■ 超クロスオーバー空想大戦2

1 名前:ドミニア:2007/08/15(水) 02:31:24
ようこそ、ありとあらゆる空想の世界が広がる、空想大戦の世界へ。
私は「ゼノギアス」はエレメンツの一人。大地のエレメンツ、ドミニア・イズコールだ。

早速説明へと入ろう・・・。ここは、複数キャラ同時参加によるキャラネタなりきり&リレー
小説方式で、作品の枠を越えた夢の共同戦線や対決に重点を置き、
特撮」「アニメ」「ゲーム」「漫画」「ジュニア向けSF・ファンタジー小説」等など
様々なヒーロー作品に登場する善悪様々なキャラクターの皆に集まってもらい、
熱い戦いと壮大な物語を思う存分に繰り広げてもらうスレッドだ。
つまり戦う物語をSSという形で描け、ということだ。よって雑談はここでは禁止。

あと、残念なことにTV放送作品で放送中のストーリー部分は、原則として出られない。
BLEACHで言うなれば、アランカル編放送中はアランカル編が終わるまで、その編より
一つ前、つまりバウント編までのキャラクター、設定は使用できるということだ。
そしてアランカル編が終われば、ウルキオラやグリムジョーの使用が可能になる。
他にも以下のルールがあるから、よく読んで記憶し、遵守しろ。
守れんのなら、軍法会議の上で島流しだからな(ぇ

●いきなりここに書き込むのではなく、まずは下記のリクスレにおいて己の
 コテハンを決め、自己紹介をし、草稿を書いてからにするべし。

●各ヒーロー作品キャラオールスターによるショートシナリオを皆で書こう!
 他の人の文章に物語を繋げてもいいし、自分独自のシナリオでもOK。

●連載や放映が終わった&シリーズが完結した作品に関しては、
 原則として最終回の後日談として超大戦スレに登場させよう!

●海外の作品は不許可!(ウルトラマングレート・パワードや
 東映版スパイダーマンのように日本の作品とつながりがあれば一部OK。
 ただし、キ●グダムハーツやパワーレンジャーのように版権元が厳しい作品は不許可)

●あまりに突飛だと思われる作品のキャラを入れる場合は、
 予め楽屋裏の方に許可を申請する書き込みをしておこう!

●書き込まれたストーリーはちゃんと全部読んでから続きを創作しよう!

●使用するキャラは基本的に早いもの勝ち。もしどうしても
 そのキャラを使いたかったら、そのシナリオが終わってから上手く話を繋げよう!

●公式サイトやファンサイトで原作をしっかり把握するのは大前提だ!

原典がいくつかのパラレルに分かれている作品については、
 特定のバージョン準拠にこだわらず、それぞれからいいトコ取りをして
 矛盾の無い程度につなげていくこと!

●SSを書き込む際は、E-mail欄に自分の名前(キャラハン名かコテハン名)を入れること!

●強さ議論は控えめにマターリと!

●勧善懲悪とハッピーエンドを心掛けよう!

●必ずしもアクションや勧善懲悪だけがその作品のメインでなくても、
「パタリロ!」「Dr.スランプ アラレちゃん」「こちら葛飾区亀有公園前派出所」等など、
主人公に最低限の戦闘能力あるいは問題解決能力があると認められば、本スレへの出演は
許容範囲内であるとします。

●円滑なるストーリー回転の為、Aの書いたSSに対し、Bの書き手がキャラクター、設定を
変更したい場合、Bの陳情カキコから返事が一ヶ月無い場合は、Bに権利が譲渡されます。

●その他詳細事項やお問い合わせについては、楽屋裏へ。
参戦希望リクエストや感想等を受付中!(※ネタバレありにつき注意)
現行リクスレ

■超クロスオーバー空想大戦 練習・感想・リクエスト受付所その4
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1166961566/
作品考証談話室

■超クロスオーバー空想大戦・作品考証談話室(避難所)
http://charaneta.just-size.net/bbs/test/read.cgi/ikkokuRH/1080433232/
前スレ

■超クロスオーバー空想大戦
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1084962936/
旧リクスレ

■超クロスオーバー空想大戦 練習・感想・リクエスト受付所(その1)
http://charaneta.sakura.ne.jp/ikkoku/kako/108/1085357593.html

■超クロスオーバー空想大戦 練習・感想・リクエスト受付所その2
http://charaneta.sakura.ne.jp/ikkoku/kako/111/1117189697.html

■超クロスオーバー空想大戦 練習・感想・リクエスト受付所その3
http://charaneta.sakura.ne.jp/ikkoku/kako/115/1151054767.html
作品情報参照スレ

■超クロスオーバー空想大戦・まとめサイト
http://www.geocities.jp/nn060529/

■超クロスオーバー空想大戦・登場済人物一覧
http://wiki.fdiary.net/scrossficwars/
それからもう二つ。私からお願いする事がある。

@SSを書き終わったら、例えば
<正義側の場合>「○MACの黒田隊員→ツルク星人を倒す」
<悪側の場合>「●スマートレディ→ガス人間に倒される」といった感じで、
善人(味方)の場合は文章の最初に○を、悪人(敵)の場合は●をつけて、
最後にその時の展開をまとめてくれると嬉しい。

A新キャラ・新規参戦作品が登場した場合は、
【今回の新規登場】
○or●+キャラ名(作品名)
のように出典を記載して欲しい。こちらの方も、
善人なのか悪人なのか一目で解かり易いように、
キャラ名の先に○か●(敵味方の立場が判別不能な時は△)をつけてくれ。

あとは、他の書き手の書いたSSを参考に、分からんことは遠慮なく
リクスレの方にいる私や他の面々に尋ねて来るといい。

それと、大まかな説明部分は↓から見てくれ。

>>2 空想大戦主題歌
>>3 地球の政府・軍、宇宙の警察組織
>>4 地球の警察組織、日本の政府組織(警察関係)
>>5 その他の正義側組織、主な敵組織
>>6 時間の流れについて、世界観について
>>7 地球(地上)とは異なる世界について、「人間」「人類」の定義について
>>8 ドラゴンクエスト(以下DQ)シリーズについて、考察ネタ
>>9 クロスオーバー空想世界における『神』また『それに類する者』の順位・序列
>>10 黄泉がえり現象、時空クレバス
>>11 特定作品の扱いについて
では、そろそろ始めよう。


2 名前:■超クロスオーバー空想大戦・公式OPテーマ:2007/08/15(水) 02:51:50

   『燃えろ!ヒーロー軍団』

作詞:八手東肇
作曲:菊羽森宙亜岳之
歌:ななしいさお&すずむし'04&オマエモナゆりかご会

1.魔の手がせまる 平和な街に
  宇宙の闇から 海の底から
  吼える怪獣 荒ぶる怪人
  立ち向かえるのはただ一つ
  ニンゲンの勇気
  (今だ! 出動!)
  コミック アニメの勇者達
  特撮 ゲームの星達よ
  僕らの希望を背に受けて
  集え この場所へ 正義の旗へ
  あれは スーパーヒーロー軍団!!

2.恐怖が覆う 静かな空を
  次元の果てから 大地の底から
  うなる怪ロボ 牙むく妖怪
  打ち砕けるのはただ一つ
  ニンゲンの怒り
  (今だ! 出撃!)
  変身 装着 合体だ
  科学も 武術も 超力も
  みんなのために命かけ
  走れ あの基地へ 光の元へ
  行くぞ スーパーヒーロー軍団!!

3.何かがうごめく 君の近くで
  心の弱さを 優しい思いを
  狙う軍団 非情の犯罪
  ふり払えるのはただ一つ
  ニンゲンの絆
  (今だ! 出陣!)
  ビームだ 剣(つるぎ)だ 体当たり
  呪文だ 拳(こぶし)だ バズーカだ
  無敵の技を身につけて
  叫べ 声高く 勝利の歌を
  我ら スーパーヒーロー軍団!!



3 名前:ルール説明その3 地球の政府・軍、宇宙の警察組織:2007/08/15(水) 02:58:10
■地球人類主体の政府・軍

○地球連邦【機動戦士ガンダムシリーズ】【スーパーロボット大戦シリーズ】

○地球連合【宇宙の騎士テッカマンブレード/U】【機甲戦記ドラグナー】【ラーゼフォン】
【機動戦艦ナデシコ】【機動戦士ガンダムSEEDシリーズ/-ASTRAYシリーズ-】

○地球圏統一連合【新機動戦記ガンダムW】

○地球統合政府・軍【マクロスシリーズ】

○地球統合政府EFA【超重神グラヴィオン/ツヴァイ】

○地球統一政府、自由惑星同盟【銀河英雄伝説】

○人類統合体【星界の紋章/戦旗】

○惑星連合・惑星連合宇宙軍、汎銀河共和国【無責任艦長タイラー】

○地球平和守備隊【太陽戦隊サンバルカン】

○地球守備隊【電撃戦隊チェンジマン】

○国際空軍【超力戦隊オーレンジャー】

○地球防衛軍【魔界戦記ディスガイア】

○国際連合(国連) etc・・・


これら各作品における地球人類主体の政体及び軍事組織の名称は
全て「地球連邦」で統一し、宇宙各地における連邦傘下の植民星も含んだ
呼称を「自由惑星同盟」とします。
地球連邦政府・大統領は、自由惑星同盟・最高評議会議長を兼任します。
地球連邦軍の中に、主に人外の侵略者と戦う「地球守備隊」があって、
イーグル【秘密戦隊ゴレンジャー】やネルフ【新世紀エヴァンゲリオン】、
国際地球防衛会議【ミラーマン】やKSS【スーパーロボット マッハバロン】
GEAR【GEAR戦士電童】など組織は、その一セクションとします。



■宇宙の警察組織

○星間警察(ユニバーサル・ガーディアン)【ロスト・ユニバース】

○宇宙警察カイザース【勇者エクスカイザー】

○宇宙警備隊【ウルトラマンシリーズ&太陽の勇者ファイバード】

○宇宙警察機構【勇者司令ダグオン】

○銀河連邦警察【宇宙刑事シリーズ】

○宇宙警察【特捜戦隊デカレンジャー】

○連邦宇宙軍【パラデューク】 etc・・・


各作品における宇宙規模の各警察組織については、
宇宙全体では宇宙警察機構の銀河系支部として銀河連邦警察があり、
ウルトラの国を中心とした宇宙警備隊と協力関係にあるとします。
銀河連邦警察は内外銀河1200ブロックから成り立つ組織であり、
総本部は外銀河宇宙に存在する。地球は第87プロックに所属し、
内銀河第10惑星バード星【パーマン&宇宙刑事シリーズ】の管轄下にある。
バード星銀河連邦警察の最高司令官はコム長官であり、
地球圏では、第一太陽系地区宇宙刑事隊長である一条寺烈=宇宙刑事ギャバンと
宇宙警察・地球署のボスであるドギー・クルーガーの指揮のもと、
地球地区担当の宇宙警察官には、個人の判断で犯罪者をその場で処刑してよい権限まで
与えられているような、いわゆる郡保安官:County Sheriff(シェリフ)型の宇宙刑事や、
犯人の処刑には宇宙最高裁判所の許可が必要とされるSPDなどが
地球に派遣されて来て(あるいは現地採用されて)いる。


◎MDPO【ウルトラマンシリーズ全般、ミラーマン、ジャンボーグAなど】
宇宙連合内におけるタカ派の台頭による侵略などに対抗する為、地球連邦軍内の
一セクションであった対怪獣用地球防衛組織・Mフォースが解散、新たに編成され、
ICPOのW.I.N.R.や科学特捜隊、世界科学連邦のSRCなども傘下とする、独立した機関、
怪獣災害防止機関:MDPO(Monster Disaster Prevention Organization)となったもの。
それにより、Mフォースの幹部は一度解散、新たに各組織トップから幹部が一人ずつ選ばれ、
情報の共有、及びこれまでMフォース内でもほとんど個々で活動していた各組織間の協力の
為にホットラインが敷かれ、絶えず情報交換が行なわれるようになった。

その総本部として、MDPOの構想を最初に提案したTPC総合本部・グランドームが選ばれ、
MDPOの幹部達は、平時は各組織の基地にいて、非常時、及び1ヶ月に1度の幹部会議の際には
TPC総合本部へ集まることになっている。
さらに、MDPOの各実働部隊(スーパーGUTS、科学特捜隊など)の隊長も、非常時や、
2週間に一度の報告会の際に、その地区で最大のMDPOの基地(極東地区でいうと日本のTPC総本部)
へ集まることになる。


4 名前:ルール説明その4 地球の警察組織、日本の政府組織(警察関係):2007/08/15(水) 03:01:14
■地球の警察組織

地球全体では、ICPOあるいはインターポールの呼称で知られる
国際刑事警察機構(International Criminal Police Organization)を頂点に、
そのICPOの中でも特殊能力を持つエキスパートばかりを集めたのが
国際警察機構=ユニコーン機関【ジャイアントロボ】であり、
科学特捜隊【ウルトラマン&ジャッカー電撃隊】やアメリカのFBI、CIA、
日本の警視庁、MI6、中国公安部もその一セクションである。

ICPO長官は、大人に成長した金田正太郎【超電動ロボ 鉄人28号FX】であり、
ユニコーン機関のトップである黄帝ライセは、同時にICPOの最高顧問を務める。
デストロンハンター出身の佐久間ケン【仮面ライダーV3/SPIRITS】が
本部長として現場にて指揮を執り、主な現場での陣頭指揮は、銭形幸一警部【ルパン三世】
や、春麗【ストリートファイターシリーズ(以下ストファイ)】などが行っている。
ICPOの本部所在地は、フランス(リヨン市)。



■日本の政府組織(警察関係)

(政府組織)

○SRI(半官半民の科学捜査機関。警察の嘱託)【怪奇大作戦】

○オカルトGメン(オカルト専門の警察組織)【GS美神 極楽大作戦】

○怪獣Gメン(元は環境省の1セクション=公害Gメンだったが、
 バイオテクノロジーを利用した怪獣と戦うために特務機関になる)【スペクトルマン】

○国家警備機構(日本の安全への脅威に対して隠密捜査を行う組織、
 アメリカで言うCIA?)【アイアンキング】

○治安維持局【未来戦隊タイムレンジャー】

○B.A.B.E.L.(バベル)(内務省特務機関超能力支援研究局、BAse of Backing Esp. Laboratoryの略。
エスパーの保護と人類との共和を目的とした組織)【絶対可憐チルドレン】

○内閣情報調査室=CIRO(サイロ)(以下内調。内閣官房の内部組織の一つ)【EVEシリーズ】


(警察内組織)
○対妖魔特殊警察部隊 AMP【サイレントメビウス】

○0課装甲警察部隊=ZAC【電脳警察サイバーコップ】

○特別科学捜査室【ロボット刑事】

○特車隊【機動警察パトレイバー】

○特別救急警察隊=ウインスペクター【特警ウインスペクター】

○特捜救急警察=ソルブレイン【特急指令ソルブレイン】

○特別救急捜査隊=エクシードラフト【特捜エクシードラフト】

○勇者警察=ブレイブポリス【勇者警察ジェイデッカー】

○未確認生命体対策班=MPD/SAUL【仮面ライダーアギト】

○特殊刑事課【はみだし刑事】

○ZECT【仮面ライダーカブト】


8マン=東八郎、8マン・ネオ=東 光一【エイトマンシリーズ】、
ジバン=田村直人【機動刑事ジバン】、
ジャンパーソン&ガンギブソン【特捜ロボジャンパーソン】は
特定のセクションに属さない遊軍的存在。

ちなみに、裏刑事達を指示する超法規委員会【裏刑事】は、
警察に近しい、だが警察を外れた組織として考えられる。



5 名前:ルール説明その5 その他の正義側組織、主な敵組織:2007/08/15(水) 03:04:26
■その他の正義側組織

 ○サージェス財団(通称:サージェス)【轟轟戦隊ボウケンジャー】
  世界各地で失われかけている貴重な宝を集める民間団体。

 ○神月財閥【ストリートファイターシリーズ】
  世田谷区に居を構える、神月かりんの家。攻撃衛星『まんじゅしゃげ』所有。

 ○ケロロ小隊【ケロロ軍曹】
  ケロロ軍曹を隊長とした、ケロン星の軍隊「ケロン軍」の小隊の一つ。

 ○西澤グループ【ケロロ軍曹】
  私設軍隊を持つような大変な富豪であり、その総資産額は国家予算に匹敵する

 ○GEAR【GEAR戦士電童】

 ○森羅【NAMCO×CAPCOM】
  闇に潜み、人に仇なす魑魅魍魎と戦いを繰り広げる特務機関。

 ○S.O.R.T.&TRAT【ディノクライシス】
  非公式な指令を専門にこなすアメリカ政府直属の特務機関。対恐竜戦闘のプロ。

 ○S.T.A.R.S.【バイオハザードシリーズ】
  元は、アメリカ中西部、ラクーン市警の特殊作戦部隊。
  アークレイ山地洋館事件、ラクーンシティ壊滅事件からは対アンブレラ、
  他Tウィルスによるバイオハザードの抑止、阻止を目的としたゲリラ的団体
  として活動中と思われる。
  ちなみにSTARSとはSpecial Tactics And Rescue Serviceの略称。

 ○S.M.L【映画クレヨンしんちゃん ブタのヒヅメ大作戦】
  正義自体が目的の秘密組織、正義の味方LOVE(頭文字をとって通称「SML」)。
  コードネーム『筋肉』、『お色気』の二人の隊員がいること以外の組織情報は全くの不明。
  テロ組織『ブタのヒヅメ』による全世界を巻き込もうとした世界一アホらしいサイバーテロ
  の危機を野原家との協力により解決している。その後、ブタのヒヅメのブレードも恩赦取引
  でスカウトされたという説もある。

 ○M.I.S.T.【パラサイトイブ2】
  FBI内の秘密部署。対N.M.C.(ネオ・ミトコンドリア・クリーチャー)専門機関。

 ○多世界間企業株式会社アルファ・システム
  九州地方熊本県に存在するとあるゲーム会社。
  現実世界で、高機動幻想ガンパレードマーチ、絢爛舞踏祭、式神の城シリーズなどを開発した
  ゲーム会社。アルファ・システムは、神聖同盟の出先機関または本拠地とされている。
  2004年6月にセプテントリオンにより壊滅。
  アルファの残党は健在している様であり、現在ゲリラ的に活動中。
  なお、現実世界においては現在も存在し、ゲームを誠意製作中である。


 ○神聖同盟【アルファシステム無名世界観】
  世界移動組織のひとつ。セプテントリオンと敵対関係にある。
  青或いはアルファ・システムの活動拠点と見られ、儀式魔術白いオーケストラ前後のリーダーは、
  アリアンことソーイチロー・ヤガミ。本拠地は火星に在る。
  クード標準暦 2298年、セプテントリオンに対抗する為、旧世界調査局系の各世界の軍部ハト派や
  千人委員会などが秘密裏に神聖同盟を締結した。
  彼らは、引き続き「世界調査局」を名乗っている。
  アルファシステム社を通じて夜明けの船にプレイヤーを送り込んだのはここ。
  第3世界のわんわん帝國やにゃんにゃん共和国の重鎮や数多くの良き神々が参加しており
  「とっとこハム太郎」、「ガウガウわー太」など動物作品が参入してくる際の本命枠と見られる。


 ○時空管理局【リリカルなのはシリーズ】
  数多に存在する次元世界を管理・維持する為の司法機関。
  警察と裁判所と文化管理や災害の防止・救助となんでもやっている模様。



◎プリンセス・ユニオン(略称:PU)
 全宇宙・次元の王女や令嬢たちによって結成されたヒーロー支援組織。

【正義と平和の為にヒーロー達と共に戦う覚悟を持っていること】。
【種族は問わず、王族や有力政治家、大富豪などの血脈ではなく、正義の血のみを重視する】。
【父母や一族、更に過去のプリンセス本人が悪側であろうとも、現在が正義の人であればいい】

 以上がPU参加条件です。
 素行に問題があり、過去の行いを悔い改めていない
 プリンセスは原則として参加していない・・・ 事になっています。

 ○セイラ・マス【機動戦士ガンダム】 ○シーラ・ラパーナ【聖戦士ダンバイン】
 ○ラクス・クライン【機動戦士ガンダムSEED】

 上記の3人が中心的役割を果たしている。
 実動部隊として5人のエンジェルライダーズ
 (岬ユリ子、上村美也、沢木雪菜、霧島美穂、長田結花)を擁し、
 神月財閥令嬢・神月かりんを通じて多くの女性格闘家たちとも協力体制にある。
 旗艦はセイラが艦長を務める、『エトワール・ド・ラ・セーヌ(ラ・セーヌの星)』。


◇他PUメンバー

 ○銀河連邦警察長官令嬢・ミミー【宇宙刑事ギャバン】

 ○デルフィヌス座ヴァルハラ星皇女

 ○ワるきゅーレ=ワルキューレ【円盤皇女ワるきゅーレ】

 ○セシリー・フェアチャイルド=ベラ・ロナ【機動戦士ガンダムF91/機動戦士クロスボーンガンダム】
  元コスモバビロニアの偶像・マザーバンガード初代艦長・PUメンバー。
  XM-07ビギナ・ギナのパイロット。

 ○カガリ・ユラ・アスハ【機動戦士ガンダムSEEDシリーズ】
  南太平洋・オーブ連合首長国代表首長。MBF-02ストライク・ルージュパイロット。
  キラ・ヤマトの双子の妹。

 ○クラリス・ド・カリオストロ【ルパン三世 カリオストロの城】
  ヨーロッパ・カリオストロ公国公王(オリジナル設定)・PUメンバー

 ○マイラ大使【世界忍者戦ジライヤ】
  中近東・アメール民主共和国特別平和大使(退位した元女王)。
  世界忍者豪忍アブダダの姪。

 ○ササール王女【ジャイアントロボ(実写版)】
  ヨーロッパ・アラー共和国王女・PUメンバー。
  (※原典に登場したのは幼い少女でしたが、オリジナル設定として
    このクロスオーバー世界では成長した女性として登場しています)

 ○リリーナ・ドーリアン=リリーナ・ピースクラフト【新機動戦記ガンダムWシリーズ】
  地球連邦外務次官・先代ドーリアン外務次官の養女・サンクキングダム元王女。
  PU中枢メンバーの1人・戦艦ゼフィルスの艦長

 ○馬場ミルク=仮面の忍者桃風【NG騎士ラムネ&40シリーズ/VS騎士ラムネ&40炎】
  異世界ハラハラワールドにあるアララ国の第3王女・馬場ラムネ。
  2代目勇者ラムネスの妻で馬場ラムネード=3代目勇者ラムネスの母。大食漢。

 ○リムル・ルフト【聖戦士ダンバイン】
  バイストン・ウェル人。ドレイク軍首領ドレイク・ルフトの娘。
  ゼラーナ乗組員としてオーラバトラーパイロットも務める。

 ○天堂(旧姓・鹿鳴館)香=ホワイトスワン【鳥人戦隊ジェットマン】
  鹿鳴館財閥の現総帥(TVシリーズ最終回後に就任)で、天堂竜=レッドホークの妻。
  国際空軍(旧スカイフォース)の嘱託隊員。S.U.P.への大口出資者も兼ねている。
  ジェットスワンパイロット兼、ジェットイカロス。イカロスハーケン。
  ジェットガルーダ。ハイパーハーケン。グレートイカロスのサブパイロット。

 ○グレース・マリア・フリード【UFOロボ・グレンダイザー】
  フリード星王女(デュークの妹)・宇宙科学研究所・ドリルスペイザーパイロット
  (※プリンセスユニオンメンバー/オリジナル設定)

 ○ディアナ・ソレル=キエル・ハイム【∀ガンダム】
  月の民ムーンレイスの女王だが、実は本物のディアナと瓜二つの容姿を持つ
  キエルが入れ替わっている影武者。未来世界でPUを再興し、その代表に就任している。

 ○阿重霞【天地無用!シリーズ】
  星間国家「樹雷」第一皇女。最高議会議員。

 ○火球皇女=セーラー火球【美少女戦士セーラームーン セーラースターズ】
  キンモク星丹桂王国第1皇女。最高議会議員。

 ○ファーラ姫【百獣王ゴライオン】
  アルティア星王国王女。最高議会議員。
  青獅子パイロット及び、ゴライオンのサブパイロット。

 ○月ひかる=アンドロ仮面【好き! 好き!! 魔女先生】
  アンドロメダ星雲α星(宇宙連合を脱退、現在は宇宙連邦に加盟)の皇女。
  宇宙連邦平和監視員。

 ○ロミナ姫(忍者戦士飛影)
  ラドリオ星王女。最高議会議員。宇宙船エルシャンクのオーナー。

 ○エリカ女王(闘将ダイモス)
  バーム星(小バーム)女王。竜崎一矢の婚約者。



◎スクランブルフォース
 小学生から高校生までを中心としたティーンエイジャーで構成された戦士部隊。
 (アメコミの世界で言うところのアベンジャーズやジャスティスリーグのようなもの)
 一種の互助ネットワークの役割も果たす。
 主に3つの部隊を編成し、それぞれが相互関係を持つ。


◇鋼鉄甲隊(パンツァーパート)
 MSや勇者系ロボットを中心とする巨大戦を操る戦士たちで編成された部隊。
 戦士の大半は極東軍指令基地に所属。代表戦士は下記の通り(紹介するのは一部である)。
 ATPからはウルトラマン80=矢的猛が補佐に当たる。

≪メンバー≫
 ○峯崎拳一【熱血最強ゴウザウラー】
  家族は両親のみ。スポーツ用品店を経営している。スケボーが得意で、プリンが好き。
  苦手なものは勉強とこんにゃく。マッハプテラパイロット。明るく活発な性格。
  (尚、ゴウザウラーには他、数名のパイロットがいるが、今回は割愛する)

 ○ウッソ・エヴィン【機動戦士Vガンダム】
  優れた知識と運動能力を持つ少年。極東軍指令基地に籍を置く傍ら、
  平和を守るためにMSであるVガンダムに乗る。

 ○地球防衛組【絶対無敵ライジンオー】

 ○ガンバーチーム【元気爆発ガンバルガー】

 ○ザウラーズ【熱血最強ゴウザウラー】

 ○竹尾ワッ太【無敵ロボトライダーG7】

 ○楯剣人。柊弾児【未来ロボ ダルタニアス】

 ○コンバトラー・チーム【超電磁ロボ コン・バトラーV】

 ○ボルテス・チーム【超電磁マシーン ボルテスV】

 ○エドワード・ミト王子(ミート)【最強ロボ ダイオージャ】

 ○戦部ワタル。忍部ヒミコ。虎王【魔人英雄伝ワタルシリーズ】

 ○出雲銀河。草薙北斗。エリス・ウィラメット。スバル【GEAR戦士電童】

 ○エルビー・プル。プルツー【機動戦士ガンダムZZ】


◇妖撃破隊【ミディアンブレイカー】
 魔法・魔術を扱う戦士や信仰の力や法力で悪霊を祓う戦士。
 指導者は地獄先生こと鵺野鳴介。所属する戦士は以下の通り

≪所属戦士≫
 ○『童守少年妖撃団』【地獄先生ぬ〜べ〜】
  童守小学校の生徒。立野広。稲葉郷子。細川美樹。木村克也。栗田まこと。
  彼ら5人を基本として存在する悪霊、凶悪妖怪バスターズである。

 ○木之本さくら。李 小狼【カードキャプターさくら】
  木之本さくら=大魔術師 クロウ・リードの遺産を継いだ少女。
  明るく優しい性格だが、お化けや幽霊の類が苦手である。
  李小狼=さくらの同級生。クロウ・リードとは遠戚に当たる李家の出身。強い魔力を持つ。
  無口でクールな反面、重度の照れ屋ですぐ真っ赤になる。

 ○横島 忠夫【GS美神 極楽大作戦】
  17歳の高校2年生。当初は霊能力が皆無だったが、現在では文殊使いという
  珍しい霊能力を扱える。ちなみに本籍はスクランブルフォースではなく、
  美神令子除霊事務所という場所に籍を置く。

 ○稲生タダシ【妖怪大戦争(2005)】
  ある夏祭りの夜。麒麟送子に選ばれた少年。気弱だが頑張るという性格。


◇『変身戦隊』(チェンジフォース)
 地球戦隊ファイブマンの5人が指揮する部隊。スクランブルフォースの中で最も大勢の
 戦士がここに所属する。変身能力を持つ者が主だが、超能力者や等身大のロボットも
 ここに所属する。(チェンジフォースは本来、対怪人用の部隊のため)

≪所属戦士≫(膨大な数の為、名前と原作のみを表示。また全員ではなく一部)
 ○アトム(鉄腕アトム)

 ○ウイングマン=広野健太【WINGMAN】

 ○愛野美奈子=セーラーV=セーラーヴィーナス【セーラームーン】

 ○如月ハニー=キューティーハニー【キューティーハニー】

 ○広瀬広一【ジョジョの奇妙な冒険】



◎特務教師部隊 ATP 『Association of  Teachers Powered 』
 子供達を愛する教師による活動団体。戦闘のみならず、上記の民間部隊である
 スクランブル・フォースへの援助や、悪の道に走ってしまった子供の更生にも手を貸す。


◇ATPメンバー
 ○近衛 近右衛門【魔法先生ネギま!】
  ATPの発足者。現時点ではATPの責任者でもある。
  魔法使いとしてかなりの力を持つ。

 ○矢的猛【ウルトラマン80】
  ウルトラマンであり教師である男性。
  教職について子供達を指導することこそないが、スクランブルフォースは
  『鋼鉄甲隊』(パンツァーパート)を援護する役割を担う。

 ○鵺野 鳴介【地獄先生ぬ〜べ〜】
  悪霊祓いを得意とする教師。最強と名高い対霊兵器
  『鬼の手』を宿す。教師として活動する傍らスクランブルフォース
  『妖撃破隊』(ミディアンブレイカー)を率いる。

 ○星川学【地球戦隊 ファイブマン】
  地球戦隊ファイブマンとして戦う傍ら、教師としての責務を果たす。
  4人の妹弟とともにスクランブルフォースではおもにDショッカーの怪人と戦う。
  『変身戦隊』(チェンジフォース)の指揮を取る。


 また、TPA特別顧問として、『事務職兼更正担任』という、戦闘を行わない役職に
 付いている教師もいる。彼らは教師間でネットワークを形成し、いち早く災害や襲撃に
 対応できるように準備を整えている。

 例)○坂本金八 (三年B組金八先生)
   ○山口久美子(ごくせん)



■主な敵組織について

 ●邪神大軍団グランショッカー→無限なる帝国ディバイン・ショッカー(Divine'Shocker)
  組織の中心となる三軍団は、三柱の至高邪神の直轄──
  邪帝大首領クライシス(声:納谷悟朗)率いるショッカー正規軍
  (ショッカー、ゲルショッカー、デストロン、GOD秘密機関、ゲドン、
  ガランダー帝国、ブラックサタン、デルザー軍団、ネオショッカー、
  ドグマ王国、ジンドグマ、BADAN(バダン)、暗黒結社ゴルゴム、
  クライシス帝国、財団、フォグ、グロンギ族、スマートブレイン)・
  銀河大星王バズー(声:加藤精三)率いるゴズマ軍(大星団ゴズマ、地底帝国チューブ、
  銀帝軍ゾーン、宇宙忍軍ジャカンジャ。他の組織の怪人も製造可能)、
  暗黒大魔神サタンゴース(声:飯塚昭三)率いる巨獣軍(宇宙犯罪組織マクー、
  犯罪エスパー組織マドー、不思議界フーマ、妖魔一族、犯罪組織バイオロン)
  によって構成されていた。
  しかし、ついに表裏六柱の実体を現した至高邪神により
  旧グランショッカーの組織を放棄、新組織ディバインショッカーへと衣替えした。
  そうして、ネイティブ過激派、ワーム、ネガティブシンジゲートといった新たな組織を
  吸収し、更なる強大化を見せている。

≪Dショッカー・地下帝国軍≫
 元々、Dショッカーの前身たるGショッカーには、ショッカー正規軍・ゴズマ軍・巨獣軍の
 三軍団以外に、第四の軍団としてミケーネ帝国軍が存在していた。
 このミケーネ帝国軍がDショッカー再編成に伴い、同じく地底を出生の地とするゴズマ軍の
 三組織、即ち、有尾人一族ジャシンカ帝国・地底帝国チューブ、
 更に地底冥府インフェルシアを戦力に取り込んだ事で、新たに地下帝国軍として生まれ変わった。



 ●地球至上主義勢力
  極端な地球中心主義を掲げ、影の地球連邦政府(シャドー・ガバメント)とも呼ばれる。
  地球教総大主教(グランド・ビショップ)と呼ばれる宗教指導者を頂点に戴き、
  ジオン軍の残党狩りを名目にして設立されたいわゆるエリート部隊「ティターンズ」や
  過激な反コーディネイター活動組織「ブルーコスモス」を裏から動かし、
  日本にも三輪防人や南雅彦らを軍部や警察組織の要職に送り込み、
  地球を祭政一致の宇宙の中心にする事を目論んでいる。デロイアなどの植民惑星で圧政を敷き、
  神ファミリーを迫害したり、反ロボット主義者たちを煽動するなど、
  テロと陰謀により、地球上のあらゆる政治・軍事・経済の各分野に絶大な影響力を持つ。
  タラークとメジェールの2惑星に“刈り取り”を送り込んだのも彼らである。


 ●ジュピトリアン【機動戦士ガンダムシリーズ】
  主に木星への移民労働者の出身階層や、核融合に必要なヘリウム3を採取して
  地球圏にまで運んでくる木星船団などで構成される軍事勢力。
  自らを地球人類とは違う木星人(ジュピトリアン)と称する。
  新西暦198年 5月〜 月臣元一朗の「熱血とは盲信にあらず」の檄文から始まり、
  白鳥九十九少佐謀殺事件の真相を知った若手穏健派が中心となった
  「熱血クーデター」により、地球と木星の間には和平が結ばれるが、
  それでも地球との和平を快しとせぬ急進的主戦派が、
  新たに木星帝国総統クラックス・ドゥガチを盟主として結集した。
  ジュピトリアンの中心人物は木星帰りのニュータイプ、パプティマス・シロッコ
  であったが、Gショッカー壊滅と同時に、己の手で地球上の敵対者となるであろう
  人物を全て一掃するという新たな目的の為、ジュピトリアンから、より組織力や
  軍事力の総合が高い、シロッコが再編した新たなティターンズを率いて行動を開始した・・・


 ●セプテントリオン【アルファシステム無名世界観】
  北斗七星の意。
  世界移動組織のひとつ。 ブランカがリーダー。よくセプと略されているのを見かける。
  すべての世界をまたに掛ける死の商人。
  兵器を売りつける代わりにその世界の未来を手に入れているという。
  ブレインワーカー(プランナー)の作った計画通りに歴史を再現する。
  元々は竜使いの一族であったという。青と呼ばれる事もある。


 ●ネスツ【KOFシリーズ】
  総帥イグニスの命の元、世界の裏で暗躍する秘密結社。
  その行動の全ては、イグニスが神の座に立つ為である。
  圧倒的な科学力を有しており、その中でもクローン技術は特に優れている。
  世界的な格闘技の祭典である『THE KING OF FIGHTERS』の最多優勝経験者であり、
  そして三種の神器の一人『払う者』でもある草薙京のクローンを主戦力としている。
  また、他にもウルトラマンのクローン等もして保持しており、その戦力は極めて高い。
  かつて、キラ=ヤマトやラウ=ル=クルーゼ達が生み出されたスペースコロニー「メンデル」の
  技術者達に、自分達の持てる技術を提供したのではないかという疑いがかかっている。
  同様に、かつて世界を震撼させたクローン技術者であるマモーとも、何らかの関係があると
  思われている。幹部クラス以上の人間は皆、一人一人が超人の域に達した実力者。
  お互いに邪魔な敵を葬り去る為にと、DIO達と協力体制をとっている。


 ●DIO=ブランドー一味【ジョジョの奇妙な冒険シリーズ】
  悪の救世主と言わしめたカリスマ、DIO=ブランドーの一味。
  強力なスタンド使いを配下として大勢保有する他、
  DIOの血を与えられた事によって人間を超越した「吸血鬼」や「屍生人」、
  DIOの放つ肉の芽によって操られている者達が彼の元に集っている。
  お互いの敵を排除する為にと、ネスツとは協力関係を結んでいる。
  しかし、かつてラクス殺害の為にDIOが送り込んだ不動琢磨がD・ショッカーの
  サー・カウラーと結託しているなど、D・ショッカーとも何らかの繋がりがある模様。
  時空を越える術として、異世界のタイムマシンであるシルバードを所有している。


 ●オロチ一族【KOFシリーズ】
  地球の自由意思である、オロチの眷属者達の総称。
  その中でも特に秀でた力を持つ八人が、オロチ八傑集と。
  八傑集の中でも最強の部類に当たる四人を、オロチ四天王と呼ぶ。
  地球を汚す全ての人間を抹殺する為、オロチを現世に呼び覚ます事を目的としている。


 ●鉄人兵団【映画ドラえもん のび太と鉄人兵団】

 ●ブタのヒズメ【映画クレヨンしんちゃん ブタのヒズメ大作戦】

 ●シャドルー【ストファイシリーズ】

 ●ザ・サードムーン【ストライダー飛竜シリーズ】

 ●企業体【ストライダー飛竜シリーズ】

 ●国際ダイヤモンド輸出機構【パタリロ!】

 ●ピョートル大帝【パタリロ!】【ブラックラグーン】

 ●アンブレラ【バイオハザードシリーズ】
 Tウィルスを作り出し、一つの洋館から、一つの街をゾンビの徘徊する
 死の街にした元凶。

 ●H.C.F.【バイオハザードシリーズ】
 アンブレラと敵対する、謎の悪徳製薬会社。

 ●ロゴス【ガンダムSEEDシリーズ】

 ●愛国者達【メタルギアシリーズ】

 ●天帝軍【ロストワールド】



■中立的組織について
 △夜明けの船【アルファシステム無名世界観】
  火星の夜明けを待つ人々によって建造された、シールドシップ。
  どこの国にも所属せず、ただ自由の旗の元に集まった英雄の艦。
  火星の海をただ一隻でこの世の悪の悉くを相手に、神出鬼没に現れては戦闘を行い、また消える。
  一番艦は儀式魔術絢爛舞踏祭において、EFの聖銃で沈没している。
  現在稼動しているのは歴史修正の後、原&BALLSインダストリアルにより届けられた二番艦である。
  地球軍から"海賊ども”と呼ばれる。



6 名前:ルール説明その6 時間の流れについて、世界観について:2007/08/15(水) 03:09:04
■時間の流れについて

○本スレでは、異なる天体・異なる次元共通の暦として
 「超時空暦」という年号が採用され、時空クレバスを通じて違う時代とお互いに自由に
 行き来できるようになった時点が元年=超時空暦0001であり、この年を「現代」として
 扱い、大半のヒーロー作品がこの時代に含まれることになっていました。
 新章からは『新西暦』という新たな暦が生まれ、より公用性が高いものとなっています。
 ちなみに、『現代=新西暦189年』となっています。

○【忍空】【NARUTO】【ONE PIECE】【鋼の錬金術師】
 これら上記の世界は、ジャスミンの未来視により、未来の物質界と断定済です。
 他にも特別な名称が無い場合で、且つ「電話」「艦船」「自動車」が存在するなど、
 ある程度まで文明が進んでいる世界(時代)は、幻想界の一つとするか、もしくは
 『新西暦X年』とする方針となっています。


  【物質界・時代別作品一覧】

○原始時代:【原始少年リュウ】【はじめ人間ギャートルズ】【PC原人】

○三国志時代:【三国無双】

○中国殷周時代:【仙界伝 封神演義】

○平安時代:【陰陽師】【少年陰陽士】

○古代〜近世ヨーロッパ:【円卓の騎士物語 燃えろアーサー】【リボンの騎士】【ラ・セーヌの星】
            【小さなバイキングビッケ】【ジャンヌ・ダルク(PSP)】

○戦国時代:【仮面の忍者 赤影】【快傑ライオン丸】【風雲ライオン丸】
      【忍たま乱太郎】【犬夜叉】【天誅シリーズ】【鬼武者シリーズ】【戦国無双】

○江戸時代:【妖術武芸帳】【魔神ハンター・ミツルギ】【白獅子仮面】
      【変身忍者 嵐】【赤胴鈴之助】【サムライスピリッツ】【必殺シリーズ】

○幕末・明治初期:【幕末浪漫 月華の剣士】【PEACE MAKER 鐵】
         【るろうに剣心 明治剣客浪漫譚】【幕末機関説いろはにほへと】

○大正(太正)時代:【サクラ大戦シリーズ】

○昭和初期:【蒼天の拳】

○第二次大戦中・前後:【紅の豚】【機神兵団】【帝都大戦】

○冷戦時代:【メタルギアソリッド(以下MGS)3】

○キューバ危機前後:【MGS・ポータブル・オプス(以下オプス)】

○未来(文明崩壊もしくは天変地異後):【風の谷のナウシカ】【戦闘メカ ザブングル】
 【∀ガンダム】【北斗の拳】【砂ぼうず】【宇宙からのメッセージ 銀河大戦】
 【ゼノギアス】【ゼノサーガシリーズ】【ロックマンDASHシリーズ】

○時の最果て【クロノ・トリガー】


 ……等など、これらの作品の時代へは、時空クレバスを通じて、
ほぼ自由な往来が可能です。時間旅行は「航時法」【ドラえもん】及び
「時間保護法」【未来戦隊タイムレンジャー】という超未来の法律により管理され、
時空管理局(タイムGメン)【恐竜戦隊コセイドン】が管轄しています。



○メタルギアアシッド(以下MGA)シリーズについて
MGSの外伝的作品。現代が舞台と思っている人間も多いが、実際は
MGA1(2016年)→MGA2(2018年)となっていて、カテゴリ【近未来】である。
しかし、オプスにも隠れキャラとして1のヒロイン、テリコと、2のヒロイン、
ヴィナスが出現していることから、タイムホールなどによる他の時代への登場も
比較的容易と思われます。ちなみに、MGS1のスネークはソリッド本人である事を
否定する部分はなかったが、ビッグシェル事件の数年後であるMGS4のスネークが
老人姿で、MGA1のスネークがMGS2と同じ中年姿であることから、MGA1の
スネークも、MGS2のスネーク同様、ソリッド・スネークのクローンである
可能性が高い。ここから、MGAシリーズのスネークは、アシッド・スネークと
呼ぶのが正しいされます。更に、1から2に至って肉体年齢変化がほとんど存在しない
事から、アシッド・スネークはオリジナルにあった急激な老化を受け継いでいない
ものと考えられる。これは、近未来のクローン技術が【恐るべき子供達計画】の時
よりもかなり進化しているからと考えるのが自然です。


○【光と水のダフネ】については、
劇中での「地球温暖化により世界の大半が水没」という設定は
矛盾がない程度に無視して、現代が舞台であるとします。

○【FINAL FANTASY Z ADVENT CHILDREN】は、
【FINAL FANTASY ]-2】の時代から約1000年経過した未来の、
スピラとは別の惑星での出来事です(同時代としても可)。

○ガンダムの長い黒歴史(宇宙世紀、G、W、X、SEED)については、
「スパロボ」や「Gジェネ」的に「同時代のこと」として処理します。


○【ゾイド】と【ゾイド新世紀/0】についても、同一の時代での出来事とします。
○地球の遙か6万光年彼方の星「惑星Zi」では、
ガイロス帝国とヘリック共和国の関係は良好を保ち、平和な状態が続いていたが、
帝国・共和国両サイドは、過去の戦争を反省し、
平和維持を目的とした特殊部隊「ガーディアンフォース」を結成。
さらに両国議会は「ゾイドバトル」を提案。それは、ゾイドによる戦闘を
スポーツに置き換えることで、職業軍人をゾイドウォーリアーへ転向させ、
さらに彼らを雇い、国家単独では対処しきれない問題や犯罪の抑止に
踏み切るというものだった……。



■世界観について

○地球人類(テラン)は宇宙へと進出を果たし、銀河連邦にもオブザーバーとして加盟し、
他の惑星文明とも国交が開かれています。これまでも数々の悪の侵略を退けてきた地球は、
他の星々からも一目置かれているようです。


○遥か遠い異星へと移住した一部の地球人類は、
惑星タラーク【ヴァンドレッド】、惑星メジェール【ヴァンドレッド】、
惑星テラツー【セイバーマリオネットR/J】、惑星Zi【ゾイド】等のように
遠い昔に独立を果たしたところもあれば、惑星デロイア【太陽の牙ダグラム】のように
今だ地球連邦本国と独立闘争を展開している移民惑星もあるようです。


○一方の地球でも【円盤皇女ワるきゅーレ】や【特捜戦隊デカレンジャー】で描かれている通り、
異星人が普通に東京の街中を歩いていたりもしています。
特に世界一宇宙人人口が多いのはマリネラ王国で、宇宙人の坩堝と言われています。


○アメリカ合衆国
ニューコンチネント合衆国【フロントミッション】や大西洋連邦【機動戦士ガンダムSEED】
コメリカ合衆国【絶対可憐チルドレン】と基本的に同一国家とします。
政府内には、滝和也を通して仮面ライダーを支援するFBIに代表される正義側勢力と、
GOD機関【仮面ライダーX】やニルバーナ機関、ブルーコスモス等と内通・結託する
悪側勢力が混在しているようです。


○ソビエト連邦(ソ連)
西暦1991年に一度崩壊したと思われていたソ連。
しかし、【蒼き流星 SPTレイズナー】や【フルメタル・パニック!】で描かれている通りでは、
実際は未だ解体されることなく健在であり、現在、米中ソ英仏の五大国が、地球連邦政府の
常任理事国となっています。空想大戦の世界では一時解体され、再編されたものとします。
ソ連がアメリカ共々、地球連邦に組み入れられたことで、核戦争の危機は事実上消滅。
しかし、


○マリネラ王国
通称常春の国。宝飾用ダイヤモンドの製造販売を基幹産業とする絶対君主制国家。人口約10万人。
王権は世襲制により代々マリネール家が保持、現国王は若干10歳のパタリロ・ド・マリネール8世。
宝石の他に観光客誘致にも力を入れ、経済的に非常に潤滑、税制が存在しない。
食糧の大部分を輸入に頼っており、自給できているのは小松菜とキクラゲだけである。
位置はバミューダ・トライアングルのど真ん中。なのに時差計算でインドネシア・日本と同経度で、
アメリカ・欧州の両方へ比較的気軽に行き来が可能なのは、バミューダ・トライアングル特有の異次元
影響を受けている為。島の形状は佐渡島に似ている。


○日本。首都・東京
世界の中で最も様々なヒーロー、悪の組織、そして未知のエネルギーポイントが存在する国。
その治安は、【勇者特急マイトガイン】や【爆裂天使】で描かれている通り、
残念ながら悪化の一途を辿っているようです。


○有名どころのパイロットやヒーロー達
(特にスパロボ、スパヒロ、特撮大戦、ブレサガ、サンライズ英雄譚の参戦組)は、
初めからお互いに顔見知りであるということにしておきましょう。



7 名前:ルール説明その7 地球(地上)とは異なる世界について、「人間」「人類」の定義について:2007/08/15(水) 03:12:34
■地球(地上)とは異なる世界について

◎五界【NAMCO×CAPCON】
神も悪魔も存在しない古(いにしえ)の時代に生まれ出でた5つの世界。
智恵と欲望に支配された『物質界』(これは地上の事)
美しき妖精と幻獣の世界『幻想界』。
邪鬼や妖怪の類が跋扈する『魍魎界』。
狡猾で強大な魔族の治める『魔界』。
そして神々が住まうとする『神界』。

NAMCO×CAPCON(以下ナムカプ)によれば、大まかに世界はこの五界に
分けられており(別次元、平行世界、未来、過去などは除く)この
法則に準ずるなら、以下のように分けられる。




◇幻想界
RPG、ファンタジーの世界の総称。ナムカプでは【クロノアヒーローズ】。
【テイルズオブデスティニー1,2】。【ドルアーガの塔】などが
幻想界として区別されている。
テイルズオブデスティニーが幻想界という事から、テイルズシリーズは
間違いなく幻想界で纏められると思われる。


 〜 【幻想界と思われる世界(名称判明済の世界のみ)】 〜

○幻界(ヴィジョン)【ブレイブ・ストーリー】

○フォーセリア【ロードス島戦記】【ソードワールド】【クリスタニア】

○スピラ【FINAL FANTASY(以下FF) ]/]-2】

○イヴァリース【FF TACTICS(以下FFT)シリーズ FF12シリーズ】

○インフェリア、セレスティア【テイルズオブエターニア】

○シルヴァラント、テラセア【テイルズオブシンフォニア】

○テレジア【テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー】

○泡の中央界【轟世剣ダイ・ソード】

○ハルケギニア【ゼロの使い魔】

○ペンタゴナ・ワールド【重戦機エルガイム】

○アースティア【覇王大系リューナイト】

○セフィーロ、オートザム、チゼータ、ファーレン【魔法騎士レイアース】

○魔法界・魔女界【東映魔女っ子シリーズ】

○スィーフィード世界【スレイヤーズ】

○アレフガルド【ドラゴンクエスト(以下DQ)ロト三部作シリーズ/ロトの紋章】

○創界山【魔神英雄伝ワタルシリーズ】

○天聖界・天魔界・次界【ビックリマンシリーズ】

○幻獣界メイトルパ【サモンナイトシリーズ】

○はざまの世界【DQY 幻の大地】

○メルへブン【MARシリーズ】

○ハイラル【ゼルダの伝説シリーズ】


【魔術師オーフェン】【クレイモア】など、
その世界に特別な名称が無い場合で且つ「剣と魔法が中心の世界観」の作品は
「適当な銀河系の別惑星」または「異次元の地球」での出来事として処理する
方向性だったが、惑星の形態かは別として、幻想界の一つとして考える方向が
自然と思われます。


 〜 【他、幻想界が舞台と思われる作品】 〜
【ONE PEACE】【HUNTER×HUNTER】【不思議の海のナディア】【天空の城ラピュタ】
【NARUTO】【デルトラクエスト】【神羅万象】【幻想水滸伝シリーズ】【RAVE】
【うたわれるもの】【ワイルドアームズシリーズ】【鋼の錬金術師】【ベルセルク】
【FFシリーズ】【DQシリーズ】【遥かなる時空の中で】【モンスターハンター】
【幻想魔伝 最遊記シリーズ】【世界樹の迷宮】【マリオシリーズ】etc・・・




◇魍魎界
妖怪、妖魔、死霊といった魑魅魍魎達の住まう世界。
黄泉還り現象により物質界が元死者で溢れ混乱している状況とは逆に、
魍魎界は多くの死者、亡者がいきなり一気に消え失せ混乱しているようです。

 〜 【魍魎界の一つと思われる世界】 〜

○地獄界・地獄【第三部ゲゲゲの鬼太郎】【ドロロンえん魔くん】【ドラゴンボール】etc・・・

○妖界【妖界ナビ・ルナ】

○三途の川【ゲゲゲの鬼太郎シリーズ】【地獄先生ぬ〜ベ〜】etc・・・

○鬼妖界シルターン・霊界サプレス【サモンナイトシリーズ】

○魔境【ゲゲゲの鬼太郎 妖怪大魔境】

○冥界・エリュシオン【聖闘士星矢】

○死霊界【宇宙刑事シリーズ】




◇魔界
世に魔界と言われる世界の総称。複数存在すると思われる。
ナムカプでは【魔界村】と【ヴァンパイアシリーズ】の魔界が該当。


大魔王ゾーマ【ドラゴンクエストV そして伝説へ】や大魔王バーン【ドラゴンクエスト
ダイの大冒険】の各魔王軍、大魔神サタン(堕天使ルシファー)【デビルマン他】
を崇めるデーモン族、大魔女グランディーヌの災魔一族【救急戦隊ゴーゴー
ファイブ】ジャアクキング率いるドツクゾーン【ふたりはプリキュア】、
超魔の司令官ルーシュ・デ・モン【超者ライディーン】など、
常に各勢力が主導権をめぐって争っており、さらに魔界の王の座をめざし、
世界中に送り込まれた百人の魔物が闘いを繰り広げるなど【金色のガッシュベル!!】
群雄割拠の様相を呈している。


 〜 【魔界の一つと思われる世界(名称自体が魔界のものは省略)】 〜

○ディスガイア&超魔界【魔界戦記ディスガイアシリーズ】

○闇の世界【DQW 】

○暗黒の世界【DQX 天空の花嫁】

○中華魔界【魔法少女ちゅうかなぱいぱい!/いぱねま!】


その他、【幽☆遊☆白書】や【魔人探偵脳噛ネウロ】など、複数の世界における
『魔界』は下手に統合するよりも、それぞれ別の魔界とする方が矛盾を生まなくて
済む。例として、ネウロの魔界はネウロ自身により滅亡しており、他の魔界でも
それぞれ魔王の名前がほぼ同じものが多いため(例:【パタリロ】と【GS美神】など)


地底冥府インフェルシア【魔法戦隊マジレンジャー】は、地底世界に分類するのが
正しいとされています。

怪魔界【仮面ライダーBLACKRX】は、ダスマダーの発言から。名称とは違い
魔界ではなく、地球とは双子星の関係にあるようです。




◇神界
世界の上でのあらゆる神が存在する世界。魔界同様、複数存在すると思われる。
ナムカプでは、【ワルキューレの冒険】のワルキューレと【ドルアーガの塔】の
女神イシターが該当。


 〜 【神界の一つと思われる世界】 〜

○天界【ドラゴンボールシリーズ】【魔界戦記ディスガイアシリーズ】

○天上界【ああっ女神様っ】【第三部鬼太郎】

○桃源郷【幻想魔伝 最遊記シリーズ】【パタリロ西遊記】【ぼくらの孫悟空】etc・・・

○天空界【天空戦記シュラト】



 〜【その他・五界と断定しにくい世界】 〜

○プリニー界【魔界戦記ディスガイア】

○デジタルワールド【デジタルモンスターシリーズ】

○二次元世界【ミラーマン】

○メカ次元【黄金戦士ゴールド・ライタン】

○五次元世界【絶対無敵ライジンオー】

○ポドリムス【夢戦士ウイングマン】

○裏次元世界(ディメンシア・ベルセルクなど)【鳥人戦隊ジェットマン】




◇地底世界概要
現代地球の地底には、地表とはまた違う世界が存在しています。
それらは多く、地上とは異なる文化、社会を形成し、独自の歴史と価値観を歩んで来ました。
彼らは大別して地底の人、地底人と呼ばれ、地上の人、地上人と対極の存在です。
地上人と全く同じ身体構造の種族もいれば、全くかけ離れた種族もあり、多種多様です。
その中には、地上の存在と友好を望む者達も居れば、勢力拡大の為、或いは自然を破壊する地表の
人間を抹殺する為、地上に侵攻し、地上人を抹殺せんと企む勢力も多く居るのです。

 ○ラ・ギアス【魔装機神 THE LORD OF ELEMENTAL】

 ○ミケーネ帝国【グレートマジンガー】

 ○有尾人一族ジャシンカ帝国【科学戦隊ダイナマン】

 ○地底帝国チューブ【光戦隊マスクマン】

 ○地底冥府インフェルシア【魔法戦隊マジレンジャー】

 ○東京アンダーグラウンド【東京アンダーグラウンド】

 ○デスパーシティ【イナズマンF】

等が存在し、
太古の小惑星激突で海底に没したアバン大陸の末裔達【ファイヤーマン】や、
身体をサイボーグ化する事で地底に適応したアクマ族【アクマイザー3】等が住みます。
もっと調べれば、まだまだ未知の種族や勢力が存在するかもしれません。

この内、ミケーネ・ジャシンカ・チューブ・インフェルシアは、
Dショッカー再編成の際に統合され、Dショッカー地下帝国軍が結成されています。
但し、チューブ内には平穏を、インフェルシア本国には地上との共存を望む者達がおり、
この者達が中心となって抵抗組織が編成される可能性もありえます。

アクマ族は、地底世界全体を「ダウンワールド」と呼称していますが、
この呼称はアクマ族内部だけの物であり、他種族には浸透していないようです。

また、類似存在として、水中、海底世界には水棲人、海底人と呼ばれる人種が存在します。
これら以外にも、知られざる地底、海底世界や、悪の秘密基地が存在するかもしれません。



◇地球とは双子星の関係にある世界

 ○エターナリア【獣戦士ガルキーバ】

 ○惑星ガイア【天空のエスカフローネ】

 ○ダイノアース【爆竜戦隊アバレンジャー】

 ○怪魔界【仮面ライダーBLACK RX】etc...



○魔空空間・幻魔界・死霊界・不思議時空【宇宙刑事シリーズ】etc...
……等など、その世界に固有名詞が付いている場合は、
地球とは同じ宇宙の別惑星、またはどこかの別の異次元の世界ともできます。
普通に宇宙船や次元転移装置、時空クレバスを利用して往来できます。

○ミラーワールド【仮面ライダー龍騎】へは、
歴代仮面ライダーは侵入が比較的可能と推測されます。それは、
ショッカーから続くライダー技術の関係上、仮面ライダーの皮膚が
一番粒子化されにくいという理由によるものです。
また、粒子化よりも肉体再生スピードの方が早い。実体そのものを持たない。
粒子化を受け付けず、特定の法則でなければ殺せない。基本的に不死。
などといった『化け物』達にもおそらく可能でしょう。

○メガゾーン【メガゾーン23】
メガゾーンは、スパロボDでは【平行進化した地球】とされている。

○バイストン・ウェル【聖戦士ダンバインシリーズ】は、
幻想界と大別できると同時に、地球の海と陸の間に存在する異世界であり

○ラ・ギアス【魔装機神 THE LORD OF ELEMENTAL】
地球の内部にある地底世界の一部です。

○その他
地底には、東京の地下深く、
忘れられ封じられた世界【東京アンダーグラウンド】も存在します。
地底冥府インフェルシア【魔法戦隊マジレンジャー】も地底とされます。




■「人間」「人類」の定義について
それぞれの生活圏で文明を維持発展出来るだけのものを持ち、
且つ神族や魔族ほど霊的進化は遂げていない知的生命体の事を、
地球人でなくても基本的に「人間」または「人類」と呼称します。

クロスオーバー世界に登場する数々のヒーロー作品には
地球以外の惑星や次元で進化したにもかかわらず、
地球人類そっくりの種族もザラに存在する以上
(たまに角や翼や尻尾やネコ耳が生えてたりしても、
肌や血液の色が緑とかだったとしても)原則としてそれら宇宙人や異次元人も
広い意味での「人間」または「人類」であると定義されます。
狭義の人間=地球のホモ・サピエンスという意味とはまた違います。

例外としては、
○神族や魔族、妖怪や精霊等のように、通常の生物よりも霊的に進化している存在。
○自分たち以外は全て下等生物とみなす連中。
○ロボット生命体
……などが挙げられます。

尚、肉体に遺伝子操作や改造手術等の医学的・科学的処置も施されず、
突然変異の進化系亜種としても覚醒していない純粋な地球人類の総称を、
ここでは「ナチュラル」と呼称します。
また、B.A.B.E.L.における基準では、大別して超能力覚醒者は「エスパー」。
未覚醒者は「ノーマル」とされています。

ちなみに、地球外知的生命体からは、地球人類に対して様々な呼び名があり、
大まかには、地球(テラ)の人、地球人(テラン)【パタリロ!】。
これが一般的な地球人の呼び名と思われ、そしてケロン人など一部においては、
地球をペコポンと呼ぶ上で、地球人を『ペコポン人』と呼ぶパターンも
存在する。また、【バーニングフォース】の天現時ひろみの通っていた大学の
名前も地球(ペコポン)大学である。



◇人類の進化した可能性
地球を初めとする人類は悠久の時を生きて、人為的、あるいは
超自然的進化を続けてきた。そこで人類がどのような進化を遂げたのか説明する。


 〜 【系統@:『人間』を超越した亜種人類達】 〜
人が進化する過程で『人間』を超越した一つの形。
外見からして形を変えてしまうタイプで中には人間を下等生物とみなす者もおり、
肉体的なスペックが人間とはかなり異なる。オルフェノク、アギト、ギルスなど

≪代表者≫
 ○乾巧(仮面ライダー555)
 ○津上翔一(仮面ライダーアギト)


 〜 【系統A:『ニュータイプ』『超能力者(エスパー)』などと呼ばれし特異能力者達】 〜
地球外宇宙圏で生活していた人々に多い『ニュータイプ』や、東京の最下層【アンダーグラウンド】
と呼ばれる場所の住人に多く見られる『能力者』、通常社会に暮らす人間に多く見られる
『スタンド使い』。『エスパー』と呼ばれる人々などが該当する。
姿形、肉体の耐久度は基本として人間と同じ(但し、例外も存在する)

≪代表者≫
 ○『ニュータイプ』=アムロ・レイ。カミーユ・ビダン【機動戦士ガンダムシリーズ】
 ○『能力者』=浅葱留美奈。チェルシー・ローレック【東京アンダーグラウンド】
 ○『波紋使い』=ジョナサン・ジョースター【ジョジョの奇妙な冒険シリーズ(第二部まで)】
 ○『スタンド(幽波紋)使い』=空条 丈太郎【ジョジョの奇妙な冒険シリーズ(第三部以降)】
 ○『エスパー』=明石 薫【絶対可憐チルドレン】 佐倉魔美【エスパー魔美】


 〜 【系統B:魔術師・魔法(魔術)使いと呼ばれる者】 〜
Aとは違い、基本として科学と完全に相反する概念の能力。錬金術師も該当。
『魔術師』とは人に害を向けることも躊躇わぬ存在。魔術使いは一般として、その力を世の為
人の為に使い生きる存在。共に体内にて駆動する魔術回路や魔力と呼ばれるものを扱う。
『魔法』とは、人類には不可能な事象を可能にする神秘、奇跡の事であり、現代の物質界では
【時間】【空間】【精神】を操る事。それ以外の事象は人類に可能な事象として、魔術と
大別される。魔術師にはメイガス。ウィザードなど、世界各地で数々の呼び名がある。

≪代表者≫
【物質界の魔術師・魔術使い・錬金術師】
 ○衛宮士郎。遠坂凛。間桐桜。イリヤスフィール。衛宮切嗣。言峰綺礼。遠坂時臣。
  バゼット・フラガ・マクレミッツ。アイリスフィール。ウェイバー・ベルベット。
  ケイネス・エルメロイ・アーチボルト。ソラウ・ヌァザレ・ソフィアリ。【Fateシリーズ】
 ○シエル。シオン・エルトナム・アトラシア。バルトメロイ・ローレライ【月姫シリーズ】
 ○蒼崎橙子。荒耶宗蓮。黒桐鮮花。コルネリウス・アルバ。玄霧皐月。黄路美沙夜【空の境界】
 ○ネギ・スプリングフィールド【魔法先生ネギま!】

【物質界の魔法使い】
 ○蒼崎青子【月姫シリーズ】
 ○蒼崎橙子【空の境界】
 ○キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ【月姫シリーズ / Fate/stay/night】


 〜 【系統C 人間と異種族(異星人)との交配で生まれた『半人』】 〜
数は少ないが、稀に人間と、人間とは別の種族が子供を作り、その子供が特異な能力を
示すことがある。尚、今回記述するのは基本的な遺伝子が人間と異なる種族と人間との
交配で生まれた者である。

○鬼太郎【ゲゲゲの鬼太郎(アニメ版)】(※幽霊族の父と人間の母の間に生まれたハーフ)

○ねずみ男【ゲゲゲの鬼太郎(アニメ版)】(※妖怪と人間の間に生まれたハーフ)

○河太郎【水のともだちカッパーマン】(※河童の父と人間の母の間に生まれたハーフ)

○霊感青年44号(※人間とゴブリン族の女王との間に生まれたハーフ)

○犬夜叉【犬夜叉】(※大妖怪の父、闘牙王と、人間の母、十六夜の間に生まれたハーフ)

○ラハール【魔界戦記ディスガイア】(※父、魔王クリチェフスコイと人間の母の間に生まれたハーフ)

○ピエトロ・ド・ブラドー(ピート)【GS美神】(※人間と吸血鬼の混血。バンパイア・ハーフ)

○孫悟飯【ドラゴンボールZ】(※サイヤ人カカロットと、人間チチの間に生まれたハーフ)

○モーラ【吸血殲鬼ヴェドゴニア】(※吸血鬼と人間の間の混血。ダンピィル)

○D【吸血鬼ハンターD】(※吸血鬼と人間の間の混血。ダンピィル)

○トランクス【ドラゴンボールZ】(※サイヤ人ベジータと、人間ブルマの間に生まれたハーフ)

○遠野秋葉。遠野四季【月姫シリーズ】(※人間と吸血種との混血)

○カイウス。ルキウス【テイルズオブテンペスト】(※リカンツと人間の間に生まれたハーフ)

○ヒルダ・ランブリング【テイルズオブリバース】
 (※ヒューマ(人間)の父とガジュマの母の間に生まれたハーフ)

○主人公(エイト)【DQ[】(※竜神族と人間 の間に生まれたハーフ)

○パンドラ【ハーメルンのバイオリン弾き】(※天使と人の間に生まれたハーフ)

○ハーメル【ハーメルンのバイオリン弾き】
 (※父は魔族の頂点に君臨する大魔王ケストラーで、母は天使と人のハーフであるパンドラ)

○アーチェ・クライン【テイルズオブファンタジア】(※人間とエルフの混血、ハーフエルフ)

○ジーニアス・セイジ。リフィル・セイジ。ミトス・ユグドラシル。マーテル・ユグドラシル
 【テイルズオブシンフォニア】(※人間とエルフの混血、ハーフエルフ)

○ティナ・ブランフォード【FFY】(※幻獣マディンと、人間マドリーヌの間に生まれたハーフ)


8 名前:ルール説明その8 ドラゴンクエスト(以下DQ)シリーズについて、考察ネタ:2007/08/15(水) 03:16:20
■ドラゴンクエスト(DQ)シリーズについて 考察ネタ

・1〜7を繋げるとしたら
      6上
 3上→7→6下→4→5
  ↓
 3下→1→2→CH
     上
 3上→6下→4→5→7
  ↓
 3下→1→2→CH


・ロト→天空の繋がり
 ・SFC版3のメダルおじさんのところの兵士は、
  メダルおじさんが後に魔王にも恐れられる大物になることを予言
   →6でメダル王はジャミラスに封印されている
 ・SFC版3のゼニス1世は6のゼニス王の先祖?
 ・精霊ルビスが6ではムドーの島に渡るための笛を作った事、
  ムドーの島には代々悪魔が住んでいたと話す


・7の繋がり
 ・2→CHは2→CH→7?
 ・7の主人公たちはロトの子孫?
   →Vジャン1・2と7のパッケージの仄めかし
   →CH内で竜王がキーファ(キャラバン内の誰か?)にロトを感じ取る
 ・エスタード島=竜王の島?


・アレフガルド関連
 ・3アレフガルドはゾーマによって空間閉鎖
   →ゾーマ死後、上と下は物理的な移動不可(ルーラ含む、ルビス等の力は要検討)
 ・竜の女王の卵=竜王?


・天空関連
 ・ゼニス城=天空城(6EDでゼニス城が実体化、内部の構造が同じ)
 ・天馬の塔=天空の塔
 ・ラミアス系の装備→天空装備(昔のVジャンに天空装備は人間の手に鍛えられてきたとも)


・6→4→5の歴史
 ・大幅な地形変化
 ・6主人公達の活躍が4以降、伝説にすら残っていない
 ・世界樹消失
 ・マスドラとエスターク大戦のタイミング
 ・キラーマシンの性能ダウン
(6の時代ではキラーマシン2があるが、4・5の時代はキラーマシンのみ)


・6の卵とマスタードラゴン関連
 ・卵→マスタードラゴン説
 ・ゼニス王→マスタードラゴン説
 ・バーバラ→マスタードラゴン説(この場合、プサン=バーバラになる)
 ・バーバラ=黄金竜(カルベローナのバーバラ様なら変身可能発言より)


(考察)【4及び5の世界と、6の世界は別物説】
 小説版6でのデスタムーアとの決戦時、デスタムーアがゼニス城の卵に執着する台詞を言う。
 ゼニス城の卵は、世界を創造する力すらあるということで、それをバーバラの能力によって
 孵化させ、自分の思い通りの世界を手に入れるというのが、小説版でのデスタムーアの目的
 であった模様。
 そこから連想してみるに、卵が孵化した事で誕生したのが4及び5の世界で、
 バーバラが自分の代理として、新世界の統治役としたのがマスタードラゴンではないかという説。
 (バーバラが黄金竜なのは、小説版ではバーバラの心情で示されてる)


・エスターク、ダークドレアム関連
 ・エスターク=マスタードラゴンと対極説
 ・ダークドレアム→エスターク説
 ・ダークドレアムは実体化していない
 ・ダークドレアム=とてつもなくおそろしいもの(パルプンテ)説


・テリー→エスターク関連
 ・6発売前「魔族が人気なので6の主人公はそろそろ魔王にしようかと思ってる」
   →6発売後「テリーが主人公の予定だったが感情移入しにくいと思いやめた」(共に堀井の発言)
 ・6グレイス城が4コーミズ村(進化の秘法発見場所)と同じ位置
 ・グレイス城の老人が「ダークドレアム召喚が後に全ての世界に災いをもたらす」
 ・6EDでテリーがダークドレアムと対峙
 ・モンスターズでエスタークを倒したとき「長い夢の中でいつか見たような気がする」と言う


○各作品の主人公の名前、補足設定などは、
エニックス(当時)及びスクウェア・エニックス出版の小説その他書籍資料や
CDシアター等の公式設定に出来るだけ準拠しましょう。


(例)
T→主人公=アレフ【小説ドラゴンクエスト】


U→ローレシア王子 : アレン
  サマルトリア王子 : コナン
  ムーンブルク王女 : セリア
  サマルトリア王女(王子の妹) : マリナ
  ルプガナの少女(船主の孫娘) : レシル
  主人公たちの船 : ラーミア号 【小説ドラゴンクエストU】


V→主人公=男勇者アレル、母の名はルシア。
  他に、戦士「クリス」、僧侶「モハレ」、魔法使い「リザ」(以上が基本パーティ)
  武闘家「カーン」、商人「サバロ」、遊び人「ロザン」が登場する。また主人公と帯同は
  しないものの、カンダタがカーンと共にギアガの大穴を超えるなど仲間として行動する。
  なお、クリスとリザのみ女性で他の人物は男性。
  リザはジパングの女王ヒミコの娘であり、「チコ」という双子の姉がいる。チコは死後
  『やまたのおろち』になったヒミコの力を強く受け継いでおり、オルテガを殺した
  「キングヒドラ」の正体はチコである。【小説ドラゴンクエストV】


W→主人公 : ユーリル(男性)
  トルネコの息子 : リトル
  第一章のピサロの手先 : アシペンサ
  ピサロナイト : アドン
  エビルプリースト : ジャコーシュ 【小説ドラゴンクエストW】

(備考):他に目立つ書籍はないが、トルネコの大冒険の方が当然公式なので、トルネコの
    息子は当然ポポロであるべき。


X→主人公=リュカ(リュケイロム・エル・ケル・グランバニア)
  パパス=(デュムパボス・エル・ケル・グランバニア)
  主人公の息子=ティミー(ティムアル・エル・ケル・グランバニア)
  主人公の娘=ポピー(ポピレア・エル・シ・グランバニア)
  サンチョ(セヴァンテスのサンチョ)
  ダンカン(ティムズ・ダンカン)
  ダンカンの妻=マグダレーナ
  雪の女王=キリオ
  ラインハット王(ヘンリーの父)=ベルギス
  ラインハット王妃(デールの実母)=ペシュマレンドラ
  アンディ(アンディ・インガルス)【小説ドラゴンクエストX】

  主人公=???
  主人公の息子=テン
  主人公の娘=ソラ
  オジロンの娘=ドリス
  (オリジナルキャラ)カデシュ=(カデシュ=レアルド=ストロス6世)
  【ドラゴンクエスト 天空物語】

(備考):小説版、漫画天空物語共に、主人公の結婚相手はビアンカである。
    遥かに人気が高いのは天空物語であることから、複合させつつも天空物語を優先させた
    設定が好ましいが、双子は既に空想対戦中で小説版の名で登場済みなので、
    テン、ソラにはできません。


Y→主人公=ボッツ。
  トム兵士長は、融合前のボッツ達を偽者と見抜けなかった責任を問われ、左遷されていた。
  後にはざまの世界で再登場。
  デビルアーマーというザコモンスター(本来はムドーの城に登場するだけ)は、
  各地の魔王たちに状況を報告する役割を担っていた。
  チャモロは初登場時、かなり横柄な性格で、ボッツたちを見下している傾向があった
  (後々変わっていった)。また、ボッツたちと出会う前のオリジナルストーリーがあり、
  その頃は髪を伸ばし眼鏡もかけていなかった。

  魔法の表現が全体的に非常に派手である。(弱魔法でも雑魚数体以上倒す)
  現実世界のムドーは、2回目の戦いでドラゴンのような姿になる。
  ミラルゴは、邪悪な心に魔物が住み着き魔物と化していた。主人公たちによって魔物は
  消滅したが、人間としての寿命は既に尽きており、その場で死亡した。

  ボッツの妹の名は小説版と同じく「セーラ」。彼女の死因は、ボッツがレイドックに
  出現した魔物と戦っていた際、主人公が折った魔物の剣が直撃したためとなっている。
  ロンガデセオの鍛冶屋、コブレは生きている。また、マウントスノーの住民が氷漬けに
  される原因を作ったのはゴランではなくコブレだった。

  デュランの性格がゲーム版とは一変し、卑怯で暴力的な性格(最初は紳士的だった)。
  テリーはデュランに敗れた後、破壊の剣(ゲーム本編には登場しない)に操られていた。
  仲間モンスターの概念は登場しなかったが、「キズブチ」と呼ばれるぶちスライムが
  ボッツの仲間として終盤まで同行した。これは作者がブチスライムを仲間に出来ない事を
  悔しがった無念の想いから。更に、終盤驚きの変身と活躍を見せる。

  魔王の部下として、『V』以前のモンスターが大量に登場していた。
  ハッサンはムドー戦での大活躍を最後に目立ったレベルアップがなく、最終決戦では空気化。
  テリーが終盤で魔王アクバーを一刀両断にする。
  バーバラは最後、夢の世界には戻らず、現実の世界でボッツと共に暮らし始める。
  この設定は神崎が堀井雄二に頼んでこの結末にしたと、作者のウェブサイトで語られている。
  【漫画 ドラゴンクエスト 幻の大地】

  主人公=本名イズュラーヒン。現実世界=イーザ。夢の世界=イザ。妹=セーラ。
  ギンドロ組の女頭シェリスタとミレーユは幼馴染である。
  デュランはカルベローナを裏切った元人間ということになっている【小説ドラゴンクエストY】

(備考):空想大戦の媒介優先順位と知名度、からすると、漫画版設定を優先するのが好ましい。
    特にバーバラとボッツが現実の世界で暮らしている設定は、実に空想大戦向き。
    ちなみに4コマでは主人公は総じてかなりのシスコンで妹バカ。


Z→主人公=アルス。トカゲはギガ。
  ギガは実はただのトカゲではなく、正体は魔物(ボトクの分身であるギガミュータント)。
  ダーマ大神官のフォズは盲目(作品中では、「光ではなく魔力を見る」とされている)。
  その他、自身の代謝を止めたりなど、超人的な設定がなされている。
  アルスとアイラは第3巻で明確な恋愛関係に。
  魔物と人間の関係を巡ってアルスとガボが一旦袂を別つ展開がある。
  アルスは魔物に対しては一切の容赦がない、人間側の英雄、逆にガボは彼の設定を受けてか、
  人間と魔物の和解の可能性を信じる者として描かれている【小説ドラゴンクエストZ】

(備考):4コマを除くと、ゲームに準拠した書籍は小説版1つのみ。
    ちなみに藤原カムイ作【漫画 ドラゴンクエスト エデンの戦士たち】は、原作ゲームの
    設定を大きく逸脱している(マリベルとキーファの恋愛など)事から、全くの異世界と
    考えて然るべし。主人公は小説では柔和な姿勢だが、4コマでは大概マリベルに頭の
    上がらない気弱パシリ気質。


[→主人公=エイト【公式サイト等】

(備考):現時点において4コマ以外に特に小説、漫画無し。
    4コマでは主人公は大概、天然ボケの大人しくかわいい性格で描かれている。


9 名前:ルール説明その9 クロスオーバー空想世界における『神』また『それに類する者』の順位・序列:2007/08/15(水) 03:18:07
■クロスオーバー空想世界における『神』また『それに類する者』の順位・序列

@(日本の特撮・アニメ界の生みの親)

 (故人)
 ○手塚治虫御大 ○石ノ森章太郎御大 ○円谷英二翁 ○横山光輝御大
 ○藤子・F・不二雄先生 ○田河水泡御大 ○うしおそうじ御大 ○石川賢御大

    ↓

 (今も現役の方)
 ○富野由悠季御大 ○赤塚不二夫先生 ○水木しげる御大 ○永井豪御大

    ↓

 (製作スタッフ・関係者の総称)
 ○八手三郎 ○矢立肇 ○平山亨 ○内田有作 ○阿部征司 ○東堂いづみ


【大野剣友会】
○大野幸太郎 ○飯塚実 ○岡田勝 ○高橋一俊 ○中村文弥
○中屋敷鉄也 ○滑川広志 ○大杉雄太郎 ○城谷光俊 ○池田力也


    ↓


A(善悪を超越した存在)

 △ORT(オルト)【月姫シリーズ/マテリアル】

 △スーパーボルボック【三つ目がとおる】

 △金色の魔王(ロード・オブ・ナイトメア)=L様【スレイヤーズ】

 △天照大神【ファイブスター物語】

 △ラ・グース【虚無戦記】

 △大神龍【五星戦隊ダイレンジャー】


    ↓


B(スーパーロボット大戦シリーズプロデューサー)
 ○寺田貴信氏=またの名を最高神テ・ラーダ


    ↓


C(各作品の聖なる光の神々(物質界に関与する神限定))

 ○<旧神>【機神咆哮デモンベイン】

 ○大いなる意思・アスタル【ブレイブサーガシリーズ】

 ○善神アーガマ【獣神ライガー】

 ○偶然の女神【地獄先生ぬ〜べ〜】

 ○女神ポロン【おちゃめ神物語コロコロポロン】

 ○守護神ペガサス【兄弟拳バイクロッサー】

 △神官パンドラ【Saint Beast】

 ○ヘビのユキ【天使のしっぽ/天使のしっぽchu/Saint Beast】

 ○女神アフロディーテ【愛天使伝説 ウェディングピーチ】

 ○女神セレネ=クイーン・セレニティ【美少女戦士セーラームーンシリーズ】

 ○創造神アース【マグマ大使】

 ○建速須佐之男命【わんぱく王子の大蛇退治/ヤマトタケル】

 ○日本武尊「ヤマトタケルノミコト」=宇宙戦神「ウツノイクサガミ」【ヤマトタケル】

 ○老界王神 ○北の界王 ○デンデ【DRAGON BALL Ζ/GT】

 ○仏教の開祖 釈迦如来=ゴータマ・シッダールタ【ブッダ/西遊記】etc・・・

 ○観世音菩薩 ○二郎神【幻想魔伝 最遊記シリーズ】

 ○センジュ ○ジゾウ ○バトウ ○アイゼン ○フドウ ○ミロク ○恵比寿 ○寿老人
 ○大黒天 ○毘沙門天 ○弁才天 ○福禄寿 ○布袋 ○アシュラ【仏ゾーン】

 ○釈迦 ○二郎神 ○?咤太子 ○万古羅漢 ○羅漢飛雄糸 ○羅漢酒切 ○羅漢冊布
 ○羅漢野風【パタリロ西遊記】

 ○調和神ヴィシュヌ【天空戦記シュラト】

 ○クジャク=孔雀明王【五星戦隊ダイレンジャー】

 ○コチャン=白猿ハヌマーン【ウルトラ6兄弟 VS 怪獣軍団】

 ○旃橿功徳仏=(初代)玄奘三蔵法師 ○闘戦勝仏=(初代)"斉天大聖"孫悟空 ○八部天龍=玉龍
 ○浄壇使者=(初代)猪八戒 ○金身羅漢=(初代)沙悟浄【西遊記/他出演作品多数】

 ○ベルダンディー ○ウルド ○スクルド ○リンド ○ペイオース ○セレスティン
 ○フレイア ○エイル ○エレ ○エクス ○クロノ【ああっ女神さまっ】

 ○ワルキューレ【ワルキューレの冒険】

 ○女神イシター【ドルアーガの塔】

 ○戦いの女神アテナ △月の女神アルテミス △太陽神アポロン ●天帝、大神ゼウス
 △ジュリアン・ソロ=海皇ポセイドン ○乙女座(バルゴ)のシャカ
 ●太陽神フォエボス・アベル【聖闘士星矢】


    ↓


D(闇の邪神や魔王)

 ●邪神ガタノゾーア【ウルトラマンティガ】

 ●ナイアルラトホテップ【機神咆哮デモンベイン】

 ●魔王カーンデジファー【電光超人グリッドマン】

 ●魔王サイコ【宇宙刑事シャリバン】

 ●ヒルド ●マーラー ●魔神千兵衛 ●ヴェルスパー【ああっ女神さまっ】

 ●冥王ハーデス ●邪神エリス ●眠りを司る神ヒュプノス ●死を司る神タナトス【聖闘士星矢】

 ●ブラックワルキューレ ●ゾウナ【ワルキューレの冒険】

 ●暗黒神ファラリス ●邪神カーディス【ロードス島戦記】

 ●破壊神シヴァ【天空戦記シュラト】

 ●牛魔王【西遊記シリーズ/パタリロ西遊記/映画ドラえもんのび太のパラレル西遊記】etc・・・

 ●竜王【ドラゴンクエストT】

 ●破壊神シドー【ドラゴンクエストU 悪霊の神々】

 ●魔王バラモス ●大魔王ゾーマ【ドラゴンクエストV そして伝説へ…】

 ●大魔王ミルドラース【ドラゴンクエストV 天空の花嫁】

 ●魔王ムドー ●魔王ジャミラス ●魔王グラコス ●魔王デュラン ●魔王アクバー
 ●大魔王デスタムーア【ドラゴンクエストY 幻の大地】

 ●魔王オルゴ・デミーラ【ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち】

 ●暗黒神ラプソーン【ドラゴンクエスト[ 空と海と大地と呪われし姫君】

 ●死の神デス ●破壊神サルーイン ●闇の女王シェラハ【ロマンシング・サガ】

 ●破壊神ネレイド【テイルズオブエターニア】

 ○超魔王ラハール ●魔王ゼノン ○魔王プリエ【魔界戦記ディスガイアシリーズ】

 ●アスタロト ●ネビロス【魔界村シリーズ】

 ●魔王サタン=ルシフェル/ルシファー【BASTARD】【パタリロ!】【GS美神】etc・・・

 ●アシュタロス【GS美神】

 △アスタロト ●ベールゼブブ ●マルコキアス ●ベリト ○サルガタナス【パタリロ!】

 ●絶対神ン・マ【魔法戦隊マジレンジャー】

 ●邪神ヨグ=ソトース【機神咆哮デモンベイン】

 ●大魔王サタン【変身忍者 嵐】

 ●魔神三ツ首【電人ザボーガー】

 ●魔王【行け!グリーンマン】

 ●魔王デカンダ ●大魔王ベムキング【サンダーマスク】

 ●大魔王 ●ガルバー【超神ビビューン】

 ●分身魔王デボノバ ●大魔王ゴースン【快傑ライオン丸】

 ●マントルゴッド【風雲ライオン丸】

 ●大魔人ドルゲ【超人バロム・1】

 ●キングモンスター【正義のシンボル コンドールマン】

 ●悪神ゴーラゾンガー=ブライゾンガー【兄弟拳バイクロッサー】

 ●魔神ダルガ=魔神クロガネ【幻星神ジャスティライザー】

 ●大サタン【恐竜戦隊ジュウレンジャー】

 ●妖怪大魔王【忍者戦隊カクレンジャー】

 ●大魔女グランディーヌ【救急戦隊ゴーゴーファイブ】

 ●邪命神デズモゾーリャ【爆竜戦隊アバレンジャー】

 ●絶対悪グランダーク ●真・グランダーク【新世代ロボット戦記 ブレイブサーガ】

 ●魔王バルドー【ブレイブサーガ2】

 ●邪神ドラゴ【獣神ライガー】

 ≪大魔界の三大魔王≫【元気爆発ガンバルガー】
 ●暗黒魔王ゴクアーク ●大魔王サイアーク ●大魔王レツアーク

 ●機械神【熱血最強ゴウザウラー】

 ≪冥府十神≫【魔法戦隊マジレンジャー】
<二極神>
 ●『インフェルシアの矛』冥府神スレイプニル ●『インフェルシアの盾』冥府神ドレイク

<三賢神>
 ●冥府神ダゴン(実質上のリーダー) ○冥府神スフィンクス ●冥府神ゴーゴン

<五武神>
 ●冥府神ワイバーン ○冥府神ティターン ●冥府神トード ●冥府神サイクロプス
 ●冥府神イフリート


≪ソロモン72柱≫【BASTARD】【パタリロ!】【GS美神】【悪魔くん】【デビルマン】etc・・・
 △アスタロト ●バアル ●アガレス ●ウァサゴ ●ガミジン ●マルバス ●ウァレフォル
 ●アモン ●バルバトス ●パイモン ●ブエル ●グシオン ●シトリー ●ベレト ●レラジェ
 ●エリゴス ●ゼパル ●ボティス ●バティン ●サレオス ●プルソン ●モレク ●イポス
 ●アイム ●ナベリウス ●グラシャ=ラボラス ●ブネ ●ロノウェ ●ベリト ●フォルネウス
 ●フォラス ●アスモデウス ●ガープ ●フルフル ●マルコシアス ●ストラス
 ●フェニックス ●ハルファス ●マルファス ●ラウム ●フォカロル ●ウェパル ●サブナック
 ●シャックス ●ウィネ ●ビフロンス ●ヴアル ●ハーゲンティ ●プロケル ●フルカス
 ●バラム ●アロケル ●カイム ●ムルムル ●オロバス ●グレモリー ●オセ ●アミー
 ●オリアス ●ウァプラ ●ザガム ●ウァラク ●アンドラス ●フラウロス ●アンドレアルフス
 ●キマリス ●アムドゥスキアス ●ベリアル ●デカラビア ●セーレ ●ダンタリオン
 ●アンドロマリウス


    ↓


E最高権力者 表裏六柱の至高邪神(劇場版仮面ライダー555 パラダイス・ロスト)
 永き沈黙を破り、ついに表裏六柱の実体を現した至高邪神。
 それにより、旧グランショッカーの組織を放棄、新組織ディバイン・ショッカーが誕生する。

 ●ショッカー大首領/邪帝大首領クライシス(仮面ライダーシリーズ)
  悪の秘密結社ショッカーの創設者にして支配者。暗黒星雲及び怪魔界の帝王。

 ●真のGOD総司令=真のゼロ大帝(支配者)(仮面ライダーΧ/アマゾン)
  GOD秘密機関及びゲドンの黒幕にして、ガランダー帝国の王者。大首領の「裏」。

 ●星王バズー=ゴズマスター/銀河大星王バズー(電撃戦隊チェンジマン)
  大星団ゴズマの支配者。計り知れぬ力を持つ惑星型生命体。

 ●ゴルゴム創世王(仮面ライダーBLACK)
  暗黒結社ゴルゴムの支配者。巨大な心臓の姿をした邪神。バズーの「裏」。

 ●大魔神サタンゴース/暗黒大魔神サタンゴース(巨獣特捜ジャスピオン)
  巨獣帝国の王。マッドギャランの父。究極の巨獣である大サタンゴースに脱皮。

 ●ミケーネ闇の帝王(グレートマジンガー)
  地下勢力ミケーネ帝国の支配者。通常見せている溶岩と炎の塊のような姿から
  発する熱は5万度といわれている。サタンゴースの「裏」。


    ↓


Fその他の神
 ≪実力の伴う神達≫

 ○聖神ナディア【ビックリマン/新ビックリマン】

 ○トランスフォーマーの創造神 ベクターシグマ【TF初代/HM/BWネオ】

 ●星帝ユニクロン【TFM/2010/BW/マイクロン伝説/スーパーリンク】

 ○究極大獣神【恐竜戦隊ジュウレンジャー】

 ○風太郎=ガオゴッド【百獣戦隊ガオレンジャー】


 ≪Sa・Gaシリーズの神々≫
 ●アシュラ ●神【魔界塔士 Sa・Ga】

 ●アシュラ ●アポロン ●ビーナス △オーディン ○女神【Sa・Ga2 秘宝伝説】

 ○サガ世界の神・ソール ●異次元の神・フェンリル ●異次元の神・ベリアル
 △異次元の神・パゴス ●異次元の神・ボルボック ●異次元の神・ティール
 ●異次元の最高神・ラグナ【時空の覇者 Sa・Ga3[完結編]】


 ≪フォーセリアの神々≫
 ○光の至高神 ファリス ○大地母神マーファ ○戦の神マイリー ○知識神ラーダ
 ○幸運神チャ・ザ ●暗黒神ファラリス ●邪神カーディス【ロードス島戦記】


 ≪アレフガルド他の神々≫
 ○主神ミトラ ○戦士の長マルス神 ○大地と炎の神ガイア ○月と英知の女神ミネルヴァ
 ○太陽神ラー【ドラゴンクエスト アイテム物語 他】

 ○精霊神ルビス【ドラゴンクエストシリーズ】

 ○不死鳥ラーミア=神鳥レティス【DQV そして伝説へ/[ 空と海と大地と呪われし姫君】

 ○竜神マスタードラゴン=プサン【ドラゴンクエストW 導かれし者たち/X 天空の花嫁】

 ○神さま【ドラゴンクエストZ エデンの戦士たち】


 ≪マルディアスの神々≫【ロマンシング・サガ】
 ○光の神エロール=ハオラーン ○豊穣の女神ニーサ ○海の神ウコム ○森の神シリル
 ○銀の月の神エリス ○愛の女神アムト ○戦士の神ミルザ ●死の神デス
 ●破壊神サルーイン●闇の女王シェラハ


 ≪エターニアの神々≫【テイルズオブエターニア】
 ○創造神セイファート ●破壊神ネレイド


 ≪ティターン神族≫【聖闘士星矢エピソードG】
 ●空間を操る神、次元のイアペトス ●神の善悪を量る女神テミス ●漆黒のヒュペリオン
 ●女神テテュス ●女神テイア ●女神ポイベ  ●記憶を司る女神ムネモシュネ
 ●次元のイアペトス ●黒雷(こくらい)のコイオス ●星漢(せいかん)のクレイオス
 ●清流のオケアノス


≪巨人族(ギガス)九兵神≫【聖闘士星矢エピソードG】
 ●紅(ポインクス)の熔岩(リュアクス) ●群青(キュアノス)の炎(プロクス)
 ●白(レウコテース)の風(アネモス) ●黒(メラース)の雷(ブロンテー)
 ●灰色(パイオス)の刃(スパテー) ●紅玉(アントラクマ)の鉄(ジギーロス)


≪創造神≫
 △A【アルファシステム無名世界観】
 △知恵者(グレートワイズマン)【アルファシステム無名世界観/絢爛舞踏際】
 △ヲーグ(ワイズ) △モルネイ △ロディス【ブルーブレーカー】


≪ワールドオーダー≫
 ○玖珂 光太郎【アルファシステム無名世界観/式神の城シリーズ】


≪神聖同盟の戦神≫
 ○ブータニアス=ヌマ=ブフリコラ【アルファシステム無名世界観/ガンパレードマーチ】
 ○スキピオ【アルファシステム無名世界観/ガンパレードオーケストラ】
 ○ハンニバル【アルファシステム無名世界観】
 ○ハードボイルド ペンギン【アルファシステム無名世界観/ガンパレードオーケストラ】
 ○グレーター招き猫【アルファシステム無名世界観/式神の城U】


≪その他の神≫【聖闘士星矢エピソードG】
 ●海洋神ポントス


≪土着信仰・町内の守り神レベル≫
 ○ご町内の神様【美少女仮面ポワトリン】

 ○河童様・道祖神・貧乏神・客人神(まろうどがみ)ぬらりひょん【地獄先生ぬ〜べ〜】

 ○八百万(やおろず)の神(※但し、一部例外有り)【かみちゅ!】

 ○お酉様【有言実行三姉妹シュシュトリアン】


    ↓


G(この世で限りなく神か魔に近い人間・存在)

   (人間)

 ≪青銅聖闘士/アテナの五聖闘士≫【聖闘士星矢】
 ○天馬星座(ペガサス)の星矢(セイヤ) ○龍星座(ドラゴン)の紫龍(シリュウ)
 ○白鳥星座(キグナス)の氷河(ヒョウガ) ○アンドロメダ星座の瞬(シュン)
 ○鳳凰星座(フェニックス)の一輝(イッキ)

 ≪黄金聖闘士≫【聖闘士星矢】
 ○牡羊座(アリエス)のムウ ○牡牛座(タウラス)のアルデバラン
 ○双子座(ジェミニ)のサガ ○双子座(ジェミニ)のカノン
 ○蟹座(キャンサー)のデスマスク ○獅子座(レオ)のアイオリア
 ○天秤座(ライブラ)の童虎 ○蠍座(スコーピオン)のミロ
 ○射手座(サジタリアス)のアイオロス ○山羊座(カプリコーン)のシュラ
 ○水瓶座(アクエリアス)のカミュ ○魚座(ピスケス)のアフロディーテ
 ○(先代)牡羊座のシオン

 ≪白銀聖闘士≫【聖闘士星矢 冥王ハーデス十二宮編】
 ○琴座(ライラ)のオルフェ

 ≪冥界三巨頭≫【聖闘士星矢 冥王ハーデス十二宮編】
 ●天猛星ワイバーンのラダマンティス ●天貴星グリフォンのミーノス
 ●天雄星ガルーダのアイアコス

 ≪冥闘士(スペクター)≫【聖闘士星矢冥王ハーデス十二宮編】
 ●天暴星ベヌウの輝火(かがほ)

 ≪天闘士≫【聖闘士星矢 天界編 序奏〜overture〜】
 ●イカロス ●テセウス ●オデュッセウス

 ≪アンチクロス≫【機神咆哮デモンベイン】
 ●アウグストゥス ●ウェスパシアヌス ●ティベリウス
 △ティトゥス ●カリグラ ●クラウディウス

 △豪鬼【ストリートファイターシリーズ】

 ○東方不敗/マスターアジア【Gガンダム】

 ○蒼崎青子【月姫シリーズ】

 ○蒼崎燈子【空の境界】

 ○キシュア・ゼルリッチ【Fate/月姫】

 △軋間紅摩【月姫シリーズ/MELTYBLOODシリーズ】

 △範馬勇次郎【グラップラー刃牙】

 △アキラ【AKIRA】

 ○天野銀次 ○美堂蛮 △赤屍蔵人【GetBackers】

 ○江田島平八【魁!! 男塾/天より高く/暁!! 男塾】

 ○デューク東郷【ゴルゴ13】

 ○赤の竜神の騎士ルナ・インバース=郷里の姉ちゃん【スレイヤーズ】


  (存在)

 ○戦士シャイダー【宇宙刑事シャイダー】

 ○聖なる者【宇宙刑事シャリバン】

 △OVERS SYSTEM【アルファシステム無名世界観】

 ○光の戦士エルドラン【エルドランシリーズ】

 ○コプー【超人バロム・1】

 ○ダイバダッタ【愛の戦士 レインボーマン】

 ○タバ老人【正義のシンボル コンドールマン】

 ●大導師マスターテリオン △エンネア=魔人ネロ【機神咆哮デモンベイン】

 ○獅子王凱=破壊神ジェネシックガオガイガー【勇者王ガオガイガーFINAL】

 ○ガンマジン【超力戦隊オーレンジャー】

 ○ウルトラマンキング【ウルトラマンレオ】【ウルトラマンメビウス】

 ○ウルトラマンレジェンド【ウルトラマンコスモスVSウルトラマンジャスティス THE FINAL BATTLE】

 ○ウルトラマンノア【ウルトラマンネクサス】


    ↓


H(自称『神』『魔王』を名乗る敵ボス)

 ≪自称・神≫

 ●全能の神【太陽戦隊サンバルカン】

 ●ガンエデン【第2次スーパーロボット大戦α】

 ●シャピロ・キーツ【超獣機神ダンクーガ】

 ●エルレイン、フォルトゥナ【TOD2】

 ●ミュートスサイボーグ【サイボーグ009】

 ●エネル【ONE PIECE】

 ●ワイズマン【装甲騎兵ボトムズ】

 ●マモー【ルパン三世 ルパンvsクローン】

 ●巨人頭脳ブレイン【大鉄人17(ワンセブン)】

 ●帝王ゴッドネロス【超人機メタルダー】etc・・・


 ≪自称・魔王≫
 ●ビルゴルディ【特捜ロボジャンパーソン】


 ≪一部で『神』と呼称される存在≫

 ●破壊神スペースゴジラ【ゴジラシリーズ】

 ●夜神月(ライト)【DEATH NOTE】


    ↓


I(地球・人類創世に関わるとされる存在)

 ○伏羲 ●女?【封神演義】

 ○伏羲 ○女?【三国無双シリーズ】

 ●JUDO/スサノオ ○ツクヨミ ●アマテラス【仮面ライダーZX】

 △オーヴァーロード【仮面ライダーアギト】

 ●オロチ【KOFシリーズ】

 △ヒューマンアンデッド【仮面ライダー剣(ブレイド)】

 ○創造神アース【マグマ大使】


     ↓


J(原作者ではあるが、自分の創造した作品の登場人物にすらコケにされるタイプ)
 ○鳥山明氏 ○神坂一氏 ○あかほりさとる氏 ○摩夜峰央氏 ○永井豪御大
 ○松沢夏樹氏【突撃! パッパラ隊】 ○臼井儀人氏【クレヨンしんちゃん】



10 名前:ルール説明その10 黄泉がえり現象、時空クレバス:2007/08/15(水) 03:19:50
■「黄泉がえり」現象について

死んだ筈の者(死者)達が、全くの当時のままの姿で蘇る(黄泉がえる)という原因不明の
超常現象が、物質界を中心に、幻想界、魔界といった全世界、全次元規模で多発しています。

彼らは、ゾンビや幽霊の姿ではなく、死んだ当時の姿のまま、
自分の事を想い続けてくれた人の前に、或いは深く関連する場所で、ある日突然現れます。
まるで何事もなかったかのように黄泉がえってきた人達。
最愛の夫、恋人、兄弟。彼らを目の前にして喜ぶ家族・・・ そして戸惑う周囲の人々。
地上、天国、地獄は大きな混乱に包まれ、原因解明の為に多くの人員と時間が費やされています。

しかし、戸惑う時間は許されません。
何故なら、ヒーロー達の死闘によって滅んだ筈の、数多くの悪の組織達も
再び地上へとその姿を現し、その力を結集し、とてつもない脅威となりその活動を再開したからです。


○【生き返る者は、善悪の立場は問わず】
かつて戦いに何らかの形で関わったことのある有能な戦士や指揮官(科学者含む)が中心。
シリーズの初期段階で死亡、もしくは死亡済キャラクターは、一部を除いて控えた方がいいでしょう。

(例:兜十蔵博士、南原博士、破乱創造博士、緑川博士、風見志郎の家族、神敬太郎、
   長老バゴー、高坂博士、ヘンリー博士、秋月教授、星博士、飛鳥五郎、如月博士……)

ただしエピソード0など、本編の過去時系列作品に登場した場合などは、その法則から除外します。

(例:衛宮切継、遠坂時臣【Fate/zero】など)

もしくはパラレル(平行)的な世界で登場した場合、その平行世界から登場させる事も可能です

(例:碇ユイ博士【新世紀エヴァンゲリオン・育成計画シリーズ】など)


○【かなり物語の中核に影響深い人物達について】
その人の死そのものが、原典作品の世界観や主人公の人生に
大きな影響を与えているキャラ復活もなるべく控えましょう。
(例:ララァ・スン【機動戦士ガンダム】、アルファートリン【TFシリーズ】、
デンジ姫【電子戦隊デンジマン】、クイーン・セレニティ【美少女戦士セーラームーン】、
星野鉄郎の母・加奈江【銀河鉄道999】宇宙刑事ボイサー【宇宙刑事ギャバン】)


○【TVで現在放送中の番組での死亡キャラの復活について】
矛盾防止のため、基本的に死亡キャラの登場〜死亡該当クール終了までは出演禁止としています。
特に少年誌はポロッと【実は生きていました】が多いので、滝壺に落ちた、建物ごと爆発した、
ブラックホールに吸い込まれた、などのいわゆる【死体の無い死に方】の場合は注意が必要です。



■時空クレバスについて

黄泉がえり現象と時期を同じくして、世界各地で「時空の穴(クレバス=crevasse)」と呼ばれる
時空・次元間の移動ゲートがあちこちに、不規則に発生、消滅を繰り返しています。
それを通じて異なる時代や次元へと行き来が可能になっていますが、多くは片道通行で
元の時代に戻れず、特に現代の物質界に一時的に滞在している英雄、戦士が多く居る現状です。
ちなみに、そういった【異邦からの客人】達の一時滞在、隠匿用の施設として、森羅の所有施設、
“トアールホテル”が在り、各世界、時代入り乱れた様々な英雄、戦士が滞在しています。



11 名前:ルール説明その11 特定作品の扱いについて:2007/08/15(水) 03:21:15
■特定作品の扱いについて

○【絶望の未来】
戦争、資源の枯渇。外宇宙侵略(インベード)・・・ その他様々なる脅威により、
正義が滅び、ありとあらゆる生命が死滅し、絶望と悲しみが支配する世界(みらい)・・・
悪の組織達が望む可能性の未来の数々を、総称し【絶望の未来】と呼びます。
正義に味方する予知能力者(ブレコグ)達はその全員が、このままでは全宇宙の未来が
絶望に染まってしまうと予言し、同時にそれを防ぐ為に戦い続けています。
同時に、あらゆる世界、各時代から英雄、戦士が結集しているのもそれに関与している
との推測もできます。

その未来の世界では、あらゆる英雄、戦士達が非業の死を遂げ、力なき者は虐げられ
エスパーとノーマルが壮絶なる世界戦争を繰り広げ(【絶対可憐チルドレン】)
核戦争によって世界に死の灰が降り注ぎ、地球のほとんどが砂漠と化し(【北斗の拳】【砂ぼうず】)
やがて、全世界、全宇宙の全ての生命は消え去り、無へと帰します。

各作品の中に在る【絶望的な未来】は、全てこの【絶望の未来】の一つとされます。
これは、未来にある無限の可能性の中にある【滅亡】を、悪の組織側の預言者、そしてそれを望む
強大な悪の存在、暗躍によって、本来の未来が捻じ曲げられているようです。
手塚海之を始めとする預言者チームは、『このままでは全ての未来が消滅してしまう』と予言。
かつてラウル【スパロボR】や、未来のトランクス【ドラゴンボール】といった英雄達によって、
【絶望】の一部は回避されましたが、それも完全なものではありません。

≪作品中の未来、または本編自体が未来軸で、絶望的な展開、設定があった作品群≫
(例:【機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-】【仮面ライダーZX】【スパロボR】
   【TOD2】【時をかける少女】【絶対可憐チルドレン】【ひぐらしのなく頃に】
   【真(チェンジ!!)ゲッターロボ 世界最後の日】【クロノ・トリガー】etc・・・


○トランスフォーマーシリーズの扱いについて
サイバトロンは初代コンボイ=スター(G2)コンボイを頂点に
各方面に歴代司令官たちがおり……デストロンは歴代大帝たちが
各勢力を率いて抗争している大分裂状態である…とします。


○参戦作品に関する注意事項
必ずしもアクションや勧善懲悪だけがその作品のメインでなくても、
主人公や他キャラクターに最低限の戦闘能力あるいは問題解決能力があると認められば、
本スレへの出演は許容範囲内であるとします。
【パタリロ!】【Dr.スランプ アラレちゃん】【こちら葛飾区亀有公園前派出所】
【銀魂】【エム×ゼロ】【To Heart】etc・・・


12 名前:新章/ダイナ帰還・地球編SS:2007/08/17(金) 00:58:25

前スレ>>998からの続き

   翌日。MDPO総合医療センター:正門前

アウル「アスカ、退院するんだね・・・・・さびしくなるなぁ」
ステラ「・・・・・・」
 アウルがアスカの前で呟き、ステラも寂しそうな顔をしてうつむく。
アスカ「そう言うなって。たまには来るさ、いつになるかはわかんねえけどな」
 アスカはアウルとステラの頭に手を置いてそう言うと、
アスカ「じゃあな、アウル、スティング、ステラ。また会うときまで元気で居ろよ?」
アウル「ああ!」
スティング「もちろんだぜ。」
ステラ「うん!」
 3人がそう答えたのを見て、アスカはニッと笑い、手を振りながら、正門を抜ける。
そして、リョウが先に乗ったゼレットに乗りこみ、MDPO総合医療センターを去って
いった。
???「おい、スティング、アウル、ステラ!」
 突然、アウル達3人の後ろから、顔面に大きな傷のある金髪の男が声をかけてきた。
ステラ「ネオ!」
 ステラが声を上げ、その男、ムウ・ラ・フラガ――アウル達3人にとってはネオ・
ロアノークの方が慣れているため、彼らからは未だにネオと呼ばれている――に駆け
寄る。
ムウ「さっきのスーパーGUTSの隊員・・・・友達だったのか?」
アウル「うん、そうさ。・・・・・・なぁ!」
 アウルが、突然ムウに向き直り、声を上げる。
ムウ「ん、なんだ?」
 ムウが尋ねると、3人は顔を見あわせ、
スティング「俺達にMSをくれないか!」
 3人を代表してそう言い切ったスティングに、ムウは目を丸くし、
ムウ「どういうことか、説明してくれ? わけがわからん」
 とアウル、スティング、ステラを見まわして言う。
アウル「ここにクローンウルトラマンが来たのは、知ってるよね?・・・・あの時、
僕達は、一緒に戦ってた友達が必至に戦ってるのに、何もできなかった、ただ見てる
ことしかできなかったんだ!!」
 アウルが、心の底から悔しそうに叫ぶ。
ステラ「もう、そんなのイヤ! ステラも、ステラも・・・・・!」
 ステラも、途中で言いよどんで、顔を伏せる。
ムウ「・・・・・そうか。わかった!」
 そう言うと、ムウは胸を叩いて、
ムウ「まぁ、まずはお前ら、体を治すのに専念しろ。その間に、どうにかしてやるさ。」
スティング「嘘じゃないな!?」
 スティングが掴みかからんばかりに尋ねる。
ムウ「ああ。絶対だ」
 ムウが、迷い無く言い切ったのを見て、
スティング「・・・・・今回だけ、信じてやる」
 と、ムウを睨みながら、そう言った。

リョウ「・・・・・いい子供達だったわね」
アスカ「ああ。またいつか会いたいぜ」
 リョウとアスカが呟くように言い合う。
 とそこに、巧と雄介がバイクに乗ってやって来て、ゼレットと並走する。
アスカ「雄介さん! 巧!」
 アスカが窓を開け、声をかける。
雄介「どうも!」
 雄介が、ヘルメット越しのくぐもった声で言う。
アスカ「この間は助かったぜ!」
巧「当然の事をしただけだ、仕事だからな!」
 巧の答えも、ヘルメット越しにくぐもって聞こえた。
アスカ「感謝してるぜ! んじゃ、またいつか!!」
 2人はアスカに答えて軽く手を上げると、バイクのスピードを上げ、ゼレットを追
い抜いて、みるみるうちに見えなくなっていった。
リョウ「にしても・・・・・ここ2週間、ほんとに忙しかったわね・・・・」
 リョウが呟く。
アスカ「まったくだぜ・・・・・スーパータイラントが来るわ、Dショッカーが来る
わ、ネスツのクローンウルトラマンが来るわ・・・・・」
リョウ「でも、アスカも帰ってきて、めでたく記憶も戻ったし。」
アスカ「ああ。それに・・・・・・」
 アスカがいったん言葉を切る。
リョウ「それに?」
アスカ「アウルとか、雄介さんとか、間宮 麗奈とか。新しい仲間もできたしな」
 リョウは笑って、
リョウ「ウカワームも仲間?」
アスカ「俺達と一緒に戦ってくれたんだ、仲間に決まってるさ」
 アスカはそう答え、笑った。


13 名前:新章/ダイナ帰還・地球編SS:2007/08/17(金) 01:00:23

○エクステンデッド3人組→退院するアスカを見送り、お見舞いにきていたムウに
自分たちのMSが欲しいと言う。
○ムウ・ラ・フラガ→スティング、アウル、ステラの頼みを聞き、何とかすると
約束。
○アスカ・シン、ユミムラ・リョウ→エクステンデッド3人組と会話した後、MDPO
総合医療センターを出て、グランドームに向かう途中、雄介と巧に会い、会話。その
後、ここ2週間のことについて会話。
○五代 雄介、乾 巧→MDPO総合医療センターの近辺でアスカ、リョウと少々会話
した後、別れる。


14 名前:新章/ダイナ帰還・地球編SS:2007/08/20(月) 23:40:15
   2日後。成田空港

光太郎「しばらく、日本ともお別れか・・・・・帰って来たばかりだったのに」
北斗「しょうがないだろ? ネスツもDと同様に世界中に支部を持っている。その支部
のどれかからクローンウルトラマンが出撃するかもしれないんだ」
 光太郎がぼやき、北斗がたしなめる。
猛「その気持ちも理解できますけどね」
 猛が苦笑しながら言う。
ダン「それで、猛。我々に土下座してまわってまで、したい事とは何なんだ?」
 ダンが尋ねると、
猛「侵略者から地球を守るために捨てた夢を、役立てる事が出来る仕事です」
 猛が、何の迷いも無く言い切る。
ハヤタ「そうか・・・・・やるからにはしっかり頑張れ」
猛「はい! それじゃあ、失礼します。これから、会合がありますから。」
ハヤタ「ああ」
郷「またな。」
 猛は、手を振って去って行った。

藤宮「・・・・・・」
郷「どうした?」
 郷が、話に参加しない藤宮へ尋ねる。
藤宮「・・・・・これからの事を思うと、考えることが多くて」
 藤宮が、歯切れ悪そうに答える。
ハヤタ「宇宙連合の事も、ネスツの事もあるから仕方が無い。あまり深く考え過ぎ
ない方がいい」
 それを聞いて、藤宮はゆっくりと頷いた。
 その時、そこにTPCの一般隊員服を来た男がやってきた。
TPC一般隊員「藤宮 博也様ですね。アルケミー・スターズの。」
藤宮「・・・・TPCが何の用だ?」
 藤宮がぶっきらぼうに聞く。
TPC一般隊員「MDPOが、アルケミー・スターズで光量子コンピュータ・クリシスを
造った貴方に協力を依頼したいと。」
藤宮「何? どういうことだ?」
 藤宮がさらに尋ねると、
TPC一般隊員「これ以上は、ここで話せません。」
藤宮「・・・・・世間には秘密の事柄か?」
TPC一般隊員「ええ」
 一般隊員は即答する。
藤宮「わかった。」
 そう言うと、藤宮は立ちあがり、ハヤタの方に向き直る。
ハヤタ「・・・・・君も頑張ってきてくれ」
 ハヤタは笑ってそう言い、藤宮は軽く礼をすると、
藤宮「案内してくれ」
 一般隊員は頷き、先導して歩き始めた。
ハヤタ「・・・・・さて、私達も行こうか」
光太郎「はい。じゃあ、またそのうち!」
 光太郎がそう言い、他の皆は手を振りながら、それぞれの乗るべき旅客機の搭乗
ゲートへと向かって行った。

  1時間後。グランドーム地下・科学局第1ラボ

我夢「藤宮!」
 そこに居た我夢が、藤宮に声をかける。
 ラボ内には、藤宮以外に十数人がUの字型の長机についていた。
 様々な分野に精通している高名な科学者である一ノ谷博士を筆頭に、科学特捜隊の
ブレーン・岩本博士、MAT隊員の岸田 文夫、TAC兵器開発主任技師の梶 洋一、ZAT隊
員の北島 哲也、TPC及びスーパーGUTS所属のホリイ・マサミ、ナカジマ・ツトム、
ヤオ・ナバン博士、XIG隊員の高山 我夢、SRC所属の木本 研作、サワグチ ヤスエ、ドイガキ コウジ、
チームDASHのショーン・ホワイト、UDFのダテ博士がその代表的人物である。
 と、そこに控えていたTPC科学局の隊員がファイルのようなものを差し出すと、
TPC科学局隊員「お名前をどうぞ」
藤宮「ああ」
 藤宮はその名簿に名前を書き込みつつ、上から順に見ていく。1番上から、一ノ谷
博士、岩本博士、ドイガキ・・・・・と続いていた。
藤宮「我夢、なぜ俺達がここに呼ばれた」
 名前を書き終えた藤宮が、我夢に尋ねると、
ゴンドウ「それは、君達にあるものを造ってもらうためだ」
 藤宮の後ろから、ゴンドウが声を言う。藤宮は振り向くと、
藤宮「なに?」
ゴンドウ「まずは、これを見てもらおう」
 机の曲がった側に行ったゴンドウがスイッチを押すと、彼の後ろのスクリーンに
光が点り、スーパータイラント製造工場とインペライザー、インペライザーVSエース
ロボットの対決が映り、エンペラ星人とメフィラス星人の会話が流された。
ゴンドウ「数名見た者もいると思うが、これはつい最近入手した、宇宙連合の秘密
工場に、その新兵器、インペライザーの情報だ。」
 ゴンドウはそう言うと、一拍置いて、
ゴンドウ「君たちを集めたのは他でもない、これらの危機に対するために太陽系防衛
計画をたて、その為の兵器などの建造を、世界科学連邦と協力してやってもらう為だ。
頼まれてもらえるか?」
 ゴンドウの問いに、深刻そうな顔になった全員が、力強く頷いた。
ゴンドウ「・・・・・・感謝する。では、早速作業にかかってくれ。」
 その言葉に、その場にそろった機械の天才達は次々に話し合いを始めた。
一ノ谷「ゴンドウ参謀、インペライザーの破片の解析を完了した結果、驚くべきこと
がわかりましたぞ」
 と、岩本博士、ドイガキと一緒にきた一ノ谷博士が、ゴンドウに声をかける。
ゴンドウ「驚くべきこと?」
一ノ谷「このインペライザーの破片は、時空クレバスを通って来た無機物質に特有
の変質を起こしており、この破片はほぼ間違い無く、別の次元の産でしょう」
ゴンドウ「そうか・・・・・・わかった。太陽系防衛計画と平行して、引き続き研究
を続けてくれ」
 ゴンドウはそう言うと、出ていく前に、
ゴンドウ「君たちの働きが、いつか地球を救うだろう。頼むぞ」
 と呟き、ラボを出て行った。

 今、地球に大いなる危機が、ゆっくりと迫っていた。


15 名前:新章/ダイナ帰還・地球編SS:2007/08/20(月) 23:53:29

○ゴンドウ・キハチ→MDPO実働部隊との会合の3日後、グランドームで藤宮ら12人に
太陽系防衛計画の立案とそれに使用するための兵器の開発を要請。
○ハヤタ・シン、東 光太郎、北斗 星司、郷 秀樹、モロボシ・ダン、星 涼子→成田
から、世界各地へ旅立つ。
○矢的 猛→日本に残り、“捨てた夢を役立てられる仕事”をすることに。この仕事
の為、ハヤタたちのもとを訪れ、土下座したらしい。
○藤宮 博也→ハヤタたちと成田にいたが、急きょグランドームに向かう。
○高山 我夢→グランドームで藤宮に声をかける。
○MDPO所属の科学者など十数人→グランドーム内で作業を開始。
○一ノ谷博士、岩本博士、ドイガキ・コウジ→1番初めに来ていた様子。ゴンドウに
オリジナルのインペライザーの破片が別次元の産であることを知らせる。


【今回の新規登場】
○一ノ谷博士(ウルトラQ)
一の谷研究所の所長で、万城目たちの知恵袋。専門分野は理学全般だが、それ以外の
多方面にも通じている高名な科学者で、万城目たちが遭遇した事件の数々を科学的に
解決へと導いた。

○岸田 文夫(帰って来たウルトラマン)
兵器開発を得意とするMAT隊員。射撃の名手でプライドが高く、少々短気。正義感と
責任感が強いが、独断で重大な決定を下してしまい、失敗することも。劇中初期では、
何かと郷隊員と意見や感情が対立することも多かったが、11話で郷に助けられたこと
を契機に次第に打ち解け、プライベートを話題にしたり、冗談を言い合うような仲に
なった。

○梶 洋一(ウルトラマンA)
TACの兵器開発担当主任技師、24歳。惑星破壊ミサイルマリア2号や、異次元突入装置
など、地球を守るためのさまざまな武器や重要なアイテムを開発する傍ら、ヤプール
や超獣が起こした超常現象の分析も進めていた天才科学者。

○北島 哲也(ウルトラマンT)
ZATの隊員、27歳。怪獣などの情報分析、及びそれに基づいた兵器やマシンの開発を
得意としている。
見た目は気が弱く瓢々としているようだが、実際はしっかりした性格で、光太郎ら
若手隊員たちの良き相談相手である。

○ヤオ・ナバン(ウルトラマンティガ/ウルトラマンティガTHE FINAL ODYSSEY)
TPC 科学研究局所属で、TPC科学陣の代表。超光速エンジン、マキシマ・オーバー
ドライブの開発者。映画版において、GUTSメンバーが乗りこんだアートデッセイ号
のメンテナンスに気を配っていた、細やかな性格の人物。

○ドイガキ コウジ(ウルトラマンコスモス)
元TEAM EYES隊員、31歳(劇場版第3作時・推定)。TEAM EYES時代は様々なメカを
開発した、自称“天才科学者”。カオスヘッダーを無力化するカオスキメラの開発に
も尽力した。
EYESを離れた後は、SRC科学セクションの主任となる。
図体は大きいが、気は小さい。

○ダテ博士(ウルトラマンマックス)
普段はUDFの太平洋基地・ベースポセイドンに勤務している。ダッシュバード3号の
製作者にしてトミオカ長官の戦友。
ダッシュバード3号以外にも、ダークバルタンを元の人間に似た姿に戻したメタモル
フォーザなどを開発した。

16 名前:新章/集う者達篇:2007/10/23(火) 05:21:35
       昼  12時

    ホテル・トアール最上階


シオン「わあ・・・」
小牢「な? たいしたモンじゃろ?」

 小牢に連れられ、シオン達がやって来た最上階は、そのフロア全てが一つの広大な
バイキングレストランだった。

 入り口からでも伺える、そのレストランの広大なスペースが成せるバイキングの内容の
充実振り。もしかしたら、小さな子なら迷子になるかも知れないと思ってしまうほど・・・

ジギー「モモ。あまり離れないようにな」
 と思ったら、早速ジギーがモモの心配をしだしたらしい。

シオン「(ジギーさん・・・(汗))」
 過保護なお父さんだなぁ、ほんとに。

モモ「大丈夫ですよジギー。モモ、いつまでも子供じゃないですから」
Jr「そうそう。コンビのオレが付いてんだから心配すんなっておっさん」

 コンビを強調しつつ、胸を張って語るJr。
 むしろ二人揃って消えちゃわないか心配なんだけど・・・


トニー「むしろ二人揃ってまい・・・ ゴフッ!?」

 と、シオンと同じ事を口から滑らそうとしたトニーが、マシューズとハマーに強制的に
シャラップさせられている。

Jr「・・・なんだ?」

ハマー「い、いやそのー・・・ ここんとこカレーばっかりで体が黄色になるかと思ってた
    とこっすから、種類が豊富そうでありがたいなーって言ってただけっす」

マシューズ「そうそう。ダンナはお気になさらずに」


シオン「・・・・・・・」

 雇用主に気を使うっていうのも大変だ。
 でも、言い訳に私のカレーへのグチを使うのはどうなんだろう。


小牢「お主らの席はちゃんと【シオン様ご一行】で取っておいてあるから、
   ・・・勝手に違う席には座らんよーにな?」

ケイオス「それはわかったけど・・・ でも、勿論これ、ただの食事会じゃないんでしょ?」

 そこで、初めてケイオスが小牢に質問をする。

小牢「うむ? まあな。まー・・・ そのうち始まるから、それまでは難しいこと考えずに、
   まあ、食いねえ食いねえ」

 それだけ言うと、小牢はさっさと奥の方へ行ってしまった。


シオン「席は・・・ ああ、あれね」

 あまりに広いレストランだが、意外にもシオン達の席は近い所にあり、あっさりと見つかった。

ジン「席も見つけたことですし、では・・・ 先にご飯をよそいますか」
 と言うと、ジンは先に和食コーナーの方へと迷いなく真っ直ぐ歩いていった。

 ・・・自分が思うのもなんだが、この人は私と仲良くなろうという気がちゃんとあるのだろうか。
 まったくマイペースだ。。

シオン「ああいうとこ、似なくてよかった」
 と、シオンが呟いたところで

アレン「しゅ、主任っ! あの、その・・・ ぼぼぼ、僕と一緒に、回りませんかっ!?」
 二人分のトレーを持って来たアレンが、嬉々としてシオンを誘うも

シオン「ありがと。でも、私も一人で回りたいから」
アレン「うぐはっ・・・・・・!!!」

 それだけ言うと、シオンはトレーだけ貰い、一人でスタスタと洋食コーナーの方へ歩いていく。

アレン「・・・・・・(ガク)」
 がくりと頭を落とし、とぼとぼどこかへ歩いてゆく、アレン。

メリィ「(・・・じゅーぶん兄妹でそっくりやっちゅーねん)」
ケイオス「(アレン君も可哀想に・・・)」

 と、二人に思われてたとは思いもせずに。

17 名前:新章/集う者達篇:2007/10/23(火) 05:22:54
○シオン・ウヅキ→アレンを天然にあしらい、洋食コーナーへ
○小牢→シオン達をレストランへ案内し、ささっと引っ込む
○ジン・ウヅキ→和食コーナーへ
○トニー→強制的にシャラップをくらう

18 名前:新章/集う者達篇:2007/10/23(火) 05:24:45
シオン「うーん、スパゲティもいいけど、やっぱり気になるのは・・・」

 自らカレーを作るカレー好きとしては、やはりカレーだろう。
 カレーは、その作り手によって味わいが指紋の如く変化する。

 このレストランのシェフがどんなカレーを作ったのか、そこにシオンが興味を引かれるのは
当然といえば当然だった。


シオン「カレー、カレー・・・ あれ?」
 カレーを探して歩いてる間に、壁にかかっているボードに目がついた。



『今日のゲスト料理人』
 天道総司様。日下部ひより様。神代家のじいや様。テンカワ・アキト様。サイ・サイシー様。
 衛宮士郎様。アーチャー様】



シオン「・・・・・・ ゲスト料理人?」
 何だろう。何となくこの時代の知識があったらこの列記された名前にびっくりしてたような、
そうでないような・・・・・・


シオン「・・・・・・カレー探しに行こ」

 と、改めて足を向けたところで


シオン「・・・・・・あっ」
ラムザ「え? ・・・・・・あ」

 名前も知らない少年と、昨日ぶりの再会を果たした。

19 名前:新章/集う者達篇:2007/10/23(火) 05:25:33
○シオン・ウヅキ→ゲスト料理人の名前が列記されたボードを見つけるも、未来人なので
         リアクションなし。残念。そこでラムザと再会
○ラムザ・ベルオブ→うろうろしてる中、シオンと再会

20 名前:新章/集う者達篇:2007/10/23(火) 05:26:34
ラムザ「えーと・・・ こんにちは。ラムザ・ベルオブっていいます」

 ぺこりと挨拶をしてくる少年。
 服装も含めて、見た目は普通の少年なのだが・・・
 その動作は礼儀正しく、どことなく育ちのよさを感じる。

 瞳には全く毒がなく、虫も殺さなそうなその様相は【反乱軍のリーダー】などには全く見えない。

シオン「こ、こんにちは。ええと・・・ シオン・ウヅキです」
 少年につられ、シオンも挨拶を返す。

ラムザ「昨日はすいません。ご迷惑かけちゃって・・・」

 昨日のご迷惑というと、鎧の女の人が通ったのを避けたことだろうか。
 びっくりはしたものの、迷惑というほどじゃなかったけれど・・・

シオン「ううん、そんなことは・・・ あ、そうだ」
 物はついで。この子に聞こう。

ラムザ「・・・・・・?」
 きょとんとした様子のラムザ。

シオン「カレーはどこかわかる?」

ラムザ「カレー・・・? ああ、インドって国の料理ですよね。インド料理コーナーなら・・・
    確か、あっちですよ」

 あっさりと指差すラムザ。
 どうやら、自分と比べてここのバイキングに何度かお世話になっているらしい。

シオン「ありがとう。それじゃま・・・」
ラムザ「じゃあ、案内します」

シオン「え?」
 いや、【案内して】だなんて一言も言ってないんだけど・・・

ラムザ「・・・? どうしました?」
 ラムザは既に、案内する気満々だった。

シオン「(う〜ん・・・ まあ、いいか)」
 成り行きに任せ、シオンはラムザに招かれる通り、その後を付いていった。



  ◇    ◇



ラムザ「へえ〜・・・ シオンさん、4000年後の世界からやって来たんですかぁ。すごいなぁ・・・」
シオン「ラムザ君は、幻想界?」

 インド料理コーナーに足を向けながら、なんとなく二人はお互い話をし始めた。


ラムザ「はい。イヴァリースという所から。・・・とはいっても、最近色んな【世界】を成り行きで
    飛び回ってたりして、色々巻き込まれたりしてたんで、自分でも何がなにやらって感じです」

 あははは・・・ と、苦笑するラムザ。

シオン「あ〜〜・・・ わかるわ、その気持ち」

 それも、ここ最近は特に。


女性店員「お飲み物はいかがですかー? コーヒー、紅茶、何でもございますよー」

 ふいに、通り過ぎようとした飲み物コーナーから女性店員がスマイルで話しかけてきた。

シオン「あ、どうもー。それじゃ紅茶で。ラムザ君は?」
ラムザ「あ・・・ じゃあ、ミルクを」

 シオンの問いに、ラムザは自然にそう答えた。


シオン「ミルク・・・」

 いやまあ、すごくこの子に似合うけど・・・
 ミルクを飲む反乱軍リーダーって・・・

 そういえば彼、いくつなんだろう? お酒が飲める年齢には見えないし、
そもそも見た目だけ見るなら、下手をすると高校・・・ いや、中学生?


女性店員「はい。お紅茶とミルクですー」
 とか考えている間に、店員さんが飲み物を渡してくれた。

シオン「え? ああ、ありがとう。・・・はい、ラムザ君、ミルク」
ラムザ「ありがとうございます」

 ミルクを受け取るラムザ。

シオン「そういえば、ラムザ君って、年はいくつ?」

 紅茶を一口、少しはしたないながら口につけつつ疑問を問う。


ラムザ「年ですか? えーと・・・」
 うーん・・・ と、少しだけ唸った後

ラムザ「19・・・ だったかなぁ?」
シオン「ゴフッ!!?」

 もう少しで紅茶を噴くところだった。


ラムザ「そういえば、シオンさんは・・・」

シオン「・・・・・と、年の話はやめましょう」
ラムザ「・・・・・・? はあ・・・」

 余りのショックに、そうとしか言えなかったシオンであった。
 ラムザはラムザで、シオンの落ち込む理由は全く分かっていない。

シオン「小牢さんから、ラムザ君は反乱軍のリーダーって聞いたけど」

 なんとか空気を変えて忘れようと、シオンは別の話題を持ち出す。


ラムザ「え・・・ 反乱軍・・・?」
 ラムザははて、という顔をする。
 こういう反応をするということは・・・

シオン「違うの?」
ラムザ「はい」

 なんだ、やっぱり。
 びっくりして損し・・・


ラムザ「僕のクランは40人程度だし、色んなお仕事もしてたし、後半なんてほとんど人間じゃない
    相手と戦ってたし・・・ 敢えて言うなら、【魔物退治専門だけどなんでも屋さん】・・・?」

 かなり眉にシワを寄せて、真剣に悩んで考えている様子。
 しかしシオンにとっては既に意味も内容も理解の範疇外になっていた。


シオン「えーと・・・ あ、そういえば、あの女の人は?」
ラムザ「アグリアスさんですか? ええと・・・ 今は、ちょっと」

シオン「まだ機嫌が?」

ラムザ「う〜ん・・・ というより」

 ラムザは少し考え込む仕草をしたあと


ラムザ「これまで溜まってた色んなフラストレーションが、昨日ので一気に出ちゃったんだと思います」

シエル「フラスト、レーション・・・」

ラムザ「アグリアスさんは、今は僕の盾だって言ってくれるんですけど、その前は違う人を守護して
    たんです。でも・・・ 頑張って戦い続けて、結果的にイヴァリースのたくさんの人達を助ける
    事は出来たのに、僕もアグリアスさんも、一番大事な相手を助けることは出来なかった・・・」

シオン「・・・・・・・」
 ラムザの表情に、深い悲しみを携えた、暗い影が映る。


ラムザ「僕は親友を失って、アグリアスさんは姫主を失いました。
    僕は、自分の気持ちに決着を付けたつもりなんですけど・・・ アグリアスさん、ああ見えて
    本当は誰より繊細な所があって・・・ 僕が何とかしなくちゃ、とは思うんですけど・・・」

 ラムザの目は、とても遠くを見ている。
 もう届きはしない、ずっと向こうにいる存在を想っているのだろうか。


シオン「(・・・どこも、一緒なのね・・・)」

 どの時代、どの場所でも。戦いに赴く人達は、誰もが何かしら、大切なものを得て
 そして、失っている。

 零児さん。小牢さん。春麗さん。スタンさん。ルーティさん・・・
 そして、私も・・・

シオン「【向こう】へ行っちゃった人達には、もう会えない・・・
    だから生きている私達は、新しい何かを見つけて、生きていくしかない。
    そうだと納得してても・・・ 辛いわね」

  シオンは、そう呟いた。

ラムザ「・・・・・・・・・ そうですね」
 少しの沈黙を経て、深く頷くラムザ。

シオン「あ・・・ ごめんなさい。偉そうなこと言っちゃって・・・」
 シオンは、無配慮だっかとすぐに訂正するが

ラムザ「いえいえそんな。・・・むしろ、気持ちが軽くなりました。
    ・・・うん。決めた。リーダーの僕がしっかりしないと」

  どうやら、シオンの言葉で、ラムザも何かしら決意をしたようだ。

ラムザ「ありがとうございましたシオンさん。僕、頑張ります。
    あ、インド料理コーナーはもうすぐそこですから」

 ひらひらと手を振って、別の方向へと消えていくラムザ。
 シオンも片手を振って、ひとまずの別れを惜しみながら


シオン「・・・・・・・・・ 不思議な子だったなぁ」

 と、素直な感想を漏らした。



  ◇    ◇



    インド料理コーナー



シオン「わあ・・・ 随分本格的、ねえ」
 やって来たインド料理コーナーは、これまた大したものだった。

 カレーやナンは当然。他にも様々な見た事の無い品まで並んでおり、カレー自体の種類も、異常と
いうほど多く並んでいる。
 鍋ばかりがずらりとテーブルに列を成しているその光景は、感動を通り越してむしろシュールだ。

シオン「これは・・・ 何度か往復しないと全種類試すのは難しいかな〜」

 しかしそこでそんな台詞が出るあたり、シオンも只者のカレー好きではない。

シオン「さて、この場合大皿より、小皿で何種かの方が・・・」
 などと、カレー鍋に釘付けになりつつ考えていると

             (ドンッ!!)


シオン「!? おっ・・・とと」
 後ろから何かがぶつかってきたらしく、シオンは少しよろめく。

シエル「あ。失礼」
シオン「いえ、こちらこそ・・・」

 互いにペコリと頭を下げると、ぶつかった相手・・・ 眼鏡で黒髪の、法衣服を纏ったシスターの
ような女性は、すぐにどこかへ行ってしまった。


シオン「・・・・・・(すごい人もいるものねー・・・ 世界は広いわ)」

 通り過ぎた後で、シオンは改めて法衣の女性の両手・・・ 指と指の間に器用に挟まれたトレーの上に、
何種類ものカレーを、しかも大皿にこんもりと大盛りで運んでいる姿に驚かされていた。

 自分もそれなりのカレー好きだとは思っていたが、あれには勝てない。
 まあ、それはそれとして・・・


シオン「それじゃ、手始めに5種類くらい小皿に盛っちゃいますか♪」

 自分は自分で、マイペースにカレー祭りとするシオンだった。

21 名前:新章/集う者達篇:2007/10/23(火) 05:27:37
○シオン・ウヅキ→ラムザとしんみりと話をし、インド料理コーナーへ到達した後は小皿でたくさん
         種類を食べる作戦へ。
○ラムザ・ベルオブ→シオンとの話で自分なりの考えを決める。ドリンクコーナーではやはりミルク
          を注文した。
○シエル→時を越えてカレー愛好者同士の出会いを果たすものの、互いに互いを知らないのでスルー


【今回の新規登場】
○シエル(月姫シリーズ)
誕生日は5月3日。血液型O型。身長165cmの体重52kg。3サイズはB92/W56/H88
イメージカラーは青。気さくで物腰の柔らかい、表では遠野志貴の学校での癒し系な優しい先輩。
しかしその正体はカトリック聖堂教会における異端審問の組織『埋葬機関』の代行者第七位。ちなみに
「シエル」は洗礼名で本名はエレイシア。卓越した身体能力、膨大な知識、冷酷な感性を持つ。任務
遂行時はクールで冷徹。数多くの武器を法衣の下にしまい込み、それらの武器の投擲による攻撃を主と
する故に、埋葬機関から「弓」と呼ばれる。魔術に関しても秀でており、対立組織「魔術協会」の
最上位の魔術師に匹敵するほど。・・・なのだが、【昔】を思い出すので彼女自身は極力使いたがらない
(任務遂行に必須となれば話は違うが)通常使うのは簡単な催眠から、戦闘用の投剣「黒鍵」への
魔術の付与や結界程度。また、矛盾的な概念欠如により決して死ぬことが出来ない不死だったが、
それも大元の吸血鬼が完全に消滅したことで失った(現在は【非常に死ににくい体】)メガネには
あまり度が入っておらず、戦闘時は外していることが多い。ちなみに世界のどこを見渡しても他に
いないという程の異常なまでのカレー愛好者で、カレーうどんをおかずにカレーライスを食べるほど。

22 名前:新章/集う者達篇:2007/10/23(火) 05:29:47
MOMO「あっ、シオンさーん」
 シオンの帰還に、最初に気付いたのはモモだった。

Jr「遅せーよ。シオン」
 JrはJrで、器用にフォークをクルクルさせながらシオンに軽く文句をつける。

 その他の面々も全員席について、始める者は既に食事を始めている。
 どうやら、自分が一番遅かったらしい。


シオン「ごめんなさい。カレーを探すのに時間がかかっちゃっ・・・」

 と、照れ笑いを浮かべた所で、シオンは見知ったエルザクルーの座る席の周囲の様子に、
ようやく気が付いた。


春麗「ニーハオ。シオン」
キャミィ「・・・久しぶりだな」

 すぐ右には、格闘家さんが二人。

レジーナ「そっちは随分大所帯でやって来たみたいね」
ブルース「あーれ? シオンちゃん、ちょっと老けた?」

 左には、特殊諜報員さんが二人。


鳳鈴「・・・相変わらず最低ね」
レイレイ「ホント、相変わらず冬瓜(ドングァ)ある」

ブルース「うぐ・・・」

 その隣に、中国の工作員さんとキョンシー。


フェリシア「やっほー! シオンちゃーん!!」
キング「・・・・・・・」

 元気に手を振ってくる無邪気なミュージカルスターと、マスクのお陰で食事に難儀している
虎のレスラーさん。

 他にもべラボーさん、モモちゃん。タキさんにわや姫、御剣さん。ギルガメスさん、カイさん。
ワルキューレさん、サンドラさん、サビーヌさん。アーサーさん。1P、2Pさん。島津さんに
水無月さん。ローズさんにさくらちゃん、かりんちゃん。リュウさん。ケンさん。デミトリさん。
仁さん。クロノア君とガンツ君。景清さん、たろすけ君。マスヨさん、みろみちゃん、アーマーキング
さん。ハガーさん。ホリさん・・・


 ・・・・・・・相変わらず人数が多すぎて、ちょっと目が疲れる。
 ともあれ、五界ヒーローズが久しぶりに再び揃ったことになるわけで・・・


シオン「・・・・・・・? あれ?」
 そこで、シオンは知っている顔が何組かいない事に気が付いた。

MOMO「そうなんですよシオンさん。いない人もいるんです」

KOSMOS「前回の五界混沌事件のメンバーでこの食事会に参加していないのは、飛竜。ロック。ロール。
    三島平八の4名です」

 シオンの表情を察してかそう話しかけるMOMOと、それを補足するKOSMOS。


シオン「ありがとうKOSMOS・・・ それはわかったから、いいかげんこーゆー
    席で猫耳(それ)着けるのやめてくれる?」

 前回の事件でシルフィーさんにコーディネートされて以来、KOSMOS自身が気に入ってるのか、時折
猫耳を装着する。
 正直、前にあったエルザ大破事件を思い出すからやめて欲しい、本当に。


KOSMOS「善処します」
 と言いつつ、特に猫耳を外そうとはしないKOSMOS。


シオン「・・・・・・・・ えーと・・・ で、飛竜さんはどこに・・・?」

 なんとか話を前に進めようと、疑問を口にすることにした。


鳳鈴「【別任務中】。だそうよ」

 最初の疑問に答えたのは、鳳鈴。


仁「・・・あの男は、【会社が忙しい】そうだ」

 続いて、不機嫌そうに三島平八の事を短く報告する、仁。


ひろみ「ロック君やロールちゃん、トロンちゃんもいないんですよ」

 そして、ひろみ達も口を開く。


マスヨ「それで、こっちの占い師さんの話だと・・・」

ローズ「ロック君達は、本来の彼らがいる時代で戦ってる。間違いないわ」

 タロットをめくりながら、ローズは確信を持って答える。


ケン「あんたの占いを信じないわけじゃねーけどなぁ・・・」

 さすがに不審を示すケンだが


ホリ「俺はローズの言うとおりだと思うぜ。冒険家としてのカンが言ってらぁ。あいつらは【こっち】
   にゃ来てねえ」

 席の端っこで沈黙を守っていたホリ・タイゾウも、それに参加する。


マスヨ「冒険家、ねえ・・・」

1P「ま、同窓会ってのは全員が揃う方が珍しいもんだ」
2P「向こうで元気にやってんなら、そのうち会うこともあんだろ」

 名無しの二人組みは、相変わらずのレットイットビーぶり。
 ドリンクコーナーには無かったが、お酒でも飲んでいるんじゃないだろうかというぐらいの雰囲気が
ある。


シオン「いないのは3人だけ?」
KOSMOS「間違いありません」

シオン「じゃあ・・・」
 他に姿が見えないのは、モリガンさん、リリスちゃん。コマンドーチームの人達と、
スタン君とルーティさん。


 一体どこに・・・


島津「ああ。コマンドーチームの皆さんなら、向こうで地球勇者という方々と談笑しているようです」

水無月「スタン君達も、あっちの方で他のお友達と話しているようですよ」


シオン「へえ・・・」
 増えたのは私達だけじゃないんだ。



       ジョニー「らぁら〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・♪」



 なるほどそういえば、さっきから変な歌声と、スタン君達らしき悲鳴が聞こえてくる。


シオン「じゃあ、あとは・・・」

アレン「わ、わわっっ!!?」
シオン「!?」
 その時、背後からアレンのものと思わしき悲鳴が聞こえ、シオンも反射的に振り返る。


シオン「あ・・・」


 すると


モリガン「あら。けっこうカワイイ子を連れて来てるじゃない♪」
リリス「ねーねー、これ。貰っていーい?」

 いつの間にやら二人組が、すっかりアレン君を捕まえていた。


アレン「な、な・・・っ 〜〜〜〜??」
 免疫の無いアレンは、すっかり固まってしまっている。

モリガン「すっかり硬くなっちゃって、ウブねぇ」
リリス「あははは。面白─い」

アレン「・・・・・・・・・・・・・しゅ、しゅしゅ主任───ん!!
    た、た、た、た・・・ 助けて下さ────────い!!!」

シオン「・・・・・・・・・・ はぁ・・・」

 これからまた、すごく疲れそうだ。

23 名前:新章/集う者達篇:2007/10/23(火) 05:30:57
○シオン・ウヅキ→五界ヒーローズ再集結に嬉々としたものを感じつつも、かつての苦労を倍で味わい
         そうで不安に
○KOSMOS→猫耳装着中。気に入っているのか
○アレン・リッジリー→モリガンとリリスにからかわれ、パニックに
○モリガン・アーンスランド&リリス→アレンをからかう
○ジョニー・シデン→今回は参加している様子。いきなり歌ってスタン達に悲鳴を上げさせている。
○その他・五界ヒーローズ→皆相変わらず。しかしこれだけ揃うとやはり騒々しい。


【今回の新規登場】
○ブルース・マッギャバン(ガンサバイバー4・バイオハザード)
アメリカ統合戦略軍のエージェント。かつてとある客船で起こったバイオハザード事件で、射撃格闘の
腕や生存力、悪運の強さとタフネスを武器に解決した男・・・ なのだが、そんな貫禄は微塵も無い。
服装に気を使わず、無精ヒゲを生やしているマイペース独身男。デリカシーはゼロで、女性にポロッと
失礼なことややらしいことを言っては、鳳鈴などに【冬瓜(ドングァ)】と言い放たれ、最近では冬瓜
が彼のあだ名として定着しそうになっている。普段はいい加減な男だが、その胸には熱いものを持ち、
困っている相手に対しては体を張って助けてくれる好漢。五界混沌事件では【同業のよしみ】(同じ
アメリカの諜報員のよしみということだろう)という理由でレジーナとコンビを組む。


○レジーナ(ディノクライシスシリーズ)
ディノクライシスシリーズの主人公。永遠の23歳。赤く染めた髪が印象の美女。非公式な指令を専門
にこなす政府直属の特殊機関、【S.O.R.T.】のエリート隊員。女性には珍しい実働部隊に所属する
工作員でありながら、多くのミッションを成功に導いている。潜入作戦のエキスパート。配属以前の
経歴は一切不明で、彼女がなぜこの過酷で危険な世界に志した経緯は一切不明。ちなみにラテン・イタ
リア語で【女王】という意味である。レジーナという名も本名ではなくコードネームか偽名の可能性が
ある。身体能力は高く、男性に劣らぬタフネス。クールな性格で絶望的な状況でも活路を見出したり
など判断力・適応力は抜群。また武器の改造に関してはとりわけ右にでるものはおらず、生存技術力も
極めて高い。それがかつての孤島とエドワードシティによる2回ものディノクライシス事件で生きて
帰って来た秘訣であると言える。クールではあるが、おのれの信念に沿い、筋を曲げぬ生きざまにこそ
レジーナの本質がある。五界混沌事件では【同業のよしみ】(同じアメリカの諜報員のよしみという
ことだろう)という理由でブルースとコンビを組み、鳳鈴に続いてブルースに【鉄女】2号に認定
される。


○鳳鈴=フォンリン(ガンサバイバー4・バイオハザード)
中国人。中国安全部所属の工作員。容姿端麗で頭もきれ、身体能力や射撃能力も高い。とある客船での
バイオハザード事件ではブルースの敵だったり味方だったりしたが、五界混沌事件ではレイレイと共に
頼れる味方として世界の為に戦ってくれた。ツンとしていてデレ部分を全く見せないのでブルースには
レジーナと同じく【鉄で出来たような女】と言われているが、レイレイとのかけあいなどを見るに、
内面はお姉さん肌かという説も。ひょっとしてブルースが実は好きなのでは? との説もあるが、
客船の事件でも五界混沌事件でもそういった部分を匂わせる言動はゼロだった。五界混沌事件において
は、レイレイを新種のゾンビと勘違いして捕捉しようとした経緯を経てレイレイとのコンビを組む事に。
ダークストーカーの事は未だによくわかっていない。


○ジョニー・シデン(テイルズオブデスティニー)
26歳。身長174cm。体重61kg。アクアヴェイル公国・シデン領当主の三男坊。
明るく飄々とした吟遊詩人。金髪。瞳は緑。メインキャラの中では唯一両親の健在が確定している
キャラクターでもある。愛するエレノアをトウケイ領主ティベリウスに殺されて(正確には自殺)
以来、自分の身分を隠し吟遊詩人として復讐のチャンスを伺っていた。しかし普段はそんな重い過去を
微塵も見せない。攻撃力のあるジャイアン並のヒドい歌を歌ったり、逆に誰もが聞き惚れるとても
綺麗な歌を歌ったりと、上手いのか下手なのかは結局の所よくわからない。かなり「独特」であると
言える。ちなみに彼の歌は全てジョニー自身の作詞作曲。弦楽器を武器とし、特技も全て歌。


○レイレイ(ヴァンパイアシリーズ)
身長156cm、体重43kg。スリーサイズはB83、W59、H86。中国出身。
袖に多くの武器(暗器)を隠し持つ女性のキョンシー。元は人間であるが、故郷の村に伝わる禁術
「異形転身の術」の力で、自らこの姿に変化した。戦闘時は姉のリンリンが御札となって彼女を制御
している。ダークストーカーズを封じるために犠牲となった母親の魂を開放する為に闘う。
『セイヴァー』では転生を果たしているので、五界混沌事件時のレイレイはそれより以前の時間軸と
考えられる。OVA版によるとフルネームは【少泪泪(シャオ・レイレイ)】で、『ポケットファイター』
でもこの名字の設定が使われている。彼女の肉体は禁術でダークストーカー(キョンシー)に変化して
しまったが、母の魂を救う為にダークストーカーと戦うという設定上、彼女も「ヴァンパイアハンター」
の1人である。五界混沌事件では鳳鈴に捕まった経緯で鳳鈴とコンビを組む。


○フェリシア(ヴァンパイアシリーズ)
身長168cm、体重58kg(猫時4.1kg)。スリーサイズはB88、W61、H87。
人間のシスター・ローズに拾われ育てられたキャットウーマン。アメリカ出身。悪者をやっつけて
有名になろうと戦いに赴く。『セイヴァー』のエピローグでは孤児院を経営。ヴァンパイアシリーズ
全作品に皆勤賞で登場している。五界混沌事件の時には何故か人間界で人間の姿に変じて、素性を隠し
ミュージカルスターとして活躍。しかもどういう経緯かボディーガードはキングだった。そのまま戦い
の時のコンビはキングと組んでいる。性格はかなり純粋で超が付くほど明るく、最強のムードメーカー。
なお、キャットウーマン族は名前上オスは存在せず、人間の男との子供も普通の人間になるため、
どうやって子孫を残すのかは目下の所不明のまま。


○キング(鉄拳シリーズ)
初代キングの孤児院で育ったある青年がアーマーキングを師として、2代目キングとなった男。初代を
殺した闘神への復讐の為大会に参加(鉄拳3)。師であるアーマーキングを殺したマードックに復讐する
ため、ファイトマネーで彼を保釈させ、大会に参加させる(鉄拳4)。マードックを倒すが復讐の愚かさ
を悟り、止めを刺すのを止める。その後、マードックがブラックジャガーのマスクを被り、自分に
リベンジマッチを挑むのを知り大会に参加(鉄拳5)。年齢は3で28、4と5は30歳、不参加の1で7才、
2で9歳。かなり実直で優しく誇り高い漢な性格。五界混沌事件では何故かフェリシアのボディーガード
をやっており、そのままフェリシアとコンビを組みた戦いに参加。死した筈のアーマーキングとの戦い
そして共闘といった、彼にとって忘れられない戦いとなった。ついでに、他の面々からあなたはどこの
ダークストーカーですかとか、いつも口を開けたままだねとか言われるたび、「・・・これはマスクだ」
とキング自身がツッコミを入れるのが定番になっていった。


○風間仁(鉄拳シリーズ)
三島一八と風間準の間に生まれた青年。母を殺害した「闘神」を倒す為、自分の祖父に当たる三島平八
に師事し、鉄拳大会に参加。風間流も母から教わっていた為に使えるが、「風間流古武術」ではなく
「風間流護身術」を使った(鉄拳3)。大会決勝で現れた闘神を見事倒すものの、背後から平八による
発砲を受ける。信頼していた者から裏切られた仁は、突如デビル化すると平八をなぎ倒し、その後行方
をくらます。自らに眠るデビルの血も三島家の格闘スタイルも全てを憎悪する仁は、オーストラリア・
ブリズベーンで正統派空手の修行を重ね、三島家の悪しき血を滅ぼす為に大会に参加(鉄拳4)。
おそらく五界混沌事件に巻き込まれたのはこの辺りの時間軸だと考えられるが、その五界混沌事件での
戦いによって己のデビル因子を自らの意志の力と仲間の想いの力によって封じ込める事に成功した為、
4以降の世界に対して独立と宣戦を布告した仁とはもはや別の存在。どちらが平行世界の仁となるかは
別として、こちらの仁はもう道を踏み外すことはないだろう。


○天現寺ひろみ(バーニングフォース)
元は地球(ペコポン)大学に通うBF(バーニングフォース)の優等生。エアブレーンとエアバイクを
乗りこなし、迫り来る巨大な敵機軍と激闘を繰り広げ、バーニングフォースに勝利をもたらした。
かわいい顔をして自機を乗り換える際には異常なほど華麗な空中回転を決めたり色々と謎な子。
大学卒業後、その実力と成果を買われてか、すぐに連邦宇宙軍の空間騎兵師団に配属された。敵機軍を
倒した事によりバーニングフォースが解散した事もその理由の一つだという説もあるが、実際の所は
不明。マスヨを先輩として慕っており、姉妹のように仲がいい。少し天然ボケでドジっぽい。


○トビ・マスヨ(パラデューク)
元、宇宙辺境警備隊の腕利きファイター。平和種族である【パケット族】を救い出す為、ホリ・タイゾウ
と共に地下要塞パラデュークを支配する邪悪生命体【オクティ族】と壮絶な死闘を繰り広げ、結果多く
の仲間がパラデュークで散りながらもなんとか勝利する。その後はタイゾウと別れ、空間機兵師団に
所属し、ひろみという後輩を得た。しかし五界混沌事件により、オクティ族との再戦や、タイゾウとの
再会を果たす。性格はかなり気が強く攻撃的でギャンブル好き。美人だが中身は猛獣と言える。ホリ・
タイゾウに対して恋愛感情を抱いている節が有り。そしてミスター・ドリラーの主人公ホリ・ススムの
母親はマスヨらしいので、つまり将来マスヨがタイゾウと結婚する事が確定していたりする。酔うと
キス魔になるため、愛称は【KISSY】。


○ローズ(ストリートファイターシリーズ)
どんな占いも確実に当てる占い師で、ベガのサイコパワーと相反するソウルパワーの持ち主。『ZERO3』
でベガと刺し違え、ガイによる救出により一命を取り留めた筈だが、五界混沌事件の登場時には既に
死んでいた(ちなみにガイとローズはカップルでは、という説もある)ジューダス、アーマーキングと
共にブラックワルキューレの力で蘇りリュウ達の前に立ちはだかったが、呪縛が解けると味方として
戦ってくれた。達観した大人の女性で、その台詞も諭すような落ち着いた言葉遣いのものが多い。
ベガとの因果関係は様々な説が飛び交っており、現在ではローズとベガが宿命的な敵対者であるぐらい
しかわかっていない。


○ケン・マスターズ(ストリートファイターシリーズ)
妻帯者の空手家。天狗的発言も見受けられるが、実はかなりの努力家。リュウに置いていかれる事に
焦りを見せていた頃もあったが、多くの格闘家達との闘いで自分のやり方で自分の強さに磨きをかけ、
リュウと再戦を果たすという目的を見つけ出す。また、誰よりもリュウの実力を認めている。
弟子にショーンがいるものの、元々弟子をとるつもりはなく強引に押しかけられた経緯もあってか、
少々持て余しており、リュウにショーンを押し付けてしまったことも。自分と妻イライザの顔が
ペイントされたクルーザーを所有している。ショーン曰く「派手っつうか、悪趣味っつうか。弟子の
こっちが恥ずかしくなっちゃいますよ」。髪を金髪に染めたのは、不仲であった両親への反発が
きっかけ。夫婦仲が良くなってからも、「仲良くしていないと不良になるぞ」という警告の意味で元に
戻していない。女癖が悪い事で有名。軟派だと言われる。『ポケットファイター』のエンディングでは
モリガンと買い物をしている所を運悪くイライザに見つかってしまい、修羅場となった。ケンとリュウ
を対極に表すと、ケンは「常識」、リュウが「非常識」であるそうだが、一般人視点からすればケンも
大概外れている。五界混沌事件では殺意の波動に目覚めたリュウを元に戻すため、命をかけてリュウに
挑んだ。


○ホリ・タイゾウ(ディグダグ)
ドリルや銛ポンプといった個性的なものを武器にしており、敵に銛を刺した後、ポンプでふくらまして
破裂する技【プクプクポン】や、【岩石落とし】など、技も個性的。また、そのドリルで地面を掘って
地中を移動できるという特技も持つ。ディグダグ事件、そしてその翌年の南国島事件を一人で解決した
事で英雄として有名になり、その腕を買われてか「バラデューク」の宇宙辺境警備隊による突撃作戦の
際、工作員としてトビ・マスヨをサポートしていた。しかしその戦いによってタイゾウは初めて多くの
仲間を失い、それによってか行方をくらまし(本人曰く「懲りた」らしい)それからしばらく宇宙の
ガイド業をやっていた。しかし、五界混沌事件でロックとロールを案内中にマスヨ達と再会、行動を
共にする事になる。性格は大雑把で何事もカンを頼りに行動する放浪癖持ち。男らしいが夫にしたら
苦労するタイプ。現時点ではまだマスヨとは結婚していない。


○名無しの超戦士1P(ロストワールド)
天帝バイオスによって破壊され、廃墟と化した地に現れた二人の戦士の一人。彼に名前は・・・ない。
鍛え込まれた肉体を持ち、多彩な重火器を手に天帝を倒す為に戦い続ける。渋い性格で、彼の放つ
台詞の一つ一つはとてもシャレており、ハードボイルド溢れている。見た目はターミネー○ーに激似。
アルファというAI搭載の兵器を所有。2Pと同じく、熱い魂を持った超戦士という以外は一切謎に
包まれている。シルフィーと腐れ縁。天帝を探す途中で五界混沌事件に巻き込まれ、共に戦うよう
になる。


○名無しの超戦士2P(ロストワールド)
天帝バイオスによって破壊され、廃墟と化した地に現れた二人の戦士の一人。彼に名前は・・・ない。
鍛え込まれた肉体を持ち、多彩な重火器を手に天帝を倒す為に戦い続ける。豪快な性格で、彼もシャレ
た台詞を放つが、1Pとは少し種類が違う。何故か髪型がモヒカンだが、とても似合っている。
ベータというAI搭載の兵器を所有。1Pと同じく、熱い魂を持った超戦士という以外は一切謎に
包まれている。シルフィーと腐れ縁。天帝を探す途中で五界混沌事件に巻き込まれ、共に戦うように
なる。


○島津英雄(ジャスティス学園シリーズ)
私立ジャスティス学園の国語教師。ヒゲ面でハゲで眼鏡と一見さえない中年男性だが、実は島津流空手
九段の達人でムキムキ。肩のプロテクターが特徴的。教師になった動機は、実家の道場を継ぎたく
なかったから(争い事が嫌いなため)。家事全般が得意。やや厳しいが、生徒と本音で接する優しい
先生でもある。響子先生に惚れていて、『燃えろ!』のエンディングで響子と結ばれた。しかし五界
混沌事件で二人が夫婦という話が無かったため、それ以前の時間軸と思われる。余談だが彼の技は
リュウに似ている。


○水無月響子(ジャスティス学園シリーズ)
私立ジャスティス学園の保健教師。メガネと長髪・白衣がトレードマークの美人で、元・某大学病院
整形外科助手。しかし家事全般が苦手。英雄先生に好意を持たれているが本人もまんざらではない
らしい。『燃えろ!』のエンディングで英雄と結ばれた。外科医術と整体を応用した独自の戦闘技術
とスタイルで、美脚から繰り出される足技と、関節を狙う投げを持つ。


○モリガン・アーンスランド(ヴァンパイアシリーズ)
身長172cm、体重58kg。スリーサイズはB86、W56、H83。1678年生まれ。ベリオール=アーンスランドの
養女で、アーンスランド家次期当主のサキュバス。スコットランド出身。通り名は【夜の女王】。
本人は当主の座に興味がなく、退屈しのぎの為にちょくちょく人間界に赴いては色々な人間に
ちょっかいを出す困ったさん。『セイヴァー』ではその驚くべき出生の秘密がリリスのサイド
ストーリーで明らかになる。ヴァンパイアシリーズ全作品に皆勤賞で登場。なお、デミトリの
「ミッドナイトブリス」を受けると何故か人形になる。リュウ・ケンのように飛び道具・対空技・
突進技を持ったスタンダード系。斜め上に進んでいく変則的なダッシュを生かした攻めも特徴。
必殺技は「ダークネスイリュージョン」(分身して左右から連続攻撃を繰り出す技)。五界混沌事件
ではワルキューレやデミトリと共に幻想界の異変に気付き行動を始める所からやがて戦いの渦中へと
進む。己の分身であるリリスと戦い、その末に和解し、リリスとコンビを組み戦った。性格は一言で
言えばサキュバスの化身と言えるが、同時に魔界での一勢力持ちらしい洞察力も見せた。


○リリス(ヴァンパイアシリーズ)
身長168cm、体重54kg。スリーサイズはB74、W56、H83。モリガンとほぼ同様の能力を持つ、モリガンの
魂が過去に3つに分割された内の1つ(残りの1つはベリオールと共に消滅している)。五界混沌事件で
姿を現すと同時にザベルにたぶらかされて敵側に。幾度かの戦闘を経てモリガンと和解するが、ソウル
エッジの影響で完全に魂が別れ、モリガンと別存在となってしまった。子供の純粋さと残虐さ、そして
無茶苦茶さを併せ持つ。

24 名前:新章/集う者達篇:2007/10/23(火) 05:32:51
さくら「う〜ん、フカフカ〜〜っ♪」
桃「わあ、ホントですね〜〜」

ガンツ「だああっ!! 抱きつくんじゃねえっっ!!」
かりん「さくらさん・・・・ 食事の席で何をやってらっしゃるの!!」

アーサー「まあまあ、久しぶりの再会なんだ。そう怒らず・・・」
たろすけ「そーゆーオッサンもさあ。ここ食う所なんだから、その重そうな鎧脱げよ」

アーサー「むっ、そうか・・・ よし! ・・・・ふんっ!!!」

 スポーン! と音をさせ、アーサーは一瞬で鎧をパージする。
 ・・・そして、鎧を脱ぎ捨てたその姿は、パンツ一丁。


クロノア「わっ!? このおじさんまたパンツ姿になっちゃったよ!?」
サビーヌ「くしゃみで脱げるなんて、どーゆー構造してんだ?」
アーサー「いや、ハッハッハ・・・」

春麗「・・・早く服を着ないと逮捕するわよ」
アーサー「・・・・・・・・・(いそいそ)」

 と、かなり賑やかにやっている集団もあれば


御剣「はっははぁ! これで俺ぁムスビ54個目だぜ!!」
ハガー「なんの!! 私は骨付き肉29本目だぞ」

 フードファイトを勝手に始めた人もいるし


カイ「ギル、ホッペにつぶがついてるわよ」
ギルガメス「あ? あ、ああ・・・ ありがとう、カイ」

 ラブラブオーラを強く発していたり


中村「あ、私、こういう者です(ペコペコ)」
ジン「これはこれは、ご丁寧にどうも」

 と思えば、逆にこの中では異常なほど静かな一団もあったり


リュウ「・・・・・・・・・」
アーマーキング「・・・・・・・・・・」
カノン「・・・・・・・・・・・」

 無口すぎて何の音も発していなかったり


景清「・・・・・・・・・・・・・(ブツブツ佛仏・・・)」
デミトリ「・・・・・・・・・・・・・・・」

 あそこに至っては空気が暗々怨々としていて、近寄り難い。


ワルキューレ「皆さんお変わりが無いというのはいいことですね」
 なんて考えていると、ワルキューレさんが女神の笑顔で話しかけてくれた。

シオン「私だけ2年経っちゃってますけどね・・・」

 しかもモモちゃんはまだまだかわいいし、KOSMOSはアンドロイドだから実質年を取っているのは
私だけだし・・・


シオン「そういえばワルキューレさんは・・・」

ワルキューレ「私は、クリノ、サビーヌと共に、女神イシターの命を受けて再びやって来たのです。
       ギルガメスさんやカイさん、スタンさん、クロノアさん達、幻想界の仲間と共に」


クリノ「今回はオイラも女神様のお墨付きで同行出来てるってワケさ」

 胸を張って答えるクリノ。

サビーヌ「一々追放されてちゃたまんないもんな」
クリノ「さ、サビーヌ・・・(汗」

ワルキューレ「・・・・・・(クスッ」


シオン「(ほんと、仲がいいなあ)」

 付き合いの長さ、潜り抜けた戦いの数が違うのか、この3人チームの絆の
深さは、五界ヒーローズの中でも群を抜いていると思う。


ギルガメス「しかし、こっちはとんでもないことになってるみたいだね」

 向こうに座っていたギルガメスも、会話に参加してくれた。

 しかも、アーサーさんと違って黄金の鎧は脱いでおり、誰のコーディネイトなのか(おそらく
シルフィーさんの押し売りだと思うけど)爽やかな水色のTシャツと紺のジーンズというしっかりと
今風な服装が、元の美形と相俟ってまるでモデルかと思うほどカッコイイ。

 しかし、その一方でカイさんが巫女服のままなのはどうなのか。


カイ「世界のあちこちで死者が黄泉還っていると聞いたわ。
   そんな力を持っている存在となると、可能性があるのは・・・」

シオン「・・・もしかして、あの人が?」

 カイとシオンが、ワルキューレの方を向き、意見を求める。


ワルキューレ「・・・【黒き堕天の騎士、ブラックワルキューレ】・・・」

 ワルキューレの表情に、少し影が宿る。


ワルキューレ「確かに彼女は死と破壊を司る女神であり、かつてはローズさん達を黄泉還らせ、私達と
       戦わせましたが・・・ おそらく、この事態に関わっているにしても、彼女だけの仕業では
       ないでしょう。一人の女神に出来る限界を完全に超えています」


シオン「じゃあ、他にこんな事が出来る神様に心当たりとかは・・・」

ワルキューレ「どうでしょう・・・ 死神ハーデスならばこれだけの事も出来たやもしれませんが、
       それも今では・・・」


わや姫「ふーん。神様でもわかんないこともあるのね」

 女神に対してかなりぞんざいな言い方をするわや姫。
 クリノがちょっと睨んでいるが、気にも留めていない様子である。


タキ「・・・・・・・・・・」

 コンビのタキも、やれやれといった目でわや姫を見ているが、どうやらフォローまで一々する気は
無いようだ。


シオン「(・・・あ、そういえば食事忘れてた)」
 ご挨拶はこれぐらいにして、カレーを食べることにした私は、自分の席に戻っていったのであった。



  ◇    ◇



    一方では


ゴードン「HAHAHAHA─。いやー、宇宙に名だたるコマンドーチームの方々とこうしてお会い出来る
     とは、光栄の限りですなあ」

Cp,コマンドー「いやいや、こちらこそ。
        地球勇者チームの皆さんとは是非お会いしたいと思っていたよ」

 二人の同じ空気を持つヒーローは、白い歯を輝かせ、何度も熱い握手を
交わしながら、テーブルの上で談笑していた。


フーバー「ボクチンがコマンドーチームのブレーン、フーバーでちゅ。
     ちなみにこっちがジェネティーしゃん」

ジェネティー「・・・・・・・・・・・・」

凱「凱でござる」
翔「翔と申す」


 その隣で、コマンドーチーム(と、もう一人)がそれぞれに挨拶をする。

ジェニファー「まぁ〜、あなたがあの、赤ん坊でありながらかなり優秀な頭脳を持ち、情報分析から
       兵器開発まで行う、天才フーバーちゃん? 私はジェニファーよ。よろしくね♪」

フーバー「ジェニファーしゃんの活躍も聞いてましゅよ。ところで・・・
     そっちのかわいいミドリのペンギンは誰でしゅか?」

カーチス「ペンギンじゃない!! 俺はカーチスっっ!!!
     地球勇者で俺も科学者だっっ!!!!」

 テーブルをバンバン叩きながら怒っているプリニーカーチス。
 しかしプリニーの格好でやられても、かわいいだけなのだが・・・


ゴードン「しかしバーニーズのテリヤキピッツァまであるとは、このホテルはわかってくれていると
     思わないかい? ジェーニファー♪」

ジェニファー「やーねー♪ あなたがわがまま言ったからメニューに載ったんじゃなーい」

ゴードン「そういえばそうだったー! HA-HAHAHAHA!!!」
Cp,コマンドー「ハッハッハッハッハ」

 ヒーロー達の高笑いが、そこらじゅうに響いていた。

25 名前:新章/集う者達篇:2007/10/23(火) 05:33:41
○シオン・ウヅキ→色々話をした上で、カレーを食べに戻る。
○春日野さくら&神田桃→ガンツを抱きしめ、ふかふかの感触にご満悦
○ガンツ→いきなり抱き抱えられて暴れる
○神月かりん→さくらの無作法(?)に怒る
○アーサー→一瞬でパンツ一丁になるが、春麗のツルの一声で着直す
○御剣平四郎&マイク・ハガー→フードファイト開始。しかしムスビと骨付き肉でどう勝敗を決める
               のかは不明
○ギルガメス&カイ→ラブラブ
○ワルキューレ→ブラックワルキューレの単独の可能性を否定。
○中村等→ジンと名刺交換
○ゴードン&キャプテンコマンドー→同じ系統のヒーロー同士で、握手&談笑。
○フーバー&ジェニファー→天才同士で挨拶。


【今回の新規登場】
○春日野さくら(ストリートファイターシリーズ)
元は世田谷区に住むごく普通の女子高生だったが、ある日偶然出会った「あのひと」(リュウ)の戦う
姿に憧れ、もう一度出会うために自らストリートファイトの世界に身を投じる。さくらもリュウに似た
技を用いる。それらの技は火引弾からレクチャーされたが、その性能は師匠のそれよりも段違いで上、
弾の教えの賜物というより彼女自身の卓抜した格闘センスによる所が大きいようだ。なお、リュウと
さくらの出会いについては詳しい説明はされてない。漫画『ストリートファイターZERO』ではリュウと
ベガの戦いに巻き込まれたさくらをリュウが助けるシーンが存在するものの、あくまで独自のもので
公式ではないが、同作品や『さくらがんばる!』、『RYU FINAL』では、触発されたカプコン側が続編に
設定の一部を取り入れる逆転現象が起きている為、出会いのシーンは「半公式」と位置づけられる。
運動神経は抜群だが、色々なスポーツを試すものの飽きっぽい性格のせいでどれも長続きしない。
ストリートファイトに対する興味が今までの最長記録。友人に、同じ玉川南高校に通う千歳ケイ、
神月かりんがいる(かりんからは一方的にライバル視されている)。また、『私立ジャスティス学園』
の若葉ひなた、鮎原夏とも友人関係にある。『私立ジャスティス学園』当時、彼女達と共に連続誘拐
事件の解決に協力したことにより、五界混沌事件ではジャスティス学園教師の島津英雄、水無月響子と
は既に面識があり、さらにワンダーモモとフェリシアのファンという設定がされていた。五界混沌事件
に巻き込まれた時はかりんとコンビを組み戦い、純粋な魂の持ち主としてジョーカーに何度も狙われた。


○神田桃/ワンダーモモ(ワンダーモモ)
ナムコシアターで大人気の舞台劇「ワンダーモモ」の主人公。格闘技が趣味のごく普通の女の子だが
その正体は、地球の平和を守るため惑星ロリコットからやってきた愛の戦士。平和を乱す怪人軍団
ワルデモンを倒すべく、キックを駆使して戦う。大胆な格好の割りに恥ずかしがり屋で、お邪魔キャラ
「カメラ小僧」に写真を取られるとしゃがんでしまう。・・・という設定の架空のキャラが
『ワンダーモモ』の筈で、それを激で演じていたのがナムコシアター一座の人気アイドル「神田桃」
だった。しかし謎の敵に襲われ、ベラボーマンに助けられた時に授けられた超変身物質により、本当に
ワンダーモモとして変身できるようになり、敵に操られた親友アマゾーナを助けるため、ベラボーと
共にコンビを組んで戦った。純粋な魂の持ち主としてジョーカーに何度も狙われた。


○ガンツ(クロノアヒーローズ)
クロノアビーチーバレー 最強チーム決定戦!からの登場だが、クロノアヒーローズから彼の存在が
大きくなっている。今ではクロノアに並ぶまでの人気に。さすらいの賞金稼ぎ。「金色(こんじき)の
死神」の異名を持ち、狙った相手は必ずしとめるクールな一匹狼。ガンツが賞金稼ぎになったのは
父バッツの仇を討つためといわれている。女が苦手で(NAMCO x CAPCOMでは女性キャラが多数いるため
か、この設定は無くなっている)船酔いしやすく(ヒーローズにその場面がある。)自分が持っている
銃に他人が触られることを嫌い、常に銃を持っていないと落ち着かない。口は悪いがクロノアも認める
ほどの美形で攻略本の紹介にも二枚目(だが船酔いすると三枚目に転落する)と書かれている。マンガ
版ではクロノアと同様ギャグ担当で泳げないという設定にもなっている。モデルは狼(犬と猫の両方
だったらしい)五界混沌事件ではクロノアとコンビを組み戦い、父の仇ジャンガを倒すことが出来た。


○神月かりん(ストリートファイター)
世田谷区に居を構える神月財閥の令嬢にして頭脳明晰、容姿端麗。その上「万事において常に勝利者
たるべし」という神月家の家訓に従い、あらゆる格闘技をマスター。その全てを合わせると16歳にして
100段と8級にもなるという強者。しかし「『世俗の暮らし』を観察する」との名目で通い始めた玉川
南高校で、クラスメイトである春日野さくらとのストリートファイト(正確には体育館で)において
人生初の敗北を喫し、以降一方的に彼女を宿命のライバルと見なしている(さくらは迷惑がっている
模様)。その後、打倒さくらのため(さくらにストリートファイトの手引きをした)火引弾に弟子入り
した。だがやはり弾よりかりんの方が性能が段違いで上。常に執事の柴崎(しばざき)を従えており、
他人には上から見たような物言いで接する。相応の家柄や実力を有しているため、それに見合った態度
と言えなくもないが、周囲からは当然ながら傲岸不遜な態度と見られている。神月家は、相手を見下す
冷たい視線「蔑みの目」を養うために“宇宙から地球を見下ろす”という修行を取り入れていたり、
シャドルー基地を壊滅させるほどの威力を持つレーザー衛星「まんじゅしゃげ」を所有していたり
(『ZERO3』)と、同じ富豪のマスターズ家と比べかなり破天荒な家風のようである。またスカートの下に
ブルマを愛用するさくらとスパッツを着用するかりんの対比関係が見受けられる。そして格闘術に
おいてもさくらは我流、かりんは各所の武術を修め自分流に構成し直した武術という「無から新たに
作られた武術」と「既存の武術」の関係の対比をしている。名前も春日野の「日」と神月の「月」と
いう星、「さくら」と「かりん」という植物で対比されている。五界混沌事件ではさくらと一緒に事件
に巻き込まれ、そのままさくらとコンビを組む。ちなみにかりんは狙われなかった。


○アーサー(魔界村シリーズ)
かつて無数の魔物が潜む魔界村に挑み、数多の戦いを切り抜け、魔界村からプリンセス・プリンプリン
を救出した王国最強の騎士。「白銀の騎士」とも呼ばれている。槍やナイフなど投射武器の扱いに
長け、さらに強力な魔法も使える。何故か本人の意思やちょっとした衝撃で鎧が外れる。鎧の下は
いつもパンツ一丁。最強の技に、【黄金の鎧・魔力解放】がある。


○たろすけ(妖怪道中記)
いつも村の人に悪さばかりしていた為、神様にお灸をすえられ眠っているうちに地獄の入り口まで
運ばれてしまい、生きながらにして閻魔様の裁きを受けるべく地獄巡りをすることになってしまった
少年。そして五界混沌事件では、唯一地獄を知る人間の少年として再び地獄に呼ばれ、景清とペアを
組んで事態解決を任される事になる。


○クロノア(クロノアヒーローズ)
ブリーガルで育った元気で好奇心いっぱいの少年。正義感が強くて仲間思いだが「ヒーロー」という
言葉に弱く、乗せられやすい面も。風を操る能力をもち、手にしたリングから風だまを撃つ事が出来る。
また、ウィンドソードやハンマー、ビームジャノメでも戦う。しかし、泳ぐことができないため、
水中では潜水スーツディープワンが必要となる。ハンバーグが好きだがトマトが苦手。口癖(?)は
「わっふぅ!」。五界混沌事件ではガンツとペアになる。


○サビーヌ(ワルキューレの伝説)
かつて子供の頃、魔物の生贄にされそうだった所をワルキューレとクリノに救われたコアクマン族。
本作では反逆者となってまで戦いに赴くクリノを手助けするべくペアを組む。一人称が「オレ」
(ちなみにサンドラの大冒険では「ぼく」だった)で中性的な外見のため判断が難しいとされるが、
両性具有である。クリノの言動で頬を赤らめる所があった。


○御剣平四郎(ソウルキャリバーU)
魔剣ソウルエッジを追い求める剛剣の使い手。同じ剣を追っているタキとは反目しあっているが、
五界混沌事件では休戦する事になる。かつて種子島と勝負し、敗れたという苦い経験ゆえか銃火器を
もった敵には目ざとい。性格は豪快そのもので、一時は食糧難の可能性に対し敵の恐竜を食べようと
し、ラプトルを脅えさせた。


○マイク・ハガー(ファイナルファイト)
メトロシティ市長。元プロレスラーで、通称『戦う市長』。ジェシカという娘がおり、攫われた娘を
救うために『マッドギア』と戦った。パイルドライバーなどの強力な投げ技と高い攻撃力が持ち味だが
大柄のため動きは遅い。『マッスルボマー』にも「マイク・“マッチョ”・ハガー」のリングネーム
で登場した。プロレスラーでしかも市長という設定が人気を博し、ゲーメストにおいてキャラクター
部門で大賞を獲得。ファイナルファイトシリーズ皆勤賞キャラである。


○カイ(ドルアーガの塔)
女神イシターに仕える巫女。ギルガメスの恋人でもあり、彼とは深い愛情で結ばれている。かつて
ドルアーガにより石にされていたのをギルガメスに助けられた。炎の魔法や回復の魔法をはじめ様々な
魔法を操り、ギルガメスを援護する。五界ヒーローズの中でもトップクラスのラブラブカップル。


○ギルガメス(ドルアーガの塔)
かつて悪魔ドルアーガを打ち倒し、女神イシターの巫女カイを助け出した「黄金の騎士」。その名は
魔界にまで知られている。現役を退いていたが、ドルアーガの復活を知り、カイと共に再び戦いに身を
投じる。クロンの魔剣を振るっての剣戟を得意とするほか、黒竜の牙やイラギスタンの油などの
マジックアイテムも使いこなす。五界ヒーローズの中でもトップクラスのラブラブカップル。


○中村等/ベラボーマン(超絶倫人ベラボーマン)
保険会社のサラリーマン中村等は、突如現れたアルファ星人から与えられた銀の力と超変身物質の力に
よってベラボーマンへと変身し、世界征服の手始めとして新田(にった)4丁目への侵略を開始した
悪の科学者爆田博士率いる悪の軍団と戦うヒーローである。マリコという妻と息子、娘がいる。
五界混沌事件では、超変身物質を桃に渡し、変身したワンダーモモとペアを組む。


○リュウ(ストリートファイターシリーズ)
剛拳(ゴウケン)の弟子で、暗殺拳を昇華させた格闘術を使う日本人。空手・柔道の技を駆使した独自
のスタイルで闘う。「真の格闘家」を目指して強い奴と戦うため修行の旅を続けている。かつて
「ムエタイの帝王」として世界に名を轟かせていたサガットを倒した若者として世界中にその名が
知られた。同門のケンとは親友であり最大のライバル。他にライバルとしてはサガット、草薙京がいる。
鉢巻に道着、赤い篭手を身に付けている。素足で黒髪。鉢巻の色は初代と『ZERO』シリーズでは白、
それ以外では赤。『ZERO2』や劇場版アニメでは、ケンの髪留めの赤いリボンをリュウが受け取り鉢巻に
する描写がある。「隆」の表記は初代『ストリートファイター』の時点で既に設定されていたが、
『ストリートファイターII』発表からしばらくの間は雑誌の記事などで常にリュウとカタカナで表記
されていたために多くのユーザーに“漢字で書くと「竜」か「龍」のどちらか”と誤解されていた時期
があった。開発段階の名前は「武神 隆」。フルネームは公式には設定されていない。五界混沌事件では
ケンと共に日本への船旅の最中に巻き込まれた。彼の体内には「殺意の波動」と呼ばれるエネルギー
が眠っており、この力を忌まわしいものとし、これを克服することを旅の目標としてあげていることも
あるが、時には力が抑えきれず殺意の波動に心身とも支配されてしまう。五界混沌事件でもゴウキに
よって一度暴走したが、ケンの命懸けの対峙によって正気を取り戻した。


○アーマーキング(鉄拳シリーズ)
キングの師匠。既に故人となっていたが、五界混沌事件ではブラックワルキューレの力で黄泉還り、
キングたちの敵として立ち塞がったが、呪縛が解けるとのちに味方となり、共に戦った。


○平景清(源平討魔伝)
1185年の壇ノ浦の戦いで戦死した景清は、【プレイヤー】という異次元の存在(オパーズ?)からの
布施により復活し、義経や弁慶と戦いながら三種の神器を集めて東上し、仇敵である源頼朝を討ち
取った。しかし頼朝が再び復活した事を知り、安駄婆の力により地獄から黄泉還り、再び源氏を滅ぼす
為にたろすけと共に戦いに赴き、戦いの終末では再びそれを討ち滅ぼすことに成功した。


○デミトリ・マキシモフ(ヴァンパイアシリーズ)
身長197cm、体重101kg。1483年生まれ。魔界の支配を企むヴァンパイアの貴族。ルーマニア出身。
全作品登場。公式に言及されてはいないが、ゲームタイトルからして彼が主人公と思われる。過去に
ベリオール=アーンスランドに破れ、魔界を追放された。プライドが高く、それに見合った強い魔力
を持っている。『セイヴァー』では魔界に復帰し、一大勢力を築いた。べリオールの死後はモリガンに
目をつけ、彼女に何度も戦いを挑もうとする。リュウ・ケンのように飛び道具、対空技、突進技を備え
たオーソドックスな性能を持ったキャラクター。『セイヴァー』で習得したガード不可能なEX必殺技
「ミッドナイトブリス」は、相手を女性に変身させてから血を吸う驚きの技。五界混沌事件では敵が
【気に入らん】という理由で仲間として戦った。


○ワルキューレ(ワルキューレの伝説)
「乙女の騎士」と呼ばれる神族の戦乙女。悪と戦う歴戦の勇者である。五界混沌事件ではクリノの身を
案じ、サンドラ族の不介入を言い渡し単独で戦いへ赴くも、それがクリノの想いに対する無礼と知り
反省すると共に、クリノ、サビーヌと共に戦う。心優しい性格でとてもおしとやかそうな美人なの
だが、同時に運命の剣を巧みに操る優れた戦士でもあり、クリノ、サビーヌとの合体必殺技
【女神光輪】では、脚力だけで大空に飛び上がり、敵のいる中心部に落下し大ダメージを与えたその上
で何事もなかったかのように剣を高らかに掲げるという驚異的な丈夫さ(?)を発揮。その生まれ
ゆえに世間慣れしていないところがあるのか、時たま天然ボケをするお茶目な一面もあり、邪念は
まったくのゼロ。さすが女神。ちなみに、某おしかけああっ女神と声が一緒(性格も似てるがこっちは
バリバリの戦闘タイプ


○クリノ・サンドラ(ワルキューレの冒険)
かつてワルキューレと共に戦ったサンドラ族の英雄。実は妻子あり。五界混沌事件では戦いに巻き
込まれぬようにワルキューレから戦いへの不介入を言い渡されていたが、英雄の肩書きを捨て
「反逆者」となり、戦士の誇りを以ってサビーヌと共に戦いへと赴く。サンドラの大冒険のエン
ディングの時と同じ黄金色に輝く鎧を身に纏っている。


○わや姫(超絶倫人ベラボーマン)
爆田博士によって作られた女忍者型戦闘用アンドロイド。忍者屋敷ステージの中ボスにして、サイ
ボーグ忍者軍団の紅一点。「アナタの負けよ」と空中から舞い降り、けたたましい笑い声と共に振り
下ろした刀から火柱を走らせる『忍法火走(にんぽうひばしり)』を繰り出す。「額の眉墨が彼女の
本当の眼」だの、「恥ずかしいので死んでも使わない禁断の秘密兵器」(おそらくアフロダイAのあの
兵装と同じものと思われる)だのと、トンデモ設定てんこ盛りな体の持ち主。 販促用チラシによれば
出身は博多との事。五界混沌事件でもベラボーの敵として登場し、タキの流派「夢想抜刀流」を取り
込まれていた。しかし命を救われたことで仲間となり、タキとでW夢想抜刀流ペアを組む。


○多喜/タキ(ソウルキャリバーU)
キャッチコピーは「封魔の朧影」。日本、封魔の里出身。武器は忍者刀「裂鬼丸&滅鬼丸」。ソウル
エッジを巡って御剣と殺しあっていたが、なりゆきで他の仲間と共に共闘することに、最初は一人で
戦っていたが、流派繋がりでわや姫とペアを組む。恐竜を食べる発言をした御剣をバカにする一方で
頭の中で「非常とあれば仕方がないか・・・?」と思っていたが、他の面々の登場によりホッと胸をなで
おろしている。


○キャプテン・コマンドー(キャプテンコマンドー)
銀河連邦宇宙軍の教本にもその名が書かれる「影の秘密警察機構」、宇宙の様々な悪の犯罪組織を
倒してきたコマンドーチームのリーダー。パワー、勇気、友情、リーダーとしてのカリスマに至るまで
ヒーローの鏡と呼べる漢。国籍不明だがかなりアメリカンヒーローっぽい。炎と電撃を放つガント
レットを装備し、キャプテンファイヤーやキャプテンコレダーを発する。中でも必殺技の
【エリアル・コンボ】は強烈。


○フーバー(キャプテンコマンドー)
コマンドーチームのブレーン役。赤ん坊ながら優れた頭脳を持ち、情報分析から兵器開発、戦闘までを
担当する。自ら設計した、パワーとスピードに優れたロボット(何故かコクピットがむき出し)に
乗って戦う。赤ん坊らしく、語尾は「〜でしゅ」。五界混沌事件ではジェネティーとのペアで戦う。


○ジェネティー(キャプテンコマンドー)
コマンドーチームに所属する異星人の戦士で、言葉は話せないがメンバーとの意思の疎通が出来る。
異星人らしい能力を発揮せず、戦闘は高速で繰り出されるナイフ格闘。全身包帯姿で謎が多い。五界
混沌事件ではフーバーとペアを組んだ。


○凱(ファイナルファイト)
武神流忍術の第39代正当継承者。かつて純粋な義侠心によりマッドギア壊滅に尽力した。五界混沌事件
では武神流繋がりで、コマンドーチームの翔とペアを組み。ほぼコマンドーチームの5人目となって
いた。正義感に溢れており、ござる言葉。


○翔(キャプテンコマンドー)
ニンジャコマンドーと呼ばれるコマンドーチームの一員で、武神流忍術の使い手。手裏剣からスモーク
・ボムなどの特殊忍具まで多種多様な武器と技を持つ。五界混沌事件では武神流繋がりで凱とペアを
組み戦った。忍の服に身を包んだそのおくには熱い魂を持つ漢。


○ジェニファー(魔界戦記ディスガイア)
ゴードンの助手。10歳で博士号を取得した天才科学者で、サーズデイの製作者。古のマーシャルアーツ
「カンフー」の使い手でもある。ラハールたちを「ちゃん」付けで呼ぶ。ラハールがどん引きするほど
のナイスバディ。ビキニのような服装をしている。後にゴードンと結婚し、娘ジェーンを設けた。

26 名前:新章/集う者達厨房篇:2007/10/23(火) 05:36:28
     一方  厨房内


    (トン、トン、トン、トン、トン)

             (ジャッ、ジャッ、ジャッ、ジャッ!!)


