■ Eastern Front 41-45

1 名前:◆xkRFenrirg :2010/02/09(火) 02:46:55


             総統兼国防軍最高司令官
 
 
            総統大本営1940年12月18日
        OKW/WFSt/Abt.L(I)Nr.33 408/40g/K.Chefs


                総統指令第21号
            ――――――――――――― 
                《バルバロッサ作戦》
 
 
ドイツ国防軍は、対英戦終了以前にも、ソ連邦を電撃戦により打倒する準
備を進めるべし(バルバロッサ作戦)。 
 
最高指導部は、次の原則に基づいて準備するものとする。
 
I 全般構想
 ロシア西部のソ連軍を、装甲兵力の大胆なる使用により殲滅し、戦闘力
を有する敵軍が奥地へ後退するのを阻止すべし。
 しかる後、急追によりソ連空軍がわが領土の攻撃を不可能ならしむる線
に到達する。 作戦の最終目的は、ヴォルガ=アルハンゲリスクの線でロシ
アのアジア部を分離することにある。 それにより、必要とあらばウラル周辺
のソ連最後の工業地帯を空軍によって無力化できる。
 
II 予定される同盟国とその任務……省略……
 
III 作戦指導
A 陸軍(余に提出された計画を承諾した上で)
 プリピャチ沼沢地によって南北に二分される作戦地域において、北半分
に作戦重点を置くものとす。 ここには2個軍集団を充当の予定。
 この2個軍集団の南側の軍集団(訳注・中央軍集団を指す)は全戦線の
ほぼ中央部に位置し、特別に強力な装甲・機械か部隊をもってワルシャワ
周辺およびその北部より進撃、白ロシアの敵兵力を撃滅すべし。 これによ
り快速部隊の大半を北方に転じ、東プロイセンよりレニングラード方面へ
作戦する北方軍集団と協力させ、バルト地域の敵兵力を壊滅させる前提を
作為するものとす。 この任務を達成し、レニングラード、クロンシュタットを
占領した後に、交通の要衝にして軍事的中心たるモスクワ占領作戦に移
行すべし。
 ソ連軍の抵抗が予想外に弱く、壊滅した場合にのみ、両目標の同時攻撃
を行うのもとする。
 プリピャチ沼沢地南方に配置された軍集団は、ルブリンよりキエフにいた
る地域に主攻撃を指向し、強力な装甲兵力を持って敵軍側面と背面を衝き、
ドニエプル流域にて撃滅すべし。
 
プリピャチ沼沢地南方もしくは北方の戦闘に勝利を収めた後の、戦火拡
張の目標は左のごとし。
 南部では経済的に重要なドネツ盆地の速やかなる占領。
 北部ではモスクワへの進撃。
 モスクワ占領は政治的、経済的に決定的効果をもたらすほか、鉄道網を
麻痺させる効果を生む。
 

アドルフ・ヒトラー


2 名前:◆xkRFenrirg :2010/02/09(火) 02:47:51
■本スレッドのルール
 
・本スレッドは1941−1945年の東部戦線を舞台とした個人スレッドです。
 
・本スレッドには如何なる政治的、差別的な意図もなく、スレッドの運営者はナチズムを信奉しておりません。
 スレッド内にて差別的であったり政治的な内容を含む表現があるかもしれませんが
 それらは東部戦線の状況再現のための演出であり、それ以上の意味は持ちません。
 ご了承ください。
 
・越境、クロスオーバーについて。
 本スレッドは1940年代の東部戦線を主題としています。
 別時代やフィクション世界の方々の話題や他スレから越境してのご来客には
 返答を控えさせていただく場合があります。 予めご了承ください。

 
■練習・実験スレッド2での記録

開戦前夜
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1119806484/909-910
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1119806484/915
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1119806484/918-921
 
ちいさなできごと
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1119806484/930-931

勝者と敗者と
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1119806484/932-933


3 名前:◆xkRFenrirg :2010/02/09(火) 02:48:24
 傾注せよ! 戦友諸君! これより状況説明を行う。
1941年6月22日0315時、わがドイツ国防軍は共産主義の脅威から全ヨーロッパ文明を救うため
対ソ侵攻を開始した。 総統指令第21号 「バルバロッサ作戦」である。
作戦部隊は三個軍集団、兵員数は述べ三百万人に及び、文字通りの史上最大の作戦となった。
各軍集団の作戦目標は以下の通り。
 北方軍集団はメーメル河を渡河、バルト三国のリトアニア、ラトビア、エストニアを経由して
ソ連第二の都市、旧ロマノフ朝の都にして革命の聖地とされるレニングラードの占領を目指した。
 二個装甲軍を含む最大の戦力を持った中央軍集団はブレスト、ヴィルナ、スモレンスク地域の
ソ連軍を撃滅、その後首都モスクワの占領、及び更に北や東への展開を目標とした。
 そして南方軍集団はガリチアと西ウクライナ、ドニエプル前面のソ連軍を破り、ウクライナの中心
キエフを占領、更に東進しドン河口ロストフを目指すこととなっていた。
 
