■ 【魔術士オーフェン】我が力宿せ後継者【はぐれ旅】

1 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/02/20(日) 08:46:53
 
 
 
 
 
「我は放つ、光の白刃っ!」
 
 
 
 
・「魔術士オーフェンはぐれ旅」のスレッドだ。
・秋田禎信BOXのネタバレは「往時編 怪人、再び」のみ受け付けるってことにさせてもらう。「約束の地で」はナシだ。
・俺に関しては東部編終了後〜「キエサルヒマの終端」でサルアに接触する直前の状態だ。
・キャラハンの越境はありでかまわない。
・一応の目標としては>>100で考えてる。

2 名前:名無し客:2011/02/20(日) 12:27:28
友達は地人と執事だけしかいないんですか?

3 名前:名無し客:2011/02/20(日) 18:58:52
アザリーってどんな人ですか。

4 名前:名無し客:2011/02/20(日) 23:26:23
今何か1つ好きなものを食べることができるとします
何を食べたいですか?

5 名前:名無し客:2011/02/20(日) 23:34:08
最近男の娘がはやりらしいですが、オーフェンさんはこれにつきどうおもいますか

6 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/02/21(月) 01:08:01
あれは知り合いの部類に入ってしまったことを後悔するような類のなにかだ。
間違っても友達じゃない。そこは全力で否定させてもらう。

ただまぁ、他にはいないのかって言われちまうと、難しいところだが。
俺が自分で捨てて出ていっちまったんだ。それでも向こうに大事にしてもらおうってのは虫が良すぎるだろ。
聖域で会ったハーティアとはろくに会話する暇もなかったが、あの様子を見る限りじゃ俺の6年間を
好意的に受け止めてくれてるとは言えねえし、俺もそれを非難できる筋合いじゃない。
コミクロンは死んじまったし、コルゴンがあの後どうしたのかは知らないが、あいつの代わりに俺が魔王術者になったことを
快く思ってるとは思えねえな。

その上、生き残ったクリーオウやティッシとも別れてきたんだ。
おまけにもう俺はタフレムに戻ることはできないときてる――

ま、所詮ははぐれ旅だ。
寂しいと思わないわけじゃない。だが俺が文句を言えた義理でもないだろう。

>>3
落ち着きがなくて、他人に喧嘩売って回って、思いつきで俺たちを振り回して、ティッシとの姉妹喧嘩では大勢を巻き込んで――
まあ、我が姉ながら性格は褒められたもんじゃない。むしろひどく泣かされてたよ。
だがそれでも俺にとっては家族だったんだ。血はつながっちゃいなかったがね。
当時は色々泣きたい思いで日々を送ってたが、今にして思えばそれでも悪くはなかった。

それでも俺にとっては強くて優しい、大事な自慢の姉貴だったからだ。

だが、それも6年前のあの事件ですべてが変わっちまった。
あのいざこざの果てに、結局彼女はチャイルドマンを殺した。
俺はアザリーにティッシのところへ戻れと言ったことがある――だがアザリーは聞いちゃくれなかった。
元より彼女が俺の助言を聞き入れたことなんざなかったけどな。
結局、彼女の思惑に俺は利用されるしかなかった。

その果てに彼女は自分の肉体を捨ててまで女神を押し返そうとした。
俺はあの時その場に立ち会っていながら、それを止めることができなかった。
先生はまさに致命的な事態で、アザリーの暴挙を止めるために俺を鍛えたっていうのにな。
俺はそれを止めることができなかった。イスターシバを止められなかった先生の二の舞だ。

だがその暴挙をしでかした愚かな姉が、破局に瀕した大陸を救う鍵――第二世界図塔における魔王召喚の術者にもなったんだ。
あの召喚は本来必要だったであろう術者の数にまったく足りてなかった。成功したのは単なるまぐれ以外の何者でもなかったはずだ。
それでも確かに魔王の力は俺に宿ったんだ。アザリーの白魔術士としての意地には感服するよ。

馬鹿なことをしでかした姉だった。だが最後にやらなけりゃならないことだけはやり通して死んだ。
そんな彼女を一言で言えば――俺にとっての天使と悪魔。そんなところかな。

7 名前:名無し客:2011/02/21(月) 09:25:38
シスコンなんですか?

8 名前:名無し客:2011/02/21(月) 15:56:33
光の白刃以外に何が使えるの?

9 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/02/21(月) 18:53:11
おっと。レス番指定が抜けてるな。
>>6の上半分は>>2あてだ。

>>4
人間が食べられるものならなんでもいいってのが正直なところだな。
ここんとこは騎士団やら暗殺者やら賞金稼ぎやらと取っ組み合いするのに忙しくておちおち休息も取ってねぇ。
そもそも6年前の出奔以降、まともに人間が食べる食事なんて数えるほどしか食ってねえが。
タフレムのティッシの家、レジボーンのエリスの宿、ナッシュウォータのロッテーシャの道場……ぱっと思い出せる限りでは
そのへんくらいだろ、まともなメシ食ってたのは。あとはコギーからふんだくった皿くらいだ。

ま……思い出すのは桃缶かな。
あの爆安缶詰市で売ってたアレだ。
あんなもんでも別にいい。
あんまり多くを望むと、なんかしっぺ返しがありそうだしな。
だいたいこんな情勢下だ、実際手に入るものなんて桃缶かそれと同程度の簡易携帯食料だろ。
そんなもんで構わねえよ。
今日食うもんがありゃあ、それで十分だ。
今日生きていけるってことは明日があるってことだ。そいつは他のなににも変えられない幸運だろ。
死んだら今日で終わりだからな。明日はない。

だから、明日のことは明日考えればいい。

>>5
それに関しちゃ思い出したくないことがあるんで、多くは語らない。
ただ俺から言えるのはひとつだけだ。

女装するなっ!手術するなっ!女になるなっ!

俺はああいうのが大嫌いなんだっ!

>>7
シスコン……まあ、まったく間違ってるとは言わないが、正確にはちょっと違うんじゃないかって今は思うよ。
俺はなんにもわかっちゃいないガキだったから、姉以外にすがるものがなかったんだ。要するにただの依存でしかない。
サクセサー・オブ・レザー・エッジだの戦闘芸術品だのたいそうな呼び名もあったが、それだけしか持ってなかった、
無力でうぬぼれ過ぎの老けガキだ。
そのガキが思い上がって自分だけがアザリーを救えると信じて、教室の仲間や先生の制止に逆らって<塔>を飛び出した。

俺を必要としてくれた人間はアザリー以外にもいたのにな……それを全部捨てて、アザリーを追いかけた。
だが結局無駄足だったよ。周りの人間を傷つけて、俺自身も多くのものを失った。
5年ぶりに戻ってきたら、ティッシの変わりようには驚いたよ。あんなにすっかり気落ちしちまってな……
教室の仲間だけじゃない。いけすかねえ最高執行部の爺さん婆さんたちだって、俺の出奔のおかげで人生狂わされたのはひとりやふたりじゃねぇはずだ。

そうやってまわりの人間に被害を与えるだけ与えて、その果てにようやく会えたアザリーから感じたのは他でもない、まぎれもない失望だった。

馬鹿なことをしたと思うよ。
取り返しのつかないことをするのが愚行で、それをするのが馬鹿だと言うならまさに俺のことだ。

10 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/02/21(月) 19:01:15
>>8
色々ある。

光の白刃――熱衝撃波は俺が一番多用する魔術だ。威力も範囲も加減が効くから使いやすい。
軽いパンチの代わり程度の威力から、本当に人を消し飛ばせる威力までかなり融通が効く。
バックファイアを考慮しない最大限の出力で撃てば、街の数区画を焼き尽くすくらいのことはできる。
そうなるとそれ相応に相当消耗するが。

共鳴現象による破壊振動波や、もっと単純な大気の振動による衝撃波っていうのもある。
このへんもよほど意図して出力を上げない限り致命傷を与えることはないんで、俺としちゃあ便利だな。
逆に言うとドラゴン種族なんかと戦う時には明らかに威力が足りないってことでもあるが。

防御力場を出すことも当然できる。
これは魔術士として真っ先に習得すべき魔術だ。俺も例外じゃない。
魔術の撃ち合いになれば魔術で防ぐ以外の方法はないからだ。
魔術で展開される障壁には質量も熱もある。物理打撃・魔術攻撃を問わず防ぐことができる。
ある意味他のどの魔術よりも使用頻度が高いと言えるだろう。
防御の強度と範囲は術者次第だな。

他にポピュラーな魔術としては炎を作ることもできる。
ただ炎っつっても魔術で生み出される炎は白いからな。知ってればすぐに見分けがつく。
関係ないが、内臓も血管も痛覚もない――それはつまりほぼ無敵ってことだが――不死身の
レッド・ドラゴンがこれに弱いってのは意外だったな。

空間爆砕は空間を揺らして、その衝撃で爆発を起こしてあたりを粉砕する。
俺が自分の頭で思いついた限りではいちばん強力なのはこれだ。
空間破砕とも言う。

このあたりの魔術は構成としちゃきわめてありふれたものだ。難度も高くない。
ここから先に話すのが制御の難易度が高いとされてる魔術だ。

重力中和は文字通り重力のキャンセルだ。
任意の対象にかかる重力を一時的にゼロにすることで空中浮遊や通常では不可能な高さまで跳躍することができる。
だが効果時間は長くない――むしろ短いな。
それでも通常の人体では絶対に発揮できないジャンプ力が必要な場合なんかで使う局面は意外と多い。

難度が高いってことに関しちゃ、自壊連鎖なんてものもある。
対象物を自己崩壊させた上で、さらに隣接する周囲の物体を文字通り連鎖するように次々と崩壊させていく。
防御障壁があっても連鎖する自壊に巻き込まれるだけだ。範囲内にいる限りは通常防御する手段は存在しない。
だがこれはあまりにも難度が高すぎる。俺が使う分には滅多に成功しないね。

擬似球電も殺傷力に関しちゃ俺が扱える魔術の中ではトップクラスだ。
呪文発声で球電を発生させ、術者の制御によってそれを光速で転移させる。
転移の軌道は術者の任意だ――これも人間レベルの魔術士には防げない。
着弾すれば対象を激しく炎上させることができるが、まあそれ以前に
光速で転移してくるエネルギー体の命中の衝撃で確実に死に至る。

そしてこの先に話す3つが黒魔術の到達点とされる魔術になる。
俺の先生であるチャイルドマン・パウダーフィールド教師によって考案された魔術だ。
これはすべて俺たちチャイルドマン教室の生徒にだけ伝授された黒魔術の最秘奥だ

まず擬似空間転移。
ドラゴン種族の空間転移を音声魔術で再現したもので、質量を擬似的にゼロにして莫大な加速をかけることで
架空の光速で移動する。
ま、"擬似転移"なんてかっこいい名前で言ってるが、要するに超高速移動だな。
だが原理上、間に壁なんかがあるとその超高速度のまま激突することになる。もちろん即死だろう。
また同じく原理上長距離の移動はできない。高速移動で起こる大気摩擦で術者を猛烈に
消耗させるからだ――移動できる距離はせいぜい10m程度が限度だろう。
もっともこの原理を逆手に取って、適当にそこらへんにあるものを目標に向けて擬似転移させることでその運動エネルギーを叩きつけるという手もある。
実際には存在しているその物体は衝撃を与えながらあらゆるものを貫通していく。つまり防御を無視して攻撃できるというわけだ。
擬似的な光速で移動してくる物体が生む運動エネルギーは計算するのもあほらしい威力が出る――防御を無視して攻撃できる俺の切り札のひとつだ。
だがあまりにも強力すぎて確実に相手を殺しちまう。そうそう使う機会があるもんじゃあないな。
擬似転移は制御は難しいが、格闘戦でも意外に使い道がある。間合いの調節は言うに及ばず、身体をひねって振り向く暇すらない時に向きを変えなけりゃ
ならない時にはこれを使うことがある。

擬似空間転移と並ぶ魔術の最秘奥、チャイルドマン教室の秘伝は他に2つある。
意味消滅がそれだ。
情報の破壊による存在発生源の消去。
まあ難しいことを言ったが、簡単に言やあ「対象をなかったことにする」というわけだ。
対象の物理的状態を無視して問答無用に消去しちまうことができる。防御術を展開していようがそれごと消し飛ばせる。
いかなる強度があろうと触れるものすべてを消去するという必殺技とも言える魔術だが、あまりにも制御難度が高いのがネックだな。
俺程度の術者じゃ、成功率はせいぜい5割ってところだ。必殺って言うには頼りないな。

最後の秘奥は物質の崩壊。
魔術構成における究極形のひとつだ。
黒い直径数センチほどの「因子」を呼び出し対象にぶつける。
だがこの因子自体は物質じゃない。ただの情報、それ自体がなにか作用を持つのではなく一種の引き金だ。
その因子によって触れた物質に崩壊を命じることができる。
通常、崩壊を命じられてそれに抗うことはできない。数百年の時間経過をもものともせず、一般的な魔術では傷をつけることすら
不可能な天人種族の魔術文字によって防御されている物体でも破壊できる。
ま、逆に言えば魔術文字で防御された物体を破壊しようと思えば物質崩壊か意味消滅でも仕掛けなけりゃ通用しないってことでもあるが。


俺が扱う魔術はほかにもいろいろあるが、代表的なところとしちゃあこんなもんだろ。

11 名前:名無し客:2011/02/21(月) 23:27:44
ところでクリーオウとデキちゃったのはどういうワケなんですか魔王様。

12 名前:名無し客:2011/02/22(火) 17:32:28
俺にも何か魔術を教えてくれ。

13 名前:名無し客:2011/02/22(火) 18:39:48
キースって地人より頑丈じゃないっスか?
あれ人間ですか?

14 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/02/23(水) 21:54:49
>>11
おっと、>>1で決めたローカルルール違反だ。そいつに関してはスルーさせてもらう
……と言いたいが、ま、一回目だしな。特別に答えることにするぜ。

人類史上最悪の犯罪者、女神の遣わした魔獣、魔王だなんて呼ばれて恐れられてる人間を、わざわざ追い掛け回してついてくる人間が
クリーオウ以外にいると思うか?
そんな向こう見ずの無鉄砲な物好きがそう何人もいてたまるか。
って、この言い方だとほかに相手がいなくて渋々選んだみたいだが……別にそういうわけじゃあない。
でもどういうわけだって聞かれても困るな。
特に理由はねえよ。
ティッシにどうしてフォルテと子供作ったんだ?って聞いても多分同じ事を言うだろ。
まあ――なんていうのかな。なんかそうなっちまったっていうか、そうなるべくしてなったというか。
男女の仲なんてそんなもんだろうと俺は思うがね。
はたから見てりゃわけのわかんねえもんだ。
そのいい例がコルゴンとロッテーシャだろ。
未だになんでコルゴンがロッテーシャと結婚なんてしたのか、それはとんと分からんね。
あいつのことだから好きでそうしたんだろう、くらいのことは分かる。
あいつは自分の好きなことしかしない、やりたくないことは絶対にしない奴だからな。
だがどうしてコルゴンがロッテーシャを気に入ったのかはまったく謎だ。ロッテーシャに魅力がないとか、そういう話じゃなくてだ。
ついでに言えばどうしてロッテーシャがコルゴンを気に入ったのは――控えめに言っても、それ以上のまったくの謎だ。
<<塔>>ですらあいつは浮いてたんだぞ。好き好んで話しかけてたのはコミクロンと、次いで俺たちくらいのもんだった。
別にコルゴンがロッテーシャの前でだけは普段と違う言動をしてたってわけでもなさそうだしな。つくづく謎だ。

まあ、なんだな。聞かれてもそんな明確にこれでございって理由があるわけじゃねえってことだ。

――言っておくが、今回だけだからな、答えるのは。
次からはローカルルールを守ってくれよ。

>>12
なんでまたわざわざ俺なんだか――言っとくが、俺は生徒に愛想つかされて逃げられたんだぜ?
俺なんぞに聞くより<<塔>>のレティシャ・マクレディかフォルテ・パッキンガムにでも頼ったほうがいいと思うがね。
どっちもとっつきやすいとはお世辞にも言えねえが、俺よりかはよほどマシだろ。

それでも教えてくれって言うなら……そうだな。
まずはお前さんに魔術の素養があるかどうかを確かめなけりゃならねえ。
知っての通り、魔術の素養は純粋に遺伝するものだ。ウィールド・ドラゴン種族との混血によって俺たち魔術士は生まれた。
巨人種族――人間種族は環境に対して性質を変え、成り行きにでも能力を獲得すればどこまでも強大化してそれを我が物にする。
この場合の成り行きってのが天人との混血だな。
つまり先祖のどこかで天人の血を引いてなけりゃ、どうあがいたところで魔術を扱うことは不可能ってわけだ。
要するに、魔術士じゃない者が魔術士になることはできないんだ。逆に言やあ、魔術士が魔術士をやめることもできないということでもあるが……

その上魔術の制御っていうのはきわめて難しい。
魔術は物理法則から完全に独立している。
だが、それにも関わらず物理法則に作用している――つまり、魔術は制御されて初めて魔術なんだ。
そして制御されている間しか魔術でいられない。
制御から外れれば、ただの物理力に戻ることになる。つまり物理法則に従い始める。
その場合真っ先に現れるのはなにか――反作用だ。
見習い魔術士の死亡率が8割にも及ぶ極端な高さを示す理由がそれだ。
制御し損なって、物理的反作用と化した自分の魔術によって爆死するはめになる。
熟練すれば制御し損なう可能性は減らせるが、それでもゼロにすることはできない。
ティッシやフォルテほどの術者でも制御中に集中を崩せば自爆するだろう。プルートーや先生だって例外じゃないはずだ。

この制御を一人前にやってのけるためにはかなりの時間がかかる。平均して5年、かなり短い場合でも2年半強ほどは要することになる。
ここで教えてくれって言われて、よし分かった教えてやろう、こうすればできるようになる、はいできるようになりました――というわけにゃいかねえんだ。
別に<<牙の塔>>に入れとは言わねえよ。市井の教室でもなんでもいいが、もっとちゃんとしたところでちゃんとした教師に時間をかけて学ばなけりゃ意味がない。


