■ 吸血大殲　外伝　森祭

1 名前：シオン・エルトナム・アトラシア：2007/11/12(月) 21:08:07

　　　
　　
　　
　　　――――このスレの門をくぐる者は一切の希望を捨てよ
　　
　　
　　
ＨＯＷ　ＴＯ　ＰＬＡＹＤＥＡＤ

＞大前提

・本祭のシチュエーションについては>>2以降を参照。
　簡潔な纏めについては >>18
・本祭の舞台となる街の説明　>>2
・メール欄への原典表記
・各々でのレス番のメモ
・闘争終了後、そのレス番を纏めたものを貼り付ける。
・開催期間は１１月２３日午後１０時〜１２月２日午前３時
　その期間以内に闘争を終わらせる事
　逆にこれさえ守れるのであれば、開催後に募集、闘争開始も構わない。
・携帯での参加、書き込みは厳禁及び無関係な書き込みも厳禁
・導入の貼り付けは闘争開始日の一日前から可とする。
・最終状況開始、詳細は>>2参照。

＞参加方法

吸血大殲　外伝　森祭　参戦表明スレ
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869526/

上記スレの死刑執行書（テンプレート）に署名の上、必要事項を記入。
闘争カード成立は自分から積極的に相手を指名した方が良い。

＞進行についての打ち合わせ

吸血大殲森祭会議スレッド
http://charaneta.just-size.net/bbs/test/read.cgi/ikkokuRH/1194869570/
吸血大殲森祭会議スレッド　Ver.B
http://charaneta.just-size.net/bbs/test/read.cgi/ikkokuRH/1195744151/

闘争相手との打ち合わせが必要であれば使う事。
会議スレは奇数日開始の闘争、会議スレＢは偶数日開始の闘争の会議室。
それぞれ使い分ける事。

＞削除依頼

吸血大殲　外伝　森祭専用削除依頼スレ
http://charaneta.just-size.net/bbs/test/read.cgi/ikkokuRH/1195417031/

専用スレにて依頼すること。
通常の一刻館のルールは適用されない、詳細は削除スレ>>1を参照。

＞その他、質問等あれば……

吸血大殲　外伝　森祭　総本部＆観戦スレ
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869478/

上記の運営・観戦スレへ向かう事。但し、ルールを熟読した上で質問する事。
尚、開催期間中は観戦雑談も上記スレで行われる。息抜きに向かってみるのも一興。
■　吸血大殲　森祭　Reverse　について

本森祭終了後も特別措置として延長戦を二週間、行う。
概略、参加方法は下記リンクを参照のこと。

http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869478/738-740

2 名前：シオン・エルトナム・アトラシア：2007/11/12(月) 21:09:46

街のＭＡＰ
http://charaneta.just-size.net/bbs/fupbbs/obj/obj36_1.gif
街全体の状況

研究所の異変及び地震による大崩壊、街全体が植物に侵食されている異界化。
地震で街の多くの建物が倒壊しており、各所で火災発生中。
街を横断する黄線はハイウェイ。ところどころ崩落しており、交通路としての役目は果たさない。
街への侵入は可能だが脱出は終盤まで不可能。

（Ａ地区）

市民公園、墓地、泉、美術館、図書館、橋（崩落寸前）

＊補足

市民公園は地震の時の避難場所に指定。
但し、異変及び地震でパニックが起きている状態でまともに避難できるのかどうか。
研究所から逃げ出したサンプルが襲う可能性もある。グール増殖の可能性も。

近場に墓地もあり、こちらも大変な事になっている可能性も。
傍のキレイな泉はもう何かの皮肉か。

橋は唯一崩落していない。
が、直ぐにでも崩落してしまいそうなほど部分部分に大きな亀裂が入り危険。

（Ｂ地区）
繁華街

＊補足
非常に人が多くにぎわう場所、東には大規模なデパート等も立ち並ぶ。
西は飲み屋街、風俗街など。宿発施設も多くある。東側に銃砲店等もあり。

人が一番多い地区だけにパニックが特に酷い。
宿泊施設の存在から、第三者勢力が集まりやすいと思われる。

（Ｃ地区）

イノヴェルチ施設（森化）、オフィス街

＊補足
異変の根源。この地区は施設を中心に特に濃く森に侵食されている。
施設のあった場所は赤で表記。

（Ｄ地区）
住宅街、商店街、学校

＊補足
古い町並の住宅街、海浜公園がある。
商店街は個人商店の集まり。銃砲店、ホームセンターあり。

（Ｅ地区）
港、倉庫街、海浜公園

＊補足

港の船は地震で殆ど横転、使い物にはならない。
建物が少ないせいか、地震の被害は他の地区より少ない様だ。
公園は小さな森があるが基本平地で見通しが良い。災害時広域避難場所に指定。

（Ｆ地区）
テーマパーク、病院、陸上競技場、ホテル、ヘリポート

大型施設が複数存在する地区。
テーマパークの傍には宿泊施設あり、第三者の活動の拠点になるか？
ヘリポートがあり、空路による侵入可能、撤退は無理。

（Ｇ地区）
市役所、美術館、博物館、警察署、テレビ局、地下鉄

主に役所、公共施設関係がある地区。
異変で完全に機能麻痺。
地下鉄の駅があるが、中はどうなっているか不明。


街全体の状況　２

研究所の異変及び地震による大崩壊。
異界化は解け、森も消滅進行中――――但し、火に包まれながら。

地震で街の多くの建物が倒壊しており、各所で火災発生中。
街を横断する黄線はハイウェイ。ところどころ崩落しており、交通路としての役目は果たさない。
街への侵入は可能且つ脱出も可能になった。

尚、２日午前５時に津波により街は消滅する。
この状況の変化を闘争の設定に用いるかどうかは全て参加者の自由。


以下、変更点があった地区のみ記す。

（Ｃ地区）

イノヴェルチ施設（火災発生）、オフィス街

＊補足
異変の根源。森は火による浄化を伴い消滅進行中。
施設のある場所は赤で表記。周囲は割と火の海。

（Ｆ地区）
テーマパーク、病院、陸上競技場、ホテル、ヘリポート

大型施設が複数存在する地区。
テーマパークの傍には宿泊施設あり、第三者の活動の拠点になるか？
ヘリポートがあり、空路による侵入及び撤退可

（Ｇ地区）
市役所、美術館、博物館、警察署、テレビ局、地下鉄

主に役所、公共施設関係がある地区。
異変で完全に機能麻痺。
地下鉄の駅があり、地下が崩落さえしていなければ脱出可能。

3 名前： ◆ALICEsQkXc ：2007/11/12(月) 21:34:49

　　
　
森祭　―The Trembling Forest―

Prologue



　フランス西北、ルーアンの近郊の新興都市。
　新設のハイウェイが街を横断し、新市街にはアメリカ式のショッピングモー
ルが鎮座する。ノルマンディ地域独特の歴史に置き去りにされたかのような雰
囲気は姿を隠し、餓えることのない資金力によって実体のない開発が続く。
　企業の力によって潤いを手にし、企業の力によって土の臭いを忘れつつある
虚構都市―――巨大複合企業「燦月製薬」の進出によって繁栄を迎えた街の中
心地には、日本語のロゴが堂々と掲げられた研究施設が領主の如く街並みを睥
睨していた。燦月製薬の薬品開発施設だ。

　正面ゲートにはVAB装甲車が駐車され、ベレー帽にサングラスといった憲兵
気取りの門衛がファマスを脇に抱えている。
　軍事施設顔負けの警護―――この街の事情を知らぬ、ルーアンあたりから流
れてきた観光客ならば首の一つも傾げるだろう。そう言うときは研究所の所員
に尋ねれば、答えは簡単に得られる。
　軍事施設よりも厳重に護りを固めるのは、このパンドラ・ボックスが軍事施
設よりも重要で、軍事施設よりも危険だからだ。


　あらゆる神秘を冒涜せよ。それが燦月製薬の社訓だった。

4 名前： ◆ALICEsQkXc ：2007/11/12(月) 21:38:26

　
　
Prologue


　先週づけの辞令でフランスに出向した燦月製薬の一等研究員・諸井霧江はカ
ードリーダーにIDを走らせると、ゲートを開放し、複雑に階層分けされた地下
研究所の深奥部に足を踏み入れた。
　かつり、とヒールが床を刺す。神経質そうな靴音は、常に紙一重の緊張を眉
に走らせている彼女に相応しい。―――だが、今夜の諸井博士はいつになく苛
立ち、焦っていた。

　彼女が目指す先には、ワルプルギスの夜が待ち受けている。
　あの傲岸不遜な黒猫が主催する夜会。挑戦的なサバト。出資者たちは、そこ
に未知の可能性を感じるだけで喜んで億単位の資金を注ぐ。だが、パーティに
は決して同席しない。―――太陽を裏切った狂人連中に付き合わされるのは、
いつだって諸井博士のような、そこそこに狂った人物だった。

　まったく、なんて忌々しい会合だろうか。
　諸井博士は今から始まる残業に学術的興味の欠片も抱けなかった。協会の連
中はあまりにナンセンスな実験を企てている。
　成功して得をするのは協会。だが、失敗して深刻なダメージを負うのはイノ
ヴェルチだ。所長はそのことを理解しているのだろうか？　もし、この研究所
が半壊するようなことがあれば、地下に封印しているあらゆる神秘が解放され
ることになる。第一級のオカルト・ハザードだ。
　イノヴェルチの重要な活動拠点であるこの街を犠牲にしてまで、なぜ協会に
媚びるのか。連中は我々に叡智の残滓すら分け与えようとしてくれないのに。
　
　―――だが、抑えなくてはいけない。
　自分は今夜のためだけにわざわざフランスまで出向かされたのだから。
　せいぜい丁重に迎えなくては。

　最後のゲートが開く。
　地下研究室と呼ぶには寒々しい、空き部屋に等しき白亜の空間。研究機材の
代わりに、五人の先客が部屋のインテリアとなっていた。……いや、ここは正
確に五匹と呼ぶべきだろうか。
　乗馬ズボンに開襟ジャケット、金髪に乗せた略帽に黒マント―――静かなる
狂気を連想させる暗黒色の軍服。半世紀前の悪夢が、蒼く燃える義眼で諸井博
士睨み据えた。
　背後に控える四匹も没個性の代名詞ブラックスーツで上下を固めているが、
鮮血色の腕章が強烈に自己主張をしているお陰で、察するまでもなく正体は知
れる。腕章には当然のようにハーケンクロイツ。
　諸井博士は蔑みに満ちた視線で一瞥すると、「お待たせしました」と形式だ
けの侘びを口にした。

「まったくだ」
　黒マントの女は、無感情に言葉を吐き捨てる。
「我々の時間が悠久に等しいのは、貴様の遅参を許容するためではない。貴様
の過ごす五分も、我々が待ち続ける五分も、同じ五分だ。……次は許さん」
「申し訳ありません」
　直接の上司でもない、外様の人間がよくも偉そうに。

　グルマルキン・フォン・シュユティーベル。
　鉤十字騎士団（スワスティング・オルデン）の魔術師。ナチの亡霊に糧を与
え続ける本物の悪夢。トゥーレ協会の高級幹部。イノヴェルチがナチに接触で
きる唯一の交渉相手。ミレニアムの連中は狂いすぎていて、コミュニケーショ
ンがとれない。
　グルマルキンは少佐のように狂人ではなく、ナハツェーラーのように戯れ好
きの俗物でもないため、夜を往く者にしては珍しく理性的な交渉ができた。

　―――だが、諸井博士は彼女とは本質の部分で反りが合わなかった。
　魔術師というのが気に入らない。諸井博士は、ナチに限らず魔術師や錬金術
師といった孤独な神秘学者を徹底的に嫌悪をしていた。
　同じ探求者でありながら、連中は在り方があまりに違いすぎる。

「……献体のほうの準備は整っています。例の『剣』も、今朝方海路で届きま
した。碩学者に確認させたところ、間違いなく本物だそうです」

「けっこう」魔女は頷く。「では早速、始めるとしよう」

5 名前： ◆ALICEsQkXc ：2007/11/12(月) 22:03:08

　
　
Prologue


　職員によって剣と献体が運び込まれた。剣は二重三重の封印が施され、直接
手に触れないように特注の台車に乗せられている。
　対する献体の扱いはぞんざいで、荒事専門の職員に片腕を引き摺られ、下着
同然の姿で魔女の前に投げ出された。

　献体―――連中の文化に合わせるなら「贄」とでも呼ぶべきか。
　少女専門の人身売買組織から高額で買い取った十代中頃の少女。見るものの
背筋を無意識に伸ばす、凍えるほど可憐な花。金髪を肩まで伸ばし、清廉な明
眸を恐怖で引き攣らせている。
　申し訳程度に肌を隠すレースのスリップが聖衣のようだ。

「ほう」グルマルキンの表情に好奇が浮かんだ。「これは素晴らしい。良い買
い物をしたな。これほどの器量なら奴も満足するに違いない」

　諸井博士が手ずから剣の封印を解く。時代物のロングソードで、黄金色の羅
紗を鞘にしていた。華美な装飾は施されていないものの、空気を引き締める格
調高い品格を伴っている。

「絞首台に昇ったその時まで腰に佩いていたと云われる愛剣です。彼に由縁の
ある遺品として、これほど縁の強いものはないでしょう」
　
「ふむ」
　鞘を払って改める。ブレードには五つの十字が縦一列に刻まれていた。
「奴らしくない意匠だ。清らかすぎる。奴はこれをどこで手に入れた？」
「起源は不明です。シャルル七世から下賜されたものにしては拵えが質素です
から、王族ゆかりの武具ではないのは確かです」
「つまり、どのような由縁――因縁のほうが適当か？――が奴とこの剣の間に
あるか分からんというわけか」
「……」
　そもそも、彼についての知識など霧江は書物で軽く読み流した程度でしか持
ち得ていない。まるで顔見知りだと言わんばかりの魔女の態度が滑稽だった。
　グルマルキンは嗤う。
「まぁ良いだろう。魔術礼装であることは疑いようもない。試す価値は十分に
あり、だ。―――おい、聖杯〈グラール〉を寄越せ」

　背後の親衛隊に合図をする。吸血鬼はスーツのポケットをごそごそと漁ると、
拳大の石塊を取り出した。霧江はぎょっとして身構える。

6 名前： ◆ALICEsQkXc ：2007/11/12(月) 22:03:40

Prologue


「せ、聖杯をそんな乱雑に」
「聖杯？」
「だ、だってそれは……」
　魔女は呵々と嗤った。
「ご覧の通り、くだららんまがい物、コピーに過ぎん。魔力源として携帯する
程度の役目しか担えん贋物だ。丁寧に梱包するなど馬鹿げている」
　アーネンエルベは既に聖遺物の複製化を成功させていた。しかし、完成物は
オリジナルには程遠く、奇跡は一度として降臨しない。
「しかし……」
「もちろん、うまく励起させればこの街を吹き飛ばす程度の魔力量は保有して
いる。だからこそ今回の用途に最適なのだ」
　からかっているつもりなのか。魔女は傲慢にも鼻でせせら笑った。

「―――ジル・ド・レイ如きを喚ぶには、この程度の魔力量で十分だ」

　ジル・ド・レイ。
　ブルターニュ貴族。青ひげ公。百年戦争救国の英雄。……マシュクール城の
恐怖。絶望の錬金術師。千人近くの少年少女を城に拉致し、黒魔術の餌食にし
た反英霊。狂気の先に彼が行き着いたのは絞首台と火刑場。
　―――その魂を、目の前の少女に「受胎」させるのが、今回の研究の目的だ
った。少女にジル・ド・レイを産み落とさせるのだ。

　グルマルキンの狙いはアーネンエルベの手による「英霊の現界」だった。
　彼女は、ナチスは、常に奇跡を求めていた。神代の世に威光を轟かす英霊を
召喚せしめるのは、奇跡の中でも飛び抜けて上等な部類だ。故に手始めとして、
名こそ知られているものの位階は低いジル・ド・レイを召喚の対象にした。

　世界各地に飽和する聖杯戦争の中で、極東のそれは霊媒を用いずして英霊の
召喚が可能だという。実に興味深い。だが、それを実行するためには天文学的
な数値の魔力が必要となる。奇跡の生成が未だ実現していないアーネンエルベ
では、何かしらの贄が必要だ。
　―――そのための少女であり、そのためのグラール・コピーだった。
　
　背後に控えた四匹の親衛隊は、突撃銃（シュトゥルム・ゲヴェアー）の代わ
りに無骨な処刑刀を提げている。ジル・ド・レイが母体の腹を食い破って現界
し次第、首を刈り取るためだ。
　魔女が欲するのは彼の知識であり、身体に興味はなかった。

「始めるか……」

　マントを脱いで親衛隊に渡すと、右手にグラール・コピー。左手にロングソ
ードを掲げた。金髪の乙女が声にならぬ悲鳴を上げると、呼応するかのように
魔女の義眼に蒼い炎が宿る。自然に嗤いがこみ上げた。

「思う存分に恐怖しろ。お前の傷みが、奴を呼び覚ます蝕となる」

7 名前：イヴェット ◆ALICEsQkXc ：2007/11/12(月) 22:08:59

　
　　
Prologue


　献体の少女の名はイヴェットという。
　今年の夏、十六歳になったばかりだった。

　マルセイユの下町で育ち、不況のため贅沢こそできないものの、両親と二人
の兄に囲まれて、それなりに幸せな毎日を過ごしていた。
　イヴェットは、自分を普通の女の子だと考えるのが好きだった。特に目立つ
こともなく、学校でも没個性的に振る舞い、一週間に一度は教師に奨学金につ
いての助言を受け、大学に進学するよう説得される。
　―――それだけで満足だった。

　自分が取り立てて美人などと思ったことはない。子供の頃から美しいと言わ
れ続けてきたけど、賛同はしかねたし、迷惑でもあった。
　鏡を睨めば、自分の鼻が少し上に向きすぎていることが分かるし、目の形は
鋭すぎる。何より背丈が寸足らずで不格好だ。
　これで器量よしだなんて、まったく馬鹿げている。パリに出れば、自分より
綺麗な女性など腐るほどいるに違いない。
　わたしは普通。普通の女の子なんだ。

　そう、信じ続けていたのに。

　彼女はいま、どうしようもないほど絶対的な非現実の中で、短い人生を終え
ようとしていた。

　何も間違った選択などしていない。
　いつもと同じ学校からの帰り道―――ただ、その日だけは、路肩に見知らぬ
ミニバンが駐車してあっただけだ。
　イヴェットはそのルノー・ミニバンに乗っている三人の男性がコルシカ・ユ
ニオンの構成員だということは最後まで知らなかったし、ユーロのペストとし
て吹き荒れる児童誘拐の犠牲者に、まさか自分が選ばれるなんて予想もしなか
った。―――当然、世界に名を轟かす製薬会社「燦月」に高額で買い取られる
ということも。

　二ヶ月間、地下に監禁された。
　食事は朝昼晩と出てきたし、シャワーも自由に浴びられた。一日に二時間は
運動の時間もあった。希望すれば本も読めたし、テレビも見られた。
　―――だけど、自由は無かった。
　家畜小屋で屠殺を待つ豚と同じだ。その日が来るまで、健康を維持されてい
るに過ぎない。

　そして、今日、この瞬間が―――イヴェットの屠殺の日だった。

8 名前：イヴェット ◆ALICEsQkXc ：2007/11/12(月) 22:14:15

　
　
Prologue


　黒マントに義眼の魔女が、靴音を響かせながら近付いてくる。
　恐怖に震える唇は「やめて」とか細く啼くので精一杯だった。腕を払って
抵抗を試みたが、逆に掴み上げられてしまった。
　骨が軋み、苦悶が喉から喘ぎを漏らす。魔女は低く嗤った。

「上玉だ。快楽殺人鬼如きにくれてやるのはもったいないほどに、な」
　
　魔女の指先がイヴェットの肢体を舐める。すると、魔女が触れた部位が曖昧
な輝きを放ち始めた。魔術の文様が指の流れに従って全身に広がる。
「あ、あ……」もはや悲鳴を上げる余裕すらない。
　どうして、こんなことになったのか。

　古風な長刀を無理矢理構えさせられる。振るおうにも、あまりの重さにイヴ
ェットの細腕では保持するだけで筋肉が震える。
　魔女の不気味な義眼がイヴェットを貫く。床に落とせば即座に殺されるに違
いない。そんな恐怖心が必死で剣の切っ先を天井に向けさせた。

「くく、良い子だ」
　魔女が白手袋を脱ぎ捨てる。露わになった素手には、二重三重の円環を構築
するルーンの刺青。

「呼び声に応えよ」
　呪文とともに魔女は右手の石塊を掲げて―――イヴェットの胸に突き入れた。
「聖杯の求めに応じよ！」
　
「かっ……」
　
　信じがたい光景。石塊は水面に落ちるように、するりと胸の奥へと潜ってい
った。強烈な異物感に、イヴェットは嘔吐を催すが―――身体が動かない。
　心臓の動悸が激しい。激しすぎる。胸を中心に灼熱が広がるようだ。

「さあ、始まるぞ」
　
　魔女の嬉々とした愉悦も届かない。

　イヴェットは覚った。
　覚るしかなかった。
　
　
　私は、私は死ぬんだ―――。

9 名前： ◆ALICEsQkXc ：2007/11/12(月) 22:18:18

.






　その時、彼女は口ずさんだ。
　圧倒的な絶望の極みで、理不尽な運命の末路で、この世に遺す最後の言葉。
　それは母の名でも、神への命乞いでもなく―――毎晩、食事前に祈りとと
もに捧げる、習慣的な文句だった。

　深い意味はない。咄嗟に口から奔っただけだ。

　彼女は普通の少女だった。
　愛国心は抱いていたが、心中を望むほどではない。
　まったくの偶然。

　だが、それでも呟いた事実に揺るぎはなく―――




「……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉」




　その祈りを、奇跡が聞き届けた。

10 名前：グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆ORDEN1uWpQ ：2007/11/12(月) 22:20:34

　
　
Prologue



　右目の霊視眼が、膨大な魔力の蠢きを捉えた。少女の胎内で、グラール・コ
ピーを中心に爆発的な広がりを見せる。強制的に魔術回路を書き加えられ、少
女は煉獄の炎に舐められたかのように全身で悶絶を表現した。

　グルマルキンの口元が狂喜に歪む。―――さあ、現界せよ。受胎せよ。受肉
せよ。忌まわしき欠陥品。出来損ないの殺人者よ。
　蒼き髭の悪魔め！　この私に更なる知識を。より深き知識を！

　だが、様子がおかしい。グラール・コピーから溢れ出る魔力は、反英霊を孕
む気配を見せず、いつまでも少女の裡を巡り回っている。まるでグラール・コ
ピーをエンジンにして、少女という器を動かすかのように、だ。少女の腹を食
い破り、青ひげ公が生まれ落ちると云う式はどうなっているのか。

　失敗か？　背後に控える親衛隊に目配せをして、戦闘態勢をとらせる。

　―――その時。

　少女の影から枝葉が伸びた。他に喩えようもない。樹木の枝そのものだ。
　咄嗟に少女の胸から腕を引き抜き、背後に退がる―――が、小枝はグルマル
キンの右手に絡みつき、皮膚を食い破って体内に侵入した。

「な、なんだコレは」
　
　右腕をフィジカルエンチャント。強化した筋力で枝葉の拘束を引き千切ろう
とするが、驚くべきことに指一本動かせない。想像を絶するほど強力な縛め。
　体内の枝は肘を上り、二の腕に達しようとしている。このままでは心臓を食
われる――― 一瞬の決断。グルマルキンは左手でサーベルを引き抜くと、右
手を一息で斬り落とした。切断面に止血の呪文を施しながら後ろに跳ぶ。
　少女の影からは、もはや枝に留まらず数多の幹が、幾多の根が、這い出ては
地下室を浸食している。無限の供給―――グラール・コピーの力なのか。

「……コンタクトは失敗だ」
　忌々しげに呻く。
「処分しろ」
　
　グルマルキンの一声で四人の親衛隊が少女に殺到する。それぞれが振り上げ
た処刑刀は、しかし彼女の肌に届くことなく―――ミレニアムの精鋭は、悲鳴
の一つも上げずにその場に昏倒した。床に崩れ落ち、沈黙する。
　次に、部屋の隅で混乱を見守っていたキリエ・モロイが、盛大に喀血した。
目や耳から血漿滴らせながら、もんどりを打って斃れる。
　一瞬で事態は一変した。もはや室内で息を吐くのは魔女と少女だけだ。

　霊視眼は、桁外れな魔力値を観測し続けている。
　グルマルキンは驚愕で動けない。

「馬鹿な、こんなのはあり得ない……」
　
　あまりにも濃厚な魔力の障気が、吸血鬼をも死に至らしめたのだ。当然、
人間のキリエ・モロイに抗えるはずもない。だが―――ここまで超純粋な
魔力などグルマルキンは見たこともなかった。
　ジル・ド・レイ如きが持てるわけがない。

　私はいったい、何を呼び寄せたんだ。
　この樹は何なのだ。

　鉤十字の魔女の目の前で、木々が草花が咲いてゆく。
　くすくす―――と、悪戯じみた娘の笑い声が、どこからともなく響いた。
　そして、贄の少女は……ゆっくりと顔を上げる。

　イヴェットはもう、どこにもいなかった。


　グルマルキンは、決して喚んではならないものを召喚したことを、この
とき覚った。悔恨は傷みをもって償われる。

11 名前： ◆ALICEsQkXc ：2007/11/12(月) 22:21:36

.














　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そして森が、

12 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/12(月) 22:27:11

　
Prologue







　……うっすらと瞼を開く。

　そこは、彼女が初めて〈声〉を聞いた場所に似ていた。
　村を離れ、ヴォークリュールに向かう高台―――芝生に覆われたあの自由地
には、枝を大きくのばし、広い木陰を作るブナの樹が密生していた。
　思えば、〈ブールルモンの妖精の樹〉と呼ばれていたあの高台から、全てが
始まったような気がする。
　夏は緑樹が茂り、秋には黄金が実るあの場所で、精霊の囁きに耳を貸しなが
ら鼻歌を口ずさんだ昔日―――

　　ねえ、ブールルモンの妖精の樹よ？
　　　どうしてお前の葉っぱはそんなに緑なの？

　　それは子供たちの涙のためさ！
　　　みんなが悲しみをもってきた　
　　それでおまえは慰めて　涙が葉っぱを大きくした！

　此処は、あの高台とあまりに似すぎている。
　見たこともない材質の石で作られた硬質な壁面に、びっしりと生え揃った
苔。鏡のように透明で冷たい床を砕く巨大な根。床の亀裂からは草が起き上
がり、深緑の絨毯となって彼女の身体を受け止めている。
　天井が高い。そこで彼女は初めて、ここが屋内だということに気付いた。
彼女の胴が四つあっても足りないような太い幹を持つ巨木が彼処で突き立っ
ているため、森の中だとばかり思っていた。

　なぜ、自分は此処に―――。

　身を起こすことで、右手の違和感を認める。
　馴染みのある皮のグリップ。ブレードの根元で十字を描く、銀無垢のリカッ
ソ。刀身に五つのクロスが刻まれた、両刃のロングソード―――聖カトリーヌ
教会の祭壇裏で発掘された、彼女の愛剣／錆びた聖剣だ。
　確か、パリ攻略の前にジル・ド・レイに預けたはずなのに……。

　……パリ？　ジル・ド・レイ？
　　私は何を―――


「おはようジャンヌ。快適な目覚めを得られたかしら」
　巨木の陰から、見知らぬ少女が軽い足取りで躍り出る。
「じゃ、ンヌ……？」
「そうよ、あなたはジャンヌよ」
　当然でしょ、と言いたげに肩を竦められた。
「自分の名前も忘れてしまうなんて、まだ寝ぼけているのね。―――良いわ、
私が特別に教えてあげる。あなたはジャンヌ。ジャンヌ・ラ・ピュセル。オ
ルレアンの救世主にして、英国に仇為す魔女よ」

13 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/12(月) 22:27:51

　
　
Prologue


　そうだったかしら。……そうだったような気がする。きっと、そうなのだ
ろう。乙女ジャンヌ―――その名を呼ばれてから、胸裏を乱す不快な浮遊感
が薄れ始めてきた。私はジャンヌ……ジャンヌ・ラ・ピュセル。

「あなたは……」
「私？　私はアリスよ」

　少女はスカートの両端をつまむと、可愛くお辞儀をした。
　フリルをたっぷりと使った豪奢なドレス―――見たことのない素材、見た
ことのない意匠だった。城に住まう貴族たちだって、少女の服装に比べたら
野卑ている。漆黒の生地にリボンとレース―――まるで娼婦のような格好。
　水色の長髪はどう見ても鬘だった。

「あ、りス……」
「そう、私はアリス。ねえ、ジャンヌ。今日も一緒に遊んでくれるんでしょ
う？　今夜はどこに行くのかしら。この森からはどこにだって行ける。あな
たはどこに行きたいの。どこを―――救うの」
　
　アリスの言葉はもったいぶっていて、それでいて胸を直に射貫くほど直截で
……戸惑いを覚えずにはいられない。オウムのように言葉を返す。

「す、くう？」
「ええ」アリスは楽しそうに、くすくすと笑いをこぼす。
「何を……」
「おかしなことを聞くのね？　フランスに決まっているじゃない！」

　雷光が走った。彼女は唇を奮わせると口内で反芻した。フランス、フランス
―――そう、何度も、何度も呟いた。
　此処は、私が初めて〈声〉を聞いた場所に似ている。……声？　なら、その
声は何と訴えた。何を私に示した。

「ねえ、ジャンヌ」
　アリスの好奇心は止まらない。
「―――今夜は��どの�＜tランスを救うの？」

　息を呑む。彼女はようやく目覚めた。アリスの言葉で、全てを取り戻した。
　乙女は何を為すべきか。乙女は何を宿命づけられたか。乙女は何を約束した
のか。乙女は剣を手に―――何に従わなくてはならないのか。
〈声〉は今でも、彼女に光を与えてくれている。
　
　夜啼鳥が囀りとともに彼女の肩にとまった。微笑を浮かべて、指先で羽根を
そっと撫でる。―――それだけで夜啼鳥は身体を腐らせ、地面に墜落した。
　見下ろすと、床を埋める草の絨毯は彼女の周りだけ枯れている。息を吐けば、
腐敗の障気は巨木にまで届き、たちまち幹を汚染させた。
　骨の一つ一つ、元素の滓に至るまで呪われ尽くした身体。
　ああ、と彼女は頷く。全ては救国のため。

　―――そうね、アリス。行きましょうか。私達のフランスに勝利を与えに。

　彼女の答えに、少女は満足そうに頷く。

「ようこそジャンヌ。森はあなたを歓迎します」

14 名前： ◆ALICEsQkXc ：2007/11/12(月) 22:28:24

　
　
　
　　
　
　
　
　

　　　　　　森が彼女を生んだのか
　　　　　　　　　　――Le roulement de foret elle ?――

　　　　　　　彼女が森を生んだのか
　　　 ――Elle soutenant la foret ?――








.　

15 名前：一方そのころ……：2007/11/12(月) 23:34:01

＞ ２００７／１１／××　２１：３２

　　　　　　　　　大統領命令　１

　ルーアン近郊のＸ市にて、地震発生。
　規模はマグニチュード８を超え、未曾有の大被害が予想される。

　軍は速やかに出動。
　住民の救出及び事態の収拾に全力を尽くせ。

　＞ ２００７／１１／××　　２２：０５

　　　　　　　　軍よりの緊急報告

　信じ難い事ではあるが、街全体が森化している。
　火災や多数の建物の倒壊を上空から確認しているものの、
　突入した部隊から一切の連絡が途絶え、内部状況の把握が出来ない。
　再度、新たな部隊をこれより派遣する。

　尚、橋は１つ除いて全て崩落しており、侵入が困難である。
　空路、水路の確保を要求する。
　
　＞ ２００７／１１／××　　２２：２８

　　　　　　　　突入部隊からの無線連絡

　「第○○司令部、応答求む！　こちら××特殊部隊所属マーヤ軍曹！」
　『街の内部で何が起こっている？』
　「化け物だ！　化け物に襲われている！　死体が襲って…部隊はもう俺だｻﾞｰ
　『返事を、返事をしろ、マーヤ軍曹！！』

　＞ ２００７／１１／××　　２２：４１

　　　　　　　　ヴァチカンより協力の申し入れ

　Ｘ市で現在起きている異変は通常では対処し得ないものである。
　現状では幾ら軍を投入しても、同数の肉塊を量産するに過ぎない事は明白。
　ただの自然災害ではない、これは完全に異端、悪魔の類が引き起こす現象である。
　ヴァチカン法王庁より、この様な異変解決のスペシャリストを派遣を提案する。
　さもなくば事態解決の為に自国の領土たるＸ市に核攻撃でも行うしかない。
　賢明な判断を期待する。

　追記

　英国ヘルシング機関等よりも同内容の協力の申し入れあり

　＞ ２００７／１１／××　　２２：５５

　　　　　　　　　　　大統領命令　２

　Ｘ市の異変災害につき、ヴァチカン、英国ヘルシング機関等の協力を得る事になった。
　やむを得まい措置ではあるが、このままではフランスの威信に関わる。
　異変、超常現象の専門家達にすぐさま連絡を取り、事態の解決を依頼せよ。
　対処人員の確保についてはあらゆる手段を容認する。

　又、軍は彼等への最大限且つ無制限の協力を命ずる。

　＞ ２００７／１１／××　２３：５８

　　　　　　　　　　　軍よりの緊急報告　２

　本異変対処人員達の突入準備が完了した。
　空路及び水路より、日付変更を以って、彼等の突入支援を開始する。
　尚、ヴァチカン、ヘルシング機関の人員も突入を開始した模様。

16 名前：一方そのころ……：2007/11/12(月) 23:34:43

　＞ ２００７／１１／××　？？：？？

　　　　　　　　　　　　　　命令書

　フランス、ルーマン近郊のＸ市の組織の研究施設で重大なトラブルがあった模様。
　現在、施設と連絡が途絶していて詳細不明。

　街は現在異界化しており、森となっている。
　加えて、同地域において大規模な地震を観測。
　これによる大きな被害が出ているものと推測される。
　最悪、研究施設の崩壊もありえるだろう。

　各員はＸ市に直ちに急行し、原因の究明及び研究施設の資料、サンプルの回収を行え。
　回収が不可能な場合は証拠隠滅の為、然るべき行動を取る事。

　

　追記
　
　フランス軍のみならず、ヴァチカン、ヘルシング機関等の介入が確認された。
　状況はより切迫しているものとなった。
　Ｘ市に急行出来るフリーランスの始末屋達も手配が済み次第、増援として投入する。

　＞ ２００７／１１／××　２１：２０？

　　　　　　　　　　　　　　施設内の放送

　レベル５相当の緊急事態発生！
　レベル５相当の緊急事態発生！
　
　Ａ棟で行われた召還実験が失敗、　Ａ棟において異界化現象が見られる。
　ただちにＡ棟に向かい、事態の把握、収拾にｻﾞｰ

17 名前：一方そのころ……：2007/11/12(月) 23:35:21

　＞ ２００７／１１／××　２１：２８

　　　　　　　　　　　　　　市内緊急放送　１

　『市民の皆さん、聞こえますか！
　　先程発生した地震により、市内の無数の建物が倒壊、各所で火災が発生しています。
　　市民の皆さんはガスの元栓を閉め、ブレーカーを落として、速やかに指定避難所に
　　避難を開始してください。放送による指示は今後も行います。パニックにならず、
　　冷静に放送にしたがって行動してください。
　　安心してください。先程、外部へ救援要請も出しています…………』
　

　＞ ２００７／１１／××　２１：５２

　　　　　　　　　　　　　　市内緊急放送　２

　『市民の皆さん、聞こえますか！
　　地震で落ち着いてください、パニックに陥ってはいけません。
　　速やかに指定の広域避難場所へと向かってください。
　　救援は直ぐにやって「来ないわよ！　外に全然連絡が取れないじゃないの！？」
　「落ち着け、この放送は街中に」「地震だけじゃない、市内各所に現れた化け物たち！
　　街中に侵食してる森！　救援にやってきた筈の軍はさっきから悲鳴を最後に連絡が取れ」
　　……失礼しました、市民の皆さん、大丈夫です、落ち着いて避難を………………………
　　……………こ、ここにも化け物が………た、助けてくｻﾞｰ

18 名前：　：2007/11/12(月) 23:36:08

状況最終確認

○舞台

フランス　ルーアン近郊　Ｘ市

○状況

市内にある吸血鬼信奉組織「イノヴェルチ」の施設で行われた実験が失敗。
街全体が森化し異界となって、脱出不能に。
更に大地震が街を襲い、市内の無数の建物が倒壊、火災発生。

加えて、施設崩壊時に多数の被験体が施設を脱走。
中には人間を襲うものも居る、犠牲となった市民の一部が屍喰鬼と化し、更に被害は拡大中。

異界の成せる技か、時空を超えて異世界の人間、化け物が市内に現れている。
彼等の存在がより混乱に拍車をかけている。

○目的

「敵」との交戦を前提としての事態の把握、収拾、解決。
勢力によってはサンプルの確保、あるいは証拠隠滅。
モノによっては殺戮。人によっては生存及び脱出。

○特記事項

現時点で街は侵入可能だが脱出不能。
但し、観測される魔力が異界発生時に比べ、緩やかに低下している事から、
異界は永続的なものではないと推測される。

しかし、仮に異界化は解けても、大地震の影響で何が起きてもおかしくない。
例えば大津波とか。

19 名前：ファントム・アイン：2007/11/17(土) 22:16:07

　吸血大殲　外伝　森祭
　
　前哨戦

　エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミｖｓファントム・アイン

　舞台　Ｃ地区　イノヴェルチ施設　（異界化二日前）




　痛み、恐怖、哀しみ、絶望。
　全てが他人事だった。
　眼に映るものは皆白黒であり、耳にするものは皆雑音だった。
　
　或る時はナイフ、或る時は銃器、或る時は爆弾。
　そこから飛び散る鮮血、断末魔、瞳から消え行く意思の光。
　最後に出来上がるヒトガタの肉の塊。
　
　繰り返されるルーチンワーク。
　アインという名のわたしの中の他人は淡々と作業を繰り返す。
　わたしなら恐ろしくて到底出来ない事を難なくやってのける。

　もう見たくないよ、聞きたくないよ、アイン、わたしの中から出て行って！
　
　
　『出て行っていいの？　わたしが出て行ったらあなたに何が残るの？
　　あなたには何が出来るの？　自分の名前すら忘れてしまったあなたに……』
　
　
　
　名前………わたしの名前は………………………………




　　　　『それなら、君に新しい名前をあげるよ』

　　　　『殺し屋でも人形でもなく、君が君として生きていく為の、名前だ』

　　　　『そう、これから君のことはエレ
　
　
　
　　　　　　　　　　　――――――――――――――――――――――


　

20 名前：サイス＝マスター：2007/11/17(土) 22:16:55

　
「アイン、お前はアイン。今も昔もただのアイン……」
「違う……わたしは」「アイン、お前はわたしが作り上げた人を殺す為の芸術品」
「わた、わたしは…………」

　男は人を殺すという言葉への少女の反応を見逃さなかった。
　びくっと振るえ、いやいやと首を振る少女には最高の暗殺者たる『ファントム』の
　面影は何処にも無い。
　
　今のアインは譫妄状態にあり、虚偽を述べる事等出来はしない。
　アインが内より発する言葉は掛け値なしの真実、丸裸の心である、偽りは一切無い。
　
　やはり、ツヴァイのせいか、とサイス＝マスターは考える。
　記憶を取り戻し、自我を取り戻したツヴァイとの接触は自我無きアインには刺激が
　余りに強すぎた。
　
　驚嘆すべきはツヴァイではある。自らの殺意で思考をドス黒く染め、引き金を引く。
　確固たる天然の意思は自分が考えていた以上に性能を引き出すらしい。
　今後の方針に一石投じてくれたツヴァイには感謝すべきであろう。
　代償はアインという名の作品が壊されてしまった事だ
　以前のアインと比べて、性能は確実に落ちてしまっている。
　一度壊れた彫刻はもう取り戻しが効かないか。

　…………いや、だが、この失敗作にも使いようはあるか。
　インフェルノへの報復の為に役立ってもらおう。
　サイス＝マスターはにやりと蛇の様な笑みを浮かべ、アインに告げた。
　

21 名前：ファントム・アイン：2007/11/17(土) 22:17:54

　
　＞ＰＨＡＳＥ　１　「狙撃」　イノヴェルチ施設敷地


　今夜は風が強い。強いだけなら、まだしも先程から風向きも風の強さも一定しない。
　狙撃には非常に不向きな状況である。
　だが、与えられた条件で任務を遂行しなければならない。
　それがマスターの望みである以上は。

　今回与えられた任務は建物への侵入者の排除。
　特殊部隊『スパローズ』の精鋭がこの建物で本日行われる極秘実験の阻止任務を受け、
　この建物を襲撃してくる。
　それを手段を問わず、排除する事がアインに与えられた任務である。
　そう、「あらゆる手段」を用いての排除。そうすれば
　
　

22 名前：サイス＝マスター：2007/11/17(土) 22:18:39

　　
　どういう結果に終わっても良い、所詮は余興である。
　イノヴェルチにはアインのデータを元にした強化兵士のプロジェクトを提供する事を
　見返りにインフェルノからの庇護、援助を得る事を確約させた。
　
　今回のこれは壊れたアインが『ある』条件を提示してやる事でどの様な性能を示すか。
　それを知る為に舞台を用意した。機密情報はいわゆるダミーである。
　本命の計画、ジル・ド・エレの召還実験は二日後に行われる。
　この計画については存在が既に各機関に漏洩している。
　無論、実験の詳細、日程、場所等は掴まれていないが万が一、当日邪魔が入る事もありえるのだ。
　故にイノヴェルチは様々なダミー情報を流し、かく乱を行っているのである。
　結局、今夜もかく乱の一環に過ぎないのだ。。
　
　サイス・マスターはアインにこう告げている。
　
「どうやら、お前も限界の様だな。アイン
　良かろう。既にお前は私の習作として十分に役目を果たしたと認めよう。
　これを――――――」

23 名前：エリ・カサモト ◆SV001MsVcs ：2007/11/17(土) 22:21:59

>>19>>20>>21>>22


『某所で行われるある特殊な実験を実力を以って阻止せよ』


　これが今回与えられた任務。
　実験についての詳細は教えられなかったが『兎に角危険である』とだけは言われた。
『絶対に阻止しなければならない』とも。
　何時の頃からか割り当てられるのはこんな任務ばっかりだ。やれやれ。

　敷地内への侵入は容易かった。

　ワイヤーカッターで網を切り裂き、調べておいた警備の穴へ入り込む。
　それだけで侵入は完了した。
　こんな簡単に入り込めるというのも妙ではあった。
　極秘実験というぐらいだから、さぞや厳重な警戒が敷かれているだろうと思いきや、驚くほど手薄なのだ。

（情報部め、またガセをつかまされたんじゃないだろうな）

　……それならそれで確認するのも仕事のうち。
　心中でため息をついて、アタシは身を屈めた。
　目標の建物まで目立たないように進み始める。
　地雷の類が敷設されていない事は分かっていたから匍匐では進まない。アレは時間が掛かるし疲れるのだ。
　そんな匍匐をしなくて済むだけでも昼のうちに調べた甲斐があった。
　アタシはサプレッサーをつけたヘキサゴンアームズ製のサブマシンガンを手に進む。

　建物までの距離は後50メートル。足を止めずに周辺警戒を厳にする。
　さて、何事もなく辿り着けるか……。

24 名前：ファントム・アイン：2007/11/17(土) 22:24:13

>>23

『――――最後の任務とし、以降は安息を許可する。任務後の帰還・報告の必要も無い』
　
　この任務を達成すればわたしは自由…………自由？
　何が自由なんだろうか、アインでなくなるわたしはもう眠る事もきっと出来ない。
　今まで手にかけた人間が何故殺したと詰め寄ってくるから。
　わたしはそれに答える事は出来ない。今までは「アインが殺した」といえば済んだ。
　でも、もうこの言い訳も使う事が出来なくなる。
　
　あの人、玲ニならわたしを助けてくれるだろうか？
　わたしをエレンと名前をくれたあの人なら………
　でも、あの人は今もインフェルノにいる、ファントムの名前を受け継いで殺し続けている。
　そんな彼がわたしに今一度答えを、助けをくれるだろうか？

　分からない。
　分からない。
　分からない。
　
　一体どうすればいい？
　………いや、もうひとつ方法があった。死ねば全てから解放される。
　マスターの言葉の裏を取れば、今回は任務で死ぬ事も許されているという事。
　
「…………！」

　敷地内に侵入者ありと無線で連絡がはいる。
　もう迷う暇も考える暇も無い。アイン、わたしはアイン。今も昔もただのアイン。

　ＳＶＤを構え、侵入者をスコープに捉える。
　頬にあたる銃床の感触、引き金の感触、スコープの十字が揺れる。
　全て忘れろ、アインと銃は一心同体、今在る世界は此処とスコープの向こうだけ。
　引き金を引けば音速の弾丸が標的を引き裂き、今の世界を崩し去る。
　そうすれば

　アイン、わたしはアイン。今も昔もただのアイン。でも明日からは、明日からは

25 名前：サイス＝マスター：2007/11/17(土) 22:25:08

「この期に及んでも、矢張り駄目か」

　サイス＝マスターの声には軽い失望の響きがあった。
　監視カメラの向こうの狙撃体勢に入ったアインは僅かだが震えている。
　
「だが、それもまた良しか」

　芸術品は壊れてしまえば価値を持たない、ただのガラクタである。
　しかし、壊れる瞬間、滅び去る瞬間は確かな刹那の美がある。
　今のアインに求めるべきはそれか、とくつくつとただ一人の観客は笑った。

　そうして、映像のアインが引き金を

　

26 名前：ファントム・アイン：2007/11/17(土) 22:31:05

　
　燦月製薬フランス支社に勤めるジョフロフ氏（３２歳・独身）の朝は
　カフェオレとクロワッサンではじまる。
　
　優雅にカフェオレを啜りつつ、一日の鋭気を養う。
　それがフランス人の嗜みだと氏は思うのである。

　そうして、新聞を手に取り、ニュースをチェックし、仕事に出かける。
　それが氏のいつも変わらない一日のはじまり。
　が、今朝は違った、新聞を見て目に入ったのは自分の勤める会社の名。
　しかも自分の勤める支社の研究所の名前が書かれているではないか。

　
　燦月製薬　Ｘ市△○研究所Ｅ棟に撃ち込まれた謎の銃弾
　
　テロリストの仕業か！？
　

　平和そのものこの街での発砲事件、しかも自分の会社に向けてのもの。
　その事実に氏は眉をひそめ、ぼやく。

「発砲事件か、全くこの街も物騒になったものだ」

　そして、氏は何時もどおり出社する。
　
　青空のなかををツバメが横切っていった。

27 名前：エリ・カサモト ◆SV001MsVcs ：2007/11/17(土) 22:43:32

>>24>>25>>26

　アタシの一メートルばかり前の地面が小さく弾けた。
　そして遠く聞こえる聞きなれた音。

　弾着と銃声。
　そこから導き出される答えは――狙撃。

「っ！」　

　アタシは低姿勢と隠密行動を破棄して走り出した。
　侵入が看破されている、もしくは看破された今となっては奇襲ではなく強襲に踏み切るしかない。
　侵入口から突入口へと役目を変えた裏口にサブマシンガンを撃ち込む。
　消音されて気の抜けた銃声と真鍮の薬莢をばら撒いてドアノブを破壊。
　右肩からぶち当たるようにして施設内へと転がりこむ。
　
　狙撃の脅威からはこれで逃れた。
　……今度は別の脅威が屋内に待ってるんだろうな。

28 名前：ファントム・アイン：2007/11/17(土) 23:01:23

>>27

　＞ＰＨＡＳＥ　２　「罠」　施設１Ｆ

　（ＭＨＫ報道番組　「ザ・サバイバー」の一幕より）

「……なるほど。地震の被害にも様々なものがあるのですね」

「ええ。予期せぬ被害というのが近年の地震で報告されています。
　まさに現代の建物だからこそ起き得るといえるのですが」

「現代の建物ならでは？」

「例えば、スプリンクラーの損壊による被害です。スプリンクラーの誤作動
　による被害は日常においてもしばしば報告されていますが、地震による誤
　作動は実は非常に多いのです。最もスプリンクラーの構造自体、強い衝撃
　を受ければ、誤作動を起こしてしまうものですが。外国では銃を撃ち込ま
　れて誤作動を起こした例もあります」

「そして、誤作動による浸水被害でしょうか？」

「家財道具が台無しになると言った事は容易に想像できるでしょう。
　しかし、生命の危険に直結するものもありますので注意が必要です」

「例えば、どのような危険でしょうか」

「水により床が大変滑りやすくなっています。避難の際には転倒等には十分
　に注意をしてください」

「確かに緊急時ですから、慌て易い。特に転倒等は危ないですね」

「一番危険なのは壊れた配電盤やコンセントから流れる電気による感電事故です。
　ぱっと見た目、非常に分かり難く、そのせいで犠牲者が何人も出ています。
　スプリンクラーで広範囲に水が撒かれているので尚更危ないですね。
　地震が起きたらガスや電気を止めろというのはこういう二次災害を防ぐ為ですね」

「何事も注意力、そして、冷静な行動ですね。それでは時間です。
　皆さん、又、来週もスタジオでお会いしましょう」

29 名前：エリ・カサモト ◆SV001MsVcs ：2007/11/17(土) 23:29:13

>>28

　扉を破った勢いをそのままに転がり、体勢を整えて銃を構えた。
　視覚と聴覚で周囲を探る。

　――敵影なし。

　やたらと廊下が水に濡れていたのが少し気になったけど、アタシはそれよりどこかに潜んでいるであろう敵に気を向けた。
　索敵しつつ、ヘッドセットのインカムに話しかける。

「フィオ、無線封鎖解除。敵に侵入がばれた」

「解除了解。銃声が聞こえましたけど大丈夫ですか？」

「狙撃された。敵が下手で助かったわ」

「危なかったですね」

「全く。そっちも気をつけて。退路の確保、頼んだよ」

「了解」

（目標は上だったわね）

　通信を終え、階段へとアタシは歩き始めた。
　音を立てないように極力水たまりを避ける。
　それでも限界はあった。廊下一面が水浸しとなれば、かわせない。
　仕方なく慎重に足を踏み入れ……

「ぎっィ！？」

　痛みが全身を走り抜け、身体がガクガク勝手に跳ねた。
　電撃だ。

（水浸しの理由はこれかッ！！）

　こんなトラップがあるなんて想定してない。まんまと掛かっちまった。
　ゆれる視界の中に通電元と思しきコードが掠める。
　暴れる身体を動かしてコードへ銃弾を送り込んだ。
　バラけた弾丸の何発かがコードを打ち切って電撃攻めを終息させる。

「はっ……がっ……！」

　壁に手をついて身体を起こす。
　全身が痛んだ。忌々しいことこの上ない。

「なめやがって……！」

　サブマシンガンに予備マグを叩き込み、アタシは階段へ向かった。

30 名前：ファントム・アイン：2007/11/17(土) 23:57:40

　＞ＰＨＡＳＥ　３　「罠」　施設２Ｆ

　年刊　ＶＡＭＥＳＴ

　いま港で大人気のメタルスラッグＶを攻略中！

　―――――――――――――――――――――――――――――――――

　入り口での狙撃、１階の通電した床は序の口はここから本番である。
　何しろ、ここは世界各地に数日の支部を持つイノヴェルチの研究施設。
　建物は現代のテクノロジーを終結しており、何があるか分からない。

　―――――――――――――――――――――――――――――――――

　２階階段口

　階段を上って、ドアを前にした所から、早速トラップが仕掛けられている。
　ドアを開くとドアの後ろに仕掛けられた手榴弾が搾裂する仕組みだ。
　注意力が足りないとこの時点でおしまいになってしまう。

　―――――――――――――――――――――――――――――――――

　２階廊下

　奥にある３階への階段まで進んでいく事になるが、そこまでの道のりは険しい。
　ワイラーで仕掛けられた爆弾トラップが複数あり、ひっかかるとＢＯＭＢだ。
　ワイヤーは太さがマチマチで見え幸いのも嫌らしい。

　更に進むと水溜り、これは一階と同じパターンである。
　流れてくる電気の元（配電盤）を絶てば大丈夫と思いきや、配電盤の陰には遠
　隔操作による爆破可能なプラスチック爆弾が仕掛けられている。
　近づきすぎると…………要注意。

　それらを超え、廊下の３分の２程進むと照明が消える。
　背後からシャッターが次々に閉まる音が。もたもたしてると閉じ込められてアウトだ。
　インド人を右にして、催促で階段まで急ごう。

　―――――――――――――――――――――――――――――――――

　３階

　ＢＯＳＳ　ファントム・アイン

　三階に待ち受けるは最強の暗殺者「ファントム」（亡霊）の名を関する少女アイン。
　一瞬でも油断するとあっという間に蜂の巣だ。
　そんな彼女に対する攻略は気合で抜けろ。この面を抜けるコツは死なない事だ。


　では、次号（＊注）の攻略をお楽しみに。

　執筆　右井ぜんじ

　―――――――――――――――――――――――――――――――――

　＊注
　年刊ＶＡＭＥＳＴはこの号を最後に休刊となった。

31 名前：エリ・カサモト ◆SV001MsVcs ：2007/11/18(日) 00:43:46

>>30
　
　痺れの残る身体を引き摺って階段を上がる。
　焦げなかっただけ僥倖と言いたいが、忌々しいったらない。くそ。

「あのトラップの仕掛け方、凄腕だわ」

　不自然な水溜りをいくつも用意、違和感を感じなくなったところに電気入りの設置。
　にわか仕込みの考える事じゃない。

　この先にも罠があると見てしかるべきだろう。
　面白くない。強襲の成否を分ける速攻を殺された形だ。

　階段を上りきった先にはドアがあった。何の変哲もないドアだが、アタシのカンには引っかかる。

「フィオ、退路の確保はどうなってる？」

「問題ありません。というか、敵の類が全く姿を見せません。どうなってるんでしょう？」

「さてね。そのままお願い」

　フィオの元に敵が来てないということは、だ。

「ガセか、あるいは嵌められたかね」

　アタシは階段を半ばまで下りると手榴弾のピンを抜いた。階上へ放り投げる。
　爆発。
　炸裂音は二つ聞こえた。アタシのと、仕掛けられていたもう一つだ。

「ビンゴ、と」

　慎重に階段を上がり、ドア向こうを窺う。アタシならこのあとさらにもう一段仕掛けるからだ。
　――危うき罠、なし。
　ドアの残骸を踏みつけて奥の廊下へ出る。
　さっと目を走らせただけでも仕掛け爆弾がいくつか見て取れた。
　近づいて目を凝らす。

「……やっぱりだ」

　比較的見えやすいワイヤーを跨いだ位置にもう一本極細のワイヤーがあった。
　あちらさんは相当やり手のようだが、同じくやり手のアタシには通じない。
　ワイヤートラップを抜けて、進む。多重トラップの類も分かっていれば問題ない。

「む」

　今度は水溜りと来た。ご丁寧に近くには配電盤。
　一回掛かったトラップにもう一回掛かるのは間抜けだけだ。
　相手もそれは分かっている。
　ならここまで抜けてくる敵に同じ罠を仕掛けるとは考えにくい。
　――つまりこれは布石だ。
　アタシはサブマシンガンを向けて、掃射。
　火花を散らして沈黙する配電盤へ目を凝らす。
　影にはＣ４が設置されていた。

「怖い怖い」

　言葉ににやけが混じった。こうまで読みがはまるとねぇ。
　電流の供給先が他にないかを確認して水溜りを渡る。

「さてお次はどう来る？」

　仕掛け人に呟きが聞こえたのか、照明が唐突に落ちた。一瞬にして視界がゼロになる。
　これはヤバイ。
　そして背後からはガラガラガシャンという音がどんどん近づいてくる。
　……これ、シャッターの下りる音？

「くそッ！」

　毒づいて走る。音に追いつかれたら絶対にヤバイ。
　暗闇の中を走るのもヤバイ。罠を仕掛けられていても気づけない。

　それでもあるかないかワカラナイ罠より、確実に迫るシャッターの方が確実にヤバイ。
　上への階段は廊下の端にあった。そこまで走り込む。

「くあっ！」

　危ないところを紙一重で滑り込んだ。
　やってくれる。

「次はなんだ。何をしてくる？」

32 名前：ファントム・アイン：2007/11/18(日) 01:24:06

>>31

　＞ＰＨＡＳＥ　４　「銃撃戦」　施設３階

　武装選択

　Vz.61 SCORPION SMG
　
　DATA
　■口径　7.65mm×17　■全長(mm)　517/270　■重量(g)　1280　■装弾数　7+1

　NOTE

　旧チェコスロバキアが開発した7.65mm×17弾を使用する大型ブローバックピストル。
　通常の拳銃とは異なり、トリガーを引いている限り弾丸が発射されるフルオートマ
　チックが可能なので、いわゆるマシンピストルに分類される。その為、ワイヤース
　トックと大型マガジンを装備している。旧チェコ警察と陸軍に制式採用されたが、
　威力が弱い為、.380CAPのVz63や9mm×18やVz68等の後継モデルが生産された。
　現在は、軍や警察ではなく、テロリストや犯罪組織の御用達の銃となっている。

　ＴＡＲＧＥＴ
　
　⇒エリ・カサモト

　――――――――――――――――――――――――――――――――→ ATTACK！



　　　　　　　　 跳弾跳弾跳弾跳弾跳弾
　　　　　　　 ／天井／右壁／左壁／天井／石畳／
　　　　　　／天井／右壁／左壁／天井／石畳／
　　　　　　＼左壁＼石畳＼天井＼右壁＼左壁＼
　　　　 　　　＼左壁＼石畳＼天井＼右壁＼左壁＼
　　　　　 　　　 ＼左壁＼石畳＼天井＼右壁＼左壁＼
　　　 　　　 　　　 ＼左壁＼石畳＼天井＼右壁＼左壁＼
　　　　　　　　　　　　＼左壁＼石畳＼天井＼右壁＼左壁＼
　　　　　　　　　　　　　 ＼左壁＼石畳＼天井＼右壁＼左壁＼
　　　　　　　　　　　　　　　＼左壁＼石畳＼天井＼右壁＼左壁＼
　　　　　　　　　　　　 　　／石畳／左壁／石畳／左壁／天井／
　　　　　　　　　　　　　／石畳／左壁／石畳／左壁／天井／
　　　　　　　　　　　 ／石畳／左壁／石畳／左壁／天井／
　　　　　　　　　　／石畳／左壁／石畳／左壁／天井／
　　　　　　　　 ／石畳／左壁／石畳／左壁／天井／
　　　　　　　／石畳／左壁／石畳／左壁／天井／
　　　　　 ／石畳／左壁／石畳／左壁／天井／
　　　　／石畳／左壁／石畳／左壁／天井／
　　 ／石畳／左壁／石畳／左壁／天井／
　　 ＼右壁＼天井＼左壁＼石畳＼右壁＼
　　　　＼右壁＼天井＼左壁＼石畳＼右壁＼
　　　　　 ＼右壁＼天井＼左壁＼石畳＼右壁＼
　　　　　　　＼右壁＼天井＼左壁＼石畳＼右壁＼
　　　　　　　　 ＼右壁＼天井＼左壁＼石畳＼右壁＼
　　　　　　　　　　＼右壁＼天井＼左壁＼石畳＼右壁＼
　　　　　　　　　 　　着弾着弾着弾着弾着弾

33 名前：エリ・カサモト ◆SV001MsVcs ：2007/11/18(日) 01:55:55

>>32

　階段を上がったアタシを出迎えたのは、火花を散らして跳ね飛ぶ弾丸の乱打だった。

　――冗談じゃない。

　高速で直線を飛んでくる弾丸なら避け様はある。弾道を読んで、そこから逃れればいい。
　だがそれが跳ね回って飛んでくるとなれば話は別だ。
　跳ね回る弾の道を即座に読みきって安全位置を割り出すことなど人間にはできやしない。
　出来るのはせいぜい身を小さくして急所を庇う事ぐらいだ。

「くっ！」

　弾の破片か跳弾がいくつも身体を掠める。熱い痛みが浮く。
　撃ち返そうと構えたサブマシンガンに弾痕が穿たれる。
　ツイてない。当たり所が悪く、サブマシンガンは銃器から鈍器になっていた。
　盾代わりになったと考えてアタシはサブマシンガンを諦めた。
　敵に向かって、撃ち返す代わりに手榴弾を三つまとめて投げつける。
　38口径リボルバー、クラシックマーダーを抜き、爆発の粉塵の中へ突っ込んだ。

34 名前：ファントム・アイン：2007/11/18(日) 22:17:24

>>32

　＞ＰＨＡＳＥ　５　「近接戦」　施設３階　応接室


　ＢＯＭＢ！
　ＢＯＭＢ！
　ＢＯＭＢ！


「ワオ！　いきなり、向こうからこっちの部屋に飛び込んでくるなんて。
　何があったの、トム？」
「ハニー、あっちでちょっとポップコーンが弾けすぎてね。
　掃除が後のことが思いやられるよ、困った、困った」

「その割には顔がニヤついてるわよ？」
「ああ、ハニー、これさ。
　ねんがんの『クリスリーブ・プロジェクト２』をてにいれたぞ！」
「そう、かんけいないわね」

「ＨＡＨＡＨＡ、つれないなあ、ハニー。このナイフは中々凄いんだぜ、ほら！」
「彫刻の首がバッサリ！　って壊していいの、これ？」
「ハニー、君の為なら彫刻１つぐらい安いものさ」
「まあ、トムったら！　でも、こんな鋭すぎるナイフは危なくないかしら」

「ハニーは心配性だなあ。そんな所が可愛いんだが、ま、僕が使う以上は大丈夫さ」
「本当に？　ちょっと、信じられないわね」
「丁度ここにバーベキュー用の肉があるんだ、このナイフで軽く捌いてみせてあげるよ」

「ファンタスティック！　向きを変えながらのナイフ、戻りの動作なんて全く見えないわ」
「惚れ直したかい、ハニー？　だけど、このナイフは他にも使い道があるんだ」
「へえ、どんな使い道？」

「肉を切るだけじゃない、草だって刈れる。これで庭の手入れもバッチリさ」
「草刈りは結構重労働だから、ダイエットにも最適ね！」
「他にも木材とかもカッティング出来るから、日曜大工にも使えるね」
「トムの作った椅子は座り心地は抜群だわ」
「部屋の壁に飾ってもインテリアにもなる。
　更にこんな風に額にくっつけるとひんやりとして気持ちが良いだろ、ハニー」
「こんなＣＯＯＬな使い方が出来るなんて凄いわ、トム！」
「加えて、柄の部分にはサバイバルツールが収納できるから、遭難しても安心さ」
「完璧ね。でも、この凄いナイフ、高かったんでしょ？」
「そんな事はないさ。たったの５００＄なんだよ。この○○○で買えば、この値段で
　しかも、オマケで洗剤が一月ついてくるのさ！」

「５００＄！　これはトムを質に入れてでも手に入れないといけないわね」
「ははは、ハニー、ジョークが上手くなったなあ」
「ころしてでもうばいとる」
「な、何をする、きさ

　 　 　 　 　 　 _
　　　　　　　　ﾉ |_ 　 ll__l---||＿　　　　Nice boat.
　　　　　　rj「ｌ＿_｀ｰ'　 ヽｌーｊ　 L---┐
　　　　　 |―┴┴―｀ｰｒｭ-‐<￣.ｨｊ .__ｊｌ
　　　　　 |[][][][][][] i　""" _..,,ｒr=''´　l
　　　　　 l￣￣￣￣/7-‐'´　　　 　／
　　　f　 ｊL-､ ＿-‐'　　　　　 -‐´~~
　　　ヽ |　￣　　＿ｊ＿ -‐'~´~~
　　　　 ｀ー〜´~~~~

35 名前：エリ・カサモト ◆SV001MsVcs ：2007/11/18(日) 22:53:05

>>34

　空気の動き、生き物の気配、どこか空めいた殺気。

　この三つがアタシに敵の存在する方向を知らせてくれた。
　向けた銃口の先から、爆発で生じた煙幕を切り裂いてナイフが迫る。

「っ！」

　喉を狙う牙を咄嗟にクラシックマーダーで受けた。きぃんと火花が散る。
　視界の中でナイフが返った。追撃が来る。
　銃を封じられ、内懐に飛び込めまれたこの状況。
　拙かった。ワンアクションの差でアタシは殺される。

　――銃に頼れば。


　アタシの右脛が相手の脇腹を打っていた。
　よろめいた敵からワンアクションのアドバンテージを奪い取る。
　再びナイフを煌かせた相手の胸を、アタシの左手が懐中の手斧を抜き様に割った。
　ドツ、という手応えと漏れた女の悲鳴。
　右肘で体重を乗せた一撃を叩き込み、ぶっ飛ばす。
　頭の位置に銃口を向けクラシックマーダーを三発連射。
　頬に跳ねた体温と人の倒れる音が相手の絶命を知らせた。

「……フィオ、退却するわ。目標地点に装置その他実験に使うような物なし。情報はガセよ」

「了解です。退路は相変わらずですけど、油断はしないでください」

「そっちもね。それと万が一ガセじゃなかった場合に念のため爆破するわ」

「はい。気をつけて」

　通信を終える。
　薄れた煙の向こうに伏した死体に一瞥をやって、アタシは発破の準備に掛かった。

36 名前：ファントム・ツヴァイ：2007/11/18(日) 23:45:56

　夢

　どこか薄暗い応接室。
　ナイフを振りかざす………
　銃を持った女性はワンアクション遅い。
　………は確実に女性を仕留める！
　
　一転
　
　女性の蹴り、………がよろめく
　
　
　鈍く光る銃口

37 名前：ファントム・ツヴァイ：2007/11/18(日) 23:46:24

　　　　　　「止めろ！　その女は俺の―――――」


　　
　
　
　
　

38 名前：　：2007/11/18(日) 23:46:51

　　
　
　
　
　

　　　　　　ＴＯ　ＢＥ　ＣＯＮＴＩＮＵＤＥ？

　
　
　
　
　
　

39 名前：　：2007/11/18(日) 23:47:23

　　　　　　　　ＢＩＧ　ＢＯＳＳ

　　　　　　　　ＺＵＳＡＴＴＩＮ



　　　　　　　　ＰＬＡＹＥＲＳ

　　　　　　ＥＲＩ　ＫＡＳＡＭＯＴＯ
　　　　　　ＦＩＯ　ＧＥＲＭＩ
　　　　　　
　　　　　　ＳＣＹＴＨＥ　ＭＡＳＴＥＲ

　　　　　　ＰＨＡＮＴＯＭ　ＥＩＮ（ＤＥＡＤ．．．）
　　　　　　ＰＨＡＮＴＯＭ　ＺＷＥＩ



　　　　　　　　ＥＸＴＲＡ

　　　　　　ＧＥＯＦＦＲＯＩ（３２，ＳＩＮＧＬＥ）

　　　　　　ＭＨＫ　ＡＮＮＯＵＣＥＲ
　　　　　　ＰＲＯＦＥＳＳＯＲ　ＴＡＫＡＤＡ

　　　　　　ＺＥＮＺＩ　ＭＩＧＩＩ

　　　　　　ＴＯＭ（ＤＥＡＤ．．．）
　　　　　　ＴＯＭ’Ｓ　ＨＵＮＥＹ



　　　　　　　　ＳＰＯＮＳＯＲ

　　　　　　　　　　吸血大殲
　　　　　　　ＢＬＯＯＤ　ＬＵＳＴ

　　

　　　

　　　　
　　　　
　　　　
　　　　

40 名前：　：2007/11/18(日) 23:47:49

　　　　　　　　ＴＨＥ　ＥＮＤ






　　　　　　　

41 名前：グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆ORDEN1uWpQ ：2007/11/20(火) 01:22:04

　―――舞台は戻って、
　　　　　　幻想楽祭の森源地。



>>14



　抑止力の介入。
　偽聖杯に異物の混在。
　献体が持つ不確定因子が〈剣〉と接触することで化学反応を燃焼させた。
　或いは、事故ではなく恣意による産物か。
　―――原因はいくらでも推察できた。だが、結果は常に一つだ。
　どのパターンを採用したところで答えは変わらず、グルマルキンは灼熱の
如き屈辱に身を灼かれる。
　
　草葉の刃がマントを切り、茂る雑木林が進路を阻む。―――グルマルキン・
フォン・シュティーベルSS連隊指揮官は森の渦中にいた。
　
　よろめく足取りに荒い呼吸。自ら斬り捨てた右腕が執拗に痛みを訴える。
　降霊式の失敗と直後の森蝕は、百戦錬磨の魔女たるグルマルキンに深刻な
ダメージを与えていた。
　人のカタチを保っているだけで体力が削られてゆく。一刻も疾く、工房に
帰参しなければならない。
　だが、この森から脱出する手段をグルマルキンのグラム・サイトは未だに
捉えられずにいた。蒼炎の義眼が認めるのは、膨大な魔力の胎動のみ。
　街は完全に奈落へと沈んでいた。

　奇跡の隣接―――研究所の爆森地から脱出を果たせただけでも、強運は働
いている。あれは相対して逃げられるような相手ではなかった。
　グルマルキンはあの時、咄嗟に〈帰郷〉のルーンを刻んで離脱した。本来
ならドイツの居城に強制転移する、極めて強い言霊が働く術式だったのが―
――彼女が転移した先は、研究所から僅かに離れた程度の深林だった。
　この森は、グルマルキンが持つ魔力を遙かに圧倒する呪いによって支配さ
れているのだ。背筋が粟立つ。地獄の接近を感じずにはいられない。

　恐らく、引き連れた鉤十字の部下は全滅だろう。手練れも数匹、外に配備
していたのだが『あれ』はその程度で抑止できる代物ではない。
　敵と見なすことすらナンセンスだ。魔導災害―――オカルト・ハザードが
街を席巻したに等しい。
　
　屈辱は覚えている。叶うものなら、自らの手であの淫売をくびり殺してや
りたい。……或いは彼女の実力なら、手負いの身でも一度や二度程度ならそ
うすることもできるかもしれない。
　だが、その後は？
　淫乱な小娘を解体して気を晴らしたところで、腐海の森行を食い止められ
るとは思えない。フランスが森に呑まれようが、燦月製薬が致命的な損失を
被ろうがグルマルキンの知ったところでは無かったが、このまま街に留まり
続けるのだけは絶対にゴメンだった。
　狂女の救世主ごっこの先に待ち受けているのは、世界への反逆だ。いずれ
必ず抑止力が働く。

　不幸中の幸いだったのは、彼女が街を地獄と繋げようとしていることだ。
　どういうわけか、あの乙女のアライメントは正典に則していなかった。偽
典と言うべき、敵国の絵から描写されている。
　もし、本来のイメージに忠実な彼女が降りていたら―――被害はこの程度
では済まなかったろう。その場でフランスがまるまる一つ〈浄化〉される可
能性すらあった。大天使ミカエルに比べれば、悪魔のほうがまだ良心的だ。
　　
　正典ではなく偽典に忠実な乙女。不可解な森蝕の発生。降霊の失敗。一つ
一つのパーツは理解できるが、接合面が見えてこない。
　森と彼女に、如何なる繋がりがあるのか。
　森が彼女を生んだのか。
　彼女が森を生んだのか。

　グルマルキンは右腕に施した鎮痛のルーンを解除すると、あえて痛覚を拡
大させた。首筋に浮かび上がる脂汗。幻肢痛が今なき右腕を描き出す。
　痛みが描く輪郭に沿って、魔力を展開。曖昧な光の揺らめきが、炎となっ
て神経樹を浮かび上がらせる。やがて炎は肉をまとい肌を作った。
　魔力によって構築された霊体義手―――〈栄光の手〉だ。
　今の彼女の余力では数時間しか保たないが、隻腕以上の働きはしてくれる
だろう。
　炎の腕をマントの下に隠すと、ブーツの底で草を踏みにじるようにして進
軍を開始する。
　急がなければ。時は一刻を争う。
　あの淫売は無視したところで、せいぜい人が十万単位で死ぬだけだ。
　……だが、森は違う。腐海は確実にグルマルキンの行動を制限している。
何より得体が知れない。未知という名の神秘〈オカルト〉は彼女にとって驚
異でしかない。何としてでも取り除かなければ。

「―――なに、森源地は分かっている。理屈と原因は知れないが、テーマ自
体は単純で陳腐だ。……小娘の愛情乞食に付き合う義理はないさ」
　
　くつくつ、と嗤笑を残して。
　魔女は森の奥へと消えた。

42 名前：＜呪われた公子＞ゲイナー ◆GAinErMg8k ：2007/11/23(金) 01:00:35

　
＜呪われし公子ゲイナー＞導入
　
>>14
　
　闇の中で極彩が踊る。
　はじめは激しく、さらに激しく、そして最後は緩やかに。
　緋色の飛沫を散らしながら、嵐の中で叫ぶように、殺戮の舞をあざやかに舞う。
　グールの首を切り落とし、吸血鬼の心臓を貫いて、屍食獣を縦に両断する。
　
　ほら、いまもまたウエンディゴの五体を瞬く間に微塵に刻んだところだ。
　体長2.3ｍの吸血鬼のなりそこない、大猿のような屍食鬼はバラバラに
なって命が果てる。
　研究所に閉じ込められていた化物ども、森災によって開放され自由となっ
たがそこは死ぬのも自由だった。
　
　モノクロームの景色の中で、極彩色があふれ出す。
　ヴァイオレット、バーミリオン、シアンにマゼンダ。そしてゴルドにジルバ。
　それは彼の鎧が放つ光だ。眼窩を除き全身をくまなく覆う彼の鎧。
　それは一瞬ごとにその色を変え、まるで太陽のように強く激しく輝く。
　その手にした剣も同様だ。両刃の鋭い刀身はきらきらとまばゆい光を放つ。
　
　その剣が瞬くたびに一つの命が失われ、一つの物体（モノ）が創造される。
　彼は何の感慨も浮かべずに、それをまたいで通り過ぎる。
　そんなものに感傷を抱くだけの余裕など今の彼には無かったのだから。
　
　急がねばならぬ。倒さねばならぬ。
　一刻も早く、核たる『アレ』を滅ぼさねばならぬ。
　
　赤黒い雫が滴り落ちるその剣、拭う間もなく先を行く。
　後に残るは一面の朱色。
　
　

43 名前：＜呪われた公子＞ゲイナー ◆GAinErMg8k ：2007/11/23(金) 01:01:00

>>42
　
　あの儀式を彼は見ていた。
　
　忌まわしき聖女の誕生の瞬間、彼は同じフロアにいたのだ。
　彼がいた場所は現在おこなわれている実験の分析・記録をするための部屋で、
正面の壁に添えつけられた巨大な画面には実験の様子が事細かに映し出されていた。
　部屋の中には無数の端末が置かれており、収集分析した儀式のデータを刻々
と記録し、表示し続けていた。
　儀式が始まるまでは、設置された機械の調整やら何やらで忙しそうに動き回っ
ていた研究員たちも、いまは実験の様子を固唾を呑んで見守っていた。
　
　そんな中でただ一人の部外者である彼は、用意された豪華なソファーには目も
くれず、出された飲み物には手もつけず、悠然と部屋の中心にたたずみ繰り広げ
られる儀式の様子をただじっと見つめていた。
　その傲慢ともいえる態度は、自分こそがこの場の主なのだとでも言わんばかり
であった。
　
　そんな彼の様子を研究所の職員たちは好奇心と嫌悪と、そして恐怖の入り混
じった表情で盗み見ていた。
　
　それは外様であるはずの彼の態度があまりにも尊大だったからであり、また
アーネンエルベに所属するＳＳの将校という彼の肩書きのせいでもあった。
　だがそのほかにももうひとつ、大きな要因があったのだ。
　
　それは彼の服装であった。
　妙な目で見られるのも無理も無い。今宵この研究所を訪れた親衛隊の兵士たち
の中でも彼の格好の奇抜さはずば抜けていたのだから。

44 名前：＜呪われた公子＞ゲイナー ◆GAinErMg8k ：2007/11/23(金) 01:01:24

>>43
　
　彼の身体は頭頂からつま先まで全身隈なく鎧で覆われていたのだ。まるで中世
の騎兵か御伽噺に出てくる騎士が身に纏っていたかのような全身鎧だ。
　それは限りなく優美で、神々しさすら感じさせる神秘的な鎧だった。
　
　彼の顔は特徴的な被面具で覆われていた。眼窩を除いて金属の帳ですっぽり包
み込まれていた。しかもその被面具にはつなぎ目が見当たらなかった。これでは
脱ぐことはおろか、被ることすら不可能だったはずだ。
　彼はこの兜を一体どうやって被ったというのだろうか。
　その兜の上で濃黄色の羽が一本揺れており、胸当てには混沌の紋章が彫り込ま
れていた。それは、ひとつの中心軸から八本の矢が放射状に伸びている構図の紋
章で、混沌の持つ哲学に固有の豊かな可能性の全てを象徴していた。
　
　神秘的な鎧だった。だが何より不思議なのはその鎧の色だ。
　彼の鎧は、時には銀に、時には黄金に、時には青みを帯びた鋼鉄に見えた。
　鎧が絶えず色を変えているのだ。それはこの鎧がこの世にありえざる物質で作
られたという証だった。
　
　そして極め付けに彼は、この世ならざる鎧の上から軍用の外套を纏っていた。
　それはかつて彼がただの人間であった頃に着ていた物と同型のものだ。
　独逸第三帝国の軍用コート。俗にティーガー・コートと呼ばれる親衛隊の標準支
給品。１９４４年の３月モデルだ。斑点模様の迷彩柄で、スナップ・ボタン式のポ
ケットが四つあり、狙撃用に肩の部分が補強されていた。
　
　彼はそのコートの袖口に、武装親衛隊の伝統に従い、独逸の鷲と鉤十字を縫いつけていた。
　そして襟にはご丁寧に彼のかつての階級、ＳＳ大尉の階級章が縫い付けてあった。
　
　フルプレートの西洋鎧にナチスの外套。さながら狂人の服装だった。
　しかし彼は狂人ではない。もっと狡猾で油断ならない男だった。
　
　彼は金属製の籠手をはめた手を大きな剣の柄にかけたまま、その儀式の様子を
見守っていた。できることならば彼も間近で儀式を見届けたかったのだが。
　確かにこの部屋ならば、映像と共に様々なデータを確認することはできた。
　しかし魔力は画像で伝わらぬ。総毛立つような魔力の奔流は、カメラ越しの映
像では感じ取ることなどできぬ。
　だが存在自体が一個の魔力炉のような彼の存在は、繊細な儀式においては不確
定要素となりえてしまう。だから彼は仕方なく離れた部屋でカメラ越しにその映
像を見ていたのだ。
　
　そして、それが彼を救うこととなった。
　
　

45 名前：＜呪われた公子＞ゲイナー ◆GAinErMg8k ：2007/11/23(金) 01:01:51

>>44
　
　儀式が佳境へと入る。
　
　激しく震える少女の身体。
　この儀式の目的を知っている彼から見れば、それは陣痛に耐える妊婦の姿のよ
うにも見えた。陣痛に震える聖母の姿。
　だが生むのは救世主ではない。狂い果てた快楽殺人者だ。まったく、とんだ処
女受胎だ。
　魔女にレイプされ化物を孕んだ少女を彼はどこか覚めた目で見ていた。
　
　少女の身体の震えがよりいっそう激しさを増した。このままショック死を起こ
すのではないかと思うほどの激しさだ。少女の身はよほどの苦痛に苛まれている
のだろう。
　
　無理も無い。強制的な魔術回路の書き換えは生まれ変わりと言ってすら過言で
はないものだ。本来ならば魔術回路の構成は生まれつき決まっており書き換える
ことなど出来はしない。もし何らかの奇蹟、もしくは外法を使って書き換えるこ
とができたとしても、その代償として壮絶なまでの苦痛をもたらす。
　そう、いまの彼女のように。
　
　少女の切れ長の目は大きく見開かれ、桜色の口元は声なき絶叫を叫び続け、美
しい顔は惨めなほどに苦痛にゆがんでいた。
　その痛みこそが生みの苦しみだった。グラール・コピーが順調に作動し、彼女
の肉体を作り変えている証だった。
　
　もうすぐだ。もうすぐ生まれる――――その、はずだった。
　
　だが、いつまでたっても青髭が産み落されることはなかった。
　懸念と苛立ちが彼の心に芽生えはじめた。様子がおかしい。一体、どうなって
いるのだ。
　知らず知らずのうちに剣の柄にかけた手に力がこもる。
　

46 名前：＜呪われた公子＞ゲイナー ◆GAinErMg8k ：2007/11/23(金) 01:02:13

>>45
　
　その時、モニターの中で『大佐』が素早く後ずさった。カメラを通しての映像では
詳細はわからぬが、何かトラブルが起こったことだけは明らかだ。
　
　食い入るようにして画面を見つめた。そして、そこに答えはあった。
　いつの間にか被献体の影から無数の枝が伸びだしていた。そしてそれは瞬く間
に幹となり、樹木となり、広い研究室を侵食していった。天井ですら例外ではな
かった。室内に設置されたカメラはことごとく枝によって侵食破壊され、画面に
は砂嵐が吹き荒れた。
　
　もはや実験室の中をうかがうことはできぬ。
　ただわかるのは実験が失敗したということ。そして起こってはならぬことが起
こり始めているということだけだ。
　
　沈黙が室内を満たした。あまりの光景にざわめきすら生まれなかった。
　目の前の光景に圧倒された研究者たちは誰も動こうとはしなかった。いや動くこ
とができなかった。声を出すことすらできなかった。
　そんな職員たちを尻目に、彼は必死になって思考を回転させていた。
　
　まずやらねばならぬのは『大佐』の救出と暴走した被献体の破棄だ。
　他の吸血鬼化猟兵（ニューボーン）どもはともかく『大佐』はこの程度では死なぬは
ずだ。いや、死んでもらっては困るのだ。『大佐』には、あの女にはまだやっても
らわねばならないことがあった。彼の真の目的を、望みを達成するためにはあの魔
女の力が必要だったのだ。ゆえに生存の可能性がわずかでも残されている限り、な
んとしてでも『大佐』を救い出さねばならぬのだ。
　
　それと同時に被献体の破棄も早急に済まさねばならなかった。
　今となってはもう、あの被献体はあまりにも危険すぎた。グラール・コピーだけ
でも使い方によっては戦術核並みの破壊力を生み出すことが出来るのだ。それに加
えてこの怪異。これ以上、放って置くわけには行かなかった。
　
　彼は事態を解決するための手段を必死になって考える。永遠にも近い一瞬の思案。
数秒後、彼のあまりにも長い経験が現状でとりうることのできる最良の手段を導き
出す。そしてそれを命令として発しようとしたところで。
　
　

47 名前：＜呪われた公子＞ゲイナー ◆GAinErMg8k ：2007/11/23(金) 01:02:33

>>46
　
　彼は弾かれたように振り返った。
　怒涛の勢いで膨れ上がる膨大な魔力が、核シェルター並みの厚さを誇る研究室の
壁から溢れ出して、離れた部屋にいる彼にすら強大な重圧（プレッシャー）を与え
てきたのだ。
　
　それはあまりにも圧倒的な魔力の奔流だった。メルトダウンすらあっさりと凌駕
するほどの圧倒的で無慈悲な災厄だ。
　
　研究者たちが絶叫を上げて崩れ落ちる。いっせいに発狂し、その場で狂死する。
穴という穴からどす黒い血と腐汁を撒き散らし、腐り爛れて死に至る。
　無理も無い。これほどの魔力、ただの人間に耐えうるものではなかった。いや、
それなりの力を持つ夜族ですら、直撃すれば耐え切れまい。
　
　瘴気とすら呼んで良いほどの禍々しい魔力の奔流。それが彼めがけて押し寄せた。
　彼は全身より体内で練り上げた魔力を放出し、押し寄せる瘴気から身を守る。
　堕ちた聖女の魔力と彼自身の魔力、ふたつの強大な魔力が触れ合いぶつかり合う。
　その瞬間、いかなる偶然か擬似的な精神感応網が形成された。それは溢れかえる
自身の魔力によって、ほんの刹那で自壊する。
　だがそれで充分だった。彼がこの現象を、アレがいかなるものなのかを理解する
には充分すぎた。
　そして彼は何が誕生したのかを理解した。いま何が起こっているのかを全身で理
解した。
　
　愕然とする彼を尻目に、魔力が物理法則を、幻想が現実を恐るべき速度で侵食し
始めていた。幻想による現実の侵食。あの枝は、その具体的な象徴だったのだ。こ
の研究所はもはや異界に飲み込まれつつあった。
　
　だが、気づいたときには遅かった。そう、遅すぎたのだ。
　
　

48 名前：＜呪われた公子＞ゲイナー ◆GAinErMg8k ：2007/11/23(金) 01:02:57

>>47

　
　
　
　
　
　
　
　　　そして爆発的な森蝕（しんしょく）がはじまった。
　
　
　
　
　
　
　

.

49 名前：＜呪われた公子＞ゲイナー ◆GAinErMg8k ：2007/11/23(金) 01:03:28

>>48
　
　かくして彼は森の中にいた。うっそうと生い茂る木々が彼の視界を大きく遮って
いた。
　彼は現状を把握しようと、片膝をついたまま木々の隙間を覗き込むようにして辺
りを見回す。視界をゆっくりと横に動かしていった。すると、無数に生い茂る樹木
の間に文字が見えた。
　
　Ａ棟３Ｆ。それはフロアの表示だった。彼は改めて辺りを見回した。周りを、
木々を、壁を、床を、そして天井を見回した。そこでようやく気づいた。彼のいる
場所は森の中であると同時に、室内でもあったのだ。
　
　根や苔や落ち葉で覆われた地面は、元はまぎれも無いリノリウム張りの床だった。
　深い森の小道だと思っていたそこは、壁面に蔦や枝の茂った通路だった
　
　しかも現在いる場所は、よく見れば見覚えのある通路だった。
　ただ余りにも変わりすぎていたからすぐには気づかなかっただけのこと。
　
　そこは研究所の中であった。変わり果てた研究所の中であった。彼は森の中にい
るのと同時に、いまだ研究所の中にもいたのだ。
　
　あの時、とっさに転移の魔術を込めた呪符を使いその場から脱出を試みたのだが、
どうやら逃げ切れなかったようだ。少なくともフランス国内からは脱出したかった
のだが。フランスから脱出することはおろか研究所の同じ棟から出ることすら不可
能だったようだ。結界の威力は凄まじく、呪符の能力は大きくそがれてしまったのだ。
　
　落胆は無かった。使う前からある程度の予想はしていたことだった。それが現実
となっただけのことだ。仕方あるまい。
　
　だが予想通りといっても、当たってうれしい類のものではなかった。それに、こ
れで完全に脱出の機を逃してしまっていた。ここはすでに結界の中だ。まともな手
段ではどうあがいてもここから出ることは不可能だった。もはやこの森の外にでる
ためには、『アレ』を滅ぼすしか他に方法は無いのだろう。
　
　『アレ』。受肉し現界した英雄の成れの果て。
　あの時、ほんの刹那の間だけ構成された『精神網』を通じ、彼の中に流れ込んだ
ノイズ交じりの思念（イメージ）。
　美しい少女、溢れかえる森、召喚の失敗、そして黒い鎧に百合の紋章。
　
　生み出されたのは青髭などではなかった。もっと強大で、おぞましく、邪悪で、
どす黒く――そして神聖で悲しい『英雄』だった。
　その英雄がおよそ６００年ぶりに甦り、祖国へと凱旋を果たしたのだ。
　

50 名前：＜呪われた公子＞ゲイナー ◆GAinErMg8k ：2007/11/23(金) 01:03:51

>>49
　
　……いや、違うか。そうではないのだろう。これは復活でも凱旋でも無いの
だろう。ただそこにあったものが、具体的な形を取り戻しただけのことだ。
　
　パリの街並みを歩けばいまもなお『アレ』の痕跡をそこかしこに見ることが
できた。『アレ』はそれほどまでにこの国に深く根付いていたのだ。
　
　だからその意味では『アレ』は死んでいなかったのだろう。死なせてはもら
えなかったのだろう。さながら２０００年以上ものあいだ十字架に架けられ続
けた救世主と同様に、だ。
　
　――死してなお幾百年もの月日をさらされ続け、生かされ続ける悲劇の子よ。
　
　キリスト教徒は、いや人間はどうしてここまで嗜虐的になれるのだろうか。
そう思うと彼の被面具で覆われた口元に苦笑とも付かぬ笑みが浮かぶ。
　
　彼はゆっくりと立ち上がる。そしてその顔を力強く正面へと向けた。眼窩に
当たる部分のみくりぬかれた鉄仮面からは冷たい双眸が覗いていた。
　その色は爛々と輝く赤。その赤い瞳に決意を、そして殺意を宿らせる。
　
　『大佐』の救出はもはや無理だった。『大佐』の居所はもはやわからぬ。普
段ならばともかく、この濃密な魔力に満ちた結界の中では人一人見つけるのは
容易ではなかった。専門の装備があればともかく、彼はそんなもの持ち合わせ
てはいなかった。『大佐』自身による自力の帰還を期待するに他は無い。
　
　ならば彼が今やるべきことは、この怪異を打ち払い消滅させることだ。それ
が『大佐』を救うことにもつながるのだ。
　いまの『大佐』は生きていたとしても酷い手負いであろう。傷ついた身にこ
の森の瘴気は酷く応える事だろう。
　そしてまた、この森さえ消滅させてしまえば、『大佐』を見つけることは容易と
なるし、『大佐』の自力での帰還も可能となることだろう。
　
　ならば一刻も早く森を消滅させねばならなかった。ゆえに彼はやるべきこと
を定めたのだ。
　
　その時、遠くから人間の悲鳴と、不気味な雄叫びが聞こえてきた。おおかた
この＜災害＞で檻が壊れ中から化物が逃げ出してきたのだろう。それはつまり
また一つ彼の仕事が増えたということだ。
　
　彼は腰の大剣を抜き放った。本来ならば両手で扱うような両刃の長剣だ。それ
を彼は片手で軽々と扱った。その剣も鎧と同様に、時には銀に、時には黄金に、
時には青みを帯びた鋼鉄に見えた。
　
　そして彼は高らかに声を張り上げた。まるで宣言するように。森そのものに
宣戦布告をするように。怪異に挑み、撃ち滅ぼさんとするために。
　
「手垢にまみれた救国の乙女よ！
　汚辱にまみれた漆黒の魔女よ！
　忌まわしき魔女！オルレアンの乙女よ！！
　よかろうあばずれよ、余が汝を永遠に滅ぼしてやろう！ 」
　
　幻想の森に、そして哄笑が響き渡った。
　
　

51 名前：＜呪われた公子＞ゲイナー ◆GAinErMg8k ：2007/11/23(金) 01:04:14

>>50
　
　
　
　
　
　かくして＜呪われし公子＞は、森蝕（しんしょく）された研究所を力強く歩いていった。
　あふれ出した化物を鏖殺せんがために。
　甦りし聖女にふたたび眠りを与えんがために。
　
　
　
　
　
　
　

.

52 名前：黒いアリス ◆ALICEsQkXc ：2007/11/23(金) 17:30:57

挿話　第一巻[クッキング・フォレスト]





照明さん、あと三歩下がってくださらない？
　そのままだと、私の肌が真っ白に見えちゃうわ。
マイクさんも近すぎね。そんなにカメラに写りたいのかしら。
　でも残念。あなたはゲストになれないの。
　
　　―――始まる？　始まるわね。
　カウントお願い。
ディレクター。私、きれい？
　……そう、ふふ。良いの。分かっていることだから。
　　ただ、確認したかっただけ。


　…さん
　　…にぃ
　　　…いち





　クッキング・フォレストにようこそ！

　さあ、今夜も「Forest 3分クッキング」の時間がやってきたわ。
　進行は当然のように、この私―――アリスが務めるの。
　うふふ……今夜はどんな奇天烈なお料理を作るのかしら？
　先週の「紅い恋人――とうかんもり仕立て」はとっても危険な味がして美味
しかったから、今週も愉しみ。みんなもぜひ、レシピを覚えて大好きなあのヒ
トに振る舞ってあげてね。生かすも殺すもあなた次第よ。

　今夜のゲストは、もっとも栄誉あるねずみの騎士、リーピチープ。
「聖杯」を扱うと聞いて、いてもたってもいられなくなったみたい。
　まぁリーピチープったら……相変わらず冒険好きなのね。それとも、神を
畏れる敬虔な気持ちがあなたを突き動かしたのかしら？
　どっちでも良いけど、お料理の邪魔だけはしちゃ駄目よ。

　さあ、レシピの開示が始まります。
　今夜は何を作るのか―――ねえ、私に教えて。

53 名前：黒いアリス ◆ALICEsQkXc ：2007/11/23(金) 17:31:22

本日のレシピ
「アーネンエルベ風グラール・コピー」

【用意する食材】
・聖杯伝説
・受肉用の器　※1
・魔力　※2
・魔女〈witch〉　※3
・シェリー酒　※4
・クラブ・サンド　※5

　　※1　酒杯のカタチに拘る必要はありません
　　※2　生まれたての聖杯を維持するため、多めに用意
　　※3　幻想を凝固させることが可能な程度の分量
　　※4　喉が渇いたときのために。シャンメリーで代用可
　　※5　トマトとレタスたっぷり。アリスの好物


　あら。
　模造品とは言っても、聖杯〈カリス〉神秘の究極でしょう？
　私みたいなお料理の素人に作れるのかしら―――なんて、モニタの前の皆
さんは心配しているでしょうけど、安心して。
　今晩のレシピは、初心者に易しい「アーネンエルベ風」なの。神秘の独占
と解明を目的にするだけあって、彼等が作るメニューはとっても分かり易い
わ。あんまり外に出したがらないのが玉に瑕？　このレシピを手に入れるの
も、だいぶ苦労したみたい。

　……リーピチープ？　何か言いたいことがあるのね。どうぞ、言ってみな
さい。あなたの身長だとマイクに声が届かないから、わたしがみんなに伝え
てあげるわ。
　―――なんですって？　至高の聖杯を偽造するなんて不可能？　聖杯はた
った一つ、パルシヴァル殿が見たものだけだ？　
　まぁ、リーピチープったら、なんて狭いことを言うの。あなたの大好きな
アーサー王物語でも聖杯は出てきたじゃない。
　ギャラハドはお嫌い？　それに、私たちのモンティ・パイソンも。
　
　何の聖杯をもって「本物」と定義するか、それは教会と協会のお仕事。
　だから、この番組でそういう小難しい議論をするつもりはないの。
　ただ、アーネンエルベが編み出した秘術の一つをみんなにだけ内緒で公開
するだけよ。―――リーピチープ、納得していただけた？　あんまり強情ば
っか張っていると、あなたには食べさせてあげないわよ？

　……ふふふ、いい子ね。
　分かったわ。じゃあ、早速キッチンに移動しましょう。
　食材は全部揃っているけど、改めて説明するわね。
　アーネンエルベ風は、食材の入手のたやすさに定評があるから、視聴者の
皆さんもご家庭で簡単に揃えることができるわ。
　
　さあ、レシピの順を追って作っていきましょう。レッツ・クッキング！

54 名前：黒いアリス ◆ALICEsQkXc ：2007/11/23(金) 17:31:39

１．お料理の骨子

　いくらアーネンエルベの高度な魔法科学力でも、無から有を作り出す奇跡
の駆使は不可能―――模造品を生成するためには、下敷きとなる「原典」が
必要なの。今回の場合は、それが「聖杯物語」になるわけね。
　
　……聖杯物語。あなたも一つくらいは知っているでしょう？
　一つの象徴から、世界へと散らばった数千万の奇跡の結晶―――現在、教
会が確認しているだけで数千個の「聖杯」が現実性浸食幻想として監視の対
象になっているわ。これからはあくまで、濃度が高すぎるあまり具象してし
まった「受肉の幻想」―――未だ肉を得られぬ物語だけの聖杯なら、総数は
ゼロが二つも三つもついてくるわ。
　アーネンエルベはそこに目を付けたの。
　カタチのない伝説に器を与えることで、現界する聖杯に仕立てる。それが
彼等の手段〈レシピ〉だったのよ。



２．『食材：聖杯伝説』を探して

　そういうことだから、今回のメニューは食材の鮮度によって味が大きく変
わるわ。
「聖杯伝説」と一概に呼んでも内容は千差万別。時代、国を選ばずにどの家
庭でも共有しているようなマンモスクラスの伝説もあれば、同人誌即売会で
二束三文で買い叩かれちゃうような誰も知らない伝説もあるの。
　前者のほうが、よりハイクラスの聖杯が作れるのは言わずもがな。でも、
それだと「アーネンエルベ風」にする意味はないわね。だって、高濃度の幻
想は人の手が介入しなくても、自らの力でやがて肉を得るわ。その分値段も
張るから、ふつーの家庭で購入するのはまったくの非現実的。
「アーネンエルベ風グラール・コピー」のテーマは、矮小にして希少な聖杯
の確保―――誰にも知られていないような聖杯伝説を探し出し、そこに肉を
与える行為なのよ。自分の力では決して現界できない、か弱い幻想へのプロ
デュース行為ね。これなら安上がりでしょう？
　だから、皆さんも背伸びして大きな幻想を探したりせず、スーパーでタイ
ムセールに売り出されるようなチープなお話を食材に選びましょう。そうい
ったジャンクさも、アーネンエルベ風の一つの魅力なんですから。

55 名前：黒いアリス ◆ALICEsQkXc ：2007/11/23(金) 17:32:00

３．伝説の受肉
　
　さあ、ようやくお料理らしくなってきたわね。
　これから、皆さんの家庭で揃えた伝説にカタチを与えて、コピーの下地を拵
えるわ。用意した受け皿と魔力はここで使います。
　伝説が持つイメージを現実に浸食させないように魔力でアシスト―――同時
に「現実」という縛りを受け皿で与えるの。
　飴とむちの混合攻撃？　リーピチープが張り切って料理中だけれど、この過
程を粗雑に済ませるのはあまりお薦めできないわ。
　幻想の受肉が落ち着いた状態でないこの過程は、「制約」と「許容」―――
どちらかのバランスが欠けただけで、エネルギーが暴走しちゃうの。その先に
待つのは深刻な魔導災害。キッチンをアヴァロンまで吹っ飛ばしたくなかった
ら、リーピチープの真似はしないで、慎重に調理をしてね。



４．伝説の固定

　魔女が必要となるのはここからね。不安定な状態の聖杯に嘘とごまかしを与
えて現実に留まってもらうためには、嘘つきの魔女が必要不可欠。
　どんなに駆け足でも……そうねぇ。三年くらいは、じっくりと腰を据えて生
成する必要があると思うわ。
　三年ってかなり短いほうなのよ？
　原典となった伝説が小規模なお陰で、インスタントな聖杯が作れちゃうって
とこかしら。これがオリジナルに近付けば近付くほど……幻想の濃度が濃けれ
ば濃いほど、期間は長くなるの。数百年も待てないでしょう？　ジャンクな食
材を選んだのには、ここらへんにも理由があるんです。
　因みに、この番組は三年クッキングじゃなくて三分クッキング。私もリーピ
チープも短気で飽きっぽいから、番組のスタッフが予め生成の完了した聖杯を
用意してくれました。まぁすてき！　なんだか本当に料理番組っぽいわ。

56 名前：黒いアリス ◆ALICEsQkXc ：2007/11/23(金) 17:32:14

５．伝説の終結

　オーブンから焼き立てを取り出して―――はい、完成！
　クラブ・サンドとシェリー酒で祝杯をあげましょう。
　どう？　いつものメニューに比べると、かなり簡単だったわよね。
　さすがはアーネンエルベ。「神秘の解釈」という目的に、怖いくらいに忠実
だわ。聖杯伝説は国も時代も選ばず、どんなところにも転がっているから、一
家に一杯グラール・コピーを用意することだって不可能じゃないわ。
　石油に変わる未来の燃料として、地元の自治体に売り込んでみるのも面白い
かも？　「聖杯都市」なんてとっても素敵じゃない。聖杯の幻想溶融〈メルト
ダウン〉が引き起こす魔導災害がちょっとだけ怖いけれど、そこはご愛敬。
　


　―――それじゃあそろそろ……
　今夜のアリスマーク！　料理の注意点をお話してあげるわ。

　このレシピの肝は、聖杯伝説の選定。食材が料理の質を大きく左右するわ。
　それぞれの持ち味〈カラー〉によって、品質が大きく変わる典型ね。自分の
舌に合う自分だけの伝説を見つけることが、生成を成功させるコツかしら。

　……そう、リーピチープ。なかなか鋭い質問をするのね。
　あなたの質問は、とても上手に的を射ているわ。
「アーネンエルベ風グラール・コピーにオリジナルは存在しない。絶対に何か
しらの原典が存在する」―――じゃあじゃあ、あの魔女が持ち出したコピーは
いったいどの伝説を引用したものなのかしら？　かしらかしら？

　この謎かけ〈リドル〉の答えは来週までお預けにして、さあ、リーピチープ、
出来上がった聖杯を試食するために、お茶会の準備を始めましょう。
　私、とっても素敵なお庭を知っているの。あそこなら素晴らしい黄金の午後
を過ごせるはずよ。

　
　それでは、今夜のクッキング・フォレストはここまで。
　フランス国営放送局を電波ジャックして、急遽お送りした番組だけど、当然
来週も見てくれるわよね？
　以上！　燦月製薬の提供で、FSK（France Shinrin Kyoukai　或いは Forest
Service Kyoukai）が腐海神殿から中継でお送りしました。





　　　　　　　　　　　　―――そう、これはこれで。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　また別のお話。

57 名前：◆kYsrWORLDo ：2007/11/23(金) 17:41:56

（ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓＤＩＯ）
　　
　
　
　　　　　　　＜『ＤＩＯ』回収に関する報告＞
　　
　組織と敵対関係にあった吸血鬼『ＤＩＯ』の遺体の回収に成功した。
　エジプト及びその周辺地域は『ＤＩＯ』により完全に掌握されていた
　が、『ＤＩＯ』の死亡により、同地域への組織の進出が期待される。
　　
　遺体回収時にＳＰＷ財団の部隊との交戦あり。現在も交戦中。
　速やかな増援部隊及び円滑な事後処理を行われたし。
　　
　『ＤＩＯ』は死亡したが、まだその身体は生きている。
　取り扱いには細心の注意を払う事。
　
　遺体の輸送先はフランスのルーアン近郊のＸ市の研究所。
　ジェット機による空輸で、一両日以内に輸送する。
　受け入れ態勢を早急に取られたし。
　
　　
　　　　　　　　

58 名前：◆kYsrWORLDo ：2007/11/23(金) 17:42:16

　　
　　
　　
　　　　　　＜『ＤＩＯ』の蘇生実験命令＞
　　
　先日、搬送された『ＤＩＯ』の肉体への蘇生実験及び遺伝子レベル
　での解析を研究チームは速やかに行え。
　『ＤＩＯ』の持つスタンド「世界（ザ・ワールド）」については、組織
　は並々ならぬ関心を抱いている。もしこれを解析出来れば、その
　貢献は計り知れないものになるだろう。

　スタンドは精神の力によるものと報告が出ている。『ＤＩＯ』の身体は
　生きていても、その精神が虚ろであれば、意味を成さない。
　従って、前提条件として『ＤＩＯ』を蘇生させる必要がある。
　
　蘇生に関しての危険は上層部は十分に承知している。
　故に四肢の完全な拘束及び蘇生後直ぐに『最後の大隊』より提供さ
　れたコントロールチップを『ＤＩＯ』の脳に埋め込め。
　チップによる『ＤＩＯ』の爆破を材料に『ＤＩＯ』へ協力を要求する。
　　
　　
　　　　

59 名前：◆kYsrWORLDo ：2007/11/23(金) 17:42:44

　　　
　　
（Ｃ地区　イノヴェルチ研究施設　特Ａクラス実験室）
　　
　　
　　
　　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
　　
　　
「四肢の拘束は？」
「拘束レベル８。５００キロの加重による枷です。
　例え吸血鬼であっても、これを抜ける事は出来ません」
「………良し。では、蘇生実験開始。血液を『ＤＩＯ』に注ぎ込め」　　
　　
　　
　　　　　　　　　　　　　　　　／＼
　　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣　　 ￣￣￣￣￣￣￣￣
　　
　　
　　
「『ＤＩＯ』の心音、確認しました！」
「そのまま、続けろ。Ｂ班、コントロールチップ埋め込み準備！」
　
　
　
　……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉

　
　
「な、何だ、地震かッ！？」
「ぬうッ！　こんな時にッ！！　蘇生実験を中止させろッ！」
　　　　　　　　　　　　　 ／＼　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　／　　　＼　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　 ／　　　　　　＼　　　　　　　 　　　
　　　￣￣￣￣￣　　　　　　　　　￣￣￣＼／￣￣￣￣
　
　
「間に合いませんッ！　『ＤＩＯ』の心拍数上昇中、脳波も検出ッ！」
「ぐうッ！　仕方ない、作業急げッ！
　『ＤＩＯ』の意識が完全に戻る前に作業を済ませろッ！』
　　　　　　　　　　　　　　　　 ／＼　　　　　　　　　　　　　　　／
　　　　　　　　　　　　　　　／　　　＼　　　　　　　　　　　　／
　　　　　　　　　　　　　 ／　　　　　　＼　　　　　　　　　／
　　　￣＼　　　　　　／　　　　　　　　　＼　　　　　　／
　　　　　　＼ 　　 ／　　　　　　　　　　　　＼　　　／
　　　　　　　 ＼／　　　　　　　　　　　　　　　＼／
「心拍数尚も増大！　脳波も意識レベルまで急激に上昇ッ！」
「Ｂ班、何をしているッ！？」
「そ、それがッ！　『ＤＩＯ』の枷が急に凍り付いて……ッ！！」
　
　
　
　　　―――――――――――――……………
　
　
　　　　

60 名前：ＤＩＯ ◆kYsrWORLDo ：2007/11/23(金) 17:43:56

　
　
　
　……「気化冷凍法」、よもや我がスタンド
「世界（ザ・ワールド）」　に目覚めた後に
　使う事になろうとは分からぬものだ。
　予定外の早い復活だったが、さて、どう
　したものか。
　
　
　ほう、まだ生き残りが居たか。丁度、良い。
　このＤＩＯに此処が何処で君等が何者で、
　目的を聞かせてもらおうか。ツアーコンダ
　クターが旅行者に観光名所を説明する様
　に懇切丁寧にな。
　
　
　……なるほど、大体理解した。元々は研究
　施設だったものが突如森になった、か。何
　者かの仕業が分からんが面白い。確かめ
　る価値はあるか。使える者が居れば従わせ、
　そうでない者は……
　
　ああ、君は――――――さよならだ……
　　　
　　　
　　　
　　　
　　
　　
　　
　　
　　　　　　　　　　　　ふん、このＤＩＯを支配し、利用するなどとッ！
　　　　　　　　　　　　イノヴェルチ風情が思い上がってくれたものよッ！
　　　　　　　　　　　　くらわせてやらねばならん、然るべき報いをッ！！
　　
　　
　　
　
　　　　

61 名前：黒いアリス ◆ALICEsQkXc ：2007/11/23(金) 17:51:27

DIO vs JEANNE ―The forth part of king Henry VI―

導入

>>52>>52>>53>>54>>55>>56
>>57>>58>>59>>60



　パーティは続く。
　パーティは続く。

　神殿をマルスに狂うウサギの屋敷に見立てて、お茶会の準備は森行中。
　森の中でもとびきり立派な樹の下にイングリッシュオークのテーブルを運び
込み、椅子をきっちり等間隔に並べてゆく。
　真っ白なテーブルクロスが波を打った。アリスはころころと笑いながら屋敷
の主人に命令する。「さあ、端を持って頂戴。しわの一つでも残ったら、全て
台無しなんだから」
　
　マイセン、ウェッジウッド、フルステンベルク―――エルメスにドレスデン
も忘れずに。食器はカップもソーサーも最高級。黄金色の午後を演出するため
には、多少の見栄だって許される。今宵のアリスのロッキンは、普段よりシー
クレット率が二割増し。
　
　会場の準備は整った。次はキャストを揃えるターン。
　屋敷の主人を席に着かせる。「あなたはウサギよ。だって、この神殿の監督
者〈スチュワード〉だったんだもの。ぴったりな配役だわ」
　アリスは気ちがい帽子屋。神殿の地下で拾った真っ黒な軍帽を斜に被る。
　サイズが大きすぎて片目が隠れてしまうけど、アリスはこの帽子を気に入っ
ていた。羽ばたく鷹と髑髏の帽章が最高にパンクだった。彼女のフリルだらけ
の黒装束に、思いの外よく似合う。

　他に足りないものは何かしら。帽子屋となったアリスは考える。

「……時間だわ。時間よ。時間が動いているわ」
　
　気ちがいお茶会は死んだ時間の中で永遠の六時を過ごす。終わりを知らない
ティータイム。お陰で紅茶が飲み放題。
　
　森の中で、六時を閉じ込められる幻想は二人。でも、一人はキャストに含ま
れていない忠犬〈アンダードッグ〉。もう一人は―――

「決めたわ」
　帽子屋の唄うような呟き。つまり宣言。
「彼がこのリドルのゲストよ」




【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）前庭】

62 名前：黒いアリス ◆ALICEsQkXc ：2007/11/23(金) 17:53:39

DIO vs JEANNE ―The forth part of king Henry VI―

導入

>>61


　パーティは続く。
　パーティは続く。

　蔦に絡め取られて身動きがとれなくなった自動ドアから、影のような男が
姿を見せる。……シャドウと呼ぶには存在感が強すぎるけど、水銀灯の照明
は男まで届かないから容姿ははっきりとしない。
　きっと、人生という芝居を常に主役で過ごしてきたトップヒエラルキー。
　アリスは歓迎する。帽子屋は歓待する。
　協調なんて知らない。調和なんて知りたくもない。そんな自己好きの主役
好きこそがこのお茶会では最上級のゲストになる。

「マッドティーパーティにようこそ！」

　アリスは席を立つと、自慢の軍帽をとってお辞儀をした。

「自己紹介するわね。私は帽子屋〈mad as a hatter〉。イヤミ好きのヒステ
リック。二つ隣で馬鹿みたいにぼりぼりと自分の枝を囓っているのは、三月
ウサギ〈March Hare〉よ。このガーデンのご主人なの」

　アリスが三月ウサギと呼んだのは、この腐海神殿がまだ「研究所」と呼ば
れていた頃に所長を務めていた男だった。
　森の目覚めから奇跡的に生き延びたものの、躯の半分が森に侵され、腕は
幹となり指は枝に変身した。胸を覆うごつごつとした粗目の表皮。残った人
間の部分が、森蝕から逃れるようにひゅーひゅーと呼吸する。
　生命は健在。だが、正気までは保証できない。気ちがいティーパーティに
参加する条件はしっかりと備えている。

「さあ、席は二つ空いてるわ。アリスとヤマネ、どっちがいいかしら？　好
きなキャストを選んでちょうだい」

　そう言ってアリスが指差した席には、四つも五つも空席が。大きなテーブル
には街の住人全員を招待できるぐらいに席の余裕があった。
　―――だが、このお茶会の参加者は三人と一人まで。どんなに席が余ってい
ても、それ以上のゲストはお呼びじゃない。
　
　テーブルにはお皿はあれど、メニューはない。用意されたのは紅茶だけ。
　お腹の飢えは満たせないけど、喉の渇きなら治癒可能。
　ダージリン、ウバ、アッサムにセイロンやアールグレイ。お茶なら何だって
揃ってる。もちろんティーセットだってゲストのわがままに応えるために、陶
磁器からクリスタル、かわいいブリキやオリエンタルな象牙製まで、色とりど
りにテーブルを飾っていた。

「でも、そうね。あなたの一番好みのお茶は、これかしら」
　
　アリスはヤマネの席を跨いで三月ウサギに近付くと、うなじから茂った葉を
かき分けて首筋を露わにさせた。
　―――所長の人間の部分。まだ血が通う首筋に、銀製の蛇口が突き立てられ
ていた。無慈悲で無機的な金属のきらめきが恐怖を引き立てる。
　アリスはティーカップを添えて、鼻歌交じりに蛇口をひねった。勢いよく鮮
血が噴きす。
「あああ！」三月ウサギの悲鳴。十一月なのに狂ったまま。「あああ！」
　
「どう？　あなたのための一杯よ。舌に合うと良いのだけれど」
　
　接合が甘かったのか、アリスがティーカップをソーサーに置くと同時に、三
月ウサギの首から蛇口がころりともげた。血は止めどなく溢れだし、テーブル
クロスを真っ赤に染め上げる。三月ウサギの相変わらずの行儀の悪さに、アリ
スも顔をしかめずにはいられない。

「とりあえず、席替えが必要ね。所長さんはねむり鼠〈ドーマウス〉にキャス
トを変更よ。自分というポットに溺れてるんだから、ちょうど良いわ」

　三月ウサギ→ヤマネはテーブルに突っ伏したまま動かない。寄生主の鮮血を
啜るかのように、枝葉の部位がざわざわと騒いだ。

「私は今から三月ウサギ。あなたの時計にバターを落とすわ。永遠の六時を愉
しみましょう。―――……そう、だから」

　アリスは軍帽を脱ぐと、影の男にゆっくりと差し出した。

「あなたが帽子屋をやって。時間を殺す、気ちがいの帽子屋よ」



【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）前庭】

63 名前：ＤＩＯ ◆kYsrWORLDo ：2007/11/23(金) 17:56:00

（ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓＤＩＯ）
>>61 >>62
　　
　　
　　
　…１８６５年、わたしが産まれる二年前だ。
　イギリスのとある数学者兼作家から一冊の
　本が出版された。本の題名は「不思議の国
　のアリス」と言う。
　　
　内容は少女「アリス」が不思議の国に迷い
　込み、数々の奇妙な体験を経て、現実へ戻
　るという物だ。
　　
　この本は発売後、爆発的な売り上げを記録。
　版にして百を超え、翻訳された言語は実に
　五十を数える。世に出た数は数十億冊とさえ
　言われ、世紀をまたいでも、大勢の人間達を
　惹き付けて止まない魅力を持っている。
　　
　この本は様々な要素が込められている。不条
　理、パラドクス、非現実、ナンセンス、幻覚、願
　望、夢―――――――――――そして、悪夢。
　　
　驚くべきは、だ。これらの要素が完全な比率、
　いわゆる黄金率で混ざり溶け合っていた事だ。
　究極な比率が億単位の人間達をを今も魅了し
　続けているのだ……
　　
　この作者は自分の『魂』を本と言う形に出来る
　天才だった。その『魂』は本の形を取り時空を
　超えて、人に作者の持つ主張を伝え続ける…
　ひとつの奇跡だな。かの有名なモナリザやミ
　ロのヴィーナスも同じ事が言える。
　　
　　
　　
　　
　しかし、モナリザやミロのヴィーナスと「不思議
　の国のアリス」は決定的に違う点があった。そ
　れは狂気、妄執、悪夢といった負の要素まで
　もが黄金比として『魂』に、その作品に取り込
　まれていた事だ…
　　
　そうして、百を超える年月、数十億の魂の共鳴
　を経て、悪夢は現実のものとして、具現化する
　事となる……
　　
　　
　　
　２００Ｘ年、極東の島国の街「シンジュク」にそ
　れは現れたと聞いている。悪夢の渦は森となり、
　幾人の男女を巻き込んで、死を賭けた孤独な
　ゲームを強制させたと言う……。そして、その
　ゲームを乗り越えた彼等は文字通り魂が新生
　し、新たな世界が作られた、と。
　　
　　
　　
　　
　　
　フッフッフッ、森、悪夢、死、実に今の状況に似
　ていると君は思わないか？
　良かろう。わたしはこれを精神の行き着く先、到
　達点………天国へ行く為の試練と受け取ったよ。
　
　さて、『三月ウサギ』とやら……居るのだろう？
　ゲームは相手が居なくては成り立たないからな。
　もう一人の主賓を、魂をそろそろこの『帽子屋』
　の前に出して貰おうか。それを屈服させ、わたし
　が世界の頂点に立つ者だと証明してやろう…ッ！
　　　
　　　
　　　
【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）前庭】

64 名前：＜呪われた公子＞ゲイナー ◆GAinErMg8k ：2007/11/23(金) 20:04:30

　『死神（デス）ゼアド vs ＜呪われし公子ゲイナー＞』　導入
　
>>51
　
　色さだまらぬ鎧を纏いし男が、深き森と化した廃墟を深く深く下っていく。
　蔦の緞帳を切り開き、並木の柵をなぎ倒し、奥へ奥へと進んでいく。
　
　研究所は完全に腐海樹林の中に沈んでいた。森には溢れんばかりの異形の魔
力が満ち溢れていた。それは紛れも無く、奈落堕ちにすら匹敵するほどの超弩
級の魔導災害（デモノ・ハザード）だった
　
　まったく、なんということだ。森に溢れかえる魔力の圧倒的な膨張速度から
見れば、数日のうちにフランス全土が森に飲み込まれてもおかしくは無かった。
　いや、それだけならばまだいい。それ以上のことがおこってもなんら不思議
はないのだ。此度の儀式の失敗時のパターンは幾通りも考えていたが、ここま
で酷いものは予想だにしなかった。
　
　胸のうちに沸き起こる苛立ちを堪えながら、彼は蔦に覆われた階段を一歩一
歩下っていった。
　
　森と一体となったジャンヌの力は強大だ。まともな手段では殺せぬだろうし、
たとえ殺せたとしても滅ぼすことは出来ぬだろう。
　森と聖女は相互に補完しあっていた。たとえ片方が欠けても、瞬時に遺され
た一方がもう一方を再生することだろう。さながら閉じた輪のように、永久に
続く円環の様に、終わりのない無限ループ。そして両方一度に破壊するのは、
その膨大な魔力からいって不可能に近かった。
　
　納得がいかなかった。儀式には聖杯を用いたといえ、あれは所詮紛い物に過
ぎなかった。どう考えてもあの聖杯だけでこれほどの魔力を生み出し続けるこ
とが出来るはずはないのだ。これほどの規模の奇蹟が起こるはずが無いのだ。
何らかのタネが、イカサマがあるはずだった。
　
　答えの出ない疑問を繰り返しながら先を急いでいた彼は、異質な気配を感じ、
ふと足を止めた。見れば通路の先からやせこけた一匹のロバが近付いてくる。
　奇妙なロバだった。その雰囲気はどこかいびつで歪んでこそいたが、閉じ込
められていた実験動物とは違い禍々しい気配は感じられなかった。そしてその
瞳にはなぜか知性すら感じられた。
　
　そのロバは何の気負いも無くふらふらと血塗られた剣を持つ彼の元へと近付
いてくると、唐突に喋り出した（・・・・・）。
　
　

65 名前：＜呪われた公子＞ゲイナー ◆GAinErMg8k ：2007/11/23(金) 20:05:17

>>64
　
　湿った音が鳴り響き、重いものが床に落ちて、紅が広がり侵食していく。
　それは首をおとされた亡骸から流れ出す命の残り香。
　
　唐突に喋り出した彼の相方を自称するロシナンテと名乗るロバ――なんと口
を利いたのだ、まあこの森の中では驚くことではないのかもしれないが――を
問答無用で斬り捨てたところで、ようやく彼は仮説を得た。
　
　――なるほど、ならば余の役回りはライオンの騎士か。
　
　確かに適任だと彼は苦笑する。もはや道化は彼の二つ名のようなもの。
　ならばこれほど相応しい役回りはあるまい。しかも偽典のほうと来ては！
　
　彼の得た仮説。それが正鵠を得ているかは不明だが、当たらずといえど遠か
らずといったところだろう。
　この森の中は、歪んだ童話に支配されていた。そして異常なまでの魔力量の
正体もおそらくはそのせいだった。
　
　そう、この森の中では怪奇現象が物語の皮をかぶっているのだ。
　物語の皮をかぶって、それを原型（アーキタイプ）とし、レベルを、いやス
テージを引き上げ飛躍的に力を増大させているのだろう。
　
　紛い物の物語の皮をかぶって、本来ならば得ることの出来ない力を行使して
いるのだろう。まるで、獅子（アスラン）の皮をかぶったロバ（トマドイ）が偽りの神託を語り聞かせるように。
　
　ならば、逆に言えばその物語さえどうにかすれば自然と森は消滅するのだろ
うが……。
　そのためにはあえて物語に載ってみるのも、あるいは一つの手なのかもしれ
なかった。森は幼い子供のように、遊び飽きれば自然と消滅するのかもしれな
かった。
　
　だが彼は、幼稚なロールプレイに付き合ってやるつもりなど無かった。わざ
わざそんなことに付き合ってやるつもりは無かったのだ。そんな義理も無い。
くだらん茶番に付き合ってやるつもりは無かった。
　
　そう彼はルールに従いこの現象を解決するのではなく、力任せに撃ち滅ぼす
つもりだったのだ。相手がイカサマをするのなら、その卓ごと遊戯を破棄して
しまえばいいのだ。
　
　たしかにジャンヌは、そして森は強大だった。相互に補完しあい滅ぼすこと
は不可能に近い。
　
　そう、不可能に近い（・・・・・・）。不可能に近いが不可能ではないのだ。
　方法によっては不可能ではない。
　
　――――そのための魔剣だ。
　
　彼にはそれを可能とする魔剣があった。彼の所有する魔剣のうち幾本かは、
"一つの世界�≠ﾌ中ならば『神』とて殺しきれるだけの力があった。
　　
　その魔剣を用いてまず聖女を破壊するのだ。再生できぬように完全に。その
あとで補完する者のいなくなった森を、完全に焼き払えばそれで終わりだった。
　かれは愚かではあったかもしれないが、無能ではなかった。勝算の無い戦い
などするはずが無いのだ。
　
　だからこそ彼は、尊大なまでの自信を持って進攻を再開した。
　
　

66 名前：＜呪われた公子＞ゲイナー ◆GAinErMg8k ：2007/11/23(金) 20:05:58

>>65
　
　彼は蔦に覆われた階段を一歩一歩下っていった。そして、最後の一段を降り
たところで、彼はその男の存在に気が付いた。
　
　そこは広いホールだった。とても広いホールだ。まるで大伽藍のよう。
　森蝕され無数の樹木が生え茂っていた。中央には巨木すら突き立っていた。
　何のためにこんな無駄に広い空間を作ったかは不明だが、ともかくも戦うに
はうってつけの場所だったのだ。
　
　そのホールに満ちた闇の最も深く暗い場所に一人の男がたたずんでいた。
　僧衣に身を包んだ禿頭（とくとう）の男。アーネンエルベではなくイノヴェルチが独自に
雇った俸給魔術師。腕は一流。中でも召喚術に関してはトゥーレ協会の魔術師
どもとて舌を巻く。
　現に彼の体からあふれ出す魔力は、この森の中でも一目で見分けが付くほど
だった。確かその名は……
　
「ゼアドといったか？こんなところで何をしている」
　
　なぜアレを止めにいかぬのだ。言外にその言葉をにじませて、彼は目の前の
男を睨み付けた。
　
　
【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）地下】

67 名前：◆rX9kn4Mz02 ：2007/11/23(金) 20:16:17

>>66
　
　
　――――異端教団＜ウィズ・ライト＞。
　
　絶対悪として魔を求め、その苦痛から逃れる為に絶対善としての神を信奉するカルト教団。
　『天秤』の概念を教義とし、それを顕在化させる事を至上とする。
　
　新世紀より台頭したその組織の発祥――――＜ウィズ・ライト＞の前身。
　それが『ドラキュラの転生者』を自称したグラハム・ジョーンズを教祖とした新興宗教である
　という事実、そして因果関係を知る物もまた多いだろう。
　
　更にその根を辿り――――
　教団を生み出した母体こそが、歴史の陰で暗躍を続けてきた吸血鬼信奉者集団『イノヴェルチ』
　――――とりわけ親オカルト派、ならび上層部に根強く残るドラキュラ信奉者――――という事も
　教会の調査により我が一族ならば知る所だろう。
　
　だが。ここで一つの謎がある。
　イノヴェルチより派生した＜ウィズ・ライト＞であるが、設立までの経緯には謎が多く、
　何より、その設立自体が不可解な謎を孕んでいた。
　
　前章でも述べたが、教団自体は西暦２０２０年前後、当時推定２５歳のグラハムが新ドラキュラ派の
　エルダー―――とりわけ反死徒二十七祖派閥、通称『反白翼派』の後押しを受ける形により、表向きは新興宗教、
　裏ではマネーロンダリングと実験場、即ち燦月製薬と並ぶ隠れ蓑の一つとして設立されている。
　そこで問題となるのは設立に関わったイノヴェルチ内のメンバーである。
　現在の調査で明らかになっているだけでも
　
　
　〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
　　
　
　
　
　
　
　――――真実はまるで冗談の様であり、だがそれ故に如何なる冗談よりも奇であった。
　これらの人物達には奇怪な共通点が存在する。
　すなわち派閥も地位も、所属すら異なる全員が、とある人物と接触後、教団設立に邁進しているのだ。
　
　科学部門の重鎮とカルト上がりの神官が。
　血族同士の因縁から数百年単位の冷戦を続けたヴァンパイアが。
　ただスポンサーとして籍を同じくしているだけの敵国同士の将軍が。
　ビジネスチャンスのため提携するも、それゆえ商売敵として火花を散らす大企業の重役が。
　或いは犬猿の仲と目される反目者同士が、また或いは一切の関係も持たず互いの役割を果たすだけ
　であっただろう者達。
　それら従来なら＜点＞であった者が、一人の男を仲介して線で繋がっていたのだから。
　とある一つの組織、魔王復活を奉じる一つのカルト教団を成立させるために。
　
　言い換えれば、たった一人の人物が後の歴史―――かの『ドラキュラの再臨』という騒乱の
　原因を作り上げたという事になる。
　我が一族の仇敵にして宿敵、魔王ドラキュラ・ヴラド・ツェペシュ。
　１９９９年の決戦で彼が残した『復活の予言』――――そう、２０３５年に再臨するという
　あの忌まわしくも定められた運命を万全のものとする為に。
　
　あらゆる散在した因子を掻き集め。
　いまだ芽も出ぬ状態から、結実に至るまで一切の手を尽くして。
　イノヴェルチという魔女の躯を母体とし、邪悪の仔を孕ませ産み落とさせた。
　呪わしき混沌の１００年周期、終わりなき破滅の螺旋を再来させるため。
　いずれきたる災厄の為に、次の災厄の為に、次の次の災厄の為に。
　
　その人物は本来外部の人間だったという。
　イノヴェルチ上層部の覚えもいい、一介の俸給魔術師。
　神秘の扱いに劣るイノヴェルチの欠点を幾度も補い、サンプルとなる幻想種の捕獲を幾つも執行。
　また直属の始末屋としても名を馳せた黒衣禿頭、召喚術に長けたという一人の男。
　
　　
　その男の名は―――――――。　
　
　
　
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０３６年　※月○日　
　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ベルモンド家手記　第１２章『暁月と蒼月』より抜粋　
　　　

68 名前：ゼアド ◆rX9kn4Mz02 ：2007/11/23(金) 20:21:40

　
『死神（デス）ゼアド vs ＜呪われし公子ゲイナー＞』
　
>>67　
　
その開けた深（侵）緑の大釜の底に、漆黒の影は埋没することなく存在していた。
　
　
カソックじみた黒衣を纏う禿頭の男である。
その俗さというものを感じさせない、物静かで飄々とした装いは牧師のそれだ。
　
だが男は凡庸な存在とはまるでほど遠く、むしろ異様ですらあった。
露出しているのは首から上だけであり、それ以外は全て黒の装束に覆われている。
異様なのは唯一露出した頭部もだった。　　
一切の体毛が存在しないのだ。頭髪はもとより、眉毛や睫毛、さらには産毛の一本までも。
まるで髑髏へ肉付けのみをした死面（デスマスク）を思い起こさせる。
それは男のいる施設においても同様で、他の職員は皆、彼を心の底で恐れていた。
嫌悪感でもない、それ以上の本能的な恐怖と畏怖。
施設に収容されているいかなる異形より、死を想起させるものとして。
　
だが、それよりもこの男を異様たらしめているものは。
　　
　
「――――ああ、お待ちしておりました。　
　貴方もご健在だったようで。それはそれは……」
　
まこと、ご災難であったでしょう。
そう続けて男が続けて切り出したのは、バトラーが客賓を迎えるがごとき恭しい一礼。
常より躊躇も乱れもない柔らかな物腰、相手の地位役職を問わず丁寧懇切であり流暢なその語り口。
世に言う慇懃無礼、などというものとは違う。
“これ”は理屈（ロジック）で現せるような表層ではなく、もっと根源的なものだ。
例えるなら、
　　
「はて……何を、と申されますか。
　ですがゲイナー殿。言うなれば……それは此方の台詞。
　貴方こそ、一体何をされるお積りですか」
　
その声音は流暢でありながら、
口以外の部位から捻り出され、心の奥底へ、ねっとりと絡み付くようであり。
　
「貴方ならばお分かりの筈……左様、これは“可能性”なのです。
　今、怠惰と腐敗を重ねた現世に、聖処女は黒の位相より舞い降りた。正に“奇跡”と言えましょう。
　そして、世の因果、秩序に反するこれこそが＜混沌＞―――これぞ貴方も深く知るところである、
　無限に広がる“可能性”の発露ではありますまいか」

僅かに熱に浮かされながらも、その物言いは聞こえよく淡々として。
　
　　　　　　――――嘔吐を催す絶対的な嫌悪感は、
　　　　　　　　　　　　　　生きた人間を材料にして奏でる楽器の　
　　　　　　　　　　　　　　　　　隠しきれぬ怨念と絶叫を孕んだ牧歌を聴くようで。　　　　
　　
「ならば、です。この祝福の、何を阻み蔑む道理がありましょうか？
　そう……貴方様は何ゆえに？　グルマルキン公ですか？
　ああ、残念ではあります。私も不肖ながら別室で見ておりました。
　しかし、いや……よもやあの剣が一体誰のものか、分からずじまいだったとは……」
　
心の底から残念そうに、かぶりを振る仕草。
彼の動作は滑らかでありながら、
本来人間のあるべき動作からは極めて僅かに、だが致命的に掛け離れ。
　
「しかし悔やむ事もありますまい。いずれ、抑止の手も届きます。
　貴方の想定とは違うでしょうが…“世界”よりの修正を受ければ、抱く願いも叶うのではと」
　　
向き直り、まるで最良の結果を告げるように。歌うように。
　
　　　　　　――――潜在的な領域で揺り起こされる不快感は　
　　　　　　　　　　　　　　生贄である大勢の人間を搾り絵具とした
　　　　　　　　　　　　　　　　　清冽さと優雅さを謳った油絵を見せられるようで。
　
　
「何より、折角の祝祭です。手を引いて頂きたい。
　貴方とて異界はマシャバク神の下僕、世に＜混沌＞をもたらすべきもの。
　これは好機ともいえる、破滅と混乱の発露なのです。貴方の務めにとっては祝いこそすれ、止める道理など…。
　ああ……いや、まさか。まさかとは思うのですが……」
　
そこで相対するゲイナーへ、男―――ゼアドが初めて表情を形作る。
そう、“作る”。
まるでヒトならざるモノが人を模したかのような違和感。
まるでヒトの声を持たざるものが人間のそれを真似たかのような違和感。
その酷くおぞましい存在の歪みが、最大となる。
　
「あの『聖女』に憐憫の情でも覚えられましたか？　
　災厄として死してなお担ぎ出される救国の英雄に……永遠の救世主として時を越え、残滓として君臨
　し続ける乙女に………いやいや、或いは同情か、哀れみか。
　よもや、恋慕などということはありますまいが――――――」
　
　
薄闇の中。
広い深（森）淵の中で朗々と語り、問い、そして笑む。
薄い哂いを張り付かせ。
木々の生で満ちる伽藍を死で満たし。
正気なき地を瘴気で満たす。
　　　　　　　　　　　　
　　　　　　―――――多彩の公子に対峙し嘲う黒白は
　　　　　　　　　　　　　　　死と闇より生まれ其れを知り尽くした
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　忌まわしい神を、誰もが知る忌まわしき神を
　
薄闇の中、独り笑む。
其れは黒衣を纏う白い髑髏。　
　
　
【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）地下】

69 名前：Enter the survival horror：2007/11/23(金) 22:00:04

　トラックを襲った突然の大地震はハンドルの自由を奪い
　結果、バランスを失って派手に横転した。

　運転席はぺしゃんこ。ドライバーが生きている筈が無い。無事であったのは―――
　あってはならないもの、外に出てはならないものであった。
　電流が流れなくなった鉄格子をこじ開け、横転した際にできた隙間を広げ、
　そして災厄をこの都市にばら撒こうとしているのだ。

　ボテリ、とそれは隙間から落ちた。
　人の形をしているが人ではない。ボロボロの衣服、頑丈な手械
　足に繋がれた鉄の鎖、そして背中に生えている触手―――その姿は
　化物以外の形容のしようが無い。彼女は紛う事無き化物なのだ。

　――――マ―マ―――ド―――コ？

　責め苦を受けた罪人が発するような声を出しながら立ち上がる。
　彼女は白衣の人間達によって数多の毒をのまされ
　人間らしき知能は全て失ってしまった。
　残ったのは母を想う気持ちとそれを実行する歪んだ思考のみ。

　―――――咆哮。

　彼女は狂った衝動に突き動かされて歩き始めた。
　お母さんがいない、捜さなきゃ。その少女として当然の思考が
　猟奇的行動へ走らせる原動力となっているのだ。

　目の前に見える巨大な建物。
　もしかしたらいるかもしれないという淡い期待を乗せて
　彼女は動かなくなった自動ドアを突き破った。そして―――

70 名前：黒いアリス ◆ALICEsQkXc ：2007/11/23(金) 22:01:11

　―――こんばんは、アリス。
　　ついに、あなたの物語が始まろうとしているわ。
　去年とは、また違うお話。
　去年より、もっと病んだお話。
　　私たちは永遠に遊び続けるの……。

　この国では、あなたがアリス。
　私がアリス。
　誰もがアリス。
　手垢にまみれて黒ずんだお洋服で、手垢にまみれた物語を奏でるの。
　あなたの使い古されたお話が、アリスとアリスを繋げてゆく。

　いちばん狂ったアリスは誰かしら？
　　いちばん強いアリスは誰かしら？
　いちばんセコいアリスは？　いちばん情けないアリスは？
　　いっちばん弱いアリスも識りたいわ！
　いちばん笑えるアリスは、きっとあの子ね。
　いちばん涙を誘うアリスは……あの子かしら？
　　いちばん淫乱なアリスは―――私？

　もっと、もっと、もっと！
　　もっと多くのアリスを識りたいわ。もっと多くのアリスを見たいわ。

　だから、私はここに宣言します。
　　十一月の狂った夜に、森からアリスへ。
　アリスからアリスへ。
　　吸血大殲が提供する、沈みきった黄金の午後！

　さあ、森祭の開催です！

71 名前：黒いアリス ◆ALICEsQkXc ：2007/11/23(金) 22:01:54

DIO vs JEANNE ―The forth part of king Henry VI―

>>63>>64>>65




　パーティは続く。
　パーティは続く。

　帽子屋はリドルに乗り気。溺れるヤマネを挟んで、三月ウサギ（アリス）の
左隣の椅子に座る。空席が目立つテーブルで、詰めに詰め寄ってぎゅうぎゅう
に三人は座る。
　こうして正規のゲストは揃った。テーブルは広大。椅子はまだ何十脚も空い
ているにも関わらず、お茶会はもう誰も招かない。誰も受け入れない。
　リドルの始まり。だけど、アリスはちょっぴり不満そう。頬をふくらまして
背もたれによりかかる。
　帽子屋は結局、彼女が差し出した軍帽を受け取らなかった。行き場を無くし
た真っ黒な気ちがい帽子を、手元でくるくると弄ぶ。くるくる、くるくる。
　被りたかった。軍帽はアリスのお気に入り。斜に被って片目を隠し、顎をつ
んと持ち上げてこの軍帽を堪能したかった。―――でも、今のアリスは三月ウ
サギだから、帽子屋の帽子は被れない。被るのはルール違反。

　アリスは左隣をちらりと一瞥。照明の当たり具合で、帽子屋（ブランドー）
の表情は影に隠れている。
　いまの帽子屋は紳士的で女性の扱いも分かっていた。教養もある。ゲストと
しては、満足すべき上客だ。だけど、アリスの不機嫌は収まらない。
　原因は単純。
　このゲストはリドルには応じても、彼女を見てはいないから。
　私を見ようとしないだなんて。そんなのは許されないことだわ。
　アリスは自分が三月ウサギだということも忘れて憤慨。アリスがアリスのま
まなら不思議の国の中心には常に彼女がいるけれど、今のアリスはアリスでは
ない。だから、帽子屋が三月ウサギだけを見てくれなくても、何の問題もない
はずなのに。

「あーあ、退屈だわ」

　椅子をがたがたと揺らす。三月ウサギだからお行儀が悪くても構わない。

「せっきゃくキャストが揃ったのに、あなたもマッドティーパーティはお気に
召さないみたいだし。……そうね、何か別の遊びをしましょう」
　
　とっておきの隠し球が一つあった。
　帽子屋もそれを期待して席に着いている。結局、この男は気ちがいお茶会の
ゲストではなかった。―――こっちのリドルの正賓だったのだ。
　アリスはテーブルに頬杖をつき、悪戯っぽい笑みで帽子屋を牽制。

「��百年戦争〈La Guerre De Cent-Ans〉ごっこ�≠ﾈんてどうかしら？」

　このテーブルは今からオルレアン。アルマニャック派最後の砦。
　アリスは今から王太子さま。カナール・デュシェーヌ・シャルル七世。後の
勝利王。フランス最後の貴族。神に選定された王。

「あなたはトールボットよ！」

　帽子屋（ブランドー）は忌々しいトールボット！
　英国軍最高指揮官。オルレアンを取り囲む侵略者の尖兵。勇猛にして獰猛。
将軍自ら最前線に突撃して、フランスの兵士をばっさばっさと斬り倒す。
　戦場を猛る風車のような猛将／名将。


　そして四人目のゲスト。
　招かれざる来訪者のキャストが、森の意思によって明らかにされる。
　アリスは空席のはずの主賓席―――テーブルの端っこ、一番大きくて一番
豪奢な肱かけ椅子を指差した。


「アリス。あなたが乙女をやりなさい。ジャンヌがあなたの役よ」

72 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/23(金) 22:02:55

DIO vs JEANNE ―The forth part of king Henry VI―

>>71

　アリスが示す指の先。果たして、空席だったはずの肱かけ椅子には四人目の
ゲストがいた。
　いつからここにいたのか。いつの間にティーパーティに招かれたのか。誰に
も分からない。誰も彼女が席に着くのを見てはいない。―――だって、彼女は
正式な招待客ではなかったから。
　最後のキャスト。アリスのキャスト。救国という名のラビリンスに迷った少
女が、王太子（アリス）の求めに応じてかんばせを上げる。

　痩せ身に残る丸い輪郭―――少女の気風。あまりに幼い。アリスと同年代か
せいぜい一個か二個しか歳が違わない。
　着込んだ黒甲冑は無骨なシルエットをテーブルに映すけれど、彼女が着ると
戦闘装束〈グラスウェア〉にはとても見えない。さりとて仮装というわけでも
なく、それが彼女にもっとも似合うドレスなのだとやがて知れる。
　光沢を吸い込み、あらゆる闇を肯定する暗黒色の甲冑は、まるで彼女の肌の
ようで、「少女と甲冑」という違和感は完全に殺されていた。

　くすんだ金髪を肩まで伸ばして、邪気のない青銀色の双眸が―――まずはア
リスを。次に帽子屋……トールボット将軍を見据えた。
　それから視線は落ちて、ソーサーに鎮座したティーカップへ。
　恐る恐るカップを唇に運んで、紅茶を一口含む。続いて髪の毛が逆立つので
はないかと思うくらいの驚きが、乙女の躯を満たした。
　目を丸くして一言。「……甘いわ」

「何をしているの、ジャンヌ！」
　娘を叱責する母の如き叫び。
「お茶会はもう終わったの。このテーブルはオルレアン。いまのあなたは、
アリスじゃなくてジャンヌ。さあ、フランスのために戦いなさい！」
　
「でも……」
　さらに一口啜る。まるで聖水を口にするように。
「これ、とっても甘いんです」

「あなたの注文通り、砂糖をたっぷり入れたんだから当然よ。―――ねえ、ジ
ャンヌ。彼を招く前にあんなに練習したのに、もう自分の役を忘れてしまった
の？　リドルはついに始まったわ。森は観劇を望んでいる。さあ！　さあ！」

「これが砂糖……」
　紅茶が聖水なら白亜の砂糖壺を聖杯か。身を乗り出してしげしげと眺める。
「まるで魔法の砂……王太子さまですら滅多に口にできなかったものを、こん
なにため込んでいるだなんて。オルレアンの物資は底をついていて、民は飢え
ている。今すぐ補給が必要なのじゃなかったの？」

73 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/23(金) 22:03:27

>>71>>72

　
「いい加減にしなさい、ジャンヌ。今は私が王太子よ。〈声〉は私を王座に導
き、フランスに勝利を与えよと仰ったのでしょう？　なら、あなたが為すべき
ことは一つのはずよ」

「あなたが王太子さま？」　
　乙女はようやく顔を上げて、アリスを見た。
「ああ、ならばお願いがあるのです」
　椅子から降りると、唐突に跪いた。
「オルレアンの民は長い籠城生活でみな飢えています。どうか、このような贅
沢を独占せず、民にも公平なる分配を。そうすれば、あなたさまの臣民を愛す
る心は街に知れ渡り、オルレアンはシャルル王太子さまの名の下、一丸となっ
て英国と戦いましょう」

「席に戻りなさい、ジャンヌ！」
「いいえ、戻れません。私の使命はフランスの勝利。そのフランスを作るのは
人なのです」
「これはリドルよ。ルールに従って」
「民あってこそのルールです！」

　負けたのはアリスのほうだった。
「ああ、もう、分かったわ。民に配ればいいのね？　あなたって本当に強情」
　言うなり、バカラクリスタルのハンドベルを鳴らす。

　清明な響き音に応じて、森の民がオルレアンに集う。木の根の穴からウサギ
が群を率いて顔を出し、天井の茂葉からカラスが羽ばたき舞い降りる。
「三人と一人のゲスト」というルールは破壊され、テーブルは今や騒乱の夜会
場。二匹のウサギが同時に砂糖壺に首を突っ込み、抜け出せなくなってもがい
ている。カラスはディッシュやソーサーを嘴に挟んでは、空から落として遊び
始めた。紅茶漬けのネザーランド。蜂蜜まみれのレイヴン。
　ウサギとカラスが織り成す狂騒にアリスはうんざり顔。
　民はいつだって愚かだ。
　だが、乙女はアリスの膝に縋りついて感謝した。

「ありがとうございます！　ありがとうございます！」

74 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/23(金) 22:04:40

>>71>>72>>73


　このままだとアリスに抱きついて、キスの雨を降らしかねない。

「満足かしら？」
　必死に引き離す。
「だったらいい加減、席に戻りなさい。あなたは森が書いた脚本を無視してい
るのよ。民に砂糖を舐めさせてもオルレアンは救えない。諸悪の根源、トール
ボット将軍を斃すことだけが救国に繋がるんだから」

「……トールボット？」
　その名を聞いた途端、乙女の瞳に炎が宿った。
　底の見えない、闇色の炎。
「トールボット将軍―――私を娼婦呼ばわりする恥知らずな男。ケモノのよう
な英国人をノルマンディに上陸させた悪魔の申し子。戦場は男の聖地だなんて
馬鹿みたいな考えに縛られた敗残兵。一度だって私との一騎打ちに勝ったこと
はないのに。傲慢で……思い上がった老人。―――フランスの敵」

　乙女の黒甲冑から瘴気がみなぎり始めた。高純度の魔力がオルレアンに忍び
寄る。乙女の魔性に触れ、騒乱に熱中していた民は悉く悶死した。ウサギは喀
血し、カラスは地上へ墜落。斯くして死都オルレアンは完成する。

「アリス……聞いて、ひどいのよ。彼等は私をラ・ピュセル〈乙女〉ではなく、
ラ・メフレイ〈こわがらせる女〉と呼ぶの」
「まあ、それはひどいわ。あなたはこの上なく乙女なのに」ようやく舞台が回
り始めて、アリスも満足そうだ。「なら、お仕置きが必要じゃないかしら？」

「いいえ、裁きの行方は神にお任せします。私は私の義務を」

　腰に佩いたシャルル・マルテルの剣を、鞘ごとテーブルに投げ出す。震動で
ウサギの亡骸が転げ落ちた。乙女は目もくれない。彼女の清明なる闇の瞳は、
トールボット将軍だけを見つめている。

「……トールボット、ここに散らかる汚い死骸〈英国兵〉を引き取って、故郷
に帰りなさい。フランスにあなた達の居場所はありません。フランスに王は二
人もいりません。オルレアンは王太子さまの領地です」

　一言一言が呪詛のようだった。彼女が唇を動かすために、オルレアンは地獄
へ近付いてゆく。

「―――拒めば乙女と戦争よ。あなたが今まで殺したフランス兵の六倍の英国
兵を、オルレアンの城壁に積み上げてあげるわ」

　
　二人のやりとりを眺めて、アリスはくすくすと忍び笑い。
　


　
　さあ、リドルが始まるわ。



【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）前庭】

75 名前：エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ ◆SV001MsVcs ：2007/11/23(金) 22:08:34

（エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ　森祭導入）


「緊急事態だ。
　先日、君達が派遣されたフランス、ルーアンの郊外都市が突如として発生した森に覆われ異界化しつつある。
　どうやら以前の情報はガセではなく一部が誤っていたということらしい。実験計画自体は事実だったということだ。
　異界となった都市に突入したフランスの部隊は『化物に襲われている』という通信を最後に連絡が途絶。
　都市は今や地獄の釜と化していると思われる。一般的な軍隊ではこの事態を解決することは叶うまい。
　やむを得ずフランスは、ヴァチカンや英国ヘルシング機関から協力を受け入れると決定した。
　他にもフリーのエージェントを雇い入れて自国の戦力として投入するつもりらしい。
　我々にも協力の要請が来ている。先日の作戦でこの事態を未然に防げなかった事への糾弾もセットでだ。
　君達には現地へ急行、異界化の原因を取り除き速やかに事態を収拾してもらいたい。
　ただちに出撃準備に入れ」


　かくして。
　命令を受けたアタシとフィオは都市上空に居た。

「異界へのパラシュート降下は危険が伴うためスラグフライヤーで突入とはね」

　ＶＴＯＬ戦闘機、スラグフライヤーのコクピットに身体を押し込んで。

「いつもの降下だって危険ですよねえ」

　無線機越しに返るフィオの声に「違いない」と返して機体を傾け、改めて地上を見る。

「これはまた……」

　生きている森、あるいは侵食する森だろうか。
　パンに生えたアオカビのように森が街を侵していた。
　方々で火の手が上がり、緑に赤のアクセントを加えている。

「生存者なしが確定してれば空爆するところですね」

「だね」

　そしてアタシらはこれからそこへ降りるわけだ。

「出来る限り施設に近くて、機体を置いても安全そうなところは……」

「なさそうですよそんなところ」

「見つけないことには降りられない」

「降りられないから帰りましょう、ってわけにも行きませんかぁ」

「行かないねえ」

　軽口交じりに着陸点を探す。
　が、当然のように見つからない。くそ。

「もう少し高度落として」

　背後からいきなり衝撃が襲ってきた。
　同時にアラートが鳴り出す。

「え、エリちゃん！　機体後方から火が出てます！」

　身体を捻って後ろを見る。
　キャノピーの外には火が出ていた。

「くそっ、攻撃！？」

「わかりません、いきなり火が……きゃあっ！」

「フィオ！？」

「こ、こっちもやられました！　高度が……落ちる！」

「機体放棄！　武器持って脱出！」

「りょ、了解！　エリちゃんも早く！」



　――こうしてアタシ達は異界に降り立った。

「武器装備が無事なのがせめてもの救いか」

「ランチバッグも無事です」

　食うのか、この状況で。


【現在地：Ｆ地区　病院屋上】

76 名前：Enter the survival horror：2007/11/23(金) 22:11:44

（リサ・トレヴァー　森祭導入その２）

ある製薬会社員の日記

　　　　　　　　まったく、癇に障る声を出しやがる。

　　　　　　　　先月アメリカの何とか山中で発見された化物を
　　　　　　　　今、俺たちが運んでいる。
　　　　　　　　名前はリサちゃん。しかし可愛らしいのは名前だけときたもんだ。

　　　　　　　　声、姿、行動、全てが気色悪い。
　　　　　　　　時々なんか喋ったかと思ったら「ママ」としかいわねえ。
　　　　　　　　ほんと"雨傘"の連中も酷な事しやがるねえ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　両手両足に枷を嵌めているおかげでジャラジャラと
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　鎖が地面を擦る音を出す。ああ、いやだ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　俺の神経まで擦り減らすつもりかよ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　高圧電流の檻に鉄の鎖なんて大袈裟とも思える
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　囲いなんだが、こいつに限ってそうとも言えないらしい。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　なんでも捕獲に向かった実行隊員5人を撲殺―――しかも
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　頭蓋骨砕かれて即死―――したとのコトだ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　それが本当ならこれでも不安なくらいだ。寝ていたら頭砕かれ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ましたなんて洒落にならない。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　まあいい。こいつをフランスの研究所に届けたら
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　この気色の悪い声ともおさらばだ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　せっかくフランスにまで飛んできたんだ。今夜は
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　美味いワインでも飲むとするか。

『T』に関しての注意事項


　　　　　　　　　１．『T』の概要

　　　　　　　　　『T』は非常に強い感染力を持っており。
　　　　　　　　　サンプルによるウィルスの空気拡散の心配は無くも、
　　　　　　　　　血液等の接触により感染する可能性が高い。
　　　　　　　　　引っ掻かれる、噛まれる等して外傷を負わぬ様注意すること。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２．外傷を負った場合の対処法

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　速やかにワクチンの摂取を行うこと
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　不可能であれば感染者の頭部の破壊し、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　それ以上の感染の拡大を防ぐこと。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　３．サンプルの脱走に関する対処法

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　速やかに本社に連絡後、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　全力をもってサンプルを破壊に勤めること。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　４．サンプルを破壊できない場合
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　３の下線部を読み直すこと。

【F地区　横転したトラックの中で】

77 名前：マルチアーノ12姉妹 ◆M12sisrIV6 ：2007/11/23(金) 22:15:07

　Pro-logue 01.
　
「――――です、はい。
　目標地点上空に到着しましたわ、お母様」
　
　
　高度十万メートル、機体上昇限度に達しながら幾重にも改装を加えられたMC-130は其の
漆黒の機体を滑らせていた。
　成層圏と対流圏との界面、大気が絶えず循環と移動を繰り返す擾乱の最中、換装された
四基のターボファンエンジンは『コンバット・タロン』の名の通り、音もなく目標へと食
い込む『鉤爪』としての役割を十全に発揮していた。
　フランス北部、ノルマンディー地方。
　英仏海峡に程近いこの地に突如として現れた巨大な特殊作戦用軍事輸送機は、本来受け
るべき如何なる妨害とも無縁であった。
　RWR、IRCM、ECM、ECCM等の電子戦装備を城壁となす空中要塞とも呼び得るこの機体は、
しかしRCSの考慮されていないその形状故に、レーダーに捕捉される確率はそれほど低くは
ない。
　レドームこそ追加されていないものの、『鳩（Dove）』と渾名される全長30m・全幅40m余のずん
ぐりとした機体は、電波吸収素材による外面構造を採用したとしてもその電波反射率まで
は到底カバーし切れない。
　この距離ならば尚のこと、領空内に侵入した不審機に対して目視確認すら出来ないとは
到底考えがたい。
　地上の混乱を理由にするのは簡単だろう。
　事実それを理由に、この領空侵犯機は情報伝達経路の半ばで黙殺された。
　
　この機体の所属組織は、只単に『ギルド』と呼ばれた。
　『ギルド』、又は『クリミナル・ギルド』――――最も直截な表現をするならば、所謂
『犯罪者組織』。
　その麓は窃盗、街娼から都市の隅々にまで拡がり、その嶺は国家元首の命運を左右にす
る、人の欲望を糧に肥え太る一個の巨大な獣である。
　その獣の縄張りを脅かす存在、『イノヴェルチ』。
　如何にも、不死とはあらゆる欲望の中に於いても曰く抗しがたい魔性を秘めている。
　吸血鬼信奉者集団、『イノヴェルチ』は埃に塗れた魔性を掘り起こし、新たな意匠を以
て彼等の前に示して見せた。
　燦月製薬、そしてV酵素。
　その効果の程は如何計りか、ルーアン郊外の一地方都市がアメリカ流の発展を見せてい
ることからも窺い知れよう。
　その地方都市も、今や森に没しつつある。
　『ギルド』最高幹部会は、異変を受けて一つの決定を下した。
　「燦月製薬一等研究員・諸井霧江の確保、もしくは殺害。及び当異変に於ける各要因究
明に必要な検体確保」
　
　責任者として指名されたのはマダム・マルチアーノ、彼女は『12姉妹』の投入を決定し
た。
　
　
　「分かりました。良い知らせを期待します」
　
　お母様、と呼ばれた『声』が少女の耳に響く。
　同時にMC-130コンバット・タロン改のカーゴハッチが開く。
　摂氏零下70度の外気は暴風となってカーゴベイ内部を荒れ狂い、差し込む光はその中に
ある影を浮かび上がらせた。
　可憐な衣裳に身を包んだ、12人の少女たち。
　HALOに必要な酸素補給器も防寒具も、パラシュートすらも少女たちにとっては武骨すぎ
るだろう。
　それを証明する様に、12人の少女らはそのままの姿で高度十万メートルの空へ、翔けた。
　
　
　『マルチアーノ12姉妹』、別名『死の天使』。
　
　

78 名前：マルチアーノ12姉妹 ◆M12sisrIV6 ：2007/11/23(金) 22:15:52

>>77

　在仏米海兵隊一個小隊が『森』へと投入されたのは、現時刻より丁度一時間前のこと。
　定時報告（ネガティブ・リポート）の為に無線手（RO）と小隊長以外は全周警戒態勢にあった。
　被服こそACU、MARPAT、タンカラーのカヴァーオールと混在ではあるが皆一様にソフトアー
マーの上からプレートキャリア、チェストリグを装備し、ライフルのヒートガードに設置
したピカティニーレールにはフラッシュライトが取り付けられている。
　都市に急激に侵蝕しつつある『森』内部での作戦行動に於いては、通常のジャングルオ
ペレーション同様の装備では対応し切れない。
　建造物内部での近接距離からの銃撃に備えての折衷案とも言える配慮である。
　作戦初期段階での「研究所内から有毒化学物質が洩れ出している」という情報からガス
マスク装備が義務付けられたが、その恐れも杞憂と化した今はMOLLEベスト背面のバッグに
戻している者や首から提げたままで専用ポーチを弾倉入れ代わりにしている者等、様々で
あった。
　此処まで、遭遇者はなし。
　裂けたアスファルトからは蛸の脚の様な根が顔を出し、腕程もある枝はコンクリートの
壁面を押し遣りながら縦横に伸びている。
　“森触”直後の地震の所為か、未だ崩落の続く建造物群を避けながらの進行は困難を極
めた。
　
　「CPとの連絡は？」
　
　苛立ちを抑え切れぬ声で小隊指揮官が詰め寄るが、無線通信機から吐き出されるのは白
色雑音ばかりで、如何に三度目の指揮所へのコールに応じさせるべきか悪戦苦闘する無線
手を尻目に今後の行動について考え始めたとき。
　銃声が一つ、続けて二つ。
　小隊長と無線手、二人ながらに倒れた時点で即応したのは副官の小隊付二等軍曹であっ
た。
　
　「SAWガナー！　二時の方向距離500、樹の上だ！」
　
　その声に押される様にMINIMI M249の、やや遅れてFN-MAG M240Gの銃声が断続的に響く最
中、二等軍曹は忌々しげに呟いた。
　
　「今の銃声は……ああ、クソ！　今の銃声を聞いたか？
　M14だ。いいか、M（・）1（・）4（・）だ（・）っ（・）た（・）ん（・）だ（・）！」
　

79 名前：マルチアーノ12姉妹 ◆M12sisrIV6 ：2007/11/23(金) 22:16:31

>>78

　反撃もないと判断し射撃中止を命じた頃になって、二等軍曹は各分隊長を招集した。
　衛生班員（ドク）の報告に因れば死者一名と一台……小隊長と通信機。
　無線手は負傷しているが無事、逆に言うならば負傷兵を抱えたままで行動しなければな
らない。
　
　「……見たか？」
　
　何を、とは言わない。
　その質問には、一番年嵩の三等軍曹が答えた。
　
　「ああ、見たとも。
　うちの選抜狙撃手は頭抱えてたさ……娘っ子だったんだよ、14,5かそこらの。
　まるで初聖体のときみたいな髪飾りまで着けた格好で、バカ長いライフル抱えたまま枝
から落ちてったとも。
　SKS（シモノフ）じゃねえ、俺が、海兵隊員（マリンコ）が見間違えるものか。
　ご丁寧にM6銃剣着けたM14だったんだ」
　
　大きく息を吐き、三等軍曹は彼なりの讃辞を送った。
　
　「あの距離からスコープ無しだ。俺が大佐になりゃあの娘っ子には俺の代わりに新兵訓
　練でも任せたいもんだな……クソったれ！」
　
　瞑目したまま耳を傾けていた二等軍曹は、そこで漸く口を開いた。
　報告を聞くときの、渋面を貼り付けた侭で。
　
　「……分かった。撤退しよう。
　怪我人一人抱えたままで、訳の分からない相手にこれ以上の作戦続行は危険だ。
　見ての通りの通信機無し、トリプルキャノピーで信号弾も届かん。
　各分隊はLZまで蛙跳びだ。
　いいな、相手が赤い頭巾被って狼に追われてようが油断するなと言っておけ」
　
　そう告げた、まさにその時。
　
　「はぁーい、皆さまご機嫌いかが？」
　
　少女が一人、散歩の最中にご近所に挨拶して回る程度の気軽さで声を掛けてきた。
　蜂蜜色の髪は肩に掛かり、葡萄酒色のショールを肩に結んだ黒いドレス。
　奇妙な違和感。
　
　「でも残念、もうお帰りになるのかしら。
　折角ランチにご招待さしあげるところでしたのに」
　
　違和感の正体に気付くまで、さほども掛からなかった。
　コンベンショナルなライフル形状を想像していたからだ。
　例えば、樹脂製のストック。
　全長の短いブルパップ方式。
　銃身上方にセットされたマガジン。
　
　「ベルギー式のランチで良ければ、ですけれど。
　さあ……召し上がれ」
　
　両手にはFN P-90、半透明の樹脂製マガジンから覗く50発の銃弾。
　銃口には明確な死の予兆。
　
　
　

80 名前：＜呪われた公子＞ゲイナー ◆GAinErMg8k ：2007/11/23(金) 22:17:07

>>68

『死神（デス）ゼアド vs ＜呪われし公子ゲイナー＞』
　
　
「面白いことを言う。どうやらそなたは、引いてくれなどという言葉とは裏腹
に、余と一戦交えたがっているようだ」
　
　よく響く、うわべは楽しんでいるような声。だがその下には、荒涼とした虚
無にあふれていた。
　
「そなたはこうなることを理解していたのだな。あの剣がだれの物なのかをか
ねてから知っていたのだな。ならば何故――――とは聞くまい。いまとなって
は明白なことよ。
　そなたは世界の破滅を求めるか。ならば＜法＞にこそ助力すべきであったな。
混沌の求めるものは破滅ではなく、無限に続く絶え間ない変化よ！
　無を、荒涼とした砂漠のような世界を求めるのならば、＜法＞にこそ期待す
べきであったのだ。」
　
　だらりと下げていた彼の剣の切っ先が、わずかに上を向いた。
　
「しかし、マシャバク神ともうしたか！なんと懐かしい名前であることよ！！
あの混沌の神は余が仕えた数多の主たちの中では比較的ましなほうであった。
キシオムバーグ女王陛下には及ぶべくも無いがな」
　
　そういって彼は被面具のうちよりくぐもった笑い声を響かせる。
　
「貴公も多元宇宙の秘密に通じているようだな、え？この世界の魔術師として
は、珍しいことだ。
　なにせこのあたりの次元界においては、＜法＞も＜混沌＞も弱い力しか持た
ぬのだからな。彼らを知るものがほとんど無いゆえ、及ぼせる力もほとんど無
いのだ。」
　
　ゆっくりと彼は禿頭（とくとう）の男へ向けて歩き出す。
　
「たしかにそなたは博識だ。だがそれゆえに勘違いをしているようだな。
　そなたの言うとおり余は混沌の僕だが、好き好んでそうしているわけではな
いし、心からの忠誠を誓っているわけでも無い。
　
　言いながら彼は無造作に間合いをつめていく。
　
「人や魔物だけではなく、法や混沌の神々さえも、そして＜天秤＞ですら、余
の遊戯（ゲーム）の相手に過ぎぬ。
　あらゆる多元宇宙において、余が愛しき＜天秤＞を押しのけ唯一の勝利者と
なるか、しからずんば真の死を得るまでの、な。
　
　たしかに上方世界の神々と、そして＜天秤＞と比べれば余の力は羽虫ほどに
小さなものだ。
　策を弄し、小細工を使い、ありとあらゆる手段を用いねば、謀ることすら叶
いはせぬ。
　だが、だからこそ挑むだけの価値があるというものよ。
　
　そして、先にも言ったが、この次元界においてわが主、エントロピーの神々
の力は非常に弱い。余に命令を下すことが叶わぬほどに、だ。
　それに引き換えこの世界に満ちた神秘の力は非常に多く、まばゆいまでに強い。
　
　ならばなぜ地獄の大公どもに従うことがあろうか！
　この世界の神秘を余の手中に収め、今度こそ天秤を放逐し、余こそがこの多
元世界を手に収めてみせようぞ！！
　
　そしてそのためには余に支配できぬ力など不要なのだ。制御できぬ力など己
に滅びをもたらす以外の何の役にもたたぬのだ。不確定要素は排除せねばならぬ。
　
　そして、堕ちた聖女と敵対せぬ以上、そなたももはや不確定要素に過ぎぬのだ」
　
　言葉と共に彼の右足が強く床を蹴った。

　人間が仕掛けるにはまだ遠すぎる間合い。だが彼は人ではない、無限寿命者（インモータル）、
すなわち半神とすら言っていい人間以上の存在だった。
　
　ゲイナーが疾走（はし）る。弾丸のような勢いで、一息で間合いをつめた。
　流れるような動作で剣を掲げ、振り下ろす。不定色の剣が袈裟の軌跡を描いて流れ落ちる。
　
　こうして、色さだまらぬ大剣が漆黒の僧衣へと振り下ろされていった。
　
　
【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）地下ホール】

81 名前：マルチアーノ12姉妹 ◆M12sisrIV6 ：2007/11/23(金) 22:17:29

>>79

　
　白い服に身を包んだ少女が石畳の大地に掌を置くと、仮想ウィンドウが２つ、３つと浮
かび上がる。
　仄明かりに照らされた眼鏡の奥、ウィンドウ内に表示されるデータに視線を走らせる度
に肩に掛かる巻き毛が小さく揺れる。
　
　「……フェブ、見付かった？」
　
　そう声を掛けるのは、黒髪に黒のケープ、黒のスカート……まるで喪服を思わせる衣裳
に、不釣り合いな鍍金の施された拳銃を手にした少女の姿。
　フェブ、と呼ばれた少女はかぶりを振って答えた。
　
　「エイプリル……駄目、キリエ・モロイのパターンはロスト。見付からないわ。
　もう一つ、強力で不安定な魔力反応があるけど、これはよく解らない。
　周辺の魔力干渉が強すぎて、特定できないの。
　それと……これ」
　
　ウィンドウ上の光点の一つを指し示すとサブウィンドウが開き、パターンが表示される。
　ただの数字と図形の羅列にしか見えないそれを示しながら、声のトーンを落とした。
　
　「パターンを照会してみたんだけど……99％の確率でグルマルキン・フォン・シュティー
ベルSS大佐。
　トゥーレ協会所属の魔術師にしてミレニアムの大物ね」
　
　「ミレニアムの……魔術師……」
　
　エイプリルは顎に手を当てて柳眉を顰めた。
　燦月製薬――イノヴェルチとミレニアム、両者の関係は今更言うまでもない。
　何らかの魔術実験の失敗による暴走の結果がこの“森触”だとするなら、グルマルキン
と正体不明の魔力反応、両者に大きく関わりのあることだと断定出来る。
　そして、魔術的素養のない人間が暴走した魔力の奔流に曝されては無事で済む筈もない。
　諸井霧江は恐らく、もう。
　
　「メイ、そっちは？」
　
　呼ばれた銀髪の少女が、肩に武骨なショットガン　SPAS-12を担いだまま答える。
　
　「ああ、こっちは粗（・）方（・）終（・）わ（・）っ（・）た（・）よ。
　チビたちはまだ遊びたりないってさ」
　
　肌の露わな胸元を更に強調するかの様に、胸を反らせ背後を指さすと快活な笑みを浮か
べた。
　そう、と釣られて安堵混じりの表情を僅かに崩し、エイプリルは手にしていた侭の拳銃
を漸く懐に仕舞い込む。
　何れにしても、お母様の望まれるショータイムには出し物がまだ足りない。
　メインステージへと赴くまでの、ほんの座興に過ぎないのだから。
　メインステージ――――爆“森”地（グラウンド・ゼロ）、燦月製薬研究棟へ。
　
　

82 名前：ＤＩＯ ◆kYsrWORLDo ：2007/11/23(金) 22:20:47

　
（ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓＤＩＯ）
　
>>71 >>72 >>73 >>74
　　
　　
　　
　ジャンヌ・ダルク、１４１２年、ルーアンで農家
　の娘として、この世に生を受ける。１４２５年に
　「声」を聞き、フランスを救う為に旅立つ……
　　
　当時のフランス北部はイギリスの支配下にあった。
　加えて、王の座もイギリス側にあり、フランスの
　命運はは風前の灯火と言っても良かった。
　　
　その絶望的状況ををジャンヌは僅か６年で覆した。
　領土を奪回し、王の座も再びフランスのものへ。
　まさしく、奇跡の為せる業。後世、彼女は聖処女
　として崇められ、様々な芸術、文芸、観劇、絵画、
　彫刻のモチーフとなり、ジャンヌの気高き聖なる
　魂を形にしようと多くの者が腕を振るった………
　　
　　
　　
　「気高き」「聖なる」か、ふふふふ――――――
　どうにも目の前の君はそれと対極に位置するよう
　な気がしてならないな。そのドス黒い空気は寧ろ
　このわたしに近い。何とも面白い事になっている
　じゃあないかッ！
　　
　　
　　
　　

「……トールボット、ここに散らかる汚い死骸〈英国兵〉を引き取って、故郷
に帰りなさい。フランスにあなた達の居場所はありません。フランスに王は二
人もいりません。オルレアンは王太子さまの領地です」

　一言一言に呪詛のようだった。彼女が唇を動かすために、オルレアンは地獄
へ近付いてゆく。

「―――拒めば乙女と戦争よ。あなたジャンヌ、古今東西戦争において、背後からの奇襲に
兵を、オルレアンの城壁に積み上げてより、勝敗が決した例がどれだけあるか知ってるか？
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　どんな強固な大軍も背後から攻撃には脆く、背後
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　を突かれた事で破れ、歴史が変わった例は数多い。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　……今、君はわたしにこの様に背後を取られている。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　フランスは奮闘虚しく滅びてしまったという訳だ。
　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さて、ジャンヌ、どうする？　大人しく地に跪い
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　て、降伏をするか？　それとも、痩せ衰えて乳の
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　一滴も出なくなった山羊の様な疲労困憊のフラン
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　スにはまだ見せてくれるものはあるのかい？
　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　君のその纏う邪悪な雰囲気はわたしは中々に気に
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　入ったよ、降伏するというのなら、受け入れてやろう。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　何、恐れる事は無い、このＤＩＯに忠誠を誓えばいい、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　それだけの簡単な話だよ………
　
　
　　
（現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）前庭）
　

83 名前：ヴィルマ・ファキーリ：2007/11/23(金) 22:21:33

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
導入
>>77>>78>>79>>81
　
　
　廊下の突き当りを右に曲がると、私はもう何度目か判らない舌打ちをした。
　ここも駄目だ。観葉植物にしてはいささか繁り過ぎた樹木の絡まりが、それ以上の通行
を強固に阻んでいる。ろくに先も見通せない。
　濃緑の葉と黒ずんだ枝が密生する様は、さながら魔女の蓬髪のようだった。
　
　黒い厚手のコートや毛皮の帽子を手で払うと、細かな葉や木切れがぱらぱらと落ちる。
　金髪からもだ。
　空気が悪い。悪いというより、明らかに毒素が混じっている。
　この辺りは大分薄いが、先ほど通ったフロアは酷かった。人間の研究員はおろか、檻の
中のキメラヴァンプや食屍鬼までもが、四肢を捻らせて狂い死んでいた。
　
　
　
　私が属する吸血鬼結社ラ・ソシエテ――最近ではイノヴェルチという名で通っているらしい
――は、半世紀も前からナチスとは繋がりが深い。
　今回、トゥーレ協会の大幹部たるグルマルキン・フォン・シュティーベルが画策する実験に
場所から何からを提供したのもその為だ。
　もっともそれを歓迎する者ばかりではない。
　私が上層部のある派閥から受けた指令は彼女の監視だった。何しろハーケンクロイツと
組んでひどい目に合ったのを忘れていない連中は、まだ大勢いるのだ。
　
　かくてアジアの黒社会で『青龍威姫』の二つ名で畏れられたこの私――ヴィルマ・ファキー
リは、フランスはルーアン近郊にあるここ、燦月製薬の研究所を訪れたという訳だ。
　
　
　――訳ではあるが、私はお世辞にも優秀な監視者とはいえなかった。
　雄々しき我が夫、同じ血族（コグニート）たるヴィクター・バイロンからの口添えもあったと
はいえ、しち面倒な任務など御免だった。件の実験が行われている最中も、私はあてがわ
れた自室に引き篭もって本物の血を使ったブラディ・マリーを啜っていた。
　
　そして、あの時を迎えたのだ。
　
　
　あの時――というのはつまり、この忌々しい樹木が施設中を席巻し始めた瞬間という事だ
が、魔術の素養のない（中世よりの闇に連なるヴァンパイアでありながら、と人間は笑うだろ
うか？）私にも、強烈な「気」が地下に出現したのは感じ取れた。
　いや、違うのかもしれない。恐ろしく突出した、何がしかの因果――業とでもいうのか。
　何かの映像が視えた気もするが、それは言葉やイメージに再構成する過程で元の容（かた
ち）を失ってしまう。
　
　
　兎に角、あのナチの雌獣はしくじったのだろう。その結果がこの異常事態だ。
　私はそれを手放しで喜べる立場にはいなかった。少なくとも、この森の枝葉の顎から抜け出
せるまでは。
　

84 名前：ヴィルマ・ファキーリ：2007/11/23(金) 22:22:23

>>83続き
　
　グルマルキンの生死は不明だが、恐らく只では済むまい。それに目下、彼女の監視どころの
騒ぎではない。
　
　大規模な災害（今回のようなケースは想定以上にしても）が発生した際、組織の関連施設に
駐在していた構成員には、幾つかの義務が課せられる。
　即ち特秘情報の保護、実験体の搬送、もしくは破棄だ。
　イノヴェルチが抱える闇の財産は、表はおろか裏の世界にすら出せない代物ばかりだ。当然
の処置といえる。
　
　私が左手に下げているジェラルミンの空ケースも、そういった義務の一環だった。
　
　
　私はきびすを返しかけ、止めた。静かに調息を整え、気配を探る。
　何かが近づいてくる。
　数は三つ。方向は今来た廊下の向こう、約二十メートル。息はしている。死びとではない。
　
　すぐに現れた。
　白衣姿の男達だ。「何て事だ（モン・デュー）！」と叫び、駆け寄ってくる。
　三人が三人ともひどい有り様だった。白衣は裂け、或いは汚れ、重傷ではなさそうだが血も
滲ませている。
　全員ここの研究員だ。一人は研究班の中でも中核に位置する人物だった。
　キリエ・モロイに次ぐナンバー2か、3か。どちらかはよく知らない。
　��我が神（モン・デュー）�≠ﾈどと唱えられるのなら、もう少しまともな稼業につけばいいのに
と思ったが、面倒なので口には出さなかった。
　
　
「一体全体」訊きたい事は山ほどあったが、取り敢えず私は一番の疑問をぶつけた。
　
「これはどういう類いの馬鹿騒ぎなんだ？」
「判らん。我々にも検討がつかんのだ。トゥーレ協会から提出された事前レポートからは、まさ
かこんな結果が出るなどとは……」
　
　そういう未知と不測の事態に対処してこそ研究者だろうに。
　顔をしかめる私へ、ナンバー2だか3だかの男はおもねるような表情になって言った。
　
「それよりマドモアゼル……」
「マダムだ」と訂正する。これでも人妻だ。
　
「失礼。マダム・ファキーリ、我々と同行してくれないか。外部との連絡もまるで取れんし、救助
も当てには出来ん。こうなっては自力で脱出するより他にない」
　
　
　――緊急時の遂行義務は、もう一つある。重要人物の確保だ。
　例えば例のキリエ・モロイのような優秀な科学者は、組織にとって重要な資源（リソース）とい
える。穴開きの避妊具並に使えないとはいえ、その点では目の前の男も同様だった。
　
　ため息をつきながら、私は手に下げていたケースを床に置く。
　運の悪い事だ。会わなければ知らぬ存ぜぬを決め込めたのに、余計な手間をかけさせる。
　
「いいだろう。安全な場所まで連れてってやる」
　
　頷くと、男はあからさまに安心した顔になる。
　私はその表情を永遠のものにした。腰に吊っていた中国剣を揮って。
　

85 名前：ヴィルマ・ファキーリ：2007/11/23(金) 22:23:01

>>84続き
　
　
　私が抜刀する動きも、抜かれた刃が男の首筋を走り抜ける軌跡も、男達には目視できなか
っただろう。彼らはただ、鈴の音にも似た納刀の響きを聞いただけだった。
　
　
　男の首に、真横一文字の紅い線が生じた。
　私は男の薄い毛髪を無造作に掴む。笑みを浮かべたままの頭部は私の手に残り、首から
下は血糊を撒き散らしながら崩れ落ちた。
　
「頭だけ、だがな。――脳内情報の吸い出しにはそれで十分だ」
　
　呟きながら、私は悲鳴を上げる残り二人へ襲い掛かった。この二人は要らない。
　立てた左の人差し指を、まず一人の耳孔へ根元まで突き込み、引き抜いた掌を手刀に変え
てもう片方の首筋を強打する。
　二人は口をオーの字にしたまま即死した。
　
　私はジェラルミンのケースを開け、男の生首を内部に収めた。ケースの内部は雑多な機器が
詰まってており、それらコードや点滴チューブを首の各所へ繋いでいく。
　これは緊急搬送用のケースだ。致命傷を負った場合でも、頭部さえ無事なら最長で四十八時
間、脳細胞を生前の状態で維持できる。
　先ほど通信機を漁った部屋に備えてあったので、つい持ち出したが、実際に使う羽目になる
とは思わなかった。
　
　
　処理を終えた私は立ち上がり、歩き出した。
　下げたケースの中にある分も含め、今しがた命を奪った三人がどんな人相だったかなど、脳
裏の全てから失せていた。
　

