■ 【50限定】ヤン・ウェンリー会見場【イゼルローン要塞にて】

1 名前:ヤン・ウェンリー:2009/11/30(月) 06:22:49
やれやれ。
我らがビュコック司令長官どのだけならまだしも、
まさか私にまで質疑応答の命令が回ってくるとはね。

ようやくガイエスブルグ要塞とのドンパチが終わって、
やっとのんびりユリアンの紅茶が飲めると思ったら、これだ。
どうやら最高評議会のお偉方は、よっぽど私を給料分以上に働かせたいらしいね。
頭が働かないなら、せめて「魔術師」の名前だけでも働かせようという魂胆か。
まったく、人使いの荒いことで。


ああ、特に決まりというほどはないよ。
大事なのは三つ。

1:このスレは50で完走。
2:言動と行動は良識の範囲で。
3:越境その他についても上に同じく。

後は、我がイゼルローン要塞は、第8次イゼルローン攻防戦と呼ばれるであろう戦い、
すなわちガイエスブルグ要塞との戦闘直後であり、未だその後遺症は抜けきっていない。
よって対応その他に疎漏があってもご容赦を、というところだね。

ああ、テンプレとかいうのは省略させてもらうよ。
あの短い文章の中の情報量に、どれだけの有意性があるのかは疑問だし、
第一面倒だ。
どうしても私のことを知りたいという酔狂人がいるのなら、

こちら、宇宙艦隊司令部
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1254982511/

ぜひここにいる司令長官どのにでも聞いてくれ。
的確という紅茶に、皮肉というシナモンをふりかけて返答してくれるだろうからね。
高給取りには高給の分だけきっちり仕事してもらわないと。
でないと、薄給で誠実さだけが売りの、私のような平凡な小市民にお鉢が回ってくることになるんだ。

2 名前:ヤン・ウェンリー:2009/11/30(月) 06:42:56
まあ、こんなところかな。
後はユリアンに紅茶の一杯でも貰って、書類仕事にでもかかるとしようか。







――ああ、ありがとうユリアン。
せっかくだ、少しお喋りをしていこうか。

さて、君は現状をどう見る?
少なくともトリューニヒト議長閣下は、しばらくは小康状態が続くと考えているようだ。
すなわち、イゼルローンはその無敵さを立証したのであり、しばらくは帝国も進行を諦めるだろう。
もうひとつのルートであるフェザーンは「平和の海」であり、そこを通ることはない、とね。

ついでに言うと、またぞろ、軍の一部若手が、帝国再侵攻論とやらを唱えはじめてるらしい。
前回の失敗はフォーク准将ほかの首脳部の無能が原因であり、自分たちならば成功できる。
しかも名将ヤン・ウェンリーがいるのだから、成功の確率は一層高まるだろう、とね。
魔術師ヤン・ウェンリー万歳、夢よもう一度とというわけだ。
やれやれ、私は彼らのために戦ったことがあるという記憶は、ないんだがね。

いいかい、ユリアン。
若者は若さを、老人は経験を所与のものとして、えてして考えがちだ。
だが、その若さは数年で失われるものであり、経験は時として予断に化けることを、
意外なほど多くの人が見落としているものなんだ。
だから、きみは今ある若さを推進力として、老人の知恵を羅針盤として、
そして判断は自分自身のものとして、これから生きていかなくちゃいけないんだ。

やれやれ、存外堅い話になってしまったね。
まあ、幸い、軍の強硬派とやらの親玉たちは、この前の救国軍事会議クーデターで一層されたから、
若手の憤慨とやらは酒場の愚痴程度で終わっている。
帝国としても、何か口実さえこちらが作らなければ、しばらくは攻めてこないだろう。
だから、今はせめて、この短い時間を楽しむことにしようじゃないか。

そういう意味では、この質疑応答とやらも、何かしらの意味があるかもしれない。
何せいよいよ私も三十だ、そろそろ老人の予断が頭に巣食い始める頃合いだ。
その予断を経験に再変換するには、他者との意見交換という奴はなかなかに有効だからね。
ああ、これも覚えておいたほうがいいぞ、ユリアン。
自分の頭だけで考えるのが難しいときは、そうやって人の頭を借りるんだ。
何せ頭ってやつは、どれだけ使っても減ることがないと来てる、便利なものだからね。

やれやれ、また説教をしてしまった。
ユリアン、悪いけど紅茶をもう一杯。
長話で喉が乾いてしまったよ。
やれやれ――


――本当に、やれやれだ。

3 名前:名無し客:2009/11/30(月) 10:19:17
親友に代わってジェシカをいただいてしまおうとは
思わなかったので?

4 名前:名無し客:2009/11/30(月) 12:09:36
英雄ヤン・ウェンリーさえいれば同盟は負けないことが証明されたのですから。
金髪の獅子を倒せるのはもうあなたしか居ませんよ。

5 名前:名無し客:2009/11/30(月) 12:38:05
奇跡ってなんなんでしょうね

6 名前:名無し客:2009/11/30(月) 12:57:25
コレで三人目になりますが…以下に崇高な思想があろうと
戦争は文化的な解決を放棄した子どもの喧嘩にも劣る行為で
軍人がどれだけ高らかに戦士の誇りを唱えようと所詮は殺人者なのでは?

7 名前:名無し客:2009/11/30(月) 15:22:27
太平洋戦争当時のアメリカ海軍提督だった、レイモンド・スプルーアンス大将の
人為について、どう思われますか?

8 名前:ヤン・ウェンリー:2009/12/01(火) 00:49:43
一日で五つの質問というのは、どうなんだろう。
ここでは多い部類に入ると思うんだが、違っていたかな。
どうやらきみ達は、答える側の私よりよっぽど熱心らしいね。

よろしい、では一つ一つお答えしていきますか。


>>3
ジェシカ。うん、ジェシカね……。

まずはじめに断っておくと、だ。
私は過剰なフェミニストでは決してないつもりだが、
それでも女性は決してモノではないと固く信じている。
つまり、結婚というのは、独立した意思を持つ個人同士による契約であって、
そこに必要なのは相互の自由意志の合致であり、決して所有契約ではない……。

いや、これでは硬すぎるか。
まあ、つまり、その、私の言いたいのは、結婚は本人の意思が第一であって、
ジェシカ・エドワーズが選んだのはジャン・ロベール・ラップであり、
ジャン・ロベール・ラップもまたジェシカ・エドワーズを選んだ以上、
そのどこに私の入る場所があるのかい、ということさ。

二人は相思相愛だった。
だとすれば、私の意思がそれをどうこうするなんて、不可能というものだ。

そうとも。
ジェシカが選んだのは彼だ。
まちがっても、民主主義運動やら、反戦運動やらと結婚したわけじゃあない。
もしそう考えてる奴がいるとすれば、それは原因と結果を取り違えているんだ。
彼女は一人の人間であり、愛した人を奪ったものに対して、戦いを挑んだだけさ。
過剰な美化や卑下、まして殉教者扱いや偶像化なんて、天国の二人とも喜ばないだろうよ。

9 名前:ヤン・ウェンリー:2009/12/01(火) 00:54:12
>>4
ほう?
いつ、どこで、誰が、そいつを証明したんだい?
後学のために、ぜひ聞かせてほしいね。

いいかい、部分の和は決して全体とは一致しない。
確かに私はいくつかの戦闘において、その勝利に貢献したと思う。
だが、その事績は、決して今後の無敗を証明するものではないんだ。
二、三の具体例をもって全体を語ろうとするのは、詭弁家のよく使う手だ。
きみ自身がそれを信じることを止めろという権利は私にはないが、
少なくともそれを定説として触れまわるのは、勘弁してほしいね。

そうだな、端的な例として、きみには古代中国の二人の武将、
すなわち項羽と劉邦という二人について、調べてみることを勧めるよ。
戦術的な勝利が戦略的な勝利と必ずしも等号ではつなげないこと、
そして九十九勝しても、たった一敗が全てを無にしてしまうことが、
けっして歴史では珍しいことではないのだと、理解できるだろうからね。

10 名前:ヤン・ウェンリー:2009/12/01(火) 01:01:09
>>5
死者が生き返ること。

もし不可能を可能とすることを奇跡と呼ぶとするなら、
それ以外の何が、奇跡の名に値することだと言うんだい?