 トアール・レストランは厨房の中では、実にけたたましく、包丁で具材を切る音や、炒める音が
リズムを刻んでいた。

 その中でも火花を飛ばしている、料理人(?)が二名。

アーチャー「ほう、なかなかの包丁捌きだな」

 外套だけを外したいつもの服の上に、エプロンをかけて炒め物をしているアーチャーと


天道「これぐらい当然だ。俺は天の道を行き全てを司る男だからな」

 作務衣を着、鯛を綺麗に捌きながら、器用に天を指差す天道。


アーチャー「ほう、太陽の神が相手となれば、私も本気でかからねばな」

 対してアーチャーは小さく笑いつつ、しゃれた言い返し。


シロウ「あれ? なんか柔らかいな。“太陽を抱いて焼死するのだな”とか言うかと思ってたのに」

 そこに、フライパンの持ち手をポンポン叩き、オムレツをひっくり返しつつ、二人の脇を通過
しながら、衛宮士郎がポロッとそう呟く。


アーチャー「・・・お前は私を何だと思っているんだ?」
シロウ「かっこつけ毒吐き男」

アーチャー「・・・・・・・・・・・」
シロウ「・・・・・・・・・・」

 新たに発生する、無言による敵意の視線の火花。


ひより「・・・あいつら、何やってるんだ? まったく・・・」
じいや「いやはや、仲がよろしいですなあ」

 それを横目で見つつ、ひよりとじいやの二名は、ラーメン作りにちゃかちゃかと動き回っている。
 厨房がこうした混沌とした状況になってしまっているのは、勿論誰もがすぐにわかりえる理由がある。

 元々このトアール・ホテルは、シオン達のように、異界や異次元、未来や過去といった異なる場所から
やって来た【客人】を匿い、歓待する為の施設であり、多少のイレギュラー的事態には全てのホテル
スタッフは慣れている。

 だが今回は、そんなホテルスタッフ達にとってもかなり酷い状態である。
 森羅が予定していたよりもずっと多い人数の【異界からの客人】の多さに、そして、その多くの人物
達の食事量のあまりにも常識を超えたレベルには、それぞれ一度に何十人前も作れるホテルの駐在料理
人達ですらも悲鳴を上げざるを得なかった。

 そして、仕方なく緊急の案として、その【客人】達の中から料理の得意な人物達を、ゲスト料理人と
して招くという苦肉の策を取った訳だが・・・ 何ぶんそれでも、客は格世界の英雄達。中には大きな
トレイに新たに作った料理が運ばれた途端に平らげてしまうような人物もいるので(そのうちの一人に、
オムレツを作っていたゲスト料理人がよ〜く知っている食欲魔人騎士王がいることは言うまでもない)

 まあそんなわけで、ここ厨房は、料理人達が死力を尽くしての消耗戦を続ける英雄達の、ちょっと
した戦場と化しているのだが



ガイ「はいっと。ごめんなさいよ・・・っと」

 そういった、様々な助っ人の料理人達が奮闘している透き間を縫うように
して、一人の男が厨房の奥へ奥へと進んでいく。

 彼の名は、山・・・


ガイ「違う!! 俺はダイコウジ・ガイだ!!!!」

 ・・・で、ある。

 いきなりナレーションに文句をつけた男、ガイは、厨房のどこかにいるある男を探す為、決して
狭いが小さくは無い厨房内をスタスタと我が物顔で歩き回っていた。


 そして、ほどなくしてその人物を見つける。
 奥の方で中華鍋を激しく回しているテンカワ・アキトと、その隣で春巻をポンポン放り込んで揚げて
いるサイ・サイシーの姿。


ガイ「おぉ〜〜いっ!! アキト〜〜〜〜!!!!」

 様々な声音入り乱れる厨房内で、一際大きなガイの呼び声。


アキト「わっ!? ・・・・え? ガイ?」

 その声に、アキトは驚きつつ、腕の動きを止めないまま振り向いた。

27 名前:新章/集う者達厨房篇:2007/10/23(火) 05:37:38
○アーチャー→天道やシロウと対抗心を燃やしている
○天道総司→見事に鯛を捌く
○衛宮士郎→アーチャーに闘志を燃やしている
○日下部ひより&じいや→ラーメン作りに奔走中
○ダイコウジ・ガイ→ナレーションに訂正を入れつつ、アキトを探し、見つけると共に大声で呼ぶ
○テンカワ・アキト→中華鍋を回していた所、ガイに呼ばれる


【今回の新規登場】
○アーチャー/英霊エミヤ(fate/stay/nignt)
第五次聖杯戦争で遠坂凛と契約した弓兵の英霊。キザでクールな皮肉屋の現実主義だが根底はお人好し。弓兵のクラスでありながら、弓より2本の短刀【干将・莫耶】での白兵戦を好む、
特技はガラクタ弄りと家事全般(特に料理)。士郎を敵視するが、一方で的確な助言を送る事も。男性
キャラ中最高人気。投票では第1、第2回共にヒロインの桜をブッチきり3位。セイバー曰く「非情では
あるが非道ではない」、きのこ神曰く「格闘戦も武器戦闘も対魔術戦も家事手伝いもそつなくこなし、
技能"執事"があるなら、間違いなくA+」。過酷で数奇な人生を語るかのような背中が印象的な漢。
今聖杯戦唯一、未来の英霊。真名『エミヤ』。未来の世界にて死す運命にあった百数人を救う為世界と
契約、代償として英雄化した衛宮士郎その人。特別な才を持たぬ彼がただ只管に厳しい修練の末に正義
の味方を目指した成れの果て。しかしその先にあったのは「人類存亡に関わる有事に際し現界、その場
の人間の全員抹殺での事態収拾」という余りにも無情な現実だった。自ら消滅も叶わず、もはやその
役目を永劫果たし続けるしかないと知った彼は遂に、人生の全てを懸けた理想に絶望し、様々な人を
理想の為切り捨ててきた自身の愚かさを呪い、自身への憤りから、過去の自分を殺しその生き方を止め
る事だけを願うようになった。生前の記憶は自分が士郎だった事以外ほぼ摩耗し喪失している。召喚
触媒は凛のペンダント、凛が士郎の命を救う為用いた物で、自分を救ってくれた誰かの持ち物として
死ぬ迄大切に持ち続けていた。特定の宝具は持たないが、固有結界【Unlimited Blade Works(無限の
剣製)】を持つ。宝具の複製、更には武器に宿った意思・経験・記憶を再現し、その技量までもの複製
(但し複製武器はランクが1つ低下)。本来ならば宝具の担い手にしか出来ない筈の『真名開放』。複製
した宝具の更なる『強化』『形態変化』。離れた場所に複数の宝具を投影し射出する事すらも可能。
得意技は複製した宝具を矢として放ち、敵に叩きつけ壊すことで内部の魔力を爆発的に解放させる
『壊れた幻想(ブロークンファンタズム)』。この能力からギルガメッシュにとって彼は天敵。ちなみに
彼の肌の変色は固有結界に関する魔術の反動から。


○天道総司(仮面ライダーカブト)
本作の主人公。21歳。仮面ライダーカブト資格者。己の姓名を指し「天の道を往き、総てを司る男」と
自称、常に冷静沈着・傲岸不遜なふてぶてしい性格だが決してエゴイストではなく、妹には常に優しく
接し、仲間や弱者は傲岸な態度ながらも必ず助ける正義漢(という設定の筈だが、己の目的や大切な人
の為なら手段を選ばない行動を度々取る)祖母を心から尊敬し、よく「お婆ちゃんが言っていた」という
台詞と数々の教えを語る。頭脳明晰・運動神経抜群。プロ以上の腕前の料理を始めとして、万事に精通
するが、ひよりや神代家のじいや等、己より優れた腕を持つ相手には敬意を払い、自身努力を欠かさず
戦う為の鍛練も常時怠らぬ故に戦闘センスは桁外れで、初期より他者の追随を許さない戦闘力を発揮。
無職で世間的にはニート。加賀美の事は、馴れ合いを嫌いつつ認め、窮地の時には手を貸し、最終的に
は違う道を進んでも同じ方を向く事が出来る“友”として認め合った。時々、人指し指で空を指し示す
ポーズをとる。自宅では主に作務衣。かなりの妹想い。旧名日下部 総司。父総一と母さとみとの間に
生誕。3歳の頃、母がひよりを身篭っていた時に両親がネイティブによって殺害・擬態された後、祖母に
引き取られ“天道”姓に。後に祖母の家に樹花が誕生。義兄妹となり、現在は共同生活中。2人の妹を
大事に想っているが、反面彼女等の危険の際には半ば短絡思考に陥り、普段から想像も出来ない行動に
走る。7年前、両親に擬態したワームに遭遇。連れている少女が母から生まれる筈だった妹に擬態した
ワームと察するが、その直後渋谷隕石が飛来、これを機に復讐を果たそうとするが、ひより
の叫びを聞き、思い留まる。例え己の妹がワームだとしても、生まれる前に殺された妹を守る事を決意。
カブトベルトをワームの父から授けられ、後の7年をひよりを守る為の鍛練に費やし、カブトゼクターと
の邂逅を契機にワームと戦う。特殊な場合以外はZECTに所属せず逆に度々利用した為、衝突が散発。
実質的な連携を図れたのは田所チームの面々と蓮華程度で、ワーム壊滅後は根岸の計画を早々に見抜き、
再び加賀見達に何も言わず単身ZECTに反旗を翻す。根岸達との戦いの終結後は行方不明だったが、
1年後、豆腐を片手にパリを歩く姿が見られた。


○衛宮士郎(fate/stay/night)
Fateの主人公。10年前の冬木市大火災唯一の生存者。その際、魔術師である衛宮切嗣に助けられ、養子
として引き取られた(つまり元は【衛宮】姓ではない)養父に無理に頼み込み魔術指導を受け、今も
欠かさず続けているものの、本来魔術師家系ではない上、養父亡き後は完全な独学で、簡単な「強化」
魔術しか使う事ができなかったが、聖杯戦争を潜り抜けた後はその若さにして魔術の最終形態、固有
結界【Unlimited Blade Works】を所有。切継への憧れと、自分一人助かった自責の念から「この身は
誰かの為に在らねばならない」という強烈な強迫観念、切嗣と交わした親父の夢を形にするという
「誓い」という名の呪縛から、【正義の味方】という理想を本気で追いかける。人助けの報酬とは
人助けそのもので、それが誰かの為になるなら我が身の事は顧みなかった。きのこ神曰く「一生懸命
人間のふりをしているロボット」或いは「人間になろうとしているロボット」。大火災が元で人生が
狂った後天的異常者と言える。しかし聖杯戦争により、自ら歪に直面、葛藤し、答えを見出す。運命の
夜、ランサーによって一度殺され、遠坂の魔術によって蘇生した後、二度目のランサーの追撃の際、
運命的偶然で召喚されたセイバーと契約、マスターとして聖杯戦争に参加する事になり、幾多の死闘を
潜り抜け成長。穂群原学園3年。元弓道部員。腕は文字通り百発百中。現在は退部。人助けが生き甲斐
で頼まれ事に対し基本的に断らない為、都合よく利用される事も多い。アーチャーとの相性は最悪で
衝突は日常茶飯事。特技は料理(特に和食)と、物の修理。作る弁当はクラス中から狙われ、備品の
修理をよく引き受ける。料理店を開店可能な程の腕前だが、あくまで生活の一部としての特技で趣味で
はないと公言。「なんでさ」が口癖。普段用いる魔術は「強化」「投影」。強化より遙かに高度な投影
魔術の方が彼にとっては容易で、本来の投影魔術とは全く異質のものである故に、宝具でさえ投影可能
投影物体が半永久的に消滅しないなど魔術師の常識が通用しない。余りの出鱈目故に、指導した切嗣や
凛にも見極きれず、的確に指導できず、凛に至っては殺意すら抱いた。剣に関係する武器のみ投影可能
で、辛うじて防具も可能だが効果は瞬間的なものでランクも半減。近代機械は外見のみしか投影不可。
なお未熟故に魔力生成量が足りず、自力で固有結界展開は難しい。単純な構造物の修復等の形状変化は
可能。


○ダイコウジ・ガイ(機動戦艦ナデシコ)
ナデシコクルー、エステバリス(青)のパイロットの一人。本名は「山田二郎(ヤマダ ジロウ)」なの
だが、この名前は仮の名前らしく、本人曰く「ダイゴウジ・ガイ」は魂の名前、真実の名前である。
必殺技複数あり。ゲキ・ガンガー3を信奉する強度のアニオタであるが、パイロットとしての腕は確か
である。アキトとは親友同士になりかけていたが、脱走を図ったムネタケに撃たれ、その後実に呆気
無くその人生を終える事になってしまった。死後に至ってもゲキ・ガンガー3を通じてアキトを始めと
するナデシコクルーに与えた影響は大きく、実際死亡した後も回想等や幻だったり幽霊だったりと
ちょくちょく登場した。そんな死せる運命を持っていた彼だが、タイムスリップしたラウル達による
尽力で、【死の未来】を回避し、その後もアキトとダブル・ゲキガンパンチを繰り出したりと、他の
ナデシコクルーと戦場を共にし、今も元気である。ちなみに、密かに地球防衛企業ダイガードの第23話
に彼にそっくりな山田という人物が登場している。声も一緒で、ダイゴウジ・ガイのオマージュである
のは明白である。ちなみにスーパーロボット大戦シリーズでは優遇され、Wでは専用の映画版グラ
フィックも用意されていたりする


○テンカワ・アキト(機動戦艦ナデシコ)
火星生まれの火星育ち。ユリカの幼馴染。幼い頃に両親を失っている。コック兼エステバリス
(ショッキングピンク)パイロット。地球では体内にナノマシンを注入することに不信感をもつ者が
多く、IFS処理をしているのはパイロットとホシノ・ルリのようなオペレーターくらいだが、ナノマシン
のテラフォーミングによって人類の居住が可能となった火星ではナノマシンは身近な存在であり、IFS
処理をしているアキトのような一般人は珍しくもない。(火星では工業用トラクターすらIFS対応)優柔
不断な性格で人付き合いが下手な青年だが、ユリカを初め多くの女性から好意を持たれるなど、かなり
のモテモテ君。ナデシコ搭乗当初はコックである事にこだわりパイロットとして戦う事にあまり積極的
ではなかったが、次第に自分が戦う意味を見い出していく。実はアニメオタクでガイと同じく、ゲキ・
ガンガー3の大ファン。ゲキガンフレアと称するエステバリスの必殺技を持つ。終戦後のサセボ拘留時に
はラーメン屋台を経営し、後にユリカにプロポーズ。ユリカの父、コウイチロウとのラーメン勝負に
勝ち、結婚を認められる。ラウルの存在していた数年後の未来ではA級ジャンパーである事が災いし
新婚旅行の最中にユリカともども拉致され。飛行機事故の偽装工作により死亡したと思われ、誘拐後は
人体実験の対象にされた為、味覚をはじめ五感の殆どを失い、「復讐鬼」へと変貌していた。しかし
ラウル達がタイムスリップで飛ばされた先の現代で尽力し、当時の【火星の後継者】を壊滅させた事で
【絶望の未来】は回避され、今も元気にコック兼パイロットをやっている上で、ブラックサレナを
乗機の一つにしている。


○日下部ひより/シシーラワーム(仮面ライダーカブト)
18歳。本作のメインヒロイン。洋食店“Bistro la Salle”のバイト店員。第一人称「僕」のボクっ娘、
年上の天道や加賀美を呼び捨てて「お前」呼ばわりなど、言葉遣いが結構乱暴。渋谷隕石により両親を
失い、その経験からか他人と上手くコミュニケーションをとれない。“オレ様”態度の天道に対して
最初は警戒していたが、その心暖かさに触れる内、いつしか大切な人と感じる様になる。趣味は絵画で
常に愛用のスケッチブックに妖精の絵を描いている。料理の腕は超一流で、料理にうるさい天道や剣が
絶賛する程。また愛用の自転車をとても大切にしている。無機物や無機質なものと会話できる接触感応
や、ライダーベルトを触れるだけで修復する等数々の『力』を持っている。7年前の渋谷隕石事故の際、
天道に助けられたが、当時の記憶が曖昧であるが故に、彼が両親を殺したと思い込み疑っていた事も
あったが、天道の嘘偽りのない心に触れて彼を信じた。ウカワームとの接触を切っ掛けに己の正体を、
天道によって自らの出生の秘密を知った。擬態天道の声をテレパシーで聞き取り、導かれるがままに
彼と対面。ハイパーゼクターの暴走で擬態天道と共に時空間の狭間へと吹き飛ばされ、そこで生活する
内にワームとしての自分を受け入れ、一時はその世界でひっそりと暮らそうと天道らを拒絶していたが
天道の「お前が生きるべき世界を守る」という説得に心を開き、再び現実世界に戻った。そして全てが
終わった1年後、天道や弓子の助けもあってla Salleのコックに正式採用。店を手伝い、自分を
「お姉ちゃん」と呼び慕う樹花と共に仲の良い“姉妹”の姿を見せた。オリジナルメニューの
“HIYORIMIランチ”は客にも大変好評の人気メニューとなっている。


○じいや(仮面ライダーカブト)
姓名不詳。65歳。神代家に住み込みで仕える執事。本当は剣の正体を知っていながらも彼を一人の人間
として接し、運転手、コック、スケジュール管理まで彼の身の回りの世話を一人で完璧にこなしていた。
料理の腕前は超一流で、かつて唯一出版した料理の本は、天道が教本とし文字通り肌身離さず持ち歩く
ほど。故に天道の料理の味付けはじいやの技術を引き継いでおり、そこから天道に師匠と尊敬されて
いる。ちなみに双子の弟がおり、彼もまた一流の料理人で“光の料理人”として料理を教えている。
破綻寸前である神代家の財政や、世間知らずな剣の行動のフォローに四苦八苦しつつも、その事実を
剣には悟らせず、必死で「名門貴族神代家」を演出し続けていたが、過労で倒れた事で全ての事実を
知られてしまう。その後は神代家再建の為に奮闘した。後に剣の正体を天道に知られた際には、天道に
「坊ちゃまの望みを叶えて欲しい」と伝え、どこまでも剣に対する深い愛情が伺える。最期は屋敷に
戻った剣の最期を隣で看取り、最後まで剣の善き理解者であった。

28 名前:新章/集う者達厨房篇:2007/10/23(火) 05:38:53
ガイ「探したぞー・・・ って」

 そこで、ガイは一瞬止まってしまった。

 最初に見つけた時は、色々な遮蔽物の向こうから良く知る顔と上半身がちょっとだけ見えただけで、
それで充分アキトと分かったから声をかけたわけだが

 近づいてきちんと見てみると、これがまた・・・


ガイ「・・・・・・気合、入りまくりだな」

 真っ白なコック帽に、コック服。
 確か一緒にレストランに入った時までは至って普通の服だった筈だが、いつ厨房用の戦闘服に
換装したのか。


サイ・サイシー「ああ、オイラもそう思ったよ。一人だけ本格的な格好するんだもんなー。
        普段着のこっちの方が恥ずかしいったら」

 そう思っていると、確かにいつもと全く同じ服で野菜を炒めているサイ・サイシーが、こっちに
背中を向けながらそう洩らす。


アキト「いやー。だってさあ。俺元々コック志望だっただろ? なのにナデシコに乗ってからという
    もの、戦闘ばっかしで・・・ それで今回はすっっごく久しぶりにコックらしい仕事だろ?
    いやー、俺、今嬉しくて仕方無いんだよー」

 本当に嬉しそうに、にへら〜と幸せそうな笑顔全開のアキト。


ガイ「お前、本当に料理好きだな」
アキト「ガイこそ一つぐらい料理覚えろよ」

 親友ならではの、遠慮の無いツーカーな会話。

ガイ「失礼な。俺だって自炊ぐらいしてる!」
アキト「へえ? 何作ってるんだ?」

 ガイの意外な答えに、アキトが身を乗り出すと

ガイ「おう! カップ麺と卵かけご飯なら任しとけ!!」

 ビッ! と、音がしそうな勢いで親指を立て、不敵なスマイル。


アキト「・・・・・・それ、料理って言わない」

 対するアキトは、がっくりと肩を落としている。


ガイ「なんだとぅ!? 侮るなよ!!
   湯待ち時間の具合や醤油と卵の順番とか、色々工夫する所は多いんだぞ!!?」

アキト「・・・・・・・・・・・・・・ ああ、はいはい」

 本気で怒っていないのは見ててわかるのだが、卵かけご飯やカップ麺でここまで熱くなるのは
どうなんだろう。


アキト「・・・そういや、ガイの方こそどうしたんだよ? “ホテルに来てるヒーロー全員のサインを
    貰うんだーっ!!”って、張り切ってなかったか?」

 アキトはとりあえず、話を切り替えることにした。

ガイ「・・・ん? ああ。おかげで“その場のナデシコ関係者で一番ヒマそうな奴”と思われたらしくて
   なぁ。艦長に「アキト呼んで来て」って頼まれちまった」


アキト「・・・ユリカが? なんで?」

ガイ「“一人じゃ淋しいしつまんなーい。せっかくなんだからアキトも一緒に回ろうよー。あ、これ
    艦長命令だからねー”」

 ガイは、棒読みであまりにも似てないユリカのモノマネをする。


アキト「・・・・・・・・・・・・頼む。気持ち悪いからヤメテ」
ガイ「ん? 似てなかったか?」


アキト「(あのダミ声を本気で合格点と思ってるなら耳鼻科直行だよ・・・)」

 そう思いつつも、口に出さないのがアキトなりの友情である。


アキト「まったくあいつは・・・ 艦長命令なんて言うならもっと艦長らしくなってくれよ、ホント」

 溜息を吐き、ブツブツ愚痴り始めるアキト。


ガイ「ハハハ。何言ってんだ。そんな艦長にあんな盛大に告ったクセに」

アキト「・・・・・・なんとなく、お前の声で言われると腹が立つなぁ」
サイ・サイシー「あ、オイラもなんとなく同感」

ガイ「・・・・・・・・・?」

 何の事か分からないガイは、首を傾げるだけだった。


アキト「でもそうなると参ったな・・・
    今の勢いだと、せめてこの二十人前チャーハンだけは作っておかないと・・・」

 顎に手をやって、悩み始めたところで


サイ・サイシー「それなら、オイラが引き受けといてやるよ」

 横でチンジャオの仕上げに入っていたサイ・サイシーが、突如の立候補。


アキト「え? いいのか?」

サイ・サイシー「大〜い丈夫だって。一度にフライパン2つ3つなんて鍛錬以前の朝飯前。
        軽い軽い・・・ よっと」

 そう言って、チンジャオが終わらない内に早速サイ・サイシーは、アキトが両手で全力を使って
回転させていた、巨大な中華鍋の中に山の様に在るチャーハンを軽々と左手だけで見事に回し始めた。


アキト「うわぁ・・・」
ガイ「すげえ・・・ さすがシャッフル同盟。イカしてるぜ!!」

 素直にたまげるアキトと、感動するガイ。


アキト「って、感心してる場合じゃなかった・・・ とりあえず、ありがとうサイ・サイシー。
    この借りは必ず返すから、それじゃ!」

ガイ「よーし、俺も残りのヒーローにサイン貰いに行くぜーっ!!」

 周りのコックたちに迷惑にならない程度に急ぎ、厨房を後にする二人。


サイ・サイシー「・・・・・アキトの奴、あの格好のまま出てったな」

 ま、いいか。と思いつつ、サイ・サイシーは調理スピードを上げるのであった。 

29 名前:新章/集う者達厨房篇:2007/10/23(火) 05:39:35
○テンカワ・アキト→ガイの伝言により、コック姿のままユリカの所へ
○ダイコウジ・ガイ→アキトにユリカの伝言を伝え、再びヒーローにサイン
を貰いに
○サイ・サイシー→アキトのチャーハンを自ら快く兼任する


【今回の新規登場】
○サイ・サイシー(機動武闘伝Gガンダム)
ガンダムファイト第13回大会に参加した。GFの中では最年少の16歳の少年。ドラゴンガンダムの
搭乗者。少林寺の再興を目的にガンダムファイトに参加する。性格はおっちょこちょいで明るく、
ドモンのことを「アニキ」と呼んで慕う。また、拳法の腕前も抜群である他、中華料理の腕前もかなり
のもの。ただしオバケなどが大の苦手。祖父は第4回大会で優勝したサイ・フェイロン。父親は
サイ・ロンパイで、サイ・サイシーが物心つく前に病気に倒れ、少林寺再興を果たさぬまま他界。
サポートクルーはネオチャイナ総帥の命で送り込まれた僧侶の恵雲と瑞山。二人とも、拳法の達人で
ある。手違いでサイ・サイシー本人と離れて降下してしまったドラゴンガンダムを盗賊から奪還する事
になった他、かつて祖父とのファイトで敗れて死亡したネオエジプトのファイター、ダハール・ムハ
マンドとも戦ったことがある。DG細胞に感染した際は旧シャッフル同盟によって救われ、クラブ・エース
の紋章を継承。決勝リーグ中は対戦相手であったネオデンマークのハンス・ボルガーの妹、セシルに恋を
する。ハンスは破ったが、その後セシルとの恋路がどうなったかは不明。ギアナ高地での修行後、決勝
では少林寺最終奥義「真・流星胡蝶剣」でドモンと死闘を繰り広げ、左腕から繰り出された爆熱ゴッド
フィンガーの前に敗れたが、そのファイトを観戦し、内容に感動したネオチャイナ総帥から、少林寺の
再興を確約される。その後はネオジャパンコロニー内部の死闘に他のシャッフル同盟の4人と共に参加
し、勝利に導いた。

30 名前:新章/魔法騎士 アース解放編  :2008/02/01(金) 18:00:57
Dショッカー邪将謁見室

ゼイハブ「…それで、俺達にどうしろっていうんだい?Dショッカーさんよ?」

かつて星獣戦隊ギンガマンと死闘を繰り広げた宇宙海賊バルバンの船長 ゼイハブは無頼を装い、目の前の男に問うた。
男…ガルマ・ザビは愉快そうに口を歪めたまま宇宙海賊のかしらを見据える。

ガルマ「体が半分しか再生されてない状態だが、ずいぶんと威勢がいいな。さすがゼイハブ船長。海(宇宙)の男だ」

ガルマの言うとおり、ゼイハブは試験管の中に納まり、その上半身は健在だが、下半身は灰と化していた。

今、現在 部屋には3人の人物がいる。
巨大な試験管に身を預けているゼイハブ。
そのゼイハブを正面から見上げるガルマ。
そして、そのガルマを厳しい眼で睨んでいる、宇宙海賊バルバンの操舵士にしてゼイハブの右腕であるシェリンダ。

ガルマはゼイハブを見て笑いながら言った。

ガルマ「私も予想外だったのだ。使徒再生に抗う生命力を持つ種族がいるとは。
キャプテン・ゼイハブ。今は少し不便だろうがあなたの体もオルフェノクの細胞に直に慣れるだろう。
なにより貴方の不死性とオルフェノクの細胞が合わされば、おそらくは銀河最強と言われるスーパーサイヤ人に匹敵する力を手に入れられるはずだ。
私はあの男…村上は好かんが種族としては優れていると認識しているからな」

シェリンダ「ふざけるな!貴様、この落とし前をどうつける気だ!」

今まで大人しく二人の問答を眺めていたシェリンダは我慢の限界とばかりにサーベルを抜き、ガルマの首に突きつけた。

シェリンダは吼える。

シェリンダ「ガルマ・ザビ!!貴様は私達が手を貸せば、戦艦『ダイタニクス』を復活させると、確かに言ったはずだ。だが、ダイタニクスは復活するどころか、貴様らは勝手に私達の体を改造し、あまつさえ船長を殺そうとしている。私はもう限界だ!ここで貴様の首を落としてくれる!!」

ゼイハブ「待て。シェリンダ」

驚いたことにゼイハブは場を諌めた。
シェリンダは思わず船長を見つめる。
彼は下半身が灰化して尚、圧倒的なまでの迫力を放っていた。
そしてキャプテン・ゼイハブはガルマに問いかける。

ゼイハブ「ジオンの元王子さんよぅ。おれぁこの体で、もう何100年と生きて来たから分かるんだが、確かに俺ぁ今、体の中で力が昂ぶってるのを感じる。だがその力が、手に入るのはしばらく先の話だ。このまま待つのは俺の性にあわねぇ。そこでだ。兵隊を少し貸してくれねぇか?どうしてもぶっ潰しておきたい虫けらどもがいる」

ゼイハブの言葉にガルマはスゥッと目を細めた。
(予定通りだ。この男とコネを作れば、あの魔獣戦艦を私の指揮下に置くことも可能になる。アレだけの戦力を手に入れればDショッカー内での私の地位も格段に上がるはずだ)

瞬間的にそう思考したガルマは「喜んで兵を貸そう」とのたまった。

ガルマ「ところで、ゼイハブ艦長。貴公が復讐する相手と言うのは…?」

ゼイハブ「あんたも人が悪いぜ。俺たちが奴らにやられたことぐらい、調べはついているんだろ?」

ガルマ「これは失礼。不粋な質問だったな。すぐに兵を手配する。ちょうど実験中の個体もいたから試験的に運用して見よう」

ゼイハブ「助かるぜ。シェリンダ、指揮はお前が取れ。あの憎たらしい森を焼き払って、ギンガグリーンとの因縁を晴らして来い」
シェリンダ「お任せを。船長」

ガルマ「スーパー戦隊への復讐か…実に興味深い祭りだ」

闇の陣営が平和な森に今、災厄をばら撒こうとしていた。

31 名前:新章/魔法騎士 アース解放編  :2008/02/01(金) 18:03:09
●ガルマ→ゼイハブと手を組み、魔獣ダイタニクスを手に入れようと画策。
●ゼイハブ→自分の体が再生するまでの間、シェリンダにギンガマンを掃討するように命じる。

【今回の新規登場】

●キャプテン・ゼイハブ(星獣戦隊ギンガマン)

宇宙海賊バルバンの首領にして、宇宙の歴史に名を残す大悪党。
数々の星を滅ぼした過去を持つが星獣戦隊ギンガマンに破れ、その体は消滅した。
 現在はガルマの手を借り、体をオルフェノク化させた状態で生きながらえている

●シェリンダ(星獣戦隊ギンガマン)

ゼイハブの右腕。
バルバンの操る宇宙船艦ダイタニクスを操る操舵士である。
妖艶な女性だが、冷徹で残酷。
その剣技は宇宙でも一流と評される。

●ガルマ・ザビ(機動戦士ガンダム)

ジオン公国の総帥、デギンの末子。
本来は優しい性格であったがその性格をシャアに漬け込まれ、戦死する。
 蘇った彼はDショッカーに参入。シャアやロンド・ベルへの復讐とジオン公国への再興ために凶行を画策する。一説によるとDショッカーによる洗脳を受けたのではないかとも噂されている


32 名前:新章/魔法騎士 アース解放編  :2008/05/16(金) 22:58:44

人の入ることの叶わぬ森の奥深く。
そこで不思議な光景が繰り広げられていた。

光「ハア!!」

 赤い髪の少女がくすぶっている薪に手をかざす。
 するとどうしたことだろう。
まるで手品のように薪からブスブス…とくすぶる様な音と共に煙が立ち昇る。
そして……薪は一瞬、ほんの一瞬、赤く炎のきらめきを見せたがすぐに消えてしまった。

光「あう…」

 がくり、とうなだれる少女…かつてセフィーロを救った炎の魔法騎士 光は肩を落としたままチョンチョンと指でその薪をつつく。

リョーマ「どうだい?光 アースの力、大体自由に使えるようになったか?」
光「あ、リョーマ」

 変わった衣装を着た青年が両手の篭に果物を抱えながらやってくる。
 光はピョン、と立ち上がり彼を迎えた。
 青年の名はリョーマ、炎のアースを操る星獣戦隊ギンガマンのリーダーだ。
 
「手伝うよ」と彼から荷物を受け取りながら光は少しだけ焦げている薪を見た。

光「うん、使えることは使えるけどまだ威力は弱いんだ」

 そういって彼女はチョン、と指で薪を突付く。

『…』

 薪には何の反応もない。
 その様子を見てリョーマはかつて自分の兄、ヒュウガから受けた忠告を光に教えた。

リョーマ「光、力を使おうとするんではなくて大地に呼びかけて力を分けてもらうんだ」
光「大地に呼びかける…?」
リョーマ「ああ、呼びかければ答えてくれるはずだ。魔法も、アースも」

 セフィーロで魔法を使うとき必要なことは『強く願う』こと=意思の力を持っていることが条件だ。意志の強さがその魔法の強弱を決める。

 炎の魔法騎士は荷物を床におき、目を閉じた。そして、自分がなぜここにとどまり修行するのかを改めて考える。

光(私はこの世界が好きだ。でも、今 この世界はDショッカーや地球教…さまざまな危機にさらされている。みんなを守るために、アース…星よ 力を貸して欲しい!!)

光は自分の胸の奥で何かが燃え盛るのを感じた。
先ほどまで、がむしゃらに修行しようとしたときとも違う。
剣を構えたときのように、心を無心におくのともまた違う。

例えるなら心をたいまつのようにくすぶらせること。
熱く…熱く感じ取ること。

(言葉が浮かんでくる…セフィーロの時と同じだ)

「炎の…矢!!」
『ゴウッ!!』

 光の指から出た炎は、薪を一瞬で炭化させ、薪の下に敷いてあった石まで焦がしてしまった。
 あまりの威力に光自身も驚いたらしい。

光「うわぁ!?」
リョーマ「…これはすごいな」

 リョーマが感心していると、大地を踏みしめながらこちらにやってくる人影があった。
 ギンガの森の長老、オーギである。

オーギ「どうやら後は力を制御するだけの様じゃな」

 そういって、オーギは光を見た。

オーギ「さきほど、他の二人の魔法騎士も見てきたがもうかなりアースを扱えるように
なっている。ただ自由自在に扱えるというわけではないがな」

 オーギの話によると魔法騎士は全員がギンガマンになれるほどの素質を持っているが力にムラがあり制御するのが難しい。とのことだった。

海「ただいまー」
ゴウキ「長老、今戻りました」

 長老が話し終えると、水のアースを持つ戦士 ゴウキと海が戻ってきた。
 なぜか二人とも服がビショビショだ。

光「海ちゃん、その服どうしたの?」
海「ああ、これ?」

(回想)


ゴウキ「この川の清流に人差し指を入れて渦を起こすのが水の戦士としての力を試す方法なんだ。よく見ていてくれ」

 ゴウキは岸から身を乗り出し、人差し指を流れる清流に浸した。
 するとゴウキの指の周りで清流が回転を始め、見る見るうちに渦を作る。

海「おお〜」

 パチパチと手を叩き、拍手を送る海にゴウキは照れた笑みを浮かべた。
 海(ゴウキさんって私の苦手なマッチョ系だけどすごい良い人よね)

 海が脈絡なくそんな事を考えていると、ゴウキは海に向き直り言った。

ゴウキ「それでは海。やってみてくれ」
海「え?でっ、でも…」
ゴウキ「君が呪文を使うときと同じようにすればいい。アースもセフィーロで使う呪文も基本は同じはずだ」

 その言葉に海は目を閉じた。
 そしてまた彼女も考える。自分が何のために再び魔法騎士になったかを…。

海(私は東京タワーで…『ガノン』とかいう怪物に襲われた時、光を救い出すことが出来なかった。私はあのときみたいに、光を助けられない弱い自分のままでいたくない。お願い、星よ…力を貸して…!!)

 彼女の純粋な友を守りたいという想い…その願いを星はちゃんと聞き届けていた。

海(感じる…セフィーロにいたときと同じ、言葉が湧き上がってくる)
海「青い―――竜巻!!」

『ドォオン!!』


(回想終了)

海「…まあ それで、私のアースが爆発して二人ともビショ濡れになっちゃったわけ」
ゴウキ「2,3日の修行であれほど使えるなら海はきっと強くなるな…最もまだまだ鍛えなければいけないが」

 火で服を乾かしながらゴウキは笑う。

オーギ「…」

オーギ(ふむ、確かに彼女達のアースは力強い、が時に非情になり敵の命を奪うことが出来るだろうか?)

 オーギはかつて光から魔法騎士が戦った相手を聞いたことがある。
 彼女達が戦った相手は魔物…と呼ばれる人々の不安やマイナスの思念が生み出した、肉体を持ったエネルギー体だ。

オーギ(Dショッカーの怪人などはもはや人に戻れぬとはいえ、元は普通の人間だったものが多い。魔物とは違う者たちをあの子達は倒せるだろうか?)

 オーギが思案しているそのときだった。

 ボック「大変だボック〜!!」

 ギンガの森に住む精霊、ボックが慌てて飛んでくる。

オーギ「どうしたんだ?」
モーク「皆、Dショッカーの怪人がギンガの森に攻めてきた!!」

 ボックの声と同時にリョーマのギンガブレスに知恵の木である、モークが警告を発した。

光「なんだって!?」

モーク「それだけじゃない。ここから一番近い街もDショッカーの襲撃を受けている。そっちにはサヤとヒカル、ヒュウガが応援に向かっているはずだ!」

ボック「森のはずれでは、風とハヤテが一緒に戦っているボック!」
リョーマ「人数の少ない森のほうに行こう!急ぐぞ!!」

戦士たちは仲間の元へと疾駆した。


33 名前:新章/魔法騎士 アース解放編  :2008/05/16(金) 23:00:52
○光、海→ギンガの森でアースを操る修行を行うが、力の制御が
難しくまだ完璧に操れない
○ゴウキ、リョーマ→光と海に戦士の才能を見出す。
○オーギ→魔法騎士が元人間であった者たちを倒せるか気にかかる
●Dショッカー→戦闘員達がギンガの森に攻めてくる。



○光、海→ギンガの森でアースを操る修行を行うが、力の制御が
難しくまだ完璧に操れない
○ゴウキ、リョーマ→光と海に戦士の才能を見出す。
○オーギ→魔法騎士が元人間であった者たちを倒せるか気にかかる
●Dショッカー→戦闘員達がギンガの森に攻めてくる。

【今回の新規登場】

○獅堂光(魔法騎士レイアース)
異世界セフィーロを救った炎の魔法騎士。
どこまでもまっすぐな性格と熱い心を持つ少女。


○リョーマ=ギンガレッド(星獣戦隊ギンガマン)
宇宙海賊バルバンから地球を救った第22代目スーパー戦隊のレッド。
常に笑顔を絶やさず、他人を心から賞賛することのできる優しい青年


○龍咲海(魔法騎士レイアース)
光と同じく異世界セフィーロを救った水の魔法騎士。
思った事をすぐに口に出すため、誤解されやすいが本当は仲間思いの優しい少女である。


○ゴウキ=ギンガブルー(星獣戦隊ギンガマン)
筋骨たくましい体を持つが、その実涙もろく動物や花を愛する優しい青年。
料理が得意でギンガマンのメンバーの御料理番。



○オーギ(星獣戦隊ギンガマン)
ギンガの森の長老。
かつて森を守るために自身と森を石化し封印したが
復活したという過去を持つ。


○ボック(星獣戦隊ギンガマン)
小さな木の実の妖精。空を飛ぶことができる。
語尾に必ず『ボック』をつける癖がある、あわてん坊。

○知恵の木 モーク(星獣戦隊ギンガマン)
自分でしゃべり、思考することの出来る樹。
全ての木の根を通じて情報を得ることが出来る。




34 名前:新章/魔法騎士 アース解放編  :2008/05/22(木) 00:26:40

ギンガグリーン「ギンガ転生!」

風をつかさどるアースの戦士、ハヤテは転生した姿…ギンガグリーンとなって突如襲い掛かってきたDショッカーの兵を切り伏せた。
そして、背後自分と背を合わせ戦っている少女に声をかける。

ギンガグリーン「風、大丈夫か!?」
風「平気ですわ!」


彼女はそういいながら弓矢を操り、戦闘兵の喉を射抜く。
その細腕からは信じられないほどの速度で放たれる矢は決して狙いを違えることは無い。
だが標的に当てた時に得られる手ごたえは、弓道のそれと違い、とても耐え難いものだ。
長老 オーギの困惑どおり、魔法騎士の中でも最も冷静になれるはずの風は、今 『人の命を摘み取る』という行為にとてつもない罪悪感を噛み締めていた。

罪悪感は心身を疲労させる枷になる。
風の息は荒くなり、目に見えて疲れが酷くなっていく。
そして、約20本目の矢を弓に番えたとき。風の目の前に一本の『線』が横切った。

ギンガグリーン「危ない! 風!!」

声と共に、ギンガグリーンに押し倒され、風は地面に伏せた。
風が確認できた『線』は細身の剣だった。フェンシングに使われるような、俗にレイピアと称されるタイプの剣。
それが、自分の目の前に向けられている。

シェリンダ「久しぶりだな。ギンガグリーン」

 風の矢をかいくぐり、切りつけようとしたのは一人の妖艶な美女。
バルバンの操舵士…シェリンダである。
 彼女の喉元にはギンガグリーンの愛用する広い刃の剣、星獣剣が突きつけられている。シェリンダが後一歩踏み出していたら、間違いなく喉を切り裂かれていただろう。一方のシェリンダの剣はギンガグリーンの脇をそれ、風の鼻先へと突きつけられている。

ギンガグリーン「シェリンダ!蘇っていたのか!」
シェリンダ「ふん、貴様の首をとるまでは死ねんわ!…勝負!!」

磁石の同極同士をぶつけたかのように、二人は一度、距離をとった。
そのまま、二度三度と剣をあわせ、互いの剣が鍔ぜりあう。
勢いのある猛攻に押されるギンガグリーン。

戦闘員「ディーッ!」
シェリンダ「貴様らは手を出すな!森を焼き払い、ここの住人を皆殺しにしろ!!」

その声を受けてあちこちに向かう戦闘員達。

だが、その時!

リョーマ「炎のたてがみ!!」
ゴウキ「流水の鼓動!!」

火柱と激流が戦闘員達を吹き飛ばした!

戦闘員「ディーッ!?」

現れたのは光とリョーマ、そして、海とゴウキ。

ゴウキ「ハヤテ、風!大丈夫か?」
海「風!」

駆け寄る炎と水の四人。

ハヤテ「リョーマ、ヒカルやサヤ、ヒュウガはどうしたんだ?」
リョーマ「街に出ている。別の怪人が現れ、そっちに向かっているんだ」

おそらくはそれも、連中の策なのだろう。
数が少ないこちらの戦力を分断し、数に余裕のあるあちらは倍の人数をこっちに送り込んでくる。

シンプルだが、中々に厄介な作戦だった。

シェリンダ「そいつらが魔法騎士か、貴様らには今日ここで死んでもらうぞ!」
ギンガグリーン「やらせるものか!」

緑と銀色の旋風が渦を巻く。
未だに決着はついていない。


35 名前:新章/魔法騎士 アース解放編  :2008/05/22(木) 00:28:03
○風とギンガグリーンが戦っているところにリョーマたち4人が参戦。(転生しているのはグリーンのみ)
●シェリンダ、ギンガグリーンと再び決着をつけるため戦闘に。


【今回の新規登場】

○ハヤテ=ギンガグリーン(星獣戦隊ギンガマン)
常に冷静なギンガマンのサブリーダー。
笛の名手でもある。変身前はその笛で吹き矢を放つ。

○鳳凰寺 風(魔法騎士レイアース)
光たちと共に異世界セフィーロを救った風の魔法騎士。
丁寧な言葉遣いで誰にでも敬語、さん付けで人を呼ぶ。


36 名前:新章/魔法騎士 アース解放編  :2008/05/27(火) 22:53:51
場面は少し過去まで遡る。

ゼイハブとガルマが邂逅を果たしているそのころ、一人の人物がとある研究所を訪れていた。
月すら出ていないその晩、刻は草木も眠る丑三つ時である。
その人間は喪服を着て、頭に貴族が被るような帽子を被りそこから黒いベールで顔を覆い隠している。

その喪服から彼女が女性であることがわかった。

??「悪趣味ですわね…」

彼女が目の前の研究所を見てそうつぶやくのも無理はない。
その研究所はドクロにアンテナが生えた構造物、マッドサイエンティストを髣髴とさせるものである。
もっとも、彼女の所属する組織も似たようなものなのだが。

??「………」

女はそのゲートを堂々と通過した。
入り口に設置されている、ビーム兵器も彼女を射抜こうとはしない。
まるで住み馴れた我が家のように彼女は進む。
いくつもの枝分かれした道でも彼女は立ち止まることすらしない
ただひたすら、悠々と道を行く。

やがて謎の女は、今まで動かし続けていた足を分厚い合金製のシャッターの前で止めた。

彼女がノックするより先にそのシャッターが開く。

「………」

部屋に入った彼女はそこを見回した。
先ほど部屋といったが、その空間は部屋というには御幣がある………そこはドームのように広大だった。見渡すと壁、床、天井に至るまで棺のようなカプセルが安置され、そのカプセルの中には特殊な液体に身を包まれた戦士たちが来るべき時に備え眠りについている。

興味深そうに兵士たちを見ていた女は何者かがこちらに向かってくる足音を聞いた。
カツンカツンと兵士たちの棺を踏みしめながら………彼はやって来る。

一言で言って特徴的な人物であった。

白衣をまとい背丈は低いが研究者にしては珍しくシャンとした背筋。

頭頂部は禿げ上がっているが、側頭部はまるでこうもりが羽を広げたように広がっている頭。

頭の優秀な人間にしばしば見受けられる、優越感の混じった意地の悪そうな眼。

その鼻は、猛禽のくちばしを見事に体現している鋭くとがったワシ鼻。

??「はじめまして。お会いできて光栄ですわ。Dr.ワイリー」
ワイリー「ふん、アポイントをとってやってくるなど最近の悪の組織はずいぶんと礼儀正しくなったのぉ」
??「優秀な人材に無礼は働けません」

その言葉にくくっと含み笑いをしてDr.ワイリーは言った。

ワイリー「通信にあった先ほどの件、本当じゃな?」
??「Dr.の研究に関するレポートとここに保存されている機械兵士たちの譲渡、他にも地下帝国軍の技術顧問を務めていただければ…」

ワイリー「いいじゃろう、ただし、ワシほどの天才を組織の犬にできると思ったら大間違いじゃぞ」
??「心得ております。Dr.はかの宿敵を追うためにこちらの技術を使いたい。私たちは兵力と組織力を増やすためにDr.の力を使いたい…契約成立ですわね。よろしく、Dr.」

謎の女は手を差し伸べる…だが、Dr.ワイリーはそれを握ろうとしなかった。

??「あら、なにか契約にご不満な点でも?」
ワイリー「顔を見せぬ者と握手ができるか。手を差し出す前にそのベールを取れ」
??「あら失礼」

女は優雅な手つきで帽子を取る。
そこから、長い金髪と共に、女の姿が現れた。
その立ち振る舞いと容姿から、彼女が育ちのいいお嬢さんであることがわかる
そして、今度こそ二人は互いの手を取り、その名を名乗った。

ワイリー「いまさらじゃが、ワシの名はDr.ワイリー。世が生み出した数多の世界でただ一人! 真の天才じゃ」
イセリナ「私の名はイセリナ、……イセリナ・エッシェンバッハ。Dショッカー地下帝国軍はガルマ・ザビ様にお仕えする側近の一人です。お見知りおきを」

二人が挨拶を済ませると基地が振動を始めた。
カプセルがひび割れ、中からかつてDr.ワイリーの宿敵…ロックマンに倒された戦士たちが蘇る。
あわせて9人。
その9人が、ワイリーとイセリアの足元にかしずいた。


??「お早うございます!!ワイリー様!ご命令を!」

ワイリー「…こいつらは手土産じゃ、オリジナルのデータをバージョンアップし、過去より数段強くなっておる。今おこなっている作戦に適したものを選ばせてもらったぞい」
イセリア「ご協力感謝しますわ…それでは皆さん、私は基地に戻ります。あなたたちはこれからとある森に向かってもらえますか?」

??「ハッ!!」

今、鋼の牙が大切な森に食い込もうとしている。
ヒーローたちはそれを阻止できるのか!?


37 名前:新章/魔法騎士 アース解放編  :2008/05/27(火) 22:55:17
●イセリナ→一年戦争で死亡したはずだが、ガルマの片腕となり人材を勧誘する。
●Dr.ワイリー→懲りずにまたしても世界征服を計画。今回はDショッカーの地価帝国軍と手を組む。
●Dr.ワイリーの作った9人の素性を明かさぬ兵士たち→ギンガの森に侵攻を開始!!

【今回の新規登場】
●イセリナ・エッシェンバッハ(起動戦士ガンダム)
ガルマ・ザビの婚約者。一年戦争時、ガルマの復讐のため戦場に臨んだが戦死。
 詳しいことは語られていないが、ガルマの側近として復活し優秀な人材を勧誘している

●ドクターワイリー(ロックマンシリーズ)
天才である悪の科学者。
過去、彼一人で15回近く世界征服を実行するも宿敵であるDr.ライトとロックマンによりその野望をことごとく阻止される。




38 名前:新章/悪より出でて善へ至る者編 part1:2008/06/18(水) 21:28:25

   ポイントゼロ 無幻城:ワーム居住区・乃木の居住室。

 ワームを統べるワーム、乃木 怜治という人間に擬態したカッシスワームは、
ワームの為に用意された無幻城の1区画にある一室にてくつろいでいた。

地獄大使「失礼するぞ」
 と、突然そこに妙な兜を付けた男、地獄大使が入って来た。

乃木「ふ〜む、地獄大使! どうした? きみがこ〜んな所に来るとは」
 乃木はキザったらしく尋ねる。

地獄大使「突然だが、お前に捕らえて欲しい人物がいる。居場所の方はわかり
次第こちらから知らせよう。もちろん戦力として戦闘員を貸し出すぞ」

乃木「んん?」
 地獄大使の言葉を聞いた乃木は、眉をひそめて大仰に肩を竦め、

乃木「なぜ、我々ワームがそ〜んな事をしなければならない?」
 と言い捨てて地獄大使を睨む。

地獄大使「標的は、お前達の宿敵とも言えるマスクドライダーの一人、天道 総司
とうりふたつのネイティブだ」

 その言葉を聞いた乃木は興味ありげな顔になり、
乃木「ほう……?」

地獄大使「奴を捕らえて叩きのめせば、少しは憂さも晴れるのではないか? 我々
は別に生死は問わない。体を残して提供してくれれば死んでいようとかまわん」

 その言葉を聞いた乃木はにやりと笑い、
乃木「ん〜 ……よろしい! その任務、請け負おう!」

 地獄大使が乃木の返答を聞き、満足げに出て言った後。乃木の部屋には彼の他
に一つの人影があった。

乃木「話は聞いていたな?」
???「はい」

 その男―――天道の友人であり仮面ライダーガタックである加賀美 新に擬態
したブラキペルマワーム・ビリディスが答える。

乃木「では、その居場所がわかったら、このネイティブを生きたまま捕らえて
来たまえ!」
擬態加賀美「了解しました」

 そして擬態加賀美は、任務のために無幻城をあとにした。


   同時刻。
   TPC総合本部基地“グランドーム”、とあるロビー。

???「・・・・・・」
 一人の青年が、ロビーを歩いていた。

 青年の名は藤宮 博也。海の光より生まれたウルトラマンアグルとして、
ウルトラマンガイアと共に根源的破滅招来体から地球を守った戦士である。

 歩いていた藤宮が十字路に差し掛かったその時、別の人影が現れた。
藤宮「!?」

 冷静沈着な藤宮ですら、その青年に驚かされた。
 というのも、青年の顔は自分―――つまり藤宮 博也に似ていたのだ。

???「! ・・・・・・お前が、藤宮 博也か?」
 現れた方も驚いて尋ねた。

藤宮「何者だ、なぜ俺の名を知ってる」
 藤宮は不信感を露わに問う。

???「俺の名は手塚 海之。今日、ライダー同盟の佐久間 ケンと共にここに
来た。そろそろ会議も終わるころだからな、彼を迎えに行くところだ。

    だが驚いたな、世界には自分に似た人間が3人いるというが・・・・・・」

 手塚が答える。

藤宮「ライダー同盟・・・・・・? なぜここに?」
手塚「簡単だ、MDPOの武装なら、ある程度Dショッカーに対抗することができる
だろう?」

 手塚の答えを聞いた藤宮、
藤宮「なるほど。技術提供を申し出たのか」
手塚「そういうことだ」

 そして、手塚は電話番号らしき数字の羅列が一行だけ書かれた、一枚の名刺の
ようなものを差し出した。

藤宮「なんだ、これは」
 藤宮の怪訝そうな顔に、

手塚「ライダー同盟の連絡先だ」
 と答える手塚。

藤宮「いいのか、ライダー同盟と言ったらDショッカーにとっては目の上のコブ。
   こんな簡単に連絡できては居場所も知られて襲撃されるぞ」

 手塚は笑って、
手塚「問題ない、これは世界中の20以上のダミーを経由して繋がるようになっている。
   それに逆探知されていないかを調べる装置もある」

藤宮「そうか。 ・・・・・・だがなぜ俺に?」
 藤宮はその名刺を無造作に上着のポケットへつっこみながらそう訊いた。

手塚「そのうち必要になるはずだ」
 手塚は意味深にそう答えると、

手塚「そろそろ行かなければ。これで失礼する」
 と言って、足早に立ち去った。

藤宮「・・・・・・」
 藤宮は、しばし手塚を見送った後、ふたたび歩いて行った。



39 名前:新章/悪より出でて善へ至る者編 part1:2008/06/18(水) 21:30:50

●乃木 怜治→地獄大使の訪問を受け、彼が持ち込んだ任務をやることに決め、
擬態加賀美に擬態天道の捕獲を命令。
●地獄大使→乃木に擬態天道の捕獲任務を持ち込む。
●擬態加賀美 新→乃木の指令を受け行動開始。
○藤宮 博也→グランドームにて手塚と相まみえ、ライダー同盟の連絡先番号を
渡される。
○手塚 海之→MDPOにライダー同盟への技術提供を申し入れにきた佐久間の護衛
任務でグランドームへ来訪、藤宮と相まみえ、意味深な言葉と共にライダー
同盟の連絡先番号を渡す。



【今回の新規登場】
●乃木 怜治=カッシスワーム・ディミディウス/グラディウス/クリベウス(仮面ライダーカブト)
全てのワームを統べる、ワームの中では最強クラスのカブトガニ型ワーム。
天道総司=仮面ライダーカブトに倒されるたびに姿を変化させていたが、能力
的には進化していたのか退化していたのか微妙なところ。
なお、ディミディウスよりも前の形態もある可能性がある。
劇中での第一形態であるディミディウス時はハイパークロックアップをも超える
超高速移動能力・フリーズを、第二形態であるグラディウス時には他者の力を
エネルギーに還元・吸収する能力を使い、第三形態であるクリベウス時は2体に
分裂してそれぞれが独自に行動していた。
ディミディウス時は、ハイパーカブトのハイパーシューティング→マキシマム
ハイパーサイクロンのコンボ、グラディウス時は、ハイパーカブト・ガタック・
キックホッパーの同時ライダーキック→マキシマムハイパーサイクロンのコンボ、
クリベウス時には、一方がガタックのライダーキック、もう一方が地獄兄弟の
ライダーパンチ&キックの同時攻撃で、それぞれ撃破されている。

●擬態加賀美 新=ブラキペルマワーム・ビリディス(仮面ライダーカブト)
ワームの卵を守っていた3体のワームのうちの1体、緑色の体色をしたクモ型
ワーム。はじめは工場の作業服の男に擬態していたが、後に加賀美に擬態。彼を
擬態したためせっかちな性格になったらしく、ガタックゼクターの適合実験に
より重傷を負い病院にいた加賀美を殺そうとし、カブトと交戦するなどした。
最期はガタックになった加賀美のガタックバルカンにより倒される。



40 名前:新章/悪より出でて善へ至る者編 part1:2008/06/18(水) 22:25:13

   数日後。
   グランドームもよりの港町にある砂浜


 そこに、一人の男が座りこんで、夕焼けで赤い海をぼんやりと見つめていた。


 彼の姿は―――仮面ライダーカブトとして世界を救った男、天道 総司に似ていた。
いや、似ているなどという生易しいものではない。まるで双子の様にうりふたつで
あった。


 だが、この男は本当の天道 総司ではない。ネイティブによりワーム化させられ、
天道に擬態させられた、天道とは全く関係の無い赤の他人なのだ。
 彼は―――ただただ、赤い海を見つめていた。


 擬態天道の座っている砂浜前の道路を、トレーニングのための道具を買う為に
外出していた藤宮が通りかかった。

藤宮「………? あれは………」

 たそがれている擬態天道の背中に気づいて立ち止まり、しばらく擬態天道の後ろ姿
を眺めていた藤宮は、なにを思ったか擬態天道に歩みより、その隣りに立つと、

藤宮「何故、海を見てる」
 と尋ねた。

擬態天道「………別に」
 擬態天道は心ここにあらずといった口調で、ただ、それだけを答える。


 それを聞いた藤宮は、黙って彼の隣に座り、擬態天道と共に海を見つめた。


 何分経っただろうか。擬態天道が口を開く。


擬態天道「生きる目的が、無いんだ。ただ一つの目的だった、僕の大切な人を守る事
も、ある人間に任せてしまってる。………僕はどうすればいいのかな?」


 擬態天道の問いに、藤宮は彼には目を向けず、
藤宮「お前の“大切な人”というのは一人だけで十分守りきれるのか?」

 擬態天道はわずかに逡巡した後、

擬態天道「いや………でも、僕は………ワームなんだ。こんな醜い僕に彼女を
守る資格なんて………」

 それと同時に、擬態天道の姿が変化、大きな角の生えたワーム蛹体、“ネイティブ”
の姿になったかと思うと、一瞬でもとの天道の姿に戻る。

 だが藤宮は、それを見て、わずかに目を閉じただけ。


 その脳裏に浮かぶのは―――かつて、自分の腕の中で息を引き取った同僚と、
今、自分の心の支えとなっている女性の姿だった。


藤宮「―――ワームにも」
 藤宮は目をゆっくりと開け、口を開いた。

 擬態天道がその藤宮を見る。
藤宮「ワームにも人を守ろうとする奴がいると聞いたことがある」

 さらに、擬態天道が口を開こうとするのをさえぎり、

藤宮「それに“資格”と言ったか? そんなものはどうでもいい。大切なのは、お前
がどうしたいか。ただ、それだけだ」

 そして、彼は擬態天道を真正面から見た。
藤宮「―――お前は、どうしたい」

 その言葉に俯いた擬態天道は、顔をあげて立ちあがると、


擬態天道「僕は―――僕は!! ひよりをっ、守りたい!!!」


 と叫んだ。

 藤宮はそれを聞いて、立ち上がると薄く笑い、そして真顔になると、

藤宮「なら早く行け。そばにいなければ守れるものも守れないし、手遅れに
なって後悔したって、なにも戻っては来ない」
 と発破をかけた。


 擬態天道は、迷いなく、そして力強く―――頷いた。



41 名前:新章/悪より出でて善へ至る者編 part1:2008/06/18(水) 22:27:22

○擬態天道 総司→黄泉還り、浜辺に座り海を見つめているところを藤宮に発見
され、藤宮と会話。その中で見失っていた自分の生の目的を見出す。
○藤宮 博也→擬態天道を見かけ、彼と会話。彼がどうしたいのか問い、自身の
生の目的を見出した擬態天道に発破をかける。

【今回の新規登場】
○擬態天道 総司=仮面ライダーダークカブト(仮面ライダーカブト)
仮面ライダーダークカブトの資格者で、天道に擬態したネイティブ。
渋谷の「AREA X」最深部で拘束されていたが、ハイパーゼクターの実験体に
された際、彼の声に導かれAREA ]の地下に訪れたひよりと邂逅、直後の
ハイパーゼクター暴走により、ひよりと共に時空の狭間へ飛ばされる。
AREA Xに幽閉されていた時は理性を失っていたが、時空の狭間でひよりと
触れ合う内に理性を取り戻し、善悪の区別さえない無邪気な本性を現す。
その後、現実世界に現れ、ワームであることを受け入れたひよりが天道を拒絶して
いることを理由に天道本人を抹殺しようとするが、ひよりが天道の説得により現実
世界へ戻ったことで絶望し、現実世界を憎みながら彷徨う。
自分をワームだと思っていたが、自分が本当は幼少の頃にネイティブに拉致され、
彼らの度重なる人体実験によりネイティブ化した人間であると知り絶望。しかし
天道に救出され、「人類を傷つけなければ、世界はお前の敵じゃない」と説得を
受けるも根岸らを倒すべく戻り、結果グリラスワームとなった三島の前に敗れ、
人類総ネイティブ化装置に渋谷隕石とともに組み込まれる。その後、装置の破壊で
自由となり、「この世界を頼んだよ」と天道に言い残し、根岸を道連れにして爆死、
戦いに終止符を打つ。



42 名前:新章/悪より出でて善へ至る者編 part1:2008/06/19(木) 22:49:05

擬態天道「ありがとう、僕に大切なことを思い出させてくれて」
 擬態天道はそう礼を言う。

擬態天道「でも、どうして君は僕を・・・・・?」
藤宮「お前の後ろ姿だ」

 藤宮が簡潔に言った。

擬態天道「?」
藤宮「お前の後ろ姿は、かつて俺が、俺を慕ってくれていた同僚を亡くし、
行動理念が悪によって捻じ曲げられたものだと知ってふぬけていた時の俺と
そっくりだった」

 藤宮は、遥か空の彼方を見ながらそう言って自嘲したような口調で―――
藤宮「だから放っておけなかった」

擬態天道「・・・・・ありがとう」
 擬態天道は、もう一度礼を言う。

藤宮「大したことじゃない」
 藤宮は平然と答えた。

 苦笑しながら、擬態天道がその場を去ろうとした、その時だった。
加賀美?「こんな所にいたのか、ダークカブト」

擬態天道「!?」

 そこに、不快なニヤニヤ笑いを浮かべた加賀美 新のような誰かが現れた。
擬態天道「君は・・・・・・」
 擬態天道が口を開いた瞬間だった。

戦闘員「ヒーッ!!」

 ガスマスクをつけたDショッカーの戦斗員とワーム蛹体がそれぞれ20体ずつ現れ、
擬態天道を半円状に囲む。

 それと同時に、加賀美は緑色のクモ型ワーム、ブラキペルマワーム・ビリディスに
変貌する。

擬態天道「な・・・・・・!?」
藤宮「・・・・・Dショッカーか」
ブラキペルマワームB@加賀美の顔『ダークカブト、Dショッカーのもとに来てもらおう!』

 ブラキペルマワームの言葉を聞いた擬態天道はわずかに俯き、そしてすぐに顔を
あげてブラキペルマワームを睨むと、


擬態天道「やっと生きる目的を見つけたんだ・・・・・! それなのに、こんな
ところでお前達に捕まるわけにはいかない!!」


 と叫び、手を空に掲げる。

 途端、空から黒いカブトムシ状の機械が飛来、近づきつつあったワームや戦闘員
にアタックして怯ませると、擬態天道の手の中におさまった。

擬態天道「・・・・・・・変身!」

 擬態天道は宣言し、腰に装着されていたベルトに機械――ダークカブトゼクターを
装着する。


『Hensin』


 機械音声が響くと同時に、擬態天道の体を装甲が包んでいく。
藤宮「!!」

 そして、変身を完了した仮面ライダーダークカブト・マスクドフォームは、即座に
ゼクトクナイガンを取り出し、ガンモードに切り替えると、次々連射してワームと
戦斗員を近づけないようにしながら、

ダークカブト「君は僕の恩人だ、今のうちに逃げて」
 と藤宮に逃げるよう促す。が、藤宮は平然とダークカブトの横まで歩いて行き、

藤宮「それはできない相談だな」
 と答える。

 驚いて藤宮を見るダークカブト。藤宮は目の前の、“人と地球に仇なす敵”を
睨みながら、


藤宮「生憎、俺も人のために戦っている・・・・・ウルトラマンだ」


 と告げ、右腕を敵たちに見せつけるように出すと、そこに装着された変身アイテム、
アグレイターが半回転し、ウイングを展開。

 そしてクリスタル部からまばゆい蒼の閃光が放たれた。


ビシュシュシュシュ――――ッ!!!


 数瞬の後、光が消えると、そこには――――


蒼き海の光の巨人、ウルトラマンアグルV2の勇姿があった。



43 名前:新章/悪より出でて善へ至る者編 part1:2008/06/19(木) 22:50:47

○擬態天道 総司→藤宮に礼を言い、去ろうとするが、ブラキペルマワーム率いる
Dショッカー部隊に立ちふさがられ、「こんなところで捕まるわけにはいかない!」
とダークカブトに変身。藤宮に逃げるように言う。
○藤宮 博也→擬態天道の礼に答える。その後、Dから自身を逃がそうとした擬態天道
の横に立ち、アグルに変身。
●ブラキペルマワームB→戦斗員、ワーム蛹体を率い擬態天道を捕らえようと現れる。



44 名前:新章/悪より出でて善へ至る者編 part1:2008/06/19(木) 22:59:03

ブラキペルマワームB@加賀美の顔『馬鹿な、ウルトラマンがなんで!?』
 ブラキペルマワームは驚きの声を上げた。

ダークカブト「な・・・・・!?」

 ダークカブトも驚愕していた。だが、アグルがその腕に光の剣、アグルセイバーを
発生し、自らの方を見つめているのを見てすぐ我に返り、

ダークカブト「・・・・・半分は任せるよ!」

 と声を上げざま、ゼクトクナイガンをアックスモードに切り替え、そばのワームに
切りかかる。

アグル「ゼアッッ!」
 同時にアグルも駆け、そばの戦斗員を一瞬で真っ二つにしてしまう。

 次々襲ってくる敵を、次々と切りはらい、蹴り飛ばし、殴りつけて敵の数を減らして
いく2人。

 そして、ついにダークカブトが次の手を打った。

ダークカブト「数が少し多いなぁ。・・・・・まとめて片付けるよ」

 彼はアグルにそう伝えつつ、腰のダークカブトゼクターの角、“ゼクターホーン”
を上に引いて起こす。

 それと同時に、その体を覆う厚い装甲がすべて浮いた。

ダークカブト「キャストオフ」
 ダークカブトは、そう告げながらゼクターホーンを右に引いた。


『Cast Off』


 その途端、機械音声とともに浮き上がっていた装甲が一瞬にして弾け飛び、
周囲のワーム、戦斗員に直撃。そして、装甲が外れた後のダークカブトの頭部に
カブトムシの角を模した“カブトホーン”が立ち上がると、


『Change Bettle』


仮面ライダーダークカブト・ライダーフォームがそこに現れた。


ダークカブト「クロックアップ」
 続けてダークカブトはベルト脇のスイッチ、“スラップスイッチ”を押す。

『Clock Up』

アグル「!?」

 その瞬間、襲い来るワームたちを切り捨てていくアグルからは、ダークカブトが
消えたように見えた。

 実際にはその間にダークカブトは超高速で移動し、ワーム蛹体と戦斗員の6割を、
ゼクトクナイガンの“アバランチブレイク”によって切り裂いていたのだが。

『Clock Over』

 アグルにとってはほんの一瞬。だがその間にダークカブトは立ち位置を変えていて、
更に次の瞬間には戦斗員は倒れて泡に還り、ワームは緑色の炎をあげて爆砕した。

 ダークカブトはゼクトクナイガンを構え、ゆっくり一歩前に出る。
ブラキペルマワームB「ギシャシャシャシャッ」

 同時に、ブラキペルマワームがクロックアップ。追う様にダークカブトも
クロックアップし、常人には感知できない超高速で次々切り結ぶ。

 ダークカブトの一閃をかわしたブラキペルマワームは素早く両腕を振り回してくるが、
ダークカブトはそれらの攻撃を踊っているかのような動きでかわし切り、顔面に拳を
一発叩き込む。

ブラキペルマワームB「ギシュシャシャシャッ!!!」

 ダークカブトは、相手の腕の一閃をバックステップでかわし、ゼクトクナイガンで
切りつける。それによりわずかに怯んだところで腹に一撃蹴り込み、体をくの字に
曲げた敵に照準を合わせ、すかさずゼクトクナイガンをガンモードで至近距離から
連射、ブラキペルマワームはその衝撃で後退。

 そしてクロックオーバー。

戦斗員「ヒィ〜ッ!!」
 アグル側でも、断末魔の悲鳴とともにアグルの斬撃を食らった戦斗員が倒れこむ。

 アグルの方もすでに敵を切りつくし、残るDショッカーの兵力はブラキペルマワームと
そのそばにいたワーム蛹体と戦斗員、計4体のみ。


ダークカブト「いくよ」


 ダークカブトはブラキペルマワームにそう宣言し、歩いて接近しつつ、ダーク
カブトゼクター上部のスイッチに手をやる。

『One』

 同時に、アグルは指を伸ばした状態で両腕を胸の前に水平に構え、両側に開くと、
右腕を上に突き上げ、左腕は再び胸の前で水平にする。途端、蒼い光の粒子が収束
していく。

 ダークカブトの方は歩き続けながら二つ目のスイッチを押す。

『Two』

 一方のアグルは大きな円を描く様に腕を動かして、両掌の間に蒼い光のエネルギー球
を収束、体を左にひねり、右腕を上で水平に、左腕を下で鉛直になるように構える。

『Three』

 ダークカブトは最後のスイッチを押す。そしてゼクターホーンを左に戻し、再び
右に倒した。

ダークカブト「ライダーキック」


『Rider Kick』


 次の瞬間、ダークカブトは飛びあがり、ブラキペルマワームに蹴りかかる。

 それと全く同時に、ウルトラマンアグルも、その必殺の光球“フォトンスクリュー”
をブラキペルマワームに放った。

 右前方と左前方から同時に飛んでくるダークカブトとフォトンスクリューに動きを
止めるブラキペルマワーム。だが、それも一瞬。次の瞬間、ワーム蛹体と戦斗員一体
ずつを盾にした。

戦斗員「ヒィ〜ッ!!!」

 ワーム蛹体はフォトンスクリュー、戦斗員はダークカブトの“ダークライダーキック”
の直撃を食らい、ワームは緑色の爆炎とともに爆散、戦斗員は悲鳴をあげて倒れこみ、
泡となって消える。


ブラキペルマワームB「ギシュシャシャシャ」


 その一瞬の隙にブラキペルマワームは素早くクロックアップし、その場を離脱していった。



45 名前:新章/悪より出でて善へ至る者編 part1:2008/06/19(木) 23:03:48

○仮面ライダーダークカブト→藤宮がアグルに変身したことに驚くも、すぐ我に返り
アグルに半分を任せ戦闘開始、キャストオフ後、クロックアップで雑魚敵を6割倒し、
ブラキペルマワームと戦闘、最後にダークライダーキックを放つ。
○ウルトラマンアグルV2→変身後、アグルセイバーを発生し戦闘開始、ダークカブト
のクロックアップに驚くも敵をせん滅、最後にフォトンスクリューを放つ。
●ブラキペルマワーム・B→藤宮がアグルに変身したことに驚愕。その後ダークカブト
と戦闘、最後にダークライダーキックとフォトンスクリューを同時に放たれるが、戦斗
員とワーム蛹体を盾にし、一瞬の隙を突いて逃走。



46 名前:新章/悪より出でて善へ至る者編 part1:2008/06/19(木) 23:13:03

戦斗員「ヒ――ッ!」

 残った戦斗員とワームがダークカブトにおどりかかろうとするが、ダークカブト
はゼクトクナイガンの銃身部分を引き抜いてクナイモードにすると、一瞬で2体を
切り捨てる。

 切り裂かれた2体は爆発炎上、泡沫還元し、ここにDショッカー・ダークカブト
捕獲部隊は全滅した。

ダークカブト「・・・・・逃げられた」
 ダークカブトは変身をとき、呟く。

 同時にアグルが蒼い光になったかと思うと、藤宮に戻る。
藤宮「逃げるのも当然だろう、ライダーとウルトラマンを同時に相手できるような
怪人なんてそうそういない」

 そう言った藤宮はポケットに手を突っ込み、先日手塚にもらった、ライダー同盟
への連絡番号が書かれた名刺を差し出す。

擬態天道「? それは?」

藤宮「お前がライダーだということは、お前の関係者もライダーだろう。
   ならここに連絡してみろ。この連絡先にはお前と同じ “仮面ライダー”の
ほとんどが所属している。その中にはZECTのマスクドライダーシステムの所持
者もいた、お前の関係者もいる可能性は高い」

擬態天道はマジマジとその名刺を見つめると、
擬態天道「本当に・・・・・・ありがとう」
 と言ってそれを受け取った。

藤宮「さっきも言ったが礼なんていらない」
 彼はそう言うと、

藤宮「俺の名前は藤宮博也。お前の名前はなんだ?」

擬態天道「僕の・・・・・名前・・・・・・・?」


 瞬間、擬態天道の脳裏に、本物の天道の不敵な顔とひよりの笑顔が浮かぶ。


擬態天道「僕の名前は―――」



 擬態天道は、万感の思いを込めて、考え付いたその名を紡ぐ。



擬態天道「僕の名前は―――日下部 総司。日下部、総司だ!



藤宮「・・・・・・日下部 総司、か。いい名だな」


 そして藤宮は右手を差し出す。
 擬態天道、いや、日下部 総司はその手をしっかり握り、握手を交わす。

総司「今度こそ、お別れだね」
藤宮「ああ。縁があったら、また会うこともあるだろう」

 そして、2人が手を離すと、藤宮はきびすを返して去っていく。
 総司もそれを見送り、歩き始めた。


 かつて人生を奪われた哀しき戦士と、かつて大いなる悪意に弄ばれた海の戦士、
二人の戦士が、今、再び己の道を歩き始めた・・・・・・!



   数時間後。
   ポイントゼロ 無幻城:ワーム居住区・乃木の居住室。

擬態加賀美「申し訳ありません、ダークカブト捕獲に失敗しました」
乃木「んん?」

 乃木が擬態加賀美を睨む。

擬態加賀美「そばにウルトラマンがいたせいです! あいつさえいなければ!」
 擬態加賀美が焦りながら言う。

乃木「・・・・・・まぁ、別に問題はないんだよ。ちょうどいい、名誉挽回
のチャンスを与えよう。これから君にはとある計画のため、Dショッカーの
他の連中とともにある村に行ってもらうよ? 詳しいことはじきに来る迎えの
男に付いて行けば分かる」

擬態加賀美「わかりました。今度こそ、必ず遂行します!」
 擬態加賀美は一礼して去って行った。


今、Dショッカーの新たな陰謀が、動き出そうとしていた。



47 名前:新章/悪より出でて善へ至る者編 part1:2008/06/19(木) 23:14:47

○擬態天道 総司=日下部 総司→残っていた戦斗員とワームを倒し、変身を解除。
そのあと、藤宮にライダー同盟への連絡番号の書いた名刺をもらい、礼をいう。
そして、藤宮の名乗りに答え、日下部 総司と名乗り、握手。去っていく藤宮を
見送り、自らも歩きだす。
○藤宮 博也→変身を解き、擬態天道にライダー同盟への連絡番号の書いた名刺を
渡し、擬態天道に名乗る。そして擬態天道の名乗りを聞き、いい名前だと言って
握手。そのまま別れる。
●擬態加賀美 新→無幻城に帰還、乃木の新たな指令を受ける。
●乃木 怜治→任務に失敗し帰還した擬態加賀美を睨んだ後、新たな任務を与える。



48 名前:新章/魔法騎士 アース解放編  :2008/06/27(金) 13:08:42
再び時は戻る。
ここはギンガの森から最も近い町。
かつてバルバンと戦う際、ギンガマンたちが拠点にした場所である。

そこに今、Dショッカーの魔の手が忍び寄っていた。

戦闘員「ディーッ」

ギンガイエロー「こいつら、数に任せて次から次へと!!」
ギンガピンク「ッ! キバアロー! キリがないわ!!」

ギンガイエロー・ヒカルとギンガピンク・サヤは怪人たちを必死になぎ払う。
そして、もう一人。黒騎士・ヒュウガも戦闘員を倒しながら町を奔走していた…が。

黒騎士「…やはりか!!ヒカル!サヤ!急いでギンガの森に引きかえすんだ!」
ヒカル「な!何言ってるんだ!ヒュウガ!そんなことしたら街の人たちが…」

だが、黒騎士はヒカルの台詞を遮り言った。

黒騎士「この街の襲撃はオトリだ! ここにいるのは戦闘員だけ! そいつらもすでに撤退を開始している!!」
ギンガピンク「そんな! モークは気づかなかったの!?」
黒騎士「とにかく急げ! このままじゃ皆が危ない!」

???「待てぇい!」

突如現れ声をあげた男は、浮き足立ち、撤退しようとしていたDショッカーの兵をためらいもなく鉄球で砕いた。その戦闘員は身体が文字通り粉々になり、残ったのはネジと体の破片だけ。

…恐るべき威力であった。

戦闘員「ギィィッ!!」

ヒュウガ「何者だ!?」

ナイトマン「Dr.ワイリー様に作られし騎士、ナイトマン!」
プラントマン「植物戦士、プラントマン!!」
エレキマン「雷の戦士、エレキマン!!」

ナイトマン「ここから先は我らが通さん。死んでもらうぞ!」


そういうと、三体のロボットたちは一斉にギンガマンたちに襲い掛かった!!


49 名前:新章/魔法騎士 アース解放編  :2008/06/27(金) 13:11:01
○黒騎士→Dショッカーの企みにギンガの森に引き返そうとするがワイリーの作ったロボット軍団が出現!その行く手を阻まれる
●ロボット軍団→ギンガマンと接触 戦闘行為を開始!

【今回の新規登場】
○ヒュウガ=黒騎士(星獣戦隊ギンガマン)
リョーマの兄。黒騎士ブルブラックの魂を受け継ぎ、変身する。
本来なら彼がギンガレッドになるはずだった。

○ヒカル=ギンガイエロー(星獣戦隊ギンガマン)
食べることが大好きな青年。
メンバーの中で一番若い。雷のアースを操る。


○サヤ=ギンガピンク(星獣戦隊ギンガマン)
男勝りな部分を持つ少女。
責任感が強く弓の名手である。花のアースを操る。

●ナイトマン(ロックマン6)
中世の騎士をモチーフに作られたロボット。
破壊力と防御力に特化しており、その盾はあらゆる攻撃を無効化する。
ちなみに彼を作ったのはDr.ワイリーではない。
鉄球をあやつり全てを粉砕する『ナイトクラッシャー』が必殺技。

●プラントマン(ロックマン6)
元々は植物園のマスコットロボ。
ロボット世界選手権に出場するため戦闘用に改造された。
ナイトマンと同じく製作者はワイリーではない。
圧縮したエネルギーの塊をシールド状に放出する『プラントバリア』が必殺技。

●エレキマン (ロックマン)
原子力エネルギーの電子制圧作業をしていたロボット。
ちなみに製作者はロックマンを創り出した人物であるDr.ライト。
今回の話に登場するエレキマンはライトの作ったエレキマンのボディにバージョンアップを施した強化型




50 名前:新章/妖を狩る者達 −Part1,丑三つ時の激戦−:2008/07/06(日) 00:07:36
  

 日本の首都、東京の中央にそびえ立つ数百mはあろう巨大な赤いタワー・・・
 言わずと知れた、日本の象徴ともいえる建造物、日本電波塔、通称“東京タワー”である。
 戦後日本の復興の象徴とも言えるそのタワーは、かつて数多の大怪獣や侵略者に
 よって何回も倒壊し、最近でも壊されはしなかったものの、大魔王ガノンが付近で
 暴れ回る等、ある意味一種の心霊スポットではないかとも思わせてしまう程の災難が
 降りかかる建造物である。

 それでも東京タワーは壊されては再建され続け、今日も光を放ちながら、
 眠らない町「東京」を静かに見下ろしていた・・・・・・
 
 
 
 
 ――――深夜午前2:00、草木も眠る丑三つ時。
 
 
 
 
???「・・・爆裂ッッ!!寸指破―――――――ッッ!!!

 突如、東京タワーに、一筋の光が走った!
 
 
 光が収まった後、東京タワーの大展望台の天井に、四人の男が空中から降り立つ。
 その内の一人は非常に巨大で古代中国の武将のような外見をしており、禍々しい仮面を被っている。
 手には巨大な長刀を持っており、その体からは夥しい妖気が湧きあがっていた。

 それ以外の3人の男は、その武将の前に立ち塞がるかのように並んで立っていた。
 一人は武将姿の男に負けず大柄な体格をしており、恐らく2m位はあるだろう。
 その肉体は岩のようであり、胸の厚さは、肩幅とほぼ同じぐらいの大きさを誇っている。
 太りすぎてもおらず、痩せてもなく、鍛えられた筋肉で構成された、
 非常にバランスのとれた身体を持っていた。手には中国風の刀を握り、構えている。

 もう一人の男は、中国の道士のような服装をしており、手に数枚の札を持っている。

 そして、その2人の傍らに、手に錫杖を握った山伏姿の男が構えていた。
 長身の男であり、一見すると細面の顔立ちだが、その眼には鋭い光を携えていた。
 身長はおおよそ180〜190cmといった所であろう。
 
 
 姿格好は違う四人だが、その衣服は部分的に傷ついており、
 少し前から激しい戦いを行っていたことが素人目にも解る状態だった。
 
 
蘭陵王「フッフッフ・・・・・・」

 武将の姿の男・・・ 南北朝時代の中国の北斎という国の王であり、
 この現代に悪霊として復活した男「蘭陵王」は、巨大な長刀を構えながら、
 眼前の三人に対し、不敵な笑いを見せた。

乱蔵「・・・復活しても、相変わらずのようだな、蘭陵王」

 大柄な男・・・ 中国拳法のエキスパートの祟られ屋「九十九乱蔵」は、蘭陵王に向けて叫ぶ。

玄角「・・・だが、それもここで終わりだ!!」

 霊能力を持った修験行者「玄角」も、続けて蘭陵王に向けて叫ぶ。

カイルン「・・・貴様のお陰で、中国では罪のない人々が大勢殺された。
      だが、もはや逃げ場はない!!」

 道士服を着た中国出身の霊符師「ヤン・カイルン」はそう言うと、
 手に持っていた文字の書かれた霊符を蘭陵王に向けて放った!!

カイルン「天道晴明地道安寧人道虚寧!!!
      真空斬!!!」

 バシュッ! バシュッ!

 真空斬とは、霊符の力によりカマイタチを発生させ、相手を切り刻む技である。
 放たれた霊符は蘭陵王の体に向かって行き、彼の周辺に群がる。
 そして、蘭陵王に向けてカマイタチを放つが・・・

蘭陵王「フンッ!!」

 蘭陵王は、持っていた長刀を振るうと、
 自分に向かってきたカマイタチを霊符もろとも叩き落とした!!

カイルン「・・・やはり、一筋縄ではいかないか」
 カイルンは、苦い顔で蘭陵王を睨む。

蘭陵王「フハハハハ!! 中国から遥々わしを追ってきたようだが、その程度か?
    言っておくが、わしは以前のわしとは違うぞ!! ハッハッハッハ!!!」

 蘭陵王は、勝ち誇ったかのように、彼らに向けて笑い声を放つ。
 
 
カイルン「くっ・・・ 奴め、中国で戦ったときより格段に強くなっている・・・」
玄角「復活して時間が経過した事で、本来の力を取り戻してるようですね・・・」

 そう呟く二人。だが・・・

乱蔵「・・・いや、まだ勝機はある」
玄角「・・・本当ですか?」

 玄角は目を丸くして乱蔵を見る。

乱蔵「さっきの寸指破もギリギリで避けられたが・・・ 完全に見切った訳じゃなさそうだ」

 乱蔵は、蘭陵王に目を向ける。
 見ると、蘭陵王は先の寸指破を完全に避けられなかったらしく、
 体の部分部分に焦げ痕らしきものが見える。

乱蔵「ただ闇雲に攻撃するんじゃ駄目だ・・・ 三人で連携して隙を作るんだ」
カイルン「・・・それしか無い様だな」

 三人は、それぞれ蘭陵王に向け構え直す。そして・・・
 
 
乱蔵「・・・・・・行くぞ!!

 乱蔵は、刀を蘭陵王に向け、飛びかかった!!

カイルン「ハアッ!!
玄角「おりゃあああ!!

 乱蔵に合わせ、カイルンと玄角も各々の武器を手に蘭陵王に飛びかかる!!

蘭陵王「ムオッ!?」

 それに合わせ、蘭陵王も彼らに向けて武器を向けた!!
 
 
乱蔵・カイルン・玄角「うおおおおおおおおおおお!!!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 ―――――夜は、まだ長い。
 


51 名前:新章/妖を狩る者達 −Part1,丑三つ時の激戦−:2008/07/06(日) 00:08:28
○九十九乱蔵→かつて倒した悪霊・蘭陵王と再び対峙。東京タワーで戦闘中。
○玄角→乱蔵と共に蘭陵王に立ち向かう。
○ヤン・カイルン→中国から蘭陵王を追って再度来日。乱蔵達と共に蘭陵王と戦闘中。
●蘭陵王→東京タワーで三人の退魔師と決戦。
 
 
【今回の新規登場】
○九十九乱蔵(つくも らんぞう) (闇狩り師シリーズ/キマイラ・吼シリーズ)
身長2m、体重145kg。中国拳法の達人で、仙道のエキスパートで、通称「ミスター仙人」。
岩のように鍛えられた肉体を持ち、その巨体からは想像できない程の柔軟さと素早さを持つ。
妖魔封じを稼業とする「祟られ屋」で、自身を「落ちこぼれの仙人」と形容する。
美男とは言えない外見だが、笑うと堪らないほど人を惹きつける魅力を持つ。
「寸指破」「八卦掌」「妖魔消滅」「八卦掌爆裂剣」「羅王神流烈破竜剣」等の奥義を体得している。
師は真壁雲斎。九十九三蔵という弟がおり、彼もまた雲斎の弟子である。

○ヤン・カイルン(地獄先生ぬ〜べ〜)
中国人の霊符師。
霊符師としての能力は極めて高く、霊符だけで妖怪を退治する程の実力を持つ。
子供の頃に妖怪によって妹を殺された経験があり、その悲しみから妖怪に憎しみを
抱くようになり、鵺野鳴介達と敵対したが、改心し「悪い妖怪」を退治し続ける事を決意した。

○玄角(闇狩り師シリーズ)
霊能力を持った修験行者で、九十九乱蔵の知り合い。身長は180cm〜190cm程度。
憑き物をおとす際は山伏の格好をしているが、普段はスラックスやシャツなどを
着用している。慈叡和尚は恩師。

●蘭陵王(らんりょうおう) (闇狩り師シリーズ)
南北朝時代の中国の北斎という国の王。戦の時につけていた仮面を拾った、
神奈村光浩という少年の体を媒体に現世に蘇ったが、九十九乱蔵によって倒された。

 ※九十九乱蔵、玄角、蘭陵王の出典作品である【闇狩り師シリーズ】は、
  夢枕獏氏の原作小説をベースに、各種漫画版の要素をいいトコ取りをした上で複合し、参戦とする。



52 名前:新章/妖を狩る者達 −Part1,丑三つ時の激戦−:2008/07/06(日) 00:09:20
 
 
     埼玉県・銀成市 とある書店 午後7:00
 
 
客「―――では、この本をお願いします」

 コートを着た三十代くらいの男性が、書店のレジに向かい、
 レジの店員に『ピンキー先生のクネクネヨガ道場』と表紙に書かれた本を手渡す。
 レジに立つツインテールの少女は、顔立ちから察するに高校生程度だと思われ、
 恐らくバイトで働いている事を推測させる。

沙織「はい。では千円ちょうどになります」

 レジに立つ少女、銀成学園の1年生河井沙織は、男性客から千円札を受け取ると、
 本を紙袋に包み、レシートと共に男性客に手渡す。
 その後、男性客は一礼をし、レジを去っていった。
 
 
 
沙織「ありがとうございまーす。 ・・・ふぅ」

 沙織は笑顔で客を見送ると、少々顔の表情に疲れを見せた。

六舛「大丈夫?沙織ちゃん」

 疲れた表情を見せた沙織を気遣うように、同じくレジに立つ眼鏡をかけた
 高校生程度の少年六舛孝二は声を彼女にかけた。

沙織「あっ・・・ だ、大丈夫ですよ、この程度」
 沙織は、表情を持ち直し、そう返答する。

沙織「でも・・・」
 沙織は、六舛の顔を不思議そうな顔で見る。

六舛「? ・・・何か顔についてる?」
 六舛はそれに気付き、沙織に質問した。

沙織「意外ですね・・・ 六舛先輩がバイトをするなんて・・・」
六舛「あー、前はみんなバイトしてた中、俺だけやってなかったから。
   何となく、やってみたくて」

 彼らは、以前寄宿舎でクリスマスパーティをした事があるのだが、その際に理事長室に
 飾ってあった大皿(古伊万里・推定30万円)を破損してしまった事があった。
 それでその弁償代を全員でバイトで稼いで返済しようと計画したのだが、
 何故か六舛のみバイトをしようとせず、部屋に篭りっきりだった。
 実際は割れた大皿を修復するため、陶器の修復の練習をしていたのであったが・・・

沙織「“何となく”・・・?」
六舛「うん」
沙織「・・・はあ」

 そうこう言っている間に、六舛の立つレジの前に一人の男が近寄ってきた。

???「店員さん、ちょっといいかな?」
六舛「はい?」

 レジに立っていた六舛に話しかけてきた、その人物は・・・
 
 
 
 ―――細身の身体にピッタリとフィットした、胸元から大きく股間近くまで開いた衣装。
  
 
 ―――顔に装着したオレンジ色の蝶々の仮面。
 
 
 紛れも無く、今この銀成市を中心に大きな話題となっている
 謎の蝶人パピヨン本人であった。

パピヨン「一週間前にここで2冊本を予約したが、届いているか?」
 相変わらず尊大不遜な態度を取っているが、その雰囲気からか、どこか憎めない
 オーラを持ったパピヨンは、どうやら予約した本を取りに来たらしい。

六舛「えー、本のタイトルは?」
パピヨン「『驚異の昆虫世界』、『世界の怪虫・奇虫』の2冊だ。
      民明書房の出版だが・・・ 届いてるか?」

 六舛は、後ろの棚に体を反転させ、棚の「ハ行」と書かれた列に目を移し、
 そこから、2冊の結構厚めの大判の本を取り出した。

六舛「これで間違いありませんか?」
 六舛は、事務的にパピヨンに質問する。

パピヨン「そうそう、それそれ」
 パピヨンも、目当ての本である事を確認すると、口元に笑みを浮かべ、
 股間からニュッと一万円札を抜き出した。

六舛「はい。では合計五千九百円となります」
 六舛はパピヨンの股間に入ってた生暖かい一万円札を、物怖じせず受け取った。
 
 
 
  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 
 
 
沙織「六舛先輩・・・ なじんでる・・・(汗」

???「ちょっと・・・ いいかしら?」

 不意に、沙織の前方から女性の声が聞こえた。

沙織「は、はい!」
 沙織は我に返り、前方を振り向く。
 そこにいたのは・・・

沙織「あ・・・」

 レジを挟んだ前方には、一人の女性がいた。
 ただ・・・ その女性は、一人の客と言うには、少々不思議な雰囲気を纏っていた。
 怪しげな裾の長い白い道士服のようなドレスに未を包み、店の中だというのに白い日傘を差しており、
 その体は服を着ている上からも抜群のプロポーションである事が窺える。
 ウェーブのかかった金髪を揺らしながら、その美しい女性は沙織に対して笑顔を浮かべていた。
 ・・・最も、沙織自身は何故かその笑顔に底知れない胡散臭さを感じていたが・・・

沙織「あの・・・ ご用件は・・・」
 とりあえず、怪しいとはいえ客なので、沙織はその女性客に話しかけた。

女性客「本を予約したのですけど、届いてないかしら?」
沙織「えーと・・・、何という本でしょうか?」

 沙織は内心、少々思索した。
 何というか・・・ 笑顔に胡散臭さは感じるものの、その女性客の底知れない何か・・・
 女性はそこそこ・・・ というか非常に顔立ちの整った美人なのだが、それとはまた別の・・・
 同じく女性である沙織が見ても心を奪われてしまいそうな魅力とはまた違った
 「何か」が感じられた。

沙織「(こんなキレイな人が本の予約を・・・ まあ、予約しても変じゃないけど・・・
   一体どんな本だろ・・・ 料理の本とかかな・・・)」

 ―――だが、その女性客の口から出た本の名前は、彼女の予想を100%裏切るタイトルだった。

女性客「『ウホッ!! いい男たち ヤマジュンパーフェクト』っていう本よ」
沙織「ブッ!!

 沙織は、レジに思いっきりズッこけた。
 本の名前自体は始めて聞いたものだが、タイトルの「ウホッ」「いい男」のフレーズだけで、
 どんな内容の本かは大方予想がついてしまった。そして恐らく当たっているだろう。

女性客「??? ・・・何か?」
沙織「・・・いえ、何でも・・・」

 沙織は、精神と体を持ち直し、再び立ち上がる。
 そして、レジを挟んだ前方に立つ女性客に、再び質問した。

沙織「お名前は・・・?」
紫「八雲紫(やくも ゆかり)。紫よ」
沙織「あ、ハイ・・・ では今探しますので、少し待っててください・・・」

 そう言って、沙織は体を反転させ、棚に目を移す。

沙織「えーと、『や』は・・・ ここかな・・・?」
 沙織は棚の「ヤ行」と書かれた列から一冊のかなり分厚いA5判程度の大きさの本を取り出す。

沙織「(・・・うわ〜)」

 沙織は本の表紙を見た瞬間、言葉を失った。
 本の表紙には上半身裸の男性の振り向き姿が書かれており、『ウホッ!! いい男たち』と
 タイトルが大きく書かれている。正直、目の前の女性客・・・ 八雲紫と名乗った女性が見るには
 似つかわしくないイメージの漫画だった。

沙織「・・・えー、五千円となります」

 佐織がそう言うと、紫は袖の中から一万円札を取り出し、沙織に渡した。
 沙織はそれを清算し、本を紙袋に入れ、機械からレシートと五千円札を取り出した。

沙織「・・・お釣です」
紫「フフッ♪ ありがとう、可愛い店員さん♪」
 紫は、沙織に笑いかけた。

沙織「は・・・ はい・・・///
 その笑みに多少胡散臭さを感じながらも、沙織はそれに対し
 照れながら笑みを浮かべ返した。
 
 
 
  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 
 
 
六舛「――またのご利用をお待ちしております」

 一方その頃、パピヨンと六舛の方も本の精算を終えていた。

パピヨン「ああ、今後も、・・・ん?」
紫「あら?」

 ふと、丁度本の精算を終え、レジから離れようとしたパピヨンと八雲紫の両者は、
 偶然にも目を合わせてしまった。
 
 
パピヨン「・・・・・・」
紫「・・・・・・」
 
 
 一瞬、両者の間に沈黙が流れる。
 先に口を開いたのは、紫だった。

紫「・・・蝶人パピヨンだったかしら?私は八雲紫。
  噂は聞いてるわ。中々素敵な格好じゃない。特にそのマスク」

 紫は、そう言ってパピヨンに微笑みかける。

パピヨン「それはどうも」

 パピヨンは笑みを浮かべ、そう返答した。
 紫に対し胡散臭さは感じたものの、自分のマスクを「素敵」と呼ばれた事に対しては、
 内心少々嬉しく感じた。

紫「それじゃ」
パピヨン「・・・ウム」

 二人はお互いに別々の出入り口に向かい、店を後にした。

六舛「・・・沙織ちゃん、大丈夫?顔が赤いよ」
沙織「ハッ!? ・・・す、済みません、何か、ボーっとしちゃって・・・」
 
 
 
  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 
 
 
 星が、寒さに震えるようにまたたく空の上。
 パピヨンは、背中に赤く、炎のように燃える蝶の羽を輝かせ、空を優雅に飛んでいる。
 手には、先程買った本を包んだ紙袋を抱えていた。

パピヨン「(あの女・・・ 人間の匂いでは無かったな・・・
      恐らく妖怪、もしくはそれに準ずる存在・・・
      まあでも・・・ もう会う事はないだろう)」

 そんな事を考えながら、パピヨンは何処へと飛んでいく。
 
 
 
  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 
 
 
 冬真っ只中、空気が肌寒い季節。
 人々の雑踏の渦巻く町の中を、八雲紫は歩いていた。
 やはり人が多いとはいえ、彼女の服装は人ごみの中でも目立っていた。

紫「(蝶人パピヨン・・・ やはり噂通り、人間じゃないみたいね・・・
  妖怪ではないようだけど・・・ もう会う事は無いわね・・・
  さっさとDMCの「魔界遊戯」買って帰るか・・・)」

 そう思いつつ、紫は数10m先にあるCDショップに足を進める。
 
 
  ブワッ・・・

紫「ん・・・・・・?」

 一瞬だったが、紫は銀成市から離れた東京の方向に、何か大きな“”を感じ、立ち止まる。

紫「フフッ・・・、暇つぶしにはなりそうね・・・
  じゃあさっさと買い物を済ませましょうか」

 紫は口元に笑みを浮かべると、再びCDショップに向かい歩き始めた。
 
 
 
  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 
 
 
 人を捨て“蝶人”へと生まれ変わった男、パピヨンこと“蝶野攻爵”

 境界を操る神に等しい力を持った妖怪“八雲紫”
 
 
 彼らが再び顔を合わせる事になるのは・・・ もう少し先の事である。
 




53 名前:新章/妖を狩る者達 −Part1,丑三つ時の激戦−:2008/07/06(日) 00:10:18
○六舛孝二、河井沙織→本屋でバイト中、パピヨン並びに八雲紫と遭遇する。
△パピヨン→書店で八雲紫と邂逅。八雲紫の正体を感じ取る。
△八雲紫→書店でパピヨンと邂逅。東京方面に何らかの力を感じ取る。

 ※パピヨンの所持する核金は【武装錬金//】での設定に準じ、
  漫画・アニメで使用したLXI(61番)ではなく、火渡赤馬から盗んだXX(20番)となってます。
  その為、火渡の武装錬金の特性が付加されています。
  なお、LXI(61番)の核金は錬金戦団が回収済みです。
 
 
【今回の新規登場】
○河井沙織(武装錬金)
銀成学園の1年生。1月13日生まれ。CV:下屋則子
ツインテールが特徴。武藤まひろの友人。通称「さーちゃん」。いつも元気で活発な少女。
まひろのことを「まっぴー」と呼ぶ。ホムンクルス調整体に銀成学園が襲撃された際は、
恐怖で腰が抜けてしまった千里を助けようとするなど勇気のある面も持っている。勉強は苦手。

○六舛孝二(武装錬金)
銀成学園の2年生。1月25日生まれ。CV:近藤孝行
眼鏡を着用している。武藤カズキの友人。「四バカ」の1人(ただ、カズキや岡倉と違って成績は優秀)。
沈着冷静な性格だが友情には熱く、銀成学園がLXEに襲撃された時は震洋と頭脳戦を繰り広げ、カズキと斗貴子を
援護した。また、かなり謎の多い一面(読唇術、声色の才能、「逆胴」に関する正確な知識等)を持ち、
岡倉からも「オメー何モンだ!!」とよくツッコまれている。料理や美術品の扱いでも意外な才能を持っている。

△八雲紫(やくも ゆかり) (東方Project)
境界という境界をすべて操れる妖怪。二つ名は「幻想の境界」等。神隠しと呼ばれる現象は主に、
紫が境界に揺らぎを起こすために起こると言われる。胡散臭い風貌・信用できない・誰から見ても
心が読めない性格を持つ。普段は余り動かず一日に12時間の睡眠を取り、冬眠までする。
寝ている間のことは全て式神の八雲藍に任せている。人食いの妖怪であり、冬眠前には人間を蓄える。
「スキマ妖怪」とも呼ばれ「他に類を見ない“一人一種族”の妖怪」らしい。「妖怪の賢者」とも
呼ばれている。また1200年以上前に記された資料にも紫と思われる妖怪が登場し、博麗大結界の創造に
協力しているなどの事実からも、幻想郷でも最古参の妖怪の一人であると考えられる。計算能力に
秀でているらしく、無間の底の深さや北斗七星が北極星を食べるまでの時間ですら求めてしまえるらしい。
『吸血鬼条約』『本当は近い月の裏側』『コンピュータの彼岸』といった書物も執筆している。幻想郷を
誰よりも愛していて、博麗大結界の提案と創造をしたり、外の世界から落ちて来る道具の安全確認や
博麗大結界の監視なども行っている(故に幻想郷の外の世界も知っている)。そのため、博麗神社を
自分の縁ある神社にするために要石を刺そうと干渉してきた比那名居天子に対しては普段の飄々とした
態度を取ることもなく、激しい怒りを露わにした。

△パピヨン/蝶野攻爵(武装錬金)
蝶を模ったマスクと全身黒タイツを身に着けた「超人(蝶人)」。CV:真殿光昭
性格は極めてハイテンション。元々は銀成学園の3年生だったが、原因不明の難病を患ったために身体が弱くなり、
高祖父・爆爵の残した研究ノートからホムンクルスの製造技術を手に入れ、自らを人間型ホムンクルスとすることで
命を永らえさせようとするが、幼生体が不完全だった為、不治の病を持つ不完全なホムンクルスとなった。
カズキに敗北後、バタフライに保護されLXEに加わるが、自ら離反。当所は世界を破壊し、ヴィクター化する事が
目的だったはずだが、カズキとの決着を最優先にしていくうちにその気はなくなったらしい。ホムンクルス化
以降は人間の名を捨て、自身が認めたカズキ以外からは本名を呼ばれることを好まない。カズキの事を
「偽善者」呼ばわりするが、心根では尊敬しており、「偽善者」と呼ぶのも彼なりの敬意の表現でもある。
人間時からIQ230の天才であり、僅か一ヶ月で完璧な「白い核鉄」を創り出すなど、天才ぶりを随所で発揮した。
なお、不完全なホムンクルスである為、食人衝動は一切無い。カズキとの決戦後は銀成市の蝶人パピヨンと
して神出鬼没に活動しており(蝶野の財産の一部を相続してるらしく、資金面では不自由はない模様)、
その存在は都市伝説とまで化している(銀成市の人々にとっては「友達感覚」)。 6月26日生まれ。

 ◇ピンキー先生のクネクネヨガ道場(ハニ太郎です。)
  ポプラ社から発行されている本。著者は漫画家のピンキー前嶋。
  読んでヨガを実践すれば肌がつるつるになるらしいが、真偽は不明。

 ◇民明書房(魁!!男塾/天より高く/曉!!男塾 青年よ、大死を抱け)
  東京神田神保町に所在する出版社。1926年(大正15年〜昭和元年)創業。
  代表取締役は創業者でもある大河内民明丸
  『世界の怪拳・奇拳』など、拳法・武術関連の書籍を主に出版している。
  (それ以外の書籍も多数出版している)

 ◇魔界遊戯(デトロイト・メタル・シティ)
  インディーズ界で人気を誇る悪魔系デスメタルバンド「Detroit Metal City
  のファーストアルバム。「ヘルズ・コロシアム」「SATUGAI」等、全12曲収録。


54 名前:新章/妖を狩る者達 −Part1,丑三つ時の激戦−:2008/07/06(日) 00:11:21
 
 
  ――――本屋での邂逅より、およそ7時間後
 
 
     午前2:00 東京都内・某所
 
 
 
       (もぐもぐ・・・ むしゃむしゃ・・・)
 
 
 東京都内のどこかにそびえ立つ一般のマンション。
 そのマンションのとある一室で、一人の背広姿の男が食事を摂っている。
 
 
       (もぐもぐ・・・ もぐもぐ・・・)
 
 
 その男・・・ 個人経営の輸入雑貨の貿易商、井之頭五郎は、
 作業用の机に向かいながら、発泡スチロール製の容器に入った牛丼を、黙々と食べ続けていた。
 机の傍らには、容器の蓋が置かれており、表面には「キッチンがいなも」と表記されている。

五郎「うん、美味しい。味付けが中々いいな」

 五郎は、弁当の味に満足すると、残りをさらに食べ続ける。

五郎「(偶々目に付いた弁当屋の店主が異星人だと知ったときは、少々ビックリしたが・・・
    人柄も良かったし・・・ この味だ。選んで正解だったな・・・)」

 彼・・・ 井之頭五郎は、取引の後や、時間の余った時、はたまた道に迷った時等に、よく散歩をする。
 そういった時、彼は昼飯を食べ損ねていた等の理由で空腹を抱えている事が多く、そのまま行きずりの
 良さそうな店に駆け込む事が多い。そして店に腰を落ち着けた後は、じっくりと店内の雰囲気や人の
 様子を観察しており、単なる味覚だけではなく、五感で食事を楽しむのである。
 残念ながら今回は、仕事の都合もあり、マンション自室へ持ち帰る事となってしまったが・・・
 
 
       (もぐもぐ・・・ もぐもぐ・・・)
 
 
 そうしている内に、五郎は既に弁当を平らげてしまっていた。

五郎「(美味かった・・・ 何か、甘いものでもあればな・・・
    そういえば、弁当屋の近くに「芋長」っていう和菓子屋があったな・・・
    今度、行ってみるか・・・)」

 そんな事を考えてながら、五郎は窓の外を見渡す。
 彼の在住しているマンションの部屋はそんなに高い部屋ではなかったが、
 何とか東京タワーはビルの隙間から覗くことができた。

五郎「・・・・・・?」

 一瞬、東京タワーの展望台付近で、強い光が光ったのを五郎は見逃さなかった。
 一体何の光だろうかとも考えたが・・・

五郎「・・・まぁ、気にするほどの事でもないか」

 そう脳内で片付けると、五郎は食べ終わった弁当の容器を片付け始めた・・・
 
 
 
 
 
  ◇    ◇    ◇    ◇
 
 
 
 
 
     午前2:10 東京都内・東京タワー
 
 
蘭陵王「ハアッ!!」

 蘭陵王は、懐から人型に切り抜かれた紙を、二枚ほど取り出し
 目の前に迫る玄角に放つ。
 放たれた人型は、みるみるうちに人間大の大きさへとなっていき、
 いつしかそれは、三国志の物語に出てくる様な古代中国の武将へと変貌していた。

玄角「ム!」

 目の前に迫りくる二人の大柄な武将を目にしても玄角は怯まず、
 自らの手に握る錫杖を構え、自らも武将に突撃する!

玄角「―――けぃッ!

 玄角は錫杖を武将の一人に放ち、その腹部を勢いよく貫く。
 そこから間髪入れずに錫杖を抜き取ると、もう一人の武将に向き直し、
 武将の長刀の一撃を避けると大きく跳び上がり、武将の頭部を錫杖の強烈な一撃で叩き割った。

玄角「成仏・・・ せよ・・・」

 二体の武将はそのまま倒れこみ、動かなくなると同時にボロボロの人型の紙切れに戻る。
 それを見計らったのか、今度は蘭陵王本人が玄角に向かって跳びかかってきた!

玄角「クッ!」

 玄角は錫杖を振るうが、蘭陵王は難なくそれを素手で受け止める。
 すかさず玄角は左手を錫杖から放し、懐から妖怪退治用の棍棒「玄角棒」を取り出す。
 棍棒を握ると同時に右手も錫杖から放し、蘭陵王が握りしめている錫杖を踏み台に
 玄角は跳び上がり、玄角棒を頭上に振り上げ――――

玄角「てああ―――ッッ!!!

 蘭陵王の頭部に対し振り下ろした!!

蘭陵王「フンッ!!」

 すかさず、蘭陵王は手にした巨大な長刀を振るい、玄角棒の攻撃を受け止め・・・

蘭陵王「――――うおおおおおッ!!

 そのまま、玄角を長刀の一振りで叩き飛ばした!!

玄角「ぐあっ!!」
蘭陵王「フン・・・ その程度・・・」
 
 
カイルン「はあッ!!
蘭陵王「ヌッ!?」

カイルン「天道晴明地道安寧人道虚寧三才一体!!!
      大炎焦熱符!!!

 蘭陵王が気を逸らした隙を突き、カイルンは、手に持っていた霊符を眼前の敵に撃ち放った!!!
 放たれた霊符は炎を纏い、蘭陵王に向かって高速の速さで飛び交った!!

蘭陵王「ムオッ!?」

   (ゴオオオオオォォッ!!!)

 蘭陵王が霊符を打ち払う隙も無く、蘭陵王の体は紅蓮の炎に包まれた!!

蘭陵王「ぐおおおおおっ!!

カイルン「蘭陵王!!貴様が滅ぼした村の人々は、それ以上の苦しみの中で死んでいった!!
      今度は貴様がその苦しみを味わう番だ!覚悟して貰おう!!」
 
 
 
 ――――蘭陵王は、中国で復活した際に付近の農村を幾つか襲撃し、壊滅させていた。
 襲撃された農村の住民達は女子供に至るまで皆殺しにされ、その骸はある者はそのまま
 野晒しに、またある者は頭を潰され、酷いものは生きたまま生皮を剥がされ、数時間
 苦しみながら死んでいった物まで散乱していた。

 幼い頃に実の妹を妖怪に殺されたカイルンにとって、いや例えそのような経験が
 無かったとしても、その光景は正常な思考の人間ならば、まさに眼を覆いたくなるような、
 まさに“地獄絵図”と呼ぶものに相応しいものであったに違いない。

 その後カイルンは蘭陵王を追い、再びこの日本に足を運んだのだった。
 そこで自分と同じ妖怪退治を生業としており、過去に蘭陵王と戦った経験のある
 “祟られ屋”九十九乱蔵と知り合い、彼の知り合いの修験行者、玄角も含め、三人で
 蘭陵王と戦い、今現在、ようやくこの東京タワーまで蘭陵王を追い詰めたのだった。

 なお、カイルンは来日した当初はかつて戦った霊能力者、“鵺野鳴介”に協力を頼む事も
 考えたが、乱蔵から彼が今現在日本国内で物議を醸している“スクランブルフォース”に
 関わりの深い組織“ATP”に所属している事を知り、恐らく彼にとって状況的に厳しい
 かもしれないと考慮し、あえて連絡をしなかったという事情があった。
 
 
 
蘭陵王「おのれ・・・ これしきの炎ごときで・・・」
 蘭陵王はそう言い、自分の体の炎を消し去るが、既にその体は所々焦がされていた。

乱蔵「蘭陵王・・・ もう終わりだ。観念して貰おうか」
 乱蔵は、手にした刀を蘭陵王に向け、その足を進める。

蘭陵王「ぬぐぅ・・・ わしは蘭陵王・・・ この世界の頂点に立つ男・・・
    もう二度と貴様ごときには負けはせぬわ〜〜〜!!!!」
 
 
  (ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!)
 
 
 蘭陵王は、手に持った長刀を上に掲げ、この穂先に禍々しい妖魔気を纏わせた!
乱蔵「カイルン、玄角・・・ 下がってくれ。奴との決着はこの俺がつける!!」
カイルン「解った・・・ だが、無理はするなよ」

 乱蔵は剣を携え、蘭陵王に歩み寄っていく・・・
 
 
 
 
  ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・

 ――――風が、音を立てて吹いている中、東京タワーで九十九乱蔵と蘭陵王の両者は対峙した。
蘭陵王「地獄に行けェェェ!!!乱蔵オォォォォ!!!!!
乱蔵「―――――蘭陵王ッッ!!!!

 乱蔵と蘭陵王の両者は、自らの手にする獲物に気功及び妖魔気を帯びさせ、
 猛烈な勢いで相手に向かって突撃していった!!!
 
 
   ザシュッ!!!
 
 
 ―――――そして、一瞬の内に決着は付いた。
 
 
乱蔵「・・・・・・」
蘭陵王「・・・・・・」
 
 
 乱蔵と蘭陵王はつい数秒前まで、相手が立っていた位置にお互い背を向けて全く動かず武器を構えていた。
 そして、カイルンと玄角はその光景を見守っている。

 乱蔵と蘭陵王が動きを止めてから一分・・・ 二分と過ぎ・・・
 ――――勝敗は、五分経過した時点で明らかとなった。
 
 
蘭陵王「グハアァッ!!

 ――――蘭陵王の体に、左肩から斜め一直線に切り傷が走り、そこから真っ赤な鮮血が吹き出る。
 それと同時に、彼の体は、切り傷を中心に黒い霧と化し崩れていった。
 
 
 ――――誰が言うまでもない、闇狩り師・九十九乱蔵の勝利であった。
 
 
蘭陵王「負けん・・・ わしはまだ負けんぞおぉぉぉぉ!!!!
    わしは大英雄、蘭陵王だぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
乱蔵「ムッ!」

 体が黒い塵と化し崩れつつも、蘭陵王は武器を手に握り締め、
 乱蔵の方向に体を向き直し、斬りかかろうとするが・・・

カイルン「真空斬!!!

  (バシュッ! バシュッ!)

蘭陵王「ぐおおっ!!」

 その猛攻は、カイルンの放った霊符の斬撃によって止められる。
 それと同時に、乱蔵は蘭陵王の方に体を向け直し、両手の掌で存在しない“球”を形作るかのよう構えた。

乱蔵「―――はああああぁぁぁぁぁ!!

 乱蔵は、掌と掌の間に気を集中させ――――
 
 
乱蔵「寸指破―――――ッッ!!!!!
 
 
 ――――蘭陵王に向け、撃ち放った!

蘭陵王「ギャオオオオオ!!!

 寸指破の光に飲まれ、蘭陵王の姿は見えなくなる――――
 
 
 
 
 ――――数秒後、寸指破の光が静かに消え、蘭陵王の姿が光の中から浮き出た。

乱蔵「・・・・・・」
カイルン「・・・・・・」
玄角「・・・・・・」
 
 
 ――――蘭陵王の身体は、乱蔵の寸指破を受けた箇所がそのまま吹き飛んで消えていた。

蘭陵王「乱・・・ ぞ・・・・・・」

 その言葉を最後に、蘭陵王の身体は完全に黒い塵となり・・・・・・
 
 
 ――――やがて、蘭陵王の姿は完全に消え去り、
 それと同時に、彼が手にしていた長刀が音を立てて展望台に転げ落ちた。
 
 
 
カイルン「――――終わったな」
乱蔵「ああ、蘭陵王さえ倒せば後は・・・」
 
 
       (パチ・・・ パチ・・・ パチ・・・)
 
 
 突如、乱蔵達の近くで、拍手らしき音が響いた。

玄角「!? ・・・何だ、この音は?」
乱蔵「拍手か・・・? だが、こんな場所で、一体誰が・・・」

 突然夜空に響いた拍手の音に、驚く二人。

カイルン「!? ・・・強い妖気を感じる・・・
     二人とも気をつけろ!この近くに妖怪がいるぞ!それも強力な!」
乱蔵「何!?」

 カイルンの言葉を二人が聞き取ると同時に、乱蔵と玄角は
 自分達の後方に強力な妖気を感じ取り、とっさにその方向を振り向いた。

乱蔵「!! 奴は・・・」

 そこには・・・ 拍手の主であると思われる一人の女性がいた。
 その女性は、怪しげな裾の長い白い道士服のようなドレスに未を包み、白い日傘を差していた。
 ウェーブのかかった金髪を揺らしながら、その女性は怪しい微笑を浮かべている。

 外見自体は人間とそう変わらないが、人間との決定的な違いとして、
 その女性は、単身で空を飛んでいたのである。
 そして、その身体から発せられる妖気。
 乱蔵、カイルン、玄角の三人は、彼女が妖怪である事を瞬時に確信した。
 
 
???「フフッ・・・ 中々面白かったわ」

カイルン「誰だお前は!?」

 女性に対し、問いただすカイルン。
 
 
紫「私は“八雲紫”。お察しの通り妖怪よ」

 そう言うと彼女は、乱蔵たちに向け、再び怪しい微笑を浮かべた・・・

 


55 名前:新章/妖を狩る者達 −Part1,丑三つ時の激戦−:2008/07/06(日) 00:12:17
○九十九乱蔵&ヤン・カイルン&玄角→苦戦の末、蘭陵王を倒す。直後、眼前に八雲紫が現れる。
●蘭陵王→乱蔵達に敗れ、撃破される。
△八雲紫→突如乱蔵達の前に姿を現す。目的は今の所不明。
○井之頭五郎→マンションの自室で食事中。乱蔵達の戦闘を目撃(?)するが、特に気にならなかった模様。
 
 
【今回の新規登場】
○井之頭五郎(孤独のグルメ)
輸入雑貨の貿易商を個人で営んでいる中年男性。普段は背広を着ている。自由な
生き方をモットーとし、そのため自分の店を構えるつもりはなく、結婚もしていない。
彼にとっての食事とは、他人に構わず、時間や社会に捉われずに、ほんの一時だけ
自分勝手になって幸福に空腹を満たす行為であり、そこには一種の癒しさえも包括している。
その為、己なりの食事に対する信念やポリシーを幾つも持っており、常にこれに則って
食事を楽しんでいる。自分の買わなかった方の弁当に入っていた干しアンズが美味そうだった
等々の細かい事柄にまで、いつまでもあれこれと悩み続ける小市民的な思考の持ち主である一方、
平和で静かな食事を邪魔する人間に対しては容赦がなく、そのような相手に対しては実力行使に
よる制裁も厭わないという、極めて行動的な一面も持ち合わせている。喫煙者で全くの下戸。
高校まで古武術を習っていたため、実はかなりの筋肉質。


56 名前:新章/妖を狩る者達 −Part1,丑三つ時の激戦−:2008/07/06(日) 00:14:03
 
     午前2:19 東京都内・東京タワー
 
 

  (ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・)
 
 
 星が、寒さに震えるようにまたたく寒空の下、乱蔵達は東京タワーの展望台にて
 境界の妖怪・八雲紫と対峙していた。
 (BGM:夜が降りてくる 〜 Evening Star)
乱蔵「・・・・・・・・・」
カイルン「・・・・・・・・・」
玄角「・・・・・・・・・」

紫「フフッ・・・・・・♪」

 突然の来訪者に、驚きを隠せない乱蔵達。
 だが、相手が妖怪だと解っている以上、各々の武器を構え、
 いつ戦闘になっても迎撃できる体勢を取っていた。
 
 
乱蔵「八雲紫・・・ だったか?」
 乱蔵は、紫に対し、口を開いた。

紫「ええ・・・ そうよ」
 それに対し、紫も返答する。

乱蔵「一つ質問させてもらうが、八雲紫・・・ お前が俺たちの前に現れた理由は何だ?」
紫「あら?理由なんて聞いてどうするの?」

乱蔵「俺はこれまで、数えられないほどの悪霊や妖怪を相手にして、そして退治してきた。
   ・・・・・・だから分かる。お前は俺が戦ってきた連中が足元にも及ばない程の妖気を放っている。
   今俺達が束になって戦っても、万に一つも勝てるかどうかは分からない・・・」

カイルン「・・・・・・」
玄角「・・・・・・」

 乱蔵は確信していた。そしてカイルンと玄角も分かっていたに違いない。
 自分達が退治している妖怪・八雲紫の実力が、先ほど戦ってきた蘭陵王の比ではないという事を。
 そして、この場で彼女と争えば、自分達と八雲紫のどちらが勝とうと、その戦闘の余波により、
 眼下の市外に甚大な被害が及ぶ事は間違いなく避けられない事を・・・・・・

紫「―――それで、何かしら?」
乱蔵「お前が俺達を狙っているのなら、応戦せざるをえないが・・・
   それ以外の目的なら、どういう理由か言って貰いたい」

紫「・・・・・・」
乱蔵「・・・・・・」
カイルン「・・・・・・」
玄角「・・・・・・」

 四人の間に、一瞬の沈黙が訪れる。
 僅か数秒にも満たない間であったが、乱蔵達にとっては数分にも感じられた。

 ―――そして、紫はその口を開いた。
 
 
紫「フフッ・・・ 少なくとも、あなた達を襲おうとは考えてないわ」
カイルン「―――じゃあ目的は何だ!言え!」

 カイルンは激昂しかけながらも、紫に対し問い詰めた。
 しかし紫はなんのこともなく、普通に返答を行った。

紫「そうね・・・ しいて言うなら、“面白そうだったから”かしら」
カイルン「面白そうだったから・・・ だと?」

 カイルンの目に不信の色が移る。
 元から彼は目の前の“八雲紫”と名乗る妖怪に対し胡散臭さを感じていたが、
 今のあまりにも怪しい返答に不信感を募らざるを得なかった。

紫「ここ最近、こっちも色々と大変なのよ。変な連中がやってきて、
  流石に幻想郷のバランスが崩れそうだったから、どっか遠い星に追い出したりして・・・
  なんか、外もこっちも色々と面倒な事が起こりすぎてるのよ」

カイルン「変な連中? 幻想郷? 何の事だ、俺にはさっぱり・・・」

 カイルンは、紫の言った聞き慣れない単語に、さらに不信感を覚えたが―――

乱蔵「――――幻想郷だと? なるほど、どうやらあんたは幻想郷の妖怪らしいな」

 乱蔵は、何やら納得した様子でそう口にした。

カイルン「なんだって!?、知ってるのか乱蔵!?」
乱蔵「ああ、聞いた事がある」
 
 
 遥か昔、東の国にある人里離れた辺境の地に「幻想郷」と呼ばれる土地が存在していた。
 幻想郷には様々な妖怪が多く住み着き、ここに迷い込めば妖怪に喰われてしまう為、普通の人間は
 幻想郷には近づかなかったが、中には妖怪退治の為に幻想郷へ住み着く者もいた。月日が流れ、
 人間の勢力が増すことで幻想郷のバランスが崩れることを懸念した妖怪の賢者・八雲紫(生年不明 - )は
 「幻と実体の境界」を張り、妖怪の勢力を他から取り込むことで幻想郷を保つ。やがて明治時代となり、
 文明開化の過程で非科学的な事象は「迷信」として排除されていき、幻想郷はそこに住み着いた妖怪達や
 一部の人間達の末裔と共に、強力な結界の中で生きる道を進むことになる。その後の幻想郷の存在は
 人々から忘れ去られていったが、結界に封印された後も幻想郷には以前と変わらず多くの妖怪たちと
 僅かな人間たちが住んでおり、外の世界とは異なる精神・魔法中心の独自の文明を築き上げていったらしい。
 現在の幻想郷は、人間と妖怪とのバランスの関係により、昔に比べると妖怪が人間を食う事はほぼ無くなって
 いるらしいが、幻想郷全体の力と均衡を保つため、妖怪が人間を襲い、人間が妖怪を退治すると言う関係は
 そのまま残っていると言われている。

 なお、幻想郷が結界に封印される以前の描写は、筆者が自身で資料に書かれていた事柄を纏めたものであるが、
 結界に封印された後の描写は、筆者が個人的に連絡を取ることができた人物からの証言に基づくものである。
 その人物の詳細は、本人のプライバシー保護の為、筆者が個人的に親しい人物であること以外は書けないが、
 現在でも稀に、外の世界の人間(我々の事である)が幻想郷に迷い込んでしまい事があるらしい。
 ちなみに現代において、本が絶版になったり、特定の商品が生産中止になったりする事で、
 その物品が二度と手に入らなくなることを表す諺“幻想となる”はこれに源を発する。

                               民明書房刊 『決定版 世界の魔境・秘境』より
 
 
紫「―――へえ、幻想郷の事を知ってるの。少し驚いたわ。
  驚いたついでに折角だから一つ、ニュースを教えてあげるわ。
  さっき私が言った変な連中って言うのは、幻魔の事よ。
  連中が、再び動き出そうとしてるわ」

カイルン「(“幻魔”? 一体何の事だ?)」
 カイルンは、紫の言った言葉を理解できなかった。だが―――

玄角「幻魔が・・・ 奴らがまた動き出していると言うのか!?」

 玄角は、紫の言葉に、表情を引きつらせて戦慄していた。
 その表情に、カイルンも困惑を隠せなかった。

カイルン「・・・おい、その幻魔とは一体何だ?」
 カイルンは、近くにいた乱蔵に若干困惑気味で問いただした。

乱蔵「―――カイルン、半年前にパリで起きた事件を知っているか」
カイルン「確か・・・ 凱旋門付近を中心に、無数の怪物が現れて、パリの住民が虐殺された事件の事か?
   新聞やネットには、事態を解決するために軍隊や対外治安総局の他にも、「シャッセール」という
   対特殊犯罪組織まで出動して、何とか怪物を全滅させたと書いてあったが・・・」

乱蔵「ああ、その時現れた怪物こそ、幻魔と呼ばれる妖物だ。
   日本でも、平安時代から戦国時代を中心に暴れまわっていたらしい。
   実際に会ったことは無いが、雲斎先生に当時の文献を見せて貰った事があるぜ」

 乱蔵は、自身と実弟である九十九三蔵の師匠であり、退魔師としても一流の能力を持った人物“真壁雲斎”が
 パリに“幻魔”が出現してから二か月程度経過した頃に「曙蓬莱新聞社」という名の新聞社に
 取材を受けたという話を本人に聞かされた事を思い出した。
 
 
 
 数百年前の戦国時代、この国では織田信長や武田信玄を始めとする数多の武将が覇権を争っていたが、
 その裏で“幻魔”と呼ばれる怪物が戦乱の世で戦火を煽っていた事は殆ど知られてはいない。
 この幻魔に関する文献は現在は殆ど残っておらず、つい最近まで歴史の闇に葬られていたが、
 つい半年前、フランスのパリに突如無数の怪物の軍勢が現れると言う事件が発生し、その際に
 出現した怪物が、当時の文献に記載されていた“幻魔”に酷似しているという情報が、とある神社からの
 匿名の連絡で発表されたのは記憶に新しいであろう。それに便乗するかのように、当時の“幻魔”の絵姿が
 描かれた資料が続々と各地の仏閣から発表されたが、その実像は未だ分からない事も多く、
 またフランス政府も現地に出現した“幻魔”に関する情報は、一部を除き一般には公表されていないため、
 事件は知っていても“幻魔”の事は知らない者が大多数だと思われる。

 余談ではあるが、先のパリの事件において、日本の戦国時代の甲冑を着た侍
 幻魔と戦っていたと言う突拍子も無い噂が現地で都市伝説レベルで語られているが、“黄泉還り”等の
 人知を超えた怪奇現象が多発している中、戦国時代の侍が時空を超えて現代に現れたとしても
 何の不思議も無いというのは既に言うまでもない事であろう。
 
 
 日本曙蓬莱武術協会名誉師範 真壁雲斎・談(曙蓬莱新聞社刊『日本曙蓬莱武術協会談話集 188年度版』より引用)
 
 
 
紫「・・・それじゃ、そろそろおいとまするわ」

 紫がそう言うのに合わせるかのように、突如彼女の背後に巨大な空間の裂け目が現れる。
 空間の裂け目の中は黒色等の色が混ざっており、大きな目らしきものも見える。
 裂け目・・・ “スキマ”と称されるそれは、そのまま彼女の体を包むように飲み込んだ。

カイルン「待て、八雲紫! お前は今回の事件をどこまで知っているんだ! 答えろ!」

 丁度紫はスキマ隙間から頭部だけが見える状態になっていた。
 彼女はそのまま乱蔵達に対し、こう言った。

紫「―――“アンゴルモア”に気をつけることね」

 紫はそう言うとクスリ、と怪しい笑みを浮かべ、頭部をスキマの中に沈め・・・

乱蔵「おい、待て!」
 
 
 ――――乱蔵が問いかけた頃には、既に紫はスキマもろとも虚空にその姿を消していた。

カイルン「くそっ・・・・・・」
乱蔵「・・・・・・」
玄角「・・・・・・」
 
 
 ――――乱蔵達は、東京タワーの展望台に、つい先程まで八雲紫が存在していた
 虚空を見上げながら、その場に立ち尽くしていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
     午前4:00 東京都内・東京タワー
  
 
 戦いを終えた乱蔵達は、東京タワーの展望台から、タワーの根元の地面に降り立っていた。

カイルン「乱蔵・・・ あの妖怪の言った言葉・・・ どう思う?」
 カイルンは、乱蔵に問いかけた。

乱蔵「さあ、どうだろうな・・・ ただ、今の状況じゃ謎が多すぎる。
   一旦どこかで落ち着いて、話を纏めるべきだろう」
カイルン「そうだな―――」
 
 
乱蔵「・・・玄角」
玄角「何でしょう、九十九さん」

 乱蔵は、腰のポケットから一枚の紙切れを取り出し、
 それを、先程の蘭陵王との戦いで使用した剣と一緒に玄角に渡した。

乱蔵「雲斎先生の住所が書いてある。先生の所に言って、今回あった事を伝えてくれないか。
   ここ最近起きている事件を考えると、これで終わるとは到底思えないんでな」
玄角「・・・解りました。私も、何やら嫌な予感がします。
   私個人としても、慈叡和尚の元にも行き“幻想郷”や“幻魔”について色々相談するつもりです」

 そう言うと、玄角は駅の方向に向かっていった。
 
 
カイルン「乱蔵・・・ 俺たちはどうする?」
乱蔵「・・・とりあえず、日を改めてどこかで待ち合わせしよう。
   それと、知り合いの退魔師にも来てもらうつもりだ」

 乱蔵の言った“退魔師”と言うフレーズに、カイルンは少し表情を変える。

カイルン「知り合いの退魔師・・・? 俺たちと同じか・・・?」
乱蔵「ああ、草波 龍志郎って奴だ。
   少し硬い所もあるけど、いい奴だし、退魔師としての実力も問題ない」
カイルン「フム・・・ 解った」
 
 
 その後、乱蔵はカイルンの宿泊しているホテルの電話番号を聞くと、カイルンと別れ、
 近くに停めてあったごついボディのランドクルーザーに乗り、自身のマンションへと
 ランクルを走らせた・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 祟られ屋、九十九 乱蔵。
 
 
 霊符師、ヤン・カイルン。
  
 
 拝み屋、玄角。
 
 
 
 彼らもまた、この地上のみならず、様々な異世界を巻き込んだ

 騒乱の歯車の中に巻き込まれつつあった。
 


57 名前:新章/妖を狩る者達 −Part1,丑三つ時の激戦−:2008/07/06(日) 00:14:34
○九十九乱蔵、ヤン・カイルン→後日再開する事を約束し、今は別れる。
○玄角→乱蔵の師匠「真壁雲斎」並びに、自分の恩師「慈叡和尚」の所に向かう。
     ついでに乱蔵が雲斎から借りた武器の返却も兼任。
△八雲紫→意味深な言葉を幾つか残し、退場。

 ◇曙蓬莱新聞社(魁!!男塾)
  日本曙蓬莱武術協会の機関紙を発行する新聞社。
  理事長である盛田慎之助と、民明書房代表取締役の大河内民明丸は旧知の間柄である。
  『撃って候 早くてゴメン』『鉄仮面の告白』などの出版物も発行している。

58 名前:新章/外伝 北欧、フィンランドにて:2008/10/26(日) 21:16:08

影山「兄貴、ラーメンがすぐに冷めちまうね」
矢車「分かってたはずだぞ相棒、俺達が光を掴むのは並大抵じゃあない」

いや、多分ラーメンがどうのという問題じゃないと思う。
破れてどれ程防寒の用を果たすのかもわからない黒いコートを着た二人の男がいた。
時折通りかかる白夜観光客が遠巻きに離れていくのも目に入らない様子で肩を寄せ合っている。
あまりに場に不釣り合いな格好に、幻覚でも見たかのように首を振るっていた者もいれば
お化けでも見たかのように駆け出す者もいた。……恐らく夢に出るだろう、お気の毒に。

男の一人、影山瞬も生身の人間が耐え得る寒さという根本的な問題に薄々気付いていた。

ネイティブならば、こんな時服も擬態出来るのだろうか?
いや、寒さ自体平気なのかも知れない。そう言えばシャドウの隊員だった頃
人間に擬態したワームは体温が人間とは違うという話を聞いたような聞かないような…

矢車「隠れろ、相棒」

影山がぼんやりとそんなことを考えていたとき、もう一人の男、
矢車想が影山の手を引き物陰へと引き込んだ。
その直後、白夜の大地を更に眩い光が刺し貫くように照らす。

影山「何…? 太陽じゃない…な」
矢車「気分の悪い光だ…」

太陽はこんなには輝かないし色も黄金色過ぎる。何より本能が告げていた。
太陽ではない。地球に棲む命の源たる太陽の光などでは断じてない。と。
その光は、北欧の氷より冷たかった。

隠れていた二人にはハッキリとは分からなかったが光の発生源は通り過ぎようだった。
物陰から出て来た二人が見たのは転がっている人々。

矢車「死んでるのか?」

じゃり。
頭を持ち上げてみると、首の中で氷が擦れ合う音が鳴った。
見たところしっかりと防寒装備を整えている人間を凍死させる者が近くにいる。
 返す返すも無謀とも言える軽装で北欧まで来たことが悔やまれる。

影山「兄貴、あれ!」

驚きに包まれた影山の声に彼が指さす方へ目を向けた矢車は、光の源が何であったかを知った。
遙か遠くを歩くその後ろ姿は黄金のウロコに覆われた巨人だった。

鋼鉄参謀「お前達、見てしまったのか?」

不意に、高台から声がする。振り向いた二人が見たのは水牛の如き角を持ち、鋼に覆われた姿。
前代未聞、『鎖鉄球を振り回す参謀』それはデルザー軍団の鋼鉄参謀!!

鋼鉄参謀「あのお方、黄金魔人の再生はまだ不完全なのだ。気の毒だが話が広まらぬよう消えてもらうぞ」
矢車「お前…どこの怪人だ」

気怠げに問う矢車。

鋼鉄参謀「私はデルザー軍団の鋼鉄参謀。行け、戦闘員!」
戦闘員s「ミュウ!」

何処からともなく鋼の仮面を着用し、手に手に鎖分銅を携えた十数人の戦闘員が現れ二人を取り囲む。

矢車「何〜で俺達ばっか…」
影山「いいよなあお前等…負けるなんて考えたことも無いんだろなぁ…」

二人の呟きと共に闇の中からショウリョウバッタを模した二つの影…ホッパーゼクターがピョコピョコと跳ねてきた。
それぞれゼクターを手に取ると線対称となる動きで開いたバックルへと差し込む。

矢車・影山「「変身」」

『HENSIN』

電子音声が響き装甲が体を包み始め、

『Change Kick Hopper』
矢車は仮面ライダーキックホッパー、

『Change Punch Hopper』
影山は仮面ライダーパンチホッパーへと変身を完了した。

その姿は鋼鉄参謀にとって実に因縁深いものだった。
鋼鉄参謀「貴様等…あのストロンガーの仲間だったのか?」

パンチホッパー=影山「ストロンガー? 俺達はマスクドライダーだ」

ゼクト以外の仮面ライダーは良く知らないのか微妙に話がずれている影山。

キックホッパー=矢車「ふん…今の俺の仲間は相棒だけだ。あっちの方も俺達を仲間だなんて思わないだろうぜ…」

鋼鉄参謀「ならば私も本気を出さねばなるまい。戦闘員! そちらはしばらく全員で抑えておけ!」
戦闘員s「ミュウ!」

矢車へと襲いかかる鋼鉄参謀と、一斉に影山に向かう戦闘員。数人の戦闘員の鎖が
影山を捕らえんと迫る。影山は両拳を顔の前に構え、姿勢を低くして駆け抜ける。

パンチホッパー「ハッ!!」

鋭いパンチの連続で瞬く間に戦闘員を叩き伏せる。横から後ろから鎖が巻き付くが、
戦闘員が動きを封じる前に影山の拳が鎖を持つ戦闘員をKOする。

鋼鉄参謀「スティールッ!!」

矢車へ鋼鉄参謀の全体重を掛けたエルボードロップが迫る。矢車はわずかに後ろへ体を傾けて避けると
すぐさま重心を前方へ移動させつつ蹴りを放つ。だが、鋼鉄参謀の体は正に鋼鉄いやその強度は只の鋼鉄の比ではない。
矢車の蹴りは弾かれるばかりで有効なダメージを与えているようには見えない。
蹴りを跳ね返し、間合いが開いたところでここぞとばかりに鎖鉄球を振り回す鋼鉄参謀。
並の怪人ならば振り回されているであろうその重量を扱って尚隙らしい隙も見せぬ圧倒的なパワーに
矢車も防戦一方となっていた。
影山は勿論、矢車も知らない。デルザーが並の怪人ではなく改造"魔人"であることを。

戦闘員「ミュウー…ッ」
パンチホッパー「兄貴っ!」

最後の戦闘員を叩きのめし、矢車の援護に向かおうとする影山。その時、地面から鎖を伝わって火花が走り、
影山を打つと白いロボットへと姿を変えた。

パンチホッパー「何…!?」
鋼鉄参謀「誰だ!?」

これは鋼鉄参謀も知らなかったらしく予想外の乱入者に名を問う。

エレギトロン「俺は怪魔ロボット、エレギトロン! 鋼鉄参謀こいつは引き受けたあ!」

頭部に生えた水牛の如き碍子の角を振り立て、影山を襲うエレギトロン。

鋼鉄参謀「ガテゾーンとか言ったか、余計なことを…まあいい、いずれ借りは返すと伝えておけ」

この二人を一度に相手にするのは苦しいと判断したのか、それとも何としても果たさねばならぬ任務だからか
素直に手を借りる鋼鉄参謀…。


水牛の如き角を持つ巨体と頭に精霊飛蝗を乗せた戦士のシルエット。
叩きつけた鉄球を振り上げるその一瞬にキックホッパーの蹴り。左腕で跳ね飛ばされるも
鋼鉄参謀がハンマー投げの要領で投げた鉄球をすんでの所で避けるキックホッパー。

水牛の如き角を持つ巨体と頭に精霊飛蝗を乗せた戦士のシルエット。
電磁スティックから放たれる光弾をかいくぐりパンチホッパー。鋭いパンチが一発、二発。
だが、フックをかわしてタックルを決めると角でパンチホッパーを挟み電撃を見舞うエレギトロン。


鋼鉄参謀「スティ〜〜ル!!」

上空よりボディプレスで襲い来る鋼鉄参謀。
キックホッパーは古き良きレバーとなっているホッパーゼクターの脚を
タイフーンを中心に回転させる。

キックホッパー「ライダージャンプ」
『Rider Jump』

打ち上がるかのように飛んで行くキックホッパー。

キックホッパー「ライダーキック!」

空中で180°姿勢を変え、再びゼクターの脚を引く。
『Rider Kick』

その電子音声と同時に脚には何者も砕くタキオン粒子の稲妻が宿る。
キックホッパー必殺の跳び前蹴りが、カウンターで鋼鉄参謀に吸い込まれる。

パンチホッパー「だぁっ!」

エレギトロンの腕にパンチを見舞い電磁スティックを叩き落とすパンチホッパー。
電磁スティックは地面に落ちると緑色の火花と化して消えてしまう。

エレギトロン「うおおお!」

四次元から取り出した二本目の電磁スティックを抱えて突進してくるエレギトロン!

パンチホッパー「ライダー…ジャンプ!」
『Rider Jump』

位置はエレギトロンの斜め上方。

パンチホッパー「ライダーパンチ!」
『Rider Punch』

角と電磁スティックに稲妻を走らせるエレギトロン。
右の拳にタキオン粒子の稲妻を纏うパンチホッパー。

エレギトロン「う…ぐおおお…」

吹き飛んだのはエレギトロン。その体を稲妻がのたうち、フラフラと数歩歩くと爆散した。

鋼鉄参謀「ぬお…まだだっ!」

ライダーキックを食らいながらも倒れぬ鋼鉄参謀に、着地することなく二撃目を決行するキックホッパー。
そこへ、爆煙の向こうからパンチホッパーまでも跳んできた。

キックホッパー「ライダーキック!」
パンチホッパー「ライダーパンチ!」

ゼクトのライダーでも最強クラスのこの同時攻撃に、さしもの鋼鉄参謀も吹き飛ぶ。

鋼鉄参謀「なん…だと…」

目を向ければ黄金魔人は既に姿を消している。黄金魔人が不完全なまま倒されてしまう
という最悪の事態だけは避けられた。そう判断したのか

鋼鉄参謀「この勝負預けたぞ…!」

何処へともなく去っていく鋼鉄参謀。肩で息をしているWホッパーも、支え合うように立っているのがやっとのようだ。


変身を解いた影山は黄金魔人が去っていった方角を向いて立ちつくしていた。

矢車「相棒」

その影山の肩を抱いて矢車が言う。

矢車「あの光は忘れろ…。俺達は…俺達だけの光を掴むんだ」
影山「兄貴……」

白夜の太陽はほとんどその高さを変えず、ただ横への移動で時間の経過を表していた。


59 名前:新章/外伝 北欧、フィンランドにて:2008/10/26(日) 21:17:42
△矢車想&影山瞬→闇の中の光を求めて白夜を見に来た先で、余り良くない光に遭遇。デルザー軍団と一戦交えるハメに。
●鋼鉄参謀→フィンランドで黄金魔人の完全復活を見張っていた(デビルズリライブ計画の一環か?)が地獄兄弟と遭遇。
十数名の部下を失い援護に来たエレギトロンも敗れるも奮戦。
●エレギトロン→パンチホッパーに敗れる。

【今回の新規登場】
△矢車想=仮面ライダーキックホッパー(仮面ライダーカブト)
当時27歳。ライダーキックホッパーゼクターの資格者であり、ザビーゼクター最初の資格者。
ZECT本部直轄の精鋭部隊シャドウの元初代リーダー。「パーフェクト・ハーモニー(完全調和)」を信条
としていたが、カブト抹殺のみに執拗に優先した結果ザビーゼクターに見限られ、ザビーの資格を喪失、
リーダーも解任されてしまい、影山の奸計でZECTから事実上追放された。その後、仮面ライダーキック
ホッパーとして天道達の前に現れた際は、己を卑下し自らが掲げた「完全調和」の精神さえ喪失するほど
にやさぐれた姿に豹変。後に孤立した影山にパンチホッパーゼクターを授け、過去の経緯を越え「弟」と
して義兄弟の契りを交わす。その後はどの勢力にも属さず、自らを「闇の住人」と称し影山と2人で
他ライダーに突如攻撃を加え、ワームを倒す日々を過ごした。後にザビーゼクターに再び選ばれかけるも
過去への興味が失せていた為、拒絶。嘗ては趣味として天道同様料理を嗜み、一度は天道に勝った程の
腕前だったが、キックホッパーとなって以降は殆どインスタント食で済ます。カッシスワーム戦を経て
もう一度「光」を求める事を決意、「闇の中の光」すなわち白夜を見る為に影山と旅立とうとしていた
時にネイティブのネックレスで影山がネイティブ化を起こしたことで、矢車はネイティブの部分のみを
蹴り殺し影山を救う。その後影山と共に日本を旅立ち、白夜を見る。今も日本各地を二人で放浪中。


△影山瞬=仮面ライダーパンチホッパー(仮面ライダーカブト)
当時20歳。パンチホッパーゼクターの資格者。ザビーゼクター三人目の資格者。
ZECT所属時は矢車を誰よりも尊敬しサポートしていたが、ザビー資格者復帰を目指す際、組織を乱す
不協和音として見下し、あっさりと切り捨てた。その後ザビーゼクターに選ばれシャドウ隊長に就任。
しかしその後失敗を重ね、再登場した矢車=キックホッパーに敗北、挙句の果てに天道にザビーゼクター
を奪われたのを機に、三島だけでなくシャドウのメンバーからも自らが不協和音とみなされ、ZECTを
追われた。その後、只一人自分に目を向けてくれた矢車と再び結束。彼に差し出されたホッパーゼクター
を受け取り、パンチホッパーの資格者となる。以後は矢車と義兄弟的契りを交わし「兄貴」と慕い、2人
で気ままな行動をとり続ける。だが影山自身は正義感が残っており、そして過去の栄光を求め、ザビー
復帰の誘いを受けた際、再びザビーになるも、加賀美の制止を無視した独断戦法によってワーム達に
惨敗し再び資格を喪失。再び矢車の元へ戻った(この後も正義感までは喪失していない)その後、矢車と
共に白夜の世界を求め旅に出ることを決意するが、ネイティブのネックレスによってネイティブ化を起こ
してしまう。影山は最後に矢車の手によって倒されることを望んだが、矢車にネイティブの部分のみを
蹴り殺された事で助かる。その後矢車と共に日本を旅立ち、白夜を見る。今も日本各地を二人で放浪中。


●鋼鉄参謀(仮面ライダーストロンガー)
黄金魔人の子孫と言われるデルザー魔人。正攻法を尊ぶ武人。
ストロンガーにドクターケイト製毒花の中に投げ込まれ、
麻痺したところに電キックを打たれて倒された。

●エレギトロン(仮面ライダーBLACK RX)
怪魔ロボット。地球と怪魔界を繋ぐ扉を開く鍵を巡って仮面ライダーBLACK RXと戦う。
武器は電磁スティック。電流へ姿を変えることが出来る。リボルクラッシュで倒された。

●黄金魔人(仮面ライダーストロンガー/懐かしの妖怪図鑑)
フィンランドの白夜の夜に現れるという巨人。
金色の鱗に覆われ体から放つ光は氷よりも冷たい。

60 名前:新章/魔法騎士 アース解放編  :2008/11/21(金) 19:59:31
ギンガグリーンとシェリンダの戦いは熾烈を極めていた。
両者が一歩も譲らぬその戦い。
ギンガグリーンが押せばシェリンダが一歩引いて受け流し、逆にシェリンダが攻めれば、ギンガグリーンは後退し、様子を見る。
両者が決着をつけるのは、いつになるかわからなかった…が。

ギンガグリーン「ウッ!?」
シェリンダ「隙あり!」

踏んでいた地面で足を滑らせ、ギンガグリーンはバランスを崩す!
シェリンダはレイピアをギンガグリーンに突き刺そうと踏み込む!
だが、ギンガグリーンは転倒しかけながらも相手の剣から目を逸らしてはいなかった。
故に、

「ハァッ!」

バランスを崩した際に踏みとどまるのではなく、それに勢いをつけ宙を舞い彼はシェリンダの背後に回りこむ!!

ギンガグリーン「疾風一陣!」

星獣剣を逆手に構えアースをこめたギンガグリーンの一撃は、シェリンダに傷を負わせた。
右肩から滴る血は彼女の傷が浅くないことを示している。
ギンガグリーンを視線で殺せるほどに強くにらみつけ、シェリンダは呻く。

シェリンダ「クッ!このままでは……」

だが、突如辺りが急に暗くなった。
それに伴い、ヒュインヒュインと妙な機械の駆動音が聞こえてくる。

戦士たちは思わず空を見上げた。

海「何よアレ!?」
風「空飛ぶ円盤…ですわね」

風の言葉通り、自分たちのいる場所を追い隠したのは未確認飛行物体=UFO…そこから突如、何者かが自分たちのいる大地に向かって降ってきた!!
悪魔の光臨さながら、舞い降りたのは6人の異形。

エアーマン「俺の名はエアーマン…Dr.ワイリーの命令により、貴様らを破壊する!!」
ウィンドマン「同じくウィンドマン!」
フレイムマン「フレイムマン!」
ヒートマン「ヒートマン!」
バブルマン「バブルマン!」
ウェーブマン「ウェーブマン!!」

シェリンダ「貴様ら…ガルマの手の者か、まあいい。ここは貴様らに任せる。ギンガグリーン! 貴様との勝負! ひとまず預ける!!」

シェリンダはそういうと、姿をくらました。

ギンガグリーン「待て!」

シェリンダを追いかけようとするギンガグリーンだが、彼の前にエアーマンとウィンドマンが立ちふさがる。

エアーマン「Dr.ワイリー様のため、ここで死んでもらうぞ!!」


エアーマンは特徴的な外見をしていた。
一言で表すなら、青い扇風機に手足と目が付いているようなものである。
もう一方のウィンドマンはエアーマンに似た体格で、両肩に巨大なプロペラが付いていて、なぜか頭にラーメンどんぶりをかぶっていた。
エアーマンの口にあたる部分にある巨大なプロペラが、ヴンヴンと轟音とともに回りだす。
そこから巻き起こるのは大木すら揺るがす旋風。

ギンガグリーン「…っく! なんて風だ!!」

一番近くにいたギンガグリーンは目を開けていられない。
地面に星獣剣を付きたて、吹き飛ばされないようにするのが精一杯である。

だが、危機に陥っているのはギンガグリーンだけではない。

ウィンドマン「どうした!? 隙だらけだな?」

そういうと、風の正面に立ったウィンドマンがこれまた肩の二つのプロペラを回す。

風「! いつの間に!!」

矢をつがえる風。
だが、

ウィンドマン「ツイントルネード!!

ウィンドマンの肩から打ち出された小型の竜巻が風を吹き飛ばす!
地面に投げ出された彼女は、体を強かに打ちつけてしまった。

風「…っうぅ」
ハヤテ「風!」

風に気を取られたギンガグリーンはもろにその一撃を喰らってしまった。
エアーマンの必殺を。

エアーマン「どこを見ている! 食らえ!エアーシューター!! 
ギンガグリーン「ぅあっ!」

エアーマンのバスターから打ちだされた空気の塊を受け、ギンガグリーンも宙を舞う。

光「風ちゃん!」
リョーマ「ハヤテ! …ハァッ!!」


リョーマがエアーマンに向けて炎のアースを放つ!だが…。

フレイムマン「ふぅん!!」
ヒートマン「ハァァ!」

怒声と共に息を吐き出したフレイムマンとヒートマンが、エアーマンをかばいリョーマのアースをそれぞれ、片手で受け止めた。

エアーマンと違い、フレイムマンは人に近い形をしている。
頭に巻いたターバンと、左腕のバスターが特徴的だ。

ヒートマンはまるで、箱に入った犬の印象を受ける。
こんな状況下でなければ中々に愛される顔つきだろう。

フレイムマン「俺たちの体は耐火、耐熱性に優れた特殊ボディ! こんな貧弱な炎が効くものか!」
ヒートマン「きくものか!」

リョーマ「くそっ!アースが通じないなら、………! ギンガてんせ…」
フレイムマン「 フレイムブラスト!!
リョーマ「うわ!」

リョーマがギンガマンへと変身する前にフレイムマンの放った熱の塊が、リョーマの体を包み込む。

ゴウキ「リョーマ!」

たくましき水の戦士は自らのアースでリョーマを援護しようとした。が…

ウェーブマン「させん!」
ゴウキ「ッうわ!?」

ゴウキの居た場所に、鋭い銛が打ち込まれる。
 彼が、とっさに回避しなかったら腹に穴を開けられ死んでいたところ。

ゴウキに銛を打ち込んだ戦士………ウェーブマンもフレイムマンと同様に人間に近いフォルムだ。
彼の場合右手に生えている銛と左手のバスター、足の水かきが特徴といえるだろう。

ウェーブマン「中々やるな、人間。……だが、これならどうだ?… ウォーターウェーブ!!

そういうと、ウェーブマンはバスターを大地に押し当てた。
それと同時…

ゴゴゴ………!!

地鳴りと共に突如! ゴウキの居る場所を中心に巨大な水柱が何本も吹き上げた!!

ゴウキ「あぁ!!」

高々と宙に打ち上げられるゴウキ。
そのまま、背中から地面に叩きつけられると、彼は痛みに耐えながらも、最初に大地を見回す。

………自然を愛するゴウキにとって見たくない光景が広がっていた。
吹き上げた巨大な水柱でギンガの森が誇る、美しい木々が横倒しになっている。
若々しい葉をつけていたナラの木が。
秋になると、ヒカルやボックたちと採るのを楽しみにしていた栗の木が。
激しい濁流に傷だらけになって根元から折れている。

罪のない木はさらに被害を拡大していた。

ゴウキが好きな花たち、キキョウやキョウチクトウ、そして今度、魔法騎士たちと取りに行こうと約束した野いちごの花までが木の幹の下敷になっていた。

ゴウキ「あ、あああ…!!」

ゴウキは思わず、花たちに駆け寄ろうとした。だが…。

バブルマン「食らえぃ!バブルリード!!
海「ゴウキさん! 避けて!!」

大気をふんだんに詰めた泡の弾丸が、花を踏み潰す。
ゴウキは海に襟首を掴まれ引き戻された。

彼の目の前で大切な森の命が消えてゆく。

ゴウキ「ああ!あぁぁ、そんな…!!」

ゴウキは膝を突いた。
悲しい。
森を、自然を愛するゴウキにとって、木々や花々を奪われることは彼の肉体を傷つけることに等しいのだ。

だが、膝を突いている場合ではなかった。

ヒートマン「全員、動くな!!」

光と戦っていたヒートマンの右手の先には、なんと、町に向かっていたはずの、ヒカル、サヤ、ヒュウガの姿。

三人がギンガブレスを外されて鎖に縛られながら歩かされ、こちらに向かってくる。まるで囚人のように。
そして、プラントマン、エレキマン、ナイトマンがまるで地獄の獄卒のように三人の戦士を牽引していた。

ヒュウガ「すまない。皆…」
リョーマ「兄さん!」
海「嘘、あのヒュウガさんが負けるなんて…」
風「………」

ナイトマン、プラントマン、エレキマンの三人がそれぞれのバスターをヒュウガ、サヤ、ヒカルの頭に押し当てている。

いつでも彼らを殺せる…という意思表示だろう。

バブルマン「この者たちの命が惜しかったら…」
ウィンドマン「全員、武器を捨て、おとなしく投降しろ!!」



61 名前:新章/魔法騎士 アース解放編  :2008/11/21(金) 20:02:28
○ギンガグリーン→シェリンダを撃退、だが逃げられる。
○ヒカル・サヤ・ヒュウガ→戦闘で敗れ、捕らえられる。
●謎のUFOから6体のロボットが出現。それぞれに襲い掛かる!
●エアーマン&ウィンドマンVSギンガグリーン&風→エアーマン&ウィンドマン優勢
●フレイムマン&ヒートマンVSリョーマ&光→転生を妨げられ、炎も効かず苦戦
●ウェーブマン&バブルマンVSゴウキ&海→ウェーブマン、森を破壊、ゴウキ大ダメージ

【今回の新規登場】

●エアーマン (ロックマン2)
空気をトルネード化させる必殺技。
エアーシューターを操る。
以前、この技で凧揚げしようとして失敗した事がある。

●ヒートマン(ロックマン2)
Dr.ライトのファイヤーマンを元に製作されたロボット。
背中にある火力調節ダイヤルで炎の威力を調整する。

●バブルマン(ロックマン2)
陸地ではジャンプ移動しかできない、
悲しき水中専用戦闘ロボット。
見た目がカエルに近い。

●ウェーブマン(ロックマン5)
かつて水道管理局を占拠したロボット。
鋼鉄も一撃で穴を開ける特殊水流、
ウォーターウェーブが必殺技。

●ウィンドマン(ロックマン6)

肩のプロペラから打ち出すツイントルネードが必殺技。
鈍重な体型と裏腹に高速飛行を可能とする。

●フレイムマン(ロックマン6)

体内に火力発電機を内蔵しており、
その発電回路を外部に向けて開放することで
必殺技であるフレイムブラストを放つ。






62 名前:新章/魔法騎士 アース解放編  :2008/11/21(金) 20:08:31
光「………」
リョーマ「………」


ギンガの森の太い樹木に、今、6人の戦士が荒縄で縛り付けられていた。
リョーマ、ゴウキ、ハヤテ、そして、光、海、風である。

ヒカル「おいっ!リョーマ達をどうする気だ!!」

 6人が縛り付けられている様を見て、ナイトマンの鎖で繋がれているヒカルが目の前にいるウィンドマンに食って掛かる。だが返ってきた返事はにべもないものだった。

ウィンドマン「見ればわかるだろう。処刑する」
ヒカル「ふざけんな!俺たちを殺すならいっぺんにやればいいだろ!仲間の死を見せ付ける気か!!」

激怒するヒカル。
だが、脇にいたバブルマンが冷静な答えを返す。

バブルマン「スーパー戦隊は常に分散させておかなくてはならない。貴様らと戦うときの鉄則だ。たとえ、止めを刺す段になってもこのコマンドプログラムは解除できん」


バブルマンが言葉を終えると同時に、フレイムマンとヒートマンが前に出た。
光たちにバスターを向ける。

風「絶体絶命…ですわね」
海「そんな…ここまでなの?」

冷静な風と諦観の表情を見せる海。

ゴウキ「すまない三人とも。こんな目にあわせてしまって」
光「ゴウキが気にすることじゃないよ」


光がゴウキに声をかけた、その時である。

Dr.ワイリー「待て、フレイムマン、ヒートマン」

その声と共に、UFOから再び何者かが降りてきた。

9体のロボット「「「「「「「「「ワイリー様!」」」」」」」」」

全員がひざまずく。

Dr.ワイリー「ちょうどここに来る途中で面白い物を見つけたんじゃよ。ほれ」

ワイリーは指を鳴らした。
それとともに彼の後ろから三人の人物が現れる。

その三人はギンガマンの面々にとって馴染みの深い顔。

ゴウキ「す、鈴子先生!」
リョーマ「勇太!」
ハヤテ「……晴彦さんまで!!」

そこにいたのは、リョーマがバルバンと戦っていたころに知り合ったかけがえの無い人々。
リョーマ達と世代を超えた友情で結ばれている少年、青山勇太とその父、晴彦 そしてゴウキにとってかけがえの無い女性であり、勇太の担任の水澤鈴子の三人である。

ヒュウガ「馬鹿な!いつの間に」
ワイリー「鈍いのう、お主ら。この森を襲撃するなら切り札の一つや二つ、いつでもそろえておくべきじゃろう」

そういいながら口ひげをしごく悪の科学者。

ワイリー「わしゃ、ロボット工学が専門じゃが、少し心理学もかじっとってのう。今、この三人はわしの言うことに逆らえん。暇つぶしに作った特殊暗示プログラムを見せることで催眠状態になっとるからのう。……じゃから、こ〜んなことをしても、」

ワイリーは自分の優秀さを自慢しながら鈴子先生のしりをなで上げた。

鈴子「………」

ワイリー「ぜ〜んぜん嫌がらん」
ゴウキ「き、貴様ぁぁぁ!!!!」

ゴウキが激昂する。
自らに課せられた荒縄を裂かんばかりの勢いで。

ワイリー「そんな訳でじゃ。ワシは余興代わりにこの三人の者を使って貴様らに着火させる事を決めた」

偉そうにふんぞり返る悪の科学者。

そのワイリーの言葉を聞いたフレイムマンが手近な木の枝に炎を移す。
そして、火のついた三本の枝をそれぞれ晴彦、勇太、鈴子に手渡した。

エアーマンが光たちを縛った木にガソリンをかけ始める。

その時、光はたいまつをかざした三人の姿を見た。

光「!」

光は彼らを見た瞬間、胸がつかえた。

彼らは瞳に何も写してはいない。
だが…泣いていた。
涙を流していた。
心を悪の科学者に掌握させられていても、である。

操られていても分かるのだ。
自分達がこれから何をさせられるか。

光、海、風は思い出す。


まるで、3人の姿は……かつてセフィーロの姫君をその手にかけた自分達のようで……。


風「(いけませんわ!彼らをあんな目に合わせるなんて!)」
海「(大切な人をあえてその手にかけさせる…なんて、なんて卑怯なの!)」

焦燥に駆られる風。
怒りに身を震わせる海。


そして……。

光「(また、守れないのか?私は………)」


光の脳裏に思い浮かぶ光景。

セフィーロで自分達を庇い死したイーグル。
自分たちと敵対しながらも最後、その自分たちに助言をくれた故に、悪姫デボネアの手にかかった、魔操師アルシオーネ。

自分の心の弱さが生み出した光の悲しき分身…ノヴァ。
光は己の無力さを嘆く。

「(私は壊すだけの力なんていらない!でも、せめて……大切な人を守るだけの想いを乗せた剣が欲しい!!)」


そして……その願いに『彼ら』が応えた。


「「「魔法騎士よ……」」」

瞬間、時が静止する。

聞こえてきた声は、かつて魔法騎士を乗せて戦った『力』の象徴の声。

それと共に縛り付けられていた、光、海、風そしてリョーマ、ゴウキ、ハヤテ。

6人の戦士は……突如としてその場から姿を消した。




63 名前:新章/魔法騎士 アース解放編  :2008/11/21(金) 20:13:34
●ロボット達→光たちを処刑しようとする。
●Dr.ワイリー→ヒーローの死を慰みにしようと卑劣な姦計を用いる。
○勇太、晴彦、鈴子→ワイリーに洗脳され操り人形に。
○魔法騎士とリョーマ、ゴウキ、ハヤテ、謎の声に導かれ突如として姿を消す。


【今回の新規登場】

○青山 勇太(星獣戦隊ギンガマン)
9歳の少年。伝説など信じない現代っ子だったが、リョウマとの出会いを切っ掛けにギンガマンの戦いを目の前にして、星を守る戦士になる事を志すようになる。リョウマから本当の勇気を教わり、時に五人のピンチを救う活躍をした。

○青山晴彦(星獣戦隊ギンガマン)
40歳。勇太の父親で、絵本作家。伝説に伝わる「不思議の森」を見つけて、それを絵本にしたいと思っていた。住む所を無くしたリョウマたちにシルバースター乗馬倶楽部を紹介し、その後はギンガマンの戦いを描き続け、彼らの活躍を絵本にした。よく駄洒落を口にする。

○水澤鈴子(星獣戦隊ギンガマン)
11話から登場した、26歳の女性。若竹小学校3年1組の教師で、勇太の担任。ゴウキに一目惚れされ、彼女もゴウキに好意を持つようになる。優しい心と、バルバンにも立ち向かう勇敢さを併せ持つ。



64 名前:新章/魔法騎士 アース解放編  :2008/11/21(金) 20:19:44
リョーマ「……うん………ここはどこだ?」

リョーマは辺りを見回す。
他の五人も既に意識を回復し、辺りを見回していた。

彼らが立っていたのは小さな台座の上。
光、海、風はこの場所に見覚えがあった。
そこはかつて、彼女たちが自らに授けられた『力』と向きあった場所。
地球ではない、異空間。

そして三人の……否、3体の主が彼女たちの台座の脇にいた。

海「セレス!」
風「ウィンダム!」
光「レイアース!」

かつて、光たちと共に戦った魔神。

炎のなかにあり、角を持つ獅子を模した巨人…レイアース。
水を統べる帝龍を模した巨人…セレス。
四枚の羽を持ち風を司る巨鳥を模した巨人・・・ウィンダム。


セレス「異世界を救いし、伝説の魔法騎士たちよ……」
ウィンダム「汝らは戦う運命(さだめ)から解放された」
レイアース「今再び、我らをまとい戦うか?」

三人の巨人が少女たちに問う。
答えは決まっていた。

光「戦うよ」
海「まだ、戦士としては未熟かもしれないけど」 
風「私たちは、もうこれ以上大切な人の涙を見たくないんです」

それは、光たちがデボネアと戦うときに魔神たちと契約した時とよく似ていた。
ただ、一点違うのはリョーマ達がいること。

魔神はそのギンガ戦士たちに視線を向けた。
そして、告げる。

セレス「かつて、数千年の古来より地球を守護してきた一族よ」
ウィンダム「魔法騎士達に戦士としての証を立てさせよ」
レイアース「我らがこの地にとどまるにはその証が必要なのだ」

その言葉に三人は一瞬顔をしかめたがすぐに思い当たったらしく手を叩いた。
そして少女たちに教授する。

リョーマ「光、海、風、お前たちはもう立派な戦士だ」
ハヤテ「その志があればきっとアースを制することも出来る」
ゴウキ「今から、俺たちと共に星の声を聞いてくれ」

三人のギンガ戦士はわずかの期間であったが少女たちと触れ合い、彼女たちが強い意志と優しさを持っていることを知っていた。

魔法騎士とギンガマンは互いの手を握り合い、一つの円を作った。
そしてハヤテが声をかけた。

ハヤテ「光、海、風 三人とも上を見てくれないか?」

そういわれ少女たちは天空を見上げる。
視線の先には夜の闇と………幾何学的な白い記号の羅列。

光「あれは………?」
リョーマ「あの記号はウルトラサイン。俺たちギンガの森の一族はあの言葉を子供のころに教わるんだ………星を護る者として」

そう、ウルトラサインとは星を護る者たちが扱う文字、ウルトラマンを初めとする幾多もの超人たちが絆を結んだ友情の白い糸である。

サインを送ったものは魔神たち。
今、三体の魔神は星の代弁者となっていた。
その星の声が彼らに告げている。
言葉を唱えよ、と。

戦士としての証を…誓いを立てよ、と。
光、海、風は天空に掲げられた文字を読み上げる。

ギンガマン達と繋いだ手から知識が流れ込んでくる。
今彼女たちは真に星を護る者として、その言葉を誓う。

全員「戦士とは」

 リョーマ「日々においても戦いにおいても」
 光「心に平和を忘れず」

 ゴウキ「持てる力全てを惜しまず」
 海「あきらめず、振り返らず」

ハヤテ「また仲間を信じ」
 風「苦難と悲しみは受け入れる」 


リョーマ・ゴウキ・ハヤテ「全ては星を守るために!」
 光・海・風「全ては星を守るために!!」

それはギンガマンが星祭の時に立てると言う戦士の誓い。
星は…魔神を、魔法騎士を戦士と認め、完全なる力を与える。

レイアース「魔法騎士よ」
セレス「この星を護りたいという汝らの願いと戦士としての誓い、確かに受け止めた」
ウィンダム「われらもこの星にとどまり、星獣となりて力を貸そう」


ウィンダムが彼らに一陣の風を吹きつける。

光たちは思わず目を閉じた。
眼を開けたとき、そこには悪の科学者と、その僕たちに痛めつけられている三人の戦士の姿。

帰ってきた。
少女たちは真なる力をその手に宿し。
戦士たちは新たな星獣という頼もしい仲間を引き連れて。

今ここから、戦士たちの反撃が始まる……!!




65 名前:新章/魔法騎士 アース解放編  :2008/11/21(金) 20:27:06
○光、海、風→異世界に飛ばされ、魔神たちとであい戦士として星と契約する。
○リョーマ、ゴウキ、ハヤテ→光たちに戦士の誓いを教える。
○三体の魔神→星獣となる。

【今回の新規登場】

○レイアース(魔法騎士レイアース)

光が契約した炎の魔神。
三体の魔神の中で攻撃力に特化している。
普段は一本角を持つ獅子の姿。

○セレス(魔法騎士レイアース)

海が契約した水の魔神。
三体の魔神の中で機動性に最も優れている。
普段は巨大な蒼い龍の姿である。

○ウィンダム(魔法騎士レイアース)

風が契約した疾風を司る魔神。
三体の魔神の中で防御力を重視した機体である。
四枚の羽を持つ碧色の巨鳥が本来の姿。



66 名前:新章/魔法騎士 アース解放編  :2008/11/21(金) 20:32:55
ギンガイエロー・ヒカルは朦朧とする意識の中を彷徨っていた。
すでに体中を殴られ、所々感覚がなくなっている。
だが、それは自分の友人であるギンガピンク・サヤと黒騎士・ヒュウガも同じこと。
体を据わった状態で木に縛り付けられているおかげで腰のほうに痛みが蓄積し始めている。

正面に立つ老人はひげをしごきながらもう幾度になるか分からない質問を問いかけた。

ワイリー「もう一度だけ聞いてやるぞい。あの小娘どもと残りのギンガマンは何処へ行ったんじゃ?」
ヒカル「へへ、さぁな…うぐっ!」

不適に笑うヒカルをエアーマンが鋼鉄の腕で再び殴りつける。
顔面に食らった衝撃でヒカルはまたしても意識を失いかけた。

ワイリー「……もういいわい。そろそろ殺してしまおうかの」

尋問に飽きた科学者はそう言ってちょいと、手刀で首を切るしぐさをした。
うなずいたフレイムマンとヒートマンがバスターを彼らに向ける。

だが…そうは問屋がおろさない!

 ゴウキ「流水の鼓動!!」
海「水の――――龍!!」

激流はフレイムマンとヒートマンだけではなく、9体、全てのロボットを押し流す!
ワイリーは突如として現れた六人に驚愕した。

ワイリー「小僧共!貴様ら一体どこから!!」
ハヤテ「驚いてる場合か?」

ハヤテが背後をアゴでしゃくる。

ワイリー「何?……んなっ!!」

素っ頓狂な声を上げたワイリーの視線の先、そこには解けたロープとガソリン
をかけられた木だけがあった。

ワイリー「ば、馬鹿な!いつの間に!!」
ゴウキ「さあ、観念しろ!Dr.ワイリー!!」

ワイリーは歯を噛み締め、顔を真っ赤にして怒り出した。
その様は海洋類のタコを思い起こさせる。

ワイリー「お、おのれ! このワシを本気で怒らせおって!!お前たち! 相手はボロボロの怪我人と青二才じゃ、とっとと片付けてしま………え?」

ヒュウガ「どこの」
ヒカル「誰が」
サヤ「怪我人ですって?」

Dr.は再び驚いた。
三人の戦士の傷が完璧に癒えている。

ワイリー「ば、ばかな! あれほどの傷を一瞬で治癒するなど……」
風「……癒しの風!!」

風の指先からそよ風が生まれた。
それは、気絶したままの鈴子や勇太たちに絡みつき傷を癒す。

Dr.ワイリーはわが目を疑った。

ワイリー「お、おのれ……そんな非科学的なものにワシの技術が負けるはずない!!お前達! やってしまえ!!」

わらわらと9体のロボット達が戦士達の目の前に現れる。

ウインドマン「ご安心ください。ワイリー様」
バブルマン「変身できないただの人間ごとき、我らの敵ではありません!」

だが、その時 ロボット達は複数の熱源を感知して辺りを見回した。
取るに足らないもの達が自分達を包囲していると気づいたのだ。
だが、もう遅い。
その包囲網は小さな牙を駆り立てて、ロボット達へと襲い掛かる。

ボック「皆! 今だボック!!」

精霊の呼びかけに現れたのは野の獣達。
キツネ、リス、野の獣とさまざまな野鳥達はロボット達からギンガブレスを奪い取ると、一目散に駆けリョーマたちにそれを渡す。

大自然を荒らす者達に森が行ったわずかばかりの反撃。



だが、その一回の反撃がロボット達にとって………致命的な敗因となる!
ギンガの戦士は自らの元に戻ったブレスを腕に嵌め、……星を護る者へと姿を変えた。

リョーマ・ハヤテ・ゴウキ・ヒカル・サヤ「ギンガ転生!!」

火柱が、竜巻が、水柱が、あるいは雷光が、花吹雪が戦士たちの姿を包み込む。
そして五色の自然の息吹が晴れ行くとき、そこに5人の戦士の姿があった。

「ギンガレッド! リョーマ!」
「ギンガグリーン! ハヤテ!」
「ギンガブルー! ゴウキ!」
「ギンガイエロー! ヒカル!」
「ギンガピンク! サヤ!」


だが姿を変えるのは5人だけにとどまらない。
光、海、風はいつかそうしたように腕の手甲についている水晶からかつての愛剣を取り出した。

その三人を導くようにヒュウガが己の剣を天に掲げ姿を変える。

ヒュウガ「騎士転生!!」

現れるのは黒い騎士、剣の元に正義を示す。

「黒騎士! ヒュウガ!!」

それに倣うように後ろの三人の少女達も剣を天に掲げる。

光「大地よ!」
海「私達に!」
風「力を!」

光・海・風「アース開放!!」

炎が、水が、風が少女達を包み込む。三つの力は少女達の武具をより強固なものへ、新しいものへと変える。防具というよりも胸当てでしかなかった最初のそれは、いまや鎧というにふさわしいものへと変貌を遂げていた。

「炎の魔法騎士! 光!!」
「水の魔法騎士! 海!!」
「風の魔法騎士! 風!!」

少女達は3つの剣を天に掲げ、交差させる。

光 海 風「我ら、魔法騎士!!」

ギンガレッドは人差し指を天に掲げ、ロボット達へと振り下ろす

リョーマ「銀河を貫く伝説の刃! 星獣戦隊!!」

ゴウキ・ハヤテ・ヒカル・サヤ・ヒュウガ「ギンガマン!!」

ギンガマン……それは、勇気ある者のみに許された、銀河戦士の称号である!

ヒカル「形勢逆転だな! Dr.ワイリー!!」

ビッ!と人差し指を憎きハゲ頭へと向け、ギンガイエローが叫ぶ。

ワイリー「ええい! こしゃくな!! ………やってしまえお前達!!」
ロボット達「ハッ!!」


鋼の体を持つ悪鬼たちと。

自然の力を一身に背負った戦士達が。

今、最後の戦いを迎える!



67 名前:新章/魔法騎士 アース解放編  :2008/11/21(金) 20:40:50
○魔法騎士とリョーマ達→帰還する。
○ギンガマンと魔法騎士→変身し森を荒らす無法者と再び合間見える
●ワイリー→大激怒。



68 名前:新章/魔法騎士 アース解放編:2008/12/18(木) 23:36:58
ロボット達は律儀にもワイリーに礼をして戦士達に襲いかかってくる。
だが、いまや彼らは戦士の脅威になり得ない。

バブルマンが言っていた言葉。

『スーパー戦隊は全員一緒にして闘ってはならない』
そういったのは彼らだ。
そして、この言葉こそ悪しきロボット軍団を瓦解させる唯一の手段。
過去30以上の組織がその団結力によって野望を潰されてきた。
故に………ワイリーはこの場に止まるべきではなかった。
尻尾を巻いて逃げるべきだったのだ。
彼は判断を誤り、己の愚かしさを悔いることとなる。

ギンガレッド「唸れ! 獣装光! 銀河の光!!」

戦士たちの体は輝き、体に金色のプロテクターが装備される。

エアーマン「おのれ! 受けろ! エアーシューター」
風「守りの風!」

旋風は牙を剥く。だが、その旋風は同じ力によって相殺された。風の障壁がエアーシューターを無効化させてしまったのだ。

エアーマン「ばかな! 俺の必殺技が!!」

驚愕をよそに今度はフレイムマンとヒートマンが前に出た。
彼らは構え自らの周りを熱気で満たす。

フレイムマン「ふん、例え力を取り戻そうと」
ヒートマン「俺達には勝てるもんか!!」

二体の機人が放った炎は風の張った障壁を飲み込んだ。
障壁の風を吸収し、より苛烈になった炎は魔法騎士とギンガマンに迫る。
その炎を見てリョーマは魔法騎士 光にまなざしを向けた。

リョーマ「光!」
光「……(コク)」
頷きを返す炎の魔法騎士。

リョーマ「炎のたてがみ!」 

リョーマが放った炎はフレイムマンとヒートマンの放った炎とぶつかりあう。
そして………。

 光「炎の矢!」

炎でできた矢が拮抗していたバランスを完璧に崩した。
フレイムマンとヒートマンの放った一撃はソレに飲み込まれる。

形を変えた炎は唸り声を上げた。そう、無機物である炎が咆哮を挙げたのだ。

フレイムマン「ば、ばかな………何だぁ!?」
ヒートマン「あれはまるで………」

その炎の中には2体の猛獣の姿があった。
額に一本の角を生やし、2対のロボットをにらみつける獅子は『レイアース』
金色に輝くたてがみを持ち、勇ましい声をあげるのは『ギンガレオン』

レイアース「グルルル………」 

ギンガレオン「ウォオオオオオン!!」

アースによって形作られた2体の獅子がフレイムマンとヒートマンを飲み込んだ!
炎の中で逃げ出そうともがく鋼の魔人達。

フレイムマン「グゥゥ!!」
ヒートマン「くそっ……身動きが……」

逃げることはかなわない。
炎は固体ではない。
掴むことすらできないそれを振り払うなどどうやってできようか?
やがて彼らの装甲が徐々に剥がれ落ちてきた。
炎を生成する彼らの、装甲がである。

フレイムマン「そんな、6000℃にも耐える………俺達の耐熱装甲が!?」
ヒートマン「周囲の温度が………活動限界点を……突……破…………」

その言葉が彼らの発した最後の音声となった。

グアァァン!!

内側から吹き飛ぶように爆散するロボット。
ディウンディウンディウンと、爆炎が花びらのように周囲に散る。

周囲にいたワイリーナンバーズは2体の散りざまを見て動揺を隠し切れない。

ウィンドマン「ば、ばかな!? フレイムマンとヒートマンが……」
ナイトマン「炎で破壊されるとは………」

ロボット達の電子頭脳から警戒を促すアラームが鳴り響く。


熱き戦いは、圧勝のうちに決した。





69 名前:新章/魔法騎士 アース解放編:2008/12/18(木) 23:40:50
○ギンガマン 獣装甲を身につける。

第一ラウンド

○光&リョーマVSフレイムマン&ヒートマン→光たちの圧勝。
●フレイムマン&ヒートマン→敗北=破壊




70 名前:新章/魔法騎士 アース解放編:2008/12/18(木) 23:47:08
WARNING!!

WARNING!!

ロボット達は己が頭の中でなり続けるアラームを無理やりシャットした。
だが、彼らの回路から、今まで存在すら知らされなかった電気信号が発せられ、手足や指先は、それを敏感に受け取り兆候として体に示す。

プラントマン「馬鹿な……なぜ俺達の指が、震えているんだ?」
ウェイブマン「冷却水がオーバーフローしている。……これが人間のかく『汗』というものなのか……?」

ある者は己の両手が震える。
ある者は己の頬に冷や汗をかく。

彼らはその「異常事態」の意味を理解できない。
人造人間キカイダーに付けられたような「良心回路」でも備えていたなら理解することができたかもしれない。

だが彼らはソレを理解できなかった。

『感情』という機能……その一種を。
故にその電子頭脳は知覚できないまま、ただ信号だけが発せられる。


その感情の正体。それは。

ヒュウガ「恐怖。それが、破壊者であるお前達が最初に手に入れた感情だ」

冷静な黒騎士の意見に彼らは激昂する。
彼らは恐怖の意味を知っていた。
恐怖とは 弱者が抱く「畏怖」の感情だということを。

ウェイブマン「ばかな! 俺達が人間ごときに恐怖するだと!?」
バブルマン「言わせておけば貴様ぁ!」

ウェイブマンがバスターを再び大地に押し当てる。
自らの恐怖もろとも戦士たちを押し流してしまおうと。
破滅の水流を起こそうともくろんだのだ。

全てのロボットが、これでこの戦いが終わると確信した。
すでに森の大木の根がほとんどへし折れているこの大地でウェイブマンの必殺『ウォーターウェイブ』を使えば、土砂崩れにより山の斜面に位置するこの森は崩れ去るだろう。
だが、自分達は地中に埋まろうと致命傷にはならない。
Dr.ワイリーの安全はエアーマンが確保している。
故に『自分達が勝った』とロボット達は、思考することをやめてしまった。

ただ一人、優れた演算機能を持つエレキマンを除いて。

エレキマン「……なんだ、周囲の温度が下がっている?」

原子力エネルギーの制圧作業という、綿密な作業を行うために作られたエレキマンは、周囲の違和感からウェイブマンに命じた。
それを止めるようにと。

エレキマン「待て! ウェイブマン」

だが、ソレは発動した。
一度開けた切り札はもう手札に戻らない。

ウェイブマン「食らえ……! ウォーターウェイブ!!」

水柱が大地を貫く。
それに合わせ鳴動する大地。

だが、魔法騎士もギンガマンも取り乱す者は一人もいなかった。
あたりに水飛沫が散る。
だが、水柱は自然を守る戦士たちを貫こうとはしない

ウェイブマン「ばかな!? 何故攻撃があたらない?」
ゴウキ「森を破壊するお前達に、自然は決して味方をしない!!」

ギンガブルー・ゴウキが怒りを込めた。
やがて水柱は収まる。
大地は崩れる気配を見せない。それに狼狽するウェイブマン。

エアーマン「おい! どうした!? 攻撃を続行しろ!!」
ウェイブマン「できない! 何者かが水流を吸収しているんだ!」

ウォーターウェイブの打ち止めに右往左往するロボット達。
そしてギンガマンと魔法騎士の頭に響く、ここにはいない仲間の声。

モーク「皆、森の木々が最後の力を振り絞って水流を吸い上げてくれている。ウェイブマンの攻撃はもう使えない」

知恵の木・モーク。
全ての木々と心を通わす彼もまた『星を守る戦士』の一人。

海「許さない……貴方達だけは!!」

水の魔法騎士 海は湧き出す怒りとともに自身の剣を天に掲げた。

(今までに放ったことのないまったく別の力が湧いてくる……これが新しい、アースの力!)

海は己の中で新しい呪文が生まれるのを感じた。
それは彼女の体を伝導体と化し、剣の切っ先へと集約される。

 「波紋の鎖!!」

『波紋の鎖』
生み出されたその新しい呪文は敵一体の周囲にある水分を結晶化させ動きを封じる。
だが、考えてみて欲しい。

この呪文は本来、大気中の水分だけで相手を氷結させることができるほどの力を秘めている。
先のウェイブマンの水流で周囲には十分すぎるほどの水分が満ちていた。

この状況でそれを使えば敵一体の動きを封じるだけですむだろうか?

否、条件がそろったフィールドで放った切り札がその程度で済むはずがない。

蒼い光はウェイブマンを貫き、瞬時に彼の体全てを凍結させてしまう。

それだけでは飽き足らない。
ウェイブマンを始点とするその一撃は、その周囲にいるロボット達の下半身も一瞬のうちに凍結させた!

プラントマン「ば、ばかな!?」
エレキマン「だから止めろと………」

エレキマンが皆まで言わぬうちに、今度は風が神に祈るように両手を組み、言霊を唱える。
空を駆ける疾風が彼女の周囲で渦を巻き、風の姿を覆い隠した。

(感じます。……大地とこの森の痛みを。……私達に代弁させてください。物言わぬ貴方達の悲しみを!)

 風「幸運の風!」

風の放った言葉により今度はギンガマンたちの体に風が巻きつく。

ギンガピンク「何?……力が溢れてくる」
ギンガグリーン「森に吹く風が……俺達に力を貸してくれたのか?」

ギンガマンたちは己の握る星獣剣を見た。
刀身に映る己の姿が、いつもよりも凛々しく見える。

『幸運の風』
味方の武器や戦士の腕を上げ、会心の一撃を引き出す魔法。
戦士たちの力は限界まで引き上げられる。
そこから導き出される一撃はただ一つ。

ハヤテ「皆……行くぞ!」

ギンガグリーン・ブルー・イエロー・ピンク「ギンガの閃光!!」


リョ−マとヒュウガを除く戦士たちは黄金の弾丸となってロボット達に向かって突き進む!

Dr.ワイリーの安全確保のためにその場を離れていたエアーマンを除き、生き残っていた全てのロボットがそれに体を貫かれた!!

バブルマン「ば、ばかな……」
ナイトマン「俺達の装甲を一撃で……?」

ディウンディウンディウン!!

爆散し、散り行くロボット達。
さきほどまで苦戦していたのが嘘のように。
勝負の決着はあっさりとついた。

ワイリー「そんな馬鹿な!…ワシの力が…あんな、あんな、わけの分からんものに………う〜ん」

ワイリーはショックのあまりエアーマンの腕の中で気絶した。
自分の科学技術が魔法に敗れたことがよほどショックだったと見える。

エアーマン「ああ、ワイリー様! お気を確かに」
黒騎士「そこまでだ。動かないでもらおうか」

そのエアーマンの体に剣を突きつける黒騎士。


光「終わったのか……?」
リョーマ「みたい……だな」

だが、その戦いはまだ終焉を迎えた訳ではなかった。


ガルマ「お初にお目にかかる、スーパー戦隊の諸君。」



はるか天空の彼方から 悪夢の元凶 ガルマ・ザビの声が響く。





71 名前:新章/魔法騎士 アース解放編:2008/12/18(木) 23:50:15
第二ラウンド

○モーク ウェイブマンの攻撃を封じる。
○海 エアーマンを除くロボット全員の動きを封じる。
○風 ギンガマン全員の攻撃力を強化。
○リョーマと黒騎士を除くギンガマン→ギンガの閃光でロボット達を撃破。
●ロボット達→破壊される。
●ワイリー→あまりのショックで気絶。
●ガルマ 降臨



72 名前:新章/魔法騎士 アース解放編  :2008/12/24(水) 18:21:10
ガルマ「お初にお目にかかる、スーパー戦隊の諸君。」

遥か天空 Dr.ワイリーが乗ってきたより幾分大型のUFOがそこにいた。
人の神経を逆なでする声は其処から響いてくる。

ガルマ「ドクターのロボット軍団を退けたのはさすがといっておこう。だがな、本物のショーはここからなのだよ」

その声が合図であったかのように、UFOから突如、鋼で出来た要塞のような兵器が投下された。

ギンガレッド「何だ!? あれは!」
ガルマ「名はインペライザー。『無双鉄神』の持つ巨大ロボット兵器だ。侮るなよ?フォルムこそ旧型のモビルスーツのような外観だが………」

言葉とともに頭部から突き出た銃口に光が灯る。

ギンガグリーン「! 皆避けろ!!」

ギンガグリーン・ハヤテの声とともに、ある者は飛び、ある者は地に伏せた。

無双鉄神・インペライザーは銃口から火を噴く。
銃口の乗った頭部は360度、物凄いスピードで回転しながらおびただしい量の光弾を放つ!!

ガルマ「くくく………見たかね? これがかつてウルトラ戦士と互角に渡り合った、我がDショッカー地下帝国軍最強の兵器よ! これの量産に成功すれば地球での覇権を取るなどたやすいわ!」

ガルマの言葉を聞いて戦士たちが目を開けたとき、そこには正真正銘の焦土が広がっていた。
森はまだいい。若干の木々を残している。
だが、ギンガマンの友人であった、勇太たちの住む町はそのほとんどが瓦礫に埋もれてしまっている。

そして一体だけに収まらずぞくぞくと投下される無双鉄神たち。
その数、5体。

ギンガレッド「よくも……森を……勇太たちの住んでいる町を! ……ギンガレオン!!」

ギンガレッド・リョーマは星獣の名を叫んだ。
リョーマの呼びかけに答えるように星獣達は相棒たる彼らの元へと駆ける。
ギンガマンたちは彼らの肩元や頭上に飛び、武器である自在剣・機刃を天に掲げた。

ギンガレッド「大転生・銀星獣!!」

星獣たちは己の姿を金属で覆われた獣……銀星獣へと姿を変えた。
五体の銀星獣………ギンガレオン・ギンガリラ・ギンガルコン・ギンガベリック・ギンガット。
この五体はそれぞれの力を合わせる事で、巨大ロボット。ギンガイオーへと姿を変える。

そして。

黒騎士「騎獣合身!!」

黒騎士は自らの星獣であるゴウタウラスの額から放たれる光を浴び、巨大化し、ゴウタウラスと合体した。

ブルタウラス「合身獣士! ブルタウラス!!」

黒き巨人が光臨する。




少女達は二体の巨人を見上げ、己の手の甲にある水晶に手を置いた。


光「海ちゃん。風ちゃん」
海「ええ。私たちも」
風「参りましょう」

少女達は己の星獣となった者達の名前を叫ぶ。

光「レイアース!」 
 海「セレス!」
風「ウィンダム!」 

表れし三体の魔神。

5体のインペライザーVSブルタウラス、ギンガイオー、レイアース、セレス、ウィンダム

真に最後の戦いの火蓋が今、切って落とされる!




73 名前:新章/魔法騎士 アース解放編  :2008/12/24(水) 18:27:57
行動説明

○ギンガマン→ギンガイオーを召喚
○黒騎士→ブルタウラスへ騎獣合身
○魔法騎士→魔神を召喚
●ガルマ→インペライザーを召喚。その力を見せ付ける。
●5体のインペライザー→破壊活動、開始

【今回の新規登場】

●無双鉄神インペライザー(ウルトラマンメビウス)

かつて闇の皇帝と呼ばれたエンペラ星人の尖兵。
尖兵ながらその戦闘能力は凄まじく、ウルトラマンメビウスを一度は敗北に追い込みウルトラマンタロウと互角の戦いを見せた。最後は両者と人間の協力によって敗れ去る。
 尚、空想大戦世界においてウルトラマンメビウスは平行世界の未来の出来事として扱われている。Dショッカーは何らかの技術を用い未来へと渡航し、破壊されたインペライザーの破片を用いてこの破壊兵器を量産する計画を施行したのではと推測される。  。





74 名前:新章/舞い降りた英雄:2009/01/26(月) 17:52:11
 
幻想界。
かつての五界混沌事件時の功労者達の多くが住まう、神秘的な力に満ちた世界。
その一角には、とある有名な王国があった。
城下町は人々の活気に満ち溢れ、まさしく平和その物である。
しかしこの王国は、建国以来ずっと平和であったという訳ではない。
これまでに幾度となく、多くの危機に晒されてきている。
壊滅寸前にまで、追い詰められた事さえもあった。
ならば何故、今はこうして平和な時を過ごせているのか。
その理由は、極めてシンプル。
この王国には・・・英雄がいるからである。
優れた力を以て、王国に迫り来る数多くの困難を打ち砕いてきた英雄が、ここに存在しているのだ。
普段ならば、城下でその英雄の姿をほぼ毎日確認することが出来る。
しかし今は残念ながら、仕事で不在のため、その姿は見られなかった。
最も、平和な今この時には、特に問題はない。
何かしらの危機が迫らない限りは、大丈夫である。
その為、誰も気に止めはしなかったのだが・・・しかし。
 
 
今、この王国には・・・その危機が、迫りつつあったのだ。
しかし、当たり前ではあるが、不幸にも誰もそれには気付かない。
そして、今・・・危機は、その姿を現した。
 
町人「な、何だ!?」
 
突然、陽炎の如く、町の中心部の風景が歪み始めた。
誰もが驚き、足を止めてそれに見入る。
すると、その瞬間であった。
突如として・・・そこに、一体の巨大な生物が姿を現したのだ。
この幻想界では、決して見られない筈の存在・・・怪獣、グドン。そしてその傍らに、学ランを着た一人の格闘家・・・草薙京が現れる。
無論、本物ではない・・・ネスツによって生み出された、クローン京である。
こうなれば当然ながら、グドンも本物ではない。
ネスツによって生み出された、クローン個体の一匹。
しかしながら、実力は本物以上と想定される。
 
 

75 名前:新章/舞い降りた英雄:2009/01/26(月) 17:53:21
クローン京は、周囲を見回し、これといった問題が無さ気なのを確認すると・・・
グドンへと、とんでもない言葉を言い放った。
 
クローン京「よし・・・やりな。
存分に暴れてやれ!!」
 
ネスツの目的は、クローン体の戦闘データを採取する事だった。
先日は、自分達の世界にて、ウルトラセブンのクローンを放った。
結果は上々・・・クローンセブンは最終的に敗北こそしたものの、優れた兵力を持つオーブを相手に凄まじい戦果を上げてくれた。
即戦力として、大いに期待出来る。
ウルトラマンのクローンという偉業を成し遂げたネスツは、続いて怪獣のクローン作成にも着手していた。
ウルトラマンがいれば、別に怪獣なんていらないのではないか。
そう思う者は、最初は少なくはなかったのだが・・・世の中には、適材適所という言葉がある。
例えば、このグドンは・・・地中怪獣に分類されている。
地中での戦いならば、ウルトラマン以上の可能性があるのだ。
早い話がネスツは、局地戦用の戦力を手にする為、怪獣のクローニングに踏み切ったのである。
ちなみに場所を幻想界にしたのは、ネスツ側の時空転移装置起動実験を兼ねてである。
 
人々「う、うわあぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
 
暴れ出したクローングドンを前に、人々はパニックを起こし始める。
そんな事はお構い無しに、クローングドンは破壊の限りを尽した。
一瞬にして、平和な町中は地獄へと変わってしまった。
騒ぎを聞き付け、城の兵士達が駆けつける。
彼等はクローングドン目掛けて、一斉に槍を投げつけた。
クローングドンが大声で哭く。
どうやら、それなりにはダメージを与えられたらしい。
続けて兵士達は、二撃目を放とうとする。
しかし・・・直後。
クローングドンが、両手の鞭で勢いよく横薙を仕掛けて来たのだ。
兵士達は攻撃を中断し、とっさに逃げ出す。
だが・・・グドンの鞭は、かなりのスピードを有している。
全員が、避けきれる訳ではなかった。
哀れにも、直撃を受け・・・事切れた者も、中にはいた。
その光景を見て、誰もが恐怖する。
勝てないかもしれない。
このままでは、確実に殺されると。
兵士達の士気は、下がりつつあった。
それとは対照的に、クローングドンはやる気に満ちている。
両手の鞭を、再び振り上げる。
そして、それを兵士達目掛けて叩きつけようとした・・・まさに、その時だった。

76 名前:新章/舞い降りた英雄:2009/01/26(月) 17:59:18
「イーーヤッホーーーッ!!」
 
高らかに声を上げ、その男は舞い降りた。
クローングドンよりも、さらに高い・・・遥か上空から。
常人離れした跳躍力を見せるその男は、大きく右脚を振り上げ・・・クローングドンの眉間に、踵落としをお見舞いした。
クローングドンも、この一撃には堪らなかった。
ダメージに怯み、動きを中断させる。
そこへ、男は追撃を仕掛けた。
掌を、クローングドンの鼻先へと押し付け・・・直後。
 
ドゴォン!!
 
クローン京「なっ・・・!?」
 
掌から、爆発が起こった。
男が仕掛けたのは、クローン京の持つ必殺技『琴月』と同じ、零距離爆破。
クローングドンは悲鳴を上げ、よろけ倒れこむ。
想定外の事態が起こってしまった。
たった一人の乱入者の前に、形成を逆転されてしまったのだ。
不幸中の幸いは、クローングドンにはまだトドメが刺されていない事。
何とか復活が出来そうだと判断すると、クローン京は構えを取った。
現れた男は、タダ者ではない。
 
???「キノコ料理で一杯やろうと思っていたが・・・
どうやら、大変な事になってるようだな」
兵士「あ、あなたは!!」
 
現れた男は、この王国・・・キノコ王国を幾度となく救ってきた、一人の英雄。
幻想界では、知らぬ者はいないとまで言われている有名人。
驚異的な跳躍力を持つ、伝説の配管工。
 
クローン京「てめぇ、何者だ!!」
マリオ「・・・俺か?
俺は・・・It′s me Mario!!
 
マリオ、その人である。
 
 


77 名前:新章/舞い降りた英雄:2009/01/26(月) 18:00:21
○マリオ→キノコ王国の危機に駆けつける。
驚異的な身体能力を発揮し、クローングドンを圧倒する
●クローングドン→マリオに顔面を爆破され、ダメージ大。
眉間からは、出血している。
●クローン京→キノコ王国で、クローングドンのテストを開始。
マリオが見せた驚異的な能力に驚きを隠せない
 
【今回の新規登場】
○マリオ(スーパーマリオシリーズ)
世界的に有名なヒゲオヤジ。
驚異的なジャンプ力を誇り、幾度となくキノコ王国の危機を救った英雄。
本業は配管工だが、医者やコック、レフェリーや解体屋、
レーサーにゴルファー、テニスやバスケ等、様々な分野で活躍している。
格闘センスは大したもので、打撃は勿論、投げ技にも精通している。
ファイアーボールを始めとして、自在に炎を操る能力を持つ。
また、ハンマーやバズーカといった類の武器を難無く扱えるなど、かなりオールマイティー。

●グドン(帰ってきたウルトラマン)
両手が鞭の形をした、地中怪獣。
ツインテールを倒し、ウルトラマンジャックも苦しめた、隠れた実力派怪獣。

78 名前:新章/舞い降りた英雄:2009/01/26(月) 18:03:43
***ホテル・トアール***
 
係員「すみません。
リュウさんとケンさんはいらっしゃいますか?」
ケン「ん?」
リュウ「ここだが、どうしたんだ?」
 
皆と談笑しあっていた二人の下に、一人の係員がやってきた。
彼の手には、何やらメモ用紙らしきものが握られている。
どうやら、自分達宛への伝言らしい。
 
係員「実は、こちらで合流予定だったガイルさんだったのですが……急遽用事で、来られなくなったそうです」
ケン「え、マジかよ?」
キャミィ「……リュウ、ケン。
話が見えないが、一体どういうことだ?」
リュウ「実は、俺達がここに来る前に、ハイデルンから言われていたんだ。
パイプ役が俺達以外にもほしいから、ガイルをそちらに寄越すつもりだったって……」
ケン「でも、何で急に……まあ、後で聞いてみっか。
ありがとな、伝えてくれて」
係員「いえ……では」
 
係員は伝言を伝え終えると、さっさと広間を後にする。
ここに来ての、あまりにも急なガイルの帰還。
ネスツ関連の問題あたりで、何かあったのだろうか。
しかし、今の自分達にはそれを知る手段がない。
リュウ達は少しばかり疑問を感じつつも、再び食事を開始する。
 
 
 
***幻想界 キノコ王国***
 
マリオ「一体何が目的かはわからないが、お前達の好きにはさせないぞ!!」
クローン京「……クローングドンを一撃か。
こりゃ、とんでもねぇ奴が出てきてくれたぜ……」
 
一方その頃。
幻想界のキノコ王国では、マリオとクローン京が対峙していた。
まさか、生身でクローングドンを撃破できる人間がいるとは思わなかった。
いや、生身での撃破それ自体は、やろうと思えば出来る者は大勢いる。
クローン京にとっての不運は、自分達が降り立った先にこのキノコ王国にそれが出来る人物がいたということである。
兎も角、折角のテストを台無しにしてくれた礼はしなければならない。
クローン京はその手から炎を発し、勢いよくマリオへと殴りかかっていった。
だが、この直後……なんとマリオも、全く同じことをしたのだ。
彼もまた、京と同じ人体発火能力の持ち主。
これぐらいの芸当は、なんでもなかった。
 
マリオ「っ!!」
クローン京「ぐっ!!」
 
紅蓮の炎を宿した両者の拳が、正面から激突し合った。
攻撃力はほぼ互角。
ならばと、クローン京は連撃を仕掛ける。
炎を宿した拳による、全力の乱打。
マリオは防御を固めて、その攻撃に必死になって耐える。
どうやらスピードならば、自分の方が上らしい。
そこに正気を見出したクローン京は、マリオに反撃の隙を一切与えない様、更に攻撃のスピードを上げる。
しかし……マリオは、反撃できなかったのではなかった。
 
クローン京「オラオラオラオラオラァッ!!」
マリオ「……いまだっ!!」
クローン京「なっ……!?」
マリオ「イーーヤッホーーーッ!!
クローン京「ゴハァッ!?」
 
どのタイミングで反撃すれば、最も効果的なのか……そのタイミングを、単に計っていただけだったのだ。
マリオは一瞬の隙を見切り、その場にしゃがみこんだ。
クローン京の拳が空を切り……そして、その直後。
マリオは強く地を蹴り、勢いよく跳躍……全力のアッパーカットを、クローン京の腹に叩き込んだ。
そのままクローン京は、マリオに押し上げられる形で宙を舞った。
だが、まだマリオの攻撃は終わっていない……最後のトドメが、ここで襲い掛かってきた。
マリオの拳から豪炎が噴出し、爆発を起こしたのだ。
クローン京はその直撃をもろに受け、宙へと投げ出された。
マリオはそのまま、何事もなく地上に着地。
遅れて数秒後……クローン京が、背中から地面に打ちつけられる形で落ちてきた。
 
クローン京「がっ……!?」
マリオ「俺の勝ち、だね?」
クローン京(う、嘘だろ……なんだよ、このひげ親父は!?
手も足も出ねぇ……滅茶苦茶強ぇじゃねぇか!!)
 