>>13
キースはもう頑丈とかそういう次元じゃねえだろ。
福ダヌキはあくまで頑丈のレベルだ。
生き物にゃ急所ってもんが必ずあるんだ。息をしてる限り横隔膜があり肺があり心臓もある。
身体を動かしてるからには腱があって骨格があって間接があって脳があって頭蓋骨にゃ亀裂もある。
あいつらだってそうだ。殴られれば痛がるんだよ。
熱衝撃波や空間爆砕どころか物質崩壊を撃ち込んでもなお燃え残るってのは納得いかんが、それでも焦げはする。
まだぎりぎり俺たちの理解の範疇にいる――はずだ。崩壊を命じられてそれを拒絶できる物体とはなにかという疑問が残っちまうが、それはこの際置く。

だがキースは別だ。
熱衝撃波を撃ち込んでも焦げ目ひとつつきゃしねえ。
それどころか術者の意思で軌道を制御できる、光速で転移してくる擬似球電すら回避できる。
頑丈とかそういう次元ですらない。真面目に考えるだけアホらしいってもんだ。

人間なのかどうかと聞かれれば、俺には到底分からんとしか言いようがないね。
本人に直接聞いてくれ――って、まともな答えが返ってくるとは思えんが。

15 名前:名無し客:2011/02/27(日) 11:33:41
クリーオウの姉ちゃんとの縁談がご破産したのは残念だったね
上手くいっていれば玉の輿だったのに

16 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/03/01(火) 02:46:45
>>15
そうだなぁ。
あれがうまくいってりゃ5年前の馬鹿な俺と取っ組み合ったり、よりにもよって魔術士弾圧の総本山たるキムラックくんだりまで潜入したり、
温泉のない温泉宿に泊まるはめになったり、レッド・ドラゴン相手に相打ちになって死ぬ半歩寸前くらいまで行ったり、
まして魔王術者になることもなく、トトカンタで平穏無事に暮らしてたわけだ。

……まあトトカンタっていう時点で平穏なのかどうか怪しい上にクリーオウの奴が妹になるわけだから無事でもない。
つまりそれはそれでやっぱり厄介ごとだらけの人生になったんじゃないかという気はするが……

ま、それでもなんだな。
厄介ごとだらけで何度も何度も何度も死にかかった人生だが、それでも結構楽しかったよ。
それに先生の意図した、やらなけりゃいけなかったこともやったはずだ――きちんとできたとは到底言い難いだろうけどな。
それでも死んだときに先生に合わせる最低限の顔くらいはあるはずだ――って、そもそも俺とアザリーの勝手がなけりゃ先生が
死ぬこともなかったと考えれば、こんなこと言ってる時点で合わせる顔なんざないか。

――しょせん、俺は玉の輿なんてガラじゃないのかもな。

17 名前:名無し客:2011/03/01(火) 07:07:17
真っ当に働いてお金貰ったこともあるらしいですが、その時の気分はどんな感じでした?

18 名前:名無し客:2011/03/01(火) 12:10:38
金貸しを営業できるほどのお金はどうやって稼いだんですか?

19 名前:名無し客:2011/03/02(水) 01:23:45
実に某所ではうひょーな展開になってますがオーフェンさん的に今までで一番うひょーだったのはどういう時ですか?


いや正直まさか3部、ねぇ
コケモモ様を信じていてよかったです

20 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/03/07(月) 23:21:19
……さすがに疲れた。
聖域での一件より疲れた、とまでは言わんが。


>>17
実を言えばまともな労働の経験がなかったから、「労働ってこういうもんか」的な目新しい体験、とでも言うのかな。。
基本的に15歳までずっと<<塔>>で生活してたからバイトの類も経験がなかったし、<<塔>>を出てからも
まあ色々経験はしたが、どれもこれもまっとうな働き口にありついたことはなかったからな。
あんまり大声じゃ言えねえが、武装盗賊団にいたこともあったんだ。
派遣警察の噂に名高い対武装盗賊戦闘課の連中とやり合ったことだってある。
さすがにあの時はその晩ちょっと落ち込んだ。
最年少の<十三使徒>になる寸前まで行った自分がここまで落ちぶれるとは、ってな。
今にして思えば自分で勝手にそういう道を選んでおいてなにを勝手に後悔してるんだかって他人事のように笑っちまうが。

基本的に魔術士なのに魔術士として仕事をすることは禁じられてる状態だったし、身元を保証するものや人もいなかったから
見つかる働き口なんてのは非合法すれすれ――か、それを通り越してまぎれもない非合法な仕事とか、そんなのばっかりだった。
さすがに殺人代行業務――まあ要するに殺し屋の類はしたことがないが、逆に言えばそのレベルの重犯罪でない、コギーの奴が言うところの
擬似合法チックな労働ばっかりだった。密輸とかな。

あげくトトカンタで始めたのは楽に儲かりそうだからっていうだけで安易に始めたモグリの金貸しだしなぁ。
これも当然まっとうな働き口とは言えねえだろうし別に言うつもりもない。

だからあの時はなんか新しい人生におけるなにかを見つけた気分というか……
いや、考えてみれば20歳にもなってそれまでまともに働いたことがなかったって
どんな人生だ俺はという気もかなりするが。

……なんでこんな人生送ってるんだろうな、俺。
改めて見直すとまったくろくでもないことばっかりだ。いや別に改めて見直すまでもなくろくでもないことばっかりだが。


>>18
そういうわけで、自前での資金を用意できる状態じゃなかったからな。
俺が営業した、というかしようとしたのは正確には金融業務の代理だ。

元締めから金を借りて、それを福ダヌキやらなんやらに貸し付けたんだ。
で、その中間マージンが俺に入ってくる……はずだったんだがな、うまくいってれば。

それが実際にどうなったかは……まあ、あれだ。
相手のいない「72時間水だけでどこまで飢えをしのげるか」サバイバルレース対決とかそういうことになったわけだ。
自慢にゃならんが、マジで餓死という二文字に到達しかかったのも一度や二度じゃねえぞ。

そういやティッシにも「あんたそんなことしてたの?」って呆れられたっけなぁ。
始めた時は楽だと思ったんだが――ってこんな台詞は仕事から生活から果ては人生まで、とりあえずみんなそう言うに決まってるんだが。

ったく、飯をたかりにいけばとりあえず食わせてくれる優しい知り合いがいる某魔導探偵がうらやましいよ。


21 名前:名無し客:2011/03/08(火) 00:01:27
オーファン?

22 名前:名無し客:2011/03/08(火) 01:14:30
お金を貸す相手の人選が間違い過ぎてたのは気のせいでしょうか……。

それはさておきアウトロー人生歩んでる人は生き延びると大成するというジンクスが。
もし無事に今の状況から抜け出せたら、改めてどんな仕事を始めたいと思ってますか?

23 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/03/09(水) 00:04:19
ちょっと前後するぜ。

>>22
そうは言うがな、こちとらモグリだぜ?
選べる相手の範囲なんてたかが知れてるってもんだ――と言いたいが、まあ今から振り返るとあまりにも
貸す相手の人選について考えなさすぎたのは否定のしようもないな。
特に不燃ダヌキとかな。物質崩壊撃ち込んで脅迫してもまだ返さないというのはあまりにも想定外だった。
知ってたら貸さない、というか間違っても係わり合いにならんように注意しただろーに。
そういやあの赤い魔法少女の子にも「おっさん考えなさすぎだろ」なんて言われたっけか。

しかもこのへんの話、ティッシの話を聞く限りじゃあ先生やフォルテはネットワークを通じて全部見てたみたいなんだよな。
さすがにトトカンタのあの破滅的な出来事が先生やフォルテに見られてたと思うとなんかこう……もぞっとする。
あれだけ大見得切って先生の制止を振り切って飛び出しておいてやってたことはアレかよ、というか。


今の状況を抜け出せたら、か。
そうだなぁ。魔術士なんだから普通なら同盟に復帰してなんらかの職に就くんだろうが、俺にその道はなくなっちまったしな。
その上<<塔>>にも戻れない。これは魔術士としては致命的だな。
これは実質的に俺がまともに社会復帰する道はもう残されてないと言ってもいい。
魔術士の身元を保証できるのは同盟だけだからだ。
そして身元が保証できない魔術士にまともな職なんてない。
魔術士であることをやめられれば普通の仕事にも就けるんだろうが、それは無理な相談だ。
魔術士をやめようっていうのは生まれ変わろうって言ってるのと同義だからな。

プルートーが健在なら本当に困った時は彼に頼って同盟に復帰させてもらうという手も最終的にはありなんだろうが、
噂じゃあ彼も俺と同じで王権反逆罪に問われてかつての地位を失ったらしい。
つまりコネに頼る路線もなしだ。

……整理していけばいくほど自分の立場がはっきりして嫌になるな、まったく。
つまり、仮に今俺にかかっている王権反逆罪が失効して指名手配が解除されたとしても、どのみち俺にはまっとうな職に就けるあてはないってことになる。

少なくともこのキエサルヒマ大陸にはもう俺の居場所はない、と言っちまってもいいだろう。
だからどんな仕事を始めるにせよ、まず大陸を出て行くしかないわけだが……それもなんとも途方も無い話だよな。

まあそのへんの現実味のなさを考慮に入れないとして、それで俺がやりたい仕事っつったら……そうだなぁ。
……教育、かな。
先生がキエサルヒマ結界の限界という破局に備えて俺たちを鍛えたように、俺も女神の再臨といういずれ訪れるかもしれない破局に備えて、それに対抗できる者を育てたい。
今度はしっかり教師をやってみせる、と誓えるほどの自信は到底ないがな。


しかしなんだな。
別に大成できなくてもいいから気楽にゆっくり暮らせる日は俺にゃ来ないのかね。

24 名前:名無し客:2011/03/09(水) 00:53:58
うおおおお! 我はぱなつぴかりのぱくじん!

25 名前:名無し客:2011/03/09(水) 13:04:41
まあ、開拓者って大抵は追い出されるか食い詰めて出て行った人物かですしね。
リスキーではあるけれど、一発逆転なら大陸の外を見てくるのもアリかと。

26 名前:名無し客:2011/03/09(水) 19:56:28
身体能力は突出していても戦闘訓練を受けていない「超人」と訓練を受けた「常人」が
白兵戦をやった場合、どちらが勝つ確率が高いでしょうか?

27 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/03/11(金) 00:57:19
>>24
まあ音声魔術ってのは声さえ出ればなんでもいいからそんなんでも別に困らないっちゃ困らないんだが……
そんな変な文句叫んでたら自分で自分の集中を乱さないか?
そうなったら構成が崩れて自爆して一巻の終わりだぞ。魔術士としてはこの上なく間抜けな死に方だ。

ただ変な呪文っていえばマリア教師の呪文も変わってるよな。
確か「色+現象」という名前だったはずだ。
「赤の刺激」とか「紅の疾風」とか。
他の教室の生徒の目からすると、あれって頭の中で「どんな色がどんな現象と組み合わさるんだっけ?」とか一瞬悩むんじゃねえのかって気がするんだが。
いや、それを悩まないよう自然に覚えられるまで反復するのも当然訓練課程なんだろうが。

でも俺もそんな長くて妙に持って回った言い回しの呪文いちいち覚えるの面倒じゃないか、って言われたことはあるからお互い様なのかな。
確かに擬似空間転移の呪文とかはそれこそ必死で何度も何度も暗唱して身体が自然に覚えるまで練習したしな。
何しろ構成が構成だからな。うっかりどこかをしくじればもうどこにも助かる余地なんぞなく一発で即死だ。
10メートル転移するのを間違って100メートル転移してみろ。減速して現実空間に復帰した時は摩擦熱でもはや骨も残らないはずだ。
まあ構成を安定させて、転移距離を絞ったところで移動先と自分の現在位置の間に障害物が立ってるのを見落としたまま発動したらこれまた即死するんだが。
これの見極めにも相当時間をかけて訓練したぞ。
今でこそほぼタイムラグなしに発動できるが、最初のころは「うわ、今構成を完成させてたら死んでた!」ってなったのは一度や二度じゃない。
とっさに見た先に障害物がないかどうかを瞬時に判断した上で瞬時に構成を展開し魔術を発動させる。
言ってるだけでどれほど難しいかわかるだろ。
だがこれが出来ないとこの魔術を活用することはできない。

実際、使いこなせればかなり応用が利くんだ。間合いの調節、緊急回避および離脱、姿勢の入れ替え、相手の意表をついての急接近、それに
そのへんにあるものをつかんで飛ばすことで弾丸として使ったりとかな。
ただこれが俺たちチャイルドマン教室の最秘奥になってるのは当然構成の難度自体の高さもあるが、スムーズに術自体を制御できるようになっても
今言ったように有効に効果を活用するのが難しいからなんだ。壁ひとつ、いや板一枚見落とすだけで術者が死ぬ。
さすがにほいほい公開したらまずいだろう。
相当慎重に訓練を重ねなければまともに使える構成じゃない。先生がこの構成を教えたのもたぶん俺だけのはずだ。
少なくとも他の連中が使っているところは見たことがない。
もっとも、どうもマジクの奴は俺が使ったのを見て一回使ったみたいだが……元師匠としてはぞっとしないね。
これほどの大魔術を見ただけで真似できるということと、こんな扱いの難しい魔術を安易に使っていたことがあるというふたつの意味でだ。

しかし呪文のシンプルさという点に関しちゃ、先生やアザリーやティッシは「光よ」って一言言うだけでパッと構成浮かべて発動させちゃうからたいしたもんだよ。



>>25
まあ実際のところ追い出されかかってる上に食い詰めた漂泊者以外の何者でもないからな、俺は。
それに大陸の外に出たい理由というのもあるにはある。

この魔王の力の持ち主に会いに行って、借りた力を返上することだ。

少なくともこの力は俺が自制している限りはこれ以上なにかを引き起こすことはない――が、正直なところ、
ありとあらゆる願いをありとあらゆる制約を無視して実現させてしまう万能の力なんてものを持っていて、
それをいつまでも自制し続ける自信はない。

誘惑にはかられる。ずっと。ずっとだ。

いつも思う。
ひとりでアザリーを追いかけたりしなければよかったんじゃないのかと。
そうすれば少なくともコミクロンと先生が死ぬことはなかったはずだ。
先生や教室のみんなと協力すれば、確実にアザリーをもとに戻すことができた――とまでは断言できないだろうが、
少なくともアザリーをもとにもどすのに5年も放浪してその挙句になんのとっかかりもつかめなかった、という俺が
実際に選んだ道よりはよっぽどマシな結果になったはずだ。
訓練課程を放棄したという意味でも、魔術士としての将来を捨てたという意味でも、それどころか
アザリーを救うという意味においてすら、結局あらゆる意味において俺は5年という時間を棒に振った。無価値に過ごした。無意味に過ごした。

それで俺だけが被害を蒙ったのなら、それはどこまでいっても俺の自業自得でしかない。それに文句をつけようってほど
俺は図々しくはない。

だがそのおかげでチャイルドマン教室は先生を失い、俺たち生徒はばらばらになった。

そう思うと、やり直せるのならやり直したい。死なせなくても良かったはずなのに死んだ人間を死なせたくない。
今度はもっとうまくできる。
そんな気が頭をもたげてくるのを抑えられない。

結局この衝動に負けていつか過ちを犯すんじゃないかって気がするんだ。
その可能性をゼロにすることはできない――この力が俺に憑り付いてる限りは。
ゼロにするには外の世界にいる魔王本人に会う以外に方法はない。

そのためには大陸から出るしかない――が、現状では当然大陸と大陸の外の間に交流はない。
開拓事業を起こして乗り出していくしかないんだが、こんなご時勢にそんな暢気なヒマと金を持て余した連中がいるのかね。
ま、いたらなんとかして話をつけるところなんだが、今のところは思い当たる節もない。

とりあえずは日々をしのぐだけになる――のかな。

28 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/03/11(金) 01:04:27
>>26
その問いは簡単とも言えるし難しいとも言えるな。

ただ答えとしては簡潔だ。そんなもん、どっちもどっちだ。
どうとでも転ぶし、どうとでも言える。

どれほど打撃の速度が速く、かつ威力が重くても打ち込む部位が間違っていれば有効打にはなりえない。
だが同じように、どれほど無駄のない動きで正確に急所に打撃を打ち込んだとしても、必要な筋肉の力が備わっていなければやはり有効打にはなりえない。

戦闘ってのは難しいものだ。
度胸、技量、制御力、筋力、瞬発力、臆病さ、運と偶然、まあとにかくたくさんのものをすべて取りこぼすことなく持って、かつすべてを発揮する必要がある――少なくとも勝つためにはな。
どれかひとつ欠けるだけで敗北ってのは簡単に起こっちまう。

その二者の対決なら欠けているものがお互い多すぎる。
不確定要素の塊と言ってもいいだろう。
もうそれは予測できるもんじゃないな。

それに有利不利ってのは相互に作用する。
例えば最大限に有効な打撃を与えるには、予備動作を挟む余地を除いた最小限の距離にまで迫るのがもっとも効果的だ。
が、最小限の距離にまで自分が相手に迫っているということは、同時に相手から見た時の自分までの距離も最小限しか残っていないわけだ。
これは絶好の攻撃のチャンスだが、同時に一歩間違えれば回避する余地もなく致命打を食らうピンチでもある、ということになる。

つまり片方が有利になっている時でも一枚めくればあっさりと逆転する。
これは技量が近いもの同士の戦闘でも当然起こりうることだ。
ということは技量に格差があってもやはり当然起こる。

生物として基本的に同じ構造をしている人間同士の格闘戦において、どちらか一方だけがリスクなく圧倒的に有利を背負えるということはほとんどないと言っていい。
一方的な有利不利の状態が発生するのは相手を転ばせた時と相手の背後を取った時くらいだろう。
従って自分は転ばない、後ろを取らせないようにしつつ相手を転ばせる、後ろを取ることを狙うのがひとつの基本になる。
だがこれも同じように、相手だって当然同じ事を考えている。
ここでも相互作用が発生するというわけだ。