まあ、言いたいことは分かる。
私もエル・ファシル以降、その手の虚名には踊らされ続けだからね。
だが、歴史から見るなら、それは奇跡でも何でもなく、
「不可能だと思いこまれていたことが、ただの思い込みだと証明された」
そのひとつの実例に過ぎない。

だから、必要なのは奇跡と賛美することではなく、
それが可能になるまでの経過・方法、そしてその背後にある、
思想や経済状況、社会通念……そうしたものを研究することであり、
理解して役立てようとすることだ。
それが歴史の価値であり、我々が一秒ごとに人類の歴史を更新し続けている以上、
もし少しでも人類に進歩というものがあるなら、そういう積み上げによってしかありえない。

そう私は思うんだが、残念だが我が民主政治とその広報機関たるマス・メディアには、
そうした考えは、管見の限りではほぼ皆無らしい。
残念なことだ。
エル・ファシル一つにとっても、軍と民間人の関係および非常時の対応について、
いくつもの教訓と、最低限のマニュアルの材料くらいは提供してくれると思うんだがなぁ……。

11 名前:ヤン・ウェンリー:2009/12/01(火) 01:14:39
>>6
ああ、全くその通りだとも。
戦争というやつは、高度に文明的でありながら、文化的には全く劣悪だ。

歴史を紐解いてみようか。
戦争が文明を進歩させた例は、数多くある。
戦争に勝つためには合理主義が求められるから、社会構造はより洗練され、
高度に組織化された社会の基盤をつくった。

科学技術は一足飛びの進歩を遂げ、一年が十年に匹敵する勢いで、
新技術や新開発が行われた。
ゆえに一部の歴史家達が、戦争を人間の進歩のための必要悪であり劇薬である、
とする見解を唱えていることを、私は一方的に切り捨てることはできない。

だがね、その一方で、戦争が文化を発展させた例はほぼ皆無と言っていいんだ。
多くの場合、それは実利のないものとして切り捨てられ、
あるいは厭戦思想や反戦思想と呼ばれて弾圧されてきた。
演劇、音楽、小説、そうした文化と呼ばれるものも、
「好戦的な気分にさせる」、その一点に寄与するかどうかが判断基準となった。
それ以外のものはどうなるって?
確か西暦時代のある国ではこんなスローガンがあったそうじゃないか。

「ぜいたくは敵だ」

ってね。


そうとも。
文明というやつは、つまりシステムだ。
それは確かに必要なものだし、便利なものだが、
その一方で滅びなかった文明はない。
世界の四大文明と呼ばれたものの中に、そのままの形で現在も残っているものが、
一つでもあるかい?

だが、文化は違う。
ローマ、ギリシア、いくつもの文明は滅んだが、その文化は今でも残っている。
彼らの神話が、詩が、哲学が、私たちを今でも楽しませてくれているんだ。
かつて古代中国では、学者を埋め学術書を燃やした暴君がいたが、
その暴君の文明は滅んでも、彼が弾圧した文化は、今でもなお私たちまで伝わっている。

この事実をどう解釈するかは、個人の自由さ。
だが、まあ私としては、文化を文明の下に置きたくはないな。
少なくとも、西暦時代の文化である紅茶というものが、
今、現にこうして私の喉をうるおしてくれているうちは、ね。

12 名前:ヤン・ウェンリー:2009/12/01(火) 01:19:38
>>11 (追記)

そうそう、三人目とか言っていたけれど、すると私以外にもその質問をしたことがある、ということかな。
できるなら、他の二人の回答も、こっそり私に教えてほしいね。
ぜひ他の見識ある人々の意見も、伺ってみたいものだから。
それによっては、私の意見も修正を余儀なくされるかもしれないだろう?
古人曰く、知って知らずとするは上なり、知らずして知るとするは病なり――ってね。

そういうわけだから、気が向いたら一つよろしく頼むよ。


13 名前:ヤン・ウェンリー:2009/12/01(火) 01:43:56
>>7
確か、第二次大戦時の、ニミッツ提督の次の太平洋艦隊司令長官だったかな。
どちらかと言えば前任者の方がいろいろ印象が強い人物だが、
資料に目を通した限りでは、このスプルーアンス提督もなかなかに優秀な軍人であり、
戦術家であるようだね。

で、コメントかい?
そうだな……興味なし。


おいおい、そんな目で見ないでくれよ。
参ったなあ。
まあ、君たちが期待していたのは、同じ「戦時の英雄」とされているものとしての、
戦術や戦略についての忌憚なき批評とか、そういうところだったんだろうけど……。

うーん……。
そうだ、じゃあこうしよう。
君達に一つのクイズを出そう。同じ日米間での軍事司令官についてのクイズだ。
時計の針を百年ほど巻き戻してみて、1852年。

ペリー提督は偉かったかどうか。

なんだい、そんな鳩が鉄砲玉喰らったような顔して。
まるで偉いのは当たり前だ、とでも言いたそうだね。
よろしい、では私の答えをお教えしよう。

興味なし。

ああ、分かった分かった、そう怒らないでくれよ。
別に茶化してるわけじゃあない。

ただ、皆は「ペリーが」やら「マッカーサーが」やら、
とにかく個人の行動がすぐに個人の考えとイコールで考えているようだったからね。
少し頭を柔らかくしてもらったのさ。

さっきのペリー提督にしても、彼が遠路はるばるアメリカから日本まで大遠征したのは、
別に彼個人の思想や発想によるものじゃない。
彼はあくまで彼の所属するアメリカ政府の代行者として、
もっと言うなら、それによって間接的に表現された議会や国民の意思によって、来たにすぎない。
だからもし、彼以外の人間が選ばれたとしても、結果は同じだったろう。
よって彼個人の人間性より、その背景にある社会を考えるのが、
史学の徒の端くれたる私の務めであり、彼個人にはあまり興味なし、というわけなのさ。

おいおい、そんなつまらなそうな顔をしないでくれよ。
英雄たる一個人が状況を左右するなんてことは、少なくとも民主国家ではありえないことなんだ。
もちろん戦場においてはそういう面もあるし、先ほどのスプルーアンス大将などは、
その意味においては優秀な軍人であったことは大いに評価しよう。
だが、戦術が戦略を凌駕することなんてのはありえないし、
軍人はあくまで民主的な議決に基づいて、民主政府から出される指令によって行動するものだ。

もし、一部の軍人の英邁さによって事態を変化させようなんて思うなら、
それは軍部独走とか独裁とか呼ばれるものだと、私は思うんだがね。
軍はあくまで政府の道具にすぎず、またそうであるべきだ。
したがって、個々の軍人の資質をあれこれ誰何するより、
それに命令する政府の意向を忖度するほうが、よほど大事である――
というのが、さしあたっての私の結論かな。













そうさ。
たかだか一個人の能力の高低が、全ての状況を劇的に改善するなんてことは、ありえないんだ。
そんなのは、安っぽい立体TVソリビジョンの中の、三流中世ファンタジーのナイトにでも任せておけばいい。
何がミラクル・ヤンだ。
後世の歴史家なら、そんなのは非歴史的な英雄願望にすぎないと一行で切って捨てるだろうさ。
まったく、バカバカしい限りだ。
ああ、バカバカしい……。

