■ 【梅雨限定】雨降りしきる森の中【雑談スレッド】

1 名前:名無し客:2010/06/01(火) 21:37:26
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・ここは梅雨明け(6月いっぱい)までの雑談スレッドです。
・雨宿りできる大きな木があります。
・変な人は多分いないと思います。
・楽しくお使いください。

2 名前:??? ◆suKEbEVebI :2010/06/04(金) 23:13:23

「ふう、急に振り出すなんてなぁ…」



                ―― 大きな木の下にかけこみ、 ――

                ―― 雨宿りをする少女が一人。 ――


「…おい。」

  
   ―― 彼女の肌はすきとおるように白く、セミショートの青い髪はそれの美しさを引き立てていた。――

   ―― そして彼女はsぎゃぶうぅッ!?



誰が少女だッ、おんどりゃあぁぁぁぁ!!


3 名前:サーナイト♂@探検隊オスメスズ ◆suKEbEVebI :2010/06/04(金) 23:14:12


      ! !
   :┼┼──  ● ● ●
.    i .i

 

ったく、フザけたナレーションだぜ。
ナレーターを殴るなんてメタいことやらせやがって…

それはともかく、今日もいつものよーに仕事をサボってテレポートで
ここまでやってきたはよかったが あいにくの雨だった。
また別の場所に跳べばいいんだろうが… 
なんとなく気分で、この木の下でもって雨宿りをしてるわけだぜ。

ある日森の中、リングマさん… もとい、おねいさんに出会った〜♪ なーんて
都合のいいことはサスガに起こらねぇだろーけどよ。


4 名前:サーナイト♂@探検隊オスメスズ ◆suKEbEVebI :2010/06/04(金) 23:41:09

「考えてみりゃあ、雨宿りなんかするのは久しぶりだよな。」

ダンジョンの中じゃあ、雨が降ろうがあられが降ろうが
探索は続けなくっちゃあならない。
(そもそもなんでダンジョンの中で雨が降るんだよとツッコミたい衝動にかられないこともないが、そこはアレだぜ)
俺が水タイプならこの雨も嬉しいものなんだろーが、残念ながら違うわけで。

ゴソゴソ…
あった。
手持ちの道具の中に、天気を「ひざしがつよい」にする『ひでりだま』がある。
雨ってのは憂鬱な気分になるし コイツで無理やり快晴にもできるが…
ま。なんつーか…それはヤボってもんだよな。
大体、ここはダンジョン内じゃあないし。


5 名前:名無し客:2010/06/05(土) 00:04:35


            クスクスクス―――

   ウフフ―――

                             アハハハ―――

6 名前:サーナイト♂@探検隊オスメスズ ◆suKEbEVebI :2010/06/05(土) 00:12:17
>>5
   ,.. -‐- 、
  l Nヽ、ヾl Σ びくうっ!?
  \;゚дヽ!  


「お…おーい。 誰かいるんですかーい?」

な、なんだよ。誰が笑ってるんだ?

…考えてみればここは暗い森の中。
「何か」出てきたっておかしくはない。
あ!いや…俺は冷静だよ。
ぜんぜん怖がってなんかないし。 ビビッてませんって。いやマジで。

だけどこれはちょいと気味悪いな。
幽霊なんざ怖くねぇが、ゴーストはニガテだ。相性的な意味で。


7 名前:名無し客:2010/06/05(土) 00:17:24





―――――ガサガサ!

      ―――――ガサガサ!

                 ―――――ガサガサガサ!

8 名前:不確定名:ミイラ長 ◆kiLL.Hxa7E :2010/06/05(土) 00:21:16
 お ー ば ー け ー だ ー ぞ ー 


    _
   ‖ ‖ ┌┐
  ‖ ‖ └┘□                       __             ┌┐ロロ
  ‖  `ヽ     _                  r‐-‐'" | ゙7"~ヽ‐‐,          | ゙'┐       ┣¨
 ‖ ‖、  \  ‖ ‖┌┐            "ヾ,ェ-゙、イ-"'''''ヽ、==`ヽ、       L ̄   ┣¨
..‖ ‖ ヽ_/  ‖ ‖ └┘□          f、シ-'  /iハ     ヽ==i-、`i,            _
 ヾ/       ‖ ヽ                /´  i  i=l iヽ     i-----、゙l、___,,,,,、     __(_`ヽ- 、
         ‖ ,、 \   ┌┐ロロ    レi  ∧ l-V及廴__、_ リニニニニテ、__ィ-、 > (__,、 \ヽ`+、,_ヽ_
         ‖ ‖`‐"    / ニコ        i  lヾヽi`ヾ、(◎)ゝ/Y __ヾヾヾゞ、_____゙    `i ゙i゙、  i_ィ、 ゙l
        └‐┘       ̄           レ、 ゙i>'"二二`ー'"ー/ィ-‐''"フ~ ̄< ̄ヾ     i  l ヽ  ゛ ゙i
                            ゙i ゙ト-‐‐二二二二y ヽイ"ヽ ,,ィ-、゙l、  ヾ~ヽr゙ヽ ヽヽ、__, ィ゙ヽ
     _....--、                  _"  ヽニニ二二--‐彡ヽ_ ゙''''ヾ<r-、__]、   ゙ー、\`''\ \、ィ"i、__
 ⊂二<"-‐=_ ゝ 、               f ,,,fV、ミ-ヽ―‐''''''", ィ'" /゙>f゙ヽz''irヽ ゙ヽ    ゙'{~゙ ̄" `ヽ ヾ |r-、 ゙'|
 ⊂ニ二`'''"、___∠-ミヽ            r-"r'"、 f=- 〈`ゝェェイ":::::::/  |_/:::::::゙'`"゙::::::::`ゞ--、 キ `ー-‐='ノ ,>=--"
   _,--" ゙ー-、   ゙-、__          (ハ ャ/ " ゙-i キ::メi::::゙i:::::://l   l )::::::::::::::::::::::::/ /:::/ 7i゙ヾー---‐''":::::ト-i
  "ー‐-、,/ ,ィ゙,  ノ ゙i `ヽ、__       r-‐ヾ ヽ::::: il   )彡' l   (〈:::::::::::::::::::::::/ /:::l l:::::i ヽ::::::::, ィ‐" ___
      /  /ヽミ  l   〉:::::゙i l`ーr-、__,イ~::::ヽ ヽ ヽf‐ィ-" 7 ゙i":  l  l`ヽ、:::::::::::::::::l  l:::::l l::::::ヽ `"´, ィ "´:::::::|
    /  l r≧___ノ  /::::::::l  l:::::::ヽ ヽ::::::::::::::l l /    /  l   l  li ゙i-=、:::::::::::ィ' _l::::::l l:::::::::`ー":::::::::::::::::::i
    l   l ヽ、__,>、-/:::::::::/ /:::::::::::i i::::::::::::::l i'_,,,,,,、 /  l、   ゙i 、 i ー====="イ" `ヽ"iヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::ノ
    l  ミ     ヽー、_:/  /:::::::::::::l l::::::::::::::l l  l ヽィ'''ー' \  ヽ ヽ、    ヾ:::::|     l lヽ、___:::::::::::::::::::/
    l   ゙i      ヽ、 " , ィ'"~`ヽ、ノ_/-、_,____l l, ゙ヽヽ、  \  `ヽ-i l___    `゙i     ヾ_ヽ,ィ"  ̄ ̄ ̄
    レ'" ̄        ̄       ヽ ー‐フ-"~~~"`ヽ`ヽ- `ヽ、___l  i  \___┏━┓ ┏┓
                        `ー'"      ゙i       |  l \__┃  ┃ ┗┛┏┓ ┏━┓ ┏┓┏┓
                                     |  ̄`ヽ、   l  l __‐┃  ┃     ┗┛ ┃  ┃ ┗┛┗┛
     r--┐┌┐       ,,  ,,             ィ"        l  l __┃  ┗━━┓    ┃  ┗━┓
     ‖ ‖└┘□    ┣ ┣      f" ̄`´ ̄ ̄         レヽ、    ┃        ┃     ┃     ┃
    ‖  《    ┏┓□□         <"/                      ┃  ┏━━┛   ┃  ┏━┛
   ‖   ヾ、  ┃┗┓        f"´/                       ┃  ┃   L____,,ィ-'"┃  ┃ \
    ‖  r-、/  ┃┏┛      ,ィ-":::::: ̄`ヾ                    ┃  ┃ ヾ       ┗━┛  \
   ‖  ‖     .┃┃     /:::::::::::::::::::::::::::ム_、                   ┗━┛ ヽ"、---'"´`ー-、 \_/
   ヾ=/     ┗┛    /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ                          ヾ:::::::::::::::::::ヽ


  <入場>

9 名前:サーナイト♂@探検隊オスメスズ ◆suKEbEVebI :2010/06/05(土) 00:28:28

>>7

ピキィーン☆
はっ… め、めったに当たった試しのない俺の「みらいよち」がッ!
何かがヤバいことが起きると告げているッ!!

ああ、なんでイヤな予感っていい予感より当たるんだろうな。
おまけにガサガサ音がして「何か」がこっちに近づいてくるじゃねーか…

ま、まぁ俺は根性すわってるし?
何が出てきてもちょー余裕?みたいな? 


>>8  お ー ば ー け ー だ ー ぞ ー 



    ノ⌒ ̄~`−' ̄ ̄ヽ_,−、
   /           /    l
   |               /l
   ヽ    /⌒ ̄⌒ヽ   ノ/
  ___/   , ,‐, ,-、 \//      【サーナイトは すごいカッコで きぜつ している!】
|⌒     / ~   ~\ \
|ノ ̄ ̄ ̄ ヽ  l    ノ \ \
        <l l  ヽ/  \ \
       /j ロ 。 ミヽゝ    \ ~l
       ( W V ζ\     l__ノ
     / ノヽ__ノ \ \
   / /         \ \
  ヽ/            \ノ



10 名前:十六夜咲夜 ◆kiLL.Hxa7E :2010/06/05(土) 00:34:14
>>9

「なんちゃって、お久しぶりね」

突如茂みから現れた怪人は
顔に巻かれた包帯をしゅるりと解いて小さく舌を出して笑った。

包帯の下から現れたのは紅魔館のメイド長、十六夜咲夜である。
どんな仕掛けがあるのか、はたまたお得意のタネ無し手品であるのか、
顔以外の包帯もするすると手元に勝手に巻き取られていく。

「どう?すこしは驚いたかしら?
 今年のハロウィン用の芸にとちょっと準備をしているところなんだけど……」

少し小首をかしげて感想は如何と尋ねる。
何も4ヶ月も前から準備しなくてもいいだろうに。

「……って、ちょっと効き過ぎたかしら?」

思わずメイド長は頬を掻いた。


11 名前:サーナイト♂@探検隊オスメスズ ◆suKEbEVebI :2010/06/05(土) 00:43:18


 【意識レベル低下… 回復は困難…】

 ____∧___∧_
 
 ピッ…ピッ…
 
 【思考波を感知… おねいさんと断定!!】

         /\
        /    \    ピッコォーン!!
       /      \
____/         \____


>>10 「なんちゃって、お久しぶりね」

がばちょ!!

と、俺はいきおいよく起き上がった。
これが起き上がらずにいられようか! 目の前におねいさんがいるのだからッ!!


「どーもどもっ、お久しぶりッス!
 それにしてもこんなオチャメないたずらをするなんて… 咲夜さんはかわいいんスねッ。キリッ」


つかみのあいさつはバッチリ。
さすが俺だぜ。


12 名前:十六夜咲夜 ◆kiLL.Hxa7E :2010/06/05(土) 00:53:08
気絶したサーナイトにどうしたものかと
大木の幹に背を預けたメイド長は天を仰ぐ。

しとしとと降り続く雨は絶える気配も無く……

>>11

と思いきや早速蘇るサーナイト。
さすがにぎょっとするが、零れ出たのは驚愕ではなく苦笑だった。
そういえば館にバイトに来ていた時も終始この調子だったっけ。
普段は噂なんて数日で飽きるはずのメイド妖精たちが、
随分と長いこと彼について語り合っていたのはきっとそれだけ気に入ったからでもあったのだろう。

「まぁ、調子が良いのね。
 でも可愛いと呼称される機会は珍しいし、おとなしく騙されておこうかな」

肩をすくめてみせる。
嘘ではない。
可愛いなんて呼称は小さい頃から通して滅多に受けた事がないのだ。
ニコリともしない愛想の無い子供だったから止むを得ないだろうが。

……ちなみにメイド妖精たちの噂の主題は彼の女装についてだった。


13 名前:サーナイト♂@探検隊オスメスズ ◆suKEbEVebI :2010/06/05(土) 01:00:14

>>12 でも可愛いと呼称される機会は珍しいし、おとなしく騙されておこうかな

「またまたぁ… ケンソンしちゃって!
 でもそーゆーあなたも素敵ですぜ。きっとハロウィンの時も皆さんにウケるッスね、その変装!」

こうして彼女と会話をしていると、ひょんなキッカケから
悪魔の館で… あまり思い出したくねぇけど、女装してメイドをやったことを思い出す。
俺の黒歴史ってヤツだぜ。
いや、仕事自体は楽しかったしみんな親切だったけど。


「そういや、咲夜さんはなんでまたこの森へ?
 ちなみに俺は仕事をサボ… もとい、休憩するためッス。」


14 名前:十六夜咲夜 ◆kiLL.Hxa7E :2010/06/05(土) 01:07:07
>>13

「それが、まだ誰にも見せていないのよ。
 美鈴あたりに見せて笑われでもしたら凹むし……
 まぁ、貴方がそう言うのなら少しは安心できるかな、有難う」

丸めた包帯をぽんぽんとお手玉しながら苦笑い。
正直言うとあまり自信はなかったのだ。
普段の方がよっぽど妖怪っぽいですよ、とか言われたら凹むどころか折れる。

「え?ここに来た理由?」

理由か。
この仮装は理由じゃないわね。
サーナイトを見てから身に纏っただけ、
たまたまポケットに入れっぱなしになっていただけだもの。
すると……

「理由は無いわねぇ。
 なんとなく足が向いたから……その程度のレベルの話かな」

昔と違い、理由が無くとも心任せであろうとも、
それが恥ずべき事とは思わない。

なんとなく。

理由なんてそれでいいんじゃないか、とメイド長は思った。

15 名前:サーナイト♂@探検隊オスメスズ ◆suKEbEVebI :2010/06/05(土) 01:15:10

>>14 まぁ、貴方がそう言うのなら少しは安心できるかな、有難う

「だぁーいじょうぶッスよぉぉぉ〜っ。
 一応モンスター(ポケモンとはいえ)のはしくれである俺が怖くて気絶しちまうくらいなんですからね!
 自信を持ってくださいよッ。」


女性を立てる。これ仲良くなれるフラグの第一歩だぜ。
いや、おせじじゃあなくマジで怖かったが…


>>なんとなく足が向いたから……その程度のレベルの話かな

「なるほどぉ…
 うん、誰だってぶらりと足が向いて途中下車しちゃいたくなったりすることもあるッスよ。
 長い人生だ、なんとなく寄り道したっていいじゃねぇスか…」


木の下で人生(俺人間じゃねぇけど)についておねいさんと二人きりで語り合う。
な… なんてとろけるシチュエーションだ! ハァハァ
ここへ来てよかったぜ〜
 

16 名前:十六夜咲夜 ◆kiLL.Hxa7E :2010/06/05(土) 01:36:14
>>15

自信をもてとサーナイトは言うけれど、
他の連中もまたモンスター、本職と言うかそのものというか、
いずれにせよ、仮装もほとんど必要の無い連中ばかりなのだ。
そうそう驚いてはもらえまい。
しかし、それでも良い気休めにはなった。

「フフ、有難う。
 それじゃ今年はやっぱりこれでいくとしますか。
 他にも幽霊とかも考えていたんだけどね。
 『お嬢様、今朝死んでしまいました』とか言って」

ちょっと洒落にならないかなと思って保留していた。
そういう迂闊に不謹慎な笑いをとろうとすると結構お嬢様は厳しく怒る方だ。
だからできればあまり選びたくは無かったのである。

「ぶらり、途中下車の旅か……
 電車という乗り物にのったことはないけれど、
 そういうのんびりした旅も一般的には喜ばれる事なのかしら」

んー、と口元に人差し指をあてて
しばし考えをめぐらせていたメイド長はそこでふと顔を上げた。

「それにしても随分機嫌が良いわね?
 なにかいいことでもあった?」


17 名前:エル・マタドーラ ◆jLr39t.yGY :2010/06/05(土) 01:36:54

「うひぃー!雨脚が早くなってきたなぁ・・・」

降りしきる雨の中を俺は走りながら呟く。

――と、言うか俺は何でこんなところにいるんだ?
お嬢さんセニョリータをナンパしようと出かけたはずが
こんな森の中に来ちまうなんて・・・。
そこまで考えて、前方に雨宿りできそうな大きな木(>>1)があるのが見えた。

「…お、付いてるぜ。あそこで雨はしのげそうだな。ちょうどいいや
 早速雨宿りを――んん?」

>>13>>14

木の下に見えたのはお嬢さんセニョリータと思しき二つの影。

――雨宿りをする男女…ナンパするにはなかなかいいシチュエーションだ。
  ようし、そうときまれば―――

「ヘイ、お嬢さんセニョリータ。俺も雨宿りさせてもらえるかい?」

そう言って答えを待たずに木の下へ駆け込む。

18 名前:サーナイト♂@探検隊オスメスズ ◆suKEbEVebI :2010/06/05(土) 01:49:08

>>16 そういうのんびりした旅も一般的には喜ばれる事なのかしら

「いいんじゃないッスか? 旅も。
 咲夜さんはこのサナくんが思うにバリバリなキャリアウーマンって感じですけど
 たまにはのんびりと旅をしてみるのもいいんじゃあないかなぁ…
 って提案してみたりなんかして。」


できればあなたと俺とランデヴーな旅をッ!
と…言いたかったが変なところチキンな俺は言い出せず。

>>なにかいいことでもあった?

「えへっ、えへへっ。モジモジ」

うわ、俺超きめぇ。
でも嬉しいんだもん!

「だって…咲夜さんみたいなおねいさんと一緒にいられる。
 それだけで俺はいいことがあったことなんスよ!!」


やっぱり俺の予知は当たらねぇや。
今日はスゲェいいことあったもんな。



19 名前:サーナイト♂@探検隊オスメスズ ◆suKEbEVebI :2010/06/05(土) 01:49:22

>>17 ヘイ、お嬢さん(セニョリータ)。俺も雨宿りさせてもらえるかい?

ピキィッ
【サーナイトの 近くの枝がポキリと折れた】


        /´〉,、     | ̄|rヘ
  l、 ̄ ̄了〈_ノ<_/(^ーヵ L__」L/   ∧      /~7 /)
   二コ ,|     r三'_」    r--、 (/   /二~|/_/∠/
  /__」           _,,,ニコ〈  〈〉 / ̄ 」    /^ヽ、 /〉
  '´               (__,,,-ー''    ~~ ̄  ャー-、フ /´く//>
                                `ー-、__,|     ''

「セニョリータ… おじょーさん…だとぉッ?」

このツノが生えたネコっぽいロボットは一体なんだとかゆー考えにいたる前に
俺が思ったことはそれだった。

「なぁ。初対面でブシツケだが、一つ質問をさせてくれや。
 そのセニョリータ…ってのは俺も含んでいるのかなぁ?かなぁ?」


この俺が嫌なもの、それは虫・悪・ゴースト。
そして…女と間違われることだぜッ!!



20 名前:十六夜咲夜 ◆kiLL.Hxa7E :2010/06/05(土) 02:04:29
>>18

「旅か……」

考えた事もなかった。
幻想郷は時を止めて空を飛べばすぐに行って回れる距離でしかない。
どこか遠くへというのも……

「ガラじゃないわね。
 行こうにも近場で十分だわ。山に湖に……ね」

ワーカーホリックだと思われたとしても、
それはそれで十六夜咲夜の一つの真実ではあるのだ。

>>19
っそいて新たな影。

他愛も無いやり取りをしていただけだが気付けばそれなりに時は経っていた。
雨脚も強くなってきたようだし、そろそろ潮時だろうか。

「こんばんは。入れ違いでごめんなさいね。
 そろそろお嬢様がお休みになる時間だし、あがるわ。
 また、機会があればお会いしましょう」

サーナイトに手を振り、入れ違いになる彼にも会釈をついて、
十六夜咲夜はどこからともなく傘を取り出すと雨の中を去っていった。

 <退場>

21 名前:エル・マタドーラ ◆jLr39t.yGY :2010/06/05(土) 02:16:53

>>19

「そうそうもちろん君の…こ…と…?」


┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨


『俺』――だと?

「なん・・・だと・・・・?」


┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨


コイツは
コイツはッ・・・・!

「お、『男』だとぉ…!馬鹿なッ、俺が見間違えるなどッ!」

しかもこいつ・・・
俺と同じナンパ師のにおいがする』だとぉ…!


>>20

そうこうしている間に、

「え、ちょ、ちょっとま――――!」

帰っていくお嬢さんセニョリータ

残ったのは野郎が二人・・・・・・・・。

「どういうことなの・・・・。」

――いや、マジで、どういうこと・・・?

22 名前:サーナイト♂@探検隊オスメスズ ◆suKEbEVebI :2010/06/05(土) 02:31:35

>>20 ガラじゃないわね。行こうにも近場で十分だわ。

あらら。あまりそんな気にはならないご様子。
やっぱアレかなぁ… そうそう仕事を抜けるわけにはいかないんだろうなぁ。
俺とは大違いだぜ。

そーこーしてる間にお帰りのようだ。

「そうッスか… お仕事をこなす咲夜さんはカッコいいッスけど
 あんまムリはしないでくださいね〜
 んじゃ、さよならッス〜!!」


>>21 お、『男』だとぉ…!馬鹿なッ、俺が見間違えるなどッ!

で… 視線をこの闘牛士風のロボットに戻す。
やっと気付いたらしい。


「おいっ、安物のアイセンサー使ってんじゃねぇのか?
 この俺のどこが女に見えるっつーんだよッ!?

 見ろ! これはスカートじゃなくて皮膚みたいなモンだし、
 髪だってセミショートっぽく見えるけど、ヘルメットの役目もしてるから硬くて切れねーし…」


ううむ… 改めて自分の女っぽさを自覚する。
マジでコンプレックスですよチクショウ…


「と、ともかく俺は男だッ! バカにするんなら、ブッ飛ばすからなッ!?
 ゼェゼェ… あぁ、スマン。この手の話となるとすぐ頭カッカになるぜ。

 俺はサーナイト。 いわゆるひとつのポケットモンスターってヤツだな。
 あんたは…えーっと、ロボットだよな?」


23 名前:シャドウ・ザ・ヘッジホッグ ◆GHap51.yps :2010/06/05(土) 02:43:32
「最悪だな…まさかこんなタイミングで降られるとは」

ミッションも終了し、出来ればさっさと帰ってしまいたいものだ、と思っていたのだが。
急ぐ為に突っ切ろうとした森の、一角。ある木の下で、奇妙な影を見つけた。
一つは、見覚えのあるモノ。以前僕の仲間に対してセクハラまがいの発言をした奴だ。
もう一つは……どれだけ考えても、ずんぐりむっくりとした奇妙な奴。
それ以外に言葉が浮かばなかった。

……何をしているんだ?

とりあえず、進路を変えてそちらに歩み寄った。

「お前達、何をしているんだ?」

24 名前:エル・マタドーラ ◆jLr39t.yGY :2010/06/05(土) 02:44:32

「どうしてこうなった・・・」

胸の内にある言葉をそのまま吐き出す。
・・・まぁ帰っちまったんならそれはそれとして。

>>21

「しょうがねーだろ、俺は大量生産品の中の一体なんだから!
 視力だって大してよくはねぇんだよ!」

と、どうやら女に間違われたことがひどく傷ついたのか
項垂れている。

「ま、まぁ…俺も悪かったからいいけどよう」
 
>俺はサーナイト。 いわゆるひとつのポケットモンスターってヤツだな。
>あんたは…えーっと、ロボットだよな?」

「おう。22世紀の科学が生み出したスーパーロボ
 エル・マタドーラとは俺のことだ」

25 名前:サーナイト♂@探検隊オスメスズ ◆suKEbEVebI :2010/06/05(土) 02:48:33

なにやら訝しげな感情をキャッチ。
…いつぞやの黒いシェイミ! と、このネタはもういいか。

「なんだ、シャドウじゃねぇか。久しぶりだな。
 キョロキョロ えーっと…一緒じゃないのか?ルージュおねいさんは?

 いややめろやめてくだしい冗談です!よしてくれっカオスブラストはッ!!」
 

「あービックリした。ちょっと聞いてみただけじゃんかよー
 何をしてるかって? ま、他愛のねーオシャベリさ。」

ホントはおねいさんとしたかったけど、もうお帰りになっちまったし。

26 名前:エル・マタドーラ ◆jLr39t.yGY :2010/06/05(土) 02:53:59
>>23

お、また誰か来た…ってまた男か。

「何って・・・まぁ大体はあんたと同じで雨宿りだ。
 で、雨宿りしてるやつら同士で話してるってわけだ。

 あんたも加わるかい、色男?」

こいつちょっとカッコイイじゃねぇか…。
なんか、なんかチクショウ。

27 名前:サーナイト♂@探検隊オスメスズ ◆suKEbEVebI :2010/06/05(土) 02:56:24


>>24 ま、まぁ…俺も悪かったからいいけどよう

「何…分かってくれればいいんだぜ。
 やっぱり誤解されることも多いからよぉ。」

エルレイドの存在を知ったのは、スデに進化した後だったという。
くそっ… ますますサーナイト=♀のイメージが強くなる一方だぜ…


>>22世紀の科学が生み出したスーパーロボ エル・マタドーラとは俺のことだ

わーお。 ポリゴン系と似た思考波を感じるからもしかしたらと思ったが
やっぱりそうだったのか…
しかし自分で言いますかね、スーパーロボと。
まぁいいか。 


「そりゃスゲーな。 でもってその格好からして、
 人間の世界でやってるらしい闘牛士ってヤツなのか?」

なんでもケンタロスと戦うとか。
フツーの人間なら軽く死ねるぜ… 命知らずだなぁ。


28 名前:シャドウ・ザ・ヘッジホッグ ◆GHap51.yps :2010/06/05(土) 02:57:00
>>25
相も変わらず、という奴か。このサーナイトというポケモンは、頭の中が酷く分かりやすい構造をしているらしい。

「また痛い目に合いたいのか?」

目線で投げかければ、途端に竦み上がったようだ。
どうも以前の事で痛みと後悔が直結しているようだった。下手に懲りないよりは余程いいだろう。
流石に僕の負担も大きいので、カオスブラストはしないだろうが。

「おしゃべり…それと、か」

出来れば名前など呼んでやりたかったが、生憎僕はそれの名前を知らなかった。
近くで見れば、違和感。一緒に居るのは生物ではないらしかった。

>>26

雨宿り、か。確かに少々酷い事は肌で感じていた。
如何に究極と言えども風邪は引いてしまうのだし、と僕も木の下に移動した。
改めて、それを見る。…ロボット、か?

「色男?僕の事か」

そんな声掛けは初めてだ。
これがあの青いハリネズミだったら上手く返すのだろうが、生憎慣れていなかった。

29 名前:サーナイト♂@探検隊オスメスズ ◆suKEbEVebI :2010/06/05(土) 03:07:37

…おっと、あんまり長いことサボってると
隊長たちにバレちまうな。

「あー。話の途中で悪いが、俺はこのへんで抜けさせてもらうぜ。
 それじゃ、また会おうッ!キリッ☆」


【サーナイトは テレポートを くりだした!】

【退場】

30 名前:エル・マタドーラ ◆jLr39t.yGY :2010/06/05(土) 03:10:28

>>27

「闘牛士『見習い』だがな。
 まだまだ新米ってとこだよ、俺なんか。」

ポリポリと頭を掻いて言う。

「で、ポケモンのお前さんは何やってるんだい?
 …思わず略しちゃったけど言いやすいな、これ」

>>28

「うん。だってお前カッコイイイじゃん。
 黒くて、なんか速そうで、だから色男」

我ながら単純だと思うが。まぁ、事実思ったことだし。

・・・それと、

「あと、『それ』じゃなくてエル・マタドーラな」


31 名前:シャドウ・ザ・ヘッジホッグ ◆GHap51.yps :2010/06/05(土) 03:13:11
>>29
瞬時に消えた姿に、さして驚くでもなく見送った。見慣れている。
以前の事に懲りているのならそれていいと思ったので、何も言わず軽く手だけ振っておいてやった。

>>30
「そうか」

実際黒いのは事実だし、速さに関しても事実だ。そこまで見抜くとは思わなかったが。
なかなか鋭い観察眼、ないしは推測出来るだけの思考があるようだ。
となると、仮にロボットとして随分優秀な部類らしい。

「エル・マタドーラ…か。僕はシャドウ。シャドウ・ザ・ヘッジホッグだ。
 ……ところで。君は…ロボットでいいのだろうか?」

32 名前:エル・マタドーラ ◆jLr39t.yGY :2010/06/05(土) 03:20:47

>>29

「おー帰るのか。じゃーなー」

『テレポートできるなら最初からやれよ』なんて野暮な突っ込みはしない。


…しないのだっ!


>>31

「そうか」で終わりかよ・・・。

「ま、いいけど――で、シャドウだっけ?
 そうさ、俺は『子守用ロボット』だぜ。ちょっと修羅場潜ってきてるけどな」

33 名前:シャドウ・ザ・ヘッジホッグ ◆GHap51.yps :2010/06/05(土) 03:28:52
>>32
何か反応に不満があったらしい。……何か不味かっただろうか?
こういう事には相変わらず疎い。

「子守用の割に修羅場、か。何やら複雑な事情を抱えているとか、そういうものか?」

姿や名前からして闘牛士がモチーフか。なら、実際にそういう事をしているのかもしれない。
或いは、それこそ僕の仲間の一人のように、軍事ないしはそれに近い事に踏み込んでいるか。

…にしても、これは曲線的なデザインだ。僕の認知としては、非常に珍しい見た目。
いや、子守用ならこれは妥当なデザインなのだろう。
これでゴツゴツしたデザインでは子どもが怪我でもしかねないから。

34 名前:エル・マタドーラ ◆jLr39t.yGY :2010/06/05(土) 03:33:51

>>33

「ただ単に、ダチのために行動しただけさ。
 あ、ちなみに違法改造なんかもしてないぞ。生まれた時からほぼそのまんまだ。」

・・・まぁ、子守用らしくないってのは俺も思ってるけど。

「って…お、おいあんまりジロジロ見るなよ…
 恥ずかしいんだけど・・・」

35 名前:シャドウ・ザ・ヘッジホッグ ◆GHap51.yps :2010/06/05(土) 03:36:55
>>34
ダチ、友人か。彼らはそういう関係もあるらしい。

「……そうか。いいものだな」

友人というものは、思った以上に暖かく、強いものだ。覚えがない訳じゃない。
今はそんな関係もすっかり……と言いたかったが、否定させない奴はいそうだな、と苦笑した。
と、不満の声が投げかけられた。

「ああ、いや。すまないな、君が僕の知るロボットとはだいぶかけ離れた姿をしていたので、つい」

36 名前:エル・マタドーラ ◆jLr39t.yGY :2010/06/05(土) 03:44:14

>>35

>「……そうか。いいものだな」

「だろ?」

そう言って笑う。

「親友が困ってるから自分が手助けする。
 俺の・・・いや、俺たちドラえもんズの…コウドウリネン?だっけか、それはそういうもんさ。」


>「ああ、いや。すまないな、君が僕の知るロボットとはだいぶかけ離れた姿をしていたので、つい」


「ああ――戦闘用や作業用のロボットってゴツイもんなぁ」

苦笑する。自分の今まで相手にしてきたロボットも大体そういったものが多かった。

「ま、気にすんなって。俺だって気にしてねぇから」

37 名前:シャドウ・ザ・ヘッジホッグ ◆GHap51.yps :2010/06/05(土) 03:47:50
>>36

「悪くはない行動理念だな。誰かの為に動く、というのは」

自分もそうだ。既に相手は死んでいるが、その最後の願いが行動理念になっている。
案外、人を動かすのは自分の意志よりも他人の意志なのかもしれないな、と思った。

>「ま、気にすんなって。俺だって気にしてねぇから」

「そう言ってもらえるとありがたい」

苦笑し返し、そらを見上げる。もう随分雨足も弱まってきたようだ。
時間も随分な時間であるし、そろそろ帰り始めなければ肉体の疲労も取れないか。

「すまないが、これで失礼する。色々と忙しくてな」

38 名前:エル・マタドーラ ◆jLr39t.yGY :2010/06/05(土) 03:53:48

>>36

>「悪くはない行動理念だな。誰かの為に動く、というのは」

「へへっ、ありがとよ」

そう言って笑いながら空を見る

「しっかし止まねぇなぁ、雨。
 こう・・・パッっと行けるような手段が――あ」

そこまで言って思い出す。…あるじゃん、そーゆー道具。

>「すまないが、これで失礼する。色々と忙しくてな」

「な、なぁシャドウ…良かったら家まで送れる方法があるけどいいか?」

俺は、引きつった笑みでそう話しかけた。

39 名前:◆jLr39t.yGY :2010/06/05(土) 03:55:15
上の>>36>>37だ・・・悪い

40 名前:シャドウ・ザ・ヘッジホッグ ◆GHap51.yps :2010/06/05(土) 03:58:21
>>38

>「な、なぁシャドウ…良かったら家まで送れる方法があるけどいいか?」

帰ろうとして一歩踏み出した僕を、その声が引きとめた。

「送れる方法?…どんな方法だ?」

一瞬で帰る、という事が出来たらすぐにしている訳で、そういう手段もある。
唯肝心要のアイテムを所持していないので、こうやって近道をするに至っただけだが。
…まあ、速く帰れるならそれに越した事はない。

41 名前:エル・マタドーラ ◆jLr39t.yGY :2010/06/05(土) 04:01:49

>>40

「どこでもドア〜!」

ポケットから自分の倍はあるドアを取り出す

「自分の帰る家を思い浮かべてドアノブを回してくれ。
 そうすりゃ、開けた場所がお前の家の前だ」

42 名前:シャドウ・ザ・ヘッジホッグ ◆GHap51.yps :2010/06/05(土) 04:06:56
>>41
唐突に取り出されたそれに思わず身を引いた。
僕の知らない圧縮技術だかで縮小されたか、或いは空間歪曲か。
…まあ、この際それは大したことではない。

「不思議なものだな…助かった。礼を言う」

ありがとう、と小さく返し、ドアノブを回して開く。
確かに向こうには僕の済む部屋が広がっていたので驚いた。

「では、また。機会さえあれば」

そうそうある事ではないだろうが、そう答えて僕は部屋の中に入っていった。

(退場)

43 名前:エル・マタドーラ ◆jLr39t.yGY :2010/06/05(土) 04:09:21

「いいってことよ。じゃあ、またな!」

そう言って、閉まるドアの向こうに手を振った後、
俺もドアを開け、くぐった。

<退場>


44 名前:紅美鈴 ◆HONGidIKL2 :2010/06/05(土) 21:21:24
どこで手に入れたものか古臭い番傘を差した女性が一人、雨の中を歩く。
大樹にちらりと目をやり……おや、と小さく驚いたような声を上げ、近づいた。

「これは雨宿りに丁度良さそうな」

ふらりと大樹の枝葉の下に入ると、果たして雨露は遮られ、傘に水の当たる音が途絶える。
チャイナドレスのような、人民服のような、そんな服に身を包んだ彼女……
紅美鈴は傘を閉じて露を振るい落とすと大樹の根のうちの特に太い一本に腰を下ろして
傘を幹に立てかけた。

「約束の時間までまだあることだし、少しくらいサボっていくとするか」

暢気にあくびをひとつ。
6日の出張、まもなく終るがさっさと戻るのも忍びない。
さても彼女らしいマイペースな判断であった。

 <入場>

45 名前:阿良々木暦 ◆VAMPiRCOXI :2010/06/05(土) 21:34:32
どうして傘を持ってこなかったんだろう。
僕はそんな自分の迂闊さを呪いながら道を急いだ。

傘を忘れたことそれだけならまだ良かった。
丁度昨日、忍に血を飲ませていたということが、それに追い打ちを掛けた。

いつもより増している吸血鬼性が、仇になる。
普段なら、雨という弱点なんか関係ないくらい、吸血鬼らしさを失っているのに――

僕の体に水滴が当たるごとに、焼けるような痛みが走っていた。

こりゃあ、図書館までたどりつけないかも知れない。

本気でそんなことを考え始めた僕の視界に、大きな木が見えた。
やたら大きいそれは、雨宿りくらいは十分に出来そうだ。

今日の勉強会は中止ということで、とりあえず、羽川に連絡を入れよう。
そう思って、僕はひとまずその木の元へ駆けていった。

<入場>

46 名前:紅美鈴 ◆HONGidIKL2 :2010/06/05(土) 21:44:29
深深と降り続く雨。
深く雲は垂れ込め、星や月の灯りも地上に届かない。

そんな中でも遠く街の灯りがほのかにあたりを照らし、特に暗いとは感じない。
夜目が利かないわけではないが、暗視の必要も無い。
幻想郷の夜とはまったく違う夜。

「ま、悪くはないけど、ルーミアとかには辛い世の中になってるわね、こっちは」

外の世界にも人喰い妖怪が居なくなったわけではない。
が、彼らはどうもその在り方を変える事で生き延びたようだ。
闇に身を隠すのではなく、人と人の間に、光を遮るものの影に、
あるいは光の中に身を隠す。

人の振りをして人を喰うバケモノか……

「昔は少数派だったんだけどね」

例えばそれは彼女であったか。

>>45
ふと。

かすかな。
本当にかすかな妖気を感じて視線を投げた。
圧倒的に多いのは人の気。
だが、たしかに純粋な人でない、そんな気。
そこに興味をひかれた。

目に映るのは学生服。

「こんばんは」

紅美鈴にとってはもはや業務の一貫ですらあるスマイルを浮かべて彼を迎える。
ここは門で、彼は来客ではないけれど。
ここは野営地で、彼は獲物ではないけれど。

……と、見覚えのある顔だった。
いつか通すようにとお嬢様に言われた子。
たしか……

「……ARARAGIさんでしたっけ」

47 名前:阿良々木暦 ◆VAMPiRCOXI :2010/06/05(土) 21:57:26
向かった木の下には、誰かがいた。
それは割と遠目からでも気付いていたんだけど。

普段ならそれだけで、なんとなく避けてしまうんだけれど。

今日ばかりは、そんなことも言っていられない。
雨に打たれていては、メールもままならない。痛いんだよ、ホントに。


だからといって、こんな形で知らない人と仲良く出来るくらい人懐っこくない僕は、
気持ちその人から離れた位置に居座ろうとして――

あれ?