ただこれは逆に言えば生物として同じ構造でない相手、たとえばレッド・ドラゴンなんかと戦う時だとこっちだけが一方的に不利になるということが普通にありうる、とも言えるわけだな。
根本的にもうどうしようもない次元の違う相手、というのも世の中にはいる。
その時はまあ戦術がどうの技量がどうのと言っても無駄だ。ならどうするかといえば、イカサマだな。
それすら通用しないことだって当然あるけどな。

そもそも戦術なんてかっこつけて言ってみたところで、実際にできることにそう幅があるもんじゃねえんだ。
どんな環境で、どんな距離で、どんな相手と、どんな目的で、どんなコンディションで、どんな武装で戦うのか。
これらの前提が重なっていけばその時なにをするのかが最善なのかはおのずと決まってくる。ひとつに限定されるところまでは行かなくても、
ある程度は絞られてくる。
あみだくじと一緒だよ。最初はいくつか選べても、それ以降の進む先は自動的に分岐していく。人生みたいなもんだな。

……戦闘イコール人生ってなっちまうのが魔術士というか暗殺技能者の性なんだろうか。
俺はそこまで自分が哀れな男だとは思いたくはない――が、思いたくないだけで事実としては俺はどうしようもなく哀れな男か。


っと。
話がかなり豪快に脱線したが、まあ結論としては一言「想定できない、しようがない」ってことになる。

29 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/03/13(日) 22:57:38
しかし何度見ても秋田スレの>>1は秀逸だな。
特に32スレ(秋田作品ネタキャラ四人集)と46スレ(秋田スレは半分ネタスレ扱いだ)、
73スレ(嘘と鎖骨)、74スレ(スーパーギガテクノロジックなスレッド)、94スレ(暗闇の中で)あたりがお気に入りだ。
嘘だが。

>>21
元はその名前だったらしいな。
原型になった話では6人パーティの冒険談で、俺はその中でいつも皮肉ばっかり言ってる魔術士。
まだこの時は俺は主役じゃなくて脇役で、主役は女だったそうだ。
おまけにこのパーティの中にゃボルカンとドーチンもいたらしい。
死んだ姉を生き返らせるための旅(しかも姉の名前はアザリー)をしている、っていうことだったらしいぜ。
で、だんだん書いてるうちにオーファンという男にばっかり焦点が当たり始めてそれが1巻「獣」につながる、ということらしい。
名前が変わったのはそのままだと語呂が悪いから、だったかな。

>>19
秋田はやるつもりがあったみたいだからいずれはやるかな、やってくれるといいな、くらいには思ってたが、
まさかこんなに早いとは思ってなかったよ。
ルヒタニ様でも汚染物質垂れ流しの神でもコケモモ様でも御使いでもLOVE・LAでも教祖様でも魔女シンシアルータでも
なんでもいいが、まあ拝んでみるもんだな。

30 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/03/13(日) 22:58:12
つづき)

一番喜んだ時、か。
そりゃあアザリーを見つけた時だろう。
世間のことを何も知らないガキがカッコつけて飛び出したはいいが、5年探し回ってまったくなんの手ごたえもなかったんだ。
そこにようやくアザリーを見つけることが出来た。こんなに喜ぶことはない。まさに俺の目的そのものだったからだ。

だが同時に落胆もあった。
5年かけて探し回ってもなにひとつ手がかりすら見つけられず、見つけられたのは結局ただの偶然の産物だった。
つまり俺のやったことがまったく無意味だったと明確に証明されてしまったんだ。
結局本物の先生と会話することはなかった――彼はアザリーに殺されてしまったが、今にして思うと
ある意味では会話する機会がなかったのは幸いだと感じる部分もないとは言い切れない。
先生はこういう時に、いや、こういう時じゃなくても、余計な世辞の類は言わない人だった。
明確に俺の選んだ道はまったく間違いで、かつまったく無駄だったと断言してくれただろう。
それを言われたら、どうかな。立ち直れないとまでは言わねえが、少なくともいい気分にはならないな。

31 名前:名無し客:2011/03/14(月) 19:04:21
自分の技量ではなく、仲間の技量を過大評価してしまうことも戦闘技能者としてダメでしょうか?


32 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/03/15(火) 22:07:58
(>>30つづき)
(答えが途中でブツ切れになっちまってるな)
その意味じゃあアザリーを見つけたのも心の底から純粋に喜べる、とは言い切れない。
結局俺が嬉しかったのは……そうだなぁ。


……トトカンタにいた時、餓死寸前のタイミングで飯を手に入れた時、か?


>>31
戦闘技能者としての意見が欲しいなら、どう考えても俺に聞くのは間違いだと思うが。
俺は5年も前に訓練課程を途中放棄した、今じゃ社会制度的には魔術士ですらないただの脱落者、漂流者だぜ?
暗殺技能者つっても一度も現役だったこともないんだ。
マリア教師やプルートーとか、他にもっと適切な意見を適切に解説してくれる適切な連中がいくらでもいるだろ。

……なんだ、それでも俺の意見が聞きたいってのか。
まあ、そこまで言うなら一応言うだけは言うが、あんまりアテにゃしないほうがいいと思うね。


過大評価ってことにかけちゃ、誰を相手にしても良くはないな。
自分の技量を過大評価する――これは言うまでもなく論外だが、仲間の技量を過大に評価するのはある意味自分を過大評価するよりまずい、とも言える。

簡単に言やあ、あまりにも仲間をあてにしすぎて行動しても相手も困るし、それはやがて自分に返ってくる。

例えばふたりで攻撃と防御を分担して担当して行動するとする。
攻撃役が障壁を出す側の技量を過大に信頼して、まったくなにも後のことを考えない、自分で自分の行動をフォローできる余力も残さない
最大限の出力で撃つ。
そしてその時、その防御を突破されて攻撃を受けることがあったとする。
そうなればまあ大抵は助からないな。確実に攻撃役は死ぬ。場合によってはふたりとも死ぬ。

で、この時攻撃役が死んだのは誰の責任になる?
フォローできなかった防御役か?それともフォローを期待しすぎた攻撃役か?
無論、一義的には不可能なフォローを期待するほうが間違っているのは言うまでもない――が、
それで仲間を死なせた側がまったく責任を感じずにいられるというのは不可能だろう。
理屈ではできもしないことを望まれても困る、自分はやるだけのことはやった――そう判断しても、
やはり感情では「自分の力が足りなかったせいで……」という自責は生まれるだろ。

自分を過大評価して、その結果自分が死ぬのは……まあ、そうだな。仕方ない、と言っていいだろ。
それは自分の責任だ。自業自得って奴だな。
俺は――いや、俺たち魔術士はそれに文句をつけようってほどには愚かな連中じゃあねえよ。
魔術士の理念ってのは、難しいことをあれこれ言う奴もいるが、ひらたく言えばとにかく自立と自制だ。
自分の行動は自分で制御し、自分で責任を持つってことだ。
その意味では自分の行動の結果、自分だけでは責任を背負いきれないようなことを招いた俺は本来の意味では魔術士とは言えないのかもしれないが……それはまあ置く。

だが仲間を過大に評価するのは時として自分の行動の結果を仲間の責任にしちまう。
それはただ自分の死に繋がりかねない、っていうだけじゃない。
その自分の死を他人の責任にしちまいかねないんだ。
それは自分の失敗を他人に押し付けるってことだ。
自業自得で済まなくなるってわけだな。

他人を信用しすぎるな、っていうような簡単な理屈じゃない。
いや、それよりもっと簡単な理屈か?
要するに他人に迷惑をかけることになるからそれはやめろ、って話だからな。

まあダメかと聞かれたらダメだとしか言いようがない話ではある。

33 名前:名無し客:2011/03/16(水) 22:08:23
そういや長年の謎なのですが「構成」ってどんなもんなんですか。
光熱波撃つイメージとかってどんな感じに見えるんでしょう。

34 名前:名無し客:2011/03/17(木) 20:45:30
貴方にとって「魔術」とは、何ですか?

35 名前:名無し客:2011/03/22(火) 21:57:46
お茶でもどうぞ。

36 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/03/25(金) 21:23:28
>>33
またえらい難題だな。
構成とはどんなものかってのは正直魔術士なら説明しなくても分かるのが当たり前だし、
逆に魔術士でないならどこまで説明しても分からないのが当たり前なんだ。
生まれつき腕がない人間に拳を握る感覚とはなにかを伝えようってのと同じだ。

光熱波を撃つイメージってのがどんな感じなのかは簡単に言えば、というより簡単にしか言えないな。
そのままだ。光熱波を撃つ感じだな。
……トートロジーだと言われるのは分かってるが、これ以外に言いようがないんだ。
熱量を持った光波を指定した空間から発生させて目標を撃ち抜くイメージ。

構成ってのは要するに魔術の具体的な設計図だ。
光熱波なら、どれくらいの熱量で、どれくらいの範囲を狙って、どこを狙って発生させるのか。
そのイメージ――妄想と言い換えてもいいが――の集合体だな。

このイメージが具体的でなければ魔術は発動しない。
よくわからない現象をよくわからないまま発動させるってのはできないんだ。

そして当たり前だが目標を焼くほどの熱量を自分の傍から発生させたら自分も焼かれる。
それを防ぐためのイメージもまた織り込む必要がある。
ちなみに自分を焼かないための変則パターンとしては、発生位置をずらすって手もあるが面倒なんでそれはあまり好まれないな。

それらすべてをひとまとめにしたワンパックのものを指して俺たちは「構成」と呼んでるわけだ。
いかに無駄なく力を発揮できるかっていうだけじゃなくて、この構成をどこまで素早く展開できるかも魔術士としての技量のひとつだな。

当然、複雑な効果を作る魔術になればそれに応じてイメージも複雑化する。
擬似空間転移や物質崩壊、意味消滅、自壊連鎖あたりはきわめて難解だ。
見習い程度の魔術士には構成を解読するのも難しいだろ。
実際、チャイルドマン教室に入った最初の頃の俺にゃ先生の使う構成はほとんど理解できなかったしな。
……マジクの奴は一度俺が使うのを見ただけの擬似転移を失敗なしに使ったっていうのがアレだが。

先生の魔術は構成に無駄がなく、非常に絞られたもので、それでいて密度が高い。おまけに展開が異常に速かった。
当時の俺たちには遠く及ばない領域だったと言っていい。

で、そのイメージの集合体を完全に記憶し、必要に応じて瞬時に展開するのが魔術士に求められることだ。
集合体の欠片をいちいちひとつずつ展開していたら日が暮れちまうからな。
もちろんひとつの構成を記憶すればそれで終わりじゃない。
熱衝撃波、空間爆砕、防御障壁、照明、破壊振動波、電撃、火炎……まあ一人前として認められるためには
それなりの種類の構成をすべて記憶して、かつそれらを混同することなく局面に応じて瞬時に引き出さなけりゃならない。
場合によってはここに擬似転移や物質崩壊も加わることになる。


……うーむ。
正直、これはうまく説明する自信がないな。


>>34
魔術ってのは俺たちにとっちゃ手足みたいなもんだ。
生来、特殊な能力を備えて生まれたものは自然とそれに頼って生きていくことになる。
自分の足で歩くことを自分の足に頼りすぎて情けないって考えるのはただの偏執狂だろ。
魔術士ってのは生まれてから常に魔術とともにあり、死ぬまで魔術士であり続ける。
そういうもんだ。
俺たちの魔術はあくまで先天的に遺伝するものだ。
これは生まれつき備わっている感覚であり、そして生まれつき備わっている感覚であるということは生きている限り決して捨てられないということだ。

だが魔術ってのは、見ての通り本来人間が扱うにはちと威力がでかすぎる。
熱衝撃波を直撃させれば容易に死ぬ。
そして制御をしくじってバックファイアが起きれば今度は容易に術者自身が死ぬ。
だから魔術士は一度は自分がそういう力を扱うことに恐怖を抱き、魔術を使おうとすることに極端に臆病になる。
「魔術士の憂鬱」ってやつだな。
力がひとつ多いってのは、責任がひとつ多いってことでもあるわけだ。
だから魔術士ってのはどうしてもその責任の多さに悩まされることになる。
だがこれは避けるべき症状かといえばそうとも言えない。
むしろ術者として熟達するためには必ず経験しておかなければならない――いや、この言い方も違うな。

魔術士の憂鬱を経験しない術者なんてのは、熟達するほど長生きできないんだ。
それは恐怖を知らないってことだからな。
恐怖を知らなければそれに備えることなんてできやしない。
自分の力を恐怖するからこそ、それを制御しようという発想に繋がるわけだ。
自分の魔術は自分で責任を持って自分で制御するということだ。
それがないってのはただ単になにも考えないで魔術を撃ってるだけだ。そんな術者はいずれ自分の術を制御し損なって死ぬ。絶対にな。

勿論俺にも経験がある。マリア教師やプルートーほどの強大な魔術士だって経験したはずだ。先生でも例外じゃないだろう。
アザリーやティッシにだってあったはずだ。

そして今だって当然魔術を使うことに恐怖はある。
これは絶対になくならないだろうし、なくそうなんて思ったこともない。
俺は自分が賢い人間だと思ったことはねぇが、だからって進んで馬鹿になりたいと思ったこともない。

魔術を制御する。
これは俺たち魔術士にとっての本質であり、それと同時に生涯に渡る課題というわけだ。

性別も年齢も才能も環境も関係ない。あるのはたったひとつのことだ――
制御できなければ死ぬ。
ただそれだけだ。


世界を歪め、破局をもたらし、絶望を生み、奇跡は消え、神もいなくなった――救いも報いも裁きもなくなった。
その末に得たのはそういう阿呆な力だ。本来人間の――いや、生物の手には余る力だ。

だがそんなものでも、生まれてしまったものだ。
殺しても壊しても一度生まれたものが消えることはない。

だから拒絶することはできない。しても意味がない。
一生を遺伝子に刻まれた呪いとともに生きていくより選択肢はない。

どんなに馬鹿げたものであっても、それを持って生まれた以上は付き合っていく以外他にはない。

俺にとっての魔術ってのはそういうものだ。

37 名前:名無し客:2011/03/27(日) 20:20:12
スピードやパワーに任せて突進して獲物を振り回したりするのと
剣術や体術などの接近戦技術はどう違うのか、素人にも分かるように教えてください。


38 名前:古戸ヱリカ ◆GOOD74TDuo :2011/03/29(火) 21:41:44
私が立ち去る前に、少しだけ寄り道をさせていただきます。

こんばんわ、キリラ……オーフェンさん。
いや、私としては、あまり猫とか犬とか昆虫とか、
そんなサムシングを食している人とお知り合いになるのは避けたいところでしたが、
知り合ってしまった以上、仕方ありません。仲良くしていきましょう。

というわけで質問です。
あなたが今まで出会った中で、二番目の変態は誰でしょうか。

……何故、一番目ではなく二番目なのかというと、
この古戸ヱリカの灰色の脳細胞にかかれば、
一番目は誰なのかは考えるまでもなく分かってしまうからです。

39 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/03/30(水) 17:38:23
>>35
……好意でくれるものにこんなことを言うのはひどく失礼だってことは分かってるが、それでも念のため聞かせてくれ。

これ、毒が入ってたりしないか?

ないか。
ないならいいんだが、俺も今は色々狙われる身分でね。
待ち伏せ、仕掛け矢、落とし穴、地雷、そういうのにゃ事欠かないんだ。
おかげでうっかり気を許すってこともできやしないときてる。
ま、気を悪くしないでくれ。

あー。うまいな。
茶なんてもう随分飲んでなかったからなぁ。
何しろ聖域の一件の後から向こう1年弱、ひたすら賞金稼ぎやら殺し屋やらと取っ組み合いしては追いかけっこしてはの繰り返しだったからな。
王都も気が長いよ。いつになったら諦めてくれるんだか。
<<十三使徒>>が壊滅し、その上生き残ったプルートーたちもタフレムに逃げ込んだ今となっちゃそうたいした人材も残ってないのか、
コンディションが万全とも言えない俺でもしのげる程度の奴しか来ないってのは救いだが……

ふう……ありがとう。少し落ち着いたよ。


>>37
どんな武器を使うにせよ、戦闘技術が目指す極地ってのは極めて簡単だ。

「触れずにその場から一歩たりとも動くことなく倒す」。

だがこれは目指す理想の中のそのまた理想であり――そして同時に駄法螺でもある。
理想に対して現実はその何歩か前、いや何千歩も前で完成する。
現実的に可能なのはせいぜい

「最小動作の最大速度で最短距離から最大威力を最大急所に」

ってとこだろう。
だがこれですら実際には非常に難しい。威力を求めれば動作は自然と大きくなり、助走距離も伸びる。
逆に動作をコンパクトに、距離を絞ろうとすれば威力が落ちることになる。

それらのせめぎあいの中でどれだけ全ての要素を高次に両立させるかというのが戦闘の技術、というわけだ。

拳術にせよ剣術にせよ槍術にせよ棒術にせよ、「相手をいかに倒すか」という最終目標に関してはこれは共通する。
ジャック・フリズビーがあれだけ強かったのも道理にかなってる。奴はまさにその「最小動作の最大速度で最短距離から最大威力を最大急所に」という戦闘技術の
理想に対して極端なまでに忠実だったからな。
あれほどの使い手はそうはいない。プルートーですら一度は遅れを取ったし、俺なんてダミアンが蘇生したから生きてるだけだ。
マリア教師じゃあ太刀打ちできないだろう。
奴を倒せそうなのは――コルゴンくらいだろうな。

それはともかく。

むろん得物が変われば間合いの取り方、敵の攻撃のいなし方、反撃の仕方といったもろもろの要素は当然変化するし、
「どんな攻撃が最大威力か」という点も変化する。
剣なら刀身による打撃によって相手の骨や内臓を破壊することを狙うのか、刺突で急所を一点に突き刺すことを狙うのか、
あるいは刃で切り裂くことで出血を狙うのかといったように攻撃方法が分かれていく。ひとくちに最も効率の良い使い方が決まるわけじゃない。
まあ俺は剣は本格的に習ったわけじゃないからそう詳しいことは言えんが。