14 名前:名無し客:2009/12/01(火) 08:12:54
>>11
正確には四人目でした。ではこっそり教えますね。

こちら、宇宙艦隊司令部
5 名前:名無し客:2009/10/08(木) 16:57:39
平和についてお尋ねしたいのですが。

…軍人さんに言うのもなんですが人殺しに大儀をつけて
軍人の誇りと書きいてて寒々しいものがありますよ。

7 名前:ビュコック ◆IKCwFPDFgg :2009/10/08(木) 17:47:26
>>5
>…軍人さんに言うのもなんですが人殺しに大儀をつけて
>軍人の誇りと書きいてて寒々しいものがありますよ。
・・・・なるほどな。健全な意見だて。

一市民の軍に対する批判が封殺されず、それどころか宇宙艦隊司令長官たる
このわしまで届くということは、誇ってよいじゃろう。自由の国という国是が建前だと
言う者もおるが、例え建前でも実際に定義されておるならば完全にそれを潰す事は
難しいものじゃ。

わしらの誇りはな。

若者が、こういった意見を言える社会を守っていることにある。
少なくとも、そう信じておる。

客員提督 -Guest Admiral-
66 名前:名無し客:2009/10/23(金) 13:42:27
ビュコック提督にも語ったのですがいくら誇りを訴えようと所詮軍は
大義名分を…いえ「めんどくさいから話し合わない」という理由で動き、動かされる人殺しの集団にすぎないと思うのです。
いえ貴方やヤン提督、ビュコック提督のように戦争について苦々しく思う軍人もいるとは思うのですが。

メルカッツ提督だけでなく若い意見も取り入れたいのでシュナイダー氏も一言何か

68 名前:ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ ◆GuestAjT2E :2009/10/25(日) 08:55:32
>>66
シュナイダー。貴官はどう考える?

「自分たちの国家を守る……そのために訓練をし、作戦を立て、事がある場合は戦いに臨む。
 もちろん、こちらの方の仰るとおり、殺人者としての側面は否定できませんが……。
 しかし我々のような存在がなければ、民を護ることは難しいのではないでしょうか」

そうだな。基本的にはそんなところだろう。


さて、わしの考えだが……。

確かに、帝国も同盟も、「相手の存在を認めず、相手を滅ぼすために」150年近く戦争を繰り返してきたな。
むろん、何度か話し合いがもたれた事はあるが……。
その点、ヤン司令官の「イゼルローンを占領することによって、軍事的に有利な地歩を占め、和平につなげる」
と言う考え方は、政治的環境をととのえるために軍事力を行使する、という本来の戦略的立場に立ち戻ったものかもしれん。


軍が人殺しの集団というのは卿の言うとおりだ。命令に従って敵を殺し、敵に殺されるのが「仕事」だからな。
しかし、その軍の兵士や士官が戦う理由は何か……それは人の数だけあるだろう。

命令されたため。
愛する人々や土地を守るため。
軍人としての誇りのため。
あるいは栄達を遂げるため。

人それぞれだ。
そして、帝国では大貴族たちや軍の幹部たちの栄達や「恒例行事」として、いくつもの戦役が行われてきた。
その戦役では、多くの血が流れる。それも、栄達や「行事」には関係ない者にとっては「無意味」にだ。
わしのように戦いで栄達した者にとっては、大いに意味があったのだろうがな。
本来ならここで、軍の意味について話すような立場ではないかもしれん。


さて……戦死した本人がどう考えているかは、天上に行かなければ訊ねることはできない。
だが、戦死した人間の戦友はどう考えているか。
家族は、恋人はどう考えているか。

その者たちは、自分にとって大切な人間が「無意味」に死んだなどということを、受け入れることができるだろうか。
それゆえ、その「意味」を探し求めて、苦しむのではないか。
遺族から丁重な手紙を頂いたことも何度もある。
軍は……軍の内だけで完結してはおらんのだ。

むろん、軍の幹部が、誇りを謳って兵士を前線に送り出し、自分たちは安全な場所にいる、
そして「誇り」を戦死者の遺族に強制するなどという状況は許されるものではないだろうよ。
常に前線に立っている、ヤン司令官……それに敵ではあるが、ローエングラム公が、兵士たちから支持される理由は、
まさにそこにあるのだろう。我々は彼のために戦う、とな。


長年軍に関わってきたわしは、拙劣な指揮で、多くの部下たちを無意味に戦死させたことは一度や二度ではない。
だからこそ、彼らが所属していた「軍」を、ただの人殺しの集団として切って捨てることはできんのだ。

もちろん、軍などの出る幕がない平和な世の中が、一番善いとわしも考えるがな。
ただ、今のところは……良いか悪いかはともかく、あくまで軍も人間の集団であり、
そして、少なくとも卿らの軍はどこかで卿とつながっている……と、わしは考えるよ。

まとまりがない話になった。頭の固い老兵がつぶやいたことだ、適当に聞き流していただければありがたい。


15 名前:名無し客:2009/12/01(火) 16:38:18
「大改造!!劇的ビフォーアフター」

……いえ、キャゼルヌ少将が来る前と来た後では、イゼルローン要塞の運営はどれくらい変化したかをお尋ねしたいのですが。

16 名前:名無し客:2009/12/01(火) 17:15:17
しょうがない、邪魔だから壊すか。
くらいの感じであっさり壊されちゃった無敵の防衛システムの名誉はどうなるんですか!

17 名前:名無し客:2009/12/02(水) 00:46:53
ヤン提督の2秒スピーチが聞きたいです!

18 名前:名無し客:2009/12/02(水) 01:05:09
かつて英国のある政治家は民主主義を評して
「最悪の政治形態だが他よりはマシ」と述べましたが
これについての見解をお願いします

19 名前:名無し客:2009/12/03(木) 09:44:22
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm8771472

ラインハルトが料理を作るそうです

20 名前:7:2009/12/03(木) 18:00:19
>13
いや、単にスプルーアンス提督は端から見ると
度し難い程に事務仕事を嫌がっていた点を論評して
欲しかったなぁと思って・・・・・・・・

(ヤン提督以上の怠け者と言っていい程です)

21 名前:名無し客:2009/12/04(金) 20:25:28
もし「パトレイバー」の後藤喜一さんみたいな方が、ヤン提督の上官だったら?

22 名前:名無し客:2009/12/04(金) 21:28:05
帝国のキルヒアイスについて思うところをどうぞ

23 名前:名無し客:2009/12/04(金) 23:21:52
【政治家が握手を求めてきた!】

24 名前:名無し客:2009/12/05(土) 07:56:23
自由惑星同盟軍開闢以来の大将帥。かつての偉大な元帥
たちを超える最高の知将。
提督閣下が同盟の元首ならば銀河は再び民主共和制の世の中
になるでしょう。

25 名前:名無し客:2009/12/06(日) 00:06:14
ヤン提督が帝国に生まれていたなら、間接的に、時には直接的に
門閥貴族に皮肉を言いまくる日々を送ってましたか?

26 名前:名無し客:2009/12/11(金) 22:46:48
帝国貴族ヤン・ウェンリー侯爵…。
さてどんな方でしょうね。

それはさておき閣下。閣下の影響で
軍にも紅茶派が増えてきたのではないでしょうか。

27 名前:名無し客:2009/12/12(土) 16:26:01
艦隊旗艦に真っ先に求められる機能は?