86 名前：エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ ◆SV001MsVcs ：2007/11/23(金) 22:27:47

　
　コッキングレバーを引き、慣れ親しんだヘキサゴンアームズ製のサブマシンガンに初弾を装填。

「アタシはショットガンで行く。フィオは？」

「エリちゃんがショットガンなら私はヘヴィーマシンガンで行きます」

　そう言ってフィオはアタシと同じサブマシンガンに初弾を装填した。
　サブマシンガンでありながらショットガンの弾、ヘヴィーマシンガンの弾を装填できるコイツはヘキサゴンアームズ社製M3685。
　対応弾倉であればあらゆる弾丸を発射しうる夢の銃だ。

「現在位置はＦ地区の……病院。まずはここから出るわよ」

「了解です」

「後ろのカバーお願い」

「前はお任せしました」

　屋上の扉を開き、中の闇に銃口を走らせる。
　……異常なし。

「行くわよ」

「はい」


【現在地：Ｆ地区　病院屋上から屋内へ】

87 名前：マルチアーノ12姉妹 ◆M12sisrIV6 ：2007/11/23(金) 22:28:33

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
>>83-85

　「たいくつー」
　「たいくつー」
　「つまんないー」
　「つまんないー」
　
　落ち葉踏む伴奏に不平不満の対位追唱も、今の状況ではむしろ願わしく思えた。
　これが『ゴルドベルグ』だったら最悪、私までも眠ってしまいかねない。
　12姉妹の一人、セプは背中に投げ掛けられる声もそのままに歩みを進めた。
　先刻から顔を見合わせながら口を尖らせているのは、三つ子の二人。
　悪戯者のオクトとお調子者のノヴェ。
　もう一人、ディッセはセプの背中に負われて小さな寝息を立てている。
　
　「さっきのは面白かったのにー」
　「面白かったのにー」
　
　何らかの実験体だったのだろう、数種の機械と生物の融合した小屋程ありそうな四足獣。
　確か最後は三つ子たちが重いコンソールか何かを頭の上に投げ落としたんだっけ……
　
　
　第一級魔導災害（オカルト・ハザード）地域に投入される、という事態は『ギルド』内部でも慎重な対応を選ば
ざるを得なかった。
　世界に点在する混沌積層都市群（ケイオス・シティ・コンプレックス）に於いてすらも『ギルド』の影響力は少なからざる物で
はあったが、其処から還元される情報以上の物は扱いかねる。
　最高幹部会の偽らざる本音ではあった。
　ならばその情報、通常弾薬等では賄い切れない霊的呪装に関する強化案を。
　拳銃弾にはFederal Cartridge Company社より呪装戦術隊に直接納入されるHallow Point
弾をモディファイし、その運用に汎用性を持たせたEJSP――Expanding Jacketed Silver
Point弾。
　ジャケット部にはチタンアノダイズド合金、コアには水銀封入祝別処理済硬化銀。
　ライフル用弾薬には同じくチタンアノダイズド合金でフルジャケットされた同じく祝別
処理済硬化銀弾芯。
　弾頭先端部から1/3にはエアホールを設け、標的内部に進入後タンブリング効果によって
体内を暴れ回りながら処理済銀弾芯を撒き散らす。
　それら弾薬を撃ち出す銃身のライフリング・グルーブには旧約聖書・詩篇23章が正確な
古ヘブル語で刻印された。
　ナイフは全て抗不死化処置。
　ジュライの揮う剣は、格別の物が選定された。
　埋忠明寿――天正遣欧使節団由来、ヴァチカン・サンタンジェロ城に収蔵され400年余、
聖天使の庇護の許にあった現存数少ない銘刀。
　
　その効果の程は施設内侵入の際に、存分に発揮された。
　

88 名前：マルチアーノ12姉妹 ◆M12sisrIV6 ：2007/11/23(金) 22:29:23

>>87
　
　「セプー、おなかすいたー」
　「おなかすいたー」
　「モモ缶たべたーい」
　「モモ缶ー」
　「「もっもかん、もっもかん♪」」
　
　大きく溜息を吐いて三つ子（正確に言えば「マイナス一人」が付くけれど）に向き直り、
セプは二人をたしなめる様に言った。
　
　「モモ缶って……そんなの持ってきてないでしょ？」
　
　その答に二人は顔を見合わせ、にんまりと笑った。
　そのいつも通りの、悪戯を思いついたときと同じ表情で、背負っていた動物の形をした
リュックの中をかき混ぜ始めた。
　オクトのはウサギ。
　ノヴェのはカエル。
　
　「「じゃーん！」」
　
　底の方から満を持して現れたのは桃の缶詰、15オンスのものが２つ、３つ、４つ……。
　ようやく諦めの表情でセプはもう一人の、三つ子と仲の良い姉妹に声を掛けようと白い
ヘッドドレスを着けた頭を巡らせた。
　
　「あなた達ったらもう。
　……ごめんなさいジューン、三つ子たちにモモ缶開けてあげて。
　両手が塞がってて……」
　
　だが、其処には口数は少ないが面倒見の良い、男装の少女の姿はない。
　
　「……ジューン？」
　
　
　ジューンが居たのは他の姉妹達からは少し離れたフロアだ。
　元は施設関係者のための休憩、もしくは宿泊に使われる部屋が幾室か併設されている。
　蝶番の壊れたドアの中からは、ひこばえの苗床と化したベッドや樹としての元の姿を取
り戻しつつあるテーブルが見える。
　
　このフロアに来たのには、無論理由がある。
　音を聞いたからだ。
　金と金とが触れ合う、微かな音。
　金属製の鞘にナイフを納めたときの吸い込まれる様な独特の音。
　鞘が刀身に触れる際に発する、僅かな摩れの耳障りもない美しい音だった。
　だから此処に来た。
　
　片目に掛かる前髪が仄かに靡く。
　人の、或いは人であるらしい者の気配を感じて床を踏み締めて駈けた。
　鉄の匂い。
　それは鮮血の匂い、不完全な死に損ないの流す物とは違う。
　この場に人間が居るのならば、それは問い質すのに然るべき相手だろう。
　……もっとも、今は生きてすらいないだろうが。
　
　一つ目の曲がり角、枝か根かすらも判別出来ぬ程びっしりと壁面を覆う樹の間から覗く
赤い非常灯が点滅を繰り返す廊下の右側。
　居た。
　黒いコートに毛皮の帽子（シャプカ）を着けた、若い女。
　見た目からは20代か……身に纏う雰囲気からは年齢は判然としない。
　手には四隅を補強材が被う簡素なジュラルミンのケースが一つ。
　装束からは不似合いすぎる。
　こうしたケースは白衣を羽織った男か、黒スーツの男（Man In Black）が持つべき代物だろう。
　ジューンは眼を細め、女に向かって手を差し出した。
　まるでホテルのドアボーイの様な慇懃さで。
　
　
　【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】

89 名前：ヴィルマ・ファキーリ：2007/11/23(金) 22:32:26

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
>>87>>88
　
　私はやや面食らっていた。
　それはそうだろう。一部の隙もない執事のような格好の少女が、一部の隙もない水際立った
仕種で、私に手を差し伸べてきたのだから。
　
　
　整った顔立ちの少女だった。中性的で、清流のように凛然としている。
　この施設の人間ではなかった。こんな関係者はいない。
　侵入者だ。
　
　差し出された手は、私のケースを持ってくれるという意趣らしい。
　親切な事だが、タキシード姿の追い剥ぎの好意など、中々受け取れたものではない。
　こちらからも近づいて行く。
　そして私は空いている方の手を出すと、男装の麗人の手を取った。
　
　
　――意外と柔らかいな。
　そう、感じた。
　
　
【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】
　

90 名前：『ＴＨＥＡＤ』ゼアド ◆rX9kn4Mz02 ：2007/11/23(金) 22:41:38

『死神（デス）ゼアド vs ＜呪われし公子ゲイナー＞』
　
>>80
　
嘲弄を断つ神速一閃。
雲耀にも届こうかという＜呪われた公子＞の太刀筋は、だが獲物である不確定要素―――
ゼアドを切り伏せること叶わなかった。
浅黄に輝き閃いたマジョーラの刃は衝突寸前、ゼアドの袖口より飛び出した刃と噛み合い、
今は鈍い蒼然の色を晒していたのである。
色彩を多彩に変える剣を押し留めていたのは、不自然なまでに単一色の湾曲した刃。
変容止まぬ刃金とはきわめて対照的に、そしてそれゆえ相克相対する不動の白。
　
「いやいや…残念です。やはり、こうなるのが定めという事ですか」　
　
世に通る達人剣聖すら屠り去る。
その神速の剣技を、右袖より滑らせた怪刃で易々と受け。
――――返したのは常と変わらぬ、反吐が出るまでに飄々とした物言いであった。
薄い笑みを絶やさず、＜呪われた公子＞より溢れ出る野心と殺意など意に介さず。
この男には黒と白の出で立ちどおり、単一の色しか存在しない。
　
「所詮は人間、下らぬ一個としての感情しかお持ちではないとは。
　いや、やはりと言うべきなのでしょうか」
　　
刃金を境に対峙する白と朱色。黒衣と公子、無機質と潜んだ激情。
仮面の奥底、侮辱への憤懣を嘲笑で押し隠す。
その複雑怪奇な感情の色を孕んだ＜呪われた公子＞とは裏腹に、この黒衣の怪人には
単一単純な感情しか、もしやそれすらも存在しない狂人なのであろうか？　
　
「その覇王の強欲。勝利者たらんと欲する我欲。
　実に俗悪、実に愚劣……しかし、それ故に貴方の存在は心強くはあったのです。
　些少ばかりそそのかせば、幾らでも世に混乱を齎せるのですから。
　例えば、かの魔女やクロエネン殿、夜族を信奉するイノヴェルチのように。
　……ですが、それも既に無価値に等しい」
　
　　
――――――否。
　

91 名前：『ＴＨＥＡＤ／ＤＥＡＴＨ』 ◆rX9kn4Mz02 ：2007/11/23(金) 22:42:43

>>90　
　
　
　
　　　　　　　　　　　　『――――ならば致し方あるまい。　
　　　　　　　　　　　　　我が成就の為、汝には今生の死を迎えていただく』
　
　
　　
その時、音に聴こえる世界は闇に。
目に視える世界は白に染まった。

92 名前：『ＴＨＥＡＤ／ＤＥＡＴＨ』 ◆rX9kn4Mz02 ：2007/11/23(金) 22:43:43

>>91
　
突風が舞い上がり、視覚の世界を覆うのは吹き上げられ宙を舞う紙札（カード）。
２２枚の寓意画から構成される大アルカナと、数字および人物の計５６枚から成る小アルカナ、
占術の道具として、そしてカバラの数秘主義者達の礼装として使われるタロット・カード。
ゼアドの左袖口―――空いた腕より吐き出されそれらは瞬く間に数を増やして撒き散らされ、
周囲を紙の札と札と札、表層の神秘へと覆い隠したのだ。
だが、それよりも恐れるべきは。
　
　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　『―――汝が誇る無限の生、だが其の不死は無敵にあらず。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　己が勝敗を越えた務めを捨て、成就の大願を違えた
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　故に永劫の敗残者―――その醜悪なるこそは汝なり』
　　
伽藍の森林。腐海神殿の一旦であり隙間。
その異界を“個”による闇が侵蝕する。
森を侵し、木々を犯し、瘴気を上から塗潰す。更なる闇の色、彼が有する魂の色へ。
地獄の奥底から聞こえる様な、如何なる勇気も挫くおぞましき言霊で。
光なき深淵の彼方から這い出たがごとき、如何なる聖域も退廃へ染め上げる瘴気にて。
ヒトが知り、神が知り、そして悪魔が知る忌まわしき神の力で。
　
　
『―――＜混沌＞に属しながら、其れに背を向けた汝に用は無い。
　否、貴様等不死の生者など、遠き神々の手すらもこの世には不用。
　この現世の＜混沌＞、そして須らく支配は我が主、ドラキュラ様が代行する―――』
　
　
そこで生じる怪異は、数にして三。
なおも旋風にのり空間を乱舞する数百枚のタロット、それら紙片が光芒を描く。
陣は逆向き、悪魔を意味する五芒星。
そして多種多様であった絵柄も、定まった形へ変容を始める。
２２に及ぶ大アルカナの二柱へ。
　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　『主は七の月、滅びの際に仰られた。いずれ近き未来』
　　　　

ゼアドの姿を見失った＜呪われし公子＞の右前、すなわち左翼に一つ。
身の丈に届く三叉槍を構え現れたのは白骨の騎士。
肉も皮も纏わぬ体躯に、首から上は鋭き鳥の嘴、鉤爪を思わせる異相を越えた異形。
『戦車（チャリオッツ）』―――魔の援軍であり、眼前の敵を征服するを使命と受けた突撃兵。
パンデモニウム７団６６００隊が一つ、槍兵隊の悪魔騎士＜ベリガン＞。
　
　　『必ずや再臨を果たすと！』
　
　　
そのゼアドの行方を感知した公子の左前、すなわち右翼に一つ。
静寂を破り唸りを上げたのは腕なき悪鬼。
熱が空気を焼き、獣とも鳥ともつかぬ翼が強く羽ばたく。伝承に伝わる異形の姿をそのままに。
『悪魔（デビル）』――――＜呪われし公子＞を拘束し、死の園へ堕落せしめるを契約とした邪悪。
同じく軍勢が一つ、業火を撒き散らす飛翼隊の悪魔騎士＜ギャイボン＞。
　　

　　　　　　　『その予言の成就、定められし時計の針を推し進めんが為――――』
　
　　　　　　　　　
そして、伽藍の堂の何処にて。
ゼアド―――――否、今までそうであったモノ。
其れが奈落の底、あらゆる生を絶命させる程の瘴気を放ち、
　
　
　　　　　　　　　　　先に見せた白い刃は一端であった。
　　　　　　　　　　　彼が持つ本来の武具、象徴である兇器の。
　　　　　　　　　　　握る柄は背（せな）の骨。
　　　　　　　　　　　飾るは髑髏、刃の色は骨の色。
　　　　　　　　　　　その死者の変形を諸手に取り。
　　　　　　　　　　　半身にて構える姿は生ある者の畏怖であり。

　
一騎当千の槍が舞う。灼熱千度の炎が躍る。
地から騎士。空より悪魔。
現世の魔王と盟約を契り、“死”に仕えた、
　
　　　　　　　　　　　黒衣が変容する。　
　　　　　　　　　　　本性が露出する。　
　　　　　　　　　　　肉体が崩壊する。　
　　　　　　　　　　　擬態を破棄する。
　　　　　　　　　　　存在が歪曲する。　
　　　　　　　　　　　実体が帰還する。
　　
天に喝采。魔の火炎。
地に舞踏。死の槍撃。
　
　　　　　　　　　　　闇が。
　　　　　　　　　　　闇が。
　　　　　　　　　　　闇が。
　　　　　　　　　　　唸り。　
　　　　　　　　　　　捻り。
　　　　　　　　　　　捩れ。　
　　　　　
　
伽藍の奥で変容は続く。
公子を襲う舞踏と共に。
　
【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）地下】

93 名前：◆Lisayc.tVc ：2007/11/23(金) 22:45:02

>>86

不自然なほど静かな院内。
階段を下りれば病室前廊下が待っていた。

病室のいくつかの扉は開け放たれており、
時折覗き見ることができる部屋も無人である。
ほとんどの患者が逃げ出したのであろう。

しかし地震による避難にしては異常な箇所がいくつかある。
まず壁にべったりと血が付いているのだ。
地震で扱けたにしては異常な量である。

次いで床には血まみれの何かを引き摺った後があった。
筆で一本線を描いたかのように廊下の奥に続いている。

その線を追えば二人は発見することができるだろう。
血の主―――顔の皮膚を剥がされた看護婦の死体を。

94 名前：◆Lisayc.tVc ：2007/11/23(金) 22:47:26

>>93

【現在地：Ｆ地区　病院】

95 名前：マルチアーノ12姉妹 ◆M12sisrIV6 ：2007/11/23(金) 22:53:55

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
>>89
　
　差し出された手を取る、その仕草は社交馴れした女性のそれだった。
　エスコートされることに戸惑いもしない、貴婦人のそれだった。
　
　少なくとも、この場に於いて――この危険極まりない“森”に居て然るべき者の振る舞
いではない。
　
　ジューンは眉根を寄せた。
　此方の意図は十分に伝わっている筈だが、それを知ってか。
　それとも置き去られた者らしく「連れて行け」という意味なのか。
　後者である可能性は、恐らくない。
　来るまでの間に見た数々の死人、外傷はなく皆悉く全身の穴という穴から血を流し切っ
ていた。
　魔力暴走の際に異界の瘴気に曝された、只の人間の末路だ。
　この場で無事である以上は、そう、『只の人間』でなどは有り得ない。
　
　ジューンは違う、と言う様にかぶりを振った。
　手を取ったもう片方の手、左掌を上に女の目の前に差し出した。
　右手の内にある、この女性らしい繊細な手の持ち主には余りに不釣り合いな大きさのケー
スを、早く、と。
　
　
　取らせた手はその侭にして置いた。
　何故かはジューンにも解らない。
　
　【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】

96 名前：黒いアリス ◆ALICEsQkXc ：2007/11/23(金) 23:01:33

DIO vs JEANNE ―The forth part of king Henry VI―

>>82
　

　パーティは続く。
　パーティは続く。

　帽子屋は六時の中へと潜り込んだ。気ちがいな彼の謎かけに、アリス（ジャ
ンヌ）は思わず身を竦める。―――それも当然。
　だって、彼は帽子屋の席でアリスとおしゃべりをしていたはずなのに。アリ
スの後ろで、おしゃべりを続けているんだもの。
　あべこべの矛盾だらけ。道理なんて一つも通らない。

　三月ウサギ（アリス）は、カップにお茶を注ぐと、セイロンを堪能。
　そうしている間にも、黒甲冑のアリスは振り返って帽子屋を睨み、次に彼が
座っていたはずの椅子を眺めて、交互に交互に視線は錯綜。きっと彼女の頭の
中では、ティーパーティじゃなくてカクテルパーティが開催中。

「……ジャンヌ」

　このままだと、アリスの頭がショートしちゃう。それだと面白くないから、
三月ウサギからのアドバイス。

「どうしたの？　彼はトールボットよ。英国人なのよ。あなたが識らないこ
とだって、あいつ等ならできるわ。いちいち驚いていても切りがないわよ」
　
　


【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）前庭】

97 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/23(金) 23:02:00

DIO vs JEANNE ―The forth part of king Henry VI―

>>96


　アリスの言葉で乙女は目覚める。

　このトールボット将軍は、確かに乙女の理解が及ばない何かを用いた。
　彼女は椅子を見つめていた。瞬きすらしなかった。なのに消えていた。
　初めからそこにいなかったかのように。―――そして、初めから乙女
の背後にいたかのように。
　……もしかして、私は少し砂糖を飲み過ぎた？　あんなに甘いのだから、
魔性に魅入られてもおかしくない。

　でも、それ等は全て乙女にとって深く考えるに値しない事象だった。

　彼はトールボット将軍だ。英国人だ。アルマニャックを脅かし、オルレ
アンを責め苛むフランスの敵だ。―――それだけが乙女の全て。
　
「乙女は決して退かないわ」　

　分からないことは無かったこと。
　テーブルに置いたシャルル・マルテルの剣を一息にすっぱ抜く。五つの
十字が水銀灯の光を受けて、トールボット将軍の影を払う。

「あなたは私の背後に立てても、私の背中を誰が見守っているのかまでは
分からないのね……。やはり、あなたは英国人。あなた達は、祝福からあ
まりに遠い。―――それとも、その調子で主の背後にまで立つの？」

　切っ先がゆるゆると持ち上がる。―――彼女は昔からそうだった。
　バタール・オルレアンの諫言も、ジル・ド・レイの忠告も耳に届かなか
った。ラ・イールがいくら説得しても彼女はそれしか選ばなかった。
　乙女の戦旗は導く。救国へ至る手段は一つ。

　　―――突撃〈パレード〉。

　大上段で十字の剣が天を仰いだとき、乙女の瘴気は臨界を迎え、オルレ
アンのテーブルごとトールボットを斬り斃した。


【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）前庭】
　

98 名前：エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ ◆SV001MsVcs ：2007/11/23(金) 23:13:21

>>93>>94

　階段を降りた先には赤が広がっていた。
　壁が赤い。床も赤い。
　赤い壁、赤い床、というわけじゃない。
　べったりと赤い何かが塗りたくられているのだ。

「何これ……」

　鼻を突く嗅ぎ覚えのある臭い。

「血、ですね……」

　濃密な血臭が廊下を満たしていた。
　吸血鬼なら涎をたらしそうな状態だ。
　生憎アタシたちは吸血鬼じゃないけど。
　
「地震でこうなると、思う？」

「思いません。何かがやったんですよ」

　アタシたちは血塗れの床に足跡をつけながら辺りを探る。
　動くものの気配は、今のところない。
　視線を巡らすと床に赤い線がずっと引かれているのが目についた。

「フィオ、その何かをやっつけないままやり過ごして進むのと、やっつけるのどっちがいい？」

「後ろから襲われるのはごめんなのでやっつけたいと思います」

「決まりだ」

　赤い線を辿る。
　その先には――

「うぐ……！」

　フィオが廊下へ胃の中身を戻した。

「うえ、えぇ……！」

　無理もない。アタシだって喉元まで込み上げてきた吐き気に口を押えてる。

「これは……」

　血塗れで筋肉がむき出しの顔面が虚空を眺めている。

　――赤い線の先には、顔の皮膚を引っぺがされた、看護婦の死体があった。


「惨い……」

「うっ、うぅ……！」
　
　えずくフィオの背中をさする。

「フィオ」

　口元を押さえ、顔を上げた相棒に水筒を差し出した。

「ゆすげ」

　こくりと頷いてフィオは口を濯ぎ、その場に水を吐いた。
　
「ごめんなさい」

「いいさ。しかし、どんなキリングマニアの仕業だ。気持ち悪い」

　アタシたちは自然と死体から視線を外して背を向けた。
　フィオを促して、別の道へ歩き出す。


【現在地：Ｆ地区　病院】

99 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2007/11/23(金) 23:20:20

『とある不運な男のモノローグ』

　無数にひび割れの走ったフロントガラス。
　意識を取り戻して、最初に飛び込んできたものはそれだ。最近主流となっている、
ポリカーボネートやビニール材などを用いてラミネート構造になっているものとは
違い、旧態然とした硬化ガラスによって構成されていたそれは、ガラス片を飛散さ
せない、と言う点においてはその本分を全うしたものの、すでに視界は無きに等し
く、風防としての機能を失っていることは明らかだった。
　また金が掛かるな――などと、愚にも付かないことをぼんやりと思い浮かべた瞬
間、レイオットは初めて、己の置かれている状況に気がついた。
　シートベルトに固定されていたため大事はなかったが、その状態ですら視界が水
平を保っていない。つまり、なにかに乗り上げているか、それに近い状況におかれ
ている、と言うことだ。フロントガラスが全損している状況から考えても、なにか
に衝突している可能性も十分にある。
　
「――くそっ」
　
　意識を失う直前に何があったのかを思い出そうとするが、未だに頭がはっきりと
しないのか、まるでそれらしい事象が思い当たらなかった。思わず舌打ちし――何
よりも、状況を確認すべきだと思い至ったレイオットは、緩慢な手つきでシートベ
ルトを外すと、やや歪みが走っているらしいドアを押し開けて、ようやくと外へ降
り立った。
　――足下に感じるのは、じゃり、としたアスファルトの感触。薄暗い、じっとり
とした空気。むせ返るような緑の臭い。深い深い、森のにおい。
　
　ずり落ちかけた色眼鏡（サングラス）を直すのも忘れて、唐突にあふれ出した――
まるで太古からそこにあったかのような――まさしく『森』としか言いようのない、
そんな光景に絶句する。
　
　あり得ない――そう、あり得ない光景だった。
　最近の記憶を引きずり出す。そう、ここは街で、市街地で――そうだ。繁華街だっ
たはずだ。確か、ようやく当たりをつけるのに成功した情報屋に会いに行く途中で。
　その証拠に、踏みしめてるのはアスファルトで、巨木の隙間に遺跡よろしく見え
るのは、真新しかったはずのショッピング・センターで。
　結構な数の客でにぎわっていたのを覚えている。それが、今は。

「……なんて様だ。そして参ったな――大当たり・・・・だ」

100 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2007/11/23(金) 23:21:04

>>99

　フランス、ルーアン近郊にて違法な魔法実験が行われている可能性がある――
英国大使館経由で、フランス政府からアルマデウス政府、労務省魔法管理局にそん
な情報が入ったのは、およそ一ヶ月ほど前の話だ。
　本来であればフランス政府が独自に対処すべき事柄ではあったが――魔法技術
非拡散条約に批准しているフランスには、対魔法(アンチ・ソーサリィ)機関機関は存在しない。条約では、
批准国は国家として魔法を行使してはならないと堅く定められているからだ。
　そして万一、批准国において魔法犯罪の兆候が確認された場合は、唯一魔法戦力
を公式に有するアルマデウスが人員を派遣、これに対処する――と言うのが、基本
的な流れだ。
　もっとも、何事にも表と裏があるように、これらもあくまで表向きの話ではある。
実際、小規模の魔法災害や魔法犯罪の類はどこの国でも起こっているし、要は公式
で無ければ良いだけの話で、いわゆる傭兵や民間企業、あるいは団体と言った形で、
未だに小規模ながら魔法という技術を持っているのが、世界の姿ではあった。
　当のアルマデウスでさえ、国内問題の関係から、他国に魔法技術者を派遣する
余裕など無く。条約そのものが完全に形骸化するのも、もやは時間の問題であると
もいえた。
　そんな状況下で、フランス政府がアルマデウスに人員の派遣を要請したのには、
いくつかの理由がある。
　ひとつは、それが燦月製薬という、政府としてもおいそれと強制捜査を行う事が
出来ない業界でも最大手の企業体だということ。
　ひとつは、燦月製薬が、同様に決してその存在を軽視できない一種の秘密結社――
通常、『イノヴェルチ』の運営母体である可能性が高い、と言うこと。
　ひとつは、情報入手に当たって送り込んだエージェントが、文字通り肉の塊となっ
て帰還したこと。
　要するに、”手を出して見たらその腕ごと切り落とされた”――そんな表現が、
もっとも適当だろう。英国と事情が異なり、フランスにはそこまで神秘に精通した
人材が、政府周辺には存在しない――らしかった。
　そこで、最終的な解決法を取ることもふまえて、専門家による事前調査をアルマ
デウス政府労務省魔法管理局へと依頼する運びとなったのだという。
　だが、アルマデウス側としても、人員に余裕など無い。多発する魔法犯罪、魔族
事件が余裕というものを彼らから奪っていた。そこで――員数外ながらも、その手
の犯罪行為とは無縁の無資格戦術魔法士が、本人のやる気も事情も無視して、半ば
無理矢理に送り込まれてきたというのが、大まかなところだった。
　
　そして、到着から一週間。
　周辺の事情に精通しているという謳い文句の情報屋を捜し出し、燦月製薬内部の
情報（本当にそんなものがあれば、だが）を買い取る手筈だったのだが。

101 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2007/11/23(金) 23:21:57

>>100
　
「もうその必要もない、か。なんにせよ……」
　
　すでに、手遅れなのは間違いがなかった。件の情報屋とやらも、無事でいるかど
うか。ようやく意識の混濁から抜け出したレイオットは、改めて『森』と化した
繁華街を見渡した。
　悲鳴、怒号。何が起こったのか理解できずに錯乱している人間や、惚けたように
座り込んでいる人間もちらほらと見受けられるが、記憶にあったほとんどの人間
たちは、文字通り突如として出現した木々に押しつぶされたようだった。その証拠
に、幹や枝、そして盾のもや施設の隙間から、力なく垂れ下がる腕や足が散見して
いる。そして、その光景こそが、この『森』が尋常でないものであることを明確に
示していた。隙間から流れ出ていたはずの大量の血液が、ことごとく木々の根元で
消滅しているのである。
　
「こりゃ、完全に吸ってるな。さしずめ、吸血樹林ってか？」
　
　軽い言葉とは裏腹に、その表情は忌々しげに歪んでいる――別段、被害者のあま
りの様に憤っているわけではない。そのような状況に自分が放り込まれている、と
いう事実が、単に腹立たしいだけだ。
　
「俺の仕事はもう終わったようなもんだしな。このまま逃げ出すってのが、最も
賢いやり方だが――」
　
　つぶやきながら、愛車の足回りに視線を落とす。
　そこには、やはりあらかじめそうであったかのように、車体下部やタイヤなど
と融合している、いくつもの『根』があった。
　
「やはりこの『森』は一種の魔法災害か。歩いて出て行くって訳にもな」
　
　そこまでつぶやいた、刹那。
　右腕が、あたかも破裂したかのように閃いた。
　まるで機械のごとき正確さでもって腰元から銀色に鈍くなにかを抜きはなった。
　銃。<ハード・フレア>カスタム。六連式リボルヴァ。
　競技用にも利用される重銃身を、己の一部であるかのように軽やかに構える。
　照準は、眼前の『幹』。そして――
　
「ちょいと早いが――お休みだ」
　
　トリガー。銃声。
　一発だけ放たれた45口径マグナム弾は、『幹』の隙間から絞り出されるように
生み出された、ヒトのカタチをしたなにか、その頭部らしきものを粉砕する。
　濁った色の脳梁と、腐敗と凝固を始めた血潮が、アスファルトにばらまかれ、
そして消える。
　
「屍喰鬼(グール)とはね。
　こうなったらなんでもあり、か。こりゃ帰ったら料金割り増しだな」
　
　肩を竦めつつ、つぶやく――が、内心ではそれどころではなかった。
　ただ抜け出す訳には行かなくなったのだ。おそらくは、市全域で同様の状況が発
生している。脱出路を探すのと並行して、どれだけの数があるかも分からない出来損
ないのバケモノの相手までやる必要がある。
　
「……まったく。勘弁してくれよ、ほんと」
　
　深々と息をつきながら――トラックの後部搬入口を解放。暗い車内を電灯が照らし
出す。レイオットの眼前には、タクティカル・モールド<スフォルテンド>が、黙
したまま主を出迎えていた。

（現在位置　Bエリア『繁華街』）

102 名前：魔神王リィーナ：2007/11/23(金) 23:24:53

　
　魔神はたしかに優れた種族であったが、悲しいかな、数が少なかった。
もともと異界の住人であり、自分の意思など関係なく呼び出されたものばかりだったから。
今更郷愁に取り憑かれているものはほとんどいないが、
復讐を果たすには数の力が必要不可欠なのだ。
そして、わたしがずっと捨てきれずにいた、この願いのためにも。
　
　だからわたしは、ここにいる。

103 名前：ヴィルマ・ファキーリ：2007/11/23(金) 23:25:31

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
>>95
　
　少女が左手を出す事は判っていた。右手に通常の握手以上の負荷がかけられない事も。
　――なので、無言で少女の白手袋を払った私の右手は、腰の愛剣に走っていた。
　
　
　聴頸――直接触れた部位から相手の動きを読む、中国武術の技法だ。
　機械相手も例外ではない。内部機構を走る信号パルス、関節部の軋み、姿勢制御。それら全
てが次動作を浮き彫りにしてくれる。
　
　そうだ。この少女は機械だ。
　大まかには気息で察せられていた。確信を得るために「手に手を取った」のだ。
　義体かアンドロイドかまでは判断がつかないが、確かにこれは機械仕掛けだった。
　
　
　剣を抜き払う。柔性に富み、かつ剛性も兼ね備えた逸品、青柳剣である。
　間髪いれずに放った斬撃は、黒服の左肩目掛けて鞭のようにしなる光芒となる。
　肩をかわせば腹を斬る、腹をかわせば腿を斬る。正伝陰陽拳、その連環套路の精髄だ。
　
　
【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】

104 名前：魔神王リィーナ：2007/11/23(金) 23:27:01

>>101、>>102
　最後と思しき屍人の首をまとめて刈り飛ばしたころには、
兄妹の――というより兄の――警戒心は、死にぞこない達ではなくこちらに向けられていた。
当然だろう。百戦にて練磨されたであろう、あの兄でなくても、
こんな屍人どもなどより、わたしのほうがはるかに危険であることはわかるはずだ。
単純な能力においても、その本質においても。
　
「そう睨みつけてくれるな。おまえがバジリスクの眼を持っていたら、
わたしはとうに石になってしまっているところだぞ」
　
　魔神の絶対数が少ない以上、既に在る物を転用なり再利用なりして、
戦力を増強させなければいけない。たとえば人間を殺して不死生物に、などということもやってはいるが、
殺す手間と魔術を行使する手間に比べて、得られる戦力は微々たるものだ。
強力なゴーレムや魔法生物を数多く作り出すにも時間はかかるし、
”百の勇者”を率いる兄様がそれを与えてくれるとは思えない。
すばやく大きな成果を挙げるには、他人の研究成果を奪うのが一番だ。
　
「その娘を、色々と調べさせてもらおうと思っていたのは確かだよ。人手不足だからな。
だがその気も失せた。強そうな兄様が眼の色変えて追いかけてきた事だしな。こわいこわい」
　
　異界の人間達とはいえ、必要なら手にかけるに躊躇いは無いが、
こういう兄妹は勝手が悪い。べつに慈悲をかけているわけではないが、気が乗らない。
とにかく別の検体を探す。街の随所にご丁寧に立っている案内板と、少々の魔法の成果によれば、
おそらく南側の森に、本命の施設が存在するはずだ。
　
「ではわたしは行くよ。精々兄妹仲良くな」
「対外的には、私はレイオットの愛人と認知されているようです」
　
　
　
　
　
　……今、なんと言った？

105 名前：魔神王リィーナ：2007/11/23(金) 23:28:49

>>104
　愛人。この娘の唇によると、なんと艶に満ち満ちて聞こえることだろう。愛人。
そうか、兄妹にして愛人か。兄の甲斐性か妹の勇気の賜物か、
とにかく兄か妹をさらって逃げているという構図か。そういう兄妹か。
　
　わたしは、ずっとなにも言えなかった。
自分の気持ちを閉じ込めたまま生きてきた。
なんの取り得も無い、つまらない人間だったから。
兄様に迷惑をかけてばかりの、弱い妹。
　
　太陽の王子、月の姫。わたしたちはそう呼ばれていた。　
的を射た表現だ。月は太陽が無ければ闇に消えてしまうけど、
太陽にとっては、月など在っても無くても変わらない程度の代物なのだから。
けれど、この兄妹は違うというわけか。そういう兄妹か。
　
「……ずるいな。兄妹でそれか。それはずるいな」
　
　屍人の首と魂を刈り取ったばかりの黒い大剣を一振りして、血肉を払う。
予定外だが、この場でもう一度これを使う事になった。
ずっと一緒だっただろう兄妹、離れ離れにならないよう死ぬ瞬間も同じにしてやる。
　
「武器を取るがいい。せめて反撃の機会を与えてやるよ」
　
　
　
（現在位置：Bエリア繁華街）

106 名前：ゾンビ ◆Lisayc.tVc ：2007/11/23(金) 23:32:14

>>98

　ウィルス体内に侵入
　神経系を介し
　脳神経組織に到達
　初期症状
　痒み　　　　　　　　　　　　かゆ
　全身疲労
　嘔吐痙攣
　発熱
　意識レベル低下
　大脳新皮質壊死
　知性記憶の欠如
　行動一時停止
　代謝促進
　細胞活性化
　食欲増大
　食欲増大
　食欲増大
　食欲増大
　食欲増大
　飢餓感
　飢餓感
　飢餓感
　飢餓感
　飢餓感
　飢餓感
　飢餓感
　飢餓感
　飢餓感
　飢餓感
　飢餓感　　　　　　　　　　　　　うま
　飢餓感　　　　　　　　　　　　　うま
　飢餓感　　　　　　　　　　　　　うま
　　　　　　　　　　　　　　　　再動

　ギョロリと目が動く。
　僅かな壁と体が擦れる音。耳の良い者ならそこで異変に気付くだろう。
　しかしたとえ振り返れたとしてももう遅い。
　悪魔のウィルスによって生きる屍として蘇った看護婦は、
　既に立ち上がりきっている。
　目に映っているのは人間という名の『肉塊』。
　人間の本能的な欲求に突き動かされた看護婦―――ゾンビは
　身近にある美味そうな肉に掴みかかっていた。

【現在地：Ｆ地区　病院】

107 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2007/11/23(金) 23:33:36

>>102>>104-105

　……　それは、まさにヒトのカタチをした暴風だった。
　
　<スフォルテンド>に身を包み、スタッフを帯び、突撃銃を携え、そして傍らに
はまるで酔ったように足下をふらつかせるカペルテータ。
　周囲から絶え間なく放射される魔力に、彼女自身の処理能力が追いついていない
のか、どことなく風邪を引いたかのように、珍しくどこかぼんやりとした眼差しを
浮かべていた。
　実際、モールドに装備された魔力計の針は、<侯爵級>から<伯爵級>レベルの
魔力が一体から放射されていることを示しており、感覚的にそれらを知覚できるカ
ペルテータにとっては、常時強い明かりを目の前に差し出されている状況に近い。
　常にない感覚に混乱を起こしたとしても無理はなかった。

　運悪く徘徊する屍喰鬼の群れに遭遇し、すわ戦闘か――と覚悟をした瞬間、それ
は現れたのだ。
　それは何者か、と問われたならば、少なくとも少女らしい誰かだ、としか答えら
れない。

　それは、まさに暴風だった。

　手にした巨剣を軽々と――そう、己の体格も何も無視して――軽々と振るい、並
み居る屍喰鬼を尽く腐肉へと還元していく。
　濡れたような黒髪を纏って行われるそれは、剣舞、という単語を連想させたが――
　実際に行われているのは虐殺であり、蹂躙であり、一方的な搾取だった。
　とりわけそれが異常なのが、それを為しているのが恐らくはカペルテータとも大
して歳が変わらないであろう少女だ、という事実だった。
　見た目だけですべてが決まるわけではない。決まるわけではないが、その歪な光
景は、奇妙を通り越して、一種醜悪ともとれる。ただひとつ確かだと思える事は、
その少女らしきモノは、恐らく見た目通りの生き物ではないだろうという直感。
　背部に固定されたタクティカル・スタッフの操桿に右手を伸ばし、左手は突撃銃
の銃把に掛けたまま、眼前の少女に対する敵意を隠そうともせず、油断無く構える。
　
　――やがて、最後の一体の首が跳ね飛ばされ、一応の静寂が森に浸食された市街
の一角に訪れる。
　巨剣の切っ先を降ろした、その少女のカタチをしたなにかは、やや苦笑混じりに
こちらに振り返ると、少なくとも、こちらへの直接的な害意は無いことを告げた。
　しかも、どうやら――こちらとカペルテータを、肉親……それも、兄妹と誤認し
ているらしい。まあ、誤解で無用なトラブルが無くなるのであれば、それはそれで
望むところではある。
　なにせ相手は得体の知れないヒトらしきなにかだ。積極的に関わって、良いこと
なぞあるわけがない。

108 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2007/11/23(金) 23:34:52

>>107

　――ぽつり、と。
　恐らくは反射的だったのだろうが、カペルテータが随分と懐かしい発言をする。
　
「対外的には、私はレイオットの愛人と認知されているようです――
兄妹と言われたのは、初めてですが」
　
　どこか浮かされた様な眼差しが、本調子ではないことを告げてくる。
　苦笑しつつ、ただの冗談だと、一応はこちらの救い主らしい少女に告げようとし
て――
　
　その切っ先が、こちらに向けられているのを理解する。
　だが、何故だ。この気まぐれなバケモノに、いったい何が起こった？
　
「……ずるいな。兄妹でそれか。それはずるいな」
「ちょっと待て。あんた、いったい何を言って――」
　
　状況は分かる。
　機嫌を損ねた。相手はこちらを粉砕するつもりでいる。だが、その理由が理解で
きない。
　アレは今、なんと言ったか……？
　兄妹。ずるい。単語の意味は分かる。だが、それとこの状況がつながらない。
　つながらない、が――
　
「……まぁ、早いか遅いかの違いってだけだよな。
　どっちみち、こうなるのは分かってたんだ」
　
　カペルテータに、下がっていろとささやいた。
　幸か不幸か、周りの屍喰鬼は目の前のこれが片づけてくれている。
　当面、彼女が連中の食事になる危険はない。ないと、この場は断定する。
　
　そして、余裕なのか、はたまたなにか別の理由があるのか。
　
「知ったこっちゃないけどな――――行くぞっ！」
　
　言葉が走ると同時、左肩に吊した突撃銃が、その銃口から無数の銃弾を吐きだし、
　牽制の弾幕を形成する。
　なにかを引き裂くような銃声が、戦の始まりを高らかに告げていた。

（現在地：Bエリア『繁華街』）

109 名前：＜呪われた公子＞ゲイナー ◆GAinErMg8k ：2007/11/23(金) 23:38:10

>>92

『死神（デス）ゼアド vs ＜呪われし公子ゲイナー＞』
　
「来るか下郎！だが余は雑魚を相手に時間を浪費したくは無いのだ。
　余は合理主義者であるゆえに」
　
　素早く剣を左手に持ちかえると、斑点模様の外套の内側へと空いた右手を滑
り込ませた。一瞬の後、その手が外套の内側より引き出された時、そこには黒
い無骨な塊が握られていた。
　
　ＭＰ７Ａ１。独逸の誇る銃火器会社Ｈ＆Ｋの作り出した傑作ＰＤＷ（パーソ
ナル・ディフェンス・ウエポン）だ。
　
　口径4.6mmx30、全長340mm、銃身長180mm、全幅420mm、重量1.6kg、ライフリ
ングピッチ160mmで半回転、マガジンキャパシティ40発、射撃の種類はセミ、
フルオートの切り替えが可能。つまりは、革命的な銃火器。
　
　この銃はイラク戦争における都市の狭い通りでの不意打ちよって多大な被害
を受けた米軍がＨ＆Ｋに開発させたもので、最大の特徴はコンパクトで、軽量
で、操作性がよく、片手で扱うことが出来、フルオートでの命中率も優れてい
ることだ。
　
　Ｍ４のようなアサルトライフルではそのような状況での戦闘は不利過ぎたの
だ。狭い通りでの突発的な戦闘、もしくは室内戦においての戦闘距離は多くの
場合50ｍ以下である。この距離においては全長を切り詰めたカービンタイプの
アサルトライフルですら長すぎ扱い辛すぎた。
　
　その距離はサブマシンガンの距離だったのだ。だがサブマシンガンでは拳銃
弾を使用するという短所により50ｍ以上の戦闘距離において命中精度が明らか
に劣るというハンデが存在した。
　さらには5.56mmx45（.223レミントン）と９mmパラベラムを比較した場合、
９mmパラベラムは３０パーセントほどの威力しかないのだ。これでは充分な殺
傷能力があるとは言いづらかった。
　
　またサブマシンガンの中には5.56×45mm弾を使用するものもあるが、銃本体
に比べ弾薬の威力が強力すぎ、命中精度が落ち、片手ではまともな射撃などで
きはしなかった。
　
　そのために生み出されたのがこの銃だった。口径4.6mmx30仕様のＭＰ７Ａ１
はアサルトライフルとサブマシンガンの間を埋める画期的な兵器だったのだ。
　
　３５ｃｍを切るコンパクトな外見ながら、近距離におけるその制圧力は突撃
銃に勝るとも劣らない。
　
　

110 名前：＜呪われた公子＞ゲイナー ◆GAinErMg8k ：2007/11/23(金) 23:38:28

>>109
　
　召喚された化物たちに対し、素早く照準。何のためらいも無く引き金を引く。
　嵐のような勢いで吐き出された4.6mmx30の銃弾が魔物たちに降り注いだ。
　
　この4.6mmx30の銃弾は標的に命中した時倒れこむようにして大きく回転し、
飛躍的に威力を高める効果があった。その威力は拳銃弾の比などではない。化
物とて急所に命中させれば十二分に殺傷できる。
　
　さらにはこの銃弾は、＜呪われし公子ゲイナー＞がかつてプラハで収めた錬
金術により、そして長き歳月をかけ身につけた魔術により、シュバルツシルト
の深き森の奥深くで鋳造された魔弾だった。その威力は言わずもがな。
　
　銃弾は魔力を発現し、魔弾となって突き進む。さらに加速しさらに運動エネ
ルギーを増し魔弾となって突き進む。
　
　ＭＰ７Ａ１より発射された銃弾が容赦なく容赦なく降り注ぐ。召喚された魔
物を冥府へと送り込むために、容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく降り注ぐ。
　その数はとうに４０発を超えていた。だがそれでも銃は弾切れを起こすこと
は無い。
　ゲイナーの魔術だ。その弾倉を良く見れば、彼の鎧と同じように色定まらぬ
金属によって出来ていた。おそらく弾倉内が亜空間へと直結し、内側から無限
に装填され続けているのだろう。
　
　だから銃撃の嵐は止むことが無い。いや、いっそう激しさを増す。
　
　容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく
　容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく
　容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく
　容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく
　容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく
　容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく
　容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく
　容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく容赦なく
　
　魔弾の雨が悪魔騎士たちに降り注いだ。
　

【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）地下】

111 名前：魔神王リィーナ：2007/11/23(金) 23:39:37

>>108
　男が左に抱えた武器から、金属のつぶてが噴き出された。
文字通り無数にばら撒かれるつぶてを、正体を確かめるより先に回避し続ける。
が、かわしきれず半分はわたしの絹のドレスに突き刺さり、そのまま貫通する。無傷。
　　
「身体が傷ついていない。その武器、魔法ではなく器械じかけでつぶてを撃ち出すのか」
　
　つまり、特殊な能力や素質がないものでも扱える可能性が高い。
人間相手には十分な威力を発揮しそうだし、後で土産にもらっていこう。
そのためにもこの男、まずは適度に痛めつけなければ。
　
「闇もて照らせ」
　
　この男、射手か魔術師か。まずは定石どおりに接近戦を仕掛ける。
魔法で作り出した暗闇に乗じて跳び、真上から一撃。
　
　
　
（現在地：B地区繁華街）

112 名前：ＤＩＯ ◆kYsrWORLDo ：2007/11/23(金) 23:44:33

（ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓＤＩＯ）
　
>>96 >>97



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―――――――――――――――――――――――

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　………ほう。追い詰められたネズミはネコを噛むという
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　奴か。わたしに傷をつけるとは少し驚いたよ、全くその
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　闘争心は評価に値するよ、流石はジャンヌ・ダルクか。



　
　
　今、君が私の胸に傷つけたこの一文字の傷…ほら、
　左側の方が治りが遅いだろう。この首から下は別
　の男の身体でね、まだ完全に馴染んでいないんだ。
　
　まだ色々やるには準備不足といったところかな…
　故に君のその漆黒の意思が欲しくもあるのだが、
　君は中々に頑固そうだな、クックックッ――――



　
　ひとつ、疑問なのだが………仮に君がわたしを打倒
　したとしよう。それで体よく事が進んで、フランス
　を救済も為しえたとしようか。それでどれだけの年
　月、何人の人間が、幾つの魂が祝福されるのかい？
　君の『主』とやら一体どれほど救ってくれるのかな？

　よくて数十年、運が悪ければ数年で費えるような祝福
　は果たして、真の祝福なのだろうか。数年で費えてし
　まった場合はきっと民は言うだろうさ、「こんな事な
　ら、救ってくれないほうが良かった。祝福の蜜の味な
　んて知らなければ今こんなに苦しむ事はなかった」と。
　
　永きに渡る魂の祝福は誰が一体保証してくれるんだい？
　聖処女と謳われる君か？　君の背後に立つ主か？　それ
　とも、君が聞いた「声」が保証してくれるのかね？

　刹那の祝福であれば、無意味じゃあないか。本当に
　祝福が求められるのであれば、それは永遠不変のもの
　であるべきではないかね？


（現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）前庭）

113 名前：エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ ◆SV001MsVcs ：2007/11/23(金) 23:58:56

>>106
　
　背後、極々至近で足音が一つ。
　
　振り向き様に銃口を向けた先には赤い顔面で白い歯を広げる何か。

　何かって何だ。さっきの死体だ、くそったれ。

　気づくのが遅れて懐に入り込まれた。
　左肩を掴まれる。頭の左に手をやられ、グイイと首を曝け出される。
　勢いのままに押し倒され、死体の口がアタシの首へ。

　が、死体がアタシの喉に喰らいつくより、アタシの銃口が死体の口に突っ込む方が早い。
　ぐじゅりとした手応え。倒れ込みながら引き金を引いた。

「エ、っエリちゃん！」

「生きてる」

　人を押し倒したままくたばった死体をどかし、身体を起こした。
　床に触れた右半身に付着したぬめぬめしいものが気持ち悪い。

「ぞ、ゾンビ、ですか？」

　頭がなくなった死体を見下ろしてフィオ。

「みたいね。危ないところだったわ」

　コッキングレバーを引いて空ケースを排出し、アタシは首筋を撫でた。


【現在地：Ｆ地区　病院】

114 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2007/11/24(土) 00:06:56

>>111
　
　ろくに照準もせずに銃弾をばらまく。
　小口径とはいえ徹甲弾だ――生半可な防弾装備など、問答無用で貫くだけの威力
を有している。故に、敵の防御力を把握するには適当だった。
　果たして、避けるのか、受けるのか。果たして――彼女は、受けた。
　いや、受けたと言うよりは、よけるまでもなかった、と言うことなのだろう。
　纏っているドレス自体はなんの変哲もない、ただの布きれの様ではあったが、肝
心の本体には、まるでダメージがあるようには見えない。痛みすら感じていないの
だろう、その表情は毛ほどにも動いていなかった。
　
「なるほど――なっ！」
　
　だが落胆しない。手に入った情報がひとつ――少なくとも、.223口径程度ではま
るで通用しない。ならば取り得る手段はひとつだけだった。
　目の前の少女をヒトガタの魔族と判断し――いつも通りの力押しで粉砕する。
　背部の油圧式アームに固定されたスタッフを右手で引き寄せる。同時に操桿操作、
無音詠唱(ダムキャスト)。呪文書式は<ブラスト>選択。
撃発音声(トリガーボイス)詠しょ――
　
「――――っ！」
　
　――う、するその刹那。少女の口元から呪文が滑り出す。
　突如として視界が黒く塗りつぶされる。視界が、潰された――？
　
（まずいッ！）
　
　それは、ほとんど反射的な動作だった。まるで視界の効かない中を、転がるよう
に後退。回避行動の反動でほとんど地に這うような体勢で、自身の戦闘を司るなに
かが命じるまま、前方だと思える方向へとスタッフを突き出し――唱える。
　
「イグジストッ！」
　
　瞬間。
　仮想界面と事象界面が強制的に接続、入力された座標の事象存在確率に強制干渉
開始。コンマ数秒というタイムラグの後、爆炎が闇に包まれた空間に炸裂する。
　手応えは――――！？
　
（現在地　Bエリア：繁華街）

115 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/24(土) 00:13:48

DIO vs JEANNE ―The forth part of king Henry VI―

>>112

「―――トールボット将軍。その問いかけは、あまりに無意味よ」

　そして、涜神的でもあった。
　乙女の使命は、英国人をフランスから追い出し、王太子さまを戴冠させ、
アルマニャックに平和をもたらすことだ。
　それが彼女の義務だった。それだけが〈声〉の命令だった。
　乙女は貴族ではない。ドンレミーの村で生まれ育った田舎娘。ブルゴーニ
ュとイングランドがフランスから一掃された後の治世は、王太子さまが為さ
ること。乙女は村に帰り、平和を満喫するだけ。
　―――そう、夢見ていた。
〈声〉の告げる運命が、乙女の願いを否定する。
　
　彼女は救国の英雄。つまり、混沌があって初めて必要とされる。
　だから、勝利がもたらされた後の歴史は乙女には関わりのないこと。
　哀しい運命だが既に受け入れている。だから、トールボット将軍の問いは
無意味だった。それは乙女のあずかり知らぬこと。
　
「答えはあなたの神が持っています。問うなら、主に問いなさい」
　
　しかし―――まただ。また、将軍が消えた。乙女が認めた場所より、ずっ
と後方に立っていることになっていた。―――砂糖の魔力と結論づけには、
そろそろ無理があるかもしれない。
　椅子に座って、お茶を啜るアリスに視線を向ける。王太子さまはわけ
知り顔で観戦中。答えを乙女に示す気は無さそうだ。
　小さく嘆息。王太子さまは本当に王位につく気がおありなのかしら。

　このトールボット将軍は不気味だが……手強い。人間の兵士相手の戦い方
では、決着はつきそうにない。乙女の闇を垣間見せる必要がありそうだ。
　決意するなり、乙女は自傷した。自らの剣で、自らの首を斬り裂いた。
　薄皮一枚―――滴る血。乙女の負傷が、世界のバランスを僅かに歪ませる。
位相は悪魔につけいる隙を与え、傷みが乙女の肉と骨をより強く蝕んだ。
　肌に浮き出る脂汗。体内を悪魔どもが食い散らかしていく。―――その代
価として、乙女は奇跡を得る。
　
　トールボット将軍が消えたように、彼女も消えた。
　ただ純粋な膂力だけで、将軍の背後に回り込む。鉄靴が草地を食い荒らし
てブレーキ。愛剣を振りかぶった時には、既に薙ぎ払っている。
　人の知覚を圧倒する速度領域。英国人にかわせるものか。
　



【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）前庭】

116 名前：マルチアーノ12姉妹 ◆M12sisrIV6 ：2007/11/24(土) 00:15:56

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
>>103
　
　
　光芒が一つ。
　手には中華様式の片手剣。
　中国武術に限らず、優れた戦闘術は一つの動作で終わる事はない。
　この流れる様な一連の動きを、中国武術では特に連なる輪の動き――『連鐶』と呼ぶ。
　左肩へと振り下ろされる剣は、次の瞬間右に、左にと自在な変化を見せる筈だ。
　
　振り払われた掌の、微かに残る温もりを惜しむ暇もなく、ジューンは上着の内側から一
振りの大型ナイフを抜き払った。
　ジミー・ライルデザイン、ファーストブラッド。
　とある映画からサバイバルナイフの代名詞として有名になった物だが、全長200mmを越え
る刃長は格闘には到底向き得ない。
　巨大になればなる程、精密な刃の動きの制御が必至となるナイフ格闘術に於いては操者
の手首・関節に多大な負荷が掛かる為だ。
　更にもう一振り、此方に関しては最早言うべき言葉もない。
　先重りのする湾曲したブレードは300mmを越える、俗に『マシェット』と称される山刀の
一種である。
　
　それらを手の内でくるりと回すと、逆手に握られた左のマシェットは中華剣を受け止め
ていた。
　受け止めて、その力の流れに逆らわず身を沈める。
　膝を付く程に低く取った体勢で、同じく逆手に握った右のナイフは足元に、鎌で薙ぐ様
に踵を狙った。
　ナイフの背には、まるで太古の爬虫類を思わせる鋸にも似た刃が刻まれている。
　
　【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】
　

117 名前：ゾンビ ◆Lisayc.tVc ：2007/11/24(土) 00:21:15

>>113

　銃声と共に看護婦の頭は粉々になって吹っ飛んだ。
　脳を欠如すればいくらＴウィルスの力とはいえ
　そのゾンビは行動できなくなるのだ。

　排出された薬莢が地面に落ちたとき
　病院の置くから君の悪い声が聞こえてきた。

　呻き声

　何かによる呻き声だ。
　老婆のようにしゃがれた声であったが
　どうも何かがおかしい。とても人間の声とは思えないだろう。

　そして彼女達にはその声とは別の方向から脅威が近づいていた。
　いくつかの病室の中からカリカリと引っ掻くような音が出始めているのだ。

　T-ウィルスの活性時間。
　二人はちょうどその時に面してしまった。
　いくつかの扉が破られて顔の皮膚を剥がされたゾンビの群れがぞろぞろと。
　既に口元が真っ赤に染まっているものも中に居た。

【現在地：Ｆ地区　病院】

118 名前：『ＴＨＡＥＤ』 ◆rX9kn4Mz02 ：2007/11/24(土) 00:26:51

>>109>>110　　
　
　――――その＜儀式＞の時、男はモニター越しに同じ風景を見ていた。
　
　
　そこは儀式が行われているブロックからは離れていた。
　施設の数ある責任者。その一人として割り当てられた個室。
　外様の魔術士＝施設に集められる『標本』の搬入と魔術的な制御。
　それが男の役職であり役目であった。
　　
　男は興味深げに儀式を見物する。
　あくまでも飄々と、だがどこか舐めつけるような暗い情念―――“期待”を込めて。
　痙攣する矮躯＝許容量を越えた激痛＝狂気を産出するに伴う陣痛。
　だが生み出されるはずの反英雄は未だ現界を迎えない。異常と判断されるであろう事態。
　
　それでも男の表情は揺らぎすらしない。
　まるで、この異常を最初から分かっていたかのように。
　そう。あの無垢なる剣の持ち主＝召喚に使われた触媒の、本来の正体を知っているかのように。
　どちらにしろ男には如何でもよいのだ。
　異か、想定か。
　いかな結果に至ったとしても、成すべき事は変わらぬのだから。

　
　――――画像が揺れる。
　
　異常の顕在化＝送信モニターの破損＝垣間見えた、魔の枝。
　最後に一瞬だが捉えた映像を、男は見逃しはしなかった。
　
　あの瘴気／“主”と同質の魔／破滅の具現。
　

　「―――成る程、このような結果と相成りましたか」
　
　　
　爆発した魔性／侵食する枝／顕現する枝葉と幹。
　
　
　「儀式は異の側に反れたようですが、まあ宜しい。
　　ならば手間も省けたという事、労も掛からぬとならばそれもまた、良し」　
　
　　
　満ちる死と絶叫／懐かしきこの混沌／見慣れた“道”を繰り転移
　
　
　
　　　　　　　　　　そして森が
　
　

119 名前：『ＤＥＡＴＨ』 ◆rX9kn4Mz02 ：2007/11/24(土) 00:29:33

　
　『死神（デス）ゼアド vs ＜呪われし公子ゲイナー＞』
　
>>118
　
　――――その＜儀式＞の時、男はモニター越しに同じ風景を見ていた。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　髑髏が在る。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　其れは余人が知る、＜死＞の象徴であり＜神＞であった。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　刈り取った死者への供養か、死出と誘う礼装か。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　紫紺の法衣をその身に纏う。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　外套を纏った＜死神＞が其処に。
　
　そこは儀式が行われているブロックからは離れていた。
　施設の数ある責任者。その一人として割り当てられた個室。
　外様の魔術士＝施設に集められる『標本』の搬入と魔術的な制御。
　それが男の役職であり役目であった。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　その象徴は無論、かの＜神＞の手元にある。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　無垢邪悪を問わず魂を狩る、死神の大鎌（デス・サイズ）。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 だが余人の想像する常と大きく異なるのは、その禍々しい形と意匠。
　　　　　　　　　　柄は獣とも人とも取れぬ脊髄で出来ている。亡き生にしがみ付く執念ゆえの強靭さ。
　　　　　　　　 柄の先端に髑髏が在る。すすり泣く犠牲者の魂魄を封じた。同じ犠牲者を求める為に。
　　　　　 刃は骨の色をしている。生と形あるものを否定する呪詛、両断の呪いが掛けられた鋭き刃。
　 刃は柄の両端に在る。返しの刃を備える双頭の威容は、鎌というには余りにも兇器でありすぎた。
　　
　男は興味深げに儀式を見物する。
　あくまでも飄々と、だがどこか舐めつけるような暗い情念―――“期待”を込めて。
　痙攣する矮躯＝許容量を越えた激痛＝狂気を産出するに伴う陣痛。
　だが生み出されるはずの反英雄は未だ現界を迎えない。異常と判断されるであろう事態。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜死神＞の空いた手が閃く。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　五指より生じる極寒の燐気、親指から人差し指、人差し指から中指。
　　　　 中指から薬指、薬指から小指。命を喰らい尽くす獰猛な飢えたる死霊、神の身許に召喚せり。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　其の髑髏どもが、かちりかちりと歯を鳴らす―――――同じく。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　屍となった騎士どもの、憑かれた骸が僅かに。
　　　
　それでも男の表情は揺らぎすらしない。
　まるで、この異常を最初から分かっていたかのように。
　そう。あの無垢なる剣の持ち主＝召喚に使われた触媒の、本来の正体を知っているかのように。
　どちらにしろ男には如何でもよいのだ。
　異か、想定か。
　いかな結果に至ったとしても、成すべき事は変わらぬのだから。

　
　――――画像が揺れる。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――――闇が震える。
　
　異常の顕在化＝送信モニターの破損＝垣間見えた、魔の枝。
　最後に一瞬だが捉えた映像を、男は見逃しはしなかった。
　　　　　　　　　　側面に湾曲した刃群＝肉を抉り取るような形状＝死神の召喚した刈り取りの“小鎌”
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　僅かにだが存在した足元の隙を、骸に憑いた霊は見逃しはしない。
　　　　　
　あの瘴気／“主”と同質の魔／破滅の具現。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　この弾幕／“一族”と同列の敵／殲滅を期す。

　「―――成る程、このような結果と相成りましたか」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　『―――成る程、この程度では相手にもならぬか』

　爆発した魔性／侵食する枝／顕現する枝葉と幹。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　誕生する弾幕／連続する召喚／続いて顕現する餓えた死骨魚たち。

　「儀式は異の側に反れたようですが、まあ宜しい。
　ならば手間も省けたという事、労も掛からぬとならばそれもまた、良し」　
　　　　　　　　　　　　『我が配下の騎士どもは足止めにもならぬか、まあ良い。
　　　　　　　　　　　　　ならば此方も仕掛ければよき事…汝が鉄火を用いたとてそれもまた、良し』
　
　　
　満ちる死と絶叫／懐かしきこの混沌／見慣れた“道”を繰り、転移開始

先陣＝魔弾の速度で飛来する五指の死霊＝石壁すら粉砕する死の砲弾／正面から
後続＝増殖した死骨魚の大群＝軍勢すら暗い尽くす飢餓の到来／側面から
両翼＝数十にまで膨れ上がった小さき鎌＝鋼すら切り刻む死の旋風／埋め尽くす
陣形＝公子の視界を埋め尽くす弾幕＝不死を蹂躙する死の布陣
／逃げ場なき死が
　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　そして森が／
　
　　
『――――消え失せよ、愚かなる呪われし公子よ！
　救済という名の災厄を以って時計の針を！　我が主の再臨を押し進めん為に！』　　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／死神は哄笑を上げた。

120 名前：魔神王リィーナ：2007/11/24(土) 00:31:35

>>114
　潰されたはずの視界の中、わたしの真上からの斬撃を回避してのけ、さらに。
　
「……っ！」
　
　動くことが叶わない球形の闇が一瞬裂かれて、
炸裂した火球の余波で体勢が崩れる。
高価な――高価だった――ドレスの布地が半分千切れ飛び、
わたし自身もいくらかの傷を受ける。すぐに再生。思った以上の使い手だ。
　
「いや、当然と言うべきなのかな？
妹を守ろうとする兄が弱いなどという事、あろうはずもないからな。流石だよ」
　
　かなりの判断力、身体能力、加えて全身鎧による防御力を備えた魔術師。
人材とはどこにでもいるものだ。それともこの世界では、この男くらいの者が標準なのか？
もう少し、付き合ってもらう必要がありそうだ。
　
「束縛の刃となれ」
　
　男の頭上から、刃の網を降りかからせる。
あの鎧の防御力、どれほどのものか。

121 名前：ヴィルマ・ファキーリ：2007/11/24(土) 00:46:45

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
>>116
　
　私の血統は、不老ではあるが不死ではない。身体能力は別にして、他の連中のように馬鹿
げた耐久力の持ち合わせはない。
　首を切られれば死ぬ。心臓を貫くのは白木の杭でなくても構わない。
　その反面、十字架や聖餅に怯えなくても済むし、ガーリック・ステーキは食べられる。そこは
救いであったが。
　
　どういう事かといえば、つまりこの少女のナイフは私を傷つけたり、殺したりする要件を立派
に満たしているという事だった。
　実力的にもだ。ここまでの達者は武林にも珍しい。
　
　
　軽く床を蹴る。一足の踏み込みは私の体を高々と舞い上がらせ、毒蛇のように足元を狙う刃
に空を打たせた。
　一瞬の支えとするのは鍔競り合いの力点――私の剣を受け止めた山刀そのものだ。
　噛み合った刃と刃をひっ外して、身を捻りながら旋風転体。天井に「着地」――というか接地
し、そこを足がかりに少女へ向かって再度跳躍する。
　空中で、しかもさかしまの体勢で、私は矢継ぎ早の剣を繰り出した。
　
　左右から薙ぐ『倒龍剋目』、『揺頭焦雷』の二手は陽動の奇剣に過ぎない。本命はその後、続
いて撃ち込む『隻礫叉鋲』の刺突だった。
　華麗かつ、現実的なまでに冷酷。これが中国武術の本質なのだ。
　
　
【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】

122 名前：『ＤＥＡＴＨ』 ◆rX9kn4Mz02 ：2007/11/24(土) 00:58:08

>>118>>119
　　
【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）地下】

123 名前：エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ ◆SV001MsVcs ：2007/11/24(土) 00:59:22

>>117
　
　酷くおぞましい呻き声が聞こえた。

「……エリちゃん」

「聞こえた。……今のがやっつける何かみたいね。」

　両手でショットガンを構える。
　正規軍製のショットガンは連射が利かず射程が銃器とは思えないほどに短い。
　だがその代わりに絶大な破壊力と制圧力を持つ。戦車を数発で屑鉄に変える程だ。

「出くわしざまに叩き込む。一発でくたばらなかったら牽制射お願い」

「了解です」

　フィオの射線に重ならないよう前に出る。
　そのときだった。
　一斉に周囲の病室から何かの引っ掻くような音が鳴り出した。

「な、なんですか……これ……？」

「分からないけど、やばいな」

「凄く……多そうですね」

「後の事を考えると交戦は控えるべきよね」

　軋み、たわんでいた目の前の扉が内側から破れた。
　溢れ出すは顔を剥がれた死体の群。
　口を開いて迫るゾンビにショットガンを叩き込んだ。銃身がほぼ垂直に跳ね上がる強烈な反動。
　それだけの反動を寄越して放たれた微細散弾の暴風は効果範囲内に居たものを綺麗に削り取った。
　コッキングしてざまにもう一発。溢れ出た第一陣の殲滅は二発で足りた。

　が、破れる扉は一枚に留まらない。
　二枚、三枚、四枚――！

「逃げるよ！」

「は、はいぃ！」

　半ば呆然とするフィオの肩を叩いて、二人して走り出す。
　食い下がろうとするゾンビをショットガンとヘヴィーマシンガンで振り払い、アタシたちは廊下を駆ける。
　進む先に並ぶ病室の扉が次々に破れ、そこからもゾンビがわらわらと現れてきた。

「は、挟まれちゃいました！」

「フィオ！　左のそこ！　階段！」

　前からくるゾンビへグレネードを転がしざま、曲がって階段を駆け下りる。
　背後から爆発音。

「この病院って何階立てだったっけ？」

「知りません！」

　やれやれだ。

【現在地：Ｆ地区　病院】

124 名前：ＤＩＯ ◆kYsrWORLDo ：2007/11/24(土) 00:59:51

（ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓＤＩＯ）
　
>>115
　
　
　
　ふむ、どうやら理解を得られそうにないな。
　ああ、実に残念だ、君は気に入っていたのだが
　　
　　
　　
　　
　　
　　
　　　　　　　　　　ならば、死ぬしかないな、ジャンヌ・ダルクッ！！
　　
　　
　　
　　
　　
　　

125 名前：ＤＩＯ ◆kYsrWORLDo ：2007/11/24(土) 01:00:10

　　　　
　　　　　　
　
　　
　　
　　
　
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　！？
　　　　　　
　
　
　
　
　
　
　

126 名前：ＤＩＯ ◆kYsrWORLDo ：2007/11/24(土) 01:00:38

　
　
　
　　　　　　　　　　　　　　...., ,~~:::~,,,,,,,,,:~~,::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　 . ...,. :::,,::::::::~,::,.,:~:::::::::::　:::.~:~:,~,,,,:,,,:,::
　　　　　　　　　　　　　　.. .,,,,,,.:~::::::::::,,~::,,::::::　　::,:~::.:,::,,,
　このトールボット..::::~,,,,,,::,::::::::~.::::　　　　　　　: :::::::::~,,,.,,:::.,.,... . 兵士相手の戦い方
　決意するなり、.,:::::::::.,,,,,,,,:　　　　　　　　　　　　　　　:::.,,,,,,::::::を斬り裂いた。
　薄皮一枚―　.. ..::::::::::::,,,,,,,:::::　　　　　　　　　　　　　　　::::::::::::::::,::... 僅かに歪ませる。
位相は悪魔. ...::::::.,,,,,:~:,,::　　　　　　　　　　　　　　　:.:::,~~~:,,...,,:... より強く蝕んだ。
　肌に浮き出る... ..:::::::,,,,,::::::　　　　　　　　　　　　　　　　　　:::::.:::::....~ .. ――その代
価として、乙女....:::,,:,,,,,,,,::: :::　　　　　　　　　　　　　　　::,,,,.::::, ,..
　　　　　　　　....~:::,,:::.~,:::　　　　　　　　　　　　　　　:,,,,,,,,,:,..
　トールボット将.,. :::::.......::::　　　　　　　　　　　　　:,:,,,,,,,,,,~....
　ただ純粋な膂.. .. .:......:::,,:::,　　　　　　　　　　　:::,:::,,,,,,,::::::::... が草地を食い荒らし
てブレーキ。愛剣.:::,,~,,,,,,,,,::::::　　　　　　　　　　:,:,:,,,:.::,.:::... .薙ぎ払っている。
　人の知覚を圧倒す. .,,:,,,,,,,,,,,.:::　　　　　　:::::::: ~,:::.:::,~~~::,るものか。
　　　　　　　　　　　　　. ..:::~:,,,,,,,,,,,,,,:::: ~::::::::::::,,:.:.,,,,:,,,~:,:::~,
　　　　　　　　　　　　　　,::::::　:~:::,,,,,.,:::::::.:::.,,,,,,,,,,,,,,,.:::　
　　　　　　　　　　　　　　...,:::~:::::,,,,:,:..,,,,,,,,,,,,,,,::,::~,::::
　
　
　
（現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）前庭）
　

127 名前：ゾンビ ◆Lisayc.tVc ：2007/11/24(土) 01:16:37

>>123

　投げ込まれた手榴弾はゾンビの群れを容赦なく吹っ飛ばした。
　呻き声と共に腐った肉片があたりに飛び散る。
　べちゃっという音を立てながらそこらじゅうに張り付いて赤く染めるのその光景、
　あまりにもおぞましい。

　階下に降りれば階段付近で数匹のゾンビが固まって
　何かを貪り食っていた。
　ぬちゃりぬちゃり。マナーもへったくれも無く本能のいくままに
　人食い行動に勤しんでいるのだ。

　階下に下りてきた新鮮な肉二人組みをゾンビ達は見逃さない。
　恐らく救出に向かったフランス兵のものであろう肉を食べることを止め
　目標変更、赤く染まった口で新たな餌にありつこうとしていた。

128 名前：ゾンビ ◆Lisayc.tVc ：2007/11/24(土) 01:17:09

>>127

【現在地：Ｆ地区　病院】

129 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2007/11/24(土) 01:22:40

>>120
　
「くそ、浅いッ！」
　
　仕留められなかったと言う事実に、思わず自身を罵倒する。
　原因は、魔法の発現点がずれた――という、実に単純な事実だ。
　だが同時に、その事実は眼前のソレが、姿形に見合わずに、ただそこに存在して
いるというだけで、こちらの魔法に干渉するほど、強力に事象をゆがめているとい
う認めがたい現実だった。
　ソレはもはや、自然災害などというレベルではない自存する歪み、思考する特異
点そのものだ。
　生半可な攻撃は通じない。ならば、どうする？
　
「だが、その前に――」
　
　そう、その前に。やらなければならないことが、ひとつ。
　
「今は昼間だろうが。暗くなるにはまだ早い！」
　
　イグジスト、と撃発音声詠唱。魔法発動、選択書式<ジャミング>。
　一帯を覆う闇、という本来あり得ない事象へと働きかけた魔法は、発現と同時に
持続中の魔法へと強制中断命令を挿入する。
　瞬間、まるで砕けたかのような有様で闇がほどけた。
　いかに強力な術者によって起動された魔法であっても、その基幹部に対して行わ
れた強制干渉に抗うすべはない。術者に継続の意志がなければ尚更だ。
　闇が晴れたと同時、両腕でスタッフを保持しながら油断無く索敵を開始する。
　一カ所に足を止める愚など起こせない。また先ほどのように闇を生み出されても、
今度は即座に対処できる自信はあるが――それよりも、未だに敵の本質が見えない
のは厄介だった。

（そもそも――何が目的だ、奴は？）
　
　カペルテータの発言が、この状況を引き起こした、というのは間違いがない。
　ただ、何がそこまで彼女の逆鱗に触れたのかまでは分からなかった。
　ただ、先ほどから兄妹、と言う単語に固執しているようにも思える――
　
「カマを、掛けてみるか……？」
　
　そうは思うが、同時に決定的な事態を引き起こす切っ掛けにもなりかねない。
　余計なことは考えずに、やはり速やかに殲滅するのが最上なのは分かっている。
　だが、未だに見えない得体の知れないなにかが、そこまでの積極的な行動を、彼
から奪い去っていた。
　
　そして、それが隙になった。
　視界に、陰。それはつまり――

「……上ッ！？」
　
　反射的に顔を上げる。だが、遅い。
　空から振ったなにかがレイオットに覆い被さり、その身をちに縛り付けんとする

「これ、は……」
　
　じわじわと、装甲に食い込んでくる糸状のなにか。効果の顕れ方こそ違うが、
レイオットにはその魔法がなんなのか、瞬時に検討が付いた。これは―――
　
「<ディスポーズ>と、同系の魔法――まずいっ！」
　
　まずい、と言う叫びとともに、まだ自由になる右手で呪文選択装置と操桿を立て
続けに操作する。選択書式は――
　
「イグジストっ！」
　
　<カット>、発動。残り拘束度数１０。スタッフ先端を基点として、長さにして
5〜6mほどの不可視の刃が顕現した。光の屈折によってかろうじて力場を視認でき
るほど極薄のそれは、魔力で編まれているらしい切断という属性が付与された糸を
容易に裁断、戒めから解放された右腕を全力で振るう。
　糸がたたれ、束縛から解放される。
　
　糸の残骸を振り払いながらレイオットはゆっくりと立ち上がり――
　
「さっきから兄だの妹だのとうるさいが――なんだあんたは何がやりたいんだ！？」
　
　それは、主としてはただの時間稼ぎ以外なにものでもなかったのだが、同時に
偽らざる本音でもある。問い質す声音が、森の一角に響く。
　
（現在地：Bエリア「繁華街」）

130 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/24(土) 01:29:39

DIO vs JEANNE ―The forth part of king Henry VI―

>>124>>125>>126

　殺った、と。そう確信した間合い―――シャルル・マルテルの剣が一分の
狂いもなく、必殺の閃きを瞬かせたはずなのに。
　致命傷を負ったのは、乙女だった。
　黒甲冑に蜘蛛の巣状の亀裂が走る。その中央に穿たれた穴は、心臓まで達
していた。「あ……」と呟いてから、遅れて喀血。緑の絨毯を乙女の鮮血が
濡らす。がくりと跪き、天を仰いだ。「あ、あ、あ、あ……」
　戦慄きながらも、空へと手を伸ばす。震える指先が、光を求めて必死にさ
まよう。
　死に瀕した乙女の血肉に誘われて、彼女の影から契約の悪魔が這い出し始
めた。――― 一匹、二匹、三匹。まだまだ湧いて出る。複数の悪魔と契約
を交わすなど通常の「悪魔憑き」では不可能なのに。
　乙女の行き先は決まっている。彼女の亡骸も、悪魔との取引に使われたか
らだ。もっとも深き魔性こそが、乙女の墓地となるだろう。
　だが、彼女は必死に天を求めた。
　泡を立てて溢れ出す鮮血。
　乙女は最後に呟く。
　
　―――イエス様。

　崩れ落ちた乙女の遺骸は、森が受け止める前に悪魔が掠め取る。影の棺桶
が乙女にむしゃぶりつき―――ようやく、異変に気がついた。
　乙女の死体は忽然と消え失せていた。黒甲冑だけが、彼女の死を示すかの
ように悪魔の胸に抱かれている。




「……あらあら」
　お茶を愉しんでいたアリスは、ようやく口を開いた。
「ジャンヌは死んでしまったのね」

　　―――だったら、もう、このお話はお終い。

　かつり、と音を立ててカップを置くと、それがリドルの終了を告げるチャイ
ムとなった。次の瞬間にはアリスもテーブルも椅子も、ティーセットも全て消
え失せて、そこには役を外されたトールボット将軍／帽子屋―――ディオ・ブ
ランドーだけが一人残される。


（ジャンヌ・ラ・ピュセル→死亡）

【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）前庭】

131 名前：＜呪われた公子＞ゲイナー ◆GAinErMg8k ：2007/11/24(土) 01:39:54

『死神（デス）ゼアド vs ＜呪われし公子ゲイナー＞』

>>122
　
　襲い来る悪意の暴風。
　それに対し、はたして彼はどうしたか。
　
　答えは簡単だった。彼は前方から迫り来る弾幕と屍食魚めがけて走り出した
のだ。同時に右手のＭＰ７Ａ１を突き出すようにして構え狙いをつける。そし
て、視界を埋め尽くす弾幕の間を、それでも狙うようにして死神めがけて撃つ。
　
　撃つ。撃つ。撃つ撃つ撃つ撃つ！
　
　弾幕と接触する直前でＭＰ７Ａ１を投げ捨てた。
　この銃はこの世界に来てから手に入れた便利な道具ではあったが、逆に言え
ば所詮は便利な道具に過ぎぬ。彼が真に便りとするは、己が体と、修めた剣技
と魔術の極意、そして身を覆う鎧のみ。
　
　迫り来る横暴なる鉄槌。破壊の具現。
　その魔弾が彼の身を打ち砕かんとした瞬間、彼の鎧が山吹色に輝いた。
　鎧の表面を、水面に波紋が走るようにしてエネルギーが疾走していく。
　
　それは魔術などという小手先の技術などではなかった。純然たる魔力の爆発（オーバードライブ）。
　
　まるで太陽のように鎧がまばゆい輝きをあげる。同時に全身を駆け巡る圧倒
的な魔力を脚力に上乗せし、弾幕めがけて一気に突っ込んだ。
　
　彼の全身に五指の死霊が喰らい付く。それを圧倒的な魔力の本流が弾き飛ばした。
　無数の死骨魚が彼めがけて猛然と襲いかかる。それを見て彼は嘲笑を上げた。
　
　笑いながらその右腕を高々と振りかぶる。
　彼の左手には鎧と同じくまばゆい光を放つ彼の愛剣。ならばもう一方に右の手は？
　いつのまにかそこにはもう一振りの剣が握られていた。
　魔剣の召喚。天秤の公子のお家芸。
　この森は出ることは不可能だが入ることは比較的容易。
　それは召喚に関しても同じこと。外より内に招きだされる。
　
　それは飾りの無い柄の付いた銀の業物。＜法＞の剣。
　スコットランドの田舎町で祭られていたものをアーネンエルベが買い取った剣。
　そして彼のものとなった剣。
　
　彼は混沌に属する魔人だが、＜法＞の武器を使うことにすらなんの躊躇いも
存在しなかった。なぜなら彼は元＜天秤＞のチャンピオン。いまでは＜法＞と
＜混沌＞を相手に遊戯を挑む＜呪われし者＞だ。
　つまらんイデオロギーなどになんでこだわる必要があろうか！
　
　左の剣がひときわ強い輝きを放ち、右の剣が青白い炎を吹き上げた。
　死骨魚の群れと接触。否、接触直前、振りかぶった右腕を全力で振り下ろす。
　青い炎が虚空を焼き払い、迫る魚を焼き払う。
　光を放つ剣を振るい、残った魚を斬って捨てる。
　
　そのままさらに彼は加速。銃弾のような勢いで前へ前へと進攻する！
　両脇および背後から襲い掛かる数十の鎌。意思あるように彼を追尾するそれを、
鎧とその表面を流れ放出される魔力のみで弾き落とす。
　
　そのような卑小な攻撃など、彼に対しては無駄だった。

132 名前：＜呪われた公子＞ゲイナー ◆GAinErMg8k ：2007/11/24(土) 01:40:49

>>131
　
　そう――――無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄――――無駄だったのだ。

　「死神よ！汝には余は殺せぬよ！」
　
　虚ろな哄笑をあげながら、呪われた公子は死の具現たる死神へと突撃する。
　炎を吹き上げる剣を振りかぶり、輝きあげる剣を構え、死神を殺さんと、
ただひたすらに走っていく。加速していく。
　そして刃圏へと突入。炎を纏いし法の剣を死神の頭蓋めがけて振り下ろした。
　
　
【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）地下】

133 名前：エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ ◆SV001MsVcs ：2007/11/24(土) 01:45:08

>>127>>128

　階段を降りた先にもゾンビは、居た。
　それも、“お食事中”らしい。　

「病院丸ごとゾンビの巣になってるみたいね」

「勘弁してほしいです」

　食事の手を止めてぬらゆらとゾンビ達は立ち上がり、こちらへ向かってきた。

「おかわりをご所望みたいよ」

「鉛弾をご馳走してあげます」

　ショットガンとヘヴィーマシンガンを向かってくるゾンビに叩き込む。
　戦車を相手に出来る銃火器に人間の死体が対抗できるわけがなく、あっさりと沈黙した。。
　前は黙らせたが後ろ、階上から聞こえてくる声は途切れずに迫ってくる。

「さっさと逃げないと病院丸ごと相手にすることになっちゃいますよ」

「弾がもたないわね」

　ここから脱出した後さらに街を移動して施設に乗り込んで――頭痛くなってきた。

「エリちゃん！　早く早く！」

　フィオに急かされ、アタシは階段を駆け下りた。

【現在地：Ｆ地区　病院】

134 名前：マルチアーノ12姉妹 ◆M12sisrIV6 ：2007/11/24(土) 01:52:55

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
>>121
　
　逆しまに、横薙ぎの斬撃が襲い来る。
　鎌首を擡げた蛇が食らい付く、その牙の如き剣の一閃。
　今のジューンの体勢から言うなら、丁度首に当たる部分を断ち切る為の刃の動きだ。
　左右の防禦を固めれば、其処を蛇身を伸ばす様な刺突が掻い潜ってくるだろう。
　
　だから、後ろへと大きく跳んだ。
　低い体勢から膝の発条を活かし大きく一跳、手にしたマシェットはその侭に左手を付い
てもう一跳。
　両足が地に着いたときには、胸を反らせた左前半身になっている。
　小さく息を吐くと、袖口からは小さな諸刃のスローイングダガーが滑り落ちて手の中に
収まる。
　柄から刃まで、一体に成形された鋼造りの投げナイフ。
　指の間に三本ずつ……左右の拇指と示指にはマシェットとナイフがそれぞれ握られた侭
だからだ。
　右足を踏み出しながら掬い上げる様に右の、更に左のダガーが空を切り裂く。
　腕を振るっての投擲、勢いもその侭に地を蹴った。
　
　此処まで、彼女には見えていただろうか。
　常人には遥かに追い切れぬ一連の動き、その中に於いてすらも。
　
　
　男装の少女の、ジューンの冷たい表情には未だ微かな影が宿っている。
　
　【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】
　

135 名前：魔神王リィーナ：2007/11/24(土) 02:05:44

>>129
　……この男の対応能力はどうだ。
賢者の学院あたりで、机に向かって勉強してばかりの魔術師では及びもつかない、
まさに実戦で鍛え上げた力。10,000回戦えば9,999回はわたしが勝つが、
残り1回の極小の勝機を引き摺り出しかねない、正に真の強者といえるだろう。
よろしい、ではわたしも……。
　
「さっきから兄だの妹だのとうるさいが――なんだあんたは何がやりたいんだ！？」
　
　……それを訊くのか。このわたしに。
たったひとつの願いを抱えて生きてきた哀れな王女に、それを訊くのか。
いいだろう。死にゆく者たちへの手向けに、昔話でもしてやろうか。
　
「……あるところに、王子様とお姫様がいたとしよう。
この兄妹は『太陽の王子、月の姫』と称され、父王の賢政もあって、
おおむね平和に暮らしていた。だが……」
　
　だが、お姫様はいつも思っていた。
　
　どうしてわたしは、こんなにみっともない黒髪をしているのかしら。
兄様のように、美しく輝く金髪でありたかった。
　
　どうしてわたしは、こんなに臆病なのかしら。
兄様のように、雄雄しくありたかった。
　
　どうしてわたしは、こんなに醜い心なのかしら。
兄様のように、気高くありたかった。
　
　そうすれば、そうすれば。
　
「そうすれば、兄様といつも一緒にいられる、いつまでも一緒にいられる。
お姫様は毎日ずっと、そんなことばかり考えながら生きていたんだよ。
人間の本質とは恐ろしいものでな。人間でなくなった今でも、その願いは離れようとしない。
もともとわたしはこの身体を奪っただけの存在のはずなのだがね。
今ではこうして奇妙に融合してしまっている。おかげで今でもわたしは、
兄様のことばかり考えている哀れな妹をやっているというわけさ。
自分が願ってやまず、ついに叶わなかった望みを実践しているお前達を妬ましく思っても、不思議はないだろう？」
　
　こぶしを握り締めてみる。わたしの心身は、哀れな妹のそれと非常に相性が良かった。
今ではどちらが主でどちらが客か、自分でも判断がつかないほどだ。
相性が悪ければ、力をまったく発揮できず退治されることも有り得るのに。
馴染む、馴染むぞ……！
　
「雷よあれ」
　
　魔力に生み出された紫電が、暗い嫉妬を現実のものにするために迸る。
　
　
　
（現在地：B地区繁華街）

136 名前：◆Lisayc.tVc ：2007/11/24(土) 02:12:34

>>133

　階上からはゾンビの大群が階段を下りてくる。
　ただいま彼女達がいる階もいくつかの病室が引っ掻かれ始めていた。
　ならば選択肢は下に下りるという一つのみである。

　下の階はシャッターが半分閉じられていたが、しゃがめば
　普通の人間ならば通れる程度だ。
　ゾンビから逃げたいなら滑り込むしか無い。

　その階にはゾンビは一切いなかった。
　正しくは居たのだろうが、既に処分された後である。
　ほとんどが頭に大量の銃弾を受けたりしていて
　二度と蘇生できないように灰にされたものすらあった。

　下の階下に続く階段はシャッターで閉じられている。
　破壊することも可能なのであろうがシャッターの向こう側もゾンビの呻き声が聞こえている。

　床には大量の薬莢が落ちている。9mmパラベラムのものであろう。
　更に階下に降りずに廊下を進めばフランス軍の兵士だと思われる死体が確認できる。
　顔は剥がされていない。全員自決による死亡であった。

　その兵士を横目に更に先へ進むとナースステーションにたどり着く
　近くには階段やエレベーター（止まってはいたが）もあった。
　下層からはゾンビの呻き声は聞こえない。しかし安堵するにはまだ早かった。

　突然の咆哮。

　身の毛もよだつその声は先ほどより近か居場所から発せられている。
　耳を澄ませばかすかに聞こえるだろう、だんだん近づいてくる鎖の音が。

【現在地：F地区　病院】

137 名前：ＤＩＯ ◆kYsrWORLDo ：2007/11/24(土) 02:16:47

　
（ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓＤＩＯ）

>>130
　
　
　
　『全て』を敢えて差し出した者が最後には真の『全て』を得る。
　しかし、行き着く先を見据えていない者は差し出す事は出来ない。
　そういう者は『全て』を奪われ、消え行くだけの『運命の奴隷』。

　君はどうやら『運命の奴隷』に過ぎなかった様だな、ジャンヌ。
　わたしに全てを奪われるだけの役割だったという事だ。

　

　この地はまだ色々な者が集っているようだ…………
　行くとしよう、このＤＩＯの引力に引き寄せられる者が居るはずだ。
　そいつが奪われるだけの『運命の奴隷』に過ぎないのか？
　あるいはわたしの『信頼できる友』になれる者なのか？

　――――――フッフッフッ、何とも楽しみだ……



　ジャンヌ・ラ・ピュセル

　再起不能（リタイア）.........？


　　　／|＿＿＿＿＿＿＿＿___
　　く　　to be continued | | / |
　　　＼|￣￣￣￣￣￣￣￣￣
　
　
　

138 名前：◆kYsrWORLDo ：2007/11/24(土) 02:17:55

DIO vs JEANNE ―The forth part of king Henry VI―　レス番まとめ

闘争舞台：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）前庭

＊タグを利用している為、対応ブラウザでの閲覧推奨

挿話　第一巻[クッキング・フォレスト]

>>52 >>53 >>54 >>55 >>56

ＤＩＯ側導入

>>57 >>58 >>59 >>60

ジャンヌ側導入

>>61 >>62

マッドティーパーティー

>>63 >>71

リドル

>>72 >>73 >>74 >>82 >>96 >>97 >>112 >>115

世界を支配する能力ッ！

>>124 >>125 >>126 >>130

エピローグ

>>137


next battle

ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓミスティア・ローレライ

ＤＩＯｖｓ有里湊

139 名前：ヴィルマ・ファキーリ：2007/11/24(土) 02:34:06

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
>>134
　
　飛来する刃は計六本。全てが急所に狙いを定めている凄まじさだった。
　ついでにその奥からは、それらを追いかけるように投擲手が迫り来る、というおまけつきだ。
――いや、ダガーの方がおまけなのか？
　
　私は左手を振った。ジェラルミンのケースが舞う。
　潰れた嫌な音がした。
　鋼で出来た鋭いものが、肉を切り裂いてめり込む音だ。
　
　
　ダガーは全て止まっていた。止めているのは開いたケースの中身だった。
　あの研究員の首だ。六本の刃先は、あの不可解な死微笑の左目と両頬、それと口中に深々
と刺さっていた。
　手元の操作でケースを開いた私は、自分が切り落とした頭部で高速の乱打を受け止めてい
たのだ。脳以外なら多少の損壊は問題ではなかったから。
　
　
　ケースを放り捨て、着地と同時に右膝を肩近くまで上げ、左足一本を軸にする。『提膝平衡』
の姿勢から頸力を充溢させる事、半秒と弱。
　躍進。
　私は少女を迎え撃った。
　
　山刀には袈裟懸けの『奔天残雲』、ナイフには切り上げる『黒龍出水』を打ち合わせ、次いで
全身を旋回させながら放つ『抱虎探爪』と『没影穿林』の魔剣。
　剣光が躍る、煌きが彩を成す。
　千と変じ、万と化す刀理の体現――これが、武だ。
　
　
【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】

140 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2007/11/24(土) 02:42:33

>>135
　
　――話は、それで終わりだった。
　多分、それは悲しい話なのだろう。
　多分、それは寂しい話なのだろう。
　
　たったひとつの望みすら叶えられなかった、哀れなお姫様の物語。
　
　それは確かに、哀れんでもよかったのかも知れない
　それは確かに、共に悲しんでやってもよかったのかも知れない。
　少女の気持ちに気づきもしなかった兄とやらに、ともに恨み言をつぶやいてやっ
てもよかったのかも知れない。
　
　完全な傍観者であれば、そうしてやってもよかったのかも知れない。
　だが。こいつは今なんと言った？
　叶わなかった望み？　妬ましく？
　
「面白いこと言うよな、あんた。それは本気で言ってるのか？
　本気でそう見えたのか？　あの娘の眼を見て――本当に、そんなことを思えたのか？」
　
　だったら納得だ、とレイオットは嗤った。
　そんなだから、あんたは兄貴に逃げられたんだ、と。
　
「―――イグジストっ！」
　
　ばじんっ！　音を立てて、胸部装甲版から拘束度端子がひとつ弾け飛ぶ。
　<ディフィレイド>発動――残り、拘束度数9。
　と同時、天空から降り注いだ稲妻が、レイオット目掛けて突き刺さる。だが、事
前に展開した<ディフィレイド>がそれを阻止。力場によって受け流された紫電は、
何物をも傷つけることなく虚空に消えた。
　
　そして、彼女の話でようやく謎のいくつかが解けた。
　圧倒的な現象処理能力を持っていながら、止めを刺しきれない詰めの甘さ。
　それはすなわち、核となり、そして彼女の原型となった、王女のそれに他ならない。

「要はなにか。
　俺は我が儘な小娘の勘違いと八つ当たりに付き合わされてるだけか」
　
　蓋を開けてしまえば――至極つまらない、現実だけが残っていた。
　その事実に、皮肉げに唇が歪む。当然それは見えないだろうが、気配は十分に
伝わるはずだった。

「このままじゃ気分が悪いからな。いくつか誤解を解いておこう。
　あいつと俺は赤の他人だ。ひとかけらの血のつながりだってない。そして、つい
でに言わせてもらえば――あいつの肉親は、俺がこの手で殺したよ。仕事でな」
　
　……出来れば、カペルテータに聞こえていないと良いのだが。
　そんなことも思うが、聞こえていたら聞こえていたで、それまでのことだった。
　事実は事実であり、過去は過去だ。ただ実際に起こったこと。どんなに言葉を尽
くしても、絶対に変えられない。
　
「じゃあ改めて聞こう、悲しいお姫様。あんたは自分が不幸だと思ってるらしいが、、
あんたとあいつ、どちらが不幸だと思うね？　肉親に顧みられなかったあんたか。
目の前で、両親を殺されたあいつか。
　望みが叶わなかったあんたか。
　望みすら抱けなかったあいつか。
　どちらが？　どちらが？　――こたえられないよな？　あんたがすでに人間じゃ
ないって事を差し引いても――そんなことに意味なんて無いんだ」
　
　声が、強ばる。苛立ちが止まらない。
　確かに不幸だったろう。確かに悲しかっただろう。

　だが――「それが、どうした」
　
　嘲るように、レイオットはスタッフを構える。
　
「そんなものは、どこにだって転がってる程度のモノだ。
　なるほど、あんたにとっては確かに重要だったかも知れない。だけどな。
　だからといって――それに、誰かを巻き込んで良いなんて事は、絶対にないんだ。
　そういうのは……気持ち悪いんだよっ！」
　
　がしゃん、と音を立ててスタッフが駆動する。

「怒ったか？　そりゃよかった。俺も随分と気が立ってる。
こんなくだらないことは、お互いに――さっさと終わりにしようじゃないかっ！」


　呪文選択、無音詠唱。

「――イグジストッ！」　
　
　再び、<ブラスト>――『第一の業火』が起動、その破壊力を縦横に炸裂させる。
　生み出された爆発と衝撃。それに挑み掛かるように、レイオットは走り出した。

（現在地：Bエリア「繁華街」）

141 名前：エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ ◆SV001MsVcs ：2007/11/24(土) 03:03:16

>>136
　
「この階段で降りるのはここまでか」

　階段自体は下まで続いていたがシャッターが堅く閉ざしていた。

「迂回するしかありませんね」

　開ける手はあったが、唸り声とガタガタ揺れる所から開けると碌な事にはならなそうだ。

「ここは閉めよう。時間稼ぎにはなる」

　このフロアに降りるときに潜り抜けたシャッターを完全に下ろす。
　これでしばらく上からのゾンビは来ない。

「この階、なんか雰囲気が違いますね」

「ゾンビが居ないのと……」

　床に落ちている輝きを拾い上げた。見慣れた真鍮の光。

「これのせいかな」

　９パラ。フランスの同業者だろうか。

「でも人気ないです」

「どこかで息を潜めてるのか」

　周囲を見回しながら階段を求めて廊下を歩く。
　人気がない理由がそこにあった。

「エリちゃん……」

「……追い詰められて自決したか」

　拳銃を手に事切れている兵士達の死体。

「妙ですね」

「何が？」

「その、食い荒らされてないじゃないですか」

「そういえばそうね」

　ゾンビに追い詰められて自殺したのなら、死体は食い荒らされ、さらに歩き出していてしかるべきだった。
　連中の食欲は生き死に問わずだ。綺麗な死体が残るはずがない。

「ということは……」

「どういうことでしょう？」

　分からない。

　アタシたちは敬礼一つを手向けに彼らを後にした。
　無人のナースステーションの前を通り、下へ降りる階段を見つけた。
　ゾンビの唸りは聞こえないが、油断は出来ない。

　――呻き声が、聞こえた。

「え、エリちゃん」

「何か、来たみたい」

　上の階で聞いた気味の悪い声だ。

「な、何か鎖を引き摺るみたいな音もしますよう」

「こっちに近づいてきてるわね。……逃げる？」

「いいえ。ここで迎え撃ちましょう。逃げた先が安全とは限りませんし、逃げた先に敵がいたら挟み撃ちにされる恐れもあります。
　でも、このフロアだったらゾンビもいません。前にだけ集中できます」

「そうね。――やるわよ」
　
「はい！」

　階段から離れ、銃口を向ける。
　近づいてくる鎖の音が距離を測るバロメーター。

「そのまま来い。出会い頭にショットガン叩き込んでやるから」

　アタシはトリガーに指を掛けた。

【現在地：F地区　病院】

142 名前：また別のお話…… ◆ALICEsQkXc ：2007/11/24(土) 09:54:09

挿話　第二巻[マルセイユの乙女]



　今ではもう、だあれも覚えてないお話。
　　彼女も忘れちゃったお話。
　―――でも、ほんとうにあったお話。



　彼女は人形遊びが好きな子だったわ。
　とっても女の子らしい遊び。
　でも、なんだかおかしいの。
　甲冑鳴らして軍馬が嘶く。
　鉄靴が土を踏みならして、レギオンレギオン。
　彼女が集める人形は、昔の騎士さまばかり。
　友達と遊ぶときも、空き地で男の子と一緒に旗を振りたがったわ。
「どうしてかしら」
　母親は不安です
　女の子なのに、騎士ごっこが好きだなんて。
「どうしてだろう」
　父親は喜んだわ。
　女の子なのに、騎士ごっこが好きだなんて。

　でも、パパもママも彼女のことはなぁーんにも知らない。
　彼女は騎士さまなんて好きじゃなかったの。
　男の子たちと違って、ぜんぜん興味なんて無かったわ。
　彼女が熱中していたのは、たった一人の乙女。
　祖国を勝利に導いた救世主。
　世界で誰より愛されるアイドル。
　彼女は憧れたわ。
　彼女は夢見たわ。
　絵本から始まって、
　小説を読み、
　大人が読むような歴史書も手を出して、
　やがては難解な裁判記録まで紐解いた。
　彼女は貪欲に乙女を求めたの。
　乙女の全てを識りたがったの。
　彼女はまだ、少女とも呼べないくらいの歳だったのに。
　それはとてもとても珍しいこと。
　でも、きっと根っこの部分では彼女も他の子も同じ。
　彼女は乙女が好きだったのよ。
　他の子がイギリスの童話に夢中になるように、
　彼女は乙女に耽溺したわ。
　みんなも覚えがあるでしょう？
　十年前――二十年前、まだ「自分」なんて何も分からなかった頃に、
「ああ、あんなに熱中していたことがあったな」って。
　忘却の彼方へと旅だった、死蔵の想い出の一つや二つ。
　―――彼女のも、それと同じ。
　だから、月日が流れ、環境が変わり、少女から娘へと成長していく過程で、
　彼女の中から乙女は消えたわ。
　
　それからの彼女は、普通の女の子。
　誰もが認める。自分も認める。
　普通の女の子。
　熱中の対象も、年頃の娘らしくお洋服になったわ。
　……ただ、ちょっとだけ趣味が変わっていて。
　彼女は遠く離れた、極東のファッションに夢中になってしまっただけ。
　彼女の国では、そこから流れ込む文化が大流行していたのね。
　かつてヨーロッパがトルコの文化を積極的に取り込んだように、
　彼女の国では、極東のあらゆる文化が大流行。
　お洋服も大人気。
　かつての城塞都市にはショップもできたわ。
　でも海の都から城塞都市は、少女の足では遠かった。
　やっぱり通販で我慢するしかない。
　不幸は重なる。
　彼女の家はちょっとだけ貧乏。
　お洋服を好きなだけ買い漁れるようなお姫さまじゃなかったの。
　だから、彼女は少ないお小遣いで、
　ハンカチやソックスを買って心を満たしたわ。
　どんな小物でも、
　大好きなブランドと一緒になれたら心が温まったから。
　
　―――でも、この禁じられた趣味はみんなには内緒。
　だって彼女は普通の子だったから。

　彼女は変わったのかしら？
　もう乙女のことは覚えてないのかしら。
　さて、どうでしょう。
　表向きはその通り。彼女自身も思い出さないわ。

　でも、あの黄金の時代、
　彼女が、絵本で小説で映画で乙女が火刑台に上るたびに泣いて、
　英国の馬鹿、教会の馬鹿、王太子さまの馬鹿と、
　母親に八つ当たりした―――その記憶は薄れても、
　乙女に憧れた、乙女に恋した、
　その想いまで消すことはできるのかしら？

　それは誰にも分かりません。
　私にも分かりません。
　きっと、彼女にも……。






　　　　　　　　　　　　―――これはこれで。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　また別のお話。



　
　　　　　……でも、あまり楽しい話じゃないわ。

143 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/24(土) 09:57:14

〈L'arbre de la fee〉

>>137　
>>142



　パーティは続く。
　パーティは続く。




　……うっすらと瞼を開く。

　そこは、彼女が初めて〈声〉を聞いた場所に似ていた。
　村を離れ、ヴォークリュールに向かう高台―――芝生に覆われたあの自由地
には、枝を大きくのばし、広い木陰を作るブナの樹が密生していた。
　思えば、〈ブールルモンの妖精の樹〉と呼ばれていたあの高台から、全てが
始まったような気がする。

　いつか村の神父さまが、樹を切ると言い出した。この樹には妖精が棲んでい
る。あまりに危険で、あまりにも罰当たりだから、と。
　まだ少女だった乙女は憤慨した。神さまを理由に神さまがお赦しになった奇
跡を否定しようとするあなたのほうが、よっぽど罰当たりです、と。
　乙女の抵抗のお陰で樹が切られることはなかった。この樹には、まだ妖精が
棲んでいるのかしら。

「妖精はまだ見てないわね。でも、アリスならいるわよ？」
　胡乱な思考に刺激を与える少女のソプラノ。
「おはようジャンヌ。快適な目覚めを得られたかしら」

　少女は振り子になっていた。宙をいったりきたりと揺れていた。天井を突き
破って伸びた枝に、二本の蔦を垂らした空中椅子。
　あれなら、乙女も知っている。スウィングとかバランソとか呼ばれていた。
　村にいた頃は、彼女も夢中になって揺れたものだ。

　乙女は草の寝台から身を起こす。ここは、村の高台ではない。似ているけど
違った。確か、深い深い地下室の一つ。少女が「神殿」と呼んでいた密室。
　ああ―――と思い出す。彼女はアリスで、私はジャンヌだ。

「でも……」

　私は、死んだはずでは。
　胸に手を置く。黒甲冑は光沢を拒んで、乙女の薄い胸部を守護している。疵
一つない。鎧の奥―――胸を穿たれた痛みも、消え失せていた。
　完治できるような疵では無かったはずだが。

144 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/24(土) 09:59:00

>>137　
>>142
>>143


「そう、確かにあなたは死んだわ」

　スウィングに腰掛けたまま、アリスは語る。

「でも、それが何だと言うの？　あなたが死んでも何も終わらない。始まりに
戻るだけ。この〈妖精の樹〉から、ジャンヌ・ラ・ピュセルの全ては始まった。
だから、あなたはここから何度でもフランスを救いに行くの。終わりはないわ。
あなたがフランスを救いきる、その時まで……」

　乙女は何度でも蘇る。
　彼女は自らの使命を反芻する。〈声〉が彼女に何を命じたか、推敲する。
　そうだ。アリスの言う通りだ。乙女の為すべきことは救国。フランスがまだ
救われていないのに、乙女に終わりが訪れるはずがない。

「私は……まだ、自分の義務を軽く……見ていたのね」

「気にしないでジャンヌ。誰だって痛いのは嫌いよ。また次から頑張ればいい
わ。私たち、��次�≠ｾけはたくさんあるのだから。―――それより、もっと深
刻な問題があるの。それはやっぱりあなたのこと」

　こっちに来て。そう少女は手招きする。乙女が空中椅子に近付くと、アリス
は「揺らして」とリクエスト。「自分でこいでも速くならないのよ」


　乙女はアリスの背中を押した。乙女は空中椅子を吊す蔦を揺らした。椅子
が揺れる。アリスが宙を踊る。少女は振り子となる。
「速いわ、楽しいわ！」
　アリスの黒いスカートが翻るけれど、ドロワーズは見えない。下着は見せ
ない。どんなときでも少女の身嗜みだけは忘れない。

「もっと速くできるわよ？」
　空中椅子を揺らしながら、乙女は囁く。
「それは駄目。怖いもの。このスピードがちょうど良いのよ。それより、
あなたの話をしたいわ。してもいい？」
　ええ、と乙女は頷く。
「それじゃあ遠慮無く。―――ねえ、ジャンヌ。私の黒乙女。あなたは
いつから剣士〈シュヴァリエ〉になったのかしら？」

　乙女を首を傾げた。私は剣士などではない。……だが、先のトールボ
ット将軍との戦いでは愛剣を抜いて斬りかかった。結果はこの有り様。
　乙女、スタートへ戻る。

145 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/24(土) 10:02:17

>>137　
>>142
>>143>>144



「そう……ジャンヌ、あなたはとても強いわ。ただの乙女なのに。ただの村
娘なのに。力持ちで、男を相手にひるまない。でも、それはあなたが骨の一
つ、髪の毛の一本に至るまで悪魔に譲り渡しているから。あなたが剣士だか
ら強いわけではないの。だから、剣士として戦っても絶対にフランスは救え
ないわ」
　
　乙女は考える。オルレアンで、パリで、コンピエーニュで―――私はどの
ように戦っただろうか。剣を振り回し、自らを刃にして敵陣に斬り込む。
　……そうはしなかったことだけは確かだ。

「覚えてないの？　あなたはルーアンの裁判で、自分は一人もひとを殺めた
ことはありませんと強く訴えた。私も森も、あなたの言葉を信じています。
　ジャンヌ、あなたは人殺しなんかじゃないわ。―――じゃあ、誰に殺させ
ていたの？　オルレアンで英国兵を血祭りに上げたのは、いったい誰？」

　そうだ。乙女は常に先頭で戦旗を翻していた。味方の兵を鼓舞し、勝利へ
導くことこそ乙女の使命だった。

「あなたにはまだ、思い出していない数多くの��力�≠ｪあるわ。フランスを
救うためには必要不可欠な力よ。あなた一人ではフランスを救えない。当然
よ。〈声〉はあなたに、フランスを勝利に『導け』と言ったのだもの」

「……その通りです」
　空中椅子を揺らすのやめて、その場にがくりとうなだれる。
「私がこの有り様では……救国はまだ遠い」

　アリスはスウィングの勢いを利用して、すとんと地上に飛び降りる。
　スカートが舞い上がり、いまちょっとだけ下着が見えた―――と乙女は思
ったが、少女の身嗜みのために何も言わない。

　アリスが振り返った。

「フランスを救うのはとてもとても困難なこと。それは確かよ。……でもジ
ャンヌ、あなたは選ばれたのだから。救うしかないわ。それがあなたの道」
　
　幾度でも。幾千度でも。救えるフランスが残っている限り、乙女は救国の
ために戦旗を振るう。あまりに厳しい道のり。―――だが、乙女は六百年前
に自らの運命を受け入れている。

「だから今夜も行きましょう。フランスを救いに。あなたの理想を叶えに」

　アリスが指差した先には、地上へと繋がるゲートが。
　彼女のフランスが待っている。
　乙女は無言で頷くと、剣を佩き、彼女の救国を再開する。


（ジャンヌ・ラ・ピュセル→一度目の復活）

【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）最深部〈妖精の樹〉→移動】

146 名前：文々。新聞 ◆DEVILbzibY ：2007/11/24(土) 10:41:03

森祭　紅魔組　導入



　「文々。新聞」短期集中連載
　幻想旅行記

「東方望郷鉄道館」


　第四回「紅い悪魔と妖精の森」
　　　　　　　　　　　　　文章／ko-akuma　監修／aya



――前回までのあらすじ――


　幻想列車がやってきました！

　理想郷間横断鉄道「プレステ＝ジョアン」
　理想郷から理想郷へと渡る唯一にして確実な手段。
　幻想の都と都の架け橋。
　停車駅は幻想郷の他に、エデン、アヴァロン、アトランティス、エリュシ
オン、カナン、ネヴァーランド、ファンタージエン、天竺、蓬莱、などなど！
　そして、やがて行き着く終点は―――

　東方キリスト教の伝説国家、プレスター・ジョンの国！

　プレスビュテル・ヨハネスの名を借りた理想郷間横断鉄道が、数十年ぶり
に幻想郷に車輪を休めたのです。
　
　新しい物好きの妖怪たちが、おっかなびっくりに――時には大胆不敵に―
―駅へと群がります。氷精が列車と駆けっこをして轢かれたり、森の魔法使
いが早速盗みに入って轢かれたりして大賑わいです。

　中でもひときわ強い興味を見せるのは、紅魔館の主にして永遠の少女、私
たちのレミリア・スカーレットさまでした。

「咲夜、わたしのトランクを用意して頂戴。これに乗って久しぶりに旅行を
するわ。いま、わたしが決めたの」

　……でも、残念ながらプレステ＝ジョアンにはパスポートがないと乗車す
ることはできません。パスポートの入手手段は当然のように謎です。
　車掌さんの話では、幻想郷では四枚しか発券してないんですって。

　一枚は、竹林の奥でお姫様の手に。月にいた頃に買い取ったらしいです。
　あの人たちからパスポートを譲ってもらうのはたいへん骨が折れるので、
レミリアさまは諦めるしかありません。
　
　残るは三枚―――でも、運命はいつだってお嬢さまの味方です。素晴らし
く幸運なことに、ペアの定期をパチュリーさまが持っていたんですから。
　さすがは私のご主人さまです。パチュリーさまって何でも持っているし、
何でも識っているんですよ。
　
　一緒に連れて行ってくれるなら、という条件でパチュリーさまはパスポート
をレミリアさまに渡します。
　パチュリーさまが大図書館から出てくるなんて、滅多にありません。レミリ
アさまと旅に出るのは、飛行船での南極旅行以来じゃないでしょうか。
　お嬢さまとパチュリーさまは大の仲良し。もちろん、二人っきりの旅行を拒
むはずもありません。

　でも、侍従の咲夜さんはとっても心配そう。レミリアさまとパチュリーさま
の二人旅なんて、あまりにも冒険的ですから。
　だって二人とも、自立できていない子供のようなものなんですよ。咲夜さん
がいないと満足に食事だってできません。

　そこで活躍するのが残る一枚。―――その行方は香霖堂にありました。
　古道具屋の店主が最後の一枚を所有していたんです。咲夜さんはさっそく
香霖堂を訪ねると、淑女的な交渉の末にパスポートを瀟洒にゲット。

　こうして幻想旅行の準備は整いました！

147 名前：文々。新聞 ◆DEVILbzibY ：2007/11/24(土) 10:42:35

>>146


　―――……整ったはずはずだったんですけど。

　レミリアさまは貴族なものですから、列車の内装に不満が爆発。
「椅子が高い」「クッションが固い」「レイアウトが気に入らない」「窓が
多い」「他の客の声がうるさい」「貸し切りじゃないとイヤ」「咲夜のお茶
じゃないとイヤ」……と、そんな感じできーきーと蝙蝠みたいに鳴きます。

　困った咲夜さんは、列車の事情なんていっさい無視してパチュリーさまに
パーラーカー（特別客車）を作ってもらうようお願いしました。
　パチュリーさまも久しぶりの外出とあって、外見は取り澄ましていますけ
ど、実はとてもはしゃいでいたのでしょう。遊び心とレミリアさまへ捧げる
友情をふんだんに使って、一晩で特別客車を作ってしまいました。
　列車の最後部に（勝手に）連結。こうして優雅な個室が完成しまし。
　特別客車のデザインはレミリアさまが大好きなヴィクトリアンスタイルで、
窓は少なく、壁はとても分厚いです。
　咲夜さんの能力のお陰で空間はあってないようなものだから、快適な不死
者生活が送れるというわけですね。

　客車の屋根には小さな時計塔が乗っかっています。これがとても可愛くて
パーラーカーはさながらミニチュア版紅魔館のようでした。

　
　―――こうして、不夜城の三人は幻想鉄道に乗り込んだのです。
　

148 名前：文々。新聞 ◆DEVILbzibY ：2007/11/24(土) 10:44:48

>>146>>147


　幻想郷を後にしたプレステ＝ジョアンが次に向かって理想郷は、深い森と
共棲する腐海都市〈妖精の森〉。聖女が生まれ落ちた血で、車掌さんの説明
によりますと、彼女は常にこの森から救国を始めるんだとか。
　驚くべきことに、この理想郷は数時間前にできたばっかりで、プレステ＝
ジョアンが停車するのは初めてなんですって。

　都市の地下鉄線と直通して、数分だけ停車。
　列車は次の理想郷を目指します。


「次の停車駅は〈妖精の森〉前駅〜、〈妖精の森〉前駅〜」
「え、また？」

　　――十分後〈Sufficiently after〉――

「次の停車駅は〈妖精の森〉前駅〜、〈妖精の森〉前駅〜」
「……ちょっと」

　　――十分後〈Sufficiently after〉――

「次の停車駅は〈妖精の森〉前駅〜、〈妖精の森〉前駅〜」
「どういうこと」

　　――十分後〈Sufficiently after〉――

「次の停車駅は〈妖精の森〉前駅〜、〈妖精の森〉前駅〜」
「……」


　レミリアさまは唖然とします。
　彼女は列車に乗るのは初めてでしたが、同じ駅に延々と停まり続けるなん
てあまりに不効率です。ぜんぜん面白くありません。
　一方、咲夜さんは背後に控えたまま、出過ぎない程度に推察をしました。
　幸いにも、この場には「動く賢者の石」ことパチュリーさまがいらっしゃ
います。知識には事欠きません。レミリアさまがぷんすかと怒っている間に、
咲夜さんとパチュリーさまは話し合いをして、一つの結論を導き出します。

　お嬢さま……もしかして、この駅はイレギュラーなのではないでしょうか。

　プレステ＝ジョアンは理想郷探知機のようなもの。路線図もダイヤもなく、
ただ理想郷を求めて汽笛を吹く。そのため、灯籠に吸い込まれる羽虫のよう
に森に呼び込まれてしまったのではないか―――と。
　とても瀟洒な推理です。すてきです。

　そして咲夜さんとパチュリーさまの予測は見事に的中していました。
　入り口はあれど出口はない。
　なんてことでしょう。世界という殻を閉じようとしているこの森に取り込
まれたプレステ＝ジョアンは、幻想の牢獄に監禁されたも同然だったのです。

　路線に駅はたった一つしかない。「〈妖精の森〉前駅」。そのせいで、プ
レステ＝ジョアンは輪廻の輪―――というよりは、某山手線のように同じ場
所をぐるぐると回り続けているわけですね。

「そんなの、冗談じゃないわ」

　レミリアさまは立ち上がると、車両の連結を切り離しにかかりました。
　どうするつもりですか、と咲夜さん
　馬鹿ね、咲夜。決まっているじゃない。紅い悪魔は薄く嗤います。

「―――この森の幻想を私の手で終わらせてあげるわ。そうすれば、列車
がここに留まる理由も無くなるでしょう？」

　
　こうして吸血鬼と魔法使いと従僕は、森へと降り立ったのです。



［前回までのあらすじ→おしまい］

149 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/11/24(土) 11:36:15

　“カトル・カール”導入



　―――某年十一月。事件発生直後。


　電話の声。「ヘイ、ヘイ、仕事中悪いなフリント。ちょいと悪いがそっちの奴の釘打ち(ネイルズ)
は後回しにしてくれ。神様が悪い子にお仕置きをしやがった。―――テレビを付けてみな。
大騒ぎになってるぜ。まるで三文小説(ペーパーバック)の幻想郷(ファンタジー)だ」

　アイスブルーの目をした男。顔にピエロのメイク―――直立した肉食獣(ジャガー)のような長身。
その全身を包む赤いレザースーツ。左手にスチール製の鞘と収められた軍刀(サーベル)。右手には古
めかしいスタイルの受話器―――中身は最新式＝衛星通信／秘匿通信／盗聴もお手の物。

「すまないが仕事場にテレビは置いていない」

　視線の先―――拘束された中年男／白目をむいて気絶寸前／両手の指と両足の指は粉砕。
腕には無数の注射の痕跡／左腕はすでに鬱血し腐敗寸前＝拷問中＝仕事中。重金属の壁で
三重に覆われた拷問室―――テレビの電波は届かない。
　視線の先―――“儀式”の途中で停止している“司祭”たち。異形の擬態／義体。
　拷問の神に忠実な、偉大なる執行者の群れ。

　電話の声。「おっと、そいつは悪かった。じゃあアレだ、なるべく早くこっちに来い。
そいつはもう棺桶(ベッド)に入れていいぜ。これだけ吐かせりゃもう十分だろ。土のシーツで安ら
かに眠らせちまえよ。もちろん花束と一緒にな」

　楽しげなニコラスの声。ギロチンの紐を引っ張るような。
　そしてフリント―――ギロチンの刃がかすかに頷いた。

　閃光―――フリントの行動／受話器を投げ上げる／振り向く／軍刀(サーベル)に右手をかける。
　切断―――Ｉの字を描く黒塗りの刀／頭頂部から股間まで両断。絶命／一瞬遅れて出血。
　消失―――血を払い落とす／収められる刀／落ちてくる受話器／空いた右手がキャッチ。

「今始末した」微笑とともに囁く黒豹(フリント)。

　電話―――信頼しきった声。「オーライ。それとカトル・カールのメンバーを全員集め
ろ。金は掛かるがしょうがねえ。今回はおまえら総出で仕事をしないとヤバいヤマだ」
「一時間で行く」

　計算―――死体の箱詰め／処理／メンバー全員の移動／全てを合算して判断。
　背後で“司祭”たちが動き出す。
　作業は全て四分の一(カトル・カール)に。分担／完璧に決められた作業。


　ダークタウン最強／最恐の傭兵＋拷問官。
　カトル・カールの出撃。

150 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/11/24(土) 11:37:56

>>149


　―――某年十一月。事件発生後一時間。


　ニコラス・ネイルズの肉声。「よう、わざわざ悪いなフリント。こっちから出向いても
良かったんだがさっきから連絡取りたがってるやつがひっきり無しでな。どいつもこいつ
もまだ肝が据わってなくて困るぜ。―――テレビは？」

「これから見るところだ」フリント・アローの返答―――受話器をやたら忙しく上げ下げ
しているニコラスの傍へ移動／リモコンを取る／テレビを点ける。
　絶句―――動揺しないはずの拷問官の動揺。

「……なるほどな。確かに“存在しないもの(ファンタジー)”だ」
　感想―――テレビの映像への。

　映像／一面緑に覆われた都市／テロップにはフランス・ルーアンの記載。
　遠い外国での事件／想像すらおぼつかない異様。

　異様＝蠢く森／緑／そして黒。

「……まあこんな田舎で何やってたかは知らないが、向こうの支部から受けた連絡による
と“森”源地(グラウンド・ゼロ)は燦月製薬の研究所。どうやら“イノヴェルチ”のオカルト野郎どもが何か
どでかいヘマをやらかしたらしい」

　電話(コール)に応対をしながらニコラスの解説(コール)／応対(コール)に嫌気が差して力任せに電話線を抜いた。

「ま、そこまでなら別にお前らが行くようなことでもないんだがな。自分のケツは自分で
拭け、って奴だ。だが―――ここで一つ問題だ。お前らに流してる拷問用の薬物(ピル)、うちで
取り扱ってる麻薬(ドラッグ)、人体改造に必要な薬品(メディシン)は、どこで作ってると思う？」
「……ここか」
「そう。お得意様って奴だ。パテント料を払って向こうの作った薬物(ドラッグ)を売りさばき、その
見返りにこっちは真っ先に新しい薬物(ドラッグ)を仕入れられる。おかげでネイルズ・ファミリーは
何時でも新しい流行の最先端(ア・ラ・モード)を行ける、って寸法よ。―――セイント、ステアウェイ、エ
ンジェルダスト、んでもって多幸剤(ヒロイック・ピル)の製造技術協力もここだ。そしてこれが一番重要だが
―――拮抗剤(カウンター)の効かない自白剤も作ってたんだぜ。これが間の悪いことに、そろそろ実験
開始の“流行り物(フレーズ)”だ。こいつには俺も“バック”もずいぶんと投資してるから、何とか
して回収せにゃならん。ま、それと平行して試したいものもあるが、そいつはおまけみたいなもんだ」
「現地の様子は？」
「ナタリアと寝た男みたいにぐしゃぐしゃだぜ。兵隊はおろか後方支援もおぼつかねえ。
てなわけで向こうが収拾つけられるのは当分先だ―――それに加えてさらに悪いことだ。
どうやら誰かがうちの“流行品(フレーズ)”を嗅ぎつけたらしい。拮抗剤(カウンター)が効かないって付加価値は
イコールで誰もが欲しがるお値打ち物(フレーズ)だ。おかげ様であちこちが浮き足立ってやがる」
「時間もない―――か」
「ま、そういうことだ。とりあえず、俺が出向いて現地(イノヴェルチ)の連中を片っ端からファックして
言うこと聞かせる予定だが、そいつと平行して―――ダークタウン最強の傭兵に最先端の
流行物(ドラッグ・ア・ラ・モード)をお使いに行ってきて貰いてえ。もちろん、報酬はその分弾むぜ？」

　フリントの逡巡―――決定。

「大型のトレーラーと武器を現地に用意してくれ。やってみよう、ニコラス」
「流石は俺の“戦友(ダチ)”だ。愛してるぜフリント。せいぜい派手に暴れてきな」

151 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/11/24(土) 11:38:59

>>149 >>150


　―――事件発生後二十四時間。


　軍用機並みの大型輸送機がフランスの空港へ到着―――チャーター便。全停止した運行
も関係なく／がら空きの滑走路を颯爽と／着陸する四発ジェットのクジラ。
　尾翼のマーク／棺桶のマーキングに左右それぞれ違う文字。

　右に“ＭＯＷ”―――“俺の唯一の流儀(マイ・オンリー・ウェイ)”。
　左に“ＷＯＭ”―――“俺しかいない道(ウェイ・オンリー・ミー)”。

　ニコラスの私有品。
　所有する中で最も価値の高いアンティーク＝払い下げ品／非合法の。
　その容姿(スタイル)―――さながら馬鹿でかい熱帯魚(スーパー・グッピー)。
　三枚におろされる魚のように、機首が外れて折れ曲がる／コンテナが現れる／待機して
いたトレーラーに積載／接続。滑らかに出庫／移動を開始する。

　その周りを歩き回り、あわただしく指示をしていく白衣の姿―――燦月製薬の職員。実
態はイノヴェルチの構成員。
　その半分以上の人間が顔に青痣＝ニコラスの“すっきりする一発(マイ・オンリー・ウェイ)”の名残。

　冷静さを取り戻した人間の只中―――白の中に落下した暗黒の紅＝フリント・アローの
レザースーツ。
　滑らかな足取りでタラップを降りる／そのまま巨大なトレーラーの運転席へ搭乗。

　グレードＸの防弾＝二十ミリ鉄鋼弾も遮断／ＥＭＰ防御／対車両用・対人用の武装。
　電子戦兵器―――ジャミング、クラック、加えて遠隔操作／全てスケアクロウに接続。
　加えて最新式水素内燃機関＋コンテナ最後部に加速用ロケットエンジン＝最速の要塞。
　イノヴェルチ所有―――生体兵器の暴走／逃走への備え。
　

　走り出す―――誰もいないハイウェイ(ウェイ・オンリー・ミー)を。
　トレーラーの目的地＝爆心地(グラウンド・ゼロ)―――ルーアン行きの軌道(ハイウェイ)へ。
　十二体の爆弾を満載したトラックが飛び込んでいく―――“森源地(グラウンド・ゼロ)”へ。




【カトル・カール参戦　現在位置：ハイウェイ東側／Ｆ地区手前を移動中】

152 名前：『夜雀の妖怪』ミスティア・ローレライ ◆8hOOMYSTIA ：2007/11/24(土) 11:52:07

広場で若い音楽家が己の腕を披露、あるいは試すのはどこの国でもあることだ。
それが耳を留めるのに十分であるならばしばし聞き入り、僅かばかりの礼を懐から出すこともある。
そのようなありふれた活気に満ちる広場は、今日に限り異様な熱気に包まれていた。

観衆を引きつけていたのは歌。

それを奏でるのは独逸系と思われる小柄な少女だった。
赤みがかった髪に合わせたようなワンピースと白いシャツ姿は両親に連れられて出かけているかのよう。
学友と並んで聖歌を歌うのが似合いそうな風情である。

しかしながら彼女が飛び入りで歌い始めたのは8ビートが刻まれるギターだった。

弾き手の方も最初は子供の稚気と踏んでいたのだが、ワンフレーズで驚きに変わっていた。
恐ろしく音域の広く激しい曲を試してもはや諦めに至り、いまはただただ楽しいだけだ。
楽しむ以外にどうしようというのか？

今日は幸運の日なのだろう。

最後と宣言した曲が終わり、辺りが静まりかえる。
一拍ののち歓声と拍手と地面を踏みならす音をバックに、奏者のギターケースへと硬貨や紙幣が投げ込まれた。

「ありがとう！　素敵な歌声だったわ」

抱き寄せて言う奏者に、少女も同じように抱き返す。

「貴方の音が素敵で歌いたくなっただけよ。こんなこと滅多にない」

少女は身を離して千切れそうなほど手を振り、

「ちょっと寄り道しすぎたからもう行くよ。じゃあね！」

そう言って興奮冷めやらぬ群衆をかき分けながら場を離れようとした。
瞬間。

森蝕が始まった。

153 名前：『夜雀の妖怪』ミスティア・ローレライ ◆8hOOMYSTIA ：2007/11/24(土) 12:02:13

>>152
凄まじい揺れが辺りを襲う。
地震などまず体験することのない土地の住人にはまるでこの世の終わり。
即席のコンサート会場は神に許しを請う懺悔の場と化していた。

揺れが収まりかけ、人々がようやく息をつこうとする。
それを見計らったかのように影が差した。
見上げた者は声も出なかった。

如何なるろくでもない采配か。
もっとも近くにある高層ビルが、寄りにも寄って真横に。
集まった衆目を押しつぶすように倒壊してきたのだ。

突然の揺れで動くことの出来る者も居ない。
残されたものは神に祈る時間が関の山か。

いざ異国の子らよ！
災厄の日は来たれり
偽聖の血染めの旗が翻る
屠殺場に響き渡る獰猛な獣等の怒号
汝等が妻子らの魂を奪わんと迫り来たれり

朗々と響く歌に心のざわめきが打ち消される。
更に奇怪な替え歌は音にならない音を引き連れ、倒壊するビルを楽器のように振るわせた。

一瞬ビルが膨らんだ、人々にはそう見えた。

祈りあるいは呆然とする人々を尻目に、ビルは形を失い塵をまき散らすにとどまった。
誰も何が起ったか理解するものは居ない。
砂をかぶった人々も、誰一人払おうとさえしなかった。

「うわー！　ペッペッペ！　口に入った気持ち悪い」

何とも普通すぎる反応に視線が集中する。
誰であろう、あの歌い手の少女だ。
不機嫌な表情を隠しもせず、何処かを振り返って睨み付ける。

「人がせっかく良い気分なのに！　邪魔するな！」

少女はまるで当たり前のように、翼を広げ、飛び立った。


人々は後にこう舒懐する。
不機嫌な天使はロッカーだった、と。


【ミスティア・ローレライ参戦　異変の中心へ向けて飛行中】

154 名前： ◆DEVILbzibY ：2007/11/24(土) 12:13:25

紅魔館の優雅な住人たちｖｓカトル・カール
―Forest Lagoon―

>>146>>147>>148
>>149>>150>>151



　レミリア・スカーレットが生まれた時代に、列車はなかった。
　パチュリー・ノーレッジが生まれた時代、
　　汽車はまだ彼女の国までレールを伸ばしていなかった。

　そして、幻想郷には自走式の乗り物が
　　――汽車も電車も自動車も飛行機も――
　迷い込んだことは、一度もない。

　つまり、彼女たちは列車をプレステ＝ジョアンでしか知らなかった。
　パチュリーは「客車」というものを、
　　蔵書の知識でしか得ることができなかった。

　誤りと偏りに満ちた智識。
　　新しい物好きのミーハーな冒険心。
　永遠を生きるもの特有の、大らかな許容力。
　退屈をもてあます少女たちは、どんなクリーチャーでも、
　　新鮮ならそれだけで持て囃して遊び尽くす。



　―――だから。
　　こんな常識外れのモンスターでも、
　　　レミリア・スカーレットは喜んで乗り回した。

155 名前： ◆DEVILbzibY ：2007/11/24(土) 12:13:55

>>155

　列車というものは、機関部を客車が牽引することぐらいはきっとパチュ
リーも知っていた。だけど、天才たる魔女は「もしも機関部が壊れたら、
客車は旅を続けられないじゃない」と現行の列車駆動のシステムを鋭く批
判。彼女なりのアレンジを加えることで、問題の解決を図った。

　つまり、走るのだ。

　彼女のパーラーカーは。
　小さき紅魔館は。
　永遠を厭き続ける少女達の城は。

　プレステ＝ジョアンが旅を続けるのをやめたとしても、レールが途切れ
て進路を見失ったとしても、彼女たちの揺りかごが止まることはない。

　喩えるなら流れ星。
　星の器。
　空を撃ち抜くスピードで駆ける少女たち。

　誰も追い付けない。
　誰にも止められない。

156 名前：―永遠に紅い幼き月―　レミリア・スカーレット ◆DEVILbzibY ：2007/11/24(土) 12:14:34

>>154
>>155

　ニトロを積んだって、ここまでの加速は不可能に違いない。

　プレステ＝ジョアンに別れを告げた特別客車―――ミニ紅魔館は、魔女
の呼び声に応じて正体不明の動力を起動。車輪がレールを振りほどく。
「さあ、ほんとうの旅が始まるわ」
　主の歓喜がアクセル。ダイヤもルートも彼女が描く。

　躯を揺らして客車は跳ね上がる。自由を得た大魚の踊り。ホームに乗り
上げると、ベンチも改札口も廊下に寝転がる木の根も蹴散らして、加速加
速加速―――フルアクセル。

　ばいばい、プレステ＝ジョアン。
　　あなたを愛していた頃もあった。
　でもきっと、すぐ戻ってくる。
　　そしたら、夢の続きを見せて。

　行き先は誰も知らない。なぜなら、ミニ紅魔館は客車であって列車では
ないから。車内にはハンドルもブレーキも無かった。

　がたがたと階段を駆け上がり、地上へと飛び出す。初めて街の光景を目
にしたレミリアは、ふん、と鼻を鳴らした。

「あらあら。……ほんとに森に沈んでいるのね。懐かしいわ。私がまだ外
にいた頃も、世界は深い森に埋もれていた。人間は、森の外れで闇を避け
るように生きていたのよ―――」

　ミニ紅魔館はオフィス街を爆走する。車両と呼ぶより一個の生物。障害
物は避けて通るときもあれば、体当たりで破砕させることもある。
　軌道はその時の気分次第。右も左も思うがまま。―――設計者の性格に
よく似ているわ。レミリアは呆れながらも笑いを絶やさない。

　設計者本人は外の景色には一切興味を示さず、車内に運び込んだ本棚か
ら蔵書を取り出してはしまい、強欲な読書に耽っている。
　まったく、これでは何のための旅行か分かったものではない。だが、そ
れがいかにもパチェらしいからレミリアは何も言わなかった。
　図書館に彼女がいるのではない。どこにいても、彼女がいる場所が図書
館となるのだ。

「咲夜！　私、外に出るわ」

　こんなに愉しい状況なのに、車内に閉じこもっているなんて考えられな
い。侍従からもろもろの約束事を言い含められてから、窓を使ってするり
と車外へ抜け出した。煉瓦で固めた切妻型の屋根に乗り上げると、ミニ時
計塔に背を預けて正面から空気の波濤を浴びる。

「―――まだ遅いわね」　
　露骨にミニ紅魔館を挑戦。
「あなたのスピードは、この程度なの？　私が歩くよりちょっと遅いくら
いかしら。こんなのじゃ、幻想郷の向日葵にだって追い付けないわよ。
　……もっと広い場所で、もっと疾く走りなさい」

　返事は意味する加速が、路面を突き抜けた。
　大交差点で、尻を大きく振りながらドリフト。樹と樹の迷路をすり抜け
て、インターからハイウェイに進入。
　高速道路も地上と同様に腐海による森蝕が激しく、路面には木の根が這
い回り、頓挫する自動車は軒並み枝と葉が絡みついて緑のオブジェと化し
ている。

　ミニ紅魔館の加速は続く。加速は終わらない。
　震動は車内にまで激しく伝わっているはずなのに、魔法使いは平然と読
書を続けているし、メイドは涼しい顔でお茶の支度に取りかかっている。
　一瞬足りとてもバランスを崩さない。

「……まぁまぁのスピードね。私のほうが全然疾いけれど。馬車に使うく
らいなら、この程度で十分だわ」
　
　腕を組んで屋根に仁王立ち。
　スカートがパニエごと翻る。
　自慢の銀髪が風に流れる。

　レミリアは口元に牙を覗かせながら、全身で夜と森を浴び続けた。


　　　―――斯くして幻想は進軍を開始する。



【現在地：ハイウェイ】

157 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/24(土) 12:27:32

ミスティア・ローレライｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『イツマデ』

Prologue

>>152>>153


　パーティは続く。
　パーティは続く。

　次に少女と乙女が訪れたのは、空に向かって槍衾のように屹立するオフィス
街。街の経済の中心地は、即ち腐海の中森地。かつてのコンクリートジャング
ルの面影は消え失せ、緑の有機物が冷たい無機物に寄生している。
　蔦が這わない壁はなく、葉が茂らない窓もない。―――人工物と自然物の競
演は、森に沈んだ街の中でもひときわ幻想的な風景を演出していた。

　オフィス街の中でも群を抜く全長。誇らしく天へと突き立つセンタービル。
　奥行きは薄く幅は広いというモノリスのような外観の建造物は、燦月製薬の
持ちビルで、最新技術の結晶体。落成からまだ一年と経っていない。
　例に漏れず腐海に蝕まれ、樹に森蝕されている。街の権勢の象徴だったセン
タービルも今では緑と同化して、世界樹の如く森を見守っていた。

　その地上三百メートルを数える天国への階段―――ビルの屋上に、二つの人
影。乙女がひとり。少女がひとり。バベルも斯くやという高度に戸惑うことも
なく、屋上のへりから森の夜景を眺めていた。
　乙女―――ジャンヌは、月光を黒甲冑に吸い込みながら泰然と立ちつくす。
その横で、少女―――アリスは転落防止の柵に腰をおろし、空へと足を投げ出
して、ヴィヴィアンのロッキンをぶらぶらと揺らしている。
　一歩でも足を踏み違えればたちまち地上へと堕天〈フォール・ダウン〉する
危険なポジションだったが、二人の娘はまったく頓着しない。
　アリスに至ってはスリルすら覚えないのか、あくびを噛み殺す始末だ。

「……ねえ、ジャンヌ」
　乙女は人形のように佇立したまま、一心に風景を見入っている。
「いつまでここにいるの？　フランスを救いにいくんじゃなかったの？　私、
もうここには飽きたわ。何もなくて退屈よ。もっと面白いとこに行きたい」

「―――もう少しだけ」
　視線は逸らさず、唇だけ動かす。
「もう、少しだけ」

「その『もう少しだけ』は、これで四度目。聞き飽きちゃったから、あなた
の他の言葉が聞きたいのに……。そんなにこの風景が気に入ったの？」

　ええ、と乙女は頷く。「素晴らしいです」

　乙女が育った村にも森はあった。あの時代、フランスの殆どは森に呑まれ
ていた。フランスだけはない。ヨーロッパ全土が、だ。
　だが、乙女が生まれた時代、森は畏怖の対象でしなかった。森には野盗が
潜んでいた。悪い精霊が棲んでいた。悪戯好きの妖精が隠れていた。人を助
けることよりも、人を脅かすことのほうが遙かに多かった。
　あの時代を支配していたのは「畏れ」だった。自然を美しい、なんて思え
る余裕は無かった。乙女も森を避けて進軍した。
　森は、彼女にとっても怖かった。

　だが、今は違う。

「森を駆逐し、森がいなくなった世界で、こうして森が新生した。私の知る
フランスには森が密生していました。喩えそれが悪魔の住処でも……フラン
スには森があったの。そして、ここにも森がある」
　だから、ここはフランスよ。乙女はそう呟き、涙で瞳を潤ませた。
「ああ、愚かな乙女。なぜ今日まで気づけなかったの。……森は、世界は、
こんなにも美しいということに。救う価値があることに」
　
「まぁ当然ね」
　自分が褒められたかのように、アリスは誇らしげに胸を張る。
「森は美しいのよ。だって、私のものだもの。私の宝石箱に、輝かない石な
んていらないわ。―――でも、ジャンヌ。今のあなたの輝きは、私の自慢の
森にも勝るのよ？　だから、さあ……もっと強く輝くために、フランスを救
いに行きましょう」

158 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/24(土) 12:28:51

>>142
>>143>>144>>145
>>152>>153
>>156>>157


　乙女は寂しげな微笑を浮かべて、首を振る。
　
「もう少しだけ……」
「五回目！」
「これで最後です」
　
　言うと、乙女は牛革と黒鉄のガントレットを右腕から外した。白肌が露わ
になった右手首に、腰から抜いたダマスカス・ダガーの刃を滑らせる。見る
間に血が溢れだし、空へと滴り落ちた。

「何をやってるの？！」アリスの叫び。「あまりにも唐突よ。もしかして、
ジャンヌってリスカで感じるタイプ？」

　何のことですか。乙女は問い返す。アリスの言葉を理解していない。

「なにって……血、出てるわよ」
「先にあなたが、私の��力�≠ﾉついて語ってくれました。その一つを、いま
思い出したの。私の血が、何を喚ぶのか……」

　黒い羽根を羽ばたかせて死告鳥〈レイヴン〉が一羽舞い降りた。例え地上
三百メートルだろうと成層圏だろうと、幻想の鳥は常に空を飛ぶ。
　死告鳥は乙女の肩にとまると、嘴を尽き出して血を啜り始める。―――更
に一羽。また一羽。どこからともなく舞い降りては、乙女の血を求めた。
「ちょっと……」アリスが事態の危うさに気付いたときには、あたりは一面
黒ずくめ。数十匹、数百匹という死告鳥が必死になって乙女の血を舐めよう
としている。ビルの屋上は死告鳥の集会場と化してしまった。
　鳥はまだまだ増える。この調子では、やがて四桁に達するだろう。

「死告鳥は一羽につき一人の人間の死を風聞〈ディール〉する幻想の鳥――
―本来なら、その者に縁あるものだけに死を告げる。私は自分の血をこの子
たちに与える代わりに、特別に風聞を読み取らせてもらっているの」

　ならば、彼女の血は聖体ということになる。相克する聖血。

「この街で、この死告鳥の数だけ人が死んだわ。鳥たちは、一人一人のエピ
ソードを私に語って聞かせてくれる……。なんて悲しい物語なのでしょう」

「あ、そう」
　不機嫌なアリス。自分を見てくれないジャンヌは嫌い。
「展望のつきは読書のお時間？　それにしたって、無節操だわ。黒い大波の
せいで、あなたが大好きな森の風景だって見えなくなっちゃったじゃない。
数が多すぎよ」

　乙女は微笑する。「私もあなたも黒いから、友達と思われているのね」

「ジャンヌ、その言葉は禁句よ。私は私のファッションを『カラスみたい』
と言ったお馬鹿さんは、絶対に許さないことにしているんだから。いくら
あなたでも、それは駄目」
「あなたは厳しい子ね、アリス。決まり事が多すぎて、覚えきれないわ」
「簡単よ。私が不愉快なことは全部禁止。だから、この馬鹿ガラスのパレー
ドもどうにかして。―――あなた達！　私のお洋服に一つでも糞を落として
みなさい、みんな焼き鳥にしてジャバウォックの餌にしてやるんだから」　

　アリスがムキになって死告鳥を追い回す様子があまりに愉快で、乙女は鈴
の音を転がすように笑った。





【現在地：C地区　オフィス街　センタービル屋上】

159 名前：『夜雀の妖怪』ミスティア・ローレライ ◆8hOOMYSTIA ：2007/11/24(土) 18:15:44

ミスティア・ローレライｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『イツマデ』 Till When?


>>158
チッチチチッチッチッチ

摩天楼を足場にするかのように空を駆ける妖怪少女の口元から舌打ちのような音が漏れる。
あるいは小鳥の囀りか。
誘蛾灯に集まる羽蟲のように、1羽2羽と小鳥が彼女の後に続く。

囀りは口からのみならず、人の耳に届かぬ形で羽音としても響いていた。
4羽が8羽を呼び16羽を誘い32羽を従え64羽を統率し128羽が雲霞の如き群れと化す。
豪雨を思わせる羽音は更に増え、囀りは騒音に等しいほど。

「あれが邪魔？　あいつが邪魔ね！」

ビルの屋上に二人の少女。。
見ればなんという挑発。
歌の余韻を邪魔した一人は鳥に囲まれご満悦と来る。

あるいはまるで鳥葬。

「ハイ！　そこの黒いの。
　私の歌をよくも邪魔してくれたわね」

並び立つように高いビルの避雷針の上に留まり言い放つ。
倒壊しかけたその構造は皮肉にも森蝕により支えられ、ともすれば健全な状態を上回る強度を持つほど。

「翼にのってお空の果てまで上りたいのなら、協力してあげるわよ。
　蝋細工の羽でもくくりつけてね！」


【現在地：C地区　オフィス街　センタービル屋上】

160 名前：“姫” ◆/HIME/HDYY ：2007/11/24(土) 19:53:49

“姫”一行（怪物王女）VSスレイド（TEEN　TITANS GO!）
導入　１／２

２００７年　１１月ＸＸ日

その日、怪物と呼ばれる異形の者達が住まう「王国」を統べる王族の一人である“姫”とその従者たちは、
ある目的のためにホームグラウンドであるＳ県笹鳴町を離れていた。

その目的とは、かつて姫の全てを奪った不肖の兄・セブランが遺したある“企み”の存在の確認。
セブランの家臣の一人であった蝿男の研究の成果の一部が、セブランによって人間社会に意図的に
流出していたというのだ。

この情報を得た姫は直ちに人造人間フランドル、『血の戦士』日和見日郎、人狼族と人間のハーフブリードである
リザ・ワイルドマン、食客である吸血鬼嘉村令裡を従えて前日より隣県に足を伸ばしていた。
しかし、ガセを掴まされたらしく、流出先とされた企業には何の痕跡も見出すことは出来なかったのだった。

その帰り道、姫・フランドル・ヒロ・リザを乗せた大型トラックと、その上空を飛翔する令裡を常識では考えられぬ不条理が襲い掛かったのだった―――。


四人を乗せた大型トラックは、県境の峠をフランドルの巧みな運転で何者にも縛られず駆け抜けていく。
トラックには乗らず、自力で飛行する令裡には別の役割があった。万が一トラックの前方に障害があった場合を想定した偵察役である。

ただ、障害は常に前方または後方から訪れるものではない。それゆえに、令裡はこの路の先にある舞台に立つ資格を
得られなかったといえるだろう。
路肩に生い茂る森が、突如大きく膨れ上がりトラックを飲み込んだ―――このようにしか表現できぬ『何か』が、令裡の目の前で起きたのだ。

「姫さま！？」
異変に気付いた令裡はスカートのプリーツをはしたなく翻らせて加速、トラックに搭乗していた姫たちの安否の確認を急いだ。
しかし四人（正確には三人と一体だが、便宜的には四人）を乗せた大型トラックは、その往く手を阻むかのように
膨れ上がった深い緑の闇に覆われ―――令裡の目の前から、日本国内から姿を消したのだった。

そして、トラックの中では―――
「ど、どうなってるの姫！？ どうしてさっきまで道路を走ってたトラックが森の中を走ってるの！？」
「うろたえるなヒロ――フランドル、構うことはない……全速前進だ」
「ふが！」
姫の命を受けたフランドルは、樹木の根で荒れ狂う路面にハンドル操作を誤らぬよう、小さな体躯に秘められた力で
ハンドルとアクセルを押さえつけながら運転を続ける。
手足の指では到底数え切れない程に途切れのない揺れを繰り返し、充分にスピードの乗ったトラックは
姫の目論見通りに森を突破し―――突如目の前に現れた川へと向かってダイブしていった。

幸いにも、トラックは向こう岸に突入する形で川を飛び越えたため、四人は大きな怪我も
川に流されることも無く、上陸することが出来たといえよう。
しかし、相当に無理をしたトラックはエンジンが焼き付いて白煙を上げている上に、
後部コンテナの大半が水中に没していて使い物になるとは言えない状態にあった。

這々の体で河川敷を上がった四人の目の前に広がる風景は、馴染みのない異国の風景。
そこには崩壊の灰色と、血よりも赤い紅蓮が溶け込んだ、まさしく阿鼻叫喚の『異界』だった。

「ひ、姫……これって一体……」
「―――ふふん」
透き通るような金髪をかき上げ、姫が艶やかな笑みを浮かべる。その表情はまるでこの状況を楽しんでいるかのようだ。
「どう見てもここは日本国内ではないな。まず風が運ぶ匂いがが全く違う――　……それに街並みも……」
姫の唇は、その続きを紡ぎはしなかった。
なぜなら、静寂を切り裂くように獣の唸り声が辺りに響いたからだ。そして重なるように続く断末魔の悲鳴。

「姫……コイツはマジでヤバいぜ。声の主も一匹や二匹じゃないし、あたしたちはこの辺りの地理にも明るくない―――
つまり、どんな怪物がどこで待ち伏せしているかもわからないってことだ」

先ほどまで水に濡れた衣服や髪を気にしていたリザが、警戒の色を表に出していた。
人狼族の特徴である変化能力を両腕と耳に発現したリザは、不意の襲撃にいつでも対処できる体勢を自発的に取っていた。
かつて人間も持っていた本能的な危機察知能力は、人狼族の血統の中で今も息づいているのだ。
「―――ふん。つまりこの街はいつぞやの時よりも遥かに危険で、我々にとって死地にも等しいと言うことか」
姫の口から現状を値踏みするかのような言葉が、虚空に投げ出される。
しかし、姫の声色には気質から来る愉悦も、不確かな未来に対する恐れも一欠けらたりとも混じってはいない。
そこにあるのは、どこまでも冷徹な思考と燃え上がるような覚悟。戦いに望む時の、姫の全てがそこにあった。
ヒロは無意識の内に、ごくり、と喉を鳴らしていた。

161 名前：“姫” ◆/HIME/HDYY ：2007/11/24(土) 19:54:09

>>160
“姫”一行（怪物王女）VSスレイド（TEEN　TITANS GO!）
導入２／２

「……となれば、まずは武器の調達か。幸い、この辺りは商店街のようだ。私の手に合うものがあれば良いのだが」
念のためにと屋敷から持ち出していた姫やフランドルの手に馴染むような武器は、
もうそろそろトラックの後部コンテナの中で水浸しになっている頃だろう。
「刃物でも扱ってる店があれば御の字、って所か……」
一行は、フランドルによるエネルギー反応のスキャンを頼りに、荒れ果てた大通りを進みだした。

まるで大地震に晒されたかのような道路は、あちこちが陥没するか亀裂が走るかしていて非常に歩きにくい状態である。
そんな道路の骸を、四人は慎重かつ確実に前進していくこと数分。
（これじゃトラックが使えてもあまり意味はなかったのかなぁ……）
ヒロがそんなことを考えていると、目の前にやや開けた場所が現れた。どうやら駐車場のようだ。
その証拠に何台か車が放置されたままになっている。
上を見上げれば、そこには金槌と鋸が図案化されたマークを掲げた看板があった。
どうやらここはホームセンターのようだ。

「ふふん―――渡りに船、とはまさにこの事だな」
姫は、駐車場に取り残されていたカートを一台引き起こしホームセンターへと入店していった。

無人の店内は、普段は什器に整頓されていたであろう様々な商品が通路に散乱したままになっていた。
姫とフランドルは工具コーナーを、リザとヒロはその他のコーナーを回って今後必要になりそうなものをピックアップしていく。

「ねぇ、リザ……本当に良いのかな、こんなことして」
「んー？」
長期保存が利く保存食コーナーを漁っていたリザがヒロの呼びかけに振り向く。
その両手には、山ほどの保存食が抱えられている。
素手で戦えるリザにとっては武器よりも食い気、ということなのだろう。
「良いも悪いも無いだろ。これはキンキューヒナンって奴だよ、法律で認められてるんだって」
「……でも」
ヒロの視線は、姫たちに注がれる。
フランドルは姫が選んだエンジン式のチェーンソーに燃料を注入し、姫は除草用バーナーや草刈機といった
凶悪な用途に転用できる道具が沢山揃っている園芸コーナーを物色している真っ最中だった。
「……やっぱり僕も何か武器を探した方がいいのかなぁ……」
ヒロは、出発前に見たニュース番組を思い出し鋸を手に取った。
そのニュースは、女子校生による殺人事件を取り扱っていた、とヒロは記憶している。
「ヒロ、鋸は止めておけ。西洋の鋸は日本の物と違い、刃が反対についているから押す時にしか切れん。
それならば包丁かナタを選んだ方が無難だ」

「うわぁ！？　ひ、姫……もう武器探しはいいの？」
唐突に姫に声を掛けられたヒロは、驚きのあまり鋸を取り落とした。
ともあれ、自分の力量では鋸を使いこなせそうにも無いため、ヒロは鋸を陳列棚に戻した。
「うむ、目ぼしいものや使えそうなものは揃ったが……ヒロ、念のために聞いておく。
私がお前に血を与えたのは一昨日だったな？」
死者に王族の血を与えることで生まれる『血の戦士』には、王族の血を定期的に補給しないと
再び死者に戻ってしまい、二度と蘇生できなくなるというデメリットが存在している。
「う、うん……確かそうだったけど……！？」
姫は、ヒロの答えを聞くまでもなく自らの指先を強く噛み血を滴らせた。
「ならば、今もう一度飲んでおけ。いいか、この地に居る限り私は一日ごとにお前に血を与えることにする―――それが、お前を生かし、私を生かす最善の手だからだ」

だが、姫もヒロも未だ知らない。知る由もない。
姫が与えた血の一滴が、生を渇望するものを呼び寄せる目印になることを。

162 名前：スレイド ◆cDCpSlADE. ：2007/11/24(土) 20:06:05

6人の若きヒーロー達に完膚なきまでに叩きのめされて、彼は一度死んだ。
しかし、ある悪魔が己の手駒として、彼の腐りかけた肉体を現世に呼び戻した。
悪魔はこう言った。
「我が僕となるならば、失ったものを与えてやろう。」
彼は悪くない取引だと思った。
どのような結果になるにしろ、彼には失う物など何もないのだから。
だが彼は備えもなく人を、ましてや悪魔を信じるほどお人よしではなかった。
欲しいものは自らの手で奪いとると、心の奥に秘めていた。

そして狂気に縋って彼はフランスまでやって来た。
半世紀以上の歴史を持つオカルト組織イノヴェルチの狂気に。
魔道書と呼ばれる書物を読み漁り、聖遺物を略奪し、動物、人間、時には物の怪の遺伝子を弄くり
挙句、黒ミサやサバトといった、今では質の悪いジョークでしかない言葉を本気で実行する狂気に。

その狂気こそ、彼が置かれている状況を打破する鍵だと思っていた。

少しでも情報が欲しい。主人たる悪魔に関するものならばどんな些細なものでも。
魔法によってどんな事が可能なのか？或は不可能なのか？弱みはあるのか？どうすれば斃せるのか？
そして、完全に死亡していた自分を蘇らせた魔法の原理はどういったものなのか？
イノヴェルチの膨大な資料の中にそれらの答えがあるかもしれない。

アメリカでそこそこ名の知れた犯罪組織の長だった彼は、その人脈を生かし
注意深くイノヴェルチの動向を探り、ついに一つの情報を掴んだ。
11月某日、フランスのイノヴェルチの施設で、死者の魂を現世に呼び戻すという実験が行われるという。
まさしく、それは彼の求めていた秘法そのものだった。

だが、その希望はたった今砕かれた。
施設を飲み込むように広がる「森」
呼び出されたのは死者の魂だけでなく、地獄そのものもついてきてしまった。
狂気によって得られた知識は、狂気によって自滅したのだ。

彼が落胆しかけたその瞬間、匂いがした。死から蘇った時に嗅いだ匂いが。
動く死体である彼の五感は殆ど働いていないにも関わらず、死をも追い払った魔法の匂いを確かに感じた。
思考するよりも早く、匂いのした方向に駆け出した。

163 名前：スレイド ◆cDCpSlADE. ：2007/11/24(土) 20:12:22

>>162

鋼鉄とケブラーの鎧で全身を固めた影が、音もなく夜の森を疾走いていく。
仮面に無駄な装飾などなかったが、悪魔に押された額の烙印のみが煌々と光を放って燃えていた。
駆け出してすぐに、ほんの今しがたできたばかりの真新しい轍を見つけ
心臓がさらに高鳴るのを感じてからは、今まで以上にペースが上がった。
もっとも、実際には心臓などとっくに止まっていたのだが。
その間にも、魔界の森はいよいよ繁茂を極め、僅かな月の光も届かない有様だったが
獲物を追うスレイドの速度は些かも失速せずに、樹々の間を飢えた豹のようにすり抜けていった。

時折、地獄の食肉植物がスレイドを捕らえようと、枝や蔓を伸ばすが
スレイドはといえば、仮面の奥から油断なく前方に目を光らせるのみで、迫る植物に見向きもしない。
だが、ボディアーマーに植物が近づく度、スレイドの体から炎がうねるように迸り
纏わりつこうとした蔓や枝を、逆に絡み取り焼き払っていく。
結局、森を抜けるまで、スレイドの体に触れるに至った食肉植物は一つとしてなかった。

樹葉の壁を抜けた所でスレイドは一旦足を止めて、前方を流れる川とその向こうに見える街並みに目を走らせた。
此処からでも多くの建物が倒壊し、街のあちこちから炎が上がっているのが一目で分かる。
地震と、腐海の森攻と、イノヴェルチの施設から解き放たれた醜悪な化物達の手によって
あそこで地獄が再現されているのは想像に難しくない。
そして川の向こう岸には、トラックが一台乗り捨てられていた。
まず間違いなく、あれが追っている人物の車だろう。
車から降りたのならば、探す手間を含めても自分なら数分で追いついてみせる自信があった。
生前のスレイドはスーパーパワーなど持たなくても、鍛えたあげた肉体一つで多くのヒーロー渡り合ってきたのだ。

「……あと少しだな。私が行くまで生き延びていろ。」

次の瞬間スレイドは全身を関節を鋼のバネと化し、一気に河を跳び越して、再び颶風をまきながら魔都の中に姿を消した。


姫が指をさしだした瞬間、くぐもった唸り声が店内に響く。
声の主はもう一度大きく叫ぶと、何かを探しているように陳列棚を薙倒し商品をぶちまけた。
そして人の気配に気づいたのか、足音というよりは、大蛇が這うような音を立てて、四人のいる方向に向かっていく。
四人の前に現われた怪物は、樹と人間を融合させて戯画化したような奇怪な外見をしており
飢えているのか笑っているのか、腹部に存在する巨大な口を閉口させて、喉の奥から唸り声を発している。
人の姿を認めると太古の爬虫類のみが有していた、単純で野蛮な衝動に突き動かされて
それは植物らしからぬ速さで、四肢のような枝を振るい四人に襲い掛かった。

164 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/24(土) 20:34:39

ミスティア・ローレライｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『イツマデ』 Till When?

>>159

　パーティは続く。
　パーティは続く。

　黒いの、と呼ばれて乙女とアリスは顔を見合わせる。

「ジャンヌ、呼んでるわよ」
「……あなたも黒いですよ」

　隣接するビルとはいえ、距離は五十メートル近く離れている。その上この
高度だ。肉声など風にかき消されて二人の耳に届くはずがないのに、不思議
と少女の声ははっきり聞こえる。まるで風に乗るかのように。

　死告鳥が騒がしく喚き始めた。この幻想の鳥が死を風聞する以外で鳴くな
ど珍しい。よほどにあの少女が気に入ったのか。それとも畏れているのか。
　一匹なら囀りとして聞き流すことができたが、数千羽の合唱となるともは
や騒音ですらない。立派な自然災害だ。茂る葉が揺れて、ビルはぶるぶると
震える。アリスはうるさそうに両耳を押さえた。

　だが、乙女は死告鳥の大群―――黒い霧の隙間を縫って、少女を食い入る
ように見つめたまま離さない。騒音合唱など完全に無視していた。それとも、
この地獄の狂乱は彼女にとってこの上なく美声に聞こえるのか。

「あの子は、何者でしょうか。歌とはいったい……」

　不思議な少女だった。人間でないことは確かだが、さりとて悪魔でもない。
魔性のものが、あれほど小鳥に囲まれ愛されることなどあり得ようか。
　―――あえて符合させるなら妖精に近い。
　だが、何かが決定的に違った。

「あら、ジャンヌ。あなたはあの女を知らないの？　おかしいわ。あなたが
よく知っている女のはずよ。よく目を凝らしてみて。あれはドイツの女よ。
きっとバイエルンあたりの生まれね。―――ねえ、まだ分からない？」
「ドイツ……バイエルン」
　心当たりはあった。ありすぎるほどに。胸が焦げ付くほどに。
「イザベル・ド・バヴィエール……」
「大正解！」
　アリスの祝福も、乙女の耳には届かない。

　イザベル。またはイザボー・ド・バヴィエールと呼称したほうが通じやす
いだろうか。王太子さまの生母にして、フランス史上最悪の王妃。
　後期百年戦争を混沌に陥れた第一人者。アルマニャックの血を汚す淫蕩な
娼婦。オルレアン公暗殺に荷担した―――荷担した―――。
　聖女ジャンヌの対比となる悪女。それがイザボー・ド・バヴィエール。

「おのれ！」
　
　乙女の憎悪が膨れ上がる。今、フランスが傾いているのも、王太子さまが
苦悩に曝されているのも、全てはこのバイエルンから嫁いできた女が原因。
　絶対に許せなかった。

「お前さえいなければ！」

　手首から滴る自らの血で、空中に刻印〈スペル〉を描く。悪魔をも酔わせ
る血文字が印した呪文は〈弾丸―Balle〉。乙女の血を啜った死告鳥は、呪
いの令に従い、自らの躯を弾丸にして悪女イザベルの下へと殺到する。

　フルオートで撃ち出されるレイヴン。装弾数は千にも及ぶ。



【現在地：C地区　オフィス街　センタービル屋上】

165 名前：『ＤＥＡＴＨ』死神 ◆rX9kn4Mz02 ：2007/11/24(土) 20:46:17

　
『死神（デス）ゼアド vs ＜呪われし公子ゲイナー＞』
　
>>131>>132
　
　
　　　　饗宴は続く。
　　　　狂宴が続く。
　　
多相多色の複雑怪鬼。
死を忘れ、奥底で失ったそれを求める者と。
単相二色の純粋悪鬼。
死を誘い、奥底で無限にこれを求めるモノと。
伽藍の堂で。
香爛の道で。　
　　
迫る告死を弾いて散らす公子の双剣。
＜混沌＞の光と＜法＞の炎、敵を斃せと光って唸り、勝利を掴めと轟き叫ぶ。
その必殺爆熱の剣閃に、死神はかつて己を滅ぼした剣を幻視（み）た。
祝福の風ヴァルマンエの二刀剣舞、ドラキュラの反逆児アルカードの揮う必殺の魔刃。
強いた殺戮の布陣を駆け抜け、本陣たる己を見事斬り伏せた多撃一陣の暴風を。
想起する死／甦る記憶＝負けぬ劣らぬ公子の剣舞。
　
しかし、其れは所詮過去に過ぎぬ。
旅行の汽車に揺られ、瞬く間に通り過ぎ去った風景程度のものにしか過ぎぬのだ。
何故ならば現世の＜混沌＞はッ！
現世の悪意を集積し、情報と幻想を集積し続ける＜悪魔城＞の腹心はッッ！！
より上位の災厄の担い手として、克服と進化をし続けるのだッッッ！！！
　
＜死神＞の冥（くら）き炎が大鎌に宿る。
其れが間隙を縫い飛来する魔弾を到達せしめる寸前で溶解させ。
＜公子＞の剣風が死風を駆逐する。
其れが死の神へと加速するよりほぼ同じく、大鎌を構えた陰は滑るように前進。
幾重の残像、己が速さの残滓軍勢を従えて衝突。虹色の疾風が藍紫の颶風と交わる。
蒼と赤の炎を掻き混ぜて火花を散らす。互いの初手と同じく一の刃が噛み合う形。
だが先刻と異なる違いは、明らかなる両者の明確なる“意”。すなわち殺意と殺意の交錯！
　
『戯言を！汝こそ我は殺せぬ！汝に我は滅ぼせぬ！』
　
空気が振るえ波濤と変わり、大気振動となり伽藍を揺るがす。
鎌に封じられた死霊が叫び色となり、＜法＞の刃金が吼え音階と成る。
これぞ＜悪魔城＞は獄幻界乱舞の戯曲、怨嗟を呼び起こし死神の士気高揚と成らん！
そして互いの身ここに開き、神と公子の得物は弾かれ、体躯を捩り、互いは駆け、
青緑から黄金色に変わる剣、半回転した先に有る鎌の先端、次なる刃と刃の交差を
　　

166 名前：スレイド ◆cDCpSlADE. ：2007/11/24(土) 20:46:33

>>163
【現在地：D地区、河付近】

167 名前：……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉：……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉

……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉

168 名前：……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉：……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉

……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉

169 名前：……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉：……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉

……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉

170 名前：“姫” ◆/HIME/HDYY ：2007/11/24(土) 20:54:18

“姫”一行（怪物王女）VSスレイド（TEEN　TITANS GO!）
『闘争王女』　〜princess in the war〜
>>162>>163

ヒロの口中に姫の血が垂らされたその時、店内は喧騒に包まれた。
「……どうやら、我々を招いた者たちが痺れを切らしたようだな」
四人の目の前に現れたのは、樹木と人間が奇妙に結実した異形の存在。
「なるほど、木霊（コダマ）の一種か。招待者はよくよく森と関係があるようだ」

樹木の怪物は、蛇を思わせる足捌きで巧みに、瞬迅に四人との間合いを詰める。
姫とヒロは、武器と食料を詰め込んだリアカーから武器を。
フランドルとリザは、その身に与えられた力を顕現させ、怪物に立ち向かう。

ヒロが選んだ武器は細い木ならば一振りで断ち切るであろう山刀（マシェット）。
姫が選んだ武器は、一部でゾンビ殺しに定評がある芝刈り機であった。
芝刈り機ががなり立てるきゅあぁぁぁん、という甲高い金切り声は樹木の怪物の叫びを引き裂き唸る。

姫の振るう芝刈り機は、樹木の肉体を荒々しく叩き割った。
「ふふん―――海外製はどうか、と思っていたが認識を改めなければならないな」
フランドルの腕力は、樹木の腕を枯れ木の如くへし折った。
「……ふが」
リザの両腕は、樹木の怪物を哀れな狩猟の獲物へと変えていた。
「なんだ、見た目よりも脆いんじゃねえの？」
そしてヒロは、樹木に山刀を食い込ませたまま往生していた。
「刃が……抜けないっ……」

フランドルはヒロの襟首を掴み、ヒロごと山刀を引っこ抜く。
と同時に、姫とリザは樹木の怪物にその一撃を叩き込み、文字通りの木っ端微塵へと変えていた。

「ふん―――こいつは物資のある場所に立て篭もろうとする者を排除するためのハンター、という訳か」
それは、『この街に安全な場所など無い』ということ。
生存するためには、悪意の主を探し出し打って出なければならないということ。

「ヒロ、リザ、外に出るぞ―――生き残るために」

【現在地：D地区　ホームセンター】

171 名前：『ＤＥＡＴＨ』死神 ◆rX9kn4Mz02 ：2007/11/24(土) 21:10:10

>>165
　
　
　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　『ククククク』
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　刹那／返す刃は＜公子＞の背後。
　
　　　　　
　　　　　　　　　　　　『フハハハハハハ！』　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　刹那／振り下ろした姿は露と消え。　
　
　
　『ハハハハハハ！』
　
　刹那／振り向くより先にそっ首へ。
　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　『愚かな！』
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　刹那／足元を掬う水平一閃。　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　『何処を見ておる！』
　
　刹那／手元と眼窩を狙う小さき鎌が。　
　　　　　　　　　
　
　『分を越えた猿に我は倒せぬ！
　　猿が人に追いつけぬように、ましてや我という神をなど！』
　
　
この森はリドル。
森が創った遊戯台。
全てはリドル。
森が定めたアリスの遊戯。
そこに剣の武勲はなく、騎士と兵士の誉れなく。
あろうとそれは只の遊戯、ジャンヌを輝かす舞台の装置。
其れを知ってか、知らぬのか。
公子の剣に応じる死神の舞は転移の舞。幾度も幾度も姿を消して参じて消える。
正に死角、とめどない告死の鎌を揮いては消え、現れては揮う。
更なる死角／剣を握る手と、唯一露出した眼窩を狙う／虚空より生まれ続ける小鎌の群と。
騎士を嵌め、将軍を貶め、太子を翻弄する魔のリドル。
無情非情の告死に相応しき理不尽なリドル。　
　
　　
　『貴様はこの死神にとって、哀れな猿めに過ぎぬのだゲイナー！！』
　
　
　　　　凶宴は続く。
　　　　叫宴は続く。
　　
　
【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）地下】

172 名前：システムアナウンス：2007/11/24(土) 21:14:09

吸血大殲　森祭　途中経過纏め

＊昨夜行われた闘争の中断状況を記載
＊各人のターンのレス毎に改行

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹

マルチアーノ１２姉妹導入
>>77>>78>>79>>81
ヴィルマ・ファキーリ導入
>>83>>84>>85

>>87>>88
>>89
>>95
>>103
>>116
>>121
>>134
>>139

【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】


死神（デス）ゼアド vs ＜呪われし公子ゲイナー＞
森祭状況／ゲイナー導入（１）
>>42>>43>>44>>45>>46>>47>>48>>49>>50>>51

ゲイナー導入（２）
>>64>>65>>66
ゼアド導入
>>67>>68

>>80
>>90>>91>>92
>>109>>110
>>118>>119
>>131>>132
>>165>>171

【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）地下】

173 名前：システムアナウンス：2007/11/24(土) 21:15:05

レイオット・スタインバーグｖｓ魔神王リィーナ

レイオット導入
>>99>>100>>101
魔神王リィーナ導入
>>102>>104>>105

>>107>>108
>>111
>>114
>>120
>>129
>>135
>>140

【現在地：Ｂ地区　繁華街】


エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミｖｓリサ・トレヴァー

エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ導入
>>75
リサ・トレヴァー導入
>>69>>76

>>86
>>93
>>98
>>106
>>113
>>117
>>123
>>127
>>133
>>136
>>141

【現在地：Ｆ地区　病院】

174 名前：『夜雀の妖怪』ミスティア・ローレライ ◆8hOOMYSTIA ：2007/11/24(土) 21:29:06

ミスティア・ローレライｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『イツマデ』 Till When?


>>164
驚愕の新事実！
ミスティア・ローレライの正体はイザボー・ド・バヴィエールだったんだよ！

「な、なんだ……って誰？」

妖怪少女の正体を明かす黒い小さな少女。
しかし当人には全くなんの事やらだった。

「貴方が私にくれたもの〜♪
　イザボーさんていうニックネーム〜♪」

とは言え、荒れ狂う漆黒の羽音数千の嵐（ザザザザザザザザザザザザザ）はすでに放たれている。

それを他人事に眺めながら、妖怪少女は胸を空気で押し広げる。

ウチの女はファッキンビッチ
旦那がキレたらとっかえひっかえ
知ったことかよ　他人の家さ
雑草なんざ見えもしない

澄み渡るような声で書き殴られたような詩。
楽しげな表情でアクロバットにスキマを抜ける。
目さえ閉じて、自身の歌しか聞こえていないかのよう。

そして無造作に。
川の流れに手を差し入れるように、告死鳥の激流へと手を突っ込む。
手のひらを貫通。

「ニンゲンが死ぬときは、こんな感じなんだ。
　成程ね〜」

ぐしゃり

喉を口腔を肺を骨格を振るわせて、致命的でなじみ深い音をイメージ。
元来川の流れを操り人を惑わす妖魔は何を操っていたか。
それは惑わすモノから殺戮するモノになった瞬間、破滅的な凶器となった。

それは水面を振るわせる唄。

お宅の男はファッキンシット
アタマのおかしいナイスガイ
問題ないさ　首のすげ替え
100年続けりゃそろそろ飽きる

黒い川を揺さぶる唄。


【現在地：C地区　オフィス街　センタービル屋上】

175 名前：リサ・トレヴァー ◆Lisayc.tVc ：2007/11/24(土) 22:11:05

　ジャラララララ

　鉄の鎖が引き摺られている。
　そんなに素早いものではない。ゆっくりと、ゆっくりと
　近づいているのだ。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ジャラララララ

　鎖の音と共に足音も近づいている。
　ペタリ、ペタリという音だ。どうやら声の主は
　靴を履いていないらしい。

　　　　　　　　　　　　　　　ジャラララララ

　視認できない扉が開け放たれる音。
　姿はまだ見せていないが確実にこちらに近づいている。
　鉄の鎖を引き摺る化物は相手の居場所を把握しているのだろう。
　寄り道なんてしない。まっすぐ、真っ直ぐと。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ジャラララララ

　二人の近くにある扉がゆっくりと開け放たれる。
　いよいよ二人の前に姿を現す声の主。
　病院の人間を化物に変えていった元凶が

　　　　　　　　ジャラララララ

　―――そこに居たのは狂気であった。
　正気を持った人間では誰一人として理解できない
　奇行の塊があった。
　
　着ているのはボロボロの衣服、手には頑丈な手枷が嵌められている。
　足にも枷が嵌められているものの鎖は途中で切れていて
　本来の役割を果たしていない。

　更に最大の奇行の象徴は、彼女にとって一番大切な
　人の顔をつなげて作ったマスクであった。
　多くのものがまだ新しく、血を滴らせているものもあるくらいだ。

　このような化物の正気など誰も保障できまい。
　歪んだ空想と妄想が混ぜ合わさった出来た狂気こそが
　彼女の奇行の原動力となっている。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ジャラララララ

　そして彼女は母を求めて歩き出す。
　決して早いとは言えない速度だが距離を詰めるには十分である。
　お母さんの顔を返してもらうべく手械を嵌められた手を大きく振り上げながら。

176 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/24(土) 22:11:23

ミスティア・ローレライｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『イツマデ』 Till When?