つまりは「いかに持っている武器を無駄なく使って無駄なく攻撃し、いかに無駄なく相手を倒すという結果を引き出すか」というのが剣術や体術といった技法だな。


それに対して身体能力に任せて得物を振り回したりってのはもう文字通りだ。
ただ振り回してるだけだな。
どれくらい助走してどれだけの筋力でどの角度から敵のどこをどう打つのが最適かとかこの打ち方では逆に自分の得物にダメージがいかないかとか、そういうことを一切考えてない。
人間の身体ってのは意外と難しいんだ。
平常心と基本姿勢を保ち、適切な予備動作を経て筋力を無駄なく発揮し有効な角度から急所を的確に打つことで初めて相手を倒す威力がある一撃を生むことができる。
つまりただ勢い任せに突き進んで得物をぶんまわすだけじゃあそうそう有効な一撃にはなりえないってわけだな。
迂闊に一撃すれば逆に自分の得物が傷つきかねない。
拳で頭蓋骨を思い切り殴りつけてみろ。傷つくのは自分の手だぞ。
剣だって迂闊に振り回せば刃が欠けるし、刀身も歪む。絶対に欠けないし歪みもしない粘性と強度がある剣を使ってるってんなら話は別だが。

接近戦用じゃないが、その意味では銃は比較的ほかの武器より楽だ。
どこを狙おうが――そもそも銃で特定の部位を狙うということがお互いに動き回っている戦闘中において可能なのかどうかという問題は置くとして――弾が当たりさえすれば
たいていは出血とショックで殺せる。殺せないにしてもそれに近い致命傷を負わせることができる。
とりあえず弾を込めて、狙いを正確に定めて、引き金を引くという3つの手順を踏みさえすれば確実に殺せる――臆病者をも殺人者にするということにかけては他の武器にはないアドバンテージがある。
剣のように斬る時刃を立てる角度がどうとか、体術のように拳・肘・つま先・かかと、どの部位でどこを打てばいいのかとかそういうややこしい心配は一切いらない。ただ弾丸を当てさえすればいい。
拳や剣と違って弾丸の威力は重甲冑でも完全に殺し切ることはできないしな。
そういう意味じゃ、銃の訓練ってのは楽でいいよ。整備を除けば、やることは非常に少ない。結局は右手で持ち上げ、左手を添えて、しっかり保持した上で、狙いを定めて、人差し指を少し動かす、というだけだからな。
足首の曲げ方、脚の動かし方、腰のひねり方、肩の振り方、肘の曲げ方、拳の作り方、と簡単にざっと思い浮かぶだけでもこれだけの複雑な過程を経なければならない拳法とは比較にならない。
それに拳銃弾、より正確には狙撃拳銃の弾丸の弾道の安定性と低伸性がもたらす命中率はきわめて高い。引き金を引いたとき、銃口が敵のほうを向いてさえいれば必ず当たると言い切っても過言じゃない。
そしてさっき言ったように、当たればそれで事は済む。
ただ銃の場合は構造的に暴発という他の武器にはないリスクがつきまとう。
これは見た目からでは判断しようがないし、そもそも暴発するかどうかは実際に撃ってみるまでは決して判別できない。
暴発しないことを祈りながら撃つより他にない。
これは射撃者がどれだけ訓練しようがどうしようもない。本人の意思も、希望も、それどころか技量さえも入る余地がない。
そして暴発が起きれば、攻撃が失敗するというだけにとどまらないかもしれない。射撃者本人を傷つけることもある。
まだまだ銃は技術的蓄積・改良の余地があるな。他の武器、そして魔術を代替するまでには及ばない。
それでも最近じゃ、騎士団に狙撃拳銃が普及してるせいで魔術士の非魔術士への優位性は少なからず崩されてるみたいだが。
あれは<<塔>>の最機密だったはずなんだが、どこから漏れたんだか。まさかティッシがあの時ヘイルストームを外に持ち出したからってわけでもないだろうし。

……そういや王都で会ったイザベラは見たこともない妙な銃をコルゴンが使ってた、とか言ってたな。
あれがもし量産され普及すれば魔術は今度こそ完全に代替される、とも。
確か、施条銃、と呼んでいたはずだ。
数百メートルという長距離から正確に狙って撃つことを可能にした銃だとか。
ただ魔術以上に極端に高い集中力を必要とする上、それを作らせていたのは領主だったらしい。
その領主は聖域で死んだし、最接近領も壊滅してる。それもただ「壊滅した」んじゃない。文字通り、全員殺された。
最接近領の側から技術が漏洩する可能性はない。
そして<<十三使徒>>の彼女も知らなかったってことは貴族連盟の側が作っていた可能性も考えなくていいだろう。
そうなれば少なくとも近いうちにその銃が普及することはないはずだ。
ただもし万が一にでもそれが本当に作られて、使われたらどうしようもないな。防ぐ術はない。


話がかなり長くなったが、ただ簡単に言うなら「無駄と効率」の一言に尽きる。
それに対して技術ってのは無駄をいかに減らして効率をいかに高めるか、その二点だな。

40 名前:名無し客:2011/03/31(木) 07:08:31
つまり最強は遠くから相手を呪い殺す事になると。
……あれ、何か違う?

41 名前:名無し客:2011/04/06(水) 22:43:21
戦いに信念は必要ですか?

42 名前:名無し客:2011/04/07(木) 22:30:26
銃器の類が進歩するなら魔術もまた進歩するとか考えた事はないですか?

43 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/04/08(金) 01:22:36
>>38
よう。あんたか。
今じゃあ指名手配犯オーフェンで通ってるからな。その名前で俺を呼ぼうとする奴もいない――なんだか懐かしい気分だよ。
それも変な話だが。

……まあ、そのへんのあれこれは1年半前の忘れたい出来事っていうか。
とりあえず触れないでくれ。俺も触れたくないんだ。
さすがに今はもう猫だの犬だの昆虫だのは食ってない。まあそれほどあの頃に比べてマシな食生活ってわけでもないけどな。

つってもまあ馬鹿にするな蔑むなとは言わないし言えないが。まさか俺の人生を振り返って、他人に嘲笑してくれるなとは言えねえよ。

変態。変態ねぇ……まあ色んな奴に出会ったが。
嗜好的に変態なトトカンタの連中、生物学的・肉体的な意味で変態だったジャック・フリズビー、そもそも人間ですらない上に獣化魔術で自分の肉体を自在に
変態させられるレッド・ドラゴン、まあ色々いたな。
その中で二番目か。意外と難しいな。

というか何を基準に「二番目の変態」と決めるのかが問題だよなぁ。
さすがにジャックと飛び降りたり死んだ魚でレスリングする連中を同じ枠でくくるのは何か違うだろという気がするぞ。

まあ直感でびびっと決めちまおう。考え出すとキリがねえし。
……しかし、変態の引き出しがやたら多い人生っていうのもなんというか非常にあれだな我ながら。

元締めだな。
あいつが二番目に変態だ。
印象に残るインパクトがあって、かつ人間としてそれはどうなんだって奴としてはあいつだろ。

>>40
呪いってのが本当にあって、かつそれで現実世界の実在に対して致命的な影響力を及ぼせるなら、間違いなく最強はそれだろ。
戦闘技術も精神力も身体能力も、それどころか魔術すらも一切関係がない。
少々文明的じゃあないがな。

ま、もうちっと現実的で、文明の進歩に意欲的なら、魔術士とは争わずに金で第三者を雇ってそいつにやらせるとか、
心を抉る一言だとか、そういうことになるな。
どの方法も魔術では防ぎにくい……ま、最良の方法はもちろん最後のものだが。

もっとも、真に一番文明的かつ賢明で効率がいいのは無論、言葉で平和裏に解決して争わないってことだが。
危険もないし、物だったり命だったり、まあとにかくなにかが壊れることもないし、そして――これが何より重要だが――遺恨もない。少なくとも直接殺し合うよりはな。

どんな手段がどれだけ強いとか、そんなことにたいした意味はないよ。
解決したいならもっと選ぶべき手段が他にある。

>>41
いらんとは言わんが……なくて困るってこともないだろ。
少なくとも戦いには信念よりまず先にいるものが山ほどある。

まあ戦うには士気が必要で、士気を保つためには戦う動機が必要で、動機はつまり信念から生まれる、とこう考えていけば
信念も必要なもののうちに入るのかもしれんが。

ただまあ、信念があれば勝てるとかそういうことはないな。間違ってもない。
それで勝てるなら5年10年とえんえん人生の貴重な時間を戦闘訓練に費やす必要はないし、世の中の物事はもっと楽に進む。
聖域に向かった<<十三使徒>>に信念がなかったわけはないが、それでも彼らはほかにすることがないからというだけで戦っているレッド・ドラゴンに手も足も出なかったんだぜ?

そもそも信じるなにかがあれば勝てるっていうなら、信じるもののない俺たち魔術士はとっくにドラゴン信仰者やキムラック教会に根絶やしにされてるだろ。
彼らは間違いなく俺たちより確固とした信念――つまり魔術士をこの世から滅ぼせという信念のもとに生きてる。
それでも俺たちが現代まで絶滅せずに生きてられるのはひとえに魔術士が魔術を持たない人間よりは強かった、というたったひとつの事実に帰結する。
他にもいろいろと理由はあげられるだろうが、少なくとも信念の差じゃあないのは疑いない。

実際問題として、本当になにひとつ信じるものなしに生きていくのは難しい――
だが信念で戦うのはそれよりもっと難しい。

それに俺はこう思うんだ。
信じれば救われるとか、戦いに勝てるってことはない。

だが本当に大事なのはそこじゃない。

信じたって救われないし、それで勝てるということもない。
信じれば必ず裏切られる。失望する。
信じようとして証拠を求め、証拠にも証拠を求め、やがて結局はなにも信じられなくなる。

だがそれでも、それを分かった上で、それでもなおなにかを信じられる奴だけが前に進めるんじゃないか――ってな。

44 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/04/08(金) 22:34:45
>>42

そりゃ、魔術だって当然進歩するさ。
少なくともこの200年間にかけては銃器の進歩よりは魔術の進歩のほうが早かったわけだしな。

魔術構成理論が整備されていなかった初期の頃は、人間種族には魔術の完全制御は不可能であるという説が有力だったんだ。
ただ大陸魔術士同盟が設立され、魔術の研究が進むにつれて制御理論も進歩し、決して人間にも不可能ではないとされるようになった。
最初期には熱衝撃波、防御力場、治癒くらいしかなかった音声魔術に、反応強振動や重力中和、自壊連鎖といった複雑な構成の術が編み出されたのもその頃だとされてる。
確かに魔術は大きく進歩したと言っていいだろう。

だがこの先はどうだろうな。
俺の先生であるチャイルドマンは黒魔術の到達点である3つ、「意味の消失」「物質の崩壊」「波動の停滞」を定義したわけだが、
つまりそれは黒魔術の限界点を定めたのと同義だ。
実際、意味消滅や物質崩壊を超える破壊力を持つ魔術が今後生まれるとは考えにくい。
もっともこんなことは後になってみればあっさり覆るような話だと言われればそれまでなんだが……

少なくとも現状では発見されていない全く新しい理論を発明するか、あるいは従来の魔術に対して異なる方向からのアプローチによる
解釈を加えるかといった画期的ブレイクスルーが生まれない限りはこれ以上の魔術の進歩は難しいんじゃないか?
それかまったく未知の第三者が俺たちに既存のものではない新しい術を授けてくれる、とか。

小手先の改良すべき余地なら俺でもこの場で今すぐ思いつくけどな。
障害物を越えられない上に10m程度しか移動できない擬似空間転移の改良とか。

それにどれほど魔術構成が進歩しても、「声の届かない範囲には魔術の効果が及ばない」「魔術の効果を具現化するためには声を出さなければならない」という
根本的な制約を打破することは原理的に不可能だ。
仮にこのふたつの制約を覆すことがあったとしても、それは魔術の進歩じゃない。変質だ。その時はもう「音声魔術」じゃなくなってる。

まあ、<<牙の塔>>にしろ、<<スクール>>にしろ、そんな俺でも考え付く程度のこんな話を正統な魔術士たちが気づいてないわきゃないだろうし、
そうなれば当然このデッドロックを克服すべく色々と研究はしてるだろうから意外とあっさりなんとかなっちまうかもしれないがな。

45 名前:名無し客:2011/04/09(土) 01:32:26
不動産持ったらオーフェン・フィンランディになるの?

46 名前:名無し客:2011/04/09(土) 13:10:31
破壊力以外だったらまだ伸びる気はするけどなあ
例えば対バックファイア用の防壁なんかを一緒に組めれば
安全性上がると思うんですが

47 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/04/09(土) 23:21:14
>>45
まあ、今更この期に及んでキリランシェロ・フィンランディと名乗る気はしない――とはっきり面と向かって言ったのに
最接近領で再会したティッシは普通に俺をキリランシェロと呼んでくれてたが――し、名前はもう俺は死ぬまでオーフェンだよ。

ただ苗字はどうだろうな。確かに持ってくるとしたらフィンランディ姓を持ってくるより他にないんだが――わざわざさらに苗字まで自分で考える必要性はさすがに感じないし、
別にフィンランディの姓を持ってくることに拒否感があるわけでもない――まあ一応可能性としては物理的にありえなくもないと断言できない程度の余地は残されてるんじゃないかと
いう気がするかもしれないという錯覚を覚えるくらいの話としてだが、俺が将来どっかの不動産を持つ家に婿入りするかもしれねぇし。

……考えてみりゃ、その可能性うんぬんの話をすれば俺ってマクレディ姓を名乗っていたかもしれないんだよな。
まあ、現実味はまったくないが。

そりゃあガキの頃からティッシはずっと美人だと思ってたぜ?
ハーティアやフォルテ、果ては先生にまで「ティッシって美人だよね?」って聞いて回ってたのはアレな思い出だよ。
だからってティッシから「あなたと結婚するのもいいかなって思った」って言われた時はさすがに反応に困ったぞ。

血はつながってないったって、仮にも姉貴だぞ。
ここだけの話ガキの頃に彼女の着替えを覗いたことも実はあるんだが、だからってさすがにそういう目でティッシを見たことはねえ。付け加えればアザリーもだ。

でもあそこであんなこと言ったってことは、逆にティッシは俺をそういう目で見てたってことだよな。
まあ今更そんなことで引いたりはせんが……なんていうか、驚くというかむしろそれこそどう言ったらいいんだか。
俺だって男だし、ああいう掛け値なしの美人――だと信じてるのは実を言うと今でも同じなんだが――にそう言ってもらえて嬉しくないってこたぁないが、
それでもどっちかといえば困惑のほうが先に立つな……

タフレムでティッシと結婚してふたりで暮らしてる俺、ねえ。
…………まるで想像できねえ。ある意味暗殺技能者でも魔術士でもない俺を想像するより難しいぞ。

とりあえず今は苗字より不動産より何より安心して寝られる場所が欲しいよ。


>>46
一番簡単な魔術とも言える熱衝撃波でさえバックファイアの危険性は常にあるんだ。
となれば当然、魔術構成理論というものが生まれた時点でそういう認識はあったよ。

にもかかわらず200年も経ってもそれが実現しなかった理由ってのはしごく簡単だ。
ひとつの構成の中にふたつ以上の効果を織り込むのがきわめて難しいからだ。
発想としちゃ、それは攻撃しながら防御する、あるいは防御しながら攻撃するっていう戦術のひとつの理想形だが。
およそ人間が持ちうる戦闘技術としては最強――ただし最良とは言いがたいが――のものである魔術をもってしてもそれを実際に再現するのは、少なくとも現状では不可能だという見解が主流だ。

これは擬似空間転移が魔術の中で最上級の難度に位置づけられてるのとも関連してくる。
擬似転移はまさに、ひとつの構成の中に複数の効果を織り込む――自分の質量を擬似的に零にするというひとつの作用の上に、
莫大なエネルギーでの加速をかけるというもうひとつの作用を重ねるという魔術だからだ。
欲を言えばここに摩擦熱や障害物との衝突に備えた防壁を加えるか、あるいは障害物自体を透過するような作用を追加できればさらに実用性は上がるんだが、
先生ですらそれを実現させることはできずじまいだった――彼もそのことをなんとか改善すべきではないかという認識自体は無論あったんだが。

このひとつの構成に複数の効果をってのは魔術構成理論の研究者たち――広義ではそこにはチャイルドマン教室、マリア教室、ウォール教室といったどちらかといえば戦闘技能者たちも含まれるわけだが――にとっては長年の難題になってる。
言うように、バックファイアに備える防壁を編み込めれば魔術の実用性は飛躍的に向上する。
魔術がなにゆえ扱いが難しいのかといえばつまり究極的にはバックファイアのリスクが常に付きまとうという一点に集約される。
それを克服できれば魔術を扱う上での最大のデメリットは消滅する。
構造上どれほど単純化しようが不発暴発の可能性をゼロにはできない銃の存在をまったく無価値に――はできないだろうが、少なくとも相当程度陳腐化させられる。

ただ現状ではその方向でのアプローチも実現の見通しが立ってないのも事実なんだ。
これを克服できれば大きな進歩なんだが……

48 名前:名無し客:2011/04/14(木) 18:59:52
お知り合いに「普通の人」はいますか?