28 名前:名無し客:2009/12/30(水) 15:40:57
同盟国家最大の危機です。閣下。イゼルローンを他の提督方に任せ
ハイネセンで指揮を執れば国民の士気も少しはあがるかと思いますが。

29 名前:不良中年:2010/01/06(水) 02:30:13
あなたがシビリアンコントロールを大事にしていることはわかります
しかし、最も犠牲者が少なくなる方法を執ることが重要ではないのですか?
あなたが政治家になり、トリューニヒトなんぞを蹴落として
国家元首の座を得て、すぐに帝国と和平を結ぶように力を尽くすべきです
これ以上戦乱が続いても兵力とローエングラム侯とその臣下の能力の問題で
帝国に敗北を喫するのは自明でしょう
ならば一刻も早く戦争を終わらせるために最も有効な手段を執ってください



30 名前:「現在としての歴史」(ヤン・ウェンリー著)より:2010/01/08(金) 02:53:47
2:1-1 宗教について

少なくとも宇宙時代に入った現代の人間にとって、宗教とは前時代的な存在であり、
また歴史の進歩に対する反動である、という認識は、所与の前提として共有されているかに見える。
現在、一部の市民に見られる地球教徒への過剰な反応などは、その一例であろう。
しかし、歴史を紐解く者にとって、必ずしもそうは言い切れないことは、常識であると言っていい。

一例として、地球時代における世界宗教の一つであるキリスト教を例にあげよう。
天動説を唱えたガリレオに対する弾圧、あるいはファンダメンダリストによる進化論批判など、
一般にキリスト教は科学の進歩を妨げる存在であった、とする理解は一般の人口に膾炙していると言えよう。
だが実際には、「神の創造物たる世界を能く知ることは即ち神に近付く道である」という理解の元、
多くの科学的研究が進められたのであり、またその成果が博物館という形で広く社会に対して還元された(注1)のである。
また、プロテスタンティズムの勤勉が資本主義の萌芽へとつながり、また現在民主主義思想と呼ばれる多くの思想が、
キリスト教の影響のもとに産したものであることは、論を俟たない。
そして、保守反動と一般に目されるカトリック派こそが、実はプロテスタント諸派よりもより、、熱心に反戦の活動を繰り広げていたことは、
特筆されてもよい。

このように、宗教と社会との関連性については多面的方向から論じるべきであり、実際に多くの書物が公刊されている。
よって読者諸氏においてはそれらに目を通されることを祈念し、ここではこれ以上論じない。
私はただ、史学上の問題としての宗教ではなく「現在の問題としての宗教」、すなわち次の二点にのみ論じるものである。
一つは地球教徒に対する市民および政府の態度、それに関連する宗教と精神の自由の問題。
二つは地球教と政治勢力乃至経済勢力との結合の有無、及びその如何である。

前者については、これもまたジェシカ・エドワーズによる優れたルポルタージュがあるので、詳細はそちらに譲る。
私はただ、彼女の結語にある『地球教徒の狂信性を非難する者は、その源泉が非難する者自身にあるのではないか、
と今一度再考するべきではないか』という一文を引用するにとどめたい(注2)。

もっとも難解なのは後者である。
宗教と政治権力、即ち聖と俗の結合については、先述したキリスト教のみならず、仏教、イスラーム教、
などという世界宗教と呼ばれたもの全てに付きまとう問題であり、それは堕落と往々にして直結した。
ただし、どのような宗教も社会情勢の中から生ずるものであり、そこに何らかの政治性が付帯することは、
いわば論理的にみても当然の結果であり、その一事をもって「地球教徒から選挙権を取り上げよ」などという
過剰な運動を行っている者に対しては、私は決して与しないことを念のために述べておきたい。
だが、それを踏まえてもなお、地球教徒の成立および発展段階において、
一般の理解以上に政治権力との結合が深いのではないか、という懸念を禁じ得ないのも確かである。
尤もそれがただの政治権力との結合であるならば、前述の理由によりこれを咎める必要もあるまいが、
そこに経済勢力が何らかの偽装の上で関与しているとするならば、私は深い憂慮を抱かざるを得ない。
宗教・政治・経済、この三者の三角結合によって生じうる結果の中で私がもっとも恐れるのは、(以下欠落)



(注1:無論、そこには教会の威信を知らしめる、という目的があったことは否定しえない。)
(注2:ジェシカ・エドワーズ「市民としての地球教徒」(民共出版、宇宙暦796)、120ページより)



                                  ヤン・ウェンリー全集(ユリアン・ミンツ編)より抜粋

31 名前:ヤン・ウェンリー:2010/01/08(金) 02:54:49
やれやれ……どうにも忙しくなって困る。
これじゃあ、おちおち原稿も書いてられやしない。
今頃ビュコックの御老体も、さぞかし忙しくしていることなんだろうなあ……。
やれやれ――ああ、これを言うと老けて見えるからおやめください、ってユリアンに言われたんだったな、
しかしこうなったら、せめてため息をつく自由くらいは私にあたえてくれたっていいだろうに――やれやれ。
とりあえず、まずやるべきことは一つかな。

ユリアン、紅茶をもう一杯。



>>14
ふむ。
ビュコック提督は、まあ、私の考えていた通りの答えといっていいだろうなぁ。
あの方は民主主義の軍隊であるというところに全ての矜持をかけておられるし、
実際それは民主主義国家の軍人としては、範とするべきところだ。

しかし、メルカッツ提督のお言葉は……うーむ。
軍は軍の内だけで完結してはいない、か。
確かにそれは、民主主義の軍であろうと、帝国主義の軍であろうと共通する、
一つの真理だろうなあ。

その謂いでいくと、私などの言動は、確かに間違っているのかもしれない。
遺族が必要としている物語は、死者は有意義に死んでいったというものであって、
間違っても拙劣な指揮により、無駄死にしていった、などというものじゃあない。
たとえ事実と異なっていても、それはその家族にとっては必要な物語なんだ。

だとすれば、私やジェシカ・エドワーズのように、「本当のこと」を喋る人間は、
それこそ憂国騎士団にでも殺してほしい、と怨む人間が増えるのも当然の結果というわけか。
いや、私などは二重にたちが悪いな。
まず一度、兵士たちに生命的な意味での死を与え、しかも社会や家族にとっても二度目の死を与えているというわけか。
いわば死んでいった兵士達は、二度私によって殺されたことになる。
なら、私のするべきことは、英雄とそれに殉じた者たち、という物語を演じることであり、
そうした方が、誰も不幸せにはならないのかもしれない……。

……いや、ダメだ、ダメだぞヤン・ウェンリー。
その論理は自己正当化の第一歩だ。
第一、民主主義国家は国民の判断によって成り立つものであり、その判断を担保するのは正確な情報だ。
もしそれが伝えられていないとすれば、知っている者にはそれを伝える義務があるんだ。
それに、私がここで口をつぐんだせいで、第二第三のアンドリュー・フォークが生まれたとしたら、
そのせいで増産された死者達に、私は何と言って詫びればいいんだ。
少なくともその時、「やれるだけのことはやった」、そう言えるようになるまでは、
為すべきことを、為せる範囲でやらなくちゃいけないんだ。
その是非は、もし死後の世界というものがあるならば、そこでハッキリすることだろう。

もっとも、私の今まで殺してきた人数から考えると、一度や二度殺されたくらいで許されるとも、思えないが……。

32 名前:ヤン・ウェンリー:2010/01/08(金) 02:55:00

>>15
水周りを中心に格段に向上した、らしいよ。

いや――らしい、というのは、つまりその、私にはそういうことはよくわからないんだ。
食事はいつもユリアン任せだし、買い物も同じくユリアン任せ。
艦艇やスパルタニアンの整備なんて門外漢だし、部屋の電球が一つ二つ壊れていたって、読書には困らないしなあ。
まあ、ユリアンは喜んでいたから、たぶんきっと向上したんだろう。