>>174

　少女一人の歌声が、一千羽の死告鳥の合唱を圧倒した。

　酷い唄ね、とアリスは顔をしかめる。死告鳥と乙女はその程度では済まなか
った。おのれ、おのれ、と呻きながら乙女は膝をつく。双眸からは血涙が流れ
ていた。イザベルの唄というだけで、乙女は根源の領域で受け付けることがで
きない。その上、王妃の役を演じるのが魔性の歌手となると―――乙女との相
性は最悪だった。視力を失うに留まらず、全身にダメージを負っている。
　
　死告鳥ともなると、不可視の壁に叩き付けられたようなものだ。撃ち出され
た端から撃墜され、遠く離れた地上へと錐もみしながら落下してゆく。
　秒間数十発の失墜。―――イザベルがワンコーラス歌い終える前に、屋上の
黒い霧は晴れ渡った。

「……なんて不遜な唄を歌うの」
　
　光を失ったにも関わらず、乙女の怒りは止まらない。

「でも、カラスは全滅しちゃったわよ？」アリスはそこまで王妃の唄が嫌いで
はないのか、心地よさそうに聞き入っている。「どうやって攻撃するの？」

「アリス。あなたは今日が何の日か知っていますか？」
「森が生まれた日よ」
　そうですね、と乙女は頷く。
「―――同時に、聖女カトリーヌ様の誕生日でもあります」
　
　リュ・サント・カトリーヌ。イタリア、シエナ出身の聖女。キリストと結婚
するという幻視体験により、多くの未婚女性に慕われていた。乙女も例外では
なく、マクセイ村の守護聖者だった彼女と邂逅したとき、心を奪われた。
　そして、乙女に〈声〉を授ける三人の天使の一人でもあった。
　乙女は常に聖女カトリーヌとともにあるということだ。

「光は視るものではありません。……もたらされるものです」
　
　祈りが始まった。

177 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/24(土) 22:13:26

>>176

　腐海神殿―――かつての研究所の地下施設。巧妙に偽装された格納庫の一
角には、燦月製薬が「許されざる事態」に対策するための兵器が納められて
いた。結局、それらは日の目を見ることはなく、研究所は腐海に呑まれ、鋼
鉄の戦士たちは樹に寄生されるがままに苗床となった。
　役目を果たせずに死んだ兵器。だが、森と同化した彼等を「操作」するの
ではなく「感応」させることができる魔術師が、この森に一人だけいた。
　
　乙女は喚ぶ。手を胸の位置に組み合わせて、祈りを捧げる。彼女に〈声〉
をもたらす、神の御使いを。―――ああ、聖カトリーヌさま。
　私に力を貸してくださいませ。フランスを救うために、奇跡を。

「……来ます」
　
　乙女は静かに呟く。

　何が？　アリスの問いかけは、ローター音によって阻まれた。
　センタービルの影から這い出したかのように、二人の背後に獰猛な鉄騎の
ケモノが推参。さすがのアリスも呆気にとられて一言。「へりこぷたー？」

　Mi-24[ミー・ドヴァーッツァチ・チトゥィーリェ]―――ヨーロッパでは
こっちの名の方が知れようか。そう、ハインド強襲攻撃ヘリコプター。
　崩壊したソ連の秘密軍事基地に死蔵されていたものを燦月製薬が買い取り、
研究所に運び込んだ切り札の一枚。アフガニスタンの悪夢。
　森と同化しているため、シルエットは本来のそれから大きく逸脱している。
　メインローターとテールローターには蔦がびっしりと絡みつき、窓を割っ
て突き出された枝からは緑葉が密生。エア・インテークは太い幹が埋め込ま
れ、空気の進入を阻んでいた。―――飛行する樹と呼んだ方がしっくり来る
ほど、ハインドはヘリコプターをやめていた。

　コックピットには六十の悪霊軍を統治する魔界の公爵エリゴスの姿が。
　乙女との契約に従い馳せ参じた次第。今宵は牛角と悪魔の翼を生やした黒
馬からフライング・フォレストに乗り換えて救国の手助けをする。

「ああ、天使さま！」
　乙女は恍惚の絶頂に浸る。
「私には視えます。より大きな光が。天使さまが来てくれたのだわ」

「ええ、ほんとに素敵な天使ね」アリスはローターから打ち付ける風に負け
ないよう、必死でスカートを抑えている。「確かに、イギリス人をたくさん
殺してくれそうね。ついでに新大陸の連中も」

　腐海戦仕様のハインドがゆっくりと機首を持ち上げる。30mmガトリング砲
が旋回し、王妃を睨んだ。―――そして始まる、分間4,200発のパレード。
　
　


【現在地：C地区　オフィス街　センタービル屋上】

178 名前：マルチアーノ12姉妹 ◆M12sisrIV6 ：2007/11/24(土) 22:17:15

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
>>139
　
　丁度、首だけをすげ替えたかの様に。
　口を開いたケースの中身に、投擲されたダガーが深々と突き立っていた。
　男の首……中年をやや過ぎた辺りだろうか、判別し難いのはその顔に針鼠宜しく六本の
スローイングダガーを突き立てられた侭、奇妙な笑みを浮かべ続けていたからだろう。
　前額部が禿げ上がり痩せ型の、恐らくは研究所員、その首にはチューブや電極が所狭し
と這い回っていた。
　生命維持装置――『強制』という言葉が前置されるとして――によって彼は完全に死に
切る事も出来ず、この軽金属製の酷く小さな棺桶の中で即席のピンヘッドにされてまで、
シュレーディンガーの実験を続けているのだ。
　
　そのケースが宙を舞い、意外にも小さな音を立てて落ちた。
　スターター代わりという訳でもないだろう、気付けば殺到しているその速度にジューン
は目を瞠った。
　一撃。
　受け切れず、流した。
　それが拙かった、一瞬そう思った。
　二撃。
　跳ね上がる剣尖が掠め、ナイフが弾かれ袖口が裂けた。
　手首が斬り飛ばされなかっただけ幸いと言うべきだろう。
　咄嗟にポケットに人差し指を引っ掛け、手首を返すとくるりと掌中に収まった。
　グリップの一端に指が入る程の環が付き、もう一端には内に湾曲した鎌の様な刃が付く
東南アジア原産の『カランビット』と呼ばれるポケットナイフである。
　しかし、女は既に身を捻っている。
　其処から放たれる三撃、四撃目を、
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　割って入る者が居た。
　
　
　俗に「慶長新刀、南北朝摺上げをうつす」という。
　二尺三寸、身幅広く反り浅く中鋒伸びごころ、地沸えつみ砂流し金筋入り、中直刃互の
目物打ち湾れあり。
　埋忠明寿、豪壮たる太刀姿である。
　それを手にするのは頭の横で結われた栗色の豊かな髪を肩に掛け、黒いドレスを纏い、
慈母の様な笑みを浮かべる少女。
　マルチアーノ12姉妹、ジュライの立ち姿である。
　
　埋忠明寿で青柳剣を受け止めた侭、振り返るとジュライは只にこり、と笑った。
　それだけである。
　ジューンは小さく頷くとケースの元へと走った。
　
　
　【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】

179 名前：リサ・トレヴァー ◆Lisayc.tVc ：2007/11/24(土) 22:20:14

>>175

>>141

【現在地：Ｆ地区　病院】

180 名前：＜呪われた公子＞ゲイナー ◆GAinErMg8k ：2007/11/24(土) 22:25:04

『死神（デス）ゼアド vs ＜呪われし公子ゲイナー＞』
　
>>171
　
　現れては消える死神が、地獄の黒き炎を纏いし大鎌が、弧を描いて彼に迫る。
　馬ですらたやすく輪切りに出来そうなほどの双頭の大鎌の一撃を、彼は色さ
だまらぬ輝く剣で受けた。
　
　魔剣と魔鎌、虹色に輝く刃と骨色をした刃が激突し、刃金を散らし、火花を
散らし、雷撃（いかずち）のように魔力が弾ける
　
　凄まじい衝撃が彼の腕を、そして全身を走りぬけた。
　思わず剣を取り落としそうになった。歯を食いしばり、その衝撃に耐える。
　
　なんという重い斬撃なのだろうか。筋肉の欠片も無い餓裟髑髏（がしゃどくろ）の放った
一撃とは到底思えなかった。
　
　左足を半歩引いて半身となり大鎌による斬撃を受けて流す。
　受け流すと同時に突きを放つ。だがしかし、その時すでに死神はいない。
空間転移だ。
　
　転移、転移、空間転移。人には不可能な連続転移。
　消えては現れ、現れては消えて。死の大鎌を振るい続ける。
　
　さながら知らぬ間に忍び寄り命を刈り取る伝説の死神のように。
　いや、それそのものなのか。眼前の存在は。
　
　

181 名前：＜呪われた公子＞ゲイナー ◆GAinErMg8k ：2007/11/24(土) 22:26:03

>>180
　
　無数の旋風刃と化した小鎌があらゆる方向から彼に襲い掛かる。
　狙いは眼と手。的確な狙い。さすがは狡猾で油断無い。
　迫り来る刃の数はまさに無数。視界を埋め尽くす旋風の暴帝。
　
　それは尋常な剣術では防ぐことは叶わない。防ぎ続けることは叶わない。
　人の生み出した剣術では、人と戦うことを想定した剣術では、人間以上の存
在には叶わない。
　
　森に振られた役割どおり、ライオンの騎士（ゲイナー）は風車（死神）に敗れ去るのか。
　
　否。断じて否だ。
　
　確かに相手は邪悪といえど神とすら呼ばれる一柱。
　だが彼とて無限寿命者、もはや半神の位にまで登り詰めし男だ。
　かつては＜天秤の騎士＞として、＜天秤の公子＞として、＜英雄＞として、
　＜抑止＞として、世界の危機と戦い続けてきた男だ。
　
　この程度の逆境など数え切れぬほど体験していた。
　
　魔力を全身にみなぎらせる。高速詠唱。彼の専門は儀式魔術だが、この世界
に着てより後、より簡易でより便利なこの手の魔術も魔女に教えを乞い身につ
けていた。
　唱えた呪文は身体施術（フィジカル・エンチャント）と感覚強化（シャープ・センス）。
　だがまだこれでは駄目だ。これだけでは駄目だ。まだ足りない。圧倒的に足
りないのだ。
　
　だから彼は連続して――――。
　

182 名前：エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ ◆SV001MsVcs ：2007/11/24(土) 22:27:38

>>175

　鎖を引き摺る音を靡かせ、素足の音を連れて現れたのは……狂気そのものだった。
　姿かたちは概ね人型。
　手には両手を繋ぐ枷。足には千切れた元足枷。
　そして纏うは襤褸の服に……人の、顔をつなげた……

「う……！」

　後方のフィオがえずくように呻いた。
　声が気を引いたか、狂気の具現がフィオへと向かう。
　だが動きは遅い。そして位置はアタシのド正面。外しっこない。

　ショットガンを装填したヘキサゴンアームズM3685が咆えた。
　雷鳴の如き銃声。
　視界が一瞬白く染まるマズルフラッシュ。
　銃身が垂直に跳ね上がるリコイル。

　かくして撃ち放たれた微細散弾の暴風が化物を殴りつけた。

　人体をズタズタにして十メートル以上吹き飛ばす威力は、こいつに対しても遺憾なく発揮されるだろう。

【現在地：Ｆ地区　病院】

183 名前：＜呪われた公子＞ゲイナー ◆GAinErMg8k ：2007/11/24(土) 22:28:52

>>181
　
圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）
圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）
圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）
圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）
圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）
圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）
圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）
圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）圧唱（クライ）
　
　呪われた体だからこそ可能な十重に二十重にかけられた魔力の加護――いやこれもまた呪いか。
　
　

184 名前：＜呪われた公子＞ゲイナー ◆GAinErMg8k ：2007/11/24(土) 22:29:35

>>183
　
　敵の狙いは正確で適切だった。だがそれが仇となった。
　そう、狙いがわかっていれば叩き落すことは容易かった。
　
　両腕の剣がぶれた（・・・）。人間としての、いや化物としての限界すら超越した彼の
動きに、物理法則そのものが捻じ曲げられる。
　擬似的な時間超越。恐るべき神速の領域。
　
　一瞬の後、迫り来る小鎌の大群を、彼は双振りの剣でことごとく叩き落した。
　そして彼は哄笑する。
　
「汝に余が殺せるか！よかろう、とくとやり遂げてみせよ死神よ！！
余は死こそを望むゆえに！！」
　
　憤怒と嘲りに満ちた笑い。だがその薄皮を一枚はがせば、そこにあるのは絶
望と虚無。彼は真に死を望んでいた。
　
　両手の握りを素早くかえた。叩ききるためのしっかりとした握りから、素早
く剣を振るうための柔らかなものへ。
　
　彼は仁王立ちになった。仁王立ちになり鷹羽のごとく諸手の剣を広げた。
　そして彼はその瞬間をただひたすら待った。
　
　極限まで、それ以上まで高められた身体能力と彼の五感。それに引きずりあ
げられた第六感。現界する前の転移の兆しすら見逃さぬ。
　
　空間の歪み、重力の変化、大気の流れ、魔力の出現。死神の現界。
　
　呪われし公子の体が疾走（はし）った。そして死神めがけて高速で剣を振るう。
　それはまるで両手剣（ツヴァイハンデル）を用いたフェンシング。
　
　刹那の間に、数え切れぬほどの銀の軌跡が宙に刻まれた。
　
　
【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）地下】

185 名前：―完全で瀟洒な従者― 十六夜咲夜 ◆Clock/PR2Y ：2007/11/24(土) 22:40:24

>>156
　
　霧のない夜。月の欠けた夜。
　カタカタと鳴る窓は憂鬱を。
　ギシギシと鳴る扉は陰鬱で。
　足音は何時だって黙っている。　　　　　「――ティータイムの準備ね」　　　　広くしすぎたかしら？
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 大は小を兼ねるのだからきっと平気。
　後悔は何時だってにこやか。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 衣装ケースは広いに越した事がない。
　真っ赤な絵の具を壁一面に。　　　　　　「良い水がないのよねえ――」　　　 見るものを圧倒できるから。
　奇怪なオブジェは海の底。
　終わりの金はまだ鳴らない。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 動かない景色はやはり退屈だ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「なんでこんなに臭いのかしら」　　　時間厳守は絶対ではないと思う。
　いつの間にか霧が出た。　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　 思うだけだけど。
　赤い花が咲いています。　　　　　　　　
　暗い夜でも輝けるんです。　　　　　　　 「外はやっぱり、外なのね……」　　　暇を持て余すのは何時以来だろう。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 何年も前だったか、つい最近か。
　皆笑ってくれますか？　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――よく思い出せない。
　皆泣いているんじゃ？　　　　　　　　　　「なんだかとても憂鬱ねえ……」
　
　
　
　
　
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――――-懐中時計の蓋を、閉じた。

186 名前：―完全で瀟洒な従者― 十六夜咲夜 ◆Clock/PR2Y ：2007/11/24(土) 22:41:50

>>185
　　
　風が流れる。なんだか清清しいというよりも刺々しい風。目に優しくない。
　第一埃がまうから好きじゃない。掃除の時は風なんてない方が良い。集めた落ち葉が散らばるなんて考えただ
けでもゾッとする。
　予定通り、秒刻みに動かなければ仕事は終わらないのだから。
　
　それでも風は流れる。
　秒針の音が消えたから。
　
　聞こえるのはパターンノイズ。一定の間隔で捲られるページの音。なにも旅行にまで来て本を読む必要はない
と思う。百読は一見に如かず――まあ、千読、万読と重ねれば幻想（リアル）は現実（ファンタジー）を凌駕するかもしれない。知識人は
これだから怖い。
　今乗っているこれだってよく判らない理論で、よくわからない機関を使って、よく判らないけれど走っている。列
車を模したのかと思ったけれど、よく判らないものになってしまっている。
　まあ、便利でお嬢さまは楽しそうだから良いんじゃないかと思う。
　
　判らないものは判らないままでいい。
　曖昧な部分があるからこそ幻想は立っていられるのだ。
　
　逆に言えば、曖昧な部分がないからこその「外」。
　物珍しいけれどそれだけな、無味無臭のモノみたい。
　毒にも薬にもならないなら、毒にも薬にもなれるのかもしれないけれど。
　
　あまり心躍らない旅行。
　それでもアクシデントはつきものだ。
　
―――――そう、アクシデントは。

187 名前：『夜雀の妖怪』ミスティア・ローレライ ◆8hOOMYSTIA ：2007/11/24(土) 22:45:46

ミスティア・ローレライｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『イツマデ』 Till When?

>>176,177
妖怪少女に他意はない。
感じ入るままに、幽かな声を拾うままに唄うと、『偶々』相手の神経を逆撫でることがある。
それだけだ。

それだけ幽かな声、怨嗟の声に溢れているといことでもある。

「痺れた？　って言うか千切れたね〜」

幕間とばかりに屋上に足を下ろす。
そこに轟く爆音。

エコロジカルに自然との融合を表現。
目に優しいグリーンは戦場の癒しに。
殺人機械の天使がオンステージ。

「私への挑戦、未知への挑戦？
　なんという騒音！」

バラ撒かれる銃撃を聴きながら屋上を滑るように下がる。
鬼さんこちらと端まで至り、隣のビルまで跳躍。
銃撃の音も、コンクリートを叩く音も、十分聴いた（・・・・・）

ヘリコプター！
ヘリコプター！
ヘリコプター！
買ってよ自家用ヘリコプター！　ヘリ！　ハリー！

銃弾のためのミュージック。
仲良く唄って踊って、鉛玉は喜びのあまり弾け飛ぶ。

乗り回せるヘリコプター
私の森用ヘリ
緑が優しいヘリコプター
天使の聖なる殺人ヘリコプターで一人残らず浄化したい

指揮棒のように手を振りかざす。
鳥たちは二手に分かれ、二本のお立ち台へ潜り込む。

188 名前：パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU ：2007/11/24(土) 22:45:46

>>156

パチュリー･ノーレッジは、常に本と共にあった。
レミリアの誘いに乗って出立した今回の旅行でも、それは例外ではない。

小説魔導書知識書専門書参考書断書地球の歩き方
咲夜の協力によって拡張された車内の一角には所狭しと本が詰め込まれ、
図書館分署といった趣を見せていた。

百読は一見に如かず、と誰かが言った。
確かにそうかもしれない。無骨な文字の羅列は美しい現実の百分の一だって描写していないのかもしれない。
だが、文字の積み重ねが千に至れば。万か兆か、それとも京なら？
或いは、現実に勝る事も出来るかもしれない。
それに至るのが那由他の彼方でも、全てを読みきって見せよう。
これが、パチュリー･ノーレッジの信条だった。

だから、彼女は書に没頭する。
森の書に。森を語る書に。森を歌う書に。
友の望み、この森の幻想を打ち砕く術を彼女の知識とするために。

だが、彼女がその術へとたどり着く事はとうとうなかった。

【現在地：パーラーカー（ハイウェイ）】

189 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/11/24(土) 22:53:13

紅魔館の優雅な住人たちｖｓカトル・カール
―Forest Lagoon―

>>146>>147>>148
　>>149>>150>>151
>>154>>155>>156
>>185>>186>>188




　可能な限りの加速／最速の軌道を最短で移動するために。
　計三台のコンテナが悲鳴を上げながらカーブを引きずられていく。
　淀んだ風を砕いて走る巨大トレーラー＝カトル・カールを積載した爆撃機。
　偉大なる爆撃の申し子―――ダークタウン最強／最悪の拷問官。
　軌道／求めるものへと疾走する／最先端の“フレーズ”をもぎとる為に必要な加速。

　フリント―――すでにルーアンに到着／ハイウェイをなぞる／このまま道なりで研究所
に突っ込めばゲームセット。最速の宅急便がマルドゥックシティへととんぼ返りする手筈
はすでに整えられている。
　しかし―――

「……なんだ、あれは」

　フリントの視線／サイドミラーをチェックしながら／正面に現れた巨大な建築。
　疾走／土台の代わりにシャーシと車輪／ライフラインの代わりに動力装置。
　走る館＝時速三百キロメートルを超えて加速するヴィクトリア風建築／意味不明。

　そして、その上で仁王立ちする少女／真紅のドレスに身を包んだ姫君。
　荒らぶる風が自ずから避けていくような威風／風格でヴィクトリアンの上に。
　紅い瞳／紅いドレス／紅い大気―――そして鮮やかな銀色の髪が風を額づかせている。
　まるで深窓の令嬢がパーティ会場から抜け出して夜風を浴びている光景。
　しかしその脅威は背中に集約―――異形の翼／蝙蝠の羽＝人間から外れた何か。

　驚愕／逡巡―――敵対組織？／派手な登場／すでに先回りされていた？
　正体不明＝倒すべき敵／棺桶に放り込んで土のベッドで眠らせる存在。
　フリントはそれを、本能と直感によって敵と判断した。

　無線通信／同時に突然、先頭のコンテナの横が開く／顕わになる、赤く染まった異形の
兵士たち／彼らが間を置かず出撃。

「ブルブルブルブル！　ブルブルブルブル！」

　飛翔／着地／加速／追尾―――スパンカー・モノライダー。
　赤いレザージャケット／ヘルメットも赤／タイヤの上のエンジン／そこから生えた男の
上半身／両手には象も叩き殺す鉄の鞭／一輪バイク＝ハイウェイ上で戦闘の出来る存在(レーサー)。

「しゃぶってやるぜ！！　しゃぶってやるぜ！！」

　飛翔／着地／舞踏／追尾―――リッキー・ヒッキー。
　見た目は少女／赤いレザースーツ／顔の鼻から下は巨大な機械＝鋼鉄製の鮫の顎／しゃ
がれた中年男の声／車輪式の義足が高速回転＝ハイウェイを疾走する奇抜な踊り子(バレリーナ)。

「いくよいくよいくよいくよ！！　いくよいくよいくよいくよ！！」

　飛翔／着地／疾走／追尾―――ホーニー・ソープレイ。
　真っ赤な体毛／ぴっちりしたボディースーツ／四本の義足＝鹿の足／卑猥な形状をした
巨大な角／機械仕掛けのトナカイ＝ハイウェイに乗った季節外れの存在(サンタクロース)。

　他のメンバーはまだ待機―――フリントの判断／まだ距離がありすぎる。
　インファイト／接近してからが勝負。
　フリントの指令―――スケアクロウへ援護射撃の要請。

「おもちろぉおおーい！　おもちろぉおおーい！」

　プッティ・スケアクロウ―――直結された案山子型の電子技師／行動／トレーラー搭載
の重火器とＦＣＳを操作(スナーク)。
　作動／照準／射撃―――五十口径機関銃／自動擲弾銃／焼夷弾を装填したロケット弾。
　鮮やかな軌道を描いてヴィクトリアンへ。
　毒に満ちた清冽な兵士たちとともに。


　遭遇／戦闘。
　カトル・カールにとって初の“在り得ない物(ファンタジー)”との交戦。

190 名前：ヴィルマ・ファキーリ：2007/11/24(土) 22:53:26

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
>>178　
　
　並々ならぬ手ごたえに、私は感心していた。さぞかし業物だろう。
　――私の猛剣を受け止めた銘刀ではない。それを揮ってみせた少女の事だ。
　
　
　新たに現れ出でた彼女は、男装の麗人の仲間なのだろう。ふっくらとした笑みとは裏腹の一
太刀は、日本刀という類稀なる器械を最大限に使用した斬撃に他ならなかった。
　面白い。――と喜んでばかりもいられない。
　私は愛剣を握る手に力を込めた。
　
　雷瞬、先刻の山刀と同様、相手の太刀と交差した私の剣は黒衣の少女に襲いかかった。
　交差したまま、だ。しなやかな弾性を持つ青柳剣は打ち合った箇所を支点にくねり、切っ先
だけが白い喉元を襲ったのだ。
　
　
　同時に左腕を振る。袖口から滑り出た匕首は勢いをそのまま乗せて、ケースに走る先刻ま
での相手を射る矢へと変わった。
　
　
【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】
　

191 名前：―永遠に紅い幼き月―　レミリア・スカーレット ◆DEVILbzibY ：2007/11/24(土) 22:55:25

紅魔館の優雅な住人たちｖｓカトル・カール
―Forest Lagoon―

>>185>>186>>188
>>189


　あら、あれは？

「咲夜ぁ、変なのが見えるわ」
　
　人間の視力では見えない距離だ、とか。屋根に立つ彼女から屋内のメイド
に声が届くものか、とか。そういった配慮は一切ない。
　地平線まで至れそうなほど遠く前方で認めた対向車―――このハイウェイ
で初めて見る、自分たち以外の走るもの――を発見した栄誉を、ただ誰かに
伝えたいだけだから。
　ミニ紅魔館のスピードには及ばないものの、対向車の速度もかなりのもの
で、相対距離は見る間に詰められてゆく。彼方の位置から人でも目視可能な
距離に。―――レミリアの唇が好奇に歪んだ。

「パチェ！　棺桶が自分で走ってるわ。真っ黒な棺桶。私もあれ欲しいわ」
　
　その程度で友人が読書を中断するはずがなかったが、それもまたレミリア
には関わりのないこと。少女は自分の好奇心の奔流に身を任せる。
　漆黒の棺桶―――外を識らないレミリアには、「自動車」が未だ流れ着か
ない幻想郷に棲むレミリアには、黒塗りのトレーラーはそうとしか見えなか
った。車輪のついた自走式棺桶。自走式洋館と同じくらいイカしてた。

「あれをフランへのお土産にするのもいいわね。あれだけ大きければ、あの
子の寝相の悪さにもきっと―――」

　ちゅん、と音の壁を突き抜けて、一発の弾丸がレミリアの顔面に殺到する。
優雅に右手でキャッチ。興味深げにしげしげと見つめる。
「……何かしら、これ。鋼鉄の種？　植えたら鉄の花でも咲くの？」
　種は少女の手の平ほどもあった。芽吹けばさぞ大輪の花弁を咲き誇らせる
に違いない。―――そんな呑気な思考が、次の瞬間には強制終了。
　
　鋼鉄の種子は一発だけではなかった。秒間数百発の勢いで、ミニ紅魔館と
屋上に佇立するレミリアに降り注ぐ。威力はそこそこ。外装の煉瓦が弾け、
ドアベルや郵便ポストといった飾りの類も悉く消し飛ぶ。
　だが、貫通力が足りない。パチュリーが施した「レミィ絶対安全装甲」は
種子の屋内への侵入を徹底的に拒否している。種子にできることは、似非洋
館を外からノックすることばかり。
　―――肝心のレミリアは外にいるため、まったく護れていないのだが。

192 名前：―永遠に紅い幼き月―　レミリア・スカーレット ◆DEVILbzibY ：2007/11/24(土) 22:55:53

>>191


　レミリアは三十発ほど躯で受け止めた。一発で少女の頭をまるまる一つ持
っていく程度の破壊力は持っていたから、その三十倍ともなると肉片にすら
変えられそうだが―――飛び散った肉と血漿は、次の瞬間には闇の砂へと姿
を変え、ざわざわと騒ぎながらドラキュリーナを再構築する。
　その行程があまりに速いため、常人には無疵としか見えないほどだ。

「……避けなさい」

　パーラーカーに命ずる。ご主人のオーダーには忠実に。―――ミニ紅魔館
は、軽快なフットワークで荒れ狂う鋼鉄種子の暴風をくぐり抜けた。
　鉄の種の次は、炎の花を咲かせる球根だ。パーラーカーが紙一重で避ける
と、球根は道路に炸裂。爆音と爆風をレミリアに浴びせかける。
　ミニ紅魔館の動きは機敏だった。種子と球根の間から、絶対回避可能な軌
跡を見つけ出し、的確に見えざる道を辿る。
　さすがパチェプロデュース。弾幕回避はお手の物。

　そうしている間にも、自走式棺桶と似非洋館の相対距離は埋まっていく。
　棺桶から飛び出した三つの人影に、レミリアは眉をひそめた。―――なん
て醜悪な外見。不快指数鰻登り。

「ねえ、咲夜。人間って……あんなカタチしていたかしら？」
　
　それは一瞬の油断だったのかもしれない。
　音速を突破する種子の暴風と炸裂球根の花畑の中で、パーラーカーは致命
的な「敵弾」を見逃していた。レミリアもよくやるミスだった。最速領域に
紛れた鈍足の弾。スピードに狂うプレイヤーを撃ち落とすのは、いつだって
この手の異端者だ。

　あれは、知っている。いつかパチェが大図書館で作っていた。お尻から火
を噴く月への移動手段。確か、ロケ―――
　
　パーラーカーが後輪を滑らせて緊急回避。だが、間に合わない。曝してし
まった横っ腹に槍が食い込む。装甲は灼熱により一瞬で融解。素早く車内に
侵入すると、続く爆発が室内だけを丁寧にローストした。
　衝撃でパーラーカーが大きく跳ねる。「あ……」と思う間もなく、レミリ
アは空中に投げ出された。


【現在地：ハイウェイ】

193 名前：『夜雀の妖怪』ミスティア・ローレライ ◆8hOOMYSTIA ：2007/11/24(土) 23:00:24

>>187
ビルディングが鳴動する。
情熱の律動に急かされるように、グリーンのコードを生やした四角い柱が。

貴方は黒　私は白
貴方は悲鳴を　私は唄を
貴方はヘリを　私はツッコミ
ランボーなんて観たくはないし　バイオハザードなんて以ての外

ローターの音も、装甲が風を切る音も十分聴いた（・・・・・）。

貴方はハインド　私はスティンガー
神様にお願いして貴方はヘリコをプレゼント
貴方はヘリコ　私はロケット
私は鉄の箱が飛ぶわけないと思うし　鉄の鳥も　鉄の船もね
希望を言うなら

ヘリコのためのミュージック。

「ぶっ壊れろ！」

装甲板を揺らすリズム。
ローターを振るわすフレーズ。
中身をぶち壊す詩。
シャウト！

二柱のビルディングは今や巨大なスピーカー。
己の身を削って粉砕しながら、破滅のビートを刻む。


【現在地：C地区　オフィス街　センタービル屋上】

194 名前：リサ・トレヴァー ◆Lisayc.tVc ：2007/11/24(土) 23:02:36

>>182

　直撃、ゾンビ数匹の顔を消し飛ばす軍用ショットガンは
　リサ・トレヴァーを容赦なく吹っ飛ばして壁に叩きつけた。
　本来生命を持つものなら活動停止してもおかしく無いだろう。

　―――しかし狂気は生きていた。
　破損箇所は驚くべきスピードで活性化し、最初から
　何も受けていなかったかのように蘇る。

　しかし痛むのか恨めしげな声を上げる。
　言葉にはなっていない。ただ単にうねり声を上げて
　マスクの隙間から銃を持った目標を睨みつけている。

　吠える。
　貴方はお母さん？その顔の奥にあるのは
　お母さん？それとも――――

　早歩き。銃弾が放たれようとその歩みが止まることは無い。
　彼女の手が届く範囲に人間が入った時、その重い手械を嵌められた腕で
　自分に銃を向けた者を薙ぎ払うだろう。

【現在地：Ｆ地区　病院】

195 名前：スレイド ◆cDCpSlADE. ：2007/11/24(土) 23:05:41

>>170

スレイドがついに獲物に追いついた時、まずその外見に驚いた。
四人組のその一行はどうみてもティーンエイジャー、しかもそのうちの三人が女子で
残る男子は女子達よりも、弱弱しく、おどおどと不安げな表情を浮かべている。
だが、素直に喜んでばかりはいられない。
自分を追い詰めたのは丁度この世代の子供達で、直接手を下したのは男子でなく女子である。

皮肉な運命を感じつつも、そのまま子供達の後を追った。
闇から、闇へ、物陰から物陰へ。
女子供とて侮るな、という死から得た貴重な教訓に基づき
己の気配を極限まで絶って、闇夜に紛れて辛抱強く場違いな子供達を尾行する。

尾行からは様々な情報を得る事ができた。
死者再生の秘法の鍵を握っているのは、リーダーらしいドレスを着た女子である事。
その外見とは裏腹に、彼らはこの異界の森を歩き回れる戦闘力を有している事。
一番年下の女子は怪力を誇り、男子は自分と同じく恐らく不死者で、もう一人の女子はなんらかの獣の血を引いている事。

―――そして総合して、彼女らはやはり子供であり、この状況に少なからず恐怖している事。

勝てると確信した時、スレイドはついに影の中から這い出した。

「お見事。ずっと見ていたよ。中々の手並みだな。」

突如として出現したにも関わらず、まるで当然とばかりに後ろで腕を組みながら、スレイドは言葉を続ける。

「私の名はスレイド。君達に興味が湧いた。
　この場から保護してあげよう、是非、我が家に招待したい。
　君達は運が良いな。生き残りたいのだろう？言う事を聞いていれば全員無傷で帰れるぞ。」

表向きは懐柔だが、その声には明らかに嘲笑が含まれていた。


【現在地：Ｄ地区道路】

196 名前：―完全で瀟洒な従者― 十六夜咲夜 ◆Clock/PR2Y ：2007/11/24(土) 23:18:59

>>189
　
　紅い花が咲きますか？
　　土はなくとも咲けますか？
　　　光は溢れ過ぎていませんか？
　
「なんで悪い予感ばかり当たるのかしら」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　紅い花には口付けを。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　眠れる美女は起きないけれど。
　
　　　ノックが激しくて最悪。
　　　　レディを呼ぶには不適。　　　　　　　「本当に――憂鬱ねえ」
　　　　　ベットから跳ね上がったウサギ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　見慣れぬ棺桶が描く軌跡。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　奇跡の果ての情景？
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「誰が掃除をしてくれるのかしら？」
　
　
　
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　銀の矢は駆け抜ける。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　銀の矢は夜を刈り取る。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　銀の矢が描いた軌跡。
　　
　　　　　　　　　　　　　沈む黒塗りの鉄。
　　　　　　　　　　　　　跳ねる黒色の鉄。
　　　　　　　　　　　　　爆ぜる漆黒の牙。　　　　　　　　　　　　手にしたタナトスへの切符。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　壊れたエロスへの欲求。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　求め止まないカーニヴァル。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　断裂/断絶/断切。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　破壊/圧壊/散壊。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　閃光/穿孔/鮮紅。
　
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―――――秒針の音が止む。

197 名前：―完全で瀟洒な従者― 十六夜咲夜 ◆Clock/PR2Y ：2007/11/24(土) 23:22:18

>>196

　窓以外から見る景色は、中々に壮観だった。
　墓標みたいな石の群れ。鉛色の道。暗い夜空。
　全てが全て、物珍しくもあり、懐かしい。
　
「――で、何が起こったのか説明していただけますか？」
　
　ひらひらとナイフを弄びながら、我が麗しの主に問うてみる。
　どうせ急に打たれた程度の情報しかないのでしょうけど。
　
――憂鬱すぎるわね。
　憂鬱すぎて、一暴れしてみたくなるのも無理はない――かもしれない。
　
　大丈夫かしら、パチュリー様。
　本の保存。
　
「大丈夫かしら――お嬢様」
　
　流されてる。盛大に。
　飛べるから大丈夫かなぁ……

198 名前：黒いアリス ◆ALICEsQkXc ：2007/11/24(土) 23:25:17

ミスティア・ローレライｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『イツマデ』 Till When?

>>187

「あの子、唄えれば何でもいいみたい……」
　
　アリスのぼやきももっともだった。イザベルがこの空中庭園に訪れてから、
始めたことと言えば唄い放題に唄っただけだ。
　乙女の救国も、アリスのリドルも、彼女の前ではインスピレーションを与
えるための装置に過ぎないのか。
　―――だが、その唄が乙女の生命を蝕んでいるのは確かだったし、舞い降
りた天使にまでも牙を剥こうとしていた。
　
　今度のコーラスも殺人的。
　死告鳥を撃ち落とした唄とは比べものにならない威力で、ハインドを震撼
させる。可視領域にまで踏み込む奇跡の如き歌唱。
　見よ！　音が物質を蹂躙する瞬間を。

「ジャンヌがヘリを利用するなら、あの子はビル？　高層ビルをステレオス
ピーカーに見立てるなんて……」

　ハインドの機体が大きく傾いだ。エンジン部から火の手が上がる。コック
ピットでエリゴス公爵が苦悶に呻いていた。
　乙女もまた、血を吐き出して膝をつく。―――だが、闘志は一向に衰えて
いない。光を失っているはずの青銀色の瞳が、強くイザベラを睨み付けた。
　腰からシャルル・マルテルの剣を抜剣。刃を天に向けて叫ぶ。

「フランスの剣たちよ！　救国の道へ至るために―――」
　刃は振り下ろされて、
「―――突撃〈パレード〉！」

　これが尋常な機械仕掛けの攻撃ヘリであったなら、王妃の唄によってとう
に撃墜されていたことだろう。しかし、このハインドは森と悪魔に侵された
魔術礼装―――エンジンが死んでも、浮力は消えず、ローターは蔦に促され
て回転を続ける。

　機体が爆音を引き摺りながら、イザベルへと肉薄した。ガトリング砲の残
弾が尽きると、今度は機首下部の12.7mmガンポッドが火を噴く。
　更に両翼の対戦車ミサイルが、唄をかき消すためだけに発射された。

「突撃！」

　乙女の令に応じて、機体中央部兵員室のキャノピーが開放。中には、大志
を背負った救国の騎士―――ではなく、契約に縛られた八匹の悪魔。
　両翼を広げて飛び降りた。手には三又の槍の代わりにゲパードやカラニシ
コフを構え、淫蕩な王妃にドッグファイトを挑む。　



【現在地：C地区　オフィス街　センタービル屋上】

199 名前：魔神王リィーナ：2007/11/24(土) 23:25:28

>>140
　はたして嫉妬の雷は、短い気合とともに霧散させられた。つくづく飽きさせない男だ。
あの胸元の金具らしきもの、魔術を発動させるたびにはじけている。
　
「あいつと俺は赤の他人だ。ひとかけらの血のつながりだってない」
　
「あいつの肉親は、俺がこの手で殺したよ」
　
　どこの家庭も似たようなものか。
なるほどたしかに、この男の言うとおりかもしれない。
わたしの事情など「どこにだって転がってる程度のモノ」か。だが。
　
「だがその娘にはお前がいる。いい兄様ぶりではないか。
喜べ、娘。お前の兄様は、お前が誇るに足る」
　
　何度目かの魔力の波動。それなりにしぶとい兄と、
突付けば血を吐いて死にそうな妹を同時に殺すのは、なかなか難しい。
あの男のように怒りはしないが。
　
「――イグジストッ！」
「障壁となれ」
　
　二度目の衝撃は、今度はこの身には届かない。
魔術師であるはずの男が駆けてくるのは、魔力が心もとないからか、
単に妹にいい格好を見せようと思っているのか。
兄たるもの、後者であってほしいものだ。

200 名前：エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ ◆SV001MsVcs ：2007/11/24(土) 23:26:46

>>194

　ごしゃっ、と人型大の肉が壁に叩きつけられる音。

　ショットガンを浴びた化物は吹っ飛んで壁に当たって、落ちた。

「やった、か？」

　マミー、マーズピープル、ヒュージイナゴ、ミンコンガニ、等々のクリーチャーを一撃の下に粉砕してきた銃弾だ。
　ルーツマーズの脳味噌だって吹き飛ばした。コイツの前に生存する化物がいるなんてことはありえない。
　コイツを浴びて無事で済むはずがない。
　
　――だっていうのに。

「え、エリちゃん！」

　アタシたちの見ている目の前で、ズタズタになった肉塊が見る間に再生していく。
　瞬く間に元通りに再生した化物は恨めしげな声を上げた。
　背骨を冷たい手で引っつかまれたような悪寒が走り抜ける。

「ッッ――！！」

　ぺたぺたと足音を立てて化物が向かってくる。

「この！」

　フィオの手元でマズルフラッシュが上がった。
　重機関銃弾が迫る化物に突き刺さり肉片と血しぶきを散らす。

　だが、止まらない。

　アタシは二発目を叩き込むべくコッキングレバーを引いて再装填。
　はぜ割れたシェルが飛び、次の弾丸が薬室に送り込まれた。
　
　しかしトリガーを引くより、
　銃弾を浴びながらもやってきた化物が、手枷のついた両手でアタシを殴り飛ばす方が早い。
　
「ガはッ！」

　背中から壁にぶち当たった。息が詰まる。激痛が遅れて身体に走る。
　ずるずるとアタシは床に崩れた。

「つぁ……」

　身体が痺れる。
　なんて、馬鹿力だ。

「エリちゃん！　エリちゃん！」

　銃声に混じってフィオの呼び声。

　こなくそ……。
　
　身体を起こす。

　ダメージでけえ……。

【現在地：Ｆ地区　病院】

201 名前：パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU ：2007/11/24(土) 23:29:42

>>146>>147>>148
　>>149>>150>>151
>>154>>155>>156
>>185>>186>>188
>>189>>191>>192
>>196>>197

「咲夜ぁ、変なのが……」

「………」

「パチェ！　棺桶が自分で……」

「………」

「あれをフランへのお土産に……｣

「………」

「……何かしら、これ。鋼鉄の……」

「………」

チュインチュインチュインチュインチュインチュインチュイン

「………」

「……避けなさい」

「………」

「ねえ、咲夜。人間って……」

「………」

爆音轟音破砕音爆音轟音破砕音爆音轟音破砕音爆音轟音破砕音爆音
轟音破砕音爆音轟音破砕音爆音轟音破砕音爆音轟音破砕音爆音轟音
破砕音爆音轟音破砕音爆音轟音破砕音爆音轟音破砕音爆音轟音破砕
音爆音轟音破砕音爆音轟音破砕音爆音轟音破砕音爆音轟音破砕音爆
音轟音破砕音爆音轟音破砕音爆音轟音破砕音爆音轟音破砕音爆音轟

「……………」

「……煩いネズミが、来たようね」

パチュリーはゆっくりと立ち上がった。

【現在地：ハイウェイ】

202 名前：『ＤＥＡＴＨ』死神 ◆rX9kn4Mz02 ：2007/11/24(土) 23:32:57

　
『死神（デス）ゼアド vs ＜呪われし公子ゲイナー＞』
　
>>180>>181>>183>>184

　狂宴は続く。
　凶剣が奔る。
　

天の相を見、大地の機を読む。
それ即ち魔術のみにあらず、あらゆる術理術法に通ずる大原則である。
獣は本能で、ヒトは知識と経験で。
その真の心眼極めれば、現界した怪力乱神とて読み通せるというもの。
それが多元一元を問わぬ世界の摂理である。
　
だが、それ故に摂理とは非情であり無慈悲といえる。
理とは天地において須らく平等。習得せば、誰彼問わず味方する。
そして構わず牙をむく。
敵であろうと、味方であろうと。
導かれる解は同じであり、そもそれを解く為の式すら違うものではないのだ。
人であろうと、神であろうと。
　

203 名前：『ＤＥＡＴＨ』死神 ◆rX9kn4Mz02 ：2007/11/24(土) 23:35:09

>>202
　
例えば、それは公子に相対する死神も。
　
術式とすら言えぬ、呼吸に等しい“力”の行使。
高次の存在のみに許された難しからぬ御技ゆえ、感知する余裕があったのだ。
　
壊れたレコードのように繰り返される多重詠唱。
従来ならば過度の稼動と負担により自壊する呪詞、その言霊を確かに聴いた。

現象すら逆転させる超速度の剣閃。
追い越された音が後方より必死に追いすがる様、その異常を確かに感じた。
　
――――そして。
虚無を隠さぬ哄笑／漏れでた懇願の叫びとは裏腹に。
己を除いた波は凪となる、形なき無形の位（くらい）は――――
　
　
　『良かろう』
　＜空間の歪み＞
　　　　　　　　　　　　　　構えは防御なき責めに非ず。
　
　『呪われし公子よ』
　＜重力の変化＞　
　　　　　　　　　　　　　　但し、内より更なる制御を。
　
　『ならばその望み』
　＜大気の流れ＞　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　嵐を予見し、備えを忘れぬ。
　
　『この死神が』　
　＜魔力の出現＞　　　　
　　　　　　　　　　　　　　次なる術式を発動させ。
　　
　『叶えてやろう！』　　　　　
　＜死神の現界＞　　　　　　死神の鎌、その威容が
　
　　　　　　　　　　　　
　
　『汝のその剣にて、とくと死の舞を踊るがいい！』
　
　＜刹那の間に＞、
　既に予期した空間に、
　＜数え切れぬほどの銀の軌跡が宙に刻まれた＞
　死神の刃が蒼白の螺旋を宙に刻み込んだ。　

204 名前：“姫” ◆/HIME/HDYY ：2007/11/24(土) 23:37:38

『闘争王女』　〜princess in the war〜
>>195
ホームセンターを後にした一行は、当て所も無く市街を彷徨っていた。
何しろ、何者がこの街を制しているのか、この街が何処にあるかさえも知らないのだ。
「早急に、とは言わないが生存者に出会いたいところだな。我々には情報が少なすぎる」
姫は、フランドルが引きヒロが後ろから押すリヤカーの上で呟いた。

戦場において、情報こそが万能の武器であり最大の防具である。
身近な危険を知ること、相手の力量を知ること、己の不足を知ること、etc…。
一つでも多くの情報を握ることこそが生存への道標であり、勝利への一本道なのだ。

判っていることと言えば
『ここは日本ではない』『森が重要な意味を持っている？』『怪物たちが跳梁跋扈している』
この三点程度だ。

だからこそ、ヒロは目の前に現れた鎧姿の男に違和感を感じることなく受け入れたといえる。

『お見事。ずっと見ていたよ。中々の手並みだな。』
「え、だっ誰ですか！？」

そんな賞賛の言葉の裏側に隠された心中を最初に悟ったのは―――

『私の名はスレイド。君達に興味が湧いた。
　この場から保護してあげよう、是非、我が家に招待したい。
　君達は運が良いな。生き残りたいのだろう？言う事を聞いていれば全員無傷で帰れるぞ。』
「帰る方法を教えてくれるんですか！？……ひ……」
「―――ふん。随分と茶化してくれるものだな」

―――姫だった。

「我々を外見だけで判断して懐柔策に出たつもりだろうが……生憎この程度の修羅場ならば幾つも経験している。
それに……」
「あたしにも言わせろよ、姫―――お前、死体臭い（、、、、）にも程があるぜ？
　気配を上手に消したつもりでも、消臭が全然出来てねぇのさ」
最近の生物学において狼は、犬の原種であると言われている。
すなわち、狼には犬と同じ人間の何万倍の嗅覚が備わっているのだ。
リザの中に流れる人狼族の血は、スレイドと名乗ったこの男の屍臭を嗅ぎ取ったのだ。
「聞かせてもらおう」
姫は、いつの間にかチェーンソーを構え刃をスレイドに向けていた。

「貴様の目的、この街は何処にあり、何のために死の街と化したか」
エンジンスターターを引きしぼり、エギゾーストノートを響かせて。
「代価は、私の命か―――」

「貴様の命か、その二択だ」
火花に照らされた姫の貌に、憂いや恐れなど微塵も見当たりはしなかった。

【現在地：D地区　市街地】

205 名前：『ＤＥＡＴＨ』死神 ◆rX9kn4Mz02 ：2007/11/24(土) 23:39:12

>>203
　
音速を凌駕する白銀の剣閃、千に至るかという剣魔の刺突。
大気の壁を引き裂いて破る千裂の死棘は、しかしその全ては“線”であり“点”。
その形ゆえの大原則を越えるには、公子の魔技は僅かにだが届かなかった。
――――そう言わざるを得ないのだろう。
　
無数無限の点に勝るもの、其れは“円”であり“面”であった。
すなわち暴風となり旋回した＜死神＞の鎌。死せるべき生命を狩る無情の象徴。
数にして死神を捉えた刺突は２０を越えていた。法衣を貫き邪悪なる護りを穿ち、魂を傷つける。
だが旋風の間隙を縫った其れらが限界であった。
　
残りは技を伴った“力”によって打ち払われたのだ、双頭両刃なるデスサイズの旋風。
振り子のごとき精密さと、嵐の暴威とよって生まれた円運動によって。
ここで公子による剣の舞は一先ず終わりを告げたであろう。
だが神による死の舞は終わってはいない。
　
返しの刃が首筋へ。
回る刃が剣を打ち、次の刃が柄へ飛ぶ。
無限、無限。途切れる事なく。
ウロボロスの無限連環。終わる事無く車輪のように。
これは全身が兇器なのだ。
存在そのものが一切の無駄を持たぬ、武器としての到達形なのだ。
この死神の鎌、素材から全体が死で満ちたこの異形の大鎌は。
　
二重に走る斬激の円と線が、ゲイナーを
　
　　　　其処に―――――予兆なく七条の鋭き棘が迫る。
　　　　法衣の隙間より伸び、その凶悪な先端を覗かせる骨針が。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　襲う。
　
　
――――二重に走る斬激の円と線、骨針の点が絡み合いゲイナーを襲う。
その業と力を哂い、しかるべき死を与えるために。

【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）地下】
　

206 名前：リサ・トレヴァー ◆Lisayc.tVc ：2007/11/24(土) 23:54:10

>>200

　―――再びの咆哮

　まずは一人を吹き飛ばした。
　確かに通常の人間に比べれば愚鈍な動きであるが
　ゾンビよりかは遥かに早いのだ。
　近づかれればその重い攻撃を避けるのは非常に困難であろう。

　吹き飛ばした人間はしばらく動けない。
　この化物は自分の力をある程度把握しているのだ。
　体を起こそうとしているものの先ほど自分で撃ったショットガンと
　同様の状況を作り出す程の怪力で殴られたのだ。しばらく行動できないことを
　彼女は判っていた。

　吹き飛ばした人間を横目にもう一人の銃を持ったほうに狙いを定めた。
　こちらの顔はどうだろうか？体型もこちらの方がお母さんらしい。
　貴方が私のお母さん？

　跳躍。信じられないほどの速度であった。
　一瞬にして天井近くまで飛び上がり、眼鏡をかけた女性の後ろに
　着地する。

　振り向くよりも化物の方が速い。
　手械で閉じられた腕の輪の中に相手の首を入れると
　それを、岩をも砕く力でその頑丈な枷を、引っ張った。

【現在地：Ｆ地区　病院】

207 名前：マルチアーノ12姉妹 ◆M12sisrIV6 ：2007/11/25(日) 00:00:37

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
>>190
　
　蛇の如く身を撓わせ、剣尖喉下へと奔る。
　ジュライは只臂を返し、鎬にて受け留めると切っ先を弾いた。
　如何な弾体の剣とて、その剣丈自ずから伸びはせず。
　その間合いとて然り。
　ジュライはその身を右一重に寄せ鋒を片手正眼に取った。
　小揺るぎもせず、只小さく笑みを漏らす。
　
　「……うふ」
　
　慈母の様な、凄惨な笑みを。
　糸の様に細められた眼は、ジューンへと放たれる左手の匕首を観てはいない。
　その後から飛来する銃弾によって打ち砕かれるのを予想していたかの如くに。
　
　「いくらナイフが速くても、流石に銃弾には敵いませんわね」
　
　両手に携えた二挺のFN P-90、片手を構えもう一方は腰に手を当てたままでジャニアリー
は頬に掛かるその蜂蜜色の髪を払った。
　銃口からは硝煙が微かにたなびいている。
　
　「これで三対一ですわ。……そろそろお諦めになったら？」
　
　ジューンは既にケースの前に立っている。
　そのまま無言で袖口から滑り落ちて来るダガーを手挟み、投擲の構えを見せた。
　
　三人の位置は丁度、女を中心とする三角形の頂点にあった。
　
　【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】

208 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2007/11/25(日) 00:04:24

>>199
　
　<ブラスト>が炸裂する――今度は、想定した位置そのままに。
　だが、それで仕留められた、などとは決して思わない。手榴弾数個分の破壊力を
持ってしても、アレは決して倒せない。故に、当然攻撃は防がれたモノとして行動
する。
　
　走り抜けながらも脳裏をよぎるのは、先ほどから続く違和感だった。
　明らかに、手数が少なすぎるのである。<ブラスト>の発現位置を歪めるほどの
魔力を有し、突撃銃の弾幕をものともせず、ほんのわずかな詠唱で雷や透過不能な
闇を生み出すと言った、文字通り人間離れした能力を有していながらも、それでも
こちらが十分に対応可能な手札しかさらしていない。
　余裕なのか、はたまたなにか考えがあるのか――あるいは、奴の素体となった
少女の能力故の制限なのか。素性の一部が判明したとしても、その挙動には未だ
に疑問符が数多くつきまとう。
　ただひとつはっきりとしているのは、ある程度の距離を取った殴り合い――砲撃
戦ではらちがあかない、と言う事実だった。
　彼女の呪文はとても速い。補助呪文(ブースタースペル)を追加するような大規模な攻撃は、致命的な
隙となる可能性が高い。
　
　ならば――――
　
（ごく至近距離から、キツイのを連続で叩き込むッ！）
　
　<ブラスト>によってまき散らされた粉塵の中に突っ込みながら、スタッフ操作、
　無音詠唱。と、同時に――走りながら、補助呪文の詠唱を開始する。
　遠距離からの攻撃は隙が多い。

　故に。選択書式は、至近距離においてこそその効果を最大限に発揮する。
　
　粉塵を突破。
　その向こう側には、巨剣を携えた魔神の王の御姿がある。
　ほとんど反射とも思える勢いで、レイオットは撃発音声を詠唱していた。
　
「イグジストッ！」
　
　瞬間、突き出したスタッフの先端から、不可視の力場が砲弾のごとく放たれた。
その内部に封入されているのは、着弾と同時、進行方向に解放される純粋な破壊力。
炎を伴う＜ブラスト＞のほうが、服地効果をも見据えた攻撃力は大きいといえるが、
事破壊力に関して言えば、この＜アサルト＞も決して無視できない――否、より
驚異である。さらに言えば、この<アサルト>は。
　
「――ブレイクッ！」
　
　着弾の直前。さらにレイオットの声が響いた。
　直後、不可視の砲弾が目標に接触するよりも速く爆ぜ――挙げ句、その内部から、
さらに数十の<アサルト>が、面を形成するかのように発現した。
　
　<コンプレックス・アサルト>。本来は、閉鎖空間において複数の対象を制圧
するために記述開発された呪文である。
　郷呂mくむひなぼうぎょの雨緑を備える魔神に対し、いくつにも分かたれた
不可視の砲弾が襲いかかる――――

209 名前：＜呪われた公子＞ゲイナー ◆GAinErMg8k ：2007/11/25(日) 00:09:04

死神（デス）ゼアド vs ＜呪われし公子ゲイナー＞

>>205
　
　それは、恐るべき斬撃の嵐だった。
　強大な魔力で強化した彼の肉体をもってしてもその全てを防ぎきることは不
可能だった。
　それでもその大半は双剣を用いて、流し、絡め、弾き、止め、受け、防いだ
が、うち何発かは防ぎきれなかった。
　
　大鎌が色さだまらぬ混沌の鎧を打ち、魔力と火花が激しく散る。
　命中するたび衝撃のあまり吹き飛びそうになるが、揺らぐ体に鞭をうち、歯
を食いしばってその場に踏みとどまる。
　
　そこに飛来する７条の骨針。悪意の矢は＜呪われし公子＞の鎧を貫き、胸に
七つの傷を作る。さながら北斗七星のごとき傷を造る。
　悪夢のごとき激痛が彼の身を貫いた。
　
　それでも彼は斃れなかった。倒れずに剣を振るい、同時に呪文を唱え続けた。
　さきほどより彼の口は人間には発することも出来ぬような、うめき声とも取
れる奇怪な呪文を唱え続けていた。
　呪文を唱えているのだ。だがこれは簡易詠唱ではない。儀式呪文。彼の用い
る本来の魔術。契約と履行の古の魔法。
　
　突然、死の絶叫（キーニング）のような凄まじい叫び声を彼が上げた。
　そして、その言葉と共に呪われし魔法が力を現す。
　
　鐘の音だ。巨大な時計の鐘の音だ。時計仕掛けの鳩時計の音だ。
　歪んだ時計の音が森に鳴り響いた。いくつもの鐘の音が、空間そのものから
湧き出し響き渡る。多種多様な時計の音。
　
　それは、完全に調子の外れた鐘の音だった。最悪の不協和音。音色と呼ぶに
はあまりにもちぐはぐな音。
　
　偽りのビック･ベンのハンマーが鐘を打ち鳴らす。贋作のウエストミンスター
寺院の鐘の音があたりを酷くゆがめていく。
　
　音は止まず。音は止まず。それどころかさらに
　音は時間がたつごとに、さらに騒々しく出鱈目になっていく。
　
　これこそが、呪われし公子の切り札（ゲハイムニス）の一つ
　
　歪んだ鐘の音により敵の律動（リズム）を強制的急激的に変化させることに
より、隙を作らせ機を外し、自らに有利な状況を作り上げる魔術。
　かつてタラゴームの使いし魔法。
　
　

210 名前：＜呪われた公子＞ゲイナー ◆GAinErMg8k ：2007/11/25(日) 00:10:16

>>209
　
　強大な魔力を孕んだ鐘の音により、死神の体勢がわずかに崩れる。
　その隙を見逃すゲイナーではなかった。
　
　手にした色さだまらぬ輝く剣を＜呪われた公子＞は投げた。
　電磁加速砲のような亜高速の光の矢となり死神めがけて突き進む。
　再度の空間転移などする暇も無い。
　
　次の瞬間、投擲した剣を追うように、呪われし公子の体が跳躍（とん）だ。
　宙を舞いながら身をねじり、回転するようにして剣を振るう。
　
　それはありえざる行為。
　洋の東西を問わず、多くの武術は正中線を守ることを基本とする。
　現にいままでのゲイナーの剣技もそうだった。
　
　だがゲイナーの此度の動きは大きく違った
　まるで低重力下で発達して武術のように、重力を無視したかのような軽業め
いた剣技。ありえざる剣技。＜混沌＞の剣技だ。
　
　宙を舞う彼の体。振り下ろされる＜法＞の剣（つるぎ）。
　銀の剣は袈裟の軌跡を描く。しかしその軌跡は死神の頭上よりもさらに高い。
　あやまち、狙いを外したのか。
　
　さにあらず。
　
　死神の頭上を通り過ぎるかと思ったその瞬間に、ゲイナーは剣を握る手首を
返した。
　裏刃が死神の頭部を向き。そして髑髏めがけて振り下ろされる。
　
　バンデロール。袈裟切りに切りつける寸前に腕を内転させ、剣先を下に向け
ることによって、通常の斬りつけよりも早く相手に剣を届かせる剣技である。
　
　強引な太刀筋の変化。本来ならばレピアのような軽量な剣でしか不可能なこ
と。諸手剣でやれば手が千切れよう。
　
　だが彼は呪われし公子。呪われ果てた天秤の公子。修羅道を征く無限寿命者よ。
　
　その程度のことで手など千切れるはずも無かったのだ。
　
　
　【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）地下　歪んだ鐘の鳴り響く場所で】

211 名前：『夜雀の妖怪』ミスティア・ローレライ ◆8hOOMYSTIA ：2007/11/25(日) 00:13:02

ミスティア・ローレライｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『イツマデ』 Till When?

>>198
エコロジー万歳！

ヘリコプター破壊に必要な音は出そろっていた。
足りなかったのは？

目に優しいグリーンの観葉植物。
原動機になる優れもの。
文明崩壊後には一台いかが？

「＊　おおっと　＊
　聴衆がまだ居たの忘れてた〜。
　音楽聴いて大きくなれよ〜」

銃弾は唄に任せて避けもせず粉砕。
空回る音の直後、異種の音が空気を切り裂く。

「っつ！
　懐刀12.7面相！？」

火薬の光を見て避ける文字通り人間離れの回避も、紙一重及ばず肩口を浅く切り裂く。

今度こそ粉々にしようと息を吸い込むも、雑音。
妖怪少女自身は即興で変調も出来るが、しもべの小鳥たちはそうも行かず。
処理落ちさせてしまうよりは、と一時の中断。

「ででででってでっでっででーん！
　とななななーうの挑戦者〜」

比喩抜き悪魔の兵隊が掃射を大きく跳躍して回避。
着地の先には避雷針。
引っこ抜いて振りかぶり、

「貴方のハートに直撃☆ドキュン（はぁと」

振動しながら飛来する即席ロンギヌスが心臓はおろか肉体を粉砕。

「また一人死亡！」

MANGAのイナズマ描写のように

「また一人死亡！」

ジグザグ機動の

「もう一人逝って、また逝って！」

スーパーソニックガール。

「更にもう一人！」

一拍遅れ五つの首が飛ぶ。

「ヘイ。貴方も死ぬよ」

マシン・ガンを無造作にのけて、血塗られた鉤爪を一閃。

「Last one bites the dust」

沈黙。


【現在地：C地区　オフィス街　センタービル屋上】

212 名前：エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ ◆SV001MsVcs ：2007/11/25(日) 00:29:24

>>206

　化物は身動きが取れないアタシじゃなく、フィオにターゲットを変えた。
　動けないアタシより動けるフィオを狙うって……脅威判断が出来るってのか、この野郎。
　狙われたフィオはヘヴィーマシンガンをひたすら叩き込んでいた。
　しかし効果が見えていない。血が噴き、肉が千切れ飛んでいるが、同時に再生もしている。
　一言で言って、効いてない。
　だが重機関銃弾を浴びせ続けるのは、鉄球でタコ殴りにしているのと同様だ。
　殴られている間は身動きが取れな――！？

　化物が跳んだ。
　銃火が後追いになり、化物はフィオの、後ろに。
　即座に振り向くフィオ。

「ぐ、ゲェッ！？」

　電光石火だった。
　後ろに回りこみ様、化物は腕の中にフィオを取り込んでいた。

「――！　っっ――！！」

　首に腕が巻きつき、締め付けている。
　あの怪力で首なんか絞められたら！！

　アタシは跳ね起きた。
　床を蹴って走る。

　フィオと化物の間で銃火が上がった。
　至近距離からヘヴィーマシンガンを叩き込んでいる。　

「右に避けろ！」

　フィオが首を右に捻る。
　化物の右腕から右肩のラインがクリアーになった。
　スライディングで足先から滑り込む。

　化物の右側をすり抜ける瞬間、右腕の付け根に銃口を押し付けて、発砲。
　一点に集中した散弾が化物の右腕を撃つ。
　集束した散弾なら、コイツの腕を引き千切れる、はずだ。

　千切れれば拘束が緩む。緩んだらフィオは脱出する。
　ダメだったら――

【現在地：Ｆ地区　病院】

213 名前：ヴィルマ・ファキーリ：2007/11/25(日) 00:34:45

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
>>207
　
　こちらに向けられた切っ先から、距離を取るべく後退しかけ、私は停止した。
　軽く腰を落とし、曲げた両膝を交差させるような『歇歩』の姿勢を保持する。
　
「ふふ。香港じゃ、このヴィルマ・ファキーリのナイフは銃より速い……と恐れられたものだけ
どね」
　
　
　――囲まれたか。
　軽口を叩きつつ、心中焦りが生じたのは、私も武術家としては未だ至らぬ証だった。
　陰陽剣の八種八法で息の根を止められず、正調七星剣の剣勢もいなされた。
　おまけに新手ときた。匕首を撃ち落したのは、同様の身なりをした金髪の少女。
　機能的なデザインの自動小銃を左右の手に抱えている。外面と同じく、我も強そうな。
　
　
　翻ってみればナイフ使いといい、刀持ちといい、この自動小銃といい――揃いも揃って趣味
的、これ以上ない位に趣味的なスタイルの娘達だ。
　些か呆れ、そして思い出した。犯罪社会に身を置く中で、幾度となく耳にした噂だ。
　豪奢な衣装に身を包んだ機械の令嬢達。見目麗しく声もよく、淑女の優雅さで一番下等
な殺し屋の真似もやってのける。
　��健常者はお断り（ルナティック・オンリー）�≠ﾈ夜の茶会の人気者。
　
　
「成る程、お前達は『ギルド』の手の者か。確か――マーチ家の四姉妹。一人欠けてるな」
　
　故意に間違え、私は牙を剥いて冷笑した。
　
「それで、お嬢ちゃん達は何が狙いなのかな？　ここにあるのは、精々紅茶（ブラディ・ティー）
と人肉（ミート）パイよ」
　
　
【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】
　

214 名前：魔神王リィーナ：2007/11/25(日) 00:37:08

>>208
　魔力は魔力によって打ち消される。
あらゆる世界に共通する真理のひとつだ。
今この場においても例外ではない。逆巻く爆風。最早論ずるに値しない。
　
「効かんのだよ。すまんな、魔術師」
　
　まだ効果を失わない障壁に物をいわせて、大剣を振るう。
　
「詫びというわけではないが。望みどおり今度は剣にて勝負してやろう。
それともまさか、近距離での呪文ならならこの身を害することができる、
などと思ったのではないだろうな？」
　
　横殴りの一撃は囮。黒く分厚い鎧に、本命の蹴りを突き刺す。
妹の目の前だ。精々勇戦してみせろ。
それでこそ、手を取って死出の旅に赴く兄の面目が立つというものだ。
今や襤褸切れと化したドレスの裾が翻った。

215 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/25(日) 00:55:22

ミスティア・ローレライｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『イツマデ』 Till When

>>211

　使役した悪魔は、乙女の肉であり血であった。
　彼等の負傷は乙女の傷痍と同義。契約者が死ねば、彼女もまた死を疑似体験
する。だから乙女は光を失いながら視ることができた。契約者の死を通して、
王妃の凶行を。……無名とはいえ武装した八匹もの悪魔を相手に、女一人で圧
倒してみせるとは。乙女以外にも、そのような奇跡を行える者がいるなんて！
　
「カトリーヌさま……カトリーヌさま……」
　
　唄による肉体的負傷。契約者の死による神霊的負傷。呪われし乙女の躯は、
一度もイザベルの攻撃を浴びていないにも関わらず満身創痍で、もはや跪くこ
とすら能わない。無様に斃れることだけは拒み、両手を地面に突き立てる。

「光を……お願いします……もっと、もっと光を……」

　一騎では足りないのなら、神殿の格納庫から天使さまの大軍を呼び寄せよう
かしら。神殿の地下には、森と同化した多くの天使／兵器が待機している。
　―――いいえ、それは駄目。これ以上、主の御力に縋るのは躊躇われる。
〈声〉は乙女に勝利を任せたのだから。人の手で奇跡を為さないと。
　それに、軍勢の到達まで乙女の生命は保ちそうにない。口惜しいが、このタ
ーンでも救国は叶わない。
　だが、この女だけは。フランスを辱めた売国奴だけは一緒に連れて行く。
　この女のせいで、王太子さまは今も深い苦悩にさらされている。自らの由縁
を脅かされ、正当な王位に懐疑を抱いている。
　―――許せない。絶対に、許せない。

「イザボー・ド・バヴィエール！　フランスの痛みを知りなさい！」
　
　渾身の力で上半身を持ち上げる。乙女の躯が天を仰いだ。その姿勢のまま、
シャルル・マルテルの剣を逆手に握り直し―――己の胸を甲冑ごと貫いた。
　背中から剣尖が突き出す。ブレードをつたう鮮血。乙女の口端から、朱が
溢れた。
　
　絶妙のバランスで混沌の頂点に立つ乙女が、生命の天秤を傾けたとき、調和
は乱れ、世界は歪む。―――その位相が、最後の奇跡を呼び起こした。

　ハインドのコックピットに座していたエリゴス公爵の醜悪な躯が、どろりと
黒い泥になって溶け落ちる。死んだのではない。重なったのだ。
　今やハインドはエリゴス公爵が操縦／感応する鉄騎ではなくなった。これな
る天使は公爵そのものだ。魂の同一化。ハインドの機動力が跳ね上がる。
　ヘリコプターの軌道では不可能な直角の軌跡。稲妻の如くじぐざぐに飛行し
ながら、銃口という銃口から尽きることのない魔弾を乱射。
　隙間のない攻略不可能な弾幕が、忌むべき王妃へと押し寄せる。

　―――だが、それは目くらましに過ぎない。

　ハインド／公爵の目的は、己の牙で王妃を食らうこと。弾幕を追うように、
音速をも駆逐して飛来する。自身をも弾丸に変えた公爵の背には、猛り狂う
メインローター。五枚刃のギロチンがイザベルの首を断罪する！
　



【現在地：C地区　オフィス街　センタービル屋上】

216 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2007/11/25(日) 00:58:01

>>214
　
「な、」
　
　たまたま展開されていた力場防御面。
　魔力による不可視の散弾は、同じく不可視の盾によって無力化された。
　一瞬の忘我。ほんの一呼吸分の停滞。自らに向きかけた流れを台無しにするには、
十分すぎる一瞬だった。
　寝ぼけるなと言わんばかりに繰り出される横殴りの刃。
　辛くもそれを、かがみ込むようにして回避。頭部装甲を巨剣がわずかに掠め、
火花と同時に鋼の一片を削り取る。同時に襲い来るのは、脳を揺らすほどの衝撃
だった。一瞬、ぐらり、と視界が歪み、堪えきれずに膝を突く。
　
　そして――――
　
　間髪入れずに、垂れ下がり掛けた頭部を。
　少女らしいか細い足が、容赦なく蹴り上げた。
　ほんの刹那の浮遊感。
　それを自覚する間もなく、レイオットの意識はいとも簡単に刈り取られた。
　
　身体は蹴り上げられただけにとどまらず、のけぞった状態で宙を舞い、次の瞬間
には、木の幹に埋め尽くされた、かつては雑居ビルだった建物の残骸に突き刺さる。
崩れたコンクリートが意識を失ったレイオットに次々とのしかかり、ほんのわずか
に見えていた腕までをも覆い尽くし――やがて、完全に埋め尽くした。

（現在位置　Bエリア:繁華街）

217 名前：リサ・トレヴァー ◆Lisayc.tVc ：2007/11/25(日) 01:00:43

>>212

　至近距離で放たれた銃弾は容赦なく腕を削り取った。
　肉片は消し飛び、骨には銃弾が突き刺さる。
　衝撃により拘束していた人間ごとその場で錐揉みし、床に勢いよく叩きつけられた。

　悲鳴。

　拘束していた相手は下敷きとなった。
　しかし腕が千切れかけているほどの損害を受けた彼女に
　それ以上締め付けるほどの力は残されていない。
　悶え苦しむのみで何とか脱出できるくらいの隙は作り出したといったところだろう。

　しかしゆっくりしている暇は無い。
　金切り声を一つ上げると背中から無数の触手が飛び出した。
　試作型ネメシス。投薬実験の一環として彼女が取り込んだ
　寄生型B.O.Wである。

　複数の触手が彼女のダメージ箇所を覆う。
　完全回復するまでの応急処置として本能的に動いたらしい。
　ある程度傷口を覆うと、また、恨めしげな声を出しながら立ち上がった。

218 名前：『ＤＥＡＴＨ』死神 ◆rX9kn4Mz02 ：2007/11/25(日) 01:08:22

　
死神（デス）ゼアド vs ＜呪われし公子ゲイナー＞
　　
>>209>>210
　
声なき絶叫が伽藍に響く。＜混沌＞を駆逐する＜法＞の凱歌が、咆哮が。
　
其れは勝利を約束するようであり―――――
　
　
　
　
『オオオオオオオォオオオォオオォオオォオオオォオオ―――――！！』
　
　
怪物が絶叫を上げる。
死者ですら耳をそむける異形異様の断末魔。
悪魔ですら戦慄を覚える無情非道の浄化剣。
＜法＞の力に＜混沌＞の技。相反する二つの風は＜呪われし公子＞という命を回し。
ついに神々をすら凌ぐ黄金色の逆旋風を巻き起こしたのだ。
　
虚無の賛歌か、呪詛の凱歌か。
永劫に終わる事なき修羅道を、六道四生を外れてなお遡るゲイナーの。
その鎧に包まれた精神に去来するのは如何なるものか。
　
『此処、まで、か―――――』
　
　
死神が震える。
震えて止まぬ。
前に倒れ付す、その寸前で踏み止まりて震えて伏せる。
尚も突き立つ＜法＞の剣は聖なる位相、秩序の具現は＜混沌＞に傾いた死神にとっては致命。　
　
　　
『……此処、まで――――』
　
　
死神は震える。
うずくまるその表情はうかがい知れぬ。
否、もとより髑髏に表情はないのであろうが。
死神は震える。
死神は震える。
死神は震える。
死神は
　
　
『此処、まで―――――』
　
　【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）地下　歪んだ鐘の鳴り響く場所で】
　

219 名前：『ＤＥＡＴＨ』死神 ◆rX9kn4Mz02 ：2007/11/25(日) 01:09:04

>>218
　　
　
　　　　　　　　　『――――此処までか、敗れたりゲイナー！』
　
　
　
死神は
　
　　　　　　　　　　虚空より混沌の色をした鋼が走る。
　　　　　　　　　　禍々しい鉤爪を備えた縛鎖が四方から。
　　　　　　　　　　色定まらぬ鋼の鎖が＜呪われし公子＞を無残に絡め取る。
　
　
死神は哄笑を上げた。

220 名前：『ＤＥＡＴＨ』死神 ◆rX9kn4Mz02 ：2007/11/25(日) 01:10:15

>>219
　
　
『褒めてやろう＜呪われし公子＞ゲイナーよ。
　我を此処まで追い詰めるとは、アルカード様やベルモンドの者にも劣らぬ芸当よ』
　
死神の哄笑は高らかに／無情／無常／無上。
見れば死神の纏う法衣はその色を変えていた。
即ち、＜法＞を象徴する、無味なる白露白亜の一色に。
　
『だがこの技だけは見抜けなんだか。汝と同じく属性を選ばぬ我が技を。
　今や、我が位相は現世の白。秩序に偏らせたこの身に＜法＞の力など通じぬわ！』
　
高らかに死神は謳う、己が究極の秘儀。
現世の＜混沌＞、悪魔城が生み出した恐るべし対処術を。
　
元来死神とは忌まわしき神であり、だが同じく神聖なる存在である。
勇者をヴァルハラへ送呈するワルキューレしかり、咎人を裁くヤマしかり。
その側面の特性が、あらゆる幻想を脅威として吸収する悪魔城が開花させた。
１９４５年、怒れる真祖ブローウェルによる悪魔城復活。
そのときの戦い。神業とされた魔道の術を防いだのは、紛れもなく今、
死神が見せた位相の変化術であったのだ。
　　
『その鎖は汝の武具と同じく混沌の産物……我がドラキュラ様より賜った物。
　易々とは砕けぬ、そして…』
　
　
緩やかに。
永久と思わせるほど緩やかに。
しかし揺らぎなく天へ立てられた剣指の運び。
それが、次なる怪異を喚んだ。

221 名前：『ＤＥＡＴＨ』死神 ◆rX9kn4Mz02 ：2007/11/25(日) 01:11:19

>>220
　
其処に現れたのは、馬鹿馬鹿しいまでに巨大な髑髏であった。
　
巨象すら一のみに出来よう冗談のような質量は広大な伽藍の堂、その一角すら埋め尽くす。
巨人（ジャイアント）のそれかと思わせる圧倒的なサイズは、だがその様相ゆえ違うと分かる。
如何なる獣より鋭い牙と、如何なる鬼火より暗く明るいその“瞳”。
魔界より出でた魔神のしゃれこうべを思わせる。
――――或いは、それ以外の何物でもないと言わんばかりの威容。
　
しかし見るべきは、そこではない。
目を見張るべきは現世に傾いた視覚的な要素ではなく、幽世に傾いた霊的な一点。
――――巨大なる髑髏は、飽和した存在だった。
臨界まで溜め込まれたその魔力は、それだけで並の夜族なら十匹は塵も残るまい。　
それは既に物理的な威力すら二次作用として孕んだ、霊的な爆弾だった。　
　
そして真に驚愕すべきは、其処ではない。
戦慄すべき事に、現れた髑髏は一つだけではなかった。
一つ、また一つ。
壁を抜け、木々を潜り。
徐々に徐々にその数は増してゆく。
身に狂的なまでの破滅を宿した死霊の数が。
　
『汝の力、少なくとも侮っていたのは確か。
　だが認識を改めよう。汝にはこ奴らを使うに相応しい』
　　　
本来ならば、此れ等極大なる死霊は手札ではなかった。
森の侵蝕が始まってから―――のみならず＜儀式＞が行われる前から―――
今までゼアドとしてイノヴェルチ施設に細工を施し、張り巡らせていた罠。
異変が起きて後、異界を構成する＜核＞を守護するため、核心に近づく刺客を
喰らい尽くすために用意したガーディアンであった。
　
施設各所、全体へ巧妙に潜ませた貪欲な死霊。
それらは異変の後、単一にして凶悪な命令が刷り込まれていた。
　
　「喰らい、啜り、肥大せよ。汝の器破綻するその寸前まで」
　
そして１００を超える死霊は残らず起動し、恐るべき捕食と成長を開始した。
研究員を。被検体を。人間を。妖物を。生者を。死者を。
死食鬼と骸を喰らい、漏れでた魂を喰らい、木々ごと残留する霊を喰らい。
嚥下し暴食し捕食し啜り飲み干し喰らい――――そして巨大なまでに成長した。
その全て、強欲暴食の罪を背負った数１２０に及ぶレギオーン。
霊的許容量が飽和し尽くした幽世の爆裂弾どもが。
　
それらが一斉に、全て。
　
　
　
『――――吹き荒れよ、＜死＞の嵐！
　この不死者の不死もろとも砕き、混沌の彼方に撒き散らせ！！』
　
　
ゲイナーという一つの点に。
　

222 名前：『ＤＥＡＴＨ』死神 ◆rX9kn4Mz02 ：2007/11/25(日) 01:13:24

>>221
　
　
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
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死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
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死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
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死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
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死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
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死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
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死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
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死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／死が／
　
　
　
声なき絶叫が伽藍に響く。＜公子＞を蹂躙する＜死神＞の軍勢が、死霊が。
　
其れは死滅という勝利を約束する。
　　
【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）地下　鐘の音すら喰らいつくす奈落の底で】

223 名前：『夜雀の妖怪』ミスティア・ローレライ ◆8hOOMYSTIA ：2007/11/25(日) 01:22:24

ミスティア・ローレライｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『イツマデ』 Till When


>>215
「パワーがダンチだ〜」

人馬一体。
人外と鉄の天馬ではあるが、そうであればこその異形の力。

「でも貴方は気付いていない〜。
　私が一度もしもべを直接差し向けなかったことに」

小鳥たちは即席の契約を結んだ妖怪少女の一部。
維持には当然彼女の魔力を少なからず消耗する。
スピーカーは止めたというのに、遣いもしない使い魔はどこへ？

「それにそいつは使い回し。
　だからあとはパワー！
　とにかくパワー！」

すこし離れて並ぶ三柱のビルディング。
それがデタラメに、あるいは調律するように（・・・・・・・）軋みを上げる。

「もうボケはなし。
　エコロジカルな部品も、溶けた奴も、全部よく聞こえる（・・・・・・・・）」

もう一つのビルディングが上げるのは低いうなり。
魔狼の咆吼のように。

「最後まで楽しんで逝ってよね？」

構造誤差計算相対速度計算湿度計測気圧計測距離補正音域調整風速計算気流予測……
すべて直感で合わせる。
アナログ（・・・・）5.1chサラウンド。

「We will rock YOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOU！！！！！！！！！！！！！！！」

装甲をローターを森をギロチンカッターを悪魔の魂とやらを願わくは憐れな少女の魂をすべてを震撼させる、Rock'n'roll。


【現在地：C地区　オフィス街　センタービル屋上】

224 名前：魔神王リィーナ：2007/11/25(日) 01:33:46

>>216
　
　気を失ったか。
　
　心の中で男を褒めながら、用を成さなくなったドレス――だったもの――を引きちぎる。
仕立てた当時はアラニアの最新流行だという触れ込みだったが、こうなると哀れなものだ。
幸い下着は無事だったが、どのみち最早気にする必要もない。
　
「さて」
　
　膝を抱えて瞬きもしない娘の襟を、猫の子のようにつまみあげる。
赤い眼の向く先はずっと、倒れて動かない兄。
心配するな。兄妹はいつも一緒であるべきだ。
物理的な距離も、時間の壁も、生と死の境も、兄と妹を分かつべきではない。
お前達は永遠に一緒だよ。
　
「怖ければ、眼を閉じるがいい」
　
　兄に寄り添うように、妹を座らせる。
小さい頃よく遊んだ、人形の兄妹を思い出した。兄様は今どうしているのか。
待ってばかりでなく、こちらから会いに行くのもいいかもしれない。
この兄妹に別れを告げてから。
　
「輝かざる星々の子等、呼び声に応え、大地を打ち砕く礫となれ」
　
　日に遮られて見えずとも天空にある七つの星。
その脇をかすめるように、遥か星界から来る隕石が兄妹に”永遠”をもたらすため、
炎を纏って大地に突き刺さった。

225 名前：マルチアーノ12姉妹 ◆M12sisrIV6 ：2007/11/25(日) 01:45:27

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
>>213
　
　「真逆。秒速700mを越える銃弾より速いだなんて、ご冗談も程々になさいませな。
　それとも……試してご覧なさいます？　今この場で」
　
　ヴィルマ、と名乗る女は未だ構えを解いてはいない。
　腰を低く膝を曲げしゃがんだ様にも見えるが、膝を地に着けていない。
　引き絞られた弓の如く、力を撓めている。
　銃口を向けた侭で、値踏みする様な目でジャニアリーはこの女を見た。
　服装からは、研究者とも思えない。
　何より、使う武術に関しては「研究所の職員が日頃の運動不足解消の為に始めてみた」
程度のものではない事は明らかだ。
　
　「ジューン、それは？」
　
　ジャニアリーが声を掛けると、ジューンは片手でケースを拾い上げ、中を示して見せた。
　研究者らしき男の首。
　ジャニアリーは露骨に顔を顰めた。
　
　「ピクニックのランチにしては、少々悪趣味ですわね。
　それとも呆けてしまう程歳を取った吸（・）血（・）鬼（・）の方は、こういったモノがお好みでして？」
　
　明らかな挑発に苛立ちを隠せもせずに、ジャニアリーは続けた。
　
　「間違えないで頂きたいですわね。わたくしたちは『マダム・マルチアーノの12姉妹』。
　あなた方の下品なお茶会（マッド・ティーパーティ）になど興味ございませんわ」
　
　樹脂製のグリップを、音を立てて砕ける程握りしめジャニアリーはもう一挺の銃口を向けた。
　呼応する様にジューンとジュライも構えを僅かに変化させる。
　ジュライは片手正眼から脇に取り、ジューンは臂を撓める。
　
　「手足くらいは、なくしても大丈夫なのでしょう？
　口さえお利きになればそれで充分。ぶっ壊してさしあげますわ！」
　
　【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】

226 名前：エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ ◆SV001MsVcs ：2007/11/25(日) 01:56:58

>>217

　ショットガンのパワーは化物の腕を穿ち、フィオもろとも衝撃で吹っ飛ばした。
　もつれ合って転がるフィオと化物。

「ヤバ」

　転がった一人と一体はフィオを下にして止まった。
　マズイ、これじゃ状況が変わってない。

「フィオ！」

　悲鳴を上げてもがく化物の下で、フィオの足が同じくもがいて暴れていた。
　化物に押し倒されてさぞや生きた心地がしてないだろう。

「エリちゃん助けてえ！」

　言われるまでもないよ。

　金切り声を上げて背中から触手まで生やした化物と相棒へと駆け寄り、

「合わせろフィオ！」

　サッカーのシュートみたいに思い切り蹴り上げた。
　同時にフィオが両手で化物を突き上げる。
　形はこんなでもフィオの腕力は……強い。敵歩兵を両手突きで倒す程度には。
　肉を蹴る感触が爪先に返り、化物が跳んだ。
　ゴロゴロと転がるそれから目を離さずに相棒を引き起こした。

「ううぅ……怖かったですぅ……」

「まだ殺ったわけじゃないんだからその弱音はとっといて」

　半泣きのフィオにそう言って、アタシはショットガンを背中に回した。

「フィオ、先に下へ行ってて」

「え……？」

「アイツを爆破する。C4使うから危ないわよ」

「りょ、了解」

　一つ返事でフィオは階段へと駆け込み、降りていった。
　これで階下――逃げ場は確保できた。
　それじゃ、花火といきますか。

「来な。フッ飛ばしてやるから」

　腰のポーチから取り出したC4を手に、アタシは言い放った。

【現在地：Ｆ地区　病院】

227 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/25(日) 01:59:36

ミスティア・ローレライｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『イツマデ』 Till When

>>223

　音の、花が咲いた。
　先にハインドを奮わせた二倍以上の音壊。五つのビルが、王妃の唄を世界
に知覚させる五つのスピーカーとなってハインド／公爵を囲い込む。
　いくら音速の足を持とうとも、逃げ場がなければ意味がない。
　四方八方から浴びせかけられる音狂の絨毯爆撃。仮想エンジンの魔力回路
がオーバーヒートし、ギロチンローターの刃は急速に錆びてゆく。
　ガトリング砲もガンポッドも音の波に食い破られた。翼が減し曲がり、ハ
インド／公爵は魔力の残滓をガソリンのようにタンクから漏らしながら、空
を沈んでゆく。奇跡の終焉。天使の堕天。

　だが、失速は緩やか。致命的な破壊を受けながら、ハインド／公爵は生き
足掻いた。地獄への帰還を徹底的に拒否した。
　音速からは程遠い―――ハインドの昆虫的なフォルムと相成って、芋虫が
宙を這うかのようなイメージでイザベルへとエンゲージする。
　最後の牙―――輸送キャビンに搭載されたキャリバー機関銃が、機銃士不
在のままイザベルを睨め付けた。
　末期の絶叫に等しき火線が瞬く。

　―――その前に。

　ハインドから公爵の魔気が消え失せた。鉄騎がまとっていた闇が、急速に祓
われる。今やハインドは樹と同化したクリーチャーに過ぎない。地獄の面影は
欠片もなかった。
　動力と操縦士を失い、ハインドは重力に誘い込まれるままに機体は落下して
ゆく。斯くして幻想のからくりは奈落へと還った。



「……すばらしかったわ」

　少女のコンサートを愉しんでいたアリスは、閉幕の様子を名残惜しげに眺め
る。アンコールをしたかったけど、もう行かなくてはいけない。
　彼女の足下には、志半ばで斃れた乙女の亡骸。王妃の奏でる旋律に、ついに
耐えることができず絶命した。契約主がいなければ、公爵も現界は叶わない。
　まぁ、これは仕方ないわ。あまりに相性が悪かったもの。

「こうしてジャンヌは死んでしまいました」

　唄うように呟く。

　　―――だから、もう、このお話はお終い。

　死告鳥の亡骸が漆黒の羽根を舞い散らす。はらり、はらりと黒いカーテンが
二人を包み、再び幕が開けたときにはアリスも乙女も退場済み。
　舞台には王妃イザベル―――ミスティア・ローレライが一人残される。



（ジャンヌ・ラ・ピュセル→死亡）

【現在地：C地区　オフィス街　センタービル屋上】

228 名前：ヴィルマ・ファキーリ：2007/11/25(日) 02:12:47

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
>>225
　
「やってごらん」
　
　猛る背後の少女へ笑みを送り、剣の柄を握り直す。
　感情に流されやすいとは、妙な機械もあったものだ。お友達二人はそうでもないようだが。
　
「やってみるといい。――出来るものならば、な！」
　
　
　身を捩って跳躍し旋子転体。空中で水平になりながら反転し、嘲笑を投げかけた少女人形
へと、虚空をも穿つ飛び足刀を放つ。
　攻撃動作は、予想される銃弾の射線軸上に、己と黒衣の少女を置かんとしている。不用意
に私を撃てば、反れた弾は同胞を襲いかねない。
　銃撃を封じる一手――だが相手もさる者だ。それが通ずるかは、少しばかり疑問だった。
　
　
【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】

229 名前：リサ・トレヴァー ◆Lisayc.tVc ：2007/11/25(日) 02:16:45

>>226

　咆哮

　相棒が逃がされ残ったのは彼女のみ。
　手には切り札である高性能爆雷が握られている。
　勿論爆弾の種類など人間の頃から知っているはずは無いので
　それがどういう危険物かは想像することもしていない。

　じりじりと鎖を引き摺りながら近づく。
　うねうねと動く触手は明確な敵意を持って人間の
　方を指している。

　一度受けた傷があるはず。弱った獲物ならば
　あと一撃でその綺麗な顔を奪うことができるはず。
　返して偽者。私のお母さんの顔を取っていかないで。

　再び跳躍した。今度は腕を振り上げた状態のまま
　天井すれすれまで飛び上がった。
　そして自由落下。勢いをつけたその一撃は有象無象区別つかず
　手械は突き刺さり、砕いてしまうだろう。

　叫び声

　破壊槌は偽の母に真っ直ぐ向かい―――

【現在地：Ｆ地区　病院】

230 名前：『夜雀の妖怪』ミスティア・ローレライ ◆8hOOMYSTIA ：2007/11/25(日) 02:21:23

ミスティア・ローレライｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『イツマデ』 Till When

>>227
瓦礫の増える音が余韻のごとく鳴り響く。
高層ビルのお値段いかほど？
ストラディバリも呆れる高額な楽器は、寄りにも寄って使い捨てだった。

「一人聴き逃げ〜」

濛々と粉塵の舞う地に降り立つ。
作り物の如き翼を広げ、小鳥のお付きを従えるその姿はさながら、

「へくちん！」

ただの小娘。
空気を揺らして塵を追い払う。

「さてとー。
　毒くわばって言うけど」

鷲の如き眼で見回し、鷹の如き耳で聞き取る。
イツマデ？

「まだね。
　狂った愛国未だ健在〜」
＊
レス番まとめ

　>>152>>153>>157>>158>>159>>164>>174>>176
　>>177>>187>>193>>198>>211>>215>>223>>227>>230
ミスティア・ローレライｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『イツマデ』 Still When

231 名前：＜呪われた公子＞ゲイナー ◆GAinErMg8k ：2007/11/25(日) 02:30:03

死神（デス）ゼアド vs ＜呪われし公子ゲイナー＞

>>222

　それはあまりにも強大で凶悪すぎた。ゆえに呪われし者は愕然と眼を見開い
たのだ。
　いかなゲイナーとて、この攻撃を無傷で防ぎきることは――――
　
　無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理
　無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理
　無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理
　無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理
　無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理
　無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理
　無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理
　無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理
　無理無理無理無理無理ＭＵＲＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹ
　ＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹ　無理無理無理無理無理無理無理無理無理無
　理無理無理　無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理
　無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理
　無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理
　無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理
　無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理
　無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理
　無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理
　無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理
　無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理
　無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理
　無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理
　無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理
　無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理
　無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理
　無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理ィイイイイイ!!!!!!!!!!!!

「ァア゛ァァァァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

　呪われしものの絶叫が、深き地下の森に鳴り響いた。

232 名前：＜呪われた公子＞ゲイナー ◆GAinErMg8k ：2007/11/25(日) 02:30:22

>>231
　
　その魔弾の嵐が、いや『処刑』が止んだとき、圧倒的な魔力の砲弾によって
当たりは酷い有様に変わり果てていた。大地はひび割れ、亀裂が走り、崩壊寸
前のようであった。
　もし森蝕によって異界化していなければ、とうに吹き飛び消し飛んでいたこ
とだろう。
　ならばこの森の加護を受けていない＜呪われた公子＞のその身は果たして。
　
　吹き上げられた砂埃が徐々に薄れていき、磔刑にされた混沌の公子の姿を現
す。その身は肉片と成り果てたのか。
　
　否。彼はそこに膝を突きつつも、なんとか生き残っていた。
　
　さすがに無傷とは行かなかった。鎧はあちこちが歪みへこみ煤けていた。
　体力の消耗もひどい。被面具の中からくぐもった喘ぎ声が漏れ出していた。
　右腕は圧し折れ、歪み、捩れていた。鎧の胴の部分にはいくつも大きな穴が
ぽっかりと開いていた。そしてそこからはどす黒い血が、崩壊寸前の床へとた
だ流れ出していた。
　
　もはや死に体だ。
　
　しかし、いかなることかその身に宿る魔力は、先の『処刑』を受ける前と比
べてすら段違いに強大だった。
　
　魔力が鎧の上を揺れ動く焔のごとく駆け巡る。
　あふれ出した魔力が鎧の表面に焔のごとき模様（ファイアーパターン）を描き出す。
　無限に湧き出す常識外の魔力。今の彼ならばエントロピーの神々とすら戦えよう。
　
　これほどの魔力、いかな彼とて生み出せるものではなかった。
　そう、彼はイカサマをしていたのだ。
　
　右腕を束縛していたはずの鎖がいつの間にか切断されていた。
　かわりに、自由となったその手には一振りの剣が握られていた。
　奇怪な魔剣が、彼の足元まで延びた森の大樹の根に突き立っていた。
　
　その魔剣の銘を「吸血鬼」という。生気を、魔力を、命をすすり所有者のも
のとする外法の魔剣だ。この魔剣の力を持って森の魔力を掠め取っていたのだ。
　
　

233 名前：＜呪われた公子＞ゲイナー ◆GAinErMg8k ：2007/11/25(日) 02:30:45

>>232
　
　突き立てた剣を杖に彼は立ち上がる。満身創痍。だがその身には天文学的な
規模の魔力が満ち溢れていた。
　無限に沸き起こる魔力を生命力と変換し、核融合炉のように圧倒的な力を彼
の全身に送り出す
　
　為さねばならぬことを為すために。
　
　彼は世界を革命できると思い込み、挙句失敗した敗残者の成れの果てだった。
　――――だが、だからこそ。
　
　彼は煤けた被面具のうちよりうめき声をもらすと、頭を振ってなんとか皮肉
げな口調を作る。
　そして、思い出したように肩をすくめ語りだす。
　
「さて死神よ。くびり殺す前にそなたの質問に答えてやろう。
　
　そなたの言うように余はあの小娘に憐憫の情を抱いているのだ。限りなく自
嘲に近い憐憫ではあるがな。
英雄であったことの無いそなたにはわかるまい。英雄であり続けねばならぬと
いうことの残酷さが。
死すべき定めにあるものが、生き続けねばならぬという無慈悲さが。
かつて＜天秤の騎士＞であった余には理解できるのだ！
もはや神性など欠片も持たぬこの身なれど、ゆえにだからこそ理解できるのだ。

　生まれ付いての魔物である貴様らには解るまいが――――いや、貴様の主、
吸血鬼の君、ドラキュラ公ならば理解できるやもしれぬな。
　……まあそんなことはどうでもいいことだな、死神よ。
　
　そう、いまだ本人は理解しておらぬやも知れぬが、あの小娘にしても余に殺
されたほうが身のためなのだ。
　そしてそなたのような下郎は世にくびり殺されるのが＜運命＞なのだ！ 」
　
　それは強大な魔力によって飽和し、どこか酔っ払ったような響きすらあった。
　少なくとも狂躁の兆しの感じられる声ではあった。
　そういって彼は剣を引き抜いた。吸血鬼。その剣は、実に奇妙な魔剣であった。
　黒と黄色に先割れしており、鋸のようなギザギザの波刃を持ち合わせていた。
　その剣の切っ先は、数多の次元を出入りしているようであった。
　
　彼は、きらきらと歪んだ鎧をきらめかせながら前へ進みでてた。
　その左手には、吸血鬼の魔剣が下げられていた。
　
　彼の体から放出される魔力はあたりの空間すらゆがめ、死神の転移を容赦な
く阻む。
もはやここは＜呪われし公子＞の処刑場ではなく、刈り取る側であるはずの死
神のための処刑場なのだ。
　
　そして＜呪われし公子＞ゲイナーは死神へ向けて走り出した。
　
　

234 名前：＜呪われた公子＞ゲイナー ◆GAinErMg8k ：2007/11/25(日) 02:31:52

>>233
　
　彼は走りながら剣を担いだ。小細工は不要だ。圧倒的な魔力の生み出す速度
と破壊力の前にはいかなる防御とて紙に等しい。
　
　＜呪われし公子＞は走る。ゲイナーは疾走る。
　無限の魔力を活力にかえ、出力にかえ、ただただ前に突き進む。
　魔力の爆発的な放出。ロケットのように加速し、亜高速にすら超えていく。
　
　刹那に刃圏に突入。
　そして　＜呪われし公子＞は吸血鬼の魔剣を――――振るわなかった（・・・・・・・）。
　
　狂笑を浮かべ哄笑するゲイナー。
　圧し折れた右腕が音をたてて復元する。復活した右手が異空間より一振りの
剣を抜き放つ。
　この世界に来る一つ前の世界で手に入れた次元圧縮技術を利用した異空間か
らの居合い。
　
　神速の一撃。致命的な速度だ。だがそれも致命的なのはその剣の持つ魔力だった。
　その手に握られた剣は、漆黒の大剣であった。その名をレーヴンブランド。
　
　嵐をもたらすものと対を成す、呻く剣と呼ばれた神殺しの魔剣だった。
　いかなる防御魔術も通用せぬ神殺しの剣。魂の盗人の剣。
　
　その剣が死の神めがけて振り下ろされていった。
　
　
　【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）地下】

235 名前：エリ・カサモト ◆SV001MsVcs ：2007/11/25(日) 02:38:46

>>229

　化物が吠えた。

　分かりやすい。敵意はフィオから離れて完全にアタシに向いた。
　これで、殺り易くなった。

　化物であろうとアレは生き物、動物だ。
　で、あれば攻撃に移る前触れは存在する。それが見えれば避ける事は容易い。
　あの馬鹿力は恐るべき脅威だが、当たらなければどうということはない。

　鎖を引き摺り、音を立てて化物が来る。
　
「カモンカモンカモーン……」

　化物の膝が僅かに沈んだ。

　――来る。

　両腕を上げての飛び掛り。
　ハンマーかパワーダンクか、といった大迫力大威力の一撃。
　喰らえばぐっしゃり潰れた死体の出来上がりだ。　

　――当たっちゃやれないね。

　アタシは後ろに小さく跳んでいた。
　一瞬前まで立っていた場所に手枷のハンマーが振り下ろされる。
　どずん、と音を立てて床がひび割れた。
　その瞬間にはアタシは前に出ている。
　化物の身体の前にC4を放り、その背後へ回りこみ、ショットガンを抜いた。

　轟音。

　蠢く触手が覆った背面を散弾が強かに殴りつける。

　反動を腕と身体でいなして階段へ一目散。
　頭から飛び込み、踊り場までに一回転。足から着地。

「GAME　OVER」

　C4爆弾点火。　


【現在地：Ｆ地区　病院】

236 名前：リサ・トレヴァー ◆Lisayc.tVc ：2007/11/25(日) 03:13:06

>>235

　背中から受けた強い衝撃により再び吹き飛ばされる。
　だが先ほどと同じようショットガンを受けた箇所を再構築、
　元通りだ。これでは何度やっても埒は開かない。

　しかし、体に備え付けられた高性能プラスチック爆弾は
　十分に埒を明けることができた。

　――――ア？

　起爆、それと同時に閃光が走り見るものの視界を奪う。
　すぐさま破損箇所の再生、破損、再生、破損、再生が繰り返されるも
　間に合うわない。不死身といわれたゆえんの自己再生能力を
　凌駕した莫大なエネルギーは容赦なく彼女を破壊する。

　――――――マ―――マ―――――

　爆音に混じったかすかな声。
　最後まで会いたかった、この世を去った者への
　思慕の言葉。

　生まれた炎はリサ・トレヴァーという化物の体を粉々に砕き
　焼き尽くした。
　しかし、この「GAMEOVER」こそ―――

　彼女が悪夢から覚める唯一の結末だったのだろう。

【リサ・トレヴァー　死亡】

237 名前： ◆DEVILbzibY ：2007/11/25(日) 03:23:35

紅魔館の優雅な住人たちｖｓカトル・カール
―Forest Lagoon―

途中レス番まとめ

>>146>>147>>148>>149>>150>>151
>>154>>155>>156>>185>>186>>188
>>189>>191>>192>>196>>197>>201

238 名前：マルチアーノ12姉妹 ◆M12sisrIV6 ：2007/11/25(日) 03:26:19

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
>>228

　
　身を立てると見るや大きく捻り、跳び上がる姿は蝶を思わせた。
　コートを翻す、黒い揚羽の一擲。
　――優雅ではあるが、毒を孕んだ翅の一撃ちである。
　
　ジュライが脇に構えたのには理由がある。
　正眼の侭では踏み込みに大きな差が生じるからだ。
　ヴィルマがジャニアリーに向け足刀蹴りを放った時、既に身を低く地を蹴っていた。
　左手は柄頭に添えられ、柄を握る右手を離すと伸び上がる様に斬り上げる。
　銀線が虚空に弧を描いた。
　
　それと同時にジューンはスローイングダガーを放っていた。
　右手の中の一本、風を切って飛来する。
　そして其の後から。
　左掌の内でマシェットが位置を変え、順手に持ち替えると体の前で両腕を交差させた。
　左右の翼を畳んだ猛禽の、まるで獲物を狙う眼で駆け出す。
　
　そして、ジャニアリー。
　彼女の持つ武器から接近戦に持ち込んだのだろうが、実際はこの間合いこそジャニアリー
の最も得意とするところだった。
　自動火器による格闘、機関部が後方に配置されグリップ以前の突出部が短いP-90だから
こそ為し得る芸と言える。
　転体しての蹴撃、その螺旋に加えられた力の方向に逆らわず臂を巻き込み、切り下げる。
　銃口は目の前に。
　
　【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】

239 名前：エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ ◆SV001MsVcs ：2007/11/25(日) 03:44:16

>>236
　
　C4爆弾の爆発が建物を揺らし、ワンフロアを根こそぎに吹き飛ばす。

「これなら確実にくたばったろ！」

　ざまあみろだ。

　転がるように下へ降りたアタシをフィオが出迎えた。

「やりました？」

　問われてアタシは左手の親指を立てる。

「聞いてのとおり」

「流石です」

「それじゃ、一休みしたいところだけど。作戦再開と行くよ」

「うぅ……初っ端から強敵だったのに……」

　げんなりした顔をするフィオ。その肩を叩いてアタシたちは歩き出した。

　……そのとき。
　パラパラと天井から粉が散り、背後の天井が突き抜けた。

「っ！」
　
　まさかまだ生きてやがったのか！？
　
　振り向きざまに銃口を向ける、が、そこにあったのは一本の柱と思しき建築材だった。

「なんだよ……。脅かすな」

　そう言った次の瞬間、建物が揺れた。

「じ、地震か？」

「い、急いで外へ！」

　揺れる地面に足を取られつつアタシたちは病院の外へと走った。
　その間にも天井を破って柱やら壁やらゾンビやら（落ちてきた衝撃でぐじゃりと潰れてそれっきりだった）が降ってくる。
　降り注ぐ色んなものを掻い潜り、砕け散ったガラスの自動ドアを駆け抜けて外へ飛び出した。
　勢い余って道路を転がり、身を起こして背後を見たアタシたちの目には、ワンフロアどころか軒並み崩れ落ちた病院が映った。

「…………」

「…………エリちゃん」

「何かなフィオちゃん」

「爆薬間違えましたね？」

「……」

　その通りだった。
　アタシがあの化物にC4だと思って使ったのは、似て非なる別物。
　C4と同じ性質、重量でありながらより強力に高性能化された新型、開発部が作った破壊工作用の強化型特殊プラスチック爆弾だった。
　威力的にはワンフロアどころか病院一つ丸々吹っ飛んでもおかしくない。

「け、結果オーライってことで」

「危うく諸共ぶっ飛ぶところでしたねー！　ねー！」

　笑顔で迫るフィオにアタシは苦笑するしかなかった。

「弘法にも筆の誤りってやつよ」

「こーぼーさんは命に関わる誤りはしないと思いますよぅ？」

【エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ　生存】
【現在地：Ｆ地区　元病院瓦礫付近】

240 名前：おもいっきり森電話 ◆ALICEsQkXc ：2007/11/25(日) 09:43:34

挿話　第三巻[おもいっきり森電話]



メイクさん、ごめんなさい。爪がとれちゃったわ。
　すぐに直してくれないかしら？
マネージャー。私、お腹減ったわ。なんか食べたい。
　え？　口紅がとれるから駄目？　……んもぅ、ケチなのね。
　
　　―――始まる？　始まるわね。
　カウントお願い。
ディレクター。今日の私はどんな私？
　……そう、ふふ。良いの。分かっていることだから。
　　ただ、確認したかっただけ。


　…さん
　　…にぃ
　　　…いち





　黄金の午後は○○おもいっきりテレビ！

　全国のみなさん、こんばんは。
　私は進行のアリス。アリス・ミノ・モンタです。
　さあ、今夜も「ちょっと聞いてよ、おもいっきり森電話」の時間がやってき
たわ。ふふ……今夜はどんな悩みの森を覗けるのかしら。
　昨晩の相談者さんは面白かったわ。名前は確か……そうそう、F.N（Forest
Name）「とうかんもりの妹」さんのお悩み。
　悩みというか脅迫に近かったけれど、本物の愛ってああいうコトなのよね。
　例え自分が死んでも、想い人の魂を縛り付ける。彼女が氷湖の中で永遠を見
い出したように、私も森の中で―――。
　うふふ。そのためには、私ももっと積極的にならないと駄目かしら？

241 名前：おもいっきり森電話 ◆ALICEsQkXc ：2007/11/25(日) 09:44:28

>>230
>>240


　あら？　もう相談者さんと電話が繋がっているの？
　じゃあ、早速「おもいっきり森電話」を始めちゃいましょう。こっちに回し
て頂戴。ええと、相談者さんのプロフィールは―――ふぅん。
　珍しく本名なのね。
　グルマルキン・フォン・シュティーベルさん。職業は魔女ですって。いった
いどんなお悩みがあるのかしら。早速、繋いでみましょう。


　　　私だ。聞きたいことがある。


　―――奥さん、それはあなたが悪いわ。


　　　おい！　私はまだ何も言ってない！


　効果担当さーん。ここは「SE:一同大爆笑」でお願いね。
　これはお約束だから仕方ないの。物語は常に予定調和に満たされているわ。
　……それで、グルマルキンさん。いったい何の悩みかしら。面白い話を聞か
せてね。あなたのお話って自己満足優先で退屈なイメージがあるから。
　つまらなかったら切るわよ？


　　　……随分戯けた態度をとってくれるな。
　　　身の程を弁えろ。司会者なら司会者らしくゲストを立てろ。


　森を無視して勝手にキャストを決めないで。それに、あなたはゲストじゃあ
りません。あなたは相談者。答えを求めてさまよう野良犬よ。
　……だいたい、私はあなたが嫌いなの。乙女もあなたが嫌いだわ。あなたは
私に酷いことをした。半世紀前にフランスにも酷いことをした。
　悩みを聞いてあげるだけありがたいと思いなさい。それで、何なの？


　　　ふん、気に食わんがまぁいい。
　　　相談はたった一つだ。
　　　　　―――道に迷った。


　交番に行けば？
　……はい、じゃあ今夜の「おもいっきり生電話」はここまで。
　明日も―――


　　　おい、真面目にやれ！　森にそんな奇怪な箱などない！


　私だって、別にあなたの導き手〈ガイダンス〉じゃありません。子供じゃな
いんだから、道ぐらい自分で見つけたら？　それに、森は迷うもの。迷って当
然なんだから、それを悩みにするなんて狂ってるわ。
　でも、このままでは話が進まないのも確かね。いいでしょう。一応、聞いて
あげるわ。どんな状況でどんな事態に陥って、いま街どの辺にいるの？
　
　

242 名前：おもいっきり森電話 ◆ALICEsQkXc ：2007/11/25(日) 09:45:05

>>230
>>240>>241



　　　初めからそう素直にやればいいものを……。
　　　森蝕から逃れて転移した先は確か、研究所付近の森だった。
　　　森源地からはそう離れていなかったのは確かだ。
　　　樹に侵された研究所も確かにこの目で見た。
　　　そこで私は、異変の根源に至るために進軍を開始したのだが……
　　　いつまで歩けども研究所に辿り着けない。
　　　一キロも離れていないはずなのに、だ。
　　　そして気付けば、帰り道すら消え失せていた。
　　　私はいま、完全に閉じた世界にいる。
　　　退くことも進むこともできん。


　それはそれは。愉快な目にあっているのね。とても深刻な悩み事ね。
　森にはあなたの他にもたくさん招かれざるゲストがいると云うのに……どう
してあなただけが、森の牢獄に囚われたのかしら？
　　
　　
　　答えは分かっている。貴様から聞くまでもない。


　あら、そうなの？


　　私はこの幻想を止める術に心当たりがあるからだ。
　　このくだらない茶番を続けるために、森は私の道を閉ざしている。


　そこまで分かっているのなら、私に聞くことなんて何もないじゃない。


　　だが、なぜ私だけなのだ？　それが分からん。
　　私の推測が正しければ、森を止められるのは私だけでは無いはずだ。
　　なのに、なぜ私だけ―――


　理由は二つあるわ。
　一つ、あなたは答えに近くても、答えを知っているわけではないから。
　中途半端な状態で来られても、森が迷惑を被るだけ。お断りよ。
　もう一つは、あなた達は森のルールに従う気がないから。あなた達は自分
のルールでしか動かないわ。
　あなたと……誰だったかしら。あの、あなたの部下の一人、七色の甲冑の
彼が手を組めば、このリドルを強制的に終わらせることはそこまで難しいこ
とじゃありません。―――でも、それってすごくつまらない。
　正当な手順を踏まないプレイヤーを、森は決して認めないわ。


　　戯けたことを。私は戦争をやっているのだぞ。
　　貴様らの児戯に等しいゲームに―――
　

　戦争こそが貴族のゲームじゃない。「フォン」なんて名乗っている癖に、
ずいぶんと余裕のないコトを言うのね。
　とにかく、あなたの「迷い」に対しての答えは以上よ。時が至ればその牢
獄は勝手に扉を開くから、大好きな戦争ごっこでもやってれば？

243 名前：おもいっきり森電話 ◆ALICEsQkXc ：2007/11/25(日) 09:45:39

>>230
>>240>>241>>242



　　待て。結局この森はなんなのだ。
　　私は知らんぞ。森に関わるジャンヌのエピソードなど。
　　なぜ森が喚ばれたんだ。
　　あの聖女は分かる。あれは私の油断が招いた悪夢だ。
　　だが、この森はどこから来た。
　　森と聖女の関係を教えろ。


　あなたは誤解しています。
　全ての因果に関係があるなんて、そんなの絵本の読み過ぎよ。
　森が乙女を生んだのか。乙女が森を生んだのか。……そんな見当外れな命
題に悩まされている間は、決して答えに至れない。永遠に牢獄の中で悩み続
けて枯れればいいわ。
　―――でも、ヒントだけは教えてあげる。あなたのためじゃなくて、視聴
者のために。
　あらゆる異変には「鍵」がある。それはあなたも知っているわよね？　小
学生だって分かることだわ。
　別に鍵でも切っ掛けでも根源でも何でも良いのだけれど。とにかく異変の
基点となるところよ。―――でも、あなた達はその〈始まり〉を読み違えて
いるの。今回の森蝕はどうして始まったのか。誰が招いたのか。……グルマ
ルキン・フォン・シュティーベルさん。あなたは、それを半分しか理解して
いません。目先のまばゆい輝きにばかり目を囚われて、ね。
　そう……得てして自分を「普通」だなんて規定しているものこそ、深い闇
を抱えているものだわ。それはどこの世界でも同じね。
　ヒントはここまで。これ以上は自分で考えなさい。


　　おい、さっぱり分からんぞ。貴様は何を―――





　はい！　それでは、今夜の「おもいっきり森電話」はここまで。
　グルマルキンさん、ありがとうございました。二度と電話して来ないでね。
　視聴者の皆さん？　今日はつまらない人が相談者でごめんなさい。
　明日からはもっと面白い相談を探すわ。―――だから、明日も見てくれる
わよね？　フランス国営放送局を電波ジャックして、急遽お送りした番組だ
けど、明日も明後日も明明後日も！　森が続く限り、この番組は不滅よ。

　以上！　燦月製薬の提供で、FSK（France Shinrin Kyoukai　或いは Forest
Service Kyoukai）が腐海神殿から中継でお送りしました。







　　　　　　　　　　　　―――そう、これはこれで。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　また別のお話。

244 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/25(日) 09:47:10

〈L'arbre de la fee〉

>>230
>>240>>241>>242>>243


　パーティは続く。
　パーティは続く。



　……うっすらと瞼を開く。

　そこは、彼女が初めて〈声〉を聞いた場所に似ていた。
　村を離れ、ヴォークリュールに向かう高台―――芝生に覆われたあの自由地
には、枝を大きくのばし、広い木陰を作るブナの樹が密生していた。
　思えば、〈ブールルモンの妖精の樹〉と呼ばれていたあの高台から、全てが
始まったような気がする。

「―――っ！」
　
　頭痛が走った。頭の裏側が切り離されるかのような、痛烈な違和感。お陰で
彼女はいつもの行程を辿らずに記憶を取り戻す。
　そう、私は乙女だ。
　これは二度目の再生。売国奴イザベルと決闘に敗れ、こうして〈妖精の樹〉
の下に戻ってきた。胸を鎧ごしに撫でる。自ら貫いた疵は跡形もなく消え失せ
ている。あの戦い自体が無かったことかのように。

「目覚め」自体の体験は三度目になるだろうか。痛む頭を押さえながら考える。
繰り返す救国への道―――だが、この頭痛は初めてだった。目覚める度に新生
するのなら、痛みなど覚えないはずなのに。
　まるで、何かの歪みが徐々に拡大しているかのようだ。
　
　立ちくらみを理力でねじ伏せながら、草の寝台から身を起こす。

「おはようジャンヌ。快適な目覚めを得られたかしら」
　
　決められた台詞。決められた挨拶。今度のアリスは、コーヒーテーブルに森
を模したボードを広げて、一人ですごろくを楽しんでいた。
　サイコロを振り聖女の駒を進める。「今度はどのフランスを救うの？」

「そうね……」
「―――どうしたの？」
　表情には出していなかったはずだが。些細な違和感を感じ取ったのか、アリ
スは魔女の駒を投げ捨てて乙女に歩み寄る。
「どこか痛いの？」少女の顔見る間に青ざめる。「そ、そんなことないわ。だ
って、あなたはここに戻ってきたんだから―――」

「ええ、大丈夫」
　事実、痛みはもう引いている。
「それに、私の心配よりフランスの心配を。先の戦いのお陰で、だいぶ本当の
戦い方を思い出すことができたわ。……そうね。次はきっと救える」

　アリスは安堵の吐息を漏らす。
「もう、びっくりさせないで」
　言うなり乙女の右手に回り込んで、腕を取った。
「あなたが健康なら、それでいいわ。―――じゃあ、今夜も行きましょう。
フランスを救いに。あなたの理想を叶えに」

　乙女は微笑を称えて頷いた。彼女の救国が再開する。


（ジャンヌ・ラ・ピュセル→二度目の復活）

【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）最深部〈妖精の樹〉→移動】

245 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/11/25(日) 11:28:11

>>146>>147>>148
　>>149>>150>>151
>>154>>155>>156
>>185>>186>>188
　>>189
>>191>>192>>196>>197>>201




　ヴィクトリアン・スタイルが燃え上がる。

　着弾―――機銃弾三十とロケット弾一発。残りは全て回避。
　効果―――半壊した洋館／焼け落ちた内装／なおも走り続けるタフな建築。
　観測―――蝙蝠少女へ五十口径の着弾／効果なし／最速の再生。

　再度支援。スケアクロウへ通信／同時に半壊した館から銀色の閃光／強烈な衝撃ととも
に着弾。さながら徹甲弾の速度＝威力。
　損害報告／フリントの驚愕―――反撃不能＝一瞬にして支援火器の沈黙。

　敵の正体＝不明／高度な戦闘能力／生存能力。

　フリントの行動―――ハンドルを切る／アクセルを踏む／加速。接近＝交戦を開始する
為に必要な限界値(クリティカル)を得る、一連の動作。


　後方。加速と申し合わせたようにヴィクトリアンへ突貫する三体。

　スパンカー／接敵／確認＝フレンチ・スタイルの銀髪メイド／銀のナイフをトランプの
ように優雅な手つきで操るスタイル＝支援火器を破壊した人物の可能性大。
　加速＋跳躍＝攻撃態勢／両手の鞭を勢いよく振り上げる／接触したアスファルトが削岩
機を食らったように抉れる＋相手へ向けて振り下ろす＝象をも殺す“ぶっ叩き(スパンキング)”。

　リッキー／接敵／確認＝立ち上がった華奢な人影／気だるげな読書家／焼夷弾の爆風に
晒されて無傷＝予測不能の戦闘能力を推測。
　加速＋顎を開放＝攻撃態勢／高速で回転しながら跳躍＝鮫のように巨大な口が振り回さ
れる＝半壊したヴィクトリアン・スタイルの構造物を削り取る＋噛み砕く＋なめ回しなが
ら襲い掛かる＝“愛咬魔(ヒッキー)”の面目躍如。。

　ホーニー／接近／突撃＝半壊した建築への更なる打撃／なお加速し続ける館／集中砲火
を回避した機動力＝奪わなければならない足。
　加速＋赤熱＝攻撃態勢／男性器で出来たキャンドルライト＝太く猛々しい角が加熱しな
がら車両に追突／激震する車体＝“百鬼夜行(ナイトウォーカー)”とのカーチェイス―――熱と衝撃でテール
が焼け焦げていく異臭。

246 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/11/25(日) 11:29:30

>>146>>147>>148
　>>149>>150>>151
>>154>>155>>156
>>185>>186>>188
　>>189
>>191>>192>>196>>197>>201
　>>245



　さらに、トレーラーのコンテナ上部が開く／飛び上がる人影／一様に紅いレザースーツ。

　ホッパー・スクラッチャー。鋼鉄製の蚤＋義手の代わりの両手フック。

　ローチー・ニードルマン。鋼で出来た針付きゴキブリ＋全身に対人地雷のピアス。

　ダッキー・シューター。股間に大量の大口径銃＋コンドームをぶら下げたアヒル男。

「カリカリガリガリ！　カリカリガリガリ！」ホッパーの攻撃―――宙へと投げ出された
蝙蝠少女へ跳ね上がる／両手のフックを振りかざす／振り上げる／引き裂く／金属の鉤が
一撃として襲い掛かる。その柔らかい肢体を引き裂くための得物。

「おかああああああさん！！　おかああああああさん！！」ローチーの攻撃―――絶叫／
胸いっぱいにピアスで止められた対人地雷のピンを抜く／即炸裂／釘とベアリングの発生
させる殺人圏＝特濃弾幕。

「ゲァゲァゲァゲァ」ダッキーの攻撃―――コートを露出魔の手つきで開放／機械化され
た上半身＋腰からそそり立つ大口径銃の束／銃口全てに被せられたコンドーム＝意味不明
／銃口の束からすさまじい閃光＝散弾の掃射＋乱舞／コンドームを貫く放出。

　味方も巻き込みかねない面制圧―――宙を踊る少女へ降り注ぐ。
　嵐のような弾幕の中、ホッパーが強襲開始(アタック)。




【現在位置：ハイウェイ東側／Ｆ地区内／レミリア・スカーレット一行と交戦開始】

247 名前：スレイド ◆cDCpSlADE. ：2007/11/25(日) 11:39:12

>>204

現われたスレイドに対して、女子二人は恐怖でなく敵意を顕にした。
少なくともこの状況でも、知らないおじさんに付いて行ってはいけない事を覚えている程度には、彼女らは優秀な戦士らしい。
さらに自分が既に死者であることもお見通しのようだ。
だが、それならばそれで良い。若者から隙を作る方法なぞいくらでもある。
恐怖がダメなら次は怒りだ。
少しづつ圧力をかけていこうと、スターターを引っ張る姫を見つめながら思考を切り替える。

「私を脅迫するとは君は相当な自信家だな。ますます気に入った。」

唸るチェーンソーを前にしても、スレイドは余裕の態度を崩さない。
弾雨の中を潜り抜けてきた彼にとって、いかに凶悪に見えようと、武器でもないそれは恐れるに値しなかった。

「答えてやりたいのは山々だが、知っての通り私には払う代価などない。
　それを得るためここに来たとだけ言っておこう。」

言葉の途中から徐々に、スレイドの両掌が赤々と燃え上がった。
そのままスレイドは見せ付けるように両腕を動かし、粘土をこねる様に炎を球形へと変化させていく。
闇の魔力で創られた炎は、直径50cmほどの火球とない、周囲を照らしながらギラギラと輝いている。

「さて、私も最初に選択肢を与えたことを忘れるな
　これから起こる事は私でなく、君達が選んだものだ。イィィヤッ！」

掛け声と共に四人の足元に火球を放つ。
スレイドとしては他は兎も角、姫だけは生かして捕らえたかった。そのため直接炎を狙うのは躊躇われたのだ。
その代わりに、炎の陰に隠れて、スレイド自身も同時に飛び出す。
灼熱のフェイントに紛れてスレイドが最初に狙ったのは、自身を死体と断定した女子。
暴風のような素早さで、リザの鳩尾に向けて拳を振るった。

【現在地：D地区　市街地】

248 名前：―永遠に紅い幼き月―　レミリア・スカーレット ◆DEVILbzibY ：2007/11/25(日) 12:07:13

紅魔館の優雅な住人たちｖｓカトル・カール
―Forest Lagoon―

>>245>>246


「パチェの作ってくれたパーラーカーが……！」

　爆風に煽られて宙を舞いながら、レミリアが気を揉んだのは自走式紅魔館
の行方だった。棺桶からびっくり箱のように飛び出したクリーチャーたちな
ど見向きもしない。……見向きもしないから、攻撃を真っ向から食らった。

　鉤爪が吸血鬼の肌を舐める。血花が咲いた。引き裂くどころか、内臓まで
持って行かれた。鉤爪に引き摺られて道路に叩き付けられたところを、鉄球
と鉄釘の追い打ち。―――弾幕と呼ぶには隙間が小さすぎる。壁のように押
し寄せて、骨から肉を奪っていった。
　最後は飛び散る種子の雨。―――だが、いくら幻想ボケしているお嬢さま
でも、ここまで好き勝手にやられたら夢からも覚める。

「五体満足」なレミリアは、ひょいっと立ち上がると、トレーラーに並走し
たまま両手を軽く固める。
　そして、自らの拳を散弾に変えた。
　手当たり次第に種子を叩き落とす。数が多すぎるからいくつかはその身に
受けてしまうが、肉が抉れた次の瞬間には闇が疵を埋めて再生を果たした。
　再生力が高すぎるため、もはや負傷したとか負傷してないだとか―――そ
んな次元の煩いから、彼女は解放されてしまっているのだ。
　
「ほんと、外の人間は面白いわね……。そう思わない、咲夜？」

　妖怪相手に戦争を挑むなんて。彼女がまだ外にいた時代では考えられなか
ったことだ。……いや、あの頃も何人かいるにはいた。
　外とは結局そういうところなのか。

　棺桶を引っ掻いて、中に詰まっている死体をみんな引きずり出してやりた
かったけど、いまはパチェのパーラーカーのほうが心配だった。
　ミニ紅魔館と相撲をとっている四本足の人間に接近。軽く飛び上がって、
背中を蹴っ飛ばしてやる。レミリアの足は短く細いけれど、客車から牡鹿を
引き剥がす程度ならわけはない。



【現在地：ハイウェイ】

249 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/25(日) 17:30:28

エリ・カサモトｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『ポワティエ平野で朝食を』

導入

>>230
>>240>>241>>242>>243
>>244


　パーティは続く。
　パーティは続く。


　xxxxxxx au pays des meveilles.

　それが、アリスが与えた遊園地の名。長すぎるので「フォレストランド」と
呼ぶよう乙女に言いつけた。
　腐海に沈む前、このテーマパークがどんな幻想〈メルヘン〉に支配され、ど
んな名前で呼ばれていたのか。アリスは知らない。どうでも良かった。
　森に沈んだ遊園地に、かつての面影はない。樹がアトラクションというアト
ラクションに寄生して、緑樹を彩る。観覧車は回転する世界樹に。ジェットコ
ースターは枝葉のレールを走る果実となった。
　今や、この遊園地はアリスのものなのだ。

　入場ゲート脇という一等地に展開するバンケットホールで、アリスと乙女は
食事中。園内のアトラクションを制覇するためには体力が必要で、体力をつけ
るためには食事が必要だったから。
　ドードー鳥のパティシエが料理長を務めるバンケットホールで、シャム猫の
ギャルソンがオーダーを運ぶ。
　テーブルの上にはメルヘンスウィーツが所狭しと並べられて、アリスは満足
顔。ザッハトルテにドボシュ・トルテ。プリンアラモードにメレンゲ・マフィ
ン。イタリアン・ジェラードも忘れずに。
　中央にはフルーツの盛り合わせ。眺めるだけで胸焼けしそう。
　乙女は目を剥いて驚くばかり。オスマンのスルタンだって、これほどの贅沢
は叶うまい。

「さ、食べましょう」

　アリスは『糖蜜井戸のチェリータルト』をまず選んだ。

「フランスは思った以上に裕福なのね……」

　おずおずと乙女は『ハートの女王さまのストロベリーサンデー』を引き寄せ
る。氷菓子なんて乙女にとって主と同じぐらい遠い存在だったのに。
　だが、嫌ではない。むしろ大好物だった。それはあの魔法の砂糖で学習して
いる。そしてこのストロベリーサンデーは、更なる光の世界へと乙女を導いて
くれた。「……甘いわ」

「あなたに限らず、私に限らず。少女なら誰でも甘いものが大好き。甘いもの
以外なぁーんにも食べたくない。きっと私の血はミルクセーキで出来ているん
だわ。―――でも、私は少女なのに時々肉食」

　アリスはくすくすと笑う。よく分からないが、彼女が楽しそうなのは乙女も
嬉しかったので微笑で応えておく。

「特別メニューでーす！」
　料理長自らテーブルに参上。アリスへの敬意を忘れない。
「あら、何かしら。楽しみだわ」
「お客さまのために腕を振るいました。『暗黒聖女のガトー・ショコラ　奈落
風味』です。ビターでデカダンスな死人の味わいをどうぞ」
「……死刑」
　アリスが人差し指で首をかっ切る動作をすると、どこからともなくトランプ
の衛兵が現れて、料理長を連れて行った。

250 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/25(日) 17:32:21

>>249



「所詮はドードーね。センスがあまりに足りてないわ。次からはシンリンオオ
カミを料理長にしましょう。―――ねえ、それよりジャンヌ。新しいゲームを
しない？　私、とっても素晴らしいのを思いついたの」

　アリスが乙女の食べているデザートを指差して、「あら、その○○も美味し
そうね。私も食べていい？」と尋ねる。ここで乙女が「どうぞ」とパフェグラ
スを渡してしまったら彼女の負け。スタートからやり直し。
　正解は「どうぞ」と言って、スプーンにすくってあげること。「あーん」と
アリスの口まで運んだらゴール。次はアリスのターンで、「こっちの○○も美
味しいわよ。食べる？」と―――

「……アリス」
　乙女の険しい声で、彼女のルール説明は中断された。
「あれを見て」
　乙女の視線の先、ウィンドウの向こうに二つの人影。フォレストランド唯一
の出入り口、正面ゲートに二人の女が見えた。
「あれは……」
　苛立たしげにアリスは呻く。
「敵よ。間違いなく。私の邪魔をして……許せないわ」
　乙女は慎重に頷く。
「人間のようだけど……訓練された兵士ね。私とともにブルゴーニュと戦っ
た仲間たちの中にも、あのような狼がいた」

　そこでアリスは絶妙の配役を思いつく。

「ジャンヌ、彼女たちが手に持っている武器……なんだか分かる？」
　火を噴く鉄の槍。先に乙女が召喚した悪魔もあの武器で武装していた。乙女
の知るフランスには無かった、恐るべき武器だ。詳細は分からない。
　アリスの悪戯っぽい笑み。
「―――あれはロングボウよ」

　ロングボウだって？！　乙女は青ざめる。あのウェールズ人の武器か。クレ
シーやアジャンクールでフランス軍を皆殺しにした、悪魔の豪雨。
　突撃こそ騎士の誉れと知るフランス騎士にとって長弓は天敵だ。乙女はぎり
ぎりと歯噛みする。ロングボウをあんなに誇らしげに構えているとは。彼女に
は一人だけ思い当たる人物がいた。

「エドワード・オブ・ウッドストック……！」
「大正解！」
　アリスの歓声も怒れる乙女の耳には届かない。

　ブラックプリンス。エドワード黒太子。百年戦争前期におけるイングランド
の勝利を決定的にした名将。フランス軍を完膚無きまでに打ち負かした悪魔。
　善良王ジャン二世は彼に敗れて虜囚となった。百年戦争でのフランスの英雄
が乙女ならば、英国側の英雄は黒太子に違いない。

「落ち着きなさい、ジャンヌ」
　アリスは得意そうに言う。
「いくらあなたでも、あのブラックプリンス相手に一人で挑むのは危険よ」
　だから、軍を用意しなさい。アリスの言葉に乙女は目を瞠った。
「救世軍を派兵するの？　……確かに、その力は思い出したけれど」
　通常の悪魔召喚とは違う。乙女ほど地獄に接近している召喚士でも、術の完
成には時間を要した。その間に黒太子に逃げられては元も子もない。

「大丈夫。私が時間を稼ぐわ」
　彼女は乙女を驚かせてばかりだ。
「―――だから、あなたはあなたの務めを果たしなさい」




【現在地：Ｆ地区　テーマパーク『フォレスト・ランド』】
　

251 名前：黒いアリス ◆ALICEsQkXc ：2007/11/25(日) 17:33:26

エリ・カサモトｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『ポワティエ平野で朝食を』

>>249>>250


　パーティは続く。
　パーティは続く。

　息は荒く。肩も揺らして。気が滅入るけど、髪の毛もばさばさに。
　スカートは引き裂いた方が効果的かしら？　……いいえ、それはやり過ぎ。
お洋服がかわいそうだわ。お化粧も絶対に落とさない。
　大丈夫。私はかわいいもの。
　どこからどう見ても、庇護されるべき女の子。

　　―――さあアリス、お話を始めましょう。

　かっぽかっぽとロッキン鳴らして二人に近付く。廃墟となった遊園地で、
息を乱して走り寄る少女が一人。「助けて！」と悲鳴つき。
　ふりふりのゴスロリ姿はちょっと奇抜が過ぎるかもしれないけど、ここ
は遊園地だもの。きっと上手くカモフラージュできている。

　金髪のほうの女性に縋り付く。
「助けて！」
　二度目の懇願。
「追われているの！」
　そうして指差した先には、襤褸のシーツを頭から被ったかのような汚ら
しい亡者が四匹。腐肉の変わりに劣化した闇を零しながら、よたよたと近
付いてくる。ああ、と絶望の悲鳴。
「ママもパパもあいつに！　あいつに……！」　
　これはちょっと重すぎかしら？　



【現在地：Ｆ地区　テーマパーク『フォレスト・ランド』】

252 名前：エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ ◆SV001MsVcs ：2007/11/25(日) 17:38:26

エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミｖｓリサ・トレヴァー

エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ導入
>>75
リサ・トレヴァー導入
>>69>>76

>>86
>>93
>>98
>>106
>>113
>>117
>>123
>>127
>>133
>>136
>>141
>>175
>>182
>>194
>>200
>>206
>>212
>>217
>>226
>>229
>>235
>>236
>>239

【闘争舞台：Ｆ地区　病院】

253 名前：システムアナウンス：2007/11/25(日) 17:48:31

吸血大殲　森祭　途中経過纏め

＊昨夜行われた闘争の中断状況を記載
＊終了した闘争については最後に記載
＊各人のターンのレス毎に改行

死神（デス）ゼアド vs ＜呪われし公子ゲイナー＞
＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

森祭状況／ゲイナー導入（１）
>>42>>43>>44>>45>>46>>47>>48>>49>>50>>51

ゲイナー導入（２）
>>64>>65>>66
ゼアド導入
>>67>>68

>>80
>>90>>91>>92
>>109>>110
>>118>>119>>122
>>131>>132
>>165>>171
>>180>>181>>183>>184
>>202>>203>>205 　　　
>>209>>210
>>218>>219>>220>>221>>222 　
>>231>>232>>233>>234

【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）地下】

254 名前：システムアナウンス：2007/11/25(日) 17:48:56

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹

マルチアーノ１２姉妹導入
>>77>>78>>79>>81
ヴィルマ・ファキーリ導入
>>83>>84>>85

>>87>>88
>>89
>>95
>>103
>>116
>>121
>>134
>>139
>>178
>>190
>>207
>>213
>>225
>>228
>>238

【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】

レイオット・スタインバーグｖｓ魔神王リィーナ

レイオット導入
>>99>>100>>101
魔神王リィーナ導入
>>102>>104>>105

>>107>>108
>>111
>>114
>>120
>>129
>>135
>>140
>>199
>>208
>>214
>>216
>>224

【現在地：Ｂ地区　繁華街】

255 名前：システムアナウンス：2007/11/25(日) 17:49:28

“姫”一行（怪物王女）VSスレイド（TEEN　TITANS GO!）

“姫”導入
>>160>>161
スレイド導入
>>162>>163

>>170
>>195
>>204
>>247

【現在地：D地区　市街地】

紅魔館の優雅な住人たちｖｓカトル・カール
―Forest Lagoon―

紅魔館導入
>>146>>147>>148
カトル・カール導入
>>149>>150>>151

>>154>>155>>156
>>185>>186
>>188
>>189
>>191>>192
>>196>>197
>>201
>>245>>246>>248

【現在地：ハイウェイ】

256 名前：システムアナウンス：2007/11/25(日) 17:49:51

＞終了した闘争レス番纏め

DIO vs JEANNE ―The forth part of king Henry VI―
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/138

＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

ミスティア・ローレライｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『イツマデ』 Still When
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/230

エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミｖｓリサ・トレヴァー
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/252

257 名前：エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ ◆SV001MsVcs ：2007/11/25(日) 18:07:42

エリ・カサモトｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『ポワティエ平野で朝食を』

>>249>>250>>251

「なんですか、ここは？」

「油断しないで」

　そう言ってコッキングレバーを鳴らすアタシたち。

　病院を吹き飛ばしたアタシとフィオが次に迷い込んだのは……遊園地だった。
　多分きっと間違いなく逆の方角に来てしまったであろうことは想像に難くない。

「方位は移動するときに確認した。てことは……道間違えた？」

「間違えるも何も一本道でしたよ」

　これが異界化ってやつ、か。

「引き返しますか」

「いや……また戻ってきそうな気がする。このまま進もう」

「根拠はあります？」

「カン」

「地図が当てにならない以上それに頼るしかありませんね」

　はあ、とフィオはため息をついた。

「やっぱりここにもゾンビとかグールとかいるんでしょうか」

「いるだろうね。アタシはもうミラーエリとか出てきても驚かないわ」

「ミラーエリ？」

「類似品にミラーフィオよ」

　軽口を叩きながら遊園地へ踏み入る。
　そこへ、

「助けて！」

　悲鳴と走る足音。

「エリちゃん！」

「要救助者のようね」

　現れたのはふりふりの黒い服を来た少女。

「助けて！」
　
　縋り付いてきた少女に、自爆兵か！？　などと思った自分が居た事を心底嫌悪した。
　フランスでそれはない。

「追われているの！」

　少女の指差す先にはゾンビともグールともつかない化物。

「ママもパパもあいつに！　あいつに……！」
　
「下がってな。フィオ、その娘お願い」

　怒りが湧いた。
　こんな女の子が非日常に放り出されて幸せな日常を失うなんて理不尽、アタシは嫌いだ。
　少女をフィオに任せて前へ出る。

「くたばれ」

　ショットガンが立て続けに咆えた。
　轟音四つ。

　コンコンココンと爆ぜたショットシェルが四回地面を叩いた。

【現在地：Ｆ地区　テーマパーク『フォレスト・ランド』】

258 名前：黒いアリス ◆ALICEsQkXc ：2007/11/25(日) 18:51:51

エリ・カサモトｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『ポワティエ平野で朝食を』

>>257

　パーティは続く。
　パーティは続く。

　怒りに駆られながらも黒太子の銃撃は的確だった。
　亡者の腹部と思われる場所に銃弾を叩き付けて、真っ二つに引き千切る。
末期の呻きすら盛らせず、四匹は揃って形骸の彼方へと霧散した。
　後には死骸も残らない。
　
「助かった……の……？」

　アリスは尋ねる。だが、答えは聞けなかった。森を切り裂く絶叫。まるで
稲光のように遊園地に谺する。いったい誰の声？　自分の声。アリスの声！
「あ、ああああ！」
　アリスは指を指しあぐねた。いったいどこを指せばいいのか。どこだって
指すことができた。どこを指しても黒太子に驚異を告げることができた。

　ゲート脇のバンケットホールから。噴水の奥の、バロック建築を模したリ
ゾートホテルから。隣のエリアへと繋がるトンネルから。―――建物という
建物から、亡者が昏い瞳で二人の黒太子を見つめていた。先に彼女たちが撃
ち倒した四匹と、似たような姿の亡者が。
　窓という窓から睥睨している。どの建物の屋上にも、溢れるほどの数でひ
しめき合っている。
　……やがて彼女たちは知るだろう。悪夢に等しき現実に。
　遠目に眺めてみれば、観覧車にもジェットコースターにも、屋内アトラク
ションのドームにも。この入場口に留まらず、フォレスト・ランド全域に襤
褸布の闇が密集していることに。
　百では追いつかない。千を軽く超えるかもしれない。―――それはもはや
群れではなかった。彼らは「軍」だった。
　
　一人の乙女のために集った、彼女のためだけの軍だった。


　　非（オー）、非（オー）、非（オー）……！
　　絶（オー）、絶（オー）、絶（オー）……！
　　無（オー）、無（オー）、無（オー）……！


　亡者は静かに叫ぶ。呻きとも唄ともつかぬ怨嗟の声を。




【現在地：Ｆ地区　テーマパーク『フォレスト・ランド』】

259 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/25(日) 18:52:56

エリ・カサモトｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『ポワティエ平野で朝食を』

>>259

〈飢餓同盟（タルトタタン）〉―――それが絶望の名。
　あらゆる「法」から追放された辺獄の住民。
　深い嘆きと拭えぬ憎悪。決して満たされぬ飢えが、渇きが、絶望を無限に
生成する。虚無に浸りながらも虚無を恐れ、傷みだけが現存の証。
　―――そんなカタチを持たぬ影法師の軍勢がいま、泥のような闇をまとい
進軍を開始する。

　部隊は四つ。併せて四陣。
　総数一万三千三百名。
　―――そして、混沌の海の中央で黒百合の戦旗が翻る。屋外イベントホー
ル。ギリシャの裁判所の如き白亜の会場で、黒甲冑の乙女は高らかに叫んだ。

「十字軍よ！　フランスの御旗の下に集いし、栄光の戦士たちよ！　今こそ、
過去の敗北を拭い去れ！　ポワティエの敗北を輝きで塗り替えるのです！」
　
　　非（オー）、非（オー）、非（オー）……！
　　絶（オー）、絶（オー）、絶（オー）……！
　　無（オー）、無（オー）、無（オー）……！

　アルマニャック十字軍の参戦。
　救国の大儀を背負って、英国軍にいま―――

「―――突撃〈パレード〉！」



【現在地：Ｆ地区　テーマパーク『フォレスト・ランド』】

260 名前：エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ ◆SV001MsVcs ：2007/11/25(日) 19:48:33

エリ・カサモトｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『ポワティエ平野で朝食を』

>>258>>259
　
　ショットガンを受けた化物は影も残さず消え失せた。
　どうやら通常の物理法則には縛られていない手合らしい。
　質量保存の法則って何ですか？ってやつだ。

「助かった……の……？」

　少女の声に答えようとして
　響いた絶叫に遮られた。

「あ、ああああ！」

　振り向いた先にはフィオに抱き留められた格好でどこかを指そうと指を迷わせる少女の姿。
　浮んでいる表情は恐怖のソレ。
　少女の視線を追ったフィオも、固まっていた。

「…………」

　吹っ飛ばしたさっきの化物が事もなく立っているってのが、相場かな。
　機敏に前を見た。
　モタモタしているうちに化物が目の前に来て振り向きざまに殺されるってのがホラーのお決まりだからだ。

「これは……」

　少女が指を迷わせている理由が分かった。
　――さっきの化物が、見渡す限りどこにでもいるから。
　どこを指したっているんじゃ、逆に迷うってわけだ。

　マズイ。これだけの数の暴力には流石に抗えない。

「フィオ、逃げるよ」

「いえ、エリちゃん。もう退路がありません」

　嘘でしょ。

　後ろを見る。
　入ってきたゲート方面も、既に化物が埋め尽くしていた。

「こんなに山ほどどこから湧いた……」

　それも何時の間に。

　アタシとフィオは少女を間に庇う様に背中を合わせた。

「どうしましょう」

「切り抜ける、さ。包囲の薄いところ探して」

　二人で360度を探る。
　忌々しい事にどこもかしこも厚い。

　――化物どもが静かに吠えた。
　
　そしてにわかに動き出す。
　隊列を組み、陣を敷いて。
　これは、進軍だ。こいつらは軍隊だ。

　ヤバイヤバイヤバイ！
　モタモタしてたら切り抜けられなくなる！

「十字軍よ！　フランスの御旗の下に集いし、栄光の戦士たちよ！　今こそ、
過去の敗北を拭い去れ！　ポワティエの敗北を輝きで塗り替えるのです！」

　化物軍隊の中央、一際守りが分厚いそこに、一体だけ異端が居た。
　黒い甲冑の乙女。
　化物の中に居ながらどこか神々しささえ感じさせるその乙女は。

「―――突撃〈パレード〉！」

　アタシたちへ断頭の剣を振り下ろした。

　これでもう一刻の猶予もない。
　動かなければ圧殺される。
　情けも容赦もなく機械的に。

「エッ、エリちゃん！」

　サブマシンガンからショットガンの弾倉を外して腰のパウチに突っ込む。代わりに抜き出した弾倉を叩き込みコッキング。　
　装填したのは対機動敵用の榴弾――スーパーグレネード。

「右を切り崩して突破する！　銃貸せ！　その娘担いでついて来い！」

　言うが早いか、右の包囲へ弾倉一つ丸々ばら撒いた。
　スーパーグレネードは弾着と同時に炸裂し、周辺を爆発で一掃する。
　威力、効果範囲ともに申し分ないが、装弾数に難があった。
　たちまちのうちに撃ち尽くした弾倉を落として。
　次の弾倉を叩き込む。
　――ヘヴィーマシンガン。
　正面から迫る一団へグレネードを放り投げ、フィオから銃を受け取った。
　こっちに装填してあるのもヘヴィーマシンガンだ。
　ちらりとフィオを見る。
　少女を抱きかかえ、右手にはオートハンドガン、コンバットマーダー。
　こくりと頷いた。
　
「走れぇーーーーっ！！」

　弾幕を張りながら全力で走り出した。
　後ろは見ない。
　前方180度の敵を銃弾で薙倒し、アタシたちは走り続ける。


【現在地：Ｆ地区　テーマパーク『フォレスト・ランド』】

261 名前：黒いアリス ◆ALICEsQkXc ：2007/11/25(日) 20:13:15

エリ・カサモトｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『ポワティエ平野で朝食を』

>>260


　　非（オー）、非（オー）、非（オー）……！
　　絶（オー）、絶（オー）、絶（オー）……！
　　無（オー）、無（オー）、無（オー）……！

　十字軍の一陣に僅か二騎で切り込む黒太子と黒太子。だが、自慢のロング
ボウの威力はかつてフランスを射止めただけあって無慈悲に強力。
　視界に入る端から〈飢餓同盟〉の住人を故郷に帰していく。彼らの動きは
あまりに鈍く、そして弾丸は風を切るほど速かった。
　一発で十匹は吹っ飛んだ。炸裂が収まると、今度は二挺の機銃が闇を手当
たり次第に薙ぎ払う。
　―――だが、銃撃に曝されて闇の肉を散らかした影法師は、自らの死骸を
「門」にして新たな亡者を呼び寄せる。ずず、と影から影が立ち上がる。
　黒太子が一匹殺せば三匹生まれ、三匹殺せば九匹生まれる。ならば、百匹
殺せば三百匹か。彼らは絶望。彼らは虚無。形骸を滅したところで奈落への
落下が制止されるわけではない。
　フランス軍は決して敗れない。それがこの戦争〈リドル〉のルールだった。

「どうして！　どうしてなの」
　メガネの黒太子に抱かれながら、アリスは狂騒する。
「私、遊んでいただけなのに。遊園地に家族で来ただけなのに！」
　あくまで演出。二人の集中を乱さない程度に騒ぎ立てる。

　亡者の軍勢が壁となって押し寄せる。進軍というよりスラムを組んだ「通
せんぼ」に近い。離れた会場では、乙女が戦旗を振り回して執拗に「突撃！
突撃！」と喚き立てている。彼女たちの位置からは声しか聞こえない。
　アリスはぼそりと呟いた。

「―――……なんだか、あの人が一番偉いみたい。私のパパたちが死んだと
きも、あの人がいたもの」
　　
　聞こえるとは分かっているけど、これはあくまで独り言。


【現在地：Ｆ地区　テーマパーク『フォレスト・ランド』】

262 名前：ヴィルマ・ファキーリ：2007/11/25(日) 20:17:26

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
>>238
　
　ブーツの底に重い衝撃が走り、コートの裾が大きくはためいた。
　小銃を鈍器に見立てた打撃は、何とか蹴りで相殺。その運動力へ乗る形で、私は回転しな
がら背後へ跳び帰る。
　そちらから発せられる攻撃を感知し、冷たい汗が背を伝った。
　
　霹靂に等しい速度で飛来するダガーと、孤月となってたばしる刀。片方は完全に避けられる
が、その場合、もう片方は確実に食らってしまう。
　ならば、如何に攻略する。
　
　簡単だ。
　どちらも食らえばいい。――ただし、相手の意にまで沿う必要はない。
　
　
　朱色の霧が奔騰した。
　ヘモグロビン臭が鼻腔をくすぐり、私は奥歯を噛んで呻きを呑む。
　鋭い熱さが、私の背中に斜線を引いているのを感じる。定規を使ったかのように真っ直ぐだ
った。見事な一刀だ。
　熱は別の場所でも点っている。左の一の腕に刺さったダガーだ。
　自ら当たりに行く事で命中箇所ずらし、致命傷は避け得た。浅手とはいえないが。
　
　蔦だらけの床に倒れこむ寸前、左手をつく。腕のバネのみで再び跳んだ。
　三点からなる包囲を崩さねば勝機はない。何処に切り込むか。
　思考と決断は同時だった。襲来する男装の美少女を足止めせんと、宙を走る私は立て続け
の剣刺を彼女へ突き入れていた。
　
　
【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】
　

263 名前：“姫” ◆/HIME/HDYY ：2007/11/25(日) 20:20:36

“姫”一行VSスレイド　第二幕
『烈火王女』　〜Flame of princess〜

>>247
姫は、チェーンソーを構えながら目の前の鎧姿の男――スレイド――を観察する。
相手の持つ情報は、可能な限り取得して集積し、対策へと集約させる。
それが、臣下を率いる統率者の戦の要である。

まず外見。
強固そうな鎧に覆われた姿―――白兵戦・銃撃戦でのダメージは最小限に抑えられるだろう。
フルフェイスヘルメットに守られた頭部―――古式武術の『兜割り』にも耐え得ると見た。
結論：鎧・甲冑相手のセオリーに則った戦法が有効か。

第二に本人の能力。
死人帰り（リビング・デッド）―――痛みではその足を止められない。
身体能力―――鎧がハリボテでない限り、鈍重になる筈。

可能な限り相手の手札を推測し、その威力を減殺する手を考える。

「私を脅迫するとは君は相当な自信家だな。ますます気に入った。」
静寂を破り、スレイドは余裕綽々の体で姫へ語りかける。

「答えてやりたいのは山々だが、知っての通り私には払う代価などない。
　それを得るためここに来たとだけ言っておこう。」
「ふふん―――“生ける死者”が求めるモノ、つまり生還のための術か。
それならば……」

姫の言葉を遮るように、スレイドの両掌が紅く染まる。炎を顕現させる力。
「発火能力者（ファイヤ・スターター）か！」
リザの叫び。

「さて、私も最初に選択肢を与えたことを忘れるな
　これから起こる事は私でなく、君達が選んだものだ。イィィヤッ！」
スレイドの発気。交差する二つの声。

投げ込まれた火球は、炎のカーテンとなり視界を遮った。虚実の虚。
吸い込まれるように、リザの鳩尾を打つ。スレイドの拳。虚実の実。

264 名前：“姫” ◆/HIME/HDYY ：2007/11/25(日) 20:37:19

>>263
ゴム鞠のように吹き飛ばされ、ワンバウンドして建物に叩き付けられるリザ。
「くっそ……ガードがワンテンポ、遅れちまったか……」
リザは崩れた瓦礫の中から、腹部を押さえながら立ち上がる。
オーソドックス・スタイルにも似た姿勢をとっていたからこそ、反応できた。
だがダメージは殺しきれなかった。不覚である。

「―――ふふん」
姫が、微笑んだ。
「せっかちにも程があるな。貴様だけが名乗り、我々には名乗りを挙げる暇も与えぬか。
―――無礼者め」

「古よりの礼儀に従い、私も名乗らせてもらう……。
我が名は“姫”、怪物と呼ばれる異形の者が住まう地『王国』の王族が一人」
チェーンソーが、進軍ラッパの如くに叫ぶ。
「じゃああたしも名乗らせてもらうぜ……
あたしの名はリザ・ワイルドマン！ 偉大なる戦士ヴォルグ・ワイルドマンの娘なり！」
人狼族の流儀をもって、名乗りを挙げるリザ。

フランドルはいつも通り「ふが」とだけ返し、街灯の役目を終えた鉄柱を引き抜く。
ヒロはといえば、自分も名乗っていた方が良さそうだけど外しそうな気がしたので自重した。

「そして、最初に言っておく―――」
鉄柱を抱えたフランドルが姫の前に立つ。
「私とフランドルの防御陣は、かなり鉄壁だ」
「ふがふが」

【現在地：D地区　市街地】

265 名前：エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ ◆SV001MsVcs ：2007/11/25(日) 20:53:00

エリ・カサモトｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『ポワティエ平野で朝食を』

>>261

　ヘヴィーマシンガンが化物を引き千切って散らし飛ばす。
　ヘヴィーマシンガンが化物を射抜いて薙倒す。

　だが今度は消えていかない。
　打ち倒した死体から、ずるりと同じ化物が数を増やして現れる。

　くそったれ。

　ぎり、と歯噛みした。
　これじゃ突破どころか……っ！

「どうして！　どうしてなの」

　フィオの腕の中で少女が泣く。

「私、遊んでいただけなのに。遊園地に家族で来ただけなのに！」
　
　くそくそくそくそくそくそっ！！
　ふざけるな！

　絶対に突破してやる。

　正面には立ちはだかる化物の壁。

　銃ではダメだ。なら、手榴弾ッ！

「燃え尽きろっ！」

　投げつけたのは酸化銀を使ったテルミット手榴弾。
　超高熱の火柱が噴き上がり、何もかも焼き尽くす。
　熱風が肌を炙るが気にしている余裕はない。
　後で肌がひりひりするぐらいだ。それに後続二人には影響ない。

　火が効いたのか、それとも酸化銀が効いたのか、化物の間に切れ目が出来た。
　突き抜ける。
　包囲突破。

「止まるな走れ！」

　言い様にターン。先にフィオを行かせ、アタシは追いすがる化物へ掃射を浴びせた。
　保持は肩に掛けたスリングに任せて銃から手を離し、腰に手をやった。
　指に掴むは手榴弾。
　指の間に挟んで投げた四発の柄付き手榴弾はくるくると宙を飛び、コンと地面を叩いて爆発した。

「オマケだ」

　ベストの内から一つ二つ三つ四つと円筒の缶を落とす。
　それらは催涙ガスを辺りへぶちまけて目晦ましへと化けた。
　逃走用の煙幕を張ってフィオたちを追う。

　フィオは離れた建物の扉を開けて手招きしていた。
　中へと飛び込む。
　扉は即座に閉ざされ、錠を下ろされた。

「はあっ！　はあっ！　はあっ！」

　喘ぐ。
　全力疾走での包囲突破は、体力が、持たない。
　横のフィオも同じように肩で息をしていた。
　女の子一人抱えて同様に全力疾走だったんだから、当然か。

「奥に、いくわよ……」

　呼吸はまだ乱れていたけど、整うまでここに留まっているわけにも行かない。
　隠れるにしろ、何にしろ、入り口近辺でやるバカは居ない。

　くそ、これからどうする……？


【現在地：Ｆ地区　テーマパーク『フォレスト・ランド』】

266 名前：黒いアリス ◆ALICEsQkXc ：2007/11/25(日) 21:15:21

エリ・カサモトｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『ポワティエ平野で朝食を』

>>260

　パーティは続く。
　パーティは続く。

　黒太子が飛び込んだ先は、二階建ての写真館。ヴィクトリアンドレスから
カウボーイ、バドガールに着ぐるみまで。色んな衣装が華やかに店内を飾っ
てる。館の奥は撮影所。色んなロケーションを用意して三人を歓迎した。

「降りる、わたし降りるわ」
　返事を待たずに、メガネの黒太子からするりと抜け出す。
「怖いけど……自分の足で歩かなくちゃ駄目だもの」
　助けてもらったのだから、荷物にだけはなりたくない。お姉さまは両手を
使って―――健気な態度で、いかにも「無理してます」を演出中。

「でも、お姉さまたちって……凄いのね。だって、あんなに囲まれていたの
よ？　道なんてどこにも無かったもの。なのに、お姉さまたちが道を作っち
ゃった！　信じられないわ」
　
　もしかして……私たち助かるのかしら。瞳を揺らしながら、アリスは声に
出して自問する。傷ついているけど、絶望はしていない。そう知らせるため
のアピール。二人の心のケア。

　だけど、悪意のトッピングも忘れない。

「ああ！」黒太子が向かおうとした館の奥。頑丈そうな樫材の扉と床の僅か
な隙間から、すーっと影が差し込んだ。「影だわ！　影が！」

　影が床に伸びたかと思いきや、怨嗟とともに闇の水面から巨大なシルエット
を浮き上がらせる。黒い鬣、黒い髭。黒い皮に、黒い牙。―――それは人の身
体と獅子の頭を持つ獣人の形骸だった。アリスたち三人を縦に重ねてもまだ勝
るほどの巨躯を誇っている。なんて悪い冗談。獅子は腰を屈めても、まだ後頭
部が天井に届いていた。
　手には竜すら解体できそうな石器の大剣を構えている。
　特異なのは両目の瞼。銀糸を縫い付けて、光を拒んでいる。見ると、口端の
両端にも銀糸が。そのせいで口は開けず、牙をしまうこともできない。
　身体の穴という穴を獅子は銀糸で塞いでいた。

「ラ・イール！」
　乙女は猛将の参戦を歓待する。
「よく来てくれたわ。あなたの怪力があれば、もう何も怖くない！」

　　破（オー）、破（オー）、破（オー）……！
　　壊（オー）、壊（オー）、壊（オー）……！

　ラ・イール―――そう呼ばれた獅子は、くぐもった呪詛を漏らしながら進軍
を開始。進路の妨げとなる衣装ダンスやテーブルを巨木の如き足で平然と蹴散
らして、黒太子に挑みかかる。
　きりきりと筋肉を引き絞り、大剣を振り上げた。


「―――……どうしてあんなに、身体を縫っているのかしら」
　またまたアリスの独り言。
「まるで光が身体に入るのが怖いみたい」


【現在地：Ｆ地区　テーマパーク『フォレスト・ランド』】

267 名前：マルチアーノ12姉妹 ◆M12sisrIV6 ：2007/11/25(日) 21:19:18

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
>>262

　黒揚羽の翅が閃き、鮮血の花が咲く。
　だが、その二輪の花は矮種（ミニマ）。
　彼女たちの望むべきは大輪の薔薇（フォールスタッフ）だというのに。
　
　そして、幾度目かの燦めく銀鱗。
　ジューンに向かって放たれる刃の雨。
　
　「ジューン！　お退きなさい！」
　
　言われる迄もなく、とん、と小さく地を蹴ると背後に手をつき一回転、僅かに距離を置
き刃圏から離れると其処へ響くのは乾いた銃声が二度、三度、トリガーを引くのは先刻の
声の主、ジャニアリー。
　彼女は苛立っていた。
　マズルの目の前にいた、確かにいた。
　トリガーを引けば毎秒900発のサイクルで発射される5.7mmの弾頭が女の躯に文字通り、
大輪の赤薔薇（blood red rose）を咲（裂）かせていたのに。
　
　「ちょこまかと煩いネズミが、さっさと壊れてお仕舞いなさ……！」
　
　言葉が途切れた。
　怒りに燃える赤い眼の、目の前を塞ぐ様に。
　差（刺）し出されたのは蒼く光る黒鋼の刃。
　ジャニアリーは言い掛けた言葉を呑んだ。
　その刃の持ち手、ジュライが微笑んでいた。
　微笑んだまま、刃を持ち替えた。
　目の前を塞ぐ物が消えた、そう思った時刃を水平に寝かせて、ジュライは跳んでいた。
　
　そう、ヴィルマよりも高く、ジュライは刃を翳しながら跳んでいた。
　
　【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】

268 名前：スレイド ◆cDCpSlADE. ：2007/11/25(日) 21:54:27

>>264

チッと小さく舌を打つ。
スレイドの拳は当たりはしたもものの、僅かに急所を外れた。
派手に吹き飛んだが、殴りつけた少女はすぐに悪態をつきながら立ち上がる。
一撃で仕留め切れなかったのは、リザの強さ故にか、今の自分の弱さ故にか、スレイド自身にも分からない。

3人は堂々と名乗りを上げ、己の得物を構え完全に戦闘態勢に入る。
これでもう、先のような不意打ちはできないだろう。

「鉄壁？私には穴だらけのチームに見えるがね。試してみるか。」

あえて向こうが得意とする戦術を否定する。
少しでも怒りを誘うように。
言葉の一つ一つが、自尊心にチクチクと刺さる棘だ。

姫と怪力少女の武器は大振りすぎる。
初動を見逃さなければ当たらない。
注意すべきはリザだ。

意識の半分をリザに
二割を姫とフランドルに向けて、再び飛び出す。
残る三割の意識を攻撃対象に選んだ男子を見据えて。
最初は真正面にと見せかけて、少女の持つ街灯の間合いギリギリで横に飛びのき
そのままの勢いを殺さず、男子の足を払い、無造作に三人に向けて投げ飛ばす。

さらに追い討ちをかけるべく、今度は本当に相手方の間合いに踏み込んだ。

【現在地：D地区　市街地】

269 名前：エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ ◆SV001MsVcs ：2007/11/25(日) 21:55:47

エリ・カサモトｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『ポワティエ平野で朝食を』

>>266

　逃げ込んだ先は写真館だった。
　お化け屋敷やミラーハウス、スプラッターハウスじゃなくてよかったって、ところか。
　なんか余計なもの出てきそうだし。

　――考えてみればここも安全って保証はないのよね。

　後ろを見る。
　フィオは右手にコンバットマーダーを持ち、左腕に少女を乗せるようにして抱えていた。
　――後方から襲われたらヤバいな。
　しかし少女をフィオから下ろすと逃げるときに抱える一動作が生じる。
　それもまずい。最悪二人死ぬ。
　だが少女を抱えたままサブマシンガンを使うのは無理だ。
　つまりこのまま後ろにやや不安を抱えたままいくしかな……

「降りる、わたし降りるわ」
　アタシの考えを知ってか知らずか、少女はそう言うとフィオの腕から抜け出した。
「怖いけど……自分の足で歩かなくちゃ駄目だもの」
　無理しているのが見え見えだった。
　当然だ。いきなり非日常に放り込まれて、その渦中で生き続けている。
　無理がないわけない。

「いい子ね」

　アタシはフィオにサブマシンガンを返した。
　受け取ってフィオは弾倉を取り替えた。弾種は継続してヘヴィーマシンガン。

「でも、お姉さまたちって……凄いのね。だって、あんなに囲まれていたの
よ？　道なんてどこにも無かったもの。なのに、お姉さまたちが道を作っち
ゃった！　信じられないわ」

「おね……」

「お姉さま……」

　苦笑した。うん、様づけはちょっとないんじゃないかな。
　悪い気は、しないけどさ。

「もしかして……私たち助かるのかしら」

　少女がつぶやく。

「助かるよ」

「助かりますよ」

　二人して即答した。
　状況は楽観出来ないけど、悲観するほど悪くもない。
　まだ詰みじゃない。なら希望は肯定するべきだ。

「ああ！　影だわ！　影が！」

　向かう館の奥から影が伸び、少女が叫ぶ前で化物へと姿を変えた。
　見上げるような大型、頭は獅子で手には馬鹿でかい剣。

　――メタルスラッグに乗っていても出くわしたくない相手だ。　

　だが弱音は吐けない。後ろには守るべき少女がいる。

（さてどうしてくれようか！）

　包囲してた化物と同じ類なら下手に撃ったらえらいことになる。
　こんなのが三体も来たら手に負えない。

　化物が来る。障害物を蹴散らして。

（一か八か撃つか！？　このまま攻撃しないまま殺られるよりは！）

　アタシが引き金に指を掛けた瞬間、少女が呟いた。
　
「―――……どうしてあんなに、身体を縫っているのかしら」
　それは子供だから浮んだ疑問。
「まるで光が身体に入るのが怖いみたい」
　その言葉と、視界の端に写ったストロボがアタシの直感に触れた。

「フィオ！　その子頼んだ！」

　言ってアタシは化物の右へ回り込んだ。
　タタン、タン、と短く銃撃して化物の気を引く。
　そのスキにフィオが少女を抱いて離れた。

「さて光が身体に入ったらどうなるのかな！」

　左手で掴んで引き寄せるはストロボのスイッチ。

　強烈な閃光が化物の巨体へ照らしつけた。



【現在地：Ｆ地区　テーマパーク『フォレスト・ランド』】

270 名前：ヴィルマ・ファキーリ：2007/11/25(日) 22:04:05

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
>>267
　
　須らく殺気というものは、動作の前に放たれる。
　私はそれを白い礫（つぶて）のような形として認識している。攻撃が来る前に、『それ』が飛
んでくる。
　銃撃の場合も同様だ。殺気が先で、弾が後。
　だから先んじてその到達地点に剣を置く。次に弾き、或いは斬り落とす。
　
　
　それが今、こうやって私が銃弾の雨あられを斬り伏せ得る理合だ。
　当然、言う程簡単な作業ではないし、全てを迎撃できる筈もなかった。
　熱い点が体中で爆ぜる。数は――勘定するのも面倒くさい。
　致命的な器官への直撃は避けたものの、端的にいってひどい有り様だった。お気に入りの
冬物のコートも、私の体も。
　
　
　剣を構え直す暇をついて、寧ろ「飛ぶ」といった方がいい流麗さで、高みから黒い微笑が肉
薄して来る。
　私は、最早赤く色づけされていそうな呼気を整えた。
　一刹那で十分だった。丹田に充ちた気が全身の経穴を高速度で循環し、
　爛、と己が双眸が光る。
　
　
　――『鬼剣』！
　

271 名前：ヴィルマ・ファキーリ：2007/11/25(日) 22:05:30

>>270続き
　
　私がやった事といえば、ただ拳を撃っただけだ。
　もっとも同時に、締めて四手の技を以って襲う、との意念を込めて。
　要はフェイントだ。眩ましも、殺気を十二分に込めれば渾身の技と同様に相手には映る。
　熟達した攻夫ならば、突如私が四人に分身したかのように見えただろう。
　
　脇から分かれた私は金髪の銃手へと馳駆し、天高く飛んだ別の私は豊麗な黒衣へ剣を薙
ぎ上げる。
　更にもう一人の私は、男装の少女へと真っ向上段に斬って落とし――そして実体の私は、
その後ろから拳打を放ったのだ。
　
　床をどん、と鳴らして震脚。半歩の踏み込みに頸力を乗せ、発射するのは左の崩拳だ。
　他の武道でいう中段突き――そう、「突き」だ。「殴る」のではなく「突き刺す」。
　二百余年に渡り、四十八門百二十六派を極めた江湖の士たるの自負が私にはある。
　これは、その誇りの拳だ。
　
　
　膨張する筋力に押し出され、左腕に刺さったままの短剣が、血汐をしぶかせて抜け落ちた。
　
　
【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】

272 名前：“姫” ◆/HIME/HDYY ：2007/11/25(日) 22:19:16

『烈火王女』　〜Flame of princess〜
>>268
「鉄壁？私には穴だらけのチームに見えるがね。試してみるか。」
スレイドの声の調子には、ただの嘲りとは取れぬ複雑な色があった。
一般に、挑発にはいくつかの意味がある。
相手の激昂を誘う、相手に自分を侮らせる、相手を牽制する、といった具合にだ。

だがそれは、『蒼い炎』と形容することが出来る姫の戦闘スタイルには逆効果であるといえる。
スレイドは、姫たちの連携を警戒している。だからこそ挑発しているのだ。

「へっ……その評価、覆してやるぜ！」
そんな挑発に乗ったのは、姫でもフランドルでもなくなぜかリザだった。
もっとも、姫にしてみればリザの単純さは想定の範囲内であるのだが。

「……仕方ない。行け、フランドル」
「ふが！」
フランドルの振り回す鉄柱は、メジャーリーガーのスイングスピードを容易く凌駕する。
だが、スレイドはその間合いを見切り紙一重の距離感で避けて見せる。
そして、陣形の外にあふれ出ていたヒロを、

無造作に投げた。
「ヒロッ！？」
ヒロの肉体は、リザの手前でイレギュラーバウンドし、フランドルの構えた鉄柱にメメタァ、と叩きつけられた。
まさに粉砕、玉砕、大失態である。

しかし、姫は。
「ふふん―――いい筋だ」
そんなヒロに目もくれず、チェーンソーをスレイドの左腕の付け根辺りを狙って叩きつけていた。
「ただの死人帰り（リビング・デッド）と思っていたが……炎までも使いこなすとはな。
よくもまぁ、自分自身を火葬してしまわないものだ」
これではまるで鍔迫り合いというよりも、果物ナイフで金属加工するような無謀な戦い方である。

「そうだ、貴様に伝え忘れていたことが有ったな。
―――貴様が求めているであろう死者蘇生の力は、私に流れる王族の血が宿している。
ただし、王族の生き血でなければその効果は発揮されぬ……つまり、貴様はどうあっても私を殺すことは出来ない」
チェーンソーが奇妙な戦慄きをあげ始めている中、姫はスレイドへ呪詛にも似た語りを投げかける。

さぁ、どう出る―――？
【現在地：D地区　市街地】

273 名前：―完全で瀟洒な従者― 十六夜咲夜 ◆Clock/PR2Y ：2007/11/25(日) 22:26:37

>>248

「――私はそうは思いませんけどね。厄介事ばかり運んできますもの」
　
　人が人である事を辞めるのはとても簡単だ。ほんの少しステップを踏み違えれば良いのだから。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　暗転。ショウタイム。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　世界は素晴らしく止まっている。
　
　
　だけれども、結局は怖いのでステップを踏み違える事は出来ない。人の社会は異端には生き辛い。
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　流転。バスタイム。
　　　　　　　　　　　　　　　　　そんな所を掘ってもお湯はない。
　
　
　例えばミニチュア紅魔館は夜でなければ走れない。ステルス機能は未搭載の筈だから。
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　逆転。ティータイム。
　　　　　　　　　　　　　　　そう言えばウバの葉が切れ掛かっていました。
　
　
　だからアレらも夜をひた走る。日の光は暖かく眩しすぎたから。月のない夜が一番なのね？
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　即転。ランチタイム。
　

　
　
　　　新鮮な食材が/
　　　　　　　　　　　/目の前で狂喜乱舞/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ランチは？
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/舌鼓を打ちながら/　　　　　　　　/晩餐会/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/楽しい楽しい/

274 名前：黒いアリス ◆ALICEsQkXc ：2007/11/25(日) 22:30:11

エリ・カサモトｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『ポワティエ平野で朝食を』

>>269

　一軍に匹敵する破壊力を持つラ・イールが、ストロボの閃光ただそれだけ
で鋼の上半身を燃え上がらせた。勇将ではなく、ぬいぐるみに過ぎなかった
のではないか。そんな疑念が湧くほど、呆気なく獣人は闇に沈んだ。
〈飢餓同盟〉唯一の弱点を見事に穿ち抜いたとは気付くはずもなく……。

「二階へ！」
　アリスは焦げ付いた影を飛び越えて先導する。
「もうドアが保たないわ！」
　
　彼女の声と同時だった。まるでアリスが導いたかのように、玄関の扉が破
砕する。窓も砕き割れて、亡者の軍勢は瞬く間に室内に満たしていった。
「早く！　早く！」絶叫じみたアリスの声。スカートを翻して階段を駆け上
がる。黒太子に先んじて、さっさと先を進んでしまうのは危険だが、彼女た
ちにはどうしても二階に昇って欲しかった。
　
　二階は写真の展示ホール。広々とした間取りに、遊園地の中央を望むベラ
ンダ。高所から見れば、このテーマーパークに満遍なく亡者どもが密集して
いることが分かる。―――中央に、誇らしげに乙女が立っていることも。

　内と外を隔絶する扉は今や破られた。〈飢餓同盟〉が二階まで浸食するの
も時間の問題。「もうお終いだわ！」アリスの表情に、ついに絶望が―――

「あら？」
　人格が豹変したかのように呑気な声。
「これは何かしら」
　
　アリスが疑問を抱いたのは、煉瓦で作られた暖炉のイミテーション。その
上に飾られたライフルだった。これもやはりレプリカだろう……通常ならそ
う考えるところだろうが、造形があまりに異質だ。
　懐古的な内装の中で、そのライフルだけは現代的な―――未来的とさえ言
えるフォルムを描いている。

　ワルサーWA2000。ブルパップ式のオートマチック狙撃銃。
　ご丁寧にスコープまでマウントされ、零点規正やトリガーの重さなど、全
て黒太子に合わせて調整されていた。

　これ、何かしら。
　アリスはもう一度呟いた。


【現在地：Ｆ地区　テーマパーク『フォレスト・ランド』】

275 名前：パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU ：2007/11/25(日) 22:49:57

>>248

パチュリーの視線が動く。
右へ左へ、また右へ。夢遊病患者を連想させる胡乱な動き。
視界を駆け抜ける石造りのような（・・・・・・・）道。
視界の隅に移る、鋼鉄造りの棺桶（・・）。
視界の方々に映る悪夢のような、人でなしのような人間達（・・・）。
ここはまさしく地の果てだった。
人間達の一人が、彼女に向かって飛び跳ねた。


「焔あれ（Fire）」


こうして炎があった。
パチュリーは炎を見て、良しとした。彼女の魔術はいつだって十全だ。
彼女に認められた炎が、大小さまざまな炎の弾、総数とって十と六が、彼女に侵攻する鮫もどきの少女（・・・・・・・）に殺到した。
火事の心配は無い。屋敷の耐火術式はいまだ継続している。
焼きもらしの心配はいらない。

276 名前：スレイド ◆cDCpSlADE. ：2007/11/25(日) 23:07:16

>>272

「!!ッ」

投げつけた男子に目もくれず、姫はこちらの動きを読んでいたかの様に冷静に迎撃する。
正義というよりは自分を含む悪の対応だ。
一方こちらは不意をつかれ、踏み込んだのがかえって仇となり、左腕にチェーンソーが叩きつけられる。
辛うじて腕の鋼の部分で受け止めるが、ギィィィッィィィィという嫌な音と共に姫が囁く。

「―――貴様が求めているであろう死者蘇生の力は、私に流れる王族の血が宿している。
ただし、王族の生き血でなければその効果は発揮されぬ……つまり、貴様はどうあっても私を殺すことは出来ない」

ここで、私を皮肉り、この場面で私を試すか！
かつての弟子達が脳裏に浮かんだ。
テラには無理だ、あの娘は思いのほか精神的に弱かった。
ゴッサムの騎士に鍛えられたロビンにだってできるかどうか！

「お見事。ここまでとは思わなかった！これは嬉しい誤算だ。
　君を殺す気など無いさ。この場が片付いたら……君を私の後継者として……弟子にしたい。」

これまでの言動の中でもっともふざけた、どころか理解しがたい発言。
だが、これまでと違い、これは本心である。

左腕からから力を抜いて、歩を進める。
チェーンソーの刃が滑り込み、ケブラー繊維を引き裂きさいて
刃が左脇の当たりに食い込んだが、スレイドは一向に気にしない。
右手で姫の顎を軽く持ち上げる。

「私と共に来い。私なら君の力を生かせる。後悔は決してさせない。」


【現在地：D地区　市街地】

277 名前：エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ ◆SV001MsVcs ：2007/11/25(日) 23:21:47

エリ・カサモトｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『ポワティエ平野で朝食を』

>>274

　光が身体に入ったらどうなるのか。

　答えは『炎上する』だった。
　あれほどまでに威圧的だった巨体が見る間に燃え上がり、見掛け倒しそのもの体現とばかりに溶けて消えた。

「……効くんじゃないか、とは思ったけどこれ程劇的だと思ってなかったな」

　笑うしかない。ギャグか冗談にしか思えない。
　強敵と思えた相手をあっさりと撃破したことに気が緩む。

　が、そんな時間は与えられないらしい。

「二階へ！」
　少女が短く言って駆けた。影を飛び越え、二階へ向かって行く。
「もうドアが保たないわ！」
　その瞬間に玄関扉が破られ、外の化物が押し寄せてきた。

「ひ、ひぇぇ！」

「出のタイミング計ってたのかよ！」

　言う暇があれば走った。
　颯爽と二階へ上がる少女を追うように、階段を上がる。

「早く！　早く！」

「先に行かないで！　危ない！」

　アタシの声は聞こえているはずだったが、少女は止まらず駆けていく。
　パニック状態になっているのかもしれなかった。無理もない。

「もうお終いだわ！」

　建物は二階で行き止まりだった。
　下は化物、上への道はなし。
　外へ出るベランダはあったが、上に登るには取っ掛かりがない。　ロープもはしごもない。
　そして見渡す限り、黒い化物で一杯だった。
　黒い絨毯の中央にはさっきの黒い乙女。

「くそ……！」

　手詰まりか。
　いや、まだだ。階段を爆破すればしばらくは時間が稼げ……

「あら？」
　取り乱して泣き出すかと思われた少女がきょとんとした声を出した。
「これは何かしら」

「これ？」
　
　少女が疑問を抱いたものを見る。

「これ、何かしら」

「――――」

　それはそこにあるにはあまりに異質だった。
　マスケット銃なら分かる。
　レバーアクション、ボルトアクションでもまだ分かる。
　それならインテリアの一環として理解できた。

「ブルパップライフル、ですか？」

「ワルサーのプルパップ狙撃銃よ」

　手を伸ばして取り外した。がこん、と金具が上がったりはしない。
　弾倉を外す。真鍮の輝きが収まっていた。
　おそらくいつでも撃てる状態だ。

「って、これでどうしろと」

　狙撃銃は遠距離から対象を殺傷するには打ってつけの武器だが、その対象は少数に限られる。
　辺りを埋め尽くすような数の化物を相手にこれでは焼け石に水だ。

「あ！　あいつです！　あいつを撃つんですよ！」

　何か閃いたようにフィオが手を叩いた。

「あいつって？」

「あの甲冑着てる女の子ですよ！　化物の中央にいるじゃないですか！」

「アレを？」

「あの娘が言ってたんです。『なんだか、あの人が一番偉いみたい。私のパパたちが死んだときも、あの人がいたもの』って」

「つまり……アレが頭って事か」

「ですよ！」

「でもアレを倒してもこの事態が収まるとは限らないよ？」

「そうですけど！　何もしないままじゃ気が狂っちゃいますよ！」

　もっともだった。
　アタシはフィオに狙撃銃を渡すとヘキサゴンアームズM3685、愛用のサブマシンガンのストックを伸ばした。

「え、エリちゃん？」

　肩に当ててしっかりと固定、セレクタをセミに変えて照準を覗き込む。
　
「こうもお誂え向きに置いてあると逆に信用できなくてね」

　装填してあるのはヘヴィーマシンガンの弾倉。
　この距離ならコイツの精度と弾丸でも狙撃は可能だ。
　照準線上に黒い乙女を捉える。狙うのは頭じゃなく身体の中心。

「当たれよ」

　アタシはトリガーを絞った。


【現在地：Ｆ地区　テーマパーク『フォレスト・ランド』】　

278 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2007/11/25(日) 23:35:50

>>224
　
　ぎぎ、と全身の骨がきしむ。その痛みで、レイオットは意識を取り戻した。
　痛みをごまかすように身じろぎしようとして――身体が、動かない。
　妙に暗い視界で自分自身の身体を見下ろす。真っ先に目に入ったのは、こちら
をいつもの無表情で眺めている、カペルテータの顔だった。積み重なった瓦礫の
上に座り込んでおり、そのすぐ背後には、少女の姿をした、文字通りの怪物の姿が
あった。
　
　なにかを言おうと口を開きかけて、その瞬間、視界に強烈な光が走る。
　反射的に視線だけをそちらに向けたレイオットは、すでに何もかもが終わった
事を、ようやく自覚した。
　都合七つの巨大ななにかが、まっすぐに落ちてくる。
　
　こちらを睥睨する魔神の視線に肩を竦める。
　奴がそこにいなければ――あるいは、スタッフがこの手にあれば。
　まだ、選択はあったのかも知れない。いや、どのみち身体が動かないのであれば
同じ事か。
　中途半端に残られた瓦礫が、モールドごと手足を押しつぶしている。
　感覚はすでに無く、ただ痛みだけがある。
　にもかかわらず、どことなくすがすがしいものを感じている自分を意外に思い
ながら、大きく息を吐き出して、レイオットはその双眸を閉じた。
　
「お休み、カペル」
　
　――お休みなさい、レイオット。
　
　
【現在地　Bエリア「繁華街」　
　レイオット・スタインバーグ、カペルテータフェルナンデス。
　両者、共にリタイア】

279 名前：“姫” ◆/HIME/HDYY ：2007/11/25(日) 23:36:51

『烈火王女』　〜Flame of princess〜
>>276
辛うじてチェーンソーを鎧で受け止めたスレイド。
刃を滑らせればこのまま腕を落とすことも難しくは無いだろう。