 その後の経過については、周知の通りだ。
ブレストからミンスク、スモレンスク、そしてブリヤンスクと我々は踏破してきた。
今、我々はソ連の首都モスクワの門前にいる。
もう三千キロを後にしてきた。 前にはあと百キロ、あと百キロのみだ。
あと百キロでクレムリンに達するのだ!前進だ! 前進せよ!
戦友諸君の一層の奮励と努力に期待する! 解散!


4 名前:エアハルト・ハーゲン ◆xkRFenrirg :2010/02/09(火) 02:49:35
>>3
 急造の基地となった名も知れぬ小さな寒村。
11月始め、ロシアの大地では白い冬が世界の半ば以上を支配しつつあった。
数週間前には初雪が降り、粗末な道路を泥沼に変える原因となった。
泥道はドイツ軍の足を絡めとり、進撃を鈍らせる恐るべき敵だった。
夏には一日で50キロは前進できたのに、今は日に数キロがせいぜい。
 中隊長の声は疲労と寒さとで、やや掠れ気味。 吐く息が白い。
忌まわしい、まとわりつくような寒さ。
雲は低く垂れ込め、冷たい北風が容赦なく皆の顔を打つ。
 中隊長が胸郭から熱狂を絞り出してどうにか訓示が終わる。
それは同時に靴底から伝わるねっとりとした泥の感触からの解放を意味していた。
ハーゲン軍曹は、ほっとしながら急ぎ足で自分の突撃砲の元へと戻る。
頭上からは、ちらちらと白い雪が降り始めていた。 この分ではまた積もるだろう。
そして一段と寒さが増すのだな。 誰もがそう悟って身震いした。

 
「どうだ、調子は?」
 
「エンジンは正常。 電装品、無線機もまあ正常。
 砲と照準器も問題はありません。
 ですが……」
 
「わかっている。 オットーとハーマンはもうすぐ届くそうだ。
 それまでにフェンリアの調子は完璧にしておけ。
 補給が出来次第、いつでも出られるようにな」
 
 ここ一ヶ月あまり、もう何度も繰り返されたおなじみの会話。
泥濘と化した道路にパルチザンの襲撃、そして広い履帯で泥の中を突進してくるT-34戦車が
ただでさえ伸びきったドイツ軍の補給線を滅茶苦茶にしているのだ。

「しかし、このままではいかんな。
 雪の中にこの色は、目立ちすぎる。 的にしてくれと言っているようなものだ」
 
 ハーゲンは突撃砲の車体を拳でコンコンと叩きながらごちた。
開戦から今日まで苦楽をともにしてきた愛車「フェンリア」は、雪の中をじっと無言で構えていた。
白一色に染まりつつある世界の中では、暗灰色の姿は数キロ先からでも発見されるだろう。
軍の規定では、冬期は車両を白色の塗料で塗り変えることになっているが、
最優先で届けられるべき燃料と弾薬ですら満足に届かないこの状況では、塗料などとてもとても。
 
「軍曹、いいものがありますぜ」
 
 操縦士のハンスがそう言って小さな小箱を差し出してきた。
中に詰まっているのは何本もの白い棒状の物体。
それが学校の黒板で板書に使うのと同じ白墨だと気づくのには、数瞬の時を要した。
 
「……白墨、か。
 ハンス、いったいどこでこんなものを」
 
「そこの農家の暖炉に置いてあったんですよ。
 ロシアの農家じゃ暖炉のすす汚れをこいつで塗り隠すんだそうで、
 どこの家でも置いてあるんだそうです。
 暖炉が塗れるんなら戦車だって塗れるでしょう。
 ま、見てくれは悪いでしょうがね。 それでも雪の中を真っ黒なままでいるよりはマシでしょう」
 
 なるほど、たしかに。
白墨はどうせすぐに落ちてしまうだろうが、一時しのぎにはなる。
敵に発見されるか否かは、生死に関わる問題だ。 見てくれなど気にしてはいられない。
 
「よし、ハンス。 ありったけの白墨を集めて来い。
 残りの者は化粧直しだ、急げよ!」
 
 車長の号令が飛び、男たちが動き出す。
かくして突撃砲「フェンリア」は、乱雑に引かれた無数の白線で冬化粧を整えることになった。


5 名前:名無し客:2010/02/09(火) 04:33:37
遺言はきちんと書いて来たか?

6 名前:名無し客:2010/02/09(火) 04:37:24
補給も滞りつつある現状、負傷兵の交代等は満足に出来てるの?