――あらためて考えてみると、本当に生活無能力者だなあ、私は。
ユリアンが来なかったらゴミの山に埋もれて餓死している、というキャゼルヌ先輩の言も、
こりゃあ、あながち否定できないぞ?
つまりキャゼルヌ先輩はユリアン・ミンツを私に任せるという人事の妙によって、
一人の問題児の命を救うことに成功したわけだ。
これこそ、アレックス・キャゼルヌのソフト面における運用の妙を示すものであり、
イゼルローンにおける運用の妙、因って件の如し……ということにしておこうか。

33 名前:ヤン・ウェンリー:2010/01/08(金) 02:55:26
>>16
名誉、名誉ねぇ……。
一体いつから、民主主義国家の名誉は、機械によって守られるものになったんだい?
私の記憶だと、民主主義の名誉とは、すなわち市民の不断の努力によってのみこれを堅持できる、
とそうなっていたはずなんだがなあ。

まあ、冗談は置いておいてだ。
ヤン・ウェンリーに壊せるものが、帝国のラインハルトに壊せないはずがない。
単純な結論だと、そう思わないかい?
あってもなくても同じなら、いっそ壊してやった方が、アレの維持費にかかる血税を節約できるという一点において、
同盟市民のためだと私は思うね。

第一、あれは劣悪すぎる。
同盟に属する惑星は無数にあるのに、首都星だけ守っていればいい、というのは、
「自分達さえ守れれば、他の星はどうなってもいい」という思想を、全宇宙的に表明しているのと同じさ。
まあ、あんなものを見たら、いくらヨブ・トリューニヒト氏が素晴らしい演説をし美文を呈しても、
兵士の大勢を占めるハイネセン以外の出身者は、冷笑をもってこれを迎えるだろうさ。

そうとも、忘れちゃいけない。
戦争において、死ねと命令する側は、一番死なない場所にいるということを。
権力者と呼ばれる人間は、自分の命を守る方法に関しては、こと無数に用意しているものなんだ。
そして、それを是正できるのは、市民一人一人の努力以外にないのであって、
決してそのおこぼれにあずかろう、なんていうあさましい考えによるものじゃないっていうことをね。


34 名前:ヤン・ウェンリー:2010/01/08(金) 02:55:38
>>17
「どうも、ヤン・ウェンリーです」(軍関係者の新年パーティにおいて)
「よく学んで、よく遊んでください」(同盟軍士官学校、長期休暇前の式典会場にて)
「いい人でした。残念です」(ジェシカ・エドワーズ追悼式において)



35 名前:ヤン・ウェンリー:2010/01/08(金) 02:55:55

>>18
ふむ……私はその発言をしたのは建国の父、アーレ・ハイネセンだと聞いていたんだけどね。
まあ、誰が言ったかはさておいても、その内容は正しいと、私も思うよ。

そこに敢えて私が蛇足を付け加えるとするならば、民主主義とは、失敗を市民自身の責任とすることができる制度だ、
ということかな。
つまり――帝国のような絶対君主制では、成功も失敗も君主の能力によってもたらされるものであり、
民衆はその結果のみを、ただ甘受するにすぎない。
ところが、民主主義においては、失敗の責任を誰かに押しつけることはできないんだ。
たとえヨブ・トリューニヒト氏がどれほど愚かな行為を行ったとしても、
彼を直接的にせよ間接的にせよ、選んだ主体としての市民の責任は、決して逃れることはできない。

ふむ……これはちょっとネガティブすぎる解釈だったかな。
しかし、私は逆にこれをポジティブにとらえたいんだ。
つまり、私たち市民が正しい情報を得ようとし、議論をして理解を深め、そして選択することで、
よりよい政治を求めることができる。少なくとも、そのための道筋は用意されている。
名君の出現を「願う」ことしかできない帝国に比べて、そして歴史上の他のすべての政治形態に比べても、
この一点においてだけでも民主共和制は優れていると、私はそう考えているんだが……さて、君たちの意見はどうかな。


36 名前:ヤン・ウェンリー:2010/01/08(金) 02:56:10

>>19
……。
こういう表現の自由が認められているという点においても、やっぱり民主共和制は帝国に優っていると再確認できるなあ。



37 名前:ヤン・ウェンリー:2010/01/08(金) 02:56:24

>>20
なるほど。
これは私も主義主張を変更する必要があるかな?
つまり、歴史においてその人物を学ぶことは、自己擁護のためには少なくとも有用である、と――。

――いやあ、ダメだなあ。
たぶんキャゼルヌ先輩あたりは、それに対する反証を、膨大な資料の中から100や200、
簡単に見つけ出してくるだろう。
そういうのは昔から得意なんだ、あの人は。
キャゼルヌ夫人も、よくあんな人と家庭生活を営めるもんだ……偉大なるものよ、汝の名は母なり、か。


38 名前:ヤン・ウェンリー:2010/01/08(金) 02:56:40

>>21
まず私は彼についてそう詳しくは知らない。
したがって、これからの回答は、彼自身がここで質疑応答したもの(※)を基にしている、ということはまず了承してほしいな。
そのうえで、私の感想を述べさせてもらうと……楽だろうなあ。

いや、別に彼を卑下しているわけじゃあない。
責任者の仕事というものは、第一にはその名の通り責任を取ることであって、それは部下にとってやりやすい環境を整えると言うことさ。
そのうえで、自分の判断や責任の有無が必要になるまでは、昼行燈でいてくれたほうが、かえって全体にとってはいい結果を生むんだ。
これがドーソン大将のように、ゴミ箱のジャガイモにまでチェックを入れるようになると……ね。

しかし、「みんなでしあわせになろうよ」、か。
そうだなあ……本当に、そうだ。
それが私達軍人の、最大の仕事なんだから。

(※http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1214572827/ )



39 名前:ヤン・ウェンリー:2010/01/08(金) 02:57:01

>>22
ジークフリード・キルヒアイスか。
少なくとも彼が存命であったなら、名実ともに帝国のNo2となっていたことは疑いようもないし、
それに足る能力を彼は持っていた、それは確かだ。

だが、彼が生きていれば歴史は変わった――という俗説については、どうかな。
確かに彼の能力はラインハルト・フォン・ローエングラムのそれに匹敵するものだが、
しかしラインハルト・フォン・ローエングラムが二人になるわけじゃない。
私の見聞する限りにおいては、彼ら二人はいつも一緒にいたという。
そして、二者の能力がほぼ互角であったとしても、卓越した者同士の結論は往々にして似通うものだから、
1+1は2にはならず、せいぜい1.2というところだったのじゃあないかな。

もっとも、彼らがバラバラに行動する場合は、また話は別だ。
たとえば片方が軍事的行動において遠征し、片方が政庁に残って政務を担当する、という場合だ。
しかし、これはあまり多かったとは思えないな。
何故なら、彼らはお互いに、傍にいることを望んでいたように思えるからね。
事実、リップシュタット戦役における別行動が、彼らの蜜月を裂く遠因となったように思える。

つまり、二人が別行動を取らない限りにおいては、仮にジークフリード・キルヒアイスが生存していたとしても、
歴史に大きな変化は生じなかっただろう、というのが差し当たっての私の見解かな。
無論これは彼の能力や人となりに対する過少評価を意味するものではない、ということは念のために付け加えておくけれどもね。

だが――人間の価値というものは、そういう面だけで評価されるものでもない。
少なくとも、社会的側面はともかく、人間的側面――すなわち、友人としてのそれはね。
冷徹な言い方をすれば、ジェシカ・エドワーズにしても、ジャン・ロベール・ラップにしても、
彼らの死が社会的ないし歴史的に考えて、大きな損失であったとは決して言えないだろう。
しかし、友人としては――そんなことはどうでもよかった。
ああ、価値とかそんなものじゃない。
彼らを失ったことで、私を含める友人や家族が、胸に空いた空隙を埋めるのにどれだけ苦労をしたことか。