49 名前:名無し客:2011/04/17(日) 22:16:25
魔術で身体能力強化とか出来ないんですかね。(某所のやり取りを見つつ

50 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/04/18(月) 19:35:53
>>48
普通の定義にもよる。
魔術士でない一般人という意味ならクリーオウやマギー姉妹がそうだし、サルアやメッチェンらキムラック教徒も一般人だ。
まあ死の教師、つまり魔術士専門の殺し屋が果たして「一般人」かという問題があるが、俺たち魔術士にとって魔術士でない
人間ということでは同じ一般人だわな。

この魔術士と非魔術士という非常に大雑把なカテゴライズで世間を図るってのは典型的な魔術士の悪癖で、それがまさに俺たち魔術士、ひいては魔術士同盟が
閉鎖的であると内外から指摘される原因なんだが、そう指摘されているのに改善されないのはその大雑把な尺度がどうしても最初あるいは最後の一線において
両者を決定的に隔てる壁になるからなんだな。

魔術という力を扱い制御しなければならない魔術士と、その力がない一般人ではどうしてもメンタリティに差が生まれる。
まあ簡単に言えば魔術士はあまりに思考が合理主義的で、かつ殺伐としてるってことだ。
俺たち魔術士特有――と知ったのはそんなに昔でもないが――の倫理である性差廃絶主義なんかはそれが端的に表れた例と言える。まあこれはわけても大陸西部の魔術士特有ってことらしいが。
そして魔術士は後述するが魔術士のみで構成されたコミュニティの中で生きるのが多数だから、そういう自分たちの思考が一般人に比べて異なっていることに気づきにくい。かくいう俺もだったしな。
他にも色々要因があるが、手っ取り早く言えば、これが「魔術士の閉鎖性」の端的にして最大の証拠だ。

で、魔術士特有の通念ということでは、例えば友人が目の前で死んでも自制を失わない冷静さを常に持つことが魔術士には求められる。
これは上で触れた、魔術士個人としてそうしなければやがては魔術を制御できずに自分の術で死ぬ、というだけのことじゃない。

俺たちの魔術は個人の枠を超えて容易に社会そのものを変革させかねない力になりうるが、そんな力を持った上でなお社会に参画して生きていこうと思えば、
それに見合った自制が社会の側から求められるからだ。
そうでなければ社会に適応できないし、それ以前に参画することを認められない。まあ、簡単に言えば村八分に合う。
このこと自体は別におかしいとは思わない。むしろ当然だろう。

で、そういったややこしい社会的束縛を嫌う魔術士は多数派ではない――でなかったら魔術士は社会的に存続できない――が、いないかといえばそうでもない。
コルゴンがいい例だが、魔術士によるコミュニティの閉鎖性を嫌って外に飛び出す者も実のところ少なくはない。
ただまあ既存の魔術士のコミュニティを嫌ったところで、魔術士が魔術士でない一般人で構成されるコミュニティに参加できるわけでもなし、
結局は世捨て人として隠遁生活を送る、とかそういうパターンが多い――らしい。
そもそも魔術士によるコミューンが持つ閉鎖性を嫌って外に飛び出した魔術士って言やあ俺だってそのひとりなわけだしな。
で、結局ぎりぎり残ってた上級魔術士の資格はおろか、魔術士同盟の籍すら剥奪されたし、どのコミュニティにも参加できずに見事に落伍者になったわけだ。
以前も触れたがつまり今の俺は社会的には死んだも同然だ。

もっとも中にはそれでは済まずに積極的に反社会的行為に走る者もいる。ひらたく言やあテロリストだな。ある意味ではコルゴンもそれに近かったのかもしれない。
有名なところではミリオンジェノサイダーと呼ばれた弓聖ケシオン・アレイクムことケシオン・ヴァンパイアがそうだ。
彼は稀代の殺人鬼であり、同時に屈指の魔術士であり――そしてこれはまだ純粋に俺の推測でしかないが、どうやら俺にとっては先代、先輩にあたるようだ。

……それはともかく、そうなると魔術を持たない一般人には恐るべき暴力と悪意の象徴となる。
魔術に魔術以外で対抗できる術は、少なくとも現在に至るまで普及はしていないし、そうなるとテロリストと化した魔術士に対抗できるのは同じ魔術士しかいない。
そこには残された魔術士が妙な同族意識で社会的不穏分子と化した元同輩に対して過度に好意的に接したりしないか?という非魔術士にとっては比喩でもなんでもなく致命的な問題が生まれるわけで、
それは魔術士の側の良識に期待する以外どうしようもない。非魔術士にとっては自らの財産生命がかかっているのに、彼らが自ら主体性を発揮して解決する余地はどこにもなく、
その彼らの財産生命その他もろもろはすべて"良識"というあやふやで漠然とした信頼に値しない二文字にかかってしまう。それも最悪なことに他人の――――自分たちより圧倒的に強大な力を持つ他人の良識にだ。
これが非魔術士から魔術士を見たときに嫌悪感、いや、恐怖感を感じる根源だわな。
かつての「魔術士狩り」は先生の盟約を葬るための聖域の扇動という側面が大きかったが、こういう構造的かつ根本的な問題があるからこそ扇動された当時の一般人たちも話に乗ったんだろう。

こうやって改めて冷静に整理してみると、確かに俺たちの存在自体が人間社会にとって致命的な危険であるという声が減りこそすれ途絶えることがないのも、許容することはできないが理解はできるな。

今でこそ本格的な反魔術士運動は少なくとも200年前に比べると鳴りを潜めたが、それでも少数の魔術士が残る大多数の非魔術士に対して支配的な優位を占めているという構造は残っている――むしろその点はかつてより強化されているとも言える。
その意味で俺たちの社会は非常に危うい均衡の上に成り立っていると言える。その均衡を派手に崩した張本人が他人事のように解説することじゃあないんだが。

実際、一方的に俺たちの生存権自体を認めない派閥は小さくなったが、一方で俺たちの魔術を都合よく利用しようとする派閥が今度は増えることになった。
小は非合法金融や密売密輸を扱うマフィアから、大は武装盗賊や王立治安構想に真っ向から異を唱える過激独立主義者に至るまで魔術士へのスカウトは引く手あまたって話だ。
かくいう俺自身もそれを実際に見たことがあるしな。
無論魔術士同盟だってそんなことは分かってるから、その手の勧誘――を通り越した買収やら洗脳の類に対抗するための思想的・倫理的教育、モラルの構築には相当念を入れてる。
ある意味魔術の制御法の教育という現代における魔術士同盟の最大の命題に匹敵するほどだ。
そういった明らかな反社会分子への人材流出を許せばますます魔術士への偏見が強まるのは目に見えてるしな。まあキエサルヒマ史上最悪の反社会分子である俺が言うことでもないが。
ただ今度はそれが非魔術士から見たとき魔術士の囲い込み、内輪による自己完結と見られかねない側面があってそれがまたさらなる偏見を呼び――――とまあ、問題はどこまでも果てしなく連鎖して続いていくというわけだ。
おまけに今はこんな情勢だ。タフレムの魔術士同盟も各地の武装盗賊も必死になって残された数少ない魔術士の取り合いをしてるって話だよ。
ただ武装盗賊ですら恥も見得も捨てて魔術士の囲い込みに必死になってるってのに、キムラック――と以前まで呼ばれていた土地――の難民たちは、傍目から見て明らかに苦しいはずの武装抵抗運動においても魔術士を頼ろうとはしないな。
そこまで一貫してるといっそ清清しい気分になる――と言いたいが、それはつまりそこまで意地を張り通してでも俺たちを滅ぼしたいというわけだからうっかり感心もできんな。

それで、魔術士同盟が閉鎖的であるというのは非常によくある批判で実際問題としてその通りなんだが、「魔術士による団結、魔術士による同盟」という組織のもっとも根本的な理念を維持していく限りはどうしたって閉鎖的にならざるを得ないのもまた事実だし、
そもそも魔術士が非魔術士を真の意味で理解することは決してできないし逆もまた然りという根源的・根本的かつどうしようもない問題――その意味において魔術士同盟はどうしても魔術士のみで構成されなければならない必然性が生じるのは
認めざるを得ない――が立ちはだかる。
まあ、そんなことはそれこそ人間種族の社会に魔術士という人種が生まれた時点でもう分かりきってたことなわけで、それを承知した上でどこまで他者からの理解度を少しでも上げていけるかが問われており、その観点から見たとき
現状の同盟の努力が足りているかといえばこれはおそらくノーだが。

こうして話してりゃ分かると思うが、キエサルヒマには問題難渋――を通り越して今や戦乱の情勢下にある。
武器が品薄になり、旅行者は途絶え、どの街も門を閉ざし、郊外では騎士団と魔術士と武装盗賊とが入り乱れて恒常的に争いを繰り広げ……まったく我ながら嫌になる。
……ただ何がいちばん嫌になるかといえば、つまり人間が社会を作り生きていくというのはそういうことが起こりうるし、それは決して根本的に避けることができない問題だというどうしようもない了解、あるいは諦観があり、さらに
それを理由にすべてを諦めて投げ出すこともできない――少なくともまっとうに生きてまっとうな社会的生活を送りたいと願ううちは――というそれ以上にどうしようもない現実があることだな。

ま、嫌になってみたところで何がどうなるわけでもなく、結局はそれでもなんとか顔を上げて、上を見て、前を向いて、地に足をつけて、自分の手の届く範囲で、必死に生きていくしかないわけだ。
現実ってのは過酷なもんだよな。
嫌になるようなことがあることがじゃない。嫌になるようなことがあって、それでもなおそんな嫌なことでも抱えて生きていかなけりゃならないことがだ。
だがそれでも、人間ってのはその上でもなお生きていけるし、そうやって生きていくものなんだ。それが本質だ。


さて。
で、そこまで小難しい話ではなくもっとわかりやすい意味での「普通の人」となると――情けないが、あまり思い当たる節はないと言わざるを得んな。
チャイルドマン教室の連中はまあなんつーかみんな底が抜けてフタがぶっ飛んでその上ネジも外れたような人間ばっかりが揃ってたし、先生だって俺たち生徒の間じゃあ変人であるということは一致した見解だったし、
他教室でもマリア教師とかはちょっと変な人ではあったし、イールギットなんかもまあアザリーとティッシよりはまともかもしれんがいきなり脈絡なくナイフで友人と斬り合うのが普通とは思えないし、
プルートーは良識的――まったくもって本当に良識的だが、彼の場合正統にして頑健で誇り高く強固強靭、先生とは種類が違うがまさに魔術士の理想像を絵に描いたような人物だ。つまり普通ではない。
クリーオウやコギーは無論色々違いはあるがどっちにしたってどう見ても普通じゃないことには変わりないし、死の教師であるサルアやメッチェンもやはり技能も精神も普通とは違う。
ウィノナに至っては社会的にも精神的にも技能的にも、すべてにおいて普遍的とは言い難かった。まあ本人も――もう死んじまったが、生きてたところでまさか否定はしないだろ。
逆に性格は――比較的――普通だが、出自がまったく普通でないロッテーシャという例もある……あったしな。
地人兄弟となると――銀月姫のゴーストを除けば、他に地人種族というものに会ったことがないんでなんとも言えんが、多分あれ、少なくとも兄のほうは地人の社会でも
普遍的ではないと思う。思いたい。
そのへんを通り越してアルマゲストのあたりまで来ると、発生学的観点・精神/論理構造・身体構造・先天および後天的技術ともはやどこを見渡しても普遍的と呼べる要素がない。
オーリオウルだのヘルパートだのアスラリエルだののドラゴン種族連中は言うまでもなく論外。
ていうか「俺の知り合い」と呼ぶことすら憚られるなあのへんは。

……思い出せるのはタフレムでカフェをやってたフリップくらいか?
まだクラブサンドがメニューにあるとティッシは言ってたが、結局<キリランシェロ>騒動だのウォール教室との抗争だのでてんやわんやになって食いそびれたな。
俺は今となっちゃあタフレムに戻ることもできねぇ身だし、懐かしいというか寂しいというか。

うーむ。普通に生きるってこんなに難しいんだなぁ。


>>49
純粋にできるかできないかで問えば、理論上では可能であるとされてる。

ただ傷口をもとの状態にもどすということでさえ完全には行えない音声魔術において、うかつに人体の化学反応に
なんらかの影響を外から加えた場合、どんな副作用が起きるのか分かったもんじゃないってんで誰も真面目に研究してる奴はいないな。

それにジャック・フリズビーを見てれば分かると思うが、人体ってのは非常に複雑かつ繊細なバランスの上で出来てる。
筋力を強化してもそれを支える骨格の強度が不足すれば打撃はむしろ自分の骨や内臓にダメージを与える。
逆に骨格を強化しても今度は筋組織を突き破って骨が飛び出すぞ。まあ骨ってのはかなり堅いから、
緊急時の即席の武器として使う分にはそれなりに使えるんだが、わざわざ自分で選んで使う武器じゃあない。
骨が露出して武器として使えるような状態になったらそれはほとんど死にかかってると言っていいわけだしな。
血液の循環速度を速める、あるいは循環効率を上げるのも運動能力を高めるということでは効果的だが、そうすると今度は
当然の結果として正比例的に上昇した血圧によって血管が内部から破裂する。

そうなると骨と骨格と血管をすべて同時に強化すれば人体の発揮できる破壊力は飛躍的に向上する――――が、そもそも破壊力を求めるならなにも自分の身体を武器にしなけりゃならない理由がない。
そんな複雑怪奇――になるであろう――な構成を編んだ上でそこからようやく殴るより魔術で直接攻撃する、つまり熱衝撃波なり空間爆砕なりを撃てばいい。どう考えてもそっちのほうが手っ取り早いしリスクも少ない。
そして防御に使うのもやはり自分の身体を使わずとも直接力場を出して魔術で防げばいいし、跳躍するならこれもまた魔術で重力中和を使えばいい。
魔術に頼らなかったとしても、剣なり棒なり槍なり斧なりあるいは銃なり、武器を使えばいい。
人体そのものに破壊力や防御力を求める人間は<<塔>>でも少数派だ。
これの理由はきわめて簡単で、自分の肉体自身にそんな能力を求めようってのはマッチョイズムの権化か精神主義の信奉者か
物事はすべて筋肉の力さえあれば解決できると信じてるような奴――まあ全部イコールで繋いでいい気もするが――だけだからだ。どれも少数派であるのは言うまでもないな。
別に趣味嗜好として自分の肉体にそういう能力を求める奴まで止めるわけじゃないが、少なくとも合理的じゃあないことだけは確かだ。

つまり、あえて魔術で自分の身体能力を強化しなければならないという局面が実はそうそう存在しない。
その意味でも身体能力の強化という魔術構成の実用化を促進する要素は薄いんだ。

需要がない上にデメリットばかり大きい、となるとまあやろうとする奴もいないわな。
音声魔術に暗黒魔術ほどの支配力があれば話は別だったろうが。

51 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/04/18(月) 19:59:34
ああ、そうそう。
レジボーンのエリスはわりと普通の子だったな。
ちょっと冷めたところがあるが、そんなのは個性の範疇で収まるレベルだし。
俺の知り合いの中じゃあかなりまともな部類だった。

52 名前:名無し客:2011/04/23(土) 11:43:16
少しの間、この子を預かってくれませんか?(子猫を差し出す)
ミルクも置いておきますね。
・・・食べないで下さいね、子猫。

53 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/04/26(火) 00:04:47
魔法少女の10戒、ねぇ。

>>52
「……食わねぇよ。こう見えても猫好きなんだ、俺は。そりゃやむにやまれず食ったこともあるが」

実のところ、あれは人生でも相当に不愉快な体験でしかなかった。
生きている猫を殺す不快感。べたつく血。ぽろぽろと現れては突き刺さる小さな骨。
そして生暖かい不気味な感触を伝えてくる内臓。
これならいっそのこと飢え死にしたほうがマシではないか。当時本気でそう思えたし、今でもそう思っている。

結局のところ猫を食べるなどという変質的、あるいは猟奇的な体験はそれが最初で最後になった。

ただ当時そのことにどこか苦い思いがないでもなかったことも覚えている。
大陸史上最強の暗殺者。その後継として育てられた自分が、猫を殺すだけでこみ上げる胸のむかつきを抑えられない。
殺せない暗殺者――そう囁かれたことは、<<塔>>にいた頃はさほど気になるものではなかった。実感のないことだった。
だがそのときは、かつてのあの嘲笑がはっきりとわかった。自分がなにを笑われていたのか。それをようやく理解した。

猫すら満足に殺せない自分が、人を殺す暗殺者になれるのか。

しばらくの間は単純な猫殺しの不愉快さと並んで、その皮肉さに悩まされたことを覚えている。忘れられそうにはなかった。
そこまで思い出したところで苦笑する。もっとマシな、覚えていて得をすることがあってもよさそうなものだろうに?