7 名前:名無し客:2010/02/09(火) 18:21:18
ボルシェビキなの? ボリシェヴィキなの?

8 名前:名無し客:2010/02/09(火) 20:11:41
冬になる前にたどり着きたかったですねー。

9 名前:名無し客:2010/02/09(火) 20:26:33
くそっ、この寒さじゃ黒パンもかじれやしねぇ!

10 名前:名無し客:2010/02/09(火) 21:19:47
聞けば開戦予定日は最初はもっと早かったそうじゃないですか。
全く、開戦が遅れてなければ今頃クレムリンに我が軍の旗が翻っていたでしょうに。

11 名前:エアハルト・ハーゲン ◆xkRFenrirg :2010/02/11(木) 03:01:41
http://charaneta.sakura.ne.jp/ikkoku/img/1265651215/11.gif (73KB)
III号突撃砲B型

全長:    5.40m
全幅:    2.95m
全高:    1.96m
全備重量: 22.0t
乗員:    4名
エンジン:  マイバッハHL120TRM 4ストロークV型12気筒液冷ガソリン
最大出力: 300hp/3,000rpm
最大速度: 40km/h
航続距離: 165km
武装:    24口径7.5cm突撃加農砲StuK37×1 (44発)
        7.92mm機関銃MG34×1 (600発)
        9mm機関短銃MP40×1
装甲厚:   11〜50mm

12 名前:エアハルト・ハーゲン ◆xkRFenrirg :2010/02/11(木) 03:02:22
 正午が過ぎてから数時間後、陽が大分傾いてきた頃に待ちに待った燃料と弾薬が届いた。
定量にはほど遠い分量だが、それでも何もないよりは遥かにマシだ。
補給部隊の連中の話では、この寒さで道路が凍結を始め、車両の通行が可能になりつつあるらしい。
硬化した戦線の大動脈は再び動き始めたのだ。
よし、いけるぞ、モスクワへ。 スターリンの顔をこの目で見てやろうじゃないか。
降りしきる雪と寒風の中、既に中隊の人数は定数の半分近くまで減っていたが、皆やる気だった。
目指すはモスクワ、クレムリン。
赤い帝国の心臓まで、残すはあと百キロメートル。
   
 
 
>>5 遺書とか遺言
 
 補給屋は燃料と弾薬以外にも、もう一つ嬉しい贈り物を届けてくれた。
トラックから降ろされたのは一抱えほどの大きさの布袋。 野戦郵便局のマークが入っていた。
待ちに待った故郷からの手紙。
郵袋の口が開かれると、あちこちから兵士たちがわっと群がってきた。
数千キロの彼方から送られてきた一枚の紙切れは、疲労と憔悴を吹き飛ばす最高の援軍だった。
 
  
「女房が無事に子を産んだ! 男の子だ!」
 
「うちの娘が似顔絵を送ってきたぞ! 見ろよ! 大した芸術家ぶりじゃないか 」
 
「エベリン… 無事でよかった……」
 
 あちらこちらであがる歓喜と感涙、そして自慢話。 仮借ない戦場でのひと時の安らぎの時間。
 だが、ささやかな幸福は、そう長くは続かなかった。
運命の女神はロシアの天気同様にきまぐれだ。
それまで降り続けていた雪が止み、雲の切れ目から残り僅かな西日が差し込んできたその時だった。
 
「空襲警報!」
 
 誰かが叫ぶのと、上空から爆音が迫ってきたのはほぼ同時。
蜘蛛の隙間から現れた二機の地上襲撃機。 主翼に赤い星のマークをつけた二組の黒い死が襲いかかる。
浮き足立って蜘蛛の子を散らすように逃げ惑うドイツ兵たちを7.62ミリの殺意が容赦なく舐め回し、薙ぎ払い、蹂躙した。
憩いのひと時は一転して惨劇の場へと変じ、この日新たに五つの名前が戦死者リストに加わった。
 
「こいつは……」
 
 運良く死神の腕から逃げ仰せたハーゲンが拾ったのは、雪と泥、そして生々しい鮮血に塗れた一葉の写真。
持ち主の妻と思しき女性は、小さな女の子を抱きかかえて笑っていた。
母と子と、二つ揃った笑顔の上には、辿々しく幼い文字で“大好きなパパへ”。
 
「………」
 
 ハーゲンは、道の片隅に並べられた五つの死体の傍らに血塗れの写真をそっと置き去った。
せめて、同じ場所に一緒に埋めてやるために。
誰がこの子の父親だったのか、誰がこの母子に父親の死を伝えるのか。 
そして、この不幸な家族が交わした最後の言葉はなんだったのか。
ハーゲンにはわからなかったし、知る術もなかった。