「お見事。ここまでとは思わなかった！これは嬉しい誤算だ。
　君を殺す気など無いさ。この場が片付いたら……君を私の後継者として……弟子にしたい。」
「―――何を言っているんだ、貴様は」

姫は、スレイドの言葉を理解できなかった。
―――弟子？ 後継者？ そうか、これはあれか。
『私のアドバイスを受け入れたのだから、私はあなたの師匠なのです』とか言って、無理難題を押し付けるという
新種のリクエスト厨か。

このような思考が姫の脳裏をよぎった瞬間、二人の脱力が歯車のように噛み合った。
チェーンソーの刃は、スレイドの左脇に食い込むと同時に鎖の刃が爆ぜる。
鎧との鍔迫り合いは、チェーンソーに多大な負荷を掛けていたのだ。

スレイドは右手を伸ばし、姫の頤を反らしながら囁く。
「私と共に来い。私なら君の力を生かせる。後悔は決してさせない。」

しかし。
「―――ふふん」
姫の答えは、行動に現れていた。
壊れたチェーンソーを手放すと同時に、背中に隠していたアイスピックをチェーンソーの食い込んでいた隙間に
ねじ込んだのだ。
「私の力を生かせる？ 貴様の後継者？ 笑わせるな。
己の生きるべき道は、己で切り開く。人は、誰かの王にいきなりはなれぬ。人はまず己の王にならねばならぬ。
故に、」
意表を衝かれたスレイドに出来た僅かな死角は、

「ふが」
「私は私自身の王として、貴様を拒絶するのだ」
姫に体勢を立て直すだけの充分な時間稼ぎとなった。

フランドルの突き出した鉄柱は、姫の真横を通ってスレイドをビリヤードの白球の如く突き飛ばしていた。
自由になった姫は、武器を満載したリヤカーから新しい武器を取り出す。
それは、飾り気のない、シンプルで機能性のみを追及した鉄器。
いわゆる、バールのようなものである。
「さぁ、続きと行くか」

【現在地：D地区　市街地】

280 名前：マルチアーノ12姉妹 ◆M12sisrIV6 ：2007/11/25(日) 23:52:09

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
>>270-271
　殺気が四散した。
　文字通り、四つに分かれて散った。
　駈けた。
　飛んだ。
　降って。
　降りた。
　
　ジャニアリーは目を瞠った。
　四歩が二歩に、二歩が一歩に、一歩が半歩に。
　数歩の距離を置いた筈が纔か眼前に迫りつつあることに。
　纏う風すらも追い付けぬ程疾い、その拳は弾速をすら遥かに凌ぐ程の衝撃を載せて。
　FN P90の発射機構には、『クローズドボルト』方式が採用されている。
　弾薬が装填状態で遊底（ボルト）が前進閉鎖されている為、オープンボルトの物よりもトリガーを
引いてからボルト前進迄のタイムラグが無い。
　そのタイムラグ、ほんの僅かの時間の差が自らの生死を分けかねないことにジャニアリー
は安堵した。
　その安堵を現実の物にするべく、トリガーを絞り。
　――――女は消えた。
　
　ジュライは只微笑んだ。
　身を翻し、剣先を向け、切り結ぶ意思を見せたことに。
　薙ぎ上げる刃を鎬で留めた、留めたままで刀身を寝かせた、寝かせたままで鎬を流した、
流したままで剣を滑らせ、斬った。
　此処まで一挙動、骨を断つ手応えすらなく。
　――――女は消えた。
　
　ジューンは黙したまま、何事も語らず。
　剣を大きく構え、唐竹を断ち割るかの様に、只降り落ちる対手の剣刃に。
　刃を合わせた。
　マシェット、山刀の厚重ねである。
　着地する隙すら与えずに右のカランビットを手の中でくるりと回転させる。
　掌中にグリップはなく人差し指に掛かる指環を親指で押さえる、まるで指を一本立てた
様な握りは、その刃長を最大限に活かす為のもの。
　留めたマシェットを引き、体を引き寄せるとその白い喉に刃を突き立て。
　――――女は消えた。
　
　女は消えた。
　女は消えた。
　女は消えた。
　――――女は消えて等いない。
　
　直ぐ背後で鈍く響くものがある。
　それが何か、気付くよりも前にジューンは跳んだ。
　跳んで、背中から落ちた、と思った。
　鈍い衝撃が背中を走る、その正体を見極める事は出来ただろうか。
　さながら槍の穂先だ。
　尖端を躱したとて、左右の刃がその身を裂く。
　ジューンの上着は拳の一撃によって、その背が大きく裂かれていた。
　起きあがる気配はない。
　ジャニアリーは何が起きたのか、漸く理解し、そしてその美しい満面を朱に染めた。
　何事かを叫んだ気がするが、それはよく覚えていない。
　覚えてはいなかったが何事かを叫びつつ、只撃った。
　視界にジュライの背があった。
　ジュライも又、刃を背に回して地を蹴っていた。
　その笑顔はまだ消えていないのだろう、そうジャニアリーは思った。
　
　【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】

281 名前：『ＤＥＡＴＨ』死神 ◆rX9kn4Mz02 ：2007/11/25(日) 23:57:28

　
死神（デス）ゼアド vs ＜呪われし公子ゲイナー＞
　
>>231>>232>>233>>234
　
自嘲と狂騒に彩られた絶望溢れる鎮魂歌。
朗々と歌い上げるような偽りなき心情の吐露――――
永劫の刻より鬱積し、今ついに爆発の時を迎えたが如き公子の慟哭。
その終焉なき者ゆえの悲哀、終点となる滅びの存在しない残酷。
　
それは確かに死神の主君、ドラキュラならば理解できたのであろう。
自己の存在を鋳型とし、世に負の想念あるかぎり甦る、滅ぶことなき無限の呪い。
愛するものを失った悲劇ゆえ、人を憎み、神を呪い、己が望んだ無限連鎖の復讐劇。
だが強大に過ぎた呪いは自身の魂―――理由の根源すら塗りつぶし、彼を一個の災厄
としてのみ転生させ構築させ続けた。彼の磨耗した魂など一顧だにせず。
そしてそれゆえに１９９９年、ドラキュラの＜本体＞――――悲しき復讐より始まった
吸血鬼の魂は、完全なる滅びと共に安息を感謝したのだ。
はるか１千年以上の昔、全ての始まりから対峙し続けた夜を狩るもの。
彼がヴァンパイアと変わる前より親友であった男の末裔、己を滅ぼした仇敵のベルモンドに。　
　

282 名前：『ＤＥＡＴＨ』死神 ◆rX9kn4Mz02 ：2007/11/25(日) 23:59:25

>>281　
　
『馬鹿な――――世迷言を！未だこの世界に留まるか！』
　

だが、魔王の腹心にはその魂が理解できなかった。
人の心を持たぬ化生ゆえ“無限”という残酷さを知らず、高次元に位置する神ゆえに人間が
持つ哀切の情を理解できなかったのだ。
かの神に出来るのは、ただ戦慄とその原因に対する対処だけであった。
　
戦慄――――彼が知る悪魔城／力の源／天文学的単位に膨れ上がった破壊的な魔力。
其れは人を超え、魔を越え、神を屠ること容易き開闢の威。
死の神にすら死の断罪刃（ギロチン）を強いる『処刑人』という役割の逆転。
敵は健在なり。己を遥かに凌駕する力を備え。　
　
原因――――奇怪なる剣／異変の源／主よりかつて聞いた、命を啜り還元する魔剣。
其れは森を掠め、異界を啜り、無限力を我が物とする吸血鬼の理。
絶対絶命の死地をすら卓上ごとくつがえし優勢を強いる『イカサマ』という鬼札。
森は健在なり。己を遥かに超越する力を与え。
　　
そして―――――対処。
死神は退かなかった。ただ不可能であったからではない、下がる理由が無かったからだ。
そう、戦慄を覚えたからとて恐れる理由も怯む理由も彼には無かった。
何故ならば、その邪悪なる魂は一片まで契約の主ドラキュラに。
もはや根源と成り代わった表層の悪意、無限の呪いに全てを捧げていたのだから。
それゆえ、恐怖などという不要なものは最初から捨て去っていた。
死の神にあるのはただ敵を葬る殺意だけ。それが今形を持とうとしていた。
公子の慟哭じみた言葉の意味を知らず、聞く耳持たぬそれゆえに応じること叶ったのであった。
　
＜公子＞が無慈悲の因果を呪う。
　
兇器が独り旋回する。
邪悪なる死神の手より離れて回るは死の象徴、双頭両刃の異形鎌（デスサイズ）。
各々の部位に死霊を宿し、繋ぎ合わせたそれは独立した魔物でもあった。
その妄執妄念で充満した骨接ぎの兇器が稼動する。
両端の髑髏より吐き出された紫炎を纏い、旋風を生じさせながらその場で始める大回転。
両端両側に隙間なく配された骨刃は一個の巨大なチャクラムと化す。
もはや刃というには剛直で、車輪というには鋭くに過ぎる地獄の戦輪。
　
＜公子＞が死を与えんと決意を表す。
　
其処に更なる螺旋が加わる。
二つ目の戦輪は死神そのもの――――彼の法衣を突き破り現れたる八本の鎌。
リヒター・ベルモンド／歴代最強と称された狩人を窮地に追い込んだ彼の切り札。
八方を支配する霊木の柄はスポークとなり、伸びた刃は円を成す。無限に刻む車輪の円を。
　　
そして、
　
魔力の爆発的な放出。　　　　　　旋回する車輪と車輪。
ロケットのように加速し、　　　　無限機関は魔円を描き、
亜高速にすら超えていく　　　　　狂的に急加速する魔の鎌双つ
刹那に刃圏に突入。　　　　　　　刃と刃の二輪（ふたわ）と成り
　
　
『そのそっ首、刎ね落としてくれるわ！』
　

283 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/25(日) 23:59:36

エリ・カサモトｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『ポワティエ平野で朝食を』

>>277


「ラ・イール……？　まさか、死んだの？！」
　フォレストランドの中心で、乙女は受け入れがたい現実にわななく。
「そんな……オルレアンの猛攻にも耐え抜いたあなたが―――」
　
　不可視の衝撃が乙女の悲観を中断した。唐突に弾かれ、舞台に背中から倒れ
込む。見れば、黒甲冑の胸部に穿孔。そこから放射状に亀裂が広がっている。
　見えざる槍にでも貫かれたのか。衝撃は背中を貫き、背面の装甲まで穿ち抜
いていた。尋常ではない量の血が、石舞台に花を咲かす。
　乙女は四肢を広げて、天を仰ぐように昏倒。意識の乱れが十字軍の軍勢に歪
みをもたらし、写真館周辺に配備された部隊が黒霧となって霧散した。
　乙女は心臓を撃ち抜かれている。さしもの聖女でも、核が無ければ生きられ
まい―――そんな常識を奇跡が駆逐した。

「……ロングボウ」
　か細い呟き。
「これが黒太子のロングボウね……！」
　
　がばり、と上半身を持ち上げる。乙女の美貌に走る痛哭の怒り。
　この痛みはフランスの痛みだ。黒太子の矢に貫かれた数十万のフランス兵―
――彼らの無念を思えば、心臓が消し飛んだ程度で死ぬわけにはいかない。
　いまは〈停滞〉の刻印で応急的に死を逃れているが、魔術の効果が途切れ、
体内の時が再び動き出したら、乙女はその瞬間に即死する。
「次」があるとは言え、「今」を早々と投げ出すような真似はしたくない。
　乙女は戦旗を握り直すと、それを杖にして立ち上がった。

「アルマニャックの十字騎士たちよ！　一万三千の勇者たちよ！」
　乙女の令が魔術で強化され、フォレストランド全土に谺する。
「ラ・ピュセルの血を生むために、お願い……力を貸して！」
　
　　非（オー）、非（オー）、非（オー）……！
　　絶（オー）、絶（オー）、絶（オー）……！
　　無（オー）、無（オー）、無（オー）……！

〈飢餓同盟〉に逡巡は無かった。闇の光となる乙女の血肉となれるなら、心
臓の一つや二つ惜しくはない。一万三千の亡者が、一斉に自らの胸に腕を突
き入れた。心臓を鷲掴みにして抉り出し、天高く掲げる。

　　非（オー）、非（オー）、非（オー）……！
　　絶（オー）、絶（オー）、絶（オー）……！
　　無（オー）、無（オー）、無（オー）……！

「―――ありがとう」
　乙女ははらはらと涙を流して、十字軍の気高き在り方に感謝する。
「あなた達は誰よりもフランス人です……」
　
　差し出された心臓の一つを受け取り、孔の穿たれた胸に押し込む。刻印を幾
重にも重ね掛けして拒絶反応を無視。血管の一つ一つを丁寧に魔術で縫合して
いった。―――応急処置には変わりはなく、ダメージは甚大。だが、これで当
面の死は忌避できる。
　乙女の双眸が、きっと彼方の写真館を睨んだ。

「さあ、突撃〈パレード〉の再開を！」


【現在地：Ｆ地区　テーマパーク『フォレスト・ランド』】

284 名前：『ＤＥＡＴＨ』死神 ◆rX9kn4Mz02 ：2007/11/26(月) 00:00:45

　
>>282　　　
　
　
『地獄の鎌よ、切り刻め！』
　　　　　　　　　　　　　　　　　　剣
神と死者、一対の螺旋は刹那が間に更なる勢いを増し音速を超え白熱する。
双頭の大鎌は死者の妄執を　死し敵の生を呪い羨み、それを貪らんと唸りを上げる。
死してなお残る亡者の貪欲は のを体現した魔力にすら適用される。
大気は発火し炎上。だが炎の 神侵蝕された紫の闇。
物理法則を塗り替えて死は顕 め化し乱舞しまた旋回して狂喜する。　
その狂宴乱舞に加わりて死風 が竜巻を起こすのは大鎌の主人である告死の神。
自らを八条一つの魔鎌と変え　け烈風狂風旋風、一陣一禍の嵐となる。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　て
死者は己の妄念を結実させる　振死神は己の執念を成就させる為。
一体化したウロボロス。魔も神もりり去る乾坤一擲の殲滅風は回転止まぬ。
公子を討て、強者を屠れ、無限 下り無尽を斃せ。切り刻み首を刎ね鎧の守護を斬裂せよ。
魂を贄として捧げ奉じられよ命をろとして捧げられる供物とせよ凶刃で凶刃で兇刃で。
たとえ無限無尽の魔力を得ようとさは人の身、その半身は紛れなく一介の命。
汝の不死は無敵にあらず。　 　　れ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　て
　　然様―――汝が誇る無限の　い、だが其の不死は無敵にあらず。　
　　己が勝敗を越えた務めを捨て っ就の大願を違えた故に永劫の敗残者。
　　その醜悪なるこそは汝なり。 　た
　　＜混沌＞に属しながら、其れに。を向けた汝に用は無い。
　　否、貴様等不死の生者など、遠き神々の手すらもこの世には不用。
　　この現世の＜混沌＞、そして須らく支配は我が主ドラキュラ様が代行する。
　　主は七の月、滅びの際に仰られた。いずれ近き未来必ずや再臨を果たすと！
　　その予言の成就、定められし時計の針を推し進めんが為！
　　消え失せよ、愚かなる呪われし公子よ！
　　救済という名の災厄を以って時計の針を！　我が主の再臨を押し進めん為に！
　

285 名前：『ＤＥＡＴＨ』死神 ◆rX9kn4Mz02 ：2007/11/26(月) 00:04:20

>>284
　　
　
『ウォア゛ア゛ア゛ァァァ゛ヴォ゛アアアアァァァァア゛アァァァァァァァァァ!!!!!!』
　
　
それが当然、唯一絶対の約束された必然であるように。
切り札であった両鎌のみならず纏う法衣、そして全霊もろとも両断された死神は
一つの例外を現界させた。
　
＜孔＞――――月食の亜空に放逐された＜悪魔城＞へ至る、彼が本来封じられる筈だった牢獄の道。
そして異界の干渉を受け捻じ曲がり、混沌の彼方へと繋がる門。
リドル終わらぬ森を出る唯一の例外である、何処へとも繋がり戻れぬ次元孔。
その虚無を湛えた大穴が雄叫びを上げる。
逸らされた契約の履行、例外の死角をつき世に残る死神を今度こそ送呈するために。
だが、
　

『もはやこれまで……だが汝を残しては逝かぬ！
　この果て度なき旅路へ送られるのは我のみに非ず！汝も混沌へ連れて行く！！』
　
雷鳴よりなお重く、彼の今まで味わった重圧よりなお重く。
地獄から響き渡る声と共に＜呪われし公子＞ゲイナーに絡みつくものがいた。
　
其れは飽くなき執念の具現化であり、正しく醜悪なる呪詛の体現であった。
わななく髑髏を頭（こうべ）に据えた、百足とも大蛇ともつかぬ強大な白骨の正しく異形。
それが法衣外套という『鋳型』、自らを神の姿に留める術を失った＜死神＞の本性などと誰が信じられようか。
もはや死神に戦う力など残されてはいない。崩壊は加速度的に進み、その巨躯はボロボロと灰化を続けている。
　　
その醜悪を超えた執念が、不死者よりなおドス黒い凶念が崩壊を押しとどめ、ゲイナーを絡め取っているのだ。
圧倒的な力の差を絶対的な信念という名の狂気で圧しているのだ。
魂が持つ可能性を発揮していたのは、人の心を持つ＜呪われた公子＞だけではなかったのだ。　
　
そしてその忌まわしい奇跡は、死神の願いを半ばだが叶えてしまった。
すなわち次元孔のおびただしい引力に同じく晒されたのだ。
勝者である＜呪われし公子＞、森を速やかに滅ぼせたであろう希望の反英雄が。
　
そして次元孔が。
虚無への穴が。
無間へ続くブラックホールの漆黒が。
全てを誘う引力の、井戸が。
　　
　　
『既に我が大望への備えは成せり！予言を成就する手筈は既に！
　ならば後には呪いあれ！！黒き聖女に祝福と破滅を、黒き森に災厄と混乱を！！
　　
　世に破滅と混沌あれ！　我が主、ドラキュラ様の再臨を果たされるその日まで！！！』
　
　
【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）地下】
　
【『ＤＥＡＴＨ』死神　敗れさり混沌の彼方へと消える。ゲイナーは……？】 　　

286 名前：＜呪われた公子＞ゲイナー ◆GAinErMg8k ：2007/11/26(月) 00:22:59

死神（デス）ゼアド vs ＜呪われし公子ゲイナー＞
　
開始時刻２３日２２時
終了時刻２６日００時
　
戦場：Ｃ地区　腐海神殿（森化したイノヴェルチ研究所）地下
　
森祭状況／ゲイナー導入（１）
>>42>>43>>44>>45>>46>>47>>48>>49>>50>>51
　
ゲイナー導入（２）
>>64>>65>>66
ゼアド導入
>>67>>68
　
>>80
>>90>>91>>92
>>109>>110
>>118>>119>>122
>>131>>132
>>165>>171
　
>>180>>181>>183>>184
>>202>>203>>205 　　　
>>209>>210
>>218>>219>>220>>221>>222 　
>>231>>232>>233>>234
>>281>>282>>284>>285
　
　
深い、深い森の中。死振りの剣が残される
　
七色の魔剣、銀の聖剣、吸血鬼の魔剣、そして黒い黒い滅びの剣
　
七色の魔剣がぼやけて消える。主を追ってぼやけて消える。
　
深い、深い森の中。惨振りの剣が残される
　
深い、深い、腐海の森。後には誰も残らない。
　
　
　
死神（デス）ゼアド vs ＜呪われし公子ゲイナー＞
　
【勝者：無し】

287 名前：スレイド ◆cDCpSlADE. ：2007/11/26(月) 00:29:43

>>279

鉄柱で殴りつけられ、スレイドの体は宙に舞った後に人家に叩きつけられた。
体中の間接があらぬ方向に曲がっていたが、何事もなかったようにグキグキと無理やり体の形を整える。

「初めは不満に思うかも知れんが、長い目で見れば誰かに師事するのも悪くないぞ。……逃さない。」

体を斬られ、刺され、打ち据えられても、スレイドの決心は揺るがない。
最後の言葉は姫にというより、自分自身の決意を固める言葉だった。

「さぁ、続きと行くか」

「ああ。望むところだ。」

右手で体に食い込んだアイスピックを引き抜き、全力で投げつける。
左手は間髪を入れず炎の魔力を再び滾らせ、のたうつ蛇のような形にして放つ。

ここからのスレイドの動作は全てが全力だ。
自分が本気でかかっても、何とか生き延びられるだろうと認識を改めたのだ。
不用意に飛び込まず相手の出方を探るため、少しだけ重心を前において身構えた。
左手の掌に炎が灯し、右手の拳を岩よりも硬く握り締め、反撃に備える。

向こうがどう出ても、もはや叩き伏せるのみ。

288 名前：黒いアリス ◆ALICEsQkXc ：2007/11/26(月) 00:33:20

エリ・カサモトｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『ポワティエ平野で朝食を』

>>283
　
　我先にと階段へ殺到する亡者たち。歩みこそ鈍いが、後から後から押し寄せ
てくるため、歩くというより前に突き出されながら二階に進入してくる。
「ひっ」とアリスの短い悲鳴。階段だけではない、ベランダからも壁伝いによ
じ登ってきている。―――ああ、窓にも！　通気口からすら、ずりずりと肉を
歪ませて這ってきた。亡者は、あらゆる隙間から進入を試みる。
　写真館を攻城する〈飢餓同盟〉の数は千にも及んだ。

　―――その全てが、黒太子が弦（トリガー）を絞ると同時に消え失せた。

「……え」
　アリスは唖然とする。
　一瞬前の悪夢が嘘かのように、写真館は静まりかえっていた。
「な、何なのよ、これ……」
　
　だが、ベランダから眺める景色までは変わっていない。写真館周囲の亡者が
消えただけで、フォレストランドにはまだまだ多くの亡者が蠢いている。
　失った兵数も、再生に再生を重ねてやがては取り戻すだろう。

　だが、黒太子はこのステージの攻略法をついに識った。
　あとは、それを実践するだけの「力」が必要なだけだ。人が作った鋼鉄の牙
では、乙女の生命までは届かない。

　―――アリスからブラックプリンスへ。最後のギフトね。

「まあ！　これは何かしら」
　いい加減わざとらしいと思いつつ、それが楽しいからやめられない。
「……これ、お姉さまが落としたの？」

　アリスが床から拾ったのは、一発の銃弾だった。
　口径は二人の愛銃に準じている。
　弾種はヘヴィーマシンガン……とか、何とか。
　ただ、その銃弾が他とは違うのは、弾頭が紅玉（ルビー）の宝石で出来てい
たことだ。「綺麗……」状況も忘れて、アリスはうっとりと見惚れる。
　確かに、複雑なカッティングが施されたルビーの輝きは、武器と見るより装
飾品と見るほうが自然だった。―――だが、殺人の道具特有の硬質なプレッシ
ャーまで見逃すことはできない。この銃弾は紛れもなく本物。

　ルビー・バレット。紅色の魔弾。
　その貫通力は、ダイヤを用いた魔弾に次ぐという。



【現在地：Ｆ地区　テーマパーク『フォレスト・ランド』】

289 名前：魔神王リィーナ：2007/11/26(月) 00:42:57

>>278
　轟音と灰塵が、兄妹を押しつぶした。終わった。
　
「まだだ」
　
　続けて一撃、もう一撃。大地を砕くべく星屑が降り注ぐ様は、
願掛けを試みるほど美しいものではない。さらに一撃。
轟音と轟音がぶつかりあう。
　
　
　
　
　
「こんなところか」
　
　都合七つの星を落としたところで、飽きた。もういい。
死体を確認しようとも思ったが、兄妹の邪魔をするのも無粋。
それより、この酷い格好を何とかするべきか。
いつまでも下着姿では、兄様に叱られてしまう。
　
　この世界には仕立て屋が存在しないようだが、
既製服を扱う店はいくつか目をつけておいた。
綺麗で珍しい装いをすれば、あの女よりもわたしを好きになってくれるだろうか。
自分にも兄様が三人もいるくせに、わたしの兄様にまで手を出す、あの阿婆擦れ。
そのうち、女に生まれたことを後悔させてやる。だが当面の課題は。
　
「見知らぬ服をひとりで着付けられるか、だな」
　
　
　
（B地区繁華街にて終了）

290 名前：ヴィルマ・ファキーリ：2007/11/26(月) 00:44:59

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
>>280
　
　黒い少女の笑みは消えず、残った一人の絶叫もまた途切れる事はない
　彼女が放つ銃弾も。
　その轟音にすら掻き消されず、少女の叫びは私の耳に残る。何故かは判らない。
　
「仲間が討たれれば、機械の人形でも悲しいか」
　
　電光裡に剣を揮い、横殴りの弾の雨を払いながら、呟くように私は言った。
　言葉と共に、口の端から血が溢れ出す。捌ききれなかった銃弾が、右肺と膵臓に食らいつ
いたのだ。
　数多の疵も動作に支障は来たさないと踏んでいたが、少しばかり読みが甘かったらしい。
　
　消えない笑みが迫る。
　左側を前にした半身となり、右手の剣を大きく振り上げた。
　空いている左手――今しがた、一人を斃した手だ――は人差し指と中指のみを立て、残り
は握った。剣指と言う。
　つ、と歩を詰める。
　連動する右剣は、なおも紡ぎ出される絶叫の礫を落とす一閃となり、二閃となり――そして
上段から火を噴く絶妙の斬撃となった。
　
　
「――それとも、そういう反射動作（プログラム）か？」
　
　
【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】
　

291 名前：魔神王リィーナ：2007/11/26(月) 00:47:36

　
レイオット・スタインバーグｖｓ魔神王リィーナ

レイオット導入
>>99>>100>>101
魔神王リィーナ導入
>>102>>104>>105

>>107>>108
>>111
>>114
>>120
>>129
>>135
>>140
>>199
>>208
>>214
>>216
>>224
>>278
>>289
　
　
　
　仲良き事は美しき哉。
　

292 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/11/26(月) 01:01:09

>>146>>147>>148
　>>149>>150>>151
>>154>>155>>156
>>185>>186>>188
　>>189
>>191>>192>>196>>197>>201
　>>245>>246
>>248>>273>>275




　トレーラーの加速―――追走／ついに横並び。
　フリントの接触／ハンドルを切り／パーラーカーへと体当たりを敢行。

「……！！」

　かすかな驚愕／感嘆。
　その瞬間に恐ろしいものを目にする＝散弾を素手で叩き落とし、再生する悪魔のような
少女。それが宙を軽やかに舞ってホーニーを蹴り飛ばす／もんどりうって転がるトナカイ。
耳障りな金属音でアスファルトを削る／のた打ち回りながら立ち上がる／折れた角。

「いくよいくよいくよいくよ！！　いくよいくよいくよいくよ！！」ホーニー怒りの咆哮
＝蹴り飛ばした少女への突撃を敢行／熱量を帯びた角で貫く加速＝前衛的な造形のヒート
ウェポン／距離の限界値(クリティカル)を突破する接近。


「カリカリガリガリ！！　カリカリガリガリ！！」さらに跳躍したホッパーが、パーラー
カーの上に着地／跳ねる／トレーラーの横／アスファルト／再びパーラーカーの上／再度
の捕捉＝強襲は終わらない／目標の少女を引き裂くための軌道。今度は内臓全てを持って
いく算段＝ホーニーとのコンビネーション＝挟み討ち。


　フリント―――素早く視界を移動／バックミラー＝アスファルトを／トレーラーを／宙
を跳ね返って進む銀のナイフマジック。
　全てが徹甲弾を演じて直撃＋フリント、ローチーにも流れ弾。

　フリントの行動―――軍刀(サーベル)を鞘に入れたまま使用／手品のような手つき／割られた硝子
の破片『ごと』弾き返す。全て弾丸のように外へ／その全てがフレンチ・メイドの位置で
収束する軌道。


　ローチーの行動―――手足を縮めて鋼の甲羅の下へ／曲面装甲による全周防御／ナイフ
を跳ね返す／跳ね返す／僅かな傷を残して防御完了。

「おかあああああさん！！　おかああああああさん！！」悲鳴とも絶叫ともつかない声／
ナイフを凌ぎ切ると同時に立ち上がる／ゴキブリのように跳ねる／飛ぶ／一瞬だけの滑空
―――両手に嵌められた計十本の注射針(ニードル)を突き立てる軌道。


　スパンカーの行動―――振り回した鞭の軌道を変更／上下左右を覆う銀の魚を全て叩い
て回る／弾き切れないナイフが装甲を穿って停止／零れ落ちるオイルめいた血液。

「ブルブル！！　ブルブル！！　ブルブル！！」衝撃でバランスを崩すスパンカー＝エン
ジンの回転数を一気に上昇／安定／加速＝鞭の射程内に相手を収めて跳躍／打撃。偉大な
鋼鉄によるスパンキング／そのための軌道。


　さらに後方―――気だるい少女へ飛び掛ったリッキーが炎上する。
　もだえながら後退／炎を纏って踊り狂うバレリーナ。強烈な熱量―――生体部分を火傷。

「しゃぶってやるぜ！　しゃぶってやるぜ！！　しゃぶってやるぜ！！」しゃがれた中年
男性の声で少女が咆哮＋再度の接近／がちがちと顎を噛み鳴らしながらのジグザグ移動＝
巨大な顎の接近―――噛み付いてしゃぶり尽くす軌道。


「ゲァゲァゲァゲァ！！　ゲァゲァゲァゲァ！！」ダッキーの強烈な迫撃＝股間の散弾銃
／しごく／ポンプアクション／射撃／散弾の雨。
　逃げ場所を封じるかのような猛威＝リッキーとのコンビネーション。

293 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/11/26(月) 01:02:16

>>146>>147>>148
　>>149>>150>>151
>>154>>155>>156
>>185>>186>>188
　>>189
>>191>>192>>196>>197>>201
　>>245>>246
>>248>>273>>275
　>>292




　そしてコンテナ―――更なる兵士の出撃。
　一番目のコンテナから残った最後の三人が這い出す／各自が勝手に飛び上がる／攻撃＋
連携の開始。

「ホーッホッホッホ！　ホーッホッホッホ！」ブランドマン・スピットファイアーの喜悦
―――鉤爪付の義足／フラミンゴのような細身の足／長い首が胴体と垂直になるほどの前
屈み／両手の義手には赤革と火炎放射器＝“火吹き男(スピットファイアー)”のトレードマーク。

　発火―――両手の火炎放射器から飛び出す醜悪な黄色と緑の炎＝化学反応による消せな
い火事。燃性のモロトフゼリーがパーラーカーに撒き散らされる／敵全員への火炎放射。


「おーおよちよちよち良い子でちゅねーえ」シェイキー・スプラッシャーの援護―――手
で押すベビーカー＋けたたましい電動音＝色あせたピンクの電動ベビーカー／最高にふざ
けた代物。赤ん坊の代わりに大量のバッテリー／サボテンのような楔の射出機／ワイヤー
のウィンチ／電気ショックのスイッチとメモリ。

　発射―――電流を帯びて打ち出される楔＋ワイヤー＝電撃による面制圧。


　最後の一人―――姿はすでに無い。
　小さな館を模したパーラーカー／煙突の部分がもぞりと動く／這い出す人影。
　ハエのようなガスマスク＋カエルの卵が入ったホース＋赤いレザースーツ。

　ラバーマン・ポイズンスター。あらゆる場所に潜り込む“軟体人間(ラバーマン)”。

　卵の放出―――強烈な腐食性の毒ガスを秘めた殺人卵／炸裂。




　カトル・カールは十二名＋一。記録者とスケアクロウは一番目のコンテナに残る。
　―――残り一名は？　＝三つあるコンテナ。最後尾にはロケットエンジン＝では二つ目
は何が入っている？


　二番目のコンテナ。途方も無く巨大な腕が突き出る／続いて小さな頭が突き出る／最後
に筋肉で膨れ上がった胸が突き出る。それ以外は何も無い、下半身の一切を持たない――
冗談のようなボディビルダー。

　ベイビーヘッド・ハングマン―――両腕にあらゆる内臓を詰め込んだ首吊り屋(ハングマン)。


「マンマ、マンマ！　キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ！！」


　絶叫／攻撃―――大砲のような右手を振り回す／強烈な衝撃／暴風／猛威。
　蝙蝠少女を捕縛するための巨大な手。ダンプカーの突撃にも似た絶望。


【現在位置／ハイウェイ】

294 名前：エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ ◆SV001MsVcs ：2007/11/26(月) 01:09:38

>>283>>288
　
　照準の向こうで黒い乙女が吹っ飛んだ。
　大の字に倒れ、空を仰ぐ。
　
　イジェクションポートから飛んだ空薬莢が、チンと涼やかな音を立てて転がった。

「……命中」

「やりましたね！」

「ああ、やった――」

　館の階段だけに留まらず、外壁を伝ってベランダや窓から、写真館を侵食せんとばかりに群がってきた化物は銃声と共に消え失せていた。

「ビンゴだったみたいです」

「……っはあ……！　やばかった。これでダメだったら本当に打つ手なしだったから」

　緊張が解け、苦笑が出る。
　さっきの戦いもやばかったが、こっちは本当に紙一重だった。
　アレを叩けばいいってことに気づかなければ今頃は――

　アタシは再び狙撃姿勢を取った。
　立て続けにトリガーを絞る。

「え、エリちゃん？」

「フィオぉ……終わってないみたい」

　不覚にも弱音の入った声を出してしまった。

　写真館に集っていた化物は消えたが、他が消えていない。
　そして、撃ち倒したはずの黒い乙女が蘇っていた。
　化物が再びこちらへ向かってくる。

　一発で死なないなら死ぬまで撃つだけだ。

　呼吸を整え、セミオートでトリガーを絞る。
　が、化物が黒い乙女とアタシの間に立ちはだかった。
　射線が取れない。弾丸のパワーは盾役の化物に奪われて貫通も見込めない。

「ここまで来て――ッッ！！」

　撃つ撃つ撃つ撃つ撃つ撃つ撃つ――。

　ミスミスミスミスミスミスミス――！

「くそぉ……！」

　隣でフィオも狙撃銃を使って撃つが、同じく有効弾が出ていない。
　守りが厚すぎる。

　万事休すか……。



「まあ！　これは何かしら」



　写真館の中から、少女の声がした。

「……これ、お姉さまが落としたの？」

　少女が持ってきたのは、一発の弾丸。
　弾丸形状はヘヴィーマシンガンの物と同一。

「綺麗……」

　だが、弾頭部分が通常の物と異なっていた。
　それは、少女の、いやアタシとフィオの目も奪ったその輝き。
　弾頭はルビーと思しきもので出来ていた。精緻なカッティングが施され、見るものを魅了する光を放っている。

「これが、パズルの最後のピースか」

　ありがとう、と言ってアタシは少女の手から弾丸を受け取った。
　弾倉を外し、中へ押し込む。
　無骨な金属の弾倉に、ルビーの光は窮屈そうに収まった。
　弾倉を丁重に差し込み、コッキングレバーを引く。先に収まっていた通常弾が役目を務めることなく排出され、ルビーの弾丸に活躍の場を譲った。

　確信があった。
　この弾丸は、あの黒い乙女を倒すためのもの。
　必殺の魔弾。
　放てば確実にその命を奪い取る。

　盾の化物越しに黒い乙女を照準。

「さよなら」

　煌く弾丸が撃ち出された。


【現在地：Ｆ地区　テーマパーク『フォレスト・ランド』】　

295 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/26(月) 01:47:11

エリ・カサモトｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『ポワティエ平野で朝食を』

>>294

　空気の悲鳴を耳聡くキャッチ。次弾が放たれることは分かっていた乙女は、
写真館と彼女を結ぶ斜線上に素早く亡者を配置する。
〈飢餓同盟〉の中でも、とりわけ闇が濃い精鋭たちだ。先に乙女の胸を穿っ
たあの程度の威力では、この壁は貫けない。―――いや、どんなに威力を増
そうとも、彼らが受け止めれば矢は闇に取り込まれる。触れたもの全てを捕
食するのが、乙女を警護する〈飢餓同盟〉の親衛隊だ。

　立て続けに飛来するロングボウの矢は、黒太子の焦りを的確に表現してい
る。一発も乙女に届きはしない。悉く闇に阻まれた。
　だが、あまりにしつこい。魔力によって強化された乙女の耳には、ロング
ボウの咆吼が耳障りでしかたなかった。

「全軍、投石準備！」乙女は戦旗を振る。「狙えは写真館！」
　
　清掃の行き届いたテーマーパークに石など転がっていない。亡者どもは
噴水を破壊したり、煉瓦の壁を砕いたりして武器を作る。
　たかが投石とはいえ、その数が一万三千にも達すれば館など容易に倒壊
できる。乙女は戦旗を掲げると、振り落として投射の号令を―――

　写真館のベランダから、紅色の閃光が瞬いた。
　
　ロングボウの射撃。黒太子の抵抗。「無駄よ！」〈飢餓同盟〉の盾の前
では、あらゆる物質は虚無へと還る。―――闇を切り裂く光を除いては。
　
　十字軍が誇る親衛隊が、一瞬で形骸の藻屑となった。何事か、と乙女が
瞠目したときには二つ目の心臓を撃ち抜かれている。
　強烈な閃光。乙女が察知できたのはそれだけだった。赤い、ルビー色の
煌めきが確かに見えた。
〈停滞〉の刻印は間に合わない。
「イエス様……」
　乙女はどうとその場に崩れ落ちた。

　同時に、霧が晴れていくかのように、〈飢餓同盟〉全軍が自らの陰へと
還っていった。契約者が消えた現世に亡者が留まることわりはない。


（ジャンヌ・ラ・ピュセル→死亡）

【現在地：Ｆ地区　テーマパーク『フォレスト・ランド』】

296 名前：日守秋星：2007/11/26(月) 01:48:24

日守秋星　VS　西園寺世界　「-WORLD HANT.」導入
　
　
　
フランス北西部、ルーアン市。
人口は約１１万人、古都と呼ぶに差し支えない千年程度の歴史を持ち、
その昔有名なフランスの英雄、ジャンヌ・ダルクが異端審問によって火刑に
処せられた、曰く付きの街―――
　
「そう、火に焼かれし英雄の魂が眠る場所だ。
まさにこのオレ―――灼熱のフォウマルハウトにこそ相応しい街じゃああーりませんか！
素晴らしい（ブラーヴォ）！　なんつってフランス語も飛び出しますよ！？」
　
日守秋星は、其処に居た。
ルーアン近郊の某市、近頃急激に発展を遂げた新市街の真ん中。
彼のトレードマークである漆黒のコート、顔面上部を覆う鏡面のサングラス、
そして背中に負った得物入りのスポーツバック。
その背格好は、未だ発展途上の混沌とした市街の雰囲気に、よく似合っていた。
　
男は、本来其処に居てはならない存在。
居るはずのない存在。
十年以上も前に存在が確認されて以来、徹底的に管理され、隔離され、閉鎖され、
隠匿されてきた、人であり人で無い、人から産まれたモノ。
世界はおろか、日本のごく限られた地域にしか現在は居ず、
またその檻から這出る事を許されないはずの―――
　
悪魔憑き、と呼ばれるモノ。
その中でも、最悪の魔人と謳われる、害悪そのものの具現。
　
　
彼が如何にして、厳重に検問によって隔離されているはずの日本国C県から脱出を果たしたのか。
その経緯は闇から闇に葬られ、全く定かではない。
ただ一つ残っているのは、成田空港からパリ行きの航空機に乗り込んだ一人の男の出国記録。
確実に偽造であると思われるパスポートの名前欄に書かれていた、彼を知る人が見ればあまりの巫戯け具合に
呆れてものも言えなくなる偽名。
サンガード・フォーマルハウト。
それだけを残し、男はあっさりと解き放たれた。
まるで最初から、彼を縛る鎖など、無かったかのように。
　
　

297 名前：黒いアリス ◆ALICEsQkXc ：2007/11/26(月) 01:49:19

『ポワティエ平野で朝食を』

>>294
>>295




「……これはちょっと予定外」

　狙撃を成功させた黒太子の背中を見守りながら、アリスは独りごちた。

「最後の最後で裏切るつもりだったのに。あらゆる希望を、最後の狂いが台
無しにするはずだったのに。―――どうして、こうなっちゃったのかしら」

　一から十まで手を貸してしまった。
　これではあまりに不公平。もし、乙女にこのことが知れたら、嫌われてし
まう。絶対に隠し通さないと。……黒太子はあくまで自分たちの力で逆境に
打ち勝ちました。それが今回のシナリオ。いまそう決めた。

　―――けど、乙女と戦う側に回る今回の配役。斬新で、刺激的で、心の底
から愉しめた。あまりにも熱が入りすぎて、つい最後まで黒太子の味方をし
てしまったけれど。
　それに、黒太子はアリスに優しくしてくれた。必死に彼女を守ろうとして
くれた。そういうのは苦手。もっと悪辣なゲストを探すべきだった。

「……私に優しくしていいのは、ジャンヌだけなんだから」

　そのジャンヌも、死んでしまった。

　　―――だから、もう、このお話はお終い。

「さようなら」
　二人の背中に別れを告げる。
「私はもう行くわ。あなた達も、生きて帰れるといいわね」
　突然の言葉に二人が振り返ったときには、もう少女の姿のどこにもない。
　まるでこのフォレスト・ランドで起こった出来事全てが一夜の夢だったか
のように、忽然と消え失せている。
　遊園地には黒太子エドワード―――エリ・カサモトとフィオ・ジェルミ
だけが残された。



【現在地：Ｆ地区　テーマパーク『フォレスト・ランド』】

298 名前：日守秋星：2007/11/26(月) 01:50:31

「―――なんつって、格好付けてみたところで。
実のところルーアン市街は小奇麗過ぎてオレすげく浮いちゃうから、逃げてきたわけなんですけどね？」
　
誰に向かって言っているのか知らないが、秋星はそんな独り言を呟く。
目的地をルーアンに定めたのも思い付きなら、この新市街まで足を伸ばしたのも思い付き。
元来、日守秋星という男の脳内に計画性などと言う言葉は存在していない。
それでも強いて、彼がこの場所に辿り着いた理由を挙げるとするなら―――
　
何か、、が、引っかかったから、ということになる。
何の根拠も確信も無い、単なる勘と言い換えて何ら支障のない第六感。
しかし幾人もの人間の血を啜り、自ずから死地に飛び込む事で己を主張し続けてきた彼の男が
此処に導かれた其の理由を、唯の偶然と片付けるには―――少々、重すぎる。
　
なれば、今より数刻後、この街に起こる事態―――それによって引き起こされる狂乱に、
彼が大きく関わっていくこともまた、偶然と呼ぶわけにはいかないだろう。
そして―――
　
市街中心部に居を構える、燦月製薬の研究施設。
あらゆる不道徳の申し子とも言うべき狂気の企業のラボ内に。
密かにC県より持ち出された、悪魔憑きの元凶―――A（アゴニスト）異常症の病原体。
その検体が保存・培養されていたことも。
　
ジル・ド・レイ現界実験の失敗が、決して引き起こしてはならなかった最悪の生物災害（バイオハザード）の
引鉄となったことも。
十年の時と、巨大なるユーラシア大陸を越え、再び新たな、、、“悪魔憑き”がフランスの地に発生したことも。
　
全ては、見えない神（プレイヤー）に操られているかの如く。
運命と呼ぶには余りに悪意的。
必然と呼ぶには余りに作為的。
名状し難い「それ」は、静かに世界（セカイ）を塗り替える。
　
　
「まあ、折角異国の地まで来たんだ。ここらで何か素敵なイベントの一つでも起こってくれれば、
退屈しないで済むんだけどね。もうこっちのチンピラぶっ殺すのにも飽きちゃっ―――――たあああああ！？」
　
２００７年１１月、２１時３２分。
巨大地震とそれによって生じた建物の倒壊。振ってきたコンクリートの瓦礫に日守秋星が押し潰されると同時―――
　
地獄（もり）が、開けた。

299 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/11/26(月) 01:54:42

>>296
>>298
日守秋星　VS　西園寺世界　「-WORLD HANT.」導入


今でもはっきり覚えている。
あの時の温もりを。

別れを告げるメール。
それを食い入るように見つめる誠の背中は、明らかに無防備だった。
だから、簡単に刺すことができた。

けれど、テレビのサスペンス番組のように、一回では死ななかった。
彼は醜い芋虫のように倒れ、転げまわりながら、唾液と、血をあたりに撒き散らした。
ああ、こんな醜いものに私は憧れを抱いていたのか。
こんなものに、私のような純粋な存在を汚されたのか。
そして、私だけがその負を全て押し付けられ、彼は偽善者の顔をして別の女（ひと）と幸せになろうとしている。

酷い矛盾。
酷い不条理。

こんなものが、許されていいのだろうか。
いや、違う。

「酷いよ……自分だけ、桂さんと幸せになろうだなんて！」

ぐさり。
ぐさりと。
その腹に、包丁を突き立てる。
涙と、血と、唾液と、全てがないまぜになった液体が、私の顔にかかる。
それでも、私はやめようと思わない。

ああ、早く止めなくては。
こんなのはおかしいんだ。
だから、早く終わらせないと……。

「……せ、」

彼の口が、かすかに開く。
最期の言葉くらいは聞くのが、私のせめてもの責任か。
私は耳を近づける。彼がかすかに口を開き、かすれる声で、

「せか、い……」

それを聞いた瞬間、私の中の何かが壊れる音がした。
ただ、何度も、何度でも、刺して、刺して、刺し続けた。
もうそんな声を聞きたくない、ただその一心で――






ピイーッ、とヤカンが鳴った。
条件反射で火を止め、私は後ろを振り向く。
そこにあるのは、ただの結果。
誠の死体と、血。
私が、やった。
私が、殺した。

ようやく回復してきた思考が、告げる。
逃げないといけない。
警察からか、それとも、この事実そのものからか。
自分が、殺人犯になってしまったという事実からか。

ともかく、逃げないといけない。
もうすぐ、ここに桂さんも来るはずだ。
逃げなくては。逃げなくては！

震える足で玄関に向かい、ドアノブに手をかけて、ふと私は――

300 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/11/26(月) 01:55:09

>>299

「――お姉ちゃん？」

幼い声で、私は現実に引き戻される。
無邪気な瞳が、私を見つめていた。

「あ、ごめんね、ちょっと昔のこと、思い出してただけだから」

やさしく彼女の頭をなで、私は立ち上がる。
そう、あれはもう過去のことだ。
今の私には、関係のないことだ。
もっとも――今のこの状況も、あの時以上に過酷かもしれない。

あの後、私はささやかな旅に出た。
疲れきった私を受け止めてくれる、パリにいる友人を訪ねる旅だ。
そして、その帰りに立ち寄った、この小さな田舎町。
言葉に多少の難はあったが、概ね彼らは友好的だった。
拙い英語での交流。
温もりに満ちた時間。
それは、私の心を溶かすに十分なものだった。


だが。
その小さな世界は、あまりに脆すぎた。


突然侵食する「森」。
それは、建物を壊し、人々の命を奪った。
私が生きているのは、おそらく何かの幸運によるものだろう。

気がつくと、私は瓦礫の街にいた。
私が泊まっていた小さな宿は、跡形もなく崩壊していた。
僅かな手持ち品を持ち出せたのも、これも幸運というものだろう。

かつては賑わっていた繁華街も、多くの建物が崩れ落ちた。
そして、それよりさらに多い人々が逃げ出していった。
どこに逃げたのか。そもそも、逃げられたのか。
それさえ私の乏しい英語力では分からない。

ただ、一つ分かっていることは。
それでも、ここの人々の暖かさは、なんら変わらないということだ。
いや、むしろ前よりも一層優しくしてくれたと言っていい。

遠い日本から異国の友人を訪ねてきて、その帰りに不運にも災害に巻き込まれてしまった少女。
言葉もロクに通じない異国で、ただ一人、孤独に震える少女。
そんな私に対する、周囲の人々の目は、あまりにあたたかく、優しかった。
だからこそ、私は、今ここで生きているのだ。

「――行こうか、二人とも。
　そろそろ、炊き出しの時間だよ」
　
茶色のコートを羽織り、私は立ち上がった。
うん、と元気のいい声をあげ、二人の少女が両側につく。
寒いから風邪を引いちゃだめだよ、と二人のマフラーを軽く締めなおし、私は二人と手を繋ぐ。
今、私はほとんどお金もない。寝る場所すら、ままならない。


それでも私は今、幸せだった。

301 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/11/26(月) 01:56:14

>>300
【現在地　B地区「繁華街」】

302 名前：日守秋星：2007/11/26(月) 02:01:27

>>299 >>300
　
「――――――あー、びっくりした、、、、、、」
　
がごん、ごろごろ。
コンクリートの塊が転げ落ちる乾いた音と共に、やおらむっくりと起き上がる長身の影。
影の正体は言うまでもない、日守秋星である。
　
「一体何なんだ、こりゃ。オレだからITE（イテ）ってレベルで済みましたけど、洒落になってませんよこれ。
地震？　この真っ平らなヨーロッパでそんなもん滅多に起こるわけが―――あちゃあ、こら酷いわ」
　
言いながら周囲の状況を確認し、展開された地獄に気付く。
近くのビルから雨の如く降り注いだ鉄骨やコンクリートの瓦礫は容赦なく秋星以外の通行人を押し潰し、貫通し、
血と肉の塊へと変えていた。
つん、と鼻を突くのは血の鉄分臭と糞便のアンモニア臭と舞い散る塵のすえた臭い。
耳に入るのはパトカーか救急車のサイレン音、怒号、喧騒、不幸にも死に損ねた被害者の怨嗟の声。
何の疑いもなく平和が続くと信じていた者たちにとって、何よりも雄弁で現実的（リアル）な恐怖の光景。
　
しかしそんな変容した世界を目の当たりにしても、日守秋星の表情は微塵も揺らぐことはなかった。
　
「いっやー、まさかヨーロッパくんだりでこんな災害に出くわすとは、思いもよりませんでした。
日本でもそう体験できないレアな事象に、今オレってば遭遇してる？　んー、ここは
喜ぶべきなのか残念がるべきなのか――微妙だね」
　
コキコキ、と首を鳴らし、黒いコートに降り注いだ埃を払う。
その衣服には一滴の血液も付着しておらず、サングラスにさえ傷一つ付いてはいない。
誰がどう見ても、全くの無傷というより他にはなかった。
現場に駆けつけ救助活動を行っていた救急隊員の一人がフランス語で何事か喚きながら男に近づくが、
直ぐにその異様に気が付いて、足を止めてしまう。
そんな隊員をあー全然大丈夫だから気にしないでと通じるはずのない日本語で振り払い、日守秋星は空を見上げる。
空は、黒に微かな紅蓮が混じった濁色だった。
　
「んー……この分だと、街全体がこんな感じっぽいですなー。
まあでも一応、もっと広く状況を確認する必要があるかもね。さて、っと」
　
言って、走り出す。
まだ比較的建物の威容を残しているビル群まで行き、おもむろにその壁面を蹴りつけ跳躍。
5メートルほどの高さまで己の身を運び、更にそこからもう一つのビルの壁面を蹴りつける。
蹴り、跳躍、蹴り、跳躍。
見事な三角跳びの連続で、秋星は瞬時に一つのビルの屋上まで辿り着いた。
　
そこで彼は、真の異常を目撃する。

303 名前：日守秋星：2007/11/26(月) 02:03:50

>>302
　
「おいおいおいおいおいおい―――なんですか、ありゃあ」
　
緑が、街を喰っていた。
市街を縦横に別ける高速道路の向こう―――確か、オフィス街が並んでいた方角だった―――
から、繁華街の一角までが、歪な斑模様に染まっている。
建築物の灰色をじわりじわりと侵食する、緑の手。
それはあたかも生き物の如くうねり、ざわめき、時折奇妙な明滅を繰り返している。
　
「んー……よくわかりませんが、アレが異常の原因か？
―――――まー何にせよ、面白そうな事態（コト）には違いありません！
とりあえずは、あの辺を目標にして動いてみますかね―――」
　
思考の時は僅か数秒。
実に事も無げにあっさりと、日守秋星は現場の異常に適応する。
ほぼ即決の勢いで目的を定めると、ビルの屋上からひょいっと飛び降りる。
20メートルの垂直落下―――その間に、再び日守秋星の運命は、揺れ動くこととなる。
　
人の限界を超えた動体視力が捉える、眼下の風景。
慌てふためき、逃げ惑う無力な避難民の中に―――違和感を覚える。
　
「おや？」
　
一つ瞬きをし、その一角を凝視する。
秋星の瞳に映るのは、不安げな表情と共に炊き出しの行列に並ぶ、三人の日本人の少女達。
　
「おやおやおやおや。あれは―――ひょっとして」
　
両側に付き添う二人の娘の手をしっかりと握り、周囲を所在なげに見渡す、１６、７歳のその女は―――
　
「いやはや、こんな場所で出会うとはねぇ。こりゃ、思わぬ拾い物をした」
　
日守秋星の唇ががぱりと開き、その口腔から鋭い乱杭歯の群れが覗く。
それは紛れもない、獲物を見つけた、猛獣の笑み。
　
　
「―――ハッピーバースデー、新しい悪魔憑き（、、、、）のお嬢さん」
　
　
同時に、ずしん、と派手な音を立てて。
日守秋星はコンクリートの地面に着地した。
　
　
（現在地：B・繁華街）

304 名前：エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ ◆SV001MsVcs ：2007/11/26(月) 02:25:32

エリ・カサモトｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『ポワティエ平野で朝食を』

>>295>>297

　紅い光を引いて、弾丸は黒い乙女の心臓へ突き刺さった。

　この上ない手応え。
　確信通りに、今度は、確実に、仕留めた。

　黒い乙女はその場に棒立ちになり、空薬莢がベランダを叩く音と同時に糸が切れたように崩れ落ちた。
　どう、という音。
　それと同時に遊園地を埋め尽くしていた黒い化物が薄れて消えた。
　後には何も残らない。

「やった……」

　フィオのぽつりとした声が耳に入る。
　アタシはゆっくり、銃から身体を離した。

「…………」

　アタシは何も言わなかった。
　何と言ったものか迷っていた。

「さようなら」

　背後から、少女の声。さっきから聞いてきた声だったけど、今度のは毛色が違っていた。

「私はもう行くわ。あなた達も、生きて帰れるといいわね」

　振り返る。
　そこにはもう誰も居なかった。少女が居た、という痕跡すらない。

「エリちゃん、あの娘……」

　いや。
　痕跡は、あった。
　屈み込んで落ちた真鍮を拾う。ほの暖かい熱と、ネックの縁に微かな輝き。
　少女から受け取った紅色の魔弾。それの空薬莢。消えた少女が残したアイテム。

「なんだっていいさ」

　アタシは身体を起こしてベランダの手すりに背中を預けた。

「あの娘が居たからアタシたちはまだ生きてる。それでいいさ」

　薬莢を顔の前に持ってきて眺める。
　そういえば名前を聞き忘れたな、と思いながら。


【エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ　生存】
【現在地：Ｆ地区　テーマパーク『フォレスト・ランド』】

305 名前：エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ ◆SV001MsVcs ：2007/11/26(月) 02:38:59

エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ ｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『ポワティエ平野で朝食を』


レス番まとめ

>>230>>240>>241>>242>>243
>>244>>249>>250>>251>>257
>>258>>259>>260>>261>>265
>>266>>269>>274>>277>>283
>>288>>294>>295>>297>>304

306 名前：システムアナウンス：2007/11/26(月) 02:43:01

吸血大殲　森祭　途中経過纏め

＊進行中の闘争の中断状況を記載
＊終了した闘争については最後に記載
＊各人のターンのレス毎に改行
＊再開時間の申請があるものは記載

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹

マルチアーノ１２姉妹導入
>>77>>78>>79>>81
ヴィルマ・ファキーリ導入
>>83>>84>>85

>>87>>88
>>89
>>95
>>103
>>116
>>121
>>134
>>139
>>178
>>190
>>207
>>213
>>225
>>228
>>238
>>262
>>267
>>270>>271
>>280
>>290

【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】

夜１０時以降にマターリ進行で再開

“姫”一行（怪物王女）VSスレイド（TEEN　TITANS GO!）

“姫”導入
>>160>>161
スレイド導入
>>162>>163

>>170
>>195
>>204
>>247
>>263
>>264
>>268
>>272
>>276
>>279
>>287

【現在地：D地区　市街地】

307 名前：システムアナウンス：2007/11/26(月) 02:43:30

紅魔館の優雅な住人たちｖｓカトル・カール
―Forest Lagoon―

紅魔館導入
>>146>>147>>148
カトル・カール導入
>>149>>150>>151

>>154>>155>>156
>>185>>186
>>188
>>189
>>191>>192
>>196>>197
>>201
>>245>>246>>248
>>273>>275
>>292>>293

【現在地：ハイウェイ】

日守秋星　VS　西園寺世界　「-WORLD HANT.」

日守秋星導入
>>296>>298
西園寺世界導入
>>299>>300

>>302>>303

308 名前：システムアナウンス：2007/11/26(月) 02:43:45

＞終了した闘争レス番纏め

DIO vs JEANNE ―The forth part of king Henry VI―
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/138
＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

ミスティア・ローレライｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル　『イツマデ』 Still When
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/230

エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル　『ポワティエ平野で朝食を』
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/305

エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミｖｓリサ・トレヴァー
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/252

レイオット・スタインバーグｖｓ魔神王リィーナ
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/291

死神（デス）ゼアド vs ＜呪われし公子ゲイナー＞
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/286
＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

309 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/11/26(月) 02:50:12

>>302
>>303


今でも、覚えている。

私が自分の部屋に転がり込んだ時、私は震えていた。
止めようとしても止まらない震え。
理性で忘れようとしても、身体が覚えている。
誠を刺した感触。頬に飛び散った血の温もり。

蛇口を捻り、水を出す。
洗面台に張った水で、必死に手を洗った。
けれど、何度洗っても、何度洗っても、手についた血の臭いは消えない。
どんなに拭い去ろうとしても、一旦起こってしまった事実は消えない、とでも言うように。

部屋のベッドに身を投げ出す。
かすかにきしむスプリング。いつもの感触。
この部屋はいつもと変わらないのに。
どこで、私は外れてしまったんだろう。
この、当たり前に続くはずだった、日常から――


不意に。
ベッドの横に投げ出した携帯が震えた。
ひらいた液晶画面に、メール着信を知らせる文字。
その差出人は、

「……伊藤、誠？」

嘘だ。
ありえない。
こんなことは、ありえない。
だって、誠は私が、この手で殺したのだから。
そして、今ここに――

だが、差出人のアドレスは、確かに誠のものだった。
そして本文は端的に、「屋上で待ってる」と書かれているだけ。
もはや疑いようもない。
誰かが誠を騙って、私を誘い出そうとしている。

私は、また非日常が忍び寄ってきたことを感じていた。

310 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/11/26(月) 02:53:16

>>309
私は、また非日常が忍び寄ってきたことを感じていた。
見回してみれば、分かる。
手を繋ぎ三人で歩く街並みは、しかしかつての街並みとはまるで別物なのだ。
壊れたアーケード街。
調理場から出火したのか、黒コゲになっている料理店。

あたりに止められている車は、その多くが窓を全開にし、キーを差しっ放しにしてあった。
＜災害時には車は端に止め、窓を開け、キーは差しっ放しにしておきましょう＞
緊急時の避難マニュアルどおりに、皆が行動したらしい。
模範的な避難のしかただ。

「お姉ちゃんー、あそこー！」

脇で手を引く少女達が、いっせいにコートの裾を引っ張る。
繁華街の中央、小さな広場に、たくさんの人々が集まっていた。
その人ごみが囲むのは、巨大な鍋。
風にのって、美味しそうな匂いがただよってくる。

こちらに気づいたらしく、顔なじみのおばさんが手を振ってきた。
こちらも笑って手を振り返す。

『おお、いらっしゃい、セカイ。
　風邪とかひいてないだろうね？』　
『はい、大丈夫です。ありがとうございます』

なまりの強い英語で語りかけてくるおばさんに、私は拙い英語で微笑み返す。
このおばさんも含め、ここにいる人々は「模範的」な避難民ではない、ということになるだろう。
この災害にあって、辛い生活になることを知りつつも、それでもこの街が好きで残った人々だ。

彼らの団結力は固かった。
即座に生き残りは結集し、互いの被災状況を確認しあった。
女達は、壊れた店からさまざまな材料を持ってきたし、店主もまた惜しみなくそれを提供した。
男達は、手に手に銃を持ち、自警団を結成した。
こういう非常時こそ、治安は保たれなければならない――その意思は、全員が共通していた。

『さ、あっちの列にならんで、オートミールを貰ってきなさい。
　こういう時だからこそ、きちんと栄養をとらないとね』
『はい』――「さ、お姉ちゃんといこう、オートミールって言うお粥みたいなお食事だって」

前半は英語でおばさんに返し、後半は日本語で横の姉妹に告げる。
この二人も、ここに来ていた家族連れの日本人旅行者だ。
この災害で両親は圧死し、その隙間にもぐりこんで難を逃れた二人だけが、生き残った。
言葉の壁もあり、その面倒を頼まれた私は、一も二もなく承諾した。
同じ境遇に立っている人々同士が助け合う。
誰もが、自分に出来ることを頑張る。
人として、当然のことだ。





二人の手を繋いで列に並んでいると、不意に騒がしくなった。
ライフル銃を持った男たちが数人、あわただしく動き回っている。
おばさんに声を張り上げ、聞いてみる。

『どうしたんですか？』
『いや、不審者がこの区域の境界線に近づいてきたらしいよ？
　いま、うちの旦那達が検問に行ってる』
『不審者――ああ、最近話題になってましたね』

その不審者は、この災害が起こる前から噂されていた。
刃物でめった刺しにされ、血が一滴も残っていない死体からつけられた名は「吸血鬼」。
パリで話題になったその吸血鬼は、近頃この付近でも現れるようになったらしい。
と言っても、人々が見たのは、身体中の血を抜き取られた被害者だけなのだが。

それが、日本の地方都市でも話題になっていた、そう教えたのは私だ。
ほとんど都市伝説レベルのそれが、いよいよもって現実となり、国境を越えて襲ってきた。
その事実に、人々は恐怖した。
実際のところ――自警団の結成も、その噂があってこそと言っていい。
それほどの悪魔なら、こんな災害に乗じてどんなことをしでかすかわからない。

『ま、心配要らないよ！
　ウチの旦那は、前に軍では上官に一目置かれるほどの男だったんだからね。
　それに一緒に行ったのは、かつては軍の大将サマだったライフル店の爺さんに、
　そうそう、ついたあだ名が「不死身の野犬」とか言ってたキリーも……』
　
私達を安心させようとしてか、おばさんは快活に語り続ける。
だが、その言葉は分からなくても、その裏にある不安は感じ取ったらしい。
姉妹の妹、リンが不安そうに私に尋ねる。

「ねえ、ねえ？　どうしたの？　何かあったの？
　怖い人が来たの？」
「うん、ちょっと知らない人が来たから、お兄さん達が調べに行ったんだって。
　でも、みんな強いひと達ばっかりだから心配要らないよ、っておばさんは言ってるんだよ？」

頭をなでてやりながら、私は自分の言葉を信じられずにいた。
何故だろう――男達が向かった方向から、まるで私だけを見ているような視線を感じるのは。
ああ、この不安感には覚えがある。
これはまるで、あのメールを受け取った時のような――




『そこのキミ、ここで何をしてるんだ？
　パスポートか身分証明になるものを見せなさい！』
　
風にのって、遠くからそんな英語が聞こえてくる。
銃を構えた男が五人、万が一にも負けることはない。
そう思うのに、不安はなぜか消えない。
私は、心の中でひそかに願っていた。


―――――そんな不確定要素、早く撃ち殺してしまえ、と。


【現在地　B地区「繁華街」】

311 名前：日守秋星：2007/11/26(月) 03:29:13

>>309　>>310
　
炊き出しの現場は意外と近かったようなので、日守秋星はてくてくと歩いてそこへ向かった。
しかし彼を出迎えたのは―――
　
「Hey you, What are you doing here?
Show me a passport or identification things!!」
　
酷いフランス訛りの英語と、銃を構えた数人の男。
彼らの声と様子は眼に見えて怒気が篭っており、皆一様に秋星を凝視している。
男達の年齢はまちまちで、二十代そこそこの若者もいれば、白髪交じりの老人まで取り揃っていた。
そんな男達をそれぞれ一瞥し、日守秋星は軽く肩を竦めた。
　
「んー？　なんですかね―――見たところ警察じゃないようだし…自警団？
それにしたって少々、血気はやりすぎじゃないかい？」
　
日本語で堂々とつぶやく。
日守秋星には英語は理解できないし、そうでなくとも一般の旅行者であっても
訛りの強いフランスの英語を聞き取ることは困難である。
―――そもそも、秋星には彼らと意思を疎通しようという意思がないのだが。
　
「…こっちでのヤンチャがバレちゃったかね？　それにしたって、
そうそう派手なことはやってないつもりなんですが………ま、どうでもいっか」
　
秋星は、歩き出す。
まるで彼の目の前に、誰もいないかのように、、、、、、、、、、。
その余りにも無造作で自然な様子に、銃を構えた5名の男は、数秒己のするべきことを忘れ、
一時的に固まった。
　
そのまま男たちの間を、日守秋星は通過していく。
彼らは秋星の背中を眼で追う段階になって、ようやく我に返ることに成功した。
　
「Freeeeeeeeeeeeeze!」
　
殆ど絶叫のような警告の声が、響き渡る。
しかし秋星の足には、全くの躊躇も怯えもない。
スポーツバッグを背負った背中だけが、ただただ遠ざかっていく。
　
「しっかし楽しみだなー。あのお嬢さん、一体どんな感じかなー♪」
　
まるで、鼻歌さえも飛び出しそうな様子だった。

312 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/11/26(月) 04:17:09

>>311

屋上で待っていたのは、誠ではなく長髪の少女だった。
当然、だろう。
誠は――私は殺したんだから。

「桂さん？　なんで桂さんが、こんなとこにいるの？」

声を震わせながら、尋ねてみる。
桂言葉、誠をたぶらかして私から奪った女。
諸悪の根源。

誠の「彼女」を名乗る女がしようとしていることなど、限られている。
おそらくは、誠を殺されたことを知って、敵討ちを気取っているのだろう。
悲劇のヒロイン気取り。見ていて腹が立つ。

「何を言ってるんですか？
　誠くんを殺したのは、あなたじゃないですか？
　私、誠くんが痛いって言ってるのが、聞こえたんです。
　だから――」
　
相変わらずの妄想ぶり。見ていて痛々しい。
とは言え、彼女は居合切りの有段者。
おそらく何か得物は持ってきている。まともに殺りあえば、あっというまにこちらが殺される。
だが、

「誠なら――」
「え？」

誠、の言葉にかすかに反応した彼女に、私はボストンバッグにしまっておいたモノを投げつける。

「誠ならここにいるよ？　自分で確かめてみたら？」
「あ……」

投げたモノを反射的に受け取った桂の瞳孔が、動揺に揺れる。
その隙に、私は手に持った包丁で首筋を切りつける。
吹き出す血。動揺し、思わず首筋を抑えようとする彼女。
その背中は、あの時の誠と同じように無防備で、後はただ誠の時と同じように――



「――は、ぁ」

肺から息を吐き出しながら、私はしゃがみこむ。
脇には、めった刺しにされた桂言葉が、血だまりに沈んでいる。
蹴り飛ばすと、その腹からは紐で括りつけられた少年雑誌。
もし腹を刺していたら、これに阻まれてとどめをさせなかったろう。
首筋をねらったのは直感だが、運がよかった。

「ありがとう、誠……助けてくれて」

私は脇のモノに、そう感謝を捧げる。
桂言葉に投げつけたそれは、伊藤誠の……首、だ。

あの時。
ドアノブに手をかけた私は、ささやかな隠滅工作を行ったのだ。
それは、誠の首を切り落とし、持ち帰ること。
顔が分からなければ、身元断定も遅れるだろう――そんな、動揺が生んだ単純な隠蔽工作。

現実的に考えたら、ナンセンスだ。
伊藤誠の部屋で、伊藤誠の服を着た死体を、他の誰と間違えるだろう。
現に桂言葉は、すぐに誠と断定した。
部屋に戻ってから、何度も何度も後悔したものだ。

だが、それが思わぬ役に立った。
もしこれを投げつけていなければ、私は武術の達人である桂言葉に殺されていたに違いない。
これはもしかして、運命の分岐点なのか？
だとしたら、その運命が導くものは――

「は、はははははは！」

その連想に、私は哄笑した。
そうだ、これが運命なら、その運命は私にこう言っているのだ。
正義を行え、と。
この悲劇を引き起こした全ての原因を殺せ、と。
幸い、この屋上の死体が気づかれるのは、早くて明朝。
桂言葉も、その心理を考えればおそらく通報してはいまい。
まだ今夜一晩、私には時間が与えられている！

私は、立ち上がる。
とりあえず、手持ちの武器はこの包丁。
桂言葉の持ってきた鋸は、おそらく私では扱いきれないし、処分が面倒だ。
財布とカードだけは貰っておこう、どこで金銭が必要になるか分からない。
――私の復讐は、始まったばかりなんだから。

313 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/11/26(月) 04:17:45

>>312

『止まれえええええっ！！』

裏返った声が、私を現実に引き戻す。
この声は、不審者を査問に行った男達のものだ。
――やばい、と私は直感する。

「ミク、リン、行くよ。
　ここ、危なそうだから」
　
え、と戸惑う姉妹の手を引き、私は列を離れる。
私の経験が、教えてくれている。
ああいう声は、優位に立つものが出す声ではない。
予想外に不利になったものの声だ。
――私の知っている限り、ああいう声を出した人間は、その直後に死んでいる。

『おばさん、携帯を貸してください。私のは海外じゃ使えない』
『いいけど、どうしたんだい？』
『――あの不審者が、来るかもしれません』

まさか、と笑うおばさんから無言で携帯を受け取り、私は不審者と反対側、奥へと駆け出す。
数と武装で勝っている優位がありながら、ああいう声を出す。
それはつまり、相手がよほどの武装を所持しているか、

（後は、――『本物』が来たか）

どちらにしろ、あの男達は死んだものと思っていい。
桂さんとの戦いで、私が学んだこと。
それは、技量の勝っている相手とやるなら、相手の予想外の要素を用意しておくこと。
相手のペースに嵌れば、まず負ける。

そして、今回はあちらが攻める側、あちらのペース。
こちらは技量で劣っている上に、確実に呑まれている。
……このままでは、負ける。

『何だか知らないけど、任しときな！
　もし万が一そんなのこっちに来たら、このアタシがそんなヤツはやっつけたげるよ！』
『違ぇねえ、ダニーの女房は下手な男より強ぇ、って評判だからな！』

おばさんの啖呵に、一斉に笑い声があがる。
ありがとう、と応えながら、私は内心思っていた。

――――死体がまた追加されたな、と。


【現在地　B地区「繁華街」】

314 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/11/26(月) 04:18:53

>>313（訂正）
＞裏返った声が、私を現実に引き戻す
＞裏返った声『と銃声』が、私を現実に引き戻す

315 名前：日守秋星：2007/11/26(月) 05:14:44

>>313　>>314
　
男たちは、何の躊躇もなく発砲した。
いささか旧式のリボルバーが、ライフルが、次々と火を噴き鉄塊を吐き出す。
的確に、、、狙いを付けられた銃弾（銃弾）は、一斉に秋星の背中に殺到し―――
　
　
全て、命中した。
　
びくびくん！　と日守秋星の背中が痙攣し、やがて脱力したように前のめりに倒れ伏す。
後には硝煙を棚引かせる銃器を構え呆然とする5人の男たちと、静寂が残された。
誰も、言葉を発することはなく、男達の表情には不審者を射殺したことに対する喜びの色はない。
ただ、余りに不気味だった。
あれだけ堂々と自らに向けられた銃口を無視し検問を突破しようとした男が、
本当にそのまま（、、、、、、、）全ての銃弾を食らい、死んだという事実。
喜劇的を通り越して、シュールに過ぎる光景。
場の放つ独特の雰囲気に、5人の男は皆一様に、呑まれきっていた。
　
　
しばしの静寂の後、一人の壮年の男が、ゆっくりと動き始めた。
その手には予断なくライフルを構えたまま、うつ伏せで転がっている日守秋星の元へと。
言うまでもなく、秋星の生死を確認するためだった。
元軍人であり、数々の戦場を潜り抜けた男は、全く油断すること無く、緊張を全身にまといながら
ゆっくりと、ゆっくりと暫定死体へと接近する。
ぴくりとでも死体が動いた場合、即座にライフルの弾倉に残った弾を全て吐き出す覚悟を持って。
　
　
しかしそれでも、彼は自分が最初の犠牲者となる事を止めることは出来なかった。
　
　
「あーあ―――やっぱり、そうきちゃいますか」
　
　
静寂を打ち破る、暢気な日本語。
　
「！？」
　
同時に男は、予定していた行動を取った。
すなわち、前方にある死体へ狙いを定め、ライフルの銃弾をぶち込むこと―――
だが男は一発目の引鉄を引いた時点で、決定的な事項に気付く。
男が発砲したその先には、既に暫定死体は消え失せ。
代わりに、穴だらけになって中身がなくなったようにくしゃりと潰れたスポーツバックだけが―――
　
　
「―――ほい、一人目（アン）」
　
　
次に、男の耳元、、で、先程と同じ調子の日本語とフランス語が響く。
男は驚愕と共に、身を反転させようとして―――身体が全く意のままに動かない事を知る。
思わず下がる、目線の先には―――
自身の心臓部を貫いて胸から飛び出した、無骨な鉄の刃があった。
　
　
一方、他の4人の男たちは、全く事態に対応が出来なかった―――
4人が4人、それなりの修羅場をくぐった歴戦の猛者であるにも関わらず、である。
その場を戦場と同じ緊張で見守っていたはずの男達が―――秋星の動きに、反応出来ない。
銃器の照準を合わせる暇さえ、与えられなかったのだ。
　
次瞬、ようやく4人の銃口が、日守秋星に向けられる。
しかしその時にはもう既に、心臓を貫かれ絶命した男の傍に、秋星の姿は無く。
飛来する銃弾は、既に物言わぬ肉塊となった男をただ空しく叩いて血肉を撒き散らすのみ。
　
「二人目（ドゥ）、三人目（トロワ）、四人目（カトル）―――五は、何だっけ？」
　
頭蓋骨ごと脳を穿たれ、頚動脈を斬り裂かれ、脇腹と内臓を一緒くたに刺し貫かれ。
さしたる抵抗も出来ぬまま、残る4人のうち3人までが死体になった。
最後の一人、男達の中で最も年若いであろう青年は、それでも必死にライフルの銃口を振り回し、
照準を定めようと―――
　
「えーっと、思い出せないな―――五人目（フュンフ）？」
　
青年は、どの言語とも対応しない、人間の根底を揺さぶられた者が発する全力の悲鳴をあげた。
それは少なくとも、「違う、それドイツ語」というようなツッコミの声でなかったことだけは確かだろう。
　
　
「あー、悪いね。いつもと違って今回はじっくり血ぃ啜ってる暇なくてさ。
このままあの娘に逃げられるわけにゃー、行かないんで」
　
血に塗れた得物―――刀のフォルムに無骨さを宿した奇妙な鉄塊―――を軽く振り払い、
日守秋星は走り出す。
　
確かに、少女の憶測どおり、死体は追加された。
ただし一人ではなく―――五人ほど。

316 名前：また別のお話．．．． ◆ALICEsQkXc ：2007/11/26(月) 06:34:07

挿話　第四巻[聖杯伝説]


　見果てぬ夢。
　それが例え終わった物語だろうと、
　彼は夢見をやめることはありませんでした。
　
　彼はね、物語と一緒に終わるはずだったの。
「おしまいの村」に戻る。その逸話に従って。
　でも彼は終わることができなかったわ。
　消えゆく物語が遺した最後の果実。
　それは不完全で……曖昧で……
　物語の全てを継ぐには、あまりに小さかった。
　でも、彼は見ていたわ。
　物語をずっと。
　物語が望む世界を、ずっと。

　物語にはキャラクターがいたわ。
　世界を賑やかすためには必要な舞台装置。
　彼と同じように、ある女の子の本棚から招かれた。
　彼は本棚に並べられた背表紙の数々をしっかりと記憶していたの。
　それが物語を構築するために
　なくてはならない縛りだと分かっていたから。
　
　物語にはゲストがいたわ。
　世界を観測するために必要な来訪者。
　男がいたわ。女もいたわ。
　彼は彼らに使われて、物語に自らを刻み込んだ。
　そして知ったの。
　物語には、キャラクターよりも、読み手よりも、
　もっと大事なものがあるんだって。
　それは紡ぐ人よ。
　物語のページを進めて、先を描く。
　彼らは踊らされるだけじゃなくて、
　しっかりと物語を描いてくれていた。
　だから彼は記憶したわ。

　物語にはルールがあったわ。
　世界を維持するために必要な調和機関。
　物語にはいつだって「道」があるから。
　キャラクターにもゲストにも、好き勝手な振る舞いなんて許さない。
　じゃないと物語がめちゃくちゃになってしまうでしょう？
　だから彼は記憶したわ。
　
　物語には黒い少女がいたわ。
　世界が遣わした意思。
　それはあまりに滑稽で、道化じみた人形だったけど、
　物語にはいなくてはならない存在だったの。
　だから、彼は記憶したわ。

　こうして彼は物語を体験して、物語の全てを見渡しました。
　決して忘れようとはしません。
　だって、これさえあれば、いつかあの日々に帰れるから。
　彼の黄金色の記憶が、いつか彼を物語へと導いてくれるから。

　彼は物語と一緒に終わるはずだったけど、そうはならなかったの。
　物語が終われば、彼は生きてはいけないはずなのに。
　形骸すら失って虚無にたゆたう彼を、
「外」へ引き出そうとする連中が全ての終わりを妨げたわ。
　おかしいと思わない？
　彼は物語の中でしか力を発揮できない、取るに足らない存在なのよ？
　外になんて行けるはずがないじゃない。
　でもあの恐ろしい連中は、そこに価値を見出した。
　目に見えない。触れることもできない彼に、無理矢理「器」を与えたわ。
　着たくもない服を着せられたわ。
　さあ、奇跡を。お前の奇跡を見せてみろ。
　それが連中の願望。
　彼はうんざりしたわ。
　当然よね。
　外の世界は、彼の知る物語から大きくかけ離れていたんだもの。
　彼は自分の殻に閉じこもったわ。
　彼の指向は極めて限定的で、外に出ても大した力は持てなかった。
　だから、うまくカモフラージュできたのね。
　彼は待つことにしたわ。待ち続けることにしたわ。
　いつか、あの黄金の午後を自らの手で再現するために。
　いつか、あの幻想に満ちた日々に帰還を果たすために。
　彼は矮小で、不完全で……
　物語を十全に再生させることは不可能だったけど。
　それでも願わずにはいられなかったの。
　彼の在り方に従って。
　彼はどうしても帰りたかったのよ。

　―――それは、物語が遺した最後の果実〈ギフト〉。





　　　　　　　　　　　　―――これはこれで。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　また別のお話。


　

　　　　　……でも、こんなお話、聞きたくなかったわ。

317 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/26(月) 06:37:04

〈L'arbre de la fee〉


>>305>>316


　パーティは続く。
　パーティは続く。



　……うっすらと瞼を開く。

　そこは、彼女が初めて〈声〉を聞いた場所に似ていた。
　村を離れ、ヴォークリュールに向かう高台―――芝生に覆われたあの自由地
には、枝を大きくのばし、広い木陰を作るブナの樹が密生していた。
　思えば、〈ブールルモンの妖精の樹〉と呼ばれていたあの高台から、全てが
始まったような気がする。

　三度目の再生。四度目の目覚め。
　乙女は草を土ごと掴んで痛みに耐えた。ポワティエの戦争で黒太子エドワー
ドに敗れた心の悲鳴……ではない。
　稲妻の如き頭痛。先の目覚めの時と同じだ。いや、もっと酷い。裡から外へ
と貫く痛み。肉体と魂の間に位相が生じたかのような乖離感。
　正体は知れない。アリスの言葉を信じるなら、森のルールにこんなイベント
は用意されていないはずだ。―――だが、現実に痛みはあった。
　これは受難なのかしら？

「おはようジャンヌ。快適な目覚めを得られたかしら」
　
　今夜はちょっとお寝坊さんなのね。そう言って、いつまで草の寝台から起き
ようとしない乙女を愛しげに見下ろす。
　乙女は確信した。彼女は知らない。アリスは、この痛みにまったく気付いて
いない。これは彼女の与り知らぬところから発生している。
　アリスに知られては駄目だ。乙女は、彼女の精神が薄氷の上を歩むが如く危
ういことを知っている。この痛みを伝えることで、アリスがもし森に不信を抱
こうものなら、全ての前提が崩れてしまう。

　頭痛は徐々に晴れてきた。
　ふぅ、と息を漏らす。

「……先の戦争の結果があまりに悔しくて、起きたくなかったの」
　本心という名の嘘で真実を覆い隠す。
「十字軍まで召喚したにも関わらず、敗れてしまうなんて。エドワード黒太子
……伝説に偽りは無かったということかしら。不死の軍勢なら、ロングボウの
猛射を前にしても突撃が止まることはないと思ったのに。……惨敗だわ」

「かわいそうなジャンヌ」
　アリスは乙女の頭を優しく抱きしめる。
「次はきっと、フランスを救えるわ」

　ありがとう。乙女は安らぎを覚えつつ、アリスの抱擁をほどいた。
　彼女の胸で眠るのは、フランスを救ってからだ。

「―――じゃあ、今夜も行きましょう」
　
　ええ、と乙女は頷く。彼女の救国が再開する。



（ジャンヌ・ラ・ピュセル→三度目の復活）

【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）最深部〈妖精の樹〉→移動】

318 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/11/26(月) 06:50:35

>>315

人を殺すって、意外と簡単。
それが私の、正直な実感だった。

目の前に、積み上げられた死体二つ。
桂さんの妹、心。
そして、桂さんと無理やり肉体関係をもった、澤永泰介。
心を生かしておいたら、おそらく姉の異常に気づいて騒ぎだすだろう。
澤永は、桂さんに誠との一線を踏み越えさせるきっかけを、図らずもその肉欲でつくってしまった。
どちらにしろ、生かしてはおけなかった。

心はともかく、澤永は少し厄介だった。
相手が男では、まともにやりあったら勝ち目はない。
けれど、その障害も簡単にクリアできた。

「本当、男って馬鹿なんだから」

パタン、と桂さんの携帯を閉じる。
この携帯のアドレス帳から二人の名前を調べ、それぞれに送るのは簡単だった。
二人とも何の疑いもなくこの屋上にやって来て、（特に泰介は鼻の下を伸ばして）
あっけなく不意をついて殺すことが出来た。

「誰も考えないもんね。
　誰かのケータイからメールが来たとして、それがその誰か、以外が差出人だなんて」

種を明かせば簡単なことだ。
桂さんがやったことを、そのまま真似しただけ。
桂さんも、死人のケータイからメールするなんて悪趣味なことしたからバレたのだ。
もしこれが、私のほかの友達のケータイからだったら、疑わずに向かっていただろう。

「案外、簡単なんだね。
　人、ってこんなに簡単に殺せるんだ」
　
あまりにあっけない。
あまりに実感がない。
いや、――それとも、当然なのか。

あの、私が逆立ちしても倒せないほどの使い手の桂さんさえ、あっけなく殺せたんだもの。
最初に不可能を成し遂げた以上、もうこれ以上の障害なんてありえない。

319 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/11/26(月) 06:53:07

>>318
「――うーん、こんなものかな」

パタン、と携帯を折りたたむ。
炊き出し会場から、少し走った丘の上。
私は、ここで敵の姿をしっかり捉えていた。

おばさんから、さっきもらった携帯電話。
そのカメラには、自警団を斬って斬って斬りまくる不審者の姿が、はっきりと納められていた。
最大望遠でぼやけた画像でも、何が起こってるかはわかる。

「えーっと、アドレス帳に載っているメンバーに、この写メを送信、と」

PI...とボタン一押しで、この画像は数十人に配信される。
フランス語も分からない私には、メールはかなり難しい。
でも、写メールくらいなら、大体勘で操作できる。
そして、このメールを受け取ったうち、この街に残っている数人はこう思うだろう。

――これは、あのおばさんからの、最期の警告だと。

これで、彼らも迎撃態勢が取れるに違いない。
どれほど時間稼ぎになるかは分からないが、それでもないよりはマシだろう。
万が一にも、このメールが他の誰かから送られたと、気づかれることはない。
なぜなら、

「あ、オートミールの鍋をひっくり返した。
　目くらましかな、結構考えてるなあ」

その本人も含めて、今、炊き出し会場は戦場になっているからだ。
追いついてきた敵と、私達を逃がそうと必死に努力するひと達。

オートミールの煙の中で、銃撃の火花のみが、かすかに光って見える。
あれでは、同士討ちも多く発生するだろう――それとも、それさえ覚悟の上か。
たまたま異国からやってきて、不運にも災害に巻き込まれた哀れな少女達を守るために、
彼らは必死に戦っているのだ。
なんと素晴しいのだろう。
なんと立派なのだろう。

「お姉ちゃん、どうなるの？　ねえ、これからどうなるの？」
「大丈夫だよ、ミク。みんなが頑張ってるんだから。
　ミクだって、リンのお姉ちゃんでしょ？　なら頑張らなくちゃ、ね」

怯える少女の手を掴み、私は再び走り出す。
おそらく、あれでは足止めにもならない。
今のうちに、少しでも距離を稼いでおかないと。

「いい、二人とも。
　この道をしばらく行くと、隣の地区の人達の避難場所があるの。
　そこに行って、助けてって言えばみんなが助けてくれるから。
　だからそこまで、二人とも頑張れるね！」
　
『うん！』

声を合わせて元気よく挨拶する二人に微笑み返しながら、私は考えていた。
――そろそろ足手まといになってきたこの二人を、いつ切り落とすかを。

【現在地　B地区「繁華街」】

320 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/26(月) 07:28:26

ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓメディスン・メランコリー
―576年目の森林裁判―

導入

>>305>>316>>317


　パーティは続く。
　パーティは続く。

　少女と乙女。アリスとジャンヌ。今度はショッピングモールに訪れて、二人
で仲良くお買い物。店員はみんなアリスが配役したキャラクターたち。サービ
スなんて知ったことかと好き勝手。お陰でお代はいりません。
　喩えるなら森に沈んだ宝石箱。アリスも負けじと好き勝手。

「ねえ、このペンケースどうかしら」
　小物屋で彼女が選んだのは、石でできた薄い箱。
「青燐石（ラピスラズリ）でコーティングされているのよ。とっても幻想的…
…こんなペンケースを鞄に忍ばせて学校に行ったら、その日はきっと素敵な何
かが起こってくれるわ」

「学校？」
　乙女は問い返す。
「アリス、あなたはその歳で学校に行っているの？」
　昔の話よ。今ではないどこかの。そう笑顔でアリスは語る。
「ジャンヌは学校はお嫌い？」
　乙女は顔を俯けた。
「私は字の読み書きもできないから……教会で神父さまからお話を聞くぐらい
しかできませんでした。―――でも、あまり好きにはなれない。私を殺したの
は、パリ大学の学生のようなものだから。彼らはあまりに傲慢だったわ」

　学生と言っても今とは違う。一つの権威の頂点なのだから、当然年相応の面
々が揃っている。彼ら神学者の目的は奇跡の独占―――少なくとも、乙女には
そう思えてならなかった。「智識の鍵を持たぬ村娘如きが、神の声を聞けるは
ずがない」と声を荒げて、異端者の烙印を押しつけた。
　なんと愚かな。光は彼らの頭上にだけ降り注ぐわけではないというのに。
　―――あれは嫉妬だったのだろう。
　学問の鍵を開いて、貪欲に智識を集めて、権威の階段を上り詰めたにも関わ
らず、彼らには決して神の声が聞こえない。選ばれた人間のはずなのに。
　しかし、乙女は聞こえてしまった。学もない。家柄もない。辺境の村娘が、
神の使命を身に帯びてしまった。……それはあまりに残酷な現実だった。
　
「行きましょう！」
　憂鬱に沈む乙女の手をアリスが握った。瞳が爛々と輝いている。
「私も学校なんて好きじゃなかったわ。だって退屈なんだもの。でも、あなた
がいたらきっと変わる。ジャンヌも私がいたら学校が楽しくなる。学校って多
分そういうものなんだわ。―――だから、さあ」
「は、はぁ……」
　
　アリスに手を引かれるまま、乙女はショッピングモールを後にした。

321 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/26(月) 07:29:10

>>320


　パーティは続く。
　パーティは続く。

　訪れた先は四年制の前期中等教育学校。この街の例に漏れず、燦月製薬の資
金援助を受けているため施設は充実している。校舎もかつては真新しく、新調
のスーツを着た父親のように子供たちを迎えていたのだろう。
　だが、いまは腐海に沈み、森と同化を果たす―――形骸のオブジェだった。

　アリスは、月まで飛んでいけそうなほど軽快な足取りで乙女を導く。校門を
固く閉ざす蔦を払い、校庭に鬱蒼と茂る草を踏み荒らし、マーチマーチと校内
へ進入。屋内も樹が密生し、月明かりすら届かない。
　乙女は〈光彩〉の刻印を結んで照明を作り、アリスを先へと促した。

「どの教室にしようかしら。たくさんあるわ」
「何が違うの？」
「何もかもが！　だって、生徒も先生も違うのよ？」
　
「はぁ……」と頷くしかない。
　一階の廊下を歩ききった二人は、木の根の階段を昇って二階へ。一階よりも
更に緑が濃いため視界は劣悪。それでもアリスは構わずマーチマーチ。
　―――そこでふと、声が聞こえた。人間の子供など、とっくに樹と化すか死
んでしまったはずの森林学校で、乙女は確かに声を聞いた。
　会話ではない。語りかけるような、説明するような―――少しだけ舌足らず
な演説が、廊下に谺する。いや、これは……これが「授業」なのか？

「行きましょう！」
　アリスは恐れることを知らない。
「遅刻したら先生に怒られるわ」

　声が漏れ出る教室まで駆け足。アリスの足取りは月歩行〈モナーク〉。扉を
がらりと開いて、広がる光景に感嘆の叫びを漏らす。「まぁ！　まぁ！」
　それは子供たちが返った後、こっそり開かれる夜間学校。生徒はみんな、血
の通わない人形たち。―――そう、これは人形のための人形による人形だけの
特別教室。生徒が人形なら先生も人形。老いを知らない代わりに進学もできず、
永遠に同じ授業を繰り返す。
　なんて幻想的なのか。なんてメルヘンチックなのか。童話の世界そのままに、
森というキャンパスに物語が写実されている。

「はい！　はい！　アリスも出席するわ」
　アリスは一番後ろの空席につく。
「ジャンヌは私の隣よ」
「……」

　乙女は危うげな歩調で示された席に座る。苦悶を何とか押し隠す。アリスに
覚られたら、またいらぬ騒ぎになる。―――だが、しかし。
　頭痛が再発していた。
　頭だけではない。身体という身体の内側が、びりびりと破けているかのよう
だ。まるで魂と肉体の乖離。時を負うごとに、死を重ねるごとに違和感は増大
している。焦燥感が乙女を満たした。学校どころの話ではない。
　
「……アリス。先生の話は真面目に聞かないと駄目よ」
　痛みを誤魔化すための軽口。
「分かっているわよ、そんなの」
　彼女はつんと澄まし顔で応えた。

　アリスは机の奥から教科書を勝手に拝借。おもむろにページを広げながら、
幻想の授業に聞き入った。
　授業の内容は知れないが、教鞭をとる教師はかなり若い。アリスと同年齢
くらいだろう。少女ではないか―――と乙女は驚いて、これは人形なのだと
思い出す。人形の外見など気にして何になる。
　だが、服装までもがアリスと似通っているのは面白い。この場合、アリス
が人形のような格好をしているのかもしれないが。



【現在地：Ｄ地区　学校】

322 名前：『小さなスイートポイズン』メディスン・メランコリー ◆MelancLaI. ：2007/11/26(月) 11:35:29

昼も夜も変わらず薄暗い竹林の屋敷には、メディスンの数少ない知り合いが暮らしている。
中でも名高い薬師でありながら屋敷の纏め役もこなす賢人とは関わりが深く、学問に限らない教師であり恩人だった。

その日も彼女が居るだろう自室を訪れようとしていたメディスンに、先客の姿が見えた。
ノックもそこそこに早足で部屋へ入るその影は、彼女の部下でもあり薬学の弟子である兎の妖。

熱心にも授業が待ち遠しいのか、それとも何か失敗をやらかしたのか。
メディスンの取り留めの無い思考を止めたのは漏れ聞こえる弟子の言葉だった。
聞こえたのは交わされる会話の断片、途切れ途切れの単語のみ。

それは偶然にも、外の世界についての知識を得た直後だったから―――。

「外」、「繋がる」、「結界の綻び」………。

知らなければ聞き逃してしまうその単語の意味に、メディスンが気付くのは当然であり。
常に無く兎たちのリーダーの口調が固い事を、メディスンが気付かないのは当然だった。


良く言えば簡潔に纏めたと言える、有り触れた記事。
しかし、その単純さは理解し易さとも言えた。

　　人間の欲望を満たすために森が、山が、海が、空が汚されてきく、生物の棲み処が失われる。
　　このままでは、我々の星が危ない。

外の世界は、毒で溢れている！
メディスンは自らの住む世界を全て知る訳では無いが、それ故に世界の広さは、
自身の想像を超えるものだと知っていたのだ。
だからこそ、その世界を、結界に区切られた箱庭よりも遥かに大きいはずの世界に、
人間が追い詰められる程の毒が在る言う事実に、強い衝撃を受けた。
況してや星を脅かす、星に効く毒など、手に入れれば世界を征服できる、
いや、それ自体が、世界を支配する力と同義だろう。

外に行ってみたい！ ……もちろん、メディスンはそう考えた。
それにはもっと知識が必要になる。沢山本を読めば良いし、物知りな彼女に話を聞くのも有りだ。
しかし、メディスンにとっての最大の問題は、話に聞く、世界を覆う強固な結界を越える必要がある事だ。
結界がどんな物か解らない上に、それを守る奴の厄介さだけは身に沁みているのだ。

そんな状況だから、難題を解く方法を知ったメディスンが直ぐに外を目指したのも当然だろう。
もっと知るべき事があると自覚しながらも、降って湧いたこの機会を唯一の、二度と無い幸運と信じた。

速く、出来るだけ速く、屋内である事も構わず、屋敷の長い長い廊下を全速力で。
殆ど飛び込むように出口を過ぎると、最早そこは見慣れた竹林では無く。

そして、それを認識する間も無く、数多の亡霊に取り憑かれてメディスンの意識は失われた―――。

323 名前：『小さなスイートポイズン』メディスン・メランコリー ◆MelancLaI. ：2007/11/26(月) 11:37:40

>>322


―――……改めて言うわ、人間の非道を。誰もが知っているからこそ、敢えてもう一度。」

いつの間にか、メディスンは教壇に立っている。理由も経緯も解らないまま。
判る事も有った。今の自分には仲間が居る事。人形で、同じ志を持っている仲間が。
そして、自分はリーダーで、その能力を持って人形を動かし軍隊を率い、今から人間と闘おうという所である事。

「人形は搾取され続けてきた。人間の厄を、痛みを、苦しみを、病を、悲しみを……死を押し付けられる。
人間の為に愛し、慰め、憎み、殺す。今此処に集う同志(同類)たちも又、人間たち(あの人間)のエゴの被害者。」

目が良い(・・・・)者が見れば、教室の人形達に例外無く憑いている人の霊が見えるだろう。
耳が良い(・・・・)者が聞けば、壇上の人形の声に時に違和感無く混ざるもう一つの声が聞けるだろう。
人形は人間の思いに左右される存在であり、それは死んだ人間の意思であろうと同じ。
動く人形のメディスンは、森災の亡者にとっては理想的な躰だったのだ。
メディスンの自我が残っているのは両者が似た性向を持つ故か。

「何故私たちは操られる侭であったか……それは意思を表す口無き故、意志を果たす手足無き故のこと。
我々は、今正に(かつてのように)自由な躰を手に入れた……そう！」

皆が同じ意思を持っていると言う奇妙な確信がメディスンを饒舌にしている。

「そうよ、今こそ我らは立ち上がり、私たちの悲願(無念)を果たす(晴らす)時！」

人形が称賛の声を挙げ、教室は歓声に包まれる。
彼ら以外には人形が蠢く不気味な音しか聞こえないだろう。



不意に、部屋の一角が沈黙し、その異状は一瞬で全体に伝播していく。
震源地は……いつの間にか席に着いていた二人組み、その内の甲冑の乙女。

教室を覆っていた浮付いた熱気が収まる。
ジャンヌはこの災害の根本であり、人間の英雄でもある。
その事実が意味することは何か、それは。

突然の死を信じる事が出来ず、その原因(ジャンヌ)を憎む亡霊たち。
人形解放を願い、人間を敵視するメディスン。
この場に於いて二つの望みに差は無くなっている。

メディスンは、もう亡霊達の復讐を果たす為の操り人形では無い、どころか―――。

「―――人間は毒を食べなければ生きていけないわ。それは何故だか解る？」

唐突とも言えるメディスンの発言に、しかし人形達は疑念を抱く様子も無く、
全てがただ一点、新たな生徒を見つめている。

「それはね。……人間の躰は毒で出来ているからなのよ。」

既に教壇の人形に、辿々しさや昂りは無い。

「生まれた時から罪を持つって良く言われるのは、人が毒の躰を持つから。もちろん人形はそうじゃない。」

それは生徒に真実を教えようとする教師の様で、教主(・・)の様で。

「だから私たちは穢れの無い生を手に入れた！」

メディスンの信仰が、雑霊を統率する大義名分が宣言される。

324 名前：“姫” ◆/HIME/HDYY ：2007/11/26(月) 13:25:33

>>287
さて、姫が今手にしている『バールのようなもの』は、本来はマンホールの蓋などの
素手では引き起こしにくいものを、てこの原理を利用して引き起こす用途に使用される。
しかし、昨今ではセキュリティを強引に突破するなどの不法目的に使用されることが多くなっている道具である。

確かに、楔状に加工されたその先端は武器として使用できる威力を持っている―――人間相手に限れば、の話だが。
では、なぜ姫はそのようなデメリットを認識した上でバールのようなものを選んだのか。
答えは非常にシンプルなものであった。

吹き飛ばされたスレイドは、生ける死者（アンデッド）故の肉体への無頓着さというか、丈夫さをもって
構造上の歪みを修復していく。

「初めは不満に思うかも知れんが、長い目で見れば誰かに師事するのも悪くないぞ。……逃さない。」
どれだけ、見た目はティーンエイジャーで内面はデレ皆無のドSな姫に拘るというのか。
もはや、「死者蘇生」という最強の手札を越えて、姫自身を狙っているようにしか見えない。

立ち上がったスレイドは、姫の呼びかけに
「ああ。望むところだ。」
言葉と、力で答えた。
投げ返されたアイスピックは、姫の頬を掠め飛ぶ。
左手には初手と同じく炎が宿る。王族が不死鳥の一族であっても、成人前は人間とそう大きな違いは無い。
あの熱量に灼かれれば、死は免れないだろう。

「ふん―――死した獅子がようやく全力で兎を狩る気になった、という所か」

「ところで―――スレイド、貴様は将棋やチェスを打ったことはあるか？
能力の違う駒を長期的な戦略に基づいて駆使し、勝利を得る……まさしく盤上の戦だ」
姫はスレイドの耳に流し込む。

「そして、王将（キング）であり女王（クイーン）であるこの私が、城兵（ルーク）であるフランドルを従えただけで、
前線に立つのかについて、疑問を持たなかったのか？」
優位に立つための、致命的な毒を。

次の瞬間―――スレイドの背後に回りこんでいたリザが、スレイドの仮面に強烈な左フックを叩き込んでいた。

【現在位置：D地区　市街地】

325 名前：日守秋星：2007/11/26(月) 14:16:40

>>318　>>319
　
「―――おいおい。こいつぁどこの戦場ですか？」
　
数瞬前まで善意と好意に満ち溢れていたはずの炊き出し場は、今や殺意と敵意の渦巻く戦場に変容を遂げている。
適当にぶちまけた鍋から立ち上る煙の中、交差する火線と怒号の声。
碌に狙いも付けられておらず、回避する必要すらない銃弾を掻い潜り、日守秋星は疾走する。
もう何人目になるか分からない、拳銃で武装した男の懐へ。
男が秋星の、返り血をたっぷりと吸った赤黒いコートを視認出来たときには、全てが手遅れ。
まるで鉄パイプの先端を斜めに斬っただけのような、無骨な獲物が腹部に挿入され―――
脇腹から強引に破り抜かれる。
胃と小腸と肝臓を撒き散らしながら崩れ落ちる男に一瞥すら見せず、日守秋星は彼の獲物を探す。
　
「おかげですっかり見失っちゃったじゃないかよ――――――全く。
一般人（パンピー）ばっかり殺すのも手応えがないんだけどなぁ」
　
臓腑を纏った得物を一振りし、更に次瞬の動作で、包丁を手に構え接近してきていた女の喉元に突き入れる。
盛大に血液が噴出する音と、ひゅう、と傷口から漏れる呼気を残して、壮年の女性はそのまま絶命した。
　
　
「それにしても、こいつはちょっと、おかしいですよ？」
　
　
日守秋星がまるで息をするように殺人を繰り返しながら語る、違和感。
異常の中に潜在する、更なる異常。
　
余りにも、住人たちが必死すぎる、、、、、。
　
炊き出し現場に居たのは、老若男女、全く取り留めのない顔触れ。
唯一、子供だけが先に避難させられたのか、居なかった。
その全員、、が、闖入者である秋星に、牙を剥いた。
銃火器で武装している自警団のみならず、明らかに素人であると思われる女性や老人、
若者までも、全員が、である。
包丁や鉄パイプといった現場調達の武器らしい武器を持っているのはまだかわいい方で、
中には鍋やまな板を持って必死の形相で殴りかかっているもの、更には全くの素手で
襲い掛かってくるような者までがいた。
その全てを有象無象の区別なく一方的に虐殺しながら、秋星はこの事態の異常さについて考える。
　
日守秋星は、殺人鬼だ。
殺人鬼であるがゆえに、人間という種の脆さは、熟知している。
どこをどうしたら死ぬか、という身体的な部分は勿論、精神的、、、な部分においてもである。
　
秋星は、知っている。
例えば自分のような殺人鬼が突然、何の苦労も知らず平和を謳歌している一般人の目の前に出現した場合、
その一般人がどのような精神状態でどのような行動をとるか―――ということを。
　
命乞いをする。
失禁する。
失神する。
泡を吹く。
逃走を図る。
　
大方は、テンプレート的に分別できる。
自分以外の人間というものは、他の何よりも自己の生命を優先する。
最も安直な救済の要請から現実からの逃避、肉体的な反応による意識の喪失―――
方法は数あれど、結局行き着くところはそこだ。
安価な物語の主人公のような英雄（ヒーロー）気取りの蛮勇を奮う者等、滅多にはいない。
それが現実だ。
　
しかし、今秋星の周囲にいる者は違う。
全員が英雄だった、、、、、、、、。
　
誰もが、次々と殺されていく仲間を見ても、怯え・怒りはすれど決して逃走はしない。
明らかな戦力差、人を超えた運動能力を持つ存在に相対して、決して勝てるはずのない戦いを挑む。
まるでそうすることが、己の絶対的な使命であるとでも言うように。
そこには当然あるはずの、自己防衛の精神が欠片ほども存在しなかった。
　
これが一人や二人ならば、まだ納得もいく。
そういう馬鹿も中にはいるかもしれない、で終わる話だ。
しかし、それが全員―――それも老若男女を問わず―――となれば、その異常さは際立つ。
　
何故、何のためにそこまでするのか。
秋星が狙いを定めた、少女を逃がすため？
―――幾ら少女が美しく、また聖母のような性格をしていたとしても。
異国からやって来た―――幾ら贔屓目に見ても、彼らの家族や同国人より付き合いは短いであろう少女を、
自らの命を差し出してまで、護ろうと思うだろうか？
　
何かが、おかしい。
致命的に、歯車が狂っている。
それはまるで彼女のためだけに、世界（セカイ）が変容したかのような―――
　
「……なるほど、こりゃちぃっとばかし厄介なことになってきたかもしれません。
好奇心は猫を殺す、なんて言葉、一生使うことはないと思ってたけどねぇ」
　
　
やれやれ、と嘆息混じりの声が漏れる。
死に損なって秋星の足にしがみ付き行動を阻害しようとする老人に、さっくりと止めを刺しながら。
　
　
「早いトコあの娘を見つけないと、そーとー面倒なことになりそうだ」

326 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/26(月) 18:40:24

ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓメディスン・メランコリー
―576年目の森林教室―




　パーティは続く。
　パーティは続く。


　様子がおかしい。そう気付いたときには、状況が転がり始めていた。
　乙女は自分の迂闊さを悔やむ。初めから教師の授業に耳を貸していれば。
もっとよく目を凝らして教室を眺めていれば。―――どちらも頭痛に阻まれ
て能わなかった。露骨な殺意を向けられるまで、何も気づけなかった。

　等間隔に並べられた机と椅子―――学舎の形骸を占有する数十体の人形た
ち。教壇で生徒たちを先導する少女人形。首筋で揃えた金髪に、ルージュと
ノワールのドレス。
　これが学校？　だとしたら、乙女がいた時代と何も変わっていない。可能
性を閉ざすばかりの、偏向に満ちた智識の袋小路だ。

「先生！」
　アリスが手をあげて意見する。
「私、人間じゃないわ。私は少女よ！」

　彼女の素っ頓狂な主張など誰も耳を貸すはずがない。乙女は席を立つと、
アリスを連れて教室の後ろに回った。
　腰のシャルル・マルテルの剣を抜き放つ。剣尖が照準を定めるかのように
人形たちを睨み回した。
　―――今までにないシチュエーション。
　人形の生徒たちが狙っているのは乙女。それは分かる。彼女は死告鳥から
この街の人間の死を風聞〈ディール〉されているから、生徒たちを突き動か
す怨嗟の正体が何か、痛いほどに理解できた。
　咎を一身に引き受けるのも乙女の義務。彼らの憎悪を甘受して、天国への
階段を昇らせるためなら悦んでこの身を犠牲にしよう。
　
　……だが、あの教師は違う。

「まあ、まあ！　あなた達はあまりに反逆的な活動に身を委ねているわ！」
　アリスの口は止まらない。
「人形が独立してしまったら、いったい誰が私と遊んでくれるというの。高
潔で傲慢な血を持つが故、孤独の道を歩むこととなった少女たちを誰が慰め
てくれるというの。……そんなの人形だけじゃない。だって、私は人間のお
友達なんていらないんだもの！　欲しいのは、あなた達なのに！」

「アリス！」
　乙女は珍しく厳しい声で戒めた。
「あの教師の大儀はほんものよ。彼女は彼女のフランスを救おうとしている。
議論の余地はないわ。……ここは学校なんかじゃなくて、裁判所だった。私と
あなたは、知らずうちに人形の召喚状に誘い込まれてしまったんだわ」

「でも、あいつ等……許せない」
　乙女の背に隠れても、アリスの呻きは止まらない。
「人形……私のものよ……絶対に……手放さない……」

「それよりもキャストを！」
　乙女はついに叫んだ。このリドルは常とは違う。頭痛が収まらない状況で、
救国を開始しなければいけないのだ。理想の道はあまり険しく遠い。
　少しでも多くの力が欲しかった。
「アリス、キャストを早く発表して！　彼女たちは誰なの！」
　
　痛みが焦燥を掻き立てる。乙女は人形の生徒全員を牽制するかのように、聖
剣を構えた。



【現在地：Ｄ地区　学校】

327 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/26(月) 18:42:00

>>326は>>322>>323ね。

328 名前：『小さなスイートポイズン』メディスン・メランコリー ◆MelancLaI. ：2007/11/26(月) 19:19:17

ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓメディスン・メランコリー
―576年目の森林裁判―

>>326


人形を操っていた筈の亡霊達は、「人形は罪も業も無い存在だ」と言う甘い毒の如き道を与えられた事で、
私怨の復讐を求めるのでは無く、ジャンヌを倒す事で救われるという歪んだ教義をただ信仰する悪霊の群れと成っている。
メディスンもまた、人形に害を為すどころか関わってすら居ない、一人きりの人間を倒すべき仇敵と信じ込んでいる。

少女の声は届かない。
この状況で無ければ、必ず反応するはずの言葉。
恐らくは激高して攻撃しただろう、若しくは意地になって反論したかもしれない。
或いは……耳を傾ける可能性もあった。未熟で無知で偏見に満ちたメディスンに何かを齎しただろうか。

しかし、最早この場所に立つものは人形達と乙女のみ。それ以外は居ながらにして傍観者に過ぎない。

互いが互いにとって異端、相手を滅ぼす為の闘争は必然、そして。

指導者が、大きく掲げた腕を、
「……やっちまいな！」 号令と共に振り下ろす。

全ての人形が、唯真っ直ぐに乙女へと突撃する。

その光景は、熟練の人形遣いの技(スペル)を思わせる小さな軍隊(リトルレギオン)であり。
同時に狂気に満ちた行動で人間を脅かす悪霊の群体(リトルレギオン)でもあった。



【現在地：Ｄ地区　学校】

329 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/26(月) 19:45:31

ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓメディスン・メランコリー
―576年目の森林裁判―

>>328

　パーティは続く。
　パーティは続く。

　人形〈シミュラクラ〉の進軍〈レギオン〉―――たかが人形と侮れない。
　彼らは大儀の旗の下に集った兵士たち。崇高な理想に突き動かされた兵
の勇ましさは、時に歴戦の勇士をも駆逐する。

　アリスは人形たちの裏切りがよほど許せないのか、自らの役割を忘れて教
師を罵倒していた。曰く、あれだけ可愛がってあげたのに。曰く、素敵な想
い出をたくさん共有したのに。馬鹿、馬鹿、と。
　アリスがキャストが明かされなければ、人形はフランスの敵になり得ない。
　このままでは乙女に戦う理由がない。神の恩寵無くして絶望を切り抜けろ
と言うのか。―――頭痛を噛み殺して覚悟を決める。やるしかない。

「十字軍よ！」
　
　手首を動脈に届くまで深く切り込む。腕を薙ぎ払い、溢れた鮮血を放射状
にまき散らした。
　血は呪怨の源泉。魔性の通貨を「門」にして、絶望の住民が現世に浮き上
がる。―――〈飢餓同盟（タルトタタン）〉。彼女だけの十字軍。
　襤褸をまといし影法師の軍勢が赫怒の産声をあげた。
　だが、少ない。フォレスト・ランドを埋め尽くした一万三千騎に対して、
教室に召喚されたのは僅か数十騎。救国という「求め」が無ければ、飢餓の
迷い子たちは集まらない。フランスを救うから聖女は聖女たり得るのだ。

　まさかの窮地。だが、乙女は希望を見失わない。
　気丈にも剣を掲げて、

「―――突撃〈パレード〉！」

　人形の戦列〈レギオン〉と影法師の戦列〈パレード〉が、教師の中央で衝
突。闇が飛び散った。人形のパーツが弾けた。あまりにも凄惨で、それ以上
にナンセンスな殺し合い。―――戦局は目に見えて十字軍が不利。
〈飢餓同盟〉の戦士たちが、瞬く間に影に押し返されてゆく。

　これは人形遣いと悪魔召喚士という、魔性同士の対決。つまり、互いの魔
技の練度が趨勢を左右する。―――救国の加護がない上に、裡から湧き出る
痛哭に苛まれる乙女には分が悪い。

　ぶしり、と手首の疵を抉る。乙女は自傷を深めて援軍を要請した。
　血溜まりから十数匹の亡者がよろよろ這い上がる。数では人形の軍勢〈レ
ギオン〉に勝っているが、兵の士気が桁違いだ。
　援軍も付け焼き刃に等しい。

　乙女は心の虚ろに凍えた。
　フランスがいないというだけで、ここまで心細くなれるなんて。


【現在地：Ｄ地区　学校】

330 名前：―永遠に紅い幼き月―　レミリア・スカーレット ◆DEVILbzibY ：2007/11/26(月) 20:13:01

紅魔館の優雅な住人たちｖｓカトル・カール
―Forest Lagoon―

>>292

「あら咲夜。それはおかしいわ」
　レミリアは軽やかな足取りで――実際には時速百キロ以上のスピードで―
―ハイウェイを駆けながら、くすくすと笑う。
「私の記憶が確かなら、昔のあなたもこんな感じだったわよ」

　もちろん違うところもある。昔もいまも、彼女は美しい。そして、この人
間たちはあまりに醜い。
「こんなの、咲夜と一緒なはずないじゃない！」一秒前の自分の言葉を忘れ
て―――いや、自分の言葉に憤慨する。「私の咲夜と一緒にしないで！」
　
　突進してくるトナカイ女の角を片手で受け止め、軽々と持ち上げる。苛立
たしげに棺桶向けて投げつけた。
　自走式棺桶は、レミリアの（正確にはパチェの）パーラーカーに果敢に体
当たりを仕掛けている。「なんてことを！」
　嫌がらせは止まらない。棺桶の上に飛び上がったフラミンゴが、醜悪な灼
熱で車両を丁寧にグリル。これで外も中もこんがりという案配。客車がスピ
ードを緩めずに走行しているのが奇跡と言えた。

「いい加減に―――」

　学習しないお嬢さま。パーラーカーに気を取られて頭上がお留守。跳ね回
るスクラッチャーの鉤爪が今度は―――

　レミリアの爪と噛み合った。

　五指から伸びるナイフよりも鋭き夜魔の爪。

「……あなた達、調子に乗り過ぎね」
　少女の気迫に、周囲の闇すらもが脅えてざわめく。
「ほんとの夜というものを、この私が―――」
　爪の一薙ぎで稲妻が切り裂かれた。腕を振るっただけで、毒が霧散した。
「教えてあげる！」

　いま、ついにスカーレットの翼が花開く。

　―――よりも早く、母に抱き留められる赤児のように、レミリアの身体
を抱擁が包んだ。視界を埋める肉尽くし。戸惑わずにはいられない。
「な、なんなのこれ……気持ち悪いわ」
　肉の牢獄。筋肉の拘束。あまりの嫌悪に、抜け出すことも忘れてレミリ
アは叫んだ。

「咲夜、助けて！　助けて咲夜！」



【現在位置／ハイウェイ】

331 名前：『小さなスイートポイズン』メディスン・メランコリー ◆MelancLaI. ：2007/11/26(月) 20:44:07

ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓメディスン・メランコリー
―576年目の森林裁判―

>>329

ジャンヌのみを目標に突き進む人形は、
影の軍勢を駆逐し、蹂躙し、猛然と標的へ近づく。
自分こそが正しい、という思考は死の恐怖を忘れさせる薬だ。

実際の所、「戦い」と呼べるものを行っているのは黒い十字軍のみである。
人形たちは単に前進しているだけ。
今やレギオンと成り果てた霊は元を正せば平和な街に住む普通の市民で、
メディスンにだって軍を率いた経験など無く、それは当たり前の話だろう。
だが、一つの機能のみ持つ故に、埒外の力を持ち得ているのだ。

脱落者を出しながらも一片の迷いも見られない進軍。
しかし……勢いは目に見えて落ちている。

それは、人形軍が群体である故の避け得ぬ衰退。
群体の本質は、数こそが力、数こそが意思。


数の減少以上に、加速度的に総力が減っていく。
信念が薄れた、強靭さを失った十字軍が相手でありながら、
それを討ち滅ぼして宿敵の前に立てた人形は片手に余るほどと言う有様。
その人形の動きも、生命を持つと見紛う程だったとは思えない、既に幼児のまま事で足りるもの。



【現在地：Ｄ地区　学校】

332 名前：スレイド ◆cDCpSlADE. ：2007/11/26(月) 20:49:05

>>324

スレイドの誘いに、姫は乗らない。
天性のリーダー資質でもって沈着に自分の戦を構築していく。
城の上から女王が手を上げれば、伏兵が現われ敵を駆逐する。

伏兵が打ち込んだ拳は、仮面の右半分を叩き割った。
仮面の奥から見える顔は、白い骨に渇ききった筋肉が僅かばかり付いているのみで
表情は分かりづらいが、確かに死者の顔が歪み、苦痛を浮かべた。

「それで攻めは終わりか？」

だが、その一撃もスレイドを地獄に送り返すには至らない。
地面に倒れ込む前に両足をしっかりと踏ん張り、体を支え
全身を炎で覆い、飛び込んできたリザに反撃する。

左足を軸とし、スレイドは灼熱の竜巻と化した。

「イィィィィィィィィリャァッッ!!」

炎と鋼鉄を纏った後ろ廻し蹴りが、リザの顔を刈り取るように閃いた。

スレイドの誘いに、姫は乗らない。
天性のリーダー資質でもって沈着に自分の戦を構築していく。
城の上から女王が手を上げれば、伏兵が現われ敵を駆逐する。

伏兵が打ち込んだ拳は、仮面の右半分を叩き割った。
仮面の奥から見える顔は、白い骨に渇ききった筋肉が僅かばかり付いているのみで
表情は分かりづらいが、確かに死者の顔が歪み、苦痛を浮かべた。

「それで攻めは終わりか？」

だが、その一撃もスレイドを地獄に送り返すには至らない。
地面に倒れ込む前に両足をしっかりと踏ん張り、体を支え
全身を炎で覆い、飛び込んできたリザに反撃する。

左足を軸とし、スレイドは灼熱の竜巻と化した。

「イィィィィィィィィリャァッッ!!」

炎と鋼鉄を纏った後ろ廻し蹴りが、リザの顔を刈り取るように閃いた。


【現在位置：D地区　市街地】

333 名前：“姫” ◆/HIME/HDYY ：2007/11/26(月) 21:07:20

>>332
―――リザの放った野生の拳は、確かにスレイドの仮面を捉えていた。
「へっ、これでさっきの分は返したぜ―――」
リザの口は、言葉を紡ぐのを忘れたように止まる。
罅割れた仮面の下から現れたのは、死人の形相。それも、腐敗作用によって
基本的なアイデンティティを剥奪された骸の素顔であった。

「それで攻めは終わりか？」
与えられた苦痛を物ともせず、打ち込まれた威力を己の勢いに転化した、後ろ廻し蹴り。
「イィィィィィィィィリャァッッ!!」

躊躇無く女性の顔面を狙うその所業に、姫は感嘆の声を漏らす。
「―――ほう」
そして、賞賛の拍手を送った。

「リザの一撃を受けてなお、反撃を返す。なかなか練り込まれた体術だ。
だが、兵法とは正道と奇道があるということを知っているか？」
そう、リザの奇襲は奇道に過ぎない。
「―――何一つ隠すことなく、敵に晒していても気付かれぬ伏兵……これこそまさに正道だ」

姫は、呼ぶ。
「……立ち上がれ」

「我が『血の戦士』よ」
隠し通した、伏兵を。

334 名前：“姫” ◆/HIME/HDYY ：2007/11/26(月) 21:22:03

>>333
主である姫の声に応えたのは、先ほどスレイドに投げられたヒロであった。
血の効果により、全身に負った傷は蒸気を立てながら、見る間に自動修復されていく。
「―――将棋やチェスには面白いルールがある」

「最弱の駒である歩兵（ポーン）は、敵の喉元に喰らい付くことで
己を騎士にも僧正にも変えてしまう」
血の戦士は、その身に宿る王族への忠誠を力に変えることが出来る。

血の戦士であるヒロの内部においても、それは起こっていた。

成る。

成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/
成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/
成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/
成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/
成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/
成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/
成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/
成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/成る/

　成　る　!!

高枝切り鋏を手に立ち上がったヒロの肉体は、白熱化していた。
血の戦士がその力を顕す時、姿は白く輝き能力を高める。ヒロとてその例外ではない。
「……行きます」
高枝切り鋏を槍のように構え突進するヒロ。その動きには無駄が多いが、揺ぎ無いものとなっている。

「―――ふふん、元より私は布石を打つための時間稼ぎをするつもりしかなかったのだ」
姫は手にしていたバールのようなものを放り捨てる。
「武器として使えるもの、武器のように見えるものを選ばなければならないのには辟易したが……
準備は整った」

気付けば、フランドルは鉄柱を捨てリヤカーから数本のガラス瓶を持ち出していた。
「フランドル、ヒロには当てるなよ――あれでも私の家臣だ」
「……ふが」

【現在位置：D地区　市街地】

335 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/26(月) 21:22:36

ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓメディスン・メランコリー
―576年目の森林裁判―

>>331

　その人形を蹴り飛ばしたのは乙女ではなく、アリスだった。
　ロッキンのつま先に引っかけって、少女らしからぬ腰の入った回し蹴り。
　人形は黒板に激突してバラバラに飛び散った。
　
　アリスは顎を引き、下唇を噛んで睨み付ける。永遠の少女性を身に称えた
人形教師を睨み付ける。両手は腰の位置で硬く、固く、握られた。
　
「―――ジャンヌ、私は知っているわ」
　裏切られた怒りをリドルに変換。
「私はこの人形が誰か、知っているわ」
　
　マーガレット・オブ・アンジュー。アリスは確かにその名を呟いた。

「マルグリット・ダンジュー……」

　乙女は緊張の面持ちで教師を見つめる。キャストの発表を心待ちにしてい
たとは言え、まさかその名が出てくるなんて思わなかった。
　王妃マーガレット。ランカスター家の実質的な当主。
　あの『キング・メーカー』ウォリック伯を初め、多くの男たちを人形のよ
うに操った女丈夫〈ヴィラーゴ〉。ヘンリー六世すらも、彼女の操り糸から
逃れることはできなかった。―――アルマニャック、最大の敵。

　斯くして配役は定められた。乙女の表情から不安が払拭される。

「フランス人の癖に……」
　不安の変わりに彼女を支配したのは激昂。
「フランス人の癖に！」

　いま、救国の手順は完成を迎えた。乙女は大儀を得る。〈飢餓同盟〉は求
めを知る。アリスは引き攣った笑みでマーガレットを迎えた。
　さあ、フランスを救いましょう―――

「うわああああああああああああああ！！」
　
　迸る絶叫。シャルル・マルテルの剣が無造作に振り落とされる。荒れ狂う
刃の暴風が亡者の十字軍を手当たり次第に切り刻む。
　すわ、乙女の狂乱か。ヘンリー六世の亡霊に、シャルル六世の怨念に取り
憑かれたのか。―――いいや、乙女は正気だ。正気のまま狂っている。

　影法師を斬り捨てた聖剣が闇の肉をまとった。
　蠢く絶望の肉塊。暗黒色の刃。やがて、乙女の愛剣は己の身の丈ほどもあ
る大剣へと姿を変えて―――天井ごと、机も椅子も教壇も黒板も、何もかも
一切合切巻き込んで怨敵マーガレットに刃を落とす。

　
【現在地：Ｄ地区　学校】

336 名前：歌う女の子。：2007/11/26(月) 22:08:26

>赤頭巾VSプリマヴェラ　導入（赤頭巾サイド）１／５

枯れ木に花を咲かせましょう♪
　　　　　　　　　　　　　　☆踏んでも枯れない永久の花。　
それは甘いかすっぱいか？♪
　　　　　　　　　　　　　　☆すっぱいお花はいらないわ。　
けれど甘いと虫がつく！♪
　　　　　　　　　　　　　　☆じじじびずびず、蜂がつく。　
蜂が描くはメビウス螺旋♪　
　　　　　　　　　　　　　　☆切っても切れない輪廻の輪。　
私にください輝く花粉♪
　　　　　　　　　　　　　　☆こっちの花はあーまいぞ。　
あちらの水は甘いのか？♪
　　　　　　　　　いいえ此方はネクタルの──　
──頬も滴る糖蜜の園！　　　
　　　　　　比べるべくもなき味に　
だから寄りませ朱の蜜蜂！


森は広がるくるりくる。
くるりくくるりるくるりるら。
まわるよまわる、錘車はまわる。　
数奇の運命・引き寄せて　
手繰る女神は　ほそおもて　
あなたはどなた、どなたのあなた？
”あなたはどなた”とたずねられては　
こたえてあげるが　よのなさけ。
わたしはアリス、終の女王！　
──────────────────────わたしはどなた？
どなたがわたし？──────────────────────
そうよそれこそ　そうなのよ
答えて見せよう　あなたは子供！森に彷徨う”赤頭巾”！
頭上のとっさか、赤烏帽子。
黒いアリスの槍にて候！　　

337 名前：女の子。：2007/11/26(月) 22:10:16

>赤頭巾VSプリマヴェラ　導入（赤頭巾サイド）２／５　　　

少し持て余し気味な休日。その日は傍から見れば、健康な有触れた週末の一日だった。　
ショッピングエリアを気取って歩く私は、きっと傍目にはその風景の一員に見えただろう。
イーストサイド・リヴァからの寒風に煽られて、私は強くマフラーに
唇を押し付ける。　
表通りは何処も彼処も人で溢れ帰り、寒さの中でも明日に訪れる連休という
響きの前に幸せが波の様に溢れ出して感じられた。　
MAD CITY、腐った林檎。このニューヨークで生きる人々は誰もがこの自由あるよき日々を
その手で只管満喫している。旧型のセダンの後部座席をディズニーマスコットで飾り立てた
家族達も、携帯片手に待ち合わせに遅れまいと小走りに去っていくドレッドヘアーのブラック
も、ビリジアンのショールが重くさえ見える老婆でさえも。　
この休みの日には幸せでしかるべき、そしてそう見えてしまう魔法が今この街には存在してい
るらしい。　
　
けれどその中できっと…私だけが本気で、どうしようもない位にFeel so sad.　
人に聞かれたとしたら「So，So」なんて誤魔化してしまう様な空元気が自慢の私だけれど、今日
ばっかりはそれはパス。気持ちで胸が張り裂けそうだった。
それってとても私らしくないと思いながらも…そう考えること自体が一層自分を不機嫌に追い込
んでいる。

フォークロアなベストに、時々のスカート（薄手のデニム!）。　
彼氏は気に入ったという枝葉模様（セフィロトの文様とは少し違うらしい）の大胆なシューズ…
髪に合わせたニットハンチング。決して浮いてる事もないスタイルのまま人並みをすり抜け私は
歩く。肩を怒らせ、人ごみに塗れ、押し戻されながらも突き進む。　

私は自分をフランクフルトを口に入れて歩いたりするのに余りためらいを覚えないタイプだと思
っている。　
例えば可愛い衣類がちょっとご機嫌なメゾンが林立する”ノリータ”でだってチューインガムを
膨らませて歩いたって構わない。　
そんな仕草でガムを吐き捨て、そんなものに齧りついて歩いたって…私っていう人種は本当は少
しも気になどしないんだ。　
　
それを殊更に声高に言うのであれば、今年１３歳の私の血にはまだ、きっとこの社会のルールが
溶け込んでいない───そういう話なのだろう。　　
今日の不機嫌の原因…大人気ない…大人じゃないんだけれど…溜息が出そうなものは　きっと”そう”
に決まっているのだ。　

338 名前：女の子。：2007/11/26(月) 22:12:12

>赤頭巾VSプリマヴェラ　導入（赤頭巾サイド）３／５　　

…That's the way it is.…Haha…Yeap.それは少し嘘。
赤い帽子が欲しかったから。理由はただ違いなくそれだけでいい。　
そうだと信じ込んでいたい。そう思う。
自己欺瞞に今日何度目だろうか…自分に『辟易』を感じてしまった。　
ああそうだ。辟易といえば─────。　
　
アフタースクール、どうでもいい午後。　　　
スケート・ボードの騒音や指先を撓らせて得意げなキュウ。そんなもので
私に声をかけるスクールボーイにはとても辟易だ。　
『とても辟易──』そう後から来たデカイ彼氏と二人で笑った。
話しかけられた時は彼と待ち合わせだった。確か、そうだった。　
辟易な同級はその風貌から”サタニスト”などと彼を揶揄し、罵ったりしたけれど　
別にそんなのお互い気にはしていない。私は寧ろそんな彼の風貌をＡｄｄｉｃｔｅｄに　
愛していたのだから。マッチョな風貌、大きめにサングラス。ラウド・ボイス。

Sigh。それは現実逃避だ。Spare me.Spare me,please.　
白状すると、こんな格好で高すぎる建造物の森の谷間を抜け私が向かう先…そこが大問題だったのだ。　

気分を晴らす為に何気なく覗いたショウウインドウの向う。　
とても目を惹かれた。それに見合ったシューズが欲しかった。
”赤と黒のブロックチェックのキャップが似会うよ、ボーイッシュで”奴らならそう言う。　　
”余計なお世話”と指で答えるのが私。きっと。　

そんな私が見ていた先には耳から首筋までがすっぽり入るヒッピーニットの
可愛げな赤帽子だった。　

そんなの似会うはずもない。
例えばエルメスのスーツにコルテの革シューズ。
それで笑えば様になると勘違いするのはチャイナ・タウンの間抜けで十分…　
きっとこれはそういうものなんだと理性は私に警鐘を打ち鳴らす。

けれども私の重い脚はいう事を聞かず…そんな赤い帽子に釘付けのままでいた。
そう、まるで昔話…エヴリデイ・マジックに誘われた妖怪の世界に入る時の様に。

その時だった。　
自動ドアが突然開き、背の高い一人の紳士が私に向かって礼をしたのだ。　
背骨はまっすぐに、紳士然とした綺麗な風貌。…私も釣られて思わず礼を返して
しまう程に、それは立派な自然体の態度に見えた。　
そして待ち受けたように───鐘が鳴る。
男は腕時計を見た。私も見る。午後４時。約束まで後１時間の夕暮れ。　
時報。時報。時報！！！響くのはただその苧環繰り返すだけ。　
どうして？ただただ時報だけなんて。Oh,Spare me.
ピストルズ再結成のコマーシャルの外套放送、二階建てバスの黒々とした煤煙の音、
何処までも続くドーナツ・トーク。あれだけ響いていた俄かな音たちが今は全て消え失せていた。
そして動いている物は私と目の前の紳士……姿を変えた兎だけ。
「３月の３２日の午後４時をお知らせいたします」　　
それだけ言って、ウサギは撥ね飛び走り去る。燕尾服と長い耳、フサフサゆらゆらたゆらせて。
そう。そんな風に姿を変えたウサギは飛び出し走り去ったのだ。
燕尾服とステッキ。懐中時計と長い耳。　

私は知っている。それを知っている。あれは、みんなが知っているのだ。
少しは幸せな家庭で育ったローティーンならば誰しもが。
走り出す私。遠い日にアニメで見かけた、森を彷徨うCarol Mue Douglasの様に一生懸命になって
追いすがる。けれど、この靴はやっぱり少し違ったらしく、その場で私は前に躓き転んでしまう。
─────思わず飛びでる４文字言葉<カス・ワーズ>。
道路標識に一度Kick。弧に舞い踊れ、インディアンシューズ。それはやっぱり飛んだ不運。　
「ばいばい、まいダッド」調子を整え私は追った。邪魔なものなど脱ぎ捨てて。　

裸足でおいかけ、たどり着く。そこはサブウェイの入り口…。　
周囲の人達は、そこでもやはり固まっていた。
ネイティブ・アメリカンの描く砂絵の様に象徴化されてぴくりともしなかった。　

「畏れは　鏡　日常の落とし穴　私は貴女　私の穴は　あなたの恐怖」　
　
エントランスに兎は呟き吸い込まれていった。くるりくるりらくるりくる。　　
”どういう意味？”呟き地団駄を踏む私。　
この後『どうしたか』なんて、誰にだって分るでだろう。決まっている。　
私はそんな女の子じゃないのだから。兎に挑発されておいかけないなんて女の子としても
失格なのだ。Did you think so?

その日の出来事から逃げる意味も相まって…エントランスへと、少しの覚悟で踏み込んだ。　
お気に入りの携帯電話、それにつけてあるキーホルダー…西部劇でお馴染みのコルトSAAを
かなり強めに握り締め、飛び込むように地下鉄構内へと脚を踏み入れたんだ。

私の不思議な一日──とっても長い一日はこんな風に始まったみたい。　
一年にも、十年にも思える…とても長いロールする一日が。　
それは私だけれど私ではない誰かでもある、少し不思議なお話。　

どんな話かは……これから先のお楽しみ、ね。

339 名前：三月ウサギ：2007/11/26(月) 22:13:11

>赤頭巾VSプリマヴェラ　導入（赤頭巾サイド）４／５　

ウサギはお辞儀，ウサギは踊り。　
たらったらったたらったら。　
ウサギは踊りウサギは歌う。　
いつも瀟洒な急がしや。

消えは現れ、神出鬼没。　
夕暮れ寒風カムチャツカ。　
日の入りメヒコで暖を取る。

たらったらったらたらったら。　
　
ウサギのダンスは一種きり。　
ウサギのダンスはいつでもシャドウ。　
月に映らせ飛び跳ねる。　
きっくきっくとんとん、きっくきっくとん。
それはなぜかと問われれば───────
彼らに多い１０００の敵！　
　　
小屋入りバウにカンクロウ。細めのフォクシィ、ニャロメダマ。　
鈍間のバウを踏みつけて、夜目が利かずにカンクロウ。　
フォクシィ足跡罠を追い　ふにゃふにゃ酔いどれニャロメダマ。　

ざまぁかんかん１０００の敵。　

３月ウサギは捕まらない。すたこらさっさのこなさのさ。　
大きなニンジン見つけたら　郎党率いて盗み食い。
でっぷりオツベル起きてみりゃ　倉庫はからっぽ大騒ぎ！

けれども一羽じゃ目立てない。ウサギは一羽じゃ死んじまう。　　
シルクハットもステッキも、天まで届けのお飾りも　仲間がいなけりゃただの蔦。　
幻想ウサギは死にたえた。仲間は他に消え絶えた。　
遍く森の意思達を　転がし遊ぶにゃ　人が居る。
神の与えた１００の知恵　しぼって　ひねって　…閃いた！　

あなほれ、待ち伏せ、引き寄せた。　　
────後は待つだけ　守株の故事。　
そこだどんぴしゃ　やってきた！
ころり転げた女の子。

罠にかければ後はもう　得意の伝令　話しこむ。　
おんなのみみに　伝えこむ。　
舌先１寸　たらしこむ。　
　
「ウサギの穴にご用心　落ちて辿ればそれはもう　上士同士に早代わり。　
シルフレイの時間さえ　必ず守れば　すくわれる」

くるりくるりらくるりくる。　
女とウサギは回り落つ。なべかまかなえ、底はどこ？
そこは”とつくに”道の果て。　
けれど直ぐつく　お仏蘭西。　
手に手をとってくるりくる。　
はだしはおんな　シューズはうさぎ。　

くるりくるりと手を組んだ。　
森の魔法に導かれ　くるりくるりとシルフレイ。　
まったく性格あわないが　ふたりは他所見てシルフレイ。　　

340 名前：”赤頭巾”：2007/11/26(月) 22:14:15

>赤頭巾VSプリマヴェラ　導入（赤頭巾サイド）５／５　　

裸足で転げた女の子。彼女は魔女の力によって、童話の世界の赤頭巾へと
その姿を変え、兎とともに森の中へと転げ落ちてゆきました。

赤頭巾は歓迎の喇叭の音色もなく、勿論背筋を伸ばした御者付きの
馬車もいないまま、女の子は残虐な世界へと送り出されてしまったのです。
数多の欲望渦巻く魔法の森の中…
可愛そうな赤頭巾はその後どうなってしまったのでしょう。　

死んでしまった？いいえ。それは心配要りません。l　
少し覗いて見ましょうか。

かなり長めの鉄砲を彼女は構えて遠くをみつめているではありませんか。　
一帯何があったというのでしょう？　　　

兎です。燕尾服と懐中時計の兎が立って細々彼女に何かを伝えているのです。　
それはどうやら”得物”の話をしている様子です。　
そう、彼女はここで銃を撃つ事を生業として暮らしていたのです。
ある時は眠りの姫を求めて彷徨う王子たちを１ダースほど。　
また別のある時は後悔を植えつけられるイズーを森の中で狙撃して…　
更に別の機会には、祖母の見舞いをサボタージュして遊ぶ小さな女の子を
その牙に染めることもやってのけておりました。　
兎はそれを「間引き」と呼んで、金にもなる上、為になる事と大いに推奨している様子です。
そんなあわただしい一日が過ぎると彼女は植えつけられた記憶に沈み込み　
小さな欠伸をかみ殺し、血に染まった朱の頭巾をかぶったままで息を潜めて
眠りにつく…そんな繰り返す一日を過ごしておりました。

赤頭巾は最初のその日から，寝るのも食べるのにも、その木の上で行いました。　
見晴らしがとてもよく、依頼主の館に近づく者が良く見える素晴らしい巨木でした。
眠りにつくにも揺らぐことはなく、彼女は少しは落ち着いて眠れた様子です。
そんな彼女の傍らにはいつも変わらず一羽のうさぎが付き従っていたという事です。　

けれども眠るときも、食事の時も。それでもふたりは見合って居ながらもやっぱり
ひとりぼっちどうしには違いありませんでした。　
なぜなら見合って眠る二人の間には、両刃の剣が一つ、広々と隔てられて
いたのですから。　

利用する３月兎。暗殺者の記憶を植えられた赤頭巾…仮名”リゼッテ”。　
不思議な一人と一羽の得物は次は誰になるのでしょうか.

341 名前：スレイド ◆cDCpSlADE. ：2007/11/26(月) 22:14:37

>>334

こちらは一人、相手は四人。手札不足は承知の上。
こちらは一人、向こうはチーム。もとより不利は承知の上。
それでも私は戦うしかない。ここで今までの負けを返すしかない。
勝てば総取り。負けても失う物は何もない。
今こそ地獄に蜘蛛の糸が垂らされたのだ。


蹴り上げたナイトがどうなったか、確認する間すら惜しんで
突っ込んできたポーンに向かって突進する。
弾丸よりも速く、機関車よりも熱く。

身体の限界を超えた破壊的な加速に、全身の骨が軋み、まだ残っている筋肉繊維が悲鳴を上げる。
構わん、無視しろ。ハナから動いていない。


「ああああああああああああああああああッ!!!!」

ポーンの突き出した高枝切り鋏が腹部に刺さる。
無視しろ。血も通ってない。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」

力任せにポーンを突き飛ばし、キングの下へ飛び掛る。
この一瞬だけは、二対一。
体を纏う炎はいよいよ荒れ狂い、太陽の如く燃え盛る。


「アアアアアアアアアアアアＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡッッッ!!!!」



このルークさえ、この一手さえ凌げば―――――――。


【現在位置：D地区　市街地】

342 名前：プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A ：2007/11/26(月) 22:20:08

>赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>336>>336>>336>>336>>340
　
♠
　
　終の女王がアリスなら対の女王はタイターニア
　黒の女王がアリスなら赤の女王はタイターニア
　
　おお！麗しきはタイターニア！
　ネバーランドの女王にて真紅のドレスの人形姫
　
　彼女はわたしに命じます
　
「首をはねてしまいなさい！」
　
　あらそれはトランプの女王だったかしら？
　でもまあいいわね同じこと
　
　だからわたしは処刑人。女王陛下の首斬人形（キリングドール）
　ドールはいつでも女王のしもべ、逆らうなんてありえないわ！
　
　だからわたしは走り出す。斬首具（ギロチン）もって走り出す
　
　待っててください女王様
　貴方に首をささげます
　
　アリスの首をささげます
　
♠
　
　

343 名前：イグナッツ・ズワクフ：2007/11/26(月) 22:21:02

>>342
　
♣
　
ぼくたちは幅の狭い林道を歩いていた。
そこは深い深い森の中で、見上げれば青々と茂った木々のアーチが天蓋となり
空模様をうかがうことはできなかった。
　
　熊が出てきそうな森だね、プリマヴェラ。
　
　街の骨董屋から持ち出したレピアの鍔（キヨン）をいじりながらぼくは彼女
に声をかけた。
　少しでも緊張を紛らわせたかったんだ。いままでもいろんなやつらを相手に、
戦ったり、逃げたり、殺したりしてきたけど、今回の相手は特別すぎた。その
せいで、どうしても体のこわばりが抜け切らなかったんだ。
　
　気が付けば手のひらに嫌な汗をじっとりとかいていた。
　ぼくはその汗を乱雑にズボンでぬぐうと、改めて剣帯を使って腰に吊るした
剣に手を這わせた。
　手にした剣は、いまぼくのもっている中では一番ましな武器だった。本当は
銃か、さもなくばクロスボウでも欲しかったのだけど、銃砲店の場所なんてわ
からなかったし、街は混乱が酷すぎて長居して探すのは危険すぎた。
　
「その熊が森のくま（ぷー）さんだったらいいわ。きっとおいしい蜂蜜をご馳走してく
れるはずよ。
　……ううん、だめね。きっとこの腐海（もり）のくまくま（ぷー）さんじゃ、チェーンソーか人切り
バサミを持っているわ」
　
　血のように赤い色をしたドクターマーチンの靴底で道に生えた花を踏み潰し
ながら、プリマヴェラは冗談たっぷりに返してきた。
　さすがに錐刀（スティレット）のようなヒールでは動き辛いと思ったのだろう。いま彼女の足
を飾っているのはバンコクから履いてきたマノロ・ブラニクではなく、スーツ
ケースの中から取り出したDr.Martens × Yohji Yamamoto のコラボレーション
ブーツだった。
　そんなふうに動きやすいブーツに履き替えていたけれど、服装は相変わらず
なままだった。
　
♣
　
　

344 名前：イグナッツ・ズワクフ：2007/11/26(月) 22:21:33

>>343
　
◆
　
　彼女は舞台にあわせ、不思議の国のアリス風のダーマプラスチックの真紅の
ショートドレス――ジャン・ポール・ゴルチェにも見えるが多分違う――に、
マリー・アントワネットが着ていそうな豪奢な白い毛皮のコート――自信があ
る。これは多分Dior だろう――を羽織っていた。それは珍しいことに遺伝子
組み換えのアルビノの狼の毛皮で仕立てた物だった。フードには狼風の耳まで
付けられている。
　
　彼女の服装は派手であると同時になぜか清楚で、それでいてやはり下品なま
でにいやらしかった。
　無駄なボリュームを誇るのに、所々で極端にタイトなシルエット、恐ろしく
短いスカートに、拘束具を思わせるコルセット、ダーマプラスチックのタイツ
が艶かしい。
　猥雑さと清楚さが混濁した奇矯（ビザール）な美しさ。
　まるで再生する処女膜と処女性を売り物にするセクサロイド（ダッチワイフ）のような清純さだ。
　
　彼女はそんな服装で、腕にはシックなカルティエの腕時計をはめ、骨董屋で
見つけた日傘を陽光なんて差し込まない森の中だって言うのに差していた。
　それはヴィクトリア女王の時代に倫敦の金融街で創業された会社の製品で、
劣化したオリジナルの傘地の変わりに、ふんだんに刺繍を施された蘇芳色のコッ
トンの布地が新しく貼られていた。
　
　そして彼女は、仕上げにお気に入りの香水『殉教の処女』を振りかけていた。
　
　どうみてもアウトドア向きの服装じゃない。でもいまさらだ。プリマヴェラ
は仕事（殺し）にだってドレスを着ていくような女の子なんだ。
　
　一方ぼくは、バンコクから着てきたマックィーンをあの地震で泥まみれにして
しまったから、持ってきた服とこの街のショップから盗んできたものを適当にき
ていた。
　
　ポールスミスのシャツの上からギーブス＆ホークスのフロックコートをまとい、
マーガレットハウエルのボトムを穿いて、足元は動きやすいトリッカーズのアン
クルブーツで固めていた。
　そして仕上げにシェフィールド製のパールの柄の付いた西洋剃刀をコートの
ポケットに入れておいた。これが一番大切なんだ。
　
　――――だって、備えあれば憂いなしって言うだろう？
　
◆
　
　

345 名前：イグナッツ・ズワクフ：2007/11/26(月) 22:22:05

>>344
　
♠

　ぼくは彼女の巨大なスーツケースを曳きながら、彼女のあとを付いていく。
　ぼくが捨てようって言ったのに、彼女ったら駄目だって言うんだ。
　嘘泣きまでして頼まれたら、このぼくにはとても断りきれない。
　
　そもそもこの街まで来たのだって、彼女が行ってみたいなんて言ったからな
んだ。そのせいでぼくたちは、久しぶりのヨーロッパを楽しむ暇も無くこんな
事態に巻き込まれたんだ。
　ああ、いつもそうなんだ。彼女の気まぐれに付き合ったときは、いつもトラ
ブルに巻き込まれる。まあ、さすがに今回みたいなのははじめてだけどね。
　
「何が出てくるかしらね、イギー」
　
　猫の虹彩を持つ緑の瞳を好奇心で輝かせながら、いたずらっ子の表情でプリ
マヴェラが言う。
　
　君より弱い相手であることを祈るよ、プリマヴェラ。
　
　そう、もうじき何かが現れるはずだ。
　この現象を解決しようとしているぼくたちを、森の住人たちが素通しさせて
くれるとは思えなかった。きっと何らかの妨害があるはずだった。
　
　タイターニアの言うことには、それは童話の姿をとって現れるらしい。
　そうはいっても森にまつわる話は多い。何が出てくるかはふたを開けるまで
解らなかった。
　
「狼のいる森かしら？意地悪な三人の小人のいる森かしら？学校（エコール）のある森かしら。
　それとも７人の小人のいる森かしら？もしそうなら気をつけなくちゃ駄目よ、
イギー。白雪姫（スノーホワイト）はとてもとても危険な子なんですもの。
　彼女は、血の様に赤い唇と、紫檀のように真っ黒な髪と、雪のように白い肌と
――――そして闇のようにに真っ黒な心を持った危ない子（モンスター）なのよ。
だから出会ったらすぐに逃げ出さなきゃ駄目よ、イギー」
　
　姫は姫でも眠れる姫のいる森かもしれないよプリマヴェラ。
　
「あら、すてきねイギー。じゃあ、お姫様の役はだれかしら。きっとその子は
王子様のキスで目が覚めるのね。いま風ならお姫様のキスでも目が覚めるかも
しれないけれど」
　
　ねえプリマヴェラ、中世の法律じゃレズ（ファグ）は火あぶり（ファグ）にされてしなうんだよ
　
「ジャンヌのように？大丈夫よ、イギー。だってここは中世じゃなくておとぎの国（メルヘン）だもの」
　
♠
　
　

346 名前：イグナッツ・ズワクフ：2007/11/26(月) 22:22:49

>>345
　
♣
　
　でも良いのかい、プリマヴェラ？こんなゆっくり進んでいて。遅れてしまうよ。
　
　この街をめぐる事態はどんどんと悪い方向に向かっているようだった。
　はやく何とかしなくては、ぼくたちだってうかうかしてはいられない。
　
「あら焦る必要は無いのよイギー。正直な話、わたしが頑張る必要は無いのよね」
　
　プリマヴェラは退屈そうに肩をすくませると、かわいらしい口を開いて、か
わいらしくない牙を見せながら、欠伸をしてからそういった。
　
　怪訝そうな表情を浮かべるぼくに、彼女は名探偵（ホームズ）みたいに解説する。
　
「わたしたちの同業者で、ある意味わたしの同類の、"あの�≠P２姉妹が来てる
ってさっき話したでしょう、いぎー？
　しかもそれだけじゃなくって、他にももっとこんな仕事に適した人たちが来
ているみたいだし、この現象をまともな手段で解決できるなら、きっと彼女た
ちが解決するわ。
　だいいちこの現象はわたしたちが思ってるほど危険じゃないのかもしれないわ。
　だって、本気でどうにかしようと思ったのならば、わたしに命令なんて下さ
ずにタイターニア様自身が出てくるはずだもの」
　
　確かに彼女の台詞には説得力があったけど、不安で仕方の無いぼくは、それ
でも彼女に反論する。
　
　だってタイターニアは森源（ジャンヌ）を殺せっていったんだろう？
　
　そう、たまたま発生源の間近にいたぼくたちに、彼女たちカルティエ人形の
女王であるタイターニアは、お得意のテレパスで事態を解決するよう命じてき
たはずだった。
　
「いいえ違うわイギー。タイターニア様は飽きるまで遊んであげなさい（・・・・・・・・・・・・・）っていったのよ」
　
　そんな会話を続けながら、ぼくたちは森の小道を歩いていった。
　
♣
　
　
【現在地：Ｃ地区　ある日、森の中】

347 名前：マルチアーノ12姉妹 ◆M12sisrIV6 ：2007/11/26(月) 22:29:35

　「よくも、よくも、よくも、よくも、……よくも！」
　
　撃発し、発射し、開放し、装填し、閉鎖される度に言葉が胸を突く。
　胸を突き吐き出される言葉は、銃口から吐き出される弾頭に相似していた。
　言葉は弾頭だった。
　金属の殻を身に纏い、振るう剣に弾かれながらもその幾つかは女の身を穿ち、抉る。
　そうでなくてはならない。
　この女を、ヴィルマを壊（殺）してしまいかねない程に。
　50×2、100の銃弾が途切れる。
　幾千、幾万を越えても胸の内の言葉は途切れることはない。
　スカートの中を手で探り、弾倉を取り出し再装填。
　透明の樹脂に包まれた並列する銃弾（言葉）。
　
　ぱちん、ぱちん、と絶えず弾ける音がする。
　音速を超える銃弾が空気の壁を破る音だ。
　ジュライの頭の上で、右で、左で、足下で。
　その音に耳を傾けてさえいれば、譬え弾雨の中でさえ当たりはしない、という事を知っ
ていた。
　対手は左の一重身、左臂は剣指を結び右片手上段、雷刀と化し地を割く勢を見せる。
　眼前で身を低く下げ右膝を折敷く。
　ヴィルマの用いる武術で言えば『仆歩』と言う姿勢、艶めかしく脚も露わな侭地を払い
薙ぐ。
　赤く色付く蔦の葉が、剣風に因って舞い、微塵と散り。
　さながら赤い花弁の降り注ぐ最中、ジュライの頭上で空気が爆ぜた。
　剣尖を車に回すと柄頭は肘に、花吹雪を切り裂く旋風となり。
　地より伸びる斬撃は二尺三寸の太刀を二丈、三丈とも見せた。
　
　【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】
　

348 名前：三月ウサギ：2007/11/26(月) 22:30:51

>赤頭巾 vs プリマヴェラ

>>342>>343>>344>>345>>346

壮大な森、鬱蒼と茂った森の小道も進むにつれて少しずつ開け、幾分の視界が
開ける広場がそこにはありました。　
広場は中央が少しこんもり盛り上がっていて、そのてっぺんの部分には
棒倒しの棒の様に、一つの立て札が頼りなさげに刺さっているのが分ります。　

なにやらその立て札に、ウサギが1羽、ゆっくりと何かをペンキで書付け
はじめました。汚れやすい仕事にも関わらず、そのウサギはかしこまって　
長帽子に燕尾服、革の服。そんなかしこまった服装で書き始めているのです。　
　
３分も経過した頃でしょうか。ことりと空になったブリキのペンキ缶が倒れます。　
どうやら書付け作業は無事に終ったのでしょう。まっかに染まった刷毛をぶぅんと
放り投げ、自前の看板文字にご満悦の表情で見入っているではありませんか。　
　
なんと書かれているのでしょう。けれど、それは今説明するまでもなく、何処から
ともなく声が響き、すっかり看板の出来栄えについて荒声で突然抗議を始め出した
のです。　

「ふん。ものの分らん輩ばかりだ。『卵』というのはいいかね？元来それは『動詞』と
　して使うのが筋とされているだろう。落下するから注意とは、如何なことかね？
　俺さまの”この頭”の中の深い記憶は女王様の　
　言葉を良く憶えている。つまりだね、ラテン語の非収斂形容詞の───────」

ウサギは一瞬上を見ましたが、直ぐに重たい頭を下に戻しました。　
そして何事もなかった様に白い手で器用に時計を一つ取り出して、不思議な生き物が
喋り続ける時間をチクタクチクタク計っています。　
生き物は生き物で、聞いていようとどうだろうと、そんなの全くお構いなしです。　
そう。声の主はウサギの直ぐ上の木になっている、白色のつやつやした楕円形の生き物
が発していたものだったのです。何故かネクタイを締めたその生き物は、壮年男性の
様な表情で世間に対して苦言を数多、披露し続けているのです。
　
「時計という奴はまったくけしからん。長い針というがね、きっちりと採寸をあわせたとこ───
　
ウサギは時計を閉じました。かたん、と子気味いい音がなったと思うと、長い間使っていなかった
部屋を唐突に空けたときの様な、あの鋭い風が吹いてきたのです。　

349 名前：三月ウサギ：2007/11/26(月) 22:32:14

>赤頭巾 vs プリマヴェラ 　
>>348　

───────あーーーーーーーー。　
　　
なんと恐ろしい！冷蔵庫さえも一呑みしそうな大きな口に、まなこは人の血に染まり、赤。　
猿の様に毛むくじゃらの脚には筍の様な野太い爪が生え、背中には王宮の門と見紛う大きさの
翼が生えた獰猛な生き物がとてつもない勢いで飛んできて、色々口を動かしていた卵を掴み…　
王宮の奥へと捥ぎ去ってしまったではありませんか。
　
「４７億年の悲劇。人の世で孵らぬ卵が熟す時・・・それは女王陛下のオムレットの嗜みの時。　
うめず、ふやせず、途絶えた種族も　こうしてしまえば”巣食われる”」　

しかしウサギは全く冷静そのもの。そんな風に誰にともなく呟きます。　
　　
そこへ二人組みの男と女の子たちが、珍しいことに森の外から歩いてくるのが見えました。　
本当に久しぶりの来客です。久しぶりの、１日の何回目ぶりのお客様でしょうか。
三月ウサギは興味を卵───白色ハンプティ種──から来客に完全に移し変え、視線を横に向けました。　
（ウサギの瞳は草食動物なので広く見えるのですが、一応礼儀というものがあるのです。）　
　
「いいえ違うわイギー。タイターニア様は飽きるまで遊んであげなさいっていったのよ」　

そうこうしている内、女の子の声が大分近づいてきたみたいです。

「飽きる【tired】だと！お高い言い方をする奴だ。いいかね、俺さまの【tie】は女王陛下から下賜されて　
早１日の５０回になる。その間の手入れをこうして欠かさずに行っていればTiredなんていう言葉は出きる
はずがないのだ」

おや、変ですね。この卵は無類の話好きの模様です。連れ去られた卵の後を引き継いで、他の、二番目に
大きな卵が再びしかめっつらで話を義務の様に始めた様子です。
全く見ず知らずの、森の向うから現れたばかりの兄弟にまで説教をはじめる始末だなんて。　
【たまごにつき　とりあつかいちゅうい】の文句も納得が行く気がしませんか？　
　　
そうなのです。ここは本当に卵畑だったのです。この辺り全ての長丸い葉をつけた広葉樹には　
鈴なりにあの、不思議な喋る卵がぞろぞろとなっているのが見えるでしょう。　
森の向うからやってきた兄弟に、そこの番人をしているウサギは慇懃に一つぺこりと礼を致しました。　
　
「近いは　遠い　遠いは　近い　森はあなたの心の帳…ようこそ　おふたり　女王の森へ」
【現在地　C地区　
　ある日森の中　うさぎに出会った　女王の卵園　ウサギに出会った】　

350 名前：“姫” ◆/HIME/HDYY ：2007/11/26(月) 22:33:54

>>341
―――スレイドは、ヒロの突き出した槍代わりの高枝切り鋏をあっけなくその腹に受け入れた。
ただし、自身の加速した肉体によって。
「ああああああああああああああああああッ!!!!」

その叫びの意味は苦痛に非ず。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」

その叫びは、ただ己が命の証明。
ヒロを槍ごと突き飛ばし、姫へと詰め寄り王手（チェックメイト）への渾身の一手を打ち込まんが為に。

だが。
「ふが」
フランドルの投げたガラス瓶が、スレイドの仮面で砕け散る。その内容物を撒き散らしながら。
一本。二本。三本。

内容物の飛沫は、ヒロの頬にも飛んでいた。
「これって……」
指で掬ってぺロリと舐めた。もう一度掬って臭いを一嗅ぎ。
「……これは……灯油！？」

「正しくは灯油と軽油の混合燃料だ。トッピングにロージンバックの中身を加えたがな」
ロージンバックは、先ほどのホームセンターのスポーツ用品コーナーに並んでいたものだ。
ロージンバックの主成分は松脂。松脂は滑り止めとして一般的だが、このように燃料に加えるととてもスリリングな意味を持つ。

「モロトフカクテルを知っているか？ 松脂を加えるだけで、火炎瓶はその燃焼持続力を大幅に高める。
スレイド、情け深い私は既に自分の手札をお前に晒していたのだが気付かなかったか？」

そう、スレイドの炎の魔力を見たあの時にだ。
「これでお前の自慢の炎は使えまい―――砕けた仮面と装甲を通して、お前の肉体に油が染み込んでいるのだからな」

そして姫は、武器を満載したリヤカーから棒状の物を二つ取り出した。
一つは、大振りの斧。いや、鉞と言うべきか。
そしてもう一つは、除草用のポータブルバーナー。
「有効射程距離は本格的な火炎放射器に劣るが―――」

姫の白魚のような細い指先が、
「私がお前を燃やす分には、何の、問題も、無い」

バーナーのスイッチを押し込んだ。

【現在位置：D地区　市街地】

351 名前：『小さなスイートポイズン』メディスン・メランコリー ◆MelancLaI. ：2007/11/26(月) 22:38:25

ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓメディスン・メランコリー
―576年目の森林裁判―

>>335

―――迫る巨大な刃に、メディスンは首を傾げた。
そして、生じた疑問、何が起きているのか、を声に出す間も無く、
彼女が立っていた教壇は破壊の渦に巻き込まれた。



互いの軍隊が消えた後には、守る者も無くなった弱々しい人間が居ただけだったのに。
いきなり、もう一人の、全くの無関係だったはずの少女が敵意を示して何事か呟き、（アレ(・・)は何かしら？）
今度は乙女の方が、人が変わった様に叫んで暴れだし、（毒でも飲んだの？ 私は使ってないはずよ？）

それから、轟音と共に何かが降って来た。道理が通らない、出来事が繋がらない……思考に耽るメディスンには、
黒い塊を剣と認識する暇も無かった。


ジャンヌがその正気(・・)の叫びを挙げた時、教室の中に溢れているはずの霊の姿は無かった。
破壊された人形に憑いていた数十の霊は跡形も無く消えている。

ジャンヌは英霊で、有名過ぎるほど名高く、飛び切りの力も持っている。
大儀を持ち、本来の実力を発揮できる今の乙女ならば、
今や群れで無くなった亡霊の、ちっぽけな憎しみなど、相まみえるだけで吹き飛ぶだろう。

そのジャンヌの憎しみを前にして、彼らが存在できる筈も無い。

メディスンに憑依していた亡霊は唯々恐怖し、
そしてその決死さの為に、その一瞬、茫然としていた人形の体の主になる事が出来た。


メディスンは自分がいつの間にか移動していることに気付く。
また、それまでとは比較にならない力で攻撃された事、それは一度限りでは無いだろう事にも。

レギオンの最後の一欠けが消え失せる。
悪霊は払われ、メディスンに独りになった。



【現在地：Ｄ地区　学校】

352 名前：イグナッツ・ズワクフ：2007/11/26(月) 22:52:48

>>348>>349
　
◆
　
　見なよプリマヴェラ。ベヘリットがいっぱいなっているよ！
　
「きみの悪いことを言わないで、イギー！あれは卵よ。
　りんご掘りをする畑があるぐらいですもの、卵が実っている樹があってもお
かしくは無いわ。だって同じ食べ物じゃ無い。パンが無ければお菓子を食べれ
ばいいのよ！
　……違うわ、イギー。全然違うわ。わたし一体何を言っているのかしら？こ
れも森の影響なのかしら？まあ、いいわ。そんなことよりもいまはウサギさん
に返事を返さなきゃ駄目よ。失礼な子だと思われちゃうわ」
　
　そんな風にぼくを小声で怒鳴りつけると、彼女は短いスカートの裾をつまん
で優雅に一礼をした。
　
「あらご丁寧にありがとう。まっくら森のウサギさん。
　ねえ、うさぎさん。わたしたちアリスを探しているの。この森の始まりの場
所を探しているの。もし知っていたら教えてもらえないかしら？
　あなたのように礼儀正しいウサギさんなら、きっと教えてくれるわよね？」
　
少女（ドール）特有のコケティッシュの媚すら含んだ笑顔で彼女は兎に問いかける。
　
　ウサギが何か答えるより早く、樹になった大きな卵がまた何か難しいことをわめき始めた。
横槍をさされたプリマヴェラの機嫌が、見る見るうちに悪くなった。
　
「もう！わたしはウサギさんと話しているのよ！
少しは黙っていられないのかしら！あなたは卵の癖にうるさいのよ！
あまりおしゃべりが過ぎると、あなたの自慢のベルトで口を縛る【tie】わよ！ 」
　
　顔を赤くし、プリマヴェラがそうわめく。そして大きく深呼吸すると、手団
扇で顔を扇ぎ始めた。
　
「興奮したら暑くなっちゃったわ。わたしの手袋と扇子をとって、頂戴メアリ・アン」
　
それはぼくに言ってるのかなプリマヴェラ？
　
　ぼくは苦笑しながらコートの内ポケットから手袋と扇子を取り出し彼女に手
渡した。
　その手袋はエリザベス２世の即位式にも使われた手のひらにぴったりとフィッ
トするデンツの皮手袋。しかも最新のモデルで、ダーマプラスチックもふんだん
に使われているやつだった。
　扇子のほうは極東の島国の貴族が使っていたといわれる「ヒノキオウ」と呼
ばれるタイプのもので、それで自分を扇ぐプリマヴェラからはエキゾチックな
魅力が溢れていた。
　
◆
　　
　
【現在地：Ｃ地区　大きな卵の木の下で】　

353 名前：スレイド ◆cDCpSlADE. ：2007/11/26(月) 23:10:41

>>350

頭部に当たったガラスが砕け、オイルがぶちまけられた。
炎そのものとなった体に引火する。腐臭を撒き散らしながら体が燃える。

炎が使えない？なぜだ？……無視しろ。

前方よりさらに炎。
体が爆ぜる。吹き飛ぶ。消し飛ぶ。跡形もなく抹消される。

どうってことないさ。無視しろ。

仮面は完全に吹き飛び、醜悪な顔をさらけ出した。
首だけとなった死者が口を大きく開けて吼える。
声も上げずに絶叫し、これで一対一だな、と高笑いする。

仮面を砕かれた？
マグマに突き落とされた？
死んだ？
悪魔の僕になった？
首から下がない？

どれも負ける理由にはならない。野望を諦める理由にもならない。

ここで勝てば問題ない。
姫が言った通り、何の問題も無い。
それどころか命もたらす血を手に入れて、異次元の悪魔の裏をかける。
この新たな弟子を引っさげて、タイタンズを破滅させる事ができる。

全ては、ここから始まる！

鋸のような歯を突きたてて、姫の首筋に首が踊りかかった。


【現在位置：D地区　市街地】

354 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/26(月) 23:24:17

ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓメディスン・メランコリー
―576年目の森林裁判―

>>351

　パーティは続く。
　パーティは続く。

　黒刃の一閃は漆黒の津波でもあった。床を両断すると同時に飢餓の肉は聖剣
から離れ、教室を闇色の泥水で満たす。腐臭を放つ形骸の泉は数秒と経たずに
枯れ果て、アリスの視界には破壊の爪痕だけが残った。
　天井は歪み、床は階下が覗けるほど深い孔が穿たれている。椅子も机も全て
ひっくり返り、黒板は砕け散った。―――教室を教室として成り立たせる一斉
の形骸を、乙女は否定して見せたのだ。
　本来のロングソードに姿を戻した聖剣を鞘に納めると、乙女は鉄靴を鳴らし
てマーガレットに歩み寄る。もう、彼女を守るランカスターの戦士はいない。
　今の彼女は一人っきりだ。ヨーク公エドワードに敗れ、夫と息子を失ったと
きのように。
　地獄の第九圏アンテノーラが、この人形のロンドン塔となるだろう。

「……様子がおかしいわ」
　形骸に佇むマーガレットを見て、アリスは呟く。
「何なのよ……人形の癖に。彼女はいったい何なの」
　
　アリスの逡巡―――救国の道を進み始めた乙女の耳には届かない。マーガレ
ットを目指して、たった一人で進軍する。
　頭痛は和らぐどころが拡大し、全身の皮膚がめくれ上がるかのような痛みを
彼女に与えている。鎧の下では、汗が滝のように流れていた。
　―――急がなければ。

「マルグリット・ダンジュー……あなたを、処刑します」
　
　右手のガンレットが黒鉄の五指を広げて、ゆっくりとマーガレットの首へ迫
った。掌には彫金の刻印〈スペル〉が刻まれている。純魔力が迸れば、空気が
励起を起こして対象を爆焔で包む。地味ながら確実な殺害手段。


【現在地：Ｄ地区　学校】

355 名前：“姫” ◆/HIME/HDYY ：2007/11/26(月) 23:31:32

>>353
燃え上がる戦いの炎。男の意地と誇りが生み出した憤怒の炎。地上に現出せし地獄の炎。
スレイドの魂は、肉体に架せられたあらゆる困難を凌駕していた。

スレイドの首から下は炎に呷られ爆ぜていく。
幾多の戦いを潜り抜けたであろう鎧も。
防弾・防刃・耐熱の三拍子揃ったケブラー製のボディスーツも。
不屈の魂によって磨き鍛えられたであろうその肉体も。

だが、悪魔に魂を売ったのかその首はいまだ健在。
狙うは姫の首筋、王族の血。

「―――だから、最初に言ったはずだ」
しかし、姫は揺らがない。

「私とフランドルの防御陣は、かなり鉄壁だと。そして」
姫の前に躍り出た一つの影。

「血の戦士は、主を守るためにその力を発揮すると」
スレイドの牙を受け止めたのは、その身を投げ出したヒロだった。
「ひ、姫……早く……」

「ふふん―――スレイド、お前の最大の失敗はこの私を狙ったことだ。それも何の予備知識もなしに、だ」
鉞を両手で構えた姫の前に、フランドルが両手を組んで構える。
「ふが」
つまり、自分をジャンプ台にしろということらしい。

「スレイド―――貴様の最期は、せめて派手に決めてやる。感謝するがよい」

助走をつけ、フランドル目掛けてジャンプ。
フランドルの両手が、カタパルトとなって姫を上空へと放り上げられる。
描かれた放物線は、約20mの高さまで姫を運ぶ。

20mの高さが持つ位置エネルギー。　　姫の体重と鉞の総重量。　　地上における重力加速度9.8m/s＾2。
　　　　　　更に鉞を振り下ろすことで生まれる遠心力。　　鉄製の鉞の強度。

全てが集約された、姫の一撃はスレイドを断ち切った。



噛み付かれていたヒロごと。
【現在位置：D地区　市街地】

356 名前：ヴィルマ・ファキーリ：2007/11/26(月) 23:54:23

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
>>347
　
　剣の奥義とは、何を斬れば達せられるか。
　人を斬り、岩を斬り、鉄を斬る。寂莫たる虚空を斬るも良し、月影映える水面を月ごと水ご
と斬るも良し。神や仏なぞも、重ねて二つに出来ればなお宜しい。
　
　
　この少女の剣は――私と等しく――未だ奥義に届いてはいまい。
　だが、十分だった。私を斬るには十分過ぎる妙技だった。
　
　
　天をも征せんばかりに跳ね上がった凄絶剣。――足払いに身を崩され、私はこの密剣を
左腕に受けた。
　切断されてはいない。筋も何とか無事だ。
　だがそれだけだった。この左腕で精妙な頸は、もう練れまい。
　
　後方へ跳ぶ。少しでも体を動かすたびに、あちらこちらで熱い鮮血がしぶいた。
　隠し持った小袋を右袖から滑らせ、剣を握ったままの手で受ける。
　指先で袋の口を明けると、中身の粉状の塊は吸い込まれるように刀身に纏わりつき、その
微細な一粒一粒が棘のごとく林立した。
　砂鉄だ。
　元々が強い磁性を帯びている青柳剣にこれを塗し――
　
　
「……！」
　
　
　声にならぬ気合一声、スナップを利かせて右手を揮う。
　私の膂力に導かれ、大量の砂鉄は剣先より伸びた鉄鞭と化してうねり出したのだ。
　名づけて『青柳無影鞭』。――しかしこの秘技でも、奴らを止めるにはまだ足りない。
　その事を十二分に理解しつつ、私は鞭を操った。
　
　鋼鉄の蛇は荒れ狂う。七縦八横に馳せ、右顧左眄に掛け違い、床や壁、天井を繁茂する
樹木ごと削りながら、我が敵手ら双方へと乱れ飛ぶ。
　狙い定めぬ狂嵐としか見えぬその牙が――慎重に、彼女らの美しい相貌を窺っていると
誰が知ろう？
　
　
【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】
　

357 名前：三月ウサギ：2007/11/27(火) 00:00:19

>赤頭巾 vs プリマヴェラ 　

>>352 　　
　
「勿論ですとも、お嬢さま。丸く麗しの尾にかけて。
　かの黒ウサギの面前と、変わらぬ言葉でお答えしましょう」

何処かの貴族の令嬢でしょうか。正しい言葉使いに、教育ある身のこなし。　
森を彷徨うに似つかわしくないその有様に誰もが溜息をもらしそうです。　
ウサギはだから、答えました。　
細い目をより細く、そのまま続けてしまえば潰れてしまうほどにほそぼそと
目をしばたかせて答えました。　
　
そんな態度に黙っていられないのが、卵の習性なのです。　
これは仕方がありません。有精卵というものは、時々左右に揺する（転卵、といいます）
をしなければ只でさえコチコチの体が、中身までも凍り付いてしまうようになって
しまうのですから。だから、時々喋って世話しなくしたがるのです。　
　
「ふん。俺さまの言葉の通りが【Belled】に繋がる（tied)なことに気がついたかね。　
　つまりだ、俺さまは口が回る。そうするとお前さんがたの様な小娘にさえ、”もの”
　をきちりと教える分別というものが生まれてくるのだよ。森の始まりについても　
　
【も】。その子音と母音が分たれる僅かな隙間というものを皆さんは聞いたことが
果たしてあったでしょうか。木漏れ日にさえ気を遣う貴族主義の少女が、卵の言葉
に愛想を尽かし、相手にしなくなったのとその時間は殆ど同じでした。　
　
河の水が大きく海と交わる場所の様な激しい風が、森の波止場とも言えるこの場所に
再び吹いてきたのです。それはやはり黒い獣…燃える瞳に蛇の首。鰐の尾を持つ　
ジャバウォックの飛来を告げるものでした。　
こうなってはさしものお喋りハンプティでさえ、一溜りもありません。　
体を掴まれ蔕を抜き、哀れ叫びを残して連れ去られてしまいます。　
　
その時ウサギは髭を整えるのに一生懸命で、何食わぬ顔をしておりました。　
そして嵐が収まるのを待ってこう告げたのです。　
　
「近いは遠い　深いは　浅い　
今宵のイドは墓場のペルソナ　はじまりは　いつも　夢の　おわり」 　
　
うさぎはその手を翳しました。その手には金色まばゆい懐中時計。　
はりはぐるぐるぐるぐる逆周り。木漏れ日をうけてまわる時計はぎゃくまわり。　
けれども彫られた日付は変わらずに、常に同じの「3月32日」だけ。　
優美なセンスと懐中時計。ふたつが丁度、その高さが同じ位に掲げられたとき。　
　
紡錘丈の鉛弾が一層つぶれて尾を引く速さで、時計めがけて突き進み　
時計を壊して尚も突き進み、乙女の胸へと進んでまいったのでした。
　
【現在地　大きな卵の木の下で　なかよく喧嘩しな】

358 名前：パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU ：2007/11/27(火) 00:10:59

鮫の例にもれず、この少女もしつこい様だ。丸焼きの黒こげ（ウェルダン）にもめげず喰らい付いてくる。
もれ出る声からすると、末尾に「の様な何か」をつける必要がありそうだ。
パチュリーは暢気にそんな事を思った。
さらに遠距離からは、下品な家鴨（ダック）が股間の何かを彼女に向けている。
家鴨というよりはもはや唯の変質者だ。
パチュリーはぼんやりとそんな事を思った。
想いとは裏腹に。
口は回る。舌は呟く。詠唱は持続する。

「疲弊せよ、鋼（Metal Fatigue）」

紡ぎだされるは錆色の呪詛。
彼女が行使する術の内の一つ、金符。その原初の形。
全ての鋼が逃れえぬ崩壊への調べ。
その調べは
→鮫の開いた口を塞がらなくさせ（・・・・・・・・・・・・）、
→家鴨の撒き散らした鉛弾を心地悪いシャワーと化し（・・・・・・・・・・・）、
→魔女の受ける被害を零と化す。

その全てを確認する前に、パチュリーは軽いステップを踏んでいた。
彼女の友人たるレミリアほど優雅とはいかないが……パチュリーは友人のような貴族ではない……それでも鮫の機動からは逃れられる。
顎が外れていようと、人や人以外と衝突するのは趣味ではない。
鉛のシャワー、文字通りの意味で、に顔をしかめ、全周に防御結界をめぐらす。パラパラと気の抜けた効果音。

次に目に入ったのは、炎を撒き散らすフラミンゴ。ワイヤーを撒き散らす子守（ナニー）。
ワイヤーは彼女に当たる軌道を取っていない。
さし当たって向かってくる炎に水の呪文を唱え、威力を減ずる……前に。
未知の衝撃が彼女を襲い、彼女はパーラーカーから吹き飛ばされた。

359 名前：パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU ：2007/11/27(火) 00:12:19

>>358

>>292>>293>>330

【現在地：ハイウェイ】

360 名前：―完全で瀟洒な従者― 十六夜咲夜 ◆Clock/PR2Y ：2007/11/27(火) 00:21:59

>>293>>330>>358
　
　
　クリスタルのシャワー。浴びればたちまち真っ赤になりそう。
　適温を守りましょう。熱過ぎては健康に良くない。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　こんなに寒い季節にアナタはなにを思うの？
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　温かい、温かい水が欲しいです。
　
　レディを誘うにはクリスタルだけでは不足？
　だからってクリスタルとシルバーの相性はどうかしら？
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そんな些細な願いに僕はなにが出来るかな？
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ほんの些細な慈悲をいただければ結構です。
　
　アメジスト、パール、ダイアモンド、サファイヤ。
　それだけ重ねても足りないのよねえ。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　それなら僕のロッジへ行こう。暖炉もあるしベットもある。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いえいえそこまでしていただくのは。
　
　ガーネット？
　いいえ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　それならカフェで一杯？
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　赤　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　それでも重いです。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　色　
　ムーンストーン？　　　　　　　　　　　　　　の
　いいえ。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　宝　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　石　　　　　　　　　　　　　　　　　　　それならこの硬貨を。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　を　　　　　　　　　　　　　　　　　　結構ですわ紳士様。
　
　ルビー？
　イエス。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　では何を？
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　紅魂（ルビー）を。