マリオの実力は、正直桁違いだった。
このまま戦っても、勝ち目は皆無……逃げるしかない。
クローン京は起き上がるやいなや、強く地を蹴って逃げ去ろうとする。
だが……そんな彼の目の前には、思いもよらぬ壁が立ちはだかっていた。
 
クローン京「て、てめぇは……なんで、こんなところに……!?」
ガイル「ゆらぎとやらが発生しているのを見かけたんでな。
リュウやケン達には悪かったが、気になったから少し調査に出向いてみた訳なんだが……
まさか、ゆらぎの先にいたのがネスツだったとはな。
どうやらあのゆらぎは、お前達が関係しているらしいな?」
 
クローン京の目の前に現れたのは、本来ならばリュウやケン達と合流するはずだった軍人。
特徴的な髪形をした、ソニックブームの使い手……ガイルだった。
遡る事数十分前。
ガイルはホテル・トアールに向かう最中で、時空の乱れ……ゆらぎらしきものを確認したのだ。
これは何かあるかもしれない。
そう思った彼は、リュウとケンへと伝言を残した後、思い切ってその中へと飛び込んだのである。
結果……思わぬ収穫を手にすることが出来た。
 
ガイル「クローンウルトラマンだけに飽き足らず、クローン怪獣か。
ネスツも、ずいぶん大掛かりな侵攻計画を立てているらしいな……?」
マリオ「あなたは?」
ガイル「こいつ等と同じ世界にいる軍人だ。
安心してくれ、俺はこいつ等……ネスツとは敵同士。
つまり、そちらの味方ということになる」
クローン京「……ゆらぎが発生してた、だと?
まさか……今までの転移実験じゃ、そんな事は一度も……!!」
ガイル「何?」
 
クローン京の言葉を聴いたところで、ガイルは思わず動きを止めてしまった。
行き着いた先にネスツがいた事から、あのゆらぎはネスツが元凶だとばかり思っていた。
しかし……嘘をついた様子がなさそうな所を見る限り、どうやらそれは違うらしい。
ならば、一体何が原因でこの事態が起こったのだろうか。
 
ガイル「……だが、考えてみれば、五界の人間がまた集まったのも……いや。
時空クレバスが発生した原因そのものも、現状では詳しくは分かっていない。
原因を追求しても、キリがないか……」
クローン京「……くそ、どけぇっ!!」
 
クローン京はガイルが隙を見せている今こそがチャンスであると感じ、特攻した。
炎を拳に宿し、勢いよく彼に殴りかかろうとする……が。
その拳がガイルに届くことはなかった……それよりも先に、別のものが彼に襲い掛かったからだ。
 
クローン京「がっ!?」
ガイル「お前をここで倒す。
その目的に、一切代わりはない……!!」
 
クローン京の顎に、ガイルのサマーソルトキックが叩き込まれていたのだ。
ガイルは、一部では『待ち軍人』の異名で囁かれているほどの、受けにおけるスペシャリスト。
カウンターの取り方においては、超一流の人物なのだ。
対するクローン京は……かつてポップ達を追い詰めたクローンほどの実力は持たない、劣化クローンである。
ネスツはクローン京を私兵として扱っているが、そのクローン京には致命的な欠点があった。
それは、彼等の多くが劣化コピーであるということである。
本物の京に逃れられた後、ネスツはクローン京のクローンを繰り返すことで、クローン京を生み出していたのだ。
しかしこのやり方では……後になるに連れ、能力が劣化したクローンしか生まれなくなる。
これは、他のクローン……それこそ、ウルトラマンや怪獣のクローンにもいえることである。
最も彼等の場合は、データが少なからず残っているので、京程実力差のある劣化クローンは生まれないだろう。
クローン京の場合は、本物の京がネスツ脱走の際、データの大半を破壊していったのが痛すぎた。
もう一度京を捕獲でもしない限りは、この先、劣化コピーしか作り出せない。
 
ガイル「実力の劣化したクローンじゃ、この程度が限度だろうな。
もしもお前が本物の京なら……俺でも勝てるかどうか分からん。
奴の実力は本物だからな……さて、色々とネスツの情報を話してもらおうか?」
クローン京「っ……甘いな。
そんな事、誰が吐くかよ……ぐっ!!」
マリオ「えっ!?」
ガイル「なっ……しまった、毒か!!」
 
クローン京は、歯に仕込んでいた毒を使って自殺をしたのだ。
MDPO総合医療センター襲撃事件の際にウカワームが別のクローン京と戦ったときと、全く同じ展開である。
またしても、手がかりを得ることが出来なかった。
後少しというところで、いつも彼等には逃げられてしまう。
 
マリオ「……あの、よかったら話を聞かせてもらえますか?」
ガイル「そうだな……お前には、話を聞く権利がある。
少しばかり長い話になるが、構わないか?」
マリオ「ええ、全然。
あ、でもそういえば……」
ガイル「?」
マリオ「元の世界に戻る宛って、あるんですか?」
ガイル「ああ、それなら問題はない。
時空の乱れに飛び込む寸前に、仲間に連絡を入れておいた。
座標の特定には少しばかり時間がかかるだろうが、ディオドスを使って迎えに来てくれるだろう」
 

79 名前:新章/舞い降りた英雄:2009/01/26(月) 18:04:39
○マリオ→グドンを撃破した後、驚異的な身体能力でクローン京を圧倒。
ガイルから、一体何が起ころうとしているのかを詳しく聞くつもりでいる。
○ガイル→リュウ達と合流する予定を変更し、単身幻想界に突入。
ネスツがクローン怪獣の作成に着手していたことを知る。
仲間達が迎えに来るまでの間、しばらく幻想界で厄介になるつもりでいる。
●クローン京→マリオとガイルに破れた後、逃げ場がないと悟り自殺。
 
 
【今回の新規登場】
○ガイル(ストリートファイターシリーズ)
アメリカ空軍に所属する軍人で、階級は少佐。
ソニックブームとサマーソルトキックの達人で、一部では『待ち軍人』の異名で呼ばれている。
シャドルーの総帥ベガに殺された親友ナッシュの仇をとるために、かつてリュウ達と共にシャドルーに戦いを挑んだ。
箒を逆さにしたような個性的な髪型と、左肩に施された星条旗のタトゥーがトレードマーク。
ちなみに、彼女の妻ユリアの妹イライザはケンの妻である為、彼とは義兄弟の関係になる。
CAPCOMvsSNKシリーズにおいて、京達SNKのキャラ達とは競演を果たしている。

80 名前:新章/天から降りし災厄編:2009/01/26(月) 18:06:41
神楽「つまり……豪鬼は、その『天から降りし災厄』を使ってオロチ一族が何かをしようとしていると、あなたに伝えたわけね」
京「ああ……何のことかわかるか?」
神楽「いえ……残念ながら、私にも検討がつかないわ」
 
徳川邸にて、花山によってアスタロトが退けられた後。
京は豪鬼の言葉の意味を知る為、自らと同じ三種の神器の一人を尋ねていた。
鏡を司る『護るもの』八咫の末裔……神楽ちづる。
オロチに関しては、彼女ほど詳しい人間はいない。
そう判断しての行動だったのだが……残念ながら、成果は得られなかった。
神楽にも、豪鬼の言葉の真意が分からなかったのだ。
オロチ一族の目的は、地球に生きる全人類の抹殺……何が何でも、防がなければならない。
その為にも……彼等が何をしでかそうとしているのかを、どうにかして知る必要がある。
何か、いい手段はないだろうか。
そう思い、二人がしばし考えたその後……神楽がふと、口を開いた。
 
神楽「……もしかすると、あの人なら何か知ってるかもね」
京「あの人……誰だ?」
神楽「ちょっとした知り合いよ。
少なくとも、あなたが知っている人では……」
 
神楽がその者の名を口にしようとした、その時だった。
力強く障子を開き、一人の男が突然部屋の中へと入ってきた。
京と神楽はとっさに身構え、乱入者の顔を見る。
すると……その乱入者の顔を見て、二人は少しばかりの驚きを覚えた。
現れたのは、自分達にとってとても身近であり……そして、意外な人物。
三種の神器最後の一人……『封ずるもの』
勾玉を司る八尺瓊が末裔、八神庵だった。
 
京「八神……!?」
 
一瞬にして、場の空気が緊迫したものへと変化した。
無理はない……京と庵は、三種の神器としての660年前からの因縁も手伝った、互いに嫌い合っている仲なのだ。
ライバルなどという言葉では決して片付けられない、宿敵同士。
事実二人はこれまでに、何度となく死闘を繰り広げてきた。
特に庵は、京を本気で殺すつもりで毎回戦いを挑む程である。
オロチを封じる際は、神楽が間にいてくれたお陰で、辛うじて協力し合えたが……
 
神楽「待ちなさい、八神!!
今は、あなたと草薙が争いあっている場合じゃ……」
庵「……分かっている」
京「何……?
テメェ、じゃあ何が目的で……」
庵「豪鬼に、ここに来るようけしかけられた」
神楽「豪鬼に!?」
 
庵が神楽の屋敷を訪れたのは、京と全く同じ理由であった。
彼は、豪鬼にけしかけられて彼女の元に現れたのだ。
最も、京がいたのは予想外ではあったのだが……本音を言えば、今すぐにでも庵は京とやり合いたかった。
だが……それでは、豪鬼の言葉の意味を確かめる事が難しくなる。
庵にとっても、オロチ一族は因縁の敵なのだ……彼等が何を企んでいるのかは、庵も気になっていた。
ならば京と決着をつけるのは、彼等を片付けてから……そう判断しての行動だった。
 
庵「貴様との決着はつける……貴様を殺すのはこの俺だ」
京「……」
庵「だが、その前に片づけねばならんこともある」
京「……そうだな」
神楽「……まあ、何にしても貴方達に争う気が無くて助かったわ。
それじゃあ、話を戻すけど……豪鬼の言葉に関して、あの人の意見を聞いてみるわ。
二人とも、少しだけ待っててくれる?」
 
神楽は祭壇に祭られている鏡と、その傍らに置かれていたある物を手に取った。
それは、神秘的な光を放つ一枚の羽であった。
羽を鏡の上に乗せ、更に神楽は、己の力を鏡に集中させ始める。
すると……その直後だった。
鏡が眩く光り始め、目の前の壁に何かを映し出し始める。
壁に映し出されたのは、黒髪の一人の女性だった。
 
神楽「お久しぶりです、侑子さん」
侑子『あら、神楽ちゃんじゃないの……久しぶりね。
あなたが私を尋ねてくるなんて、珍しいわね』
庵「……誰だ?」
神楽「この人は壱原侑子さん。
異世界に住んでいる、次元の魔女と呼ばれる人よ」
京「異世界って……待てよ神楽。
お前の力じゃ、異世界と連絡取るなんて真似は」
神楽「確かに、私の力……八咫鏡の力には、異世界に干渉する力なんて一切無いわ。
でも、それを可能にしてくれたのがこの羽の力よ」
 
神楽は光り輝く羽を京と庵に見せ、全てを説明する。
神楽の内に眠る力……八咫鏡の力は、あらゆる敵の能力を一時的に封じ、無力化させる力。
オロチ封印の際に、オロチの動きを封じるという重要な役割を果たした力であった。
異世界に干渉する力など、本来ならば微塵もない力である。
しかし、それを可能にしたのが……彼女が手にした羽。
ある日、ふとこの神楽邸の庭に出現した謎の羽である。
 
神楽「この羽には、持ち主の能力を増幅させる効果があるの。
勿論、それだけじゃ異世界に干渉する事は不可能だけど……」
侑子『あなたの家に突然現れた時空クレバスが、全てを可能にしてくれた。
あなたは羽根の力でクレバスの力を封じ、異世界への干渉を可能にしたのよね』
庵「ここに、時空クレバスがあるだと……?」
神楽「ええ……それでも、こうして異世界の人と話をする事ぐらいが限界ね。
私達自身が異世界に転移したりする事は、流石に不可能よ」
京「……まあ、話は分かった。
それじゃあ、さっさと本題に入らねぇか?」
神楽「そうね……侑子さん。
貴方が知っていればの話にはなりますけど、教えて欲しい事があるんです」
侑子『何かしら?』
 
神楽は、一連の事情を全て侑子に説明した。
天より降りし災厄。
その言葉を聞いた侑子は、少しばかり驚いた様子を見せた。
それを見て、京達は全てを確信する。
侑子は、確実に何かを知っている。
 
京「あんた、何か知ってるんだな?
だったら教えてくれよ……一体、何がどうなってんだ?」
侑子『……分かったわ。
でも、それに見合った対価は貰うわよ』
庵「ただでくれてやるつもりは、無いというわけか……」
侑子『悪く思わないでね……これが私の商売なの』
神楽「なら、丁度いいのがあるわ」
 
神楽は一度部屋を出る。
そして、それから数分後……一本の酒瓶を手に取り、戻ってきた。
かなりの年代物で、換算すれば数十万は下らないであろう代物である。
 
神楽「百年前から家の蔵に保存されている、秘蔵の一本よ。
対価としては、悪くはないでしょ?」
侑子『いいわねぇ……よし、交渉成立ね。
その対価、確かに貰ったわ』
 
次の瞬間。
鏡が眩く発光し、酒瓶がその中に吸い込まれていった。
行き着く先は当然、侑子の元である。
対価はこれで支払い終えた。
侑子は自分の知っている全てを、三人へと話し始めた。
 
 
侑子『天から降りし災厄……これは恐らく、異世界のとある生物の事を指しているわ』
庵「異世界の生物だと……?」
侑子『……ラヴォス。
ある一つの異世界を滅ぼした、宇宙生物の一種よ』
京「宇宙生物……?」
侑子『ええ……ラヴォスは、あらゆる異世界に存在する生物の中でも、最悪の存在の一つだわ。
ラヴォスは、星を巣食って成長する寄生獣なの』
神楽「寄生獣……まさか、星の力を吸って成長する生き物だって言うの?」
侑子『ええ、大正解よ。
ラヴォスは宇宙から飛来して星に衝突し、そしてその星の中心部に根付く、最強最悪の寄生獣。
寄生した星を食らって力を蓄える一方、星のあらゆる生物の遺伝子を絶え間なく集める。
そうする事で、ラヴォスは成長し……そして成長し切った所で、地表に現れその星を滅ぼすの。
星を滅ぼすのは、自分自身のテリトリーを作るため。
ラヴォスは滅ぼした星に卵を産み落として、子供を孵化させる……そして孵化した子供は、宇宙へまた旅立つわ』
神楽「……嘘でしょ。
そんなとんでもない生物が、異世界には存在しているの……!?」
 
天から降りし災厄の正体……ラヴォスの存在を知り、神楽と京は驚きを隠せなかった。
庵は表情を変えることなく話を聞いていた為、驚いているかどうかは分からない。
しかし、脅威に感じているのは事実だろう。
ラヴォスが侑子の言うとおりの存在だとすれば、それは間違いなく全世界最強の生物という事になる。
星の持つ力を、星に生きる全ての生物の力を持つ生物。
とてつもなく強大な存在を、自分達は敵に回してしまったのだ。
 
庵「……だが、天から降りし災厄がそのラヴォスと同一である保障はあるのか?」
侑子『その保障があったから、対価を要求したのよ。
私は以前に一度、ラヴォスの存在を感じ取ったことがあるの。
そして今……その力を再び感じ取ったのよ。
そう……貴方達の世界にね』
京「何だと……!?」
侑子『オロチ一族が何を企んでいるのか、これで分かったわよね?』
神楽「……まさか。
でも、そんな……!!」
 
オロチ一族の企みは、恐るべきものであった。
オロチは、「地球意思」と呼ばれる強大な力を持つ生命体。
古くから地球全体を司った、神に等しい存在……いや。
言うなれば、地球そのものの存在である。
かつてオロチは、地球を害していく人類へと大いなる怒りを覚え、そして人類を滅ぼそうとした。
しかしそれを阻止したのが、三種の神器だった。
三種の神器によって、オロチは己の眷属……オロチ一族と共に封印された。
だが、660年前にオロチの力に引かれた八尺瓊によって、オロチ一族の封印は解かれてしまった。
しかしそれでも、オロチ一族が完全な復活を遂げるのには時間が必要だった。
その後、オロチ一族の魂は輪廻転生を繰り返し……そして完全なる力を取り戻し、現世に再び現れた。
彼等の目的は、言うまでも無くオロチの復活であった。
オロチは肉体を持たぬ思念体……その復活には、強いエネルギーと、オロチの肉体となる触媒が必要であった。
そこでオロチ一族は、格闘技の祭典であるKOFを利用し、エネルギーを確保。
オロチ一族の一人であるクリスを触媒とする事により、オロチを復活させたのだ。
そのオロチも、京達の手によって再び封じられたわけなのだが……
 
神楽「オロチ一族は……オロチの新たな肉体に、ラヴォスを選ぼうとしている……!?」
 
星に生きるあらゆる生物の力を持つラヴォスに、地球の意思そのものであるオロチ。
この二つが合わされば……想像を絶する、最強の存在が誕生するだろう。
そうなれば、待ち受ける未来にあるのは……破滅しかない。
 
庵「……一つだけ聞かせろ。
そのラヴォスは、話を聞く限りでは成長に相当の時間が必要になる筈だ。
数千年、数万年……それ位の単位にはなるようだな」
侑子『……察しがいいわね。
貴方が思っている通りよ……既にラヴォスは、貴方達の世界の地球に巣食っているわ』
京「マジかよ……」
侑子『本来ならばラヴォスは、貴方達の世界に存在しうる筈が無かった存在。
地球に巣食うなんて、まずありえない……けれど、時空クレバスが現れた御蔭で事態は急変したわ。
大昔の地球に生きていた恐竜は、隕石の落下による地球の寒冷化によって絶滅した。
もしも、その隕石が……時空の乱れの所為で、ラヴォスと摩り替わっていたとしたら』
神楽「……じゃあ、例えオロチの復活を阻止できたとしても……」
侑子『ラヴォスという脅威は、残ることになるわね……』
 
侑子の言葉を聞き、三人は息を飲んだ。
例え、オロチ一族を無事に倒してオロチの復活を阻止したとしても……
ラヴォスは、星に巣食ったままという事になるのだ。
その目覚めの時がいつなのかは、誰にも分からない。
もしかしたら何千年先の話かもしれないし、もしかしたら明日にでも目覚めるかもしれない。
とてつもない時限爆弾を、地球は抱えてしまったのだ。
 
侑子『でも……希望はあるわ』
庵「ほう……?
まさか、そのラヴォスを戦って打ち倒せとでもいうのか?」
侑子『ええ、そのまさかよ。
……さっき私は、ラヴォスが異世界を一つ滅ぼしたと言ったわ。
でもそれは、厳密に言うと違うのよね……ラヴォスは、異世界を一つ滅ぼす筈だったの』
神楽「どういうこと?」
侑子『実はね……その異世界では、ラヴォスが星を巣食った事である異変が生じたのよ。
ラヴォスの余りに強大すぎる力が原因で、時空の歪み……タイムゲートが現れたの。
そのゲートを見つけたある者達は、ゲートの力によって未来へ飛び……ラヴォスの存在を知った。
そこで彼等は、決意したわ……自分達の未来を救う為に、ラヴォスを倒すと。
彼等はその後もゲートを使って色んな時代を行き来したわ。
その結果、彼等はラヴォスを倒せるだけの力を手にする事に成功し……ラヴォスを倒した。
無事に、未来を救ったのよ』
京「じゃあ、ラヴォスは倒せる存在って事なんだな?」
侑子『強敵ではあるけど、無敵では無いわ。
ラヴォスが生物である以上、死は逆らいようが無い運命だもの』
 
ラヴォスは、決して倒せない存在ではない。
その言葉を聞き、希望が出てきた。
一体、いつラヴォスが目覚めるかは分からない。
しかし……来る決戦の時の為に準備を整えておけば、きっと乗り越えられる。
神楽は安堵のため息をつき、肩の力を抜いた。
しかし、そんな彼女とは対照的に……庵は、真剣な顔で何か考え事をしていた。
 
庵「……」
京「八神……?」
庵「……ラヴォスが救ったことによって、タイムゲートが現れたか。
なら、今のこの世界全体に起こっている問題は……そのラヴォスが原因ということか?」
神楽「あ……!!」
 
時空クレバスの出現。
その元凶は、もしかするとラヴォスでは無いだろうか。
話を聞いているうちに、庵はふとそう考えてしまったのだ。
確かにそれならば、全てのつじつまが一致する。
 
侑子『……恐らくは、ラヴォスも原因の一つね』
神楽「つまり……全部が全部、ラヴォスの所為ではないということですか?」
侑子『ラヴォス以外にも、時空の歪みを生じさせる要因は幾つか存在するわ。
だから、一概にラヴォスが全ての元凶とは言い切れないの。
……さてと、これで情報提供は終わりね』
 
伝えるべきことは全て伝え終えた。
そう告げる侑子へと、神楽は頭を下げて礼を言う。
そして、彼女との交信を終えようとした、その時であった。
 
侑子『あ……そういえば、一つだけ言い忘れてたわ。
いけないわね……前も同じ事やらかしてたじゃない、私』
神楽「?」
侑子『実は、あなたが使っているその羽の事で、言わなきゃいけないことがあるのよ。
もしも今後、白いモコナって動物を連れている四人組があなたの所にやってきたら、
その羽を彼等に渡してあげてくれないかしら?』
神楽「羽を……でもそれじゃあ、時空クレバスの制御が出来なくなりますけど」
侑子『それなら大丈夫よ。
その時が来たら、私に連絡を頂戴。
羽の代わりになるものを、ちゃんと渡してあげるから』
神楽「それなら、構いませんけど……その四人組って一体?」
侑子『……私の大切なお客さん、とでも言っておこうかしら?』
 
 

81 名前:新章/天から降りし災厄編:2009/01/26(月) 18:10:14
○草薙京→豪鬼の言葉の意味を確かめるべく、神楽の元を訪れる。
そこで次元の魔女侑子から、ラヴォスに関する話を聞く。
△八神庵→豪鬼の言葉の意味を確かめるべく、神楽の元を訪れる。
全ての問題を片付けるまで、京とは一時休戦。
○神楽ちづる→侑子から全てを聞き、オロチ一族の目的を察する。
ラヴォスの目覚めに備えての準備を、今後打診するつもり。
○壱原侑子→神楽から対価を貰い、ラヴォスの情報を提供する。
また、自分の知り合いが彼女の元を訪れた際、羽を渡すよう交渉する。
 
【今回の新規登場】
△八神庵(THE KING OF FIGHTERSシリーズ)
三種の神器の一人、勾玉の力を司る『払うもの』八尺瓊の末裔。
京と同じく炎を操るも、彼の炎は京の紅蓮の炎とは違い、紫色の炎。
その理由は、かつて八尺瓊の先祖がオロチ一族の封印を解いてしまったが為。
オロチの力を手にし、オロチが持つ紫炎を操るようになったからである。
八尺瓊が八神と性を改めたのは、この為であるとされている。
京とは互いに因縁の相手同士であり、決着をつけるべき宿敵同士。
こうなった原因は、上記のオロチ一族との間に起こった問題であるとされている。
しかし実際は、庵自身が「気に喰わない」という個人的な理由だったりする。
先祖がオロチの力を手にしたことによって、その体にはオロチの血が流れている。
この為、KOF96においては血の暴走を引き起こし、オロチ一族のマチュアとバイスを殺害した。
その後のオロチとの決戦でも暴走を起こすも、自らの意思でそれを押さえ込み、オロチに牙を剥く。
オロチ封印後、決戦で力を消耗していた所を狙われてしまい、
京共々ネスツに拉致されてしまう。
しかし京と違い、ネスツにクローンを作成される前に脱走。
その後、奇しくも京と同様に単独でネスツに戦いを挑み、彼等に痛手を負わせていった。
KOF2001にてついに表舞台に復帰し、ヴァネッサ、セス、ラモンの三人とチームを組む。
大会では途中敗退してしまうものの、彼等と共に裏から動き、ネスツ壊滅に貢献した。
ちなみに、CAPCOMvsSNKシリーズにおいて、
リュウやケン達といった一部のカプコンキャラと競演を果たしている。
 
○神楽ちづる(THE KING OF FIGHTERSシリーズ)
三種の神器の一人、鏡の力を司る『護るもの』八咫の末裔。
京と庵とは違い炎を操る力は持っていないが、それ以上に強力な八咫鏡の力を操る。
神楽財閥の総帥であり、政財界に大きな影響力を持っている。
KOFの主催者であるルガール亡き後に、KOF96を開催した。
その理由は、オロチの力を手にしたルガールを打ち倒した京達の力を確かめる為。
例え京達が途中で敗れたとしても、彼以上の力を持つ者が現れるのならば構わないとこの時は考えていた。
そして、無事に優勝を果たした京達の前に現れ、彼等に戦いを挑んだ。
その結果、京達ならばオロチ一族を打ち倒せると確信。
直後に現れたオロチ四天王が一人、吹き荒ぶ風のゲーニッツを京達と共に退ける。
その翌年、オロチ一族を誘き出すべくKOF97を開催。
京と庵との三人でチームを結成し、無事に優勝を果たす。
その後、残るオロチ四天王を撃破し、復活したオロチにも京達と共に戦いを挑んだ。
そして三人で、再びオロチを封印する事に成功する。
三種の神器の中では唯一、ネスツに拉致されなかった。
ネスツ編には登場しておらず、この後KOF2001まで姿を現すことは無かった。
 
○壱原侑子(xxxHOLiC/ツバサ・クロニクル)
xxxHOLiCの主要人物にして、ツバサ・クロニクルのキーキャラクター。
その人の願いを叶える代わりにその人から同等の対価を貰う「ミセ」の女主人。
強大な魔力を持ち、彼女を知る者の間では「次元の魔女」と呼ばれている。
異世界へと干渉出来るだけの力を持っており、その力で自らの元を訪れた
小狼やサクラ達に異世界を旅する手段を与えた張本人。
また、時間の流れにまで干渉し、彼等を過去へと送ったこともある。
名前は偽名であり、本名は不明。
また、カードキャプターさくらに登場したクロウ・リードとは旧知の仲。
どうやら他にも、レイアースやXなど、全てのCLAMP作品に関して
何かしらのつながりを持っている模様である。

82 名前:新章/最悪のクローン編:2009/01/26(月) 18:11:33
エルメス「キノコ王国か……どんなとこだろうなぁ」
キノ「話で聞いた限りじゃ、とてもいいところみたいだよ。

幻想界の山道を、モトラド(二輪車、空を飛ばないものを指す)に乗った一人の旅人が走っていた。
旅人のキノに、その相棒である喋るモトラドのエルメス。
様々な国々を自由気ままに旅する二人が次に目指すは、キノコ王国だった。
山道も中腹に差し掛かったその時、向こう側の風景が見えてきた。

キノ「うわぁ……」
エルメス「随分大きな国だね、キノ」
キノ「うん……話に聞いてた以上かもしれない」

二人は、眼前に広がるキノコ王国の姿を見て、感嘆の意をもらした。
噂に聞いていたとおり、いや、それ以上に良さそうな国だった。
早く入国したい。
そう思ったキノはエルメスのエンジンを吹かし、手早く下山しようとする。
しかし……その時であった。
二人が、その異変に気づいたのは。

キノ「……あれ?」
エルメス「どうしたの、キノ?」
キノ「エルメス、あれ……」
エルメス「え……?
……何、あれ?」
キノ「空が、歪んでる?」

キノコ王国の上空を見て、キノは思わずエルメスを止めてしまった。
空が揺らいでいる……いや、歪んでいるといったほうが正しいだろう。
何やら、嫌な予感がしてきた。
キノコ王国に向かうと、何かやばい事が起こるのではないだろうか。
そう、直感したのだ。

エルメス「どうする、行くのやめる?」
キノ「いや、ここまで来たら行ってみよう。
何が原因でアレが起こってるのか、正直気になる。
ひょっとしたら、何もないかもしれないけど」
エルメス「そうじゃなかったらどうするのさ?
何か、とんでもない兵器の実験の最中とか……」
キノ「その時は……」
エルメス「その時は?」
キノ「その時さ」

スロットルを回し、キノは先へと進んでいく。
この先には一体、何が待ち受けているのだろうか。
それを確かめるべく、二人は道を行く。


この時、キノとエルメスは思いもしなかっただろう。
この異変が……異世界から齎された、未曾有の危機の前兆であったなどと。
 

83 名前:新章/最悪のクローン編:2009/01/26(月) 18:12:09
○キノ&エルメス→空の歪みに不吉な予感を覚えるも、逆に確かめてみたくなりキノコ王国へ向かう

【今回の新規登場】
○キノ(キノの旅 -the Beautiful World-)
相棒のエルメスと共に、自由気ままな旅を続けている旅人。
一人称が「僕」のため誤解されやすいが、女性である。
冷静沈着で口数が少なく淡々とした口調で話す為、冷たい印象を与える事も多いが、
注射と料理がかなり苦手という可愛らしい一面を持つ。
基本的には中立的であり、積極的に誰かを助けたりはしない。
野宿が多いためかシャワーやふかふかのベッドが好きで、そういった条件の揃った場所を好む。
パースエイダー(銃器)の段位の持ち主であり、4段で黒帯という相当の実力者。
1つの国には3日間しか滞在しないというルールを自らに課している。
その理由は「その方がどんな国か分かるし、長居していると多くの国を回れないから」との事。
しかし、一部の国には例外的に3日以上滞在する事がある。
(キノ自身が望んで3日以上滞在したいと感じたのは『優しい国』のみであり、他の国は何かしら事情があってやむを得ず滞在した)
キノという名前は偽名であり、かつて自分を救ってくれた旅人の名前をそのまま使っている。
本名は、何かの花の名前であるという事しか分かっていない。

○エルメス(キノの旅 -the Beautiful World-)
キノの相棒である、喋るモトラド(二輪車、空を飛ばないものを指す)。
自力で走る事も出来ないが、化学・科学などの知識が豊富。
キノを茶化す皮肉屋な性格で、諺を使おうとするが、大抵間違っている(実はわざとらしい)。
怒哀楽をあまり極端に出さず、悲しんだり怒鳴ったりすることはほぼない。
しかし自身の不調を治してもらったりするとスッキリするらしく、とても喜ぶ。
逆に倒されたりテーブルにされたり、粗雑に扱われると不満を愚痴る。
初代キノによって修理されたのが切欠で、キノと出会う事になった。

84 名前:新章/最悪のクローン編:2009/01/26(月) 18:12:50
***ネスツ宇宙要塞***

クリザリット「幻想界との連絡が途絶えた?」
クローン京「はい……現地で、何者かに始末された模様です。
いかがいたしますか?」
クリザリット「……幻想界との連絡が途絶えたという事は、クローングドンまでも撃破されたという事だ。
あのクローンがどこを実験材料に選んだかは知らんが……今は少し待とう。
相手が追撃を警戒しているのは明白だ……調査はしばらくしてからの方が都合がいい」

ネスツ宇宙要塞の研究室内部。
クリザリットは、幻想界に向かったクローン京との連絡が途絶えたという報告を受けていた。
今回はクローン怪獣のテストということで、向かわせたクローン京は比較的実力の劣るものを選んだ。
だが……どうやらそれが、完全に裏目に出たようである。
しかしそれでも、クローングドンまでも始末されるというのは、やや予想外であった。
怪獣の中では、強くも無いが弱くも無い。
そんな無難なレベルではあるものの……それでも、怪獣であることに変わりは無いのだ。
それを倒したとあれば……舐めてはかかれない相手が、少なからず存在するという事である。
すぐには調査には向かわせず、しばらくしてから落ち着いた所で進めるのが吉。
それがクリザリットの考えであった。

クローン京「分かりました。
それと……例の件ですが、どうなっておりますか?」
クリザリット「……クローンの作成自体は、現状のまま続行する。
戦力としては、充分すぎる力があるからな……だが。
奴の……ウルトラマンコスモスの始末は、我々の最優先事項の一つになった」
クローン京「やはりそうなりましたか……」

ネスツが所有するクローンの中でも、最高の実力を誇るクローンウルトラマン。
本物のウルトラマンに匹敵する実力を持つ彼等は、ネスツ最強の私兵と呼べる存在であった。
しかし……その最強の私兵が、先日、思わぬ形で撃破されてしまった。
ウルトラマンコスモス……ウルトラマンの中でも、極めて異質な能力を持った戦士。
相手の持つ邪気を取り払い、戦意を失わせる浄化の力。
コスモスはその力で、クローンウルトラマンティガと、クローンウルトラセブンを浄化させたのだ。
このネスツには、ウルトラマンのみならず多くのクローン戦士が存在している。
その中には、ウルトラマン同様に元々は強い正義の心を持っていたクローンが、数多くいる。
ネスツは彼等の精神を調整する事によって、己の私兵として扱っている。
そして……コスモスの浄化の力は、彼等に植えつけられた邪気を取り払ってしまう。
ネスツによって調整される前の、本物と同じ正義の心を持ったクローン戦士に戻させてしまうのだ。
自分達の持つ戦力を無力化させる、最悪の存在。
それが、ウルトラマンコスモスであった。
こうなった以上、ネスツの目的は一つ……コスモスの早急な抹殺である。

クリザリット「だが、コスモス相手にクローンウルトラマンは使えない。
結果が、あまりにも見えすぎている……だから奴には、クローン怪獣をぶつける」
クローン京「クローン怪獣を……しかし、怪獣でも浄化される可能性は……」
クリザリット「ヤプール製の超獣や円盤生物等ならば、何も問題はない。
最初から戦闘を目的とした生物を使えば、浄化も何も無いだろう?」
クローン京「成る程……ん?」

ウルトラマンコスモス撃破の対策について話していた、その時であった。
一人の兵士が、息を切らせて研究室へと入ってきたのだ。
汗だくで顔面蒼白……明らかに様子がおかしい。
クリザリットとクローン京は、何か異常事態が起きたとすぐに察した。
それも、ただ事ではない何かが……すぐさま、クリザリットは兵士に問いただす。

クリザリット「どうした……何があった?」
ネスツ兵「さ……最悪の事態です。
ハイデルン率いる特殊部隊が、アジトに強襲。
襲撃を受けたのは、日本の……」

グオオオオオォォォォォォォッ!!!!

クローン京「何だ!?」
研究員「これは……強力な時空波の乱れです!!
何かが、時空の流れに影響して……!!」
クリザリット「時空波だと……!?」

突如として要塞を襲った、謎の巨大な揺れ。
クリザリット達は何とか倒れないように踏ん張ると、すぐさま研究員に原因の追求を要請した。
その原因は、強烈な時空のゆらぎによって発生した、時空波の乱れだったのだ。
しかし、この宇宙要塞をも揺るがすほどの時空波が巻き起こるなど、これまでありえた事が無かった。
余程の事態が起きている。
皆が時空波の発生要因を探る為、研究室中を駆け回る。
すると、その最中で……駆け込んできたネスツ兵が、震えながら声を出した」

ネスツ兵「……まさか、そんな。
アレの影響が、もう……!?」
クリザリット「何……?
一体、どういうことだ……何があったんだ!?」
ネスツ兵「……ハイデルン達が強襲を仕掛けたのは、愛媛の石鎚山。
あのクローンが……ミズチが保管されている場所です……!!」
クローン京「え……おい。
じゃあ、まさかこの時空波は……冗談だろ!?
アレが、この事態を引き起こしたって言うのか!?」
クリザリット「ミズチの制御は、完璧じゃなかったのか……?」
ネスツ兵「その筈だと、報告はありましたが……ですが。
ミズチは、起動直後に暴走……制御を受け付けない状態になったと……!!」
クリザリット「……なんて事だ。
すぐに付近の全兵士を、石鎚山へ向かわせろ!!
どれだけの兵力をつぎ込んでも構わん……奴を止められるのは、目覚めて間もない今だけだ!!
DIOの手の者達にも、連絡を入れろ……奴等の手を借りねば、どうしようもなくなる!!
早く止めなければ、取り返しがつかないことになるぞ!!」



***DIOの館***

ヴァニラ「DIO様、これは……!?」
DIO「……世界の終わりとでも言うべきだろうかな。
先程、ネスツから報告があった。
奴等は……偽りの神を、目覚めさせたようだ」

数刻後。
DIO達にも、ミズチ復活の報が届けられた。
余りの緊急事態に、彼等も相当戸惑っている。
兎に角、ミズチを止めねばとてつもない事になる。
ミズチは、世界を……全てを滅ぼしかねない程の可能性を秘めた存在なのだ。

DIO(……思い上がりすぎたようだな、ネスツ。
如何に貴様等が優れた力を持とうが……人には、越えてはならぬ領域があるのだよ。
そう……神の領域がな)
 
 

85 名前:新章/最悪のクローン編:2009/01/26(月) 18:13:36
***現代 神楽邸***
 
京「おい、何だよこれ……空が、歪んでいる……?」
神楽「ゆらぎ……いえ、そんな生易しいものじゃないわ。
これは、もっと別の何か……!!」
 
同時刻。
異世界……神楽邸においても、その異変は察知できた。
神楽が侑子との通信を終えようとしたその時に、彼等はそれに気づいたのだ。
決して、見間違えなどではない……空が歪んでいる。
京達はこの異常事態を前にして、戸惑っていた。
一体、何が起ころうとしているのか……すぐさま神楽は、侑子へと何が起こっているのかを尋ねた。
 
侑子『……世界を隔てる壁が、壊れようとしているわ』
京「おい……一体、どういうことだよ!?
まさか、ラヴォスってのが……」
侑子『いえ、これはラヴォスの影響ではないわ。
もっと別の何かが……!?
草薙、危ない!!』
京「え……なっ!?」
 
侑子でさえも、一体何がこの事態を引き起こしているのか、見当がつかないでいた。
何が起こってるのか、彼女が力を使い確かめようとした……その時だった。
京の隣にいた庵が……突然、京に襲い掛かってきたのだ。
その攻撃を辛うじて避けた京は、すかさず庵へと問いただした。
 
京「八神、てめぇこれは一体何の……!?」
神楽「八神!?」
庵「ぐっ……グオオオオオォォォォォッ!!!」
 
二人が目にした庵は、普段の彼ではなかった。
かつてのKOFで見せた、狂気の姿。
彼の体に流れるオロチの血が引き起こした……暴走の姿であった。
庵は、咆哮を上げて襲い掛かってきた。
 
庵「キョオオオォォォォォォッ!!!
京「血の暴走だと……!?
おい、じゃあまさかこれは……!?」
神楽「そんな……そんな筈はないわ!!
だって、まだ……まだオロチは、封印されままよ!!
封印から解けた気配はない……もしかして、オロチ一族の影響?
いいえ、違う……いくらオロチ一族でも、ありえない。
彼等に、時空を崩壊させるだけの力があるなんて筈は……!!」
 

86 名前:新章/最悪のクローン編:2009/01/26(月) 18:14:20
***愛媛 石鎚山***
 
話は、遡る事数十分前。
ハイデルンが突き止めた、ネスツのアジト……愛媛の石鎚山。
今、そこへと奇襲をかけるべく、多くの戦士達が陣営に集っていた。
ネスツと浅からぬ因縁を持つ、K´達と怒チーム。
奪還屋ゲットバッカーズの天野銀次に美堂蛮。
ジョースターの血統を受け継ぐスタンド使い、空条承太郎に東方仗助。
東京ドーム地下闘技場の猛者である、範馬刃牙、花山薫、渋川剛気。
そして、悪の魔の手より世界を守るという使命を持った、新世代超人達。
皆、勇猛な戦士達ばかりである……が。
そんな中、約一名だけ逃げ腰な者がいた。
 
万太郎「嫌だって、こんなとんでもないの!!
何で僕がやらなきゃいけないんだよぉ!!」
ミート「何我侭言ってるんですか、王子!!
日本駐屯超人として、これは当然の役目です!!」
 
新世代超人の一人……偉大なる伝説超人キン肉スグルの息子、キン肉万太郎。
彼は木にしがみ付き、奇襲作戦参加を必死になって拒んでいた。
彼のお付であるミートは、そんな態度の万太郎を怒鳴り声で叱りつける。
こういう事態こそが、正義超人の力の見せ所であるというのに、余りに情けなさ過ぎる。
見ていた仲間達も、呆れて物が言えない。
 
蛮「あんな餓鬼、本当に戦力になるのかよ?」
渋川「とてもじゃないが、戦いに向いとるとは見えんのぉ……」
チェックメイト「まあまあ……でも万太郎は、やる時はやるんですから」
仗助「まあ、そうじゃなくちゃ超人オリンピックで優勝なんて出来ないっすからねぇ……」
ケビンマスク「ああ……後は、あいつが戦う気にさえなってくれりゃいいんだが……」
 
万太郎は、決して弱いわけではない。
寧ろ彼は、この場にいる戦士達の中でも、最強の部類に入るであろう一人なのだ。
キン肉スグル……キン肉マンの血を受け継ぐ正義超人だけあって、万太郎の実力は紛う事無き本物。
ヘラクレスファクトリー二期生、ノーリスペクト、超人オリンピックの出場者達。
万太郎は数多くの強敵達と戦い、そしてその全てに勝利してきている。
今でこそ情けない姿を晒しているが、彼はとてつもない可能性を秘めた戦士なのだ。
 
ミート「あぁもう……いいですか、王子。
相手はあの大組織ネスツ……世界的に有名な悪の組織なんですよ?」
万太郎「それぐらい分かってるよ。
僕は、そんな連中と戦って怪我するのが嫌なんだよぉ!!」
ミート「……もしも貴方がここで戦ってネスツを倒したら、きっと凛子さんもカッコいいって言ってくれますよ?」
万太郎「え?」
ミート「やりますよね?」
万太郎「……分かった、やるよ!!」
キッド「ハァ……相変わらず、単純な野郎だぜ」
銀次「でも、やる気出してくれてよかったよ。
それじゃ、そろそろ作戦開始かな……?」
 
作戦開始まで、後一分を切った。
皆は息を呑み、突入の時を待つ。
ここでこのアジトを壊滅させれば、少なからずネスツにはダメージを与えられる。
運がよければ、本丸の居場所も分かるかもしれない。
この決戦次第で、今後が大きく変わるのだ。
誰もが覚悟を固め、各々に与えられた時計を見る。
今、時刻を告げるその針が……動いた。
 
ハイデルン「突撃開始ぃ!!」
 
ハイデルンの合図と共に、皆が一斉にアジトへと突入する。
ネスツ兵達は、この突然の奇襲に驚きを隠しきれずにいた。
すぐさま迎撃に移るべく、彼等は武器を抜こうとする。
しかし……それよりも早く、攻撃は繰り出された。
 
チェックメイト「ケンタウロスの黒い嘶き!!
マキシマ「ベイパーキャノン!!
蛮「蛇咬スネークバイトォッ!!
承太郎「オラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!!
 
各々が必殺の一撃を繰り出し、次々に兵士達を打ち倒していく。
怒涛の勢いで攻め込む彼等を止めるのは、ただの兵士達には無理であった。
すぐさま、数体のクローン京が現場へと急行する。
しかし……如何せん、相手が悪すぎる。
ここにいるのは皆、全員が実力者なのだ。
 
刃牙「成る程な……どうやらお前等、劣化コピーみたいだな。
本物の京さんなら、倍は強いぜ……?」
クローン京「がっ……!?」
 
刃牙の強烈な拳をボディに受け、クローン京は地面に崩れ落ちる。
数多くの強敵達を打ち破り、地下闘技場最強の称号を得た刃牙の実力は、もはや並の格闘家では遠く及ばない次元にある。
本物の京なら兎も角、劣化コピーではどうにもならないだろう。
そしてそんな刃牙の隣では、同じく花山がクローン京を拳の一撃で粉砕していた。
魔王アスタロトすら粉砕した剛拳の威力は、伊達ではない。
 
ハイデルン「よし、ガゼルマンとセイウチン並びにチェックメイトと花山は、兵士達と共にここで敵を食い止めてくれ!!
私達は更に奥へと突入する!!」
ラルフ「頼んだぜ、お前等!!」
チェックメイト「任せてください!!」
 
敵の追撃を食い止めるべく、花山達は大勢の兵士達と共に、最初の大広間で足を止めた。
そこへと一斉に、大量のネスツ兵とクローン京がなだれ込んでくる。
ここで自分達が敗れれば、突入したハイデルン達を危機に晒す事になる。
必ず、勝たねばならない。
 
チェックメイト「ここから先へは、一歩も行かせませんよ……!!」
花山「来な……!!」
 

87 名前:新章/最悪のクローン編:2009/01/26(月) 18:15:27
ネスツ兵「駄目です、第三ブロック突破されました!!
このままでは奴等が辿り着くのも、時間の問題です!!」
クローン京「くそっ……奴等、化け物か!?」
 
ハイデルン達の進撃が止まらないのに、ネスツの者達は心底焦りを感じていた。
クローン京のみならず、多くのクローン戦士を彼等を止めるために投入した。
しかし、足止めは出来ても進撃を止める事は出来なかったのだ。
それだけ、彼等は強大すぎるのである。
 
クローン京「……やむをえねぇな。
おい、ミズチはもう使えるのか?」
ネスツ兵「はい、大丈夫です。
昨日のテストでは、何の問題もありませんでした……起動させますか?」
クローン京「ああ、やるぞ!!」
 
クローン京はカードキーを取り出し、厳重に封鎖されていたある部屋への扉を開いた。
その部屋に眠っているのは、カプセル内で眠る一体のクローン。
胸に何か刺青の様な模様のある、白髪の青年……ネスツはこのクローンを、ミズチと呼んでいた。
このミズチは、ネスツが作成した数多くのクローンの中でも、最も危険な存在といっても過言ではない。
余りに強すぎる力を持つが故にその制御は難しく、調整には相当の時間を費やした。
この状況をどうにかするには、ミズチの力を使うしかない。
クローン京はパスワードを打ち込み、ミズチのカプセル内の培養液を抜く。
これで数十秒後に、ミズチが目覚める。
何とか危機は乗り切れそうだ……そう感じ、クローン京は安堵のため息をついた。
 
 
しかし……その直後であった。
 
ミズチ「……!!」
クローン京「え……ガハァッ!?」
 
ミズチが目を大きく見開くと同時に、クローン京の体が壁に強く叩きつけられた。
彼の体を襲ったのは、ミズチが発した強大な衝撃波であった。
ミズチはカプセルを破り、外へと足を踏み出した。
 
ミズチ「……哀れなものだな……お前達如きで、私を制御できるとでも思っていたのか……?」
クローン京「ば、馬鹿な……お前、俺達に従わないっていうのか……!?
調整は、完璧だった筈じゃ……」
ミズチ「我は人に屈したりはしない。
人の味方をする理由など、我には無い……消えよ」
クローン京「うっ……うわあああぁぁぁぁぁっ!?」
 
ミズチの掌から紫炎が放出され、クローン京の身を一気に焼き尽くした。
調整が完璧だと思われていたミズチが、まさかの暴走を引き起こした。
ネスツは、ミズチを制御する事に失敗したのだ。
ミズチは静かに瞳を閉じ、力を集中させ始めた。
そして、この直後……圧倒的な力の波動が、山全体に襲い掛かった。
 

88 名前:新章/最悪のクローン編:2009/01/26(月) 18:15:57
ドグオオオォォォォォォン!!!!

クラーク「うおおっ!?」
K´「今のは……爆発か……!?」

支部全体に爆音が響き渡り、強烈な振動が襲い掛かった。
一体何が起こったのか、皆は思わず足を止めて周囲を確認し始める。
すると……その時であった。
ここまで進撃を続けてきた彼等の内の一人に、とてつもない異変が起きた。

レオナ「ぐっ……アアアァァァァァァァァァッ!!!」
ラルフ「レオナ!?」
クラーク「隊長、まさか……!!」
万太郎「え、何何!?」

怒チームの一人、レオナが突然うめき声を上げ始めたのだ。
その髪は、本来の蒼色とは正反対の、血のように真赤な紅へと色を変えている。
かつてのKOFでも、これと同じ症状をレオナは起こしている。
彼女の中に流れる……オロチの血の暴走を。

ケビンマスク「おい、一体何が起こっているのか説明しろ!!」
ラルフ「血の暴走だ……!!
レオナの中に眠ってるオロチの力が、暴走を引き起こしやがった!!」
クーラ「血の暴走……?」
レオナ「ウオオオオオオオオォォォォォッ!!
クラーク「いかん!!」

レオナは手刀を振りかざし、仲間達へと襲い掛かってきた。
暴走状態にある彼女には、敵味方の区別など一切ついていない。
すぐさま怒チームの面々が動き出し、彼女を止めようとする。
ウィップが鞭を強く振り、レオナの動きを封じようとする。
だが……暴走したレオナのスピードは、それまでの彼女とは比べ物にならないレベルだった。
ウィップの鞭を掻い潜り、レオナは彼女へと襲い掛かる。

クラーク「いかん、ウィップ!!」
ラルフ「止めるぞ、クラーク!!」
クラーク「おう!!」

とっさにラルフとクラークが飛び出し、レオナにショルダータックルをぶちかます。
レオナはよろめき、一瞬だけとはいえ動きを止める。
そこへとすかさず、ハイデルンが仕掛けた。

ハイデルン「スト−ムブリンガー!!」

レオナの肩に、ハイデルンの貫手が直撃する。
そこからハイデルンは、レオナの体力を吸収しにかかったのだ。
相手の体力を奪い己のものへと変える必殺技、ストームブリンガー。
この技ならば、レオナを無力化させられると判断しての行動であった。
しかし……完全な無力化は、不可能であった。
レオナはすぐさま後ろへ下がり、ハイデルンの指を引き抜いたのだ。
殺意に満ちた目で、レオナはハイデルン達を睨みつける。

ラルフ「一体、どうして急に血の暴走なんか……!!」
ミズチ「知りたいか?」
刃牙「!?」

突然、レオナの背後に何者かが空間転移して現れた。
それは、先程開放されたミズチである。
ミズチが現れた瞬間、一瞬にしてその場の空気が一変した。
その全身から滲み出ている、強烈な力の波動。
対するもの全てを圧倒する、凄まじい殺意。
誰もが息を呑み、そして恐怖を覚えた。
目の前の相手は、これまでの敵とはまるで別格。
とてつもない怪物であると、本能的に理解できたのだ。
一体何者なのか、それを問い質すべく万太郎が口を開こうとする。
しかし……その寸前であった。
ミズチの姿を見たラルフが、突然大声を上げた。

ラルフ「なっ……そんな馬鹿な!!
どうして……どうしてこんな奴が、ここにいるんだ!?」
承太郎「……知り合いか?」
クラーク「……知り合いなんてレベルじゃないです。
だって、こいつは……!!」
ハイデルン「……ネスツめ。
とんでもないクローンを、作り出していたようだな……!!」

ウィップを除く怒チームの面々は、ミズチを知っていた。
いや、正しくは……ミズチの元となった者を知っていた。
忘れる筈も無い、自分達にとって最強最悪の敵だった存在。
神に等しき力を持つ、地球の自由意志……!!

ハイデルン「こいつは……オロチのクローン体だ……!!」
 
 

89 名前:新章/最悪のクローン編:2009/01/26(月) 18:17:55
○京&神楽→暴走する庵を止めるべく、彼に立ち向かう。
○花山&チェックメイト&セイウチン&ガゼルマン→敵の攻撃を食い止めるべく、最初の広間に残る。
○奇襲部隊→ミズチと対面、彼がオロチのクローン体である事を知る
○レオナ→血の暴走を引き起こしてしまい、仲間達へと襲い掛かる。
△庵→血の暴走を引き起こしてしまい、仲間達へと襲い掛かる。
●クリザリット→ミズチ復活による異変を止めるべく、石鎚山へと兵士達を送る。
●DIO→ミズチ復活の報を聞きネスツの愚かさを批判、彼等同様ミズチの静止に動き出す。
●ミズチ→誰の制御も受け付けず、全てを滅すべく動き始める。

【今回の新規登場】
●クリザリット(THE KING OF FIGHTERS 1999/2001)
世界の支配を目論む大組織「ネスツ」の幹部。
強靭な肉体を持つ戦士で、様々な格闘家のデータを自らの中に取り込んでいる。
草薙京の能力を移植されており、己の肉体から炎を出す事が可能。

●ヴァニラ・アイス(ジョジョの奇妙な冒険)
DIOに忠実な、屈指の実力を持つスタンド使い。
「亜空の瘴気」の異名を持ち、彼のスタンド「クリーム」の破壊力は、全スタンド中でも最大級。
DIOの血を与えられた為、彼同様の吸血鬼となっている。

●DIO / ディオ・ブランドー(ジョジョの奇妙な冒険)
絶対的なカリスマを持つ吸血鬼にして、ジョースター家の宿敵。
時間停止能力を持つスタンド「ザ・ワールド」を操る。
朝日と紫外線に弱く、浴びると体がひび割れ砕けていく。

○キン肉万太郎(キン肉マンU世)
偉大なる伝説超人、キン肉マンの息子である正義超人。
ヘラクレスファクトリー1期生で、ファクトリー卒業後は、大田区田園調布にある美波理(ビバリー)公園の防衛にあたっている。
両親に甘やかされて育ってしまったが故に、父とは違い軟弱な性格になってしまった。
しかしながら、親友の危機や卑劣な敵には勇気を奮い起こし立ち向かう。
その実力は父親同様凄まじく高く、数多くの強敵との戦いを勝ち抜いてきた。
キン肉マンとは違いマスクに「肉」のマークがついていない。
しかし、彼が火事場のクソ力を発揮した際には、肉のマークが浮かび上がるようになっている。
超人オリンピックの決勝戦において、強敵であるケビンマスクを撃破し、無事優勝を収めた。
※アニメ版の設定に基づいていますので、漫画版と違いケビンマスクを決勝で破っています。

○アレクサンドリア・ミート(キン肉マン/キン肉マンU世)
正義超人達の参謀役である、優れた頭脳の持ち主。
かつてキン肉マンのお付として、数多くの苦難を共に乗り越えてきた。
そして彼がキン肉星王位の座についた後、自らの頭脳を未来に現れるであろう強敵達との戦いに活かす為、
知り合いであるキン骨マンの力を借りてコールドスリープに入った。
その28年後、万太郎の地球派遣によって永い眠りから目覚めた。
かつてキン肉マンと共にいた頃と同様に、万太郎の世話役として動いている。
実は自身も一度リングに上がった経験があり、そこではキン肉マンを破ったミキサー大帝を撃破するという大金星を上げた。

○テリー・ザ・キッド(キン肉マンU世)
偉大なる伝説超人、テリーマンの息子である正義超人。
万太郎と同じヘラクレスファクトリー1期生で、卒業後は大阪の防衛に当たっている。
父が奥ゆかしい性格なため、常時二番手に甘んじたと信じ、父に一時期反発していた。
そのコンプレックスから、万太郎への対抗意識を燃やすが後に和解、万太郎のよきライバル・そしてパートナーとなる。
父と自分とは違うと主張していたものの、そのファイトスタイルは彼と瓜二つ。
ストレートを放つ際の癖まで一致しており、キン肉マンでさえも彼とテリーを見間違えたほど。
テキサスの暴れ馬の異名を持つ、実力派超人。
超人オリンピックでは父同様に、子供を助けるために名誉ある敗北を選んだ。

○チェックメイト(キン肉マンU世)
悪魔超人首領サンシャインが手塩にかけて育てた、d.M.p最強の集団であるナイトメアズの一人。
万太郎と激闘を繰り広げ、彼に敗れた。
その後、彼との間に友情が芽生え、これを機に悪行超人から正義超人へと移行した。
「チェス・駒(ピース)・チェンジ」という特殊能力を持っており、
「キング」、「ナイト」、「ルーク」、そしてそれらに通常形態を組み合わせた「グランドスラム」の4形態に体を変化できる。
口調は丁寧で礼儀正しいがやや慇懃無礼な傾向がある。
d.M.p時代の、鶏肉とゆで卵の白身だけという節制の反動からか食いしん坊に。

○ケビンマスク(キン肉マンU世)
偉大なる伝説超人、ロビンマスクの息子。
紳士的なロビンと違い、寡黙でストイックな性格の不良。
彼がグレたのは、幼い頃からの父によるスパルタ指導と、名門ロビン一族の跡継ぎという重荷に耐え切れなくなった為。
家を飛び出した後、悪行超人にスカウトされd.M.pに加入。
しかし彼等に愛想を尽かし、d.M.pを脱退した。
以後は、正義超人でも悪行超人でもない、どの集団にも属さないフリーの立場へとなる。
ロビンに対しては、愛憎入り乱れる複雑な感情を抱いている。
超人オリンピック決勝戦にて、万太郎と激突。
激しい死闘を繰り広げた後、万太郎懇親の必殺技であるマッスル・グラヴィティを受けて敗北した。
※アニメ版の設定に基づいてますので、漫画版と違い決勝で敗れています。

○美堂蛮(Get Backers-奪還屋-)
凄腕の奪還屋「ゲットバッカーズ」の三代目。
常人を遥かに超えた、握力200kgという怪力を持っている。
また、相手に一分間の幻を見せる事の出来る「邪眼」という特殊能力を持っている。
彼の祖母はウィッチクィーンと呼ばれる魔女で、彼は魔女の正当な血統を受け継いでいる数少ない人間の一人。
通称は「邪眼の男」で、VOLTS時代の銀次に勝つことが出来た唯一の人物。
銀次と出会うまでは、奪い屋として各地を点々としていた。

○天野銀次(Get Backers-奪還屋-)
凄腕の奪還屋「ゲットバッカーズ」の三代目。
常人の数倍以上に発電細胞が発達していて、まるで電気ウナギの様に体から電流を放つ事が出来る。
かつては裏新宿の無限城にて、VOLTSというグループのリーダーをしていた。
当時は「無限城の雷帝」と呼ばれていて、今でもその名は健在。

○渋川剛気(グラップラー刃牙)
実戦合気柔術の達人。
実戦において合気を扱う事が出来る、唯一の武術家と言われている。
彼の柔術の前にはどんな怪力も通用せず、作中最強の怪力を誇るビスケット・オリバですら何も出来なかった。
鎬昴昇や愚地独歩といった実力派の武闘家達を正面から撃破した、とてつもない実力の持ち主。
しかし彼の柔術は、攻撃の意思を持たない行動には無力であるらしく、
一切の殺意も敵意も持たない無意の拳である「菩薩拳」等には、対処が出来なかった。
普段は気さくな好々爺であるが、エキサイトすると本来の好戦的な性格を露にする。
かつて、空道の使い手である柳龍光との決闘に敗れており、左目を失っている。
(現在は義眼を装着している)

○空条承太郎(ジョジョの奇妙な冒険)
世界的に有名な海洋学者で、『星の白金スタープラチナ』のスタンド使い。
悪の救世主DIO=ブランドーを打ち倒し、世界の危機を救った。
ジョセフの孫だが、彼と違って波紋は扱えない。

○東方仗助(ジョジョの奇妙な冒険)
ジョセフの隠し子であり、立場的には承太郎の叔父に当たるものの、彼より年下という奇妙な関係。
強力な近距離パワー系スタンド『クレイジー・ダイヤモンド』の使い手。
彼のスタンドの能力は、あらゆるものを『なおす』能力。
しかし、自分自身の怪我は治すことが出来ず、死人の蘇生などは不可能。
また、切れた車のガソリンなど、無いものは直せない。
特徴的なリーゼントをしており、それを貶されると凄まじく怒り狂う。
承太郎を除けば、彼の髪型を馬鹿にした者は一人残らずズタボロにぶちのめされている。
その理由は、かつて彼が高熱にうなされた際に自分を助けてくれた命の恩人の髪型を真似しているから
杜王町に潜む凶悪な殺人鬼吉良吉影に立ち向かい、その凶行を止めさせた。

○マキシマ(THE KING OF FIGHTERS 1999〜)
ネスツによって肉体を改造されたサイボーグ。
友人の仇を討つため、K´達と共にネスツに戦いを挑み、その野望を阻止した。
常人を遥かに超えた戦闘能力を持ち、それを武器にKOFを勝ち上がってきた。

○ラルフ・ジョーンズ(THE KING OF FIGHTERS 1994〜)
ハイデルン傭兵部隊の一員で、階級は大佐。
打撃技の達人で、殴り合いに関しては右に出る者はいない。
怒チームの一員として、KOFの裏に潜む巨悪と立ち向かってきた。

○クラーク・スティル(THE KING OF FIGHTERS 1994〜)
ハイデルン傭兵部隊の一員で、階級は中尉。
プロレス技の達人で、その技術は一流。
怒チームの一員として、KOFの裏に潜む巨悪と立ち向かってきた。

○K´(THE KING OF FIGHTERS 1999〜)
ネスツによって草薙京の炎を移植された、凄腕の格闘家。
マキシマやウィップ達と共にKOFを戦いぬき、ネスツの野望を阻止した。
己の記憶を取り戻す為に、旅を続けている。

○レオナ・ハイデルン(THE KING OF FIGHTERS 1996〜)
ハイデルン傭兵部隊の一員で、ハイデルンの養女。
そして、オロチ八傑集の一人であるガイデルの娘。
ハイデルン直伝の暗殺術を使う。
幼い頃に、オロチによる血の暴走を引き起こしてしまい、ガイデルを自らの手で殺害。
それからは感情を失ってしまい、まるで機会の様に振舞っていた。
しかしラルフやクラーク達との出会いから、徐々に感情を取り戻しつつある。
怒チームの一員として、KOFの裏に潜む巨悪と立ち向かってきた。

○クーラ・ダイアモンド(THE KING OF FIGHTERS 1999〜)
秘密組織「ネスツ」により生み出された改造人間だったが、
組織に裏切られ、現在はネスツを離れてK'達と行動を共にしている。
氷を操る能力を持ち、普段は栗色の髪をしているが、能力を発動させると水色になる。

○ウィップ(THE KING OF FIGHTERS 1999〜)
ハイデルン傭兵部隊の一員で、鞭の達人。
また、デザートイーグルを片手で発砲できるという、とんでもない腕の持ち主。
その正体は、ネスツによって生み出された、K´の姉「セーラ」のクローン。
K´達と共にネスツへ戦いを挑み、その野望を阻止した。

●ミズチ(ネオジオバトルコロシアム)
ネオジオバトルコロシアムのラスボスの一人。
複合組織「WAREZ」がオロチの細胞片から生み出した、オロチのクローン体。
しかしオロチは本来肉体を持たぬ思念体であるため、
このクローンは、クリスの身に宿った際のオロチのクローンと言う方が正しい。
その力はオロチと比べても遜色が全く無い。
 
 

90 名前:新章/最悪のクローン編:2009/01/26(月) 18:18:47
承太郎「オロチのクローン……だと……!?」
蛮「おい、それってどういうことだよ!!
オロチは確か、何かを寄り代にしなきゃ存在できない思念体じゃ……あ!!」

本来ならば存在するはずの無い、オロチのクローン。
オロチは思念体であるから、そもそもクローンなど作れない筈なのだ。
だが……そのオロチが、肉体を得たならば話は別である。
かつてのKOFで、京達三種の神器はオロチと対峙した。
オロチ四天王が一人……炎のさだめのクリスの肉体を寄代に使い、この世に光臨したオロチと。
つまり……ミズチは、その時のクローンなのだ。
オロチ撃破直後に京と庵を拉致したネスツならば、その時にオロチの細胞片でも手に入れているのはおかしくない。
間違いなくミズチは、ネスツが所有する最強のクローン。
クローンウルトラマンや、現在も作成が続いているとされる大魔王バーンのクローンをも上回るだろう。
だが……強大すぎる力には、問題も伴う。

刃牙「……仲間がピンチだから出てきたってか?」
ミズチ「仲間……?
ふん、笑わせてくれる……何故我が、人間を仲間と思わねばならぬ?
この地球を害する、愚かなる存在を……我が目的は一つ。
貴様等人間の抹殺……それだけだ」
ラルフ「こいつ……そうか。
どうやらネスツは、作ったはいいものの、制御までは仕切れなかったみたいだな」
クラーク「……レオナの暴走も、こいつの復活が原因か」
万太郎「そ、そんな……無理無理無理!!
幾らなんでも、こんな神様のクローン相手だなんて、絶対勝てないよ!!」
ハイデルン「いや、寧ろ逆だ!!
京達も、復活したばかりのオロチを圧倒して、封印に成功している。
目覚めたばかりのオロチは、力が本調子じゃない……倒すならば、今しかないぞ!!」

逃げようと提案する万太郎に対し、いや、この場にいる全員に対し、ハイデルンは命令を下した。
ミズチを倒せるのは、復活したばかりの今しかないのだ。
このチャンスを逃せば、永遠にミズチを倒せなくなるかもしれない。
なんとしてでも、ここで撃破する……そう、皆に告げた。
その言葉を受け、多くの者達が構えを取る。

万太郎「で、でも……」
ミート「大丈夫です、王子。
今は皆も一緒だし……例え相手が神でも、倒せない相手じゃないですよ!!」
万太郎「え?」
ミート「あなたは知らないかもしれませんが……かつてあなたのお父上達は、邪悪の神を相手に死闘を繰り広げました。
スーパーフェニックス、ゼブラ、マリポーサ、ビッグボディ、ソルジャー。
スグル様を抹殺しようと降り立った邪悪の神々は、あまりに強大すぎる力を秘めていました。
けれど……スグル様やアタル様、テリーマンさんやロビンマスクさん……皆、彼等達を相手に必死に戦って、そして勝ったんです!!」
キッド「俺も、パパからその話は聞いている。
あまりに強大すぎる敵だったが、キン肉マン達は逃げずに立ち向かい……そして勝ったと」
万太郎「父上達が、神様を相手に……」
ケビンマスク「万太郎よ、お前もキン肉マンの息子だってんなら……やれるよなぁ?」
万太郎「……ああ!!」

ミート達の言葉を聞き、万太郎は闘志を奮い起こした。
自分は、偉大なる伝説超人キン肉マンの息子。
かつて邪悪の神すらも打ち倒した、誇り高きキン肉族王家の跡取りなのだ。
父が乗り越えた、神という強大な壁を……自分が乗り越えられないでどうするか。
先ほどとは打って変わった、気迫に満ちた表情で万太郎はミズチを睨みつける。

ミズチ「面白い……私を倒すか。
やれるものなら、やってみるがいい……ゆけ!!」
レオナ「ぐおおおおおお!!」

レオナが咆哮を上げ、万太郎達へと襲い掛かっていく。
そんな彼女の前へと飛び出したのは、怒チームの面々だった。
同じチームの仲間として、彼女は必ず止める。
オロチの力なんかに支配されたままにして、たまるものか。

ハイデルン「レオナは、私達が引き受ける!!」
クラーク「だから……必ず、奴を!!」
ウィップ「皆、頼むわよ!!」
ラルフ「いけぇ、お前等ぁ!!」
銀次「皆……うん!!」
K´「いくぜ……!!」

怒チームにレオナを任せ、そして残りのメンバーは一斉にミズチへと攻撃を仕掛けにかかった。
ミズチは動じることなく、掌を突き出す。
直後……強烈な衝撃波が巻き起こり、迫り来る者達へと襲い掛かった。

マキシマ「うおおっ!?」
承太郎「ちっ……!!」

強く地に足をつけ、吹き飛ばされないよう踏ん張ろうとする。
しかし……ミズチの力は強大だった。
耐え切れなくなり、何人かが吹き飛ばされ、壁へと激突してしまう。

渋川「ぬぅぉっ!?」
クーラ「キャアアァッ!!!」
ミズチ「愚かな……む?」

余裕の表情で、吹き飛ばされた者達を睨みつけるミズチ。
しかし……その直後、彼の頭上に一つの影が落ちた。
上空に飛ぶことで衝撃波を回避し、ミズチへと接近する事に成功した者が一人いたのだ。
新世代超人の一人……ジェイド。
ジェイドの右手が、紅蓮の炎で包まれる。
これぞ、彼の誇るフェイバリットホールド。
師匠のブロッケンJrより伝授された、伝家の宝刀……!!

ジェイド「ベルリンの赤い雨ェェェェェッ!!!
ミズチ「!!」
万太郎「いいぞ、ジェイド!!」

コンクリートすらも切り裂く必殺の手刀が、ミズチの脳天に迫る。
見ていた万太郎達も、見事にやったと思った。
ベルリンの赤い雨がこの状況で炸裂すれば、大きなダメージになるだろう。
誰もが、そう思い喜んでいた……が。
この直後に、その期待は見事打ち砕かれることとなった。

ミズチ「どうした?」
ジェイド「なっ……ば、馬鹿な!!
か、体が……動かないだと!?」
ミズチ「……この程度か」

ベルリンの赤い雨は……ミズチに命中していなかった。
その刃がミズチを捉える寸前で、ジェイドの手刀が……いや、ジェイド自身が静止していたのだ。
念動力、とでも言うべきだろうか。
得体の知れない何かの力を受け、ジェイドは身動きを封じられていた。
ミズチはそのまま、カッと目を見開き……直後。

ドグォォンッ!!!!

ジェイド「ぐあああああぁぁぁっ!?
蛮「ジェイド!?」
キッド「なっ……一体、何しやがったんだ、あいつ!!」

ジェイドの足元から蒼白い火柱が立ち昇り、一瞬にしてその身を焼いたのだ。
全身を業火に巻かれたその苦しみから、ジェイドは呻き声を上げてのた打ち回っている。
あまりにも、受けたダメージが大きすぎる……このままではまずいと、仗助が真っ先に飛び出した。

仗助「待ってろ、俺がすぐに治す……クレイジー・ダイヤモンド!!」

仗助は自身のスタンドであるクレイジー・ダイヤモンドを発現させ、その拳をジェイドに向ける。
クレイジー・ダイヤモンドの能力は、あらゆるものを『なおす』力。
相手が死人か己自身で無い限り、傷を直す事は造作も無いことである。
一瞬にしてジェイドの傷口が塞がり、ダメージが回復する。
これで何とか大丈夫。
仗助が一息をついた……その、次の瞬間であった。

ミズチ「治癒の力か……厄介だな」
仗助「!?てめぇ、いつの間に……!!」

いつの間にか、ミズチは仗助の背後に立っていたのだ。
動く瞬間が、全く見えなかった……いや、そもそも動いてすらいないのかもしれない。
ミズチは、気配すらも感じさせていなかった……テレポートの類で移動したのかもしれない。
すぐさま仗助は、クレイジー・ダイヤモンドでミズチへと殴りかかろうとする。
だが……それよりも早く、ミズチは動いていた。

ミズチ「遅い……」
仗助「なっ……ぐおおおお!?」


ズガアアァァァァン!!!!


承太郎「仗助ぇ!!」
仗助「は……反則だろ……こんなの……!!」
ミズチ「まずは、お前から消させてもらおうか……」
仗助「くそっ……クレイジー・ダイヤモン……」
ミズチ「遅い」

仗助は、反撃を試みようとするも……ミズチには、触れる事すら許されなかった。
ミズチの体が発光すると共に、まるでハンマーで叩かれたかのような、強烈な衝撃が仗助を襲ったのだ。
そのまま仗助は壁に叩きつけられ、痛烈なダメージを受ける。
仗助の能力が厄介だと悟ったミズチは、仗助から真っ先に消そうと考えていたのだ。
今現在、この中で治癒能力を持つ者は仗助ただ一人。
ここで彼を失ってしまっては、受ける損害は余りに甚大である。

キッド「そうは……!!」
ケビン「させるかよぉっ!!」

ミズチが追撃に移るのを止めるべく、キッドとケビンマスクが同時に飛び出す。
二人はほぼ同時に、ミズチの顔面目掛けて拳を繰り出しにいった。
だが、ミズチは二人の方へと見向きもせず……ただ、彼等のいる方へと手をかざした。
その瞬間……その掌から雷撃が放たれ、二人の体を穿ったのだ。
僅か一瞬の一撃……されど、十分すぎる一撃であった。

キッド「ゴハァッ!?
ケビン「ば、馬鹿な……!?

二人は一瞬で、十数メートル先まで吹き飛ばされていた。
その身に受けたダメージも、尋常なレベルではない。
穿たれた部分は焼け焦げ、そこからどくどくと血が流れ出ている。
彼等はここまで……ミズチに、触れる事すら許されていない。
一撃も、攻撃を加えられていない……ミズチがあまりにも、圧倒的すぎるのだ。
その様を見た怒チームの面々は、かつての三種の神器対オロチ戦の事について、思い返していた。
あの時は、庵と神楽の力でオロチの力を封じ、そこを京が叩く事で打ち勝つ事が出来たのだが……

ラルフ「このクローン……京達がやりあった本物より、力が上がってやがるのか!?」
クラーク「ネスツが独自に調整を加えたと見るべきでしょうね。
草薙京達が戦った本物のオロチも、確かに凶悪でしたが……それでも彼等は、普通に挑む事が出来た。
触れる事すら叶わないなんて、そんな馬鹿な話は……!!」
ハイデルン「……ネスツ、貴様等は一体何を……!?」
 


91 名前:新章/最悪のクローン編:2009/01/26(月) 18:19:16
ドグオオオォォォォォォン!!!!

チェックメイト「!?」
花山「爆発……?」

遡る事数分前、ミズチが復活を遂げた直後の事であった。
敵の追撃を防ぐべく戦っていた花山達は、突如として基地内に響き渡った爆音と震動に、驚かされていた。
震源はどうやら、基地の奥……ハイデルン達に、何かあったのだろうか。
見た所、敵の数もかなり少なくなってきている。
後は兵士達に任せて、自分達も奥に急行すべきではないだろうか。
そう花山達は考え、すぐさま兵士達にその旨を伝えようとする……が。
その、直後であった。

ガゼルマン「待て……この足音、誰かが近づいてきている……?」
セイウチン「まさか、新手が来ただか?」
花山「……来たぜ」

入り口近くから、大勢の足音がこちらへと迫ってくるのが聞こえてくる。
とっさに花山達は身構え、新たなる敵へと備えた。
そして、そこに現れたのは……無数のネスツ兵と、ネスツ幹部が一人。
圧倒的な戦闘能力を持つ、かつてのKOF大会の主催者。

チェックメイト「あなたは、確か……クリザリット!!」
クリザリット「……正義超人に、花山薫か。
俺の顔は、ハイデルン辺りから知らされたようだが……まあそんな事はどうえもいい。
我々は、今すぐ成さねばならぬ事がある……大人しく、道を明けてもらおうか?」
ガゼルマン「ハッ、どうせ奥にいる万太郎達を倒しに行くって言うんだろ?
そんなマネ、誰がやらせるかよ!!」
クリザリット「……それどころではない」
花山「何……?」
ガゼルマン「ふん、いきなり何を……」
セイウチン「ちょっと待つだ、ガゼルマン。
何か、様子がおかしいだよ」

クリザリットは、ただ単に増援に現れたわけではない。
彼の焦り模様からそれを察したセイウチンが、いきり立つガゼルマンを制した。
話を聞かせてもらってからでも戦うのは遅くは無い。
まずは、何があったのかを知るべきである。
しかし万が一に備え、構えまでは解かぬまま、花山達はクリザリットに問い詰めた。

花山「……奥で、何が起こっている?」
クリザリット「……この基地は、ただの拠点という訳ではない。
ここには、秘密裏に培養していたクローン……オロチのクローン体がいる」
ガゼルマン「お、オロチ!?
それって、あの地球の自由意志とかいう……」
クリザリット「そうだ……どうやらお前達を止める為に、誰かがあれを起動させたらしい。
だが……制御に失敗して、暴走が起こってしまっているようだ。
ここは屋内だから分からないだろうが、外は今とんでもない事になっている。
……ミズチの力の影響で、世界を隔てる次元の壁が脆くなり始めている。
下手をすれば、五界事件の時と同じく世界の融合が起こる!!
いや、最悪……世界の消失さえも考えねばならぬ事態だぞ!!
チェックメイト「何ですって……!?
しかし、確かにオロチは地球の自由意志。
神にも等しい力を持っている存在でしょうが……かつてのオロチでも、
目覚めた直後にそれだけの力を発揮しては……まさか!?」

チェックメイトは途中まで言いかけて、ネスツが何をしでかしたのかを悟った。
彼等は恐らく、ミズチに何かしら手を加えている。
本来のオロチをも越えるべく、調整を施して強化したのだ。
それこそが、今ミズチが暴走している全ての元凶ではなかろうか。
だとすると……この事態を収束する為に、クリザリット達を奥に通すべきなのだろうか。
しかし……彼等は、何をしでかすか分からない。
どうすればいいか……そう悩んでいた、その矢先であった。

花山「……何悩んでいやがる」
チェックメイト「花山さん……?」
花山「相手が神だろうが閻魔だろうが関係ねぇ。
奥に行ったのは全員、信用できる仲間だろうがよ
ガゼルマン「!!」
花山「あいつ等なら、誰が相手だろうと潰す。
なら俺達は、その邪魔をされない様にやるだけだろうが」

花山の言葉を聞き、皆がハッとした。
そう……この奥で戦っているのは、信頼の置ける大切な仲間達なのだ。
自分達が彼等を信じないで、一体どうする。
御蔭で目が覚めた……皆が戦う姿勢を取る。
ここでクリザリット達を倒す事こそが、自分達の役目なのだ。

クリザリット「……力ずくで退かす以外に、手は無いという事か。
ならば、いいだろう……!!」

クリザリットの全身から紅蓮の炎が吹き上がり、羽織っていたコートを焼く。
完全な戦闘態勢……クリザリットも構えを取った。
彼等の言う事も、確かに一理ある。
ミズチと対峙しているのは、いずれも屈強な猛者達……倒せる可能性はある。
だが……ミズチを倒すという目的を果さなければならない一方、
ハイデルン達にはそれを任せられない理由が、ネスツにはあったのだ。
無論、ミズチの撃破は最優先事項なのだが……

クリザリット(奴等がミズチを倒したならば、それはそれで構わない……目的は達成される。
だが……その時に、ここで足止めを喰らっているままだという事態だけは避けねばならん。
もしも、ハイデルン達にミズチの死体を回収されでもしたら……アレの存在がばれる)

ネスツが、ミズチ強化の為に用いたとある代物。
それはかつて、神風怪盗とCLAMP学園、それに連なる者達を苦難へと叩き込んだ存在。
Gショッカー……今のDショッカーが、ある一人の王を目覚めさせる為に用いた起爆剤。
ある獣戦士の血より、ネスツが秘密裏に入手していた負の遺産……

クリザリット(蠅の魔王の遺伝子……アレを、不完全な形といえど我々が所持している事が
知られれば、何かと厄介だ……防がなければ!!)
 

92 名前:新章/最悪のクローン編:2009/01/26(月) 18:20:02
○先行部隊(怒チームを除く)→ミズチに戦いを挑むも、触れる事すら叶わないという最悪の事態に陥っている。
○怒チーム→暴走したレオナを止める為、総がかりで彼女に挑む。
○花山達足止め組→仲間達の力を信じ、クリザリット達の撃破を決意。
●ミズチ→圧倒的な力を発揮し、己に仕掛けてくる相手を次々に撃破。
     文字通り、指一本触れさせもしていない。
●クリザリット→道を空けない花山達と対立。
        ミズチを撃破する可能性に賭けてはいるものの、
        その体内に眠る蠅の魔王の遺伝子だけは知られるわけにはいかないと感じている。

【今回の新規登場】
○ジェイド(キン肉マンU世)
伝説超人ブロッケンJr.の愛弟子である正義超人。
生き甲斐を失っていたブロッケンJr.に、再び生き甲斐を取り戻させた。
ベルリンの赤い雨を初めとする多くの技を、彼から受け継いでいる。
彼との絆は深く、実の親子以上である。
その後、ヘラクレスファクトリーに入学し、二期生として卒業。
ヘラクレスファクトリー一期生との入れ替え戦では、ベルリンの赤い雨で
ガゼルマンを文字通り瞬殺するという活躍を見せた。
真面目で素直な性格だが、精神面で脆く非情に徹しきれない事が多い。
それ故に、手痛い敗北を喫してしまった経験もある。
第22回超人オリンピックのヒカルド戦を経て、ブロッケンJr.に一人前と認められ、
彼から巣立ち一人立ちした。

○ガゼルマン(キン肉マンU世)
名前の通りの、ガゼルの化身超人である正義超人。
ヘラクレスファクトリーを首席で卒業した、一期生の筆頭超人だった。
しかし……日本防衛の任についた後の扱いは、散々なものである。
d.M.Pが日本に襲撃を仕掛けてきた際には、真っ先に倒されて戦線離脱。
ヘラクレスファクトリー入れ替え戦では、ジェイドのベルリンの赤い雨で瞬殺される。
第22回超人オリンピックに至っては、一切活躍を描かれずにいつの間にか脱落していた。
影が薄く、そしてかつ不幸な超人である。

○セイウチン(キン肉マンU世)
名前の通りの、セイウチの化身超人である正義超人。
ヘラクレスファクトリーでは、学力面でこそガゼルマンに劣っていたものの、
その高い身体能力を発揮し、一期生二位で卒業した実力者。
しかし、実戦では相手をいい所までは追い詰めるものの、
その優しい性格ゆえに戦いの中では本気になる事が出来ず、敗北する事が何度もあった。
しかし日常では、老人を助けたり不良の更生を行っていたりしており、多くの者達から慕われている。
第22回超人オリンピックでは、不運にも予選第二回戦における最初の犠牲者となってしまった。
ちなみに、セイウチン自体のポテンシャルは、正義超人の中でも極めて高い部類に当たっている。
(※究極の超人タッグ編参照)

93 名前:新章/最悪のクローン編:2009/01/26(月) 18:21:24
 
仗助「くそっ……クレイジー・ダイヤモンド!!」
ミズチ「無駄だ……」

クレイジー・ダイヤモンドが拳を振り被ると同時に、ミズチは掌をかざした。
その掌から巨大なエネルギー弾が放たれ、仗助に迫る。
しかし、クレイジー・ダイヤモンドの攻撃力は数多くのスタンドの中でも、最強クラス。
ミズチの攻撃を、逆にその拳で粉砕したのだ。
流石のミズチも、これには少々驚かされた。

ミズチ「ほぅ……!!」
仗助「ドラァッ!!」

クレイジー・ダイヤモンドの拳が、ミズチの脳天に迫る。
攻撃さえ命中させれば、こちらのもの。
怯んだ瞬間から怒涛のラッシュを叩き込み、ミズチを粉砕してくれる。
仗助には、自分の攻撃を命中させる自信があった。
その根拠は、自分達スタンド使いの間にある暗黙のルール。
スタンドは、スタンド使いにしか見ることが出来ない。
いかにミズチといえど、見えない攻撃を回避できる筈などない。
だから、この攻撃は確実に命中する……





……筈だった。


仗助「なっ……ば、馬鹿な!?」

ミズチは、クレイジー・ダイヤモンドの拳を、その手で受け止めていたのだ。
まさか、破壊力が自慢の自分の攻撃を受け止められるなんて。
いや、それ以上に……スタンドが見えないはずのミズチが、どうして攻撃を受け止められたのか。
その理由は……最もありえて欲しくない事実であった。

ミズチ「どうした……その霊体の攻撃を防がれたのが、そんなに驚いたか?
仗助「……!!」

仗助の犯した、最大の誤算。
それは、ミズチにはスタンドが見えないと思っていた事。
スタンド使いでないミズチには、スタンドを目視する事は不可能と思っていた事。
しかし……それは、大いなる誤りであった。
思い返してみれば、先程エネルギー弾を粉砕した時も。
いや、その前……自分が最初に仕掛けた時も、ミズチの反応はおかしかった。
スタンドが見えてないのならば、あんな反応が出来るわけが無い……つまり。

仗助「テメェ……スタンドが見えてやがんのか!?」
ミズチ「なるほど、それがその霊体の名か。
どうやら、他の者の目には見えない様だが……私には見える」
ケビンマスク「やべぇ……このままじゃ、あいつ……!!」
蛮(くそっ……邪眼を使りゃ防げるか?
いや、駄目だ……あいつは赤屍や不動と同じだ。
邪眼を仕掛ける隙がねぇ!!)

クレイジー・ダイヤモンドの拳を、あろうことか掴まれてしまった。
このままじゃまずい……何をされるか分からない。
すぐにスタンドを消滅させようと試みるも、しっかりと掴まれている為に不可能。
スタンドの受けたダメージは、一部の例外を除けば、全てスタンド使いに還ってくる。
ここでクレイジー・ダイヤモンドの拳が破壊されれば、そのまま仗助の拳も砕け散る事になる。
仗助はすぐに、ミズチの手を振り払おうとするが……力が強すぎる。
振りほどけない……!!

仗助「クソッ……!!」
ミズチ「砕けちグフゥゥッ!!?
仗助「……え?」

ミズチが拳を粉砕しようとした瞬間。
突然、ミズチが横方向へと吹き飛ばされ、そのまま壁に激突した。
何の前触れもなく、いきなりミズチがダメージを受けたのだ。
仗助はとっさに後ろへと下がり、ミズチからの距離を離す。
一体何が起こったのか、まるで分からない……誰もが呆然と立ち尽くす。
ただし、ただ一人……この一撃を加えた、この男だけを除いて。

承太郎「やれやれだぜ……大丈夫か、仗助?」
仗助「承太郎さん……!!
まさか、星の白金スタープラチナで!!」
ミズチ「一体……何をした……!?」
承太郎「正直、ほっとしてるぜ。
スタンドが見えてるってのには、驚かされたが……止まった時の中じゃあ動けないようだな」

現象の正体は、承太郎のスタンド能力。
星の白金スタープラチナが持つ、文字通り世界を制する力。
スタープラチナ・ザ・ワールド……ホンの1〜2秒間、時を止める能力である。
承太郎が訓練をすれば、止められる時間は更に延びるだろうが、今はこれが限界である。
だが……そんな僅かな時間の内でも、この場においては効果は絶大だった。
流石のミズチも、静止した時の中では動けない。
承太郎は、時を止めてミズチへと怒涛のラッシュを叩き込んだのである。

ミズチ「……時を止めるだと……?」
万太郎「時を止めるって、それって無敵の能力じゃん!!
やったね、これならミズチでも簡単に倒せるよ!!」
銀次「承太郎さん、頼むよ!!」
承太郎「……やれやれだぜ」

承太郎ならば、ミズチを倒す事が出来る。
希望の光が見えた……皆が歓喜の声を上げ、彼に声援を送った。
承太郎はそんな彼等の声を聞き、溜息をついた。
自分の力ならばミズチを倒せるというのは、紛れも無い事実である。
しかし……それが、絶対とは限らないのもまた事実。
その事に気づいていたのは、他ならぬ承太郎と、そして仗助の二人だけであった。

承太郎(……一つ、気がかりがある。
俺は今、こいつに星の白金スタープラチナを全力で叩き込んだが……)

星の白金スタープラチナの攻撃力は、半端なレベルではない。
仗助のクレイジー・ダイヤモンドとも肩を並べるか、それ以上なのだ。
だが……ミズチはそれだけの打撃を、連続で受けておきながら、倒れてはいない。
どうやら、タフさは相当のレベルの様だ。
承太郎にとって、これは少しまずい展開であった。
時を止める能力は、確かに強力……この能力で、幾度と危機を乗り越える事が出来た。
だが……この力を用いた上で、承太郎は戦いに敗れた事が何度かあるのだ。

仗助(今ので倒しきれなかったのは、ギリかもしれねぇけどよぉ……次は流石にアウトだぜ。
確か承太郎さんって、虫食いネズミやシアー・ハート・アタック相手に負けてるんだよな……?
それって、時を止める能力=無敵じゃねぇってことだろ?)
承太郎(……こいつは得体の知れない化物だ。
そうそう同じ手段で攻められるとは思えねぇ……次で仕留める!!)

承太郎は、己の能力を破られる可能性を考慮し、その上でなお時を止めにかかった。
先程の一撃は完全な奇襲だったから、恐らくミズチは何も分かっていない。
しかし……これ以降の攻撃は、相手に手の内を明かした上。
この一撃は、まだ二撃目だからいいが……三撃目からが、格段に勝率が落ちる。
もしもニ撃目を耐え切られてしまっては……確実にミズチは、何かしらの手を打つだろうからだ。

承太郎「スタープラチナ・ザ・ワールド!!

時が止まり、承太郎以外の全てが静止する。
止められる時間は二秒が限度……その内一秒は、ミズチに接近する為に使用。
そして残り一秒全てを使い……ミズチへと、全力を叩き込む。
狙いは全て、その顔面……!!

承太郎「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!!!

星の白金スタープラチナの拳が、怒涛の勢いでミズチに叩き込まれた。
通常の人間相手ならば、頭蓋骨が完全に粉砕されていてもおかしくないだろう打撃の嵐。
だが、先程の前例がある……倒しきれたかどうかは分からない。
承太郎は、息を呑む……そして時は動き出す。

ドガッシャアアァァァァァァン!!!

ミズチ「グフゥゥゥッ!!??

時が動き出したと同時に、ミズチは勢いよく壁に叩きつけられた。
全身が、壁にめり込んでいる。
それだけ承太郎の放った攻撃が、強力だったのだ。
しかし……それでも、ミズチを倒せたかどうかはまだ分からない。
頼むから、このまま倒されてくれ。
そう、承太郎は切に願っていた……が。

承太郎「……やれやれだぜ」
ミズチ「やってくれるな……人間ども……!!」

駄目……!!

承太郎「防御力まで、規格外ときやがったか……」
ミズチ「時を止める力……見せてもらったぞ。
まさか、これほどに恐ろしいものとは思わなかった……だが……!!」

ミズチはダメージを受けている……それは紛れも無い事実。
しかし……倒しきれなかったのもまた事実。
星の白金スタープラチナのラッシュで倒しきれない相手……承太郎は息を呑んだ。
こうなれば、危険を覚悟で時をもう一度止めてかかるしかないか。
ミズチが何かを仕掛けてくる前に、こちらから仕掛けるしかない。
すぐさま承太郎は、時を静止させようとする……が、その直後だった。
ミズチが大きく目を見開き……承太郎の足元から、火柱を噴出させたのだ。

承太郎「ぐあああああぁぁっ!!??
蛮「JOJOォッ!!」

ミズチが取ったのは、承太郎も十分予測できていた行動。
極めて簡単、至ってシンプルな手段……承太郎が時を止める前に、彼を仕留めるという方法である。
かつて承太郎はDIOと対峙した時、DIOが時を止める前に即座に拳をぶち込み、阻止した経験がある。
そう……時の静止は、発動させようとしてから発動するまでの間に、若干のタイムラグが生じるのだ。
ミズチがそのタイムラグの瞬間を狙えたのは、はっきり言うと運が良かったからではあるが……

渋川「いかん……全員、承太郎を守れ!!」
万太郎「い、言われなくったって!!」
マキシマ「仗助、急いで承太郎を治すんだ!!」
仗助「分かっている!!」

もはや、ミズチの狙いが承太郎一人に絞られるのは明確である。
ミズチはまず間違いなく、彼に集中砲火を浴びせ、時を止める時間すら与えないつもりでいる。
ここで承太郎を失うわけにはいかない……皆が壁となり、承太郎を守ろうとする。
だが……ミズチはここで、恐るべき手段を取ってきた。
承太郎に手傷を負わされたことにより、彼の内から余裕は消えていた。
もはや、敵の殲滅に手段は選ばないつもりでいるのだ。
ミズチの全身から、眩いエメラルド色の光が放たれ始める。
レオナと交戦中だった怒チームは、それが最悪の事態を意味する事を知っていた。

ラルフ「やべぇ!!
おい、全員すぐに逃げるんだ!!」
刃牙「え……?」
ハイデルン「あれは、以前のオロチが扱っていた中でも、最も破壊力のある攻撃だ!!
巻き込まれれば、ただではすまんぞ!!」
K´「何だと……?」

ハイデルン達の言葉を聞き、皆はとっさに出入り口のほうを見やった。
だが……その時には、既に手遅れだった。
ミズチの全身から……とてつもないエネルギーが、放出された。

ミズチ「さあ……無に還ろう……!!
 
 
 

94 名前:新章/最悪のクローン編:2009/01/26(月) 18:22:24
○東方仗助→ミズチに奇襲を仕掛けるも、スタンドが目視されているとは思わずに失敗。
      ミズチがスタンドを目視できる事を確認する。
○空条承太郎→時を止める能力を用い、ついにミズチにダメージを与える。
      しかし、ミズチの耐久力が半端ではないという予想外の事実から、
      ミズチを仕留め切れなかった。
      この一連の行動がミズチの逆鱗に触れてしまい、全身火傷の重傷を負わされる。
●ミズチ→最初に会った時から、承太郎達のスタンドを目視出来ていた。
     しかし、承太郎にダメージを与えられた事から、彼等の危険を再認識。
     余裕の態度から一変、一気に殲滅を図ってきた。

95 名前:新章/最悪のクローン編:2009/01/26(月) 18:23:15
ハイデルン「私とラルフで脱出経路を作る、皆も来るんだ!!」
ミート「は、はい!!」
ラルフ「いくぜぇ……ギャラクティカファントォォォムッ!!

ハイデルンとラルフは、同時に壁へと攻撃を仕掛けた。
渾身の力を込めた、ラルフ必殺の一撃であるギャラクティカファントム。
その直撃を受け、分厚い壁に一気に亀裂が走る。
そしてその亀裂へと、ハイデルンの手刀がまともに直撃。
ハイデルンは力を込め、手刀の先からそれを開放した。

ハイデルン「Go to Hell!!

手刀の先から、強烈な爆発が起こる。
一瞬にして、壁は崩壊……出入り口が出来上がった。
そしてそれとほぼ同時に、ウィップの鞭が暴走するレオナを捕縛。
そこへクラークが掴みかかり、彼女の身動きを完全に封じた。
後は、ミズチの攻撃に呑まれる前に逃げるのみ。
まずはハイデルン達怒チームが外へと出、それに続きミートとキッドの二人。
重傷を負い気を失っている承太郎を抱えた渋川が飛び出した。
そして後へ続こうと、他の者達も動く……が。

ラルフ「やべぇ……間に合わねぇ!!」
ミート「皆さん……王子ぃ!!」

不運にも、他の者達は間に合わなかった。
脱出できたのは、彼等だけだったのだ。
そして直後……建物の壁に一気に亀裂が走った。
ミズチの力により、この基地そのものも崩壊の危機を迎えていたのだ。
急いで離れなければ、自分達もどうなるか分からない。
しかし……それを妨害すべく、レオナがクラークの束縛を解き放ち、襲い掛かってきた。

レオナ「ガアァァァァァッ!!
クラーク「くぅっ!?」
渋川「やれやれ、厄介な嬢ちゃんじゃな……!!」

ここでレオナを止めなければ、自分達が死ぬ。
とっさに渋川はレオナへと飛び掛り、彼女の手首を掴んだ。
渋川流柔術、達人渋川剛気。
己の二倍以上はある大男ですらも軽々と投げ飛ばす、脅威の合気使い。
彼の前には、例え相手が暴走するレオナであろうと……その敵ではなかった。

渋川「ほれっ!!」
レオナ「!?」

渋川が軽く手を捻ると、それに合わせてレオナの体も崩れ落ちた。
レオナは強く、頭を地面に打ち付けられる。
それに合わせて渋川は、更なる追撃に出る。
そのまま、レオナをキッドの方へと引き投げたのだ。
キッドはレオナを受け止めると、すぐさま攻撃に移った。
しばらくの間、彼女には気を失ってもらう為に。

キッド「うおおおおおおぉぉぉ!!」

キッド渾身のバックドロップが炸裂。
レオナは意識を失い、その場にゆっくりと崩れ落ちた。
そんな彼女をハイデルンはそっと抱え上げると、すぐさまその場から離れるよう皆に命じた。
皆を助けたいのは山々だが……このままでは、自分達までどうなるかが分からない。
指揮官としての、苦渋の決断であった。




ミズチ「おおおぉぉぉぉぉっ!!」

既に、目の前まで力の波動は迫っていた。
ミズチの全身から解き放たれた、異常な量のエネルギー。
コンクリートの床を粉砕しながら、それは迫り来る……巻き込まれれば、死は免れないだろう。
ならば打つ手は一つ……可能な限り、攻撃を防ぐしかない。
とっさに、クーラと仗助の二人が皆の前に飛び出した。
仗助はクレイジー・ダイヤモンドを出現させ、床に全力のラッシュを叩き込む。
クーラは床に両手を着け、持てる限りの力を解放する。

仗助「クレイジー・ダイヤモンド……ぶっ壊れた破片を、元通りに『直す』!!」
クーラ「いくよ……おっきいの!!」

仗助は、粉砕した床を空中で直す事により、防護壁を形成する。
クーラは力を最大限に発揮し、巨大な氷の壁を生み出す。
二人はミズチの力を押さえ込もうと、決死の覚悟で挑んでいた。
そして、防護壁が出来上がったまさに直後。
ミズチの解き放ったエネルギーが、皆に襲い掛かった。



ズガガガガガガガガアアアァァァァァァァァァァッ!!!!!



仗助「このパワー……やべぇ!!
俺の作った防護壁じゃ、こいつは無理だ!!」

仗助の生み出した防護壁は、一瞬にしてその八割を削り取られた。
いくらクレイジー・ダイヤモンドで直したとはいえ、所詮材料はただのコンクリート。
ミズチの攻撃を防ぎきる事は、まず不可能であった。
そうなれば……頼りとなるのは、クーラ一人である。
彼女が生み出した氷の防護壁は、彼女の持つ力によるもの。
つまり、彼女の力に比例して防御力は上昇するのだが……

クーラ「キャアッ!?」
K´「クーラ!!」
クーラ「だ、大丈夫……何とか、するから……!!」

ミズチの力は強大無比。
クーラの全力を込めた氷壁ですら、防ぎきれるかどうかが分からなかったのだ。
しかし……ここでクーラが倒されれば、皆が倒される事になる。
クーラは全身全霊を集中させ、己が倒れるのも覚悟で氷壁の展開を続ける。
そんな、彼女の決死の姿を背後から見ていて、皆は歯がゆい思いをしていた。
自分達にも、何か出来る事があれば……そう思っていた。

ミズチ「愚かな……貴様如きに、何が出来る!!
クーラ「う……嘘っ!?
力が強まって……キャアアァァァァァッ!!!」
銀次「クーラちゃん!!」

クーラに阻止された事が、余程腹立たしかったのだろうか。
ミズチの力が、急激に強まった……氷壁の消失していくスピードが、倍増する。
このままではまずい……後数秒、持つか持たないか。
もはやこれまでか……多くの者が、覚悟を固めた。
しかし、そんな中で……一人、闘志と苛立ちを募らせる者がいた。

K´「ちっ……うざってぇんだよっ!!
クーラ「K´……!?」

K´の右腕から、凄まじい勢いで紅蓮の炎が噴出された。
特殊なグローブによって、普段は彼の力は制御されている。
しかし……これまでの戦いにも何度かあったが、グローブの制御を無視して力が暴走する事もあった。
まさに今、その暴走が起こっていたのだ。
K´は、拳を真っ直ぐに前へと向け……凄まじいスピードで、突撃していく。
あろう事か……クーラの展開している氷壁を、粉々にぶち破って。
クーラはすぐに力を集中し、氷壁を修復させるが……一瞬遅かったら、エネルギーに呑まれていた。
この暴挙に、誰もが驚き、中には怒りすらも感じる者もいた。

蛮「なっ……何を考えているんだ、あいつ!?
死ぬ気か……いや、俺達まで殺す気か!!」
万太郎「ま、待って……よく見てよ!!」

しかし……直後に、その怒りすらも吹き飛んだ。
K´は、ミズチのエネルギーの直撃をまともに受けているにもかかわらず……止まらない。
スピードを維持したまま、ミズチへと真っ直ぐに向かい……そして。
燃え盛る右拳を、ミズチの胴体へと叩きつけた。
K´の超必殺技の一つ、ヒートドライブ。
それがまともに、直撃したのだ。

ミズチ「なっ……ゴフゥッ!?
K´「うおおおおおお!!

直後、K´の右拳が爆発。
零距離からの強烈な爆撃を受け、ミズチが後方へと大きく吹き飛ばされた。
それと同時に、ミズチから放たれていたエネルギーの波動も消失する。
これで、自由に動けるようになった。
すぐさま仗助がK´に駆け寄り、彼が受けたダメージを治す。
絶体絶命かと思われた事態が、一瞬にして覆されたのだ。
そしてこの時、皆はある異変に気づく。
承太郎のラッシュですら耐え切ったミズチが……今の一撃に、相当のダメージを受けているのだ。
確かにK´のヒートドライブは、凄まじい破壊力を持ってはいる。
だが、それにしてもミズチにここまで効果的とは思わなかった……一体何故か。
その理由に真っ先に気づいたのは、彼の相棒であるマキシマだった。

マキシマ(そうか……考えてみりゃ、これは当然だ。
K´の炎は、草薙京の炎を移植されたもの……オロチを倒した、三種の神器の力だ。
だから、あいつの炎はミズチに反応して暴走を起こしたんだ。
あいつの攻撃がミズチに対して有効なのは、必然……K´は、ミズチの天敵……!!)
ミズチ「その炎は……馬鹿な。
貴様、草薙の……!?」
K´「……確かに俺の力は、草薙の炎と同じ代物だ。
だが……俺は俺だ

K´の持つ炎の力は、ネスツによって移植された草薙京の力。
彼と同じ、三種の神器が炎の力なのだ。
オロチのクローンであるミズチにとって有効打なのは、当然の結果だった。
ミズチにとって最大の脅威。
それは、時を止める承太郎でもなく、治癒能力を持つ仗助でもなかった。
草薙の力を持つ、K´だったのだ。
すぐさまミズチは、K´を止めるべく攻撃を仕掛けようとする。
しかし、その瞬間……K´の姿が、視界から消失した。
ブラックアウト……漆黒の残像を生み出す、高速移動技。
K´は瞬時に、ミズチの背後へと回りこんだのだ。
ミズチはすぐさま後ろに振り返ろうとする……が。
振り返ろうとしたその直後……その頭上から、影が落とされた。
襲い掛かってきたのは、相棒……マキシマ。

マキシマ「バンカー……バスタアアァァァァァッ!!
ミズチ「ぐぉぉぉっ!!??」

強力なエネルギーを纏っての、空中からの体当たり。
ミズチはまともにその直撃を喰らい、地面に叩きつけられる。
K´は黙ったまま、マキシマに軽く首を振った。
彼なりの感謝の仕方ということだろう。

マキシマ「相棒の危機を黙って見過ごせる程、俺も馬鹿じゃないんでね。
反撃開始だ……遠慮なくやらせてもらうぜ、ミズチさんよ」
ミズチ「貴様……っ!?
こ、これは……!!」

ミズチが起き上がろうとした、その時に異変は起こった。
動けない……両足が凍りつき、地面から離れない。
これを行ったのは、勿論クーラであった。
マキシマが仕掛けると同時に、彼女もまた動いていたのだ。

ケビンマスク「流石は、KOFの優勝チームだけはあるな。
完璧に息が揃ってやがる……おい、万太郎!!
俺達も負けてられねぇよなぁ……?」
万太郎「……ああ、勿論だよ!!」

K´達の姿に、他の者達も触発された。
まず最初に動いたのが、万太郎とケビンマスクの二人だった。
万太郎の額には、肉の一文字が浮かび上がる。
ケビンマスクの肉体は、眩く輝き始める。
二人の持つ底力が、発揮されたのだ。

万太郎「火事場の……クソ力ァァァァァッ!!
ケビンマスク「大渦メイルストロームパワァァァッ!!
ミズチ「くっ……おのれぇぇっ!!」

ミズチはすぐに力を放出し、足の氷を粉砕……身動きを取れるようにする。
そして迫り来る万太郎へと向かい、強烈な衝撃波を浴びせた。
しかし……火事場のクソ力が発動した万太郎の力は、半端なレベルの代物ではない。
万太郎は肉のカーテンでミズチの攻撃を防ぎながら、真っ直ぐに彼へと突撃する。
止まらない……止められない。
万太郎の進行が止まらない事に、ミズチは脅威を覚えた。
このままではやられる……すぐに動きを封じなければ。
ジェイドを止めた時と同様、サイコキネシスで万太郎の動きを停止させようとする。
だが……万太郎には、それが通用しなかったのだ。
火事場のクソ力により、強引に……力ずくで、ミズチのサイコキネシスを破ったのである。

ミズチ「ば……馬鹿な!?」
万太郎「うおおおおおおぉぉぉっ!!」

万太郎の渾身のタックルが、ミズチを捉える。
そしてそのまま、万太郎はミズチの両足を掴み、勢いよく担ぎ上げる。
ミズチの頭を自分の頭の横に乗せ、そして跳躍。
四十八の殺人技の一つ、五所蹂躙絡み……またの名を。

万太郎「キン肉バスタアァァァァァァッ!!
ケビンマスク「よしっ……そのままやれぇ、万太郎!!」

キン肉バスターを発動させた万太郎へ向けて、ケビンマスクも跳躍する。
そしてその背後に回り、ミズチの腕を取る。
その両足は、ミズチの足にかける。
師匠ウォーズマンより伝授された、必殺のフェイバリットホールド……OLAP。
今、その技がキン肉バスターとの合体を果した……!!

万太郎&ケビンマスク「NIKU→LAP!!
ミズチ「がっ……うあああぁぁぁっ!!??
ジェイド「キン肉バスターとOLAPのツープラトン……凄ぇ……!!」

NIKU→LAPがミズチに与えたダメージは、相当なものであった。
単発でもかなりの破壊力がある二人の必殺技を、同時に叩き込まれたのだ。
全身の間接を痛めつけられ、流石のミズチもかなりの重傷である。
しかし、ミズチにも意地がある……ここで負けるわけにはいかない。
渾身の力で、万太郎とケビンマスクを吹き飛ばす。
二人は壁に叩きつけられ、ダメージを受けてしまうが……

刃牙「ははっ……負けてられないか。
確かに、その通りだな……俺もだよ……!!

触発されたのは、彼等のみにあらず。
刃牙もまた、真っ直ぐにミズチへと突っ込んでいった。
彼には、地上最強の生物を……範馬勇次郎を越えるという目的がある。
ここで立ち止まっていてはいられない。
この程度の壁を乗り越えられないようでは……あの男には勝てない……!!

刃牙「うおおおおぉぉぉっ!!」
ミズチ「なっ……何ぃっ!?」
マキシマ「あれは……鬼の顔が、背中に!?」

異常なまでに発達した背の筋肉が形成する、鬼の顔。
父範馬勇次郎が持つものと同じものが、彼の背中に表れたのだ。
この時刃牙の脳内では、βエンドルフィン……脳内麻薬が、大量に分泌されていた。
ミズチという、生命の危機を感じさせる強敵を前にした事により、急激に分泌され始めたのだ。
その効果により、彼の持てる力が限界を超えて引き出される。
刃牙は全力を込め、ミズチの顔面へと真っ直ぐに拳を振り被った。
その拳の速さは……何と、星の白金スタープラチナ以上。
刃牙は今ここに残っているメンツの中では、唯一の『普通』な人間。
スタンド能力もなければ、K´やクーラの様な特殊な力があるわけでもない。
勿論、マキシマの様なサイボーグでもなければ、万太郎たちの様な超人でもない。
その為に、ミズチは油断をしていた……が。
刃牙は、あの範馬勇次郎の、地上最強の生物の血を引くグラップラーなのだ。


ドグシャァァッ!!


ミズチ「ガハッ……!?
刃牙「アアアァァァァァァァァッ!!」

この一撃で終わらせるつもりはない。
刃牙は、更なる連撃に移ろうとした。
だが……次なる攻撃が叩き込まれる前に、刃牙の動きは封じられてしまった。
承太郎の時を止める力。
人知を超えた、火事場のクソ力の無茶苦茶さ。
人間としては最強レベルといっても過言ではない、刃牙の身体能力。
そして何より……自らにとって最大の天敵とも言える、三種の神器の力。
目覚めたばかりの相手が、既に世界最強の域に踏み込んでいる者達ばかり。
流石のミズチとて……堪え切れなかった。

ミズチ「図に乗るな……人間どもがぁっ!!

ミズチが雄叫びを上げると共に、力は解放された。
ジェイドや万太郎に仕掛けたのとは比べ物にならない力で放たれた、強烈なサイコキネシス。
全員が身動きを封じられ、指一本動かせなくなる。
今度ばかりは、万太郎の火事場のクソ力でもそれを打ち破る事は出来なかった。
その後……徐々にミズチの背中が隆起し、そこから羽根が生えてきた。
やがてその肉体は、徐々に黒色へと染まっていく。
ミズチが窮地に立たされた事により、蠅の魔王の遺伝子が彼の肉体に急激な作用を及ぼしたのだ。

刃牙「この距離……まずいか……!!」
ミズチ「死ね……!!

ミズチはまず、眼前の刃牙へと拳を打ち込んだ。
普段の刃牙ならば、余裕で防御できる攻撃ではあったが……身動きが取れない現状では、それも叶わない。
強烈な勢いで、刃牙の肉体は壁に叩きつけられた。
骨が砕け散る感じの、嫌な音がした……肋骨を何本か、持ってかれたらしい。
刃牙は口から血を吐き、肩で大きく息をし始める。

ミズチ「死に切れなかったか……なまじ鍛えていたのが、仇になったな
刃牙「……いける……まだ、生きてる……」

刃牙は、己がまだ死んでいない事を確認する。
どうやら今の一撃を貰った事により、サイコキネシスが解けたらしい。
他のメンバーには、以前金縛りは続いている。
ならば自分がやるしかないだろう……刃牙はゆっくりと起き上がり、ミズチを睨みつけた。
だが、その瞬間には……既にミズチが動いていた。
大きく目を見開き、巨大な火柱を刃牙の足元から出現させたのだ。
その規模は、変化を遂げる前のそれよりも遥かに上。
今の刃牙の身体では、受け切れる攻撃ではない……即死もありうる。

仗助(駄目だ……スタンドは出せるけど、刃牙との距離が遠い!!
即行で治すって手段は取れねぇ……!!)
ミズチ「まずは……一人

ドグウォォォォォォォォン!!!
 
 

96 名前:新章/最悪のクローン編:2009/01/26(月) 18:24:04
○怒チーム・キッド・渋川→基地からの脱出に成功、暴走レオナを静止させる。
○K´→己の力がミズチに通用する事が判明。
    暴走気味の力を制御せず、逆にそのままミズチにぶつけにかかる。
○クーラ→ミズチからの攻撃を辛うじて封じきる。
     その後、NIKU→LAPへの繋ぎの為に全力でミズチを止めにかかった。
○キン肉万太郎→火事場のクソ力で、強引にミズチの攻撃を突破。
        ケビンマスクと共にツープラトンを決め、ミズチに大きなダメージを与える。
○ケビンマスク→大渦パワーを土壇場で発動。
        万太郎と共にツープラトンを決め、ミズチに大きなダメージを与える。
○範馬刃牙→βエンドルフィンの異常分泌により、鬼の面が背中に形成される。
      ミズチに強烈な一撃を叩き込みダメージを与えるが、
      その後巨大な火柱に飲まれてしまう。
●ミズチ→K´が草薙の力を持っていたが為に、大きなダメージを受けてしまう。
     その後、それを皮切りに万太郎達が猛攻を仕掛けてきた為、多大なるダメージを受ける。
     しかしその直後、蠅の魔王の遺伝子による急激な変異を遂げる。
     刃牙を火柱で焼き殺しにかかった。

97 名前:新章/最悪のクローン編:2009/01/26(月) 18:25:48
ジェイド「刃牙ィィィィィィ!!!」
銀次「そんな……刃牙君が……」

巨大な火柱に刃牙がのまれた。
その光景に、誰もが絶望を隠し切れなかった。
先刻、ジェイドや承太郎へと仕掛けた時よりも、明らかに威力は上。
いかに強靭な肉体を持つ刃牙といえど、死は免れないか。
ミズチも、刃牙の死を確信していた。

……が。

マキシマ「いや、まて……生体反応がある!!
刃牙は、まだ生きているぞ!!」
ミズチ「な……にぃ!?

火柱の中から、刃牙は姿を現した。
所々に軽い火傷を負ってはいるものの、無事である。
しかし、ミズチの攻撃をここまで軽減できるなんて、幾らなんでもありえない。
この場にいる誰かが、刃牙の手助けをしたのか。
すぐにミズチは、全員の顔を見渡す。
サイコキネシスによって、身動きは全て封じていたはず。
それでもなお、何か出来るとするならば……仗助のクレイジー・ダイヤモンドか。

ミズチ(いや……奴のスタンドに動きはなかった。
ならば、他の者が……むっ!?
)

ここでミズチは、刃牙の足元に目をやる。
そこに出来ていたのは、何てことないただの水溜りだった。
明らかに、汗で出来たものではない。
誰かが故意にやったとしか思えない……ここまでくれば、その犯人を特定するのは簡単である。
水、もしくはそれに連なる力を扱えるものは、ここに一人しかいない。

ミズチ「貴様あぁぁぁぁぁぁっ!!
クーラ「ばれちゃった……!!」

仕掛け人はクーラだった。
刃牙が炎に飲まれる直前、彼女はとっさに能力を発動させ、彼の周囲を氷で包み込んだのだ。
そうする事により、ミズチの炎を軽減させ刃牙を封じていたのである。
身動きが取れない彼女にそれが出来たのは、身動きをとる必要が無かったから。
足元から冷気を発生させ、それを伝わらせて氷を発生させていたからだ。
ミズチは怒りを露にし、クーラに掌を向けた。
だが……その瞬間、とてつもないスピードで何かが顔面に叩き込まれた。
唯一サイコキネシスを受けていなかった、目の前の刃牙の拳。



98 名前:新章/最悪のクローン編:2009/01/26(月) 18:27:24
ミズチ「ぐぅっ!!??
刃牙「やらせるかよっ!!」

ミズチが大きく吹っ飛ぶ。
受けたダメージは、それなりに大きい筈。
しかし……サイコキネシスが解除される様子はない。
ミズチがダメージを受けようが受けまいが、それには関係ないのだろうか。
それとも、強い意志でサイコキネシスを継続させているのか。
どちらにせよ、動けるのは刃牙一人というのが現状。
刃牙はファイティングポーズを取り、ミズチと向かい合う。
しかし……いかに鬼の面が発動したとはいえ、この行動は危険極まりない。
ミズチは今も尚……進化を続けているのだから。

ミズチ「ヒト如きに……愚かな生き物如きに、我がぁぁぁぁっ!!
刃牙「なっ……!?」

ミズチが咆哮を上げ、真っ直ぐに拳を突き出した。
その拳からは、強烈なエネルギーの波動が放たれる。
刃牙はとっさに防御行動を取るも、踏ん張りきる事が出来ない。
猛烈な勢いで、その身は壁へと叩きつけられた。
しかし……事態はこれだけに留まらなかった。
この一撃が、全ての引き金となってしまったのだ。


ミシッ……


万太郎「えっ……この音って……」
マキシマ「まずい……このままじゃ、崩れちまうぞ!!」

嫌な音が、全員の耳に届いてしまった。
既にこの基地は……限界を迎えていたのだ。
ここまでの激戦による影響に加え、先ほどミズチが放ったエネルギーの最大放出。
基地はいつ崩壊してもおかしくない程のダメージを、蓄積してしまっていた。
そして……今の刃牙が叩きつけられた衝撃により、一気に侵攻は進んだ。
壁全体に亀裂が走った……崩壊寸前となったのだ。
もしもここで、何か強烈な一撃が加えられでもすれば、確実に崩壊するだろう。
仗助はすぐにクレイジー・ダイヤモンドで基地全体の修復に取り掛かろうとする。
しかし、相手が大きすぎる……すぐさまの修復は無理である。
こうなると、ある程度の修復が済むまで、その強烈な一撃が加えられない事を祈るしかない。




……しかし。


その願いは、余りにも無残な形で打ち砕かれてしまった。




ドゴオォォォォォンッ!!!



ガゼルマン「ガハァァッ!!??」
ケビンマスク「ガゼルマン!?」
K´「テメェ……クリザリット!?」

壁をぶち破り、広間へとガゼルマンが吹っ飛んできた。
花山とセイウチン、チェックメイトの三人もそれに続き、空いた穴から広間に入ってくる。
そして、目の前の敵……クリザリットへと向き直った。
クリザリットは彼等四人を相手に、ここまでほぼ互角の死闘を繰り広げていた。
その最中に、クリザリットの攻撃を受けて吹っ飛んだガゼルマンが、壁をぶち破ったわけなのだが……
全く以て、最悪の形でやってきてくれたのだ。

ミズチ「……よくやってくれた
花山「……おい、まさか……」
銀次「うん……その、まさか……」

亀裂は更に広がり、そして天井にまで伝わった。
花山達も、ここで全ての事情を察した。
この基地は……間も無く崩壊する。
ミズチはニヤリと微笑を浮かべた後、基地の天井へと落雷を落とす。
天井には当然大穴が開き、ミズチはそこから急速で離脱したのだが……直後。
ミズチの一撃が駄目押しとなって、基地は完全な崩壊を向かえた。
 

99 名前:新章/最悪のクローン編:2009/01/26(月) 18:28:28
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………ッ!!



クリザリット「ミズチ……貴様ァッ!!」
刃牙「花山さん、チェックメイト、ガゼルマン、セイウチン!!
皆、金縛りにあってて動けないんだ!!
俺達が抱えて外に……」
チェックメイト「だ、駄目です……間に合いません!!」

動ける者達が、身動きが取れない者達を抱えて外へ連れ出そうとする。
しかし……皆を救出して脱出するだけの時間は、もうなかった。
瓦礫は全てを呑みこみ……地獄へ誘おうとする。
これまでなのか。
もう、どうすることもできないのか。
今度ばかりは助かる保証はない……皆が死を覚悟する。
だが……そんな最中、唯一諦めていない者が二人だけいた。

蛮「ふざけんなよ……こんなところで……!!」
銀次「まだ……俺達は終われないんだ!!」
蛮&銀次「「終わって……たまるかあぁぁぁぁぁっ!!」」

奪還屋、ゲットバッカーズの二人が咆哮を上げる。
こんな所で終わってたまるか。
二人がそう、強く願い全身に力を込めた……その瞬間だった。
強烈な力の波動が、二人の全身より解き放たれ……その金縛りが解かれたのだ。
それを見ていた万太郎は、二人の様子から火事場のクソ力に近い感じを覚えた。
しかし、これはどこかが火事場のクソ力と異なっている。
一体、どう例えればいいのだろうか。
まるで二人の中に眠っていた力が、一気に解き放たれたような……そんな感じがしたのだ。

蛮「銀次ィッ!!」
銀次「うんっ!!」
マキシマ「なっ……なんだ、こりゃ……!!??」

直後、誰も我が目を疑った。
蛮と銀次は、人間ではありえないレベルのスピードを発揮した。
その場にいた者達を、瞬時に抱え込み……外へと連れ出したのだ。
俊足を誇るガゼルマンや、優れた身体能力を持つ刃牙でさえ断念したそれを、いとも簡単にやってのけたのである。
そして、唯一一人取り残されたクリザリットはというと……

クリザリット「くっ……ウオオオオォォォォォォッ!!」

己が身を守るため、苦肉の策を取っていた。
強烈な勢いで拳を床に叩きつけ、爆発を起こす。
その後、爆発の影響によって出来上がった窪みに身を投じたのだ。
これで何処まで耐え切れるかは分からないが……やらないよりかはマシである。

クリザリット(ゲットバッカーズ……無限城の外でありながら、これだけの実力を……!?)
 

100 名前:新章/最悪のクローン編:2009/01/26(月) 18:29:16
ミズチ「なん……だと……?
ハイデルン「全員無事か……!!」
ミート「王子、皆さん……よかった、本当に……!!」

基地の外へと先に逃れていたハイデルン達は、皆が無事だった事に安堵していた。
一方のミズチは、目の前の光景が信じられなかった。
銀次と蛮の二人は、一瞬の内に……ありえない時間の内に、皆を救出した。
まさか、力を隠していたというのか。
いや……それなら、何故今までその力を発揮しなかったのだろうか。
あれだけ追い詰められていて、どうして今まで本気を出してこなかったのか。

ミズチ(まさか……出さなかったのではなく、出せなかった……!?)
銀次「うおぉぉぉぉぉぉっ!!」
ミズチ「!?」

いつのまにか、銀次はミズチの背後に回りこんでいた。
動きが、先程までとはまるで別人……スピードが段違いすぎる。
ミズチは振り向き、とっさに迎撃しようとするが……それよりも早く、銀次の拳が顔面に叩き込まれた。
超高圧電流を纏った拳による、強烈過ぎる一撃。
ミズチは大幅に吹き飛ばされるが……そんな彼へと、更なる追撃が迫った。
目の前から、もう一人……蛮が迫ってきていたのだ。

蛮「蛇咬スネークバイトォォォォォッ!!
ミズチ「ガハァッ!!??

強烈な一撃が、横っ面に叩き込まれる。
ミズチは錐揉み回転しながら、基地の残骸の中へとその身を落とす。
これにはミズチも勿論、その場にいた全員が驚かされていた。
蛮も銀次も、先程よりも格段にレベルが上がっている。
二人に何があったのか……不思議がる皆へと、ハイデルンが話を切り出した。

ハイデルン「……驚いたな。
まさか、無限城の外でありながらも本来の力を出せるとは……」
K´「本来の……?」
ハイデルン「ああ、そうだ……
今の蛮と銀次の実力こそが、本来の二人の実力だ。
最も、私自身も人伝に聞いたから詳しい事は分からんが……
……あの二人は、色々と訳ありでな。
無限城という場所でこそ、完全に己の力を出し切れるらしい」

無限城。
裏新宿に高く聳え立つ、現実と仮想空間が入り混じった瓦礫の城。
その内部では、あらゆる者の生命力・戦闘能力が活性化されるという特性がある。
銀次と蛮は勿論、赤屍蔵人、デル・カイザー、弥勒一族……ありとあらゆる者達が、そこでは超人的な力を発揮できていた。
無論、無限城の外でも彼等の強さは一級ではあるが……無限城の中における彼等の強さは、正しく異常であったのだ。
そして今……銀次と蛮は、その異常な力を発揮している。
無限城の外である、この場において。

ミート「じゃあ、どうして二人が今こんな力を?」
ハイデルン「分からん……私も、かなり驚いている。
ゆらぎによる影響の類なのかもしれんが……」
クラーク「まあ、何だって構いませんよ。
御蔭であの二人が、こんなパワーアップをしてくれたんですから」
ハイデルン(しかし……待て。
まさかこれは、ミズチが……?)

ハイデルンはある仮説に辿り着く。
ミズチの力は余りにも強大。
このまま進化を続けてゆけば……最悪の場合、とてつもないゆらぎが生じる。
世界を隔てる次元の壁が崩壊し、かつての次元混沌事件の様に世界の融合が起こりえるかもしれない。
それ程までに恐るべき力が……今、全くの裏目に出たのだ。
無限城は、この世界の中枢とも言える存在……それが次元の壁が壊れつつある事で、この場と繋がってしまったのではないか。
だとすれば、二人がこれ程までの力を発揮できたのも納得はいく。

ハイデルン(……もしもそうだとしたら、皮肉なものだな)
 
 

101 名前:新章/最悪のクローン編:2009/01/26(月) 18:29:46
ミズチ(馬鹿な……なんだ、これは……!?)

奪還屋二人の猛攻は、もはやミズチでさえも凌ぎきれないレベルであった。
攻撃の一発一発がとてつもなく重たい。
回避が間に合わず、防御するのがやっと……その防御すらも、打ち破られかける。
彼等は既に……人の領域を越えている。

ミズチ(この二人は……神の領域に達しているとでもいうのか……!?)
蛮「オオオォォォォォォォォォッ!!!」

蛮の拳が、凄まじい勢いでミズチの胴へと叩きつけられる。
ミズチの口からは鮮血が吐き出され、衝撃の余波によって、周囲の瓦礫は一斉に吹き飛び砕け散る。
それに合わせ、銀次が動いた。
空中へと勢いをつけて飛び上がり、電流を纏った脚で強烈な蹴りの一撃を見舞う。
ミズチの肉体が、衝撃に耐え切れず数メートル先まで派手に吹き飛ばされる。

ミズチ「ガハァッ!?

完全に圧倒されている。
このまま一方的な攻撃を許しては、確実に死ぬだろう。
それだけは避けねばならない……ミズチは渾身の力を込め、全身から力を解放しようとする。
先程と同じ、エネルギーの一斉放出。
これで一瞬でも二人の動きを止められれば、そこに全力の一撃を叩き込める……まだ勝負は分からない。
二人が迫る前に、すぐさまミズチは行動に移ろうとする……が。

K´「何、ボサっとしてやがんだよ……!!」
ミズチ「!?」

そんなミズチの背後には、右腕から爆炎を放出させたK´がいた。
奪還屋二人の戦闘能力があまりにも高すぎた為に、彼は失念していた……この天敵の存在を。
とっさにK´へ攻撃を仕掛けようとするも、時既に遅し。

K´「オォォォォォォ!!」

草薙の業火を纏った拳が、ミズチの額に打ち込まれる。
途端に額の皮が裂け、大量の血が噴出す……効果は絶大である。
しかし、K´はここで動きを止めなかった。
自身の攻撃がミズチに有効である以上、銀次と蛮が作ってくれたこのチャンスを、絶対に逃してはならない。

K´「オラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァァッ!!

拳、蹴り、炎。
ありとあらゆる攻撃が、ミズチの全身を襲う。
持てる全てを込めた、K´最強の猛撃……チェーンドライブ。

ミズチ「ガアァァァァァァァッ!!??

ミズチは絶叫を上げて苦しむ。
この場に集った全ての者達の、全身全霊をかけた一撃。
それによって蓄積されたダメージが、奪還屋の二人とそしてK´の猛攻によって、ついにミズチの許容範囲を突破しようとしているのだ。

ラルフ「よし……決めちまえ、K´!!」
ガゼルマン「このまま、ミズチを倒すんだ!!」

誰もが、K´の勝利を願う。
そしてそれに答えるかのごとく……K´が、トドメの一撃を叩き込んだ。

K´「オラァァァァッ!!
ミズチ「ッ……アアアアアアァァァァァァァァァァ!!!??

灼熱の拳がミズチに叩きつけられ、大爆発を引き起こす。
ミズチの身体は、炎に包まれた後に宙へと舞い上がり……そして、静かに瓦礫へと叩きつけられた。
誰もが固唾を呑み、その様子を伺う。
まだ起き上がるか……それとも、これで全て終わったか。
その結果は……後者。
ミズチはもはや、ピクリとも動かなかったのだ。
 
 

102 名前:新章/最悪のクローン編:2009/01/26(月) 18:30:12
万太郎「……やったぁぁぁぁぁぁっ!!」

一斉に歓声が沸きあがる。
圧倒的な力を誇る地球意思の分身。
このまま成長を続けさせれば、世界が一つ滅んでいたかもしれぬ大惨事に繋がっていた。
そんな恐るべき敵を、自分達の手で打ち倒せたのだ。

承太郎「っ……」
クラーク「お……気がついたか」
承太郎「何とかな……やったみたいだな」

ここで、今まで気を失っていた承太郎が目を覚ます。
彼は周囲の様子を見て、すぐに自体を察した。
厄介な相手ではあったものの、何とか倒せてホッとした。
小さな溜息をつき、承太郎はゆっくりと立ち上がろうとする……が。




その時、異変は起こった。




承太郎「……!?
何だ、こいつは……!!」

歓声が、瞬時にしてやんだ。
それどころか……物音すらも一切聞こえなくなった。
いや、止まったのは音だけではない。
飛び跳ねて喜んでいた万太郎達に至っては……空中で、そのまま静止している。
周囲のあらゆるものが、停止したのだ。
明らかな異常事態……最初はミズチの金縛りかとも思ったが、それとは何かが根本的に違う。

承太郎「俺だけが動ける……まさか!!」

当てはまる可能性が一つだけあった。
だとすれば、近くにあの男がいる筈……承太郎は周囲を見回す。
すると、その直後だった……承太郎の上空から、一つの影が落とされたのは。
それは、銀色に光る時空を越える翼……シルバード。
そのコックピットにいるのは、承太郎にとって忘れられない最大の宿敵。
 

103 名前:新章/最悪のクローン編:2009/01/26(月) 18:30:30
DIO「久しぶりだな……承太郎」
承太郎「……DIO!!」

シルバードに乗り込んでいたのは、他でもないDIOであったのだ。
この停止現象の正体は、やはり予想をしていた通り……DIOのスタンド能力であった。
彼は時を止めて、そしてこの場に現れたのである。
DIOとネスツが手を結んでいるらしき話は聞いている。
この事態を収束させるため、現れたというのも納得は出来るが……DIO自らがまさか現れようとは。

承太郎「消耗しきった所を、自分自身の手で確実に仕留めたいってか……テメェらしいぜ」

承太郎は星の白金スタープラチナを発現させ、臨戦態勢に入る。
時の止まった世界で動けるのは、DIO以外に自分一人。
この場で彼を迎え撃てるのは、己のみという状況である……ミズチとの戦いで消耗している今、果たしてやれるのだろうか。
最悪、死人が出るのを覚悟しなければならない。

DIO「……いや、違うな」
承太郎「何……?」

しかし、DIOは承太郎の考えを否定した。
彼は自分達と争うつもりではないといったのだ。
ならば、何が目的でこの場に現れたのか……承太郎は、すぐにその理由に気付けた。
そもそもこの事態の発端となったのは、目の前に倒れ伏せているあの男……

承太郎「まさか……!!」
DIO「ああ……そのまさかだ、承太郎!!」

直後、シルバードから勢いよくDIOは飛び降りた。
それとほぼ同時に、時は動き出す。
全ての者達が、再び通常通りに戻り……そして、すぐに彼等はDIOの存在を確認した。
いきなり目の前に現れた彼の存在には、誰もが戸惑わされており、動きを硬直させている。

ケビンマスク「なっ……何だ!?」
ハイデルン「これは……!?
一体、今……それに奴は……DIO……!?」
承太郎「駄目だ、ここからじゃ時を止めても間に合わねぇ……!!
誰でもいい、DIOがミズチに近づくのを止めろぉっ!!」
DIO「もう遅い!!」

DIOはミズチのすぐ側に着地した。
そして、その指を……その首筋に突き刺したのである。
これこそが、DIOがこの場に自ら姿を現した理由……その目的。
己の中に、ミズチの血を取り込む事……!!
 
 

104 名前:新章/最悪のクローン編:2009/01/26(月) 18:30:56
ズキュウウゥゥゥン!!


DIO「クク……ハハハハハハハハハァッ!!
馴染む、実に馴染むぞぉっ!!」
承太郎「……何てこった……!!」

DIOは己の中から、強大な力が湧き上がってくるのを実感した。
地球意志の持つ絶対的な力、蠅の魔王の遺伝子。
これまでに吸ってきたどの血よりも、自分に力を与えてくれる。
今ならば、何だって出来る……そんな気さえもしてならない。

DIO「どうだ……折角の勝利が、すぐさま絶望へと変わった気分は?」
ジェイド「貴様ァッ!!」

怒りに身を震わせ、DIOへと真っ先にジェイドが飛び出す。
右手を燃やし、ベルリンの赤い雨を叩き込みにかかろうとする……が。

ジェイド「ガハッ……!?」
DIO「無駄だ!!」

その直後、凄まじいスピードで彼の肉体に拳が叩き込まれた。
DIOの背後に立つ、最強のスタンド……世界ザ・ワールドの一撃。
超人であるジェイドですらも見切れない程の拳速で、それは放たれたのだった。
ジェイドの身体は宙を舞い、そのまま瓦礫の中へと一直線に突っ込んでいく。

仗助「ジェイド!?
くそ……クレイジー・ダイヤモンド!!」

ジェイドを治療すべく、仗助はすぐにクレイジー・ダイヤモンドを発現させた。
しかし、近寄ろうとしたその刹那……彼の目の前に、いつの間にかDIOが立ち塞がった。
そして自分の真横には、同じくいつの間にか承太郎が立っている。
すぐに仗助は、事態を把握した……DIOが時を止めたのだと。
承太郎はそれを阻止しようとするも、後一歩間に合わなかったのだと。

仗助「ッ……!?」
DIO「東方仗助……報告には聞いているぞ。
あのジョセフ=ジョースターの隠し子で、忌まわしいジョースターの血統の一人。
だがその様子では、どうやら貴様は……承太郎と違い、我が時の静止した世界に入門する資格すらないようだなぁっ!!」

世界の拳が、クレイジー・ダイヤモンドに炸裂した。
破壊力は明らかに、星の白金スタープラチナ以上……これまで仗助が相手をしてきたどのスタンドよりも、遥かに強力。
数メートル先まで吹っ飛ばされ、背中から鉄骨へと勢いよく叩きつけられる。

仗助「グアァッ……!?」
DIO「フハハハハ!!
いいぞ、我がスタンドの力は確実に増している!!
我が世界は、名実共に世界を制する最強のスタンドになったのだ!!」

DIOは勝ち誇ったかの様に、高らかに笑い声を上げる。
事実、今のDIOの強さはかつて承太郎と対峙した時よりも遥かに増している。
恐らくは時間停止も、十秒台を叩きだせるだろう。
 

105 名前:新章/最悪のクローン編:2009/01/26(月) 18:31:13
承太郎「DIO……!!」
DIO「憎いか、承太郎?
憎いだろうなぁ……だが、生憎今日はここまでだ。
そろそろ、日の出の時が近いのでな」

しかし、DIOにもまだ恐れるものはあった。
それは吸血鬼にとって、最大の天敵……日光である。
いかにミズチの血を取り込んだといえど、これまで克服できているかどうかは分からない。
もしも出来ていなかった場合、無様な死に様を晒す事になる……DIOは敢えて、引き上げる事にした。
勢いよく空中のシルバードへと飛び乗ると、操舵席に座るダルトンへと指示を出した。

DIO「ダルトン、撤退だ……承太郎。
いずれ貴様は、ひれ伏す事になる……このDIOの前にな。
その時を楽しみに待っているがいい……フハハハハッ!!」

シルバードが消える。
DIOはこの場から、完全に去っていってしまったのだ。
残されたのは、立ちすくむ者達と瓦礫の山。
戦いはこれで、本当に終わった……だが。

ラルフ「……なんだよ、こりゃ。
こんな後味の悪い最期ってよ……!!」

これ程までに、後味の悪い終わりは無かった。
これでは、完全にDIOの一人勝ちである。

ハイデルン「……総員退却だ。
一先ずの目標は達成できた……決して、良い結果ではないがな。
……今後の事も考えねばならん」

兎に角、これ以上はこの場に残っていても仕方が無い。
アジト跡の調査は、後日別働隊にしてもらおう……今は皆の消耗も大きすぎる。
ハイデルンは撤退命令を出し、至急その場から去るように指示した。

クリザリット(……DIOがミズチの力を手にした……
どうする……奴とネスツとの同盟は、これでは……!!)

そして、地底深くで息を潜めていたクリザリットもまた、この異常事態には言葉が出なかった。
よもやDIOが、この様な暴挙に及ぼうなどとは……果たして、このまま彼等と同盟関係にあっていいのだろうか。
また同じ様に、漁夫の利を狙われるかもしれない。
だが……今のDIOの力が、味方としてはこの上なく強大なのも事実。
どうするべきか……ネスツもまた、追い詰められていた。



***現代 神楽邸***

庵「ッ……!?」
京「八神……?」

同時刻。
暴走状態にあった庵が、突如としてその自我を取り戻した。
ミズチが倒れたことによって、彼もまた元の状態へと戻ったのである。
暴走中の記憶は無い為、本人からすれば何がなんだか分からないのだが……

庵「……俺は……今、どうしていた?」
神楽「どうやら、暴走が収まったようね」
庵「暴走だと?」

庵は神楽の発言に対し、明らかに不機嫌そうな顔つきになる。
血の暴走によって完全に意志を失っていたなど、彼にとっては不愉快極まりない事であった。
ならば、何が己に暴走を引き起こさせたのか……京と神楽はありえない。
だとしたら、考えられる人物は一人……庵は鏡の向こうに立つ、侑子へとその怒りの視線を向けた。

庵「貴様の差し金か……?」
神楽「ちょっと、八神!!
何を根拠にそんな……」
侑子『いいわ、私が疑われるのは最もだから。
けど……残念ながら、私は何も関係していないわ』
京「……なら、何があった?」
侑子『オロチに近い何者かが、この事態を引き起こした。
恐らく、考えられるのは……ネスツでしょうね』
京「ネスツだと!?」
 

106 名前:新章/最悪のクローン編:2009/01/26(月) 18:32:06
○銀次&蛮→次元の壁の崩壊を利用し、逆に覚醒。
      一時的にではあったが、無限城内部と同じポテンシャルを発揮しミズチを完全に圧倒する
○K´→草薙の炎を全力でぶちこみ、ミズチにトドメを刺す。
○ネスツ強襲チーム一同→作戦自体は無事に成功したものの、DIOの強化という結果に素直に喜べない。
            今後の事を考える必要もある為、帰還する
△八神庵→ミズチが倒れた事により、血の暴走が解かれ正気に戻る
○京&神楽&侑子→今回の事件の裏に、ネスツがいると判断する
●ミズチ→銀次と蛮に完全に追い詰められた後、K´にトドメを刺され絶命。
     更にその死体は、DIOによって血を吸い上げられて干上がる。
●DIO→ミズチの血を吸い、驚異的なパワーアップを果す。
     その後、日の出が近いため撤退する。

【今回の新規登場】
●ダルトン(クロノトリガー)
分不相応な野心を秘めた策士。
特殊な魔道生物「ダルトンゴーレム」を生み出す事が出来、更に彼自身にもそこそこの戦闘能力はある。
しかし、人の上に立てる器とはお世辞にもいえない。
DIOの肉の芽によって完全に操られ、彼の命令に従い、タイムマシンのシルバードを操っている。

107 名前:新章/外伝 二人の皇帝:2009/10/19(月) 22:29:39
 
 
 
 
 
 
―――――暗い。
 
 
 
 
 
―――――暗い。
 
 
 
 
 
――――――漆黒の闇。
 
 
 
 
 
――――――光の欠片も見えぬ、真なる闇。
 
 
 
 
 
――――――私は、一体どうなったのだ。
 
 
 
 
 
――――――確か、アルテミスをデビルマジンガーに破壊され、
その後奴に挑むも、そのまま吸収され・・・
 
 
 
 
――――――くそ、その後が思い出せない。
あの忌々しい剣鉄也、兜甲児、他の連中・・・ デビルマジンガーはどうなった。
互いに潰し合えばそれはそれででいいが・・・ そもそも、一体、私はどうなった。
此処は何処だ。もしや、“死後の世界”とやらではないだろうな。
 
 
 
―――――何処でも関係ない。地獄だろうが天国だろうが、此処に留まるわけにはいかぬ。
たとえ数千、あるいは数万の時が必要だろうとも構わん。光子力研究所、早乙女研究所、
そしてマジンガーやゲッターを始めとするスーパーロボット共を完膚なきまでに破壊した上で、
再び時を越える能力を持ったエスパーを生み出し、今度こそ滅びを知る前のミケーネへと還り、
永遠の栄華、永遠の輪廻、永遠の帝国を築いてみせるわ!!
 
 
 
 
 
 
―――――残念だが、今の貴様には無理だ。
 
 
 
―――――!? ・・・何奴!?
 
 
 
―――――貴様は・・・ 私だ。 そして、私は・・・ 貴様だ。
 
 
 
 
 ――――光の欠片さえも見えない漆黒の闇の中。
 その中に怨念の塊とも見紛う様な、二人の灼熱の炎の巨人が並び立っていた。

 
 
 
 
―――――貴様は・・・ この時代の私か。
 
 
 ―――――ミケーネ帝国がマジンガーに敗れ、己が息を潜めていた時代に帰ってきていた事に、
 彼は、ギャラハンは思い至った。だがその時代の彼が姿を現した此処は何処なのか。彼には全く覚えがなかった。
 少なくとも彼はこのような場所に来たことはない。しかしその炎の巨人にとっては違う様だ。
 自分の記憶にない場所にいたそれは、本当に「過去の自分」であるのか?目の前にいる炎の巨人は、
 彼の言葉をまずは肯定した上でその疑念に答えるかの如くこう答えた。

 
 
―――――尤も、私が生き延びたとしても、貴様に繋がることは無いだろう。
貴様は既に、過去の世界より召喚した弓さやかに、貴様がネットワークを利用して
世界を掌握した事を伝えている。そうなれば、奴らが生き延びた以上、
それに対し対策をする事で歴史は分岐し、私は貴様に繋がらなくなる。

 
 
 
―――――フン、ならば好都合。ここで貴様を滅ぼし、
唯一無二の皇帝となった上で、再び現世に舞い戻り、奴らを倒すまでよ!!
 
 
―――――笑わせる。
 
 
―――――何だと!?
 
 
―――――今の地上は様々な勢力や存在が入り乱れている。
そんな中で復活したとしても、目的を達成する事は容易ではあるまい。

 
 
―――――貴様、臆しているのか?
 
 
―――――慌てるな。歴史が繋がっていないとはいえ、やはり貴様と私は同じ存在。
つまり、私の目的も貴様と同じ、永遠の栄華、永遠の輪廻、永遠の帝国を築き上げることよ。

 
 
―――――何が言いたい?
 
 
―――――私と一つになれ。同化すれば、それだけ大きな力を得た上で
現世に戻ることもできよう。無論、それだけでは無い。

 
 
―――――ほう。
 
 
―――――この地から現世に戻る際、冥府と現世の“境界”に大きな亀裂を加えれば、
かつて我々の部下として動いていた者ども・・・ 暗黒大将軍に、七大将軍、
・・・そして、あのDr.ヘル共さえも、我らと共に黄泉還らせる事も可能だろう。
無論、デビルマジンガーに組み込まれて貴様を殺す前の、地獄大元帥の頃のあやつにな。

 
 
―――――我らはともかく、他の連中は肉体を持つ存在。幽霊などでは使い物にならんぞ。
 
 
―――――“生と死”の境界を同時に破壊すれば、幽霊ではなく、肉体を持った
存在として復活させる事も可能だ。我らが同化すれば、それも不可能ではない。
尤も、他の連中も黄泉還るかもしれんが・・・ 知ったことではなかろう。

 
 
―――――フッ、成程。
では問おう。同化に成功したとして・・・ その主導権は、貴様と私、どちらとなる?
 
 
―――――“意志”の強き者。
現世に戻り、己の目的を成し遂げようとする思いの強い方が残り、
残ったものは体、記憶、力を全て吸収され・・・ 消える。

 
 
―――――いいだろう。貴様を吸収し、更なる力を得たうえで復活し、
かつての部下たちを引き連れ、現世に戻ってくれるわ!!

 
 
―――――来いッ!!
 
 
 
 
 二体の炎の巨人は、お互いの体の炎を強くしたかと思うと、やがてその体形を崩し、
 その首をのばす。やがて体全てが長大な首と変化し、巨大な炎の蛇、あるいは龍を
 思わせる姿となり、お互いに絡み合い、やがてお互いを吸収し合った。
 
 
 ――――やがて、二つの炎は一つへと融和し、再び炎の巨人の姿となった。
 だが、その大きさは以前の炎の巨人の比では無く、その2倍・・・ もしくはそれ以上の大きさ、
 そして凄まじく禍々しい怨念の業火のパワーを感じさせるものとなっていた。

 
 
 
闇の帝王「ククククク・・・ ハッハッハッハッハッ!!!
     待っていろ・・・マジンガー! ゲッターロボ! そしてαナンバーズの連中よ!

 
 
 
 
 
  ◆    ◆    ◆    ◆
 
 
 
 
     冥府 三途の川(幻想郷方面)
 
 
小町「ふぅ・・・ やっとこれで半分ってとこか」

 三途の河で船頭をしている死神・小野塚小町は、彼岸から、此岸(現世側)の岸に着き、
 待機している幽霊を船に乗せる準備をしようとしていた。

 仕事をサボる事も多い彼女も、今日はたまたま仕事が進んでいるようである。
 小町はもう少し仕事が進んだら、仕事場を離れて無縁塚にでも行き、自らの上司である
 四季映姫にバレないように仕事をサボって酒を飲もうかと考えると、次の幽霊を船に乗せて
 三途の川を渡る船を進め始めた。
 
 
 ―――――その時。
 
 
小町「・・・ん?」

 ふと、小町は三途の河の遥か先、彼岸が何やら光っているのに気がついた。
 三途の河は基本的に深い霧で覆われているが、彼岸から見える眩い光は
 その霧さえも透過して、彼女が確認できるほどに周囲に届いている。

小町「な・・・ 何だい? ありゃ」

 その光はまるで元旦の初日の出の如く、徐々に上へ上へと昇ってゆく。
 見ると、その光を放っているのは、大きな炎の塊の様な物体であった。
 その炎の塊の中には、大きな悪鬼の様な顔が浮かび上がっており、
 その邪悪な表情は人妖問わず、見る者を震え上がらせることであろう。
 事実、小町もそれを見て、少なからず戦慄を感じ取った。

 そして、その炎の悪鬼の周囲には、何やら米粒の様なものが纏わりついていた。
 ・・・もっとも、そう見えるのはその炎の悪鬼の大きさと比較しての事であって、
 実際の大きさは、各々が10m〜50m代と考えて間違いないであろう。
 それらは、人型だったり、獣型だったり、鳥型だったり、虫型だったり、
 それ以外にも様々な形をしていて、炎の悪鬼と共に上昇し続けていた。
 
 
 
  ◆    ◆    ◆    ◆
 
 
 
闇の帝王「ワハハハハハハハ!!!!

 地獄から現れた炎・・・ それは紛れも無く、かつての古代ミケーネ帝国の皇帝であり、
 今なお怨念のエネルギーとして存在し続けている、ミケーネ闇の帝王こと、
 “ギャラハン皇帝”の姿そのものであった。

暗黒大将軍「待っていろ、剣鉄也!!」
地獄大元帥「兜甲児、マジンガーごと地獄に葬ってくれる!!」

 闇の帝王の周辺では、現世で待ち受けているであろう宿敵に向け
 闘志を燃やしている暗黒大将軍と地獄大元帥の姿があった。
 その他にも、アルゴス長官、ゴーゴン大公、ヤヌス侯爵、獣魔将軍、七大将軍、あしゅら男爵、
 ブロッケン伯爵、ピグマン子爵、その他大勢の機械獣や戦闘獣、鉄仮面軍団、鉄十字軍団、
 ミケーネス、キャットルーが闇の帝王の周囲を旋回し、共に現世に向けて上昇し続けていた。
 
 
 
  ◆    ◆    ◆    ◆
 
 
 
小町「こ、こりゃ大変だ・・・ 早く四季様に知らせないと・・・ ん?」

 慌てふためく小町の目に、ふと、何やら黒い物体が三途の河の遥か上空に
 浮かんでいるのが映った・・・ が、それは数秒にも満たないうちに見えなくなった。

小町「・・・消えた? あれは一体・・・」

 ・・・尤も、流石の小町も、結構前に発生した“リョーツ大王”の地獄クーデター事件、
 そして数百年前の“悪代官・羽流内匠頭助兵衛”と“悪徳商人・弁天堂菊蔵”一味による
 地獄の三百丁目への襲撃以来の大事件の発生を目の当たりにしてしまい、冷静さを欠いている現状である。
 それに構ってられる余裕は、ほぼ無いに等しかったのが事実であった。

小町「・・・と、兎にも角にも、急いで四季様のところに・・・」
 
 
 
 
  ◆    ◆    ◆    ◆
 
 
 
 
     冥府 三途の川(幻想郷方面)上空
 
 
 
 ―――――三途の川の上空、高度八千メートル地点。
 そこに、おそよ冥府には似つかわしくない・・・ いや、案外そうでもないとも言えそうな、
 漆黒のボディの巨大なロボットが、首に巻いたマントを靡かせ、佇んでいた。

???「――――気付かれずに済んだようだな」

 ロボットの操縦席に座っていた男は、安堵の声を上げる。
 よく見ると、ロボットの首に巻かれているマントの付け根部分には、二人の男性がしがみ付いていた。
 一人は全身に包帯を巻いた男であり、胴体には防弾アーマーのようなものを装着している。
 もう一人は、身長2m以上はありそうな大男であり、迷彩柄の服を着ていた。
 
 
包帯の男「・・・しかし神隼人、まさかお前が地獄から俺達を助けてくれるとはな」

隼人と呼ばれた男「・・・確かに俺は神隼人だが、お前達の知っている神隼人では無い。
             お前達の知っている竜馬と隼人は、「白い宇宙」の方面に発生した宇宙怪獣共の
             大規模なコロニーを潰しに行っている。すぐには戻れんだろう」

 操縦席に乗っていた男・・・ 神隼人はそう答え、もう一人の大男のほうに目を移す。
 
 
大男「・・・ウガ」

 大男は、片手でマフラーにしがみ付き、もう一方の手で何かを握っていた。
 よく見るとそれはバナナのようなものであり、大男はそれを食べている。
 ・・・ただ、それは我々の知っているようなバナナとは異なり、その皮の色は
 黄色とも緑色とも付かず、むしろ灰色と形容できる色のものであった。
 大男がそのバナナをかじる度に、ジャリ、ジャリといった、とても果実とは思えない
 まるで砂の塊をかじっているかのような音が鳴り響いていた。
 
 
隼人「・・・何だそれは」

包帯の男「地獄に偵察に来てた死神から、賭け勝負をして奪い取ったバナナらしい。
      ・・・尤も、味自体は砂とそう変わらんがな」

隼人「冥府を抜けたら、もっと美味いバナナを沢山食わせてやる。それまで我慢してろ」

大男「ウガガ」
 
 
 
包帯の男「・・・ム?」

 包帯の男は、三途の川の岸辺に居た小町に気付き、目を配る。
 
 
包帯の男「あそこの死神の女に気付かれたようだが、どうする?」

隼人「気にする必要は無い。今さら冥府の連中が動いても、奴らを止める事はできん。
   流石に俺も、あの“ギャラハン”の復活と重なるとは思わなかったが・・・
   まあ構わんさ。遅かれ早かれ、奴らとの戦いは避ける事はできないからな」

 漆黒のロボットは、マフラーを靡かせながら、さらに上空へと進んでいく。
 その行き先には、大きく切り開かれた時空クレヴァスが見えていた。
 
 
包帯の男「・・・あれぐらいの奴が、これからも黄泉還るのか?」

隼人「・・・間違いないだろう。この様子だと、恐竜帝国や百鬼帝国・・・
   ランドウ一派やインベーダー共もそう遠くない内に出てくるだろうな」

包帯の男「インベーダーもか・・・ 俺達だけで立ち向かえるのか?」

 包帯の男は、かつて自分達が戦った、ゲッター線を吸収する異形の怪物
 「インベーダー」の姿を思い出し、包帯に隠れたその顔を歪ませる。
 
 
隼人「・・・だからこそ、お前達を地獄から引っ張ってきたんだ。
   ゲッターの力で、“生と死”の境界を壊した上で連れてくるつもりだったが・・・
   素直に喜べないにしろ、奴のおかげで手間が省けたのは確かだ」

包帯の男「・・・俺達以外にも、仲間が増えるのならありがたいがな。
     地獄にいた連中でも、ギレンやパトリックみたいな奴らは流石に願い下げだが・・・」

隼人「増やすのさ。歴史改変でも特異点でも何でも利用して、
   全く異なる歴史を辿った平行世界が増えれば、それだけチャンスは多くなる。
   ・・・特に“あの世界”に影響を与えれば、ゲッターに大きな変化が出る
   可能性も十分あるだろうしな」

 隼人はニヤッと笑い、手元の操縦桿を大きく傾ける。
 それと共に、ロボットの動きが一気に加速した。
 
 
隼人「行くぞ。三泥、地獄。お前達の世界の竜馬も待っている」

三泥(包帯の男)「おう」

地獄(大男)「ウガ」

 漆黒のロボット・・・ ブラックゲッターは、そのマントをさらに大きく靡かせ、
 今まさに閉じようとしている時空クレヴァスの中に消えていった・・・
 
 
 
 
 
 ―――――それは、スマートブレイン社の元社長・村上峡児が
 数ヶ月ぶりにその姿を見せ、緊急記者会見を行った日より、およそ十一ヶ月ほど前の物語――――
 
 
 



108 名前:新章/外伝 二人の皇帝:2009/10/19(月) 22:31:59
●ミケーネ闇の帝王=ギャラハン皇帝→千年以上先の未来の闇の帝王と、現代でαナンバーズに
 倒された闇の帝王が地獄で邂逅。互いに吸収し合い、更なる力を得て復活。増大した怨念の
 パワーで“生と死”の境界線を破壊。かつての部下たちを引き連れ、現世に向かう。
 彼の行動が、後の「黄泉還り」の発生に大きな影響を与える事となった。
 (「黄泉還り」の原因そのものではなく、あくまで切欠の一つである)
△小野塚小町→仕事中に闇の帝王とその一味の復活、並びにブラックゲッターを目撃。
△神隼人(世界最後の日)→ブラックゲッターを駆り、地獄からかつて平行世界でのインベーダーとの
 闘いで戦死した三泥と地獄を復活させる。その目的と所属は今のところ不明。
△三泥虎の助&地獄→隼人によって、地獄から現世に帰還する。

【今回の新規登場】
△小野塚小町(東方Project)
閻魔である四季映姫・ヤマザナドゥの部下の死神。距離を操る程度の能力を持つ。
二つ名は「三途の水先案内人」等。能力を使用すると、特に道の長さが変わり、距離は
見た目の距離も弄るので、近づいていようと遠ざかっていようと、一定の距離の位置に
いるように見せることが出来、追っても近づかず、逃げても離れずで人間に恐怖心を与える。
性格は明るく、江戸っ子っぽい気前の良さがある。三途の河の船頭をやっており、幻想郷の
住民を担当する事が多い。船に乗せた魂との会話が、仕事中の楽しみでもある。サボり癖が
あり、映姫に見つかってはよく怒られている。サボっている間は幻想郷にいるらしく、
その様子をよく目撃されている。

●地獄大元帥=Dr.ヘル(グレートマジンガー/その他マジンガーシリーズ)
地下帝国を統べる悪の天才科学者。 CV:富田耕生(Dr.ヘル)、神弘無(地獄大元帥)
地中海のバードス島で古代ミケーネの遺跡を発見し、そこに残されていたロボットの技術を
元に作り上げた機械獣軍団を率いて世界征服を狙っていた。マジンガーZら光子力研究所の
面々と激闘を繰り広げ、最終的には死亡する。その後、ミケーネ帝国の科学力によって
戦闘獣“地獄大元帥”として復活。暗黒大将軍の死後、新幹部として任に就く。頭部の
コクピットの中にDr.ヘルの上半身が収納されていて地獄大元帥の体をコントロールしては
いるが、地獄大元帥の体から分離することはできない。冷酷非道な作戦を躊躇わずに実行する。
武闘派の暗黒大将軍と異なり、科学者としての頭脳を駆使して鉄也と甲児を追い詰めていったが、
最終的には倒された。

△神隼人(真(チェンジ!!)ゲッターロボ 〜世界最後の日〜)
平行未来の地球における元ゲッターチームのジャガー号のパイロット。 CV:内田直哉
沈着冷静、頭脳明晰、チームの指令塔。早乙女博士殺しの張本人であり、博士の遺志を継ぐため、
敢えて竜馬に罪を着せて逃亡したが、それ故に事情を知らない竜馬から恨まれることとなる。
冷静な性格だが、時に非情な一面も覗かせる。13年後はタワーの指揮官となり、真ドラゴンの
炉心解体のために敷島博士と共に行動していた。ゲッター2、真ゲッター2を操縦。
木星におけるインベーダーとの最終決戦の直後、時空間の裂け目に突入。その先でゲッターエンペラーと邂逅。
自分たちの存在理由を悟り、流竜馬、車弁慶と共に、未来永劫の時の狭間で戦うべく突き進んでいった。
【ゲッターロボシリーズ】における他作品の神隼人とは、平行未来の同一人物の関係。

△三泥虎の助(真ゲッターロボ!! 異聞 Try to Remember)
平行世界の地球における流竜馬の仲間。全身を包帯で覆っている男。
ゲッターロボ(単騎操縦型)に搭乗し、流竜馬と共に月から地球に帰還したが、
インベーダーに寄生された早乙女博士にコクピットごと潰され、死亡。
【ガクエン退屈男】の三泥虎の助とは、平行未来の同一人物の関係。

△地獄(真ゲッターロボ!! 異聞 Try to Remember)
平行世界の地球における流竜馬の仲間。巨大な大男で「ウガ」としか言わない。
ゲッターロボ(単騎操縦型)に搭乗し、流竜馬と共に月から地球に帰還したが、
インベーダーに寄生された早乙女博士にコクピットごと潰され、死亡。
【ガクエン退屈男】の地獄とは、平行未来の同一人物の関係。

 ◇ブラックゲッター(真(チェンジ!!)ゲッターロボ 世界最後の日)
  平行未来の地球で、流竜馬が月のゲッター線研究ラボの跡地に放棄されていた初代ゲッターロボを
  独自に修理・改造し、戦闘能力をアップさせたもの。戦闘力はゲッターロボGに匹敵するが、
  変形機構はオミットされている。また、本来機体色は赤だったが大気圏突入時の摩擦熱で塗装が
  焦げて黒色になった。作中では竜馬しか搭乗しなかったが、コクピットが残っているため、
  三人搭乗する事も可能(【スーパーロボット大戦】の設定より)。全高38m、重量220t。
  武装は44マグナム・シキシマSP、ストライクガン、ニ対のゲッタートマホークなど。


109 名前:新章/MMR緊急報告・前編 古墳に隠されし謎を暴け!!:2009/10/19(月) 22:33:43
 
 
     東京都 講談社本社ビル 入口前
 
 
 東京都の郊外に聳え立つ数十階はあろう巨大なビル。
 これこそが、日本が世界に誇る出版社として名高い講談社の本社ビルである。
 そして、そのビルの入口に、講談社の発行する漫画雑誌の一つ「週刊少年マガジン」の編集者であり、
 かつて、その中で発足した組織“MMR”の隊員でもあった男、ナワヤは立っていた。
 
 
ナワヤ「・・・・・・(チラッ)」
 ナワヤは腕時計に目を移し、すぐに目の前の道路に視線を戻した。
 
 
 暫くして、ナワヤはビル街の雑踏の中から一人の面長の男を見つけた。
 
            ,. -─- 、._
            ,. ‐'´      `‐、
       /           ヽ、_/)ノ
      /     / ̄~`'''‐- 、.._   ノ
      i.    /          ̄l 7
      ,!ヘ. / ‐- 、._        |/
.      |〃、!ミ:   -─ゝ、    __ .l
      !_ヒ;    L(.:)_ `ー'"〈:)_,` /  ナワヤ「!! ・・・おーい!イケダ――!!」
      /`゙i         ´    ヽ  !
    _/:::::::!             ,,..ゝ!
 !    \::::::::::::::ヽ    `ー─ ' /
 i、     \:::::::::::::::..、  ~" /
 .! \     `‐、.    `ー;--'´
  ヽ \     \   /

 その男に向け、ナワヤは手を振り呼びかけた。
 
     ,. -─v─- 、 、
 __, ‐'´           `ヽ
..≦              `i,
..≦               i、
 1  イ/l/|ヘ ヽヘ       i          
  l,_|/ ! ! | ヾ ヾ ヽ_、,l`ヘ  .,| イケダ「あっ・・・ あれはナワヤさん!    
  .レ二ヽ、 、__∠´_"` ! /     ナワヤさ―――ん!!」    
  riヽ_(:)_i  '_(:)_/  |i)'  
  !{   ,!   `      μ!
  ゙!   ヽ '        ,i!
   !、  ‐=ニ⊃     ,,ハ
    ヽ  ‐-    / "ト、
     ヽ.___,._/   // \
    //イ;;:::::     //〃 ヽ、
   /  /i:::::.    //     ヽ 

 そして、その面長の男・・・ かつてのMMRの隊員の一人、イケダは、
 講談社ビル前のナワヤの姿を見つけると、一目散で駆け寄った。
 
イケダ「お久しぶりです!ナワヤさん!」
ナワヤ「お前も相変わらず元気そうだな、イケダ!
    タナカとイケダも待ってるぞ!」
イケダ「タナカさんとトマルも・・・ キバヤシさんは?」
ナワヤ「あ・・・ あいつは・・・ えーと・・・」
 
 
 ―――かつて、彼らは“MMR”という組織に身を置いていた時期があった。
 MMRは講談社の発行する漫画雑誌『週刊少年マガジン』の企画の一環として行ったUFO体験談の
 調査から発展した、当時多発していたミステリー現象をジャーナリスティック的な視点から
 本格的な調査を行うという組織であり、かつてはUFOや超能力、心霊現象等を調査していたが、
 「予知」に関する調査を行った時に、謎の人物から脅迫状を送られて以降、超常現象を利用し、
 世界を破滅に陥れようとしている謎の組織と関わる事が多くなり、その結果、調査中に妨害工作を
 受けたり、時に暗殺されかけたりした事もあった。

 それでも奮闘の結果、何とか組織の目的と、その実態の真相に目前まで近付く事が
 出来たのだが・・・ 組織の本拠地が存在するという中国に出発する直前に
 「MMRを解散しなければ中国行きの飛行機を爆破する」という脅迫を受けてしまう。
 彼らに多くの罪無き人々を犠牲にする事は出来ず、やむを得ずMMRは解散する事となってしまった。
 しかし、読者からの応援の手紙を見た一同は、MMRが解散しても、自分達が
 「あきらめない」限り負けではない事に気付き、タナカ、イケダ、トマルは海外に旅立った。
 ナワヤ、そしてMMRの隊長だった男、“キバヤシ”は講談社に残り、
 編集者の立場から様々な情報を探索していたのだが―――
 
 
イケダ「まだ、帰っていないんですか・・・? キバヤシさん・・・」
ナワヤ「全くだ。携帯もいなくなってすぐに繋がらなくなったし・・・
     ったく、少しは連絡してもいいだろうに・・・」
 
 
 ―――そう、キバヤシは突然行方を眩ましてしまったのである。
 ある日、いつもの様にナワヤが編集部に来ると、

                 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
                 | ナワヤへ        .|
                 |               |
                 /    ̄ ̄ ̄ ̄       /____
                ./  俺は 旅に出る。    /ヽ__/ /
               / ナワヤは編集部に  /   /   /
              ./  残って 調査を     /   / キ ./
              /  続けてくれ。     /   / バ /
            / いずれ帰る。     /   / ヤ /
           /              /    / シ /
            ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/   /   /
                           ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ・・・と、そのような手紙が机の上に置かれていたのであった。
 以降、キバヤシとは音信普通になり、今に至るわけである。
 なお、謎の組織に関しては、ショッカーや地球教関連ではないかという説も挙がったが、
 キバヤシがいない今、その正体は不明確としか言いようがない。
 
 
イケダ「・・・でも、タナカさんとトマルさんはいるんですよね?
    もしかしたら、嗅ぎ付けて帰ってくるかも知れませんよ!」
ナワヤ「・・・だったら、嬉しいんだがな・・・」
 
 ナワヤの表情が曇る。

イケダ「とりあえず、中に入りましょう。色々話したい事もありますし」
ナワヤ「・・・そうだったな、確かお前、アメリカへ行ったんだっけな。
    二人も待ってるだろうから、とりあえず中にいくぜ」

 そう言って、二人はビルの中に入っていった。
 
 
 
 ナワヤとイケダがビルの中に入ってしばらくした後、一人の眼鏡をかけた男が
 雑踏の奥の方から現れた。背はそこそこ高く、おそらく180cm位だろうと思われる。
 男は講談社のビルの前で止まり、それを見上げる。
 
 
  .ト│|、                                |
. {、l 、ト! \            /     ,ヘ                 |
  i. ゙、 iヽ          /  /  / ヽ            │
.  lヽミ ゝ`‐、_   __,. ‐´  /  ,.イ   \ ヽ            |
  `‐、ヽ.ゝ、_    _,,.. ‐'´  //l , ‐'´, ‐'`‐、\        |
  ヽ、.三 ミニ、_ ___ _,. ‐'´//-─=====-、ヾ       /ヽ
        ,.‐'´ `''‐- 、._ヽ   /.i ∠,. -─;==:- 、ゝ‐;----// ヾ.、
       [ |、!  /' ̄r'bゝ}二. {`´ '´__ (_Y_),. |.r-'‐┬‐l l⌒ | }
        ゙l |`} ..:ヽ--゙‐´リ ̄ヽd、 ''''   ̄ ̄  |l   !ニ! !⌒ //
.         i.! l .:::::     ソ;;:..  ヽ、._     _,ノ'     ゞ)ノ./
         ` ー==--‐'´(__,.   ..、  ̄ ̄ ̄      i/‐'/
          i       .:::ト、  ̄ ´            l、_/::|
          !                           |:    |
             ヽ     ー‐==:ニニニ⊃          !::   ト、
            ヽ     、__,,..             /:;;:   .!; \
             ヽ      :::::::::::           /:::;;::  /  
キバヤシ「・・・・・・久しぶりだな、講談社。3年ぶりか・・・」
 
 
 
 その男・・・ かつてのMMRの隊長、“キバヤシ”は、
 講談社のビルの中に入っていった。
 
 
 
 
  ◇    ◇    ◇    ◇
 
 
 
 
 ビルが立ち並ぶ街の雑踏の中に、一人の眼鏡をかけた少年が立っていた。
 少年は講談社ビルの前のキバヤシを見ながら、ヨーヨーをしつつ歌を口ずさむ。

謎の少年「・・・好〜きです、好〜きです、心から・・・ 愛していますよと・・・
     甘い言葉の裏には・・・ 一人暮らしの寂しさがあった・・・」

 その少年は、キバヤシがビルの中に入るのを確認すると、
 そのまま雑踏の中に消えていった・・・
 
 

110 名前:新章/MMR緊急報告・前編 古墳に隠されし謎を暴け!!:2009/10/19(月) 22:35:58
○ナワヤ→数年ぶりに講談社に戻ってきたイケダを迎える。
 タナカ、トマルも既に本社ビルの中にいる模様。
○イケダ→数年ぶりに講談社に戻る。ナワヤとの再開に喜ぶ。
○キバヤシ→消息不明となっていたが、数年ぶりに講談社へと戻ってきた。
?謎の少年→“巡恋歌”を歌いながら、MMRメンバーを監視している模様。

【今回の新規登場】
○ナワヤ(MMR マガジンミステリー調査班/100万$キッド/15の夜/GTO)
キバヤシを補佐するMMRの副リーダー格。 CV:千葉一伸(【GTO】出演時)
キバヤシの発言に反論のできる数少ない人物であり、キバヤシの出張中に臨時的にリーダーに任命
された事も。女好きでスケベな性格。 MMR唯一のお笑い担当として様々な人物に弄ばれる事も多いが、
そんなコメディリリーフである所の彼も、後催眠で暗殺されかけたり、赤痢の疑いで入院したりと
それに劣らず散々な目に遭っている。大学では航空学を専攻。MMR解散後は講談社本社に残り、
編集者の立場から様々な情報を探索する。ミウラ率いる新生MMRに参加していた時期もあった。
【100$キッド】文庫版1巻収録の特別編にも登場。アメリカのラスベガスに観光に来た際、
二階堂ひろしとポーカー勝負をしたが、戦意を喪失して見事に完敗、ラスベガスに対するトラウマを
植え付けられてしまった。

○イケダ(MMR マガジンミステリー調査班/GTO)
週刊少年マガジン編集長のイガラシ編集長の推薦によりMMRに加わった面長の男。
フルネームはイケダ・マサユキ。英語が堪能で海外在籍が長く、国際事情に詳しい事から海外調査では
重宝されている。他にもインターネットに精通しており、海外から「The X-Files」を取り寄せて参考に
したりと、その方面でも大きな戦力となっていた(テープを見たナワヤはアメリカ製AVと思っていた)。
友人にチャーリー・ライアンという男がいる。MMR解散後、最先端の遺伝子技術を求めてアメリカに渡米。

○キバヤシ(MMR マガジンミステリー調査班/GTO)
MMRのリーダー。身長182cm、体重は77kg。 CV:平田広明(【GTO】出演時)
IQは170の超天才で、日本語・英語・フランス語の三ヶ国語を扱える。信条は「即断は禁物」。
超常現象・ノストラダムス解釈に精通しており、どんな謎も調べて結論を下してしまうが、詳細が
分からない場合も多い。初期は超能力に否定的な姿勢も見せていたせていたが、後にナワヤに簡単な
実験で説得され、鍼治療のこともあり再評価するようになった。使用携帯電話はJ-PHONE。
MMR解散後は講談社に残り、ナワヤと共に編集者の立場から様々な情報を探索していたが、
ある日突然置き手紙を残して音信不通となる。



111 名前:新章/MMR緊急報告・前編 古墳に隠されし謎を暴け!!:2009/10/19(月) 22:36:59
 
 
     東京都 講談社本社ビル・待合室
 
 
 講談社本社ビルのとある場所にある、待合室。
 そこのソファに、かつてのMMR隊員、タナカとトマルは座っていた。
 ・・・しかし、ナワヤがイケダを迎えに行くと言って出て行ってから、
 既に2時間以上経過しており、流石に彼らもナワヤが心配になっていた。
 
 
    _
   , ‐''´~   `´ ̄`‐、
 ヽ‐'´            `‐、
≦               ヽ
≦   , ,ヘ 、           i
 l イ/l/|/ヽlヘト、      │   
 |/ | ! |  | ヾ ヾヘト、    l    
  ! ‐;-、   、__,._-─‐ヽ. ,.-'、   
  } ' (:)〉  ´(.:)`i    |//ニ ! 
 ゙!  7     ̄    | トy'/
 !  `ヽ"    u    ;-‐i´
 ヽ  ` ̄二)      /ヽト、
  ヽ、 ー         / ゝ
   \   __, ‐'  / / \
      ̄ i::::: / /
タナカ「遅いですね・・・ ナワヤさん。
    イケダさんを迎えにいったはずじゃ・・・」
 

 /   , ,ィ ハ i、 、     !
 /イ  ,ィ/l/ |/ リuヽlヽト、 |
  イ /r >r;ヘj=:r‐=r;<ヽ│
  r、H   ┴'rj h ‘┴ }'|ト、  
  !t||u`ー-‐ベ!` ` ー-‐' ルリ   
  ヾl.     fニニニヽ  u/‐'    
    ト、  ヽ.   ノ u,イl.   
   ,.| : \  `ニ´ / ; ト、 
-‐''7 {' ::   ` ー '  ,; ゝ:l`ー-
  /  \ ::       , '/  :|  
 /     \    /     |
トマル「まさか、どっかの組織がMMRメンバーが再結集する事を知って、
    前みたいにナワヤさんを狙ったんじゃ・・・」
 
 トマルがそんな事を口走った、その時・・・
 

    |┃.   、ー'´         \      /''⌒ヽ-─‐- 、
    |┃三  >       ,       !     ゝ ,、.___,  \
    |┃     ≧  , ,ィ/ハヽ\   |    「 ./        \  |    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ガラッ.|┃    .1 イ/./ ! lvヾ,.ゞ、 !     |./        ヽ |  <  待たせたな、二人とも!
    |┃    _レ「゙f.:jヽ ーT'f.:j'7`h    r|´゙>n-、ヽ-rj='^vヽ  |  イケダも来たぞ!!
    |┃三  {t|!  ̄" }  ` ̄  !リ    :|r|  ー "j `ー ′ h゙リ   \____________
    |┃.   ヾl   ヾ_    /'     ヾ!   ヾ     イ‐'
    |┃三    ト  ヾー-' ` /.|       ト.、  ー―  , ' |
    |┃      | :\    /,' ト、_       ⊥:`ヽ. __ / ,' |
    |┃三 ,、.._ノ ::  `ー '   /,.イ   / ̄\ ::       , '/ ̄\

 
タナカ「ナワヤさん!無事だったんですか!」
 タナカは、安心した様子で答える。
 
ナワヤ「何言ってんだ、それじゃ俺が毎日命を狙われてるようじゃねーかよ」
タナカ「実際狙われてましたよ。確か、予知能力を調べた際に一回、
    遺伝子技術の調査の際に一回、計二回ナワヤさんは殺されかけてますよ」
ナワヤ「そ・・・ そうだったか? ・・・よく覚えてねーな」
タナカ「全く・・・ そんなだからよく狙われるんじゃないですか?」
 
 ハァ・・・、とタナカは溜息をつく。
 だが・・・ その心の奥底では、ナワヤが無事に帰ってきた事に対して、
 深い安堵を感じていた。
 
トマル「それにしても・・・ 本当にみんな久しぶりですね・・・」
ナワヤ「全くだな・・・ あの時、俺達は『神の言葉』の真相に近づきながら、
    もう一歩のところで調査を断念せざるを得なかった・・・
    それでも、「あきらめない」事が俺達にできる唯一の戦い方だった事が
    わかって、みんなバラバラに旅立ったからな・・・」
 
 かつてMMRとして活躍した過去を懐かしそうな顔で
 しみじみと振り返るナワヤ。
 
トマル「・・・キバヤシさん、一体今何処にいるんでしょうか・・・」
ナワヤ「・・・さあな、でもあいつの事だ、きっとどこかで頑張ってるんじゃないか?
タナカ「・・・だと、いいですけどね・・・」

一同「・・・・・・」
 一同の中を、重い空気が覆う。

トマル「ま、まあ、とりあえず、会議室に行きましょう。
    お互い、色々話したいこともあるでしょうしね」

 トマルが、重い空気を切り開き、話を進めた。

ナワヤ「そうだな・・・ あれからもう数年も経ったんだ。
    会議室でゆっくり話そうぜ」

 ナワヤは、通路へのドアを開き、会議室へ向かおうとしたが・・・
 
 
   ドカッ!

ナワヤ「ブッ!」

 ナワヤはドアの向こうに立っていた人物に頭をぶつけ、声を上げる。

ナワヤ「だ・・・ 誰だ!?ボケッとつっ立ってんのは!!」
イケダ「ナ・・・ ナワヤさん・・・」
ナワヤ「あん?」

 ナワヤは頭を押さえながら頭を上げた。そこに立っていたのは・・・
 
 
 
 
     ,ィ, (fー--─‐- 、、
.    ,イ/〃        ヾ= 、
   N {                \
  ト.l ヽ               l
 、ゝ丶         ,..ィ从    |   
  \`.、_    _,. _彡'ノリ__,.ゝ、  |   
   `ゞf‐>n;ハ二r^ァnj< y=レヽ   
.    |fjl、 ` ̄リj^ヾ)  ̄´ ノ レ リ   
    ヾl.`ー- べl,- ` ー-‐'  ,ン  
      l     r─‐-、   /:|   
       ト、  `二¨´  ,.イ |   
     _亅::ヽ、    ./ i :ト、   
  -‐''「 F′::  `:ー '´  ,.'  フ >ー、 
    ト、ヾ;、..__     , '_,./ /l
   ヽl \\‐二ニ二三/ / /
キバヤシ「久しぶりだな・・・ みんな」
 
 


 /   , ,ィ ハ i、 、     !   /''⌒ヽ-─‐- 、     、ー'´         \ .イ   , ,ィ ハ i 、 .   |
 /イ  ,ィ/l/ |/ リuヽlヽト、 |   ゝ ,、.___,  \  >       ,       !  | ,ィ/l/ l/ uハlヽトiヽ. |
  イ /r >r;ヘj=:r‐=r;<ヽ│  「 ./       u \  |  ≧  , ,ィ/ハヽ\   |   |/゙>r;ヘ '-‐ァr;j<`K
  r、H   ┴'rj h ‘┴ }'|ト、  |./        ヽ |  1 イ/./ ! lvヾ,.ゞ、 ! .ry   ┴ 〉   └'‐ :|rリ
  !t||u`ー-‐ベ!` ` ー-‐' ルリ r|´゙>n-、ヽ-rj='^vヽ _レ「゙f.:jヽ ーT'f.:j'7`h |t|.   ヾi丶     u レ'
  ヾl.     fニニニヽ  u/‐'  :|r|  ー "j `ー ′ h゙リ {t|!v ̄" }  ` ̄  !リ ヾl u  iニニニヽ   /|
    ト、  ヽ.   ノ u,イl.    ヾ! v  ヾ__ v イ‐' ヾl   ヾ_  v ./'    ト、  、__丿u ,イ ト、
   ,.| : \  `ニ´ / ; ト、    ト.、u L_ フ , ' |.    ト、u ヾー `> /.|.   ,| ::\     / ; / \
-‐''7 {' ::   ` ー '  ,; ゝ:l`ー- ⊥:`ヽ. __ / ,' |    | :\   ̄ /,' ト、_ /〈 ::  ` ー '   ,'/   「
  /  \ ::       , '/  :|     `'''ー- 、 , ' '>-,、.._ノ ::  `ー '   /,.イ   \::     /      |
 /     \    /     |        | ヽ-‐'´ _,.ヘ<  _::   _,. イ/ |     ,.へ、 /´\       |
ナワヤ「キ・・・ キバヤシィィィ!!!!
タナカ・イケダ・トマル「キ… キバヤシさあぁぁぁぁん!!!!!

 すかさず、ナワヤとタナカはキバヤシに駆け寄る。

ナワヤ「キバヤシ・・・ お前、今まで一体何処で何してたんだ!?」
タナカ「心配してたんですよ!!」
キバヤシ「済まない・・・ 長い間連絡が取れなくてな・・・
     ・・・だが、それ相応の収穫はあったぞ」

 キバヤシは、自信満々の顔で、そう言った。

トマル「それ相応の収穫・・・?」
 トマルは首を傾げる。

イケダ「例えば・・・ 『神の言葉』の正体とかですか? ハハハ・・・」

 イケダは恐らく冗談まじりで言ったと思われる。本人もそのつもりだった。
 だが、キバヤシの答えは・・・・・・

キバヤシ「フッ・・・ 流石だなイケダ。その通りだ
 
 
 
ミミ:::;,!      u       `゙"~´   ヾ彡::l/VvVw、 ,yvヾNヽ  ゞヾ  ,. ,. ,. 、、ヾゝヽr=ヾ
ミ::::;/   ゙̄`ー-.、     u  ;,,;   j   ヾk'! ' l / 'レ ^ヽヘ\   ,r゙ゞ゙-"、ノ / l! !ヽ 、、 |
ミ/    J   ゙`ー、   " ;, ;;; ,;; ゙  u ヾi    ,,./ , ,、ヾヾ   | '-- 、..,,ヽ  j  ! | Nヾ|
'"       _,,.. -─ゝ.、   ;, " ;;   _,,..._ゞイ__//〃 i.! ilヾゞヽ  | 、  .r. ヾ-、;;ノ,.:-一'"i
  j    /   ,.- 、  ヾヽ、 ;; ;; _,-<  //_,,\' "' !| :l ゙i !_,,ヽ.l `ー─--  エィ' (. 7 /
      :    ' ・丿   ̄≠Ξイ´,-、 ヽ /イ´ r. `ー-'メ ,.-´、  i     u  ヾ``ー' イ
       \_    _,,......::   ´゙i、 `¨ / i ヽ.__,,... '  u ゙l´.i・j.冫,イ゙l  / ``-、..- ノ :u l
   u      ̄ ̄  彡"   、ヾ ̄``ミ::.l  u   j  i、`ー' .i / /、._    `'y   /
              u      `ヽ  ゙:l   ,.::- 、,, ,. ノ ゙ u ! /_   ̄ ー/ u /
           _,,..,,_    ,.ィ、  /   |  /__   ``- 、_    l l  ``ーt、_ /  /
  ゙   u  ,./´ "  ``- 、_J r'´  u 丿 .l,... `ー一''/   ノ  ト 、,,_____ ゙/ /
        ./__        ー7    /、 l   '゙ ヽ/  ,. '"  \`ー--- ",.::く、
       /;;;''"  ̄ ̄ ───/  ゙  ,::'  \ヾニ==='"/ `- 、   ゙ー┬ '´ / \..,,__
、      .i:⌒`─-、_,....    l   /     `ー┬一'      ヽ    :l  /  , ' `ソヽ
ヾヽ     l      `  `ヽ、 l  ./  ヽ      l         )  ,; /   ,'    '^i
ナワヤ・タナカ・イケダ・トマル「なっ… なんだって―――――!!?
 
 
 四人は、思わず大声を上げてしまった。無理も無い。
 かつて、五人があれだけ賢明に捜索して、それでも正体がわからなかった
 『神の言葉』の正体を、キバヤシが掴んだというのだから。

ナワヤ「それは本当なのか・・・!? キバヤシ!!」
 ナワヤは、すかさずキバヤシに問いただす。

キバヤシ「ああ、本当だ」
 そして、キバヤシは即答した。

イケダ「一体、奴らは何者だったんですか!?教えてください!!」
キバヤシ「まあ、慌てるな。お前達も色々話したいことがあるだろう。
      まずは会議室に行こう。そこで話す」
ナワヤ「お・・・ おう!」
 
 
 そして、彼らは会議室に向かっていった。
 かつて知ることの出来なかった真実に、もう一度挑むために・・・
 
 

112 名前:新章/MMR緊急報告・前編 古墳に隠されし謎を暴け!!:2009/10/19(月) 22:37:35
○キバヤシ→数年ぶりにナワヤ達の前に姿を現す。『神の言葉』の正体を掴んだらしい。
○ナワヤ、タナカ、イケダ、トマル→数年ぶりに集結。突然のキバヤシの来訪に驚きを隠せない。

【今回の新規登場】
○トマル(MMR マガジンミステリー調査班/GTO)
イケダが事故で入院した為、補助要員としてMMRに参加した眼鏡をかけた男。
弱点は太もも。東京大学卒。プライベートではイケダを「アニキ」と呼んでいる。
MMR解散後、ジャンクDNAの研究を志す。

○タナカ(MMR マガジンミステリー調査班/GTO)
MMR結成当初からいた隊員で、「予言博士」を自称する。
ノストラダムスの大予言以外にも「ヨハネの黙示録」にも詳しい。筑波大学に
おいて考古学を専攻。トルコの遺跡カマン・カレホユックの調査にも参加。
MMR解散後、世界中の様々な遺跡を調べるため、海外に旅立つ。

 ◆『神の言葉』(MMR マガジンミステリー調査班)
  正体不明の組織。その正体はナチスドイツの残党とも軍産複合体とも言われるが
  真相は定かではない。「Resident of Sunレジデント・オブ・サン)」を名乗る
  人物が関わっている以外は構成員は不明。かつて始皇帝陵の隷属遺伝子を巡り、
  MMRと対峙した。

113 名前:新章/MMR緊急報告・前編 古墳に隠されし謎を暴け!!:2009/10/19(月) 22:38:09
 
 
     東京都 講談社本社ビル・会議室
 
 
 講談社本社ビルの会議室、そこにかつてのMMRメンバー、
 ナワヤ、タナカ、イケダ、トマル ・・・そして突如現れたキバヤシは集合していた。
 キバヤシは会議室のホワイトボードの前の教壇に立ち、
 後の四人はその真正面の席に座っていた。

タナカ「こうして集まるのも・・・ 何年ぶりでしょうか・・・」
イケダ「ほんと、久しぶりですね・・・」
ナワヤ「でも、みんな、よく集まってくれたな・・・ 俺からも礼を言うぜ」

 全員が懐かしさを口に含め談笑する中、キバヤシは口を進めた。

キバヤシ「・・・今回、ナワヤがお前達を収集したのは他でもない・・・
      俺達はMMRの解散後、散り散りになりながらも、世界各地に向かい、
      そこで様々な情報を求め続けていた・・・
      そして今日集まり、これまで各々で調べてきた調査の内容を
      ここでお互いに発表し、皆で再検証する・・・ という事だったらしいな、ナワヤ」

 キバヤシは、ナワヤに確かめるように問う。

ナワヤ「ああ・・・ ま、お前が来た事だし・・・
     お前がやりたいんなら進行役は任せるぜ」

 ナワヤは、そう即答した。やはり、長年リーダーを務めてきたキバヤシなら
 話の流れを任せられるということなのだろう。

キバヤシ「そうか・・・ では俺が進めさせてもらう。
      誰からでもいい・・・ 自分が調べてきた調査内容を話してくれ」

 キバヤシがそう発言した直後、一名が挙手した。

イケダ「ハイ!!」
キバヤシ「イケダか・・・ 確かお前は最先端の遺伝子技術を求め、
      アメリカに行っってたな・・・ 話してくれ」

 イケダは席から立ち上がり、話し始めた。

イケダ「僕はアメリカに渡米した後、友人のチャーリーの協力を得て、
    様々な遺伝子操作の技術を研究している施設を見て回りました。
    その中でも、特に注目したのは、やはり『コーディネイター』関連の話題です」
キバヤシ「フム・・・」

 イケダは険しい表情で話を続けた。

イケダ「今現在は当時のブルーコスモス的思想の定着等により、いわゆる
     『第一世代のコーディネイター』は殆ど生まれなくなっていますが、現在でも
     コーディネイターとナチュラルの間の確執は消えたとは言えず、人権、社会、
     国家的な問題が依然残ったままだと言えます。つい数ヶ月前にも、ナチュラルの
     排除を目的としたパトリック・ザラ率いる過激派がグランショッカー・・・
     現ディバイン・ショッカーと手を組み、プラントの首都「アプリリウス・ワン」を
     占領したという事件が起きています」
ナワヤ「自分達の主張の為なら悪党と手を組んで、同胞すら容赦なしか・・・ ひでぇな・・・」

 ナワヤは苦い顔をし、心の中で舌打ちする。イケダは表情を崩さず、さらに話を続ける。

イケダ「幸いにもこの事件はヒーロー達や、当時のクライン派の軍勢によって
    鎮圧されましたが、まだ安全な状況だとは言えません。かつて僕達は
    「遺伝子∞(インフィニット)」や「寿命コントロール遺伝子」等による
    遺伝子操作の技術による人類間の確執を危惧してきましたが、それはまさに
    今、現実の問題となっていると言っても過言じゃないでしょう。僕はそこに
    恐怖を感じます」

 イケダは全てを言い終わると、着席した。

キバヤシ「なるほど・・・ 遺伝子操作による人類間の確執か・・・」

 キバヤシの言葉の後、トマルは席から立ち上がり、話し始めた。

トマル「確かに遺伝子操作による人類間の確執も大きな問題だと思いますが・・・
    僕は他にも、自然発生的な人類の進化に興味を持っています」
ナワヤ「自然発生的な・・・ オルフェノクとかか?」

 ナワヤはトマルに質問した。

トマル「ええ、その進化によっても様々な種類があり、所謂
    「ニュータイプ」「超能力者」など、他の人間と姿形が変わらない者もいれば、
    「オルフェノク」「アギト」の様に、外見からして形を変えてしまう者もいて、
    特に後者には現人類を下等生物とみなす勢力も多いようです」

タナカ「確か・・・ オルフェノクはイケダさんの話に出てきたプラントの
    占領事件にも関わってましたよね・・・」
トマル「ええ、俗に言う「地球至上主義勢力」が主導のTVやインターネットの
    ニュース報道等では、オルフェノクが人類に害をもたらす存在の様に
    言われていますが、実際にはDショッカー等に関わっている者以外は
    大半が人間への敵意を持たず、仮面ライダー等、ヒーロー側の勢力に
    協力している者達も一部ながら存在しているようです」
キバヤシ「だが、そんな連中だけじゃないというのが問題だ・・・」
ナワヤ「何てこった・・・ 人類は一体どうなっちまうんだ・・・」

 ナワヤは冷や汗をかきながら、戦慄する。

トマル「・・・人類は有史以前より、様々な脅威にさらされ続けていました。
    宇宙や地球の内部からの脅威・・・ 魑魅魍魎、悪鬼悪霊の類・・・
    ・・・僕個人の考えなんですが、もしかしたら、これらの人類の進化は、
    人類がこれらの脅威に耐えうるため、ジャンクDNAが自発的に進化を
    始めたのではないか・・・ そんな気もするんです」

 そう言うと、トマルは着席した。

キバヤシ「なるほど・・・ 現在地球にはDショッカーや宇宙連合の過激派等、様々な
      敵対勢力が大頭している・・・ それらの脅威に立ち向かうための進化か・・・」

 そう言い、キバヤシはナワヤに目を向けた。

キバヤシ「ナワヤ、お前はどうだ。MMR解散後も講談社に残って、編集者の立場から
      様々な情報を探索してたらしいが、何か目立ったことはあったか?」

ナワヤ「俺か・・・ 俺が編集部で仕入れた情報で目立ったのは、やっぱり、
    中学生や高校生の起こす事件や社会問題だな」
イケダ「事件・・・ イジメ、薬物、ひきこもりとかですか・・・
    確か雑誌の方でも漫画の形式で取り上げてましたね・・・」

 イケダがそう言うと、ナワヤは自分の座っていた
 パイプ椅子の下から、新聞を取り出す。

ナワヤ「最近も、ほら」

 ナワヤは、イケダに新聞を投げ渡した。

イケダ「こ、これは・・・?」
ナワヤ「四日前の新聞だ。一面を読んでみろ」
イケダ「えーと・・・ 何々・・・」

 イケダは、新聞の一面を読み上げる。
 
 
 『マンションの惨劇!学生二人の命が失われたその原因は?
  その残酷極まりない事件は神奈川県原巳浜で起きた。地元の榊野学園に在学していた学生の
  伊藤誠さん(16)、西園寺世界さん(16)の二名が早朝、無残な姿でマンションで発見された。
  西園寺さんの遺体ははマンションの屋上に血まみれで横たわっており、腹部を刃物の様な
  物で裂かれていた。また、伊藤さんは首から上を切断されて持ち去られており、DNA鑑定で
  本人であることが判明した。なお、血痕などから、伊藤さんを殺害したのは同じく殺害された
  西園寺さんである事が判明しており、目撃情報などからその西園寺さんを殺害したと思われる
  同学園に所属の桂言葉容疑者(15)を現在警視庁は全力を挙げて捜索中である』
 
 
イケダ「・・・酷いですね、こんな事件が起こるなんて・・・」
ナワヤ「・・・ったく、世も末って奴だよ・・・ あのノストラダムスでも
    人類破局の危機は予言できても、こーいう現実的な問題までは
    予測できなかったって訳さ・・・」
キバヤシ「・・・・・・・・・」

 全員、沈黙する。

ナワヤ「・・・正直、俺個人としては、Dショッカーや宇宙連合も脅威だとは思うけど、
     こういった人類内部での破局も、より身近な恐怖として脅威を感じるぜ・・・」

 ・・・暫く沈黙が続いた後、話を進めたのはタナカであった。

タナカ「・・・そういえば最近、「スクランブルフォース」って組織が話題になってますよね?
    あれに関しては皆さんはどう思いますか?」

 タナカの問いに対し、ナワヤは椅子の背もたれに寄りかかりながら、
 腕組みをした姿勢で答えた。

ナワヤ「・・・確か、小学生から高校生くらいの子供達で結成された自警団だったっけな。
     正直な所を言うと・・・ 俺はどちらかっつーと反対だ。
     俺たちの雑誌を読んでるくらいの年齢の奴らが武器を持って
     危ない連中と殺し合うなんて、正直、あまり考えたくねぇな・・・」

 ナワヤが言い終わった直後、トマルも口を開いた。

トマル「・・・僕は、どっちかというと、賛成です。
    確かに彼らはまだ10代程度の少年少女です。その上で誰かに強制されて
    戦わせるというなら反対ですが、彼らがDショッカー等の悪が許せず、
    それらの驚異から人類を守るため、自分達の意志で戦いに赴くのなら、
    それを僕ら大人がどうこう言う権利は無いんじゃないでしょうか」

 トマルの発言したスクランブルフォースの擁護論に対し、
 ナワヤは表情を変え、トマルに詰め寄った。

ナワヤ「おいおい、何言ってんだ!自分の意志だか何だか知らねぇが、
     子供が戦争に巻き込まれていいわけねぇだろーが!!
     そうだな・・・ 確かお前の従兄弟にシゲキってやつがいたよな!
     もしあいつがそのスクランブル・・・ 何とかに入るって言ったら
     お前はそれでも平気なのか!?」

 ナワヤの顔が真ん前にあるという、凄まじくプレッシャーがかかっているだろう
 状態にも関わらず、トマルは表情を崩さず答えた。

トマル「・・・シゲキ君が、少なくとも100%自分の意志でスクランブルフォースに
    入るというのなら、僕は止めはしません」
ナワヤ「・・・ッ!?」

 トマルの言葉に、ナワヤは怒りの表情を露見し、彼の胸ぐらを掴み上げた!