13 名前:エアハルト・ハーゲン ◆xkRFenrirg :2010/02/11(木) 03:02:47
>>6 負傷兵の交代、後送
 
 日が暮れて、再び雪が降り始めた。
空からの招かざる客は去り、物資を運んできた輜重部隊も後方へと引き上げていった。
残されたのは、まだ戦える者ともの言わぬ死体となったものだけだった。
臨時の野戦病院となって重傷者を詰め込んでいた農家はもぬけの殻となっていた。
先ほど引き上げていった補給部隊が、中隊長のささやかな懇願を受けて
空になった荷台に負傷者を載せられるだけ載せていったのだ。
果たして彼らのうち何人が後方までもつのだろうか。
だが、後方のまともな病院にいけるという希望が持てただけでもましというものだ。
あの農家の中で、後送を願いながら死んでいった者たちは今、街道沿いの冷たい土の下に眠っている。
 

「車長と分隊長は集合せよ!」
 
 呼集命令。 積もりだした雪に足を取られぬよう、注意しながら駆け足。
指揮所として使われている元村長宅へ。
明々と燃え盛る暖炉の前、粗末な木製の机には、信頼性皆無なソビエト製の地図が広がっていた。
冷たくかじかんだ手指を暖炉に向けながら、ハーゲンは集まった人間の数を数えてみた。
 
 また、減った。
先ほどの空襲で命を落としたものの中には、歩兵部隊の分隊長が含まれていたらしい。
櫛の歯が抜け落ちるように減っていく戦友たち。
彼らの代わりとなってハーゲンの隣に立って戦う者は、いない。


14 名前:名無し客:2010/02/11(木) 06:07:50
くそ!空軍は何をしてるんだ!あのデブ元帥閣下はよぉっ!

15 名前:エアハルト・ハーゲン ◆xkRFenrirg :2010/02/11(木) 07:28:23
 「微速前進、僚車を見失うなよ!」
 

 操縦手に向かって、咽頭マイク越しに指示を出す。
既に十分に暖まったエンジンが、ひと際大きな唸り声を上げる。 
履帯が凍り付いた大地をしっかりと踏みしだき、鋼鉄の獣はゆっくりと前進を開始した。

 時刻はちょうど午前四時を回った頃。 夜明けは、まだ遠い。 
暗闇の中、昨夜の会議の内容を反芻。
 夜明けとともに全戦力で前方のソ連軍陣地への攻撃開始、これを粉砕して突破する。
待ちに待った攻撃命令。
よし、イワンたちに朝の一杯をごちそうしてやろうじゃないか。
そのためには、こうしてまだ暗いうちから行動を開始する必要があった。
 
 ハーゲンは、ハッチから身を乗り出すと前方を行く僚車の微かな尾灯の灯りを追った。
あの小さな灯りを見逃してはならない。
あの僅かな灯りだけが自分たちを敵陣に導く道しるべなのだ。
 
 氷点下の空の下、冷たく身を切る風にガタガタと震えながら、ハーゲンはある男の名前を思い出していた。
 
「アナートリィ・ゴロドク、か」
 
 その名前を初めて聞いたのは、ブリヤンスク戦のすぐ後だった。
一人の中尉がハーゲンを呼び止めて、奇妙な質問をしてきたのだ。
 
「ハーゲン軍曹、君の兄弟にロシアに養子にいったものはいるかね?
 アナートリィ・ゴロドクというんだが」
 
「いえ、自分はハーゲン家の上から三番目ですが、誰も養子に行ったものなどいませんよ」
 
 ありのまま、そう答えると中尉は地団駄を踏んで悔しがった。
くそ、だまされた! 逃げた捕虜に君と兄弟だと言い張るのがいた!
きっと我々の放送を聞いたんだ! 余計な時間をとらせやがって! くそ!くそ!くそ!
 
 ひとしきりの悪罵を吐ききると、中尉はさっさと引き上げていった。
後には、事態を理解しきれずに困惑するハーゲンがぽつりと一人。
 
 こいつはいったい、どういうことだ。
中尉の言うように、放送を聞いて俺の名を知ったというのはわかる。  
だが、何故俺なんだ。 何故兄弟を名乗るんだ。 わけがわからない。
そのゴロドクという男は、何を考えてやがるんだ。(ろくなことではないのは確かだが)
以来、ゴロドクの名は、得体の知れない薄気味悪さとともにハーゲンの脳裏に刻まれることとなった。 
そして、事あるごとに不吉な呪文となって記憶から掘り起こされてくるのだ。
たとえば、今、こんな時に。
 
 
「えぇい、くそ。 顔も知らない男のことがこうも気になるとは。 何か悪いものにでも魅入られたか。
 ゴロドクだかごろつきだか知らんが、もし出会ったらただじゃ済まさんぞ」
 