だがどうだろうか。思い出せるのは――やはり、不愉快な体験ばかりだ。

15歳のころ、師に殺されかかったこと。
<フェンリルの森>でディープ・ドラゴンに廃人にされたこと。
タフレムで過去の自分との殺し合いに臨んだこと。
キムラックの地下で死の教師に殺されかかり、結果として殺したこと。
やはりキムラックで、死の教師に撃たれ湖に落ちて死にかかったこと。
アーバンラマで、レッド・ドラゴン種族最高の暗殺者と戦い、相打ちで死にかかったこと。
最接近領、その領主の館でジャック・フリズビーと戦い、手も足も出ずに打ち殺されたこと。

「……つくづくろくでもねぇことばっかりだな、俺の人生ってのは」

だがそれでも絶望するほどではない――そんな人生でも、楽しかったと感じる。
おそらく、いや間違いなく、もっと賢い選択を選んでもっと賢く生きている自分を創ることもできたはずだ。
それでもこれが自分の生きてきた、そしてこれからも生きていく人生なのだ。
それを否定することに意味はない――そして同じように、肯定し賛美することもまた意味がない。
人間の意思は閉じ込められない限りはどこにでも伸びていくし、その限りは生きていけるのだというそれだけの事実だ。

そしてそんな深刻なこととは関係なく、

「しっかし、住所不定の人間に預けられてもねぇ。これどう返すんだよ」

また厄介ごとがひとつ。
生きるというのは、つまりはまあ――そういったことなのだろう。

54 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/04/26(火) 00:40:19
「魔術士としての心得とはなにか、と。それが聞きたいのか、キリランシェロ」

<<塔>>の体技室。リノリウム貼りの床に立つ、長く伸ばした髪をうなじのあたりでくくった男。
それほど目に見えて鍛えているという体ではない。だがよく見れば、恐ろしく鋭い筋肉の持ち主であり、
つまりはそれが大陸最高峰<<牙の塔>>の教師のひとりだという証明だった。
その彼の陰気な声――というほど暗いわけではなかったかもしれない。
彼の声は明朗ではないが、言い回しは常に明快だったし、それが澱んだこともほとんどなかった。
そして人を拒絶するような冷たさがあったわけでもない。ただ積極的に受け入れようという気はなかったのは間違いないが、逆に言えばその程度のことだ。
結局どう表現すべきなのか――キリランシェロは悩んだ末にこう結論付けた。つまり、ただの声――ほかになにも含むもののない、ただそれだけの声なのだと。
それが魔術の冷たい明かりで照らされた体技室の中に、低く、だがこれ以上ない明確さを持って音を広げている。

「同盟綱領にあるとおりだ。自制。これに尽きる。これ以上ではなく、またそれ以下でもない。
 我々は最初、そして最後の一線において、これを失うようなことがあっては生きていけない。
 ひとつの生物個体としても、社会に参画する一員としても、戦闘技能者としても」

そんなことは分かっている――と、記憶の中の自分は不満げに言った。
自分が知りたいのは、それ以外のこと――いや、それ以上のことなのだと。

「なぜそんなことを知ろうとする」

抱いていた答えは簡単だった。
それを知らなければ、姉を……そして師を超えることはできないと。その確信があった。少なくともその時は。
ただとっさに口をついて出ようとしたその言葉を押しとどめるのは簡単ではなかった。
確か、そのときの自分はこう答えたはずだ――ただ知りたいだけだと。
その嘘を師が見抜けなかったということもなかっただろう。それはその瞬間にすらそう思えた。
ふっ、と空気が抜ける音が聞こえた。嘆息、というほどのことではない。ただ息を吸って、吐いた。その結果としての空気の流れの音。

「わたしとて、それほど多くを知るわけではない。なぜわたしならそれを知っていると思った」

これもまた簡単な答えだった。
そして今度は押しとどめることをしなかった。

こんな問いなんて、先生以外の誰に聞けば良いんですか。

それは彼が自分の教師であるという役割上のことだけではない。もっと純粋に、それは恐らく彼でなければ知り得ないことなのだと感じていたからだった。
ウォール・カーレン教師でもマリア・フウォン教師でも王都の魔人プルートーでもなく、彼、チャイルドマン・パウダーフィールド教師でなければならないと。
大陸で最強の魔術士である彼の語る言葉にこそ意味があるのだと。そのときの彼――彼ら彼女ら?――は信じて疑わなかった。
だがその最強の魔術士たるところの師はといえば、普段と変わりない、余分なことなどなにひとつ言ったことのない寡黙なまなざしのまま、こちらを見つめている。

先生。教えてください。

彼は問うた。渇望すら感じて。
だが対する師の答えはひどくシンプルだった。

「キリランシェロ。わたしはお前になにを教えている?」

彼はなにを言い出したのか。だが顔を見返すと、冗談で言っているわけではなさそうではあった。

自分はそのままを答えた。

「そうだ。わたしの戦闘技術のすべてだ。その上でお前に伝えることはひとつだ」

「暗殺技能者の心の遣いようとは拳を構えるまでのこと。いつなんのために構えて打つのか、敵を殺すことがあっても、
 あるいは己が殺されるかもしれないとあってもなおやらねばならない時とはなにか。それを見定めることにある。その上で」

それはいつも聞いていることだ――無論、彼も分かっているのだろう。
大した間も挟まず、こう付け加えた。たった一言だけ。

「――――隙を見つけて、迷わず殺せ」

あまりの唐突さにきょとんとする。
タイミングも唐突なら、内容も唐突だった。
理解できない――――というほどまったくついていけない内容を語ったのではない。だが――最初の答えと同じように、やはり端的過ぎる。
視線で問い返す。

「――その言葉が、わたしがお前に教えていることの到達点だ。究極だ」

「なすべき時になすべきことを見定め、それを迷いなく即座に実行しろ」

「わたしが今なにを言ったのか、それをお前が理解できれば、その時がお前がわたしを超えた時だ」

それ以上言うことはないということなのだろう。師は振り返ると、そのままこちらを一度も見ることなく体技室を後にした。
当時の自分は、煙に撒かれたのだと――師らしい、なんだかよくわからない言葉でこちらを置き去りにしたのだと、そう理解した。
侮辱されたのではない。もとより自分が求めたことなど、そんな曖昧な言葉でしか返せない曖昧なことだったのだろうと。

今はどうだろうか。
彼がなにを言いたかったのか、はっきりと理解できる。
彼はただ、問いに対して率直に思っていることを答えただけなのだと。

天人種族直伝の体術。時として意表をつくために定石をも無視することを厭わない特殊拳法。
人体による人体への破壊術。その最も効率的なひとつの理論。
その最高の境地。
それがまさに、師の語ったその短い一言であり、同じ魔術士として彼が自分に伝えようとした心境もまたその短い一言だったのだと――




「……夢、か」

目覚める。
なにを見ていたのか。夢の内容など覚えているようで記憶の網をすり抜けていく――水をつかむようなものだ。
だが時には、わずかに手のひらの中に何滴かの水が残ることもある。

「先生……」

つぶやく。
もう記憶の中にしかいない人間。生きて言葉を交わすことは決してない人間。
その彼の最後の生徒である自分。
そこまで考えたとき、浮かんできたのはひとつの名前だった。

サクセサー・オブ・レザー・エッジ。鋼の後継者。

自分はこの名に相応しいのだろうかと、そう悩んだ時期もある。むしろそのほうが長かったように思う。
本当に自分は彼の後継者たりうるのかと。
ずっとその問いに悩まされ、追いかけられ、問い詰められて生きてきた。
今はどうだろうか。夢と同じ問いを自分に投げかける。

「先生を理想系として仕立てていたのは俺たち生徒7人だ。彼こそが大陸で並ぶもののない、無敵にして最強の魔術士なのだと。
 だが今の俺は先生の強さの限界を知っている」

「だから――――俺が、後継者だ」

そんな寝覚めのうわごととともに立ち上がる。
今日もまた、一日が始まる。なにかが生まれ、なにかが終わる。平凡だが決定的な、いつまでも繰り返される、そんな一日が。

55 名前:名無し客:2011/04/29(金) 15:25:25
俺に戦闘の基礎を教えてください。

56 名前:名無し客:2011/05/03(火) 22:27:54
自分の身体に傷がつくのを嫌がるようでは、戦闘訓練は受けられませんか?

57 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/05/04(水) 01:03:33
>>55

「戦闘の基礎、ねぇ。基礎っつっても、どこまでさかのぼる必要があるんだ?それにもよるが」

<<塔>>の訓練課程は長期かつ詳細にわたる。
筋力、握力、瞬発力といったもっとも基礎的な身体能力の訓練と平行しつつ、歩幅が必ず一定になるよう歩く訓練や、
なにかが自分めがけて飛んできてもとっさに眼を閉じてしまわないよう目を開けたまま殴られ続ける訓練といった
基礎の中のそのまた基礎から、その先の蹴る時に足のどこにどれだけの力を込めてどの角度からどこを打つのが最適なのかといったような打法、
回避や予備動作のための体捌きの理論と実践、受け身や人体による手足を用いた防御法、そういった諸々の要素をすべて身につけることで
初めて一人前だと認められる。

「身体能力や技術のほかに、もっと別のこともある。精神的制御力――もっと簡単に、気合や覚悟と言い換えてもいいかもしれない」

「戦う上でなにより重要なのは、まあ殺せない暗殺者なんて言われて嗤われてた俺が言うことでもないが――――
 結局は戦いってのは突き詰めれば殺し合いでしかないということを理解することだ。
 その殺し合いに臨む覚悟ってのはつまり、相手に殺されるかもしれないということを承知の上で相手を殺すつもりでかかるということだ。
 あるいは、相手に殺されてでもなお引き換えに相手を殺すという決意をすることだ」

「それが怖いなら戦うな、とは言わねぇよ。それは恐れて当然のものを恐れてるだけだからな。むしろ正常だ。
 その感覚がなければ戦って生き延びることはできない。
 だから戦うなら、その恐怖を忘れるな。
 どれだけ肉体を鍛え上げようと、技術の熟練を極めようと、そんなことは関係ない。
 人間なら急所を一撃されれば死ぬしかないんだ。どうしようもなく。避けようもなく。
 そして人間の体はそんな一撃されれば死ぬような急所の集合体だ。
 およそ人間種族が編み出した戦闘技術・理論の、すべてに共通する根元的な前提がそれだ。
 それを忘れたらなんにもできやしない。攻撃も防御も回避も移動も、なにもできない」

「殺さずに相手を無力化する戦いってのも無論ある。だが、これは素直に殺すよりよっぽど難しい。
 殺さない程度に動けなくするってのがどれだけ難しいかは、まあそうくどくど説明しなくてもわかるだろ」
 
そこまで言ったところでオーフェンは一度言葉を区切り、自分に問うてみる。

殺すのは怖いだろうか――2人も殺している。だからもうひとりやふたり、などとは言わない。自分が奪ったのは、
どうしようもなく取り返しのつかない、誰の手をもってしても取り戻せない、そういった絶対的ななにかだ。それを償う術などこの世には存在しない。
それを二度も重ねてしまったのだ。
だがそれを分かった上で、必要ならばまた殺せると断言できる。それは恐ろしいことだ――ついに自分は、一線を越えてしまったのだ。
そういう自分にならねばならなかった、その必要があったのだと、それは即答できる。
だがそのことは人間として進歩したのか退化したのか。それはわからない。

殺されるのは怖いだろうか――思い残すほどのことはない。自分が死ねば、ティッシは泣くだろう――だがこの期に及んで、彼女を泣かせるかどうかを
心配するのはもはや馬鹿げている――もうすでに、自分は彼女をこれ以上なく泣かせてきたし、今も泣かせているのだろう。
さほど今死んで困る不都合というのも思いつかなかった。人生などもとより無意味なことだ。その真理を悟ったのはつい最近ということでもない。
だが、それを理由に死ぬこともできないのが現実だった。
それを理解するのには、真理を悟るよりは時間がかかった――つまり、現実は真理より難解だということなのだろう。
生きている。その限り死を受け入れることはできない。いつだって死には抗っていなければならない。

戦うのが怖いだろうか――もう慣れた。だが恐怖を感じなくなったということではない。
何もかもを失いかねない一瞬のうちに、今までの自分のすべてを賭けなければならない。
恐ろしく不釣合いな博打だった。
そのことに恐怖を感じずにはいられない――――今はまだ。

結論としては、つまりはどうやら自分はまだ正気を保っているらしいということだった。
もっとも狂気と正気の区別など、自分でつけられるものかどうかは怪しいものだが。

「まあ、そうだな」

誰とはなしに苦笑して、

「戦闘の基礎ってことにかけちゃ、要するに――――
 戦うのは、怖いことだ。
 それさえ理解してりゃ、俺なんぞが教えるこたぁ何もねぇよ」

58 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/05/12(木) 02:52:27
「……簡単なようで難しい質問だな」

文字通りに受け取れば、それはそうだとしか言いようがない問いかけだった。
だが本質的なことを考えれば話は違う――傷を負うことを恐れるからこそ、魔術士、いや人間種族は戦闘技術を鍛錬する。
その意味においては傷がつくのを嫌がるからこそ戦闘訓練を受ける。
それは当然の心理であり、その当然の心理が人間種族のあらゆる体技のあらゆる理論の大前提だ。
傷つくことを恐れないならそこに技術は必要ない。
どれほどの熱量を注がれようと、どれだけの衝撃を加えようと微動だにしない肉体を持つミスト・ドラゴンが
魔術の制御という人間種族の魔術士にとっては致命的な問題に対してまったく無頓着だったのはまさにその理屈による。
彼らは自らの魔術を制御し損なったとしても、自分の身体が損なわれることはない。
そしてディープ・ドラゴンがまったく技術も理屈もなにも必要としなかったのも同じ理由だ――彼らには圧倒的で絶対的な力があり、
それが彼らの全てであり、存在意義だ。
それはただ敵を滅ぼすためだけの存在で、そこに技能や理論は存在しない。必要としない。
その上彼らの暗黒魔術は死すらも治癒することを可能としていた――それゆえに、彼らは自らが傷つくことを恐れなかった。

「少なくとも人間種族にとっちゃ、傷がつくのを嫌がるようじゃ訓練もできやしない――が、そもそも訓練するのはその恐怖心があるからこそだな」

それは生きていくのにも似ている。
誰もが傷つくことを恐れているのに、誰も傷つかずに生きていく術など知らない。
傷つけることが容易な者同士が、自らが傷つけられることなど想像もせずに傷つけあっている。
それが人間の世の中というものであって、建前はうまくそれを覆い隠してくれている。
結局は、傷つき続けることこそが生きていくことなのだ。

そこには救いなど、奇跡などない。誰もがそれを知っている。だというのに、それでも生きていなければならない。
それが絶望だ――――

そう語ったのは誰だったのだろうか。
クリーオウ。領主。ジャック・フリズビー。ネイム・オンリー。クオ・ヴァディス。ヘルパート。様々な顔がよぎる。
だがどれも合っているようで違う。正解は浮かばなかった。
代わりに浮かんだのはかつて語った自分の言葉だった。

奇跡はない。だが、代わりになにか――なにかがあるはずだ。そうでなければ誰も生きてなどいけるものか。

(なにかとは、なにか?)

これは明確に思い出せた。ジャック・フリズビー。自分が殺した男との最後の会話。
その時自分が答えた言葉もまた明確に覚えている。

(さあな。知るかよ。なにかがあるだろ。なにか)

(そう思えるお前は、単に幸福な男なのだよ)

「そうかよ。……そうかもな」

最後の言葉は口に出し、独りごちる。
幼少時には死亡率が8割を超える魔術士の訓練において、その残りの2割未満に入れたのはただの幸運だったのだろう。
顔も覚えていないうちに両親と死別したのは不幸かもしれない。
だが、自分には姉がいた。ふたり。
彼女らからは、両親から受けるはずだった愛情を代わりに授けてもらったのだと胸を張って断言できる。それも幸運だ。
その後の6年間弱の放浪は不幸だったかもしれない。実際、不幸だと思っていた。
だが最後の半年はひとりではなかった。
「役にも立たない足手まといがふたりも」そう思ったのは一度や二度ではないし、事実としてやはりそうだっただろう。
だがそれでも、ひとりではどこへ流されていくやら分からない自分にはむしろちょうどよい重石だったのだ――今ならそう思える。
ひとりに逆戻りした今ならば。
だが永遠に別れたわけではない。いずれ――それがどれほど遠いのか近いのかは知る術などないが――生きている限りはまた会える。それもまた幸運だ。

(なるほどね。確かに俺は、幸福な男だよ)

ジャックはこうも言っていた。自分にとっては生きることそのものが訓練だったのだと。
だが逆に言えば、あのジャック――あの絶望していた男でさえ、それは死ぬのは怖かったということではないか。
それとも、むしろ絶望していた――つまり、たとえどんなことがあろうと、一度生まれ落ちてしまったからには生きて
いかなければならないという現実を理解していたからこそ自ら死を選ぶ気にはなれなかったのだろうか。

結局、それはもう二度と分からない。
戦闘は様々なものを無意味に、永遠に封じ込めてしまう。

「だが、たとえそうだとしても殺されるわけにはいかないと思っている限りは戦闘には勝たなければならない。
 少なくとも負けてはならない」

「となれば、結局は嫌がろうが嫌がるまいが訓練は受けるしかないわけだ」

59 名前:名無し客:2011/05/15(日) 22:42:21
人に寄生しない。金が無い。だが餓死しない。

60 名前:名無し客:2011/05/20(金) 13:02:56
なんで黒っぽいんですか? 服。

61 名前:名無し客:2011/05/23(月) 21:50:53
オーフェンさん
なんでわざわざ絶対に金を返さなそうなやつを選んで貸すんですか?
審査はしっかりやった方がいいですよ

62 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/05/29(日) 00:55:30
>>59
 苦笑いしながら思い出す。

「なにかの遠まわしな嫌味かよ、それ」

 かつての弟子――そのときには弟子ではなかったが――に"うちに寄生している人"と紹介されたことを思い出す。
 否定はしたが、実際そうなのだろうと薄々は当時でさえ思ったし、今から考えてみればやはりそうなのだろう。
 
「まぁ、言い訳させてもらえるなら、そうだなぁ。人間なんて所詮は他人に寄生して生きていくもんだと思うよ。
 それが友人だったり恋人だったり家族だったりするっていうだけで。別にそれがけしからんとは言わねぇよ。
 むしろまったく他者から自立して生きていくなんてのは不可能――とは言わんが、それはかなり辺鄙な生き方だぞ。
 現にそれが魔術士同盟への最も大きな批判だしな。
 結婚という制度すら魔術士は嫌う――度を越した他者への依存とみなすからだ。現に魔術士の都市であるタフレム市に結婚という法的制度は存在しない。
 もっとも法的制度としての結婚、入籍という概念が存在しないだけで、もちろん魔術士だって恋愛もするし特定の懇意になった異性との間で
 子供を作ることだって普通にするが」

 だが、そんなことを言いながらも頭のどこかで感じるものはあった。

 つまり、堕落するとはこういうことなのだと。
 その意味で、社会的な意味だけでなく理念的な意味からも自分は本来の意味での魔術士とは呼べなかったのだろう。

(道理で同盟の籍を剥奪されるわけだ。確かにこのありさまじゃ、魔術士ですなんて名乗れたもんじゃねえ)
 
 魔術士とは魔術の力を行使する者のことではないからだ。

 自立。あるいは自制。
 究極的には、魔術士の理念はそのわずか二文字に集約される。
 チャイルドマンとプルートーはまさにその理念を具現化したようなふたりだった――
 チャイルドマンは言うまでもない。対するプルートーは対照的に激しやすい男ではあった。が、それでやるべきこと、言うべきことを
 見失うような男でもない。

 だが。

『現実に魔術を制御できた魔術士など歴史上存在しないのだ――』

 そう語った男――今はもういない男――をふと思い出す。確かにそうなのかもしれない。
 魔術などという力は、結局は制御もできない馬鹿げた力でしかない。

「金ってのも考え出すと哲学的な話だよな。
 なければもちろん困るが、あったらあったで今度はまた別の困りごとが出る。
 金があるところに悩みありってわけだ。だというのに現代における人間種族の社会においては、
 金は絶対に必要不可欠だ。こんなに困る話もそうはないと思う――ってこともないな。
 むしろ生きていて困るような話なんてのはいくらでもある」