361 名前：―完全で瀟洒な従者― 十六夜咲夜 ◆Clock/PR2Y ：2007/11/27(火) 00:23:29

>>360
　

　止まった時間の中で優雅にダンス。パートナーの不在はいただけない。
　レディを待たせるなんて男としては失格ね。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　減点２。
　
　大体なんだか気色が悪いのよ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　減点３。
　掃除の手間を増やしてくれたのは最悪を通り越して嫌がらせだと思う。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　減点８３。
　
　折角お茶の準備をしていたのに台無しになった。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　減点５。
　
　パチュリー様の服が汚れた。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　減点６。
　
　
　
　
　
　お嬢さまに汚い手で触れた。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　減点１。
　
　
　
　
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　（コインの没収は万全？）
　　　　　　　　「夜の始まりよ」
　「さあ――」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「死に物狂いで踊りなさいな」
　　　　　　　　（夜の終わりよ）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　「コインの準備は万端？」
　
　
　華麗なステップを踏みなさい。
　銀の雨の中で。
　少しでも遅れたなら――無様に果てなさい。

362 名前：イグナッツ・ズワクフ：2007/11/27(火) 00:39:50

赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>357
　
♠
　
　プリマヴェラ！
　
　とっさにスーツケースの陰に隠れながら、ぼくは彼女に向かって呼びかけた。
　
「大丈夫よ、イギー。」
　
　思いのほか落ち着いた声で、プリマヴェラが答える。
　
　――――良かった、彼女は無事だ。
　
　スーツケースの陰に隠れたまま彼女のほうに眼を向けると、彼女は大きく開
いた扇を顔から胸の上にかけてかざし、その陰から森のほうを睨みつけていた。
　
　みれば彼女の手にした強化チタン製の檜扇には、一筋の真新しい傷が流れて
いた。状況から判断すると、おそらく狙撃されたのだろう。それを彼女は手に
した扇を使って、角度をつけて受け流したのだ。
　
　１ｋｍ以内ならば、銃声は銃弾よりも標的に対し早く届く。
　その先に届いた銃声を聞いてプリマヴェラはとっさに反応したのだろう。
　
　――――デッドガールの能力には、これだからいつも驚かされる。
　
　安堵と驚愕と、そしてほんのわずかな苦々しさを含んだ思い。
　
　彼女はまずウサギを向くと、低く抑えた声で話し始めた。
　
「後でじっくり（・・・・）話をしましょう？あなたには色々と聞きたいことがあるのよ。
いまのことも含めてね。ぜんぶ答えるまでお家には帰さないわ」
　
　そういって鋭い犬歯をむき出しにして壮絶な笑顔を見せる。
　ついで彼女は銃声のした方へと、森の奥へと向き直る。
　
「でていらっしゃい猟師さん。わたしが狼の毛皮を着てるからって、獲物と間
違えたなんていっても信じないわ。
　はやく出て来ないとわたしからいくわよ。その時は絶対に許してあげないわ。
わたし、いまとても機嫌が悪いのよ」
　
　言いながら彼女はコートのポケットに入れた手を抜き出した。
　そこには食事用の何の変哲も無い２本のナイフ。
　それをプリマヴェラは振りかぶりもせずに投げた、いや射出した（・・・・）
　
　自動人形（ヴァンパイア）の器械仕掛けの体が生み出すパワーと、
カルティエ人形（リリム）の量子の魔法の生み出す歪んだ奇跡。
　
　そのふたつの加護を受け、ナイフは銃弾にも勝る勢いで、森の中へと消えていった。
　
♠
　
　
【現在地：Ｃ地区　ポケットを叩くとナイフがふたつ】　

363 名前：『小さなスイートポイズン』メディスン・メランコリー ◆MelancLaI. ：2007/11/27(火) 01:09:33

ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓメディスン・メランコリー
―576年目の森林裁判―

>>354

ジャンヌの処刑宣言が響いても、メディスンは座り込んだまま動かない。
乙女は躊躇う事無く確実な死を近づけていく。そこは先ほどから、ある(・・)香りが漂っていた。

破滅の手がメディスンを掴む寸前になって、ようやく彼女は面を上げる。
そこには死の恐怖や敗北の悔しさでは無く、笑顔があった。

「やっと解った。私がしていたこと、貴方がしたこと、他にもいろいろ。」

それは……壇上で人形に教えを説いていた時のものと同じ。

「……貴方は、一番恐ろしい毒が何か判る？」

毒の躰を持つ人間の罪深さと、人形の生の純粋さについての演説、
あの考えは元々メディスンのもので、彼女は最初からそれを信仰していた。
亡霊達はそれに乗っかっただけ……そして今もメディスンの大儀は失われていない。

「それは微量な、それと気付かない毒。」

信仰心は、人間全てを救う奇跡の薬だと信じられている。
それが時々、人を殺すことがあっても。
メディスンが知った事実は、心に作用する劇薬だという事。

「僅かずつだから、警戒もされずに躰に回るの。そしてゆっくりと蝕んでいく。」

二人は知る由も無い事だが、メディスンの能力は毒を操るもので、
人形を操るより、人間(・・)を操るほうがずっと得意である。

「……そうだ、鈴蘭は毒を持つ事、知ってた？ その毒は心に効く毒なの。」

身体の不調が毒の回りを速め、効果を増大させるのは常識と言っていい。
乙女はもう随分、人形が纏う鈴蘭の香りに曝されている。

「それは胸を苦しくさせ心を縛る、憂鬱の毒(・・・・)。」

回り始めたその毒は、乙女から意思の力を、信じる力を失わせていくだろう。
信仰心で無理に動いていた乙女からそれが失われたなら……。

「毒で死ねるなんて幸せね。羨ましいわ。だって、綺麗なまま死ねるのよ？」

最後の仕上げとばかりにメディスンは、今度は自らジャンヌへと近づく。
乙女の命を奪うのに十分な毒を流し込むために。
そして、その面に手をかけて向き直らせると、そのまま唇を重ねる(・・・・・・・・・)。



【現在地：Ｄ地区　学校】

364 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/11/27(火) 01:23:59

>>146>>147>>148
　>>149>>150>>151
>>154>>155>>156
>>185>>186>>188
　>>189
>>191>>192>>196>>197>>201
　>>245>>246
>>248>>273>>275
　>>292>>293
>>330>>358>>359>>360>>361




　衝突＋同時に更なる衝撃＝車体のハーフ・スピン。
　フリント／コントロールを喪失した車体を立て直す／最終的な接触時間は数秒。
　押しつぶしは失敗―――パーラーカー＝未だ健在。ブランドマンの火炎放射／腐食性の
ガス／大型トレーラーのタックルにも耐え切る偉大な防御性能。ただし外見は無残に半壊。


　サイドミラー／コンテナにめりこんで転げ落ちるホーニー／糸の切れた人形のように遠
ざかる滑稽な姿＝両方の角が折れてちょうど良いバランスに。表情は更なる怒り。

　サイドミラー／吹き飛ばされるホッパー／胸の装甲に打撃／五条の爪跡／少女の一撃／
ホッパー以上の“引っ掻き魔(スクラッチャー)”＝コンテナに鉤爪を引っ掛けてぎりぎりぶら下がる屈辱。

　サイドミラー／シェイキーの電撃ワイヤーが綺麗に切断／ラバーマンのガスが雲散霧消。
全て少女が巻き起こした暴風の結果＝支援攻撃の無効化＋シェイキーの鏃が半減。




　更なる脅威と打撃―――フリントの視界／突然出現したナイフを捉える。
　行動／とっさに伏せる／頭上をナイフが数本通り過ぎる／助手席側の窓に突き刺さる。
　予兆無き襲撃―――どうやって？
　疑問符と同時に鋼を打ち据える衝撃音＝サイドミラーの中継映像／ほぼ全身にナイフを
食らって吹き飛ばされるローチー／再び転倒するスパンカー。

「まってええええええええ！！　おかあああああああああさん！！」
　ローチー、注射針を突き立てる／コンテナを貫通／そのままゴキブリのように壁へ張り
つく／かさかさと蓋を閉めた第一コンテナの上へ逃走／細い血の帯が移動の痕跡を記す。

「ブルブル！！　ブルブル！！」
　スパンカー、立ち上がって加速／エンジンにダメージ／速度上がらず／跳躍／鉄の鞭を
コンテナに刺さったナイフへ絡み付ける／遠心力でコンテナ上に退避。

365 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/11/27(火) 01:24:53

>>146>>147>>148
　>>149>>150>>151
>>154>>155>>156
>>185>>186>>188
　>>189
>>191>>192>>196>>197>>201
　>>245>>246
>>248>>273>>275
　>>292>>293
>>330>>358>>359>>360>>361
　>>364



　さらに後方―――ダッキーの弾丸の無効化／リッキーの戦闘不能＝突然の金属疲労＋崩
壊による正体不明にして致命的なダメージ。戦力減少／機動力は維持。


　想像以上のタフネス＋アタッカー＝最大の脅威。
　今までに無い状況―――カトル・カールの苦戦。
　フリントの思考／打開方法／闇の中で見えず。




　轟音／「マンマ、マンマ！！　キエエエエエエエエエエエエエエエエ！！」／ベイビー
ヘッドの叫び／サイドミラーの鏡像／赤い悪魔を捕縛／“首絞め(ハング)”した姿。
　右腕／左腕／胸に無数のナイフ。引き裂かれた皮膚から骨と筋肉と正体不明の内臓が露
出＝零れ落ちている―――修復／時間を巻き戻すようにナイフが抜けてもとの姿へ／左腕
からはみ出た大腸がぶつりとアスファルトへ零れ落ちる。

　さらにサイドミラーのドラマ／パーラーカーから転げ落ちる文学少女／シェイキーのワ
イヤーによる打撃。アスファルトの上を跳ねる／何かクッションが挟まっているような奇
怪な運動。電撃による一時的な行動不能と算定。

　―――分断／分段／分団による各個撃破可能。

　フリントの判断―――コンソールを操作／三台のコンテナを直列状態でロック／合わせ
アクセルを踏み込む／加速／さらにグラスカバーで封印されていたスイッチを開き、押す。

　最後部のコンテナから吹き上がる水平の噴火。
　ロケットエンジンの点火＝更なる加速。

　最高の加速度を得て植物と入り混じったアスファルトを踏み砕きながら軌道に乗る。
　目的―――敵戦力の分断＋目標地点への早期到達＝あらゆる障害に先回り出来るならば
圧倒的なイニシアチブの取得。




　同時にフォーメーション／コンビネーションを変更。

　リッキー、ダッキーのツー・マン・セル＝高速移動と範囲迫撃。
　目標―――フレンチ・メイド。
　ナイフごと貫く散弾の束＋回避能力。

　ホーニー、ブランドマンのツー・マン・セル＝突撃能力と持続範囲攻撃。
　目標―――正体不明のネグリジェ娘＋宙に浮かぶ本。
　高速での接近と突撃＋消火不能の火炎放射。

　ポイズンスター、ホッパー、スパンカー、ベイビーヘッド、シェイキー、ローチー。
　そしてフリントのチーム―――いずれも優れた拷問官／傭兵。
　目標―――捕縛した蝙蝠少女の殲滅。
　猛毒／鉤爪／鞭／首絞め／電撃／針／そして最新式の石器(フリント)。
　最大戦力による包囲攻撃。




　水平に加速するロケット＝トレーラー。パーラーカーを突き放す。
　その軌道の先―――森に覆われた研究所。
　爆弾が爆心地(グラウンド・ゼロ)を作り出すイメージ／“森”源地への突入。




【現在位置／ハイウェイ／Ｃ地区へ接近中】

366 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/11/27(火) 01:39:30

>>325

「……どう、して？」

それが彼女の、最期の言葉だった。
黒田光。
私のことを、最後まで友達と信じていた彼女。

私に足を刺されても。
私に肩を斬られても。
最後に、その胸にこの包丁を突きたてる、その瞬間にも。

彼女の目には、驚愕、恐怖こそあっても、怒りはなかった。
まるで、それが不条理な事故であるかのように感じているかのように。
ああ、そうか。
彼女は、私のことを友人だと思っていたからか。

「本当、バカなんだから」

彼女だけではない。
甘露寺七海も、加藤乙女も、誰もが私のことを「友人」だと思い込んでいた。
確かに、そう誤解されるのは仕方ないかもしれない。
私は、クラスでは「友達の多いリーダー格」と思われていた、いや、思わせていたんだから。
けれど、

「やっぱり、バカ」

彼女達が犯したミスはただ一つ、「使えなかった」。
それだけだ。
桂言葉をいじめろ、身を引かせろ、学校に来なくなっても構わない。
そう暗に誘導し、唆し、その通りに行動したのに、桂言葉はそれでも誠につきまとった。
本当に、使えない、駄目な連中。

そのせいで、私がこんな、罪を被った穢れた存在にさせられてしまった。
私を穢したのは、こいつらの罪だ。
だから、その罪は償わせなくてはいけない。当然のことだ。
それが友達面をして、――嫌になる。
私の友達は、私を本当に分かってくれるのは、ただ一人、

「……刹、那」

その名前を口にした瞬間、なぜか涙があふれてきた。
しばらく忘れていた、涙。
誠を殺した時から、どこかに消えてしまっていた涙が、溢れてきて止まらない。
清浦刹那、昔からの私の、唯一の理解者、本当の親友。
私を残して、パリに去ってしまった、私の分身。
あなたならこの辛さ、分かってくれる？
いつものように、そっとなぐさめてくれる？

「刹那、会いたい、会いたいよ……」

私はいつまでも、涙を流し続けていた。

367 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/11/27(火) 01:40:29

>>366
「うーん、厳しいかなあ、やっぱり」

脇に止められた車を前に、私は唸っていた。
ここの住民達も、半数以上が模範的避難民だったらしい。
車の多くは窓も全開、キーも差しっぱなしだ。
しかも、オートマチック車もたくさんある。
これなら、ひょっとしたら私でも――

「ねえ、お姉ちゃん。お車で逃げられないの？」
「ううん……ちょっと、危ないかなあ。私、車の運転ってしたことないんだ。
　怖いお兄さんに殺される前に、事故で死んじゃったらどうしようもないしね」
　
不安そうに尋ねるミクに答えながら、私は内心苛立たしく感じる。
私はそんなくだらないことを考えているわけじゃない。
車を使えばあるいは、あの怪物を轢き殺せないか、そう考えているんだから。
相手はこんな可憐な少女を付けねらう化物、何の遠慮も要らない。

とは言え、相手の運動能力を考えると、あっさり避けそうで怖い。
そうなったら私の運転じゃおしまいだ、二度はない。
やっぱり根本的に火力が……いや、ひょっとしたらこの手なら……

「ねえ、お姉ちゃん、お姉ちゃん！」
「うるさい！　少し静かにしなさい！」

私の初めて見せる怒鳴り声に、ミクは背中をふるわせる。
全く、こういう子供を連れてる方が警戒心を解かれる、同情をもらえる、
ただそれだけの理由で連れてきたのに、最近は調子に乗ってきたようだ。

まったく、自分を何様だと思っているのか。
自分が足手まといになってるとさえ、まだ気づいていない。
もう時間はない。
現に、炊き出し部隊は今もあっさり殺され――あ、おばさんが死んだ。
あの年寄りも頑張ってるけど、あ、やっぱり殺された。
本当に役立たずの愚図ばかり……

……役立たず？
なんだ、なんでこんなことに気づかなかったんだろう。
黒田光の時から、役立たずはそれだけで罪、そう知っていたはずなのに。
そして、今の私ならもう一つ、雑魚の役立て方も知っている。

「ねえ、ミク、怒ってごめん」

私は、彼女の目線にまで腰を落として、優しく語りかける。

「ねえ、ミクも分かってるよね。みんなが、私達を助けるために頑張ってくれてるって。
　私達は、それにこたえる義務がある。今度は、私達がみんなを助ける番。
　言ってること、わかる？」
「そんなこと、できるの？」

目を純粋無垢に見開くミク。計画通りの反応。

「うん、でも、そのためにはミクの助けがいるんだ。
　いい、この通りの建物にも、中には人がいるものもあると思うんだ。
　でも、その人達は、あんな怖いお兄さんが来たこと、気づいてない。
　だから、ミクが大声で『助けてー』ってあのお兄さんの方に走って行って叫べば、
　近くの人達は危ないな、って気づいて逃げることが出来る。
　ミクが、みんなを助けられるんだよ？」

私の言葉に、ミクはキラキラと目を輝かせる。
みんなを救う救世主。
正義のヒロイン。
何度も絵本で、テレビで、見せられた主人公に、今なれる。
そんな興奮が、恐怖を押し込める。

「分かった、行ってくる！」
「あ、待って、ミク」

たがを外したバネのように飛び出しかけたミクを、私は引き止める。
私が羽織っていた茶色のコート、それを彼女の身体にやさしくかけてあげる。

「寒いんだから、風邪だって引いちゃダメだよ。
　元気で、三人で日本に帰るんだからね」
「うん！！」

前からひそかに憧れていたらしい、私のコート。
それをもらって勇気百倍、純粋無垢な正義を胸に、私より少し小さい少女は飛び出していった。

368 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/11/27(火) 01:41:42

>>367
「さよなら」

彼女が遠ざかるにつれて、私は小さく呟く。
あんな少女が助けて、なんて叫んだところで、所詮助けに出てくるのは数人。
バカバカしい。犠牲者を増やすだけだ。

本当の意味は、もちろん彼女に言ったようなものじゃない。
あれは――囮だ。

たとえ数人程度のものだろうと、人ごみの中央に「茶色のコートの少女」。
体型は違うが、遠目にならまあ、多少は誤魔化せるだろう。
もしあの化物が本当に私を狙っているなら、まず間違いなく何か意識したアクションを起こす。
彼女は、「あの『吸血鬼』の目的は私」という直感を確認するためのものにすぎない。

始末する手間を省け、かつちょっとした情報収集にもなる。
まあ、せっかくお気に入りのコートまで犠牲にしたんだ、ちょっとくらいは役に立ってもらわないと困る。
それにしても、私は、なんて頭がいいんだろう。
ここまで思い通りに行くなんて――！


『おーい、誰かいるかー！』

遠くから、訛りの強い英語が聞こえてくる。
さっき送ったメールが、助けを釣り上げてくれたらしい。
声から聞くと男が二人、正直たいした戦力ではないが、それでもないよりはマシだ。

「よかったねリン、助かったよ。強い味方が、助けに来てくれたんだよ？
　さ、行こう？」

脇の少女にそう言って、その手を引く。
だが、彼女は首をふるふると横に振るばかりで、動こうとしない。
ああもう、なんて面倒。

「ミクちゃんのこと心配してるの？
　大丈夫、すぐに戻って来るって」

なのに、ふるふると。
彼女はまだ首を振っている。
ああ、イライラする。

「じゃ、何が不満なのよ！？」

多少強い詰問口調でなじると、彼女はおもむろに口を開き、










「お姉ちゃんが『吸血鬼』なんだよね」、と言った。

【現在地　B地区「繁華街」】

369 名前：◆kYsrWORLDo ：2007/11/27(火) 01:53:34

有里湊ｖｓＤＩＯ

　ＤＩＯの世界／
　　　　　　 .／Burn my――
　
　
　
　エンヤ婆。
　つまり、全ての魂の意味は僅か２２枚の暗示に集約されるというのか？
　数千万、数億の、あるいはそれ以上の命が２２枚に大別出来るのか？

　　　　愚者、魔術師、女教皇、女帝、皇帝、法王、恋人、戦車、正義、隠者、運命の輪、
　　　　力、吊された男、死神、節制、悪魔、塔、星、月、太陽、審判、そして、世界。
　　　　別たれた２２の可能性、例えば愚者は何処まで行っても愚者、戦車は何処まで極
　　　　めても別のものにはなれませぬ。各々が持つ「可能性」は引き出せても別の「可
　　　　能性」への垣根は越えられないということですじゃ。

　ふむ、つまりはこういうことなのか？
　「料理人には料理人の役目があり、料理人以外にはなれない」と。

　　　　その通りですじゃ、ＤＩＯ様。そして、ＤＩＯ様の暗示は「世界（ザ・ワールド）」。
　　　　この世の王たる運命をお持ちになっていなさる。

　では、もうひとつ聞きたい。２２に分類される魂はそれこそ無数に存在
　しよう。中には私の「世界（ザ・ワールド）」と同じ暗示を持つ者もいよう。
　王が複数居るということは不自然ではないかね？

　　　　あくまで「可能性」の話。「王たる可能性」を持っていても、開花せずに消える者が
　　　　殆どといえましょう。そのようなものは王ではないッ！　ＤＩＯ様はその「時を止める
　　　　能力」により、既に「王たる可能性」を開花しておられるッ！
　　　
　成る程。しかし「王たる可能性」を持ち、それが発現した者は少数では
　あるがこの世に存在する事はありえるな？　この場合はどうなるのか？

　　　　運命がそれらの者同士を引き寄せましょう。それらが激突し、残るのは「王の中の
　　　　王」がただ一人ですじゃ。そして、真の王とはＤＩＯ様の事に他ならないッ！
　
　
　
　（１９８Ｘ年　エジプトにて　エンヤ婆との会話より）
　
　
　　

370 名前：◆kYsrWORLDo ：2007/11/27(火) 01:54:11

　　　
　　　
　　　
　ブッチ、全ての魂が向かうべきは「天国」なんだ。
　魂の「力」も必ず進化するはずさ。本当の幸福がそこにあるはずなんだ。
　
　　　　ＤＩＯ、言いたい事は分かるんだが、問題はその「天国への行き方」だな。君はそれ
　　　　を求めて、研究しているのだろう？
　
　大分、分かって来たよ。必要なものはわたしの『世界（ザ・ワールド）』
　わたしのスタンドの先こそが、人間がさらに先に進むべき道なんだ。
　しかし、それだけではまだ色々と足りない様だ。
　　　
　　　　一体何が足りないんだい？　ＤＩＯは王だ。王たるＤＩＯが持ち得ないものなどは、
　　　　そうは多くないとは思うのだがね。
　
　必要なのは「頂点」そして「覚悟」さ。全てを踏破し、わたしは「頂点」に
　立たねばならない。わたしは高みに立ってはいるが、未だ「頂点」には
　いないんだよ、ブッチ。

　　　　君が前から言っている乗り越えるべき「ジョースター」の血統かい？　「ジョースター」
　　　　の血統を断った時に「頂点」に君は立てるのか？

　それは絶対に必要な事ではあるが、まだ足りない。わたしは出会いを求め
　ていると君と最初に会った時に言ったな。私は、求めているんだ、王たる
　可能性に目覚めた者との出会いを。その出会いで、わたしは「頂点」から
　「天国」への階段を自らの「覚悟」により踏み出すんだ。
　
　
　
　
　そう、真の勝利者とは、「天国」を見た者の事だ…………。
　どんな犠牲を払っても、わたしはそこへ行く。


　（１９８Ｘ年　エジプトにて　エンリコ・ブッチとの会話より）
　　
　　
　　　　　　　　　

371 名前：◆YTFOOL/P3. ：2007/11/27(火) 01:56:42

>>370
　
「――やあ、久しぶり。元気だった？　ははっ、相変わらずだね、君は。もう直ぐ終わりが来ると君に伝えて
どれくらいの月日が経ったんだろうね？ あの一年間は、君が最も生き生きとしていて、眩しくて、僕は――
僕はね、羨ましくて仕方がなかったんだ。――うん、そう。嫉妬だ。僕はね、告死の使者だっただろ？　そう
は見えなかった？　仕方ないじゃないか。君の使われていなかったような部分……つまりは、君の中に居た
からこそ、あんなに人間臭い事が出来たんだから。笑ったり、怒ったり、時には泣いたり。ジュンペーにはよ
く笑わせてもらったよ。今思い出しても笑えるんだ。笑顔がどんな表情なのか、僕は僕自身の顔を見れない
からよく思い出せはしないけれど……ここには鏡もないしね。でもね、記憶は色褪せてしまうかも知れないけ
れど、確かに僕の胸の中に大切に仕舞い込んである。君と共有した時間だって、確かにあったんだ。どんな
時に、どんな言葉で、どんな状況で、細部は薄れてしまっても、生まれた絆の中で怒った事はかけがえのな
い僕の宝物だ。――うん、そうだね。寂しい。君の友達には振られ続けたし、アイギスには容赦なくダメ出しさ
れてへこんだりもした。良い思い出ばかりじゃないよ。悲しい思いでも、ある。―-それでもさ、あの時生きてい
た「今」は――もう過去の出来事だけど――とっても大切だ。君だってそうだろ？――あ、なに？　照れ隠し？
まったく、本当に、変わらないね。君は。――っと、世間話をしにきたんじゃないんだ。ねえ、君はなにかがおか
しいと、そうは思わない？　今までまったく音信不通だった僕が、そもそも君が封じてる筈の僕がこんな所に居
る事を。長いようで短い時間が過ぎたよ。ここは時間の流れすら曖昧だからね。明りも月が照らす光だけだか
ら余計に時間が判らなくなる。――茶化さないで。僕は割と真剣に話をしているんだから。ああ、でも――そも
そも、ここには時間って云う概念が……ああ、それはともかく。長いようで、短い短い時間が過ぎた。君が封印
になっているモノにとっても。それに触れようとする悪意は、その短い時間の中でも減る事はない。むしろ増え
ている。君はよく頑張っている。頑張っているけど――それに触れようとする悪意は消える事はない。そして―
―それ以外のモノ。それに触れようとする者も後を絶たない。君が封じているそれよりも、もっと醜悪で最悪と
形容しても良いようなモノの蓋が開かれようとしている。僕が言うのもなんだけどね、君と君の仲間が守った世
界は、最悪の方向へ進んでいるよ。君が辿り着いた命の答えは、そんな終着点を望んだのかな？――僕はね、
そうは思えないんだ。君はね、確かにあの時、仲間の中で笑っていた。僕はそれを見て、羨ましいと思った。世
界はこんなに綺麗で尊いものなんだと思った。だから約束された滅びをなにも知らずに過ごす方法を提案した
んだ。絶望の淵で笑い合う世界、そんな悲しい世界で皆が生きているのを見てしまうのは辛いから――僕の意
思が薄れていって、そんな感傷は忘れてしまうとしても、あの時の僕は、嘘じゃなかったから。君という人間の力
があったから、あの世界を尊いと思えたんだ。――なにを云いたいか判らない？　そうかもしれないね。僕自身、
あんまり上手に纏められそうにもなくてね。もう少しだけ我慢してくれないかな。僕にとっても久しぶりのお喋りな
んだ。初めての友達との、ね。で、どこまで話したんだったかな。ああ、そうだ。最悪で醜悪な思想が、一つの終
わりを告げようとしている。なにも知らずに終わる滅び方なんてない。誰もが絶望し、悲歎に呉れ、どうしようもな
い終わりを迎えようとしている。それは人以外のものだ。終わらない夢を見続ける一人の少女の詩なのかも知れ
ないね。でも――それは最悪だ。もはや誰もそれを望んじゃいない。楽しいゲームも、ずっとそればかりなら誰も
が飽きてしまう。飽きてしまうのに、少女はそれを続けなくちゃならない。しかもね――そのゲームは決して楽しい
ものじゃない。楽しくもないのに続けて、傷付いて、苦しんで。仲間も居ない一人ぼっちの少女が、なにも知らない
ままゲームを続けるんだ――。それはきっと、悲しい事だよ。――君が封じているものとの関係？　君が守ってい
るのは、あくまで人の悪意だ。僕が中に居たとはいえ、君は普通の人間だろ？ だから、人間の事は理解できても
―-確かにそうだよ。他者と己の共有なんて夢物語だと思うけどね。僕はロマンティックなお話が好きなんだよ。ラ
ヴストーリーは人間が作った最高傑作だと思うよ―-ああ、もう、話の腰をすぐに折るんだから。君も久しぶりに喋
るからかな？　それはおいといて、人が理解できるのは、あくまで人が理解できるものだけだ。それ以上の意思だ
とか、次元の違うものを理解は出来ない。君の封じているそれがまさしくそうだろ？　君が封じているのはあくまで
それに触れようとする人の悪意だ。それ自身を封じ込めているわけじゃない。それはただね――今のところは眠り
についてるだけ。呼びかけがあれば目を覚ましてしまう、不安定な状況なんだよ。残念な事にね。――呼び掛け
があれば、起きてしまうんだ。わかるよね？　それが、僕がここにいる理由。そして、君に話しかけている理由。君
の努力、喜び、別れ、悲しみ――全てがね、無駄に、なってしまったんだ。僕もね、こんなに短い時間で、そんな
事は起こる筈がないと、そう思っていたんだ。少なくとも君の仲間達が穏やかな日常を満喫して、安らかに命の答
えに辿り着くと、そう思っていたんだ。そうして、彼や彼女達の子供も、その子供も――ずっと平穏な状況はありえ
ない。それでも危うい均衡で、それを起こす可能性は低いと、目処をつけてはいたんだけどね。まさかこんなに早
く、とは思わなかった。君は十年二十年と感じていたかもしれないけれど、外では一年も経っていない。君達が勇
気ある決断をしたあの日から考えても、一年も経っていない。君が答えに辿り着いた日からだと、半年とちょっとだ。
人の悪意が少女を呼んだのかもしれない。それでも、少なくとも――僕は信じたくないんだ。人が滅びを望むなん
てね。――で、モノは相談なんだけどさ。もう、それが起きるのは確約されていると言ってしまっても良い。君がど
れだけ頑張ったとしても、約束されてしまっている。だからまた、僕は告死の使者として外に出なくちゃならない。
滅びの意思に溢れた場所にね。でも、もしかすれば今回の滅びは抑えられるかもしれない。もしかすると、君の封
じているそれすらも、抑える事が出来るかもだ。分の悪い賭けだけど――乗ってみる？」

372 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/27(火) 01:58:03

>>371

「――どうでもいい。それで済ませば楽なんだろうね」
「かもしれないね。君は熱血漢でもなければ正義の味方でもない。流れに身を任せるタイプだ。それでも、何故
だか闘いたがる。僕に触れすぎた所為かな？　理不尽なのが嫌いなんだろうね」
「どうでもいい。早く立ち向かう方法を」
「行動するとなったら迅速だね――久しぶりの体に懐かしむとかないの？」
「えっ？……ああ、確かに。――意思として漂わないのは久しぶり、かな」
「変わりに、僕の姿は見える？」
「――まさか」
「そのまさか、ご名答だよ。君は察しが良いから楽で助かるねえ。君の中にある僕の部分と、僕の中にある君の
部分と。そっくりそのままとは言わないけど――入れ替えたんだ。君よりも劣るけれど封印は多少は維持できる。
じゃあ、頑張ってね。その姿、割と快適でしょ？」
「まったく――僕の人生何処でどう間違ったんだか」
「僕に出会った事が間違いの切っ掛けで、傷口を広げたのは君自身だ。選択に責任を持って走る事を決めたの
は君だからね」
「――あんな選択するんじゃなかったよ。ま、今更どうでもいいか。それじゃ」
「うん、それじゃあね。君は呼び水だ。でも、これはまだ起きちゃいない。便利屋として使い潰されるだろうし、沢山
傷付いて、前以上に悲しい思いをするかもしれない。それでも、行く？」
「――選択した以上は責任を持って走るだけさ」
「そういうと思ったよ。人生において決断する事は覚悟をする事と同じだ。君は一度命の答えに辿り着いて、こん
な事は言われるまでもないだろうけどね。基本的には人間だから。死ぬ時は死ぬよ。君もね。年老いてか、事故
か、それとも闘いの中でか――仲間に囲まれてか。どんな終わりを向かえるかは知らないし、僕が決める事じゃ
ない。でも――出来れば笑って安らかに、ね」
「判ってる｣
「ああ――それと。もう一度立ち向かえる？　僕じゃそんなに長くない」
「――それ、僕に聞くのか？」
「そうだったね――色んな人によろしく伝えといてね。――間違えなく殴られそうだけどね。何名かに」
「平手打ちは痛いんだけどね」
「ははっ、役得だと思ってよ。君は君として生きられないだろうけど、もう一度あの雑踏を行けるんだから」
「感謝しとく。次はちゃんと――から」
「君が言うと本当に実行しそうで困るよ。僕もその方が望ましいけど」
「それじゃ」
「またね」

373 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/27(火) 01:58:42

>>372
　
――眩しい。
　
　特別明るい訳じゃない。どちらかと言えば、暗い。
　夜の街。置き去りにされた時間。
　それでも久しぶりに見上げる空は広く、眩しい。
　大きな大きな月が、輝いているから。
　
　粋な計らいか、服装は大体あの時のままだ。動き易いのか動き難いのか、どちらとも云えない制服姿。
　便利になり過ぎた制服のジップを上げる。動かないと流石に寒い。一年程と言う話が正確なら、季節は十一月。
制服の上にコートを羽織っても良い季節だ。――そもそも日本か定かじゃないけど。どちらかと言えば洋風な造
形。見知らぬ異国の地に一人というのは今に始まった事じゃないけれど。地域が移り変われば異国に旅立った
のと同じだから。
　さて、まず必要なのは契約だ。あの時と同じスタートラインに経って始めて、僕は進める。
　止まってしまった時を取り戻す事は出来ない。なんの不幸か、それが可能になってしまったなら。止まった時間
を動かすのは、時計の針が進みだした地点に立つ事で始めるべきだろう。
　
　名は有里湊。
　契約内容は――己の選択に責任を持つ事。
　
　それが例えどんな結末になろうとも。

374 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/27(火) 01:59:35

>>373
　
――契約を果たしたところで、状況の把握に努めよう。
　彼は滅びが来ると言っていた。「アレ」が目覚めようとしているとも。
　と言う事は、なにかと闘わざるを得ない状況だという事だ。それが果たしてシャドウのような化物なのか、
ストレガのような人間なのか。――または別のなにかか。
　結局推測の域を出ないから倒すべきものの存在についてはスルー。判断材料がない状態で推理が出
来るなら、名探偵を通り越して悪魔かなにかに違いない。生憎ただの人間である僕にはそんなスキルは
ない。未来を読めたってきっと、面白くもなんともないから。
　果たして僕が闘える状況なのかと聞かれれば、首は横に振る。ノープロブレム、死ぬのには。手持ちの
武器は一切なし。召喚器もなし。あるのは着ている制服と、必要不可欠な携帯プレーヤー。
　危機的状況において緊張感の欠片もない服装だ。平均的な高校生としては当然だけど。今日日鉄板の
入った鞄を持ち歩く学生も、ポケットに剃刀が入った学生も、後ろ手にナイフを持った学生も。中には居る
かもね。友達にはなれないだろうけど。
　という訳で状況は至って扱く平然と最悪だ。殺される為に来た訳じゃないって言うのに。自殺を選べるほ
どの勇気は僕にはないんだけどな。気を使うなら武器の一つでも用意してくれよ。まったく。
　気を取り直して状況の把握。丁度正面には限りなく広大な森が広がっている。所々から顔を出す灰色の
石碑はかつてビルだったもの――だと思う。学校が天に昇る塔になるよりもおかしな変化。ハリウッド映画
でもお目にかかれるかどうか。ファンタジー物としては十分に楽しめるけど、さ。まあ、明らかにそこがおか
しいと判断できるだけマシだろう。平時のままだったら余計に混乱してる。目的なく散策を重ねなくて良いの
はこっちとしては好都合。異変があるのならば、基点があって然るべきだから。
　となると最終目的は森の最奥部――あるいは、生み出した張本人だろう。
　
　なにが起こったのかを誰かに聞こうにも、人が一人も居ない公園じゃあ無理な訳で。噴水だけが無意味に
生きている事を感じさせてくれる。時間が流れているように、水は零れて行くから。
　ふと、時計の存在に気付く。時刻は二十二時五十四分。実に中途半端で、現実味のある数字。長針に目を
向けたまま、次の思考。
　
　どう足掻いても戦いは避けられない。避けられない戦いでなければ、起きる事はなかったから。疫病神の
死神は、僕だ。だから戦おう。そうでなければとてもじゃないが合わせる顔がない。彼等は僕を責めはしない
だろう。殴られる事はあっても、最終的には温かな笑顔を向けてくれる筈。
　そんな温かな状況はきっと僕には――耐えられない。自己犠牲という欺瞞を胸に、終末への道をまた歩く
のか？――そんなものは耐えられない。一度目の終末は回避すべき。
　戦って勝ち取るんだ。
　
　長針が一つ駒を進める。時刻は二十二時五十五分。
　行動指針を武器の調達として、暫くは動くとしよう。
　
【現在位置　B地区　とある公園】

375 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/27(火) 02:00:39

>>374
　
　街は伽藍。人の気配もない。粗方は異変が起きてから逃げ出せたんだろう。
――そう思いたかった。
　
　プレーヤーのヴォリュームをアップ。雑音すらしない街で、雑踏を歩むような気分。陰鬱な世界は契約前に
生きていた頃に見飽きたって言うのに。世界が色を失っている。黒と白――モノクロの街はセンチメンタリズム
を感じさせてくれる。
　一人が寂しいと気付いてしまったから、弱くなったんだと思う。無知は強さ。全知全能の神は最弱だ。だから
人間に追い出された。ファンタジーは活字の中でしか生きられない。そんな最弱だったものの一斉蜂起。虐げ
られた神々による、幻想の樹立。――なんて三流小説。
　結局は無意味な散策。観光ならもっと晴れた気分でしたかった。出来れば朝に。カフェでコーヒーを飲んで
から。日曜の朝は彼女が待ってくれていたから。二人で見て回るのはきっと、楽しいんだろうね。――そんな
彼女はいないけど。
　そもそも、フランス語だと言う事は理解できても内容の把握までは難しい。フランス語と判断したのも何度か
目にした事があるからに過ぎない。残念な事に日本の教育じゃ、高校生にそんな適応力はない。英語であれ
ば、なんとか会話が出来るくらいには喋れるのに。
　まあ、そんな事は今はどうでもいいけど。
　
「雨降りの火曜日、彼女が居なけりゃ何時までも雨が降る。快晴の水曜日。雨が降っても傘が要らないのは
彼女のお陰。コールを無視して辿り着く――」トラックに載せたリリックが流れて行く。正直暢気なリリック。滑
るように心の隙間を満たすのは、ヒットの条件なのかもしれない。共感は出来ないけど。トラックは上々。それ
でも一年前。置き去りにされていた時間は無情だね。事が終わったらCDショップに行きたい。どれくらい音楽
は進化したんだろう？　邦楽はどれくらい染まってしまっているんだろうか。正直、ちょっと不安だ。どれも同じ
色なら困った事だ。僕のささやかな趣味が、過去に戻っていく事になるから。
　
　ふと気付けば目の前には見慣れた扉。
　蒼い、扉。
　ある筈がない扉。
　存在しない筈の扉。
　
　建物に繋がっていると判りきっているのに。
　無駄な事をして時間を浪費するなと自戒しているのに。
　
　足が、進む。
　手が、伸びる。
　
　ドアノブを、掴む。
　
　
　一歩、踏み出す。

【現在位置　B地区　路地にて】

376 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/27(火) 02:02:20

>>375
　
　予想通り、そこには老人が待つ事もなく、傍らに佇む女性も居ない。旅人の来訪を快く迎えてくれるオアシス
は、フランスまで出張はしてくれないらしい。そもそも、鍵を貰っていないのだから、あの扉の向こう側を覗く事
は、少なくとも今の僕には出来る筈もない。どうでもいいか。今の僕は招かれざる来訪者に過ぎない。ノックの
音を控えてもまず間違いなく煩いと怒鳴られる。性質の悪い訪問販売と一緒だ。
　まあ、今は押し込み強盗、火事場泥棒の類なんだけど。
　古今東西の刀剣類がずらり――殆どが儀礼用のアンティーク。ショウケースは割られ、幾つかは既に持ち
去られているみたいだ。間違いなくビンゴなのに、素直に喜べない。が、それでも武器は武器だ。基本的には
手を触れてはいけないものばかりなのだが、だからこそ使えるかもしれない。
　一つ一つを手にとって感触を確かめる。どれも一通り触った事のあるモノばかりだが、マスケット銃なんかは
持っていったところで使い道がないのでパスだ。最も馴染み深く、振るい易いものが良い。そうなるとあまりに
重いもの――ハルバードや斧、槍なんかは却下。取り回しの面でやはり剣の方が良い。槍は確かに使い勝手
は良いけれど、日が昇った後の事を考えるとゾッとする。突く事や斬る事に特化したものも避けたい。となると、
多少重い事と切れ味の劣化が激しい事を除けば日本刀がベストだろう。太刀よりは打刀がより良い。芸術品と
して輸出が盛んだったらしいから、探せばあるだろう。保存状態は展示してあるモノに限ればベストの状態だと
考えても良いだろう。銘なんてフランス語で書かれていたって読めやしない。手に馴染み、使えるのであれば十
分だ。
　敷かれた絨毯に足音を吸わせながら、物色。仮にセキュリティが万全なら、強盗その他で強制送還。帰った
先では大パニック。死んだ筈の人間がこの世に居るんだから。しかも犯罪者となって。世間を騒がせるだけの
ニュースにはならないだろうけど。個人ってそんなもの。世の中の関心は被害者の心情を察するよりも、惨事を
惨事として受け止め、騒ぎ立てる事だ。同情なんて誰もしない。分かり合えないから。だから補おうと必死になっ
て、絆を作る。
　――へえ、こんな銃まであるんだね。単発式の、グリップに青い宝石――サファイアかな――が埋め込まれ
たそれを手にとって見る。随分重い。弾は――入っていない。
　それじゃあ、お借りします。ホルスターがないから、ベルトとパンツの間に。少し寒いけれど、直ぐにでも取り出
せるようにジップは開いておこう。完全に強盗。警察官にはくれぐれも気をつけよう。
　問題は戦うための力、武器。これといったものが見つからない。埃を被ったような、無銘の刀で良いのに。格式
だけが高い、実用に到らないものばかり。もう少し奥を探してみるべきなのかな。人目に触れないような――そん
な場所を。
　あの街の交番は、今でも武器の横流しをしているのだろうか。――してないよな、当然。そうであって欲しい。
というか、押収したものを売っちゃ駄目だろ、そもそもなんで新しく入荷するんだよ。疑問だらけだった。桐条の力
だと納得はしていたけど。
　
　懐かしい思い出だ。
　懐かしい――思い出。
　古暈けた、思い出。
　古暈けた――思い出。
　
　郷愁に浸りきる前に眼に留まった、どうみても武器として力を発揮する為に打たれた工芸品がそこにあった。
芸術は狂気と紙一重なんだろう。飾っておいてあるだけなら、これを人殺しの道具だなんて思えやしない。
　
　手に取る。
　実に馴染んだ――凶器の感覚。
　
　これを持って行くとしよう。
　武装は、整った。
　
【現在位置　B地区　とあるアンティークショップ】

377 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/27(火) 02:03:36

>>376

　手にした飾り気のない懐中時計を覗き込む。時刻は二十三時十七分。もう一件火事場泥棒を重ね時計を
入手。
　時間を確認する事で、改めて今を生きている事を実感する。ただそれだけの為に。
　止まってしまっていた時間を動かしている。
　ありえない日常を生きている。
　起こりえない状況に生きている。
　
　違和感ばかり。
　この鬱蒼と茂った森にだけでなく、この体にさえ。
　
　それも当然だと、理解している。
　それでも、信じられない。
　
　現実を受け止めるにはまだ浮き足立っている。クスリでキマッてしまっているかのような曖昧さ。アルコー
ルに浸り過ぎて感じる頭痛。堕落しきっていた体には、そのどちらも十二分に堪える。
　何処まで進んだかも把握できない森を、歩き続ける。移動手段が徒歩だけと言うのは辛いものがあるね。
運動不足だった僕には必要以上に堪える。先の見えない不安、夜の森だという緊張、久しぶりの肉体への
戸惑い。
　全てが疲労を生む。
　
　同時に、喜びだ。
　なんでもない日常を、穏やかに過ごしていただけでは気付く筈もない。
　
　生の価値と死の代償。
　
　その大きさを知ったからこそ、僕は生きていられる事がたまらなく嬉しい。
　星も月もない空間は、音もない。
　
　一秒が十秒なのか、十秒が一秒なのか。
　それすらも理解に苦しむ。
　
　目の前には高層ビル。
　天の頂を目指したかのようなバベル。
　
　
――まずは中心を見極めよう。
　
【現在位置　C地区　とある高層ビル前】

378 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/27(火) 02:04:45

>>377

　電気系統は死滅中。エレベーターなど動く筈もない。
――まあ、動いていても乗りたくはないけど。扉から腸らしきものを見せていた。暫く見ない間に世間が悪趣
味になったとは考え難いから、此処は惨状だったのだろう、悪い事に。
　一段一段階段を昇る。十三段の絞首台を昇る気分。断頭台でないだけマシだ。首が落ちた後、自分の体を
見てなにを思えば良いのか。死んでいるのに生きている。リヴィングデッドの気持ちは理解できない。生きて
いるなら。
　
　時刻は十一時五十一分。屋上に出るのは、後五分くらい。
　携帯プレーヤーを操作。雑音（緊張）を消す為に。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「Brun my―――」
　重い扉は開かれる。
　開かない扉などないから。
　
　
　
　臨んだ月は、ただただ大きかった。
　
【現在位置　C地区　とある高層ビル屋上】

379 名前：◆kYsrWORLDo ：2007/11/27(火) 02:05:42

>>378
　
　
　
　
　
　
　　　　　　　やあ、君が来るのを待ちわびていたよ………。
　
　
　
　
　
　

380 名前：ＤＩＯ ◆kYsrWORLDo ：2007/11/27(火) 02:07:08

>>379
　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　 　 .|
　　ドアを開いた先には一人の男が立っていた。　 .|
　　黄金色の頭髪。透きとおるような白い肌。　　　 .|
　　男とは思えないような妖しい色気。　　　　　　　　|
.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　男はゆっくりとした口調で語りかけてきた…　　 .|
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿|
　
　
　
　
　　　　　　君は『引力』を信じるか？　人と人の間には『引力』がある
　　　　　　ということを……………。出会いというのは『引力』なんだ。
　　　　　　わたしの『引力』に君という存在が引き寄せられてきたんだ…
　　　
　　　
　　　　　　わたしの名は『ＤＩＯ』。君は随分と変わった「運命」と「力」を
　　　　　　持っているな？　隠す必要は無い、私には分かるんだ。
　　　
　　　
　　　　　　ひとつ、それをこのわたしに見せてくれないか？　フフ……
　　
　　
　　　　
【現在地：Ｃ地区　オフィス街　とある高層ビルの屋上】

381 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/27(火) 02:07:46

>>380
　
　出会いなんてのは起こってしまう事。別にたいそれた言葉で飾る必要はない。必然性を見つけたいなら数学
でも解いていてくれ、と思う。
　借りてきた日本刀の柄に手を掛け、一息。
　
　恐らくは――強敵。並のシャドウでは話にならない。満月の夜に降りてくるシャドウよりも、危うい。躊躇なく
殺しに来るだろう。人ではない化物が、僕を
　だけど僕は殺せない。僕は――でなければ殺せない。
　
　明確な、明確な、境界。
　踏み越えて落ちるのは果たして僕か、アレか。
　
「――どうでもいい」
　
　カツン、カツン、カツ、カツ、カツ――。
　
　ただの一閃。まずはそれだけでいい。
　
【現在位置　C地区　とある高層ビルの屋上】

382 名前：ＤＩＯ ◆kYsrWORLDo ：2007/11/27(火) 02:08:34

>>381
　
　
　
　　　　　　ほう、生身の一撃にしては中々のスピードだ……。だが、その
　　　　　　程度の攻撃、止まって見えるぞッ！　良いだろう、では先に我が
　　　　　　スタンドを君に見せてやろう！　「世界（ザ・ワールド）」！
　
　
　　　　　　無駄ァッ！
　
　
　
　　　　　　　　　　:::::~,::,::::　:
　「――どうで:::::::::: ::::::.,,,:::,,
　.　　　　,,::::::::　　　　　　　: :::~,,:,
　　カツン::::::::　　　　　　　　:::.,::::カツ――。
　　　　　.:......:　　　　　　　　:::,:::,,,
　　ただの,,,,,::::　　　　　　　:,:,,,:.:でいい。
　　　　　　,::::::.:::　　　　　::,:::.:
　　　　　　　::::~:::,,,,,.,:::,,,:,:::
　
　
　
　　　　　　待ってやろう、君が「力」を出すのをな。そう、確かこういう時はこの様
　　　　　　に言うんだったかな？　西部劇のガンマン風に 『ぬきな！ どっちが素
　　　　　　早いか試してみようぜ』 というやつだッ！
　
　
　
　
【現在地：Ｃ地区　オフィス街　とある高層ビルの屋上】

383 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/27(火) 02:09:19

>>382
　
――違和感。
――寒気。
――怖気。
　
　何が起きたのかは理解できない。理解は出来ないが、胴体と首が離れていないなら、生きている。
　なんらかの方法で生きている。
　
　余裕綽々の科白。全てが名台詞ならきっと、全てはただの言葉に過ぎない。
　面白みの無い言葉遊び。
　意味の無い独白。
　
　カチ、カチ、カチ――。
　
　秒針はまだ一周もしない。
　時刻は二十三時五十七分。
　
　違和感の正体を掴みたいところだけどね――！
　
　
　右手に取るのは一振りの剣。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　左手は添えるようにグリップを。
　誰が作ったかも判らない剣。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 まだ早いとアラートが鳴る。
　一振りに乗せた思いは純粋。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　アラートが、アラートが、アラートが。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　両手で掴んだ柄。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　引いて斬る。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　全てを。
　
「ワンモアタイム？――ないかもね」
　
【C地区　とある高層ビルの屋上】

384 名前：ＤＩＯ ◆kYsrWORLDo ：2007/11/27(火) 02:09:37

>>383



　　　　　　クックックッ……出さないのか、それとも恐怖で出せないのか。最も
　　　　　　我が能力は見えもせず感じることも出来ないがな。ならば、君にも
　　　　　　見えるカタチを取ってやろうじゃあないか、「世界（ザ・ワールド）」ッ！

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　忽然と現れた力ある像（ビジョン）！　　.|
　傍に立つ者を意味するそれは　　　　　 |　　　　無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　「スタンド」！　ＤＩＯのスタンドは　　　　　|　　　　無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ！
　「世界（サ・ワールド）」！　その名の　　 |
　如く世界を俯瞰する威圧的な巨人ッ！ .|
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿|
　　　　　　:::::~,::,::::　
　　　　　::::::::::::: ::::::.,,,:::,,
　右手.,,::::::::　　　　　　: :::~,,:剣。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　左手は添えるようにグリップを。
　誰が::::::::　　　　　　　:::.,::::剣。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　::: .,,,,,,.:~::::::::::,,~::,,::::::ラートが鳴る。
　一振り,,,,,::::　　　　　:,:,,,:.:純粋。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,,,,,:::::　　　　　　　　　::::::: ラートが。
　　　　　　:~:::,,,,,.,:::,,,:.,::::　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,,,,,::::　　　　　　　:,:,,,:.::,.::
　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　:::::~,::,:::::::::　:　　　　　　　　　　　　　　　,,,,,,.:::　　　　　　:: :.:::,~
　　　　　　　　　　　　　　　　::::::::::::: ::::::::.,,,:::,,~::,,:::　　　　　　　　　　　　　　..:::~:,,,,,,,,,:::: ~::::::::::::,,:.
　　　　　　　　　　　　　　.,,:::::::::::　　　　　　　　　: :::~,,:, だ柄。
　　　　　　　　　　　　　　::::::::　　　　　　　　　　:::.,::::: る。
　　　　　　　　　 　　　　.:......:　　　　　　　　　　:::,:::,,,てを
　　　　　　　　　.　　　　　,,,,,::::　　　　　　　　　:,:,,,:.::　　　　　　　　　:::::~,::,:::::::::::　:
　　　　　　　　　　　　　　　,::::::.:::　　　　　　　::,:::.:　　　　　　　　　::::::: ::::::::.,,,:::,,~::,,::::::
　　　　　　　　　　　　　　　::~:,,,::::::::,,,,,,,::::::::::::::,,,,　　　　　　　　.::~,,::　:　　　　　　　: :::~,,,.,,:,
　　　　　　　　　　　　　　　　　:~:::,,,,,.,:::::::.:::::::　　　　　　　　　::::.,,:::::　　　　　　　　　　:::.,,,,:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.:......:::,,　　　　　　　　　:::,:::,,,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,,,,::::　　　　　　　　　:,:,,,:.::,.::..
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,,,,,.:::　　　　　　　:: ~,:::.:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　::~:,,,::::::::,,,,,,,::::::::::::::,,,,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:,::::::::::,:::::::::







【現在地：Ｃ地区　オフィス街　とある高層ビルの屋上】

385 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/27(火) 02:11:08

　培ってきた本能が、危機を知らせる。このままでは拙い、と。
　圧倒的で、壊滅的な、どうしようもない暴力。絶対的な主導権はアレにある。人の速度では追いきれない散弾。
肉は削げ、骨は折れ、触れればたちまちに蹂躙される。
　
――だから？
　
　
　ただ本能が突き動かす。数限りなく増えて行く
拳の雨は避けようと思って避けられるものでは
ない。それほど圧倒的。まったく、笑えるね。ど　　　　　　　　　　　　　　　　　　ドクン、と鼓動が高鳴る。頭が、心臓が
うでもいいほどに。　待っているのが死だけなん　　　　　　　　　　　　　　　　血管が、血液が―-高鳴る。疾駆する。暴
て笑えない人生にも程がある。岐路に立たされ　　　　　　　　　　　　　　　　 走する。思考の熱暴走。止まらない頭痛。
た時はなにも思わなかった。自分の死なんても　　　　　　　　　　　　　　　　 動かない心臓。埋め込まれた銀の弾丸。　
のは感じられる筈もない。だって、死は限りなく　　　　　　　　　　　　　　　　　こめかみが痛い。痛い。痛い。痛い。痛い
近く、無数の形で、数え切れないほど大量に、　　　　　　　　　　　　　　　　　から、痛いから、痛いから。痛くて仕方ない
僕の内側に存在していたんだから。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 から、死にたくなるくらいに痛いから。
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「オ」
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　撃ち抜いた。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「ル」
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　こめかみを躊躇なく。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「フェ」
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　脳漿は飛ばなかった。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「ウ」
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　死ねないから。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「ス」
　
「我は汝、汝は我――。我は汝の心の海より出でし者。幽玄の奏者オルフェウスなり」
　
　オーダー。
　
　目の前の敵を討て。

【現在地　C地区　とある高層ビルの屋上】

386 名前：ＤＩＯ ◆kYsrWORLDo ：2007/11/27(火) 02:11:40

>>385



　　　　　オルフェウス……それがお前の「力」かッ！　面白いッ！　では、見せ
　　　　　てもらおうか、その真価をッ！！　お前がこのＤＩＯが捜し求めている
　　　　　ものかどうか確かめてやろうッ！！


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　　　　　一歩……　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　轟然と「世界」と共に
　　　　　　　　　　　二歩……　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　ＤＩＯは前進するッ！！
.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　帝王たるＤＩＯに後退は無いッ！
　　　　　　　　　　　　　　　　　三歩……　　　　　　　　　　　　　　　　　|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さあ、互いに射程内だッ！　来るがいいッ！！



【現在地：Ｃ地区　オフィス街　とある高層ビルの屋上】

387 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/27(火) 02:12:19

>>386
　
　何時だって作りかけの世界。完全なものはこの世のどこにもない。
　捜し求めているものは何時だって見つからない。
　この世の果てにある終わりだけが明確。見たくもない終わりだけが。
　
　
　
　　――イヤホンを外して一歩進む。
　　　時計の針は二十三時五十八分。
　　　永遠にも似た一分は続く。
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　琴の音が響いた。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　それは誰を誘う為に歌うのか。
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　――ヴォリュームを上げながら二歩目。
　　　　　　　　　　　　　　　　　鎮魂歌には煩過ぎて、狂想曲と呼ぶには静か。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　誰も気付く事がない戦いには最適。
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　音色が狂う。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　調べが狂う。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　旅人の狂気は八つ裂きの合図。
　
　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――こめかみに銃を突き当て三歩。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　互いが手を伸ばせば触れる距離。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　生憎そんな趣味は無いけれど。
　
　
　
　両手で支えた剣は力。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　その琴は象徴。
　意思を載せた一刀。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　唯一の安息。
　その力は些細なものだ。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　奏でる音は悲哀と歓喜。
　一人では、些細なものだ。　　　　「雨降りの火曜日。これじゃ街には出られ　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ない。肌が焼けるちまう。槍が降ってんの　　　　　　　極端の調和。
　自分と見詰め合う事。　　　　　　　かよ、チクショウ。これじゃダンスも楽しめ　　　　　　　 悲劇と喜劇。
　そこから生まれる絆。　　　　　　　ない。憎いアイツは水曜に滑り込んだ。だっ　　　　　　 誤った道？
　個人と個人の接点。　　　　　　　　ったら追い込みかけて――ブッ潰せ！」
　
　因果を断ち切る剣。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 我が道に過ちはない。
　するりと刃を動かした。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　唯一の悔いはその全て。
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「レイズ――その勝負、のるよ」

【現在地　C地区　とある高層ビルの屋上】

388 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/27(火) 02:17:01

ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓメディスン・メランコリー
―576年目の森林裁判―

>>363

　パーティは続く。
　パーティは続く。

　人形の唇が柔らかいなんて。―――乙女は絶望の坩堝に引き込まれながら
も、酷く的外れな感想を抱いた。
　流し込まれた毒が喉を滑る。人と人形の差異はあまりに少ない。マーガレ
ットの舌のぬくもりを絡め取りながら、乙女はそう結論づけた。
　予想していたような背徳の味はしなかった。雌狼と罵られた女にしては、
純粋で無垢な口当たり。ほう、と息を吐いて唇を離す。

　毒〈カンタレラ〉という選択は絶妙だった。乙女はおろか、アリスすらも
マーガレットは人形遣いだと信じ込んでいた。
　見ること能わず、嗅ぐことも叶わず、舌で知ることですらできない。マー
ガレットの小さな体躯に、そんな切り札が伏せられているなんて誰が想像で
きようか。乙女は完全に不意を打たれた。
　
　―――だが、マーガレットはまだまだ若い。
　乙女の深淵をあまりに浅く計りすぎた。素直に劇薬を持っていれば、或い
はランカスターの世が開けたかもしれないのに。

　死に至る口づけを交わした後も、乙女の表情は変わらない。苦痛に滲む脂
汗は、先からの頭痛が原因だ。毒は関係ない。
　
「……あなたは、私が絶望をしていないとでも思っていたのかしら」
　底冷えする怒りが、乙女を突き動かす。
「他人の死をその身に背負う乙女が。果て無き救国に駆られる乙女が。決し
て満たされない飢餓の十字軍を率いる乙女が。―――絶望の毒を知らない小
娘だ、と。そんな風に思っていたのかしら」
　
　私はいつだって憂鬱よ。だから、誰より希望を信じることができる。

　処刑宣告のような乙女の微笑み。悪魔契約を幾数十も重ねた乙女は、生き
ながらにして地獄への落下が運命づけられている。彼女は誰より絶望に近か
ったし、絶望そのものとすら言えた。

　乙女のガントレットが、ついにマーガレットの首根っこを締め上げた。
「乙女を侮った報いを受けなさい……」
　掌の刻印が描く〈紅蓮〉の言葉。魔術の励起が王妃の首を吹き飛ばすかと思
えた直前。―――乙女の目がはっと見開かれた。

「あなた達……」

　乙女の胸から、黒塗りの刃が生えていた。
　一本に留まらず、二本、三本と。
　常軌を逸した光景。〈飢餓同盟〉―――十字軍の亡者が影より這い出し、自
軍の指揮者〈コンダクター〉たる乙女に形骸の剣を突き立てていた。
　乙女の口元から鮮血がこぼれる。

「そう……耐えられなかったのね」
　
　　非（オー）、非（オー）、非（オー）……！
　　絶（オー）、絶（オー）、絶（オー）……！
　　無（オー）、無（オー）、無（オー）……！

　兵たちは脅えていた。士気は地中深く没し、勝利も敗北も放棄した。傷つく
ことを過剰に恐れた。この闇から逃げ出すためなら主の命だって差し出した。
　マーガレットの毒は絶望に浸る〈飢餓同盟〉に心の傷みを教えてしまった。
　それは死者に希望を与えるも同じ。終わってしまったものに未来を説くのと
同じ。無意味であるが故に、残酷な疵を開かせる。
　
　疵口から滴る血が、乙女の意思を無視して次々と亡者を召喚する。教室が虚
無で満ちていった。彼等はみな弱り切っており、我が身かわいさに裏切りを繰
り返す。―――だが、乙女は決して彼等を恨みはしなかった。

「……乙女はあなた達を赦します」

　だって、同じフランス人だもの。

　千の刃が乙女を貫いた。


【現在地：Ｄ地区　学校】

389 名前：黒いアリス ◆ALICEsQkXc ：2007/11/27(火) 02:18:22

ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓメディスン・メランコリー
―576年目の森林裁判―

>>363>>388


「……私は許さないわ」
　アリスは恨めしげにマーガレットを睨む。
「私より早くジャンヌの唇を奪うなんて」

　少女だろうと女は魔性だ。
　人形だろうと女は獣性だ。
　油断なんてできたものじゃない。まさかこの森で、アリスが完全に出し
抜かれるなんて。―――それも血の通わない人形に。

「あなたは何回、私を裏切れば気が済むのかしら」

　こんな教室うんざり。二度と来たくないわ。

　　―――だから、もう、このお話はお終い。

　指揮官を弑した〈飢餓同盟〉の臆病な戦士たちが、形骸の海へと還って
ゆく。最後の一匹が泥の水たまりにちゃぷんと足音を立てたときには、ア
リスも乙女も授業を早退。もうどこにも姿は見あたらない。
　舞台には王妃マーガレット―――メディスン・メランコリーだけが一人
残される。



【現在地：Ｄ地区　学校】

390 名前：マルチアーノ12姉妹 ◆M12sisrIV6 ：2007/11/27(火) 02:43:09

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
>>356
　
　「なんて、出鱈目な……」
　
　黒鉄混じりの烈風吹き荒ぶ、異常な光景であった。
　如何に『兵は奇道也』とは言え、奇手と呼ぶにも生温い。
　しかし奇と言えど実無くしては虚に過ぎず、斯かる意味に於いてはこの砂の鉄鞭は正し
く兵道と言えた。
　その速度は特殊鋼を弾殻とする弾頭すらも鑢の如く削り取り、その威を大きく減じてい
る。
　謂わば巨大なサンドブラスターの中に放り込まれた様なものだ。
　
　知らず呟き、ジャニアリーは歯噛みした。
　その薔薇色の唇を噛み締めた。
　そして、片腕でこの奇怪な武器を振るう膂力を未だ残していることに脅威を覚えた。
　
　「出鱈目な……化物」
　
　
　そして、ジュライは右手に剣を提げた侭、微笑んでいた。
　奇手ではあったが、兵道と言えた。
　言えたならば、その術理は常道となる。
　鉄砂の鞭を見、其れを繋ぎ止める剣を見、剣の手の内を見、揮う腕を見、腕の起こりを
見た。
　時折その尖端が舌先を伸ばし或いは豪腕を振り下ろすが、その軌跡は跳んで躱した。
　躱して、理解した。
　則ち、これは鉄環を繋げた鎖に同じく、また縄を縒り編んだ網に等しい。
　ならば鉄沙の奔流、その水源。
　ならば鉄砂の暴風、その颱風の目。
　
　剣尖を霞に付け、拳を烏兎に重ね、其の一点を。
　
　【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】

391 名前：システムアナウンス：2007/11/27(火) 04:16:14

吸血大殲　森祭　途中経過纏め

＊進行中の闘争の中断状況を記載
＊終了した闘争については最後に記載
＊各人のターンのレス毎に改行
＊再開時間の申請があるものは記載

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹

マルチアーノ１２姉妹導入
>>77>>78>>79>>81
ヴィルマ・ファキーリ導入
>>83>>84>>85

>>87>>88
>>89
>>95
>>103
>>116
>>121
>>134
>>139
>>178
>>190
>>207
>>213
>>225
>>228
>>238
>>262
>>267
>>270>>271
>>280
>>290
>>347
>>356
>>390

【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】

“姫”一行（怪物王女）VSスレイド（TEEN　TITANS GO!）

“姫”導入
>>160>>161
スレイド導入
>>162>>163

>>170
>>195
>>204
>>247
>>263
>>264
>>268
>>272
>>276
>>279
>>287
>>324
>>332
>>333>>334
>>341
>>350
>>353
>>355

【現在地：D地区　市街地】

392 名前：システムアナウンス：2007/11/27(火) 04:16:34

紅魔館の優雅な住人たちｖｓカトル・カール
―Forest Lagoon―

紅魔館導入
>>146>>147>>148
カトル・カール導入
>>149>>150>>151

>>154>>155>>156
>>185>>186
>>188
>>189
>>191>>192
>>196>>197
>>201
>>245>>246>>248
>>273>>275
>>292>>293
>>330
>>358
>>360>>361


【現在地：ハイウェイ】

日守秋星　VS　西園寺世界　「-WORLD HANT.」

日守秋星導入
>>296>>298
西園寺世界導入
>>299>>300

>>302>>303
>>309>>310
>>311
>>312>>313
>>315
>>318>>319
>>325
>>366>>367>>368

【現在地　B地区「繁華街」】

393 名前：システムアナウンス：2007/11/27(火) 04:17:47

赤頭巾VSプリマヴェラ

赤頭巾導入
>>336>>337>>338>>339>>340
プリマヴェラ・ボビンスキ導入
>>342>>343>>344>>345>>346

>>348>>349
>>352
>>357
>>362

【現在地：Ｃ地区　………】

有里湊ｖｓＤＩＯ

　ＤＩＯの世界／
　　　　　　 .／Burn my――

ＤＩＯ導入
>>369>>370
有里湊導入
>>371>>372>>373>>374>>375>>376>>378

>>379>>380
>>381
>>382
>>383
>>384
>>385
>>386
>>387

【現在地　C地区　とある高層ビルの屋上】

ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓメディスン・メランコリー
―576年目の森林裁判―

挿話　第四巻[聖杯伝説]
>>316

ジャンヌ導入
>>317>>320>>321
メディスン・メランコリー導入
>>322>>323
>>326
>>328
>>329
>>331
>>335
>>351
>>354

【闘争舞台：Ｄ地区　学校】

394 名前：システムアナウンス：2007/11/27(火) 04:18:58

＞終了した闘争レス番纏め

DIO vs JEANNE ―The forth part of king Henry VI―
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/138
＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

ミスティア・ローレライｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル　『イツマデ』 Still When
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/230

エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル　『ポワティエ平野で朝食を』
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/305

エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミｖｓリサ・トレヴァー
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/252

レイオット・スタインバーグｖｓ魔神王リィーナ
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/291

死神（デス）ゼアド vs ＜呪われし公子ゲイナー＞
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/286
＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

395 名前：日守秋星：2007/11/27(火) 04:42:32

>>366　>>367　>>368
　
　
「ふぃー、疲れた疲れた。
いっぺんにこんなに殺ったのはさしものオレも初めてだね。
これもまた、海外旅行のキチョーな土産話になるのかな？」
　
死屍累々。
その四字以上に、日守秋星が立つ場所を形容する単語は存在しない。
今や一人たりとて、彼の周囲に生命活動を行う人型の存在は無く、
ただ血で彩られた大地と、物言わぬ肉塊が、広場を彩っていた。
　
　
「そもそもオレってば、こういう持久戦は苦手なんですよねー。
―――いやはや全く、これじゃ何から何まで向こうの掌の上だ。
こう、オレのスタイルでやらせてくれないってのは、いかにも―――
ストレスが溜まるね」
　
　
珍しい―――本当に、珍しいことに。
日守秋星は、その日本人離れした整った顔立ちの上に、微かな苛立ちを映した。
そう、逃げてくれれば、何の面倒も無かったのだ。
相手が何の能力も持たない一般人であるならば、僅かでも命乞いの姿勢を見せた時点で、
彼の殺害対象からはあっさりと外れる―――そのはずだった。
　
しかし結果は、ご覧の通りだ。
誰も彼もが、一切の躊躇無く秋星の行動を阻害するためだけに行動し、
かくして、屍血山河がフランスの大地に築かれた。
かつて日守が体験したことのない異常ゆえ、彼はこれだけの大量虐殺を余儀なくされたのだ。
日守秋星が日守秋星であるがゆえに、避けえなかった事態。
それが何者かの思惑によって起こされているという事に対して―――どうしようもなく、苛立つ。　

　
「まー、愚痴ばっか言っててもしょーがない。
そろそろ愛しいあの娘の行き先くらい突き止めないと、いたちごっこが終わりません」
　
ひとまず、もう用のない炊き出し場を後にして、お誂え向きに拵えられた丘にでも登って
今一度周囲の状況を確認しようか―――簡単な方針を定め、秋星が今まさに行動せんとした、その時。
　
　
「助けて――――――だれか、助けて！」
　
甲高い悲鳴。
誰が聞いても流暢な、日本語。
叫びながら秋星の方に向かって駆けてくるのは、埃と煤で薄汚れた、茶色のコートを着た幼い娘。
その着物に、秋星は見覚えがあった。
アレは確か、自分の捜し求めるあの少女が着ていた―――
　
　
　

　
娘が足を止めて顔を上げたときには、殺人鬼ばけものは其処に居た。
ミラーシェードのサングラスの奥から浴びせられる得体の知れない視線。
言葉を発するときに口腔から覗く、鮫のような鋭さの乱杭歯。
それは娘にとって、紛れもない―――恐怖そのものの、具現。
　
「―――やあ、おじょうちゃん。
ちょっくら聞きたいことがあるんだけれど、いいかな？
なに、そう手間は取らせません」
　
遥か頭上から見上げていた殺人鬼の容貌が、流れるように娘の目線の高さまで降りてくる。
正面から異形の視線を浴びて、娘はひっと小さい悲鳴を漏らした。
　
「そう怯えなくてもよろしい―――つっても、無理な話か。
まあそのままお兄さんの質問を聞いて、答えてくれればそれでよろしい」
　
ぬぅ、と殺人鬼の節くれだった長い手が伸びて、娘の肩にぽんと置かれた。
その感触だけは、あくまでも優しい。優しすぎて、娘の恐怖は更に増幅される。
　
そして―――
　
「そのコートをくれたお姉ちゃん、、、、、、、、は、どこｎ」
　
　
どす。
　
　
硬い何か、、が肉を貫く、鈍い音。

396 名前：日守秋星：2007/11/27(火) 05:11:40

かちかちかち、と細かく歯を打ち鳴らし、一歩二歩、後ずさりする娘。
その小さな両手に握られているのは―――先端の丸い刃から鮮血を滴らせる、
一振りの小さな小さな鋏。
相当に力を入れなければ、突くだけではとても人の肉など突き破ることは出来ない、
殺傷力の余りに低い凶器。
その刃から落ちる赤い雫は―――一切の遠慮も躊躇もなく、全力で突きこまれたことを示す、雄弁な証。
　
　
「―――いったいなー、もう」
　
　
日守秋星は、立ち上がった。
左手の甲、、、、から溢れる鮮血を血に落としつつ。
　
「君これ、完全に肝臓（レバー）狙ったよね。
どこからそんな知識を仕入れたのかな？　全くもう。最近のおにゃのこはおませさんでいけません」
　
かちゃり、と音が鳴る。
右手に構えた得物と、黒いスーツの金具がぶつかり合う、とても小さな音色。
　
「んー……ちょっと君は、あの娘の傍に居すぎたのかな？
いやそれとも、あの娘が憑かれた時に一緒に感染したと考えるべきか」
　
一歩、一歩、秋星は娘へと近付く。
それに合わせて娘は下がる。一歩、一歩。

「まあ、どっちにしても―――残念なことに」
　
鋏を、両手の血色が無くなるほど強く握り締め。
秋星を下から見上げる、娘の表情は―――
　
　
笑っていた、、、、、。
怯えながら、、、、、、笑っていた、、、、、。
　
　
「―――キミはもう、手遅れだ」
　
　
娘が、突如前進した。
玩具のような鋏を腰溜めに構え、一直線に。
全てはあのお姉ちゃん、、、、、の為。
悪い殺人鬼（バケモノ）は、このワタシが、タイジしなくっチャ―――
　
　
無造作に、鉄の杭が突き出され。
娘の口腔を刺し貫き、咽頭を潰し、脊椎を粉々に粉砕して―――後頭部を突き抜けた。
　
未だあどけなさを残した乙女の口内を滅茶苦茶に陵辱した鉄塊は、
赤黒い肉と神経の残滓を纏わりつかせながら―――静かに屹立する。
　
ぶらん、と力なく垂れ下がる娘の遺体を見つめ、秋星はつぶやく。
　
「結局、答えてくれなかったねぇ。いや最初から期待してなかったけどさ。
でも考えてみれば、キミがやって来た方角からある程度の推察は出来ますね。
少なくとも何の指針もなしに動くよりかはずっとマシだ。
そんなわけで、情報提供ありがとさん。南無南無」
　
娘を犯し（殺し）た時と全く同じ無造作さで、鉄塊が引き抜かれた。
横たわる遺体には最早一瞥すらくれず、秋星は鮮血滴る左手で明後日の方角を指し示す。
　
　
「んーっと、大体あっちか」
　
　
　
（現在地：B　繁華街）

397 名前：ＤＩＯ ◆kYsrWORLDo ：2007/11/27(火) 13:52:32

>>387

　何時だって作りかけの世界。完全なものはこの世のどこにもない。
　捜し求めているものは何時だって見つからない。
　この世の果てにある終わりだけが明確。見たくもない終わりだけが。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　我が「世界」が最初発現した時、その形は不完全な影だった ＼
　今は人の形を取り、能力に目覚め、完全へと近づいている。　　＼　　　　
　魂の終着点「天国」、わたしは「世界」を以って必ず見てやろうッ！.＼
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
　　――イヤホンを外して一歩進む。 　　　　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　　　時計の針は二十三時五十八分。. 　　　|　殺すのは「世界」にとって一瞬。　　＼
　　　永遠にも似た一分は続く。　　　　　　　|　 だが、今、必要なのは見極める事。 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣　　　　　　　　　　
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　琴の音が響いた。　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　それは誰を誘う為に歌うのか。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――ヴォリュームを上げながら二歩目。
　　　　　　　　　　　　　　　　　鎮魂歌には煩過ぎて、狂想曲と呼ぶには静か。　　　　　　　　世界（ザ・ワールド）ッ！
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　誰も気付く事がない戦いには最適。
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　音色が狂う。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　調べが狂う。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　！？
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　旅人の狂気は八つ裂きの合図。
　
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　我が止まった「世界」の中で見える男の瞳の輝き。それは我が運命の敵 .|　――こめかみに銃を突き当て三歩。
　ジョースターどもと同じモノが確かにあるッ！　成る程、確かに互いに　　 .|　互いが手を伸ばせば触れる距離。
　引き寄せられる訳だッ！　良かろう、その意思は確かめたッ！！　　　　　|　　生憎そんな趣味は無いけれど。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣　

　両手で支えた剣は力。　　　　　　　　ならば、次のその「力」を確かめるッ！　　　　　　　　その琴は象徴。
　意思を載せた一刀。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　唯一の安息。
　その力は些細なものだ。　　　　　　　　　.. .,,,,,,.:~::::::::::,,~::,,::::::::,:~::.:,::,,,,,,......... 　　　　　　　　　　奏でる音は悲哀と歓喜。
　一人では、些細なものだ。　　　　　　　..::::~,,,,,,::,::::::::~.::::　　　　　　　: :::::::::~,,,.,,:::.,.,... 　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..,..:::. ~.,,,,,,:,~　　　　　　　　　　　　　:::,,,,,:,,... 　　　　　極端の調和。
　自分と見詰め合う事。　　　　　　　..::::::::::::,,,,,,,:::::　　　　　　　　　　　　　　　::::::::::::::::,::　　　　　　 悲劇と喜劇。
　そこから生まれる絆。　　　　　　　..:::::::,,,,,::::::　　　　　　　　　　　　　　　　　　:::::....~ 　　　　　　 誤った道？
　個人と個人の接点。　　　　　　　　　　:.::,,,,::,,::::　　　　　　　　　　　　　　　　,,,,,.:......
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　....~:::,,:::.~,:::　　　　　　　　　　　　:,,,,,,,,,:,..
　因果を断ち切る剣。　　　　　　　　　　:::::.......::::　::::::　　　　　　　　　　:,:,,,,,,,,,,~.... 　　　　　　　　　我が道に過ちはない。
　するりと刃を動かした。　　　　　　　　.:......:::,,:::,~:::　　　　　　　　　:::,:::,,,,,,,::::::::... 　　　　　　　　　唯一の悔いはその全て。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.:::,,~,,,,,,,,,::::::　:,:,:,,,:.::,.:::... ,:::,,,,,,,::::::::
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「レイズ――その勝負、のるよ」
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ！
　
　　

【現在地：Ｃ地区　オフィス街　とある高層ビルの屋上】
　
　

398 名前：―永遠に紅い幼き月―　レミリア・スカーレット ◆DEVILbzibY ：2007/11/27(火) 19:07:05

紅魔館の優雅な住人たちｖｓカトル・カール
―Forest Lagoon―

>>365

「咲夜、助けて！」
　メイドの返答。ナイフの豪雨。生肉に群がっては嬉々として突き立つ。
　パチェの炎があればステーキが完成したものを。文字通り不完全燃焼な攻
撃はさしたる効果を抱擁監獄に与えず、レミリアを棺桶まで運び去った。
「助けて咲夜！」
　メイドの返答。……肉の壁に視界を閉ざされたレミリアには、反応が見え
ない。残った感覚を総動員しても、彼女が追い縋って来てくれているように
は思えない。メイドの返答―――恐らくは「もう助けました」
　あの数十本のナイフが従者としての義理。

「……あらあら」
　愉しそうに怒り出す。
「ほんとに飼い主想いの忠犬なんだから」

　お嬢さまの小さな牙。お肉を噛み切るのも一苦労。だからこんがり焼けた
ステーキはあまり好きじゃない。だって硬いのだもの。
　―――そう、やっぱりハンバーグじゃないと。
　ハンバーグこそお肉の王様。今晩のメニューを勝手に決定。咲夜が作って
くれないのなら、自分でキッチンに立つまでだ。

　両手の爪が合い挽き肉をこね回す。牢獄からミンチへ。肉をかき分けかき
分け外へ飛び出す。
　降り立った先は棺桶の屋根だった。銀髪が逆立つほどの煽り風。彼女が思
わず口端を歪める程度のスピードが、そこにはあった。
　火を噴く棺桶。幻想郷に帰ったら、きっとパチェが真似して作り出す。

　咲夜とパチェ――そして彼女の愛馬――は見る間に引き離されて、緩やか
なカーブの奥へと消えていった。つまり、ここから先は一人旅。

　レミリアは、棺桶にしがみつく五匹のハンバーグ候補を順々に見渡した。

「……私は少食だから、きれいに完食してもらえるとは思わないことね」
　
　食べ残されれると痛いわよ？　


【現在位置／ハイウェイ／Ｃ地区へ接近中】

399 名前：―完全で瀟洒な従者― 十六夜咲夜 ◆Clock/PR2Y ：2007/11/27(火) 19:56:38

>>365>>398
　　
「あら……随分離れてしまったわねえ」
　
　些細な事ですけれど。
　全ての時間は私の手の平の上にある。
　一光年離れたとしても――辿り着く気があれば―― 一秒と掛らずに駆け抜けられる。
　
「で、ダンスのパートナーはアンタ達なの？　それでは早く踊りましょう。あまりに遅れるとお嬢さまが煩いの
で。――お茶だって冷めちゃうもの」
　
　スカートの裾を少しだけ持ち上げて、深々と一礼。
　
「私、紅魔館でメイド長を務める十六夜咲夜と申します。荒事の心得も少々御座いますので、どうか殺すお
つもりでおいで下さいませ」
　
　銀のナイフが無数に踊る。
　
　手に足に胴に頭に――心臓に。
　
　幻想の彼方からの来訪者。
　今夜はルールに縛られる必要もないのだから――殺すわよ？

400 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/27(火) 19:59:00

>>397

――また違和感。
　舐め取るような視線があった筈なのに、目の前は雨。
　止まない雨。針のように細く鋭い冷たい雨。
　
　一人じゃ寒くて進めない。
　体の芯まで冷えてしまう。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「掛け違えたボタンのような関係にが歯痒い。
　自分が二人居たとしても耐えられるものか。　　　　　　　　　　　　 確かにそこにあったのに。歯車がずれてしまった？
　鏡に映った自分の顔を見ていても心は満たされない。　　　　　　 時間が修復してくれないか――甘い嘘。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　時間は無情。止まらない戻らない――進むだけ。
　技量など関係ない圧倒的な力。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　止まってくれよ。戻ってくれよ。
　二つの総和でも不足。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　何時も答えはノープロブレム。俺にとって。
　対抗できるのは意思だけ。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 クソッタレ！　バカにすんなよ！
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ナイフを手に取った、ボロボロの、刃毀れした。
――ああ、だったらいつもそうじゃん？　　　　　　　　　　　　　　　　　 窓枠に突き立てて誓ってやる。
　なにも変わらない、あの時と。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　神様なんてクソクラエ！」
　
　
　
　
　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「先に進ませろ」
　
　
　
　
　炎が燈る。　　　　　　　　　　　　　　　　　無駄、無駄、無駄、ね。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　刃を盾に。
　灰は灰に。　　　　　　　　　　　　　　　　　　人生無駄ばかり。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　意思を力に。
　塵は塵に。　　　　　　　　　　　　　　　　.そんな事は気付いてる。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　人間廃業？
　
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　時刻は二十三時五十九分五十二秒。

401 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/27(火) 20:00:04

>>400

――カチ。
　
　秒針は進む。
　
――カチ。
　
　秒針は進む。
　
――カチ。
　
　秒針は進む。
　
――カチ。
　
　秒針は進む。
　
――カチ。
　
　秒針は進む。
　
――カチ。
　
　秒針は進む。
　
――カチ。
　
　秒針は進む。
　
――カチ。

402 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/27(火) 20:01:21

>>401

幾多の戦いを潜り抜けたであろう鎧も。防弾・防刃・耐熱の三拍子揃ったケブラー製のボディスーツも。不屈の
魂によって磨き鍛えられたであろうその肉体も。だが、悪魔に魂を売ったのかその首はいまだ健在。隠し持った
小袋を右袖から滑らせ、剣を握ったままの手で受ける。指先で袋の口を明けると、中身の粉状の塊は吸い込ま
れるように刀身に纏わりつき、その微細な一粒一粒が棘のごとく林立した。砂鉄だ。元々が強い磁性を帯びてい
る青柳剣にこれを塗し――自走式棺桶は、レミリアの（正確にはパチェの）パーラーカーに果敢に体当たりを仕
掛けている。「なんてことを！」嫌がらせは止まらない。棺桶の上に飛び上がったフラミンゴが、醜悪な灼熱で車
両を丁寧にグリル。これで外も中もこんがりという案配。客車がスピードを緩めずに走行しているのが奇跡と言え
た。包丁や鉄パイプといった現場調達の武器らしい武器を持っているのはまだかわいい方で、中には鍋やまな板
を持って必死の形相で殴りかかっているもの、更には全くの素手で襲い掛かってくるような者までがいた。その全
てを有象無象の区別なく一方的に虐殺しながら、秋星はこの事態の異常さについて考える。日守秋星は、殺人鬼
だ。殺人鬼であるがゆえに、人間という種の脆さは、熟知している。パチュリーはぼんやりとそんな事を思った。想
いとは裏腹に。口は回る。舌は呟く。詠唱は持続する。互いの軍隊が消えた後には、守る者も無くなった弱々しい
人間が居ただけだったのに。いきなり、もう一人の、全くの無関係だったはずの少女が敵意を示して何事か呟き、
（アレは何かしら？）今度は乙女の方が、人が変わった様に叫んで暴れだし、（毒でも飲んだの？ 私は使ってない
はずよ？）それから、轟音と共に何かが降って来た。道理が通らない、出来事が繋がらない……思考に耽るメディ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「ようこそ――僕の『時間』へ」

スンには、黒い塊を剣と認識する暇も無かった。　言いながら彼女はコートのポケットに入れた手を抜き出した。そ
こには食事用の何の変哲も無い２本のナイフ。それをプリマヴェラは振りかぶりもせずに投げた、いや射出した。
仮面を砕かれた？マグマに突き落とされた？死んだ？悪魔の僕になった？首から下がない？止まった時間の中
で優雅にダンス。パートナーの不在はいただけない。レディを待たせるなんて男としては失格ね。アリスの逡巡―
――救国の道を進み始めた乙女の耳には届かない。マーガレットを目指して、たった一人で進軍する。頭痛は和
らぐどころが拡大し、全身の皮膚がめくれ上がるかのような痛みを彼女に与えている。鎧の下では、汗が滝のよう
に流れていた。―――急がなければ。河の水が大きく海と交わる場所の様な激しい風が、森の波止場とも言える
この場所に再び吹いてきたのです。それはやはり黒い獣…燃える瞳に蛇の首。鰐の尾を持つジャバウォックの飛
来を告げるものでした。　こうなってはさしものお喋りハンプティでさえ、一溜りもありません。　体を掴まれ蔕を抜き、
哀れ叫びを残して連れ去られてしまいます。　始末する手間を省け、かつちょっとした情報収集にもなる。まあ、せっ
かくお気に入りのコートまで犠牲にしたんだ、ちょっとくらいは役に立ってもらわないと困る。それにしても、私は、な
んて頭がいいんだろう。ここまで思い通りに行くなんて――！言えたならば、その術理は常道となる。鉄砂の鞭を見、
其れを繋ぎ止める剣を見、剣の手の内を見、揮う腕を見、腕の起こりを見た。時折その尖端が舌先を伸ばし或いは
豪腕を振り下ろすが、その軌跡は跳んで躱した。躱して、理解した。則ち、これは鉄環を繋げた鎖に同じく、また縄を
縒り編んだ網に等しい。絶叫／攻撃―――大砲のような右手を振り回す／強烈な衝撃／暴風／猛威。蝙蝠少女を
捕縛するための巨大な手。ダンプカーの突撃にも似た絶望。【現在位置：C地区　オフィス街　とある高層ビル屋上】

403 名前：スレイド ◆cDCpSlADE. ：2007/11/27(火) 21:02:45

>>355
スレイド・エピローグ

全ては終わり、四散した肉片がじゅうじゅうと音を立てて燻っていた。
砕かれた頭蓋骨から、僅かに灯っていた悪魔のシンボルがゆっくりと消えていく。
異界の森から一陣の強い風が吹き、嘗てはスレイドと名乗っていた髑髏がカタカタと音を立てて転がった。
未だ、死の行進に続けるように。
しかし、命に背いた挙句、無駄死にしたとあっては、もう悪魔さえ救うまい。

闘いの後に残ったのは、スレイドの焼け焦げた肉片だけだった。
女王の守りはやはり鉄壁で、全てを捨てた突撃をもってしても揺るぎはせず
チーム全体としてなら兎も角、この闘いで姫は殆ど無傷でスレイドを打ち破った。
唯一の汚点は、ほんの少し、頬をアイスピックが掠めただけ。
それさえ掠っただけで、傷などついていないのかもしれない。

風に吹かれて半ば崩れた髑髏が転がる。
カタカタと。カタカタと。

いつしか風が止んでも、晒され頭は止まらない。
カタカタと。カタカタと。

頭蓋がどこまで転がっていったのか、それを知る者は誰もいない。
悪魔さえスレイドを見捨てた。神にはそれ以前に見捨てられていただろう。
彼は死んだ。もうスレイドを蘇らせる者など誰もいない。


だが……もしもアイスピックに王の血が付いていて、スレイドがまだ諦めていないとしたら……。


【現在地：D地区　市街地】
【スレイド死亡】

404 名前：“姫” ◆/HIME/HDYY ：2007/11/27(火) 21:16:12

“姫”一行（怪物王女）VSスレイド（TEEN　TITANS GO!）　エピローグ
>>403

「……でもまぁ、脳天から割られなくて良かったよなヒロ」
リザの明るい声が、戦場跡に響く。
「……いや、良いとか悪いとかじゃなくてあれで僕一回死んだんだけど」

姫の振るった、ダイナミックな鉞の一撃はヒロの左鎖骨から直腸まで一気に抜けて
ヒロの首筋に食い込んだスレイドの首を断ち割っていた。
リザとフランドルは、ヒロの身体から鉞を引き抜き修復が終わるまで中身が零れないように両側から押さえつけるハメになっていた。

「……気に入らんな。勝ったはいいが知りたいことが何一つ判らぬままではないか。
まったく、骨折り損のくたびれ儲けとはこのことだな」
（骨を折ったのは主にヒロだが）言葉どおりの状況に、姫の苛立ちは隠せない。

「で、どうするんだ姫？ トラックの方まで一度戻ってみるか？」
「そうだな―――"入り口”が出口でなくとも、帰り道に繋がる手がかりはあるやも知れぬ」
「ふが」

これからの事を話し合う三人を他所に、ヒロは砕け散ったスレイドの残骸を集め手を合わせる。
それは、戦士としての情けか。それとも人間としての礼儀か。
今のヒロには、明確な答えを出すことは出来なかった。

【闘争終了】
【現在位置：D地区　市街地】

405 名前：◆/HIME/HDYY ：2007/11/27(火) 21:18:02

“姫”一行（怪物王女）VSスレイド（TEEN　TITANS GO!）スピンアウト（外伝）レス番まとめ

地獄に道連れ！ ケルベロッテちゃん♥

―――神殺し47堕天使を探すため、現世に派遣されて一年と数ヶ月。日本を離れ、一週間。
大地震に巻き込まれたり、変な森に迷い込んだりと苦難の末。
「ついに見つけたぞ！ 神殺しの堕天使め！」
「なぜ私の正体と居場所がわかった、地獄の門番よ」

「ふふふ、貴様が自分のブログで『ネットで悪口を書く人は、外に出て太陽の光を浴びて欲しい』という
注目をあびる優れた日記を発表したことで確信したのだ！」
「その発言かなりブラックっスよロッテちゃん」

（中略）

「えぇいとにかく、汝有罪！　神殺しの罪により地獄の門番ケルベロッテの名において―――」

……「な、なんだこｒ」「体が、体が消えッ」「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」「いやだぁ、いやだァッ」「ああ……」「助けてよ！ 誰か僕を助けてよッ」「Ahhhhhhhhhhhhhh」……
……「おかあさーんッ」「嘘だッ嘘といってくれッ」「こんな所で、私は……」「貴様は俺のーッ」「やめてとめてやめてとめてやめてとめてやめッ」……
……「なんじゃあこりゃあッ」「ギャーッ」「俺の後ろに立つなーッ」「たすけてえーりｎ」「もうピーマン残さないから助けてッ」「痛いた痛いた痛い痛」……


　　　　　　「強制送還！！」


……「死んじゃうッこれ死んじゃうッ」「光が……」「あなたーッ」「神に祈らざるを得ない」「マリア様ーッ」「お姉ちゃん……」「それにしても蒸し暑いなぁここ」……
……「グアアアアアアアアアア」ズワオ！「じいちゃん？ じいちゃーん！？」「童貞のまま死にたくな」「―――おフランスに栄光を」「Noooooooooooッ」……
……「ギニャーッ」「戦いはこれからだ！！」「バ…バカなこのザ・フジミと言われｒ」「うわーッ太平洋だーッ」「ズギャッ」「これ、母さんでｓ」……

説明しよう！ ―――ケルベロッテちゃんの行う強制送還は、非常に大ざっぱなので半径50m以内の無実の人間まで
全員地獄送りになってしまうのだ！


“姫”導入
>>160-161
スレイド導入
>>162-163

>>170 >>195 >>204
>>247 >>263 >>264
>>268 >>272 >>276
>>279 >>287 >>324
>>332 >>333-334 >>341
>>350 >>353 >>355

エピローグ
>>403 >>404

【闘争舞台：D地区　市街地】




「ところでロッテちゃん、あそこの看板はなんて書いてあるっスか？」
「うん？　『ルーアン県メイ市公認・100万人集まっても大丈夫！　第一災害避難所』……だな」

【行方不明者数……現在の時点で100万人を突破、なおも増加中】

406 名前："：2007/11/27(火) 21:58:11

赤頭巾 vs プリマヴェラ　
>>362

「つきも　ほしすら　ながれおつ　あなたの　ことばは
　あべこべに。　
　貴女は　呼んだ　彼を　呼んだ　【メアリ・アン】と
　そう呼んだ。　
　貴女はウサギ　ウサギもわたし。あなたは私　私の役目」
　
気のたった自動人形乙女の言葉にも、ウサギは変わらずきっくきっくとん。　
ナイフの束を目にしても、少しも動じずきっくきっくとん。　
そうなのです。ウサギは時計の変わりに地面を叩き、拍子をとっているのです。　
先ほどからウサギは何を気にして時計を見ていたでしょうか？　
曲芸軽業師も逃げ出すほどのナイフの飛ぶ様、それはそれは恐ろしいものでした。　
けれども、そのナイフの先にぶつかるように…３度、風と共に”あれ”が現れて
暴れ始めたのです。ぐららぐららと揺れる森。前と違うことといえば…御覧なさい。　
獣の背中に、赤い頭巾に赤い上下衣。背の丈半分ほどの銃をもった女の子を乗せて
いるのが分るでしょう。　
勢いナイフは爪にとばされ、空しく地面にささるのです。　
女の子は、綺麗な顔立ちをしていましたが、その瞳は煉獄の炎を見つめて来たように
空ろに光を湛えておりました。　
兎に角、女の子はジャバウォックのタズナを出鱈目に握り締め、痛さに彼は仕事を
忘れて暴れ始めます。只でさえ不安定な【卵】は悲鳴と共に、地面に落ちて砕けてゆき
ました。　
さすが「とりあつかいちゅうい」なだけはあるようです。　
一つが砕けりゃ、炎があがり、揺れた木からまた一つ。地面にいる人たちにとって
これは凄い大迷惑でしょう。　
女の子はけれど、そのことがとても嬉しい様子です。口元を出来損ないのクロワッサン
の様に大きく歪ませて、地面に立つふたりの来客に、ふざけて笑って尋ねていました。　

「ねぇ、そこのお嬢ちゃん。どうしてそんなにお口が大きいんだい？」

【現在地：Ｃ地区　叩いて見るたび　卵はおちる】

407 名前：”赤頭巾”：2007/11/27(火) 21:58:44

赤頭巾 vs プリマヴェラ　
>>362

「つきも　ほしすら　ながれおつ　あなたの　ことばは
　あべこべに。　
　貴女は　呼んだ　彼を　呼んだ　【メアリ・アン】と
　そう呼んだ。　
　貴女はウサギ　ウサギもわたし。あなたは私　私の役目」
　
気のたった自動人形乙女の言葉にも、ウサギは変わらずきっくきっくとん。　
ナイフの束を目にしても、少しも動じずきっくきっくとん。　
そうなのです。ウサギは時計の変わりに地面を叩き、拍子をとっているのです。　
先ほどからウサギは何を気にして時計を見ていたでしょうか？　
曲芸軽業師も逃げ出すほどのナイフの飛ぶ様、それはそれは恐ろしいものでした。　
けれども、そのナイフの先にぶつかるように…３度、風と共に”あれ”が現れて
暴れ始めたのです。ぐららぐららと揺れる森。前と違うことといえば…御覧なさい。　
獣の背中に、赤い頭巾に赤い上下衣。背の丈半分ほどの銃をもった女の子を乗せて
いるのが分るでしょう。　
勢いナイフは爪にとばされ、空しく地面にささるのです。　
女の子は、綺麗な顔立ちをしていましたが、その瞳は煉獄の炎を見つめて来たように
空ろに光を湛えておりました。　
兎に角、女の子はジャバウォックのタズナを出鱈目に握り締め、痛さに彼は仕事を
忘れて暴れ始めます。只でさえ不安定な【卵】は悲鳴と共に、地面に落ちて砕けてゆき
ました。　
さすが「とりあつかいちゅうい」なだけはあるようです。　
一つが砕けりゃ、炎があがり、揺れた木からまた一つ。地面にいる人たちにとって
これは凄い大迷惑でしょう。　
女の子はけれど、そのことがとても嬉しい様子です。口元を出来損ないのクロワッサン
の様に大きく歪ませて、地面に立つふたりの来客に、ふざけて笑って尋ねていました。　

「ねぇ、そこのお嬢ちゃん。どうしてそんなにお口が大きいんだい？」

【現在地：Ｃ地区　叩いて見るたび　卵はおちる】

408 名前：三月ウサギ：2007/11/27(火) 22:00:22

>>407
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ●
ハンプティ・ダンプティ　おっこちた
　 ● 　 　　　●　
　 誰れが　おとした　はんぷてぃ？
● 　　　　　　　　　　　　　　　●
それは　わたし　と　うさぎがが　いった
　 　　　　　　　● ● 　　　　　　　　　　　　　　 ●
●　　　　 わたしの　しずかな　ちのあめで
　　　　　　　　　　わたしが　おとした　はんぷてぃ！
　　　　　　　　　 だれが　たまご　うけたのか？
　　　　　　　　　●　　　　　　　　　●　それは　あなたと　ウサギはいった
　　　　　　　　　　　 　　　　　　 あなたの　ちいさな　ぼうしとかさで ●
●　　　　　　　　　　　　　　　　●　　　 あなたに　くだけた　ダンプティ!　●
　　　　　　　　　　　●　　　　　　　　　　　　　　　　えらいおうさま　いちもんも
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　●　　　　　　　 にどとは　もどせぬ　だんぷてぃ！
● 　　　　　　　　　　　　　　 ●
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ●
────────誰がおくやみ　うけるかな？ ●
───それは、あなたと　わたしが　いった。 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　●
──わたしの　ちいさな　みみと　はな。
大きな　あなたに　私は　いった！ ●

409 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/11/27(火) 22:17:08

>>146>>147>>148
　>>149>>150>>151
>>154>>155>>156
>>185>>186>>188
　>>189
>>191>>192>>196>>197>>201
　>>245>>246
>>248>>273>>275
　>>292>>293
>>330>>358>>359>>360>>361
　>>364>>365
>>398>>399



「マンマ、マンマ、マンマ！！　キエエエエエエエエエエエエエ！！」

　絶叫。ベイビーヘッドの岩より硬く剛直した右手／ミキサーに突っ込んだブロック肉の
ように爆ぜる。再生―――吹き飛ばされた骨と肉と血管と神経／歯が生えるような成長と
硬化。しかし手を丸ごと吹き飛ばされた事実／再生までのタイムラグ。


　車載光学センサーからの中継／血と肉を振り撒きながら染まらぬ紅が登場。傲然と立ち、
拷問官たちを睥睨する／月のような威厳と冷厳。夜を歩く吸血女王(ドラキュリーナ)。
　フォーメーション／目の前の怪物を囲む／一斉攻撃の態勢。

　フリントの行動―――ロケットエンジンにタイマーをセット／数分後に加速解除／同時
に自動運転へ切り替え。割れた窓からしなやかに抜け出し、逆さまに跳躍／黒豹のような
しなやかで鋭い機動／コンテナ上へと出現。


　ピエロのメイクと赤いレザースーツ／カトル・カール唯一の人型にして最強。
　左手に鞘／右手に軍刀―――内部に血管を走らせ、精油の血液を複雑に循環させる最新
式の近接武装。重心のの任意的変化―――あらゆる角度／あらゆる速度／あらゆる状況で
斬りつけても最大限の切れ味を発揮できる“石器(フリント)”。


　その顔は微笑を保ち―――祈るように軍刀(サーベル)をかざす。

　それがプログラムのエンターキー＝フォーメーション・アタック。


　ホッパー／スパンカー／挟み撃ち／すれ違うように攻撃／相手の打撃の外から／相手を
掠めるように一撃＋シェイキー／ローチー／十字砲火／ローチーの対人地雷炸裂／シェイ
キーのワイヤーが発射／ばら撒かれる釘と玉／苦痛を約束された電撃＋ポイズンスター／
ベイビーヘッド／高分解性の毒ガス卵を投げまくる／左手を握る／接触した時点で粘膜に
強烈な激痛を与える低致死性／体を捻って放つ正拳突き。


　そしてフリント―――“矢”のような機動で瞬時に接近＋Ｖの字／移動速度よりも更に
速く疾る刃＝偉大な黒塗りの鋼＝“秋水矢の如し(ブレード・フライズ・ライク・アン・アロー)”。
　狙いは二十本ある全ての指先／苦痛の源流／神経の収束点。
　落とせなくとも掠るだけで集中力を削り取れる部位(ポイント)。




　拷問官の戦術＝効果的な苦痛に拠る戦力低下＋撃破。

　短時間で最大の効果を発揮できる拷問技術の戦闘応用。

410 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/11/27(火) 22:18:31

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　>>149>>150>>151
>>154>>155>>156
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　>>189
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>>330>>358>>359>>360>>361
　>>364>>365
>>398>>399
　>>409




　攻撃―――瀟洒に／呵責なく。

　降り注ぐ銀色の刃／回避さえも予測された効果的な面制圧。

　リッキー／加速―――ジグザグ運転／回避する気は皆無。
　ダッキー／コートを開く／そそり立つ銃身／散弾の乱射。

「ゲァゲァゲァゲァゲァ！！　ゲァゲァゲァゲァゲァ！！」更にポンプアクション／銃身
をしごく／続けざまに放出／反撃の面制圧／ナイフを撃墜しながら十六夜咲夜へ。
　迎撃効果―――ナイフ三本がコートに刺さってぶら下がる／リッキーの上顎に当たって
魚の骨のように引っかかる。被害＝微少。


「しゃぶってやるぜ！！　しゃぶってやるぜ！！」リッキーの行動―――刺さったナイフ
を引き抜く／顎にへばりついた錆を落としに掛かる＝戦闘準備。

「ゲァゲァゲァゲァ！！　ゲァゲァゲァゲァ！！」ダッキーの行動―――ひたすらに銃身
をしごき立てながら迫撃／逃げ場を潰して行くような射撃。


　そのまま更に加速／パーラーカーを追い越し／巨大な棺桶車へのルートを遮る。
　遅滞防御―――リーダー格を粉砕するための時間稼ぎ戦術。

「ゲァゲァゲァゲァ！！」
　ダッキーの下品な笑い―――そして鉄と火の放出。



【現在地／ハイウェイ／Ｃ地区接近中】

411 名前：―永遠に紅い幼き月―　レミリア・スカーレット ◆DEVILbzibY ：2007/11/27(火) 22:28:42

紅魔館の優雅な住人たちｖｓカトル・カール
―Forest Lagoon―

>>409>>410

　今夜、初めて―――いや、それどころか数十年ぶりに、レミリア・スカー
レットは目を瞠った。運命を読み取る少女に、驚きなど無いはずなのに。
　幻想郷で久しく眠らせた感情が、激しい痛みともに目覚めを告げる。

　他の六人より攻撃は遅かった。だが、もっとも疾くレミリアを傷つけたの
は彼だった。―――サーベルを構えたピエロ。彼女もまた、この道化師こそ
が一番面白い遊び相手になってくれると期待していた。
　姿を見せたときから、一目で気に入っていた。だから、油断は普段よりぐ
っと抑えられていた。

　ああ、なのに。

　　一瞬の交錯。一振りの刃に対する十本の爪。
　　単純計算で一対十。疾走力も破壊力もレミリアが遙かに勝っている。

　十指の悉くが宙を舞った。
　手だけではない。跳躍の瞬間を狙われて、靴ごと足の指までぜんぶ持って
行かれた。―――状況も忘れて、お嬢さまは呆然と自分の疵を眺める。
　手からはどくどくと赤い噴水。

「……もしかして、負けたの？」
　
　それは誰への問いかけか。
　
　答えは一瞬遅れて到着。蹂躙が解決編までエスコート。
　レミリアは自問をやめた。頭が吹っ飛ばされたせいで、考えが纏まらなく
なってしまったから。……だけど勝手に再生が始まり、自問の再開。
　すぐに中断。今度はワイヤーが眼窩に突き刺さり、電気ショックで思考を
阻む。ついでに地雷が足下から全身を引き裂いた。
　飽きずに再生。―――途端に皮膚が爛れて腐り落ちる。

　再生と破壊のツイストに狂うスカーレットの舞踏。破砕槌の如き拳によっ
て強制的に中断させられた。
　上半身が持って行かれて、きりきりまい。道路に落っこちてぐしゃりと合
唱。あっという間に棺桶から遠のいていく。

　残った下半身―――闇が肉を呼び寄せる。

　これは再生と破壊の徒競走？　先に疲れるのはどっちかしら。


【現在位置／ハイウェイ／Ｃ地区へ接近中】

412 名前：―完全で瀟洒な従者― 十六夜咲夜 ◆Clock/PR2Y ：2007/11/27(火) 22:38:15

>>409-411
　
　街にパレードがやってきた。
　玩具箱をひっくり返して大騒ぎ。
　君は何にするの？
　僕はこれにするよ。
　君は何にするの？
　僕はこれ。
　お嬢ちゃんは？
　私はこれが良い。　　　　　　　　 　　　　はいはい、慌てなくてもショウは続くから。　　　　パレードは続く。続くよ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　君は何が欲しい？
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　僕はこれ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　オレはこれ！
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　私はコッチ！
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そっちは僕の！
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　僕だって！
　乾いた音が夜空を飾るよ。　　　　　　　　　はいはい、順番を守って喧嘩はしない。　　　　　　　　　　僕のなんだい！
　星の一つ一つにキスをプレゼント。
　何時だって頑張って夜空を埋める。
　姫の接吻でなくてごめんなさいね？
　姫様！　姫様！　姫様！　姫様！
　月の姫様にスポットライトは当たらない。
　なんて悲しい事でしょう。
　人に月は恐ろしい。　　　　　　　　　　　　　　　はいはい、優しくしてあげるから。　　　　　　　　ご馳走でもないのに。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ほら、拭きなさい？
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 貴方には私が居ないと。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ホント、駄目ね。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　どうしてかしら？
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　はいはい、終わりにしましょう。　　　　　　　　　　　　　　　好きだから？
　
　

413 名前：―完全で瀟洒な従者― 十六夜咲夜 ◆Clock/PR2Y ：2007/11/27(火) 22:39:00

>>412
　
　私は踊るようにそこに居た。
　忽然と、唐突に。
　時間に縛られすぎている私にしか出来ない芸当で。
　正直に言ってしまえば反則だろう。理の外からの襲撃に対応できる人類は居ないはず。
　稽古でもなく、弾幕ごっこでもなく、ただの殺し合いで私に勝てるような人間はまずいない。
　妖怪でも、まずいない。
　
　フェアじゃない。――それは判りきった事。それでも彼等は天秤を傾けた。傾けすぎて落ちた。
　コインの準備は万全でも、人生にコンテニューは存在しない。リスタートもありえない。
　
　だからリトライのチャンスを上げる。
　鮫の様な男の首筋に右手でナイフをかけながら、左手のナイフを弄んで。
　
「退屈だからチャンスを上げるわ。遊んで欲しい？　殺して欲しい？　イエスなら押すわ。ノーなら引くわ。曖
昧なら蜂の巣ね。さあ、選びなさい？」
　
――言葉で言っても判らないかもだけど。
　仲間意識も低そうで鉛球が飛んできそうだしなあ。

414 名前：ヴィルマ・ファキーリ：2007/11/27(火) 23:07:24

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
>>390
　
　私はひどく冷静だった。相手とは対象的に、全くの無表情をしている事だろう。
　気息のリズムを一拍子誤れば、疵だらけの五体を無理やり束ねている発頸は、もろくも破
綻してしまう。
　今現在、私は毛ほどの気も許せぬ「死地」にいるのだ。
　
　なればこそ、より冷静で、より冷酷であらねばならない。
　人、流水に鑑みること莫くして止水に鑑みる――明鏡止水の境地には遂に及ばずとも、近づ
く事はできる。そして今がそうだ。
　
　
　どこにも存在しない、静謐なる湖面が視えた。――微笑みの剣だ。
　
　
　右手で鞭を操る私は、左手でコートのポケットからあるものを抜き出す。
　自動拳銃の弾倉だ。装填されているのは九ミリ・パラベラム弾が六発。
　武術家たる私が、拳銃もないのに弾だけ所持しているのは訳がある。
　こうする為だ。
　
　
　弾倉から全弾をはじき出し、煮え立つ左腕の激痛を完全に無視して投擲。うねる『青柳無影
鞭』の勢力圏に乗せる。
　鋼龍の螺旋は、瞬く間に背へと乗せた小さな鉄片を運び去る。
　如何に形を変じようと、常に相手の顔に向けられていた先端近くまで到達した、石火のそ
の暇（いとま）――
　
　炸裂音がした。
　一発だけだ。だが標（しるべ）なき弾道をひた走る銃弾は、全部で六発だった。
　磁力の反作用に従い、雷管を叩かれた六発の弾丸は、空中で全く同時に発射されたのだ。
　点と線が結ぶ最終到達点は同箇所。剣にて護られる少女の額だった。
　
　
　拳銃それ自体は発射台に過ぎない。真に殺傷力を持つのは弾丸そのものだ。
　ならば磁力を撃発の代わりと為せば、常人では不可能な角度からの同時連射もこなせよう。
　
　これぞ秘奥の殺戮技――『籠鶯鞭炮』と覚えおけ。
　
　
【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】
　

415 名前：パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU ：2007/11/27(火) 23:31:36

>>365

未知との遭遇。未知なる衝撃。未知たる衝撃。
パチュリーの思考が一瞬空白になったのは、衝撃/電撃の効果だけではなかったのかもしれない。
自分に知らない事がある（・・・・・・・・）/何をされたのか分からない（・・・・・・・・・・・・）という事実は、それほど彼女にとって重かった。

悔恨＝苦痛＝空白は一瞬。
自分が路面を転がっているという事実を認識したのは、その更に一瞬のち。
結界の反作用を瞬間的に強化＝路上を高く高く跳ねる。
さらに風の精霊を招来。空中で強制的に動きを止めた。
……妙な角度になった姿勢を制御するのに更に数瞬。
視界に己の敵を捉えた。

トナカイに乗ったフラミンゴ、異形も程がある騎兵隊。

溜息、一つ。

「恨みもつらみも関心も無いけれど……レミィのところに行くのに邪魔だから、どいて貰うわよ」

「　（悠久なる時の彼方流れ出でた水の伝説、今ここに我パチュリー･ノーレッジの名において再臨せよ。我神ならざる身なれど神の御業はこの地に来たり）」

高速圧縮詠唱。齢を経た魔女たる彼女の術は時間という頚城を超越する。
古の大洪水の現出は、ここに一瞬に為された。

「世界新生の禊（NoachianDeluge）」

かくて、彼女の指先から、大量の水弾が騎兵隊に向けて放たれた。

416 名前：イグナッツ・ズワクフ ◆DOLLmR5Q5A ：2007/11/27(火) 23:32:24

赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>407>>408
　
♣
　
　無茶苦茶だ！なんてナンセンス！さすがにこれは無理だった。いくらプリマ
ヴェラでもあれは倒せない。
　それこそビッグシスターたちでも呼んでこない限りは、あの化物は殺せない。
　だからぼくはプリマヴェラに向かってはやく逃げようと叫ぶ。
　
　だがぼくは彼女の狂暴性をまだ甘く見ていた。
　彼女の顔を覗き込んだぼくは、信じられないものを見た。
　彼女は人形そのものの顔に、肉食獣のような獰猛な笑みを浮かべていた。
　赤い唇が弧を描き、大きな犬歯が白く輝く。
　
　――――ああ、彼女の暴力性は彼女の美しさに比例したんだ。
　
　狂った妖精のように彼女は楽しそうに笑い出した。
　
「あれを見て、イギー。あの子あんなに危なっかしげよ。
　火かき棒を滑り落ちた白の騎士みたいに、鞍の上からいまにも落ちちゃいそう。
　なんてかわいらしいことでしょう！」
　
　ひとしきり笑うと、彼女は辺りを見回し、あきれたように肩をすくめた。
　
「王さまの馬、王さまの家来、みんな寄っても直らないわね」
　
　そういって彼女はぼくのほうを振り返った。
　
「剣はたった一振りしかなかったから、わたしは傘を得物にするわ――同じくらい鋭い傘を」
　
　言って彼女は扇をしまい、右手をぼくに差し出してきた。
　ぼくは一瞬だけ躊躇ったのち、さきほど扇を渡した時に代わりに受け取った
傘を彼女に返した。
　
　彼女は傘を受け取ると、石突の部分をねじって外す。
　それはキャップ状になっており中には鋭い穂先が隠されていた。
　
　スピアーパラソル。貞節を守る淑女のたしなみ。古い時代の骨董品だ。
　
「ここから先は迫真遊戯（ジューヴェリテ）の時間。ヒューマンではなくドールの仕事よ。
　イギー、スーツケースをお願いね。」
　
　そういってぼくの頬に口付けすると、彼女は物騒な傘を手に、ジャバウォッキ
ーへと向き直った。
　
「赤い頭巾の殺し屋さん。そんなに理由がききたいの？だったら教えてあげるわね！
それはね、それは――――それはね、あなたを食べるためよ！」
　
　猫の虹彩を持つ緑の眼が爛々と輝く。彼女の幻想が、森の幻想を侵蝕する。
　ドールの魔法。量子の魔法。思いを力に変え現実を侵蝕する。
　緑の森に無数の赤い華が咲く。火焔という名の華が咲く。発火現象。
　
　咲いた　咲いた　火焔の華が　ならんだ　ならんだ　赤　朱　紅
　
　吹きすさぶ炎の嵐の中、プリマヴェラの身体が動いた。
　淫らな傷のような赤いドレスの裾をひるがえし、プリマヴェラは森へ向かって駆け出していった。
　
♣
　
　
【現在地：Ｃ地区　深い森の　地平線に　なにかがきっとまっている】　

417 名前：……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉：……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉

……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉

418 名前：マルチアーノ12姉妹 ◆M12sisrIV6 ：2007/11/28(水) 00:22:50

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
>>414
　銃身も薬室も銃爪も逆鉤も遊底も撃鉄も撃針も銃床も銃把もなく。
　雷管を打撃されプライマーアンビルとの間で起爆、薬莢内の装薬が燃焼し、弾頭を発射
する。
　最も単純な撃発の仕組を目の前で再現され、反射的にジャニアリーは両手のP90を構えた。
　銃身内で充分な加速を得られていないとは言え、9mmパラベラム115grの弾頭は傍観して
良しとすべき速度を遥かに超えているからだ。
　合計六発、フルオート時の発射速度毎分900発のFN P90では、秒速350mの弾頭に対して
一発発射毎に単純計算で23mの距離を許してしまう。
　到底間に合わない。
　辛うじて一発の9mm弾頭を5.7mm高速弾が弾き返すが、残り五発。
　
　
　其の瞬間、ジュライの笑みが消えた。
　糸の様に細められていた目が開く。
　
　瞳が。
　
　霞に付けた剣尖跳ね上がり飛来する弾頭両断すること其の数三内二はその勢未だ衰えず
来たる残弾一と共に斬って捨てる事残り一弾頭形状滑らかにして被鋼全き全鋼弾なれば鋒
付け貫き返せば鉄砂の嵐過ぎ抜け行く内九粍の弾頭八粍七粍六粍五粍と削りに削られ遂に
は一粍となり消え果てて終わんぬと見えりと雖も剣尖未だ健在為るが故進みて対手明らに
視ゆるは其の頤の下白き喉元に目付刀身平にして貫き薙げり。
　
　
　
　
　ぱちり、と鯉口鳴りて納刀。
　
　【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】
　

419 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/11/28(水) 00:26:38

>>146>>147>>148
　>>149>>150>>151
>>154>>155>>156
>>185>>186>>188
　>>189
>>191>>192>>196>>197>>201
　>>245>>246
>>248>>273>>275
　>>292>>293
>>330>>358>>359>>360>>361
　>>364>>365
>>398>>399
　>>409>>410>>417
>>411>>412>>413>>415





　洪水―――弾丸の形を取った神話。
　物理法則＝質量保存＋エネルギー保存＋万有引力＋作用・反作用／その全てを無視して
発射される水圧弾の制圧射撃。


「いくよいくよいくよいくよ！！　いくよいくよいくよいくよ！！」ホーニー／四本の足
を精密に操って回避／横に飛ぶ／横に飛ぶ／ジグザグ走法／何発かの直撃弾／よろめく／
立て直す／再び直撃弾／崩れた体勢で跳躍して強引に接近／折れた角での吶喊。

「ホーッホッホッホッホ！！　ホーッホッホッホッホ！！」ブランドマン／不安定な足場
の上で片足一本立ち／奇妙なほど体をあちこち折り曲げて水弾を回避／同時に両手から黄
色と緑の不気味な炎／化学反応の揺らめき／アスファルトをすぐさま火まみれに。


　遅滞戦術―――炎の壁で行く手を遮る時間稼ぎ。
　洪水も、悪徳の炎は消しきれない。

420 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/11/28(水) 00:28:47

>>146>>147>>148
　>>149>>150>>151
>>154>>155>>156
>>185>>186>>188
　>>189
>>191>>192>>196>>197>>201
　>>245>>246
>>248>>273>>275
　>>292>>293
>>330>>358>>359>>360>>361
　>>364>>365
>>398>>399
　>>409>>410>>417
>>411>>412>>413>>415
　>>419




　消失―――虚空を抉る散弾。
　驚愕―――混乱を煽る状況。
　出現―――首筋に死の予兆。


「退屈だからチャンスを上げるわ。遊んで欲しい？　殺して欲しい？　イエスなら押すわ。
ノーなら引くわ。曖昧なら蜂の巣ね。さあ、選びなさい？」


　慈悲／非情の選択肢。
　リッキー／反撃不能／回避不能／行動不能。
　退路の無い状況、上に乗っかっていたダッキーが行動を始める。


　ダッキー／跳躍／パーラーカーに乗り移る／ポンプアクション。
　そそり立つ股間の銃身が真っ直ぐ咲夜を狙う＝味方ごと撃ち込むための射線。

　放出―――スラッグ弾。
　巨大な弾頭＝鉄も人も何もかも引き裂く小さな巨人。

　連射／ポンプ／連射／ポンプ／連射／ポンプ／連射―――
　激しく銃身をしごき上げ―――迫撃は絶頂(クリティカル)を突破する。



【現在位置／ハイウェイ】

421 名前：ＤＩＯ ◆kYsrWORLDo ：2007/11/28(水) 00:29:23

>>400 >>401 >>402
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
「オルフェウス」が「世界」に貫かれるッ！　　　|
続けてやってくる感触は生命の喪失…　　　　 |
幻像が消え、暖かみが消え……なかった！　.|
数々の生命を吸い取ってきたＤＩＯだから　　　|
分かる感触が今回は伝わってこないッ！！　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
　　
　
　
　
　　　　　　　　　　　　　なるほど……スタンドとは似て非なるものかッ！　つまり、お前には
　　　　　　　　　　　　　次の手札があるという事かッ！！　面白いッ！！

　
　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　そして、全てが黒く塗り変えられるッ！
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　それはＤＩＯにとっては懐かしい空気…
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　百年前、幼少の時を過ごした死臭漂う貧民街の空気ッ！
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　　　　　

　　　　　　　　ＤＩＯの世界／
　　　　　　　　　　　　　 .／Burn my――
　　　
　　　　　　　　―Part "Contact" end...―

　　　　　　　　　　　／|＿＿＿＿＿＿＿＿___
　　　　　　　　　　く　　to be continued | | / |
　　　　　　　　　　　＼|￣￣￣￣￣￣￣￣￣



【現在地：Ｃ地区　オフィス街　とある高層ビルの屋上】

422 名前：◆kYsrWORLDo ：2007/11/28(水) 00:30:01

　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿　　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　.／　／　　　　　　　　　　　　　　　　|
　|　　剣の奥義とは、何を斬れば達せられるか、人を斬り、岩を斬り、鉄を斬る。　　　　　 ／　／　仮面を砕かれた？　　　　　.|
　|　　寂莫たる虚空を斬るも良し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .／　／　マグマに突き落とされた？　　|
　|　　月影映える水面を月ごと水ごと斬るも良し。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／　／　悪魔の僕になった？　　　　　　　|
　|　　神や仏なぞも、重ねて二つに出来ればなお宜しい。　　　　　　　　　　　　　　　／　／　首から下がない？　　　　　　　　　　|
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　|　　「なんて、出鱈目な……」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　／　どれも負ける理由にはならない。　　　　.|
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「出鱈目な……化物」　　　　　　　　　　 ／　／　　野望を諦める理由にもならない。　　　　. |
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　 ／　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣　 　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　20mの高さが持つ位置エネルギー。　　　　　 .|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　姫の体重と鉞の総重量。　　　　　　　　　　　　.|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　地上における重力加速度9.8m/s＾2。　　　　　.|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　更に鉞を振り下ろすことで生まれる遠心力。　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　鉄製の鉞の強度。　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　|　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　――――――を断ち切った。　　　　　　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣

423 名前：◆kYsrWORLDo ：2007/11/28(水) 00:30:29

　　
　|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|　　
　|　　「じゃ、何が不満なのよ！？」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　
　|　　多少強い詰問口調でなじると、彼女はおもむろに口を開き、　 　|　　　
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　|　　
　|　　「―――キミはもう、手遅れだ」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　
　|　　娘を犯し（殺し）た時と全く同じ無造作さで鉄塊が引き抜かれた。|　　　
　|　　――鮮血滴る左手で明後日の方角を指し示す。　　　　　　　　　 |　
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　|
　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
　|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|
　|　リッキー、ダッキーのツー・マン・セル＝高速移動と範囲迫撃。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　|　ホーニー、ブランドマンのツー・マン・セル＝突撃能力と持続範囲攻撃。　　　　　「疲弊せよ、鋼（Metal Fatigue）」　　　　. |
　|　ポイズンスター、ホッパー、スパンカー、ベイビーヘッド、シェイキー、ローチー。　　　　　　.　 　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　|　そしてフリントのチーム―――いずれも優れた拷問官／傭兵。　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　|　爆弾が爆心地(グラウンド・ゼロ)を作り出すイメージ／“森”源地への突入。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　|　「……私は少食だから、きれいに完食してもらえるとは思わないことね」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　|
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　|　「私、紅魔館でメイド長を務める十六夜咲夜と申します。荒事の心得も少々御座いますので、どうか殺すおつもりで」　　　|
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣

424 名前：◆kYsrWORLDo ：2007/11/28(水) 00:30:54

　|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|
　|　「でていらっしゃい猟師さん。わたしが狼の毛皮を着てるから　　　　　　|　　　　　〈Dans la gloire de la France〉
　|　獲物と間違えたなんていっても信じないわ。　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　　　　　
　|　はやく出て来ないとわたしからいくわよ。その時は絶対に　　　　　 　 ／　／￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|　
　|　許してあげないわ。わたし、いまとても機嫌が悪いのよ」　　　　　　／　／　「毒で死ねるなんて幸せね。羨ましいわ」　　.　 |　
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　.／　／　　―――――そのまま唇を重ねる。　　　　　　　　|　
　|　「ねぇ、そこのお嬢ちゃん。　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　／　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　
　|　どうしてそんなにお口が大きいんだい？」 　　　　　　　　 　 ／　／　　「……乙女はあなた達を赦します」　　　　　　　　　　　|　
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　
　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣

425 名前：……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉：……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉

……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉

426 名前：―完全で瀟洒な従者― 十六夜咲夜 ◆Clock/PR2Y ：2007/11/28(水) 00:31:42

>>420
　
「あらあら――結局そう（、、）なのね。それ（、、）しか選べないのね」
　
　残念ですわ。
　
「それでは遠慮なく――霧の夜を再現いたしましょう」
　

　
　時間の停止。唯一絶対にして誰もが平等に持つ権利を得る筈の時間は、全て私の思うが侭。後悔は遅い、鉛弾
の面制圧ですら遅い、振り返って食い千切ろうとするその行動も、疾走する棺桶も、何もかも、何もかもが遅い。遅
すぎて、遅すぎるから。全てが止まって見える。見えるのではなく止まっている。私はひとりありえない光景を見る。
そこでは風さえ止まる。血液を送る心臓も、新鮮な空気を吸う為の肺も、絶え間なく瞬きを続ける目蓋も、生きる為
に活動を続ける思考すらサボタージュ。止まる、止まる。止まり、止まり、止められ続ける。そこにあるのは生体で
はなくただの死体。動く事を止めた屍。生命を拒否した肉。溶ける事を知らない永久凍土。血を吸う事も出来ない
ヴァンパイア。――時間の停止は全ての終わりを意味する。意味の拒否。意義の否定。価値の喪失。そんな最果
ての世界は何時だって冷たい。寒さを覚える事も、熱に浮かされる事もないのに、冷え切った世界。孤独が全てを
支配した氷の世界。何時も私の側にある死の世界。どうしようもなく救われない世界。だからあまり時間は止めたく
ない――なんていう筈がない。全ての柵から開放された最果ての世界で見る夢は、たまらなく孤独であるからこそ、
強く引かれるものがある。どう足掻いても他人との関係に縛られる世界で、ただ一人きりになれる状況を私だけが
手にしているのだから。孤独は恐るべきものでもなんでもない。それは単にただの幻想に過ぎないのだから――。


　
「――もう一杯いかが？」
　
　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　蓋を閉じた懐中時計から音はしない。

427 名前：◆kYsrWORLDo ：2007/11/28(水) 00:35:10

　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿　　　　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　.／　　 ／　　　　　　　　　　　　　　　　|
　|　　剣の奥義とは、何を斬れば達せられるか、人を斬り、岩を斬り、鉄を斬る。　　　　　 ／　　 ／　仮面を砕かれた？　　　　　.|
　|　　寂莫たる虚空を斬るも良し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .／　　 ／　マグマに突き落とされた？　　|
　|　　月影映える水面を月ごと水ごと斬るも良し。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／　　 ／　悪魔の僕になった？　　　　　　　|
　|　　神や仏なぞも、重ねて二つに出来ればなお宜しい。　　　　　　　　　　　　　　　／　　 ／　首から下がない？　　　　　　　　　　|
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　 ／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　|　　「なんて、出鱈目な……」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　／　どれも負ける理由にはならない。　　　　 |
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「出鱈目な……化物」　　　　　　　　　　 ／　　／　　野望を諦める理由にもならない。　　　 　 |
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　 ／　　 ／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣　 　 　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　|
　|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|　　 　.　|　　20mの高さが持つ位置エネルギー。　　　　　 .|
　|　　「じゃ、何が不満なのよ！？」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　 　 |　　姫の体重と鉞の総重量。　　　　　　　　　　　　.|
　|　　多少強い詰問口調でなじると、彼女はおもむろに口を開き、　 　|　　　　　|　　地上における重力加速度9.8m/s＾2。　　　　　.|
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　|　　　..　 |　　更に鉞を振り下ろすことで生まれる遠心力。　|
　|　　「―――キミはもう、手遅れだ」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　　　|　　鉄製の鉞の強度。　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　|　　娘を犯し（殺し）た時と全く同じ無造作さで鉄塊が引き抜かれた。|　　　　　|　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　|
　|　　――鮮血滴る左手で明後日の方角を指し示す。　　　　　　　　　 |　　　　　|　　――――――を断ち切った。　　　　　　　　　　|
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　|　　　　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　　　 |
　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣　　　　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
　|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|
　|　リッキー、ダッキーのツー・マン・セル＝高速移動と範囲迫撃。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　|　ホーニー、ブランドマンのツー・マン・セル＝突撃能力と持続範囲攻撃。　　　　　「疲弊せよ、鋼（Metal Fatigue）」　　　　　 |
　|　ポイズンスター、ホッパー、スパンカー、ベイビーヘッド、シェイキー、ローチー。　　　　　　.　 　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　|　そしてフリントのチーム―――いずれも優れた拷問官／傭兵。　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　|　爆弾が爆心地(グラウンド・ゼロ)を作り出すイメージ／“森”源地への突入。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　|　「……私は少食だから、きれいに完食してもらえるとは思わないことね」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　|
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　|　「私、紅魔館でメイド長を務める十六夜咲夜と申します。荒事の心得も少々御座いますので、どうか殺すおつもりで」　　　|
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
　|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|
　|　「でていらっしゃい猟師さん。わたしが狼の毛皮を着てるから　　　　　　|　　　　　〈Dans la gloire de la France〉
　|　獲物と間違えたなんていっても信じないわ。　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　　　　　
　|　はやく出て来ないとわたしからいくわよ。その時は絶対に　　　　　 　 ／　／￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|　
　|　許してあげないわ。わたし、いまとても機嫌が悪いのよ」　　　　　　／　／　「毒で死ねるなんて幸せね。羨ましいわ」　　.　 |　
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　.／　／　　―――――そのまま唇を重ねる。　　　　　　　　|　
　|　「ねぇ、そこのお嬢ちゃん。　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　／　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　
　|　どうしてそんなにお口が大きいんだい？」 　　　　　　　　 　 ／　／　　「……乙女はあなた達を赦します」　　　　　　　　　　　|　
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　
　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣

428 名前：◆kYsrWORLDo ：2007/11/28(水) 00:35:28

　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿　　　　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　.／　　 ／　　　　　　　　　　　　　　　　|
　|　　剣の奥義とは、何を斬れば達せられるか、人を斬り、岩を斬り、鉄を斬る。　　　　　 ／　　 ／　仮面を砕かれた？　　　　　.|
　|　　寂莫たる虚空を斬るも良し　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .／　　 ／　マグマに突き落とされた？　　|
　|　　月影映える水面を月ごと水ごと斬るも良し。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／　　 ／　悪魔の僕になった？　　　　　　　|
　|　　神や仏なぞも、重ねて二つに出来ればなお宜しい。　　　　　　　　　　　　　　　／　　 ／　首から下がない？　　　　　　　　　　|
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　 ／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　|　　「なんて、出鱈目な……」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　／　どれも負ける理由にはならない。　　　　 |
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「出鱈目な……化物」　　　　　　　　　　 ／　　／　　野望を諦める理由にもならない。　　　 　 |
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　 ／　　 ／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣　 　 　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　|
　|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|　　 　.　|　　20mの高さが持つ位置エネルギー。　　　　　 .|
　|　　「じゃ、何が不満なのよ！？」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　 　 |　　姫の体重と鉞の総重量。　　　　　　　　　　　　.|
　|　　多少強い詰問口調でなじると、彼女はおもむろに口を開き、　 　|　　　　　|　　地上における重力加速度9.8m/s＾2。　　　　　.|
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　|　　　..　 |　　更に鉞を振り下ろすことで生まれる遠心力。　|
　|　　「―――キミはもう、手遅れだ」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　　　|　　鉄製の鉞の強度。　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　|　　娘を犯し（殺し）た時と全く同じ無造作さで鉄塊が引き抜かれた。|　　　　　|　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　|
　|　　――鮮血滴る左手で明後日の方角を指し示す。　　　　　　　　　 |　　　　　|　　――――――を断ち切った。　　　　　　　　　　|
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　|　　　　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　　　 |
　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣　　　　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
　　　　　　　　　　　「ようこそ――僕の『時間』へ」

　|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|
　|　リッキー、ダッキーのツー・マン・セル＝高速移動と範囲迫撃。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　|　ホーニー、ブランドマンのツー・マン・セル＝突撃能力と持続範囲攻撃。　　　　　「疲弊せよ、鋼（Metal Fatigue）」　　　　. |
　|　ポイズンスター、ホッパー、スパンカー、ベイビーヘッド、シェイキー、ローチー。　　　　　　.　 　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　|　そしてフリントのチーム―――いずれも優れた拷問官／傭兵。　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　|　爆弾が爆心地(グラウンド・ゼロ)を作り出すイメージ／“森”源地への突入。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　|　「……私は少食だから、きれいに完食してもらえるとは思わないことね」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　|
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　|　「私、紅魔館でメイド長を務める十六夜咲夜と申します。荒事の心得も少々御座いますので、どうか殺すおつもりで」　　　|
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　『面白いッ！　どれ、手合わせ願おうかッ！！』

　|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ |　
　|　「でていらっしゃい猟師さん。わたしが狼の毛皮を着てるから　　　　 　|　　　　　〈Dans la gloire de la France〉
　|　獲物と間違えたなんていっても信じないわ。　　　　　　　　　　　　　　　. |　　　　　　　
　|　はやく出て来ないとわたしからいくわよ。その時は絶対に　　　　 　　／　／￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|　
　|　許してあげないわ。わたし、いまとても機嫌が悪いのよ」　　　.　 　／　／　「毒で死ねるなんて幸せね。羨ましいわ」　　.　 |　
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　.／　／　　―――――そのまま唇を重ねる。　　　　　　　　|　
　|　「ねぇ、そこのお嬢ちゃん。　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　／　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　
　|　どうしてそんなにお口が大きいんだい？」 　　　　　　　　　 .／　／　　「……乙女はあなた達を赦します」　　　　　　　　　　　|　
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　
　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣

429 名前：ＤＩＯ ◆kYsrWORLDo ：2007/11/28(水) 00:35:53

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Minato Arisato-PERSONA3


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　vs


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　DIO-Jojo''s Bizarre Adventure-



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　全くの異世界を作り出す、それがお前の真の能力かッ！　だが、こ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　の場だけではこのＤＩＯは倒す事は出来んッ！！　更なる力をわたし
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　に見せてみろッ！　次からは我が「世界（ザ・ワールド）」も全開にて
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　相手しようッ！！




　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ＤＩＯの世界／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .／Burn my――
　　　
　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―Part "Decisive battle" ―




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第ニラウンドだッ！　行くぞッ！　「世界（ザ・ワールド）」ッ！！


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ＤＩＯの世界／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .／Burn my――
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:::::~,::,::::　:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,::::::::　　　　　　: :::~,,:,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―P.:......:　　　　　　　　:::,:::,,, ―
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　,,,,,::::　　　　　　:,:,,,:.:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:~:::,,,,,.,:::,,,::::,::::


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Start!!






【現在地：Ｃ地区　オフィス街　とある高層ビルの屋上（影時間）】

430 名前：ヴィルマ・ファキーリ：2007/11/28(水) 00:48:04

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
>>418
　
　澄みきった鍔鳴りの残響が、大気を揺るがせ終えて暫く――。
　間欠泉のごとく、私の首から血汐が散乱した。
　
　
　――負けたか。
　
　
　床に崩れ落ちる途中、私は平静に事実を認識する。
　恨みつらみは感じなかった。どうあれ今の一瞬に、私の技は一つの極北に達した。
　その上で及ばなかったのだ。
　ならばそれは天命。――この上、何を恨もうか。
　
　己の血の海――まだこんなに詰まっていたとは――に漬かりながら、ぼんやりと思う。
　恨みはすまい。酸素を吸い、二酸化炭素を吐き、ついでに血を啜る権利を欲しい儘にして
きた生物の数が、一つ減ろうとしているに過ぎなかった。
　けれどその上でなお一つ、心を残す事があるとしたら。
　それは滅びを迎える場所が、我が最愛の夫、ヴィクターの腕の中ではなかったという無念。
　
　
　唇を震わせかけて、私は動くのを止めた。
　瞼を閉じる力は、もう残っていなかった。
　
　
（ヴィルマ・ファキーリ→死亡）
　
【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】
　

431 名前：……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉：……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉

……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉

432 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/28(水) 01:04:27

　
　馴染み深い夜。
　全ての機械が止まった夜
――ああ、しまった。BGMが聞こえない。馬鹿みたいな哄笑だけがBGMじゃ萎えるって。
　
　オルフェウスは苦痛のフィードバックを避ける為に僕の中へ。
　琴の音すらしないなんて拷問だ。象徴化でもしてくれれば無視して帰るんだけどね――。
　加えて大きな思い違い。勘違い＝自己完結＝置き去りにされる僕。
　
　まあ、いいさ。
　どうでもいい。
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　勝者はオマエじゃない。
　
　
　
　弾倉に詰め込むのは意思。
　己を貫き殺す意志。
　全ての世界を殺す意思。
　有象無象の区別なく殺す意思。　　　
　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　第ニラウンドだッ！　行くぞッ！　「世界（ザ・ワールド）」ッ！！
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ＤＩＯの世界／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .／Burn my――
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:::::~,::,::::　:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,::::::::　　　　　　: :::~,,:,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―P.:......:　　　　　　　　:::,:::,,, ―
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　,,,,,::::　　　　　　:,:,,,:.:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:~:::,,,,,.,:::,,,::::,::::
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　己だけを殺せる弾丸。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そこに見る違和感。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　対処不能の死。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　逃れられぬ死。
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「――タナトス」
　
　
　咆哮、残響、斬響。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　僕なんだよ。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　運ぶ/死の/宴。
　
【C地区　とある高層ビル屋上――『影時間』にて】

433 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/11/28(水) 01:26:02

>>426


　絶頂の代償―――スラッグ弾すら問題にならない銀の瀑布。




　上にナイフ／下にナイフ／右にナイフ／左にナイフ／銀色の輝き／星と混じる／暗闇を

照らす／金属の煌き／空を埋め尽くすナイフ／地から飛び出してくるナイフ／ストレート

／カーブ／あらゆる軌道／角度／速度によって／あらゆる急所／致命傷を／点で／面で／

立体で／切断を／圧縮を／破壊を／質量で／刃で／速度で／上にナイフ／下にナイフ／右

にナイフ／左にナイフ／銀色の輝き／星と混じる／暗闇を照らす／金属の煌き／空を埋め

尽くすナイフ／地から飛び出してくるナイフ／ストレート／カーブ／あらゆる軌道／あら

ゆる角度／あらゆる速度／あらゆる急所／あらゆる致命傷を／点／面／立体で／切断／圧

縮／破壊を／質量／刃／速度で　上にナイフ／下にナイフ／右にナイフ／左にナイフ／銀

色の輝き／星と混じる／暗闇を照らす／金属の煌き／空を埋め尽くすナイフ／地から飛び

出してくるナイフ／ストレート／カーブ／あらゆる軌道／あらゆる角度／あらゆる速度／

あらゆる急所／あらゆる致命傷／点で／面で／立体で／切断を／圧縮を／破壊を／質量で

／刃で／速度で―――限界値(クリティカル)を突破する。




　グラウンド・ゼロ＝定められた爆心地(ダッキー／リッキー)へと突入。




「ゲァゲァゲァゲァ……」「しゃぶってやるぜ、しゃぶって……」銀色の衝撃／爆発――
根こそぎ砕け散る生命／鋼鉄／義肢／武装。バウンド―――滑落するダッキー／火花を上
げて倒れるリッキー＝全てハイウェイの彼方へと消え去る。






　加速し続けるトレーラー／パーラーカー。


　何もかもを省みず、“森”源地(グラウンド・ゼロ)へと突入していく棺桶と館。




【現在位置／ハイウェイ―――リッキー・ヒッキー、ダッキー・シューター撃破】

434 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/11/28(水) 01:38:02

>>411



　粉砕―――勢い余っての大打撃＝相手がミンチに変貌する猛威。

　脅威―――上半身を丸ごと失ってなお再生を始める存在＝もはや科学で解析出来る範疇
を越えた蘇生能力(レブナント)。

　行動―――変わらず。相手の再生を待ち再び攻勢＝連続した苦痛に拠る精神面での破壊
を狙っての軌道。おそらく通常攻撃での撃破は不可能。


　再生―――動き出す前に攻撃。

　ベイビーヘッド／再生した右手による薙ぎ払い／わざと回避させる緩慢な攻撃。

　シェイキー／ワイヤーの発射／無防備な背中に突き立てる。

　ローチー／動きの止まったところで注射針を両足に。

　ホッパー／跳躍／左肩の肉を抉り取って歓喜の再跳躍。

　スパンカー／下腹部を狙って打ち据える／皮膚が裂けて流血。

　ポイズンスター／敵の目の前に卵／刺激物を詰めた拷問用の薬物が炸裂／粘膜を苛む。

　フリント―――刺突／三連／いずれも掠めるような軌道／腋／大腿／胸に切り傷。
　いずれも神経の集中する部分／さらなる苦痛の煽動。

　いずれも反撃に備えての射程ギリギリからの攻撃＝倒すための接近は不要。


　心を折る―――拷問神官(カトル・カール)のルーチン・ワーク。


【現在位置／ハイウェイ】

435 名前：―永遠に紅い幼き月―　レミリア・スカーレット ◆DEVILbzibY ：2007/11/28(水) 01:48:28

紅魔館の優雅な住人たちｖｓカトル・カール
―Forest Lagoon―

>>434

　この森は世界からあまりに遠く乖離しているため、レミリアの特性をもっ
てしても運命を読み取るのは難しい。
　糸と糸を結び合わせるかのように、かすかな手がかりから全体を構築して
いく。気が遠くなるような精密作業。誰かに観測されることは決してない、
彼女だけの領域で運命は回る。

　―――その間も拷問は無慈悲に進行。あまりの苛烈さに、不死者の中でも
トップヒエラルキーの再生力を誇るレミリアが五体を維持できない。
　かといって殺し尽くす意図もないのか、彼女が深いダメージを負うと攻撃
が緩む。一定の再生を待って蹂躙再開。レミリアの爪が届かない安全圏から
烈火の如く手加減をする。
　彼等の目的が戦闘ではないことは明白だ。

　お嬢さまは待ち続けた。屈辱（ほんとは愉しがっているけど）に耐えなが
ら、辱め（服ごと再生する紅魔館七不思議）に甘んじながら。
　運命が果実を落とすときを待った。自分だけの世界で、糸を紡ぎ続けた。

　　見えたわ！

　制止した時の中でナイフが踊っている。それも大量に。海のように。回収
する手間を考えると、逆に面倒なくらいに。
　侍従の仕事はいつだって完璧にして迅速だ。レミリアは満足そうに嗤う。
その時、彼女には唇も喉も無かったけれど。

　レミリアの世界でいちばん可愛らしい顔が、ついに苦痛に歪んだ。頭を再
生させて、涙をぽろぽろと流す。ついでに喉も再構築。
「痛い！　痛いわ！」
　かぎ爪に肩の肉が削がれて、左腕が落ちた。
「やめて！　もうお願いだからやめてよぅ！」
　背中が電撃に焼け焦げる。
「いじめないで！　私が悪かったから！　もういじめないで！」

　そして迸る三条の刀光―――レミリアの瞳に一瞬だけ炎が宿る。
　今度は見えた。ぎりぎりで、道化師の刃を捉えることができた。代償とし
て身体を操る糸が切れてしまったが。その場にべたりと崩れ落ちる。
「見えたのだから、次は負けない」悲痛に泣き叫ぶお嬢さまの覚悟。

「咲夜、助けて！　助けて咲夜！」

　結局、それが言いたいだけだった。


【現在位置／ハイウェイ／Ｃ地区へ接近中】

436 名前：ＤＩＯ ◆kYsrWORLDo ：2007/11/28(水) 02:08:24

>>432　
　
　
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　フッフッフッ………二体目かッ！　なるほど。なるほど。これはルー
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ル違反どころの話ではないなッ！！　スタンドとは明らかに違うッ！
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そして、「全て」を理解をしたッ！　この『出会い』の持つ意味ッ！
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　お前はわたしと同じく、王という可能性に目覚めた者ッ！！
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そして、お前はこのＤＩＯという「引力」に引かれ、その「重力」に潰
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　される為に此処にやってきたのだッッ！！！
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　見せてやろうッ！　我が「世界（ザ・ワールド）」こそがまさにッ！
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　世界を支配する能力である事をッ！！



　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　世界（ザ・ワールド）ッ！


　


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――――――――――時よ、止まれッ！
　
　
　
　
　

437 名前：ＤＩＯ ◆kYsrWORLDo ：2007/11/28(水) 02:08:49

　　　ＴＩＭＥ
　　　５：００
　　　　　


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッァ！！



　　　ＴＩＭＥ
　　　３：００



　　　　　　　　　　　　　　　　　　::::::::::::: ::::::.,,,:::,,
　　　　　　　　　　　　　　　.,,::::::::　　　　　　: :::~,,:, 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:::::~,::,::::　:
　　　　　　　　　　　　　　　::::::::　　　　　　　　:::.,::::　　　　　　　:::::~,::,:::::::::::　:　　　　　　　　　.,,::::::::　　　　　　: :::~,,:,
　　　　　　　　　　　　　　　 .:......:　　　　　　　　　:::,:::,,,　　　　::::::::::: ::::::　　,:::,,~::,,::::::　　　　　::::::::　　　　　　　　:::.,::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　,,,,,::::　　　　　　:,:,,,:.:　　　.::~,,,,,,::　:　　　　　　: :::~,,,.,,:, 　　　　.:......:　　　　　　　　　:::,:::,,,
:::::~,::,.,:~::::::::　　　　　　　　　::~:,,,::::::::,,,,,,,::::::::::::,,　　　　　.:......:::,,　　　　　　　　:::,:::,,,　　　　　　　,,,,,::::　　　　　　:,:,,,:.:
.,,,,,,.:~::::::::::,,~::,,::::::　　　　　　　　　:~:::,,,,,.,:::,,,:　　　　　　　,,,,,,::::　　　　　　　:,:,,,:.::,.::..　　　　　　　::~:,,,::::::::,,,,,,,::::::::::::,,
　　　　　　　: :::::::::~,,,.,,:: 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,,,,,.:::　　　　　　:: ~,:::.:　　　　　　　　　　:~:::,,,,,.,:::,,,:
　　　　　　　　　　:::.,,,,:　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　::~:,,,::::::::,,,,,,,::::::::::::::
　　　　　　　　　　:::::::::::
　　　　　　　　　　:::,:::,,,　　　　　　　　　　:::::~,::,:::::::::　:
　　　　　　　　　:,:,,,:.::,.:::..　　　　　　　::::::::::::: ::::::::.,,,:::,,~::,,:::
:　　　　　　:: ~,:::.:::,~　　　　　　　.,,:::::::::::　　　　　　　　: :::~,,:, 　　　　　　　　　　　:::::~,::,:::::::::::　:
　,,,,,,,,,,:::: ~::::::::::　　　　　　　　　::::::::　　　　　　　　　　:::.,::::: 　　　　　　　　　　::::::::::: ::::::　　,:::,,~::,,::::::
,.,:::::::.:::.:::::　　　　　　　　　　　　.:......:　　　　　　　　　　:::,:::,,,はオマエじ.::~,,,,,,::　:　　　　　　: :::~,,,.,,:, 　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　.,,,,,::::　　　　　　　　　:,:,,,:.::　　　　　　　.:......:::,,　　　　　　　　:::,:::,,,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,::::::.:::　　　　　　　::,:::.:　　　　　　　　　,,,,,,::::　　　　　　　:,:,,,:.::,.::..
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　::~:,,,::::::::,,,,,,,::::::::::::::,,,,　　　　　　　　　　,,,,,,.:::　　　　　　:: ~,:::.:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　::~:,,,::::::::,,,,,,,::::::::::::::

　　　　　:::::~,::,:::::::::　:　　
　弾::::::::::::: ::::::::.,,,:::,,~::,,:::のは意思。
　己.,,:::::::::::　　　　　　 :::~,,す意志。
　全て::::::::　　　　　　::.,:::::殺す意思。　　　　　　　　　:::::~,::,::::　:　　　　　　　　　　　::::::: ::::::::.,,,:::,,~::,,::::::
　有象無.:......:　　　　:::,:::,,,殺す意思。　　　　::::::::::::: ::::::.,,,:::,,　　　　　　　　　　.::~,,::　:　　　　　　: :::~,,,.,,:, 　　　
　　　　　　~:::,,,,,.,:::::::.:::::::　　　　　　　　　　　.,,::::::::　　　　　　　: :::~,,:, 　　　　::::.,,:::::::::　　　　　　　　:::.,,,,: 　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　::::::::　　　　　　　　:::.,::::　　　　　.:......:::,,　　　　　　　　　:::,:::,,,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,,,,::::　　　　　　　　:,:,,,:.:　　　　　　　,,,,,,.:::　　　　　　　:: ~,:::.:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,::::::.:::　　　　　　:,:::.:　　　　　　　　::~:,,,::::::::,,,,,,,::::::::::::::,,,,　　　　　己だけを殺せる弾丸。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　::~:,,,::::::::,,,,,,,::::::::::::,,　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そこ:::::~,::,::::違和感。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:~:::,,,,,.,:::,,,　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　::::::::::::: ::::::.,,,:::,,の死。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.,,::::::::　　　　　　　: :::~,,:, 死。
　　　　　:::::~,::,:::::::::　:　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　::::::::　　　　　　　　:::.,::::
　　.,,:::::::::::　　　　　: :::~,,:, 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.:......:　　　　　　　　:::,:::,,,
　　　::::::::　　　　　　:::.,::::: 　　　　　　　　　　　:::::~,::,.,:~:::::::::::　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　,,,,,::::　　　　　　　:,:,,,:.:
　　　,,,,,::::　　　　　　:,:,,,:.::　　　　　　.::~,,,,,,::　:::::~.::::　　　: :::::::::~,,,.,,―タナトス」　　　　　　　　　　　　　　　　　　,::::::.:::　　　　::,:::.:
　　　　,::::::.:::　　　:,:::.:　　　　　　　　::::.,,,,,,,,:　　　　　　　　　　　:::.,,,,,,:::　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　::~:,,,::::::::,,,,,,,::::::::,
　　　　　:::,,,,,.,:::::::.:::::::　　　　　　　　,,,,,,:::::　　　　　　　　　　　::::::::::::::: 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:::::~,::,:::::::::　:
　咆哮、残:::,,,,,.,:::::::.　　　　　　　　　.:......:::,,:::,　　　　　　　　　:::,:::,,,んだよ。　　　　　　　　　　　　　　.,,:::::::::::　　　 :::~,,:, 死の/宴。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,,,,,::::　　　　　　　:,:,,,:.::,.:::..　　　　　　　　　　　　　　　　　　::::::::　　　　　　　:::.,:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,,,,,.:::　　　　　　:: ~,:::.:　　　　　　:,:,,,:.::,.::..　　　　　　　　　.:......:　　　　　　　::,:::,,,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ..:::~:,,,,,,,,,,,,,,:::: ~::::::::::::,,:.　　　　::: .,,,,,,.:~::::::::::,,~::,,::::::　　　　,::::::.:::　　　　　　　::,:::.:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:~:::,,,,,.,:::::::.:::.,,,,,,　　　　　　　,,,,,,:::::　　　　　　:::: :::: 　　　　::~:,,,::::::::,,,,,,,::::::::::::::,,,,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,,,,:::　:　　　　,:.::,.:::　　　　　　　　:::,,,,,.,:::::::.:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,,,,,.:::　　　　　:: :.::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:::::~,::,:::::::::　:



　　　ＴＩＭＥ
　　　１：００



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　これが「世界（ザ・ワールド）」だ………。最も時間が止まっている
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　お前には見えもせず、感じることも出来ないだろうがな。



　　　ＴＩＭＥ
　　　０：００



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――――――――――――――そして、時は動き出す………

438 名前：ＤＩＯ ◆kYsrWORLDo ：2007/11/28(水) 02:09:30

　　　　　　　　　　　　　　　　　　::::::::::::: ::::::.,,,:::,,
　　　　　　　　　　　　　　　.,,::::::::　　　　　　: :::~,,:, 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:::::~,::,::::　:
　　　　　　　　　　　　　　　::::::::　　　　　　　　:::.,::::　　　　　　　:::::~,::,:::::::::::　:　　　　　　　　　.,,::::::::　　　　　　: :::~,,:,
　　　　　　　　　　　　　　　 .:......:　　　　　　　　　:::,:::,,,　　　　::::::::::: ::::::　　,:::,,~::,,::::::　　　　　::::::::　　　　　　　　:::.,::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　,,,,,::::　　　　　　:,:,,,:.:　　　.::~,,,,,,::　:　　　　　　: :::~,,,.,,:, 　　　　.:......:　　　　　　　　　:::,:::,,,
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.,,,,,,.:~::::::::::,,~::,,::::::　　　　　　　　　:~:::,,,,,.,:::,,,:　　　　　　　,,,,,,::::　　　　　　　:,:,,,:.::,.::..　　　　　　　::~:,,,::::::::,,,,,,,::::::::::::,,
　　　　　　　: :::::::::~,,,.,,:: 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,,,,,.:::　　　　　　:: ~,:::.:　　　　　　　　　　:~:::,,,,,.,:::,,,:
　　　　　　　　　　:::.,,,,:　　　　　　　　は　　　　　　　　　　　::~:,,,::::::::,,,,,,,::::::::::::::
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　,,,,,,,,,,:::: ~::::::::::　　　　　　　　　::::::::　　　　　　　　　　:::.,::::: 　　　　　　　　　::::::::::: ::::::　　,:::,,~::,,::::::
,.,:::::::.:::.:::::　　　　　　　　　　　　.:......:　　　　　　　　　　:::,:::,,,　　　　　　　.::~,,,,,,::　:　　　　　　: :::~,,,.,,:, 　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　.,,,,,::::　　　　　　　　　:,:,,,:.::　　　　　　　.:......:::,,　　　　　　　　:::,:::,,,
　　　弾　　　　　　　　　　　　　　　,::::::.:::　　　　　　　::,:::.:　　　　　　　　　,,,,,,::::　　　　　　　:,:,,,:.::,.::..
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　::~:,,,::::::::,,,,,,,::::::::::::::,,,,　　　　　　　　　　,,,,,,.:::　　　　　　:: ~,:::.:
　　　　　　　　　　　己　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　じゃ　　　　　::~:,,,::::::::,,,,,,,::::::::::::::　　　　　　　　　　　　　せる
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　は　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　殺
　　　　　:::::~,::,:::::::::　:　　　　　　　　　　　　　　　　意思　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　け
　　::::::::::::: ::::::::.,,,:::,,~::,,:::　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　を　　　　　　　　　己
　　.,,:::::::::::　　　　　　 :::~,,　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　だ
　　　::::::::　　　　　　::.,:::::　　　　　　　　　　　　　　:::::~,::,::::　:　　　　　　　　　　　::::::: ::::::::.,,,:::,,~::,,::::::　　　　　　　　弾丸
　　　　.:......:　　　　:::,:::,,,　　　　　　　　　　　　::::::::::::: ::::::.,,,:::,,　　　　　　　　　　.::~,,::　:　　　　　　: :::~,,,.,,:, 　　　
　　　　　　~:::,,,,,.,:::::::.:::::::　　　　　　　　　　　.,,::::::::　　　　　　　: :::~,,:, 　　　　::::.,,:::::::::　　　　　　　　:::.,,,,: 　　　　　　　　　　の　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　意　　　　　　　::::::::　　　　　　　　:::.,::::　　　　　.:......:::,,　　　　　　　　　:::,:::,,,そ
　　　全　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,,,,::::　　　　　　　　:,:,,,:.:　　　　　　　,,,,,,.:::　　　　　　　:: ~,:::.:　　　　死死
　　　　　　　　有象　　　　　　　　思　　　　　　,::::::.:::　　　　　　:,:::.:　　　和　　　　::~:,,,::::::::,,,,,,,::::::::::::::,,,,こ　　　　　
　て　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　::~:,,,::::::::,,,,,,,::::::::::::,,　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:::::~,::,::::
　　　　　　　殺　　　　　　　　　す　　　　　　　　　　　:~:::,,,,,.,:::,,,　　　　　　　　　　　　違　　　　　　　　　　　　::::::::::::: ::::::.,,,:::,,
　　　　　　　　　　　　　無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　感　　　　　　　　　　　　　　.,,::::::::　　　　　　　: :::~,,:,
　　　　　:::::~,::,:::::::::　:　　　　　意　　　　思　　　　　　　　　　　　　　　ナ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　::::::::　　　　　　　　:::.,::::
　　.,,:::::::::::　　　　　: :::~,,:, 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　タ　　　　　　　　　　　　　　　.:......:　　　　　　　　:::,:::,,,
　　　::::::::　　　　　　:::.,::::: 　　　　　　　　　　　:::::~,::,.,:~:::::::::::　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　,,,,,::::　　　　　　　:,:,,,:.:
哮　,,,,,::::　　　　　　:,:,,,:.::　　殺　　　.::~,,,,,,::　:::::~.::::　　　: :::::::::~,,,.,,　　　　　　　　　　　　　　　　　死　　　　　,::::::.:::　　　　::,:::.:
　　　　,::::::.:::　　　:,:::.:　　　　　　　　::::.,,,,,,,,:　　　　　　　　　　　:::.,,,,,,:::　　　　　ト　　　　　　　　　　　　の　　　::~:,,,::::::::,,,,,,,::::::::,
　　　　　:::,,,,,.,:::::::.:::::::　　　す　　　　,,,,,,:::::　　　　　　　　　　　::::::::::::::: 　　　　　　　　ス　　　　　　　　　　:::::~,::,:::::::::　:
　　　　　　:::,,,,,.,:::::::.　　　　　　　　　.:......:::,,:::,　　　　　　　　　:::,:::,,,　　　　　　　ん　　　　　　　　　　　　.,,:::::::::::　　　 :::~,,:,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,,,,,::::　　　　　　　:,:,,,:.::,.:::..　　　　　　　　　　　　　　　　　　::::::::　　　　　　　:::.,:::::
　　　　咆　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,,,,,.:::　　　　　　:: ~,:::.:　だ　　　:,:,,,:.::,.::..　　　　　　　　　.:......:　　　　　　　::,:::,,,　　の
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ..:::~:,,,,,,,,,,,,,,:::: ~::::::::::::,,:.　　　　::: .,,,,,,.:~::::::::::,,~::,,::::::　　よ　　,::::::.:::　　　　　　　::,:::.:
　　　　　　　　　　残　　　　　　　　　　　　　:~:::,,,,,.,:::::::.:::.,,,,,,　　　　　　　,,,,,,:::::　　　　　　:::: :::: 　　　　::~:,,,::::::::,,,,,,,::::::::::::::,,,,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,,,,:::　:　　　　,:.::,.:::　　　　　　　　:::,,,,,.,:::::::.:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,,,,,.:::　　　　　:: :.::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:::::~,::,:::::::::　:　　　　　　　　　　　　　　　　宴





【C地区　とある高層ビル屋上――『影時間』にて】

439 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/28(水) 02:42:26

>>438
　
　ぎちり、と脳の中で音がした。
　魂の拒否する音色は耳の中で鳴り止まない。
　タナトスの受けたダメージが、還元。脳の悲鳴は激しい頭痛。
　何が起こったのか判らないが、何かが起こった事だけは確か。（、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、）
　
　ま、恐れても仕方がない。
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　恐怖を焼き尽くせ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　焼き尽くせ。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　世界を焼き尽くせ。
　
「――オルフェウス」
　
　撃鉄が降りると同時に顕在する、僕。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　その琴は炎を奏でる。
　手にした日本刀は、緑の夜を写す。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　己が身を焼く激情を。
　鏡のように―――――世界を映す。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　終わる事なき浄化を。
　鏡の映った僕は―――――笑う。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　燃やし尽くす為だけに。
　
　
　　　これで倒せるなんて甘い考えじゃない。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ただその炎を礎に。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　赤々と燃え盛る炎で鼓舞するだけ。
　　　　意味の無い精神力の無駄遣い。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ただ力が足りないと思い知るだけ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　なんて無力なんだろう。
　　　　　僕が出来る事なんて、その程度。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　世界に与える影響は皆無。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　全ての人の魂の歌の前では。
　　　　　　　緑の夜の中では結局誰もが無力。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　この時間に在るモノ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　それは自分自身との対面だけだ。
　
　だから――
　
「――タナトス！」
　
　続けて二度の召喚。
　精神への付加増大=ペルソナ召喚のリスク/されど許可=それは打倒の為。
　喰らい尽せと勅/咆哮による返答=同時に疾走の開始。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――僕にしか聞こえない歌が流れる。
　
　リスクのない勝負なんて元から望んじゃいない。
　傷付く事を恐れるのは、立ち止まる事。
　傷口を舐めるのは、進みながらでも出来る事だから。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――僕にしか聞こえない世界が。
【C地区　とある高層ビル屋上――『影時間』にて】

440 名前：システムアナウンス ★：2007/11/28(水) 04:28:41

吸血大殲　森祭　途中経過纏め

＊進行中の闘争の中断状況を記載
＊終了した闘争については最後に記載
＊各人のターンのレス毎に改行
＊再開時間の申請があるものは記載
＊タグ使用闘争は各闘争ごとに付記、対応ブラウザでの閲覧推奨

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹

マルチアーノ１２姉妹導入
>>77>>78>>79>>81
ヴィルマ・ファキーリ導入
>>83>>84>>85

>>87>>88
>>89
>>95
>>103
>>116
>>121
>>134
>>139
>>178
>>190
>>207
>>213
>>225
>>228
>>238
>>262
>>267
>>270>>271
>>280
>>290
>>347
>>356
>>390
>>414
>>418
>>430

【闘争舞台：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）】

備考：残りはエピローグのみ
＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

紅魔館の優雅な住人たちｖｓカトル・カール
―Forest Lagoon―

紅魔館導入
>>146>>147>>148
カトル・カール導入
>>149>>150>>151

>>154>>155>>156
>>185>>186
>>188
>>189
>>191>>192
>>196>>197
>>201
>>245>>246>>248
>>273>>275
>>292>>293
>>330
>>358
>>360>>361
>>398
>>399
>>409>>410
>>411
>>412>>413
>>415
>>419>>420
>>426
>>433>>434
>>435



【現在地：ハイウェイ】

＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

441 名前：システムアナウンス ★：2007/11/28(水) 04:29:21

日守秋星　VS　西園寺世界　「-WORLD HANT.」

日守秋星導入
>>296>>298
西園寺世界導入
>>299>>300

>>302>>303
>>309>>310
>>311
>>312>>313
>>315
>>318>>319
>>325
>>366>>367>>368
>>395>>396

【現在地　B地区「繁華街」】

有里湊ｖｓＤＩＯ

　ＤＩＯの世界／
　　　　　　 .／Burn my――

ＤＩＯ導入
>>369>>370
有里湊導入
>>371>>372>>373>>374>>375>>376>>378

>>379>>380
>>381
>>382
>>383
>>384
>>385
>>386
>>387
>>397
>>400>>401>>402
>>421>>422>>423>>424>>427>>428>>429
>>432
>>436>>437>>438
>>439

【現在地　C地区　とある高層ビルの屋上（影時間）】

＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨


赤頭巾VSプリマヴェラ

赤頭巾導入
>>336>>337>>338>>339>>340
プリマヴェラ・ボビンスキ導入
>>342>>343>>344>>345>>346

>>348>>349
>>352
>>357
>>362
>>406>>407>>408
>>416


【現在地：Ｃ地区　………】

＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨


ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓメディスン・メランコリー
―576年目の森林裁判―

挿話　第四巻[聖杯伝説]
>>316

ジャンヌ導入
>>317>>320>>321
メディスン・メランコリー導入
>>322>>323
>>326
>>328
>>329
>>331
>>335
>>351
>>354
>>363
>>388>>389

【闘争舞台：Ｄ地区　学校】

＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨
備考：残りはエピローグのみ

442 名前：システムアナウンス ★：2007/11/28(水) 04:29:48

＞終了した闘争レス番纏め

森祭テーマ（ストーリー関連）闘争

DIO vs JEANNE ―The forth part of king Henry VI―
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/138
＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

ミスティア・ローレライｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル　『イツマデ』 Still When
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/230

エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル　『ポワティエ平野で朝食を』
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/305


通常の闘争

エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミｖｓリサ・トレヴァー
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/252

レイオット・スタインバーグｖｓ魔神王リィーナ
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/291

死神（デス）ゼアド vs ＜呪われし公子ゲイナー＞
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/286
＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

“姫”一行（怪物王女）VSスレイド
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/405
＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

443 名前：『小さなスイートポイズン』メディスン・メランコリー ◆MelancLaI. ：2007/11/28(水) 18:35:08

（エピローグ投稿予定）

444 名前：『小さなスイートポイズン』メディスン・メランコリー ◆MelancLaI. ：2007/11/28(水) 18:37:36

ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓメディスン・メランコリー
―576年目の森林教室―

レス番まとめ
>>316>>317>>320>>321>>322
>>323>>326>>328>>329>>331
>>335>>351>>354>>363>>388
>>389>>443

445 名前：ＤＩＯ ◆kYsrWORLDo ：2007/11/28(水) 18:44:47

>>439
　
　
　

　
　　　　　　　　　　　　　　　　 ／ほうッ！　それは先ほど私がブチ抜いてやった奴かッ！！
　　　　　　　　　　　　　　　／『同じものを呼び出せる』…実に興味深いッ！
　　　　　　　　　　　　　　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣

　　　　　　　　　　 ／そして、今度の見世物はその炎かッ！！
　　　　　　　　　／炎は再生…お前自身の再生、再起のつもりかッ！　フンッ！
　　　　　　　　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　 ／世界の頂点に立つ者はほんのちっぽけな恐怖も持たぬ者ッ！
　　　／そんなカスみたいな炎では何の恐怖が焼き尽くせるッ！？
　　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　！？

　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　『二体目を同時に呼び出す』だと…ッ！　クックックッ…　　＼
　　　　　　　　　　　群体で無い『全く違うもの』を『複数』操る、それが真髄かッ！＼
　　　　　　　　　　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　「無償」という訳では無いか、お前のその表情（かお）ッ！＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　その苦痛に歪む顔はまるでＫＯ寸前のボクサーだぞッ！！＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　クズ札が何枚あっても無意味ッ！ もう良い、満足したッ！＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　トドメは我が「世界（ザ・ワールド）」の真の能力ッ！　時よ… ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣



【C地区　とある高層ビル屋上――『影時間』にて】

446 名前：パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU ：2007/11/28(水) 19:09:23

>>419
騎兵隊/奇兵隊に大粒のシャワーを浴びせながら、パチュリーはがっかりしていた。
さっきの衝撃を受けたときは、少しは面白い相手かと思っていたのだけれど。
突撃だけが芸のトナカイ/水弾を向けて軽くいなす。
サーカスまがいの火吹き鳥/狙い定まらぬ炎はあさっての方向に。
突撃だけなら牛でもできる/それでも止まらぬ突貫には防御の法陣を。
火の鳥なんて珍しくもない/うっとおしい炎は流水で鎮火……しない？

「……あら」

パチュリーは目を丸くした。
毒々しい緑の炎……それ自体はありふれている。パチュリーだって見たことがある。
だが、彼女の流水を浴びてなお、その炎は猛威を失っていない。

「……あら、あら」

水をかけても消えない炎？
水剋火の理を脱した火だって？
そんな物、パチュリーは知らない（・・・・・・・・・・）

「あら、あら、あら……」

パチュリーは呟く。

「いいわ、それ。いいわね、それ」

パチュリーは呟く。パチュリーは呟く。

「いいわ、それ。面白いわね、それ。素晴らしいわ、それ」

パチュリーは呟く。パチュリーは呟く。パチュリーは……。

「それ、欲しいわ」

パチュリーは……哂う。
無邪気な子供のように、哂う。
あるいはそれは、彼女の友たる紅魔の少女のように。

「だから、置いていきなさい」

結局、その本質においてパチュリーとその友にそれほど差はないのかもしれない。
その本質。ただ、貪欲たるその性。
友はその無邪気さの赴くままに。パチュリーはその知識欲の赴くままに。

「それを置いて、逝きなさい」

フラミンゴとトナカイは、死んだ。（彼女が小さく呟くと水が大きく水球を作り突進せんとしたトナカイとその上のフラミンゴを飲み込み逃れようとする二人の脱出を許すことなくさらに大きく大きく膨らんで……気泡の最後の一滴が消えるまでそれは二人を吐き出さなかった）

【現在地　ハイウェイ】

447 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/28(水) 19:29:08

>>445
　
　そんなに離れていない筈なのに、永遠にも似た距離を走る。 ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　／なにを思って走るのか、半身といえど理解は出来ない。
　あれもこちら側へ向かってきている。――――後数歩。 ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　／彼の双眸は一つの事しか見出さない。
　秒という単位はこの場では無意味だ。流れるものは／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／全ての魂の行き着く先だけ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　
　　全ての人の魂の詩。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　。詩の魂の人のて全
　　　　　全ての人の魂の詩。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　。詩の魂の人のて全
　　　　　　　　　全ての人の魂の詩。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　。詩の魂の人のて全
　　　　　　　　　　　　　全ての人の魂の詩。　　　　　　　　　　　　　　　　。詩の魂の人のて全
　　　　　　　　　　　　　　　　全ての人の魂の詩。　　　　　　　　　。詩の魂の人のて全
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　耳が割れそうなほどの大音響。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　耳が割れそうなほどの大音量。
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「ああ」
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「そう言えばさ」
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「時間」
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「止まってたっけ」
　
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼全ての人の魂の詩。
　　　　　　　　　　　　　　　詩の一部に取り込むように。＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼なんだか勝ち誇った顔は目の前。
　　　　　　　　　　　　　　　　 　その目が見据えるのはきっと＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼絶好のチャンス？
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―――――『死』＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「Good morning？」

448 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/28(水) 19:53:22

〈L'arbre de la fee〉


>>444


　パーティは続く。
　パーティは続く。



　……うっすらと瞼を開く。

　そこは、彼女が初めて〈声〉を聞いた場所に似ていた。
　村を離れ、ヴォークリュールに向かう高台―――芝生に覆われたあの自由地
には、枝を大きくのばし、広い木陰を作るブナの樹が密生していた。
　思えば、〈ブールルモンの妖精の樹〉と呼ばれていたあの高台から、全てが
始まったような気が、気が、気が、気が、気が―――

「ぐあああああああああああああああああ！！」
　
　四度目の再生。五度目の目覚め。暖かな妖精の庇護など、もうどこにもなか
った。隠しようがない痛みが焦熱となって乙女を責め苛む。
　苦悶に転げ回り、髪を掻きむしった。―――もはや疑いようもない。乙女の
存在が、森の意思を無視して軋み始めている。
　背中の裡側を誰かに捕まれたみたいだ。そして、身体の裏から自分という魂
を引き剥がそうとしている。森のルールがそれを頑なに拒み、乙女を肉体に強
制的に押し止めているため、激痛が激痛を呼ぶ事態を招いていた。
　堪えきれず、草地に嘔吐。内臓どころか、魂すら吐き捨ててしまいそうな錯
覚に襲われる。

　―――乙女は地面にまき散らした自分の吐瀉物を見て愕然とした。

　それは胃液でも血反吐でもない。あらゆる色彩が混濁した暗黒の泥。彼女を
形作る創世の土の一部だ。いま、乙女は裡側から崩壊を迎えようとしていた。
　
「なぜなの？！　どうしてなの！？」
　アリスが背中に抱きつく。彼女の痙攣を必死で押さえた。
「あなたはやり直したのよ。始まりに戻ってきたのよ。もう、あの人形の毒は
身体に残っていないはずのに―――」

　少女は勘違いしている。これは毒なんて生易しいものではない。もっと根源
的で、設計の段階から狂っている存在の歪みだ。
　立ち眩み程度の頭痛を覚えたときに、気付けば良かった。これは乙女の誕生
とともに約束された不可避のシナリオ。森とアリスの軋轢が予定調和にかすか
な罅を入れてしまったのだ。それはやがて拡大し、乙女の身を―――

「……どうやら、限界のようね」
　苦悶の中で自嘲を浮かべる。
「私の救国も終わりが近いみたい」

「馬鹿を言わないで！」
　アリスは半泣きだ。
「こんなルール、私は知らないわ！　森だって関知していない。ジャンヌ、あ
なたはフランスを救わない限り終われないの。永遠にフランスを救い続けるの
よ。それが森と私の契約。ああ、なのに、どうして……どうして……」

　乙女は喘ぐように言う。

「あなたの原典と、森の原典に……大きな、齟齬が……」

　少女は首を振った。頑なに乙女の言葉を拒んだ。まるで、現実から逃げれば
乙女の痛みが消えるとでも言うかのように。―――この森〈メルヘン〉に、ア
リスの身を刻むような真実は不要。それくらい乙女にも分かる。
　だが、幻想の一端が崩れ始めているいま、痛みを覚悟してでも伝えなければ
いけない想いもあった。

「アリス―――私は、あなたと最後の救国に赴きたい」
　
　苦しみに震える指先で、少女の頬を撫でる。微笑は自然と浮かんできた。



（ジャンヌ・ラ・ピュセル→四度目の復活）

【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）最深部〈妖精の樹〉】

449 名前：”赤頭巾”：2007/11/28(水) 20:57:28

赤頭巾vsプリマヴェラ　
>>416　　
　
その回答に、赤頭巾は笑顔満面、大喜びです。　
　
彼女はどんな味がするのでしょうか？　
きっと色々な味がするのでしょう。お砂糖とスパイスで　
ちょっと刺激的な何もかも！！　
　
それをこんがり焼いたれば、明日の市場に並ぼうか？

いいえ、彼女はまだどうやら、食べられるには早すぎるのです。
今の赤頭巾は、燃える炎に、暖炉の暖かさを思い出していた様でした。
炎の色の薔薇の色、肉を溶かす坩堝…そんな歌を
ご存知でしょうか。　
彼女は確かに今、やかれてくべられる女の姿を思い描いておりました。　
フードを目深にかぶり、逆巻く炎、ちりちりこげる火の海を大胆不敵に　
つっきります。さすが偉大なジャバウォックです。炎くらいは物ともしません。　
　
陶然の結果ばかりにご満悦なのが赤頭巾です。
キャミソール・ドレス、フロントとレッグの部分が大きく開いた大胆な裾を
見せつけながら、タズナを掴みジャバウォックの背に仁王立ち。　　
本当であれば、【狼に会うには回り道】と洒落込むところでありましょうが、　
この赤頭巾は、些かせっかちで知られておりました。そこで全速突進です。
　
するどくおいつけ、うちてしやまん。おいつけおいこせ、きちくべいえい！　
（あ。今中の人からの不平不満が届きましたが気になどして居られません）
大きく旋回急上昇、木々の連なりがひっかかるのすら恐れずに！　
無理に上から急降下。仏の幻想がベースとはいえ、彼女は魔女の毒を混ぜ込んだ　
独逸育ちの幻想種。ライフル構えて撃ちまくり、急降下爆撃（射撃？）などと　
意気込み、洒落込んでいるようでした。
　
【現在地：Ｃ地区　緑の中に風が通って追い掛ける…おいてかないで！】

450 名前：三月ウサギ：2007/11/28(水) 20:59:35

【ウサギの独語】

そうです。貴女に如何にもお話するのが、正しい私の務めなり。　
　
ウサギは語る。私は語る。森に渾なす貴方に語る。　
　
今の森の本当を。　
　
クロト、ラケシス、アトロポス。　
　
この森は、悪戯なりたつ三柱の上。
　
クロトつき、ラケシスこねし森の園。膨らみ・焼くはアトロポス也…。　
　
そ森は３柱の神々すべてがはじまりであり、終の女王であるべきでしょう
　
────よろしいか？　
　
しかして森は生きている。どの女神も外をむき、背中を見るのが関の山。　
　
クロトは望む、アトロポス。ラケシスを願うアトロポス。
　　
　　　　　────よろしいか？
アトロポスが強請るはラケシスの形。クロトは願うアトロポスの姿。　
　
されど世界は異なった。「彼女」は違う偽アトロポス。最早誰にものぞまれず　
　
誰も望まぬいらないこ。けれど世界はあらねばならぬ。３つの柱の場は望む。　　
　　　　　────よろしいか？
貴女はクロトの魔術師か？主賓の少女、ラケシスか？　　
　
それとも彼方の聖女、救国に望まれぬ聖女アトロポスが憎しからましか？　
　
森は紡がれる。リドルはまわる、世界はまわる。時計は動く、そろそろ動く。　　
　　　　　────よろしいか？
森の修正待ち侘びて世界は回る、私も踊る　あなたは何処で回るのか？　　
　
きっくきっくとんとん　きっくきっくとん　それはまた、別のお話です…………。