遠目から見ただけだったけど。
その姿には見覚えがあった。

たふん、という音が聞こえたわけではないけれど。

レミリアの館の、門の前にいた人だ。
そう思っていたら、声をかけられた。

向こうも気付いたみたい。

一回しか会ってないはずなんだけど、憶えてるもんなんだなあ、と感心する。
門番的な立ち位置の人なら、日頃から多くの来訪者と接するだろうに。

「あ、こんばんは」

とりあえず振り返って、挨拶を返す。

名前まで覚えているものらしい――他所の国の生まれなのか、若干訛り気味なのか、まるで
アルファベット表記のような発音だったけれど。

チャイナドレスちっくなあたりから察するに、中国辺りの人なのかも知れない。
……。

そういえば、名前、聞いてないかも知れない。

「えーと……」

耳元で揺れる三つ編みに目がいきそうになるのを堪えて――目を見て話すのは、恥ずかしい。

「レミリアのところの、人、ですよね」

若干失礼な物言いをしてしまったかも知れない。

48 名前:紅美鈴 ◆HONGidIKL2 :2010/06/05(土) 22:09:03
>>47

僅かな得心、それなりの不安、ちょっとした勇気。
そして口ごもる気配。

そんな気を感じ取って気付く。

「ああ、失礼を。
 私は紅美鈴、レミリア・スカーレットの従者やってます。
 つまりは正解。ぴんぽんぴんぽ〜ん」

人差し指をくるくる回して微笑む。
そう言えば名乗っていなかったか。
あのお嬢様が来たら通してなんて言い含める事態なんて滅多に無いから覚えていたが
向こうは分からない。
顔だけかろうじて分かったが……そんなとこだろうか。

「よかったら使う?
 私も汗ぬぐったりした物なんであんまり綺麗じゃないですが、
 風邪を引くよりはいいでしょうし」

濡れた服と髪を見て手ぬぐいを差し出す。
洗濯したのは昨日だから……まぁ、セーフと判断した。
傘を持ってない理由は聞かない。
さっきの歩調からすると単に急に降られたんだろう。

あったかいし、若いんだし、そんな簡単に風邪をひくということもないだろうが、
なにより、濡れた部分の気がまるでダメージを受けているかのように消耗しているように見えるのが気になったのだ。

無論それは指摘されたくない事かもしれがいが、風邪引きますよと言っておけば角は立つまい。


49 名前:ディアボロ ◆IAd1rUKHuQ :2010/06/05(土) 22:23:10
         __      __   _      __
    /::ヽ.   「::::l /}  /:::/ /´::::/     /´::::> ,.-.、_        __,,..、
    〈:::::::ハ  |:::::j '´   |:::::/ /:::::::/./!   /:::::/ /:::::/      /::::::::j__
    ';:::::::l l/ _    l::::i /:::::::://:::/  /:::::/ /::::://::7   ,:'::::::::/::::::〉    __
     V:::::l /::::}.   l:::::!ヽ一' l/   /::::::< └-' 〈_:/  /::::://:::::::/,.ヘ.  /:::::/
     V:::レ::::::::r'  .l:::::l       /:::;へ::::\      /:::::<  ー-'<:://::::::://:ヽ
       .';:::::::::/   ;:::::└‐:::ァ    ∨  丶;::::>.    ,'::::;ヘ::丶、  ´ /::::::::/':::::::/
       .';::::〈     !::::;_:::::::/          `     レ'   `¨   /:::::::< ヽ;;/::::>
       ヽ::::〉    |::/  ̄                        /::::;::::::::\ ヽ'
          .V     U                             〈:::/ \/

                
          ,,r--、-,. -"
    .,,. -''" '';;:::;) ゙ 、 ''"",, ゙\
   .r'"/;;'' i / \; ;;  i '''ヽ、 ;;:ヾ
   .i ,, i '' ! /") )/ ./ヾ' ' 'ヽ  ';i
   { ;;::: i | .i//;;i/_,,ソ) , |!ヾ;: |   
   i.!   | |ノY○.'>ミ;;"○,ノリノ ! ;;:} /    
  ! ヾ  ! ! /゙"..::" 、゙;〉u./ |./ //"''::   『 *きの なかにいる* 』
  .i;;::  ::;; ヽ ヽ u  ,- ‐ヘ u// /'  '';:
  .ノ;  ヽ;;;\i.  〈""" .{ //! _,,,.....,
-''"ノ ,,  ;'ヽ\v ヽ、_)ノ'-―=ニ''''
;;:,  :;;''i  ノ; \、 u ゙'''/<、>< ヽヽ
_,,.,,="-'",,( \ \ -/,/,,,_ /''\,.へヽ
;'"! | ' ,... .,, \";;ヽi_」  へ /\/ヽ
. ! !/ iヽ.\''  )ヽ!゙'''ト-''!\ /i 〉
 '';; { ;" i  ヽ \ ./-i"|::;;;,, /\ >'"r
ヽ;;: / : :'  i " >,゙''‐''ヽ、>::::''"::<>゚。!
ヽ! / / , :./{ ゙),,r-(,_/ !:::::::::> <! ヘ
 Y /= .i , i;;::^'"
. ゙〈_ /!  | 
   ヽ,,)! i
     ゙-'

 【テレポーターで飛ばされたディアボロが迷い込んだようです。】


50 名前:阿良々木暦 ◆VAMPiRCOXI :2010/06/05(土) 22:24:08
>>48
さすがに割と近くまで来て、その存在感溢れる胸元に露骨に目をむけることは出来なかった。
僕のチキンぶりはまさに筋金入りだったらしい。

それで良かったような気もするけど。
さすがにこうしてマトモに話す分には、客というラベルがない以上、変態と見られたらそれまでだ。

しかし。
チャイナ服と気付いてしまってからは、その脚の方に目を向けたくて仕方がない。
ドレスなのか、服なのか。
気になるのもまた人の性。

でも見ない。
紳士だからね!

自己満足に浸りながら、僕は目の前の人にきちんと向き直る。

赤い髪に、緑の服が映える。
若干目立つ色合いなのだけど、それを感じさせない。
それは傍に置いてある番傘のせいだろうか。
和風な――ここではアジアンな、というべきだろうか――雰囲気を、まとっていた。

「紅美鈴、さん?」

予想通りというべきだろうか。
日本人の名前じゃ、なさそうだ。

指をくるくると回すそれが、三つ編みの動きと相まって、穏やかな笑と並んで、なんだか和む。
これだけでいい人だと断じてしまうのだから、僕はやはり浅い生き物だった。

そして、彼女は手拭いを差出してくれた。

正直、ありがたい。
濡れた服もどうにかしたかったけれど。
それ以上に、火傷に近い肌が、残った水分で嬲られるのは、心地いいものではない。

――そこに気づかれるのは、なんとなく嫌だったから、我慢してはいたんだけど。

「ありがとう、助かります」

そう言って受け取って。
痛むから、水分だけさっと拭き取ったところで――気づいた。

え?
此の人使ったの?

僕の中に動揺が走る。
どうってことないのに。
どうってことないはずなのに!

「あ、ありがとうございました!」

顔が熱い。
超熱い。

なんだか別の意味でのお礼になってしまった気がするくらいだった。

「いやあ、こんな時期に傘忘れちゃって――参りましたよ」

誤魔化すために、世間話を混ぜてみた。
効果の程は、まるで分からない。
意識はまだ、あのタオルの感触に浸っていたから。

51 名前:阿良々木暦 ◆VAMPiRCOXI :2010/06/05(土) 22:27:36
>>49
気配じゃあないが……
今、確実に『何か』が『起きた』。

そんな気がする……

52 名前:ディアボロ ◆IAd1rUKHuQ :2010/06/05(土) 22:35:40

――――ううん。

はッ!? 
…どうやらわたしはまた「死んだ」ようだ。
あの時、好奇心に負けて宝箱を開けてしまったばかりに。不覚。

体の身動きが取れない。
いくら力をこめてみてもピッチリと体が何かにめりこんでしまったようだ。
木のニオイがするから、木の中にいる。それは間違いないだろう。

……Mamma Mia!
このままでは餓死を待つばかりだッ。



>>48 >>51
ム? …人の声がするじゃあないか。

 「うぐうぅ… おーいッ!
  誰かいるのか?いたら返事をしてくれると助かるーッ!!」

53 名前:紅美鈴 ◆HONGidIKL2 :2010/06/05(土) 22:36:42
>>50

手ぬぐいを受け取って手足をぬぐう彼の表情に一瞬動揺が走る。
あちゃー。
やっぱ汚いって思われちゃったかな?
こういうの女性としちゃやっぱはしたなかったかなぁ。

「あ、いや、すいません。
 他に持ってなくて……でも昨日選択したばっかりなんでそんなに汚くないんじゃないかなぁ……と……」

今朝の太極拳の後ぬぐっただろうが。
それを思い出し、発言の途中で少しずつ自信なさげな声になっていくのが分かる。

しまった。
今後は予備に一枚くらい持っておこう。
気を通せばデスアーミーくらい倒せるだろうし、もっていても邪魔にはならないはずだ。

「傘ないんですか?
 なら、ソレでよければ私の使ってくださいな。
 私は帰ってそのままお風呂にゴーで済みますし、一応帽子もありますし」

番傘を指差す。
名無しさんにつれてってもらった武侠映画見た帰りにお土産に買った玩具同然の傘だが、
結局こうやって雨がふってきたのだから、あの気まぐれは正解だったと言えるだろう。
ウォンさんかっこいいよ。

>>49

ぶー!?

突如出現した気配に振り向いて大樹の幹に目をやり……そのまま思わず噴出した。

「木の中から人がッ!?
 新手のスタンド使いかっ!?」

ずぶずぶと浮き出す姿にさすがに焦りを覚える。
妖怪だったらもっとスマートに木を透過して出てくるだろう、
これは明らかに透過できるわけでもない人が木にハマった状態だ。

え、何?
絶対可憐チルドレンでテレポーターの怒りをかった人かなにか?

「ど、どちらさま……っていうか大丈夫?」

とりあえず、心配してみた。

54 名前:ディアボロ ◆IAd1rUKHuQ :2010/06/05(土) 22:47:44

ジャッポーネ(日本人)と…チーナ(中国人)か?
こちらに気付いてくれて何よりだ。

>>53
>>新手のスタンド使いかっ!?

「何ィィィィーッ!!?」


スタンドだとぉッ?! まさか、まさかこの女ッ
スタンド使いなのか…!?
いや、むしろ好都合といったところか。もし近距離パワー型のスタンドを持っているのなら
わたしをここから助け出すことも可能じゃあないか。

「ゴホン、大声を出してスマない。
 えぇ〜っと…君はスタンド使いなのか? できればわたしを助けてくれると
 ありがたいんだがなぁ〜〜〜っ…」

>>「ど、どちらさま……っていうか大丈夫?」

「あまり… 大丈夫じゃあないな。
 ああ、名前か。ディアボロというものだ。」


初対面の相手に堂々と名前を言うなんぞ、『ボス』時代では考えられんことだな。


55 名前:阿良々木暦 ◆VAMPiRCOXI :2010/06/05(土) 22:49:42
>>53
謝られてしまった。
思わず僕は手をぶんぶん振って否定していた。

「い、いやいや全然! 問題ないです! 無問題!
  むしろご褒bげふんげふn。

  その、助かりましたよ。本当に」

理性によるストッパーが作動した。
もっと早く作動して欲しかったかも知れない。
なんだか普通のタオルよりもずっと柔らかかった気がした。
いい匂いがした気がした。
ちゃんと嗅いだら汗の匂いしかしないかも知れないけど、イメージの世界は無限大だった。

そうこうテンパッているうちに、傘を貸してくれるとのことを言ってくれた。

んー。
でもなあ。

正直、僕としてはこういうのはダメだ。
男がのうのうと傘を差して帰り、女性が濡れて帰るとか。
あっちゃいけない。

「いやあ、それには及びませんよ。
 濡れて帰るくらいなら、どうってこともないですし」

僕はいい感じに嘘をついてみた。
口元が引きつった気がするけど、誤魔化せただろうか。

まあ、最悪の場合、妹に連絡とればいいから、いいだろう。


>>49
唐突に、紅さんが振り向いて吹き出したから。
僕もそちらに目を向けて。

「なんでだっ!?」

とりあえず、叫んでしまった。
ハマってるー!?

どういうことなの!?

「えーと、これは……

 えー!?

 あれか、新手の怪異か!」

絶対に違うと思うけれど、とりあえずそんなことを叫んでみる。

56 名前:紅美鈴 ◆HONGidIKL2 :2010/06/05(土) 22:55:22
>>54

何ィ!?
肯定されただとぉーーー!?

さすがに驚愕する!
100パーセント冗談のつもりで口を出たスタンド使いかって言葉に、
スタンド使いなら出してくれと答えるとか!
この人がスタンド使い、もしくは重度の荒木病患者であることは明白!

紅魔館漫画部、筆頭部員としては助けねばなるまい!
ちなみに部長はお嬢様。

「助けだすって言ったって……」

とりあえず両手に気を巡らせて硬化させ、
声のするあたりの気の幹の皮をバリバリと剥がして見る。
もっと掘らないとだめかな?

……気を炸裂させれば一発かもしれないが、
それだと中の人もまとめて一発のような気もするので自重しておく。

>ああ、名前か。ディアボロというものだ

ぶー

また噴出した。

「ボ、ボスだとォーーーー!?」

紅魔館漫画部でJOJOは必修科目である。
お嬢様の居間での反応を思い起こしていただければ明白とは思うが。


57 名前:紅美鈴 ◆HONGidIKL2 :2010/06/05(土) 23:03:43
>>55

「……ごほうb?
 あはは、おかしな人だなぁ、あららぎさんは。
 でも問題ないなんて言って頂いてありがとうございます」

ちょっと分からない単語があったが、まぁ、気にしないことにした。
日本語ってむずかしいね。
ともあれ、笑って流してくれるのはありがたい。
女性らしさに欠けると常日頃から咲夜さんに注意されている身なので。

と、傘は辞退されるらしい。
でもなぁ……

彼の手の甲、肌のすこし赤くなった部分に目をやる。
平気には見えないんですよね。

そう、まるでお嬢様のような……
いや、お嬢様だと赤くなる程度じゃ済みませんが。

「私は濡れても平気ですけど……」

んー、と口元に手をやって考えるような仕草をしつつ、
あららぎさんに近づいて失敬とその手を取る。
そっと手の甲に気をあてて赤くなった部分が治るのを見て、
これがやはりもともとあった傷ではなく雨のためのものと確信した。

「貴方はそうでもないようですし。
 せっかくですから話のタネにお持ちくださいな。
 番傘と変な中華女性の話なんて土産話には悪くないでしょ?」

にっこりと笑う。
理由は聞きませんけどね。という意思をのせて。


……脇の木の中のボスが居るんでムードはアレですが。

58 名前:ディアボロ ◆IAd1rUKHuQ :2010/06/05(土) 23:16:01

>>55
>>なんでだっ!?
>>あれか、新手の怪異か!

「ウム… ま、そんなところだろうか。
 突然こんな現れ方をしてヒジョーに申し訳ないとは思うがね。」


さぞ驚いているだろう。
もちろん、わたしも驚かすつもりはないのだが…
とはいえ助け出されたら謝っておいたほうがいいだろうな。


>>56
>>助けだすって言ったって……

わたしが埋まっている木を掘っている音が聞こえた。
パワーが低いスタンドなのか、またはわたしをキズつけまいと加減しているのか…
このままでは時間がかかるばかりだ。
…仕方ない。

「あー、もしわたしを助け出すのに力を加減しているのならば
 その必要はないぞ。 何せ「死ぬ」のは慣れているからな。
 一思いにやってくれてかまわない。」

どうせ、今日は大したアイテムも持っていない。
死んで失ったとしてもさしたる被害ではないからなぁ…………。
それより、この状況から脱出するほうが先決だ。

>>ボ、ボスだとォーーーー!?

「なんだとオオオオォーーーーー!? な、なぜわたしがボスだったと知ってるッ!!?」


スタンド使いなのはまだしも、なぜボスのことまで…
ン? こんなことは前にあったような。

59 名前:紅美鈴 ◆HONGidIKL2 :2010/06/05(土) 23:25:13
>>58

こ、こいつ……
何故ボスだったと知っていると来ましたよ。
重度の荒木病患者と判定。
いや、本当に本人という可能性もないわけじゃないですが……えーと
そういえば前にお嬢様がボスにあったとか自慢してたことがあったような……
てっきりコスプレの人にでも会ったのかとばかり……

まぁ、いいや。

とりあえず皮をはがした幹に両手を当てて木を流し込み、中の人の位置を把握する。
そうして、気の質を少しずつ変えて行き……

「……はぁっ!」

ブロック状に固めて無理やり引き剥がして中の人への道を開いた。
姿が目に映り……

「うわ、ほんとにボスでやんの……」

思わず挨拶も忘れて呆れた声が出た。

60 名前:阿良々木暦 ◆VAMPiRCOXI :2010/06/05(土) 23:25:48
>>57
AHAHA。
AHAHAHAHAHAHAHAHA。

可能な限り爽やかに笑ってみた。誤魔化せ。超誤魔化せ。
問題発言に突っ込まれないことは良きかな良きかな。

笑っていると――

濡れても平気だなんて言いながら。
少し考えるようにしてから。

彼女は、僕の手をとった。

「――――――――」

え? え?
えー!?

拭き取ったとは言え、雨で若干冷えていた肌が、暖かくなる。
柔らかな感触と、仄かなぬくもり。
どきどきする。
尋常ではなく。

――と。
その手が触れた先が、仄かに、という言葉を取り除けるくらいに、熱を持った。
熱くはないけれど。
思わず目を落としてみると。
雨に当たった跡が、赤く残っていた跡が、消えていた。
手の感触で気にならなくなっていたけれど――痛みは、どうした?
いつから?
とっくに治っていたんだとしたら、他のところも治ってるはずだけど……

まさか、なあ。
あれか。中国四千年の歴史!?

「あなたは一体――」

不意に出かかった言葉は、相手の言葉と被ったおかげで、最後まで言わずに済んだ。

僕の傷には、気がついている。
そしてそれに、触れない。

ああ、全く。
気を遣わせているんだな、僕は。

これ以上駄々を捏ねるのも、ガキっぽくて、僕は観念して肩を竦めた。

「スタイルのいい美人女性と、物語のように出会えたって、自慢出来ますね」

冗談めかしてそう言い。
僕はお礼を言って、傘を受け取ることにした。

「どうもありがとう。お借りします。

 必ず、返しに行きますんで」

61 名前:阿良々木暦 ◆VAMPiRCOXI :2010/06/05(土) 23:35:05
>>58
認めちゃった!
そんなところとか!
何ものだよ一体!
なんでこんな時にいねえんだよ忍野! 絶対にお前のフィールドワークの対象だよ
この奇っ怪なの!

とりあえず、助けるとはいえ。
今の僕の持ち物は、勉強道具くらいだ。

吸血鬼の十分の一にも満たない怪力なら、あるけれど。

「えーと。木をへし折るまでは出来ないだろうけど……

 ちょっと危ないけど、ごめんな」

抉り取るくらいなら、セーフだろうか。

とりあえず拳を固めて、彼の周囲の木を少しづつ削る。

手元が狂ったら、それだけで、人体は破損する恐れがあるけれど。
気をつけながら手を出していると。

>>59
紅さんがいい感じに木を引き剥がした。

どうなってんのさあれ、と思いはしたけど。
さっきのと合わせて何事だと思いはしたけど。
とりあえず、あとは木のささくれに注意して引っ張りだせばいいっぽい。

力仕事になるだろうから、とりあえず僕も力を貸すことにした。

62 名前:紅美鈴 ◆HONGidIKL2 :2010/06/05(土) 23:39:21
>>60

「私?私はただの門番よ。
 ちょっと気とかを扱えるってだけの普通の人〜」

ブロック化した木の中身を持って言っても説得力ないだろうなぁ、とか思いながらも
木を掘る作業を彼に手伝ってもらうかたわら、一応、彼の視線に返事を返す。
いや、こうしておけばボスが出た後に戻せるだろうとおもって。
んで、最後に皮を貼って軟気孔を流し込んでおけば……
たぶん枯れないんじゃないかなぁ。
保証はできないけど。

「スタイルって……」

彼の言葉にふと視線を下に落とし、ちょっと頬が紅潮した。
ンなことさらっと言いのけるとは……こやつ!?

「あ、あはは、お世辞もお上手のようで。
 返しに来てくれますか、有難う。
 実はソレ映画館のおみやげなんで、ちょっと嬉しいんですよね。
 その時は歓迎しますんで……とは言っても門番詰め所には大した物もないですが」

苦笑した。
まぁ、その時は咲夜さんの力を借りよう。
お茶くらいは自分でいれてもいいかもしれない。


63 名前:ディアボロ ◆IAd1rUKHuQ :2010/06/05(土) 23:47:14

>>59
>>……はぁっ!

見事なものだ。
チネーゼ4000年の歴史のたまものとでも呼べばいいのか?
彼女はみるみるうちにわたしの周りの木を退かしていく……

だが、スタンドのビジョンは見えない。どういうことだ。


>>うわ、ほんとにボスでやんの……

「君も知っているということ、だな。あの吸血鬼の少女と同様に。
 それはともかく、助かった。グラッツェ。」

色々とたずねたいことはあったが、まずは脱出せねば。


>>61 
>>ちょっと危ないけど、ごめんな

こちらの男もだ。スタンドのビジョンは見えないというのに
素手で木を削っていっている。
スタンドではない、別の『能力』を持っている…と考えるのが一般的だろう。


かくして、わたしはふたりの助けを借り
やっとの思いで外へ出ることがかなった。

        _
     /; ̄;: ̄;\
    /;:/;;;:ヘ;:ヾ; :: ヽ
   /;;/,::レ´   フ|リ;||
   レ;ル  ()  () |;):i|
    |:;ヽ  一  ノ;: :i|   「すまない、初対面の相手にこんなことをさせてしまってな。
    |/|Xヽ /X|\ji    ディモールト・グラッツェ(どうもありがとう)。」
    <てVXVXVγ>;|
    (__)XXXXX|(__):|
      |    | ;;;::ノ
      |: |⌒|: |
    ⊂二)   (二⊃


これで命の恩人たちの姿をやっとハッキリみることができる。
改めて、彼らに目をやる。
男と女が木の下でふたりっきり。
これは…

「もしかして、アップンタメント(デート)の最中だったかな?
 いやぁ… それならばとんだジャマをしてしまった。」

ひとの恋路を邪魔するヤツは、馬にけられて死んじまえ。
本当に死んでしまうかも知れんな。慣れた事だが。


64 名前:阿良々木暦 ◆VAMPiRCOXI :2010/06/05(土) 23:52:29
>>62
「ただの門番、ねえ……
 そうかあれですか。受付嬢が揃いも揃って美人なのと同じ理屈ですかね。
 ――じゃなくて。

 でもまあ、考えてみれば、レミリアのところの門番だもんなあ。
 只者だと考える方が、どうかしているのかも」

気を使える。
そうか、カンフーか。
僕は完膚なきまでに納得した。
気はすげえよなあ。多分ビームとか打てるに違いない。中華すげえ!
中国四千年には、疑問を挟む余地などはないのだった。

スタイルって言葉に反応された。

……やべ。
ここまで必死に頑張っていた理性が、ついに怠けてしまったらしい。
明らかにこう、表情が一瞬変わった。

流してくれたから良かったものの。
ヘタすれば刺されてたかも知れない――相手が良かったと、言うべきか。

「映画のおみやげで傘ですかあ。映画館って全っ然行かないけど、最近のはそういう
 のがあるんですねえ」

こんな凝ったものが売ってるのか。
映画館スゲエ。

「そんなものを借りちゃって、申し訳ない。
 お土産持っていくんで、ご勘弁を」

門番の詰所といわず、レミリアのところまで行って一緒に――なんて思ったけど。
考えてみれば仕事を放置させるわけにもいかないだろうから。
そうなるのもむべなるかな、といったところなのかもしれなかった。


――と。

65 名前:紅美鈴 ◆HONGidIKL2 :2010/06/05(土) 23:56:51
>>63

「吸血鬼、ああ、お嬢様が会ったと前に仰ってましたが
 あれは冗談じゃあなかったんですねぇ」

ボス……じゃなくてディアボロさんが出るのを確認し、
幹の穴に掘った部分を押し込んでいく。
最後に皮を貼り付けて、両手を当てて気を流し込んだ。
後はこの木次第。
さすがに専門家ではないのでそれ以上はどうにもならないだろう。

ふぅ。
一息ついて、ディアボロさんにあらためて自己紹介する事にした。

「はじめまして、ディアボロさん。
 私は紅美鈴、紅魔館の普通の門番です」

にへらと緊張感のない顔で微笑む。
いつものように、いつものごとく。

>「もしかして、アップンタメント(デート)の最中だったかな?
> いやぁ… それならばとんだジャマをしてしまった。」


「デート?
 あははは!そんなまさか!
 あららぎさんとはさっき会って自己紹介したばっかりです。
 ボスとそう変わりませんよ」

からからと笑って答える。
単に雨の導く偶然ってやつですか。
暗い空を指差した。


66 名前:阿良々木暦 ◆VAMPiRCOXI :2010/06/06(日) 00:03:27
>>63
とりあえず、木の中の男は救出することは出来た。
どういう仕組みでなったのか、その辺りは全く分からないんだけど。

まあ、良かったということにしておこう。

木には結構傷つけちゃったけど。
これだけの大木だ――きっと大丈夫だろう。

……今度肥料的なものでも調べて、買ってくるのもいいのかも知れない。

>ディモールト・グラッツェ

「イタリア語ー!?」

僕が知っている唯一のイタリア語だった。
イタリアンらしい。
すげえ。
いや、何がすげえのか分からんけどとりあえずすげえ。

そしてそんな彼曰く。

アップンタメント?
意味はわからなかった。
が――

>>65
>「デート?
> あははは!そんなまさか!
> あららぎさんとはさっき会って自己紹介したばっかりです。
> ボスとそう変わりませんよ」

「デートぉ!?
  ち、ちがっ!」

僕は失礼なくらい首を振った。
冷静に考えれば笑い飛ばされるのも若干ショックだけど、そんなことを
言えるくらいの余裕もなかった。
顔真っ赤だ、絶対。

こんなんじゃあ、勘違いされても文句は言えない。
いや、逆にこんなに片方が余裕がない会合が、デートなわけがなかった。

67 名前:紅美鈴 ◆HONGidIKL2 :2010/06/06(日) 00:07:02
>>64

「まぁ、世の中も物騒ですし。
 門番なんてやってると色々な方がいらっしゃるわけで……
 時には弁えない方にお帰りいただかなくちゃいけないってこともあるんですよ」

だから普通の門番。
その職責に必要であろう能力を発揮する。
だから、普通、なのだ。

「そこは謝らないで頂戴な。
 番傘借りて有難う。返しにきてくれて有難う。
 それで十分じゃあないですか。お互い相手に気に病んで欲しいなんて思ってないでしょ?」

謝らないでいいんですよ。
咲夜さんにもたまに言うことだ。
気に病むなんて自分も相手も喜ぶ事じゃあない。
だったら、それでいい。

本当に必要な時だけ、その一度だけ、謝ればいいと思うよ。
紅美鈴はそう考える人であった。

>>66

と、赤くなる彼にちょっと悪戯心が刺激された。

「おや意外?もしかして脈があったり?」

冗談ですよと笑い飛ばす。
いやぁ、こういう真面目な子をからかうのは楽しくてよくない。
ついついやりすぎて怒らせてしまう事も多いから、
ボロがでないようにこのへんで。
何事も控えめにしておくに限るのだ。

68 名前:ディアボロ ◆IAd1rUKHuQ :2010/06/06(日) 00:20:52

うぅ〜ん… と、自由になったわが身を伸ばしてみる。
幸い、ケガはしていないようだ。
彼らの手際のよさのおかげだ、な。

>>65
>> 私は紅美鈴、紅魔館の普通の門番です

「こちらこそ、ピアチェーレ(はじめまして)……。
 もうご存知だろうが 改めて名乗らせていただこう、ディアボロだ。
 紅美鈴… 紅さんでいいかな?

 門番ということはレミリア嬢に雇われているのか、不思議な縁もあるものだ。」


見るからにチネーゼ(中国人)なのに、吸血鬼の部下とは珍しい。
吸血鬼の配下といえばゾンビあたりを連想するが。


>>66
>>イタリア語ー!?

「そう、イタリアーノ…イタリア人だ。
 言葉がわからなくて気を悪くしたら許してくれ、ジャッポーネ…日本人の恩人よ。」

つい、母国語が出てしまうのは仕方ない。
彼の様子からすると、なにやら感心されているようだ。
ジャッポーネは外国人に対して何か特別な感情でもあるのだろうか?


>>デートぉ!?ち、ちがっ!

「ハハハ。 すまない、余計なことを言ってしまったか。」

真っ赤な顔で否定する彼と、笑い飛ばす彼女。
紅嬢の『さっき会って自己紹介したばっかりです』というのはウソではないようだな。

「そうだ、自己紹介させてもらおう…
 ディアボロだ。 宝箱を調べていたらテレポータの罠で飛ばされてしまってね。」


69 名前:阿良々木暦 ◆VAMPiRCOXI :2010/06/06(日) 00:32:13
>>67
なるほど。
門番の仕事を出来るからこその、門番さんである、と。
そういうことなんだろう。

「仕事なら仕方ないのかも知れないけど――大変ですね」

軽い言葉になってしまったかも知れないけど。
本当に、そう思う。
働いていない身分の僕からすれば、それは少し遠い話だけど。

大変、なんだ。
きっと。

「ごめんなさいよりありがとう――口頭で言われるのは初めてですけど。
 その通りなんでしょうね」

全く。分かっちゃいながら――僕は、この有様だ。

だからこそ一言。
最後にお礼を言おうと思ったところで。

>「おや意外?もしかして脈があったり?」

なにそれ! ナニソレ!
誘われてる!?

――いいや。
分かってる。
この手の大人のお姉さんは、おおらかなお姉さんは、確実に人をからかって楽しんでいる。
分かってるんだ。
決して、その気にならないために自分に言い聞かせてるんじゃなくて。
だからといって、動揺が沈められるわけではないんだけどな!

「脈はともかく、縁くらいはあったんでしょうね――合ったんでしょうね」

とりあえず、誤魔化すように気取ってみる。
顔が赤い状態でやってはならない行為其の参くらいだ。
一生懸命墓穴を掘っている気にしかならない。


>>68

自己紹介。
ディアボロ。
イタリアン。
奇妙な冒険が連想されたけど、イタリアだもんなあ。
きっと似たような名前がいっぱいあるんだろうから、日本の漫画の話を持ち出すのはやめにした。
よくある名前なんだろう。石を投げればその名前の人に当たるくらい。

とりあえず、僕も自己紹介をするべきだろう。

「僕は阿良々木暦。絶賛雨宿り中の高校生です」

そこまで言って、ふと気になった。
宝箱? テレポーの罠?

イタリアにはファンタジーがリアルに存在するのだろうか。
イタリアへの興味が増した気がした。
今度、羽川に聞いてみよう。

まず、テレポータの罠ってあたりから。


――と。

ここで思い出し。
まずい! 羽川待たせてるんだった!

やべえ、怒られる! やったあ! っじゃなくて!

「ごめん、二人とも! 僕、用事忘れてた!

 ディアボロさん、縁が合ったらまた会おう。今度は気の中に登場しない形で!

 紅さん、傘、ありがとう! 今度返しに行きますんで! よろしく!」


慌ただしい流れになってしまったが、仕方がない。
僕は二人に手を振ってから、借りた傘を差して、木ノ下から足を踏み出した。


ああ、雨があたらない。
痛く、ない。


その事実に感謝しながら、僕はとりあえず携帯を取り出した。
羽川に連絡をとらなければ。

<退場>

70 名前:紅美鈴 ◆HONGidIKL2 :2010/06/06(日) 00:38:20
>>68

不思議そうな気を彼の視線から感じ取る。
どうやら西洋妖怪のお嬢様の配下に私が居ることあたりが気になるのだろう。
んー、まぁ、いつものことですが。

「いやぁ、お嬢様に挑んだもののボコボコにされちゃいましてねぇ。
 命を取る代わりに飼われることになったってわけですよ」

力の理屈。
人間にだって分かりやすい話のはずだ。

当初は本当にそれが理由だった。
今は他にも色々と理由がないではないが、きっかけがそうだという事に変わりはない。

「それはそうとディアボロさんこそ、なんでまた木の中に?」

>宝箱を調べていたらテレポータの罠で飛ばされてしまってね。

「えっ?」

そうか……
ディアボロさんはボスをやめてから冒険者になったのか……

思わず私は遠い目をしていた。

71 名前:紅美鈴 ◆HONGidIKL2 :2010/06/06(日) 00:46:19
>>69

大変なのだろうか?
いや、大変ではないな。

なにしろ招かれざる客を追い返すときが一番楽しいのだから。
魔理沙のようなスペルカードルールで挑んでくる人妖は客だ。
招かれた客である。
お嬢様にもスペカ戦で来るヤツは通してもいいと言われている。

そうでない連中、遊びにつきあう気のない野暮な連中との闘争。
それこそが紅美鈴のもっとも充実した日常であり、一番の快楽なのだ。
他の時間は退屈と戦うという精神的修行の場とすら言える。

さいきん侵入者こないけどな!

「まぁ、好きでやってるからなぁ。
 大変っていうか、むしろ退屈……げふげふん」

>「脈はともかく、縁くらいはあったんでしょうね――合ったんでしょうね」

くすっと笑みが零れた。
これは光栄。
ありがたい事です、ということにしておこう。

「縁についてはそうでしょうね。
 なにせ、ウチの主人は運命が味方ですから。
 袖すりあう縁くらいは従者におこぼれもありましょうか」

からからと笑って駆けて行く彼を見送った。
誰かを待たせているのだろう。
足取りに焦りがある。
転んだりしないとよいのだがと要らぬ気を使う自分に苦笑しつつ、手を振った。

72 名前:ディアボロ ◆IAd1rUKHuQ :2010/06/06(日) 00:57:26

>>69

>>僕は阿良々木暦。絶賛雨宿り中の高校生です

「アララギ コヨミ君、か。よろしく頼む。」

奇妙な視線を感じた。
まるで、彼も紅と同じようにわたしの… 「ボス」のことを知っているかのような。
やれやれ もはや「ボス」の正体はジャッポーネの学生にまで知れ渡っているとは…
もっとも昔のことだ。 気にはしていないが。

――と、アララギは何かを思い出したようだ。
誰かとの待ち合わせがあるのかも知れん。

「そうか、まだ礼もできていないのに名残惜しいが…
 アリーデヴェルチ(さよならだ。)また会おう。
 …もちろん、普通の再会をな。」

借りた傘をさしながら、ジャッポーネの少年は去っていった。


73 名前:ディアボロ ◆IAd1rUKHuQ :2010/06/06(日) 00:59:24

>>70 
>>命を取る代わりに飼われることになったってわけですよ

「なるほど、弱肉強食の理はどこでも同じか。
 実にわかりやすい。
 かつてわたしが身を置いていたギャングの世界と変わらんな。」

決して『沈む』事がない『絶頂』。
それをつかむために、わたしは色々やったものだ。
『時を消し飛ばす力』を身につけ、ギャングのボスに一代でなり、麻薬で莫大な富を築きあげ…


>>それはそうとディアボロさんこそ、なんでまた木の中に?
>>えっ?