そうとも。
人一人の人生は、その死は、社会的貢献なんてものによって比重が決するものじゃあない。
友人の死とは、そういうものだ。
おそらく、ラインハルト・フォン・ローエングラムも、ジークフリード・キルヒアイスの死を聞いたとき、
同じ思いを抱いたはずだ。
たとえ大けがをしても、政治・軍事においてその能力を生かせなくなったとしても、それでも生きていてほしかった。
生きていてくれる、ただそれだけでよかった。

きっと、彼もそう思ったに違いないと、私はそう信じて疑ってやまないんだ。


40 名前:ヤン・ウェンリー:2010/01/08(金) 02:58:11
……さて、今日は少し喋りすぎたなあ。
このくらいにしておいて、続きはまた今度、とさせてもらおうか。

ああ、ユリアン、紅茶をもう一杯頼むよ。
分かっていると思うけれど、ブランデーをたっぷり……そう、「たっぷり」と入れて、ね。

41 名前:ヤン・ウェンリー:2010/01/08(金) 03:12:21
おや、いくつかミスがあるようだなあ。

>>30
>天動説を唱えたガリレオ

>地動説を唱えたガリレオ

に、

>>39
>おそらく、ラインハルト・フォン・ローエングラムも、ジークフリード・キルヒアイスの死を聞いたとき、



>おそらく、ラインハルト・フォン・ローエングラムも、ジークフリード・キルヒアイスの死を目の当たりにした時、

に読み替えてくれるとありがたいな。
しかし……ガリレオが天動説じゃあ、逆じゃないか。
誤植にしてもこれは酷い。
少しブランデー……もとい紅茶を飲みすぎたかな。
やれやれ……。



42 名前:名無し客:2010/01/08(金) 13:35:23
信じたいのか! 疑いたいのか!
ハッキリ声に出して言ってもらおうッ! ウェンリィー!

43 名前:「現在としての歴史」(ヤン・ウェンリー著)より:2010/01/09(土) 03:33:58

3:2-2 テロリズムについて

テロリズムとは、端的にいえば非常の思想である。
それは目的と手段の結合であり、その二者は時に主従を転換しながら一体として機能する。

常時の思想とは、現在を漸進的に改革しようとする革新派と、
それに対し過去の中にその答えを見出そうとする保守派の競合の中で、
最良の妥協点を見つけ出そうとしていく、その思想の歩みそのものであると言っていい。
保革いずれの立場に立つにしても、現状に甘んじずよりよいものを目指すという点では一致しており、
その点において、二つの立場は十分に共存可能であり、むしろお互いを認めつつも議論を繰り返すことが、
民主主義そのものであるというべきである。
古人はこれを「多事争論」といい、以て民主主義の基礎とみなしたのであった。

しかし右翼乃至左翼とは、これを超えた非常の思想である。
そこでは目的のためには手段の如何を問わないことが正当化される。
結果、皮肉なことに、二者の至る地点は限りなく同一のそれに近付く。
即ち、自己以外の立場・信条に立つ者に対し、実力を以てこれを排するという一点において、である。

重要なことは、民主主義においてもこれがしばしば民衆によって肯定されてきたという歴史である。
私がここで念頭に置いているのは二人のルドルフ、すなわちゴールデンバウムとヒットラーなのであるが、
いずれにしてもその急進的な改革に対し、当初人々は拍手喝采を送ったことは歴史が記すとおりである。
しかし、迂遠な民主主義を捨て、テロリズムから独裁へと至る道筋を選んだ結果、
どのような惨禍を人類の史上に記すことになったのかもまた、歴史の示す通りなのである。
拙速という非難は敢て甘受することとし、私はここから一つの教訓を導きだしたい。
すなわち、一個人の能力に対する過剰な依存のもたらす結果についてである。

そもそもテロリズムとは、究極的に突き詰めれば自己の優越にその基盤がある。
テロリストは自ら拠って立つ思想を絶対の優位と考えるから、それに反対する者はただの障害物、
と見做し排除することに何らためらいを持たない。
しかし、もし彼が真に有能であるなら、今一度省みるべきであろう。
自分ひとりの判断は、彼が愚民と侮蔑する人々の集合知より、絶対的に優れていると断言できるほどのものなのであろうか、と。

ここで私は一つの歴史的真実を提示したい。
すなわち、テロリズムは確かに歴史を停滞させることはできる。しかし流れを変えることはできない。
歴史とは云わば広大な大河である。
その流れはすさまじい奔流であり、たとえテロという柵をそこに設けたとしても、
崩壊するまでのわずかな時間の間しか、その流れを食い止めることはできない(注1)。
歴史の流れは決して留まることを許さないのである。

だが、たとえ押しとどめられなくとも、流れを変えることはできよう。
その時転轍機の役割を果たすものは「思想」であり、その思想の土壌は「社会」であり、
そしてその社会を構成するのは、テロリストが最も侮蔑する存在である「民衆」なのである。
つまり、形として上部構造に押し出されている思想ないし思想家は、卓越した一個人であるが、
それを支える下部構造は、民衆そのものである、ということである。

したがって我々が為すべき事は、考えることであるといえよう。
どの方向に我々は進むべきなのか。我々は転轍機をどの線路に向けて動かすべきなのか。
無名であると卑下し、無力であると落胆するよりも、考え、論じ、そして行動する、
その積み上げこそが歴史をつくる巨大な力になるのだと、私は信じてやまない。

無論、テロリズムの信奉者たちもそれは十二分に熟知しており、
だからこそ彼らはしばしば、扇動者としての顔をも合わせ持つ。
この場合、二章で論じた宗教との結合が重要な問題となってくる。
古くは地球時代の南北対立に至るまで、宗教観がそれを下支えしていたことは周知のとおりだが、
それは現在、過去の遺物となったと果たして言えるだろうか。
ここで私が危惧の対象としているのは言うまでもなく地球教徒であり(編注1)(以下欠落)





(注1:ただし、歴史の広大な流れの中では僅かでも、現実には十年単位の時間であり、
    それによって人命や文化に与える損失は、計り知れぬものがあることは論を俟たない)
    
(編注1:『ここからの論は、純朴な地球教徒達への弾圧につながる恐れがあるから、
      表現は慎重にしなくちゃいけない。
      もちろん、二章でそれに対する抑止として、幾重にも予防線をはりめぐらしてはあるのだが、
      筆者の文脈など無視して、自分の文脈に引きつけて引用する輩は、いくらでもいるのだ』
     という走り書きのメモが、原稿に挟まっていた。
     おそらくヤン・ウェンリーは、この原稿が安易なエスノセントリズム(自文化中心主義)の文脈で、
     安易に援用・利用され、少数派たる彼ら地球教信者への弾圧に使われることを危惧し、
     適切な表現が見つかるまで執筆を止めていたのだろう、と推測される)


                                  ヤン・ウェンリー全集(ユリアン・ミンツ編)より抜粋

44 名前:ヤン・ウェンリー:2010/01/09(土) 03:34:42

やれやれ、どうにも原稿をまとめている時間がない。
困ったものだなあ……こう書きかけのものばかり溜まっちゃあ、
最後にはまともに発表できるものは一つもない、なんてことになりかねないぞ。
これもみんな多忙のせいだ。どうしてみんな、私をゆっくり休ませてくれないんだろうね。
せめて引っ越しの準備くらい、誰かが代わりにやってくれたっていいじゃないか。
イゼルローンを離れると言っても、十年も二十年も住み続けていたわけでもあるまいに……。

……あの通信文は、ビュコック提督の元に無事届いただろうか。
仮に私の危惧が現実になったとしても、もし提督に優秀な副官が付いていれば、
きっと止めてくれると思うのだが。
そう、責任者が責任を取って自死、などという前時代的贖罪を取るなどと言うことは……。
だが果たして今の同盟に、そんな優秀な人物を補佐につける見識があるのかどうか……。

……いや、考えるのはよそう。
どの道、私がここで懊悩したって、どうすることもできないんだ。
私は私のできることをするだけだ、せめて少しでも悔いが残らないようにね。
さて、今来ているおたよりは、


>>42
>信じたいのか! 疑いたいのか!
>ハッキリ声に出して言ってもらおうッ! ウェンリィー!