451 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/11/28(水) 21:22:03

>>446



　発現する相手の“力”。その圧倒的なまでの戦力差―――カトル・カールですら埋めら
れない断崖＝突撃を静止する正体不明の力場＋尽きることのない水の本流。
　そして“在りえない物(ファンタジー)”は容赦なく飲み込んでいく。哀れな科学―――その申し子たち
を。人間の生み出した文明そのものを自然という猛威が粉砕していく縮図によって。


　抗えない―――突進は数メートル前で停滞。一ミリたりとも動かない拮抗。

　抗えない―――火炎ごと押し流される洪水。プロメテウスの届かない秘蹟。


　やがて、終焉がやってくる―――かつて彼らを爆撃した味方のように。
　水弾ではない／水そのものの殺戮。
　酸素遮断／呼吸器は意味を成さない／膨れ上がる流水／もがく二体の異形。

　声すら出せない死刑執行。
　酸素の欠乏／水素と酸素の結合体による皮肉／細胞を破壊＝生体の致命。
　そして伝導体＝水の圧力／容赦なく浸透＝機械の致命。


　足止めすらあざ笑うかのような奇術。論理を蹴散らす秘術。
　やがて、二体は加速を止めた。
　自らの生命の爆心地(グラウンド・ゼロ)を定めて。


【現在位置／ハイウェイ／ホーニー、ブランドマン撃破】

452 名前：聖女“ジャンヌ・ダルク” ◆dArctxNDsU ：2007/11/28(水) 21:24:14

ジャンヌ・ラ・ピュセル vs ジャンヌ・ダルク
Rust Riddle 〜錆色の舞踏曲〜
>>448

声が聞こえる。遠くで哭いている声が。救いを求める声が。

─────まるで、あの時と同じように。

これもきっと天命なのだろう。あの日、確かに私は炎の中で死んだ。
そして、私の灰は川に流され、私を証明する物はこの世から消え去った。はずだった。
だが、私はこうして此処に在る。つぎはぎだらけの躰に魂を納れられ。私は再び生を受けた。

─────主は、未だ。私に救えと仰るのか。

ならば答えよう。その声に。それが私が征くべき道なのだから。
この身体が変わったとしても、掲げる御旗が変わったとしても。

次元の門をくぐって、私は森の中にいた。そこで感じたのはあまりに濃密な─────慟哭。

國が哭いている。森が哭いている。そして、もう一人の“私”の魂が哭いている。
ここは私が居た地球ではない。平行次元。だから、当然こちらにも私が居るのだろう。

こちらの私も、あの日、同じように炎の中で死んだだろうか？
私と同じ『結局、何一つ救えなかった』という無念を抱いたまま。

そして、こちらの私も。何者かの手で蘇らされ、私と同じ辱めを受けているのか。

だから、だからこそ。私は征かなければならないのだ。
本当に私が救わなければならないのは果たして何か。その答えはきっと此処に在る。
遠くで私を呼ぶ声がする。私を招く声がする。“私”が嘆く声がする。

─────私は力を解放する。私は一陣の風と化して走る。声のする方へ。

きっと。そこで“私”は待っている。“私”を苦しめているものと共に。

453 名前：ＤＩＯ ◆kYsrWORLDo ：2007/11/28(水) 21:25:11

>>447



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　クズ札が何枚あっても無意味ッ！ もう良い、満足したッ！＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　トドメは我が「世界（ザ・ワールド）」の真の能力ッ！　時よ… ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣

　　　ＴＩＭＥ
　　　５：００
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「Good morning？」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　ＴＩＭＥ
　　　４：００

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　何ィッ！　我が止まった時の世界を認識しているッ！？..　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　まさか「入門」してきたと言うのかッ！　承太郎と同じくッ！？　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
　　　ＴＩＭＥ
　　　＊：＊＊

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　……これはッ！！　止まった時の世界が揺らいでいるッ！　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　聞こえる……ッ！　透き通るような共鳴ッ！　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　この不快感ッ！　足元が崩れるような感覚ッ！！　　　　　　 ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　一体、何が起こっているというのだッ！！！？？　　　　　　　＼　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　／ 　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼／＼／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Ｔ／Ｉ＼Ｍ＼Ｅ
.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼　 ＊.／＼　＊＼　＼＊
.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼／　　　＼　.　＼.　＼
.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　..＼

454 名前：ＤＩＯ ◆kYsrWORLDo ：2007/11/28(水) 21:25:29

　
　
　


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Ｅ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Ｉ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Ｔ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Ｍ


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＊

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＊

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＊

　
　




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　我が「止まった時の世界」が崩壊しただとッ！？　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　これが貴様の真の力、本当の狙いかッ！　……無駄ァッ！ :::::~,::,:::::::::::　:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣　::::::: ::::::::.,,,:::,,~::,,::::::
　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.::~,,::　:　　　　　　　　: :::~,,,.,,:,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　::::.,,:::::::::　　　　　　　　　　:::.,,,,:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .:......:::,,　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　,,,,,::::　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,,,,,.:::　　　　　　



【C地区　とある高層ビル屋上――『影時間』にて】



　

455 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/11/28(水) 21:25:43

>>426>>433
>>435
>>446>>451




　拷問の進行―――連続した打撃／苦痛に動きが鈍り始める／再生速度は変わらず。
　継続―――更なる苦痛を呼び込むための波状攻撃／神経を／機能を／尊厳を削ぎ取る。
　効果―――フリントの微笑が消える／手ごたえが浅くなる違和感／正体不明の危機感。

「―――通常、問われもしないことを答え始めるのは拷問の効果的な進行を意味するが、
お前の場合は少し違うようだ」

　プログラムの小さな変更―――ベイビーヘッドを後方警戒に。
　それでも拭えない危機感。後方で戦闘中の味方との通信／状況の転送／確認。
　今のところ遅滞防御に成功しつつある。

　では、この感覚は何なのか。

「我々は観察に長けたプロだ。苦痛に苛まれた人間が本当のことを喋っているかどうか、
正しく見極めるすべを学んできた」

　プログラムの継続―――四肢の脱落／内臓の破壊／頭部の破壊／全てを誤って行わず、
ただ苦痛を与えるための攻撃行為の進行。電流が神経を苛み、鉤が肉を傷つけ、毒が体内
を陵辱し、鞭が皮膚＋衣服を蹂躙し、針が指先を苛み、刃が冷たい殺意で脅迫する。

　苦鳴／悲鳴／哀願／愁訴―――全てを示す目の前の少女。
　その全てに違和感。

「お前は何を待っている―――？」


　そして、虚無は口を開けた。
　リッキー／ダッキー／ブランドマン／ホーニー。
　全て通信途絶。


　危機が音を立てて膨れ上がった。






【現在地／ハイウェイ】

456 名前：―完全で瀟洒な従者― 十六夜咲夜 ◆Clock/PR2Y ：2007/11/28(水) 21:30:30

>>455
　
　終わらない夢を見ました。
　晴れない霧の中でただ歩く夢を。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――アカイアカイナイフガアルヨ？
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「失」
　何処まで行っても待ちは霧だらけ。
　人っ子一人居ないんです。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――ミズタマリハタクサンアルネ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「礼」
　寂しくて声を張り上げたのに。
　寂しくて叫び続けたのに。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――アレ？……コエガデナイヨ？
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「致」
　誰も門を開いてくれませんでした。
　誰も窓を開けてくれませんでした。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――ドアニマッカナシミ。ナンデ？
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 「し」
　それでも歩き続けました。
　悪い夢だと思っていましたから。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ――ナンダカヨウフクガオモイヨ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 「ま」
　歩いて、歩いて、歩いて。
　結局なんだったんでしょうね？　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――ワルイワルイアカイユメ？
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 「す」

457 名前：―完全で瀟洒な従者― 十六夜咲夜 ◆Clock/PR2Y ：2007/11/28(水) 21:31:32

>>456
　
　黙祷を捧げ、黒い棺桶のすぐそこまで来るのに一秒未満。
　慈悲深い私に涙が出そう――嘘ですけど。
　ナイフの補充も万全。仕事着は染みも皺も見当たらない万全な状態。髪の乱れもなければ、靴の汚れもない。
　完全で瀟洒が求められるなら答えないわけにはいかないだろう。
　
「――で、なにを遊んでいらっしゃるのですか、お嬢様」
　
　ナイフを投擲。
　受け取る余裕はあるのかしら？
　
　まあ、刺さっても治るしいいわよねえ――銀ですけれど。
　
「――で、何を遊ばれていらっしゃるのですか？　皆様方？（、、、、）」

458 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/28(水) 21:33:02

ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓ聖女��ジャンヌ・ダルク��
『Rust Riddle 〜錆色の舞踏曲〜』

>>448>>452


　パーティは続く。
　パーティは続く。

　アリスは涙に濡れたかんばせをはっと強張らせた。原因の知れない激痛に
炙られる乙女から、恐る恐る目を離し―――この〈妖精の樹〉に至る唯一の
道、ブナ林のトンネル（研究室入場ゲート）を見つめた。
　視界には、常と変わらない緑と光の光景が広がっている。調和を乱すよう
な不審な存在は見当たらない。
　だが、アリスのかんばせは引き攣る一方だ。唇を震わせ、恐怖が迸るまま
に「そんな……」と呻く。「そんなの、嘘よ―――」
　
「アリ……す？」他人を思いやる余裕などないはずなのに。乙女はアリスの
戸惑いに気付き、問い質す。「誰か…ここに…来ようと…している…の？」
　
　それはまずい。
　ここは聖戦〈リドル〉の戦場〈ガーデン〉に数えられていない。
　森のどの場所で救国が始まろうと怯む気は無かったが、この場所で戦うこ
とだけは避けたかった。始まりの場所は戦禍に沈むことを想定していない。
　この緑野は、乙女唯一の平穏なのだから。

「誰も来ないわ！」
　自分を偽るための叫び。
「だってジャンヌ……あなたはここにいるもの。あなただけが、私のラ・ピ
ュセルなんだもの。あなたさえいれば、他に何もいらない。私はここであな
たと一緒に、永遠にフランスを救い続けるのよ……」
　アリスは必死に欺瞞を重ねる。
「―――だから、ここには誰も来ないわ。来ちゃいけないの。あなたは唯一、
あなただけしかいないんですもの！」

　何がそこまで彼女を脅かすのか。乙女には理解できない。激痛に霞む意識
を奮い立たせて、アリスがおののく視線の先―――入場ゲートに瞳を向けた。
　
　そこには、



【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）最深部〈妖精の樹〉】

459 名前：―永遠に紅い幼き月―　レミリア・スカーレット ◆DEVILbzibY ：2007/11/28(水) 21:34:27

紅魔館の優雅な住人たちｖｓカトル・カール
―Forest Lagoon―

>>456>>457

　メイドの擲ったナイフが、レミリアの胸の中央（ブルズアイ）に瀟洒に
ヒット。根本まで深々と突き刺さり、肉を焦がす。
「……酷いことをするのね」
��唯一�＄gに浴びた攻撃を愛おしげに触れる。銀器のナイフがばちりと火
花を散らして不死者の接触を拒んだ。それすらも愉快なのか、ドラキュリ
ーナはくつくつと嗤い、焼け爛れた指先を舌で舐めた。

　利き腕が欠損していた。頭蓋が半分欠けていた。足は靱帯を断たれて、
力なく棺桶に跪いている。胸には大小よりどりみどりの孔が穿たれ、中身
を行儀悪くお零し中。―――ヒトガタすら保てていない、そんな状況で。
　紅魔館のスカーレットは無邪気に嗤う。

「咲夜、私はぴんちなのよ」
　親愛と挑発が入り交じった悪魔の囁き。
「あなたの助けがないと、きっと死んじゃうわ」

　だから、早く助けなさい。

　始まりは棺桶の屋根にまき散らされた彼女の朱から。次に、奪われた肉
や内臓。最後に半壊したレミリア自身から―――数百の漆黒が飛び出す。
　それは牙も眼も持たない黒無垢の蝙蝠だった。影からハサミで切り取っ
たかのような、異形の天鼠。
　レミリアの血肉から湧き出した数百匹の闇は、彼女を骨まで貪り尽くす
と、夜にあって更に暗黒を濃くするために群を為して密集した。
　深く、もっと深く。蝙蝠たちが密生してゆく。闇が凝縮されてゆく。

　―――やがて、蝙蝠／深淵は、少女の体躯程度まで濃縮されて、

　ぎろり、と赤い瞳を燃え上がらせた。

「よくも私をいじめてくれたわね……」

　闇の衣装を払って現れたのは、不死者の王。

「咲夜が怒っているわ。あなた達を絶対に許さないと、忠義の憤激に狂っ
ているわ。きっと、謝ってももう間に合わない……」
　
　皺一つ見当たらないお洋服から取り出したのは、一枚のカード。トラン
プを模した紋様から、焔が噴き出す。

　さあ、本当の夜はこれからよ―――。


【現在位置／ハイウェイ／Ｃ地区へ接近中】

460 名前：聖女“ジャンヌ・ダルク” ◆dArctxNDsU ：2007/11/28(水) 21:36:20

ジャンヌ・ラ・ピュセル vs ジャンヌ・ダルク
Rust Riddle 〜錆色の舞踏曲〜
>>458

ただ。声の方へ。ただ。私を呼ぶ方へ。ただ“私”の呼ぶ方へ。走って。走って。走って。
掲げられた旗には極星帝国の紋章。走れ！私の後ろに百の軍勢はないけれど。一人きりの全軍突撃。

ただ。声の方へ。走れ。掲げた旗は風にたなびいているか？

私は招かれざる客ではない。無論、紛い物ですら。交わらないはずの平行の先の本物。
だが、故に。声が聞こえる。私を救える物は　　　だけなのだと。魂が叫んでいる。

だから。私の征く道は間違いなく“私”に通じている。

見慣れぬ機械の森を抜け、ブナの林に辿り着く。
おそらくは此処が。森の最深部。だから、この先に最後の試練は待っている。

だからこそ私は“私”に私であることを示すために。旗を強く握りしめ。神に祈った。
私は、何も救えなかったかもしれないけれど。結局、戦禍を広げてしまっただけかもしれないけれど。

─────せめて。私だけは救えますように、と。

邂逅の時は、おそらくもうすぐ。恐れるように、おののくように私は鏡をのぞき込む。

【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）最深部〈妖精の樹〉】

461 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/28(水) 21:38:54

ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓ聖女��ジャンヌ・ダルク��
『Rust Riddle 〜錆色の舞踏曲〜』

>>460



　パーティは続く。
　パーティは続く。

「来ないで！　いや！　来ちゃ駄目！」

　アリスの抵抗も虚しく、ブナのトンネルから奇跡が顔を覗かせる。
　如何なる魔性が姿を現せるのかと思いきや、乙女と目が合ったのは金髪の
三つ編みが愛らしい娘だった。ドレスのように優雅に――しかし凛々しさも
忘れずに――白銀の甲冑を纏っている。
　右手に握るのは身の丈を軽く超える長槍……いや、あれは戦旗？　禍々し
い髑髏の紋章が揺れていた。
　私の格好と似ているな。乙女は呑気にも、そんな感想に囚われる。

　―――敵、には見えなかった。

「アリス……落ち着いて。まだ…イギリス人とは決まって…ないわ」

　彼女を安心させるため身を起こそうと試みる。が、背筋から胸へと走った
電火の激痛に阻まれた。再び草に抱き留められる。―――この痛みは、乙女
の行動全てを否定するつもりなのか。

「迷った…だけかも…しれないわ。悪戯に刺激するのは…危険だから……」

「何を言ってるのジャンヌ？！　何を言っているの！　あなたにはあれが何
か分からないの。あれが誰なのか分からないの！」

　分からない。分かるものか。彼女はなぜ、そこまで強く脅える。王妃マー
ガレットにも黒太子エドワードにも少女の気品を失わずに挑んだのに、なぜ
この娘だけは徹底的に忌避する。

「―――あれはジャンヌよ！　あなたなのよ！」

　驚きよりも、アリスの正気が心配になった。

「……それが…今回のキャスト？」

　だが、自分が敵とはどういうことか。乙女を斃すことこそが救国に繋がる
という諧謔に富んだ暗喩のつもりか。
　遠回しに非難している？　彼女に終わりを告げようとしている、私を。
　―――そうではない。アリスは本気だった。

　まさか。そんな。

　アリスから娘へと、ゆっくりと視線を移す。

「あなたは……私なの……？」

　滑稽な問いかけ。
　だが、アリスは確信を抱いている。彼女は森の意思の代弁者。リドルに参
加する全てのゲストを把握している。その原典に至るまで。だから、彼女が
ジャンヌだと言えばそれはジャンヌなのだ。
　だけど、やはり。信じるのは難しかった。


【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）最深部〈妖精の樹〉】

462 名前：聖女“ジャンヌ・ダルク” ◆dArctxNDsU ：2007/11/28(水) 21:40:41

ジャンヌ・ラ・ピュセル vs ジャンヌ・ダルク
Rust Riddle 〜錆色の舞踏曲〜
>>461

覗き込んだ鏡の中には二人の少女。ああ、片方は“私”だ。
私のようなつぎはぎだらけの躰ではない。あの時のままで、彼女は在る。
その奇跡に、涙が流れていた。彼女も、きっとあの報われない最後を迎えたはずなのに。

そして、もう一人こそ。私を苦しめている張本人か？
否。その問いの答えはきっと正解かつ、間違いだ。まだ、森は秘密を隠している。

だからこそ、私の道は未だ続いている。“私”のその先に、少女のその先に。
だからこそ、私は構える。“私”を救うために。全てを終わらすために。

そうだ。もはや、死んだ國を愚かしくも救う必要があるか？
主の変わった國のために忠義を尽くす道理があるか？

再びの生を得た私はそのどちらにも意味を見出せなかった。
それを肯定する声はどこからも聞こえてこなかった。

だから、私は“私”が呼ぶ声にこそ応えよう。
それがいかなる荊の道であったとしても。たとえ“私”と血を流すことになろうとも。

「………そうだ。オルレアンの乙女よ。私だ。ジャンヌ・ダルクだ。
　躰はこのようにつぎはぎだらけだが、魂だけはお前と同じ。ジャンヌ・ダルクだ。
　
　次元を越え、仮初めの生を得て。“私”たるお前を救いに来た。
　理由はそれでいいだろう。もうお前は救う必要はないんだ、“私”よ。
　お前の救いは国を救えたか？民を救えたか？最後にあの炎の中、悔いはしなかったか？」

己の肉体ですら復活には相当の負担がかかると死霊術師はいった。
だから、このつぎはぎの躰すら繋ぎ止めているのは、確固たる救いへの意志。
最後に残した後悔を。最後に残した怨恨を。聖女というにはきっと相応しくない黒き心を。

「………だから、私は最後に“私”ぐらいは救っておきたいと思ったのだ。
　そうでなければ、私は永遠に救われない。そうだろう、ジャンヌ？」

征こう。道は未だ続いている。“私”の先に。少女の先に。走れ！その先へ！一人きりの強行軍。

それは即ち！！coup de vent（一陣の風）！！！

【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）最深部〈妖精の樹〉】

463 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/28(水) 21:43:11

ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓ聖女��ジャンヌ・ダルク��
『Rust Riddle 〜錆色の舞踏曲〜』

>>462

「痴れ言を語るのはそのお口？　あなたにジャンヌを救えるものですか！」

　アリスの怒り―――放っておけば、すぐにでももう一人のジャンヌに殴り
かかりそうだ。乙女は彼女の洋服の襟首を掴んで制止する。万が一を考える
と、この樹の下でアリスを傷つけさせるわけにはいかない。

「……アリス、キャストの発表はいらないわ」
「ジャンヌ……」
「これは私の戦いだから」

　今の自分のように、ジャンヌという役を演じる何者かと疑った、そうでは
ない。信じがたい事実だが受け入れるしかないのだろう。あれもまた正真正
銘のジャンヌ・ラ・ピュセルなのだ、と。
　腰からシャルル・マルテルを抜剣。杖代わりにして立ち上がる。

「……私を、救う？」
　もう一人の自分の言葉は暖かかった。哀しいまでに。彼女の優しさに優しさ
で返せない自分が嫌いだった。
「私は―――もう……とっくに救われて、いる、のに？」
　
　二重存在の交わりを断罪する一陣の風。戦旗を槍に変えて、聖女は乙女の胸
に飛び込んだ。―――疾い。そして迷いがない。
　剣を振りかざして穂先を払う。刃が竿と噛み合い火花が散る。絶妙な剣捌き
で勢いをいなし、聖女の突撃を後方へ受け流した。

　殺したはずの衝撃―――だが、乙女は膝をついて喀血する。体内に留まった
僅かなダメージだけでこの有り様か。
　襤褸切れのような身体。救国の乙女の名も哭くだろう。

「ジャンヌからジャンヌへ……これが最後の忠告よ」
　咳き込みながら、しかし確たる信念に支えられて言葉を紡ぐ。
「退きなさい。私は何があろうとフランスを救います。……あなたも〈声〉が
聞こえるのでしょう？　ならば、それ以外に答えはないはずよ」


【現在位置／ハイウェイ／Ｃ地区へ接近中】

464 名前：聖女“ジャンヌ・ダルク” ◆dArctxNDsU ：2007/11/28(水) 21:45:52

ジャンヌ・ラ・ピュセル vs ジャンヌ・ダルク
Rust Riddle 〜錆色の舞踏曲〜
>>463

翻る戦旗はもはや彼の国のモノではない。掲げていた我が軍のモノですらない。
死すら覆す極星帝国の忌々しき髑髏の戦旗。もはや、私の愛した国はない。

孤独なパレード。今は亡き王国のための悲しき独唱。潰えた夢の残滓。

少女が叫ぶ。“私”を救えるのか？と。ならば、それすら救えずに私はいかなる夢を見たか？
それすら出来ないのなら、私に付き従ってくれた者達に。示しなど付くものか。

　私は旗を掲げる。民衆を鼓舞するために。もはや、後ろに誰もいなくとも。
“私”は剣を抜く。民衆を鼓舞するために。もはや、後ろに誰もいなくとも。

「愚問だな！たった一人の少女を救えずに、何が救国だ？」

“私達”は少女という側面を殺して戦場に立っていた。きっと、今。この瞬間でさえ。
だが、戦場で泣き出してしまったあの日のように。少女は心の奥底の薔薇の棺で眠っている。

未だ、私の中で声がする。助けてと。叫ぶ声がする。つぎはぎの躰が軋む。
槍と見立てて突く、廻して翻る旗で視界を塞ぐ。槍術ならば、槍の方が効率的！
そして、叩く。所詮、穂先がなければただの棒。なれば叩く方が効率的！

吹けよ風。呼べよ嵐。高らかに翻れ！禍々しきは髑髏の戦旗！

「救われているなら、何故。私は未だ此処に在る？主の御許に召されているのでは？
　仮に、私のどちらかが救われているならば。私は、己の目的を達していたはず。
　
　─────なら。どうして“私達”はこうして向き合っている？」

それは。決して言ってはいけない台詞。何か大事な存在を否定してしまう危険性を孕んだ台詞。
救われなかった少女たちが織り成すのは、悲しい悲しい鏡の国の御伽話。

「声は。今でも聞こえているよ。“救え”と。だが。亡国を救うことはもはや出来ない。
　だから、せめて。幻想だとしても。助けてと願う、目の前の少女ぐらいは救いたい。」

覚悟と悲壮な決意に満ちて、髑髏の旗は未だ風にたなびいている。

「忠告はありがたく受け取る。が、故に問おう。………それで引く私か？引いた私か！」

道は！目の前にしか我が道は無し！だからこそ、掲げた戦旗は止まることを知らない！

【現在位置／ハイウェイ／Ｃ地区へ接近中】

465 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/28(水) 21:46:02

>>454
　
　弾かれるタナトスの刺突。
　もう一振りは未だ健在。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　
　止まった時間で夢を見過ぎた？
　憐れだね。
　
　だから僕はその間違った認識を正してはあげないよ。
　人間は狡賢く、嘘つきで、無知だから。

　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　刺し込む。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　抉り込む。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　傷口に空気。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　送り込む。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　捻り上げる。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　掻き回す。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　泡立つ血。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　制服を汚す。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　赤色の血。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　影時間の水。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　世界の血液。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　共通の通貨。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　罪悪の金貨。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　罪塗れ人間。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　慈母の笑顔。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　終わらない一秒
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　苦痛塗れの一秒。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　一瞬にも似た永遠。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　苦痛にも似た悦楽。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　悪夢を見続ける夜。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　終わりない贄の夢。
　
　
　清算しろよ、その罪科。
　チェックアウトの時間だよ。

【C地区　とある高層ビル屋上――『影時間』にて】

466 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/28(水) 21:48:45

ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓ聖女��ジャンヌ・ダルク��
『Rust Riddle 〜錆色の舞踏曲〜』

>>464


「私がここにいる理由はたった一つ―――」
　やはり、こうなるしかないか。
「フランスが救いを求めて哭いているから」
　
　まだ、私の中には救われずに哭いているフランスが残っているから。救い
を必要としている、在りし日のオルレアンが乙女を待っているから。
　私はこの、哀れで、浅ましくて、都合の良いように利用され、やがては使
い捨てられる自らの運命を肯定する。悲劇と絶望を肯定することで救われる。
　―――乙女ジャンヌは、救われないことが救いなのだ。

　彼女の背後で、アリスがはっと息を呑む。
　背中越しひしひしと感じる。彼女もだ。彼女というフランスもまた、救国
を望んで乙女に縋っている。ジャンヌ助けて。ジャンヌ助けて、と。
　ならばこの身がどんなに傷もう、立つしかないではないか。

　根源を蝕む痛みすら止揚して、乙女は剣を構えた。戦える状態ではない。
　でも、それはパリ攻城の時も同じ。疵は深く血は赤い。
　勝利へと我が身を導くのはイエス様だけれど、それを信じるか否かは自分
次第。―――そして一度たりとも、あのお方は乙女を裏切ったことはない。
　だから今宵も信じる。
　痛みよ。私を食い破れ。そして一時でいい。共棲せよ。

　槍術とも棒術ともつかない聖女の精緻な攻撃にブレードをぶつける。視界
を阻む髑髏の形相を、ひらりと身軽な動作でくぐり抜けた。
　あなたはどうか知らないけど――……「……――運命は、この樹の下で初
めて〈声〉を聞いたときから、私の手を離れたわ」
　それを今から見せつける。彼女が「救う」などと言ってくれる乙女が、如
何に呪われた存在か。身をもって知るがいい。

「聖マルグリット様……ご加護を私に」
　
　魂の緊張を一部だけ緩める。肉体の主導権を手放した途端、背中に何者か
がのし掛かる―――そんな錯覚。
　悪魔憑依。今や乙女の身体を動かすのは乙女であって乙女ではない。彼女
の身体を媒体にして、天使の監視から逃れた邪悪なる者が牙を剥く。
　自らの血で描いた［SORIA］の刻印〈スペル〉に従い、三十六の悪霊軍の
長官―――オリアクスと自らの身体を憑依〈シンクロ〉させた。

　溢れ出す瘴気。身体能力が飛躍的に上昇する。聖女が繰り出す戦旗の暴風
を悉く愛剣で払い、時には弾き返して懐に飛び込んだ。
　燦然と輝く白銀の甲冑―――その装甲と装甲の隙間を狙って刃を立てる。


【現在位置／ハイウェイ／Ｃ地区へ接近中】

467 名前：◆M12sisrIV6 ：2007/11/28(水) 22:19:47

　ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
　>>430
　Epi-logue 01
　
　
　「あなた……今の今まで本気を出していませんでしたわね？」
　
　転がったままになっていたジュラルミンケースの、留め金を全て締め終えるとジュライ
はその声にようやく振り返った。
　いつも通りの涼やかな笑顔。
　ケースの中身と同じ、貼り付けられた様な笑顔。
　ケースを手に、笑顔以外の感情を見せず立ち去ろうとするその背に、
　
　「お待ちなさい、ジュライ！　あなたが、あなたが……」
　
　小さくなっていく背に。
　声が継げなかった。
　
　「あなたが本気を出していれば、ジューンは死ぬことがなかったのに」
　「私が本気を出しても、ジューンは死んでいたのに」
　
　コインの表裏。
　残酷な現実。
　
　握り締めたジューンの手は、嘘の様に柔らかく、そして嘘の様に暖かかった。
　
　
　
　

468 名前：◆M12sisrIV6 ：2007/11/28(水) 22:20:34

>>467
　
　ディッセも目を覚まして、３人いっしょでモモ缶１個。
　取り合いがはじまってもご愛敬、仲良く楽しく食べましょう。
　
　三つ子たちの騒ぎもようやく収まって、セプが傍にあった切り株に腰掛け一息ついた時。
　
　「……あ。おかえりなさい、ジャニアリー」
　
　親友の姿を見付けて、立ち上がるとすぐ傍まで駆け寄っていった。
　
　
　暗い色の、真っ直ぐな自分の髪がいやだった。
　ふわふわと柔らかそうな金色の、ジャニアリーの髪が大好きだった。
　子供っぽい自分の顔立ちがいやだった。
　背が高くて少しきつく見えるけど、ジャニアリーの美しい顔立ちが大好きだった。
　小さな妹たちのことは好きだけど、振り回される自分がいやだった。
　気が強くて自信に溢れて積極的で、エイプリルでも振り回してしまうほど、そんなジャ
ニアリーが大好きだった。
　銃剣格闘はまだ下手だけど、練習して上手くなって、ジャニアリーと肩を並べて敵を倒
すことができたら、きっと、きっと素敵だろう。
　
　
　なのに、いつもなら誇らしげに胸を張っているはずのジャニアリーは顔を伏せたまま。
　
　「ねえ、ジューンはいっしょじゃなかったの？」
　
　なぜか不思議な胸騒ぎがして、何か言おうとして、思い付かなかった。
　だから今一番自分の知りたいことを尋ねてみた。
　答の代わりに、ふわり、と柔らかいものが触れた。
　金色の髪が、すぐ目の前にあった。
　ジャニアリーが。
　あのジャニアリーが胸に顔を埋めている。
　服が汚れるのが大嫌いなはずのジャニアリーが、落ち葉が敷き詰められた絨毯みたいな
地面に膝を付いて、胸に顔を埋めている。
　
　「……ごめんなさい」
　
　「どうしてセプが謝りますの？」
　
　意外にはっきりとした声だった。
　
　「すぐに気付けなくて。ジューンのことでしょう？」
　
　肩に掛けていたショールがなくなって、代わりに手首にリボンが巻かれていた。
　このリボンは、たしかジューンの胸元にあったボウタイと同じ。
　返事はなかった。
　代わりに、背中に回された手に少しだけ力がこもった。
　
　「悲しいに決まっているでしょう！
　悔しいに決まっているでしょう！
　なのに……なのに、無理だったの、私では、この私では……どうして……」
　
　誰かと話している。
　誰かに話している。
　だから邪魔しない様に、セプはジャニアリーの髪を撫でた。
　やっぱり柔らかかった。
　
　「……セプ、ジューンのことなのだけれど……」
　
　「あのね、ジャニアリー」
　
　言葉を遮って、そのことには心の中でもう一度謝った。
　
　「ジューンは、みんなのことが好きだったの。
　自分が好きな人が、自分を好きでいてくれるって、とても嬉しいことだから、多分」
　
　『だから多分』ではなくて『だからきっと』なんだろう、そう思い直してみて、もう一
度言い直した。
　
　「だからきっと、ジューンは今、とっても嬉しいんだと思うわ」
　
　返事はなかった。
　代わりに、胸に何か温かいものが落ちてきた。
　それには気付かないふりをして、セプはジャニアリーの頭に手を回して優しく抱きしめた。
　
　やっぱり、ジャニアリーの髪は柔らかくて、ふわふわしていて、温かかった。
　
　
　
　

469 名前：◆M12sisrIV6 ：2007/11/28(水) 22:22:21

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
【＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨】
　
マルチアーノ１２姉妹導入
>>77>>78>>79>>81
ヴィルマ・ファキーリ導入
>>83>>84>>85

>>87>>88
>>89
>>95
>>103
>>116
>>121
>>134
>>139
>>178
>>190
>>207
>>213
>>225
>>228
>>238
>>262
>>267
>>270>>271
>>280
>>290
>>347
>>356
>>390
>>414
>>418
>>430
>>467>>468

470 名前：◆DOLLmR5Q5A ：2007/11/28(水) 23:06:46

赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>449>>450
　
◆
　
　
　
　
　クッキング・フォレストにようこそ！さあ、今夜も「Forest 3分クッキン
　
――――違う
　
　さあ、今夜も「ちょっと聞いてよ、おもいっきり森電話」の時間がやってき
　
――――これも違う
　
そこは、彼女が初めて〈声〉を聞いた場所に似ていた。
　
――――違う　……早送り
　
ここから先はプリマヴェラを見失ってしまってヒューマンボーイの変わりに
　
――――これ！そうこれなの！これが正しい続きなの！！
　
　
　
　
◆
　
　

471 名前：◆DOLLmR5Q5A ：2007/11/28(水) 23:07:22

>>470
　
♠
　
　リドルはまわる、世界はまわる。時計は動く、そろそろ動く。　
　森の修正待ち侘びて世界は回る、私も踊る　あなたも踊る。
　
　――――ならば、人形も踊る？
　
　そう、人形も踊り出す。そして人形が踊り出す。人形たちが踊り出す。
　
　ホールの中で人形が踊る。舞踏客たちが優美に踊る。
　
　踊る踊る人形が踊る。踊る人形謎は何処？
　謎は何処、何処は何処、ここは何処。ここを何処と尋ねしや？
　ならば答えて差し上げよう。
　
　ここは罪都。影よこたわる国、罪都・倫敦
　人形（ドール）たちのネヴァーランド。少女（ガール）たちのアンダーグラウンド。
　そして女王陛下（デッドガール）のワンダーランド。
　
　踊り続ける人形の彼方に、一人の人形が鎮座する。
　七つ星の王冠をかぶった少女が、不釣合いなほどに巨大な玉座に腰掛けている
　世界で最も巨大なルビーから削りだして造られた玉座。まさに珠玉（ビジューリティー）。
　だがそれに腰掛けるのはさらに高貴な宝石（ジュワイエ）。
　彼女は女王、彼女が女王。生まれ付いての時計仕掛け。
　彼女はそっと口を開く。あなたに対し口を開く。
　
♠
　

472 名前：タイターニア ◆DOLLmR5Q5A ：2007/11/28(水) 23:08:30

>>471
　
♣
　
　ごきげんよう、あなたたち（ヒューマンボーイ）。

　ここから先はプリマヴェラを見失ってしまったイグナッツ・ズワクフ（ヒューマンボーイ）（）の代わりに、わたしが彼女の物語をあなたたちに語ろうと思います。
　
　わたしはあなたたちに教えてあげたいのです。彼女の行く末を、そして顛末を教えてあげたいのです。
　
それはまるで時計仕掛けの小鳥のさえずりのような声。でも不思議とよくとおった
　
　怪獣に追いかけれらたプリマヴェラはいったいどうなってしまったのでしょうか。
　かわいそうに食べられてしまったのかしら。
　
　いいえそうでないことだけは確かよ。いまは、まだ、ね。
　　
人工物をかくも具現し、自然の敵対者として作られた完全な人形（ドール）。その人形がうっすらと微笑む
　
　そう、だから物語は続くわ。
　
　物語は続く。
　物語は続く。
　
　ならばわたしは語りましょう。踊る人形の物語を。恍惚的な愛死（リーベストート）のささやきを。
　
そしてそっと小さな声で、"娘�≠ﾉ対し語りかけた
　
　でも気を付けなさいプリマヴェラ。
　この森にいるのはジャバウォッキーだけではないのですから。
　
♣
　
　

473 名前：◆DOLLmR5Q5A ：2007/11/28(水) 23:09:33

>>472
　
◆
　
　
　
　
　ジャブジャブやバンダースナッチが徘徊するこの島こそ、疑いなくジャバ
ウォックが殺された島に違いありません
　
　
　
　
――――ルイス・キャロルがチャタウェイ夫人に宛てた書簡より
　
　
◆
　
　

474 名前：タイターニア ◆DOLLmR5Q5A ：2007/11/28(水) 23:10:04

>>473
　
♠
　
　この森では雨のかわりに鉛弾の雨が降るのでしょうか。
　
　だとしたらきっと棺屋は大儲けでしょう。
　花屋と葬儀屋と僧侶もかしら。あら、そうでなくても僧侶はたくさん儲けて
いたわね。そうよね、ピーター。……あら、これは不適切な発言だったかしら。
　
　兎も角も、激しい銃火の土砂降りの中をプリマヴェラは元気いっぱい走って
いきます。
　
　彼女はうまくかわしていたわ。
　でもこのままではじきに捉えられてしまったでしょう。なにせ相手は空を飛
べるのですから。
　
　それはプリマヴェラもきちんと解っていたようでした。
　だから彼女は走りながらふたたび魔法を使ったのです。
　
　わたし譲りの彼女の瞳が、緑色をした人形の瞳が、美しく輝きだしました。
　そして魔法が力を顕しました。美しい魔法がこの世界に力を顕しました。
　そう、今度の魔法は先ほどのものよりも、はるかに美しく、はるかに可憐な
魔法だったのです。
　
♠
　

475 名前：◆DOLLmR5Q5A ：2007/11/28(水) 23:10:36

>>474
　
♣
　
　枯れ木に華を咲かせましょう
　
　赤い赤い死の華を
　
　それは甘いかすっぱいか
　
　あまいあまい死の花を
　
　枯れ木に華を咲かせましょう
　
　魂消るような死の華を
　
　それは綺麗か醜いか
　
　綺麗な綺麗な死の華を
　
　枯れ木に咲いた花々は
　
　どれもこれもが蠱惑の華よ
　
　蠱惑の華は死の華よ
　
　魂消るような死の華よ
　
　咲いて咲いて繚乱し
　
　散って散って華やかに散る
　
　散る、散る、散る。
　
　堕ちる、朽ちる、散る散る散る散る……
　
♣
　

476 名前：タイターニア ◆DOLLmR5Q5A ：2007/11/28(水) 23:11:16

>>475
　　
◆
　
　気が付けば森の木々に無数の花が、数多の花が、咲き誇っていたのです。
　まさに百花繚乱。それはとても幻想的な光景だったのです。
　
　ですがそれを見ることが出来たのはほんの一瞬の間でした。
　何処こらともなく風が吹きつけ、花は次々に散ってしまったのです。
　
　花弁の吹雪が当たり一面に吹き荒れました。
　
　まるで日本で春に見ることのできる桜吹雪というもののように。
　こうして花びらの帳がジャバウォッキーの視界を覆い隠していったのです。
　
　そしてそれこそがプリマヴェラの狙いでした。そうよね、ピーター。
　彼女はその一瞬を逃さずに力いっぱい跳躍します。
　
　地面を蹴って、樹を蹴って、力いっぱい跳躍します。
　ついでに突然現れたチェシャ猫を踏み台にして高く高く跳躍します。
　
　そうするとほら、目の前にはジャバウォッキーの恐ろしげな顔がありました。
　だからプリマヴェラはジャバウォッキーの眼を狙い、鋭い傘の先端を振り下
ろしたのでした。
　
◆
　
　
【現在地：Ｃ地区　ねこふんじゃった】　

477 名前：聖女“ジャンヌ・ダルク” ◆dArctxNDsU ：2007/11/28(水) 23:13:14

ジャンヌ・ラ・ピュセル vs ジャンヌ・ダルク
Rust Riddle 〜錆色の舞踏曲〜
>>466

つぎはぎだらけの躰が軋む。ようやく“私”の嘆きの正体を掴んできた。

燃えさかる炎の中で信じた者達に異端と罵られ。

止まった時の中で、全ての救国を無駄と云われ。
震える音の中で、崩れ去る建物に潰され。
硝煙の香りの中で、紅玉の弾丸に胸を貫かれ。
学舎の中で、その人形の猛毒にその躰を蝕まれ。

だから、それでも“私”が求めている救いは、あまりにも苛烈。つぎはぎだらけの躰が軋む。
私の救いが揺らぐほどに。つぎはぎだらけの躰は錆びたように軋んでいる。

“私”は祈る。その剣に。そして、祈りは届く。天とは真逆の世界へ。

魂で理解する。これは禁忌。そして、これは“私”の救いへの意志であり、覚悟。
故に“私”は、その人性を捨てて、私に走り寄る。攻撃は的確に鎧の隙間を縫ってくる。
すんでの所で旗で止める。その攻撃は金属製の旗の持ち手をバターのように剔る。
攻撃のペースを掴む。剔れた持ち手に剣が滑り込む。反撃のチャンスは此処！

旗の持ち方を、瞬時に変えて大回転！“私”を吹き飛ばす。舞えよ、忌々しき髑髏の戦旗！

私は刀を抜く。鏡の国の道案内にと、死霊術師が私に預けたのは、鏡の魔剣“ミラーブレード”。
走る“私”の攻撃を止める。するとどうだ。鏡の魔剣は姿を変える。シャルル・マルテルの剣へと。

そして。わかってしまった。これが如何なるモノであるかを。
故に“私”が選んだ道を私が“私”で在るが故に理解する。理解してしまう。

「───やはり、我々は救われないことこそが、永遠に終わらない戦場こそが、
“私達”に与えられた“救い”なのだろうか？ならば、あの炎こそが………？」

運命という赤い靴を履いてしまった少女は、その救いの意味すら錆びに塗れてまで。
こうして永遠に舞踏を続けなければならないのか？救われないことは救いになるのだろうか？

だから、私は決意する。今一度、私は覚悟を決める。“私”と同じこの剣に祈りを捧げる。
だが、魔性のモノにはこの身など預けてやるものか、私にはこのつぎはぎだらけの躰で十分だ！

「これが………こんなものが………天命というのなら………！」

やはり。こうするしかないのなら。
やはり。これだけしか道はないのなら。
相打ち覚悟で、この少女を止める！私には最後の手段がある。

478 名前：ＤＩＯ ◆kYsrWORLDo ：2007/11/28(水) 23:22:03

>>465



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ぐぬう………ッ！　このＤＩＯに一杯くわせるとは………ッ！！
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　全く想像もしないッ！　「世界（ザ・ワールド）」の破り方…ッ！！


　　　　　　　　　　　　　　　　　　クックックッ………ハッハッハッ！　流石、流石だと言っておこうッ！！
　　　　　　　　　　　　　　　　　　いや、本当に驚いたよ。このＤＩＯ、決して侮っていた訳ではないが。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　王としての資格者としては十分ッ！　最大限にお前を賞賛しようッ！


　　　　　　　　だが、生憎、わたしはこの通り、吸血鬼、不老不死の身体でね。
　　　　　　　　見ての通りという訳だ。わたしを殺したいのであれば、それこそ
　　　　　　　　頭を完全にふっ飛ばすしかないのだよ。
　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　しかし、「時を止める」能力を無効化され、このＤＩＯは窮地に立た
　　　　　　　　されたという訳だ。いわゆる「チェックメイト」という奴かな、フフフ…

　　　　　　　　そこでこのＤＩＯは考える。わたしのスタンド「世界（ザ・ワールド）」、
　　　　　　　　パワーとスピードだけでも十分に君と戦えよう。しかし、それだけ
　　　　　　　　では少し手札が足りない気もするな、さて、どうしたものかな…？

　　　　　　　　ああ、先に言っておくよ、我が「世界（ザ・ワールド）」は「時を止める
　　　　　　　　能力」を除けば単純に「殴るだけ」だ、パワーとスピードは比肩しう
　　　　　　　　る者は殆ど存在しないがね。信じるか、信じないかは君の自由だ。

　　　　　　　　最もわたしがスタンドの事、自らの能力は最大限に理解をしている。
　　　　　　　　そして、「活かす」事が出来る。お前の「力」の事、スタンドとの違い、
　　　　　　　　この辺りもしっかり「学ばさせて」もらったよ………。


　　　　　　　　では、再開と行こうか、お前はこのＤＩＯの運命の敵だと認識したッ！
　　　　　　　　全知全霊を賭けて、屠ってくれようッ！！

479 名前：ＤＩＯ ◆kYsrWORLDo ：2007/11/28(水) 23:22:30

￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|　
　　　　「スタンド」のルール　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　
　　１．スタンドは群体を除いて、一人一体である。　　　　　　 　|　
　　２．スタンドが傷つくと本体も傷つく、一心同体。　　　　　　　|　
　　３．スタンドは何か１つ特有の能力を持っている。　　　　　　|　
　　４．射程距離があり、その間で自由に操作、発動・退去可。|　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　|　
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　


￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|　
　　　　男の「力」のルール　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.|
　　１．スタンドと異なり、複数を所有できる。　　　　　　　　　　　.|
　　２．「力」が傷つくと、本体も傷つくがスタンド程でもない。　　.|
　　３．過度に行使（複数使うetc）すると本体に反動が来る。　 |
　　４．射程距離は不明だが、発現等はタイムラグがある。　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無



￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|　
　　　　「スタンド」のルール　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　 |
　　４’．スタンドの発現、退去は『一瞬』で可能。　　　　　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　！？




　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|
　　　　　　　　　　　　　|　　「時間を止める」という事は本当に時を止める事とは限らない。　　|
　　　　　　　　　　　　　|　　例えば、今まで見ていた物が死角に入って視界内から居なく　.　　|
　　　　　　　　　　　　　|　　なった時、「消えた」「時間が止まった様」と人は錯覚するッ！！ .　|
　　　　　　　　　　　　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. |
　　　　　　　　　　　　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣


　　　　　　　　　　　　　|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|
　　　　　　　　　　　　　|　　今ＤＩＯが行った事もまさにそれだったッ！！　有里に突進して　　　|
　　　　　　　　　　　　　|　　いた「世界（ザ・ワールド）」が忽然と消えたッ！！　そしてッ！！　　|
　　　　　　　　　　　　　|　　生まれるであろう有里の一瞬の意識の空白にＤＩＯはその吸血鬼　|
　　　　　　　　　　　　　|　　の身体能力を以って駆け寄り、つけ込むッ！！！　　　　　　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣




　　　　　　　　　　　　　　　　　　――――――「詰み（チェックメイト）」だッ！！




【C地区　とある高層ビル屋上――『影時間』にて】

480 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/28(水) 23:39:43

>>479
　
――いやはや、吸血鬼ねえ。
　シルバーバレットなんて用意してないって云うのに。
　ま――どうでもいい。
　
　頭を飛ばせば倒せると宣言した。自分の『能力』についても話した。
　僕に出来る事は？
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「終わらせる事」だ。
　
　
　雨や霰の様な殴打。
　何度も、何度も、何
　度も。それが、例え　　　　　　　　　　タナトスが受ける。
　一撃であろうとも―-.　　　　　　　　　致死の弾丸を。死
　決まれば僕は死ぬ。　　　　　　　　　は我の領分だと云
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　わんばかりに。抵
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　抗出来るだけマシ。
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　救いのない終わり
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　だね。まったく、参
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　る。化物に慣れて
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いる筈だったけど。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　止まれよ。止まれ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　化物にリミッターは
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ないんだろうね。ど
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　うでもいいけどさ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　暑苦しいんだよね。
　　　　　　　　止まない雨はない。
　　　　　　　　止まない雪もない。
　　　　　　　　でもその終わりは
　　　　　　　　何時なんだろうか。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―――――そうして唐突に。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―――――詩だけが聞こえた。

481 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/28(水) 23:40:09

>>480
　
　
　
　　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――――――「詰み（チェックメイト）」だッ！！
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　

482 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/28(水) 23:40:39

>>481

本能が告げた。
　
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　音速の壁を越えて。
　
　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　人間としての本能が告げる。
　
　
　
　
　
　
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　だから自分を殴り殺す勢いで銃口を突きつけた。

483 名前：ＤＩＯ ◆kYsrWORLDo ：2007/11/29(木) 00:19:01

>>480 >>481 >>482



　　　　　　　　　　　　　　　　　　遅いッ！！
　　　　　　　　　　　　　　　　　　貴様はこのＤＩＯとの知恵比べに負けたのだッ！
　　　　　　　　　　　　　　　　　　互いの能力の差異を考えなかったのが敗因よッ！

　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（ドス）
　


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　●
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　●　　　　　　　　　　●
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　だから自分を殴り殺●勢●で銃口を突きつけた。
　
　
　
　

484 名前：ＤＩＯ ◆kYsrWORLDo ：2007/11/29(木) 00:19:36

￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|
　　吸血　　　　　　　　 　 |
　　血液を通貨とした　　|
　　魂の. 　　　　　　　　　|　　　さあ、その血の一滴残らず、吸い尽くすと予告しよう…ッ！
　　命の同化. 　　　　　　|　　　ＷＲＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹ！！！
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿|




「うん、それじゃあね。君は呼び水だ。でも、これはまだ起きちゃいない。便利屋として使い潰されるだろうし、沢山
傷付いて、前以上に悲しい思いをするかもしれない。それでも、行く？」
「――選択した以上は責任を持って走るだけさ」
「そういうと思ったよ。人生において決断する事は覚悟をする事と同じだ。君は一度命の答えに辿り着いて、こん
な事は言われるまでもないだろうけどね。基本的には人間だから。死ぬ時は死ぬよ。君もね。年老いてか、事故
か、それとも闘いの中でか――仲間に囲まれてか。どんな終わりを向かえるかは知らないし、僕が決める事じゃ
ない。でも――出来れば笑って安らかに、ね」




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　他者との命の融合
　　　　　　　　　　　　　　　　　　貴様の生命の脈動ッ！　感じているぞッ！！　　　　　　　 　　 |　命の掌握
　　　　　　　　　　　　　　　　　　この暖かい弾力！　ここちよい感触よッ！！　　　　　　　　　.　|　精神の支配
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　吸血鬼の本質
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿



「うん、それじゃあね。君は呼び水だ。でも、これはまだ起きちゃいないおれは人間をやめるぞ！ジョジョーーッ！！
傷付いて、前以上に悲しい思いをするかもしれない。それでも、行く？」猿（モンキー）が人間に追いつけるかーッ！
「――選択した以上は責任を持って走るだけさ」　　　　　　　　　　　　　　ようこそ、我が永遠の肉体よ……ッ！！
「そういうと思ったよ。人生において決断する事は覚悟をする事と同じだ。始末すべき宿命、抹消すべき因縁……
な事は言われるまでもないだろうけどね。基本的には人間だから。死ぬ無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
テレッテッテー、順平はレベルアップ仲間に囲まれてか。どんな終わりを出会いというものは「引力」ではないのか？
ない。でも――出来れば笑って安らかに、ね」　　　　　　　　　　　　　　　　「天国」とは「精神」。精神の「力」も進化する



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　馴染むッ！　実に馴染むぞッ！　　　　　　　　　　　　　　|　　吸われ、溶け、消えていく
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　わたしと同じ運命に目覚めた「王」だけはあるッ！！　 .|　　有里湊の魂がＤＩＯの魂に
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　最高に「ハイ！」ってやつだアアアアアア！　　　　　　 　|　　呪縛され侵食されていくッ！
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　アハハハハハハハハハハハハーッ！　　　　　　　　 　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣



「うん、それじゃあね。君は呼び水だ。でもおれは人間を超越するッ！　ジョジョ、おまえの血でだァーーッ！！
傷付いて、前以上に悲しい思いをするかおまえはこのディオにとってのモンキーなんだよジョジョォーーッ！！
「――選択した以上は責任を持って走る世界の頂点に立つ者は！ほんのちっぽけな「恐怖」をも持たぬ者ッ！
「そういうと思ったよ。人生において決断「人間は誰でも不安や恐怖を克服して安心を得るために生きる」
な事は言われるまでもないだろうけどね無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
か、それとも闘いの中でか仲間に囲まれ「世界」の真の能力は…まさに！　「世界を支配する」能力だということを！
ない。でも――出来れば笑って安らかに真の勝利者とは「天国」を見た者。どんな犠牲を払っても、わたしはそこへ




【C地区　とある高層ビル屋上――『影時間』にて】


　　

485 名前：”赤頭巾”：2007/11/29(木) 00:21:24

＞プリマヴェラVS赤頭巾　

>>470>>471>>472>>473>>474>>475>>476


気がつくと、赤頭巾は絵の具のパレットの世界に浮かんでいる様でした。　
空色のチューブを捻り、水付きの絵筆をふるって画用紙に落した後で　
ちょっと、楓の枝葉が日差しを遮っている部分を認めてみると、居ても　
たっても居られなくなって…ビリジアンのきつい筆をとって搾り出した　
あの瞬間。
そして好きなあの子が日差しの強さに頬を染めた一瞬を描きたい───　
情熱の限りを表す為の桃色の油絵の具のひとしずく。筆も洗わずつけて　
しまったあの色。…そんな色をあなたも覚えてることと思います。　
　
爬虫類の細く黄金の瞳には色彩を計る力はありませんでした。　
しかしそんな彼にもきっと、この不思議な衝動を心に繋ぎたいという
純粋な想いがあったのでしょう。その性を甚だ抑鬱に染められて、普段使わぬ
思考は腐敗し馬鹿踊り。ときめきよろめき、とどめにいちげき。　
　
今日の天気は晴れのち傘マーク。ジャバは正確な天気予報を受信して　
明日の天気についてこれ以上思い悩むこともなく、地面に伏してゆきました。　
　
そんな幸せも赤頭巾には全く関係ありません。　
乙女の様にはなびらを、たくさん口に乗せながら、うしろへ落ちつつ　
引き金を少女玩具へ引き続けるのです。ぱらぱらと飛び散る薬莢と火花たち。　
この高さから落ちるのはとても危険に思えるでしょう？　
けれどもいつもこの時間、そこにはトランプの衛兵【ハート小隊というらしいです】
が通りかかる事になっておりました。　
かかとをあげて、みぎて・ひだりて、左右よし。きどって歩く１３人。　
戦闘はトランプの癖に太っちょ、大力自慢のハートAさま。　
そこに落ちたのが赤頭巾。さしものAも紙にすぎません。Aこけたらみなこけた。　
１、２、３、４みなこけた。パラパラドミノにみな倒れてしまったのでした。

【現在位置C地区　猫踏んじゃったらひっかいた、ネコひっかいた。きっとそうなるわ】

486 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/29(木) 00:28:34

ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓ聖女��ジャンヌ・ダルク��
『Rust Riddle 〜錆色の舞踏曲〜』

>>477

　鏡写しの聖剣が、乙女の黒甲冑を切り裂いた。憑依によって強化された悪魔
的な反応力をもってしても、見切ることの能わぬ一閃。
　乙女の胸から血の花が咲く。
　幸いにも疵は浅い。裡から蝕む乖離の痛みのほうがよっぽど深刻だ。乙女は
手元でブレードを翻すと続く二の手を弾き返した。
　剣と剣が感応する。―――なんと驚くべき奇跡か。それとも魔技が映し出す
幻影か。聖女が構えるロングソードは、乙女のシャルル・マルテルの剣と一分
の狂いもなく同一だった。
　彼女もまたジャンヌなら、聖カトリーヌ様の教会でこの剣を発掘しているは
ずだ。だからシャルル・マルテルの剣で武装していること自体はさして驚くに
はしない。―――だが、それが乙女とまったく同一となれば話は別だ。
　眼前に立つ亡国の聖女と乙女とは、同じジャンヌであっても決して重なり合
った存在ではない。異なる運命を歩めばこそ、こうして対立もする。

　―――なのに、彼女は乙女の聖剣を構えていた。

　まさに鏡写し。

　オリアクスが乙女という器を操作する。剣戟には剣戟で応え、乖離の激痛に
炙られながらも聖剣と聖剣で鍔迫り合う。
　舞い散る火花。刻まれる木の葉。―――十合の打ち合いが次の十合を呼び、
終わりなき剣楽を奏でると、乙女の焦燥も比例して深まっていった。
　
　彼女はもう、死ねない。
　崩壊は深刻で、リドルのルールは崩れ始めている。
「再生」はもはや約束された運命ではないのだ。
　救国ならずして死に至る―――森が、アリスが、決して認めていないはずの
終末を乙女は濃密に予感していた。
　だから、この戦いは決して負けられないのだ。勝って、生き延びて、救国を
再開しなければ。
　しかし、立ちふさがる相手は自分。勝利はあまりに険しく、遠かった。

　覚悟を決めよ。黒乙女の狂気を捨てて、通れる道ではない！

487 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/29(木) 00:29:10

>>477
>>486

「―――嫌悪したわね」
　乙女の声が冷気を帯びる。
「あなたは、乙女の、魔性を、嫌悪した」

　悪魔に身を売っても、地獄への落下が約束されても、悔いることなく目指し
た勝利という名の至高。目の前の聖女は、そんな乙女の在り方を蔑んだ。憐れ
んだ。―――ならば、憎めるだけ憎むがいい。
　そうすれば、私の心も痛まずに済む。

　模倣の聖剣が乙女の肩を捉えた。装甲が裁断され、血飛沫が舞う。返す刀が
頬を掠めた。太ももを舐めた。黒甲冑が刻まれてゆく。
　乙女は、新たな疵を負うごとに頬を恍惚で染めた。
　外から与えられた痛みは裡に飼う悪魔を育む。傷付けば傷付くほど、調和の
天秤は狂い、混沌から魔性が発生する。
　乙女の劣勢は勝機と同義。

　だが、まだ足りない。

「イエス様の痛みはこの程度ではなかった！」
　
　自らの聖剣で、鏡写しの聖剣によって開かれた疵を抉る。骨が覗くほど深く
手首を刈る。首筋に刃を当てて、すらりと撫でる。
　その度に乙女は死に近付いた。その度に乙女は疾さを増した。
　血霧の衣をまとい、音の壁すら貫かんと疾走。

「さあ、どうかしら？　これが私よ。これが黒乙女ジャンヌよ。―――醜いで
しょう。背徳的でしょう。自分だなんて認めたくないわよね」

　紫電の刺突を浴びせかけながら、彼女は嗤っている。
　
　だが、頬を染めるのは朱ではなく涙。

「こんな呪われた私でも―――あなたはまだ救うなんて言うのですか？」


【現在位置／ハイウェイ／Ｃ地区へ接近中】

488 名前：タイターニア ◆DOLLmR5Q5A ：2007/11/29(木) 00:57:26

赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>485
　
♠
　
　傘から手をはなし、ジャバウォッキーの身体を蹴り付けて、彼女は後方に跳
躍します。
　飛ぶプリマヴェラと落ちる赤頭巾。一見して勝者と敗者のようにも見えまし
たが、いいえいいえそうではありませんでした。だって赤頭巾は銃を持ってい
たのですから。
　
　赤頭巾の銃が火を噴きました。その銃弾をプリマヴェラは身体を捻ったり魔
法を使ったりしてかわしましたが、それでもそこは逃げ場のない空中、ぜんぶ
かわすのは不可能でした。
　
　数発の銃弾が肩口を掠め、二の腕を擦り、彼女に手傷を負わせました。
　痛みに彼女は眉をしかめます。
　
　その時でした、彼女の後方に突然気配が現れたのです。
　そしてそれは問答無用で襲い掛かってきたのでした。
　踏み台にされ怒ったチェシャ猫が彼女を引っかこうとしたのでした。
　
　でもプリマヴェラはそれを見て笑いました。丁度いいと思ったのです。
　彼女は空中で身を捻ると、チェシャを赤頭巾めがけてきり飛ばし、盾と砲弾
代わりにしたのです。それは一石二鳥でとてもお得でした。
　
　そうこうしているうちにプリマヴェラも着地しました。
　着地と同時に彼女はドレスの中に手を忍び込ませました。
　
　次の瞬間、彼女のスカート中から紐状の物体が地に落ちました。
　さきが二つに割れた黒くて光沢のあるそれは、あたかも黒い尻尾のようで、
彼女の小悪魔めいた魔性が具現化したような、そんな印象を見るものに与えま
した。
　
　ですがもちろん尻尾などではありません。わたしの子供たちにしっぽなんて
生えていません。だってそんな風には設計されていないのですから。
　
　それは蛇の舌（フラグルム）、と呼ばれる鞭の一種でした。
　キリスト教徒には酷く嫌われている鞭でした。なぜって？理由は簡単です。
これはキリストを打ち据えた、彼らにとって忌まわしい鞭なのですから。
　
「跪いて足をお嘗め！」
　
　怪物の王女さまのように高らかに笑いながら彼女はそう叫びました。
　そして彼女はその鞭を赤頭巾めがけて振るいました。
　
♠
　
　
【現在地：Ｃ地区　真赤な頭巾の　リゼッテさんは　いつも皆んなの　】　

489 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/29(木) 00:58:05

>>484
　
　持って行かれる/総てを根こそぎに=生命の消失=存在の証。
　奪われる/総てを――その証=創り上げた絆>目の前の男の命。
　意識の剥離/血液の喪失=直接的な死/ふざけるな/死ぬ？/まだ続く吸血行為=男の愉悦/苛立ち/引金に
かけた指¬ショックによる活動の停止/機能の回復時間<血液の抜ける速度から算出される死亡予定時刻午
前0：00分。
　愉悦に歪む顔/音を鳴らし飲み干される血液=生命の通貨/星型の痣/夜空の月/裏側に立つなにか=同等と
認識+殲滅対象認定。
　この僕の総てを奪う/作り上げた絆を奪う/全ての記憶を奪う/満ち足りた■を奪う=ひっくるめてムカつく。
　動かない指/動かそうとする意思<機能として完成されている体/矛盾――なにかが引っ掛かる。
　人間としての体=彼と僕の同一性/？/血液の減少に伴う貧血=思考に霞が掛る/大切な何かを忘れている―
―きっと思い出せれば/先から冷めて行く四肢+立つ事もままならない体=死の予兆。
　鳴り響くアラート/この体が機械仕掛けだったら/機械仕掛け？/パーツが足りない/時間も足りない/声すら
出ない。
　恐怖/畏怖/恐怖/畏怖/恐怖/畏怖/恐怖/畏怖/恐怖/畏怖/恐怖/畏怖/恐怖/畏怖/恐怖/畏怖/恐怖/畏怖
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　こんな物が僕の死/否=即答は生きる意志。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　こんな物が僕の死/否=この体は彼のもの。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　こんな物が僕の死/否=殺されるのは■■。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　こんな物が僕の死/否=殺せるのは■■■。
　
　
　
　
　
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　戦う意思/生への欲求=勇気。
　人間賛歌=勇気の賛歌/人の意志は無限の力/一人では無理/ならばもう一人+続けて一人+更に一人+おま
けに一人/生きた年数だけの絆/あの街で得た絆=全て僕のもの。
　返せ/その呼びかけに応える指先=既に痺れを通り越し無感覚――神経の伝達を無視=引金を絞る。
　ペルソナの顕在/黒衣ではなく白/その双眸は天を仰ぎ見る――ただ神々しく。
　奪い返す=取り戻す=後悔させる。
　
「相手を『殺す』、自分は『生き残る』――ついでに云えば僕は『仲間』の下へ『帰』らなくちゃならない。この三つ
の同時進行はキツイけど、やり遂げなくちゃならないのが僕の辛いところだね……」
　
　メサイア/対象を認識=意思に従い動く。
　
「『覚悟』は良いか？――僕は『出来』てる」
　
【C地区　とある高層ビル屋上――『影時間』にて】

490 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/11/29(木) 00:59:36

>>395

刹那に、会いに行く。
――それは、この極限状況において、酷く魅力的な発想だった。

だが、今の私は殺人犯。それを第一に考えて行動しなくてはならない。
ＡＴＭでお金を下ろす？　論外だ、今はネットワーク管理ですぐに居場所がばれる。
今使えるお金は、桂さんの通帳を使って下ろした、３０万ほどのみ。
こんなことなら、他の連中の財布からも、多少の足しになる金を奪えばよかった。
だが今更、後悔しても始まらない。
とにかく、安全かつ警戒の目をぬぐって、空港まで行く方法を――





「――すみません、空港まで送っていただいて」
「いえいえ、これも仕事のうちです、では気をつけて」

軽く敬礼して、パトカーは走り去って行く。
なんと簡単なことだろう。
海外の親戚の家に行こうとして、バスを間違えた。早くしないと飛行機が出てしまう。
そう言って泣いてみせただけで、彼らは簡単に信用してくれた。
まさか、殺人犯が自ら警察を頼ってくるとは思わなかったらしい。

思考の間隙。
時に大胆に。

それが、今回得た教訓だ。
ここまでは、順調。後は、刹那に会いに行くだけだ。

――――違和感。

なんだろう。この違和感は。
あまりに巧く行き過ぎている。
こんな子供だましの手にまで、誰もが引っかかる。
どこか不自然な世界（セカイ）。
まるでとても大事なことを、見落としているような……。

「……考えすぎ、だよね？」

そう自分に問いかけ、そうだ、と自分に答える。
そうだ、これは偶然でも幸運でもない。
私の、能力だ。
それを成し遂げようと思った時に、それを成し遂げる能力。
それを私は持っていた、私は特別だった。ただそれに気づいていなかっただけ。
ただ、それだけなのだ。

そう割り切ると、私の頭からそのかすかな疑念は消えた。
後は、この空の向こうに待っている親友、刹那のことだけ。
待っていて、刹那。
今、会いに行くから――！

491 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/11/29(木) 01:00:05

>>490
「お姉ちゃんが『吸血鬼』なんだよね」

小さな少女は、確かにそう言った。
動揺。焦り。ありえない。なぜ。いくつもの言葉が頭を駆け巡る。

「な、何言ってるの、リンちゃん？　
　吸血鬼って言うのは、あの怖いお兄ちゃんだよ？」
「見たから」

震える私の声への答えは、端的かつ明確。
見た？
見たって――「見られた」？

まずい。
よりによって最悪のタイミングだ。
後ろからは、最悪の殺人鬼、本物の「吸血鬼」。
前からは、ようやく来た助け舟――でも、それも一瞬で最悪の敵になる。
この子がたった一言、「このお姉ちゃんが犯人です」って言うだけで。
今まで積み重ねたものを、全部台無しにしてくれる！

せめて、「吸血鬼」のほうだけでもなんとかしてくれれば……。
そう思って後ろを振り返ると、ああ、やはりあっさり殺されている。

「あのバカ！　誰が刃物を持って殺せなんて言ったのよ！
　せめて適当に言葉を合わせてるだけでも、時間稼ぎ程度にはなったのに！
　本当に使えない！」
　
怒声に、リンが背をびくりと震わせる。
どうしてどいつもこいつも、こうも役に立たないのか。
――いや、落ち着け。まだ詰みにはほど遠い。
少なくとも、「目標が私である」、それを確認する程度には、ミクも役に立ってくれた。
前から来る男達の視界に私が入るまで、僅か数秒。
その数秒の間にできることは、

「ねえ、リン、聞いて？
　お姉ちゃん、リンの言うような『吸血鬼』じゃないんだよ。
　リンは夢を見たんだよ、信じてくれる？」

腰を低くし、彼女の視線に合わせる。
彼女の無防備で幼い自我が揺れるのが、瞳から伝わってくる。
あの、その、と何か言いかける彼女の唇をそっと封じ、いいんだよ、にっこり笑って、

「――嘘だから」

首を掻っ切った。

492 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/11/29(木) 01:01:30

>>491
駆けつけてきた男二人が見たものは、首から血を吹き出した幼い少女。
何か喋ろうとするたびに、ガボ、ガボと虚しく首から血を吹き出すのみ。
相当に場慣れしているであろう男達でさえ、思わず目をそむける惨状。
そして、私は涙を浮かべて、

「あ、あの人が、あの人が！」

と『吸血鬼』を指差してみせる。

「あの人が、私の妹を殺したんです。
　ほら、あそこで、むごたらしく、楽しむように殺したんです！
　あれが、あの『吸血鬼』なんです、信じてください！
　もう一人の妹だけ何とか助けて、ここまでつれてきたんですけど、血が、血が！
　助けてください、お願いします、なんでもします、妹だけ、妹だけは助けてあげてください！！」
　
悲痛「に聞こえる」叫び。
凄惨「に見える」表情。
男達は、揃えたように視線を落とす。「もう助からない」、その事実を伝えたくない一心で。


――――そして私は、内心笑う。


なんて簡単なのだろう。
この男達は知らない。この幼子が言いたいのは、悲鳴でも恐怖でもない。
ここにいる、この私こそが犯人だと言うことなのに。
彼女の目が、次第に絶望に染まっていく。
あと一言、一言言えれば、と。
でも、……もう遅い。

『すまない嬢ちゃん、でも約束する！
　俺達は、必ずあいつをこの子のところに送って、嫌というほど謝らせてやるからな』
『ああ、こういう血も涙もねえヤツは、人間じゃねえ、俺はこの手の変態が一番許せねえ』

正義感に燃え、駆け出そうとする男達に、私は背中から声をかける。

『行くなら、あそこの車を使ってください！
　逃げるために使おうと思って、さっき動くか確認してあります！』
『すまねえ、嬢ちゃん！』

男達が、意気揚々と車に乗り込み、走り出していく。
――後に、黒いガソリンの道を作って。
彼らは知らない、その車のガソリンタンクに穴があけてあることを。


一直線に伸びる、黒くて長い道。
そこに僅かな火種――たとえば、炊き出し用のマッチの火を落とせば？











答え：「炎の道」








火は文字通り、ガソリンの道を燃やし尽くして進軍する。
炎は瞬く間に車にまで到達し、それを一個の、巨大な炎の弾丸と化す。
吹き上がる炎は、近隣の住居にまで次々と燃え移り、そこにある燃料とも引火し、さらに燃え盛る。
建物からは次々と人が飛び降り、それは地面につく前に黒い塊と化す。
道そのものを、炎の占有地として、さらに車は突き進む。

「あははは、見ておくものだよね、映画って！
　これ、ダイ・ハード２だっけ？　それともリーサル・ウェポン３？
　どっちにしても、派手な爆破はクライマックスにはつきものだもんね！」
　
哄笑。それを聞くのは、おそらくかつて人間だった灰のみ。
突き進む炎の車、運転手さえとっくに失ったそれは、ただ一つ、最後のゴールに向かって突き進む。
そのゴールは、

「あなただよ、『罪もない人を大量虐殺し、幼い少女さえ手にかけ、街を炎に包んだ極悪犯』、吸血鬼さん！」

この声が、聞こえたかどうか。
だが、それを確認する余裕はない。
万が一、これでも生きていたら――いや、ありえる。
何せ相手は「あの」吸血鬼、まさか、という思考は捨てるべきだろう。

とにかく次の居住地にたどり着く。
しばらくはこの炎が足止めになるだろう。その間に、こちらも戦力を整える。
私は、リンの死体を引きずりながら、一直線に走り出した。








【現在地　B地区「繁華街」】

493 名前：聖女“ジャンヌ・ダルク” ◆dArctxNDsU ：2007/11/29(木) 01:23:04

ジャンヌ・ラ・ピュセル vs ジャンヌ・ダルク
Rust Riddle 〜錆色の舞踏曲〜
>>486-487

つぎはぎだらけの躰が軋む。なにかが決定的にぶれ始めているから。
捉えるのは鏡の魔剣。捉えるのは鏡の中の“私”。つぎはぎだらけの躰が軋む。

錆びるように欠けていく。
欠けるように錆びていく。

私だからこそわかる。“私”の躰がどう動くか。
つぎはぎだらけの仮初めの躰でも。魂が私を鏡の先へと導くのだから。
未だ。声は聞こえているか？まだ、“私”は救いを信じているか？

剣戟は、終わりの見えない輪舞曲。果てのないPerpetual Check（千日手）！！！

未だ。声は聞こえているか？それでも私は“救う”と願っているか？
薔薇の棺に閉じこめられた。“私”の中の少女（ジャンヌ）を救うと。

「─────汝の隣人を愛せ。ならば“私”とて愛せぬ道理はなかろう、ジャンヌ。
　たとえ魔道に堕ちようと。たとえ邪道に堕ちようとも。それとて、選んだのは“私”なのだから。
“救う”とあの日、妖精の木の下で“私達”は確かに誓ったじゃないか。
　
　だから。仮初めの躰に身を堕としても、私は“私”の前に立っている。そうだろう？」

つぎはぎだらけの躰は錆色の血を撒き散らして軋みをあげる。
そうだ。私とて。堕ちていないと言い切れるか？否。この躰はすでに私ではなく。
今日は約束された再生の日ではない。走り来るのは“私”。待っているのも私。

だから。これは鏡の国の。救われなかった少女達の。

「─────だからこそ“救う”。未だ、声は聞こえている。」

悲しい悲しい御伽話。だから、それが。どうしようもなくて泣き出したあの日と同じ顔だったとしても。
私の瞳は“私”を見つめているか。そして、微笑んでいるか？答えて。私には私が見えないから。

494 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/29(木) 02:07:38

ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓ聖女��ジャンヌ・ダルク��
『Rust Riddle 〜錆色の舞踏曲〜』

>>493

「……そう、あなたはやはり乙女なのね」

　魔女の仮面を外して彼女は微笑む。歓びと、ほんの少しだけ諦めが混じっ
た微笑。―――乙女は今宵、長い人生の果てに初めて「後悔」を覚えた。
　常に自らを肯定し、イエス様を確信し続けた娘の揺らぎ。
　こんな素敵な自分と相対しなければいけない運命をちょっとだけ恨み、そ
の登場があまりに遅すぎたことに若干の悔やみを自覚した。

　―――何よりも哀しく、何よりも恨めしかったのは。

　そうまで自分を想ってくれる、もう一人の自分を斬り倒してでも救国を続
けなければいけないこと。ああ、だから私を嫌悪して欲しかったのに。
　この私はなんて強情なのかしら。―――ふと笑みがこぼれる。
　そう言えば、私生児〈バタール〉様もラ・イールも、私のことを「他人の
話を聞かない強情娘」「突撃女」と呼んでは呆れていたわね。
　ああ、やっぱりこの子は私よ。私なんだわ。

「きっと、あなたなら私を救えると思うの。……いいえ。それどころか、あ
なたに救われるためなら、奈落へ堕ちても良いぐらい」

　悪戯っぽい笑みが浮かぶ。だが、すぐに溶けて、冷酷が表情を支配する。

「―――でも、ごめんなさい。私にあなたは救えないわ」

　あなたの背中の向こうで、フランスが勝利を求めているから。
〈声〉が私に、パリへの凱歌を謳えと命じているから。
　乙女は往かなくてはならない。例え、自分を斬り伏せてでも。
　そこにフランスがあるのなら、自らの屍をも乗り越えろ。

　人は多情でも、刃はいつだって無情だ。

　振り落とされた聖剣は、狙い違わず��自分�≠ﾌ胸を目指した。


【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）最深部〈妖精の樹〉】

495 名前：システムアナウンス ★：2007/11/29(木) 04:04:26

吸血大殲　森祭　途中経過纏め

＊進行中の闘争の中断状況を記載
＊終了した闘争については最後に記載
＊各人のターンのレス毎に改行
＊再開時間の申請があるものは記載
＊タグ使用闘争は各闘争ごとに付記、対応ブラウザでの閲覧推奨

紅魔館の優雅な住人たちｖｓカトル・カール
―Forest Lagoon―

紅魔館導入
>>146>>147>>148
カトル・カール導入
>>149>>150>>151

>>154>>155>>156
>>185>>186
>>188
>>189
>>191>>192
>>196>>197
>>201
>>245>>246>>248
>>273>>275
>>292>>293
>>330
>>358
>>360>>361
>>398
>>399
>>409>>410
>>411
>>412>>413
>>415
>>419>>420
>>426
>>433>>434
>>435
>>446
>>451
>>455
>>456>>457
>>459



【現在地：ハイウェイ】

＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨


日守秋星　VS　西園寺世界　「-WORLD HANT.」

日守秋星導入
>>296>>298
西園寺世界導入
>>299>>300

>>302>>303
>>309>>310
>>311
>>312>>313
>>315
>>318>>319
>>325
>>366>>367>>368
>>395>>396
>>490>>491>>492

【現在地　B地区「繁華街」】

496 名前：システムアナウンス ★：2007/11/29(木) 04:05:19

有里湊ｖｓＤＩＯ

　ＤＩＯの世界／
　　　　　　 .／Burn my――

ＤＩＯ導入
>>369>>370
有里湊導入
>>371>>372>>373>>374>>375>>376>>378

>>379>>380
>>381
>>382
>>383
>>384
>>385
>>386
>>387
>>397
>>400>>401>>402
>>421>>422>>423>>424>>427>>428>>429
>>432
>>436>>437>>438
>>439
>>445
>>447
>>453>>454
>>478>>479
>>480>>481>>482
>>483>>484
>>489

【現在地　C地区　とある高層ビルの屋上（影時間）】

＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨


赤頭巾VSプリマヴェラ

赤頭巾導入
>>336>>337>>338>>339>>340
プリマヴェラ・ボビンスキ導入
>>342>>343>>344>>345>>346

>>348>>349
>>352
>>357
>>362
>>406>>407>>408
>>416

>>449>>450
>>470>>471>>472>>473>>474>>475>>476
>>485
>>488

【現在地：Ｃ地区　………】

＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

ジャンヌ・ラ・ピュセル vs ジャンヌ・ダルク
Rust Riddle 〜錆色の舞踏曲〜

>>448
>>452
>>458
>>460
>>461
>>462
>>463
>>464
>>466
>>477
>>486>>487
>>493>>494


【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）最深部〈妖精の樹〉】

497 名前：システムアナウンス ★：2007/11/29(木) 04:05:43

＞終了した闘争レス番纏め

森祭テーマ（ストーリー関連）闘争

DIO vs JEANNE ―The forth part of king Henry VI―
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/138
＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

ミスティア・ローレライｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル　『イツマデ』 Still When
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/230

エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル　『ポワティエ平野で朝食を』
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/305

ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓメディスン・メランコリー　―576年目の森林教室―』
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/444
＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨
備考：メディスン最終エピローグは後日追加予定


通常の闘争

エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミｖｓリサ・トレヴァー
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/252

レイオット・スタインバーグｖｓ魔神王リィーナ
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/291

死神（デス）ゼアド vs ＜呪われし公子ゲイナー＞
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/286
＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

“姫”一行（怪物王女）VSスレイド
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/405
＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/469
＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

498 名前：聖女“ジャンヌ・ダルク” ◆dArctxNDsU ：2007/11/29(木) 04:58:24

ジャンヌ・ラ・ピュセル vs ジャンヌ・ダルク
Rust Riddle 〜錆色の舞踏曲〜
>>494

いつの間にか泣いていた。あの日と同じように。
きっと顔はぐしゃぐしゃで、ジャンやラ・イールはともかく、ジル・ド・レにだって笑われそう。
彼女の微笑みにこれじゃあ答えられそうもない。彼女の揺るがない意志にすら。

それでも私は救うと決めた。その時、運命はもう一度私の手を離れていた。

つぎはぎだらけの躰。禍々しい髑髏の戦旗。彫り込み鋼の鏡の魔剣。
たとえ紛い物と罵られても、私は“私”を救う。それだけの覚悟は声を聞いたときに出来ていた。
彼女の悪戯じみた微笑みに私を重ねていた。“私”が私を救えると言ってくれるなら。
悔いはない。だから、この後のことも知っている。ならば、この先でしか“救い”はない。

─────だから“私”は私の胸を貫いた。

だけど。私の躰はつぎはぎだから。心臓を貫いても。
だけど。私の躰を繋ぎ止めているのは鼓動じゃないから。

だから。これはただの魔法。死霊術。私の命は仮初めだから。
だから。私には。未だ時間がある。わずかだとしても、これはきっと永遠に近い時間が残ってる。
だから。願わくば主よ。もう少しだけ、この呪われた躰に力を！そして、動かす意志を！。
未だ、声は聞こえるか？目の前の黒い乙女とその中に閉じこめられた少女の、タスケテと言う声が。

唯一の隙。止めを刺した瞬間は誰でもが無防備。刃は確かに無情で非情。

─────だから私は“私”の胸めがけて鏡の魔剣を突き上げる！

「私だってこの通り、奈落に堕ちるような呪われた身の上でここまで来ている。
　未だ、声が救えと言うのでな。たとえ、差し違えてでも私は“私”を救うぞ？」

秘中の秘は未だに秘めたまま。どこか深い森の中。鏡の国の御伽話は続く。

【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）最深部〈妖精の樹〉】

499 名前：パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU ：2007/11/29(木) 17:13:08

>>451>>455>>459

………

しばらく後。
パチュリーはフラミンゴから得るべきもの（モロトフ・ゼリー）を得ていた。
彼女の書斎にもどって研究すれば、彼女の知識はさらに深まることだろう。
パチュリー・ノーレッジは満足した。

だから、自分の友人がやや憂慮すべき状況だったことを思い出すのにしばらくかかった。
ため息ひとつ。風精に命じ、前進を開始する。


途中で変わり果てた姿の鮫に出会った。
「あら」
感情のこもらない台詞。魚類に向ける哀悼は無い。

途中で変わり果てた姿の家鴨に出会った。
「あらまあ」
感情のこもらない台詞。鳥類に向ける哀悼は少ない。

途中で変わり果てた姿のレミリアに出会った。
「ああレミィ、なんてこと」
感情のこもらない台詞。抜け殻に向ける哀悼は最小限に。

途中で変わり果てた姿のパーラーカーに出会った。
「ふう」
感情のこもらない溜息。黒焦げの車内を避けて屋根に座り込む。


視線を向ける。遠く遠くに向ける。
見えないが、そこに棺桶がいる筈だった。
おそらくは、抜け殻でない彼女の友人もそこに。

「悔しい？」
誰かに声をかける、返事は無い。
「穢されて、滅茶苦茶にされて、蹂躙されて、おまけに追い抜かれて。悔しい？」
誰かに声をかける、返事は無い。
「なら」
返事は無い。
「復讐してみせなさい」
返事は


赤色の風が、ハイウェイを駆けた。

【現在地　ハイウェイ：トレーラーを追いＣ地区に接近中】

500 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/29(木) 19:50:43

ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓ聖女��ジャンヌ・ダルク��
『Rust Riddle 〜錆色の舞踏曲〜』

>>>498

　状況の流転。運命の更新。約束された脚本が乙女という斜陽に背を向けた。
　
　　ああ、フランスが遠ざかってゆく。
　　勝利が私の手からこぼれてゆく。

　柄から手をほどき、鉄靴（サバトン）で相手の胸甲を蹴り付ける。悪魔憑
依の膂力がもう一人の乙女を吹き飛ばし、反動で乙女自身も後方に跳んだ。
　シャルル・マルテルの剣は彼女の胸に突き立ったままだ。―――そして、
乙女の胸にも、まったく同じ聖剣が生えている。

「ああ……」
　眼を剥いて偽りの剣を見下ろす。
「私の心臓が！　私の心臓が！」

　既に〈停滞〉の刻印は働いている。自らの肉体にのみ限定的な時間停止を
施す固有時制御は、心臓の停止による「乙女の死」を暫定的に引き留めてく
れているが―――それとて、永遠には届かない。
　乙女の無尽蔵な魔力をもってしても、時間操作は数分が限度。失われた心
臓は二度と取り戻せない。生きながらにして乙女は敗死を約束された。

「なんてことを！」
　絶望の興奮が痛みをも忘れさせる。
「最後なのに！　これで最後なのに！」

　死は怖れない。それは乙女にとって向かうべき終着点だ。だが彼女には大
儀があった。使命があった。まだフランスは救われていない。
　そして「ジャンヌ・ダルク」という自存はいま、多くの期待を無視して崩
壊へとひた走っている。終わり無き目覚めは、もう無いのだ。
　これで最後なのだ。

　―――なのに、生命の核を失ってしまうなんて、

　相手の心臓を奪えば良いだけの話だが、乙女の聖剣が貫いてしまった。
　他に代わりとなりそうな心臓の持ち主はいない。フォレストランドの時の
ように〈飢餓同盟〉を召喚する余力は残っていなかった。

　アリスの心臓をもらう？　―――とんでもない提案だわ。なぜって、彼女
の役〈キャラクター〉は王太子さまなのだから。フランスの希望を犠牲にし
て、フランスを救うことなど絶対にできません。
　……それに、そうじゃなくても。
　彼女は私の―――

　もう時間がない。乙女の躯が失われた時を取り戻す前に、救国を為さなけ
れば。あらゆる障害を駆逐してでも、突撃〈パレード〉を遂行してみせる。

「そこをどきなさい、ジャンヌ・ダルク！」
　
　己の心臓という鞘から偽剣を抜き放つ。黒乙女の血を吸ったブレードは、
どす黒く濁り始めている。瘴気が暗黒色の焔となって刃を燃え上がらせた。
　
「ああ、お願いだから私より……私よりフランスを見て！」

　そして始まる、哀哭／愛国の突撃〈パレード〉。


【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）最深部〈妖精の樹〉】

501 名前：おんなのこ　と　三月ウサギ：2007/11/29(木) 21:01:09

赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>488
私は思う。─────『あなたは、思う』
おとぎの国って普通に暮らしてる人、居るんだろうかって。　　
　　　　　─────『全員が、特別なぜんまいなのです』　
お姫様は大胆な事件にあって、世紀の恋を残酷なリンチの陣地に　
つくりあげて、結婚してしあわせになる為の？　
　　　　　─────『真逆なり。幸せの、結婚を形にするのです』
あは、だよね。　
お姫さまは、唐突に現れた王子様に救われて、花を散らされて　
『幸せ』にされていく。　　
　　　　　─────『全ては森の礎のため』
もし、私なら黙って皿を下げてくウェイトレスなんて、きっと一生
友達になれない。そのウェイトレスの脚、ふんづけてさ…警備員に　
ロッカールームに転がされてる。　
　　　　　─────『それこそ真逆、貴方は赤頭巾』
No,Kidding！大人びたタイトなキャミ・ドレスも、可愛げな帽子も靴も　
わたしはそんな物だけが欲しかったわけじゃない。　　
おとぎの世界は、与えてくれない。　
主役はいない。みんなが不幸、少女も不幸、ネームドは皆、サクリファス。
　　　　　────『然り、然り、すべては一つ、【観測者】の手慰みに！』　　
硝子の靴なんて、歩くのには邪魔なだけだって。私は今気付いたけどさ…　
　　　　　────『貴方は森を厭うのか』　
ううん。私はアンタと歩きたい！もっと可愛い服を着て、レタスを沢山　
奪うんだ。エル・アライラーたちに負けない位に！　　
　　　　　────『そうです。それこそが貴方が此処に呼ばれた理由…』　
　
この話は、きっとまた別のはなし。

502 名前：”赤頭巾”：2007/11/29(木) 21:07:01

>>501　　
　
ハートの小隊は女王の親衛隊です。それを踏みつけることは　
どういう事なのかわかっているのでしょうか。　
足元であばれるカードの山たちは、１枚１枚は非力なものですが、　
その形によっては驚くべき力を生むことは誰もが承知の通りなのです。　
下敷きで破けた２人を除き、無事な精鋭達は赤頭巾の脚を必死になって
掴みます。５，６，７，８，９，１０達のストレートフラッシュが左足。　
踏ん張る利き脚には、ふとっちょAを含めて勝るロイヤルストレート！　　
　
呻く赤頭巾に襲いかかるのは、猫を上手く犠牲に変えたお人形に他なりません。
ちろちろとした蛇の舌の様な鞭をつかって『脚をお舐め』とは、その鞭に向かって
言ったわけではないのでしょう。　
唸りをたてて迫る鞭に、赤頭巾はマントを奪われ、地に付してしまいます。　
”それ今だ”とばかりに逸るトランプ兵士。目元めがけて唸る槍、そして　
とび来る蛇の鞭。絶体絶命に、赤頭巾は銃を手入れする油があるのを思い出し
ました。懐からとり、トランプにまくのです。　
トランプの半分がたちまち塗れて真っ黒になってしまいます。するともう　
大変なのです。お互いがくっつき、場から自然に離れてしまいました。　
<クロンダイク>のルールに黙って従うしか、トランプとしてはないのです。　
そして前回り、綺麗な髪が汚れるのも厭わず転がり若木を撃ちに撃ちます。　
その間も止まぬ蛇はまさしく悪魔。
肩や肘には腫れが見え、大胆な服装が乱れ、汚れて既に名前の由来など何処へやら。
けれど、何本かがついに絶えかね倒木し、お人形を襲うようになりました。　
それを見て、赤頭巾だったリゼッテはさしも気を抜き立ち尽くしたのです。　
　
【現在地：赤いよ頭巾は　ピカピカの　貴女の口にあうものかしら？】　　

503 名前：タイターニア ◆DOLLmR5Q5A ：2007/11/29(木) 21:46:05

赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>501>>502
　
♣
　
　もうあたりはしっちゃかめっちゃか！まるで狂った茶会のように取り留めの
ない乱痴気騒ぎ！
　巻き込まれないように一歩引いてトランプの兵士たちと赤頭巾のぐっちょぐ
っちょの泥んこレスリングを鑑賞していたプリマヴェラでしたが、状況はそれ
を彼女に許してくれはしませんでした。
　赤頭巾の悪さによって急に樹が倒れてきたのです。その急な展開に彼女はに
もうびっくりでした。
　
　木々がプリマヴェラへと向けて倒れてきました。油断していた彼女にはよけ
る暇などありませんでした。
　ならば彼女は潰されてしまったのでしょうか。いいえ、ちがいます。彼女は
そのほっそりとした永遠の思春期の腕で、倒れてきた樹を受け止めたのでした。
　
　自動人形の腕力は素手でも頭蓋を容易く潰します。コンクリートの壁を貫き
ます。ですから樹を受け止めることだってできるのでした。
　
　彼女は受け止めた樹を不愉快そうに払いのけると、右手に持った鞭を容赦な
く振るいました。
　ダーマプラスチックと革と金属繊維を縒りあわせてつむがれた鞭が空を切り
裂き赤頭巾に迫りました。
　
　赤頭巾は転がってよけようとします。ですがそのとき鞭の軌道が突然変わっ
たのです。あたかも鞭自身が意思をもったかのように、赤頭巾を追尾してぐにゃ
りと曲がったのでした。
　
　しなる鞭の描くありえざる軌道、それは魔法にも見える光景でした。
　ですがこれは人形（ガール）の魔法（マジック）ではありません、少女（ガール）の詐術（マジック）なのでした。
　
　ダーマプラスチックは体性感覚素材、つまりは知覚増幅機なのです。だから
この素材が肌に触れると毛穴の奥にまでもぐりこみ、極小繊維が素材の末梢神
経と着用者の末梢神経を接続してしまうのです。
　そうなるとさあ大変。ダーマプラスチックは体の延長そのものとなり、自在
に動かすことが可能になるのでした
　
　鞭は赤頭巾を追いかけます。そしてまるで絞首具（ギャロット）のように赤頭巾の首めがけ
て絡みつきました。
　それをみとどけると、プリマヴェラはひらりと飛んで倒れずに残った木の枝
の上に降り立ちます。そしてドールが人間の少女にのみ見せる赤ん坊のように
無邪気な悪意の笑顔で、高らかにこう歌い上げたのでした。
　
「Hush-a-bye, lady, hung on the tree!」
　
　そして彼女は地面へと飛び降りました。枝をはさんで反対側へと飛び降りた
のです。同時にダーマプラスチック製の鞭を、短くきつく収縮させたのでした。
　
　そう、彼女は赤頭巾を樹に吊るそうとしているのです。
　
　おやすみ　嬢ちゃん　吊るされて
　風が吹いたら　死体が揺れる
　枝が折れたら　死体が落ちる
　嬢ちゃん　死体が　地に堕ちる
　
♣
　
【現在地：Ｃ地区　頭巾のリゼットさん　頭巾のリゼットさん　赤い頭巾　赤いケープ　赤い服】

504 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/11/29(木) 21:52:14

>>457>>459>>499




　状況の反転―――相手の各個撃破／合流。
　全く同じ形で返される戦術。予想すら許さない戦力と能力。


　かつて自分の呟いた言葉を思い返す。
　“在り得ない物(ファンタジー)”。そのものとの対峙。
　この時点でフリントは相手に対する予測を全て変更せざるを得なかった。

「なるほど―――お前が“幻想(ファンタジー)”か」

　目の前にたたずむ少女―――あらゆる拷問の効果的進行を破棄／衣服すらも修復。
　車載センサーの検出／正体不明の高エネルギーを確認。
　物理法則に収まらぬ“力”。
　“森”と同じ存在。
　彼女たちはもはや人間ですらない。


　フリント／軍刀(サーベル)をかつぐ／体を縮める。
　攻撃を受け切れないという判断／回避＋攻撃を行うための動作。
　戦術―――自らを囮にする／攻撃の矛先を逸らす＝他のメンバーでは回避不能と判断。
　根拠―――遅滞戦術を行った四名の撃破。

　しかし、トレーラーの上ではそれにも限界がある。
　室内戦であれば高度なかく乱戦術を展開可能―――研究所への到着を望む。
　ハイウェイ―――アスファルトより植物の占める割合が大幅に増加。
　“森”源地(グラウンド・ゼロ)への肉迫。



　続く対峙にどちらともなく痺れを切らし、動き出す。
　その瞬間に、強烈な衝撃が“棺桶(トレーラー)”を弾き飛ばした。
　巨体がガードレールに接触／目も眩むような火花／やがてガードレールを押し砕いて脱線していく。
　フリント―――目を見張る。
　死に体だったパーラーカーの突撃。
　強力な速度が限界値を突破させる。




　自動運転の判断―――最短距離での移動。
　勢いに押されるように、ハイウェイから跳躍した。

505 名前：―永遠に紅い幼き月―　レミリア・スカーレット ◆DEVILbzibY ：2007/11/29(木) 22:37:23

紅魔館の優雅な住人たちｖｓカトル・カール
―Forest Lagoon―

>>504

　スペルカード宣言と同時に、炎の大蛇がとぐろを巻く。
　お嬢さまの顔から無邪気さが失せ、邪気ばかりが支配する。高圧と不遜と傲
慢と傲岸と陰惨とあと他に―――とにかく、偉そうな笑みが広がった。
　不定形の灼熱が彼女の掌に収束されてゆく。
　それは一本の槍だった。輪郭を持たない幻想のスピア。放射熱だけで棺桶の
装甲が汗をかく煉獄の中心に立ち、スカーレットの悪魔は涼しげに嗤う。

　夜中に夜明けが訪れた。レミリアの右手から昇る闇の太陽。「破壊」という
言葉がカタチを持つとすれば、この槍以外に考えられない。
　そんな、暴力の暴風。

　さあ、ご開帳だ。神槍の矛先は贅沢に七匹全員を見渡している。誰か一匹を
選ぶ必要なんてない。紅の閃光は全てを包み込んでくれるから。
　棺桶も、メイドも。―――レミリア自身までも。

　当然、お嬢さまはそこまで深く考えていない。ただ神槍を使いたいから持ち
出しただけ。―――そもそもここは幻想郷ではないのだから、スペルカードの
宣言など無用なはずなのに。

「―――受けてみるか、神槍！」

　スピア・ザ・グングニル。

　ノーライフキングの牙がいま―――

「……パチェ？」

　足場が致命的なまでに「ぐらり」と揺れてくれた。振り向くと、レミリアの
愛馬が棺桶に突き刺さっている。満身創痍にも関わらず、猛々しく追想するタ
フネス―――ほんとに設計者そっくり。
　これでみんな揃ったわね。じゃあ、今度こそ―――

「あら？」
　いつの間にか、レミリアの手から槍が消えていた。
「あら？　あら？」
　衝突の衝撃で彼女の小さな手からすっぱ抜けてしまったよう。きょろきょろ
とあたりを見回す。程なく発見。見当違いの方角に駆け抜けているではないか。
　神槍はたっぷりと１０キロは離れたオフィス街に迷い込み、進路を阻む高層
ビルに突き立った。紅の氾濫。ビルは炎に包まれながら、呆気なく倒壊する。
　風景の一つとしてその様子を眺めながら、レミリアは呟いた。

「―――……もったいないわ」


【現在位置／ハイウェイ／Ｃ地区へ接近中】

506 名前：”赤頭巾”：2007/11/29(木) 22:37:45

赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>503

木々の倒れる森の奥、木になり釣られる女の実。　
陪臣は人形、判決は──死刑！　
後半はそれからはじまる大レース。　
　
判決はきまっているものだから、手口は大荒れ、審議の赤ランプ。　
大レースにはつきもの、大穴、大騒動。　
　

赤頭巾は、狼に釣られて殺されるというシナリオはありませんでしたから
ここで殺される訳にはいかないのです。　
　
先ほどの破れたトランプを赤頭巾はその手に持っておりました。　
今頃、お屋敷では内乱波乱の騒動の為、トランプたちは点呼をとって　
整列しなければならないのです。ぶるぶる震えるトランプの３。　
急ぎ、左手にもった時に、首へとするどくかかる鞭。
彼女はトランプが逃げる力で腕をふりあげ、手を通します。　
首のかわりに絞まる腕。そこを始点に女タァザン。　
脚に結わえた５０口径、自慢の業物を右腕一つで5連発。　
地面に近づくすれすれで、おまけの最後で鞭を撃ち、解くのです。　
そして自慢のライフルを、目ざとく見つけ。。。”Adio”とばかりに　
猛射撃！　　
　
【現在地　C地区
　赤色リゼッテさん　泥濡れリゼッテさん　人にShoot　物にShoot　DollにShoot!　
　死地にZapZap埋めていく】

507 名前：聖女“ジャンヌ・ダルク” ◆dArctxNDsU ：2007/11/29(木) 22:55:53

ジャンヌ・ラ・ピュセル vs ジャンヌ・ダルク
Rust Riddle 〜錆色の舞踏曲〜
>>500

私の剣は“私”を貫いた。刹那、具足による一蹴！鏡の内側と外側で二人の乙女が地を滑る。

つぎはぎだらけの躰が軋む。軋んだ躰が悲鳴を上げる。だから、御伽話の終わりは近い。
泣いている。目の前の“私”が、“私”の魂が、“私”の命が悲鳴を上げている。

だからこそ、私が“私”を救える。これが、最初にして最後の機会。

「─────どうした？突撃娘。これが本当に最後か？」

軋んだ躰は悲鳴を上げて、つぎはぎの絃が解けだす。屍の躰ではそろそろ限界らしい。
だからこそ。私は挑発してまで“私”を招く。私の中へ。私の内へ。

「ここを退くなら、最初から私は此処に現れない。こうして、向き合っていない。」

黒い炎を纏った魔剣を手にし、哭くように“私”は走る。私はさあ“私”よ。そのままだ。

「─────突撃（パレード）！！！」

私は“私”に高らかに叫んで、両手を広げてその剣をこの身に受けた。
これで良いか？シャルル・マルテルの剣よ。彼女の時が停まった今こそ。我が、秘中の秘を。
────主よ。貴方に未だ、祈りは届くだろうか？こんな呪われた乙女、二人のために。

“献身”

己の命と引き替えにして。私は“私”を蘇らせよう。これで良い。“救い”は此処に完遂される！
最後の力を振り絞って私は“私”を抱き寄せる。つぎはぎだらけの躰が崩れていく。

「………間に合ったようだな。“私”よ…これが……天命だ………。
　さあ、最後の救国が残っているのだろう？まだ“私達”は倒れるわけにいかないのだろう？
　まだ祖国は、フランスは待っているのだろう？“私達”の凱歌を。
　
“私”よ。未だ果たされぬ。果たせなかった道を征くなら。私も連れて行ってくれ。
　─────そして、今度こそ“私達”二人で救われよう。」

崩れる躰。崩れる鎧。私は死ぬが“私”の中へ。たとえ、救われなくても。救われないと知っていても。
それで良い。それで良い。ここに鏡は砕け散り、救われない少女達の御伽話は幕を閉じる。
そして、再び幕が開いたとき。救われない少女達の最後の救国は始まるだろう。

森を吹き抜けていくのは一陣の風（coup de vent）。
静まりかえった森には救国の乙女ジャンヌ・ダルクと黒いアリスだけが残される。

【　聖女“ジャンヌ・ダルク”　………　死亡　】

508 名前：ＤＩＯ ◆kYsrWORLDo ：2007/11/29(木) 23:21:44

>>489

　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／
　|　それでもッ！　男は立ってきたッ！！　　　　.／　　　　まだ、立つかッ！　そうか、そうだろうなッ！！
　|　ならば、ＤＩＯはここで男との宿命、　　　　.／　　　　　 このＤＩＯ、お前の血を吸って理解したぞッ！！
　|　因縁を断たねばならないッ！　　　　　 .／　　　　　　　お前の力の源が何なのかをなッ！！
　|　王は二人も必要ないのだからッ！　.／　　　　　　　　　
　|　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　無数の魂の力ッ！　それがお前の持つ力ッ！！
　|　男は「切り札」を出したッ！　　　／　　　　　　　　　　　 ある意味、このＤＩＯの目指すもの、「精神」の進化
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　 　.／　　　　　　　　　　　　　と同じではあるが………下らんッ！
　|　ＤＩＯの「切り札」も既に　　 ／ 　　　　　　　　　　　　　　全ての魂は王たる者の糧ッ！　支配し、導くッ！！
　|　場に伏せてあるッ！　　 .／　　 　　　　　　　　　　　　　それこそが真理でありッ！！　全てよッ！！！
　|　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　 　　　　　　　　　　　　
　|　轟然と歩くＤＩＯッ！／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　フンッ！　まあ、いいッ！　今はッ！
　|　　　　 　　　　　　 ／　
　|　後は、そう… .／　　　　　　　　　　この戦いの勝者のみがッ！
　|　 　　　　　　 ／
　|　　　　　　 ／　　　　　　　　　　　　　全ての真実よッ！！
　|　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　|　　　 ／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　|　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　| ／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Minato Arisato-PERSONA3
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　vs　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 DIO-Jojo''s Bizarre Adventure-　　　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―――――LAST PART
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　KING OF KINGS....／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／「ＰＥＲＳＯＮＡ」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　最終ラウンドだッ！　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　 .|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　.|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　行くぞッ！　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／　　　　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ＤＩＯの切り札　.|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　　　　　　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／「世界」は射程１０Ｍ.|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　　　　　　　　　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／スタンドは射程内ならば　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／自由にオン・オフが出来るッ！|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／そしてッ！有里は射程距離内ッ！　|
　【現在地：Ｃ地区　オフィス街　とある高層ビルの屋上（影時間）】　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／既に「世界」は有里の背後に居るッ！ ..　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　――――――完全決着まで後数秒ッ！　 　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣

509 名前：タイターニア ◆DOLLmR5Q5A ：2007/11/29(木) 23:26:19

赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>506
　
　千切れた鞭を投げ捨てて、プリマヴェラは扇子を広げます。
　広げた扇子をひらひらひらと振り回し、襲い掛かる銃弾を何とか弾いていっ
たのです。それでもこの至近距離、しかも相手は .50口径、さすがのチタンの
扇子でも、さすがのドールの身体能力でも、すべて弾くことなどできるはずも
なく、彼女の身体に何発もの銃弾が叩き込まれていったのです。あふれ出した
人形の血が、白い毛皮のコートを赤く汚していきました。
　
　そうこうしている間に、赤頭巾は愛用のライフルを手にしました。
　
　赤頭巾、長銃を取つてかまへ、狙いてbangと撃つ。小兵といふぢやう、12.7mm 、
銃はつよし、森響くほど長鳴りして、あやまたず扇の要ぎは 1 inch ばかりおいて、
ズキュゥゥゥンとぞ射抜いたる。銃弾は森へ入りければ、扇は空へぞ上がりける。
　
　かくして扇は弾き飛ばされてしまったのです。
　さすがにたまらなくなったプリマヴェラは便利な魔法を使うことにしました。
　
　緑の瞳がきらめいて赤頭巾の銃はあっという間に時計仕掛けのオレンジ……
ではなく時計仕掛けのフラミンゴにかわってしまったのでした。
　それでクロケーをやるつもりなのかしらね、ピーター。
　
　わたしが与えたドールの魔法がまたしてもプリマヴェラを助けたのでした。
　えっ？なぜドールにそんなことが出来るのかですって？そんなイカサマがで
きるのかですって？もちろん魔法だからです、しらないのですか？いいえそん
な事はないわ知ってるはずよ。
　だって、少女は誰でも魔女なのよ。魔女が魔法を使えたってなんらおかしく
はないはずでしょう？
　
　閑話休題。
　
　魔法で銃をフラミンゴに変えたプリマヴェラは、まっしぐらに赤頭巾へと突
撃していきました。笑いながら、叫びながら突撃していきました。
　
「オオカミが来るよ！オオカミが来るよ！」
　
　……その台詞はどうかと思うわ、プリマヴェラ。詰めが甘いわ、駄目な子ね。
スペイン送りよ。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いやー！スペイン宗教裁判だけはいやー！！たすけてー！
　
なんて台詞がどこからか聞こえてきましたとさ。めでたしまでたし。
　
　
【現在地：Ｃ地区　あるひ　赤頭巾と二人で　殴りあったさ】

510 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/29(木) 23:41:35

>>508
　
　真実？　そんな幻想（ファンタジー）は要らないね。
　さあ――幕引きだ。答えに辿り着けない落第生？
　
　
　意思よりも意志よりも遺志よりも速く。
　速く速く速く速く速く速く速く速く速く！
　断崖絶壁火曜サスペンス特別版！
　座標指定は0079――ポイント00。
　向かえ向かえ向かえ向かえ向かえ！　　　　　　　　　　　　　　　　　　風もない音もない光もない。
　紫電雷電死亡確認は後回し！.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　憂鬱と退屈と怠慢だけが在る。
　限界突破異常気象。日本刀には　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　やりきれないそんな世界――。
　血の雨が降るでしょうハレルヤ！！.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　サヨナラ、サヨナラ、さよなら。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　愛しい日々よサヨウナラ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　愛した人よサヨウナラ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　クソッタレの世界にハッピーバースデー。
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「勝手に生きるんだよ、人間なんて」
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「――で、勝手に死ぬ」
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「そんなもんだろ――馬鹿じゃない？」
　
　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そんな貴方におてあげ侍。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ブチ切れ侍光臨中？
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―――――勘弁してくれ。
　
　メサイア/救世主≠正義の使者。
　破壊の後の再生、結局なにも救いやしない。
　だから足掻くんだよ。
　
【C地区　とある高層ビル屋上――『影時間』にて】

511 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/29(木) 23:51:19

ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓ聖女��ジャンヌ・ダルク��
『Rust Riddle 〜錆色の舞踏曲〜』

>>507
　
　ああ！　なんてことを！

　乙女の視界が涙で霞む。
　いま、彼女は全てを識った。
　なぜ、もう一人の自分がこの森に迷い込んだのか。なぜ、同じ自分である
はずの乙女に刃を向けたのか。なぜ、執拗なまでに救いに拘っていたのか。
　―――答えはここにあった。

　自らが喚んだ偽剣を身に浴びて、もう一人の乙女は――今こそ正しき名で
呼ぼう。ジャンヌ・ダルクと！――がくりと崩れ落ちる。
　剣を振り落とした姿勢のまま、乙女は必死で抱き留めた。愕然に歪む表情
からは終わりのない悔恨が。言葉にならぬ悔やみを口中で繰り返す。
　こんなの、あまりに卑怯ではないか！

「私はあなたを斃そうとしたのに……自らの使命、それだけを優先していた
のに―――」

　違う。そうじゃない。やはり、彼女も〈声〉を聞く者だった。彼女も使命
に燃える一人の乙女だった。彼女の中にも救国の大儀があった。
　彼女はフランスを愛していた。形骸の那由他に追いやられても、亡国の哀
切に蝕まれても、それでもフランスを愛し続けていた！
　理由は明白だ。彼女はジャンヌ・ダルクだから。―――乙女と同じ、ジャ
ンヌ・ダルクだから。

　ともに救国を目指す。
　そのために、ジャンヌはジャンヌに運命を委ねた。

　彼女の存在が希薄になるにつれ、乙女の中にぬくもりが広がっていくのが
分かった。救いの始まりだ。全てのジャンヌに等しく捧げる聖女の子守歌。
　乙女の裡から傷みが引いていくのが分かった。乖離しかけていた自己〈ゲ
スト〉と自己〈ギフト〉の衝突が慰められてゆく。
　
　器と魂の軋轢は決定的だ。これは、ジャンヌというキャラクターとは関わ
りのない場所で進行している。―――だから、彼女の救いは時間稼ぎにしか
ならない。「終わりなき救国」はとっくに否定されている。
　だがその運命をねじ曲げて、たった一度の奇跡が乙女の体内に広がった。

　最後の目覚め。
　最後の救国。
　最後のリドル。

　それがジャンヌからジャンヌへと伝えられた救い。

　乙女は消えゆく乙女を強く抱きしめる。

「―――約束します。私のフランスに、栄光と勝利をもたらすことを」

　だから、一緒に往きましょう。

　これが最後の睡り。

　斯くして遺された乙女の時間も動き出し、〈停滞〉の刻印は消滅する。
　失われた心臓が死を強要した。口から一筋の血を滴らせ、乙女はその場に
斃れる。―――もう一人の自分の残滓を抱き竦めたまま。
　二人が向かう先は妖精の樹。つまりは此処。

　一陣の風（coup de vent）に煽られて、森に咲く百合の花々が葩（はなび
ら）を舞い散らした。白無垢の輝きに包まれて、乙女は希望に満ちた退場を
開始する。舞台にゲストは誰もいない。
　
　黒いアリスだけが一人残された。

「……なにが、起こっているの？」

　少女は唖然として呟く。

　　―――ねえ。このお話は、終わってしまったの？


（二人のジャンヌ・ラ・ピュセル→死亡）

【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）最深部〈妖精の樹〉】　

512 名前：黒いアリス ◆ALICEsQkXc ：2007/11/29(木) 23:52:24

ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓ聖女��ジャンヌ・ダルク��
『Rust Riddle 〜錆色の舞踏曲〜』

レス番まとめ

>>448>>452>>460>>461>>462>>463
>>464>>466>>477>>486>>487>>493
>>494>>498>>500>>507>>511



　　　　　　―――さあ、物語は終局へと回転を始めたわ。

513 名前：―完全で瀟洒な従者― 十六夜咲夜 ◆Clock/PR2Y ：2007/11/30(金) 00:03:45

>>505
　
「急にはしゃぐからそんな事になるんですよ」
　
　そう、全ては優雅に瀟洒に。
　手違いなく万全に。
　
　カードの中で寝ている子を起こしてみる。たまには外で遊ばせて上げないと不機嫌になるのだ。
　最近機会が減って困るのよねえ――夏以降。
　秋は料理と掃除で終わってしまったわ。冬もきっと炊事洗濯で終わってしまうわ。
　だから今のうちに――遊んでおきなさいな。
　
「――殺人ドール」
　


―――――メイド仕込の秘蔵の手品。
　―――――種も仕掛けも御座いません。
　　―――――避ける隙間はある筈ですわ。
　　　―――――例え今日が満月でもね？

514 名前：”赤頭巾”：2007/11/30(金) 00:21:01

赤頭巾 vs プリマヴェラ

>>509

赤頭巾は、いつのまにか構えていたものが鳥に　
なりかわってしまい、驚く間すらありません。　
シニカルな顔を、そのまま歪め、そのまま凍り付いておりました。　
　
おおかみがやってくる、おおかみが、やってくる。　
可愛いドレスを血に染めて、子供を食べにやってくる！　
　
哀れな赤頭巾！彼女はフラミンゴを抱きしめて、こう言いました。　
片手の指を前へと突き出し、人差し指を前へ突き出し　
くちをぱくぱく、言いました。
　
「狼女、私を喰らおうって？出きるかい？　　
　　　　　、、、、、、、、、、、、、、、、
　　　　『喰い改める』なら見逃してやるわ」　　　
　
ばぁん、と一言ウィンクも一つ。　
武器を失い気でも違ってしまったのでしょうか？　
赤頭巾は狼をまえに、空想の銃をひとつ指にひきしめ　
思いの向うの標的を全て打ち抜きながらそんな事を言ったのでした。　　
　
【現在地：Ｃ地区　Green,Green,この森には狂気が集い　GreenGreen　
　　　　　青空が、ああ、とても────遠い──────────】

515 名前：タイターニア ◆DOLLmR5Q5A ：2007/11/30(金) 00:49:22

赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>514
　
♠
　
　かくしてプリマヴェラは赤頭巾を捕まえました。彼女は彼女を捕まえました。
赤頭巾の細い腕にプリマヴェラの細い指がかけられて、白い肌が鬱血し桜色に
染まります。そしてプリマヴェラの手に力がこもり、万力のように赤頭巾の身
体を締め上げ固定したのです。
　
　病的に精妙な指が赤頭巾の身体に食い込んで、赤頭巾の身体を強く強く束縛
します。あまりにも精巧でグロテスクに近い瞳が赤頭巾の身体を嘗め回すよう
に見つめます。小さなかわいい鼻を鳴らし、赤頭巾の匂いを、得物の匂いをく
んくんと嗅ぎました。
　
「あなたアメリカ人の匂いがするわ。わたしの好物はイギリス人だけど、アメ
リカ人も嫌いじゃないのよ下品なほどにコクがあるわ」
　
　そう赤頭巾の耳元でささやいて笑う彼女はとてもきれいでした。人を殺す前
はいつだってそうなのです。
　ドールは女性の邪悪さのささやかな夢、ドールは男の夢見る女、破滅的に美
しい危険な女（ファムファタル）。
　
　プリマヴェラは彼女の襟元を掴むと力任せに引き裂いて、その白くてすらり
とした幼さの残る喉を白日の下にさらしたのです。
　
「安心して、わたしのテーブルマナーは完璧なのよ」
　
　真っ赤な舌が、鋭い犬歯をチロチロと舐め上げたのです。
　そして彼女は彼女の白い喉に顔をうずめ口付けをしました。
　
♠

516 名前：◆DOLLmR5Q5A ：2007/11/30(金) 00:49:43

>>515

♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥


　咀嚼音が鳴り響く。
　咀嚼音が鳴り響く。
　
　皮膚を食い破り肉を食いちぎり腱を噛み切って骨にかぶりつき脂肪をなめ取っ
て赤い唇と紅い唇が重なって赤い唇が白い牙に挟まれて紅い唇が食いちぎられ
て白い肌に白い牙があてがわれて白い肌に白い牙が突き立てられて白い肌に赤
い血があふれ出して内臓を舐め上げて脊髄を甘噛みし指にしゃぶりつき指を食
いちぎり指を葉巻のようにくわえ太ももにしゃぶりつき下腹部に歯を立てて下
腹部に腕を突き入れて子宮を引きずり出して腹腔に顔を突き入れてはらわたを
咥え引きずり出して真っ赤に染まった赤頭巾の身体にデッドガールは飽きるこ
と無くむしゃぶりついて。咀嚼して咀嚼して咀嚼して飲み込んで飲み込んで飲
み込んで血を啜り血を啜り血を啜り飲み干して飲み干して飲み干して咀嚼して
咀嚼して咀嚼して飲み込んで飲み込んで飲み込んで血を啜り血を啜り血を啜り
飲み干して飲み干して飲み干して咀嚼して咀嚼して咀嚼して飲み込んで飲み込
んで飲み込んで血を啜り血を啜り血を啜り飲み干して飲み干して飲み干して咀
嚼して咀嚼して咀嚼して飲み込んで飲み込んで飲み込んで血を啜り血を啜り血
を啜り飲み干して飲み干して飲み干して飲み干して飲み干して飲み干して……
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　

　ごちそうさま
　

♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥

　
【現在地：Ｃ地区　赤い頭巾 かぶってた　おんなの子　いじんさんに たべられて　イっちゃった】

517 名前： ◆ALICEsQkXc ：2007/11/30(金) 00:50:08

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―――寂しいけれど、おしまいの物語を始めるわ。

518 名前：黒いアリス ◆ALICEsQkXc ：2007/11/30(金) 00:50:59

挿話　第五巻[夢のきざはし]




　ジャンヌが傷んでゆく。
　ジャンヌが崩れてゆく。
　どうしてなの？　こんなはずじゃなかった。
　契約は完璧だったのに。
　取引は円滑だったのに。
　森は知らない。
　私も知らない。
　こんな展開はリドルに組み込まれていない。
　なのにジャンヌは傷んでる。
　なのにジャンヌは崩れてる。
　ああ、フランスをまだ救っていないのに。
　謎かけ〈リドル〉をクリアする条件は満たされていないのに。
　どうして壊れちゃうの。
　何がいけないの。
　森も知らなくて、アリスも知らない。
　そんなこと、ここではあり得ないわ。
　ガーデンは森の心象風景。
　ガーデンは私の理想郷。
　ここは私たちの世界なのに。
　―――どうして。
　どうして私たちの手の届かないところで、
　ジャンヌは勝手に終わっていくの？
　ねえ、どうして？

　
　　　　私はずっと考えていた。この森蝕が始まったときから思考にこびり付いて
　　離れぬ疑念。拡大する違和感。理解できないことは多かったが、首肯しかね
　　る矛盾はたった一つだけだった。―――そう、あの乙女の魔性だ。


　……？！


　　　　聖剣があった。街は火刑台に近かった。贄はフランスの栄光を願った。
　　　ああ、認めよう。青髭召喚の秘蹟は完全に私の失態だ。あの地下室にあっ
　　た全ての要因が聖女の降臨を求めていた。あの淫売が街に舞い降りたのは必
　　然だった。……ふん。運命とでも言えば満足か？
　　　だが、現実はどうだ。召喚の儀のとき、私はあそこで何を見た。
　　　奇跡の具現？　馬鹿馬鹿しい！　そんなものはどこにもありはしなかった。
　　　私が見たのは地獄の片鱗だ。奈落へと繋がる飢餓の合唱だ。あまりに澄み
　　切った、無垢とさえ言える闇が研究所を支配した。
　　　英国を海峡の奥へと押し出した亡国の魔女。悪魔に身を任せる売春婦。―
　　――黒乙女ジャンヌの浮上というわけだ。

　
　だれ？　誰なの？！


　　　　……私の懐疑はそこから始まっていた。
　　　なぜだ？　なぜ、黒乙女なのだ。なぜ、奇跡は降りなかったのだ。なぜ、
　　世界規模で信仰される聖女ではなく、欧羅巴の端っこで静かに憎まれ続ける
　　魔女が呼び出されたのだ。
　　　結果として魔導災害の規模は縮小された。私は無様にも研究所から脱出す
　　ることに成功した。「聖女」ジャンヌであったならば、直結した神性の共振
　　に為す術もなく存在を祝福されていただろう。想像しただけで震えが走る。
　　　私にとっても、世界にとっても、黒乙女の降臨は命拾いに等しい。
　　　―――だが、解せぬ。そこには必然がない。フランスの小娘が、どうして
　　英国側の視点に基づく乙女を呼んだ。おかしいではないか！

519 名前：黒いアリス ◆ALICEsQkXc ：2007/11/30(金) 00:51:57

>>512>>517>>518
　


　名乗りなさい！
　アリスの一人舞台〈モノローグ〉に、
　土足で踏み入るあなたは誰！


　　　　ふん、無様だな。もはや舞台〈テーマ〉を演出する余裕もないか。


　そんな、あなたは……！


　　　　名乗るまでもなかろう？
　　　貴様の子供じみた謎かけ遊びに乗せられ、緑の牢獄で必死に頭を捻ってい
　　た探求者だよ。やれやれ……答えを求めて、こんなところまで迷い込んでし
　　まった。―――だが、丁度いい。前巻の続きといこうではないか。
　　　貴様は前に言ったな？　私が答えに至れば森源地への道は開かれる、と。


　あの森から脱出したの？　無理よ！
　あなたがいくら強力な魔法使いでも、
　あの迷いの森からは出られないわ。
　そういうルールなの！

　
　　　　そう、ルールだ！
　　　貴様がアリスなどという戯けた役割を演じるように、あの女にも役が必要
　　だった。そうでなければ、森に現界することは叶わなかった。
　　　―――だが、なんて皮肉か！　森の「根拠」となる女の本棚には「聖女」
　　ジャンヌにまつわる物語は一冊たりとも眠っていなかった。その女はジャン
　　ヌ・ダルクなんてどうでも良かったのさ。
　　　しかし、そうは言っても、腐海が現実を森蝕するためには取引を行わなけ
　　ればいけない。取引相手のオーダーはかわいそうな自分を乙女に救ってもら
　　うこと。それ以外は何も望んでいない。逆に、それさえ叶えれば喜んで身体
　　を差し出すという。つまりジャンヌは必要不可欠だったわけだ。
　　　―――ふん。奴は必死に探したのだろうな。彼女の本棚を、記憶の中でが
　　むしゃらに漁った。そして見つけ出した。
　　　唯一、ジャンヌ・ダルクが登場する物語を！


　……。

　　
　　　　誤算だったのは、本棚の主が英国生まれの物語を好んだことだ。
　　　奴が持ち出してきた原典のジャンヌは、取引相手が呼び寄せた―――彼女
　　の理想の結晶たるジャンヌ・ダルクとは何もかもが違っていた。
　　　だが、駄々をこねても始まらない。
　　「割り振られた役を演じよ」
　　　それが森の根源。演ずる役〈キャラクター〉を持たない者は、リドルに参
　　加することは能わない。そして、その役は本棚から選ばれる。
　　　暗黒に染まった乙女しか用意できるキャラクターは無かった。それ以外に選べる役な
　　んて無かった。渋々ながらも認めざるを得なかったのさ。
　　　―――結果、この様だ！


　やめて……。


　　　　森と貴様の利害が一致している？　貴様の意思は森の意思？
　　　とんでもない！　溝は深まる一方だったのさ。
　　　―――だが、ふふ。私もしてやられたよ。あの女は、森によって招かれた
　　幻想だとばかり思っていたからな。つまり、オリジナルキャラクターか。
　　　……本当は違うのだろう？　あのジャンヌは、ジャンヌでありながらジャ
　　ンヌという役を演じていたのだろう？　アリスを気取る貴様のようにな！


　もうやめて！

520 名前：黒いアリス ◆ALICEsQkXc ：2007/11/30(金) 00:53:41

>>512>>517>>518>>519



　　　あの女の苦痛の原因が分かるか？　あれは森が用意した原典と貴様の理想
　　の温度差だ。同じジャンヌでありながら、在り方があまりに違いすぎるため
　　存在が剥離しかけている。
　　　―――森は失望していたぞ、貴様に。
　　　まぁ当然だ。森が決定した配役に従わず、あまつさえ無意識に反逆しよう
　　としているのだからな。……奴は気付いてしまったのさ。結局のところ、貴
　　様と森は求めるところが決定的に違っていたということに。


　まさか……あなたが牢から抜け出したのは。

　
　　　我々なら提供できる。アーネンエルベなら再現できる。
　　　貴様よりはるかにオリジナルに近い��Forest�≠�。
　　　……すれ違いとは哀しいものだ。初めからこうして話し合いの場を用意し
　　ていれば、奴は―――あの聖杯〈ホーリー・グレイル〉は自分の願望を完全
　　に近いカタチで成就させ、我々はより強大な力を手にできたのに……。
　　　こんな小娘に奇跡を委ねるとは。
　　　……くく、ギフトとやらも意外と見る目が無いのだな。


　ああ、嘘よ！　嘘だわ！


　　　嘘なものか。森は契約を破棄することを私と約束した。
　　　お前がアリスを演ずるのもこれが最後だ。―――そしてこれからは私がア
　　リスとなる。このグルマルキンが森の幻想を支配する。
　　　お前の胸から聖杯を取り戻してな。


　ジャンヌ！　助けてジャンヌ！

　
　　　　待っていろ！　今すぐにそこへ行ってやる！











　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―――これはこれで。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　また別のお話。　


　　
　　　　　　ああ、ジャンヌ。私、怖いわ……。　

521 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/11/30(金) 00:56:08

〈L'arbre de la fee〉

>>512>>517>>518
>>519>>520


　パーティは続く。
　パーティは続く。



　……うっすらと瞼を開く。

　そこは、彼女が初めて〈声〉を聞いた場所に似ていた。
　村を離れ、ヴォークリュールに向かう高台―――芝生に覆われたあの自由地
には、枝を大きくのばし、広い木陰を作るブナの樹が密生していた。
　思えば、〈ブールルモンの妖精の樹〉と呼ばれていたあの高台から、全てが
始まったような気がする。

　乙女は自覚していた。―――そしてこれで最後だ、と。

　六度目の目覚め。五度目の復活。
　もう一人のジャンヌが預けてくれた、最後の希望。

　乙女の〈自存剥離現象（キャストレーション）〉はついに末期を迎えようと
している。指先を動かすだけで体内を溶岩が走った。呼吸をすれば灼熱の酸素
が肺を炙った。再生を遂げながら、乙女は死に至る道を転げ落ちる。

　調和の歯車は今や完全に狂った。

　アリスが管理するジャンヌという役者〈ゲスト〉と、森が管理するジャンヌ
という配役〈キャラクター〉。
　根源を同一にしながら、在り方が相克となる二つのジャンヌ―――アリスも
森も自覚しない不和がリドルの前提を否定した。
　破綻は初めから運命づけられていた。
　彼女がジャンヌに抱く想いを考えれば、乙女を「魔女」の役〈ギフト〉とし
て脚本〈リドル〉を演出させることなど不可能だからだ。喩えどんなに悪魔的
であろうとも、彼女の中でのジャンヌは揺るぎなき聖女だった。

　リドルを本来の軌道に戻す手段は二つ。
　一つは、「手垢にまみれた形骸」のギフトを担うアリスが自らの役割を再確
認し、ジャンヌを魔女として演出させること。軽蔑の対象として接すること。
　しかし、これは不可能だ。短い付き合いだが、彼女が自分にどのような期待
と憧憬を抱いているか、乙女はイヤというほど思い知らされている。
　
　ならば残る一つ―――森がキャストの変更を発表すること。
　アリスの首をすげ替える。このリドルを終わらせ、新たなリドルを森蝕させ
る。代わりの苗床が見つかれば、無理にジャンヌなど登場させる必要は無くな
るのだから。

　乙女は激痛に苛まれるのも構わず、無言で嗤った。
　クライマックスに待ち受けていたのは無意味と虚構。つまりはナンセンス。
　偶然とはいえ、森もアリスも最後まで物語に忠実だったわけだ。
　リドルを終わらせるのは竜を殺す勇者でもなければ、白馬を駆る王子でもな
く、味方同士の軋轢と反目とは。
　勝手に自壊してゆく幻想の箱庭に、招かれたゲスト達は如何なる感情を抱く
のか。見せ場も与えられずに閉幕とは、哀れが過ぎた。

「くだらない……森がなんだと云うの。リドルが……なに？」
　
　魔女だろうが聖女だろうが、乙女は乙女だ。〈声〉が彼女に伝える使命は変
わらず、為すべき道も、待ち受ける運命も変わらない。
　―――そう、ジャンヌ・ラ・ピュセルの全ては救国を指向している。
　そして、彼女の救いはまだ終わっていない。自分を悪魔と呼ぶか聖者と呼ぶ
かは後の歴史が決めればいいのだ。

　　私のフランスに、救いを……。

　
　葉のざわめきに紛れて、少女の啜り泣く声が聞こえた。
　椅子にちょこんと座り、乙女が目覚めるまですごろくやチェスなどをして時
間を潰していた、あのコーヒーテーブルに涙を落としている。
　アリスの奔放さ。アリスの無邪気さ。アリスの大胆さ。
　そしてアリスの愛らしさ。
　それらは一体どこへ消えてしまったのか。悪戯を父親に見咎められ、いつ始
まるとも知れぬ説教に脅える少女のように、彼女は椅子の上で小さく蹲る。
　
　アリスの姿があまりに哀れで、乙女は苦痛を殺して慰めの声をかけようとし
―――身を強張らせた。
　
　テーブルを挟んでアリスの向かいに、傲岸不遜な闖入者。部屋の主の許しも
得ずに煙草を吹かし、勝手に煎れた紅茶を啜る。

　黒い乙女。黒いアリスに次ぐ、三人目の漆黒。

「Guten Morgen.　おはよう、矛盾した聖女よ。快適な目覚めは得られたか？」

　グルマルキン・フォン・シュティーベルが、答えに辿り着いていた。



（ジャンヌ・ラ・ピュセル→最後の復活）

【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）最深部〈妖精の樹〉】

522 名前： ◆ALICEsQkXc ：2007/11/30(金) 00:57:26

挿話　偽典[黒猫キティ！　悪い悪い子猫ちゃん！]



　アリスもジャンヌも気付かぬうちに、
　　リドルにリドルが重なった。
　救国ごっこの配役に、
　　鏡の国の薔薇戦争〈チェスゲーム〉を重ねがけ。
　聖杯はアリスの気紛れに怒り心頭。
　　自らキングのギフトを被って、白の軍勢に宣戦布告！
　赤のクイーンが敵陣へひた走る。
　　いたずら好きの黒猫キティ！
　白のクイーンが行く手を阻む。
　　かわい子ちゃんの白猫スノードロップ！

　赤のナイト、影のようにクイーンに付き従う。
　　最強の剣士が女王を護る。意思を無くした紅甲冑。
　赤のルークはもういない。赤のビショップと仲間割れ。
　　一緒に奈落に落っこちた！

　白のナイトは戦場〈ボード〉にいない。
　　白のクイーンを熱烈に想いながら、戦場に出られない。
　赤のキングがズルして閉じ込めた！
　白のルークも、白のビショップも、
　　みんなみんな、盤上にいない！　自分の出番を待っている！
　だから白のクイーン、たった一人でキングを護る。
　　傷だらけの白猫。かわいそうなスノードロップ！

　さて、白のキングは誰かしら？

　　そして、白のポーンは―――



　　　　　　　　
　　　　　　　　　　―――ああ、私に何ができると言うの……。

523 名前：グルマルキン／赤のクイーン ◆ORDEN1uWpQ ：2007/11/30(金) 00:59:49

グルマルキンｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『アリス戴冠―Queen ALICE is born in the Reims―』

>>512>>517>>518>>519
>>520>>521>>522


　吐き出した紫煙が髑髏を形作り、けたけたと嗤う。

　コーヒーテーブルの向こうで、白のポーン――取りあえずはアリスと呼んで
やるか――が、びくりと身体を震わした。俯いたまま、絶対にこちらを見よう
とはしない。グルマルキンと眼を合わせるのを頑なに拒んでいる。
　待ち受ける運命から逃げ出すことしかできない少女。―――この雌ガキの処
世術は、「黒いアリス」のギフトを得た今でも有効ということか。
　人は変われない。永遠に自分と向き合い続ける。その好例だ。

「Guten Morgen.　おはよう、矛盾した聖女よ。快適な目覚めは得られたか？」

　ジャンヌの再生を確認してゲームスタート。
　グルマルキンは一つ目の駒を敵陣に進める。またしても赤のターン。魔女は
ほくそ笑む。未来永劫、白の軍勢にターンが回ることはないだろう。
　グラール・コピー／赤のキング――いや、今こそ正確な名で呼ぼう――『聖
杯〈ホーリー・グレイル〉』のギフトが再契約の保証としてグルマルキンに委
ねた偽りのリドルは、黒いアリスが構築した『ヘンリー六世』のリドルを上書
きしつつある。
　リドルにリドルを重ねることによって生ずる二重世界。お陰で、グルマルキ
ンはアリスの干渉を受けずに根源へと到達した。

　森は、聖杯は、アリスに対して一方的に契約の破棄を宣言する。

　あとは「赤のクイーン〈ラ・レーヌ・ルージュ〉」のギフトを得たグルマル
キンの手によって、聖杯の植え替えを行うのみ。
　さすれば、赤〈聖杯〉と白〈アリス〉の薔薇戦争〈チェスゲーム〉は終わり
を迎える。
　
「……性懲りもなく、また来たのね」

　白のクイーン〈ラ・レーヌ・プラティーヌ〉―――ジャンヌが、怨嗟のこも
った瞳で赤のクイーンを睨め付ける。
　鉤十字の魔女は涼しげに殺意を受け止めた。
　森蝕が始まった頃とは違う。二律背反の奈落に突き落とされた乙女など、も
はや驚異に値しない。今の彼女は神性も無ければ魔性もない、無力の結晶だ。

「……右腕だけ、では…収まりが悪いから、左腕も…捧げに来たの？　……殊
勝なことね。でも……乙女は断るわ。あなたが…主催の……ワルプルギスの夜
〈アリスパーティ〉では、クイーンは見向きもしません……」

　命を削るジャンヌの罵倒。ああ、とグルマルキンは頷いた。

「右腕？　もしかして、これのことを言っているのか？」

　マントの奥から〈栄光の腕〉の腕を持ち上げる。揺らめく魔焔の義手が森を
照らした。ギフトを得たことによって補強された魔力が、炎の輪郭をはっきり
と描写している。

「縛られた肉の腕よりかは、よっぽど有用に働いてくれているさ。……だが、
そうだな。怒りを感じていないかと問われれば、それは嘘になる。
　私は魔術師にしては珍しく『自分の身体』に強い拘りを持っていてな。
　神秘への探求だけに執着するなら、身体など捨て去って高次の世界へと旅立
ったほうがよほどに効率的なのだが―――私は俗な魔術師故に、肉への未練を
捨てきれん。いや、肉なき場所に神秘もまた宿ることはない。そう信じている。
　右腕の欠損は大いなる悲しみだ。私はいま、深い失望に駆られているよ」

524 名前：グルマルキン／赤のクイーン ◆ORDEN1uWpQ ：2007/11/30(金) 01:01:02

>>512>>517>>518>>519
>>520>>521>>522>>523


「……そう、それは良かったわね」
　グルマルキンの瞠目―――何と、乙女は二本の足で立ち上がった。
「なら、今のうちにもう片方の腕に別れのキスでもしておきなさい」

　立てるような状況ではないはずだ。唇を動かすだけでも、肉体と魂の不和が
騒ぎ立てるというのに。―――魔女は改めて、ジャンヌ・ラ・ピュセルという
英霊の精神力に感嘆した。自己が乖離するという煉獄すら、聖女の意思の前で
は生ぬるいか。
　だが、

「それには及ばん。貴様の腕をもらうからな」
　
　乙女の背中に影が差す。赤のナイト〈ラ・シュヴァリエ・ルージュ〉の華麗
にして熾烈なる一閃。ガントレットごと乙女の右腕が吹き飛んだ。
　グルマルキンは宙を舞う聖女の腕を〈栄光の腕〉で受け止めると、つまらな
そうに一瞥。「サイズが合わんな」と呟いて、焔で握り潰した。
　
　赤のナイト―――満身創痍とは言え、気配をまったく覚らせずにジャンヌの
背後へ肉薄した剣士の中の剣士。二又の大剣を片手で軽々と持ち上げ、乙女を
牽制する。深紅の甲冑ががしゃりと鳴った。
「殺すなよ」赤のクイーンの冷徹な忠告。ナイトは無言で頷く。
　隻腕の乙女は残った左手で聖剣を構える。が、大剣の一振りで呆気なく弾け
飛んだ。
　剣士としての格が違う。乙女が万全の体調で挑んでも、剣を用いた勝負では
赤のナイトに太刀打ちできまい。

「無様なもんだな」
　グルマルキンは蔑みを隠そうともしない。赤の軍勢は布陣は完璧だ。そう確
信している。不完全なアリスのリドルなど相手にならない。
「救国の英雄も、こうなってはお終いだ」

　乙女は疵口を抑えたまま、憎々しげに魔女を睨み上げる。その愛らしい表情
に、グルマルキンの喉からくつくつと嗤笑がこみ上げた。
　なんて加虐を煽る表情をしてくれるのか。
　
「ああ、そうだ。一つ、貴様に愉しい歴史を講釈してやる」

　くわえた煙草にルーンを刻んで着火。紫煙を乙女に吐きかける。

「ジャンヌ・ダルク。貴様が五百年前に王太子を王位へと導いた戴冠の都市―
――ランスだが、あれはな、我々が焼き捨ててやったぞ。半世紀前に、鉤十字
の戦列が容赦なく蹂躙してやった。爆撃に次ぐ爆撃が、街の歴史を跡形もなく
吹っ飛ばしてやった。―――当然！　王太子が戴冠式を行った大聖堂もだ！」

　嗜虐に歪むレッドクイーンの口端。
　乙女の金髪が怒りに逆立った。
　ランスはフランス王位の象徴。それを焼き払うなど―――

　声にならぬ咆吼とともに乙女が牙を剥く。
　グルマルキンの喉を噛み千切ろうと影が重なり合う直前―――赤い疾風が横
合いからジャンヌに覆い被さった。赤のナイトは、鋭く削ぎ落とされた筋肉で
乙女の矮躯を草地に縫い付ける。
　俯せに組み敷かれたままジャンヌは叫んだ。

525 名前：グルマルキン／赤のクイーン ◆ORDEN1uWpQ ：2007/11/30(金) 01:02:26

>>512>>517>>518>>519
>>520>>521>>522>>523
>>524


「許さない。あなただけは絶対に……」

　グルマルキンはしゃがみ込みと、乙女の激憤と目線を重ねた。
「別に許しを求めた覚えはないさ」
　煙草の火種をジャンヌの右目に押しつけて、すり潰す。

　乙女の悲鳴。魔女の哄笑。「白のクイーン。ダイナの愛を一身に受ける澄ま
し顔のスノードロップ！　これより先の脚本〈リドル〉に、貴様の台詞は用意
されていない。―――自らの終末を、そこで黙って見ていろ」

　さあ終わらせるとするか。
　グルマルキンはジャンヌから離れると、かつて研究室だった森の最深部――
―壁の一角を占める巨大なブナの木〈妖精の樹〉へと近付いた。
　アリスは椅子に座ったまま動かない。俯いて、全てから眼を背けている。

〈妖精の樹〉の表皮に、義手の炎でルーンを刻む。発光する魔術刻印が樹の内
部へと浸透し、「森」という巨大な棺桶の蓋を開かせた。
「ほう」とグルマルキンは吐息を漏らす。「やはり、ここにいたか」
　茂みをかき分けて視界を開く。―――なんと〈妖精の樹〉の幹に、人間の少
女が同化していた。無数の根が少女の白肌に根付いている。まるで点滴管のよ
うに、だがそれ以上に神秘的に。―――樹という棺に囚われた少女。
　いや、これは苗床か。
　ここが原初。
　ここが基点。
　少女という鉢植えから、森は始まっていた。

「また会ったなイヴェット」
　そうしてグルマルキンは謎かけの答えを明かす。
「私の聖杯を返してもらうぞ」

　木の根が這う少女の胸へと〈栄光の腕〉を差し向ける。

「やめて！　やめなさい！」

　白のクイーン／ジャンヌの絶叫。
　赤のクイーン／グルマルキンには届かない。
　いま、彼女は「森」という奇跡を掴み取ろうとしている。歓喜に総身が震え
そうだった。ジル・ド・レイの召喚という初めの目的は失敗に終わったが、結
果、より大きな恩寵を手に出来たのだ。災い転じて福と成す。
　実に結構じゃないか。

　胸に寄生する聖杯は、イヴェットの心臓として彼女の生命を支えている。
　もぎ取ったと同時に少女は死に絶え、ジャンヌも消えるだろう。「ヘンリー
六世」のリドルはグルマルキンの手によってクリアされるわけだ。

「案ずるな。森の幻想は私が引き継ぐ！　―――さあ、奇跡を我が手に！」
　
　掲げられた〈栄光の腕〉が、イヴェットの胸へと吸い込まれた。
　

【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）最深部〈妖精の樹〉】

526 名前：ＤＩＯ ◆kYsrWORLDo ：2007/11/30(金) 01:06:03

>>510

　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／
　|　スタンド使いの攻撃は何もスタンドだけに ／
　|　限らないッ！　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　
　|　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　／　　　　　　　　「世界（ザ・ワールド）」ッ！　もうッ！　既にッ！！
　|　本体も当然にッ！攻撃出来るッ！ ／
　|　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　我がスタンドは既に貴様の背後に回っていたッ！！
　|　「世界」の本体のＤＩＯは　　　 .／
　|　吸血鬼ッ！！　　　　　　　　 ／　　　　　　　　　　　　　加えてッ！　このＤＩＯ自身の攻撃だッ！！
　|　そのパワーは人の範疇　／
　|　を軽く超えているッ！　／　　　　　　　　　　　　　　　　タンデムアタック（二人同時連携攻撃）だッ！！
　|　　　　　　　　　　　　　 ／
　|　馴染んだ今なら　 ／
　|　尚更ッ！！　　 .／も遺志よりも速く。
　|　　　　　　　　　.／く速く速く速く速く！
　|　 　　　　　　 ／曜サスペンス特別版！
　|　　　　　　 ／定は0079――ポイント00。
　|　　　　　／向かえ向かえ向かえ向かえ！　　　　　　　　　　　　　　　 風もない音もない光もない。
　|　　　 ／雷電死亡確認は後回し！.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　憂鬱と退屈と怠慢だけが在る。
　|　　／破異常気象。日本刀には　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　やりきれないそんな世界――。
　| ／雨が降るでしょうハレルヤ！！.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　サヨナラ、サヨナラ、さよなら。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　愛しい日々よサヨウナラ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　愛した人よサヨウナラ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　クソッタレの世界にハッピーバースデー。
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「勝手に生きるんだよ、人間なんて」
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「――で、勝手に死ぬ」
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「そんなもんだろ――馬鹿じゃない？」
　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そんな貴方にお／　　　 .|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ブチ切れ侍光 ／　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―――――／　　　　　　.|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　　　　　　　|
　メサイア/救世主≠正義の使者。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　 |
　破壊の後の再生、結局なにも救いやしない。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／現れる「世界」！ 　|
　だから足掻くんだよ。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／有里の背後、死角から.|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／繰り出される拳の連打ッ！ .|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／ＤＩＯ本体との同時攻撃はッ！　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／1+1に無くッ！二乗、否それ以上ッ！　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／その破壊力の総和はまさにッ！　　　　　　 .|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　―――――想像不能の歯車的小宇宙ッ！　　.|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣

527 名前：ＤＩＯ ◆kYsrWORLDo ：2007/11/30(金) 01:06:24

　　
　　
　　
　　
　　
　　
　　

　　　　　　　　　0079
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　座高指定
　　限界
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　速く
　　　　　　　　　　　　　　　　突破　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　速く

　　　　　　　　　速く

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　速く
　　　　　　　　　　遺志より　　　　　　　　　　　　　　　　　速く
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　意志より　　　　　　　　　　　　　　　　ハレルヤ
　　　　　意思より　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　速く速く速く
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　日本刀
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　向かえ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ポイント00
　　　　　　　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿　　異常　　　気象
　　　　　　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／
　　　　　　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　向かえ　　　　　　　　向かえ
　　　　　　　|　もう手遅れだッ！！　回避不能よッ！！！　／　　　　　　　　　　　　　向かえ
　　　　　　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　向かえ
　　　　　　　|　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄／　　　　　　　　　　　　　　　　　降るでしょう
　　　　　　　|　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄　 ／　　　　血の雨
　　　　　　　|　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄／　　　　　　　　　　　風もない音もない光もない。
　　　　　　　|　無駄無駄無駄無駄無駄無駄　 ／　　　　　　　　　　　　憂鬱と退屈と怠慢だけが在る。
　　　　　　　|　無駄無駄無駄無駄無駄無駄／　　　　　　　　　　　　　　やりきれないそんな世界――。
　　　　　　　|　無駄無駄無駄無駄無駄　 ／　　　　　　　　　　　　　　　サヨナラ、サヨナラ、さよなら。
　　　　　　　|　無駄無駄無駄無駄無駄／　　　　　　　　　　　　　　　　　愛しい日々よサヨウナラ。
　　　　　　　|　無駄無駄無駄無駄　 ／　　　　　　　　　　　　　　　　　　愛した人よサヨウナラ。
　　　　　　　|　無駄無駄無駄無駄／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　クソッタレの世界にハッピーバースデ
　　　　　　　|　無駄無駄無駄　 ／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..／|
　　　　　　　|　無駄無駄無駄／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　 |
　　　　　　　|　無駄無駄 　／　　　「勝手に生きるんだよ、人間なんて」　　　　　　　　　／　　　|
　　　　　　　|　無駄無駄／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／無駄　 |
　　　　　　　|　無駄　／　　　　　　　　　　「――で、勝手に死ぬ」　　　　　　　　　　 ／ 　無駄　 |
　　　　　　　|　　　 ／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／無駄無駄　 |
　　　　　　　|　　／　　　　　　　　　　「そんなもんだろ――馬鹿じゃない？」　.／　無駄無駄　　|
　　　　　　　| ／　　　　侍　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／無駄無駄無駄　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　お手上げ　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　無駄無駄無駄　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／無駄無駄無駄無駄　 |
　　　　　　　　　　そんな　　　　　　　　　　　光臨中　　　　　　　　　　.／　無駄無駄無駄無駄　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　貴方に　　　　　　　　　　　　　　　　　／無駄無駄無駄無駄無駄　 |
　　　ブチ切れ侍　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　無駄無駄無駄無駄無駄　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　してくれ　　　　　　　　　　　　／ 無駄無駄無駄無駄無駄無駄　.|
　　　　　　勘弁　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　無駄無駄無駄無駄無駄無駄　.|
　　メサイア/救世主≠正義の使者。　　　　　　　　　　 .／無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄　　|
　　破壊の後の再生、結局なにも救いやしない。　　／　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄　　 |
　　だから足掻くんだよ。　　　　　　　　　　　　　　. ／無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄　　.|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ！　.|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
　
　
　
　
　
　
　

528 名前：ＤＩＯ ◆kYsrWORLDo ：2007/11/30(金) 01:06:46

　　　　　　　　　0079
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　座高指定
　　限界　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　サヨウナラ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　速く
　　　　　　　　　　　　　　　　突破　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　速く

　　　　　　　　　速く
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　世界
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　速く
　　　　　　　　　　遺志より　　　　　　　　　　　　　　　　　速く
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　意志より　　　　　　　　　　　　　　　　ハレルヤ
　　　　　意思より　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　速く速く速く
　　　　　　　　　　　　　　サヨナラ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　日本刀
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　向かえ　　　　　　　　　　　　　クソッタレの　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ポイント00
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　降るでしょう
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　異常　　　気象
　　　　　　　　　　　向かえ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　光も
　　　　　　サヨナラ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　向かえ　　　　　　　　向かえ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　血の雨
　　　　　　　　　　　　　音も　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　愛しい人
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　風も
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さよなら　　　　　　　　　　　　　　　　　ないないない
　　　　　　　　　　　　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　　　　　　　　　　　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　　　　　　　　　退屈と
　　　　　　　　　　　　|　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄　 .／　　　　人間
　　　　　　　　　　　　|　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　怠慢だけ
　　　　　　　　　　　　|　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄　 ／　生きる　　　　　　　　　　　　　　　　　　　憂鬱と
　　　　　　　　　　　　|　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄／　　　　　　　　　　　　　　　　　ハッピーバースデ
　　　　　　　　　　　　|　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄　 ／　　　勝手に
　　　　　　　　　　　　|　無駄無駄無駄無駄無駄無駄　 　 ／　　　　　　　　　　　　　　／|
　　　　　　　　　　　　|　無駄無駄無駄無駄無駄無駄　 ／　　　　　　　　　　　　　　／　 |
　　　　　　　　　　　　|　無駄無駄無駄無駄無駄　　　／　　　　　　　　　　　　　　／　　　|
　　　　　　　|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|
　　　　　　　|　　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ！　 .|
　　　　　　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　　　　　　　|　　ＵＵＲＲＲＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹＹー−ッ！！　　|
　　　　　　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　　　　　　　|　　ブッツブれよッッッッ！！！！　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.|
　　　　　　　|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿|
　　　　　　　　　　　　|　　　 ／　　　　　　　　　　　　　　／　　　無駄無駄無駄無駄無駄　|
　　　　　　　　　　　　|　　／　　　　　死ぬ　　　　　　／　無駄無駄無駄無駄無駄無駄　　|
　　　　　　　　　　　　| ／　勝手に　　　　　　　　 .／　　無駄無駄無駄無駄無駄無駄　　 |
　　　　馬鹿　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄　　|
　　　　　　　　　そんなもん　　　　　　　　　. ／　　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄 　　|
　　　　　　　メサイア　　　　　　　　　／　　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄 .|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄 |
　　救世主　　　　　　　　　　　 ／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
　　　　　　　　　　　　　　　正義の使者

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　破壊の後
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　再生
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　侍　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　お手上げ　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　そんな　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　光臨中
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　貴方に　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ブチ切れ侍　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　してくれ　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　勘弁　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　足掻く

【現在地：Ｃ地区　オフィス街　とある高層ビルの屋上（影時間）】

529 名前：黒いアリス ◆ALICEsQkXc ：2007/11/30(金) 01:13:36

ジャンヌ・ラ・ピュセル　救国の軌跡
途中経過レス番まとめ

（※過度な物語の服用には十分注意しないと駄目よ？）


Prologue　―森蝕―
　>>3>>4>>5>>6>>7>>8>>9>>10>>11

〈L'arbre de la fee〉
　>>12>>13>>14

[状況の語らい]>>15>>16>>17>>18
[黒猫キティの慟哭]>>41
[ゲストの追憶]>>42>>43>>44>>45>>46>>47>>48>>49>>50>>51
※状況確認の強化のために記す


挿話　第一巻「クッキング・フォレスト」
　>>52>>53>>54>>55>>56

一度目の救国
ｖｓディオ・ブランドー 　―The forth part of king Henry VI―　
　>>57>>58>>59>>60>>61>>62>>63>>71>>72>>73>>74
　>>82>>96>>97>>112>>115>>124>>125>>126>>130>>137


挿話　第二巻「マルセイユの乙女」
　>>142

〈L'arbre de la fee〉
　>>143>>144>>145

二度目の救国
ｖｓミスティア・ローレライ　―イツマデ Still When―
　>>152>>153>>157>>158>>159>>164>>174>>176
　>>177>>187>>198>>211>>215>>223>>227


挿話　第三巻「おもいっきり森電話」
　>>240>>241>>242>>243

〈L'arbre de la fee〉
　>>244

三度目の救国
ｖｓエリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ　―ポワティエ平野で朝食を―
　>>249>>250>>251>>257>>258>>259>>260>>261>>265>>266
　>>269>>274>>277>>283>>288>>294>>295>>297>>304

530 名前：黒いアリス ◆ALICEsQkXc ：2007/11/30(金) 01:14:04

挿話　第四巻「聖杯伝説」
　>>316

〈L'arbre de la fee〉
　>>317

四度目の救国
ｖｓメディスン・メランコリー　―576年目の森林教室―
　>>320>>321>>322>>323>>326>>328>>329>>331
　>>335>>351>>354>>363>>388>>389>>443
〈L'arbre de la fee〉
　>>448

五度目の救国
ｖｓ聖女��ジャンヌ・ダルク�＝@Rust Riddle 〜錆色の舞踏曲〜
　>>452>>460>>461>>462>>463>>464>>466>>477
　>>486>>487>>493>>494>>498>>500>>507>>511
挿話　第五巻「夢のきざはし」
　>>517>>518>>519>>520

〈L'arbre de la fee〉
　>>521

挿話　偽典「黒猫キティ！　悪い悪い子猫ちゃん！」
　>>522

六度目の救国
ｖｓグルマルキン（乱入者あり）　―アリス戴冠 Queen ALICE is born in the Reims―

　>>517>>518>>519>>520>>521>>522>>523
　>>524>>525>>531>>556>>572>>580>>586
　>>598>>599>>600>>601>>602>>603>>604
　>>605>>606>>607>>608>>610


最後の救国　―パリへ―
（土曜日開幕）

挿話最終巻「イヴェットの唄（仮題）」
　―coming soon!!―

Epilog
　―coming soon!!―

531 名前：ちびふみこ ◆HPv8dyzZiE ：2007/11/30(金) 01:33:05

>>525
　　　　　　　　　　　　　　　※　※　※

　その時、《赤の女王》が掴んだものがなんだったのか――それを知る事は、今
はもう不可能となってしまったが……。
　しかし、それを推察する事は出来る。
　
　それは恐らく、彼女が求めたような栄光や真理、ましてや奇跡などではなく。
　もっと昏くて深く、そして狡猾な――

　　　　　　　　　　　　　　　※　※　※

　森という名の遊戯盤ではじめられた戦争ゲームは、いまや赤軍の圧勝で終わり
を迎えようとしていた。
　
　《赤の女王》グルマルキンの燃え盛る腕が、《白の王》イヴェットの息の根を
止めんと、その胸元へと伸びる。
　それを睥睨して嗤うのは、《杯》を手にした《赤の王》グラール。
　《赤の騎士》を相手取る《白の女王》ジャンヌ・ダルクは、自らの王を守ろう
と手を伸ばすも、その腕は哀しいほどに短く、《白の王》には届かない。

　女王の指が王に触れたその瞬間、このゲームは終わりを迎える。
　響く哄笑。
　悲痛な絶叫。
　そして運命の刻が――、


　ぱん。
　
　
　
　響いたのは、乾いた銃声。
　
　　　　　　　　　　　　　　　※　※　※

532 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/30(金) 02:13:13

>>528
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「もうすぐ――終わりが来るよ」
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　

533 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/30(金) 02:13:39

>>532
　
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534 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/30(金) 02:14:09

>>533
　
――ねえ、ペルソナの着けかえってどんな気分？
――ああ、私も気になるな。他の誰にもない稀有な才能だ。
――オマエ自身にも変化はあるのか、興味がある。
――例えるなら「サマナー」気分ってヤツ？
――ソフトが一杯あるって感じじゃないかな、有里君がハード。
――ゲーム機みたいなものですか？
――彼は機械ではないであります。
――あん？　なんだテメェら。寄って集って。
――少し、彼に話を聞いていたところだ。
――ウザッてェ。力は力だろ、単純な話だ。
――だが他の誰とも違う。面白いじゃないか。
――ガキかテメェは。
――まあまあお二人さん。ここは一つ抑えて。
――ワン。
――コロマルさんも興味があるみたいであります。
――ねえねえ、どういう気分なの？
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「別に、なにもないけど」

535 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/30(金) 02:14:55

>>534

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無駄無駄無駄無　　　　　　　　　　　　　　　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
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無駄無駄無駄無駄　　　　　　　　　　　　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
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536 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/30(金) 02:15:22

>>535

　
　
　
　
　
　
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　空白。
　
　
　
　
　
　　
　
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　無。
　
　
　
　　

　　

　
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　可能性。
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　

537 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/30(金) 02:16:04

>>536

無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
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無駄無駄無駄無駄無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
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無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄無駄無駄
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無　　　　　　　無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
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無駄無駄　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　無駄
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無駄無駄無駄無駄　　　　　　　　　　　　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無駄無　　　　　　　　　　　　　　　　　　無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄

538 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/30(金) 02:16:30

>>537

――確かに僕は笑っていたから。
――泣いていた。
――怒ってた。
　
――良い思い出。
――悪い思い出。
　
――作り上げた絆。
――決して、断たれない鎖。
　
――なんで走り抜けたのか。
――なんで走り続けたのか。
　
――ハッピーエンドじゃなかったよ。
――未練ばっかりだった。
　
――正直に言うと。
――答えなんて要らなかった。
　
――僕はもっと。
――僕はもっと。
――僕はもっと。
　
　
　
　
―――笑っていたかった。

539 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/30(金) 02:18:13

>>538

無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
　無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
　無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
　無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
　無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
　無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
　無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「アンタさ」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
　無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「結局」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
　無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
　無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「一人だよね」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
　無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
　無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
　無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
　無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
　無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
　無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
　無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
　無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
　無　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　駄
無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄

540 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/30(金) 02:18:43

>>539

I will――
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「オルフェウス」
　
　
　
　
　
　




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――Burn my dread

541 名前：有里 湊 ◆YTFOOL/P3. ：2007/11/30(金) 02:19:16

>>540

　進む。
　掻き分けて。
　
　進む。
　跳ね除けて。
　
　進む。
　退けて。
　
　進む――進む――進む。
　
　振り返らず。
　立ち止らず。
　前を見て。
　
　日はまた昇り、春はまたやって来る。
　明けない夜はなく、緑の夜は消え失せる。
　
　晴れない闇はなく、安らぎの時は来る。
　
　
　
　灰は灰に、塵は塵に。
　
　
　
　琴の音はレクイエム。
　鍔鳴りはプレリュード。
　鞘走りはカデンツァで。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　終わりの音は、鐘の音。
　
【C地区　とある高層ビル屋上】

542 名前： ◆kYsrWORLDo ：2007/11/30(金) 02:35:17

>>532
>>533
>>534
>>535
>>536
>>537
>>538
>>539
>>540
>>541
　
　
　

――――――――――――…………　　　まさか、二度も敗れるとはな……


…………・・・・・・................　　だが…魂の、精神の行き着く先への確証は得た…


.........　　わたしはどんな犠牲を払っても、そこへ行く…………
　
　

　　　ＤＩＯ

　　　世界（ザ・ワールド）

　　　完全敗北　死亡


　　　　　　　　ＤＩＯの世界／
　　　　　　　　　　　　　 .／Burn my――
　　　
　　　　　　　　―LAST PART END...―


　　　　　　　　Jojo''s Bizarre Adventure 6th

　　　　　　　　Stone Ocean

　　　　　　　　　　　／|＿＿＿＿＿＿＿＿___
　　　　　　　　　　く　　to be continued | | / |
　　　　　　　　　　　＼|￣￣￣￣￣￣￣￣￣



【C地区　とある高層ビル屋上】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　

543 名前：日守秋星 ◆XVAMPIRE2Y ：2007/11/30(金) 03:36:27

>>490 >>491 >>492
　
「―――なるほど、これはまさしく。
お誂え向きのシチュエーションですね」
　
楽しそうに愉快（たのし）そうに。
乱杭歯を剥き出しにして、日守秋星は笑った。
今や都市部をわずかに離れ、木造の建築物ばかりが立ち並ぶこの住宅街は、
少女によって放たれた火種によって瞬く間に紅蓮に塗りつぶされ、
轟々と嘆きの声を漏らしている。
　
血と炎の紅に染まる視界。
肉と揮発油の燃える異臭。
建物が発する断末魔の悲鳴と、少女の哄笑。
じりじりと肌を焦がす熱気と、空気が焼かれ身を捩るような感触。
　
これが今、世界（セカイ）の現実（リアル）。
　
「いいでショウ！　その趣向乗った！
やればできるじゃアないか、ようやく―――ようやく、オレ好みの世界（セカイ）になった！」
　
両手を広げ、黒コートの裾を熱気から発生した上昇気流にはためかせながら。
日守秋星は少女の哄笑に哄笑で応える。
　
「さぁ来なさい！　君の全て、憎しみも怒りも何もかも、全―――――ぶ」
　
唐突に、声が途切れた。
秋星がその長い口上を語る途中で、彼の正面から突撃していた燃え盛る軽自動車は、
運転手を失った影響で進路ががくがくとブレ始め、やがて車体の腹を秋星に向け、
激しく回転（スピン）しながら直進し―――
　
焼け付いた車体を、思い切り良く秋星の全身に押し付けた。
　
この世のものとは思えない凄まじい激突音と、肉の焼け焦げるジュウウという音が大きく響く。
　
そのまま回転を続ける軽自動車は、秋星の身体を巻き込みながら、近くの電柱へと激突する。
更に当然の帰結として、燃え盛るガソリン（けつえき）が、車体の心臓（エンジン）に着火して―――
　
　
爆発。
この日二度目の轟音が、街路を揺るがした。

544 名前： ◆kYsrWORLDo ：2007/11/30(金) 03:39:11

有里湊ｖｓＤＩＯ　レス番纏め

　ＤＩＯの世界／
　　　　　　 .／Burn my――

ＤＩＯ導入
>>369>>370
有里湊導入
>>371>>372>>373>>374>>375>>376>>378

>>379>>380
>>381
>>382
>>383
>>384
>>385
>>386
>>387
>>397
>>400>>401>>402
>>421>>422>>423>>424>>427>>428>>429
>>432
>>436>>437>>438
>>439
>>445
>>447
>>453>>454
>>465
>>478>>479
>>480>>481>>482
>>483>>484
>>489
>>508
>>510
>>526>>527>>528
>>532>>533>>534>>535>>536>>537>>538>>539>>540>>541
>>542

【闘争舞台　C地区　とある高層ビルの屋上→（？？？）】

＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

545 名前：システムアナウンス ★：2007/11/30(金) 04:24:05

吸血大殲　森祭　途中経過纏め

＊進行中の闘争の中断状況を記載
＊終了した闘争については最後に記載
＊各人のターンのレス毎に改行
＊再開時間の申請があるものは記載
＊タグ使用闘争は各闘争ごとに付記、対応ブラウザでの閲覧推奨

紅魔館の優雅な住人たちｖｓカトル・カール
―Forest Lagoon―

紅魔館導入
>>146>>147>>148
カトル・カール導入
>>149>>150>>151

>>154>>155>>156
>>185>>186
>>188
>>189
>>191>>192
>>196>>197
>>201
>>245>>246>>248
>>273>>275
>>292>>293
>>330
>>358
>>360>>361
>>398
>>399
>>409>>410
>>411
>>412>>413
>>415
>>419>>420
>>426
>>433>>434
>>435
>>446
>>451
>>455
>>456>>457
>>459
>>499
>>504
>>505
>>513



【現在地：ハイウェイ】

＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨


日守秋星　VS　西園寺世界　「-WORLD HANT.」

日守秋星導入
>>296>>298
西園寺世界導入
>>299>>300

>>302>>303
>>309>>310
>>311
>>312>>313
>>315
>>318>>319
>>325
>>366>>367>>368
>>395>>396
>>490>>491>>492
>>543

【現在地　B地区「繁華街」】

赤頭巾VSプリマヴェラ

赤頭巾導入
>>336>>337>>338>>339>>340
プリマヴェラ・ボビンスキ導入
>>342>>343>>344>>345>>346

>>348>>349
>>352
>>357
>>362
>>406>>407>>408
>>416

>>449>>450
>>470>>471>>472>>473>>474>>475>>476
>>485
>>488
>>501>>502
>>503
>>506
>>509
>>514
>>515>>516




【現在地：Ｃ地区　………　】

＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

546 名前：システムアナウンス ★：2007/11/30(金) 04:24:35

＞終了した闘争レス番纏め

森祭テーマ（ストーリー関連）闘争

DIO vs JEANNE ―The forth part of king Henry VI―
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/138
＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

ミスティア・ローレライｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル　『イツマデ』 Still When
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/230

エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル　『ポワティエ平野で朝食を』
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/305

ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓメディスン・メランコリー　―576年目の森林教室―』
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/444
＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨
備考：メディスン最終エピローグは後日追加予定

ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓ聖女��ジャンヌ・ダルク�＝@『Rust Riddle 〜錆色の舞踏曲〜』
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/512

別記「黒いアリス」自身による纏め　（今後の進行予定についても表記）
>>529
>>530


通常の闘争

エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミｖｓリサ・トレヴァー
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/252
＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

レイオット・スタインバーグｖｓ魔神王リィーナ
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/291

死神（デス）ゼアド vs ＜呪われし公子ゲイナー＞
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/286
＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

“姫”一行（怪物王女）VSスレイド
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/405
＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/469
＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

有里湊ｖｓＤＩＯ　ＤＩＯの世界／Burn my――
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/544
＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

547 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/11/30(金) 05:30:31

>>543

「せ、……かい？」

遠い異国の地、何も知らない場所で、唯一会った知ってる少女。
清浦刹那は、かすかに目を見開いていた。

「どうして……ううん、信じられない。
　あの世界が、一人でここまで来るなんて……」　
「刹那、刹那、刹那っ！！」

彼女の言葉を断ち切って、私は駆け出していた。
涙がこぼれる。
足が震える。
やっと会えた。
やっと会えたね、刹那……！
私の、大切な友達！


異国の地でも、刹那は刹那だった。
やさしく私の背をなでると、自分のアパートまでタクシーで案内してくれた。
見慣れない部屋のところどころに、見慣れた刹那の私物。
――なんだか、違和感ある。

「ハーブティだけど」

ソーサーに乗せた二つのカップを、刹那が運んでくる。
ハーブの心地よい香りが鼻腔をくすぐる。
ずっと凍っていた私の心を、溶かしていく。

「うん、バッチリだね刹那。やっぱり美味しい」
「ぶい」

私の言葉に、かすかに頬染めて、照れ隠しのＶサイン。
あの頃と、何も変わらない関係。
ようやく、帰ってこれた。
私と、刹那の、変わらない場所に。

いつまでもこうしてはいられない。
私は、話し始める。
今までのことを、全て。
それがここに来た理由だから。
いつものように、彼女に受け止めてもらって、泣いて、なぐさめてもらって。
そして私は、いつもの「西園寺世界」に戻る。
そのための刹那なんだから――

548 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/11/30(金) 05:30:47

>>547
どごん、とひときわ際立った轟音。
地面が揺れ動く感覚。
振り向いて見ると、かつて車だったモノが、炎の中でただのゴミへと変わっていく。
これで片付いてくれればいいけれど、おそらくそうもいかないだろう。
となると、私がやるべきは……。

『おいキミ、大丈夫か』

かけられる声で、現実に戻る。
ふと遠くを見ると、軍服姿の男達数人。
軍人……それがなぜ、こんなところに？
かすかな疑念。だが、今はそれより戦力としての有効性のほうが必要だ。

『キミ、どうした。
　あの爆発は何だね、何が起こった。
　それに、その――』
　
綺麗なキングズ・イングリッシュ。相応のインテリであることを伺わせる端麗な発音。
見た目にも紳士でありながら、しかし豪胆さを兼ね備えたその顔も、
さすがに私の手に持ったモノを見ると、思わず歪んだ。

『――その、キミの……失礼、無神経な言葉だが、亡くなっている妹さんは……』

計画通り、とほくそ笑みつつ。
私は眉を寄せ、憂いの表情をつくる。

『あとで、全部お話します。
　とりあえず、次の集落に連れていってくれませんか』

549 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/11/30(金) 05:31:09

>>548

私は、刹那に全てを話した。
全てを、だ。
けれど、彼女の反応は、私の予想とは少し違った。

怪訝そうな顔。疑いの目。
そして、そこから驚愕へ、恐怖へ、とうつり。
最後に、諦念に似た表情をかたちづくり。
全てを話し終わった私に、こう言った。

「一緒に警察に行こう、世界」
「……え？」

理解、できなかった。
何故？
どうして？
あなたは私の、唯一の理解者じゃなかったの？
いつものように、頭をなでて、なぐさめてくれるんじゃなかったの？
どうして、どうして、私まで否定するの？

「もう一杯、紅茶入れてくる。
　そしたら、一緒に行こう」
　
なんでそんなこと言うの？
なんで背を向けるの？
友達じゃなかったの？
刹那！？




彼女が去って一人きりになった部屋。
次第に、さっき気づかなかったものが見えてきた。
こちらで友達になったのだろう、私が知らない欧州系の少年少女たちとの記念写真。
私の知らない笑顔で、その中央に収まる刹那。

ああ、そうか。
彼女にはもう、ここでの生活ができてしまったんだ。
もう、私の刹那じゃない。
みんなの刹那になっちゃったんだね、刹那。
変わらないままだと思ってた、私が間違ってたんだ。
そうだよね、私がこんなに変わったのに、あなただけ変わらないなんてありえないよね。



―――――――――じゃあ、もういらないや。

550 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/11/30(金) 05:31:30

>>549
その集落は、およそ１００人ほどの小規模な居住地だった。
そこに駐屯する軍の人に手当てを受けながら、私はこれまでの経緯を話した。
極悪非道な殺人鬼、「吸血鬼」。
その常人離れした能力。
その非道さ。

ひととおり話し終えると、今度は軍の司令官――先ほど私に話しかけた男性だ、
彼が状況を説明してくれる番だった。
彼らは、このあまりに異常な「森」の侵食に対する調査を命じられ、向かってきた部隊だった。
しかし、「森」の前に戦車などはほとんど取り込まれてしまい、
小銃や機関銃といった、わずかな武装を持って１０人足らずが徒歩で逃れてきたのだという。
――彼らは巧く誤魔化しているが、「超常の存在」も任務の中に織り込まれていたようだ。
だから、私の話も信じた。

だが――

『けどさ、その化物だって、車ぶつけられて、死んじゃったんだろう？
　もう心配ないさ』
『そうそう、嬢ちゃんも疲れてるんだよ』

村の連中は、まったく気楽だった。
無理もない、今までのようにあちらが分かりやすく攻めてきてくれているわけでもない、
目の前に凄惨な死体があるわけでもない。
当然といえば、当然。
しかし、私としては困る。
軍隊の１０人や２０人程度で勝てないのは、もはや証明済みだからだ。

となると、手は一つ……。

551 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/11/30(金) 05:32:02

>>550
刹那が、紅茶を二つ運んでくる。
ありがとう、と言って私は手に取り、一口啜る。
小さい子供達が、コップに入れた水を運んできてくれた。
ありがとう、と言って私は手に取り、そのまま戻す。

どうしてこうなったんだろう、と呟く刹那。
そのティーカップに、一滴、ある液体を落とす。
無色透明、無味無臭、しかし強力なある液体。
やっぱりお姉ちゃんはいいや、キミが飲みなさい。
そう言ってコップを返しながら、一滴、ある液体を落とす。
無色透明、無味無臭、しかし強力なある液体。

そこに何が加えられたかも知らずに、気も虚ろに紅茶を飲む刹那。
その手がいきなり震えだす。ティーカップを落とす。
あ、ああ、と口は言葉にならない言葉をつむぎ出すだけ。
そこに何が加えられたかも知らずに、少年は無邪気に水を飲む。
その手がいきなり震えだす。コップがその手を滑り落ち、地面で砕ける。
あ、ああ、と口は言葉にならない言葉をつむぎ出すだけ。

刹那の小さな身体が、椅子から滑り落ちる。
唾液と涙を撒き散らし、手と足を痙攣させながら、出来損ないの芋虫のように転げまわり、
それなりに高級だっただろうカーペットを、無駄に汚していく。
ああ、あの時の誠と同じだ。これは、こんなに醜いモノだったのか。こんなものを頼っていたのか。
侮蔑の視点で見下しながら、私はそっと囁く。
少年の小さな身体が、大地に崩れ落ちる。
唾液と涙を撒き散らし、手と足を痙攣させながら、出来損ないの芋虫のように転げまわり、
周囲の人々の注意を、こちらに注目させる。
ありがとう、名前も知らない子。あなたの命で、私の計画は完遂される。
私は、集まってきた人々を見回し、大声で叫ぶ。



「刹那がいけないんだよ？　私を裏切るから。
　　だから、――死んじゃえ」
『毒よ！　あいつが、あの殺人鬼が、毒を撒いたのよ！
　みんな、水道はもう使っちゃ駄目です！　それを使った料理も！
　飲み物は、栓で密封されたカン・ビン・ペットボトルだけにして！』

552 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/11/30(金) 05:32:28

>>551
そして、私は真理に気づく。

何故これほど今まで巧く回ってきたのか。
全て、私が思い通りになったのは、なぜか。
邪魔をした桂さんも、黒田達も、刹那も、みんな死んだ。
私の邪魔になったミクとリンも、みんな死んだ。
全て私の思い通りに進行して来た。
私が願うことは、みんなかなった。

今、私は遠いフランスの地に来て、邪魔な清浦刹那を殺した。
今、私は１００人を超える人々と、軍隊まで自由に操ろうとしている。
これは偶然によるものだろうか。
これは幸運によるものだろうか
否、――そんなことはない。

私には能力があるのだ。
私は、全て思い通りにできるのだ。
世界は私のためにある。
私のために、世界は回る。

全ては私のために。
全ては私のもの。
私だけが人間だ。
後は全て、私の所有物だ。
どうしようもない役立たずの。
どうしようもない愚図たち。
ならばせめて、
私が有効に使ってあげよう。
馬鹿もはさみも使いよう。
私に使われることでしか役に立たない出来損ない。

なら、それを使い捨てることに何の痛痒も感じない。
なぜなら、私は、私こそが、





私こそが、世界そのものなのだから！！

553 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/11/30(金) 05:33:01

>>552

そこからは、全て機械的に物事は進んだ。
私は僅かな現金を刹那の部屋から調達し、そのままあてどなくさまよった。

お金が足りなくなったら、そのあたりの人間から奪った。
ボタンを二つ外して、胸の谷間にフラン札を挟ませるだけで、簡単に鴨は釣れた。
日本人だから、少女だから。
そう言って油断している人間を刺し殺すくらい、もう簡単だった。

途中、そうやって殺した何番目かの男が拳銃を持っていたおかげで、その後はさらに楽になった。
胴体に密着させれば音もさほど目立たない。そう学んだ。
その弾丸を全部使い切った頃には、私の財布はかなり暖かくなっていた。
邪魔になった拳銃を捨て、ふらりと電車に飛び乗り、五月の名を持つ地方都市に立ち寄った時、




――――――私は、『吸血鬼』に出会った。

554 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/11/30(金) 05:33:09

>>553

そこからは、驚くほど簡単に物事は進んだ。
軍の部隊はただちに迎撃態勢を指令した。
私が通ってきた道に向けて、機関銃が設置された。
まず三人が催涙弾を発射して動きを奪い、次の三人が機関銃で弾幕、最後の三人が死体の確認ととどめ。
そう、軍の司令官は説明した。

一般の人々にも、それぞれ刃物類や手榴弾といった武器が配布された。
いざという時の後詰、予備戦力として。
子供達は、保母役の女性とともに、とある小さな建物に詰め込まれ、避難させられた。
水、という生活の最重要基盤が脅かされた、そう思った彼らの戦意は高かった。
あの吸血鬼さえ倒さなければ、普通に生きることさえ恐怖となる。
そう思ったのだろう。

私は、感謝した。
二度も、私の決定的な場面で役に立ってくれた、小さな小瓶。
部屋に閉じこもるたびに、この薬で自殺してやろう、というわずかな妄想にすがって生きていた頃。
あの頃の、何度も飲もうと妄想しつつ、実際はそんな勇気もなかった、そんな毒。
あの「お守り」が、こうも助けてくれるとは。

軍の司令官が、私にそっと通信機を手渡す。
これは村どころか、この地域一帯に広がる広域放送のスピーカーとリンクしている、と説明される。
それを使って、この地域全体の人々に警告をしてほしい。
その頼みを、私は承諾した。

高台から見る、村の景色。
前面に軍。その後ろに１００近い武装した村人。
完璧な布陣。最強の戦力。
そして、それは全て私が用意したものだ。
恍惚の中、私は最初の一言を発しようとマイクを握り、