うぐッ… それを話さなくてはならんか。
しかし彼女は命の恩人だ。仕方あるまい…

「あまり思い出したくはないが、わたしが… 『ディアボロ』が
 『終わりのないのが終わり』になったことは知っているな?
 決して終わることのない死。
 
 そこから逃れられるかも、とわたしは偶然たどり着いた
 『奇妙なダンジョン』を探索しはじめた。それがきっかけだな。」

そして、宝箱のワナにマヌケにもひっかかり… 木の中にいる、と。


74 名前:紅美鈴 ◆HONGidIKL2 :2010/06/06(日) 01:07:33
>>73

弱肉強食の理。
それは絶対的に存在するものだ。
しかし、それだけでもない。

「ま、きっかけとなりゆきですね。
 その後の私が反逆したり逃げ出したりしないでずっと居るのは
 また別に理由があるってわけです」

漫画で見る限り、彼には理解しがたい感覚かもしれないが、
それだけではないのだ。
人をひきつける魅力は力と恐怖のみによってなるものではない。

> 『奇妙なダンジョン』を探索しはじめた。それがきっかけだな

「奇妙な迷宮……いやぁ、うちのお嬢様が知ったら絶対挑みそうなブツですねぇ。
 しかし瞬間移動の罠とは恐ろしい」

というか木にハマって平気なこの人がすげえと思った。


75 名前:ディアボロ ◆IAd1rUKHuQ :2010/06/06(日) 01:22:54

>>74 
>>私が反逆したり逃げ出したりしないでずっと居るのは
>>また別に理由があるってわけです


「反逆… わたしが頭を悩ませていた問題だ。
 知っているだろうがボスの座を狙って裏切るモノは腐るほどいたからね。
 君のような反逆とは無縁な人材がもっと欲しかったよ。」


実際、中にはペリーコロや親衛隊のような忠実な部下もいた。
だが… 彼らと紅美鈴には何か違いがある。
ま、今となっては部下なんぞどうでもいいし 進んで知りたいとは思わんが。


>>奇妙な迷宮……いやぁ、うちのお嬢様が知ったら絶対挑みそうなブツですねぇ。
>>しかし瞬間移動の罠とは恐ろしい

「フフ。だが永遠に続くダンジョンに挑むことは、
 永遠に死に続けるわたしに生きる希望を与えてくれたのだよ。
 …死に続ける人間が『生きる希望』なんていうのはおかしなことかな?」


そもそも、死に続ける人間なんてもはや人間とは言えないだろう。
わたしも人外の仲間入りか。 ハハハハッ… 

「そうだ、まだお礼をしていなかったな。
 大したものじゃあないが… 食べてくれ。」

ポケットの中の『エニグマの紙』を広げる。
たちまち焼きたてホカホカの状態で保存されていたネアポリスのピッツァが飛び出した。


76 名前:紅美鈴 ◆HONGidIKL2 :2010/06/06(日) 01:34:41
>>75

「反逆とは無縁……?」

ぴくり。
聞き捨てならぬ言葉が聞こえて笑顔が凍りつく。
ああ、いやまぁ、そう見えておかしいわけじゃないか。
でもねぇ。
そこは訂正しないと。

これでも紅美鈴は妖怪なので。

「……私が人畜無害で忠誠溢れるおとなしい駒にでも見える?」

先ほどまでとは違う、妖怪の顔で、人喰いの顔で笑って見せた。
反逆?
上等だろう。

それだけの理由があるならいつでもやる。
私が求めるものを、私が楽しいと感じる日常を、私が望む姿を、
レミリア・スカーレットが失ったならば、いつでもその心臓に星気弾を叩き込む。

今はそうではないというだけだ。
それらが存在するから私は門番としてのほほんと笑っているというだけなのだ。
勘違いするなよ、小僧?

>大したものじゃあないが… 食べてくれ

「ありがとー
 ……ま、今のは聞かなかった事にしときます。
 そうねぇ、絶頂にあった昔の貴方はあれで魅力的でしたけど、
 今の貴方には昔になかった魅力も感じますよ?私はね」

お礼にと差し出されたピザを受け取って、表情をいつもの笑顔に戻す。
ぐうと素直に反応を返すおなかに苦笑して、速攻ぱくりとかぶりついた。

あ、おいしい。

77 名前:ディアボロ ◆IAd1rUKHuQ :2010/06/06(日) 01:49:00

>>76 
>>……私が人畜無害で忠誠溢れるおとなしい駒にでも見える?


      i 、
.    ,、 | :l
   /;,,V .:ト、-,‐'"゙ヽ__,イヘ            
.  ハ,;; :` _. -',; ;,.-、  | ,;;\
  |/,;/、, /‐-:.|; l'-_'ヽ`l l ;; : `‐、         
  l; / /:::|. ヽl;,|{_ッゞ !ノ  .:  .: `‐-、..._
. };/ ./:u,_`._'´l !; ´ '; /;;,/ : ,,.:  ,;;   ,;; ̄`,,‐--  
 レ' /::::/‐-、!u` ; ij /;, / ,. ;;     ,,     ;;;
   !:::/.⌒ヽl , ,; .//,,/  ,  、               ヒイィッ!?
.  / ij :::  ` u /‐' ;; イ  /   .ト、_   .:::::::::....
  i' ,...、 u ij  ´///;, ,イ,;; .:  |;;;;,`‐-.:::        
. ヽ/::::::\   /.' /.,イ |   :  .l''''' ;;,     ''
  `、:::::::::::`...‐'´// ::l; l  :: '' |  -‐─-、-‐-     
    ヽ:::::::::::::::/'"´   | |  :: ;;;|  ,,, :.   ;;;\
.    |:::::: :::: .: _ .:::l. l  :. '';|.、 '''  :. ,,,  `     
     |:.   ,-‐'´ X ̄.|     :  |. \    :.


思わず情けない声を出してしまう

今までとはまったく違う、彼女の…
ダンジョンで何度も戦ってきた吸血鬼やらゾンビやらと同じ『バケモノ』としての顔を見た。
いや、見せ付けられたッ!!

今手元にはまともに使えそうなアイテムはない… アイツがその気になれば
オレはいつでもエサとなっている。 それを忘れていた。


「…すまない。気に障ることを言ってしまった、かな?
 君には君の流儀がある。 それを忘れていたよ。」


>>絶頂にあった昔の貴方はあれで魅力的でしたけど、
>>今の貴方には昔になかった魅力も感じますよ?

「そんなことを言われたのは初めてだよ。
 自分では今のわたしは、もがいているだけの死に損ないだと思っていたのでね。
 いや…… 素直にありがとうと言うべきか。」

微妙に距離をおいてそう言った。



78 名前:ディアボロ ◆IAd1rUKHuQ :2010/06/06(日) 01:57:06

「さて! 申し訳ないが、わたしはそろそろ帰らせてもらうよ。
 倉庫の整理をしなくっちゃあならないのでね…」

正直言うと、早くコイツのそばから離れたい。という気持ちもあった。
ヘタなことをしなければ害は無い。むしろ好人物だとは分かっているが…
クッ 情けない……

「慣れているとはいえ、死にかけたところを助けてもらった上、
 今夜は色々話せて楽しかった。
 次に逢う時は落ち着いて腰を下ろせる場所で逢いたいものだな。
 …アリーヴェデルチ!(さよならだ)」


【ディアボロのDISCを使った】

  ここは「退く」のだ……………
   ここで一時「退く」のは
    敗北ではない……………!
     オレは頂点に返り咲ける能力があるッ!


<退場>

79 名前:紅美鈴 ◆HONGidIKL2 :2010/06/06(日) 02:02:38
>>77-78

「いやいや、こっちこそ生意気言って失礼しました。
 妖怪ってのも色々と面倒な生き物でね。
 『在り方』にはあんまり妥協できないんですよ」

そのへんある意味ではギャングに近い。
舐められたらおしまいとか、そんな感じ。
ただ、その『在り方』をどこに規定しているかは妖怪によってまちまちだから、
うちのお嬢様のように舐められてもOKみたいなのも存在する。
ただ、そんなお嬢様でも、譲れない一点に触れたらただではすむまいが。

「未来の自分がどうなるかなんてわかんないですからねぇ。
 何の因果でどうなるか、だから、まぁ、その内に部下でも出切る様な事があれば、
 考えてみるといいかもしれません。
 ってなんか説教っぽくてうざいですねぇ、失礼失礼」

と、私はピザのチーズのカケラがついた指先を舐めながら立ち上がった。
そろそろ帰ろう。
というか約束の時間は軽く3時間ほど越えたのでメイド長がイラついている頃だろうし。

「お帰りですか?
 じゃあ私もこの辺で失礼しましょう。
 今日は有難う。また、どこかで会える事を願って」

再見と挨拶を送って、とんとんと撥ねて足の筋肉をほぐす。
そうして一気にトップスピードにまでギアをあげて、
木の下から雨の中を駆け出した。

目指すは紅魔館、着いたらお風呂。
その後はメイド長のお説教だ。

さても楽しい日常に復帰いたしましょう。
そうして紅美鈴は彼の地を後にしたのであった。

  <退場>

80 名前:シロー・アマダ ◆08MSwPc.vs :2010/06/08(火) 23:03:24
しとしとと降り続ける雨は宇宙育ちの俺にとっていつまで経っても慣れない雨季の到来を知らせた。

「うへー…べったり。じめじめ。まったく、もう6月か…」

薄手の携行に適したものとはいえ、安価な割りに良い技術を使った
軍用レインコートを着ているため濡鼠になる心配は無いのだが、
こう夏場の雨だと代わりに気密性で汗に溺れそうになってしまう。
いつになったら人類は完璧な雨除け道具を開発できるのだろうか。

何でこんなところ歩いているかって言うとちょっと近所に所用があって徒歩で出向いたのだが
日が沈むころ雲行きが怪しくなり、少し駆け足で帰ろうとしたが案の定途中雨に降られてしまった。
ならばとショートカットコース発見できるかの淡い期待を寄せてこんなところに突入
してみたのだが、どうやら遠回りになっているらしい。
おかしいな、確かに最短ルートの筈なんだけど。

「てかあっちー…ホントこの季節はあんまり快適に過ごせないよなあ」

丁度大きな木に差し掛かったのでフードをめくって一休みすることにした。
雨にぬれた木々の臭いでむせ返りそうだ。
こんなのコロニーじゃあ一生味わえないだろう。
学生時代よく行ってた登山コロニーも所詮箱庭だったってことか。

81 名前:ルーミア ◆Dark.ociCM :2010/06/09(水) 00:08:35
  <周囲が突然真っ暗になりました>


お兄さん、お兄さん。

……お兄さんは食べてもいい人類?


  <入場>

82 名前:シロー・アマダ ◆08MSwPc.vs :2010/06/09(水) 00:15:45
>>81

ふっと、視界が真っ暗になる。
夜の森の中で街灯が無いとはいえ木々を知覚出来なかったわけでもないのに。
本当の暗闇。電気を消したとかそんなレベルじゃない。
いきなり眼球の神経がぷっつり切れて失明でもしない限りこんなレベルの
暗闇は体験できないのではないだろうか。

それでこの言葉か。
食ってもいいのかって言う問いかけにイエスと答える人間は自殺願望持ち位。
まあ、聞いたことのある声ってのが救いか。

「食ったら銀のナイフが胃に突き刺さるぞ。だからやめとけ」

これでいいんだったかな。

83 名前:ルーミア ◆Dark.ociCM :2010/06/09(水) 00:23:06
「あれー?
 いつかのお兄さんなのかー?」

周囲の明るさが戻る。
その中にわだかまるかのように闇の集まった部分があり、
そこからぽんと金髪の少女がアタマを突き出した。

あーやっぱりーと緊張感の無い声を出したのは
宵闇の妖怪、ルーミア。
こう見えてれっきとした人喰いのバケモノだ。

「なーんだ。
 変なマント着てるからべつじんだと思ったのにな〜」

ちぇーとくやしそうにつぶやきながらふわふわと宙をただよう。


84 名前:シロー・アマダ ◆08MSwPc.vs :2010/06/09(水) 00:42:32
「マントみたいにお洒落なもんじゃないよ。ただの雨具だ、雨具」

カーキ色の無骨なレインコート。
機能性は抜群、肌触りはあまりよくない。軽量で耐久性に優れコンパクトに
畳めるため、持ち運びが簡単である。

「あー、えーっと…ルーミス?いやなんか違ったような…」

最後にあったのは結構前だったな。
しかも一回だけしかあってないので記憶があやふやだ。
途中まで合っているような気はするんだけどなあ。

「お前は雨具は持ち歩いてないのか?びしょ濡れみたいだけど」

彼女の頭の上にぽんと手を置くとしっとり、いやべっしょりとした感触。
あまり雨に濡れるのを気にしたい性質なのか。

85 名前:ルーミア ◆Dark.ociCM :2010/06/09(水) 00:51:01
>>84

「えー?いつもルーミアはこうだよー?
 傘差して森で飛ぶとすぐひっかかってやぶれちゃう」

頭に触れてもにへらと笑っている。
しかし、この妖怪。
人を襲う時もかわらず、この無邪気な笑顔でいるのだから恐ろしい。

「それに雨があがればそのうち乾くわ。
 雨の日は狩りがしやすくていいのよ?
 ほらー森の中で立ち往生しちゃう人とか〜
 近づく音や気配が雨でわかりにくくなったりとか〜」

指折りメリットを数えていく。
実に楽しそうに。

「あ、そうだ。お兄さんは狩りとかしないのかー?」

何を思ったか、目をきらきらさせて、聞いてきた。


86 名前:名無し客:2010/06/09(水) 01:09:09
そっちの軍人は甘い人類だから最後に食べるといいぞーいいぞーぞーぞー

87 名前:シロー・アマダ ◆08MSwPc.vs :2010/06/09(水) 01:11:37
>>85

あー、そうそう、ルーミアだった。
失礼だがすっかり忘れていた。ルーミスは少し惜しかったな。
相手が気にしてないのが幸いだ。

「ふーん、まあ確かに傘を粗末にしていたらそのうちお化けが出るかもしれないしな。
 ていうかそれで大丈夫なのか、服は」

泥だらけになりそうだな。
暗いながらも白いシャツの袖部分が肌に張り付いているのが分かる。
不快に感じないんだろうか、この子。

「まんま野生動物みたいな行動をとるな。
 そりゃ雨天を狙って奇襲を行うやつも居るんだけどなあ。
 人間だとそうは行かないや。地面がぬかるむと移動に支障が出る」

後は視界が狭まったりレーションが不味くなったり。
海上だと余計に大変だろう。

「狩りか?うーん、兎狩りやったり釣りとかするのが精精だな。
 サバイバルになったらそりゃ命がかかるからなんだってやるけどさ」

88 名前:ルーミア ◆Dark.ociCM :2010/06/09(水) 01:23:03
>>87

「ん?」

服は大丈夫かという質問にきょとんとするルーミア。
どういう意味かはかりかねているようだ。

「別に濡れたら崩れるとか破れるとかそういうことはないけど……
 ……脱いだ方がいいの?」

干すには確かにそうだが人目と言うものを考えた事はないのだろうか?
その子どもそのものの姿らしいと言えばその通りだが、
ルーミアの発言はいささか常識ハズレなものであった。

>狩りか?うーん、兎狩りやったり釣りとかするのが精精だな。

「ふーん、戦争は狩りじゃないんだね。
 前にパッドンとかいうヒトも言ってたことだけど〜
 いえね、おにーさんの服は硝煙の匂いがわずかにするから
 てっきり軍人かなーって思ったのよ」

>>86
何処からともなく聞こえた声に感動したようです。



                           _人   _,,.. - ''''"" ̄`"'''7:::∠__  これがスイーツってやつなのかー!?
                           )  ,. '"          !ヘ/:::/、
 ___      _l⌒l_            /       ハ, __i  i:::::>!   ',
(__   )     (_  _)l⌒l        /    /'! ハ  /!二_ハ i´ |   ハ
 _/ /      / /  |  | ___  |  / ,.ィ‐-V レ゛´!´.ハ`ヽイ /   ! !
(__  ) __ (_/ l⌒l `ー' /     ヽ i  i  イ「ハ     !__,リ ノ | /|    |
  / /(___)   |  l_ │ .○ /ヽ | /.| | ! !ソ     ̄ 〃 レ' |    |
 │ │_        ( ○ _) 丶_/  / /  レソ〃 ,-=ニニ'ヽ.    7 ,'    |
  丶__)        `─'         `ー'   |7!  i     !  u / /!    |
       _l⌒l__ /⌒ヽ         /⌒/ .'ゝ、_ヽ、   _ノ   / / /  i   ,'
      (_     \\  | /⌒ヽ_/ / ̄レヘ/,./^i,.-,r  イ´レヘ/ヽ、ハノ
       / / ̄ヽ | `ー'(_/\  /     r| ! ! レ^i/  ̄'7ー-、 
      (_/   / /        `ー'       ハ     /ヘ__/// ヽ,
            `ー'              ,. '⌒ヽ,r‐''"´ ̄ト、::::::/     !



89 名前:シロー・アマダ ◆08MSwPc.vs :2010/06/09(水) 01:42:17
>>88

「いや、ここで脱ぐんじゃなくて干せよ。そっちの方が乾き早いだろ」

なんだろう、代わりの服を着るという発想が無いんだろうか。
妖怪は風邪を引かない可能性も無きにしも非ずだが
それにしたって濡れたままは気持悪いだろ。

「…戦争は狩りなんかじゃないな。
 確かに俺は軍人だし血の臭いも硝煙の臭いもするだろう。
 だけど狩りだなんて思ったことは無いな…」

人狩りだなんて洒落になんないや。
本来ならば食事の為に動物を道具を駆使してキャプチャーするが生憎俺は
人肉を食う趣味は持ち合わせていない。

「…ま、軍人にも色々あるんだよ。
 鉄の巨人で人を殺めてしまうときもある。狩りとは別にな…」

>>86

食うなよ!絶対に食うなよ!

「血糖値は高くないから甘くは無いと思うぞー」

90 名前:ルーミア ◆Dark.ociCM :2010/06/09(水) 01:50:24
>>89

「えーめんどくさいー」

乾かしても雨が降ってればまた濡れる事になる。
着替えるにしても雨が止んでからでいいじゃない。
ルーミアの思考がたどるルートなどこんなものだ。

「そう、それだよ。
 前に戦車もそんな事言ってたよ。
 戦争は狩りじゃないって」

不思議そうに眉根をよせて腕組みして空中をふわふわと漂う。
その姿をぼやかすようにとりまくかすかな闇が周囲に滲んで見えた。

「狩りでもないのに襲って、食べもしないのに殺す。
 戦争って不思議だよねーって、そう思って」

>食うなよ!絶対に食うなよ!

「つまり……
 ダチョウなクラブでヤーなのかー!」

最初に見た時から美味しそうだなーって思ってはいたのだ。
紅魔館の関係者でなければなー。

さきっぽだけとかダメかー?
ダメかー

91 名前:シロー・アマダ ◆08MSwPc.vs :2010/06/09(水) 02:00:57
>>90

…妖怪にも様々か。そう乾きの早い服でもないだろうに。
それでは服が泥まみれになるんじゃないだろうか。
特に白い服は目立ちやすい。まあルーミアが良いというのなら多分それで良いんだろうが。

「人間は社会的動物だ。…色々あるんだよ、立場の違いだとかでな。
 お前から見たら馬鹿らしいことかもしれない。
 でもな、どうしても人間ってやつは争いを止められないようなんだ…」

遠い目をする。
スペースノイドの自立。ニュータイプ思想。
悉く踏みにじられていった平和への願い。

「…まあ、食い物が残り少なかったらその取り分を争うかもしれないかもな」

最も原始的な争いの理由、また富の不均衡という今でも通用する争いの理由。

と、ここで気が付いた。
なんかこっちを見る目が、アレだ。ご馳走を前にしたようなそんな感じ。
やめろよー、食っても美味くないぞー。

「…もしかして腹減ってるのか?」

普通の食事で我慢してくれないだろうか。

92 名前:ルーミア ◆Dark.ociCM :2010/06/09(水) 02:11:10
>>91

その時のルーミアはひどく醒めた表情に見えた。
まるで別の大人の女性であるかのように。

「おなかは空いてるけど、お兄さんは食べないよ。
 こんな風にガマンすることは妖怪にだってできるわ。
 なら、同じガマンが人間にできないなんて思うのは間違いなんじゃないかなー」

周囲の闇が彼女に向かって集まっていく。
闇に姿が飲まれ、徐々に見えなくなるルーミアはなぜか寂しそうに微笑んでいて……

「そろそろ帰るね。
 お兄さんもあんまり夜遅く出歩いてると悪い妖怪に食べられちゃうのだー
 ……優しい夜に見守られている間にお家にお帰りなさいな」

闇は宙にまるで十字架のような暗い跡を残して消えていった。

  <退場>

93 名前:シロー・アマダ ◆08MSwPc.vs :2010/06/09(水) 02:22:50
>>92

「人間ってのは欲深い生き物なんだ。
 …どんな獣よりも、そしておそらくどんな妖怪よりも…な」

何を求めて何を生きるのだろうか。
基本的な欲求の他にも社会的欲求を持つ人間の求めるものとは。
そしてそれを求めるが故に他人と衝突していく人間の生きる道とは。

「…悪いな、そんな寂しい顔をさせて。
 まあ、食わないって言うのならまた会いたいな。それじゃあな」

雨は相変わらず降りつづけている。
闇に消えて行く少女を寂しそうに見送り、さてとフードをかぶった。

「…いつまでも休んでられないし帰らないとな。えーと方角的には」

再び俺は森の中を最短ルート開拓を目指して歩き始めた。

【退場】

94 名前:M1A2 Abrams ◆SEP/ra/6qE :2010/06/12(土) 00:17:20
http://charaneta.sakura.ne.jp/ikkoku/img/1275395846/94.jpg (45KB)
なるほど、なるほど。
このあたりの気候は先任から聞かされていたが、この時期になると雨が降り続くと言うのは本当だったんだな。
南国のスコールの様に、ザッと降ってサッと上がると言うものではないのか。
あたりの珍しさに木々を見ていると、操縦手が突然僕を止めた。

「困ったな……」
「困ったっスねぇ……」

戦車長と操縦手が、車内で何事か呟いている。

「旧式のM60しか乗ったことないですからねぇ。俺たち。」
「まったくだ。画面の見方がさっぱり判らん……」

要は……迷子と言う奴だ。電子音痴が、最新鋭の電子機器に囲まれるとこうなると言ういい見本なのだろう。
雨脚未だ強く。車体を洗う雨粒はまだ大きい。

95 名前:M1A2 Abrams ◆SEP/ra/6qE :2010/06/12(土) 00:42:47
(遅ればせだけど入場)

「仕方が無い。俺が降りて周りを見て来る」

業を煮やした戦車長が、ポンチョを着込んでハッチを開け放った。
ドッと吹き込んでくる風と雨。ハッチ周囲の白い壁に、チョークで書かれたメモ書きが、雨に濡れて消えて行く。

「30分で戻ってくる。エンジンを切って補助発電機を動かしておけ」

言うが早いか戦車長は巨体に似合わぬ軽快な動きで、ハッチを抜けて砲塔側面を飛び降り。
森の中へライトを持って分け入っていった……。

96 名前:名無し客:2010/06/12(土) 01:17:27



――――――ガササッ!

97 名前:M1A2 Abrams ◆SEP/ra/6qE :2010/06/12(土) 01:25:53
きっかり30分。戦車長が駆け戻ってきた。
サイドから砲塔上部まで這い上がると、車長ハッチを叩く。

「開けろ!道を見つけたぞ」

砲手が中からハッチを開けると、待ちきれんと言わんばかりに戦車長が飛び込んできた。
びしょ濡れのポンチョを脱ぎ捨てた戦車長は、操縦手に指示を飛ばす。

「エンジン始動!この木々の間をまっすぐ進め。300ヤードほど先に川になってたが道路があった」
「了解!エンジン始動。前進!」

補助電源を切り、ガスタービンエンジンに火が入る。そして僕は、再び走り出した。

>>96
?何か音がしたような気がしたけれども、僕には何も見えなかった。

98 名前:窓付き:2010/06/12(土) 01:32:05

 おっきな車が走ってくる
  雨を受けて走ってくる
   まっくらやみの森の中
    歩く私に走ってくる


「あっ」

   さしてたかさを落としちゃった
  車が私に走ってくる
 お気に入りに手は届く?
車道に飛び出てさようなら?

99 名前:M1A2 Abrams ◆SEP/ra/6qE :2010/06/12(土) 01:39:45
>>98
40km/h程度で森の中を進んでいると、ライトの中に不意に影が飛び込んできた。

「停車!止まれ!!止まれ!!」

直後に響く戦車長の怒号。操縦手が思い切り掛けたブレーキのショック。
キャタピラが抜かるんだ地面を剥ぎ取り、車内でシートに座っていなかった装填手が車内で転ぶ。

「……轢いた?轢いちゃった?」

顔面蒼白の操縦手が震えながら呟く。戦車長は再びポンチョを羽織ると、再び車外へと出て行った。
いったい何が飛び出してきたのだろう?

100 名前:窓付き:2010/06/12(土) 01:48:15


       いけないあぶない車さん
     ここで止まらないと首だけさん
       でもだいじょうぶひかれない

「だってしんごうは赤だよ?」

       思った通りに体変わって
        しんごうきに私はなった
     青は進め黄色はちゅうい、赤は止まれ。
    止まれ  止まれ  止まらないといけないよ?

     とつぜん目の前で車が止まる
     動いているさい中かたまったみたい。
    ブレーキかけてよかったね

「あらこんばんはおじさん」

     上から出てきたおじさんに
    ていねいにごあいさつ
      パパと同じくらいのとしなのかな?

101 名前:M1A2 Abrams ◆SEP/ra/6qE :2010/06/12(土) 01:59:36
>>100
女の子?こんな森の中で?

「ん?あぁ、こんばんは。今飛び出してきたのは君か、お嬢ちゃん?」

ハッチから出てきた戦車長が車体を下り、駆け寄りながら尋ねる。

「大丈夫かお嬢ちゃん?怪我や痛い所は無いか?」

戦車長が少女を立ち上がらせ、体に付いた泥を払って、傘を拾って持たせてやる。
どうやら大きな怪我はしていないようだ。けれども一瞬見えた、信号機の幻影はなんだったんだろう?

102 名前:窓付き:2010/06/12(土) 02:10:31
>>101

   くすくす
   くすくすくすくす
   くすくすくすくすくすくすくす
   くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす
   くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす

「けがなんてへいきだよ?私はけがしないんだ。せまいおへやがきらいなだけだよ」

   顔にどろが付いちゃった。
   人さしゆびでぽろぽろおちた。
   かさにどろが付いちゃった
   クルリ一まわしで少しおちた

「おじさんおじさん、こんなおっきな車を見たのはじめて。なにこれ?なにこれ?」

   くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす
   くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす
   くすくすくすくすくすくすくす
   くすくすくすくす
   くすくす

103 名前:M1A2 Abrams ◆SEP/ra/6qE :2010/06/12(土) 02:21:13
>>102
幻影が見えたり、幻聴が聞こえたり。まるで今日の僕は疲れた人のようだ。
さっきから、幼子の笑い声が聞こえて仕方ない。

「そうか。しかしコイツに轢かれたら怪我所ではすまないしな。なんにせよ驚かせて悪かったな。」

そう言えばこの戦車長は、ちょうど目の前の少女と同じくらいの娘さんが居られると言っていたな。
少女は顔や傘に付いた泥を落とすと、戦車長に僕の事を尋ねている。

「コイツか。コイツは『M1エイブラムス戦車』といってな。悪い奴らをあの大砲で倒す為の車さ」

戦車長が笑顔でそう説明する。間違っては居ない。疑問は残るけど。

「そんな事よりお嬢ちゃんのお家は何処だい?もし良ければ、連れて行ってやってもいいんだが」

104 名前:窓付き:2010/06/12(土) 02:31:50


   ゆがむゆがむくるくるゆがむ

「えいぶらむす?かっこいい名前だね。」

   ゆめのなかでまよってばいばい

「わるい人をやっつけれるんだ?」

   ぐるぐるぐるぐるまわってゆがむ

「わるい人はさいきんいっぱいいるから気をつけたほうがいいんだよね。ぶっそうなよのなかになったから?」

   この森は広くてせまい

「んっと、おうちはね、マンションだよ?でも一人で帰れるからだいじょうぶだよ?」

   長く続いて元にもどる

「わるい人をやっつけるのがお仕事?どーんってやってどかーん?」

   おじさんのすそをつかんだらもらった

105 名前:M1A2 Abrams ◆SEP/ra/6qE :2010/06/12(土) 02:45:25
>>104
「戦車長……あのー。飛び出した物は大丈夫だったんスか?」

操縦手がまさに“そっと”という表現が似つかわしい動作で、車体のハッチから顔を覗かせる。
装填手も、自分の受け持ちハッチを開けて砲塔上面に出てきた。

「あぁ、心配は要らなさそうだ。特に怪我も無いという。ブレーキが間に合ってよかったな」

戦車長がニカニカと笑う。

「ん。お嬢ちゃんは一人で帰れるのか。うーむ……しかしその……」

今度は戦車長、一転して渋い顔になる。
腰を落として少女と目線を合わせると、再び口を開く。

「俺たちの仕事は悪い奴らをやっつけるのが仕事なんだが……練習中に道に迷ってね。
途中まででいいから一緒に行かせてくれないか」

……情けの無い。戦車長が頭を垂れて少女に懇願している。そんな戦車長の服のすそを、少女がそっとつかんだ。

106 名前:窓付き:2010/06/12(土) 02:52:48


      もりのおくにゆびをさす
       まっすぐいけばどうろに出るはずのほうこう

   「いまのうちにじしゃくでかくにんしたら?すぐそこだよ。」

            かさをたたんで雨にうたれて
       ひんやりせずにべとべとした

    「でも私がいると、どうろにいけない。うん、そろそろいいかな」


   おじさんはてっぽうもってた。
                      それを見たからもらえた
   おじさんのものをみようみまね。

      「ところでさ、そのわるい人をどっかーんって」

    手の中おじさんと同じのもうひとつのてっぽう

      「こんなかんじ?」

           あたまにあててひきがねひいたらおおきなおとがなった


とくとくあたまからちがながれてびしゃびしゃおおきなみずたまりができるけれども
わたしはたったままでおどろくおじさんをいたずらっぽいかおでみていてとくとくな
がれるちはとまらなくてどんどんもりがあかくなっていってくさもそらもぜんぶあか
くなってしろくなってしろくなってしろくなってしろくなってしろくなってしろくなってし

「くす」
「くすくす」
「くすくすくすくす」
「くすくすくすくすくすくすくすくす」
「くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす」
「くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす」


くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす
くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす
くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ





    ユメノセカイガコワレチャッタ

「おじさん、いねむりうんてんしちゃだめだよ?」

     もとにもどってここはげんじつ


車は最初から止まってなんかいなかった。
降り止まない雨は先ほどと変わらない。
白昼夢を見ていたかのような不思議な感覚、現実味が無い。
時もそれほど経っていない。
ないない尽くしで何が夢なんだか分かりはしない。

でも最後に少女の声が聞こえた。

「ばいばい。ゆめはもうおしまいだよ?またね」


★たいじょう★

107 名前:M1A2 Abrams ◆SEP/ra/6qE :2010/06/12(土) 03:33:19
>>106
……。

「……」
「……」
「……」
「……」

この人たち。方位磁石の存在を忘れてたね。

うっかりしてたなぁと、苦笑いする彼らを他所に、少女がいきなり傘を畳む。
するとさっきまで持っていなかった筈の銃が、彼女の手の中にあった。
戦車長が持っていたCz85。9mmを使うチェコ製の銃。珍しくて、そんなに容易く手には入らない拳銃。
戦車長が無言でホルスターを確認していたが、そこには自分の銃がちゃんと下がっていた。
あっけに取られる僕らを前に、少女はCzを頭に持って行き……銃声。

飛び散る血しぶき。脳漿。それでも彼女は立っていて、悪戯が成功した子供の様に満面の笑みを浮かべていた。

――――――――――――

「停車!止まれ!!止まれ!!!」

直後に響く戦車長の怒号。操縦手が思い切り掛けたブレーキのショック。
キャタピラが抜かるんだ地面を剥ぎ取り、車内でシートに座っていなかった装填手が車内で転ぶ。
わき腹を思い切り砲尾に打ち付けられ、床に倒れた装填手が苦悶の呻きをあげる。

「一体……今のは?」

車体を流れる雨は相変わらず生温く。雨脚は弱まりもしない。そしてあたりは暗い森。

「お前ら、女の子見たな?」
「えぇ。俺好みだったッス」
「バカ。お前の好みは聞いてねぇだろうがイテテ……」
「……自分はずっとここに居たので見ておりませんが」

そう。僕も見た。あの子は一体なんだったんだろう?
結局答えは出ないまま、磁石で方位を確認し再び走り出す。300ヤードを走るのに、ずいぶん時間がかかったような気がする。
やっと森を抜け、僕らが駐屯地に帰り着いたのは、もうじき夜も明けようとする頃だった。

(退場)

108 名前:十六夜咲夜 ◆kiLL.Hxa7E :2010/06/12(土) 23:04:11

しとしとと雨の降り注ぐ森の中、メイド服姿の女性がひとり、傘を頼りに歩を進める。
雨の音にまぎれて小さな音が混じっている。
なんだろうか。
耳を済ませても聞こえるかどうか、そのくらいのか細い声で彼女は歌を口ずさんでいた。

ふと大樹を見上げ、それが先日サーナイトらと語り合った時の樹と
同じである事に気付いてその枝葉の下へ入り込む。

青々と茂った葉と大きく広がった枝のせいだろう。
雨はほとんど透過しない。

傘を閉じて樹の幹に立てかけ、自分もまた幹に寄りかかる。

「〜〜〜〜♪」

ろくに聞き取る事はできないが、メイド長、十六夜咲夜はまだ口ずさみ続けていた。

  <入場>

109 名前:十六夜咲夜 ◆kiLL.Hxa7E :2010/06/12(土) 23:21:41
十六夜咲夜は歌をロクに知らない。

彼女に歌を教えるものはなく、彼女から積極的に覚えようとしたこともなかった。
それはもっとも歌を覚えやすい子供の頃に付近に近しい大人がいなかったからであり、
歌うより、奪う方が当たり前の幼少期を過ごしたからであり、
そして、漸く手に入れた居場所では歌を歌う者があまり居なかったからでもある。

だから、今口ずさんでいるものは歌とは懸け離れたものでしかない。
うろ覚えのメロディ。
うろ覚えの菓子。
思い出せない部分はハミングで。
しかし、そのハミングが大半を占める、そんなひどい歌。

元々を歌っていたのは誰であったろうか。
十六夜咲夜にとって興味のない情報の為、それはすでに霞がかってしまった記憶。
人里の子供達か?
それとも通りがかった妖精たちか?
あるいはいつかの道中で出遭った夜雀の歌を無意識に記憶していたものだろうか?