……うん。
>>41
>きっと、彼もそう思ったに違いないと、私はそう信じて疑ってやまないんだ。

の「疑って」は余計だね。
謹んでお詫びして、訂正させてもらうよ。
しかし……酷いな。
本当に、酷い。

45 名前:ヤン・ウェンリー:2010/01/09(土) 03:35:01
>>23
うへえ。

ああ、いえ、なんでもありません。
しかし本当にご苦労様です……まもなく帝国軍に占領されるであろうイゼルローンにわざわざお越しいただくとは。
え? 何を驚いていらっしゃるんですか?
私ならなんとかできるだろう? 御冗談を。種の仕込んでない手品はできませんよ。

それよりも、これからはあなた方政治家のほうが大変じゃあないですか?
私たちは無事生き残りさえすれば、後は優雅な年金生活が待っていますが、あなたはそうじゃあない。
民衆はスケープ・ゴートを探すものですから、真っ先に政治家は叩かれるでしょうねえ。
現に要領のいい政治家は既に逃げ支度を……おや? どうしました?
急な御用……はあ、そうですか。それじゃ、どうも。


――――やれやれ。
やっぱり保身のための政治「屋」だったか。
こういう時に力を発揮するのが、本当の政治「家」の仕事だったはずなんだがなあ。
まあ、彼が慌てるのも無理はないか。
政治家は選挙に落ちればただの人、というのは千年以上前の地球時代からの至言だが、
銀河帝国、ラインハルト・フォン・ローエングラムに征服されでもしたら、
その選挙というシステムそのものがなくなってしまうだろうからなあ。

しかし、種の仕込んでいない手品はできない……か。
自分で言っておきながら何だが、確かにそうだ。
それじゃあ、せめて一つくらいは種を仕込んでおきますか。
願わくば、この手品をお披露目できる日が来ますように、と祈りたいね。


46 名前:ヤン・ウェンリー:2010/01/09(土) 03:35:58

>>24
なるほどなるほど。
そのヤン・ウェンリーという人は、素晴らしい人らしいなあ。
同姓同名の私とはえらい違いだ。いやあ、素晴らしい。

とまあ、冗談は置いておいて。

なるほど、きみの見解は分かった。
それについて、私は否定も肯定もしないよ。
ここは民主主義の国で、意見を表明する自由はあるんだし、
そして自分自身についての評価について云々するのは、私はあまり好きじゃないからね。
だから、差し当たっては、たった一つの質問をするだけにしておこう。

それで、君は何をしてくれるんだい?

何も戸惑うことはないだろう。
民主主義を支えるのは、市民一人一人の不断の努力によるものである、というのは、
たしか小学校の高学年で既に習うことだったと思ったんだが、違ったかな?

私もかつては史学の徒を一旦は志した人間だ。
だから、僭越を承知で言うんだが、なぜ歴史の教科書が無味乾燥か、知っているかい?
よく「教科書的に」というのは無味乾燥の比喩表現で使われるし、
実際私も、歴史の授業のうち半分は居眠りの時間に充てていたものさ。
私が本当に歴史の面白さを知ったのは、自分で歴史書を買いあさるようになってからだなあ、と、
まあこれは余談。

まあ、話を歴史に戻そうか。
私はよく「教科書に書いてない面白い歴史」というような本を手に取ってみるんだが、
あれを読んでみると大体が英雄豪傑史観というやつだ。
つまり偉大な英雄がいて、それに無名の大衆が引きずられて歴史となった、というわけだ。
確かにそれは分かりやすくて、「物語」としては面白い。
だが、それを教科書に書かないのには理由があるし、私も書くべきじゃないと思っている。
何故だか分かるかい?

それはつまり、「無名の大衆」ってものの存在意義は何なのか、ってことさ。
もし偉い一握りの人が歴史を決定づけるとしたら、それ以外の何億人の価値はどうなる?
歴史が一握りの偉人の能力だけで決まるのなら、私達「無名の大衆」は何も考えなくていい、
ただ流れに身を任せているだけでいい、ということになってしまうじゃないか。
忘れちゃいけないが、私も君も、その「無名の大衆」なんだ。

話を最初に戻すと、君の質問もこの歴史観と同じだ。
ヤン・ウェンリー一個人の能力が歴史を決めるのなら、君はどうなる?
いてもいなくても構わない、考える必要も行動する必要もない、路傍の石と同じ。
そんな存在にまで、自分を貶めることはないんじゃないかな?

そうとも、全ての事象には、必ずその下地がある。
帝国のラインハルト・フォン・ローエングラムだって同じさ。
彼があそこまで急激に伸長できたのは、ゴールデンバウム王朝があまりに腐敗しきっていて、
民衆も心ある貴族達も、それに対する反感を強めていたからだ。
もしゴールデンバウム王朝がかつてのように清廉であったなら、彼もせいぜい一能吏として生涯を終えただろう。

歴史の事象ってやつは、つまりみんなこうなのさ。
だから無味乾燥でも、事件の背後にある社会構造そのものを知らなくちゃいけない。
それは現在についても同じことだ。
ハイネセンの政治家達のように、ラインハルトをも「帝国主義の権化」とのみ決めつけて嘲笑していると、
彼を下支えしている、多くの人々の無名の思いを踏みにじることになる。
そのせいでどんなしっぺ返しを食らうことか……。

……まあ、その話はよそう。
とりあえず、最後に私は一つの例をあげておくことにするよ。
おそらく君なら、真っ先に賛同の意を表明するだろう人物だ。
その人物は卓越した軍事能力を持ち、強引ともいえる突破力で事態の改善に貢献し、
ドラスティックな改革を大胆に実行し、百年の怠惰を一年で取り戻すことができ、
そして多くの民衆の喝采を受けて、民主主義の手続きに則って権力の座についた軍人だ。
どうかな、君にとっては、なかなか理想的な人物だろう。






その人物の名は、銀河帝国初代大帝、ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムというんだがね。







47 名前:ヤン・ウェンリー:2010/01/09(土) 03:36:19
>>25
ううん、どうだろう。
そうやって呑気に暮らしていられればいいが……。


「ヤン・ウェンリー!
 卿はなぜ、その身を無為に持て余さんとするか!」
 
「陛下、お言葉ですが私は非才の身、無理に表に出たところでお役には立てませんよ」

「黙れ、余を愚弄するか!
 卿の他の能力についてはいざ知らず、軍事的能力については既に余の知るところである!
 よいか、才を持ちながらそれを生かさないのは、国家に対して損害を与えるのと同義であり、
 余は余の国家政府に属する者が、それを生かさず無為に過ごすことは民衆に対して最悪の害であると断言する!
 卿は何もしないということによって、最大の罪を犯しているものと知れ!
 竹林の賢人気取りで政務から逃げようなどと、余の眼の黒いうちは絶対に許さん!」
 