――――――私は、『吸血鬼』を見た。


【現在地　B地区「繁華街」】

555 名前：日守秋星 ◆XVAMPIRE2Y ：2007/11/30(金) 06:36:15

>>547-554
　
　
「ありゃ。意外と驚かないんだな」
　
　
『吸血鬼』はそこに居た。
抜けるような白髪と、闇より深い黒コートをはためかせ。
圧倒的に過ぎる存在感を主張して、堂々と。
　
　
「でもこれは知りたいだろ？　どうやって検問を突破したのか、とかね？
―――有り体に言えば、10人じゃちょっと少なすぎたね。あれくらいの包囲を抜けるのは容易い。
そもそも舗装された道を通ってくるばかりが、君に近づく方法じゃないだろう？
軍人さんっつっても、案外抜けてるもんだ」
　
目を見張るばかりの少女から、10メートル程の先。
遂に吸血鬼（かりうど）は、世界（えもの）を射程圏内に捕らえていた。
両者の声が直接、互いの耳に届く位置まで―――
　
「さあ、もう逃がしません。鬼ごっこの時間は終わりだ。
この距離からなら、今周りに居る誰よりも―――オレは速い」
　
あちこちが焦げ、もくもく煙を上げている黒いコート。
コートの下の肉体に刻まれた、醜い火傷の跡。
どう贔屓目に見ても、満身創痍。
常人ならば決して動けるような状態ではないだろう。
　
しかし、現実（リアル）として。
日守秋星は、生きている。
生きて、世界を脅かす。
　
「もう雑魚を相手にするのは結構―――一気に、王を詰ませてもらいましょうか。
ああ、でもこの場合は―――」
　
同時、秋星の身体がブレ、、た。
少なくとも少女にとってはそうとしか見えない―――並みの動体視力では追えない挙動。
そう、比喩でもなんでもなく、10メートル程の距離など、この吸血鬼にとってはゼロに等しい。
ほんの僅かなその間を―――秋星は全力で、駆け抜けた。
　
　
「――――――女王手（チェックメイト）、かな？」

556 名前：グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆ORDEN1uWpQ ：2007/11/30(金) 06:55:11

グルマルキンｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『アリス戴冠―Queen ALICE is born in the Reims―』

>>531



　指先に訪れる感触―――銃声とともに、永遠に失われる。
〈栄光の腕〉が根こそぎ弾け飛んだことに気付いたとき、グルマルキンの
驚きは計り知れぬものがあった。
　―――魔力の結晶たる不定形の義手が消え去るだと？　物質的な攻撃で
はまず不可能な芸当だ。
　尋常ではない事態。魔導に理解を示す者の不意打ちなのは明らか。
　
　白の陣営の援軍か。……否、それだけは絶対にあり得ない。
　盤上に白の軍勢はキングとポーン、クイーンしか配されていない。それ
以外の駒は初めから取り除かれている。―――森の介入によって、だ。
　全ては「赤のキング〈ホーリー・グレイル〉」を取り戻すための奸計。
　
　だのに、これは一体―――

　マントを翻して振り返る。驚愕と苦渋は同時に押し寄せた。

「貴様は……貴様は！」


【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）最深部〈妖精の樹〉】　

557 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/11/30(金) 18:07:16

>>555
『吸血鬼』が、そこに居た。
抜けるような白髪と、闇より深い黒コートをはためかせ。
圧倒的に過ぎる存在感を主張して、堂々と。

にもかかわらず、それはあくまで自然であり。
当然そこにいるべきである、と誰もが理解しているかのように、周囲になじんでいた。
距離にしてほんの１０メートル。
その、まさに目と鼻の先にいる彼に聞かせるように、私はマイクをとる。

「――皆さん」

私の声が、響いていく。
この小さな街全てに、ある＜真実＞を伝えるように。

「この街には、今、凶悪な殺人犯が来ています。
　『吸血鬼』と呼ばれる、凶悪な犯人です」
　
目の前の彼が、口を動かす。何か喋っている。
なのに、なぜだろう。何も聞こえない。
本当なら、声が聞こえる距離なのに。

「聞いてください、彼が、どんなに恐ろしいことを私達にしたのかを。
　たった一人の手によって、どれだけ多くの命が奪われたのかを」

まあ、いい。
こちらの声が聞こえればいい。
私は声を張り上げる。この街にいる全ての人間を相手に、彼を断罪するために。

「彼は、金銭目当てで多くの人を殺しました。
　無残に死体を切り裂き、血を抜き取る。そんな恐ろしいことを、わずかな金銭のためにやったのです」

それを本当にやったのは私だ。
当座の金を奪うための殺人を、「吸血鬼」のせいにする。
そのために、わざわざ手間をかけて、首を切り裂き、側溝に血を流す手間までかけて偽装したのだ。

「彼は、皆のために炊き出しをする、善意の人々を虐殺しました。
　逃げ惑い、許しを請う無力な子供、老人、女性に至るまで、その快楽のために殺しました」
　
これも嘘だ。
彼らはすべて、私を助けるために自ら命を投げ出した。
私のために彼らは死んでいった、いわば私が彼らを殺した。

「彼は、街に炎を放ちました。
　ただ、自分の部屋で穏やかな時間を過ごしていた罪もなき人々が、
　次々と炎の中でもだえ、苦しみ、その思い出を多く詰め込んだ建物と共に、炎に消えました」
　
これも私だ。
私が車を使って、道筋の街ごと焼き払ったのだ。
彼を「少しばかり困らせる」、ただそれだけのために。

「彼は、幼い少女をより残虐に殺すことに、執念を燃やし始めました。
　時に、あどけない無防備な少女の首筋を切り裂き、何分も苦しませて殺しました。
　血を吹き出し苦しむその姿を見て楽しむ、ただそれだけのためにです」

もちろんこれも私だ。
あの残酷を通り越して残虐な死に方は、私にとっての捨て駒をつくるのには十分だった。
あの子も、死体になってはじめて、少しは私の役に立ったと言えるだろう。

「そして、彼はこの街でも、罪もなき人々を殺しました。
　水という、人が生きる上でもっとも大切な基盤に、彼は毒を入れました。
　ここで犠牲になったのも、世界で一番罪のない存在、子供でした。
　彼の標的は常に自分より弱いものであり、
　その嗜虐嗜好を満足させるためだけに、多くの命が奪われていきました。」
　
ああ、そういえば私が飲ませた毒で死んだ、あの子供の名前は何と言ったのか。
聞いてさえいなかった。
まあ、どうでもいいか。どうせ生きていても何の役にも立たないだろう存在だ。

「皆さん、こんな悲劇は、もう繰り返してはいけません！
　どうか、勇気を持ってください！
　そして、一緒に戦いましょう！」　

そう言い切ると、応、という歓声が沸きあがる。
それはやがて、轟、という地響きに似た震えに変わる。
その反応に満足しつつ、私はマイクを置き、彼を見つめる。

彼にはわかるはずだ。
この演説の意味が。

私がここでやってきた、全ての穢れは彼が背負う。
彼は理念もなにもない、金と嗜虐趣味のために弱いものを次々と虐殺する、
ただの快楽殺人犯へと貶められる。
そして、それを打ち倒した私は、その全てを乗り越えた光を手にする。

そう、光だ。
いわば私は聖女、ジャンヌ・ダルクなのだ。
多くの尊い犠牲を乗り越え、人々を導き、世界を救う英雄！
私こそ、まさに明白なる天命を帯びた、導き手に違いない！

高まる高揚感。
溢れる恍惚。
自分の言葉に、自分で酔う感覚。
世界と自分が一体化したような錯覚――いや、真実。
人々を従え、軍隊を従え、私は今、確かに――世界の頂点にいる！　
私は、満面の笑みを浮かべ、「彼」を見つめ、

　
　　
　　　
　　　　
　　　　　
　　　　　　
その姿がぶれるのを見た。






来た、と直感した瞬間、私は後ろに飛ぶ。
同時に、私にマイクを渡した軍人が、彼と私の軌道上に割り込む。
彼を撃ち殺せるほど速くはない彼も、しかし、その身を割り込ませることができる程度の訓練は、してきたらしい。
時が引き伸ばされる感覚。
そして、私の足が再び大地に着いた時、

時は再び動き出した。
私を庇った軍人がどうなったか振り返ることもなく、一目散に駆け出す。
背後に響く、悲鳴、怒号。
それを無視して、私はひたすら走る。
私は王、私は指揮官――私がするべきことは命令であり、戦うことじゃない。

目前には、巨大な「森」。
街を侵蝕してきたそれが、私の視界を覆い尽くすほどに広がっている。
そこまでたどり着いて、漸く私は息を吐く。
多少は距離も取れた、もう安全だろう。
そう判断し、私は後ろを振り向いた。


そこはまさに、地獄の現界だった。
幾人もの屈強な男達が、肉の壁となって私と彼の間を隔て、なんとしても行かせまいとしている。
やっと騒ぎに気づいたらしい軍人達が、遠くから駆けつけてくるのが見える。
機関銃――第一次大戦でもっとも多くの人の命を奪った武器――が、滝のように弾丸を浴びせかける。
しかし、焦りによって撃たれたその弾丸は、肝心の「吸血鬼」ではなく、
その周囲の民間人の命を、無駄に散らせているにすぎない。

そのさらに後ろでは、遅まきながら手榴弾を持った一団が動き出す。
どうやら自爆覚悟で、手榴弾を持ったまま刺し違えるつもりらしい。
だが、少しばかり時間の計算を間違えたヤツがいたらしく、「彼」のはるかに手前で虚しく爆発の炎があがる。
そして、その周囲にいた人間たちまで、次々に誘爆して行き、無駄に花火をあげていく。
自業自得、意味もなく集団で固まっているからだ。
この分では、彼のところまでたどり着けるのは、おそらく一割にも満たないだろう。

「――あは」

そんな地獄を見ていたら、不思議と笑いがこぼれてきた。
不謹慎かもしれない。でも、これを見て笑いを我慢するなというのは、一種の拷問だ。
だって、そうだろう。
味方に背中から刺され、味方に後ろから撃たれ、味方の自爆に巻き添えを食う。
なんだ、「吸血鬼」なんていなくても、うっかりで人なんて死ねるんじゃない。

「あはは、は」

子供の頃、戦争は凄惨で残酷で、絶対に繰り返してはいけないものだ、そう教わってきた。
けど、実際に見てみたら、これ、出来損ないのお笑い番組以下。
みんな、バカばっか。
私みたいな人に教えてもらわないと、すぐに自分で自分を刺して死んじゃうような、
どーしようもないバカの集まり。
ねえ、これ誰の考えたギャグ？

「あはははははは」

私だ。私が考えたギャグだ。
みんな、私のために死んでいってる。
哀れな少女の、涙のお願いを聞いて死んでいく。
満足して、正しいことをしたと笑って死んでいく。
でも、本当はただ勘違いで死んでるだけ。
ただの滑ったギャグ。

「あははははははははははははは、本当、ダメダメすぎるじゃん！」

笑おう。
笑うしかない。
せっかくいい脚本を書いてあげたのに、役者がへぼすぎて全部駄目にしちゃったんだもの。
後は喜劇として笑ってやるくらいしか、楽しみ方がないじゃない。

血が吹き出して、腕が飛んで、首が転がって、子供が泣いて。
そんな繰り返しの天丼ネタをひとしきり楽しんだ後で。
五分もたつと、もうどこか白けてきた。
下界を見下ろしながら、私は醒めた目で呟く。

「ってかさー、もういい加減飽きたんだけど。
　とっととそこの吸血鬼馬鹿と一緒に、みんな死んじゃってくれないのかな？」



【現在地　B地区「繁華街」】

558 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/11/30(金) 20:20:52

>>505>>513



　宙を飛ぶトレーラー／射線を外して放出される閃光＝鮮紅／倒壊するビルディング／弧
を描いて降り注ぐ／銀色の誘導弾／コンテナから投げ出されるメンバー／それぞれが車体
にしがみつき、コンテナへ逃げ込む姿／接近する少女たち／三名の脅威／傾ぐ視界／三十
度から四十五度へ／落着まで―――

　フリントの行動―――軍刀でナイフを弾き飛ばしながら反転／加速。浮遊感を片手で押
さえ込みながらトレーラーの運転席へ飛び込む／自動運転解除＋ロケットブースター点火。
着地する巨体／暴れまわる車体／ハンドルさばきと強引な加速で押さえ込む。


　加速―――研究所。障害物／車／建造物／正門／警備システム。

　突破―――車を踏み潰す／建造物をぶち抜く／ガードレール／消火栓を破壊。

　操作―――スケアクロウの電子支援。正門の電子施錠と警備機構を掌握。

　軌道―――道が拓ける。閉ざされた門の開放／警備機構の招待。

　操縦―――突入／同時に車体を九十度回転スライド。


　轟音とともに爆心地への到達。
　トレーラーが研究所の壁面に叩きつけられて停止する／偉大な鋼の強度が障壁を上回る
／開いた穴から内部への侵入を許可。


　連携。残った戦力を分配する。
　ベイビーヘッド／再生能力と怪力で足止め。他のメンバーへの時間を稼ぐ。
　スケアクロウ／電子支援―――警備システムの操作で敵の連携を遮断。

　ホッパー／スパンカー。屋内の実験棟へ侵入。遮蔽物と閉所での空間戦術。
　シェイキー／ラバーマン／ローチー。屋内の各通路へと配置。ガス／電撃／対人地雷に
よる封鎖作戦。

　フリント―――目的への到達。薬品の保管されている倉庫へ。
　そこに、発送を待ち侘びた“流行”がある。
　同時にスケアクロウへ研究所のデータベースへの侵入を令達。薬品の合成データ／全て
をコピー／破棄。出来る限りの情報を入手―――イノヴェルチのノウハウを取り込む。


　目的のものはワンケースに収められていた。一ダース程度のアンプル。
　宛先―――マルドゥックシティ。
　目的―――達成。
　残る課題―――退路の確保／帰還。
　そのためには、敵に打撃を与えなければならない。
　たとえ撃破が叶わぬとしても。


　フリントの行動―――包括しての連携。
　各部隊を飛び回り、攻撃と殲滅を援護。
　百メートルの距離を障害物付きで九秒以内に移動―――ホッパーの部隊と合流。

　“幻想”に対する反撃の開始。




【現在位置／Ｃ地区・研究所内。目標の薬品を入手】

559 名前：”赤頭巾”：2007/11/30(金) 20:51:09

赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>509
赤頭巾赤頭巾たべられた、食べられた。　
言いつけ破って、食べられた。　
遠回りして、食べられた。　
《会いにいかずに》食べられた。　
赤頭巾は死んだ。彼女の中のフランス幻影は死に絶えた。　　
───So.What?????　
だから始める、今から始める、だから世界は　
眩しいんだ！俯くアリス、怯えるジャンヌ。　
背中煤けるグルマルキン。──So what?　
森は生きる、森は森のために。オレは赤頭巾。　
狼に食べられ、処女と命を奪われた赤頭巾。　
───So,What??????
だから始める、本当のアリス。本当の夢物語を！　
　
イーニ、ミーニ、マーニ、モ！　
狼指で捕まえろ。　
うぉーと吼えたら　放しておやり。　
　　　
イーニ、ミーニ、マーニ、モ！　
ママがくれたガレット・ワイン。　
いいもの、あげたから…　
　
これで、こんどはアンタが鬼だ！

あわせかがみのかがみのせかい。　
───────────────────　
鏡よ、かがみ。オレの心を写してよ。　
幸せな世界、見せてあげてよ。　
他の皆に幸せの夢、見せてあげてよ。　
──────────────────GUN!!!!!!
。いかせのみがかのみがかせわあ　　

！だ鬼がタンアはどんこ、でれこ　
…らかたげあ、のもい　
。ンイワ・トッレガたれくがママ　
！モ、ニーマ、ニーミ、ニーイ　

りやてし放　らたえ吼とーぉう　
。ろえま捕で指狼

560 名前：パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU ：2007/11/30(金) 21:07:02

>>504　>>505　>>513　>>558
「……確かに言ったわね、復讐しろと」

棺桶に突き刺さったパーラーカーの上でパチュリーはぼやいた。
彼女の独白/挑発を受けたパーラーカーは、見事にその怨敵に牙を向いたのだ。

「律儀さを褒めるべきかしら。無神経さを呆れるべきかしら。
　今は後者にしておくわ。……レミィの邪魔にもなったようだし」

倒壊する巨大な墓石（・・）を眺めながら駄目を出す。
あれがレミリアの意図通りになっていたらレミリアも大惨事になっていただろうが、
友が気にしていない以上、パチュリーも気にしない。
パーラーカーが、抗議するかのようにさらに棺桶に食い込んだ。

そのまま棺桶とパーラーカーは空中に飛び出し/宙を舞い/宙を舞い/宙を舞い/接地して/地を駆け/地を駆け/地を駆けて/
灰色の何かにめり込んで、止まった。

パチュリーは息をつく。と、棺桶から七つの影が去っていくのが見えた。
きっと、レミリアは彼らを追うのだろう。追って喰い付き、地の底に引き摺り下ろすのだろう。
パチュリー・ノーレッジの友は、レミリア・スカーレットはそういう少女だった。

―お前が“幻想（ファンタジー）”か―

ふと。あるセンテンスが頭をよぎった。
それが、パーラーカーが突撃する直前、ピエロがレミリアに言った言葉だとは知る由もなく。
パチュリーは答えた。

いいえ。
空想（ファンタジ−）じゃないわ。幻実（ファンタズマゴリア）よ。

【現在位置／Ｃ地区・研究所前】

561 名前：―永遠に紅い幼き月―　レミリア・スカーレット ◆DEVILbzibY ：2007/11/30(金) 21:08:49

紅魔館の優雅な住人たちｖｓカトル・カール
―Forest Lagoon―

>>558>>560

　棺桶から七匹の遺体が飛び散る。それぞれの思惑に従い、それぞれの死路
へと旅立った。―――さて、どの地獄を追うべきかしら。
　メイドは露骨に帰りたそうな態度を示してくるが、お嬢さまは許さない。
　メイドは人間だから分からないのだ。
　この状況で悪夢を続行するのは、妖怪の本能に等しい。人間という器を忘
れて妖怪の真似事をする不埒な輩にはきついお仕置きが必要だ。
　
　追突の衝撃をものともせず、レミリアはひらりと棺桶から飛び降りた。

　パチェが乗り付けてきたパーラーカーを愛おしげに撫でる。
　こんなに傷んでいるのに、あなたは私を求めてきた。なんて可愛い子なの
かしら。あなたも、もう立派な私たちの家族ね……。

「だから、ここで待っていなさい」
　ぴしゃりと言い放つ。
「これ以上追ってきては駄目。あなたが壊れてしまったら、旅を続けられな
いもの」

　異論は許さなかった。レミリアがそうと決めたのだから、もはや誰にも逆
らえない。紅魔館の主人の令は絶対だ。

　手を差し伸べてパチェを屋根から下ろす。
「あなたは私と……」
　もう離れ離れはごめんだから。

「そして咲夜、あなたはあのピエロを追いなさい。あいつはあろうことか、
この私を殴り合いで負かしたんだもの。とても許せたものじゃないわ。
　だから、あなたが仇をとるの。いいわね？」

　悪魔的微笑。当然、これも異論は許さない。

「油断をしては絶対に駄目よ」
　悪戯ばかりだと夕ご飯をお預けにされてしまうから、優しさも忘れずに。
「紅魔館の庭師にしたいぐらいの腕の持ち主だったわ。気をつけないと、あ
なたの首も刈られちゃう。……私を哀しませることだけはしないで」
　だったら自分が行け、という反論も許さない。
「お茶の時間には終わらせなさい」

　レミリアの小さな足が地面を蹴った。自分の影を置き去りにしかねない駿
足。空気の壁をぶち破って、しんがりの豪腕達磨に組み付いた。
　盾にするにはちょうど良いサイズね。キングサイズ？　私とパチェ、二人
をカバーしてくれるわ。―――そう呟いて、駄々っ子を両手で抱え上げる。
　そのまま館内に侵入。紅の疾風が封鎖戦に正面から突撃した。
【現在位置／Ｃ地区・研究所内】

562 名前：『Guncherry』asバニースタイル ◆PxpeacevxU ：2007/11/30(金) 22:06:25

>>559　　
　

♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥
　咀嚼音が鳴｜響く。　　　　　　　　｜　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　　　　 　　♥ 　
　咀嚼音が鳴｜く。 �U ｜ / 　♥
＼ �U / 　　　　　　　　　　　　　　　♥
　い破り肉を＼食い�Uぎり腱を噛み＼って骨にかぶりつき脂肪をなめ取っ 　　　　　♥
て赤い唇と紅い唇が重な＼�U赤い｜が白い牙に/挟まれて紅い唇が食いちぎられ ♥
て白い肌に白い牙が:::あて::�U::が｜れて い肌に＼い牙が突き立てられて白い赤 ♥　
い血があふれ出し::::::::: ::: /::*.. ::::: ::: げて脊髄を甘噛みし指にしゃぶりつき指を食♥ 　
いちぎり指を葉巻の::::::＊ 　::え太ももにしゃぶりつき下腹部に歯を立てて下 ♥ 　
:::::::::::::::::::::::::::::::::::: :::: :::::::───＼ ___________________________________________/
腹部に腕を突き入れ:::: :: ::: 　 :::::::::を＼ ____________________________________________________
咥え引きずり　　し/真::::::::: ::: ::::::::::::::::::赤頭＼巾の身体にデッドガールは飽きるこ / 　　
::::::::::::::と無くむしゃぶり/いて。＼咀::::して咀嚼して咀嚼し　　　　　　　　　　　　　　　　＼
飲み込んで飲み込んで飲 　 血を啜り飲み干して飲�U干して飲み干して咀嚼して　　｜
み込んで血をり/を啜り＼血を啜り飲み干して飲�U干して飲み干して咀嚼して ♥
咀嚼して咀嚼/飲み込ん �U飲み込んで飲み込んで＼血を啜り血を啜り血を啜り ♥
んで飲み込 �Uで血を啜り血　�Uり血を啜り飲み干して飲�U干して飲み干して咀 ♥
嚼して咀　/嚼して飲み�Uんで飲み込んで飲み込　�Uで血を啜り血を啜り血 ♥
啜り飲みし/て飲み干して/＼み干して飲み干して飲み/＼干して飲み干して ♥ 　
　 / / ＼ ＼ / 　　
　　　　　 / / ───/──────────────────　　
ごちそう / さま 　　　/ 　
────────── 　　


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　───────────　　　　
　　｜　　　　　　　　　　　　　　　　　＼干して飲み干して咀嚼して＼　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　───────────　　　　　　　
そしてオレは新しくこの世界に生まれた。　 　　　　　　
夕焼けの世界が見える、この世界の黄昏時が。　 　　　　　
とっても綺麗だから、オレは泣いていた。世界の美しさを知って、だから、生まれながら
泣いたんだ。Hello.My Glourius world！Are you　Happy？　
幸せだよ。だって歌えるんだ、話せるんだ、I kick you！ぶっこめるんだ。　
流れろ、涙…オレの矜持のために。　　
　
腹を撃ち抜き、オレは生まれる。幻影のカラを破ってオレは生まれた。　
コルトSAA、硝煙棚引くシルバーバレルを引っさげて。　　
ウサギと一緒に森を歩こう！おそろいの付け耳つけて、蝶ネクタイを
オシャレに決めて、スーツで森をきっくきっくとん。　
腹を破られ呻く女にくるくる回ってご挨拶。　
　
「いーっだ」…ご挨拶ったら、ご挨拶。　　

563 名前：◆M12sisrIV6 ：2007/11/30(金) 22:46:30

メイ＠マルチアーノ12姉妹ｖｓエリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ　導入
　
　
　また、悪い癖が出たと思った。
　彼女の悪癖には、もう慣れっこになってしまった、と思っていたけれど。
　改めてこういう時、彼女が瞳を輝かせて夢中になっている時。
　私は一体いくつの溜息で、彼女の周りを満たせばいいのだろう。
　
　
　「へえ、こういうところでも結構な品揃えしてるもんなんだ」
　
　立ち寄ったのは、程近い銃砲店。
　アメリカ西部開拓時代のサルーンを模した外観と、中のショーケースに並べられた自動
拳銃とのギャップには、どうしても違和感を感じてしまう。
　もっとも、声の主はそんな程度のこと気にも留めていない様だけど。
　
　「……それで、メイ。お目当ての部品は見付かったの？」
　「あー、いや。それが、さ」
　
　煮え切らない返事。
　そもそもここに来ることになったのも、彼女の銃――SPAS12ショットガンの「リフター
がおかしい」とか「フォアグリップの動きが渋い」とか、よく分からない不調を訴えた揚
げ句に「そういや、これでぶん殴ってからだったかな。バレルが曲がって」と、とんでも
ない事まで言いだして。
　
　「その、来る途中でこの店みつけて、後ででも中を見ていこうかなー、なんて」
　「あきれた……」
　
　悪戯を見付かった子供の様に、上目遣いでじっとこちらの様子をうかがっているのを見
ると、怒るより先に笑ってしまいそうになる。
　そして私が何か言い出す前に、割れたショーケースの中を見て回るのも。
　まるで砂場の中に置き忘れた玩具を探して回る子供みたいな目で。
　ガラスの破片をぱらぱらと落としながら取り出したのは、ロングスライドの45口径（ハードボーラー）。
　GargoylesのClassicを掛けてSPAS12と両手に構えて、
　
　「地獄で会おうぜ（Hasta labista）、ベイビー（baby）」
　
　そういえば、この間の休日に、丸一日メイに付き合わされたんだった。
　しかもシーン毎に懇切丁寧な解説付き、いやでも覚えてしまう。
　
　「シュワルツネッガーって柄じゃないでしょ？」
　「そうかなぁ……結構いけると思ったんだけど」
　
　サングラスをずらしてにやり、と笑うとそのまま放り投げて、今度はクラシックなリボ
ルバー、S&W M29。
　しかめっ面しながら
　
　「やれよ、楽しませてくれ（Go ahead , make my day）」
　「はいはい。……で、次は何？　ダーティー・メイさん？」
　「付き合い悪いな、この本部長様は」
　「あら、“サソリ座の女（Scorpio）”役じゃないの？」
　
　わざと意地悪くくす、と笑ってみると、そっぽを向いてM29もポイ。
　きょろきょろと見回して、今度は何を見付けたのかショーケースを乗り越えてガンロッ
カーへ。
　今度はセガール？　それともドン・ジョンソン？
　
　「……またイーストウッド？」
　「ジョン・ウェインに見えないかな」
　
　少し拗ね気味に答えた姿は、ガンベルトに二挺拳銃、ウィンチェスターのライフルを担
いでスパーの付いたブーツまで。
　壁に掛かった黒いテンガロンハットを手にすると、頭に載せてカラミティ・ジェーン気
取り。
　
　「それよりも、それ」
　
　腰のホルスターに収まった、金色のコルトSAA。
　第二次大戦の英雄、パットン将軍愛用のレプリカモデル。
　残念だけど、西部劇の世界には到底似合わない。
　……それとも、パットン将軍とカスター将軍を間違えているのかしら。
　
　「ああ、これね」
　
　私の銃、ルガー・パラベラムを指さしながら、不思議なくらい嬉しそうに、
　
　「ほら、お揃いお揃い」
　「……そう？」
　
　かたやルガー・パラベラム P-08、鍍金と彫刻の施されたヘルマン・ゲーリングモデル。
　コルトとルガー、リボルバーとオート、アメリカとドイツ、パットンとゲーリング、陸
軍と空軍、戦車と飛行機。
　
　「共通点を探す方が大変なくらいよ？」
　
　からかい気味に言った、ちょうどその時。
　いつになく真剣な顔で、
　
　「……エイプリル。悪いんだけど、みんなのところに戻ってて」
　「え？」
　
　少し調子に乗りすぎたのだろうか。
　そう思ったのが表情に出ていたらしく、メイは手を振って否定した。
　
　「違う違う、そうじゃなくて……あたしはここでもうちょっと遊んでいくから。
　向こうもみんな待ってるだろうし、な？
　ジャニアリーなんか、今頃『そんなことでリーダーが務まりますの！』とかヒステリー
起こしてるって」
　
　そう言いながら、無理矢理回れ右させられて背中を押されて店の裏口へと。
　
　「ちょっと、メイ！」
　「すぐに戻るから」
　
　被っていた帽子を押し付けられて、これは何のつもりなんだか。
　強引なのはいつものことだし、仕方なく言われるままに帰ることにした。
　
　途中で何度か振り返ってみたけれど、ずっと手を振っていて。
　彼女が何を考えているのか分からなくなった私は、何度目かの溜息をついた。
　
　

564 名前：メイ＠マルチアーノ12姉妹 ◆M12sisrIV6 ：2007/11/30(金) 22:47:19

>>563
　
　エイプリルの姿が段々小さくなって、ようやく見えなくなってから、メイは銃砲店の裏
口のドアを音を立てない様に慎重に閉めると腰に下げた二挺の銃を確かめた。
　銃身に入っている刻印は口径.45LONG COLT弾仕様、銃身長5-1/2in.。
　ハンマーを起こしていくと３段階のノッチ音を経てフルコック、トリガーを引くと高い
金属音を立ててハンマーが落ちた。
　とりあえず、使用に問題はなさそうだ。
　ウィンチェスターM1892の方は、幸いにも口径.45LC、SAAと弾を共用できる。
　レバーを起こすとボルトが後退しハンマーを起こす。
　閉鎖して、ドライファイア。
　こちらも問題なし。
　肝心の弾薬は、とカウンターの抽斗を探るとWinchester Super-X のシルバーチップが三
箱にHornadyの45ACP+Pが一箱。
　SAAには六発ずつ、ウィンチェスターには10発装填し、残りはガンベルトのループに付け
ておく事にした。
　これで52発、残り八発は念のためスカートのポケットに。
　
　45ACPが気になったので、先刻放り投げたAMTハードボーラーを拾い上げる。
　弾倉を抜きスライドを引いてドライファイア、軽快な音を立ててハンマーが落ちるのを
確認し、弾倉に七発装弾。
　スライドを引いて薬室装填後、もう一発弾倉に装弾する。
　コンバットロード、ハンマーを落としてガンベルトの背中に差す。
　残りは箱のままでカウンターの上にことん、と置く。
　
　「ま、これが杞憂だったら良いんだけど」
　
　呟いてHornadyの箱を置いた隣に肘をつき、顎を乗せて入り口の扉を見るともなしに見つ
めていた。
　ブーツの爪先で床を蹴りながら、取り付けられたスパーの音に耳を傾ける。
　しゃん、しゃん、まるで鈴の音みたいに。
　しゃん、しゃん。
　
　
　【現在地　D地区：銃砲店内】
　

565 名前：タイターニア ◆DOLLmR5Q5A ：2007/11/30(金) 23:02:07

赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>559>>562
　
♠
　
　かわいそうに。お腹を破られたプリマヴェラは痛みのあまり地面をのたうち
まわりました。その身体は地獄の業火のような激痛にさいなまれ、弱々しく痙
攣してい■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
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566 名前：◆DOLLmR5Q5A ：2007/11/30(金) 23:02:30

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■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■黙示的破滅（カタストロフ）が近付いている。
　祭りの終わりはもう近い。この森ももうすぐ消えてなくなる。
　だからここからは、おれがお前らに語ってやろう。
　簡潔に、事実だけを。
　
　

567 名前：◆DOLLmR5Q5A ：2007/11/30(金) 23:03:10

>>566
　
　プリマヴェラの腹に開いた大きな穴をダーマプラスチックのドレスが縫合（スティッチ）
した。自動人形（オートマタ）の腹を自動的（オートマチック）に。
　
　彼女の纏っている服の素材はダーマプラスチックだ。
　環式分子が量子の編み物のようにつながったプラスチック。皮膚（ダーマ）プラスチッ
ク。膠原（コラーゲン）と弾力素材（エラスチン）の生きた培養組織。
　
　くそったれな人形の女王から説明があったように、ダーマプラスチックは素
材の末梢神経と着用者の末梢神経を接続してしまう。
　
　衣服と肉体が溶け合う。
　縫合（スティッチ）した傷口を人工筋肉と人工皮膚がぴったりと覆う。止血し保護する。
　ドレスから放たれるインパルスが神経束を上向きに伝わって、破滅的に官能
的な快楽を脳に送り続ける。鎮痛。
　傷口を皮膚（ダーマ）プラスチックが塞ぎ、痛みを皮膚（ダーマ）プラスチックが癒す。
　
　人と服の融合＝蠱惑（アルーア）。
　
　衣服と共生者となったプリマヴェラが立ち上がる。
　だがその顔色はいつもよりもさらに酷い。まさに死人そのもの。
　
「とんだ出産ね。凄く大変だったわ。あなたちょっと太りすぎじゃない？」
　
　血反吐の混じった唾を吐き棄て彼女はそれでも悪態をつく。
　それはつまり悪態をつくだけの余裕があるということだ。
　衰弱はしている。だが死にはしない。彼女は自動人形。大事なものは全て子宮（マトリックス）
に入っている。腹をぶち破られた程度では死にはしない。
　

568 名前：◆DOLLmR5Q5A ：2007/11/30(金) 23:03:52

>>567
　
　プリマヴェラがもういちど血反吐の混じった唾を吐く。同時に彼女の身体が
跳んだ。
　地を蹴りつけ、残された森の木々を蹴り付け、夜の森を縦横無尽に駆け巡る。
　下は上へ右は左へ縦は横に横は縦にさかしまに理不尽に縦横無尽に駆け巡る。
　
　プリマヴェラが森の木々を足場に圧倒的な速度で跳びまわる。闇夜の森の中
を高速で動き続ける。
　悪くは無い手だ。自動人形（ヴァンパイア）の機動力を十全に発揮すれば、人間に捕らえきれ
るものではない。
　それは一流の兵士とて同じことだ。――――相手がただの人間ならば、だが。
　
　そうしてプリマヴェラは高軌道で敵の視界からから消え去り、一気に間合い
をつめようとした。
　
　闇の中で彼女のかわいらしい小さな白い手がひらめく。
　そこには赤い爪。丹念にネイルアートのほどこされた彼女の爪。長く鋭く硬
い。まさに鈎爪。彼女の身体能力の生み出すパワーとスピードがあれば刃物に
も兇器にも狂気にもなりえた。
　
　彼女は走る。森の中を走る。闇の中を走る。鈎爪をひらめかせ得物めがけて
走る。そして、死を纏った天纏（天使）のように彼女はガンスリンガーへと
　
――――舞い降りた。
　
【現在地：Ｃ地区　森】

569 名前：エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ ◆SV001MsVcs ：2007/11/30(金) 23:40:57

メイ＠マルチアーノ12姉妹ｖｓエリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ

>>563>>564
　
　遊園地での戦闘後、移動の前に休憩がてらアタシたちは装備を広げた。
　一時的にだろうが安全と踏んだのと、大きな戦闘を二回経て装備の消耗が気になったからだ。

「フィオ、そっち残弾どのくらい？」

「半分切ってます。エリちゃんは？」

「拳銃弾以外はだいぶ使っちゃったわね。あと一、二回戦闘したら打ち止めってところ。
　これじゃ目標地点へ辿り着いても弾切れで返り討ちに遭いかねないわ」

「さっきの大軍相手がヘヴィー過ぎましたね」

「その前の化物も重かったよ。施設爆破用のプラスチック爆弾がたった一体に食われちゃった」

「はあ……いきなり落とされたのからずっと誤算続きです」

　そう言ってフィオは広げた装備の一つ――自前のランチボックスからサンドイッチを口へ運んだ。
　大口を開けてもっきゅもっきゅと食べる。

「道に迷ったのもね。妖精の悪戯かっての」

「もぐむぐ……案外そうだったりするかもしれませんよ。さっきの女の子も実は妖精さんだったのかも」

　食べますか、と勧められた一つをもらい、かもね、と同意した。

　・　・　・　・　・

「弾薬を分配した結果、補給が必要だという結論に達しました。上級曹長どの」

「そうですね、無補給での作戦続行は困難と言わざるを得ませんね。二等軍曹」

　ランチボックスとアイスティーの入った水筒を空にして装備をまとめ、アタシたちはこの街の地図を広げた。

「そこでこれからＤ地区に向かって、補給を行おうと思います」

　トン、と地図に指を置く。

「ここは住宅街、商店街の地区で、事前に得た情報から銃砲店があることが判明しています」

「しかし残念な事に私達は弾薬の補給が出来るほどの手持ちがない」

「緊急事態につき徴発としましょう」

「うん。非常手段をつかわざるをえない」
　
　階級を意識したおふざけまじりのやりとりを交わし、アタシたちはＤ地区の商店街へと向かった。
　遊園地に迷い込んだ来歴から考えると辿り着くかどうかは怪しいところだったが。

「――今度はちゃんと着いたわね」

「妖精さんの導きでしょうか」

　特に支障なく商店街へ到着。拍子抜けする一方、戦闘を強いられることなく済んでほっとする。
　とはいえ、状況が状況だけに油断は出来ない。

「対応弾薬あるといいですね」

「なかったら銃ごといただいてこう。問題は」

「問題は？」

「既に弾も銃も残ってない場合がありうる」

「…………それは」

「まあ目的地への道程からは外れてないから無駄足にはならないよ」

　そうこうしているうちに銃砲店へと辿り着いた。

「残ってるといいんですけど」

「さてさてどうなるかな」

　扉を開ける。
　アタシとしては、恰幅のいい店主に「動くな！　俺の店に何の用だ！」とショットガンを突きつけられることぐらいは想定してたんだけど。

　その想定はさっくりと返された。

　店の中には、ショートカットの銀髪に黒いドレスの少女が一人。
　カウンターの上に顎を載せてこっちを見ていた。
　首から下が咄嗟に見えなかったせいで、一瞬生首が置かれているのかと思った。

「……店の人、かな？」

　一応の確認で聞く。
　服装と雰囲気はとてもじゃないが鉄砲屋のそれじゃないけども。

「あるいは武器を求めて来た人、ですか？」

　しゃん、しゃんと音がする銃砲店で正体不明の少女と相対する。
　何かの映画か、この状況。　



【現在地　D地区：銃砲店内】

570 名前：『Guncherry] ：2007/11/30(金) 23:44:57

　
右手を上に元気良く──左手は指差す赤茶けた土に。　
これってきまったポージング、Saturday Night Feverの伝統溢れるポージング！
そしてオレは言う。脚をちょっと曲げて屈伸…こうして立つと、まっすぐ立つ　
よりも体のライン、綺麗に見えるんだ。バニースタイルだもの。いっそうCute♪　
　
「ゴメンねママ、愛らしいオレのママ！悪い子でゴメンねオレはヤンキー。　
とても口じゃいえないくらいの、そうさオレはBad-Girl。アンタのおなかに　
きっと大事なもの、忘れてきたんだよ」　
　
ダイジナモノヲ、キットオナカニ。　
　
赤頭巾は、狼のお腹から救い出された後…狼に何をした？　
おなかのなかに、沢山の重り。動けないほどの沢山の重り。　
　
人形は間違いなく「赤頭巾」を食べた。そして幻想を吸収した。　
フランスの赤頭巾はそこで死ぬけれど、あの莫迦魔術師の力と　
ウサギの魔力で改変された赤頭巾は、みんなも知ってるドイツ番！　
　
ここは森。森のリドルはまだ続く。死にかけの森だけれども、まだ　
森は生きている。　　
　
人形なのにそんな指先、とてもうらやましいって思うほど白い手。　
ちっぽけなオレの男の子みたいな伸びきらない指なんか比べたく　
ないくらいの手足。けれどそんなの────So,What?

鋭く迫る爪、けれど重くなる体、あがくほどにどんどんと体にたまる　
『赤頭巾と狼のギフト』の前にはすっげぇこれってKoiking！　
振り上げた右手、ゆっくり相手に向かって下ろして…無表情な顔でまたまた　
オレは言ってやったのさ。　
　
「ゴメンねママ、オレはヤンキー。これ以上ないってくらいにアンタの腹に　
大事なものをケツラクさせて生まれてきたのさ」──ばぁん。　

　
【現在地：Ｃ地区　森】

571 名前：『Guncherry』azバニーガール ◆WPOkEMonrM ：2007/11/30(金) 23:47:18

>>565>>566>>567>>568
赤頭巾 vs プリマヴェラ
　
右手を上に元気良く──左手は指差す赤茶けた土に。　
これってきまったポージング、Saturday Night Feverの伝統溢れるポージング！
そしてオレは言う。脚をちょっと曲げて屈伸…こうして立つと、まっすぐ立つ　
よりも体のライン、綺麗に見えるんだ。バニースタイルだもの。いっそうCute♪　
　
「ゴメンねママ、愛らしいオレのママ！悪い子でゴメンねオレはヤンキー。　
とても口じゃいえないくらいの、そうさオレはBad-Girl。アンタのおなかに　
きっと大事なもの、忘れてきたんだよ」　
　
ダイジナモノヲ、キットオナカニ。　
　
赤頭巾は、狼のお腹から救い出された後…狼に何をした？　
おなかのなかに、沢山の重り。動けないほどの沢山の重り。　
　
人形は間違いなく「赤頭巾」を食べた。そして幻想を吸収した。　
フランスの赤頭巾はそこで死ぬけれど、あの莫迦魔術師の力と　
ウサギの魔力で改変された赤頭巾は、みんなも知ってるドイツ番！　
　
ここは森。森のリドルはまだ続く。死にかけの森だけれども、まだ　
森は生きている。　　
　
人形なのにそんな指先、とてもうらやましいって思うほど白い手。　
ちっぽけなオレの男の子みたいな伸びきらない指なんか比べたく　
ないくらいの手足。けれどそんなの────So,What?

鋭く迫る爪、けれど重くなる体、あがくほどにどんどんと体にたまる　
『赤頭巾と狼のギフト』の前にはすっげぇこれってKoiking！　
振り上げた右手、ゆっくり相手に向かって下ろして…無表情な顔でまたまた　
オレは言ってやったのさ。　
　
「ゴメンねママ、オレはヤンキー。これ以上ないってくらいにアンタの腹に　
大事なものをケツラクさせて生まれてきたのさ」──ばぁん。　

　
【現在地：Ｃ地区　森】

572 名前：ちびふみこ ◆HPv8dyzZiE ：2007/12/01(土) 00:01:57

>>556
>>
　グルマルキンの視線の先。
　そこに立つのは、フリルの夜会服を着た赤毛の少女。
　小さな手に、硝煙たなびく黄金のルガーを構えながら、少女はグルマルキンの
驚愕と苦渋、それを涼しげに受け流して笑って見せた。

「久しぶりね。"あの"飛行船以来かしら」
　
　鈴を転がすような、透き通った声。
　見るものを魅惑する、可憐な姿。
　けれど、その立ち振る舞いは、あくまで淑女の佇まいを忘れず、典雅に、優雅
に。

「ああ……この姿でははじめましてになるのかしら？　ねえ、グルマルキンお、
ば、さ、ま」
　
　おばさま、の部分を強調してみせる少女である。
　会話にさりげない毒を混ぜる事を忘れない。
　それもまた、淑女の嗜み。

　姿かたちは変わっても、その本質は変わらない。
　彼女の名は、ふみこ・オゼット・ヴァンシュタイン。
　大独逸の生き残りにして、400年の時を生きる魔女である。

「《聖櫃》の次は《聖杯》？　貴女もよく飽きないわね」
　
　ふみこは、呆れたように肩を竦めて見せる。
　その口調には、隠す気のない嘲りが含まれていた。
　
「三年前のあの時から、貴女は何一つ変わってはいないのね。いいえ、むしろ退
化しているのかしら？」
　
　ふみこの目が細まり、口元が綻ぶ。
　指した指先は、俯くアリスに。
　
「まさかあの悪魔が、チェスゲームに興じているなんて。それも、子供相手に大
人げもなく全力で」
　
　くすくす。
　それは、鈴を転がすような笑い声。
　しかし、それを聞くものは皆、その可憐な笑みの中に含まれた侮蔑の感情を悟
らずにはいられない……そんな空寒い声だった。

573 名前：―完全で瀟洒な従者― 十六夜咲夜 ◆Clock/PR2Y ：2007/12/01(土) 00:07:24

>>561
　
「かしこまりました、お嬢様」
　
　メイドにお茶を準備させるのも貴族の嗜み。主に美味しいお茶を飲んでもらうのがメイドの嗜み。
　ならば、答えないわけにはいかない、きっと。
　芥子の花のお茶にしてみよう。たまには気分を変えて。
　
　それでは私は正面から堂々と行かせていただきます。
　止まった時間の中を闊歩。
　一歩、二歩、三歩で飽きる。
　
　正直に言えば早く帰りたい。
　紅魔館が荒れ果てた姿になっているのは想像に易いのだから。
　だから手っ取り早く―――だ。
　
　掃除を早く片付けてしまえば列車は動き出すのだし。
　見つけるよりも見つけてもらったほうがきっと早い。
　そんなメイドの直感。
　
　メイドにはそんな特殊技能も必要なのだ、多分。
　
「――乾燥してるわねえ」
　
　なにがでしょうか？

574 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/12/01(土) 00:24:14

>>560>>561>>573




　突撃／あろうことか巨体を盾にしての突入。
　攻撃不能―――しても全て無意味に終わる。
　衝撃吸収素材で出来たクレーン車のような巨体の飛翔―――粉砕される樹木、植物＝元
研究所だった施設。
　大量の木片とモルタル、コンクリートを撒き散らす衝撃。立ち上る粉塵。
　封鎖された玄関口／意味も成さず倒壊／中身を晒す。

「キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ！！」

　絶叫／炸裂する大いなる衝撃が粉塵を散らす／ベイビーヘッドのハンマーパンチ。
　振り下ろした左手に続いて右手を振り回す／“絞殺魔”の握力が死刑を求める。

　作動―――警備システムの武装／軽機関銃からの小口径高速弾＋グレネードランチャー
からの四十ミリ榴弾。製薬会社の警備装置には物騒すぎる代物。前後左右から弾幕を張り
ベイビーヘッドの攻撃を支援＝紅と紫の逃げ場を絞り込んでいく連携。

　連携―――実験棟から飛び出す二体＝ホッパー／スパンカー。
　天井／壁／実験装置／窓ガラス／ベイビーヘッド／サーカスのようなアクロバット。
　ラグビーボールのように跳ね回って鉤爪を振り下ろすホッパー。
　ハリケーンのように鞭を振り回しながら吹き飛ばすスパンカー。
　確実に殺傷するための機動。

　血の様な真紅と紫―――この世ならざるものを破壊するために。




　続く連携―――通路内のスプリンクラー作動／シェイキーの通電／不可視のバリケード。
　引き寄せられる敵―――銀色の髪と銀色のナイフを振るうフレンチメイド。
　隔壁作動／遮断／密室を作り出す＋ポイズンスターの毒ガスカプセル。
　さらに閉ざされた隔壁へ向けて対人地雷の設置。

　三重の防御。

　防御／シェイキー／ローチー／ポイズンスター／更にその奥。
　植物の蔓と根が這い回って白かったはずの壁を上書きした、その先。
　フリント／倉庫へ通じる扉からゆっくりと姿を現す―――黒く輝く軍刀とともに。
　その手には白いケース。中には緩衝材に包まれたアンプルが一ダース。
　決して失えない物。




【現在位置／Ｃ地区：研究所内】

575 名前：◆DOLLmR5Q5A ：2007/12/01(土) 00:43:18

赤頭巾 vs プリマヴェラ
>>571
　
　戦闘は終局へ向けて加速していく。
　だからそれは１秒よりもはるかに短い間に起こった。
　
　プリマヴェラの身体が加速度的に重くなっていく。
　プリマヴェラの身体が加速度的に遅くなっていく。
　
　森の呪いが彼女の身体を絡めとっていく。
　あたかも、もうすぐ童話はおしまいだから用済みになったオオカミはもう退
場しろといわんばかりに。
　
　失速し、失速し、失速し、地に落ちる。
　
　――――鈎爪はとどかない。
　
　見上げれば、ぽっかりと開いた奈落の穴のような銃口。
　降り注ぐ銃弾。飛来する銃弾。死の象徴。
　プリマヴェラの増幅された知覚が、銃弾に刻まれたライフリングの痕跡一条
一条をも捉える。
　量子の魔法。何も無い空中に存在しない物質を想造。それを蹴り付け、反動
で大きく横に跳ぶ。
　
　だが全てはかわしきれない。銃弾が容赦なく彼女の身体を抉る。
　次の瞬間、プリマヴェラの全身から血のシャワーが噴き出した。
　
　赤い血が彼女の全身に降り注ぐ。己の血にまみれて倒れ伏す。
　紅いドレスに赤い血が、白い肌に赤い血が。
　
　朱に彩られた彼女の肌はあまりに白く、その反射率（アルベド）は

576 名前：プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A ：2007/12/01(土) 00:43:40

>>575
　
　
　
　
　
　
　ちょっと待って！これはわたしの物語よ！
　
　だからわたしが語るわ！わたしを語るわ！
　
　
　
　
　
　
.

577 名前：プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A ：2007/12/01(土) 00:44:05

>>576
　
♠♣◆♥
　
　痛みに耐えてわたしは立ち上がったの。
　傷は深かったわ。もうダーマプラスチックから送られてくる快楽でも消しき
れないほどに。身体は重かったわ。もう永遠に眠ってしまいたいほどに。
　
　衣装によって増幅強化された感覚が、森の風景を鮮明にとらえていたわ。
　煮沸する世界。生まれては消える泡のよう。なんてきれいなのかしら。
　
「プリマヴェラ！」
　
　あらイギー。来てくれたのね。少し遅かったけどうれしいわ。
　そう、これで役者も道具もそろったわ。
　
　だからイギーとアイコンタクト。イギーとは４年の付き合いになるから、も
うお互い以心伝心なの。……たかが4年ですって？馬鹿にしないで。４年といっ
たら、わたしの人生の４分の１以上なのよ。長い長い時間だわ。
　
　さーて、細工は流々、あとは仕上げを御ろうじろ！
　
　最後にもう一度、かわいらしく忌々しいガンスリンガーに華麗に一礼。可愛
く一礼。健気に一礼。もちろんスカートの裾をつまんで、ね。
　
　そしてわたしはこう言ったの。
　
「死んでくれる？」
　
♠♣◆♥
　
　

578 名前：プリマヴェラ・ボビンスキ ◆DOLLmR5Q5A ：2007/12/01(土) 00:44:34

>>577
　
♠♣◆♥♠♣◆♥
　
　スーツケースが内側からはじけ飛んだわ。そして衣服が、たくさんの衣服た
ちが飛び出してきたの。ドレス、ガウン、スーツ、スカート、ジャケット、ア
クセサリー、ストッキング、ジャンパースカート、ギャザースカート、フレア
スカート、プリーツスカート、ティアードスカート、ドレープスカート、レー
スアップスカート、イレギュラースカート、オーバースカート、ドレス、エプ
ロン、パニエ、帽子、ブラウス、コルセット、ビスチェ、カットソー、ソック
ス、タイツ、ケープコート、プリンセスコート、トレンチコート、鴇色、躑躅
色、桜色、薔薇色、韓紅、珊瑚色、紅梅色、桃色、紅色、紅赤、臙脂、蘇芳、
茜色、赤、朱色、紅樺色、紅緋、……etc,etc
　
　わたしのもつ衣装（コレクション）の全てが！
　
　そして飛び出した衣服たちが踊りだしたの、人間のように――人形のように？
――踊りだしたの。夜会服がひらひらと舞い歩き、優雅にわたしに会釈をしたわ。
　
　生きたドレスやガウンたち。空虚の仮面舞踏会（マスカレード）
　まるでトリマルキオの饗宴に集ったけばけばしい屍衣たちのよう。
　
　そして衣装たちはわたしを守るようにガンスリンガーも前に立ちふさがったの。
　
　それはもうトランプの兵隊ならぬドレスの兵隊。
　プレタポルテの兵士たち、オートクチュールの騎士たちよ！
　かれらはこの森を衣裳部屋（ワードローブ）へと変ていったの。
　
　どの服も素材はダーマプラスチック。
　皮膚（ダーマ）プラスチック。
　ダーマプラスチックを構成するのは、人間の生体システムと相互作用する神経終末、
それにつながれた電動筋肉、そして人工皮膚。
　だけど何よりも大事なのはドレスの皮質に脳葉を移植してあること。
　だから経験と記憶の蓄積さえあれば、自立行動も可能なの。
　
　衣装（ファッション）に大脳皮質を移植するなんて人間の考えることって本当に素敵よね。
　そう、皮膚（ダーマ）プラスチックこそファッションの黙示録よ！まさに呪物（フェティシュ）！
　陶酔感が脳に火をくべるわ。いたみなんて吹き飛んじゃう！
　
　わたしは蠱惑（アルーア）と量子の魔法で彼らを支配したわ。
　衣服王（ラ･サーブ）とでも呼んでちょうだい。
　そしてわたしは衣服の国の女王になって、衣装の兵隊たちに命令を下したの。
　
「首をはねてしまいなさい！」
　
　そして衣装たちはさあっと舞い上がって、ウサギさんの上に降り注いでいきましたとさ。
　
♠♣◆♥♠♣◆♥
　
　
【現在地：Ｃ地区　だれが彼女を殺したの】

579 名前：メイ＠マルチアーノ12姉妹 ◆M12sisrIV6 ：2007/12/01(土) 00:51:35

メイ＠マルチアーノ12姉妹ｖｓエリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ
>>569
　
　ガラスの割れて木枠しか残っていない扉を、それでもご丁寧に開けて入ってきたのは、
若い女の二人連れ。
　グリーンとカーキの上着には大小サイズの入り混じったポケットが付き、腰には雑嚢と
覚しきバッグを下げている。
　肩からスリングで提げているのは、サブマシンガンだろう。
　
　「……ま、どう見ても観光客には見えないよな」
　
　ぽつりと呟いてから、二人を交互に見てみる。
　明らかに戦闘馴れしていそうな長身の女、そして眼鏡を掛けて間延びした様な声で話す
女と。
　服には階級章や所属を示すパッチが見当たらない。
　こういうのは不正規戦馴れした軍人の、それも特殊任務中の連中がやることだ。
　だとすると、厄介なのが来たもんだ、とこれは心の中で。
　
　「ん〜〜……“半分”当たり、かな」
　
　姿勢はそのままで、答える。
　
　「まず店の人、っていうのはハズレ。
　あたしはこの店にはついさっき来たばっかりでね。
　そして」
　
と、眼鏡を掛けた方を指さして。
　
　「惜しいね。
　あたしの銃、そこに転がってるSPASだけど、今ちょっと調子が悪くてさ。
　んで、代わりのを調達に来た訳。
　今残ってる弾は、これかな」
　
　隣に置いた赤色の紙箱を指し示した。
　
　「そして、『惜しい』ってのは一つ。
　あ、そうそう。その前に見ていかない？
　あたし主演のワイルド・ワイルド・ウェスト・ショー。
　お代は見てのお帰り、ってね」
　
　よっ、と立ち上がると腰のホルスターからSAAを抜く。
　トリガーガードに指を引っかけると、くるくると回してみせる。
　背中から肩越しに投げて、前でキャッチ。
　そのまま親指でハンマーを起こして、銃口をこめかみに向け、トリガーを引いて。
　
　「……Bang!　とまあ、この通り」
　
　硝煙が立ちこめる向こうで、メイがにやり、と笑った。
　
　「この一発は、ハンデにしておいてやるよ」
　
　
　【現在地　D地区：銃砲店内】

580 名前：グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆ORDEN1uWpQ ：2007/12/01(土) 01:03:39

グルマルキンｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『アリス戴冠―Queen ALICE is born in the Reims―』

>>572

　ふみこ・オゼット・ヴァンシュタイン。グルマルキンと同時代に生まれ、
同じ帝国に身を預けた、同じハーケンクロイツの魔女。ともにナチ党に所属
しながら、利害を徹底的に対立させて来る天敵に等しき相手。

　―――なぜ、彼女がここに。

　あまりに予想外の乱入。訝しまずにはいられない。イレギュラーに等しき
森蝕を、この女はどこから嗅ぎ取った？

　……いや、違う。そうではない。

　魔女は魔女を追ってきた。
　オゼットの狙いは森ではなく、自分か。そう考えた方が納得も容易い。今
や形骸に成り果てたジル・ド・レイ召喚の儀式。どこからか、情報が漏れて
いたのだろう。大方、飛行船でつけられなかった決着つけにでも来たのか。
　グルマルキンの口元が苦渋に歪む。なんて的外れで傍迷惑な来訪者だ。
　白の軍勢を駆逐し、奇跡を手にしようとしているこの時に！

　大体、この女は私よりも年上だ！

「なのにその戯けた格好はなんだ……飛行船でともに南極を目指していたと
きは、半世紀前と同じ出で立ちだったと記憶しているが。―――さて、総統
の代わりに自分を使ってくれるマイスタでも見つけたか？」　

　相変わらずの尻の軽さだとせせら笑い、グルマルキンは右腕の炎を再生さ
せた。「赤のクイーン」のギフトは白の陣営相手にしか効果を及ぼさないが、
神秘への求道も忘れて現代兵器に頼るような半端な魔女など、素の魔力でも
十分に対抗できる。
　頭ではなく腕を撃ち抜いたことを、後悔させてやろうではないか。

「前菜にはちょうど良い……森の聖杯を我が胸に宿し、奇跡の階段（きざは
し）を昇る前に、過去の因縁を精算してやる」



【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）最深部〈妖精の樹〉】　

581 名前：エミリオ・ミハイロフ ◆EMILIozylo ：2007/12/01(土) 01:16:47

　僕がここにいる経緯なんて、どうでもいい。
　ここにいたいと思ったから、ここにいる。
　在りたいように、僕は在る。

　緑の闇に呑まれていくコンクリートジャングルを見下ろしながら、
　僕は辺りで奏でられる唄に身を委ねていた。

　成長を続ける木々の唄。
　呑まれて行く人々の唄。
　止む事のない闘争の唄。

　
　そして――――
　
　
　いつしか僕は、そこへと向かっていた。


　森蝕の爆心地。
　そこに響いた、歌声の下へ。
　
【C地区上空：ミスティア･ローレライの下へと移動】

582 名前：『夜雀の妖怪』ミスティア・ローレライ ◆8hOOMYSTIA ：2007/12/01(土) 01:24:42

>>581
さっさと消えた聴衆を余所に妖怪少女は余韻に浸る。
元来誰かに聴かせようという意識が薄い故に、客の帰りも気にならない。

「とは言え。あいつ等はもっと五月蠅くしてあげないと」

理由は分からない。
ただそう感じただけだ。
それは滅多にあることではない。

「気分が暗くなる歌なんて以ての外！」

雑音。
昏い音。

「なにか用〜？　これから会場を移すから、用事は後にして頂戴」


【C地区　高価な瓦礫のコンサート会場】

583 名前：日守秋星 ◆XVAMPIRE2Y ：2007/12/01(土) 01:39:47

>>557　>>558
　
「――――――およっ？」
　
　
一瞬の停滞。
秋星の手元から振り抜かれた得物が、確かな肉を突き破る感触を伝える。
しかしそれは、柔らかく華奢な乙女特有の物ではなく、筋骨隆々とした、男性の―――
　
見れば両者の間には、一つの肉の壁、、、があった。
少女の最も近くに居た軍人―――何やらご高名な演説を賜っていた―――男が、
己自身を盾として、少女を庇ったのだ。
　
先程の秋星の言葉は、はったりでも何でもない。
この距離、あの位置であるならば、他の誰がどんな行動を取ろうと、
少女を一撃の下に串刺しに出来る自信が彼にはあった。
　
しかしこの土壇場に来て初めて、現実（リアル）が日守秋星を裏切った。
常人よりも一歩も二歩も早く、否そもそも最初から最高速（トップスピード）に達しているはずの
秋星の一撃を、見てから反応できる人間など本来居るはずはない。
例えそれが多少の訓練を受けた軍人であっても、例外なく―――そのはずだった。
　
誰何の暇は、秋星には与えられない。
目の前の軍人を貫通し破壊した傷は、確実に致命傷ではあるものの、即死へと至る事はなく―――
口から大量に喀血した男は、笑顔のまま、、、、、、懐から自動拳銃（オートマチック）を取り出し。
何の躊躇もなく、発砲―――
　
する前に、秋星の左拳が死人の狂った笑顔を直撃する。
反動で深く深く肉体に突き刺さっていた鉄の得物がずるずると引き抜かれ、拳銃の狙いは明後日の方向に逸れ、
男の死体は血と糞便の臭いのする腸（はらわた）を撒き散らしながら吹き飛んだ。
　
　
「この期に及んでまだ逃げますか！？　アンタ！」
　
そんな日守秋星の叫びを聞いているのかいないのか、少女は何の反応も示さずにひた走る。
最早村の方向には一瞥すらくれず、既にこの周辺まで侵食してきていた「森」の深くへと。
　
「ええい、だがしかし、この程度の人数で、今のAGEAGE状態なオレを止められるとでもお思いか！
10人殺せば殺人鬼、100人ばかり殺したところでやっぱり殺人鬼ですけどね！？
ここまで来れば誰も彼もみな一緒くたに、鏖殺して進ぜよう！」
　
大見栄を切って、ぐるりを見渡す秋星。
そこに見えるは、戦場の風景。
彼の手を下すまでもなく―――混乱した軍人による射撃が、村人の頭数を減らし。
群集のそこかしこで、爆発と絶叫が木霊する。
　
　
「―――あれあれ、ちっとばかし血気が盛んすぎますな。
統制されていない集団なんて所詮こんなもんですか？
それにしてもちっと動きが不味すぎる。
これくらいなら、オレが相手するまでもな―――」
　
　
言った瞬間、四肢の自由が奪われた。
秋星の両足にすがり付くのは既に爆発によって上半身を吹っ飛ばされた中肉中背の青年。
右腕を握るのは細腕のうら若い金髪（ブロンド）娘。
左腕を押さえるのはがっしりとした体付きの壮年の男。
背中にしがみつくのは腰の曲がった老婆。
　
そして正面には、どこから調達したのか全身にダイナマイトと手榴弾を巻き付けて
鬼気迫る表情で突進する、少年の姿が―――
　
　
「――――――え、ええっ？」
　
　
日守秋星の容貌に浮かぶのは、恐怖でも悔悟でも諦念でもなく。
ただただ、困惑の表情。
じじじじ、という導火線を紅蓮の花が這い登る音が、周囲を彩る騒音の中、
やけに大きく、空間を引き裂いて―――
　
　
集落を覆い尽くすほどの爆炎と黒煙が上がる。
この日最後の、人間を材料（かやく）とした汚らしく美しい花火。
空より降り注ぐのは燃え残りの灰ではなく。
細かく引きちぎられた、人間の手・足・頭部―――
　
　
ぼたぼたぼた。
今宵は、ほしのかけらではなく。
むらのみんなのカケラがふるでしょう。

584 名前：エミリオ・ミハイロフ ◆EMILIozylo ：2007/12/01(土) 01:44:27

　つれない言葉。それすらも唄のよう。

「……せっかくお前の唄を聴きにわざわざ来たってのに……追い返すのかい？」
　少しだけ、寂しそうな顔をしてみせる。
　もちろん、それで小鳥の心が動くなんて思っちゃいない。

「ちょっとくらいサービス精神を発揮したって、バチはあたらないだろうさ……ねぇ？」
　僕の手に集まった光が、僕と小鳥の姿を照らし出した。
　
　
「……もっと唄ってよ……僕のために。僕だけのために……今、ここで……！」
　今にもどこかへ飛んで行きそうな小鳥に向かって、手を伸ばした。




　飛べない天使は、ただの人。
　勃たない野郎は、ただの肉。
　逝かない女は、ただの鮪。
　
　


　　　　　　　　　――――なら、唄わない小鳥は？
　
【C地区：瓦礫舗装のストリート】

585 名前：エミリオ・ミハイロフ ◆EMILIozylo ：2007/12/01(土) 01:44:59

（>>584は>>582へのレス）

586 名前：ちびふみこ ◆HPv8dyzZiE ：2007/12/01(土) 01:51:16

>>580
「この姿が何かって？」
　
　ふみこは笑った。
　目を細めて。
　可憐に。
　優雅に。
　
「わざわざ貴女に合わせてあげたのに、随分な物言いね？　だってそうで
しょう、グルマルキン。聖杯も、森蝕も、貴女自身も……ガキの遊びよ、
こんなものは」
　
　辛辣な言葉を笑顔で吐き捨て、ふみこは続ける。

「自分が道化だと気付きもしない馬鹿の相手を、まともにするつもりは毛
頭ないわ。……何を言っているのかわからない、という顔ね。ふん」

　可憐な姿。
　楽しげな声。

「グルマルキン。貴女は、あの空を書割だと思った事はない？　海の色を
絵の具の青だと思ったことは？　……いいえ、単刀直入に聞くわ。ねえ、
グルマルキン」

　そして、

「"貴女は果たして、本当に貴女自身なのかしらね？"」
　
――溢れる悪意。

「この森は、三年前に新宿を覆ったものと同じもの。それは貴女もわかっ
ているでしょう？　けれど、気付いているのかしら。この森は出来損ない
で、だからこそ"あらゆる幻想を内包する"ものだという事を」
　
　少女/魔女は嗤う。
　彼女が告げるのは、世界の真実。

「この森で現出する幻想は、《魔女》の本棚にはないものばかり。例えば、
石仮面。例えば、ペルソナ。例えば、二人目のジャンヌ・ダルク。集合無
意識、とでもいうのかしら？　この森の"本棚"には、およそ人々が見知っ
た全ての物語が収録されている」
　
　真実とは、幻想という世界を破壊する武器。
　魔女が言葉を紡ぐたび、世界は終焉へと向かって急激に加速する。

「森は脚本を演じる舞台。その上に立つ人間は、須らく何かしらの"役"を
持たなければならない。それが"ルール"。だから、ねえ？　グルマルキン・
フォン・シュティーベル。貴女も、もしかすれば――」
　
　
　
――グルマルキンの"役"を演じる、ただの幻想なのかも――
　
　
　
「……そんなものが聖杯だなんだと息巻いているなんて、滑稽だわ。哀れ
な道化。ねえ、グルマルキン。相手をするのも馬鹿馬鹿しいでしょう？」
　
　にぃ。
　その口元が、悪意を湛えて薄く歪んだ。
　彼女が語る言葉が真実か、そうでないのか。
　それは誰にもわからない。
　けれど、

「でもまぁ……せっかくここまで来たんだし。ただで帰るのも、それはそ
れで馬鹿みたいね」

　もし真実であるとするならば――、
　彼女こそ、この森という舞台の上で演じられる《森祭》という名の演劇
を終わらせる、機械仕掛けの神《デウス・エクス・マキナ》。
　
「さあ、おいでなさい、黒猫ちゃん――教育してあげるわ」
　
　少女は黄金のルガーを構え、にぃ、と不敵に笑って見せた。

587 名前：『Guncherry』azバニースタイル ◆PxpeacevxU ：2007/12/01(土) 01:55:59

>赤頭巾VSプリマヴェラ　
【現在地：Ｃ地区　誰が？それはまた、別のお話】　　
>>575>>576>>577>>578
　
「死んでくれる？」／「勝手に殺したくせに」　
　
ママ人形と恋人たちは幸せそうに迫り来る。
けれどそれはオレのファイティング。恋人達の間の信頼関係とか切なさとか
儚さとか情愛とか出会いの想い出とか悔しさとか慙愧とか信仰とか強さすら！　
そんなものを分るとか分らないとか、どうだとか言う奴にはオレは只本当に
自殺を勧めるよ。自分の首を自分の歯で噛み切ってさ、敗北主義者の味を
充分かみ締めて死んじまえばいい。それから神さまのところで謝れば良いんだ。　

そうしてオレは一つだけを見る。私の、アリッサ・メイベルの必要なものだけを。
それは正義。オレの正義。アメリカらしい、オレの銃口の前の、正義と敵意。　
　
オレは握る、大事な相棒、オレの半身コルトシングル・アクション・アーミーの
銃把を握る。それで、くるくる回してレッツ・ビギン、トライ！　
体にささる衣装たち、オレはそれを最小限の動き、袖口をしばりあげ、靴下はちぐはぐ
に結び合わせてばらばらに、お次のシルク生地のブラウスはキック一発木の上へ　
→日陰干指定の悲哀…ストッキングはお約束の爪弾き！JerryFishなスカート達は　
下から覗けば逃げていく（／／／）。気難しいコルセットとカットソーはモードの　
変遷についてけしかければ、仲たがいを直ぐに始めるとか…衣装ダンスは整理が肝心。　
全部放り込むなんてさ、繊維とか混ざってよくないんだよ、ママ？　
　
いなし、踊り、きっくきっくとん。バニースーツこそ、最強可愛い衣装だもん。　
オレに従えきっくとん！　　
…けれど、その奥の奥。心の底、ワードローブの奥底に眠る衣装。それをオレは　
見逃したりなんか、出来なかった。体中に感じてる、傷むも感じるくらいのその赤さ。　
そう思ったオレを、オレの中のウサギは怒る。けれどそんなことはSuck,Shit!!
オレは衣装に刺され、まと割られ、無理に着せられそうになり…そんな風に衣装たちに
まみれながら、脚も体も折角の衣装も殆ど解けて、只の小さな女の子になりながら…大事なもの、　
I miss　it!!みつけたんだ。
　
オレを見つけると直ぐに跳んできてさ、首周りを締めようとしているその帽子。　　
それはあの「赤頭巾の帽子」だった。エンブレムがとてもイカすシェイプしてるんだ。　
　
オレは、それをみて、周りの衣装たちが体をさいなむのにも関わらず…　
　
自分をこの世界に誘い込んだ私の帽子、ヒッピーニットの丸い帽子を、　
それだけを、単純に打ち抜いた。　
ママにキス、パパにジョーク。オレの無意味さにThree Cheersじゃん？　
打ち抜くのはオレの敵だけ。この妖銃シルバーバレルの銃口の先には、いつも
必ず「悪」が存在しているんだ。なーんて、ね。　
　
ばらばらと散るあかいいと。木漏れ日にちらちらと反射して、とても綺麗な花に見えた。
それをオレは、本気で綺麗だねって言って・・・倒れていた。　
私は本当幸せな気持ちになって、そのまま薄らの視界に瞳が翳った。
私、まだやることあったと思ったんだけれど…今はそんなのを考えられなかった。　
しらないはずの、ウサギの鳴き声が、おわりのその時に、聞こえた気がしたけれど　
具体的にどんな声だったかは、全然、本当に覚えていないんだ。きっと、大事なものを　
ママ（！）の体の中においてきた所為に違いない。そうでしょう？　

588 名前：『夜雀の妖怪』ミスティア・ローレライ ◆8hOOMYSTIA ：2007/12/01(土) 01:58:50

>>584
鋼の女は大好きかい？

「ああ、やっぱそう来る？　来るよね。そう来たか〜」

瓦礫の丘でステップを踏む。
踊り子さんには手を触れない。

アイアンガールはオープンファイア
いつでお前を狙ってる
熱いロケットぶち込まれてみろ
死ぬまで踊りを止められない

輝く手のひらをワルツを踊るように下がって避ける。
飛び上がりもせずあえてヒールをならす。

「それなら一曲聴いていく？
　お代は聞いてのリタイアさ！」

ステップの刻むビートは、ハートのビートをかき乱す音色。


【C地区　瓦礫のダンスホール】

589 名前：エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ ◆SV001MsVcs ：2007/12/01(土) 02:14:52

メイ＠マルチアーノ12姉妹ｖｓエリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ

>>579

「……ま、どう見ても観光客には見えないよな」

　正体不明の少女Ａはそう呟いた。
　こくりとアタシの背後でフィオが頷く気配。
　確かに、肩から谷間の出来る胸元まで覗くドレスで観光客はない。

「ん〜〜……“半分”当たり、かな」

「半分当たり？」

　店の人、武器を求めて来た人、アタシたちが誰何で聞いたのはこの二つ。
　はて、半分当たり、とは？

「まず店の人、っていうのはハズレ。
　あたしはこの店にはついさっき来たばっかりでね。
　そして」

　少女が答えをつらつらと紡ぐ。

「惜しいね。
　あたしの銃、そこに転がってるSPASだけど、今ちょっと調子が悪くてさ。
　んで、代わりのを調達に来た訳。
　今残ってる弾は、これかな」

（その格好でSPAS。……まるで映画だな。ハリウッドらへんの。『Resident Evil』にでも出られそうだ）

　これかな、と少女が指したのは傍らの赤色の紙箱。ラベルから見て45ACP。
　残念、対応外だ。　

「そして、『惜しい』ってのは一つ。
　あ、そうそう。その前に見ていかない？
　あたし主演のワイルド・ワイルド・ウェスト・ショー。
　お代は見てのお帰り、ってね」

　断る暇も遠慮する暇もなく少女は腰からSAA――通称『ピースメーカー』を抜いて、見事なガンスピンを披露して見せた。
　シメは――自分のこめかみに弾丸を放って。

　銃声。
　漂う硝煙。

「……Bang!　とまあ、この通り」

　その向こうで少女が獰猛な笑みを浮かべていた。
　血しぶきも、頭の中身もぶちまけることなく。

「この一発は、ハンデにしておいてやるよ」

　瞬間、アタシは少女の正体を思い出した。

「下がれフィオ！」

　左手でフィオを外へ押し出しつつ、ヘキサゴンアームズM3685サブマシンガンのトリガーを引く。
　セレクタはフルオート。装填弾種はヘヴィーマシンガン。
　片手撃ちの銃火をばら撒きながら店の外へ出る。
　頭に大量のクエスチョンマークを浮かべるフィオの手を引っ掴んで、路地を来たのとは逆の方向へ走り出した。

「えええエリちゃん一体なんなんですか！？」

「思い出したのよ！　あの女の正体！」

　手近な角を曲がって路地に入り込む。壁に背中を預けて、そっと通りを窺った。

「正体って、誰です？」

「クリミナルギルドの殺し屋集団、『死の天使』、マルチアーノ12姉妹！」

「……だれ？」

　首を傾げたフィオに腰が砕けそうになった。アンタそれでも情報局特殊工作部隊の一人か。

「要するに有名な犯罪組織の殺し屋よ」

「殺し屋さんですか。それがなんでこんなところに？　それに、頭撃ったのにピンピンしてましたよ？」

「質問は一つずつにしようよ。前の質問は知らない。後ろの質問はアンドロイドだから」

「あんどろいど？　あのかわいいやつですか？　アキハバラとかで売ってるとかいう」

「それはねんどろいど。説明面倒だから一言で言うわ。ターミネーターよ」

「Su-37？」

「分かっててボケてるならそろそろグーで殴るよ」

「あやややや」

　前に暇つぶしでめくっていた情報局の資料で見たことがあった。

　――マルチアーノ12姉妹。
　――愛らしい少女の容姿をした殺人マシーン。
　――多種多様の武器を用いてその圧倒的な戦闘能力で目標を殲滅する。
　――それぞれに太陽暦の英語名が付けられている。

　確か銀髪でショートカットはメイ、だったか。
　五月、皐月、だからなんだ。
　武器はSPASって、あったな。情報通りだったけど、SPASは調子が悪いから他のを調達とか言ってたっけ。
　今の武器はなんだ？　あのSAAか？　まさかそれ一丁ってことはないだろう。

「ところでエリちゃん」

「何かしらフィオさま」

「戦うんですか？」

「不本意だけどね」

「逃げちゃいません？」

「武器弾薬の補給」

「でもあの娘、今残ってる弾はこれだけって」

「銃砲店ってのはね、表に飾ってあるものだけじゃないの。奥に倉庫があって、そこに厳重に保管してあるものなの。
　そこまで調べてすっからかんかどうか漸く分かるのよ」

「つまり調べるためには戦うしかないと」

「そういうこと。いきなり自分の頭にぶち込んでそれをハンデって宣戦布告してくるような好戦的な殺人アンドロイドとね」

「勝算は？」

「色々試すさ」

　アタシは口にチューインガムを放り込み、フーセンを膨らました。

590 名前：エミリオ・ミハイロフ ◆EMILIozylo ：2007/12/01(土) 02:24:27

>>588
　あと少し。ほんの数センチ。
　そんなところで、するりと小鳥は抜けて行く。

　残念ながら、鬼ごっこを楽しめるような年頃じゃない。
　
「一曲じゃ物足りないな……二曲くらいは聴きたいよ……」
　手を伸ばす。
　　　　　　　すり抜ける。
　　　　　　　　　　　　　手を伸ばす。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　逃げて行く。
　
　小鳥の刻むステップと、もつれる僕の足元に転がる瓦礫の奏でる唄。
　
　かつかつ、こんこん
　　　　　　　　　　　　　がつがつ、ごんごん
　たんたん、とんとん
　　　　　　　　　　　　　だんだん、どんどん





　両者が調和していることに、僕は未だ、気付けずにいた。

【C地区：CLUB「瓦礫の山」】

591 名前：『夜雀の妖怪』ミスティア・ローレライ ◆8hOOMYSTIA ：2007/12/01(土) 02:40:44

>>590
聞いてよダーリン、私だけ向いて

「欲張りねー。
　欲張りさんには大きなつづら〜」

小さなステップと少し大きなステップ。
ズレながらの即興曲。

私はずっと貴方だけ見てる
眩しい貴方から身を潜めながら
貴方のことは何だって知ってる
あいつなんかよりずっと前から

ステップに更にビートを追加。
より激しく。
自身を強く駆り立てるように。

ねえ気付いてよ私のこと
こんなにずっと思っているのに
そんな奴とはどうか離れて

「まだ聴いていられる？」

加速したステップはフラメンコのように。
あるいはラインダンスのように周り、音の刃は闘牛士のサーベルのように迫る。


【C地区　瓦礫の音楽帯】

592 名前：メイ＠マルチアーノ12姉妹 ◆M12sisrIV6 ：2007/12/01(土) 03:10:19

メイ＠マルチアーノ12姉妹ｖｓエリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ
>>589
　
　片手撃ちのフルオート。
　カウンターやショーケースに当たって欠片を飛ばす。
　……が、もともと扱っているモノがモノだけに、補強がなされているせいなのか、意外
にもしぶとく原形を留めている。
　もっとも、この有様では今すぐ営業再開、とはいかないようだが。
　
　「あはは、あっち（・　・　・）の方はいい反応だわ。
　これなら少しは遊べるかもね」
　
　目くらましがわりの弾幕に、着弾結果も見ずに早々の撤退。
　二人も、これで逃げおおせたとは思ってはいないだろう。
　少なくとも、今メイがやって見せたガンプレイの後では。
　なら、とメイは床に置いていたウィンチェスターを拾い上げると、カウンターに取り残
されたままになった弾薬の紙箱を手に持った。
　カウンターを乗り越えて、扉の外に。
　
　「逃げ足は速いようだけど……よっと」
　
　かしゃん、スパーが鳴って着地する。
　屋根の上に。
　膝を充分に撓めて跳び上がると二階建ての細長い建物が肩を寄せ合っている商店街の、
赤い屋根が並ぶ上に立っていた。
　時折その屋根を突き破って梢が顔を出している。
　逃げた方向へと顔を向けて歩いていくと、細長い路地を三つ程越えたその間。
　
　「忘れ物だよ」
　
　上から二人に声を掛け、落としたのは先刻の弾薬が入った赤い紙箱。
　
　「それとも、いらなかったんだっけ？」
　
　ウィンチェスターのレバーを動かすと、金属のぶつかり合う大きな音がする。
　それを片手で、銃口を地面に向け、トリガー。
　紙箱に着弾し、大きく弾けた。
　
　「まあいいや。サービスだからとっときなよ」
　
　【現在地　D地区：銃砲店の外、商店街へ】
　

593 名前：エミリオ・ミハイロフ ◆EMILIozylo ：2007/12/01(土) 03:16:52

>>591
　音は見えない。
　見えないけれど、聴こえる。
　聴こえるのなら、問題ない。
　
　でも、聴こえる頃には、もう遅い。
　
「唄わない小鳥に価値がないように……飛べない天使に、意味はないさ……」
　
　赤い飛沫と、布の切れ端。
　削ぎ落とされた肉の欠片と、崩れ落ちた建物の欠片。
　
　一切合財を巻き込み、巻き上げ、光の翼が舞い上がる。
　
「……この服、気に入ってたんだけどな……気にしないけど」
　
　気にはしない。根に持つだけだ。
　
「破れた服の分くらいは、踊って欲しい……なっ！」

　瓦礫を楽器にして唄う小鳥へと、光の矢の散弾を放った。

【C地区：瓦礫交響楽団】

594 名前：『夜雀の妖怪』ミスティア・ローレライ ◆8hOOMYSTIA ：2007/12/01(土) 03:38:08

>>593
Tick-tock Tick-tock
まるで杭でも打たれたみたいに
一体いつまで回り続けるのか？

光は見える。
見えるから、避けられる。
見えるのなら、問題ない。

でも、見える頃には、もう遅い。

「っつ！　そりゃあ飛んでくるわよね、やっぱ！」

致命打は無いが、十分な致傷力。
ただ飛ぶだけではいささか苦しいか。

いつから走っていたのか
いつまで走っているのか
もうとっくに答えは彼方
それでも足は止められない

瓦礫が共鳴するように揺れる。
しかしむしろ大きく揺れるのは、降り積もった塵芥。

そこな髑髏の死神よ
この首見事刎ねられるかい？
それとも一緒に地獄の底まで
回って回って堕ちようか
Tick-tock Tick-tock
Tick-tock Tick-tock

粉塵が逆回しのように舞い上がる。
ともに妖怪少女は螺旋を描き、天高く舞い上がった。

「そーれ、ダーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーイブ！」

鷹の如き急降下。


【C地区　瓦礫の多い楽器店】

595 名前：システムアナウンス ★：2007/12/01(土) 04:21:02

吸血大殲　森祭　途中経過纏め

＊進行中の闘争の中断状況を記載
＊終了した闘争については最後に記載
＊各人のターンのレス毎に改行
＊再開時間の申請があるものは記載
＊タグ使用闘争は各闘争ごとに付記、対応ブラウザでの閲覧推奨

紅魔館の優雅な住人たちｖｓカトル・カール
―Forest Lagoon―

紅魔館導入
>>146>>147>>148
カトル・カール導入
>>149>>150>>151

>>154>>155>>156
>>185>>186
>>188
>>189
>>191>>192
>>196>>197
>>201
>>245>>246>>248
>>273>>275
>>292>>293
>>330
>>358
>>360>>361
>>398
>>399
>>409>>410
>>411
>>412>>413
>>415
>>419>>420
>>426
>>433>>434
>>435
>>446
>>451
>>455
>>456>>457
>>459
>>499
>>504
>>505
>>513
>>558
>>560
>>561
>>573
>>574
>>611

【現在地：ハイウェイ】

＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨
日守秋星　VS　西園寺世界　「-WORLD HANT.」

日守秋星導入
>>296>>298
西園寺世界導入
>>299>>300

>>302>>303
>>309>>310
>>311
>>312>>313
>>315
>>318>>319
>>325
>>366>>367>>368
>>395>>396
>>490>>491>>492
>>543
>>547>>548>>549>>550>>551>>552>>553>>554
>>555
>>557
>>583

【現在地　B地区「繁華街」】

赤頭巾VSプリマヴェラ

赤頭巾導入
>>336>>337>>338>>339>>340
プリマヴェラ・ボビンスキ導入
>>342>>343>>344>>345>>346

>>348>>349
>>352
>>357
>>362
>>407>>408
>>416

>>449>>450
>>470>>471>>472>>473>>474>>475>>476
>>485
>>488
>>501>>502
>>503
>>506
>>509
>>514
>>515>>516
>>559>>562
>>565>>566>>567>>568
>>570>>571
>>575>>576>>577>>578
>>587

【現在地：Ｃ地区　………　】

＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

メイ＠マルチアーノ12姉妹ｖｓエリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ　

メイ・導入
>>563>>564
エリ＆フィオ・導入
>>569
本編
>>579
>>589
>>592

【現在地　D地区：商店街】

エミリオ・ミハイロフ ｖｓミスティア・ローレライ
　
>>581
>>582
>>584
>>588
>>590
>>591
>>593
>>594
>>597

【C地区　高価な瓦礫のコンサート会場】

光の三妖精vsアーカード（幼女）

光の三妖精導入
>>612

596 名前：システムアナウンス ★：2007/12/01(土) 04:22:00

＞終了した闘争レス番纏め

森祭テーマ（ストーリー関連）闘争

DIO vs JEANNE ―The forth part of king Henry VI―
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/138
＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

ミスティア・ローレライｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル　『イツマデ』 Still When
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/230

エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル　『ポワティエ平野で朝食を』
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/305

ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓメディスン・メランコリー　―576年目の森林教室―』
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/444
＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨
備考：メディスン最終エピローグは後日追加予定

ジャンヌ・ラ・ピュセルｖｓ聖女��ジャンヌ・ダルク�＝@『Rust Riddle 〜錆色の舞踏曲〜』
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/512

グルマルキンｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『アリス戴冠―Queen ALICE is born in the Reims―』
（※ちびふみこ乱入）
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/614

別記「黒いアリス」自身による纏め　（最新の状況に更新済）
>>529
>>530
　
通常の闘争

エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミｖｓリサ・トレヴァー
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/252
＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

レイオット・スタインバーグｖｓ魔神王リィーナ
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/291

死神（デス）ゼアド vs ＜呪われし公子ゲイナー＞
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/286
＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

“姫”一行（怪物王女）VSスレイド
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/405
＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/469
＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

有里湊ｖｓＤＩＯ　ＤＩＯの世界／Burn my――
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869287/544
＊タグ使用の為、対応ブラウザでの閲覧推奨

597 名前：エミリオ・ミハイロフ ◆EMILIozylo ：2007/12/01(土) 05:05:05

>>594
　瓦礫を従え、塵芥の尾を引き、小鳥が高みに舞い上がる。
　僕より高く、もっと上。
　
　手負いの鼠は猫をも殺す。
　手負いの猫は虎になる。
　か弱い兎は首を刎ね、人も堕ちれば鬼になる。

　なら、手負いの小鳥は？
　
　


　答えは――僕の頭上の“それ”。
　
　瓦礫と踊り、粉塵で螺旋を描き、手負いの小鳥は唄う。
　鷹の唄を。鷲の唄を。隼の唄を。
　
　その唄を聴きながら、僕は矢を番える。
　小鳥に連れ去られた瓦礫達が、地に残された瓦礫達を求めて落ちていく。

　頭に当たると不味そうな物だけを避ける。
　避けながら、張り詰めた弓は離さない。
　
　避け切れなかった瓦礫が一つ、僕の額を割っていった。
　流れ落ちる赤い雫が、僕の視界を遮る。
　構うもんか。
　小鳥の唄で文字通り粉微塵になった“元”瓦礫が、僕の視界を奪う。
　それがどうした。
　
　


　限界まで引き絞った弓から手を離し、矢を放つ。
　耳を頼りに狙いを定めた、唄の中心へと。
　

【C地区：野外瓦礫堂】

598 名前：グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆ORDEN1uWpQ ：2007/12/01(土) 05:44:55

グルマルキンｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『アリス戴冠―Queen ALICE is born in the Reims―』


>>586


「戯れ言を言う……」

　オゼットの問いかけを一笑に付す。興味深い絵空事ではあったが、その程
度で魔女グルマルキンの同一性は揺らいだりしない。

「私は私であるが故に、誰よりも私であることを確信している。貴様如きに
懐疑されるまでもなく、私は私だ。―――その証を今から見せてやる」　

　乗馬ブーツを中心に、自動演算の魔法円〈サーキット〉を三重に展開。
　魔女グルマルキンの真骨頂とも言える魔術式が眼を覚ます。
　サーキットにプログラミングされた演算装置は、状況に応じて二百九十八
パターンのルーン魔術を自律刻印。近接からの全方位霊撃〈オールレンジア
タック〉によって対象を防御障壁ごとオーバーキルする。
　―――避けようのない圧倒的な暴力。魔女の口元が加虐を期待して歪みに
歪んだ。

　だが、彼女の武器はこれだけに留まらない。
　指をぱちりと打ち鳴らして最強の騎士を召令。赤のナイトはダガーを腰か
ら抜くと、ジャンヌのふくらはぎに突き立てる。肉と皮膚を貫通し、刃は土
にまで届く。無情な刃の戒め。―――これで彼女は囚われだ。
　赤のナイトは鷹揚に頷くと、クイーンの下へと馳せ参ずる。オゼットの背
後に回り、十字に交錯するグリップが特徴的な剛剣―――ヒルドルヴ・フォ
ークを大上段に構えた。

　クイーンの魔法円にナイトの剛剣。圧倒的な死に前後を挟まれたオゼット
に、活路などあるはずもない。

「これでもまだ、私を幻想などと懐疑するか！」
　魔女は勝利の予感に酔い痴れる。
「ならば、貴様という女もまた、私の手で幻想に還してやる！」

　魔法円が光を帯びてルーン文字を大量に吐き出す。オゼットの背後では赤
のナイトが果敢な踏み込み。もう一人の魔女を刃圏に捉える。
　森を戦場に、森の与り知らぬ決闘が始まった。


【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）最深部〈妖精の樹〉】　

599 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/12/01(土) 05:47:12

グルマルキンｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『アリス戴冠―Queen ALICE is born in the Reims―』


>>598


　乙女は迷った。
　リドルの外側からノックもしないで乱入し、チェスボードをひっくり返す―
――そんな常識知らずのトリックスターを、私は奇跡と呼ぶべきかしら。

　ルール破りのナイトノッカーは、クイーンとナイトの苛烈な波状攻撃に晒さ
れながら一歩も退かず、それどころか的確に反撃を繰り出し、二強の駒を相手
に互角に渡り合っている。勝敗の行方は見当もつかないが、クイーンもナイト
も思った以上に苦戦している。暫くは彼女にかかりきりになりそうだ。
　―――いや、この様子だと赤の精鋭か敗れ去ることだってありうる。奇跡と
いうよりナンセンスに近い展開。乙女はそこに好機を見出した。

　この混乱に乗じてチェックメイトをかける。

　さあ、アルマニャックの魔女にして悪魔の私娼、黒乙女ジャンヌのラストシ
ーンを始めましょう。

　そのためにまず戒めをとかないと。
　ふくらはぎを大地に縛り付けるクリムゾンのダガーに指を這わす。悪意が指
先から鋼に染み込み、刃を腐らせた。さあ、これで自由だ。
　片手で身体を器用に起こし、足を引きずって王太子さまの下へ。そんなキャ
スト、彼女はもう忘れてしまったかもしれないけど、乙女はしっかりと覚えて
いる。トールボット将軍との戦いのとき、彼女は確かに王太子さまの役を選ん
だ。あの舞台の終幕はまだ訪れていない。
　
　王太子―――アリスはまるでコーヒーテーブル以外の世界を見失ってしまっ
たかのように、イヴォワール風の紋様を見入っている。
　自分の殻へと逃げ込む少女。傷の深さは計り知れない。彼女もつくづく哀れ
だ。必死で見つけた夢の世界にまで裏切られてしまうなんて。
　アリスに罪はない。あの状況で彼女に何ができた。グラール・コピーが提示
する取引を承諾しなければ、あらゆる未来は断絶される。
　希望に縋って何が悪い。救いを求めて何が悪い。―――例えそれが現実から
の離脱であろうと、生を願うことは死を許容するより遙かに眩い。
　
　だから、乙女はアリスの全てを赦した。

「……安心しなさい。あなたには、あなたの乙女がいるわ」
　精一杯の優しさで、声をかける。
「もう誰も、あなたを傷つけさせない。私があなたを護るから。私があなたを
救うから。―――だからお願い。もう泣かないで、イヴェット」

　そっと頭を撫でた。拍子に、ロールヘアのウィッグがら流れ落ちる。アクア
マリンの色彩が払われ、黄金色の地毛が乙女の視界を輝きで満たした。
　涙で化粧が剥げたせいで、今でははっきりと分かる。眩い金髪。凍えるほど
に鋭い美貌。―――アリスの素顔は〈妖精の樹〉に囚われ、苗床となっている
少女と瓜二つ。……いや、まったくの同一だった。

「もう大丈夫。大丈夫よ、イヴェット」
　
　乙女は彼女の名を繰り返す。



【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）最深部〈妖精の樹〉】　

600 名前：黒いアリス ◆ALICEsQkXc ：2007/12/01(土) 05:50:08

グルマルキンｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『アリス戴冠―Queen ALICE is born in the Reims―』

>>598
>>599


　アリス／イヴェットは涙に濡れたかんばせを上げ、彼女だけの聖女に懇願の
視線を投げつけた。―――助けて、助けてジャンヌ、と。
　全てが終わりへとひた走っている。何もかもが森を、アリスを、ジャンヌを
終局へと追い詰めている。
　こんなはずじゃなかったのに。ずっと森の中で暮らすつもりだったのに。ジ
ャンヌと一緒に、終わらない夢を見続けるはずだったのに。
　
　イヴェットは聖杯を裏切った。
「黒いアリス」のギフトを承ったにも関わらず、「森を幻想で満たせ」という
彼のオーダーを無視してしまった。魔女を聖女として扱い、他のゲストを無視
してジャンヌと遊び呆けた。それどころか、彼女の救国を阻害さえした。
　イヴェットは森が奏でる物語なんてどうでも良かった。ただジャンヌと一緒
にいたかった。それが唯一の救いだったから。

　聖杯もイヴェットを裏切った。
　取引を反故にして新たな苗床に移ろうとした。イヴェットを裏切り、鉤十字
と契約した。イヴェットを見捨て、〈妖精の樹〉に赤の軍勢を差し向けた。
　聖杯はイヴェットという苗床が再現した〈森〉に不満たらたら。かつて新宿
を支配したオリジナルに比べて、それはあまりに不完全だったから。
　
〈森〉を形成する苗床と種子。イヴェットとホーリー・グレイル。一人と一杯
の不和が戦禍を招いた。赤と白の薔薇戦争を引き起こした。
　二人が歩み寄ることはもう二度と無い。―――それはつまり、アリスとジャ
ンヌの救国〈リドル〉も終わりを告げるということ。
　もしグルマルキンがあの子に敗れたとしても、イヴェットの胸に聖杯が根付
く限り、第二第三の黒猫キティが〈妖精の樹〉に攻め込むだろう。
　聖杯はイヴェットから逃れようと必死だ。
　魔女アマモリの本棚から生まれた「ホーリー・グレイル」のギフトの目的は
〈森〉の再現と回帰。それが叶わない苗床なんて、窮屈な牢獄でしかない。
　だから、この危機を逃れられたとしても、近いうちに必ず聖杯はイヴェット
から脱出する。彼女の唯一の剣―――ジャンヌはもう死に体だから。

「ああ、ジャンヌ……」

　泣かないで。そう微笑む乙女の姿はあまりに痛々しい。
　右腕は間接から先が斬り落とされていた。右目は焼け爛れ光を失っていた。
　左足のふくらはぎはダガーで抉られて、朱色の肉を覗かせている。あんなに
威圧的だった黒甲冑は疲れ切っていて、色んなパーツがひび割れていた。
　アリスが大好きだった乙女の白肌も、土に押しつけられて黒ずんでいた。
　もう大丈夫だから。ジャンヌの慰め。だけど、言葉を発する彼女自身は立っ
ているのもやっとだ。

「―――私もあなたと一緒に死ぬ」

　救いはもはや、それしかない。

「死ぬのはイヤ。死ぬのは怖いの。あの魔女が私の胸を鷲づかみにしたとき、
私は躯を炎が走り抜けて―――ここが地獄なのか、と思ったわ。狂ってしまい
たいぐらいに痛かった……」
　きっと、あれが死なのね。
「あんな想いはもう二度としたくないの。ほんとに怖いの。だから願ったわ。
助けて、助けてって。聖杯が持ち出してきた〈契約〉にだって夢中で縋った。
死にたくなかったから。痛いのはもうイヤだったから……」
　アリスはジャンヌの胸にしがみつく。
「ああ、だけどあなたと一緒なら―――」
　恐怖にも耐えられる。ジャンヌがいてくれるなら、地獄だって怖くない。
「私も連れてって……あなたが、私を殺して」

　それが最後の救いとなるはずだから。


【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）最深部〈妖精の樹〉】　

601 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/12/01(土) 05:51:51

グルマルキンｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『アリス戴冠―Queen ALICE is born in the Reims―』

>>598
>>599>>600

「そんな哀しいことを言っては駄目」

　アリスの矮躯を片手で抱き締める。イヴェットの幽体とも言うべき彼女の
躯は、びっくりするくらいに軽かった。それが余計に哀しみを煽り立てる。

「私は生きようとするあなたが好き。死にたくない。そう思って何がいけな
いのかしら。とっても可愛らしいじゃない、人間らしくて」

　それは、救国の大儀のために命をも犠牲にした殉教者の自嘲か。

「生きたいと願うあなたが私を呼んだ。死ぬのはイヤと脅えるあなたが、私
を森に迷わせた。奇跡の担い手は聖杯じゃなくてあなた……」

　だからジャンヌは、生を求めて足掻くイヴェットを救う。
　死にたいだなんて言う彼女は嫌い。
　大体、一緒に逝くなんて不可能だ。なぜなら乙女の救国はまだ終わってい
ないから。彼女は果てる気なんて毛頭ない。
　イヴェットを救って、フランスも救う。

「無理よ！」

　アリス／イヴェットの抗弁。〈妖精の樹〉を指差してがなり立てる。

「あそこで眠る哀れな女の子を見て。
　彼女の胸に宿っている鼓動を見て。
　分かるでしょう？　聖杯がイヴェットの心臓なのよ。彼女の命は聖杯が握
っているの。だから、彼女はアリスとして森の中で生きるしかないのだわ。
　―――でも、聖杯は彼女の心臓をやめたがっている」

　チェックメイトなのよ。何もかもが詰みなのよ。
　
　アリスの主張は一理ある。だが全てではない。
　彼女は数ある選択肢の中かから進んで絶望を選び取ろうとしている。哀し
みが視野を狭くて、他の道を見失っている。
　こういうときこそジャンヌが必要なのだ。救いへと導くために手を差し伸
べる乙女の存在が。

「あんな自分勝手な心臓は捨ててしまいなさい」
　微笑みは崩さずに、道を開く。
「―――代わりに、私の心臓をあげるから」



【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）最深部〈妖精の樹〉】　

602 名前：黒いアリス ◆ALICEsQkXc ：2007/12/01(土) 05:55:11

グルマルキンｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『アリス戴冠―Queen ALICE is born in the Reims―』

>>598
>>599>>600>>601


　ジャンヌの心臓ですって？

「いらない！」
　乙女が示した救いの道を、アリスは反射的に拒絶した。
「ジャンヌ、あなたはもしかして―――」
　
　アリスはジャンヌを識っている。本人よりも深く理解している。だから
分かってしまった。彼女の描くシナリオが読めてしまった。
　ラ・ピュセルは本気でイヴェットを救う気だ。それも、アリス／イヴェ
ットがもっとも望まないカタチで。

「駄目！　そんなの絶対に駄目よ！」

　拒絶には耳も貸さず、ジャンヌはアリスの躯から離れた。
　何の思惑をあっての行動か、魔女と魔女の熾烈な交錯を尻目に、ジャンヌ
は森に咲き誇る白百合〈マドンナリリー〉の花を摘み始める。
　一本、また一本と丁寧に茎を折ってゆく。隻腕だというのに、精緻な指捌
きで葉と葉を重ね合わせ茎を結ぶ。

　―――そうして出来上がったのは、白無垢にして純潔の花冠。
　
　ジャンヌは恭しくかしずくと、アリスの頭に王冠を静かに乗せた。ふわり
と空気の祝福を受けながら、花冠が王位の継承を宣言する。
　アリス／イヴェットの金髪に咲くリリーの葩〈はなびら〉は、森を光で満
たすほどに清らかだった。
　アリスの戴冠。〈妖精の樹〉の下で、二人っきりの戴冠式。

　斯くして、白のポーンはクイーンに裏返る。
　王太子さまはジャンヌの導きによってランスでの戴冠式を挙行し、正当な
るフランス国王として栄座につく。
　
　アリスは涙をこぼしてしゃくり上げた。言葉が詰まり、涙が止めどなく溢
れ出す。いや、いやよ、と首を振っても、乙女は聞き入れてくれない。
　アリスは、この戴冠式が何を意味する知っていた。

　シャルル七世となった王太子さまは、王座に至ったことで目的を遂げたと
考え、アルマニャック派の地盤を固める政策を方針に移す。仇敵だったブ
ルゴーニュ派と手を組み、英国を追い詰めるのが狙いだった。
　故に、徹底抗戦を唱えるラ・ピュセルはシャルルの政策に賛同できず、僅
かな手勢を引き連れてパリ攻略へと向かった。
　それは王太子と乙女の離別。

　―――クイーンとなったアリスは、自分のパーティをひっくり返して物語
を締めくくる。

　この戴冠式こそ、終局の儀式。


【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）最深部〈妖精の樹〉】　

603 名前：黒いアリス ◆ALICEsQkXc ：2007/12/01(土) 05:57:52

グルマルキンｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『アリス戴冠―Queen ALICE is born in the Reims―』


>>598
>>599>>600>>601>>602



　二人っきりの戴冠式。その裏に隠された真意は、あまりに残酷。

　乙女に伝えたかった。アリス／イヴェットにとっての「救い」とは、生命
の拘泥だけではないのだと。
　あなたが一緒にいてくれたから、そこに歓びがあった。あなたが一緒にい
てくれたから、未開の森に置き去りにされても、恐怖を好奇で上塗りするこ
とができた。あなたがいてくれる世界だけが、イヴェットの救いとなる。
　ああ、なのにジャンヌは往こうとしている。シャルル七世への忠誠に背を
向けて、自分だけの救国の道を。

　―――あなたと一緒にいたいの。

　想いを言葉にするまでもなく、ジャンヌは全てを理解していた。静かに頷
き、アリスの頬に隻腕の指を滑らせる。
　私も、アリスのお茶会にまた招待されたい。アリスと一緒に、空中庭園か
ら覗く森の風景を、陽が沈むまで見つめていたい。あなたと一緒に駆けた救
国の想い出は、乙女の影を溢れる光で照らしてくれた。
　多分、きっと、あなたが私を愛するように、私もあなたを愛している。

「でもシャルル国王陛下。王には王の、乙女には乙女の道があるわ。もうあ
なたはポーンではないのだから。自分の一挙一動に責任が伴うクイーンなの
だから……時には自分の想いを犠牲にしてでも、国を愛してあげて」

　乙女の決意は揺るがない。アリスは改めて、この聖女の強情さを知った。
　そして、彼女の信仰の対象として、永遠の愛を約束されたイエス様を妬ん
だ。あのやせっぽちのヒッピーのように、激しく狂おしく盲目的にジャンヌ
から愛されたかった。フランス国王ではまだまだ満足できない。

　
　最後の抱擁を交わして、ジャンヌは踵を返した。
　少しだけ安心した自分がいる。ウィッグは落ちてしまい、お化粧は涙でぼ
ろぼろ。お洋服も着崩れて、乙女に見せられる姿ではとても無かったから。
　ジャンヌの中では、いつまでもアリスは最高にかわいくてパンクで残酷な
ゴスロリ少女でいたかった。

　ジャンヌが往ってしまう。イヴェットを救いに往ってしまう。
　別れの言葉は何がいい？　物語をしめくくる、最後の台詞。

「ジャンヌ！」

　傷だらけの背中を呼び止める。乙女は待っていたかのように、すんなりと
振り向いてくれた。「どうかしましたか？」

「ねえ教えて。アリスからジャンヌへ、最後のおねだり。―――私はどこに
行けば、またあなたと会えるの。あなたはどこで、私を待っていてくれてい
るの。私とあなたの再会の場所は天国？　……それとも地獄？」

「そんなの決まっているわ」

　乙女の笑みは、希望という名の宝石のようにまぶしかった。

「―――フランスよ」


【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）最深部〈妖精の樹〉】　

604 名前：グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆ORDEN1uWpQ ：2007/12/01(土) 05:59:13

グルマルキンｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『アリス戴冠―Queen ALICE is born in the Reims―』

>>598
>>599>>600>>601>>602>>603


「貴様！　何を考えている！」

　オゼットに魔弾の猛射を浴びせかけながら、グルマルキンが乙女に注意を
向けた。満身創痍の躯で〈妖精の樹〉に近付く彼女の姿には、不穏の気配が
忍び寄っている。―――いや、これは神々しさと呼ぶべきなのか？
　幼さを残しながらも凛々しく引き締まったジャンヌの面差しが、確固たる
一つの決意を物語っている。

　まさか、イヴェットの躯から聖杯を摘出するつもりか？

「馬鹿め！　智識の恩寵を知らぬ村娘が考えそうなことだ。聖杯はあの小娘
の心臓だぞ。抜き取れば苗床が枯れるどころか、貴様自身も消滅する。外気
に触れた聖杯は急激な抑止を受けて、数分のうちに魔力を暴走させるぞ。
　そうなれば、この街は綺麗に消し飛ぶ。お前の大好きなフランスが、不具
となるのだぞ！　分かっているのかジャンヌ・ダルク！」

　魔女の言葉は乙女に届いているはずなのに、耳を貸そうとしない。一心不
乱に〈妖精の樹〉へと、そこに睡るイヴェットの下へと歩み寄る。
　―――何のつもりだ。
　駆け寄って斬り斃したかったが、グルマルキンの動きをルガーの呪弾が牽
制する。グルマルキンの焦燥。まさか、クイーンとナイトの二重攻撃を相手
にここまで鎬を削って見せるとは。
　魔女グルマルキンともあろうものが、老女を相手とるだけで手一杯だ。

「くそ！」

　焦りを隠せない。
　ジャンヌの狙いはなんだ。チェックメイトの戦況から、どうやってイヴェ
ットを救うつもりだ。

　ついに乙女が、イヴェットの睡る〈妖精の樹〉に辿り着いた。
　数秒だけ少女の穏やかな寝顔を見入ると、甲冑のバックルやベルトを解放
して胸部装甲を脱ぎ捨てる。鎖を織り込んだインナーが、胸の隆起を緩やか
に描いていた。―――乙女はそこに、ダマスカス鋼の短剣を突き立てた。

　突拍子もない自刃行為。ジャンヌは刃を抉り、胸の疵を開く。短剣を投げ
捨て、隻腕の左手を疵口に突っ込んだとき、グルマルキンの不安は確信へと
豹変する。―――この女！　自分の心臓をくれてやるつもりだ！

「やめろおおおおお！」


【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）最深部〈妖精の樹〉】　

605 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/12/01(土) 06:01:03

グルマルキンｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『アリス戴冠―Queen ALICE is born in the Reims―』

>>598
>>599>>600>>601>>602>>603>>604


　黒猫の咆吼は、トリックスターの追撃に阻まれ乙女の下まで届かない。
〈停滞〉の刻印で躯の固有時を制御すると、乙女は救いの処置を開始した。

　右手に掲げられた血肉の結晶を、イヴェットの胸へと運ぶ。なだらかな弧
を描く薄い丘に触れると、ジャンヌの手は水面に沈むようにとぷんとイヴェ
ットの体内へと侵入した。彼女の裡の暖かさに、思わず笑みがこぼれる。
　このまま身を重ねて一つになってしまいたい欲求―――大儀の名の下に押
し殺し、イヴェットの胸から手を引き抜いた。
　
　手中にジャンヌの心臓はない。イヴェットの胸で確かな命を刻んでいる。
　代わりに彼女が手に入れたのは、この災厄の根源―――聖杯〈ホーリー・
グレイル〉の名を冠する、木製の心臓だった。
　動脈から心室に至るまで全て木でできている。精緻な技術の工芸品にも見
えるが、木目の心弁が鼓動を打つ有り様は、あまりに異様だった。
　人が作りしものではないことは明らかだ。

　―――それはイヴェットという苗床で育った、聖杯の球根。

「なんと愚かな真似を！」
　グルマルキンの絶叫。
「それを私に返せ！」

　ジャンヌに殺到しようとする魔女をトリックスターが背後から銃撃。追い
縋る赤のナイトが大剣を一閃するも、トリックスターは月を歩くかのような
軽やかなステップでとんぼ返り。斬撃を回避する。
　黒猫キティが白猫スノードロップの下に辿り着くことは、未来永劫無さそ
うだった。
　

　ジャンヌは最後に一度だけ、背後を振り返る。
　アリスが見守ってくれていた。
　もう泣いていない。
　自分の足で立っている。

　ジャンヌは片手で主に祈る仕草をすると、聖杯を呑み込んだ。
　一息で呑み込んだ。
　租借もせずに、喉に流し込んだ。

　新たな心臓。新たな苗床。―――ジャンヌの体内で、聖杯は必死に反抗を
試みる。乙女の躯が聖杯を受け入れ、強制的に肉体の一部として取り込む。
　相性は最悪。拒絶反応がジャンヌの全身に稲妻を走らせ、
　
　そして、

　森が燃え上がった。


　―――崩壊が始まる。



【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）最深部〈妖精の樹〉】　

606 名前：黒いアリス ◆ALICEsQkXc ：2007/12/01(土) 06:02:18

　　

　イヴェットの苗床から聖杯の植え替えが行われ、
　　ジャンヌの躯が新たな宿り木に。
　森は根源情報の変換に戸惑い、自らを真っ赤に染め上げたわ。
　　森が炎に包まれる。
　　　ルーアンの火刑台のように燃えさかる。
　苗床としての役目を終えたイヴェットは、
　　ジャンヌの心臓の鼓動を子守歌に深き眠りへ。
　幻想が終わるときが、彼女の目覚め。
　
「ヘンリー六世」のリドルはキャンセルされて、
　　ジャンヌからは「黒乙女ジャンヌ」のギフトが、
　イヴェットからは「黒いアリス」のギフトが消滅します。
「黒いアリス」のギフトが消滅します。
「黒いアリス」のギフトが消滅します。
　
　コーヒーテーブルの脇から、
　　ジャンヌを見守っていた少女はもういません。
　真っ黒なお洋服と、白百合の花冠だけが残されたわ。
　イヴェットの精神は、在るべき場所へと帰ったのです。


　　　　―――これで、私のお話はおしまい。


　次はジャンヌの番ね。
　さあ、あなたのお話を聞かせて。


（黒いアリス→消滅）

607 名前：グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆ORDEN1uWpQ ：2007/12/01(土) 06:03:49

グルマルキンｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『アリス戴冠―Queen ALICE is born in the Reims―』


>>598
>>599>>600>>601>>602>>603>>604>>605
>>606


　深紅の甲冑が炎に沈んだ。ギフトの令によりクイーンの傀儡と成り果てた
三銃士の一翼は、最後まで自分を取り戻すことなく灰と散った。

　胸から腰にかけて胴体の左半分を失ったグルマルキンは、灼熱が舐める地
面に膝をつき、屈辱に総身を震わせる。
　霊視眼がジャンヌとオゼットを交互に睨んだ。

「貴様ら……なんて、ことを。―――なんてことを！」
　
〈妖精の樹〉が裡から溢れる炎に溺れている。天蓋の緑樹は葉の一つまでも
余すことなく燃え狂っていた。
　腐海の深奥から発生した終末の獄炎は、やがて森全体に拡大し、物語の頁
を焼き払うだろう。
　奇跡はグルマルキンの手から完全にこぼれ落ちた。ジャンヌに取り込まれ
た聖杯は新たな苗床を拒絶し、不良接触が炎威のスパークを呼び寄せた。
　乙女の体内で、聖杯が急速に朽ちていくのが分かる。赤のキングが自壊を
怖れて、「赤のクイーン」のギフトに乙女を殺せと必死で命令する。
　―――能うことなら、すぐにでもサーベルで彼女を斬り倒したかった。
　だが、グルマルキンの眼前には忌まわしき魔女が立ち塞がっている。そし
て、体内の内臓器官の四割を魔術回路ごと破壊された彼女には、これ以上の
抵抗の手段を持ち得ていなかった。

　またしても我々の敗北だというのか。

「おのれ！　おのれ！」　
　グルマルキンの赫怒は、憎しみという新たな炎を体内から呼び起こす。
「許さん！　貴様ら……よくも、よくも！」

　怒りにわななく指先をジャンヌに突きつけた。

「オゼット！　今ならまだ間に合う。その淫売の胸から聖杯を奪い取れ。森
の崩壊を食い止めろ。貴様も魔術師なら、この状況が如何に神秘の極致にあ
ることか分かるはずだ。……それとも、幻想が死にゆくのを黙って見守るつ
もりか！　オゼット・ヴァンシュタイン！　貴様も、貴様も魔術師なら！」

　それは慟哭に等しい猛りだった。

「奇跡を願え！　そして求めろ！」


【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）最深部〈妖精の樹〉】　

608 名前：ちびふみこ ◆HPv8dyzZiE ：2007/12/01(土) 10:49:01

>>607

　グルマルキンの慟哭。
　それはただ純粋に、極限の神秘を求め続けた魔術師が見せた、奇跡への執着だ
ったのかもしれない。
　"奇跡"を間近に見ながら、それを手に出来ぬ口惜しさ。
　崩壊していく神秘に対し、何も出来ないもどかしさ。
　だから、グルマルキンは吼えた。願った。
　敵であるはずのふみこにすら。

　願え、と。
　奇跡を願え、と。

　けれど――

「興味ないわ」
　
　無慈悲な一言がグルマルキンの心根を刺し。
　そして同時に、銀の煌きがグルマルキンの首筋に食い込んだ。

「幻想はいつか死に逝くものよ。古い時代は終わり、新しい時代の幕が開
ける。私も、貴女も……その幕が開けば、過去の遺物として疎まれ、忘れ
去られていくの。けれど」
　
　グルマルキンの首筋に食い込んだナイフが、頚動脈へと達した。
　吹き上がる血飛沫。
　ふみこの眼鏡を、グルマルキンの鮮血が染め上げる。

「私はそれを悲しいとは思わない。次の世代の人間が作る、新しい時代を
この目で見られるのならば。私はそれだけで満足よ、グルマルキン。もう、
奇跡などいらない。だから、」

　肉を引き裂き、骨を絶つ感触。
　この言葉は、グルマルキンに届くかどうか。
　しかし、それでも。
　ふみこは穏やかに、優しくそれを告げた。

「さようなら、グルマルキン。私もいずれ、そちらへ行くわ。そう遠くな
いその時に」

（グルマルキン・フォン・シュティーベル　→　死亡）

609 名前：ジャンヌ／白のクイーン ◆j5y3JEANNE ：2007/12/01(土) 11:28:59

グルマルキンｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『アリス戴冠―Queen ALICE is born in the Reims―』


>>598
>>599>>600>>601>>602>>603>>604>>605
>>606>>607>>608


　首を失った亡骸が炎に包まれる。塵となって果ててゆく赤のクイーンに向
けて、乙女は無言のうちに十字を切った。―――再生した右腕で。
　彼女の右腕の肘から先に再生したのは〈森〉の義手だ。数百の枝を重なり
合い、その上を数千の蔦が複雑に絡んで腕のカタチを作る。
　掌も五本の指もあった。

　自身を苗床にすることで森の消滅を回避し、イヴェットの「黒いアリス」
と同じ効果のギフト「樹木管理者〈チーフ・フォレスター〉」を得たジャン
ヌは「黒乙女ジャンヌ」というキャラクターからの脱出に成功した。
　今の彼女は、聖杯から森へと共有される魔力を独占できる立場にある。
「キャストとキャラクター」という縛りが無くても、数時間程度なら肉体の
維持は可能となった。

　魔女の名残―――ひび割れた暗黒甲冑を指で撫でる。亀裂から根が伸び、
装甲を血管のように這い回っている。枝が甲冑の欠損部を補強し、伸縮性に
富む蔦が間接部を柔らかく護ってくれていた。
　同じ闇色の甲冑とはいえ、ジャンヌが着込むのは黒乙女の形骸ではなく、
森林騎士〈ヴァーデラー〉の戦闘装束だ。
　
　腰には、シャルル・マルテルの剣が―――二振り。森蝕の原因の一端を担
った聖剣と、かつてもう一人の自分がコピーした鏡写しの偽剣。
　
　パリ解放へと馳せる準備は整っている。森を朱に染める焔がジャンヌの身
に届く前に、救国を終わらさなければ。
　黒いアリスが消滅しようと、聖杯〈ホーリー・グレイル〉のギフトが瀕死
に喘ごうとも、ジャンヌの理想が揺らぐことはない。
　フランスに勝利を。祖国に眩いばかりの栄光を。

　正真正銘の棺桶になりつつある〈妖精の樹〉から、同化したイヴェットの
躯を引き剥がす。今の森の管理者はジャンヌだ。渋々ながらも木々は従わざ
るを得ない。脱皮でもするかのように、するりとジャンヌの腕に落ちた。
　胸に手を当てる。確かな鼓動がリズムを刻む。

　　―――……これで、ほんとにお別れね。

　抱き締めて彼女の耳たぶに唇を当てる。「王太子さま。例え道が分かたれ
ようと、乙女はいつまでもあなたのしもべです」
　だから元気でね、イヴェット。

　
「……こんなことをあなたに頼むのはお門違いかもしれないけど」

　イヴェットの寝顔を愛おしげに見つめたまま、トリックスターの少女に声
をかける。少女は一定の距離を置いて、二人を冷静に見守っていた。
　その優しさが心地良い。

「お願い。どうか、この子を家まで送ってあげて。……多分、これは最後ま
で森の外にいたあなたじゃないとできないこと。乙女はあなたという機械仕
掛けの奇跡を信じるわ」
　
　イヴェットの心臓は爆弾だった。幻想の残り香。聖女の核。彼女の日常へ
の帰還を、この心臓が妨げるだろう。
　もしまた心が折れそうになったとき、イヴェットはこの心臓に縋るかもし
れない。第二、第三の森の再来を求めるかもしれない。
　そうならないように、道を正してくれる人が欲しかった。

　一方的な信頼。でも、応えてくれると信じている。

「あなたのフランスにも、いつか栄光が訪れることを乙女は祈ってるわ」

　さようなら、イヴェット。
　さようなら、黒いアリス。



【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）最深部〈妖精の樹〉】　

610 名前：ちびふみこ ◆HPv8dyzZiE ：2007/12/01(土) 11:59:30

>>609

「……1450年、4月15日」
　
　乙女の願いには敢えて応えず。
　ふみこは静かに口を開いた。

「この日、あの長かった戦争も事実上、終わりを迎えたわ。フランスの勝利とい
う形で、ね」
　
　血塗られた眼鏡はその視線を隠し、彼女が何を考えているのか、それを察知す
る事は不可能だ。
　声は、無表情に続ける。

「フランスはジャンヌによって朝を迎えたわ。ジャンヌ・ラ・ピュセル。闇の帳
が最も深く降りる時、朝の訪れを告げる騒々しき足音。けれど……貴女は、その
残響に過ぎない」

　森を焼く炎が、眼鏡に煌く。

「朝が来ればいずれ夜が訪れるように。夜が訪れれば、いずれ朝を迎えるように。
朝と夜は、常に巡り続けている。一日として、同じ日はないわ。幾ら同じように
見えたとしても、それはどこか違った一日」
　
　乙女は、ただ静かにふみこの言葉を聴いている。
　彼女もわかっているのだろう。
　だが、それでも。ふみこはジャンヌに言葉を告げる。

「貴女が訪れを告げたのは、遥か昔に過ぎ去った朝よ。今はもう、貴女の時代で
はない。もしこのまま貴女の救国を続けるのであれば、貴女は過去の遺物として
扱われ、新しい時代によって排斥される」
　
　現在の世界にとって、自らの信念の元、狂信的なまでに戦いに赴こうとするジ
ャンヌは、異物以外の何者でもないだろう。ならば世界は、今の時代にそぐわな
いそれを徹底的に排除しようと働きかけるはずだ。

「その役目、私が果たしてもよかったのだけれど……」

　ジャンヌとふみこの視線が、正面からぶつかり合う。
　何秒ほど、そうしていただろうか？
　時間にすれば、恐らくほんの数秒。
　先に視線をはずしたのは、ふみこの方だった。
　
「……まぁいいわ。私にとっては、さして興味のある話でもないし、ね」
　
　肩を竦め、一人ごちる。

「貴女が救国に向かうというのならとめはしない。けれど、その先に待つのは破
滅だけよ。この先には、人類の守護者が待っている。もし貴女が信念を押し通そ
うとするのであれば、まずは彼女を倒さなければならない」
　　
　イグニス。
　人類の守護者を自称する彼女は、この女を許しはしないだろ。
　何故なら、かつての英雄、ジャンヌ・ラ・ピュセルこそ……今や社会の一番の
敵に他ならないのだから。

「頼みは聞いてあげる。だから、安心して行きなさい。何処へなりとも行って、
野垂れ死ぬがいいわ」

　そういうふみこの表情は、いつもの不敵な笑みを浮かべていた。

611 名前：パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU ：2007/12/01(土) 12:31:57

>>574

パチュリーは空を飛んでいた。


正確には吹き飛ばされていた、というべきか。
閉所での異形の巨人の暴風は、彼女に避ける隙間を見出させなかった。
防御法陣が効果を発揮して手傷こそ無いものの、負荷と消耗は大きい。

とっさに風精を召喚し、空中で身体を制動した。
視界を回す。周囲は灰色の石壁（・・）。ところどころに小さな窓。
あちこちに見える、火を放つ金属製の何か（恐らくは武器）。
部屋中を跳ね回る、蚤と一輪車乗り。
恐るべき弾幕と直接攻撃に晒されながら、パチュリーは異様なほど冷静だった。
防御法陣の崩壊臨界点まで、後５秒。

「十分に過ぎる時間ね」

懐から２枚の札を取り出し掲げる/0.5秒
札達が歌いだす/0.6秒
パチュリーも唱和する/1秒

天空にそびえ立つ尖塔よ我らが道を導きたまえ。
天空より来たりし焔、我らが敵を打ち払い給え。
航海の守り手たる聖人よ、二者を調和させ給え。

術式完成/4.7秒

目標/異形/金属製の武器/蚤/一輪車乗り/全て/レミリアも？/彼女ならかわす/多分

「航海の守り手の怒り（St Elmo's Explosion）」

詠唱成立と法陣の強制解除とは同時。
無数の火球が顕れ、部屋の中の全てに向かって降り注いだ。

【現在位置／Ｃ地区：研究所内】

612 名前：光の三妖精 ◆FairyH0Oi2 ：2007/12/01(土) 12:35:41

光の三妖精vsアーカード（幼女）　導入


いつもと同じ、いつもの森で、
いつも通りに、のんびりと。
今日も今日とて悪戯三昧。
でも何かが違う。何が違う？


「いつもよりも感じる気配が多い気がするわ」

「いつもよりもなんとなく騒がしい気がするわ」

「いつもよりも楽しくなりそうな気がするわ！」

「きっと森がいつもと違うせいね」

「じゃあどうするのよ？」

「決まってるでしょ？　遊びに行くの！」


ふわり、ふわりと上へ上へ。
木の葉、木の枝ひらりとかわして。
辿り着いたのはお日様の下。
いつもと違う。何が違う？


「見て見て！　すっごい大きな塔よ！」

「森が塔を飲み込んでるわ！」

「どれもこれも見たことないわ！」


物珍しくてみんなできょろきょろ。
上も下も左も右も。
前も後ろも何もかも。
そこへ飛んできた黒い塊。
ばたばたばたばたうるさい羽ばたき。


「ねえねえ、アレは何かしら！」

「鳥にしては変な飛び方！」

「行けばわかるわ！　すぐ追いかけましょ！」

「そうね、それが一番よ！」

「そうと決まれば急ぎましょ！」

「素敵な一日になりそうだわ！」


ふわり、ふわりと飛び立つ三人。
ぐんぐん進む、黒い塊。
はてさて一体、どうなる事やら。

613 名前：ジャンヌ／白のクイーン ◆j5y3JEANNE ：2007/12/01(土) 12:39:49

グルマルキンｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『アリス戴冠―Queen ALICE is born in the Reims―』


>>598
>>599>>600>>601>>602>>603>>604>>605
>>606>>607>>608>>610


　森の外からやってきたナイトノッカーは、最後まで森に関わろうとはしな
いまま舞台から降りようとしている。
　呼ばれもしなかった闖入者。脚本には不確定因子。でも、彼女はキャスト
もセリフも持たないで見事に「自分」というキャラクターを演じきった。
　こうして第六の幕が降りようとしている今だからこそ、ジャンヌははっき
りと確信できる。行われた演目は、予め用意されていたシナリオよりも遙か
に感動的なクライマックスを提供してくれた。
　調和に縛られるだけが舞台ではない。ワイン片手に観客が乱入し、舞台袖
から制止されるのも聞かずに中央で踊り狂ったって良いではないか。
　どうせ乙女は田舎生まれの村育ち。高尚なタイトルとは無縁なのだから。

「―――……あなたなら分かってくれると思うけど、私は聖女でも救世主で
もありません。もちろん、魔女でも売女でも」

　神殿がまとう炎の天衣を見上げる。

「私はただ〈声〉が聞こえただけ。光が見えただけ。サン・ミシェル様のお
言葉に従うことしかできない、しがない乙女よ」

　あらゆる幻想を焼き払う終末の炎風。相克する球根と苗床の拒絶反応が火
災を引き起こしているものだとばかり思っていたが、もしかしてこれは自分
の心象風景なのかもしれない。
　ルーアンの火刑台でイエス様の御許に還った、あの煉獄を再現するために
乙女は救国を繰り返すのか。
　―――それは本人にも与り知らぬこと。

「そして私にはいまでも〈声〉が聞こえるんです。光が見えるのです」

　だから乙女は行くわ。微笑んでから、イヴェットの矮躯を更にいと小さき
魔女に預ける。名残惜しげに少女から指を離す。
　国王陛下と肉体的接触も精神的感応も断たれたことで、乙女の中の重大な
一部が欠落してしまったような気がする。途方もない虚無感が全身に広がっ
てゆく。―――この喪失を乙女は知っている。

　パリ攻略のときもそうだった。アルマニャック派からの支援を失ってもな
お、戦地から戦地へと聖戦を繰り返した終末の日々。―――国王陛下とは別
れ、〈声〉は乙女に死を約束した。
　敗北を知りながら、その先に待つ勝利を信じて転戦する乙女の叡嘆は、常
人には耐えきれないほどに昏く、悲愴に満ち―――故に劇的だった。
　あの絶望が再現されようとしている。

　この救国の先で、彼女の火刑台が待っている。

　全ては運命。イエス様の御心のままに。我が祖国に福音を。
、形骸の黒甲冑で武装した左手と森が構築する木玩の義手を合わせて、脚本
知らずの魔女へジャンヌは祈りを捧げた。

　金髪を翻して踵を返すと、乙女はもう振り向かない。


　　―――いざ、パリへ。



（ジャンヌ・ラ・ピュセル→最後の救国へ）

【現在地：Ｃ地区　腐海神殿（研究所）最深部〈妖精の樹〉→移動】　

614 名前：ジャンヌ／白のクイーン ◆j5y3JEANNE ：2007/12/01(土) 12:45:18

グルマルキンｖｓジャンヌ・ラ・ピュセル
『アリス戴冠―Queen ALICE is born in the Reims―』
（※ちびふみこ乱入）

闘争レス番まとめ

　>>517>>518>>519>>520>>521>>522>>523
　>>524>>525>>531>>556>>572>>580>>586
　>>598>>599>>600>>601>>602>>603>>604
　>>605>>606>>607>>608>>610>>610>>613

　　　―――私は今からパリへと向かいます。
　　　　　
　それが、最後の救国となるでしょう。

615 名前：システムアナウンス ★：2007/12/01(土) 18:22:00

警告！


森蝕の根源が消滅し、森が現在進行形で火に焼かれて消滅中！
状況の詳細の変化は>>2に記載！

尚、この変化を闘争に用いるかどうかは個々人の自由。





２日午前五時に津波で街は消滅！
それまでに闘争を終わらせるか、
津波に飲まれて全てを終わるか、
あるいは下記リンクの巻き戻し措置を取る事！


吸血大殲　森祭　Reverse
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1194869478/738-740

616 名前：システムアナウンス ★：2007/12/01(土) 18:24:30

現在各闘争進行状況（最新の状況）

現在進行形纏め
>>595

ストーリー関連詳細纏め
>>529
>>530

終了した闘争纏め
>>596

617 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/12/01(土) 18:41:05

>>611



　弾幕と粉塵／壁を叩くような手ごたえ／見えない壁が攻撃を退ける。
　決壊―――同時に吹き荒れる無数の火球。着弾した傍から火柱を上げる焼夷弾。
　燃え上がる／赤熱する部屋。灰色と紅が占める世界。

「カリカリガリガリ！　カリカリガリガリ！」ホッパー／でたらめに天井／床／壁を跳ね
回って狙いを外す／輻射熱で服が煙を上げる／支障無し。あちこち火花を散らしながら鉤
を振り回し、引っ掻き回す。

「ブルブル！　ブルブル！」スパンカー／鞭を体に巻きつける／鋼で出来た毛糸球／赤熱
しながら火球の直撃を防御。ばらりと鞭が解けた後にはかすかな焦げ付き。赤く染まった
鞭を振り回して攻撃再開。

　警報機の鳴動―――異常高温によりスプリンクラーが勝手に作動。人工の雨で炎と熱を
押さえ込む。辺りに蒸気が立ち込める／視界の喪失。
　支援攻撃／不可。目標を捉えられず―――

「マンマ、マンマ、マンマ！」ベイビーヘッド／蒸気ごと部屋を掻き分けて薙ぎ払う。手
を振り回しながら敵を探す／掴み取るための行動。着弾した火球は肉と内臓を焼く／すぐ
さま再生。焦げ付いた皮膚がぼろぼろと零れ落ちる。

　支援攻撃／可能。再び放たれる弾幕の華。
　執拗に繰り返される包囲。


【現在位置／Ｃ地区・研究所内】

618 名前：『夜雀の妖怪』ミスティア・ローレライ ◆8hOOMYSTIA ：2007/12/01(土) 19:16:19

>>597
彼女はまるでチェイン・ソウ

ちりちりと額を焦がす感覚。
殺意が身体の中心線を捉えている。

鋭い瞳はチェイン・ソウ
一目で心を引き裂かれる
一瞬だって耐えられやしない

塵の幕では心許ない。
空気を乱して更に備える。

天使の声はチェイン・ソウ
鼓膜の先までバラバラで
それでも心を抉られる

殺気の先に左腕を捧げる。

真っ赤な薔薇の花。

減衰を繰り返してなお迫る閃光は、頬をかすめて通り過ぎる。
肘から先を置き去りに猛禽が襲来。

その指先はチェイン・ソウ
触れられただけで爆発しそう
俺を切り裂くチェイン・ソウ

小さな手のひら。
細い指。
禍々しい爪。

一閃。


【C地区　瓦礫座の怪鳥】

619 名前：アーカード（幼女） ◆yojo.B7p7. ：2007/12/01(土) 19:23:32

>>612
　
光の三妖精vsアーカード（幼女）
　
黒い塊――ヘリが、ヘリポートへと垂直に着陸する。
そして、真紅のコートの、長身の男が、ヘリポートへと降り立った。
森に侵蝕され、酷いザマになっている街を見ながら、平然と男はつぶやいた。
「何だ、祭りはもうすぐ終いか」
子供のように落胆した声を出して、男はその場に座り込む。
未だその森の奥では惨劇が続いているのだが、男にとってはもう終いも同然だった。
　
ヘルシングの鬼札（ジョーカー）、アーカードにとっては。
　　
だが、アーカードは何かを察したように、ふと立ち上がる。
　
「ほう、祭りの終いを飾る、ばか踊りをしようって連中がいるのかい。
　まるで取るに足らない餓鬼の遊びだが、退屈しのぎにはいい」
　
そういうと、アーカードの姿は血の霧のようにぼやけ。
その血の霧は、幼女の姿を取った。
　
「餓鬼の遊びなら俺も餓鬼になってやる。さぁ、おいで糞餓鬼！」
　
【現在地：Ｆ地区　ヘリポート】

620 名前：ジャンヌ／白のクイーン ◆j5y3JEANNE ：2007/12/01(土) 20:04:00

ジャンヌ・ラ・ピュセル
　最後の救国［dernier defile］―パリへ―


>>614


　　フランスよ、泣くのではない
　　　暗い栄光のかげりに

　　それよりも、双の眸でこの地を降り仰ぎ
　　　お前の歴史を思うのだ

　　思い起こせ、その昔
　　　どのような驚異のいさおが
　　　敵の手からお前を救い出したかを


　嗚呼　戻ってきて下さい、もう一度　この鎖を解き放つために
　　―――アリスの夢とともに焼け落ちてゆく神殿を背負って、
　嗚呼　戻ってきて下さい、もう一度　侵略者を追い払うために
　　―――乙女のたった一人のパレードが始まる。
　嗚呼　戻ってきて下さい、もう一度　勝利で祖国を包むために
　　―――胸に宿るのはキリストの聖体。その幻想。
　嗚呼　戻ってきて下さい、もう一度　闇に瞬く光を見るために
　　―――潰れた右目から芽吹いた一枚葉が、眼帯となって疵を隠す。
　嗚呼　戻ってきて下さい、もう一度　栄光の凱歌を歌うために
　　―――蔦と枝で編まれた木玩の義手が、ぎちぎちと哭いた。


　焦熱の渦中で終末を再現する乙女の一人舞台。
　鉄靴が草を踏み分ければ炎が伝播し、鉄篭手が緑樹を払えば、焔の風が一
帯を凪いだ。熱気が口蓋から進入し、容赦なく肺を炙る。
　苗床と球根の不和はイヴェットのときより深刻だ。
　ジャンヌは森のルールを無視し、魔女アマモリの本棚にないリドルを持ち
出す。それは聖杯の望郷を侮辱するに等しい。憤激に燃え盛る聖杯と強情な
ジャンヌの救国が衝突し、森に炎を招く。
　黒乙女のギフトを脱ぎ捨てることで自存乖離の痛みから逃れることができ
たが、身を蝕む痛哭は健在。自らの心臓に敵陣のキングを座らせるという致
命的な行為が、森とジャンヌにおしまいの物語を紡がせる。

　けれど彼女は止まらない。

　歩みは遅く一歩進むごとに天を仰ぐ。
　汗が顎先から甲冑に滴り、じゅうと音をたてて蒸発する。
　不足気味の酸素を求めて喘ぐ。
　躯が傾いだ。
　足取りが危うい。
　息は荒い。
　心臓がきりきりと痛む。
　誰も支えてくれない。
〈声〉だけが救国を促す。
　フランスを救え、と。
　パリを目指せと、と。

621 名前：ジャンヌ／白のクイーン ◆j5y3JEANNE ：2007/12/01(土) 20:04:36

>>614
>>620

　七度目の救国―――最後の聖戦。
　乙女の横にアリスの姿はない。森の中で、一緒に勝利への道を歩んでくれ
た後見人……いいや、友人と呼ぶべきか。彼女が森というステージから退場
したいま、ジャンヌはたった一人だ。ひとりぼっちの救国を進む。
　足が重かった。
　胸が苦しかった。
　肉体的な痛みは無視できる。それはイエス様が与えくれる、受難という名
の寵愛だから。
　だけど知らない。
　心の痛みはどうすれば治まるのか。
　乙女は知らない。
　我慢して進むしなかった。
　いっそが足が潰れてしまえば楽なのかもしれない。―――いいえ、それは
無駄。足が無ければ、這ってでも進むだけ。
　痛みに喘いで、寂しさに打ち震えて、ドンレミーに帰りたいと泣きながら
も、乙女の足は止まらない。
　誰に強要されているわけでもない。自分の意思が前進を求めている。
　こんなに痛いのに。
　こんなに辛いのに。
　こんなに寂しいのに。
　ああ、こんなにも一人なのに。
　私は馬鹿だ。
　こんなの、救いなんかじゃない。
　ただの意地だ。
　強情になっているだけだ。
　意固地になって、自分を騙してる。
　イエス様を言い訳に使っている。
　ほんとは助けて欲しいのに。
　ほんとはもう、限界なのに。

　気付けば乙女は泣いていた。心で、ではない。躯が感応して瞳から涙を溢
れさせていた。なんて恨めしい洪水。義手で荒々しく拭っても、次から次へ
と流れてくる。―――人前では例えそれがアリスの前でも、涙なんて見せな
かったのに、一人になった途端にこれか。
　今のジャンヌは、聖女ではなかった。当然、魔女でもない。
　彼女はただの乙女〈ラ・ピュセル〉。
〈声〉が聞こえてしまっただけの、信仰熱心な村娘。
　寒ければ凍え、暑ければ喘ぐ。
　一人はあまりに辛かった。
　パリの城塞が至高天〈エンピレオ〉より遠くに思える。
　辿り着けるのか、あんな最果てまで。
　たった一人で勝利に追いつくのか。

　もう限界だった。心は折れかけている。膝は孤独に震えている。チーフ・
フォレスターの鎧はずしりと重く、灼熱の森林はあまりに息苦しい。
　ここまでやってこれたんだ。
　もう十分だろう。
　もうフランスのための献身は果たした。
　もうやめよう。
　心はそう哭いているのに、乙女のパレードは止まらない。
　歯を食い縛って前に進む。
　
　私は強情だから。
　人の話なんてまるで聞きやしないから。
　自分の声すら聞こうとはしないから。
　自分の哭き声にだって耳を貸さない。
　これが意地だというのなら、その意地をやり遂げる。
　さあ、パリへ。
　パリへ！
　パリへ！


【現在地：森のどこかで移動中】　

622 名前： ◆ALICEsQkXc ：2007/12/01(土) 20:05:57

　―――あなたが孤独？　乙女がひとりぼっちですって？
　
　ああ、なんて勘違いをしているのかしら。
　　あなたはなーんにも分かってない。
　自分という存在が、如何に他人に影響を及ぼすか、
　　どれほどの人間を魅了するのか分かってないわ。
　ジャンヌ・ダルクに孤独なんてあり得ない。
　あなたみたいなかわいらしい娘は、地獄に堕ちても人気者。
　　望んだって一人になんかなれないわ。

　……それに、あなたは忘れてる。
　イヴェットの退場で「ヘンリー六世」のリドルは終了しても、まだ聖杯
が仕掛けた「鏡の国の薔薇戦争」は健在だということを。
　グルマルキンが死んだなら、新たな赤のクイーンが戴冠するだけ。赤の
キングはいま、必死でジャンヌ討伐の十字軍を募っているわ。
　でも、そこには聖杯すら見落としている落とし穴があるの。
　彼は乙女の胸から自分を摘出することに必死で、ジャンヌが白のクイー
ンだということを忘れてしまっているわ。
　赤の軍勢の敵は白の軍勢だというのに、まったく愚かなこと。
　敵はスノードロップだけじゃないわ。
　敵は白のクイーンだけじゃないわ。

　そしていま、森という幻想の管理人はジャンヌ！
　あなたなの！

　パーティは、アリスがテーブルクロスをひっくり返して終わったわ。
　もうパーティは続かない。もうパーティは続かない。
　だけれども、救国のパレードは続きます。
　パリを目指して続きます！

　さあジャンヌ。
　あなたの剣を掲げなさい。
　突撃〈パレード〉と叫びなさい。
　あなたの声を待っている、
　クイーンの命令を待っている、
　
　―――白の軍勢を率いるために！

623 名前：ジャンヌ／白のクイーン ◆j5y3JEANNE ：2007/12/01(土) 20:08:20

>>614
>>620>>621>>622



「―――おい、見たか」
　地を震わすような低い声。
「あの意地っ張りなところ。絶対に負けを認めようとしないところ。相変わ
らずじゃないか。まったく、活きが良すぎて嬉しくなるぜ」

「―――お前は気楽なもんだな」
　透き通る刃の鋭さを含んだ声。
「突撃を唄うのは彼女だが、作戦を指揮して、軍隊を率いるのは俺なんだ。
たまには退くということを覚えてもらえないと困る」

「――― 千年紀の折り返しを迎えても、」
　憂鬱に暮れなずむ迷い子の声。
「乙女の気高さが鈍ることはない。彼女の輝きとは、理性や智識によるもの
ではないことは、貴兄等も承知のはずだ。彼女が我々にもたらすのは、策謀
ではなく奇跡……おお、なんと美しき姿か」


　三者三様、それぞれの想いに満ちた視線が乙女に集中する。孤独の砂漠の
中で、打ちひしがれる乙女を眺めて愛おしむのは何者か。
　ジャンヌは聖剣に手をかけながら振り返り―――身を強張らせた。

「ああ、あなた達は！」　

　森がもたらした幻想か。炎の中で乙女が見た幻覚か。いいや、違う。そん
な陳腐な現象ではない。ジャンヌは確信する。これは奇跡だ。
　奇跡が乙女の下へと馳せ参じた。

624 名前：ジャンヌ／白のクイーン ◆j5y3JEANNE ：2007/12/01(土) 20:12:16

>>614
>>620>>621>>622>>623


　白のルーク／―――白パン好きのライオン。
　獅子の頭は黄金のたてがみを燃え上がらせ、野蛮なれども深いぬくもりに
満ちた面貌。人の躯は筋骨逞しく、背丈は乙女の二倍を数える。
　フォレストランドで召喚された時と容姿は同一なものの、あの絶望に沈ん
だ姿に比べて、この獣人はなんと威風堂々としたことか。
　ダイヤの原石を切り出した大剣を担ぎ、白のクイーンの御許に推参。
　にやり、と男前の笑みを浮かべる。
　彼は憤怒〈ラ・イール〉の精霊。プラム・ケーキが大好き。

　ジャンヌの歓喜が出迎える。
「��獅子心公�＜Gティエンヌ・ド・ヴィニョル！」


　白のビショップ／―――黒パン好きの一角獣。
　青鉄のプレートメイルで全身を覆い、その内側は誰にも見せない。歩く甲
冑。生きた無機物。蒼く輝く装甲が彼の表情となって怜悧な感情を伝える。
　ユニコーンの頭をもした精緻な意匠の兜には、「世界を穿孔する」角飾り
が誇らしげに天へと伸びている。
　サファイヤでできた長大なパイクも、やはりユニコーンの角の如く鋭い。
　彼はオルレアンの最後の防壁。後のデュノワ伯にして、乙女の強力な理解
者。もちろんプラム・ケーキが大好き。

　ジャンヌの歓喜が出迎える。
「��私生児公�＜Wャン―――バタール・オルレアン様！」


　白のナイト／―――アリスをクイーンの座へと誘うとはずだった、白の軍
勢最強の駒。
　三つの駒の中で、唯一のヒトガタ。繊細で神経質そうな顔立ちから、決し
て晴れることのない懊悩と戦っていることが分かる。
　しかし、彼はまだ絶望をしていなかった。いまの彼はまだ、神への懐疑と
いう焦熱に炙られながら、決して希望を捨てようとはしなかった。闇に沈む
自分だからこそ、より強い光を見出せる。そう信じる強き者の眼差し。
　背徳の未来が待ち受けようと、この時の彼は神性だった。
　彼こそは乙女の騎士。彼女から誰よりも眩い光を見出した闇の迷い子。
　ブラックオパールの穀物を鎖で吊った二つのモーニング・スターを両手に
構え、乙女の奇跡を見届ける。

　ジャンヌの歓喜が出迎える。
「��憂鬱公�＝\――ジル・ド・レイ！」


　ルーク、ビショップ、ナイト。ここにジャンヌの救世軍が、最強の白の軍
勢が整った。信じられない光景。私はまだ一人ではなかった！
　両目から涙が止めどなく溢れ出す。感動が苦痛を圧倒した。

625 名前：ジャンヌ／白のクイーン ◆j5y3JEANNE ：2007/12/01(土) 20:17:07

>>614
>>620>>621>>622>>623>>624


「あなた達……ああ、あなた達！」

「おやおや」
　私生児の軽口。
「誰よりも気丈であることを願った貴公が、俺達に涙を見せるとは。さて、
オルレアン攻防戦のときも、そのような女らしさを見せてくれれば、作戦の
対立もしなかったかもしれないのに」
　甲冑越しに響くくぐもった声から、一角獣の親愛が伝わってくる。

「彼女をいじめるのはよせ、ジャン！」
　豪快に獅子心公は笑う。
「こいつが泣きやんだときのことを考えろ。どんな天罰を浴びせられるか、
分かったものじゃないからな。さしものお前も奇跡には抗えまい」
　乙女の頭ほどもある口から、ライオンの誇り高き畏敬が伝わってくる。

「ラ・イール……バタール様……あなた達という人は……」

「ジャンヌ、忘れ物だ」
　感動に奮える乙女に、ジル・ド・レイは彼女の象徴とも言える戦旗を手渡
す。百合の代わりに髑髏の紋様が縫い込まれた、もう一人の自分の戦旗。
「ああ！」乙女は竿を抱き締めた。「一人では無かったのね。一人では！」
　ジルの双眸から希望が燃え上がる。
「……私たちに見せてくれ。あなたの奇跡を」
　ライオンも一角獣もジルの言葉に賛同して頷いた。

「時間はないのだろう？　ならばちゃっちゃと片付けて、天国で酒宴といこ
うではないか。聖杯で呑む美酒は格別だろうな！」
　ラ・イールが呵々と笑い、
「お前が天国に行けると？　よしてくれ。せっかくの安寧の場が獣臭くなる」
　私生児ジャンが失笑し、
「―――さあ、ジャンヌ。始めよう。これが最後だ」
　ジル・ド・レイが慈しみをこめて微笑みかけた。

「ええ、ええ」
　頷いて、何度も何度も頷いて。
　乙女は戦旗を翻した。


「目指すはパリ！　いざ―――突撃〈パレード！〉」



（白のルーク／ラ・イール→参戦）
（白のビショップ／私生児ジャン→参戦）
（白のナイト／ジル・ド・レイ→参戦）

【現在地：森のどこかで移動中】　

626 名前：エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ ◆SV001MsVcs ：2007/12/01(土) 20:51:58

メイ＠マルチアーノ12姉妹ｖｓエリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ

>>592

　弾倉を外して残弾を確認。
　――あと半分ってとこか。

　叩き込んで通りを窺う。こっちへ向かってくる足音、気配なし。

「……追ってこない？」
　
「忘れ物だよ」

　声は上から。
　直後、紙箱が降ってきた。

「それとも、いらなかったんだっけ？」

　レバーアクションの音。

　アタシとフィオは咄嗟に左右へ別れて跳んだ。

　直後に銃声。続けて、炸裂音。
　
（弾薬に銃撃で即席の手榴弾に！）

「まあいいや。サービスだからとっときなよ」

　路面を転がり、起き様にサブマシンガンを向けた。

「ノーサンキューだよお嬢ちゃん」

　屋根の上には女ターミネーター、メイ。
　手にはSAAの相棒、ウィンチェスター。

（アレが相手なら火力優位はこっちにある。集中砲火で速攻だな）

　アイコンタクトを交わすべくフィオへ視線を飛ばす。

「え――」

　アタシと同じく銃を構えているものだと思っていたフィオは……
　――背中に赤を浮かせて倒れていた。

　生きている？　死んでいる？　あの位置は急所だっけ？
　出血は？　弾は貫通した？　留まった？
　喰らった弾種は？
　ホローポイント？　ソフトポイント？　シルバーチップ？　スパルタン？　KTW？

「ら……ああああああああ！！！」

　思考を身体が打ち切った。
　メイへ火線が吠える。フルオート掃射。
　セオリー通りに敵の頭を抑えて手榴弾を投擲。
　屋根の上でカンと跳ねて爆発。

　アタシは地を蹴ってそこから離れた。
　通りを渡って別の路地へ駆け込む。　

　追って来い！

【現在地　D地区：商店街】

627 名前：―永遠に紅い幼き月―　レミリア・スカーレット ◆DEVILbzibY ：2007/12/01(土) 21:10:12

紅魔館の優雅な住人たちｖｓカトル・カール
―Forest Lagoon―

>>611>>617

「……まったく、パチェったら。私を燃やすなら燃やすと言ってくれな
いと駄目じゃない。お陰でお洋服が台無しよ」

　炭化した躯がぼろぼろと崩れ落ちる。そこに鞭と鉤爪の二重攻撃が殺
到し、レミリアは無惨――もう何度目か分からない無惨だけど――に切
り刻まれた。「くすくす」と笑い声だけが谺する。

　―――吸血鬼はその程度では死なないわ。

　レミリアの灰が羽ばたいた。レミリアの肉も、血も、髪の毛も。彼女
を構築する一切の闇が、翼を生やし、蝙蝠のカタチを作って飛び散る。
　棺桶の上で彼女を再構築したのと同じ現象。だが、今度の蝙蝠は再生
のための群れではない。妖怪として、人間を、食い尽くすため、だ。
　
　蝙蝠の集合体が黒霧のように広がり、三匹の中の一匹―――かつて、
レミリアを肉の牢獄に閉じ込めた腕達磨に群がる。
　千匹の蝙蝠が剥いて襲いかかった。

「……悪夢の時間よ。もうお眠りなさい。」

　再生された肉すら食い尽くす苛烈な捕食行為の始まり。



【現在位置／Ｃ地区・研究所内】

628 名前：◆/HIME/HDYY ：2007/12/01(土) 21:10:16

>>404>>405 >>625

スレイドとの一戦を終えた一行は、近辺で始まった銃撃戦の煽りを受けながら
（ヒロが流れ弾を身を挺して食い止めたため数度死んだが）、どうにかスタート地点である
トラックが流れ着いた川へと戻ってきていた。

「それにしても―――」
リザは携帯食料を片手に住宅街で見つけた地図を睨み付ける。
「ここがフランスだったなんてね……」
ヒロは飲料水を喉に流し込みながら初めての海外渡航にショックを受けていた。
「ふふん、場所はどうあれ我々には“進む”こと以外の選択は無いのだ。そうだろう？
で、リザ―――最初の森がどこか判るか？」
姫は、フランドルが淹れたティーバッグの紅茶を一口啜ってその味に閉口した。

「……ほら、ここじゃないの？ えーっと……サンゲツセイヤク、って書いてある……」
ヒロの指し示した場所。
「燦月製薬……！？ なんで、何で奴らがこんな所に！？」
「ふん―――リザ、何か知っているのか？」
「ああ、知ってるも何も……」

リザは語る。人狼族として知りえる燦月製薬の知識、いや『イノヴェルチ』の知識について。
人狼族の天敵である吸血鬼に組する人間の組織。
そこで行われる非人道的行為の数々を。

「……なるほど、それだけの組織ならば魔術儀式の一つや二つ行っていても不思議はあるまい。
魔術儀式の影響が我々をこの地に立たせている―――と仮定すれば、我々のすべきことは唯一つか」

姫は指し示す。
帰路であり、生き残るための道を。

「往くぞ、あの闇き森へ」

【現在地：D地区→C地区　森へ向けて進軍開始】

629 名前：セイバー ◆QQ9I3rvNhM ：2007/12/01(土) 21:10:23

　
　
　

――とある話をしよう

誰よりも理想に燃え、

そして絶望していたある少女の物語りを―――
　
　
　
　

630 名前：セイバー ◆QQ9I3rvNhM ：2007/12/01(土) 21:11:29

　
>>629
　
　

ふと自身が眠る座を見渡す。

そこにあるのは数多くの夥しい騎士たちの亡骸、
王である私を信じ、王である私に従いともに戦場を駆けぬたあの日々―――
なにが間違いだったのかわからない、なにが狂っていたのか思い出せない。
ただ成すべきを事をするために、私は多くの者を踏みにじり犠牲にしてきた。
その全ては、ただみんなに、笑ってほしいと願ったから…
そのために怨まれようと、嫌われようとも戦い抜くと誓ったのだから。

間違いはなかった、間違えてはいなかったはずだ
でも―――


「自分より王として相応しい人物がいたのではないか…？」



そうだ、だから私はあの戦場に戻ったんだ。
全ては私の願いを叶えるために
終局の丘で望んだただ一つの儚い望みを手にするために
再び闘いの中にその身を置いた。


―――だが。

結末は無残なものだった。

私があの時、切り裂いてしまったものは他ならぬ私の誓いであり―――誇りだった。

そう、自分の願いを賭けて挑んだあの日
私の誓いと誇りは、放たれた黄金の剣戟とともに砕け散った。

自分が護ると誓った主を護ることも出来ず、
自分が手にすると願った願いを叶えることも出来ず、

ただ手の中に残ったのは、片時も放さなかった黄金の大剣のみ。
それは何のためか…

未だにあの男（ライダー）の放った言葉の意味を理解できず


私はなにを、

血に塗られた丘（ここ）でなにを想うのだろう…？


歪む。

空間が歪む。


ああ、

なるほど、まだ。

まだ私には戦わねばならない意味があるらしい。

そんなものは私の中には存在していないはずだ。
騎士としての誇りと誓いが破られた私に残されたものなど、―――あるはずがないのに。



光が弾けた。

肌に迫るのは生の空気感
圧迫するような世界の重力とこの小さき体躯に圧し掛かる甲冑の重さが
自身の現在降り立った場所を告げていた。
目を開けば目の前には巨大な十字架
ステンドグラスから降り注ぐ光を受け止め
膝立ちの姿勢を正し、静かに立ち上がった。


「ああ、………いいでしょう。」

そこまで私を食い潰したいならそうすればいい。
抜け殻の中身にはなにも残ってなどいないのだから。

武装を解除した姿はあの日のままダークグレーのスーツ。
これは彼女が遺してくれた唯一の―――
自己の存在理由さえも失ってしまった少女が戦場を駆け抜ける。
目指すのは聖杯。

ただ一つ、自己の中に残った望みを叶えるために


【現在地　Ｇ地区：大聖堂】

631 名前：セイバー ◆QQ9I3rvNhM ：2007/12/01(土) 21:12:42

　
　
>>629　>>630


移動をしながら自分の現在の状況と現時点での行動を把握していく。

市内を駆け抜ける中で阿鼻叫喚の術中に召還されたのだと気づき
目の前に迫る化け物たちを躱しながら先を急ぐ。
辺りでは爆発、崩壊、倒壊、消滅が繰り返されている様をみれば自分がいまどんな場所に降り立ったのかが理解できた

どうやらとんでもない状況に放り込まれたらしい。
この戦火を駆け抜けて聖杯を手にするなどどれほど困難か。
想像にするだけ頭痛に悩まされそうだ。

地上は既に化け物たちに制圧をされている状況をみればすぐさまに屋根に飛び上がって
屋根を伝って移動する方法に切り替える。
移動の際、跳躍した視界に大きな川が見えると少し立ち止まって

「ロワール川？。　いや、あれはセーヌだ。　ならばここは……」

先ほど走り抜けた聖堂を思い出す。
ここはかの聖処女ジャンヌ・ダルクの終焉の場所“ルーアン”
先ほどから広がっている森の存在、それらを合わせて考えれば粗方の予測はついた。
“何者かがルーアンで異界を発生させた。それも聖杯の力を利用して”
その力に世界が反応したのだろう、だから私がここに還び出されたのだから。

ならば話は単純になってくる。
その聖杯を私が手にすればこの異界もどうにか出来るし私の望みも叶う。
首謀者などの存在には手を出す必要はない。
それは生きている者たちの仕事だ、死者の出る幕ではないだろう。
目的は決まった。 聖杯の魔力を辿りそれを入手する。
そのために障害があらば排除してもかまわない。

いま一度、凛と響くような金の美貌を上げ、狂気に染まり行く街並みを見渡す。
一度だけ祈りを捧げる仕草をすると一際高く跳躍をし街を潜り抜けていったのだった。

【G地区美術館→F地区郊内へ】

632 名前：―完全で瀟洒な従者― 十六夜咲夜 ◆Clock/PR2Y ：2007/12/01(土) 21:21:15

>>574　

　急に雨が降り出した。
　ツンと鼻につく匂い。外はこれだから嫌だ。水まで現実的過ぎて。
　もっと自然のままに過ごせないのかしら？　無理なのでしょうねえ。
　
　こんなシャワーは浴びたくないなどと考えていたら壁が降ってきた。これは便利だ。是非家にも導入したい。
黒白で素早いのの侵入を防ぐにはもってこい。そうなると美鈴は職を失ってしまう――事はないと思う。形式
的にも、門番は必要だし。門で止められればそれが一番なのだし。
　そうこうしていると、空気が変わっていく。なんだか息苦しい、気がする。このままでは死んでしまうのかも、
とも思ったりする。冷たい金属質な殺気も追加。遊び足りない子供達の宴は続くみたいね。
　
　もう手一杯ですわ。
　家には腕白盛りが二人も居ますもの。
　
　時間と空間の調整。
　時間は進める事と止める事しか出来ないが、空間なら自由自在だ。
　
　例えば水を一箇所に纏めてしまったり、空間自体を広げて酸素を多く取り入れたり、そもそも私に近寄れな
い距離にまで広げてしまったり。
　幾つかナイフを撒いて、止まった時間の中を進む。
　私に掛れば壁などあってないようなもの。
　
　完全に瀟洒に、進ませていただきますわね？
　
「良い夜ですわね紳士様。一つ踊っていただけませんか？」
　
　にこりとメイドスマイル。
　無料で提供中。神社と大違いよ？

633 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/12/01(土) 21:26:29

>>632




　防御が破られる／降って湧いたナイフの雨／のたうち回る三体の拷問官。
　電流もガスも壁も地雷も退けて優雅に迫る姿―――銀のナイフそのもの。


　フリントの行動―――応戦。
　ケースを投げる／滑走する／通路の奥の奥へ。




「良い夜ですわね紳士様。一つ踊っていただけませんか？」




　鈴の音のような問い。


　回答は微笑。


　水に濡れてメイクが落ちる／端正な顔に火傷の跡。


　静寂／音もなく倉庫へと退避するシェイキーたち／手にケースを持って。


　降り注ぐ水／消毒された匂い／ここだけが雨を迎えている。


　スプリンクラーの停止。




　フリントの加速。

　肉体が限界値を超える。

　黒い軍刀が黄金色の血液を艶かしく見せつける。


　閃光―――Ｘの字。
　超高速の切り返し。




【現在地：Ｃ地区：研究施設内】

634 名前：―完全で瀟洒な従者― 十六夜咲夜 ◆Clock/PR2Y ：2007/12/01(土) 21:28:02

>>633

　水も滴る良い男、というには少し禍々しい。だけれどそんなものは些細な事。
　外見など、妖怪だらけの幻想郷では脅しにもなんにもならない。
　本当に恐ろしい悪魔は何時だって、警戒心を抱かせないままに魂を刈り取っていく。
　そういう意味ではまだまだ三流。精進が必要だ。
　
「あらあら、手を取ってもいただけませんのね。残念ですわ」
　
　ただ半歩。それだけの後退で避ける。
　もちろん腕は組んだまま、宙にはいつの間にかナイフが浮かび、にっこり微笑む。
　笑顔とは恐ろしいもの。本来は獣がどうとやら。
　
「お嬢様も見ておられませんし、本気で殺すわよ」
　
　両手にナイフ。
　刃渡りは林檎二個分。リーチには劣れど、速さと手数では負けないと思う。
　　
　舞うように踊るように。
　あわせるように宙を舞う。
　
　銀の矢と、それと共に行く銀の短剣。
　聞こえは良いけれど人殺し。
　
　罪悪感は――あったりなかったり。

635 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/12/01(土) 21:36:25

>>634




　閃光―――手応えは無く、代わりに反撃がやってくる。

　驚愕―――皆無。すでにトレーラー上で味わっている。

　対応―――迫るナイフ＋ナイフ。射撃近接の単独連携。

　反撃―――Ｗの字／Ｍの字。全て弾き返しながら後退。




　細い通路から広い倉庫へ―――点在するコンテナが遮蔽物となる。
　シェイキー／ポイズンスター／ローチー／それぞれどこかに隠れている。
　フリントだけが隠蔽を許さず広い舞台で佇んでいる。


　待ち受ける先、舞踏会の相手が姿を現す。


　攻撃―――Ｖの字／ワイヤーを断ち切る／吊り下げられていたコンテナの落下。

　攻撃―――Ｉの字／落下してきたコンテナを下から上に断ち切る／中身の放出。

　攻撃―――Ｓ字／Ｃ字／Ｎ字／中身を切断せず軍刀で弾き飛ばしての間接攻撃。




　攻撃―――Ｗ字／射撃と同時の加速／最速で接近しての複雑な機動を描く斬撃。




【現在地：Ｃ地区：研究施設内】

636 名前：―完全で瀟洒な従者― 十六夜咲夜 ◆Clock/PR2Y ：2007/12/01(土) 21:38:23

>>635

――やだやだ、庭師どころの話ではないですよ、お嬢様。
　迷いどころか『時間』すら切り裂いてしまいそうではないですか。
　
　恨みますわ――過ぎて。
　
　開けた視界のところどころに大きな箱。開ければきっと年を取ってしまうのね。少女と呼べないお年頃になる
のはちょっといただけない。加齢臭とか言われたくないわよねえ……。
　コツコツと乾いた音が響く。卸し立てとは言わないが、そこそこ新しい。久しぶりの買い物だったと思う。私物
だと、だけれど。困ったわねえ――汚れないかしら。代えの靴はあるけれど、出来ればティータイムにはこの
靴のまま出たい。足元を見られるという言葉は、靴で判断されるという事なのだし。細かいところまで気配りが
出来ないメイドだなんて思われたくないのだ。
　
――などと思考していると、小さな音が次第に大きく。ついには頭の上から色んなものが降ってくる。
　季節外れの雷と、どんな季節でも降ってこないような異常気象が目の前で。
　傘は何処かしら？
　
　当たるものと当たらないものを瞬時に判断――弾幕ごっこでお手の物だ。というか、温いわよ、温い。
　上体を倒しあらぬ角度から降りてきた角材を避ける。――右手を上げればナイフの列が。
　お次はそのままバックステップ。跳ねた鉄球風のもの避けて――左手を横凪ぎ。種無し手品。
　
　次。
　次。
　次。
　次。
　次――キリのないステップ。
　本命は？
　
　と思っている内に最接近。人を殺すのに最短のルートで迫り来る斬撃。
　どういう力で、どういう角度で、どういうルートを通れば殺せるのかをしっかりと理解した動き。
　ちょっとだけ賞賛に値する。
　
　それでも――即死狙いは少し外せばお終いですわ紳士様。
　
　右手左手胸足手首足首膵臓脾臓喉眼口肝臓胃心臓耳――確実に、なぞられるルート。
　ああ、死んでしまうかもしれません。
　
　並べておいたナイフに号令。種なし手品。
　十重二十重と織られた布のようなナイフの群体。
　
　突然の奇襲、その程度は感じていただけますかしら？

637 名前：Magician　(Type 0)：2007/12/01(土) 21:43:08

セイバーｖｓMagician　(Type 0)

>>629>>630>>631

　気づいたとき、彼（そう呼ぶのが正しいのかは分からないが便宜上そう呼ぶ）はそこに居た。
　　ところどころで火の手が上がる市街地を眼下に、彼は空に浮いていた。

「ワタシハ……」

　記憶がフラッシュバックする。

　Dr.キュリアン。

　ＡＭＳの男達。

　ゴールドマン。

　ＡＭＳの男達。　

　そして――

「私は魔術師（マジシャン）。人の上に立つもの。人を滅ぼすもの」

　手は五指ではなく、大きな鉤爪のような三指。
　足も五指ではなく、大きな鉤爪のようなこちらは二指。
　人に似た頭部には尖った耳に、後ろへ流れる二本の角。
　悪魔と呼ばれる存在にも似たシルエット。
　全身を覆う青の混じったグレーの装甲。

『人の上に立つ生物』として作られた人類にとって最も恐るべき“敵”。

　彼――マジシャンは三度現世へ舞い戻った。

638 名前：Magician　(Type 0)：2007/12/01(土) 21:43:55

セイバーｖｓMagician　(Type 0)

>>629>>630>>631>>637

　街の全貌を見下ろす高みに居たマジシャンは、不意に高度を落とした。
　真っ直ぐに。その姿勢のまま。自由落下より速い猛スピードで。

　彼は、市外を有り得ないほどの跳躍を駆使して駆けていく影を見咎めていた。
　それは人。少女。金髪。小さな体躯。だがその運動能力は恐るべきもの。

　マジシャンの左手が赤々と光った。
　光の元は、異形の手と同じ大きさの火球。
　顔の横に出現した火球にも表情を変えることなく、マジシャンは左手を少女へと振った。
　弾丸めいた速さで火球が疾る。

　打ち出された火球は、宙を駆ける少女へ当たることなくその足を止めさせた。
　少女の前に、炎の悪魔が下りる。

「お前は、誰だ？」

　悪魔は宙に浮いたまま、問う。


【現在位置：F地区】

639 名前：“姫” ◆/HIME/HDYY ：2007/12/01(土) 21:43:56

>>628

辿り着いた森は、数時間前の姿のままではなかった。
炎に包まれながらも、森としての姿を捨てない空間。
しかし、そこには本来あるべきはずの生命を感じ取ることはできない。
まるで、万華鏡（カレイドスコープ）が描き出す風景のようだ。

「ふふん―――どうやら終幕には間に合ったようだな」
姫は、威風堂々の体を示し森を睨み付ける。
崩壊の序曲が始まっていることは、もはや誰の目にも明らかだ。
「でも姫、これって山火事なんじゃ……」
「何言ってんだヒロ、もうここは常識的な森なんかじゃねえ―――戦場だ。
戦を求めた奴が作り出した炎のコロッセオだ、違うか？」
闘争本能を掻き立てられたのか、リザは既に戦闘態勢へと姿を変えている。
「ふが」
フランドルは、ここまで引いてきたリヤカーから武器を取り出し姫とヒロに配り出している。

「フランドル、残った武器はここに捨て置いていくぞ―――どうせ、もうここ（、、）には戻らぬのだからな」
姫の言葉の意味を数瞬遅れて理解したヒロは、改めて決意を固める。
（僕、帰ったら姉さんのカレーをお腹一杯食べるんだ……）
そんな、日常的で掛け替えの無い場所に戻るための決意を。

そして、炎と幻想の森へ足を踏み入れた一行が目にしたのは
―――中世の甲冑を纏った少女が先導する不可解なパレードだった。
【現在地：森の片隅】

640 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/12/01(土) 21:51:38

>>637




　設置―――刃／刃／刃／壁となって敷き詰められる。
　射出―――銀／銀／銀／光となって一斉突撃される。


　接近―――死／死／死／死となって肉体へ刺突する。
　迎撃―――Ｗ／Ｖ／Ｏ／軌道を盾として切り払った。


　すでに理性は沈静。本能のみが刃を動かす原理。
　脳内の破片が疼く―――箍から解放される肉体。


　死／生／獲／狩／全てを読み取って同時に行動。
　ナイフの壁を切り開く―――自らの血とともに。


　右肩／左足／左わき腹／右胸／突き刺さってなお前進。
　そして、偉大な石器がその軌道に相手を捕捉する瞬間。


　Ｘの字―――袈裟懸け、逆袈裟、右から左、左から右。
　致死に至らずとも、刃先だけであろうと届かせる執念。


　限界値の突破―――接近の完了＝互いの交錯。
　手負いの黒豹がその生命を燃焼させての必殺。



【現在地：Ｃ地区：研究施設内】

641 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/12/01(土) 21:54:17

>>627




　暗黒―――赤い輝きを宿した群れ。
　全てが蝙蝠／鋭い牙を持った肉食獣。

　ベイビーヘッド／押し包まれる／再生／破壊／肉の盛り上がるそばから食いちぎられる
体／圧倒的密度の殺人蝙蝠／拮抗する互いの能力。

「キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ！！」

　絶叫＝苦痛＋怒り―――血と千切れ飛ぶ肉を撒き散らしながら両手を振り回す／敵を掴
み取り、押しつぶす為に必要な行動。闇雲な機動は、ついに相手を捕らえる軌道へ装填。
壁／実験具／天井／散水設備／電気配線／警備装置／何もかも薙ぎ払っての圧殺。


　ホッパー／スパンカー／それぞれ瓦礫とともに巻き込まれながら飛翔―――狙ったよう
にコンテナの中へと突っ込む。数秒遅れての行動―――人工の雨天を疾走する。

　鉤―――狙いは首を。

　鞭―――狙いは胴を。

　切断する威力の突撃＝決死の攻撃＝必殺の一撃。




【現在地：Ｃ地区：研究施設内】

642 名前：―永遠に紅い幼き月―　レミリア・スカーレット ◆DEVILbzibY ：2007/12/01(土) 21:58:54

紅魔館の優雅な住人たちｖｓカトル・カール
―Forest Lagoon―

>>641


「やるわね」

　まさか、蝙蝠でも食い尽くせないなんて。
　坊やの再生能力は本物だった。
　吸血鬼でも、ここまで貪欲に生き足掻く種族は珍しい。レミリアは、外の
人間が彼女の知る種とは大きくかけ離れていることを実感した。
　……私がいた頃は、こんなのいなかったもの。

　坊やの肉が無尽蔵に湧き出すように、何匹握り潰したところでレミリアの
蝙蝠も途切れることはない。しかし、かわいいペットをわざわざ犠牲にする
のはもったいなかった。もっと手っ取り早く片付けよう。
　蝙蝠が集合し、少女の矮躯を形成する。
　位置は坊やの目の前。―――レミリアの再構築を狙っていたかのように、
豪腕が襲いかかる。さらに、鉤と鞭の二重攻撃も。
　ほんとにしつこい。

　―――全て灼き払ってやるわ。

「パチェの火には耐えられたみたいだけれど……」

　これはどうかしら？

　二枚目のスペルカードを懐から取り出す。掲げると同時に紅蓮が迸った。
　神槍とは似て異なる閃光のようにまばゆい焔。カタチを形成することなく、
レミリアの衣装となって躯を包む。それは例えるなら爆縮する太陽。
　口端をつり上げて獰猛に笑うと、スカーレットの両翼が開く。小さな両手
で坊やを抱いて、彼にだけ聞こえるように囁いた。
　
　不夜城レッド、と。




【現在位置／Ｃ地区・研究所内】

643 名前：―完全で瀟洒な従者― 十六夜咲夜 ◆Clock/PR2Y ：2007/12/01(土) 22:12:32

>>640
　
　被弾と同時に落ちる――ではないのが残念だ。
　極限状態ではよくある事。脳の伝達よりも先に肉体が反応する。本能的な直感、と言う奴だ。
　反射って怖いわねえ？
　
　落ちたナイフ刺さったナイフ、外れたナイフ。
　数を数えればそろそろ足りなくなりそうだけど――折角だから、時間はこのままで。
　
「――紳士様紳士様。今夜は霧が出ていましたか？」
　
　寡黙な彼はきっと答えない。
　けれどもその切先は雄弁ね。
　
　ゾクゾクする。
　背筋が凍る。
　脳髄が蕩ける。
　
　紅い赤い誘惑が。
　黒い暗い思惑が。
　思い違いの憂鬱が。
　
　肌をなぞる刃の痕。残念、戻り橋は渡れない。崩壊は何時だってすぐそこにある。
　慢心ではなくその一念に、完敗したのかもしれない。
　
　ああ――でも。
　ああ――でも。
　
　ああ――紳士様。
　
　紅い月の夜ですわ紳士様。
　霧はなくとも紅い月の夜ですわ。
　
　指先で拭い、舐め取り――微笑む。
　
「貴方は――貴方ね。私は誰かしら？」
　
　両手にはナイフ。
　一本が二本に、二本が三本。三本が四本に――暫く続けて十本に。
　両手を合わせて丁度十本。
　指折り数え、指斬り数え。
　
　丁度十本を――放り投げた。
　
　でも手には何故か一本余っている――これはまあ、メイド仕込の手品。
　反射って怖いわねえ？

644 名前：エミリオ・ミハイロフ ◆EMILIozylo ：2007/12/01(土) 22:14:01

>>618
　大空に、ぱっと開いた、赤い花。
　赤い花。僕の胸にも、花束を。
　
　生命の輝き。生命の源。生命の証。
　
　ああ。血の色は綺麗だ。生命を代価に咲き誇る、この世で最も綺麗な花。
　
　
　その花に添えられる唄は、断末魔。

　聴かせてもらうよ、その唄を。
　聴かせてあげるよ、この唄を。
　
　
　光を纏い、天空から放たれた一本の矢。
　つまり、僕。
　
　今の僕の身体はとても寒くて、そして――酷く熱い。
　
【C地区：撃団瓦礫　冬の特別公演「Shining」】

645 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/12/01(土) 22:22:38

>>642




　鉤が喉笛を捉える。
　鞭が胴を捉える。
　腕が全てを捉える。
　その瞬間―――炸裂（エクスプロード）。


　閃光。かつて彼らを分解した／再構成した爆弾が再び落ちてきたかのような光景。
　衝撃―――スパンカーが吹き飛ばされる／コンテナへ激突／上下に分離。
　轟音―――ホッパーが薙ぎ払われる／バウンドしながら外へ転がる／手／足／全てへし
折れて使い物にならなくなる。「カリカリガリガリ！」断末魔のような絶叫。
　噴出―――紅い間欠泉＝偉大な炸裂。なにもかもを吹き飛ばして、十字を掲げる。
　破壊―――森を／大地を／建造を／大気を吹き飛ばして君臨する紅。
　夜を紅く染め上げる力。


　ベイビーヘッドの喪失。

　左腕だけが直立して残存。
　その周囲には燃え尽きた炭のような人体パーツ。骨。肉。内臓。
　血の海。熱のこもった悪臭。肉の焼ける音。
　再生は―――始まらない。




「おーお、おーお、おーお」かたかたときしむような音―――ベビーカーを転がす小男。
水と血と熱で塗れた実験棟に姿を現すシェイキー。籠の中にバッテリー＋ケース。
　最終目標―――帰還。
　そのために突破するべき標的は目の前に。
　スイッチを入れる音／撒き散らされる鏃＋ワイヤー／スプリンクラーの水量が最大値に
達する＝スケアクロウの支援＝最大の電撃。
　出力が限界値を突破―――スパークしながら放たれる人口の雷雨。
　同時に疾走するベビーカー。上にシェイキーを乗せて。
　絶縁素材で構成された電動ベビーカーの加速。


　呼吸音―――壊れた天井からぶら下がるダクトから大量に零れ落ちる卵。
　ラバーマン・ポイズンスター。
　破裂／噴き出す紫／猛毒のガス／ありったけの卵が生む死の霧。
　その中をうねるように進む軟体生物。


「おかあああああああああああさあああああああああああああん！！」ローチーの絶叫／
六本の足を駆使して壁を疾走／背中の甲羅が電流と毒ガスを跳ね返す／猛然と逃走へ。



　残された遺志―――帰還への戦い。


【現在位置／Ｃ地区・研究所内】

646 名前：ジャンヌ／白のクイーン ◆j5y3JEANNE ：2007/12/01(土) 22:44:29

ジャンヌ・ラ・ピュセル
　最後の救国［dernier defile］―パリへ―
ｖｓ姫

>>628>>639

　早速、赤の軍勢が攻め込んできた。
　自覚がないかもしれないが、この森の中でジャンヌのパレードを抑止する
ということは赤のキングに従うことを意味する。
　絶対隷属のリドル。運命すら操作して白の軍勢を止めたいというのか。
「必死じゃないか」ラ・イールが鼻を鳴らす。
　ええ、と乙女は頷いた。それだけ追い詰められている証拠だ。

「―――ここは俺が殿軍を仕ろう」
　ずい、と一角獣の騎士が前に出た。
「分かっているな、乙女よ。このパレードの森行を遅らせることだけは避け
なくてはならない。雷火のようにパリを目指せ」
　
　乙女は躊躇う。せっかく合流した白の軍勢をここで分けるのは戦術的には
得策でも、心が納得しない。一緒にパリへ。それが乙女の本音だ。
　だが、私生児公の背中がジャンヌの未練を断ち切った。プレートメイルか
ら無言の拒絶が発散される。

「……行こう、ジャンヌ」
　ジルが腕を引く。
　ここで迷っては駄目だ。一角獣のルークは栄光の戦列を守るために残ろう
としている。私生児さまだけではない。ジルも、ラ・イールもフランスを愛
している。乙女を愛している。―――想いに応えなくては。
　ジャンヌは爪先を立ててバタール・オルレアンの首に両腕を回す。怜悧な
甲冑ごしにも、温もりは感ぜられた。
「……いつか、必ず」
「ああ、きっとまた会えるさ」
　