ナワヤ「お、お前なぁ!!」
トマル「ぼ、僕は、間違ったことは言ってるとは思いません!」

 まさに一触即発の状態の二人。流石にこの状況は不味いと思ったのか、
 タナカとイケダは声を揃え、二人に向かって一喝した。

タナカ・イケダ「い───かげんにして下さい!」 ボケェ

ナワヤ「うおっ!?」
トマル「うわっ!?」

 突然の大声にナワヤは驚き、トマルの胸ぐらを掴んでいた手を緩めてしまう。
 その結果、トマルは床に音を立てて尻餅をついてしまった。

タナカ「確かに最初に言い出したのは僕ですし、スクランブルフォースに関しても
    人それぞれ賛否両論があるでしょうけど、今はもっと別にしなくちゃいけない
    話があるでしょ──が!!」
イケダ「そうですよ!せっかくキバヤシさんがMMRとしての活動時には尻尾を
    掴みながら、全貌までは知ることのできなかったあの『神の言葉』の
    正体を掴んだって言うんですよ!?知りたくないんですか!?」

 二人はナワヤとトマルに対して険しい見幕で詰め寄った。
 この状況に対して、ナワヤとトマルは自分達の表情を引きつらせるしか無かった。

ナワヤ「わ、解った!悪かったよ!
     お、俺もそろそろ話を切り上げる頃だと思ってたんだよ!」
トマル「ぼ、僕もそう思ってた所ですよ!」

 二人の表情には明らかに焦りが見えていた。

イケダ「ったく・・・ ナワヤさんとトマルは本当に相変わらずですね・・・」
 イケダはため息をつく。

キバヤシ「・・・だが、それはナワヤ達がMMR解散から数年経った今でもかつてのMMRとしての
      志を失っていないという何よりの証拠だ。悪いことではないさ。」

 キバヤシは、口元に少し笑顔を含み、そう言った。

キバヤシ「・・・さて、そろそろ本題に移ろうか」

 そう言い、キバヤシは表情を変え、教壇に向かい直った。

ナワヤ「・・・その前に、一つ聞きたいことがある」

 ナワヤは挙手し、キバヤシに問いかけた。

キバヤシ「・・・何だ?ナワヤ」
ナワヤ「お前、数年前に「旅に出る」って手紙に書いて、それ以来
     音信不通だったわけだが、一体今まで何処で何をやっていた?
     後、何で俺たちに一度も連絡をよこさなかった?
     もし無事だったんなら、俺達に一回くらい連絡してもいいじゃねえのか!?」

キバヤシ「・・・・・・」
 キバヤシは、少し黙り込む。
 そして、数秒の沈黙の後、口を開いた。

キバヤシ「俺は、MMRが解散した後も、編集部に残って編集者として活動していた。
      できることなら直ぐにでも『神の言葉』の正体を知るために、アメリカや中国に
      向かいたかったが、直ぐに活動したら、奴らに感づかれてしまう・・・
      それでお前達にまで危険が及ぶのは、できれば避けたかったんだ・・・」

ナワヤ「・・・・・・」
タナカ「・・・・・・」
イケダ「・・・・・・」
トマル「・・・・・・」
 四人は、ひたすら黙ってキバヤシの話に耳を傾けている。


キバヤシ「だが・・・ ある時、"夢”を見たんだ」
四人「「「「夢!??」」」」
キバヤシ「ああ・・・ あれは夏の蒸し暑い夜の事だった・・・」
 
 
 
 
  ◇    ◇    ◇    ◇
 
 
 
 
キバヤシ「ウ、ウ〜ン・・・」

 ──あまりの寝心地の悪さに、俺は少し目が覚めたんだ。
 ──そして、辺りを見回すと・・・

キバヤシ「こ、ここは・・・!!?」

 ──目が覚めたとき、俺は、異空間のような所にいたんだ。
 風景はなく、ただ歪んだ色とりどりの曲線だけの空間で、
 俺は、一体自分の身に何が起きたのか理解できなかった。
 その時──

???「・・・シ。 ・・・キバヤシ」
 突如、俺を呼ぶ声がしたんだ。

キバヤシ「だ、誰だ!?」
 そして、俺が声の方向に振り返ると・・・

謎の老人「・・・・・・」
キバヤシ「だ、誰だお前は!?」

 俺のすぐ傍に、黒い帽子を被り、全身を黒い服装に包んだ、
 白い髭を生やした老人が立っていたんだ。

謎の老人「・・・我の名はノストラダムス。お主も存じているはずだ」
キバヤシ「ノ、ノストラダムス!!?あ、あなたが!!?」
ノストラダムス「いかにも。我こそがノストラダムスだ」

 そう──、俺の傍に立っていた老人は、
 紛れもなくかつての大予言者、ノストラダムスだった。
 俺は恐縮し、言葉も出なかった。
 そんな俺に、彼はこう言い残したんだ。

ノストラダムス「キバヤシよ・・・ 今、地球には危機が迫っている!!」
キバヤシ「何ですって!?それは恐怖の大王のことではないのですか!?」
 俺は、ノストラダムスに対し問いかけた。

ノストラダムス「・・・『恐怖の大王』は今の時代を生きる英雄達の活躍により、去った。
         ・・・だが、『アンゴルモア』は未だ姿を現さぬ」
キバヤシ(そ、そういえば・・・ 確かノストラダムスの予言集の記述には
      恐怖の大王はアンゴルモアの大王を甦らせる者として書かれていた・・・
      恐怖の大王が消えても、アンゴルモアの大王は未だ存在している・・・)

ノストラダムス「・・・キバヤシよ、お主は立ち上がらなければならぬ」
キバヤシ「た、立ち上がる・・・!? 一体何を・・・」

 ノストラダムスの突然の言葉に、俺は一瞬だけ困惑してしまった。

ノストラダムス「・・・キバヤシ、アメリカへ行け」
キバヤシ「アメリカ・・・ ですか?」
ノストラダムス「うむ。そこで「ペガサス・J・クロフォード」という男に会え。
         彼こそが、『神の言葉』の正体を知っている男だ。
         彼に会えば、奴らの真実に迫ることができるだろう・・・
         お主を信じているぞ・・・ キバヤシ・・・」

 そう言うと、ノストラダムスの体は徐々に薄くなり、消えていった・・・

キバヤシ「ま、待ってください!」

ノストラダムス「キバヤシ・・・ 地球、いや全平行宇宙の未来はお主達にかかっている。
         頼んだぞ!!」

   ピカッ!!

キバヤシ「うわっ!」

 突如光った閃光に目がくらみ・・・ もう一度目を開けると・・・

キバヤシ「・・・・・・」

 ──俺は、自室のベッドに戻っていた。
 
 
 
 
  ◇    ◇    ◇    ◇
 
 
 
 
キバヤシ「───と、言う訳だったんだ」

 キバヤシは、全てを言い終わると、少し表情を緩めた。

ナワヤ「ほ、本当に・・・ ノストラダムスが・・・?」
 ナワヤは、明らかに困惑の表情を浮かべていた。

キバヤシ「ああ・・・ 本当だ。信じられないかもしれないが・・・ 事実だ」

タナカ・イケダ・トマル「・・・・・・・・・」
 一方、トマル達は、完全に沈黙状態に陥っていた。

ナワヤ「そ、それで・・・ そのペガサスって男に・・・ 会えたのか!?」
 ナワヤは動揺しながらも、キバヤシに質問した。

キバヤシ「それは・・・ これから話そう」
 
 

114 名前:新章/MMR緊急報告・前編 古墳に隠されし謎を暴け!!:2009/10/19(月) 22:38:50
○キバヤシ→自分の経緯をナワヤ達に説明中。夢枕にノストラダムスが姿を現したらしい。
○ナワヤ達→キバヤシの夢にノストラダムスが登場したことに対し、驚きを隠せないでいる
△ノストラダムス→キバヤシの夢の中に出現。「ペガサス・J・クロフォード」という男に会うようキバヤシに伝えた。

【今回の新規登場】
△ミシェル・ド・ノートルダム(MMR マガジンミステリー調査班)
姓をラテン語風に綴って「ノストラダムス」とも呼ばれる。予言書「諸世紀」で有名な
フランスの予言者。過去の人物なので直接MMRとは関わってはいないが、キバヤシ曰く
人類に危機を警告する「時空を超えて立ちはだかる」存在。

115 名前:新章/MMR緊急報告・前編 古墳に隠されし謎を暴け!!:2009/10/19(月) 22:39:38
 
 
キバヤシ「夢を見た後、俺はすぐにアメリカに向かった。
      ペガサスという男に会うためにな」
ナワヤ「お、おう・・・」

 ナワヤは、腕組をして頷く。

キバヤシ「俺は渡米した後、「ペガサス・J・クロフォード」の行方を調べ・・・・・・ その所在を掴む事に成功した」
タナカ「!! ・・・本当ですか!?」

 キバヤシの言葉にタナカは目を大きくして驚いた。

キバヤシ「ああ・・・ そして、本人と直接話す機会も得ることが出来た」

 キバヤシは、自分とペガサス・J・クロフォードが行った話の内容を、
 ナワヤ達に話し始めた・・・
 
 
 
 
  ◇    ◇    ◇    ◇
 
 
 
 
     一年前


 山々や森林に囲まれた湖の畔に建っている、洋風の大きな古城・・・
 それこそが、インダストリアル・イリュージョン社の名誉会長であり、世界中で大ブレイクしている
 TCG「デュエルモンスターズ」の生みの親、ペガサス・J・クロフォードの住む古城である。

 その豪邸の屋外の、豊かな自然と湖を一望できるプールサイドの前に置かれた白色の折り畳み式の
 テーブルを挟み、年の頃は30代半ばと思われる銀色の長髪の男性―――ペガサス・J・クロフォードと
 彼の元へと来訪したキバヤシの二名は会談を行っていた。
 
 
キバヤシ「――――という訳です。『神の言葉』について、知っている事を教えて頂けないでしょうか・・・?」
ペガサス「成程、それで日本からはるばるアメリカまで来たという訳デスか・・・
    MMRの活躍は、アメリカでも一度耳にした事がありマース」

 キバヤシはペガサスに真剣な表情で問いかけており、ペガサス自身もその問いに対し、
 冷静な表情で対応を行っていた。

キバヤシ「お願いです!! 今は一刻も無駄にはできないんです!!
ペガサス「・・・・・・」

 ペガサスは、少し黙り込むと、微妙に真剣な表情になり、数秒置いてキバヤシに返答した。

ペガサス「いいでしょう、Mr.キバヤシ、お話しマース」
キバヤシ「!! ・・・ありがとうございます!」

 ペガサスは、キバヤシの目を見ながら、話を続けた。

ペガサス「まず、あなた方が退治していた組織・・・ 『神の言葉』について話しマース」
キバヤシ「・・・・・・・・・」

 キバヤシは、これから語られるだろう『神の言葉』の正体を鼓膜に刻みつける覚悟で
 ペガサスの言葉を一字一句聞き取る心構えをした。

ペガサス「『神の言葉』・・・ 彼らの最終的な目的は、大国の軍産複合体と結びつき、
     世界中に軍事国家を張り巡らせる事でした・・・」
キバヤシ「ああ・・・ そこまでは我々も知っています・・・
     その為に奴らは、スーパーモスキートや隷属遺伝子など、様々な計画を打ち立ててました・・・」
ペガサス「そこまで知ってるとは・・・ 流石デース」

 その言葉と共に、ペガサスの目の光が多少変わったように感じた。
 正直、ペガサスはMMRの事を耳に挟んでいても、具体的にどんな集団なのかは知ってなかった。
 その為、初対面時はキバヤシに対し所謂三流雑誌記者のようなイメージも持っていたが、
 キバヤシの真剣な表情、そして彼らが掴んだ『神の言葉』の作戦を聞き、彼らが単なる三流記者の
 集まりでない事を確認し、態度を改めたのだった。
 ―――無論、最初から表情にも言葉にも出してないため、キバヤシが知る事は無かったが。

キバヤシ「・・・肝心なのは、そこまで奴らの真実に踏み込んでも、俺達が判らなかった謎です。
     『神の言葉』の正体・・・ 知っているのなら、教えていただきたいのです・・・
ペガサス「・・・彼らの正体、デスか」

 ペガサスの表情が、微妙に曇る。
 それを見たキバヤシは、彼が『神の言葉』について、かなり深い部分まで知っている事を察した。

キバヤシ「お願いします!! 『神の言葉』とは一体何者なんですか!!」
ペガサス「・・・・・・Mr.キバヤシ、ユー達が興味本位ではなく、真剣に彼らの事を知りたいと
     言う気持ちは理解してマース・・・ ですが、彼らは非常に危険な組織デース・・・
     貴方達がこの世界の“表”に位置する者なら、彼らは“裏”に位置する者。
     表の者が不用意に裏に踏み込めば・・・ 悲劇が生まれマース」

 そう言うと、ペガサスは、左目を覆っている銀髪を掻き分け、キバヤシの前に露にした。

キバヤシ「なっ・・・!?」
 
 
 そこに・・・ 彼の左目は無かった
 
 
ペガサス「これが不用意に“裏”の世界に関わった者の末路の姿・・・ Mr.キバヤシ、
     これ以上“裏”の世界に関わろうととすれば、これだけじゃ済まないかも知れまセーン。
     ―――それでもユーは、彼らの正体を知りたいデスか?」
 
 
 ペガサスが左目を失った理由は、実際の所、かつてエジプトのクル・エルナ村を訪れた際に、
 村の地下神殿で決して見てはならぬ千年アイテムの儀式を見てしまった為、千年アイテムに
 選ばれるか否かの闇の試練を受け、千年アイテムの一つ「千年眼」を手に入れた代償として
 失ったという経緯であり、『神の言葉』とは全く関係は無かった

 しかし、秘密結社とオカルトの違いはあれど、どちらも“表”の世界に対する“裏”である事は事実。
 そんな“裏”の世界の者達がどういう存在であるかを知った上で、キバヤシがそれでも臆せず
 彼らに立ち向かう覚悟を有しているか・・・ もしここで臆するようならば、『神の言葉』の真相に
 辿り着く前に『神の言葉』の手にかかり、下手したら、片目を失うだけでは済まないかもしれない。
 ペガサスはそれを確かめる為に、自分の失った左目を彼に見せたのだった。
 
 
 
 
 ―――そして、キバヤシは自分の答えをペガサスに告げた。
 
 
キバヤシ「・・・忠告はありがたく受け取っておきます。ですが、我々は奴らの作戦を阻止する為にも
     ここで立ち止まるつもりはありません。覚悟はできてます」

 ペガサスは、キバヤシの目を見る。
 彼の目は、強い光を放っているかのように、真っ直ぐな眼光を備えていた。
 まるで、かつて祖父の魂を取り戻す為に、自分に挑んだ少年のように・・・
 
ペガサス「・・・判りました。お話しシマース」
 
 
 
 
  ◇    ◇    ◇    ◇
 
 
 
 
ナワヤ「――――それで、結局『神の言葉』ってのは何だったんだよ?」
タナカ「ちょ、ちょっとナワヤさん・・・ まだキバヤシさんが話してる最中ですよ・・・」

 キバヤシの話の途中で、ナワヤは話を中断してキバヤシに問いかけた。
 それと同時に、他の二人と共に話に聞き入っていたタナカもナワヤを制止しようとする。
 
 
 ・・・だが、キバヤシはそんなナワヤの態度に一切不満そうな表情は見せていなかった。
 むしろそれを見計らっていたかのように、キバヤシはナワヤに視線を向け、彼に語りかけた。
 
 
キバヤシ「・・・・・・ナワヤ、『GOD機関』という組織を知っているか?」
ナワヤ「『GOD機関』? え、え〜と・・・、確か・・・ ショッカーとかと同じ、
    改造人間でテロとかやった組織だよな? 仮面ライダーに大分前に潰されたって聞いたけど・・・」

 ナワヤの答えに、キバヤシは満足そうな表情を浮かべ、話を続ける。

キバヤシ「その通りだ・・・ では、GOD機関とはどういう背景の組織だったのか、わかるか?」
ナワヤ「そ、それは・・・ えーと・・・ そこまでは知らねぇな・・・」
 
 
 ナワヤは困惑してしまうが、無理も無い。
 実際、ショッカーやGOD機関等、人体改造などの技術を悪用した秘密組織は、
 ビルや都市部を狙った大規模のテロ活動や、改造人間を使用した一般人の無差別殺戮など、
 様々な犯罪や破壊活動を頻繁に行ったため、TVの報道やインターネット等の媒体でも
 度々報じられており、世間一般 ―――少なくとも日本国内では、その存在は国民の記憶に
 畏怖するべき存在として深く刻み込まれていた、

 だがその反面、それらの破壊活動や大量殺人のイメージのみが先行されてしまっている側面もあり、
 それらの組織がどういった目的で結成されたか、どういった目的で行動しているのかといった
 情報は、政府や警察機関の情報規制もあり、多くの一般人が知らずにいるという実情でもあった。

 キバヤシは、ナワヤがGOD機関に関しての詳しい情報を知らないことを確認すると、
 一呼吸置き、GOD機関に関する説明を始めた。
 
 
キバヤシ「GOD機関がどういった組織かという話だったが・・・
     アメリカで聞いた、確かな筋の情報によれば、GOD機関とは、当時核問題などで
     対立し合っている東西の大国同士が水面下で手を結び、日本を滅ぼす目的で組織した秘密結社らしい。
     最も、その結成にはかつての秘密結社ショッカーが大きく関わっているらしいがな・・・」
ナワヤ「なるほどな・・・ で、それが『神の言葉』と何の関係があるんだ?」

 ナワヤはキバヤシに再び問いかけるが・・・ キバヤシは何故か無言のままであった。
 そんな彼に対し、ナワヤ以外のメンバーも彼に話しかけた。
 
 
イケダ「・・・・・・キバヤシさん?」

 イケダが話しかけたと同時に、キバヤシは突如口を開いた。

キバヤシ「―――――それが、ペガサスが話した、『神の言葉』の正体だ
一同「「「「!!!!?」」」」

 その言葉に、ナワヤを始めとするキバヤシ以外の全員は、驚きを隠せなかった。
 
 
タナカ「ど、どういう事なんですか!? キバヤシさん!!」
キバヤシ「よく思い出してみろ・・・ 俺達が追ってきた『神の言葉』が起そうとしてきた計画を・・・」

 キバヤシがそう言ったと同時に、全員が何かに気付いた様な表情を浮かべた。

ナワヤ「!? まさか・・・ キバヤシ・・・」
キバヤシ「そうだ・・・ 似てると思わないか・・・? 『GOD機関』と組織の方向性が・・・」

イケダ「た、確かに・・・ 『神の言葉』が起こそうとしていた計画の中には、
    風水を利用して日本の穀倉地域を壊滅させようとしたり、殺人プログラムをネットに
    流そうとしたりと、日本を壊滅状態に追い込む事を目的としたものが少なくなかった・・・」
トマル「・・・それだけではありません!!!

 イケダが話し終わると同時に、黙り込んでいたトマルも何かに気付いたような
 表情を浮かべ、直後にキバヤシ達の方を向き、口を開いた。

ナワヤ「ま、まだ何かあるのかよ・・・」

 ナワヤは頭に冷や汗を流しながら、トマルのほうをふり向く。

トマル「GOD機関と神の軍団・・・ 共に「を組織名としてます!!!
ナワヤ「!!! た、確かにそうだ・・・ 何で今まで気付かなかったんだ・・・」

 次々に明らかになる事実に戦慄しているのはナワヤだけでは無い。
 タナカ、イケダ・・・ 喋っているトマル自身も、あまりの衝撃に表情を強張らせていた。

キバヤシ「GOD機関のGODは、Government Of Darkness・・・ 「暗黒政府」の略らしいが、
     組織の体質から考えて、神を意味する『GOD』になるように単語を選んだと言うのは
     十分考えられる話だ・・・」

ナワヤ「・・・・・・・・・」
タナカ「・・・・・・・・・」
イケダ「・・・・・・・・・」
トマル「・・・・・・・・・」
 
 
 全員が神妙な表情を浮かべ、黙り込んでしまう。
 そんな中、ナワヤはハッとした表情となり、戦慄しながら口を開いた。

ナワヤ「お、おい・・・ 確か・・・GOD機関の結成には、
    ショッカーが大きく関わってるって言ったよな・・・
    って事は・・・ まさか・・・」

 ナワヤが言い終わると同時に、キバヤシもカッと目を見開き、教壇を両手で叩き付け、そして――――――
 
 
キバヤシ「そうだ・・・ 『神の言葉』とは、やはり『GOD機関』の事だったんだ・・・
     つまり・・・」
 
 
 
      ,.ィ , - 、._     、
.      ,イ/ l/       ̄ ̄`ヽ!__
     ト/ |' {              `ヽ.            ,ヘ
    N│ ヽ. `                 ヽ         /ヽ /  ∨
   N.ヽ.ヽ、            ,        }    l\/  `′
.  ヽヽ.\         ,.ィイハ       |   _|
   ヾニー __ _ -=_彡ソノ u_\ヽ、   |  \   
.      ゙̄r=<‐モミ、ニr;==ェ;ュ<_ゞ-=7´ヽ   >
.       l    ̄リーh ` ー‐‐' l‐''´冫)'./ ∠__   『神の言葉』の計画を裏で操っていたのは、
       ゙iー- イ'__ ヽ、..___ノ   トr‐'    /    他ならないショッカーだったんだよ!!!
       l   `___,.、     u ./│    /_ 
.        ヽ.  }z‐r--|     /  ト,        |  ,、
           >、`ー-- '  ./  / |ヽ     l/ ヽ   ,ヘ
      _,./| ヽ`ー--‐ _´.. ‐''´   ./  \、       \/ ヽ/
-‐ '''"  ̄ /  :|   ,ゝ=<      /    | `'''‐- 、.._
     /   !./l;';';';';';';\    ./    │   _
      _,> '´|l. ミ:ゝ、;';';_/,´\  ./|._ , --、 | i´!⌒!l  r:,=i   
.     |     |:.l. /';';';';';|=  ヽ/:.| .|l⌒l lニ._ | ゙ー=':| |. L._」 ))
      l.    |:.:.l./';';';';';';'!    /:.:.| i´|.ー‐' | / |    |. !   l
.     l.   |:.:.:.!';';';';';';';'|  /:.:.:.:!.|"'|.   l'  │-==:|. ! ==l   ,. -‐;
     l   |:.:.:.:l;';';';';';';';| /:.:.:.:.:| i=!ー=;: l   |    l. |   | /   //
       l  |:.:.:.:.:l;';';';';';';'|/:.:.:.:.:.:.!│ l    l、 :|    | } _|,.{::  7 ))
        l  |:.:.:.:.:.:l;';';';';'/:.:.:.:.:.:.:.:| |__,.ヽ、__,. ヽ._」 ー=:::レ'  ::::::|;   7
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ミミ:::;,!      u       `゙"~´   ヾ彡::l/VvVw、 ,yvヾNヽ  ゞヾ  ,. ,. ,. 、、ヾゝヽr=ヾ
ミ::::;/   ゙̄`ー-.、     u  ;,,;   j   ヾk'! ' l / 'レ ^ヽヘ\   ,r゙ゞ゙-"、ノ / l! !ヽ 、、 |
ミ/    J   ゙`ー、   " ;, ;;; ,;; ゙  u ヾi    ,,./ , ,、ヾヾ   | '-- 、..,,ヽ  j  ! | Nヾ|
'"       _,,.. -─ゝ.、   ;, " ;;   _,,..._ゞイ__//〃 i.! ilヾゞヽ  | 、  .r. ヾ-、;;ノ,.:-一'"i
  j    /   ,.- 、  ヾヽ、 ;; ;; _,-<  //_,,\' "' !| :l ゙i !_,,ヽ.l `ー─--  エィ' (. 7 /
      :    ' ・丿   ̄≠Ξイ´,-、 ヽ /イ´ r. `ー-'メ ,.-´、  i     u  ヾ``ー' イ
       \_    _,,......::   ´゙i、 `¨ / i ヽ.__,,... '  u ゙l´.i・j.冫,イ゙l  / ``-、..- ノ :u l
   u      ̄ ̄  彡"   、ヾ ̄``ミ::.l  u   j  i、`ー' .i / /、._    `'y   /
              u      `ヽ  ゙:l   ,.::- 、,, ,. ノ ゙ u ! /_   ̄ ー/ u /
           _,,..,,_    ,.ィ、  /   |  /__   ``- 、_    l l  ``ーt、_ /  /
  ゙   u  ,./´ "  ``- 、_J r'´  u 丿 .l,... `ー一''/   ノ  ト 、,,_____ ゙/ /
        ./__        ー7    /、 l   '゙ ヽ/  ,. '"  \`ー--- ",.::く、
       /;;;''"  ̄ ̄ ───/  ゙  ,::'  \ヾニ==='"/ `- 、   ゙ー┬ '´ / \..,,__
、      .i:⌒`─-、_,....    l   /     `ー┬一'      ヽ    :l  /  , ' `ソヽ
ヾヽ     l      `  `ヽ、 l  ./  ヽ      l         )  ,; /   ,'    '^i
ナワヤ・タナカ・イケダ・トマル
なっ・・・ なんだって―――――!!?
 
 
 
トマル「そ・・・ そんな・・・ ショッカーって言ったら、今は・・・」

 ナワヤ達はショックを隠せないが、無理も無い。
 なにせ自分達が追っていた『神の言葉』の正体が、あの世界規模で暗躍していた秘密結社
 「ショッカー」と非常に深い部分で繋がっていた事を知ってしまったのだから。

 それだけでは無い。今やショッカーやGOD機関は、三柱の至高邪神の元、
 他の数多の悪の組織や集団を統合し、今や他に類を見ない規模を誇る悪の組織、
 『無限なる帝国ディバイン・ショッカー』となっているのである。
 『神の言葉』がもし本当にGOD機関やショッカーと繋がっているのであれば・・・
 
 
 ―――――彼らの前に立ち塞がる相手は、想像以上に強大な存在であった。
 
 
 
ナワヤ「な・・・ 何てことだ・・・ Dショッカーって言ったら、ショッカーのような秘密結社以外にも、
    外宇宙や異世界の連中、妖怪とかもいるって言うじゃねぇか・・・」

イケダ「そんな連中が相手じゃ、対策の立てようなんてあるはずも無い・・・」

トマル「幾らなんでも、絶望的です・・・」

 ナワヤ達は深く沈んでしまった。周囲を重たい空気が包む。
 
 
タナカ「いっその事、最初から関わってなければ・・・」
 
 
 
 ――――誰もが希望を失いかけたそんな中、キバヤシは意を決した表情に変わり、言葉を発した。
 
 
 
 
 
 
        ,   / `ー---─一''"~´ ̄`ヾヽ
      i  i| ilレ           ミミミミ''"`─- 、
    , .,i! i !/i  i         ミミミミヾ   ミヾ ゙ヽ
    .i  ,!i l.| ' i  ゞ       彡ミミミヾ   ミヾヾ  `ヽ
  ,  i!、k ヽ、 ヽ          彡ミミ   ミヾヾ    ゙
  li l ヾ、    ヾ        _,,==  ミヘベ
  , |i、ヽ  ヽ、     ヽ             ヾ ゙
  !ヾ ヽー- _ ー- ,,__         〃ヾ
  ヾヽヾ ‐- ,,___             /ソツ、ヾゞ、ヾヾ
   ` 、`ー- 、...,,─--  __,,     彡ソソ ヾゞゞミミ
  ヽ.、 `ー --- .,,─--  __,, 彡ソソノ,;  ,,-弋ミミミミ
    \ ゙ー‐- 、..,,,____,,. --彡彡彡'"'",ィ'-====、ヽミミミ
      ``,.-、-─r,=====、:;;,,::;;::f" ,.'i´ o`i 冫ヽ ]-'´ 
         ゙iヾ ニill 〈 (.O)ーi` ̄´i  _`_-_'....'  li ゙
        ゙i   ill::::::::;ー-‐γ'i'::l,⌒ヾ`)::::::::::;;''  〃u
        ゙i  :ill::::::::;;  ソ::::;i,、,  ヾ:::::::;''' _,,ノ'  ,r-
         ゙i、  ゙`‐=='"..::::::;i,, .,,,  ゙゙'''''"~´    l
          ヾ.イ        '''"..-一、   u   .l
            ヽ     :;;l ̄´ _,,,...,.ヽ     ,イ
             ゙i. u   ;;iェ'´ i'  ヾト!    ./:!
              ゙!.    :;;Fi、   ,,.ツ   ./;:;:
             ./゙i ヽ   ゙;ヽニ二ニ-'´  ./ :;:;  /
            / i  ヽ    :..,,-‐' /::;'  ;:; /
キバヤシ「――――うろたえるなおまえ達!!
 
 
ナワヤ「ッ!!?
タナカ「!!?
イケダ「!!!?
トマル「!!? ・・・・・・キバヤシ、さん?」

 四人は我を取り戻したかのように、表情を変え、キバヤシの方を向いた。
 キバヤシはなおも話を続ける。
 
 
キバヤシ「――――俺達はもう既に『神の言葉』の事を知りすぎた。
     奴らが本格的に活動を開始している以上、俺達手が回ってくるのも時間の問題だ」
ナワヤ「―――つまり、もうどこへ逃げても無駄って事か?」

 ナワヤが目の光を失いかけた表情で、キバヤシに言葉を投げかけた。
 それとは対照的に、キバヤシの目は未だに眩しいほどに輝きを放っている。

キバヤシ「―――そうかもしれん。 ・・・だが、逆に言えば、俺達はこの世界の中でも数少ない、
     『神の言葉』やGOD機関・・・ そう、Dショッカーに深く近づいた物達とも言える」
ナワヤ「――――それが、どうかしたのかよ・・・」

 キバヤシはなおも話を続ける。
 
 
キバヤシ「かつて、俺達が奴らの手によってMMRを解散に追い込まれた際、
     俺達は今と同じくらい絶望した筈だ。
     だが、そんな俺達にでも出来た事は何だった・・・?」

 キバヤシは、真剣な眼差しでナワヤ達に語りかけた。
 自分達が、過去に交わした信念の誓いを、思い出させる為に・・・
 
 
ナワヤ「俺達に・・・ 出来た事・・・ はっ・・・!!」
タナカ「あきらめない・・・ 事・・・!」

 言葉と同時に、ナワヤとタナカの表情から暗さが消えうせ、目に光を取り戻す。
 それに合わせ、イケダとトマルの表情にも変化が現れた。
 
 
キバヤシ「『あきらめない!』 それがMMRを失った俺達にできた唯一の闘いだったはずだ!」
 
 
 

 /   , ,ィ ハ i、 、     !   /''⌒ヽ-─‐- 、     、ー'´         \ .イ   , ,ィ ハ i 、 .   |
 /イ  ,ィ/l/ l/ リ ヽ!ヽト、 .|   ゝ ,、.___,  \  >       ,       !  | ,ィ/l/ l/ lハlヽトiヽ. |
  イ /r >rjヘ;=:r‐=tj<ヽ│  「 ./      \  |  ≧  , ,ィ/ハヽ\   |   |/゙>rjヘ '-‐ァt:j<`K
  r、H   ┴'rj h ┴'  }'|ト、  |./        ヽ |  1 イ/./ ! l ヽヾ、_ ! .ry   ┴ 〉   └'‐ :|rリ
  !t||. `ー-‐ベ!` ` ー-‐' ルリ r|´゙>uー、ヽ-tj='^vヽ _レ「゙fぅヽ ーT'tラ'7`h |t|.   ヾi丶     レ'
  ヾl    -─-、   /‐'  :|r|  ー "j `ー ′ h゙リ {t|!.  ̄" }  ` ̄  !リ ヾl    -─ -   /|
    ト、    ‐‐     ,イl.    ヾ!.    ヾ      ,イ‐' ヾl   ヾ      /'    ト、    ‐-    ,イ ト、
   ,.| : \       / ; ト、    ト.、   ´_ ̄` , ' |.    ト、  ´_ ̄`  ./.|.   ,| ::\     / ; / \
-‐''7 {' ::   ` ー '  ,; ゝ:l`ー- ⊥:`ヽ. __ / ,' |    | :\     /,' ト、_ /〈 ::  ` ー '   ,'/   「
  /  \ ::       , '/  :|     `'''ー- 、 , ' '>-,、.._ノ ::  `ー '   /,.イ   \::     /      |
 /     \    /     |        | ヽ-‐'´ _,.ヘ<  _::   _,. イ/ |     ,.へ、 /´\       |
――――あきらめない!!

 
 
 
 ――――その瞬間、彼らの顔から絶望の色が完全に消え、目に希望の光が灯った。
 
 
 
 
キバヤシ「そうだ・・・ 俺達の所属は幸いにも講談社と言う大手の出版社だ。確かに俺達にはウルトラマンや
     仮面ライダーのような力は無いが、その代わり『報道の自由』という名の武器があるんだ!
     俺達が奴らの情報を記事にし、雑誌やネットなどのメディアで報じれば、
     いずれ奴らの力を削ぎ、ヒーロー達の手助けにもなるはずなんだ!」

 キバヤシの言葉に続き、ナワヤも口元に笑みを浮かべて口を開く。

ナワヤ「―――フッ、そうだったな・・・ 俺達は記者なんだ。
    それなら、やる事はお前の言ったとおりだ。Dショッカーの素顔、暴いてやろうぜ!!!」

トマル「・・・でも、具体的にどんな事をすればいいんでしょうか?」

 トマルの質問はもっともだ。いくら精神論を語った所で、
 実際に結果を残せなければ、単なる机上の理論でしかない。

キバヤシ「―――それなら問題は無い。俺がこの数年間で掴んだ情報は、
     単に奴らの正体だけではないんだ。
     ・・・お前達、比留子古墳ひるここふん)という名を聞いた事はないか?」
ナワヤ「ヒルコ・・・ 古墳・・・?」

 一同は首を傾げる。これまで彼らはMMRとして、様々な遺跡や施設を調査して回ったが、
 比留子古墳と言う名の古墳など、誰も耳にした事はなかった。
 
 
 そう・・・ 正確には約一名を除いて、だが。
 
 
タナカ「・・・ひょっとして、九州の比留子の里にある比留子古墳の事ですか!?」
ナワヤ「!? 知ってるのか、タナカ!!」

 タナカは、かつて与那国島沖の海底遺跡の存在に言及し、実際に来日し調査した作家の著書に
 感銘を受けた事が原因で、世界各地に点在する古代遺跡に惹かれるようになり、トルコの遺跡の
 調査にも参加したと言う経歴を持つ。それ故、MMRが解散した後も、国内外の様々な古代遺跡に
 関する調査を独自で行っていた。だからこそ、比留子古墳の存在も知っていたのだろう。
 
 
キバヤシ「その通りだ。 さて、本題に入るが・・・
     確かな筋の情報によると、その比留子古墳をDショッカーが狙っているらしい」
トマル「!! なんですって!?」
タナカ「・・・そういえば、比留子古墳の周辺では、怪物が出ると言う噂が流れてました・・・
    何でも昔、古墳を調べていた郷土史家が首無し死体で見つかったとか・・・」

 タナカは色々と知っている様だが、詳細を語れるほど知っているというわけではなさそうだ。
 恐らく、古新聞や文献などの資料で見ただけなのだろう。事実そうであった。
 
 
ナワヤ「で、でもよ、何でDショッカーがその古墳を狙うんだよ!?」
キバヤシ「・・・・・・それは俺にもわからん。あくまで“狙っている”という情報しか聞けなかったからな」

 その言葉に、一同は再び、不安を感じ、ざわめきをあげる。
 
 
                     (ざわ・・・・ ざわ・・・・)

                                 (ざわ・・・・ ざわ・・・・)
      (ざわ・・・・ ざわ・・・・)
 
 
キバヤシ「・・・だが、俺達以上にその比留子古墳の事を知っている人物が一人いる。
     彼はかつて比留子古墳に赴き、そこでの研究ノートを今も残し、所持しているとの事だ」
イケダ「!? ・・・本当ですか?」
キバヤシ「既にアポは取ってある」

 キバヤシの言葉に、全員がざわめく。
 タナカを除き、誰も知らなかった遺跡の事に関し、研究ノートを残しているほど
 調べ上げた人物がいると言うのだ。一体誰なのだろうか・・・
 
 
ナワヤ「・・・だ、誰なんだ!?」
キバヤシ「・・・『古墳の呪的文様』『天孫降臨』 ・・・耳に挟んだ事ぐらいはあるはずだ」
タナカ「!? キバヤシさん、ひょっとして・・・」
 
 
 ナワヤやイケダには見当もつかない。 ・・・だが、タナカには心当たりがあった。

 かつて自らの著書において、装飾古墳の文様を独自の解釈で斬新な考察を行い、
 それ以降も幾つかの大学の客員教授や著述活動を行いながら、奇怪な事例の研究を
 続けている“妖怪ハンター”のアダ名を持った考古学者・・・
 
 
 
タナカ「稗田礼二郎・・・ ですか?」
 
 

116 名前:新章/MMR緊急報告・前編 古墳に隠されし謎を暴け!!:2009/10/19(月) 22:41:04
○MMR一同→キバヤシの見つけた手がかりから、比留子古墳の調査を決定。
 比留子古墳に詳しいと言う考古学者「稗田礼二郎」の元へ行く事を決定する。
○ペガサス・J・クロフォード→過去にキバヤシに助言する。

【今回の新規登場】
○ペガサス・J・クロフォード(遊☆戯☆王シリーズ)
身長188cm、体重65kg。10月8日生まれ。血液型はA型。CV:高杉Jay二郎
アメリカのラスベガス出身。インダストリアル・イリュージョン社(略称:I2社)の名誉会長。
カードゲーム「デュエルモンスターズ」の生みの親で天才ゲームデザイナー。当初は武藤遊戯や
海馬瀬人と敵対していたが、遊戯と仲間の結束力の前に敗北する。千年アイテムの一つである
「千年眼(ミレニアム・アイ)」の所持者だったが、決闘者の王国終了後にバクラに千年眼を
刳り貫かれてしまう。それでも治療を施されて一命は取りとめ、以降は遊戯達に協力するようになった。
デュエル・アカデミアにも度々訪れている。デュエリストとしての腕は超一流であり、千年眼を
失った後も、相手の伏せカードをズバリ読み当てたりと、人の心理を読むのが十八番であることは
変わらないようである。

117 名前:新章/MMR緊急報告・前編 古墳に隠されし謎を暴け!!:2009/10/19(月) 22:43:39
 
 
 翌日、MMR一行は、異様な事例や奇怪な題材などを中心に研究している
 “妖怪ハンター”のアダ名を持った考古学者・・・ 稗田礼二郎(ひえだ・れいじろう)の元を訪れた。
 
 
     都内 某大学の研究室
 
 
稗田「なるほど・・・ そのような事が・・・」

 キバヤシ達は、黒いスーツに身を包んだ長髪の男性・・・ もとい、稗田礼二郎とテーブルを
 挟んで互いに向かい合わせになり、ソファーに座りながら取材を行っていた。

キバヤシ「稗田先生・・・ 我々はMMRを一度解散した後、『神の言葉』の正体を求めて
     世界中を巡り、 ・・・その結果、今話した通り、奴らがあの“ショッカー”と
     繋がっていた事を突き止めました」
稗田「ふむ・・・」

 キバヤシは稗田に対し、自分達がこれまでの調査で掴んだ『神の言葉』 ・・・もとい、
 ショッカーの活動、そして彼らがかつて稗田が現地に赴いて調査したと言われる遺跡
 “比留子古墳”を狙っていることを真剣な面もちで語っていた。
 稗田は、神妙な面もちで彼らの話に耳を傾ける。

キバヤシ「―――そして、かつて先生が研究に携わり、調査したと言う遺跡“比留子古墳”・・・
     理由は知りませんが、彼らはその古墳を狙っているらしいのです」
稗田「・・・・・・」

 稗田はキバヤシの言葉に、その表情に僅かに焦りの色を見せる。
 
 
キバヤシ「―――申した通り、我々は比留子古墳の事を先生の『古墳の呪的文様』の中で
     記させていた情報しか知りえません。
     ―――そして、あなたはその著書の執筆後に実際に比留子古墳に赴き、
     古墳に関する情報を研究ノートに残したと聞いています・・・
     先生も存じている通り、Dショッカーは非常に危険極まりない組織です・・・
     だからこそ、先生が比留子古墳で何を見たのか、教えていただきたいのです・・・」
稗田「――――比留子、古墳・・・」
タナカ「お願いします!! 比留子古墳には一体何が隠されているんですか!?」

 キバヤシの強い要望に対し、稗田は表情を曇らせたまま、その口を開く、だが・・・
 
 
稗田「――――もし、あなた達の言うように、神の言葉・・・ いや、Dショッカーが
   比留子古墳を狙っているのであれば・・・ 非常に恐ろしい事だ・・・
   しかし、比留子古墳に隠されていた“あれ”は、絶対に外には出してはいけない存在・・・
   どんな理由にしろ、果たして“あれ”の存在を公にするべきかどうか・・・」

 稗田はハッキリとこそ言わなかったが、発言内容、 そしてうつむいた顔から覗かせる
 彼の表情が『真実を語ることはできない』と言っていた。

タナカ「で、ですが・・・(ここまできて諦める訳には・・・)」
 タナカは、表情に僅かに絶望の色を浮かべながらも、その心をギリギリのところで引き留めようとする。

キバヤシ「稗田先生、お願いします!!!
     今は一刻たりとも無駄にはできないんです!!」
イケダ「教えて下さい、先生!!」

 キバヤシ達は稗田に頼み込むが・・・

稗田「・・・・・・・・・」

 ――――稗田は額から汗を流し、切羽詰まった様な険しい表情を浮かべ、
 何も喋ろうとはしていない。
 
 
 ――――稗田が険しい表情のまま一言も喋らなくなり、MMR一行も深い不安に包まれていき、
 重い空気が室内を包み、そのまま全員が無言の状態のまま、1分・・・ 10分と過ぎていき・・・

 ―――30分経過した、その時・・・
 
 
キバヤシ「・・・・・・・・・・・・」  (ガタッ)

 ―――あまりにも重い空気を切り払うかのように、キバヤシがソファーを立ち上がり、
 真剣な表情で、稗田に口を開いた。
 
 
キバヤシ「・・・・・・稗田先生、我々MMRは発足して以来、様々な要因によって人類に降りかかるやも知れぬ
     数多の破局を独自に調査することにより、様々な人達に危機意識を持ってもらう事を
     基本方針として活動を続けてきました。
     ――――しかし、今ここで何の手がかりも得ることが出来なければ・・・
     それこそ我々は突然訪れる破局を前に、何も出来ずにその運命に
     身を任せることになってしまうのです!!」
稗田「・・・・・・」

 キバヤシの表情と気迫は、先ほどの彼の"それ"を遥かに上回るものだった。
 それに対し、稗田の表情が、微妙に揺らぎ始める。
 稗田礼二郎――― 彼もかつて、多くの人間の生命を傷つけるやも知れぬ存在と関わっていた。
 そんな彼が、かつて関わった遺跡がきっかけで多くの命が危険に晒される事態を前に、
 見過ごす事ができるのか・・・ 彼の心は揺れ動いていた。

キバヤシ「お願いです、先生!! 我々に納得の行く調査をさせてください!!
     人類の運命は先生の決断一つにかかっているんです!!」
 
 
 
 ――――静寂が、数分続く。
 
 
 
キバヤシ「・・・・・・・・・」
ナワヤ「・・・・・・・・・」
タナカ「・・・・・・・・・」
イケダ「・・・・・・・・・」
トマル「・・・・・・・・・」
 
 
 キバヤシ達は稗田のほうを向き、汗を垂らしながら、稗田の答えを待ち続けた。
 
 
稗田「・・・・・・・・・」
 
 
 稗田は無言のままだったが、キバヤシ達は瞬き以外の一切の動作を行わず、稗田に目を向けている。
 
 
 ――――10分過ぎ・・・    ――――30分過ぎ・・・

稗田「・・・・・・」
 
 
 
 ――――そして、15分経過時点で、稗田はその口を開いた。
 
 
稗田「――――わかりました。ディバイン・ショッカーのような組織が動いている以上、
   ・・・・・・・・・今回ばかりはやむを得ないでしょう」
キバヤシ「!! ・・・ありがとうございます、先生!!」

 キバヤシ達は、歓喜の表情を浮かべ、稗田に感謝の言葉を述べた。
 稗田は近くのタオルで汗を拭うと、キバヤシ達に向き直り、話し始めた。

稗田「ノートを見せる前に、まず・・・
   あなた方は“擬似生命”と呼ばれる存在をご存知だろうか」
ナワヤ「“擬似生命”・・・?」

 聞きなれない単語に、一同は若干戸惑う。
 稗田は、なおも話を続ける。

稗田「―――擬似生命とは、この地球に最初の生命が誕生したと同時に、現れた存在・・・
   我々のような生命体に対し、相反する生命・・・ その名の通り“擬似生命体”と言うべき存在です」
キバヤシ「擬似、生命体・・・」
稗田「我々人類が属する生命系統に、原生動物から哺乳類まで存在するように、
   “やつら”にも系統樹がある。 ・・・そして、“やつら”の生命系統は
   本質的に、我々の生命系統と対立する邪悪なものなんだ。
   私は“擬似生命”と仮に呼んでいるが・・・
   やつらは基本的に伝説の中でしか知られておらず、古来より様々な名前で
   呼ばれていた・・・ 悪魔、妖怪、鬼・・・
   そして、古事記には“水蛭子(ひるこ)”という名でその姿を見せている」

キバヤシ「!? ヒルコですって!?」
タナカ「ちょっと待ってください、ヒルコって言ったら・・・」

 稗田が擬似生命の説明の中で出してきたたった一つの単語・・・ “ヒルコ
 その単語に、キバヤシ達は驚きを隠せなかった。

稗田「・・・そう、あなた方が言っている九州の史跡・比留子古墳」

 稗田はそのまま立ち上がると、研究室の本棚に向かい、
 その本棚の中から、一冊の古いノートを持ち出してきた。

稗田「かつて、私は装飾古墳について研究していた時期があった。
   その中で出版した「古墳の呪的文様」の読者から、一通の手紙が届いた事が始まりだった。
   手紙には差出人の名前の他、差出人の村に存在する古墳についての情報、そしてその古墳が
   その地方の妖怪伝説と密接な関係がある事などが記されていた。
   私はその古墳こそが自分の説を証明してくれるかも知れないと思い、
   差出人の住む村へ向かった・・・」
キバヤシ「・・・・・・」

 先程とは逆に、今度はキバヤシ達が稗田の話に聞き入ってしまっている。
 稗田は再びソファーに腰を下ろすと、ノートを捲りつつなおも話を続けた。

稗田「私は手紙を送ってくれた少年と共に、深夜に古墳に忍び込んだ。
   そして、古墳の中に存在していた、“やつら”が・・・」
タナカ「擬似生命、ですか・・・?」

 稗田の表情が、僅かに険しくなる。

稗田「ああ・・・ 奴ら・・・ “ヒルコ”は、かつて古代人によって古墳に封じ込められていた
   存在だったが、同行していた少年の父親が興味本位で古墳の扉を開けてしまい、
   外に出ようとしていたのだ・・・」
トマル「それが、比留子古墳の付近で噂された、怪物の正体だったんですね・・・」
稗田「その通りだ・・・ 私は少年と共に何とか逃れ、
   古墳の文様を消す事で、再びヒルコを封印する事に成功した。
   今では、古墳は密閉されて、中には入れないような設備になってるはずだが・・・」

キバヤシ「だが、Dショッカーがそのヒルコを狙っている・・・」
稗田「先も言ったとおり、ヒルコは古代に封印された擬似生命そのものだ・・・
   そして、その体には、地球の誕生と共に誕生し、日本ではアメノミナカヌシ・・・
   聖書ではエホバなど、あらゆる国の神話で世界最初の神と伝えられている、
   原始生命と擬似生命の先祖を生んだ巨大な超生命体から受け継がれた遺伝子が
   現在、この世界に存在するあらゆる生命、擬似生命より遥かに色濃く
   受け継がれているだろう・・・」
ナワヤ「それにDショッカーが目を付けたって訳か・・・ 全く、抜け目の無い連中だぜ・・・」
 
 
 
 
稗田「さて・・・ 私は先程、擬似生命に連なる存在・・・ ヒルコや妖怪は、基本的には
   伝説の中でしか知られていないと言ったが・・・ 現在はどうだろうか・・・」

 唐突に、稗田はキバヤシ達に質問を投げかけた。
 突然の質問にキバヤシ達は少し考え込み・・・ 僅かな間の後に問いへの答えを出した。

キバヤシ「――――妖怪軍団、災魔一族、オルグ、インフェルシア・・・
     既に幻想の存在になりつつあった存在が、この数年の間に
     次々と大規模な破壊活動や侵略を行っている・・・」

 キバヤシは、数年前に起きた、妖怪軍団のダラダラやハイネスデュークオルグのウラによる
 破壊活動、冥府門や冥府十神の出現などを脳裏で思い出しながら、稗田に告げた。

稗田「―――無論、裏の世界ではそういった存在との戦いが数世代にわたって続けられてただろうが、
   その戦いや存在が、表社会に知られたりする事は非常に稀だった・・・
   ・・・ここ数年、これだけ奴らが表立って行動しているのは単なる偶然では無いだろう」

 その言葉からそう時間が経たない内に、ナワヤら他のMMRメンバーも、
 稗田の問いに答えた。

イケダ「確か・・・ 半年前に、フランスのパリに怪物の大群が出現して、
    パリの市民が大量に虐殺された事件もありましたよね。
    気になって文献や調べたら、戦国時代を中心に日本でも似たような怪物が
    “幻魔”と呼ばれ、跳梁跋扈してたみたいです」

 イケダは、半年前にフランスの首都・パリに突如無数の異形の怪物が現れ、
 それから数週間の間、パリを中心に怪物たちが跳梁跋扈していた事件を振り返っていた。

稗田「文献・・・ 確か幻魔に関して詳しく取り扱っていたのは、
   民明書房の『新装版 戦国時代暗黒史』辺りだったな・・・」

タナカ「えぇ、後は・・・」
 
 
 
 
 
 ―――――そんな感じでMMR一同と稗田は暫く話していたが、やがて話が収束し始めていった。
 それを見計らったかのように、タナカはソファーから立ち上がり、キバヤシに声をかけた。

タナカ「・・・キバヤシさん!」

 そして、それの待っていたかのように、キバヤシはタナカに顔を向け、自身も立ち上がる。

キバヤシ「ああ、分かっている。
     奴らの目的が確定した以上、ここで留まっている訳にはいかないだろう」
イケダ「では・・・」
キバヤシ「九州の比留子の里の“比留子古墳”・・・ 奴らがそこに眠る擬似生命の遺伝子を
     手に入れる前に、俺達が先回りして阻止する!!

 キバヤシの言葉と共に、ナワヤ、イケダ、トマルも意を決した一転の曇りもない表情で
 ソファーから立ちあがった。
 
 
稗田「私も行こう。Dショッカーがヒルコを何の目的で狙っているのかは知らないが、
   かつて奴らに関わった一人の人間として、ここで見過ごすわけには行かない」

 そして稗田も立ち上がり、MMRの面々への同行を決意する。

トマル「!! ・・・ありがとうございます!!」
 
 
 
 ―――かつて彼らMMRは、多くの罪無き人々の生命を盾にした『神の言葉』の非道な策略により、
 組織の核心に迫る一歩手前で、その活動を停止することを余儀なくされた。
 ―――しかし、彼らに届いた大きな段ボール箱一杯に詰まった読者達の応援の手紙を
 受け取った彼らは、“あきらめない”事を選んだ。
 そしてMMRの活動が中止した後も、それぞれ独自の手段で調査を続けていたのだ。
 
 イケダは最先端の遺伝子技術と、それによって生み出される利益と弊害を。
 タナカは世界中に点在する、様々な古代の遺跡、そこに残された技術を。
 トマルは人間の体に眠っているジャンクDNA、そしてそれによって起きる人類の進化の可能性を。
 ナワヤは講談社に残り、一人の編集者として人間の心と精神の変換とその行く末を。
 そしてキバヤシは・・・ それらの技術を悪用し、地球の全ての国家、企業、自然、果ては
 人間個人の精神と心までも掌握しようとした組織『神の言葉』の目的と手段、
 その背後に存在する強大な存在の正体を・・・
 
 彼らは独自の力で調査を続け、自分なりにその答えを導き出し、今再び集結したのだ。
 それぞれの調査の結果を結び合わせ、導かれた『神の言葉』の背後に存在する真の邪悪・・・
 無限なる帝国 ディバイン・ショッカーに立ち向かう為に・・・
 
 
ナワヤ「フッ・・・ ようやくMMR活動再開ってか・・・」

 ナワヤは、その顔に笑みを浮かべた。
 かつて活動を停止したMMRが、今この瞬間、再び動き出そうとしていた。
 彼らが“あきらめない”事を選び続けた事によって・・・

キバヤシ「さあ・・・ 行くぞ!!」
 
 
 
                      ,ィ, (fー--─‐- 、、
.                     ,イ/〃        ヾ= 、
         _,,r-‐''"´ ^ `N /l/               `ヽ
        彡        N! l                   `、
   ,, -‐- ,,-彡       l ヽ                     l` ´ ``‐ 、
 彡´      |    ,,w,,wヽヽ              ,,      |      `ヽ‐‐-- 、
_彡          |  //レ/ハl/ハ\ヾー        _,, ,,r,,/lヾ    |         }    `‐、
ハl/   ,/ハlヾヾ,l、 /三f、,,_   _,ヾニ_ ____彡ノノノノノ_ヾヾ   | ,l、 、     l、_ ,、-‐、  |
/レ  /l,,_/__ヽ lヾ ヽモ-ヽl ´fモチ7ヽ={ r‐ィッヾ ヽ-r'´〒fデF`lェr‐、ハlヽヽヽ   l     ヽ |
 l`=l fモチ)_{´ヽl!l     :l     l ll !l  `┴ー/ソl⌒ッ`┴┴' }//l l、 ,,、ァtッヒヽ、rゥ _,,ェヒ‐ l,-、
 ヾ}弋_シl弋 ヽl    ヽ-    ヽl lゝ__,ノ |  ゞ___ノl/l / l  `~゙´  lァノl 、fモチ lヾ;|
  ヾl   `'  `''´lヽ  ──   /l\l        l、,      l_ノ 〈 _     l!ノ l、,    lソ
   }\  ̄ ̄ ,ィl \   ̄  / l  l    ___    /  ──   丿 ─‐    丿
  ,/\ \__// \ \___/ ,,-''\|\    _       /|\  -   / |、  `  / ,|、
-‐'   \_,,-‐'\  `ヽ、  ,,r'   /|  \       / .|  \__/  ,,rヽ‐-‐ '' / l`ヽ
   ,,-‐''       \  /\/\  / \.  \____/  /\    ,,-‐''  /\ ,/  l  ヽ
-‐''´         \/  }゙ _,,,‐''\   \        /   /l\‐''    /  `ヽ、_ l
              _,,-‐''    ヽ   \      /    / l  ''‐-、,/       `‐-、_
          _,,-‐''´        ヽ    /V<´     / l      `‐- 、,,_

    MMR、出動だ!!!
 
 
 
 
 
 その頃、大学から少し離れた所に建っている7階程度のビルの屋上に、眼鏡をかけた少年が立っていた。
 先日、講談社本社ビルに入って行ったキバヤシ達を雑踏の中から覗いていたあの少年である。

謎の少年「・・・・・・好〜きです、好〜きです、心から・・・ 愛していますよと・・・
     甘い言葉の裏には・・・ 一人暮らしの寂しさがあった・・・」

 少年は大学のキバヤシ達と稗田が話をしている研究室の窓のほうを覗きながら、
 先日同様、ヨーヨーに興じながら歌を口ずさんでいた。
 そして、その研究室から「MMR、出動だ!!!」と外に聞こえるほどの大声が聞こえた瞬間、
 少年は手に戻っていたヨーヨーを握りしめ・・・

謎の少年「・・・・・・ッッ」
 
 
 無表情のまま、それを粉々に握り潰した。
 
 
 

118 名前:新章/MMR緊急報告・前編 古墳に隠されし謎を暴け!!:2009/10/19(月) 22:44:34
○MMR一同→稗田礼二郎と会見し、事情を話して比留子古墳に眠っている存在が古代に封印された
 “擬似生命”だと知る。Dショッカーの野望を阻止するため、遺跡に向かう。
○稗田礼二郎→キバヤシ達の事情を知り、比留子古墳に眠る存在を彼らに教える。
 その後、彼らの比留子古墳行きに同行する意思表示を見せる。
?謎の少年→昨日に引き続きMMRの面々を監視している。

【今回の新規登場】
○稗田礼二郎(ひえだ・れいじろう) (妖怪ハンターシリーズ/稗田礼二郎のフィールド・ノートより)
元K大学教授の考古学者。民俗学や宗教学、古文書学などにも幅広い興味を示す。
異様な事例や奇怪な題材にばかり手を出すため、学会からは異端児扱いされている。
若い学生や一部のマスコミ等からは“妖怪ハンター”というアダ名も付けられている。
自らも怪奇事件に遭遇した事が多々あり、それゆえか手紙で呼ばれたりして全国を渡り歩き、
様々な事件に巻き込まれる。スキューバダイビングや裸眼立体視をできる事が作中で確認できる。
長身で、髪型は20年変わらず長髪。彼のゼミに参加した生徒曰く、容姿は沢田研二似らしい。



119 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/21(水) 21:25:02



     トアールホテル最上階


   レストランフロア  ギリシア料理コーナー    



 ・・・・・・一体、どうしてこのような事態が起こったのか。

 最初は騒然となり、次第に沈黙に包まれていったレストランの一角。
 僅か十数歩の位置、正面に立つ、眼鏡をかけた長躯長髪の、怪しい美しさを魅せる女性。
 その隣で、地面に顔をめり込ませ、倒れ伏している、沙織の護衛、辰巳徳丸。


ライダー「すみません。・・・正当防衛のつもりでしたが、あまり手加減できませんでした」

 辰巳を床にめり込ませた本人である、ライダーという名らしき長躯の女性は、
 長い髪をかきあげ、淡々とそう述べた。
 言葉こそ丁寧だが、その実、態度といえば全く悪びれるそぶりなど全くない。

 彼女は驚くべき事に、100kgを超える巨躯の辰巳の頭を片手で掴んだかと
思うと、まるでカルタでも投げるかの如き軽々しさで、辰巳の身体を、床に叩きつけたのだ。

 通常の女性・・・ ましてや、通常の人間の範囲を軽く逸脱した怪力。
 それを見せられた沙織、護衛の聖闘士、そして多くの外野の戦士達は共に、
剣呑とした空気から、今は肌を刺すような戦慄に包まれていた。 


邪武「てめぇ・・・!! どこの聖闘士だっ!!」

 聖闘士として、突如現れた【敵】から沙織・・・ アテナを守る為、
青銅聖闘士の一人邪武が、聖衣(クロス)を纏った姿で、強い闘気を放ちながら
ライダーと沙織の間に立ち塞がり、問う。

ライダー「セイント・・・?」

 はて、聞いたこともない。
 という顔で、長躯の女性、ライダーはその単語を反芻する。


ライダー「・・・・・・・・・ 聞きたいですか? 私の名前が」
 逆に、怪しい瞳で、邪武に対し、問いを返すライダー。

邪武「だからそう聞いてんだろうがっ!!」
 一方の邪武は、かなりヒートアップしているらしく、烈火の如く怒りを露にし、
確実に冷静を欠いている。

ライダー「そこにいらっしゃる女神様なら、私の事をよく存じている筈ですよ」

 皮肉的な笑みと共に、ライダーと呼ばれる女性は改めて沙織を見つめる。
 眼鏡を通して沙織だけに向けられる、明確な敵意、憎しみ。
 その鋭い刃物のような視線は、まるでその身を石に変えてしまいそうな・・・

沙織「私が・・・?」

 どこか・・・ 気が遠くなるほどの遥か昔、出会った事があるような気はするものの。
 それがいつなのか、どこなのか、そして自分の前に居る長躯の美しい女性が誰なのか、
女神アテナの全ての記憶を持っている訳ではない沙織には、その名は出てこない。


ライダー「そうですか、今の貴方に、私の名は判りませんか。
     ・・・・・・それとも、元より貴方に私などを記憶する気など、なかったかもしれませんね」

 フッ・・・ と、自虐的に哂うライダー。
 そして、一呼吸を置くと

ライダー「私の名は、メデューサ。
     貴方によって醜い怪物へと変えられた、ゴルゴン3姉妹の末妹です」

 ライダーは、告げた。
 悠久の時を超え出会った、あまりにも深い因縁を持つ女神に、その名を。


120 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/21(水) 21:26:10

○ライダー→辰巳を地面に叩き付け、敵意満々で詩織に自分の真名を告げる。
○城戸沙織→突然の事態に少なからず驚く。ライダーの真名はわからなかった。
○邪武→沙織を守る為、その前に立ち、ヒートしながらライダーと対峙。

【今回の新規登場】
○ライダー/メデューサ(Fateシリーズ)
第5次聖杯戦争に召喚された、騎兵(ライダー)の英霊。女性。
その名の通り高い騎乗能力と機動力を持つ上に、豊富な宝具を用いる。
通常時は魔眼封じの眼鏡をかけ、石化の眼を封じている。
戦闘時は常に目隠しを装着しており、鎖鎌に似た短剣を装備している。
その妖艶な美貌と、それに似つかわしくない意外な性格。長身で女神にも
例えられる絶世の美女だが、本人の美しさの基準は「小さくて可愛いこと」
であるため、自分の長身にコンプレックスを持っている。
その姿形から、慎二からは【デンチュー】などと形容された。
正体はギリシャ神話に登場するゴルゴン3姉妹の末妹・メドゥーサ。
石化の魔眼【キュベレイ】を持ち、【自己封印・暗黒神殿(ブレーカー・ゴルゴーン)】
【他者封印・鮮血神殿(ブラッドフォート・アンドロメダ)】の2大結界と、
【騎英の手綱(ベルレフォーン)】という3つの宝具を持ち、ペガサスを召喚できる。
常にマスターである桜を思いやり、彼女の運命を案じている。

○城戸沙織/戦いの女神アテナ(聖闘士星矢シリーズ)
数百年に一度、地上に邪悪が蔓延る時現れるとされる戦いの女神アテナの化身。
地上の平和を守り、地上に生きとし生けるすべての生命を守る使命を持つ。
現代における冥王ハーデスの復活を予期し、13年前のアテナ神殿に人の肉体を得て降臨。
グラード財団総帥・城戸光政の孫娘として育てられ、現在ではグラード財団の実質的な支配者。
幼少時は星矢達を鞭で殴り続けたり馬代わりに乗り回すなど自己中心的且つ破綻した性格の
持ち主だったが、アテナとしての覚醒後は気高く優しき、正に女神と呼べる人格者となり、
聖闘士達から絶大な愛と信頼を寄せられている。黄金聖闘士をも遥かに上回る小宇宙を持つが
攻撃に使う事はほとんどなく、愛と安らぎに満ち、瀕死の聖闘士たちを甦らせる事が多かった。
天闘士戦の後、記憶を失った星矢と再会。
今では記憶を取り戻した星矢と共に別荘で暮らしている


○一角獣星座(ユニコーン)の邪武(聖闘士星矢シリーズ)
一角獣星座(ユニコーン)の聖衣を纏う、青銅聖闘士の一人。
幼い時から沙織に恋心を抱き、自ら進んで馬になり鞭打たれたほど。
沙織に対して反発的な態度を取っていた星矢とは、何かと衝突していた。
性格はその星矢と同様の熱血漢。コロッセオで一輝に倒された後、修行地の
アルジェリアで再び修行し直し、サガの乱の際からアテナの元へ駆けつけている。
ハーデス軍との戦いでは復活した過去の白銀聖闘士と思われる亡霊を一蹴し、
天界戦でもシャイナの部下として選抜された。星矢達以外の青銅聖闘士の中では
実力は随一であり、リーダー格である。

○辰巳徳丸(聖闘士星矢シリーズ)
城戸光政の時代から城戸家に仕える執事。城戸家への忠誠心ゆえに、
当初は反抗的な星矢達に対し冷酷で、日常的にリンチを加えていた。
しかし成長した星矢に壁にめり込む一撃を喰らい、そして星矢達が聖闘士の宿命を
受け入れ沙織の元で戦うようになってからは互いの蟠りも氷解し、素直でないながら
も彼等の活躍を支えるようになった。剣道三段の腕前であり、雑兵を一人倒したことがある

121 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/21(水) 21:31:47

      時を少し戻し

    ホテル・トアール  レストランフロア 入り口


桜「うわぁ・・・ すごい」
 ただでさえ一般のホテルより一回り巨大なホテル・トアール。
 そんなホテルの1階層分を丸々全部使ったレストランフロアに、桜は目を丸くしていた。

ライダー「確かに、これだけのスケールは、他に類を見ませんね」
 隣でそんな感想を添えるライダーだが、桜と比べて落ち着いた風である。


桜「先輩とアーチャーさんは厨房よね。
  ・・・はぁ、私も先輩と一緒に料理したかったなぁ・・・
  私、なんだかいつもこういう時いいの引かないから。・・・もしかして私、ラック値最低かも」

 いつものように、桜の笑顔にブルーさが蓄積されていく。

ライダー「・・・凛もここ一番でハズレくじを引いていましたから、そう気にする事も無いでしょう」
 ライダーは、少し困った顔をしながら、なんとか思いついたフォローを入れる。
 しかしその凛自体、桜ほど厨房にこだわっていたわけではないのを桜も知っているので、
 実質フォローとして全く意味が無い。

桜「・・・・・・ フォローありがとう、ライダー。 ・・・あ」
 そうこうやっている内に、桜の視界に、見知った存在が入ってきた。

桜「おはようございます。姉さん」
 そう、桜の姉、冬木のレッドデビルこと、遠坂凛である。

凛「・・・おはよう、桜」
 相変わらず、凛の寝起きの顔・・・ 目つきはひどいもんである。
 ひょっとして、その表情のまま部屋からここまでズンズン歩いていたのだろうか?

凛「・・・私は紅茶とトーストでいいわ。朝って食欲わかないから」
桜「・・・・・・・・・」

 なんと勿体無いというか、欲がないというか。
 これだけ各国の料理がパレードのように展開している状態を見て、それで尚。
 それらを全部無視して自分のペースで動く、その唯我独尊たる姿には、敬服してしまう。

凛「・・・私はそこら辺の席を確保しとくから、適当に持ってきて」
 と言って、実に自然に、トレイを実の妹に渡す凛。

桜「・・・・・・・・・・・」
 うふふふ、しかもナチュラルに妹を下僕(パシリ)にするんですね姉さん。
 もう、嬉しすぎて私の朝ごはんは姉さんにしちゃおうかなぁ、だなんて。
 あ、クゥクゥおなかがすきました。


ライダー「・・・・・・・・・・・・・(((ガクガク、ブルブル・・・・・・・)))」
 そんな桜の黒い波動にあてられ、ライダーは大きな体を小刻みに震わせている。



  ◇    ◇



     一方

   五界ヒーローズご一行様席


ケン「どーしたんだよリュウ? そんなキョロキョロして」
 でかい骨付きチキンをマンガのようにかぶりつきながら、ケンが尋ねる。

リュウ「いや・・・ 今、殺意の波動に近いものを感じたんだが・・・」
ワルキューレ「私も今、とても邪悪な波動を感じた気が・・・」

モリガン「ここには私以外にも何人か魔王が招待されてるみたいだし、それじゃない?」

アーサー「なるほど。しかしこれだけの邪悪な波動を感じさせる魔王とは只者じゃないな」
デミトリ「ふむ、面白い・・・ 一度その力の程を試してみたいものだ」

 不敵な顔で笑いつつ肉を頬張るアーサーと、邪悪に微笑むデミトリ。
 その邪悪な波動の主が、まさか一人の少女が発したものとはまあ思うまい。



  ◇    ◇



 と、離れた場所の各世界のヒーロー達に、魔王と誤解されているとは知る由もなく・・・

桜「ええと・・・ 先輩が料理をしてる和食コーナーは・・・ あ、あった」
 先ほどの黒い波動はどこへやら。
 当の桜本人は、すっかり通常に戻っていた、

 どうやら、先輩の担当している和食コーナーに行って、どれが先輩の料理なのか弟子として
当ててみよう。という腹づもりであるようだ。

桜「ライダーも、一緒に回らない?」
 くるりと振り返り、ライダーを誘う桜だったが

ライダー「とても魅力的なお誘いですが、私にも是非巡ってみたいコーナーがありまして」

 意外な事に、ライダーは珍しく、桜の誘いを丁重に断った。

ライダー「私としても、このようなチャンスはなかなかないでしょうから。
     そこを見終わってから、改めて桜と合流したいと思います」

桜「他に・・・? ・・・・・・あ」
 案内板に書かれている、各国の料理コーナーの数々。
 ライダーの視線の先を追うと、そこの文字は、“ギリシア料理コーナー”となっている。

 なるほど、ライダーは元々ギリシアの英霊だ。
 いくら先輩が料理の鉄人とはいえ、それは和食をメインとした話。
 レパートリーは私も姉さんも舌を巻くほどだけど、専門的な海外料理まではさすがに知識が及ばない。

 衛宮邸では決して並ぶ事が無い、故郷の食文化の歴史を見る事が出来るまたとない
機会ともなれば、先輩の料理のオンパレードより何より興味がいくのは当然の話である。


桜「ライダーの国の料理かぁ・・・ 私も興味あるなあ」
 ライダーのいた国、ギリシア。
 その国の料理は、どういう文化を歩み、歴史を重ねてきたのか。


イリヤ「でも、ライダーの居た時代って千年以上前の神の園や孤島でしょ?
    今のギリシア料理とじゃ、歴史が開きすぎて懐かしいとか以前にまったく別物だと思うけど」


桜「わっ!? い、イリヤさん・・・!?」
 桜とライダーの間から
 “あ、私もシロウの所がいいな〜”と付け足しつつ、ぴょいんと出てくる形で登場するイリヤ。


ライダー「・・・確かに神話の時代と今では大きく違うでしょうね。
     しかしそれはそれで、長い歴史を経て、どう変わったかという興味が沸いてくるものです」

 感慨深そうに、ライダーは穏やかにそう言った。

イリヤ「ふ〜〜ん・・・ そんなものなのかな」
桜「多分、そうなんですよ」

 そう、ライダーの言うとおり
 いくら時代が流れても、故郷というのは特別な意味があるのだと思う。

 だとするなら、他のサーヴァントの皆さんも、アイルランド料理とか、地中海料理とか
 セイバーさんなら、イギリス料理コーナーとか・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・大丈夫かな? イギリス料理のコックさん。


桜「それなら、後で私の方からライダーの方に行こうかな」

ライダー「サクラ・・・?」

桜「だって、私もライダーの故郷の食べ物がどんなのか興味あるし」

凛「いいじゃない桜。ライダー懐かしの味を食べ覚えついでに、厨房に乗り込んで
  コックからレシピぶん取っちゃいなさいよ。」

 と、ちょっと離れた席から、姉の声。

桜「ね、姉さん・・・」
 思わず苦笑する桜。
 うん、でも、あとでコックさんにはレシピを聞いておこう。
 それで、今度は自分で作って、ライダーに食べさせてあげてみたい。


ライダー「わかりました。では、お待ちしています」
 そう言って、ライダーは一人、ギリシア料理コーナーへと向かうのであった・・・



122 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/21(水) 21:32:36
○間桐桜→ライダーと別行動。和食コーナーに、士郎の料理当てへ
○遠坂凛→席の確保だけして、桜をナチュラルにパシる。
○イリヤスフィール・フォン・アインツベルン→妖精のようにどこからともなく登場。
○ライダー→ギリシア料理コーナーへ
○五界ヒーローズ→桜の黒の波動をどこかの魔王のものと勘違い。ラスボスという意味ではあながち
         間違っていない。


【今回の新規登場】
○遠坂凛(Fateシリーズ)
身長:159cm 体重:47kg スリーサイズ:B77/W57/H80(cm)6月10日生。A型。イメージカラーは赤。
趣味は宝石いじりと士郎いじめ。逆に苦手は突発的なアクシデントと電子機器全般。それは携帯も
持たない上にウォシュレットも知らなかったほど。
士郎と同じ穂群原学園(2年A組)に通う魔術師。アーチャーのマスター。亡き父、遠坂時臣の遺志を
継いで聖杯戦争に臨んだ。家訓「常に優雅たれ」を実践する。学校では男女問わず絶大な人気を誇る
美少女であり、優等生を演じているが、その本性は士郎曰く【赤い悪魔】。アベレージ・ワンと
呼ばれる五大元素使いの魔術師として高い実力を誇るも、肝心な所で凡ミスをする悪癖があり、
それは先祖代々のもので、遺伝的な呪いと言っていい代物らしい。相手を指差すことで人を呪う
という北欧の魔術・ガンド撃ちを得意とする。料理の腕前は少なくとも得意の中華料理に関してなら
士郎より上。寝起きはかなり悪い。遠坂の魔術の性質上、高価な宝石を多用する必要があるため、
見た目とは裏腹にお金に細かい。士郎と共同戦線を張り、彼の魔術を指導するため衛宮邸に居候するが、
家主の士郎よりも権力を振るう。プライドの高さゆえに誤魔化しているが、実はかなりお人好しな性格。


○間桐桜/遠坂桜(Fateシリーズ)
身長:156cm 体重:46kg スリーサイズ:B85/W56/H87(cm)12月24日生。AB型。胸の大きさが武器。
イメージカラーは桜色。特技は家事全般とマッサージ。甘いものと怪談が好きで、体育と体重計が苦手。
間桐慎二の義妹。士郎の1年後輩で、妹の様な存在。弓道部主将。洋食に関しては師である士郎より上。
士郎に強く恋慕している。ライダーの正式なマスターで、元は遠坂家の魔術師で遠坂凛の実妹。
幼い頃父時臣により、マキリ(間桐)の家に養女として放り込まれ、それが彼女の地獄の始まりとなる。
それから長年に渡り、身体に合わない間桐の魔術を無理矢理馴染ませるべく、蟲による強引で陰惨な
肉体改造を受け続けてきた為、元は凛と同じだった髪と瞳の色が一変してしまう程に体質が変貌。
吸血衝動持ちという吸血鬼じみた体質だった。聖杯戦争では間桐家の虐待と周囲の無関心への秘めた
復讐心と士郎に対する独占欲を利用され、聖杯から桜に侵入していた【この世全ての悪(アンリマユ)】
との契約を受け入れ、人を喰らい強大な魔力を得る禍々しい姿(俗称【黒桜】)となり、多くの人間を
捕食。それはアンリマユ自体の意思でもあり、自身が暴力や殺戮に酔っていた側面でもあった。
士郎と凛が命を懸け彼女を救ったことで彼女は全てから解放され、現在は精神的に強く成長を見せ、
己の罪の全てを受け入れ日々を生きている。同時に性格もしたたかさや腹黒さを時折出すようになり、
かつて自分を虐待していた兄、慎二との力関係は完全に逆転。姉同様、怒らせると怖すぎる人物。
戦闘時は本来の自分の魔術である「虚数」属性の魔術を使用、しかし使用時には自分の負の部分を
むき出しにする必要があり、それは彼女にとって最大の苦悶である。余談ではあるが、3人目のメイン
ヒロインなのに人気投票第1回6位、第2回5位と3人の中で人気が低く、彼女のサーヴァントのライダー
にすら下克上されている。ちなみに、一番多く士郎を「道場送り」した人物でもある。


○イリヤスフィール・フォン・アインツベルン(Fateシリーズ)
身長:133cm 体重:34kg スリーサイズ:B61/W47/H62(cm)11月20日生。B型
イメージカラーは銀。好きなものは雪。苦手なものは寒い所と猫。聖杯戦争に参加したマスターの一人
で、バーサーカーのマスター。愛称イリヤ。マスターとして最強の存在。聖杯戦争の為だけに育てられた
為、性格はどこか歪んでおり、素直かつ無邪気だが、妖艶さと狡猾さ、残虐性をも垣間見せ、その様は
雪の精を思わせる。士郎を【お兄ちゃん】と呼び慕う。衛宮切嗣とアインツベルンのアイリスフィール
との間に生まれた実娘。士郎にとっては血の繋がらない姉にあたる。母のアイリスフィールはホムン
クルスであり、彼女自身もまたそうである。アイリスフィールの中にいる時からアインツベルンより
様々な調整を施されており、このせいで成長が二次性徴前で止まってしまった。士郎より年上である
にも関わらず、外見が幼いのはこのため。自分と母を捨てた切嗣を憎んでいる。実はその肉体は聖杯で
あり、同じく聖杯である桜をどことなく苦手としている。アインツベルンから失われた第三魔法
【魂の物質化】、“天の杯(ヘブンズフィール)”に至るための器でもある。
ちなみに、【タイガー道場】の弟子一号【ロリブルマ】であるB(ブルマ)イリヤは、別の平行世界の
同一存在のイリヤであり、こっちの本物のイリヤとは厳密には別人。


123 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/21(水) 21:55:18

   レストランフロア  ギリシア料理コーナー



ライダー「・・・・・・・・・・・・・」

 ライダーの辿り着いたギリシア料理コーナーは、一目でそうと分かるほど分かりやすかった。

 コーナーの入り口にはギリシア語の表記で大きく【タベルナ】と表記されており、隣に日本語で
 “食べるなという意味ではありません。ギリシア語で食堂の意味です”
 と、丁寧なのかギャグなのかわからない説明書きがある。

 装飾として、テーブル上のあちこちに小さな柱や、神々を象った石膏像などがある。
 ギリシア神話のオリンポスや、神々の園、そして神々自身をイメージしたものなのだろう。

 少々複雑に思うところもあるが、装飾自体は目にやかましくなく、なかなかに美しい。
 しかし、これを装飾した担当員は、まさか神話に出て来た本物が食器を持ってやって来るとは
思わなかったろう。そう思うと、少しだけ愉快だ。


ライダー「しかし、これは、また・・・」

 懐かしい感覚。
 柱に、石膏像。
 まるで、姉さま達といたあの孤島のようで・・・ ・・・・・・・・・


ライダー「・・・・・・・・・(ブルブルッ)」
 懐かしく尊い、大切な思い出に、思わず泣けて来そうになった。・・・多分に、違う意味で。

ライダー「・・・・・・気を取り直しますか」
 独り言を漏らしつつ、料理が並ぶ中心へと向かう。

 それぞれ料理が盛られた大型トレイの前には、フェタチーズ、ギロピタ、ムサカ
 ・・・といった料理名と、簡単な説明が書かれた型紙が立ててあった。

ライダー「では、これは・・・」
 一つだけ名札が倒れた料理があり、ライダーは手を伸ばそうとする。

 そこに

店員?「それはタラモサラタといいまして、塩漬けの魚卵をほぐしてマッシュポテト、
     オリーブオイル、レモン汁、刻んだタマネギを混ぜたものでございます」

 ・・・と、

 テーブルの僅か向こうから、店員らしき男の声。

 ギリシャではコイやボラの卵(タラマ)を用いるのですが、ここにある品のように日本ではタラコ
で代用することが多いですね。鳥獣の肉に加え、魚肉の消費も禁じられる四旬節の期間中によく食べら
れる前菜です・・・ と、長々とした追加説明付きで。


ライダー「ほう・・・ なるほど。では、これは?」

????「それはムサカです。ナスと挽き肉、油で揚げたジャガイモを交互に重ね、ベシャメル
     ソースをかけてオーブンで焼いたものでございます。トルコ料理に由来し、トルコでは
     ジャガイモが入らないものを食べます。このようにベシャメルソースをかけるようになった
     のは20世紀初めからですね」

ライダー「ふむ。ふむ・・・」
 読書の時と同じように料理に集中しているライダーは、店員の説明に小さく頷いている。

????「ちなみにこちらの串焼きがスーヴラキ。こちらのツァジキを付けて食べるのが通で、
     現地では鉄道の売店や車内販売でも一般的なファーストフードでございます。
     デザートにはこちらの“ヴァクラヴァヴァクラヴァ”などがオススメですよ」

 店員の男は料理の事に詳しく、ライダーの知りたい内容以上のことを教えてくれた。

ライダー「なるほど・・・ 大変興味深い情報でした」
????「それはそれは、どういたしまして」

ライダー「ありがとうございました。では、私はこれで・・・」
 一礼し、立ち去るフリをするライダーだったが

????「おーい、待ちやがれ。・・・っつーかお前なぁ、いい加減気づけって」

 急に粗暴な口の聞き方になった店員に、初めて目線を上げるライダー。

 そこには

ランサー「よぅ」
 店員の格好をした、槍兵の英霊。ランサーがいた。

ライダー「・・・・・・一応聞いておきましょうか、何をやっているんです? ランサー」
 槍兵の登場にも驚きを見せず、ライダーは冷静に応対を始めた。

ランサー「おう。人手が足らねーってんで、ちとスタッフのバイトをな」

ライダー「・・・・・・・・・・・」
 ・・・なるほど。考えてみれば、客が極端に増えた時に足りなくなるのはコックだけではない、か。

ライダー「・・・・・・相変わらず一人ハローワークですね」

ランサー「おいおい。俺達ぁ英霊だぜ? 困ってる奴がいたら助けるのが正しい姿だろ?」
ライダー「それは給金を貰わない人の台詞だと思いますが」

 ランサーの言い口に、ライダーは即座に指摘(ツッコミ)を入れる。

ランサー「ありゃ、ツッコまれちまったか」
 しかしランサーは、心底おかしそうに笑い飛ばした。
 

ランサー「しっかし、つれないねぇお前さんも。同じサーヴァント同士だってのに」
 
ライダー「こちらとしては単純に、故郷の料理が時代と共にどう変化していたかを確かめに来たので、
     余計な時間と面倒が起こる可能性を考え敢えて無視していたのです」

 ライダーの目は、“それぐらい気付けば良さそうなものを、空気を読め”と、氷の刃のような
視線を向けたのだが

ランサー「おーおー、そりゃいけずだこと」

 言い終わるや否や、ふあ〜〜 と。大きくあくび一発。
 ライダーの視線は豪快に無視・・・ ではなく、気付きさえしていないらしい。
 ・・・なるほど。こういう所に鈍感でなければ、あれほど多くの女性を敵にはしないか。


ランサー「けどよ。料理の説明は大したモンだっただろ?」
 胸を張るランサー。

ライダー「ええ、そうですね。大変興味深かったですよ」
ランサー「だろ?」

 さらに得意気になるランサーだが

ライダー「メモを片手に隠しての説明でなければ、もっとよかったんですが」
ランサー「ぐはっ・・・!?」

 メモがばれるとは思っていなかったのか、ランサーは盛大に驚く。

ランサー「(・・・・・こいつ、マジで目が頭の上にでもあるんじゃねえのか?)」
  とか何とか思いながら。

ランサー「・・・じゃ、オレは別んトコ行ってくるわ、じゃあな」
 手をプラプラ振りながら、ばつの悪くなったランサーは、とっとと退散する。


ライダー「・・・・・・さて、まずはタラモサラタ、から試してみますか・・・」
 邪魔者がいなくなった所で、ライダーは改めて、ギリシア料理のトレイへと手を伸ばし始めた。



  ◇    ◇



   ついでに

  ランサー視点  その直後



ランサー「やーれやれ、気が強すぎっつうか、どーも毒が強えーんだよなアイツ」
 などと、ナンパの対象外であるライダーの事でボヤき始めていると


バゼット「動きなさい、この、この・・・!! ・・・・・・・・死ねぇ!!!

      (ドガァンッッ!!!)

 よ〜〜く聞き覚えのある物騒な声と、さらに物騒な事が起こったのであろう音。


ランサー「・・・・・・・・・・・・はぁ」
 溜息を一回して、改めてランサーは音のした方向へ向かう。



  ◇    ◇



    第3ドリンクコーナー


 1階分のフロアをまるまる使うレストランともなれば、ドリンクコーナーも一つでは足りない。
 幾つもあるうちの一つ、第3ドリンクコーナーは、最もギリシア料理コーナーと近い位置だ。

 そこの真ん中に、一人。
 オレンジジュースまみれになっている女性が・・・

ランサー「・・・・・・・・何してんだよ」
 思いっきり呆れた風で、その女性に一声かけると

バゼット「あ・・・ ランサー・・・?」
 彼の元マスター、バゼット・フラガ・マクレミッツは、ランサーと同じ男物の店員服を、びっしょ
びしょにした濡れ鼠の姿のまま、ランサーの方を振り向く。

 バゼットもまた、ランサーの後から付いてくる形で、少々強引に同じゲストスタッフとして参加した
のだが、レストランの開店から、彼女の起こした何かしらのトラブルはこれでしめて5回目になる。


ランサー「それで今回は、どのようなトラブルでいらっしゃいやがりますか?」
 少し引きつった笑顔で、ランサーは丁寧と怒りの混ざった言葉で問いかける。

バゼット「あの・・・ その、ですね。私に落ち度は無いんです。
     いきなりこのジュースを出す機械が動かなくなってですね。それで・・・」

ランサー「・・・・・・・・・ああ、もういいや。大体分かった」

 というか、現状とさっきの声と音を照らし合わせれば想像も付く。

 未だにジュースを噴き出してる機械は、明らかに人為的な破壊行為で鉄クズになっている。
 ・・・すげぇな。拳の形にめりこんでやんの。拳何で出来てんだ、こいつ。

ランサー「お前なあ、ドリンクバーが動かなくなったら、まず他の店員とか店長に相談するだろ?
     っつうか、殴って動かそうとするのは百歩譲ってまだいいとしてよ。全力パンチは・・・」

 どこから突っ込んで言いか、という状況だったが、ランサーは一応元マスターに注意をする。

バゼット「全力? 失礼な! あの程度が私の全力だなどと、侮辱するつもりですかランサー!!」

ランサー「・・・・・・・・・」
 うわー、あの惨状でまだ手加減してたのかよ。
 ってことは、全力で殴ったら機械を貫通して壁までイッてたってことか?

ランサー「なんつーか、もう人間じゃねえなお前。ホントはサーヴァントじゃねえの?」
バゼット「なっ・・・!?」

 ランサーがそう、わりと本気の混じった冗談を飛ばすと

カレン「そうね。だとするとクラスは拳闘兵(グラップラー)といったところかしら?」

ランサー&バゼット「「!!!?」」

 どこからともなく、両者共にとんでもなく苦手とする、極悪シスターが登場した。


バゼット「な、何の用ですか?」

カレン「何の用もなにも・・・ 他の客と同じですよ? 喉が渇いたのでジュースでもと・・・
    尤も、ドリンクバーとパンチングマシーンの区別も付かないダメットさんに目の前で破壊
    されてしまったのだけれど」

 空のグラスを見せつつ、究極に罵倒した表情でクスクスと笑うカレン。

バゼット「うぐ・・・・・」
 グゥのねも出ないダメット・・・ いや、バゼット。

カレン「常識のなさでは隣の古代出身の駄犬以下ね。まるでゴリラのよう。・・・ポルカミゼーリア(ぼそ」

バゼット「うぐ・・・ うぐぐぐ・・・・」
 身長の高いはずのバゼットがどんどん小さくなって、不思議な事にカレンより小さく見える。
 しかも顔を見ると、少し涙目だった。

ランサー「ああハイハイ。ジュース飲みたかった所を破壊されてムカついてんのはわかったから。
     あんまりイジめないでやってくれる? ちなみにジュースはあっちにもあるから」

 ランサーはカレンの肩を掴んで、その“あっち”方向へ向けて軽く押す。

カレン「・・・・・・そうね、これ以上からかってもつまらなさそうだし、私も教会の人達とのお話で忙しい
    から、ここまでにしておこうかしら」
 
 そういうと、カレンは驚くほどあっさりと退場してくれた。
 どうやら最初から、軽くおちょくることが出来ればそれでよかったらしい。

 ・・・ただ、“何とかゲンカは狗も食わないと言いますしね”という最後の言葉だけははっきり
聞こえるように言い放っていきやがったが。


ランサー「・・・・・・や〜れやれ。さて、と」

 カレンの姿が人の森の中に消えるのを見届けると、ランサーはバゼットの方に向き直り

ランサー「お〜い、いつまでもびしょびしょのままじゃ風邪引くぜ。ホラ、更衣室更衣室」
バゼット「えっ? あ・・・ だ、大丈夫です! 一人で行きます!!」

 バゼットは少し頬を紅くして、

ランサー「なに恥ずかしがってんだ? ま、遠慮すんなって」

 さすがに力比べで英霊には勝てないのか、バゼットは抵抗しつつも、ズルズルと引きずられていく。

バゼット「あ、ああああああぁぁ〜〜〜・・・・・」

 そうしてランサーとバゼットは、スタッフルームの中へと消えていったのだった。


124 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/21(水) 21:56:06

○ライダー→ランサーとの雑談の後、ゆっくり料理を選ぶ
○ランサー→店員の方でヘルプとして働いていた。
○バゼット・フラガ・マクレミッツ→ランサーと同じくヘルプ店員として働いていたが、やはりダメット
                さんぶりを発揮。
○カレン・オルテンシア→バゼットを毒舌で軽く攻撃し、退場


【今回の新規登場】
○ランサー/クー・フーリン(Fateシリーズ)
身長:185cm 体重:70kg。イメージカラーは青。狗(いぬ)と言われると激怒する。
好きなものは気の強い女と無茶な約束。苦手なものは回りくどい方針、裏切り、運任せのゲーム。
特技は窮地における生存と帰還。属性は秩序・中庸。槍兵(ランサー)の英霊。高度な白兵戦の技量と、
サーヴァントでも1、2を争うほどの高い敏捷性を備え、必中必殺の紅い魔槍をもつ。根は実直で、
口は悪いが己の信念と忠義を重んじる英霊らしい英霊。漢らしい行動やさっぱりとした気質でファン
からは兄貴と呼ばれる。一方で、いざ戦うとなれば実の息子さえ殺す程の冷淡さも持つ。聖杯戦争を
目撃した士郎を殺そうとした事もあったが、総合で士郎を「道場送り」にしたのが一回だけなので、
Bイリヤからは「甲斐性無し」といわれている。また、アーチャーとは犬猿の仲。正体はケルト神話に
おける大英雄、アイルランドの光の皇子。クー・フーリン。死力を尽くした戦いを求めるものの、なか
なかその願いが叶う局面に恵まれない。元のマスターはバゼットだが、騙し討ちにより言峰にマスター権
が渡り、更に現在はカレンへと移っている。宝具は、因果を逆転し“敵の心臓に命中する”という事実を
作った後に攻撃し、投擲武器としても絶大な威力を誇る【刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)】。魔術にも
秀で、18の原初のルーンを習得しているが、直接的な戦闘を好む為、使用することは稀である。聖杯戦争
後は派手なアロハシャツを私服に、フリーターとしてあちこちでバイトに勤しみ釣りを楽しんでいる。
バゼットにベタ惚れされているが、ランサーが軟派で意固地であるが故か、なかなか進展しない。


○バゼット・フラガ・マクレミッツ (Fateシリーズ)
魔術協会所属の【封印指定】執行者。アイルランドの古いルーン魔術の大家「フラガ」の出身。
男物のスーツで身を固めている男装の麗人。生真面目だが融通が利かない性格。クールを装っているが
かなりの短気で、ちょっとした我慢が出来ない。また人生経験が偏っているためか、言峰、ランサー、
アヴェンジャー、士郎と、関わった男性に次々と想いを寄せる惚れっぽい一面も。魔術師としては優秀で
キビキビと果断な立ち振る舞いをするが、女性として、人間として(特に社会人として)の「弱さ」も
強く、ファンからは【ダメットさん】の愛称で親しまれている。【伝承保菌者(ゴッズホルダー)】の
異名を持ち、人間でありながら現存する宝具、【斬り抉る戦神の剣(フラガラック)】を有す。戦闘に
特化した武闘派魔術師であり、人間単体としての性能が非常に高い。素手での戦闘を好み戦闘時には
硬化のルーンを刻んだ手袋をはめ、80km/hのパンチを繰り出す(プロボクサーは40km/h程度)。
サーヴァント・アヴェンジャーの性能の低さもあって、マスターが戦いサーヴァントはサポートをする
という戦闘スタイル。トラぶる花札道中記EXではアームレスリングで600万円も稼いだほどの豪腕。
物語の最後には、アヴェンジャーに別れを告げ、繰り返しの4日間から5日目へと走っていった。
元ランサーのマスター、言峰の裏切りよって左腕ごとマスター権を奪われ、今はカレンからなんとか
ランサーを取り戻そうと試行錯誤中。今の彼女の左腕はアヴェンジャーの変じた残滓である。
ランサーにベタ惚れしているが、彼女自身かなりの恋愛不器用なため、なかなか進展しない。


○カレン・オルテンシア (Fateシリーズ)
寡黙だが毒舌。死亡した言峰綺礼の代わりに「教会」から監督者として派遣され、現在は彼に代わって
ランサーとギルガメッシュを従えている。「男性を拘束する」という特性を持つ礼装「マグダラの聖骸布」
を持つ。あくまでも拘束するだけであってこれ自体に攻撃力は皆無であり、また強度もさほど強くない
ため相手によっては拘束を無効化し、破壊することが可能。性格の悪さは折り紙付でサディストの一面が
ある。手厳しくなぶる口調とさらりと吐き出す問題発言には、暴君ギルガメッシュでさえ正面から逆ら
おうとせず逃げに回っているほどである。繰り返しの4日間の中に存在し得ない言峰綺礼の位置に自分の
存在を滑り込ませ侵入し、士郎達と出会った。『被虐霊媒体質』といわれる、周囲の霊障をその身で
体現するという先天的な能力を持ち、そのため教会の悪魔祓いが悪魔を探知する時に使われていた。
そのため、彼女は常に生傷が絶えず、片目はほとんど見えず、走ることもできず、味覚も利かなくなって
いる(極端な味の物を好むのはこのため)。しかし、それらの事全てをあるがままに受け入れている。
繰り返しの四日の終末には、『天の逆月』に向かう衛宮士郎(アヴェンジャー)に付き添った。
言峰綺礼の実の娘であると推測される。姓の「オルテンシア」はあじさいの意味で、名前はおそらく
「可憐」から。士郎を「駄犬」呼ばわりして虐めているがそれは愛情の裏返しで彼に想いを寄せている。



125 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/21(水) 22:12:04



    ギリシア料理コーナー付近  自由席



 ギリシア料理コーナーのトレイに並んでいた料理の数々を、少量ずつ粗方更に盛ると
 その近くにあったカウンタータイプの自由席で、たまたま空いている一席を見つけた。

 早速その席に腰を下ろすと、ライダーは、少量ずつよそったギリシア料理の試食を始めた。
 まずは、タラモサラタから。

 フォークで掬い、一口・・・


ライダー「・・・・・・・・・・ これは」

 ランサーから内容を聞いていた時から
 長く時代を超え、ギリシアの料理もだいぶ変わったと思っていたのに

 このタラモサラタを始めとして、多くの料理の中で、その幾つかだけは
 かつて自分が存在していた頃と比べさすがに変わってはいるが、その根本は変わらず同じ
 “故郷の味”を保っているというのは、魔法に近い奇跡の領域であり、それはライダーにとっても
言葉に出来ないほどの驚きだった。


ライダー「姉さま・・・・・・」

 目を閉じると、大変だったけど、とても暖かで楽しかった日々が、瞼の向こうで蘇る。
 あの時は、あの生活がずっと続けばいいと、そう思っていたけれど・・・




ブルース「しっかしまぁ、大したもんだなこりゃ。国王やらPUやら世界の諜報員の名士やら・・・
    有名所の大集合っつうか、レアにも程があるよなぁ。カメラ持ってくるんだったぜ」

レジーナ「さっき見かけたけど、城戸財閥令嬢の城戸沙織もいたわね」
ブルース「ああ、あれだろ? 何でも女神アテナの生まれ変わりだとか何とか・・・」



ライダー「(ピク・・・)」
 その瞬間、ライダーのスプーンを持つ手が、ピタリと停止した。

 それなりの距離を挟んだ向こうでの、たくさんの人間の雑談の中に混じった、一かけらの単語。
 その名前は、ただ聞き流すには、ライダーにとって、あまりにも深く関係がありすぎた。

ライダー「・・・・・・・・・・」

 しかし


ライダー「・・・・・・・・ バカバカしい」
 そう毒ずくや、ライダーはすぐに試食を再開する。

 考えるまでも無い。サーヴァントシステムでもなく、他の高度な召喚でもなく。
 ただの人間の輪廻の輪にギリシア神話の女神が入り込むだなどと、笑い話にすらならない。
 耳にいれる事すら無駄な、只の根も葉もない下らない噂だろうと

 ライダーはそう、判断した。


ライダー「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 しかし・・・
 もし、本当なら?


ライダー「(・・・バカな。私は何を下らないことを・・・・・・)」

 自分で思っているよりも、メデューサである私は、冷静で居てくれない。

 神々を、深く憎悪している自分がいる。
 特に、アテナという名の女神を。

 かつて身も心も怪物に変じ、何よりも大切だった姉様たちを、私は喰い殺した。
 それはいくら口先で繕おうと、私の咎。私の罪だ。

 だが、こうも思う。
 女神アテナが、私のような醜い女に目など留めずにいてくれたなら
 せめて、怪物に変えるのではなく、その場で首でも刎ねてくれたなら

 かつて“嫉妬”という理由だけで、女神に怪物に変えられた女など、いなかったのではないか。
 人の臓物を啜り、果ては愛する姉達ですら喰らった醜き怪物など、いなかったのではないか。


ライダー「〜〜〜〜〜〜・・・・・・・っ」

 心の奥底から湧き上がる、漆黒の泥のような憎悪と、心臓を握りつぶしたかのような痛み。
 まるで自分が内側から塗り替えられていくような。最悪の感覚。

ライダー「はぁっ・・・ はぁっ・・・」

 酸素が足りない。苦しい。痛い。
 心臓の鼓動が、たまらなく五月蝿い。


 苦悶に俯き、蹲るライダー。

 そこに



辰巳「ささ、こちらです、沙織お嬢様

ライダー「・・・・・・・・・!!」

 背後から聞こえた。その、名前。


   (ドクン・・・!)

             (ドクン・・・!!)

                         (ドクン・・・ッ!!!)




 かっと目が開くのが自分でも分かった。
 ゆっくりと、体ごと捻る形で、首を

 声が聞こえた、背後に向け・・・



ライダー「────────────・・・・・・!!!」

 振り向ききったその直後。ライダーの中で、時は停止していた。


 ・・・それは、紛うことなき、本物の女神だった。
 かつて神々の園で見た、それはそれは美しき美貌と神聖に溢れた・・・ あの時の網膜に焼きついた
そのまま姿で、戦いの女神。アテナがそこにいた。

 間違いなく、その身体は人のそれでありながら、全く同じ美貌、同じ神聖で。


              (カタッ・・・!)

 気が付くと。もう自分は、驚くほど静かに、その席を立っていた。
 夢遊病のようなふらついた足取りで、ライダーの爪先は、女神の立つ場所へと向かう・・・



  ◇    ◇



       一方

     城戸沙織サイド


 ギリシア領リコーナーの中を、上品な足取りで歩む、城戸沙織。
 その前には彼女のボディーガード、辰巳徳丸がおり、その数歩後方では、青銅聖闘士の一人、
ユニコーンの邪武が付かず離れずでいる。

辰巳「ささ、沙織お嬢様。ギリシア料理コーナーはこちらです」
 ズカズカと小さくない足音をさせて、辰巳は両手でギリシア料理コーナーの看板を指す。

沙織「・・・・・・・・・」
 大して当の沙織お嬢様は、静かながらも、その表情に不機嫌さを宿し、無言。

辰巳「沙織様・・・? 何か気に入らぬ事でも・・・」

沙織「あるに決まっているでしょう。先ほどからまったく何ですか。
   人を無理にどけて近づかせない。私が何かをする前に店の方にやらせる・・・」

辰巳「はあ、しかし。沙織お嬢様・・・」

沙織「・・・私は子供ではありません。食べるものの種類を選ぶぐらい一人で出来ます。
   それに、私だけを分け隔て考えるのは他の英雄の人達に失礼ではないですか」

 毅然とした態度で、淡々と己の意見を述べる沙織。

辰巳「そうは言いましても、周りを見れば・・・
   どうにも胡散臭い無頼の輩の様な奴らだらけですからなぁ。私辰巳徳丸としましては」

 周りを訝しげに一通り見渡しながら、そう言い放つ辰巳。
 最もその【無頼の輩】に一番見えるのは、辰巳自身なのだが。

沙織「貴方の気持ちを無碍にするつもりはありません。護衛するなとも言いません。
   ・・・しかし、明らかに貴方のそれは過剰です。少し控えなさい」

辰巳「は・・・はあ」

 さすがに萎縮し、2,3歩退く辰巳。
 後ろでくっくと笑う邪武にきっと睨みを利かせようとするが、逆に聖闘士の迫力を込めた眼力で
返され、更に萎縮する結果となった。


辰巳「・・・(ったく。あのガキども、成長して帰ってきたら揃って生意気になりおって・・・)」

 などと心の中で愚痴を漏らすも実際かかっていっても返り討ちで壁にめり込む事になるのは
身に染みてわかっている分。そういう態度が取るに取れない。
 瞬ぐらいの素直さが他の奴らにもあればなあ・・・ もう少し可愛げも


 とかなんとか、心の中で呟いていると


辰巳「・・・・・・んん?」
 ふらふらと、誰か・・・ やけに女の癖に長躯な奴が、こちらに向かって歩いて来ている。
 しかも・・・

 まるで幽鬼の類かのような、力の無い・・・
 しかしそれでいて、何か危険なものを感じさせる表情は、辰巳の頭に護衛としての警鐘を鳴らす。

 それもある程度以上のレベルをいっていれば、自分では紙屑以下だとすぐさま悟って、後方の邪武
を呼ぶなり何なりしただろうが、そこは辰巳。彼の警鐘は“鳴るだけ”なのは、性能として最悪だ。


辰巳「おいコラ、何だお前は?」
 だからこそ、こういうタイプは、時としてどうしようもなく命知らずな愚行をしてしまう。

           (ガッ・・・!)

 あろう事か彼は、ふらふらとアテナ・・・ 沙織の方に真っ直ぐ歩いてくるライダーに対し、
少々乱暴に肩を掴んでがっしりと止めた。


ライダー「・・・・・・・・・」
 強引に止められたライダーは、無表情に辰巳を見・・・ てはいない。
 ライダーの目線の先はアテナから瞬きほども外れておらず、辰巳の存在は完全にその外であった。

辰巳「コラ貴様。何のつもりだ。あそこにいらっしゃるは城戸財閥の城戸沙織お嬢・・・」
ライダー「どいてくれますか」
 辰巳の言葉すら耳に入れず、呟くようにライダーは、障害物に命令をする。

辰巳「な・・・ なんだとぉ!?」
ライダー「・・・・・・・・今の私には、余裕が、ありません。これは警告です。邪魔を・・・」

 それは、ライダーの最終通告だった。
 もう既に、理性は限界に近い。
 手榴弾で言うなら、ピンが取れかかってゆらゆら揺れている状態。

辰巳「ふっざけるなっ!! 貴様あまり嘗めてるとわしの背負い投げで床に叩き・・・」

 ライダーの服をぐっと掴み、くってかかる辰巳。
 それが彼の運命を決めた。

              (ガッ・・・!)

辰巳「ん?」
 辰巳のハゲ頭を、ライダーの右腕が掴む。

 そして

              (ドコォン!!!!)


 ライダーは、軽く下に押した。それだけで

 ボウリングの玉が落ちたかのような勢いで
 辰巳の頭は大理石の床に、垂直に・・・ 叩きつけられた。


沙織「!!?」
邪武「!!!?」

 その大きな音に、驚き振り向く沙織と邪武。


 聖闘士と英霊による内紛の幕が、上がった。


126 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/21(水) 22:15:04

○ライダー→理性のタガが外れかかっている、ほんの軽い力で辰巳の顔を床にめり込ませた
○辰巳徳丸→よせばいいようなことを連続で行った末に床にめりこむ
○城戸沙織&邪武→驚愕

127 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/21(水) 22:36:24



  ホテル・トアールは、数ある会議室の一つ。
 
   その一室で


佐久間「フム・・・ 埋葬機関。第13局からは一切の返事無し、デスか・・・ 残念ですね」

 書類の一つを見ながら、佐久間ケンは残念な印象を見せぬポーカーフェイスでコーヒーを啜り

西条「魔術協会の方もあまりいい返事じゃないな。全く協力しないというわけじゃないみたいだが。
   ・・・・・・まったく、今の状況が分かっているのか? あそこは・・・」

 魔術協会のよこした、協力の条件やらなんやらが書かれた書類を不機嫌に睨んで愚痴をこぼすのは、
オカルトGメン代表の西条輝彦。

小牢「じゃからぁ、魔術協会はともかく、埋葬機関は当てにならんっちゅうたじゃろ?
   あそこは昔っから血も涙も無いわ頭は固いわな奴らなんじゃから、あくまで協力は・・・」

 ホテル・トアールは数ある会議室の一つで小牢は、これからの組織の動向などを話し合いながら、
大好物の油揚げ定食のあぶらげをはみはみしていた。



小牢「・・・・・・・ おんやぁ?」
 小牢がふと窓の外。トアールの入り口を見ると。

 入り口の警備員に止められ、すごすごと帰る黒い服の二人組・・・

小牢「おー、誰かと思ったらホッパー兄弟か。生きとったんじゃな」
 さすがライダーやガンダム等のオタク知識においては右に出るものがいないオタ狐、小牢。
 仮面ライダーの顔と名前ぐらいは基本である。


小牢「あの絶望兄弟・・・ どうしてここにおるんじゃ?」

 ここトアールホテルは、都心から離れた、山と海に囲まれた形で建っている。
 地下の秘密鉄道以外だと交通手段は限りなく少ない上に、どんな方法でここに来るとしても必ず
途中の探知ポイントや関所を通る事になるはずなのだが・・・

小牢「影が薄すぎて素通りできたとか?」
零児「シャレにならんな、それは」

 隣の零児が、冷静に合いの手を入れる。

小牢「あ、あっちの方向は・・・」
 ホッパー兄弟の足を向ける方向は、交通手段には一切組み込まれていない山の方だった。
 要するに・・・ 外敵侵入防止の為の、トラップわんさか入ると死ぬでハイキングコースである。


小牢「・・・・・・ま、よいか」
 奴らならまあ死ぬことはあるまい。・・・多分。

零児「あとで管理人に連絡しておくか」
 零児の方も、わざわざ忠告や救助をする気は無いらしい。


 そうして、外に気をやっていると


         (ドォ・・・ン!!)


 いきなり真上から、何かぶつかったような音が響いた。

小牢「おわっ!!? な、なんじゃ?」
 油揚げ定食をガードしながら、驚く小牢。

零児「真上だな。・・・ レストランフロアか」
 一方の零児は、冷静に真上を見て分析する。

小牢「・・・ああ、なるほどのぅ。
   や〜れやれ。世界の一大事っちゅう時になにいちびっておるんじゃか」

零児「仕方ないな」

 そう言うと、二人は上着と武器を持って、上の階、レストランフロアへと向かうのだった。


128 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/21(水) 22:37:02

○有栖零児→会議中だったが、小牢と共にレストランフロアへ
○小牢→やっぱり油揚げ定食

【今回の新規登場】
○西条 輝彦(GS美神 極楽大作戦)
28歳。ICPOの超常犯罪課(通称オカルトGメン)に所属。正義感の固まりみたいな所があり、Gメンでの
自身の理想を熱々と語ったり、不正な行いやそれを行う者が許せない熱さがある。なので煩悩全開で
下卑た行動をとる横島と決定的にソリが合わず、恋仇であう事も含め犬猿を通り越してもはや宿敵関係。
しかし一方で、西洋剣タイプの霊刀をメインに戦うが、時と場合によっては遠慮なく重火器を使う合理的
(卑怯ともいう)な所も。この作品においては比較的珍しい喫煙者。戦闘も強いが指揮能力も優れ、
良き指揮官として戦っている。プレイボーイで、魔鈴めぐみに「毎回連れている女性が違った時期が
あった」と暴露されたこともあるが、美神に関しては実質、横島と同レベルで争っていたり、実質負けて
いたりする。青年期までは美神の母、美智恵の弟子だったが、Gメンになる為英国(おそらく時計塔)
へ留学。今でも美智恵は師として尊敬している。前世で美神、横島の前世と関わり持っていて、彼の前世
は、横島の前世の高島と同期のライバルで自分も優秀な陰陽師“西郷”。美神の前世のメフィストに
惚れていて、メフィストと相思相愛だったが死んでしまった高島と来世で決着をつける為に、妹として
メフィストを育てる事にした辺り、プライドの高さやが伺える。恋愛でも戦闘でも噛ませ犬だったり、
後半になるに連れてどんどん損な役回りになっていった。

129 名前:新章/外伝 地獄兄弟、再び:2009/10/21(水) 22:59:58
 
 
     ホテル・トアール付近の観測施設 展望台
 
 
 
 ホテル・トアールで五界ヒーロー達やサーヴァント達とそのマスター達・・・
 その他様々な世界の客人達がレストランフロアで食事を楽しんでいる頃。

 丁度、その裏手にそびえ立つ観測施設の展望台から黒い服を着た二人組の男が、
 レストランフロアのガラス張りになって外から見える一面を、双眼望遠鏡を用いて
 2人で片方ずつ片目で除きこんでいた。
 
 
影山「いいな・・・俺達も食べたいな・・・」
 
矢車「諦めろ・・・闇の住人の俺たちがあんな物を食う必要はない・・・」
 
影山「でも、兄貴のマーボー豆腐、また食べてみたいな・・・」
 
矢車「・・・・・・」
 
 
 矢車は、一年前の戦いが終結した直後の事を思い出す。
 
 
 
 2人で見た白夜。
 
 
 闇の中の光。
 
 
 
矢車「・・・・・・行ってみるか」

影山「!!・・・・・・いいの?」

矢車「・・・勘違いするな。あくまでタダ飯を食いに行くだけだ。
   ・・・どうした? 行くぞ」

影山「・・・・・・うん、行こう! 兄貴!」
 
 
 
     ホテル・トアール  入り口
 
 
警備員「申し訳ございませんが、当ホテルは現在一般客のご利用は不可能となっております」
 
 
矢車「・・・・・・帰るぞ・・・」

影山「・・・・・・うん・・・」
 
 
 
 彼らの行く末は、誰も知らない。
 

130 名前:新章/外伝 地獄兄弟、再び:2009/10/21(水) 23:00:52
△矢車想&影山瞬→ホテル・トアールのレストランに向かったが、利用できなかったので渋々帰る。

131 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 03:52:29

 聖闘士達の前に突然として現れ、檄と蛮を倒した、二人の乱入者。
 残された聖闘士、邪武。那智。市の三人は、明らかに戦慄していた。

市「う、ウソでやしょ・・・?」
那智「檄と蛮が、背後からのたった一発で・・・!?」
邪武「馬鹿な・・・」

 実際、彼らの驚きは尤もの話だった。
 五人の最強青銅達と比べれば話にもならない実力とはいえ、彼らもまた厳しい鍛錬を経て、常人を
超越した屈強な戦士達。

 だというのに、乱入者の二人は、いとも簡単に二人の聖闘士の隙を突き、彼らの背後の一点に
たった一撃を加えただけで倒してしまったのだ。

 よほどの実力差、よほどの熟練の技量が肉体に染み付いていなければ、出来ようも無い芸当。
 それも、片方の軽そうな男の手に持つ獲物に至っては・・・


ランサー「ったく、掃除ついでに何事かと寄ってみりゃ・・・」
 どこにでもありそうな、清掃用のモップ。
 しかも、もう片方の手には、バケツ。

 いかにも片手間で放たれた、小突き程度のような一撃で倒されたのかと思うと、鞘を填めたままの
刀の峰で倒された蛮はともかく、檄の方はひたすら哀れである。

ランサー「何やってんだよ、蛇のねーちゃんよ」
 ランサーは変わらずなマイペースで、ライダーに尋ねてみるが

ライダー「・・・・・・・・・・・・」
 ライダーの方は、据わった目のまま、たった一瞬だけ。
 見た側が石化しそうな瞳で、【邪魔です】とだけ伝えてくる。


ランサー「(・・・やーれやれ。こりゃ、尋ねようが無さそうだな)」
 モップを肩でトントンさせながら、軽く溜息を吐くランサー。


邪武「貴様ら、何者だ!!」
 そんな状況で、先に堰を切ったのは、邪武。
 邪武の言葉には、常人であれば押し潰されかねん気迫が込められていたが

ランサー「あん? 俺はただのバイトのスタッフだって言ったろ?」

 それもランサーにとっては、欠片ほどの重圧にもならないのだろう。
 自然体のまま、気軽に答えている様子は、いつでも欠伸をしそうだ。


那智「そっちのサムライもだぜ。メデューサの次は佐々木小次郎ってのは何の冗談だ?」

小次郎「ふむ。確かに我が存在。誠に冗談の類に近い曖昧さではあるが・・・」
 ふ、と。那智の問いに対し、雅に一笑する小次郎。

小次郎「状況は知らぬが、そこな女の実力はどうあれ、どうやら一人の女を複数の男で取り囲み、斬り
    かかろうとしている様子。武士面体の風上にもおけぬ所業、捨て置けぬと思うてな。
    ・・・それに、そこの女とはそう知らぬ仲でも無いが故に」

 という訳で蛇女よ、助太刀するぞと言いつつ、乱戦の輪の中に堂々と入っていく小次郎。


市「・・・そっちのナンパそうな兄さんも、何かご大層な名前でもあるんざんすか?」
 冷や汗満点のまま、当然の疑問を口にする市。

小次郎「・・・そういえば、ここな槍兵は何という名であったかな。
    確か・・・ そう、湯ー布ー院(ゆーふーいん)と」

ランサー「英霊(ひと)の名前を日本人おなじみの温泉町と間違えてんじゃねえっ!!
     クー・フーリンだクー・フーリン!!!」

小次郎「はっはっは。そう怒るな」

 まるで緊張感の無い。漫才のようなやり取り。

邪武「クー・フーリン・・・!!?」

 赤槍ゲイボルグの使い手。アイルランドの光の御子。
 判明せし三人目の英雄の名に、聖闘士達は驚かざるをえない。

市「ど、どうするざんすか? どうも旗色が悪そうでやんすよ!?」
那智「一人だけでも無理そうだってのに、3人も出てきちまったら、さすがにヤバいな・・・
   何やってるんだ!? 星矢達は・・・っ」

 窮地に冷や汗が止まらない、聖闘士の二人。

邪武「怖気づくな! それでもお前ら、沙織さんの、アテナの聖闘士か!!
   あいつらの正体はどうか知らないが、ハーデス軍との戦いに比べればどうって事は無い!」

 二人の聖闘士を一喝し、ライダー、ランサー達に向き直る。

邪武「来い!! 沙織さんに近づく輩は、俺が全員叩きのめしてやる!!」
 溢れるほどの闘気を滾らせ、邪武はユニコーンの構えを取る。

ランサー「あれぇ? 俺ホントにただのバイトなんだけどなぁ。敵と見なされちまうかなぁやっぱ!
     そうだよなぁそうだよなぁ。じゃあ俺も身を守らねえとなぁ! やぁ困ったなぁ!」

 嬉々としながら“困ったなぁ”を連発しつつ、意気揚々と乱騒のど真ん中に陣取るランサー。


 それと同時に、ドカドカとやかましい音を響かせ、辰巳と同じような黒服を着た男たちが、何十人
と押し寄せてきた。
 想像するまでもなく、城戸財閥のガードマン達か何かだろう。

市「おお! タイミングがいいでヤスねえ!!
  皆、あいつらが駆けつけてくるまで時間を稼ぐザンスよー!!!」

 市が情けない事を黒服に命令している一方で

小次郎「やはり最初から乱闘に混ざる目的であったか。まったく好き者よな」
 横目でニヤとランサーに笑みを向ける、小次郎。

ランサー「っせーな。てめーも一緒だろ。退屈サムライ」
小次郎「それは心外な。まあ否定はせぬがな」

 はっはっは、と、爽やかに笑う小次郎。
 モップをクルクルと手軽に回し、構えるランサー。

 ライダー本人をわりと置いてけぼりにした、大乱闘が始まった。



132 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 03:53:14
○ライダー→ランサー達は無視
○ランサー&小次郎→天然漫才を発揮しつつ、嬉々として乱闘へ
○邪武→市と那智を一喝し、一人使命に燃える
○那智→心が折れかかっている
○市→言うことがまるで三下


133 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 04:00:57


      一方

    地中海料理コーナー



葛木「・・・・・・・・どうだった? キャスター」

 地中海料理コーナー近くの席で、長躯を行儀正しく座っている葛木宗一郎と

キャスター「ええ・・・ さすがにかなり大きく変化をしていましたけど。
      それでも、とても懐かしい気持ちになれました」

 その向かいの席に座り、望郷の想いの小さな成就と、愛する人との二人きりでの食事。
 二つの幸せな時間を噛み締めているは、奥様サーヴァント。キャスター。

葛木「そうか」
 葛木は相変わらず無表情なまま、ほとんど二の句が無い。
 喋りかけているのはほぼキャスターの方で、周囲から見れば少々異様な夫婦の会話像である。

 しかしキャスターにとっては痘痕も笑窪。無口もまた最高の魅力であり
 こういった時間こそが、最大に満たされた時間だった。

キャスター「(ああ・・・ こういう機会はもう二度と無いと思っていたけど・・・
      ありがとう仏様っ。神々はいつか殺すけど、もう毎日参拝しちゃうわ〜!!)」

 と、たまたま何度か手を合わせていた仏様に対し、今の喜びを感謝するキャスター。


???『ウケケケッ!! ならばお布施を払えい!!
    とりあえずその幸せ換算率。溜まるに溜まって神戸牛ステーキ1000グラム!!』


キャスター「高っ!? しかも多っ!!?
      ・・・・っていうか、え? ウソ。また!?」

 ガタンと大きく音をさせて、思わず椅子から立ち上がる。


葛木「・・・・・・・・・ どうした。キャスター」

キャスター「いえその、どこからか不吉な声が・・・ あら?」
 辺りを見渡しても、それらしき虎の姿はない。

キャスター「空耳かしら・・・?」

キャスター「そうよね・・・
      いくら世界全体が乱れてるからって、あんなのがホイホイ出てきたらたまらないわ)」

 ふぅ、と。溜息をついて、安堵。 
 そして、一息ついてから


キャスター「あの・・・ 一つ、質問をしてよろしいでしょうか?」
 キャスターは上目遣いで、葛木に問いかける。

葛木「なんだ」

キャスター「あの、その・・・ 何故、今回・・・
      ボウヤの頼みを、聞く気になられたのかと・・・」

 ボウヤ・・・ つまり、衛宮士郎が柳桐寺に現れ、助力を申し出に来たのは、今回の現象が起こってか
ら数日後のことだった。

 今回の黄泉還り現象と、時空クレバスの歪み。怪現象、事故、事件の数々。
 聖杯戦争の勝者として森羅に呼ばれた士郎は、正義の味方を自称する通りに二つ返事で引き受けた
だけではなく、葛木達にも事態解決の助力を一緒に申し出てきたのだ。

 それ自体にもキャスターはなかなか驚かせられたが、更に驚いたのは・・・



  ◇    ◇




葛木「わかった。私も手を貸そう」




  ◇    ◇



 と、思いがけない二つ返事で、宗一郎がそれを引き受けた事には、驚きを隠しきれなかった。
 そしてそんな宗一郎を一人きりで送り出す事は出来ず、キャスターもまた、小次郎付きで同行した
というのが、キャスター組のパーティー参加経緯だった。

キャスター「(せっかく、また宗一郎様と平穏に過ごせると思ったのに・・・)」

 そう思った心内は、決して告げず
 キャスターは宗一郎に、その理由だけを尋ねたわけだが。


葛木「純粋な事態の解明と悪の壊滅を望む衛宮や森羅と目的は違うが、目的の為の道筋は同じ。
   ならば、私の人殺しの技も、いくらかは衛宮達の役に立とう」

キャスター「いえ・・・ 宗一郎様。私が知りたいのは・・・」

葛木「・・・・・・・・・・・・・・」
 続く、沈黙の時間。


葛木「今回の現象は・・・」
 そして、唐突にその口は開かれ、今回の事に参加した真意が語られる。


葛木「どこの誰が、どういった理由で、どうやって続けているかもわからない。
   お前はそう言ったな」

キャスター「え・・・ は、はい」

 そう。キャスターを以ってしても、この現象は、魔術とも他の術式行使とも、神のものとも悪魔の
ものとも。全く何もかもが分からないものだった。

 全世界を超え、他の時代、他の平行世界にまで飛び火した黄泉還り現象。歪み、?がり、断裂を
繰り返す時空。無限に増殖していく、あらゆる可能性。

 そんな中、魔術探索から水晶占術まで色々試して唯一分かったのは、
 この現象は、しばらくの間は続くということだけ。


葛木「時間という名のチャンスが長く在るのなら、出来得る事や可能性もまた多い」

キャスター「はあ・・・・・」

葛木「ならば、死者が黄泉還るこの奇跡を利用し、その工程を知れば、或いはこの現象が終わりを
   迎えた後も、お前と私が共に居る可能性もまた生まれるかもしれないと、そう言われてな」

キャスター「え・・・」
 明らかな驚きを見せる、キャスター。

葛木「・・・その為には、ただ傍観者で居てはいかんと、森羅の者は言った。
   自ら行動し、その可能性に辿り着かなくてはならないと」
   
キャスター「・・・・・・それで、この誘いに参加なさったのですか?」

 キャスターの問いに、宗一郎は小さく頷き


葛木「私はずっと、誰かの為にありたかった」
 その想いを、告白する。

葛木「だからこそ、衛宮と森羅からの誘いを受けた時、私は、お前の未来の為に在ろうと思った。
   これから私が参加する戦いは、その為のものだ」

 真っ直ぐにキャスターを見つめ、静に、その決意を。

キャスター「宗一郎、様・・・・」
 かつての彼からは考えられない。しかし、身に余る嬉しい言葉に
 もう既にキャスターは、涙目になっていた。


葛木「・・・・・そういえば、お前とは式も挙げていなかったな」

キャスター「え・・・・・・」

葛木「前に、生徒に『先生は奥さんと新婚旅行はどこに行くつもりなんですか?』と言われた事が
   あった。一成にも、『式はいつにするのか、その時は是非とも柳桐寺で盛大にやらねばな』と、
   それより前から考えてはいたのだが・・・」

 いずれは、お前を望む故郷に連れて行かなくては、と。
 それは、聖杯戦争が続いていた頃。葛木が勝手に、心の内でキャスターに約束した事だった。

葛木「総てが上手くいったなら、式を挙げる事も考えなければな。
   それに、お前の故郷も一度目にしておきたい」


キャスター「・・・・・ あう・・・ あう・・・(ぷる、ぷる、ぷる)」
 涙腺の我慢はとうに限界を迎え
 小さく肩を震わせながら、キャスターは少女のように、ボロボロと涙を流していた。

葛木「大丈夫か?」

 無骨で冷静な声による、心配の声。
 その一つ一つに至るまで、幸せすぎて、温かすぎて。

 人目も忘れて、あとはおもいっきり泣いてしまおうか、そう思ったところで


キャスター「(・・・・・・あら? そういえば、いつもならここで茶々を入れてくる侍は・・・)」 
 と、ふいに一言余計侍の姿が浮かんだ、次の瞬間


         (チュド────ン!!!!)


 魔力のパスから、小次郎の気配を感じ取れるその方向から聞こえる、どでかい音。


キャスター「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ あんの、バカ侍」

 ・・・・・・ああ、もう。
 どうして私の人生って、幸せを感じた途端に、必ず何か起こるのかしら。


葛木「む・・・ 何かの騒動か?」
 ウーロン茶の入ったグラスを傾けながら、音のした方向を見る宗一郎。
 
キャスター「あー・・・ ええと・・・ 宗一郎様。少し私、様子を見てまいりますね」
葛木「・・・うむ。わかった」

 かくしてキャスターは、乱闘の嵐吹き荒れる場所へ、一人向かうのだった。


134 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 04:01:54

○キャスター→宗一郎からの告白に涙ボロボロ。しかし侍のせいで感動台無し
○葛木宗一郎→今回の戦闘パーティーへの参加の経緯と、キャスターへの想いを語る

【今回の新規登場】
○キャスター/メディア(Fateシリーズ)
身長:163cm 体重:51kg スリーサイズB82/W57/H84。イメージカラーは紫。好きな人は寡黙で誠実な人で
可憐な服と少女と造型も好き。筋肉ダルマが苦手。特技は結界作成、道具作成。悪巧み。属性:中立・悪。
女性魔術師の英霊。神代にしか存在しない魔術を自在に操る。魔法こそ習得していないものの空間移動
等、現代で言えば魔法の域に達する程の超高等魔術を平然と扱い、魔術師としての能力は魔法使いと同等
もしくは上回るレベル。しかし大抵のサーヴァントは対魔力がかなり高い為、魔術が主な攻撃手段となる
キャスターは全七種中最弱とも言われるが、それはあくまでも「サーヴァント中で」であり、きのこ神
曰く本気のキャスターには蒼崎青子も敵わないらしい。実はサーヴァントの中で年増である事を気にして
おり『もっと可愛らしい、皆に愛されるキャラになりたい。変わりたい』と胸の内を暴露。小次郎が暴露
した年齢は【二十ウン歳】。三十代近くと思われる。正体はギリシャ神話に登場する裏切りの魔女
メディア。身勝手な神の都合で心を操られ、好きでも無い男を愛し、実の弟をバラバラに切断して海に
捨て、最後には男にも捨てられた経緯から愛に飢え、神々を憎悪している。宝具はあらゆる魔術効果を
無効化する短剣【破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)】。自身を召喚した最初のマスターを殺害し
消滅してしまう危機を葛木宗一郎に救われた。以来現マスターである彼に対し、マスターとサーヴァン
ト以上の想いを寄せ、現在では素顔を晒し、柳洞寺で宗一郎の押し掛け女房としてバカップルぶりを
晒している。結婚式は挙げてないが、凛から戸籍を購入し正式に夫婦になった模様。思いの他日常での
素顔がコミカルで、むくれ顔の時に耳がぴくぴくする様などがファンの好評を呼び、【キャス子】の
愛称がついた。ボトルシップ製作が趣味という面白い一面も披露。


○葛木宗一郎(Fateシリーズ)
身長:180cm。体重:70kg。イメージカラー:無色。好きなもの:特になし。苦手なもの:特になし。
特技:格闘技。士郎達が通う学園の社会科教師。生徒会顧問。倫理も担当している。実直、寡黙な人物で
生徒からの評判は悪くない。学年が高いほど信頼される珍しいタイプ。柳洞寺に居候している。キャスタ
ーのマスター。魔術師ではなく、聖杯戦争には関係のない人間だったが、柳洞寺の前で行き倒れていた
キャスターを助け、彼女に頼まれるままに力を貸すことになった。親はなく、とある暗殺集団に凶器と
して育てられたという過去がある。特殊な暗殺術・"蛇"の達人で、キャスターに魔術で拳を「強化」して
もらうことにより、サーヴァントであっても彼の技を初めて見る相手であれば互角以上に戦うことがで
きる。彼の背景や能力は、『月姫』と本作に繋がり(同じ世界での出来事)があることを示す演出の一つ
である。聖杯戦争後、一見変わらぬ日々を送っているが、その実キャスターの良き夫でありたいと悩み、
模索していることを、とあるエピソードで告白。【最後の夜】にはキャスター、アサシンと共に『無限の
残骸』と戦った。その際、彼を知るものなら考えられないような台詞を発言した。

135 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 04:06:17
   

        そして再び

      ギリシア料理コーナー




キャスター「わぁ・・・ 来るんじゃなかったわ」
 到着早々、キャスターは自身の行動を後悔した。

 アサシンはすぐ見つかった。ついでに、探してもいないナンパ槍男も。
 二人とも、数十人の黒服や、特殊な力を帯びた鎧を纏った少年(?)達を相手に、ちぎっては投げ
ちぎっては投げを楽しそうに行っている。

 しかも、周りに居るそれぞれに戦士であろう野次馬達は、その多くが止めるでもなくただ見物に
徹しているというのはどうなのか。中には、混ざりたくて仕方がなさそうな者までいる始末。


キャスター「はぁ・・・ ちょっと目を離すと野良犬と一緒に大騒ぎだなんて、とんだ番犬だわ」
 ・・・まあ、とにかく。
 すぅ、と息を吸い込んで

キャスター「ちょっとアサシン!? ちょっと目を離したら何やってるの!!」

 と、巻き込まれない位置から小次郎を叱り飛ばす。

小次郎「おう。これは我がマスター」
 その怒鳴り声に、くるりと振り向き爽やかな笑顔を向ける小次郎。

 完全に黒服の群れや青銅への視線は完全に外れていたが、それでも峰や柄でドカッ! バキッ! と
近づく相手を打ち据えているのは流石である。


キャスター「どういう事か説明して貰おうかしら!? 返答次第によっちゃあ・・・」
 そう言いつつ、右手から魔力の波動をバチバチいわせているキャスター。
 返答次第ではどうなさるつもりなのか。小次郎の命運の分かれ目である。

小次郎「・・・いや、ふらと散歩をしてみれば、そこな蛇女が“あてなのせいんと”とやらに囲まれて
    いたので、つい助太刀をな」

 少々間を置いて、小次郎は正直に簡潔な説明をした。


キャスター「アテナ・・・?」
 エルフ耳をぴくんと震わせ、アテナ・・・ 城戸沙織を一瞥するキャスター。
 それで女神特有の何かを感じ取ったのか、その顔に明らかな、強烈な嫌悪オーラを見せる。

 キャスターの人生を狂わせた直接の神は、美の女神アフロディーテ。ライダーのようにアテナその
ものと因縁深いわけではないが、キャスターにとっても神々は強烈に嫌悪、憎悪する対象。この反応は
当然といえば当然だった。

 むしろ幸運とするべきは、この場に黄金聖闘士は魚座(ビスケス)のアフロディーテが居ない事で
あろう。もし彼とキャスターとかち合ってしまった日には、その場に残るのは見渡す限りの焦土と、
どちらかの屍だけなのだろうから。


小次郎「マスターよ。どうかな?
    ここは同じサーヴァントの誼(よしみ)、拙者の助太刀を容認して頂けると嬉しいが」

 わかっているのかいないのか、小次郎はキャスターの同意を求める。


キャスター「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 そしてキャスターは、少々の沈黙の後、紫のローブを被りなおした。
 魔女モード、スイッチON。


キャスター「まあそうね。私も神々は嫌いだし・・・
      いいわアサシン。サーヴァント同士の友情ということで・・・ や〜っておしまい!!」

 悪役のオホホ笑いを木霊せながら、GO! とばかりに人差し指を向ける魔女奥様。

小次郎「ハッハッハ♪ うむ。心得たっ!」
 マスターの了解に勢いを得た小次郎は、那智に距離を詰める。

那智「くっ・・・!!」

         (ドゥッ!! ドゥッ!! ドゥッ!!)

 対する那智もまた、気圧されながらも、聖闘士として、ありったけの拳圧の弾丸を小次郎に放つ。

 しかし

         (キィン!! キィン!! キィンッ───!!!)

 小次郎はそれに驚く事もなく、あろうことか、全ての拳圧弾を
 払うでなく、弾くでもなく、斬ったのだ。

那智「んなっ───!?」
 攻撃を刀で斬られた事など、紛れも無く生まれて初めて。
 常人どころか常識すらも離れまくった光景に、目を疑う間もなく


小次郎「さて、残念だが、ここで詰みかな?」
 刀の間合いに入った那智に対し、気絶(とどめ)の一刀を放とうとするが


小次郎「むっ・・・・!」

 その刹那、4時の方向に強大な闘気を感じた小次郎は、
 刀の軌道を変え────


         (ガキィィィン!!!!)


 舞い散る火花。相対する両者。

 新たな乱入者と、構えを直す小次郎の目が、交錯する。

小次郎「ほう・・・ 手刀にて我が物干し竿の鞘に傷を付けるとは見事」

 小次郎の言う通り、物干し竿の鞘には、刀戟を受けたかの如く鋭利な傷が出来ていた。
 元よりそう柔な鞘ではないが、此度この鞘、そして刀には、キャスターによる強化が施されている。
 それを、こうまで削るとは・・・


小次郎「・・・・・さて、貴殿は何者かな?」
 新たなる兵(つわもの)の登場に、嬉しそうに眼を細めながら、問う。

紫龍「アテナを守る聖闘士が一人、龍星座(ドラゴン)紫龍」



  ◇    ◇



       一方

     ランサーサイド



ランサー「ほ〜う・・・」
 一瞬で使い物にならなくなったモップを見ながら、ランサーは不敵に笑む。

 モップは先端から持ち手に近い位置まで、完全に凍結していた。
 しかも冷凍だとかそういうレベルではなく、絶対零度による全凍結。
 既に先端から、ポロポロと崩れ始めているモップを捨て

ランサー「やるじゃねえか。完全に不意を突かれたぜ」

 しかも、凍結に必要な魔術の発動も欠片も感じなかった。
 遠坂の嬢ちゃん達が使うような魔術ではない。ルーン魔術でもない。
 他の聖闘士とやらの拳圧弾を弾いた時もそうだったが、それは、ランサーの知らぬ力だった。

ランサー「テメェらの力。こりゃ何だ? そしてテメェは何者だ?」

氷河「俺達の力は小宇宙(コスモ)。そして俺は・・・ 白鳥星座(キグナス)の氷河だ」

 ランサーの前に立つは、白鳥座の戦士。
 その全体から漂う、美しいまでに静かな、それでいて裏に感じ取れる強大な力の奔流に
 槍の英霊は、戦士としての胸の高まりを徐々に躍動させていた。

ランサー「嬉しいぜ。こっち(槍)で闘り合えそうなヤツが出て来てくれてよ」

氷河「・・・・・・・・・・」
 氷河は、無言のまま構えた。

 卓越した戦士同士となると、言葉は必要ない。
 目と目が合うだけで、互いに何を考えているか、何を求めているかは分かる。

 目の前にいるランサーという男は、アテナに害を加えるつもりはないだろう。
 しかし、どうにもこの男の相手は、自分がしなくてはいけないらしい。

氷河「仕方がないな。無益な争いはしたくないんだが・・・」

ランサー「ハッ。上品ぶるなよ小僧。
     隠しても、テメェの闘気はしっかり湧き上がってるぜ」

 ランサーの纏う空気も変わる。
 服はスタッフの服からサーヴァントの青色の服に。
 そして、その右手には赤色の槍、ゲイ・ボルグが握られた・・・!


136 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 04:06:41

○龍星座(ドラゴン)の紫龍→小次郎の剣檄を弾き、登場。
○白鳥星座(キグナス)の氷河→ランサーと対峙
○ランサー→ちぎっては投げ状態から、氷河との対峙に喜び勇む
○佐々木小次郎→ちぎっては投げ状態から、紫龍との対峙へ
○キャスター→魔女奥様モードオン。小次郎の戦闘を許可

【今回の新規登場】
○龍星座(ドラゴン)の紫龍(聖闘士星矢シリーズ)
年齢:14。身長:172cm。体重:53kg。誕生日:10月4日。血液型:A型。出身地:日本。
修行地:中国・廬山五老峰。技:廬山昇龍覇、廬山龍飛翔、廬山百龍覇、廬山亢龍覇、聖剣エクスカリバー
性格は誠実で勤勉。思慮深く落ち着いた性格であり、聖闘士の要となり得る存在。正義を信じる事に
加え、大変義理堅い性格であり、友のためならば己の身を犠牲にする事すら厭わない。外見上は腰近く
まで伸ばした長髪が印象的。童虎により聖闘士としての闘法のみならず「生きる」という根本的な事を
教わり、孤児という境遇の中で光明を見出した紫龍にとって、五老蜂は聖闘士となった後も安らぎの
場所。童虎に育てられた捨て子の少女・春麗とは幼馴染み同士で、互いに深い愛情を抱いている。
多くの青銅聖闘士同様、城戸光政の非嫡子として生誕。聖闘士への修行に際し俗世間からの情を断ち
切る為、光政から認知されず孤児として育ち、自身も暗黒聖闘士戦まで出生の真実を知らなかった。
孤児としての境遇、暗闇の人生を切り開く強く強さを求め、死地への誘いとも言うべきグラード財団の
求めに敢えて応え、聖闘士への道を選んだ。龍神伝説で名高い中国・廬山五老蜂で老師こと天秤座の
童虎に師事し、5年に亘る修行の末に廬山の大瀑布をも逆流させるドラゴン最大の奥義・廬山昇竜覇を
体得。大瀑布の底に眠っていた龍星座の聖衣を得て、聖闘士となる。当初は師の教えを試す為に闘いの
場に臨んでいたが、星矢たちとの闘いを経て、誰より友情に厚い正義の聖闘士として覚醒していった。
闘いにおいては敢えて聖衣を脱ぎ捨てる等、敵前で自身を追い詰めて逆境の中で小宇宙を高めてゆく。
その為、限界を越えた闘いの最中で出血多量、失明、挙句は仮死に至るなど重傷を負う事も数多い。
小宇宙が最高点にまで燃え上がると、龍が天に昇るときに発するという燐気が全身に満ち、背中には
一面、昇竜の姿が刺青のように浮かび上がる。


○白鳥星座(キグナス)の氷河(聖闘士星矢シリーズ)
年齢:14。身長:173cm。体重:60kg。誕生日:1月23日。血液型:O型。出身地:ロシア。修行地:東シベリア
技:オーロラエクスキューション、オーロラ・サンダー・アタック、ダイヤモンドダスト、氷結リング
、凍結拳。小宇宙によって物質の熱運動を下げる事で、標的物を凍結させ戦闘不能に至らしめる凍気技
の使い手。紫龍同様に黄金聖闘士の師事を受けただけあり、青銅聖闘士の中でも突出した技術の持ち主。
多くの青銅聖闘士同様、父は城戸光政。星矢達の異母兄弟。しかし星矢達と異なり、氷河のみその事実
を知っていたものの、聖闘士修行に際して俗世間からの情を断ち切る為、光政から認知されなかった。
母はロシア人のナターシャで、日本とロシアとのハーフである。その為、金髪と青い瞳が外見上の特徴。
シベリア氷原を体現するかの様なクールな性格で、一見すると冷たい印象を与えがちだが、内面には
人間らしい優しさ、母への愛情、そして聖闘士としての熱い闘志が秘められている。ロシアから船で
日本へ向かう最中、事故で母が船もろとも救難不可能深海域に沈み、母の遺体を引き上げる力を得る為
聖闘士となる決心をする。グラード財団に東シベリアへ送り込まれ、水瓶座のカミュに師事し、修行の
末に聖闘士となる。母の遺体が氷点下の海水で生前の状態のまま保存されていた為、聖闘士となった後
もその力を深海の母の元に花を届け見舞う事にのみ使っていたが、それを女々しいとしたカミュにより
船を海中断層の奥底に沈められ、永遠に会えなくなった。銀河戦争を経て星矢達との友情に目覚め、
聖闘士として正義の闘いに身を投じていく。修業地のコホーテク村は彼の故郷でもある。


137 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 04:56:46

   
     小次郎サイド


小次郎「ほう、これはこれは・・・」
 小次郎は、飛び込んで来た紫龍に対し、素直に驚きを見せていた。

 紫龍という少年は、小次郎の眼前に立つや
 拳と掌を合わせ、武を学ぶ者ならではの礼を示した。

 セイバーに勝るとも劣らぬ礼儀正しいその姿勢。
 それは、礼形が海を越えた国のものという違いこそあれ、正しく
 小次郎が人として生きていた時代に在った、武人の在り様だった。


小次郎「何とも驚いた。貴殿、その若さにして礼節をわきまえておるな」

紫龍「・・・貴方は真たる武人の一人とお見受けした。
   【武人には、礼節を以って臨むべし】。それが我が師の教え」

小次郎「・・・・・・・・・ く」
 その紫龍の堂々とした返答に、小次郎の顔がほころぶ。

小次郎「・・・・・・ふふ。はっははははは! 面白い。これは愉快よ!!」
 さも愉快そうに、嫌味なく小次郎は笑う。

紫龍「・・・・・・・?」
 突然の相手の笑いに、さしもの紫龍も、不可思議そうに眉をくねらせた。

小次郎「いやいや・・・ すまぬな。決してそなたを笑ったわけではない。
    嬉しいのだ。幾百年が過ぎようと、武に生きる酔狂者は居る所には居るものか、とな。
    そうした酔狂者と刃を合わせる事が出来るこの巡り会わせの、なんと面白い事か」

 そう語る小次郎の表情は、まるで無邪気な子供のそれに近い。


小次郎「・・・・・・ところで、先程我が一太刀を受けた刀・・・
    内なる闘気を手刀に集結させ作り上げたものと見たが」

紫龍「・・・・・・!!」
 紫龍は驚かされた。

 初見だけで、聖剣エクスカリバーの本質をほぼ完全に見抜かれては当然の反応である。
 それも、たった一合の、しかも、明らかに小次郎の視界の外での刃のぶつかり合いで・・・

紫龍「・・・・・お見事。素晴らしき慧眼だ」

小次郎「なに、どのようなものであろうと、この物干し竿と打ち合った時の響、正にあれは刀剣。
    それも、鍛えこまれし最上の業物であろう。それも、代を受け継ぎ昇華されてゆく至宝にも
    近いもの。・・・貴殿にその刀を授けた師は、さぞかし素晴らしき侍(おとこ)に違いあるまい」

紫龍「・・・・・・・・」

 感銘を受けざるをえない。
 この世に達人や賢者と呼ばれる者がいるなら、正にそれは、目の前の人物の事だろう。 


小次郎「ちなみにその刀剣。名は何と言う?」
紫龍「・・・・・・聖剣、エクスカリバー」

小次郎「! ・・・・・・ほう」

 これはまた、面白い。
 この漢の刀もまた、かの騎士王と同じ名とは。

 ならばこの祭事は、あの夜と同じく
 我が本分を果たせる、最高に善き仕合いになろう。


小次郎「では、拙者も改めて名乗ろう」

小次郎「・・・アサシンのサーヴァント。佐々木小次郎」

 しゅらりと静かな音をさせ、鞘から刀身を引き抜き、長刀の真の姿を露にさせる。

 張り詰める空気。静かに、激しく燃え上がる両者の気迫。
 小次郎は最長の刀を横上段に構え
 紫龍は、最短の聖剣を正面に構える


小次郎「・・・・・参る!!」

紫龍「覇っ───!!!」


      (ガキィィンッ────!!!)

 火花を散らす長刀と、聖剣。
 時代を超え出会った二人の戦士の刃(たましい)は、今ここにぶつかり合う───


138 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 04:57:19

○佐々木小次郎→初見で聖剣エクスカリバーの本質を見破り、いざ果し合いへ
○紫龍→小次郎という人物に感銘を受け、いざ果し合いへ

139 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 05:04:38



       ランサーサイド



 小次郎と紫龍の間で繰り広げられている戦いを、静なる武人同士の試合とするなら。
 ランサーと氷河の間で繰り広げられているそれは、正に戦場を感じさせる激闘であった。

 床は砕け、椅子は潰れ、テーブルは割れ。
 ありとあらゆる障害物は悉く極細と散り、二人以外の何者も近寄ることを許さない。

 百合か、千合か、或いはそれ以上か。
 僅かにだけ刻まれた時間の間、両者が繰り出した拳、そして槍は、最早人間の刺客に捉えられる
限界を遥かに超え、大嵐の如くぶつかり合っている。


氷河「ダイヤモンド・・・」
 間合いが離れると同時に、氷河は、両拳を組み繋げ、後頭へ引き絞ると・・・


氷河「ダストォ────────ッッ!!!

 キグナスの数ある技の一つ、ダイヤモンドダストをランサーに向けて放つ。

   (ドゥ、ドゥ、ドゥッ────!!!)

 氷河の拳から、凄まじい小宇宙と共に放たれる、無数の氷の刃。
 それは、完全に相手を捉え、回避も、そして防御も封じる技───


ランサー「よっっ・・・ とぉ!!」

 (カンカンカンカンッ────!!!)


 しかしそのダイヤモンドダストの識も、槍の英霊にはまるで通じない。
 ランサーによる槍の高速回転は瞬く間に無穴の結界を作り上げ、無数の氷の弾丸を粉砕した。


氷河「(なっ・・・───!?)」
 その超人的とも言える見事な槍捌きと、今まで見た事のない技の防ぎ様に、氷河は驚きを隠せない。
 
 これまでの聖闘士としての永き激闘の中、ダイヤモンドダストは様々な形で防がれてきた。
 しかしそれは共通して、それを上回る小宇宙の力によるもの。
 “ただ、槍を回転させただけ”で防がれた事など、見た事はおろか、聞いた事すらない。


ランサー「面白い技使うじゃねえか。魔術以外で氷の散弾なんて始めて見たぜ」
 対するランサーは、心底楽しそうにカラカラ笑っている。
 

氷河「わからない・・・」
 呟くように、一言。

ランサー「あん?」
 それを見、首を傾げるランサー。


氷河「お前達の目的は何なんだ・・・? 何故アテナを狙う!?」

ランサー「アテナなんざ知らねぇな。ついで言うなら特に興味もねぇ」


氷河「!!? な・・・!?」

 なんだって・・・!!?

氷河「なら何故・・・」
ランサー「そこまでにしとこうぜ」

 氷河の二の句を、ランサーは軽い風で遮る。

ランサー「つまんねぇ言葉でせっかくの場を濁すんじゃねえっつってんだ」

 首をコキコキと鳴らしつつ、ランサーは続ける。

ランサー「ライダーか向こうの嬢ちゃん、どっちに非があるだないだ・・・。
     正直そんなこたぁどーでもいいんだよ、俺ぁ」

氷河「な、・・・・!?」
 ランサーの口から肩あれる理由、そして戦いに対する姿勢は、氷河の在り様とはまるで逆。


氷河「それが、理由なのか・・・!?」

 戸惑いながらも、相手を強い視線で、ランサーを見据える。

 己の信じる正義の為でもなく、何かを守る為でもなく
 ただ、戦いを愉しもうというのかと。そう語るように。


ランサー「ほー・・・ なんだボウズ、俺の知ってるヤツと似たような事言うんだな」

 ランサーは更に、それが楽しそうに笑顔を見せるが
 一呼吸を置き、改めて氷河に向き直ると、それは驚くほど真剣な表情に変わり


ランサー「どっちが正義でどっちが悪かじゃねえ。
     どっちが清くてどっちが汚いかでもねえ」

 朱の槍、ゲイ・ボルグを構え直し、闘気を迸らせる。

氷河「・・・・・・・っ」

 氷河もまた、強大な闘気を放つ相手に対し、静かに構えを取る。
 もはや、どちらかが勝つしか、この男を止める手段はないと把握したからだ。


ランサー「この後、どっちが倒れているかだっっ!!!!


140 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 05:05:27

○氷河→ランサーの【理由】に戸惑いながらも、全力で応える。
○ランサー→ランサー節炸裂

141 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 05:12:36


      ライダーサイド



 ランサー達が、それぞれに勝手な戦いを繰り広げているその間にも
 激闘の渦の中心であるライダーと邪武の攻防は続いていた。


邪武「はっ!!」

    (ドゥッ────!!!)

 音速の脚が風を切り、邪武の必殺技、ユニコーンギャロップが唸る。


ライダー「・・・・・・・遅いですね」

 しかしそれは、サーヴァント中最速のスピードと敏捷性を誇るライダーの前にとっては脅威ではなく
 空中で僅かに体を捻る、その動作だけで、邪武の拳を易々と避わしていきながら、徐々にその距離を
詰めていった。

ライダー「通らせてもらいますよ」

 いよいよという距離にまで近づいて、ライダーは宣言通り、人間の常識を遥かに超えた跳躍力で


        (ビュオッ・・・────!!!)

 高々と、跳んだ。


邪武「くっ・・・ させるかっ!!」 

 邪武は、そんなライダーを食い止めんと、その跳躍の軌道に割って入る為に自らも跳ぶ。


     (ドグォッ!!!)


 しかし、いささかタイミングが悪かった。
 邪武を通り過ぎようと跳んだライダーの足は、その軌道上に邪武が入ってきた事により、偶然に
ジャンピングニーという形となり・・・ 深々と、邪武の頬に突き刺さったのだ。


ライダー「あ・・・・・・」

 偶然的に発生した強烈な攻撃に、すれ違い様の後頭部への手刀程度で済まそうと思っていた
ライダー自身も思わず空中でそんな声を漏らす。
 
邪武「ぶっ・・・・・ ば、バカな・・・」

 単車に撥ねられたかのように、スローモーションで縦に回転しながら、放物線を描き
 ドシャアと、例によって顔面から床面に激突する邪武。

 言うまでもなく、その時点で完全に戦闘不能である。


 ほぼ最後の壁である邪武を打倒し、もはや、この一跳びでアテナに届く。
 そう思っていたライダーだったが・・・・・・


ライダー「(ハッ──!?)」

 その瞬間、強い何かの気配を感じ取ったライダーは
 空中で身を翻し、武器のチェーンダガーを前方の虚空へ────


     (ビュンッ──!!)


 投げた。



      (ガキィィンッ────!!!)



 金属同士が衝突し合う音が響き、ライダーのダガーが跳ね返る。

      (パシッ───・・・)

 それを右手で受け止めながら、ライダーは柔らかに床面に降り立った。


ライダー「これは・・・・」

 四足での着地のままの姿勢で、前方を見やる。
 そして、そこに広がっている光景に、ライダーは少々の驚きを見せた。


 つい幾瞬の前には何もなかった床には、その一面に長い一本の鎖が広がり、螺旋の円を描いている。
 それは、まるで生き物のようにうねり、シャラシャラと小さな鎖特有の音を木霊していた。


 それは、紛れも無く
 アンドロメダの聖闘士の最強の防御技。ローリングディフェンス。


瞬「そこから先には行かせないよ」

 そして現れる、新たな声、そして、姿。
 美しく可憐なる中性の美を持つ聖闘士。

 それは────


アテナ「瞬・・・」
 黒服達のバリケードに阻まれた向こうから、アテナもその名を呟く。


ライダー「・・・・・・・ 貴方の“匂い”には、覚えがある気がします。
     僭越ながら、名を訊いてもよろしいですか?」

 邪武とは全く違う、柔らかな見た目に反し、その全身から漂う強き戦士の気配に
 初めてライダーは、己の武器、チェーンダガーを構える。


瞬「僕は瞬・・・。
  アテナを守るアンドロメダ星座の聖闘士、です」

 その瞬の言葉に
 ライダーは少しだけ、目を見開いた。


142 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 05:13:09

○ライダー→邪武を撃破するも、瞬に阻まれる
○邪武→役立たず。しかし散り際は派手。
○瞬→アテナのピンチに登場。


【今回の新規登場】
○アンドロメダの瞬(聖闘士星矢)
13歳。身長:165cm。体重:51kg。誕生日:9月9日。血液型:A型。出身:日本。修行地:アンドロメダ島。
技=ネビュラストーム、星雲鎖(ネビュラチェーン)、ローリングディフェンスetc。
城戸光政の非嫡子として生誕。聖闘士の修行に際し俗世間の情を断ち切る為、光政に認知されず孤児と
して育ち、暗黒聖闘士戦まで出生の真実を知らなかった。星矢達100人の孤児の中で唯一、一輝と父母が
同じ。幼きから2人きりの兄弟として育つ。財団による聖闘士養成の道を余儀なくされ、修行地選択の
くじ引き時、地獄と呼ばれるデスクィーン島を選んでしまうが一輝がその地を引き受け、替って瞬が
選んだ先は、昼は灼熱地獄、夜は極寒の、美しい名とは裏腹の地獄、アンドロメダ島。白銀聖闘士
アルビオレに師事し、最大の試練サクリファイスを克服、聖衣を手に入れ聖闘士の称号を得た。当初は
兄一輝の安否のみを気にしていたが、やがてアテナの聖闘士として正義の闘いに身を投じてゆく。実は
地上で最も清らかな心の主としてハーデスの肉体に選ばれ、冥界での死闘ではハーデスの魂に憑依され
るも、アテナの血で呪縛から解放、その後も星矢達と共に戦い抜いた。闘いを好まぬ心優しい性格。
幼い頃から周囲に泣き虫とからかわれ、聖闘士の力を得た現在もできるなら敵を攻撃せず、身を守る
だけで済ませたいと考えている。また、伝説の王女アンドロメダが海の怪物へ生贄として捧げられたが
如く、瞬も仲間を守る為に自身を犠牲にする事も厭わない。星矢達と異なり憩いの場所と呼べるものは
なく、十二宮戦の直前には城戸邸に滞在。帰る場所のない瞬に対し、沙織が城戸邸を自宅同然に扱う事
を許す場面も。修行仲間である女聖闘士・カメレオン星座のジュネから想いを寄せられている。一輝の
実弟だけあり高い潜在能力の持ち主。通常は星雲鎖による防御主体の闘技を身上としており、一撃で
黄金聖闘士を倒す生身の拳を持っているにも拘らず、敢えてそれを封印している。


143 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 05:18:54




ライダー「・・・・・・なるほど。
     アテナを護るのはアンドロメダ。確かに納得できる組み合わせですね」

 ライダーは納得しながらも、心の内で呟く。
 ・・・・・・まったく、まるで性質の悪い悪夢(ゆめ)を見ているようだと。


瞬「あの・・・」
 ふいに、瞬の方から口が開かれた。

ライダー「・・・?」

瞬「本当に・・・ 貴女が、メドゥーサなんですか?」

 どうやらここに来るまでに、黒服か誰かしらに聞いたようだ。
 実際に伝説のメデューサと思われる女性に相対し、軽くない緊張を抱いているのだろう。
 その表情には、多少の硬ささえ見て取れた。
 

ライダー「・・・・・・ええ、そうですよ。
     かつての貴女は、私の首で命を拾ったのです。アンドロメダ」

 瞬をアンドロメダと呼び、そう答えるライダー。

瞬「・・・・・・【貴女】?」
 そして瞬は、【貴女】という言葉の微妙な違いに気付く。


      (ザァッ・・・・・────!!)


 ライダーの服装が、平常時の私服から、戦闘時の紫の服と、アイマスクに変わった。

ライダー「相手が少女とあれど、邪魔をするのなら容赦はしません」

瞬「ボ・・・ ボクはですっっ!!!///////

 ライダーの間違いに対し、瞬は珍しく、顔を真っ赤にして、大きな声で訂正した。


ライダー「おや・・・ そうでしたか。それは失礼・・・
     しかし驚きですね。アンドロメダの魂を持って男に生まれる事があるとは。
     魂の匂いも女性のものでしたので、間違えてしまいました」

瞬「におい・・・」
 よっぽど発言が衝撃だったのか、無心に右手を鼻の前に持っていってクンクンとし始める瞬。
 もちろんそんなもので魂の匂いなど分かるはずもないが、そういった仕草さえ男の粗野さが欠片も
なく、ライダーを始めとして多くの野次馬達にも、まるで少女にしか映らない。

瞬「(・・・ハッ!)と、とにかく!
  あなたがアテナを狙う以上。通すわけには行きません!!」

 思考をきちんと整理し、心整えたらしい。
 
ライダー「でしょうね。どの道あなたをどうにかしなければ、この鎖は通れないらしい」

       (チャリ・・・・・・)


                          (ジャララ・・・・)



 高まる戦慄と緊張。
 低く静に唸りを上げる、両者の鎖。

 神話の時代に生きた二人の伝説が、今ここにぶつかり合おうとしていた・・・





  ◇    ◇




     一方  時間を少しだけ巻き戻し


子ギル「はい。日本料理コーナーなら向こうですよ。あと、コーラならあっちに炭酸飲料をメーカー
    から一通り揃えたドリンクバーがありますから」

アヤ「・・・・・ありがとう。おかげで助かった」

子ギル「いえいえ。人として王として当然のことをしたまでですよ」

 ばいばいと手を振って、アメリカ人らしき薄着の女性を輝かしいまでの屈託ない笑顔で見送る少年。
 小さき英雄王。子ギルことギルガメッシュ(幼年体)である。


子ギル「すいませんセイバーさん。もういいですよ」
 くるりと振り返ってそう呼ぶと、その視線先にいる少女もまた、子ギルの方へと振り向く。

セイバー「そのようですね」
 呼びかけに応えるは、ブリテンを代表する騎士王。アーサー王こと、セイバー。


セイバー「しかし英雄王。どういうつもりです? いきなり私を誘うとは(もっきゅ。もっきゅ)」
     通常の貴方ならともかく、その姿の貴方は・・・(もっきゅ)
     私に対するあの異常なまでのストーカー的執着を持たない筈では・・・(もっきゅ)」

 セイバーの両手いっぱいに抱えられた様々な種類の具乗せ型おにぎりは、どんどんセイバーの口の中
に、しかも喋りながらだというのに、凄まじいスピードで消えていく。

子ギル「・・・セイバーさん。食べるか喋るかどっちかにしましょうよ」

 あはは・・・、と。苦笑いをしつつ、子ギルはそう言う。

144 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 05:20:30

○ライダー→瞬を少女と勘違い。
○瞬→ライダーに少女と勘違いされ、珍しく慌てる
○アヤ・ブレア→子ギルに日本料理コーナーの場所を教えてもらう。今回の出番はこれだけ
○子ギル→持ち前の紳士さでコーナー案内
○セイバー→おにぎりを食べている


○セイバー/アルトリア(Fateシリーズ)
身長:154cm。体重:42kg。スリーサイズ:B73/W53/H76(cm)。7月7日生。O型。イメージカラーは青。
好きな物はきめ細かく美味しい食事。ライオン。嫌いなものは大雑把な食事と装飾過多。属性:秩序・善。
士郎と契約した剣士の英霊。外見は美しく華奢な少女だが、【セイバー】のクラスとして召喚された程
の英雄。但し未熟なマスターである士郎が原因で魔力の供給が十分ではない。性格は良く言えば実直で
生真面目だが、悪く言えば融通の利かない頑固&負けず嫌い。凛とした表情を滅多に崩さないが、怒る
と怖い。その一方で時折、年相応(?)の少女らしさを見せる事も。見かけによらずかなりの大食いであり
(本人曰く「魔力の供給不足を補う為」との事だが、食への拘り様を見れば明らかにそれだけではない)
またの名を【腹ペコ王】。正体は世界的に有名な英国の伝説的大英雄【アーサー王】。アルトリアと
いう少女が性別を男と偽り。伝説通り生前に選定の剣を岩から引き抜いて王となったが、代わりに肉体
の成長が止まった。国の為に身を捧げるも国から裏切られ、結局国を護る事が出来なかった無念と後悔
から、自身の選定をやり直すべく聖杯を求める。霊体化が出来ないという弱点有り。選定の剣である
【勝利すべき黄金の剣(カリバーン)】(生前に失われていたが、士郎により投影可能)を除くと、武器を
透過し、間合いを測らせない第二の鞘【風王結界(インビジブル・エア)】。星に鍛えられた神造兵装
【約束された勝利の剣(エクスカリバー)】、あらゆる物理干渉や魔法すらも遮断し、傷を癒す聖剣の
鞘【全て遠き理想郷(アヴァロン)】の三つの宝具を持つ誇り高き騎士王。前聖杯戦争でも切嗣によって
セイバーとして呼び出されている。ちなみに、頭のアホ毛を掴むと属性が正反対に黒化し、衣服も
黒ゴスor黒鎧に変化した存在【セイバーオルタ(通称【黒セイバー】)】となり、傍若無人で無愛想、
ジャンクフード以外は「不味い」と言い張る、食欲無尽蔵の暴君に変貌する。


○英雄王ギルガメッシュ(幼年体)/子ギル(Fateシリーズ)
第三次聖杯戦争にて弓兵(アーチャー)のサーヴァントとして召喚され、その最終決戦でのとある
きっかけから受肉したことで、現世で10年以上も現界し続けている英雄王ギルガメッシュ。それが、
ホロウにおける【永遠の四日間】事件において、こんな児戯のようなものに付き合ってられないと
【若返りの薬】(宝具の原型の一つと思われる)を飲んで幼年体になった姿。元の英雄王からはにわか
に想像のつかない姿と性格で、かなりの好人物。正に別人としか思えないのだが、由紀香をどう思うか
を聞かれて答えた内容に現れている通り、根底はやはり同一人物。ランサー同様カレンのサーヴァント
となっているが、人遣いが荒すぎるため逃げている。士郎の同級生、三枝由紀香を異性として気に
入っており、逆に青年時の強烈なセイバーに対する興味はなくなっている。黄金律は今作の姿でも健在
で、社長として経営もやっており、実はわくわくざぶ〜んのオーナー。幼年体は決して慢心しない為、
こちらの方が強いのでは? と冗談めかしてではあるがきのこより言われている。最後の夜には
【反魂の香】で『無限の残骸』を集め、青年体に戻り、油断と慢心を捨てた一生に一度の本気モード
(ギルガメッシュ・ネイキッド)となって、乖離剣エアと無数の宝具により『無限の残骸』を消滅させ
続けた。

○アヤ・ブレア:Aya Brea(パラサイト・イブ シリーズ)
身長160cm。体重48kg(但し1の時点)。年齢27歳。常人離れした美貌を持つ以外は、見た目は完全に
通常の人間。しかし、数少ない人類の進化の可能性、H・M・H(ネオ・ミトコンドリア・ヒューマン)の
一人であり、体細胞内のN・M(ネオ・ミトコンドリア)の力、P・E(パラサイト・エナジー)を持ち
傷の休息治癒や、放電、他生物のミトコンドリアに働きかけ人体発火を起こすなどいずれも超能力
レベルで、N・Mの制御を完全に解き放つ事で人間から離れたN・M・Hとしての真の姿に変身する
【リバレート】という状態があり、驚異的な力を発揮するが、アヤ自身が能力を極力封じている事で
現在は使えなくなっている。3年前はニューヨーク市警17分署所属の新人刑事。親子ほどの年齢差がある
ダニエルとバディを組み、周囲からは「親子コンビ」と呼ばれていた。しかしカーネギー・ホールでの
突然の観客焼死の惨劇から運命が一変。N・M・C(ネオ・ミトコンドリア・クリーチャー)と、それを操り、
N・Mの女王を自ら名乗るEve(イヴ)との全人類の命運を賭けた戦いを繰り広げる(後にマンハッタン島
封鎖事件と呼ばれる)その後、同僚への配慮から警察を退職。その後、FBIの秘密部署、M.I.S.T.
(Mitchondrion Investigation and Suppression Team・ミトコンドリア調査・鎮圧班)のN.M.C.ハンター
として勤務。27でありながら、活性化しているミトコンドリアの影響でその美貌は全く衰えを見せて
おらず、十代に間違われる事すらある(不老不死の可能性もある)が、本人はその事に虚しさすら憶えて
いる。マンハッタン島封鎖事件において我が身に降りかかった宿命や姉の事も含めた心の傷を引き
ずって生きていたが、新たな脅威、Shambala(シャンバラ/理想郷)と、それが創り出した存在、
A(アンミック)N・M・Cとの戦いを経て、己の苦悩に対するある答えに到達する。現在はShambalaで保護
した自分のクローン、EVEを妹として面倒を見ながら二人で暮らしている。カイルとピアースの二人に
好かれているが、アヤの気持ちがどうかは不明。

145 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 05:35:33



子ギル「ええ。確かにボクの方は、セイバーさんに特に興味はないですよ」

 セイバーの問いに対して、子ギルはあっさりとそう告げた。


子ギル「太陽の光は美しいとは思いますけど、どちらかというと由紀香のような日向の一輪の花の
    ような女性の方が好きです。・・・いやまあ、同じ英霊で王同士、仲良く善い友好関係を築ければ
いいなぁ、とは思いますけどね」

 最後に、にぱ。と笑顔。


セイバー「・・・・・・ 貴方、本当に英雄王ですか?」

 見慣れている英雄王とは180度違う、純真なニッコニコの笑顔を向けられて、セイバーは少々を
通り越して、かなり困惑していた。

子ギル「う〜ん・・・・・。やっぱり皆さんそういう反応なんですよねぇ。
    自分のことなんですけど、あんな困った大人ですいません本当に」

 小さな英雄王は溜息交じりに、ぺこりとセイバーに対し頭を下げる。

セイバー「あ、いえ、その・・・」

 そんな英雄王の姿に、いよいよもってセイバーは面食らってしまう。
 心の中で深呼吸を数回。頭の中を整理し・・・


セイバー「・・・ ああ、そうでした。
     英雄王。あなたに二つほど質問があったのでした」

 いつもの冷静を取り戻して、セイバーは改めて問うた。


子ギル「はあ、なんですか?」

 きょとんとした顔ながら、英雄王の瞳はきちんとセイバーの目を見ている。
 自然体で“聞く姿勢”を形成する辺り、まったくもって好人物。

 というか、この容姿なら“とても利発で素直ないい子”と言うべきか。


セイバー「(・・・・・・まったく、何がどうなればこの目の前の子がああなるというのでしょう)」

 と、いった感想は心の中だけに留め・・・


セイバー「まず、あなたがどうしてその姿でいるのかが知りたい。
     ここは閉じた円環の世界ではないのですから、貴方がそう退屈する理由もない筈だが」

 一つ目の問いをぶつけた。     


子ギル「ああ、なるほど・・・ いやー、それがですねえ。
    うちのマスターにかなり強烈に釘を刺されちゃいまして」

セイバー「はあ。釘・・・ ですか?」

 にわかには何のことだから駆らず、セイバーは首を傾げる。


子ギル「はい。マスターが言うには・・・」

 すっと目を閉じ、胸の前で掌を重ね、両指を組み、祈りの姿勢になる子ギル。
 おそらく、カレンのモノマネだろうか。

子ギル「“世界中から様々な方々が集まる会合に、礼儀知らずの歩く恥晒しである貴方に自由気ままに
     闊歩されては、マスターである私も同じく恥です。
     ・・・・・・なので、会合の場では小さい方でいることを命じます。
     守れなければ本気で去勢して女の子にしますので。そのつもりで”」

 と、純真な少年の顔と声で、えらく物騒な内容が再生された。


子ギル「と、いうわけなんです」
セイバー「・・・・・・・・・・・・・」

 苦笑する子ギルと、絶句しているセイバー。
 少々内容に衝撃を受けたのか、セイバーは視線が色んな方向に行ったり絶えず表情が変化したりと、
見てて飽きない状況になっていたが、それも時間の経過と共に落ち着きを取り戻し


セイバー「・・・・・・・・・なるほど。わかりました。
     そういう事情であれば、確かにあなたのその格好は納得が行きます」

子ギル「で、もう一つの質問は何ですか?」

セイバー「勿論、私を何の目的で、いったい何に誘ったかについてです」

子ギル「あー、なるほど。そうですよね」
 自分の予想とぴったり合っていたのが嬉しいのか、少しにこやかな顔で

子ギル「幻想界には、時に物質界の人物と平行的な同一存在というのが居たりするパターンがある。
    というのは知ってますか?」

セイバー「ええ。聞いた事があります。
     特に英霊ともなれば、必ずという程に近い割合で同名の英霊が幻想界に存在しているとか」

子ギル「さすがセイバーさん。よくご存知ですね」

セイバー「と、いうことは、つまり・・・?」

子ギル「ええ。今回聞いた話に寄りますと、なんでも幻想界から来たお客さんの中にですね、
    僕とセイバーさん・・・ つまり、英雄王ギルガメッシュと騎士王アーサーの平行同一存在
    の一人である英雄がいらっしゃってるらしいんです。
    面白い機会ですから、是非物質界(こっち)側の英霊として、ご挨拶しておこうかな、と」

セイバー「・・・なるほど。私を誘ったのはそういう理由でしたか」

子ギル「ええ。セイバーさんも興味、あるでしょ?」

 答えは分かってますよ、という陰を含んだ、無邪気ながらもどこか人を食ったニヤリ顔。


セイバー「・・・・・・・・・ ええ、まぁ。
     無いと言えば、ウソに・・・ なります、ね」

 子ギルから視線を外し、やや上に向けつつ、微妙な照れ顔になるセイバー。

子ギル「じゃ、決まりですね」

 子ギルはニンマリと微笑むと


子ギル「じゃ、行きましょうか」

 軽快な足取りで、目的の場所へと先導する子ギルと、後ろから付いていくセイバー。 


セイバー「(まさか、英雄王の後ろから付いていくような事があるとは・・・)」

 後ろから付いてこられたり、追いかけられたり逆に怒り心頭に来て、追いかけてエクスカリバーで
吹き飛ばすような事はあったが、黙って英雄王の後ろを歩くなど全く想像もできなかった。

 彼がずっとこの状態であれば、心労が無くて済むのだが・・・


子ギル「あ、セイバーさん。ちょっとお耳を拝借」
セイバー「え? あ、はい」

 不意に名を呼ばれ、セイバーは軽く驚きを見せた。
 その隙を縫うように、すっとセイバーの耳元に背伸びし


子ギル「・・・・・・さっき沈黙してた時、実はボクの女の子姿を想像してたでしょう?」

 天使の笑顔のまま、小悪魔な目線で、
 セイバーの頭の中を完全に読んだかのような、ストレート毒言(スペル)。

セイバー「なっ・・・・・・・・・!!!??////////////

 セイバーは、その一言で一気に耳まで真っ赤にしてしまう。

子ギル「あはははは。やっぱり図星みたいですね〜」

 ケラケラと子供らしく笑う子ギル。

 セイバーは確信する。
 見た目は無邪気だが、この英雄王は、大人の時以上の、イリヤスフィールをも超えるデビルだと。

セイバー「え、え、英雄王〜〜〜〜っっ!!!!」

 完全に頭に血が昇ったのか、瞬間に武装し、風王結界まで発動しだすセイバー。 


子ギル「あははははは。そう本気にならないで下さいよー。
    子供のほんのイタズラ心じゃないですか。心配しなくてもフェイカーのお兄さんには
    “セイバーさんが僕の女の子姿を想像して顔を赤くしてました”とか言いませんから」

 脱兎の如く、小さな体と機敏さを活かし、群集の間をスイスイ逃げながら、なおセイバーを
からかう小さな英雄王。
 実際よく考えている。ああいう逃げ方なら、風王結界では他の人たちを巻き添えにしてしまう
わけだから、完全な風王結界封じというわけだ。


セイバー「なっ・・・ 待ちなさい!! 
     大人をからかうお子様にはお尻ペンペンと決まっていますっっ!!!」

子ギル「うわー、そんな前時代的で恥ずかしい体罰、絶対嫌だなぁ。
    まぁせっかくだから、追いかけっこで親睦を深めましょうか。
    ハイハイ、鬼さ〜んこ〜ちら♪」

セイバー「こっの・・・・ 許しませんよ、英雄王─────────っっ!!!!」


 そうして、英雄二人による、なんともどうでもいい鬼ごっこがスタートした。


146 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 05:35:58

○セイバー→子ギルにいいようにからかわれ、全力で追いかける。
○子ギル→セイバーを巧みにからかい、追いかけっこへ

147 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 05:38:57



子ギル「しつこいですよー、セイバーさーん。
    ムキになるのも負けず嫌いもほどほどにしないと〜」

セイバー「ええい! なら大人しく捕まりなさいっ!!」

子ギル「あ・・・っ」
 その目線の先に何かを発見するや、子ギルは急に減速をし始める。

セイバー「隙ありっ!!」

 それは当然の如くセイバーにまたとない好機を与え
 セイバーは地を蹴り、一気に正面へ跳び──


         (ガバ─────ッッ!!!)


子ギル「わっ!?」

 まるで一流のラグビー選手のように、がっしりと子ギルの肩を掴み、キャッチ(捕獲)した。

セイバー「どうですかっ。英雄王!
     このように、本気の私はかけっこでも負けないのです」

 ふふん、と。
 実に得意そうな顔で微笑むセイバー。

子ギル「あははは。捕まっちゃいましたねぇ」
 対し、ひっ捕まったというのに、実に楽しそうな子ギル。


 そこに

??????「あらあら、賑やかで楽しそうね」

 神々の楽器の奏でる調べの如く、品のある、美しき女性の声。


セイバー「あ・・・ すみません。騒がしくしてしまって・・・・・」

 声の方向── 真上を向くと同時に、セイバーは動きが止まってしまった。
 その女性(ひと)は、まるで神話の絵画から抜け出てきそうな、『神聖なる女神』そのもので。
 女性であるセイバーが、思わず見蕩(みと)れてしまったから。

 想像するまでもなく、一角の・・・ いや、確実に高位の女神なのだろうと、セイバーは確信する。
 事実その通り、セイバーの目の前に座している女神は、他の英雄達と共に再び地上へとやってきた、
戦女神ワルキューレその人だった。


ワルキューレ「(クスッ・・・)いいえ。お気になさらずに。
       ご姉弟かしら? 仲が良さそうでいいわね」

 声が出ないセイバーに対し、戦女神ワルキューレは微笑を交えそう語る。

セイバー「・・・・っ!? してっ・・・!!?」
 その発言に、顎を外し兼ねんほどに驚愕し、絶句するセイバー。

子ギル「あ、そう見えます?
    いやぁ、セイバーさんの弟に間違われるなんて光栄ですねー」

 対する子ギルは、皮肉ではなく本当に嬉しそうに反応をする。


ワルキューレ「セイバー・・・? というと、あなた方は・・・」

子ギル「はい。物質界で英霊の誉れを頂いています、セイバーさんこと騎士王アーサー。
    そして僕は英雄王ギルガメッシュです。
    始めまして、女神ワルキューレ。お会いできて光栄です」

 その瞬間、子ギル本人から漂う空気は完全に一変した。
 つい少し前まで無邪気に走り回っていたとは思えない、完璧なる王の礼儀、立ち振る舞いを見せる。

 さすがは世界最古の英雄。半神半人の英雄王と言える。

 まあ、尤も・・・
 追いかけっこをしながらも、事前に誰が来ているかを完全に知っている上で、自分の意志でセイバー
を目的地であるこの場所まで誘導したのだから、当然といえば当然なのだが。



セイバー「ワルキューレ・・・!? 貴女が・・・!!?」

 戦女神ワルキューレの事は、当然セイバーも知っている。
 このレストランには各地各世界の英雄が集っているとは聞いていたが、こんな風に至って普通に、
遥か天上の存在である神々の一人が座って茶話の輪に溶け込んでいるなどと、誰が思おうか。


ワルキューレ「こちらこそ、お会いできて光栄です」

 そう言って、ワルキューレは何の躊躇もなく、白魚の様に、という例えさえ憚られる美しい手を
差し出し、初めて出会う英雄達に握手を求める。

 そうして、子ギル、そしてセイバーと、ワルキューレは片鱗も神としての気位も威風も見せず、
まるで自分が全くの同等の存在だと言わんばかりの友好の意を、握手で示してくれた。

セイバー「・・・・・・・・・・・」

 そこに何の計算も裏表もないであろう事は、女神の笑顔が証明している。
 その瞳は万人の母が如く慈愛を感じさせながら、生まれしばかりの赤子の様な純粋無垢。
 しかし同時に、その奥底には、英霊すらも凌駕する戦女神の名に相応しき力強さも、セイバーは
英霊として感じ取っていた。

 初めて相対する女神、ワルキューレという存在の、初見だけで感じ取れる奥深さと広大さに、
セイバーはしばらく圧倒されていた・・・


148 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 05:39:21

○ワルキューレ→セイバー、子ギルと初対面。自然体ながら女神のオーラを見せる。
○子ギル→追いかけっこをしながらもきちんとセイバーを誘導。目的地に着くやわざと減速し捕まり、
     ワルキューレに礼儀正しく挨拶をする。
○セイバー→子ギルに追いつき、ワルキューレと対面。オーラに圧倒される。

149 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 06:55:43



ワルキューレ「なるほど・・・ それでは、貴方達がそうだったのですね。
       幻想界での私がよく知る英雄の方々と同じ名を持つ方が物質界側の側にいらっしゃる
       とはお聞きしいていたのですけど・・・ まさか、こんな可愛いらしい方々だったなんて」

 子ギルの口から述べられた簡潔な自身らの紹介を聞き、ワルキューレはなるほどと頷いた。

セイバー「は、はあ・・・ それは、どうも・・・ その」

 いまだ驚きが強いのか、それとも緊張か。
 セイバーが少々しどろもどろな返答になっていると


ワルキューレ「ところで・・・ どうお呼びすればいいかしら?
       アルトリアさん、でいいのかしら? それとも・・・」

セイバー「あ・・・ はい。私はサーヴァントですので、セイバーとお呼び下さい」

 いつものお決まりに近く、セイバーは【セイバー】の名で呼ばれる事を選ぶ。

ワルキューレ「そうですか。では、お言葉に甘えて【セイバーさん】で。よろしくお願いします」
 
 文字通りの女神の笑顔で、ワルキューレは改めてセイバーに友愛の意を示す。

セイバー「はい。ワルキューレ様にそう言って頂けるならば、身に余る光栄です」

 セイバーも、段々といつもの平静を取り戻してきたのか。
 ワルキューレに対する受け答えも、落ち着いたものになってきていた。

ワルキューレ「あら、セイバーさん。
       私の事は、気軽に【ワルキューレ】と呼んで下さって結構ですよ?」

 しかしワルキューレの人柄は、そんなセイバーの予想を遥かに超えていた。

セイバー「なっ・・・!? そ、そんな、恐れ多すぎま・・・」
子ギル「セイバーさん。こういう時は素直に受け入れるのが礼儀ですよ」 

 びっくりして思わず手を左右に振るセイバーに、すかさず子ギルが自然に間に入り、そう言う。 

セイバー「む、そう・・・ ですか?」
ワルキューレ「はい」

 気持ちよく頷く、ワルキューレ本人。
 こうなっては、セイバーも覚悟を決めるしかない。

セイバー「で、では・・・ 【ワルキューレ殿】、で」
ワルキューレ「はい♪」

 緊張を隠せぬまま大胆な事に挑戦したセイバーに対し、本人は明るく返事を返してくれた。


子ギル「それでは互いの挨拶も済んだ所で・・・」
ワルキューレ「そうですね。では・・・」

 そう言うと、ワルキューレは席を立ち、ある二人の人物の名を呼びながら探し始めた。




  ◇    ◇




 すると、程なくして、一人の青年が子ギルとセイバーの前に現れる。

 青年は、格好こそTシャツにジーンズと、現代に適したラフスタイルだったが、
 その実全体から漂うものは、先刻のワルキューレとはまた違う、セイバー達がよく知る英霊達のそれ
にとてもよく似ていた。

 そういった感想をセイバーらが抱いている間に、青年は、子ギルのすぐ数歩前にまでやって来た。


ギルガメス「やあ。始めまして」
子ギル「どうも、始めまして」

 何かしら互いに感じるものがあったのか。
 初対面の筈の二人は、出会ってすぐに互いに握手をする。

 勿論、隣のセイバーに対しての礼も、青年は忘れていない。

ギルガメス「僕は幻想界バビリム国の王。ギルガメス」
子ギル「僕は物質界、古代メソポタミアの初代王、ギルガメッシュです」

 男同士らしくがっちりと握られた、青年と子供の体格差のあるやや斜めの握手も、簡単な自己紹介と
ともにゆっくりと離された。


ギルガメス「不思議だね。ワルキューレさんに話を聞いて来てみたら、遠くからでもすぐわかったよ」

子ギル「ええ。僕もすぐわかりましたよ。
    やっぱり存在世界が違っても、僕らは“黄金”みたいですね」

 互いに初めて出会った筈だというのに、全くそんな風を見せない。
 数歩後ろから見ていたセイバーには、まるで兄弟が久しぶりに顔を合わせたかのような親しさすら
感じ取れるほどであった。

ギルガメス「それで、君が・・・」

セイバー「はい。物質界の旧ブリテンの王、アーサーです」

 よろしく、と。
 今度は、セイバーとギルガメスの間で、にこやかに握手と挨拶がなされる。

 ギルガメスの裏表のない人柄は非常に英雄の見本というべきものであり、これまで様々な英雄、騎士
を見、また相対してきたセイバーにとっても久しい気持ちの良さがあった。

 ・・・ただ、セイバーが自身をアーサーと言った時にギルガメスが一瞬見せた、驚きと困惑の表情だけが
少々気になったものの、セイバーの直感スキルは何故かそれを尋ねる事を踏みとどまらせる。


子ギル「ところで、もう一人の方は?」

 セイバーが聞きあぐねていると、子ギルの方が先にその質問をギルガメスにぶつけた。

ギルガメス「ああ、彼は・・・ そうだね。もうすぐ来ると・・・ 思う」

子ギル「いやぁ、幻想界のアーサーさんはどういう人なんでしょうねぇ。
    僕の場合のお兄さん(ギルガメス)を考えると、かなりカッコいい銀騎士かも」

ギルガメス「うん、まあ・・・」

 対するギルガメスの答えは、どうも歯切れが悪い。
 それに、先刻から時折、気まずそうにセイバーの方を見ては視線を外したりしている。

セイバー「・・・・・・・・?」
 セイバーが、なんだか理由の分からない不安に支配され始めていると


アーサー「おお、いたいた!! お〜〜〜〜〜〜〜〜い!!!!

 後方から唐突に、野太い中年男性の声が響いてきた。

セイバー「・・・・・・」

 セイバーが、恐る恐る振り向くと

アーサー「すまんすまん。待たせたな」

 はっはっは。と、豪快に笑う、銀色の鎧に身を包んだ、ヒゲの中年男。
 ガッシリとして肩幅が広い割には何故か背が低く、セイバーからも見下げる形となっていて、まるで
中世に目にした事があるホビット族を思わせる。

 改めて言うまでもなく、セイバーの様相、雰囲気とは正反対である。


ギルガメス「遅かったね。何かあったのかい?」

 アーサーの軽い遅刻に、ギルガメスが純粋な心配で尋ねると

アーサー「いや、俺もすぐ来るつもりだったんだが、未知の途中で骨付き肉争奪バトルが白熱していて
     なぁ。これがなかなか・・・」

 そう言うアーサーの右手には、ジューシーな骨付き肉が握られていた。・・・かじりかけの。


セイバー「・・・・・・・・・」
子ギル「・・・・・・・・・・」

 珍しく、沈黙がシンクロする両者。


セイバー「あの・・・ すいません」

 ひとたび深呼吸の後、セイバーはギルガメスに近寄ると、小さな声で尋ねる。

ギルガメス「ああ・・・ 何?」

 ギルガメスもセイバーの言いたいことがある程度分かっているのだろう。
 彼の声も、アーサーに聞こえない程度に小さい。

セイバー「その・・・ まさかとは思いますが」

ギルガメス「うん・・・ 彼がアーサーだよ。
      いや、君の気持ちはわかる。けど彼はその、少し豪快なだけで、決して・・・」

セイバー「はあ・・・」
 決して、の先は何だったのだろうか。


アーサー「それで、そこのお嬢さんかな? 物質界のアーサーというのは」

セイバー「ええ、その・・・ はい」

アーサー「そうかそうか。しかし、物質界(こっち)のアーサーがアンタみたいにかわいいお嬢さん
     とは光栄だな」

 豪快に笑うアーサー。
 ギルガメスとは形が違うが、彼もまた裏表のない好漢であるらしいことがわかる。
 ・・・少々、あの征服王に似ているだろうか。

 最初は面食らって少々驚いたものの、なるほど。人に嫌われるのが難しい性質の人間のようだ。

セイバー「・・・コホン。何はともあれ、同じ銀の騎士のアーサー同士が集ったのです。
     今後、悪しき輩から世を守る為、共に剣を合わせる事もあるでしょう。
     貴殿がよろしければ、今ここで友好の意を」

アーサー「・・・・・・・・・ ああ! 握手のことか?
     そうだな。一緒に手合わせなり共闘なりやってみたいもんだ。
     嬢ちゃんもかなりの使い手みたいだしな」

 差し出される、握手。
 セイバーも迷いなく、その手を握ろうと・・・

アーサー「む・・・?(ムズ・・・)」

 したその時、アーサーがふいに顔をゆがめた。

ギルガメス「あ・・・」

 ギルガメスが「やばい」という顔をした時点で、もう後の祭り。

アーサー「は・・・ は・・・」

 
アーサー「ぶぅえあっくしょい!!!!


         (パ────ン!!!!)


 一部の人間が見れば、キャストオフの一種かと見紛うただろうか。
 クシャミを点火の合図としたかのように、一瞬で花火の如く吹き飛ぶ銀の鎧。

 そしてその後には、トランクスのパンツ一丁の姿のアーサーが残るのみ。



ギルガメス「・・・・・・・・ やっちゃったか」

 思わず天井を仰ぎ、片手で目を覆うギルガメス。

子ギル「・・・・・・・・・・・・」

 さすがに目を点にしている、子ギル。

 そして


セイバー「・・・・・・・・・」
 
 セイバーは・・・
 いや、セイバーを中心とする空間は、本人の表情ごと、完全に凍結していた。


アーサー「あ〜〜・・・ いかんな。どうもくしゃみのたびに脱げてしまう」

 明るく苦笑しながら鎧のパーツを一つ一つ拾う、その元凶。
 ここまで凍りついた空気を全く意に介していない辺り、本当に征服王といい勝負をしている。


子ギル「あの〜〜・・・ セイバーさん?」

 恐る恐る声をかける子ギルだが

セイバー「・・・・・・・・・・・・」

 セイバーは凍結したまま、微動だにしない。

子ギル「・・・・・・まあ、無理もないですけど。参ったなぁ・・・ あ、そうだ」

 ポン、と手を叩き


子ギル「あ、アツアツ出来立てのおいしそ〜なタイヤキが」

セイバー「(パキンッ!)どこですかっ!!?」

 瞬間解凍、成功。

子ギル「(ホント、わっかりやすい人ですねー・・・)」

 実際、アーサーさんと共通点もそれなりにあると思ったりする。
 案外行動パターンが単純だったり、ヌケている所とか。食べ物に対しての執心ぶりとか。

 ・・・・・・まあ、勿論口には出さないが。

 
セイバー「む。そういえば、私は何を・・・」

子ギル「はいはい。心の整理をきちんとつけるのは後々にして。
    挨拶も終わったところで、さっさと行きますよ〜」

 前後の記憶が一時凍結したままのセイバーの手を引き、子ギルはサッサと退場することにした。

セイバー「ああ、タイヤキを食べに行くのですか?」

子ギル「そうそう(・・・・・タイヤキなんてあったかなぁ。やっぱり日本食のおやつコーナーとか?)」

 などと考えつつ。

 ただ、たった一回だけ後ろを振り返り、「すいません、また後日〜」と、ギルガメスとアーサーに
きちんと手を振って伝えた上で。


150 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 06:56:12

○セイバー→アーサーのパンツ一丁にフリーズするも、子ギルの機転で解凍。
○子ギル→ギルガメスと出会い、すぐに仲を深める。セイバーを一瞬で解凍し、手を引いて退場
○ワルキューレ→セイバーと子ギルの為に、アーサーとギルガメスを呼ぶ
○ギルガメス→子ギルと出会い、すぐに仲を深める。
○アーサー→お約束とばかりにパンツいっチョ姿に。

151 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 07:27:03



        一方  時と場を戻し
 
     ギリシア料理コーナー  激闘地区



士郎「こ、これは・・・」

 セイバーと子ギルがタイヤキを探し始めた時より、十数分後。
 空になった料理のトレーを新たに補充する為に厨房から大盛り料理入りのトレーを持ってレストラン
に戻ってきた士郎は、騒ぎを聞き駆けつけたその先で、驚愕の余り絶句していた。


 ランサー、小次郎、キャスター。そしてライダーまでもが、どこかで見た事のある人たちと
ガチで闘り合っている。

 キンキンカンカンと、金属音はまるで協奏曲のように鳴り響いているし、
 椅子か机かの木片や、大理石の床の欠片、果ては何故か氷の破片まであちこちに散ってる始末。
 これは・・・ 果てしなくヤバイ。

士郎「(こりゃ、どうするべきかな・・・)」
 と、士郎が難題を前に悩んでいると

小牢「うっひゃ〜〜・・・・・・ どえらい乱闘騒ぎになっとるなぁ」

 ひょこっと。
 士郎の真横から登場したのは、森羅エージェント小牢。
 

士郎「あっ! あんたは俺をスカウトしに来た森羅の人!!
   確か・・・ ・・・・・・? え〜〜と・・・」

 そういえば、名前なんだっけ?

小牢「小牢じゃシャオムゥ。シェンムーではないぞ」

士郎「ああ、そうだったそうだった。・・・じゃなくて、何してんだあんた」

小牢「ん? そりゃあわし、森羅のエージェントじゃし」

士郎「ああ」
 そういえば、家にスカウトに来たときも腕利きのエージェントとか言ってたっけ。

士郎「ってことは、止めに来てくれたのか!? よかっ・・・」
 
小牢「あっはっは。無理無理。
   わしだけであんな超絶レベルの連中止められるわけないじゃーん」

 能天気に笑いながら、ダメダメと手を振る小牢。

士郎「うわー、役に立たねー」
 と言って、士郎も一緒に笑う。

士郎「・・・それじゃ、ここへは何しに?」

小牢「まあ正直な話、いきなり止めに入っても乱闘が拡大するだけじゃし、とりあえず様子見」

士郎「そんな悠長な・・・」

小牢「大丈夫じゃって〜。
   わしの長〜〜い人生経験からするとな、こーゆーのはほっといても自然と落着するモンじゃよ?」
   ほれ、“雨降って地下貯まる”と言うじゃろ?」

士郎「・・・つっこまないぞ」
小牢「ええ〜。イケズ〜〜」

 ぶりっ子風の口調で、くねくねと妙な動きをしている小牢。

士郎「・・・・・・・・」
 間違いない。この人、藤ねぇと同類だ。


士郎「で? 手に持ってるのは何?」

小牢「ん〜? お主ハンディカム知らんのか?
   それはいかんのぅ。若いんじゃから、若者らしくもっと最近の電機に詳しく・・・」

士郎「そういう意味じゃなくて。
   おもいっきり録画してるのはどういうことですかって聞いてるん・だ!!」


小牢「なにぃ!? サーヴァントvs聖闘士じゃぞ!? 神話と神話のバトルじゃぞ!?
   こんなお宝映像、撮らずしてどうする!!」

 (ドド────ン!!!)

 効果音付きで、堂々と胸を張って答える小牢。
 瞳をメラメラと燃え上がらせての力説振りは、他者の追随(ツッコミ)を許さない。

士郎「・・・・・・・・・・(ダメだ、こりゃ・・・)」
 対して士郎の方は、北極の海の如く冷えている。

士郎「(・・・早く俺が何とかしないと)」

 このまま放って置いたら、間違いなくこのレストランフロアは倒壊、建物は崩落だ。

 小牢(この人)は残念ながら、まず頼りにならない。
 それに俺だけでも、あの面子を止める事は・・・

 しかし今も続いている激戦に、悩み考えている時間は残されていないだろう。
 するべき行動を決めるなら、今を置いて他にない。

 俺は────



    ────────────────────────────────
   │                                │
   │      ほっとこう                     │
   │                                │ 
   │   ●  身を挺してでも止めにいく              │
   │                                │
   │      俺だけじゃ無理だ。他の奴を───          │
   │                                │
   │                                │
    ────────────────────────────────





 よし、ここは身を挺して止めに入ろう。

 その選択絶対間違ってるぞとゆーツッコミがどこかから聞こえる気がするけど・・・
 とにかく行動あるのみだ!!!


 ・・・と、士郎が決断し、仲裁馳せ参じようと踏み出した、その時


ランサー「あっ!! 坊主、危ねえぞ───!!!」

士郎「────・・・・・・え?」


    (ヒュンッ・・・───)


       (スッコ────────ン!!!!)


士郎「ぐはっ・・・!?」
 気持ちいいぐらいに頭蓋に響く音と、衝撃。 

 何が起こったかというと、実に単純な話。
 超人同士の剣戟の影響で吹き飛んだ椅子が、士郎の頭に見事ストライクしたのである。


小牢「ありゃ」

 大丈夫かー、とか。
 後ろの方で聞こえる小牢らしき人の声も、だんだん遠くなっていく。

 薄れゆく意識。駆け巡る走馬灯。


士郎「(・・・・・・ああ、やっぱりこういうオチか。
    いや、わかってたよ。わかってたとも・・・・・・)」




            【DEAD END】




  ◇    ◇





     ????道場


士郎「・・・・・・・・・ ぅ・・・・・・ あれ?」
 軽い眩暈と共に、士郎は目を覚ます。
 開いた目に

士郎「(俺、たしか・・・ ああ、久しぶりにDEADENDしたんだっけ・・・?)」

 と、いうことは・・・


(パンパカパーン!! ダン、ダン、ダン、ダ────ン!!!)


 突如鳴り響く、ファンファーレ。


タイガ「いやっほぉ────!!! 全国全世界全時空のみんな────!!!!
    タイガー道場の時間だぜぇ────────────っっ!!!!!!!」

Bイリヤ「いえ────────────い!!!!」


士郎「・・・・・・・・・・・・・・・」

 な、なんてこった。
 約半年以上ぶりに、ここに来ちまった・・・・・!!