とかそういうことになって、コキ使われそうだなあ。
もっとも、あちらには有能な士官が大勢いるから、私なんぞの背に過剰な責任がのしかかるようなことは、
あまりなさそうなのが唯一の救いか。
ただ、帝国にも年金というのはあるのかどうか……そこが最大の問題だね。

まあ、仮定の話は置いておいて、少なくとも私は民主主義の水を飲んで育ったのだし、
その水が一番体に合っている。
少なくとも皮肉や嫌みを言いまくっても、せいぜい出世が遅れる程度で、
暗殺者を送られたり、戦時中に背中から撃たれそうになったりということはない。
それだけでも私には、民主主義のほうが合っているということだろうなあ。


48 名前:ヤン・ウェンリー:2010/01/09(土) 03:36:55

>>26
おやおや。
まず確認しておきたいんだが、私が仮に帝国に生まれていたとしても、
貴族よりは平民に生まれている可能性のほうが、統計的にいえばきわめて高いんだがね。
よく立体TVの前世占いとやらを見ていても感じるんだけれど、なぜ前世とやらは貴族や有名人ばかりで、
「中世の農奴」とか「平凡な商人」なんていうのは皆無に等しいんだろうか。

まあ、それは置いておいて、残念ながら軍ではいまだに紅茶派は少数派だよ。
コーヒーという奴はコーヒーメーカーで簡単に大量に淹れられるし、
オートのマシンを食堂に設置しておけば、簡単にセルフで飲めるからね。
それに対し紅茶という奴は、淹れるのにも技量はいるし、一度に大量には淹れられない。
ティーバッグは確かに便利だが、やっぱりユリアンの紅茶に比べると味が落ちるんだよなあ、どうしても。

これがアッテンボローあたりに言わせると、
「いい加減大人になりましょうや。
 大人になるってことは、周りを自分に合わさせることを卒業して、
 自分が周りに合わせることを覚えるってことですよ」
となるんだが――こればっかりはどうしても譲れないね。
会議ならともかく、プライベートまであの泥水を飲まされちゃ、たまらないからなあ。

49 名前:ヤン・ウェンリー:2010/01/09(土) 03:37:08
>>27
フィッシャー提督の名人芸としての艦隊運用。
いくら私が理屈であれこれ言ってもしょせんは理屈。
これはある人物の言をそのまま引用させてもらうんだが、「演奏されずして人を感動させる名曲はない」からなあ。
名演奏家たるフィッシャー提督、さまさまだ。

ああ……分かってる。
求められている答えはそういうものじゃなくて、ハード面についてなんだろう?
しかし私は、今まで艦隊旗艦だから特別な機能が必要だとは、感じたことはないんだ。
もちろんラインハルト・フォン・ローエングラムのブリュンヒルトのように、
見ただけで美しさと壮大さを感じさせ、士気を高めるということはあるだろう。
だが私はそういうのは好きじゃないし、第一この私じゃあ、
あの美麗なラインハルト閣下のようにはいかないのは、目に見えているからね。

つまるところ、やり方は人それぞれであって、私の場合には特別な機能は必要としていなかった。
そういうことで、納得してもらえると嬉しいね。

50 名前:ヤン・ウェンリー:2010/01/09(土) 03:37:59

>>28
最前線を逃げ出し、弾の届かない一番安全なところから死んでこい、と命令する指揮官に、
ついてくる兵士がいると思うかい?



51 名前:ヤン・ウェンリー:2010/01/09(土) 03:38:14

>>29
やれやれ、シェーンコップ中将。
それで匿名のつもりかい……というか、明らかに隠す気もないじゃないか。

そして、どうしても私を独裁者に仕立て上げたいらしいが、私の答えはいつもと同じ、NOさ。
その発想は、まさに非常を理由として全てを肯定するテロリズムの思想だし、
それはまさに、ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムの通った道でもある。
時にそれがドラスティックな変革をもたらすことは私も否定しないが、
しかしそれでも私は、その道を選びたいとは思わないんだ。

そもそも……私は、ラインハルト・フォン・ローエングラムという人物の皮肉は、
帝国主義というシステムの上に拠って立ちながら、彼個人はもっとも民主的な市民の理想像である、
という逆説にあると、そう考えている。
彼は自己の能力以外によって社会的地位が決定づけられる社会を嫌悪し、
自ら決定し行動したその結果によってのみ地位が決定される社会を目指した。
世襲、血縁、そういったものをできるだけ排除しようとしたし、
彼は他者との意見の違いを尊重し、自らの意見に基づいて行動し、その結果に責任を負った。
これは最も理想的な、市民の姿だと言えるだろう。

だが彼は、専制君主となることを肯定した。
それはもっともドラスティックな改革を可能にするシステムだからだ。
彼は自分の理想とする結果に対して最短のルートを選ぶことを躊躇しなかったし、
自分の行動についても悩みはしたろうが、本質的には自己の判断を疑うことはなかった。

先ほど、私が帝国に生まれていたらどうだったか、と質問をした人がいたが、
逆に彼が同盟に生まれていたなら、おそらくルドルフ同様、軍事的能力を基に政治家へと転身し、
その辣腕をふるったことだろう。
そこに一点の躊躇もなかったろうし、それが彼の強さなんだ。

だが私には、それはできない。
私は自己の判断をいつも疑わざるを得ないし、だからこそ独走を食い止めるシステムの必要性を思う。
それが民主主義というものだと、私はかたく信じているし、
それを支える人々の意思というものも、また私はかたく信じている。

第一、中将の言うとおりに私が専制君主になって和平を結んだとして、そのあとどうなる?
それがヤン・ウェンリーとラインハルト・フォン・ローエングラムの個人的友誼に基づくものだとしたら、
私たちが表舞台を去った後、再び戦火が交えられるのは、時間の問題でしかないだろう。
それじゃあ、意味がないんだ。
それぞれの国民の意思が終戦の方向に傾いて、それを代表する者同士が――決して個人ではなく――話し合い、
講和するのでなくては、ね。

だから、私はその提案に乗ることはできない。
それに、私が君主になれば犠牲が減らせる、なんていうのは傲慢じゃないか。
私は自分自身の能力が、国民の意思によって選ばれた選良より優れているなどというような思い上がりは持てないし、
そんな傲慢を持ちたくはない。
たとえ遠回りでも、私は人々の選択を信じてみたいんだ。

そういうことだよ、シェーンコップ中将。
時には待つことも必要さ。
今は腐敗という土壌に覆われていても、いつかそれを突き抜けて民主主義の種は必ず芽吹く。
大事なのはその時のために種子を守り抜くことであって、安易に相手側の土に鞍替えすることじゃない。

さ、お喋りは終わりだ。
できれば、そちらも荷造りを早めに済ませて、ゆっくり休んでいてくれ。
あるいは、一仕事頼むことになる可能性だってあるんだからね。

52 名前:ヤン・ウェンリー:2010/01/09(土) 03:38:51
そういうことで、少々予定をオーバーしてしまったけど、この会見場もいったん閉じさせてもらうよ。
機会があれば、またお目にかかることもあるだろう。
とりあえず、生きてその機会があることを、私は祈っているよ。

ああ、それと、ビュコック提督の会見場のほうは、まだ開いているようだ。
あの御老人もなかなかに苦労人だから、気晴らしの話し相手にくらいなってくれると、助かるかな。

こちら、宇宙艦隊司令部
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1254982511/


さて、こんなところか。
最後だから少しくらい格好いい話をしようかとも思ったんだけれど、どうもうまくいかない。
やっぱりこういうことに関しては、私は全く役に立たないらしいね。
困ったものだ、我ながら。

それじゃあ、まあ、またどこかで。


53 名前:停止しました:停止
真・スレッドストッパー。。。( ̄ー ̄)ニヤリッ


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