思い出せないことばかり。
記憶の引き出しは多すぎて、いらないものをまとめておしこんだ引き出しから
それを見つけ出す事ができないのだ。

だが、それでもこれが今の十六夜咲夜のメロディの綴れる唯一の音の連なりであった。


110 名前:名無し客:2010/06/12(土) 23:30:26
わーたしーはかーんぜーん♪
かーんぜーんでしょーうしゃなメーイドー♪
さくや〜 フフフーン♪

111 名前:十六夜咲夜 ◆kiLL.Hxa7E :2010/06/12(土) 23:39:17
>>110

「……ッ!」

一瞬脳内をよぎったイメージに思わず歌が止まる。
ひどいフレーズ、ひどいメロディー、というか揶揄のような、囃し立てるような歌。

己への自嘲故の思いつきか。
はたまた慣れぬ事をしている今にストレスが高まって無意識が警鐘を発したものか。

「……はぁ」

なんとなくもう歌う気にもなれず、溜息をつく。
顔を上げて曇天を見上げるが、降り注ぐのは雨水ばかり。
太陽が顔を出す気配は感じられなかった。

112 名前:十六夜咲夜 ◆kiLL.Hxa7E :2010/06/12(土) 23:53:20
雨が降っていれば音も響くまい。
こんな所で小声で歌を口ずさむのもそれが理由。
ではなぜそんなに怖れるのか。

簡単だ。

十六夜咲夜は歌を聴いてもらったことがない。
つまり、彼女は自分がもし歌の才能がなく音程を生まれつき揃えられない体質であったら
……ぶっちゃけて言えば音痴であったらどうしようと、それを怖れていた。

「…………」

頭を掻いて幹に寄せた身を離す。
馬鹿馬鹿しいことを考えていたようだ。
こんな何処とも知れぬ場所にそうそう都合よく誰かが来るとも限らないというのに。

ひょいと立てかけた傘を手に取り、押し広げる。
雨を避けるべく翳して、大樹の元を離れて歩き出した。
傘の布地を叩く音のリズムを聞いて、再び口ずさみ始める。

「恥ずかしいけれど……美鈴にでも聞いてもらって確かめるか……」

苦笑を浮かべてメイド長は雨降りしきるこの森の中、姿を消した。

  <退場>

113 名前:ハーケン・ブロウニング ◆VPHaken.os :2010/06/13(日) 00:08:29
「―――おっと?」
 
気が付けば、俺はうっそうと繁った森の中にいた。
先ほどまで俺のいた場所とは、似ても似つかぬ光景。
 
 
「こいつは、一体どういうこった…?
知らない間にテレポートでもしちまったか? それとも…まさか…?」
 
 
これが噂に聞く、「次元移動」というヤツなのかもしれない。
知り合いの異邦人(エトランゼ・カップルが
いつか口にしていたような―――空間の“ゆらぎ”による別世界への移動。
クロスゲートを介さない、どこへ飛ばされるとも知れない不安定なジャンプだ。
 
 
「やれやれ…とんだアクシデントだ。
久々に仕事にありつけた、ってのにな」
 
 
そもそもの発端は、俺が自分のパーソナルスペースで、「何者かに追われている人物」
を保護したところにある。えらく怯えた様子で入ってきたその人物から
多少強引に仕事の契約を取り付け、そいつを襲った謎の「バケモノ」を退治するために
動き出した、その矢先のことだった。
 
 
「……ひょっとすると、この先にいるのか? バケモノってやつが。
このタイミングでのジャンプ、偶然とも思えんしな」
 
 
世の中ってヤツは偶然に偽装した必然でのみ回っている。
それがエンドレス・フロンティアで23年間生き抜いた俺の持つ教訓だった。
 
 
「ま、何にせよ、用心に越したことはない―――か」
 
 
念のため、黒コートの下に忍ばせている愛銃・「ロングトゥーム・スペシャル」と
特殊銃剣「ナイトファウル」の感触を確かめる。
コトによっては使わざるを得ないだろう。
 
と、そこまで考えたところで、俺はようやく己を濡らす雨に気付いた。
じめじめと湿った空気は何も森の中だからいうだけではなく、
空を真っ黒な雨雲が覆い尽くしていたかららしい。
 
 
「雨か。……ま、たまには悪くないがね」
 
 
身にまとったコートのお陰で、濡れることへの抵抗はさほどない。
心配事といえば銃火器が湿気て不発に陥る可能性だったが、
それらもまとめてコートの中なので余程のことがない限りは平気だろう。
 
 
「さて、まずは…手がかりを探しますかね」
 
 
適当にそうごちて、俺は暗い森を歩き出した。

114 名前:名無し客:2010/06/13(日) 00:19:30
(かさこそ、かさこそ)



     (がさがさがさっ)



          (しゅたん、しゅたん)



               (がさがさ、がさ、がささっ)



(複数の気配が森の中を移動している……)

115 名前:ハーケン・ブロウニング ◆VPHaken.os :2010/06/13(日) 00:20:28
>>108-112
 
「ん?」
 
 
歌が、聞こえた気がした。
延々と降りしきる雨音がノイズとなり、ほとんど聞き取れはしなかったが。
幽かに耳に届いたメロディーに、俺は即座に反応する。
これくらいの音を聞き分けられないようでは、バウンティ・ハンターなんて務まりはしない。
 
 
「…さて、オーガが出るか、スネークが出るか…だな」
 
 
歌が聞こえるということは、必然、そこには何者かがいるということだ。
しかしその「何者か」が、俺の敵か否か、までを判別することは流石にできかねる。
では無視するべきか? 答えはノーだ。
他に手がかりが皆無なこの状況で、起きた変化を確認しないほうが有り得ない。
ともかく、行くしかないだろう。それに、
 
 
「誰だろうがなんだろうが、行けばどうにかなる…さ。ポジティブシンキングといこう」
 

誰に言うでもなくそう呟いて、俺は歌声のする方向に見当をつけて、歩みを進めた。

116 名前:ハーケン・ブロウニング ◆VPHaken.os :2010/06/13(日) 00:28:35
>>114
 
「!?」
 
考えるより先に、俺は銃を抜いていた。
一般の拳銃よりかなり長い銃身を持つリボルバー・ガン。
特殊拳銃「ロングトゥーム・スペシャル」の早抜き(クイックドロー
 
 
(がさがさがさがさ…)
 
 
俺が銃口を向ける先、俺が感じ取った物音と気配はどんどんと遠ざかっていく。
 
 
「……動物、か?」
 
 
呟くが、当然答えはない。
少なくとも、敵意や殺意は感じないが…得体の知れない物であるには、違いない。
俺は溜息を付き、結局銃声を響かせなかったロングトゥーム・スペシャルをコートの中へと仕舞う。
 
 
「やれやれ、どうしたもんかね、こいつは」

117 名前:名無し客:2010/06/13(日) 00:43:06
               (がさがさがさ)



          (しゅたたっ、しゅたん)



     (かさささささっ)



(がさがさがさ……がさ)



(複数の気配が再び接近してきた……)

118 名前:ハーケン・ブロウニング ◆VPHaken.os :2010/06/13(日) 00:55:20
「………むう」
 
 
行けども行けども、誰にも出会わない。
雨は降り止むことを知らず、黒雲も動くことを知らない。
俺が道を切り開きながら進む音と、雨の降りしきる音と、
先ほどの「何者か」の気配のほかは、何も聞こえない。
幽かに響いていたはずの歌は、いつのまにか消えてしまっていた。
 
 
「こりゃ…ハズレか?」
 
 
そんな考えが俺の中によぎり始めた。
そもそも、人を襲えるくらいのバケモノがこの辺りを通ったとして、
その痕跡が見当たらないはずがないのだ。だが、見当たらない。
本来はもう少し早めに見切りをつけるべきだったのかもしれないが、
森の恐らくはかなり奥まで進んでしまった今となっては、どうしようもない。
 
それ以前にまず、
 
 
「おい、これ…迷ってないか」
 
 
行けども行けども、景色は変わらず。
自分の現在位置なんて、つかめるはずがなかった。
少し行き当たりばったりに過ぎたかと、流石に反省する。
もはや何度目になるかも分からない溜息をつき、立ち止まる。その瞬間―――
 
 
>>117
 
「…………!」
 
 
気配が、近づいてきた。今度は明らかに、何かしらの意思を持って。
俺は再びロングトゥームを抜き放ち、予断なく構える。今度は直ぐには仕舞わない。
近づいてくる足音は、このまま行くと確実に俺の目の前に到達するはずだ。
いつ、何が飛び出してきても即座に対応できるよう―――
俺は、正眼に拳銃を構えたまま、待った。

119 名前:???:2010/06/13(日) 00:56:09
    「よう、大将!」
      ,:;:,.,.,.;:;、
      :;:;・ω・:;:;  
      :;っ:;:;:;:;つ
      ,:':;:;:;:;:;:;:
     .;;,:''''''''':;;:  

(もさもさした物が、殴り掛かって来ました)




120 名前:名無し客:2010/06/13(日) 01:03:32
>>118
(気配はハーケンの近くで一瞬止まり、そして……)


>>119

!?

(気配は出るタイミングを逸した)

(気配は混乱している)

121 名前:ハーケン・ブロウニング ◆VPHaken.os :2010/06/13(日) 01:13:40
>>119
 
躊躇なく、引き鉄を引いた。
2発、3発。
 
撃ったその刹那に、色々な思考が浮かんでは消える。
 
“敵!?”
 
“襲ってきやがった”
 
“何だこいつ!?”
 
“こんな奴見たことないぜ”
 
“こいつが件のバケモノ?”
 
“いや、違う?”
 
 
………そして。
 
 
>>120
 
もう一つの気配がそこに在ることに、気付いた。
右手でロングトゥームの引き鉄を引きつつ、自然と左手はもう一つの武装に伸び―――
特殊銃剣「ナイトファウル」が、俺のコートの下から引き出された。
そのまま、左手の指が銃剣のガトリング部を制御する引き鉄にかかる。
 
一連の動作は既に俺の身体に芯まで染み付いており、そこには何の澱みもなかった。

122 名前:マクミラン大尉(M):2010/06/13(日) 01:26:08
>>121
「ビューリホー……。しかし発砲タイミングが少し遅かったぞ?」
3発の弾丸は、ギリースーツの脇を抜けていた。
対して私のM21は、後数ミリで彼のわき腹を殴打し、目的を完遂できただろう。

>>120
彼の無力化は簡単と判断した私は、彼に習って未だ姿を見せない気配に向き直った。
スコープには何も見えないが……。

               ,:;:,.,.,.;:;、
         __O)二))):;・ω・:;:;:;:: ステンバーイ
   0二━━ )____)┐;:ノ;:;:;::;:;:;:   
         A   ||ミ||\ くく:;:;:;::;:;:;:

123 名前:名無し客:2010/06/13(日) 01:44:10
>>121
>>122
向けられる二つの殺意。
それに気づいたのかどうか、気配が一瞬「薄くなる」。
そして……。

124 名前:ハーケン・ブロウニング ◆VPHaken.os :2010/06/13(日) 01:48:06
>>122
 
「なっ…かわした!?」
 
かわせるタイミングじゃなかったはずだ。撃った俺が言うのだから間違いない。
驚愕に染まる俺の表情―――
いや、そうじゃなくて、だな。
 
 
「って、誰だよアンタ」
 
 
襲ってきた相手は化け物ではなかったらしい。
いや、そもそも人間かどうかも怪しいが。
少なくとも今の銃弾をかわせた奴がまともな人間であるはずはないので、
判断は保留せざるをえない。
 
対して左手はナイトファウルを構えつつも、未だ発砲はしていない。
目の前の相手に驚いたというのもあるが、撃つタイミングが掴めなかった。
 
とりあえず、気配のほうへを声をかけることにする。
 
「―――ヘイ、なんだかわけのわからんことになっちまったが……
そこにも誰か、いるんだろ? もう隠れてる理由もあるまい。
素直に出てきちゃあどうだい?」

125 名前:マクミラン大尉(M):2010/06/13(日) 02:05:26
>>124
銃を右手で構えたまま、黙ってギリーの左脇をヒラヒラと振る。
心臓の脇。20センチほどずれた場所に、3発の弾痕が固まっていた。
「ギリースーツと君の目のお陰だ」
左手をM21に添え直し、再び気配を探る。
「私はマクミラン。訳有ってこれ以上は教えられないが」

(入場)

126 名前:不確定名:両手に二振りの大剣を持った40cmほどのヒトガタ:2010/06/13(日) 02:21:12
二人の目の前に忽然と現れたヒトガタが、叫んだ。

「ザイオンスr」

>>124
>「―――ヘイ、なんだかわけのわからんことになっちまったが……
>そこにも誰か、いるんだろ? もう隠れてる理由もあるまい。
>素直に出てきちゃあどうだい?」

「れいやぁぁあっとっとぉ!?」

そして、叫びと共に振り回されるはずだった二振りの剣は、すんでのところで止められた(というか、無理矢理地面にめり込まさせた)。
もし彼の提案が一刻遅れていたら、その剣が大変なことになっていたのは想像に難くない。

さておき。
確かに頃合いだろう。
「そうねー。みんなー、でてこーい」

両手に二振りの大剣を持った40cmほどのヒトガタ……ああ長い……ペコが、手を降って合図する。すると……。

127 名前:ヒトガタ達 ◆KREU/c.SEU :2010/06/13(日) 02:33:43
「ぼんばー」
「しおしおー」
「私の出番が……」
「オペレーションを終了します」
「あんでぃー!」
「狩りの時間ここまで」
「そちも悪よのぅ……」

あちこちの木陰から、あるいは木の上から。
様々な姿形のヒトガタ達が現れる。
果たして、彼らは何体まで気がついていただろうか。

「で、ちょっと待ってね。私もそっち行くから」

ペコを介してそう言うと、「私」は切株に座っていた腰をあげ、彼らのところに歩き出した。

128 名前:マクミラン大尉(M):2010/06/13(日) 03:02:23
>>126
大声で叫びながら、小人の女性が藪から飛び出してきた。
両手には、身の丈以上の剣を携えている。そいつはその剣を振り上げながら飛び上がり――――地面に叩きつけていた。
「……派手なご登場だな」
感想を呟いていると、小人が手を振り何事か合図している。

>>127
「なるほど。ずいぶんと集まっていやがる…」
辺りから同じくらいの小人が、わらわらと現れた。
私はギリーの下から、フラッシュバンを取り出して安全ピンに手を掛ける。
「こいつらあまり人懐っこく無さそうだな。目を眩ませて立ち去ろうかと思うが……どうする?」

129 名前:ハーケン・ブロウニング ◆VPHaken.os :2010/06/13(日) 03:19:03
>>125
 
「ミスター・マクミラン、ね…OK、覚えておくぜ」
 
言いながらも、俺は内心苛立っていた。
こいつ、あくまでも外したのは迷彩と俺の狙いのせい、と堂々と言ってやがる。
そもそも外しようがない距離だったにもかかわらず、だ。
何にせよ、事実として弾は外れたし、こうして相手は生きている。
それだけは認めざるを得ないだろう。
 
 
>>126-127
 
 
「って……こんなに大勢いたのかよ?」
 
何やら続々と現れる小さな…人形だろうか?
なるほど、気配をつかみにくかったわけだ。敵意も殺意も、持ち合わせて
いなかったのが頷ける。
ともかく、先ほどからがさがさと周りを騒がせていたモノの正体はこいつらだったらしい。
だが…こいつらは、外れだろう。もしこいつらが「化け物」とやらの正体なら、
あの人物の説明に化け物が「沢山」とかそういった表現が付くはずだ。
 
 
 
「さてさて…、ゴーストの正体見たりドールズだ、ってか。
お集まりのところ悪いが、俺もそろそろ、時間切れらしい。
これ以上やってても情報は得られなさそうだしな?」
 
言って、瞬時に一切の構えを解く。
謎の男に向けたロングトゥームも、人形に向けたナイトファウルも、降ろした。
 
「まずは怪しげマン、なんと言おうが先に発砲したのはこっちだ。悪かったな。
だがいきなり襲い掛かるって挨拶の仕方も今度は改めたほうがいいぜ?」
 
続けて、
 
「ドールズたちもソーリー。ビビらせちまったかい?
実際何が出てくるか分からなかったもんでね。銃口を向けちまったのは謝っておくさ。
それじゃ―――出会ったばかりで悪いが、俺はそろそろおいとまさせてもらうぜ」
 
俺は言うと同時に、コートの下に手を突っ込んだ。
そこから取り出したのは―――一塊のカードデッキ。
 
「それじゃ、この場はひとまず、アディオスだ。縁があったらまた会おうぜ」
 
別れの言葉を告げて、俺はカードデッキをばら撒いた。
その正体はただのカードではなく、煙と光を強めたスタン式カード型爆弾―――
全天候型仕様として、きっちり防水加工は施してある。
煙は雨で流されるだろうが、一瞬の目くらましとしては充分だ。
 
 
空に待ったカード爆弾が、一斉に炸裂する。
同時に俺は、コートを翻し、その場を後にした。
 
 
(退場)

130 名前:マクミラン大尉(M):2010/06/13(日) 03:43:51
>>129
「あや……なんだって?」
なにやら聞きなれない単語を聞いたが。
最も内容を再確認するまもなく、男は低威力のスタングレネードらしき物を投げると、マントを翻して立ち去っていった。

「まったく。銃を持った相手の前に、普通に現れるバカが何処に居る」
一人愚痴をこぼし、フラッシュバンの安全ピンを引き抜いて、小人達の前に投げ放つ。
――――閃光。続く轟音。
耳鳴りを堪え、さっきの男が去って行った方向と違う方角へ駆け出す。
途中藪に隠れながら、私はその場を離れた。

(退場)

131 名前:クロイツェル ◆KREU/c.SEU :2010/06/13(日) 13:20:18
「「「「「「「「しおしお〜」」」」」」」」
「うわあ……」


私がその場所に着いた時、そこは死屍累々、
ただし全部人形、みたいなっ、という感じだった。


帽子の男がカードデッキを取り出した時点で
イヤな予感がして感覚結合を切ったのは正解だったようで、
その後物凄い閃光が私の方からも見えた。それも2回。
2回目はもう一人の男の方だろうか。最初ので
ペコ達の視界は潰れてるのに、念入りなことだ。


「次があったら苦情の一つも言わせてもらわないとね」

私はそう呟くと、倒れたりム○カごっこをしたり
……結構余裕あるわね……してる人形たちの回収に入った。


【退場】

132 名前:八神 庵:2010/06/13(日) 21:47:27
 
 目的も無く歩き、辿り着いた。
 此処に留まるだけの理由は、それだけで充分だ。
 
 視界を覆う雨。
 肌に張り付くシャツの不快感に眉を潜め、シガーライターから取り出した煙草に火を燈す。
 
 灰を満たす有害物質。
 何時しか慣習と化した喫煙。
 
 揺れる煙の様に曖昧で不確かな理性と狂気。
 穏やかな日常など望んではいない――それでも血塗れの毎日を望む訳でもない。
 矛盾を抱えたまま進むのが人間であるというのであれば、久方ぶりに人間らしい思考をしている
のであろう。
 そう自分の中で結論付け、視界を覆う雨を見る。
 
 暗く深い闇に降り注ぐ慈愛と見るか、災害と言う鎌を振るう死神と見るか。
 
 天の恵みとは、不足も余剰も赦され無い。
 人間と言うエゴイズムの塊にとって見れば、全てが唾を吐き掛ける対象と成り得る世界。
 
 空に月は無く、暗い情景が広がる。広がり続けている。
 己が心の闇を、誰もしもの心の闇を映し出すかのよう。
 
 濡れることを厭う訳でもないが、少しだけ。
 世界を見つめ、己が闇を見据え――穏やかに過そうか。

133 名前:八神 庵:2010/06/13(日) 22:28:23
 
 正しい、正しくない。
 
 そんな事は些細な話だろう。
 自分にとって正しければそれが全て。
 
 全てだ。
 如何に血に塗れた道であろうとも、そこを歩む事こそが正しかった。
 
 
 
 だが――望みだったか?
 
 
 
 善も悪も関係無く、正しいか正しくないかも如何でも良い。
 
 
 
 それが――望みだったのだろうか?
 
 
 
 知る術は、きっと、無い。
 

134 名前:八神 庵:2010/06/13(日) 22:50:20
 
 雨は――止まない。
 
 
 雨音が奏でるリズム。
 そんな物に酔っているのは何時以来なのか。
 
 
 雨は――止まない。
 
 
 記憶の底に仕舞ってある筈の惨劇。
 憂鬱と共に吐き出した溜息交じりの紫煙。
 
 
 雨は――止まない。
 
 
 感情か?
 
 
 雨は――止まない。
 
 
 いや。
 
 
 雨は――止まない。
 
 
――感傷だ。
 
 
 雨は、止まない。
 

135 名前:八神 庵:2010/06/13(日) 23:09:08
 
 何本を数えるのか。
 それすら判らなくなる程、無為な思索に耽る時間。
 
 破滅を謳う調べが流れるでもなく、雑踏の喧騒も無い――自然が織り成す調べ。
 
 思考を満たすのは、出口の無い迷宮。
 番人に喰われる事の無い、究極にして単純明快であろう迷宮。
 
 
 生きている事は、無価値だ。
 生きている事は、無意味だ。
 
 
 だから――終わりにしてしまえば良い。
 
 
 破滅を願えば良い。
 自らを殺してしまえば良い。
 
 
 執着と言う文字を殺す事が出来たならば。
 
 
――それは。
 
 
 自殺に違いない。
 

136 名前:八神 庵:2010/06/13(日) 23:24:21
 
 己を殺してしまうのも。
 他者を殺めるのも。
 
 何が違い、何処に違いが在るというのか。
 
――いや。
 
 大きな隔たりがある、か。
 
 人と鬼では価値が違う。
 天秤に掛ければ人の方に傾くのは想像に易い。
 
 社会から放逐され、人の理の中では生きられず。
 その手にした物を全て手折る俺に。
 
 人として生きる術など在る筈も無く。
 
 
――人としての価値があるとは思えない。
 

137 名前:八神 庵:2010/06/13(日) 23:51:18
 
 価値。
 意味。
 
 
 この言葉が無為であると知るのに時間は必要無い。
 
 
 全てが、人と言う杓子定規で測ったものに過ぎない。
 
 
 そう――何もかもが。
 
 
 無価値で。
 無意味だ。
 
 
 どれだけ足掻こうが、底のない沼に沈み行く。
 
 
 それが、全てだ。
 

138 名前:名無し客:2010/06/13(日) 23:54:10
雨は炎を消してしまいますか

139 名前:八神 庵:2010/06/14(月) 00:03:14

「雨は――炎を消してしまいますか?(>>138)」
 
 何時か聞かれた言葉のリフレイン。
 その時はなんと答えたか、定かではない。
 
「消える筈など無い。
――そう。消える事など、無い」
 
 
 この手に掴んだ物が幻だけだとしても。
 作られた意図に絡められていたとしても。
 
 
「消えるのは」
 
 
「消せるのは」
 
 
「己が命を断つ時」
 
 
「――そこが、この忌まわしき炎の消える時だ」
 

140 名前:十六夜咲夜 ◆kiLL.Hxa7E :2010/06/14(月) 00:10:05
>>139

鉛の様な刃。


第一印象はそんなイメージだっただろうか。
降りしきる雨の中、大木の足元に佇む青年の持つ重たくまとわりつくような鈍い気配。

それは殺気と言うには志向性がなさ過ぎた。
それは狂気と言うには理の光を失っていなさ過ぎた。

過去にこのような気配を持つ者は居たような気もするし、居なかったような気もする。
空とぶ巫女とは別の意味で、瀟洒なメイドとも別の意味で、世界から浮き上がる……
いや、世界から沈み込むような光と闇の気配。

通り過ぎるだけのつもりが、メイド服の女性、つまり私……
十六夜咲夜は気がつくと其処で足を止めていた。
理由は自分にも分からない。

「今晩は」

在り来りの言葉こそが相応しく、そして、相応しくなかった。


141 名前:八神 庵:2010/06/14(月) 00:29:43
>>140
 
『今晩は』
 
 雨音が支配する空間に声が響く。
 凛とした、意志ある声。
 
 手を伸ばそうとも届かない過去ではなく、現在が告げる音。
 
「――なんだ、貴様は」
 
 巷で見かける事も無くはないメイド姿の女。
――血の匂いを感じさせなければ、だが。
 
 研ぎ澄まされたナイフを連想させる佇まい。
 奇術師の様な、表情を見せる事の無い表情。
 
 シガーケースから取り出す煙草は残り僅か。
 躊躇い無く火を点け――
 
「月も出ない夜だ。静かに過すのがお互いの為だと思うが?」
 
 吐き出す紫煙。
 溜息交じりのそれは、確かな拒絶を含む。
 
 再び雨音だけが、夜を支配する。
 

142 名前:十六夜咲夜 ◆kiLL.Hxa7E :2010/06/14(月) 00:44:18
>>141

奇妙に淀む気配。
静かに揺れる紫煙。
わずかに揺れる視線。

「『なんだ』という問いかけに特別な意味を込めたかしら?」

断る事も許可を得る事もせず、大樹の下に歩み寄り、傘を閉じる。
並んで立つ様に幹に背を預けると視線だけをちらりとやって彼を見た。

突然の来訪者に驚いた風ではない。
それが森には場違いのメイド服に身を包んだ女性であるにも関わらず。
その女性の持つ血生臭い気配とどこか暢気さを両立させて気配にも関わらず。

「人に名を尋ねるならば、まずは自分からなんて下らない常識がありますわね。
 礼讃するつもりはありませんが……一応名乗っておきましょう。
 私は十六夜咲夜と申します」

十六夜咲夜は身構えない。
たとえ危険が目の前にあったとしてもその筋肉を緊張させ、
いつでも飛びのけるようになどという思考はない。

ただ、静かな精神の緊張をもって危機にあたる。
それは自分の能力に大きな自信を寄せているからであり、
また、同時に相手に自分の手札を見せぬためでもある。
ことさらに能力に依存するその傾向は彼女の主から問題視されてはいるが

−−酷使による反動のリスクの意味で、だ−−

彼女に改めようと言う考えはまるでなかった。
反省はしても後悔はしない。

夜霧の幻影殺人鬼であった頃から彼女のその姿勢に変わりはないのだ。
そしておそらくこれからも。

「結構な事だと思いますわ。
 貴方の精神的安定のために、そして私の立場のために」

自分の精神的安定のために、ではない。
自分の存在になにかを察したのであろう彼にそう、暗に含ませた。

彼が何者かは知らないが吐き出された言葉のイントネーションから
どこか同類染みた部分でもあるのだろうと感じた。
だが、之はおそらく同類ではない。
彼には愉悦と邪悪さが絶対的に欠けているように感じた。
どちらかと言えば妹様に近いだろうか、制御できぬ破壊。
狂気と呼ぶほどの圧倒性は感じないが、今は。


143 名前:八神 庵:2010/06/14(月) 01:00:51
>>142
 
「会話に含みを持たせるなどと言う回りくどい事はせん」
 
 チリチリと燃え、肺を満たす有害物質。
 衝動は吐き出す紫煙と共に薄れ行く。
 ゆらゆらと漂う境界の維持は、嗜好品と理性で押さえ込む。
 
 そう――血の匂いに過敏に反応する我が狂気を。
 
「ふん――…八神、庵だ」
 
 気紛れ――気紛れだ。
 名に意味など持たない。
 識別記号と何の変わりがあるというのか?
 
 零でも壱でも、それを識別する為の記号に意味など持ちはしない。
 
 どうでもいい事だ。
 一期一会の精神など、如何でも良い。
 
「立場を弁えるならこの状況を忌避すべきだ。
 男と女、他に人影は無し――下らん欲を満たすには、うってつけの状況だろうに」
 
 
 殺せてしまう距離。
 殺されてしまう距離。
 
 
「それとも――『ヤスイ』のか?」
 
 
 最悪のジョークを口に。
 

144 名前:十六夜咲夜 ◆kiLL.Hxa7E :2010/06/14(月) 01:10:29
>>143

ヤガミイオリ。
日本人だろうか。

気配も重ければ声も重い。
鉛の様なという第一印象は誤りではなかったのだろう。
鈍い敵意、鈍い殺気。

ああ、そうか。
この気配は私に似ているのだ。
ずっとずっと昔の私。
霧の街の夜に潜み、快楽に溺れ、ある時にふとその自らに戸惑ったあの頃。
夜霧の幻影殺人鬼が幻想の彼方に去るそのまさに直前。

殺す事に飽きたわけでもない。
世界と神への呪詛が尽きたわけでもない。
ただ、意味の分からぬ疲労と諦観に足元が淀んだあの頃。

あの時、あの方に出会っていなければ私はどうなっていたのだろうか?
幻想郷でもその刃を振るって、怪異として退治されていたのだろうか?
それとも何とも知れぬ妖怪どもを殺戮し、最後に力尽きて喰われていただろうか?

……振り返って意味のある疑問ではない。
そんな道はなかった。選ばなかった道に意味はない。
私は今こうして此処に在るのだから、それが全て。
いわばこれは運命であろうか。

「はぁ、そう言われてみれば確かにそうね。
 そんな対象として認識される程度の見てくれはある。
 まぁ、褒め言葉として受け取っておきますわ」

暢気に答える。
しかし、続く挑発の言葉に首をかしげた。

ヤスイノカ?

ふと、彼の瞳に映る自分に目を留めた。
安い?それは価値の問題か?
何の?私のか?

それは誰が認める価値だろうか?
お嬢様?いいや、社会一般?

そこに意味があるのか?

私はその時、心底不思議そうな表情を浮かべていたのだと思う。


145 名前:十六夜咲夜 ◆kiLL.Hxa7E :2010/06/14(月) 01:11:07
十六夜咲夜という人物の……
いや、その名を得る前から彼女という人物にはある異常性があった。
それこそが彼女を夜霧に暗躍させた大きな要因であろうことは疑いない。

それは「他に許しを請う」という発想が完全に抜け落ちている事。
彼女にとって「他」は「他」でしかなかった。
だから彼女は他の評価を必要としない。他の存在に価値を認めない。
他に価値を認めさせる事に意味を感じない。

彼女が彼女として在る事に資格も意味も価値も必要としなかったのだ。
そう在る理由はそうすることが可能であり、それに愉悦を得ていたから。
それだけに過ぎない。

そしてそれは世界において「邪悪」と呼ばれるに十分な特質ではあった。

彼女が「他」に価値を認めたのはかの吸血鬼に出遭ったその時からなのだ。
絶対的な力で、圧倒的な魅力で、捻じ伏せられ倒れ伏し、屈服させられた。
価値を認めざるを得なかった。
之は己を所有する程の存在である、と。

それから彼女の……十六夜咲夜の価値観に変化が訪れた。
「他」に意味が生まれた。主に与えられた名と立場はそれを要した。
「他」に価値が生まれた。主が示す価値をただ受け入れた。
彼女が彼女として在る事の資格も意味も価値も主が与えてくれた。

だから十六夜咲夜という銀のナイフはその鋭さを失わない。
誰彼構わず切り裂いた頃と違い、刃先の向きすらも明確に示されるため、
そのナイフは常に揺ぎ無い軌道でもってただ鋭利に在る事ができた。

その安定性こそが彼女を完全で瀟洒たらしめたのだ。

彼の気配を噛み締めて、彼の瞳に映る自分を見つめて、
唐突に自分と言う存在が自分の中で浮き上がるように感じた。

まるで磨き上げられた珠の表面に映し出される光のように。
まるで剣によって削り出されたカタチのように。
まるで鏡に映った影のように。

こんな感覚は初めてで……わずかに内心動揺した。

146 名前:八神 庵:2010/06/14(月) 01:29:32
>>144-145
 
 動揺を見る。
 生死の境ではない精神の境における動揺を。
 
 つまりは――価値を認められない、意味を求めない同類であると言う事か。
 
 永遠に答えの出ない命題を前にした哲学者の様に。
 
「それに答えが出るのは、全うした者だけだろう」
 
 揺れる紫煙。
 瑣末事に捕われる人を嘲笑うかの様に揺れる。
 
「――いや、若しくは」
 
 安直な答えに身を委ねた結果がこれであるならば。
 目の前に在るモノを許容する事こそが逝き方だと思ってしまっていたならば。
 
「答えなど――」
 
 この女と、俺との間に相似はない。
 何処も彼処も似ては居ない。
 
 それでも、共通すべき解があるのだとすれば。
 
「――とうに出ているのかもしれん」
 
 見ない振り。
 判らない振り。
 
 延々と続ける道化師の如き生き方。
 
 滑稽で、馬鹿馬鹿しい、落伍者にも劣る――
 
――阿呆。
 

147 名前:十六夜咲夜 ◆kiLL.Hxa7E :2010/06/14(月) 01:37:22
>>146

「答えですか。
 QEDの先に答えを求める方も居れば、
 答えに意味はない、答えを出す過程に意味があるんだと笑う方も居る」

自嘲とも、私への侮蔑ともつかぬ笑みを崩さぬ彼に平然と答える。
私への評価などどうでもいいのだ。
私が挑発を受けて怒りを覚えるとしたらそれは私への侮辱に対してではない。
それはきっと……。

「私の周囲にはそんな方々ばかりでして。
 ああ、そうそう、こんなのも居るわね。
 『答えですか?そうですねぇ、ドレがいいですか?あはは』
 ねぇ、イオリ、貴方は証明を望むタイプ?」

珍しいなと自己分析の結論を出す。

彼と言う存在に興味を抱いているのはナイフではなく時計の方。
不思議と咲夜の中の殺人ドールは彼をダンスの相手として認識していない。
むしろ、メイドの方が彼を気にしている。
何故だろうか。

妹様とよく似た気配からだろうか。
なにか身の内の見えないものの拡大を忌避し、
現状の思考を維持しようとするような、焦燥感と危うさ。

それは狂気の爆発を抑えて声を震わせる時の主の妹、
フランドール・スカーレットにどこかよく似ているように思う。

狂気に身をゆだねてしまった者を殺してなにが楽しいか。
殺される痛みと怒りと悲しみと恐怖、其処にそれらが伴わないならそれはただの作業だ。
機械と殺しあうのは詰まらん。
仕事をするならお前がやれ、私は興味が無い。

心中の幻影殺人鬼が嘯く。

ああ、成る程。
そんなものかと納得した。
お嬢様と殺しあう事を夢想したことがあるのに、妹様にはそんな気持ちを抱いた事がないのは
自分でも少し不思議だったが、おそらくこれが理由なのだろう。

不謹慎極まる妄想を転がしながらメイドは一人得心した。


148 名前:十六夜咲夜 ◆kiLL.Hxa7E :2010/06/14(月) 02:33:05
返す言葉がないのは迷いゆえか、敢えて目をそらさんとするためか。
立ち入った事を聞いたのが不味かったろうか。
小さく溜息をついて視線を外す。

雨はずっと変わらず。
ただ降り続くのみ。

……ふと手元の時計に目を落とし、
思った以上に過ぎ去っていた時間に驚く。

「さて、それでは私はそろそろ失礼しますわ。
 願わくば再び運命の軌跡がどこかで交差しますことを」

彼に手を振って、傘を手に取って、雨の中を歩み去る。

比較から他者を分析しようとするのは私の悪い癖かもしれない。
だが、部分部分においてその特質を確認するのに比較は有効な手段ではある。
ことに初対面の人物の像を測るにはなおさらの事。

さて、返すにこのヤガミイオリという人物はどうだろうか?

ダンスの相手としてではなくもっと違う部分で興味がある。
ならばどうする?
妹様……フラン様に対して最近そうしているように、
ぎりぎりまで踏み込んで戯れるのも楽しいのかもしれない。
おそらく厭うであろうが、だがそれがいい。
トランプの十六夜咲夜はそういう悪戯心の強い人間であるのだ。

からかうには情報も足りなければ面識も足りない。
となれば、またいずれ会う機会でもあればいいのにと思う。

あるかもしれないし、ないかもしれない。
ならばそれは運命次第とただ期待だけをかけることとしよう。
何、案外目はあることだろう。

なにしろ、我が主は運命を操る悪魔なのだから。

  <退場>

149 名前:M1A2 Abrams ◆SEP/ra/6qE :2010/06/19(土) 00:17:37
また夜間行進訓練のお付き合いだ。彼らには早く電子機器に慣れて貰わないと困る。

「多分『R147』ってルートが舗装道路で、森を迂回してはしってる道のようっス」
「なら『R131』は、森の中の未舗装道って事か?」
「そのようっスね戦車長」

IVIS車両間情報システムが得た情報をディスプレイに呼び出し、周辺の確認をしているようだ。

「よし。R131を併走して、Gグリッド-I-108に移動。そこで小休止」
「ヒ−ハァ!」
「やれやれ、やっと休憩ですか。しかしM1はM60に比べると振動も少なく良い戦車ですね」

砲手が僕の事を褒めているが、比較対象はやっぱり先任なのか……。
降り続く雨の中、泥を跳ね飛ばして僕は森を進んでいた。

(入場)

150 名前:M1A2 Abrams ◆SEP/ra/6qE :2010/06/19(土) 00:40:52
『木々を縫い。腐った倒木を踏み越え。鉄の雄牛が夜の森を疾駆する』
とでも、M60先任なら今の状態を表現するのだろうか?
障害物が多い割りに、木々の間隔が広いこの森は、格好の練習場所だ。
操縦手が樹をパイロンに見立てて、スラロームを繰り返す。

「おいおい。遊ぶのはいいが樹に傷を付けるなよ?」
「ご安心を。M60より、遥かにステアの切れが良いッスからね。俺、このままM1に乗り続けてぇッス……」
「ヘイヘイ。120mm砲弾を装填する、俺の身にもなれよ。俺はパットンの方が楽だぜ」

装填手だけは、あまり僕のことが気に入っては居ないようだ。

「よーし、見えてきたぞ。あの樹の下あたりに寄せて小休止だ」

そう言った戦車長の視線。僕のCITVは、前方に見えて来た大木に注がれていた。
大きな大きな樹。樹齢はどのぐらいなのだろうか……。

151 名前:M1A2 Abrams ◆SEP/ra/6qE :2010/06/19(土) 01:56:50
小休止は良いんですが……。
操縦手。運転席でお菓子食べるのはかまいませんが、その手でハンドルとかベタベタ触らないでくれません?
砲手。貴方IVISに何入れてるんですか。野球ゲームなんか入れないでくださいよ。装填手も一緒になって……。
戦車長。雨降ってるんですし、車内に臭い籠もりますからタバコは止めてください。ハッチ空けててもダメ。
と、そんな事を思ってみても、彼らには届かないんだろうな。

「さて。小休止終了だ。操縦手……って、お前またスニッカーズ喰ってるのか」
もふぁ。もがもがもふぁふぁ。もかもがもごもぐハイ。出発っスね。エンジン始動します
「あー。食ってから喋れ食ってから」

発電機からエンジンに切り替え。再び、雨降りしきる暗い森の中を走る。

(退場)

152 名前:アヴェンジャー ◆ty.Avenge. :2010/06/20(日) 21:08:53

――世間じゃ「あの人は今」てのが流行っているらしい。
 近頃見なくなった誰かが顔を見せたりするのがそんなに嬉しいもんかね?変わり果てた遺物になってたら
悲しくねー?
 ほら、最近顔を見せた赤毛君とか独り善がりな上に途中退場じゃん?
 人間様の飽き性に完敗(誤字に非ず、俺のキャラ的に許してくれ)!
 
 で、なんだ。六月ですよ?
 梅雨時で湿気やら何やらで過ごし難い日が続いている訳で。
 六月の花嫁ってのは、この国で言えば情報操作も良い所。式場が暇になるのを防ぐ為の聴こえの良い謳い
文句である事実に目を背けたとしても、幸せになれる二人なんているんでしょうか?
 
 おいおい、人間。二人居りゃ殺し合いが出来んだぜ?
 幸せを夢見るよりもバッドエンドを創造するほうがタスクを咲く割合が少なくて済むってもんです。
 純白のドレスを赤黒く染めるのって胸キュン?
 
 ああ、しかし。
 長雨にはうんざりである。この国特有の湿気もうんざりねー。
 
 まったくさ、カビルンルン?
 
 残った目にカビが生えた時は殺意云々の前に知的探究心が刺激され―――――る訳は無いんだけれども、
物悲しい気分になったのは確かだったりもする。
 いや、人に黴って生えるんですね?
 
 それでも雨に濡れる自由は素晴らしい。
 鼻につく異臭もなんのその。公害なんて慣れちゃったら適応してくれんですよ?
 
 知ってた?
 排ガスって下手すると普通に吸う空気より綺麗な事もあるんだぜ?
 
 
「いやー、世界ってのは醜くも退屈しねーよ。
―――――ホント、退屈だ」
 
 矛盾する言葉?
 いえいえ、皆さん各自でルビでも振ってくださいな?
 

153 名前:アヴェンジャー ◆ty.Avenge. :2010/06/20(日) 21:59:55
 
 しっかしまあ、よく降るものである。
 詩的に言えば天が号泣している(天は”そら”って読みねえ)――今日この頃だ。
 
 お天道様が見られないのは気が滅入る人種も多いのでしょうね?
 オレ? オレはアレだよ。
 
―――――別に?
 