152 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 07:27:36

○衛宮士郎→いつものようにありえない選択肢を選び、タイガー道場へ直行
○小牢→結局士郎と漫才をしつつ、カメラを回していただけ
○タイガ&Bイリヤ→ノリノリで登場

○タイガ(Fateシリーズ)
身長:159cm。体重:53kg。スリーサイズ:B??/W??/H??(cm)。イメージカラー:虎。
特技:剣道、自堕落、不思議空間。好きなもの:万物全て。苦手なもの:ライオン。
冬木市最強の女。士郎達の学園の英語教師とは別の平行世界のタイガ。Bイリヤをマスターとする、
サーヴァント(奴隷)のサーヴァント。元の世界ではサブキャラ反乱のリーダーとなり、調子に乗って
どっちとも木っ端微塵にしたらしい。Bイリヤに呼び出され、花札聖杯戦争を経て、マスターと
サーヴァントの関係でありながら師弟という奇妙な関係を形成、【どこでもない世界】にあるタイガー
道場を住処とし、現実世界にありとあらゆるちょっかいを出したり、士郎のバッドエンド後のお助け
コーナーとして登場もした。存在自体がおふざけの塊だが、意外にサーヴァントとしての性能は高く、
桜の影の一撃が「いたた」程度だったり剣技で小次郎と互角に渡り合ったり、ティーゲル戦車を一撃で
粉砕したりした。固有結界【タイガー道場】は強制的に相手を花札という勝負形式に参加させるもので
黒桜の呪層界を簡単に塗り潰し、連続で行うと術者が耐えられないという固有決壊の常識をも無視し
何度も形成できる無茶苦茶さ。宝具の虎竹刀にはプルトンスイッチがあり、押したが最後地球を滅ぼす
大爆発を起こすらしい。また、【タイガーころしあむ】ではなんと主人公に昇格。純粋且つ小規模な
願望器【虎聖杯】を手に、バーサーカーを喋らせたりセイバーライオンを生み出したりと散々好き勝手
やらかした。彼女もまた「タイガー」と呼ばれると激しく怒る一方で、虎のストラップを愛用の
「虎竹刀」に付けていたりする。彼女にとって虎とは「深く憎み、そして愛している」存在。
お化けは苦手でゴザル。

○B(ブルマ)イリヤ /ロリブルマ(Fateシリーズ)
身長:133cm。体重:34kg。スリーサイズ:B61/W47/H62(cm)。11月20日生。B型。イメージカラー:銀。
特技:特になし。好きなもの:雪。苦手なもの:寒い所、猫。
BADEND後のお助けコーナー【タイガー道場】の弟子一号「ロリブルマ」として登場。 聖杯戦争に参加
するマスターの一人とはまた違う、平行世界の同一存在。素直かつ無邪気だが、妖艶さと狡猾さ、残虐
性をも垣間見せる性格は変わらず。コミカルさと無茶苦茶さは倍増。【メイドに支配された世界】
(武内神の力が多分に働いている世界と思われる)の出身。サーヴァント・タイガのマスターにして一番
弟子。常に体操服とブルマを着用。タイガの事を深く尊敬していると共に、固有決壊の継承を狙って
隙あらば何度も命を狙う程の師弟愛(?)を持つ。【どこでもない世界】にあるタイガー道場を住処とし、
現実世界にありとあらゆるちょっかいを出す。【風雲イリヤ城】では遂に本格的にタイガに造反するも
タイガが呼び寄せたサーヴァント軍団によるリンチによって、野望は潰え城と共に自爆。
しかし【タイガーころしあむ】では何事も無かったかのようにいつもの仲良し師妹関係に戻っていた。


153 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 07:42:12


タイガ「タイガぁ〜〜〜〜〜っっ!!!」
Bイリヤ「道っっ場ぉ〜〜〜〜〜〜〜っっ!!!!」

タイガ&Bイリヤ「「いっっえ〜〜〜〜〜〜い!!!!!」」


        (ちゅど〜〜〜〜〜〜ん!!!!!!)



 戦隊の登場風に、二人の後ろ、道場の床からの爆発。
 

士郎「・・・・・・・・・・・・」

 派手なアクションが好きな藤ねえなら、こういう登場も考えるだろう。
 確かに派手だし、目立ってる。
 戦隊でもやらないぐらいの、倍威力の爆発は度肝を抜かれたし、色付きの煙も決まってる。

 ・・・・・・ただ、明らかに藤ねえとイリヤが立ってた位置がおもいっきり爆発と煙の中心だったけど。


士郎「おーい、大丈夫かー」

 あまり心配していないのが丸出しの声で、煙の中にいるであろう二人に呼びかける。
 すると程なくして、派手な色の煙は晴れていき、次第に不死身の二人らしき影が見えてきた。


タイガ「げほっ、げほっ・・・ ちょ、ちょっと火薬の量を間違えたみたいね・・・ 失敗失敗」
 煙の中から現れる、煤だらけのアフロ。

Bイリヤ「もー! だから火薬の量には気をつけてって言ったんすよー!」

 そして片や、同じ爆発に巻き込まれた筈なのに、それほど煤汚れもなければ神も至って無事な、
ブルマーの悪魔っ娘。


タイガ「む。ちょっと待て弟子一号よ。
    私がこれだけの状態なのに、ユーだけ釜をフーフーした程度というのはこれ如何に?」

イリヤ「ふふぅん。当然よ。
    貴女みたいな純度100%お笑い担当とは違って、私は3人目の闇ヒロインよりも人気で勝る
    最強のヒロイン候補。そんな私には常にH(ヒロイン)フィールドの加護によって、泥水は
    届かず粉は被らず、パイは命中せず、胸像フィギュア付きの本だって作ってもらえるんだから」

タイガ「な、なんだってぇ──────────っっ!!!?
    さすがはFateが誇る残酷な天使、テーゼがやがて飛び出して魂がルフランだぜ!?」

 驚愕するタイガ、何故かその背後に稲光。・・・道場の中なのに。


士郎「・・・・・・・・・・・・・・・」
 そんな二人のあまりのハイテンションさに
 士郎はただただ立ち尽くすしかなかったが

士郎「・・・・・・漫才、終ったか?」
 このまま放って置くといつまでも終らないと判断し、観念して話しかけることにした。


タイガ「おっとぉ忘れてたぁ!
    はぁい士郎〜〜。久しぶり!」

 にこやかなスマイルで士郎を出迎えるタイガ。
 いつのまにかボロボロの胴衣もアフロも、完全に元に戻っている。


士郎「あ〜・・・ なんてゆーか、全開だよな」

タイガ「あっはっはー♪ そうなのよー。2008もタイガー道場はバリバリ全開だよー。
    ネズミいないけどねー。何せ虎ですからー、来ても食べちゃうもんねー」

 いつもの如く、わけのわからない事も言い始めた。
    
タイガ「いやぁ〜〜。つい嬉しくってねぇ〜。 なんたって、とらぶる道中記では実質主役
    だったしぃ〜。今回のたいがーころしあむに至っちゃあ100%主役なんだもの〜。
    ようやく私の魅力にみんなが気付いてくれたっていうかぁ〜。ようやく時代が私の方に
    傾いてくれたっていうかぁ〜。とにかく(以下省略)」

 延々と嬉しそうに、体をくねくねさせながら喋り捲るタイガ。 


士郎「・・・・・・すごいな、今回の藤ねえ」

Bイリヤ「そう、タイガはずっとこんな感じなの。
     色物キャラとして異例の優遇をされて舞い上がってるのよ。
     愚かよねー。一時的にブレイクして天狗になったイロモノ芸人みた・・・」

タイガ「指導っ!! ズビシ ズビシ ズビシ ズビシ ズビシ!!!」

 すかさず飛んでくる、タイガの連続上段。
 妖刀虎竹刀がイリヤの頭をポコポコいわしている。 

Bイリヤ「いた!? いたたっ!!
     やーっ!! それマジで痛いっすししょー!! ジドウギャクタイ反対───っ!!!」

 逃げ回るイリヤと、追いかけるタイガ。
 なんか、有名なネズミとネコのアニメを見ている気分になる。


士郎「あのー・・・ 俺、帰ってもいいかな?」
 はい。と手を挙げて発言する士郎。

タイガ「ノウ!! 当劇場は途中退場禁止ゆえ、ちゃんとアドバイス聞いてけ!!」

士郎「・・・わかったよ。アドバイスで聞いたら返してくれるんなら」
 どのみち、言うとおりにしないと返してくれそうにないし。

タイガ「そーそー。そう素直に聞いてくれればいいのよー。
    で、今回のアドバイスなんだけどぉ」

士郎「・・・・・押忍」

タイガ「あのねえ士郎。あなたの悪い癖よぅ?
    Fateきっての暴れん坊達と、あの神話の少年達の乱闘なんて例えプロレスラーの一個大隊でも
    止められないなんて当たり前なんだから。士郎が入って行ってもそれ即ちタイガー道場いらっ
    しゃい、私大歓迎。は自明の理よ?」

Bイリヤ「そーそー。せめて止められそうな人を何人か連れてくるかしなきゃね〜。
     餅は餅屋。ナンパ槍男は外道シスター。奥様とサムライには無口教師。
     そして歩く暴走特急には日陰マスターあるのみよ」

士郎「・・・・・・・ああ、うん」

 なるほど、そうだよな。
 てゆうか、何でそんな当たり前を失念していたんだろう、・・・謎だ。

タイガ「わかったらそろそろ何でも一人でなんとかしようとするのはいいかげん卒業しなさいね。
    今の貴方にはたくさんの強敵(とも)が居るんだから、素直に頼る時は頼っちゃいなさい。
    どぅーゆーあんだすたん?」

士郎「・・・・・・わかった。久しぶりに参考になったよ。
   ありがとう、藤ねえ。イリヤ」

 藤ねえにはにかんだ笑顔を返し、イリヤには髪を軽く撫でる。


Bイリヤ「・・・うん。でも気をつけてね。
    これからシロウは色々タイヘンだから」

 髪を撫ぜてくれる感触に、気持ち良さそうに身を任せながら、イリヤはそう呟いた。

士郎「大変・・・? 俺が? それって・・・」

Bイリヤ「うーん、正確にはタイヘンなのはセイバーとリンだけど・・・
     その時が来たらわかるわ。その時は、道場(ここ)に来ないように頑張ってね。お兄ちゃん」

士郎「・・・オーケー。よくわからないけど、頑張るよ。
   それじゃ、そろそろ・・・」

タイガ「はーい。お帰りはあちらねー。忘れ物のないようにー」
Bイリヤ「宿題やって歯をみがけよー」

士郎「はいはい」

 珍しく何もないうちに帰れるんだ。
 酷い目に逢わないうちに帰らなくちゃな。

タイガ「・・・・あーそうだ。今度は私達がそっちに行くからよろしっくね〜?」

士郎「あー、はいは・・・・・・・・・・ え゛!!?」

 ちょっと待て。今・・・
 すごい、不吉な事言わなかったか!?

Bイリヤ「あら、そう驚くほどの事じゃないでしょ?
     あれだけ世界中で時空やら固定観念やらが滅茶苦茶に歪んでるんだもの。私達がそっちの
     世界にお邪魔しに行くぐらい、簡単なんだから」


士郎「な・・・・・・」
 この二人が、俺たちの世界に来る・・・!?

 馬鹿な、そんな事になったら冬木の街は壊滅・・・ いや、下手したら世界が虎色に染まってしまう。
 Dショッカーや並居る魔王も真っ青な、【至上最凶の悪夢(たいがーころしあむ)】の再来だ。

 そんな野望今すぐ止めないと・・・ って


      (がお〜〜〜〜〜〜〜ん・・・・・・・)


 その時。
 衛宮士郎の視界の全てが歪み、虎柄に変化し、ぐにゃりと曲がり始めた。


士郎「う〜〜〜わ〜〜〜〜〜あ〜〜〜〜〜〜・・・・・・・・・」

 視界の全てが湾曲し、霞がかって消えていく。
 そして、意識も・・・・・・ 




  ◇    ◇





士郎「・・・・・・・・・ハッ!!?」
 がばっと、その場で起き上がる士郎。

小牢「おお士郎よ、しんでしまうとはなさけない」
 そしてその正面には、なんだかどこかの神父っぽい帽子を被った、狐さん。

士郎「あんたは俺をスカウトしに来た森羅の人!! ・・・じゃなくて、何してんだあんた」

小牢「ん? この姿見て分からん?」
 “ホレ、これこれ”と、十字架マークのある神父帽子を指差す小牢。
 
士郎「そういえば、小さい頃に画面の中でよくお世話になってたような・・・ いや、それよりも!」
 ガバッと、大きなアクションで立ち上がると

士郎「あっ、イッテテテ・・・」
 突如発生した痛みに、後頭部を押さえて蹲る。

小牢「大丈夫かー?」
士郎「・・・まあ。たぶん」

小牢「しかしおぬし頑丈じゃなぁ。あのクラッシュで血も出んとタンコブもなしとは」
士郎「まあ、回復力と頑丈さには自信があるから」

小牢「おーおー、若いっちゅうのはいいことじゃなぁ。
   無鉄砲じゃったり治りが早かったり。若さとは振り向かない事さーってか?」

士郎「・・・どーも」
 小牢のオヤジ言葉にそこそこに返事をしつつ、よいしょっとで立ち上がる士郎。

士郎「(とりあえず、この事態を止められるやつらを探さないと・・・)」

 士郎が意を決し、辺りを見渡し始めた、その時


慎二「あれ?」
ハサン「おや?」

士郎「・・・・・・え?」


154 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 07:42:42

○衛宮士郎→タイガー道場でありがたいアドバイスと不吉な宣言を受け取り、帰還。
○タイガ→漫才しつつ、士郎にアドバイス。そして最後に不吉な宣言。
○Bイリヤ→士郎に予言に近い助言。H(ヒロイン)フィールドを持っているらしい
○小牢→士郎を介抱しつつ、ドラクエ神父のネタを仕込んでいた
○慎二&ハサン→登場



【今回の新規登場】
○間桐慎二(Fateシリーズ)
身長:167cm。体重:57kg。イメージカラー:群青。特技:名推理・探し物。好きなもの:子犬・特権。
苦手なもの:無条件で幸せな空気。怖いモノ:バーサーカー,桜。
間桐桜の義理の兄。弓道部副部長。士郎とは同級生で数年来の友人だった。士郎の事を便利屋同然に
扱うも、その裏では士郎をただ便利に利用する人間に社会的制裁を食らわせるなど、どことなく歪んだ
友情を発露しており、士郎は慎二の性格を結構理解していた。紆余曲折の末、交友関係は今も続いて
いる。女子生徒に人気があったが、いずれも名前の無いモブで、作品に登場する名前付きの良識ある
女性キャラ達は逆に誰も慎二を相手にもしていない事から、モテるのは慎二の内面を見抜けずに外面
だけに騙される【オツムの軽い系】の女性に限った話だとわかる(それも聖杯戦争後からタイころに
至り、格段にモテなくなったらしい)また、男の後輩部員をイジメで退部させるなどの問題も起こして
いた。偽臣の書によって桜からライダーへの命令権を借り受け、ライダーの仮マスターとして聖杯戦争
に参加。自身魔力を持たないが故に、ライダーに命じ学校に結界を張らせ、無差別に生徒、教師から
生命力を奪おうと画策した。由緒正しき魔術師家系に生まれ、高度な魔術知識を持ちながら、魔術回路
を持たない事に強い劣等感を持つ。養子に来た桜への虐待や、優秀な魔術師である凛の気を引こうと
したのも、ひとえにそれを紛らわせる為。セイバールートではバーサーカーに一撃で挽肉にされ、
桜ルートではキレた桜本人の手で頭を割られ死亡。生存したのは凛ルートのみ。聖杯戦争後は彼なりに
ある程度改心したらしく、幾分か性格も丸くなり、同時に完全なイジられ系ギャグキャラへと転身し、
日常の象徴として登場。通称「ワカメ」。登場場面のほとんどがギャグシーンであり、この事で前作
より人気が出た。


○ハサン・サッバーハ/真アサシン(Fateシリーズ)
真アサシンの呼称は便宜上のもの。作品中では単に「アサシン」と呼ばれ、佐々木小次郎と同じ
アサシンのクラスだが、真にアサシンのサーヴァントと呼べるのはこのハサンの方である。その風貌と
行動の不気味さなど、マスターである間桐臓硯と並んで作中の闇、重苦しい部分を象徴する存在。
真名はハサン・サッバーハ。史実上の記録ではハサン・サッバーフはイスラム教ニザール派の創始者の
一人。アサシンの言葉の語源は彼自身ではなくニザール派で、「山の王」とは後世のニザール派指導者
ラシード・ウッディーン・スィナーンの呼称でハサンではないが、作中ではハサンこそが山の王、アサシン
という言葉の語源となった人物上記のように独自解釈されている。なお、この「ハサン・サッバーハ」
は特定の個人ではなく、「ハサン」の名を継いだ歴代の山の王達から成る英霊候補の亡霊の群を指して
おり、毎回の聖杯戦争においてアサシンのサーヴァントとして選ばれる19人いるハサンの内一人。
桜ルート開始後まもなく、臓硯により佐々木小次郎の肉体を利用し召喚。当初は知性も低く、たどたど
しい口調だったが、ランサーを破りその心臓を取り込むことで克服。その影響か独特の美学を持ち、
どこか大仰な口調で話していた。アサシンのクラスは戦闘力最弱で能力そのものは低く、ランサーの
心臓を取り込んで強化していてさえ言峰に瞬殺されるほど。戦闘には投擲用の短剣ダークを愛用し、
戦闘後は律儀に拾って帰る。宝具は相手の心臓を掴み出す呪いの右腕「妄想心音(ザバーニーヤ)」。
タイころでは何故か性格が180度変化し、すっかり温和で礼儀正しく心優しい超善人になっていた。


155 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 07:48:07


慎二「衛宮じゃん。何やってるのさ」

ハサン「何やらすごい事になっていますねえ。一体何の騒ぎです?」

 ハサンを隣に引き連れ、慎二が目の前に現れた。


士郎「あ、慎二。それに武士道じゃない方のアサシン」

ハサン「・・・セイバー殿といい、その区別の仕方、オフィシャルなんですか?
    もうハサンでいいですよ。ハサンで」

士郎「ん、ああ、わかった。
   じゃあえーと・・・ ハサンは確か、今は一時的に慎二のサーヴァントなんだっけ?」

ハサン「はい。魔術師殿が何ぶんお歳ですし、日中の行動は負担が掛かりますので・・・」

 そう語りながら、言葉に影を落とすハサン。

士郎「・・・・・・・・・・・」

 実際に、無理に300年もの間、延命を続けてきた間桐臓硯の肉体は
 既に色々と、ガタがきているらしい。

 他人の肉体の捕食もやめた今では、その残された時間はどれだけのものなのだろうか。
 今でも士郎にとっては嫌悪の感情が抜けきれない相手ではあるが、こうして目の前でハサンの
こんな姿を見ていると、少しは感じ入るものがある。


ハサン「と、いうわけで。今回私ハサンは、坊ちゃんのサーヴァントという事に。
    魔術師殿より任されたからには、身命を以ってお守りする所存です」

士郎「・・・ああ、慎二は色々と難しくいヤツだから大変だと思うけど、助けてやってほしい」

ハサン「優しいですな、衛宮殿は」

士郎「え? ああ、そうかな」    

 と、珍しい二人組みでの立ち話が続いた所で


慎二「お前らさぁ。仲良くスピーチは結構だけど、今の状況忘れてない?」

士郎「あ・・・」

 慎二につっこまれ、大事なことを思い出す士郎。 


慎二「それに、まったくライダーの奴、何やってるんだろうね。まったく。
   あんな騒ぎなんか起こしちゃってさ、女のクセに背ばっか高いから脳に酸素が足りてない
   んじゃ」

 そう、いつものように慎二がのたまっている所で

    (ヒュ〜〜〜ン・・・・・・)

 その騒ぎの中心から、新たに机の一部らしきものが弾丸のように飛び

小牢「うおっと」

 その直線上にいた小牢が、鍛えられた動体視力で軽々と上体を反らして避わすと


          (ゴッ☆!!!)



慎二「ぎゃ、たわばっ!!?(ドベシャッ・・・!)」

 それは慎二の顔面に見事なまでにクリーンヒットし、鼻血を拭いて慎二は崩れ落ちる。


ハサン「ああああっ!!? ぼ、坊ちゃ────────ん!!!!」

 それを見て、悲鳴を上げるハサンに

小牢「・・・・・ありゃりゃ」

 身体を反らしたまんまの状態で、「うわ〜」という顔をする小牢。

士郎「慎二・・・ 運のない奴」

 そして士郎は、いつも通りにお約束に見舞われた友人に涙したとかしなかったとか。


小牢「おおワカメよ。しんでしまうとは」

士郎「いや、生きてますからやめてください」

 どうもこの人のノリ、藤ねえに似てるよなぁ。
 ・・・いや、じゃなくて。


士郎「なんで慎二のあだ名を知ってるのさ?」

小牢「ん? あだ名じゃったん?
   こやつの髪を見てて自然に口から出ただけなんじゃが」

士郎「・・・・・・・・・ あ、そう」



156 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 07:49:29

○衛宮士郎→実質的に小牢のツッコミ役。
○小牢→さすがの反射神経で楽々と飛んで来たものを避わし、神父ボケ二発目。
○ハサン・バッサーバ→実直な忠義者らしさを魅せるも、さっそく守りきれず。
○間桐慎二→お約束。


157 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 07:58:57




  トアールレストラン  地中海料理コーナー



士郎「えーっと・・・」

 慎二の退場の後、衛宮士郎は一刻も早い事態集束の為の人員確保へと奔走していた。

士郎「多分、ここら辺だと思うんだけど・・・」

 きょろきょろと辺りを見渡していると・・・

士郎「・・・・・・あ!」

 早速、一人目を見つけることができた。

葛木「む・・・?」

 急いで駆け寄る気配に気付いたか、人込みの中に居た葛木も振り向き、士郎を確認する。


葛木「衛宮か、どうした」

 目の前にまで駆け寄ってきた士郎に、葛木が無表情のまま尋ねる。

士郎「葛木先生!! よかった。探してたんだ」
葛木「探す・・・? 私をか」

士郎「ああ、実は・・・」

 士郎は、起こっている騒動を大まかに説明し始めた。



  ◇    ◇



葛木「・・・そうか。キャスターが騒ぎを起こしているか」

士郎「ああ、そうなんだ。
   ・・・葛木先生! このままじゃホテルが吹っ飛んじまう!!
   奥さんを止めてくれ!!」

葛木「ふむ・・・」
 顎に手をあて、少しの間の沈黙。

 そして

 
葛木「それは激しくか? 優しくか?」

士郎「・・・・・・・・・・・・ は?」

 予想もしていなかった質問に、士郎は固まるしかなかった。

士郎「・・・・・・・・・・・・・・・・」
葛木「・・・・・・・・・・・・・・・・」

士郎「え〜〜と・・・・・・ 出来る限り優しくお願いします」

 短い時間で悩みぬいた末、士郎はなんとかそんな答えを搾り出す。 

葛木「了承した」




      【葛木宗一郎、合流成功!!】





  ◇    ◇




 葛木を連れ、士郎は新たな人員確保へと向かう。


葛木「・・・衛宮」
士郎「え・・・?」

葛木「早く現場へ向かわなくてもいいのか?」
 唐突に、後ろからそう話しかける葛木。

 見た目は歩いている状態にほぼ近いが、それでも前を進む士郎よりも素早く、無駄の無い自然な
動きで綺麗に人込みの間をすり抜けている。


士郎「そうしたいのは山々なんだけど、確実に全員止められる人員を揃えないといけないんだ。
   下手にバランスを崩したらそれこそレストランが吹き飛ぶかもしれない」

 ・・・まあ、これは小牢って人の推測なんだけど。

葛木「・・・なるほど。賢明な判断だ」

 葛木は真剣に納得している。


士郎「でも、早く残りのやつらも見つけないと・・・」
 そうして、士郎が更なる人員確保へと向かい急ぐ中・・・


       (カッ、カッ、カッ、カッ・・・・・・)


セイバー「シロウ!」
 左後ろの方向から、良く知る人物の声。

士郎「セイバー!? ・・・と、子ギル!?」

 駆け寄ってくるセイバーの隣には、紛れも無い小さな英雄王がいた。


子ギル「どうも、お兄さん♪」

 表情を引きつらせる士郎の心情を知ってか知らずか、
 子ギルは純粋無垢な天使の笑顔で、にこやかに士郎に挨拶をする。


セイバー「大丈夫ですか!? 何やら大変な騒ぎと聞きましたが・・・」

士郎「ああ・・・ まあ、俺は大丈夫(一回デッドエンドしたけど・・・)」

 予想もしていないグッドタイミングによるセイバーとの合流に、士郎が内心喜んでいると


小牢「おー、おヌシも首尾は上々みたいじゃな」
 予想もしていない所で、予想していない人物がまたしてもひょっこり現れた。


士郎「あんた・・・ 何で居るんだ?」

小牢「ふっふっふ。【トアールの洞窟】はしゃおむぅエンカウント率100%じゃ。
   ちなみに仲間になりたそうに見ています。仲間にしますか?」

士郎「イヤです」
 0・1秒による即答。

小牢「や〜ん、イケズぅ♪」

 対して小牢は、プリッ♪ という効果音がしそうな、一昔前のアニメで見るような
お色気くねりを返してきた。

士郎「・・・・・・・・・・・」
 
小牢「・・・や、調子乗ってマジすいませんっした。
   反省しますからそんな怖い顔で怒らんといて?」

 いつまでもおふざけっぱなしの小牢に、怒りの不動面になる士郎、
 その迫力には、小牢もさすがに平謝りをするしかなかったという。



    【セイバー&子ギル、合流成功!!】



  ◇    ◇



士郎「・・・・・で、ここにいる理由は?」

 改めて小牢に尋ねる士郎。

小牢「んーまあ、さすがにいつまでもほっちらかしっちゅうわけにもいかんからのぅ。
   まじめな話、森羅エージェントとしてちゃんと仕事しはじめたっちゅうワケ。
   わしの方はなんとか二人だけ確保しておいた」

士郎「そうなのか?」

セイバー「ええ、まあ・・・」
 何故かあさっての方向に目を逸らすセイバー。

士郎「・・・・・・・・?」
 そんなセイバーの不審な挙動を知ろうが不審に思っていると

子ギル「セイバーさんの食い意地ってすごいですよね〜。
    小牢さんの【おいしいおいなりさんいらんかねー】のたった一言をしっかり聞きつけて
    亜光速で駆けつけたんですから」

 と、隣の子ギルがあっさりバラした。
     
セイバー「ギ、ギルガメッシュ・・・!!///////
     言わないで下さいとあれほど言ったではありませんかっ!!」

 赤面しながら子ギルに怒るセイバー。

子ギル「あ、そうでした。すいませ〜ん」
 無邪気に笑っている子ギル。


士郎「あ〜〜・・・ セイバー。
   いいかげん食べ物キャラはホントに卒業しような?」



  ◇    ◇




士郎「あとは、桜とカレンか・・・
   まあでも、これだけ揃ってたら大丈夫かなとも思うけど」

 士郎がそう呟くと

子ギル「そうですね。僕がエルキドゥを使えば大体は片がつくとは思いますけど・・・
    でも万全を期して、残りの人たちも確実に集めておくべきだと思いますよ」

 それに対し、子ギルは冷静に窘める。

セイバー「そうです士郎。今回に限ってはギルガメッシュが正しい」
葛木「うむ。堅実且つ賢明な意見だな」

 後ろに居る葛木も、感心し頷いていた。


士郎「う・・・ わかってるよ。
   でも意外だな、お前が慎重な意見を出すなんて」

子ギル「ええ。大人の時とは違いますから、絶対に油断しませんよ」
 ニヤリ、という不敵な顔で、意味深に士郎を見る子ギル。

 つまり意訳すると、【次があるなら勝率はゼロだと思えフェイカー】という事である。
 恐るべし子ギル。無害に見えて自分の白星を全然忘れてない。

士郎「あははは・・・ えーと、その笑顔本気でおっかないからやめてください」
 蛇に睨まれた蛙状態の士郎は、冷や汗を流しながら苦笑するしかない。

小牢「まー今回は相手も相手じゃからなぁ。
   慎重に慎重を重ねてもお釣りは来るまいて」

子ギル「まったく、本当に仕方ないですね〜あの人は。
    自由奔放な生き方は確かにランサーさんのいい個性ですけど、フォローに回る人の迷惑も
    少しは考えて欲しいですよね」

 そう言って苦笑する子ギルに

士郎「・・・・・・・・・ えーと・・・ お前に言われたくない」
セイバー「・・・・・・・・・ええ」
葛木「・・・・・・・・(コクリ」

 外野である小牢以外の意見感想は、完全に一致していた。

子ギル「・・・・・・・・???」
 当の本人は、きょとんとハテナマークを浮かべるだけだったが。



  ◇    ◇



士郎「・・・あれ? そういや、ハサンは?」
 そこでようやく、士郎が一人いないことに気付く。

小牢「真っ黒仮面なら、慎二を担いで保健室にスタコラサッサじゃな」

士郎「あ〜・・・ じゃあ、助っ人は無理か」

 ホテルに保健室はないだろとかツッコムのは、この際後回しで。


士郎「あとどうでもいいけど、撮影はいいのか?」

小牢「ふっふっふ。心配せずとも、小牢に死角なし。
   こんな事もあろうかと、撮影役なら既に雇用済みじゃ、ホレ、あそこに」

 と言って、手差しである人物を指し示す小牢。
 その方向の先には、明らかに慣れた手つきでハンディカムを用意している高校生らしき人物が。

佐木「あ、こんにちわ」

 愛用のキャモン・ビデオアイのチェックをする手はそのままに、
 ペコリと士郎達に一礼する高校生カメラマン。

士郎「え、あ・・・ こんにちわ」
 つられて挨拶を返す士郎。

佐木「じゃ、早速撮(い)ってきます」
小牢「おー、後はヨロシクナー♪」

 互いに親指を立て、健闘を祈りあう両者。
 謎の高校生カメラマンは、そのまま激戦の繰り広げられている場所の方に消えていった。


士郎「えー・・・と、知り合い?」
小牢「ふっふっふ・・・ ヒ・ミ・ツ♪ ・・・お?」

 ポケットからのバイブレーションの震えに気付き、キツネ型の携帯を取り出す小牢。

小牢「はいこちら、携帯しゃおむ〜」
 どこかのおっさん風の口調で応答を始めている。

零児(電話)「・・・・・・刑事ドラマの再放送の見過ぎだな」
 携帯の向こうから聞こえる声は、小牢の良く知る声だった。

小牢「おー零児ぃ。こっちは四人揃っとるぞ。そっちはどうじゃ?」
零児(電話)「ああ、こっちも残り全員確保済みだ」

小牢「おー、OKOK。んじゃ作戦通りにシクヨロ〜(プッ」
 携帯を切り、軽快にポケットに仕舞い直す小牢。


士郎「確保済み、って?」

小牢「準備完了っちゅう事じゃよ。
   いやー零児もやるようになったのぅ、善哉善哉」

 そう言う小牢の顔は実に嬉しそうである。


葛木「・・・・・・・・・」
 その後方で、無表情の様相の中、何かしら考察に耽っているような節を見せる葛木。

セイバー「どうかしましたか?」
 それに気付いたセイバーが、何気なく伺う。

葛木「いや・・・」
 しかし葛木は、一言だけの返事を返すだけだった。

セイバー「そうですか・・・」
 梨の礫と判断したのか、セイバーは葛木に話しかけるのをやめ、離れた。


葛木「(水面下での迅速な行動と連係・・・ 我々の相互関係の完全な把握・・・
   協会とも埋葬機関とも異なる退魔機関、森羅。・・・音に聞く通り、侮れんな)」
   
 士郎を始めとした多くの人物は、小牢の飄々とした言動ばかりに目をとられているが・・・
 少なくとも葛木は、退魔機関、森羅の組織力と、隊員個人の実力に注目を強めていた。


葛木「(ともすれば、あの小牢という仙狐のふざけた行動は・・・)」

 他の組織に注目をさせぬが為の、道化の役割か。
 それとも、彼女自身がそれを買って出ている、爪を隠した鷹なのか・・・


小牢「では早速合流あるのみ!! 行くぜ野郎ども────っ!!」
士郎「え? うわっ、ちょっと待てって!!」

 走り出す小牢に、慌てて付いていく士郎。
 それにつられて付いて走る、セイバー達。



葛木「(考えすぎかもしれんが、な・・・)」

 そんな風に考えを巡らしつつ、葛木もまた、士郎達の後ろに付いて、走るのであった。




 
    【桜、カレン、既に合流済み!!】

       【準備・完了!!!】


158 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 07:59:25
○衛宮士郎→葛木を発見、合流。続いて小牟、セイバー、子ギルと合流。
○小牟→稲荷寿司でセイバーを釣り、子ギルごと連れてくる。ふざけすぎて士郎に怒られた。
○葛木宗一郎→士郎に事情の説明を受け合流。森羅の優秀さに注目。
○セイバー→稲荷寿司で小牟に釣られ、そのまま合流。
○子ギル→セイバーのついでで合流。次があったら油断しないらしい。
○有栖零児→水面下で行動。桜とカレンを確保し、小牟に電話。
○佐木竜太→小牟に代わって撮影係に。何故いるのか全く不明。

【今回の新規登場】
○佐木竜太(金田一少年の事件簿)
CV:難波圭一。男性。不動高校1年。金田一一の数少ない友人であり、助手。
親(父・連太郎、母・良子)は「佐木映像」という会社を経営しており、本人たちもビデオで
色々なものを撮影する事が趣味である(ペットの犬にまでビデオを持たせている)。
「学園七不思議殺人事件」から登場。その後、一の助手となり、チーム金田一の撮影役として活躍。
デバガメ根性以外にスケベ根性からの撮影が多いため、時には逮捕されても仕方の無いようなもの
まで映しているが、何故かそんなものまで含めて彼の撮影記録は証拠能力が著しく高く、金田一の
推理において何度も犯人を追い詰める切り札となっている。「異人館ホテル殺人事件」ではその
証拠能力が災いし殺されかけるも、何とか一命を取り留めた(原作漫画版では死亡し、撮影役を
弟の竜二が引き継ぐ。ドラマ版では「異人館ホテル殺人事件」そのものに巻き込まれていない) 。
弟と同じ、キャモン・ビデオアイという機種のカメラを使用している。絵はとてつもなく下手。
一と美雪の幼馴染・神津さやかに惚れている。

159 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 08:00:41


         ─── MISSION START ───



     <キャスターサイド>




キャスター「さ〜あ蟻ん子さん達! いくらでもいらっしゃ〜〜い♪」

 ホホホのホーと楽しそうに笑うキャスター。
 次々ラグビー選手のようにアタックをかけようと襲い掛かってくる、タフな黒服達に対し、
キャスターの動きはというと・・・ ほんの少し、指先を動かしているだけ。

 そんなシングルアクションの行使だけで、彼女の手の中には、瞬時に爆裂系魔術が形成される。

キャスター「ホイっと」

 スーパーボール大程度の、透明な球。それを軽く投げて飛ばすだけで・・・


     (ちゅど〜〜ん!!!)

 うわー、などといったわかりやすい悲鳴と、爆発音の二重奏。
 派手な爆発に、ギャグ漫画のように吹き飛んでいく黒服達。

 もちろん、爆破魔術に大した威力はない。
 派手なのは音と煙だけで、殺傷能力などという大袈裟なものはほぼ皆無。
 幻覚魔術を多量に混ぜて作られたそれは、言うなればリアルなねこだましに近い。

 それは、キャスターvs黒服のバトルというよりは・・・


     (ちゅど〜〜ん!!!)


キャスター「ほーらストライク〜〜♪」

 名付けるなら、人間ふっとばしボウリング。
 日頃溜め込んだ鬱憤でもあるのか、魔女モード全開のキャスターは超ノリノリである。


 そこに


??「・・・・・・・・・ター」

 背後から、声。

キャスター「え? 何!? 今取り込み中よ!! 後にし・・・」

?木「・・・ャスター」

キャスター「ああもう、うっさいわね! あんまり邪魔するとあんたも吹っ飛ば・・・」

 そう怒鳴りながら、キャスターが後ろを振り向くと

葛木「・・・? ふっとば・・・?」
キャスター「っっ────────・・・・・!!!?」

 その真後ろにいた人物の正体に、キャスターは凍りつく。

キャスター「あ、あわわ・・・ そ、宗一郎様? こ、これは、その・・・」

葛木「お前や他のサーヴァントが暴れていると聞いてな」

キャスター「す、すみません! すみません!!
      つい調子に乗って・・・ 申し訳ありません、宗一郎様にとんだお恥を・・・」

 ぺこぺこと頭を下げ、必死に謝るキャスター。
 その180度変わった姿に、さっきまで吹き飛ばされていた黒服も、呆然とするばかり。


葛木「いや」
キャスター「え・・・?」

 首を横に振る葛木に、キャスターが困惑すると

葛木「私の面子など瑣末なものだ。気にすることはない。
   それに、お前の近くにいるべきだった私にも非はある。
   ・・・すまんな、キャスター」

キャスター「・・・ 宗一郎様・・・・・」

 自分には過ぎると思うほどの、葛木の短いながら嬉しすぎる言葉。
 その感激に、キャスターは心震わし、頬が自然と紅くなる。 

 薔薇でも咲き乱れそうな、甘酸っぱい空気に、二人のいる空間が包まれ始めていると・・・


小牢「おーい、そこのお二人さ〜〜ん。
   イチャイチャパラダイスしとるとこ悪いんじゃが、ちょっとこっち来て座りんさい?」

 声の主は、小牢。
 葛木とキャスターが離している間、彼女は彼女で黒服達の方に、懸命に説明をしていたのである。

 そんな(彼女に珍しく)マジメに仕事をやっている中、片方がラブラブオーラとあっては、
さすがに小牢もムカついたのか、顔は笑顔だが、よく見ると唇の端がひきつっていた。




      <キャスター、説得完了!>





  ◇    ◇





     <小次郎サイド>





         (((キィンッ───・・・・・・!!!)))



 佐々木小次郎と、ドラゴン紫龍。
 二人の戦士による世紀の大仕合は、互いの力を存分にぶつけ合うものでありながら、
その実、驚くほど【静】を感じさせるものであった。

 まったくの素人が見れば、あるいは、互いが互いを見合っているだけにすら見えただろう。
 それだけ、両者の間に激しい動きは一切なく、両の足が地から離れることすら珍しい。

 ならば本当に動いていないのかと問われれば、全く否。
 それは、二人の勝負を見守る見物人達も充分にわかっていた。

 瞬きの間に、幾十数合。
 歴戦の戦士、達人達の目を以ってしても、目で追うのがやっと。

 音速などという域を遥かに超え、音すらも置き去りにしたその剣戟の回数。
 その全てを、自身の目で追いきれているか?

 自信を持ってその数を宣言できる者は、見物の戦士達の中でも、果たして五指に届くかどうか。

 それだけ、二人の剣戟は・・・ もはや、常識も次元も超えていた。


 片方は手刀でありながら、響く音は紛れもなく、名刀と名刀がぶつかり合う音。
 その、響きあう音も、散る火花も。
 不思議とそれを見、聞く者達に、五月蝿さを全く感じさせない。

 むしろ、その全てが“風流”さえ感じさせたと、後に見物人の一人は語る。


 外部からの、何かしらの水入りさえなければ、
 この二人の素晴らしき仕合は、いつまでも続くだろうと、そう思った人物もいただろう。

 しかし、変化はそう遅くなく、訪れた。


小次郎「・・・ふむ」

 それまで仕合の中、一言も発しなかった小次郎に、初めての、変化。
 一言残念そうに唸ったかと思えば、その静ながら鋭い剣気が、嘘のようにしおれていく。

紫龍「・・・・・・?」
 その変化に、紫龍も戸惑い、同じく闘気が薄れていく。 


小次郎「どうやら、これまでのようだ」
 愛刀、物干し竿を一瞥し・・・ 小次郎は、仕合の終了を宣言した。

紫龍「・・・? 何故・・・」
 紫龍が、その理由を尋ねようとすると

小次郎「いや、なに。某も続けたいのは山々なのだが・・・ 剣士の相棒が、これではな」

 そう言って、小次郎は愛刀のある部分を、紫龍に見せる。
 そこには、刃の部分から峰に向かって、僅かな皹が入っていた。


小次郎「此度の仕合、剣技こそ拮抗すれ・・・ 
    貴公の繰り出す一撃の威力に、我が物干し竿の方が先に参ってしまったらしい。
    これでは満足に、あと二振り三振りと振るうことも叶うまいな。
    いやはや、我が奥技を現代の武士(もののふ)に披露する又とない好機であったのだが・・・
    言い訳はするまい。剣士の剣が折れるは、その剣士が心技の未熟が故」

紫龍「そんな・・・ 俺の方こそ、あなたの剣技に対して隙を見つけられず、後半はただ防戦だった。
   あなたの刀さえ健常であったなら、この刀勝負、負けていたのは確実に・・・」

小次郎「謙遜は不要。むしろ私を屠ったことを誉れとするがよろしかろう。
    ふむ、しかしなかなかに謙虚な若者よな。善哉善哉。
    ・・・では、再戦を愉しみに、ということにしておくとしよう」

 心底愉快そうに頷いた後、小次郎は傷付いた愛刀を、緩やかに鞘へと収める。

紫龍「・・・是非に」
 紫龍もまた、拳と掌を合わせ、二度目の戦士の礼。


キャスター「ア〜〜〜サ〜〜〜〜シ〜〜〜〜ン!!!!
      撤収よ〜〜! 戻りなさ〜〜〜〜〜〜い!!!!」

 そこで、小次郎のマスターであるキャスターの声が響いてきた。


小次郎「む・・・ ちょうど水入りか。
    ・・・しかしあの女怪、相変わらず水の差し所というものをわきまえておらぬ」

 やれやれと、両手を小さく挙げてポーズをとる小次郎。

小次郎「ではな、少年。次回は存分に我が奥技を披露しようぞ」

 それだけ言うと、小次郎は堂々とキャスターの声の方向へと帰って行く。


紫龍「・・・・・・不思議な人だ」

 まったく不思議で、懐深く、強く、麗しく・・・ そして、優雅。
 何より、尊敬に足る最高の戦士であり、最高の剣客だった。

 



      <佐々木小次郎、説得前に決着>





  ◇    ◇




      <ちなみに、ランサーサイド>




ランサー「ぐおわーっ!?」

       (ビシ────ッ!!)

カレン「・・・フィッシュ」
 小次郎の仕合の決着が優雅に終わりを告げようとしていた一方で・・・

 こっちの勝負は、なんともあっさりと、一瞬で終わりを告げていた。
 決め手は、ランサーの槍でも氷河の奥技でもなく、カレンの聖骸布だったが。 

ランサー「ぐっ・・・ お、おい! ひょっとしてこれで終わりか!? 終わりなのか!?
     冗談だろ〜!? 魅せ場無しのゲイボルクの披露も無し!?」

 聖骸布にグルグル巻きにされたミノ虫状態で、じたばた暴れるランサー。

カレン「あるわけないでしょう。本当に知能も犬並みなのね」
子ギル「そうですよ。即死系対人宝具と対城宝具をどう披露するつもりだったんです?」

 そんなランサーの要望に対し、二人同時のツッコミ。

ランサー「イヤ、それは・・・ まあ、そりゃ言われてみればそうなんだが・・・
     ・・・・・・ぬがーっ!! とにかくもっと、たーたーかーわーせーろ───っっ!!!

 激しく暴れてはいるものの、ぐるぐる巻きの状態では、ただくねくね動くばかり。

カレン「キャンキャンと吼えてホントに五月蝿いですね、この駄犬は。
    首輪をつけて鎖で繋いでいないとダメかしら」

子ギル「あははははは。ランサーさんなら鎖でも食いちぎりそうですけどねー」

ランサー「むが───っっ!!!」
 聖骸布に口を塞がれながらも、ランサーは元気に吼える。


氷河「・・・・・・・・・・・」
 一方の氷河は、突然の戦闘終了と目の前の光景に、完全な唖然呆然状態だった。

カレン「あ・・・ どうもすいません。うちの駄犬が迷惑をかけまして」
子ギル「すいませんねーお兄さん。あとでよくしつけますんで」

氷河「あ、ああ・・・」
 カレンと子ギルの挨拶にも、生返事しかできない。 


ランサー「ふぐぐぐっ!! むぐ〜〜〜っ!!(犬扱い、すんな────っ!!!)」





      <ランサー、捕縛完了>





160 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 08:01:09

○キャスター→宗一郎の説得(?)により、あっさり戦闘終了。
○葛木宗一郎→キャスターに、マイペースに説得。
○佐々木小次郎→説得以前に、刀の皹を理由に負けを認め、優雅に去る。
○ドラゴン紫龍→佐々木小次郎に対する、戦士としての尊敬の念を抱く
○ランサー→ 一人だけあんまりな終わり方。
○カレン・オルテンシア→ランサーをフィッシュ。
○子ギル→なにげに言ってることがひどい


161 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 08:01:55




        <ライダーサイド>




 その戦いは、全てがおかしかった。


 休む事無くひたすら攻め込んでくるライダーと、
 そんなライダーに対し、チェーンの結界を広げ、防戦に徹する瞬。

 防戦とは、一方的な攻撃者と、一方的な防御者がいて始めて成り立つ言葉である。
 故に、常に防御に徹する側だけがダメージを負うもの。


 しかし、その防戦者である筈の瞬には、一切の負傷も、ダメージもなく
 アンドロメダの鎧にすら、一点の損傷も見つかりはしない。

 その逆に、一目でもわかるほどに負傷していたのは、ライダーの方だった。

 所々解れ、切れ、肌を晒している衣服。
 深い傷や、深刻なダメージこそ負ってはいないものの
 全身に点在する擦り傷や切り傷の数はあまりにも痛々しい。


 そのあまりにもおかしな構図は、同時に、当然の結果でもあった。

 瞬のネビュラチェーンによる“チェーンの結界"は、チェーンによる自動迎撃。
 そういった特殊な戦法を相手が展開した場合、“戦士”ならば必ずそれに応じた戦法を試行する。

 それが当然。それが定石。

 時に冷酷とすら恐怖されるほど、常に冷静沈着。
 毒蛇の牙を思わせる、鋭利な戦闘スタイルをよしとするライダーなら、それは尚更のことだ。

 しかし・・・ 
 今のライダーには、そんな美麗たる戦闘スタイルは、欠片として存在していなかった。


 先刻からのライダーの行動は、一貫してただの突撃。
 何の算段も智略もなく、チェーンの結界を相手に、文字通りの猪突猛進を繰り返している。

 勿論その度に、チェーンの結界による迎撃が、侵入者であるライダーに発動する。
 残された本能的な戦士の習性が咄嗟に防御をとることで、深刻なダメージだけは避けられているが

 突撃しては弾き飛ばされてを繰り返していれば、打ち傷だらけになるのは至極当然の結果である。


ライダー「ハッ・・・ ハッ・・・ ハッ・・・」

 そして、苦しげな息切れの呼吸音。
 体中に負った傷も含め、普段の彼女からは考えられない、あまりにも痛々しい姿・・・

 それは間違いなく
 ライダーの、普段の冷静な思考力の、完全な欠落を示していた。

 それどころか、今のライダーの姿は、まるで・・・


瞬「・・・・・・・・・・・・」

 逆に、誰よりも苦しい表情をしていたのは、ライダーではなく、瞬だった。

 それもそうだろう、瞬は、最も誰かが傷付くということを嫌、う心優しき聖闘士。
 そんな彼が、どうしてこんな戦いとも呼べない戦いに、平気な顔をしていられようか。

 勿論、幾度もライダーに対し、止まってくれと呼びかけた。懇願した。
 だが幾度制止を呼びかけても、ライダーはそれを耳に入れず、突撃をひたすら繰り返す。


瞬「・・・・・・っ」

 こんなものは、防戦でも何でもない。

 瞬はライダーと“戦い”などというものは一瞬たりとも行えていないし
 ライダーもまた、最初から瞬を視線にすら入れてもいない。

 眼帯に隠れていながらも、その視線の先には、瞬の後方にいる一人の人物・・・ 
 沙織しか映っていない。


ライダー「・・・・・ 女神、アテナっっ────!!」

 その叫びも、何度目のものになるだろうか。


沙織「・・・・・・・・・」

 対する沙織は、沈痛な表情のまま、言葉を発していない。
 いや、発せられる言葉が無いというべきだろうか。

 メデューサという人物に対する記憶、アテナとしての記憶を持たない沙織に
 今のライダーに対して、どんな言葉をかければ、答えればいいというのか。


ライダー「私をっ・・・ 私の顔を見ろっっ!! この醜き蛇の怪物の顔をっ!!!
     アテナぁぁぁああああぁぁああぁっっっ────────!!!!!!!」

 どんな言葉で、あの叫びを止められるのか。


沙織「(私は・・・)」

 幾度もの思考の反芻の末、アテナは・・・


沙織「瞬、チェーンの結界を・・・」

 “チェーンの結界を解いて”と、沙織は瞬に命じようとした。


 彼女は最初から、女神アテナ(わたし)に対し、恨み、怒り、叫び続けている。
 ならば、その矛の先を受けるべきなのは、瞬ではなく、自分自身ではないのか。

 自分は逃げ、瞬にだけ辛い思いをさせるのが、正しいことだとでも言うのか?


 そう思ったからこそ、沙織は敢えて、ライダーの目の前に、臆さず立とうと決意したのだ。
 その決断こそが、城戸沙織の信念。誇り高き精神の現われでもあった。


 しかし・・・


??「瞬! チェーンの結界、もういいぞ!!」

 沙織がその言葉を紡ぎ終わるよりも前に、

瞬「え・・・!?
沙織「星矢・・・!?」

 二人が誰よりも知る大きな声が、沙織の言葉をかき消した。


星矢「悪い、瞬。沙織さん。遅れた」

 いつものラフな服装で、星矢はいつの間にやら、沙織のすぐ近くにいた。

162 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 08:02:27

○ライダー→完全に我を失った状態。衣服が所々破け、打ち傷だらけ
○アンドロメダの瞬→チェーンの結界でライダーが傷付く姿に心を痛める
○城戸沙織→ライダーに対し逃げずに受け止める決意をするが・・・
○天馬星座の星矢→植物状態時や記憶喪失時の面影はなく、元気でラフな普段着姿で登場。


【今回の新規登場】
○天馬星座(ペガサス)の星矢(聖闘士星矢シリーズ)
天馬星座の青銅聖闘士。13歳。身長:165cm。体重:53kg。誕生日:12月1日。CV:古谷徹。
血液型:B。出身地:日本。修行地:ギリシア聖域。
技:ペガサス流星拳、ペガサス彗星拳、ペガサスローリングクラッシュ。
城戸光政の非嫡子として生誕。聖闘士への修行に際し俗世間からの情を断ち切る為、認知されず
孤児として育ち、暗黒聖闘士戦にて自身の出生の事実を知った。幼少時は唯一の肉親、姉の星華と
共に孤児院・星の子学園で暮していたが、グラード財団により引き離され、聖衣を勝ち取れば姉に
会えるとの財団の言葉で聖闘士への道を選ぶ。7歳でギリシア聖域に送られ、魔鈴の元で6年間修行
を積む。 同じ聖闘士候補生カシオスを倒し、天馬星座の聖衣を得、聖闘士となる。日本帰国直後
は姉を捜す為に闘い、白銀聖闘士戦で聖闘士の放棄もしかけたが、沙織がアテナの化身と知り、
聖域の異変を知った事を機に次第にアテナの聖闘士として目覚めてゆく。少年らしい爽快さと熱血
を併せ持つ性格。失明寸前、仮死状態と、何度も重傷を負い倒れても必ず立ち上がり、どんな強敵
や苦境にも怯まず立ち向かう勇者。その熱き心は数々の強敵との闘いで奇跡の勝利を齎し、出会う
多くの者に影響を与えた。また、闘いの最中でもコミカルな表情を見せたりと意外な一面もある。
青銅聖闘士一の敏捷、スピードの持ち主で、最大の脅威はその成長性。新必殺技の開眼、光速拳
習得。セブンセンシズ、エイトセンシズ覚醒。神聖衣進化など、奇跡を超えた覚醒、進化の数々
を率先して起こしていった。強敵との闘いに倒れる度に甦ってきたが、ハーデス戦では心臓に剣を
受け遂に瀕死の重傷を負う。その後はハーデスの呪いで一時小宇宙発揮不能状態になっていたが、
オリンポス十二神アルテミスと天闘士の台頭、沙織の危機に再起。アポロン戦で新聖衣を纏い勝利
するも記憶を消され、その後の動向は不明だったが・・・
今では完全に記憶を取り戻し、沙織と共に別荘で暮らしている。



163 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 08:05:49


星矢「駄目だよ沙織さん。殴られてもいいなんて考えちゃ」
 そう呟くように沙織に語りかけながら、星矢は沙織の横を通り過ぎる。

沙織「星矢……」

 それはあまりにも疾くて、呼び止めようとする沙織の声すらも遅かった。


星矢「よっ」

 そして星矢は、颯爽と瞬の前に登場する。

瞬「星矢・・・ チェーンの結界を解けって、どういうこと?」

 突然現れ歩み寄ってきた星矢に、瞬は当然の疑問をぶつける。


星矢「ん? ああ」

瞬「そんな、だって星矢…! 聖衣も着けてないのに…」

 星矢の言葉に対し、瞬は心の底から星矢の身を案じている。



             (ポンッ)



瞬「え……?」

 そんな瞬に対し、星矢は一言も発さぬまま、ただ瞬の肩に手を置いた。

 星矢の歯を見せた不敵な笑顔が、瞬をも悠々と通り過ぎていく。



 そして星矢は、ライダーの目の前に立った。


星矢「………」

ライダー「…………」


 無言で見合う、両者。
 そしてそれを固唾を呑んで見守る、瞬や沙織を始めとする多くの人間。

 高まる緊張。周囲の空気は張り詰め、呼吸の音さえも五月蠅く感じられる。


 しかし不思議なことに
 その中心である筈の星矢とライダー。両者の間にある空気だけが、決定的に違っていた。



 星矢も、ライダーも、最初の対峙からまったく動こうとしない。
 ただ互いの視線だけが行き交い、決して外れずに、それが続いていた。

 しかも星矢に至っては、聖衣はおろか、戦闘の構えすらとらず、
 闘気どころか、敵意、戦意のかけらも感じられない。

 それどころか、ライダーを見つめるその目は、まるで旧知の存在への友愛さえ見受けられた。



瞬「まさか、星矢…」


 間違いない。星矢は、


 ライダー(あのひと)は、言葉では止まらない。
 それは、瞬が身を以って証明したことだ。

 それを繰り返しても、星矢が、そしてライダーがより傷付くだけ。


 だからこそ星矢は、闘気を捨て、瞳で伝えるという手段を選んだ。
 
 死線を潜り抜けた戦士同士ならば尚の事。
 時として、それは幾百幾千の言葉よりも純粋に相手の心へと響き伝わる。

 その心。想い。生き方。
 生の価値、尊さを誰よりも知っているその上で、守ると決めた者をその命を賭しても守るという、覚悟。
 そばに居続けたい。守りたいという、愛情。

 そして、その相手にそれだけの価値があると信じて疑わぬ、その瞳はどこまでも澄んでおり、
 それが決して、盲目的な忠誠や信仰によるものではない事を、何よりも語っていた。




  ◇    ◇




ライダー「…………」


 星矢という少年の戦意のなさ、無防備さに、
 我を忘れていたライダーは、一瞬驚きに身を止める。

 そして同時にライダーは、その少年の目を見てしまった。

 ライダーは、石化の魔眼の持ち主であり、幻惑(チャーム)の能力もまた有している。
 全サーヴァント。いや、世界中の戦士の中でも、瞳が伝えるものの真髄を知っているとさえ言っていいだろう。


 そんなライダーが、星矢の瞳を見てしまった時点で、既に決していた。
 この戦いとも言えぬ虚しき暴発の終わりを。


ライダー「………っ」

 どこまでも純粋で純真、そして、力強い熱き瞳。
 それはまるで鏡のように、今のライダーの心の乱れを反射して映す。

 ライダーは、動くことができなかった。
 再び暴走したゴルゴンの怪物は、鏡のように澄んだ瞳によって、石と化してしまったのだ。


 熱で暴走していた心が、より熱き瞳に溶かされていく。
 たった一人の人物しか見えていなかった視界が、平成とともに徐々に開けていく。

 そして見た。
 星矢の後ろに居る、アテナ… いや、城戸沙織の瞳を。


沙織「…………」

 そこには、かつてのメドゥーサとしての彼女が知る、傲慢な女神の姿など、どこにもない。
 
 ただ、どこにでもいる一人の少女がいた。
 愛する少年を心の底より案ずる、不安で、弱々しく儚い、そんな少女の… 祈るような、悲痛の想い。

 自分の身など考えていない、命の危険すらあるその場で、愛する存在だけを案ずる目…


ライダー「っっ………」

 そう、それは
 ライダーが、かつて見た…

 彼女が、最も侵してはならない存在の瞳では、なかったか。






  ◇    ◇






    『……貴女は私たちを守った。
     けれど、私たちを守ったメドゥーサはもういない』


    『なら―――守られていた私たちも、同じようになくなりましょう』


     『……うわ、もう目の前かあ……。
      じゃあね。さようなら、可愛いメドゥーサ』
    
      『最後だから口を滑らせてしまうけど―――』





         『憧れていたのは、私たちの方だったのよ?』






  ◇    ◇






ライダー「あ… あ……」

 ライダーの体が、震える。
 自然と武装は消え、服装は日常のライダーの姿へと戻った。


星矢「……?」


ライダー「うあ、あ゛ぅ、あ……」

 頭を抱え、力なく膝をついていた。
 呼吸が乱れていく。心臓が悲鳴を上げる。


 頭の中でオーバーラップする、二つの存在。

 かつて自分が何を置いても守らなければならなかった、何よりも大切な人。
 そして、怪物に変貌した自分が、最初に喰い殺してしまった… 二人の、姉。


 よりにもよって最も憎い存在が、同じ眼をしていた。

 それをライダーが知ってしまったその瞬間。
 ライダーの中で、二つの悲しみと憤りが渦を巻き、その胸を絞め殺そうとする。


 憎むべき相手が、もはやどこにもいなくなってしまっていたという事実に。

 そして何より、また同じ過ちを犯してしまったかもしれない。
 かつての過ちと、まったく同じ情景の中にいた、自分自身に……



ライダー「ア… ア、ア……」

 自責と自嘲が、幾千幾万の針となって、次々とライダーの心を突き刺していく。

 そんな時
  

桜「ライダー!!」

 声が、聞こえた。


ライダー「サク… ラ……?」

 涙に濡れた瞳が、その姿を捉える。

士郎「……」

 横には、士郎もいた。


桜「ライダー…」

 桜は、ライダーの痛々しき姿に躊躇いながらも、徐々に歩み寄ってくる。
 それに対し、ライダーは

ライダー「……」

             (タッ…───!!!)


 顔を伏せたまま、その横を走り抜け

士郎「っ!?」
桜「ライ…っ」

 そのまま、人の隙間をかき分け、何処かへと消えていった。


桜「待って、ライ…」

 手を伸ばし、ライダーを呼び止めようとする桜。


士郎「ライダー!!」

 それと同時に、士郎はライダーを追い、走り出していた。


桜「(先輩……)」

 それを見た瞬間、桜はライダーを追って走ろうとしていた足を、戻す。

 ライダーは、自分から逃げる形で走り去っていった。
 きっと、逃げたかったのだ。

 なら、それを追うのも、何とかするのも… その役目は、先に追いかけた、あの人のものだろう。


桜「(ライダーのこと… 頼みます。先輩……)」

 心の中で祈るようにそう呟くと、桜は、後ろを振り向いた。


桜「……すみませんでした。私の身内が、ご迷惑をおかけしたみたいで」

星矢「あ、ああ、いや…」
沙織「………」

 桜の丁寧な御辞儀と、謝罪の言葉に、沙織たちは何も言えない。
 何を言えばいいのか、何があったのか、それをまだ知らないから。

 ライダーと呼ばれた女性(ひと)は、どうしてあんな形で暴走し、そして突然泣いて、去ったのか。
 それに対し沙織は、かつてアテナとして、どう関わったのか。


桜「……城戸、沙織さん。ですよね?」

 沙織を見据え、桜が問う。
 その口調には、小さく敵意と、怒りが内包されていた。


沙織「……はい」

 対する沙織は、返事に力がない。


桜「森羅の人に、何があったか聞きました。
  そして… 沙織さんが、女神アテナの化身の方だっていうことも。
  沙織さんは、ライダーのこと…」

沙織「私は… 彼女のことを、何も思い出すことができませんでした」

 罪の告白の如く、沙織は答える。


桜「そう… ですか」

 桜は俯き。きゅっ と、組んだ腕が自分の服の袖を握る。


桜「………私、夢を見たことがあるんです。
  ライダーの夢。

桜「私は… たぶん、沙織さんに、その夢を話さなくちゃいけないんだと思います。
  …ライダーがどうしてあんな事をしたのか。そして… ライダーに、何があったのか。
  ライダーが、それで私を許してくれなくても…」

 それでもこのままじゃ、ライダーが…
 憎む理由すら忘れ去られてしまった彼女が、あまりにも、可哀想だと思うから……


星矢「…そうだな。俺も、聞いておかなきゃいけないと思う」
沙織「ええ… 桜さん。お願いします」

 そう言って、沙織は桜に頭を下げた。
 沙織が自分なりに、己の罪を逃げずに享受する覚悟で臨んでいる証拠である。


桜「……… とても、とても昔の夢でした…」

 そして桜は、語りだした。


 とても面白おかしくて   健気でかわいくて    愛しく   優しく

 かなしい   悲しい   哀しい   カナシイ……

 ある日夢を通して見た、一人の不憫な怪物の大切な思い出の物語を────





  ◇    ◇




      トアールレストラン同階

     西側    非常階段連絡通路




                それは、とてもとても昔の話。

         海の上に浮かぶ小さな島に、一人の怪物が暮していました。

    女神の怒りを買ってしまった女は、怪物に変えられ、ひとりきりで島に暮らしていました。






ライダー「ハァッ… ハァッ…」

 ただひたすら、がむしゃらに逃げ走ったその先に
 ライダーが辿り着いたのは、人が決して来ることのないであろう、非常階段と繋がった僅かな屋外スペースだった。

 ふらつきながら鉄柵によりかかると、どこまでも広大に、自然の景色が広がる。
 空も海もどこまでも蒼く、果てがない。


 あの島の一番高い位置から見たことのある景色にまるでそっくりで、不思議と笑みがこぼれた。






              でもそんな怪物にも、嬉しいことがありました。

      なんと、二人の姉が、怪物となった自分と同じ、神に追放された者の島へ来てくれたのです。

            なんて嬉しいことでしょう。もう怪物は淋しくありません。

          怪物は、二人の姉がいれば、他にはもう何もいらなかったのですから。


              いびられても、からかわれても、いじめられても

             それは怪物にとって、夢のような日々の時間でした……







ライダー「は、ハハハ。はは……」

 なんて、乾いた笑い。
 自分を卑下する笑いとは、こんなにも乾いているのか。

 そんな風に考えると、よりずっと笑えてくる。








                ……しかし、怪物の想いとは裏腹に

          そんな夢のような日々は、いつまでもは続くことはなかったのです。




        



 なんて滑稽なのだろう。なんて愚かなのだろう。
 なんて惨めなのだろう。なんて… なんて… 






          そして、怪物の夢の日々に、終わりの日がやってきました。

        女神の呪いは、やがて怪物の心を、本当の怪物へと変えていったのです。

          怪物は、しだいに、なにもわからなくなっていきました。

           大好きな二人の姉のことも、そして、自分自身も。




        




ライダー「う、ひぐっ…」

 気付くと、嗚咽とともに
 また、膝が地面についていた。






            お腹のすいた怪物は、ある日、大切なものを べてしまいました。

        そして怪物は、また独りきりになってしまいましたが、それすら怪物はわかりません。

        何もかもわからなくなった怪物は、何が悲しいのかもわからず、ただないていました。

              そして怪物は、誰もいない島を、さまよい続けました。

                       ずっと、ずっと   

            いつかゆうしゃさまが、かいぶつをたいじしてくれる、その日まで       









ライダー「う、あ… あぅ、うぅあ…っっ
     あ゛あっ!!! くあぁあっっっ!!!! うああああああああっっっっ!!!!!!」




         (ガァンッ!!  ガァンッッ!!! ガァァンッッ────!!!!)



 振るわれるライダーの拳が、鉄柵を熱した飴細工のようにひん曲げ、コンクリートの床を何度も砕く。

 周囲の何もかもを引き裂き、粉々にし、その破片でライダーの拳は、手先は、傷付き、血に染まっていく。
 それでも、ライダーの拳は止まることはなかった。

 まるで、周りのモノをではなく、自分自身を壊そうとしているかのように…
 





                  そしてまた怪物は

            ひとりきりで、ずっとずっと、ないていました…





164 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 08:06:16

○ライダー → 沙織の目がかつての姉のものと同じだと気付き、駆け付けた桜から走り逃げ、慟哭。
○間桐 桜 → ライダーの前に現れるが、ライダーを士郎に任せ、沙織に夢の話を始める。
○城戸沙織 → ライダーの悲しむ姿を見、桜の話を聞く覚悟を固める。
○ペガサス星矢 → ライダーに瞳で自分の想いを伝えたが、ライダーを苦しめる結果になってしまった。
○衛宮士郎→桜とともに駆けつけ、ライダーを追いかける。


【今回の新規登場】
○ステンノ&エウリュアレ(Fateシリーズ)
神代に生きた女神。ゴルゴン三姉妹の長女と次女であり、生前のメドゥーサ(ライダー)の二人の姉。
細胞一つに至るまで同一の存在であり、お互いを「私」と呼ぶ。完全な不老不死であるため、ライダーとは対照的な
幼い容姿でライダーの憧れの姿でもある。末の妹であるライダーには何かと手厳しく当たり、洗濯や雑用などにこき使う他、
吸血するなど日常的に虐めていたが、彼女らなりにライダーを深く愛していた。英霊と成ってなおライダーを苛む「罪」の
象徴的存在。ライダーがアテナの嫉妬を買い形なき島に追放された後、彼女を心配して追って来て形なき島で暮らしていた。
二人はアイドルとして、男に庇護されつつ蹂躙される宿命とされており、ライダーは大好きな彼女達を守るため、島に訪れる
者を石にしていた。ステンノは三人で永遠に一緒に暮らせると夢見て、エウリュアレはいつか三人でかつての場所に戻ると
信じていたが、ライダーが人を殺し過ぎて反転し怪物になってしまい、自分達を守ってくれたライダーが消えた時、自分達も
ライダーと同じように消えることを望み、本当はライダーに憧れを抱いていた事を告白しつつ生きたまま喰われ、ゴルゴンの
中に取り込まれていった。ステンノは「強い女」。エウリュアレは「高く飛ぶ女」という意味がある。


165 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 08:09:02



      トアールレストラン同階

     西側    非常階段連絡通路前  廊下




士郎「ハァッ… ハァッ…」

 人のいない薄暗い廊下を、士郎はたった一人で走り続けていた。

士郎「ライダーが、来たのは…… こっち… だよな?」

 額から多量の汗を流し、絶え絶えの息で、肩を大きく上下させている、士郎。


 同じ走るという動作でも、サーヴァントであるライダーのそれと、人間の士郎では全く違う。
 もっとも士郎はよく追えた方だが、それでも巨大な建物の1フロア、その反対側までの蛇行レース。

 途中でライダーの後ろ姿を見失い、それでも足音を頼りに追い続けたが、それにすら振り切られた。
 後は勘と根性と総当たり。それでなんとかここまではやって来れたというわけだ。


士郎「ええと…」

 呼吸を落ち着けながら、辺りを見渡す。

 扉はいくつかあるが、用具室とかリネンとかばっかりで…

士郎「……ノブ、埃かぶってるな…」

 開けた形跡すらない。
 ライダーの狼狽してた様子からして、霊体化して通り抜ける余裕があったとも考えにくいし…
 

士郎「あとは、ここか……」

 そうして士郎は、最後の扉に手をかけた。






  ◇    ◇





(ビュウッ────・・・・・!!!)




士郎「うわっ……!」

 扉を開けるとともに、気圧の関係か、かなり強い風が士郎の頬を叩きつけ、通り過ぎる。
 同時に、西であるにもかかわらず、それでもかなり強い海辺の日差しもまた、室内にいた士郎の目には毒だった。

 思わず目を閉じながらも一歩ずつ進み、後ろ手でドアを閉めた士郎は、
 やがてゆっくりと、目を開けた。

 そこに、いたのは……




       (ザァッ・・・・・・・)




 再び吹いた強い風に、ライダーの長い髪が揺れている。
 ライダーは、士郎に背を向け、手摺の傍に立った姿で、そこにいた。

 何気なしに見ただけなら、麗らかに景色を見て物思いにふけっているようにすら見えただろう。
 それだけライダーの後ろ姿には、詩的なまでの美しさがある。


 だがそれは、今のライダーと、この場所を見ては、有り得ない。

 悉く砕けたコンクリートの床。壁。
 拉(ひしゃ)げて折れて、まるで何かのオブジェかのように変形した鉄の手摺。
 所々が血に濡れて赤いそのオブジェに敢えて名前を付けるというのなら、“怒り”だろうか。それとも…


ライダー「……………」

 ライダーは、依然沈黙を続けたまま、動かない。
 その背中はひどく痛々しく、同時に一掻きでかき消えてしまいそうなほど、儚かった。



士郎「・・・・・・・・ ライ…」

 士郎は意を決し、ライダーに言葉をかけようとしたが


ライダー「・・・どうかしたんですか? 士郎」

 それよりも先に、ライダーは背を向けたまま士郎に応える。
 おそらく、扉を開けるよりも前から士郎に感づいていたのだろう。


士郎「どうかしたんですか、って・・・ ライダーこそ」

ライダー「私は見ての通り、ここで沸騰した頭を冷やしているだけですが」
士郎「……………」

 嘘だ。それだけじゃない筈だ。

 ライダーのその魂自身が、今も囚われ続けている業。
 それをあんな形で裏切られて、頭を冷ますだなんて… その想いを一瞬でも風化するなんて、出来る筈がない。

 だからここがこんなになるぐらい、いやそれ以上に、ライダーは苦しんでるんじゃないか…!!


ライダー「・・・・・・馬鹿ですね。私」

 士郎がやりきれない想いを巡らしていると、再びライダーが口を開いた。

士郎「………違う」

ライダー「いえ、甘やかさないでください。
     私が愚かだったことに変わりはないのですから」

 ライダーは冷静だ。
 …だからこそ、自分を卑下するその言葉は、痛い。


ライダー「今の、あの状態のアテナに… 私だけが覚えているかなどと。
     そんな事を求めても仕方がないというのに・・・ 
     挙句に、私一人の身勝手な怒りで、士郎やサクラに迷惑をかけてしまいました」

士郎「違う…! そんなこと…」

ライダー「結局私は… 何も変わっていませんでした。
     我を失い、同じ過ちを犯す… こんな愚かでは、サクラや士郎を守る資格も…」


士郎「ライダー!!!

ライダー「……ッ!!?」

 いきなり左肩を引かれ、ライダーは驚いた。
 思ったよりもずっと強い力だったことにも、そして… 士郎の普段からは考えられない行動にも。


 そうして驚いている内に、士郎は、より強い力でライダーを抱きしめる。

 172cmのライダーを、167cmの士郎が抱き抱えるという形は、女を抱きしめる男の構図としては少々不格好だが…
 それでも、その姿には、誰よりも漢らしい男の姿があった。


ライダー「士郎……?」

 ドアを開けてから、初めて見れたライダーの顔。
 そこには、ここに来るまでの間に流したのであろう、涙の跡が残っていた。


ライダー「……見られて、しまいましたね」

 恥ずかしげに、目を反らすライダー。

士郎「もういい。…もう、いいから。無理するな」

ライダー「…… 私は…」

 何故か、士郎を引き離すことができない。
 コンクリートをも砕ける力を持つ腕が、士郎から離れることが… できなかった。


士郎「どうして、こんなになるまで一人で抱え込むんだ…」

 何度も何度もコンクリートを殴って、拳骨を傷つけ真っ赤に染まった手。
 それを優しく己の手で包み、摩りながら、士郎は問う。

士郎「辛いなら、泣けばいいじゃないか。
   桜に、俺に… 俺達に全部ぶちまけてくれればいいじゃないか」

ライダー「士郎…」

士郎「誰だって辛い時は必ずある。
   そんな時… こんな淋しい所で、一人で泣くな。もっと家族に頼れ。
   少なくとも俺はじーさんに、そう教わったぞ」

ライダー「かぞ、く……?」

士郎「そうだよ。……俺達、もう家族みたいなもんだろ?」

 さも当然の如く、士郎は言う。


ライダー「私が… サクラや、士郎の… 家族………」

 思い出される、衛宮邸での日常。

 それは、桜と一緒にとりこんだ洗濯物であったり
 セイバーとのほんの些細な原因での喧嘩だったり……

 驚くほどゆっくりで、何事もなく、平穏な日々の時間。
 思い出せば思い出すほど、その日々は笑顔に溢れていて……


 その笑顔の中に居て、違和感のない自分に気付いたのは、いつだったか。
 いつから、その笑顔の日々が、当たり前だと認識できるようになったのか。

 それは…


士郎「俺や桜だけじゃない。セイバーも、藤ねえも、イリヤも…
   みんなみんな、俺にとっちゃ大事な衛宮家の家族だ」

 そう言って、ライダーを見上げ、満面の笑みを見せる士郎。

ライダー「…………」

 それは確か、この少年の同じような笑顔を、見た時ではなかったろうか。







                  ああ… そうか。

             失ったものは、あまりにも多かったけど

               私には、得たものもあったんだ…








  ◇    ◇





ライダー「なるほど… 私達は、家族でしたか」

 ああ、納得したという顔で、目を閉じ頷くライダー。


士郎「わかったなら、俺の胸で遠慮なく泣けばいいさ。
   桜の所に戻る前に、吐き出すものは全部出しとこう」

 グッ! と、胸を張りながら、右手親指でその胸を指す士郎。
 少しコミカルなその動作はなんだかおかしく、そしてありがたい。

ライダー「いいんですか?
     …私、一度泣き始めたらきっとすごくみっともないと思いますよ」

士郎「遠慮するなよ、俺達以外、誰もいないんだから」

ライダー「ええ、まあ… そうなのですが……
     それでも、なんだか恥ずかしい気がしますね。
     それに… 泣きわめいている内に、眼鏡が外れて士郎を石にしてしまうかも…」

 なかなか、あと一歩の勇気が出ないらしい。
 それも当然。こんなことは、ライダーには初めてのことだろう。


士郎「そっか… それじゃ」

 士郎はすぐさま、ライダーの顔に手を伸ばし

士郎「目を閉じて」

ライダー「え? …あ」

 言われた通りに目を閉じると
 カチャリという音と共に、ライダーの顔から眼鏡が外される。

 士郎はそれを自分のポケットに入れると


             (ポフッ……)


ライダー「……っ?」

 すぐさま自分の胸に、ライダーの顔を持ってきた。


士郎「これでいいか?」
ライダー「……………////////

 一瞬、思わず赤面するライダーだったが
 その次の瞬間には、ライダーの心(なか)の吐露を拒むものは、全て溶けて消えていた。


ライダー「………… ぅ…」

 士郎の胸の中、やがてライダーは声を震わせ、涙を流し始める。

ライダー「う、うぁ、あ゛、あ……」

 それはやがて大きな嗚咽となり、ライダーもまた、士郎を強く抱きしめた。

 強い力で腕が食い込む痛み。
 しかし士郎は敢えて何も言わず、ただライダーを黙って抱き留め続ける。


ライダー「お姉様…… お姉様ぁ…… お姉様ぁぁっっ!!! 
     うわああああああああぁぁぁぁぁぁああああああああああああっっっ!!!!!

 ライダーは、まるで幼い子供のように、泣き叫んだ。泣き叫び続けた。
 今はどこにもいない二人の姉のことを、何度も、何度も。


士郎「…………」

 そう、ライダーは、姉の仇がとりたかったんじゃない。
 恨みを晴らしたかったわけでもない。

 ただ… ただひたすら、姉を探していた。求めていた。
 だからこそ、忘れられているなんて、耐えられなかったのだ。


 最も関わりの深い女神の記憶からも、姉は消えてしまった。
 それは、どれだけ悲しかったろう。


 士郎にできることは、その悲しみを、その重みを少しでも多く受け止めるだけ。


士郎「………」

 ふと、
 海から跳ね返る陽光は、やけに眩しかった……





  ◇    ◇




      一方

    非常階段連絡通路前  廊下





セイバー「とりあえずは一件落着、ですね。…よかった」

 士郎とライダーがいる、非常階段の連絡通路。
 そこと扉を隔てたその向こうには、セイバーがいた。

 彼女は扉のすぐ傍の壁に寄り掛かり、扉の隙間から覗き込む形で
 士郎とライダーの二人の動向を見守っていた。


セイバー「……まったく。今回だけですよ。ライダー」

 実はセイバーは士郎に続く形で、一足遅れてライダーを追いかけていた。
 それは、彼女なりにライダーが、そして士郎が心配だったからこそなのだが…


セイバー「それにしても、家族、ですか…」

 セイバーもまた、在りし日の家族をその瞳の奥に思い浮かべていた。

 知略で国を支えてくれた兄、サー・ケイ。
 悲しみしか与えることができなかった、形だけの妻。グィネヴィア。

 そして…


セイバー「(モードレッド……)」

 何もない天井を見つめるセイバーの目に、哀しみが去来する。
 己の手で斬り伏せ殺した、同じ貌(かお)の息子。

 彼もまた、セイバーが救うことのできなかった家族の一人だった。
 家族殺しというのなら、ライダーと自分は同じかもしれない。

 いや… 呪いに狂わされたライダーよりも、
 最初から最後まで、自分の業で子を死なせた私の方が、よほど罪深い。


セイバー「(いつか… 償うべき日は、来るのでしょうね)」

 覚悟はしている。

 士郎と一緒に生きていくと決めた。
 だが、いつか必ず、子殺しの罰はやって来るだろう。






              ライダーも、セイバーも、そして、桜も…

          殺した者達、奪った者達は、罪を抱え、これからも生きていく。

          結局は、そう生きるしかなく、逃げる道など、どこにもない。

       罪業の苦悶に苦しみながら、それでも、安らかな幸福の日々を生き続けよう。

             それこそが、奪った命への償いだと信じて……






166 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 08:09:33

○衛宮士郎→ライダーの悲しみを正面から受け止め、抱きしめる。
○ライダー→士郎の胸の中で、子供の様に姉の名を叫び、泣き続ける。
○セイバー→実は駆けつけていた。そして、モードレッドの事を想う。


167 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 08:13:47




       それから十数分後


      トアールレストラン同階

     西側    非常階段連絡通路




ライダー「ありがとうございました。士郎」

 少々の時が経過したことで、ライダーはいつもの平常に戻っていた。


士郎「…ああ」

 知性と品性を宿す柔和な表情が、士郎を大きく安堵させる。


士郎「これから、どうする?」

ライダー「レストランに戻ります。
     …彼女と、今度こそきちんと話すつもりです」

 そう話すライダーの目には、もはや怒気や狂気は欠片もなく
 むしろ…


士郎「……ん、そっか」

 そして士郎も、それ以上を訪ねることはしなかった。
  

        (ギィ…)


 扉に手をかけ、ライダーが

ライダー「そうそう。誰にでも優しいのはいい事ですが…
     時として、命取りになりますよ?」

士郎「え? なんでさ?」

 士郎の問いに、ライダーは僅かに微笑み


ライダー「では、私はこれで…」

 後ろ手で、ドアを閉めた。


 



士郎「それにしても、ライダーはいったい何のことを…」

 そんな独り言を漏らしながら、続いてドアに手をかけ、ゆっくりと開く士郎。


士郎「あ……」

 そこには


セイバー「おはようございます。シロウ」

 ニッコリと笑った顔の、セイバーが


士郎「セ、セイバー… さん? いやその、これは」

セイバー「長い間お抱き合いになってましたね」

士郎「ああ… 見てたのね」

 オーノー、とばかりに片手で顔を覆う士郎。


セイバー「ええ。覗き見するつもりはなかったのですが、心配でつい」

 本意ではない覗き見をしたことに対して、セイバーはいささか申し訳なさそうにしている。
 どんな事象にさえ、自分の非は誰よりも真正直に受け止め、反省するのがセイバーだ。


士郎「なら… 事情も分かってくれてるよな? ライダーは素通りしたみたいだし」

セイバー「ええ。シロウのライダーへの親愛の情と行動には感動を覚えました。
     この身がシロウのサーヴァントであることに、改めて誇りを感じます」

 セイバーの言葉に、士郎がほっとするも束の間。

セイバー「しかし… それとこれとは別の話。
     ライダーは許しますが、士郎はもう少し自分のことを自覚するべきです。
     貴方がいつまでもそんな様子では、周りの女性も無用の苛立ちに…
     まあそのですね。あくまで一般論ですが……(ゴニョゴニョ」

 最初はすらすら話していたセイバーだが、
 途中からだんだん顔を赤くし、何やら聞き取り辛くなっていっている。


 ここで選ぶ言葉によっては、平穏に終わったかもしれない。
 しかし、忘れてはならないのは、ここに立っている男が世界最大レベルの朴念仁だということだ。


士郎「周り? 苛立ち…? ……何でさ?」

 そして、この場で一番発してはいけない朴念仁発言が、発射される。

セイバー「………!!(ピシッ…!)」

 晴れ渡った空だというのに、セイバーの背景に落雷が走るのを士郎は見た。


セイバー「ふっ… ふふふふ、ふふふ……」

 顔を抑えたままの、なんかニヒルな笑い。
 あれ? セイバーのこういう顔は始めて見るぞ。

 ……ってゆーか、見ちゃいけない表情だと第六感が今更デンジャーサイレンを出してるんだが。

 おかしいな。サイレンってのは人が逃げる為に作られた警報装置であるはずだ。
 なのに何で俺のサイレンは、もうどうしようもない逃亡不能のDEADEND直前状況になってようやく鳴るんだ?

 

セイバー「……………… わかりました。もう何も言いません。
     私が甘かった。シロウに必要なのは助言ではなく… 教育的指導のようですね」

 そう言って、セイバーはどこからか竹刀を取り出し、こっちに向かって構える。

士郎「せ、セイバー!? ちょ、ちょっと待て。こっちで帯刀は禁止ってあれほど」

セイバー「大丈夫。竹刀ですから、打ち所さえ悪くなければめったに死ぬことはありません。
     ちなみに、道場に送る気は満々ですが」

士郎「それは世間一般では「殺害予告」って言うんだ〜〜〜っっ!!!!」


セイバー「問答無用!! 覚悟────っっ!!!」

士郎「うぎゃあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!??」




                (ちゅど〜〜〜〜〜ん!!!)





 士郎は、薄れゆく意識の中。

士郎「(あ〜… ライダーが言ってたのはそういうことか。
    久しぶりに本日二度目のタイガー道場だな。これ…)」

 とか、思ったとか思わないとか。


168 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 08:14:23

○セイバー→士郎のあんまりな反応に、ついキレて教育的指導。
○衛宮士郎→過度の朴念仁がたたり、セイバーの怒りの折檻によって再びタイガー道場へ


169 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 08:17:09



    トアールホテル  レストランフロア




 ライダーによって引き起こされた騒動から、半刻ほどの時間が流れたろうか。
 件の騒動による人だかりはほとんど消え、レストランフロアはほぼ元の賑わいに戻りつつあった。


桜「……私の知っている物語(ゆめ)は、そこで終わりです」

 そんな中、一人の少女の口から語られた物語が終わりを迎える。
 少女が一心同体の存在とのパスを通じて、かつて見た… 悲しい、哀しい夢の話。


星矢「………」

 それを最後まで聞き終えた星矢達。
 その誰もが、重き沈黙と、悲哀の表情に支配されている。


 星矢以外にも、少しだけ離れた場所に立つ氷河と紫龍も同様。
 瞬に至っては、自分で気付いているかはわからないが、一筋の涙すら流している。

 親のように、いやそれ以上に深遠に、守り、いたわり、愛してくれた姉。
 そんなかけがえのない存在の、深き愛と、献身と、死の悲劇。

 元々が誰よりも優しい心を持っている上に、同じく一輝という、己を誰より愛してくれた兄を
持つ瞬にとっては、その物語はまるで自分の事のように感情の移入を許してしまうのだろう。


沙織「……………」

 だが、それよりも更に表情が沈痛なのは、沙織である。

 桜という少女から無感情に、驚くほど淡々と語られた物語は、しかしそれ故に聞く者に重くのしかかった。
 ライダーを【家族】と語る彼女は、その物語を自分が何度も見た夢だと言った。

 そしてその家族をどれだけ大切に思っているのかは、語る際の一挙一動に痛いほどよくわかる。
 なら彼女は、その家族であるライダーの夢を見て、何度涙を流したのだろうか。

 勿論、その夢を支配する理不尽の元凶に、誰よりも彼女は怒りを孕んでいるだろう。
 きっと、百万の殺意を以ってしてもなお足りないほど、“女神アテナ”への憎しみがあろう。

 だがその憎しみや怒りといった感情を、桜は一欠けらすらも沙織に向けはしなかった。
 だからこそ、その想いがより胸を刺すのだ。


沙織「私は…」

桜「私は最初の夢を見たときから、ずっとライダーを…
  あの子の心を傷つけ続けてるものから、開放してあげたいと思ってました」

 重い沈黙の中、沙織が重い口を開こうとした時
 桜は呟くように再び語りだした。


桜「……私は、今を生きてるライダーを笑顔にさせることはできます。
  でも、夢の中のライダーにも、今いるライダーの中に残ってる、自分を責める心も…
  “今”を生きている私には、“メデューサ”という女性を救うことは出来ないんです」

沙織「桜さん…」

桜「でも、沙織さんなら… 同じ世界にいたあなたなら、できるかもしれないと思うんです」

沙織「…! 私…なら?」




  ◇    ◇




邪武「沙織様、大丈夫ですか?」

 時間の経過により、なんとかライダーによるダメージから回復し、沙織の周りに再び集う邪武達。


沙織「…ええ、私は大丈夫です」

邪武の言葉に、沙織は優しく笑顔で答えるが

星矢「お前らこそ大丈夫かよ?」

 星矢の方は、同じ笑顔でも意地悪なニヤリ笑みで返してきた。


邪武「んがっ・・・! うるせえよっ!! このヤロウ!!」

星矢「シシシ」

 軽いパンチを連続で繰り出す邪武に、それを平手で全て受け止めながら歯を見せ笑う星矢。
 彼らがごく時折に見せる、13歳の少年らしい顔である。


沙織「・・・・・・・・・(クスッ)」

邪武「ああっ! 沙織様まで… ・・・っ!?」

 突如、邪武の顔が一瞬で戦士のものへと変わり、即座に後方へ振り向く。
 その視線の先には… 



ライダー「………………」

 先刻の騒ぎの主にして、邪武達を一撃で静めた巨躯の女性。
 それが最初に見かけた時と同じ民間人の服装で、再びこの場所に戻ってきていたのだ。


桜「ライダー…」

邪武「こいつっ!」

 心配そうに目を細める桜。警戒を強め先制に構える邪武。


星矢「よせよ」

 しかし邪武の構えは、星矢によって解かれる。


邪武「っ? 何言ってんだ!? 目の前の相手が見え…」

沙織「邪武」

 星矢にとめられてなおも食い下がる邪武を、続いて制したのは沙織だった。


邪武「沙織… お嬢様…?」

沙織「私は大丈夫です」

邪武「は… はあ…」

 静かながらも有無を言わさぬ沙織の目に、邪武は控えざるをえなかった。



ライダー「…………」

 ライダーは物言わず、ただ沙織を正面に見据えながら、しっかりとした歩みで、まっすぐ歩み寄ってくる。
 そして沙織も、そんなライダーがほんの数歩ほどに近づくまで、しっかりとライダーを見ていた。


沙織「…………」

ライダー「…………」

 しばらく無言で見つめあう、両者。
 ある者は緊張の面持ちで、ある者は一切表情を変えることなく、それを見守る。

 すると


沙織&ライダー「「すいませんでし…」」


        (ゴンッ☆!!!)


沙織&ライダー「ぃたっ!!?」

 ほぼ同時に頭を下げた両者のおでこ同士が盛大にぶつかり、共に悲鳴を上げた。
 突然の頭突き事故の発生に、呆然とする周囲の人間達。


ライダー「……………ふ」

沙織「…………ふふっ」

 額を押さえたまま目を合わせると、とたん両者は微笑み始めた。


ライダー「やはりもはや別の存在ですね。
     私の知る女神アテナと、あなたは全く違う」

沙織「ええ。私はアテナの宿命を受け継ぎましたが… それ以前に私は、城戸沙織です」

ライダー「ならば、挨拶をやり直さなくてはいけませんね」

沙織「ええ」



ライダー「初めまして。城戸沙織」

 差し出される、ライダーの右手。

沙織「初めまして。ライダー」

 同じく差し出される、沙織の右手。
 

 両者の手が、ギュウと、強く、強く… 握られた。

 女神アテナと、メデューサではない。
 ただの城戸沙織と、ただのライダー。

 かつて遥か遠けき神話の時代。傲慢なる神々の過ちにより起こった確執は、そこには関係がない。
 今を生きる二人は、それぞれに自信の過去に決着をつけ、それぞれが大切な家族、仲間と共に生きていく。

 この握手はその決意の表れであり、同時にそう生きていく互いへの健闘の祈り。
 そこに一切の言葉は交わされず、また必要もなかった。


 だから二人は、そのまま無言でまた別れる。
 数奇にも幾千年の時を経て交錯した道が、再びそれぞれの道へと戻るのだ。


 その道が再び交わる時は、来るのか
 交わった時、城戸沙織とライダーは友となれるのか、それとも…

 それは、誰にも分からない
 そう、たとえ神にすらも



  ◇    ◇




桜「待って、ライダー」

 後ろから聞こえる声に、振り向くライダー。

ライダー「桜」

 手を振り小走りでやってくる桜。その顔は、実に気持ちのいい笑みで溢れている。


桜「お疲れ様」

ライダー「…はい、肩の荷が、一つ下りたような気がします。
     ありがとう、サクラ」

桜「ううん、私は大した事は何もしてない。
  むしろ… ごめんなさいライダー。私、あなたの…」

 謝ろうとする桜に、ライダーは無言で、桜の口に自分の手を添える形でそれを制する。
 そして… にこりと、笑顔。


桜「…………」

 その笑顔を見て桜は思った。
 本当によかった… と。

 心の中で、強く城戸沙織という女性に感謝をした。
 色々とあったが、彼女のおかげでライダーは過去の鎖の一部から、ようやく開放されたのだ。

 無論、全ての鎖が解けたわけではない。
 ライダーの心を巻きつける罪という名の自責。姉殺しという名の茨は、これからも彼女を苛み続ける。

 だが、それでも
 こうして二人、笑顔で歩んでいけるなら、きっと何の心配も要らない。

 彼女はもう蛇の化け物ではなく、衛宮家の家族で、とてもきれいな女の子なのだから。
 だからこれからは私が、彼女をもっと、とびきりの笑顔にさせていく。

 私が先輩にかけがえのない“幸せ”を貰ったように
 私がライダーを、今度こそは世界一幸せな女の子にしてあげるのだ。



桜「でも私、全員を倒したライダーの姿もちょっと見たかったかも」

 と、勢いで黒い冗談を言う桜だったが


ライダー「いえ、勝負はもう既についています」

桜「……え?」

 桜の方が驚く返事が返ってきた。


ライダー「恐るべし、城戸沙織… サーヴァントの、しかも私をも上回る、石頭、とは…(クラッ」


    (バッタ────ンッ!!)



桜「ら、ららら、ライダー!!?
  しっかり! しっかりして────────!!!」


170 名前:新章/女神は怪物(ゴルゴン)と再会す:2009/10/22(木) 08:17:42

〇間桐桜→ライダーを世界一幸せな女の子にすると決意
〇ライダー→ライダーとして、城戸沙織と握手。石頭で沙織に敗れる。
〇城戸沙織→知らないうちに石頭でライダーを倒していた。
〇ペガサス星矢→久しぶりに少年らしい一面を出すも、決める時は決める
〇アンドロメダの瞬→ライダーの夢の話に唯一涙
〇ユニコーンの邪武→まあ彼の反応は間違ってはいない


171 名前:新章/その時カレーコーナーでは:2009/10/22(木) 08:31:33




       同時刻

    トアールレストラン   世界のカレーコーナー



シオン「また来ちゃった… う〜ん、我ながらカレー好きねぇ、私」

 自分で自分のカレーへの愛好ぶりに苦笑する、シオン。
 その目的は、一週目ではさすがに回収しきれなかった「世界のカレー」のもう半分である。

 ちなみに、そんな怪物的な量を、一週目で大量に、しかも自分の手だけで持っていった怪物的カレー好きメガネが、
シオンの到着の数分後に、更に残りのカレーを殆ど空にしてしまったりするのだが…

 そういう意味では、シオンがこのタイミングでここに来たのは奇跡的な幸運である。


シオン「(それにしても、さっきは向こうがすごい騒ぎだったけど… なんだったのかしら?)」

 レストランフロアはかなり広い。
 その上、コーナー別に様々な装飾が飾られたりしている為、一目でレストラン全体を見渡すのは難しい。

 “自分の食事席から離れた所で神話レベルのバトルが繰り広げられていた”

 ……など、シオンには知る由もないのであった。


シオン「とにかく、カレー、カレー っと♪」

 ルンルン気分で、シオンがカレーコーナーに歩み寄った、その時…


シオン「……………え?」

 シオンがその目を疑うような光景が、その先にあった。


KOS-MOS?「〜〜〜〜♪」

 数あるカレー鍋のひとつの、目の前。
 そこに、自分のトレーの上のライスが乗った皿に、カレーをかけているKOS-MOSらしき姿がある。

 しかも、なんか鼻歌まで歌ってるし。


シオン「ちょ…… ちょっとちょっとKOS-MOS!!」

 慌ててKOS-MOS(?)に駆け寄る、シオン。

KOS-MOS?「えっ?」

 対するKOS-MOS(?)は、
 いきなりびっくり顔で話しかけてきたシオンに、目をぱちくりさせている。 


シオン「“えっ?”」じゃないでしょ!? 何やってるのKOS-MOS!!
    あなた、カレーなんて… 物を食べれるように出来てないのは…」

 人差し指を突き立てて、KOS-MOSにいつもの調子でクドクドと叱ろうとするシオン。

 しかし


KOS-MOS?「……… あっ! シオンさ〜ん。どうもおはようゴザイマスです〜」

 邪気のない無垢な満面の笑顔で、シオンに挨拶をするKOS-MOS(?)。


シオン「な、っっっ………!!!!???

 天地も鳴動し兼ねんほどの驚きに、シオンの目が見開かれる。
 それも当然。この笑顔は、KOS-MOSを知っている人物ならそうであるほど、ショックが強い。

 特にKOS-MOS(?)の製作者であるシオンからすれば、心臓が止まり兼ねんほどの衝撃だったろう。


シオン「え…… いや、ちょっ… シオン、さ…… ええ!?」

 ショック覚めやらぬシオンが、反芻しながら何度も繰り返し驚いていると
 

トロン「あっ! いた!!
    ちょ〜っとぉ! KOB-MOS(コブモス)!! あなた何やってますの〜〜!?」

 どこかで聞いたような声が、後ろから聞こえてくる。


コブモス「あっ。トロン様ぁ〜〜〜〜」

 遠くから聞こえるトロンの声に、コブモスと呼ばれたKOS-MOSらしきロボットは、笑顔で手を振った。


トロン「“トロン様ぁ〜〜”じゃないですわよ、まったく…。
    私はデザートコーナーであんみつアイスを取って来いっていったんですのよ!?
    それなのにま〜たカレーコーナーで油を… あら?」

 途中まで強い語気でコブモスを叱っていたトロンは、その隣にいる人物を確認すると


トロン「シオン? あなたもいたんですの?」

 と、なんともあっさりな再会の反応。

シオン「“いたんですの?”って… それ、私のセリフですが…
    (いくら私たちと違って早い再会だからって… なんか寂しいなぁ)」

 いや、今はそれどころではない。
 シオン的には大問題な存在が、今も隣できょとんとしている。


シオン「それよりも… これ、いったい何? コブモスって… もしかして」

トロン「あ…。え、え〜〜〜〜っっ…と」

 シオンに真顔で質問をされ、明らかに戸惑いを見せるトロン。 


シオン「あれだけやめてと言ったあのプラン… 実行しちゃったのね?」

 シオンが言う“あのプラン”というのは、かつての五界混沌事件での出来事のことである。

 ピラミッドの中での連戦、その時に敵、ザベル・ロックが出してきた驚くべき駒、KOS-MOSコピー。
 オリジナルの初期KOS-MOSよりも装甲が強化されているが、反面出力においては劣るという性能
 それが複数体も出現した時は、メンバー全員の肝が冷え、シオンに至っては心臓が止まりそうだった。

 しかしメンバーもまたそれを凌ぐ最強の英雄、強者達。
 悪夢のような“敵”を相手に苦戦しつつも勝利を手にし、KOS-MOSコピーは全て破壊された。


 やれやれと安堵の息を漏らしたシオン。
 だがそこで更に、驚愕の一声が上がった。 

 “あ、名案がありますわ!
  残ったパーツをこのコ達に組み込んで、コブンとKOS-MOSのコンパチモデルを造るというのはどうかしら?”

 という、トロンのトンデモ発言である。

 勿論、KOS-MOSの開発主任であるシオンはそれに大反対。
 それにより、コブモス開発計画は白紙になった… 筈だった。


シオン「それがここにこうしている… ってことは」

コブモス「ハイ♪ コブンの記憶データを継承して造ってもらっちゃいましたぁ。
     KOS-MOSさんよりパワーは劣りますけど、その代わりすごく頑丈なんですよー」

トロン「こ、こらコブモス!! シー! シーッ!
    ああもう、これじゃ皆への口添えが全部無駄になるじゃ…」

 得意げに自分のスペックを自慢するコブモスに、慌てて黙らせようとするトロン。
 しかしヒーローの皆に口止めか何かをしていたことを暴露してしまっているので結局ミイラ取りが何とやら。


シオン「……なるほどなるほど。
    KOS-MOS開発主任の私に無断で、造っちゃったわけですか。
    それも他のヒーローの皆さんに、コブモスが私にバレちゃまずいから、
    自分たちがいることを黙っててとお願いした… と」

トロン「いや… その… あの…
    これはあくまでメカニックの純粋な使命感とメカへの愛での行動であって。
    決してあのKOS-MOSのスペックをコブンに持たせたら空賊家業も安泰。
    借金生活もオサラバですわ〜とか思ったわけではなくて────」

 と、トロンが懸命な弁明を続ける中

シオン「は〜〜〜〜〜………」

 シオンは右手を拳にして強く握り締め、
 その拳に、気合と共に息をゆっくり吹きかけ…





           (ガンッ!!!)

                         (ゴチンッ!!!)






172 名前:新章/その時カレーコーナーでは:2009/10/22(木) 08:31:57

○シオン・ウヅキ→カレーコーナー二周目にしてトロンとコブモスに出会い、
         勝手なコブモス製作に叱りのゲンコツ
○トロン・ボーン→シオンと再会。コブモスを勝手に造った事でシオンからお叱りのゲンコツをもらう。
○コブモス→シオンにKOS-MOSそっくりの姿と、コブンの無垢な性格を初お披露目。


【今回の新規登場】
○KOB-MOS/コブモス(ナムコ×カプコン:半オリジナル)
外見は18歳前後、身長167cm、体重92kg。青色の長髪と赤色の瞳。CV:横山智佐。
五界混沌事件、ピラミッド内の戦闘において破壊したKOS-MOSコピーの残存パーツをコブンに組み込み、
トロンが秘密裏に(シオンに黙って)作られたコブンとKOS-MOSのコンパチモデル。正式名称は
「Kobmos Omotonisita Battamonno Mouretu Osorosii Systems(KOS-MOSを基にしたバッタモンの猛烈恐ろしい体系)」。
正式名称の命名者は小牢。言うまでもなく再帰的頭字語どころかただの悪ふざけであり、字もかなりいいかげん。
外見は完全に初期KOS-MOSだが、中身の性格は完全にコブンであり、ボーン一家に忠実なのも、カレー好きも、
おっちょこちょいも、声も、無邪気な性格もコブンそのものなので、KOS-MOSを知っている人間ほど面食らう。
オリジナルの初期KOS-MOSよりも装甲が強化されているが、反面出力においては劣るという性能はKOS-MOSコピー
のまま。兵装はオリジナルのものを全て受け継いでいる他、トロン・ボーンの改造により追加された(割とアホな)
便利兵装やシステムが組み込まれており、痛みなども感じる上にカレーも美味しく頂け、空腹や満腹の感覚まで存在。
コブンの頭脳が8等身に不慣れなのか、事あるごとによくコケる上に、自分の出力(馬鹿力)への不慣れから、
日常の雑務で物を粉砕したり建物を崩壊させたり、ボーン一家を入院させたりする。純粋な破壊力ではボーン一家の
メカの中でもダントツだが、中身がコブンなので活かしきれておらず、しかも重要な所でポカをして不発に終わったり
逆に味方側をピンチ、又は壊滅させてしまう事もある為、使い勝手としては果てしなく微妙である。
ちなみにコブンで数えるなら42号にあたる。一番若いコブンなので序列としては他の通常コブンの方がえらい。
なのでボーン一家ではコブン達が見た目KOS-MOSのコブモスに雑用の言いつけというカオスな日常光景が見られる。
KOS-MOSとの区別の為に、カチューシャ型外部兵装の額中央部分が本来のデザインからコブンの顔のデザインに
差し替えられている。

○トロン・ボーン(ロックマンDASHシリーズ)
声:飯塚雅弓。空賊ボーン一家の長女。14歳。メカニックの天才でもあり、その腕前はロールと互角。
自作の操縦者露出形人型ロボ「グスタフ」に搭乗して戦うのが基本スタイル。多くの戦闘用ロボットの他に、
41体ものコブンの製作者もトロンである。役の担い手としてはボーン一家の中心的存在。また、自身の作った
コブンに対しては厳しさと優しさを併せ持って接しており、こき使いつつも時おり母性を垣間見せてくれる。
とある出会いをきっかけにひそかにロックに恋をしているが、いわゆるツンデレであり素直になれない。
おかげで恋敵のロールとは犬猿の仲である。しかし、星から戻れなくなったロックを助けるために二人で
航宙ロケット製作を試みるなど、ことロックのピンチとなると互いに協力することもあり、お互い認め合って
いる所もあるようだ。ちなみに当人のロックはその想いに気付いてすらいない。シリーズを重ねる毎に様々な
理由でボーン一家の負債が増していくためか、ロールとは対照的にメカ開発には性能よりとにかく低予算を重視
するようになる。
五界混沌事件終結後、持ち帰ったコピーKOS-MOSのパーツを使い、KOB-MOSを製作する。


173 名前:新章/弓×たらし×タイガー道場:2009/10/22(木) 08:43:36


          同時刻

        (出張版)タイガー道場




タイガ「あのさぁ士郎さあ。そりゃ来てくれるのは嬉しいよ?
    でもさすがに30分も経たずにとんぼ返ってくるのはどうかと思うな〜」

Bイリヤ「そうだそうだー! だからアッパーでもう一人の私にフルボッコにされるのよ〜?」

士郎「はぁ… はい。すいません」

 一方のタイガー道場では、セイバーに道場送りにされた士郎が、愛の指導を正座で受け続けていた。


 そこに


                  (ガララッ……)


 道場の戸が、新たな誰かの手によって開かれる音。

士郎「えっ…?」

 それに驚き、士郎は正座のまま後ろを振り向いた。


ポックル「…………」

 そこにいたのは、士郎が見たことのない、一人の少年だった。 

 カマボコを逆さにしたような半月ツリ目に、箒のように放射状に下にツンツンと伸びた髪。
 見た目の年相応に見える“少年らしい”体躯は、その少年の持つであろう身軽さを初見の士郎にも予見させる。

 

 その少年の身を包む衣服の特徴は、西洋の牧歌的なイメージを感じさせる。
 しかしそれに反し、ウン… 貝殻をイメージさせる帽子の形が、まるでターバンのようでそうではない。

 この世界のどこの国の衣装のイメージとも融合しない独特の装飾形式を持つ服装。
 それは、彼がこことは違うまったく別の世界の住人であるという証明だった。


士郎「………(あれは…)」

 だが、士郎が最も目を惹いたのは、服装ではなく、少年の左手に装着されている、“あるモノ”だった。

 左手首に装着されている、茨(いばら)をイメージしたと思われるデザインの、シルバーの大きな腕輪。
 ちょっとしたリストバンド大のそれの中央にある深い海のような蒼色の宝石は、瑠璃(ラピスラズリ)だろうか。

 それだけならば、ちょっと大きな宝石のついた、ちょっと目立つだけの大きなアクセサリだ。
 凜ならともかく、特に士郎がそれほど目を惹く代物(シロモノ)ではない。

 士郎が目を惹いた件のそれは、その腕輪に更にくっついているものだ。

 それは、大きなラピスラズリを中心とした左右に伸び、少年の左手首から肘までを楕円の形に覆っていた。
 更にその全体には、古代文字の様な何かが紋様の如くびっしりと書き込まれ、まるでその物質自体の模様の
ようにさえ見える。

 普通に見るならば、それは腕に装着する楕円型の片手装型円盾(ランタン・シールド)。

 しかし士郎には、その防具… いや、その武器の正しい形が一瞬でわかった。


士郎「(機械銃(ボウガン)… いや、洋弓(アーチェリー)か…?)」

 そう、あれは弓だ。
 普段はああして盾の形に擬していて、実際ある程度はあれで防げる耐久性も兼ねているのだろうが…
 間違いなく“あれ”が進化を発揮するのは、あれが本来の弓の形にギミックを展開させたその時なのだろう。

 そして…


士郎「(強いな… あの弓。それに… あいつ自身も)」

 魔力とはまた違う。しかし根本は同じと確信できる何か。
 それを、士郎は目の前の弓と、少年自身から強く、とても強く感じられた。



タイガ「あ。ポックルちゃん、おかえり〜♪」

 そんな士郎の考察をよそに、なんとも間の抜けた挨拶で少年… ポックルを迎えるタイガ。


ポックル「……ああ、ただいま」

 対するポックルは短くそれだけ答えると、士郎から少しだけ距離を離した隣に正座した。


ポックル「………………」
士郎「……………………」

 少々の間、続く沈黙。


士郎「…………… え〜〜〜〜と…… 誰?」

 その沈黙は、士郎から破られた。


タイガ「ん? この子〜? 道場の新入りのポックルちゃんだよ〜」

士郎「新入り…?」

タイガ「そうそう。いやー、最近うちの道場もすっかり弟子が増えてさあ。
    でも師匠も同じぐらい増えたから、実質私のすることはそんなに増えてないのだ。えっへん」

士郎「いや… そこは」

ポックル「自慢げになるなよ」

 士郎とポックルの両方から、すかさず入るツッコミ。


タイガ「おおー。さすが各世界屈指のツッコミキャラ同士だ。
    お互いタイミングとか完璧だねえ」

Bイリヤ「もはや芸術の域に達してやがりますねー、師しょー。
     これぞツッコミの異文化コミュニケーションやー♪」


士郎&ポックル「…………(ダメだ、こいつら…)」

 タイガとBイリヤのわいわい漫才に、士郎とポックル両方がため息をつき、
そしてすぐ、二人は自然に互いに目を合わせた。


士郎「えーと… まあその、よろしく」

ポックル「あ、ああ… よろしく」

 二人はぎこちなく、正座のまま互いにそっと出した手同士で握手を交わす。


ポックル「あんたがエミヤ・シローか?」

士郎「ん? ああ。そうだよ」


ポックル「あんたのことはタイガから耳がタコになるぐらい聞いてたよ。
     俺はポックル。幻獣ハンターをやってる。あんたと同じ弓使いだ」

士郎「やっぱりな。左腕のそれ、盾のフリして実は弓だろ?」

ポックル「……へえ。これが一瞬で弓ってわかる奴には初めて会ったな。やるじゃんか」

士郎「ああ。物を見る目だけは自信があってね」


 と、弓で戦う青少年同士での会話が弾んでいたところで…


士郎「ところでポックルは、どうしてまた道場行きに?」

 それは、結構強そうで抜け目もなさそうなポックルを見ての、士郎の正直で素直な疑問だったが

ポックル「・・・・・・・・・・・・」

 聞かれたポックルの方は、明らかに唇を引きつらせ、明らかに言い辛そうだった。


士郎「……あれ? どうしたんだ?」

タイガ「あ〜〜・・・・・・ 士郎?
    それは聞いてあげない方が・・・」

 空気の悪化に、タイガが珍しく空気を読んでフォローを入れようとするも


Bイリヤ「そーそー。ホの字の女の子の胸を事故で掴んじゃって、
     その彼女の反撃で道場送りなんて言えませんよねーししょー?」

 そこに打たれる、悪魔っ娘によるトドメ。


ポックル「ぐ、く、く…………………… ぬが────!!!!!
     あーあーそーだよ!! 好きな女の為に強くなりてーなーとか思ってたらさぁ!!
     その好きな女にキスより前に胸をおもいっきし掴んじまったよ!!
     しかもその好きな女のカウンター技のハチに刺されて道場行きだよ!!!
     満足か!? 聞いて満足かコノヤロー!! 笑えよ、笑ったらいいだろモテ男さんよぉおおお!!!!」


士郎「ぐぇっ…!!! く、首…!! 首を本気で…!! ブ、ブレークブレーク……!!!」

ポックル「うるせー話聞いてりゃこの鈍感女ったらしがぁ!
     テメーみたいな男の敵はいっぺんくたばって地獄でハーレム作ってろこんの野郎ー!!!」

士郎「たらっ…!? こ… いいかげんにしろこのウンコ帽子!!!

ポックル「誰がウンコ帽子だくらぁ────!!!」



            (ボカ スカ ボカ スカ ボカ スカ バタン ドカンッッ!!!!)


 広い道場の中を所狭しと暴れ回る両者。
 転げまわりつつボカスカ殴りあう二人を中心とする空間は、ギャグマンガの如く謎の煙が包み、
時おりどっちかの拳だったり顔だったりが見え隠れしている。



タイガ「おおー。懐かしき昭和のギャグ喧嘩表現だー。なつかしーなー」

Bイリヤ「今でも一部使われてる表現っすけどねー」

タイガ「はっはっは。喧嘩することは仲良きかな。…ところでイリヤちゃん」

Bイリヤ「はい? なんっすかししょー」

タイガ「最後の、うっかり口を滑らせたみたいだったけど、実はワザとでしょ?」

Bイリヤ「わっかりますー? いやー、起こりそうな火事騒動は着火しないとウソっすよねー♪」

タイガ「んまっ! やっぱこの娘、外見は純白でも腹の中は真っ黒の悪魔っ娘だよ!?
    なんてヤツだコンチキショー!! 最近の子供の計算高さにはお姉さん驚くばかりですっ!!」


 タイガー道場の中は、今日も喧騒と天然漫才で溢れていた……


174 名前:新章/弓×たらし×タイガー道場:2009/10/22(木) 08:44:09

○衛宮士郎→女だけかと思ったら男も怒らせました。
○ポックル→ポンズの胸を触っちゃった反撃でまた道場へ。痛い所をつついた士郎とおもいっきし喧嘩。
○タイガ→士郎に説教。喧嘩は高みの見物。
○Bイリヤ→喧嘩の火種をマッチどころか火炎放射で爆発させる悪魔っ娘ぶりを発揮。

【今回の新規登場】
○ポックル(HUNTER×HUNTER)
男性。CV:玉木有紀子。幻獣ハンター。第287期ハンター試験合格者。放出系能力者。
弓矢を武器に使う狩人青年。ゴン達と同じく287期ハンター試験を受け、頭のキレや罠などの周到性を駆使し
勝ち残っていく。最終試験初戦でハンゾーに敗れるも、次戦相手のキルアの試合開始前の不戦敗宣言により
合格となった。ちなみにアニメオリジナルの軍艦島試験では多くの時間をポンズと多く行動し、恋愛フラグが
立っている。その後は独自に念習得に努力し、念能力【七色弓箭(レインボウ)】を習得。それぞれ七色分の
異なる能力を持つらしく、光速の橙の矢。着弾と同時に敵を燃やす赤などがある(残りの色の能力は不明)。
仲間と共にNGLへキメラ=アントの調査に向かった際にキメラ=アントと戦闘となり、毒を受け食料として
拉致される。その後、解毒剤を使い巣からの脱出を試みるがネフェルピトーに発見され、脳を操作され念に
ついての情報を白状させられた後、殺害され女王の食料にされるという実に遭えない最期を遂げた。
その後、天国特派部隊の一員として選ばれ、仮の命と新武器を得て物質界へ。


175 名前:新章/弓×たらし×タイガー道場:2009/10/22(木) 08:45:04


タイガ「……さて、と。
    二人とも落ち着いてくれたかな〜?」

 道場の木床を竹刀でトントンしながら、士郎とポックルの両者に尋ねるタイガ。

士郎「……ああ」

ポックル「……嫌ってほど落ち着いたよ」
 

タイガ「うむ、善哉善哉(よきかなよきかな)。
    お姉ちゃん、二人のそういう素直なところ好きよ〜。
    いやー、私の説得能力(ネゴシエイト)も捨てたもんじゃないわねー。
    タイガー道場師範としてらしい所が出せて私も大満足である」

Bイリヤ「説得仲裁とか言いつつ、実際は問答無用ノータイムで竹刀でフルボッコっすけどねー♪」

 Bイリヤの言葉通り、言葉での説得などは1ミクロンたりとも行っていない。
 実際は宝具【タイガーアポカリプス】発動により、二人ともフルボッコに吹っ飛ばしただけである。

 その威力は、士郎とポックル両方の頭にアイスの如く5,6の段々と重ねされているギャグタンコブの
量を見れば、火を見るより明らかであろう。


士郎「(まっったく、相変わらず無茶苦茶な技だなぁホント…)」

ポックル「(纏(テン)のガードをまるっきり無視してダメージってどんな反則だよ…)」


Bイリヤ「さっすがししょー! 時々鬼畜〜〜♪」

タイガ「応! 戦士達への説得は常に肉体言語と何百年も昔から相場が決まっているのだ!!
    アイムスパ──ルタ!!」

Bイリヤ「キャー♪ ししょーのテンション300%(スリーハンドレッド)────!!」


士郎「あー… 盛り上がってるとこ悪いんだけどさ」

ポックル「映画とかのネタはそこまでにしてくれるか?」

 好き勝手にやっている二人に、ようやく入るダブルツッコミ。


タイガ「オーケーオーケー。じゃあ仲直りタイムねー」
Bイリヤ「はい見合って見合って〜」

士郎「ええと…」

 横目でポックルを見つつ、むずかゆそうに頬を掻く士郎に

ポックル「あー、その…」

 少し恥ずかしげに、目線をあちこちに向けているポックル。

士郎「あ〜… ごめんな、ポックル。
   嫌な時に向こう見ずに朴念仁なこと聞いちゃって」

ポックル「…いや、俺の方こそ。
     いくら落ち込んでたからって、ガキみたいに怒っちまってすまない」

 互いに正面を向いたまま、拳を相手に差し出して、コツンとくっつける両者。
 拳を杯に見立てた乾杯の儀式。戦う者ならではの、勇ましい握手の形である。


 そして、両者がはにかみながらも、笑顔で拳を戻したところで 

ポックル「さて… と、俺がなんで道場に来たか、って話だったか?」

 と、いきなりポックルが話を始めようとした。

士郎「え…? いやいやいや、いいって。
   第一、聞かれたくないことだったんだろ?」

ポックル「いいさ。こういう恥は笑い飛ばしてもらうのが一番だ。
     時間の流れが関係ないここは長話にはいい機会だしな。
     …あ、そうだ。せっかくだから、“どうして俺が死んだか”も大筋で話そうか」

士郎「…… お前……」

ポックル「そんな顔すんなよ。じゃあ…」

 そうしてポックルは話し始めた。
 ポックルという一人のハンターの、死に至るまでの、そしてそれからの物語を。


176 名前:新章/弓×たらし×タイガー道場:2009/10/22(木) 08:45:29

○衛宮士郎→ポックルと友情を結び、ポックルの人生を聞く。
○ポックル→士郎と友情を結び、自分の死とそれからの話を始める。


177 名前:新章/弓×たらし×タイガー道場:2009/10/22(木) 08:46:17



ポックル「っつーわけで、ブチッと潰されて肉団子にされて食われてオシマイってワケだ。
     …ポンズも逃げきれずに食われちまったらしい。
     結局、好きな女も仲間も守れずに、敵に情報その他色々取られて死亡だ。
     戦士としてもハンターとしても、男としても… これ以上ない最低の死に方だな。ハハハ」

 本人の口を通し語られる。一人の戦士の、あまりにも無惨で非常な、終末の話。

士郎「…………」

 それを士郎は、自分の事のように神妙に聞いていた。

 かつて自分の非力によって、自身や仲間を巻き込みかけた。

士郎「(もし、あの時…)」

 もしあの時、ほんの些細な選択肢でも間違えていたら
 自分も確実にポックルと相似した… いや、もしかすれば、更に悲惨な結末を辿っていたかもしれない。

 そう、ポックルと自分の違いは、ただその時の選択肢と、運。
 そのほんの僅かな違いに過ぎないんだ。


ポックル「いーや、違うな」

士郎「え?」

ポックル「確かに運と判断力は大事だ。そして俺には確かにどっちも足りてなかった。
     けどな、お前わかってないぞ」

士郎「なんでさ?」

ポックル「…こういうのは死んでからやっとわかったりするんだけどな。
     お前が今ちゃんと自分の命をしっかりと抱きしめられてる理由は、お前自身の“徳”さ」

士郎「徳…?」

ポックル「ああ。誰でも持ってるわけじゃない、そいつにしかない一種の魅力だ。
     ハンター試験で最初に見た時は俺も驚いたなぁ…
     なんたって、殺す気満々でやってきた敵ですらも、次の瞬間には嘘みたいに殺る気をなくして、
     気付いたらそいつをなんとなく気に入っちまってるんだから」

士郎「………」

ポックル「で、気付いたら、そいつの周りには一人二人と、仲間が増えてる。
     それも、自分の命を懸けてでも助けようってぐらいにな。
     ……正直、俺はあの時からあいつにちょっと嫉妬してたかもしれないな。
     ま… 同時に、あいつには絶対に敵わないな、とも心のどこかで悟ってたわけなんだけど」

 溜息を一つと共に、後ろ頭を?くポックル。

 そして  

ポックル「お前の目、あいつとよく似てるよ。
     それに、タイガから腐るほど話も聞かされたからな」

士郎「つまり…?」

ポックル「要するに、お前が生き残ってこれたのは、お前を命懸けで助けてくれる仲間のおかげ。
     そしてそれはそのまま、お前の人望っていう一つの長所だってことさ。
     …そーいや、誰より無鉄砲で死に易そうなのに、その実誰よりもしぶといとこも同じだな」
     

士郎「(ああ…)」

 ポックルの言葉を最後まで聞いて、なんだか… 急にわかった気がした。
 というか、今更こんな事に改めて気付くなんて、鈍いな俺も。


ポックル「少しでもわかったなら、今の仲間を大事にしろよ。
     …ま、俺からお前に言えることっていったら、それぐらいだな」

士郎「…ああ、そうだな」

 そう、そしてそれは、今この目の前にも…




タイガ「うっぷ… 改めて聞くと精神的にクるわぁ…
    ミートボールしばらく食べられないわね、イリヤちゃん」

Bイリヤ「へ? なんで?
     別に私は平気だけど」

タイガ「あー… そっかー。
    イリヤちゃんってば、本編でもわりとノリノリで士郎やワカメっちをミンチにしてたもんねー。
    グロやスプラッタはだんぜん平気ってわけですか。
    怖っえー! 最近のロリ系ヒロイン(仮)マジで怖えー!!」

Bイリヤ「おーっす! (仮)って付けんなー!!
     そう! 人は私を轢殺天使イリヤと呼ぶ!
     天が呼ぶ血が呼ぶ人が呼ぶ! ヘタレを潰せと俺を呼ぶ!
     あたしは正義の…」




士郎「………………」

 なんだか、色々と一気に冷めた。
 もう、信じられないぐらい一気に、氷点下に。


士郎「……あーそこ。ちょっと静かにしてもらえる?」

ポックル「そーだよ。話が進まねーって言ってるだろ」

タイガ&Bイリヤ「「は〜〜〜〜い」」

 士郎とポックルのダブルでの抗議に、タイガとBイリヤはあっさりと引き下がった。


ポックル「…じゃ、次は死んだ後の話からな」

士郎「ん… おう」

 そして、ポックルの物語は続く。


178 名前:新章/弓×たらし×タイガー道場:2009/10/22(木) 08:46:44

○衛宮士郎→ポックルの話から、自分の周りの絆について再考察。タイガ達に呆れる。
○ポックル→士郎とあの少年に似たものを感じながら、士郎に助言し、死んだ後の話へとシフト。
○タイガ&Bイリヤ→相変わらず


179 名前:新章/弓×たらし×タイガー道場:2009/10/22(木) 08:49:32
士郎「それで、その後は?」

ポックル「俺たちが仮蘇生させられた理由や、やってほしい仕事の内容の説明を一通り。
     それからはハンター試験や他の死亡メンバーが集まって… あー、とにかく修行しまくったなぁ。
     わけのわからねーでっかい扉を押すだの、やたら重い服や湯呑み持たされるだの、
     シャベルで岩を掘るだの、カードのモンスターを捕まえるだの……」

 指をおって数えながら、天国での修行内容を思い出しつつ語るポックル。
 よほどスパルタだったのだろうか、なんとなく涙を誘う切ない表情だ。


タイガ「特にポックルちゃんよく吹っ飛ばされてたよねー。主に私に。
    いやー、死人じゃなかったら死んでたねー。わははははー」

ポックル「笑ってんじゃねえよこの暴走師範」

士郎「……なんだか痛いほどわかるな。色々」

ポックル「そりゃありがたい。お前さんならわかってくれると思ったよ。
     ……ま、おかげで死ぬ前より格段に強くなれたから一応感謝してるけどな」


タイガ「むー、一応? もっと全力で崇め奉ってよ〜」

Bイリヤ「はいはい自重自重」

 常に前へ前へなタイガを、体全体で押して下がらせるBイリヤ。


士郎「天国の神様の特例で一時的な蘇生… 黄泉還りとは違うんだな」

ポックル「ああ。俺達みたいな天国出身の仮生者チームは、“天国特派部隊”って呼ばれてる」

士郎「天国… 特派、部隊?」

ポックル「ああ。俺達以外にも、各世界、各次元で戦闘能力を持ってた死者が集められてさ。
     今の世界の混乱の収拾のために、小隊程度のチーム人数で色んな所に散らばってるんだ。
     同じような形で“地獄特派部隊”ってのもあるらしいぜ。お目にかかったことはないけどな」

タイガ「地獄出身で最近ポックルちゃんのチームに入った子もいるけどねー」

 と、いうタイガの言葉が終わるかいなや


ヂートゥ「呼んだ?」

 ひょこっ! と、士郎とポックルの間から、件の人物(?)の顔が出てきた。


士郎「うわっ!? チーター人間!?」

 チーターと人間が完全に融合した、ともすれば一種の歌劇の特殊メイクのような風貌。
 キメラアントという存在を知らない士郎には、仰天に充分足る存在である。


タイガ「ノンノン。キメラアントゥ、っていうらしいよー。
    何でも人とアリとチーターの混ざったタイプらしくてさー、かっわいいよねー。
    ちなみに最初は色々と難アリな困ったサンだったので、教育的指導をバッチリしておきました☆」


士郎「……かわいい、か?」

Bイリヤ「うーん、虎人間なだけに同じ獣人のことがわかるのかしら。私にはわかりかねるわ」

 体を寄せ合って小声で話しつつ、タイガのセンスに頭を捻る兄妹。


ポックル「……何でお前いるんだよ」

 一方のポックルは、すっかり慣れているのか冷静… というか、冷めた目線で、ヂートゥにたずねる。

ヂートゥ「それがさー。
     あんまし退屈だったから、“スカートをめくって逃げる遊び”をやってたんだけどさ、
     さっき白い服のねーちゃんのスカートめくって逃げたら、なんでか先回りされてて。
     すんげーパンチもらっちゃって一撃KO! いやー、すげぇヤツがいるよなー」

 無邪気且つ、とても楽しそうに自分の道場行きの理由を話すヂートゥ。

Bイリヤ「ちなみに“白い服のねーちゃん”ってのは真祖のお姫様(アルクェイド)のことね」


士郎「……… あー、あの。ちょっと前にファンタズ何とかってコスプレして冬木で暴れてた人か。
   確かにアレはとんでもなかったな。…バゼットさんも一撃だったらしいし」

ポックル「…(よくわからねーけど、そいつには近づかないようにしとこう)」

 と、ポックルが思考していると…


ヂートゥ「で、タイチョーはどーしてここにいんの?
     ひょっとして、ポンズのスカートをめくって殴られた?」

ポックル「(ムッカ…!)……いーから。お前は隅でハムでもかじってろよ。冷蔵庫にあるから」

ヂートゥ「んー。タイチョー、なんか俺に冷たくない?
     どっか避けてるっつーか。なあなあ、どーして? どーして?」

 顔を近づけてしつこく聞いてくるヂートゥ。
 悪気がないのが分かっていようと、こういうのは時として我慢し辛いほどうっとおしいもので。


ポックル「…………あのな!! 俺をとっ捕まえたの、お前の仲間だし!!
     俺の(ピー)をいじったのもお前の上司だし!! 俺を食ったのお前んとこの王様!!!
     お前がホントはいいヤツってわかってても俺にはトラウマなんだっつうの!!!
     てか何度言ったら覚えるんだよお前!! ワザとか? ワザとなのか!? ああん!!?」

ヂートゥ「あ〜そうだっけ。………あ、そーいやポックルの顔って王に似てるかも」

ポックル「うがー!! それも言うなって何度言わせらぁ────!!!」


         (パシュンッ!! パシュンッ!! パシュンッ!!)


ヂートゥ「へっへ〜ん♪ 当たらないもんね〜〜」

 座った姿勢からほぼ瞬きほどの時間で念の矢を繰り出すポックルの超速の矢撃ち。
 しかし対するヂートゥの方も、目にも止まらぬスピードで飛び跳ねながら、それを悉く避わしている。


士郎「あっちはあっちでカオスだなぁ…」

Bイリヤ「そうねー。タイガが関連する所ってどこも暴風雨な連中なのよね。あ、そば茶飲む?」

士郎「お、いいね。みんなの分も淹れとこう」

 そんな一方、すっかりこういう光景にも慣れた様子の二人は落ち着いたものだった。


180 名前:新章/弓×たらし×タイガー道場:2009/10/22(木) 08:50:01

〇衛宮士郎→ポックルに同情したり、ヂートゥに驚いたり。そば茶を淹れたり。
〇ポックル→修行で何度も死にかけてた事が判明。ヂートゥとは相性が悪いが、いいヤツとは認めているらしい。
〇タイガ→ポックルを修行でボコボコにしていた事と、ヂートゥを教育的指導していたことが判明。
〇Bイリヤ→今回は割と補足説明。そして士郎に兄妹の阿吽の呼吸で受け答え
〇ヂートゥ→死んだのでポックルチームに。ウザ無邪気ぶりは相変わらず

【今回の新規登場】
〇ヂートゥ(HUNTER×HUNTER)
キメラ=アント兵の1人。師団長。 チーター型の蟻。自称・スピードキング。無邪気、単純で大雑把な性格。
目前に迫った銃弾を座った状態から回避する程の途轍もないスピードの持ち主(拳銃の弾速は大体秒速250m〜350m)。女王の崩御と共に単独行動するが、モラウとナックルに攻撃を食らう。後、ハギャと提携し、ナックルにかけられた
念を除念してもらう。サバンナの念空間。ボウガンとクロウを具現化する念能力を持っていたが、モラウにあっさり
敗れてしまった為にシャウアプフによって再度新たな念能力「紋露戦苦(モンローウォーク)」を授けてもらうも、
その自称「すげー」新念能力でゼノ相手に挑もうとするも、直後にシルバの上空からの一撃を喰らい、能力を披露
する事無く潰され即死した。
その後ポックル達と同じように地獄から特派され、ポックルチームで鬼教官の指導により、一応人畜無害に成長(?)



181 名前:新章/グルメ?×デンジャー?×恋の道:2009/10/22(木) 09:08:36



 それは、ポックルがタイガー道場に訪れるより少し前の話…



      トアールレストラン

     ゲスト参加型  特殊メニューコーナー



ポックル「しっかし、ホントに色々あるなーこのレストラン」

 トレーを片手に、辺りを見渡しながら歩くポックル。


ポドロ「ふむ。和食洋食中華。更には異世界のグルメまで…
    まったくもって驚きの取り揃え。グルメハンターなら涎モノだな」

 顎の先を触りながら、うんうんと隣で頷くはポドロ。


ポックル「かといってブハラが来たら、あらかた食い尽くされそうだけどな」

ポドロ「ハッハッハ。確かに確かに」

 そんな、割とどうでもいい話をくっちゃべながら歩いていると。


ポックル「そういやここはどういうコーナーなんだ?
     屋台みてーに小じんまりとしたのが並んでるけど」

ポドロ「うむ。聞いた話では、ここは在来の料理人達ではなく、招かれた客の中で
    我こそはという料理自慢の者達にスペースを与えたコーナー…
    の中でも、色々と“特殊”な食材、メニューを使う者が集う場所と聞いた」

ポックル「……特殊?」

 ポドロが語気強く押し出した“特殊”という言葉に、ポックルは一抹の不安をよぎらせる。


ポックル「……ま、とりあえず見てみっか」

ポドロ「応」


 そうして二人は、とりあえず入り口から見て回ることにした。

 ハンターとそれを目指した者ならではの探究心、好奇心がそうさせたのか。
 どちらにせよ、彼らは思い知ることとなる。


 入るんじゃなかった
 と。




  ◇    ◇




ポックル「……で、入り口最初の店がこれか」

 特殊コーナーの入り口すぐにある店。
 その立て看板メニューを見たポックルは、早くも苦笑いだった。

“あらゆる料理をコーディネイトする新鮮な味の出会い!!
 とにかくかけまくれ!! バルドフェルトのヨーグルトソース料理コーナー”


ポドロ「……ヨーグルトのソースをかける専門店とはこれまた珍奇な」

 ポドロの沈着なツッコミは尤もである。


ポックル「えーと、メニューは“店長こだわりコーヒー”各種に…」


“ケバブのヨーグルトソースがけ”
“ハンバーグのヨーグルトソースがけ”
“トムヤムクンのヨーグルトソースがけ”
“まぐろ丼のヨーグルトソースがけ”  etc


ポックル「……… 頭おかしいのか? ここのシェフ」

ポドロ「隣よりはマシではないか? 梅カレーとかメニューにあったが」

ポックル「あー、あそこに何人か重なって倒れてるのはそれか…」

 あまり見ないようにしていたが、向かいには“梅”という字がびっしりの立て看板がある。
 “名物梅サンド”とか、“万能ドクターが一人ついているので安心”とか。

 こっちのヨーグルトソースの方は店主らしきオッサンの顔が怖いからか客が居ないが、
向こうの方は美人のメイドさんが作ってるせいで、馬鹿な男達が次々と食べては屍と化しているようだ。

 現に、こうしてポドロと話している今も、定期的に人が倒れる音がしている。
 倒れた人間はメイド本人からは死角になって見えず、その上彼女に良く似たハカマの何者かが、
ずるずると屍を引きずってどこかに連れて行ってしまうので、メイドがそれに気付くことはない。

 そうしてメイドは、今も殺人梅サンド他色々を作り続けているのである。



ランサー「げふぁっ……!!?」

ロニ「ぎゃぶぁ────!!!?」

 そしてまた、背後から断末魔が聞こえる。



ポックル「……男ってバカだよなあ」

ポドロ「まったく。良き教訓になる」

 男として、何か悟ったように深く頷く二人であった。


182 名前:新章/グルメ?×デンジャー?×恋の道:2009/10/22(木) 19:09:35

○ポックル→トレー片手に特殊メニューコーナーを散策中。
○ポドロ→なんとなくポックルと行動中。
○ランサー&ロニ・デュナミス→地味に梅サンドで屍に。


【今回の新規登場】
○ポドロ(HUNTER×HUNTER)
CV:竹本英史。年齢不明。男性。第287期ハンター試験受験者。武道家。
最初は寡黙且つ静かな武人のイメージを見せていたが、一次試験で落ちた事をさらっと告白したり、最終試験を
ペーパーテストとウソ予想をしたりと、けっこうお茶目なおじさん(おじいさん?)である。
かなりの体術を会得しており、1次試験から4次試験に至るまで、その格闘能力と経験で堅実に合格しているが、
最終試験ではヒソカに指一本で敗れる。次のレオリオとの対戦を控えていたが、イルミに会って精神的に混乱して
いたキルアに後ろから心臓を一突きにされ殺された。ネテロの見たところでは実力はレオリオの方が上だったという。
その後、天国特派部隊に選ばれ、一時的な仮初の命を与えられる。

○ロニ・デュナミス (テイルズオブデスティニー2)
23歳・身長180cm・体重75kg。男性。CV:関俊彦(幼少時代:雪乃五月)。
カイルの兄貴分で、アタモニ騎士団に所属している青年。しかし、レンズ重視の神団のやり方を良く思わず、
カイルと共に旅立つ為に騎士団を辞める。 美女を見ればナンパすることを常としているが、振られまくっており、
「ふられマン」と呼ばれることすらある。しかし実際は年相応の思慮深さを持ち、無鉄砲な行動を取るカイルに
ブレーキをかける保護者的存在でもある。過去に孤児院で起きたある事件について負い目を感じているため、
カイルに対しては過剰とも言える優しさを見せる。ジューダスにからかわれたりナナリーに絞められたり、
ハロルドの実験の材料にされるなど、パーティメンバーの中では極度のいじられキャラであり、他サイトのギャグ系
アンソロジー小説や漫画では、やられ役兼つっこみ役が定着している。なお、お化けが苦手という一面もある。
ただし、それらの敵が弱点というわけではない。「テイルズオブハーツ」では、サポートキャラとして登場。


183 名前:新章/グルメ?×デンジャー?×恋の道:2009/10/22(木) 19:10:37



ポックル「さて、と…
     それじゃ、先に行ってみようぜ」

 気を取り直し、特殊メニューコーナーの奥へ行こうとポドロに呼びかけるが

ポドロ「いや、ここはひとつ、食してみたいと思う」

 あろうことか、ポドロは目の前の店での昼食を宣言した。


ポックル「……マジか?」

ポドロ「うむ、大マジだ」

ポックル「…………」

 ポックルは怪訝な顔でポドロの顔を下から覗き込む。


ポックル「……確かに、本気の目だ」

ポドロ「何事も経験。どのような味になっているのか興味がある」

ポックル「そう言うなら敢えて止めはしないけどさ…
     じゃ、俺は先行ってるぞ?」

ポドロ「応」

 そうしてポックルは、ヨーグルトソース料理の店に足を踏み入れるポドロを尻目に、
特殊料理コーナーの奥… 更なる人外魔境の深くへと進んでいくのであった。




  ◇    ◇




ポックル「はあ… 早くもっと強くなんねーとな〜…」

 ある程度までぶらぶらと歩を進めたところで、ポックルは溜息のように呟いた。


ポックル「(まだ足りない… 俺の力はまだまだ中途半端だ……)」

 じっと、自分の手を見る。

 タイガっていう、無茶苦茶な人の指南で、以前とは比べ物にならないほど強くはなった。
 身体能力は格段に鍛え上げられたし、念能力もより強力に実戦的なものになっている。


ポックル「(それでも…)」

 あいつにはまったく届いていない。
 自分の脳をいじくり回した、猫男… 確か名前は、ネフェルビトー。

 あの酷く凶々しい、強大且つ重苦な闇のオーラ。
 それをこの目で見た時に感じた恐怖と絶望は、仮初の命を得、再び現世に両の足で
立っている今も、拭えない。

ポックル「………」

 道場での修業で、一番ひたすら血眼になって修行をしていたのは、他ならぬポックルである。
 誰もが音を上げ、死を覚悟し、或いは本当に死に掛けた、タイガの異常スパルタ修行。

 そんな中ポックルだけは、ただの一度も音を上げず、タイガの与えた課題全てにひたすら
がむしゃらに挑んでいた。

 それだけポックルは、己を強くすることに必死だった。
 そこまでする理由が、ポックルにはあったから。

 戦いに負けたことではない。
 むざむざ敵に捕まり、玩具のように扱われ、情報を穿り出されたことでもない。


ポックル「(もう、二度と…)」

 好きになった女を、守ることも逃がすことも出来ずに死なせない。
 そう誓ったからこそ、あらゆる痛みも苦しみも我慢し、励んできた。

 しかし… 

 ネフェルビトーのあレベルに到達するどころか、それ以前。
 それよりずっと前の位置で、ポックルは壁にぶち当たった。

 全力で走っているのに、立ち止まっている相手に追いつくことが出来ない、歯痒い感覚。


ポックル「ゴンやキルアみたいにはいかねーなぁ…」

 自分で言っていて空しくなる。
 所詮自分は戦いの才能に恵まれた天才ではなく、凡人なのだと自分で認めてしまったも同然だ。

 いや… 才能の程度なんて、とっくに自身で把握している。
 だからこそ躍起になって、少しでも強くなろうと、情けないほど必死になっているんだ。


ポックル「はぁ〜あ…」

 一人になっているせいか、頭の中でグルグル余計なことばかり考えてしまっている。
 肺に溜まった重苦しい何かを、空気と一緒に吐き出していると


至郎田「キミ… 強くなりたいのかい?」

ポックル「え?」

 横から聞こえる声に振り向くと、そこにはいかにもコックという格好の男が居た。


至郎田「なら、私の料理をぜひ食べて欲しいな」

ポックル「あんたは?」

至郎田「私の名は至郎田正影。シェフだ。この世界では多少名が通っている。
    そして私の料理は、『強くなりたい』という君の願いに実に理に適っているのだよ」

ポックル「強くなる料理…? 何だそりゃ?」

 途端に怪訝な顔になるポックル。
 この状況においては至極当然の反応である。


至郎田「フフフ… よく聞いてくれた。
    では、私の素晴らしい至高の料理の内容をお教えしよう」

 そんなポックルの表情を意にも介さず、至郎田は得意な顔で解説を始めた。

至郎田「数え切れぬ高級食材と共に… コカイン、ヘロイン、モルヒネ、各種麻薬に加え。
    ステロイド系テストストロンや、DHEAなどの筋肉増強剤を精密なバランスで配合し…
    煮込むこと、7日7晩!!
    血液や尿からは決して検出されず、なおかつすべての薬物の効果も数倍!!
    血管から注入(たべ)ることで更に数倍!!!
    これが、長年の研究の末辿り着いた、究極の料理!!!
    ドーピングコンソメスープだぁ!!!!」

 エコーがかかりそうなほど大きな声で、最後の料理名を強調して紹介する至郎田。
 目を見開き鼻息を荒くしたその顔は、整った顔立ちを面白い風に歪めている。


ポックル「…………… いらねー」

 対するポックルは、横目のまま、そう一言。

至郎田「────っっ!!!?? なん… だと…?」

 それを聞いた至郎田は、更に目を見開いた。


ポックル「こっちの世界の麻薬の名称は知らねーけど、『麻薬』ってハッキリ言われて
     食おうって気にはならねーよ。それに…
     そのスープ、麻薬以前に悪いオーラ込め過ぎ。
     そんなドス黒いオーラ纏ったらもう料理じゃねーよそれ」

 人間、ネガティブな考え事をしていたら周りに気を回す余裕は失っているものである。
 多少のイライラも手伝い、ポックルはまったく歯に衣着せぬ状態になっていた。

 …それが、余計なトラブルの種になるとは微塵にも思わずに。


至郎田「………ぶっ 無礼なッ!!
    私の料理に… 失礼な奴だ!!」

 ポックルにズバズバと散々言われた至郎田は、頭を抱えながら歯軋りし、目を血走らせている。

ポックル「あ… え〜と…」

 その時初めて、ポックルは「あ、まずった」と思っていた。
 しかし、現状はそれどころの騒ぎではない。

ポックル「ごめん、言い過ぎた。もう行くよ。それじゃ」

 そう言ってポックルはさっさと立ち去ろうとするが

至郎田「ふっふふふふ… 血管から注入(たべ)ることで…」

 既に至郎田は、手に持った注射器をドーピングコンソメスープで満たしていた。
 そして…

       (プスリ)

至郎田「更に数倍ぃぃぃぃぃいいいいいいい!!!!」

 至郎田がそれを腕に刺し、体内に注入(たべ)た瞬間。
 彼の全身の筋肉は冗談のように巨大に隆起し、あっという間にその姿をハルクのような
筋肉隆々の巨人に変える。

ポックル「………(ポカーン)」

 元の世界で色々な怪奇現象を目の当たりにしてきたポックルでさえ、
その光景には呆気に取られざるをえなかった。

ポックル「って、うわ────────っ!!!??」

 そしてようやく今の状況をある程度把握できたポックルは、全力で逃走を開始した。

至郎田「フハハハハハ!!
    俺の料理は!! 至高にして究極だあああぁぁぁぁああ!!!!!」

 それを、周りの店や料理、そして人を吹き飛ばしながら、すごい勢いで筋肉の塊が追いかけていく。


184 名前:新章/グルメ?×デンジャー?×恋の道:2009/10/22(木) 19:11:16

○ポックル→くよくよ考えていたら筋肉ダルマに追いかけられるはめに
○ポドロ→ヨーグルトソース料理に興味津々
△至郎田正影→DCSを否定され怒りのままDCS変身。ポックルを追いかける

【今回の新規登場】
△至郎田正影(魔人探偵脳噛ネウロ/真説ボボボーボ・ボーボボ)
CV:大塚明夫。「成功を呼ぶ店」と呼ばれるフレンチレストラン『シュプリームS(シロタ)』。
そのオーナーシェフにして自身TV、雑誌等で紹介される有名なカリスマ料理人。だが実際、その料理には
違法な薬物が多量に含まれており、それを用いて“食の千年帝国”を作ろうと画策していた。その事から、
シロタの料理スタイルに反対するシェフの海野浩二(うんの こうじ)を殺害。しかし、ネウロにアリバイ
工作を見破られ、自らの編み出した究極の料理『ドーピングコンソメスープ』で肉体を強化し逃走を図ったが、
ネウロの安い挑発に引っ掛かり激昂、一転して襲い掛かるもネウロには全く通じず痩せ細った姿に変えられた。
その後、殺人、麻薬取締法違反、その他諸々の罪で懲役ウン十年の服役囚としてなぜかテレビに出演。
『獄中ですよ』という番組にて『ドーピングホワイトシチュー』なる新開発のメニューを引っ提げて登場。
レシピも紹介されたが、その材料のほとんどが放送禁止用語で、ほとんど全部「ピー音」で修正された。
それでも懲りずに更にその次は、『DCS 春のチョイ悪歌謡祭』という番組に登場。アシスタントと共に
『ドーピングコンソメミュージカル』を披露するが、あまりに不適切な内容に番組が中断する事態となる。
その後『ボーボボ』の世界にまで乱入し、にも\EX(ナインエキスパート)の黒賭博騎兵衆の1人、雨水の部下
としてゲスト主演、「DCS(ドーピングコンソメスープ)真拳」なる真拳の使い手としてボーボボ達と対峙する。
DCSを敵味方関係なく飲ませようとして暴れるが、ソフトンのバビロン真拳で倒される。
現在は警察の緊急特別司法取引により、監視付きながら懲役軽減の為に



185 名前:新章/グルメ?×デンジャー?×恋の道:2009/10/22(木) 19:12:51



ポックル「(・・・そういや、なんで逃げてるんだ?)」
 
 レストランフロア何周分に相当するかのランニングを経て、ポックルはようやく気付いた。


至郎田「ハハハハハハハハハハハ!!!」

 後ろから追いかけてくる筋肉ダルマ。あまりにも異様な事態に思考停止していたが、
よくよく考えてみれば・・・ そもそも、こんな奴に今更どうにかされるほど自分は貧弱だったか?


ポックル「(・・・・・・違う)」
 
 確かにビトーだとかには遠く及ばない。
 でも、俺は強くはなった。強くなったんだ。

ポックル「(そうだ。俺は変わったんだ。いつまでも・・・
      いつまでも逃げ回ってばかりの俺じゃない!!)」

 決意を固め、カッと目を見開く。
 そして走りながら、再び後ろの筋肉ダルマを改めて“凝”視する。

ポックル「(・・・・・・・・・ なんだ)」

 オーラも、体の動きからも、まるでたいした相手じゃない。
 純粋な力勝負でも負けやしないだろう。たぶん、軽い“硬”のパンチで片はつくだろう。

 だが・・・


ポックル「(それだと周りに迷惑がかかるよな・・・)」

 筋肉ダルマがただでさえ周囲をフッ飛ばしてる現状。
 これで考えなしに硬パンチなんてかましたら、更に酷い状況になる事は間違いない。

ポックル「(と、なると・・・ あ)」

 その時、ふいに上を見上げたポックルの視線の中に、サイズのでかい頑丈そうなシャンデリアが入った。


ポックル「・・・・・・よし」
 

      (タンッ!)


 ポックルは大きく右足を踏み込み、他か飛び込みの選手が如く、跳んだ。

 おおよそ5メートルはあろうかという天井。

 その天井に釣り下がる大きく絢爛なシャンデリアに
 ポックルの体の軌道は、まるで吸い込まれるように放物線を描く。


至郎田「なにぃっ・・・!?」

 周囲にいた人間の多くと共に、至郎田もまた、その跳躍に大きく驚き、目を奪われる。
 

ポックル「よっ・・・ とと」

 着地と共に、ちょっとしたブランコのように揺れるシャンデリア。
 それを体の重心の調整で静めると
 

ポックル「これなら追って来れないだろ。バーカ」

 余裕のしゃがみ姿勢で、至郎田に突き出した右手の親指を下に向ける。
 

至郎田「う、ぬぬぬぬぅっ・・・・・・!!!」

ポックル「(よし、怒ってる怒ってる)」

 内心ニヤつきながら、ポックルは追加の口撃を開始する。


ポックル「悔しかったらここまでおいで♪」

 舌を出し頭につけた両手指をうねうねさせ、いわゆるべろべろばーのアクションを始めるポックル。


至郎田「ふ、ふ、ふ・・・ ふぅぅざけるなぁぁあああっ!!!
    この私が、私の最高のドーピングコンソメスープが!! その程度ぉぉぉおおおお!!!!」

  怒髪天を衝く状態の至郎田は、大きく屈みこみ、床石を割るほどの力で大きく跳躍する。

 ポックルの華麗なそれとは真逆のモンスタージャンプはロケットが如く勢いで、
一直線にその軌道はポックルを捉えている。

 しかし


ポックル「狙い通りだよ、猪(いのしし)」

 その時には既に、ポックルは左腕のギミックを開放し、念矢(アロウ)を構えていた。
 
至郎田「ぬ・・・!?」

 何らかの異変に気付く至郎田だが、もう遅い。
 獲物は既に、狩人の罠の中だ。

 円盾から変形し、本来の形となった弓の両端から伸びる念糸を引き絞ることで、無色の矢が顕れ、光り輝く。


ポックル「(この状況に一番合ってる七色弓箭(レインボウ)は・・・)」

 ポックルの右手が掴む無色の念矢。それが一瞬にして、眩く朱色に輝き燃え滾る。
 

    朱の矢!


 放たれる炎の矢は螺旋を描き、瞬く間もなく跳躍中の至郎田の胸ど真ん中に着弾する。



    (ドゥンッ・・・!!!!)


 目も眩むほどの、空中での大爆発。
 揺れるシャンデリア、驚く野次馬達。

 そして・・・


至郎田「か・・・ は・・・!?」

 爆発によって、ボッロボロのアフロと化した至郎田。
 口から煙(?)を吐きながら、空中で勢いを失った至郎田は、ゆっくりと真下へと・・・



    (ドッスゥゥンッ・・・!!!!)


 落下した。


ポックル「落ちたとこに人は・・・ よし、いないな」

 やれやれとばかりに溜息をつき、シャンデリアの上で腰を落ち着けるポックル。

 筋肉ダルマ自身が破壊した場所に落とすなら、とりあえずそれ以上の被害は出ない。
 だからポックルはわざわざシャンデリアに乗り、至郎田を挑発し
 飛んできたところを己の能力で攻撃することによって、狙った場所に落としたわけだ。


 朱の矢とは、ポックルのかつての念能力、“七色弓箭(レインボウ)”。
 その一つである“赤の矢”が改善されたものである。
 
 従来の能力は、着弾と同時に発火し、敵を焼くという単純なもの。

 それに加わった新たな能力は、【矢先が念に接触した瞬間、引火、爆発する】。
 

 それは例え、念を知らない一般人においても同じ。
 肉体の外に僅かに流れ出るオーラに引火したが最後、体の内外ほぼ全てのオーラの爆発、焼失。

 それによって受けるダメージは、致死レベルには至らないものの、文字通り気力を失った状態
となり、爆発、発火自体による肉体的ダメージも総合し、戦闘不能状態は避けられない。


 これが、ポックルの新しい能力。敵の無力化にはこれ以上ないほど有功な念能力。
 ハンター試験でも狡猾に頭脳と駆け引きを駆使し勝ち進んだ彼ならではの理想的な力。


ポックル「ちょっと大人気なかったかな」

 などと言いつつ、ポックルは自分でも気付かぬ内に、少しだけ笑顔になっていた。




  ◇    ◇




 ポックルの受難が、ようやく一つ去ったところで

ポンズ「あ、いたいたー」

ポックル「!?」

 下から聞こえてくる声に、ピクンと反応するポックル。


ポックル「ぽ・・・ ポンズ!!?」

 シャンデリアから顔だけ出して下を覗くと、そこには案の定愛しの・・・ 

ポックル「(・・・いやいやいや)」

 頭の中に浮かんだ恥ずかしい単語を一生懸命消しながら、深呼吸を一回。


ポックル「ど、どうしたんだ?」

 そして平静を取り繕いつつ、ポンズに問う。

ポンズ「どうしたじゃないでしょー?
    この国、私の名前と同じ調味料があるって聞いたから見に行ってたんだけどー。
    なんだかポックルが変なのに追いかけられてるとか聞いたからー」

 普通の音量でも充分聞こえるのに、口に手を立てて大きめの声で話してくれるポンズ。

 その仕草がかわいらしすぎて、
 悶えてしまいそうなのを我慢している少年がシャンデリアの上にいるのは内緒である。


ポンズ「それとー。そこから今すぐ降りたほうがいいよー」

ポックル「え?」
 
ポンズ「エレガさんに聞いた話だとねー。ここ建てる時の内装のいくつかはケチな王様が担当しててー。
    見た目に反してすごく脆いのがあるんだってー。だからひょっとしたらー・・・」

 大きな声で、ゆっくりと説明をしてくれるポンズ。
 その途中で


      (ピシッ・・・!)


ポックル「へ・・・?」

ポンズ「あ・・・」


      (バキ、バキバキッ・・・!)


 気付けば、ポックル足場となっていた場所はすっかり千切れたり折れたりしていて、
 体がぐらりと傾いて・・・

ポックル「ああああああ・・・・・・っ!!?」

ポンズ「ああああっ!?」

 落ちていた。 



    (どんがらがっしゃ〜〜ん!!!!)


 派手な音に、舞い散る色々な何か。
 
 

ポックル「あたたっ・・・ いって・・・ あれ?」

 うつ伏せの状態から腕立ての姿勢で立ち上がるや否や、ポックルは何やら違和感を覚える。

 念を習得しているポックルは、数メートル上から落ちた程度では怪我などしない。
 ポックルが違和感を覚えたのは無論そこではなく、起き上がった時に・・・

ポックル「(なんか、手の先がすごく柔らか・・・)」

 床やテーブルクロス、そんなここにあるであろうものでは考えられない。


ポックル「(なんというか、すごく上等なクッションというか。
      すごくふわふわ・・・・・・ ・・・・・・・・・まさか)」

 瞬間、ブリザード級の悪寒がポックルの脳内を襲う。

 永遠とも感じられるコンマ0.数秒で、視線を恐る恐る下に向けると・・・


ポンズ「・・・・・・・・・・・・」

ポックル「・・・・・・・・・・・・」

 ビンゴである。
 ポックルの両手は、それはもう見事に、何故かポンズの両胸の上にあった。

 いや、上に乗っているとかもうそういう次元ではない。
 おもいっきり掴んじゃっている。言い訳不要。断罪確定。

 それになんだか全体の姿勢的にも、覆いかぶさってるというか・・・
 ポンズは仰向けで、それに対しその上にうつ伏せで微妙に重なってる状況。
 一言で言うなら、完全に“襲っている構図”。

 何だこの偶然?
 運命の女神か何かの粋な計らいか? いや、嫌がらせか?

 確かにいつかはこういう・・・ いやいや、そうじゃなくて。
 もっと順序があるだろ!? 順序が!!

 キスもちゃんとしたことがないのにいきなりこれはないだろ!!
 っていうか、どんな女の子にだってこれは嫌われる・・・!!


ポンズ「・・・・・・・・・・・・」

ポックル「あ、あの・・・ その・・・」

 一刻も早く手を離さなくてはいけないのに、体が硬直していう事を聞いてくれない。
 小刻みに震える唇から、人間の言語ともつかない何かしらを発するだけ。

ポンズ「・・・・・・・・・」

 そんな情けない状態の自分に対し、罵倒の言葉や悲鳴が来るのは予想していた。
 なのに・・・ ポンズは、そのどっちもしない。

 一回だけ、自分の顔と掴まれている胸とを交互に見た後、ずっと無言で・・・
 ただ、どんどん頬が、赤くなって・・・・・・


 え? なんで、そんな顔・・・?
 なんで、どうして・・・


       (プスッ!)

ポックル「っ・・・・・・!? あ・・・」

ポンズ「え・・・?」

 その時、ポックルの後頭部に鋭い痛みが走る。


ポンズ「あ・・・ 護身用のバレットビー・・・」

 帽子を触りながら、ポンズは「あっ」という顔で言う。
 ただでさえ超強い特殊な毒を持ってたハチが、ポンズの育て方で更にとんでもになった・・・

 まあ、こんな事しちゃってたら、そりゃ刺すよなあ、護衛蜂も。

ポックル「な、なるほど・・・ 天罰って・・・ あるんだ、な・・・」

 頭がグラグラ揺れ、意識が遠のいていく。
 何か遠くから、ハカマとブルマの呼ぶ声と手招きが見えるような・・・




      【DEAD END】




186 名前:新章/グルメ?×デンジャー?×恋の道:2009/10/22(木) 19:13:28

○ポックル→至郎田をスマートに撃退するも、事故でポンズの胸を掴んでプスッと道場行き
△至郎田正影→念能力の前にはさすがに撃退され、爆発アフロ。
○ポンズ→登場早々胸を掴まれ、出番終わり。

○ポンズ(HUNTER×HUNTER)
CV:天神有海。第287・288期ハンター試験受験者。様々な薬を使って罠を仕掛ける他、
護身用に帽子にハチを潜ませていて、彼女に危険が迫ると出てくる。戦い方は待ち一辺倒。
取っ組み合いになるとまず勝ちは拾えない。第3次試験の追加試験“軍艦島”では、
多くの時間をポックルと2人組で行動し、そこでの命を懸けた共同作業と対話は、二人の
信頼と恋愛感情(?)が生まれるきっかけとなったと思われ、プロとアマチュアの違いが
ありながら後のNGL調査で同じチームで行動していた事からも想像に難くなく、個人的な
付き合いは続いていたものと考えられる。第4次試験でバーボンの罠に嵌ったところを
ゴンに助けられるが、レオリオのターゲットだったため催眠スプレーで眠っているところを
プレートを奪われ脱落。第288期試験も受験するがキルアの軽い一撃で他全受験者と共に敗れ
不合格。アマチュアハンターではあるが、「念」の存在は知っている。ポックルや他の
アマチュアハンター達と共にNGLに潜入したが、キメラ=アントの襲撃により部隊は壊滅。
ハチを伝令として他のハンター達に急を知らせ、最後までハンターの矜持を果たしたが、
その直後にキメラ=アントにより射殺、捕食されるという無残な最期を遂げる。
しかし彼女が命をかけて届けたハチのおかげで、カイト達他のハンターがNGLの地獄の現状を
いち早く把握することが出来、ハンター協会も素早く対処世界各国へ働きかけた事は結果と
して多くの人命をNGLの危機から遠ざける一因として充分だった筈であり、そこから
考えても、彼女の最期の仕事の功績は非常に大きなものである。
その後、天国特派部隊の一員として選ばれ、仮の命と新武器、ハチを得て物質界へ。


【能力説明】
◇朱の矢(使用者:ポックル)
ポックルの念能力、七色弓箭(レインボウ)の一つ、赤の矢の改善版。
着弾と同時に発火する従来の能力から、着弾前より矢自体が発火した状態で、
掠るだけでも発火する仕様に変更。しかし朱の矢の能力の肝はその矢先にある。
矢先には【念に接触した瞬間引火する】能力が付加されており、矢先に触れた
人間は“念引火”により体中の念が発火し、内側から爆発する。
体内に蓄えられた念が強大であればあるほど大爆発となり、そのダメージ量も増大。
体内の念はほぼ“焼失”し、肉体的にも戦闘不能レベルのダメージを受ける。

引火は一瞬の為、念の鞭や鎖などで払い落とそうとしても結局引火する。
但し、【絶】状態の人体や、そもそも念を持たない無機物などにはその効果はない。
更には単純に念そのものに引火する為、矢の軌道に念でデコイを設置すればデコイに
引火するので、放出系念能力者はその方法で回避し易いという欠点がある。

しかしそれは本人も充分に心得ている部分であり、むしろ狙いでもある。
朱の矢の能力を知っている敵は無機物でガードするか、少なくとも矢が当たるであろう
体表を絶にし、己の体と接着していない念能力での戦闘を余儀なくされる。

そしてそれはポックルにとっては、他の矢の能力で狙う歓迎すべきチャンスとなる。
ポックルは瞬間的に矢を他の7色(能力)に変更できるので、連射した朱の矢の中に
別の色を混ぜたフェイント戦法で相手を翻弄する事が出来るからである。
また、敵の放出系の念攻撃がいかに強力であろうとも朱の矢が当たれば基本的に
(特殊な制約がされていない場合に限り)無効化が可能なので、放出系能力者にとって
決定打ではない代わりに、ポックルの矢と同程度かそれ以下の連射速度の放出系能力者
にとっては厄介な能力でもある。

なお、朱の矢は“引火”に特化した矢である為、攻撃力自体はポックルの通常の念矢
“無色”よりもずっと低い(それでも三の扉を開けられる腕力で飛ばしてくる矢だが)
頭脳派で狡猾な戦法に長けたポックルには非常に適した能力と言えるだろう。

187 名前:新章/グルメ?×デンジャー?×恋の道:2009/10/22(木) 19:16:28




     一方   マリネラ料理コーナー




 世界各国、各世界、次元、時代の者達が集うトアールには、レストランもまた古今東西が揃っている。
 その中にマリネラという国のコーナーがあるのは、ある意味当然と言えば当然であった。

 とはいっても、この国の料理は他の国、または異世界の料理と比べてさえ異質なものではあったが。

 1kgの厚切りベーコン。目玉焼き百個使用による【百目焼き】。脂身とフォアグラその他のミキサージュース。

 パンや菓子類などにはほぼ全て国王の顔がペイントされていたり、型になっていたり。
 そんな国王の顔がディスプレイやメニューにズラリと広がっている光景は、かなりシュールと言えた。

 そんなゲテモノとも呼べない怪奇なものばかりかと思えば、【ショジリエの特性精進ポタージュ】など、
妙に趣向を凝らしたおいしそうな料理まで並んでいて、一概に評価することを困難にしている。


 そしてそこに、足を踏み入れようとする男が一人…


佐久間「どうも、こんにちは」

 店の中の人物に話しかけるは、ライダー同盟のリーダー、佐久間ケンである。


パタリロ「やあやあ、いらはいいらはい」

 対して店の中から顔を出したのは、マリネラの国王、パタリロ本人であった。


パタリロ「ご注文は〜?」

 板さんのような格好で、流暢に注文を聞く国王。


佐久間「そうですね… ではこの【パタリロまんじゅう】で」

 そんなパタリロの姿に何のリアクションもする事なく、佐久間はすぐさま手前の饅頭を注文した。


パタリロ「はーい、300円になりまーす」

佐久間「オヤ、珍しく値段がまともですね」

 本来は、この異世界の客人用の無料バイキングで、別購入にしている時点で問題があるのは言うまでもない。
 しかし店長である国王が国王である。チラホラ見える他の購入者も大概「ですよねー」という顔だ。


タマネギ1号「最初はこの10倍の値段だったんですけどね。しかも上げ底で」

タマネギ44号「食品管理係の人にこっぴどく(殿下が)怒られまして」

 店のあちこちからひょいと顔を出す、同じメーキャップのタマネギ達。


佐久間「なるほど、トアールの従業員さんはよく仕事をされてますねえ」

 購入したパタリロまんじゅうを一齧りしながら、佐久間は素直にスタッフを評価した。
 味は… まあ、普通にあるおいしいこしあんの饅頭である。


パタリロ「で? ライダー同盟のリーダー自ら僕の所に来た用はなんだ?
     まさかただ饅頭を食いに来たわけでもあるまい」

 途端に、パタリロはいつもの顔をシリアスなものに変えた。


佐久間「ええ。少し聞きたいことがありまして」

パタリロ「そうか。…おい」

タマネギ1号「はっ」

 パタリロが目配せをすると、1号を中心としたタマネギ達は統率された動きで、
佐久間とパタリロを緩やかに店の奥へと誘導する。

 そして瞬く間にその周囲に放射状に展開し、自然に店の各作業をそれぞれに始めだした。
 文句の付けようのない、完璧な動きである。


パタリロ「さて。人払いも済んだ。【話】を始めるか」
     
佐久間「おや、これまた珍しい」

パタリロ「うん?」


佐久間「貴方は真面目な話に入る前に、3,4回ギャグを挟む方と認識していましたが」

パタリロ「失礼な。僕だって時と場合と相手は選ぶわい」

 もっとも今回の場合、時と場合の方はどうでもよかった。
 パタリロがジョークを挟まなかったのは、佐久間がそういったものに悉く無反応で話を進める男だからである。

 パタリロのようなギャグメーカーにとって、無反応ほど嫌な手合いは居ない。
 それを以前の会議で散々味わったパタリロは、こと佐久間に関しては早々に話を進めるようにしているのだった。


佐久間「では、単刀直入に」

 佐久間は、一旦間を置くと


佐久間「トレーズ総帥の事で」

パタリロ「ああ、なるほどな」

 佐久間が急に出したトレーズの名に、パタリロはそうかそうかと頷く。


パタリロ「シロッコとの対決を決めてからというもの、奴はほとんどの交信手段を絶ったからなあ。
     他の反ティターンズ勢力やヒーロー達に極力迷惑をかけず事を済ませたいという奴なりの考えで」

佐久間「さすがといいますか、お陰でほとんど情報が入ってきません。
    しかし貴方は唯一に近く総帥と連絡を取っている方だと」

パタリロ「まあな。奴は僕の【隠されると知りたくなる】性格をよく知ってる。
     軍事、諜報の大国の長である僕なら情報を駄々漏れにしてしまう可能性もないし。
     こうして限られた、逆に伝えておくべき【大丈夫な人物】にはむしろ進んで話す、
     そんな的確且つ柔軟な判断能力と頭脳の持ち主だからこそ、トレーズも僕には特殊無線を敢えて閉じない。
     …まあ要するに、僕は信頼されているということだ」

 フフンと、鼻高々にふんぞり返るパタリロ。


佐久間「(……【こいつになら迷惑をかけても別にいいか】と思ってる可能性もありますけどねえ)」

 とは思いつつも、決して口には出さない佐久間であった。


パタリロ「しかし、わざわざそんな僕に聞きに来るというからには、
     トレーズに関して何かしら掴んだ事があるんだろう?」

佐久間「ええまあ、そうですね」

パタリロ「まずはそっちを聞かせてもらおうじゃないか」

 横目で値踏みをするように佐久間を見るパタリロ。
 

佐久間「つい先日の大ニュースである【社会福祉公社】解体。それに連なる政治家、
    警察等の関連人物の逮捕、そしてイタリア郊外のビルの謎の爆破ニュース…
    それらが、総帥と関連しているのではと、そう思いまして」

パタリロ「…ほう」

 パタリロは少しだけ驚き、そして関心と警戒の色を表情に見せる。


 ほんの3日ほど前である。
 イタリアの内閣府が運営する公営団体である【社会福祉公社】は、突然にスキャンダルの嵐に晒された。

 名が示す通りの社会福祉の事業が行われる場所であり、民生用義肢義足という技術を高く評価されている機関…
 しかし、近日になって暴かれたその実体は、筆舌にするも憚られるような非道たるものだった。

 機関特有の洗練されたサイボーグ技術の結晶である【義体】。そして洗脳記憶消去術【条件付け】。
 その二つを利用する事で、事故や犯罪による瀕死の重傷者や、重篤な障害者である若年女性を
眉一つ動かさず【敵】を殺害する忠実な【人形兵】へと変え、ボディーガードや暗殺に利用する。
 諜報や暗殺など非合法の非公然活動を行う諜報機関…

 そんな、ある意味まるで絵空事のような事実は、ある日突然暴かれた。
 更に、政府のトップを始め、多くのイタリア政財界の大物の多くまでもがそれを知りながら容認していたという
事も判明し、そのニュースは現在様々な事件に襲われている世界各国をより強烈に震撼させることとなる。

 今この瞬間に至るまで、イタリアのTVは全てそのニュースを報道し続け、
新聞の一面からは決して退くことなく、関連インターネットサイトはパンクと閉鎖を繰り返している。

 イタリアは未曾有の大混乱に見舞われており、経済から治安に至るまでわやくちゃになっている。
 周辺諸国やヒーローが手助けをする事でなんとか形を保ちつつ、処分、払拭、建て直しに必死というのが現在の所だ。


 そんな“大混乱”の中…


パタリロ「トレーズとの交信ゼロでそこまで繋げられてるのは大したもんだ」

 ご丁寧に、まるで関係なさそうないちビルの爆発までしっかり調べ、二つの関連にまで届いている。
 それならば…


パタリロ「どうせ大まかな推察は出来ているんだろう?」

佐久間「【大まかな推察】だからこそ、答え合わせがしたいのですよ。
    何が起こり、どのように変化があったのか、詳しく知る必要があります」


パタリロ「……(トレーズもそうだが、こいつも喰えん奴だ)」

 そう心の中で呟きつつ、コホンと咳払い。


パタリロ「どうせ調べは付いてるんだろうが、爆破されたビルは民間… と思わせて、実は
     OZが所有している幽霊ビルだ。奴のこういう時の為の隠れ家の一つだろうな」

佐久間「……」

パタリロ「そして想像通り、トレーズとシロッコの差し向けた暗殺者との戦いが行われた場所だ。
     まず、シロッコはどこからどう操ったかは知らんが、【社会福祉公社】のフラテッロ…
     つまり、件の義体少女達とその担当官を暗殺の刺客に使っている」

佐久間「ティターンズの総帥がイタリアの公社を、ねぇ」

パタリロ「悪の組織同士横の繋がりが元からあったのか、調べたら向こうの痛い所を掘り当てたかは知らんがな。
     とにかくシロッコの奴は、余所(よそ)から持って来た駒を使ってシロッコを摘み取ろうとしたわけだ」

佐久間「自分の手駒と懐はほとんど痛めず、【可哀想な子供達】を彼(トレーズ)にぶつけることで、
    精神的に遅れを取らせるという作戦も兼ねているワケですか…
    なるほどなるほど、非常且つ合理的と名高いパプティマス・シロッコらしい戦術だ」

 表情も語気も変わらないが、それでもパタリロは、佐久間からどことなく静かに内側で燻る怒りを感じ取った。
 冷静沈着に見えて、その奥底にはやはり誰よりも強く燃え滾る正義感を持っているのだろう。
 常人でも吐き気がするような話であれば尚更、その義憤の炎の勢いは強いに違いない。


パタリロ「……そしてトレーズはその卑劣な策に敢えて乗った。
     自身の命を優先するなら愚行この上ないが、トレーズはそういう奴だ」

佐久間「その時のトレーズさん側の戦力は?」

パタリロ「レディ・アンと、かつて【インフェルノ】というマフィアで【ファントム】と呼ばれていた3人。
     そしてニューヨークシティの死神【シスター・ミリティア】。
     どれも悪の組織による拉致の可能性などから、トレーズが保護していた元殺し屋の少年少女達だ」

佐久間「義体少女と同じ、いわゆる【可哀想な子供達】ですか…」

パタリロ「まあ彼らの場合は足を洗って、トレーズの保護のおかげで人間らしい暮らしが出来ていたみたいだが…
     今回はそんな恩人(トレーズ)の窮地に、自分から再び銃を握ったみたいだな」


佐久間「彼らはどうなりました?」

パタリロ「えーと、確か…」

 頭をクルクル回しながら考える仕草を始めるパタリロ。
 

パタリロ「暗記した報告内容だと、【死神】ティスタは銃弾を腹と右肩に受けて。
     3番目のファントム、キャル・ディヴェンスは全身裂傷と打ち身。
     1番目のファントム、吾妻エレンはアバラを数箇所骨折。
     2番目のファントム、吾妻玲二は胸をナイフで刺されてそれぞれ重体らしい。
     …まあ、命に別状はないらしいが」


佐久間「ご存命ならそれは何よりですね。
    少女たち… フラテッロの方は?」

パタリロ「全員射殺済み」

佐久間「………」

 パタリロの言葉の内容に、佐久間は少しだけ表情を変える。


パタリロ「あくまで“表”の報告書ではの話だ」
     
佐久間「ああ……」

 なるほど、とばかりに、小さく頷く佐久間。


パタリロ「死神や亡霊と戦闘をしたわけだからそれなりにボコボコにはやられたみたいだが、
     なんとか全員生きてるようだ。今はトレーズの知る限り一番腕のいい医科学者に
     預けて治療してもらってるらしい」

佐久間「表向きには死亡という記録にするのは、彼女達が世間の同情や好奇の目に晒されたり、
    またその殺しの技術、能力をDなどに利用されるのを極力防ぐ為、というわけですね」

パタリロ「トレーズの望みは彼女らが普通の人生に戻ることだろうからな。
     ブン屋のカメラに追いかけられる中ではそれも満足に出来まい」


佐久間「しかし… それでも難しいでしょうね」

パタリロ「そうだな。これから改めて洗脳を解き、正しい知識と道徳を得ていくんだろうが、
     そうなると人殺しの記憶は最大の障害になるだろう。
     彼女達の心が壊れないように、長い長い年月をかけるしかないな。
     いくら科学が発達しても、精神(こころ)だけは自分で治して強くするしかない」


佐久間「…やりきれない話です。
    大人の悪意やエゴによって、常に犠牲になるのは子供達だという現実は」

パタリロ「それが許せんから、トレーズは黄泉還って尚あそこまで頑張るんだろうな」


佐久間「そういえば、総帥とレディ・アンの方は…」

パタリロ「僕に通信ハロで結果を報告してくれたのはアンの方だ。
     あいつも疲れてはいるものの怪我とかはなかったみたいだな。
     ただトレーズは…」

佐久間「総帥も負傷を?」

パタリロ「いや、怪我は一切ないそうだ。
     しかしシロッコとの情報戦の駆け引きから、裏での公社解体の為の根回し…
     その時点で何日も寝ずに常人からは考えられないような仕事量をこなしている上に、
     対決の日にはフラテッロの一人と銃を向け合いながら問答をするわ、
     その後やって来た最後っ屁のMS… アッシマーと疲労状態のまま戦闘したらしい。
     なんとか勝ったみたいだが、トールギスから降りた瞬間にブッ倒れたとか」

佐久間「……なんとも壮絶だったようですね。
    聞いただけでなんだかどっと疲れたような気がします」


パタリロ「…これで公社は潰せ、少女達は助けられたわけだが、問題は残存兵力だな。
     トレーズの本意じゃなかったろうが、彼を守護する重要な戦力である【死神】と【亡霊】は皆重体。
     本人も倒れている今、彼を守れるのはアンだけだ」

佐久間「そしてシロッコの側が失った戦力といえば、アッシマーとそのパイロットだけですか。
    ……ほぼ彼の思うとおり、盤外の駒で敵の主要戦力を削られた結果になったと」

パタリロ「アンはトレーズの体調が戻るまではまたしばらく身を隠すそうだ。
     本音では僕にすら助力を請いたかっただろうが、どうやらトレーズの意志を尊重するらしい」
  
佐久間「なんとも歯痒い話ですね」

パタリロ「まあ、そう心配しなくても奴なら大丈夫だろう。
     …で? もう聞きたいことは終わりか?」

佐久間「ええ。大変重要なお話をお聞かせ頂きまして、感謝します。殿下」

パタリロ「僕らも食事が終わったら忙しくなりそうだな。
     …じゃあ、店に戻るとするか」




  ◇    ◇




パタリロ「タマネギー、ちゃんと売ってるだろうな?」

 店の奥から姿を現すや否や、パタリロはいつものおちゃらけた表情に戻っていた。

タマネギ1号「あっ、殿下。
       なかなかの好売り上げですよ」

パタリロ「うむ、けっこうけっこう。
     お前らガンガン売るんだぞー。この売り上げは全部恵まれない子供に寄付するんだから」

佐久間「寄付とは珍しいですね。…それで、恵まれない子供というのは?」

パタリロ「僕だ」

佐久間「………」

 …と、他愛もないやり取りをしていると


(ドドドドドドドド………!!!!)



ポックル「うわあああああああああああっっ────!!!!!」

至郎田「ふぅはははははは────っっ!!!
    ワタシノドーピングコンソメスープを飲めぇぇええ────────っっ!!!!」


 ものすごい音とスピードで、変な帽子の小柄な少年と、スープ鍋を持った筋肉ダルマが通り過ぎていく。


パタリロ「………なんだあれは?」

佐久間「……… なんでしょうねえ」

 二人はただ、首をかしげるばかりであった。





188 名前:新章/グルメ?×デンジャー?×恋の道:2009/10/22(木) 19:17:00

○パタリロ・ド・マリネール8世→佐久間にトレーズの事を話す
○佐久間ケン→パタリロからトレーズの戦いを聞く
○タマネギ1号&44号→店員をこなしながらもしっかりタマネギ部隊。
○ポックル→まだ追いかけられてた
△至郎田正影→まだしつこくポックルを追いかけていた

【今回の新規登場】
○タマネギ1号(パタリロ!)
タマネギ部隊最年長の42歳。エトランジュ王妃(現皇太后)から直接任命された隊員。
最古参メンバーであり、6号を除きパタリロと同じ年頃の子供がいる。黒タマネギ部隊、
紫タマネギ部隊等全てを含めたタマネギ部隊の中でもっとも経験豊富で、パタリロの
奇想天外な行動にも、手を焼いてはいるようだがさほど動じず、時にはパタリロに
意見する家老的役割を果たし、タマネギ部隊の中では一番偉い司令塔的存在。
前には2歳のパタリロに反陽子光線を浴びせられ8年後突如として羊羹に変身して
しまったり、アニメではエトランジュに話しかけられると体が(物理的に)凍り、
その状態で再び話しかけられると溶けてしまったりしていた。下着はふんどしを愛用。

○タマネギ44号(パタリロ!)
長髪の優男風な美形の青年。霊感体質で霊を認識でき、除霊能力も持つ。実は人間と
ゴブリン族の女王との間に生まれたゴブリンハーフ。白魔術の大家である薔薇十字会
にも属している。 非番の度に何故か事件が起きる不運の人(その為素顔で登場する事が多い)。
タマネギ部隊では数少ない至ってノーマルな人。個人としては最多登場回数。
ぬいぐるみを集めるのが趣味で、登場する度に私室に飾られているぬいぐるみが増えている。
パタリロにぬいぐるみを人質に取られた時は我が子を人質にされた母親の様に狼狽したほど。
人間の身ながら、対悪魔戦では上級悪魔と同等の戦闘力を有するが、人間との戦闘となると
実戦向きではないらしく、プロの殺し屋には通用しなかった。


189 名前:新章/グルメ?×デンジャー?×恋の道:2009/10/22(木) 20:47:38



冥「ふーん・・・ なるほどね」

 粉塵、瓦礫と化した店舗や設備の数々を見渡しながら、眉をピクピクさせる若き女性。


冥「担当してるバカがバカな理由で目を離している間にバカ一人が勝手にバカな料理を
  作って暴れまわった末に異世界人に倒されて一応の落着・・・ と」

糸鋸「すいませんッス。返す言葉も無いッス」

冥「バカだバカだとは思っていたけど、
  まさかたかがラーメンに釣られて持ち場を離れるほどのバカとはね」

糸鋸「ただのラーメンなんてモンじゃないっす!
   日本中、世界中、異世界中のうまいラーメンが勢揃いでそれはも(ビシィ)ぐはぁっス!!」


      (ビシ バシ ベシ バシ 
       ベシベシビシビシバシバシッッ ゴシカァン!!!!!)


 息もつかせぬ、冥の連続鞭攻撃。
 それが終わる頃には、ボロ雑巾と化した糸鋸が周囲の瓦礫と溶け込んでいた。


冥「ヒゲ、今月の給与査定楽しみにしていなさい」

糸鋸「は、はいっス・・・・・・(がく」


冥「(まったく。次から次へと・・・ ただでさえ警察が仕事でパンク状態だっていうのに)」

 黄泉還り、時空クレバスと各種問題が浮上してからというもの、警察には微塵も休む暇が無い。
 事態整理。収拾。パトロール。逮捕。拘留。主要人物の警護。etcetc・・・・・・

 国民からの通報や相談など山の数、警察の電話線はパンク寸前とひどいもの。
 結局は警察の仕事のうち、裁判は極力後回しになり、検事ですら本来と違う仕事を重点にせざるを得なかった。

 天才検事である狩魔冥がこんな場所にいて、糸鋸達を管理している理由も、そこである。


冥「弟子!」

美穂「は、はいっ!!」

 冥の一括により、素早く駆けつけて来るのは、霧島美穂。
 彼女も仮面ライダーの一人だが、現在はかけだし検事として冥の下で修行に励んでいる。

 ・・・といっても、冥同様に今は検事の仕事に着手は出来ていないが。


美穂「はいミストレス〔師匠)、アイスティーです!」

冥「結構」

 美穂からストローの刺さった紙コップのアイスティーを受け取り、喉を潤す冥。


冥「あなたもよくわかるようになったわね」

美穂「お、おかげさまで・・・」

 冥の言葉に苦笑しつつ答える美穂。
 実際にここまで以心伝心するにはそれなりに怒られ、苦労していた。

 こうして普段は冥にピッタリとくっつき、全ての命令を即座にこなすのが彼女の仕事である。
 ぶっちゃけて言ってしまえば、部下というより召使いに変わりない。


美穂「ミストレス。それで今回の事態はどう・・・」

冥「至郎田の懲役は3年追加。ヒゲは復活次第店舗等々の修復を手伝わせる、ってとこね」

美穂「なるほど・・・ それで私は」

冥「あなたは他のライダーと同じように佐久間ケンに呼ばれているんでしょう?
  その時間になるまでは私について雑務を手伝いなさい」

美穂「はいっ!」




  ◇    ◇




村雨「ここがレストランフロア、か・・・」

 ポックルの事件も終わり、落ち着きを取り戻し始めたレストランフロア。
 そこに足を踏み入れる新たな男。

 その名は、村雨良。
 またの名を、仮面ライダーZX。
                                     え い ゆ う   
 かつて世界中を危機に陥れた悪の組織『BADAN』と戦った仮面ライダーの一人。 


村雨「(重大な発表があるからここに来ていてくれと、佐久間サンは言っていたが・・・)」

 佐久間からの連絡を頭の中で思い出しながら、辺りを見渡していると 


デネブ「はい」

村雨「・・・ん?」

 急に眼前に、ペロペロキャンディーが現れた。
 腕が伸びてきた方向に首を向けると・・・

デネブ「やあやあ、初めまして! 俺はデネブ!」

 明らかに人間とは違う、人型のカラス・・・? のような造型の顔の形をした者が、そこにいた。
 怪人・・・ にしては陽気で、純粋でとても友好的なオーラが、自然と警戒心を失わせる。


デネブ「これは俺の特製のデネブキャンディーだ。
    世界のために頑張ってくれてる皆の為にせめて俺も何かしようと思ってたくさん作ってみたんだ〜。
    よかったらもらってくれ!」

村雨「あ、ああ・・・ ありがとう」

 差し出されたペロペロキャンディーを受け取り、軽くペコリと会釈をする村雨。
 そのまま彼は、ぺロキャンを片手に、レストランフロアの奥へと向かう。


デネブ「もし侑斗に会ったら、その時はよろしくな────!!」

 という、よくわからないデネブの言葉に、律儀に一応OKのサインを返しながら。




  ◇    ◇




 佐久間がいるであろうスタッフルームを目指し、村雨は更に奥へと歩を進める。

村雨「・・・・・・」

 そんな最中、目に付くのは先程デネブがくれたキャンディー。

 捜し歩く、という行動に当たって上半身はけっこうに暇なもの。
 村雨はなんとなく、ちょっとした興味と、もらったからには食べなくてはという真面目な考えから、
ちょっと舐めてみようかと考えた。

 成人男性がペロキャンをなめて歩く際の、周囲の反応がどうなるかという予測はまったく考えず。



 その時


          (ドンッ!)


 何か硬いものに、ぶつかる。

ガンギブソン「あ、ごめんよ」

村雨「いや」

 ぶつかった両者は、何事もなく簡単に通り過ぎようとした。
 その、筈だったが───・・・・・・


ガンギブソン「・・・・・・!? あっ───!!?」

村雨「ん?(ぺろ)」

 何かかなり驚いた様子でふり返るガンギブソン。
 間の悪いことに、その瞬間にキャンディーに口をつけた村雨。


ガンギブソン「・・・てめぇ、ビルゴルディ!!!
       性懲りもなく、また黄泉還ってきやがったな!?」

村雨「ビル、ゴル・・・? いや、俺は・・・ ・・・・・・・・・っっ!!」


      (バキュン!!   ズギュン!!

          ドッキュゥゥゥン!!!!)


 村雨が弁解をし終わる前に、ガンギブソンのガンボルバーとブローソンが火を噴いた。
 上体を逸らして避わす村雨に、更にガンギブソンの2丁拳銃の銃口が向く。


ガンギブソン「くたばりやがれー!!!」

村雨「だから俺は違・・・!!」




 この第二の騒動が、ジャンパーソンの仲裁によって終わり、
警備担当の人達にガンギブソンがボコられるまで、そう時間はかからなかった・・・・・・




  ◇    ◇




     トアールホテル   レストランフロア・ベランダ部分




ドクターHY「フフフ・・・ やってるわね」

 通常であれば人が立つ事のない、嵌め殺しの窓の外側の出張り。
 そこに堂々と立ち、中のヒーロー達の騒動を見、クスクスと嗤う一人の女性。


シュヴァルツ「まぁ〜〜〜〜〜〜っっこと馬鹿極まりない!
       タンパク質の脳でできたサルがいくら集っても無意味!! ウハハハハーのハー」

 そして、その肩の上で騒ぐ機械の小人。


ドクターHY「さて・・・ お笑い劇場も一通り見物できたし、
       私の今回の役目も終了・・・ そろそろお暇の時間ね」

シュヴァルツ「まぁたあのクソガキ共の“治療”かねー?
       つまらんなぁー、面倒だなぁー、いっそ全身機械に・・・」

ドクターHY「フフ、そんな楽はさせてあげないわ。
       彼女達にはゆっくりと時間をかけて、苦しみぬいてもらわないと」

シュヴァルツ「おほぉ〜、残酷っ! 冷酷っ!
       正に悪の幹部、マッドサイエンティストの鏡!!」

 カタカタ体を揺らしながら

ドクターHY「・・・・・・そして、本当の意味での人間に戻ってもらうわ」

シュヴァルツ「・・・・・・うぬぅん?」

ドクターHY「自分の目で行き先を見つけて、自分の足で歩ける、ね」

シュヴァルツ「なんだなんだぁ? お前さんも“人の良心”とかいうやつか〜?」

ドクターHY「私はドクターだから、受け持った患者は必ず治す。
       ・・・・・・それだけよ」

シュヴァルツ「??? まったく人間という生き物は不可解なものだぁ〜。
       実に理解シガタイ! ・・・特にアンタがねー」

ドクターHY「私を理解? ・・・無理ね。
       誰も私を理解することはできなかったし、できないわ。
       この私自身ですら、自分を理解できないもの」

 例外は、たった一人・・・

 世界を征服できる力と技術を手にし、その具現を作り上げた筈だった私に、
 たった一人で、何の武器も持たず、その身一つで

 私の世界を壊し、私の野望を崩壊させ

 そして、私の・・・


ドクターHY「・・・・・・昔の事を思い出しすぎね(ピッ)」

 HYが指輪の一つを触ると、徐々に水色の光の柱が二人を包む。
 次の瞬間には、ドクターHYは一切の痕跡を残さず、ベランダから消えていた。





 そして、誰もいなくなったベランダに




ハロルド「チッ・・・ 逃げられたわね」

 現れるは、もう一人のマッドサイエンティスト。


ジューダス「俺たちがヤツに気付いた事に、向こうも気付いたようだな」

 そして、仮面の騎士。


ハロルド「このハロルド様の鼻先をうろついてタッチの差で逃げおおせるとはねぇ。
     しかも追跡不能のジャミングを内蔵した転移装置とはねえー。
     666なんてふざけた発明品といい、やってくれるわあの女」

 さっきまでHYが立っていた場所を調べながら、呟くように言うハロルド。


ジューダス「(この女が他のやつを認める発言をするとはな・・・
       それだけドクターHYという女が大した存在だということか)」

 そうジューダスが思っていると


ハロルド「・・・・・・グッフッフ〜。燃えてきたわ!!
     元の時代に帰るのは少なくともあの女を私の科学力で打ちのめしてからね!!」

 何かに引火したかのように、ハロルドはすさまじいテンションで拳を握る。


ジューダス「おいおい。そいつが俺たちの敵かどうかなんてわかってないだろう」

ハロルド「うん? そんなのかんけーなし。
     敵だろーが味方だろーが、神だろーが仏だろーが、
     私の前に立ち塞がるモノはなんであれ排除排除よっ!!
     さ〜〜て、首を洗って待ってなさいよ、ドクターHYとやら〜!!」

ジューダス「・・・・・・やれやれ」




190 名前:新章/”管理”する者・騒がしき者・観察する者:2009/10/22(木) 20:49:03

○狩魔 冥→必要な指揮をやり終え、美穂と共に他の仕事へ
○霧島美穂→冥の弟子として堂に入ったパシリっぷりを発揮。
○糸鋸圭介→ムチでさんざん叩かれたあと、給与カット
○村雨良→ビルゴルディと勘違いされ、撃たれる
○デネブ→村雨にデネブキャンディーを渡す
○ガンギブソン→村雨をビルゴルディと勘違いし、発砲
△ドクターHY→お笑い見物のあと、少女達の治療に帰る
△シュヴァルツ→まだ人間の深い部分の理解には至ってないようだが・・・
○ハロルド・ベルセリオス→ドクターHYを勝手にライバル視
○ジューダス→ハロルドと行動を共にしているのはツッコミ役の性かも


【今回の新規登場】
○狩魔 冥(逆転裁判シリーズ)
狩魔 豪の娘。アメリカで育ち、13歳の時に検事になった。成歩堂に対しあからさまな
敵意を向け、成歩堂から有罪判決を得ることに執念を燃やしていた。父親同様「完璧な立証」
に強くこだわり、証拠の隠滅や証言の操作が主戦法。非情に攻撃的であり、常にムチを
携えており、何者に対しても一撃を与える。他人をフルネームで呼ぶ癖があるが、他人
からフルネームで呼ばれる事は嫌う。米国暮らしが長い故か、日本の諺や常識に関して
誤った認識をしている一面も。プライドが高く、天才と自称し自信過剰な面を見せるが、
それは天才と呼ばれた父親に対するコンプレックスの裏返しのであり、そのことを『2』
EDで御剣に指摘され、この時それまでの彼女からは想像も出来ない表情を見せ、ユーザーに
大きな衝撃を与える。それ以降は性格が丸くなったようで、御剣に協力を要請され素直に
日本に来たり、不正行為を一切行わずに正当手段だけで弁護側に鋭く切り込むなど、
父の呪縛から解かれ自分なりのロジックで闘おうとしている彼女の姿勢が感じ取れる。
また漫画版では現場の状況から「冥は体重360キロ以上?」と愚考した成歩堂達を赤面
しながらムチで叩くという年頃の女性らしい一面を、「なるほど逆転裁判!」ではダジャレ
を言う為だけにわざわざ米からやってくるというお茶目な一面を見せた。
兄弟同然に共に検事の修行をした御剣 怜侍に恋愛感情を持っている説がある。

○糸鋸圭介(逆転裁判シリーズ)
身長182cm。正確な体重は不明だが漫画版で「最近ちょっと太り気味で、90kgぐらい」
と発言。常にコートを着用し、着古され徐々にベージュからフクザツな色あいになった。
好物はソーメン(というか薄給の為それしか食えない)実は裁判勝訴時の紙ふぶきを
降らせているのは彼である。部下である須々木マコとは紆余曲折を経て相思相愛の仲。
仕事に対する情熱を持ち、正義感も強い。しかしドジを踏む事も多い為その情熱が
報われる事は少なく、たびたび給料減額の憂き目にあう。口ぐせは「〜ッス」。
スタッフ曰く「彼は純度の高いネットリとした愛をタップリ抱えているので、それを
受け止められる人に出会えればいいダンナさんになるが、今はその報われない思いを
捜査に向けている」とのこと。また、かなりいい体格をしているものの、その容姿とは
裏腹に怖がりな一面やナイーブな一面を見せる。学歴は不明だが、「自分はちゃんと二流、
いや一流の大学を出ているッス!」と発言している。今は刑事課所属だが元は交番勤務。
26歳で刑事課に配属。配属から半年後法廷に証人として御剣及び千尋の初法廷に登場。

○村雨良/仮面ライダーZX(仮面ライダーZX/仮面ライダーSPIRITS)
ブラジルの大学に通っていた日本人の青年。バダンの世界征服実現のために姉を殺され、
自分も改造人間にされてしまう。改造後は優秀なバダンの歩兵として活動していたが、
事故をきっかけに自我を取り戻し逃走、バダンに復讐を誓う。しかし先輩ライダーたち
との交流の中で、復讐のためでなく平和のために戦わなければならないことを悟り、
正義の戦士・仮面ライダーZXとしてバダンに立ち向かうことを決意する。

○デネブ(仮面ライダー電王)
桜井侑斗と契約したイマジン。名前の由来は白鳥座のデネブで、その姿は武蔵坊弁慶から
カラスのイメージが具現化されたもの。額にはモチーフとなった弁慶の「弁」の文字がある。
モモタロスらには「おデブ」と勘違いされているが、自身も人の名を間違えて覚える事が多い。
一人称は「俺」。指先は銃口になっており、そこから弾丸や煙幕弾を発射できる。炊事・買い物
金銭管理など侑斗の世話全般を負担。家事好きで、穏やかで優しく律儀。「‐はよくない!」と
侑斗の不遜な態度を戒めようと努力したり、「デネブキャンディ」という手作りの飴を配りながら
他人の理解を得ようとする他、正々堂々とした戦法を好み、戦闘中ですら敵にも行いを非難する事も。
戦闘能力は高いが力関係では侑斗よりも下で、開き直られプロレス技をかけられることが多い。
少々ドジで話し下手で女性はやや苦手。イマジン感知能力が低く気配を察知できない。
お化けの類が大の苦手で、足し算ができないらしい。契約完了しているため、現実世界でも実体化
することが可能。公の場では変装することが多いが、イマジンとしての異形の風貌を全く隠せて
いないため、周りの人からは変質者のような扱いを受けることがある。実体化している時に侑斗
から離れると即座に駆けつけることができないため、侑斗はデネブの助力なしで戦闘に入る場合も。

○ガンギブソン〔Gun Gibson〕(特捜ロボジャンパーソン)
ネオギルドによって制作された暗殺ロボット。0.05秒の射撃の名手。ジャンプ力は25m、
走力は100mを6.3秒で走る。義理堅い性格で、ジャンパーソンとの決闘にこだわり
ジョージ真壁の命令に逆らったため、相棒で恋人ロボットのキャロルを破壊され、
復讐のために真壁の命を狙う。その後、別行動の末にジャンパーソンと共闘するようになる。
ネオギルドの圧倒的攻撃の前に一度は機能停止したものの、ロボット修理屋の主人が用意
していたスペア用の記憶チップで復活を果たす。『重甲ビーファイター』特別編においても
ジャンパーソンと共に登場した。

○ジューダス 〔Judas〕(テイルズオブデスティニー2)
16歳・身長159cm・体重48kg。CV:緑川光。常に怪物の頭蓋骨の形をした仮面を被り、
顔を隠している不思議な少年。 口数が少ない冷めた皮肉屋だが、その心中には仲間を
思いやる優しさを秘めている。また、熱血さも混ざっており、クールな面はそのままに、
スタンやカイルに引けを取らない強い心の持ち主でもある。その年齢や体格からは想像も
つかないほど、剣の技量や過去の騒乱における知識を持っている一方で、好き嫌いがある
など子供っぽい一面も持つ。カイルに付けられた名「ジューダス」は裏切り者を意味する
ユダの英語読みである。その正体は、18年前の騒乱時に、ある理由で他のソーディアン
マスターらを裏切りヒューゴ側についた、王国客員剣士のリオン・マグナスで、バルバトス
同様にエルレインの力によってカイル達の時代に蘇った。カイルの叔父。18年前の経験からか、
カイルやロニをからかうなど、若干性格がやわらかくなっている。同一人物であるが、リオン
の術技は使用しない。本編では、ルーティの弟だという事を明かそうとしながらもやめている。

○ハロルド・ベルセリオス〔Harold Belserius〕(テイルズオブデスティニー2)
23歳・身長149cm・体重35kg。CV:平松晶子。地上軍中佐。ソーディアンを発明した天才科学者
でマッドサイエンティスト。ソーディアン・ベルセリオスの人格のオリジナルであり、地上軍軍師
カーレル・ベルセリオス中将の二卵性による妹である。ハロルドという名は自称で、この名前に
しておけば後世の人間が勘違いすると思い、面白がって名乗っている。その思惑は成功したらしく、
1000年以上経過した第二次天地戦争以降(カイル達にとっての現代)でも、男として歴史に名を
残している。物事を「面白いか、否か」で判断し、カイル達の仲間に加わったのも「ついていけば
面白そう」という理由から。科学に関しては天才的だが、他の面では子どものように単純な言動が
目立つ。パーティーメンバーの身体(特にロニやジューダス)を使って実験を行うことがあり、
料理に薬品を混入するときもあるため、仲間達は彼女の料理を危険視している。彼女はやがて、
自分を襲う歴史上の悲劇を知ることになるが、それを受け止め、乗り越えて進んでいく。初対面の
敵と戦闘になった際、メンバーに彼女がいて、かつスペクタクルズを1個以上持っていると、開始
直後に「勝手にスペクタクルズ」で敵のデータを採取する。


191 名前:新章/明らかとなる新たなスターダスト:2009/10/22(木) 20:54:34


         開店より数刻

      レストランフロア  中央



 レストランフロアの朝も、幾多の出会いと事件を繰り返し、
気付けばそれなりの時間が経過し・・・ 大方の者達の食宴は、終わりを迎えようとしていた。


 そんな中


レジーナ「・・・・・・・・ ねえ、鳳鈴」

 カラン、と。

 グラスの中の氷同士が鳴る小気味の良い音をさせながら、
よく冷えたジンジャーエールで喉を潤していたレジーナが、周囲を見渡し、話しかける。


鳳鈴「あら、やっぱりあなたも気付いてたのね」

 同じように冷えた烏龍茶を口にしていた鳳鈴もまた同じ目をしていた。
 諜報員特有の研ぎ澄まされた感覚は、時に刃物よりも鋭い。

 その、才と経験が生み出す第六感感知が気付かせた異変。
 それは・・・


ブルース「ん〜? どうしたんだお二人さん。
     お食事の席には随分似つかわしくない顔してんな」

 突然、二人のシリアスな空気の中に、ブルースが割って入る。
 片手にはビールジョッキ。心なしか顔も赤い。


鳳鈴「冬瓜は黙って向こうで飲んでいてくれる?」

レジーナ「こっちは真面目な話の途中よ、あなたが混ざるとややこしいんだけど」

ブルース「おいおい。俺はいつでも大真面目(シリアス)だぜ?」

 指を顎に当てて、歯を見せ笑うブルース。


鳳鈴「朝からビールを次々おかわりして飲んでる奴がよく言うわ」

レジーナ「ホントに諜報員なのか怪しくなってくるわね」

 鉄の女二人の視線は冷ややかだ。

ブルース「まあまあ待ちなって。
     お客さんの中に毛色が違うのが増えてきたことだろ?」

 ブルースの発言に、二人の表情が一瞬変わる。


ブルース「見たところ、今さっきまでの大物サン達とは種類が違うVIPさん達が・・・
     おーおー、どんどん増えていってるなぁ」

 視線の先を2,3回左右させ、暢気に話ながら、ブルースは尚もビールを口にした。


鳳鈴「各国の大使、大臣などの重要人物・・・ 驚いた。国家元首本人まで何人かいるわ」

レジーナ「それだけじゃなく、MI6。CIA。FBI。中国公安部・・・
     ふうん、元KGBの人間までいるわね。豪勢なこと」

ブルース「えー、あれが“死神”ジャック・バンコラン。向こうがミスマル・コウイチロウ。
     お、あっちにいるのはリリーナ・ドーリアンかぁ。すげえなこりゃ。
     何が始まるんだ? これから」

鳳鈴「他にも何かしらの重要人物らしき人が集まってきてるわね。
   幻想界とか、他の世界の王、姫、大臣と考えていいのかしら」


 鳳鈴らを始めとする慧眼な人物達が、それに気付き始めたところで・・・




  ◇    ◇




パタリロ『あー、てすてす』

 レストランフロア各所に設置されてあるスピーカーから響く、気の抜けた声。
 それにレストランフロアにいる客達が、何事かとそれぞれ反応をしていると


          (ウィィィィンン・・・・・・!)