 だというのに、死んで楽になるという選択肢を選ぶこともできない。
 その苦痛とともに生涯を共にするより他にない。

「ま、困りだしたら人間キリがないんだ。金ひとつとっても塩との交換レート相場の上がり下がりに一喜一憂するはめになるわけだしな。
 無論それ以前の人間――まあ、つまり俺みたいな人間だが、そいつらはそれ以前のところで困るわけだ」」

「……ちなみに餓死ってのは意外としにくいもんだが、それによる臨死体験は気軽にできるぞ。
 生物学的には水だけで1、2ヶ月は生存できるらしいが、そんなもんは学者の書いた本の上での話であって、
 実際の体感的には3日くらいなにも食わないだけでわりと限界が来る。実際に経験した俺が言うんだから間違いない」


>>60
「これまた難題が来たな。いや、答えるぶんには簡単なんだが……
 俺たちが黒魔術士だからだ。理由はそれだけだ」

言ってしまえば――あるいは言うまでもなく――陳腐な理由ではある。
もっとも世の中のたいていのものの理由を問うていけばおおよそ同じようなことになるのではないかという気もするが。

「そーいや考えたこともなかったが、白魔術士ってのは白い服着てるもんなのかね?
 俺が知ってる白魔術士は3人、いや4人いたが誰も白い服着てなかったぞ」

 そこでふと考える。<<牙の塔>>、ひいては同盟、そして組織というそのものを嫌って出奔した自分がなぜ今も黒い服で通しているのか。
 
「確かこのジャケットは3、4年くらい前、アレンハタムにいた頃に買ったんだっけか」
 
 黒魔術士の組織を嫌った自分が、それでも結局は黒い服を選んでしまったことに嫌悪感を感じないでもなかったことを覚えている。

「まあ別に黒って色に特別な意味があるかといえば、そういうわけでもない。その意味じゃあポストが赤い色してるほうがちゃんとした理由があるとも言える」

「結局はまさに哲学的な一言に集約されるな――――――つまり、なんとなくだ」

>>61
「つってもな。そもそも非合法の、モグリの金貸しだぜ?まともな銀行なら間違っても融資の対象にはしないような、審査で容赦なくはねられる連中を
 相手にする商売だ。いわゆる隙間産業だな。
 その意味じゃあマトモな審査なんかしてたら商売が成り立たない――いや、まあ、結果としてその隙間産業すら商売として成り立たせられなかった男が
 言ってもあんまり説得力はないけどな」

 そこで嘆息する。
 
「それでもこっちには魔術っていう最終的な保険がある――つもりでいたんだ。だが実際にゃ熱衝撃波も破壊振動波も空間爆砕も、
 それどころか物質崩壊まで撃ち込んでも決してカネを返さないようなどうしようもない相手だったわけだ。
 さすがにそこまでのリスクを予測できなかったことが責められることには反論するぞ」

「――それにしてもあのタヌキ兄弟、今頃どこで何やってんのかねぇ……」

63 名前:名無し客:2011/05/29(日) 18:15:36
ようオーフェン
一緒に飲もうぜ

64 名前:名無し客:2011/05/30(月) 22:01:00
オーフェンは白魔術使えないの?
確か白は黒に比べて高等だったような記憶が
この作品読むまで白にそんな強いイメージなかったから新鮮だったわ

65 名前:名無し客:2011/06/01(水) 23:17:16
男女の身体的な差を格闘技術で補うことは可能ですか?

66 名前:名無し客:2011/06/01(水) 23:33:37
クリーオウの実家とは懇意にしてますか?

67 名前:名無し客:2011/06/02(木) 21:31:48
トトカンタってトトを反射する魔術だろ、知ってるぜ。

68 名前:名無し客:2011/06/04(土) 16:09:20
魔王術者?お前はいったい何なんだ。自分が嫌にならねえか?
無かった事に出来ねえのか?
え、呆れて物も言えねえぜって?
それはいろいろまずいのか?


69 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/06/04(土) 17:42:38
>>63
「俺はそんなに酒呑みってほどじゃあないが……ま、もらえるもんはありがたくもらっとくよ」

 ガラスで出来たビンを傾け、渡されたグラスに注ぐ。
 赤くさらりとした液体がこぼれ出る。どうやらビールではなく、ワインらしかった。

「ワインか。それどこの奴だ?」

 言いながら見る。
 ラベルには「キンクホール産」と書かれている。

「なるほどねぇ……あそこの産か。そりゃあうまそうだ。あそこは空気もいいし、土壌の質もいい。
 灌漑も整備されて水はけもいいから、ワイン造るのももってこいだろ」
 
 あの村での奇妙な出来事――思えば自分の旅が単なる借金の取立てではなくなったのはあの村からだったかもしれない――を懐かしく
思い出しながら、グラスを傾け中の液体を舐める。
 
 熱い。
 
「……酒なんて久しぶりに飲むせいかな。ちょっと利きそうだぜ」

 実のところ、オーフェン自身には飲酒の習慣がなかった。
 単純に酒を買うような金銭的余地がなかったというのが無論大きい――が、そもそも体質として
あまり酒が美味いと感じるようなタイプではなかった。
 
(俺はともかく、先生なんかはあれで結構酒好きだったんだけどな)

 チャイルドマンの趣味は他教室の者に話すと、決まってこう言ったものだ――本当はもっと得体の知れないことを
好んでいるから、お前たち生徒が隠しているんじゃないのか。
当然自分たち生徒は反論したが、同時にどこかでこうも思っていた。そうかもしれない、と。

「先生の趣味が寝酒っていうのはなぁ……確かに未だに寝ながら酒食らってる先生の姿とか想像できねえし俺」

ぶつぶつと独りごちながら。

「まあ、<<塔>>にいた頃はティッシに見つからないように――見つかるとえらい目に合うからだが――ハーティアたちと
 こっそりブランデー飲んだりしてたが、あれも酒が好きで飲んでたっていうよりかはガキらしい反抗心の産物って気がするな、今思うと」

 実際のところ、焼け付くような痛みばかりが舌に残って味もなにも分かったものではなかった。
 それでもなんとなくこっそりと仲間内で飲んでいたというのは、結局はいわゆる「ロックンロール」ということでしかないのだろうが。

「このくらいでいいよ。あんまり飲むと次の日立てなくなるし、そうなると色々まずいんでな。ま、礼は言っておくよ。ありがとよ」


>>64
「これは簡単な質問だな。はっきりとノーだ。俺には使えない。
 使えるのは魔術という特殊な先天的才能を持って生まれてくる人間の中でもさらに限られた人間だけだ。
 俺が知っている白魔術士も4人しかいない。うち2人に至ってはもうこの世に存在していない」

 若干酒が残っていたが、それでも意識が朦朧とするほどではない。
 指を一本立てて説明する。

「そしてもうひとつも簡単だ。 
 白魔術は黒魔術に対して圧倒的に上位にある。
 俺たち黒魔術士が扱う黒魔術は物理的な現象に限られる。これに一切の例外はない。
 対して白魔術は時間と精神を操る。
 その時点でどちらがより高度な術かは分かると思うが、その上でなお付け加えるなら、白魔術には過程が存在しないんだ。
 黒魔術では相手を消し飛ばすのに直接相手をいなかったことにすることはできないから、熱衝撃波や空間爆砕で間接的に相手がいなかったという
 結果を導き出す。
 だが白魔術はこのプロセスをまったく省略して結果だけを引き出すことが出来る。
 相手を消し飛ばそうと思ったらそのまま相手を消すという事実だけを理不尽に具現化できるというわけだ。
 さらに極めた術者――精神体と呼ばれる、肉体を捨てて精神だけの存在になった術者なら本来"音声"魔術には
 絶対に必要不可欠なはずの発声すらなしに術を行使できる」

 そこでいったん区切り、

「つまり白魔術が扱える効果の範囲はきわめて広い上に強大だ。
 だが、その理不尽さゆえに白魔術にはひとつだけ致命的な欠陥がある。
 過程が省略されているせいで結果が保障されていないのさ。
 熱衝撃波を食らえば誰がどう文句を言ったところで人間の体は消し飛ぶしかないが、白魔術による消去を行おうとした場合は
 過程がない。
 だから結果の完了を最後まで否定できるんだ。
 それに精神体となった白魔術士は莫大な力を扱えるようになる――だが反面、力だけの存在となる。
 魔術を行使すれば消耗するし、消耗し切れば消滅する。当然の話だが。
 そして力だけの存在であるということは無意味に存在し続けることができないということでもあるんだ。
 生まれたというだけで存在し続けられるのは肉体だけだからな」

「これがチャイルドマンが俺に教えた精神制御、マインドセットと呼ばれる奴の原理だ。
 黒魔術士による白魔術士への唯一の対抗手段ってわけだ。公式にはこの訓練を受けた黒魔術士は俺だけってことになってる。
 まあ、多分コルゴンあたりは非公式に受けてるんじゃないかって気もするが」

「もっとも本当に強力な白魔術士ならそれすらまったくなかったかのように無視して精神支配や空間転移をやってのけちまうが……」

70 名前:名無し客:2011/06/15(水) 18:29:48
オーフェンさんとミズーさんでは、どっちが強いんでしょうね

71 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/06/18(土) 21:43:03
>>65
「そもそも女性が身体的に男性に対して差をつけられているという定説に対して懐疑的なんだが、俺」
 
 姉ふたりやウィノナ、マリア・フウォンといったような生粋の戦闘者である連中の顔を脳裏に浮かべながら、半眼でうめく。
 
「ま、生物学的には女性のほうが筋量が少ないし、筋力を生み出す筋繊維の大きさも小さい。
 その意味では確かに女性のほうが非力なはずなんだが……どうしてだろうな。俺の知り合いは生物学・生理学に反逆してる連中ばっかりだ」

 ふうむ、と息をついて腕組みをしながら考える。

「まあ、あくまでこういった差は所詮スペック上の、最大筋力の差であって、戦闘に必要な筋力が足りてないとかそういうわけじゃないからな。
女性の一撃でも適切に筋力を発揮し、正確な姿勢から的確に急所へ撃ち込めば十分に人を倒す一撃たりうる」

 思い出すのは<<塔>>時代、自分やハーティアをやすやすと跳ね除け引きずり倒し蹴り倒し殴り倒し――まあとにかく、いろいろと軽く自分たちを
捻り上げていた姉ふたりの姿だが。
 
「そもそもそれは逆説的に男と男の戦いなら身体能力に差がないというのが暗黙の了解になってると思うが、それも正確には異なる。
 例えば俺と――えーと、名前なんなんだっけな――昔<<塔>>に来た地獄四人集のナントカって奴。
 あいつと当時の俺だって身体的な差は当然あった。体格、筋力、瞬発力、どれをとっても当時の俺には比較にならなかった。
 筋力だけ、瞬発力だけで括ればもしかすると先生以上なのかもしれねぇ連中――だった、かもしれない。あくまで仮にだが。少なくとも素行さえ良ければ<<十三使徒>>にはなれていただろうって話だからな。
 だが先生には威力には隙を、体格には死角を、反射速度にはフェイクへの弱さを――つまり相手の優位をすべて逆手にとって全員をあっという間に倒しちまった。
 まさに身体的な差を格闘技術で補った、というわけだ」

「ま、何が言いたいかと言えば簡単だよ。
 訓練による技術があろうがなかろうが、実は男女間に決定的な身体能力の差はない――陸上競技でやってるレベルで細かく計測・比較するなら話は別だが――んだ。
 そして訓練を受けていない素人と訓練を重ねている玄人の戦いなら、まあ大抵は玄人のほうが勝つわな。
 別に男女の差で決まることはない。
 答えとしちゃシンプル過ぎて面白みがねぇが、そんなところだ」

>>66
「いや、なんていうのかね。
 別に黙って連れ出したわけでもないが、はっきりとした形で了承を取って合意の上で旅の連れにしたってわけでもない。
 馬車を用意してくれたってのはある意味合意したと呼べないでもないかもしれないが。
 マジクの実家とは授業料を払う関係でナッシュウォータにいた頃あたりくらいまでは銀行を通じて連絡を取ってた――逆に言うと
 それ以降、アーバンラマから最接近領、聖域に行っていた頃は完全に音信不通だったわけだが――が、クリーオウの実家となにか連絡を取り合った覚えはないな」

 首を傾げて考える。

「思えば変な家ではあったよ。結婚詐欺にかかろうとした俺を訴えもしなかったし……まあそのおかげで俺は刑務所に入らなくて済んだからこれはありがたいが、
 モグリの借金取りのために馬車まで用意するか普通。
 あいつの親父も相当に変な奴だったっぽいしなぁ。その意味じゃあティシティニーもどっか変わってる人だったよ」 

「まあ結局親なんだし、クリーオウがなにをどうしたがるのか完全に理解したうえで俺にああ言ったって考えるのが自然だろうな。
 それにしたってモグリの借金取りの取立て――つまり非合法業務にいいとこのお嬢様を付き合わせるなんてなにを考えてるんだろうな、という気は今でもしてるが」

>>67
「いや、そーいうのではない。
 っていうかなんだそれは」

「まあ魔術が炸裂したくらいならなんでもなかったかのよーに過ごしている街ではあったが。
 俺が空間爆砕とか物質崩壊とか擬似球電とか連射しても4時間もすれば元通りになってるようなごっつい街だったしなぁ。
 物質崩壊って黒魔術の最秘奥だぞ。それをものの数時間で片付けちまうとかどんな街だよ」

「なんか仮に女神が押し寄せてきて今度は押しとどめられずに大陸中が滅んだとしてもあの街の連中だけは平然と生きてそうだ」

>>68
魔王術者。はっきり言って迷惑だ。俺の立場はどーなんだ?
迷惑だから消えてくれ!
思えば遠くへ来たもんだ……

それでお前は満足か――

これで終わりと思うなよ!


>>70
 それほど興味深い、というほどの問いというわけではない。

「まあ、誰が誰より強いなんて話は所詮意味もなければよくわからん話で、実際に試したところでもっとよくわからなくなるだけなんだが」

 それでも一度は考えるようなことではある、とも言える。

「まずは念糸を紡ぐのが魔術を展開するのに比べてどれだけ速いかにもよるな。
 ただ原則として防御も治癒もできる魔術に対して、念糸は基本的に攻撃にしか使えない。その点で俺にアドバンテージがある」

「もっとも逆に彼女には俺になくて、かつきわめて強大な武器がある。精霊だ。
 しかも彼女の開門式は非常に短い。少なくとも俺が呪文を唱えるよりは速いはずだ。
 単なる殴り合いや念糸と魔術の競り合いならそこそこなんとかしのげるはずだが、彼女が即断で
 精霊を使う気になれば俺には防ぐ手はない。つまり、その点では俺よりミズーのほうが強い」

 そこで手をひらひらさせ、肩をすくめると

「もっとも今の彼女にいきなり出会い頭に精霊で攻撃するような精神性があるかどうかは甚だ怪しいと思うがな。
 俺が出会い頭にいきなり物質崩壊やら意味消失ぶっ放さないのと一緒だよ。
 といっても逆に必要ならその時は彼女はためらいなくあの獣精霊を呼び出すだろうがな」

 そこでいったん言葉を区切り、

「ま、つまりは結局、どうなるのかよくわからんってことさ」

72 名前:名無し客:2011/06/23(木) 15:22:48
オーフェンさんとマス何とかの闘犬ではどっちが強いんでしょうね?

73 名前:名無し客:2011/06/23(木) 20:15:46
ティッシの事は愛してなかったんですか

74 名前:名無し客:2011/06/30(木) 17:59:01
一緒にメシ食いに行きませんか?