 いやー、お天道様を見るほうが少なかったからね、HAHAHAHAHA!
 大体片目潰された上に磔にされたヒッキー街道まっしぐらだったし?
 屋根の隙間から見えるお天道様が熱いのなんのってさー。
 
 換気もして貰えませんでしたし?
 夜は糞寒いのに毛布も無かったし?
 DDDの三巻は出ないのに漫画原作とかやってるし?
 
――おっと、これは関係なかったっぜ!
 新作書く暇案なら進行中のプロジェクト片付けろ菌糸類。
 
 ボクニハナンノコトカサッパリワカリマセンケドネ?
 
 ざぁざぁと降る雨の心地良さ。
 濡れても風邪なんて引かない便利な体。それでも寄らば大樹の影。
 
 ほら、夜の影っていろいろ隠してくれるっしょ?
 風貌怪しいしね?
 

154 名前:アヴェンジャー ◆ty.Avenge. :2010/06/21(月) 00:33:47
 
 とりあえず雨音にも満足したので帰ろうと思うのである。
 そもそも居ちゃいけない存在ですし?
 
「――何の因果かマッポの手先、みたいな。
 マッポってなんざんしょ?」
 
 機会が巡れば出会いもあるさ。
 そう結論付けて終わりにするのである。
 

155 名前:シロー・アマダ ◆08MSwPc.vs :2010/06/22(火) 23:48:04
「…で、結局この木に辿り着く訳か」

しとしと降る雨の雫がフードを伝って先からぽたぽた落ちる。
歩いていると時々顔に引っ掛けて少々不快だ。
とはいえ、レインコートの暑さで汗もだらだらかいているし、例え雨が
降っていなかったとしても同じ状況になるだろう。
いや、普通雨降ってなかったらこんなの着ないんだけど。

「またいつぞやの戦車か?んーでも…」

妙だな。雨でぬかるんでいた分ハッキリと軌道が分かるのだが
以前の戦車とは少し違う気がする。
はっきり言ってこの前のは少々どころで無い旧式であることが分かるのだが
こいつは軽快な動きを見せて木々の間を抜けている。
サイズも変わっているようだった。

「ここで一休みしたんだろうな………はふ…」

丁度雨もかからない場所だし俺はフードを取って木にもたれかかる事にした。
休憩には丁度いいだろう。

156 名前:M1A2 Abrams ◆SEP/ra/6qE :2010/06/23(水) 00:07:27
右へ岩を避け、左へ樹を避け森を進む。

「戦車長!もうすぐG-I-108を通過するっス」
「オーライ。そしたらR138を外れてR148に入れ。今夜は休憩ナシだ」

戦車長たちも装備の使い方だいぶ覚えてきたらしい。

「戦車長」
「どうした砲手?」
「木陰に人が居ます」

確かにCITVの熱感知画像では、樹にもたれ掛っている人影が見える。

「礼もなく通り過ぎるのは失礼だな。敬礼くらいはしてやろう」

そう言って戦車長がハッチを開け、上半身を乗り出し人影に敬礼を送る。
暗くて判らないかもしれないが、そのまま人影の前を走りすぎる。
さあ、まだまだ訓練はこれからだ……。

(入場して、そのまま退場)

157 名前:シロー・アマダ ◆08MSwPc.vs :2010/06/23(水) 01:01:19
「……んあ?」

一息ついていたら轟音が近づいてくるのに気づいた。
ザクの足音とは違う、もっとエンジンを混ぜた一昔前の戦闘の主力が
奏でる突撃太鼓。
巨大な影がすぐ近くを通り過ぎていった。

のわっ!?

吃驚して後ろに下がったらしたたかに背中を大木にぶつけた。
え…61式?いや、違う。米軍のMBT、エイブラムスか?

「何でこんなとこ走ってるんだ…?」

それはキャタピラ跡を見つけたときから思っていたこと。
立ち止まることなく俺の前から轟音を残して消え去ってしまった戦車に
疑問をぶつける時間は無かった。

158 名前:シロー・アマダ ◆08MSwPc.vs :2010/06/23(水) 02:27:07
「…っと、うちの基地の近くじゃないか」

先ほど通り過ぎた戦車の後ろを追うように履帯跡を追いかけていると
不意に森の外に出た。
ちょっと歩けば自分の勤務している基地のあるところだ。

「こいつはもしかしたら…近道かもしれないな」

何度も森に挑んできたかいがあったというものだ。
もう数回この道を通ってしっかりと覚えてしまうとしよう。

【退場】

159 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2010/06/23(水) 22:43:22

「Shit――フられるのは女だけにして欲しいもんだぜ」
 
 大型犬のように振る頭/染み一つない銀糸から飛び散る雫/お気に入りのコートに着いた雨滴を払う/
地を踏みしめる度に不快な感触=濡鼠――”染みにならねーだろうな”
 
「依頼は空振り、ツケは溜まる、雨にゃ降られる――挙句にあの”バカ”がまた現れた」
 
 不機嫌な表情/細められる剣呑な瞳=不穏なものを宿す眼光――射止められたのは二つで一つの
相棒=エボニー&アイボリー。
 雨に打たれた程度で精度に誤差が出るとは思えない造形美/ハンドメイドのスペシャルオーダー/一対
であるからこそなせる芸術――頼りにしているからこその確認。
 脇に置かれたギターケースには目もくれず点検――まるで愛しい恋人に向けるかのような熱視線。
 
「まあ……真面目に働くなんて性に合いやしないが」
 
 一通り点検を終えた相棒は元通りの位置/細められた両眼は恨めしげに空へ/止む事を忘れたかの様
に降り続ける天の恵――”事務所のシャワーの方が幾らかマシだぜ”
 
 熱い/冷たい――両極端の事務所のシャワーを思い出す。
 修理する為の費用=見積もりの時点で破り捨てた。
 
「エンジンがイカレちまうってもんだぜ」
 
 溜息――雨に良い思い出はあまりない。
 溜息――事務所に放置してあるピザの状況を考える
 溜息――帰った所で気持ちよくシャワーは浴びられない。
 
 溜息――”勘弁してくれ”
 

160 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2010/06/23(水) 23:59:29
 
 容赦なく降り注ぐ雨/時間経過による変化――”いい加減止めよ”
 そんな心境を嘲笑うかのように降り注ぐ大粒の雫+雫+雫。
 
「濡れて帰るか、仕方ねえ」
 
 翻るコートの裾/闇夜に広がる真紅=防水加工済み――それでも気になる雨染み。
 
「メンテに出すとして――子猫探しでもコツコツ受けろってか?」
 
 やりきれない感情/それでも必要になる天下の回り物=金。
 
「――ツケ、利いてくれよ?」
 
 進む――足取りは重く。
 進む――日々の糧を得る為に。
 
 進む――”生きるってのはなかなか難しい”
 
(退場)
 

161 名前:不確定名:風 ◆WINDsAjQOg :2010/06/24(木) 00:07:52
降りしきる雨。

降り続く雨。

雲は蠢き空気は胎動する。

雨の中だろうと、森の中だろうと、風は何処にでも吹く。

「一向にやみそうもありませんが、これも神の思し召しということでしょうか」

青い修道服に身を包んだシスターらしき女性が静々と水滴の舞う森を歩む。

その瞳には静かな狂気を。
その口元には僅かな微笑を。

「はて?魔の者の気配がしたかと思いましたが……どうやら、私の勘違いだったようですね」

傘を持ち上げて、周囲を見回し……自嘲めいた笑みが口の端を捻じ曲げる。


162 名前:シロー・アマダ ◆08MSwPc.vs :2010/06/24(木) 00:09:34
「…何やってんの?」

今年は梅雨の入りが遅いからきっと梅雨明けも遅いだろう。
ねっとりとした空気が体に絡みつく感覚はとても不快で
一日も早く明けて欲しいのだが、明けると今度は汗のシャワーに浸る季節が来る。
自然現象にいちいち不平漏らしても仕方ないのだが、どうにもまだコロニー時代の
感覚が抜け落ちないらしい。

まあ、そんなことを考えつつ今日も戦車の足跡を辿って歩いていると
いつも通りの大木に辿りついた。
そこにいるのはいつか見た顔。ダンテだ。
名前からして多分イタリア系かなとか考えてる。

妖怪一杯いるんだしイタリア人、ないしイタリア系ナントカ人がいても不思議じゃないだろう。
レインコートのフードを取りつつ雨具を持たない銀髪の男に声をかけた。

163 名前:不確定名:風 ◆WINDsAjQOg :2010/06/24(木) 00:19:17
割れた鏡の中、映るこの歪な姿は現界に狂気の影を落とし、
果てに消えるはずの影はなにかに導かれたかのように再度姿を結んだ。

名乗る事はもう止めた。
偽者であることが分かったから。

この姿にあわせて揺れ、流れる思考を留める事もやめた。
像を結んだ影が律儀さを美徳とする必要などないと思ったから。

ただ、成り行きにまかせ、現象のように現界を歩む。
そうだ、これはこの夜だけの運命の悪戯。

魔の気配に導かれたかと姿を求める視線の先に映ったのはどこかの軍人らしき人物。
かつて傷つけ、そして再び憎悪をもって合間見えたある軍人を一瞬連想した。
しかし、その優しげな相貌はとても似つかぬもの。
心のどこかで落胆を感じつつも、小さく会釈して見せた。

狂ったこの身とて仮にも神に仕えた存在なれば。

「今晩は、軍人の方。
 良い夜……とは言いがたい湿気ですが」

微笑みと呼ぶにはいささか不敵に過ぎる笑みであろう。

164 名前:シロー・アマダ ◆08MSwPc.vs :2010/06/24(木) 00:33:57
む、声をかける前に去ってしまったようだ。
…雨具一つも持ってない彼は濡れ鼠になるという選択をしたようだ。

「…主よ、どうか彼が風邪を引きませんように」

適当にその場で祈ることにした。

>>161

……。
…………。

おう、神に祈ってたら何故かシスターが現れた。
普段の行いがよかったのかしら。
全然信心深くないけど。

「えーと、こんばんは修道女様。本日はお日柄も…」

空を見上げてしばし思考。

「全然良くないですね」

誤魔化すように笑った。
…シスターってばったり出会ったらなんて言えばいいんだっけ。

165 名前:不確定名:風 ◆WINDsAjQOg :2010/06/24(木) 00:42:52
>>164

「過ごしやすくはない夜ですね。
 ですがこれも恵みの雨であるかもしれません」

この世界にとっては、良い夜かもしれない。
人にとってどうだからと言ってそれがなんだと言うのか。
随分と遠く感じる様になってしまった彼の主たるオロチに思いを馳せながら、
シスターは伏目がちに笑う。

「お互い、装備も十分なればこれも風情と笑うが良し。
 見たところ東洋系のご出身とお見受けしますが、そちらではそのような思想の方が一般的なのでは?
 大地への畏敬、素晴らしい事です」

それを忘れなければ、オロチは目覚める事もなかったのだろうか。
あるいは同じ事なのか。
それはわからない。

それもわからない。

166 名前:シロー・アマダ ◆08MSwPc.vs :2010/06/24(木) 00:53:35
>>165

東洋系。
うん、まあ…名前とか親とかそれっぽいんだけど。
人種と宗教のミキサーにかけられた結果わびさびを保って生きれる
人間はどれくらいいるのだろうか。

「ああ、いえ…日本生まれじゃないのでそこら辺りの考えは良くは分かりませんが…」

実際ここに駐留しているのは左遷の末の偶々。
コロニー生まれのコロニー育ちにとって地球の環境は結構苛酷。
二十数年の宇宙暮らしは体質をオリジナルの人種より完璧に変えていた。

「こういった自然現象を直接体験するのは人間らしいことじゃないかなとは思いますね。
 自分の故郷じゃ到底味わえないので」

木々の間を抜けて落ちたしずくが鼻先を打った。

167 名前:不確定名:風 ◆WINDsAjQOg :2010/06/24(木) 01:00:05
>>166

「ああ、これは失礼。
 顔立ちから勝手にアジアの方の方かと思っていたようです」

故郷では見れない。
つまりは都市化が進んでいるのだろう。
人の営みの発達への喜びと大地から離れた人の心への悲しみ。
天にまします主がどうお思いなのか察する事はできないが、
地の化身たるオロチの咆哮はたやすくこの身を焦がす。

「人間らしさをどこに感じるのか。それすらも多様化してしまったのでしょう。
 嘆くべき事でもあり、喜ぶべき事であるようにも思います」

そこですぅっと瞳を細めた。
表情の変化を見落とすまい。
その心構えが視線に現れたのだ。

問う。

「斯様な夜中に、軍人の方がここで一体どのようなご用事で?」

周囲の空気の流れが気のせいか速まったように思う。
まるでつむじ風のように。


168 名前:シロー・アマダ ◆08MSwPc.vs :2010/06/24(木) 01:11:55
「わっぷ…失礼」

急に吹きぬけた風が雨を煽ってあまり届かないはずの
大樹の下にも雨を浴びせた。
袖で顔をぬぐってシスターの方に再び顔を向ける。

「基地の近くに小用がありまして、それでまあ帰りは近道をしようと思い
 この森を通っただけです」

あんまりなくだらない答え。
小恥ずかしそうに笑いながら頭を掻いた。
この地面のキャタピラ跡が基地への近道を導いてくれるとはいえ
そんな横着せずとも普通の道を通ればいいのに。

「そう、人間らしさを感じようだとかそんな深いことも考えてもないです。
そういう修道女様は一体どんな御用でここに?」

確か付近に教会なんて…神父はいるんだけどなあ。


169 名前:不確定名:風 ◆WINDsAjQOg :2010/06/24(木) 01:23:14
>>168

通りすがりの軍人に。
朧に像を結んだ幻の風に。

今宵の運命が導いた一瞬の交錯。
なるほど、狂ってみるのも一興というわけですか。

「残念ですが私は牧師です。そして人ではないかもしれない。
 ですがご安心ください。相手を選ぶだけの理性はいまだ持ち合わせています」

血に狂うのか、我が身の浅ましさに狂うのか。
月の夜、オロチの血が呼ぶ夜の風は、神の導の示すままに。

「そう、だから私が貴方に贈る言葉はこれだけです。
 どうかご無事にお帰りなさいますように。
 その道の先に……神のご加護があらんことを」

突如逆巻く突風。
竜巻の如く吹きすさぶ風。

巻き上げられた水滴の荒れ狂う一瞬の嵐の後、
そこには小さなロザリオがひとつ落ちているのみであったと言う。

(退場)

170 名前:シロー・アマダ ◆08MSwPc.vs :2010/06/24(木) 01:50:02
…え?
あ、あら、また妖怪化なんかの類の人?
人外と仲良くなる率が多いなあ、俺。

「…妙な物に憑かれていたりして」

まさかな。

「あー…牧師様だったか。ってことはプロテスタントか」

カトリックはいまだ女性牧師の存在を認めていない。
そういや一番女性の聖職者への登用に寛容なのは
日本のキリスト教会だったっけ。

「んー、しかしどうした物かね、コレ」

落ちていたロザリオを拾い泥を払うと鈍い銀色の輝きを放った。
偶々落としたのか貰って行けということなのか。

「…しょうがない。どっちにしたってこのままじゃ拙いよなあ」

ポケットの奥に十字架を押し込み、俺は再び帰路についたのだった。

171 名前:シロー・アマダ ◆08MSwPc.vs :2010/06/24(木) 01:50:29
>>170

【退場】

172 名前:一方通行(アクセラレータ) ◆Accel.skt. :2010/06/26(土) 21:21:50


 天気予報の的中率が落ちてから数ヶ月。
 通りには、傘を持ち歩く人の姿が急激に増えた気がする。

「……ま、そンなもンだよな」

 結局のところ、表の場所ではその程度の影響しか無い。
 実際は原因不明の損壊と、その破片、部品を巡っての暗闘が会った事は知られていない。
 一方通行もまた、そのうちの一人だ。

 そんな彼は今、閑散とした小さな喫茶店の一席に腰を落ち着けている。
 同居人は病院で定期健診中。その間の時間潰しを兼ねてここに居た。
 そういえば、と一方通行は思う。
 こうして満足に独りの時間を作ったのは久しぶりなような気がする。
 ほんの少し前までは、独りでいるしかなかった境遇だというのに。

 窓の外には、やけに大きな樹木が見える。雨宿りするならうってつけなくらいの枝の広さだ。
 元々あったのか、それとも他所から持ってきたのかは知らないが、元気よく根付いている。

 一方通行は、外からの狙撃を警戒して窓側から見える席には決して座らない。
 なのに今、窓側でお値段高めのアイスコーヒーをのんびり飲んでいられるのはその木のおかげだ。
 それは外部と喫茶店の間にあって完璧なまでの遮蔽物になっている。周辺には狙撃可能なポイントは無い。
 接近して撃つという手も無くは無いが、梅雨時とはいえ人通りの多い時間帯。
 白昼堂々と銃を取り出して撃つというのも無理がある。

(……襲撃警戒する高校生ってのもどォなンだろォな、しかし)

 自嘲気味に笑いながらストローをくわえる。
 値段相応だけあって、普段から飲んでる缶コーヒーとは格が違った。



173 名前:一方通行(アクセラレータ) ◆Accel.skt. :2010/06/26(土) 21:47:02

 雨足は強い。今日いっぱいは降り続くらしい、という予報が今朝にあったことを思い出す。
 どうやら当たりらしい。傘を差しても足元が濡れ始めているのか、小走りに通り過ぎる人が良く見える。
 運悪く傘でも忘れたのか、手近な軒下やあの大樹の根元で雨宿りをする相手まで居たようだ。

 閑散とした喫茶店にも、逃げ込むように人が少しずつ増え始めている。
 その全員を観察しながら、一方通行はカウンター近くにかけられている古めかしい柱時計を見た。
 予定の時間まではまだ遠い。それまではまだ孤高を気取っていられるわけだ。


 そういえば、と一方通行は思い返す。
 こうして緩やかな時間を味わうのも久しぶりだったと。
 何しろ今までが今までだ。ジェットコースターよりも速く目まぐるしく過激な時間を過ごしていたのだ。
 たとえ学園都市最強でも、人間である事は変わらない。
 つまり、普段の彼ではありえない事に、この静かな時間を心地良いと感じるのは。

「疲れてたンだろォなァ」

 ぼんやりと、思考をそのまま小さく口に出している。
 常人なら狂うか壊れるか病院のお世話になるか、といったような出来事ばかりだったのだ、仕方ない。
 ただ、それが少し疲れるだけで済む一方通行も精神的にはかなり強靭だろう。

 ……別に、同居人の破天荒な言動行動一挙一動に振り回されていたから、という訳ではない。
 たぶん。



174 名前:名無し客:2010/06/26(土) 22:17:57

   がや……がや……

           ざわ……ざわ……

175 名前:鴉木メイゼル ◆Sadistoogk :2010/06/26(土) 22:31:37
「もー! なんなの!?」

ランドセルを盾にして木の下に走りこんだ。
天然の傘の下に入り込んだ小学六年生鴉木メイゼルは、ランドセルを乱暴に下ろし、毛先まで
ぐっしょり濡れた――その髪の長さ故に、先端のほうが濡れていた――髪から水分を払う。

魔法が使えたなら熱源を出したいところだったが、あいにく、近くには喫茶店がある。

>>174
そうでなくとも、そこそこの人通りがある時点で、まず魔法消去の視線から逃れることはできないだろうと
はっきり分かっていた。

この世界は神なき地獄であると言われている。
この世界の住人は、観測するだけであらゆる魔法を破壊する。
だから、奇跡の使い手である彼女も、人前ではただの小学生に過ぎないのだった。

真っ赤なワンピースの裾を絞り、少女は雨を避けながら空を見上げた。
雨雲はしばらく、この辺りでゆっくりしていくようだ。
少女には迎えに来てくれるような大人はいない。

濡れて帰るか、人目が消える瞬間を狙って転移するしか無さそうだ。
薄桃色の唇から、溜息が漏れた。

そして視線を降ろした先には、喫茶店で談笑する人達の姿があった。
金を持たない少女からすれば、向こうとこちらにある大きな断絶を感じずにはいられない。
この世界の住人と異世界から落とされた罪人の立場が、どうしようもなく大きい。
それを、少々場違いながら、感じてしまった。

そこでふと、喫茶店の中で一際目立つ姿が目についた。
白髪の少年――勿論メイゼルよりは間違いなく年上だろうが、おそらくは未成年だろう。
少し変わった風貌に、少女の注意が引かれる。
魔法使いは、この世界の住人と違うところが多い。
姿形にそれがあらわれることは、基本的によくあることだった。

彼女に友好的な魔法使いなど、この世界はほとんど存在しない。
少女は警戒心をもって、その少年を観察した。

176 名前:鴉木メイゼル ◆Sadistoogk :2010/06/26(土) 22:45:08
喫茶店を見ながら思う。
少女はその手の店にそもそも入ったことがない。
店の名前なのだろう英語の表記に顔をしかめた。
彼女を含め、多くの魔法使いにとって英語は卑語として扱われている。
その店の名前がいかなる意味を示しているのか、それはこの世界の住人と少女の中では
激しく異なることだろう。

しかし、中で行われている食事に興味が湧かないといえば嘘になる。
アパートでの料理担当としては、おいしい料理への挑戦をしないわけにはいかない。
どんなに頑張って創った料理よりも、だいたい誰がつくってもそこまで変わらないとされる
カレーの方が何倍も評価される現状を、少女が穏やかに受け入れているわけではないのだった。

ただし、そのための努力と、料理の中にお菓子をいれるということが両立している時点で、
いかなる創意工夫も褒められたものには成り得無かったが。

そういえば、先の少年はナニカを飲んでいるようだが、食事まではしていないようだ。
正体不明――もしかしたら敵かもしれない、と考えはするものの、そもそも彼女の敵が
ああも人前で、この世界の一般人の前で、彼女たち魔法使いの呼ぶところの《悪鬼》の
魔法消去効果付きの視線にさらされた中で、平然としていられるだろうか。

それを考えると、あまり本心から敵のようには思えなかったのだろう。

今では、彼が何か食べないのだろうかと、そんなことを考えるに至っている。
それとも、その思考のシフトは少女の空腹具合と関係があるのだろうか。

177 名前:窓付き:2010/06/26(土) 22:53:47
ぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃ
ぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃ
ぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃ

とおりすぎる人には顔がない。
まるでわたしが見えてないみたい。
とおりすぎる人には目玉がない。
まるでまわりにいる人が見えてないみたい。

だからわたしもうんざりしてた。
顔がない人ばっかりだった。
楽しい楽しいゆめの中なのに
なんでこんなに顔が無い人ばっかり
なんだろうってふしぎだった。

>>176

どん。

「あう」

歩いているうちに女の子にぶつかった。
せなかのランドセルにぶつかった。
さしてたかさを落としちゃった。

178 名前:一方通行(アクセラレータ) ◆Accel.skt. :2010/06/26(土) 22:58:51
>>174

 騒がしくなってきた。がらんどうだった店内にはずいぶんと人が増えてきている。
 そろそろ、相席なども申し渡されそうな雰囲気だった。
 流石に見も知らぬ相手にサシでコーヒーを飲めるほど図太くは無い。

(そろそろ店を変えっかなァ……)

 と、カフェインで適度に冴えた頭で考えていると、


>>175

 視線を感じた。
 首を動かさず、視界の端だけで発信源を確認する。
 殺意は無い。薄い敵意はあるが、それは自分に向けられたものではない。
 どちらかといえば、周囲に対して無差別に発散しているような―――

 とはいえ、見も知らぬ相手にいきなり警戒されるというのは少々困った。
 自分の素性を知っているならともかく、そんな素振りは見えない。
 という事は、単に何か鬱屈しているのか。

「ま、この雨じゃァな」

 目の醒めるほど鮮やかな赤いワンピースも、雨水を吸って黒く重く色褪せている。
 折角のお洒落をしたらお天道様に台無しにされた、といったところだろうか。
 特に女性として一気にジョグレス進化を遂げる小学生末期の年頃なら苛立つのも無理はない。

 ちらり、と首を薄く動かして“あンま見てンなよ”と軽くけん制してから、アイスコーヒーの処理に取り掛かる。
 追加オーダーをするにしろ退店するにしろ、まずは目の前の黒い液体を味わってからだ。
 そういえば、検診終了まではあとどのくらいだったろうか―――


 と、視界の端で栗色の髪が見えた。
 保護者同伴で暢気に歩いてきているのは―――打ち止めと、黄泉川だった。
 どうやら無事終了したらしい。

「―――ンじゃ、行くか」

 と、腰を上げたところで。

「ただいまー!!」

 元気よく声を上げ、雨にも負けずレインコートを羽織った姿で打ち止めが窓ガラスに張り付いてきた。
 黄泉川が何か楽しげにそのあとを歩いてきている。
 そういえば、この店を薦められた理由は。
 たしか美味しいケーキが食べられるとかいうふれこみだったような気がする。

「……あァ。そォか。おごれってか」

 一方通行はため息をついて、座席に腰を据え直した。
 しばらくは喧騒の中で過ごせということらしい。


>>177

 と、何の気も無く窓の外を見て―――


 背筋が寒くなった。 

「―――なンだ?」

 一方通行はベクトル変換という能力の獲得に伴って知覚も拡大している。
 五感に頼らずとも物体の位置や運動を理解できるという独特の感覚だ。

 それが、全てにおいて目の前の少女が『異質』だと断じて警鐘を鳴らしていた。
 何の警報なのかまでは分からない。危険か、それとも未知か。
 それを判断するにはまだ、時間が必要だった。



179 名前:鴉木メイゼル ◆Sadistoogk :2010/06/26(土) 23:02:26
真っ赤なワンピースを折りたたみ、少女は上品にその場に腰を下ろそうとして
動きを止める。
足元の草が十分に濡れていたからだ。
雨がやんでいないこの状況で座り込むと、下着まで染みてしまいそうだ。

ランドセルを座布団替わりにするのも、気が引ける。
結局メイゼルは細い肩を震わせて、髪を一度撫でただけに留める。

ずっとこうしていても仕方が無いかと思いランドセルを背負いなおしたところで。

どすん、と。

>>177
背中に衝撃が走った。
何事かと先程までの警戒心を取り戻して振り返ると。

傘がふわりと踊り、地面に落ちるのが眼に入る。

年の近い女の子がぶつかってきたようだった。

不思議な顔をした子だった。
何を見ているのか分からないような表情をしていた。

「びっくりした。ちゃんと前見て歩きなさいよね」

驚かされたこともあって、少し乱暴な言い方をしながら、メイゼルは落ちた傘を拾ってやる。

180 名前:鴉木メイゼル ◆Sadistoogk :2010/06/26(土) 23:12:56
>>178
不意に、少年と目が合った。
それが確かであるかと言われればなんとも言えない様な距離ではあるが、こちらに見るべきものが
他にないということもある。恐らくそれは間違いではないだろう。

その目は、どこか牽制しているようだった。
ああ、とメイゼルはつまらなそうに目を細める。
彼は恐らく、魔法使いではない。この世界の住人だ。
いわゆる一つに不良と呼ばれる人種なのだろうと理解した。
その材料が目付きだけというのも如何なものかとは思われるが、異世界の住人を判断するのに
外見というものは非常に大きな要素なのだ。
この世界には、なんだか分からないが『!?』だけで会話をする種族がいるという偏った知識を、
彼女がどこから仕入れたのかを知るものはいない。


そして更に、彼に声をかける人間の姿が見えた。
窓に張り付いているようにしか見えなかったが、まあ、そういうこともあるのだろう。

急速に興味がなくなった――かと思ったが。
その少年に意識を向けることを、なぜかメイゼルはやめなかった。
それはきっと。

彼のまとうどこか普通と違うような空気に、感づいたというか。
それと似たような空気を知っているから、だろうか。
さすがに露骨に見過ぎていたことに、少し反省しながら。

181 名前:窓付き:2010/06/26(土) 23:13:35
>>178

同い年ぐらいの女の子がきっさてんのまどにはりついている
                   白いかみをしたお兄さんがまどのおくでなんだかあきれてる

    おにいちゃんのいないわたしには遠いせかいで
                   わたしにはよくわからなくて

         ちょびっとお兄さんとわたしの目と目があった。

>>179

  びくっ

おこられた。
         前を見て歩けって言われた
   ここにいる人はみんな
                    なんにも
               みえて
         なさそう
    なのに

「ごめ、ごめんなさい」

  あたふたしてかさをかえしてもらった。
      おこってるのかな。
   どれだけあやまったらゆるしてもらえるんだろう。

182 名前:鴉木メイゼル ◆Sadistoogk :2010/06/26(土) 23:24:42
>>181
びくりと、少女が震えた声を出す。
たどたどしく謝るその姿に――少女の飴色の瞳が妖しい悦びに輝く。

それは、獲物を見つけた狩人のそれだった。
相手が傘を受け取ったことを確認してから、メイゼルはしっかり相手を見据える。

「なによ、そんなに怯えちゃって。そんな顔して、あたしにどうして欲しいのかしら?
 見ず知らずの相手にそんな表情を晒すなんて、いやらしい子ね。いじめて欲しいなら、
 もっとちゃんとあたしを見て、そう言いなさい。 そしたら、痛くしない程度にしたげるわよ?」

少女の性癖が歪みきっていることが手に取るように分かる。
彼女はその年にして、既に筋金入りの加虐趣味者なのだった。

183 名前:一方通行(アクセラレータ) ◆Accel.skt. :2010/06/26(土) 23:26:05
「よっしゃー今日は一方通行のオゴリだからケーキワンホール頼んじゃうじゃんよー!!」
「ひゃっはー!! スイーツだー!!」
「いやだからテメエら他人の金だからっつってむちゃくちゃすンじゃねェよ!?」
「一方通行はお金持ちだから大丈夫だよ? ってミサカはミサカは安心させてみる」
「いやそォいう問題じゃねェだろォがよ!? ……ったく」

 結局、アイスコーヒーの追加と一緒にケーキまるまる1ホールまで頼むことになってしまった。

「しかも一番高ェの頼んでるしな……つーか社会人が未成年にたかるっつーのはどォよ」
「はっはっは。……いやぁ、この前壊した車両が思ったより高くついてて今月苦しいんじゃんよ……」
「自業自得だろォがそりゃ……」

 もはや呆れるしかない。
 一方通行がぐったりとソファに背を預けると、

「……ん? あの子達……雨宿りか?」
「……あン? けっこォ前から居たぞアイツらは」

 異質な少女の方は知らないが、少なくともランドセルをしょった紅いワンピースの少女ならそうだ。

「この雨の中で突っ立ってるなんて……」
「傘忘れたンだろ。……ま、」
「ちょっと見てくるじゃんよ。あ、席二人分くらい空けといてなー」
「ちょ、待てオイ!?」

 止める間もない。
 黄泉川は傘を担いで外に飛び出していった。



184 名前:黄泉川愛穂 ◆Accel.skt. :2010/06/26(土) 23:31:42
>>182-183

 いやー、ひどい雨だね。
 天気予報じゃ小ぶりで終わるって言ってたのに困ったものじゃんよ。

 で、えーとこんにちは。
 二人とも、こんな雨の中で突っ立っててどうしたじゃんよ?
 あんまり濡れたら風邪引いちゃうぞ?



185 名前:窓付き:2010/06/26(土) 23:32:32
>>182

「ご、ごめんなさい」

   きーんとおとがしてがやがや
 ぎーんとおとがしてきいきい
    ざーざーおとがしてびしゃびしゃ

「ごめんな、ごめんなさ、い」

   とてもこわくて女の子を見れない
      顔がふせて目もしっかりあけられない。
 おこったみずしらずの女の子はとってもこわかった



   「、いじめるの?」

     目がおっきくひらく
           初めて女の子の顔をしっかり見た。

186 名前:鴉木メイゼル ◆Sadistoogk :2010/06/26(土) 23:49:38
>>184-185
なにやら、あの少年と一緒にいた女性が、席を立ったかと思ったら。
あろうことかこちらまでやってきた。

さすがに少し見過ぎただろうか。
メイゼルは自分の失態と少し反省する。

「……こんにちわ。
 傘、この間壊しちゃったのを忘れてたのよ。
 服もこんなにしちゃったし。嫌よね、雨って」

電子の操作を得意とする円環大系魔法は、だから雨の存在を好まない。
人々の視線があまり周囲に向かない分、魔法消去の視線は少ないのだけれど。

と、そんなことを考えはしたものの、さすがに口にはしない。
この世界で魔法使いのことを知っている人間は限られているからだ。
そして、彼女の立場はその限られた人間の殆どと敵対している。

そう考えれば、先の少年が魔法使いでなかったことには、感謝すべきだろう。

「で? こんな雨の中わざわざ出てきて、どうしたっていうのかしら?」

さすがに大人が出てきては、警戒せざるを得ない。


>>185
謝る少女。
謝る少女。

そして、顔を上げる少女。

メイゼルの頬が上気する。
背筋がぞくぞくしてくるのを感じながら、とろけるような瞳で――それは最早、笑っているようにしか、
あるいは悶えているようにしか見えない――その小動物のような子をがっちりと見据える。

「いつまでも謝ったってなにも変わらないわよ? いじめて欲しいならちゃんと自分の口で言いなさい?」

――と。
そこで。
少女が目を見開いて、こちらを見上げた。

歴戦の少女が、少しだけとはいえ、気圧される。
何か、を感じた。
しかし、メイゼルの乗りかかった勢いを止めるには至らない。

「さあどうして欲しいわけ? そういえばあたしのトモダチに縛られるのが大好きな子がいたけれど、
 あなたもそのクチかしら? 丁度ここにリボンがあることだし、両手を縛って、可愛がってあげることも
 できるわよ?」

言うが早いか。メイゼルは長い髪をくくっていた赤いリボンをさっと解いてみせた。

187 名前:黄泉川愛穂 ◆Accel.skt. :2010/06/26(土) 23:56:10
>>186

(しょ、小学生なのに濃厚な趣味してるじゃんよー……。
 これはなんというか教育方針に関して全力で親御さんに問い詰めたいじゃん)


 ……えー、えーと。こほん。
 アテがないんだったら―――あっちの喫茶店。
 ウチらのトコ、ちょうどあと二人分空いてるじゃんよ。
 あんまり長いこと濡れたままじゃ風邪引くし、良かったら一緒にどうかな、って。
 少なくともここで雨ざらしよりはずっといいと思うじゃんよ。

 あ、そうそう。
 ツレの片方がやったら目つき悪いけど普段からああなだけで別に悪いヤツじゃないじゃんよ。



188 名前:窓付き:2010/06/27(日) 00:02:22
>>186

「あ、う、やだ」

顔のない人は通り過ぎて行く
        まるでなんにもみなかったかのように
目玉のない人は通り過ぎて行く
        まるでなんにもみえなかったように
なんにもない人は通り過ぎて行く
        まるでそこにはなにもなかったかのように

「だめ、だめ、や、やだ、むり」

      どっくんどっくん心がいたい

     あ
         コワイ から
  にげられ
           なくて
 なら             つめたい
                      ひかりで
    さされて

           キエテシマ

>>187

  顔のある人が話しかけてきてくれた。

「あ、う、えっぐ、ぐす」

心がいたかった。

189 名前:黄泉川愛穂 ◆Accel.skt. :2010/06/27(日) 00:06:50
>>188

 ……っとと。
 なんだか良く分からないけど泣いてるじゃんよ。
 大丈夫? どこか痛いのか? 何か辛いのか?
 えらいな、よく我慢してたな。

 うん、そうだな。ほらおいで。
 怖くない怖くない。



190 名前:鴉木メイゼル ◆Sadistoogk :2010/06/27(日) 00:13:15
>>187
きょとんと、少女の目が丸くなる。

この世界に来て数ヶ月。
初めは悪鬼の住まう地獄として教えられていた。
そして魔法が焼かれるのを見て、その通りだと理解していた

それが。
小学校に通ってしばらくして、そのイメージはある程度払拭されて着ていたが。

見ず知らずの相手に、気遣われるのは初めてだった。
『この世界は地獄じゃない』
メイゼルはそれを『先生』に何度も聞かされ、そして自分でもそうだと思っていたことが、
改めて信じられることだということを、思い知らされたような気がした。

「し、仕方ないわね。
 確かにこんな風に濡れてちゃ、カゼ引いちゃうし。
 世話になったげるわ。


 ……ありがと」


最後の一言は、そっぽ向いて、消え入るような声になってしまった。
内心を読まれているわけではないのだから、必要以上に喜んでいるように見えそうで、
誤魔化したかったのだ。

とはいえ、計算がないわけではない。
魔法使いを警戒するなら、人目のあるところに行ったほうがいい。
人の目の数だけ、魔法消去の効果はあがる。
あれだけの人数がいるところでは、ほとんどの魔法がその場で焼かれることだろう。

それは、同じく魔法使いであるメイゼルにとって、複雑な気分ではあったけれど。

191 名前:名無し客:2010/06/27(日) 00:19:30
「喫茶店では全裸が作法です」


と、張り紙が貼ってある。

192 名前:鴉木メイゼル ◆Sadistoogk :2010/06/27(日) 00:23:18
>>188
少女が泣き顔になっていくさまは、メイゼルにとってとても心が踊るシーンだった。
ドキドキする。ワクワクする。ぞくぞくする。
可愛らしい少女が、あどけない表情を崩して、弱みを晒すようにダラシない顔で泣きじゃくる。
その支配感が。
征服感が。

メイゼルの心を満たす。

それをご満悦で眺めていた少女だったが。
ふいに、相手の気配が変わるような何かを感じた。

滅多に無いが、やり込められていた相手が本気で反撃に転じようとしてきたときのそれだ。

主にその相手は魔法使いで、だからこそメイゼルもそんな相手には魔法でやりあえたから、
敵だったから、叩き潰して終わりでよかった。

けれど。

この子供相手にそんなことは流石にできない。

腕力でこの少女をやり込められるかどうかは、自信がない。
だからこそ、少女は止まらない。

そういう相手こそが、屈服させがいがあるのだから。


優位を捨てた狩人の眼は、それこそ、獲物を狙う獣のそれと違わない。
彼女に後退の二文字はないのだった。

しかし。

>>189
やってきた女性が少女とメイゼルの間に入ったことで、その小さな争いは終結を迎えてしまった。
普段ならその女性にも喰らいつくところだったが、さすがにそれはできない。

メイゼルは内心で舌打ちしながら、渋々少女をことさらに泣かせることを諦めた。

193 名前:黄泉川愛穂 ◆Accel.skt. :2010/06/27(日) 00:24:31
>>190

 ん。それじゃあ決まりじゃんよ。
 すぐ目の前だから大して時間はかからないけど……。
 ま、傘があるから大丈夫だな。子供二人くらいは余裕で入るし。

 あ。今日はあそこの白いののオゴリだからお金とかの心配はしなくていいじゃんよ。

【ひでえ!?】


>>191

 ……悪戯にしてはシュールじゃんよー。
 まあ、基本的に無許可の張り紙禁止だからな。
 ウチもアンチスキルとして見逃すワケにもいかないじゃんよ、と。
 撤去撤去ー。



194 名前:鴉木メイゼル ◆Sadistoogk :2010/06/27(日) 00:26:53
>>191
「……タチの悪い冗談ね。

 これだから錬金体系魔道士は変態だって言われるのよ」

少女は知り合いの全裸の剣士を思い出して深々と溜息を吐いた。
>>193
女性がひっペがさなかったら自分が剥がしていただろう。
これが知り合いの仕業でないことを、祈るばかりだ。


そもそも、喫茶店の中には服を着た人しかいない。

195 名前:窓付き:2010/06/27(日) 00:31:41
>>189

   ぐじぐじ、ぽろぽろ。
     ゆめの中なのに何で私はこんなによわいんだろう。

  いつもおなじ。
      どうやったってあの人たちには勝てない。
真っ赤な目をして追いかけてきて私をとじこめる。

「ご、ごめんなさい、ごめんなさい」

  顔のあるお姉さんは
  こころがずきずきするのを
  とめてくれた。

>>192

ちょっとのぞいてぎゅっとかくれる。
お姉さんの後ろにいるといじめてこない。
だからわさなくてもいい。

>>191

「えっと、……みせではぜん……がさ、さほうです?」

むずかしくてよめない。

196 名前:黄泉川愛穂 ◆Accel.skt. :2010/06/27(日) 00:36:18
>>195

 あっはっは、別に謝ることなんてないじゃんよー。
 ウチがいるかぎり子供に手出しなんてさせないさー。
 ……さて、と。それじゃあお前も一緒に来るかい?