 突如として、大きな機械音とともに
 フロア中央にあったモニュメントが分解されながら床の中に消えていく。

 それと共に現れる、巨大なモニター。
 更にそれに呼応するようにして、フロア各所の壁から出現する小型モニターの数々。


          (ざわざわ、ざわざわ・・・)


 驚きに、辺りをキョロキョロと見渡したり、唖然としたりする、半数の客達。

 その反応も当然。

 料理こそ片付けられてはいないが、
 さっきまで普通に食事をしていたレストランフロアが一瞬にして、
 何かの上映施設のような様相へと変わったのだ。



佐久間『皆サン、楽しき食事の中、突然の水差し、申し訳ありません』

 そこにまた響く、今度は落ち着いた冷静な声。

佐久間『突然発覚した事態であるが故に、皆サンへの連絡が完全に
    お伝えすることが出来ないままこうして発表となってしまいました。
    そのことをまず、重ねてお詫びいたします』

 中央の壇上に現れたのは、ライダー同盟のリーダー、佐久間ケン。


パタリロ「よっ・・・と」

 そして、短い足で段を超える、マリネラ国王、パタリロ・ド・マリネール8世。



佐久間「本来この時間は、日々人の為、世界の為闘われている皆さんの為の
    ちょっとした催しを予定していましたが、予定を変更し、まずは
    我々が入手した驚くべきある計画についての説明をさせて頂きます」

パタリロ「それについての詳しい説明は、国際発明家団体連絡協議会のメンバーであり、
     そしてこの計画に因縁もある僕からさせてもらう。
     ・・・慧眼な国賓、情報員達は既に来ているようだな。
     ならこのまま話をさせてもらうとするか」

 レストランの客達がそれぞれに静まりをみせたところで、パタリロは話を続ける。


パタリロ「今回明らかになった計画というのは、他でもない。
     あの冥王、『グランドマスター』による人類抹消計画。
     その名も・・・ 『スターダスト・ザ・サードムーン計画』」

 パタリロの“スターダスト”という言葉に、何割かの客達がざわめいた。


 “スターダスト計画”。
 それはかつて“タランテラ”という組織が計画した、最悪のテロ計画だった。

 当時世界各地で相次いだダイヤモンドの盗難事件。
 そして当時は、マリネラ王国のダイヤモンドの収集も全て奪われた。

 タランテラことインハリッヒ・シュゲルグ博士は、アメリカの宇宙ロケット・アポロ11号を
ハイジャックし、世界征服の為の恐るべき“スターダスト計画"を発動した。

 宇宙上から世界で尤も安定した硬度を持つ物質、ダイヤモンドを、
宇宙から都市の雲を狙い射出することで、宇宙の絶対零度に冷されたダイヤモンドは
雲を凍らせ、凍った雲は無数のボール大の雹となり地球へ落下する。

 数時間も降り注ぐ無数の雹は、地球上のどんな建物も破壊し、人を死に至らしめる。
 核も使わず、光科学兵器も使わず、コロニーを落下させることもなく。

 あらゆる人類の文明を破壊し尽くし、放射能も焼却残滓も残さない

 それを食い止める為に立ち上がったのが、パタリロ、バンコラン、マライヒ、そしてプラズマX。
 彼らは、マリネラ空軍の月ロケットを駆って、宇宙へと飛び立ち、計画を阻止したのだ。




  ◇    ◇




パタリロ「とまあ、以上が僕が経験した“スターダスト計画”事件の顛末だ」

 パタリロの口から語られた、スターダスト計画の内容。そしてその事件の結末。


パタリロ「当然問題はそこからでな。
     早い話が・・・ このスターダスト計画が、もう一度着手されているらしい」

佐久間「それも、前回とは比べ物にならないほど大きなスケールで、です」

 二人の衝撃的な発表に、聴客達のざわめきはより一層大きなものとなる。


佐久間「ストライダー飛竜君の報告によると、グランドマスターの所有する
    『ザ・サードムーン』は、メートル単位の誤差でダイヤを目標に発射する
    高性能な射出装置を備え、更には自在にワープで場所を転移させる事が
    可能なようです」

パタリロ「つまり、奴らはこれを使えば、この地球上のどの宙域からでも、好きな時、
     好きな場所に雹の雨を降らせることが出来るということだ」


        (ざわっ・・・・・・!!)


 パタリロの決定打に近い言葉が、聴客の緊張とさわめきをピークにさせる。



  ◇    ◇



ブルース「おいおい、マジかよ?」

レジーナ「サードムーン・・・ あの時破壊した筈のあの要塞・・・」

 それは、かつてグランドマスターを倒した筈の彼らも例外ではなかった。

鳳鈴「(確かにこれは大事ね。でも・・・)」



  ◇    ◇



バンコラン「待て。パタリロ」

 そして本舞台には、新たな登場人物が現れた。

 
パタリロ「おお、バンコラン。来てたか」

バンコラン「世界中のどこにでも好きにダイヤを射出できる、と言ったな。
      だがそれには膨大な・・・ いや、正に星の数ほどのダイヤが必要な筈だぞ」

パタリロ「ああ、まったくその通りだ」

バンコラン「だが、お前に言われて盗難事件の記録を部下に調べさせたが、
      いくら過去を遡っても、過去のタランテラのようなダイヤ盗難事件は
      一切見当たらなかったぞ」

 そう言ってバンコランは、片手に持っていたファイルをパタリロに投げ渡した。


パタリロ「だろうな」

 渡されたファイルをパラパラと速読しながら、さも当然といった風にパタリロは言う。


バンコラン「・・・・・・?」

パタリロ「僕がかつて、宇宙ロケットで他国よりもいち早く月に行こうとしてた
     という話は覚えているか?」

バンコラン「確かにそういう話をしていたな。なんでも・・・ ・・・!!」

パタリロ「そう。それが正解だ。
     月にはたくさんの隕石が落ちる。だからそこで炭素が圧縮されて、月の
     表面には膨大な数の、それこそ星の数ほどのダイヤがゴロゴロしている」

佐久間「そしてある時、実際に多くのダイヤが一つの宇宙旅客艇から見つかっています。
    ・・・そうですよね。アトム君?」

 佐久間がある方向を向きながら尋ねると

アトム「あ、はい。
    確かに僕が行った時は、たくさんのダイヤが月の谷にありました」

 そこには、マイクを持たされていたアトムがいた。
 実は彼もまた、佐久間に呼ばれていた一人である。


パタリロ「だから僕は宇宙探査艇の開発を急いだ。
     世界一意のダイヤ産出国のマリネラとしては、他の国に
     月のダイヤ採集を邪魔されるわけにはいかんからな。しかし・・・」

バンコラン「ダイヤは見つからなかった。というわけか」

パタリロ「ああ。丹念に探し回ったが、影も形もなかった。
     ただ、その代わり見つかったものがある」

佐久間「それについては、もう一人詳しい方をお呼びしています。
    月往還船『SAGAWA』で月に赴き、BADANの怪人と戦った方を。・・・沖サン」

 佐久間がまた違う場所を向くと


アトム「あ、マイクどうぞ」

沖「・・・・・・ あ、ああ」

 そこには、アトムからマイクをバトンタッチされた沖一也・・・
 惑星開発用改造人間・コードネーム「S-1」こと、仮面ライダースーパー1がいた。


佐久間「BADAN事件の時、沖サンは月である跡をご覧になったそうですね」

沖「そうだね。ツィオルコフスキーの巨大採掘跡・・・
  月の裏側にある巨大なクレーター。あれはBADANによるものだった」

パタリロ「少なくともBADANは、僕らよりずっと早く月にちょっかいを出す技術を
     持っていたという証明だな」

佐久間「そして、グランドマスターがかつてBADANや、他の悪の組織と古くから
    繋がっていたと思われる痕跡も飛竜君が届けてくれました」

パタリロ「それを見てみた結果、当時既に、グランドマスターはBADANと同等か、
     それ以上の技術を有していたことがわかった」

佐久間「ここからは仮説でしかありませんが、BADANが『月に眠りし力』に
    執心していた一方で、グランドマスターはその時から既に月のダイヤを
    集めていたのではないかと考えられます」

アトム「じゃあ、僕がダイヤを見つけた時は・・・」

パタリロ「たまたまそこが一番後回しになった箇所だったのかもしれんな。
     どの道、今は月にダイヤは欠片もないというのが事実だ」
     
佐久間「とどのつまり、グランドマスターは必要な数のダイヤを確保しており、
    充分すぎる精度の射出装置も、更にはそれを自由な時間、場所に撃てる
    移動航宙要塞も確保している。・・・ということです」


アトム「そんな・・・! 大変じゃないですか!!」

 いよいよ本格的にざわめき出す聴客を代表するかのように、アトムが大きな声を出すと

パタリロ「慌てるな、バカ者」

 それをパタリロは、冷静な一言で抑える。


パタリロ「射出装置も要塞もあるが、それだけですぐ発射できるわけじゃない。
     サードムーンが造り直されたのはつい最近の話。
     そこから、破壊する着弾先の都市の座標、天候、ダイヤの射出用の加工。
     計算する事は山ほどある」

佐久間「そしてその一部を担っていたロシア基地を飛竜君が破壊したことで、
    彼らの計画は更なる遅れは避けられないものとなったでしょう」

パタリロ「まー、ロシア基地に関してはザンギエフとレインボー・ミカも
     助っ人に行ったとゆー話も聞いてるが」

アトム「え? そうなんですか?」

沖「あの有名な“赤いサイクロン”?(もう一人は知らないな・・・)
  それで、その人達は?」

パタリロ「報告によれば、基地の自爆カウントダウンが鳴り響いてるのによほど
     エキサイトしてたらしいな。逃げもせずに基地の中の敵と戦いまくって、
     あげくに爆発で吹き飛ばされて、雪の中に頭から突き刺さっていた所を
     ロシア警察に発見されたそうだ」

アトム「・・・・・・・・・・」

沖「・・・・・・・・・・・・・・・」

 なんとも言えない内容に、あんぐりとする二人。

パタリロ「話を戻すぞ。
     同様に演算を行っている他の基地の場所も飛竜のおかげでわかった。
     その基地を破壊していけば、サードムーンの射出計算はもっと遅れる。

佐久間「放っては置けない事態ではありますが、今慌てふためくべき事態でもありません。
    現在最も効果的且つ重要な作戦は、世界各地の『第三の月』の基地の破壊。
    落ち着いて各個撃破していけば、必ずサードムーンへと到達もできる筈です」

パタリロ「既にこの作戦に関しては、僕と佐久間で有志に声をかけている。
     ま、他にも重要な任務についている奴もここには多くいるだろう。
     手の空いている奴がいれば、後で佐久間に声をかけてくれ」

バンコラン「お前はどうするんだ?」

パタリロ「サボるわけじゃないぞ。僕は僕でやることがあるんだ。
     久しぶりにプラズマXにも出番が来そうだし、その準備もしなきゃならんしな」

バンコラン「あの時のロボットか・・・」

 少しだけ遠い目をしながら、バンコランは葉巻を取り出す。


佐久間「ああすいません。このレストランフロアは禁煙でして」

バンコラン「・・・・・・ 咥えるだけだ」

 その言葉どおり、バンコランは葉巻を咥えるだけで、ライターは取り出さなかった。

 葉巻を咥え、目を閉じると、当時の記憶が映画のフィルム再生のように浮かぶ。


 タランテラ・・・ ビョルン。アンドレセン。

 時に愛し、時に愛され、そして自らの手で葬った、美しき刺客達。
 大地に眠った兄と、宇宙(そら)の星となった弟。

 バンコランの勘が正しければ、彼らは・・・


バンコラン「(3度目・・・ か。なければいいが)」

 窓の外を見つめるバンコラン。
 その遥か先にいる彼は、今も宇宙(そら)で眠っているのだろうか。それとも・・・




192 名前:新章/明らかとなる新たなスターダスト:2009/10/22(木) 20:55:19

○ブルース・マッギャヴァン→酔っているようでやはりキレる所はあるようだ
○鳳鈴&レジーナ→いち早く客層の変化に気付く
○パタリロ・ド・マリネール8世→スターダスト・ザ・サードムーンを説明
○佐久間ケン→パタリロと共に説明と、色々な手回しが発覚
○アトム→佐久間に呼ばれた一人目。月へ行った時のことを話す
○沖一也→佐久間に呼ばれた二人目。月で見つけた巨大採掘跡について話す。
○ジャック・バルバロッサ・バンコラン→ビョルンとアンドレセンを思い出す

【今回の新規登場】
○アトム(鉄腕アトム・第2部)
公式誕生日は2003年4月7日。製作者は天馬博士。交通事故死した息子、天馬飛雄に
似せて作られた(故に当初は「トビオ」と呼ばれていた。「アトム」と名付けたのは
サーカスの団長)。天馬博士と客船に乗っていて一人になった時、悪徳サーカス団の
団長に騙され、サーカス団員として契約し拉致される。やがて感情を持つロボットに対し、
人間と同じ様に暮らす権利が与えられる様になると、アトムの可能性に着目していたお茶の
水博士に引き取られた。そして情操教育としてロボットの家族と家を与えられ、人間の小学校
に通わされる様になる。学校での生活は、同級生達と紆余曲折しながらも仲良くやっている。
性格は真面目で正義感が強いが、時にロボットである自分に苦悩や葛藤することも多い。

○沖一也/仮面ライダースーパー1(仮面ライダースーパー1)
演:高杉俊介。スーツアクター:中屋敷鉄也。アメリカ国際宇宙開発研究所に勤務する科学者。
早くに両親を失い、研究所の所長ヘンリー博士に育てられた。惑星開発用改造人間の被験者に
志願しその第1号となる。平和利用目的で改造された唯一の仮面ライダー。「S-1」とはこの時
に与えられたコードネーム。ドグマの襲撃で研究所が壊滅し、外部CPUからの変身コマンド
でのみ変身できた一也はS-1になる術を失うも、秘拳・赤心少林拳の修行を積み、そこから得た
呼吸法を用い、自らの意思で変身を可能とする。後にドグマの怪人を倒したS-1に谷源次郎が
仮面ライダーの名を贈った。デザインモチーフはスズメバチ。変身のコードは「変身!!」。拳法
の発勁をベースにしたポーズで変身。 惑星開発用として体内に重力制御装置を持ち、この働きで
ジャンプ力は測定不能(重力制御装置を用いない場合は100m)。改造による機械部分は全身の
7割。歴代ライダーと違いエネルギーを生む主機関は体内の原子炉(核融合炉とする資料も存在)
でベルトの風車「サイクロード」は補助機関に過ぎない。宇宙空間には体内熱を逃がす伝導体が
存在しない為、排熱に非常に神経を使った設計となっている。吐き出した息を再生利用する循環
型酸素ボンベで1ヶ月の連続宇宙活動が可能。

○ジャック・バルバロッサ・バンコラン(パタリロ!)
CV:曽我部和行(のち曽我部和恭)。軍人を多く出してきたバンコラン家の家系であるが、
それと同時に代々の男性がのきなみ同性愛者という特殊な家系でもある。両性愛者なのでは
なく純粋に男性だけを愛するバンコラン家の男たちは、家系が絶えぬようにやむなく女性とも
関係を持ち子孫を残してきた。早くに死に別れた父は例外的な異性愛者だったらしい。幼年期
にはその自覚は無かったようだが長じてからはバンコラン本人も同性愛者となっている。MI6
所属の凄腕エージェント。階級は「少佐」であるが、陸海空軍の所属は不明。殺人許可証を保持
するダブルオー要員。誕生日は12月25日、作品中での年齢は27歳。常にシガーを切らさない
ヘビースモーカーで人がいなければ禁煙の場所でも遠慮なく喫煙し、悪びれる事はない。健啖家
だが食事内容はもっぱらワインとステーキばかりと偏食が目立つ。しかしそれが原因で体を壊した
ことはないらしい(タマネギの仮説によると肉食獣と同じ体質)。食事のスピードは速く、本人
曰く「エネルギー補給に時間をかける趣味はない」とのこと。徹夜しても一杯のウォッカを睡眠の
代わりとすることができるらしい。昔親友が重度の薬物中毒の状態で英国に送還されたことが
あり、それが原因で麻薬や覚醒剤に対して激しい憎悪の念が深く、麻薬の売人を問答無用で
撃ち殺した事もある。自分を殺そうと近づいた殺し屋マライヒと紆余曲折を経て結婚し、
後に息子フィガロを設ける。

193 名前:新章/ボクの歌を聴け! 轟く魂 迷走Mind:2009/10/22(木) 21:01:42
佐久間「人類とその文明だけを地球上から消し去り、原初の大地から新たな人類、
    そして新たな世界を創生する・・・ その手段として、スターダスト計画は
    現在存在するあらゆる【地球を滅ぼす手段】と比べても、理想的な手段・・・
    というわけですね」
    
パタリロ「なるほど。人間嫌いのグランドマスターらしい考えだな。
     まあ【地球クリーン作戦】とかぬかして地球をローラーしようとした
     アホ共よりはまだずっとマシかもしれんが」


タマネギ1号「殿下。今日も毒舌がきいてますねえ」

タマネギ44号「聞いてると安心しますね」

 ハッハッハと、互いに笑い合うタマネギ達。


佐久間「この件については少々の時間を置いた後に、予めこの事態の解決の為に
    召集させて頂いた方達でそれぞれの作戦に沿ったチームを形成します。
    勿論、この場にいらっしゃる方々の参加志願も受け付けていますので」
    
パタリロ「まあ、この問題は大事中の大事には違いないが、
     他にも大事を抱えているチームも多いだろうからな。
     今のところ暇な奴だけでいい。今さっき言ったとおり、今の所はそんなに
     慌てふためくほどじゃないから無理して参加しなくてもいいぞ」


佐久間「さて・・・ とりあえずこの件に関してはこんなところでしょうか。では・・・」

アトム「さっき言ってた【もよおし】ですか?」

佐久間「ハイ。アイドルの方による、ヒーローの方々の慰安コンサートを」

沖「アイドルの・・・ コンサート? こんな時にかい?」

佐久間「こんな時だからこそですよ」

 沖のもっともでもある指摘に、佐久間は不敵に微笑んだ。

佐久間「多くのヒーローの方々は、情報を整理する為であったり、戦いの一時の休息の
    場としてここトアールホテルにいらっしゃっています」

パタリロ「しかし、そういった奴らはほとんどがここでの食事を終えたら
     また新たな戦いの場に飛んでいってしまう」

佐久間「だからこそ、戦う力を持たない我々は、せめて彼らの心を支えたい。
    彼らに迷う心があれば、それを分かち合い、共に答えを見つけたい」

パタリロ「特に今は、ヒル何とかいうアホな奴が余計な真似をしているせいで、
     僕に近い年のヒーロー達が何かと酷い目に遭っているようだしな」

佐久間「そういう意味でも、ピッタリだと思うゲストを今回はお呼びしています」
    
 そう言うと、佐久間はパチンと指を鳴らした。




  ◇    ◇




      数分前

   レストランフロア裏  スタッフ控え室  



 レストラン以外にも、会議用、イベント等々・・・
 様々な用途を想定して作られたレストランフロア。
 
 なればこそ、その舞台裏と呼べるスペースは当然存在する。
 幾つかのスタッフ用の控え室から、大道具、小道具室、機械室まで。

 そんな控え室のいくつかの中で、小さく縮こまっている影が、一つ。


真「うううう・・・ 緊張するなぁ」

 765プロのアイドル。ユニット【パーフェクトサン】の菊池真である。


P「(コン、コン)まことー。入るぞ」

 そこに響く、ノックの音。そして声。
 間違える筈もない、真のプロデューサーの声だ。


真「あ、プロデューサー・・・ はい」

 真の返事が聞こえると同時に、ドアが開き、プロデューサーが入ってきた。


P「緊張してるのか?」

真「ははは・・・ はい」

 部屋に入るなり見抜かれ、真は苦笑する。


P「今日のコンサートは真がメインなんだから、そんな調子じゃ困るぞ」

 自然に隣に座りながら、プロデューサーは世間話のようにそう言った。


真「わ、わかってますよぉ・・・ でも、客席の人達がスゴすぎて・・・
  伝説の格闘家の人達だってたくさん来てるし・・・」

 膝を抱えて小さくうずくまり、視線を下に落として震えている真。
 それはいつもの凛々しく強い真とは、まるで正反対の・・・ 少女らしい姿だった。


P「そういえば真、空手やってたんだったな。
  となると、リュウとかケン・マスターズとか、雲の上の人だったり?」

真「ええ、まあ・・・ 真面目にやってましたから。
  達人って呼ばれる人達はすっかり尊敬しちゃってます」

P「あー・・・ そうでなくても、他の人達も世界中の有名人やヒーローだもんな。
  それで緊張するなっていう方が無理があるか」

 そう言うと、プロデューサーはポケットから缶コーヒーを取り出した。
 プシッ、というプルタブを開ける時の独特の音が、小さな控え室に小気味良く響く。


真「それに・・・ 佐久間さんが言ってくれたことはとても光栄ですけど、
  正直、ボクなんかにそんな大それた役目が務まるのかなって思うと・・・
  手が、震えちゃって・・・」

P「手? ・・・どれどれ」


          (ぎゅっ) 


 プロデューサーは、真自身反応が遅れるほど、本当に自然に、
真の左手を優しく包むように握っていた。

真「あっ・・・////////」

 プロデューサーの不意討ちに、一気に耳まで真っ赤になる真。
 男の人の大きく力強い手。それでいて握る力はとても優しく、暖かい。

 その暖かさは、ホットの缶コーヒーを掴んでいただけではなく・・・


P「あれ? 震えてないな」

 そんな真に対してプロデューサーは、真顔で実に唐変木である。

 おそらくと言うより、確実に。
 自分の行動がどれだけ真の思考を掻き乱しまくっているか、微塵も分かっていないだろう。


P「まああれだ。真はいつも通りに歌えばいいさ。
  熱く、力強く、一生懸命に・・・ そして何より楽しくな」

 そんな唐変木は、屈託のない笑顔で真に語りかける。
 誰よりも相手のことが分かっているからこその、包み隠しのない笑顔を。


真「・・・・・・・・・・・・」

 その笑顔に、その言葉に。何度励まされてきただろう。
 何度支えてもらっただろう。勇気をもらっただろう。

 この人の笑顔と言葉があったからこそ、今までやってこれた。
 アイドルとして闘ってこれた。たくさんのかけがえのない事を学び、得てきた。

 真は、これまでのアイドル活動の間にそれを充分すぎるほどに知り、感謝している。
 そして、今もまた・・・ 

 彼女のかけがえのない相棒の言葉と笑顔は、胸の中に渦巻いていた不安や畏れ・・・
 そういった感情を、あっという間に溶かし、消し去っていく。


P「・・・・・・あれ? 顔赤いな。どうしたんだ?」

 そんな真の心情の変化は露知らず、プロデューサーは真の顔を首を傾け覗き込んでいる。


真「な、な、何でもないですっ!!」

 思わず慌てながら顔を背け、更に両手で顔を隠す真。

P「・・・・・・???」

 プロデューサーは、訳が分からず首を傾げるのみだった。




  ◇    ◇




P「・・・あ、そうこうしてる内にもう時間だな。
  行けるか? 真」

 プロデューサーは腕時計を確認すると、反動を付けて勢いよく立ち上がる。


真「ハイッ! もう大丈夫です!!」

 真もプロデューサーに続いて元気よく立ち上がり、胸に手をやりつつ、頷く。


真「おかげでボク、わかりました! どんな気持ちで歌うべきなのか。
  プロデューサーのおかげです。ありがとうございますっ!」

 そう、誰の為に何を想い、何の為に歌うのか。
 頭で考えるのではなく、真は心を通して、それを再確認できた。

P「ん。いつもの調子に戻ってきたな。
  それでこそ完璧太陽(パーフェクトサン)だ」

真「えへへ・・・」

 プロデューサーに頭を撫でられ、アヒル口のニマニマ顔になる真。


P「じゃあ、いつものやるか」

真「はいっ!」

 互いに向かい合い、右手の拳を突き出す、真とプロデューサー。
 そして、互いの拳を軽くぶつけ合う。


真「どーんっ!! へへっ、やーりぃ!!」

P「よしっ! 行ってこい!! みんなが待ってるぞ」

真「はいっ!! 行ってきます!!!」

 そして真は、元気に駆け出した。
 眩しく輝く、彼女の歌(たたか)う場所。舞台の上へ・・・



194 名前:新章/ボクの歌を聴け! 轟く魂 迷走Mind:2009/10/22(木) 21:02:19

○佐久間ケン&パタリロ→アイドルによる慰安コンサートを計画していた
○タマネギ達→暢気に笑いあう
○菊地真→プロデューサーによって迷いをふっきる
○プロデューサー→天然たらしぶりも発揮しつつ、真を元気付ける

【今回の新規登場】
○菊地真(THE IDOLM@STERシリーズ)
CV:平田宏美。女性。16才。身長:157cm。体重:42kg。誕生日:8月29日。血液型:O型。
B-W-H:73-56-76。趣味:スポーツ全般。「凛々しい顔立ち」「運動神経抜群」
「スレンダーな体格」「ハスキーボイス」といった特徴から美少年系アイドルとして売り出され
ており、ゲーム中では男性より女性ファンが多い。男子を欲していた父の教育のため、一人称は
「ボク」で、男性的な言動が目立つ。しかし本人は女性らしくありたいと願っており、その外見
と内面のギャップに悩んでいる。直情系で身体を動かすことが大好きだが、可愛い物集めも好き
で、意外と小心でお調子者な一面もある。アイドル活動をしていることを父には内緒にしている。
女子校に通っており、校内でも女子生徒に大人気の様子。空手道場に通っていた事があり、黒帯
初段。しかし銀河系最強(真曰く)の男。800戦無敗を誇り、丸太割りを得意とするV-1グランプリ
チャンピオン、ステゴロ・ザウラーを正拳突き一発でKOするという信じられない豪腕
ぶりを発揮しており、実質初段レベルは軽く凌駕しているのは間違いないと思われる。
レッスン用のジャージをプライベートでも着用。レッスンの時は上着を脱いでタンクトップ姿に
なる。良い事があると「へへっ、やっりぃ?」と喋るのが特徴。気合を入れる時は相手と拳骨を
ぶつけ合う。亜美・真美につけられた愛称は「まこちん」。

○プロデューサー(THE IDOLM@STERシリーズ)
ある日突然765プロ唯一のプロデューサーとなり、十数人ものアイドル候補生をプロデュース
しトップアイドルへと導くという普通に考えたら過労死必須の大役を任せられる事となった男。
そしてその実癖のある子揃いのアイドル達それぞれの個性、性格、心情を理解し、的確なレッスン
で能力を高め、心の壁を取り外しチームワークを生ませ、あらゆるオーディションを成功させ、
更には敵対する961プロのアイドルすらも狙わずして765に引き抜いてしまう恐るべき
天然トンデモ手腕のプロデューサー。しかもプロデュースしたアイドルのほとんどが彼に対して
恋愛感情を抱いている節が各所で見受けられたりするあたり羨まし過ぎる男である。
ちなみに若い男性であるという事以外、ほとんどが謎。


195 名前:新章/ボクの歌を聴け! 轟く魂 迷走Mind:2009/10/22(木) 21:05:46


    HY世界征服秘密要塞  秘密病院A棟



 そこは、どこにあるのか、どの時代に在るのかさえもわからない秘密の場所。

 無数の建造物、自然、巨大生物、巨大機械・・・ 
 窓から見える景色には限りはなく、そして一切の常識も存在しない。


トリエラ「・・・・・・・・・」

 なんとなく、窓のカーテンを閉める。

 白く殺風景な病室はそれはそれで気分が良いものではないが、
自分が正気なのかどうかを疑わなくて済む分、まだそっちの方がマシだ。

 騒がしいのは好きじゃない。かといって、眠るのは・・・



?????「僕と君の違いは、ただ守る相手が違っただけさ」



トリエラ「・・・・・・ うっ・・・!」

 胃の中身がこみ上げてくる嫌な感覚。
 しかし既に胃液すら残らず吐きつくした今、喉の奥から出るのは、呻き。


トリエラ「はっ・・・ はっ・・・」

 今は、出来る限り静寂の中にいるのが、一番いい。

 尤も・・・


キャル「よう。相変わらずシケた貌(ツラ)してんな」

 そんな静寂すらも、破壊しに来る奴がいるんだけど。


トリエラ「・・・・・・・・・何の用?」

キャル「病院ってさ、ヒマなんだよ」

トリエラ「どうして動けるの? ・・・怪我は?」

キャル「あん? 見ての通り完治じゃねーけど、歩くぐらいは充分だぜ」

トリエラ「あなた、どういう体してるのよ・・・」

 このジャンパー女は、私との戦いで擬体の拳をさんざん喰らった上、機関砲の斉射を防ぐ
特製防弾ジャンパーを間に挟んだとはいえ、至近距離のショットガンを喰らっていた。

 ほぼ全身の打ち身に加え、肋骨もいくつか砕けている筈である。
 それがたった数日で、松葉杖をついて別の病室にちょっかいをかけに来ている。


キャル「あいにく潜った修羅場の数と鍛え方が違うんでね。
    包帯巻いて肉さえ食っときゃたいがいすぐ治るし?」

トリエラ「・・・・・・ 化け物」

キャル「ハッハハハハ。間違えんなよ。
    あたしらは亡霊(ファントム)だ。化け物じゃ・・・
    ん? 似たようなモンか? ま、いいか」


 そう言ってジャンパー女は、側にあったコップを手に取り、中のジュースを一気に飲んだ。
 ・・・・・・私のなんだけど。




  ◇    ◇




キャル「寝ないのか?」

 キャルは唐突に、トリエラに尋ねた。


トリエラ「え?」


キャル「随分眠そうにしてるわりに起きてるからな」

トリエラ「・・・ほっといて」


キャル「・・・・・・・・・
    殺した奴が夢に出るから、眠れねーってか?」

トリエラ「・・・・・・・!!」

 図星を言い当てられ、トリエラは驚きを隠せない。


キャル「あたしらも通った道だからな。よくわかるぜ。
    ま、今までは条件なんたらのおかげで抑制されてたんだろうが」

トリエラ「・・・・・・・・・」

 無言で、敵意の視線をぶつけるトリエラ。


キャル「説教する気はねーよ。
    数だけならあたしらの方が殺してるし、第一人に薀蓄垂れるほど生きてない」

 ジュースのコップを、一旦置き

キャル「懺悔がしたいってんなら、敬虔なクリスチャンの一人ぐらいはを紹介するぜ。
    ・・・・・・ああ。もっとも、そいつの殺した数はあたしの比じゃねえが」

 皮肉な笑いに、トリエラは一瞬背筋がゾクリとするのを感じた。


キャル「ま、せいぜい今は悩み苦しんで、吐くだけ吐いとけ。
    胃液と一緒に、これまで吐き出せなかったモンも全部・・・ な。
    それでその先にやる事を見つけたら、その時はまた勝負してやってもいいぜ」

 またボコボコにしてやるけどな。
 キャルの歯を見せた悪辣な表情はそう言っていた。


トリエラ「・・・・・・・・・ 言いたいことは、それだけ?」

 だがトリエラ冷淡な返事を返す。
 俯き、ぎゅうとシーツを掴みながら、小さく震える声で。


キャル「・・・まあな」

トリエラ「・・・なら、出て行って」


キャル「はいはい。出て行きますよー。
    患者の方で面会謝絶じゃしょーがねえか」

 それまでのちょっかいは何だったのか。
 キャルはあっさりとトリエラに背を向け、松葉杖でゆっくりと退出を始めた。


トリエラ「・・・・・・・・・」

 遠ざかるキャルの姿を見ることもせず、出来ず。
 ただ松葉杖の床を叩く音が遠ざかるのを聞くだけの、トリエラ。
 

キャル「ああそうそう。
    ドクターがな、もうちょっとしたら歌の生放送があるから、
    退院したかったらTVのIチャンネル見とけってさ」


 そんなトリエラに、
 キャルは一言だけ、ふり返らないまま言い残していった。




  ◇    ◇




キャル「ケッ。つれねーの」

 松葉杖の割にはけっこうな速さで、廊下を進むキャル。


玲二「用は済んだ?」

 そこに、優しい男の声。

キャル「え? れ、玲二?」

 先程の人食い狼のような鋭さはどこへやら。
 玲二に振り向いたキャルの顔は、服と体格に似合わぬ十代前半の少女のそれであった。


玲二「キャルもなんだかんだで優しいね」

キャル「な、何の話だよ。
    あたしはただ、ドクターの伝言ついでに生意気なガキをおちょくりに」

 ムキになって否定するキャルに、ニコニコ笑顔の玲二。


玲二「はいはい。でもキャルもまだ言うほど・・・」

キャル「あーっ! レディに向かってお子様扱いしたなー!?」

 うーっ! と、しっぽを踏まれた犬のようにうなるキャル。
 その仕草の変わらなさに、玲二は微笑がやめられない。


玲二「・・・・・・それで、あの子、どうだった?」

キャル「え? あ〜〜・・・ そうだね。
    元々洗脳に感づいてたらしいせいか、他の子よりはショックが少ないみたいだけど・・・
    それでもかなり重症。・・・色々時間が掛かると思う」
    
玲二「そうか・・・ そうだろうな」

キャル「ま、きっと大丈夫さ。
    あいつ、どこかあたしに似てるし」

玲二「キャルに?」

キャル「ああ。あたしと同じぐらい負けず嫌いだよアイツ。
    タイマンはった時も大したガッツだったしな」

玲二「・・・・・・ ん。キャルがそう言うなら、そうかな」

 顎に手を当て、頷く玲二。


玲二「さて、と。そろそろ時間か」

キャル「あ、そっか。
    あたしらも生放送ってやつ見ないとドクターに叱られるな」

 そう言うと、キャルは松葉杖を左手にまとめて持ち、右手を玲二の肩に絡めた。


玲二「え? きゃ、キャル!?」

キャル「一度くらいいいだろー?
    やってみたかったんだよな。男の肩に支えられて運ばれるっての」

玲二「いや、僕も一応怪我人なんだけど・・・
   ああもう、近いぞキャル! もう大きいんだから甘えない!!」

 玲二は赤面しつつ顔を遠ざけ、キャルを叱るが


キャル「あたし子供だも〜ん」

 と、猫のような甘え声で返してきた。

 
玲二「(・・・なるほどね。次から発言に気をつけよう)」

 そして玲二は、キャルをがっちり支えながら病室に帰ることにした。
 とりあえず、部屋に帰ったらエレンにジト目で見られるのは覚悟して。
 



  ◇    ◇




トリエラ「・・・・・・・・・」

 放送? それが何だと言うんだろう。くだらない。
 そんなもの・・・ 何の意味も・・・

トリエラ「・・・・・・・・・・・・」

 なのに、なぜこの手は、リモコンに伸びているのか。

 ただ、何もない病室の退屈と、真っ暗でドロドロな思考のループから逃れたいからか。
 それとも、欲しいのは他の・・・?

 

196 名前:新章/ボクの歌を聴け! 轟く魂 迷走Mind:2009/10/22(木) 21:06:02

○トリエラ→キャルと話をした後、TVのリモコンに手を伸ばす
○キャル・ディヴェンス→トリエラと話をした後、玲二に甘える
○吾妻玲二→キャルと話して迂闊発言。キャルを抱っこして運ぶことに

【今回の新規登場】
○トリエラ(GUNSLINGER GIRL)
CV:仙台エリ/榎本温子。担当官はヒルシャー。公社が二番目に完成させた義体。褐色肌に金髪。
精神年齢が高く聡明、他の義体の面倒見も良い。真面目でさっぱりした性格だがヒルシャーに
対してだけは素直になれず実は非常に繊細。しかしその素振りを他人に見せず苦悩を抱えている。
イタリア語以外にドイツ語とフランス語も操るなど教養は高く、戦闘力も極めて高い。複数の儀体
で作戦を行う場合は突入役を担う事が多く、銃剣やナイフ類を扱い近接格闘もこなす。 1期生の
中では年齢も高く比較的高身長の為変装して成人女性として任務に就く事も。服装は、プライ
ベートでもネクタイとスーツが多い。その一方で少女のような柔らかい服装も望んではいるが、
ヒルシャーにそういう服をねだる事が気恥ずかしく口に出せない。ヒルシャーから時折贈られる
テディベアを集め、名前を付けている。ヒルシャーのある思いから1期生の中では条件付けが最も
弱い為、他の義体とは違い異論を持ち、全てを客観視するリアリストかつニヒリストである。
公社についても客観的視点を持って認識していた。自分の過去にはあまり執着しておらず、
「ポルノかスナッフにでも出演させられていたのではないか」と他人事のように語るほど。
その素性は自らが語った通り、ユーロポール時代のヒルシャーがラシェルと共にスナッフ
フィルムの撮影現場からヒルシャーに助け出され義体少女となった過酷な経緯を持っている。
トレーズの根回しとドクターHYの医術により、公社から解放され、条件付けのロック
を外されるが、今度はそれまで抑え付けられていた罪悪感と心の痛みに苦しむことになる。


○吾妻玲二(PHANTOM OF INFERNO)
CV:岡野浩介 / 櫻井孝宏 / 入野自由。卒業旅行でやってきたLAで、ファントムによる新聞
記者殺害を目撃した事から秘密結社インフェルノに拉致される。アインによって処刑されかかる
も、生命の危機に優秀な殺人者としての能力を見せ、それに目をつけたサイスマスターの一存で、
暗殺者となるべくアインから数々の訓練を受ける日本人の少年。任務遂行の障害とならぬよう、
本名を始め過去の記憶は一切消されていた。ツヴァイはドイツ語で"2"の意。のちにクロウディア
から返却されたパスポートをきっかけに、ひそかに記憶を取り戻し、対照的に情緒不安定に
なっていくアインにエレンの名を与え、殺人術の師である彼女を支えるパートナーとなる。後に
エレンと共に日本に逃亡し名を変え高校生の兄妹として生活するが、かつて共に生活していた
キャルをはじめとするサイスマスターの刺客達と死闘を繰り広げ、キャルと和解し他の刺客を
打倒。その後、エレンと共にモンゴルへと旅立つ。
しばらくは戦いと関係のない世界に身と心を休めていたが、世話になっていたトレーズへの
恩義と自分なりに守りたい人達の為、エレン、キャルと共に再び血と硝煙の世界に身を投じる。



197 名前:新章/ボクの歌を聴け! 轟く魂 迷走Mind:2009/10/22(木) 21:11:30



       トアールレストラン




P「やあ、どうもどうも。
  今回は我が765プロを起用していただきまして」

 佐久間とパタリロの二人が立つレストランの中心。
 そこに腰低く挨拶しながら姿を表す、765プロデューサー。


佐久間「イエイエ。こちらこそ。
    ご協力いただいて感謝しています」

 それに対し、佐久間もまた
 ライダー同盟のトップという偉大な役職の人間とは思えないほど低姿勢で丁寧な挨拶を返す。


パタリロ「ん? 高木社長と事務は一緒じゃないのか?」

 そしていつも通り、一人高姿勢のまま自然体で問いかけてくるパタリロ。


P「ああ。社長達は昔の友人と話に華を咲かせてまして」

佐久間「ふむ・・・ なるほど」



  ◇    ◇



高木「それにしても久しぶりだね、桃君。
   聞いた話では目覚しい活躍をしていたようだが、元気だったかね?」

桃「はい。お蔭様で!
  今では劇場の中と外でダブルワンダーモモで大忙しです」

 紅茶を置いた円形テーブルを挟み対面する、高木社長と神田桃。


高木「ワンダーモモも今や本物のヒーローか。
   いやはや。やよい君といい、私の周りの子はどうもこういう事に縁があるね。
   何とも数奇な廻り合わせというか・・・ これもまた何かの縁(えにし)なのかな」

桃「え? 私以外にもこういう事になった子がいたんですか?
  って・・・ やよい君って、あの高槻やよいちゃん?」


高木「うむ。なんでも彼女の話では、いきなり幻想界のマクス帝国という所に
   飛ばされて、そこで何故か強い力を得、その力でシングという少年に
   力を貸し、世界の危機を救う助けになったそうだ」

桃「へえ〜〜・・・ あんなカワイイ子が、そんな冒険に出てたんですかぁ。
  5つの世界で暴れ回った私が言うのもなんですけど、びっくりですね」

高木「ハハハ。私としては複雑な気分だがね・・・」

桃「そのうち、765プロの子達全員が私みたいに変身するかもですね♪」

 かわいく首を傾けながら、冗談めいた口調で桃はそう言った。


高木「う〜む・・・ そのジョークは現実になりそうで笑うのが躊躇われるねぇ」

 対し高木社長は、眉に皺を寄せつつ苦笑する。


桃「それで、やよいちゃんはその後どうなんですか?」

高木「どう、というと?」

桃「いやその、私の“銀の力”の場合は無害ですけど、
  中にはそうでもないパワーもありますし、他にも色々ありますから」

高木「ああ、彼女自身は特に問題はないよ。ただ・・・」

桃「ただ?」

高木「時々、幻想界で習得したパワーの制御をうっかりしてしまうことがあってね。
   彼女のハイタッチで我が社唯一のプロデューサーが何度も吹っ飛んで壁画状態に
   なったり遥か遠くに飛んでいったりと・・・ いやはや困ったものだよ、ハッハッハ」

桃「ええええぇぇええ!!?
  だ、だだ、大丈夫なんですか!? そのプロデューサーさん!!」

高木「ああ、彼はあらゆる意味で丈夫だからね。心配要らないよ。
   車に撥ねられても翌日にはピンピンしているしね」

桃「は、はぁ・・・(アーサーさんみたいな人なのかなぁ)
  ところで社長。あの・・・ 音無さんはいらっしゃらないんですか?
  姿が見当たらないみたいですけど」

高木「ああ、彼女なら・・・」
   
 高木社長が右の方を向き、それと同じ方向を桃が追って見る。   

桃「あ・・・・・・(汗」

 すると・・・・・・



  ◇    ◇



ケン「これでいいかい? お嬢さん」

 慣れた手つきでサインペンを色紙の上に走らせると、それを目の前の女性に差し出すケン。
 

小鳥「ありがとうございますー♪
   もう夢みたいですよー。ケン・マスターズさん、フェリシアさん、春麗さん・・・
   超有名なヒーローの皆さんからこーんなにサインを戴けるなんてっ!」

 その女性・・・ 言うまでもなく765プロ事務員の音無小鳥は、喜び奮していた。
 余程嬉しいのだろう、山ほどの色紙を抱えながら、ぴょんぴょん飛び跳ねている。

ケン「なーに。レディーの頼みには一通り応えなきゃ男じゃねえってもんさ。
   ま、そうだな。あと一つぐらいはリクエストにお答えしてもいいぜ」
   
小鳥「本当ですか!? えっと、え〜・・・ それじゃあですね・・・」

 小鳥は耳を拝借とばかりに、ケンにずいと寄り、耳打ちをする。


ケン「ふんふん・・・ え? リュウとオレでツーショットの写真?」

 変わった要望に、さすがに怪訝な顔になるケン。


小鳥「ええ! お願いします!!」

 小鳥は強い想いを込め、拳を握りながら語気強くお願いをする。


ケン「・・・・・・ よくわかんねえけど、まあ、別にいいか。
   じゃ、ちょっと待っててくれ、リュウ呼んでくるから」

小鳥「きゃー♪ ありがとうございますっ!!
   写真は末代まで家宝にしますっっ!!!」




  ◇    ◇



桃「ははは・・・ あ、相変わらずですね・・・ 小鳥さん」

高木「・・・・・・・・・ はは」



198 名前:新章/ボクの歌を聴け! 轟く魂 迷走Mind:2009/10/22(木) 21:11:50

○プロデューサー→佐久間とパタリロに挨拶
○佐久間ケン&パタリロ→765プロデューサーと会う
○神田桃→高木社長と話に華を咲かせる
○高木順一郎→桃と話に華を咲かせる
○音無小鳥→ケンに色々な人のサインと、リュウツーショット写真を頼みハイテンション

【今回の新規登場】
○高木順一郎(THE IDOLM@STERシリーズ)
年齢:55歳。誕生日:7月6日(蟹座)。身長:180cm。体重:76kg。3サイズ:社内秘
血液型:AB型。趣味:クレナフレックス、かげ踏み。イメージカラー:ブラック?。CV:徳丸完。
アイドル事務所「765プロ」の代表取締役。通称「社長」。プロデューサーや小鳥の直属の上司に
相当。最初にプロデュースしたアイドルは「ワンダーモモ」らしい。家族構成に関しては不明。
SPにて黒井社長から「音無小鳥に事務をやらせている」「彼女らのことはあきらめたらどうだ」
と言われているが、小鳥の過去の経歴の繋がりと「彼女ら」についての詳細は不明。
社長が色黒なのは事実らしく「みのさんにも負けない」とのこと。『アイドルマスターSP』予約
特典の着せ替えジャケットには「(雪歩の字が)小さくて読めない」と書かれており、音無小鳥
のメッセージで「年のせいでは」とツッコミを入れられている。

○音無小鳥(THE IDOLM@STERシリーズ)
年齢:2X(にじゅうちょめちょめ)歳。誕生日:9月9日(乙女座)。身長:159cm
体重:もごもご(49kg?)。3サイズ:非公開。血液型:AB型。趣味:妄想、3ちゃんねる巡回
イメージカラー:ひよこ色。CV:滝田樹里。芸能プロダクション・765プロが誇る××
(チョメチョメ)でウフフ?な事務員さん。愛称は小鳥さん、ピヨちゃん、ぴよぴよ。
事務員ながら歌唱力は非常に高く、また高木社長や黒井社長が度々意味深な発言をしている事も
あり「昔アイドルをやっていたのではないか?」との噂が絶えない。ただし人前で歌うのは苦手
なようだ。亜美真美の言動によれば、疲れた身体と心が癒される、それなりの胸囲の持ち主で
あるらしい。ただし彼氏いない暦=年齢。しかも結構うっかり屋。その妄想癖や行動などから
腐女子疑惑をもたれていたが、そっち向けの同人誌をいくつか保有し(同好の士を増やそうと
したのか)そのコレクションを雪歩に紹介したことがあると判明、腐女子疑惑は確定となった。
ランチは765プロ階下のたるき屋(だるい屋)で取っており、従業員の小川さんと仲がいい。


199 名前:新章/ボクの歌を聴け! 轟く魂 迷走Mind:2009/10/22(木) 21:13:31


       (ウィィィィン・・・!!)


 佐久間が指を鳴らすと、それを合図とするかのように。
 レストランフロアの中央の床が開き、いかにもな機械音を幾種類も奏でながら、
飾り気も何かしらの機能性も特に感じられなかったその場所を、みるみるうちに変容させてゆく。


 そして、おおよそ1分とかからずに。
 レストランフロアの中央に、ライブステージが出来上がった。


小牟「おぉ・・・ これは、すごいのう」

 その光景には、今回の催しの内容を聞かされていた小牟でさえ感嘆せざるをえなかった。

  
 360度全ての方向から歌い手を見られるように、ほぼ全て天井に取り付けられた音響機械。
 その全ては独創的なデザインながら、同時に素人目に見ても本格的なもの。

 スペースこそ小規模であるものの、それを目にした誰しもが
 それがかなり力を入れて作られた、立派な【コンサート会場】であると納得できた。



  ◇    ◇



ルーティ「何、あれ・・・?」

 異世界からの客人たちにとっては、その驚きも困惑もより大きい。

スタン「わからないけど、何か始まるみたいだね・・・ あ!」

 スタンが素っ頓狂な声を上げて、指差した、その先には



  ◇    ◇



佐久間「皆サン、たびたび申し訳ありません」

 マイクを手にし、ステージの中央に立つ佐久間ケン。
 礼儀正しく会釈をすると、佐久間は言葉を続けた。


佐久間「予定を大幅に変更してしまいましたが・・・
    かねてより進めていた企画を、ここで行いたいと思います」



  ◇    ◇



スタン「予定・・・?」

ルーティ「何をする気かしら・・・」



  ◇    ◇




佐久間「実は我々は、日々闘い続ける皆サンへの慰安の気持ちを以って・・・
    そして、他の多くの皆サンの心にも想いを届けたいと考え・・・
    物質界を代表するトップアイドルによる、コンサートを計画したわけです」

 マイクを通し、佐久間の言葉がレストランフロアの客達に浸透する。
 困惑と、そして嬉々の声が混ざり合い、ざわざわと波のように寄せては返す。


佐久間「先程話したサードムーン。Dショッカー。他にも様々に存在する敵達。
    無限に近い力、そーして数を持つ彼らに、我々は日々激闘を強いられています。
    対し、悲しいことですが・・・ 世論は今、残念な方向に向かっている」

 ついさっきまで爽やか且つ冗長な笑顔を交えていた佐久間の表情、瞳に、
強く鋭い意志の光が宿る。


佐久間「まだ若きながらも己の意志と矜持に従い、命をとして闘う少年達。
    しかし彼らは、その想いも、闘いも、その存在すらをも否定されようとしている。
    それも、よりにもよって、彼らが今まで守ってきた人達に、です」

パタリロ「(ふむ、SFの事だな)」

 佐久間の言葉に、パタリロはすぐさま少年戦士達の事を頭に浮かべる。


      (ドタドタ、バタバタッ!)


 一足遅れ、騒がしい足音と共に駆けつけやってきたのは、
 様々な撮影危機を手にしたカメラマン達。そして・・・


佐久間「これで物質界の全世界に中継がされますね。あとは・・・
    準備は出来ていますか?」

 佐久間が

ハロルド「当ったり前でしょ? 私達を・・・」

シャントット「どこの誰だと想ったいらっしゃるのかしら?」

 ステージの両端。佐久間にとっての左右の位置から現れる、二人の天才。
 遥か昔の天才博士ハロルドと、もう一人・・・ 連邦の白い悪魔、シャントット。

 幻想界はヴァナ・ディールに生きる、タルタル族と呼ばれる小人の亜人。
 その中で最強の黒魔道士として畏れ、恐れられる存在である。
 

佐久間「では、お願いします」

 佐久間がそう言うと、シャントットは懐から何かを取り出す。
 それは淡く蒼に光る、アメフトボール大の、巨大なクリスタルだった。


アトム「何ですか? それ」

 おそるおそる尋ねるアトムの口調は、【綺礼ですね】という感想を内包していた。


ハロルド「聞きたい〜? ぐっふっふ〜。これはねー、実はね〜」

 いかにも喋りたそうに、ハロルドは唇をにんまりとさせて笑う。


シャントット「これは魔造(魔道で造られた物)のクリスタルですわ。
       それも名付けて共鳴水晶(ハウリング・クリスタル)。
       天才のハロルドさんと、天才の私とで作り上げた、大傑作!
       

ハロルド「むっかぁ〜〜〜!!
     何でアンタが先に言うワケぇ!?
     大体、何で私が「天才」で、アンタが「大天才」なのよー!!」

シャントット「あら、確固たる事実ではなくて?
       大体貴女、私のように天才の更に上を冠するには品性が欠けましてよ」

ハロルド「・・・!? ムッカァ〜〜!
     そう言うアンタこそ、性格捻じ曲がってるにも程があんでしょー!!
     こーの中身も真っ黒黒魔道士!! ついでに年・・・」

シャントット「あら、それ以上言うと私・・・ ブチギレましてよ?」

ハロルド「上〜〜〜等ぉ・・・」

ジューダス(遠)「ハロルド、いい加減にしろ」

 あわや最悪のバトル勃発かと思われたが、すんでの所で制止の声が入る。


佐久間「お二方。水を差してすいません。
    が・・・ 今はクリスタルについてのご説明をお願いできますか?」

 それに続き、割って入った佐久間の独特の温和なオーラが、険悪な空気を嘘の様に破壊した。


ハロルド「ぶ〜〜・・・・・・」
シャントット「・・・仕方ありませんわね。淑女として、任された事は手早く済ましましょう」

 それぞれに不満を見せながらも、両者は息を整えた。


ハロルド「この世界には既に『通信ハロ』って便利な中継アイテムがあるみたいだけどー。
     アレはあくまで通信だから、次元や時代を超えて話をしたり相手を見たりは
     できないのよね。そこでー。そーゆーことが出来るのを作ろうじゃない?
     って話になったってワケ」

シャントット「そこで白羽の矢に立ったのが、ハロルドさんと私というワケですわ。
       私の魔道学。そしてハロルドさんの科学。両方のノウハウを駆使して
       色々チートなモノを混ぜたり注入したりブチギレたりを繰り返して、
       ようやく出来上がった芸術の美の結晶! それがこの共鳴水晶ですわ!!」

ハロルド「原理とか工程とかは今回すっ飛ばしてー。
     早い話が、これと同じ水晶を持ってて、なおかつその水晶同士をコツンと
     ワイングラスみたいに友達同士が軽くぶっつけておくと、次元も時代も無視
     していつでもどこでも彼方でも、自由に水晶に自分を映して会話可能ってワケ!!
     どう!? どう!? イカスっしょ!!」

 早口で語られる共鳴水晶の能力に、レストランの人間達はほぼ呆気に取られ、
或いは純粋に驚き、感心し、感動したり、訝しく思ったりと百人百色。


佐久間「このクリスタルについてはギリギリではありましたが、
    さすがのお二人の尽力によって、今日のコンサートまでに間に合って下さいました」

シャントット「私の知り合いを始め、通信ハロの圏外で頑張っていらっしゃる
       方々には既にこれと同じクリスタルをおすそわけ済みですわ。
       まあそれでほとんど在庫が尽きまして、残りは追加生産を急いでおりますけど」

ハロルド「要するにはー、これで幻想界とか大昔、大未来、異次元にいるお友達にも
     今回のお祭り(コンサート)の中継で元気いっぱいデリバリーサービス作戦!
     ってワケねー♪ こういうの、ヤックデカルチャーって言うんだっけ?」

佐久間「まあ・・・ そうです、ね」

 さすがに苦笑する佐久間。
 控えの方をチラと見ると、スタッフらしき人物からOKのサインを確認した。


佐久間「・・・さて、招待したアイドルさんの準備が完了したみたいです。
    では、そろそろ登場して頂きましょう。
    765プロから・・・ 菊池真さんです!!」


 菊池真。
 その名が佐久間の口から放たれると共に、レストランフロアに割れんばかりの
拍手と、歓声。それに混じり口笛や、中には祝砲のような音まで聞こえてくる。

 それはトップアイドルクラスにまで上り詰めた、真の知名度の確実たる証明であった。


  ◇    ◇



パタリロ「大した人気だな」

 拍手の洪水の中、パタリロはサイダーが入った紙コップを片手に、冷静に話す。

P「まあ、おかげさまで」

 横にいるプロデューサーも、また冷静沈着である。


パタリロ「だが、いくらトップアイドルとはいえなあ。
     一人の少女の歌声だけで世界中の人の心に響かせるのはさすがに足りるか?」

P「・・・・・・ええ。もちろん。
  俺も真も、そこまで傲慢じゃありません。ただ・・・」

パタリロ「ただ?」



  ◇    ◇



 煌びやかで凛々しいアイドルの服に身を包んだ真が控え室から颯爽と現れると、
レストランフロアの拍手喝采は一層凄まじいものになる。


佐久間「そして・・・」

 そんな中、舞台から早々にはけると思われた佐久間が、尚も言葉を続けた。
 ブーイングが起こるのではないかとさえ思われる、その刹那・・・


佐久間「765プロの代表アイドル?達・・・」


  ◇    ◇



P「ただ、Sランクレベルのアイドルがじゅうさ・・・ 12人。
  765プロのアイドル全員なら、どうですかね?」

パタリロ「・・・なに!?」

 パタリロが滅多に見せない驚き顔になったその瞬間
 それと同時に


  ◇    ◇



佐久間「“]Uエンジェルズ”の皆さんです。どうぞ!!」

 舞台から降りながら、佐久間は衝撃の発言をマイクに響かせる。

 発言のあまりの内容に、拍手喝采が嘘の様に消え、しんと静まりかえる数秒。
 それも当たり前の話、トップアイドルは、一箇所に二人揃えるだけでも大変な事。
 それが十二人も一同に揃えるとなると、資金だけでもとんでもないことになる。

 おまけに、今は世界的な混乱の時期。
 更にトアールホテルに英雄達が集められたのは急遽の事であり、前もっての準備など
出来よう筈もなく、年単位で予定が詰まっているとさえ言われるトップアイドルを呼び
集めるなど、元々真一人でさえ奇跡。

 だからこその拍手喝采だったのだ。

 それが、トップアイドルクラス12人全員とくれば、呆然と静まりかえるのも無理はない。


 しかし、それは



亜美「やっほ────う!!!」

 一人目が飛び出し

律子「コラ! いきなり飛び出さないの!!」

 二人目が叱る声と共に現れ


千早「・・・・・・・・・」

 マイペースに沈黙のまま3人目が登場し


春香「こーんにーちはー! 天海春香ですっ!!」

伊織「伊織ちゃんでーす! 皆さん、今日はよろしくー♪」


 4人、5人、6人・・・


あずさ「あらあらー、お客さんがたくさんねー」

雪歩「はうう・・・ 緊張しますぅ・・・」

美希「ミキも緊張気味なの。・・・あふぅ」

 7人、8人。9人。


響「あたしたちもいるさー! みんなー、チューウガナビラ(おはよう)ー!!」

貴音「異世界の戦士の皆様方、お初にお目にかかります。四条貴音と申します」

 そして、961プロからの移籍組の二人。
 10人。11人。


 そして・・・

真「ヒーローの皆さん、こんにちは!!
  菊池真です!! はじめましてー!!!」

 その中央に立つ真が、元気一杯に挨拶をすると



        (ワァァァァアアアアアア・・・・・・────!!!!)



 拍手喝采の洪水は、大爆発へと変わった。



  ◇    ◇



小牟「・・・・・・・・・・・・うおおおおおおお!!!??
   みんなー! ワシじゃー!! 結婚してくr グホゥッー!!?」

 そんな大興奮の中、一際強く興奮する狐の頭に、後ろからチョップが炸裂する。

零児「自重しろ」

小牟「うぅ・・・ サーセン」



  ◇    ◇



真「・・・・・・・・・」

 12人の天使、その中央に立つ真。
 客(ファン)の視線は、直接、或いはモニターを通して、当然中央の真に集まっていた。


真「スー・・・ ハー・・・」

 目を閉じ、深く、深呼吸を一度。
 緊張、興奮、強く波打つ心臓の鼓動すらも、今は心地がいい。

 そして、真の目はゆっくりと開かれる。
 真の沈黙と、開かれた瞳に宿る力強さに、注目は更に集約されていく。

 純粋に真の言葉を心待ちにするファン。
 トップアイドルと言われる少女が、どんなことを話すのかと興味の視線で見る者。
 または、年端もいかない小娘がいかなる演説をするかと、訝しい目線。


真「・・・自分の生き方とか、進むべき道とか」

 そんな中、真の口は開く。


真「そういうことで悩んでいる人って、いっぱいいると思うんだけど」

 心臓の上。自分の胸をきゅっと掴み、真は言葉を続ける。


真「この曲は、そんな人たちにこそ、聴いてもらいたい曲ですっ!」

 真正面を向いて、真ははっきりと言い切る。

 一呼吸を置いて


真「・・・・・・僕はまだ16ですけど、歌の世界でこれまで、色々な事を・・・
  本当に、信じられないほど、たくさんの事を経験してきました。
  楽しい事、悲しい事、辛い事・・・ 出会い、別れ・・・ 信じたものに、裏切られたことも。
  何度も押し潰されそうになった。逃げ出そうとした事もありました」



  ◇    ◇



P「・・・・・・・・・」

 ファン達の沈黙。
 その中でプロデューサーもまた、不動で黙していた。

 ただずっと、一度も視線を逸らすことなく。



  ◇    ◇



真「きっと一人だったら、そこで僕は諦めていたと思います。
  でもそうじゃなかった・・・ 今から歌う歌は、その人と、皆と一緒だったから・・・
  この歌は、たくさんの想いで出来た歌なんです」

 真が無言で周囲に目をやると、そこには


亜美「・・・・・・」

やよい「・・・・・・」

美希「・・・・・・」

 純粋な


伊織「・・・・・・」

貴音「・・・・・・」

 高貴な


律子「・・・・・・」

千早「・・・・・・」

 頼れる


雪歩「・・・・・・」

あずさ「・・・・・・」

 優しい


響「・・・・・・」

 力強い


春香「・・・・・・」

 何よりも心強い、仲間達の笑顔があった。

 そして、前には



  ◇    ◇



P「・・・・・・」

 無言で、親指をグッと立てて自分を見てくれている、プロデューサーの姿。



  ◇    ◇



 この歌の意味。歌詞に込められているもの。
 それがここにある。だから歌(たたか)える。

真「聞いてください・・・」

 ただ、全力で。ただ、笑顔で。
 全ての思い出と、今の想いを、爆発させて。


真「迷走Mind!!!





200 名前:新章/ボクの歌を聴け! 轟く魂 迷走Mind:2009/10/22(木) 21:14:29

○菊池真→これまでのアイドル人生、万感の想いを込め、いざ歌うは迷走Mind。
○他765アイドル達→総登場。みんな想いは一つ。
○プロデューサー→いつでも真を見守っている。
○パタリロ→今回は驚き役。
○佐久間ケン→己の想いを語り、はける。
○小牟→興奮しすぎ。
○有栖零児→いつもどおりツッコミ。
○スタン&ルーティ→異世界の人視点担当。
○ハロルド・ベルセリオス&シャントット→共鳴水晶を開発。ケンカ仲。

【今回の新規登場】
○シャントット(ファイナルファンタジー]T/ディシディア ファイナルファンタジー)
CV:林原めぐみ。種族=タルタル。異名:淑女、連邦の黒い悪魔(冒険者内の呼び名)。
ウィンダスの三博士の1人。水晶大戦の英雄。ウィンダス連邦の実質的なNo.2であり、圧倒的
魔力の持ち主。他国との会議の場で、さらりと他国の情勢を罵倒する毒舌家。現在は「引退中」
で、ウィンダス石の区の博士公邸にて結婚し忘れた事を心残りとしながらも悠々自適に暮らす。
元老院首席で、ジュノ大公国オーロラ宮殿での各国軍首脳会談に赴く事も。尚、彼女の有名な
発言に「あら! わたくし、ブチ切れますわよ」があり、実際にブチ切れ場面に遭遇した者は
恐ろしい光景を目る事に。「オホホホホ〜」と本性を隠した笑い方に上品な口調だが、その言葉
の内容は超毒舌で、四大強国が集う重要会議でも、さらりと相手や国の情勢を罵倒する。その
人格も最狂・・・ いや、常人の尺度を当て嵌める事は到底適わぬ傲岸不遜傍若無人な性格の持ち主。
仇為す輩に強力な呪いを掛けたり、「北の大地で置き去り」刑等の粛正が待っている。触らぬ
淑女に祟りなし、下手に関わると「ヘッポコくん」の烙印を押される。両親とも優秀な黒魔道士
を輩出した由緒正しい家系で、強大な魔力とコネでいきなり院長に抜擢。しかし前院長暗殺未遂、
迷宮の書物事件等、数多く事件を起こし一度は国外追放の経歴持ち。クリスタル戦争で呼び戻され
自ら義勇兵を率い獅子奮迅の活躍。ウィンダス英雄の一人となる。
「狙った獲物は地の果てまで追いかけ、邪魔をする者には容赦しない」と恐れられる罪狩りの
ミスラでさえ、彼女には手を出さず引き下がる。勿論、伊達に博士号に叙されている訳ではなく、
呪いや新魔法開発等も行っており、ただ魔力が高く魔法の熟練者というだけでなく、多くの冒険者
も一部その恩恵に与る事ができるが、「お使い」と称して課せられる役務の道のりは遠く、
冷たく、そしてとてもツライ…。『ディシディア ファイナルファンタジー』ではコスモス側の
戦士として召喚され、FF歴代主人公やボスキャラ達との競演を果たした。

○高槻やよい(THE IDOLM@STERシリーズ)
13歳。誕生日:3月25日。牡羊座。身長:145cm。体重:37kg。3サイズ:72-54-77。O型。
趣味:オセロ。イメージカラー:オレンジ。CV:仁後真耶子。5人兄弟姉妹(妹1人・弟3人)の
長女で弟妹の面倒見はとても良いが、「自分も甘える事のできる兄の様な人が欲しい」と心の
どこかで願っている。また父親の仕事が安定しない上に大家族な為、貧乏である。そのため節約や
バーゲンセール等の情報に詳しい。 妹の名前はかすみ、弟の名前は長介・こうたろう(漢字表記
不明)・浩司(→高槻浩司)。「ハイ、ターッチ!」やお辞儀の際に両手を後ろに跳ね上げる仕草
(通称:ガルウイング)、「うっうー」という口癖が特徴的である。驚いた時の声は「はわっ」、
意見を述べる時には「?かなーって」という言い回しが度々使われる。私服はトレーナーで、
ずいぶん長いこと着古しているため襟首の部分などがかなりくたびれている。身につけている
カエルのポシェットは「べろちょろ」という名前がついており、10年間使い込まれてボロボロに
なっていたが、それを見かねた春香が母親の協力で作ったものである。難しい漢字(健気、豆苗)
が読めない、横文字に弱い(アンモナイトバディ、スパルタン教育、トリガラハイタッチ)等、
学力は今ひとつらしい。実は極度の高所恐怖症。小柄なだけにバストサイズはアイドル中最小
(タイ)の72センチだが横向きのポーズをとるとふくらみかけ具合が絶妙な美乳であることが
わかる。趣味はオセロだが好きなだけで別段強いわけではない。ゲームアプリでは、リバーシが
あるにも関わらず対戦役の座を千早に奪われてしまっている。

○天海春香(THE IDOLM@STERシリーズ)
16歳。誕生日:4月3日。牡羊座。身長:158cm。体重:45kgくらい。3サイズ:83-56-80。0型。
趣味:カラオケ、お菓子作り。イメージカラー:赤。CV:中村繪里子。愛称は「はるるん」
「はるかっか」など。単純に「春香」または(敬愛を込めて)「春香さん」と呼ばれる事が多い。
明るく前向きな性格で、トップアイドルを目指しひたむきに頑張る努力家だが、その行動は若干
天然。おっちょこちょいで、何もないところでよく転ぶ(何かある所では何故か転ばない)。
今風の美少女キャラというよりは、一昔前の「ドジっ娘」。公式キャッチは「かわいくって、
やさしくって、そしてちょっぴりドジな正統派アイドル!」特徴は頭のリボンと少し跳ねた後髪。
基本的に「どこにでもいる普通の女の子」。都心からやや離れた街に両親と住んでおり、765プロ
へは始発電車で2時間通勤。他の家族は田舎の祖母のみ。服装や言動含めあまり都会的ではなく、
休日Pとの食事の約束をした時はファミレスかどこかに行くと思って普段着のまま高級レストラン
に行ってしまった(が、食欲は普段と変わらず旺盛だった)。趣味のお菓子作りは実益も兼ねて
おり、ケーキ等には全般的に目が無い。子供の頃はパティシエに憧れており、腕前は中々。
クッキーの生地をひっくり返すなど、ドジで失敗することはある様だ。運動は基本的に苦手。
何故か犬かきだけは得意(しかも結構速い)。子供の頃から歌が好きで、近所の公園でよく歌って
いたお姉さんとギャラリーの前で歌い、褒められた経験がアイドル志望の原点。千早ほど歌その
ものへの情熱があるわけではないが、「大好きな歌を歌いたい」という想いはシンプルかつ純粋。
Pの事が大好きで、11人の中で最も積極的にPのアプローチを(不器用ながらも)試みる子。
特に口癖はないが、作中での名台詞「プロデューサーさん!ドームですよ、ドーム!」から
「〜ですよ、〜!」という言い回しが多用されるようだ。

○三浦あずさ(THE IDOLM@STERシリーズ)
20歳。誕生日:7月19日。蟹座。身長:168cm。体重:48kg。3サイズ:91-59-86。O型。
趣味:犬の散歩。イメージカラー:紫。CV:たかはし智秋。おっとりとした性格のマイペースな
女性。壊滅的な方向音痴で、ただの散歩で常識的にありえない所へ行ってしまうほどである。
頼りない部分もあるが、包容力を感じさせる。「運命の人に会う」という目的から、短大卒業後に
アイドルデビューという変わった経歴を持つ。恋愛への憧れは強いが、実際にアプローチすると
なると少々照れ屋。友美という親友がいて、互いに抜け駆けしないと言う約束をしていたが、
結果的に先を越されてしまった。そのグラマーな体型で電車で痴漢に狙われることも。設定上では
ビジュアル型のパラメーターになっているが、中の人があまりに歌唱力があるせいで、どう考えて
もボーカル型としか思えないほど綺麗な歌声を披露している。「あらあら」や「うふふ〜」が
口癖。慈愛や温和の象徴とも言えるほどの包容力と優しさの人であり、滅多に怒ることはない。
SPにおいても、同じムーン組の律子や千早が美希の身勝手に怒ったり叱ったり衝突したり
する中、あずさだけは美希を怒らず純粋に身を案じたりしているほど。

○双海亜美(THE IDOLM@STERシリーズ)
12歳。誕生日:5月22日。双子座。身長:149cm。体重:39kg。3サイズ:74-53-77。B型。
趣味:遊ぶこと、食べること、イタズラ、モノマネ。イメージカラー:黄色。CV:下田麻美。
765プロ最年少、小学6年生の双子の姉妹の妹(アーケードでは逆)。2人で1人のアイドル「双海
亜美」を入れ替わり演じている。髪留めが向かって左についているのが亜美、右が真美。真美の
方がほんの少しだけ胸が大きい? とは彼女らのプロデューサー「兄(c)」の言である。
性格面でも非常に似ている双子だが、ドラマCDやアイドラなどでその違いを知ることが出来る。
亜美の方がより自由闊達で奔放。二人揃った時のパワー(ファン曰くとかちパワー)は破壊力
満載で、二人のパワフルさ、個性の強さが作り出す独特の世界は他者の太刀打ちを許さず、
気付けば誰もがペースを乱され、二人のとかち世界に引き込まれてしまうという恐ろしい
天然能力(?)があり、SPでは貴音も黒井社長もその餌食となった。純粋な子の多さに定評の
ある765プロアイドルの中でも、最年少ということもあってか、最も純粋無垢で、大人の
世界の汚さや駆け引き、計算といったものとはまるで無縁である。

○萩原雪歩(THE IDOLM@STERシリーズ)
16歳。誕生日:12月24日。山羊座。身長:154cm。体重:40kg。3サイズ:80-55-81。A型。
趣味:MY詩集を書くこと、日本茶。イメージカラー:白、薄い青。CV:落合祐里香。非常に
ネガティブで、心配症で、後ろ向きな性格。それを変える為にトップアイドルを目指している。
しかし何事にも臆病ですぐ泣いてしまう。さらに激しく落ち込むと「穴を掘って埋まってますぅ」
の台詞とともに、本当に地面に穴を掘って埋まる癖がある。「Live For You!」の「アイドラ:
オフスケッチ」では、失意のあまり穴を掘っていたらとんでもないモノを掘り当てたことも。
男性と犬が苦手。小型犬でさえ通り道にいると怖くて前へ進めない。また初対面の男性と会話する
際は、大股で3歩ほどの距離を必要とするほど。しかし意外にも根性があり、コミュには「気合」
の単語をよく耳にするうえ、ドタキャン発生率が最も少ないキャラである。口が堅いことから、
友達から「石地蔵のお雪」と呼ばれているらしい。父親は厳しく怖い。家には大勢の「弟子」達が
いるようで、親方と呼ばれる職業か、裏稼業に従事すると推測されるが、確証はない。コミュが
屋外であった場合、なぜか背景の中にUFOが写っていることが多く、休日ブーストイベントでは
「今話題のUFOアイドル」として雑誌に取上げられた。

○水瀬伊織(THE IDOLM@STERシリーズ)
14歳。誕生日:5月5日。牡牛座。身長:150cm。体重:39kg。3サイズ:77-54-79。AB型。
趣味:海外旅行・ショッピング・プロデューサーいびり。イメージカラー:ピンク。CV:釘宮理恵。
金持ちの家のお嬢様であり、親のコネで765プロダクションに入る。対外的には可愛らしく振る
舞っているが演技であり、プロデューサー(プレイヤー)や他のアイドルの前ではわがままで高飛車
な本性をあらわにするツンデレキャラである。常にその性格で心の中と正反対の行動をするため
逆にアイドル中一番分かりやすい子と評判でもある。プライドが高く負けず嫌い。前髪を上げた
おでこが特徴的。ゲーム中では初期パラメータ(特にビジュアル)が高い。とある理由からうさ
ちゃんといううさぎの人形を常に抱いておりアイドル活動時以外は手放さない。亜美・真美に
つけられた愛称は「いおりん」。また、美希等からも「でこちゃん」という愛称で呼ばれている。
癖は育ちの良さとは裏腹な「にひひっ」。オレンジジュースが好物で、逆にローストビーフは
苦手らしい。プロデューサーへの想いもツンデレすぎて逆にストレートである。

○如月千早(THE IDOLM@STERシリーズ)
15歳。誕生日:2月25日。魚座。身長:162cm。体重:41kg。3サイズ:72-55-78。A型。
趣味:音楽鑑賞(クラシック)。イメージカラー:青、水色。CV:今井麻美。歌唱力は飛びぬけて
高いが、テンション管理があまりにも厳しく(ダウンする要素が多い)、非常に扱いにくいキャラ
でもある。性格は真面目で冷静だが、こと歌に関しては異常なまでの執着を見せることがある。
その真面目すぎる性格が災いして、周囲と壁を作ってしまっている。プロデューサーへの態度も
最初は良くはなく、学校でも合唱部で孤立状態にあるらしい。「アイドル」という扱いにも不満を
持っており、むしろ「ボーカリスト」として扱われることを望んでいる。数年前に起こった事故で
弟を失ったことが今も彼女の心に影を落としている。この事故がきっかけで両親も離婚寸前状態、
後半では完全に離婚する。始めはプロデューサーから褒められても喜ばない(むしろ厳しく接する
事を求める)が、次第に心を開き、本来の素直な千早らしさを見せ始める・・・ そんな不器用で
ツンデレな所も千早の魅力の一つ。口癖は、事が上手く運ばないときに発する「…くっ!」。
歳不相応に胸が小さく、そのことを気にしている節が見られる。事務所移転時の会話で、新しい
事務所の爽やかな雰囲気をぶち壊すように「まあ、なんでも、いいですけれど。」と言ってしまう
癖(?)がある。しかし、本人に悪意はない。SPでは歌よりも恋愛を大事とする美希とは序盤
水と油のように激しく反発し合うも、次第に美希の心情にも理解を示しながら純粋にライバルと
して闘おうとする度量をみせる。プロデューサーが好きなのかどうかは自分でも分からない。

○秋月律子(THE IDOLM@STERシリーズ)
18歳。誕生日:6月23日。蟹座。身長:156cm。体重:43kg。3サイズ:85-57-85。A型。
趣味:資格取得/分析。イメージカラー:グリーン。CV:若林直美。元々はプロデューサー志望
で、765プロにおしかけバイトで事務をしていたが人手不足の為アイドルデビュー。知略と情報力
を武器にプロデューサーと共に二人三脚でトップアイドルを目指す。アイドルと事務員と学生
(高三)の三足の草鞋をこなし、将来設計も怠らない「才女」。父親は商店経営で、一代で地域有数
の大きさまで育て上げた。その背中を見て育った為、律子も実業家を目指し努力中(765プロに
入ったのもその一環)。従妹に861プロの秋月涼がいる。見た目のイメージは眼鏡と三つ編み。
ローソンぽい青い縦縞のブラウスと膝丈スカートの私服。春香・伊織同様、保守的な地味目の
趣味。スタイルは美希すらもうろたえる隠れグラマー。しかし本人は自分を寸胴と卑下、千早を
「スタイルがいい」と発言する等いまいち自信がない。表面上は気が強くしっかりした子だが、
反面アイドルとしての自分に自信を持てない芯の弱い部分も。秋月電子を応援してたり、調子の
おかしなノートPCをその場で直したりPC関係には造詣が深く、小鳥も律子の知識・技能を頼りに
している。自作の妙な発明品を持ち出したり、自作CD販売数予測プログラムが本人さえ気付かない
性能を有してたりする。ゲームについても詳しく、所謂ヲタク趣味。ディープな趣味だけではなく
少女小説が好きなど恋に夢見るお年頃のよう。泳ぐのは苦手。最後の最後まで脆い自分を見せよう
としない非常にツンの割合の大きなツンデレで、誤解されやすい。ローソン名誉店長として公式に
採用された。

○星井美希(THE IDOLM@STERシリーズ)
14歳。誕生日:11月23日。射手座。身長:159cm。体重:44kg。3サイズ:84-55-82。B型。
趣味:バードウォッチング、友達とおしゃべり。イメージカラー:ライトグリーン(フレッシュ
グリーン)。CV:長谷川明子。口癖は「あふぅ」「〜なの」。好きな食べ物はおにぎり、いちご
ババロア、キャラメルマキアート。家族構成は公務員の両親としっかり者の姉(星井菜緒)の4人
家族。両親に甘やかされて育った。14歳とは思えないほどにスタイル良好で、84cm・Fカップの
巨乳の持ち主。スポーツ万能で他にも多彩な才能を持ち、正に天才肌。『スタイル抜群で才能
豊か、何でも器用にこなせるスーパーアイドル』幼稚園の頃から人気者で、現在では「1日」で31人
に告白されるほど。世間知らずでマイペースな性格だが、トップアイドルに近付くにつれ悩み
ながらも大きく成長していく。また、ある条件を満たすとシナリオが分岐するという他のアイドル
にない大きな特徴があり、ある事件をきっかけに、通常のルートとは別の形でアイドルとしての
自覚を強く持ち、真剣にトップアイドルを目指すようになる。同時にプロデューサーとの関係も
変化し、ランクが上がるとプロデューサーの事を「ハニー」と呼ぶようになる。美希といえば
「ハニー」の印象が強いが、最初からそういう関係では決してなく、相応の過程を経た結果と
いう事。またこのルートではある質問が追加され、返答によっては以降の髪型が茶髪のショート
ヘアに変化。野比のび太に負けないと自負するほど、如何なる状況でも即座に入眠することが
出来る眠り姫。千早とは親友で、彼女を尊敬し、同僚アイドルでは只一人、「千早さん」とさん
付けを自発的に使う。お互いに姉妹のような感情も抱いているが、SPではライバルとして対峙
したり、何かと忙しい。同じ14歳の伊織に対してだけ、何故か「おでこちゃん」とド直球な渾名で
呼びかけ、律子に対しては「律子…さん」と呼び捨てをしそうになる所を無理矢理「さん付け」
させられていて、気を抜くとさん付けを忘れる。

○四条貴音(THE IDOLM@STERシリーズ)
17歳。誕生日:1月21日。水瓶座。身長:169cm。体重:49kg。3サイズ:90-62-92。B型。
趣味:天体観測、舞台鑑賞、一人になる事、月を見る事。イメージカラー:臙脂色。CV:原由実。
「961プロダクション」所属。美しい容姿と、穏やかながらも威圧感のある物腰で「銀色の王女」
と称えられる新人アイドル。「貴方様…」「何奴!」「面妖な!」等の時代がかった古風な物言い
も特徴。目上の人物を呼ぶ時には「〜殿」、目下の者には必ずフルネームで呼びかける。
その歌声には強さがあり、妖艶な華がある。アダルティーな曲から、可愛さ全開の曲まで歌い
分ける。王女様でである共にお姫様でもある(亜美真美からは「お姫ちん」と呼ばれている)。
「スタ→トスタ→」を歌う時「貴方様?」と言い、ファンが悩殺されると評判。本人談ではどこか
しら亡国の姫らしく、ラストでいずれロケットで国に行くと発言し、よく月を見る事から、
【月の姫】説が濃い。伊織、雪歩、亜美真美と戦う。伊織とは互いのプライドをぶつけ合う
姫対決を繰り広げ、雪歩には小心な性格を叱り、亜美真美にはペースを乱される。アイドル
アルティメイト決戦で敗北し黒井からクビを言い渡され、プロデューサーと再会を誓い涙の
離別後、その翌日に765プロの新人アイドルとしてデビューというズッコケをかます。
響と比べ、明らかにプロデューサーへの恋愛感情の気がある。

○我那覇響(THE IDOLM@STERシリーズ)
15歳。誕生日:10月10日。天秤座。身長:152cm。体重:41kg。3サイズ:86-58-83。A型。
趣味:編み物、卓球。イメージカラー:浅葱(あさぎ)色。CV:沼倉愛美。
「961プロダクション」所属。黒井社長から、765プロのプロデューサーは立場を利用して担当
アイドルにセクハラをするヘンタイだと信じ込まされていた。沖縄から単身上京。能天気で
よくしゃべる。ネコっぽい性格。動物好きで判明している範囲内では、ハムスターのハム蔵と、
蛇のへび香、シマリスのシマ男、オウムのオウ助と、うさぎのうさ江、ねこのねこ吉、ワニの
ワニ子、豚のブタ太、犬のいぬ美、モモンガのモモ次郎、沖縄の実家ではニワトリのコケ麿
(表記不明)を飼っている。ペットの餌をつまみ食いすることがあり、怒ったペットによく逃げら
れている。家事全般が得意。冷蔵庫にある在り合わせの材料で、チャンプルーやタシヤー等の
沖縄家庭料理を中心とした自炊をしている。小学校時代は卓球部部長。熱がりなので直射日光に
晒されないインドアスポーツを好む。国語力が高槻やよい並に低い。一人称は「自分」。語尾は
「だぞ」。「はいさい!」と沖縄弁(琉球語・うちなーぐち)で挨拶をする。響のトレードマーク
も「なんくるないさー!」「てーげー」(適当)文化を誇る些細な事には動じたり囚われたり
しない沖縄文化を支える大らかな精神性を表す台詞である。なお、沖縄の実家には765プロ
プロデューサーによく似た兄がいるとのこと(兄は母親似で、響自身は父親似らしい)。


201 名前:新章/ボクの歌を聴け! 轟く魂 迷走Mind:2009/10/22(木) 21:16:40




         レストランフロア  控え室   



ポックル「ん・・・ ううん・・・」

 後頭部に感じる柔らかな感触と、ほのかに通う薬品臭と、優しい香り。


ポンズ「目が覚めた?」

 うっすら目を開けると、そこには女神の微笑があった。


ポックル「あ、ああ・・・ ・・・・・・・? ・・・・・・!!」

 状況を確認するまでに数秒かかり、更にそこから心を大至急落ち着けるまで、数秒。
 
 仰向けに寝た状況で、こうして横向きの、覗き込むポンズの顔が真正面に見える状況。
 そして先刻から感じられる柔らかな感触と・・・

 間違いなく、膝枕である。


ポックル「あ、えと、その・・・」

 慌てて起き上がろうとするポックル。

ポンズ「いいから」

 それをポンズは、そっと額に手を置いて制した。


ポンズ「いつもチームのリーダーとして頑張って、疲れてるでしょ。
    たまにはこうして、ゆっくり休んでもいいと思うよ」

 そう言って、頭上の天使はにっこりと微笑んで、頭を撫でてくれた。


ポックル「ポンズ・・・」

 二人きりの部屋の中に発生する、甘くほのかな空気。


        (ワァァァアアアア・・・・・・)



 そんな二人きりの空間は、どこかから聞こえる歓声によって掻き消えた。


ポックル「っ・・・!? 何だ?」

ポンズ「ああ・・・ うん。コンサート、やるみたいだよ。ホラ」
 
 ポンズが指差す方向、その先には小型のTVモニターが設置されていた。


ポックル「へぇ、コンサート・・・」

ポンズ「この世界の最高のアイドルなんだって。けっこう楽しみかも」

 そして真達の歌は、TVを通し、流れ始めた。



  ◇    ◇



 響く歌声。







               あとどれくらい進めばいいの?

                  >もう 壊れそう





 異世界から来た者達。そして物質界に生きる者の中にすらも、真を知らない者はいた。
 知っていた上でも、たかが16そこらの小娘達の歌など・・・ そう考えるものもいた。 

 そう、歌声が始まる、その瞬間まで。



  ◇    ◇



パタリロ「(これは・・・)」

 
 歌が奮わせる何かというのは、確実に存在する。
 オーラや念、波動といったものとは明らかに違う、だが、それと同等に・・・



  ◇    ◇




シャントット「ホホホ、さあ・・・ 遠い世界で頑張っている“秩序(コスモス)”の戦士の皆さん。
       よ〜くお聞きなさいな」

 共鳴水晶を天高く掲げるシャントット。 
 途端に水晶はワインレッドに淡く輝き、“歌”への共鳴を開始する・・・



  ◇    ◇




     トアールホテル近隣   浜辺



Dカメレオロイド「ヒュヒュヒュ・・・ 鏡の13ライダーとやらも大した事ありませんナァ」

 醜く顔を引きつらせて笑う、カメレオンと人の合わさった姿の怪物。

 元はBADANの怪人、そして今はDショッカーの技術によって更なる強靭な肉体と力を得、
その名をDカメレオロイドへと変えた、新たなDの刺客の一人である。


ライア「・・・・・・ くっ」

 下婢(げひ)た笑いを響かせるDカメレオロイドとは違い、ライアは地に膝を屈していた。
 所々が削れたライアのスーツと、僅かに燻る煙が、戦いの劣勢を物語る。


Dカメレオロイド「よくもまあアタシの完璧な潜入に気付いたモンだ。
         しかしまあ相手が悪かったようですなぁ。Dの技術で生まれ変わった
         アタシに、所詮そこらの人間が作ったライダーの力なんぞ敵うわけがないですな」

ライア「・・・・・・・・・」

Dカメレオロイド「ま、アンタを始末させてもらった後は、アンタに化けて要人を手当たり次第・・・
         始末して差し上げましょう」

 Dカメレオロイドが、再び笑い始めた時




              この道を選んでひたすら突っ走ったよ

                  >でも 苦しいの





Dカメレオロイド「んん?」

ライア「歌が、始まったか・・・」

 顔を歪めるDカメレオロイドに対し、ライアは聞こえてくる歌に大きく反応した。
 

ライア「なら、俺も・・・ こんな奴にこれ以上、時間をかけるべきじゃないな」

 ゆっくりと立ち上がり、ライアは再び怪人と対峙する。

 その姿には、先程までの弱りようは微塵にも感じられない。
 勇猛にて精悍。正に、一人のライダーの姿である。


Dカメレオロイド「何ですと? この新しい力を得たあたしを、雑魚・・・?」

ライア「ああ」

Dカメレオロイド「フン、無駄な虚勢はおやめなさいなぁ」

ライア「どう思おうと、お前の勝手だ。
    ・・・出来る事なら、お前程度にはこれを使わないで勝ちたかったがな」

 心底残念そうにそう言って、ライアが取り出したもの、それは・・・



          (SURVIVE)




  ◇    ◇



      GEAR本部前  海上




                Tenderness 差しのべて

                 温もりに触れたい



 大型街頭TVから流れる、真の歌。
 それが響く先は


銀河「北斗! この歌・・・」

北斗「うん・・・ 何か、すごく力が沸いて来るね・・・!
   まるで、バサラさんみたいな」

 GEARの巨人、電童に乗り闘う、二人の幼き戦士達。
 彼らは今、無数の空からの来訪者・・・ エアロゲイターと闘っていた。


北斗「すごく暖かい・・・ 疲れも悩みも、全部包んで消してくれるよ!」

銀河「ああ。こりゃ、クヨクヨしてる場合じゃねえな!!
   ・・・・・・いくぞ!! 北斗!!」

北斗「うん!!」

 ついさっきまで、二人は多勢の前に苦戦を余儀なくされていた。
 しかし今、その瞳に迷いはない。



  ◇    ◇



      GEAR本部内   モニタールーム



渋谷「先程までの影が、全部きれいに吹き飛んだようですな」

ベガ「・・・ええ。これなら・・・ 大丈夫だわ」

 安堵の溜息をつくベガ。

 SFへの非難の声は、今海の上で闘う幼き戦士達の戦う意志を、ついほんの少し前まで蝕んでいた。
 それは幼き戦士達の闘う気概すらも萎縮させ、その力を低下させ、苦戦させていた。

 だが、今戦士達の心に届いているのは、悩みながらも強い心で前へ進む、少年少女の想いの歌。
 太陽よりも強く輝く歌という名の想いの宝石を前に、醜き心から吹き付けられた靄など、塵芥にも等しい。



  ◇    ◇



北斗「こいつでっ・・・!」

銀河「どうだぁっ!!」

 北斗と銀河、二人の想いが再び一つとなり


北斗&銀河「「フェニックス・エール!!」」

 勇気の炎が、最強の力となって燃え上がる。


北斗&銀河「「ファイナル・アタックッッ!!!」」

 

  ◇    ◇



             幻想界

          霧深きどこかの廃墟跡




バルバトス「屑どもが・・・ 塵に還れぇぇいい!」

サレ「さあ、ボクに最高の悲鳴を聞かせておくれよ」

 バルバトスの大斧が大地を砕き、サレの嵐のフォルスがその破片を旋回する砲弾と化す。


フリオニール「くっ!」

ティーダ「うわわっ!」

 災害ともいえる凶悪な攻撃を、相対する二人、フリオニールとティーダはなんとか建造物の
隙間に飛び込んで回避した。


ティーダ「ったく〜、あのオッサン強すぎだっつの!!」

フリオニール「遠距離になるとあのキザ男の暴風が厄介だし、かといって接近戦をやろうとすると
       バケモノ筋肉男に吹き飛ばされるし・・・ どうしたもんかな」




                  けどね解ったよ

               貴方の優しい声がする方 向かって




フリオニール「?」

ティーダ「?」

 懐から聞こえてくる歌声に、驚き顔を見合わせる二人。


フリオニール「これは・・・ 共鳴水晶から・・・?」

 そう言って取り出すと、新たな驚きがそこにあった。
 フリオニールの手の中の水晶は、僅かに震えながら、淡く光輝いている。

 そして

ティーダ「女の子が歌ってる・・・」

 自分の水晶を取り出し、覗き込んでいたティーダもまた驚いていた。
 水晶の中には、別の世界で踊り歌っている筈の、真達の姿が映されている。 


ティーダ「いい曲っスねー。・・・なんか、ノリノリになってくるっスよ」

フリオニール「シャントットが水晶(コレ)を渡した理由はこういう事だったのか・・・
       確かにこれは、力が沸いてくるな。よし・・・」

ティーダ「俺らもノリノリで行くッスか!!」

フリオニール「ああ。そうでなくちゃな」

 握り拳をコツンとぶつけ合い、二人は勢いよく廃墟の隙間から飛び出す。


サレ「おや、隠れんぼは終わりかい?」

バルバトス「フンッ! ならば叩き潰してやろう!!」

 微笑を浮かべるサレに、戦斧を大きく振り回すバルバトス。


ティーダ「(うっひゃー、おっかねー・・・)」

フリオニール「(けど、ま・・・ やるしかないな)」

 目配せで会話する二人。
 そして、次の瞬間には


ティーダ「よーい・・・」

フリオニール「ドン!」

 二人は突然に、正面の敵へと駆け出した。



  ◇    ◇



         再び、トアールレストラン



佐久間「歌が伝えるもの、与えるもの・・・
    勇気。友愛。慈愛。歓喜。そして・・・」

P「未来(きぼう)・・・。
  ハハハ、口に出して言うとクサいですねえ」

 そう、それこそが、歌が伝え、与える命の力。
 それを知り得、胸に抱き、前に進める者こそが、真の意味で最強なのだ。


パタリロ「戦士の心を挫かせるのも人なら、それを奮い立たせるのも人間。
     だから同じ年代で、尚且つ迷いから希望を見出す歌を歌うアイドルの力を借りたい・・・
     元々そういう話だったな。お前が持ちかけてきたのは」

佐久間「ええ。嬉しいことに、思った以上に効果が生まれてくれたようです」

 にこやかな笑顔でそう語る佐久間。
 片手で見ている携帯端末には次々と何かしらの報告らしき文字が表示されており、
彼の考えた「計画」が如実に成果を結んでいる事を示していた。
 

タマネギ1号「(爽やかなようで策士だなあ)」

タマネギ44号「(ある意味では殿下以上に恐ろしい人ですねー)」

 パタリロの後ろのタマネギたちが、ヒソヒソとそんな話をしていた。


202 名前:新章/ボクの歌を聴け! 轟く魂 迷走Mind:2009/10/22(木) 21:17:09

○ポックル&ポンズ→控え室でいい雰囲気になりながらコンサート視聴
○パタリロ・ド・マリネール13世→歌とアイドルの評価を改める
○仮面ライダーライア→サバイブカードを使用
●Dカメレオロイド→ライアにダメージは与えているが、既に噛ませ犬臭漂う
○出雲銀河&草薙北斗→意気消沈気味状態から回復。一気にエアロゲイターを蹴散らす
○渋谷長官&ベガ→銀河と北斗の士気復活にほっと安堵
○フリオニール&ティーダ→二人のコンビで頑張り中。いざ反撃へ
●バルバトス・ゲーティア&サレ→幻想界で悪タッグ中
○シャントット→共鳴水晶で各異世界の仲間にコンサート中継を伝える
○佐久間ケン→今回の催しがよく練られたSFの士気低下改善策だと暗に明かす

【今回の新規登場】
●ラ・モール / カメレオロイドDカメレオロイド(仮面ライダーZX/仮面ライダーSPIRITS)
ZXを追う刺客として差し向けられたヒッピー風の男。カメレオンがモデルで、どんな場所にも溶け
込んで見えなくなることが可能。伸縮自在の舌は数十メートルまで伸び、硬度も自在に操ることで
手下のコマンドロイドごと村雨の腹を貫ける程。ZXと接触していた金富老人を「徳のある笑顔が嫌い」
だから、その舌で惨殺した卑劣漢でもあり、皮肉にもそのことが村雨に怒りの感情を取り戻させること
となった。不完全ながら再生能力を持っており、一旦はZXパンチに敗れるも一応の復活を果たす。
まだ再生しきっていない身体で暴走してルミを捕まえるが、十字手裏剣と衝撃集中爆弾で木っ端微塵に
吹き飛ばされ、遂に絶命した。Dの技術で強力になって蘇る。

○草薙北斗(GEAR戦士電童)
CV:進藤尚美。主人公の一人。星見小学校5年1組在籍。7月7日生まれ。血液型はA(RH+)型。思慮深い
知性派で勉強も得意。好きな学科は算数。特筆すべき特技は他人の動作を自分の身体で再現できる能力
の高さで、初めて電童を操縦した際に練習もなく銀河の技を成功させた。コンピュータとサッカーなど
も得意。洗濯物を畳むのがプロ並みだが、料理は手伝わないらしく料理道具の名は無知。足の多い蟲が
苦手。乗り物やロボットなどのメカが大好きで、部屋のポスターはスペースシャトルとフォーミュラ
カー。メカ好きが高じてロボットアニメは観ていたらしく、プラモデルを作ったり「ニュータイプじゃ
あるまいし」と譬えたりもする。他にもビリヤードなど幅広い趣味を持つ。ペットでは犬が好き。
引っ越して来たその日にガルファの襲来を受けて銀河と共に電童に選ばれた。地球人とアルクトス人
との混血であると発覚するなど、幾多の困難や運命に弄ばれるも、持ち前の機転の良さと前向きな心で
乗り越えて行く。幼少の頃にアメリカに滞在していた経験あり。名前の由来は北斗七星。月の螺旋城
破壊作戦から、アルテアから託された騎士凰牙に単独で搭乗し、最終決戦直前に再び電童へ戻されて
二人で搭乗する。

○出雲銀河(GEAR戦士電童)
CV:松岡洋子。主人公の一人。星見小学校5年1組在籍。5月5日生まれ。血液型はB(RH+)型。少林寺
拳法の使い手で、考えるよりまず行動が先の肉体派。問題にぶち当たると投げ出す癖がある。好きな
学科は体育と図画工作。母親と先生とお化けと勉強と北斗の飼い犬ジュピターが大の苦手。林檎の
皮剥きとカレー作りが得意。アイドルグループ『C-DRiVE』の一人ユキの大ファンで、出演番組をデッキ
で録画しながらTV画面をビデオカメラで撮影し、さらに録音までするなどかなりマニアックなファンで
あり、公式サイト掲載漫画では「萌え」発言が飛び出す始末。彼女の大判ポスターは命より大事だと
豪語する。妹の乙女を溺愛。母親のみどりは師であると同時に脅威的存在であるが、行き詰まると相談
するなど誰よりも頼りにしている。北斗との出会いがきっかけで共に電童のパイロットに選ばれ、戦士
として成長していく。宿題などの忘れ物チャンピオン。古いロボットアニメの武器に詳しい事を披露。
ニュータイプへの理解度が高いらしく、「(自分の父親は)マジでそんな感じ」と断言した。月の
螺旋城破壊作戦から、凰牙のシステムを移植された電童に単独で搭乗し、最終決戦直前に戻されて再び
二人で搭乗する。

○ベガ/草薙織絵(GEAR戦士電童)
CV:三石琴乃。GEAR副司令官。常に仮面で素顔を隠し、長い金髪が目立つ謎の女性。戦闘用バイク
『ワルキューレ』を駆り戦いをサポートするが、生身でもかなりの戦闘能力を持つ。また、鞭と
ブーメラン、ベーゴマ型爆弾の扱いに長けている。本来は電童のパイロットであり、その正体は北斗の
母「織絵」でアルクトス皇女である。喫茶店「ポラール」の経営者でもある。ポラールは北極星の意味
だが、アルクトスの旧首都の名であることから。8月27日生まれ。28歳。血液型はAB(RH-)型。実際の瞳
と髪の色はライトグリーンだが地球では目立つ為茶色に染めている。副指令ベガの時の金髪はカツラ。
(小説外伝では古代アルクトス文明の産物「染め粉」で茶色に染めている)。

○渋谷長官(GEAR戦士電童)
CV:西村知道。GEARの最高責任者。4月10日生まれ56歳。剣道二段、柔道三段、書道三段の有段者。
西園寺を「御前」と呼び、ベガの正体を知っているなど、かなり以前からの知り合い。好きな言葉は
「泰然自若」。隠居したら陶芸家になりたいらしい。

○ティーダ(FINAL FANTASY ]/DISSIDIA FINAL FANTASY)
CV:森田成一。夢のザナルカンドの名ブリッツボール選手、ジェクトの息子で、ブリッツボール
チーム【ザナルカンド・エイブス】に所属。父ジェクトの名を冠したトーナメントに出場していた所を
現れた「シン」によって飲み込まれ、スピラへ渡り、そこで出会った召喚士ユウナの一行と旅をする。
金髪青目で肌は小麦色。身長は175cm。皮製とみられるツナギ服(オーバオール)に素肌に黄色の上着。
皮の手袋。左腕に装甲具。黄色のショートブーツ。なおオーバーオールのすそは右がすね、左がひざ上
までで、ともに短い。ザナルカンド・エイブスのチームシンボルのネックレスと指輪をしている。
性格は明朗快活で表情豊か。語尾に「 - ッス」をつけるのが口癖。スポーツマンらしく体を動かす
のが好き、スピラの伝統を無視し感情のまま行動することも良くあるが、その行動が一行の指針となる
事も。父ジェクトに対してはすぐにからかわれ泣かされたり、自信過剰で傲慢にも見える態度から
嫌っていた(これは母親がジェクトにかかりきりでティーダに愛情をあまり注がなかった事も確執の
一因)。使用武器は剣。身体能力は高く、「ザナルカンド・エイブスのエース」を自称している。
旅の後半で自分が【夢】であり、シンを倒すと共に自身も消滅する事を知るが、葛藤を経て自分の最も
大切なものの為に、仲間達と共にシンを倒し、ユウナと抱擁を交わし仲間に笑顔を残して消える。
しかしその1年後に愛の奇跡で復活し、ユウナと再会を果たすのであった。

○フリオニール(FINAL FANTASY II/DISSIDIA FINAL FANTASY)
CV:小尾元政/緑川光。主人公。フィン王国の若者で、レオンハルトとマリアの生家で育つ。国が
パラメキア帝国に襲撃された際に義理の両親を殺され、自身も殺されかける。その後流れ着いた先で
息を吹き返し、マリア、ガイと共に反乱軍に身を投じる決意をする。小説「夢魔の迷宮」ではサラ
マンド生まれとなっている。基本的には勇ましいが、物語の中盤でラミアクィーンが化けた偽者の
ヒルダに誘惑される破目になる。近距離・遠距離を問わず多彩な武器を使いこなし、必殺技では全て
の武器で攻撃可能。武器による攻撃が中心となる地上戦を得意とし、魔法攻撃主体の空中戦をやや
苦手とする。「のばら咲く世界」を夢見る熱血漢。ひたむきに夢を追う様と、「のばら」の夢は、
コスモス戦士たちを繋ぎ、彼も知らぬうちに道を示している。女性に免疫がなく、ティナやアルティ
ミシアが相手だと動揺したり、シヴァの召喚石を手に入れる時につい「ゴクリ」としてしまうことも。
フリオニールの出す八重咲き形状の真紅のバラは、物質界ののばらとは異なっている。

●サレ(テイルズオブリバース)
CV:菊池正美 24歳・身長169cm・体重54kg。四星唯一のヒューマ。「ラドラスの落日」以前から
フォルス能力を持ち、その能力が四星になれるほど高かったという、ヒューマとしては稀な存在。
同じく四星のトーマと行動を共にしている。ヒトを痛めつけたり傷つけたりすることで喜びを感じる
冷徹非道な性格。カレギア城でヴェイグ達に敗れてからはその性格がさらに顕著になり、ヴェイグ達の
「心」を屈服させるべく執拗に付け狙うようになる。好物はワインとブルーベリージャム。特にジャム
は、パンにはつけずそのまま食べるのが彼の趣向らしい。暴風を巻き起こす「嵐」のフォルスの能力者
で、フォルス能力による風の導術を得意とする。また、細身の剣を使った剣術も相当なもので接近戦の
戦闘能力も侮りがたい。こちらがグミを使用すると、ラズベリーグミで自分を回復する。

●バルバトス・ゲーティア (Barbatos Goetia)(ティルズオブディスティニー2/その他ティルズオブシリーズ)
32歳・身長187cm・体重82kg。CV:若本規夫。「英雄」を恨み、「英雄」と称される者を悉く殺害
せんする狂戦士。「噛み付く悪魔」を意味する巨大な斧・「ディアボリックファング」を片手で扱う
程に鍛え抜かれた肉体美を誇り、スタン達四英雄の前に姿を現し、その凶刃と圧倒的力量を振るう。
その正体は、エルレインの神力で蘇った第一次天地戦争時代の地上軍の軍人。後にソーディアンチーム
に選抜されたディムロス以上に有能な戦士だったが、その冷酷かつ残忍な性格からくる凄惨な戦い振り
が災いし、ディムロスの様に「英雄」と称えられる事は無く「反逆者」となり、ディムロスへの対抗心
とアトワイトを得たいが為地上軍を裏切り、ディムロスによって処刑される。「英雄」に対する激しい
憎悪は「英雄」に見合うだけの力量と才覚を持ちえながら「英雄」と称えられる事無く果てた無念の
裏返し。「英雄」の座を渇望するその姿は前半のカイルに通じるものの本来の目的は「戦って死ぬ」
事である。晶術の一つ一つに「灼熱の - 」「殺戮の - 」といった枕詞を付ける嗜好があり、その点
でも他のキャラクターと一線を画している。圧倒的な強さを持つ上に、アイテム封じなど様々な行動に
対してカウンターを繰り出す非常に厄介な相手。以降の他シリーズ作品にもしばしば登場するが、設定
は大幅に変わり、戦う事に「美学」と「誇り」を重んじる存在となっており、アトワイトの関係に
ついては言及されなくなった。




203 名前:新章/ボクの歌を聴け! 轟く魂 迷走Mind:2009/10/22(木) 21:18:30




     トアールホテル近隣   浜辺




 目が眩まんばかりに眩く光輝く、ライアの装甲。

 その光の収束と共に姿を現すは、美と凶、荘厳を備えた、新たなるライア。
 それはさながら武を司る神のようであり、同時に死を送り届ける悪魔(エビル)のようでもあった。


Dカメレオロイド「・・・・・・・・・」

 彼(か)の姿と、漂う正体の分からぬ威圧感。
 それは、自信の新たな力を最強とさえ自惚れていたDカメレオロイドを畏怖させるには、
充分に過ぎるほどのものであった。


ライアサバイブ「悪いが、このあとは予定がある。
        歌が終わる前・・・ 3分で決着をつけさせてもらおう」

 それだけ言うと、ライアサバイブは新たなカードを取り出した。


           (AKASHIC VENT)
 

 カードのリーディング音声に警戒を強めるDカメレオロイドは、再びその姿、気配を消す。

 Dの改造技術によってカメレオロイドが得た新たな力は、ただ透明になるだけではない。
 赤外線。音波ソナー。あらゆる索敵手段を無効にする特殊パルスを纏い、また体温、音、
更には気配さえも完全に断ち切る。

 万全のトアールホテル周辺エリアのあらゆる検閲すらも通り抜けた、完全なるステルス能力だ。


Dカメレオロイド「・・・・・・・・・ ・・・・・・?」

 何秒様子を伺おうと、ライアサバイブには何の変化も見られない。


Dカメレオロイド「(こけおどしか・・・? それとも何かの罠?)」

 いや、どちらにせよ構うまい。
 何にしろ、消えれば絶対に誰にも気付かれることのない自分は最強無敵。

 例え如何なる追加能力があろうとも、先刻までと同じ。
 何の対処も出来ぬまま、一方的に弄られ、切り刻まれるしかできない。

 ならば・・・

Dカメレオロイド「(死ねぃ・・・っ!!)」

 Dが作り出したステルス技術の試験ケースとして改造されたDカメレオロイド。
 誰にも気付かれず侵入し、気付かれぬまま静かにターゲットを殺し、去ることを可能にする。
 その能力は正に最強で、無敵。

 ・・・その、筈であったが



           (ドゴォッ!!)
 

Dカメレオロイド「ぐひゅっ────っ・・・!!?」

 Dカメレオロイドにも、一瞬何が起こったか判断が出来なかった。
 
 完全に背後を取り、必殺の一撃を決めたと確信した刹那。
 Dカメレオロイドの鳩尾(みぞおち)には、深々とライアサバイブの鋭い膝蹴りが決まっていたのだ。


Dカメレオロイド「(カァッ!!)」

 起こった事態が信じられない混乱のまま、Dカメレオロイドは鉄をも貫く舌を、
二の撃として放とうとするが



           (バキィッ────!!!)
 


Dカメレオロイド「ゲヒャアッ────!!?」

 それよりも前に、ライアサバイブの拳が見事にDカメレオロイドの顎に炸裂していた。


Dカメレオロイド「ぐっ・・・ う・・・!」

 顎が砕け、脳が揺れる。
 激しい痛み、ダメージに、おぼろげながらDカメレオロイドの、その醜い姿が現れ始めた。

Dカメレオロイド「馬鹿な・・・ 貴様、何故あっしの攻撃が・・・!」

 よろめき後ろに後退しながら、Dカメレオロイドはライアサバイブに問う。

ライアサバイブ「・・・全て、お見通しだ」

 対しライアサバイブは、短くそれだけを告げた。
 その冷静な言い口には、それ以上のことを教えるつもりは無いと暗に語る。


Dカメレオロイド「チ・・・ ィィッ・・・!! ならぁっ・・・!!」

 醜き怪物の顔を怒りに歪めながら、Dカメレオロイドは再び姿を消した。

 理屈は分からないが、近距離での攻撃に反撃されるなら、遠距離から攻撃すればいいと
 そう考えたからである。
  

ライアサバイブ「・・・・・・・・・」

 ライアサバイブはそんなDカメレオロイドに億劫そうに肩を竦め
 更なるカードを取り出す。


           (SHOOT VENT)
 

 シュートベントの発動と共に、ライアサバイブの左手に現れる、新たな武器。

 竪琴(ハープ)を思わせる美しき曲線を描きながらも、同時にエビルダイバーの姿も
模されたそれは、洋弓とも和弓とも断言し難い、独特の姿形をした長弓だった。

 その名はエビルボウ。
 ライアのサバイブ体が手にする、強力なる武器。


ライアサバイブ「無駄だ」

 ライアサバイブが右手で弓の中央の球体に触れると、忽(たちま)ちそれは、
紫の電光を発し、ライアサバイブの右手に集まりだした。

 紫電はあっという間に矢の形を作り出し、ライアサバイブの右手と弓にぴったりと収まる。
 それを確認する間を入れず、ライアサバイブは大きく弓を引き絞り・・・


Dカメレオロイド「・・・・・・っ!!?」

 まるで見えているかのようにDカメレオロイドの入る方向へ振り向き、放った。


     (ビュンッ・・・────!!)

 
Dカメレオロイド「っ────!」

 光の速度を思わせる速さで、Dカメレオロイドに向かっていく紫電矢。
 反射的に横に跳ぶDカメレオロイド。

ライアサバイブ「俺の矢は」

 だが、紫電矢は標的を逃さない。
 矢は、まるで生きているかのようにカーブを描き、空に逃げた怪物を・・・



           (ザシュウッ・・・!!)
 

Dカメレオロイド「ギ、イイィィッ────!!!」

 貫いた。


ライアサバイブ「当たる」 

 そしてさも当然と、ライアサバイブは冷淡にそう言った。


Dカメレオロイド「グギッ・・・ ギィィッ・・・ ガ・・・!!」

 紫のスパークと共に、再び姿を現すカメレオンの怪人。

 左の眼球から後頭部まで貫通して貫かれながらも、その怪物はまだ激しく全身で
そのダメージを顕にしていた。 

 頭部、脳を大きく破壊されながらもあそこまで動き、煙を上げて再生をしようとする。
 見れば、先程破壊された鳩尾と顎もまた、ジュワジュワと煙を上げてその形を戻し始めていた。

 正に、人であることを失った怪物。。
 更に人としての尊厳や心まで失っては、それは化物以外の何といえるものか。


Dカメレオロイド「ヒィィ・・・い痛ぇ・・・
         こんなの、こんなのあり得ねぇ・・・ あり得ねぇよぉ・・・」

 うわ言のように呟きながら、蹲るDカメレオロイド。


ライアサバイブ「“あり得ない”・・・ そんなものは、ない」

 そんなDカメレオロイドに、ライアは口を開いた。


ライアサバイブ「運命は変えられる。例えば・・・
        本来なら、お前のせいで警備の人間を含め、何人も死んでいる筈だった。
        だがそれは・・・ もう起こらない。そう俺が変えた」

Dカメレオロイド「ヒュ・・・?」

ライアサバイブ「人は努力することで、信じることで、戦うことで。
        未来を変えられる。そう・・・ 俺に教えてくれた奴がいた」

Dカメレオロイド「何を・・・」

ライアサバイブ「だが・・・ お前は、自分の運命を変えることは出来ない。
        己の能力に頼り、姑息な戦闘に終始するお前のような奴に待ち受けている
        宿命は、たった一つ。そしてそれは・・・ 既に、見えている

 ライアサバイブは、人差し指を怪物に差し、断言した。

Dカメレオロイド「ヒッ・・・ ヒ・・・ ヒヒ・・・」

 ライアサバイブのその言葉に、言葉の中に宿る、正体の分からぬ威圧がとどめとなったか。
 狼狽し、目を泳がせ、徐々に後ずさるDカメレオロイド。


Dカメレオロイド「ヒヒーッ!!!」

 次の瞬間には、悲鳴と共に踵を返し、Dカメレオロイドは脱兎の如く逃げ出していた。 


 しかしそれをみすみす見逃しはしない。
 ライアサバイブは、戦いの決着の為の、最後のカードを取り出した。
 

           (FINAL VENT)
 

 ファイナルベントの発動と共に、虚空から現れる契約モンスター。

 エビルダイバーがより強く、海の覇者として生まれ変わった姿。
 その名も、エビルリヴァイアー。

 現れた海の覇者はすぐさまに、その姿をファイナルベントのトリガーへと変えていく。
 それと同時に、空高く跳び上がるライアサバイブ。

 エビルリヴァイアーがその姿を巨大な弩砲へその姿を完成させるのと、
ライアサバイブが着地するのは、ほぼ同時。

 瞬く間にライアサバイブの身体を紫電が覆い、弓の尾が引き絞られる。

 そして


ライアサバイブ「ハァッ───!!!」
 

      ハ イ ド バ リ ス タ ー !!!!


 それは、ライダーという名の射出兵器。
 超高速で射ち出される、超高圧電流とスピンを加えられたライダーキック。



  ◇    ◇



Dカメレオロイド「・・・・・・!! っっ────────!!!!?」

 かなりの距離まで逃げていた筈のDカメレオロイドは、背後から迫る何かに気付いた。
 しかし、悲鳴を上げるよりも、いや、振り返りその正体を確認するよりも前に




(バシュッ────   ドォォン!!!)

 ライアサバイブという、超エネルギーの塊に貫かれ
 細胞の欠片さえ残すことなく、爆死した。



  ◇    ◇



手塚「3分ちょうどか・・・」

 全てが終わった戦いの場。
 そこにはただ一人、ボロボロになった警備員の服で立つ、変身を解いた手塚の姿があった。

手塚「まだまだ、サバイブを使いこなせていないな」

 自身のサバイブとしての初陣の結果に、手塚本人は不満を顕にしていた。

 アカシックベントの能力、“完全予知”の効果時間は3分。
 無敵に近い能力だからこそ、時間内に余裕をもって倒せなくてはいけない。
 そう手塚は考えていた。


手塚「さて・・・・・・ 今からなら、3曲目ぐらいには間に合うか」

 どこまで冗談なのか。
 手塚はフッと小さく笑いながら、ホテルの方へと帰っていった。




204 名前:新章/ボクの歌を聴け! 轟く魂 迷走Mind:2009/10/22(木) 21:19:36

○手塚海之/仮面ライダーライアサバイブ→様々な新カードを駆使し、勝利。ホテルへ
●ラ・モール/Dカメレオロイド→ライアサバイブのファイナルベントによって爆死

【新規カード紹介】
◆【AKASHIC VENT】
ライアサバイブ専用カード。使用時の付加能力は3分間のみの完全予知(アカシックレコード)。
発動から3分間の間に起こる未来の事象を全て知り得る事が出来る。どの方向からどんな攻撃が
やってきて、どうすれば対処できるかまでを予め知りえる最強の能力ではあるが、効果時間は3分。
更に発動からの3分間を超えた先の未来は知りえない。また、いくら予知できようと、圧倒的な実力差
などから本人が相手の攻撃にどうやっても対処しきれない場合は意味がないのは他の予知能力の弱点と
同じである。


205 名前:新章/ボクの歌を聴け! 轟く魂 迷走Mind:2009/10/22(木) 21:20:33




 フリオニールとティーダ。

 二人は岩の隙間から駆け出すと同時に、既に攻撃を仕掛けていた。


フリオニール「はっ!!」

 槍、斧、剣、ナイフ、刀。
 手を突き出すと同時に彼の周囲に現れる、無数の武器。

 それらは自体が意志を持ったかのように軌道を描き、
 それぞれがバルバトス、サレへと襲い掛かる。


ティーダ「せえーのっ!!」

 一方のティーダは、流れる動きでバック転、横回転のコンボを繰り返しながら、
サレへの懇親の一撃を仕掛ける。


 それは、実に見事なタイミングの連携攻撃だった。

 しかし


バルバトス「ふんっ───!」

 バルバトスは、巨大な戦斧を軽々と振り払い、全てを弾き飛ばし

サレ「あはははっ! バカだね!」

 サレは、嵐のフォルスを発動し、己を中心に激しい竜巻を作り上げ


ティーダ「うおわぁ────っ!!?」

 ティーダとフリオニールの武器は、竜巻に巻き上げられた。


フリオニール「ティーダ!?」

サレ「あっはっは。これで人間ミキサーの出来上がりさ。
   仲間の武器で切り刻まれるといいよ!」

 自分の周りをぐるぐる廻るティーダを見ながら、サディスティックに高笑いをするサレ。
 絶体絶命。そう思われたが・・・


フリオニール「・・・それはどうかな」

サレ「・・・・・・え?」

フリオニール「俺の武器は、仲間達の想い。魂!
       だから絶対に、仲間を傷つけることはない!!」

ティーダ「そうっスよ!」

 強い言葉と共に、ティーダは竜巻の中で己の身体を回転させ始めた。
 竜巻の回転、その力の流れに合わせ、ティーダのスピンは勢いを増していく。

 それは竜巻の中で更なる竜巻を作り出し、力の奔流を生み出していった。


サレ「な・・・!?」

ティーダ「せぇ〜〜・・・ のっ!!
     ティーダマシンガンシュートぉっ!!!


 ティーダの身体を抉り、突き刺すものと思われたフリオニールの無数の武具。
 それをティーダは、回転の威力を乗せ、渾身の連続シュート(蹴り)を放つ。

 ブリッツボール最強のエースが放つシュートは、フリオニールが武器を放った時の
それを遥かに上回る威力とスピードを内包し、唸りをあげてサレへと襲い掛かった────!


サレ「っっ────!!」


        (ザクッ! ザクッ!! ドシュッ!!
             ザシュザシュッ!! ガシュッ────!!!)


サレ「ぎゃあああああああっっ────────!!」

 無防備な竜巻の目に立っているサレには、竜巻の中から射出された武器を防ぐ手段はなかった。

 次々と、深々と突き刺さる武器の機関銃。
 人の悲鳴と痛みを何より好む男は、今は自らの激痛に悲鳴を上げ、銃斬撃に踊らされている。


サレ「ガッ・・・ く・・・」

 ガクリと膝を落とし、血を撒き散らしながら項垂れるサレ。
 竜巻も徐々に力を失い、ゆっくりと消えていく。 


ティーダ「おっ・・・ ととと」

 見事に綺麗な着地を決めると、ティーダはサレ達の方へ向き直り、剣を構え直した。


ティーダ「ちょーっと、やりすぎちゃったかな?」

 と、肩を竦めながら。

フリオニール「だが、うまくいったな」

ティーダ「急ごしらえの作戦にしちゃ、上々っス」


    (パン、パン、ペチンッ!)


 男同士の、作戦成功の祝福の儀式。
 二人は互いの手を叩き、最後にガッチリと握手を決める。


 そう、この結末は、最初から二人の作戦通りだった。

 サレがフリオニールの武器を嵐のフォルスで巻き上げることも、
 ティーダが同時に迂闊に空から攻めれば、サディスティックなあの男は必ず
ティーダごと空に巻き上げ、切り刻もうと考えるだろうことも。

 あとは、互いへの信頼。
 ティーダが竜巻の中でも、誤らずサレを狙いシュートをできるか。
 フリオニールの武器が、ティーダを傷つけることがないか。

 相手を信じている、まことの相棒。仲間だからこそできる真の連携。
 秩序(コスモス)の光の戦士達ならではの、想う心の勝利である。


バルバトス「貴様らぁ・・・ 小癪な真似をぉ!!」

 だが、もう一人が残っている。

 ・・・おそらくは、サレが戦闘不能であろうとなかろうと、2対位置であろうとなかろうと。
 関係なく厄介であろう相手。


 その男は、ゾッとするほどの明らかな怒気と殺気を重く放ちながら、
 戦斧を振り上げ、今にも襲い掛からんとしている。


ティーダ「・・・・・・」
フリオニール「・・・・・・」

 一人敵を倒した事に安堵する間もなく戦慄する二人。

 この男には、もはや小細工は通用しない。
 サレのような能力で戦う者ではない、純粋な強さで他を圧倒する闘鬼。

 死闘は避けられない・・・
 二人が覚悟を決め、踏み出そうとした、その時


        (ポゥ・・・)


バルバトス「むぅ・・・?」

 不意に、バルバトスの腕に付けられた腕輪の、黒い水晶が不気味に光りだす。


バルバトス「・・・・・・・・・ ちっ」

 黒い水晶の輝きに目をやっていたかと思うと、バルバトスは忌々しげに舌打ちをした。

バルバトス「運がよかったな。貴様ら」

 それだけ言うと、バルバトスはあろう事か、
 眼前のフリオニール達にあっさりと背を向け、歩き出し


サレ「うっ・・・ うう・・・」

 多量の血を出し、呻いているサレを



         (ガシッ!)
     

 片手で掴み、軽々と持ち上げた。


ティーダ「!?」
フリオニール「!?」

 驚く両者。
 それを尻目に、バルバトスは腕輪の黒水晶を正面の空中にかざす。

 すると



          (バチッ、バチ、バチッ・・・!!)


 突如、空中に亀裂が生じ、空間が大きく裂け、漆黒の闇が広がっていく。


フリオニール「あれは・・・!?」

ティーダ「次元の狭間・・・ っすか!?」

 それは、エクスデスの使う時限の狭間に、実によく似ていた。


バルバトス「・・・・・・・・・」

 その時、初めてバルバトスはこちらに首だけ振り向いた。

 正に鬼神の如くと言える、恐ろしい一瞥。
 相対するのがティーダ達でなければ、一瞬で心を砕かれていただろう。


バルバトス「・・・つまらん邪魔が入った。今回は見逃してやる。
      だが、次は・・・ 必ず殺してやる。必ず。
      せいぜいそれまで、少しでも俺がもっと楽しめるように腕を上げておけ」

 どこまでも留まる事を知らない、バルバトスの言葉。
 だがその言葉の中に宿る迫力が、それが慢心や増長の類ではないことを思い知らせる。


フリオニール「待てっ!!」

 それを、気丈に呼び止めるフリオニール。

ティーダ「性懲りもなくよみがえって、徒党を組んで・・・
     一体何が目的で、ボスは誰っスかー!?」


バルバトス「・・・・・・・・・」

 無言での睨み合いが、何秒続いたか


バルバトス「いいだろう。一つだけ教えてやる」

 凶悪な笑みを浮かべ、バルバトスは再び口を開いた。


バルバトス「魔王達は、目覚めたぞ


ティーダ「っ!!?」
バルバトス「っ!!?」

 その言葉に、二人は驚愕を隠せなかった。

 無言のまま次元の狭間の中に消えていった、バルバトスとサレを、ただ見るしかできなかったほどに。


ティーダ「ま・・・ 魔王・・・!?」

フリオニール「まさか・・・」



  ◇    ◇



       漆黒の闇の底



 そこは、どの時代なのか、どの次元なのかも分からない、ただただ、深い闇だけが広がる場所。


 その深い闇の中で、只者ではない何者か達が、中央の巨大な黒い水晶玉を取り囲み、
円を描く形でそれぞれが玉座に座っている。

エルレイン「バルバトスめ・・・ 余計なことを」

 人の背よりも大きな黒水晶の隣に立つは、“聖女”エルレイン。


ゴルゴナ「グブブブ・・・ まあ、よかろう。
     どの道、もはや今更奴らには止められぬ」

 傍らから顔を出すは、冥王ゴルゴナ。


 他にも、

 ガーランド。皇帝。暗闇の雲。ゼロムス。エクスデス。ケフカ・パラッツォ。アルティミシア。
 竜王。シドー。ゾーマ。ミルドラース。デスタムーア。オルゴ・デミーラ。ラプソーン。
 冥王ハーデス。ヒュノプス。タナトス。
 死の神デス。破壊神サルーイン。闇の女王シェラハ。邪神ガタノゾーア。
 アスタロト。ネビロス。ゾウナ。

 1人1人が世界を滅ぼすに足る力を持つ様々な魔王、邪神・・・
 そう呼ばれるに足る者達が、それぞれの玉座にて、沈黙を守っている。


ギータ「その通り。彼らにとって、恐怖におびえる時間が増えただけの話。
    我々の力、そして野望を止めることはできません。ハッハッハッハッハハハハ」

 ギータが笑い出すと同時に、他の多くの魔王。そしてその眷属達も、笑い出した。
 邪悪な笑いの重奏は、それそのものが世界の終焉曲の如く響き渡る。


 今ここに、最大の闇が結集し、動き出そうとしていた・・・



206 名前:新章/ボクの歌を聴け! 轟く魂 迷走Mind:2009/10/22(木) 21:21:12

○フリオニール&ティーダ→作戦成功。バルバトスから「魔王達の目覚め」を知る。
●サレ→ティーダ達の作戦勝ちによって戦闘不能。
●バルバトス・ゲーティア→謎の呼び出しによって帰還。二人に魔王の目覚めを教える。
●エルレイン→バルバトスの軽い口に不快を表す。
●冥王ゴルゴナ→今更光の戦士達が知っても無駄と言う。
●超獣王ギータ→相槌を打ち、大きく嗤う。

【今回の新規登場】
●エルレイン (テイルズオブデスティニー2)
27歳相当・身長160cm・体重43kg。CV:榊原良子。現アタモニ神団の指導者となっている女神官。
信者からは「聖女」と呼ばれ崇められている。 リアラ同様フォルトゥナによって創造された
「二人の聖女」であり、リアラ以上の力を持っている。 彼女はひたすらに人々の幸福を求める内に
「痛みがない=幸福」という理論を持つようになり、カイル達との衝突に至り、結果として、歪んだ
形でその理想を成就させようとした。

●冥王ゴルゴナ(ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章)
黒衣のローブをすっぽりと被った魔導師で、得体の知れない雰囲気を漂わせる。黒魔神の直属で幽
(ファントム)兵団を指揮する。異魔神とは古くから関わりがあり、その言葉を他の魔王に伝える役割
を持つ。死者を操る妖術に長けており、かつて勇者ロトに倒された魔王バラモスを復活させ、操った。
また「光葬魔雲」などの技で聖なる力を消し去ることができる。知略に長け、魔王軍の中では参謀役も
務めている。その正体は古代ムー帝国の魔導師にして科学者であり、タオ導師=太陽王(ラ・ムー)の
弟にあたる。異魔神を召喚した張本人。自己中心的な性格で、異魔神すら自分の野心のために利用
しようとしていたが、次第に手に負えなくなり、ムー帝国の崩壊を招いた。兄であるタオに沈みゆく
ムー大陸に取り残されたが、生き残るため冥界の王である大蜘蛛と、部下の魔導師、科学者達6人と
共に融合し、生き長らえる。しかし、直後に異魔神をオメガルーラで封印した精霊ルビスによって
同じように封印された。その後、タオと同様に精霊ルビスがゾーマによって石化された際に復活し、
異魔神の精神を呼び戻す。黒衣を取った大蜘蛛の姿の背中の中心にゴルゴナの本来の顔があり、それを
取り囲むようにその他のツークーマン、オティカワン、トピアポ、フロレンシア、キアーラ、ボボル
ヴーの6人の顔が並ぶ。ゴルゴナだけでなく他の6人も意思を持ち話すことができる。1万2000年を経て
再び兄と対峙。追い詰められると自分だけを冥界の王から分離し、部下達をゾンビとして蘇らせようと
したが、冥界の王から離脱したためすでにその力はなく、最後の不意打ちも虚しく惨めな死を遂げた。

●超獣王“ウォーリア・キング”ギータ(ハーメルンのバイオリン弾き)
CV:松山鷹志/二又一成。魔界軍王No.4。超獣王ギータ。上半身は犬型の獣人で、下半身は犬丸1頭
分の形を成している。魔界一の剣客で珍しい剣を大量に集める。どんな強い相手でももがき苦しむ様を
眺めることが出来るという実に魔族らしい理由で剣を使用。相手を問わず丁寧語で会話するが、それが
地らしく、敵に追い詰められても口調は変わらない。魔界軍王の中では一番地位が低い為、ドラムと
サイザーの内ゲバの際は真っ先に逃げたりと平身低頭な場面が多いが、その反面、一番の野心家でも
ある。自分より強い者には頭を下げるが、いざ強い相手が弱みを見せると賺さず付け込み、更には平気
で殺傷せしめるだけの狡猾さと苛烈さを持つ。相手の血を飲む事によって、相手の能力をコピーすると
いう特殊能力を持っており、作品中ではドラムとサイザーの血を飲み、左手から竜を、背中から翼を
出した。真の姿は地獄の番犬ケルベロスで、その形態でも竜頭(尻尾に当たる部分に展開される)と
翼を展開可能。特殊能力の恩恵もあってか、ハーメルたちを敗北寸前にまで追い詰めた。何度も自分
より上の魔族に殺されかけるが、しぶとく生き残る執念の持ち主。実は下半身が残っていればいつでも
復活可能な模様。名前が判明している剣は、飢狼剣、氷槍剣、雷王剣(ライトニングブレード)、
超重皇剣、何でも切れる剣、揺光氷星剣(アルカイド)、緋炎。北の都の最終決戦の時、トロンと一騎
打ちで敗れる。だが、それでも生き残り、当初の計画を実行し絶大な力を手に入れるが、コルネットの
聖母殺人伝説によって一瞬で消滅する。


207 名前:新章/ボクの歌を聴け! 轟く魂 迷走Mind:2009/10/22(木) 21:30:03

        同時刻

     横浜中華街  大飯店前




秋雨「さて、これで全員かな」

 パンパンと手をはたき、ふぅと一息つくは、哲学する柔術家、岬越寺秋雨。
 その足元には、大量の戦闘員。それに混じって、数体の再生怪人が横たわっている。

逆鬼「“怪人”っつー割には、思ったほど苦戦しなかったな」

 首をコキコキと鳴らす、ケンカ百段。空手の鬼。逆鬼至緒

アパチャイ「アパ! アパ!」

 変な相槌を打つ巨漢の男、裏ムエタイ界の死神、アパチャイ・ホパチャイ。

 達人達はそれぞれに、己の手で打倒した怪物の実力に軽くがっかりとしている。
 再生怪人が弱いのではなく、自分達が激しく人間離れしている・・・ という考えには至らないようだ。
 

 そんな中


秋雨「おや」

 店主や他の民間人の感謝の声もそこそこに飯店から出ようとした時、
初めて秋雨は、どこからか聞こえてくる歌声に気付く。

 その方向に振り向くと、向いの店の天上設置型の古いTVに、一人のアイドルが映っていた。


秋雨「ふむ。765プロの菊池真くんか。
   そういえば特別番組をやるとかいってたねえ」

逆鬼「あー。パンチ一発でステゴロ・ザウラー沈めたっつー鉄拳アイドルだっけか?
   俺ぁそういう方面には詳しくねえんだよなぁ」

 首の後ろをボリボリ掻きながら、そう言って出てくる逆鬼。


アパチャイ「お、アパチャイ知ってるヨ! キクチマコトはすごいイッキトーセンヨ!
      センゴクブショーやアクダイカンをちぎっては投げてたヨ!!」

 隣のアパチャイは、TVを指差してはしゃいでいる。

秋雨「・・・アパチャイ君。それは彼女の出演してる大河ドラマと時代劇だから」

 と、秋雨は軽くツッコミを入れる。

逆鬼「まー、体つきと動きから見りゃ、確かに格闘家の才能には恵まれてんな。
   いい達人になれたろうに、もったいねーなぁ」

 悪気はないのだろうが、なんともぶしつけな言葉である。

秋雨「ふむ。しかし・・・ いい歌だが、勇猛や活発と共に、随分と深い哀愁が込められているね。
   まだ16そこらの青少女だというのに、随分と色々な経験を重ねてきたようだ」

 一方で、秋雨はたった一見でずいぶんと的確に真を分析している。


秋雨「・・・さてさて、一体どんな出会いや別れを重ねてきたんだろうねえ」




  ◇    ◇




      同々時刻

    刑務所内  食堂




 真の歌は、全国各地の様々な施設でも流されていた。
 それはここ、とある刑務所の、女囚が使う共同食堂でも。


アヤ・エイジア「・・・・・・・・・」

 その歌を聴く女囚の中に、元全世界カリスマ歌手、アヤ・エイジアもいた。
 自身が歌姫であったが故か、彼女は食事の箸すら止め、真の、そして全ての765アイドルの
歌を、誰よりも真剣に聞いている。


アヤ・エイジア「ねえ、“お隣のお嬢さん”」

 と思いきや、アヤ・エイジアはふわりと左を振り向き、隣の席の少女に語りかける。

 その理由は・・・
 少女が真の歌に、エイジアよりも強く反応し、聞き入っていたこと。

 しかしその反応が、ただその歌が好きだからにしては、あまりにも・・・
 

 あまりにも悲しそうで、苦しそうだったから。




  ◇    ◇




真「(そう・・・ あの日、あの時・・・
   ボクがあの子の声に気付いてあげられれば、あの子は・・・)」




  ◇    ◇




     過去  回想

    小規模屋外ステージ ライブ後



真「え? ボクのファン!? ・・・あ、ありがとう!
  嬉しいなぁ〜。まだステージって言える所だと2,3回しか歌ってないから・・・」

 ファンの、年下と思われる小さな女の子からの、ささやかに小さな花束を受け取る真。
 駆け出しの頃のその姿は初々しく、現在と比べるとアイドルのオーラも薄い。


 顔を赤くして、ファンの少女がまた何かを話す。

真「じゃあ、君がボクの大切な3人目のファンだね。

真「え? 最初のファンは誰? あはは・・・ それはね」

 顔を赤くして、真はその答えをはぐらかす。




  ◇    ◇




真「プロデューサー! あの子からまたファンレター届いてました!」

 何度目かになる、かわいい便箋に入ったファンレターを、真は嬉々としてPに見せる。

真「はい! すごく嬉しいんです!
  ボクの歌ですごく元気になるって、だからボクにも頑張ってくださいって。
  ・・・この子の手紙、丁寧で、でも力が込められてて、読んでると力が沸いてくるんですよ!」

 3人目のファンの女の子。
 彼女からのファンレターを、真はいつも楽しみにし、励みにしていた。

 丁寧に毎回返事を出し、かけだしのアイドルは文通のように彼女とやり取りを繰り返していた。
 それはもう、丁寧に。大切に。


 しかし、すべからくこの世に、不変のものなどは存在しない。




  ◇    ◇




       数ヵ月後

   ダンスレッスンホール  控え室



真「はぁ・・・ き、今日も・・・ つ、疲れた・・・」
  
 倒れこむようにして、ソファーに力なく寝転がる真。
 トップアイドルにいよいよ近づいてくる毎に、真は日々、疲労との闘いに身をすり減らしていた。

 毎日大量にやってくる仕事のオファー。厳しさを増していくアイドルオーディション。
 響達、プロジェクトフェアリーに勝つ為の、血の滲むほどのハードレッスン。

 それらを体力と気力の限界ギリギリまで行っては、こうして倒れ伏し休む、その繰り返し。

 他の事を何か一つでも考えていてはやっていられないほどの苦難の日々。
 気付けば生活スタイルは、あらゆる意味で駆け出しの頃とはまるで変わり果てていた。


真「(そういえば・・・ あの子の手紙・・・ もう随分、返事書いてないな・・・
   いや、返事どころの話じゃなくて・・・ もう、数ヶ月も誰の手紙も見れてない・・・・・・)」

 Aランクアイドルともなれば、贈られるファンレター、プレゼントもまた、とんでもない数になる。
 一つ一つ返事はおろか、全部を読むことさえ不可能な量は、もうとっくに超えていた。

 ましてこの時の真は、忙殺という言葉ですら生温いほどの状態。
 そんな真に、かつての3人目のファンにかつてのように手紙のやり取りなどとは度台無理な話である。


真「(アイドルアルティメイトが・・・ 本戦が終わったら・・・
   その時は、あの子にこれまでの分も・・・ たくさん・・・・・・ へん・・・ じ・・・ ・・・・・・・)」

 こんな余計なことが考えられるのは、疲労から眠りに入るまでのほんの僅かな時間だけ。
 しかしそんな思考も、疲れが押し寄せさせるまどろみに呑まれ、睡魔にかき消されていった・・・


 そしていずれ、彼女は気付く。
 大切なものほど、失くしてから気付く、ということに・・・




  ◇    ◇




        更に数ヵ月後

     真の自宅   リビングルーム



『東京都○○区○○団地において起きた、14歳の少女が父親を包丁で刺した事件について、
 被告人の家庭環境についての新たな事実が判明・・・』

『容疑者の○○被告は、8年前に賭博、借金、家族への暴力を繰り返していた父親と別れ、
 母親との二人暮らしを続け・・・ 数ヶ月前からつきまとい。何度も勝手に家に上がりこんでは
 金銭、物品を強引に奪い取り、激しい暴力を・・・』

『被告人は供述において、「お母さんが何度も何度も殴られて動かなくなって、それでも父が
 母を殴ろうとした。「このままでは母が死んでしまう」と思った。気付いたら血まみれの包丁
 を握っていて、シャツが血に染まった父が倒れていた」と・・・』


      (プツッ・・・)


 TVから流れるニュースキャスターの映像が、十字の光になって消える。

 電源ボタンを押した人物は、リモコンを放り捨てると、電気の点いていない奥の部屋、
真の寝室まで歩き寄る。


P「真。入るぞ」

 コン、コンと、半開きの扉に一応のノックをすると、プロデューサーはゆっくりと
扉を開け、足を踏み入れた。


真「・・・・・・・・・・・・」

 いつもなら、プロデューサーに会うと飛び跳ねん限りの元気な挨拶をする真。
 しかし目の前の彼女は、電灯も点いていない暗い部屋の奥、ベッドの片隅で膝を抱え、
くしゃくしゃに布団を抱いたまま顔を伏せ、プロデューサーにすら反応を見せない。


 リビングルームの明りが挿し込み、明らかになる部屋の状況。


P「・・・そうか。読んだのか。あの子の、手紙」

 手紙には、確かに書かれていた。
 数ヶ月前からの彼女の悩み。縁を切った筈の最低の父親に受けた苦難の悩み、

 少女は、とても内向的な人間だった。
 幼少期に受けた虐待から内向的になり、人に心を開くことができなかった。


 ただ一人、その例外が、菊池真だったのだ。
 だから、真への手紙でだけは、想いの全てを打ち明けていた。 

 しかしそこにタイミングの不運が重なった。
 アイドルアルティメイトという、菊池真自身が全てをかけなければならない舞台。


 それに真正面からぶつからなければならなかった真、そしてプロデューサーは
常識から外れたハードスケジュールの中、アイドルアルティメイト本選に必要な予定以外を
極端にまで遠ざけなければいけなかった。

 結果として、真も、そしてプロデューサーも、ファンの少女の手紙に、
その中にある、悩み・・・ 助けの声に気付くのが完全に遅れてしまった。

 勿論、元々においてまったくの他人である。
 責任は真以外に助けを求められなかった少女にあり、何度も手紙のやり取りやイベント先での
対面をしたとはいえ、助けを求められてもそれに応える義理も義務もない。


 ・・・・・・というのが、“普通の人”の考えだろう。

 しかし、真にはそんな考えなど出来よう筈もない。
 少女の存在が、どれだけ真の精神的な励みに、支えになったか。

 真は少女を親友と思っていたし、少女が困ることでもあれば、
 どんな小さなことでも出来る限り力になろうと強く誓ってさえいた。

 そうでなくとも、真の心はとても純粋で、例え仕事のライバルでも自分の事のように
心配する優しさを持っているのは、響達との勝負の時に証明されている。


 そんな真だから、誰からも好かれるトップアイドルになった。
 だが・・・ そうだからこそ、今回起こってしまったことは・・・


真「プロデューサー・・・」

P「なんだ」

真「ボク・・・ 何やってるんでしょうね」

P「・・・・・・」

真「たくさんの人を笑顔にする、幸せにするのがトップアイドルなのに・・・
  ボクはあの子にずっと励まされて来たのに・・・ 助けられたかもしれないのに・・・」

P「真・・・」

真「なのにボクは、あの子に何もしてあげられなかった・・・っ!!
  アイドルアルティメイトなんてものに浮かれてて、一番大切な・・・っっ ・・・・・・
  こんな・・・ ボクなんか、アイドル失格だ・・・!!」


P「真っ!!!」

 Pの滅多に出さない大きな声に、真はビクンと顔を上げる。
 さんざん流し続けていたであろう涙の跡が、頬を塗らし、目を赤くしていた。


P「確かに俺達が気付くのが早かったら、何か変えれたかもしれない。
  自分が許せないのは、俺も一緒だ。でもな・・・ いいか、真。
  自分の進んでいる道で、何か大きな後悔や失敗があったとき、大事なのは・・・・・・」
  



  ◇    ◇





           時を戻し

      トアールホテル  レストランフロア






              誘惑を断ち切って

              つらくても前を見て

              ラストでは笑顔で

              見つめ合いたいの






 迷走Mindが終わり、スポットライトがゆっくりと消えていくと共に、
 僅かな静寂から、場内は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。

 スタッフが慌しく動く中、センターの真が、スタンドマイクを前に深呼吸を一回。
 マイクをトントンと軽く叩き、あー、うん。とセキをすると、歓声はゆるやかに消えていく。


真「ちょっと、生意気なことを話しますけど、聞いてください」

 そうことわって、真は真剣な顔で話し始める。

 トアールの客達も、空気を感じ取ったのだろう。
 歌を聴くときとは違う、注目の仕方が伺えた。


真「・・・・・・アイドルをやってから、色々なことがありました。色んな人達と会いました」

 語り始める真の瞳は、とても澄んでいた。
 16にして、清も濁も含めた様々な出来事を歩み越えてきたであろう気配を感じ取れる。


真「それで、本当に・・・ 本当に、たくさん、色々なことを教わり、気付きました。
  それは・・・ ボクは、一人じゃなかったから、たくさんの人に支えられてきたから、
  これまで頑張って夢を続けられて、生きてきたんだって」

 当たり前のことかもしれませんけど、と。
 自分の姿を映しているカメラを正面に見据え、真は苦笑する。


真「こうして生まれてきたこと。たくさんの人たちに出会えたこと。
  お父さん、お母さん・・・ 学校の先生。仕事の先輩や、仲間や、後輩。ファンの皆さん。
  ボク達のまったく知らない所で、何かを作ったり、
  何かの為に働いている人達・・・ たくさんの人たちに支えられてボク達は生きているんだ。って」
  
 そこまで語ると、一呼吸置き


真「・・・とても、感謝してます」

 深く深く、真は頭を下げた。
 その仕草には、嫌味でも何でもない、菊池真という少女の心の底からの感謝の気持ちが現れている。

 
真「・・・・・・でも、それはボクだけじゃない。
  みんな、みんな・・・ ボク達は、こうして生きていることの価値を知ってる。
  出会いをくれた、言葉をくれた、心をくれたみんなに感謝してるんです。
  だからみんな、闘っているんだと・・・ ボクは改めてそう知りました」

 そう。たくさんの少年少女達は、戦い続けている。
 どれだけ蔑まされようと、今でも。


真「闘える力を持って、拳を振るってる子供達は、確かに恐ろしく見えちゃうかもしれません。
  でもそれは・・・ 守りたい人達を、愛してる人達を。その人たちが暮らしている町を、世界を、
  守りたいから! ・・・そのために闘ってるんです。例え、どれだけ自分が傷ついても・・・
  それだけは、信じてほしいんです」

 握るマイクに力が入っているのを、真自身気付いていないだろう。


真「ボク達は、確かに子供です。だから、間違えることもたくさんあると思います。
  ・・・・・・ボクも、大切な友達を守れなかった。それは、今でも自分を許せません。
  でもだからこそ、立ち止まっちゃいけない。やめちゃいけない。
  間違えた分も、助けられなかった分も、全部ひっくるめて、受け止めて。
  前に進んで、自分にできる戦いをしなくちゃいけないって・・・ 教えてくれた人がいました」


P「・・・・・・・・・」

 真の魂の言葉に、プロデューサーも腕を組んだまま、
怖いぐらいの真剣な目で真をずっと見続けていた。 


やよい「シングさんも、他の皆さんも、みんないい人達ですよ!」

真「わっ!?」

 そんな中、真の横から、やよいが飛び出し、真は軽く驚き、たじろぐ。


やよい「シングさん、頭なでてくれました! コハクさん、私が怪我してないか心配してくれました!
    ヒスイさん、私のこと心配してよく声をかけてくれました!
    イネスさん、商品のお菓子をタダでくれました! 他にも、他にも・・・」

 指折り数えながら、やよいは、かつていった異世界で出会った人達の事を一生懸命に語る。


やよい「シングさん達言ってました! “みんなの笑顔が守りたいから闘うんだ”って!!
    だから、だから皆さん・・・ 笑顔で、シングさん達や、他の皆さんをイジめないで下さいっ!!
    おねがいしますっっっ!!!」

 静かに語りかけた真とは違う、強い願い、感情をそのまま乗せた、ストレートすぎる言葉。
 それは彼女だからこそ出せる言葉であり、またここに必要な声の一つだった。


千早「・・・・・・私達が正しくない時も、当然あると思います」

 そんなやよいに続いて、千早も静かに割り入る。

千早「でも、亡くしてから気付いても、その時に残るのは、後悔だけです。
   ・・・大切なものを、自分から亡くそうとしていないでしょうか?
   思い出してください。自分の大切なものを。大切な笑顔を。
   それを守る為に必要な行動が何なのか、それを・・・ 忘れないで下さい」

 喪失の悲しみが内包された、千早だからこその言葉。


真「ボク達はこれからも、言葉と、歌で闘っていきます。
  想いを、願いを乗せて。たくさんの大切な人達へ、そしてボクの知らない人達へ。
  聴いてください。・・・・・・・『i』!!」

 再び鳴り響く拍手と歓声。
 ライトが入れ替わり、765アイドル全員が新しく配置につく。





         新しい服着替えて 出掛けよう





 そうして、もう一つの歌が、始まった。





  ◇    ◇






          再び

       刑務所内  食堂








        いつも忘れてた 他事に気を取られ

         すごく大切な人たちの存在を







アヤ・エイジア「孤独な人にも、満たされた人にも届く歌・・・ 私には出来なかった歌。
        すごいコ達ね。この歌を歌えるようになれるまで、
        半端な苦労じゃなかったでしょうに」

 刑務所の中のアヤ・エイジアも、真達の歌に聞き入っていた。
 辺りを見渡すと、他の女囚達もほとんどが聞き入り、中には嗚咽を漏らして泣いている者もいる。

 そして最も強い嗚咽と共に、とめどなく涙を流しているのは・・・


アヤ・エイジア「お隣のお嬢さん・・・」

 隣の席の少女は、ずっと顔を抑えて泣いていた。

 おそらく少女には分かったのだろう。充分すぎるほど伝わったのだろう。

 若き戦士や、それを疑う大人達への想いの歌。
 その歌の中に、たった一人・・・ 自分への強い想いを込めて、歌ってくれていることを。

 かつて他の誰よりもその人の歌を愛し、応援していたからこそ。
 100万の言葉や文字よりも、その歌の中に込められたものが、強く心を揺さぶった。

 まるでその人が隣に居て、自分を包んでくれているかのような暖かさ。
 頑張れと励ましてくれる、心強さ。

 正しくそれは、彼女があの日初めて彼女の歌を聴いた時の感動そのものではなかったか。

 彼女は、いつでも歌で励ましてくれていた。しかしそれを最悪の形で、裏切ってしまった。
 それでもそんな自分を、あの時以上に優しく包んでくれる彼女に、そのどこまでも暖かい心に。
 抑えられる涙などあろう筈もなく、声をせき止めることなど出来よう筈もない。

 少女に出来ることは、ひたすら子供のように、みっともなく号泣し続けることだけ。
 何度もごめんなさいと、ありがとうを、心の中で繰り返しながら。


アヤ・エイジア「はい、これ」

 そんな少女に、隣から手が伸びる。
 差し出された左手の平の上には、なんの飾りつけもない普通のハンカチが乗っていた。

アヤ・エイジア「これで涙をお拭きなさいな。お隣のお嬢さん」

 わざとらしく変な口調で、アヤ・エイジアは微笑んだ。


アヤ・エイジア「もう少しの間だけおつとめを我慢したら、お家に戻れるのよね。
        ハンカチは、それまでに返してくれればいいわ。
       ・・・そうよね? 看守さん」

女看守「ええ。模範囚ですし、情状酌量が効きましたからね。現場の状況他色々もあって・・・
    お父さんの方もだいぶ快方に向かっているそうで」

アヤ・エイジア「ふふ、よかったわね。お隣のお嬢さん。
       “ここを出たらあの人に会って謝って、恩を返したい”んだったかしら。
        ・・・お隣からいなくなっちゃうのは少し寂しいけれど、応援するわ」




  ◇    ◇






              歌やダンスで自分を伝えよう

             言葉だけでは言えない熱い気持ちを

              少しだけでも届けられたならば・・・ 





真「・・・・・・ 幸せ」




208 名前:新章/ボクの歌を聴け! 轟く魂 迷走Mind:2009/10/22(木) 21:30:48

○岬越寺秋雨→Dショッカー退治後、真を一瞬でいい感じに分析
○逆鬼至緒→アイドルについてはまったく知らないらしい
○アパチャイ・ホパチャイ→真の力量を時代劇、大河ドラマと混同
○アヤ・エイジア→真の歌の力に感心。“隣のお嬢さん”を励まし、ハンカチを貸す
○菊池真→過去の後悔をバネにしながら、歌に想いを乗せる
○高槻やよい→シング達はいい人達だとTVの向こうへ伝える
○如月千早→やよいの言葉に乗せて自分の考えを語る

【今回の新規登場】
○岬越寺秋雨(史上最強の弟子ケンイチ)
38歳・身長180cm・体重80kg。CV:小杉十郎太。「哲学する柔術家」「書・画・陶芸・彫刻の全てを
極めたと謳われる天才芸術家」の異名を持つ柔術家。あらゆる物を取り込み昇華し、「岬越寺流」と
呼ばれる独自の流派と化した。20年以上に及ぶ独自の鍛錬理論により、全身の筋肉をピンク筋(瞬発力
の白筋と持久力の赤筋両方を併せ持つ筋)へと変え、梁山の中でも比較的小柄だが逆鬼さえ一目置く
恐るべき筋力を誇る。冷静沈着・才気煥発で、独自の悟りを開いており、長老が居ない時は大体彼が
梁山泊纏め役。梁山面々の中で最も精悍な顔つきで若い女子高生から大人までもてる。兼一の各種修行
全体の監督的立場。普段は人当たりよく穏やかで理知的な性格に見えるがキレると一番恐く、血を見る
と性格が変わる。弟子の命さえ脅かし兼ねん危険修行も彼考案作が多く、兼一への師弟愛はかなりドS
気味。嘘をつく時髭をいじるという癖がある。寒いのが苦手。書画・陶芸・彫刻・演劇・音楽・茶道と
何でもこなす芸術家として著名な上、接骨医としても有能で、梁山泊裏で接骨院を経営し梁山泊の家計
を助ける(医師資格持ちで外科手術可能)。愛読書は罪と罰。囲碁将棋オセロも達人級、更に多種多様
の外国語、機械からくり作り技術も高く、兼一の修行道具を開発。その万能ぶりから「ドラ○もん」
(オヤツでよくドラ焼きを食べる)と兼一に呼ばれ助けを求められる。但しピーマンが嫌いで、よく
青椒肉絲のピーマンだけをアパチャイに食べさせている。

○逆鬼至緒(史上最強の弟子ケンイチ)
29歳・身長192cm・体重110kg。CV:石塚運昇。タイプ:動。あまりの強さで空手界を追放された
「ケンカ100段」の異名を持つ空手家。腕の筋肉が兼一の胴回りほどあり、その腕が出す突きはコンクリ
壁を簡単に貫き、強靭な足腰がなければ拳圧だけで人が簡単に吹き飛ぶ。強面で顔面に傷あり、素肌の
上に革のジャケットという外見だが、性格は面倒見がよい兄貴肌。それを悟られるのを恥じらいわざと
そっけない態度を多く取るが嘘が下手でモロバレ。子供におじさんと言われた時は「お兄さん」と訂正
させるなど愛嬌のある面も。酒と賭事好き、酒豪だが賭事は弱い。警察からたまの裏仕事(表沙汰不可
の要人護衛等)の依頼を受け梁山泊の収入源に。兼一に対し最初は「弟子は取らない主義」と突き放す
も、秋雨達が教える姿に触発されたか、自分から積極的に指導するように。その後は兼一の不在を寂し
がったり、傷つけた相手に激昂したり、師弟愛ツンデレ気味。達人の中では比較的歳が近いせいか兼一と
の関係は、師弟と言うより兄弟のよう。世界喧嘩旅行経歴有りゆえ英語堪能。かつて3人組で仕事して
いたが、殺人を嫌う逆鬼を殺そうとした二人を砂漠に生き埋めてチーム解消。文書化不明著作に
「逆鬼式ケンカ大原則」がある。 梁山では珍しく自家用車持ちだが「逆鬼よりも年上」な年代物で
エンジン始動にかなり時間を要する。姉がいるらしい。師は静の武術家。

○アパチャイ・ホパチャイ(史上最強の弟子ケンイチ)
28歳・身長201cm・体重120kg。CV石丸博也。タイプ:動。「裏ムエタイ界の死神」の異名を持つ
古式ムエタイの達人でタイ人。幼い時から命がけの裏の戦いを生き抜いている。梁山泊の中でも
際立って目立ち、よくアパチャイを見て悲鳴をあげる者も。長老が世直しの旅の際にとある南の国で
出会い、そのまま日本まで付いて来た。日本語は超いい加減で、普段カタコトなのに、間違った日本語
は流暢。逆鬼と歳が近い為か、日中は行動を共にしてる事が多く、競馬に付き合わされたりしている。
性格は純真で子供の様に無邪気、食事と子供、動物と遊ぶ事が大好き。「気は優しくて力持ち」という
表現ぴったり。その純真さゆえ子供や動物にはとても好かれ、動物と意志の疎通も出来る。鳥に頼んで
人探しをしたり馬と話し競馬で勝ちそうな馬を教えてもらったりも。一方、幼い頃から命懸けの戦いを
経験してきたが故に全力攻撃が条件反射になっており、手加減と非常に下手。度々組み手やミット打ち
で兼一を半殺し(一度は心停止)にさせている。後に「子供達と遊ぶつもりで教えればよい」という
長老の助言のもと、死なない程度には手加減出来るようになった。その人柄の良さと驚異的身体能力で
兼一達の通う荒涼高校バスケ部の助っ人をして逆転勝利したり、火事現場から赤ん坊を救う等、各方面
の人々から『謎の巨人』として生きた伝説である。口癖は「アパパパパ(笑い声らしい)」
「イ〜ヤバダバドゥ」など。よく兼一の妹のほのかとオセロで遊んでいる内、実力が達人級の秋雨
にも引けを取らない実力になっていた。 好きな食べ物はハンバーグ。

○アヤ・エイジア(魔人探偵脳噛ネウロ) 
3月27日生。26歳。身長165cm、服役前後含めCD総売上7億5千万枚。現在の楽しみは探偵さんと話す事。
CV:高山みなみ。本名:?沢綾。世界的知名度と不動の地位を築いた実力派歌手。プロデューサーの
台島拓郎とマネージャー大泉ひばりを立て続けに失い、警察の自殺の断定に疑問を抱いて事務所に
足を運んだとの事だったが、実際は彼女自身が犯人。彼女の歌声で脳を揺らす能力はネウロの興味を
引き、ネウロが人間の進化の可能性に気付くきっかけとなる。「世界で自分は独りきり」と思う人が
彼女の歌を聞くとダイレクトに脳を揺らされ感涙し、時には感動の余り失神するが、それは曲を作る
彼女も同じく自分は独りきりと思っていなければならず、皮肉にも台島、大泉と親しくなり孤独を癒さ
れ力を失いかけた為、彼らを殺害。弥子に捜査依頼したのは、罪悪感に苛まれた末の贖罪の賭けだった。
現在は贖罪の為服役中だが、心の整理がついた為か現在の歌は普通の人の脳も揺らすまで進化。歌で
人を癒したり、逆に失神させる事も可能。使えば脱獄も出来るが殺した2人への償いと自分の犯行と
心理を看破した弥子への敬意故に行わない(弥子を助けに一度脱獄したがすぐに刑務所に戻った)。
後には動植物にまで影響を与えるように(DS版ではUFOすら引き寄せた)。弥子を探偵さん、ネウロを
助手さんと呼び、ネウロが人間でない事を知る人物の一人(魔人と知ってるかは不明)。しばしば
物語の鍵の一人として再登場し、面会した弥子に事件解決の助言を与える。一時は彼女を虐めようと
襲いかかった女看守の井伊朋子とも、現在はそれなりに仲良くしている。



209 名前:新章/ボクの歌を聴け! 轟く魂 迷走Mind:2009/10/22(木) 21:32:08



 トアールホテル  レストランフロア



ドレビン「やあやあ、佐久間本部長にパタリロ殿下。
     それに765プロのプロデューサー、お揃いで」

 パタリロと佐久間、バンコランの前に現れる一人の黒人男性。
 元、闇の武器のロンダリング屋、ドレビンである。


パタリロ「おや」

P「あ、久しぶりでっす」

 不敵な笑みで寄ってくるドレビンに、パタリロとプロデューサーは
それぞれに反応を示した。


佐久間「ご存知で?」

 佐久間、そして無言のバンコランは同時に、プロデューサー達とドレビンを見る。


P「ええ、まあ」

パタリロ「腐れ縁というかな」

 二人の反応はそれぞれ微妙である。


バンコラン「ドレビン・・・ 闇の武器専門ロンダリング屋か」

ドレビン「おやおや。さすがMI6のOO(ダブルオー)要員。
     よくご存知でいらっしゃる」

 風体から動作に至るまで怪しいドレビンに対し、軽く睨みを利かせるバンコランに、
ドレビンは飄々とした体を崩さない。


バンコラン「一アイドル事務所のプロデューサーと知り合いというのも充分気になる所だが、
      それ以上にこの厄介な潰れ肉まんとどういう繋がりだ?」

パタリロ「誰が潰れ肉まんだ、誰が。
     心配せんでも、なんも悪巧みはしとらんわ」

バンコラン「どうだかな」

 これまでの付き合いが付き合いだからか、冷たい懐疑の視線を向け、
新しい葉巻を咥えるバンコラン。

 しかし、ポケットから取り出したジッポーライターは、指先をいくら動かしても
カチ、カチと乾いた音と小さな火花を出すだけで、その役割を果たそうとしない。 


バンコラン「いかん、オイル切・・・」

 バンコランが軽く肩を落とし、台詞を言い切るより前に

        (シュボッ)


 ドレビンは、右手の握りこぶしから人差し指と中指だけをピンと立てると、
左の手のひらにマッチの如く擦り付け、何もない指先に火を点らせるや否や、
バンコランの葉巻の先をチリチリと燃焼させる。

ドレビン「火種なら任せてくれ」

バンコラン「む・・・」

 
ドレビン「パタリロ殿下には俺の新しい商売のスポンサーとしてお世話になっててね。
     ああ、もちろんとても健全な慈善事業だ。安心してくれ」

 指先の火をフッ と一息で消し、ドレビンはスマイルで語る。


ドレビン「プロデューサーの方には、うちの・・・ え〜・・・ そう。
     知人をマネージャーに雇ってもらった恩があってね」

 ドレビンは途中で一瞬だけ目を泳がせるが、動作全てが道化的なせいで、
本気の躊躇なのかそうでないのかすらも怪しい。


ドレビン「プロデューサー。あの4人、ちゃんとやってるかい?」

P「それはもう、よくやってくれてますよ。
  おかげで俺も随分と楽になりましたから」




  ◇    ◇




     トアールレストラン

   レストランフロア  控えのスペース




雪歩「真ちゃん。センターお疲れ様」

真「うん。雪歩もお疲れ様っ!」

 ひとまずの出番を終えた二人のアイドルは、それぞれにタオルで全身の汗を拭き、
荒れた息を整え、火照った身体を休めていた。


雪歩「でもあと9分で交代だよね。どうしよっかな・・・」

真「そうだね。とりあえずマネージャーにお水もらってくるよ」

雪歩「あ。じゃあ私もレイジングさんにお水お願いしちゃおうかな」

 歌と踊りの疲れの中、雪歩はなんともいい笑顔を見せる。

 765プロとしては新鮮な、テストケース的なものとはいえマネージャーが
ついているという事に対して、少なからず嬉々としている所があるのだろう。

真「じゃ、また」

雪歩「うん」

 そうして真は雪歩と別れ、それぞれのマネージャーのいる場所へ歩んだ。



  ◇    ◇




      十数秒後

    控え室前  廊下




真「・・・あ、いた」

 控え室から近い廊下の端に、真担当のマネージャーは立っていた。

?????「・・・・・・・・・」

 マネージャーは、ぼ〜・・・っと空ろに窓の外の景色を見ている。
 その光景は、傍目から見ると、どこかしら現実味を外れていた。

 それは、マネージャー・・・
 彼女が日本人ではなく、米か英か欧州かの人だからというだけではない。
 
 服装こそ、いかにもTVスタッフが着ているイメージのままの、何の変哲もない
地味で活動的なTシャツとジャージズボン。

 だが、だからこそ逆に、それを着ている人間の体型、スタイル・・・
 一流のモデルかと疑うほどの均整の取れた理想的な肉体美をこれでもかと目立たせていた。

 ここまで美麗な体型だと、せめて顔は一般かそれ以下でなくては不公平と女性ならば思うだろう。
 しかしその女性は、その貌に至るまでが悉く美しかった。

 長く伸びた睫から、両の瞳、ぷっくらとした唇まで。
 その艶美とまで言える貌の美しさは、女の真ですら一瞬見惚れてしまうほど。


真「・・・・・・(う〜〜ん・・・)」

 それだけに残念なのは、彼女自身の在り様である。


 本当に、本当に綺麗な人なのだ。
 こと体型、女らしさについては人一倍コンプレックスを抱いている真にとっては、
尚更憧れを抱くに充分すぎるほどの。

 正直、自分よりもアイドル・・・ いや、それこそモデルとしてデビューすれば
かなり素晴らしい事になるとさえ真は思っている。

 なのに、それを

真「(ほんとに勿体無いなぁ。ボクなんかよりずっと魅力的なのに)」

 全て台無しにするほど、空気に溶け込むようにこの人は無気力で、
内面的な色気を、それはもう信じられないほど、まるで纏ってないのである。
 
 そして、まるで笑わない

 自分から笑うようになったら、それこそ爆発的な魅力を発揮してくれるに違いないだろうに。


 ・・・と、いつまでも考えていても仕方ないので、話しかけることにする。
 

真「ラフィングさーん」

 そうして真は呼んだ。その名前を。


ラフィング「・・・・・・ ・・・・・・? あ・・・ ご、ごめんなさい」

 ワンテンポ遅れて、彼女はようやく振り返る。
 

真「コンサート、聴いててくれました?」

ラフィング「え、ええ・・・」

 実際嘘ではない。
 彼女は真の歌は何があっても聴く。例え他に大事な仕事があっても、それを忘れて。

 彼女は今回もしっかり真の歌を最後まで聞いて、その十数秒後にこの廊下を通り、
たまたま目に入った窓の外の景色に立ち止まったのである。


ラフィング「何か、必要?」

真「うん。次の出番の前に、お水もらおうかなって思って」

ラフィング「お水ね」

 うん、と頷くと、ラフィングは傍らに置いていた携帯型のビニルウォーターボックスの
ジッパーを開き、多量の保冷剤の中から「六甲の天然水」とラベルのついた500mの
ペットボトルを2本ほど取り出した。


ラフィング「はい」

真「わあ、ありがと。準備いいね」

 爽やかな笑顔で感謝の言葉を述べつつ、早速受け取った一つ目のキャップを外し、
ゴクゴク音を立てて勢い良く飲み干した。

ラフィング「ん・・・ 嬉しいけど、これは私じゃなくて・・・
      あの、プロデューサーさんに・・・ 言われて」

 嬉しそうで且つくすぐったそうな顔で、ラフィングは正直に告白した。
 実際にこの水の用意の仕方は、プロデューサーの真マネージング指導の一つである。 


真「でも用意してくれたのはラフィングさんでしょ?
  なら、ボクの「ありがとう」はラフィングさん宛てだよ」

ラフィング「・・・・・・・・・ うん」

 恥かしげに、視線を外すラフィング。

ラフィング「・・・ あ。「宛て」っていったら・・・」

 すると、唐突に何かを思い出したように顔を上げる。


真「え? 何?」

ラフィング「プロデューサーから、手紙、渡されてて・・・ 届きたての」

真「手紙?」

ラフィング「うん・・・ 『3人目のファンから』だって」

 そういって、ラフィングのポケットから取り出される手紙。
 それは確かに、見覚えのある便箋で・・・


真「!!」

 驚きを見せた直後、真はすぐさま手紙をラフィングの手から慌て取っていた。
 焦りながらも慎重に便箋を開き、中の手紙を広げる。

 あの過ちの日から、彼女から送られなくなった手紙。
 何度自分が手紙で謝ろうと、決して帰ってこなかった返事。

 許されていないのだと思った。
 だから、本当はこの返事を読むのもとても怖い。

 でも・・・ 


真「・・・・・・・・・」

 食い入るように手紙を見つめる真の目が、上から下に動き、徐々に左へ移っていく。
 それが中央から、より左へと進むにつれ


真「・・・ っ・・・」

 溢れる涙が、一滴頬を伝うと、もう止まることはなかった。
 次々溢れ出る涙、漏れる嗚咽。 

 先程までの、ステージの上での凛々しく強い姿が嘘のように
 子供のように感情を曝け出し泣いている少女が、そこにいた。


ラフィング「真・・・ 辛いの?」

真「・・・っ ・・・・・・ ううん。
  そうじゃ・・・ ない、よ。すごく・・・」

ラフィング「そうだね。真・・・ 泣きながら、笑ってる。
      そういう笑顔も・・・ あるんだね」


 手紙には、色々なことが書かれていた。

 前半は、あの日の事件や、出せなかった手紙への後悔と謝りの言葉。
 中盤は、これまで何を想い、何をしていたのか。
 そして後半は・・・




          たくさんあなたを裏切ってしまったけど

               もし、こんな私が

     あなたの3人目のファンであることをまだ許してもらえるのなら

       また 勇気を出して あなたが歌うコンサートに行きます。

            あの頃と同じ、花束を持って。

        たくさんのごめんなさいと、ありがとうを言いに




  ◇    ◇




        回想

    ドクターHYの診療所




ドレビン「それでドクター。あの子達の具合はどうだい?」

ドクターHY「あなたの言うとおり、スネークとの戦いで彼女達の精神的外傷(トラウマ)。
       PTSDはかなり軽微になったのは間違いないようね。・・・科学上とても
       不可思議で、個人的には納得がいかないけど」

 確かに医者としては頭を捻る内容だろう。
 【スタミナキル】などという戦闘で、相手を倒した上にその心の傷を浄化するなどと。


ドレビン「・・・それで?」

ドクターHY「当然、心の傷が完全に癒えたわけじゃないわ。
       このまま日常生活は無理よ。だから・・・ 記憶に軽いロックを複数かけておいたわ。
       時間の経過と共に徐々に解けていく仕組みよ。
       精神のリハビリが順調に行けば、後々ロック無しでも日常で暮らせるでしょう」

ドレビン「ふ〜ん・・・ 後々ってのは、どれぐらい?」

ドクターHY「さて、数年後か、十数年後か・・・
       人の心は繊細で奥深いもの。つまり本人次第ね」

ドレビン「なぁ〜るほど」

 ふんふんと、ドレビンは頷いている。


ドクターHY「それにしても、意外ね」

ドレビン「何が?」

ドクターHY「あなたは、金と火種への興味以外では動かない人と聞いてたけど。
       わざわざ倒れたBB部隊を回収して、私に応急処置と延命処置を
       お願いするとはね。・・・しかも、大枚の医療費を私に振り込んで」

 冷徹な目でドレビンを一瞥する、ドクターHY。

ドクターHY「同じ戦争の犠牲者としての情、かしら?」

ドレビン「なあに、俺は洗浄屋だからな。
     戦場を巡り巡って血に汚れた汚い金(マネー)をロンダリングするのも
     また一興、って思ったまで・・・ さ」

 対しドレビンは、いつものように飄々と答える。


ドクターHY「フフ・・・ あなた自身がそういうなら、そういうことにしましょうか」

 肩をすくめ、ドクターは笑う。


ドレビン「それで今は、どんなもんかな?」

ドクターHY「色々見せたり聞かせたり試してるけど、イマイチね。
       例えば、ここから近いのはラフィングの部屋だけど・・・」

ドレビン「ふうん」

 ドクターHYが指し示す方向に、歩き出すドレビン。
 それにHYも足を揃え、二人はラフィングの病室に向かった。



  ◇    ◇




ドクターHY「あら・・・」

 部屋に入るなり、ドクターは目を丸くしていた。
 この女性においては、かなり珍しい表情である。

ドレビン「なんだどうした? ・・・お」

 部屋の中を見ると、ドレビンも納得した。


ラフィング「・・・・・・・・・・・」

 部屋の中のラフィングは、何かに僅かながらも反応し、目を輝かせていた。

 ドクターとドレビンがそれに驚きを見せるのは当然。
 なぜなら彼女は、まったく・・・

 今日の今日まで、何に対しても人形のように無反応で、
 ただ心臓が動き、息をしているだけ、それ以外に何もしていなかったのだ。


 だというのに、今の彼女は、ある一点に釘付けになっている。
 方向からすると、視線の先にあるのはTVだが・・・


ドクターHY「一体どんな番組・・・ ・・・・・・ へぇ」

 部屋に入りTVの画面を覗き込むと、ドクターの表情はとたんに珍妙なものになった。

ドレビン「おやおやぁ。これは・・・ 確か、アイドルの菊池真ちゃんかぁ。
     そういや今日はアイドルの歌番組をやってたっけ」

ドクターHY「音楽療法なら色々と試してみてはいたけど・・・
       これは・・・ 面白いわね。
       他のBBの子達にも試してみようかしら」

ドレビン「・・・・・・・・・ ふぅ〜ん。ほうほう、なるほど・・・」

 首を傾げたり、頷いたりを繰り返し。
 やがてドレビンは、いやらしくニヤニヤと笑い始めた。


ドレビン「こいつぁ、面白いことになりそうだ」




  ◇    ◇




         時を戻し

   トアールレストラン  中央




パタリロ「その後、僕の友人の占い師の助言も手伝って、765プロに手続き。
     BB部隊にひとまずマリネラ国籍を新しく用意し、今やマネージャー・・・ と。
     いやはやまったく、お前も面白いことを考えるな」

ドレビン「お褒めに預かり光栄ですねえ。
     プロデューサーや社長には無理を聞いてもらって感謝してますよ」

P「いやあ、的中率100%の占い師さんのお墨付きということでしたしね。
  人助けとなれば黙ってられませんし、今じゃウチの子達も彼女達を気に入ってくれてますから。
  今じゃ、いい人達を紹介してもらったなって思ってます」

ドレビン「そりゃあ、何より」

 満足そうに、先程から呑み続けているビールを、もう一口傾けるドレビン。


ドレビン「生きてるっていうのはぁ・・・ それだけで価値がある。
     っしてそれはぁ、巡り巡って、俺の儲けにも・・・ なるといいなぁ〜(ヒック)」

パタリロ「酔うのが早いヤツだなぁ」

P「ほんと、面白い人だ」




  ◇    ◇




 人の想い、思惑は巡り巡る。
 歌を通し救われる人。歌を通し巡り合う人。

 それは絆となり、繋がりとなり、新たな輪を紡いでいく。


ラフィング「よかったね、真・・・」

真「うん・・・ ありがとう」

ラフィング「わからないけど。・・・私も嬉しいよ」


 歌で人を励ます生き方を選んだ少女と、その歌で新たに生命を得た女性。
 二人の繋がりから新たに紡がれるは、如何なる物語なのか。

 今はまだ、分からない。




210 名前:新章/ボクの歌を聴け! 轟く魂 迷走Mind:2009/10/22(木) 21:32:37

○菊池真→休憩。届いた手紙に涙。
○ラフィング・オクトパス→真のマネージャーに。記憶ロックのせいかのったり性格に。
○ドレビン→BB部隊を裏で回収していた。
△ドクターHY→BB部隊の治療をしていた。
○ジャック・バルバロッサ・バンコラン→ドレビンに訝しげ

【今回の新規登場】
○ドレビン(METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS)
CV:藤原啓治。ドレビンと言う名は非公式の武器商人の事で、彼はその893人目。SOPシステム施行
以降、システム登録していない小規模PMCや現地民兵などを顧客に商売を始め、その活動地域は世界
各地にまで広がっている。武器洗浄(ガンロンダリング)を扱う唯一の業者であり、ATセキュリティ
の社員という立場を利用した武器の横流しや、内部コネクションを通じた記録の改竄などで裏稼業を
支えている。SOPシステム施行前の裸の銃や、ID銃のID認証チップを偽造チップと交換し、ID認証
のプロセスなしで使用可能にする。幼い頃にウガンダ内戦で肉親を失い戦争孤児となった後、反政府
武装勢力であるLRA(神の抵抗軍)に誘拐され、少年兵として戦場で育った。その後愛国者達に拾われ、
アメリカに渡りビジネスを仕込まれ、武器洗浄人の一人として全世界の戦場に派遣された。彼が
ソリッドに接触したのは愛国者達の指示で、愛国者達の目的はドレビンを通じて新たなFOXDIEを
スネークの体内に注入する事だった。旧ナノマシンの抑制剤にこれを混入し、スネークをベクター
(運び屋)にする。同時に、リキッド・オセロットと対立関係にあるソリッド・スネークの支援
(バックアップ)も指示されており、以降何度もソリッドの前に現れることとなる。BB部隊についても
詳細を知っており、ソリッドがBB部隊を倒すと通信で彼女達の生い立ちを語る。

○ラフィング・オクトパス。(METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS)
CV:相元晴名/飯塚昭三。笑う蛸。身につけたスーツの外皮はオクトカムと同様の機能を持ち、
頭部に固定された4本のマニピュレータを自在に操る。オクトカムによる擬態や罠を利用した攻撃を
得意とする。ヨーロッパでは珍しく蛸を食べる習慣があるため、「悪魔の村」と忌み嫌われていた
小さな集落で生まれ、村を襲ったとある武装集団に捕まり、自身の命と引き換えに、笑いながら肉親
を殺せと命じられたことがトラウマになっており、常に高笑いし、「笑え」と言いながらスネークを
襲った。素顔は、銀髪のショートヘアの美女。スネークとの戦いで傷付いた心を浄化され、その命を
永らえさせる。その後、彼女らを裏でドレビンが回収し、保護。ドクターHYの
助力を経て、精神安定のため記憶をロックさせた上でラフィング・ジャーヴィスと名を変え、戦い
から離れた場所でマネージャー業を行いながら精神のリハビリにつとめている。



211 名前:新章/後日譚・広がる歌と続く物語:2009/10/22(木) 21:36:51



     ドクターHYの秘密病棟  4人部屋


雪歩『わあ!? なんですかいきなり!?』

ジョニー『「なんですか」じゃねーよ。せっかくの歌宴に混ざらない理由はないだろ?
     歌を愛するヤツは世界の区別なく今こそ歌って踊って演奏するべきってもんだ!!』

あずさ『あ〜、なるほどぉ。そういえばそうですね〜〜』

ジョニー『他にもハジけたいヤツは上がってきな! 全世界に轟かそうぜ!!
     俺達の熱いハートを! パッションを!! せっかく五界、過去未来の歌手や
     ダンサーが揃ってるんだ、協奏曲(セッション)しなくちゃもったいないぜ!!』

フェリシア『わ〜〜い!! あたしも踊る〜〜〜!!!』


 世界の各地に発信される、騒がしい声と、歌。
 それはさながら酒場のその場で集まった他人達が歌う雑多な喧騒歌のようで、
それでいてまた、驚くほど協和し合い、美しく、力強い。

 コントの様に可笑しく、そしてどんな劇歌よりも胸を打つ。

 その不思議さと魅力、そして心への響きようは、正に全ての世界、時代、次元が集まった
歌といえるものだった。

 これを見、また聞いて、彼らに敵対心や恐怖心を抱く者などどこに現れようか。
 いや、そんな感情を欠片でも抱こうとすること自体が馬鹿らしくなるというものである。


 765アイドルを使っての、歌によるメッセージ。
 そこまでは完全な佐久間の思い通り。

 だが、五界のあらゆる英雄達が集まった場所では、全てを思いの通りに進めるなど、
どだい無理な話というものだ。

 ジョニーの乱入をきっかけとして、予測と結果は大きく違えたものとなった。
 想定されていた『大成功』を大きく逸脱し、百点は万点すらも過小と言えるものとなる。


 そんな“予想外”の与えた影響の一つは、僅かながらもこの秘密病院でも・・・



キャル「あっはっはっは! 最高だな。ホント最高だ」

 TVの前で腹を抱えて大爆笑しているのは、キャル。
 玲二もエレンも、そして少し離れたところに黙し座しているティスタもまた、少なからず
笑顔でTVの映像を見ていた。

 世界で有名なアイドルのコンサートと新聞のTV欄に載っている番組が、
まるで仮装コンサートだ。それもとびきりファンキーな。

 半裸の猫娘やらRPGの吟遊詩人みたいなヤツやら・・・
 そしてそんなヤツらが歌ってる歌が、とびきり最高にクールに感じている自分が、
たまらなく可笑しい。

 何もかもが楽しくて、とにかくいい気分だった。
 こんなに心から笑ったことは、ここしばらく記憶にない。


(ヒュンッ───!)