75 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/07/05(火) 19:47:20
>>72
「どう考えても俺だと思うが。250戦250勝0敗だぞ」

が、そこでふうむとひとりでうなり声を上げると

「しかし物質崩壊を撃ち込んでも燃え残る頑丈さは俺にはないな……まあ何をもって強いと呼ぶかにもよるが、その点は考慮すべきなのは確かだ」

>>73
愛していなかったのだろうか。言われて、自問する。
考えるまでもない。
はっきりとノーだった。

「愛してたよ。今でも愛してるさ。大事な仲間、大事な姉貴、大事な家族だからな」

誰にというわけでもなくかぶりを振り、

「だが、俺にとっちゃ姉貴はふたり揃ってなけりゃダメだったんだ。
 ティッシがいればアザリーがいなくてもいいとかそういうわけにはいかなかった。
 あの時15歳の俺が下した決断は間違いなく途方もなく愚かで、拙劣で、未熟な決断だった。
 だがアザリーがいなくちゃダメなんだ――ダメだったんだってことは今でも一緒だ」

考える。もう一度あの場に立たされた時、15歳の自分はどうしただろうかと。

「そうだな。それでも同じことをしたかもしれねぇ。少なくとも執行部の決断に、どういう形になるにせよ、
 逆らう決断はしただろう。今度は先生と一緒にな」

言いながら、認める――これは言い訳なのだと。
あのときティッシよりもアザリーをとったことへの。
ティッシが自分に愛されていたと感じてくれただろうか。これもまた考えるまでもなく、ノーだろう。

それを苦く噛み潰しながら、告げる。

「……いや、悪い。こんなのはただの言い訳だ。ティッシには聞かせられない……
 すまねえな。ちょっと気が動転して変なことを口走ったよ」

>>74
「うん?そいつはありがたい誘いなんだが」

薄く苦い笑みを浮かべると、

「一応、これでも指名手配犯なんでね。街に入ると俺の似顔絵がべたべたあちこちに張ってあって、その本人がのこのこやってきたとなると
 ひと騒動あるわけだ」

肩をすくめ、

「そういうわけなんでな。まあ、せっかくの誘いだが、断らせてくれ」

76 名前:名無し客:2011/07/06(水) 21:51:24
オーフェンさんて人相凶悪なのになんだかんだでモテますよね


77 名前:名無し客:2011/07/10(日) 21:21:15
あなたの存在理由を教えてください。

78 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/07/17(日) 23:11:26
>>76
「もてるっていうのもかなり語弊がある気がするが」

 腕を組み、ううむとうなる。

「結局、みんな俺を自分のために利用しただけさ。
 アザリーは言うまでもないし、メッチェンやウィノナ、ヒリエッタはおろか、エリスでさえも自分のために俺を連れてきただけだよ」

 こんなことを思うのは、自分の心がすさんでいる証拠だろうか。そうも感じる。
 荒野で過ごす日々が続いている。水もなければ森もなく、草すらもまともに生えていない、生命のない土地。
 それを見、そこで眠り、そこで目を覚まし、そこで過ごす。そんな日々だ。
 乾いた大地は心を荒ませるというが、本当かもしれない――そんなことを考えながら、そこでうっすらと苦く笑うと、

「ま、それがムカつくってほど子供じゃないつもりだけどな。
 結局は人間は生きていく上でどこかで他人を利用しなけりゃ生きていけない」

 それが人間の社会というものであって、建前はそれをうまく隠してくれている。
 だが真理は隠されているからといって無くなることもない。
 誰も見ず、誰も聞こうとせず、誰も触れようとしない。だがそれだけにかえって厳然と存在している。
 否定もできない。しても仕方がない。それとうまくつきあって生きていくより他にない。

 「俺だって5年間ずっと帰りを待っていてくれたあげくに"キリランシェロ"事件の後始末に奔走してくれたティッシと、
 ウォール教室との抗争でついに同盟反逆罪に問われた俺を庇い立てしてくれたフォルテの好意を利用してキムラックに行った、とこういう見方もできる」

 というより、少なくとも前者に関しては他人から見ればまさにレティシャを都合よく利用したというようにしか見えないだろう。
 恐ろしく姉不孝――という言葉があるのかどうか知らないが、オーフェンはなんとなくそんな言葉を思いついていた。
 
 姉に心配ばかりさせ、姉に苦労ばかりさせ、自分からはなにも返さない。
  
 それでもその姉であるレティシャはあのタフレムの広い屋敷で自分を待ってくれている――そう思う。
 そう考えると安心できるのは、自分の卑怯さのなせる業か。
 否定しようにもする余地がなく、オーフェンは独り嘆息した。誰にでもなく、自分自身に。

 そこでふと思いつき、独りごちる。

「……そうやって考えると、クリーオウの奴は純粋に俺のためを思って行動してた数少ない例外なんだな――」

>>77
「生まれたから今生きてここにいる。それだけだ。それ以上でもそれ以下でもない。
 誰かに望まれているから存在していると思うほど自惚れても依存してもいない」

 結局のところ、肉ある生命というのはそんなものなのだろう。

「ま……両親が望んだから俺が生まれた、くらいのことは信じたいが」

 そこで肩をすくめ、

「俺は両親の顔だって覚えちゃいない。俺にとっての親は墓標に刻まれた名前の上での存在でしかない。
 今となっちゃあどういうつもりで俺の両親が俺を生んだのかなんて分かりゃしねぇ」

「まあ、死にたいと思ったことも、逆に生きたいと思ったこともある……だが、どっちにせよ好きなほうを自分で選べたわけじゃないからな。
 自分で選択して存在しているとも言いがたい」

「そんなもんだよ。俺だって結局はひとりの人間、ひとりの魔術士なんだ。それ以上の価値があるなんて思ったことはない……
 いや、そもそもひとり分の価値すらあるのかどうかも怪しいけどな」

79 名前:名無し客:2011/07/27(水) 18:16:04
某胸の小さい女魔道士さんと、戦ったらどっちが勝つんでしょう?
接近戦では、オーフェンさんに分がありそうですが。

80 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/08/06(土) 23:28:17
>>79
「魔道士?魔術士でなくてか……?」

 首を傾げる。

「ああ。リナのことか。すっかり忘れてた……っていうか、ぽいもの曰く忘れるようになる仕組みだったんだから忘れてて当たり前らしいが。
 むしろなんで俺思い出したんだか。これも魔王術者になった影響か?」

 聞きつつも、実際そうとしか考えられなかったが。

「実際、彼女の実力の全てを見たわけじゃないからなんとも言えんな。
 なんとなくわかるのは彼女は魔力の出力――まあ"魔力"の定義自体がこっちとあっちでは違うらしいからこの言い方も正確じゃないが――で大威力の魔術、じゃない、魔法で
 叩き潰すっていう戦術スタイルで、俺の"こかして踏みつける"とは全然違うってことくらいか」

「それに彼女と戦うならあの金髪の剣士とも戦うことになるんじゃないか。相棒らしいしな」

 よーいドンで真っ向から向かい合って1対1、なんて都合のいい建前でやるなんて無意味な前提で考えても仕方ねぇだろ、と付け加えながら、オーフェンは続ける。
 
「そうなるとそれは不利だなあ。あの剣士もリナに負けず劣らずの相当な、途方もない手練れのようだし。そのくらいは見りゃ分かる。
 その手練れのガードを突破しつつ俺たち音声魔術士とは比較にならない火力を扱えるリナを制圧するということになるが――」

 うなる。あまり現実的な算段が立てられるとは言い難い。

「かといって距離をとっての魔術と魔法の撃ち合いじゃあ俺とリナにはそれこそどうしようもない開きがある。
 どうも向こうには防御の魔法という概念が薄いらしいが、だからといって俺が有利ってわけじゃない。
 俺が最大出力で防御してもあの"竜破斬"とかいう術を使われたら余裕で撃ち抜かれる。というか撃ち抜かれて塵も残らん。
 彼女に言わせれば呪文詠唱なしに即魔術の効果を具現化できる俺たちの音声魔術は音声魔術で脅威らしいが、
 俺の普段扱う熱衝撃波でもリナが使う術の中では比較的簡単な"火炎球"にかなり威力で劣る。
 単純な破壊規模でリナの出力に匹敵させようと思ったら、制御も後のこともまったく何も考えない自爆覚悟の、
 力を100%放出する文字通りの最大出力で撃ってそれでもまだ"竜破斬"にはまるで及ばない、ってくらいの歴然とした差があるわけだ」

「火力なんて近接戦闘じゃあ屁の役にも立たない――立たないが、そもそもその近接戦闘に持ち込むのが至難、とこういうわけだな」

「まあ前にも言ったが、誰が誰より強いとかどっちが勝つだなんて話は意味もなければわけのわからない話でしかないが、それでも言えば――

 そうだな。不利なのは俺のほうだろうな」

81 名前:名無し客:2011/08/15(月) 02:57:06
今でも謎の日曜大工系大発明な趣味は続いてるんでしょうか。

82 名前:名無し客:2011/08/21(日) 22:24:23
スクラップド・プ○ンセスのラクウェル姉みたいな人がお姉さんだったら、
どんな苦労をしていたんでしょうね。

83 名前:名無し客:2011/08/21(日) 22:30:53
ひでえお姉さんに恵まれていたのは承知しました。
それではオーフェン氏の思う理想のお姉さんはどんな感じでしょうか?

84 名前:名無し客:2011/09/08(木) 22:43:05
そういえば、ヒーローズファンタジアの作品ってどういう基準で選ばれたんでしょうね
特殊能力使った戦闘なら、他にもザ・サードや棄てプリやBBBなどもよかった気がしますが


85 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/09/19(月) 22:29:24
>>81
「さすがに最近はしてないが」

 なんとはなしに空を見上げ、呟く。

「まあ落ち着いたらああいうのもまたやりたいなとは思ってるよ。
 あの手の日曜大工ってのもなかなかどうして面白いもんだぞ」

 まあ、まさかコミクロンの影響を受けたとは思いたくないが、とだけ付け足して、懐かしげに言う。

「思えば最初のころはそりゃあ稚拙だった――単なる金属バットを発明品と呼んでただけだ。駄作破壊装置グッバイ・アーチ、
 駄作破壊装置パート2、イブシギン・タイムリー君、そして駄作破壊装置パート3改め対横暴姉用兵器、ポテン・ヒッター――」

 懐かしさの中にぎらりと瞳に光を覗かせ、小さくとも力強く続ける。

「それじゃあ駄目なんだ――そう気づいたのはいつだったんだろう。
 気づいたら俺は問答無用調停装置:エドゲイン君や無能警官いたぶり機シリーズことボンバー君を作っていた」

「きっかけは簡単だった。過程はもっと簡単だ。
 旅先で必要になればなんとかして自分で作るしかない――たったそれだけのことだ」

「それらが全部積み重なった結果、今の俺がいるわけだが――ううむ。あの俺がダイアンにヒントあげた、
 あごの骨砕き機は結局コギーのあごの骨を砕く機会はなかったみたいだなぁ。
 今思い返してみるとそれがもったいなかったな、うん」

 大きく空を見上げながら、独りごちる。

「もういい加減短剣やら拳銃やら振り回す生活にも疲れて来たよ――またああやって大工道具振るってるほうがずっと楽でいい」

>>82
「まあ火力と腕力にものを言わせてわがままを好き勝手に押し通したあげく飽きたらそれを容赦なく放り出して後片付けだけはこっちに
 押し付けてくるアザリーと、常識人のつもりでいて実はトラブルを破滅的に加速させる迷惑ヒステリー女なティッシよりかは確実に平和な姉貴だと思うが……」
 
 胡乱げにうめく。

「うーむ」

 腕組みして、軽く上を見ながら考える。

「天然気味で酒乱とか、それもどうなんだろうな。結局余計な心配しなくちゃならんってことじゃあ
 あんまり大差ない気もするぞ。
 たとえば余計な虫がつかないかどうかの心配とか」

>>83
苦笑いしながら、つぶやく。

「理想の姉、ねぇ。まあいろいろ考えたことはあったが」

そこで一度言葉を切り、

「結局、俺の姉さんはやっぱり暴力ワガママ女のアザリーと、迷惑ヒステリー女のティッシ以外にゃ考えられんよ。
 それ以外の女の弟でいる自分ってもんが想像できねぇ」

「つまりこういうのをシスター・コンプレックスって言うのかねえ……」

>>84
「俺が知るかよ。まあ次がありゃあ"銀刀"やカスール兄妹と一緒に戦ってみたいってのは確かだが」

86 名前:名無し客:2011/09/22(木) 20:52:22
遅くなりましたがヒーローズファンタジア出演おめでとうございます。
しかし、ほとんど一撃必殺みたいな魔術ばっかりなのにバランス取れるんだろうか。
昔あったスレイヤーズのTRPGも即死上等で世紀末状態だったのに……。

87 名前:名無し客:2011/09/22(木) 20:53:39
そういえば直剣ばっかり見るけど、片刃の曲剣みたいなのは無いのかな?
刀みたいなの。

88 名前:名無し客:2011/09/22(木) 20:56:05
どうみてもシスコンです。ほんとうにありがとうございました。
……割とマゾ気質?

89 名前:名無し客:2011/10/10(月) 00:01:13
時を遡ってでも取り戻したいものはありますか?


90 名前:オーフェン ◆oRPhEnns0U :2011/10/23(日) 00:46:43
>>86
「それについてはアニメ版なのか原作版なのか怪しいっつうか、前者っぽいんで素直に喜べないんだよなぁ。

 ま、バランスで言やあクリーオウ――というよりはレキがいる時点ですでに崩壊してる。その点はさほど気にしてないな。
 最大火力でペットに圧倒的に劣る主人公なんてそうはいないと思うぞ。自慢にゃならねぇが。
 
 しかしリナは竜破斬以上の切り札があるし、他の連中も"シェルブリッド"や"絶影"みたくパワーアップする連中が多いが、
 俺はなにもないな。そっちのほうが気になる」

 
>>87
「あるぜ?
 いかんせん普通の直剣と比べると扱いが難しいんであんまり流通はしてないが。
 それに製造コストから言っても、量産し易い鋳造の直剣と比べると職人芸と時間を要する鍛造の刀は分が悪い。

 メッチェンに言わせると「刀は刃こぼれしたらおしまいだが、剣は打撃で折ることも期待できる」とかなんとか。
 俺もあんまり得意な武器じゃあない。道具なんてのは折れるまでぶん回してやりゃあいいっていうタイプだしな。
 刀を使ってたのは……シーク・マリスクくらいか。
 仮にも<<十三使徒>>の魔術士がまさか伊達で刀ぶら下げてるなんてこともないと思うが、結局彼が刀を使うところは見てないな。

 そういや魔術武器でもたいていは直剣だな。
 少なくとも刀の魔術武器っていうのは俺は見たことがない。
 まあ天人種族の発想ってのは正直よくわからん――それを言えば天人に限らずドラゴン種族全体がそうなんだが――から、
 なんで刀を使おうとしなかったのかは俺には想像つかないが。

 ……そういやラシィも刀持ってたな。妖刀・血煙灯台とかいうの。
 危うく後ろから斬られるところだったっけ」


>>88
「いや、どうなんだろうな。シスコンなのはもう否定する気はせんが。
 まあ確かに姉貴とかにしょっちゅうぼろくそにやられてたが、別にそれが快感だったりはしなかったぞ断じて」


>>89
「やろうと思えば、それができるだけの力が今の俺にはある……」

 そして取り戻したいものが――だがどうしようもなく、永遠に、完全に、失われてしまったものがある。

(だが、魔王の力はそんなことは関係がない。万能に近い究極。無限の力だ――)

 世界のほとんどすべてを作り変えてしまうこともできる。歴史を望む通りに書き直すこともできる――
 アザリーが最期に言っていたことを思い出す。

『不可能のない力だからこそ、それを最良の形で実現しなさい』

 ふと、掌に目を落とす。無論、それが血にまみれて見えるなどということはない。だが。

「領主も、アザリーも、俺が俺の後悔を取り戻すために犠牲になったんじゃあない。
 この力はそんなことのために召喚されたんじゃあない……そんな、過去を変えるだなんてことのためじゃあない」 

 不可能だからこそ大切にされてきたものがある――

「もし本当に過去に遡るなら、俺はなにを差し置いても間違いなく6年前の俺を殴りに行くよ。あのうぬぼれ過ぎの老けガキだった俺をだ」

 6年前の決断は正しかったのだろうか?
 最初は疑問になど思わなかった。だが、時間とともに確信は揺らぎ、そして最後には別の確信を得た――自分は間違ったのだと。
 未熟で、拙劣で、増長した自分の決断がなにもかもを変えた。いや、無駄にした。
 何もかもを犠牲にし、そうまでして追ったアザリーと再会した時に感じたのは紛れもない失望だった。

「だが、どれだけ後悔しても、失望しても……人は生きていくんだ」


「だから、俺は今の自分で生きていく。失ったものを悼みながら――」

91 名前:名無し客:2011/11/17(木) 21:55:25
差し入れです。
つサンドイッチ

92 名前:名無し客:2011/11/28(月) 22:18:25
実戦で楽観視が許される時はありますか?
自分の戦いだけでなく、仲間の戦いでも。

93 名前:名無し客:2011/12/02(金) 21:20:09
力に酔っているとは、どういう状態を言うんでしょう?

94 名前:名無し客:2011/12/09(金) 00:52:28
世界で最も無駄な魔術の使い方を選ぶとしたらどんな時にどんな術を使うものなんでしょうか?

95 名前:名無し客:2012/02/15(水) 01:45:10
一撃必殺シチューってどんな味がしました?

96 名前:名無し客:2012/02/15(水) 01:49:31
チョコは大事なカロリー源ですか?

97 名前:名無し客:2012/02/19(日) 00:58:17
娘に彼氏が出来たら気が気でないですか?

98 名前:名無し客:2012/02/20(月) 10:47:24
結婚は人生の墓場って話を耳にすることがありますが、
オーフェンさんは結婚してみてどうでした?

やっぱ墓場に入った気分でした?

99 名前:名無し客:2012/02/21(火) 13:00:11
生活力なかったのに、よく所帯を持つ気になれましたね……

100 名前:名無し客:2012/02/22(水) 22:09:32
やっぱクリちゃんもパートとかして、家計を支えたりしてるんですか?

101 名前:名無し客:2012/02/23(木) 10:25:20
やる気が出るのはどんな時ですか?

102 名前:名無し客:2012/02/26(日) 00:30:07
金髪の女性って年取るとメタボ化するらしいけど、クリーオウは大丈夫ですか?

103 名前:名無し客:2012/02/28(火) 20:20:48
              イ   > ´                `ヽ、
            //   /       /        ヽ   ヽ
          .,. ´ /    ´   '       !        l   ヽ
          /  l   /   ,'     l         |    ∨
            l  ,'   ! |      N        l l       }
         l.   l  l    N : : : : : :__ノl: : : : : : : : : :} }     l
       . l    l   |: : : : tT フ=笊ミ、 ー―--ヽ_/_: : : : : :j
        '   .∧r-N: :, ' 〃ん__く心      x =≠y、、: : //    
          /     {///ヽ .《 .{辷圭に       ん'沁.ハ ハV‖   うわっ……
       '      弋//ノ   ゝ--- '       しノにリ/ノ  .|    オーフェンさんの年収、低すぎ……
      /  ,     ヽ .∧ U ヽNヽ        , ゝ--' |   ∨   
     .イ  {  : : : . ..  `ヽl           , -y、 ヽNヽ !   l ヽ
     /   l  : : : : : : : : : : :\     r‐, /./ イh   ノ_ -‐- !  ',
    ,     , : : : : : : : : : : : : : ヽ   ノ /./ ./7l l、/: : : .  |: : ,
    {  : : : :ヽ _:_:_:_:_:_: : : : : : : :_ .Y´   ´ / イ, ! l 〉 : : : : : :j: : : }
     ,  : : : : : :./     ` ヽ y´  i_ =-=、   ' ノ  /: : : : : : ノ: : :/
     .' , : : : : : :'       ,八  |    `ヽ /  _/⌒ヽ-‐'ヽ: : ノ
       ー-- |  、       ヽj  __    V__ノ {   ノ   }ー
           |         r‐' ´  `ヽ、 /    ⌒、   j






104 名前:名無し客:2012/03/08(木) 11:27:18
歳食って、少しは落ち着き出ましたか?

105 名前:名無し客:2012/03/09(金) 11:39:52
このリア充め!爆発しちまえ! って思った相手はいますか?

106 名前:名無し客:2012/03/30(金) 14:44:18
マジクって今なにやってんの?
あいつがクリーオウとくっつくかと思ってたんだが


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