(遠くで一方通行が引きつった顔をしているのが見えた)

 ……ま、何とかなるかね。
 とりあえず、中であったかいものでも飲もうかね。
 ほら、いらっしゃい。




197 名前:一方通行(アクセラレータ) ◆Accel.skt. :2010/06/27(日) 00:40:15
>>196

「何やってンだあの野郎は……」

 遠くの光景を見て、一方通行は頭を抱えた。
 どうやら予感は完全に的中したらしい。
 コッチに連れてくる気だ。

「黄泉川は優しい人だからね。寂しそうにしてる子をほっとけないんだよね。
……まあ、ミサカはお友達が増えそうな予感がしてワクワクだけど!!」
「子供は気楽でイイよなァ……」

 まあ、それでも一方通行としては危害が及ばない限りは不承不承だが受け入れるつもりだった。
 問題は異質な気配を纏った少女だが……黄泉川は何かその手の才能でもあるのだろうか。
 あっさりと手懐けて一緒に連れてきていたりする。

「……まさかアイツらの分も俺のオゴリじゃねェよなァ」

 歩くキャッシュカードじゃねェンだぞ、と毒づいて、アイスコーヒーを飲み干してもう一杯頼んだ。
 それを拒絶しない自分にも、少しイラついて。



198 名前:鴉木メイゼル ◆Sadistoogk :2010/06/27(日) 00:41:10
>>193
誰かにおごってもらうことは2回目だったけれど。

(明らかにオトナであるあなたじゃなくてあっちの人が払うのね……)

別にどうこう言うつもりはなかったが。
甲斐性のない人間がいることを少女は知っていたから。それも、割とたくさんだ。

とりあえず傘に入れてもらい、メイゼルは改めて女性を見上げた。
顔の高さにある、存在感のある胸に顔をひきつらせたのは一瞬のことだった。

「何人かいるみたいだけど、みんな知り合いなの?」

知らない顔ぶれの中に顔を出すのは少し気が進まなかった。
人見知りをするわけではないけれど。

最低限、彼女と知り合いであれば、この世界の住人だと確定するだろうし。
そうしたら、まだ安心出来るはずだった。

>>195
女性の影に隠れて安心している少女。

心の中では舌打ちしたけれど、それ以上特に何かをしようとはしない。
安全な場所で安心しているところを不意打ちするのもそれはそれで楽しいのだけれど、
そんなことを楽しむ空気はもう壊れてしまっていたから。

仕方がないが、そのことは完全に諦めたので。
性癖を考えなければ割と面倒見のいい彼女は、少女に向けて「行きましょう」と声を掛けた。

それまで自分がしてきたことは、一切悪いと思っていないため、省みてもいないが。

199 名前:一方通行(アクセラレータ) ◆Accel.skt. :2010/06/27(日) 00:48:33
>>198

「はーい、二名様追加じゃんよー!!」

 カフェインよりキツい声だった。
 黄泉川は少しくらい遠慮というか自重すべきだと思う。
 一方通行はそんなことを考えながら、ぐったりと窓の外を眺めている。

「こんにちはー! 初めましてだよね? 外寒かったでしょ、大丈夫だった?」

 隣では打ち止めが子供の特権である天真爛漫さ全開で話しかけている。
 こういう対人スキルは子供ならではのものだろう。

「……つーかヨミカワ、オマエ……あァもうイイわ。勝手にしろ。
どっちにしろ使いもしねェ金だしな」

 さっさと自分の頭の中にケリをつけて、一方通行はぞんざいに挨拶をした。

「……一方通行だ。一応は保護者とその子供って関係だぜ。後は面倒だから細かい事は訊くな」
「ちょっと無愛想すぎない? ってミサカはミサカはぐりぐり脇腹に肘を押し込んでみる」
「痛ェから止めろバカ」

 ……しかし、なんというか。
 これではちょっとした大家族のようだ、などと、一方通行は思った。
 家族。自分に欠けていたもの。
 拒絶したくなかった理由は―――そういう事なのかも知れない。



200 名前:窓付き:2010/06/27(日) 00:51:34
>>196-197

    目をごしごしして涙がうでにべたべた
    もうなかなくてもいいんだよね
    だれもいじめてこないんだよね

「ごめんなさ、い、ありがとう、お姉さん……」

    ちょっとだけこわい顔したお兄さん
    そんな目で見られるとちょっとヤダ
    またまたぎゅっとお姉さんの後ろ

>>198

「う、うん……でも」

    声をかけられびくっとした
    ちょっといじめられたらあとはずっとヤダ
    ずきずき心がいたんでずっとのこる

「あなた、こわ、い。いじめ、ないで」

    ゆうきがもっとあればいいのに
    だんだん小さくなる声出すと
    のどがいがいがした。



201 名前:一方通行(アクセラレータ) ◆Accel.skt. :2010/06/27(日) 01:01:06
>>200

 ふと、怯えたような視線に気づいた。
 ……硝子細工をイメージしたような少女だ。
 触れたらそれだけで壊れそうな類の危うさを感じる。

「……別に何もしやしねェよ。ンな怯えンな」

 つい、と視線を再び窓の外に逸らして、それだけ言い捨てた。

「そりゃ仏頂面してりゃ怖がられるじゃんよー。ほらほら、スマーイル」
「俺が笑ったらライオンが獲物を食い殺すみてェな顔になるンだが」

 顔の筋肉が引きつりかねない。
 そっちの方が怖いだろう。

「……だいじょうぶだよ。一方通行は優しい人だから」

 気づくと打ち止めがフォローに回っている。
 敢えて何も言わなかったが、初対面の人間に妙なイメージを装着するのは止めて欲しい。
 なにしろ自分は―――生粋の悪党なのだから。



202 名前:鴉木メイゼル ◆Sadistoogk :2010/06/27(日) 01:01:38
>>199
店の中に入ると、黄色い声が出迎えてくれた。

>「こんにちはー! 初めましてだよね? 外寒かったでしょ、大丈夫だった?」

元気いっぱいに話しかけてくるこのノリは、メイゼルにとってそこそこ馴染みのあるものだった。
小学校にいるときに気分を思い出す。
それが連想させるのは、平和な空気だった。

「はじめましてよ。普段なら傘を忘れるなんてないんだけど、うっかりしていたわ」

少女の存在と店の中の温かさで、少女の心が少し緩む。

その少女にじゃれつかれる白髪の少年――一方通行と名乗った……名乗った? 名前?――に、
改めてメイゼルは眼を向けた。

やっぱり、どこか魔法使いを連想させる。
刻印魔道士のような、この世界で生き疲れた異邦者の雰囲気。

とはいえ、その空気も元気な少女の前では形無しのようだったが。

「鴉木メイゼルよ。いっぽうつうこう……と呼べばいいのかしら? 今日はお世話になるわね」

メイゼルは小さく頭を下げる。

203 名前:鴉木メイゼル ◆Sadistoogk :2010/06/27(日) 01:11:02
>>200
>「あなた、こわ、い。いじめ、ないで」

これはもう、メイゼルにとっては『いじめてください』と言っているようなものだ。
解いたリボンが手の中で存在感を主張する。

うずうずする。
欲望を仕方無しに我慢して、メイゼルはそちらを見ないように口を開いた。
見ると多分、押え切れないだろうから。

「そうして欲しくなかったら、それらしい態度をしなさい。そんなはしたない声を出して、
 そんなにあたしにどうにかされちゃいたいみたいな顔をしないでよ。

 あなたの可愛い泣き顔を見てると、どうにかしちゃいたくなるのよね」

言い終わってから、どうしても我慢できずに、少女の方に眼を向けた。
勇気を振り絞っている様子が、見て取れる。
それが突き崩されて、どうしていいかわからなくなって、すがるようにして泣きながら屈服し、
そうすることが嬉しい、みたいになっていくところを想像して、つい顔が綻んでしまう。

メイゼルの飴色の瞳は、欲望に揺れていた。

204 名前:一方通行(アクセラレータ) ◆Accel.skt. :2010/06/27(日) 01:19:09
>>202

「……おォ。あとアクセラレータな」

 とりあえず、かけられた声には応じた。
 会話自体に慣れていない一方通行にとっては少しばかり悩ましい。
 が、まあそれは自分の仕事ではない。
 打ち止めと黄泉川が立派に場を回してくれるだろう。
 自分は置物でいい。

「メイゼルちゃんだね!
 ……えっと、ミサカの事は打ち止め(ラストオーダー)って呼んで。
 名前については、あ、そうだ。学園都市の外の人なの?」

 嬉々として話題を進めていく元気のよさは何処から来るのだろうか。
 学園都市の外の人間と見るや要点だけてきぱき教えては話に花を咲かせている。
 彼女たちにとって超能力者だらけのこの社会はどう映るのだろうか。
 夢の理想郷か、それとも謎の研究所か。あるいは邪悪な組織か。
 学園都市の表も裏も知っている一方通行からすれば、それはどれも正しいが。

「……ま、アレだ。ラッキーだったな。ヨミカワはやたら世話焼きだからよ。
 困ってる感じのガキ見ると放っておけないらしいぜ」
「おいおい何を言ってるんだ少年。大人なら子供たちを守るのが義務って奴じゃんよ」
「それ俺にメシ代たかってる大人の言う事じゃねェよな!?」
「こまけぇこたぁいいじゃんよ。ま、お前だって独りだったとしてもほっとかないじゃんよ?」
「……どォだか。知らねェよ」

 ―――実際、自分でもそう思ってしまうのが少し腹が立つ。
 甘過ぎる。優しいと評される事もあるが、意識が緩んでると感じる方が強い。
 今も視線をさりげなく巡らせて警戒は怠っていない。
 そういう事が必要になる環境に身を置いているからだ。
 それは今も変わらない。

 ……のに、どうしてこうなっているのか。
 一方通行には、いささか図りかねた。



205 名前:窓付き:2010/06/27(日) 01:22:28
>>201

かちゃん、ちゃりんちゃりーん
がや    がや     がや

つかれたように一人でいる  の無い人
                 顔
二人でからっぽの話をする  の無い人
                 顔
         そんなお店に  のある人二人いた

  かさをたたんでじゃまだからぱっとけして
    こわい顔したお兄さんの声がちょびっと優しかった

「あの、あの、」

    なんていえばいいのかわからない
       声でのどがつまりそう

>>203

「ひぐっ」

   こわい声なんか出さないで
      今からわたしをいじめようとしているみたい

「だめ、むり、なの。わたし、こんなの、だから」
「かわらない、だから、ごめんなさい」
「ごめんなさい」

     ちょっとした力を出せればいいのに
     力を出したらまた大きな力で
     いじめられるのがいやだから。

206 名前:一方通行(アクセラレータ) ◆Accel.skt. :2010/06/27(日) 01:29:49
>>205

「……あン?」

 ぱっ、と少女の持つ傘が消えた。
 超能力かと思ったが……微妙に違うような気がする。
 害意は感じない。
 ならそれでいい、そういうものだとして一方通行は保留した。

「怖ェなら無理すンな。一応、自覚はあるンでな」
「んもーまた自虐するー、ってミサカはミサカはほっぺつねってみるうにょーん」
「だからヤメロっつーの。暴れるとソイツにも迷惑だろォがよ」


>>203

「……俺が言うのもアレだが、同意のねェSMプレイは犯罪だぜ?
 イジるのもイジメるのも勝手だがよ、程々にしとけ。年少者の教育に悪ィ」
「え、ミサカの事?」
「他に誰がいるンだよ十歳児」

 特にソイツは得体が知れないしな、という言葉は切っておいた。
 言ったところで正体が分かるわけでもない。迂闊に刺激もしたくなかった。
 何より……。害を及ぼすというよりも。

(うっかり消えそォだしな、窓付きの方は)

 その方面で不安があった。



207 名前:鴉木メイゼル ◆Sadistoogk :2010/06/27(日) 01:38:03
>>204
アクセラレータ。
ラストオーダー。

メイゼルの整った眉の間に、亀裂の如き皺が刻まれた。
英語は多くの魔法使いにとって、卑語である。
メイゼルも、その例にもれない。

即座に思考を巡らせたくなくて、とりあえず話に耳を傾ける。

学園都市、という言葉が出てきた。
なんのことかは分からないけど、言い方からするとどこか大きな都市の出身、ということが
読み取れる内容だった。

そもそも、この世界に来てまだ一年も経っていないメイゼルに、都市単位の話はそれほど
大きな意味を持たない。彼女の知る世界は、小学校と、住んでいるアパート。そして
この世界の魔法使いが所属する三つの勢力だけだった。

魔法使いの常識は、この世界の住人の常識とは一線を画する、超縦社会のものだから。
力ある個人の存在に関しては、それほど拒絶はなかった。

そうしていると、いっぽうつうこう(呼び名はこちらで固定することにした)が声をかけてきた。

オトナなら子どもを守る。
その内容は、別に悪いことではないのだろうけど。
メイゼルは思わず、口を挟む。

「子どもだから、っていうのを理由にされるのは、あまり面白く無いわね。
 助けてもらってるのは確かなんだけど。
 せんせもよく、子どもが助からない世界は間違ってるって言うわね。
 そんなに子どもがスキなのかしら」

守られるだけの立場に嫌気が差して一度は居場所を飛び出した少女は、不満そうに唇を
尖らせた。

208 名前:窓付き:2010/06/27(日) 01:45:48
>>206

  女の子に ほっぺ を引っぱられる
  お兄さん
    ちょっとおもしろくて
           なかよさそうでうらやましくて

       おもわずゆっくりお兄さんのそばによって

「うにょーん?」

もう一方のほっぺをひっぱった。

209 名前:鴉木メイゼル ◆Sadistoogk :2010/06/27(日) 01:52:19
>>205
>「だめ、むり、なの。わたし、こんなの、だから」
>「かわらない、だから、ごめんなさい」
>「ごめんなさい」


ああもう、いっそ欲望に負けてしまってもいいんじゃないかしら。
メイゼルは目の前のケーキよりも甘くとろけそうな気分になる。

けれど。

>>206
横から妙な口出しがされた。

ある魔法世界の自然法則からSだということ認められた少女は、それでも自分の性癖を
妙に感じたことはない。

しかし。
一向に反抗精神すら見えない少女に、さすがにメイゼルも少し焦れてきた。
少しでも強気になってきたら、それこそ潰す楽しみもあっただろうが。

その気も削がれてしまい、メイゼルは小さくため息を吐いた。

「なによ、人をヘンタイみたいに。あたしは人より少しだけ、人が困ってるところや痛がってるところを
 見るのがスキなだけよ」

言いながら、メイゼルは目の前のケーキをふたり分切り分け、うつむく少女の前に差し出した。

210 名前:一方通行(アクセラレータ) ◆Accel.skt. :2010/06/27(日) 02:01:27
>>207

「ま、私もただ子供だからってだけで誰彼構わずってワケじゃないじゃんよ。
 自分で立派に歩いていける子はそれでいいしな、一方通行?」
「俺に振ンのかよ……ま、ガキだからっつって一から十までされるのは逆にウザいしな。
……俺の場合は一も無ェ状態だったが」

 最後の呟きは過去から来たように小さく消えていった。
 それを拾うように、黄泉川が続けた。

「……ウチは警備員みたいな仕事をしてるんだけどね。荒事も色々こなしてたんよ。
その過程で色々見てきたんだけど……犠牲にされてるのはいつも子供たちばっかりだった」

 一方通行は黄泉川の見た闇を知らない。だが、自分と大同小異である事は推測出来る。
 彼女は子供に決して銃を向けない。向けさせない事を己に課している。

「子供っていうのは、ウチらの先に行けるじゃんよ。ウチらには想像できない未来を見たり、今のウチらに出来ない事をしたり。
今解決できない問題も、今いる子供たちがこの先できっと解決できるかも知れない。超能力もその一つじゃんよ。
……そんな素敵な子達を、ウチらみたいな大人が、ウチらの勝手な都合とか利益とかで苦しめるのは間違ってる。
その先生の言う事は間違ってないと思うじゃんよ。理屈じゃないんよ。メイゼルちゃんみたいないい子たちを、そんな大人の
汚い所から守ってやりたいっていうのは」
「……」

 ふと、一方通行はかつて垣根提督の一件を思い出した。
 あの時も、黄泉川は一方通行が手を汚す事を嫌って止めに入った。
 自らが傷つく事も厭わずに。

「だから、うん。私は子供が大好きじゃんよ。好きなものを守りたい、っていうのは当然じゃんよ?
……ま、確かに過保護すぎるのは良くない、なんていうのは同意だけど。
我慢して見守ったり、叱ったりのもまた大人の甲斐性だし?」 

 その先生は心配性過ぎるのかもなー、と、けらけら黄泉川は笑っている。
 闇を覗き見てなお、日のあたる場所に居られる強さ。
 一方通行は、少しだけ羨ましかった。


>>208

 シリアスな気分が壊れた。

「……初対面で顔引っ張られるとか斬新な出会いだなオイ」

 力なく払いのけようとしても次から次へと弄られる。
 ―――俺はこンなキャラだったか?
 そんな謎のワードが浮かんだが、変に怒って怯えられても困る。

「そろそろ痛ェから勘弁しろ。打ち止めも後輩に変な事教えるなっつーの」
「教えてないよー。自力でラーニングしたんだよねってミサカはミサカは向上心の発露を歓迎してみる!」
「だから痛ェよ皮が伸びるから止めろっつーの!」

 やはり年下には敵わない。
 いつか自分で口にした言葉が脳裏をよぎる。
 その通りだった。



211 名前:窓付き:2010/06/27(日) 02:13:50
>>209

  人をこまらせたり、きずつけたりしたら、ダメ。
    きずついた人、わすれないの
      きずつけられた、おもいで

「それ、いじめっこの、やることだよ」
「や、めてあげたほうが、いいと、その、おもう、け、ど

         どんどん声が小さくなって
            でもおおきなこえをだすことができなくて
               でもせいいっぱいダメなことはダメだと言いたくて
                  でもわたしにはゆうきがなくて
                     でもわたしにけーきをだしてくれて

「あ、ありがと」

     おこられないか、びくびくしながら
          フォークをぷるぷるとった

>>210

 くす
 くすくす
 くすくすくすくす

      お兄さんはおもしろかった
    こわいかおしてて
   でも女の子にはよわくて

 「ごめんなさーい」

ちょっとわらってしまって
うでをぎゅっとだきしめちゃって

212 名前:鴉木メイゼル ◆Sadistoogk :2010/06/27(日) 02:15:37
>>210

>だから、うん。私は子供が大好きじゃんよ。好きなものを守りたい、っていうのは当然じゃんよ?

「そう。それなら納得したげられるわ。誰でもいい、じゃ、納得できない。そんなのに守られても、
 ミジメなだけだも。スキだから、大事だから、そういう理由で守りたいっていうのは、分かるもの。
 そういうものを守ろうとするときって、強くなれるもの。守ってるだけじゃなくて、守られてるのよね。

 それに。
 スキな相手は、自分だけしか傷付けられないようにしたいもの」

先生、武原仁が間違っていないと言われることは、やはり嬉しい。
自分以外にも理解者が居ると思うと、少し面白くなくもあったけれど。

>我慢して見守ったり、叱ったりのもまた大人の甲斐性だし?

「それじゃあせんせは、オトナ失格だわ」

少女は思い出して、幸せそうに笑う。

「せんせはあたしが叱って欲しい時に限って喜ばせちゃう、ダメな人だもの」

しょんぼりした犬のような仁の姿が、とても愛しく、脳裏をよぎる。

213 名前:鴉木メイゼル ◆Sadistoogk :2010/06/27(日) 02:26:26
>>211

>人をこまらせたり、きずつけたりしたら、ダメ。

「あら、知らないのかしら。困ったり傷付いたりしてる人って、とてもカワイイのよ?」

魔法社会では、個人が社会に勝る。
故に、高位な魔道士ほど、性格を正されることがない。
だからこそ強い魔法使いほど、性格が歪んでいることが多いのだが。

彼女の場合は、それとはまた少し違う理由で、しかしそれだけに根強く。
芯まで染み込んでいるのだから、人から少し言われたくらいで、動じることは全く無い。

「ああ、もう。危なっかしいわね」

少女を見かねて、メイゼルはそっと少女の震える手にそっと手を添える。

「食べやすい大きさに切るのよ? なんだったらお箸使う? お箸使える?」

少し口やかましいく、メイゼルは少女に問う。
これには、恐らく少女が最近割と上手に箸が使えるようになってきたことが関係なくもないだろうと、
知る人ならば知るところだろう。

214 名前:一方通行(アクセラレータ) ◆Accel.skt. :2010/06/27(日) 02:33:50
>>211

「あ、ずるーい。ミサカもやるー!!」
「コーヒーが飲めねェんだが……」

 両腕を拘束される様はロズウェル事件のアレを連想する。
 単に背丈が逆というだけだが。
 しかし、なんというか。最初の異質な印象はすっかり薄れている。
 こうしている限りでは、年相応の大人しめな少女だった。

「……つか、なンだ。ちゃァンと笑えるじゃねェかよ?」
「あれ? もしかして今ちょっと笑ってた? ちょっと優しい系の顔してた?」
「わざわざ聞くなテメエは!!」
「はっはっは。一方通行の照れ屋さんはなかなか直らないじゃんよー」
「煽ンじゃねェよヨミカワ!!」

 気がつけば自分も巻き込まれている。
 距離を置いたと思ったらいつの間にか引き込まれていた。
 それを悪くないと思える自分を意識する。
 今は大して苛立たなかった。


>>212

「やー、メイゼルちゃんと付き合う子は大変そうじゃんね……。
絶対に尻に敷くタイプだからなー。その先生も苦労してそうじゃん」

 はっはっは、と笑いながらケーキを追加注文する。
 太るぞと言いたかったがライオットシールドで殴られたくはないので止めておく。

「ははは。まあ、好きな子を甘やかしたくなるのも大人の性だからなぁ。
メイゼルちゃんも分かってて振り回してるじゃんよ? その辺」

 そこまで考えている小学生は居るのだろうか。
 と考えて、一方通行は自分の両側に居る少女たちを見た。
 ……いや、今は普通という定義を忘れるべきだろう。
 そう判断した。



215 名前:窓付き:2010/06/27(日) 02:43:18
>>213

「でも、ダメ。ダメ、なの。心、いたいの、ダメなの」

  りゆうだとかよく分からないけど
  お母さんやお父さんや先生から
  習ったからというわけではないけ
  れどでもダメなものはダメなの。
  心がばらばらになりそうでいやな
  思い出だけがどんどんふえていっ
  てどんどんどんどんおしつぶ、おし

「おはしぐらい、だいじょうぶ。できないとおこられる、から」
「でも、フォークも、使え。るよ。だいじょう、ぶ」


  ちょびっと
       フォークで取ったケーキは
    甘くておいしかった、

>>214

「んんー、ふ、ふ」

ぎゅっとつかんだうではらんぼうな
   言葉にはにあわないほどやさしくってつよくって
       だからほほをおしつけたりして、
          なんだかにおいまでおぼえられそうで

「ん、ふふ、くすっ」

          よりいっそうぎゅってして
       顔があるからあんしんできて
   いじめてこないからいい人で
思わずちょっとねこみたいにすりすりしちゃって

216 名前:鴉木メイゼル ◆Sadistoogk :2010/06/27(日) 02:46:56
>>214

「だって、せんせは苦労することの天才だもの。放っておいても自分から首を突っ込んで
 いくんだから。痛い思いをするって、わかってるのに。
 だったら、あたしのことで苦労して欲しいじゃない」

まあ。
ここまでの流れを見る限り、一方通行という少年にも似たような空気を感じるが。
いちゃいちゃしているところにそれを言うと、構ってもらえなくて寂しがっているかのように
見えそうだったからケーキと一緒に飲み込んだ。

甘さが口の中に広がる。お菓子の甘さとは又違う、普通の食事では味わうことのない、
遊びのような甘さが、舌に幸せを運ぶ。イチゴの甘い汁は神様の血だというが、まさに
然りだ。
少しそれに浸ってから、メイゼルは続ける。

「せんせは好きな子に痛くされるのがスキなのよ。でも、絶対にそれを認めないの。
 だから、カワイイのよ。
 ちゃんと尻に敷いてもらえないと、居心地が悪いんだわ。だから、犬みたいなのよね。

 だったらちゃんとあたしだけを見てくれればいいのに、あっちにもこっちにもいやらしい目を
 向けるんだから。あたしがいないと生きていけないって、言ってたくせに」

217 名前:鴉木メイゼル ◆Sadistoogk :2010/06/27(日) 02:56:03
>>215
「痛いのがダメなら、痛くされないようにあたしを屈服させなさい。
 弱いから守って、ってだけで守ってくれるような人はいないのよ」

自分で身を守れなければ死んでしまう立場だから。
もともとは、使い捨てにされるはずのただの罪人だから。
自分より先に、自分よりずっと大事な相手が死んでしまうから。

少女の言葉に、力が入った。

魔法使いなら、魔法使いらしくありなさい――そう言いかけてしまうくらい、感情的に
なっていた。

そうではない。
相手は『魔法使いではない、力のない少女』なのだ。
なら、この少女は。

それでも。

「欲しいものは手を伸ばさないと、自分の力で手に入れないと、誰かにとられちゃうんだから」

そう言って。
メイゼルは少女のケーキを一部切り取って、自分の口に運ぶ。
ケーキは嗜好品だ。今のメイゼルの生活では、滅多に口に入るものではない。
その甘さに浸りながら、メイゼルは「ね?」と得意気に言ってみせた。

218 名前:一方通行(アクセラレータ) ◆Accel.skt. :2010/06/27(日) 02:58:44
>>215

「……つーかオマエ、早くケーキ食わねェとヨミカワとメイゼルに全部食われるぞ」
「うわやばっ!? 確保ー!!」

 ようやく片腕が解放されたのでアイスコーヒーに手を付ける事が出来た。
 それにしても、ともう片方の少女を見た。
 一方通行には彼女がどんな境遇を過ごしていたのかを推し量る術はない。
 人懐こい猫がすりよってくるような仕草は―――しかし、却って何か寂しさを感じた。

 思い返すのは、誰からも優しくされる事が無かった、かつての『彼女』であり。
 そこから推測出来る事もまた……。

(同情は、出来ねェけどな)

 あまり知られていないが、学園都市には親から捨てられた子供たちがそれなりに存在する。
 置き去り(チャイルドエラー)と呼ばれるその子供たちは、自然と厳しい環境へ置かれる。
 学園都市の運営側も、その当たりの福祉や対策については手が届かないのが現状だ。
 結果として彼らが送られるのは―――『暗部』に存在する研究所や組織となる事が多い。
 そこでは人が人として扱われない。
 それが意味するところは、想像するまでも無かった。

「……ほほー。随分と懐かれてるじゃん。意外な才能開花か?」
「ンな才能ねェよ。たまたまだ、たまたま」
「お前は十分、人に優しく出来るんだからさ。もうちょい頑張ってみな」
「ケーキほおばりながら言われてもな……つか、ソイツは俺のキャラじゃねェっつの」

 ため息をついて、コーヒーを再び飲み干して次を頼んだ。
 何杯目か忘れた。

「……で、オマエも。ケーキ取らないと全部コイツらに捕食されちまうぞ」

 ぐりぐりと頭を撫でてやってから、窓の外に目をやる。
 天気予報に反して、雨は小降りになってきていた。



219 名前:一方通行(アクセラレータ) ◆Accel.skt. :2010/06/27(日) 03:05:42
>>217

「つっても、すぐに強くなれる奴ってのも限られるけどな。無理強いはするモンじゃねェよ。
何にしろ、強くなるにゃ相応の時間や代償がかかるモンだ。もう少しくらい待ってやれ」

 かつて絶対無敵を目指した学園都市最強はそういって、ケーキには手をつけないままコーヒーを煽った。
 強さ。物理の法則を支配する力ですら足りないほどの強さ。
 かつて自分を倒した強さ。
 一方通行にはまだ、手の届かない場所にある強さ。

「特に、心の強さは時間がかかるからよ」

 それを思い出しながら、軽く口を挟んだ。

220 名前:窓付き:2010/06/27(日) 03:20:44
>>217

「力を使ったら、いたいの。わたしも、きずつけられた人も」

どす、どす、ドス、ドス、ドス、ドス、ドス、ドス

「何だって思い通りにできるのは、ゆめのなかだけ」

どす、ぎゃー、どす、ぎゃー、どす、ぎゃー、どす、ぎゃー、どす、ぎゃー、
どす、ぎゃー、どす、ぎゃー、どす、ぎゃー、どす、ぎゃー、どす、ぎゃー、

「ゆめの中だから、ゆめの中だから、ゆめの中だから」

どす、ぎゃー、どす、ぎゃー、どす、ぎゃー、どす、ぎゃー、どす、ぎゃー
どす、ぎゃー、どす、ぎゃー、どす、ぎゃー、どす、ぎゃー、どす、ぎゃー
どす、ぎゃー、どす、ぎゃー、どす、ぎゃー、どす、ぎゃー、どす、ぎゃー

「でもゆめを見てても心がいたくなるの、きずつけるといたくなるの」

なんだかいやなこえばっかりがあたまにのこって
  とってもいやなきぶんがして
     なにもかもがまっかになって
         じぶんがまっかになって

 わすれたくて、ちょっと取られたケーキを食べた。

>>218

        わたしがもらったケーキはわたしのものだから
   ちょっといそいでくちいっぱい
       あまさひろがってしあわせになる。
    とてもおいしいケーキだな

「ふふん、ふふふ」

     お兄さんをもっとちかくによせたくて
       もっともっとあまえたくって
   だからちょっといたずらしたい
         しっぽや耳がうっすら見える
    まねきねこはふくをよぶんだって

にゃーにゃーにゃー

     三かいないたらちょっとはなれてた
おにいさんのうでは
            わたしのうでのなかにおさまってた

221 名前:鴉木メイゼル ◆Sadistoogk :2010/06/27(日) 03:22:54
>>219
「それなら、今ここであたしからどうやって身を守るのよ。
 それとも、あとで強くなるから今は仕方ないって諦めるの?