 ・・・と、ケタケタ馬鹿笑いをしている中、
 キャルの左耳が、僅かに聞こえる風を切る音をとらえる。


キャル「おっと」

 キャルは鍛えられた動体視力で軽く避け、右手で飛来物をすかさずキャッチする。
 右手に取ったそれの正体を、その目で確認すると・・・

キャル「(あ、あたしの飲んだやつ)」

 それはトリエラの部屋に置きっぱなしにした、ジュースの缶だった。 
 ご丁寧なことに、どこで用意したのか、中身がこぼれないための便利キャップまでついている。


キャル「・・・ちなみに聞いとくけど。
    この缶をあたしに投げてどういうつもり?」

 後ろにふり返るよりも前に、キャルは後ろにいるであろう人物へ尋ねる。

トリエラ「・・・・・・・・・・・・」

 そして飛来物の飛んできた方向を見ると、予想通りの人物が投球後のフォームで睨んでいた。 

 まだ心身ともに回復していないのだろう。足元は心許なく、それを支えるための左手に握る
松葉杖は、小さく震えていた。


トリエラ「・・・・・・お前が口をつけた缶なんて飲みたくないの。
     そのキャップごと、お前にやる」 

キャル「それでわざわざ配達とはご苦労さん。
    ・・・思ったより早かったな」

 まるで返しに来るのがわかっていたかのように、キャルは言う。


キャル「ま、お前の意向はわかったから無理すんなよ。ガリガリ。
    これで体調崩されてブッ倒れでもされたらあたしがドクターに殺される」

 シッシッ、と。缶を持ってない方の手で帰れの手合図。


トリエラ「・・・・・・・・・・・・」

 よたよたとした足取りながら、黙って後ろを向くトリエラ。
 それを見てキャルもTVの方に向き直ろうと・・・


トリエラ「あなたこそ早く治しなさい。
     今度は私がボコボコにして、3日前の借りを返すから」

 思ったところで、トリエラの口から
 驚く内容の宣言が放たれた。
 

キャル「・・・・・・ へぇ」

 最初の数秒は目をぱちくりとさせていたが、
 やがてキャルはガキ大将のようにニヤリと笑う。

キャル「魂抜けた人形ヅラしてたクセに、言うようになったじゃねえか。
    ・・・いいぜ。ドつき合いでもドンパチでもいくらでも付き合ってやるよ」

 左手指を放送の出来ない挑発ポーズにして、キャルは挑戦状を受け取った。

トリエラ「・・・・・・・・・」

 そんなキャルの姿を一瞥しながら遠ざかるトリエラは無言だったが
 ただ一瞬・・・ 笑ったようにも見えた。


玲二「あの子は、もう大丈夫そうだね」

 優しい顔で少女を見送る玲二に

エレン「・・・・・・・・・なんだか、キャルに似てるかも」

 と、さらりと呟くエレン。

ティスタ「・・・・・・・・・」

 ティスタの方は、無言で出口の方を向いて祈りのポーズをとっている。
 トリエラに神の加護でもつくように祈ってでもいるのだろうか。


キャル「ふぁ〜〜〜あ・・・」

 そんな彼らをチラリと見渡して、キャルは大きくのびながら欠伸を一回。
 そして窓の外に目をやると、太陽が少し眩しい。




  ◇    ◇




 少し未来の話をすれば
 少年少女の戦士達にばら撒かれた誤解という名の疑念が消え去るのに、そう時間はかからなかった。

 もちろん、その日、次の日、すぐに全部消えたわけではない。
 それでもコンサートの開催の日を始まりとして浸透した波は、静かに、そして確実に
 やがては、まるで最初から存在していなかったかのように、朝霧の如く掻き消えていった。

 そう。夜の闇が、太陽に照らされ終わりを迎えるように・・・


 遠からずな未来。いや、あるいはその次の瞬間から
 彼らはまた、無責任な誰かの願いや過ち、悪意の尻拭いに駆り出され、旅立ち、
命を掛けた戦いに赴くのだろう。

 そしてまた一堂に集まり、歌い、笑いあう。

 彼らの物語は、続いていく・・・・・・



212 名前:新章/後日譚・広がる歌と続く物語:2009/10/22(木) 21:37:12

○ジョニー・シデン→アイドルのコンサートに乱入。
○トリエラ→缶を渡し、借りを返すことを宣言
○キャル・ディヴェンス→コンサートに笑い、トリエラの挑戦状を快く受け取る

【今回の新規登場】
○ティスタ・ロウン(TISTA)
主人公。内向的で気弱な性格。通称「ティセ」。普通の学生だったが12年前己を虐待する両親が
麻薬中毒の強盗に殺された事件事件(本人は「パパとママを殺して」と祈ったからと思い込んでいる)
を機に退学、修道院へ。本名「ティスタ・ロックウォール」。その後修道院に保護され、己と同じ
孤児達と暮らし、後にブラザー・ロウンに引き取られ、彼を父親代わりに育つ。教父の死後、彼の
左目を移植され、New York Cityの死神、暗殺者"シスター・ミリティア"として畏れられ、教会から
の依頼で「聖務」と称し犯罪者を暗殺。主武装リボルバー・ライフル「I.H.S.V-P3」、副武装
フルオートマチック・ピストル「I.H.S.V-センチュリオン」。戦闘コスチュームはサングラスに黒
尽くめ衣装。暗殺の際、瞳に十字線が入り、その能力でスコープ無しで狙撃可能。ハンドガン使用に
限り、相手の眼球を撃ち殺害する傾向があった。ある任務中に標的の罠により騎士位階を剥奪。その後、
復帰する為にアーティーを殺害を試みるも、寸での所で思い止まり、自ら命を絶とうとするもティスタ
に代わりアーティーを射殺しようとした修道士の使徒と相撃ちになり重傷(その際右目を失明)。
その後120年の懲役に服す。刑期の3分の1を経過した時点で状態・状況を見て24時間監視下での仮釈放
予定で、助祭司法取引によっては仮釈放が早まる可能性が示唆された。
現在は刑期短縮取引により、ファントムと行動を共にしている。


○吾妻江漣(エレン)=アイン(Phantom -PHANTOM OF INFERNO-)
秘密結社「インフェルノ」のトップスナイパー・ファントムの称号を持っていた少女。
東洋系の風貌だが、国籍、本名は不明。元はモンゴル出身で、ソ連崩壊の騒動で孤児になり
人攫いによって中国の娼館に売られた所をサイス・マスターに引き取られた模様。
過去の記憶を消去されて“アイン”の名を与えられ、組織最強の暗殺者として活動していたが
同じく記憶を失いながら、とある切欠で取り戻した吾妻玲二と共に組織から逃げ出すことになる。
上記の通り、本名は記憶と共に失っており、エレンの名は玲二に与えられたものである。
しばらくは戦いと関係のない世界に身と心を休めていたが、世話になっていたトレーズへの
恩義と自分なりに守りたい人達の為、玲二、キャルと共に再び血と硝煙の世界に身を投じる。


213 名前:新章/外伝 地獄兄弟とスーパー・ドクター:2009/12/19(土) 11:25:06
 
 
 
 ――――遥かなる天より豪雨が降り注ぎ、雷鳴が轟く深夜。

 とある病院の一室において、二人の男性・・・ もっと正確に言うのであれば、
 一人の若い男を背に抱えた、黒い服装に身を包んだ別の男性が、
 一人の白衣に身を包んだ・・・ 医者と思しき男の眼前に立っていた。

 黒い服装の男に背負われた若い男は、彼もまた黒い色のスーツを身に纏っている。
 その身体には、彼を背負っている男が自らの衣服を破って、包帯替わりに用いたと思しき
 ボロボロの布が何重にも重ねられて巻かれており、そこからは赤黒い血が滲み出し、
 布が吸い切れなかった分が、彼の身体を赤く濡らしていた。
 その顔からは、大分生気が失われているように感じられた。

 闇に染まったような黒い服と、清潔感を感じさせるような純白の白衣・・・
 一見対照的な服装に身を包んだ二名+一名であったが、第三者がもしこの場に居るとしたら、
 両者の衣服に覆われて隠れている、無駄な筋肉や脂肪の削ぎ落として絞り込み、数多の実戦を
 経て鍛え上げられた肉体のうねりを、感じ取ることができそうであった。
 
 
 部屋の窓枠に先程まではまっていた硝子ガラスは、粉々になって床に散らばっており、
 遮蔽物を失った窓は、外の冷たい空気と、降り注ぐ雨をそのまま部屋へと通している。

 黒い服を身に纏った男の身体には、硝子の破片が幾つか突き刺さったままに
 なっており、露出した肌からは血が少しばかり滲んでいた。
 
 
 そして、黒衣の男と対面した、彼と同じく実用的な絞り込まれた肉体を保持する
 白衣の医者・・・ 鎬 紅葉は、彼らが元ZECTの一員にして、現在は組織から離れた者達・・・
 仮面ライダーキックホッパー・・・ 矢車 想
 仮面ライダーパンチホッパー・・・ 影山 瞬である事を、己の知識から見抜いた。
 
 
矢車「あんた・・・ 医者だろ?」

紅葉「・・・私に何の用だ。 矢車想・・・ 仮面ライダーキックホッパー
 
矢車「・・・俺の相棒を、助けてほしい」
 
 
 
  ◆    ◆    ◆    ◆
 
 
 
 ――――時は流れ。
 
 
 
 
     日本国内某所 石神井総合病院


 日本国内の某県に、石神井総合病院という病院が存在している。
 そんな当病院には、今日もまた変わった患者が来ているようで・・・

 病院の一室において、白衣のナースと思われる若い女性が、患者の基本情報を収集するように
 言われたのか、ソファーに腰掛けている黒い服を来た二人組の男・・・ もとい、矢車想と影山瞬に対し、
 色々と質問を繰り返していた。 ・・・最も、一筋縄には行っていない様ではあるが。
 
 
Ns「―――まず、お名前は?」

矢車&影山「・・・・・・忘れた」

Ns「・・・・・・忘れたんですか?」

矢車&影山「・・・・・・はい」
 
 ・・・そんなやり取りが暫く続き、診察していた女性看護師・しえは、幾つか文章を書いた診察書を閉じると、

しえ「―――解りました。それでは、少し待っててください」

 そう言って、矢車と影山を待機させ、部屋から出て行った。
 
 
 
しえ「・・・ふう」

???「どうかしたの?」

 部屋から出たばかりのしえが振り向くと、そこには病院に努める女医であり、
 彼女の上司である彩園すずが目の前に立っていた。
 
しえ「・・・先生、あの患者さんですが・・・ やっぱり記憶喪失みたいです」

すず「・・・そう」

しえ「あの人達の身元は、まだ解んないんですか?」

すず「今現在、総力を尽くして調べている所よ。3日前に、近くの山の麓の雑木林で、
   全身に怪我を負ってる所を見つかって、この病院に搬送されたらしいのよ。
   怪我は2日・・・ 丁度昨日でほぼ完治したけど、どうやら記憶を失ってるみたいね・・・」

しえ「何か・・・ 身元が解るような物品は無かったんですか?」

すず「腰に変なベルトを着けていた以外は、ポケットの小さい財布に5円玉が一つだけ
   入ってただけで、手がかりになるようなものは何も無かったわ」

しえ「・・・ベルト、ですか」
 
 
 
神崎「先生、急患です!」

 廊下の奥から、別の女性看護師が声を上げ、駆け寄ってきた。

すず「・・・私は行くわ。あなたは診察室に戻って」

しえ「は・・・ はい」

 そう言って、すずは女性看護師と共に、廊下の奥に向かっていった。
 しえはそれを確認すると、診察室の扉を開けたが・・・

しえ「・・・・・・あれ?」

 ――――そこには、すでに二人の姿は無かった。
 
 
 
  ◇    ◇    ◇    ◇
 
 
 
 その頃、ホッパー兄弟は病院の廊下を歩いていた。
 失った記憶はというと・・・・・・

矢車「俺の名前は・・・ そうそう、矢車だ。ようやく思い出したぜ・・・」

影山「で、俺の名前は・・・ そうそう、影山だ。思い出せて良かったね、兄貴」

 ・・・・・・すっかり取り戻したようだ。
 ついでに、腕には物色したと思われる食料品の箱が幾つか抱えられている。
 彼らは箱を一個開き、そこから病院食を二人で摘みながら廊下を進んでいる。

矢車「さてと・・・ 名前も思い出したし、さっさと帰るぞ」

影山「うん、そうだね・・・」

 そう言って歩いていた二人の前に、一人の男性医師が姿を現した。
 その医師は二人に気付くと、彼らに近寄って話しかけた。
 
 
医師「矢車想に、影山瞬・・・ こんな所で会うとは思わなかったな」

 彼らに声をかけた医師の姿を見た矢車は、少し驚いたような表情を浮かべた。
 ・・・何故なら、その医師は、あの豪雨の夜に出会った、あの「鎬 紅葉」であったのだから。
 首筋にまでかかったロングヘアに、医療関係者とは思えないほどの完成された肉体・・・
 どこからどう見ても、「鎬 紅葉」本人に相違なかった。見間違えるはずもない。

矢車「・・・先生、あんたはここの病院の勤務だったのか?」

紅葉「いや、後進の指導も兼ねて、近々講演を行う為に招かれたのだが・・・
    ・・・つい先程、近くの市街で、時空クレヴァスから迷い込んだ、異世界のモンスターが
    出現した。機動隊の応戦でモンスターは撃退できたんだが、民間人が数名重軽傷を負い、
    死傷者も二名ほど出てしまった。偶然、その現場に私も居合わせていてね。
    最寄りの病院であるここで、医師として協力している」

 矢車と影山はそこまで聞くと、彼の履いている靴が、異様に傷だらけである事に注目した。
 “現場に居合わせた”と言ったが・・・ 一人の医者であると同時に、世界最大のホワイトタイガーを
 素手で打ち倒し、その“握力”だけであれば、かの“地上最強の生物”・・・ 多くの人外や魔王さえも
 凌駕する戦闘能力を有し、江田島平八や孫悟空、ゴルゴ13と言った者達とも比例する実力を有した
 存在として知られる「範馬勇次郎」にも匹敵し、それを呻らせる程の実力を持つ地下闘技場の戦士で
 あった彼ならば、モンスターの数匹でも返り討ちにしたに違いない・・・ 二人はそう確信した。
 
 
紅葉「・・・そういう訳だ。今は忙しいのでね」

 そう言うと、紅葉は二人の傍らを通り過ぎようとする。
 そして、彼が二人の背後へと出たとほぼ同時に、矢車は彼に声をかけた。
 
 
影山「・・・先生」

 影山の言葉に、紅葉は振り向かずに立ち止まって返事する。

紅葉「・・・何だね」

影山「あの夜は・・・ 俺を助けてくれて、ありがとうございます」
 
 
 
  ◆    ◆    ◆    ◆
 
 
 
 ・・・そう、あの豪雨の夜、影山 瞬の命は風前の灯であった。

 ネイティブへと変貌しつつある細胞に強力なダメージを与え、壊死させることで彼のネイティブ化は
 引き留めたものの、結果的にキックホッパーの強烈な一撃は、彼に相応のダメージも与える結果となった。

 ・・・そして、矢車は影山の身体を抱え、一人の医者の元へと走ったのだ。
 そう、ZECTに所属していた時代にその名を聞いた、日本中の医者にその名が知られている
 医学界の権威にして、地下闘技場の戦士でもあった男・・・ 鎬 紅葉の元へ。
 
 
 
  ◆    ◆    ◆    ◆
 
 
 
 矢車と影山は、病院のとある窓から飛び降ると、草むらに着地する。
 それを見計らったかのように、周囲の草陰から、一匹の異形の怪物が姿を現した。
 怪物は二人を視界に見据えると、その口から涎を垂れ流しながら、牙を剥いた。
 
矢車「・・・市街に現れた奴の、生き残りか」

影山「やっちゃおう、兄貴」

矢車「ああ・・・ 行くぞ、相棒」
 
 
 ―――――そして、二人の手に、それぞれのゼクターが握られる。
 
 
 
矢車・影山「「――――変身!!」」
 
 
 
 
 
 キックホッパーの資格者・・・ 矢車 想。

 パンチホッパーの資格者・・・ 影山 瞬。
 
 
 闇の中を生きようとも、彼らもまた“仮面ライダー”である。
 
 
 
 


214 名前:新章/外伝 地獄兄弟とスーパー・ドクター:2009/12/19(土) 11:34:48
△矢車想&影山瞬→トラップコースを打破し、大怪我と記憶喪失も四日で回復。
 影山はかつて鎬紅葉に命を救われており、石神井総合病院において偶然再会した。
○しえちゃん→矢車と影山の情報を聞いていたが、彼らにトンズラされる。
○彩園すず&神崎美智子→急患に向かう。
○鎬紅葉→後進の指導も兼ねて講演に招かれたが、偶然異世界のモンスターの襲撃に遭遇。
 機動隊と協力してモンスターを返り討ちにし、石神井総合病院で急患に対応する。

【今回の新規登場】
○しえちゃん(かってに改蔵)
石神井総合病院に勤める女性看護師。動物好きの普通の人物。

○彩園すず(かってに改蔵)
石神井総合病院に勤める精神科の女医。
かつて同病院に入院し、現在は退院した勝改蔵、名取羽美、坪内地丹の主治医でもあった。
担当患者の退院後の生活の為にお金を溜め込むなど、結構面倒見がいい。

○神崎美智子(かってに改蔵)
石神井総合病院に勤める女性看護師。アニメや漫画の大好きで、私生活の
趣味(同人活動)を職場ではひたすら隠そうとしている典型的な「隠れオタク」。

○鎬紅葉(グラップラー刃牙)
医者兼格闘家。別名「スーパー・ドクター」。身長184cm、体重131kg。 CV:宮本充
日本中の医者にその名が知られている医学界の権威で、地下闘技場のドクターも彼を知っていた。
鎬昴昇の実兄であり、彼を馬鹿にするような発言も多いが、内実かけがえのない弟として溺愛している。
普段は端正な顔立ちと紳士的な振る舞いで女性看護士たちの人気の的になっている優男だが、屈強な
「超肉体」を持つアスリートの一面を持つ。当初は人の痛みを何とも思わない冷酷な医者であり、膨大な数の
犠牲者を伴う不正な治療によって人体を研究し、転移しかけた癌を数十秒で摘出する技術を会得していた。
その技術は人体の治療・修復のみならず人体の破壊にまで及び、医学を応用した格闘術をもって戦う。
最終的には地下闘技場で範馬刃牙に敗北したが、彼の行った人体実験の犠牲者たちに助けられ、改心した。
現在は一線から退き、怪我をした格闘家を治療する役割に徹している。ジャック・ハンマーに骨延長を施したり、
花山薫の脳髄から弾丸を抜くという手術も手がけている。

215 名前:新章/決意の変身:2010/03/24(水) 16:17:36


 オフィス街に立ち並ぶ多数のビルディングの中でも、
一際目立つのが佐野商事のビルである。

この会社の社長は事業を立ち上げると同時にそれを成功へと導き、
一代にして巨万の富を手に入れた男だった。

しかし、彼は数か月前に病によって死去、その後遺された者達は遺言に従って、
二代目社長の座を彼の息子に託すことになった。

 先代の社長とその息子は折り合いが悪く、
息子の方が家を出て行ってからは長い間音信不通であったが、
遺言の内容から父親が最期まで自分が戻って来てくれると信じていた事を知った息子は、
彼の遺志を継いで社長の椅子に就くと決意した。

 息子の名は佐野満。

かつて行われたライダーの戦いに仮面ライダーインペラーとして参戦、
自分にとっての幸福を求め続けたが、運命に弄ばれた結果、命を落とした青年である。


  <佐野商事 社長室>


佐野「……」

 佐野が部屋の窓から眼下に広がる街並みを眺めていると、ドアをノックする音が聞こえてきた。

見ると、一人の社員が室内へ入ってくる。

社員「失礼します。社長、OREジャーナルの記者の方がお見えです」

佐野「分かった。お通しして」

社員「かしこまりました」

 社員が一礼して退室すると、入れ替わるようにして茶髪の男が佐野の前に現れた。

???「よう。元気そうだな、佐野」

 OREジャーナルの記者を名乗るその男、城戸真司の顔を見て佐野は笑みを浮かべる。

佐野「先輩! お久しぶりです!」

 懐かしい人物との再会を果たした佐野は、
嬉々とした様子で真司を部屋の中央に設置されたソファに座るように勧めた。

真司「忙しい所に悪いな」

佐野「とんでもない。
    俺だって先輩と会って話をするの、楽しみにしてたんですから」

 真司の言葉に、佐野は自らもテーブルを挟んだ反対側のソファに腰掛けながら答えた。

佐野「それより聞きましたよ、先輩。この間の大活躍!」

真司「こないだの?」

 一体いつの活躍の事を言っているのかしばらく考え込んでいた真司であったが、
彼が答えを導き出すより早く佐野の方が言及してきた。

佐野「はぐらかさなくてもいいっすよ。
    Dショッカーの連中を相手に一歩も引けを取らず、
    一人で全滅させたって話は俺の耳にもちゃんと入ってるんですから」

真司「ああ、あの時か」

 そこまで言われて、真司はようやく彼の話に該当する記憶を探り当てた。

 確かに真司は数日前に霧島美穂と共に訪れた遊園地で、
ショッカーの再生怪人や戦闘員を相手に戦った。

だが、あの時の戦いで活躍していたのは誰かと言えば真司ではなく、
むしろサバイブの力を行使して怪人ガザミスナイパーを寸での所まで追いつめた美穂の方であろう。

佐野「流石っすね先輩! いやぁ、お強い!」

 恐らく彼も美穂の話を独自の情報網を通じて知っているに違いないのだが、
何故かその事に触れようとはしなかった。

単純に、佐野と美穂との接触がなかったから話題に出さないだけなのか。
あるいは目の前にいる真司の顔を立てる為に、敢えて黙っているのかも知れない。

真司「…お前におだてられてもいまいち喜べないな」

 本来の真司ならこういった賞賛の辞を述べられた際には素直に喜んでいる筈なのだが、
相手が佐野満の場合なら事情は違ってくる。

 かつて佐野は、敵対関係にある他のライダー達に取り入り、
ライダー同士の戦いを自分にとって有利に展開させようと画策していた。

良くも悪くも素直な性格である真司は、彼の甘言にすっかり騙された挙句、
手痛い裏切りを受ける羽目になったのである。

このような経験からか、佐野から賛辞を呈されると、
何か裏があるのではないかと真司はつい身構えてしまうのだ。

佐野「嫌だなぁ、勘ぐらないで下さいよ。
    俺はもうライダーじゃないんですから、先輩をのせてどうこうしようだなんて気はありませんって」

 自虐的な笑みを浮かべて、佐野が言った。

ライダーの戦いに敗退して死亡し、
その後神崎士郎の手による戦いそのものの「リセット」の影響によって、
この世に再び生を受けた彼がライダーである事を辞めると神崎に進言したのは、
当時の関係者なら全員共有している事実であった。

ただ、戦線を退いた後でも独自の判断により、
ライダー同盟などの組織へは資金面の援助を行う形で、
多少は協力を申し出ているのだという。

真司「そういやお前、インペラーのデッキはどうしたんだ?」

佐野「あれなら、神崎さんに返還しました。
    何でも『しかるべき後継者に託す』とかいう話で、ライダー同盟の方に回されてるみたいですよ」

真司「へぇ。って事はいずれはその後継者ってのが俺達と一緒に戦ってくれるのか」

 真司は期待感を込めて呟いた。

 遊園地での件が証明しているように、
Dショッカーの連中はその最たる障害となる仮面ライダーを抹殺すべく、
次々と新たなる戦力を送り込んできている。

そればかりか、Dショッカーと同盟関係を結んでいるという冥王グランドマスターの手の者など、
独自の目的を持って暗躍する組織なども姿を現わしつつある。

 こうした闇の勢力と渡り合う為には、味方は少しでも増えてくれた方がいい。

佐野「だといいですね」

 などと、彼らが近況を報告しあっていると、扉のノック音と女性の声が聞こえてきた。

???「満さん、入ってもよろしいですか?」

佐野「あ、百合絵さん。どうぞ」

百合絵「失礼いたします」

 声の主である女性=佐野百合絵は、
片手にティーカップを載せたトレイを抱えたまま、
しとやかな所作で社長室の中へ入って来た。

その名字からも推察出来るように彼女は現在の佐野の妻、すなわち社長夫人にあたる人物である。

百合絵「真司さんに、お茶でも飲んでいただこうと思いまして」

 そう言うと、百合絵は手慣れた所作でティーカップを真司の前に差し出した。

こうした所からも、彼女がいかに気配りの出来る人物であるかを窺い知る事が可能となる。

百合絵「お口に合うかどうかわかりませんが、どうぞお召し上がりください」

真司「あ、いえ、どうかお構いなく…」

 終始穏やかな微笑みを浮かべて応対する佐野夫人を前にして、真司はついその表情を緩めてしまう。

押しの強い性格の美穂や桃井令子、
ミステリアスな性格の神崎優衣や島田奈々子など、
周囲を癖のきつい女性達に囲まれているせいか、
彼女の醸し出す柔和な雰囲気が真司にとってはかなり新鮮に感じられるのだ。

真司「…しかし、お前もすっかり勝ち組になっちまったなぁ。
    大企業の社長の後継ぎになって、美人の奥さんがいて…。ほんと、大した出世だよ」

 羨ましげに呟く真司に対して、佐野ははっきりと返答した。

佐野「俺自身は昔も今も変わってません。
    そう見えるとしたら…、それは百合絵さんのお陰ですね」

百合絵「まぁ、満さんったら…」

 佐野の台詞を受けて、百合絵は照れくさそうに俯いた。

 だが実際に、百合絵は妻として彼を支えているだけに留まらない。

夫がかつて仮面ライダーの一人として戦っていたという事実も知っているし、
一企業の社長としての振る舞い方や嗜み、
更にはビジネスの席でいかに立ち回るべきかといった事への手解きを施すなど、
秘書としても献身的に面倒を看てきているのだ。

無論、短期間でそれらを身に着けた佐野自身も相当な努力をしたのには相違ないだろうが、
元々は一介の小市民であった彼を、
ここまでのレベルにまで引き上げるのに成功した百合絵の頑張りは、
やはり注目に値する。

真司「そうか…。
    ま、それでも今の状況はお前が自分の意志で掴み取った物なんだから、
    胸を張って社長の仕事をこなして行けばいいさ」

 真司は何度も頷きながらしみじみと言い放った。

そんな彼の様を見た佐野の脳裏には、
「どう見ても自分のやるべき仕事も出来ていない先輩に言われても説得力がない」という考えが浮かんだが、
それを口外する事はしなかった。

 もっとも、かつての彼なら弾みでうっかり漏らしてしまい、
真司の不興を買っていたかもしれないが。

佐野「そうでしょうかね…」

 そう言うと佐野は腕時計に目をやった。

時計の針は、真司との面会に充てられた時間が残り少ない事を如実に示している。

 もう少しこの見習い記者との会話を楽しみたいというのが本音だが、
今となっては佐野も多忙な身なので、あまりのんびりしてもいられない。

佐野「あ、すいません先輩。
    今日はこれから人と会う約束があるんで、そろそろ…」

真司「おっと悪い、すっかり長居しちまったか」

 慌てて立ち上がり、その場の後始末を始める真司。

百合絵「また、いつでも遊びにいらしてくださいね」

 彼も真司さんと会うのを楽しみしていますから、
と、当の佐野には聞こえないように百合絵は部屋を出ようとする真司に囁きかけた。

真司「ええ、その時はまた連絡させてもらいますよ。
    じゃあな、この幸せ者!」

 最後に佐野の方を振り返り、真司はそんな事を述べつつ去って行った。

百合絵「さて、と…」

 OREジャーナルの記者が退場した後、
百合絵は予定のびっしり書き込まれた手帳を取り出し、今日の日付に注目した。

百合絵「次は名古屋の凱王グループの社長様とミーティングですね。
     私、先に車の手配を済ませておきますので」

佐野「ええ、お願いします」

 佐野がそう言うと、百合絵は小走りで社長室を後にした。

佐野「……『幸せ者』か……」

 誰もいなくなった室内で、部屋の主はソファの肘置きに腰を下ろしながら一人ごちた。

 確かに自分は傍から見れば幸運な男なのかも知れない。

真司が言うように、偶然の出来事によって多くの財産を手に入れ、
理想的なパートナーを迎え入れる事もでき、
ライダーとしての宿命からも無事逃れる事が叶った。

かねてより切望していた「いい暮らし」は、
紛れもない現実として彼の目の前に展開されている。

しかし、真司から「幸せ者」と呼ばれた時、
佐野は心の奥底にひそかな違和感を感じていた。

 ――俺は本当に幸せを手に入れたのか。

改めてそう考えると、彼は明確な答えを出す事が出来ずに、
その疑問だけがただ不快な澱として頭の片隅に残り続けているのであった。



216 名前:新章/決意の変身:2010/03/24(水) 16:23:27

○佐野満→真司、百合絵と話す。
○城戸真司→佐野との面談を設け、近況報告。
○佐野百合絵→真司、佐野と話す。

【今回の新規登場】
○佐野 満=仮面ライダーインペラー(仮面ライダー龍騎)
フリーターとして日々の生計を立てていた青年。「いい暮らしがしたい」というただそれだけの理由か
らライダーの戦いに参戦。戦況を有利な展開に持ち込む為、自らを競争相手のライダー達に売り込んで
いたが、寝返り行為を繰り返していた事で信用を失う。ただし、東條悟に対してはライダーの仮面を脱
ぎ捨てて、仲間として接していた。最終的には死んだ父親の後を継いで大企業の社長の座に就き、願い
を叶える事に成功するが、ライダーとして戦う宿命から逃れられず渋々戦いを続ける。その際、東條の
奇襲を受け、浅倉にデッキを破壊された為にミラーワールドの中で消失した。

○佐野 百合絵(仮面ライダー龍騎)
亡き佐野父の友人の娘。政略結婚的な意図の下で佐野の見合い相手に選ばれるが、当人達はまんざらで
もない様子であった。佐野がインペラーに変身するのを目撃した後、戻ってくるのをずっと待ち続ける
所からも、彼を強く意識していた部分が伺える。(執筆者注:名字は創作。現在は佐野と正式に婚姻を
結び、彼の秘書として活動している。)



217 名前:新章/決意の変身:2010/03/24(水) 17:05:52


 佐野商事の二代目社長との面談を終えた真司は、
愛車のスクーター・ズーマーを駆って自らの仕事場へ向かっていた。

出かける前に、編集長の大久保にはあらかじめ取材に行くと説明しておいたのだが、
今の状態でのこのこと帰社した所で、
彼が私用の為に一切の仕事を成し遂げていない事はたちどころにばれてしまうに相違ない。

その危険を回避する要素となりえるのはこれから何処か適当な場所へ赴いて取材を行うか、
あるいは先程佐野から伺った近況報告を取材の内容だとでっち上げるかのいずれかくらいであろう。

 さてどちらの対策を取るべきか。

 スクーターを走らせつつ真司がそんな事を思い浮かべた、その時である。

突如として、つい今し方挙げた方法のどちらとも異なる第三の選択肢が彼の前に提示されたのだ。

金属製の物体同士が擦れ合うような、
鼓膜を引き裂き脳に直接響いてくるような不快な共鳴音が、
真司にその事を理解させる。

真司「…っ! 何度聴いても慣れねぇな、この感覚は…」

 軽く舌打ちすると、真司はズーマーを路肩に停め、
懐から取り出したカードデッキをサイドミラーに向けて翳した。

それは、何処からともなく聴こえてくる共鳴音、
すなわちモンスターの接近を警告するアラームを察知した仮面ライダーが、
まず実践すべき行動であった。

すると、ミラーワールドへの通行許可証たるカードデッキの力によって、
変身ベルト・Vバックルが真司の元へ転送される。

真司「変身!」

 その叫びに合わせてデッキをVバックルの中央部にセットすると、
今度はミラーワールドから真司の変身後の姿が投影され、
それはベルト装着者のシルエットと一体化する。

真司「っしゃあ!」

 神崎士郎の開発したカードデッキシステムによる、
仮面ライダー龍騎への変身プロセスを完了した真司は、
自らに闘志を注入した後ミラーワールドの中に突入していった。


 <ミラーワールド>


 目に映る物体全てが反転して見える鏡像世界、ミラーワールド。

まさにこの世の裏側とも言えるその世界には、
人間はおろか猫の子一匹の気配すらしないのだが、
そんな場所を拠点として活動する例外的な生物(本当に生物と呼称出来る存在なのかは、
はなはだ疑問であるが)が、ミラーワールドのモンスターである。

 コアミラーによって与えられた仮初めの命しか持たない彼らは、
現実の世界には僅かな間しか留まる事が出来ない。

それに起因しているのか、モンスターは完全な生命体となるべく、
一万年前に行われたバトルファイトに勝ち残った強い生存能力の持ち主、
つまり人間を餌としてつけ狙う習性がある。

 ライダー同士の戦いを止める必要が失われた今では、
真司に課せられた使命は純粋に人々を襲うモンスター達の撃退に変わっていた。

そして、それこそは彼が仮面ライダーとして戦う事を選択した理由だったのである。

龍騎「(さて、何処にいる…?)」

 辺りをきょろきょろと振り返り、モンスターの姿を探し回る龍騎。
一度その気配を感知した以上、この近辺にいるのは明白だ。

そうしていると案の定、彼は数メートル先の建物の影に、
今にも窓ガラスを通って現実世界へ移動しようとする一体のモンスターを発見する。

龍騎「させるかっ!」

 ターゲットがこちら側の世界へ行こうとする前に、龍騎は一気に駆け出し、
そのモンスターに向かってタックルを食らわせる。

モンスター「…!?」

 予期せぬ所から受けた妨害によって、モンスターはろくに回避する事もままならず、
龍騎に突き飛ばされ、地面に倒れ込む。

モンスターが体勢を立て直している隙に、
龍騎はデッキからカードを引き抜き、
それを左腕の召喚機・ドラグバイザーにベントインした。

無機質なアナウンス・ヴォイスが鏡像世界に響き渡ると、
天空から龍騎の契約モンスター・ドラグレッダーの尻尾を模した青龍刀、ドラグセイバーが飛来する。

龍騎がそれを手にしている時には、彼のぶちかましを受けたモンスター、
バズスティンガー ワスプもまた、武器の長剣を構え戦闘態勢に入っていた。


???「あっ…!」

 一方こちらは現実世界。

 龍騎とバズスティンガー ワスプがミラーワールド内にて交戦しているのと同じ時刻に、
カードデッキの所有者とはまた異なるアプローチの仕方で異形の存在に近付かんとする二人の男がいた。

その者達は、かつてとある組織によって開発された特殊なデバイスを用いて、
鏡の向こう側の世界に巣食うモンスターの反応をキャッチしていたのだ。

???「これ、見て下さい…。
     確かに、この近くでアンデッドサーチャーが強く反応してます」

 男二人の内、比較的ラフな服装で、ノートPCのような機械を抱えている男の方が、
傍らにいる相棒にその機械のディスプレイを見せた。

そこには、彼らの現在地をマッピングした画像が映っており、
更に赤い発光体が三つ程、一定の間隔で明滅を繰り返している。

そしてそのすぐ横には、やはり同じように点滅する青い発光体も表示されていた。

???「えっと、この赤い光がモンスターの反応なんですよね。
     となると、隣の青い光は…」

???「そいつは仮面ライダーだ」

 彼らがアンデッドサーチャーと呼ぶ機械の表示画面を見つめていたもう一人の男が、淡々と呟いた。

この男の外見は隣に立つ相棒とはうって変わって、
漆黒のスーツ上下にサングラスという、まるで要人警護のSPのような出で立ちだ。

???「仮面ライダー…」

 黒服の男から聞かされたその単語を、もう一人の男は重々しく反芻した。

 まるで、それが何を意味する言葉なのかをよく心得ているかのように。

???「よし…、これより俺達もミラーワールドへ突入する。準備を始めろ」

???「わ、わかりました」

 仮面ライダーの名を聞かされ戸惑っているパートナーを尻目に、
黒服の男は人目に付きにくい路地裏に移動し始めたので、
アンデッドサーチャーを傍の道路脇に停車させているバイクの収納スペースにしまい込んでから、
彼も慌ててその後を追って行く。

???「それにしても…、本当に俺達の使ってるライダーシステムでミラーワールドに入れるんですか?」

 先程アンデッドサーチャーを抱えていた方の男が、
歩きながら黒服の男に訊ねた。

???「理論上はな」

 またしても簡潔な答えを返す黒服の男であったが、
それは言い換えればまだ実際に成功するかどうかは判らないという事に他ならない。

 しかしそんな会話をしている間にも、
黒服の男は懐から取り出した小型の装置に一枚のカードを装填し、
それを下腹部に押し当てていた。

すると、その装置の両側からベルトが伸びて、たちまち男の腰に装着される。

???「後はあの神崎士郎って人を信じるしかないって訳ですね…」

 黒服の男の答えを聞いて、彼は憂いの表情を浮かべたが、
結局は黒服の男と同じような装置にカードを装填し、変身ベルトを完成させた。

???「今更だがな…」

 ライダーバックルが変形したベルトを装備している状態で二人が並び立った時、
黒服の男がおもむろに切り出した。

???「本当にもう一度仮面ライダーとして戦場に出る覚悟はあるか、睦月?
     中途半端な志は戦いへの恐怖心を生む。その恐怖は…」

???「…命の危険に繋がる。それは解かってるつもりです。橘さん…」

 ここへ来て初めてパートナーに対して気遣いの意思表示をした黒服の男、
橘朔也の台詞を自らが代わりに紡ぐ事で、
上城睦月は彼に心配は無用だと伝えた。

睦月「…俺にだってあります。その覚悟が…!」

 静かに、しかし内に確固たる決意を秘めた面持ちでそう言うと、
睦月は変身ベルト・レンゲルバックルの中央部を左右に開き、
目の前に光り輝くスクリーン・スピリチアエレメントを放出する。

スピリチアエレメントは独りでに睦月の体を通り抜けると、
彼の姿をクラブのスートを司る戦士、仮面ライダーレンゲルの物へと変化させていた。

橘「いい返事だ…」

 唇の端に笑みを浮かべると、
橘もまた変身ベルト・ギャレンバックルのターンアップハンドルを引き変身のプロセスに入る。

 音声アナウンスの後、バックルからはオリハルコンエレメントが放出され、
橘の正面にあるビルの窓ガラスの手前に固着した。

橘「先に行く」

 言うが早いか、橘は光のスクリーンに向かい勢いよく走り出していた。

次の瞬間、彼の体はオリハルコンエレメントに吸い込まれていき、
その直後にはダイヤのスートを司る戦士、
仮面ライダーギャレンの姿が窓ガラスの向こうに映り込んでいる。

その様子を見届けたレンゲルは、
自身もまた眼前のウィンドウに向かい駆け出していくのだが、
彼の肉体は水面のように波打つガラスの中に吸い込まれるようにして消えていくのであった。



218 名前:新章/決意の変身:2010/03/24(水) 17:10:54

○城戸真司→モンスターの気配を感知し変身、ミラーワールドへ。
●バズスティンガー ワスプ→現実世界へ侵入しようとするが、龍騎の妨害にあう。
○上城睦月→アンデッドサーチャーでモンスターの気配を感知し変身、ミラーワールドへ。
○橘朔也→アンデッドサーチャーでモンスターの気配を感知し変身、ミラーワールドへ。

【今回の新規登場】
●バズスティンガー ワスプ(仮面ライダー龍騎)
ミラーワールドに生息するジガバチのモンスター。ボディの色は青。同種のモンスターであるバズステ
ィンガー ホーネット、バズスティンガー ビーらと常に集団で行動しており、このモンスターは長剣を
武器とする。三体が円陣を組んで高速回転する事により、強力なバリアを発生させる。

○上城 睦月=仮面ライダーレンゲル(仮面ライダー剣)
バスケットボール部所属の高校生。ごく普通の生活を送っていたが、スパイダーアンデッドに目を付け
られ、レンゲルバックルの装着者に選ばれてしまう。本来は争いを好まない性格だが、ひとたびレンゲ
ルに変身するとスパイダーUDの精神統制の影響を受けてしまい、好戦的かつ凶暴な性格に様変わりし
てしまう。そんな状態が長らく続いた為に最終的にはスパイダーUDに肉体まで乗っ取られかける事態
にまで陥ったが、嶋昇や城光の介入によってその呪縛から解放された。幼少時に誘拐されコインロッカ
ーに閉じ込められた経験があり、そのトラウマからか暗闇を恐れている。

○橘 朔也=仮面ライダーギャレン(仮面ライダー剣)
人類基盤史研究所BOARDでギャレンバックルの適合者としてアンデッドを封印していた、剣崎一真
の先輩格。正義感が強く生真面目な性格だが、反面特定の物に対する依存度も強く、恐怖心の影響でラ
イダーシステムに適合できなくなったのをシステム自体の欠陥だと思い込んだり、それを克服する為に
伊坂の持つシュルトケスナー藻の力に頼るなど、極端な行動を取りがちでもある。診療所を営む深沢小
夜子の傍にいる事に唯一安らぎを見出していたが、シュルトケスナー藻の副作用により伊坂のコントロ
ールを受け、その小夜子すらも拒絶してしまう事もままあった。後に彼女を伊坂に殺害される事を機に
戦いへの恐怖心と伊坂への依存心を同時に克服する。精神的に未熟な睦月に特訓を課すなど、面倒見の
良い一面と、常人離れした味覚センスを持つ。



219 名前:新章/決意の変身:2010/03/24(水) 17:59:00


 名古屋を本拠地とする凱王グループは、企業としての歴史は浅いものの、
現在ではスマートブレイン社や高見沢グループに匹敵する程の力を持つ一大企業として君臨している。

その理由は、凱王グループの起こす事業が不動産業、外食産業、
はたまた観光事業やエンターテイメント事業と、関連性の無い物であるにも関わらず、
常に一定の業績を上げているからだと言われている。

しかしそれと同時に、
凱王グループの資金源やその使途の中には出処のはっきりしない物が存在しており、
この総合企業は裏の社会と何らかの繋がりがあるのではないか、
等といった黒い噂も絶えなかった。

そんな中で、本社の金庫が強奪される事件が発生し、
一時は経営が立ち行かずに倒産の危機に立たされた時期もあったが、
グループの前身である凱王工業の頃から親交のある人々の融資によって無事に軌道修正し、
今ではその借金も完済出来るまでに、かつての勢いを取り戻しつつあるのだ。

凱王グループに投資した企業に佐野商事の名前も含まれている事を、
佐野は名古屋へ向かう途中で百合絵から聞かされていた。

佐野「しかし、あの凱王グループの社長さんと親父に交流があったなんて…」

 百合絵の話に耳を傾けていた佐野は、
意外そうな表情を浮かべてその感想を述べた。

それと同時に、彼は自分の父親について何も知らなかった事を改めて痛感させられる。

百合絵「お義父さまはあの方のお人柄をとても気に入っていらしたと、父からよく聞かされました」

 更に、「これからの世の中を生き抜く為には、
彼のような強いハングリー精神が必要だ」とも言っていたと、彼女は後に付け加えた。

 確かに、数年の間で自社の規模をあれ程までに拡大したのだから、
相当な気概の持ち主であるのは明らかだ。

佐野「百合絵さんは、凱王グループの社長とお会いした事が?」

 彼女の口振りからそう判断した佐野が訊ねると、百合絵はこくりと首を縦に振った。

佐野「どういう方なんですか?」

百合絵「そ、そうですね…、とっても気さくな方なんですけど…」

 佐野の質問に、百合絵は小首を傾げつつ、幾分か戸惑いながら言葉を紡いでいく。

百合絵「初めてお会いする時は少しびっくりしてしまうかも知れませんね。
     あの方は、その…、ちょっと変わった所がおありですから…」

佐野「ああ、心配ありませんって。
    確かに武者頑駄無と会うのは初めてですけど、テレビでちらっと観た事ありますし…」

 「武者頑駄無」というのは、時空クレバスの存在が知られる少し前、
世紀末を乗り越え、新世紀を迎えた頃の日本に突如として出現した異世界の住人達である。

彼らが現代の日本へやって来た理由は、
時空転移システムを利用して武者世界よりこちらへと向かった敵対勢力・堕悪(ダーク)闇軍団を追う為であった。

しかし、転移装置の不調もあって武者頑駄無達は、
堕悪闇軍団が襲来する半年も前の時代へ転移してしまったので、
やむなく連中が出現するまで、各都道府県に一人ずつ滞在する事となる。

 武者頑駄無は三、四頭身という小柄な体型に、
それぞれが派手な鎧兜を身に纏ったまさに異形の姿をしていた為に、
当初は日本人達から恐れられていたが、彼らが言葉を話せる知的生命体であり、
また「天馬(ペガサス)の国」の名で日本の存在も知っていた事も手伝って、
急速にこの国の風土に順応していき、やがては現地での生活基盤を作る武者頑駄無も多数現れ始めた。

 その後、堕悪闇軍団との抗争が本格化してきた頃には、
警察組織の一員として大きな成果を上げていた東京都の武者刑事・トッキーや、
山形のサクランボ農家から演歌歌手デビューを果たし、
一躍有名になった紅 零斗丸(くれない れいどまる)など、
メディアにてクローズアップされる者も登場し、武者の存在は市民権を得るようになった。

 凱王グループが経営を拡大し、
大企業の一つとして一般に認識されるようになったのもこの時期であるという。

 堕悪闇軍団との決着が着き、彼らが武者の世界へ帰らなければならない際には、
多くの日本人達がその別れを惜しんだと伝えられている。

もっとも、彼らはその数ヶ月後には再びこの世界へ戻ってくる事になるのだが。

百合絵「(外見の話じゃなくて、性格面での事なんだけどなぁ…)」

 その事を佐野に告げるべきかどうか百合絵が迷っている内に、
二人を乗せた車は凱王グループ本社に到着してしまうのであった。


 <名古屋 凱王グループ本社前>


百合絵「そう言えば、武者頑駄無さん達がこちらへまた来られた時も、
     凱王グループのお力添えがあったそうですよ」

 二人を乗せた車が目的地へと到着した頃、百合絵がそんな事を言った。

 一旦故郷の国へ帰った武者達から天馬の国=日本での思い出話を聞かされる事で、
かの地に興味を抱く者達は大勢いたらしい。

凱王グループはそういった武者頑駄無達を募り、
彼らが日本へ向かう際の斡旋を買って出ていたのだ。

佐野「へぇ、そうなんですか…」

 感心した様子で呟きながら、
佐野は目の前の鯱を模した飾りを付けた巨大なビル、
凱王グループ本社の社長に思いを馳せていた。

自分の父親よりも遥かに短期間の内にこれ程の大企業の持ち主となった異邦人とは、
一体どんな人物なのだろうか。


 <凱王グループ本社 ロビー>


 佐野夫妻が社屋内に足を踏み入れると、
ロビーには既に案内役らしきスーツ姿の男性が待機しており、
彼らに確認を取るや否やその場でしばらく待っていて欲しいと言ってきた。

恐らくその間に社長に連絡を入れているのだろう。

佐野「初めて来た場所で人を待ってる間って、
    なんか妙に長く感じたりしません?」

 傍らの細君を振り返りながら、佐野がそんな事を言った。

百合絵「緊張してるせいで、
     普段より神経を使ってしまうからかも知れませんね。
     …あら?」

 二人が取り留めのない会話をしていると、
佐野の背後に得体の知れない物体が近付いてきた為、
百合絵は思わずその方面に目を向けた。

彼らの元へやって来たのは、
二人の腰の高さくらいの小型のロボットであった。

ボディはほとんどが暗い緑色で、
足の裏にはキャタピラが装備されているそれは、
サイズこそ小型であるものの、外見からは強い重量感を漂わせる。

ロボット『イラッシャイマセ、イラッシャイマセ』

 と、何度か二人に向かって機械的なメッセージを発する所から、
恐らく簡単な接客係も兼ねているのだろう。

百合絵「まぁ、かわいい…」

佐野「…これも凱王の製品なんですかね?」

???「そのロボットは警備を兼ねた接客用の物です」

 二人の近くで動き回っているロボットを中腰になって眺めていると、
今度は人間の女性が彼らの前に現れ、話しかけてきた。

 凱王グループの社長を影に日向に支える秘書・ナンシー阿久津だ。

百合絵「あ、ナンシーさん。どうもお久しぶりです」

 ここの社長と面識があるからなのか、
百合絵は落ち着いた色調のスーツを着こなすブロンドの美人秘書にも、
親しげに話しかけていた。

百合絵「満さん。こちらは凱王グループの社長秘書のナンシー阿久津さんです」

 ナンシーとの挨拶を終えると、百合絵は彼女を佐野に紹介した。

佐野「どうも、初めまして…」

ナンシー「初めまして、佐野社長。
      これより社長室へご案内いたします。
      長らくお待たせして申し訳ありません」

佐野「あ、いえ…。どうぞお構いなく」

百合絵「…満さん。顔がニヤけてますよ……」

佐野「いっ!? い、いや、そんな事はないっすよ、全然…」

 珍しくも不機嫌そうな表情を浮かべる百合絵をなだめるのと、
ナンシーの後ろ姿につい視線が行ってしまうのを我慢するのに四苦八苦しつつも、
いよいよ凱王グループの社長との対面に臨むのだった。


 <凱王グループ本社 社長室>


 佐野夫妻が秘書の導きによって辿り着いた社長室は、
最上階の一番奥の部屋に充てられていた。

他の部屋の物に比べて二回りは大きな扉をノックし、
ナンシーは室内に控えているであろう社長に向かって呼びかける。

ナンシー「シャチョー。佐野商事の社長様をお連れしました」

シャチョー「分かったんや。入ってくれ」

ナンシー「失礼いたします」

 そう言ってナンシーが室内へ入ったので、佐野と百合絵もそれに合わせて入室する。

 佐野商事のそれより三、四割ほど広く、整然としている社長室。

その中で佐野達を待ち受けていたのであろう凱王グループの「シャチョー」は、
窓側にある大きなデスクに腰かけていたが、彼らの姿を確認すると、
椅子から降りて近くへ歩み寄ってきた。

シャチョー「おめえさんが佐野前社長の息子さんやか?
       僕ちゃんがこの凱王グループの社長(シャチョー)なんだがや」

 言葉の節々に名古屋弁の訛りを滲ませる、
シャチョーを名乗った武者頑駄無は、
佐野の知る彼らの姿とはかなり異なる物であった。

 シャチョーは武者頑駄無でありながら鎧をまとっていない。

武者といえども普段から鎧を着けていては何かと不便だろうから、その事自体は理解出来る。
不可解なのは、シャチョーの体型が例え武者頑駄無であるのを考慮したとしても、
あまりに小さい事だ。

彼にも鎧などの武装が存在するとしたら、
一体どうやってそれらを身にまとうのか、佐野には見当も付かなかった。

佐野「初めまして、シャチョーさん。
    父の後を継いで佐野商事の社長をさせてもらっています、佐野満です」

 シャチョーが握手を求めてきたので、それに応対する為に佐野がしゃがもうとすると、
その前にナンシーが脚立のような台を持ってきて、シャチョーをその上に素早く乗せる。

これによって、佐野は普段の姿勢を維持したまま彼と握手する事が出来るようになった。

シャチョー「おめえさんのお父上には我が凱王グループ再建の時、大変お世話になったんや」

佐野「はい、それについては既に伺っています。
    ですが、それはあくまで先代社長である親父の業績であって、俺自身は何もやっていません。
    なので、今後は俺も佐野商事の社長として、凱王グループの更なる発展に協力していきたいと考えています」

 シャチョーはその場所が気に入ったのか、
台の上に乗ったまま佐野の話に耳を傾けていたが、
やがて手に持っていた日の丸の入った扇子を広げ、上機嫌で話し出した。

この手の人物にありがちな親の力に頼ろうとする素振りを見せない若社長に、
強く興味を抱いたようだ。

シャチョー「ニャハハハハ! その心意気、気に入ったんや!
       ならばこれからは肩書は捨てて、お互いに友人として付き合っていく事にするだぎゃー。
       よろしゅうお願いするんや、満(み)っちゃん!」

佐野「み、満っちゃん!?」

 会ってから十分も経たない内にいきなりあだ名を付けられてしまうという事態に、
佐野はひどく困惑させられた。

しかも相手はかの凱王グループの社長というのだから、その衝撃は尚更だ。

しかし、一方のシャチョーはそんな事を気にも留めていない。

シャチョー「おや? この呼び方は好きじゃないやか?
       だったらミッチーは…」

佐野「い、いえ…、どうぞ満っちゃんと呼んで下さい…」

 あまりにはっちゃけたキャラクターのシャチョーを前に、
すっかりペースを乱されてしまう佐野の姿を見て、
その傍らに控える百合絵とナンシーは微笑を浮かべつつそれぞれ顔を見合わせていた。



220 名前:新章/決意の変身:2010/03/24(水) 18:05:05

○佐野満→シャチョーと初めての顔合わせ。
○佐野百合絵→佐野の振る舞いに妬いたり微笑んだりしている。
○ナンシー阿久津→佐野夫妻をシャチョーの元へ案内する。
○シャチョー→佐野と初めての顔合わせ。

【今回の新規登場】
○ナンシー阿久津(SD頑駄無 武者○伝)
総合企業・凱王グループの社長秘書。武者の世界から現代日本へ転移してきたシャチョーを公私共にサ
ポートしている。彼との付き合いは比較的最近になってからだが、凱王グループが倒産寸前に追い込ま
れた際もシャチョーの再起の為に人材を招集するなど、彼への信頼感は並々ならぬものがある。経営危
機時にシャチョーを追いかけ回していた暴力団・璃ゲ瑠(リゲル)組の組員に鉄拳制裁を下すなど、ひ
そかに腕っ節が強い一面も。

○シャチョー=鎧丸=凱王頑駄無(SD頑駄無 武者○伝)
夢者遊撃隊の一員で、後方支援を得意とする司令塔的な存在。現代日本に転移した際は愛知県に滞在し
ている。総合企業・凱王グループの社長として生活していたが、金儲けに夢中になるあまり武者として
の気概(=武者魂)をすっかり失って臆病な性格に変貌してしまい、堕悪闇軍団との戦いが始まってか
らも、戦線に復帰する事を拒み続ける。しかし、心の奥底ではそんな自分を変えたいという気持ちも残
っており、戦友紅零斗(グレード)丸が遺した言葉によって、武者魂を復活させた。鎧鋼力服(ヨロイ
スーツ)と呼ばれる大型の鎧を操縦する事で「鎧丸」に、改良型の新鎧鋼力服(ニューヨロイスーツ)
に乗り込む事で「凱王頑駄無」となる。



221 名前:新章/決意の変身:2010/04/12(月) 20:13:52


 <ミラーワールド>


龍騎「うらぁぁっ!」

 ドラグセイバーを手にバズスティンガー ワスプへと斬りかかる龍騎。

彼の攻撃は太刀筋こそ荒削りであったが、
これまでの戦いから培った経験値と勢いの強さによって、
戦闘のペースを自分の物にしていた。

一方のモンスターも龍騎の気迫に負けじと長剣を振るうが、
一瞬の隙を突かれ、真正面からセイバーによる斬撃をくらってしまう。

B.ワスプ「…!?」

 その衝撃にバズスティンガー ワスプは思わず後方へよろめいた。

龍騎はそこへ更に駄目押しの一撃を加えようとしたが、
次の瞬間、ドラグセイバーを握っていた方の手に激痛を感じ、
武器を手放してしまった。

龍騎「な、何だ…?」

 一体何処から攻撃してきたのか。

それを見極めようと龍騎は辺りを見回すが、今度は彼が困惑している間に、
バズスティンガー ワスプではない別のモンスターが乱入してきた。

二本の短剣を操る深紅のモンスター、バズスティンガー ホーネットだ。

龍騎「くそっ、新手か…」

 彼がバズスティンガー ホーネットに気を取られている内に
ワスプは既に体勢を整えており、ホーネットと共に龍騎に襲いかかってきた。

二体がかりでの猛攻から身を守るべく
龍騎はガードベントのカードをデッキから引こうとしたが、
またしても先程の見えない攻撃によって阻まれてしまう。

龍騎「!」

 だが、それこそが彼の思い描いた通りの展開であった。

 最初の攻撃を受けた時点でそれが狙撃系の物であると考えた龍騎は、
その確証を得るべく別のカードをちらつかせる事でもう一度攻撃させ、
敵の所在を見抜こうとしていたのだ。

敵の攻撃をわざと受けて反撃に出るというのは、
いかにもその場で思いついたような詰めの甘い戦法ではあるが、
他のライダーに比べてフィジカルの高さが群を抜いている龍騎=真司らしいやり方ともいえよう。

龍騎「そこか!」

 バズスティンガー ホーネットとワスプの斬撃を回避しつつ素早くドラグセイバーを拾い上げた後、
龍騎はそれを背後のビル影に向けて投げつける。

モンスター「!?」

 龍騎のそんな行為を目にした弓矢を携えるモンスター、
バズスティンガー ビーは最早姿を隠しているのが無意味だと感じたのか、
早々とライダーの前に正体を現し、
ホーネットやワスプとの連携攻撃を繰り出す為のフォーメーションに切り替えてきた。

しかしながら、状況は一対三。
多勢に無勢であるのに変わりはない。

更にバズスティンガー三体のチームワークの良さも相俟って、
龍騎は徐々に追い込まれつつあった。


レンゲル「!? 橘さん、あれは…」

 仮面ライダーギャレンとレンゲル、
二人のラウズカード使いが鏡像世界への突入に成功したのは、
ちょうど仮面ライダーとモンスターの戦闘が激化している最中であった。

ギャレン「どうやらミラーワールドに上手く入り込めたらしいな。
      あの神崎士郎の言葉は正しかったという事か」

レンゲル「そんな呑気にしてる場合じゃ…」

 異質な空間にいるせいか落ち着かない様子のレンゲルの発言を遮るように、
ギャレンは醒銃ギャレンラウザーを構え、
その中に収められているラウズカードを展開させた。

ギャレン「分かっている、あの仮面ライダーを援護するぞ。
      続け、睦月」

レンゲル「…はい!」

 ラウザーに内蔵されているトレイから一枚カードを取り出した後、
龍騎達の元へ駆け出すギャレンを追う形で、
レンゲルもまた醒杖レンゲルラウザーを戦闘用のザッパーモードに変形させて走り出すのであった。

ギャレン「俺が先行して奴らの陣形を乱す。
      お前はその間にあのライダーの援護に回れ」

レンゲル「了解です」

 レンゲルの返事を聞くのとほぼ同時に、
ギャレンは先程取り出したカードをラウザーのスラッシュ・リーダーに通してその効果を発動させる。

直後、ギャレンの姿はその場にいる者達には見えなくなった。
自らの気配を消す能力を持つダイヤの10・『シーフカメレオン』の効果を発動させたのだ。

その効力を利用してギャレンはバズスティンガー達に接近し、
ギャレンラウザーの連射をバズスティンガー ビーに放った。

B.ビー「!!?」

 よもや自身が仮面ライダーに対して用いたのと、
ほとんど同じ方法で反撃を受けるとは予想もしていなかったであろうバズスティンガー ビーは、
ギャレンの不意打ちに反応する間もなく銃撃をくらってしまい、
残る二体との陣形を大きく崩された。

龍騎「こ、今度は何だ?」

 突然の事態に驚かされているのはモンスターだけでなく、
龍騎もまた同様であった。

B.ワスプ「…!」

 龍騎が混乱している隙に乗じてバズスティンガー ワスプは彼に襲いかかろうとするが、
そこへやってきたレンゲルのラウザー攻撃がそれを阻む。

レンゲル「…大丈夫ですか?」

龍騎「あ、あぁ…」

 バズスティンガー ホーネットの短剣をかい潜りながら、
龍騎はレンゲルの言葉に返答した。

龍騎「あんたもライダーなのか? 見たことない格好だけど」

ギャレン「説明は後だ。今は戦いに集中しろ」

龍騎「うわっ! また見知らぬ奴が!?」

 『シーフ』の効果が切れた為、二人の目にも見えるようになったギャレンを見て、
龍騎は再び驚きの声を上げた。

 そんな本家ミラーワールド対応式ライダーを尻目に、
彼より遥かに戦い慣れした様子を漂わせる紅き銃士は、
ダイヤの7のカードをスラッシュし、
『ロックトータス』の効果を上乗せしたギャレンラウザーでバズスティンガー ビーの弓を狙い撃つ。

すると、弓は一瞬にして石化し、
矢を番(つが)えることが不可能となった。

レンゲル「心配要りません。
      俺達はあなたと敵対するつもりはありませんから」

 そう言って、深緑の杖使いはクラブの7、
『ゲルジェリーフィッシュ』のカードをレンゲルラウザーにスラッシュする。

だが次の瞬間には、彼の腹部をバズスティンガー ワスプの長剣が貫いていた。

レンゲル「…」

龍騎「うわぁぁーっ! あ、あんた、凄ぇことになってんぞ!」

 腹を押さえて、当のレンゲルよりも痛々しそうなリアクションを取る龍騎であったが、
そこにバズスティンガー ホーネットがすかさず斬りかかってくる。

龍騎「ぐっ!」

 短剣による斬撃を受けて龍騎は仰け反るが、
かたやレンゲルは平然としたままクラブの8・『ポイズンスコーピオン』を発動させ、
ワスプに猛毒を付加したレンゲルラウザーの刺突をくらわせた。

体を液状化する『ゲル』の能力が効果を発揮しているからこそ為せる業だ。

龍騎「す、凄ぇ…」

 二人のライダーのラウズカードを駆使した戦闘を見て、
龍騎は思わず溜息を漏らした。

自分の知る仮面ライダーとは全く異質の力を持ち、
卓越した戦術を披露する彼らのさまは、
そのまま龍騎との実戦経験の大きな違いをも如実に表わしていた。

 それでも、ここで彼だけが引き下がる訳にはいかない。
彼にはギャレンやレンゲルのような戦いのセンスこそ無いものの、
モンスターを倒す事で一人でも多くの命を救いたいという、
強い想いがあるのだ。

龍騎「おーし…。こっから、反撃開始だ!」

 バズスティンガー ホーネットを勢いよくキックで退けると、
龍騎はデッキからストライクベントのカードを引き、ドラグバイザーに挿入した。

このカードより召喚されるのは、
ドラグレッダーの頭部を模した『ドラグクロー』だ。

右腕に装備されたドラグクローを構えると、
天空から契約モンスターであるドラグレッダーが龍騎の元へ飛来する。

 その頃、ギャレンとレンゲルの戦いもまた最終段階へと入っていた。

 ギャレンはバズスティンガー ビーを、
レンゲルはバズスティンガー ワスプを標的に、
複数のカードを用いたコンボ攻撃を発動させる。

炎のエネルギーを宿した弾丸の連射・『バーニングショット』、
高速回転する氷の粒子をまとったコークスクリューパンチ・『ブリザードゲイル』をそれぞれ受けて、
ビーとワスプはその威力に耐え切れず爆発四散した。

 そして、龍騎はドラグレッダーとの協力で発動する特殊技・『昇竜突破』を使用し、
残るバズスティンガー ホーネットを撃破する。

龍騎「…やったか」

 三体のモンスターが爆発した跡から、
モンスターの核<コア>とでもいうべき光る球体が出現したのを見て、
龍騎は呟いた。

後は、この核を契約モンスターが捕食すればモンスターの撃破に成功となるのである。

 しかし、ドラグレッダーが食らいつこうとする前に、
三つの核は突如として消失してしまう。

龍騎「! な、何!?」

 いきなりの予想だにしなかった事態に困惑させられる龍騎。
ドラグレッダーも心なしか不機嫌そうな咆哮を上げる。

 だがここでも、ギャレンとレンゲルの二人は冷静だった。

ギャレン「やはりか…」

レンゲル「ええ。これも神崎さんの情報通りってことですね」

龍騎「ちょっと待ってくれ。あんたら神崎を知ってんのか?」

 二人が話している間に龍騎が割って入る。

その後も彼は二人のライダーに向けて矢継ぎ早に質問を繰り出した。

龍騎「…結局、あんたらは一体何者なんだ?
    カードデッキも無いのにミラーワールドに入ってるし、
    妙なカード持ってるし、おまけに神崎の名前まで知ってるし…」

レンゲル「詳しい事情はこれからお話しします、城戸真司さん」

龍騎「俺の事まで知ってるし!」

ギャレン「まずはここを出るぞ。話はそれからだ」

 謎のライダー達の出現に頭を悩ませながらも、
自身の体からミラーワールドの滞在時間の減少を報せる粒子が発生している事に気付いた龍騎は、
彼らとともに鏡の中の世界を後にした。



222 名前:新章/決意の変身:2010/04/12(月) 20:20:22

○仮面ライダー龍騎→B.ホーネットを倒す。
●バズスティンガー ワスプ→レンゲルに倒される。ただし、核は消失。
●バズスティンガー ホーネット→龍騎に倒される。ただし、核は消失。
●バズスティンガー ビー→ギャレンに倒される。ただし、核は消失。
○仮面ライダーレンゲル→B.ワスプを倒す。
○仮面ライダーギャレン→B.ビーを倒す。
△ドラグレッダー→モンスターの捕食に失敗し、不機嫌になる。

【今回の新規登場】
●バズスティンガー ホーネット(仮面ライダー龍騎)
ミラーワールドに生息するスズメバチのモンスター。ボディの色は赤。同種のモンスターであるバズス
ティンガー ワスプ、バズスティンガー ビーらと常に集団で行動しており、このモンスターは二本の短
剣を武器とする。三体が円陣を組んで高速回転する事により、強力なバリアを発生させる。

●バズスティンガー ビー(仮面ライダー龍騎)
ミラーワールドに生息するミツバチのモンスター。ボディの色は黄。同種のモンスターであるバズステ
ィンガー ホーネット、バズスティンガー ワスプらと常に集団で行動しており、このモンスターは弓矢
を武器とする。三体が円陣を組んで高速回転する事により、強力なバリアを発生させる。

△ドラグレッダー(仮面ライダー龍騎)
仮面ライダー龍騎と契約する龍のモンスター。東洋の龍そのものといった出で立ちで、モンスターの中
では大型の部類に入る。空を自在に飛び回り、口から吐き出す高熱の火炎を武器としている。非常に獰
猛な性格で、かつては真司を餌としてつけ狙っていたが、契約を交わしてからはその高いスペックの為
に彼にとっても重要な戦力となった。


223 名前:新章/決意の変身:2010/04/12(月) 20:50:18


 <名古屋市内 高級料亭>


 凱王グループ本社でのシャチョーとの挨拶を済ませた佐野は、
彼の案内で名古屋のとある料亭に立ち寄っていた。

その店は凱王グループ傘下の企業である凱王フーズの直営店なので、
恐らくシャチョーにとっては自社の宣伝の意味も込めて、
こうした接待の場を用意していたのだろう。

だが、元々こうした敷居の高い空間に長時間留まる事に慣れていない為か、
佐野はそわそわと平素より落ち着かない様子であったので、
シャチョーの思惑に気付く余裕はほとんどなかった。

 もっとも、彼は元来落ち着きのある性格ではないのだが。

 そこへ行くと、残る三人の立ち居振る舞いは実に場馴れした物である。

 ナンシーや百合絵はその挙動に育ちの良さを思わせるスマートさがあるし、
シャチョーに至っては貫禄のあまり、
異世界の出身であるのを忘れさせてしまうくらいだ。

 この小さな武者頑駄無はこちらの世界で暮らすようになって数年経つと言っていたが、
はたしてどんな生活を送ればかくも人間臭い所作をマスター出来るのか、
佐野には見当も着かなかった。

 彼が日本を訪れてから現在に至るまでの日々を基にドキュメンタリー番組でも制作したら、
結構な視聴率が取れるかもしれない。

百合絵「これおいしいですね、満さん」

佐野「…?」

 テレビのブラウン管の中で目まぐるしく動き回るシャチョーのイメージを脳裏に思い浮かべたところで、
佐野は小皿に盛り付けられた材料も名称もよくわからないような、
見知らぬ料理に舌鼓を打つ百合絵の言葉によって、
急速に現実へと引き戻される。

その時になって初めて、
彼は今まで自分の口に入れていた料理の味さえ理解していない事に気付く。

佐野「あ、本当だ。美味いっすね」

 慌てて百合絵の言及した品を食べてみたが、確かに彼女の言う通り、
味に関しては高級店でメニューに加えられているだけに申し分のない出来であった。

シャチョー「ほう、これの良さが解かるとは二人とも中々の通やね」

 佐野夫妻の会話を耳にして、シャチョーがそんな事を言ってきたので、
夫の方の佐野は思わずぎくりとした。

百合絵にはこういった事象に関する知識がある程度身に着いているのだろうが、
佐野自身は料理の事など全く知らないし、
そもそもさっき食べた品が何という名前なのかさえ理解していないという体たらくなのだ。

このままでは流石にまずいと考えた彼は、
思い切って話題を逸らすのを試みた。

佐野「そ、そう言えば…、シャチョーさんは武者軍団の一員として、
    あの堕悪闇軍団と戦ったと聞いたんですが…」

シャチョー「おぉ! 満っちゃん、あの時の事を知っておるのやね。
       それは嬉しいや」

 シャチョーの口から出た「あの時」というのは、
武者頑駄無達と堕悪闇軍団の戦いにおける、最終局面の事を指している。

当時、堕悪闇軍団を率いる暗黒の武者・堕悪魔刃(マジン)頑駄無は、
強大な力を解放して彼らをこの地へと呼び寄せた時空転移装置を搭載する
小惑星・是断(ゼダン)の門を武者の世界より富士山頂に召喚し、
天馬の国こと日本を闇に染め上げるべく、総攻撃を開始していた。

 これに対して、全国各地の都道府県に散らばっていた武者頑駄無は一堂に会し、
自衛隊の協力を受けつつ、堕悪闇軍団の首領を討つ為に是断の門への特攻をかけ、
一気呵成に戦いを終結させたのだ。

その様子はテレビ中継もされており、
今日(こんにち)に至るまで多くの日本人の記憶の中に強く刻まれている。

佐野や百合絵のような直接に武者と顔を合わせた事のないような者達にとっても、
それはまた同様であった。

シャチョー「いや、今となっては懐かしい思い出話や…」

 かつての壮絶な戦いの事を振り返って、
シャチョーはしみじみとそう漏らした。

シャチョー「恥ずかしいやが、昔の僕ちゃんはとにかく戦うのが怖くて怖くて、
       ずっと武者としての使命から逃げ続けておったんや」

佐野「…っ!」

 彼の言葉は、再び佐野の琴線に触れた。

戦士としての力を持ちながらそれを放棄し、
束の間の安息に浸りきって戦士の使命から目を背け続けている弱き存在。

シャチョーがかつての自分を言い表す為に用いた表現は、
そのまま現在の佐野満に姿にもそっくり当てはまる物であった。

 無論、目の前にいる小さな武者は、
佐野が仮面ライダーとしてミラーワールドでの戦いに身を投じていた事など知る由も無い。

所詮は単なる偶然に過ぎない話なのだが、
それがかえって天啓的な力を感じさせずにはいられなかった。

ライダーの資格を捨て、大企業の社長となり、
以前とは比べ物にならないほど多忙な生活を送る日々に、
佐野は満足しているのだと常に己に言い聞かせてきたのだが、
同時に頭の片隅には拭い去れぬ不安感もあった。

今シャチョーが話している内容の中に、
それを解消する為のヒントがあるのかもしれない。

そう考えた佐野は、相槌を打つのも忘れて彼の話に聞き入っていた。

 シャチョーが失っていた戦士としての気概(=武者魂)を再び覚醒させるきっかけとなったのは、
彼の戦友・紅零斗(グレード)丸の存在だったという。

シャチョーの正体が夢者遊撃隊の一員・鎧丸であるのを知っていた彼は、
商売に力を入れ過ぎた結果、
戦いに対して恐怖心を抱くようになってしまった彼の有様を憂えていたが、
一方で彼がそんな自分を変えようと思っていた事、
心の奥底に武者魂の火が消えることなく燻ぶり続けている事もまた理解していた。

紅零斗丸『オレはオマエの 武者魂を信じている!』

 紅零斗丸の遺した言葉によって、
ついに武者魂を甦らせたシャチョーは武者頑駄無の一人として戦場に出る決意を固めるに至ったのだ。

佐野「…」

 凱王グループの社長が述べたいきさつに、佐野は大いに驚かされた。

傍から見れば何の苦労も悩みも無く、
人生を面白おかしく生きているように見えるシャチョーだが、
実際には彼もまた、人知れず悩み苦しんだりしながらここまで辿り着いたのだろう。

 この武者頑駄無は、自分が思っていた以上に険しい人生を歩んでいるのかもしれない。

 そんな考えを巡らせる佐野の頭脳には、
最早口に運んだ料理の味を判別するだけの余裕は残されていなかった。


 <凱王グループ本社 社長室>


ナンシー「いかかでしたか、佐野社長の息子さんは?」

 食事を終えて自社へと帰還した後、ナンシーがそんなことを尋ねた。
シャチョー「ふむ、人柄は悪くないやが、まだちょびっと経験不足な所が目立つでなも。
       ま、その内慣れていくやろ。ただ…、一つ気になる事があるんや」

ナンシー「? それは一体…」

 端麗な顔立ちに怪訝な表情を浮かべながら、ナンシーは彼に続きを促した。

シャチョー「何というべきか、心の中に迷いがあるように感じられるんやな。
       昔の僕ちゃんみてえに…」

???「その通りだ」

 シャチョーの発言を遮ったのは、
本来ならここには存在しない筈の第三者の声であった。

シャチョー「!? 誰や?」

 何者かの声に気付き、シャチョーは声の聞こえた辺りに視線を向けるが、
その先には部屋の窓ガラスしかない。

だが、確かに声はその向こうから響いてきているのだ。

シャチョー「…『そこ』におるんきゃ?」

 ビルの外の景色を映す窓ガラスに向かって、彼は問いかける。

???「…お前が凱王グループの社長、鎧丸か?」

 声の主は、シャチョーの質問に直接答えはしなかったが、
ガラスの向こうから唐突に出現し、彼に別の問いを投げかける事で、
彼の予想が的中していたのを仄めかせた。

ナンシー「っ! シャチョー、下がってください!」

 二人の目の前に悠然と姿を見せる、
トレンチコートを羽織った一見浮浪者のような装いの男。

そいつが明らかに普通の人間ではないと察知した秘書ナンシーは、
シャチョーを庇いながら男の前に駆け寄り、
渾身の力で彼を殴りつけようとする。

シャチョー「待つんや、ナンシー」

 彼の制止の一声を聞く事によって、
ナンシーはトレンチコートの男の顔面わずか手前で拳を動きを止めた。

後少しでもタイミングがずれていたら、
彼女の鉄拳はトレンチコートの男の顔面にクリティカルヒットしていたのは想像に難くない。

しかし、男は顔色一つ変えることせず、
何事も無かったかの如く平然とした様子で佇んでいる。

シャチョー「おめえさん、満っちゃんの知りあいやか?」

???「…名は神崎士郎」

 トレンチコートの男=神崎士郎は、やはり唐突に自分の名を告げた。

神崎「かつて佐野満に仮面ライダーの力を与えた者だ」

 聞き慣れない単語を織り交ぜつつ話を継続する神崎に、
シャチョーはすぐさま興味を抱いた。

シャチョー「ふむ…、何ぞ訳ありのようやね。
       どうせならアポを取って欲しかったやが、おめえさんの話は面白そうや。
       特別に用件を聞かせてもらうでなも」

神崎「…わかった。
    お前は佐野満の今後に、重大な影響を及ぼす力を持っている。
    真実を知る権利はあるだろう…」

 凱王グループのシャチョーこと鎧丸と、
かつてのライダーの戦いを画策した男、神崎士郎。

本来なら混じり合わない筈の二人による奇妙な会談が、
これより始まろうとしていた。



224 名前:新章/決意の変身:2010/04/12(月) 20:52:01

○佐野満→シャチョーの過去の話に衝撃を受ける。
○佐野百合絵→高級店でもそつなく振る舞える育ちの良さを発揮。
○シャチョー→神崎士郎と接触。
○ナンシー阿久津→突如現れた神崎を牽制しようとする。
○神崎士郎→シャチョーと接触。



225 名前:新章/決意の変身:2010/04/29(木) 01:17:32


 橘と睦月の支援を受けて、
何とかバズスティンガー軍団を退ける事に成功した真司は、
近くの公園に場所を移し彼らの話を伺っていた。

真司「ちょっと待ってくれ。
それじゃ、さっきみたいな現象がずっと前からミラーワールド中で起こってるってのか?」

橘「正確には一ヵ月前からだ」

 驚いた様子で騒ぎ立てる真司に、橘がフォローを入れる。

 ――一ヵ月前。

その時期を境にして、
ミラーワールド内では倒したモンスターの亡骸から現れ出でる核が、
原因不明の消失を遂げるという異常事態が頻繁に見かけられるようになった。

 ライダー同盟の報告を通じてそれを知った神崎士郎は、
現在では壊滅した、人類基盤史研究所BOARD所長・烏丸啓との接触を図り、
現代に蘇った不死身の生命体・アンデッドを封印していた仮面ライダーの招集を呼びかけた。

かねてから、人々を護る為、
謎の怪物を相手に戦いを繰り広げる正体不明の存在・仮面ライダーの
都市伝説についての調査を断続的に行っていた彼は、
そのバックにあるのがBOARDなる組織である事を既に突き止めており、
当時の責任者だった烏丸とも個人的なコネクションを持っていたのだ。

 烏丸の手によって、
以前アンデッド封印の為に戦っていた
旧BOARDのメンバーが不完全な形ながらも再び一同に会し、
ミラーワールドの異変の調査と鎮静化という、新たな戦いに挑む事となる。

そんな彼らの為に神崎は、
本来ミラーワールドで戦う力を持たない旧BOARD側のライダーシステムに細工を施し、
更にはアンデッドサーチャーにモンスターの出現を感知する索敵機能を搭載させて、
出来る限りカードデッキ型ライダーと同じ能力を持たせ、
連携を取りやすくしたのだという。

また、一部のライダーは既に橘らの存在も知っており、
互いに情報交換をしつつ真相の究明にあたっているという事実を聞かされ、
真司は呆気に取られていた。

 よもや自分の与り知らぬ所で、
そのような事態が起こっていたとは露程も知らなかったのだ。

真司「くそーっ、どうしてもっと早く俺にもこの事を教えてくれなかったんだよ!?
    俺だって仮面ライダーの一人だぞ!」

睦月「いえ、連絡先がわからなかったんですよ。
    神崎さんも知らないって言うし…」

 一人除け者にされたと思ったからなのか、
あるいは事の重大さを今になってようやく理解した無力感からか、
突然勢いを増す真司を、睦月は冷静に宥めた。

無論彼らも、出来るならばすぐにでも全てのライダーと連絡を取って、
戦力の強化をしたいところなのだが、
神崎士郎もライダー全員の居場所まで知っている訳ではなく、
真司に関しては「赤い龍のモンスターと契約しているのが城戸真司だ」
という非常に断片的な情報しか得られなかったのである。

橘「そこまで言うのなら、お前は俺達に協力する気があると見ていいな?」

真司「勿論だ」

 橘の問いに、力強く返事をする真司。

揺るぎ無い覚悟の意思を秘めた彼の瞳を前にして、
橘はそこで初めて笑みを漏らした。

橘「…分かった。お前の力にも期待させてもらうとしよう」

真司「おう! 任せてくれ…」

 と、そこまで言いかけた時、
真司が上着のポケットの中に入れていた携帯電話がコール音を鳴らし始めた。

真司「あ、悪ぃ」

 橘と睦月にしばらくの間その場で待機してもらうように頼んでから、
真司は少し離れた地点で携帯を取り出し、相手の表示を確認した。

真司「!?」

 そこに「大久保編集長」とあるのを見て、彼は思わず目が点になった。

恐る恐る携帯電話を開いて通話を開始した真司は案の定、
取材に出かけると言ったきり一向に戻ってくる気配を見せない社員に対し、
怒りを募らせていた大久保の叱責を受ける羽目になってしまうのであった。


睦月「あの、橘さん…」

 真司が大久保からの小言を聞き終えるのを二人して律儀に待っている時、
睦月がおもむろに口を開いた。

 橘は彼の呼びかけに、声を出す代わりにその方向を振り向く。

睦月「俺達がこうして今でも戦いを続けているとあの人が…、
    剣崎さんが知ったらきっと悲しむでしょうね。
    何の為に自分が犠牲になってまであの戦いを止めたんだろうって…」

橘「…その通りだ」

 橘が呟いた。

橘「だからこそ、あいつや始をもう戦場に立たせる訳にはいかん。
   あいつらの戦いは終わったんだ…」

 ここからは俺達の戦いだ。

 そして、自分達が剣崎一真や相川始の為に出来る事はと言えば、
いずれ彼らが平穏無事に過ごせるような世界を少しでも早く実現させるべく、
闇の勢力との抗争を終結させる事くらいである。

橘の発言の裏にはそう言った意味が込められていた。

睦月「俺も、そう思います」

 そんな橘の意図を汲み取った睦月はすぐさま反応する。

 確かに、彼とて剣崎には平穏な生活を迎えてほしいと思っている。

 だが果たして、現実はどうだろうか。

十二体ものアンデッドの力を融合したキングフォームを超える最強フォームの力を酷使して、
最終的には人間ですらなくなってしまった剣崎の存在を、
Dショッカーなどの組織が放っておく筈などあるまい。

睦月「今の剣崎さんを戦いから遠ざけようとするのは、
    むしろ危険なんじゃないでしょうか?
    もしあの人がDショッカーに囚われでもしたら…」

橘「分かっている」

 それまでは無言で睦月の話に耳を傾けていた橘が、
ここへきておもむろに口を開いた。

橘「だからこそ、神崎士郎を通してライダー同盟にアプローチをかけたんだ。
   上手く行けばDショッカーに関する情報が手に入るかもしれないからな」

 橘がそんな内容の話をしていると、
ようやく大久保の小言から解放されたらしく、
真司がばつの悪そうな表情をしながら戻ってきた。

真司「いやー、まいったまいった。編集長にまたこってり搾られちまったよ。
    いつまでもふらふらしてないでちゃんと仕事しろってさぁ…」

睦月「城戸さんは、記者か何かをやってらっしゃるんですか」

 真司のこぼした愚痴の内容から彼の職種について推理した睦月が話しかける。

真司「まぁな。つっても俺はまだ新米なんだけど…。あ、そうだ!
    この際だしあんたらの事記事にしてもいい?
    『「仮面ライダー」の素顔を徹底的に暴く!』みたいな奴を…」

「それは駄目だ!」

 あまりに突拍子な発言を抜け抜けとしでかす真司に対して、
橘と睦月は同じタイミングでツッコミを入れていた。


 真司達のいる公園から多少離れた地点に位置するビルの屋上。
そこには今、一人の武者頑駄無が佇んでいる。

漆黒の鎧に身を固め、身の丈を軽く上回る大鎌を携えたその武者は、
例え直立不動であろうとも強烈なプレッシャーを放っていた。

武者「…戻ったか」

 黒い鎧の武者=堕悪魔刃頑駄無(ダークマジンガンダム)が独り言のように呟くと、
彼の持っている鎌・ファントムハーケンの刃から鈍く輝く光が放たれ、
その中から一人の仮面ライダーが姿を現した。

 外見は龍騎に酷似しているが、
黒のグランメイルにダークグレーの鎧を装備しているなど、
細部には微妙な違いがある。

ライダーの手には、外見だけではどのようにして用いるのか判断出来ない、
禍々しい形状をした筒状の物体が握られていた。

魔刃「収穫はあったのか?」

ライダー「それなりにな」

 大儀そうに呟くと黒いライダーは変身を解除し、
その素顔を白日の下に晒す。

そしてその全貌は仮面ライダー龍騎に変身する男・城戸真司と
一目では見分けの付かないほど瓜二つであった。

しかし、本来の真司を多少なりとも知っている者からすれば、
この男が「城戸真司」という一個人でない事はたちどころに判別出来るであろう。
それ程に彼の醸し出す雰囲気は、
本物の真司なら決して持ち得ない筈の強い負の力に満ちていたのだ。

魔刃「…しかしリュウガよ、何時までこんな地道な作業を続けているつもりだ。
    俺は貴様の戯れに付き合っている程暇がある訳では無いぞ」

真司(虚像)「武者頑駄無ともあろう者が愚かな事を…。
        戦において、兵の数は多ければ多い程こちらに有利となる…、違うか?」

 堕悪魔刃頑駄無の言葉に、
リュウガと呼ばれた男=ミラーワールドの城戸真司は、
優越感の混じった見下すような不敵な笑みを浮かべて反論した。

魔刃「だが質も伴っていなければ話にならんぞ。
    貴様が堕悪馬吸夢(ダークバキューム)を用いてまで集めて回っている鏡像世界の妖物共…、
    使い物になるのであろうな」

 魔刃は虚像の真司の手に抱えられている筒状の機械を指差して言った。

 この堕悪馬吸夢は本来、堕悪魔刃頑駄無の所有物であり、
日本の地に眠ると言われる「天馬の国沈没エネルギー」を吸収する為の装置なのだが、
それ以外にも武者魂をも吸引可能な構造となっており、
実際に魔刃の宿敵たる紅零斗丸の武者魂を奪い去って、
彼を堕悪武者へと変貌させた事もあった。

その話に興味を抱き、
ミラーモンスターの核に対して同じ事を為そうと魔刃に協力を持ち掛けてきたのが、
虚像の真司であった。

彼は堕悪馬吸夢を持ってミラーワールドに侵入し、
他の仮面ライダーや自らが撃破したモンスターが遺していった核を次々と吸収していたのである。

真司(虚像)「(フン…。
        やはり異界の野蛮人風情にモンスターの真の価値など解かる道理もないか…。
        まあいい…)」

 虚像の真司は内心ではかように思っていたものの、
それを決して面(おもて)に出す事はせず、
不敵な笑みを浮かべたまま、相方に向けて言い放った。

真司(虚像)「ならば魔刃よ、そろそろお前にもモンスターの力の程を見せてやるとしよう。
        そして奴らに思い知らせてくれる…。
        この世の裏側に追いやられし者達の恨みを…!」



226 名前:新章/決意の変身:2010/04/29(木) 01:21:54

○城戸真司→橘、睦月の素性を知り、彼らに協力する事を表明。
○橘朔也→行方不明の剣崎や始の分まで戦い続ける意志を固める。
○上城睦月→剣崎の身を案じる。
●堕悪魔刃頑駄無→虚像の真司と共に暗躍。
●城戸真司(虚像)→密かにミラーワールドへ渡り、モンスターの核を収集していた。

【今回の新規登場】
●堕悪魔刃頑駄無=魔王頑駄無(SD頑駄無 武者○伝)
大鎌ファントムハーケンを振るう、堕悪闇軍団の首領。本来は魔界の出身で、かつて武者の世界・「天
宮(アーク)」に侵攻した際に武者紅零斗丸によって倒された。『武者○伝』の世界にて錬金術師の鉄
仮面によって過去の世界より召喚された上、錬金術によるパワーアップを経て堕悪武者として復活。し
かし直後に、鉄仮面を葬り去って自ら堕悪闇軍団の支配者に君臨した。「天馬(ペガサス)の国沈没エ
ネルギー」を求めて現代日本へ時空転移する。富士山頂にて強大なエネルギーを吸収する事にで更なる
強化を果たし、魔王頑駄無を名乗るようになるが、いつしか力を手に入れる事がそのまま目的となって
しまい、強過ぎる力を持て余してしまう。その結果、武者頑駄無達の「想い」の力を前に敗れ去った。

●城戸真司(虚像)=仮面ライダーリュウガ(仮面ライダー龍騎劇場版 EPISODE FINAL)
自身をミラーワールドのライダーと名乗る、城戸真司と瓜二つの外見を持つ謎の存在。その見た目こそ
真司に通じるものがあるが、内面は全くの別人であり、他のライダーを傷付ける事も厭わない。真司の
優しさと甘さに付け込み、一度は彼の肉体を乗っ取る事に成功するが、優衣の死を知った真司の意志に
より再び分離させられる。最終的には龍騎のドラゴンライダーキックを受けて爆死したが、その正体に
関しては明かされないままであった。現実世界に長時間滞在出来ない、真司と一体化して完全な生命体
になろうとした点などから、広義の意味でモンスターの一種と考えられる。



227 名前:新章/マスター・アジア発つ:2010/09/08(水) 00:11:48


光たちが襲撃を受けているころ、別の場所にて一人の男が滝に打たれ瞑想をしていた。
男は針で穿たれている様な痛みにも、水の冷たさも気にせず、ただひたすら滝に打たれ
自分がこれから何と戦い、何を為すかを考えていた。

それは過去、男が道を誤ったが故の試行。
男が滝に打たれ、自然と一体化していると声が聞こえた。
それは男と志を同じく者達の悲鳴。

愚か者たちによって愛する自然が消えてゆく。


??「………そうか、星獣たちよ…汝らの森が…………。
よかろう、のうのうとこの身一人休むわけにはいかぬ。ワシが手を貸そう!!」

故に彼は立つ。
悪を断ち、豊かな自然を取り戻すために!

??「ドモン……シャッフル同盟の同志たち、玄海、江田島、天秤の童虎。
見えたぞ!ワシの行くべき道が!!」

男は、清流に打たれながら立ち上がった。

??「ハアアァァァ!!」


カッと眼を見開き、男の正拳が天を衝く!

その滝は逆流し、龍となって空に虹をかけた。


迷ってなどいない。
ただ、討つべき者たちを改めて見据えただけのこと。
友の声に答えるため、流派 東方不敗を極めし男…マスター・アジアはギンガの森を目指す。

その背に虹と熱き想いを背負って!


東方不敗「もしもし……カッシュ博士。あれの修理は終わっているか?
そうか。………いや、まだいい。他のパイロットと違い、ワシはこの身一つで事足りる…が、
森を守る盾は大きいほうがよかろう?」



228 名前:新章/マスター・アジア発つ:2010/09/08(水) 00:12:19
○東方不敗マスター・アジア→星獣の声を聞き立ち上がる。

【今回の新規登場】
○東方不敗マスター・アジア/シュウジ・クロス(機動武闘伝Gガンダム/機動武闘外伝ガンダムファイト7th)
凄腕のモビルファイターで拳法家。
自然を愛するが故に人類を滅ぼそうとしたが弟子であるドモンに(拳で)諭される。
愛する弟子に見守られ逝ったが、黄泉還り今度は自然と人類を守るため再び戦場に立つ。


229 名前:新章/魔法騎士 アース解放編:2010/09/08(水) 00:13:22


ガルマ「やれ! インペライザー!! 
奴らを一人残らず血祭りにあげろ!」

UFOから響く声とともに五体の無双鉄神は進軍を開始した。
だが、ギンガマンと魔法騎士たちも、黙って殺されるわけがない。

最初に立ちはだかったのは漆黒の重戦士 ブルタウラスであった。


黒騎士「野牛鋭断!」

独楽のように体を回転させ、ギュルルルと腕を振り回す。
その手にある長槍がインペライザー達の頭部を薙ぎ、
五体の無双鉄神全てをばらばらに引き裂いた。

光「やった!」
ガルマ「フフフ………」

5体のインペライザーすべてが倒されたというのにガルマは笑みを浮かべたままだ。
その笑みには不気味さすら伺える。
まるで、まだインペライザーは死んでいないとでもいうように。

黒騎士「おかしい。いくらなんでもあっけなさ過ぎる。
こんな強さでウルトラ戦士を倒したなどと………がッ!」

油断したわけではなかった。
だが、彼はそれに気づくのが一瞬、ほんの一瞬だけ遅かった。

ギンガレッド「兄さん!」

元は巨大な砲台であったインペライザーの両腕が、
杭となって彼の両足を縫いとめた。
さらに止めを刺すようにブルタウラスの腹部を一本のドリルが貫いている。
『重星獣』の異名を取る戦士は一瞬にして地に伏した。

ギンガレッド「兄さん! 返事をしてくれ! 兄さん!!」

ギンガレッドの叫びも虚しくブルタウラスの目から光が消える。

ギンガレッド「にいぃさあぁん!!!」
ギンガピンク「ヒュウガァァ!!」

悲しみに浸る間は無かった。インペライザー達は再び進軍を開始する。
バラバラにされた手足は接合され、腕にはより凶悪な刃を身につけて。

ギンガブルー「くそぅ! よくもヒュウガを!!」
海「許せない!!」

インペライザーには感情も、言語機能すらも搭載されてはいない。
彼がおこなう任務は、破壊することのみである。

ガルマ「どうだ! 見たかね諸君。これがDショッカーの…力と栄光を手に入れた者たちの進軍だ。
我らが行く先には虫けら一匹残すものか! 進め、インペライザー!! まずはその鈍牛の頭を叩き潰すのだ!!」

ブルタウラスの前に立ちはだかろうとするギンガイオーと四体の魔神。
だが、彼らもまた4体のインペライザーに阻まれる。

ギンガイエロー「くそ、こいつら不死身かよ!?」
ギンガグリーン「落ち着け! どんな敵にも倒す方法はあるはずだ!」

だが、そう叫んだギンガグリーン自身もまた内心では焦っていた。
黒騎士・ヒュウガの容態。
あれは下手をすれば致命傷か、命にかかわる怪我であるのは明白だ。

一刻も早く、助けなければいけないのは分かっている。
が、どうにもできない硬直事態に皆の焦りばかりがつのった。

光「くそっ。私にもっと力があれば……」

その時である。ギンガの森にある滝が割れ、そこから一つの戦艦が現れた。
名をギガバイタス。

そして現れる新たな二体の巨人。

ギンガイエロー「ギガライノス!!」
ギンガブルー「ギガフェニックス!!」

地を駆け、力を司る赤き鋼の巨人。ギガライノス。
空を飛び、速さを司る蒼き翼の巨人。ギガフェニックス。

かつて、ギンガマンに命を救われた二体の星獣。
インペライザーの魔の手からブルタウラスを救おうと陸と空を駆ける二体。

だが――

ガルマ「なぎ払え!」

ガルマが右手で振り払う仕草をすると同時、轟音と爆炎が辺りを包む。
ギガライノスとギガフェニックスの進行が阻まれてしまう。

ギンガイオーもレイアースも、セレスも、結界を張れるウィンダムですら猛火の前に為す術が無かった。
呪文を唱えようにも敵は隙を与えない。進軍しようにも砲撃はたやすく自分達の足をくじく。

光「………早く行かないと…! ヒュウガが、ヒュウガがぁ!!」


絶叫する光。風と海も唇をきつく噛み締める。
なんと無力なことだろう。星獣の力を借りて尚、
自分たちは星を守るに足りないというのだろうか。

その時であった。

東方不敗「石・破・天・驚・拳!!」


閃光が、一瞬にしてインペライザーの腕を砕いた。
粒子密度まで分解されたインペライザーのその先、光達は眼にする。
二人の男性を。

ガルマ「ヤツは……憎きロンド・ベル隊の……モビルファイター!!」
東方不敗「ジオンの小僧が、一体何用でこの森を荒らす!」
??「……ここまで無残に星を破壊するとは……」

片方は、紫色の特徴的なチャイナ服に身を包んだ男性。
もう片方は、ボロボロの衣を身に纏った若い顔つきの男。
その左腕には不思議な光を放つ、腕時計のような装身具を身につけていた。

男は、その左腕を空に掲げる。

??「ヘァッ!」

光が収束し巨人が現れる。
その腕と胸には幾多の戦場で得た勲章 スターマーク。
胸に輝くは光の巨人の証。カラータイマー。
彼こそ。
ウルトラ兄弟の長兄にして宇宙警備隊の隊長 ウルトラマンゾフィー。

東方不敗「この愚か者どもがぁ!! 罪の無い森をここまで傷つけおって! 容赦はせんぞ!」

大気に、大地に、亀裂が走る。
普段は重力に従って、垂れている一房の弁髪でさえ、今は天を衝いている
そして男の叫びに応えるように、一筋の光が天から舞い降りる!

東方不敗「出でよ! ガンダァァム!!」

天から飛来したのは一つのカプセル。
そして、そのカプセルを割り開いて出てくるは漆黒に彩られた一体のMS。

その名を『マスターガンダム』。

ギンガグリーン「すごい……」
光「レイアースを通して伝わってくる。力が…」

ウルトラ戦士の隊長といえる男と、最強のモビルファイターが、一同に会す。

今、事態は着実に終着へと向かっていた。



230 名前:新章/魔法騎士 アース解放編:2010/09/08(水) 00:14:04
○ブルタウラス→瀕死の重傷を負う。
○ギガライノスとギガフェニックス救援に現れるもインペライザーに苦戦。
○東方不敗とゾフィー→戦士たちのピンチに駆けつける。
●ガルマ・ザビ→東方不敗に驚愕。

【今回の新規登場】
○鋼星獣ギガバイタス(星獣戦隊ギンガマン)
海の惑星・バイタス星の出身。
闇商人ビズネラによって捕らえられ鋼星獣に改造されるが、ギンガマンと星獣たちの説得で
ギガライノス、ギガフェニックス共々正義の心を取り戻す。

○鋼星獣ギガライノス(星獣戦隊ギンガマン)
沼の惑星・ライノス星出身。
闇商人ビズネラによって捕らえられ鋼星獣に改造されるが、ギンガマンと星獣たちの説得で
ギガフェニックス共々正義の心を取り戻す。その後、グレゴリ艦長に命を奪われたが、
空想大戦の旧編にて黄泉還り、平和のため戦う。

○鋼星獣ギガフェニックス(星獣戦隊ギンガマン)
山の惑星・フェニックス星の出身。
闇商人ビズネラによって捕らえられ鋼星獣に改造されるが、ギンガマンと星獣たちの説得で
ギガライノス共々正義の心を取り戻す。その後、グレゴリ艦長に命を奪われたが、
空想大戦の旧編にて黄泉還り、平和のために戦う。


231 名前:新章/魔法騎士 アース解放編:2010/09/08(水) 00:14:24


ゾフィー「へアッ!」

駆けつけたゾフィーはブルタウラスへと手を差し伸べる。
マスターガンダムは隙のない構えで、2人の前に立ちインペライザーを牽制する。

ガルマ「ば、バカな! インペライザーがああもあっさりと破壊されるだと!?」

一方のガルマ・ザビは己の目を疑った。
過去の性能を100%引き出していないとはいえ、
よもや初撃でインペライザーが、しかも生身の
モビルファイターに破壊されるとは思っていなかったのだ。


一方のマスターガンダムは魔法騎士達とギンガマンに視線を向けた。
戦士たちは、思わず姿勢を正す。

そうするだけの威厳がそのMFにはあったのだ。
かれの声がスピーカーごしに光たちに伝わる。

東方不敗「この……馬鹿者どもがぁぁあぁ!!」

敵に向けたのではない。
東方不敗マスター・アジアの怒声は星を守護する戦士たちを揺さぶった。

東方不敗「森を守護する者達が! このていたらくはなんだ!」

マスターガンダムの漆黒の手が、木がなくなり焼けた大地を指す。
突如の罵声に驚いた戦士たちも言い訳のしようが無かった。

彼らは、敵がどんなに強くとも敗北してはならない。
いや、彼らだけではない。

護りし者は敗北してはならないのだ。

東方不敗「思い出せ! 貴様らは一体誰からその力を授かった!?」

インペライザーが進軍を開始した。
マスターガンダムとウルトラマンゾフィーはブルタウラスを庇いながら、応戦する。

リョーマ「誰から……?」
光「私たちが……力を授かったのは」

言われるまでもない。
彼らに力を授けたのはこの星そのものだ。

東方不敗「ならば何故、ここまで破壊者に暴挙を許す! 貴様らは……」

そう、地球に足をつけて戦う彼らは。
言ってしまえば戦闘する場所全てが自分達の領域(テリトリー)。
そして分け与えられる力も無限。
なら、

風「私たちは負けられないのではなく」
ハヤテ「負けるはずが……ない?」

東方不敗「ふ………やっと気づきおったか」

彼らと対峙したとき瞬間に東方不敗は理解した。
戦士たちが自分と同じ力を継ぐ者と。

流派 東方不敗は天と地の霊気を父母とし生まれたもの。
天地自然の大いなる力が、マスター・アジアに無限の力を与える。

それこそが老いて今尚、最強と名高いモビルファイターの強さの原点。

東方不敗「自然の化身たる星獣と共に戦って尚、
それに気づかないとは、まったく甘すぎるわ。おぬしもそう思わんか?」

2体のインペライザーを同時に相手にしながら、ゾフィーも頷いた。
気のせいか、彼の顔は笑っているようにも見える。

東方不敗「さぁ、見せてみるがいい! 
戦士たちよ! 真の姿をこの愚か者どもに!!」

ギンガマン「「「「「唸れ! 獣装光!」」」」」

ギンガイオーの体を装甲が包み、剣がより強力な形態に変化する。
頭部の兜は王冠さながら。
胸部には分厚く、これまた立派な装甲。
これぞ、ギンガイオーの最強の姿。

【獣装光 ギンガイオー】

そしてもう一体の大地の守護神も、真の姿を現す。

光「魔神よ!」
海「我らに!」
風「力を!」

三体の魔神がその姿を光へと変え、空に飛んでゆく。

最初に碧の閃光が
次に蒼い光りが
最後に紅い輝きが

三つが重なり合った瞬間、凄まじい音とともに大気が震えた。

光臨する究極の魔神 

【合体魔神 レイアース】

東方不敗「光の国の戦士よ。この先、我らは手を貸してはならん」
ゾフィー「?」

東方不敗「星を守る以上、奴らにはこの先、何倍もの苦難が襲い掛かる。
この程度あの者達だけでしりぞけなければな」

ゾフィー「……デュワ」
東方不敗「心配いらん。ヤツラは負けぬよ」

東方不敗の視線の先には。
インペライザーと合間見える二人の守護神。

魔法騎士とギンガマンは己の心臓の位置に手を当てた。

胸の奥で震えている。
森や街のあの頃の輝きは取り戻すのに時間を要するだろう。
それでも、彼らは戦う。

未来過去を抱きしめて

ギンガレッド「行くぞ! 皆!!」
ギンガマン・魔法騎士「「「「「「「「おう!!」」」」」」」」

魔神 レイアースは両手を胸の前にかざした。
現れるは白光の魔法陣。

その魔方陣にギンガイオーも手をかざす。

ギンガマン・魔法騎士「光の螺旋!!」

魔方陣から何重にうねる光が、放たれる光弾ごと無双鉄神を飲み込んでゆく。
光の螺旋は本来、三体の魔神のエネルギーを相乗させることで強力なエネルギーを生み出し、相手にぶつける技。
だが、ギンガイオーと協力して打ちだす、この光の螺旋はいままでの技とは違う。
この星、地球の持つ力をそのままエネルギーに転化し、打ち出すのだ。

戦士たちは星のエネルギーを変換する歯車となりてただ、荒れ狂う力を御する。

インペライザーを破壊するたびに、戦士たちの腕から、何かが折れるような音が響いた。
あまりに大きなエネルギーの過負荷に戦士たちの体が、悲鳴を上げているのだ。

苦痛に顔をゆがめる戦士たち。
まるで何トンもある重りを吊り上げているような痛みが腕に走る。
歯を食いしばり、ただひたすら戦士たちは前を見つめる。
彼女達の視界は自分達の放つ白い閃光に遮られ、何も見ることはかなわない。

だが、その中で光は幻視した。
桃色の長い髪をなびかせる一人の少女を。
少女は光そっくりの笑みを浮かべて戦士たちの近くに己の手を添える

光「ノヴァ……」

少女の名はノヴァ。
光がセフィーロで宿した不安や悲しみから生まれた彼女の分身。

光は、彼女の笑みに頷いた。
戦士たちの負担が軽くなる。

ギンガレッドと光はひときわ強い声で叫んだ。
好機は今。全身の力を込めて、大自然の怒りを無骨な鉄の神にぶつける!!

リョーマ・光「いっけぇぇぇぇぇ!!!!」

砲撃の嵐もろとも螺旋が飲み込む。
地面や木々は一切傷つけず、クレーター一つ残すことなく。
インペライザーは消え去った。

戦いはここに終結したのだ。



232 名前:新章/魔法騎士 アース解放編:2010/09/08(水) 00:14:53
○ゾフィーと東方不敗→ギンガマンと魔法騎士の助太刀に入る。だがブルタウラスを助けた後事態を静観。
○魔法騎士・ギンガマン→東方不敗の助言に気づき、星の力を借りてインペライザーを破壊。
○ノヴァ→突如出現。光に手を貸す。
●インペライザー→消滅。

【今回の新規登場】
○合体魔神レイアース(魔法騎士レイアース)
レイアース・セレス・ウィンダムが合体した姿。
レイアースの姿に、セレス、ウィンダムの羽を備えている。

○ノヴァ(魔法騎士レイアース)
光がセフィーロで得たマイナスエネルギーから生まれた少女。光の分身であり当初は光達を殺そうとするが、
最終的には光と一つになる形で消滅する。なぜ、彼女が現れたのか、それはまだ明らかにされていない。

233 名前:新章/魔法騎士 アース解放編:2010/09/08(水) 00:15:27


戦いは終わった。魔法騎士とギンガマンは満身創痍になりながらも、己の乗っていた機人たちから降りてきた。

ボック「みんな〜」

森の精霊であるボックが彼らの元に一目散に駆け寄る。

サヤ「ただいま、ボック」

帰還した戦士たちを、長老オーギ、東方不敗と、巨大なウルトラマンゾフィー。
そしてヒュウガと鋼星獣たちが、出迎えた。

オーギ「皆。良くやってくれた」
光「でも、私たちは森を守れなかった……」

気を落とす魔法騎士とギンガマンたち。
彼らの正面には、焼け付いた大地。
だがその時、大きな咳払いが聞こえた。

他でもない。東方不敗マスター・アジアだ。

東方不敗「まあ、貴様らも 若輩なりによくやった。それに美しい森をこのままにしておくのも忍びない」

マスター・アジアは上を見上げた。
視線の先にはウルトラマンゾフィー。

2人は、同時に頷いた。

ゾフィー「ゼァァァァ!!」

ウルトラ兄弟の長兄は飛んだ。

両手を広げる。
生み出されるは虹色の光。
ゾフィーのカラータイマーが点滅するのと引き換えに、
キラキラとした光の粒子が森に降り注ぐ。

光「! 見て! 皆!!」

光が指差した先、そこにはインペライザーによって
へし折られた大木たちの姿。

だがその大木の折れた幹から再び、芽が生え、枝をつける。
それだけではない。

焼け付いた大地からは水が湧き、傷ついていた獣たちは再び起き上がる。

東方不敗「すでに消えてしまった命を蘇らせることはできない。だが、傷ついたものたちを癒すことは出来る……」

腕を組み蘇る大地を眺め、マスター・アジアは呟いた。
戦士たちもマスターに倣って大地を見る。

ヒカル「あれ? 腕の痛みが消えてる」
ゴウキ「ウルトラマンが、俺たちの傷も直してくれたのか」

全員が遥か天空を見る。
光の国の警備隊長はもう一度全員に向かって頷くと晴天に消えてゆく。

リョーマ「ありがとぉーっ!!」
光「ありがとぉーっ!!」

全員が閃光の彼方に手を振った。

東方不敗「さてと、小娘たち」
海「だれが、小娘よ!!」

軽口の応酬をしてマスター・アジアは懐から携帯型のテレビ端末を取り出す。

東方不敗「そら、貴様達に伝言だ」
端末「……魔法騎…聞こえ…か? 聞こえ…ら応答…願う」

放られたそれを風が受け取り、ダイアルを調節する。

風「もしもし、どちら様ですか?」
端末「私はロンド・ベル隊の代表を務める、ブライト・ノア。ゲッターロボのパイロット、流竜馬からの話を聞いていないか?」

光たちは目を向いた。
ブライト・ノアといえばかつて、地球とジオン公国との間で起きた、『一年戦争』の英雄の1人である。

ホワイトベースと呼ばれる戦艦に乗り込んだ英雄たちの話は、地球に住んでる者なら誰もが知っている。

光「竜馬さんから話しを聞いたのは私だ」

風から端末を受け取り、ブライトに挨拶する光。

ブライト「魔法騎士の諸君、我々地球連邦はこの度 正式に君達に対して協力要請を申し込むことを決定した。
君たちを少年少女が任意で行動する地球防衛チーム スクランブル・フォース(SF)にスカウトしたい」
海「スクランブル・フォース?」
ブライト「そうだ。ロボットを操る鋼鉄甲隊。悪霊退治を主とし、僧侶や魔法使いが所属する、妖撃破隊。
主にDショッカーを初めとする怪人と戦う、変身戦隊の三つからなる」

説明を聞き終わった光たちはその申し出を受けるより先に疑問に思ったことを
ブライトに問いただす。

海「私たちはどこに所属すればいいの?」
ブライト「君達自身で決めてもらってかまわない。君たちは3つ全ての勢力に加入する資格がある」

その言葉にじっと考え込んでいた光は顔を上げた。

光「3つの勢力全てを掛け持ちしてもいいのか?」
ブライト「……想像を絶する辛さだと思うが君達自身がかまわないなら」

光は意志の宿った鋭い瞳で海と風を見つめた。
三人はお互いの顔を見る。
そして頷く。
答えは決まっていた。

光「私たちはスクランブル・フォースの全部隊に所属したい」
ブライト「……かまわないんだね?」
海「もちろんよ」
風「よろしくお願いいたします」

東方不敗がくくっと愉快そうに笑った。
その眼には、生徒を思いやる教師のような『見守る者』の光が宿っている。

ブライト「来週にでも日本にある、極東軍指令基地に来てほしい。鋼鉄甲隊を始め、スクランブル・フォースは君たちを歓迎する」

ブライトの敬礼を最後に、通信は途絶えた。



魔法騎士も、おそらく生涯初めての敬礼をすでに途絶えた液晶画面に返した。
彼女たちが、戦士としての覚悟をした瞬間である。




そして、同刻。


ジオン軍の攻撃空母・ガウ。
このご時世で安価に量産できるようになったその戦艦。
艦内では、二人の人物が衛生兵に包帯を巻かれていた。

ご存知 ガルマ・ザビとDr.ワイリーである。
そしてそのワイリーを守護するようにエアーマンが扉の前で仁王立ちをしていた。

ガルマの脇ではイセリナと白髪の男性が厳しい顔で会話をしている。

イセリナ「助かりましたわ ガトー少佐。感謝いたします」
ガトー「なんと勿体無いお言葉! ガルマ様こそはジオンの理想にして信望の光。
ガルマ様をお守りするは、私の使命であり、身に余る光栄にして果報。
・・・むしろ、私の到着が遅れてしまったが為、ガルマ様の御身にお怪我を
負わせてしまった不甲斐なき自身を恥じております」

白髪の男の名はアナベル・ガトー。一年戦争時、『ソロモンの悪夢』として地球連邦から恐れられたジオンの英雄である。
もっとも、今はその身をガルマに預け、ジオン再興のため、Dショッカーの幹部として采配を振るっているが。

Dr.ワイリー「……それにしても、ヤツラの戦闘能力はどういうことじゃ。ワシの精鋭であるロボットたちをああも簡単に壊すとは……」

ワイリーの言葉を聞き、ダン! とテーブルに怪我をしていない方の手を叩きつけ、ガルマは険悪な顔で虚空を見上げた。
彼の脳裏に思い出されるはギンガの王と紅き魔神の姿。
あのあと、UFOであらん限りの速度で逃げ出した彼らはどうにか事なきを得たのだが……。

ガルマ「よもやインペライザーが破壊されるとは……ましてや、このガルマ・ザビが尻尾を巻いて逃げ出すとは……
ロンド・ベル! スーパー戦隊! この屈辱、忘れはせんぞ!!」

怒りに眼を濁らせるガルマを見て、イセリナとガトーは切ない眼を向けた。
だが、二人ともその心情を語ろうとはしない。

イセリナ(ガルマ様、あんなにお優しい方でしたのに……)
ガトー(やはり、ガルマ様はDショッカーにいるべき人物とはおもえん。何よりDショッカーのやり方は私の指針に反する)


復讐と困惑の炎を孕んだまま戦艦・ガウは闇夜に還る。
そこには憎しみだけを乗せて。





星の綺麗な夜、ギンガの森で戦士たちとささやかな晩餐をし、
戦士たちは、別れを惜しんだ。
帰り際、森の入り口まで見送りに来た戦士たちと魔法騎士たちは抱擁し、
再会を誓い合う。

ゴウキ「……行くのか?」
ヒカル「あんまり危ないことはするなよ?」
海「うん」

海は、ゴウキとヒカルに小さな包みを渡した。

海「ギンガの森で取れた木の実でケーキを焼いたの。よかったらみんなで食べて」
ゴウキ「ありがとう」
ヒカル「大事に食うよ」

風は世話になったハヤテとサヤに丁寧にお辞儀する。
15歳とは思えないほどしっかりとした少女の目は今、潤んでいた。

ハヤテ「……またここへ来るといい」
サヤ「森も、私たちも、貴方たちを歓迎するわ」
風「ありがとうございます」

光は赤い瞳で、リョーマとヒュウガを見つめた。

光「リョーマ。ヒュウガ。今まで本当にありがとう」
リョーマ「困ったときには呼んでくれ」
ヒュウガ「俺たちも、すぐに駆けつける」

光は己の胸に手を当てた。

光(ノヴァ……私は大丈夫だよ。だから今度は私を内から見守っていて欲しい)

光の螺旋を放ったときに、感じたもう1人の自分。
かつて獅堂光の負の感情が作り上げた彼女は、今、自分の中で眠りについている。

光(もう、決して恐れない)
海(今の私達に出来ることを精一杯やろう)
風(大地のため。大切な人のため。なにより自分たちのために)

彼らはまた強くなる。
友との絆が。
自らを戒める心の強さが。

オーギ「始まるのじゃな。また、新たな争いが」
東方不敗「人は戦わなければ生きてゆけん。争いの波を鎮めるのが若き力。そしてそれを見守るのが我らの役目よ」

戦士たちの別れを惜しむ声が響く。
涙を流しながら。

真の戦いはこれより始まるという予感が彼らを引き締める。

だが、今は戦士たちにもひと時の休みを与えるべきではなかろうか?
朝が来れば、再び剣を取らなければならぬ。

せめて、僅かな一時だけでも 戦士と剣に安息を……


新章 魔法騎士 アース開放編 完



234 名前:新章/魔法騎士 アース解放編:2010/09/08(水) 00:18:38
○魔法騎士、ギンガマン→戦いに勝利する。
○ゾフィー→森を元に戻し、M78星雲へと帰還する。
○魔法騎士→東方不敗から連絡を受け、ブライトからSFへの参加を表明。
○魔法騎士とギンガマンたち→別れを惜しむ。

【今回の新規登場】
○ブライト・ノア大佐(機動戦士ガンダムシリーズ)
一年戦争時、地球連邦の戦艦、ホワイトベースを駆り、戦場を掛けた艦長。
数々のニュータイプを眼にしてきた歴史の生き証人である。
(ここから先はスーパーロボット大戦の設定)
戦艦の指揮は地球随一と評され、【機動戦艦ナデシコ】のミスマル・ユリカ艦長や、
地球連合の戦艦 アークエンジェルの指揮を務めるマリュー・ラミアス艦長を叱咤したり、
エヴァンゲリオン初号機のパイロット碇シンジやアムロ・レイを『修正』したりと、
艦の責任者として、厳しい大人のポジションを保っている。



235 名前:新章/決意の変身:2011/06/06(月) 19:49:46


 <枇杷高校 体育館>


 桃栗町でも有数の金持ちばかりが通うと言われている枇杷高校。
その体育館の中で、新体操部の女生徒達が
練習を行っている様子を眺める、二人の男がいた。

佐野「いやー、一生懸命何かに打ち込む女の子の姿ってのは美しいものっすねー」

 二人組の内の一人、佐野満は、
レオタードに身を包んだ部員達が演技の美しさに磨きをかけているのを見て、
ふぬけたような表情を浮かべている。

こんなざまでは、彼が見惚れているのは女子部員らの演技ではなく、
レオタードによって強調されている体のラインの方である事は明らかだ。

その事は勿論、佐野の傍らにいるもう一人の男にも筒抜けであった。

佐野「ねぇ、秋山さんもそう思うでしょ?」

 嬉々とした顔で、彼は傍らにいる、
黒系の服でコーディネートしたその男を振り返った。

蓮「……」

 すると、彼は無言のまま視線だけを佐野の方へと向けた。
第三者の目から見れば非常に機嫌が悪そうに見えるのだが、
この男、秋山蓮は普段からこのような顔をしているのである。
よって、彼の日常における素行を知っている佐野もまた、
蓮の仕草に一々動じる事もしなかった。

蓮「しかしお前、こんな所に何の用があるんだ?」

 これまたぶっきらぼうな態度で蓮が訊ねる。

 ちなみに蓮自身は、恋人である小川恵里の見舞いに行った帰り道に偶然佐野に出くわし、
半ば強引な形でこの枇杷高校まで連れてこられたのだ。
そして佐野はそこに何の用があるのかというと、
ここの新体操部の練習に付き合っている百合絵を迎えに行く為であった。

百合絵本人は枇杷高校の生徒ではないのだが、
偶然にも大学時代に入っていた新体操部の友人が本校の教師となったのが縁で、
彼女も時折この学校を訪れているのだ。

佐野「あ、ほら、あそこにいる人ですよ……。百合絵さーん!」

 彼女のいる位置をはっきりさせて蓮にも分かるようにする為、
佐野は諸手を上げて大声で妻の名を呼んだ。


部員「あの、百合絵さん……。あちらの方が何かおっしゃってますけど……」

 声を張り上げて叫ぶ佐野の様を見て、
百合絵の近くにいた新体操部員の一人が呆気に取られたような顔で呟いた。

百合絵「まぁ、満さんったら……」

 百合絵もまたそんな夫を見て始めは驚いていたが、
やがてクスリと笑みを漏らすと、彼に向って控え目に手を振った。

???「……まったく、いい大人があんな風に騒ぎ立てるなんて」

 そんな事を言ったのは、新体操部員の中でも一際目立つスタイルの良さと、
整った顔立ちに浮かべるいかにも気の強そうな表情が印象的な少女である。
先の発言からも伺えるように、
典型的な『お嬢様キャラ』といった形容の仕方が非常に似合う人物だ。

 名を山茶花弥白(さざんか やしろ)という彼女は、
枇杷高校の新体操部においてもトップクラスの実力を誇る部員でもあった。

弥白「失礼ながら、あの方は百合絵お姉様の夫として相応しくないと思いますわ。
    いくらあの佐野商事の後継ぎといっても、あんな幼稚な行動を取っているようでは……」

百合絵「ふふ。弥白ちゃん、私が満さんと結婚したのは、彼が大会社の社長だからじゃないのよ」

弥白「え……?」

 百合絵の言葉に、弥白は意表を突かれた。
普通に考えれば百合絵が社長令嬢でありその相手が会社の社長であれば、
それはお互いの経営戦略を有利に進める為だけのものであって、
個人的な感情は一切挟まれる余地は無い筈だ。

しかし、今回の場合は事情が異なり、両者の間には明確な恋愛感情が存在している。
百合絵は社長令嬢としてではなく一人の女性として、
佐野満を人生の伴侶に選んだのだ。

百合絵「満さんは確かにちょっとお調子者なところがあるけど、
     私の事はとても大切にして下さってると思うの。
     だから、満さんの事は悪く言わないであげて」

 自らの高飛車な発言に対しても怒りを露わにせず、
あくまで優しく諭す百合絵を前に、弥白は恥ずかしげに俯いた。

弥白「ご、ごめんなさい……。そんなつもりは無かったんですが……」

 そんな彼女を見兼ねた部員の一人が、
弥白をフォローしようと百合絵に話しかけた。

部員「気にしなくても大丈夫ですよ。
    弥白さんは百合絵さんを他の男の人に取られたのを悔しがってるだけですから」

弥白「いっ、な、何言い出すの!? 私にだってちゃんと想いを寄せる殿方くらい……」

 咄嗟に自分を好きだと言ってくれた唯一の男性である神楽の存在を思い出し、
部員に反論する弥白であったが、
その情報を初めて耳にした他の部員達に取り囲まれてしまう。

部員「え、弥白さん、誰か好きな人いるの?」

部員「もう告白とかしたの? 今度紹介してよぉ」

弥白「ちょ、ちょっと! 離れなさい!」

 練習そっちのけで弥白の下に集まる部員達と、
それを振り払おうとする当の本人の様子を見て、
百合絵は軽く微笑を漏らすのであった。


佐野「あっ、見て下さい、百合絵さんがこっちに気付いてくれましたよ!
    百合絵さーん!」

蓮「……お前は嫁を自慢する為に俺を連れて来たのか?」

 百合絵が自分の呼びかけに応えたのがよほど嬉しかったのか、
佐野はやけに高いテンションとなっているのに対し、
傍からそれを眺めていた蓮は最早呆れたような顔となるのをはばかろうともしない。

佐野「い、いや……。そういう訳でもないんすけどね……」

 蓮のもっともな指摘にばつの悪そうな表情になる佐野であったが、
やがてしばらくの間を開けた後、再び口を開いた。

佐野「……東條の奴はどうしてますか?
    またライダーとして戦う事になったって聞いたんですけど……」

蓮「……ああ、その通りだ」

 蓮は静かにそう答えた。

 仮面ライダータイガのデッキの所有者であった東條悟は、
早々にライダーの資格を放棄していた佐野とは違い、かつては自分の進むべき道を決めかねていた。

 ライダーとして戦いを続けるのか、
あるいはデッキを捨てて全ての記憶を消し去るか、
二つの道の狭間で燻ぶっていた彼であったが、
ある日にデパートの屋上で知り合った男・滝和也との出会いや、
そこで出くわした恩師・香川との戦いを経て再び戦う事を決意し、
サバイブの力を手に入れたのだ。

ライダー同盟を通じて知ったというそんないきさつを蓮から聞かされ、
佐野は東條が新たな道を進み出したのを心から喜ぶと同時に、
一種の寂しさを感じずにはいられなかった。
ライダーの資格を辞退した事をいまだに引き摺っている自身に比べると、
東條とは随分と差を付けられてしまったからだ。

蓮「奴はお前にも会いたいと言っていたが……、一度くらい顔を見せてやったらどうだ?」

佐野「……それは出来ません」

 俺はもう仮面ライダーじゃありませんから。
そんな言葉が喉元まで出かかっていたが、
突如として蓮が妙にそわそわし始めたのを見て、
佐野は思わずその言葉を呑み込んだ。

佐野「秋山さん、まさか……」

蓮「ああ、モンスターが近くにいる」

 蓮の言葉に佐野は大いに驚かされた。
そのモンスターの狙いが誰であろうとも、
付近にいる百合絵が危険に晒される事は想像に難くない。

慌てふためく佐野を尻目に、蓮は変身出来るよう人目に付かない
体育館の裏手へ向かおうとする。

佐野「秋山さん!」

蓮「佐野……、お前は自分のやるべき事をやれ」

佐野「俺のやるべき事……、そうだ、百合絵さん!」

 何とか蓮のいう『自分のやるべき事』を認識した佐野は、
まだこの非常事態を知らないであろう者達の安全を確保する為に妻の下へ向かおうとするが、
次の瞬間、彼らの耳を劈(つんざ)くような悲鳴が聞こえてくる。

どうやら体育館内にいる新体操部員の誰かが発したものらしい。

蓮「……チッ、遅かったか!」

 モンスターによる襲撃が起こったのを悲鳴が聞こえた事で理解した蓮は、
迎撃態勢を整える為にカードデッキを手に体育館裏へと急行した。
それとほぼ同じタイミングで佐野もまた、声のした方向を目指して走り始めていた。


 <ミラーワールド>


 仮面ライダーナイトに変身した蓮が鏡像世界の中で遭遇したモンスターは、
濃緑色のボディを持ち、両腕には長い鉤爪を備えたクモ型モンスターの一種・ソロスパイダーであった。

その鋭利な爪には赤い液体が付着しており、
それが人間の血液である事は誰の目にも明らかだ。

恐らく、一度現実世界へ渡り獲物に奇襲をかけたが失敗し、
滞在時間の終了前にこのミラーワールドへ戻って来たのだろう。

ナイト「……運が無かったな。今度はお前が狩られる番だ」

 そう一言呟くと、ナイトはソードベント・ウイングランサーを召喚し、
眼前のモンスターへと斬り込んでいくのだった。


 <枇杷高校 体育館>


佐野「!? これは……!」
 体育館の内部にいる百合絵達の下へ駆け付けた佐野が目撃したのは、
弥白を始めとする新体操部員達の手当てを受けている彼の細君の姿である。

佐野「百合絵さん! 大丈夫ですか!?」

百合絵「あ……、満さん……」

 佐野に呼びかけられて振り向く百合絵は片腕の部分を負傷したらしく、
レオタードの薄い生地ごと皮膚が切り裂かれていたが、
当人が至って平然としているので重傷には至らなかったものと思われる。
しかし、只でさえ華奢な体付きの彼女が負わされた傷は出血の量と相俟って非常に痛々しい。

佐野「うわ、酷い傷ですね! 早く手当てしないと……!」

弥白「既にやっておりますわ」

 広い体育館内に山茶花弥白の凛とした声が響き渡る。

 彼女の言う通り部員達の手によって救急箱が運び込まれており、
周囲には百合絵の治療を行う少女達の姿があった。
この分では佐野の出番は無さそうである。

佐野「あ、あのさ……、俺も何か手伝う事ない?」

 手持ち無沙汰な様子で訊ねる彼を見て、弥白は大袈裟な溜息をついた。

弥白「はぁ……。もう少し早く来て下されば色々と手伝っていただくつもりでしたが……。
    では、百合絵お姉様を保健室へお連れしてくださいまし。ご案内いたしますから」

佐野「わ、分かりました……」

 弥白に先導されて、百合絵に肩を貸しつつ保健室へと向かう佐野の心の内には、
何も出来なかった己に対する自責の念が渦巻いていた。

―― 俺は一体何をやっているんだろう。

 蓮のようにモンスターと戦う事も出来なければ、
かといって弥白のように負傷した百合絵を助けてやる事も結局は出来なかった。

 彼は、無力だった。


 <ミラーワールド>


 スピードを生かした戦法と長年の経験から培った技術でソロスパイダーを追い詰めたナイトは、
翼召剣ダークバイザーにファイナルベントのカードを装填、一気に決着をつけにかかった。

まずナイトがウイングランサーを構えて突撃し、
その後方に出現した契約モンスターのダークウイングが彼の背中に合体し、
翼が変形してマントのような形態となる。

その力によって、ナイトは遥か上空へと飛び上がり、
標的に向けて翳したウイングランサーを支点に、
ダークウイングの翼を全体に纏い、その体勢のままドリルのように高速回転を始める。

この状態を保ったまま、彼はソロスパイダー目掛けて急降下し、
錐揉み回転のパワーと急速落下のスピードとの相乗効果で一気に貫いた。

契約モンスターとの連携によって放たれる仮面ライダーナイトのファイナルベント・飛翔斬である。

ナイト「フン……、手間取らせやがって……」

 爆死したソロスパイダーが排出した核を見届けながら、
夜の闇でその身を染めた騎士は苦々しげに吐き捨てた。

傍らでは、彼の背後から分離した闇の翼が素早く飛来し、
モンスターの置き土産に食らいつこうとするが、
ここでも遺された核はダークウイングに吸収される前に忽然と消失してしまうのだった。

ナイト「!? またしてもか……」

 再び発生した異常事態に対応出来ず、
ナイトは無念のまま現実世界へ帰還する。

やはり大元の原因を突き止めない事にはこの現象の鎮静化はままならないと、
最近の戦闘結果から彼は結論を下していた。



236 名前:新章/決意の変身:2011/06/06(月) 19:54:43

○佐野満→自身の力の無さを責める。
○秋山蓮→佐野に付き合わされる。
○佐野百合絵→ソロスパイダーに襲われ負傷。
○山茶花弥白→モンスターに襲われた百合絵を救助する。
○仮面ライダーナイト→ソロスパイダーを撃破。
●ソロスパイダー→ナイトに倒される。ただし核は消失。
△ダークウイング→モンスターの捕食に失敗。

【今回の新規登場】
○秋山 蓮=仮面ライダーナイト(仮面ライダー龍騎)
無表情で、あまり自分の感情を表に出さない、喫茶店「花鶏」のウェイター。神崎士郎が強行した実験
によって意識不明となった小川恵里を目覚めさせる為に仮面ライダーの戦いに参加した。最初は比較的
クールにライダー同士で戦っていたが、本来持っていた優しさが災いし、他のライダーの命を奪う事が
中々出来ずにいた。一匹狼的な行動を取る事が多く、他人と親しくしようとはしないが、彼の想いの強
さを真正面から受け止めようとした城戸真司だけは仲間と認めている。金銭感覚は非常にシビア。

○山茶花 弥白(神風怪盗ジャンヌ)
枇杷高校新体操部に所属する、名古屋稚空の婚約者。日下部まろんや東大寺都らをライバル視しており、
彼女らをけだものと称する。稚空に対して想いを寄せていたものの、彼が乗り気ではなかった為に長ら
く告白出来ずにいたところを付け込まれ、悪魔に魅入られた事もある。後に稚空に自分の気持ちを伝え
るものの、結局は玉砕してしまう。箱入り娘であるせいかプライドが高く、意地っ張りな性格。最終的
には名古屋家に仕える彼方木神楽と結ばれ、双子を儲ける。

●ソロスパイダー(仮面ライダー龍騎 TVスペシャル 13RIDERS)
ミラーワールドに生息するアシナガグモのモンスター。上半身はディスパイダー リ ボーンに酷似して
いるが、肩の部分にフック状のパーツを装備している。両腕に備えた鉤爪が武器。

△ダークウイング(仮面ライダー龍騎)
仮面ライダーナイトと契約したコウモリのモンスター。空中戦に特化した性能を持ち、ナイトの戦いを
サポートする。ナイトの背中に合体して彼に飛行能力を与える他、超音波ソニックブレイカーを発して
敵の妨害も行う。



237 名前:新章/決意の変身:2011/06/06(月) 20:13:35


 <都内某所 喫茶店>


 ビジネスマンをメインの客層に据えたと思われる、
落ち着いた雰囲気の小さな喫茶店。
凱王グループのシャチョーの姿がそこにあった。
秘書のナンシーを連れていない事からも推測出来るように、
今回彼が本拠地である名古屋を離れて都内を訪れたのは、
仕事とは関係ないプライベートでの要件だ。

シャチョー「……」

 彼は持参してきたジュラルミンケースを開けると、
その中に入っていた直方体の物体をそっと取り出す。

手帳程のサイズで、ブラウン系の色で塗装された表面に、
大きな角を持った偶蹄目の動物をあしらった金の紋章が施されたそれは、
まさしくかつて佐野満が所持していた仮面ライダーインペラーのカードデッキであった。

 だがしかし、これは本物のインペラーのデッキではない。
その設計図を基に凱王グループの手によって複製されたイミテーションなのだ。

シャチョー「(ふむ、たしかに凱王〈ウチ〉の技術でこのデッキとやらを複製する事は出来た……。
       ほんでも、本当に満っちゃんはこんなもんを必要としておるんやろうか……)」

 シャチョーは、このカードデッキに関する情報を持っていた神崎士郎が、
自分達の所へ現れた時の事を思い起こしていた。

 * * *


 <数日前 凱王グループ 社長室>


シャチョー「ほぉー……。ミラーワールド、そこに巣食うモンスター、そして仮面ライダー達の戦い……。
       満っちゃんがそんなもんに首を突っ込んでおったとは驚きやね」

 佐野と別れた後、窓ガラスの中から突如現れた上、
彼を知っているかのような口振りで話す男、
神崎士郎から聞かされた内容に、シャチョーは驚愕を隠せずにいた。

ナンシー「俄かには信じ難いお話ですが、あなたがここに姿を見せた方法、
      それに神隠しの事件を考え合わせると、信じる他無いようですね」

 そう言って、ナンシーもまたシャチョーの言葉に同調する。

ちなみに彼女のいう『神隠し』とは、
名前の通りその場にいた筈の人間がある瞬間を境に忽然と姿を消したまま戻って来ないという、
まさに神隠しと形容するに相応しい怪奇現象の事を指している。

数年前まではかなり頻繁に発生しており大きな問題となったが、
現在となっては黄泉還りや時空クレヴァスの発生のお陰で
それどころではなくなってしまった事に加え、
発生件数も大幅に減少してきたという事もあってかほとんど話題に上らなくなっていた。

実は当時からゴシップ記事などでは、
神隠しの発生現場に必ず鏡やガラスといった映る物が傍にあるという共通点が指摘されており、
中には「神隠しに遭った人々は鏡の中にある
異次元世界へ連れ去られた」などという眉唾物の説も多数挙げられていた。

かつて週刊誌の記事でこれらの妙な推論を目にしたナンシーはそれを一笑に付していたものだが、
今し方神崎の語った内容と照らし合わせればあながち間違いであるとは言い切れないのだから、
世の中は何処で何がどういう形で繋がっているのか分かった物ではない。

シャチョー「ほんでもおめえさん、
       何で今更ほんな事を無関係な僕ちゃん達に教えたんや?
       満っちゃんの為にも黙っといた方がよかったんやねぇか」

神崎「……確かに、このまま何もしなければ佐野満は、
    今の平穏を維持したままで過ごす事は出来る」

 神崎が彼らの質問に対してまともな返事を寄越したのは、
これが初めてであった。

神崎「だがそれはあくまで仮初めの平穏でしかない。
    奴にはこの世界は今も数多くの戦いが起こっているという事実に、
    目を逸らさず向き合う必要がある。……仮面ライダーの力を手にした者としてな」

ナンシー「ですが、あなたの話を聞く所では、佐野社長は自らデッキの所有権を放棄したのでしょう?
      それなら、わざわざ戦場に引き戻すなんて事をしなくても……」

神崎「……それが奴の本心ならばな」

 そう言って、神崎はひどく伸びた前髪に隠れた鋭い眼光をシャチョーに向ける。

彼と視線を合わせた次の瞬間、シャチョーは神崎が自分の過去
――武者魂を失い、堕悪闇軍団との戦いから逃げ続けていた姿――
を知っている事を確信した。

そんなシャチョーが全てを理解するまでには、然程時間はかからなかった。
彼にとって、現在の佐野の様はまさにかつての己自身なのだ。
そしてそれは、戦士としての志を失い何も出来ずに逃げ惑う事しかしない、無様な男であった。

神崎「……お前達に頼みがある」

 その言葉と共に神崎はトレンチコートの内ポケットから取り出した
一枚のディスクが入ったケースを、シャチョーのデスクに投げて寄越した。

シャチョー「これは?」

 怪訝そうな表情でディスクを拾い上げ、訊ねるシャチョー。

神崎「その中に佐野がかつて使っていたカードデッキのデータを収録している。
    お前達にはそれを基にして、デッキの複製品を造ってもらいたい」

 神崎の言葉にはシャチョー達にとってあまりにも不可解なものだった。
カードデッキを生み出したのは他ならぬ彼自身なのに、
何故わざわざ直接には関係のない凱王グループに依頼を持ちかけるのか。

シャチョーはこれらの疑問を神崎にぶつけてみたが、
この男はやはり返事らしい反応を返す事はしなかった。

神崎「……そして完成したデッキを佐野に渡し、奴に最後のチャンスを与えてやれ。
    もう一度ライダーとして戦うのか、あるいは……」

シャチョー「目の前の戦いから逃げ続けるのか……」

 神崎の言わんとしていた事を、かつて佐野と同じ立場にいた者が代わって紡いだ。
自分の進むべき道を決められずに迷い続ける辛さと惨めさを、その武者頑駄無はよく知っている。

シャチョー「うむ、分かったんや。この依頼、引き受けさせてもらうでなも」

神崎「……」

 シャチョーが了承したのを聞いた神崎は無言のままコートの裾を翻し、
ここへ来た際と同じように社長室の窓ガラスを通じてどこかへと姿を晦ましていた。

こうして、凱王グループは神崎から託された資料を用いて、
インペラーのデッキを複製する作業に入る事となったのである。

 * * *


 <都内某所 喫茶店>


 そして現在。

 凱王グループの前身にあたる凱王工業の技術を以て、
シャチョーは佐野の持っていたデッキの複製に成功した。

しかし、課題は未だ数多く残されている。
一体彼は何と言って佐野にデッキを渡せばいいのだろうか。
直接出会って手渡してしまうと、
何故シャチョーがライダーの事を知っているのか訝しむだろうし、
かといって神崎の名を出せば佐野は警戒してデッキを自分の意思に関わらず拒否するかもしれない。

これらの懸案事項を考慮すると、
シャチョーはいざ佐野に会うべく東京へ赴いたものの、
そこから先へ踏み出せずに途方に暮れているのであった。

 そこで今回は様子見を兼ねて、自分と同じように武者の世界から
この現代日本にやってきた同胞と会う約束を取り付ける事にした。
その武者頑駄無はシャチョーこと鎧丸が初めてこの時代に来た時からの戦友であり、
彼の失われた武者魂を甦らせた件もあって、一等強い絆で結ばれている。

???「シャチョー、遅れてすまん」

シャチョー「っ!?」

 背後から何者かに声をかけられ、
彼は慌ててデッキをジュラルミンケースの中に仕舞い込んだ。

シャチョー「おぉ、紅零斗丸!」

 シャチョーの前に姿を現した一人の武者頑駄無。
彼こそ戦死した二人の兄、
将頑駄無 戦刃丸(センジンマル)・超将軍 闘刃丸(トウジンマル)に代わって
真星勢多(マスターゼータ)率いる鉄機武者軍団や、
魔刃頑駄無ら魔界の武者と戦った覇大将軍・武者紅零斗丸(グレードマル)であった。



238 名前:新章/決意の変身:2011/06/06(月) 20:17:17

○シャチョー→複製デッキを作り上げた後、上京。紅零斗丸と会う。
○ナンシー阿久津→神崎の話を聞く。
○神崎士郎→シャチョーにデッキの複製を依頼。
○武者紅零斗丸→シャチョーと会う。

【今回の新規登場】
○武者紅零斗丸=紅零斗大将軍=ч、頑駄無(超SD戦国伝 覇大将軍/SD頑駄無 武者○伝)
将頑駄無 戦刃丸を長兄に、超将軍 闘刃丸を次兄に持つ、三兄弟の末弟。兄達を鉄機武者 真星勢多に
殺害されたと思い込み、鉄機武者に復讐する為に豪剣(ゴウケン)頑駄無の下で修業を積む。しかし、
鉄機武者の反乱の裏には魔刃頑駄無ら魔界武者の謀略があった事を知り、最終的には真星勢多と共に
覇大将軍として魔刃を討つ。当時は良くも悪くも熱血漢で、感情に任せて周囲が見えなくなる事もしば
しばあったが、『武者○伝』では歴戦の勇士として貫禄のある振る舞いを見せていた。魔刃に武者魂を
奪われる事で一時は堕悪武者となっていたが、シャチョーの計らいによって武者魂を復活させ、ч、(ト
ウオウ)頑駄無となる。現代日本では「紅 零斗丸(くれない れいどまる)」の芸名で演歌歌手として
活動している。



239 名前:新章/決意の変身:2011/06/06(月) 22:09:57

シャチョー「久し振りやね、紅零斗丸。元気やったか?」

 かつての戦友との再会を遂げたシャチョーはその事を大いに喜び、
彼を自分の正面の席に座るよう促した。

紅零斗丸「あぁ、お前も変わりないようで安心したよ」

 軽く言葉を交わした後、紅零斗丸も着席する。
ちなみに武者頑駄無である彼らは身長が三、四頭身程度しかない為、
二人共店側の用意した子供用の椅子に腰かけている。

紅零斗丸「それで、今日はどういう用件なんだ?」

 コーヒーを注文した後で、紅零斗丸はシャチョーに問うた。
平素では山形のサクランボ農家に下宿している紅零斗丸だが、
近年では自らの名前をもじった「紅 零斗丸(くれない れいどまる)」の芸名で演歌歌手としての活動も行っており、
その際に彼の所属事務所としてバックアップに尽力したのが
凱王エンターテイメント、すなわちシャチョーであった。

そんな縁もあって、彼とシャチョーは単なる同胞としてだけではなく、
ビジネスの中で顔を合わせる機会も多くなっていた。

シャチョー「いやなに、大した用はないんやよ。ただ顔が見たかっただけや」

 紅零斗丸の質問に、彼は努めて明るく返事をしてみせた。
だが、それはかえって相手に不信感を抱かせる原因となってしまう。

紅零斗丸「お前が用も無いのに他人を呼び付けるとは珍しいな。……何かあったのか?」

シャチョー「!?」

 その発言に大いに驚かされるシャチョー。
以前の堕悪闇軍団との戦いに躊躇していながらも、
本当は心の奥底で戦おうとする武者魂がまだ残っていた事を、
自分自身より早く見抜いたこの男にやはり誤魔化しは効かない、と彼は思った。

シャチョー「い、いや、本当になんもないんや」

 しかし、今回ばかりは彼の力を頼る訳にはいかない。
神崎士郎から託されたデータを基にカードデッキを複製した事は、
武者頑駄無としては全く関係のないシャチョー個人の問題である。
ならば、その問題を如何にして解決するのかもまた彼が自ら決定しなければならない。

紅零斗丸「そうか……。それなら構わんが」

 頑なに口を閉ざすシャチョーの様子を見て、
紅零斗丸もまた不用意に干渉すべきではないと判断したのか、
それ以上深入りする事はしなかった。
そして、それ以降は二人は近況の報告などを簡潔に済ませ、
当たり障りのない世間話をして過ごしていた。

 彼らの前にある人物が現れるまでは。

佐野「あれ、シャチョーさんじゃないっすか」

シャチョー「いっ……、み、満っちゃん!?」

 二人の武者が着いていたテーブルの傍に、
妻の百合絵を伴い近付いてくる佐野満の姿を見て、彼は再び驚かされた。
佐野に会ってデッキを渡す為にわざわざ上京までしてきた矢先に、
よもや向こうの方からやって来るとは想像もつかなかったのだ。

 偶然か、はたまた彼らの見えざる所で何か大きな力が働いた結果なのか。
いずれにしても、シャチョーは佐野にインペラーのデッキを引き渡さなければならない運命にあるようだ。

佐野「いやー、こんなところでお会いするとは奇遇っすね。
    今日はまたどうしてこっちに?」

 そんな事は露知らず、目の前にいる若社長はシャチョーに話しかけてくる。

シャチョー「あぁ、ちょっと同郷の友人と会う約束があったんでな」

紅零斗丸「どうも、初めまして」

 シャチョーからの紹介を受け、会釈する紅零斗丸。
すると、彼の顔に見覚えがあったのか、百合絵がこんな反応を返してきた。

百合絵「……あら、もしかして紅 零斗丸さんじゃありませんか?」

紅零斗丸「えぇ、まあ」

 まんざらでもない紅零斗丸の受け答えを聞き、
佐野がそこへ食い付いてくる。

佐野「えっ、マジっすか!? そんな有名人と知り合いだなんて、
    やっぱりシャチョーさんは只者じゃないっすね」

シャチョー「ニャハハハ! 何を隠そう、この僕ちゃんが紅零斗丸に
       秘められた歌の才能を引き出して、歌手デビューまで漕ぎ着けさせたんだがや!」

 得意げに語るシャチョーを尻目に、
佐野はと言えば手帳とペンを取り出して紅零斗丸にサインを要求しているのであった。

紅零斗丸「これでいいかな?」

 紅零斗丸は慣れた手付きでサインを印し渡された手帳を返却すると、
佐野は嬉々とした様子でそれを受け取った。

佐野「おぉ、ありがとうございます! これで先輩達にも自慢出来ますよ」

 その光景は無論シャチョーにとっては面白くない物であった。
紅零斗丸と比べれば明らかに彼の方が有名である筈なのに、
何故佐野は自分ではなく紅零斗丸にサインを貰った事を自慢しようとするのか。

そんな疑問をぶつけてみたところ、
佐野から返って来たのはこんな内容の台詞であった。

佐野「そう言われましても、やっぱり単なるお金持ちより
    芸能人の方がネームバリューは高いですからねぇ。
    その分紅さんの方が価値があるってもんですよ」

シャチョー「うぬぬ……。その紅零斗丸を
       プロデュースしたのはウチの会社やと言うのに……」

百合絵「心配しなくても大丈夫ですよ、
     シャチョーさんだって今じゃとっても有名なんですから」

 百合絵の精一杯のフォローも空しく、
シャチョーは機嫌を直す事なしにテーブルに突っ伏していた。

シャチョー「百合絵さん……、紅零斗丸からサインを貰った後で
       ほんな事言われても説得力ないんやけどなぁ……」

百合絵「はうっ! す、すみません」

 この天馬の国=日本という土地においては、
単なる大会社の経営者よりもエンターテイナーの方が重宝されているという事実を、
彼女は異邦の民に対して自らの身を以て教えているのであった。


真司(虚像)「……この場所でいいのか?」

 シャチョーと佐野達がいた喫茶店からやや離れた位置に堕悪魔刃頑駄無を伴い現れたのは、
ミラーワールドが生み出した虚像の城戸真司だ。

魔刃「あぁ、この地にかなりの強力なペガチンがあるのをこやつが感知しているからな」

 虚像の真司からの問いに、魔刃は堕悪馬吸夢を頭上に掲げつつ応答する。

真司(虚像)「『天馬の国沈没エネルギー』か……。
        お前はまだそんな物に執着しているんだな……」

 天馬の国沈没エネルギー、通称ペガチンを手に入れる事こそが、
彼が時空転移システムを利用してまでこの日本にやって来た理由である事を
事前に聞かされていた虚像の真司は、大袈裟な溜息をついてみせた。

魔刃「……俺は何としても確かめたいのだ。ペガチンとは如何なる力なのか、
    あの武者丸の小僧が魔王頑駄無となった俺すらも凌駕した、
    その力の拠って来たる処は一体何なのかをな……」

 そう語る魔刃の表情には何処か悲愴感のようなものが込められているのを、
虚像の真司は微かに感じ取っていた。
だが、彼はその事に敢えて触れようとはしない。
今でこそそれぞれの目的の為に行動を同じくしているが、
虚像の真司はあくまでこの武者頑駄無を戦力として利用しているだけに過ぎない。
そんな魔刃が裏でどんな事を考えていようと彼にはどうでもよい事象なのだ。

真司(虚像)「フン……、まぁお前が思った通りにやればそれで構わんさ。
        俺は奴ら仮面ライダーさえ滅ぼせばいいだけだからな……」

 ――そして、新しい命を手に入れる。

 ポケットの中に入れたカードデッキを握りしめ、
虚像の真司が内に秘めた野望の火を燃やしている間に、
魔刃は堕悪馬吸夢を起動させて吸収したモンスターの核の再利用を始めていた。

魔刃「核を排出するぞ」

 魔刃がそう言った次の瞬間、
堕悪馬吸夢の吸引口からはその機械が今までにストックしてきたモンスターの核が、
ミラーワールドへ通じる鏡やガラスなどに向けて多数撃ち出されていく。

真司(虚像)「様子を見てきてやる」

 言うが早いか虚像の真司は相棒の背負ったファントムハーケンの刃からミラーワールドへ侵入し、
そこに溢れている無数の光る珠の行方を見届ける。
するとしばらく経つ内に彼の遥か頭上から、
全面鏡で構成された奇妙な柱状の物体がゆっくりと飛来してきたかと思うと、
その場にあるモンスターの核を内部に吸収しだした。

真司(虚像)「そうだ……。たっぷりと味わえコアミラー……!
        モンスターがお前の為に蓄えておいた、人間共の命の輝きを……!」

 狂気じみた笑みを浮かべ、鏡の柱=コアミラーが核を食らう光景を眺める虚像の真司。

真司(虚像)「そして産み出すがいい……、新しい命を!」

 彼の呼びかけに呼応するかのように、
コアミラーは取り込んだ核を再利用してモンスターの肉体を構築し始めていく。

吸収した核の全てを再生し終えた頃には、
ミラーワールドは飢えたモンスター達の咆哮で満たされていた。
しかも、これらの凶暴な怪物共は堕悪馬吸夢を通じて核へと送り込まれた堕悪エネルギーによって、
彼らの思うがままに操る事が可能となるのだ。

魔刃「クク……、どうやら成功したらしいな」

 餌を求めて現実世界へと現出し暴れ回るモンスターの姿を見て、
魔刃は不敵な笑みを漏らしていた。


シャチョー「ん……? 何ぞ騒がしくなってきたな」

 周囲の空気が変わり始めた事を敏感に察知したシャチョーが、
辺りを振り返りながら口を開く。

佐野「あ、もしかして俺達が騒ぎ過ぎたせいで紅さんがここにいるってバレちまったかな……?」

紅零斗丸「いや、違う……。
      今この場に渦巻いているのは明らかに『負の気』だ……!」

 武者頑駄無として培われた感覚の鋭さを以て、
状況をいち早く理解した紅零斗丸が呟いた直後、
何処かから何者かの悲痛な叫びが聞こえてきた。

市民「だ、堕悪闇軍団だ……!」

「……っ!?」

 その場に居合わせた全ての者達が、
その声を耳にした途端恐怖と驚きのあまり身を強張らせた。

 かつて天馬の国沈没エネルギーを求めて、
日本各地に甚大な被害をもたらした武者の国の軍勢・堕悪闇軍団。
この混沌の時代に、とうとう奴らまでもが黄泉還ってしまったのだ。

シャチョー「くっ! こうしちゃおれーへん、すぐに迎撃しに行かんと!」

紅零斗丸「シャチョー、待て」

 宿敵の名を聞いて闘争心を昂ぶらせるシャチョーを諫めるかの如く、
紅零斗丸は彼を制止する。

シャチョー「な、何や?」

紅零斗丸「奴らの戦力がどの程度の物か分からん今、
      二人共出て行くのは得策じゃない。
      お前はまず周りの人達を安全な所へ避難させるんだ。
      増援に来るのはそれからでも遅くはないだろう」

 紅零斗丸の指摘は、シャチョーとしても頷かざるを得ない的確な物であった。
また、将軍家の家系に生まれ、武芸にも秀でた彼ならば、
例え単騎で突撃させても簡単には倒される事はまずないだろう。

シャチョー「分かったんや。任せておくでなも」

紅零斗丸「頼んだぞ……、鎧丸よ」

 戦友の顔とその手に提げられたジュラルミンケース、
そして佐野の顔とにそれぞれ素早く目を遣ったのち、
武者紅零斗丸は逃げ惑う人々の中をくぐり抜け、戦場へと急ぐのであった。


紅零斗丸「鎧召喚!」

 来たるべき敵との戦いに備えて、
紅零斗丸はムシャノコージエレクトロニクス社の鎧転送サービスを作動させた。
これは鎧兜で武装している武者頑駄無が、
現代日本での生活により適応出来るようにと日本の企業によって考案されたシステムで、
個々の武者の音声コード入力によって、
彼らが何処にいようとも瞬時にそれぞれの武装が手元に届くという物であり、
日本在住の武者頑駄無はほとんどがこのサービスを利用している。

紅零斗丸がアクセスした場合になら、彼の専用鎧に加え、
武装としてサスマタ状の槍・烈双輝(レッソウキ)や、
身の丈の二倍程ある大太刀・烈龍刀(レツリュウトウ)が転送されるといった具合だ。

こうして、完全武装を遂げた武者紅零斗丸は、
最初に魔刃頑駄無と虚像の真司がモンスターの再生を行なった地点へと辿り着いた。

 そこで彼を待ち受けていたのは紅零斗丸にとって最も因縁深き相手であった。

魔刃「フフフ……、久しいな。まっこと久方振りだな……、紅零斗丸よ!」

紅零斗丸「やはりお前だったか、魔刃……!」

魔刃「そうだ……。貴様ら武者頑駄無に復讐する為、冥府の闇より黄泉還って来た……、という訳だ」

紅零斗丸「だがたった一人で事を起こしたのは迂闊だったな。
      ……今一度地獄の底へ叩き落としてくれる!」

魔刃「たった一人……、本当にそう思うか?」

 堕悪武者の研ぎ澄まされた刃物のような鋭い眼光が紅零斗丸を刺し貫く。

魔刃「ならば……、見るがいい。鏡像世界の物の怪の姿を!」

 魔刃が魔力を秘めた左手の手甲・ジーグをやおら振り上げると、
彼らの周囲にある鏡やガラスなどからモンスターの大群がその姿を現していった。

紅零斗丸「!? ……それがお前の新たな力か、魔刃」

 かつて戦った鉄機武者や堕悪武者のいずれとも異なるモンスターの異形を見て、
初めの方こそ度肝を抜かれる紅零斗丸であったが、
すぐに気を取り直し、烈龍刀を構える。

 復讐の炎にその身を焦がす堕悪武者と、魂に飢える鏡像世界の怪物。
そんな連中を相手に、天宮(アーク)の若武者の戦いは静かに幕を開けた。



240 名前:新章/決意の変身:2011/06/06(月) 22:12:07

○シャチョー→紅零斗丸と再開後、彼の助言を受けて人々の非難に回る。
○武者紅零斗丸→魔刃やモンスターとの戦闘態勢に移る。
○佐野満→紅零斗丸からサインを貰う。
○佐野百合絵→意気消沈するシャチョーを励まそうとするが空回り。
●虚像の城戸真司→コアミラーから復活するモンスターを見て、歓喜。
●堕悪魔刃頑駄無→モンスターを率いて紅零斗丸との戦闘態勢に移る。



241 名前:新章/決意の変身:2011/06/07(火) 02:28:52

紅零斗丸「うおぉぉぉっ!」

 烈龍刀を振るい、武者紅零斗丸は迫りくるモンスターの群れを斬り捨てながら、
魔刃へと一直線に向かっていった。

今回のような一対多数の戦いにおいては、
長期戦は圧倒的に紅零斗丸に不利となってしまう。
それを防ぐ為にはなるべく時間をかけずに決着を着ける必要がある。
つまり、モンスターを操っている魔刃を真っ先に倒さなければならないのだ。

 しかし、敵も同じ武者頑駄無。
紅零斗丸がそのような考えに至るのを見越して、
魔刃は自分の周囲に重量級のモンスターを配置し、
簡単に攻撃されないような布陣を固めているのだ。

紅零斗丸「ふんっ!」

 勢いよく魔刃を守護するモンスターの内の一体に向け得物を振り下ろす紅零斗丸であったが、
彼の一撃はそのモンスターのメタリックな質感の皮膚に軽く弾かれてしまう。

紅零斗丸「っ!?」

 鉄機武者の鎧にも匹敵しようかと思われるモンスターの硬さには、
さしもの彼も驚きの表情を隠せなかった。
更にその近辺にいた別のモンスターの反撃を受けて、
紅零斗丸は大きく後方へ吹き飛ばされる。

紅零斗丸「くっ……」

 地面に強かに激突する宿敵の姿を、
魔刃は不敵な笑みを浮かべつつ嘲笑う。

魔刃「フフ……、無様だな紅零斗丸。
    この天馬の国で暮らす間に平和ボケしたか……?」

紅零斗丸「ぬかせ……」

 刀を握りしめゆらりと立ち上がりつつ、
紅零斗丸はなおも戦おうとする意志を見せていた。

そして、敵将の撃破により戦闘を終了させる事が困難だと感じ取った彼は、
襲い来るモンスターを各個討ち取り魔刃の戦力を減らす作戦に変更する。
無論この方法は最終的には消耗戦となるので、
単騎の戦いを強いられる紅零斗丸に対して圧倒的に不利な状況となってしまうのだが、
こういった修羅場は紅零斗丸自身も幾度となく経験してきた物でもあった為、
彼は非常に落ち着き払った様子で自分の近くにいるモンスターから順に薙ぎ倒していく。

紅零斗丸「(シャチョーの前で……、不甲斐ない姿は見せられん……)」


シャチョー「ふー……、これで店の中の人達は全員避難させられたきゃ……」

 その頃、当のシャチョー達は喫茶店に残り周囲の人々に危害が加わらないよう、
彼らの避難ルートを確保していた所であった。
閑散とした店内を一通り見渡し、シャチョーはようやく一息つく。

百合絵「どうやらそうみたいですね」

 百合絵も彼の言葉に同調する。

シャチョー「あ、百合絵さん。悪いんやけど、満っちゃんを呼んできてくれんか?
       もうじきこの辺でも戦闘が起こるやろうからな」

百合絵「は、はい……」

 シャチョーの言葉に緊張した面持ちで頷くと、
百合絵は夫のいる喫茶店の外へと向かっていった。
遠ざかっていく彼女の姿を見届けた後、
シャチョーは傍らにあるジュラルミンケースの中身に手を伸ばす。

シャチョー「(……満っちゃんも戦わにゃならへん運命にあるって事か)」

 インペラーのデッキを握りしめて思い悩んでいた彼は、
突如として奇妙な感覚を察知した。
(武者頑駄無がどういう原理で音を聴いているのかは定かではないが)聴覚器官を通り越えて、
脳天を直接刺激するような不快で耳障りな共鳴音。

それがミラーワールドに巣食うモンスターの接近を知らせる警告音であるとは、
シャチョー本人は知る由も無かったが、
これが何か良からぬ事態の発生であるのを武者の熟練された判断力を以て感じ取った彼は、
百合絵を追って佐野の下へ急ぐのであった。


モンスター「!?」

 また一つ、烈龍刀の刃がモンスターの体に傷をつける。
斬り付けられた衝撃で軽くよろめくそのモンスターが体勢を立て直す隙も与えず、
紅零斗丸はそいつに烈双輝を突き立てた。

モンスター「!!!」

 それが致命傷となったのか、
そのモンスターの肉体は紅零斗丸が烈双輝を引き抜くと同時に爆ぜ、
その跡に光り輝く核を遺した。
しかしそれに息つく暇もなく、
紅零斗丸には別のモンスターが入れ替わるようにして襲いかかる。

連中一体ごとの実力はさほど強くないのだが、
魔刃の指示により常に徒党を組んで迫りくる上に、
数の上では圧倒的に奴らの方が有利である。

戦況は今の所紅零斗丸に優勢なものの、
このままの戦闘が長引けば何れは形勢逆転されてしまうのは想像に難くない。

 そして魔刃は、モンスターを操りつつ宿敵が疲弊していくのを実に楽しげに眺めていた。

魔刃「クク、どうした紅零斗丸。
    よもや、貴様一人ではその程度で終わりだなどと言うまいな?」

紅零斗丸「ぐっ……、当然だ」

 再び烈龍刀を大きく振るい、
群がる鏡像世界の怪物を薙ぎ倒して応答する紅零斗丸。

その士気こそ下がる様子を見せていないが、
度重なる戦闘によって彼の体には少しずつ疲労が蓄積されている。
彼が力尽きるのも時間の問題だと確信した魔刃は、
ここで一気に勝負をかけに出た。

魔刃「フフフ……、そうでなくては面白味が無いわ!」

 手甲ジーグを掲げ、魔刃はその場にいるモンスター達をまとめて紅零斗丸にけしかけた。

紅零斗丸「!? くそ……」

 あまりに多くのモンスターが一斉に襲いかかってきたので、
今回ばかりは烈龍刀を以てしても捌き切れない。
それまでは長期戦に備えて出来るだけダメージを受けないようにして戦ってきた紅零斗丸だが、
流石にこの状況では無傷を維持する事は到底不可能だろう。

 万事休すか。
頭ではそう考えていながらも、
紅零斗丸は太刀を構えて受け身の態勢を取っていた。
しかし、神はまだ彼を見捨ててはいなかったのだ。

モンスター「!?」

 それは一瞬の内の出来事だった。

 紅零斗丸の足元に散らばっていたガラスの破片から突如として黒い物体が飛び出し、
前方にいるモンスター達を吹き飛ばしていた。
更にその物体はつい先程紅零斗丸が撃破したモンスターの核に食らい付いた後、
漆黒のボディを持つ巨大なコウモリというその正体を、ようやく顕わにした。

紅零斗丸「な、何だ……」

 ダークウイングの姿に彼が驚いていると、
今度は背後の窓ガラスから無数の火炎弾が放たれ、
近辺にいるモンスターを次々と焼き焦がしていった。

その攻撃の主の姿を見た武者頑駄無は自身の眼(まなこ)を思わず疑っていた。
彼の真後ろにいたのは、
武者の世界でもその名を轟かせる『龍』そのものであったのだから。

睦月「……どうやら、この場所で間違いないようですね」

橘「まぁ、これだけ派手に騒いでいればアンデッドサーチャーに頼るまでもないがな」

 龍=ドラグレッダーを目の当たりにした紅零斗丸が呆気に取られている間に、
バイクやスクーターに乗った総勢四人の『ライダー』がその場に文字通り駆け付けてきた。

彼らはヘルメットを脱ぎ捨てると、
周りにいるモンスターの群れや武者頑駄無の姿にも何ら反応を示さず、
四角い形状をした妙なデバイスを持って近付いていく。

真司「うへーっ! 何だよこのモンスターの数は! これじゃ百人組手じゃねぇか!
    それとあそこにいるのは武者頑駄無か、生で見んのは初めてだぜ!」

 状況を全く気にも留めずに騒ぎ立てる、只一人の例外を除いては。

蓮「はしゃぐな」

 そんな只一人の例外、真司を蓮は機嫌の悪そうな口調でたしなめる。

紅零斗丸「あ、あなた達は……」

橘「警戒する必要はない。
   俺達は旧人類基盤史研究所(ボード)の者だが、
   そこにいるモンスター共の始末に来ただけだ。
   武者頑駄無の戦いに手出しする気はない」

真司「あれっ、俺や蓮も旧BOARDの一員になってんの?」

睦月「いいんですよ、その方が説明が楽ですし」

 などといった比較的どうでもいい話はさておき、
突然の乱入者を訝しむ紅零斗丸に対し、彼らを代表して橘が話に応じた。

魔刃「フン……。こやつらを知っているという事は貴様ら、仮面ライダーか……。
俺の邪魔をするというのなら紅零斗丸諸共叩き潰してくれる!」

 橘の話を聞き付けた魔刃が苦々しげに吐き捨てると、
ミラーワールド内に待機させておいた残る全てのモンスターを投入し、
総力戦へと持ち込んだ。

蓮「お前がモンスターを操っているのか。なら、話は早い」

 蓮がナイトのデッキをかざし、

睦月「あんたを倒してミラーワールドの異変を鎮圧する……」

 睦月がレンゲルバックルを起動し、

真司「武者頑駄無さんよ、後の事は俺達に任せて今は休んでてくれ!」

 真司が龍騎のデッキを構え、

橘「お前達、決して油断はするな。
   モンスターは兎も角あの武者頑駄無は未知の相手だ」

 そして橘がギャレンバックルにダイヤのAのカードを装填する。

「変身!」

 各々が変身ポーズを取ると彼らは一斉に仮面ライダーの姿へと変わり、
アドベントカードやラウズカードを手にし、
目の前にいるモンスターらに向かって駆け出していった。

真司(虚像)「(……ようやく姿を現したな、城戸真司……)」

 そんな彼らの戦う様子を眺めつつミラーワールドの中にいる虚像の真司は、
ドラグセイバーを振り翳す龍騎に憎悪のこもった視線を投げかけていた。



242 名前:新章/決意の変身:2011/06/07(火) 02:30:43

○武者紅零斗丸→モンスター相手に鬼神の如く奮戦。
●堕悪魔刃頑駄無→紅零斗丸を追いつめるが、旧BOARDのライダー達の妨害に遭う。
○シャチョー→インペラーのデッキによりモンスターの接近を感知。
○佐野百合絵→佐野を呼びに出る。
△ダークウイング→モンスター群を襲撃し、紅零斗丸を驚かせる。
△ドラグレッダー→モンスター群を襲撃し、紅零斗丸を驚かせる。
○上城睦月→旧BOARDのライダーとして戦闘に介入。
○橘朔也→旧BOARDのライダーとして戦闘に介入。
○城戸真司→旧BOARDのライダーとして戦闘に介入。
○秋山蓮→旧BOARDのライダーとして戦闘に介入。
●虚像の城戸真司→真司の出現を感知。



243 名前:新章/決意の変身:2011/06/07(火) 11:39:03

 旧BOARD所属の仮面ライダー達の加勢により、
紅零斗丸対魔刃・モンスター群の勢力図は大きく塗り変わっていった。
ことミラーワールドのモンスターとの戦い方については紅零斗丸を上回るスキルを持つ彼らは、
集団で襲いかかる連中相手にもある程度の余裕をもって戦えていた。

 仮面ライダーナイトは自らの分身を作り出す技、『シャドーイリュージョン』や、
契約モンスターのダークウイングが繰り出す超音波・『ソニックブレイカー』を用いてモンスターらを撹乱している。

レンゲル「……」

 その近くでは、仮面ライダーレンゲルがラウザーを振り回し、
並み居る敵を薙ぎ倒しつつラウズカードを発動する隙を伺っていた。
しかし、一度に三、四匹のモンスターが群れを成して彼に突撃をかけてくるので、
そのチャンスを中々見付けられない。

レンゲル「くそぉっ!」

モンスター「!?」

 レンゲルラウザーを豪快にスイングさせて付近のモンスターをまとめて吹き飛ばした時、
ようやくカードを使用する絶好のタイミングが訪れた。
ここぞとばかりにレンゲルはベルト横のカードボックスから、
ラウズカードを三枚引き出していた。

ギャレン「睦月、あまりカードを無駄遣いするな」

 レンゲルのそんな行動を目にした仮面ライダーギャレン=橘が、
醒銃を連射して彼の周りにいるモンスターを退けると同時に注意を促す。

レンゲル「分かってますよ」

 多少不機嫌な声でそう言って、レンゲルは一枚のカードをラウザーの
カードリーダーにスラッシュし、その効果を発動させる。

 彼が使用したカードは『リモートテイピア』。
カードの中に封印されているアンデッドを一時的に現世に解放するという、
一風変わった効力を持つカードだ。

睦月がカテゴリーAのスパイダーアンデッドに操られていた頃には猛威を揮っていた代物でもあり、
当時の彼は他のライダーのカードに封印されていたアンデッドを多数解放し、
自分の手駒として利用していた。
正気に戻った現在となっては、
この『リモート』はもっぱら自分の所持カードに対してのみ使われている。

レンゲルが手元にある残りのカードを空中に放り投げると、
ラウザーから放出されたエネルギーによってそれらのカードに封じられていた超古代の不死生物が、
この現代の世界に再び姿を現した。

モールUD「……」

ジェリーフィッシュUD「……」

 解放されたクラブのカテゴリー3・モールアンデッドと、
同じくクラブの7・ジェリーフィッシュアンデッドは、
深緑の杖使いと鏡像世界の魔物達との間を分かつようにして佇んでいる。

レンゲル「……よし、行け!」

 レンゲルが一言命じると、二体のアンデッドはまるでそれに従うかの如く、
眼前のモンスター群に狙いを定めて攻撃を開始した。

龍騎「へぇ、あいつらがアンデッド……、橘さんや睦月が戦ってきた相手か……」

 自身が解放したアンデッド達にアシストさせ、
順調にモンスターを殲滅していくレンゲルの様子を見て、
仮面ライダー龍騎は感心したように呟いた。

 一方の龍騎は何をしているのかと言うと、
ドラグセイバーを片手にモンスター達との激しい斬り合いを演じているのである。

その付近には、先程紅零斗丸を助ける為に召喚した契約モンスター・ドラグレッダーもいるのだが、
こちらはレンゲルの解放したアンデッドとは違い龍騎を積極的に助けるような事はせず、
ただ本能のままに立ち塞がるモンスター目がけて火炎弾を放ち、
そこに残った核を捕食するといった動作を続けていた。
ちなみに、ドラグレッダーが放射した炎のブレスは、
時折契約主である龍騎を直撃するといった事態も起こっている。

龍騎「熱っ! ……ったく、やる事が相変わらず過激だよな、あいつは」

 などと愚痴をこぼしつつも、彼を含めた旧BOARDの仮面ライダー達は、
魔刃の使役するモンスターの群れを確実に退治していった。

龍騎「へっ、どうだ! お前の操ってたモンスターは殆ど倒したぜ」

 モンスターの数が最初の四分の一程に減ってきた所で、
龍騎は堕悪魔刃頑駄無の方に向き直った。
これまでは兵の数に物を言わせて高みの見物を行っていた魔刃だが、
モンスターが随分減少した今となってはそう余裕ぶってもいられない筈だと彼は踏んでいた。

 しかし、そんな彼の予想に反して目の前にいる堕悪武者は至って落ち着いている。

魔刃「フ……、フフフ……!
    天馬の国の戦士とやらの実力はこの程度なのか……? 興醒めだな」

龍騎「何……!」

 魔刃の吐き捨てた言葉に、龍騎は過剰な反応を示した。

魔刃「貴様ら風情を相手に戦っても愉しめぬと言ったのだ。
折角こうして黄泉還ってきたと言うのに、
これしきの若輩者共しか相手に出来んとは何ともつまらぬ話ではないか……?」

 その発言がごく単純な挑発行為である事は、
紅零斗丸を含む何れの当事者から見ても明らかであった。
だが、それ以上に単純な思考を持つ者が相手の場合には、
こうした安い挑発も十分に効果を発揮する。
そして現在魔刃と対峙している龍騎は、まさにそういった単純思考の持ち主であったのだ。
故に、彼はその仮面の奥に湧き上がる怒りの感情を抑え切れずにいた。

龍騎「黙れ……!」

ギャレン「やめろ、城戸! これでは奴の思う壺だ!」

 ギャレンの呼びかけも空しく、
龍騎は次の瞬間にはドラグセイバーを構えて魔刃に突進していた。

龍騎「俺達は遊びで戦ってんじゃねぇ!」

魔刃「フン……。愚か者め」

 龍騎の手から振り下ろされたドラグセイバーを、
魔刃は左手の手甲ジーグでいとも簡単に受け止めてみせる。

龍騎「なっ……!」

魔刃「クク……。この程度の挑発に易々と引っ掛かる事こそ、
貴様が戦士として未熟な何よりの証拠だ」

 そう言うと、魔刃は空いた右手を背中にマウントした大鎌・ファントムハーケンに伸ばし、
手の塞がった龍騎に向けて一気に振り下ろした。

龍騎「うわっ!」

 ファントムハーケンの斬撃をもろに受けてしまい、
仰向けの状態で後方へ吹っ飛ばされる龍騎。

ナイト「あの馬鹿め……」

 あっさりと敵のペースに乗せられてしまった龍騎の様を見て、
ナイトは苦々しげに呟いた。
そのあまりの不甲斐無さに、普段なら個人戦にこだわる彼でさえも
援護に向かいたくなる衝動に駆られてしまうのだが、
残りのモンスターの相手もしなければならない上、
シャドーイリュージョンの効果も切れた今となってはそれも中々叶わない状況であった。

魔刃「……戦場では冷静さを欠いた弱卒共から死んでゆく。
貴様は早死にするタイプだな」

 紅零斗丸の烈龍刀に匹敵する程の大きさを誇る首狩り鎌を手に、
魔刃は悠々と相手の傍に歩み寄る。
その間に、龍騎は全身に残された力を込め、ようやく立ち上がろうとしている。

龍騎「お……、俺達は、命を懸けて戦ってんだ……。
人の命も、自分の命もな! 冷静でなんかいられっかよ!」

 そう叫んだ直後、彼はドラグセイバーを構えて
再び魔刃に突っ込んでいった。
一方そんな龍騎の行動を見た魔刃はすぐさま、
ファントムハーケンを振るって彼にとどめを刺そうとする。

 だが、次の瞬間。

 龍騎やナイトが所持するバイザーとは明らかに様相が異なる、
くぐもったようなアナウンス音声が何処からともなく響き渡ったかと思うと、
魔刃が今まさに振り下ろそうとしていたファントムハーケンの刃から深紅の瞳を持つ黒いボディの龍が出現し、
迫りくる龍騎目がけて黒焔のブレスを放った。

ギャレン「!? おい、城戸!」

 それに気付いたギャレンが龍騎に注意を促そうとする頃には、
彼の姿はすっかり黒焔に包まれて見えなくなっていた。

魔刃「(あやつめ、仇を前にして抑えが効かなくなったか……)」

 ドラグレッダーに酷似したシルエットを持つ黒い龍のモンスター、
ドラグブラッカーを伴いその全貌を現した仮面ライダーを見て、
魔刃は心密かに漏らした。

ライダー「ようやく会えたな、城戸真司……。
この俺を世界から追放した忌まわしき存在よ……!」

 限りなく龍騎に似たシルエットのそのライダーは、
黒焔に包まれる前の僅かな隙を衝いてガードベント・ドラグシールドを召喚し、
辛うじてドラグブラッカーのブレス攻撃を凌いでいた龍騎に向かって話しかける。

龍騎に変身している真司と全く同じ声で。

龍騎「……っ!」

ナイト「貴様は……」

 ライダーの姿を目にし、声を聞いた龍騎とナイトの身に戦慄が走る。
彼らのそんな様子に、同じ場所にいるギャレンとレンゲルは
新たに出現した仮面ライダーが少なくとも味方ではない事を確信した。

レンゲル「秋山さん、何者なんです? あのライダーは……」

ライダー「俺か……?」

 レンゲルの問いを聞き付けた乱入者が再び口を開いた。

リュウガ「俺はミラーワールドのライダー……、リュウガ……」



244 名前:新章/決意の変身:2011/06/07(火) 11:43:48

○仮面ライダーナイト→モンスター群と戦闘。
△ダークウイング→ナイトを援護。
○仮面ライダーレンゲル→モンスター群と戦闘。
○仮面ライダーギャレン→モンスター群と戦闘。
△モールアンデッド→レンゲルのリモートで解放され、モンスター群と戦闘。
△ジェリーフィッシュアンデッド→レンゲルのリモートで解放され、モンスター群と戦闘。
○仮面ライダー龍騎→モンスター群、魔刃と戦闘。
△ドラグレッダー→本能の赴くままモンスター群と戦闘。
●堕悪魔刃頑駄無→龍騎を挑発。
●ドラグブラッカー→リュウガに召喚され、龍騎に襲いかかる。
●仮面ライダーリュウガ→ミラーワールドから現実世界に出現。

【今回の新規登場】
△モールアンデッド(仮面ライダー剣)
モグラの祖たる不死生物で、クラブのカテゴリー3。モグラの祖先なだけあって地中で活動しており、
右腕に具えたギヤ型のドリルで地面を掘り進む。防御力重視の能力を持ち、左腕に装備したモールシー
ルド、顔面から放つドリル型ミサイルなどを駆使し、敵を寄せ付けない。

△ジェリーフィッシュアンデッド(仮面ライダー剣)
クラゲの祖たる不死生物で、クラブのカテゴリー7。肉体をゲル状に変質させる能力の持ち主で、これ
によってあらゆる物理攻撃を無効化する事が可能となる。左腕の触手は百万ボルトの電流を流す電磁鞭
となっている。

●ドラグブラッカー(仮面ライダー龍騎劇場版 EPISODE FINAL)
仮面ライダーリュウガと契約した黒龍のモンスター。ドラグレッダーの亜種にあたるが、その力はドラ
グレッダーをも凌駕する。口から吐く黒焔のブレスなどを武器に、リュウガと組んで他のライダーを襲
撃した。



245 名前:新章/決意の変身:2011/06/08(水) 16:51:40

ギャレン「リュウガだと……」

 自らをミラーワールドのライダーと名乗る、
龍騎によく似た漆黒の仮面戦士と対峙したギャレンは、
彼の放つ強い負の気に満ちたプレッシャーによって、
その場の空気が一気に重苦しくなったのを瞬時に感じ取っていた。

ギャレン「(なんて奴だ……)」

 リュウガの醸し出す強い殺気に触れ、
ギャレンは目の前にいるのがいかに恐ろしき存在であるかを理解する。
恐らく、武者頑駄無を含めたこの場にいる全員が束になってかかっても、
あのライダーは倒せないだろう。

龍騎「お前……、何であんな事をやったんだよ!?」

 しかしそんな状況下においても、
龍騎だけはリュウガのプレッシャーに気圧される事なく、
真正面から立ち向かおうとしていた。
そんな彼の振る舞いを見れば、
例え事情を知らないギャレンやレンゲルのような旧BOARD出身のライダーや紅零斗丸にも、
この同じシルエットを持つ二人のライダーの間に深い確執があるのだと気付かない筈がなかった。

リュウガ「何の事だ?」

 怒りの感情を爆発させる龍騎に対して、
リュウガは落ち着き払った様子で彼の質問に聞き返している。
カマトトをかけているのではなく本当に心当たりが無さそうに尋ねているのが、
龍騎の怒りの炎に油を注ぐ結果となっていた。

龍騎「とぼけんなよ! 俺たちゃ知ってんだぞ、
    お前がサイド3で無差別攻撃を繰り返してたのを!」

リュウガ「あぁ、あの時の事か……、それを知っているとは
      貴様にしては上出来だな。誰に入れ知恵された?」

 龍騎から聞かされた『サイド3』というキーワードから、
彼はようやく眼前に立つもう一人の己が言い放った台詞に該当する記憶を探り当てた。

 龍騎の言う通り、確かに彼は宇宙コロニー・サイド3に上がり、
シャア・アズナブルを筆頭とするネオ・ジオンに反感を抱く者達や、
ジュピトリアンといった勢力に対してほぼ無差別と言っていいような一方的襲撃を何度も仕掛けていた。

その際には地球にいる本物の城戸真司に存在が発覚しないようわざわざ宇宙にまで上がっているのだが、
流石に彼も神崎士郎がそれまでは全く面識の無かった元OZの総帥トレーズ・クシュリナーダを動かしてまで、
真司達をサイド3に赴かせるとまで予測する事は出来なかった為に、
真司が自分の復活を既に知っているとは把握していなかったのだ。

龍騎「そんな事を訊いてんじゃねぇ!
    何の為に無関係な人達を襲ったのか訊いてんだよ!」

リュウガ「俺の『新しい命』を手に入れる為だ」

 リュウガは龍騎からの問いに何の躊躇いもなく、
何の負い目もなしに即答してみせた。
それが私利私欲の為に多くのライダーとは無関係な命を奪い去った行為であるにも拘わらず。
彼のやっている事は、ミラーワールドのモンスターが
本能のままに行なっている人間の捕食行為とまるで違(たが)わないものだ。
曲がりなりにも人間としての感情を持ち合わせている者の行動ではない。

リュウガ「軍属の人間として戦闘訓練を受けている連中なら多少は強靭な肉体を持っているものかと思えば……。
      奴らときたら、揃いも揃って貧弱な身体ばかりだ。はっきり言ってモンスターの餌にもならんかったぞ。
      まぁ、白兵戦を止めて機動兵器の操縦ばかりしているような能無し共ならば、それも道理かも知れんがな……」

レンゲル「あ、あんた……、何言ってんだ……?」

 事も無げに滔々と語るリュウガの様に、レンゲルはまさしく唖然としていた。
龍騎との会話を注意深く聞いていれば、
リュウガが反ネオ・ジオンやジュピトリアンの兵士達を大勢死に追いやったという事は容易に想像出来る。
だがあろうことか、彼は殺して回った兵士達の死を悼む所か、
彼らの命をまるでゴミ屑のように粗末に扱っている。

龍騎「理由はそれだけか……?」

 もう一人の自分とも言えるリュウガの発言に対してふつふつと怒りを沸かせる龍騎。

 その感情が頂点に達した時彼は、
目の前にいるリュウガに向かってドラグセイバーで斬りかかっていた。

龍騎「そんな理由の為に……、お前は何の関係もない人達を巻き込んだのかよ!」

リュウガ「!? ……そんな理由だと……!?」

 ドラグセイバーによる斬撃を受けて一度はよろめくリュウガであったが、
じきに体勢を立て直すと今度は自ら龍騎に掴みかかっていく。
Vバックルに装着されたカードデッキから一枚のカードを引き抜くと、
彼は契約モンスターであるドラグブラッカーの頭部を模した武器・ドラグクローを装備し、
お返しとばかりに龍騎を殴りつける。

リュウガ「貴様ごときには解かるまい……。
      己の思い通りになる肉体すら持つ事を許されずに、貴様の虚像として産み出されたこの俺の苦しみが!
      一個人として生きていく事も叶わずにミラーワールドに囚われ続けるこの俺の哀れさが!」

龍騎「ぐぅ……っ!」

 リュウガの執拗な攻撃を食らって龍騎は後方へ派手に吹き飛ばされるが、
リュウガはそんな彼に更なる追撃をかけようと迫ってくる。

レンゲル「城戸さん!」

 そんな龍騎を助け出そうとしてレンゲルが、
先程リモートのカードで解放したモールアンデッドとジェリーフィッシュアンデッドを援護に向かわせる。
レンゲルからの命令を受けた二体のアンデッドはただちにターゲットをモンスターからリュウガに変更し、
彼に左右からの挟み撃ちを仕掛けた。
しかし、結論から言えばこれらの行為はすべからく無意味な物に終わってしまうのである。

リュウガ「邪魔だ……」

 そう一言言い放つと、
リュウガはドラグブラッカーの力を借りてストライクベントの派生技・昇竜突破を発動させた。
漆黒龍の吐き出す黒焔のブレスはモールアンデッドとジェリーフィッシュアンデッドの二体を同時に襲い、
彼らにモールシールドや液状化能力といった兵装を使う暇(いとま)すらも与えずに瞬殺してしまった。
もっとも、相手はあくまで不死身(アンデッド)なので戦闘不能に陥る事はあっても死にはしないのだが。

レンゲル「……っ、そんな……」

 一瞬の内にリュウガに敗北し、
力尽きた二体のアンデッドを目の当たりにしたレンゲルはその光景にショックを受けながらも、
急いでプロパーブランクのカードを投げ付けて彼らを再封印する。

魔刃「フン……。別ち難き業(カルマ)によって結ばれし
    あやつらの戦いに水を差すとは……、無礼千万!」

 リュウガが龍騎に対して抱いている憎しみの深さをよく理解していた魔界武者は、
レンゲルの軽率な行為に怒りを覚えファントムハーケンを振りかざして彼に突撃していた。

レンゲル「!?」

 予想を遥かに上回る猛スピードで距離を詰めてくる魔刃を前に、
先程のショックを引き摺っていたレンゲルは防御の態勢に入るのが大きく遅れてしまった。

 だが、魔刃は彼を傷付ける事が出来なかった。
二人の間に、烈龍刀を構えた武者紅零斗丸が割り込んだからである。

紅零斗丸「魔刃よ、ならば俺とお前の間のカルマもここで断ち切ってくれる……!」

魔刃「クク……、それもまた一興か」

 紅零斗丸という宿敵との鍔迫り合いを演じながら、
魔刃は笑みを浮かべていた。

紅零斗丸「はぁぁっ!」

魔刃「ぬぅんっ!」

 鍔迫り合いから一転して、
距離を取ってからの二人は両者共に大型の武器を所持しているにもかかわらず、
ライダーには真似の出来ない高速移動で戦いを続けていた。

ギャレン「睦月、何を魅入られている? 俺達も今、戦っている最中だぞ」

レンゲル「橘さん……」

 先輩格であるギャレンの呼びかけにより、
睦月は自分がまだ踏み込んだ事のない未知の領域での戦いを繰り広げている、
龍騎や紅零斗丸の姿に圧倒されている所からようやく我に返った。

ナイト「モンスター連中にもまだしぶとく生き残っている奴がいる。
     俺達はこいつらを叩かねばならん」

 ナイトが言うように、
彼らの周りにはミラーワールドのモンスターが集合し始めている。
龍騎や紅零斗丸が強敵と交えている以上、
こういった雑兵の殲滅は必然的に彼らに回ってくる。

ギャレン「……よし。やるぞ、睦月、秋山」

 ギャレンを筆頭に、レンゲルとナイトも戦闘態勢に突入する。
ところが、ここへ来て彼らにとっても予想外の事態が発生してしまう。

???「……ほう。中々面白そうな事をしているな、橘」

ギャレン「何?」

 名指しで呼び止められたギャレンは、
何処からともなく聞こえてきた声の主の姿を一目見て、
思わず自身が幻覚を見ているのではないかという疑念に駆られていた。

 何故なら彼に声をかけてきたのは、
本来ならこの世に存在してはならない筈の者だったのだから。

???「我々もその中に加えてもらおうか」

ギャレン「……何故だ。何故お前がこんな所にいるんだ? ……伊坂!」

 黒い革製のロングコートにサングラスをかけたその男、
伊坂は不敵な笑みをこぼして宙に浮いた状態のままギャレンに話しかけていた。

レンゲル「馬鹿な……。あの伊坂って男、橘さんが封印したんじゃ……」

ナイト「人間の姿に化けるアンデッド……、上級アンデッドという奴か」

ギャレン「そうだ……。そして、奴は確かに俺がこの手でカードに封じ込めた。
      現にカテゴリーJのカードも俺の手元にある」

 ダイヤのカテゴリーJ・ピーコックアンデッドが変身した男、伊坂。

彼はかつての戦いで橘が想いを寄せていた深沢小夜子を殺害した憎むべき存在であると同時に、
恐怖心の影響からギャレンバックルに適合出来ずに行き詰っていた彼に付け込み、
シュルトケスナー藻の力を与えて利用していたという因縁深き人物でもあった。

伊坂「フ……、安心しろ。俺自身はお前の言う通り封印されたままだ。本物の俺はな」

 困惑するライダー達に対して、伊坂はそう言い放った。
ご丁寧にも『本物の』と断りを入れている事からも、
今彼らの目の前にいる伊坂は偽物だという事になる。

 だとしたら、その偽物を生み出したのは一体誰なのか。

伊坂「……だが俺はお前達の知る伊坂に限りなく近い存在だ。
    オリジナルの伊坂と同じ容姿、記憶を受け継いでいるのだからな」

 伊坂のその発言によって、
ギャレンはようやく彼の正体を突き止める事が出来た。

ギャレン「そうか……。貴様、カテゴリーJのデータを基に複製された……、トライアルだな?」

レンゲル「な、なるほど……。それなら確かにあいつがこうしてここにいる事も説明が付きますね」

 かつてのアンデッドとの戦いにおいて元BOARD理事長・天王路博史が悪用したトライアルシリーズは、
アンデッドの細胞と各種のデータを組み合わせて生み出される改造実験体であり、
橘や睦月から採取された身体データを応用して誕生したトライアルEやトライアルGなどは、
現代版バトルファイトの終盤での強敵となった。

またBOARDの研究者・広瀬義人のデータを移植されたトライアルBは、
広瀬としての姿と記憶を与えられる事によってあたかも自身が広瀬本人であるかのように振る舞っていた。

これらの点から考えれば、
データさえ残っていれば伊坂の記憶と外見を持ったトライアルを造り出す事も可能なのだと言えよう。

ナイト「……お前自身の真贋はこの際どうでもいい。
     俺達の前にわざわざ姿を見せたという事は仮面ライダーの排除が目的ということだろう。
     白昼堂々そんな事を仕出かそうとする連中など、Dショッカーぐらいしか思い浮かばんがな」

伊坂「……中々の推理力だ、仮面ライダーナイト。……いや、秋山蓮」

 そう言って伊坂は地上へと降下してきた。
どうやら自身も旧BOARDのライダーと戦うつもりらしい。

ナイト「俺達の素性も既に調査済みか」

伊坂「そう言う事だ……。貴様ら仮面ライダー共が幾ら集まろうとも、
    我々Dの組織力の前には何ら意味を成さぬのだよ……。
    見たまえ、これがDの再生怪人技術……。命すらも思うがままに操るテクノロジーだ」

 伊坂が両の腕を仰々しい動作で振り上げると、
何処ともなく封印された筈のダイヤのカテゴリー8・バットアンデッドと、
スペードのカテゴリー5・ローカストアンデッドが彼の傍に出現する。

バットUD「……」

ローカストUD「……」

ギャレン「(アンデッド共め……。またしても俺達の前に立ちはだかろうと言うのか……)」

 秘密結社ショッカーを始めとして、
過去に仮面ライダーに滅ぼされた数々の組織が結集して誕生した無限帝国ディバイン・ショッカー。
その存在は、戦いを終えた筈の旧BOARDのライダー達にも暗い影を落としていた。



246 名前:新章/決意の変身:2011/06/08(水) 17:02:29

○仮面ライダーギャレン→モンスター群、Dショッカーのアンデッドとの戦闘に入る。
○仮面ライダー龍騎→リュウガとの戦闘に入る。
●仮面ライダーリュウガ→龍騎との戦闘に入る。
○仮面ライダーレンゲル→モンスター群、Dショッカーのアンデッドとの戦闘に入る。
△モールアンデッド→リュウガの昇竜突破を受けて戦線離脱。
△ジェリーフィッシュアンデッド→リュウガの昇竜突破を受けて戦線離脱。
●堕悪魔刃頑駄無→紅零斗丸との戦闘に入る。
○武者紅零斗丸→魔刃との戦闘に入る。
○仮面ライダーナイト→モンスター群、Dショッカーのアンデッドとの戦闘に入る。
●伊坂→Dショッカーのトライアルとして橘らの前に現れる。
●バットアンデッド→Dショッカーのトライアルとして橘らの前に現れる。
●ローカストアンデッド→Dショッカーのトライアルとして橘らの前に現れる。

【今回の新規登場】
●伊坂=ピーコックアンデッド(仮面ライダー剣)
クジャクの祖たる不死生物で、ダイヤのカテゴリーJ。人間に化身する事の出来る上級種のアンデッド
で、伊坂を名乗っている。人間体時にも空中浮遊、発火能力、マインドコントロールなど様々な能力を
使用可能。バトルファイトの主導権を握るべく烏丸や橘を利用してレンゲルバックルを製作させるが、
橘の精神的支えであった深沢小夜子を殺害した事によって、橘に恐怖心を取り除くきっかけを与えて
しまう。怪人体では火炎弾に羽手裏剣・アイダート、巨大剣スウォーザーなどの豊富な武装を備えて
いる。(執筆者注:本編に登場したのはオリジナルのデータを基に造られたトライアルであり、厳密
には本人ではない)


●バットアンデッド(仮面ライダー剣)
コウモリの祖たる不死生物で、ダイヤのカテゴリー8。太陽光を嫌っており、普段は下水道の内部など
薄暗い場所に身を潜めている。眼は暗視スコープの役割を果たすので、暗闇でも自由に活動する事が出
来る。無数のコウモリを手下に従えている。(執筆者注:本編に登場したのはオリジナルのデータを基
に造られたトライアルであり、厳密には本人ではない)


●ローカストアンデッド(仮面ライダー剣)
イナゴの祖たる不死生物で、スペードのカテゴリー5。無数のイナゴを手下に従えており、自身もその
イナゴが集合した姿である。武器を持たないが身体能力に優れ、格闘戦も難なくこなす。BOARDを
崩壊させた張本人。(執筆者注:本編に登場したのはオリジナルのデータを基に造られたトライアルで
あり、厳密には本人ではない)




247 名前:新章/決意の変身:2011/06/08(水) 19:18:14


 <都内某所 喫茶店付近>


佐野「うわ、こいつは酷い有様だな……」

 突如として現代日本に復活した武者の世界の武装勢力、
堕悪闇軍団の襲撃から一刻も早く人々を避難させる為に、
先に戦闘を開始した紅零斗丸とは別行動を取っていた佐野満は、
喫茶店の中にシャチョーと妻を残し、
自身は店の外で戦闘に巻き込まれた者がいないか捜し回っていたのだが、
幸いにも彼らが早期に動いた事もあって、
大きな被害が発生する前に何とかその付近にいた者達の避難経路を確保するのに成功していた。

一般の人間達がいなくなった後、
改めて堕悪闇軍団によって破壊された街並みを見渡した時、
佐野は何とも言えない寂寥感に襲われていた。

佐野「ん……?」

 と同時に、街の様子を注意して眺めてみると、
何故か建物や車の窓ガラスの損壊が異様に少ない事にも気付かされる。

百合絵「満さーん、もうこの辺りに逃げ遅れた方はいないみたいですから、
     私達もそろそろ避難の準備を……」

 佐野はその事を不審に感じていたが、店の中から出てきた妻の百合絵に
声をかけられた時には、その疑念は消失していた。

佐野「あ、はい……」

 百合絵に呼ばれた佐野は早足で彼女のもとへ行こうとするが、
その瞬間、彼は偶然にも目撃してしまう。
百合絵の背後にある喫茶店の窓の向こうに、
今まさに彼女に襲いかからんとする黒い影が映っているのを。

佐野「百合絵さん、危ない!」

百合絵「……っ!?」

 気が付いた時には佐野は彼女の傍に猛然と駆け寄り、
抱き付くような形で突き飛ばしていた。
それが功を奏し、百合絵は後ろの窓ガラスからミラーワールドを通じて
迫りくるモンスターの襲撃を辛くも逃れる事に成功する。

佐野「だ……、大丈夫ですか、百合絵さん!?」

百合絵「……! は、はい……っ」

 夫から思いのほか強い力で抱き付かれた事で一瞬事態を把握出来ずに、
顔を赤らめながら戸惑う百合絵であったが、
程なくして喫茶店の窓からミラーワールドに身を潜めていたモンスター・ソロスパイダーが出現したのを見て、
何が起こったのかを少しずつ理解していった。

佐野「(くそっ……、そう言う事か。
    だから窓ガラスだけは壊されなかったのか……)」

 一方で佐野も、自分の身の回りで起きた事態の深刻さを身を以て実感し始めていた。
本来は武者の世界の存在であった筈の堕悪闇軍団は、
何らかの技術を利用してミラーワールドのモンスターを操る事が出来るようになったのだ。
そして今回、そのモンスター共の力を使い本格的に活動を開始したのであろう。

佐野「(畜生、俺はもうライダーじゃないってのに……)」

 モンスターの攻撃から必死に百合絵を庇いつつ、
佐野はこれからどうするかを考えていた。

まず真っ先に浮かんだのが自ら囮になって百合絵を安全な場所へ避難させるという策であったが、
これはすぐに取り下げざるを得なかった。
モンスターは一度狙いを定めた標的を仕留めるまで執拗に追い続けるという習性を持っているので、
例え百合絵を逃がしたとしてもモンスターは何処までも追跡を続けるだろうし、
ましてや連中はミラーワールドを自在に行き来出来るのだ。

 そうなってしまえば、最早打つ手はない。
ミラーワールドへの通行許可証、カードデッキを所持していない限りは。

ソロスパイダー「……!」

 そんな事情を知ってか知らずか濃緑色の体表を持つアシナガグモのモンスターは、
両腕の鉤爪を振り翳しつつ無防備な獲物達に襲いかかる。

佐野「うわっ!」

 百合絵を庇って鋭く研ぎ澄まされた凶器による切り裂き攻撃を受けた佐野は、
その強い力に耐え切れず大きく仰け反る。

百合絵「!? み、満さん!」

佐野「へ、平気っすよ、こんな傷……」

 慌てて佐野の傍に寄り添い彼を抱き起そうとする百合絵に向け、
気丈な振る舞いを見せつつ彼女の夫は呻いた。
実際、鉤爪での攻撃で受けたダメージは、
肉体的には一般人と同等である佐野にとってもそれ程の痛手ではない。
しかし、これが何度も続けばそう余裕ぶってもいられないだろう。
その事を思い知らせるかの如く、
ソロスパイダーは佐野を生かさず殺さずの絶妙な力加減でいたぶり続けていた。

百合絵「……お願い、もう止めて!」

 身体のあちこちに生傷を負い見るも哀れな姿となった夫の前に、
百合絵が立ちはだかる。

百合絵「あなたの狙いは私なんでしょう!?
     私は逃げも隠れもしないから、好きなだけ傷つけなさい! 私があなたの餌になるから!
     ……だ……、だから、だから……、この人は助けてあげて……。この人だけは……」

佐野「ゆ、百合絵さん!? 何を馬鹿な……!」

 佐野が妻の顔を見上げた時、彼女の瞳からは大粒の涙が零れ落ちていた。
命を奪われようとする恐怖に怯えているからではない。
自分のせいで愛する者が傷つけられている事があまりに悲しく、
そしてそんな悪夢を目の前に見せ付けられていながら
何も出来ない自分自身があまりに嘆かわしいからだ。

 だが、鏡像世界のモンスターには百合絵の想いが伝わる事はなかった。
必死で佐野を庇おうとする百合絵をソロスパイダーはぞんざいに押し退け、
両腕の鉤爪を佐野の頭上に構える。

ソロスパイダー「……」

百合絵「――っ!」

 その時のソロスパイダーの顔を見た百合絵は思わず総毛立った。
本来なら感情などが表に出る筈のないそのモンスターが、
確かに嗤(わら)っていたのだ。

 この怪物は楽しんでいるのだ。
戦う術を持たない弱者を徹底的に痛め付け、それによって百合絵が涙を流す事を。

ソロスパイダー「……!」

 モンスターの鉤爪が佐野目がけて振り下ろされた。

百合絵「――――!」

 自分の目の前で繰り広げられる光景に、百合絵は声にならない悲鳴を上げる。

 彼女らの元へ猛烈な勢いで突っ込んできた小さな影。
次の瞬間にその小さな影に激しく蹴り飛ばされているソロスパイダー。
佐野の手元に落下する長方形の小さな物体。

シャチョー「……大丈夫やったか? 満っちゃん、百合絵さん」

 佐野夫妻が全てを理解したのは、
凱王グループのシャチョーが二人の前に姿を現し声をかけてきた時であった。

ソロスパイダーが佐野に止めを刺す寸前、
シャチョーは目にも止まらぬ猛スピードで突っ込んできて跳び蹴りをくらわした。
そしてその衝撃で、元々シャチョーが持っていた仮面ライダーインペラーのカードデッキが、
偶然(かどうかは定かではないが)にも佐野の近くに落ちてきたのだ。

シャチョー「デッキを持っとったらおかしな音が聞こえてきたんで来てみれば……」

 小柄な武者頑駄無は、先程の自身の攻撃により吹き飛ばされた
ソロスパイダーの方を見やり、苦々しげに呟いた。

シャチョー「何の因果か、ミラーワールドのモンスターきゃ……」

佐野「シャチョーさん、どうしてあなたがモンスターの事を……、それにこのデッキは……」

シャチョー「……全てを話すのはこの戦いが終わってからだ」

 そう言って佐野の質問を遮るシャチョーは、既に胡散臭い名古屋弁を使っていなかった。
この事は、彼が武者本来の姿に戻ったのを意味しているのだ。

シャチョー「モンスターよ、貴様はこの俺が友だと認めた者達を傷付けた……」

 最早佐野や百合絵が知っている者の面影すら残さない鬼気迫る表情でソロスパイダーを睨み付けると、
シャチョーは何処からともなくゲーム機のコントローラーを思わせる形状をした大型の鍵を取り出し、
その中央に設けられた「スタートボタン」を押した。
これにより秘書ナンシーの元に非常用の信号(シグナル)が届き、
凱王グループ本社の地下に厳重に保管されているシャチョー専用の鎧鋼力服(ヨロイスーツ)が、
彼の元に転送されるのだ。

シャチョー「それが何を意味するのか……、己が身を以て味わってもらおう!」

 鎧鋼力服の背面に設置された南京錠に先程の鍵を差し込みそのロックを解除すると、
シャチョーはその内部に収まり、
あたかもそれと一体化しているかのように鎧鋼力服を動かし始めた。

鎧丸「武者合身! 鎧丸!!」

 威勢よく名乗りを上げたその武者頑駄無こそ、
時空を超えて現代日本へ現れた堕悪闇軍団と激しい戦いを繰り広げた末に彼らを打ち破った、
夢者遊撃隊の一員にして司令塔・鎧丸であった。



248 名前:新章/決意の変身:2011/06/08(水) 19:20:11

○佐野満→ソロスパイダーの攻撃から百合絵を庇う。
○佐野百合絵→ソロスパイダーに自分を攻撃するよう涙ながらに訴えるが、拒否される。
●ソロスパイダー→佐野を執拗に痛めつける。
○シャチョー→佐野夫妻を襲うソロスパイダーに怒り爆発、武者合身する。



249 名前:新章/決意の変身:2011/06/08(水) 19:45:39

 ソロスパイダーと武者鎧丸の戦いの火蓋が切って落とされた頃、
旧BOARDのライダー・紅零斗丸と堕悪闇軍団の戦闘も新たな局面を迎えつつあった。
Dショッカーによって生み出されたアンデッドのトライアル達が第三勢力として乱入してきたのだ。
その内、下級クラスに属するバットアンデッドとローカストアンデッドは、
モンスターの群れに紛れる形でレンゲルとナイトに襲いかかってきた。