 いつまでも止むことのない寒風。 こんな薄手のコートで凌げるような代物ではない。
凍えながらハーゲンは、未だ見知らぬアナートリィ・ゴロドクに向かって悪態をついた。
思い出したのが、ララ・アンデルセンならよかったのに。 
 
 
>>8 冬になる前に
>>10 作戦開始の遅れ
 
 東の空が僅かに白み、遅い夜明けの兆しを告げ始めた。
行程は、まあまあ順調。 少なくとも地雷を踏んだり道に迷ったりはしていない。
白く開けた雪原の向こう側にはソ連軍の陣地線。
攻撃開始まで、あと僅か。 
 
「しかし、冷えますね。
 出来ればこんな季節になる前にたどり着きたかったものです」
 
 装填手が赤く膨れ上がった鼻をひくつかせながら言うと、伍長の徽章をつけた無線手が続けた。
 
「まったくです。
 聞けば開戦予定日は最初はもっと早かったそうじゃないですか。
 全く、開戦が遅れてなければ今頃クレムリンに我が軍の旗が翻っていたでしょうに」
 
 昔から、伍長は戦場の秘密を嗅ぎ分けると言われている。
彼らはどこからともなく、ありとあらゆる噂を聞きつけ、そして発信する。

 
「なに、まだ間に合うさ。
 赤旗を引きずり降ろして俺たちの旗を立ててやろうぜ」
 
 車長として、ハーゲンは会話のしんがりを取って締めくくった。
わが軍の旗。 俺たちの旗。 赤と白と黒の三色の国旗。
防空識別のためにと機関室の上面に被せられた祖国ドイツの旗。
数千キロぶんの埃と数ヶ月もの間の日差しに曝された鍵十字の旗は、
色褪せ、ところどころ擦り切れ始めていたが、見るものに対して強固にその存在を主張していた。

16 名前:名無し客:2010/02/11(木) 09:58:26
III号戦車とIII号突撃砲の違いって何?

17 名前:名無し客:2010/02/11(木) 19:56:14
>>1000を迎える頃には終戦していると良いですね。

18 名前:名無し客:2010/02/11(木) 20:44:09
「魔女の呪い」のほかにも「中村の呪い」なんてのがあるみたいですね。

19 名前:名無し客:2010/02/11(木) 21:44:31
こんな寒くて住み辛い所、占領してどうするんですか?

20 名前:名無し客:2010/02/11(木) 22:41:53
チェキストめ

21 名前:アナートリイ・ゴロドク ◆CCCPrT.vPo :2010/02/13(土) 05:34:51
練習・実験スレッド2
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1119806484/929
>同志の事は本当に同志だと思って同志と呼んでいるのですか?

 
「うむ、いい出来だ」
 
 ソビエト=ロシア近代芸術アカデミー大祖国戦争会派の最前衛に属する
アナートリィ・ゴロドク画伯は、出来あがった作品を前に満足げに頷いた。
T-34戦車という鋼鉄のキャンバスに書かれた作品名は「報復」
降雪に合わせて乱暴に塗りたくられた白ペンキの上。
真っ赤な字で書かれた物騒な文句。 否応無しに目に留まる。
 単純にして、明快。 我ながら会心の作だ。 
周りにいる他の戦車に書かれた文句を見てみろ。
「祖国のために」「スターリンのために」「母なるロシアのために」
一番目と三番目は悪くないが、いずれも冗長に過ぎるだろう。
芸術とは、こう、シンプルであるべきだ。 そうだろう。
これであの憎いハーゲンのやつめの死体があれば完璧なのだが。
 
「<報復>号か。 悪くはないな、同志ゴロドク。
 だが、少々単純素朴にすぎる気もするがね」
 
 刷毛とペンキの入った缶を片付けていると、居丈高な政治委員がやってきた。
頼みもしない論評。 うるせぇ。 黙ってろ。
大佐だかなんだか知らねぇが、こいつも党の犬っころだ。
一度そのご大層な階級章なしで勝負してみろってんだ。 ゴクリ。
口をついて出かかった悪罵を飲み下すと、ゴロドクは精一杯の真面目さを振り絞って答えた。 
 
「はい! この傷跡に誓って自分はファシストを必ずや打ち砕いてみせます。
 ソビエト人民の怒りを思い知らせてやります」
 
「なるほどな。 そういえば君は一度負傷しているのだったな。
 あの激戦の中を生きて帰ってきた手腕に期待させてもらおうか。
 文学的な才能はともかく、な」
 
「はい。 それでは同志政治委員どの、ペンキの後片付けがあるのでこれにて失礼を」
 
 適当に理由をつけて会話を打ち切ると、ゴロドクはむっとした顔つきのままその場を立ち去った。
ええい、むかっ腹が立つ。 ウォッカでもやってすっきりするか。


22 名前:アナートリイ・ゴロドク ◆CCCPrT.vPo :2010/02/13(土) 05:36:03
>>7 ボルシェビキなの? ボリシェヴィキなの?
 