 時間がかかった後で強くなったって、仕方ないじゃない。
 その時にはもう、大事な人がいなくなっているかもしれないのに。
 大切なのは、今持っているものでどう戦うかってことよ」

生き死にの戦いどころか、必ず死ぬとされている戦いに挑んでいる少女の言葉は、だからこそ
抜き身で鋭い。
ぶっちぎりで史上最年少、最も幼くして《地獄》に堕とされた少女は、自分の世界の全てから
死を望まれた少女は、それでも卑屈にならず、胸を張って戦う。
だからこそ、厳しかった。他人にも、自分にそうしているように。
気高く。
しかし、だからこそその域まで付いて来られない人の事を、許せない。
それもまた、魔法使いらしいといえば、それまでなのだろうが。

「あたしはただ、弱いからやめて下さいごめんなさいだけでなんとかなると思ってるのが、
 納得行かないのよ」

それは。
もしかしたら、そんなことではどう転んでも解決しない問題を抱えている自身と、そうでない少女の
差に、苛立っているだけなのかもしれないけれど。

222 名前:鴉木メイゼル ◆Sadistoogk :2010/06/27(日) 03:35:18
>>220
彼女は魔法使いではない。魔法を使わない魔法使いは、何者でもない。
けれど。彼女は魔法使いではない。
そういうこと、なのかもしれない。

釈然としないままに、メイゼルは納得するしかなかった。
この世界は地獄じゃなくて。平和なところは平和なのかもしれない。
傷付くことも傷付けることも怖いと、言っていられる内が花だ。

なら。無力な彼女が、それでいられるように。
しなければならない。
魔法使いの中には、この世界の人間を全て排除してしまおうと考えることや、この世界の住人同士を
殺し合わせて滅ぼしてしまおうという動きもある。前者は過去形で、後者は現在進行形だ。

それらから守る対象が、また一つ増えたのだろう。
知り合った数だけ、守る相手が増えるなら。
その分だけ、力をもらえる。
負けられないと思うから。

メイゼルは真っ赤なイチゴを、先程自分が切り取った少女のケーキの上に乗せた。

「痛いのが嫌なら、痛くされても構わない相手を探すことね。
 痛くするのが嫌なら、痛くしたくなるような相手を探すといいわ。

 人はどうしようもない絶望の中でも、人をスキにだってなっちゃうんだもの。
 きっと、その人の事がスキで仕方なくなったときには、とても強くなれるものだから」

223 名前:一方通行(アクセラレータ) ◆Accel.skt. :2010/06/27(日) 03:47:19
>>220

「……あン?」

 ふと、妙な違和感を覚えた。
 視線を向けると、少女がネコミミモードだった。

 何が起こった。

「うおおおおおおおおおお!? 気がついたら謎の少女が変身していたっ!?
これはもしやミサカに新たな強敵と書いて友と呼ぶライバル系魔法少女の登場!?」
「とりあえず落ち着けオマエ。俺も驚いてるのに却って冷静になるじゃねェか。
……にしても、なンだ。ソイツは一体、どォいうモンだ?」

 超能力の類では無さそうだが……一方通行にも上手く理解が出来ない。
 まるでこの世の理からズレた仕組みで存在しているような感じだろうか。
 とすると、この少女に異質さを感じたのは―――


>>221

「ま、否応無く放り込まれたらそォするしかねェわな。
……だが、全員が全員、ンなイカれた境遇に放り込まれてるワケじゃねェ。
この世全てがそォだったら、俺は何年も前にこの世を吹き飛ばしてるぜ」
「……一方通行アクセラレータ
「ヨミカワは少し黙ってな。……ま、テメェの言いたい事は分かるけどな。その状況に放り込まれれば。
例え何が足りなくとも資格が無かろうと、他に出来る誰かが居ないなら、自分でやるっきゃねェってよ。
……ただ、コイツが今そォだとは限らない、っつーこった。過去の事か、この先の事かまでは知らンけどな」

 十歳に満たない歳で絶望と人間の業を根こそぎ閲覧してきた彼は言う。

「だからこそ、無理に引っ張り出すなッつー事だが……ま、そンだけだ。
言葉だけじゃ人は変われねェよ。必ずきっかけが必要だ。
自分で見つけるか、誰かがくれてやるか。ま、どっちにしろそいつがありゃ変われる」

 アイスコーヒーの入ったグラスを空にした。
 ため息をつく。

「ソイツを与えてやれるなら、ま、反論の余地はねェが……。
そォでないなら、まずは、他人の弱さを責めるのは止めろ。
強くなる機会すら与えられずに死んでく奴の方が圧倒的に多いンだ」

 追加注文は無かった。



224 名前:窓付き:2010/06/27(日) 03:51:55
>>222

ピアノの音がきこえる
       ただたんじゅんなくりかえしだけど
   心によくひびくかなしい音色
          三つの音がへんじのかわり

「でもね、でもね、きずつけられたくない人をむりにきずつけちゃうひともいるの」
「おもしろいからってきずつけられて、それでなみだを流すの」

  店の明かりが少しくらくなって
      かなしいピアノの音色がずっとひびいて
   顔の無い人たちは何にも知らないといった風に
           むかんしんで音だけなくして話を続けて

  コップの水からふしぎないきものひょっこりでてくる
     まんまる頭に大きな一つの目
        なみだを流しながら一本の足で立っている

「火星さん」
「名前は教えてもらってないけど、そうよんでるの」

   ふしぎなことが店の中でおこっても
      これは顔のある人たちのないしょのお話
    だれも気づいたりなんかしないよ。

「きずはなくならないの。なみだは止まらないの」
「かなしみだけがずっとふりつもってなみだを流し続けるの」

  まっかなイチゴを食べながら
        火星さんをじっとみつめておだやかなきもち

>>223

「これ?そのね、エフェクトだよ」

   ちっちゃな火星さんのよこで
     ねこみみしっぽをひっこめて
       お兄さんのうでにほおずり

「ゆめをみるとね、ふしぎな力が使えるの」
「いろいろ出せるよ。こんなのどうかな」

        てをにぎって
            ひらいて
              たてぶえがでてきた

225 名前:鴉木メイゼル ◆Sadistoogk :2010/06/27(日) 04:09:23
>>223
「今がその場じゃなきゃいつがその場なのよ。
 きっかけなんて今ここにあるじゃない。
 あたしにいじめられたくなかったら、逆らうことは出来るでしょう。

 いじめられるのも嫌逆らうのも嫌、じゃあいつまでもは通らないわ」

魔法使いは、その意味では単純だ。自分より強い相手と戦えば死ぬ。それを助けてくれる相手は
いない。だから、少女はそれを潔く受け入れる程度に魔法使いである、というだけだ。

「急になんか強くなれないって、わかってるわよ。でも、強くなろうとしなきゃ、強くなんか
 なれるわけがないじゃない。

 死ぬときはみんな死ぬわよ。それは明日かもしれないし、ずっと先かもしれない。
 でも、それに逆らおうともしないでただ死んでいくことだけは、絶対にイヤ。
 そういう人を見るのもイヤ。
 同じく死ぬなら、戦って死んだほうがマシだって、そう言いたいのよ。


 別に、生き死にの話をしているわけじゃないけど。
 否応なく放り込まれたわよさあどうするの、って言ってるの。
 戦うの? 戦わないの? って。

 この世を吹き飛ばすなんて強いことを言っているけど、あなたがそれをしようとしてもしも出来るなら、
 あたしはそれを止めようとするわ。もし止められなかったとしてもね。
 だって、それをされたらあたしの大好きな人も死んじゃうもの。

 それが嫌なら、なんとかするしかないの。


 ――って、まあ、こんなことまでその子に言ったわけじゃないんだけど」

少女は元の話から大きくなりすぎた話題に、一度距離をおいて一呼吸入れる。
少なくとも、世界規模の話をしてはいなかったはずだから。

「言い過ぎたつもりはないけど、少し興奮したわね」

勢いが付き過ぎたことに気づき、ごまかすように自分のケーキに手を伸ばす。

226 名前:一方通行(アクセラレータ) ◆Accel.skt. :2010/06/27(日) 04:12:26
>>224

「……一方通行」
「……『原石』ってヤツか。実際に見るのは初めてだな。驚いたぜ」

 それが厳密な意味で自分たちの定義する超能力かどうかは分からない。
 ただ、目の前で起きる異質な現象は、超能力として定義するには十分すぎる。

「じゃあ、えーと。ナカーマ?」
「変なアクセントつけンな。……ま、なンだ。学園都市は超能力開発研究をやっててな。
学生の半分以上は超能力者なンだよ。コイツは発電系。アレだ、電気ウナギとかと同じで」
「静電気スペシャル!」
「痛ェ!? 地味だけど痛ェだろバカ!!」
「ミサカ、ウナギなんかじゃないもん!! ってミサカはミサカは全ミサカを代表して抗議してみる!!」

「しかし、夢を見る……な。『自分だけの現実』をそう捉えるヤツも珍しいか」
「睡眠中にだけ能力を行使できる能力者、っているんだっけ?」
「昏睡状態で能力だけが暴走する事もあるが……制御は出来てるみてェだな」

 耳と尻尾の代わりに現れた縦笛を見つめる。
 一方通行や打ち止めには思い出と縁のない物品だが、知識はある。

「……そういえば縦笛とかって使った事無いよね」
「俺もだな。……あー、吹けンのかそれ」



227 名前:鴉木メイゼル ◆Sadistoogk :2010/06/27(日) 04:19:57
>>224
>「おもしろいからってきずつけられて、それでなみだを流すの」

さすがに、少しバツが悪くなる。

『そういうもの』を見せつけられてしまっては、『それは傷付ける側がヘタなのよ』とは言えなかった。
『身体の痛みで傷付けると卑屈になるから、心を折らないと』とは、言い出しづらい。

「でも、泣いてるだけでなにかが変わったことなんて、無かったわ」

メイゼルはハンカチでそっと、その大きな目から溢れる涙を拭う。
拭っても拭っても、涙は止まらない。

「悲しいだけじゃあ辛いから、楽しいこと、嬉しいことを探して、歩くのよ。
 欲しい物は自分で手に入れないといけないのだから」

同じ事を口にして。
今度はケーキには手を伸ばさない。

けれど。

「でもそれは、一人でやらなくてもいいのだから」

彼女はその火星さんと呼ばれたものの頭をなでるように、それに人差し指を乗せた。

228 名前:一方通行(アクセラレータ) ◆Accel.skt. :2010/06/27(日) 04:21:23
>>225

「ま、人間、いつ運命の選択を迫られるか分からねェからな。そォ考えるのも間違っちゃいねェ。
……が、ソイツを極力避けるために社会、なんつー面倒臭いシロモノは発達してきたんでな。
正面切って戦うなり強くなるなり以外の手も、多少はあるってこった。
別にオマエの言う事を否定してるわけじゃねェさ」
「……まったく。お前はもうちょっと手心加えた言い方を覚えるべきじゃんよー。
何時ケンカになるか冷や冷やしたじゃん」
「うるせェな、俺にンな機微期待すンなっつの。……ま、俺も少し抑えとくべきだったが」

 そういってグラスに手をかけて、空だったことに気づいて舌打ちする。

「あとアレだ。世界滅ぼす気とかねェよ。冗談だ。つーか可能だとしてもやったら俺も死ぬしよ。
超能力以外は普通の人間と変わらねェからな」

 仕方なく、小さくなった氷をほお張って噛み砕くに留めた。




229 名前:窓付き:2010/06/27(日) 04:26:56
>>226

「だれでももっている力だよ?」

ピロリ♪

「だってゆめの力だもん。ゆめを自由に出来るのはだれでも同じだよ」

ピロリッロ♪

「わたしはゆめの中をじゆうにうごきまわれるの」

ピロピ♪

「それでいっぱいいっぱいはっけんをするんだ」

ピロリッロ♪

「ゆめの中は起きているときのいやなことぜんぶわすれさせてくれるの」

ピロピ♪

「今はたのしいから、だからここはゆめの中なの。おへやのとびらの外はいやなことがいっぱい」

ピロリ♪

「でもゆめを見ている間は、おへやの外にとびらがいっぱい出てきて」

ピロピ♪

「ぐるぐるあるきまわっていたらお兄さんに出会えたの。すごいでしょ」

>>227

「ごめんね、ここにいる火星さんは火星さんじゃないの」

    女の子がひとさしゆびを乗せたとたん
    火星さんはすっときえちゃった

「本当の火星さんはもっと遠いところでせまいあなのおくにいるの」
「そこで古い機械といっしょに、ひとりでなみだをながしているの」
「ずっとずっと、さびしいところでなみだを流しているの、出られないばしょで、ひとりで、ずっと」

    ピアノの音がなっていて
      さびしさはどんどんますばかり
         火星さんはきっと「こどく」なんだろうな

230 名前:鴉木メイゼル ◆Sadistoogk :2010/06/27(日) 04:34:39
>>228
「別にあたしは手心を加えられないといけないような話なんて一切してないわよ。
 ただ、話が変な方向にズレてちゃったってだけ」

小さな魔女は、いらないところでも負けず嫌いだった。


超能力。


超能力。


(魔法使い?)

これまで彼がそんな素振りを見せなかったから、そうではないと決めつけていたが。
彼が魔法使いならば、その所属次第では本当に今この場で喧嘩では済まない次元の争いになる。
確認すべきだろうか。彼女がこの場で魔法を使えば、ここにいる全員に観測され、魔法使いにしか見えない
炎で焼かれる。その炎を魔炎と呼ぶが――その魔炎が見える者がいれば、その人物は魔法使いだ。
この世界ではない、異世界の住人だ。

試すべきか迷い、やめることにする。もしも彼が魔法使いだとして、少なくともいまここでそれが露見して
闘いになることは避けたかった。そもそも、メイゼルの顔を知らない魔法使いは、今ではそう多くないという
こともある。

「そう簡単に滅ぼされちゃ、たまったものじゃないものね。あたしたちが必死で守ってきた世界だもの」

超高位魔道士にもなれば、一人でこの世界を滅ぼすくらいは本当に出来る。
そしてそれを実行しようとした魔法使いが、いた。
それを撃退したのが、彼女であり、多くの魔法使いたちだったのだから。

231 名前:鴉木メイゼル ◆Sadistoogk :2010/06/27(日) 04:40:59
>229
ここじゃないどこか。
消えた『火星さん』。

もっと遠く。狭いところ。出られない場所。

ひとりで。

初めてこの世界に来た時のことを、メイゼルは思い出す。
この世界では味方は一人もいない。犯罪を続ける魔法使いと戦い続けるための、捨て駒として扱われる。
敵と、自分を使い潰す気しか無い専任係官と、魔法を焼き払うこの世界の住人=地獄の悪鬼がいるだけ。
そう思っていた頃を。

消えてしまった『火星さん』の姿を惜しむように、メイゼルは自分の指をじっと見つめてから、少女の方を見る。


「ひとりは、寂しいわよね」

それは今日はじめての、弱気な表情だっただろう。
一人でも立ち続けることをやめないと誓った魔女には、珍しいものだった。

232 名前:鴉木メイゼル ◆Sadistoogk :2010/06/27(日) 04:45:12
「そろそろせんせも心配するかもしれないし。
 そうね……人目につかないところってどこかあるかしら」

屋内であるならば、例えばトイレなどは監視の目もないだろう。
あったら嫌だ。

「それじゃご馳走さま。あたしはそろそろ帰るわ。せんせが待ってるもの」

ばいばい、と小さく手を振って、少女は入り口ではなくトイレへと向かう。

人目がなければ、魔法が使える。アパートの屋根の上にでも跳べば、誰にも見つかることはない。
外に出るため、また少し濡れるかもしれないが、今の降り方ならそれほど気にしなくてもいいだろう。



円環大系の転移魔法は、思い浮かべたところへ跳べる非常に使い勝手の良いものだった。

【退場】

233 名前:一方通行(アクセラレータ) ◆Accel.skt. :2010/06/27(日) 04:46:19
>>229

「誰でも―――か。確かに夢は誰でも見るがオマエみたいなのは珍しいぜ。
……ま、考えてみりゃ『自分だけの現実』も似たような性質のハズだしな」

 肩をすくめて、打ち止めと視線を合わせた。

(……この子って……)
(そォだな。何かあるっつーか、アレだな……)

 何か、過酷な境遇で生きてきた末にこうした力を獲得した可能性があった。
 実際の現実とはズレた現実を観測する条件を満たしたが故に。
 ただ、それは得てして幸福ではない状況である事が多いのだ。

「……あ、そういえば。まだ名前は聞いてなかったね。なんていうの?」

 打ち止めがふと思い出したように、話を切り替えるように言った。
 誰しも、何処かに傷がある。それに触れるなら、慎重に指を進めなければならない。
 開いた傷口が致命傷である可能性もあるのだから。


>>230

「そりゃな。……ドイツもコイツも必死こいてこの世界で生きてンだ。
そいつを食い物にする野郎はともかく、それ以外をどォこォしよォなンざ毛頭無ェよ。
……つか、その物言いだと……ま、イイか。勝手に同業だと思っておくぜ」

 打ち止めへ悟られないように言葉を紡ぐと携帯電話が無機質なコール音を静かに鳴らした。
 画面にはメール着信の表示。差出人は『登録1』。
 最悪な事に仕事らしい。アイスコーヒーをもう一杯頼んでおくべきだった。

「悪い、俺ァ用事だ。支払いはこっちのカードで済ませてくれ」
「あれ、お仕事?」
「アタリだ。休日くらい休ませて欲しいンだがよ。……夜までにゃ戻るぜ」

 からん、と、鈴をあしらったドアをくぐる。
 空は、雨のやんだ雲間から太陽を覗かせていた。



234 名前:窓付き:2010/06/27(日) 04:57:54
>>231-232

「うん、まわりにいっぱい人がいても、ただいるだけだと、ひとりとかわらないんだ」

わたしたちを見ていない顔のない人たちは
                                   何もかんじない
わたしたちからはなれて自分のことしかかんがえない
                                    何も見えてない


「だからわたしはゆめの中でわたしを一人にしない人をさがしたの」

    でも、ゆめの中で会える人はゆめの中だけ
            ゆめの中の友だちはおきたときにはいなくなる
      それがくるしくって、せつなくって、心がいたくて

「いつかさびしくないひがくるといいな」

     女の子をみおくってためいきついた
          しあわせがにげてもいいや
               おきているうちにたのしいことはないから

>>233

「あのね、ごめんね。わたしの名前、あんまりいいたくないの」

       だって名前はおきているときにひつようだから
         ゆめの中だといらないものだから

「でも、うん、窓付きでいいよ。ゆめの中で、そうよんでくれた人がいる気がするから」

      もうそろそろ時間かな
                そろそろいちどおきたほうがいいかな

「じゃあね、お兄さん、お姉さん、ラスト、オーダー?ちゃん。そろそろかえるね」
「またゆめの中で会えるかな?会えるよね。お兄さんはやさしいからまた会いたい」

         ぎゅっと自分のほっぺをつねったら
                    ふっとゆめからさめちゃった

★たいじょう★

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

気が付けば起こっていた数々の異常現象は
まるで幻のように消え去っており
残ったのは閑散とした喫茶店の店内であった。

235 名前:打ち止め(ラストオーダー) ◆20001.Xmto :2010/06/27(日) 05:37:45
>>232

「うん、またね」

 打ち止めが手を振って、メイゼルを見送った。

「ふむ……今の子って超能力者だったんじゃん?」
「あれ、そなの?」
「あー、勘だ勘。雰囲気がなんとなく一方通行に似てたっしょ?」
「そうかなあ……」



「雨、止んだね」
「やっと洗濯物が干せるじゃんよー」

「……うーん」
「どうかした?」
「なんだか夢を見てた気がする、ってミサカはミサカは報告してみる」
「まどつきちゃん……でいいのかな? なんか不思議な子だったじゃんよ。
『原石』自体は会った事はあるけど、あそこまで雰囲気違う子は初めてだったじゃん」
「そだね……夢。夢を操る能力者なのかな?」
「……んー。かもなー。まだまだ能力は研究されて間もないしなあ」
「また会えるかな」
「きっと会えるじゃんよ。仲良くなれたんだからね」


【退場】

236 名前:有里 湊 ◆YTFOOL/P3. :2010/06/27(日) 21:11:09
 
 ザア……ざあ、と降り注ぐ雨。バタバタと音を立てて傘をノックする。
 耳元ではゆるくダルイレゲエのリズム。
 
 雨の夜には似合わない?
 良いんじゃないの? 晴れ間を願うのは当然じゃない?
 
 雨と気温のお陰で眠りに着くにはちょっとだけ辛い夜。散歩に出ても気分が晴れる事にないとしても、
気分の転換には少しの運動は安らぎに。
 
――Are you happy?
 
……さて、どうだか?
 
 面白可笑しいとだけは言い難い世界。
 そうだろう?
 
 
 倦怠感は充満して。
 絶望は支配者面で。
 幸福は気付けなくて。
 退屈には飽きている。
 
 
 雨の日は雨音を楽しんで、そんな悟りは開けない。
 憂鬱を噛み殺して少しの間の雨宿り。
 
 寄らば大樹の陰。
 雨を厭って一休み。
 
 休んだ所で止まないだろうけど。
 

237 名前:望月綾時 ◆vDUDShAdOw :2010/06/27(日) 21:30:02
―――こんばんは。
あと一週間で、満月だよ。





なんてね。
はるか太古の昔から雨は地上の生物に恵みを与えてきた。
雨が降らなければ植物は枯れ、植物を食べる生物は死に絶え、またその植物を食べる生物の肉を食べる生物も消え去って行く。
食物連鎖のピラミッドってよく言うけど、頂点にいるから偉いんじゃなくて頂点は土台によってかろうじて生きているに過ぎない。
全然降らなければあっという間に死が星を覆ってしまう。
だからこれでいいのさ。

ひさしぶりだね、有里君。元気にしてた?

238 名前:有里 湊 ◆YTFOOL/P3. :2010/06/27(日) 21:38:39
>>237
 
「―――――」
 
 絶句。
 珍しく表情が動いた気もする。
 
 能天気なリズムはシャットアウト。
 目の前の現実に対処する為に。
 
 何時かの再現なのか。
 僕の見る幻なのか。
 夢である現なのか。
 
 
 
 ああ――でも。
 
 
 それでも。
 
 
「――や、久しぶり」
 
 
 どうでもいい。
 
 
 久しぶりの邂逅は、緊張感のない始まりで。
 それも当然彼は■だったのだし。
 

239 名前:望月綾時 ◆vDUDShAdOw :2010/06/27(日) 21:59:25
気の抜けた返事だね。
友人が幽霊になって出てきたような反応だよ。

僕がここにいる事が、そういうありえないと思っていたこの状況が、おかしいようだね。
でもそんなのお互い様じゃないか。
何で君は生きているの?君はニュクスを封じて命の答えにたどり着いたはずなのに?
それは死という答えじゃなかったの?何で死んだはずの君がいるの?

そういった疑問は、意味を成さないんだ。
君は確かにニュクスを封じたんだ。今年の1月31日にね。
だけど君は3月5日を超えてまだ生きている。
それに理屈なんて存在しない。君が生きているということはとても喜ばしいことなんだ。
―――そうだろ?

そういえば3年生になったんだったね。
大学受験がんばってる?美鶴先輩に気に入られようと二年のころはずっとがんばってたから
就職って言う選択肢は選んでないと思うけど。

240 名前:有里 湊 ◆YTFOOL/P3. :2010/06/27(日) 22:12:55
>>239
 
「気も抜けるさ――鏡の前に立たず鏡を見るなんてさ。
 出来れば二度と見たくない顔だった――なんて言って欲しくないだろう?」
 
 言いたかないけどさ。
 
「解は怪より出でて戒より快し、なんてね」
 
 疑問も疑念も、挟む余地がないのは承知。
 だって僕も、彼も。
 ■■であるべきで。
 
 それでも、それでも。
 悪くない。
 
「ま、頑張ってるよ。人並みに、ね。
 面白可笑しく過ごしすぎていて危機感には欠けるけど、喧騒に身を任すのは悪くない選択さ。
 君の得意分野だろう、こーゆーの」
 
 失った分は楽しまないと損だ。
 楽しむ為に失うのとは違う。
 
 無くなったものを尊べばこそ、聖者は楽しむべきなのだ。
 
 雨音も。
 憂鬱も。
 

241 名前:望月綾時 ◆vDUDShAdOw :2010/06/27(日) 22:25:47
>>240

 酷いなあ、僕は確かに君の影から出でたものだよ。
 だけど僕は有里君じゃなくて望月綾時という別の人間に相違ない。
 確かにオリジナルは君だ。だけどオリジナルから生まれるものはオリジナルと同一でなければならない
なんてルールが出来たら芸術創作なんてできっこないよ。

 ああ、安心して?
 人類は影時間とはもう決別した。ニュクスは深い眠りについている。
 それに今の僕はニュクスとは独立した存在さ。
 何だったら月光館学園に帰ってこようか?それくらいなら出来るよ。

 そうやってゆったりと学園生活を送るのが本来の君の姿だ。
 シャドウなんかと戦っている方がおかしいんだからさ。

 だけど、やっぱり、憂鬱だね。
 この雨、危ないかな。君には関係ないことだけど。

242 名前:有里 湊 ◆YTFOOL/P3. :2010/06/27(日) 22:40:26
>>241
 
「勿論――■は■で、■は■だ。
 それでも、■は■で、■は■だ。
 同じじゃない。似て非なるもの――共通点があれば声、かな。それ以外はまったく別物。
 僕は君には成れないし、君は僕には成れない」
 
 左手を銃の形に。
 それをこめかみへ。
 
「夢のような時間だった――って言うほどロマンチストじゃなくてね。
 悪夢が醒めたなら良い夢を見られるとも限らないけど、夢を語るなら良い夢を見たいもんさ」
 
 そうだろうと言う同意は、こめかみを打ち抜くポーズ。
 慣れ親しんだ、どうでもいい決意表明。
 
「騒がし過ぎるから勘弁してくれない?
 ゆかりとジュンペー、風化にアイギス……君がいれば想像するだけで騒がしい」
 
 苦笑とともに告げる言葉はデクレシェンド。
 語尾が弱くなるのも仕方はないさ。
 
 その喧騒も。
 
――心地良かったのだから。
 
 
「濡れるのはね。嫌なもんだよ。――でもさ、晴れるだろ?
 僕は太陽には成れない月だった。
 だから晴れを祈るのさ」
 
 人の心ほど強い物はない。
 嫌と言うほどに思い知ったあの日。
 
 希望と言う光が月を照らしたのだから。
 

243 名前:望月綾時 ◆vDUDShAdOw :2010/06/27(日) 22:54:40
 そこの辺りはやっぱり影だからかな。
 しょうがないと言えばしょうがないよ。でも腹話術なら出来るかもね。
 君が人形持って僕が後ろから喋ったら特別なスキル無しで出来る一発芸。
 バ行もパ行も自由自在だよ。

 じゃあ僕はこんなのかな。
 えっと、コレくらいの枝かな。これで剣みたいに振り回してる。
 あの姿はあんまり好みじゃないんだけどね。でもハロウィンパーティーにお面の代わりに
顔だけ変えていったら可愛い女の子一人ゲットできちゃった。
 たまにはあの姿も役に立つ時もあるみたいだよ。

 じゃあ君がストレスで禿げたら嫌だから自重させてもらうよ。
 でもちょっと惜しいなあ。
 ゆかりさんに風花さんにアイギス、久しぶりに会いたいのになあ。

 ねえ、もし晴れなかったらどうする?
 雨霧に隠れて太陽の光がずっと届かない状態になったら。
 他人の顔さえ見えなくなってしまったら。
 真実の光さえ隠されてしまったら。



244 名前:有里 湊 ◆YTFOOL/P3. :2010/06/27(日) 23:09:31
>>243
 
「仮に僕が女の子だったら、イフも有り得るんだろうけどね。
 ま、腹話術は楽しいかもね。縦横無尽に声は遅れるだろうし、歌だって歌えるだろうさ」
 
 
「それはそれは。
 僕は賑やか過ぎたのと出遅れちゃったから参加は控えたけど――楽しめているなら何より、
じゃない?
 未練と悔いと。提案による選択は、それが大きい所だった、なんて」
 
 今更だ。
 そう、今更なんだ。
 僕は彼を殺さなかったし、彼は僕を殺さなかったし、■は■に許しを請うた。
 
 それが結果で、答えがあって。
 今がある。
 
「ナチュラルに奴を無視するかね……フツー。
 ヤなもんだ。誰かがこうなるとこんな結末に至るってのは、ね?」
 
 浮かぶ苦笑。
 ストレートな感情表現。
 自然になったとは言え、少し前までなら有り得ない光景。
 
「霧が掛かる夜でも。
 霧の支配するロンドンでも。
 誰もが仮面を手に踊っていたとしても。
 
 夜明けが来れば魔法は解けるさ。
 身を持って体験してるじゃないか、お互い、さ」
 
――やれんだろ?
 
 死者すら生者の礎に。
 心の力が齎す光は、人だけが持ちうる、奇跡。
 

245 名前:望月綾時 ◆vDUDShAdOw :2010/06/27(日) 23:28:18
>>244

 君が女の子なら迷わず声をかけてたね。
 有里君はなかなか素敵だからさ。
 あ、僕は構わないよ?

 そりゃ、ね。
 人間なんていつ死ぬか分からない。
 もしかしたら明日風邪を拗らせて死ぬかもしれないし、次の瞬間車に轢かれて
死ぬかもしれない。
 だからmemento moriだよ。今を生きることほど大事なことは無い。
 君との会話一つ一つも僕にとっては大事な今さ。

 ……あ。
 やっだなー、順平君だって忘れてたわけじゃないよ。
 なんだかんだで君達の寮で一番遊んでた仲だしさ。

 そうだね。
 人は真実を見失うことなく闇の中から光を見出せる。
 その力添えにまたビロードの部屋が開かれるとしても。
 明けの明星は魔法を打ち払ってくれる。
 そう願ってるよ。

246 名前:有里 湊 ◆YTFOOL/P3. :2010/06/27(日) 23:38:45
>>245
 
「――止めてくれ。どっちでもいける名前だってのは分かってるけどさ。
 戯言、だろ?」
 
 頬を伝う汗は不快指数の高い夜のせい。
……きっと。
 
「宝箱にしまうほど、楽しい話じゃない気もするけど?
 ま、悪くないよ。どうでもいいと流すには勿体無い。
 心の底にしまうほど重要じゃなくても、心の片隅には、留めて置きたい。
 この瞬間は掛け替えのないもので、だからこそ何物にも変え難い」
 
 夢で見返せるように。
 浅めにポケットにしまっておこうかな?
 
「――どうでもいい。
 秘密にしておいてあげるよ」
 
 
 
「絶望と希望じゃ絶望が勝ちやすいけれどね。
 
 でも。
 
 それでも。
 
 
―――――人は、強いさ」
 

247 名前:望月綾時 ◆vDUDShAdOw :2010/06/27(日) 23:48:02
>>246

 えっ?


 なーんて、冗談だよ、冗談。
 半分くらい。

 君にとっては路傍の石に過ぎないこの会話も僕にとってはどんな宝玉よりも
価値のある時間かもしれないじゃないか。
 色々寂しい気分にもなるよ。
 雨にも降られて親しい友人が遠いって言うのはさ。
 だからこのなんでもない言葉はとても価値があるかもしれない。

 もっと君達みたいに絶望に打ち勝てる人がいればいいのにね。
 でもそう上手く世界が回っているわけでもないや。
 絶望に甘んじたいっていう人も多い訳だし。

 でも

 君達を知ったから


 ―――人の強さも知ってるよ。

248 名前:有里 湊 ◆YTFOOL/P3. :2010/06/27(日) 23:59:10
>>247
 
「……笑えないから、それ」
 
 
「キャンパスは埋まってないだろ?
 時間がまだあるなら、出来る限り埋めていけば良いさ」
 
 失くして、そこから得たものもあって。
 君の為に得ると言うのは傲慢。
 
 それなら――
 
「希望を胸に――荒野を行け」
 
 そう――
 
「慈愛はあるさ。この雨みたいに」
 
 希望も、絶望も。
 等しく降り注ぐけれど、尊いものがある。
 
 それに縋って愚者は行く。
 
「君を知ったから、僕がある」
 
 誰かに聞かれると困ったことになる発言。
 拙い、かな?
 

249 名前:望月綾時 ◆vDUDShAdOw :2010/06/28(月) 00:19:52
>>248

 キャンバスの一部をわざと空けておくのも一興さ。
 そこには想像という名の見えない絵の具で絵が描かれる。
 だから未来に思いを馳せれるって訳さ。

 絶望と虚無に満ちた砂漠があるのなら
 希望を道しるべに旅人はカーリマンとなる。
 今この雨は疲れた旅人の喉を潤す恵みとなってるのかもしれない。

 君がいたから、僕もいる。
 君が僕を殺さなかったから、今がある。

 果たされたこの奇跡の世界、人はずっと守ってくれるよね?

250 名前:有里 湊 ◆YTFOOL/P3. :2010/06/28(月) 00:28:30
>>249
 
「真っ先に女の子で埋めそうだけど?」
 
 冷やかしに嘲りはなく。
 本音でもないけれど。
 
 想像問い余地がある事で、愚者は荒野を進む。
 想像とは、希望にも似ている。
 
 似て非なるもの――と言われればお終いだけれど。
 
「―――――守るさ」
 
「この手で」
 
「その手で」
 
 
「――誰かの手で」
 
 
 空を指差し――
 
 
「人が希望を抱く限り」
 
 
 改めてこめかみへ。
 
 
「世界が絶望に満ちる事なんて――
 
 
                             打ち抜く。
 

                         心に宿るは竪琴の奏者。
 
                          棺桶を引きずる死神。
 
                           終末を救う遣い。
 
                         希望を奏でる竪琴の奏者。
 
 
――ないんだよ」

251 名前:望月綾時 ◆vDUDShAdOw :2010/06/28(月) 00:41:21
>>250

 やだなあ、君で埋めちゃうに決まってるじゃないか。

 やっぱり人間って素晴らしい。
 そうやって旅人は迫り来る恐怖を全て焼き尽くし
 この世の果てにある

 ―――命の答えを、宇宙の輝きを見つけたんだ。


 命は君達自身のものだ。
 その使い方もね。

 雨も上がったことだし僕はそろそろお暇させてもらうよ。
 見てごらん、空を。
 さっきまで雨が降っていたとは思えない満天の星空だ。

 きっと、人間は次の絶望も乗り越えてくれる。


 あ、そうそう。君の携帯、実はこっそり抜き取ってて。
 僕のアドレス入れといたから。

 じゃ、その内遊びに行くよ。
 ゆかりさんや風花さん、それとアイギスにもよろしくいっといて。
 後ついでに順平君。

 それじゃ、また会おう。
 満月や滅びとは無縁の、ゆっくりとした時間の中で。

【退場】

252 名前:◆rX9kn4Mz02 :2010/07/01(木) 22:44:39

水無月とは、梅雨により天の水が無となる月であると云う。
これは新暦が用られてよりの解釈だが、後付の類としては巧い方だといえる。
水無月は「水月(みなづき)」・「水張月(みづはりづき)」とも呼ばれ、田植を終えた
田に水を張るべき月だというのがその語源である。
 
しかし、その天よりの水が必要とされる月も最早過ぎ去った。
現時点での日時は7月1日の22:44。
ユピテルの妻はカエサルへと下り、水無月は穂含月(ほふみづき)へと遷移する。
梅雨は明け、暦に従いて夏へとまた進むのだ。
全ては変転、川が下流へと下るよりも確かな世の理と共に。





だが、此処は違う。
 
 
  
 
 
まばらではあるが、未だ粛々と降り注ぐ天の雨水。
大樹を頂くこの森には、先日、とうに過ぎ去った筈の『水無月』が留まっていた。


253 名前:有角幻也 ◆rX9kn4Mz02 :2010/07/01(木) 22:46:56




「―――――ここか」
 

漆黒と白皙のコントラストが、薄闇の風景を濃淡に色分け彩る。
雨の降り止まぬ“森”の中心部。
悠然と屹立する一本の大樹の前に、有角幻也は辿り着いていた。
 
その美貌に宿る眼差しの色は、冷徹という名の色。
彼が処するべき相手に、存在に、対象に、常に向けるものと何ら変わりのない色だった。
 


――――――“ゆらぎ”。
 
時に日本の対策機関をして『境界融解現象』とも呼称されるそれは、
正しく不安定な次元の“ゆらぎ”を生じさせるものである。
ゆらぎは異界との穴と歪みを生み、その歪みは世界の理を破壊せしめ混沌へと導く。
 
原初復古とも称される、終焉/崩壊と等しい異世界同士の融合。
そして、その現象は幻也の良く知る世界を想起させた。

それは世界を破滅へと導くべく幾度でも甦る悪魔の城。
人の悪しき願いの数だけ復活し、混沌の具現として世に顕れる『崩壊の為の異界』。
 
そんな彼が其の生涯を以って挫かねばならぬものと、今この森に現れる“ゆらぎ”は
非常に良く似ていた。
或いはそれが、あえて専門の―――特務機関のエージェントではなく、彼が此処に
派遣された理由の一つなのであろう。
 
 
「『森羅』の諜報部からの情報では、ここで間違いはない筈だがな……」 
 
 
“ゆらぎ”の気配を探りながら、幻也は依頼主である特務機関からの情報を
頭の中で反芻していた。

一つはこの場所における妖怪・魔物・怪異の目撃例。
これらは過去のデータから見ても極めて多く、何れの個体も捨て置けるレベルではない。
 
もう一つは、“ゆらぎ”の最たるものである次元転移現象。
報告では異なる世界の住人が、正にその“ゆらぎ”に巻き込まれこの場に転移してきたという。
一人は重火器を装備したカウボーイ風の男。
もう一人は既に死んでいるはずの、イタリアンマフィア『パッショーネ』のボス。
いずれも発生したゆらぎに再び巻き込まれたらしく、その後の足取りは掴めていない。
 
 
「……いや。或いは」

 
其処まで出ていた言葉に気付き、幻也は次の句を飲み込んだ。
……何故ならば、此処で考えても意味のない事だ。
 
 
例えば。
山奥の結界を隔てた向こう側に、幻想として忘れ去られたものの住む郷がある。
 
例えば。
超能力と最先端の科学を研究している、学園都市が存在する。
 
例えば。
西暦は既に終わり、人が宇宙に進出し人型兵器で戦争をする時代に突入している。
 
 
 
――――例えば。
我々が今の在り方を普通と思い込んでいるだけで、全ては“ゆらぎ”に飲み込まれているのではないか。
全てが混ざり合い混沌と化した、この世界を。 


254 名前:八神 庵:2010/07/01(木) 22:59:17
 
――三日月の刻印が浮かぶジッポを持て遊び、くわえたタバコをゆらゆらと揺れる。
 
 何時か訪れた『筈』の場所へと足が向く。
 憂鬱にも雑音を繰り広げる雨。
 神経の一本一本を犯すかのようなノイズ。
 
 いつぞやのリフレイン。
 己と言う存在すら解けてなくなる最悪にして、最低な過去。
 消せ去る事は叶わずも、忘れる事は出来るだろう。
 
 
 出来るのであれば。
 
 
 
 過去。
 因縁。
 禍根。
 
 
 消せる夢を見られれば誰もが平穏に生きるだろう。

 
 憎悪。
 怨恨。
 殺意。
 
 
 渦を巻く赤黒い情景に喜ぶ心と、無意味である筈の倦怠感。
 
 揺ら揺らと揺れる紫煙。
 何時ぞやの木に身を寄せていれば現れる珍客。
 
 興味もない。
 
 

 邪魔か、否か。
 
 
 
 本能が騒ぐ。
 
 
『そんな事はどうでも良い。赤、紅、朱――手にすべきは穢れない臓物、慈悲なき苦痛、喜ばしき悲鳴』
 
 火が燈る煙草。
 揺ら揺らと揺れる紫煙。
 一瞥もくれる事のない来訪者。
 
 求めるのは――?
 

255 名前:十六夜咲夜 ◆kiLL.Hxa7E :2010/07/01(木) 23:08:57

……なんだろう、この空気は。
眩暈にも似た感覚に眉を顰める。

散歩がてら久々の外出を決め込んだメイド長のその森での第一印象である。

重厚に沈んだ、重金属のような陰鬱な雰囲気。
くだらないジョークでも口にしてぶち壊すべきだろうか?

「ええと……」

いつかの大樹のもとには見知った顔と見知らぬ顔がひとつずつ。
と言っても知る方も二言三言言葉を交わしただけの間。
互いの名も知らぬ程度の袖すりあった刹那の隣人。

さて、何か言わねば。

「……逢引ですか?」

考えうる限り最悪の言葉が出てきた。
無意識にまかせて言葉を紡いだ結果がこれだよ!

 <入場>


256 名前:有角幻也 ◆rX9kn4Mz02 :2010/07/01(木) 23:12:51
>>254


敢えて言うならば、今宵の月齢に名などはない。
三晩も待たずして下弦に至る今の月は、やや半端に欠け始めた型だ。
  
だが今其処に、三日月が昇る。それも鋭く、暗く、何処か哀愁を漂わせた三日月が。
その三日月の主の名を幻也は知っていた。
正確には、彼の今の生業に関わることで、“識っていた”というべきだが。
  
 
「炎と共に血の宿命を失った筈の男が、何の用だ」
 
 
一瞥も暮れぬ男に、一瞥もくれぬ侭に敢えて問いかける。
かつて策謀に嵌められたが故に己の使命を裏切り、闇に堕ちた男の末裔。
仕組まれた憎悪による契約は彼らの持つ封じの炎を蝕み、闇と光のない交ぜとなった
復讐の紫炎へと変えた。
だが今はその炎すら、自身を苛む血と共に嘲笑う火影に奪われた男。
 
 
「―――――八神、庵」
 
 
日輪と対に成る三日月を。
祖先と同じく底の見えぬ罪を背負う、血濡れの刃のような男に問うた。


257 名前:八神 庵:2010/07/01(木) 23:28:53
>>255
 
 呟きに意味などない。
 
 紡ぐ言葉に意味など無い。
 
「何時ぞやの答えだ。
 
――答えなぞ、要らん」
 
 
 血染めの道を歩むことに拒否感も。
 血染めの道を歩むことに意味も、意義も。
 
 感じない。
 感じる事が出来ない。
 
 生きることすら、無意味、無価値。
 
 死ぬことも、無意味、無価値。
 
 解を求める事がそもそも間違っているのだから。
 
 
>>256
 
「何の用、だと?
 貴様に興味があるようにでも見えたか、戯け」
 
 ゆっくりと紫煙を肺に落とし込み、ゆっくりと吐き出す。
 
 
『チノニオイアフレルヨルニコソキョウキヲネガフ』
 
 
 肌に感じる救いがたい衝動。
 壊してしまいたい情動。
 生を感じさせる唯一つの成道。
 
 
 赤く燈る火に視線を落とす――
 
「名を尋ねる礼儀くらいは弁えて欲しいものだがな」
 
『親殺し』――サイレントの呟き。
 

258 名前:十六夜咲夜 ◆kiLL.Hxa7E :2010/07/01(木) 23:39:16
>>257

答えはいらない。
それが彼の答え。いつかの答え。

ああ……そうだ。
名は名乗りあっていたか。

ヤガミイオリ。
いつぞや不機嫌そうに呟いたフレーズが脳裏に蘇る。
なにもかもが不満やるかたなし、そんな空気をまとった彼は、今晩もまた同様のオーラを放っていた。

「答えが要らない?
 ではヤガミ様は過程にこそ意味を見出しておられるのかしら?」

小首をかしげていつぞやの続きの如く尋ねてみる。
およその答えは予想しているというのに。

おそらく、彼はこう言うのだろう。
過程にも興味がないと、意味に意味を感じぬと。
なぜそんなことが予想できるのか、自分でもわからないが、なんとなくそんな気がした。

さて、正解はどうだろうか?