レンゲル「……くそっ、Dショッカーの奴らめ、
      よりによってアンデッドを復活させるなんて……!」

 クロスレンジに踏み込んで格闘戦を仕掛けてくるローカストアンデッドの
攻撃をレンゲルラウザーで防ぎながら、レンゲルは不快感を顕わにしていた。

ナイト「だが解せんな」

 レンゲルが愚痴を溢すのを聞き付け、
彼の近くでモンスターの一体をウイングランサーで刺し貫いていたナイトが呟く。

ナイト「どうしてDの連中はアンデッドの複製体を造る事が出来たんだ?
     奴らのデータはお前達旧BOARDが所持していたんじゃなかったのか」

レンゲル「ええ、その筈ですが……」

ギャレン「恐らく、あの男がDショッカーの側にいるんだろう」

 空中から襲いくるバットアンデッドにギャレンラウザーの連続射撃を
浴びせて牽制すると同時に、ギャレンがレンゲルに代わってそう言った。
彼の言うあの男とは、
かつて人類基盤史研究所BOARDの理事長を務めていた天王路博史の事である。

この人物は現代に復活したアンデッドによって再び始まったバトルファイトを利用し、
アンデッドが持つ永遠の命を自らの手中に収めようとしていた男であり、
改造実験体トライアルシリーズや合成アンデッド・ティターン、人造アンデッド・ケルベロスなどを用いて、
ライダー達を排除してラウズカードの力を奪い取ろうと画策していた。
結果的にはそれらの計画は失敗に終わり、
天王路は野望を達成せぬまま命を落としたのだが、
もし彼が例の黄泉還りを遂げているのだとしたら、
野心家である彼が更なる力を求めてDショッカーの門を叩くであろう事は容易に想像出来る。

加えて天王路にはBOARDの技術を応用して完成させたトライアルの製造技術もある。
Dショッカーに取り入る為の材料としては打って付けだ。

ギャレン「……どうやら、俺達も本格的にDとやり合わなければならんようだな」

伊坂「フッ……、その心配は無用だ。
    何故なら、貴様らは全員ここで朽ち果てるのだからな……」

 ギャレンの台詞に不敵な笑みを浮かべながら伊坂が答えると、
彼は即座に本来の姿であるピーコックアンデッドに変化し、
前方にいるギャレン目がけて掌から火炎弾を連射する。

ギャレン「……仮面ライダーの力を甘く見るな!」

 ダイヤの2・バレットのカードをラウズし、
ピーコックアンデッドの放った火炎弾をすべからく撃ち落とすギャレンであったが、
そこへ先程彼によって退けられたバットアンデッドが体勢を立て直し、
再び攻撃を仕掛けてくる。

ギャレン「くっ……」

 ピーコックアンデッドの火炎弾に気を取られていたギャレンは、
バットアンデッドの奇襲に対応するのが大幅に遅れてしまった。
このままでは直撃は避けられない所であったが、
間一髪の所でナイトの契約モンスター・ダークウイングが
アンデッドに体当たりを仕掛け、それを阻止する。

ギャレン「!? 秋山か……」

 頭上を飛び回る闇の翼の姿に、
ギャレンはそのモンスターを操る契約主の方を見やる。

ナイト「橘、お前はあの上級アンデッドをやれ」

 それだけ言うと、ナイトは背中のジペッド・スレッドにダークウイングを接続させ、
ウイングランサー片手にバットアンデッドと熾烈な空中戦を繰り広げ始めた。
後方では、レンゲルがローカストアンデッドや他のモンスターを相手に奮闘している。

ギャレン「……」

 自分が決して独りで戦っているのではないという事実を教えてくれる仲間の存在を確かに感じ取りながら、
深紅の銃士は孔雀の不死生物にギャレンラウザーの銃口を向けた。
そんな状況下においても、ピーコックアンデッドは余裕の姿勢を崩す事なく、
ギャレンに話しかけていた。

ピーコックUD「ククク、奴らに感謝するがいい、橘。
         お前の死に様に花を添えてくれる仲間とやらにな……」

ギャレン「黙れ、伊坂! 俺はDショッカーなぞにみすみすやられたりはせん!」

 バレットのカードにより強化されたギャレンラウザーの射撃でピーコックアンデッドを怯ませつつ、
ギャレンは手早い動作で別のカードをラウザーにスラッシュしていた。

ホエールアンデッドが封じられたダイヤの4・『ドロップ』、
ファイアフライアンデッドが封じられたダイヤの6・『ファイア』、
ゼブラアンデッドが封じられたダイヤの9・『ジェミニ』。

これら三枚のカードの組み合わせによって発動する技・『バーニングディバイド』は、
二人に分身したギャレンが炎のエネルギーを凝縮させた踵落としを同時に食らわせる、
格闘戦におけるギャレンの切り札であった。

そしてそれは、以前の現代版バトルファイトで、
彼にとって誰よりも大事な人であった深沢小夜子の命を奪った、
ピーコックアンデッドに止めを刺した必殺技でもあった。

ピーコックUD「ぬおっ……!」

 ギャレン二人分の威力を誇る強烈なヒールクロウをまともに受けたピーコックアンデッドは、
その衝撃によって遥か後方の瓦礫の山まで吹き飛ばされてしまう。

ギャレン「まだだ!」

 体勢を立て直そうとする敵に対して、既にギャレンは次の策を講じていた。
今度はダイヤの4・『ラピッドペッカー』のカードをラウズし、
ギャレンラウザーの高速射撃をピーコックアンデッドに浴びせたのだ。

ピーコックUD「ぐおぉぉ……!」

 ギャレンの放った銃撃はピーコックアンデッドの周囲に爆発を起こし、
更に爆風と大量の砂塵がその一帯を包み込む。
仮面ライダーとアンデッドの姿はそれらによって一瞬の内に掻き消されてしまい、
他の者達からは視認出来なくなっていった。


龍騎「うおーっ、やったぜ!
    流石は橘さん、アンデッドも簡単にやっつけちまった!」

 事の一部始終を見て、己の分身とでも言うべきリュウガと戦っていた龍騎が嬉しそうに叫んだ。

リュウガ「そんな事に気を取られている余裕があるのか、貴様は!?」

 その隙を衝いてドラグクローで殴りかかるリュウガの攻撃を、
龍騎はドラグシールドで防いでみせる。

龍騎「そうだ! この勢いに乗って、お前らもじきに追い払ってやるぜ」

紅零斗丸「いや、まだ安心は出来ない」

 陰と陽の対極に位置する仮面ライダー達が交戦する傍らで、
魔刃と戦っている武者紅零斗丸は彼らとは異なる結論を導き出していた。

紅零斗丸「あれ程の余裕を見せ付けていたような奴が、たった一撃で倒されるとは到底思えん…」

 目の前でピーコックアンデッドが派手に打ち負かされた事に疑念を抱く紅零斗丸の姿に、
さしもの龍騎も能天気に構えてはいられなくなっていた。

龍騎「ま、まさかさっきのは奴の作戦ってことか……!?」

魔刃「フフフ……、所詮あの赤いライダーも貴様と同じ穴の狢(むじな)だったという訳だな」

龍騎「何だと?」

 不敵な笑みを含んだ表情で自分に話しかけてくる魔刃の態度に、
リュウガの攻撃をかわしながら龍騎は怪訝そうにギャレンとピーコックアンデッドのいる方向へ目を向けた。


ピーコックUD「フン……。あの時の戦いから多少は
        腕を上げたかと思っていたが……、この程度か、橘?」

ギャレン「!」

 砂煙が完全に消え去ろうとしていた頃、
ピーコックアンデッドはバーニングディバイドやペッカーラピッドによる連続攻撃を受けたにもかかわらず、
何事も無かったかの如くゆらりと立ち上がった。

ギャレン「馬鹿な、確かに直撃させた筈だが……」

ピーコックUD「馬鹿はお前の方だ。
         Dショッカーのトライアルとして造られた俺が、
         本物と同程度の能力しか持っていないとでも考えていたのか?」

ギャレン「(そうか……、そう言う事か……)」

 ピーコックアンデッドの態度から、
ギャレンは彼が平然としている理由を察する事が可能となった。
確かに、オリジナルのアンデッドのデータから生み出された実験体に、
本体と同じ能力を付加する必要はない。
恐らく、Dショッカーならばオリジナルのデータを上回るスペックを、
このトライアルに搭載している筈であろう。

ピーコックUD「ならば、次はこちらから行かせて貰うぞ!」

 言うが早いか、ピーコックアンデッドは羽手裏剣のアイダートを
撒き散らしつつ、一気にギャレンに接近してきた。

ギャレン「っ……!」

 先の戦闘で多くのカードを使用しかなりのAP(アタックポイント)を消費してしまった為、
彼は急いでラウザーのAP量を回復する効果を持つ、
ダイヤのK・『エヴォリューションギラファ』のカードをラウザーに読み込ませた。

 だがしかし、次の瞬間。

ピーコックUD「……遅い!」

ギャレン「……!?」

 不死身の孔雀明王が振るう大剣・スウォーザーが、
紅の銃士の腹部を鋭く貫通していた。



250 名前:新章/決意の変身:2011/06/08(水) 19:46:36

○仮面ライダーレンゲル→ローカストUD、モンスター群と戦闘。
●ローカストアンデッド→レンゲルと戦闘。
○仮面ライダーナイト→バットアンデッド、モンスター群と戦闘。
○仮面ライダーギャレン→ピーコックアンデッドと戦闘。
●バットアンデッド→ナイトと戦闘。
●伊坂→ピーコックUDに変化し、ギャレンと戦闘。
△ダークウイング→ナイトと共にバットUD、モンスター群と戦闘。
○仮面ライダー龍騎→リュウガと戦闘。
●仮面ライダーリュウガ→龍騎と戦闘。
○武者紅零斗丸→魔刃と戦闘。
●堕悪魔刃頑駄無→紅零斗丸と戦闘。



251 名前:新章/決意の変身:2011/06/09(木) 01:53:42

鎧丸「破壊してやる」

 情けの一切入っていない声色でそう言うと、
武者鎧丸はミラーワールドのモンスターに向けて主装備の一つである、
『火縄式バスターライフル』を発射した。
一度に撃てる弾数こそ少ないもののそれを補って余りある威力の高さを誇る、
この武装から放たれた弾丸をまともに受けたソロスパイダーは体をくの字に折り曲げて後方遠くへ吹き飛び、
背後にあった建物の窓ガラスに激突していた。

佐野「……シャチョーさん、教えてください……。
    どうしてあなたがこのデッキを持ってて……、あいつらの事を知ってたんですか……」

 自分の傍に転がり落ちてきた仮面ライダーインペラーのカードデッキを目にした佐野は、
祈るような視線で重厚な鎧を身にまとった武者頑駄無を見上げている。
その様はまるで、鎧丸が「そんな物は知らない」
とでも言うのを待っているかのようである。

この時点でもしも鎧丸が自身の手でデッキを粉々に粉砕して、
「今見た物は全て幻だ」などと言えば、
佐野をライダーとしての呪縛から解き放つ事が出来るのなら、その方がずっと容易いものだろう。

 しかし、実際にはそう簡単にはこの問題は片付かない。
佐野がライダーとしての運命を受け容れようが見て見ぬ振りをしようが、
現実にはミラーワールドには依然としてモンスターが息を潜めており、
連中の犠牲になってしまう人々がいるという事実は変えようがないからだ。

恐らく佐野を説得出来る最初で最後のチャンスであろう今のこの時に、
かつては彼と同じ境遇にあった鎧丸が自らの体を張ってでもこの事を伝えなければ、
佐野もまた以前の鎧丸=シャチョーの二の舞となってしまう。

 己の優柔不断さが原因で最も大切な存在を失う事は、
鎧丸にとっては何としても避けたい事態であった。

鎧丸「……そのデッキは凱王グループの手で作り出した複製だ。
    神崎士郎からの依頼を受けてな」

佐野「……そうでしたか……」

 百合絵に見守られる傍らで、
佐野は全身の力が抜けたかのようにその場に呆然と立ち尽くしていた。

佐野「……神崎さんも人が悪いな。
    わざわざシャチョーさんを巻き込んでまで俺を引き戻そうとするなんて……」

鎧丸「それは違うな」

 佐野の呟きを耳にした鎧丸はそう言い放った。
彼は決して神崎に命令されて動いた訳ではなく、
ミラーワールドや仮面ライダー、
あるいは佐野本人に関しての事情を聴いた上で自ら判断を下し、
デッキのレプリカを製造したのだ。
もし鎧丸が佐野はもうライダーの戦いに戻るべきではないと考えていたなら、そ
の時点で神崎の依頼を断っていた筈だ。

鎧丸「俺はお前にもう一度仮面ライダーとして戦って欲しいと思っている。
    そして、お前にはそれが出来るとも思っている。……昔の俺自身がそうだったようにな」

 しみじみと話す鎧丸の姿を見て、
佐野はつい先日シャチョーと初めて会った時の出来事を思い出していた。

あの時に名古屋の料亭で聞かされた話によると、
シャチョー=鎧丸自身もまた仮初めの平穏に浸り切ってしまい、
武者としての使命から逃げ続けていた結果、
戦友の紅零斗丸を一度は失ってしまったという。

 そして、彼は紅零斗丸がいなくなって初めて、
戦いを恐れるあまり自分が為すべき使命を他の者達に丸投げしていた事、
そんなシャチョーを最後まで信じていてくれた友の存在の重さとありがたみに気付いたのだ。

佐野「そんな事……、無理っすよ俺には……。
    俺にはもう、ライダーとして戦う理由も意思もないんですから……」

鎧丸「……俺とて以前は同じような事を考えていた。
    だが親友の紅零斗丸がその身を犠牲にして俺を助けてくれた時、
    ようやく俺の中にも戦士として戦うとする意志がある事に気付いたんだ。
    ……情けない話だが俺自身、自分の中にまだそんな感情が残っていたなんてその時まで考えてもみなかった。
    ならば、俺と同じような境遇にあるお前にもきっと、戦士として戦う気持ちがまだ……」

佐野「……やめてくださいよ! 俺はあなたとは違うんだ!」

 鎧丸の言葉を遮るかのように佐野は思わず大声で叫びを上げていた。

佐野「そりゃ、あなたはそうやって無事に武者としての戦いに戻る事が出来たかもしれませんよ!
    でも俺はそうじゃない! 俺はただの人間なんだ、
    武者頑駄無みたいにずっと戦争に携わってるんじゃないんだ!」

 これらの主張が単なる八つ当たりに過ぎないという事は、
当の佐野自身もよく解かっていた。
しかし、最早今の彼には目の前にいる鎧丸を罵倒するのをどうしても止められなかった。

 常日頃から思っていた現在の生活へのひそかな違和感、
真司や蓮、東條といったライダーとしての新たな戦いへと歩を進めていった者達の存在、
再び佐野の前に姿を見せたミラーワールドのモンスター、
そしてかつては彼と非常に似通った立場でありながら、
再び戦場(いくさば)へと赴いたシャチョー=鎧丸の事。
これら全ての要素が混然一体となって佐野に重くのしかかってくるのだ。

その葛藤から逃れる為には、
現在の彼にはカードデッキを持って現れた、
重厚な鎧をまとう武者頑駄無を責める以外に方法は無かった。

佐野「あなたは武者として戦って……、あの堕悪闇軍団との抗争に勝ったからそんな事が言えるんだ。
    けど俺は違う。俺はライダーとして戦った所で結局望んだ物は何も手に入らなかった。
    いや、ライダーの戦いに参加したせいで何もかも失っちまったんだ!
    今は百合絵さん達のお陰でこうして前の生活を取り戻せたけど……、
    ライダーのせいでまた全部失くしちまうのはごめんだ!
    ……俺は守りたいんですよ、こうして百合絵さんが傍にいてくれる今の生活を……」

百合絵「満さん……」

鎧丸「……」

 佐野が捲し立てるのをそれまではただ黙って耳を傾けていた鎧丸であったが、
彼が話し終えた後、一度だけ大きく深呼吸すると、やがて口を開いた。

鎧丸「……そんな脆弱な気持ちで、お前に何が守れるって言うんだ!!」

佐野「……っ!?」

 鎧丸の凄まじいまでの剣幕に、佐野は最早言葉も失う程に圧倒されていた。

鎧丸「はっきりと言ってやる。今のお前に何かを守れる事なんて出来やせん!
    何故だか解かるか? お前は何処まで行っても自分の事しか考えていないからだ!
    さっきお前は百合絵さんのいる生活を守りたいと言ったが、それは彼女の事を想って言ったんじゃない。
    お前自身が彼女にいなくなられると困るからだろう!?
    その程度の中途半端な志で、今の地位や生活を守れる等と思うな。
    ……目の前の戦いから逃げ続けているような奴に、そんな事を成し遂げられる力はない……」

佐野「……」

 鎧丸の言葉に、佐野はかつてのライダーの戦いに参加していた頃の
己の姿を思い返していた。
あの時も確かに彼は、「いい暮らしがしたい」という実に単純な理由でライダーになろうと思った。
そして、ライダーの戦いとは無関係な所で自分の望みが実現してしまえば、
あっさりとライダーの資格を放棄しようとした。
そんな彼の態度には、
城戸真司のような自らを犠牲にしてでもライダーの戦いを止めようとする決意も、
秋山蓮のような再び大切な人と触れ合う為に敢えて非情に徹する覚悟も、
東條悟のような恩師や友人を自身の手で消し去る事で英雄としての高みに近付こうとする想いも存在していない。

百合絵「違うんです、シャチョーさん……!
     満さんは、本当に私の為を想ってあんな事を……」

佐野「もういいんです、百合絵さん。俺なんかの事を庇ったりしなくても……」

 必死で夫の事を擁護しようとする妻の様子を見て、
佐野は彼女の肩に優しく触れ、それを諫めた。

佐野「……シャチョーさん、さっきは怒鳴ったりしてすいません。
    ……あなたの言うように、俺は今まで自分の事しか考えないで生きてきたし、
    目の前の戦いからも逃げ続けてきました。その事は俺自身解かってるつもりです。
    ……だからこそ、俺はデッキを受け取る事は出来ません。
    こんな中途半端な気持ちでもう一度戦おうとするのは、
    シャチョーさんや先輩みたいにちゃんと戦う意志や理由を持ってる人達に申し訳ないですし……」

 佐野がそう結論を導き出したのなら、
最早鎧丸にこれ以上彼にかける言葉は無い。
鎧丸は彼の答えをそのまま受け止めてやる事に決めた。

鎧丸「……そうか」

 そこまで言った時、鎧丸は右の拳を頭上に大きく振り上げた。
彼のそんな動作を目にした佐野は一瞬殴り飛ばされるのではないかと思い身構えたが、
鎧丸の拳はそれ以上動く事は無かった。
彼の取った行動の真意は佐野を殴ろうとしていたのではなく、
ミラーワールドを通じて鎧丸の背後まで迫っていた、
ソロスパイダーの攻撃から彼らを護る事にあったのだ。

通常音も気配もなく獲物に忍び寄り、
瞬時に捕食するモンスターの気配を察知する事が出来たのは、
鎧丸の武者として研ぎ澄まされた超感覚によるものである。

鎧丸「……ならば、下がっていろ。こいつの相手は俺がする」

 そう言うと、鎧丸はバックパックにマウントされた二振りの刀、
『双絶刀(そうぜつとう)』を装備しソロスパイダーへと斬り込んでいった。

佐野「百合絵さん、俺達も早く逃げ……」

 武者頑駄無とモンスターとの戦闘が本格化したのを受けて、
佐野も百合絵を連れて遠くへ避難しようと彼女のいる方に振り返るが、
その時彼は俄かには信じ難い光景を目にしていた。
百合絵は安全な場所へ逃げるどころか、
鎧丸とソロスパイダーとが交戦している真っ只中へ走り出して行ったのだ。
そして、この後に彼女が取った行動は、
残る男二人が全くもって予想だにしていないものだった。

百合絵「……変身!」

 何時の間にカードデッキを反射物に映していたのか、
百合絵の腰には紛う事なき仮面ライダーの変身ベルト・Vバックルが巻かれており、
彼女はその中心部にある窪みに素早くデッキを装填し、
仮面ライダーインペラーの姿へと変身を遂げた。

インペラー(百合絵)「……満さんを、これ以上苦しませないで!」

ソロスパイダー「……!??」

意外な形で出現した敵の増援に、モンスターですら度肝を抜かれたのか、
一時はインペラー(百合絵)の攻撃に圧倒される状態に陥っている。

鎧丸「む……!」

 だがしばらくすると、鎧丸が双絶刀を構えて再び戦闘に戻って行った。
どうやら、戦況がまたしても変化したらしい。
佐野が見た所ではソロスパイダーが、片腕を負傷している為に上手く戦えていない
インペラー(百合絵)の攻撃パターンを看破するようになったらしく、
鎧丸は彼女の援護に向かったようである。

ソロスパイダー「……!!」

インペラー(百合絵)「あっ……!」

 ソロスパイダーのハイキックを受け、
インペラー(百合絵)は後方へ勢いよく吹き飛ばされてしまった上、
その衝撃でVバックルからカードデッキが外れ、
百合絵はライダーの装甲を失い元の姿に戻された。

ソロスパイダー「……!」

 そこから更に追い打ちをかけようとするモンスターを、鎧丸の巨体が阻む。

鎧丸「貴様は大人しくしていろ」

 双絶刀をバックパックに収納すると、
今度は牽制用の二門の小型銃・『コアバレル』を連射し、
鎧丸はソロスパイダーの注意を自分の方に向けさせる。

佐野「百合絵さん!」

 その間に佐野は、急いで妻の元へと駆け寄った。

百合絵「……す、すみません、満さん…。お力になれなくて……」

佐野「何を言ってんですか。百合絵さんは十分やってくれましたよ!
    だからもう、俺なんかの為にこんな事しなくても……」

百合絵「……そんなに自分を責めないで。これは、私が勝手にやった事ですから……」

 百合絵は力無く笑みを浮かべると、片腕を佐野の頬に伸ばし、
か細い指で彼の目から流れる涙を拭ってやった。

百合絵「満さん……、さっき私と一緒の生活を失いたくないって言ってくれましたよね……。
     あの言葉を聞いた時、私はほんとに嬉しかったんです……。
     ……だって私、満さんの事、大好きなんですから。
     満さんのお役に立てるんでしたら私、何だってしますわ……」

佐野「百合絵さん……、俺なんかの為にそこまで……」

 彼女が自身の身を犠牲にする事も厭わない程、
佐野の事を愛しているのだという事を知った時、佐野はふと考える。
もし自分がこのままずっと目の前の戦いから逃げ続けるとしても、
百合絵は佐野を護る為、彼の代わりに戦おうとするのだろうか。

 そして、最終的には彼女さえも失ってしまうのだろうか。
自分の事をここまでに想ってくれている人を。

佐野「(そんな訳には行くか……! 俺は何としても護りたい。
    俺みたいな人間をここまで一生懸命愛してくれるこの人の気持ちに何としても応えたい……!)」

 その為には一体何を為すべきなのか、佐野は今になってその答えにようやく到達した。
佐野「百合絵さん! 俺も……、俺もあなたが好きだ。
    失いたくない大切な人なんだ」

 佐野満が再びライダーとしての戦いに赴く為の決意と意思の源が、そこにはあった。
彼は百合絵のデッキが握られている方の手をそっと自分の手で包み込んだ。
そして、その中にあるカードデッキを抜き出す。

佐野「百合絵さん……。俺、もう一度やってみますよ。
    仮面ライダーとして、あなたの想いを受け止めて見せます!」

 そう言った佐野の目には、最早曇りは無かった。
その表情は、戦いへの覚悟と決意を秘めた戦士の物であった。

百合絵「……はい! どうか、お気を付けて……!」

 佐野は彼女の言葉に強く頷いて見せると、
ソロスパイダーと戦う鎧丸の元へ急いだ。

佐野「シャチョーさん、遅くなってすみません! 俺も今から戦います!」

鎧丸「フッ……、遅れに遅れた分はしっかり取り返して貰うぞ」

 腰にVバックルを装備して駆け付けた佐野を見て、
鎧丸は何処か嬉しそうな声色で言った。

佐野「勿論っすよ……。……変身!」

 バックルにデッキを装着し、佐野の姿は一瞬にして変貌を遂げる。
レイヨウのモンスターを統べるガゼルの皇帝・仮面ライダーインペラーへと。

鎧丸「……行けるな、満っちゃん!」

インペラー「……はい!」



252 名前:新章/決意の変身:2011/06/09(木) 01:55:15

○鎧丸→ソロスパイダーと戦闘。及び佐野を説得する。
●ソロスパイダー→鎧丸、インペラー(百合絵)と戦闘。
○佐野満→鎧丸の説得や百合絵の行動を見て、再び戦う事を決意。
○佐野百合絵→インペラーに変身し、ソロスパイダーと戦闘。佐野に自らの想いを打ち明ける。



253 名前:新章/決意の変身:2011/06/09(木) 02:27:50

 己の愛する者を護る。

そんな決意を胸に秘め、佐野満は仮面ライダーとしての
新たなステージへと踏み出していった。
彼の迷いや不安を恐らく最も理解しているであろう、
天宮(アーク)の武者頑駄無・鎧丸と共に。

鎧丸「相手はミラーワールドのモンスターだ……。とどめはお前に任せるぞ」

インペラー「ええ、やってみます」

 そう言うと、インペラーは走る速度を上げて一気に倒すべき敵の元へ接近し、
その身軽さをいかした格闘戦法でソロスパイダーを翻弄する。
そんな彼の姿はまさしく、荒涼とした大地を駆け回る一頭のガゼルを彷彿とさせた。

ソロスパイダー「……!」

 近接戦闘は不利と感じたのか、
ソロスパイダーは一旦インペラーとの距離を離すと、
胸の中央にある逆三角形に配置された六角形の器官から無数の針を撃ち出してきた。

鎧丸「満っちゃん、下がれ!」

 指示を受けたインペラーが後退して針をかわしたのを確認すると、
鎧丸は自身の武器であるコアバレルと火縄式バスターライフルを合体させた大型銃、
『ダブルライフル』をソロスパイダーに向ける。

鎧丸「受けよ……、『金鯱極震弾』!」

 武者頑駄無の叫びと共に、ダブルライフルの二門の砲身からは高密度に圧縮されたビーム、
『金鯱極震弾(きんしゃちごくしんだん)』が放たれた。
大量のエネルギーを一発分の弾丸に凝縮している為に、
その弾は黄金の鯱(しゃちほこ)の如く眩い輝きを発している。

ソロスパイダー「!?」

 既に鎧丸や百合絵との戦闘によってある程度体力を消耗させられていたソロスパイダーは、
鎧丸の奥義とも呼ぶべき技を回避する事もままならず、
黄金の発光弾の直撃を受けてしまうが、何とか致命傷を避ける事に成功しており、
鎧丸の追撃を免れようとミラーワールドへ退却していった。

だがその行為は、あくまで武者からの攻撃を受けないようにする為だけの手段であって、
ミラーワールドに突入する力を持った仮面ライダーの前には、さして意味を成さない。

インペラー「逃がすかよ!」

 モンスターを追って、
インペラーもまた建物の窓ガラスを通って鏡像の世界へとトリップする。


 <ミラーワールド>


ソロスパイダー「……」

 インペラーに追い詰められ、最早逃げるのも不可能であると判断したのか、
ソロスパイダーは両腕のクローを構えてライダーに正面から突撃していった。

インペラー「最後の一足掻きって訳か……。受けて立つぜ……!」

 もっとも、尻尾を巻いて逃げる事なく最後まで戦い続けようとするその姿勢は、
ある意味見習うべき物なのかもしれない。

 そんな事をふと思いながら、
インペラーはバックルのデッキから一枚のカードを引き出し、
右膝に装備された召喚機、ガゼルバイザーにベントインした。
契約モンスターの力を介して発動するファイナルベント、
『ドライブディバイダー』のカードを。

ソロスパイダー「……!?」

 ガゼルバイザーからアナウンスが響いた次の瞬間、
ミラーワールドにはインペラーと直接契約を交わしたギガゼールを始め、
同じくレイヨウのモンスターであるメガゼール、ネガゼールなどが出現し、ソロスパイダーを取り囲んだ。

 これこそが仮面ライダーインペラーの特殊能力。
通常なら契約のカード一枚に付き一体のモンスターとしか契約を履行する事が出来ないが、
インペラーはそのデッキの特性により、契約モンスターの同族とも仮契約を結ぶ事が可能なのである。

インペラー「一斉攻撃だ!」

 右手を軽く振り上げ契約主がそう指令を下すと、
それを皮切りにオメガゼールやマガゼールを含めたレイヨウ型のモンスターが大挙して跳びかかっていった。
あらゆる方向からの予測が着かない突撃に、ソロスパイダーは為す術もなく、
ギガゼールらの攻撃を受けて上空高くへ打ち上げられてしまう。

インペラー「こいつで終わりにしてやる!」

 ドライブディバイダーのトリを飾るのは、
インペラー本人によるガゼルバイザーを用いた強烈な膝蹴りだ。
受け身を取る事すら叶わぬ空中で最後の追い撃ちを食らったソロスパイダーは、
そのまま地面へと急速に落下しとうとう力尽きてしまい、大きな爆発と共に消え去った。

インペラー「や……、やった……」

 爆心地に残されたモンスターの核をギガゼールが捕食したのを確認した後、
インペラーはホッと溜息を吐きつつ現実世界へと帰還するのであった。


 <都内某所 喫茶店付近>


百合絵「満さん、やりましたね!」

 復帰第一戦を終えたインペラーが戻ってくるや否や、
彼の戦いをガラス越しに見守っていた百合絵が急いで駆け寄ってきた。

インペラー「ええ、百合絵さんのお陰ですよ」

 そう言った後百合絵の全身を改めて見てみると、
彼女が夫の為にどれ程の痛手を受けていたのかを思い知らされる。
髪や衣服は所々乱れているし、皮膚のあちこちにも痛々しい生傷を創っている。
特に、枇杷高校にソロスパイダーが出現した際に受けた傷は、
先の戦闘で再び開いたのか血が大きく滲んでいた。
自身の不甲斐無さの為に百合絵にここまで無茶をさせてしまったのは心苦しいが、
それでもやはりこうして精神的にも肉体的にも支えになってくれる人がいる自分は、
いつだったか真司から言われたように幸せ者であると、インペラー=佐野は深く実感するのであった。

鎧丸「……まぁ、復帰したての戦いにしては中々出来た方だな」

 そう声をかけてきたのは、
ある意味佐野のライダーとしての復活を一等喜んでいるであろう鎧丸だ。

インペラー「フフ……、どうです? 俺、強いでしょ……」

 この台詞は『リセット』される前のライダーの戦いで、
自分を他のライダーに売り込もうとしていた際に彼が頻繁に用いていたものであり、
言葉巧みに他人に付け入ろうする為の手段でもあった。

 紡がれる言葉こそ以前と同じであるが、そこに秘められた想いはかつてとはまるで違う。
安易に他人の力に頼ろうとする脆弱な想いではなく、
自分にとって大切な人を護る為に本当の力を手に入れようとする確固たる『決意』が込められている。

鎧丸「……調子のいい奴め」

 前世の自分の売り文句を自嘲気味に呟くインペラーを前に、
やや呆れたような表情を浮かべる鎧丸であったが、やがて気を取り直すと、
先行した紅零斗丸の援護に向かうよう彼を促した。
如何に戦い慣れた紅零斗丸と言えども、
これ以上彼を一人で戦わせておくのは流石に危険であると鎧丸は判断していたのだ。

インペラー「し、しかしそれでは……」

 インペラーは百合絵の顔をちらと振り向きながら狼狽した。

百合絵「わ、私なら大丈夫ですから……」

 などと本人は主張しているものの、負傷した状態の彼女を
このまま置いて行くのはインペラーにとっても非常に不安な事であった。

鎧丸「心配するな。既にナンシーに救援を要請しておいた。
    じきにここまで来るだろう」

百合絵「何から何まで助けていただいて……、本当にありがとうございます」

 そう言って、百合絵は鎧丸の前でぺこりと頭を下げた。

インペラー「……分かりました。でしたら、早いとこ紅さんを助けてこの戦いを終わらせましょう」

鎧丸「それが得策だろうな」

 鎧丸はそんな風に言いつつ、
バックパックにマウントされた双絶刀の内の一振りを取り出し、
インペラーの前に差し出した。

鎧丸「……持って行け。丸腰で行くよりは役に立つだろう」

インペラー「ええ、お借りします」

 双絶刀をその手に受け取ると、
インペラーは武者鎧丸を伴い新たなる戦場へと向かって行った。
この時の彼は、穏やかに見守る百合絵の視線を背後に感じながらも
決して振り向く事はしなかった。

 ―― 必ず無事に彼女の元へ帰ってくる。
インペラーの中には既に、そうした決意が秘められていたからである。



254 名前:新章/決意の変身:2011/06/09(木) 02:31:26

○仮面ライダーインペラー→ソロスパイダーを撃破し、紅零斗丸達の援護に向かう。
○鎧丸→紅零斗丸達の援護に向かう。
●ソロスパイダー→インペラーに倒される。
△ギガゼール→インペラーに召喚される。
△メガゼール→インペラーに召喚される。
△ネガゼール→インペラーに召喚される。
△オメガゼール→インペラーに召喚される。
△マガゼール→インペラーに召喚される。
○佐野百合絵→インペラーの勝利を祝福する。

【今回の新規登場】
△ギガゼール(仮面ライダー龍騎)
仮面ライダーインペラーと契約したレイヨウのモンスター。同種のモンスターであるメガゼールらと常
に集団で行動しており、このモンスターはドリル状の角を持つのが特徴。両腕に備えたガゼルカッター
や切っ先が捻じれた二股の槍を武器とする。

△メガゼール(仮面ライダー龍騎)
仮面ライダーインペラーと仮契約したレイヨウのモンスター。同種のモンスターであるギガゼールらと
常に集団で行動しており、このモンスターは鋭利な角を持つのが特徴。両腕に備えたガゼルカッターや
鋏型の剣を武器とする。

△ネガゼール(仮面ライダー龍騎)
仮面ライダーインペラーと仮契約したレイヨウのモンスター。同種のモンスターであるオメガゼールら
と常に集団で行動しており、このモンスターはヒツジのような角を持つのが特徴。両腕に備えたガゼル
カッターを武器とする。

△オメガゼール(仮面ライダー龍騎)
仮面ライダーインペラーと仮契約したレイヨウのモンスター。同種のモンスターであるネガゼールらと
常に集団で行動しており、群れを統率する役目を担っている。このモンスターは全身に顔状の構造を持
つのが特徴。両腕に備えたガゼルカッターを武器とする。

△マガゼール(仮面ライダー龍騎)
仮面ライダーインペラーと仮契約したレイヨウのモンスター。同種のモンスターと常に集団で行動して
おり、このモンスターは湾曲した角を持つのが特徴。両腕に備えたガゼルカッターを武器とする。



255 名前:新章/決意の変身:2011/06/09(木) 18:25:44

レンゲル「橘さん!?」

 自分達の目の前でピーコックアンデッドの剣に腹部を刺し貫かれるギャレンという、
衝撃的な光景を目にしたレンゲルが叫びを上げる。

ピーコックUD「まずは一人だ。何とも呆気ないものだな……」

レンゲル「貴様……、よくもこんな事を……! 無事で済むと思うなよ!」

 レンゲルラウザーを構え、
ギャレンを倒したピーコックアンデッドに真正面から突撃をかまそうとするレンゲル。
しかし、そこへローカストアンデッドが割り込み、彼の行動を妨害しようと迫ってくる。

レンゲル「邪魔だ、どけぇっ!」

 ザッパーモードのラウザーを振るい、
レンゲルは必死でローカストアンデッドを退けようとするが、
彼の戦いは何処か精彩を欠いており、
幾度となく攻撃を外してはイナゴの化身のカウンターを受けて仰け反っていた。
明らかに今のレンゲルは怒りの感情に支配されており、
冷静な判断が出来ない状態であった。

レンゲル「く……、くそっ……」

 レンゲルが思わぬ所で苦戦を強いられていると、
突如としてDショッカーが送り込んできたもう一体の刺客・バットアンデッドが地面に叩き落とされた。
その直後に、闇の翼で空中を舞っていた夜の騎士が、
深緑の杖使いの近くに飛来する。

ナイト「上城、敵にペースを乱されるな」

レンゲル「そんな事言われても……。
      橘さんがやられて黙ってる訳にはいきませんよ……!」

 レンゲルは仮面の下に浮かべた不満の表情を隠し切れずにいた。

ナイト「……お前は橘がやられたと思っているのか?」

レンゲル「……!?」

 ナイトの言葉を聞いたレンゲルは驚いて彼の顔に目を向けた。
彼は橘=ギャレンがまだ負けていないと思っているのだろうか。
あれ程までに追い詰められたギャレンが、
これから本当に逆転出来ると信じているのだろうか。

ナイト「……お前が仲間を、橘を信じてやらないでどうする?」

レンゲル「……」

 自身とナイトの周囲を取り囲むモンスターとアンデッドの姿を見据えた時、
レンゲルはようやく落ち着きを取り戻す事に成功した。
そして、何故ナイトは仲間である龍騎が宿敵であるリュウガにたった一人で挑んでも、
ギャレンがピーコックアンデッドに刺されてもクールなままでいられるのかも、同時に理解した。

 彼は仲間の勝利を信じている。
現時点では圧倒的に不利な状況に置かれていても、
ギャレンや龍騎なら必ず逆転して勝利を掴んでくれると信じているのだ。

レンゲル「(そうか……。俺達は負けられない……、負ける訳にはいかないんだ……!
     ここで俺達が勝たないと、更に多くの人々が苦しむ事になる……)」

 ならば、この戦いに勝つ為には何を為せば良いのか、
その答えは自明の物であった。

バットUD「……」

ローカストUD「……」

 目の前に立ちはだかる敵を討つ事、
これこそが今のレンゲルとナイトが為すべき使命なのだ。

ナイト「……まずは奴らから倒す。遅れるな」

レンゲル「ええ……」

 翼召剣ダークバイザー、醒杖レンゲルラウザーを手に、
二人の仮面ライダーはDショッカーのアンデッドに狙い定めて突撃していった。

ピーコックUD「クク……、安心しろ。貴様らもすぐに橘の後を追わせてやる」

 気持ちも新たにトライアルアンデッドに立ち向かう
レンゲルとナイトの様子を見て、ピーコックアンデッドはほくそ笑んだ。

???「……誰の後を追わせるつもりなんだ、お前は?」

ピーコックUD「……?」

 聞き覚えのある声が背後からしたので、一度だけ彼は後ろを振り返った。
すると、そこにはつい今し方倒した筈のギャレンとは異なるもう一人のギャレンが佇んでおり、
すかさずピーコックアンデッドに向けてギャレンラウザーの連射を放つ。

ピーコックUD「な……、何だと!?」

 ピーコックアンデッドが突然の事態の急変に驚いて対処し切れずにいる合間に、
大剣スウォーザーに腹を刺された方のギャレンはまるで煙に巻くかの如く消失してしまった。

ピーコックUD「!? ……これは、まさか……」

ギャレン「……あぁ、そのまさかだ」

 残った方のギャレンがピーコックアンデッドの予想した内容を肯定する。
彼が止めを刺したと思っていたギャレンは、
実際にはその直前に発動していたバーニングディバイドによって生み出された分身であったのだ。

そして、本物のギャレンは分身体が『ラピッドペッカー』を使用して注意を逸らしている隙に、
『シーフカメレオン』を使って身を隠していたという訳だ。
この作戦をより確実な物とする為に、
ギャレンは敢えて射撃系の技ではなくバーニングディバイドという格闘系の技を選び、
その攻撃を耐え抜いたピーコックアンデッドに彼が近接戦闘用の手札を使い切ったと思い込ませていた。
結果的にその作戦は成功し、
ピーコックアンデッドはギャレンに格闘戦を挑む為に間合いを詰めようとしてきたので、
分身にカテゴリーKのカードをラウズさせてAPを補充する事も可能となった。
そして、シーフの効果が切れる頃を見計らって、
本体はピーコックアンデッドの背後に回っているというのが、
現在起こっている事態の真相である。

ピーコックUD「き、貴様……、最初から全て計算ずくだったとでも言うのか……?」

ギャレン「……秋山の話に乗せられて自分がトライアルであり、
      尚且つDの差し金であるのを自白したのは迂闊だったな」

 ピーコックアンデッドがその事を認めた時点で、
彼が以前戦った本物のカテゴリーJよりも強化されているのではないかと、
ギャレンは薄々感付いていたのだ。

ピーコックUD「フッ……、だが先程の攻撃で貴様は多くのカードを消費した筈だ……。
        今の貴様に俺を倒せるだけの余力があるのか?」

レンゲル「(そうだ……。俺もさっきからそれが気になっていたんだ)」

 銃士と不死生物の問答が続く中、
ローカストアンデッドや残りのモンスター群の相手をしていたレンゲルは、
その様子を固唾を飲んで見守っている。
ついさっきギャレンは彼に対してカードの無駄遣いをするなと忠告していたのだから、
彼自身が無計画にカードを消費していたとは考えにくい。
果たして、バーニングディバイドを発動する事で重要なカードを粗方使い切った現在のギャレンが、
如何にしてこの場を潜り抜けるのか。
レンゲルの疑問は、その事だけに集約されていた。

ナイト「……」

 その一方でナイトは、ミラーワールドと現実世界を交互に行き来し、
手下のコウモリを率いて襲いかかるバットアンデッドを翻弄している。

バットUD「……!?」

 幾ら暗闇を見通す眼があったとしても、
鏡の向こうからの予測の着かない攻撃を見破る事は不可能だった。
ダークバイザーとウイングランサーによる複合技・『連撃斬』を受けて、
バットアンデッドはレンゲルの付近まで弾き飛ばされる。

ナイト「上城、同時にやるぞ」

 ファイナルベントのカードをちらつかせるナイトを見て、
レンゲルもラウザーでローカストアンデッドを突き飛ばし、
再びカードボックスから手札を三枚引き出した。
それらの内訳はクラブの6・『ブリザードポーラー』、
クラブの4・『ラッシュライノセラス』、クラブの8・『ポイズンスコーピオン』。
レンゲルのコンボ技、『ブリザードベノム』を発動させる為の組み合わせである。

ナイトがファイナルベントのカードをバイザーにベントインするのに合わせて、
レンゲルも手早く三枚のカードをラウザーに読み込ませ、最終奥義の発動に入った。

バットUD「……!!」

ローカストUD「……!!」

 飛翔斬とブリザードベノム、
それぞれの必殺技を受けた二体のアンデッドはその威力の前にとうとう限界を迎え、
ベルトのバックルが割れると同時に爆発を起こして消滅した。
それは彼らが決して不死身の生物などではなく、
Dショッカーによって製造された改造実験体でしかないという事を如実に表わしている。

ギャレン「……言った筈だ。仮面ライダーの力を甘く見るなと……!」

 そう言って、ギャレンは醒銃のカードトレイを展開し、
そこから取り出したカードをラウザーにスラッシュしていく。
その間に、ギャレンラウザーは感情の一切入っていない機械的な音声で、
カードの種類を読み上げていく。

 一枚目、スペードの6・『サンダー』。
 二枚目、スペードの5・『キック』。
 三枚目、スペードの9・『マッハ』。

ピーコックUD「な、何……!?」

 アナウンスの内容に、ピーコックアンデッドは驚きを隠せなかった。
よもや、ギャレンがダイヤではなくスペードのスートでコンボを仕掛けてくるとは、
思いもよらなかったのだ。

契約主本人にしか効果がないアドベントカードを所持する神崎版ライダーと違い、
旧BOARD製のライダーが用いるラウズカードは、全てのラウザーに対応しているという点を利用して、
ギャレンはあらかじめ自分の手札の中にスペードスートのカードを忍ばせていた。

それは今回の魔刃やリュウガ、ピーコックアンデッドのような、
まだ見ぬ強敵との戦いの為に取っておいた切り札であり、
また現在では自分達の前から姿を消した仮面ライダーブレイドの資格を有する男、
剣崎一真の分まで自身が戦うという意思表示でもある。

ギャレン「……伊坂! これがお前を倒す為の切り札だ!」

 目にも止まらぬ驚異的な移動速度で敵の前に急接近し、
電撃を纏ったライダーキックを決める仮面ライダーブレイドのコンボ技・『ライトニングソニック』。
真正面からそれを受けたピーコックアンデッドはまたしても後方の瓦礫の山へバーストされ、
大きな爆発を発生させた。

レンゲル「……や、やったのか……?」

 一連の流れを見届けたレンゲルが溜息を漏らす。

ナイト「いや……、見ろ」

 先程ピーコックアンデッドが吹き飛ばされた地点を静かに指し示すナイト。

 ギャレンとレンゲルがその方向をみやると、
恐るべき事にピーコックアンデッドはまだ死んではいなかった。
もっとも、如何にDショッカーの手で強化を施されたトライアルと言えども、
流石にバーニングディバイドとライトニングソニックの連続攻撃は堪えたらしく、
身体のあちこちから白い煙を上げている。

ピーコックUD「フン……。まぁ、初戦ならこんな物か……」

レンゲル「負け惜しみを……!」

ピーコックUD「ほざけ。そういう台詞は本当に勝利してから言うんだな……」

 ピーコックアンデッドの不敵な態度に怒りを顕わにするレンゲルを、彼は嘲笑した。

レンゲル「……っ、こいつ……!」

ギャレン「待て、睦月」

 レンゲルラウザーを構えピーコックアンデッドに殴りかかろうとするレンゲルを制し、
ギャレンが発砲するものの、放たれた弾丸は羽手裏剣のアイダートによって防がれてしまう。

ピーコックUD「……今回は一度退かせて貰う。
        ……だが、この程度で我らDに勝ったなどと思わぬ事だ。
        貴様ら仮面ライダーの命、何れ必ず貰い受けてくれる……!」

 言い終える頃には、辺りに撒き散らされた羽手裏剣のみを残して、
ピーコックアンデッドの姿は既に掻き消えているのであった。



256 名前:新章/決意の変身:2011/06/09(木) 18:40:36

○仮面ライダーレンゲル→ローカストUDを撃破。
●ピーコックアンデッド→ギャレンに敗れ、撤退。
●ローカストアンデッド→レンゲルに倒される。
●バットアンデッド→ナイトに倒される。
○仮面ライダーナイト→バットUDを撃破。
○仮面ライダーギャレン→ピーコックUDを撃破。



257 名前:新章/決意の変身:2011/06/09(木) 19:09:38

魔刃「Dショッカーとやらは退いたか……」

リュウガ「……チッ、口程にもない奴らめ」

 ギャレン、ナイト、レンゲルの三ライダーに敗れたDショッカーのトライアルアンデッド達を見て、
堕悪魔刃頑駄無と仮面ライダーリュウガが呟いた。

龍騎「今度はお前らの番だな!」

 そう言ってドラグセイバーを掲げ、龍騎はリュウガに斬りかかったが、
彼の太刀筋を完全に見切っていたリュウガによってその攻撃は敢え無く相殺され、
ドラグクローでの反撃を受けてしまう。

リュウガ「調子に乗るな。俺や魔刃は連中のように甘くはない!」

龍騎「うわっ!」

 リュウガの攻撃によって龍騎は放物線を描いて後方へ弾き飛ばされ、
地面に強かに叩き付けられた。

龍騎「ぐっ……、畜生……」

 全身に力を込め何とか起き上がろうとする龍騎であったが、
思ったように疲弊した肉体を制御し切れず中々立ち上がる事が叶わない。
彼自身も気付いていなかったのだが、
リュウガやモンスター群との戦いを経てそれ程までに彼は体力を消費していたのだ。
そんな龍騎を、もう一人の自分自身を嘲笑いつつ、
リュウガは一歩ずつ彼の傍へ近付いていく。

龍騎「……!?」

リュウガ「フン……。どうだ、己の無力さを思い知らされて悔しいか?
      それとも今更になって死の恐怖を噛みしめているのか?」

 狂気に満ちた笑みを仮面の下に浮かべつつ龍騎を足蹴にした挙句、
彼の胸板を乱暴に踏み付けるリュウガ。
かつて彼は『新しい命』を手に入れる為に真司と一体化してその肉体を手に入れようとしていたが、
モンスターの核とコアミラーを用いての命を創りだす新たな方法を完成させんとする現在のリュウガにとっては、
最早龍騎=本物の真司は新しい命を得る為の器などではなく、
単に自身を死に追いやった憎むべき存在としか認識していなかった。

リュウガ「……だがそんな物は、俺が今までに経験してきた絶望や嘆きに比べれば何程の物でもない」

 そう言って、リュウガはあたかも龍騎との圧倒的な力量差を見せ付けるが如く、
無防備な状態で語り始める。
生まれながらにして城戸真司の写し身でしかないと知った時の絶望感、
仮初めの肉体しか持てずにミラーワールドという牢獄に囚われ続ける孤独感、
そして現実世界に生きる数多の人々と同じような命を手に入れる事を渇望し、
仮面ライダーとして戦いに挑んだ時の飢餓感を。

しかしながら彼は結局この悲願を成就させる事も出来ず、
ミラーワールドのモンスターと同程度の力しかない一時の命すらも奪われてしまった。
あろう事かもう一人の自分とも言える城戸真司本人の手によって。

リュウガ「……なればこそ、俺は再びこの世界に黄泉還ってきた際に思い立ったのだ。
      貴様ら仮面ライダーにも俺と同じような絶望感を味わわせてやるとな!
     そして、俺や魔刃のような世界から拒絶された者達の無念をこの世界に思い知らせてやると!」


 リュウガが叫びを上げるのを聞いて、
それまで魔刃との鍔迫り合いを続けていた紅零斗丸は、
本来なら接点が存在しない筈の魔界武者とミラーワールドのライダーという二つを結び付ける共通項に気付かされた。

紅零斗丸「復讐か……」

 破壊活動を行う事で今この世界に生きる人々に自分達の存在を気付かせ、
恐怖や悲しみといった負の感情で彼らを支配するという、この世界に対する復讐。
それこそが堕悪闇軍団が再び活動を開始し、リュウガが魔刃と手を結んだ理由なのだ。

魔刃「そうだ……」

 ファントムハーケンを握る腕により一層力を込めつつ、魔刃は返答した。

魔刃「復讐の為に仇へと向けられる憎しみの刃は、時として何よりも強力な武器となる。
   ……貴様にも覚えがあろう?」

紅零斗丸「……」

 確かに、紅零斗丸自身もかつては復讐の為だけに戦おうとしていた時期があった。

 突如として勃発した鉄機武者の反乱の時代、
鉄機軍団の部隊長・真星勢多(マスターゼータ)によって
兄の戦刃丸(センジンマル)を討ち取られたと思い込んでいた紅零斗丸は、
真星勢多への仇討ちの為に全てを捨てて復讐の鬼となろうとしていた。

だが彼との実力差を痛感し、
剣の師匠であった豪剣(ゴウケン)頑駄無の師事を受けていた当時の紅零斗丸は、
そうしている内に復讐への想いだけでは真の強さは得られないという事を理解した。

もし紅零斗丸がその事を悟らず復讐を遂げようとしていたならば、
彼が鉄機武者の反乱の裏に魔刃を始めとする魔界武者の存在があった事にも気付かず、
また真星勢多と共に覇大将軍として黒幕たる魔刃を撃破する事も出来なかったに違いない。

紅零斗丸「……ならば、あの黒き仮面戦士を放っておく訳には行かなくなったな」

 烈龍刀を軽く振って魔刃の斬撃をいなした後、
紅零斗丸は急速に後退して彼との距離を離した。

魔刃「……何のつもりだ、紅零斗丸」

紅零斗丸「魔刃、貴様の相手は後回しだ!」

 それだけ言うと、紅零斗丸は二人の仮面ライダーが
戦いを繰り広げている地点に向かって行った。

魔刃「紅零斗丸めが……、無粋な真似を……」

 どんどんと小さくなっていく宿敵の後姿を睨み付けながら、
魔刃は苦々しげに吐き捨てた。


リュウガ「そろそろ終わりにしてやろう……。
      このまま死ねばお前も現世への未練が残るだろうが、生憎俺はそんな物に興味はない。
     精々地獄の亡者共にたっぷりと聞かせてやるがいいさ……」

 優越感に浸るリュウガは満身創痍の龍騎の前でドラグブラッカーを呼び出し、昇竜突破の準備に入った。
この至近距離からドラグブラッカーの黒焔のブレスを受けたならば、
如何に仮面ライダーと言えど先程の二体のアンデッドと同じ末路を辿るであろう事は容易に想像出来る。
そして、リュウガはドラグクローの先端を龍騎に向けて契約モンスターに昇竜突破のターゲットを指定した。

リュウガ「くたばれ! 城戸真司!!」

龍騎「!?」

 契約主が吼えるのを受けて、
漆黒龍の必殺武器である黒焔のブレスが放たれようとしたその瞬間、
武者紅零斗丸は寸での所で二人の間に割り込み、
烈龍刀を振り下ろして黒色火焔を薙ぎ払っていた。

龍騎「! あ、あんた……」

 突然の武者頑駄無の乱入にリュウガはおろか、龍騎もまた驚きを隠せない。

紅零斗丸「……真剣勝負の最中にかたじけない。
      だが目の前で命が奪われようとするのを、武者として見過ごす訳には参らんのでな。
     あの仮面の戦士の相手、しばし俺に任せて貰えないか?」

龍騎「……あ、あぁ」

 武者と名が付くだけあって少々古風な物の言い方をする
紅零斗丸の言葉に最初は戸惑わされる龍騎であったが、
彼が助太刀をしてくれるという事は何となく理解出来た為、取り敢えず返事をした。
一方のリュウガは、ようやく宿敵に止めを刺せる所まで漕ぎ着けたというのに
紅零斗丸による妨害を受けてしまい、内心に怒りを湛えている。

リュウガ「俺の邪魔をする気か、武者頑駄無……!?」

紅零斗丸「……お前の戦う目的が復讐であればな……」

 リュウガの問いに静かに答えた後、
紅零斗丸は殺気をふんだんに秘めた瞳で彼を見据えた。
怒りや悲しみといった感情すらも超越しているその殺気は、
ただただ目の前の敵を倒す事だけしか念頭にない者のみが発する事の出来る、
まさしく修羅の如き物であった。

龍騎「(!? な、何だよ……、このプレッシャーは……?)」

 例えそれが自分に対して向けられていないと解かっていても、
紅零斗丸の放つ殺気の異様さは、龍騎にとっても得体の知れない威圧感を与えていた。
その感覚は、あたかも喉元に鋭利な刃物を突き付けられているようだと形容するのが相応しい。

リュウガ「(これが……、武者頑駄無の力か)」

 眼前の相手が一筋縄ではいかない者だと直感したリュウガは
武装をドラグクローからドラグセイバーへと変更し、
烈龍刀を構える紅零斗丸へと斬りかかって行った。


 <都内某所 喫茶店付近>


百合絵「満さん……、無理はしてないかしら……」

 紅零斗丸の援護に向かったインペラーと鎧丸が姿を消した後も、
百合絵は夫の身を案じ続けていた。

 本来ならば今すぐにでも彼らを追いかけたい所なのだが、
戦闘の真っ最中に生身で飛び込んでいくのはあまりにも危険な行為なので、
現在彼女が出来るのはこうしてインペラー=佐野の無事を祈りつつ、
鎧丸が救援を要請したという彼の秘書・ナンシーがこの場所へ到着するのを待つ事のみである。

百合絵「?」

 一、二分程経過した頃だろうか、百
合絵の耳に地面に散らばる瓦礫を踏み分けるような足音が聞こえてきた為、
慌ててその音の発生源を探ろうと周囲を見渡した。
もしかすると、まだ避難出来ていない一般人がいたのではないかと思ったからだ。
しかし、辺りを確認しても人影らしき物はとんと見当たらないので、
単なる空耳かと結論付けて捜索を諦めようとした次の瞬間。

モンスター「……!!」

 百合絵を取り囲むようにして、
ミラーワールドのモンスターが数匹の群れを成し出現したのだ。

百合絵「……っ!」

 またしても彼女の前に姿を見せたモンスター達を前に、
百合絵は大いに驚かされる。
しかも、今回は先程のソロスパイダー戦とは異なり敵が複数いる上、
こちら側には戦力が存在しない。
カードデッキも手元になければ、
鎧丸やインペラーのように連中と渡り合える能力を持った者も不在なのだ。

百合絵「(どうしよう……。……満さん……!)」

モンスター「!!」

 抵抗する術もなく、夫の名を心の中で呼びかける事しか出来ない哀れな獲物を前にして、
モンスター群の内の一体が俊敏な動きで百合絵に飛びかかろうとした、まさにその時。

???「動くな」

 静かな、しかしその空間全てに響き渡るような重々しい声がしたかと思うと、
百合絵を攻撃しようとしたモンスターが突如として爆発した。

百合絵「え……!?」

 百合絵のみならず周囲のモンスター群さえもが度肝を抜かれている間に、
爆風の中からモンスターを倒した何者かが徐々にその正体を現していく。

百合絵「武者頑駄無……、さん……?」

 三、四頭身程度の身長に重厚な鎧を纏ったその姿を見て、
百合絵はシャチョー=鎧丸や紅零斗丸の姿を思い浮かべながら呟いた。
その武者頑駄無を何より特徴づけているのは、
本人の身の丈に匹敵する大きさを誇るレンチと剣を組み合わせたような、
独特の形状を持つ武器・鉄斬刀(テツザントウ)であろう。

武者「……」

 彼は黙ったまま鉄斬刀を構え直すとそれを手足の如く自由自在に操り、
瞬く間に百合絵の周囲にいたモンスター群を、
彼女をただの一度も傷付ける事なしに粉砕していった。

モンスター「!!?」

 一体のモンスターが鉄斬刀のレンチ部分に掴まれた後、
武者頑駄無によって勢いよく地面に叩き付けられて絶命する。
そいつが最後のモンスターであったのを確認すると、
武者はようやく百合絵の方を向いて話しかけた。

武者「……怪我はないか、御婦人」

百合絵「はっ……、はい」

武者「そうか……」

 武者頑駄無はそう言っただけで他には言葉を発しなかったが、
その口振りから百合絵はどうやら彼が安堵していると察知する事が可能であった。

百合絵「あ、あの……。危ない所を助けていただいて……、ありがとうございます」

武者「いや、礼には及ばん。俺はナンシー殿の依頼を受けてここへ来ただけだからな」

百合絵「ナンシーさんに?」

 凱王グループの社長秘書の名に百合絵が反応していると、
彼女達の頭上の空からローター音を唸らせつつ一機のヘリコプターが飛来し、
その内部からナンシー阿久津が軽やかな身のこなしで姿を見せた。

ナンシー「遅くなって申し訳ありません、百合絵さん。
      モンスターに襲われていたようでしたが……」

 台詞とは裏腹に普段と同じような冷静沈着振りを発揮しているナンシーを見て、
百合絵は不思議と安心感を覚える。

百合絵「大丈夫です。……こちらの方に助けていただきましたから。えっと……」

 この時になって初めて百合絵は、
彼女を窮地から救ってくれた武者頑駄無の名前をまだ知らない事に気付かされた。
武者の方もその事を察したのか、
おもむろに百合絵に対して自らの素性を明かし始める。

真星勢多「俺は鉄機武者 真星勢多(テッキムシャ マスターゼータ)という。
     佐野夫人、貴女の事はナンシー殿とシャチョーから既に伺っている」
 普通の武者頑駄無とは少々異なる『鉄機武者』と称される存在であるこの真星勢多なる武者は、
かつて堕悪魔刃頑駄無率いる堕悪闇軍団が日本を襲撃してきた時に、
武者軍団の一員としてこの国の人々の為に奮戦していたのである。

百合絵「まぁ、そうでしたの……」

 ナンシーからこうした真星勢多について詳細を聞かされた百合絵は、
感心した様子で呟いた。

ナンシー「それにしても、本当に鏡の中にあのような化け物が潜んでいるとは……。
     やはり、真星勢多さんに増援を要請しておいて正解だったようですね」

 ミラーワールドのモンスターに襲撃された百合絵を、
真星勢多が寸での所で救出するのを空から目撃していたナンシーが溜め息交じりに言った。

真星勢多「いや、まだ安心は出来ん。
      この区域(エリア)に漂う『負の気』は依然消えてはいないからな……。
     戦いを終わらせる為には、その源を断ち切らねばならん」

 負の気の源が何処にあるのかが分かっているのか、
真星勢多は鉄斬刀を握り締めて何処かへ向かおうとするが、
百合絵がそれを呼び留める。

百合絵「あの、私もそこへ連れて行っていただけませんか?
     ……夫がそこにいて戦っている筈なんです」

真星勢多「……」

 鉄機武者はしばしの間黙考したが、
やがて進行方向へと向き直るとその体勢のままで百合絵とナンシーに話しかけた。

真星勢多「……俺の往く先にあるのは戦場(いくさば)だ。
      それが何を意味するかが解かっているなら、ついて来なさるがいい」



258 名前:新章/決意の変身:2011/06/09(木) 19:12:16

●堕悪魔刃頑駄無→紅零斗丸と戦闘。
●仮面ライダーリュウガ→龍騎と戦闘。
○仮面ライダー龍騎→リュウガと戦闘。
○武者紅零斗丸→龍騎を援護する。
●ドラグブラッカー→リュウガと共に昇竜突破を発動させる。
○佐野百合絵→モンスター群に襲撃される。
○鉄機武者 真星勢多→ナンシーの要請を受けて増援に加わる。モンスター群を殲滅する。
○ナンシー阿久津→真星勢多を伴い救援に駆けつける。

【今回の新規登場】
○鉄機武者 真星勢多=真星勢多大将軍(超SD戦国伝 覇大将軍/SD頑駄無 武者○伝)
輝神大将軍獅龍凰のデータを基に製造された、鉄機(人造)武者軍団の斬り込み隊長。魔刃頑駄無によ
って思考制御プログラムの鉄機心得を改変されて反乱を起こし、紅零斗丸の兄・戦刃丸を殺害した。そ
の為、紅零斗丸から仇敵と見なされ何度も刀を交えるが、後に紅零斗丸によって本物の鉄機心得を搭載
された際に彼と和解。最終的には紅零斗丸と共に覇大将軍として黒幕であった魔刃を討つ。『武者○
伝』では現代日本に転移し、岩手で南部鉄器の職人として活動していた。



259 名前:新章/決意の変身:2011/06/09(木) 19:51:35

 武者紅零斗丸と仮面ライダーリュウガ、
かつては復讐の鬼であった者と現在も復讐の野望に囚われし者。
そんな二人の実力差が明るみに出るのに、そう長い時間はかからなかった。

 紅零斗丸はリュウガのドラグセイバーによる斬撃をかわし、
時には烈龍刀で防いだりしているのだが、
その一方でリュウガは紅零斗丸の反撃に対して常に反応がワンテンポ程遅れており、
結果として相手の攻撃をことごとく食らう羽目に陥っている。

ギャレン「(奴の動き、何処かおかしい……)」

 Dショッカーの刺客との対戦を終えたばかりのギャレン達は、
しばらく何が起こっているのかを見極める為に事態の静観を決めていたのだが、
ようやく状況が飲み込めてきた時には、リュウガの調子がどうもおかしい事に気付き始めた。
今彼らの目の前で武者頑駄無と一戦交えている漆黒の仮面戦士は、
明らかに先程龍騎を圧倒していた者とは似ても似つかない戦い方である。

レンゲル「橘さん……、どうしたんですか、あいつは……」

ギャレン「恐らくあの武者に自分のペースを乱されて焦っているんだろう。
     後一歩で城戸を倒せる所を邪魔されれば、そうなるのも仕方ないだろうがな」

ナイト「……或いは、あの武者の放つ殺気に気圧されたか……」

レンゲル「……」

 それぞれ異なる結論を導き出したギャレンとナイトの回答を聞き、
レンゲルは再び視線をリュウガと紅零斗丸が戦う方向へと向けた。

確かに、最初に自分達の前に現れた時と比べ、
リュウガの放つ非常に強力だった負のプレッシャーも現在ではすっかり影を潜めている。
その原因となったのが、彼と刃を交えている武者・紅零斗丸の醸し出す殺気に
直に触れた影響だったとしたら、それもまた頷ける話であろう。
紅零斗丸の放つ殺気とは、それ程までに周囲にいる者全てに
重苦しい雰囲気を与えずにはおかない物だったのである。

魔刃「残念だが、その何れとも違う」

ナイト「!? 堕悪闇軍団か……」

 突如として彼らの前に堕悪魔刃頑駄無が姿を見せたので、
旧BOARDのライダー達は一斉に武器を構えた。

魔刃「……貴様ら三人程度なら丁度良いわ。暇潰しにしばし付き合え」

レンゲル「馬鹿な……。
      お前がどれだけ強いかは知らないけど、俺達全員を相手に勝てるつもりでいるのか?」

 大胆不敵な台詞と共にファントムハーケンの先を仮面ライダー達に向ける魔刃に対して、
多少なりともプライドが傷付けられたのか、レンゲルが不信な態度を顕わにしつつ言った。

魔刃「フン……」

 彼の疑問に答える事なく、魔刃は一度だけ意味深な笑みを浮かべる。

 そして、次の瞬間。

魔刃「笑わせるな」

「……!?」

 その場にいた三人のライダーは皆一様に絶句した。
魔刃が二言目を言い放っている頃には既に、彼はレンゲルの真後ろの位置に移動しており、
その首筋にファントムハーケンの刃先を突き付けていたのだ。

レンゲル「(な、何……!?)」

 一瞬の内に背後を取られた事に驚愕しながらも、
レンゲルはすぐさま『ゲルジェリーフィッシュ』のカードを発動しその場を離脱する。

ギャレン「睦月、大丈夫か!」

 相棒の名を呼びかけつつ醒銃のトリガーを引き魔刃に向けて弾丸の連射を叩き込むギャレン。
だが、魔刃もまたその動きを予測していたのか、
隙の無い動きでそれらの攻撃を回避する。

レンゲル「えぇ、何とか……」

 青息吐息をつきギャレンの言葉に反応した所で、
彼は頭の中で魔刃の実力を侮っていたのを後悔していた。

 かつて経験してきたアンデッドとの戦いは彼にとってまさに死闘の連続であり、
それを潜り抜けてきた今の自分にならば、
例え相手が異界の出身であろうとも引けは取らないだろうと考えていたのだが、
こうして改めて堕悪武者と対峙した時には、
その考えははっきり言って間違いであった事が身に染みて理解出来た。

そもそもこの堕悪魔刃頑駄無という武者は、
以前にも部下を率いてこの日本の各地に大いなる恐怖をもたらし、
最終的にはこの国を壊滅寸前にまで追い込んだ存在なのだ。

ナイト「……どうやら、余裕をかましているのは単なるハッタリじゃないらしいな」

魔刃「なめられた物だな」

 ナイトのダークバイザーによる斬撃を、
魔界の戦士が用いる禍々しい形状の剣・『シュトローム』を召喚して受け止めながら、
魔刃は不満を口に出した。
そこへ間髪入れずにレンゲルがザッパーモードに展開した醒杖を構えて刺突をかけるのだが、
それもまたファントムハーケンによって敢え無く防がれてしまう。
しかし、ここまでは旧BOARDのライダー達も十分に予測出来ていた状況であり、
彼らの目的は最初から魔刃の動きを封じる所にあったのだ。
ナイトとレンゲルの攻撃により両手を塞がれた魔刃を、
最後に残ったギャレンがラウザーで狙い撃ちにする。

魔刃「甘い!」

 魔刃が一言叫ぶと、
彼の左肩に装備されている外套型の鎧・『ハーデスコート』から魔力による障壁が作り出され、
ギャレンの放った弾丸を無効化した。

ギャレン「ちっ……、何て奴だ……」

 三人の仮面ライダーによる連携攻撃の手順をあっさりと見抜き、
それに瞬時に対応している異世界の武者頑駄無を見て、苦々しげに呟くギャレン。

魔刃「貴様ら如きの力を寄せ集めた程度で、この俺に敵うと思っておるのか」

 そう言うと、魔刃はファントムハーケンを大きく振り回し、
付近にいるレンゲルとナイトを退ける。
その大鎌の魔力の作用なのか、斬撃は同時に衝撃波を起こし、
周囲にある建物の壁や地面にさながら獰猛な魔界の獣が付けた爪痕を彷彿とさせる跡を残した。
旧BOARDのライダー達は何とかその衝撃波を回避出来たものの、
もし一度でも当たってしまえばそれなりのダメージを受ける事は想像に難くない。

魔刃「そう言えば、まだ話が途中だったな」

 魔刃の攻撃パターンを見破ろうと躍起なライダー達を尻目に当の本人は、
ふと思い出したように先程の話を再開した。

 リュウガが果たしてどのような原因でその調子を崩したのか、
彼はまだその結論を告げていないのである。

ナイト「お前は俺達とは違う答えを持っているようだな」

 ダークバイザーを目の前にいる堕悪武者に突き出しながら、ナイトが言った。
ギャレンとレンゲルもそれに続き連続攻撃を仕掛けていくのだが、
魔刃はそれらを掻い潜った上で彼の言葉に不敵な笑みを漏らす。

魔刃「クク……。貴様らが知った所で如何にもならんだろうがな……」


リュウガ「何だと、貴様……。もう一度言ってみろ……」

 背後から烈龍刀を突き付けられた状態でありながら、
リュウガはその刀の所有者の紅零斗丸が言い放った内容に対して計り知れない反感を表わしていた。

紅零斗丸「……お前に復讐を遂げるのは無理だと言ったんだ」

 これ以上リュウガと戦う必要がないと感じたのか、
紅零斗丸からは最早つい先程までの異様な殺気は消え失せている。
しかし、それでも紅零斗丸はリュウガの発するプレッシャーに気圧される事なく、
淡々と彼との会話に応じていた。

紅零斗丸「……俺もかつては復讐の為に戦おうとしていた身だ。
      お前の思う所も全く理解出来なくはない。さっきの話を聞けば、尚の事な」

 自らを受け容れなかった世界と、
自らをこの世から追放した真司へ復讐しようとするリュウガの想いに
一定の理解を示した上でそれでもやはり、紅零斗丸は彼が間違っているという判断を下した。

リュウガ「だ……、黙れ! 下手な同情など俺には必要ない! 
      俺は常に孤独の中で生きてきたんだ。今までも、そしてこれからもな……!」

紅零斗丸「ならば……、何故お前は魔刃と手を結んだ?」

リュウガ「……!」

 武者頑駄無の視線はリュウガという仮面の下に見え隠れする僅かな、
しかし確実な感情の起伏を完全に見透かしている。
故に、彼の鋭い眼光は今やどんな凶器よりも殺傷能力の高い武器としてリュウガのプライドを深く傷付け、
その中にある彼の剥き出しの感情(まさしく城戸真司のそれに近いもの)を抉り出す。

 復讐とは、己を常に孤独な状況に置かなければならない。
全てを捨てて自身にとっての仇を討つ事だけに専念し、
尚且つそれによって生まれる孤独感に苛まれつつもこれに打ち克つ事の出来る、
強靭な精神力が要求されるのだ。
そして、復讐者にとっては仇討ちこそが人生の全てであり、
その者が目的を遂げた時は本人の存在意義が失われるという事態を意味している。
復讐の為に生きると言う事は積年の恨みを晴らすのと同時に、
自分自身を破滅の渦中に投げ入れるという行為なのである。

紅零斗丸「俺は復讐の為に全てを捨て去る事が出来なかった。
      完全に失くすに惜しいものが、俺の中には余りにも多過ぎたからな……。
     孤独には、なりきれなかったんだ」


ギャレン「そうか……、だから奴はあれ程までにペースが乱れていたという訳か……」

 魔刃から話を聞かされ、ギャレンは合点がいったかのように呟いていた。
最初に対峙した際には、この場にいるライダーや武者が一斉にかかっても
倒せないと判断せざるを得ない程の強烈な負の気を秘めていたリュウガが、
ここへ来て急速なまでにトーンダウンしたのは、
戦いの邪魔をされたからでも紅零斗丸の殺気に圧倒されたからでもなく、
その武者の介入がリュウガの復讐という目的そのものを否定するものであったからなのだ。

レンゲル「でもそれだとおかしくないですか?
      あいつは自分が不完全な肉体しか持っていないから『新しい命』ってのを手に入れるのが目的で、
     復讐はあくまでそのついでじゃないかと思うんですが……」

魔刃「いや、そうではない」

 まだギャレンの結論に納得しないレンゲルに、魔刃が解説を加えた。

 リュウガにとってみれば新しい命を手に入れる事と城戸真司への復讐は表裏一体である。
何故なら、仮に新しい命を手に入れたとしても、
真司が存在している限りはリュウガは彼の虚像であるという呪縛から逃れる事は叶わないからだ。
彼が本当の意味で完全な生命体となるには、真司との決着を着けるのが絶対条件となっているのだ。

ナイト「(だとしたら皮肉な話だ……)」

 ライダーと堕悪武者のやり取りを聞いていたナイトは心密かにそう思った。
リュウガが新しい命を手に入れる事と本物の真司を抹殺する事に拘(こだわ)り続ける程、
彼は確実に城戸真司とは全く違う存在に変化しているのに、
当人はそれに気付いている気配がないのだから。


紅零斗丸「こう言えばお前は反論したくなるかも知れんが、
      お前もまた孤独から逃れようとしていたんじゃないのか?
     だからこそ自分と同じような経験を持ち、
      同じような思想を抱いていた魔刃と行動を共にするようになった……。違うか?」

リュウガ「黙れと言っている!」

 紅零斗丸の発言が余程彼の琴線に触れたのか、
リュウガは痺れを切らし突如としてドラグセイバーで斬りかかった。

 しかし、その一撃は紅零斗丸にヒットする事はなかった。
ドラグシールドを構えた龍騎が二人の間に割り込んで来たからだ。

リュウガ「貴様……、この期に及んでまだ邪魔を……」

龍騎「紅零斗丸さんだっけ? あんたの言おうとしてる事が何となく解かってきたぜ」

 防御の態勢を取ったまま、龍騎は背後にいる武者とリュウガとを交互に振り返った。
今のリュウガは強い復讐への想いに囚われ過ぎるあまり、
復讐というその行為もまた己が身を滅ぼすものであるという事に気が付いていない。

龍騎「……『力』だけ強くても、『想い』ばかり強くても駄目だって事だ。
   結局の所、お前も俺も未熟なのに変わりはないんだ!」

リュウガ「城戸真司…! 何処までも俺を虚仮にしやがって……!」

 内に秘めた怒りの感情を爆発させ、
今度は標的を龍騎に変更して彼に攻撃を仕掛けるリュウガであったが、
寸での所でその動きは止まった。
リュウガの頭上で彼目がけて焔のブレスを放射する、
真紅の龍の姿が見えたのがその理由である。

ドラグレッダー「―――!!」

 本来のターゲットであるリュウガどころか、
契約主やその付近にいる紅零斗丸までも巻き込みかねない程の勢いを持つドラグレッダーのブレス攻撃は、
さしものリュウガにも回避や防御に出る隙を与えない。
しかし、無双龍の赤焔がリュウガに直撃する直前になって、
今まで生き残っていた魔刃の操るモンスター・バズスティンガー軍団が、
三体の連携によって繰り出すバリアによって彼を保護したので、
リュウガはダメージを負わずに済んだ。

リュウガ「……!? 魔刃か……」

魔刃「……リュウガよ、ここは一旦引き下がるとしよう」

 まるで瞬間移動でもしたかのように錯覚させる程の素早い動作で、
堕悪魔刃頑駄無はリュウガの傍に現れた。

リュウガ「何? ここで奴らに背を向けろと言うのか……」

魔刃「少し冷静になるがいい。今のお前は連中とまともにやり合える状態では無かろう?」

 魔刃からの提案に不満を表していたリュウガは、
彼の指摘を受けてようやく自分の体から現実世界での活動時間の限界を示す
粒子が発生している事に気付かされた。
神崎製のライダーにミラーワールドにおける活動での時間制限があるように、
ミラーワールドのライダーたる彼もまた、
現実世界ではごく限られた時間しか留まれないのだ。

魔刃「それに、我々の目的の一つは既に達成したからな……」

 そう言って、魔刃は微かな笑みを浮かべた。
彼ら堕悪闇軍団の目的は武者頑駄無や仮面ライダー達のみならず、
『この世界』に対しても復讐を果たす事にある。
今回、こうした市街地で破壊活動を行うのには、
自分達の存在をこの世界の住人に知らしめるという理由も含まれているのである。

リュウガ「ちっ……」

 リュウガもそれらの事情を察したのか渋々とした態度ながらも、
ドラグブラッカーを伴い魔刃の携えるファントムハーケンの刃先から鏡像世界へと帰還していった。

龍騎「あっ! ま、待て……!」

 ミラーワールドに退却するリュウガを追って自身もそこへ突入しようとする龍騎であったが、
魔刃の操るバズスティンガー ホーネットの攻撃を受けて、
タイミングを逃してしまう。

魔刃「貴様らはこの物の怪共の相手でもしておけ」

 それだけ言うと、魔刃もまた独自に開発した空間転位術を使用し、
何処ともなく消え去っていた。

ナイト「取り敢えずくたばってはいないようだな、城戸」

 魔刃とリュウガが姿を晦ました後、ナイトは急いで仲間の元へと駆け寄った。
表面上の態度はどうあれ、
龍騎=真司の身を一番に案じていたのがこの男である事は間違いないだろう。

龍騎「…あぁ、俺ならこうしてピンピンしてるぜ」

 ファイティングポーズらしき物をとりながら、龍騎がナイトの言葉に頷いて見せた。

ギャレン「なら、残った問題はこのモンスター達だな」

レンゲル「……まだこれだけの数が残ってるなんて……」

紅零斗丸「それでもやるしかないな……。俺も力を貸そう」

 こうして、武者紅零斗丸を含めた旧BOARDのライダー達が最後の戦闘に挑もうとしていた時、
彼らの背後から土煙を上げてこの場へ乱入してくる連中がいた。

???「先輩! 先輩じゃないっすか!? いやぁ、先輩も来て下さってたんですね!」

 親しげな口調で話しかけてきたその乱入者の声を聞いて、
龍騎は驚きと嬉しさの入り混じったような様子で騒ぎ立てる。

龍騎「あーっ! お、お前は……!!」



260 名前:新章/決意の変身:2011/06/09(木) 19:53:46

○武者紅零斗丸→リュウガと戦闘。
●仮面ライダーリュウガ→紅零斗丸、龍騎と戦闘後、退却。
○仮面ライダーギャレン→魔刃と戦闘。
○仮面ライダーレンゲル→魔刃と戦闘。
○仮面ライダーナイト→魔刃と戦闘。
●堕悪魔刃頑駄無→ギャレン、レンゲル、ナイトと戦闘後、退却。
○仮面ライダー龍騎→リュウガと戦闘。
△ドラグレッダー→リュウガを攻撃。
●ドラグブラッカー→リュウガと共に退却。
●バズスティンガー ホーネット→龍騎を攻撃。



261 名前:新章/決意の変身:2011/06/10(金) 23:14:02

 旧BOARDの仮面ライダーと武者紅零斗丸、
そして魔刃が置き土産として残したミラーワールドのモンスターとの戦いに、
疾風怒濤の勢いで乱入してきた者達の姿を見て、
龍騎はあたかも懐かしい友人に思いがけず再会した時のような気持ちを表現していた。

そして、実際に夢者遊撃隊の一員・鎧丸と共にこの場に現れた、
仮面ライダーインペラーに変身している男は、
龍騎=真司にとっては今や弟分とでも言うべき存在となった佐野満なのだ。

龍騎「さ、佐野……! お前よく戻って来たな……!
    そのデッキ、神崎に頼んで返してもらったのか?」

インペラー「あ、いや……。こいつはちょっと訳ありでして……」

 龍騎に指摘され、インペラーは少し困ったような動作で
腰のVバックルにセットされたカードデッキに触れた。
実の所、インペラー本人も神崎の依頼を請けたシャチョーからこのデッキを受け取っただけで、
その詳細についてはほとんど分かっていないのだ。

鎧丸「事情は何れ明らかになる。それより今は、このモンスター共を片付けるのが先だ」

 そんな事を言いつつ、鎧丸が彼らの前に進み出る。

紅零斗丸「ここへ来るのに随分時間がかかっていたが……、要件は済ませて来たようだな」

 戦友とその隣にいるライダーとに、紅零斗丸はそれぞれ視線を浴びせた。
この発言から、やはり紅零斗丸はある程度自分の抱えている問題について見当を着けており、
最初に堕悪闇軍団の襲撃が発覚した時点で、
彼がシャチョーと佐野を残して先行したのもその為だったのだと鎧丸は確信した。

紅零斗丸「フッ……、武者の勘という奴だ」

 その事を鎧丸から指摘され軽く笑みを漏らす紅零斗丸。

インペラー「っつー訳で……、こいつらは俺とシャチョーさんとで片付けますから、先輩方は休んでてください」

 そう言って、インペラーがモンスター群の前に立ちはだかった。

ナイト「お前達だけで事足りるのか」

 やけに自信に満ちたインペラーの様子を見て、
かつて彼が自分の進むべきを決められず途方に暮れていたのを知っていたナイトは疑問を呈する。

インペラー「へへ……、心配ないっすよ。
       俺もこのシャチョーさんも、こういう多数の敵との戦いには向いてる方ですから」

 複数の仮契約モンスターを同時に使役する特性を持つインペラーと、
豊富な重火器を装備し遠距離からの集中砲火を得意とする鎧丸。
この二人は何れも、対戦相手の数が多い時にこそ真価が発揮されるのだ。

ギャレン「そのライダーの言う事は本当なのか?」

 インペラー、及び鎧丸とは初対面である為彼らの実力の程を量りかねるギャレンが、傍らにいる神崎製のライダー達に問うた。

鎧丸「そいつは、俺達の戦い方を見てから各々が判断を下せばいい」

 龍騎やナイトの代わりに鎧丸がそう答えると、
彼はダブルライフルを構え、早速戦闘態勢に入った。
鎧丸から双絶刀の内の一振りを受け取っているインペラーも、
デッキから一枚のカードを引き出してそれに続く。

龍騎「佐野、あの三人組のモンスターには気を付けろ。
    バリアを張ってこっちの攻撃を防いでくるぞ!」

インペラー「分かりました!」

 三体のバズスティンガー達を指して後輩に注意を促す龍騎に、彼は頷いて見せた。
ならば、こちらはバリアを使われる前に先手を打たねばならない。
そう結論づけたインペラーは先程取り出したカードを
ガゼルバイザーにベントインし、『アドベント』の効果を発動した。
たちまち、周囲に散らばるガラスの破片からインペラーの従える
レイヨウのモンスター達が出現し、堕悪闇軍団のモンスターを取り囲む。

鎧丸「満っちゃん、戦法はここへ来る途中に話した通りだ……。抜かるなよ」

インペラー「了解っす!」

 それだけ言うと、インペラーは自身の契約モンスターと共に、
双絶刀を構えてモンスター群に突撃していった。

龍騎「うわ……。ある意味凄ぇな、こりゃ……」

 目の前で繰り広げられる光景に、
龍騎を始めとする当事者達は思わず言葉を失っていた。
あたかもサッカーにおけるフーリガン同士の抗争や、
巣を襲撃しに来たスズメバチを追い払う為にミツバチが一斉蜂起するかのごとく、
敵味方が激しく入り乱れるその戦いは、まさしく混戦、乱闘と呼ぶのに相応しいものがある。

真星勢多「……一足遅かったようだな」

 ナンシー阿久津、佐野百合絵を引き連れた鉄機武者 真星勢多が戦場に足を踏み入れたのは、
この混沌とした戦いが行われている最中だった。

紅零斗丸「真星勢多! よもや、お前が来ていようとは……」

 かつて共に魔刃と戦った旧友の姿を見付けた紅零斗丸は大いに驚かされていた。

真星勢多「奴は撤退したか……」

 周りの景色を一通り見渡した後、真星勢多は紅零斗丸に尋ねた。
彼がこの近辺で感知した非常に強力な負の気、
それが紛れもなく因縁の敵である堕悪魔刃頑駄無の発している物である事を、
彼は既に見抜いていたのである。

紅零斗丸「あぁ……。しかも厄介な事に、この世界に巣食う妖物共と手を結んでいるようだな」

真星勢多「な、何だと……!」

 真星勢多本人も先程戦ったミラーワールドのモンスターを、
彼はてっきり魔刃が魔界の技術で産み出した物だと思い込んでいた為、
今度は紅零斗丸の発言に彼が驚かされる番となった。
というのも、真星勢多はミラーワールドのモンスターとは異なる、
この天馬の国=日本に古来から存在し、
ごく僅かな人々にのみその情報が伝えられる妖物の存在を知っていたからだ。

紅零斗丸「? どうかしたのか」

真星勢多「ん、いや……。何でもない」

 真星勢多はあからさまに歯切れの悪い返事をした。

龍騎「あれっ……? さっきから敵の数が全然減ってないぞ……」

 二人の武者が会話している間に、
旧BOARDのライダー達はインペラーと鎧丸の戦いを見守っていたのだが、
その混戦振りとは裏腹にモンスター群は今の所一体も倒れていないので、
この事に気付いた龍騎は怪訝な態度を顕わにしていた。

レンゲル「橘さん、俺達も援護に向かった方が……」

ギャレン「……いや、それは出来ない」

 レンゲルの提案を、ギャレンは神妙な面持ちで否定した。
これはインペラーと鎧丸、彼ら二人の戦いであり、
現在の彼らが苦戦している訳ではない以上余計な手出しをする事は良しとしない、
というのがその理由である。

ギャレン「それに、彼らにしても考えなしに戦っている訳じゃない」

レンゲル「どういう事ですか?」

 「見ていれば分かる」と言わんばかりに、
ギャレンは彼の問いに答える代わりにインペラーと鎧丸が戦っている方向へ視線を向けるのであった。

インペラー「うりゃあっ!」

 一方、戦闘中のインペラーと鎧丸は着々とあらかじめ考案しておいた作戦を実行に移していた。

 単体でもモンスターを倒すに十分な力を有している紅零斗丸や龍騎ならいざ知らず、
インペラー個人のスペックではモンスターの集団に太刀打ち出来るものではない。
鎧丸は彼と対照的に高火力の武装を備えているが、
それらはすべからく攻撃前後の隙が大きいので、
敵の注意を引き付けてくれる斬り込み役がいなければ効果は薄れてしまう。

 そこで、彼ら二人が思い付いたのは互いの弱点をカバーしあいながら戦う『連携』の戦術であった。
まずはインペラーの契約モンスターが堕悪闇軍団のモンスターを牽制し、
その間を縫うようにして契約主たるインペラーが双絶刀でダメージを与えていく。
更に残った敵を、鎧丸が遠距離からの砲撃で撃ち落とすのだ。
だが、これらの行動自体は敵を倒す事を目的としていない。

インペラー「シャチョーさん、準備完了しました!」

鎧丸「よし、後は任せておけ」

 インペラーの攻撃によって、
堕悪闇軍団のモンスター群は道路のほぼ中央地点に集められていた。
視界の開けたこの場所ならば、
鎧丸は確実に相手に狙いを定める事が可能となり、
かつ周囲への被害も最小限に抑えられる。

鎧丸「バスター……、発射!!」

 鎧丸の力強い叫びと共に、彼の手にしたダブルライフルから黄金に光り輝く高熱のビーム・『金鯱極震弾』が発射された。
弾丸はモンスター群に直撃すると同時に大規模な爆発を巻き起こし、
残りのモンスターを全て塵に変えてしまう。

インペラー「連携の力を有効に用いれば、最小限の力に最大限の効果をもたらす……」

鎧丸「これぞ、夢者遊撃隊に伝わる頑駄無流の奥義だ」

 亡骸の代わりとしてその場に漂っている核を、
インペラーの契約モンスターが全て捕食するのを見届けると、
彼らはようやく今回の戦いが終局を迎えた事を悟るのであった。



262 名前:新章/決意の変身:2011/06/10(金) 23:16:46

○仮面ライダー龍騎→インペラーの登場に驚かされる。
○仮面ライダーインペラー→鎧丸と共にモンスター群を撃破。
○鎧丸→インペラーと共にモンスター群を撃破。
○武者紅零斗丸→真星勢多と話す。
○仮面ライダーナイト→インペラーと鎧丸の戦いを見届ける。
○仮面ライダーギャレン→インペラーと鎧丸の戦いを見届ける。
○鉄機武者 真星勢多→紅零斗丸と話す。
○ナンシー阿久津→真星勢多に同行。
○佐野百合絵→真星勢多に同行。
○仮面ライダーレンゲル→インペラーと鎧丸の戦いを見届ける。



263 名前:新章/決意の変身:2011/06/10(金) 23:32:30

龍騎「っしゃあ! よっしゃーっ!」

 『連携』の戦術を駆使しモンスター群を打ち破った
インペラーと鎧丸の活躍を見て、龍騎はガッツポーズを連発していた。

ナイト「はしゃぎ過ぎだ、お前は」

 異様なまでにテンションが上昇している龍騎の様子に、
ナイトは半ば呆れ果てたようにブレーキをかける。

龍騎「なっ……、何だよ、佐野が俺らの代わりに戦ってくれたんだぞ!
    お前は嬉しくないのかよ?」

 言うまでもなく、佐野が再び仮面ライダーとして戦線に復帰したという事自体は、
ナイトにとっても喜ばしい報せである。
ただ、彼はそういった感情を表に出すという事をしないだけなのだ。

ナイト「『仲間が一人増えた』……、それだけの事だ」

 そう言ってナイトは変身を解除し、秋山蓮の姿に戻った。

龍騎「お前……、素直じゃねぇな……」

 ナイトの天の邪鬼な反応にツッコミを入れつつ龍騎が変身を解いたのを皮切りに、
残りのライダー達も続々と人間の姿へ戻り始める。

橘「どうだ、睦月?」

 睦月が操作しているアンデッドサーチャーの画面を橘が覗き込んだ。

睦月「……大丈夫です。もうこの近辺にはモンスターの反応はありません」

 アンデッドサーチャーのディスプレイに、
モンスターの接近を意味する赤い点滅光が表示されなくなったのを確認してから、
睦月は安堵した表情で答えた。

シャチョー「ふー……、疲れた……」

真司「うわっ! な、何だ!?」

 戦闘が終わって、鎧鋼力服(ヨロイスーツ)の中から鎧丸の本体であるシャチョーが唐突に現れたので、
彼の詳細を知らない真司は思わず仰天のリアクションを取っていた。

佐野「あ、先輩はシャチョーさんとお会いするのは初めてでしたよね。
    こちらは凱王グループの社長でいらっしゃる、鎧丸さんです」

真司「なっ……、あの大企業の社長さん!?」

橘「武者頑駄無であるとは聞いていたが……」

 スマートブレイン社や高見沢グループに匹敵する程の力を持っていると言われる凱王グループの名前は、
現代日本に暮らす者なら大抵が知っている。
しかし、そこの社長の椅子に座っているのが異世界の出身者であり、
なおかつシャチョーのような小柄な武者であるという事実を把握しているのは、
その中でもごく少数の人間だけなのだ。
そして今この時から、旧BOARDのライダー達もその一部の中に含まれる事となった。

シャチョー「ニャハハハ! おめえさん達は満っちゃんのお仲間やか?
       ほんならこの僕ちゃんの友人にもなるという事やね。どうもよろしゅう!」

睦月「俺達はお二人とも初対面ですけどね……」

 佐野とシャチョーの顔とを見比べつつ、睦月が呟いた。
無論、旧BOARDの技術で造られたライダーシステムと、
神崎士郎の開発によるカードデッキの違いをシャチョーが知っているとは考えにくいので、
この場にいる仮面ライダー全てが佐野満との関係者であると推測してしまうのも、致し方ない事であろう。

 問題は、この小さな武者頑駄無が一体どのようなルートで、
仮面ライダーについての情報を入手したかなのである。

蓮「佐野……。今、お前が持ってるデッキは何処から手に入れた?」

 シャチョーとの挨拶もそこそこに、インペラーへと復帰したばかりの佐野を問いただす蓮。
佐野が以前神崎にデッキを返還しているという事実から照らし合わせて、
今回の彼の復活劇には、このシャチョーが大いに関わっていると蓮は踏んでいたのだ。

佐野「あ、いや……、これはですね……」

シャチョー「まぁ待ち。ここはこの僕ちゃんから順を追って説明させてもらうでなも」

何故かしどろもどろな反応をする佐野の前に、シャチョーが進み出る。

シャチョー「……何せ、神崎士郎に言われて、満っちゃんの為に
       あのカードデッキっちゅうもんを造ったんは、凱王工業(ウチ)やからな……」

 そう言って、にやける口元を扇子で隠しつつシャチョーは蓮の方を見やった。
先程佐野に放った質問から、
蓮の知ろうとしているデータが何なのかをすぐさま読み取った彼は、
その答えと言うべき物を、一見奔放な発言の中に巧みに散りばめている。

蓮「……」

橘「(あの秋山の態度だけでここまで読み取れるとはな……)」

 企業の社長という物は人を見極める目を持っていなければ務まらないというが、
その点でシャチョーは、人間の本質を見抜く為の熟達したスキルを有しているに違いない、
と橘は一連のやり取りから判断していた。
凱王グループが数年間で大企業に急成長したのも、
シャチョーのこの能力が多分に関係しているのだろう。


 シャチョーこと鎧丸が長広舌を開いている間に、
残る二人の武者頑駄無・紅零斗丸と真星勢多は、
仮面ライダーとはまた異なる話題についての会話を繰り広げていた。

紅零斗丸「……真星勢多、さっきは何に驚いていた?」

真星勢多「何の……」

 皆まで言う前に、真星勢多は喋るのを止めていた。
あの時の彼の反応を目にしていれば、
どれ程勘の鈍い者であろうとも「何か良からぬ事態が起こった」と結論付ける筈である。
ましてや相手が紅零斗丸ならば尚更だ。

真星勢多「そう言えば、お前にはまだ報せていなかったな。
      ……この世界にも奴らがいるという事を」

紅零斗丸「奴らだと?」

真星勢多「……魔化魍(まかもう)の事だよ」

 意外な単語が登場した為、紅零斗丸は思わず面食らっていた。
『魔化魍』と言えば、武者の世界 ―― 厳密に表現すれば武者の世界=天宮が属する、
魍魎界と呼称される世界 ―― にも度々目撃される妖邪の類であり、
紅零斗丸も古文書の記述などからその存在については以前から知っていた。

紅零斗丸「時空転移か?」

真星勢多「いや違う。連中は遥か昔からこの天馬の国に出没しているらしい」

紅零斗丸「何だと……。どういう事だ、それは」

 いよいよ紅零斗丸にも事態が飲み込めなくなってきた。
真星勢多の言葉をそのまま受け取るなら、
魍魎界で目撃されてきた魔化魍と全く同じ名前の妖物がこの国、
即ち物質界にも存在しているという事になる。
しかも、時空クレヴァスなどによる次元転移ではなく、
どちらの世界にも古来から魔化魍の名前が伝えられているのだ。
はたして、このような現象が単なる偶然で起こり得るものだろうか。

紅零斗丸「……待てよ。魔化魍がこの世界にいるというのなら、もしや……」

 紅零斗丸の予想を肯定すべく、真星勢多が口を開く。

真星勢多「そうだ。彼らもまた、この国で人知れず魔化魍退治を行っている」

紅零斗丸「『鬼』がか……」

 鬼、それは魔化魍を清める為の最終兵器。

 極限にまで鍛え抜かれた肉体と精神で以てその体を異形の姿へと変え、
清めの音を操り魔化魍を大自然へと帰す、音撃の使い手である。
武者の世界でも過去には魔化魍を討つ為の様々な秘術が編み出されたそうだが、
結局は清めの音による音撃以上に効果を発揮した物は皆無であったらしく、
最終的には魔化魍の対処については特別な場合を除いて鬼の一派か、
独自の秘術を現在も生み出し続ける時防衆(じぼうしゅう)に一任するという形がスタンダードになったのだと、
紅零斗丸は何かの書物で読んだ記憶があった。

真星勢多「天馬の国では鬼とその後援団体を合わせて『猛士(たけし)』と呼ぶそうだ。
     一応、彼らの代表に挨拶して魔化魍退治への協力を申し出ておいた」

紅零斗丸「そうだったか……。敵がまた一つ、新たに増えたという事になるな」

 堕悪闇軍団、ミラーワールドのモンスター、トライアルアンデッドを擁するDショッカー、そして魔化魍。
これらの勢力全てを敵に回さなければならぬのだとすれば、
今度の戦いは以前とは比較にならない程、激しい物になりそうだ。

 紅零斗丸がそんな事を呟くと、真星勢多は微かな笑みを浮かべた。

真星勢多「ほう、お前が弱音を吐くとは珍しいな」

紅零斗丸「馬鹿言え、確かに敵の力は強大だがこちらには更に大きな力がある。
     ……結束の力がな」

 そう言い返す彼の視線の先には、
旧BOARDのライダー達を前にまだ話を続けているシャチョーの姿があった。



264 名前:新章/決意の変身:2011/06/10(金) 23:35:45

○城戸真司→シャチョーと初めての顔合わせ。
○秋山蓮→シャチョーと初めての顔合わせ。彼を訝しく思っている。
○橘朔也→佐野、シャチョーと初めての顔合わせ。
○上城睦月→佐野、シャチョーと初めての顔合わせ。
○シャチョー→旧BOARDのライダーと初めての顔合わせ。
○武者紅零斗丸→真星勢多から魔化魍の情報を聞く。
○鉄機武者 真星勢多→紅零斗丸に魔化魍の情報を話す。



265 名前:新章/決意の変身:2011/06/10(金) 23:58:30

シャチョー「……と言う訳で、満っちゃんは僕ちゃんの造ったカードデッキを使って、
       再びライダーとして戦う事を決めたんや」

 シャチョーは、佐野と初めて会ってから今日に至るまでの出来事を、
旧BOARDのメンバー達に包み隠さず話していた。

これによって、シャチョーがインペラーデッキの複製品を造り上げた背景には神崎士郎直々の依頼があった事、
またシャチョー自身もかつては佐野と同様戦いに戻るのを恐れていたが、
戦友の紅零斗丸の助言によって武者魂を取り戻した事、
そしてそんな自らの過去と佐野の現在とを重ね合わせ、
佐野には自分と同じような後悔を味わって欲しくなかったが為に彼を必死で説得した事、
最終的には百合絵の深い愛情の力で佐野がもう一度戦いの場へと赴く決意を固めた事などが、
真司達の知る所となったのである。

橘「そうか……、事情はよく解かった」

 橘がやけに重々しい表情で答えた。
彼もまた戦士として復活する為に多大な犠牲を払ってしまったので、
シャチョーや佐野の気持ちが痛い程理解出来るのであろう。
一方、シャチョーの話を聞いた後であっても、蓮の疑問は完全には解消される事はなかった。

蓮「神崎は凱王グループにデッキを造らせた理由を話さなかったのか」

 蓮はその疑問をシャチョーの秘書・ナンシーに投げかけていた。
神崎自身が他ならぬカードデッキの制作者であるのにかかわらず、
わざわざ直接には無関係である凱王グループにデッキ複製を依頼するのは、
やはりどう考えても不可解である。

ナンシー「一応理由を尋ねてみましたが、納得出来る答えは返ってきませんでしたね。
     恐らく、我が社のシャチョーと佐野社長との間に交友関係があったのが要因ではないかと」

 社長秘書の返事はあまり芳しい物ではなかった。

睦月「まぁ、神崎さんの考えてる事はよく解かりませんからね……」

 神崎士郎という男は、人類基盤史研究所BOARDの元所長・烏丸啓の前に唐突に現れ、
ミラーワールドで発生した異変の鎮静化を理由にライダー同盟への協力を働きかけ、
旧BOARDの活動再開の一因ともなった上、ライダーシステムにミラーワールド侵入機能を付加し、
自身が生み出したカードデッキ変身型のライダーとの仲介役も果たしている。
だが、彼が一体何の為にそのような根回しを行ったのか、
その行動原理はいまいちはっきりしていない。

 こうした事情を思い出して、睦月は溜息交じりに呟くのであった。

真司「しっかし話を聞いた限りじゃ、
    百合絵さんがその場にいなかったらあるいは佐野は変身しなかったかも知れないって事か……。
   今回はほんとに運が良かったんだな、お前は……」

 確かに真司の言葉通りであった。

実際、シャチョー=鎧丸の説得だけでは佐野は戦おうとする決心を持っていなかったのである。
百合絵がその身を挺して彼の為に戦ったからこそ、
佐野は再びライダーの世界に戻ってくる事が出来たのだから、
彼の中で百合絵がどれ程大きな存在であったが窺い知れる。
また同時に、百合絵もまた自分の夫に対して、
揺らぐ事のない愛情を抱いているという事実をも証明しているのだ。

百合絵「あの時は無我夢中だったもので……」

 思えば軽率な行動だったと、顔を赤く染めて俯く百合絵に、
佐野は至極真面目な態度でフォローを入れた。

佐野「そんな事ないっすよ。
    あの時の百合絵さん、すごくかっこよかったじゃないですか!」

百合絵「あ、ありがとうございます……」

 夫の真剣な言葉に励まされたのか、彼女は多少照れを残しつつも頷いて見せる。

橘「ところで……」

 佐野夫妻の会話が一段落着いた時点で、橘が重要な話題を切り出した。

橘「佐野君と言ったか、君自身はこれからどう行動するつもりだ?」

 神崎製の仮面ライダーも何人か在籍しているライダー同盟に加入するか、
旧BOARDのメンバーとして活動するか、
あるいはどの勢力にも属さぬ遊軍的な立場をとるか、選択肢は幾つかある。

シャチョー「僕ちゃんとしてはその旧BOARDに入る事をお勧めしたい所やね」

 今回の件で、武者頑駄無にとっての敵対勢力である堕悪闇軍団が、
ミラーワールドのモンスターを戦力に加えた事が判明した。
そして、同じく武者頑駄無達と旧BOARDのライダーの間にも一つのコネクションが出来上がった。
ならば武者であるシャチョー、
仮面ライダーである真司や蓮と交流のある佐野が旧BOARDに参入する事は、
互いの組織の連帯を深める上でも重大な意味を持ってくる。
シャチョーの助言は、かような理由からなされたものであった。

佐野「そうっすね……。確かにその方がいいのかも……」

 シャチョーのアドバイスに同調する意向を示しつつ、
佐野は真司達の方に視線を向けた。
佐野が旧BOARDへ加入するには、彼らの承認が必要となる。

橘「俺達は彼の参入には異存ないが……、城戸、秋山、お前達はどうだ」

 橘がカードデッキの持ち主達に振り返った。

真司「佐野……、もう一度だけ聞かせてくれ。お前が何の為にライダーとして戦うのかを」

佐野「はい……!」

 真司がこの上なく真剣な眼差しで見つめてくるので佐野は思わず緊張させられたが、
彼は自分の思う所を極めて素直にこの場にいる者達に伝えていた。

佐野「百合絵さんを護る為に……、それから彼女が俺の傍に
    いてくれる今のこの世界を……、守る為です」

 以前、佐野商事の社長室で真司と面談した時、真司は彼の事を『幸せ者』だと形容している。

 その言葉を聞いた時点では、佐野が社長の立場を継いで
百合絵を妻に迎えていたから真司がそのように言ったのだと考えていた。
しかし、仮面ライダーとして戦う道を選び取った現在では、
佐野にとっての幸福とは百合絵の存在そのものであるという事が、
今回のモンスターとの戦いを通じて彼にも理解出来るようになったのである。

真司「……」

 しばらくの間、真司は沈黙を保っていた。

 誰かの為に戦うという事は途中で投げ出したり出来ない分、
自分の為だけの戦いより厳しい状況を強いられる。
はたして佐野満に、そんな戦い方を貫くだけの
揺るぎない決意があるかどうかを、見極めようとしているのだ。

真司「……少なくとも俺達は、お前の決意が本物だって信じてる。
    だからお前も旧BOARDのライダーとして戦って、その意志の強さを見せてくれ」

 その言葉は、佐野を改めて旧BOARDのメンバーとして招き入れるという事を表現していた。

佐野「は……、はい! これからよろしくお願いします!」

百合絵「よかったですね、満さん」

佐野「ええ……!」

 細君からの祝福に、佐野は何度も頷いて見せる。

真司「にしてもお前……、ほんとによく戻って来てくれたなぁ!」

 実質上の後輩が出来たのに気を良くしたのか、
真司も実に嬉しそうに佐野の肩を叩いた。

真星勢多「なるほどな……。彼らの結束の力なら、奴らにも対抗出来るかもしれんという事か」

 天宮(アーク)の武者頑駄無と天馬(ペガサス)の国の仮面ライダー達が、
共に同じ土俵に立っている現在の光景を見て、真星勢多が感慨深げに漏らす。

紅零斗丸「この天馬の国にいる多くの戦士達の力を借りれば、
      恐らく堕悪闇軍団やDショッカーの連中とも渡り合える筈だ……。
      希望はまだ潰えてはいない」

 この世界に再び災禍をもたらさんとする堕悪魔刃頑駄無との再戦を心の中で堅く誓いながらも、
本来は異なる世界の住人と共に戦える現状に、
紅零斗丸は何故かその内に秘めた武者魂が熱く燃え上がるのを感じ取らずにはいられなかった。


 <白井邸>


 その日の夜、堕悪闇軍団とDショッカーとの戦いを潜り抜けた橘と睦月は、
現在における彼らの活動拠点となっている白井虎太郎の邸宅に帰還し、
今日体験した出来事を元BOARD所長・烏丸啓を含む旧BOARDのメンバーに報告していた。

栞「モンスターとアンデッドを同時に敵に回してたなんて……、酷い乱戦状態だったのね」
 
 橘からディバイン・ショッカーがアンデッドのトライアル製造に着手したという情報を聞かされ、
自身もBOARDの所員であった女性・広瀬栞が真っ先に口を開いた。

橘「ああ。このスペードのカードがなければ、勝てていたかどうか判らんな」

 そう言って、橘は懐からギャレンバックルと予め携帯しておいた、
スペードスートのカードを取り出しテーブルの上に置いた。
これらのカードは元々烏丸が保管していた物であったのだが、
彼が神崎の協力を得て修復したギャレンバックルを橘に渡す時に、
未知の強敵に対抗する切り札とする他、
姿を消した剣崎の分まで戦いたいという意向の元、
一時的に橘の手元に渡っていたのである。

栞「剣崎君が力を貸してくれたのかしらね……」

 誰に訊ねるともなしに彼女が一人ごちると、
今度はそれまで黙って橘らの話に耳を傾けていた烏丸が話し始める。

烏丸「……今後はDの動向に更なる注意を払う必要がある。
   橘の言ったように、奴らがアンデッドの力を手に入れた背景には、
    天王路博史の存在がある事は明白だからな」

栞「それならライダー同盟との連帯も、もう少し深めておく必要がありますね」

 神妙な面持ちで栞が言った。
幸いな事にライダー同盟という組織は、
世界の各地に派遣されている『仮面ライダー』達による広大なネットワークを有しているので、
彼らの情報力を借りる事は非常に大きなアドバンテージとなる、
と烏丸は彼女の言葉に付け加えた。

虎太郎「ぼ、僕にも何か協力出来る事はないかな……?」

 物憂げにそう訊ねてきたのは、台所で夕食の後片付けをしていた家主であり
フリーのルポライターとして活動している、白井虎太郎である。
彼は元々都市伝説としての仮面ライダーを調べる目的で剣崎らに接触していたのだが、
その内部事情に触れていくにつれて彼らのサポートに回るようになっていった。
旧BOARDのメンバーに自宅を活動の拠点として提供しているのも、
そういった経緯によるものだ。

橘「そうだな……。なら、OREジャーナルという会社に連絡を入れてくれ。
  そこにいる城戸真司という記者に事情を話せば、大体の事は理解してくれる筈だ」

虎太郎「うん、わかった。そうしてみるよ」

 彼にとっても橘や睦月と同じように、剣崎一真は大事な仲間である。
そんな剣崎に例え目に見えない形でも何らかの援助が行えるという事は、
虎太郎にとっても喜ばしいものがあった。

睦月「しかし、今のままではやっぱり戦力的には不十分ですね……」

 ライダー同盟や神崎士郎に協力を要請し、
カードの数を増やすなどの対抗策も講じてはいるものの、
それだけでDショッカーの勢力に何処まで対抗し得るのかは分からない。

烏丸「その事に関してだが……、橘、上城君、二人に提案しておきたい事がある」

睦月「? 一体何を……」

 おもむろに話を切り出す烏丸の態度を睦月が訝しんでいると、
突如として白井邸のリビングに呼び出し音が響き渡った。
虎太郎の家に来客がやって来る事など、本来は起こり得ない事態である。

虎太郎「あれっ、誰だろこんな時間に……?」

烏丸「(来たか……)」

 奇妙な来客の訪問に気付いた烏丸は、虎太郎にその人物をここまで連れて来てくれるように頼んだ。
どうやら彼は、白井邸に何者かが訪ねて来るのを前もって知っていたらしい。
数分後、虎太郎が一人の男を伴って居間に戻ってきた時には、
橘は驚きを隠さずにはいられなかった。
何故なら虎太郎が連れて来たその男の顔は、
橘にとっては決して忘れる事の出来ないものであったからだ。

橘「!? あなたは……」

桐生「……久しぶりだな、橘。あの時以来か」

 男の名は桐生豪。
人類基盤史研究所BOARDの元職員にして、
ギャレンバックルの最初の適合者として選ばれた男でもあった。



266 名前:新章/決意の変身:2011/06/11(土) 00:04:06

○シャチョー→旧BOARDのメンバーに事情を話す。
○橘朔也→烏丸らに状況報告。桐生の訪問に驚く。
○秋山蓮→神崎の行動に疑問を抱く。
○ナンシー阿久津→蓮、睦月と話す。
○上城睦月→烏丸らに状況報告。
○城戸真司→佐野を旧BOARDのライダーとして招き入れる。
○佐野百合絵→佐野と仲睦まじく話す。
○佐野満→旧BOARDのライダーに参入する。
○鉄機武者 真星勢多→紅零斗丸と話す。
○武者紅零斗丸→真星勢多と話す。
○広瀬栞→橘らと話す。
○烏丸啓→桐生を白井邸に招き入れる。
○白井虎太郎→旧BOARDのバックアップを志願する。
○桐生豪→白井邸を訪問する。

【今回の新規登場】
○広瀬 栞(仮面ライダー剣)
人類基盤史研究所BOARDの元職員で、同じくBOARDの研究員であった広瀬義人の娘。アンデッ
ドサーチャーを駆使してアンデッドの動向を探り、それを剣崎や橘に伝えるのが主な役目であった。多
少気の激しい所があるが姉御肌で、特に剣崎の精神的な支えとなってやる事が多い。趣味はダンベルト
レーニングで、その結果なのか冷蔵庫を指一本で動かせる程の異様な怪力を身に着けている。

○烏丸 啓(仮面ライダー剣)
旧BOARDの所長。現世に解放されたアンデッドを封印すべくライダーシステムの開発に着手してい
たが、BOARD壊滅後は伊坂のマインドコントロールを受けて、レンゲルバックルの製造に協力させ
られていた。精神操作から解放された以降はラウズアブゾーバーなどの強化アイテムを開発し、剣崎や
橘のバックアップに尽力する。

○白井 虎太郎(仮面ライダー剣)
フリーのルポライター。仮面ライダーの都市伝説について調べている内に、アンデッドやBOARDの
存在を突き止める。当初は単に取材の為に剣崎や栞に協力していたが、次第に剣崎の人柄に惹かれ、そ
の活動をサポートするようになっていった。牛乳が好物で、ミルク姫という銘柄を愛飲している。姉の
遥香の所に居候している相川始に対して最初は不信感を持っていたが、やがて天音や遥香を護ろうとす
る始の姿勢を見て彼を受け入れる。

○桐生 豪(仮面ライダー剣)
BOARDの元職員。ギャレンバックルの最初の適合者であったが、実験中の事故によって右腕を失っ
て以来、ギャレンの資格を橘に譲渡し自身は辞職した。しかし、仮面ライダーへの執着心を捨て切れな
い故に本来持っていた正義感を暴走させてしまい、電撃を放つ義手を着けて犯罪者を独自に処刑するよ
うになっていった。またギャレンとして活動していた橘に対しても嫉妬の感情を抱いており、そこに付
け込んだスパイダーUDによってレンゲルバックルの装着者として選ばれた事もある。最終的には橘と
戦って敗れる事で自分のしてきた行為が間違いであったのを悟り、仮面ライダーへの純粋な憧れを取り
戻し息を引き取った。



267 名前:新章/決意の変身:2011/06/11(土) 01:33:52

 橘朔也と桐生豪との間には実に複雑な関係があり、
それはBOARDがライダーシステム第一号として、
ギャレンバックルの開発を進めていた頃にまで遡る。

桐生はこのライダーシステムの最初の適合者に選ばれた人間であったのだが、
その稼働実験の最中に起こった事故によって右腕を失ってしまった為、
適合者としては不安定と見なされ、
ギャレンの資格を彼に次いで高いシステムとの融合値を持っていた後輩の橘に譲渡し、
自身は程なくしてBOARDから去っていった。
その後、二代目ギャレンに指名された橘は安定した適合値をマークし、
ライダーシステム第二号・ブレイドの装着員に選ばれた剣崎と共に解放されたアンデッドの封印に力を注いでいた。

しかし、アンデッドの襲撃によってBOARDが壊滅した事をきっかけに、
橘の運命の歯車もまた狂い始める。
自身の無力さを感じ取った彼の中にはいつしか戦いへの恐怖心が芽生え、
ライダーシステムへの適合率も次第に低下していったのである。

 橘は苦悩した。
どうすればこの負の連鎖から抜け出す事が出来るのか。
肉体的にも精神的にも打ちひしがれていた彼は
愚かにも敵である筈のアンデッド、伊坂の手に落ちていた。
伊坂が持っていた古代植物シュルトケスナー藻の力によって、
一時的に本来の、あるいはそれ以上の能力を得る事が出来たからだ。

 だがしかし、それはまた抜け目ない上級アンデッドの策略でもあった。
そもそも伊坂が橘に求めていた物は、
自身が開発していた新型ライダーシステム・レンゲルバックルの起動に必要なクラブの
カテゴリーA=スパイダーアンデッドを捕獲する為の手駒としての役割なのだ。
橘本人がこの事に気付いたのは、彼を傀儡として操る際の最も大きな障害である深沢小夜子を、
伊坂が殺害した後になってからだった。

 愛した人を喪い伊坂の呪縛から逃れる事に成功した橘であったが、
その為に支払った代償はあまりにも大きい。
戦士としての資格はないと悟った彼は、今度は自らギャレンバックルを放棄したのである。

 そんな中、烏丸は橘にもう一度ライダーとして戦う気概を取り戻させるべく画策しており、
そこで白羽の矢が立ったのがかつてギャレンの装着員として活動していた桐生であったのだ。
だが後輩との再会を遂げた桐生は以前とすっかり変貌していた。
BOARDを辞職した後も仮面ライダーへの執着心を捨てられずにいた彼は、
本来持っていた正義感を歪んだ方向へと暴走させ、
失った右腕の代わりに電撃を放つ機能を搭載した義手を取り付け、
犯罪人を独自に処刑していたのである。

 そのような独善的な行為は到底許されるものではない。
橘は桐生の行いを止めさせようと説得を試みるが、
落ちぶれた自分とは異なり仮面ライダーとして活躍していた橘に嫉妬の感情さえ抱くようになっていた彼は、
かつての後輩の言葉にも一向に耳を貸さなかった。
そればかりか、桐生は睦月からレンゲルのベルトを奪うと、
あろう事か彼自身がレンゲルへと変身してしまった。
恐らく彼の中にあった負の感情が、
睦月に代わる新たな依代としてレンゲルバックルに封じられている
スパイダーアンデッドを惹き付けたのがその要因であろう。

 しかし皮肉な事に、桐生のこうした常軌を逸した行動が、
橘にライダーとしての使命感に再び目覚めさせるという本来の目的を果たす為のきっかけとなっていた。
「桐生の暴走を止めなければならない」、
そうした決意の下で橘はついにギャレンとして再度覚醒を果たし、
レンゲルに変身した桐生との戦いに打ち勝ったのだが、
それが原因で桐生は命に関わる重傷を負わされてしまう。
自分が今までしてきた行為が間違いであったと桐生がようやく理解する事が出来たのは、その時であった。
昔の上司を救えず自責の念に駆られる橘に、
桐生はやっと先輩らしい言葉をかけてやれた。
「もっと馬鹿になれ。真面目過ぎるんだよ、お前は……」と。

それは、生真面目なあまり時に融通の利かない側面を見せる後輩の不器用さをからかうと同時に、
そういった所こそが橘朔也という男の長所でもあるという意味を暗示する台詞であった。

 そしてこの時を以て、二人は和解し以前の関係へと戻ったのである。


橘「桐生さん……、まさかあなたが黄泉還っていたとは……」

 突如目の前に現れた懐かしい顔に、
橘は驚きや喜びの入り混じった何とも複雑な表情を浮かべる。

桐生「あぁ。……どうやら俺は地獄からも見放されたらしい」

 シニカルな笑みを唇の端に浮かべて、桐生が言った。

桐生「しかし橘、その格好はどうしたんだ? 何処かの国の諜報員みたいだな」

橘「これはまぁ……、色々ありましてね……」

 黒のスーツ上下にサングラスをかけた橘の装いを不思議がる桐生を前に、
当の橘はサングラスを外しながら当たり障りのない返事をした。
そもそもこの服装は、
旧BOARDのエージェントとしてライダー同盟を訪問する際に着用していた物なのだが、
ライダー同盟との接触回数が多くなるにつれて、
橘は普段からこの格好で行動するようになっていたのだ。

虎太郎「ねぇ、あの人は……?」

 桐生を自宅の居間まで連れて来たものの彼についての情報をまるで知らない虎太郎は、
傍らに腰かけている栞に小声で問うた。

栞「橘さんより前にギャレンの装着員に選ばれてた人よ」

 ルポライターからの質問に、彼女は簡潔な答えを提示する。

烏丸「彼をここへ呼んだのは私の提案による物だ」

睦月「……さっきの話と関係ある事なんですね?」

烏丸「その通りだ」

 睦月からの問いに、烏丸は静かに頷いた。

烏丸「……単刀直入に言おう。
    彼を……、桐生をブレイドの装着員とする事を提案したいと思っている」

「……っ!?」

桐生「……」

 突然の展開に橘と睦月が度肝を抜かれるなか、
桐生はその顔色を一つも変えずに彼らの反応を眺めていた。

睦月「この人が剣崎さんの代わりを務めると?」

 勢いよくソファから睦月が立ち上がった。
こうした所作からも、彼が烏丸の提案を受け入れていない所が伺える。

橘「……睦月、少し落ち着け」

 橘からのたしなめを受けた睦月はすぐに本来の落ち着きを取り戻したのか、
「すみません……」とだけ言って再び席に着いた。
直後、それまで沈黙を保っていた桐生が口を開く。

桐生「まぁ、お前達の事情も俺は理解しているつもりだ。
    だから無理にライダーシステムを装着しようとは考えていない。
    あくまでお前達二人の判断を仰いでからどうするかを改めて決めるつもりだ」

烏丸「……そこでだ。桐生にブレイドのベルトを使わせて良いのかどうか、
    君達の結論を聞かせてほしい」

 旧BOARDの所長が発したその言葉を最後に、白井邸のリビングにはしばしの静寂が訪れた。
虎太郎も栞も、橘と睦月が如何なる判断を下すのかを固唾を呑んで見守っている。

睦月「……」

 そんな中、睦月が黙って橘の方を見やった。
彼自身は桐生という人間の事をよくは知らないので、
最終的なジャッジを少なくとも睦月よりは桐生の事に詳しい橘に委ねるという意図なのだろう。
睦月の思考を読み取ったのか橘は彼に向かって小さく頷くと、
張り詰めた空気の中で先程机の上に置いたスペードスートのカード三枚を拾い上げ、
桐生の前に差し出した。

橘「……桐生さん、俺はあなたに仮面ライダーとして戦ってほしいと思っています。
  剣崎の代わりとしてじゃなく、俺達の新たな仲間として……」

 それは、桐生が仮面ライダーを志願した理由が本来は、
純粋な正義感に依るものであると知っている橘だからこそ導き得た答えであった。

橘「睦月、それで構わんな?」

睦月「ええ、わかりました」

 睦月が首を縦に振って見せる。
例え桐生がブレイバックルを装着しようとも、
そのベルトの本来の持ち主である剣崎と睦月達の間に結ばれた
絆が途切れる訳でもないと、彼は理解したのだ。

烏丸「……どうやら決まったようだな」

 橘の手から桐生が三枚のカードを受け取るのを見て、
烏丸は懐から仮面ライダーブレイドの
変身用デバイス・ブレイバックルを取り出し、それを桐生に渡した。

睦月「あの……、これからよろしくお願いします」

 バックルを烏丸から預かった桐生の前に、睦月の片手が伸ばされる。

桐生「あぁ、こちらこそな」

 桐生は微かな笑みを浮かべると、ブレイバックルを握っていない方の手で、
レンゲルバックルの適合者に選ばれた若者と握手を交わした。

 仮面ライダーになれなかった男、桐生豪。
彼の新たなる戦いはこの時を以て幕を開けたのである。



268 名前:新章/決意の変身:2011/06/11(土) 01:35:55

○橘朔也→桐生をブレイバックルの装着員として受け入れる。
○桐生豪→ブレイバックルの装着員として橘らに合流。
○白井虎太郎→栞と話す。
○広瀬栞→虎太郎と話す。
○烏丸啓→桐生をブレイバックルの装着員とするよう提言する。
○上城睦月→桐生をブレイバックルの装着員として受け入れる。



269 名前:新章/決意の変身:2011/06/11(土) 01:53:29


 <凱王グループ本社ビル 社長室>


シャチョー「ふん、ふん……。それはほんまやか?」

 堕悪闇軍団との戦いが一段落していても、
大企業のトップに立つ者であるシャチョーに休息の時はない。
彼は今、鉄機武者 真星勢多との電話を通じて戦友紅零斗丸も知る所となった、
大自然の産み出す怪生物・魔化魍や、
それを人知れず退治する音撃戦士=鬼と呼ばれる者達に関する情報を取得している最中であった。

 もっとも魔化魍や鬼の存在自体は、
武者頑駄無であるシャチョーもまた既に知識としてその脳内に蓄えている。
彼を驚かせているのはそういった連中の伝承が、
武者の世界である天宮の属する魍魎界だけでなく、
この天馬の国がある物質界にも伝えられているという事実であった。

真星勢多「こちらの世界には猛士による情報網があるから、俺達の出る幕は殆どないだろう。
     ……だが、万一俺達が魔化魍と遭遇した場合は積極的に浄化作業に協力するよう、
      既に全国の武者には呼びかけている」

 受話器の向こう側にいる真星勢多から聞かされた猛士という単語もまた、
シャチョーは初めて耳にするものであった。
真星勢多の説明によると、
天馬の国=現代日本での鬼はその大半が猛士なる組織に所属しており、
魔化魍の出現を各地に散らばる構成員からもたらされると、
ただちに管轄の鬼がその地へ派遣され魔化魍退治に赴くというシステムが根幹にあるのだという。

シャチョー「そうか……、解かった。
       魔化魍や猛士については、僕ちゃん達の方でも調べておく必要がありそうやね」

真星勢多「フッ……、調べるのは構わんが程々にしておけよ。
      お前は一つの事柄にのめり込むと、周りが見えなくなるという悪癖があるからな」

シャチョー「ハハハ……、分かっとるよ。ほんならな」

 鉄機武者からの忠告を笑って受け流すシャチョーであったが、
実際真星勢多の言う事は概ね正しいものであった。
シャチョーは初めて現代日本に来た際も、
凱王グループを使った金儲けに夢中になり過ぎて本来の目的や武者魂を失いかけていたのだから。

真星勢多「ああ。斗機丸や爆炎の奴にも宜しく伝えておいてくれ」

シャチョー「おう、分かったんや」

 この発言を最後に凱王グループの社長と鉄機武者軍団の斬り込み隊長との通話は切られた。
蛇足ながら真星勢多の台詞に出て来た者達は、
シャチョーと同じく夢者遊撃隊の一員である斗機丸零参(トキマルゼロスリー)と、
鉄機将 飛閃(テッキショウ ヒセン)率いる
武者軍団の砲撃担当・爆炎頑駄無(バクエンガンダム)をそれぞれ指し示している。

 斗機丸、爆炎頑駄無は共に真星勢多と同じく
人の手(勿論天宮に在住している武者頑駄無達の事)によって産み出された
人工生命体・鉄機武者であり、真星勢多にとっては同胞と呼ぶべき者達なのだ。

シャチョー「ふー……」

 真星勢多との会話を終え、シャチョーが深く椅子にもたれながらホッと溜息を漏らしていると、
社長室のドアがノックされる音が聞こえてきた。

ナンシー「シャチョー、よろしいですか」

 声の主は秘書ナンシーであった。
シャチョーが入室を促すと、彼女は数冊の分厚いファイルを抱えた状態で室内へと現れた。

シャチョー「どうかしたんか?」

ナンシー「ええ。カードデッキについて記したこれらの資料ですが、いかがなさいますか?
     不要でしたらこちらで処分しておきますが……」

 そう言って、ナンシーは部屋の中央に設けられた応接用のテーブルに持ち込んできたファイルを置いた。
これらの資料の中にはシャチョー達が神崎士郎の依頼を請けて、
インペラーのデッキを複製した時に利用したカードデッキの解析データが詳細に記録されている。
元々デッキ制作の参考として用いていたのは神崎から渡された一枚のディスクのみであったのだが、
その中に収録されているデータの解析を進めていく内に
いつの間にやら膨大な数の資料が出来上がっていたのだ。

シャチョー「そうやな……。いや、これはまだ残しといてくれるか?
      ちょびっと気にかかる事もあるもんでな……」

ナンシー「……と言いますと?」

 シャチョーの発言に、その端麗な顔に疑問符を浮かべるナンシー。
そんな秘書の態度を見てから、シャチョーはおもむろにこう切り出した。

シャチョー「そもそも、何で神崎士郎は自分でデッキを造れる筈やのに、
       わざわざ僕ちゃんのとこに来てデッキを造れと言うたんか、
       それがずっと引っ掛かっとったんや……」

ナンシー「それは佐野商事と凱王グループとの間に交友関係があったからでは……」

 シャチョー自身も最初はそう考えていた。
だが、神崎から託されたデッキの資料を解読している内に、
彼は全く未知の技術である筈のカードデッキの中に一つだけ
既に知っているテクノロジーが存在している事に気が付いたのである。

シャチョー「あのカードデッキの製造過程で……、どういう訳か錬金術の手法が使われとった」

ナンシー「錬金術ですか……」

 ここでいう錬金術とは、科学がまだ発達していなかった中世ヨーロッパにて盛んに行われた、
卑金属を化学反応によって金に変えようとする秘術の類ではなく、
シャチョー達の属する武者の世界において用いられていた特殊技術を指している。

 天宮における錬金術は主に鉄機武者を産み出す為に使用されており、
真星勢多や夢者遊撃隊の斗機丸らもその力によりこの世に生を受けたのだ。
そんな武者世界のテクノロジーとでも言うべき錬金術の理論が、異世界である筈の現代日本、
しかもカードデッキを製造する為の方法として利用されているのを神崎のデータから知った時は、
さしものシャチョーも驚愕せざるを得なかった。
無論の事、錬金術自体がデッキを組み立てる技法として使われているのではなく、
あくまでもその製法の一部に転用されているというだけの話である。
しかし例えその程度の話であっても、
シャチョーは大いなる謎と疑問を投げ掛けられたような気分を味わわされていた。

 ――神崎士郎は一体どのようにしてこの錬金術の存在を知ったのか、
あるいは既に彼は錬金術と武者の世界の関係にある程度把握しているのではないか、と。
そう考えた時、シャチョーには神崎が自分の元を(それも名指しで)訪れて
インペラーデッキの複製を頼み込んだ本当の理由が、
うっすらと脳裏に浮かび上がり出していた。

シャチョー「……神崎は知っとったんや。カードデッキを造り出すには、
       僕ちゃんらの世界に伝わる錬金術の知識が要求されるっちゅう事をな……」

ナンシー「……それではつまり、佐野社長と我々が知り合いであったのは単なる偶然であり……、
      神崎士郎が凱王グループを訪ねて来たのは偶然ではないと」

 何時にも増して真面目くさった表情へと変わったシャチョーの様子を見て、ナンシーはそう続けた。

 尚、現時点では彼らも知らない情報の中にもう一つ、
カードデッキと錬金術の関連性を示唆する物がある。
神崎が残したデッキについての資料を偶然にも目撃してしまった、
清明院大学教授・香川英行が造り上げた疑似仮面ライダー・オルタナティブがそれだ。

香川は、その眼で一度でも見た出来事ならば決して忘れる事無く脳内に情報を留めておける、
いわゆる求聞持(ぐもんじ)と呼んでも差し支えない特殊能力の持ち主である。
だがその香川をもってしても、カードデッキを完全に複製する事は叶わなかった。
彼は門下生の東條悟が所持していた仮面ライダータイガのデッキを分析し、
そのレプリカも造ったのだが、
それは変身機能もなくミラーワールドを少し覗き見る程度の力しかない不完全な粗悪品であった。

 香川英行が完全なカードデッキの複製に着手出来なかった理由は、たった一つ。
彼はデッキの技術の根底に存在する、錬金術の素養を持たなかったのだ。

シャチョー「そうや……」

 そう言った後、彼は僅かに身震いした。

シャチョー「神崎士郎……、実に恐ろしい男やな……。
       ひょっとしたら、これまで僕ちゃんや満っちゃん達がやってきた事も、
       全て彼奴の想定しとったシナリオ通りの展開やったんかも知れん……」

ナンシー「ですが、シャチョー」

 小難しい表情のまま思索に耽るシャチョーに対して、
まるで「そんな哲学者のような振る舞いは似合わない」とでも言いたげに、ナンシーが口を挟む。

ナンシー「神崎士郎の考えがどうであれ、
      佐野社長が仮面ライダーとして戦う事を選んだのは
      ご自身の意志によるものだったのではないでしょうか」

シャチョー「!?」

 秘書の発言に、この小さな武者は目から鱗が落ちる思いを経験した。

シャチョー「……ニャハハハ、確かにその通りや!
       満っちゃんにしろこの僕ちゃんにしろ、
       戦士としての道を選んだんは他でもない本人の意志に依るもんなんだがや」

 ようやく普段の調子を取り戻したシャチョーを見て、
ブロンドの美人秘書は唇の端に笑みを浮かべていた。

ナンシー「では、私はこれで」

 一礼して社長室を出ようとするナンシーを、シャチョーが慌てて呼び留める。

シャチョー「一つ、仕事を頼まれてくれんか?
       猛士という組織について調べて貰いたいんや」

 猛士なる単語は勿論ナンシーにとって初めて耳にするものであったが、
それがシャチョーの好奇心と探求心を満たす新たなファクターであるという事を、
彼女は長年の付き合いからすぐに理解していた。

ナンシー「分かりました。直ちに調査を始めます」

 それだけ言うと彼女は退室し、ヒールの足音を廊下に響かせつつ去っていった。

シャチョー「……」

 再び一人きりとなったシャチョーは部屋の窓辺に歩み寄ると、
夜空に浮かぶ月を眺めた。天宮のそれとは違う、物質界の月を。

シャチョー「(満っちゃんが戦士としての使命に目覚めた今、僕ちゃんにしてやれる事は何もない……。
      出来るんは、隣に立って同じ道を歩いていく事ぐれぇやな……)」



270 名前:新章/決意の変身:2011/06/11(土) 01:55:50

○シャチョー→真星勢多と電話する。ナンシーと話す。
○鉄機武者 真星勢多→シャチョーと電話する。
○ナンシー阿久津→シャチョーと話す。



271 名前:新章/決意の変身:2011/06/11(土) 02:19:14


 <佐野商事 社長室>


佐野「ふぁっ……、はぶしょっ!」

 シャチョーやナンシーに噂をされていたからなのか、
自社の社長室の中でその主は盛大なくしゃみを放った。

百合絵「あらあら、風邪ですか?」

 夫のそんな様子を見て、妻の百合絵は心配そうに彼の方を振り返る。

佐野「いえ、大丈夫っすよ、お構いなく……」

百合絵「駄目ですよ。これからは社長の仕事だけじゃなくて
     旧BOARDとしての活動もあるんですから、体調管理はきっちりしておかないと」

 たかだかくしゃみ一発程度気にする程の物でもないと主張する佐野であったが、
対する百合絵の方は本気で心配しているらしく夫の傍まで歩み寄ると、
彼の額に自分のおでこを突き合わせる。

百合絵「……熱はないみたいですね」

佐野「……!?」

 佐野が体調を崩していない事が判り百合絵はほっとした表情を浮かべているが、
対する佐野の方はたまったものではない。
元々は貧乏なフリーターとして生活を営んでいたこの男だ。
いずれ大金持ちになった暁には美しい女性を妻に迎えたい、
といったような野望は漠然と抱えていたものの、
当時は女性と付き合う余裕など時間的にも金銭的にも到底あり得なかった。

 結果として、彼は女性に対しての免疫をほとんど持っていないのである。
そんな男が好きな女性からこれ以上ない程の至近距離でまじまじと見つめられれば、
照れ臭さのあまり思わず赤面してしまうのは至極もっともな反応だと言えよう。

佐野「(……やっぱ、俺みたいな男には百合絵さんはレベルが高過ぎるのか……)」

百合絵「……満さん、顔が赤いです」

 佐野が気を取り直そうとしている矢先、
百合絵は再び彼の顔をじっと見つめていた。
ただ、その原因となっているのが他ならぬ自分自身だとは解かっていない辺りは、
百合絵もまた男性と付き合った経験に乏しい事を明らかにしている。

百合絵「やっぱり何処か具合が悪いんじゃ……」

佐野「い、いえ……。ホントに何ともないっすから……」

 何故かやたらと夫の体調を気遣い出来るだけ近くにいようとする百合絵の態度に、
若干の不可解さを感じていた佐野は、じきに彼女の行動に隠された真意を予測し始めていた。

佐野「……百合絵さん、もしかしてさっきの戦いで俺に助けられた
    借りを返したいと思ってる……、とか?」

百合絵「……っ!」

 夫の発言が余程核心を衝いていたのか、
百合絵は突然歩行のバランスを崩し佐野が腰かけているソファの方向へ頭から突っ込んでいった。

百合絵「きゃっ」

佐野「おっと」

 自分の方に転倒してくる百合絵を抱きかかえるようにして受け止める佐野。

佐野「……図星ですか?」

 彼はその体勢を維持したまま百合絵に話しかけていた。
妻から返ってきた答えは沈黙であったが、
彼女が佐野から離れようとせずに俯き頬をわずかに紅潮させている所から、
何を思っているかは大方の予測を立てる事が可能である。

百合絵「借りを返すだなんて……。
     私はただ助けていただいたお礼がしたかっただけで……」

 そこまで言った後、百合絵は急に話すのを止めて佐野の胸板に顔を埋めた。
現在社長室には二人しかいない為、
例え普通に話しても第三者に聞かれる事はなかったのだが、
こうして夫にしか彼女の言葉を拾えなくした上で百合絵は佐野に向けて囁きかける。

百合絵「……もうあの時みたいな悲しい思いは、したくありませんから……」

佐野「……」

 そんな事を呟く百合絵の顔を直接見た訳ではなかったが、
その時確かに彼女が泣いていたのを佐野は己の心臓で以て感じ取っていた。

 かつて繰り広げられたライダーの戦いで
佐野が最後にインペラーに変身した際の出来事を、百合絵はよく覚えているのだという。
そしてそれは、当時戦いの果てに望んでいた願いが思わぬ形で成就してしまったものの、
一度加わってしまったライダーの戦いから降りる事は叶わず、
渋々デッキを所持し続けていた佐野がモンスターに狙われていた百合絵を護るべく、
初めて自らの意志で変身した瞬間でもあった。
そんな光景を偶然にも目撃してしまった百合絵であったが、
彼女はモンスターを追ってミラーワールドに突入した
将来の伴侶が帰ってくるのをずっと待っていたのである。
既に佐野がカードデッキを破壊されて鏡像世界から出る事もなく、
絶望と後悔に呑み込まれながら一人静かにこの世から消え去った事も知らずに。
程なくして、百合絵の前に現れた神崎士郎から佐野の死が告げられていたのだが、
死んだ当人がその事を知ったのは修正された世界にて、
妻となった百合絵の待つこの佐野商事の社長室に戻ってきた時だった。

ばつの悪そうな表情を浮かべ帰還した佐野の姿を目にして、
何も言わずに瞳を涙で濡らしつつ彼を強く抱きしめていた百合絵の悲しげな様子を見た佐野は、
「もう二度と彼女を悲しませまい」と心に誓い、
のちに何者かによって送り付けられてきた仮面ライダーインペラーの
カードデッキも神崎に返却し戦いの場から遠ざかろうとした。

 だがしかし、その選択は結果的に間違いであった。
彼の為すべき事は忌まわしき記憶を封じ込んで目を逸らす事ではなく、
その記憶と向かい合い乗り越える事だったのだ。

佐野「百合絵さん……、恩返しをするのはむしろ俺の方っすよ」

百合絵「……?」

 佐野の発言に思わず顔を上げ、上目遣いに彼を見つめる百合絵。

佐野「俺が今こうしていられるのも、
    百合絵さんが俺の為に色々と頑張ってくれたからじゃないですか。
    こっちはまだその恩を一つも返せていないのにこれ以上気を遣ってもらってたら、
    俺の立つ瀬がなくなっちまいますよ」

百合絵「は、はぁ……」

 佐野が一体何を主張しようとしているのかがいまいち理解出来ず、
百合絵はきょとんした表情に変わっていた。
一方で佐野もまた自身が言っている事の支離滅裂さに気付いたのか、慌てて補足を入れる。

佐野「えぇ、その、つまりですね……。何が言いたいのかっつーと……、兎に角!
   百合絵さんは無理して俺に気ぃ遣ってくれる必要なんてないんですよ。
   素のままのあなたでいてくれる事が、俺にとっちゃ一番嬉しい事なんです」

百合絵「……はい」

 その言葉を聞いて百合絵は、ふっと穏やかな微笑を漏らした。
緊張から解き放たれた為か、佐野の目には彼女の笑顔がやけに美しく映し出されていた。

佐野「百合絵さん……」

 そんな彼女の華奢な身体を佐野はより一層強い力で抱き寄せ、
熱のこもった視線を注ぎ出す。
一連の動作から夫が何を望んでいるのかを咄嗟に感じ取った百合絵は、
少し困ったような顔をしながらも、体の力を抜いて瞼を閉じた。

百合絵「……」

 二人の唇がいよいよ重ね合わされようとする時に彼女が無意識に目を開けた、次の瞬間。

百合絵「ぎ……、ぎやぁぁぁっ!」

佐野「(ええ―――っ!?)」

 突如として悲鳴を上げた百合絵から勢いよく突き飛ばされ、
佐野は思わず脳内でツッコミを入れていた。

佐野「すっ、すみません! 流石に突然過ぎたっすか……?」

百合絵「ああっ、違うんです! そ、その……、満さんの……、後ろに……」

佐野「?」

 何故か奥歯に物の挟まったような返答をする百合絵を見て、
佐野は彼女に指摘されるがまま背後をふと振り返る。
するとそこには、本来なら佐野夫妻以外立ち入っていない
社長室には存在し得ない筈の、第三者の姿があった。

佐野「うわぁっ! お、脅かさないで下さいよ、神崎さん……」

神崎「……」

 恐らく、というより確実にミラーワールドを通じてここまでやって来たのであろうこの男、
神崎士郎を目にした佐野もまた、驚愕の叫びを上げつつ仰け反ってしまうのだった。



272 名前:新章/決意の変身:2011/06/11(土) 02:21:06

○佐野満→百合絵と話した後、神崎の存在に気付く。
○佐野百合絵→佐野と話した後、神崎の存在に気付く。
△神崎士郎→佐野夫妻の前に現れる。



273 名前:新章/決意の変身:2011/06/11(土) 02:40:56

佐野「ったく……。神崎さんもいるんでしたらそう言って下さいよ」

 もし妻の百合絵が気付いていなければ、
神崎は彼らのキスシーンの一部始終をずっと見物しているつもりだったのだろうかと邪推しつつ、
佐野は神崎が久方振りに顔を見せた要件を伺う事に落ち着いていた。
もっとも、神崎がわざわざ佐野に会いに来た理由ならば選択肢はそう多くはないので、
おおよその見当は着けられるのだが。

神崎「……凱王グループの鎧丸からインペラーのデッキを受け取ったようだな」

 佐野商事を訪れた神崎の放った第一声はそれであった。
どうやら彼は既に事情を知っているらしい。

佐野「そんな事を聞くって事は、俺が本当にライダーとして戦う覚悟があるかを確かめに来たとか?」

神崎「今更お前の決意などに興味はない」

 にべもない反応を返す神崎であったが、
これは発言内容そのままを意味しているのではない。

元々佐野には戦おうとする意志自体はあったのだ。
以前の戦いで経験したトラウマや大会社の社長という社会的地位、
更には恋人の百合絵などの存在ができ、
かつてとはまるで異なる生活環境の中に置かれている内に、
彼はそうした戦士としての志を自ら閉ざしてしまっていたが、
常に心の奥底には戦士たらんとする決意の炎が灯り続けていたのだ。

佐野が再びライダーに変身するきっかけの一つとなった武者頑駄無=シャチョーならば、
彼のそうした想いの力をさしずめ武者魂と表現したに違いない。
そして佐野満をインペラーデッキの所持者として選んだ神崎は、
彼が持っているその想いの強さを知っていたのである。

百合絵「では、どういったご用件で……」

神崎「お前達に渡しておくべき物がある」

 そう言うと、神崎はトレンチコートの懐に手を入れて何かを取り出し、
それを佐野に向け放り投げてみせた。

佐野「これは……」

 その物体を体に当たる寸での所でキャッチした佐野は大いに驚かされた。
彼の手に握られているのは、かつてのライダーの戦いにおいてごく一部のライダーしか
持つ事の許されなかった、サバイブのカードであったからだ。
このカードは、使用したライダー及び契約モンスターの力を一時的にであるが大幅に強化せしめるという、
アドベントカードの中でも一際変わった性能を秘めている故に、
ライダー同士の戦いにおいてはまさに最後の切り札として扱われていた物でもある。

元々この世界に存在していたのは<烈火>、<疾風>、<無限>の三枚のみだったのだが、
戦いの『リセット』によってライダー同士が争う必要もなくなった現在においては、
神崎の手によって幾つか新たなカードも造り出されていた。
例えば、霧島美穂が持つ<光輝>、手塚海之が持つ<紫電>、
北岡秀一が持つ<覇射>、そして東條悟が持つ<大地>などがそれだ。
これらはDショッカーを始めとして様々な闇の勢力に対抗しているライダー同盟の関係者に対して、
優先的に支給されているのだが、旧BOARDに所属しライダー同盟にも
資金提供という形で協力している佐野も決して例外ではない。

佐野「いいんですか? 俺なんかがこんな大層なカードを貰っちゃって……」

 手にしたカード、荒野を颯爽と駆ける半人半馬(ケンタウロス)の意匠が入った、
<地殻>のサバイブをしげしげと眺めつつ多少浮かれた調子で佐野は神崎に問うた。

神崎「お前達が戦うべき相手はDショッカーだけではない。
    今回出現した堕悪闇軍団を始め、幾つもの小規模勢力もその中に含まれている。
    お前がそうした連中に見す見す殺されデッキの情報を奪われでもしたら、こちらが困るのでな」

佐野「うっ……」

 神崎から投げ掛けられた言葉に思わず絶句する佐野。
確かに、武者の世界からやって来た堕悪闇軍団などは
既にミラーワールドのモンスターをその支配下に置いていると、
彼はシャチョーや真司の証言から認知している。
そんな連中にカードデッキの技術が渡ってしまえば、
どんな風に悪用されてしまうか解かったものではない。

佐野「……でも今日実際に戦って、その事は身に染みて解かりました。
   だから俺も、今度は浮ついた気持ちじゃなく旧BOARDのライダーの一人として、戦っていくつもりです」

 佐野は、いつになく真剣な眼差しで神崎を見つめていた。
立場こそ違えど彼の妻たる百合絵もまた、内に秘めた想いは同じである。

百合絵「私も……、満さんの力になれるならどんな事だっていたしますわ」

神崎「……そうか。ならば、もうお前達に告げる事は何もない」

 それだけいうと、神崎は踵を返してミラーワールドへ戻ろうとするが、
その直前に一度だけ佐野夫妻の方を振り返った。

神崎「……一つだけ忠告しておいてやる。
    あの高見沢グループの総帥……、高見沢逸郎の動向にだけは細心の注意を払っておけ」

佐野「……?」

 何故このタイミングで高見沢の名前を出すのかと佐野から質問される前に、神崎はその理由をごく簡潔に述べていた。

神崎「あの男は仮面ライダー……、ベルデだ」

佐野「なっ……!?」


 <高見沢グループ本社 社長室>


高見沢「……」

 そして当の高見沢逸郎は自身が所有する高見沢グループの本社ビルにて、
彼の協力者から今回起こった旧BOARDと堕悪闇軍団、
Dショッカーによる戦闘行為の顛末に関しての報告を受けている最中であった。

高見沢「クク、そうか……。モンスター共を引き連れた堕悪闇軍団と、
     アンデッドを複製したDショッカー……、奴らが本格的に動き出したという訳だな?」

 社長室のデスクでこれらの事情を聞かされた高見沢は瞬時に状況を把握し、
見る者全てを凍り付かせるような冷たい笑みを漏らす。

芝浦「そう言う事になるね。でもどうすんの、高見沢さん?
    あんた確か、佐野商事のボンボンを金で釣ってこっちへ引き込むとか言ってなかったっけ」

 今時の若者らしい軽薄な口調で、
年上の高見沢にも敬意などを一切払う素振りを見せないこの男は芝浦淳といって、
彼もまた高見沢と同じくライダーのデッキの持ち主である。
戦いの『リセット』によって復活した芝浦は、
その後の修正世界で出会った高見沢が持つ独特のカリスマ性に惹かれ、
以後は彼の腰巾着的な間柄として行動を共にするようになっていた。

芝浦「あの分じゃあいつ、旧BOARDとかいう組織の一員になるみたいだけど」

 仮面ライダーガイのデッキを持つ芝浦は、
ミラーワールドを利用して密かに百合絵が真星勢多に助けられた場所に現れ、
他のライダーや武者頑駄無に気取られぬよう気を払いつつ、戦いの様子を眺めていたのだ。
当然、真星勢多が殲滅したモンスター群の核は、彼の契約モンスターの餌となっている。

高見沢「フン……。今更佐野の小僧を引き入れた所で俺達には何の利益にもならん。
    奴ごときが一人戦線に加わろうが、状況は大して変わらんのだからな……」

芝浦「まあ、高見沢さんならそう言うだろうと思ってたけどね」

 今や佐野に対しては一欠片の興味も抱いていないと言ってのける高見沢に、芝浦は同調してみせる。

芝浦「……それはそうとさ」

 おもむろに彼はポケットの中からガイのカードデッキを取り出し、
それを何度も宙に放り投げて弄びつつ高見沢に不敵な表情を向けた。
芝浦「いつまでこんなつまらない様子見を続けるつもりだよ?
   ゲームってのは、ただ見てるだけじゃなくて実際に参加しないとその面白さを感じ取れないんだよねぇ……」

 かつてのライダーの戦いに参加していた芝浦淳であったが、
彼がそうした動機は他のライダーが持っていたような明確な目的の為ではなく、
単純に自分の力がどれだけライダーの戦いに通用するかを試したいという、
いわばゲームと同じような理由の為であった。
コンピュータやゲームのプログラミングのマニアである芝浦は、
現実世界で培った知略と技術をミラーワールドの中にも持ち込み、
一歩間違えれば己の命を失いかねないスリルを感じると同時に敵対するライダー達を手駒として自在に操り、
シミュレートした通りの戦いを演出する事への快感に酔い痴れていたのである。

だが、芝浦は一つ大きな誤算を犯していた。
そもそも自らの願望を成就させる為に他者を犠牲にするという道を選び取った仮面ライダーという人種には、
彼が予測した通りに動いてくれるような者は誰一人存在しなかったのだ。
その結果として訪れたのが、仮面ライダー王蛇に変身した
浅倉威の攻撃を受けて迎えた呆気ない最期なのである。

一方、そんな芝浦と非常に近しい思想の持ち主でありながら、
彼以上に狡猾な頭脳をも兼ね備えていたのがベルデのデッキの所有者・高見沢逸郎だった。
芝浦のライダーとしての振る舞い方を知った高見沢は早速彼に協力体制を取るように提案を持ちかけたのだが、
その際には芝浦の能力だけを効率よく利用するべく、
あらかじめ目立つ行動は控えておくことを義務付けておいたのだ。
しかし、多くの仮面ライダーが新たな戦いへと進出していくのを目の当たりにした芝浦は、
徐々に痺れを切らし始めていた。

高見沢「……言った筈だぞ。本当にゲームを楽しむ気があるならこの俺の命令に従え、とな」

 高見沢は鋭い眼光で芝浦に向けて凄みを効かせていた。
表向きは申し分のない紳士として名の通っているこの男の、真の姿である。

高見沢「だが喜べ、じきにこちらの手筈も調う。
    これまで影に身を潜めていた連中が一斉に動きを見せ出した……。
     今の時世こそ俺達が表舞台に返り咲くのに相応しい状況だ」

芝浦「そうか……、じゃあいよいよ始まるって訳だな……。
    この腐敗と混沌の世界を舞台にした、究極のサバイバルゲームが……」

 生き残りをかけた新しいゲームの開始に期待で胸を膨らませて
破顔する芝浦と、無言で薄ら笑いを浮かべる高見沢。
野望の種は、魔天楼の中に密やかに、
しかしながら確実にその芽吹きの刻を迎えつつあった。


 <佐野商事 社長室>


百合絵「高見沢逸郎……。あの人がまさか仮面ライダーだったなんて……」

 既に社長室から姿を消した神崎の口から語られた事実に、
百合絵は当の本人が去っていった後も戦慄にその細い体を震わせていた。

佐野「高見沢社長か……。確かあの人の会社って例の、
   『FREEDOM』の資金源の一つじゃないかって言われてましたよね?」

百合絵「はい……、当時は警察の捜査も行われたそうですが、
     結局証拠になる物は見付けられなかったそうです」

 FREEDOMというのは、表向きには慈善事業団体の体裁を取りながら
裏では兵器や情報の裏取引、政治家の買収などを斡旋していた国際犯罪組織である。
日本においても八角銀行を拠点に暗躍していたという事実が
つい最近になって政府の特務機関V.S.によって明らかにされ、
当時の頭取であった原田興太郎を始めとするトップが次々と逮捕されるという事態が起こる事で、
これまで一般にはほとんど知られていなかったFREEDOMの名は市井にも浸透するようになったのである。
もっとも、FREEDOMという組織は世界のあちこちにこうした活動拠点を設けているので、
時間が経てばまた何らかの手段を講じて活動を再開するのではないかとも危惧されてきた。
そしてその際にFREEDOMの新たな拠点となる可能性が最も高いと噂されているのが、
他でもない高見沢グループなのだ。

佐野「うーん……、場合によっちゃ俺達は相当ヤバい連中を敵に回す事もあり得るって訳ですね……」

百合絵「……可能性としては十分に考えられますね。
     満さん、この事は旧BOARDの方達に伝えておいた方が……」

佐野「いえ、それは出来ません」

 百合絵からの提案を佐野がここまで強硬に突っ撥ねたのは珍しい事であった。
佐野の話によれば、真司達旧BOARDのライダーは既に幾つもの
敵対勢力との抗争を繰り広げているのだから、
ここで不用意にFREEDOMの名前を出して余計な気苦労をかけさせるのは良しとしないのだという。

百合絵「しかしそれでは満さんだけに負担が……」

佐野「……その覚悟は出来てます。このデッキを受け取る事を決めた時からね」

百合絵「……」

 この時改めて彼女は夫が胸中に秘めた決意の強さを知った。
必要があれば佐野は例え一人でも高見沢を相手に戦うつもりなのは予想が付くが、
もし本当にそのような事態が起こった時、はたして百合絵には何が出来るのか。

百合絵「……わかりました。でしたら、私も一緒に戦わせてください……!」

佐野「……?」

 佐野の手を取りつつ、何かを思い立ったような視線で彼を見つめる百合絵を前に、
当人は状況をすぐに飲み込めず何とも微妙な表情で反応するのであった。


真司「あ〜ぁ。結局昨日は何の取材も出来ずに編集長に怒られちまったよ……」

 明くる日の朝、城戸真司は旧BOARDの橘や睦月と初めて遭遇した
公園のベンチに、気の抜けた様子で腰かけていた。
この日もOREジャーナルの編集長・大久保から取材に行くように命じられ、
朝早くからネタを探している所なのだが、
記事を書くのに使えそうなトピックに辿り着く事が出来ずにこうして暇を持て余しているのである。

真司「ん……」

 半刻ほどそうしていると、
視界の向こうから彼のいる方角へ向かって近付いてくる影が現われた。
自分の他にもこんな時間から外出している人がいるのかと思って、
真司がその正体を見定めようとすると意外な事に彼と面識のある人物、
佐野満であるのが判った。

真司「(あいつ……、こんな朝っぱらから何やってんだ?)」

 真司が目を凝らして見ると、
佐野はジャージの上下を着て公園内をジョギングしているところらしく、
少し先の方では同じくジャージ姿の百合絵が自転車を漕ぎつつ彼を先導していた。


百合絵「満さん、ファイトですよー」

佐野「ゆ、百合絵さん……。ちょい休憩入れませんか? もう限界っすよ…」

 自転車に乗った百合絵の後に続く佐野は既にかなり息が上がっており、
しきりにそんな事を言っている。

百合絵「もぅ、休憩なら十分前にも入れたじゃないですか……。
    それにあと三十分で会社に戻らないと、朝一の会議に間に合いませんよ」

佐野「っつーか…、こんな体鍛えるのが俺達の戦いと何か関係あるんすか……」

百合絵「大有りですよぉ! これからは会社の社長と旧BOARDメンバーの
     仕事を両立していかなきゃならないんですから……。
     基礎体力はしっかりつけておかないと」

 そう言うと、百合絵は鼻歌などを歌いながら自転車を漕ぐ速度を上げたので、
佐野はへばる肉体に鞭打って何とか彼女の後に追従し、
息も絶え絶えに公園の中を走り抜けていった。


真司「そうか、佐野の奴も色々頑張ってんだな……。俺ももっと気合い入れていかないとな」

 後輩があのような形で努力しているのを目の当たりにしたならば、
やはり彼の先輩としては不甲斐ない姿を晒す訳にはいかない。
かような事を考えつつ真司もまた、記事のネタを探しに街中へと繰り出すのであった。



274 名前:新章/決意の変身:2011/06/11(土) 02:44:05

○佐野満→神崎と話す。翌朝、百合絵と共にジョギングを始める。
△神崎士郎→佐野夫妻と話した後、佐野にサバイブカードを授ける。
○佐野百合絵→神崎と話す。翌朝、佐野と共にジョギングを始める。
●高見沢逸郎→芝浦と話す。
●芝浦淳→高見沢と話す。
○城戸真司→佐野夫妻のやり取りを目撃した後、取材に赴く。

【今回の新規登場】
●高見沢 逸郎=仮面ライダーベルデ(仮面ライダー龍騎 TVスペシャル 13RIDERS)
総合企業体高見沢グループの総帥。超人的な力を得るという目的の下、仮面ライダーの戦いに参加して
いた。自身にとって利用価値がないと判断した人間は徹底的に見下し、邪魔者はあらゆる手段を以てし
て排除しようとする狡猾にして慎重な性格の持ち主。コアミラーを破壊してミラーワールドを封印しよ
うとした城戸真司と秋山蓮を危険分子と見なし、他のライダーを引き連れて彼らの抹殺を試みるが、最
終的には蓮の返り討ちに遭って死亡した。

●芝浦 淳=仮面ライダーガイ(仮面ライダー龍騎)
明林大学の学生で、コンピュータクラブ「マトリックス」に所属している。コンピュータ・ゲームのマ
ニアであり、ライダーの戦いすらもゲームの延長として捉えている節がある。ライダーの戦いでも自身
が戦うのではなく敵対するライダー同士を戦わせ、潰し合わせようとしていた。しかし、ライダーに変
身する人間のほとんどは彼の予測範囲を超えた行動ばかりを起こし、手駒として扱う筈のライダー達に
よって止めをさされた。(執筆者注:『リセット』後の修正世界で高見沢と出会って以降、彼と行動を
共にしている。)




275 名前:新章/少年たちの誓い 少女たちの願い:2012/05/31(木) 09:07:01

執事、それは主を守護する者。
聖闘士、それは女神(アテナ)を守護する者。
この物語は主を守るべく闘う二人の少年と、彼らの主である二人の少女の物語である!


***長野県 軽井沢 城戸家の別荘***


 田舎の学校ほどの大きさを誇る瀟洒な洋館に、美しい花々が咲く乱れる花園のある広い庭。
 様々な建築様式の別荘が立ち並ぶここ、軽井沢のなかで敷地の広さと建物の美しさ
 において、城戸家の別荘はトップクラスに入るだろう。
 そして、その別荘の門の前に、一組の少年少女がいた。

???「ここが、ナギお嬢様のお友達の…」

??「うむ。 城戸 沙織の別荘だ」

 洋館を見上げる己の執事である綾崎ハヤテの言葉に、三千院ナギは頷く。

 彼女がこの別荘に最後に来たのは故城戸 光政翁―――沙織の祖父が
 亡くなる少し前だから、実に5年ぶりの来訪となる。
 祖父たちに交流があったため、幼い頃は遊ぶことも多かった沙織と
 ナギだが、光政が亡くなって沙織がグラード財閥を継いでからは
 会うことは無くなっていた。

ナギ「(沙織……なぜ今になってわたしに会いたいなんて……)」

 服のポケットにしまってある沙織からの手紙に触れながら、
 ナギは彼女のことを思った。

ハヤテ「…様、ナギお嬢様」

ナギ「! な、なんだ、ハヤテ!?」

 めずらしく(というのもどうかと思うが)真剣に考えこんでいたナギは、
 ハヤテの言葉に現実に引き戻される。

ハヤテ「あ、ぼくたちが来たことをあちらの方々に教えたほうがいいかな〜と思いまして」
    
ナギ「そ、そうだな。 頼む」

ハヤテ「(やっぱりお嬢様、 あの手紙を読んでから様子がおかしいな……。
    ぼくがなんとか出来ることなら、力になってさしあげたい)」

 主を心配しつつ、門に設置されたインターホンを、ハヤテは押した。


 ピンポーン♪


 ???『はい、どなたですか?』

 軽やかな音が鳴った後インターホンから女性の声が聞こえた。

ハヤテ「すみません。 今日、お約束した三千院の者ですが」

???『あっ、三千院家の方ですね。 少々お待ち下さい』

 女性が応えた後、門がゆっくりと開き始めた……。

  

◇    ◇    ◇    ◇



沙織「ふぅ……」

美しい紅薔薇が咲き乱れる薔薇園の中に建てられた東屋。
東屋の中にある椅子に座るこの屋敷の主―城戸沙織は、
本日何度目か判らないため息をついていた。

沙織「こんなに緊張するのは、おじい様に叱られた時以来かも知れませんね」

聖域・海底神殿・冥界といった様々な場所において、命を危険にさらしながら、
戦いの場へ赴いていた戦女神(アテナ)の化身とは思えぬ言葉である。

だが、それも仕方が無いのかもしれない。
今までの戦いは女神として臨んできたものであり、今日の沙織は、
グラード財団総帥でも、女神アテナでもない、ただの13歳の少女なのだから。

沙織「(ナギ……。あなたは怒っているでしょうね) 」

三千院ナギ。
沙織が、まだ自分の運命を知らなかった頃の友達。
気が強かったけれど引きこもりがちだった彼女と、
やはり気が強かったがおてんばだった沙織は、
祖父たちが友人だったためよく遊んだものだった。
ナギを通じて愛沢咲夜、鷺ノ宮伊澄、橘ワタルといった彼女の幼馴染たちとも仲良くなり、
自分と同世代で同等の立場の人間と遊ぶことを、彼女らは沙織に教えてくれた。
大きくなっても、彼女たちとはずっと友達だと、当時の彼女はそう信じていた。


―――祖父が自分に真実を伝えた、あの日までは。


沙織「(あの日から、私は子供であることを止めた。
    女神であることが、私の運命だと知ってしまったから。
    けれど、今は……)」

そうやって沙織が、自分の気持ちを確かめていたその時だった。
懐かしい、彼女の声が聞こえたのは。

??「沙織!」

沙織「(この声は……まさか)」

声の聞こえた方向に沙織が目を向けると、そこには―――。

沙織「ナギ……」

息を切らせながら、自分を見る幼馴染の少女がいた。


276 名前:新章/少年たちの誓い 少女たちの願い:2012/05/31(木) 09:08:51
○三千院ナギ→沙織のことが気になって、心ここにあらず
なぜか息を切らせながら、沙織と再会
○綾崎ハヤテ→ナギのことを心配し、力になれたらと思う。
○城戸沙織→緊張しながら、ナギのことを思い返していたところ、5年ぶりに再会

【今回の新規登場】
○三千院ナギ(ハヤテのごとく!)
生年月日12月3日。  血液型AB型。  年齢13歳。  身長138cm。  体重29kg。
三千院財閥の令嬢。公園でハヤテに誘拐されかけた際の言葉を愛の告白だと思い込んで一目惚れし、
その後ハヤテを執事として雇う。白皇学院高等部一年生(飛び級制度によるもの)。幼いころから、
英才教育を受けているため、8ヶ国語を話すことが出来たり、カラオケで100点をとるほどの歌唱力
を持っている。経済学にも精通しており、三千院家の固定資産税を株式トレードで捻出したこともある。
性格は、強気で負けず嫌いで意地っ張り(天邪鬼などいわれることも)。思いつきで行動して、
周囲に被害をおよぼしたり(被害者は大抵ハヤテ)することもあるが、ハヤテの借金を肩代わりして執事として雇ったり、
学校を退学させられていたハヤテを白皇学院に編入させ、学費を払うなど優しい所もある。引きこもり傾向が強く(自称インドア派)、
学校も不登校気味。趣味は漫画・アニメ・ゲーム。また、『世紀末伝説 マジカル☆デストロイ』という漫画を描いているが、
今のところ、友人の鷺ノ宮伊澄しかこの漫画を理解する者がいない。人見知りの傾向があり、友人は少ない。
家族構成は、祖父のみ(両親は死去)。
PUメンバー。

○綾崎ハヤテ(ハヤテのごとく!)
生年月日11月11日。 血液型A型 。 年齢16歳。 身長168cm。 体重57kg。
両親の借金(1億5680万4000円)の支払いに困り、公園でナギを誘拐しようとするが、そのときの言葉を
愛の告白と勘違いしたナギによって、三千院家の住み込み執事となる。都立潮見高校一年生→白皇学院高等部一年生。
ギャンブル好きの両親が、生活費を家にいれなかったため、幼いころから年齢を誤魔化して様々なアルバイトをしていた。
そのため、多彩な技術と超人的な身体能力を持っている(ナギやマリアから「パーフェクト超人」といわれることも)。
性格は、温厚でナイーヴな常識人。ネガティヴに物事を考える傾向に有る。普段は誰にでも敬語だが、本気で怒ると使わなく
なる。かなりの気配り上手だが、女心に鈍くナギを始めとする数人の女性たちから、好意を寄せられていることに気づいていない。
また、極度の不幸体質。華奢で女顔のため、女装するとほとんどの人から女性と間違われる。
女装時の名前は「綾崎 ハーマイオニー」。「三千院家の遺産が欲しかったら、まず自分を倒せ」と宣言したため、
三千院家の遺産を狙うものたちから狙われている。家族構成は父、母、兄。


277 名前:新章/少年たちの誓い 少女たちの願い:2012/05/31(木) 09:10:21
―――逃げたい。

綾崎ハヤテ、十六歳。
生活力皆無な両親の元に生を受けたがゆえに、危険なアルバイトを幾度も経験し、
身の危険にさらされることが多かった彼にとって、
 現状からの逃避願望というのは馴染み深いものではあったが。

ハヤテ「(ああ、でも今日ほどそう思ったことはないかもしれない……)」

が、その選択を選ぶことは不可能だった。
なぜなら彼がそう思う原因を作っているのは、ほかならぬハヤテの主なのだから。

ナギ「………」
沙織「………」

互いを見たまま、ナギと沙織は沈黙を続けていた。

屋敷のメイドから沙織の場所を聞くなり駆け出したナギを追って、ハヤテが東屋に着いた
ときには、既にこの状態になっていたから30分以上はたっているだろうか。
二人は未だに会話らしい会話をしていなかった。

美少女が二人並んでいる光景というのは、通常であればそれを目撃した人々に癒しを与えるはずなのだが、
東屋の雰囲気は癒しとはかけ離れた重苦しいものになっている。

ハヤテ 「(だ、だめだ。お二人に任せていたら今の状態が
    続くだけ……!ここは僕がなんとかするしかない!)」
    
今のままではこの空気を変わることはないと判断した若き執事は、行動に出た。

綾崎ハヤテの何百あるか判らない特技の1つ、アメリカンジョーク。
後に愛沢邸で行われるパーティーで、観客を爆笑の渦に巻き込むそれを
本来の時間軸よりも早く披露するべく、ハヤテは前に一歩踏み出し、
前フリを言おうとした―――。

が、時の神と笑いの神は、どうやら少年の渾身のジョークの披露を
許さなかったようである。

?? 「失礼いたします。お茶をお持ちいたしました」

なぜならハヤテの口が開く前に、この場に紅茶やケーキが載せられたワゴンを押した
一人の少年を登場させたのだから。

沙織 「星矢!? あなた、どうして……」

少年―――星矢の登場に沙織は驚いた。
確かに彼の現在の『仕事』を考えるならば、この場に来ることは不自然ではないが、
それにしても今の状況で現れたのは、少々タイミングを図っていたとしか思えない

……たぶん、沙織の気のせいだろうが。

星矢 「そんなに驚かなくてもいいじゃないですか。
   今の俺は、沙織さ……お嬢様の執事なんですから」

そんな疑惑を持たれているとは知らずに、星矢は沙織に笑いかけた。
主の疑問に答えながらも、ケーキなどを配膳する手を止めないのは、
執事(?)の鏡といえるかもしれない。

ハヤテ「(沙織さんの執事か……。まだ働きだして日が浅いのかな?
    すこし動きがぎこちない気がする)」

傍目にはまったく感じさせない星矢の動きの鈍さに、ハヤテは気付く。
さすがは、幼いころからいくつもの苦難をくぐりぬけてきた借金執事。
その観察力は、かなりのレベルにあると言っていいだろう。

ナギ「(この男……。どこかで……)」

重苦しい雰囲気を破るかのように、突然登場した沙織の執事らしき少年。
彼の顔に、ナギはなにかひっかかるものを感じていた。

沙織 「でも、あなた、リハビリは……」
星矢 「今日の分は終わりました。ですから、こうしてお嬢様とお客様に
    お茶を」

ナギ「あー、思い出したぞ!」

星矢が現れてからずっと過去の記憶を思い返していたナギは突然大声をあげ、
椅子から立ち上がった。

沙織「ナ、ナギ?」
ハヤテ「お、お嬢様?」

困惑する幼友達と執事に構わず、ナギはきょとんとしている星矢を
指差し、衝撃的な言葉を放つ―――。

ナギ「なんでお前が沙織の執事をやっているんだ、このスカート捲り魔!

星矢「……はい?」

天馬星座ペガサスの聖闘士に、危機到来。


278 名前:新章/少年たちの誓い 少女たちの願い:2012/05/31(木) 09:12:05
○城戸沙織→ナギとの会話に困っていたとき、やってきた星矢に驚く。
○三千院ナギ→沙織との会話に困っていたとき、現れた星矢の顔を見て、
      驚くべきことを言い出す。
○綾崎ハヤテ→空気を変えるため、アメリカンジョークを披露しようと
      するが未遂に。
○ペガサス星矢→空気を壊すかのように、登場。ナギに驚くべきことを言われ……


279 名前:新章/少年たちの誓い 少女たちの願い:2012/05/31(木) 09:13:32

【6年前、城戸邸(本宅)】

?「ね、ねぇ。星矢」

星矢「なんだよ、瞬?」

瞬「本当にするの、その、ス、スカートめくり……」

若干涙目かつどもりながらも、問いかける瞬。

星矢「しょうがないだろ。約束しちまったんだから」

そんな彼に準備運動をしながら、星矢はやや投げやりに答えた。

かって姉と暮らしていた【星の子学園】で、よく悪戯の一つ
としておこなっていたスカートめくり。

その腕がどれ程のものなのかと城戸邸で一緒に生活している子供達から問われ、
『あの生意気な沙織お嬢さんのスカートだってめくってみせる』
などと宣言してしたのが、運のつき。
気がついたら、実際にその腕前が本当なのかを証明するはめになってしまっていた。

星矢「で、瞬。お嬢さんは?」

瞬「えっと……まだ来てないよ」

現在、二人がいるのは城戸邸の居間に通じる通路の曲がり角。
居間に行くには、この曲がり角を通らなくてはいけないので、
待ち伏せするのに絶好のポイントであった。

ちなみに、瞬がいるのは、星矢のサポート兼監視のためである。
そして『最愛の弟にそんな役割をさせられるか』と、某ブラコ…もとい
Iくんが反対したものの多数決で否決され、現在(暴れるので)拘束中
だったりするが、それは本筋にはまったく関係がない。

瞬「! 星矢!」

星矢「来たか!?」

緊迫した声で自分の名を呼ぶ友人に、
星矢は目標が来たか否かを確認する。

瞬「その……来たことは来たんだけど……」

星矢「なんだよ?」

歯切れの悪い答えにいらつきながらも、少年は瞬に状況報告を促す。

瞬「お嬢さんのほかにも、女の子がいるんだ……!」

このままでは沙織のみならず、見知らぬ少女にまで星矢は非難を浴びせられる。
友人の身を案じた瞬の声は、知らず強張ったものになっていた。

星矢「……なんだ、そんなことか」

が、そんな友にフッと不敵な笑みで答えた後、
星矢は走るために姿勢を整えた。

瞬「星矢!? まさか……」

瞬の言葉を最後まで待たず、星矢は走り始めた。

星矢「(目標は、お嬢さんただ一人……といいたいとこだが!)」

走りながら、星矢の腕が伸ばされる。
その姿勢は、まさに翼を広げた天馬――――!

近づきつつある沙織とその友人と思しき少女の顔を確認した後、
星矢の両腕が、一度下がりそして。

(ヴァサ――――……!)

二枚のスカートが、天井に向け舞い上がった。

星矢「スカートがそこにあるならば、めくるのは礼儀―――」

そう、星矢がめくったスカートは二枚。
本来のターゲットの沙織だけでなく、隣にいた少女のスカート
も彼はめくっていたのだった。

沙織のスカートだけをまくることもできたのに、あえてそうしなかったのは、
さっき言ったようにスカートめくりの礼儀だからか。
だとしたら、とんでもない馬鹿である。
いい意味でだが。

しかし被害者は、そんな馬鹿をいい意味ではとらえないものである。

沙織「せ〜い〜や〜……」

ナギ「き〜さ〜ま〜……」


ゾクゥ!


余韻にひたっていた星矢は、背後からの声を聞き、
なにか寒いものを感じ恐る恐る背後を振り向いた。



そこには、――――鬼が立っていた。



【現在 城戸邸(別荘)】

星矢「で、その後お嬢様たちにずっと追い掛け回されて、
   なんとか逃げ切ったもの、その日の夕食は抜きになってしまって」

余談だが、この日、某Jくんは「お嬢様と追いかけっこ」という
なんともうらやましい(Jくんの主観)状況を味わった星矢をますます
嫌いになったらしいが、これも本筋には関係ない。

ハヤテ「そ、そんなことがあったんですか……」

6年前に起きた事件の顛末に、ハヤテは引きつった笑顔を浮かべる。

ナギの口からあの言葉が飛び出したときには、それこそ
星矢の襟首をつかんで、上下に揺さぶりかねない勢いだったのだが、
事件の経緯を聞くにつれ普段の状態に戻っていた。

沙織「あのときは、本当にびっくりしました……」

ナギ「まったくだ! あんなことされたのは、生まれて初めてだったんだぞ!」

当時のことを思い返し、沙織は羞恥から、ナギは憤りから顔を赤くしている。
生粋のお嬢様である二人は、スカートめくりといった悪戯に対する免疫がなかったので、
今でも鮮やかに当時のことが思い出せるらしい。

星矢「も、モウシワケアリマセン……」

ハヤテ「お、お嬢様。これ以上星矢さんを責めるのはもう……」

いまにも土下座しそうな勢いの星矢がいたたまれなくなったのか、
ハヤテは主をなだめる。

ナギ「むっ……判った。今日のところは、これで許してやる」

沙織「(ナギが言う事を素直に聞くなんて……。 
ハヤテさん、信頼されているようですね)」

まだ怒りは消えていないようだが、素直に引き下がった友人の姿から、
沙織は彼女の執事への信頼を感じ安堵した。


風が吹いた。
二人の少女の間に知らず、存在した重い空気を吹き消すような強い風が。
この風が彼女たちを、吉と凶、どちらに導くかは誰も知らない。



280 名前:新章/少年たちの誓い 少女たちの願い:2012/05/31(木) 09:15:59
○天馬星座の星矢→過去の自分のしたことを、責められてちょっと
         落ち込む
○綾崎ハヤテ→ナギの言葉に取り乱すも、詳しい話を聞いて
       冷静さを取り戻す
○三千院ナギ→星矢の所業に思い返し怒りを露わにするも、
       ハヤテのとりなしで引き下がる。
○城戸沙織→ナギのハヤテに対する信頼を、感じ取る。

281 名前:新章/少年たちの誓い 少女たちの願い:2012/05/31(木) 09:17:51

ナギ「で、その時のトドメに、ブレザーブルムーンが」

沙織「あら、その回はスク水ブルムーンがとどめをさしたはずよ?」

ナギ「そうだったか? 今度、DVDを見直す必要があるな。
   あ! そういえば、ブルムーンごっこをするとき、沙織は
   いつもスク水ブルムーンだったな」

沙織「ええ、ナギがセーラーブルムーンで、伊澄がブレザーブルムーン、
   咲夜がショタブルムーン。渡君は……」

ナギ「ワルイザ―ン役だ。あいつ、私たちと戦う展開だと役になりきるのに、
   伊澄が出てくると素に戻って台詞が言えなくなって」   

沙織「そうそう。それで、渡君に咲夜のハリセンが……」

 星矢の昔話は、それまで会話の糸口が見えなかった二人に、
 いい話題を提供したようだった。
 星矢への文句、お互いの近況、ナギが今描いている漫画のこと、そして幼い頃の話。
 離れていた6年間に起こった出来事を、時間を忘れて少女達は互いに語り続ける。
 少し前まで重苦しかった東屋の雰囲気は、彼女達の楽しげな声によって
 明るいものへと変化していた。

ナギ「しかし、『義母さんと一緒』はなんで未だに続いて」

沙織「……ナギ」

 かれこれ十年以上は続いている某教育番組について、ナギがなにか言おうとした時、
 沙織は彼女の名前を呼んだ。
 先ほどまでの笑顔とは異なり、その表情はどこか憂いを含んだ真剣な表情へと変わっていた。

ナギ「沙織?」

沙織「少し、いいかしら。……聞いて欲しい話があるの」



  ◇    ◇    ◇    ◇



ハヤテ「(これからどうしようかな……)」

 別荘本館の廊下を歩きながら、ハヤテは悩んでいた。
 沙織に『ナギと二人きりにして欲しい』と頼まれ、
 ナギもその頼みを同意したため、急に自由な時間が
 出来てしまったのだが……。

ハヤテ「(沙織さんは『なにかあっても、護衛が控えているから大丈夫』
     とおっしゃっていたけど。 
     でも、万一ということもあるし、う〜ん)」

?? 「あれ、ハヤテさん」

ハヤテ「え? ……あ、星矢さん」

 悩んでいたハヤテは、後ろからかけられた声に振り向くと、
 声の主―――星矢の名を呼んだ。

 自分の恥ずかしい昔話を話した後、彼は食器類を台所に下げに行ったきり、
 東屋には戻っていなかった。
 同じ執事として色々と話したいこともあったハヤテは、
 彼が戻ってこないことを少し残念に思っていたのだが……。

星矢「三千院のお嬢様の傍にいなくていいんですか?」

ハヤテ「本当はそうしなければいけないんですが、沙織さんに
    二人きりにして欲しいと頼まれてしまって。
それで、せっかくですからなにかお手伝いできることは
    ないかと……」

星矢「手伝い、ですか」

 ハヤテの言葉を聞き、星矢は少し考えた後に、
 こう提案した。

星矢「だったら、俺の手伝いをしてくれませんか?
   今から買い物に行くつもりだったので、
   人手が欲しかったんです」

ハヤテ「え、いいんですか!ありがとうございます!
    ……あと、少しいいですか?」

星矢「なんですか?」

ハヤテ「その……無理に敬語を使わなくていいですよ。
    今は、お嬢様たちもいませんし」

 いつも敬語を使っているだけあって、
 ハヤテは星矢の敬語に無理があるのを見抜いていた。
 今から二人で行動するのに、気を使わせるのもどうかと思い、
 ハヤテは星矢にそう申し出てみた。

星矢「……なら、お言葉に甘えさせてもらいますね。
   それと、俺も頼みがあるんですけど」

ハヤテ「はい」

星矢「その、『さん』付けは、辞めてくれ。
   年上の人に『さん』付けされるのは、ちょっと
   変な感じがする」
   
ハヤテ「…………え?」

 普段の言葉づかいに戻った星矢の答えに、ハヤテは固まる。

ハヤテ「せ、星矢……くん。君、今何歳なんですか?」

星矢「俺の年? 沙織さんやナギお嬢さんと同じ13歳だけど」

ハヤテ「じ、じゅうさんさい、ですか……ハハ」

 昨今の小中学生の発育がいくらよくなっているとはいえ、
 目の前の少年が自分より3歳下とは、
 実年齢以上に人生経験を積んでいるハヤテでも見抜けなかった。

ハヤテ「(沙織さんもお嬢様とは同じ年には見えないけど、まさか
    星矢さん、いえ星矢くんもそうだなんて……)」

星矢「(俺の年齢聞くと、皆驚くんだよなー。なんでだ?)」

 本日最大の衝撃を受けたハヤテに対し、その衝撃を与えた張本人は、
 自分の実年齢を聞くとなぜか人が驚く原因が判らず、首を傾げるのであった。


282 名前:新章/少年たちの誓い 少女たちの願い:2012/05/31(木) 09:19:12
○城戸沙織→ナギと楽しく会話していたが、急に真剣な表情になる
○三千院ナギ→沙織と楽しく会話していたが……
○綾崎ハヤテ→本日二回目の衝撃に、ちょっと固まる
○星矢→実年齢を言うと、なぜ人が驚くのか判らないらしい

283 名前:新章/少年たちの誓い 少女たちの願い:2012/05/31(木) 09:20:46
沙織「城戸沙織はね、一度『死んだ』の。
   おじい様が亡くなったあの日に」

なにも知らなかった深窓の令嬢は、決断した。
自分のために命を落とした射手座の聖闘士と全てを知りながら
自分を愛してくれた祖父やそしてこれから出会うであろう聖闘士たちのために、
慈悲深く勇敢な戦女神(アテナ)になることを。

無邪気な子供だった過去を捨てることによって。

しかし、『神』の化身である以前に彼女は『人』であった。
神であろうとする自分と人としての自分。
分裂しそうな自己にゆらぐ沙織を支えたのは、天馬星座の少年。

沙織「星矢は……『私』を守ってくれると言ってくれた。
   グラードの総帥ではない、城戸沙織としての私を」

少しの嘘をおりこみながら、少女は告白する。
自分を憎んでいたはずの少年は、誓ってくれた。
女神としてではなく、人間としての彼女を守ると。

沙織「だから、あなたに会おうと考えたの。
   私が一人の少女として在ることを許されるなら、
   ナギ達とまた『友達』になりたいと、そう思ったから……」

一人の少女としての自分が許されるのならば。
断ち切ってしまったかっての幼馴染たちとの関係を、
もう一度始めたい。

トアールホテルで出会った神代の時代に因縁のあった女性との和解は、
沙織の心の奥底にあったその気持ちを目覚めさせた。

そして今――沙織は自分の気持ちを告げる。

後は、沈黙しているナギの口から答えが出るのを待つのみ。

ナギ「……沙織」

沙織「な、なにかしら?」

ナギ「相変わらず一人で突っ走る奴だな、お前は」

はぁ、とため息をつき少し呆れたようにナギは言った。

ナギ「私も、伊澄も、咲夜も、ワタルもお前と友達を辞めたつもりはない。
   皆、お前が大丈夫かって心配してたんだぞ」

沙織「え……」

ナギ「なのにお前ときたら、なんにも連絡してこないし。
   してきたかと思えば、『もう一回友達になって欲しい』って……。
   思い込みが激しいのは、変わってないな」

でも、とナギは笑って言葉を続ける。

ナギ「安心した。私が知ってる沙織のままで、ほっとした」

沙織「ナギ……」

『神』であろうとした。
地上の平和を守り、人間を愛する戦女神であろうとした。
そのために『人間』であることを止めようとした。

けれど『人間』である自分を肯定してくれる守り手がいて、
身勝手な自分を友達といってくれる少女がいる。

そのことが、なによりも嬉しい。

沙織「(ああ、だから私は――――)」

人を愛することを止められない。
たとえ、その思いがオリンポスの神々の意向に
反する結果を生み出し、『神』の化身でなくなったとしても。

『城戸沙織』を望んでくれる、愛する人たちのために。

沙織「(戦うことができる……)」

そして沙織は、言葉を紡ぐ。
自分を許し、そして自分の戦う理由を改めて思い出させてくれた友のために。

沙織「……ありがとう」

心からの笑みとともに、感謝の言葉を。


284 名前:新章/少年たちの誓い 少女たちの願い:2012/05/31(木) 09:22:13

○城戸沙織→ナギに謝ると同時に、自分の中にある思いを確認する。
○三千院ナギ→少々辛口なコメントをいいながら、沙織を友と思っている
       と答える

285 名前:新章/少年たちの誓い 少女たちの願い:2012/05/31(木) 09:23:54

少女たちが友情を誓いあっていたその頃。

彼女たちに仕える少年たちが何をしていたかといえば。


***ペンション&喫茶『美鈴』***


ハヤテ「へぇ、じゃあ星矢くんは8年もギリシャで修行を……」

星矢「ああ。ハヤテさんは?執事修行とかしたんだろ?」

ハヤテ「いや、僕は……」

別荘からほど近いペンションで、お互いの境遇を語り合っていた。

片や、6歳のころから8年間に渡る生きるか死ぬかの修行を生き延び、
見事青銅聖闘士の座を勝ち取り、今では聖闘士のなかでも上位の
実力者となった男。

片や、無類のギャンブル好きの両親を持ったがゆえに、幼いころから
アルバイト生活を強いられ、結果「パーフェクト超人」ともいわれる
高い能力の持ち主となった男(借金あり)。

ともに波瀾万丈の人生を歩んでいるせいか、二人の話は非常に弾んだ。
(星矢は、聖闘士の修行を、ボディーガードの修行とごまかしたりしていたが)

??「はい、お茶のお代わりどうぞ♪」

ハヤテ「あ、すみません……美鈴さん」

星矢「ごめんな、美鈴ちゃん。
   いきなり来たのにお茶と菓子まで御馳走になっちゃってさ」

二人は、お茶を持ってきたこのペンションの主である
園田美鈴(本名功)にすまなそうに言う。

美鈴「いいのヨぉ、星矢くんのご主人さま―城戸のお嬢様は
   ウチを御贔屓にしてくれる大事なお客様だしネw
   こんなサービスでもまだ全然足りないくらい、お世話になってるんだから」
 
男性的な顔にフリフリのピンクハウスというある種
衝撃的な組み合わせの彼女(?)は、少年たちに笑ってみせる。

ちなみに、今星矢たちが飲んでる紅茶(さくらんぼのフレーバー)とクッキー
(リンゴを使ったトルコ風クッキー)は美鈴のお手製である。

星矢「……ありがと、美鈴ちゃん。ところで、例の奴は?」

美鈴「今煮込んでるところだから、あともうちょっと待ってて欲しいんだけど」

ハヤテ「わかりました。お言葉に甘えさせてもらいますね」

美鈴「ふふ、楽しみにしててちょうだい☆」

ごゆっくり〜と素敵スマイルをふりまきながら、
美鈴は厨房の方へと戻って行く。

ハヤテ「今頃、お嬢様たちどうしているんでしょうね……」

美鈴が厨房に戻るのを見送った後、ハヤテは不安げな表情を浮かべた。

星矢から沙織がナギを別荘に呼んだ理由を、彼はすでに聞かされている。

ハヤテ「(お嬢様は、基本的に友人を大切にする人だから普通に考えれば
大丈夫だと思うけど……)」

もし、彼女の欠点である素直になりきれないところが出てしまったら、
ナギも沙織も悲しむ結果に終わるのではないか。

物事を悲観的に考えがちなハヤテは、そんな展開を思い浮かべ
少々気持ちが暗くなりかけていた。

星矢「大丈夫だよ」

ハヤテは、自分にかけられた言葉に俯いていた顔をあげる。

その目に映るのは、穏やかな顔をして自分を見つめる星矢。

星矢「沙織お嬢さんもナギお嬢さんもずっとお互いの
   ことを忘れずにいたんだから……きっと悪い結果にはならない。
   俺は、そう思う。」

ハヤテ「星矢くん……」

静かにしかし力強くにも感じられる彼の言葉に、ハヤテは不安にかられて
いた心が軽くなるのを感じた。

ハヤテ「そう、ですね。お嬢様を信じなくちゃいけないのに悪い癖が
出てしまったみたいです。すみません、星矢くん」

星矢「どういたしまして」

落ち着きを取り戻したハヤテに、星矢は明るい笑みで彼に答えた。

美鈴「二人とも〜。例の奴、出来たわよー!」

厨房の方から、美鈴の明るい声が聞こえる。

その声を聞き、顔を見合わせ頷きあい、少年たちは席を立ち厨房へと向かう。

ささやかな主への贈り物を受け取るために。


286 名前:新章/少年たちの誓い 少女たちの願い:2012/05/31(木) 09:25:13
○綾崎ハヤテ→ナギのことを考えて不安になるが、星矢の言葉で落ち着く。
○星矢→不安そうなハヤテを落ち着かせる。
○園田美鈴→少年たちにお茶とお菓子をふるまいつつ、なにかを作っている模様。

【今回の新規登場】
○園田美鈴(桜蘭高校ホスト部)
本名園田功(いさお)。前職は銀行員で、現在はニューハーフとして働いている。
夏の間だけ、軽井沢にてペンションを経営している。
趣味は小物&洋服づくり。料理も得意。
バツ一で、別れた妻との間にメイという娘がいる。

287 名前:新章/少年たちの誓い 少女たちの願い:2012/05/31(木) 09:26:54

日は傾き、もうすぐ夜が訪れようとしていた。

ナギ「沙織、帰ったら今度は私から連絡するからな!」

沙織「ええ、待ってるわ」

再び絆を結んだ少女たちはお互いのメールアドレスを交換
した後で、そう言葉を交わし。

ハヤテ「星矢くん、今日はありがとうございます」

星矢「お礼言うのはこっちの方だよ。ハヤテさんが手伝ってくれた
   おかげで、今日の買出し大分楽だったし」

護り手の少年たちは、笑顔で互いに礼を言いあう。

ナギ「またな、沙織!」

沙織「ええ、ナギ。また逢いましょう」

星矢「じゃあな、ハヤテさん」

ハヤテ「さよなら、星矢くん」

そして、ナギとハヤテは城戸邸を去るのだった。


***軽井沢 城戸邸 門前***

沙織「……星矢」

星矢「はい」

沙織「あなたの体、どのくらいまで回復していますか?」

星矢「もう充分回復してます。流星拳も彗星拳も撃てますよ」

その言葉を裏付けるように、星矢の小宇宙が燃え上がる。

夜空にまばゆく輝く天馬星座。

数々の強敵と戦うたびに熱く激しく燃え上がってきた
彼の小宇宙のイメージを感じ、沙織は彼の復活を確信する。

そして同時に感じるのは、少しの寂しさ。
『城戸沙織』と『星矢』の時間が終わることへの、悲しみ。

沙織「(贅沢ですね、私は……)」

途切れていた友との縁を再び結んだだけで十分なのに。

これ以上を望むなど、贅沢にほどがある。

沙織「―――全ての聖闘士に招集をかけます。一月後、聖域へ集結するようにと」

サガの乱や冥王との聖戦などでその数を激減させた聖闘士たちだが、
黄泉還り現象によって、かなりの人数が現世に蘇っていた。

沙織「世界は今、揺れています。私もグラード総帥としての力だけでなく、女神としての
   力も行使しなければならないでしょう。平和を願う者の一人として」

星矢「沙織さん……」

沙織「人として、女神として。私は、自分に出来ることをしようと思います。
   ですから、星矢」

星矢「守ります」

沙織の言葉を遮り、星矢は答えた。
儚くも強い、自分の守護するべき人へ。

星矢「『城戸沙織』も、『女神』も―――そして世界も俺が、俺たちが守ります」

静かに、だがそれでいて熱い思いを込めた少年の言葉に、沙織は笑顔で答える。


その笑顔が慈愛に満ちた女神の微笑みか、涙を流しながらもどこか
嬉しそうな少女の笑顔だったかは、星矢しか知らない。


***三千院家 自家用車内***

ナギ「ハヤテ」

ハヤテ「はい、なんですかお嬢様?」

ナギ「帰ったら、マリアにPUの会合が今度いつあるか確認してくれ」

ハヤテ「判りました……ってええ!?」

ナギ「なんだ、その反応は」

激しい驚きを見せたハヤテを、ナギはジロッと睨んだ。

ハヤテ「い、いえお嬢様は今までPUの会合に出席するのを嫌がってたのでその」

ナギ「――PUへの参加は、じじいに強制されたことだったからな。あいつの
   言う通りにするのが癪で、ずっと出席を拒否してた。けど」

自分に嫌われていたのではないかとずっと思っていて、
でも勇気をだして連絡してきた沙織。

そんな沙織に対して、自分はただ待っていただけで。

グラードの総帥として、孤独に耐えていた沙織に
自分から先に手を伸ばしていたら。

もっと、早くまた友達になれていたかもしれない。

だから。

ナギ「(私も、勇気を出してみるさ。勇気をだして―ー―PUに参加する)」

大事な人達を失って、どこか閉ざされていた自分の心を開いた
大好きな執事や、さっき別れたばかりの友人のように。

ほんの少し、勇気をだして。

ハヤテ「けど……なんですか?」

ナギ「……秘密だ!」

ハヤテ「え、そこで秘密にするんですか!?」

『やっぱりお嬢様の考えって時々判らない』などブツブツ言い始めた
ハヤテを横目で見て、ナギは膝の上に置いていた紙袋からあるものを
取り出した。

それは、小さなガラス瓶に入ったさくらんぼのジャム。

沙織のお気に入りだというそのジャムの瓶を眺めた後、
ナギはそっと目を閉じた。

明日、幼馴染たちに連絡しようと思いながら。

しばらくして、ようやくブツブツ言うのを止めたハヤテは
隣に座っている主の様子を見て、温かい笑みを浮かべた。

ジャムの瓶を握りしめながら眠る主にブランケットをかけた
後、ハヤテは思う。

少しずつだが、前に進んでいる主人。
いつか、自分を必要としなくなる日も来るのかもしれない。
けれど、その日まで。


ハヤテ「あなたをお守りします――ナギお嬢様」


いつか来る未来を思いながら、ハヤテは主に誓いを立てた。


288 名前:新章/少年たちの誓い 少女たちの願い:2012/05/31(木) 09:28:12
○城戸沙織→全聖闘士の召集を決意。星矢の誓いに浮かべた
      笑顔は女神と人、どちらのものだったかは
      二人の秘密。
○星矢→沙織に対して、一つの誓いを立てる。
○三千院ナギ→PUの会合へ出席することを決意。
○綾崎ハヤテ→いつか来るかもしれない未来を
       思いながら、誓いを立てる。



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