「……で、1917年の革命でボリシェヴィキ主導のソビエト政府が樹立してだな」
 
 粗末な丸太小屋に設けられた食堂では、どこぞの隊の兵士が熱心に歴史の教鞭を振るっていた。
生徒はウラルの向こう側から徴兵されてきたであろうアジア系の兵士たち。
とりあえず話を聞いてはいるようだが、そもそもこいつら、ロシア語を理解しているのだろうか。
おまけに教師の方も訛りが酷い。
ありゃあ南のロストフかドニエプルのあたりの訛りだな。 いや、それともクリミアかもしれん。
モスクワ流の綺麗なロシア語なら、そこはボルシェビキと発音するところだが。
 
「ま、どちらにせよ魔女のバアさん並にタチが悪い代物だってことに変わりはないがな」
 
 少し離れたテーブルで、ゴロドクは一人そう呟くと、ウォッカの杯を呷った。
うむ、旨い。 革命前も革命後も、ウォッカはいつだってロシア人の最大の友だ。
これぞ子々孫々に伝えるべき歴史の真実というものだ。

 近代史の授業は当分終わりそうにない。
即席の歴史教師は、今度はツァーリが如何に悪辣に労働者と農民から搾取していたかについて
義憤に溢れた口調で長々と語り始めた。 この調子では晩飯の時間になっても終わりそうにない。
 フン。 勝手にしやがれ。
 
  
>>9 この寒さじゃ黒パンもかじれやしねぇ!
>>18 中村の呪い
 
「歯ぁ食いしばれぇ!ゴルァ!」
 
「ヒィ!」
 
 窓の外、食堂の裏手であがる叫び声。 続いて何かが壁にぶつかる鈍い音。
どん、がしゃん。 そして静寂。
 
 やれやれ、またか。
隣の小隊長のサトビッチの野郎、またナカムラーエフを苛めてやがる。
今回の私刑執行の理由はなんだ、おい。
この前は持ってきた黒パンが冷えていたのが気に入らねえ、だったか。
その前はたしか磨いておくように命令した靴に泥がついていた。
その前は訓練中にビビって戦車の中で小便を漏らした。
更にその前は単に目つきが気にくわねぇから。
その前は、その前は……
 
 まぁ、いいさ。 俺には関係のないこった。
サトビッチは後ろから飛んでくる銃弾に気をつけ…いや、待てよ。
 
「おい、水を一杯よこせ」
 
 何やら閃いたゴロドクは、カップ一杯の水を持って裏手へと向かう。
 
 雪の積もった食堂の裏手、陽当たりの悪い一角。
先ほど殴り飛ばされたナカムラーエフが自分の血と反吐に塗れた姿で倒れていた。

「くそっ、いつか殺してやる……」

 まだ立てないのだろう。
踏みつぶされたカエルのように手足をヒクヒクさせながら涙混じりの怨嗟の声があがる。
 
「おい、立てるか。
 ……よし、大丈夫のようだな。 次はこいつで口をゆすげ」
 
 普段見せないような優しさと思いやりをもって、ナカムラーエフを助け起こすゴロドク。
無論、本気の善意などではない。
周りの兵士たちに、自分は寛容な上官だと見せつけるという思惑あってのことである。
後ろから飛んでくる銃弾から身を守るには、こうして日頃から点数を稼いでおくことだ。
 
「ゴロドク軍曹……
 あ、あ、ありがとうございます」
 
 よし、効果覿面。 ナカムラーエフのやつ、感動にむせび泣いてやがる。
周りの皆もよく見ておけよ。 誰が本当に理解ある上官なのかをな。
 
「さあ、口をゆすいだら持ち場に戻るんだ。
 今度はヘマするんじゃないぞ、いいな」
 
 肩に手を乗せ、励ましの言葉をかけてやる。
少々クドいかもしれんが、演出はわかりやすいほうがいい。
 
「ゴクゴク… ほ、本当にありが……ぶぇっくし!」
 
 くしゃみとともに発射された水と血と反吐が、ゴロドクを直撃。
狙い済ましたかのような最悪のタイミング。 くそ。魔女のバアさんが笑ってやがる。
 
「…あ、すいません。 今すぐ拭きますんで。
 ええと、拭くもの拭くもの……」
 
 慌てて取り繕おうとするナカムラーエフ。
だが、時既に遅し。

「てめぇ! 歯ぁ食いしばれ!」
 
「ヒイィ!!」
 
 その日二度目の鉄拳制裁が下されたのは、きっちり二秒後のことであった。


23 名前:名無し客:2010/02/14(日) 00:12:55
「HERHER」「BAGOOOOM」「DOKOKOKO」「ZIPZIP」などの音を自在に鳴らせなられない奴は
東部戦線に参加できないって本当ですか?