>貴様に興味があるようにでも見えたか、戯け」

「……お二方は気安い仲なのですか?」

ちっともそうは見えないからこそ、この無愛想な男にそう尋ねてみた。

259 名前:シロー・アマダ ◆08MSwPc.vs :2010/07/01(木) 23:42:28
「んー、なんとなくここまで来たんだけど…」

いつも通り、消えた戦車の足跡代わりに自分の記憶をコンパスにして
歩いているとたどり着いた大木の足元。
森に入り込んだ理由は自分でも良く分かっていない。
まあ、なんていうか、何だろう、入らないといけないって気分になったっていうか。
そこには見慣れた顔と久しく見る顔がいたわけで。

「よお、こんなところで合うなんて寄寓だな咲夜」

フードの先を持ち上げながら親しい友人への挨拶。

「…それと、久しぶりだな有角」

額の汗をぬぐいながら紡がれた再会の喜び。
雨の葉を打つ音は止む気配が無い。

260 名前:八神 庵:2010/07/01(木) 23:51:34
>>258
 
「――過程すら無意味だ。結果が自己満足であるのならば、其処に意味を挟める筈も無い」
 
 煙草を燻らせ、瞳に誰を写す事の無い呟き。

「殺める事に意味など無い。快楽も無い――悔いも無い。
 破綻した者に、解法など望むべくも無い。
 唯一の救いは――
 
 
 
 
 張り付いた微笑に苛立ちを覚えながら吐き捨てる。
 
 
 
 
――何もかもを無くし、潰える事だけだ」
 
 
 それが、答え。
 誰にとっても上策な、答え。
 
 
「しかし――気安く見えるか……これと俺とが。
 極地であるというのにそう見えるのであれば、ジョンの破願も目に浮かぶ」
 
 

261 名前:有角幻也 ◆rX9kn4Mz02 :2010/07/02(金) 00:01:29
 
 
 
           
                ――――カチリ。
 


動かぬ筈の歯車が回り、回らぬ筈の機械仕掛けが始動する。
幻也が懐に潜ませている銀色の懐中時計だ。
彼の父がと或る“旅人”を招き、その証として受け取ったという曰くの品。
 
父から幻也に送られてよりずっと、常に彼の手元にあった機械仕掛けの懐中時計。
遥か昔―――本来その概念すら存在しなかった時代から現存する、機械仕掛けの時計。
必要である時に彼の手に渡り、
必要である刻に動き出し、
必要である“刻”に彼の懐に存在する。
まるで、そうある事が既に決められていたかのように。
その存在の全てが定められているかのような懐中時計が、今また僅かに動いたのである。
そう。まるで今よりこの“刻”、自らが必要であるかのように。
 
 
そして今この刻、必要とされたものは――――――。
 
 
>>255
 


「―――――寝言は寝て言え」
 
 
この言葉である。
彼が常に使う口癖のような言葉ではなく、完膚なきまでな否定の言葉。
断定の意すら込められた、既に言霊にも等しい一撃であった。
 
  
「……まあいい。
 先程の問いは否定するしかないとして、聞きたい事と言うべき事がある」
 
 
そう続けて、幻也は視線を移す。
眼差しの先には灰色の――否、銀の髪をした少女が一人。
少女の格好にはあえて何も言わず、要点のみを告げることにする。
  
「聞きたいのは此処に来た理由と……此処で変わったものを見なかったか、という一点」
 
この場に来てまで情報収集を重ねる必要性は薄いが、念の為である。
今までの現象(ゆらぎ)が人為的に仕組まれているのならば、何がしかのカウンターが用意されていても
おかしくはない。そうでなくとも、如何なる不確定因子が潜んでいるかは未知数だ。

来訪者がいるならば、多少でも情報を得ておくに越したことはない。
例え、目の前の少女がその不確定因子であったとしても。
    
「言うべきことは、今日を持ってこの辺り一帯の一時封鎖が決まったことだ。
 “逆神隠し”とも言うべき状態と判断され、今日未明を持ってこの森は一年間の間封鎖される」
 
封鎖指定。
“ゆらぎ”の観測された地域は、その危険性の為無期限の封鎖処置が行われる。
むしろ封印と呼んだ方が正しい超法規的処置。
都区一つをすら完全に封鎖させるその強権発動は、それだけ“ゆらぎ”という現象の危険性を象徴していた。
   
「……有角幻也だ。この地域における封鎖処置の指揮を任されている。
 私の眼の届く範囲内の行動は認めるが、用が済みしだい立ち去ることを推奨しよう」
   
最後に警察手帳―――表向きの役職である、公安職員という肩書きの証明書と写真―――を開いて、
自らが真っ当な身分で、一先ず正当性のある行動をしていると目の前の少女に示す。
公文書偽造同然な上に面倒なのだが、こうするのが最もリスクの少ないやり方でもあった。
 

262 名前:十六夜咲夜 ◆kiLL.Hxa7E :2010/07/02(金) 00:03:27
>>259

背後に気配。
瞬間的に時間を止め様として……その特徴的な気配に発動をやめる。
この暢気な気配はあの人だろう。

そしてその予想を裏切らぬ声音が背後から響く。
片腕を三角巾で吊り、もう片手で傘をかかげるメイド長は
肩越しに彼の姿を確認し、傘をもちあげて視線で会釈をおくる。

「こんばんは、シロー。
 相変わらずどこでも神出鬼没ですわね?
 そして貴方は次に、それはお前の方だろと仰るのでしょうか?」

くすりと笑って彼をからかう。
文字通り、挨拶代わりと言った所だろうか。

>>260

片眉があがる。
驚いたという顔。

何もかも失って消え去る事にこそ意味がある。

「ああ、成る程。ワケもなくいたたまれない。
 ……そんな気分なのですか」

もしくはひどく優しい男だという可能性もあるが……
……さすがにそうは見えない。

「昔、どこかへ消えてしまおうと考えたことがありますわ」

分かる、などとは言わない。
もし私なら、知った風な事を言われるのが一番苛立たしいだろうし。
人は所詮他人のことなどわかるようにできてはいない。
その上、わかろうと努力する意思もないときては分かろうハズがないのだ。

>しかし――気安く見えるか……これと俺とが。

「はい。いいえ。
 貴方は初対面の私には言葉を選んでいるように感じたけれど、
 彼には容赦のない言葉を躊躇わなかったから、ひょっとしたらと思っただけ。
 まぁ、気安いというのも仲が良いだけを指す言葉でもありませんし。
 例えば何度も何度も刃を交えれば、その内気安い関係にはなるでしょう?
 生きてればだけど……それでちょっとね、聞いてみたのよ」

人とのつながりなど千差万別だ。
どういう距離をお互いに設定するかなど、まさに思うが侭だろう。
しかし、思うが侭にするのは誰でも同じ。よっていつでも自由にとはいかないわけだ。

なにがきっかけになるかなど誰にもわからない。
いや、私の主であればそれが分かるのだろうか……?

263 名前:有角幻也 ◆rX9kn4Mz02 :2010/07/02(金) 00:14:08
>>257
 
 
「確かに、あるようには見えんな」
 
 
手帳を仕舞い、男―――八神の言葉に応じる。
その声色はやはり、鉄よりも重く、冷たく、常と同じく冷徹の極み。

奥に潜む衝動を察したか、
尚も渦巻く情動を見抜いたか、
男が成道と信じるものを得心したのか。
 
 
――――血、ではないな。
  
この男を今このような在り様にしているのは、決して血の宿命ではない。
それは紛れも無く、八神庵という個が背負い、抱き続けてきた意思そのものであった。
生まれが、血が在り方を決めるのではない。
生きている本人の意思こそが己の生を、在り方を決めるのだ。
その事を幻也は誰よりも理解していた。 
何故ならば、その生き方は何より彼自身の辿った道でもあったからだ。
 
資料で見た八神庵という男の情報と、自らが体験した情報の一致。
たとえ、選んだ在り方はまるで違ったとしても。
 

「……有角幻也だ、先程言ったがな。
 弁える前に名を言った。ならば、先に名乗っておくのが筋だろう」
 
 
―――或いは、一致するのは己の犯した罪までもか。
 

264 名前:十六夜咲夜 ◆kiLL.Hxa7E :2010/07/02(金) 00:14:41
>>261

寝言は寝て言え。
難しいリクエストを初対面の人間に要求するとは。
私は涼しい顔で答える。

「あら、失礼。脳がシェスタしておりましたもので」

門番の居眠りに比べれば優しいものだ。
平然と彼の視線を受け流しながら、逆に彼を観察する。
見覚えは確かにない。初対面で合ってるのだろう。

「ご希望は確かに。義務遂行の様も確かに拝見しましたわ。
 ……それで、私になにか?」

揺らぎね。
まぁ、スキマが道を開いたり閉じたりしてくれているのだ。
空間にゆらぎくらいは生じてもおかしくはない。
しかし……

だから、なに?

のんびりと尋ねる。
聞きたいのは貴方の希望。でもそれだけ。
こちらには生憎と答える義務も義理もありはしない。
残念な事にとてもではないが十六夜咲夜は善良な一般市民ではない。
その上、主も呆れるほどに血の気の多い従者であった。

実の所、彼が警察手帳を出した瞬間から十六夜咲夜の協力を得る事は格段に難しくなったのである。


265 名前:シロー・アマダ ◆08MSwPc.vs :2010/07/02(金) 00:36:08
>>262

「それはおま…ハッ!?」

くそう、先を読まれた。
神出鬼没って言葉が合うのはまさに向こうのほうなんだけどなあ。
時を止めて移動するから、一般人には突然現れたようにしか見えない。

「…ん?腕、どうしたんだ。骨密度不足か?」

そんなわけ無いんだろうけど気になるものは気になる。
そういや俺だってフランと激突した時はいくつか骨多分折れてたんだけど
魔法の薬飲んだら一発で治ってたなあ。
ああいったものは館の主は所持してないんだろうか。

266 名前:十六夜咲夜 ◆kiLL.Hxa7E :2010/07/02(金) 00:56:14
>>265

つきあいのいい彼の言葉に微笑む。
奇術師的な感覚で言えば、彼は実に魅せ甲斐のある観客と言える。

「カルシウムが不足していたわけではないと思うのだけど。
 まぁ、人の身で妖怪とやりあっていたらこういうこともあるわ」

油断したつもりはないが、甘く見ていた部分はどこかにあったのだろう。
吸血鬼の腕力は常日頃よく知っているつもりだったのだが。

「まぁ、もうしばらくで直るでしょ。
 薬とか魔法とか、緊急性がないならなるべく使わない方がいいと思って」

必要と在らば迷わないが、たまたま今回はそうでもなかったのだ。
妖精たちが奮起してくれたおかげでもある。
柄でもないが、一応感謝しておかないとね。

「それに空間をいじればそれほど不都合もないわ」

手に取ったハンカチの周囲の空間を固定して板のようにしてひらひらとあおいで見せる。
ようはこういうことだ。


267 名前:有角幻也 ◆rX9kn4Mz02 :2010/07/02(金) 01:06:48
>>259
 

幻也がその男を知っているのは偶然といえば偶然であろう。
少しばかり昔に見知った顔であり、久しく会わなかった顔でもある。
そして幻也という男に対し物怖じしない、数少ない人間の一人でもあった。
 
 
「……確かに、顔を合わせるのは久しぶりか」
   
友人かどうか、というのはまた別の話なのかもしれなかったが。
それでも――――少なくとも、幻也には得難い類の人間には違いはないのだろう。
僅かに緊張が緩められた、そんな印象を見るものに与えていた。
 
例え――――再会した男が人ならざる者の世界に関わってしまっていたとしても。
諜報部からの報告書にあった、彼と吸血鬼らしき存在との邂逅。
 
とはいえ、その吸血鬼の正体も大方の予想は付いていたのである。
そのため必要以上の詮索も警戒も、現時点では無用であった。
 
「知っている顔か?」
 
だから、自分を友と思う男には敢えて思うところを聞かず、
代わりにサクヤと呼んだ少女について訊ねる。
 
 
>>264
 
何故ならば、当の彼女が此方に際し警戒心を抱いたからである。

幻也のとった行動が裏目に出る場合、理由は二つある。
一つは対象が警察嫌いであった場合。
もう一つは……対象が、その手の手合いを嫌いというレベルではない存在である場合だ。
僅かに、だが確実に変わった彼女の気配は、少女がもう一つのケースである事を示していた。
即ち――――。

 
「いや……どうもしないならば、それでいい」
 
牧歌的な――しかし、その内奥には明らかな拒絶が感じられる――問いに対し、
幻也が返したのは意外なまでに素っ気の無い対応だった。
少女が血の気の多い人間ならば、幻也は冷血冷静を己に課している男である。
その冷静な思考と洞察力、そして感覚が告げていた。
この藪の先を突いた先にあるのは惨劇のみ、或いは無意味な血戦であると。 
だから。 
     
「あえて言うなら、覚えておいて欲しいだけだ。
 たとえ犯罪者や不審者、珍しい動物の類などを見かけたとしても
 とりわけ今日は必要以上に関わるべきではない、留意しておいてくれ、とだけな。
  
 普段の利用者にとっては気に入らないかもしれないが、今日に限っては我々の仕事場だ。
 済まないが、警告だけはさせてもらった。……最近はこの辺りも物騒なのでな」 
 
  
――――まるで、何かの“結界(境目)”が壊れているかのように。
 
最後にそう付け加えて、サクヤと呼ばれた彼女に通告する。
こうなった以上、元より協力は期待していない。
必要なのは、忠告する事であり認識させることだ。
たとえ、彼女の正体が何者であろうとも…そして、異能の力を持っていたとしても。
 
 
「……それと余計だが、怪我ならば無理をしない方がいい。
 少なくとも、お前の隣にいる相手を心配させるのは確かだからな」
 
 
―――最後のも忠告か、或いはこれは紛れの無い善意か。
多分、後者である気がしなくもない。

268 名前:シロー・アマダ ◆08MSwPc.vs :2010/07/02(金) 01:21:25
>>266

「…まあ、そりゃそうだろうな。俺だってフランの時は死ぬかと思ったし」

幾万もの弾丸を浴びてフレームが拉げて塗装が剥げ、一見すると
鉄屑とも見分けが付かなくなった俺の愛機の姿を思い出す。
ホントヨク生きてたな、俺。悪運に感謝だ。

「魔法ってのも科学と変わらないんだな。
 あんまり自然を捻じ曲げるのは気に入らないってことか?」

発達しすぎた科学は魔法云々。
あんまりにも使い古された言葉なのだが実際に魔法見ると
やはり凄いという感想が思い浮かぶ。
でも魔法使いに俺達のテクノロジーを見せるとまた別の反応見せるんだろうけどな。

「って結局魔法みたいなもんに頼ってるじゃないか」

ハンカチがまるで凍っているみたいだ。
濡れた洗濯物を寒い日に外に干すとカチカチになってたり。

>>267

警察手帳を見せて咲夜に忠告を与える有角。
ジトリと湿気以外の要因で汗が浮かんだ。顔は僅かににこやかなままで。
えっと、フォロー、すべきかな?

「ああ、ああ、こいつは俺の友人だよ。ちょっと今の職辞めた後の再就職先を
 紹介してくれるって言う真っ当に善良な普通の人間だよ?
 戦車だって通るんだしここら辺りが物騒だって言うのなら彼女を送って行くよ」

色々と魔法披露している時点で説得力が全然無いけどな!
良いやつだよ?ホントだよ?

269 名前:十六夜咲夜 ◆kiLL.Hxa7E :2010/07/02(金) 01:23:11
>>267

すうと目を細めた。

意外にあっさり引き下がる。
面倒ごとは御免だと言うことなのだろうか。

残念だ。私は熱心な警察は大好きだと言うのに。
どうやら彼はよくあるタイプの警察関係者であるらしい。
そつなく、トラブルは最小限に。
騒ぎにでもならなければ問題にしない。
そういうことか。

ああ、そういえば霧の街にはそんな警察官ばかりだった。
静かに瞳の色が青から赤に変わる。

「犯罪者、不審者、珍しい動物の類……みんな心当たりがありますわね」

視線をそらせて不敵に笑う。
それはそうだろう、その殆どがこの場に居るのだから。

「心配なさらなくとも主の許可なしに騒ぎを起こしたりはいたしませんわ。
 もっとも降りかかる火の粉があれば喜んでこれを払いますけれど」

それに隣の人物を言うなら、ケガがあろうがなかろうが同じ事だ。
彼はきっといずれにせよ心配をするだろう。
まったくの損得抜きで。

私のようわりとゲスな人間にとってはやりづらいことこの上ない。
彼のような光溢れるタイプの人間は。


270 名前:十六夜咲夜 ◆kiLL.Hxa7E :2010/07/02(金) 01:31:40
>>268

「そう言えばフラン様をお止めになったのでしたね。
 その意味ばかりに囚われていましたけど……よく死ななかったわね、シロー?」

ひどい言い草だが、本心だ。
打たれ強さに定評のある美鈴でも涙目で挑むと言うのに、
よくもまぁ人間並みの強度の体で立ちふさがって生きてもどれたものだ。

運命を切り開くとはそういうことなのか。
あるいは、フラン様の無意識がそれをさせたのか。

「あら、私のこれはただの手品ですわ。
 魔法ではなくマジック。魔術士ではなく奇術師なのですから、
 いっしょにしてもらっては困るわ」

>ちょっと今の職辞めた後の再就職先を紹介してくれるって

割って入るシローに瞳が青に戻る。
じろりと横目で睨むが、一瞬後に溜息をついて気持ちを収めた。

「……あれ、そんな約束、しましたっけ?」

ただ、それだけでは悔しいので、
そう言って悪戯っぽく笑って見せてあげることにする。


271 名前:シロー・アマダ ◆08MSwPc.vs :2010/07/02(金) 01:53:43
>>270

「自分でもそう思う…先にスクランブルで出た後大破させられた
 機体のパイロットは重体で、何とか一命を取り留めて後方に送られたものの
 精神的にはコックピット恐怖症になるくらいのトラウマ負ってしまったらしいし」

つまりパイロットとしては再起不能。
高価な機体をいくつも壊された上に貴重なパイロット一人を失ったということだ。
いや、あれは死者が出なかっただけ奇跡的だったような。

いつぞやの改造ゲルググ追った時も腕を折ったっけ。
あの時以上に生きた心地がしなかったけどなあ。
やはり吸血鬼と戦うのは無理がある。

「…あ、ああ、そうだな!
 お前、手品が得意だったからなあ、宴会芸の十八番だったし!」

無理にフォローを入れてみる。
酒を一緒に飲んだら泣かせてしまったんだけど。
青い目をした少女にタハハと誤魔化す様な笑いを向けた。

「え、ちょっ、頼むよ、家族自分の傍における職業を希望してるんだって。
 じょ、冗談だよな?な?」

これで本気だったら洒落にならないんですけど。

272 名前:有角幻也 ◆rX9kn4Mz02 :2010/07/02(金) 02:03:43
>>267
 
 
―――――生憎だが、“相手”をしてやる暇もないのでな。
 
  
細められた視線を受けて、幻也は言葉に出さずこの句を返した。
胸中にて、そして何よりも雄弁で冷徹な眼差しで。
 
こと『有角幻也』という男について皆誤解し易いのだが、彼は日和見主義者の類ではなかった。
むしろ彼の本来の気性を知るものにとっては、必ずといって良いほど逆の印象を抱く。
 
   
『犯罪者、不審者、珍しい動物の類……みんな心当たりがありますわね』
「―――そういう事だ。
 もし騒ぎが起こるのならば、此方も相応の対応をしなければならん。
 生じた“仕事”は面倒がらず、全力で果たすのが我々の職務なのでな」
 
  
その瀟洒にして不敵な笑みを、幻也は見逃さず睥睨する。
そう、見下すのではなく睥睨だ。
有角幻也という男が己に課しているのは、冷静にして冷徹。
冷静とは如何なるときでも見分けるべきを見分け、為すべきを見失わぬということ。
 
 
『心配なさらなくとも主の許可なしに騒ぎを起こしたりはいたしませんわ。
 もっとも降りかかる火の粉があれば喜んでこれを払いますけれど』
「―――了解した。協力に感謝する。
 しかし、くれぐれも無理はしないことだ。火の粉を払うつもりが焼かれるようなこともある。
 “火”というのは、思った以上に危険なものだ」
  
――――そして冷徹とは滅ぼすべきを全身全霊を以って滅ぼし、為すべきを為すということ。
それは即ち、敵として認識したものは容赦なく其れに当たるということ。

そして、其処に例外は無い。
彼が今まで為してきた事/滅ぼしてきたものと同じく。
 
  
 
                 ―――カチリ。
 
 
再び懐中時計の歯車が動く。
『伯爵』がとある時空の旅人を召喚し、その証として受け取ったという銀時計。
 
伯爵より■■に送られてより、必要な時は常に手元にあった機械仕掛けの懐中時計。
遥か昔―――本来その概念すら存在しなかった時代から存在する、機械仕掛けのオーパーツ。
 
必要である時に彼の手に渡り、
                       ラルフ・ベルモンドの手に渡り、
必要である刻に動き出し、
                       ■■を止め、■■を止める力に干渉する。
必要である“刻”に彼の懐に存在する。
                       まるで今このときのように。

まるで、そうある事が既に決められていたかのように。
■■を止めるものに抗するように。
その存在の全てが定められているかのような懐中時計が、今また僅かに動いたのである。
そう。まるで今よりこの“刻”、自らが必要であるかのように。
 
 
或いは今この刻、必要とされるものは――――――。
 

273 名前:十六夜咲夜 ◆kiLL.Hxa7E :2010/07/02(金) 02:17:45
>>271

フラン様は吸血鬼である以前にあまりに恐ろしい能力をもっている

常識的な人間にとっては悪夢そのものだろう。
巨大な機動兵器にも畏れず。
その右手を握り締めるだけで乗機が一瞬で破壊されるなど、想像もつくまい。

それを死者なしで時間を稼いだというのだから、
十分に精鋭ぞろいと言う見方もできる。
まぁ、その精鋭を失うのは痛手であろうが。

「ふふ、私はお嬢様にお話しすると言っただけですわ。
 確約でしたらお嬢様からいただくしかありませんわね」

だが、おそらく、大丈夫なんではないかとは思う。
なんだかんだ言ってお嬢様は貸し借りを気にされる方だ。
フラン様の件がある以上、そうそう無碍にはしないだろう。
それに面白がってもいるようであるし……

>>272

「ふふ、少しイイ顔になりましたわね?
 仮面を被って生きるというのは慣れるまでは面倒なものです。
 そして被り慣れてしまえば気にならなくなるというわけでもない」

漸く見せた本性の一端に胸が高鳴る。
二枚とも仮面、いや、あるいはこれも彼の仮面のひとつなのだろうか。

「けど、勘違いをなさらないでくださいな。
 降りかかる火の粉は払うと申しましたが……あれは私へのものだけではありません。
 私の主人に降りかかるならば、払うだけで済むものではありませんわ」

もしその時は火の気の根源すべてまでも滅ぼし尽くそう。
我が主たる不死の王の為に。

「プロ意識とはそういうものですかしらね?」

笑って見せた。

274 名前:十六夜咲夜 ◆kiLL.Hxa7E :2010/07/02(金) 02:18:13

「……と、もうこんな時間ですか」

ふと懐から古い銀時計を取り出し、嘆息する。
もともとはただの散歩のつもりだったのだ。
あまり長居もできない。

「それではすいませんは私はお先に失礼しますわ。
 運命が交差する頃、またお会いしましょう」

カチリ

銀時計が針を刻んだ次の瞬間、
この森のどこにもその不審な元殺人鬼の悪魔の狗の姿は無かったのである。

  <退場>


275 名前:有角幻也 ◆rX9kn4Mz02 :2010/07/02(金) 02:18:58

>>272>>269宛)
 
>>272 
>>268
 
 
「―――――分かった。
 そんな事はどうでもいいと言いたい所だが、この場はお前の言葉を信じるとしよう」
 
 
詰まる所、今はこの時計以外である。
 
有角幻也という男は、己に課した事を忘れるような男ではない。
己で選んだ物事に対し、それが理由もない限り変節するような性格ではないのだ。
一言で言えば―――実のところ、偉く一方向ではあるのだが―――強靭な精神を持っているといえた。
 
そもそも彼が今此処に要るのは、別件なのだ。
例え相手が油断の出来ない相手でも、信用に値すると判断すれば置いておかざるを得なかった。
 
 
「出来る事ならば、軍になど長く居るべきものではないからな。
 ……少なくとも、お前のような男は」
 
 
――――損な性分だ、お前は。
そんなやや呆れた言葉を感情と共に、胸のうちに押し込める。
或いは、そんな性分だからこそなのだろう。
『吸血鬼』に殺されかけて尚、それを友人と言えるのは。
 
 
「ならば見送りは頼む。
 大丈夫なようだが、怪我人は怪我人だからな。
 それと……仕事に困っているようだが此方は助けになってやれん」
 
 
――――その吸血鬼を存分に滅ぼすような仕事ばかりなのでな。
そんな言葉を、またもや押し殺し飲み込みながら。 

276 名前:有角幻也 ◆rX9kn4Mz02 :2010/07/02(金) 02:33:34
>>273-274
 
 
 
        ―――カチリ。



 
その彼女の立ち去る後ろ姿を、停止した世界で見た。
時を放浪する観測者・サンジェルマンの銀時計。
時空における事象を観測するための力を内包するそれは、持ち主の神を超えた能力に等しく。
 
限定的な時間操作と、補助を為す空間操作。
それらが可能とするのは、即ち時間停止とその対抗である。
 

即ち―――――。
十六夜咲夜が自らの異能を以って時間を止めた瞬間。
もう一つの銀時計は“定められていたかのように”発動し、その所有者を停滞の枷から解放したのである。
 

 
「――――無論だ。
 お前の主の事は知らぬが、私の前に立ち塞がる時が来たならばそれを打ち滅ぼそう」
 

彼は知らない。
彼女の主が、かつて邂逅した一族最後の生き残りであることを。 

有角幻也を偽りの名とする、彼は知らない。
互いの運命が交差するとき―――それは彼と紅魔の主との再会を意味することを。
  
 
停止した世界の中で。
今は只、立ち去る彼女を見送るのみ。 

277 名前:有角幻也 ◆rX9kn4Mz02 :2010/07/02(金) 02:37:43
 
そうして―――――
 
  
「ふむ―――――」
 
 
再び時計の停止した世界の中で。
再び時間の動き出した世界の中で。
 
 
「この場合、再就職の伝手を失った……という事になるな」
 
 
当人にとってはどうでもいいと切り捨てられない事を、幻也は呟いた。

278 名前:シロー・アマダ ◆08MSwPc.vs :2010/07/02(金) 02:53:04
>>273

「いや、ホント頼むよ。
 田舎でのんびりと嫁さんと暮らすって言うのもまたいいと思うんだ。
 たとえ吸血鬼の館でもさ」

でもどれだけの身体能力が要求されるんだろうか。
…重力無視は当然?
どうしようか、常識的に俺には無理なんだけど。

「…っと、じゃあな。気をつける必要も無いだろうけど、一応気をつけて帰れよ」

そういって消える友人を見送った。

>>275

「臆病でも、馬鹿みたいな理想を持っていても、それでもやりたいことは軍にあるんだ。
 しょうがないさ、自分の中でケジメをつける戦いなんだから」

何時になったらケジメをつけられるのだろうか。
何時になったら戦いは終わるのだろうか。
何時になったら家族を安心させられるのだろうか。

答えは見えない。
まだ見えない。
ずっとずっと闇の先。微かな光に向かって歩き続ける。
報われるかどうかも分からない淡い航路を行く。

「いやあ、今から警察とか勉強しなおすのもなあ」

時間が取れないや。
片足が無いから採用されるかどうかも分からないし。

「だ、大丈夫だって!あいつを信じるしかないんだよ。
 あれを断られたら俺もっと危ない職種に付く羽目に…」

反政府組織とか。
軍人の就職先にしては酷いものだ。
パイロット不足だからすぐに雇ってくれるだろう、体制テロリストへの抵抗の為に。

「じゃ、あいつも帰ったしおれもそろそろ基地に戻るよ。
 封鎖するんだったらこの道通るのは止めるよ。それじゃあな」

時間を計ってて気づいたこと一つ。
この近道と正規の道、どっちを通ってもあんまり時間が変わらないっていうこと。

【退場】

279 名前:有角幻也 ◆rX9kn4Mz02 :2010/07/02(金) 04:27:32
>>278
 
 
「ああ、悪いがそうしてくれ。
 封鎖指定は一年の予定だが、その間何が起こるか分からんのでな」
  
この男もまた、己の宿命を生きているのだろう。
微かな希望の灯を頼りに進む暗夜航路。それを敢えて往くのもまた、この男の性分か。
  

「……シロー・アマダか」
   
 
幻也は知っている。
帰路に着く男の背は、本来ならば見ることのない光景であると。
彼の知る旅人から聞かされた男の話。それは本来の歴史から外れた男の話だ。
正史という安寧から外れ、尚も茨の道を往く男の話だ。
 
そして、それでもその道を逃げずに進む男の話だ。
間違えても、誤っても、裏切られてもそれをバネにして諦めない男の話だ。
 
 
「本来の歴史を違え、茨の道を敢えて進まんとする者よ。
 それも暗き茨の道を往くものよ」


そして、或いは――――幻也の友が守りたかったような人間の話だ。
 
 
 
「――――願わくば、お前の行く手に祝福あらん事を」
 
 

 

280 名前:有角幻也 ◆rX9kn4Mz02 :2010/07/02(金) 04:28:35
 
 
 
「さて――――」
 
 
かくして。
三日月は落ち、奇術師は消え、人は去った。
残ったのは幻の如き美貌の男只一人。
  
そしてその眼差しの先には、この場に来てより探し求めた解がある。
空間、次元、因果……合切の“ゆらぎ”を孕み、果てには永遠に水無月の明けぬ
場に変異させていたのは他でもない。
 

 


         ――――やはり、“樹”か。



 
雨降り注ぐ深き森。
その中央に屹立する、太古より在る一本の巨木。
水面下で探り続けた“ゆらぎ”の流れは、やはり其の大樹の一点へ集中している。
  
6月を過ぎても、この森で一向に降り止まぬ梅雨の正体。
それこそは正しく、時間の流れすら歪める“ゆらぎ”の仕業であるのは間違いなかった。
その上、危惧されたとおり空間の相が悪化している。
先月にこの森で起き続けた『出来事』の数々が、微々たるものであった“ゆらぎ”に志向性を持たせ始めているのだ。

とはいえ、『出来事』自体は害ではない。
問題なのは、この樹に偶々霊的な力が強く備わっていたか…或いは、誰かが仕組んだかだ。
このまま放っておけば、この樹を中心として周囲は世界の摂理を破壊する『混沌』となる。
 
混沌とは、霊的エントロピーがベクトルすら定まらずに極限化した状態だ。
エントロピーが死滅して奈落と落ちるか、それとも高次の世界と繋がり耐え切れず消滅するか。
或いは、単純に負荷が掛かり空間が崩壊するか。
辿る結末はバラバラだが、いずれも大災害となりうるのは間違いなかった。
 

281 名前:有角幻也 ◆rX9kn4Mz02 :2010/07/02(金) 04:31:45


最も、それほどにまで肥大化するには時間が掛かる。
この場合、厄介なのは『混沌』という状態そのものだ。
例えるならば高度な時限爆弾に等しいそれは解除/封印するのに特殊な経験が必要となる。
すなわち『混沌』を――――一見掴み所のない力の流れを知り、適切な処置を見出せる経験をである。
 
そして、幻也はその『混沌』を経験している数少ない一人だった。
彼が借り出されたのは正にその為なのだ。
  
 
幻也は懐から携帯電話を取り出すと、登録してある端末を呼び出した。
端末は森に面した道路に停めてある専用車両に繋いであり、
此処から他の機関員たちと同時に連絡を取り合うことが出来る。
既にこの森の各地で待機している機関の人間たちと、この為に助勢を頼んだ協力者達だ。
 
 
「――――有角だ。此方の準備は完了した、其方はどうなっている?」
『お疲れ様です、隊長。
 封鎖処置の第一段階、第二段階共に完了。全員、外周の所定の位置で待機中です』
 
車両にて待機している連絡員の報告が響く。
第1段階とは区域内の人払いを指し、第2段階は外周での封鎖維持を意味する。
それが完了したというのは即ち、今この森に居るのは幻也のみだという事だ。
 
「報告が無かったが、喫茶店の方はどうなった?」 
『実家やら本店やらが別にあるとかで、そっちに移るそうです。
 最後まで渋ってましたが、一年の辛抱だからとどうにか説得したようですよ』
「了解した。……四方担当は?」
 
  
『春日一門。南方、配置滞りなく』
『ふむ、この機械に喋るのだな。む…失礼した。西方、千年守が確かに』
『森羅一号。北方の裏鬼門開放、何時でも行けるぞ』
『同じく東方、力任せの二号! わしはいつでもクライマックスじゃぜ!』
『略すな。あと力任せは止めろ』
「そうだな、暴走などしたら目も当てられん」
『ぐぐぐ、謎のツープラトンを発揮しおって。このダブルムッツリめ』
「そんな事はどうでもいい」
『全くだ。 ……済まない、有角。本来ならば、俺達がやるべき仕事なのだが』
「謝る必要はない。今回は私の力が必要だった、それだけの事だ。
 そんな事より、其方は制御に集中しろ。それに……」
『それに?』
「……懐かしい顔にも会えた。気にすることはない」
『…フッ、そいつは重畳だな。了解した、サポートは俺達に任せろ』
『おうよ、わしのバッチリとした魔法で因果地平の彼方までフッ飛ばしちゃる!』
『……因果地平はやりすぎなのではないでしょうか』 
『……うむ、流石にそれは私もどうかと』
『オイィ、わしだけ包囲網完成とかどんなイジメじゃ!?』
  
  
「そんな事はどうでもいい。
 
 
 ――――――始めるぞ、各々の役目に集中しろ」 
 
 
 
かくて森の四方――――四門に配された退魔の者/次元対策のエキスパート達が
駆動する。聖霊の力、霊剣の力、陰陽道の力、仙狐の力。
各々の業によりて高めた力で四方を繋ぎ、災厄の魔と化した“ゆらぎ”を封じる結界とする。
  

そして、


282 名前:アルカード ◆rX9kn4Mz02 :2010/07/02(金) 04:34:29

     ―――――解除術式緊急開放 承認      

 
              ―――――隠微術式 “グラント” 開放
 
 
                      ―――――擬態術式“サイファ” 開放  


                              ―――――拘束術式“ラルフ” 開放

 



                 ―――カチリ。
 
 
三度、懐中時計の歯車が動く。
『伯爵』がとある時空の旅人を召喚し、その歴史の証として受け取ったという奇蹟の魔具。
 
伯爵より彼に送られてよりずっと、彼の手元にあった機械仕掛けの懐中時計。
遥か昔―――本来その概念すら存在しなかった時代から存在する、機械仕掛けのオーパーツ。
 
必要である時に彼の手に渡り、
                       そう、今この時に彼の手に携えられ、
必要である刻に動き出し、
                       歴史を紡ぎ、歴史を乱す力に干渉する。
必要である“刻”に彼の掌に存在する。
                       まるで今このときのように。
 
まるで、そうある事が既に決められていたかのように。
世界を壊す要因を否定するように。
その存在の全てが定められているかのような懐中時計が、今また確かに動いたのである。
そう。まるで今よりこの“刻”、自らが必要であるかのように。
 
 
そして今この刻、必要とされるものは――――――。
 
 
 
 
 
 

 


              ――――― 偽典拘束術式クロムウェル・フェイク―――――  
 
 
 
 

 
 

283 名前:◆rX9kn4Mz02 :2010/07/02(金) 04:37:11
 
 
 
  
 
 

   かくて、この森の歴史は一度終わる。
      
   願わくば、次なる交差まで静寂と安寧が支配せんことを。
 
         
  【梅雨限定】雨降りしきる森の中【雑談スレッド】 -終-
 

284 名前:停止しました。。。:停止
真・スレッドストッパー。。。( ̄ー ̄)ニヤリッ


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