24 名前:名無し客:2010/02/21(日) 09:17:35
たしかに命中したのに……なぜだ!

25 名前:名無し客:2010/02/21(日) 14:10:05
奴らはいったいどれだけの予備人員を抱えてるってんだ……。

26 名前:名無し客:2010/02/28(日) 02:39:20
「たたかいは創造の父、文化の母である」というスローガンについてどう思いますか?

27 名前:名無し客:2010/03/04(木) 00:49:28
第三帝国の優しい掟を教えてください。

28 名前:エアハルト・ハーゲン ◆xkRFenrirg :2010/03/11(木) 03:57:01
 夜明け前。 裸になった樹々がまばらに立ち並ぶ小さな林の中。
薄闇の中で息を殺し、じっと時計を睨み続ける。 短針はもうすぐ七から八を指そうとしている。
そろそろ、時間だ。
そう思って頭上を見上げたのは何度目だったろうか。 きゅるきゅると、大気を切り裂く不気味な音がハーゲンたちの頭上を越えていった。
後方の砲兵陣地からの準備砲撃。 ソ連陣地に襲いかかる無数の砲弾、そしてロケット弾の群れ。
着弾。 爆発。 そして衝撃と振動。 装甲と履帯越しに伝わってくる戦場の律動。
鉄と炎が奏でる戦争の序曲はやや簡素。
いつもなら伴奏として添えられる急降下爆撃機のサイレン音は響かない。
それでも数日来の念入りな観測と計算は、正確に死と破壊のプレゼントをイワンどもの頭上に送り届けてみせた。
イワンたちは今頃怒り狂って歓迎の支度を整えていることだろう。

 
「突撃砲、前進(マールシュ)!」
 
 無線封鎖解除。 インカム越しに前進の号令が下る。
攻撃開始の信号弾。 氷点下二十度の寒風が吹き荒れる中、攻撃部隊は一斉に動き出す。
雪を泥を掻き分けて進む車両群。 その傍らを低い姿勢で飛び出していく歩兵たち。
到るところで銃撃と砲撃の音が鳴り響き、手榴弾が炸裂する。

 砲隊鏡の向こう側、レンズの中で東の地平線の彼方より太陽がゆっくりと顔を出し始める。
長い夜の闇がようやく重い腰を上げ、光に道を譲る時間。
白く積もった世界に朝焼けが紅と黄金で束の間の彩りを添える。
朝焼けの中に浮かび上がる鋼鉄の車体と兵士たち。 そしてイワンたちのトーチカや鉄条網、対戦車障害物。
これらは皆、モスクワの女子供が建設したものだという。
イワンたちもいよいよなりふり構わなくなってきたということか。
 
「A(アドラー)からF(フェンリア)へ。 右翼から敵陣地を攻撃せよ。」 

「F号車了解! 右翼からイワンを攻撃する!
聞いたなハンス。 右に二時、あの鉄条網を突き破るまで前進!
工兵の仕事を減らしてやれ!            
ゲオルグは榴弾を装填。
ハインツ、前方のトーチカが見えるな? 鉄条網を越えたら撃て!」
 
「ヤボール(了解)!」
 
マイクロフォン越しに飛ぶ命令と力強い返事。
今日まで生き残って来た歴戦の乗員たちは皆、車長であるハーゲンの指示に手足のように応えてみせる。
ミンスクで。 キエフで。 ブリヤンスクで。
同じ戦場を駈け、同じパンを食い、同じ夜空の下で眠った戦友たち。


 更に前進。 ハーゲン車の接近に気づいたトーチカのマキシム重機関銃が装甲板をひっきりなしに叩き始める。
鋼鉄と鋼鉄がぶつかり合う甲高い音。 誰も気にしない。
この程度では、突撃砲の前面装甲は破られはしない。
魔狼の名を冠した突撃砲は、橙色の尾を引く曳光弾の中を悠然と進む。
  
「よし、停止! あの発砲炎を狙え! フォイエル!」

 指示の後、照準を狙い定める僅かな間隙。 そして撃発。
衝撃と轟音が車内を揺らし、白い発砲煙と煤が視界を染める。
後退した砲尾が空薬莢を吐き出すのと、命中した砲弾が閃光と轟音を巻き上げるのはどちらが先だったろうか。
これまで幾度となく繰り返されて来た死と破壊の儀式。
それは皮肉にも、自分たちがまだ生きていることの照明でもあった。

 排気装置が全力で硝煙を車外へ排出し、視界が回復する。
照準器越しに無残に吹き飛ばされ、崩れ落ちたトーチカが炎と煙をあげているのを確かめると、
ハーゲンは次の獲物を屠るために再度の前進を操縦手に命じた。
喰らうべき獲物はまだ到るところにいる。 魔狼の狩りはまだ始まったばかりだった。


29 名前:エアハルト・ハーゲン ◆xkRFenrirg :2010/03/11(木) 03:58:46
>>14 くそ!空軍は何をしてるんだ!あのデブ元帥閣下はよぉっ!
 
 「くそ!空軍は何をしてるんだ!あのデブ元帥閣下はよぉっ!」
 
 三つ目の火点を潰した時に砲手のハインツが喚いた。
何よりも危険なラッチェ・バムを備えた大型のベトンは、破壊するのに貴重な弾を三発も使わなければならなかった。
電撃戦の教本に従えば、、あのような頑強な抵抗拠点を潰すのは、本来ならゲーリングご自慢のスツーカの役目だ。
だがこの日もその次の日も、ルフトヴァッフェが上空にその姿を見せることはなかった。
氷点下数十度という恐るべきロシアの寒気の前に、精巧なドイツ製航空機のエンジンは凍り付き、機銃も発射できなかったのだ。
出撃前の打ち合わせで空軍の連絡員が申し訳なさそうにそう言っていたのを思い出す。
ハーゲンがそのことを話して宥めたが、ハインツは納得せず、激しい口調で反論して来た。
 
「イワンどもは平気で飛んでいますぜ。 こいつはどういうことなんですかい?」
 
 そう、彼の言う通りなのだ。
ルフトヴァッフェが身動きできない酷寒の空を、ソ連空軍は我が物顔に飛び回っている。
開戦以来ドイツ側が保持していた制空権は今やイワンの手に渡っていた。
頭上を好き勝手に飛び回り、攻撃してくる赤い星をつけた地上襲撃機は
ドイツ軍将兵にとって、T−34戦車やラッチェ・バムと並ぶ疫病神となっていた。
戦車や突撃砲といった装甲車両は、概して上空からの攻撃には無力なのだ。
  
「さぁな。 イワンどもは飛行機にもウォッカを飲ませてるんじゃないのか?
 おかげで飛行機もへべれけになって飛べる気になるんじゃ……」
 
 軽口でハインツの疑問を受け流しながら、ハーゲンは外の様子を見るべく天井のハッチを開き、
身を乗り出しかけたところで絶叫した 
 
「いかん! 黒死病だ! トーチカの陰に隠れろ!」
 
 履帯が外れかねない勢いでの急発進。
突撃砲が炎と黒煙を噴き上げ続けるソ連のトーチカの陰に身を隠した直後、
地表すれすれに飛来してきたソ連機の銃撃が地表を舐めとっていった。
 
 
「…いってしまったようだな。 よし、戻せ」
 
間一髪、危機を脱した一同。 ほっとした空気が車内を支配する。
危機から逃れる過程で履帯が地面でも岩でもない、何かもっと柔らかいものを幾つか踏み潰していったようだが、
それについては、誰も口にはしなかった。


30 名前:◆CCCPrT.vPo :2010/03/11(木) 04:02:57
>>29
 
 地上のドイツ軍戦車に一掃射を加えたエフゲニー・コーズィレフは、
愛機イリューシンIl-2の搭乗席で嗜虐的な笑みを浮かべていた。

 ふん、ナチの豚どもめ。 地面を蟻んこのように這い回っていやがるぞ。
恐怖の中で悶え死ぬがいい。 まだ弾も燃料もたっぷりと残っているんだ。
さっきの獲物は煙が邪魔で撃破を確認しきれなかったが、まあいい。
戦果報告には敵戦車一台撃破と載せておこう。  
さあ、次はどいつを狙ってやろうか。
  
 僚機と共に上昇し、高度をとると、獲物を探す猛禽のようにゆっくりと旋回して地上を探る。
夏場ならたちまちナチのメッサーシュミット機がやって来て食い物にされるであろう無謀な飛行。
なに、構うものか。
ファシストの空軍はロシアの冬の空を飛ぶ方法をまだ知らないでいる。
凍り付いたエンジンを焚き火で暖めればいいし、機銃を発射できるようにするには
凍結の原因であるオイルを落としてしまえばいい。
そして不凍液の代わりには、ウォッカを使う。
フィンランドとの冬戦争で得た冬の空を飛ぶための幾多の教訓と知恵。
それらがある限り、祖国の空はこちらのものだ。
エフゲニーは操縦桿を握り直すと、新たな標的めがけて降下を開始した。
さあ、黒いナチどもに死の裁きをくだしてやろうではないか!



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