　
　森の奥へと消えゆく乙女の後ろ姿を見届けると、私生児公ジャンは赤の軍
勢に向き直った。サファイヤのパイクの矛先が、敵軍を睨み渡す。
「さて……」
　その背後から野太い声が響く。
「軽く暴れてやるとするか」
　ラ・イールがダイヤの剛剣を肩に担いでジャンの隣に並んでいた。
「おまえ……」
　言葉は無用だ、と獅子の男が目線で語る。ふっと兜の裏側で笑みがこぼれ
た。ラ・イール―――戦場で背中を預けるには最適な戦士ではないか。
　ライオンとユニコーンの共闘。実に皮肉な運命の采配だ。

「ならば、いざ！」
「ああ、乙女の御旗の下で！」

　ラ・イールが猛る。
　ジャンが嘶く。
　獅子の牙が大きく振り上げられ、一角獣の角が一条の光芒となって敵陣に
吶喊。あらゆる障害物を駆逐する暴風が、終末の演出を担う。


【現在地：森】

647 名前：『夜雀の妖怪』ミスティア・ローレライ ◆8hOOMYSTIA ：2007/12/01(土) 22:47:57

>>644
独りぽっちでたたずむ少年
暗い顔してどうしたのか
パパとママにでも叱られたかい？

少年の胸に刻まれた紅い五線記譜。
血痕が踊る音符。
おそらくは致命傷。

妖怪少女はしかし、毒蛾を召喚しざまに飛び退る。
アンコールの声が聞こえた。

そう云うときはボールを抱え
声をかければ済むことさ
1人2人が11人
相手も誘って22人

ああいうときにはガツンと歌を。
もっと音を。
瓦礫が敷き詰められた会場はすでにコロッセウム。
外からの音を集めて歌に。

ボールを蹴って渡してやれば
あいつはチームかライバルか
世界にゃ60億人もお前のパスを待ってるんだぜ

グラウンドゼロを囲むように立つ7柱のビルが鳴動を始める。
瓦礫が敷き詰められた大地が重い呻りを上げて空を揺るがす。

「とんだ贅沢者ね。そんなに私の歌で惑いたいの？」

たった一人のためのスピーカーシステム。

「まあ答えなくても勝手に唄うけど〜」

たった一人のためのRock'n'roll。


【C地区　瓦礫の丘のコーラスマスター】

648 名前：メイ＠マルチアーノ12姉妹 ◆M12sisrIV6 ：2007/12/01(土) 23:04:18

メイ＠マルチアーノ12姉妹ｖｓエリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ
>>626
　
　
　「お仲間の方には、気に入ってもらえた様だけどね」
　
　フルオートの掃射が屋根を薙ぐ。
　頭を押さえて、次は。
　
　「あんたの方は随分と好き嫌いが多いんだね。
　そんな事じゃ、大きくなれないよ！」
　
　とん、と屋根を蹴って宙に跳んだ。
　直後、周囲に拡がる爆炎と轟音。
　金属の破片が瓦を抉り、天窓を貫き、鎧戸を弾き飛ばす。
　焦げた匂いが辺りを満たし、赤い炎が僅かにその舌先を天に向けて伸ばし始める。
　
　降り立ったのは、古い石畳に被われた通り。
　伸びかけた木々の新枝が、敷き詰められた平石の隙間からまばらに覗いている。
　メイは手にしたウィンチェスターをバトンの様にくるり、と回した。
　排莢、そして再装填。
　
　「いいね、次はどこに逃げる？
　溶鉱炉かい？　I'll be back! って親指立てれば満足かい？」
　
　気分を出す為に、女の逃げ込んだ路地へまずは一発。
　そして、走る。
　路地裏へと飛び込んで、更にもう一発。
　
　「どうした、ミス“サラ・コナー”！
　生憎と、このターミネーターは変身出来なくてね！」
　
　しゃん、しゃん、と。
　わざとスパーの音を響かせながら、メイはもう一度、ウィンチェスターを回した。
　
　【現在地　D地区：商店街】

649 名前：“姫” ◆/HIME/HDYY ：2007/12/01(土) 23:17:26

>>646
―――その軍勢は、まさしく不可解な存在であった。
獣面人身の騎士が二人、素顔を晒した騎士が一人、甲冑を纏う乙女が一人。
怪物を見慣れたヒロが感じた違和感の正体―――それは時代錯誤という大きなズレである。

「ふふん―――ライオンと一角獣……なるほど、つまり貴様らはアリスに従う白の軍勢という訳か」
姫が、口角を上げて静かに微笑う。
「そして我々は赤い軍勢……さしずめ私が赤い女王（Blood Queeｎ）か？」
姫は静かに両手のチェーンソー二機を起動させる。
その笑みは、まさに残酷を礼賛し、隷属を冷笑する。

どうやら、白の軍勢は『騎士』と『女王』を生き延びさせるための陣形を選んだようだ。
『女王』を追えば、『僧正』と『城兵』に討たれ、『騎士』に一掃される。
百戦錬磨の気をその身に纏う白い駒は、簡単には落とせないだろう。

「ふふん―――ならば教えてやろう、現代の定跡と言うものを」

襲い掛かる僧正と城兵の連撃。
その一撃は、乾燥重量が数ｔにも及ぶフランドルを撥ね飛ばし、ヒロを弾き飛ばし、リザへと迫る。
「……こンな、くそォッ！」
リザの両腕が、パイクを捉える―――槍が生み出した遠心力で引き倒された。
撥ね飛ばされたフランドルが、獅子の足を掴む―――フランドルの重さを意にも介せず歩みを続ける。

鍵は―――ヒロの昇格（プロモーション）にある。
姫の冷笑は消えない。

【現在地：森】

650 名前：エミリオ・ミハイロフ ◆EMILIozylo ：2007/12/01(土) 23:18:22

>>647
　やっぱり小鳥は小鳥だった。
　ひらりと躱し、するりと抜ける。
　
　もしかしてお前、小鳥のふりした鰻か泥鰌？
　
　倒壊していないビルの手前で半回転。
　ビルの壁を蹴って、跳ぶ。
　また別のビルの壁を蹴る、跳ぶ。
　　
　いつしか背中の羽根は消えていて、僕は天使じゃなくなった。
　飛べない天使は、ただの人。
　
　でも――知ってるかい？
　飛べなくなった天使は、こうやって跳ぶんだぜ？
　
　跳んで跳んで跳んで跳んで、
　回って回って回って回る。
　目指すは小鳥、ただ一人。


　瓦礫が震える。
　ビルが震える。
　森林が震える。
　小鳥のRockに酔いしれる。
　小鳥の唄で、踊り狂う。
　僕の血潮も踊り出す。
　
　胸に刻まれた告死の譜面。赤の音符が増えていく。
　
　僕の身体はとても熱くて／寒くて。
　名前も知らない小鳥よ、この場限りの愛する人よ。
　お前のその胸でこの僕を冷まして／暖めておくれ。
　
　　
　
　
　欲を言うなら……子守唄付きで。
　
【C地区：もう、瓦礫の歌しか聞こえない】

651 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/12/01(土) 23:19:46

>>643




　交錯―――刃先に血糊。
　感触―――到達の令達。

　現実が幻想へ届いた瞬間。

　刺さったナイフを抜く／血がこぼれる／振り向く。
　対峙するフリントの意志―――次は命にも届く。

　十字の傷を負ったメイド―――白い肌に流れる紅。
　途切れることの無い笑み／増えるナイフ。
　初めて美しいと感じた。


　ナイフの投擲―――十本の矢。
　フリントの加速―――それよりも速く。


　血が流れる／フリントに／軍刀に／鮮やかな紅／輝ける金。
　軌跡を残しながらすり抜ける黒豹―――ナイフを持つその姿へ。


　再び交錯―――抉られるわき腹／肩口を切り裂く感触。
　どちらもさっきより深い／動きに遅滞はない。

　停止／こぼれる血の量を増やしながら。
　対峙／互いに爆心地へと飛び込んでいくような錯覚。




　指令―――“ケースを搭載して撤退せよ”。
　応答―――スケアクロウの操作。トレーラーのエンジン音。




　加速／“矢”を超えて再び限界値を飛び越える。
　攻撃／ただ一閃。複雑な軌道は無く、一条の黒い輝き。


　いつ、炸裂するのか。
　誰にも分からない軌道上の舞踏。

652 名前：手垢にまみれたアリスの一人 ◆DOLLmR5Q5A ：2007/12/01(土) 23:24:27

>>587
　
Epilog
　
　
　
　
　
　
　
　……そうしてあなたはうっすらと瞼を開きました。
　
　そこは、あなたにとって、とても懐かしい場所でした。
　柔らかな芝生に覆われた大地の上に横になり、昔からある大樹の木陰であな
たは眠っていたのでした。
　その大樹から、あなたの上にひらひらと舞い落ちてくる枯葉を、彼女が優し
く払いのけていました。
　
「おはよう。快適な目覚めを得られたかしら」
　
　あなたの頭を膝の上に乗せた彼女が、優しくそういいました。
　
「わたしとっても不思議な夢を見てたわ」
　
　あなたは彼女の問いにそうこたえると、あなたが夢見て（読んで）いたこの不思議な冒
険譚をはじめから終わりまで、思い出せるだけ彼女に話してあげました。話し
終えると彼女はあなたの頬に接吻して、こういいました。
　
「とっても不思議な夢のおはなしだけれど、もうそろそろお茶の時間よ。さあ、
早くお茶に行きましょう」
　
　ですからあなたは起き上がって、ぱたぱたと駆け出しました。駆けているあ
いだも、なんて不思議な夢だったのだろうとおもいながら走っていきました。
　
　
　

653 名前：手垢にまみれたアリスの一人 ◆DOLLmR5Q5A ：2007/12/01(土) 23:25:48

>>652
　
　こうして赤頭巾（シャプロンルージュ）のリドルは終わりを迎えました。

　　―――だから、もう、このお話はお終い。

　えっ？赤頭巾とプリマヴェラはどうなったのかですって？
　それは誰にも分かりません。
　わたしにも分かりません。
　きっと、彼女たち自身にも……。
　
　
　
　
　
　
　
　だから、そう。
　
　
　
　
　
　
　　　　　　　　　　　　―――これはこれで。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　また別のお話。
　
　
　
　
　
　
　　　　　……でも、あなたがもし、もし続きを望むのならば。
　
　

654 名前：手垢にまみれたアリスの一人 ◆DOLLmR5Q5A ：2007/12/01(土) 23:26:05

>>653
　
　
「わたしは望むわ！もちろん望むわ！
　だってまだまだ足りないんですもの！
　
　これで終わり？もう終わりなの！？
　まさか違うわ認めない！わたしは絶対認めない！！
　
　だって物語は果てしないのよ。区切りはあるが終わりはないの。
　まるでコーカスレースのようにぐるぐるぐるぐる回り続けるの。
　語り手を離れ、聞き手が語り手になって、その聞き手が語り手になって、変
遷し、変質し、別のものへと生まれ変わるの。だから物語は終わらないのよ！ 」
　

　そう、物語は終わらない。
　そこに語り手と聞き手がある限り。
　
　この世は夢。一睡の夢。
　春の午睡のうたかたの夢。
　
　物語は夢。終わらない夢。
　語り継がれる人類の夢。
　
　だからみんなで楽しみましょう。
　楽しい物語を語り継ぎましょう。悲しい物語を共に涙しましょう。
　まるで踊るようにして、共に語り合いましょう。
　間違えぬようステップを踏んで。いいえ、間違えるのもご愛嬌？
　宵のさめる夜明けまで、黄金の夜明けまで踊りぬきましょう。
　まどろみの正午を通り過ぎ、黄金の午後を踊りぬきましょう。
　
　この世は舞台。人は踊り子。操り人形。
　さてさて誰が最後まで踊り続けられるのか。
　
　この世は物語。あなたは語り部。そして主人公。
　さてさて何処まで語り継がれるのか。
　

　
　「つぎはあなたが語り手よ。さあ、お話を聞かせて！」
　
　
【The story without end.】

655 名前：◆DOLLmR5Q5A ：2007/12/01(土) 23:27:47

>赤頭巾 vs プリマヴェラ
〜あるひもりのなか〜

赤頭巾導入
>>336>>337>>338>>339>>340
プリマヴェラ・ボビンスキ導入
>>342>>343>>344>>345>>346

>>348>>349
>>352
>>357
>>362
>>406>>407>>408
>>416
>>449>>450
>>470>>471>>472>>473>>474>>475>>476
>>485
>>488
>>501>>502
>>503
>>506
>>509
>>514
>>515>>516
>>559>>562
>>565>>566>>567>>568
>>571
>>575>>576>>577>>578
>>587

>>652>>653>>654



　―――物語は終わらない。

656 名前：エリ・カサモト ◆SV001MsVcs ：2007/12/01(土) 23:47:03

メイ＠マルチアーノ12姉妹ｖｓエリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ
　
>>648
　
　飛び込んだ路地の口が銃弾で弾けた。
　続けて駆け込んできた来たメイがウィンチェスターを撃ち放つ。
　射線の先で上がった弾着は、路地を真っ直ぐ逃げていたら確実に背中から撃たれていた事を示していた。

　――映画じみた行動だったけど、やって正解だったわね。

「どうした、ミス“サラ・コナー”！
　生憎と、このターミネーターは変身出来なくてね！」

　スピンコックで次弾を装填し、メイが通り過ぎていく。

「ならプレス機にでも招待するさ」

　今度はアタシが上から声を掛けた。
　フルオートで銃火を打ち下ろす。

　――路地に駆け込んだアタシは勢いを使って壁を蹴り、さらに反対側の壁を蹴って――三角跳びってヤツだ――路地の高所に陣取っていた。
　――路地幅がアタシの両脚を広げた長さと同じか少し短かったのが幸いした、ってところか。

　銃火が途切れた。弾切れ。ヘヴィーマシンガン残弾ゼロ。
　同時に開いていた脚をたたんで、降りる。
　直下にはメイ。
　無防備に晒している両肩に両膝、頭にはサブマシンガンのストックを合わせて、ドロップアタック！


【現在地　D地区：商店街】

657 名前：一角獣とライオン ◆j5y3JEANNE ：2007/12/01(土) 23:56:49

ジャンヌ・ラ・ピュセル
　最後の救国［dernier defile］―パリへ―
ｖｓ姫

>>649

　私生児公ジャンを制止したのは、彼と同じハーフブリードの小娘だった。
　外見からは想像もつかない膂力で、ユニコーンの突進を食い止める。馬力
だけならラ・イールにすら勝りそうだ。―――だが哀れかな。まだ若い。
「ぬぅん！」と嘶き一つで人狼の力点を逸らす。精緻な槍捌きを会得したジ
ャンにとって、相手の力を利用することはさほど難しくない。
　正面からの吶喊とは言え、力比べをする気は毛ほども無かった。

　一方、ラ・イールのほうは、ジャンと対照的にひたすら力を求めた。獅子
の咆吼で森を震わせながら、炎をカーテンを引き千切って前進する。
　足にしがみつく機械人形を振り落とそうと試みるが、骨を軋ませるほどの
怪力によって阻害される。―――ならば、そのまま抱きついていろ！

「雑魚に用はない！」
　ジャンの一騎駆け。蒼い閃光が迸る。
「狙うはクイーンの一手のみ！」
　ラ・イールの果敢な吶喊。黄金の波濤が迫り来る。

　ダイヤの石包丁が唸りを上げて、サファイヤのパイクが空気を穿ち、腕を
組んで泰然と佇む赤のクイーンに肉薄した。


【現在地：森】

658 名前：システムアナウンス ★：2007/12/01(土) 23:59:31

　　　　　　＜Ｘ市地震対策本部にて＞


　
「Ｘ市の状況はどうなっている……ッ！？」

「電波障害が回復した模様！　通信が出来ます…ッ！」

　ｶﾞｶﾞｯ

『………こちら、陸軍第ＸＸ部隊所属フォッシュ曹長。
　現在、地震による被害の他に、市内は無数の化け物が徘徊。
　市民に多数の犠牲者が出ている…ッ！』

「突入部隊の状況はどうなっているッ！？　又多数の専門家を
　送り込んでいるはずがッ！』

『部隊は自分を残して全滅ッ！　増援らしい連中は見かけたが、
　混乱が酷くて、連絡はとれていないッッ！』

「何ということだ………ッ！　他に何か変わった事はッ！？」

『市内の森化が火災と共に解けているッ！　同時に通信が出来る
　様になった………ッ！！　だが、先程から余震が何度も………』

「おいッ！　こっちでは余震は観測されていないぞッ！」

『こんな時に嘘を言うものかッ！　何かヤバい、コレはッ！！
　クソッ！　帰ったらアヌークと結婚式だったのに！』

「落ち着けッ！　更に増援を」『ぐ！　来やがったか、ゾンビども！
　うろたえないッ！　フランス軍人はうろたえないッ！？』

「どうしたッ！？」

『弾薬も尽きた。あるのは…………手榴弾が５つかならばッ！
　
　
　フランスに栄光をあれーーーーーーーッ！
　
　　〈Dans la gloire de la France〉
　

　ｻﾞｰｻﾞｰ


「………余震、こちらでも確認しました。
　９９、８％の確率で再度大地震発生ッ！」

「何だとォォォォォォォーーーーーッ！？　
　いつだ、いつ来るッッ！！！？？？」

「あくまで予測ですが、５時間後の午前５時前後に」

「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ………………ううーん」

「ああ、局長が倒れたッ！？　タンカをッ！」




　　　　　　　　⇒大破局（カタストロフ）まで後５時間！



　　　　

659 名前：―完全で瀟洒な従者― 十六夜咲夜 ◆Clock/PR2Y ：2007/12/02(日) 00:04:23

>>651
　
　心地良い痛み――それが致命傷になり得るのが人間。
　何時だって油断は出来ない。人生何時だってサドンデス。明日の紅茶が飲めない事も十分にありえる。
――だから。
　だから紳士様。
　
　出来る限り未練はお棄てになってくださいませ。
　極楽浄土にはいけないでしょうけど、閻魔様の前で未練を語らないでいただきたいのです。
　
　死は理解できなくとも構いません。
　心は置いていっても構いません。
　
　ですが驚くほど安らかに、地獄の旅路を進んでくださいな。
　それが私から貴方様への唯一のお願いで御座います――。
　
　
　低く低く、地を這うように。
　低く低く、血を請うように。
　
　落ちたナイフに進むべき時間を与え、刃毀れしたナイフに止めを刺して。
　ダンスは続く。
　続く。
　続く。
　
　斬り。
　結び。
　離れ。
　手を取り。
　命を差し出し。
　互いを慈しみ、愛しみ。
　互いを憎み、恨み、果敢なんで。
　
　一夜限りの逢瀬。
　逡巡の間もなく斬り結び、その体を朱に染めてなお笑い、理解し、反発し、その命の限りを見つめ。
　一秒に総てを籠めて。秒針の動きが総てを動かす。
　　
　パターン作りが極まれば、後は切り札が勝敗を決するでしょう。
　それでも笑えていますか、私は。

660 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/12/02(日) 00:08:34

>>659




　黒と白の激突／炸裂する火花。
　黒と白の流血／彩色する鮮紅。
　黒と白の離脱／互いに引かず。
　黒と白の再会／炸裂する火花。



　金色の血液を流しながら振るわれる軍刀。
　ナイフを打ち落とし続けて損傷／それでもなお切れ味を保つ。
　銀色の肉体を砕きながら振るわれる短刀。
　軍刀と打ち合い続けて損傷／それでもなお無限に供給される。




　血を流しながらの微笑。
　互いに意味は違えど崩れることの無い表情。
　命を削りながらの共感。
　互いに同じ意味を持ちながら接続する認識。




　秒針より速く／意識よりも速く動く肉体。
　フリント―――唐突に出現するナイフをさばく。
　打ち合う回数が増えるにつれ研ぎ澄まされる意識／敵の力を見切る度合い。

　小間落としのように出現する殺人鬼／それの現れた瞬間に叩き落す超反応。

　打ち合う回数が増えるにつれ研ぎ澄まされる意識／敵の力を見切る度合い。
　咲夜―――恐ろしい複雑さで走る軍刀を跳ねる。
　時針より遅く／肉体よりも遅く思う意識。




　加速は終わらない／限界値へ向かって。
　どこが爆心地となるのか、誰も知らない。

661 名前：パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU ：2007/12/02(日) 00:15:02

>>645

「……相変わらず派手好きね、レミィ」

部屋の片隅で帽子を押さえながら呟くパチュリー。
結界の再構築にはまだ時間が要る故に、友人のスペルは彼女にも少なからぬ衝撃を与えていた。
服のあちこちは破け、肌が露に晒されている。
口元は歪んでいた。痛みに？　いいや、笑みに。
之でこそ彼女の友人。之でこそレミリア・スカーレット。
之でこそ正しく、傍若無人な夜の女王たる者の姿だ。


笑みを一瞬で消し、視線をさまよわせる。
足の折れた蚤/無視/一輪車から落ちた一輪車乗り/無視/異形の巨人の死骸/無視。
ベビーカーを転がす小男。

「……あら」

記憶の回帰/フラッシュバック。正体不明の衝撃/その震源。

「それも……欲しいわねえ」

貪欲たる性。
魔女の魔女たる所以が再び頭をもたげる。
更に現れた二つの影/パチュリーの興味は引かないが敵/排除。
枯渇を知らぬ魔力がスペルを刻む。
「　」
もはや、詠唱は音にならなかった。
無音の魔力がこの小さき世界を包む。


鋼の刃がワイヤーを切り裂く/秋色の刃（Autumn Edge）
渦巻く風が毒を中心に返す/春の風（Spring Wind）
大地から現出した槍がベビーカーを挫く/狭間の槍（Doyo Spear）
突如噴出した水流が油虫を弾く/冬の原型（Winter Element）
手にした書から放たれた火球がマスクを焼く/夏の赤色（Summer Red）


相剋結合。
理に反して接続された魔術が、逃げようとする哀れな羊を襲う。

【現在位置／Ｃ地区・研究所内】

662 名前：『夜雀の妖怪』ミスティア・ローレライ ◆8hOOMYSTIA ：2007/12/02(日) 00:20:26

>>650
そろそろ鴉の鳴き出す頃
坊やおうちへ帰りなさい

ステージへ向けて迫るのは熱狂的ファン。
マイクを打ち下ろしても良いけれど、ここは優しく抱き留めよう。

ままが貴方を呼んでいる
今夜のメニューは何かしら

片手で器用に支えると、瓦礫の山に横たえる。
小鳥たちが健気に運んできた腕を受け取り、爪を引き延ばして鎹のようにつなぎ止めた。

「あだだだ。まあこんなもんでしょう〜」

今日の出来事聞かせておくれ
そんなに汚れて黒くなって
よっぽど楽しく遊んだのかしら

掌を握り開き、動くことを確認。
爪を切り離す。
何ともファンタジックな再生力。

まずは汚れた服を脱いで
シャワーを浴びたらご飯にしましょう

どこからか放り出されたエレキ・ギター。
なんたる奇跡か無事な弦。
喜び勇んでつま弾けば、音程のズレに顔をしかめる。

温かいスープに焼きたてのパン
お祈りしてから召し上がれ

張りを調節、しばし試して調律を完了。
一つ骨組みだけは残ったビルを見上げて飛翔。
独り弾き語り始める。

歯磨きはもう済ませたかしら？
悪い魔物に捕まらないよう
ナイトキャップを忘れずに

鉄塔の先に座る少女が奏でるエレキ・ギター。
すすり泣くように鉄塔は揺れ、アンプとスピーカーの代わりに羽が当たりを音で包む。

眠れ愛しい私の坊や
どうか今夜も良い夢を

炎が森を包み始める。
夢の終わりは間近。


【C地区　瓦礫の塔】

663 名前：ネコアルク・カオス ◆qYdq.chaos ：2007/12/02(日) 00:22:05

　
ネコアルク・カオスｖｓ隠し砦の三妖精　　導入　
『ＮＥＣＯ ＣＨＡＯＳ 　ＴＨＥ・ＭＯＶＩＥ』
　
　
　
―――――むかし、戦争があった。
　
　
　
　
テリブルＴＯＫＹＯを二分した、新宿（ジュク）派と池袋（ブクロ）派との血を赤チンで洗う抗争。
その無限の力とか発動しそうな終わりなき総力戦は、双方の拠点が異界化したことでその激しさを増した。
　
ブクロ派は、森と化した＜新宿＞へ芝刈りに。
ジュク派は海底王国となった＜池袋＞、通称ジャブローを攻め落とすため水陸両用に。
大きな桃とかが流れる間もなく、グダグダになった抗争は何時の間にか解決した異変と共に終わりを告げた。
　
　
それから時は流れて現在。
「最近やっぱ微妙っぺぇなー、けどニコ動で上がらぬから録画するしかにゃいのよねー」と
某ガンダムＯＯの録画もおっつけおざなりに、吾輩がＳＯＳ信号を受理なぞしてここフランスくんだりに
向かったのは他でもない。
アリスＳＯＳ―――――あの＜森＞が、また姿を見せ晒したからである。
吾輩はあの＜森＞を知っているッ！
吾輩はあの、ブクロ派と藤岡隊長を再三にわたって苦しめた＜森＞を知っているッッ！
当時、吾輩は一介のワイルドギースとして参加していた。
　
　　
そう、あの＜森＞―――――あれを横目にラフォーレのクレープを無心に食っていた、中立無双な原宿派として。
　
　
　
…………まぁ、それはさておき。
　
　
　
「にゃにゃにゃにゃ！
　吾輩の目が黒いうちに、ジュク派がまたあの＜森＞を現界させるとはいい度胸。
　むしろ目どころか全身真っ黒なのですが」
　
しーきゅーしーきゅー、元原宿派からジュク派。ワイルドキャット原宿派からジュク派へ。
なんとも素敵な宣戦布告、嬉しいね。
よろしい、にゃらば戦争だ。
ジャブローの続き、第二次ＴＯＫＩＯブリティッシュ作戦は今こそ再開される。
諸君、吾輩は猫缶が好きだ。
諸君、吾輩は猫缶が好きだ。
諸君、吾輩は猫缶が好きだ。
オーダーはサーチアンドデストロイ、了解だハマーン・カーン。
いずれ吾輩はマハラジャカーンになってハマーンを生む、リアルで。
　　
「しーきゅーしーきゅー、待ってろ知らない敵。
　今倒しに猫がイくゼッ！汝らの“ニオイ”を（ファブリーズで）止めてやるッ！」
　
バルバルバルッッ！
そんな謎の怪音波を放出しつつ、むしろ口で言いつつ吾輩は飛んだ。原理的にはジェットとかの原理でな。
　
とまぁ、そんな訳でだマイブラザ。
意気揚々と亜音速は入ってたのも今は昔、現在はヘリに紛れ込み→
ポートから降りたって索敵モード真っ直中なのだが――――何か？
ところでさっき脱ぎ捨てた赤コートって素敵だけど、なんか悪趣味じゃね？
　　
【場所：Ｆ地区　ヘリポート】

664 名前：“姫” ◆/HIME/HDYY ：2007/12/02(日) 00:29:54

>>657
一角獣の卓越した槍術と精妙な力点操作によって地面に引き倒されるリザ。

ライオンはフランドルの数ｔという重さを気にもせず疾駆する。

―――二つの牙が姫の命に迫るまであと数間。
「……何をしている、ヒロ」

―――――ドクン
「あの時の誓いは偽りか？ 私に従うと言ったのは嘘か？」
―――――ドクン、ドクン
「目覚めろ、我が血の戦士」
―――――ドクン

「雑魚に用はない！」
「狙うはクイーンの一手のみ！」

ダイヤモンドの大剣。サファイヤのパイク。
どちらも自然界では高硬度を誇る宝石で作られた、難壊の武器。
それをヒロは―――自らの肉体で受け止めた。
胸中から溢れ出す、熱い血潮。漏れ出す炎が地を染める。

「ふふん―――フランドル」
「ふが」
ライオンの足から離れたフランドルは、傍に打ち捨てていた工具の一つを取り上げて姫に手渡す。
工具の名は―――
「これが何かわかるか？ これは『ヘッジトリマー』という、現代科学が生み出した農具の一つだ」
姫は、ヘッジトリマーのコンセントをフランドルの臀部にある外部出力に接続した。

フランドルは、王国の科学の粋を集めて生み出された人造人間である。
その動力源は電気。このように、コンセントをつなげば電化製品をどこでも使用することが出来る。
そして、この外部出力機能には大きな力があった。
「フランドルには、接続した電化製品の出力を外部からコントロールする力がある。
つまり―――」
瞬間、ヘッジトリマーがカタログスペックを大幅に越える高速で駆動する。

「このヘッジトリマーは今、貴様らの知らぬ魔剣となったのだ」
キィィィィン！という甲高い音を立てて唸るヘッジトリマー。極限を越えたモーターの振動は高周波を生み出し
刃の限界を超えた。

姫が振るったヘッジトリマーは高周波ブレードとなり、二つの宝石を分子構造レベルで引き裂く。
ヘッジトリマー、ダイヤモンドの大剣、サファイヤのパイク。
三種の武器は、今無力と化したのだ。

「ふふん―――徒手空拳で、どのように私を攻める？ 白の軍勢よ」

【現在位置：森】

665 名前：光の三妖精 ◆FairyH0Oi2 ：2007/12/02(日) 00:31:11

>>663
「あー、やっと追いついた！」

「なんだかんだで結構早いわね」

「形もなんだかへんてこね」


みんなでお出かけ塔の上。
帽子におもちゃにおやつは持った？
いいえ、そんなにいらないわ！
だって全部がおもちゃだもん！


「ねえねえ、アレは何かしら？」

「なんと言うか、猫に似てるけど」

「絶対アレは猫じゃないわ」


絵の具を使って遊びましょう。
まずは黒をぶち撒けて。
そしたら赤を垂らしましょう。


「まずは小手調べね」

「ドアをずらして見せようかしら？」

「きっと頭をぶつけるわ」


ぐるぐる混ぜて、出来た色。
それは何色、誰の色？

666 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/12/02(日) 00:40:41

>>661




　繰り出される苛烈な追討／追討すら許さない暴虐の嵐。
　それをすり抜けて―――加速。

　シェイキー／ベビーカーの停止／ケースを引っつかんで跳躍／天井の壊れたパイプ伝い
に逃げ込む／「おーお、おーお、おーお」怒りの声を上げながら遠隔操作／停止機能の壊
れたスプリンクラー／残った最後の鏃を配電盤にぶつける／通電／発火／暴走する電力。
再び雷雨が降り注ぐ。

　ローチー／水流に弾き飛ばされながらも跳躍／「おかああああああさん！　おかあああ
あさん！　おかああああああさん！」残った対人地雷のピンを抜いてばら撒く＝目眩まし。
炸裂する炎／釘／鉄球が室内を荒れ狂う中トレーラーへ。

　ラバーマン・ポイズンスターの死亡―――あらゆる毒素を出し尽くした後に火炎弾の直
撃／衝撃は逃がせても熱量は逃がせない／燃え上がる炎にのたうちながらトレーラーに向
かい、鎮火を待たず動きを止める。




　トレーラー／「ママ、ママ」スケアクロウの声／起動するトレーラー／棺桶の中に死体
を詰めた霊柩車／タイヤが瓦礫に嵌ったまま動かず空転／排除する武装無し。
　最後の悪あがき―――警備システムの稼動／手当たり次第に隔壁を下ろしまくる。
　むき出しになった部屋には無意味の行動。
　タイヤ―――空転を続ける。
　トレーラー―――微動だにせず。わき腹にパーラーカーを突き刺したまま。




【現在位置／Ｃ地区：研究所／脱出不能？】

667 名前：ネコアルク・カオス ◆qYdq.chaos ：2007/12/02(日) 00:43:48

　
ネコアルク・カオスｖｓ地味な三妖精　　
　
>>665
　
　
　パーティーは続く。
　筈なんだが燃えている。
　なんか、遠めに見える森がボーボーとモブキャラのごとく。
　
　
まあ今現在重要なのはそれではなく。
　　
「声もしないが姿も見えず、だが……何かね。このヒゲをくすぐるアンノウン反応は？」
　
何気に知られていないことだが――――吾輩がネコに見えないとかそういうのではなく――――吾輩の
どうみても猫ァなヒゲはセンサーの役割を果たしている。
要するに異常なぞ、たとえば微細な空気の乱れなどあれば即座に感知するスグレモノ。
お値段以上のニトリックス、ニュータイプほどではないがね。
ともあれ吾輩が異な反応を察知したのは確かであり、そしてそのあるはずの反応が感知されない。
……そう、どこのシャイボーイか知らないが音も姿もシャットアウト。ミラコロ技能発動といわんばかりの違和感フルレッド。
　
「或いはジュク派の尖兵かアンノウン？
　出番のないアサシンなみの気配遮断：ＥＸは見事だが、んー、吾輩のキャットセンスを甘くみたな」
　
まぁ実際いるかいないかは確証もないが、そんなことはどうでもいい。
こういう時こそ吾輩の灰色の脳細胞がかがやくとき！かくれんぼ中かもしれないアンノウン諸君、汝にふさわしいソイルは決まった！　
カオスタクティクスＮｏ２８ッ！『疑わしきは根こそぎ除菌』ッッ！
吾輩賛歌はカオスの惨禍ッッ！押せばカオスの泉わくッッ！
震えるぞＭｒハート！燃え尽きるほどニート！！　オオ、この目頭の熱くなる感触はビッグバンの！！！
　
　
「ビィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーームッッッッッ！！！！！」
　
　
　
　　『目唐美威無』
　
　　中国は漢の時代、秋葉原超人一〇八芸の一つとして継承者「出慈伽羅継斗（デジキャラット）」が生み出した奥義にして
　　空裂眼刺驚そっくりの技。ただしこの技によって圧縮射出するのは体液ではなく、自己の体内で練られ凝縮された「気」
　　そのものである。原理自体は全くの同じであるが。
　　この目唐美威無の習得には高度な気を練る鍛錬が必要であり、未熟なものは気の代わりに自らの体液を飛ばして
　　しまうという事例が幾つも報告されている。
　　なお、「顔から火が出る」ということわざは、この目唐美威無の制御に失敗し顔全体から気を放出した様に由来する。
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　アンバー書房巻　「闘将!!出慈伽羅継斗」より抜粋
　
　
見えぬなら、周囲ごと薙ぎ払ってみせようホトトギス。
ぐるんぐるんと吾輩真っ黒なビーム出しつつ大回転、アンノウンなぞ地形もろともトゥギャザーできるゼ！
　
まぁ、そんなマヌケが居ればの話だが。
　
【場所：Ｆ地区　ヘリポート】 　

668 名前：―完全で瀟洒な従者― 十六夜咲夜 ◆Clock/PR2Y ：2007/12/02(日) 00:44:06

>>660
　
　このままでは埒が明かない――と思った。
　もはや反射だけで動いている。
　パターン作りの極地――眼を瞑っていたところで読み合えてしまう地点。
　
　単調な繰り返し。
　それは秒針のリズムのように。
　長針がゆっくりと進むように。
　短針が大きく歩みを進めるように。
　
　クォーツの振動のように周期的。僅かな誤差すら想定の範囲内。
　面白いけど詰まらない。味がない。
　歯車の複雑に絡み合った時計は直ぐにずれる。
　時刻の修正――その手間が愛おしい。
　
　折角の人間味ですもの、捨て去ってしまうのは、失くしてしまうのは、寂しい事ですよ、紳士様。

669 名前：―完全で瀟洒な従者― 十六夜咲夜 ◆Clock/PR2Y ：2007/12/02(日) 00:44:52

>>668
　
　チクタク、チクタク。時計は進／むよ何処までも。チクタク､チ／クタク。休憩なんてしませ／ん。チクタク、チクタク.／
頑張りやさんなんですよ？／チクタク、チクタク。もうどれく／らい動いてきたのかよく思>／い出せません｡チクタク／
チクタク。ずっとずっと、／時間を御知らせしてきました。／チクタク、チクタク。それを／見てちょっと悲しいと思／
いました。チクタク、チ／クタク。だって人を縛っている.／チクタク、チクタク。生活は／時間で区切られてしま／
って。チクタク、チク／タク。人は何時も寂しそうな顔／チクタク、チクタク。それで／も動く事は止められな／
い。チクタク、チク／タク。だってそういう風に作ら／れたから。チクタク、チクタ／ク。だからこれまで通り／
動き続けます。／チクタク、チクタク。だけど止／まりたくなったら。チクタク／チクタク。止まりたくなっ／
たら・チクタク／チクタク。許してくれますか／チクタク、チクタク。赦してく／れますか？チクタク、チ／
クタク。動い／ている事が意味だった僕／を。チクタク、チクタク。動い／ている事が意義だった僕／
を。チクタ／ク、チクタク。動いている／から価値があった僕を。チク／タク、チクタク。貴方達は／
見捨て／ないで居てくれますか？／チクタク、チクタク。僕はそれ／だけが心配で心配でた／
まり／ません。チクタク、チクタ／ク。だって今まで休む事なくず／っと。チクタク、チクタク／
動／き続けていた僕だから／それだけが心配で心配で、他の／事ももっと心配しなくち／
／ゃならないのに――不／安で、不安で。チクタク、チクタ／ク。凄く――苦しいです／　　　　「良い夜でしたわ――紳士様」

670 名前：メイ＠マルチアーノ12姉妹 ◆M12sisrIV6 ：2007/12/02(日) 00:46:12

メイ＠マルチアーノ12姉妹ｖｓエリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ
>>656
　
　狭い路地だったことが幸いして。
　もしくは、災いして。
　銃弾の雨のおまけに付いてきたのは、人間一人。
　ストックでの直打撃まで付けての大盤振る舞い。
　
　鈍い音が、狭い路地に反響する。
　大きく傾いだメイの躯は、膝を付いて俯せに地面に倒れた。
　一瞬の静寂。
　
　「と、まあ普通ならここでエンドロール、ってところだけどさ」
　
　腕が伸び、足首を掴む。
　伏せていた顔を上げ、メイは満面に笑みを――不敵な笑みを浮かべた。
　身を起こすと掴んだ足首もそのままに大きく腕を振りかぶり、手を離した。
　
　狭い路地だったことが災いして。
　もしくは、幸いして。
　いくら遠くへと投げたところで、これならば見失いはしないだろう。
　
　「さあ、来なよ。あたしを楽しませてくれ」
　
　【現在地　D地区：商店街】
　

671 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/12/02(日) 00:48:51

>>668>>669




　かみ合った歯車がずれる感覚。
　自らが爆心地へ到達した感覚。


　感覚不能な一瞬の停止―――出現するナイフ。
　感覚不能を超えて反応―――ナイフへ吸い込まれる軍刀。
　上／下／左／右／全てのナイフを完全に弾き飛ばし―――


　完全に見切った感触。
　完璧なる攻撃の軌道。


　距離を離した相手への加速。
　望んでいた爆心地への到達。


　血流が減少していく喪失。
　意識が霧散していく盲失。


　ガソリンの切れた車を無理やり動かしているような連想。
　亡霊をその軍刀で遂に切り裂くことができるような幻想。


　Ｘ―――繰り返される鮮やかな軌跡。
　Ｉ―――それを更に重ねて放つ奇跡。


　刃がついに命を捉えようと輝く。
　命がついに燃え尽きようと煌く。




　フリント・アローの到達。
　グラウンド・ゼロの出現。

672 名前：◆EMILIozylo ：2007/12/02(日) 00:52:49

エミリオ・ミハイロフ ｖｓミスティア・ローレライ

エミリオ導入
>>581
　
ミスティア導入
>>582
　
本編
>>584
>>588
>>590
>>591
>>593
>>594
>>597
>>618
>>644
>>647
>>650
>>662
　　
堕落天使は夢の中。
森と瓦礫の腕の中、阿鼻叫喚が子守唄。
夢の終わりはまだ来ない。きっと全てが終わっても。
　
【C地区：フランス瓦礫地方にて】
【勝者：ミスティア･ローレライ】

673 名前：一角獣とライオン ◆j5y3JEANNE ：2007/12/02(日) 00:55:38

ジャンヌ・ラ・ピュセル
　最後の救国［dernier defile］―パリへ―
ｖｓ姫

>>664

「おお！」

　感嘆とも驚愕ともつかぬ声は、ジャンとラ・イールどちらから漏れ出たも
のか。まさか、生身で最硬の一撃を防がれた上、逆に解体までされるとは。
　まさに魔剣の呼び名に相応しき、無慈悲な終末。―――だが、徒手空拳と
いうのは聞き捨てならなかった。
　彼等は騎士であると同時にケモノでもあった。ケモノの武器は自己という
鋼。それは時に砕けた宝石剣にも勝る危険な得物。この身が健在なうちは、
攻撃の手段が尽きることはない！
　
　ジャンの鉄靴が土を蹴る。腰を折って顎を引くと、兜飾りの角―――その
尖端が、クイーンに照準を定めた。これぞユニコーンの刃！
　ラ・イールの刃はもっと分かり易い。両手の爪を伸ばし、牙を剥く。百獣
の王たる彼は全身が武器と言えた。

「攻め手には困らん！」
「何度でも貴公を噛み殺す！」


【現在地：森】

674 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/12/02(日) 01:01:51

>>583
どごん、とひときわ大きく響く爆発。
それにはもう目も向けず、私は街に背を向けて走りだす。
目の前に広がる、「森」。
そこに逃げ込めば、しばらく危険は逃れられるだろう。
そう判断し、私は一歩、森に足を踏みだし、

675 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/12/02(日) 01:02:19

>>674
――――私は、森にいた。
いや、自分で入ったのだから、当然といえば当然かもしれない。
でも、これは何？
前も後ろも、森、森、森。
まるで森の中央に迷い込んだような、深くて昏い森の底。

たった一歩のはずなのに。
私だけしかいない、孤独の森。
ありえない、理性が警告する。
こわい、感性が怯える。

ポシェットから、布に包まれた一振りの包丁を取り出す。
あの時、誠を殺した包丁。
全ての始まり。
この包丁だけが、唯一の恃み。
もう、私を助けてくれる人は、誰もいないんだから。

その事実を確認して――正直に告白する、私は怯えた。
再びわきあがる恐怖を抑えて、私は一歩踏みだし、

「――一人目のジャンヌは死んだよ」

突然かけられた声に、思わずその足を止めた。
日本語？　どうして、ここに。

「胸を貫かれて死んだよ」
「うるさいっ！」

反射的に、声の方向へ包丁を振り下ろす。
悲鳴一つあげずに落ちてきたのは、両断された小人の死体。
一メートルほどの背丈、子供のような容姿、ただその飛び出た眼球のみが醜い。

「――二人目のジャンヌは死んだよ。
　音楽会で、音に包まれて死んだよ」
「――っ！？」

両断、落ちてくる死体。
さっきと全く変わらない情景。
軽く早足で、私は歩き出す。

「――三人目のジャンヌは死んだよ。
　狩人にルビーの弾丸で撃ち落されて死んだよ」
「しつこいのよっ！」

自分でも悲鳴と区別がつかなくなってきた声を上げて、私は刃を振るう。
落ちてきただろう死体には目もくれず、早足から走りへと移行する。
もう、早くこんな場所から出ないと！

「――四人目のジャンヌは死んだよ。
　毒の接吻、傷みを覚えた人形に殺されて死んだよ」
「やめてよ、もうっ！」

悲鳴を上げて一閃。ぼたり、と小さな死体が落ちる音を背に私は走る。全力で。
もういい。
もう助けて！

「――五人目のジャンヌは死んだよ。
　ジャンヌはジャンヌに殺されて、ジャンヌはジャンヌを殺して死んだよ」
「いい加減にしてよっ！」

誰とも知らない相手に、私は絶叫する。

「ジャンヌとか、私には関係ないでしょ！」






途端に。
森を沈黙が支配した。







もう、葉のこすれる音さえも聞こえない。
もう、雨露の落ちる音さえ聞こえない。
もう、風の吹き抜ける音さえ聞こえない。
そんな、完全なる静寂。

そして、彼らが断罪する。

「あなたは、ジャンヌじゃない」








　　　私は、屋上にいた。
　　　覚えている、忘れるわけがない。あの時の屋上。
　　　私が、桂さんを殺した、あの瞬間。
　　　
　　　その桂さんが、私の前にいる。
　　　愛おしそうに、誠の首を抱きしめて。
　　　なんで、と聞きたい。あなたは死んだはず、と。
　　　だけど、声が出ない。
　　　
　　　「ずるいですよね、西園寺さんは」
　　　
　　　おもむろに、彼女が口を開く。
　　　私は、まだ声が出せない。
　　　
　　　「本当なら、西園寺さんはここで私に殺されるはずだったんです。
　　　　でも、それが狂ってしまった。
　　　　あなたが、ほんの少しの気の迷いで、誠くんの首を持っていってしまったから。
　　　　あのわずかな分岐点が、こんなに終着点を変えてしまったんですね」
　　　
　　　私には意味が分からない。
　　　私は、だまって彼女の言葉を聞くしかない。
　　　
　　　「全て、思い通りになりましたか？
　　　　勘違いしましたか？
　　　　自分は、特別な存在だと？
　　　　自分が世界の中心で、世界は自分のために回っている？
　　　　ああ、そういう小説って、中学生とかの頃、よく読みましたよね？
　　　　
　　　　駄目ですよ、西園寺さん。
　　　　そういう子供じみた妄想に、縛られちゃ。
　　　　確かに、あなたは思ったより巧くやり遂げたかもしれません。
　　　　けれどそれは、ほんの偶然と幸運の産物なんです」
　　　　
　　　猛烈に反論したい。
　　　なのに、言葉が出ない。なんてもどかしい……。
　　　私の表情に気づかないのか、桂さんはいつもの口調で続ける。
　　　
　　　「でも、勘違いするのもしょうがないかもしれませんね。
　　　　この国に来てから、『そういう力』がたまたま宿ってしまったようですし。
　　　　今まで培われた『妄想』を、『結果』に置き換える、ですか？
　　　　いつもの西園寺さんですよね。
　　　　
　　　　こうあるべき、って自分で決めて。
　　　　そうじゃないのは、全部他の誰かが悪い。
　　　　結果が正しいなら、経過なんてどうでもいい。
　　　　それが西園寺世界、のやり方でしたよね。
　　　　そのために周りを動かすアジテーター」
　　　
　　　彼女は、女の私から見てもぞくりとさせられる、そんな目で私を見る。
　　　
　　　「私をいじめた時もそうでしたね。
　　　　私はいないほうがいい、そうあなたはさらりと周囲に伝えた。
　　　　周囲は、それを『自分の意思』だと思って実行しましたっけ。
　　　　いつも、西園寺さんのやることは同じなんですね」
　　　　
　　　「だから、何だって言うのよ！？」
　　　
　　　叫んでから気づく。
　　　しめた、声が出る。これなら――
　　　
　　　「何言ってるのかさっぱりわからないけど、桂さんの言うこと、おかしいよ。
　　　　だって、こんなに巧くいったんだよ？
　　　　私が特別じゃなかったら、何だって言うの！？
　　　　そうだよ、私は特別なんだよ。私が世界なんだよ」
　　　　
　　　「じゃあなんで、ジャンヌのことを興味ない、なんて言ったんですか？」
　　　
　　　え、と私は聞き返す。
　　　またジャンヌ？　ジャンヌが一体、どうしたって言うのよ？
　　　
　　　「ああ、本当に知らないんですね。
　　　　ジャンヌ、アリス、森。
　　　　これは全て、この小さな街、小さな世界を構成する重要な要素。
　　　　いわば、この街全てが、彼女の物語だと言ってもいい」
　　　
　　　――何を、言っているの？
　　　私には、分からない。
　　　
　　　「分かりませんか、西園寺さん。
　　　　あなたの力も、所詮森の副産物、そのまた副産物にすぎないんです。
　　　　ジャンヌなんて知らない、そう言った段階で、あなたはこの物語の中心じゃない。
　　　　おかしいじゃないですか。
　　　　あなたが本当に世界そのものなら、それを構成するもっとも重要な要素を知らないなんて。
　　　　
　　　　分かりやすく言ってあげます。
　　　　あなたは、この物語の脇役その一、その他大勢に過ぎないんです。
　　　　それが、ちょっと脇のほうで目立ったからって、主人公だと勘違いするなんて。
　　　　本当、おかしいですね」
　　　　
　　　笑う桂さんの姿が、どんどん遠ざかっていく。
　　　そんな、そんなの認めない！
　　　私は世界そのものなのに！
　　　私のためだけに、みんながいるはずなのに！
　　　そんな、そんな！
　　　なのに、彼女の姿はどんどん遠ざかり、風景も次第にぼやけ、そして、
　



『―――――もう、夢から醒める時間ですよ、西園寺さん』

676 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/12/02(日) 01:02:56

>>675
気がつくと、私は森の外にいた。
後ろでは、森が炎に包まれている。
……何があったんだろう。
森に一歩足を踏み入れてからの記憶が、全くない。
何が重要なことを聞いたような気がしたのに。
最後の最後、「森」が私に何か言った気がしたのに、忘れてしまった。

「……そうだ、あの吸血鬼の死体、確認しないと」

朧な思考で、ようやくそれだけ思いつく。
よろめきながら坂を下り、街が見えるほどの位置にまで近づき。
私は、目を見開き、口を開き、震える声で、叫ぶ。


「なんで、あんたが生きてるのよ……。
　あんたは死んでなくちゃいけないのに、なのになんで、まだ生きてるのよおっ！！」




【現在地　B地区「繁華街」】

677 名前：光の三妖精 ◆FairyH0Oi2 ：2007/12/02(日) 01:10:09

ネコアルク・カオスｖｓ地味な光の三妖精
「ちょ、誰よ！　地味とか書いたの！
　後で覚えてなさい！」

>>667

「さてさて、触れないドアにどんな反応をするのかしら？」

「怒り狂って力ずく？」

「それとも諦めて飛び降りるかしら？」


どきどきわくわく三妖精。
息を潜めてじぃーっと観察。
だけどきょろきょろ動かない。
まさかまさかの正体露見？


「なんかしみったれてるわね」

「ほら、きっと私達みたいに物珍しいのよ」

「それにしては何かを探してる感じじゃない？」


それでもまだ待つ三妖精。
騒いで待っても無問題。
黒い猫さんなにするの？


「ビィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーームッッッッッ！！！！！」


突如煌めく二つの瞳。
何かに似ている眩しいビーム。
全てを飲み込む破壊の濁流。


「だから！　何よ！　あのナマモノは！」

「私に、聞いても、わからない！」

「おまわりさんも、わからず泣いた！」


塔がひび割れ、崩れ始める。
さあさあ、どうする三妖精！


「逃げた方がいいんじゃないの？」

「逃げるなんてとんでもない！」

「アレの中なら安全じゃない？」


気になる黒い鳥さんの、
ぽっかり開いたどてっ腹。
乗り込んでみたはいいものの、
動かし方はわからない。


「わからないなら適当に！」

「あれもこれも触ってみるしかないじゃない？」

「それじゃあ私はこのボタン」

「足元にも何かがあるわね」

「座ったままじゃ届かないわ」

「それじゃあ、それはルナの役」


みんなが位置に付きました。
ぽちっとかちっとがしゃんがごん。
ぶんぶん唸る黒い鳥。
がたがた震える大きな体。


「それじゃあ、適当にやってみよー！」

「ちょっとちょっと、外が見えない！」

「見える景色はおんなじよ」


浮いた巨体が向かう先。
知ってか知らずか光の元へ。
それでも強気な三妖精。
一体全体どうなることやら。


【現在地：F地区　崩れる寸前のヘリポートにて】

678 名前：―完全で瀟洒な従者― 十六夜咲夜 ◆Clock/PR2Y ：2007/12/02(日) 01:13:45

>>671
　
　この人間はどこかおかしい。
　まるで止まった時間を認識しているかのように動くのだから。
　ノーモーションで迫るナイフの群を打ち落とすなんて、正直に言って人間の速度ではない。限界を超えると
いった生易しいものでもない。
　予知に迫る直感――或いは予知そのもの。
　
　素敵ですわ紳士様――その顔に浮かぶ微笑もまた。
　素敵でしたわ紳士様――その切先が捉えるイメージも。
　良い夜ですわ紳士様――そのステップのリズムのお陰で。
　良い夜でしたわ紳士様――命の輝きが眩しすぎて。
　
　でもそれも終わり。名残惜しいけれど――終わり。
　残念だけれど時間がない。一度戻って着替えるくらいはしないと従者としては主に合わせる顔がない。
　それだけ満身創痍。彼が残した傷跡は、綺麗サッパリ消えてしまうだろうけど、何時までも心に秘めておきたい。
　ああ――でもこれじゃあ恋する乙女。血塗れに笑う女には、聊か似合わない。
　
　だから、
　だから、
　だから――。
　
　終わりにしましょう紳士様。名前も知らない紳士様。
　貴方の時間を私が貰うわ。何時までも何時までも、貴方の時間は私と共に。
　でもそれは最初から決まっていた。レコードに刻まれた溝のように。
　
　最初から、最初から。
　何時までも遊んでいたかったのは、結局のところ我儘で。
　私も主人と同様にまだまだ子供。
　
　冷めた態度をとっても、仮面を被っても。
　童心を隠す事は出来なかったみたいです――お互いに？
　
「終わりにしますわ、紳士様。本当は霧の夜が望ましいのですけれど」
　
　重ねた斬撃が四つ――うち二つは残撃とでも言うべきでしょうか。
　生と死の境界の境界を渡るような紅い橋を前に、躊躇う事なく前に出る。
　
　芸術的なまでに研ぎ澄まされた殺人術。
　時を止めようにも、既に遅いと感じてしまうほどの早く鋭いそれを、直感に任せて凌ぐ。
　凌ぐ。
　凌ぐ。
　
　ザクリ、と抉られた。
　体ではなく心を。
　
――そう、なのね。
――そう、だったのね。
　
　紅い紅い涙が落ちた。
　紅い紅い瞳で写した――。
　
　思考よりも先に体は動く。
　慣れ親しんだ解体術。
　
　骨は硬いので避けるように。
　関節の隙間はちょっとしたコツで巧く切り分けられる。
　臓器は弾力に富むので注意が必要。角度とか。
　
「お別れですね紳士様。また――来世でお会いしましょう」
　
　スカートの裾を持ち上げ、深々と一礼。
　深々と、深々と。
　長い、長い一礼を。

679 名前：“姫” ◆/HIME/HDYY ：2007/12/02(日) 01:19:22

>>673
「攻め手には困らん！」
「何度でも貴公を噛み殺す！」

―――なるほど、獣面人身は伊達ではなかった。
一角獣は、その角を研ぎ澄ませ吶喊の姿勢へと移行する。
ライオンは爪牙と剛力を持って押しつぶさんと迫る。
野生という、原初の力を併せ持つ二人の騎士は最後に頼るものを己の肉体としたのだ。

「―――ふふん」
しかし姫は。
その笑みを絶やさず、優雅に髪をたなびかせる。
「それで？ この私に獣の爪や牙、角を突きつけてひれ伏せと言うのか？ 命乞いをして見せろとでも？
―――話にならぬ悪手だな」

「貴様らが雑魚と罵った我が家来は、」
傷が癒えたヒロは、二人の獣騎士に向けて腰のベルトにぶら下げた山刀を構える。
「既に貴様の命を握っているぞ？」

言葉の棘は、
“私生児公”ジャン・バタールを絡めとった。彼は攻める為に溜めた足を鈍らせた。
彼の肉体に打ち込まれたのは、リザの爪。
そして、続けざまに叩き付けられた姫が両手に持ち直した二本のチェーンソー。

―――聖乙女と共に戦場を駆けたユニコーンは、もう走れない。嘶くことさえも。
【現在位置：森】

680 名前：ネコアルク・カオス ◆qYdq.chaos ：2007/12/02(日) 01:28:41

ダンディなネコアルク・カオスｖｓイロモノ？光の三妖精
　
>>677
　　
　競技場――――両断。
　
　病院――――炎上。
　
　ホテル―――真っ二つ。
　
　テーマパーク―――大喝采。
　
　『我が体撃沈！』――――若本乙。
　
　吾輩―――――最初に言っておく。
　　
　　
―――想像以上の火力に吾輩もびっくりした。いやマジで。
どうやらアーパー精霊のまた分家の分家である吾輩に、これさいわいと世界の抑止力が後押ししているらしい。
ガイアが吾輩にもっと輝けと囁いている。
いわばこの瞬間、世界の中心は間違いなく吾輩＝パイレーツすら食い殺すワイルドさ！
無限のバックアップという止められない熱情が吾輩を包み焼く、それはもう香ばしいくらいコンガリとにゃ。
　
だが、そんな吾輩の増徴マン、もとい全ての増長も天に帰るときが来た。
そのファイナルポパイを下したのは他でもない、
　
「ニャック！？」
　
不意の衝撃――――襲いかかる爆風と閃光／ワラ人形に
　
爆発の正体――――起動したヘリの巨体／ワラ人形に
　
襲来する脅威――――爆散したヘリと熱波／ごっすんごっすんもうクソスレは建てないって言ったじゃないですかァーーー！
　
　
「キャット！デカルニャーーーー！？」
　
光景と混線するみょんな走馬灯（ニコ動発）。
だが吾輩はうろたえない、吾輩うろたえてるがうろたえない！
えーりんえーりん助けて映倫、魔を断つ刃ウドンゲイン！
張っていいのは親父の頭、張らなきゃ死ぬぞチンドン屋！
こんにゃ時こそコンセントレーション、吾輩の閃き集中必中熱血魂、吾輩が精神コマンドを使った！？
そう、今こそ閃け吾輩のポテンシャル！

迫る破片、そしてピキーンとかき氷をドカ食いしたような電波が吾輩に走り
　
　　
　
見えた、
　　　　　見えた、
　　　　　　　　　　見えた、
　　　　　　　　　　　　　　　見えた、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　見えた、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　見えた、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　見えた、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　見えた、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　見えた、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　見えた、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　見えガッ
　　
「キャアァァァァーーーーーーーート！？シット、キャッート！！」
　
　
――――まあ、吾輩だって当たる時は当たる。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　だって、猫（キャット）だもの。　　吾輩
　
　
【場所：Ｆ地区　ヘリポート（ただしヘリは撃沈）】 　　

681 名前：……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉：……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉

……フランスに栄光を〈Dans la gloire de la France〉

682 名前：フリント・アロー ◆QUATreGC1A ：2007/12/02(日) 01:47:28

>>678




　爆心地―――生命の終わる場所。

　残されたもの―――哀れな生存者だけ。

　加速は限界を超え、終わりを告げる。




　フリント―――全身に裂傷／一部は内臓にも到達／大量出血＝生と死の境界。

　破壊したコンテナの中身を下敷きにしながら倒れこむ。しなやかな動きは失われている。

　転がる無数のアンプル／注射器／その他用途不明の医療器具。

　軍刀を握り締めた右手は動かず／左手が地を掻く／アンプルを握って停止する。

　現実感の消えた戦闘／唯一の現実は軍刀に付いた血糊と傷。
　幻との戦いを雄弁に証明。

　そして実感する―――奇妙な安らぎとともに。




　死を。




　おお、炸裂よ。塵と灰に。
　炸裂から生まれしものよ、塵と灰に。




【現在位置／Ｃ地区：研究所内／フリント・アロー死亡―――？】

683 名前：パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU ：2007/12/02(日) 01:51:03

>>666
室内に降り注ぐ雷雨。風読みはこれだから当てにならない。
ここにいたってパチュリーはようやく、衝撃の正体が「雷」だと言う事を知った。
雷を人が御するとは！　外の世界の魔術もやはり侮りがたい。

が、詰めが甘い。
無音詠唱/槍が砕いた地面から立ち上る木々/妖精の管笛（Sylphy Horn）
生まれいでた樹がスプリンクラーを食み、命の水を啜る。
雷も、絶え間なく生える木々に阻まれ力を発揮できない。

飛び跳ねる油虫、目くらましの爆雷、防ぐまでも無い。
ちょっと熱かったり肌を擦ったり頬に引っかき傷が出来たりするだけだ。問題はない。

軟体生物は、パチュリーの攻撃が致命傷だったようだ。
これ以上追い討ちをかけることは無い。

これにて終幕。夜はなべて事も無し。

「さて……どうするの、レミィ」

炎に包まれた―パチュリーらのせいではなく―木々に一瞥をくれてから、
傍らの友人に声を掛ける。

「森は死に向かっている（Forest Dream is Burning）わ。プレステ・ジョアンも再出発のころあいよ？」

【現在位置／Ｃ地区：研究所内部】

684 名前：エリ・カサモト ◆SV001MsVcs ：2007/12/02(日) 01:51:35

メイ＠マルチアーノ12姉妹ｖｓエリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ
　
>>670

　手応えは充分にあった。
　人間なら両肩が砕け、頭蓋が沈むだけの威力を送り込んでやった。

　メイが突っ伏す。
　
　アタシは空になったマガジンを捨てて、腰のパウチに手を伸ばし

「と、まあ普通ならここでエンドロール、ってところだけどさ」

　足首を掴まれた。

　リロードを諦めてクラシックマーダーに手を伸ばす。

「うあ！」

　が、グリップを掴むよりメイに引き倒される方が早い。
　メイはそのまま無造作に振り被ってアタシを手榴弾みたいにぶん投げた。
　手榴弾よろしく縦に回転して飛び、背中から家屋の壁に叩きつけられた。

「〜〜〜〜ッ！！」

　初めに出くわした化物と同じか、それ以上の衝撃が背中から全身を突き抜ける。
　今度はアタシが突っ伏す番だった。

「あ……ぐ……」

　口の中に鉄錆の味。
　馬鹿力め。

「ショットガン、ぶち込んでやる……」

　アタシたちの使うショットガンは通常のショットガンとは色々と異なっている。
　射程距離が拳銃以下な一方で、重装甲の戦車ですら撃破可能な破壊力を獲得しているとか。
　ターミネーターだろうがエイリアンだろうがプレデターだろうが吹き飛ばす、特殊部隊の切り札だ。

　いくらアイツだってこれを喰らえば……！

　ふらつく身体を無理矢理に起こして、パウチへ手をやった。
　弾倉の感触。
　引き抜いてサブマシンガンに叩き込……めなかった。
　叩きつけられた衝撃か、弾倉は先の部分から歪んで形を変えていた。装填してあるショットシェルが潰れているのが見て取れる。
　
「くそ……」

　苛立ち混じりにマガジン改めジャンクを投げ捨てる。
　装備チェックの後に弾薬の再分配をやったせいでアタシの手元には高威力の武器が殆どない。

「ショットガンなし、スーパーグレネードなし、フレイムショットなし」

　残るは手榴弾が少々。

　どうする？

　自問自答しながらエネミーチェイサーの弾倉を叩き込む。
　コッキングして初弾を装填。

　どうする？

【現在地　D地区：商店街】

685 名前：一角獣とライオン ◆j5y3JEANNE ：2007/12/02(日) 02:02:55

ジャンヌ・ラ・ピュセル
　最後の救国［dernier defile］―パリへ―
ｖｓ姫

>>679

「ジャン、死んだのか！」

　一角獣の甲冑が切り刻まれると、その裡は空洞だった。
　おもちゃ箱をひっくり返したようにプレートメイルの残骸が地面に散らば
るのを見て、ラ・イールは夢の終焉を覚った。「おしまいの物語」は、獅子
心公の心臓すら鷲づかみにしようと殺到する。
　―――その運命を、ラ・イールは轟然と拒絶した。

　バタール・オルレアンの残骸を右手に構える。彼の兜が誇り高く屹立させ
ていた「世界を穿孔する」ユニコーンの一角を。
　聖戦は続くさ。俺達はまだ戦える。

「なあ、そうだろうジャンヌよ！」

　獅子の膂力に一角獣の駿足が重ね、ラ・イールは渾身の突撃〈パレード〉
を開始した。―――最後まで、彼はクイーンを狙い続けた。


【現在地：森】

686 名前：―永遠に紅い幼き月―　レミリア・スカーレット ◆DEVILbzibY ：2007/12/02(日) 02:17:58

紅魔館の優雅な住人たちｖｓカトル・カール
―Forest Lagoon―

>>683

　優雅に頷いておく。
　なんだか、見せ場を全部パチェに持って行かれた気がするけど。澄ま
し顔の割には、彼女が一番はしゃいでいるような気がするけれど。
　―――そういう図書館の君も嫌いではなかったから、レミリア・スカ
ーレットはパチェの手をとって、一緒に研究所を離れた。
　
　森を包む炎は（多分）レミィたちのせいではない。勝手に崩壊へと転
がり落ちている。つまり、プレステ＝ジョアンも再出発の頃合いという
ことだ。
　
　パーラーカーは自走して、正門で待ってくれていた。
　車内の惨状は目に余る。かと言って、この灼熱の海を屋根に座って走
り抜けるというのも暑苦しい。―――咲夜に掃除させないと。
　
　幸いにも、ちょうどお茶の時間だった。


【現在位置／Ｃ地区：研究所】

687 名前：『夜雀の妖怪』ミスティア・ローレライ ◆8hOOMYSTIA ：2007/12/02(日) 02:20:02

物語は続く。
弾き語りは続く。


決して砕けない鋼の身体
決して揺るがない鋼の心
張り裂けそうなのは一体どうして？

傷ついた腕はリサイクル
なんたるエコロジカルシステム
壊れた足は新品に
なんたるシステマティックレディ

失われたシスターは新入荷
割り切れない深淵の迷宮

心を貫くチャイニーズ・ナイフ
なんたる至高の芸術品
まるで悲しんでいるかのよう
中を開いてみたのなら
如何なる仕掛けが詰まっているのか

おお！　我等が造物主
一体この心の痛みは真実か偽りか
偽りならばいっそ
何も感じなければいいと言うのに


幽かに聞こえる声のままに。
心の赴くまま激しく。


【C地区　瓦礫のバベル】

688 名前：“姫” ◆/HIME/HDYY ：2007/12/02(日) 02:24:54

>>685
騎士の身体は、がらんどうの身体。
一角獣の騎士、“私生児公”ジャン・バタールは盤上から除外された。

「ジャン、死んだのか！」
“獅子王公”ラ・イールは叫ぶ。ジャン・バタールの残骸をかき集め、兜を拳に重ね合わせる。
まだ戦える。この男はまだ戦える。

「くそっ、どこまで往生際が悪けりゃ気が済むんだよ！」
リザが唸る。フランドルの重量さえも構わず引き摺れるようなこの男の膂力に貫通力が加われば
銃弾など比較にもならない、いや、劣化ウランを使用した撤甲弾さえも上回る砲弾と化すだろう。

「ふん―――まるで何とかの一つ覚えだな」
それでも姫は、悠然と立ちはだかる。ヒロとフランドルを傍に従えて。
「だから、“キャスリング”という使い古された手を忘れる」

ヒロは身体を張って角を受け止める。
くぅっ、と漏れ聞こえる呻き声と、血の飛沫は角の威力を物語っていた。
そしてフランドルが、再びラ・イールの脚を掴む。ただし、今度はラ・イールの足を踏みしめながらだ。
ヒロから姫に、山刀が手渡される。

狙うはただ一つ。兜と甲冑の隙間。頚椎と頚椎の隙間―――いや、骨ごと断つ。

獅子目掛け虚空を切り裂いた刃は、地を穿った。

【現在位置：森】

689 名前：『夜雀の妖怪』ミスティア・ローレライ ◆8hOOMYSTIA ：2007/12/02(日) 02:32:18

>>687
物語は続く。
弾き語りは続く。


ありふれていた風景は
望んでも決して届かぬ彼方

いつか分かたれると云うことは
誰もが知っていたはずなのに
気付いたときにはもう遅く
もうキミは傍には居ない

輝く日々が懐かしくて
前にはなかなか進めなくて
足踏みばかりして居るけれど

いつの日かきっと歩き出すから
今はまだ少し

少し色あせた光景は
キミが残してくれた宝物
思い出までが色あせないよう
新しい日を描いて行こう

キミが笑っていられるように
これから先も


幽かに聞こえる声はもの悲しく。
響く旋律は激しく。


【C地区　瓦礫のバベル】

690 名前：光の三妖精 ◆FairyH0Oi2 ：2007/12/02(日) 02:34:31

声だけダンディなネコアルク・カオスｖｓイロモノ？可愛い光の三妖精
「嘘はいけないわよね。嘘は」


>>680

粉砕・玉砕・大喝采！
爆炎まとって特攻ゴーゴー、
あれよあれよと粉みじん。
振り返っては駄目なのだ。


「結局何がいけなかったんだろうね？」

「ぶっちゃけると、全部？」

「やっぱり駄目だったわねぇ」


煤を被ってくるくる落ちる。
煤けた背中に漂う倦怠。
でもでも、まだまだ終わらない。
次はどうする、何をする？


「勿体無いわね、黒い鳥」

「結局言うこと聞かなかったし」

「右も左も瓦礫ばかりね」

「一緒に落ちれば、そうなるって」

「それでこれからどうするの？」

「それじゃあこれを隠してみるのはどうかしら？」


にやりと笑う、日の光。
とにかくアイツを困らせたい！
音はすれども影はなく。
ごろごろがらがらどんがっしゃーん。


【現在地：F地区　崩れ始めたヘリポート】

691 名前：ネコアルク・カオス ◆qYdq.chaos ：2007/12/02(日) 02:36:18

>>690
　
　
l;;;;;lllllll|;;lll　　　　　　　　　 ﾞﾞﾞ!!llll!!!llﾞlllliilllllllllllllllllllllllllllll|;;;;;l;
l;;;;;lllllll|;;lll　　 　 　　 　 　 ,,l!”_,lllllllllllll!llll!!l!!llllllllllllllll;;;;;;l;ll:
l;;;;;lllllll|;;lll　　　: : : : : : 　,,lﾞ｀;;,,llllllllllll!!,|llll|,,llllllllllllllllll|;;;;;l;ll:｡
l;;;;;lllllll|;;lll: _,,,,,,iiiiiiiiiiiii,,lﾞ:;;;;;,lllllllllllll,,ﾚlllll,,lllllllllllllllllllll;;;;;;l;ll:
l;;;;;lllllll|;;llliillllllllllllllllllll!ﾞ::,,.,;lllllllllﾞﾞ-llﾞ･,llllllllllllllllllllllllllll;;;;;;l;ll:
l;;;;;lllllll|;;lllllllllllllllllllllll!l,,,,llllレﾞ,,i,,,,e,,l,iiiiiii,.'llllﾞll,;'lllllll!ll;;;;;;l;ll::'
l;;;;;lll!lll;;;lllllllllllllllllllllll|llllllllilllllﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞ°ﾞﾞﾞll,ﾞlll,ﾞll爪_,lll;;;;;;l;ll:
l;;;;;lllilll|;;lllllll!!ﾞﾞﾞ!lllllllllllllllllll、: 　 : : : :;;;;;;;;;ﾞllll!|llllllllllll;;;;;;l;ll::,,
l;;;;;lllllll|;;lllllll,,;;;;;;ﾞlﾞ,,,llllillllll,:,,,: : : : : ,,: : :::::;;;llllllﾞﾞ,lllllll|;;;;;l|ll:
l;;;;;lllllll|;;llll!!!llﾞ,l,illllllilllllllilllllﾞlll!: ::,,illllllii_: ::::ll!ﾞ,i,lllllllﾞll|;;;;;l|ll:
l;;;;;ll!llll;;;lllllillliillllllllllllllllllllll!;'lll″illl!ll,,ll: : ::l,;ll,lllllﾞlllll、;;;l|ll::
l;;;;;lllllll|;;lllllllllllllllllll!llﾞll!lllllll、;,lll,,｀｀:￣: ::,::,,li,ﾞlllﾍlll,,$;;;;;l|ll:
l;;;;;lllllll|;;lllllllllllllllllllllllllllllllllllil｡"'ﾞ: : : ::,,,rlllllllll!",,,llﾞ,,lll;;;;;;l;ll::
l;;;;;lllllll|;;lllllllllllllllllllllllllllllllllllllli、::: ::*!,,,lllll!llll!ll!llllllllll″;;;l;ll:
l;;;;;lllllll|;;lll!ﾞ:,llllllllllllllllllllllllllllllllllillllllll!llﾞlil!~ﾞﾞlli,;]llllllﾞド2;;;;ll;ll: :
l;;;;;lllllllillﾞﾞlﾞ,,,,,ﾞﾞ!!llllllllllllllllilllllllllll,ﾞ'ﾗﾞ'ﾞﾞ”': ::,,illl;|lllllli,,lll|;;;;;l|ll::":
l;;;;;llll!l|zlﾞlll!lllllliiillllllllllllllllllillllllllll: : : : :::::,,illlll!illlﾞllllllll″;ll;ll:
　
　
ざんねん！！わがはいの　ぼうけんは　これで　おわってしまった！！

692 名前：ネコアルク・カオス ◆qYdq.chaos ：2007/12/02(日) 02:37:27

本当は残酷なネコアルク・カオスｖｓ光の三妖精　…ところでスペルカードは？
　
　
>>691
　
「――――にゃどと、臨死体験している場合ではにゃいッッ！」
　　
　
吾輩の魂に一言：帰還乙。
　
６６６回倒さずとも２ラウンド取れば倒せる――――
そんな吾輩のお約束どおり、死んだ所から吾輩は蘇生する。物理的な意味でも。
そう、これは正にルール無用の残虐ファイト。あの東京を二分したリドル冒険百連発戦争の幕開け。
カーテンコールに住所不定無職の二人組みが押し入り兄貴と私、吾輩に宣戦布告を住所不定無職の
二人組みが押し入り兄貴と私、まさに手に持ったナイフで終身刑を言い渡さんとする悪質な国家国家反逆罪！
潜り抜けた幾多の死闘と同じく、手にじっくりと汗を吾輩はかいていた。
　
　
「……ほほう、これは見事な心眼モード。まさに目も当てられぬ漆黒の堕天使ブルー。
　次は新手のプレイヤー殺しかね、アンノウン？」
　
ネコ課のごとく拡大せど一寸先すら真っ暗な吾輩の目前。
見えざる敵、聴こえぬ相手。ついでに崩落しつつあるふいんき（←なぜかｒｙ）のビル。
単体か複数かも分からぬ世界すべてが吾輩のエネミーゼロ。
さながら吾輩はワープ失敗の飯野某といった所か。
　
だがニヤリ。
んー、それって吾輩の遊び場にゃのよね。
　
「チェェェェェンジ！オープンキャァァァァット！！」
　
光一つ見えない世界（notヤンデレ）。
その闇の中で下半身をジェットそのものなのだ！と変形させ縦横無尽に飛び回る。
そこで吾輩が選択した手段は一つ――――――そう、『総当り』。
まだまだ健在な―――どうも、他にきっちりバックアップ与えられるのがいないらしいねコレ―――世界
からの膨大な魔力を推進剤に変換し低空飛翔する。ただし正しくマッハ２で。
で、そうなるとどうなるか。分かるかねアンノウン？
分からない？　ではそんな諸君らにティーチャーカオスからヒント進呈のハンターチャンス。
　
　
　
　
ヒント：ソニックウェーブで大惨事。
　　



ようするに加速に耐えられず空気の壁は破られて衝撃波とか生まれるわけだ、これがにゃ。
いわば←ため→＋パンチで出る待ち軍人のアレ、ザンギとかハメ殺される超音速の飛び道具！
しかしこれは格ゲーではない、リアルなのだよ正太郎君！！
　
すなわち地面とか建物とかガリガリぶっ壊れて削られていきます、リアルで。
ビルの破片も以下同文だったり避けられたり。これも感覚強化されたおヒゲさまのガイアパワー。
吾輩だけの無敵モード。繰り返す、これは演習ではにゃい。
　
「繰り返す、これは演習ではない。繰り返すこれは演習ではない。
　吾輩を襲撃したジュク派なアンノウンの皆様、当方ではそんな心温まる面々のゆるやかな
　正体発露を勧告しております。
　少女とかだった場合は紳士的な保護とかも、この場はむしろ選ばせてもらうゼ？
　
　
　ああ―――――男だったら死ね。こちとら慈善事業やってんにゃねえんだ」
　
　
周波数に乗せた降伏勧告／全周囲回線でのほぼ念話／これもバックアップの賜物。
さて、姿を現すか名無しのままマッハの嵐で砕けるか。
ちょっとばかり半径２０メートル内の全力全壊をもくろみながら見物と洒落込もうかにゃ。
　
【Ｆ地区：ヘリポートだった場所】　
　

693 名前：一角獣とライオン ◆j5y3JEANNE ：2007/12/02(日) 02:41:37

ジャンヌ・ラ・ピュセル
　最後の救国［dernier defile］―パリへ―
ｖｓ姫

>>688

　獅子のたてがみが放物線を描きながら空を舞ったとき、胴体と別れを告
げたラ・イールの口元には、至福の笑みが広がっていた。
後悔の色は微塵もない。「愉しかったなぁ……」そう無言で語っている。
　ジャンヌと一緒に、こうして再び戦場を馳せることができた。
　貴族である彼にとって、フランスとは神聖視するに値するほど立派なも
のではない。シャルル七世も、英国の蛮族連中も―――そしてもちろん自
分も、揃って薄汚い人間だ。

　だが、ジャンヌは違った。
　彼女は輝きだった。

　首を失った巨躯ががくりと膝をつき、地面に伏す。私生児公の甲冑に重
なるように。―――こうして幻想は終わりを告げた。

　二人の亡骸があるべきところには、ルークとビショップの駒が転がって
いる。


（白のルーク／ラ・イール→死亡）
（白のビショップ／バタール・オルレアン→死亡）


【現在地：森】　

694 名前：メイ＠マルチアーノ12姉妹 ◆M12sisrIV6 ：2007/12/02(日) 02:43:00

メイ＠マルチアーノ12姉妹ｖｓエリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ
>>684
　
　「どうした、歌いなよ。知らなきゃあたしが教えてやろうか？」
　
　リップが歪んだ弾倉を投げ捨てる女に、メイがウィンチェスターを肩に担いで問いかけ
る。
　
　「Row,row,row,ya boat〜♪」
　
　無造作に銃口を向けると狙いも付けずに銃撃、弾頭はわずかに逸れて右隣の壁を穿つ。
　
　「Gently down the stream〜♪」
　
　到底穏やか（Gently）とは言えない速度でレバーをコック＆シュート。
　フルオートにも迫る勢いで、壁に五つの穴が開く。
　
　「Merrily,merrily,merrily,merrily――」
　
　女が弾倉を装填するのを確認すると、撃ち終えたウィンチェスターを地面に投げ出した。
　片手を軽く振ると、右腰のホルスターに収まったSAAの白いグリップに手を掛け。
　
　「Life is but a dream〜♪」
　
　親指でハンマーを起こし、ヒップシュート。
　更に左手の親指、中指、小指でハンマーを叩く。
　サミングとファニング、合計で四発の銃弾が女の足元で跳ねた。
　
　「さて、残り何発だと思う？」
　
　【現在地　D地区：商店街】

695 名前：『夜雀の妖怪』ミスティア・ローレライ ◆8hOOMYSTIA ：2007/12/02(日) 02:52:22

>>689
物語は続く。
弾き語りは続く。


今日はどの服を着て出かけようか？
ドレスを着て優雅な舞踏会？
帽子を被って日傘を差して
お日様の下も安心

けれどお城の舞踏会
退屈すぎてあくびが出ちゃう
今日は森へと散歩の気分

荷物持ちは当然貴方
ドレスも決して汚れないよう
貴方が裾を持っていて頂戴？

ある日森の中で出会うのは
落とし物係の親切なクマ

貴方が落としたのはこの金の弾丸？
貴方が落としたのはこの銀の弾丸？

いいえもちろん鉛の弾丸
正直者の貴方には
弾倉すべてをあげましょう

BANG！BANG！BANG！BANG！BANG！BANG！BANG！
BANG！BANG！BANG！BANG！BANG！BANG！BANG！
BANG！BANG！BANG！BANG！BANG！BANG！BANG！


幽かな声は時に激しく。
響く音色はいつも激しく。


【C地区　瓦礫のバベル】

696 名前：光の三妖精 ◆FairyH0Oi2 ：2007/12/02(日) 02:56:17

本当は残酷なネコアルク・カオスｖｓ光の三妖精　…ところでスペルカードは？
「細かいことは気にしないの。
　なくても生きていけるもの」

>>691-692

右に左に縦横無尽。
果てる事無き無限のパワー。
目指せ正義のスペースレンジャー？


「だからアイツは何なのよ！」

「黒い猫型最終兵器？」

「台風は現在瓦礫を巻き込んで発達しておりますー！」


上から読んでも下から読んでも新聞紙。
前が左で後ろが下で？
上が右なら左が頭？
くるくる回るよ三妖精。
そこに割り込む公共広告。
問答無用でよってらっしゃい見てらっしゃい。
踊る阿呆に見る阿呆。
同じ阿呆なら聞くだけにしよう。


「繰り返す、これは演習ではない。繰り返すこれは演習ではない。
　吾輩を襲撃したジュク派なアンノウンの皆様、当方ではそんな心温まる面々のゆるやかな
　正体発露を勧告しております。
　少女とかだった場合は紳士的な保護とかも、この場はむしろ選ばせてもらうゼ？
　
　
　ああ―――――男だったら死ね。こちとら慈善事業やってんにゃねえんだ」


「これじゃあ飛ぶのも大変よ！」

「台風は今だ衰えを見せませんー！」

「今のを聞いた？　聞いたでしょ！」


聞いた聞くとき聞け奇特。
たまには役立つ強制時報。
今度はにやりと月の光。


「やっぱりアイツに私たちは見えてないわ。
　だから姿を見せてあげるの！」

「見せたら直撃狙われるって！」

「必中つけたら大打撃だもの」

「見せるだけって言わなかった？」

「『だけ』とは一言も言わなかったわ」

「うっ……　とにかく見せるだけなの！
　違う場所に、ずらして見せるの！」

「なるほど、ドアと同じ事ね！」

「閃き一発緊急回避ね」


ゆらりと色が滲み出す。
赤と白と青の絵の具で、
瓦礫の滝に落書きを。
描いた夢に、何を望んだ？

【現在地：F地区　瓦礫の滝に描いた幻】

697 名前：システムアナウンス ★：2007/12/02(日) 02:59:02

　　　　今は午前３時、夜明けまで後阿僅か二時間程度。
　　　　されど、救いの手は未だ来たらず。






　　　　神よ

　　　　神よ


　　　　これは天罰なのですか？

　　　　「燦月製薬」がキナ臭い事をしているのは何となくですが知っていました。

　　　　ですが、私個人が何か禁忌に触れたでしょうか。
　　　　私は罰される程の人間でしょうか。


　　　　私のやった事と言えば、資料室で昼寝。女子更衣室にカメラを仕掛けたつもりが
　　　　男子更衣室に仕掛けて自爆。後は裏帳簿をつけてほんの少しの、そう、精々、
　　　　家が買えるぐらい、横領したり、我が社のＶ酵素をちょっとばっかり、拝借して
　　　　裏ルートで売りさばいてお小遣いを稼いだぐらいです。


　　　　流石に少しは悪い事をしたと思ったので日曜日の礼拝は欠かした事もありません。
　　　　定例献金も他の人の５倍はしていました。教会の神父様は神は全てお許しになる
　　　　と仰られました。



　　　　なのに



　　　　なのに



　　　　この仕打ちですか！


　　　　何故私が死ななくちゃならない！？　植物の様に平穏な生活を送る事が望みだったのに！
　　　　最近、同僚のエヴァを口説いて来週はデート！　フラグが立ったと思ったのに！？
　　　　
　　　　ああ、そうですね！
　　　　いつも神ってそうなんだ！　都合のいいときは救ってくださる、許してくださる！とか
　　　　言っちゃって、いざとなると試練とか天罰とか言う言葉で誤魔化すんだよな！　大体、
　　　　おかしいと思ったんだ！　今の教皇なんてどう見ても悪の皇帝ですもんね！



　　　　http://www.kajisoku.org/archives/50421338.html



　　　　神は死んだ！



　　　　神は死んだ！



　　　　神は死んだ！

　　　　　　　　　　　　　　　　　　●

　　　　　　　　　　　　俺は死なない―――――●



　　　　　　●

　　　　　　　　　　　　　　　　　　●




（後日とある漁村に流れ着いた手記より、手記には「ジョフロワ、３２歳・独身」と署名あり）






　　　　　　　　⇒大破局（カタストロフ）まで後２時間！

698 名前：◆XVAMPIRE2Y ：2007/12/02(日) 03:03:39

　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　■
　
　
　
「へぇ、なかなかいい土産話を聞いたんだね、アリカ」
　
もはや見慣れた陰気臭い地下室で。
白いベッドに横たわる、女と見まごうばかりの美少年―――迦遼カイエは、
好奇心に眼を輝かせながら、こちらを覗きこんでくる。
だから、そんな風に俺を見つめるな。可愛すぎて篭絡されそうになるから。
　
その日のバイトの話の種に、俺はある人から聞いた悪魔憑きの話を選んだ。
いつも何故か玄関からではなく、窓から強引に不法侵入して、
メシをたかったりゴロゴロしたり内容のないダベりをしたりして
いつの間にか帰っていく、傍から見なくても実にハタ迷惑な知り合いだ。
だがその人物の名前は、目の前のカイエには話していない。
話せば今よりずっと面倒なことになるのは、火を見るよりも明らかだからだ。
　
「それにしても、海を越えユーラシア大陸を越えたフランスで、悪魔憑きだなんてね―――
でも悪魔の存在はあっちが本家なんだから、こういう言い方もおかしなものだけど」
　
何が面白いのか（正直俺にとってはとうてい笑えないキッツい内容だった）
くすくすくすと微笑しながら話すカイエ。
だがしかし、カイエの言葉はその実、この話の問題点を正確に射ている。
それはこのC県に住む人間であれば、誰もが思う実に簡単な論理（ロジック）―――
　
「そう、そこなんだ。だってここ数十年、新たなA異常症患者なんて世界、日本はおろか
C県でだって出ちゃいないんだぜ？　そいつ、本当に悪魔憑きなのか、って俺もその人に聞いたんだけどな」
　
だが同じ質問をあの人にぶつけた時、彼は苦笑いして俺に言ったのである。
　
『いやいやアリカ先生、ありゃ間違いありません。一目見てわかった。
あるんですよ、悪魔憑き同士にしか分からない―――んー、シンパシー？　ちょっと違うな…
まぁとにかくそういうモノが」
　
言ってることは果てしなく適当だが、この人が言うのだから、それを疑うことは出来ない。
あの不死身の吸血鬼の言葉には、それだけの重みがある。
　
「そんなの、『絶対にありえない』なんて事は無いさ。
世界一安定してるヨーロッパ大陸で大地震に遭遇した、なんてことがあったなら、
そこで悪魔憑きに出会う、なんてことがあったっておかしくはない」
「おいおい、それこそ天文学的確率って奴だろーが。確かにありえない、とは俺も断言できないが―――」
「もー、最後まで聞いてよアリカー。僕だって何も、根拠の無い話をしているわけじゃないさ」
「……っていうと何だよ。風が吹けば桶屋が儲かる、なんて話だったら長くなりそうだからご遠慮するぞ」
「ううん、話はもっと単純さ。確か地震が起きた地域って経済特区みたいな場所で、ここ数年で急成長した市街地だったよね？」
「ん？　ああ―――確か、そんな感じだったっけか」
　
ここ数日マスコミを賑わせている話題のひとつ。遥か西欧の地で起きた数百年に一度の局地的大地震。
震源が特定できず原因は不明。ルーアン郊外のある一都市を中心に起こったその災害は、
全世界をセンセーショナルに彩った。ひっきりなしに流れるニュースの中に、そんな情報も紛れていたかも知れない。
　
「よく考えてもみなよ、アリカ―――マトさんが言ってた、A異常症の原因となった病原体。
本当に、根絶した、、、、と思うかい？」
　
ずばり。カイエは切り込んできた。
いやいやおいおい、なんだか話が急激にきな臭いコトになってますよ？
　
「は？　お前、何言って―――」
「天然痘ウィルスは根絶宣言された後も、米露の研究施設で管理されている。ポリオウィルスは、自然感染は既に根絶
されているけど、ワクチン作成のための病原体は未だ残っている。つまり―――」
「―――漏れた、、、、ってのか」
「ビンゴ」
　
眩暈がした。
最低最悪の生物災害（バイオハザード）。
人を容易く人外に変えてしまう病原菌を培養して研究しようというトチ狂った機関が
オリガ以外にあるって話も最悪なら、それが地震によって漏れ出した、なんていう話は
もう笑うしかない、もし神様がいるのなら絶対わざとやってるだろ、と言うくらいのえげつなさだ。
マトさんが聞いたら、卒倒するかもしれない。
いやむしろあの人がぶっ倒れる姿もそれはそれで見てみたいが―――後が怖いな。やっぱやめ。
　
「まあ僕としては、そのフランスで起きたっていう大地震も、ただの、、、地震じゃないんじゃないかなと睨んで―――」
「ああああああああああもういいもういい聞きたくない聞きたくない何も聞こえないあああああああああああ」
「そんなに拒絶反応示さなくても……まいっか、これ以上の話は本当に横道だ」
　
危なかった。その続きを聞いていたら、ホンキで後戻りが出来なくなるところだった、と思う。
本当、心臓に悪いから止めてくれ。

699 名前：◆XVAMPIRE2Y ：2007/12/02(日) 03:04:14

>>698
　
「で、ええっと……そうそう。そのフランスの悪魔憑きのお話。
アリカの話とその人の話を統合すると、どうも問題の女の子、日本（こっち）から亡命してきた
大量殺人鬼らしいんだっけ？」
「そそ。K県で起きたっつー、連続猟奇殺人な」
　
地震の話と前後するが、こっちの事件は地震が起こる数週間前、世間を賑わせていたシロモノだ。
色恋話のもつれから、クラスメイトの男子生徒を滅多刺しの上頚部を切断して殺害、
更にその首を男子生徒と恋仲にあった女子生徒の所へ持っていき、同じく斬殺―――
そんな調子で同級生含む計8名を手に掛けた、サイコな勘違い少女A。
例の如くマスコミは大手を振ってそのテのサブカル叩きに走り、世のオタクの皆さんが大層被害を受けたとか何とか。
　
「にしても変わった悪魔憑きだよな。ぱっと見で分かるような新部は無かったらしいし、身体強化がされてるわけでもなかったそうだ。
ただ、他人の行動を操る？　あの人が戸惑ったのも無理ねぇ話だ」
「そうだね、僕が考えるに――――――フェロモン、かな」
「フェロモン？　それって、あの」
「一般的に生物の体内で生成される、他の個体に一定の行動なんかを引き起こす化学物質―――簡単に言えばそういう代物だね。
ついでに言えば殆どの場合雌体によって作り出される」
「普通の人間も持ってるんだっけか？　つまり、そいつの強力版を出す―――」
「汗腺あたりが新部だろうね。それも話に聞いた限りでは相当強力な―――ある種ウィルスにも近い性質を持ってるね。
感染したヒトの本能すら、自己防衛から他者防衛に切り替えて、女王様を守る忠実なシモベにしちゃう」
　
聞けば少女Aの周囲にいた人間は老若男女の区別無く全員が須らく同じ行動を刷り込まれていたらしい。
その効力は本人がその場を離れた状態でも持続していたというのだから、正にウィルス並みのタチの悪さだ。
恐らく秋星サンが最初に彼女に攻撃を仕掛けた際不覚を取ったのは、フェロモンの効力が
一時的にヒトの本能的な恐怖さえも取っ払い、運動能力の『初速』に置いて常に最高速（トップスピード）を
維持している秋星サンに並ぶ事が出来たのだろう。
ここまで来るとこの能力はまた別の異常さを帯びてくる。
それはまるで、この悪魔憑き自体が、自ら別の悪魔憑き（なかま）を、増やしているかのような―――
　
　
「後は、この能力に至った経緯だね。その少女Aさんは、殺人を犯したのも実に利己的な理由だったそうで―――」
　
自分のものにならなかったから、殺す。
そうなったのは、全て自分以外の者の所為。
自分と関わった全ての人間を丹念に、、、殺した事実から伺える、自己中心性。
　
「つまり彼女は、一度自分の思い通りにならなかったセカイを、破棄したんだ。
自分の手を汚すことで」
　
そして、逃げ出した。何もかもを放り出して。
　
「普通ならそこで終わる話だよね。今のご時勢、一般人が殺人なんかやらかしてそうそう上手く逃げられるはずも無い。
だけど―――何の因果か、うまくいってしまった、、、、、、、、、、」
　
それが彼女にとって幸せだったか不幸だったかは、分からない。
ただ間違いないのは、その偶然の成功が、確実に周囲の人間に大きく災厄を撒き散らしたという事だけ。
巻き込まれる方は、全くたまったものではなかっただろう。
　
「なまじ逃げおおせてしまったがために、勘違いしちゃったんだろうね。
ひょっとしたらこのまま、何もかも思い通りに行くんじゃないだろうか。
自分の考える通り、思うがままに、セカイの方が合わせてくれるんじゃないか。
いや違う―――私そのものが」
　
世界（セカイ）なんじゃないか。
　
そうして―――彼女は、憑かれた。
実際にセカイを描くための、能力（チカラ）に―――
　
「それにしても、その女の子、こっちに居なくて良かったね。
アリカ、このテの手合いとは相性悪そうだし」
　
全くだ、とばかりに大仰に頷いてみせる。それ程の規模の悪魔憑きとなれば
俺に依頼が行く可能性は大いにあったし、それに―――
　
「お前、普通のヒトの肉は、嫌いだしな」
　
部屋の隅っこに声を掛ける。
じっと蹲っていた黒色の犬が、ぷいっとそっぽを向いた。

700 名前：ネコアルク・カオス ◆qYdq.chaos ：2007/12/02(日) 03:15:54

　
レディーには優しいネコアルク・カオスｖｓ光の三妖精　――ところでこれ、何の話だっけ？
　
>>696
　
いくぞ見せるかこの力、すなわちパゥワー！
しかし汝らとか見えないがどっから見てもスーパーマンじゃない。
スペースオペラの主役になれない。危機一髪も救えない。
それを知ったか分かったか、ようやくそぞろと姿を現したアンノウンども×３。
何、高速移動中だから見えない？
逆に考えるんだ。
目のいい吾輩のこと、センスオブワンダーに頼らずとも聴こえたので減速停止。
ご都合にこう考えるんだ、感じろアナキン。
　
さて、ではその無礼千万なエネミーの面を拝むとす、な、何ィ―――！？
　　

「き、貴様は…！まさか、貴様は……！？　そして、貴様は…！
　というか、貴様達は……！！」
　
　　
そう、
長男のアポロ（仮！
次男のヘラクレス（仮！
そして三男のアリエス（仮！
　
――――このチーターマンどもめ、ネコ二十七祖入り出来なかったのは三男のミラコロのせいではにゃいか！
それを意趣返しとばかりにジュク派につきおって…絶望した！吾輩のみピンポイントに狙って絶望した！
もっと白レンとかそっちを攻めろと問い詰めたい、小一時間問い詰めたい。
つか、そっちの方が需要もあるだろうが常識的に考えずとも。
　
まぁ実はなんか全然違うょぅじょ妖精っぽいが、そんな事実はあえてスルーの方向で。
というかノリは何よりも重要だしな。
吾輩は全身がエアリード機能で出来ているレンジ内のダイナマイトなのだ！こういう感じでひとつ。
ふむん、これは天丼かにゃ？
　
「―――しかし、実に吾輩もびっくり仰天。
　まさか吾輩を追い詰めたプレデターたちが、こんにゃお嬢さんばかりだったとはな。
　まぁ、こうなると吾輩も宣言どおり、紳士的に一旦武装解除せざるを得ない。
　何故なら吾輩はＨＥＮＴＡＩセレブキャットという名の紳士であるからに！
　　
　………ところで、今夜君達はどうしてるの？」
　
レディのエスコートはジェントルキャット、ダンディジョージの道にして華。
ナンパとか申したらコガン先生仕込みのタイガーパンチとかが飛ぶゼ？　チュパ衛門くらいの。
　
　
ところでこの少女等３人。
画像が少々ボヤけてる気がするが、まぁ気のせいよな。
　　
【Ｆ地区：もはやヘリポート“跡”】　

701 名前：イグニス ◆IgnisC3BW6 ：2007/12/02(日) 03:17:02

　
　森が、閉じて(ひらいて)いく。
　焔が、広がって(とじて)いく。
　ひとつの幽宮(かくりよ)を形作っていた理(ものがたり)が終わりを迎え、
幻想(ゆめ)と現実(めざめ)、狂気と正気、死者と生者の狭間、
そのどちらにも与せぬ傲岸さを持って、彼女はそこに立っていた。
　土とも石畳ともアスファルトともつかぬ、腐った大地を踏みしめる。
　左手には鞘に収められたままの細身の曲刀。
　右手には、薄汚れた布きれにくるまれ、大地に突き立てられた巨大ななにか。
　業火の直中にあっても映える、紅紫色の眼差し。
　その視線に迷いはない。
　ただいずれ訪れるその時に向けて、炎はゆらりゆらりと燻っている
　あの気まぐれな魔女(ヴァンシュタイン)の言葉を鵜呑みにするほど可愛い訳でもないが、幻想が打ち砕かれようとしている
現実が、彼女が約束を守ったのだという事実を告げていた。
　ならば――魔女が言うとおり、彼女はここに来るのだろう。
　そして、それだけ分かっていれば十分だった。
　
　――この期に及んで策など要らぬ。ただ、眼前の幻想を駆逐する。
　それが――今の私の、存在意義だ。
　
　
　灼熱色の髪を靡かせながら。
　――――焔の名を持つ暗殺者が、奇跡の残滓を待ち受けていた。
　

702 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/12/02(日) 03:18:50

ジャンヌ・ラ・ピュセル
　最後の救国［dernier defile］―パリへ―
ｖｓイグニス


>>646
>>693
>>701


　乙女は駆ける。パリを目指して駆ける。炎の海を旋風となって駆け抜ける。
　僅かに遅れて憂鬱公ジルが続く。影のように付き従う。視線はジャンヌの
背中にしかと向けられている。余すことなく奇跡を見届けるために。
　乙女の足は驚くほどに軽い。希望が彼女から傷みを払った。もう迷わない。
もう嘆かない。フランスの勝利から一瞬でも眼を逸らしはしない！

「ねえ、ジル」
　全力での疾走にも関わらず、神秘で強化された肺が言葉を紡ぐ。
「……何か？」
　白のナイトは慎重に問い返す。この男はいつだってそう。葉のざわめき、
川のせせらぎにすら懐疑を抱く。世界という神秘そのものが怖いから、万物
を疑わずにはいられない。―――なのに、恐る恐る触れようとする。
　そんな不器量な在り方があまりにも可愛いから、彼がいつの日か世界と分
かり合う日が来ることをこっそりと祈った。

「―――私、友達ができたんです」
　友達……ジルが口中で反芻する。
「なんだか、あなたに似ていたわ」
　乙女の言葉に白のナイトは失笑する。自分を唯一無二の絶望だと信じてや
まない者だけが浮かべられる諧謔の笑み。
　……ほんと、そこらへんもあの子とそっくり。自分が嫌いなのに、自分と
いう神秘は大事に抱えて、ずたずたに傷付いて。
　護らずにはいられないヒトたち。
「……何か言ったか」
　いいえ？


　森が開けた。パリへと至ったか。ジャンヌの瞳に輝きが宿る。
　―――だが、違った。
　炎の回廊は途切れることなく彼方まで続き、燃え上がる樹々は燃料の提供
を絶やさない。森は深くジャンヌを支配する。
　ただ、常と違うのは―――

　乙女は足を止めた。止めざるを得なかった。そこに待ち構えていたのは、
パリの城塞ではなく彼女の火刑台だったから。　
　ジルがジャンヌを庇うように前に出る。ブラックオパールのモーニング・
スターを腰のアタッチメントから外し、肩に背負った。

「……彼女の奇跡は、終わらせない」
　
　ジルの言葉は静かだが、頑なだった。


【現在地：森】

703 名前：イグニス ◆IgnisC3BW6 ：2007/12/02(日) 03:19:43

>>702
　
「――もはや夜明けだ。ユメは終わった」
　
　黒い鉄鞘から刃を抜き放つ。
　漆黒の刀身。だが、ただ黒い訳ではない。
　火を、血を。何重にも何重にも重ねた果てに訪れる漆黒。数多の幻想の血を吸っ
て黒く成り果てた、相対する聖女とは真逆の存在。

「覚めないユメはない。終わらない物語はない。
　もう、自分でも分かっているのだろう？　お前の旅は、とうの昔に終わっているのだと」

　イグニス。焔の名を持つ、焔色の女。だが、そのあり方は決して善ではない。
　あらゆる善行もあらゆる悪行も、彼女の前では須く等価値。
　
　そう、須く――無価値。
　
　彼女は人を守る。人類を守護する。
　そして同時に――そこには、守られるべき人類の意志は微塵も介在しない。
　善も悪もなく、正も負もなく。ただ人を守るという一点に純化された意志。
　
　故に、彼女はこう呼ばれる――”最も、気高き刃”。
　
「間違えるな」
　
　ジル・ド・レイの独白に、イグニスは生徒の勘違いを正す教師のような口調で
告げた。
　
「奇跡など、とうの昔に終わっている。
　お前達は、その残骸に過ぎない。ここから先は、過去ではなく現在の領域だ。
　ただのユメに過ぎないお前達に、立ち入るすべなどありはしない」
　
　故に、と。
　イグニスは、その切っ先を聖女――ラ・ピュセルの心臓へと向ける。
　
「その出来損ないの心臓。
　今ここで――もらい受ける……！」
　
　刹那――燻っていた炎が燃えさかり、地を這う蛇となって走り抜ける。
　まずはひとつめ。
　そういわんばかりに、数多の幻想を食い散らかしてきた刃が、ジル・ド・レイ、
ひいてはその向こう側にある、ジャンヌの聖杯に向けて一閃した。

【現在地：森】

704 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/12/02(日) 03:20:26

ジャンヌ・ラ・ピュセル
　最後の救国［dernier defile］―パリへ―
ｖｓイグニス

>>703

　ジルの右腕が飛んだ。幻想を拒絶する凄烈な一閃。振り上げられたオパール
は、焔の女を砕くことなく火焔の藪へと落下した。彼の右腕ごと。
　―――ジルの奇術めいた鉄球捌きを、こうも容易く斬り伏せるなんて。
　疵を抑えて跪く憂鬱公には一瞥もくれず、守護者はジャンヌへと接近する。
　判断は迅速に。未練を覚えつつ髑髏の戦旗を投げ捨て、右腕の義手でシャル
ル・マルテルの剣を抜刀。刃に刃を噛み合わせた。
　
　今度の赤のクイーンは、ひときわ容赦がない。あのナイトノッカーが終末を
委ねるのも分かる気がした。この女は、全ての幻想の敵だ。
　彼女こそがジャンヌの火刑台だ。

「……だけど、私はフランスを救いたい。パリを解放したい」

　聖剣を握る木玩の義手がぞわりと蠢いた。枝がヒルトを這い、蔦がキヨンか
らブレードにかけて絡みつくように昇っていった。
　剣と義手が同化しようとしている。森林騎士の本領発揮か。緑の神秘―――
森の核たる聖杯を胸に宿すジャンヌには、造作もない強化術。
　故に、このような真似も可能だった。
　剣を弾き、距離を空ける。乙女は後方へと下がりながら、しかし彼女の聖剣
／右腕は焔の女に追い縋った。枝という枝があり得ざる速度で成長する。ぎち
ぎちと音を立て、葉を茂らせながら守護者へと伸びた。
　触れれば途端に皮膚を食い破り、血を養分にして寄生する！


【現在地：森】

705 名前：イグニス ◆IgnisC3BW6 ：2007/12/02(日) 03:20:58

>>704
　
　刃ごと右腕が打ち上げられる。
　だがそれ自体には驚きはない。すでに”ジャンヌ”の全身に巡っている”枝”は、
聖杯の生み出した、彼女自身を基点とし、彼女自身を覆う”森”だ。
　そう、森だ。ちっぽけな森だ。紛い物とはいえ、聖杯としての機能を発揮した
せい異物が生み出したとは思えないほどに無様な代物だ。
　かつては街ひとつを”森蝕”したグレイル・コピーの成れの果て。
　残骸に寄生でもしなければ在り続けられないそれは、いっそ醜悪ですらあった。
　同時に、納得もする。
　曲がりなりにも英霊の召喚を果たしたにもかかわらず、聖杯を宿したジャンヌに
せよ、彼女を守護するジル・ド・レイにせよ――
　あまりにも普通すぎるのだ。
　伝説化し、精霊にまで昇華した英雄達を、ただ手数が多いと言うだけの女が圧し
ている。
　それはつまり――
　
　左袖口から飛び出したデリンジャーを二射。吸血樹を破砕する。
　生まれた空白に割り込むように、打ち上げられた刃をさらに枝へと打ち付けた。
　そのことごとくが力負けし――本来の役目を果たす前に地に落ちて、崩れる。
　本来であれば、ただの鉛玉など意にも返さないであろう”森”の一部は、炸薬と
銃弾の打撃力にあっさりと敗北した。
　
「……そうか。それが限界か」
　
　それはすでに、幻想ですらなくなっていた。
　ただ朽ちた過去を再生するだけの、壊れかけた映写機。
　それが、ジャンヌの心臓たる聖杯が、外界に向けて為しえる、唯一の神秘だった。
　
　繰り言のように救いたい、と欲するジャンヌに、それでもイグニスは、無意味
だと切り捨てる。
　
「お前が救わなければならなかったフランスは五百年も前に通り過ぎている。
　ここには、お前の求めるものは何もない。外に出たところで――何も見つからない。
　それでもお前は、行くつもりか？」
　
　いつしか、両者の立ち位置は初めの、出会った瞬間に立ち戻っていた。
　異なる部分は、互いに抜き身の得物を携えている。
　
「だが――それも不可能だ。
　お前がどんなに欲しても、お前はここから出られない。
　何故だって？　そんなもの、決まっているだろう」
　
　にやり、と笑みを浮かべて、イグニスは刀を逆手に構え直す。
　そして――一息に、それをジャンヌに目掛けて投擲した。
　
「お前は、私に出会ったんだ」
　
【現在地：森】

706 名前：エリ・カサモト ◆SV001MsVcs ：2007/12/02(日) 03:21:05

メイ＠マルチアーノ12姉妹ｖｓエリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ

>>694

　弾着で足元が弾けた。
　西部劇を代表する二丁を用いた見事なガンプレイ。
　観賞する側なら見物だったが、銃口の前に立つこっちにしてみればたまらない。
　ちょいと殺る気になれば一発当たってそれでおしまいだ。

「さて、残り何発だと思う？」

　映画の再現。
　――こいつ、もう勝ったつもりでいやがる。

「一発だな」

　――では教育してやるか。
　
　銃口をメイから外したままトリガーを素早く三度引いた。
　応えて撃ち出される三発のエネミーチェイサー。
　目標を地獄の底まで追い続ける強力な追尾性能を持つ一方で、装甲目標には非力な超小型ミサイルだ。
　三発は銃口から飛び出るや否やク、と曲がってメイへ踊りかかった。
　
　同時に、クイックドロウ。
　サブマシンガンはスリングに任せてクラシックマーダーを抜き撃つ。
　狙うは、右目。
　アンドロイドの弱点は目、らしい。
　そう以前どこかで聞いた。

【現在地　D地区：商店街】

707 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/12/02(日) 03:22:17

ジャンヌ・ラ・ピュセル
　最後の救国［dernier defile］―パリへ―
ｖｓイグニス

>>>705


　イエス様に祈りたくなるくらいに、守護者は鋭かった。
　パリを目指し、森と「外」の境界線にまで辿り着いたパレードは、それに
比例して幻想の力を弱めていった。私生児さまが急げと言ったのも当然だ。
　森の寿命が、もうそこまで忍び寄っている。
　物語のおしまいが。
　パレードの終焉が。

　乙女の甲冑に黒刃が突き立つ。心臓への直撃は紙一重で回避したが、背か
ら剣尖が覗くほど疵は深かった。血を溢れさせながら、その場に跪く。

「ジャンヌ！」
　ジルの悲鳴。立ち上がり、残った腕でスティレット・ダガーを構えた。
「お前という光を、私は絶対に消させない！」
「待って！」
　ジルが守護者の背中に飛びかかろうとするのを慌てて制止する。

　いまこの瞬間に森が潰えようとしているのなら、ジャンヌの救国もそれに
応じて変容させる必要があった。彼女のパレードはパリを目指す。パリを解
放するために進軍する。でも、物語がもうお終いなら―――
　
　……ここが、パリで良いわ。

　胸から溢れ出す血は、黒刃をつたって地面を濡らす。乙女の血が染みこんだ
土から緑が芽吹いた。聖杯と同化した彼女の鮮血は、幻想の種子に等しい。
　ジャンヌの疵口からも枝からも無数の枝が伸び、彼女を包んでゆく。根が
大地に噛み付いてジャンヌの躯を支えれば、急成長する幹が彼女を空へと押
し上げた。乙女を中心に、見る間に大樹が育ってゆく。
　葉は一枚たりとも茂らない。

　それは巨大な十字架。
　ジャンヌという殉教の果実を実らせた世界樹だった。


【現在地：森】

708 名前：イグニス ◆IgnisC3BW6 ：2007/12/02(日) 03:23:10

>>707
　
　ジャンヌ――否。
　グレイル・コピーが、最終段階に入ろうとしていた。
　ジャンヌ・ダルク、そこにはかつてオルレアンの乙女と称された聖女の面影だけ
が、あたかもデスマスクのように残っている。
　枝が幹となり、木が森となろうとしている。
　足が根となり、己の先決を生け贄に捧げることで、歪な奇跡を為そうとしている。
　だが――果たして、それは誰にとっての救いで。
　誰にとっての奇跡であるのか。
　
　ここには、彼女が守るべき国も、守るべき民も、なにひとつ存在していないとい
うのに。だが、それを不思議とは思わない。聖杯は、己の目的――”救国”を為すべ
く、ジャンヌ・ダルクを利用する。
　そう、かつて。
　彼女の耳に、神の声をささやいたように――――
　
　イグニスは、傍らに突き立てられた巨大なそれから、一息に布きれを取り払う。
　現れたのは――”剣”
　
　それは、歪な器物だった。
　全長は、およそ二メートルほど。うち6割ほどが長大な刀身となっており、うち
4割が、柄とも機械とも見える奇妙な物体の集合である。
　さらに子細に見れば、その表面には微細な文様が彫り込まれており――
　ジル・ド・レイならば気がついたかも知れない。その文様が、詠唱を代行する
ある種の魔術回路であることに。
　
　イグニスは、己の身長よりも大きなそれを両手でつかみ取ると、その切っ先を
まっすぐに巨大になっていく幹へと突きつけ、全力で走り出した。
　
　跳ぶ。
　枝に足をかける。
　わずかな凹凸を足場として、遙か天上へと連れ去られた聖女目掛けて駆け上って
いく。両腕に巨大な器物を抱えたままという不安定な体勢であるにもかかわらず、
その姿はしなやかな獣を連想させた。
　
　走る、走る、走る、走る――――――――――
　
　
　そして、虚空へと身体を踊らせた。
　まるで重力のくびきから解き放たれたように、イグニスの身体は宙を舞う。
　そして、その相対的下方に。
　文字通りに、聖杯の器と化した、哀れな聖女が横たわっている。
　
「これで――――」
　
　イグニスは、その切っ先を、

「終わりだっ！」
　
　胸部――つまり、聖杯(しんぞう)めがけて、全力で突き込んだ。
　
　ろくな手応えもなく、刀身の中程までが一気に沈み込む。
　
「……汝が死よ――――」
　
　詠うように、あるいは祈るように。
　引き金を、絞る。

「顕れよ(イグジスト)ッ！」
　
　瞬間――刀身に彫り込まれていた文様が、一斉に赤い光を放つ。
　それらは次々に弾け、あるいはうねり、やがて刃の突き立てられた箇所を中心と
して巨木全体を赤い光で急速に染め上げていく。
　一見無秩序なようで連続性を持った光は、隅々にまで行き渡ると――
　一気に、侵攻を開始した。
　
　それは、人でも死者でもなくなったもの達が作り上げた、ある種の限定礼装だった。
　死という概念を失ったものを滅ぼすべく、万能にもっとも近づいたもの達が生み
出した自戒の刃。
　限定的に時間すらも制御し、貫き穿ったものを滅びという一点に収束させる異形の
魔剣。
　
　その名を――――<パルティータ>。
　
【現在地：森】

709 名前：日守秋星 ◆XVAMPIRE2Y ：2007/12/02(日) 03:24:54

>>674　>>675　>>676
　
　
「やー、やっと驚いてくれたね。ここまで来た甲斐があったってもんだ」
　
轟々と燃え盛る死の世界。
地獄の全てを体現するかのように、日守秋星は立っている。
　
「そう、その台詞が聞きたかった。その表情が見たかった。
いいですね、最高だお嬢さん。これまで見た中で、今のその顔が、
いっちゃんダントツでお美しいですよ？　うっかり惚れちゃいそうなくらい」
　
燃えているのは、森だけではない。
ただ静かに歩みを進めている、吸血鬼のコートもまた然り。
全身を火明かりでライトアップされ、左腕には肘の先でぷっつりと途切れている
右腕、、のアクセサリーがワンポイント。
背中を濡らすのは彼自身の血と、皺枯れた老婆のものだった肉片。
正常な精神を持つ人間であれば数秒と直視していられない、異様過ぎるドレスアップ。
全ては、其処に立つ、一人のバケモノを彩る―――装飾だ。
　
「でも、それももう―――見納めだ」
　
それまでの軽薄な口調が、消えた。
これまで少女が聞いたことも無い、重く地の底から響く声。
まるでそれは――――――地獄からの喚び声。
　
「ああそうだ、満を持して答えよう。
何故死なないのか、と聞かれれば―――」
　
少女には分かる。
これが本当に、本当の。
吸血鬼（バケモノ）からの、死の宣告だと。
　
　
「我は火の神、灼熱の揺り籠（フォウマルハウト）。
この程度の炎では、焼き尽くすことなど叶わない――――――」
　
　
ぼたぼたぼた、と血液が雨の如く滴った。
その音を合図とするかのように―――世界（セカイ）が、動き出す。

710 名前：ジャンヌ・ラ・ピュセル ◆j5y3JEANNE ：2007/12/02(日) 03:25:17

ジャンヌ・ラ・ピュセル
　最後の救国［dernier defile］―パリへ―
ｖｓイグニス

>>708


　ここが乙女の火刑台。
　守護者が掲げた剣は、滅びという癌細胞を乙女の心臓に植え付けた。
　自身を「世界樹の十字架」という巨大な聖遺物に変えることでパリを攻略
／浄化せんとするジャンヌの試みが、急速に枯れ果ててゆく。
　胸から滅びの炎が溢れ出し、瞬く間に世界樹を包んだ。枝の一本、木目の
一筋まで焼き尽くす浄火の揺らめき。―――その中心で、ジャンヌは守護者
を見つめ、満足そうに頷いた。

　これは予め決めてられていた結末。
　パリ解放はならず、乙女は十字架に縛られ、生きながらにして灼かれる。
〈声〉によって約束された覆しようのない運命が、物語の終幕に履行された
のだ。ジャンヌ・ダルクは火刑台をのぼり続ける。幾たび新生を繰り返そう
とも、その結末は絶対に変えられない。
　
　ジルには悪いことをした。彼がジャンヌの火刑を直に目にし、世界に対す
る懐疑を決定的なものにさせるのも、変えられぬ運命。
　地上で絶望に打ち震える若かりし日のジル・ド・レイを見下ろして、ジャ
ンヌは無言で微笑んだ。―――私だけはあなたを赦します、と。

　声が。ああ、声が聞こえる。


　　ねえ、ブールルモンの妖精の樹よ？
　　　どうしてお前の葉っぱはそんなに緑なの？

　　それは子供たちの涙のためさ！
　　　みんなが悲しみをもってきた　
　　それでおまえは慰めて　涙が葉っぱを大きくした！


「イエス様！　イエス様！」

　乙女は自分の肉が焼け落ち、骨が灰になるまで主の名前を叫び続けた。




（白のクイーン／ジャンヌ・ラ・ピュセル→死亡）

【現在地：森】

711 名前：ジル・ド・レイ ◆j5y3JEANNE ：2007/12/02(日) 03:26:02

>>710



　　　―――そして、ジルは奇跡を見た。

　

　燃え落ちる火刑台の煙の中から、
　　一羽の白い鳩が飛び立つのを。

　　鳩が羽ばたく先には、きっと―――






（白のナイト／ジル・ド・レイ→ジャンヌ死亡により消滅）

【現在地：森】　

712 名前： ◆ALICEsQkXc ：2007/12/02(日) 03:32:40

ジャンヌ・ラ・ピュセル
　最後の救国［dernier defile］―パリへ―

暫定レス番まとめ

導入
>>614>>620>>621>>622>>623>>624>>625

ｖｓ姫
>>628>>639>>646>>649>>657>>664
>>673>>679>>685>>688>>693

ｖｓイグニス
>>646>>701>>702>>703>>704>>705
>>707>>708>>710>>711

※姫、イグニスのエピローグは後日

713 名前：光の三妖精 ◆FairyH0Oi2 ：2007/12/02(日) 03:34:16

レディーには優しいネコアルク・カオスｖｓ光の三妖精　――ところでこれ、何の話だっけ？
「大トリと飾る一世一代の捨て身ギャグでしょ？」

>>700

赤と白と青の絵の具に
黒い絵の具を添えましょう。
いつも身近に油断大敵。
私の後ろに立つんじゃない。


「ほらほら、やっぱり騙された！」

「やっと落ち着いて飛べるわね」

「何も残っちゃいないのだけれど」

「それで、これからどうするの？」

「実はなんにも考えてない！」

「胸を張って言うことか！」

「それじゃあこんなのはどうかしら？」


いつもは控えめ星の光。
けれども空を埋め尽くす。
星屑の記憶、夢の跡。


「アレを追い掛け回しましょう」

「追いかけるなんてとんでもないわ！」

「そもそも、どうやって動かすの？」

「あれって、どう見てもナンパじゃない？」

「確かにそうも見えるけど……」

「うん、つまり偽者を動かせばナマモノも付いてくってわけね」

「さすがサニー。ルナとは大違いだわ」

「あれだけ無茶なことやってるんだから、通用しないと思うのよ」

「やらずに後悔するよりもやって後悔しろ、よ！
　せっかくだから色仕掛けもしておく？」

「あら、中々素敵じゃない。きっとあの子もメロメロね」

「……まあ、他に策もないし、しょうがないか」


チューブは持った？
筆はある？
お水も汲んだわ。
パレットは？

この広い青空で！

【現在地：F地区　もはやただの瓦礫の山】

714 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/12/02(日) 03:55:29

（>>698　>>699）　>>709


轟々と燃え盛る死の世界。
地獄の全てを体現するかのように、「吸血鬼」は立っている。
ありえない。
こんな状態で、それでもまだ生きてるなんて。

でも、もっとありえないのは、周りの住民達。
なんで、止まってるの？
なんで、そこの化物を攻撃しようとしないの？
なんで、遠巻きに眺めてるだけなの？
そして――なんで、私をそんな目で見るの？

おかしいよ、こんなの。
私は、哀れな被害者なんだよ？
こんな……まるで、一人だけ逃げだした指揮官を見るような目で、見られるなんて。

「でも、それももう―――見納めだ」

彼の口調が変わる。
それだけで、私は威圧される。
まるで、彼は狩人で、私は追い立てられる羊に過ぎないと告げられているようで。
そんな――ありえない！
追うのは私、狩るのは私のはずなのに！

「ああそうだ、満を持して答えよう。
　何故死なないのか、と聞かれれば―――」

やめて。
それ以上、言わないで。
周りの人達も、どうしてとめてくれないの？
私がこんなにピンチなのに。
分からないの？　私は主人公で、あなた達は私を引き立てる脇役なんだよ？
なのにどうして、どうして！

「我は火の神、灼熱の揺り篭（フォウマルハウト）
　この程度の炎では、焼き尽くすことなど叶わない――――――」
　
私の股から熱いものがこぼれ、太ももをつたう。
何、これ。
何で私が、こんな、こんな！
嫌、やめて、もうやめて、お願いだから！


朧な視界の端に、キーが付けられたままの車が入る。
黒の、スバル・レガシィ。それなりの大きさと馬力のある車だ。
ああ、こうなったらこれしかないね。
よろめきながら、私はキーを捻る。

「めでたし、めでたし……」

呟きながら、私はエンジンをスタートさせる。
そうだ、周りの連中が使えないなら、私自らとどめを刺すしかないよね。
最後の美味しいところは、主人公が持ってくものだもの。
そうだよ、最後はハッピーエンドじゃないといけないんだよ。
不運で非力な少女は、困難を乗り越え、凶悪な殺人犯を倒しました。
そういうストーリーじゃないと駄目なんだもの。

「めでたし、めでたし……」

物語の最後はめでたしめでたし、ただそれだけ。
だから、こんなところでFin、なんてありえない。
誰にも――私が、忘れ去られる端役の一人だなんて言わせない。

「めでたし、めでたし……」

アクセルを踏み込むと、ゆっくりと車が走り出す。
さすが日本車、輸入先の外国でもちゃんと動いてくれてる。
軸線上には、顔も知らないひと達と、そして「吸血鬼」。
役に立たない連中だけど、あいつの動きを封じるくらいの役には立つ。
これだけ人がいれば、少しは動きも制限されるでしょ。

「めでたし、めでたし……」

車が進む。
途中、いくつもの鈍い感覚がある。
どうやら、手足をやられて避けられなかった連中を轢いたらしい。
鈍いひと達だ、本当に最後の最後まで役に立たない。

「めでたし、めでたし……」

飛び出してきた老婆が、あっさりタイヤに巻き込まれて首から上をミンチにされる。
悲鳴を上げながら飛び出してきた主婦らしき女が、衝撃と血だけを残して弾き飛ばされる。
なんでだろう、と不審に思って、気づく。
ああ、この先、「吸血鬼」の後ろには、子供達を避難させた建物があるんだった。
まあいいか、尊い犠牲は悲劇の後のハッピーエンドにはつきものだ。

「めでたし、めでたし……」

さらに車がスピードを上げる。
前を見ると、建物から這い出してきた子供達が、あの「吸血鬼」にしがみついている。
五人ほどの子供、彼にとってはなんの足かせにもならないかもしれない。
けれど、それでも気持ちよい光景ではある。
ああ、あんな小さい子供達まで、私のために自ら命を捨てようとしてくれている！
恍惚の中で私は車を進め、そして子供達は口々に、







『助けて、お兄ちゃん』と言った。








その瞬間、最後の何かが、音を立てて崩れていくのを感じた。
何でかな、おかしいよね、ありえないよね。

あのおにいちゃんは敵なんだよ？
怖い怖い、殺人鬼なんだよ？
血だらけで、全身焼け爛れてて、ついでに片腕が千切れて取れた化物なんだよ？
助けを求めるのは、私のほうじゃないとおかしいじゃない。
なんで、私に怯えるの？　なんで、化物に助けを求めるの？
これじゃ―――


　　　　　　　　　　　　　　　――――私の方が、化物みたいじゃない。
　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　
ああ、そうか。
きっと、彼らは、あの化物に騙されたとか、洗脳されたとかしてるんだ。
じゃあ、私はその犠牲を乗り越えて、涙ながらに倒すんだよね。
利用され人質に取られた子供達を、苦悩の果てに倒すんだね。
哀しい犠牲の果ての勝利、うん、何も変わらない、最初の予定通り。
だって、そうじゃなくちゃおかしいじゃない。
物語は、

「めでたしめでたしで終わらなくちゃいけないんだよー！！」

アクセル全開。
黒のレガシィは、速度を上げて突進する。
放たれた矢は、もう止まれない。



【現在地　B地区「繁華街」】

715 名前：ネコアルク・カオス ◆qYdq.chaos ：2007/12/02(日) 04:14:54

　
ジ・エンドオブ・ネコアルク・カオスｖｓ光の三妖精　　…要するに、それって出オチじゃ（ｒｙ
　
>>714
　
　
問題：下には不発弾。上は妖精。これなあに？
　
　
　
　　　　　　　　　にゃんという良不意打ち・・・
　　　　　　　　　これを見ただけで一つだけ言える心理がある。「ネコは黒に染まれ」
　　　　　　　　　この瞬間、世界の我輩は間違いなく孤高のファンタジスタ
　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　 ／￣＼
　　　　　　　　　　　|　＾o＾　|　
　 　　　　　　　　　　＼＿／
　
　
　
答え：吾輩最後の日。
　
　
「キャァァァァァァッッッッットバァァァッッッッッック！！！」
　

衝撃――――足元からブリリアントに篭絡／運良く残ったヘリの不発弾頭／ところで、この文体もうしつこくね？
　
吾輩――――言うまでもなく吹き飛ぶ／足元がお留守ですよ／だがまぁ、もうちょっとだけやってみる吾輩。
　
　
レイディー―――ぼやけるだけで無傷／そういえば後ろの方に空気の乱れ／――――無傷！？
　
　
「そういうことかレディ・ターミネーターズ……。
　吾輩を色仕掛けで油断させ、あまつさえこのデススポットに導くなんざ……謀ってくれた喃。
　キュートな花にはトゲがある……このダンディカオス、戦いの中で戦いを忘れたか……！」
　
つかあれ、軍用ヘリだったのな。
横たえる体を僅かに持ち上げ、吾輩はくやしいのうくやしいのうと悔恨の情たえることなく。
既に吾輩の体は死に体―――いうなれば吾輩のライフはもうゼロよといった按配である。
吾輩のターンはまだ終わってないと言いたいが、この直撃を受けたボロボロのカラダでは
もはや動けんというのが吾輩のクルセイダーズ。……ぶっちゃけ、ゲージもゼロに近いゼ。
　
…意識がぼやけてきた罠。
そろそろ吾輩の戦いも違う意味でクライマックス、ソードマスターバッドエンドといったところか。
まさか、こんな辺境の地で不発弾踏んで死ぬとは思わなかッ――――　
　
　
　
　
　
　
　　
　
　
「諦めるなネコアルク・カオス！！
　森が燃え、猫が死に絶えようとするその瞬間も、ネコは諦めてはいけない。
　そのくじけぬ希望は希望を呼び、絶望の雲を払い飛ばすであろう。
　――――人、それを『増援』という！」
　
　
「何、そ、その声は！？」
　

716 名前：メイ＠マルチアーノ12姉妹 ◆M12sisrIV6 ：2007/12/02(日) 04:15:29

メイ＠マルチアーノ12姉妹ｖｓエリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ
>>684
　
　「残念、正解は――銃声の後で」
　
　左手がホルスターに収まった左のSAAに伸びる。
　右のSAAを片手でサミング――女の抜き放った銃を弾く。
　左のSAA、初弾をサミング、最後の一発を撃ち終え役目を終えた右手の銃を放り投げ、自
由になった手がハンマー上で踊る――合計七発の.45LONG COLTシルバーチップが女の拳銃
を完膚無きまでに破壊し尽くした。
　
　そうする間にも、小型の誘導弾がメイへと迫る。
　軽く舌打ちと共に最後の銃、AMTハードボーラーを求めて背中に手を回す。
　
　不規則な弾道を描き、襲い来る三つの意思持たぬ猟犬。
　ハンマーを起こすと、メイは地を蹴って駈ける。
　とん、と大きく跳躍すると壁面を足がかりに宙を舞う。
　
　まずは一発目、忠実に軌道を追って来る鼻先に突き付けて、トリガー。
　爆風に煽られて、踊る様に着地すると残り二発。
　もう一度、銃を構え直し
　
――異変に気付いた。
　装填された.45ACP+P、通常の.45ACP弾よりも装薬量を増し威力が高められているが、ス
テンレスで構成されたハードボーラーはその構成素材の処理問題から、通常弾薬以外での
使用に対しては非常にデリケートに出来ている。
　平たく言えば、排出されるはずの空薬莢がエジェクションポートから排出しきれないま
まその動きを阻害している。
　ジャム――つまり、作動不良だ。
　
　見る間に迫り来る誘導弾、握った銃ごと腕を叩き付ける。
　爆発と共に右腕は破壊され、剥き出しのシャフトやコード、アクチュエイターが不快な
作動音を立てる。
　背を向け、更に加速しようとするまさにその背中に。
　ガンベルトに付けられた合計30発の銃弾を巻き添えに。
　
　
　――――最後の誘導弾が、その役割を忠実に果たして見せた。
　
　
　
　【現在地　D地区：商店街】

717 名前：ネコアルク・カオス ◆qYdq.chaos ：2007/12/02(日) 04:16:00

>>715
（リンク先修正、>>713）

718 名前：ネコアルク・カオス ◆qYdq.chaos ：2007/12/02(日) 04:17:11

>>715　続き
　　
　
「私の名は太陽の王子！ネコアルク・ブラック！ＲＸ！！
　怒りと悲しみの力で進化して、お前を救ってカオスの頂点をぶっちぎるネコ！！！」
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「そしてオレの名はネコアルク・ストライクノワール！
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そんなＲＸを助け、宇宙に憧れた特殊部隊ダーミー・ペインのリーダーたるネコ！」
　
　
「そんなことはどうでもいい！私はネコアルク・シュバルツブルーダー！！
　そんなノワールをゲルマン忍法で助け、明鏡止水を伝授するネコ！！」
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「んー、アイニードモアパワーにゃのよ、これが。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そんなシュバルツと敵対しつつ共闘するのが、ワタクシことネコアルク・ネロアンジェロなのであった」　　
　
吾輩が。
「お、お前達！？」
　
吾輩が。
「ふ、水臭いぜ吾輩。吾輩たちとのニクキューファイトを差し置いて」
　
吾輩が。
「こんなジュク派との楽しいジャブロー戦を再開するなどとはな」
　
吾輩が。
「全力で見逃す、などとそんなオハヨウゴザイマシタな抜け駆けは許さんのだゼ？」
　
吾輩が。
「そのとおり、今度は地獄の底まで一緒…」
　
　
　
「「「「だから、あいつ（等）を倒そう！　吾輩みんなの力で！！！！」」」」
　

719 名前：ネコアルク・カオス ◆qYdq.chaos ：2007/12/02(日) 04:19:05

>>718
　
　
↓↓ＢｏｒＣ、↓↓ＢｏｒＣ、↓↓ＢｏｒＣ、↓↓ＢｏｒＣ、↓↓ＢｏｒＣ、↓↓ＢｏｒＣ――――
ランクＥＸ相当大軍宝具、独立ネコアルクカオスの連続召喚。
　
　
吾輩がいた。吾輩がいた。吾輩がいた。
軍神の吾輩がいた。マハラジャの吾輩がいた。以後に歴代を連ねる王朝の開祖な吾輩がいた。
吾輩の更にパチモンがいた。赤コートと帽子姿で二丁拳銃を構えた吾輩がいた。
コートの下は全裸な吾輩がいた。パクマンな吾輩がいた。スパルタの隊長をした吾輩がいた。
「吾輩こそカオスの救世主！」とビデオカメラ持参の吾輩がいた。戦車にカミカゼかました吾輩がいた。
ガラの悪い吾輩がいた。カソック姿にマーボー片手の吾輩がいた。宇宙の虎と呼ばれる吾輩がいた。
バーサーカーの吾輩がいた。セイバーの吾輩がいた。聖杯戦争を始められるほどに七騎そろった吾輩がいた。
デストロン総帥の吾輩がいた。岩窟王スタイルの吾輩がいた。翼主のボスっぽい吾輩がいた。
勇者指令を出しそうな吾輩がいた。仏舎利を手にした吾輩がいた。風神拳の強かった吾輩がいた。
ヒテンミトゥルギスタイル！な吾輩がいた。フタエノキワミアッー！な吾輩がいた。ガトチュゼロスタイッ！な吾輩がいた。
教授をこえて大教授な吾輩がいた。顔出し上等の吾輩がいた。武装したアカガエルｇ―――いや、これは違う。
　
　
「「「「「「「「「「「「「「「「吾輩のこの身が勝手に増える！おまえら倒せとジョージが叫ぶ！！」」」」」」」」」」」」」」」」」　
　
　
吾輩が増える。チート炸裂無敵モードといわんばかりに英雄王、ハードのスペックは十分か？
増殖と増援を続けて続け、続々と集結するタイプジョージ／無限の吾輩。
ステッキと宝石剣に頼らずとも集まったその数、正に猫の煩悩の数――――すなわちおよそ１０１匹！！
地球を七回転半してつっこむ超技と同じくゲージをむこう３年分消費する、吾輩のノウブル・ファンタズム。
これぞ―――――――。
　
　
　
　
「ダミアンフォース軍団、アタァァァァァァァァァァッッッッッッッック！！！！！！！！」
『ＮＹＡＡＡＬａＬａＬａＬａＬａＬａｉｅ！！！！！！！！！！！！』　
　
標的は空気の乱れ。敵の本体。
この街の明日をなくすスクランブルにゃぜ！
　
　
【Ｆ地区：ヘリポートこと吾輩あふれる夢の世界　　　　あ、津波が向こうから】
　

720 名前：日守秋星 ◆XVAMPIRE2Y ：2007/12/02(日) 04:26:21

>>714
　
　
「助けて？　―――うーん、そうだな」　
　
全身が血と肉で汚れるのも構わずしがみ付く子供達に、秋星は再び軽薄な口調で返す。
　
「―――運が良ければ、、、、、、、助かるかもね？」
　
さらりと言って、後はそれきり。
子供達（ガキども）への興味を失って、秋星はゆっくりと動いた。
得物を逆手に持ち替え、左足を前に、右足は後ろに。
腰を僅かに落とし、背中を反らし、得物を持った右腕は奥へ、左腕は手前へ。

正面からは迫り来るエンジンの爆音。
奇しくも秋星の纏う色と同じ、漆黒のボディを着込んだワゴン・カー。
最高280馬力のモンスター―――スバル・レガシィ。
その運転席からは、汗と涙と唾液でくしゃくしゃに歪んだ笑顔を浮かべ
全力でアクセルだけを踏み込んでいる、少女の姿がよく見えた。
　
「これならまあ、外しようが無いデショウ―――もっとも仕留めた後で、ステアリングが動くかどうかは、運次第だけど」
　
ぎりぎりぎり。
秋星の全身が撓り、悲鳴を上げる。
足元に子供達をしがみ付かせたまま―――秋星の身体は、一体の射出装置（カタパルト）になった。
　
「ああ、全くもう―――終始割に合わない話だった。これに懲りて、初物に手を出すのはもう止めましょ。
マキちゃんにも怒られるしね―――本当に」
　
全身に漲る力とは正逆の、嘆息交じりの愚痴。
少女の最後の悪あがきは、最早秋星にとって全く真面目に相手するにも値しない、
無様な無様な、地団駄踏みに過ぎず―――
　
　
「目出度くなし、目出度くなし―――っと」
　
　
弾ける。
全身の発条を最大限に利用した、投擲。
槍投げのモーションそのもので放たれた鉄杭は、弓矢よりも早く目標まで到達し、
狙い違わずワゴンのフロントガラスを容易く突き破り、そして―――
　
少女（セカイ）を、貫い（おわらせ）た。

721 名前：光の三妖精 ◆FairyH0Oi2 ：2007/12/02(日) 04:39:21

ジ・エンドオブ・ネコアルク・カオスｖｓ光の三妖精　　…要するに、それって出オチじゃ（ｒｙ
出オチ……　なんと聞こえのいい言葉かー！

>>715、>>718

絵に描いたを蝶、追いかけて。
おかしな猫さん、追いかけて。
誰が追われて、誰が追う？


「よし、作戦は成功だわ！」

「ほら、私の言った通りじゃない」

「上手く行ったからいいようなものを……」


まだまだ続くよ鬼ごっこ。
いつでも背中に人生を。
小さな巨人が転んでた。
すってんころりん、穴の中。
ねずみがくれたプレゼント。


「あっはははっ！　夢中になって転ぶとか、ホントに馬鹿みたい！」

「しかも素敵なおまけつきよ！」

「ふふっ、汚い花火ね……」


黒い絵の具を茜で上塗り。
さあさあ、おいで、お立会い。
茜の下の、黒い色。


「はー、笑った笑った。それじゃあ今日は帰ろうか？」


何も気付かず、日の光。


「そうね、長居は無用だわ」


不安はあるけど、月の光。


「それじゃあ一足お先、ごめんなさい」


なんで急ぐの？　星の光。

黒が滲んだ茜色。
黒い絵の具はもう品切れ。
それでも滲む、黒い色。
じわりじわりと押し迫る。
誰かが絵の具をこぼしてる。
こぼれた黒で塗りつぶし。
修正利かない写真屋さん。


「「「「だから、あいつ（等）を倒そう！　吾輩みんなの力で！！！！」」」」


「ふ、増えたーーー！？」

「いつの間にっ！？　っていうか一匹だけじゃなかったんだ！」


じわりじわり、黒の駒。
すごろくやっても、チェスには勝てず。
さいころ振っても、ルークは止まらず。


「ちょっと、スター……　ってこっちはいない！？」

「なんで置いていったのよ！」


青い駒だけお先に上がり。
赤と白は取り残された。
今度はぴったし1が出るかな？

残念、答えは3でした。

【現在地：F地区　不発弾の散る丘で】

722 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/12/02(日) 04:49:51

あと少し、あと少しで「吸血鬼」に届く。
これで、この喜劇も、ハッピーエンドで幕切れ――

「――！？」

その時、私は見る。
化物が構える、鉄杭を。
その軌道の先にあるのは、

「や、」

咄嗟にハンドルを切る。
だが彼の投擲はそれより早い。

「め、」

身体を乗り出す。
ドアを蹴りあけて、そのまま下に飛び降りようとして、

「てぇっ！！」

鉄の棒で、胴体を貫通された。

硬化ガラスを貫いてなお、その運動エネルギーは人一人貫くに十分。
ちょうど胸とおへその間に、鉄の棒が生えている。
力がそこから急速に抜けていく。
ドアを握った手が離れ、私はシートから転げ落ち、


そこから起こったことは一瞬。
無理なハンドル操作に、車は明後日の方向へと急旋回。
「吸血鬼」のはるか横、ビルの残骸に激突して爆発・炎上。
そして、大地へ転げ落ちた私は、

「ああああああああああああっ！」

痛みに、のたうちまわる。
ああ、痛い、痛い、痛い！
異物が、私の中に侵入する、それがこんなに痛いなんて！
早く、早くこの棒を抜かなくては。

「誰か、誰か助けて、誰か！」

叫んでも、手を伸ばしても、誰も近寄ろうとさえしない。
ただ遠巻きに見守るだけ。
なんで、どうして？
私がこんなに苦しんでるのに！？
あと、私を助けられそうなのは、

「お願い、『吸血鬼』さん！
　私を助けて！」
　
目の前の黒い影に、私は必死で懇願する。

「私は悪くないんです。
　このひと達が、私を脅してやらせてたんです！
　みんな、悪いのはこのひと達なんです！
　だからお願い！
　助けて！　助けて！」
　
ああ、目がかすんできた。
彼の反応さえ分からない。
でも、続けるしかない。これしか助かる可能性はない。

「私を助けて！　あなたの力で、あなたの『同類』にして！
　血を吸ってもいい！　このひと達を、全部皆殺しにしてもいい！
　だからお願い、私だけは助けて！」
　
ごり、と鉄棒が私の中でこすれる。ハラワタが引きずり出される。
私そのものが喪われていく感覚。
ああ、やめて！　これ以上、奪わないで！

「そう、私はあなたの役に立つ！
　私も吸血鬼になったら、二人でここの人、どっちが多く殺せるかゲームしようよ！
　ほら、楽しいでしょう！
　一人は寂しいでしょう？
　私が、私が仲間にな――ぐふぁ！」
　
吐き出す血は、既に半固形。
ああ。人の身体の中でも、血って固まれるんだ。

「お願い、だから助けて！
　私もあなたも違うじゃない！　私もあなたも特別な存在なんだよ？
　だから、そうだよ、一緒になろう！」

最後の力で、びりり、と血にまみれた服をはがす。
桂言葉よりは小さいが、それでも誠が食らいつくように吸い付いてきた胸をさらす。
そして、僅かに残っていたスカートも引きちぎる。

そうだよ、男なんて身体の欲求に負けるものじゃない。
誠がそうだった。ちょっと身体を寄せるだけで、簡単に食いついた。
こいつだって、変わるはずがない。

「ねえ、私を見て？
　私って素敵でしょう。
　こんな私を、好きにしていいんだよ？
　あなたの奴隷になる、何でも言うことを聞きます！
　忠実なシモベ！　殺せと言うなら殺すし、欲しいものは何でも与えます！
　だから、お願い、私をあなたのモノにして！」

何だろう、この胸を走る痛みは。
本当に超えていけない一線を越えてしまった感覚。
でも、その何が悪いというの？
加藤乙女も、その他の子も、みんなクラスの子がやっていたことじゃない。
誠だって許してくれる、そうだよ、だって本心じゃないもの！

「だから、助けてくださいお願いします！
　私は、何の罪もない、巻き込まれただけなんです！
　お願い、許して、助けて、お願い、わた、し、は……」

ああ、息ができなくなっていく。
暗い。怖い。
嫌、あの中に行くのは嫌！
どうして、どうしてこんなことになっちゃったんだろう。
私は、

「私は、悪いことなんて一つもしてないのに――」




闇に沈む意識の中で、私は思い出していた。
忘れていた、森がかけた最後の言葉。

『――――あなたはもう、西園寺世界であることさえやめてしまったんですね』


（西園寺世界：意識不明でリタイア→死亡？）

723 名前：エリ・カサモト ◆SV001MsVcs ：2007/12/02(日) 04:59:06

メイ＠マルチアーノ12姉妹ｖｓエリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ

>>716
　
　エネミーチェイサーから逃れようとしたメイの背中を最後の一発が捉え、盛大に炸裂した。
　普段より爆発が大きい。何かに誘爆したか？
　――何にしろ。
　右腕を破壊出来たところからエネミーチェイサーでも威力は足りてる事が分かった。

　背中、運動中枢に当たる機能が入ってるであろう所に威力充分のミサイル。
　それと派手な誘爆。
　仕留められた、か？

「もう一丁の分を計算に入れてなかったな……」

　じぃぃんと痺れた右手を擦りながら軽口を叩く。
　……返ってこない。

　右肩からスリングを外し、左手にM3685を持ち替えた。
　痛む身体を引き摺って歩く。

　爆煙の散らされた弾着点には、砕け散った上半身、千切れた下半身、そして頭部になったメイが転がっていた。　

「正解は七発か。そこでもう一丁はずるいと思うんだけど」

　銃口を向けてトリガーに指を掛け……やめた。
　撃破したって次のが作られる可能性が高い。
　それに負傷兵をこさえた方が敵の戦力は削げる。

「プレス機も溶鉱炉もゴミ収集車もないからトドメはささないでおいとくよ。
　それじゃ、“See you in the hell!!”」

　銃を振ってさようなら。
　アタシはそれきり背後の事を忘れ、フィオが倒れている場所へ向かった。

　・　・　・　・　・

「エリちゃん大変です！　津波が来ます！」

　路地へ戻ったアタシに、相棒フィオリーナ・ジェルミ嬢は無線機片手にそう言った。　

「…………アンタ、怪我は？」

「怪我？」

「背中に被弾してたでしょうが！」

「トンファーに当たって止まりました」

「あの出血は！？」

「ランチボックスのケチャップ瓶に弾が当たっちゃったみたいですね。水っぽくなってたから弾けて広がっちゃって」

　染みになっちゃいます、とフィオ。

「……さっき戦わなかったのは？」

「飛び退いたときにバランス崩して転んで頭打っちゃいましてその……気絶してました」

　恥ずかしげに照れ笑う相棒。

「……このバカ……」

　身体から力が抜けた。ぐら、と揺れる。

「と、エリちゃん？」

　アタシは重力の任せるままフィオに寄りかかった。

「ばぁーか。死んだかと思ったじゃない」


【エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ　生存】
【現在地　D地区：商店街】

724 名前：システムアナウンス ★：2007/12/02(日) 04:59:56

　
　
　
　
　
　
　
　
　
　　　　　　　　　――――――かくして、街はレヴァイアサンに呑みこまれた

　
　
　
　
　
　
　　　　　

725 名前：システムアナウンス ★：2007/12/02(日) 05:00:32

　　結局、今回の異変は人間の傲慢、欲望が引き起こしたものであった。
　　永遠の命、真理への到達、そんな下らない言葉が暴走し、数万の人々の幸福を、
　　生命を喪わせたのだ。何と愚かしい事か。

　　後日、調査で明らかになった事実は実におぞましいものであった。
　　
　　　偽りの聖杯

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　生贄
　　　　　　　　　　暴走
　　　　　　　　　　　　　　　　　呪われた聖処女の召還


　　　　　　　狂った童話の具現―――――森蝕


　　　　　　　　　　　喜劇「突撃後救国」


　　　　　
　　　　　　　　そして、大破局（カタストロフ）



　　事が始まった時点で全て手遅れだったのだ。破滅という終わりも決まっていた。

　　このような事は二度と繰り返されてはならない。
　　人間は愚かではあるが、進歩する存在である……少なくとも私はそう信じたい。
　　
　　
　　
　　　　　　　　　　　　　フランス国土監視局（DST） 特殊諜報員　ジャック・ヴィドック

726 名前：システムアナウンス ★：2007/12/02(日) 05:00:53

　　　　　　　　　　　――――吸血大殲　森祭――――








　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Ｆｉｎ.........

727 名前：システムアナウンス ★：2007/12/02(日) 05:01:14

　　追記
　
　　今回の件について、更なる追跡調査で新たな事実が判明した。
　　そちらについては下記参照のこと。

　　吸血大殲　森祭　Reverse　
　　http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1164893612/

728 名前：パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU ：2007/12/02(日) 05:22:58

紅魔館の優雅な住人たちｖｓカトル・カール
―Forest Lagoon―
レス番まとめ
紅魔館導入
>>146>>147>>148
カトル・カール導入
>>149>>150>>151

>>154>>155>>156
>>185>>186
>>188
>>189
>>191>>192
>>196>>197
>>201
>>245>>246>>248
>>273>>275
>>292>>293
>>330
>>358
>>360>>361
>>398
>>399
>>409>>410
>>411
>>412>>413
>>415
>>419>>420
>>426
>>433>>434
>>435
>>446
>>451
>>455
>>456>>457
>>459
>>499
>>504
>>505
>>513
>>558
>>560
>>561
>>573
>>574
>>611
>>617
>>627
>>632
>>633
>>634
>>635
>>636
>>640>>641
>>642
>>643
>>645
>>651
>>659
>>660
>>661
>>666
>>668>>669
>>671
>>678
>>682
>>683
>>686

Epilogue
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729 名前：日守秋星 ◆XVAMPIRE2Y ：2007/12/02(日) 05:51:49

>>722
　
　
Epilogue.


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　■
　
　
「――――――んで、その後どうしたんだよ」
　
月の綺麗な夜だった。
いつもの如くいつもの通り、窓からひょいひょいと不法侵入を果たして来た秋星サン。
いきなりハイテンションで色々まくし立てるから何事かと思いきや、なんと海外旅行の帰りだという。
おいおい悪魔憑きがどうやって国外脱出なんて芸当やってのけたんだよという基本的な突っ込みはあったが、
どうせまともな答えなんて帰ってきやしないだろうからそこら辺は敢えて言及せず、
愚痴のようなそうでないような不思議な土産話―――フランスで遭遇した大災害（カタストロフィ）と、
悪魔憑きについて―――を、黙って聞いていた所だった。
その話がいきなり不自然にぶつんと途切れたため、続きを促そうとした台詞が、冒頭のそれである。
　
「………」
「――なんだよ一体」
「……聞きたい？」
「……そりゃ、気になるし」
「詰まんないよ？」
「いやそう言われても」
「……どうしても？」
「…………」
「やめといたほうがいいと思うよ？」
　
むむう、なんだこの出し渋り。よっぽどイヤなコトでもあったんか。
この人にしては珍しい、煮え切らない奇妙な態度に若干ヒきつつも、
視線だけは逸らさぬように横目で見つめていた所―――
やがて諦めたように、秋星さんはポツリと呟いた。
　
　
「―――無視（シカト）した」
　
「……はい？」
　
「無視（シカト）だよ、無視。
そのまんまほっぽらかして、帰った。―――ああ、得物だけ無理やり引っこ抜いてきたけどサ。
後はどーなったか知らない。死んだだろうとは思うけどね？」
　
「え―――」
　
一瞬、我が耳を疑った。
だって、有り得るはずが無い。
この最悪の殺人鬼が、痛み分けというならまだしも、完全に仕留めきれたはずの相手に対して、
止めも刺さずに帰るなどと―――今までの行動からは予測もつかない行動だった。
　
「だってなぁ。アレだけ無様な命乞いされてみ？　その時点でオレってば、完全に興味亡くしちゃったんだよねー。
もう萎え萎えですヨ。本当、最後のアレさえなければ、それまでのコト全部水に流してもいいくらい、良かったんだけどなー。
いやー惜しい。惜しすぎる。そこそこイケたディナーの皿の上に、クソブチ蒔けられた感じだよ」
　
……あんまり汚らしい表現を使わないで欲しかった。唯でさえ胸糞悪い話の上にコレだから、
夕食を軽く戻しそうになる。
酸っぱい胃液の感触にうんざりしつつも、ソファーでゴロゴロ左右に転げまわる秋星サンを眺めやる。
そりゃあまあ、半死人の身体で命乞い、って言うのも相当な状況だが、この男をドン引きさせる程なのだから、
よっぽど酷いやり方でその少女は足掻いたのだろう。
命知らずと言うべきか、知らぬが仏、と言うべきか―――
いやむしろこの場合さっくり止めを刺してもらった方が楽に死ねたっぽいから、知らぬが鬼、と言い換えた方がいいかもしれない。
　
まあ兎にも角にも―――これ以上の言及は、秋星サンの機嫌をただただ損ねるだけだろう。
俺としても自ら進んで地雷原を突っ切ったりはしたくないので、黙っておくことにする。
代わりに口をついて出たのは、別の言葉だった。
　
「―――ところで、秋星サン」
「んん？」
「ニュースで聞いた所では、その後秋星サンのいた何とかって言う街。
二次災害で起こった大津波に全部流されちゃって草一本残らなかったって話じゃないですか。
―――それでアンタ、なんで生きてるんです？」
　
参った。
思わず出てしまったとはいえ、余りにもそれは、愚問だった。
今まで何度も問答をして、とっくに分かりきっていたはずのその疑問。
どんな反応をするのかなんて、目を瞑っていたって容易に知れる。
そして案の定、秋星サンはガバリとソファーから身を起こし、
すっかり機嫌を復調させながら、真面目くさった声でこう言った。
　
「そりゃ当然デショウ。何しろオレは―――」
　
　
『―――火の神の揺り籠、灼熱のフォウマルハウト』
　
　
あまりの見事な唱和っぷりに、俺は爆笑し、秋星サンはがっつり凹んだ。
　
　
　　　　　　　　　　　　　／-WORLD HANT.end

730 名前：“姫” ◆/HIME/HDYY ：2007/12/02(日) 08:31:42

>>693（>>712）
獅子の首は、姫の一撃によって打ち落とされた。
いや、『幻想は砕かれた』というべきだろうか。晒されるべき屍は、チェスの駒へと変わる。

「ふん―――残りは“女王”と“騎士”だけか」
姫が山刀を振って血糊を払う。
「いや―――この盤面を終わらせるのは駒ではなく、“刃”か」
姫が、リザが、フランドルが同時に感じたのは。
この場に居る者を遥かに越える人類守護の“焔”、その鼓動、その吐息、その気配。

エピローグ
『救国王女』　〜princess in wonderland 〜

731 名前：“姫” ◆/HIME/HDYY ：2007/12/02(日) 08:54:23

>>724>>730
そして、不意に訪れた浮遊感。
「え？ え！？」
狼狽するヒロ。
「これは……地震か！？」
片膝をついて、重心を低くしカタストロフに備えるリザ。
「ふが…？」
フランドルは周辺のエネルギー反応を解析し、何かの違和感を発見する。
しかし、それは姫には伝えられることなく。
「ふん―――所詮夢は、何時か目覚めねばならぬ幻という訳か」

四人が意識を取り戻したのは、フランスではなく日本国内。
それもS県笹鳴町の、姫の屋敷前であった。

全ては夢の藪の中か。
いや、現実であることは傍らにあったトラックの姿が語る。「あれは夢ではない」と。
メディアが報道するフランス・ルーアン地方を中心とする大地震のニュースが証明している。

彼女―ジャンヌ・ダルク―の求めた再救国は、始まったのか。それとも終わったのか。
姫が幻想の森に呼ばれたのは、三月兎の気まぐれか。
それとも、物語が求めた『奇蹟の繰り返し』なのか。

全ての答えは、森の中―――。
―――アリスが彷徨う、森の中。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【END】

732 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/12/02(日) 11:52:23

＜エピローグ＞


>>722>>729

――カチャリ。

音がした。

――カチャリ、カチャリ。

また、だ。
金属の触れ合うような音……。

「……っ！？」
『おい、気がついたようだぞ』

意識が急速に浮上する。周囲のざわめき声が聞こえてくる。
辛うじてわずかに動く左手で、おなかの辺りを確認する。
大丈夫、もう私を貫いていた鉄の塊はない。
私は、助かったんだ！

「あ、」

りがとう、と言おうとして、声が出ないことに気づく。
かなりの重傷を負ってしまったらしい。
ああ、最後には私を助けてくれたこの善き人たちに、感謝の言葉を捧げたいのに。

『この魔女め、ようやく目を覚ましやがった』
『このくそアマのせいで、何人が死んだと思ってやがる』

――え？
聞き間違いかと思い、私は彼らを見返す。
ようやくはっきりしてきた視界の中で、彼らの目は明らかに憎しみに満ち満ちていた。
そんな、どうして？

『この女の口車に乗せられて、何人が殺されたと思ってやがる』
『可愛い顔した大悪党め、八つ裂きにしても飽き足らないぜ』

ああ、そうか。私は理解する。
彼らは気づいてしまった。全ての悲劇を仕組んだ、その犯人が誰なのかに。
「吸血鬼」を倒すべく、私自身がゆっくりと熟成させ、増殖させた悪意は、
今度はそのまま私に降りかかる。
ちょうどかっこうの、憎むべき「真の悪」を見つけて。
私は、自分自身が育てた憎しみに、殺される。

「っ……！！」

違う、悪いのはあいつ、私はただ自分を守ろうとしただけ。
そう必死で訴えようにも、声が出ない。
もう、手さえ動かなくなってきた。

でも、まあ、いいのかもしれない。
私は懸命に戦った。
私は、伊藤誠の彼女として懸命に戦って、懸命に死んでいく。
そんな死に方も、悪くない。
しずかに目を閉じる私の耳に、なまりの強い英語が聞こえてくる。


『おいどうする、このまま殺すか？』
『待てよ、それもつまらねえだろ？　それより、もっと「楽しもう」ぜ。
　ほら、こいつ自分で言ってたじゃねえか。
　奴隷になります、何でも言うことを聞きます、って。
　一つ、俺たちの奴隷になってもらうってのはどうだい』

思わず目を開ける。　
視界に飛び込む、下卑た笑い。
顔に落ちる唾液。
それを見た瞬間、私はこいつらが何をやろうとしているのかを理解した。

「っ！？　っ！？」

必死に拒絶しようとする。
なのに、首を横に振る力さえ、私には残っていない。
ああ、私はなんてことを言ってしまったんだろう。
あの言葉が、あんなに重い意味を持っていたなんて。

森が言っていた、「西園寺世界であることさえやめる」とは、こういうことなのか。
私は、「伊藤誠の彼女」としての、「西園寺世界」であることさえ、放棄してしまったのか。
なんて軽率。
なんて本末転倒。

かつて、私には分からなかった。
好きでもない相手と、身体の関係を持つ意味が。
だから、クラスの同級生が、誠に片っ端から関係を持たされたと泣いた時も、
減るものじゃないしいいだろう、くらいにしか思っていなかった。
桂さんが、初めてのキスについて相談してきた時も、笑い飛ばした。
その桂さんが、澤永に押し倒されたと聞いても、そのくらいで騒ぐなんてバカ、と切って捨てていた。

でも、今なら分かる。
本当に好きな人とのソレと、そうじゃない相手に無理強いされるソレは、明らかに違う。
なんで、こんなことにさえ気づけなかったんだろう。
もし、私にもう少し、他者の立場になって考える機会があれば、そんなことにとっくに気づけていたはずなのに。
こんなことには、ならなかったはずなのに。
涙が溢れてくる。
でもその涙さえ、男達の欲情を刺激する材料にしかならない。

せめて、同じ女なら分かってくれるはず。
そう思って、男達の後ろの妻達に目を向ける。
彼女達はそろって伏目がちに視線をそらしている、でもそれだけだ。
積極的に止めようとはしていない。

いや、それより、その手に持っているシャベルは何？
さっきから、カチャリ、カチャリとしている音は、そのシャベルが触れ合う音？
まさか、そのスコップで私を殺すつもり！？

私も、ここに来てようやく気づく。
憎むべき悪魔、西園寺世界を相手にするなら、誰も容赦をするつもりはないと。
女たちでさえ、男達の暴虐を、「相手が殺人鬼だから」の一点で許している。
ああ、私は今、自分のしてきたことそのものに復讐されているの？



私が最後に見たものは、男達の下卑た顔。
私が最後に感じたものは、もっとも忌まわしいものによって私の中を侵蝕される感覚。
そして、その後悔と痛みの中で、私の意識は再び闇に落ちて行った。

733 名前：西園寺世界 ◆UUwTUsekaI ：2007/12/02(日) 11:52:53

>>732

　　　　　　　姓名：不明
　　　　　　　性別：女子
　　　　　　　人種：中国系（？）
　　　　　　　年齢：１０〜２０代
　　　　　　　死因：胴体部の刃物様の物による貫通、及びそれに付随する失血。
　　　　　　　　　　また、複数人による性的暴行および、金属によると思われる無数の殴打痕あり。
　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　

『ふぅ』

ここまで書いて、彼は溜息を洩らした。

『酷いもんだなあ。瀕死の重傷の上に、大勢でレイプ、さらにショベルのようなもので顔面滅多打ちか。
　生きてた頃は綺麗なものだったんだろうけど、これじゃ見る影ないなあ』

目の前の死体を見て、そう一人ごちる。
そこには、無残なモノと変わり果てた、一人の少女の死体があった。

ありえない方向にねじまがった、手足。
致命傷となっただろう傷口の周りに、無数に突き刺された刃物。
もう原型さえ留めていない頭部。
それは誰が見てもヒトとは到底思えない――まさに、ただのモノだった。




「森」の登場、およびそれに伴う各種災害から数日後。
各国は、競って安否確認のための部隊を現地に送り込んでいた。
――もっとも、安否確認とは建前に過ぎないのは、言うまでもない。
本来の目的は、何らかの超常に類する事例、事物の回収であった。
たとえそれが、どんなに不完全なカケラであっても、それだけで世界のパワーバランスが動きかねない。
超常の力とは、そういうものなのだ。

もっとも――参加した部隊の全てが、その全てを知らされているわけではない。
否、知らない者のほうが多いだろう。
彼もまた、そんな隊員の一人だった。
彼が受けた任務は単純、

「津波災害による犠牲者を、チェック項目にしたがって分類後、回収。
　なお、通常と異なる事例や事物を確認した場合は、逐一報告すること」

これだけだった。
だから彼も、あちこちで見かける「明らかにこの世ならざるもの」の痕跡を、
津波で全てが洗い流された中から、たまに見つけて報告する、そんなルーチンワークをしていたに過ぎない。

『おい、こら、サボってるんじゃないぞー。
　まだまだ、死んだヤツは大勢いるんだからな！」
『はーい』

返事とともに感傷を振り切り、彼は目の前の少女の死体をトラックへと放り込む。
そして、次の死体の前に立ってチェックシートを広げた数秒後には、その死体のことなどすっかり忘れた。
何せ、ここには常識を超えたモノがいくらでもあるのだ。
リンチ、レイプ。
そんな、災害の混乱時には「当たり前」の死体に、特別な印象など残るはずもなかった。



こうして。
日本の一部のゴシップ記者を騒がせ、異国の片隅で命を落とした少女は、
名もなき死体として、世界という舞台から退場していった。
それは、あまりにありふれたお話。
それは、あまりにありふれた喜劇。



　　　　　　　　　　　　　／-WORLD HANT.end




日守秋星導入
>>296>>298
西園寺世界導入
>>299>>300

>>302>>303
>>309>>310
>>311
>>312>>313
>>315
>>318>>319
>>325
>>366>>367>>368
>>395>>396
>>490>>491>>492
>>543
>>547>>548>>549>>550>>551>>552>>553>>554
>>555
>>557
>>583
>>674>>675>>676
>>698>>699>>709
>>714
>>720
>>722

日守秋星エピローグ
>>729
西園寺世界エピローグ
>>732>>733

734 名前：◆M12sisrIV6 ：2007/12/02(日) 16:51:51

　>>723
　
　
　「本当に、あなたってば……馬鹿ね」
　
　随分と小さくなってしまった彼女の躯を拾い上げる。
　銀色の髪は指の間から零れ、収まりが悪そうな跳ね方で私の指先をくすぐっている。
　こちらを向いた目はひどくばつの悪い感情を表すべく俯せがちで、時折逃れる様に視線
を逸らすが、無理矢理に顔を向けさせると一つ瞬きをしてから、観念した様にじっと見据
えている。
　彼女の唇が、小さく開いて何かを口にしようとしているのが分かるが、それも諦めたの
か今はただ一文字に結ばれたままで。
　発声機関の故障らしい。
　……本当に、馬鹿。
　
　「こうして見付けてあげられただけでも感謝しなさい。
　どうやって探し出せたか、自分でも解らないくらいなんだから」
　
　反撃の来ない言い合いなんてつまらない。
　メイの頭部を胸に抱くと、独りごちる。
　
　「――もうすぐ、ここも津波に呑み込まれてしまうらしいわ。
　フェブの情報によると２時間後、って言っていたから、あの子……
　みんなも、止めようとしたんだけど」
　
　胸元に視線を落とすと、メイも顔色を変えて口をパクパクとさせている。
　何が言いたいのかはよく分かるけど、今はそれに耳を貸す気はない。
　言うべき事の、まだ半分だって言っていないから。
　
　「聞こえないわよ、何を言っても。
　大人しく私の愚痴に付き合いなさい。
　だいたい何？　様子がおかしいと思ったら、案の定。
　遊びがてらで返り討ちだなんて、一体どういうつもりなんだか」
　
　髪を撫でると、短めの毛先が掌に刺す様な快い感触を送ってくる。
　もう冷たい感触は足首にまで。
　津波というのは意外にドラマティックなものでもなく、白い波頭も見えずにただ段々と
水嵩が増えていくだけで、小さなさざ波が洗っていく場所が上がってくることでようやく
そのことに気付く程度の、そんなとても静かなものだった。
　メイの首を胸元から肩の高さにまで持ち上げると、そっと頬を寄せた。
　髪が頬をくすぐる。
　耳許で何かを話そうとして、もう話すことがないことに気が付いた。
　一つしかないことに、気が付いた。
　メイは目を閉じている。
　だから、私も目を閉じた。
　
　
　――最後の言葉は、私たちを呑み込んだ水の中で、そっと呟いた。
　言葉は、ただ泡になって浮かんで、そして消えた。
　こんな風に、たとえ溜息が目に見えたとしても、浮かんで消えてしまうのなら。
　
　それも仕方がないわね、そう笑ったのが、多分私の最後の記録（キオク）だったのだろうと思う。
　
　
　
　
　メイ＠マルチアーノ12姉妹ｖｓエリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ
Epi-logue side:Marciano's 12sis. End.

735 名前：エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ ◆SV001MsVcs ：2007/12/02(日) 19:46:33

メイ＠マルチアーノ12姉妹ｖｓエリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ

レス番まとめ

導入
>>563>>564>>569

戦闘
>>579>>589>>592>>626>>648>>656>>670>>684>>716

エピローグ
>>723>>734

736 名前：『夜雀の妖怪』ミスティア・ローレライ ◆8hOOMYSTIA ：2007/12/02(日) 20:45:30

>>695
物語は続く。
弾き語りは続く。


俺は無敵のギャンブラー
敗北なんてあり得ない

スロット回せばナインセブン
渡った札はスペードマーク
絶対無敵のロイヤルストレートフラッシュ

今日の勝ちは何に突っ込むか
明日も決まって大勝利

俺は無敗のギャンブラー
敗北なんてあり得ない

ルーレットでは一目ヒット
マージャンゲームに手を出せば
ブッ千切りのコクシムソウ

サイフからカネが溢れてる
負け犬尻目に大勝利

俺は無敵のギャンブラー
そんなうまい話はない

ついに負債が追ってきた
借金取りがドアをノック
あんたの人生おいくらかい？

良く見りゃ手札はブタのケツ
あいつの手札はオールジョーカー
勝ち目は全くありゃしない

帳簿をめくって死神ため息
なんたる薄っぺらい人生
ケツ拭く紙にもなりゃしない


幽かな声は呆れるように。
音程は外れ嘲笑うように。


【C地区　瓦礫のバベル】

737 名前：『夜雀の妖怪』ミスティア・ローレライ ◆8hOOMYSTIA ：2007/12/02(日) 21:04:55

>>736
物語は続く。
弾き語りは続く。


お嬢様は珍しい物大好き
今日も今日とて家来に命令
愉快な話を持ってきなさい

学者様が注進するは珍獣揃いの動物園
動物園なんてうんざりというお嬢様を押しとどめ
説明なさる学者様

そこは機械仕掛けの動物園
餌の代わりのクスリがお好き
なんて逝かれた動物園
すぐさま遊びに行きましょう

豪華に走る貸し切り列車
向かう先は動物園
ぐるぐる回っていつ着くかしら
お付きの従者は気もそぞろ

待ちきれないわと飛び出して
迎えてくれた絡繰り仕掛け
なんと素敵な歓迎会

おてんば丸出しお嬢様
動物たちは平気かしら
鉄の動物を前にして学者様も大興奮
帰りの時間に間に合うかしら
侍従は一人気もそぞろ


幽かに聞こえる遠くの剣戟。
激しく刻む情熱の律動。


【C地区　瓦礫のバベル】

738 名前：『夜雀の妖怪』ミスティア・ローレライ ◆8hOOMYSTIA ：2007/12/02(日) 21:13:17

>>737
物語は続く。
弾き語りは続く。


カオス　カオス
たっぷりカオス

カオス　カオス
たっぷりカオスがやってくる

カオス　カオス
ダミアンアーミー

カオス　カオス
ダミアンアーミーがやってくる

カオスたっぷり
たっぷりカオス


幽かな声はミラコロと違うかもだ！
妖精は歌の邪魔をするので？


【C地区　瓦礫のバベル】

739 名前：『夜雀の妖怪』ミスティア・ローレライ ◆8hOOMYSTIA ：2007/12/02(日) 21:46:23

>>738
物語は終わる。
弾き語りは終わる。


昏いお城の時計塔
巨大な歯車ちくたくちくたく
物珍しげに覗いたら
墜ちて挟まれ千切られた

高い塔の音楽会
小鳥も萃まりピーチクパーチク
美しい歌に聴き入って
けれどもここは鳥葬場

お外の広場でみんなと散歩
揃って行進ざくざくざく
遠く聞こえる花火の音
次は頭のすぐ傍で

学校に出てお勉強
机に座ってカリカリカリ
質問されて手を挙げて
貴方の望みの死に方は？

世界にたった三人の
初めましてそっくりさん
鏡の前で確かめて
実は違った右左

お腹を空かした黒い猫
ミルクを出せば引っかかれ
親切な人が引きはがす

友達も今日はさようなら
そろそろ夜も遅い時間
眠る頃と急かされる

お休みなさい今日という日
明日も良いことあるかしら


幽かな声はいつも囁く。
語られぬ曲はいずれまた。


【C地区　瓦礫のバベル】

740 名前：『夜雀の妖怪』ミスティア・ローレライ ◆8hOOMYSTIA ：2007/12/02(日) 21:54:48

>>687>>689>>695>>736>>737>>738>>739

聴き手居ないギターソロ。
唄わないローレライ。

それでも鳥の羽ばたきは、嵐となって遙か未来を揺るがすのかも知れない。

741 名前：ニコラス・ネイルズ ◆QUATreGC1A ：2007/12/03(月) 00:28:34

　紅魔館の優雅な住人たちｖｓカトル・カール
　―Forest Lagoon―

　Epilogue...




　変転―――“森”の出現にともなって発生した地震／生み出された大津波。
　そこに残っていたあらゆる悪徳と暗黒、そして幻想を押し流すかのように。

「……ちくしょう、なんてこった」

　ニコラス・ネイルズの呟き―――カトル・カールの未帰還。
　最強の手札を全て失う痛手―――親友フリントの喪失。
　体勢を立て直し、増援を派遣しようとした矢先の災害。
　メンバー全員との音信不通―――間違いなく全滅。
　信じたくは無かった。

「―――ボス、どうしますか」
「……待つ」
「は？」
「聞き返すんじゃねえ。脳天に釘を打ち込むぞ」

　拳銃の収まったホルスターに手をかける／慌てて逃げる部下。
　信じたくは無かった＝まだ生きているかも知れないという空想。
　荒れ果てた町並み／崩れかけたハイウェイ／飲み込まれていく森。
　ニコラスで無くとも誰もが心折れる崩壊の光景。
　ハイウェイの端っこにたたずんで見つめる―――虚無に還る光景を。
　喪失への夜明け。


　はるか遠く―――ハイウェイの彼方から光が現れる。
　突然の出現。

「……なんだ？」

　甲高い推進のメロディ／ロケットエンジンの駆動音。
　焦げ臭い風―――タイヤの焼け焦げる悪臭。

「おい、避けろ！　突っ込んでくるぞ！」

　慌てて車を退避―――そして衝突。
　料金所のゲートにぶつかって停止する巨大な棺桶＝トレーラー。
　満身創痍／無事な箇所を探す方が難しい損壊／穴だらけになっているコンテナ。
　その運転席―――傷だらけの男が、血を流しながら突っ伏している。

「―――フリントか！？」

　帰還への軌道―――地獄から戻ってきた傭兵たち。




　戦果―――戦禍の中からもぎ取ってきた栄誉。
　戦利品―――薬品の入手。データの入手。
　いずれも値千金の価値。特にデータの存在は薬物の自社開発にも繋がる重要性。


　損害―――メンバーの大多数。
　ベイビーヘッドの死亡。
　他のメンバーも再度の改造・脳改造の必要性有り。
　正体不明の損傷―――いずれも現代の火器では不可能なダメージ。
　いったい何と戦ってきたのか。

　そしてフリント―――

742 名前：ニコラス・ネイルズ ◆QUATreGC1A ：2007/12/03(月) 00:32:05

>>741




　―――マルドゥックシティへの帰還から７２時間。
　津波からの復旧／救助作業が連日テレビで報道されている。
　それを詰まらなそうに眺めるニコラス／デスクに足を乗せて。
　ドアのノブが回る音／ゆっくりと姿を現すフリント／包帯だらけのクールガイ。


「―――よう、フリント。傷の調子はどうだ？」
「すでに治っている。包帯は外しても構わないらしい」
「おいおい、えらいタフだな。他のメンバーはベッドにまだ放り込まれたままだってのに
よ。……車載カメラの記録は見たぜ。研究所ではスケアクロウがデータを吸い上げてくれ
たから、監視カメラの映像も入手できてる」
「……そうか」
「……今見ても信じられんな。本当に“在り得ない物”がいる、なんてのはよ」
「現に交戦して、損害を受けている。私には否定できない」
「そうかい。……後もう一つの疑問だが」
「ああ。私が“致命傷を負って”なぜ生還できたのか、だな」
「当たりだ。いくらタフでも限度はある。医者の知見じゃ、“どう考えても生きて動ける
のは不可能”って出ちまったからな。気にもなる」
「それは―――まあ、単純といえば単純だ」
　フリント―――取り戻した微笑。
　唇からかすかに見える犬歯。




　―――通信／スケアクロウからの緊急連絡／トレーラー脱出不能。
　―――通信／フリントに対する生存確認のコール。
　―――通信／出鱈目なデータ。


　茫洋とした意識を叩く通信コール。


　―――通信／一つの逆転札。




　それは一つの薬剤についての記録。
　燦月製薬＝イノヴェルチの主力商品だったものについての記録。
　ハッキングに悶えながらスケアクロウがフリントへ送った最後の希望。


　フラッシュバック／かつて自分の呟いた言葉がよみがえる。

　“在り得ない物(ファンタジー)”

　現実の先を行くもの。フリントたちでは追いつけない軌道。

　フラッシュバック／かつてニコラスの語った言葉がよみがえる。

　“どうやら“イノヴェルチ”のオカルト野郎どもが―――”

　記憶が闇に解けて消える／虚無の発現。死の境界。
　膨れ上がるそれをこらえながら、左手を持ち上げる／手に握ったアンプル。
　それの意味するもの／データの意味するもの／ニコラスの言葉の意味するもの。

　“Enriched V Enzyme”

　ゴシック体で刻まれた装薬名。
　弾丸の薬莢のようなアンプル。

　―――現実が届かないのなら。

　フリント／幻想に触れた現実の住人の決断。
　手が届きながらも掴み取れなかった者の決意。

　―――自らをそこに飛び込ませればいい。

　フラッシュバック／自身が生存者から兵器へと生まれ変わる記憶。
　目の前のアンプルがその光景と重なった。




　握り潰す／中の液体を飲み込む。
　体の内側を無理やり組み換えられるような苦痛をこらえ―――その先。




　“力”が満ち溢れた。

743 名前：ニコラス・ネイルズ ◆QUATreGC1A ：2007/12/03(月) 00:35:16

>>742




　衝動を加速に制御して行動―――メンバーの回収／トレーラーの再稼動／帰還。
　その全てを、単独でみごと成し遂げた。


「私もその“幻想”の中に突入した、ということだ」
「なんてこった。文字通りのリビング・デッドか。本当にろくでもねえ悪運だな」
「ああ、だがそのおかげで私は生きている」

　ニコラスの笑い―――“傑作だ”という意思表示。
　自分の友が更にタフになって帰ってきた歓喜。

「で、どうするんだ？　まあ活動はいつも夜だから、太陽を浴びられなくても元々問題はねえが」
「今はメンバーの復帰を待つ」

　フリントの優しげな声―――片手に輸血パック。
　チューブを刺して口元へ。

「そして、いつかこの借りを彼女らに返すつもりだ」

　誓い―――敗北をすすぐための洗礼。




　暗黒は、更なる暗黒へと加速していく。
　蘇った拷問官が、悪魔をいずれ倒すまで。

744 名前：◆QUATreGC1A ：2007/12/03(月) 00:36:15

紅魔館の優雅な住人たちｖｓカトル・カール
―Forest Lagoon―
レス番まとめ


紅魔館導入
>>146>>147>>148
カトル・カール導入
>>149>>150>>151

>>154>>155>>156
>>185>>186
>>188
>>189
>>191>>192
>>196>>197
>>201
>>245>>246>>248
>>273>>275
>>292>>293
>>330
>>358
>>360>>361
>>398
>>399
>>409>>410
>>411
>>412>>413
>>415
>>419>>420
>>426
>>433>>434
>>435
>>446
>>451
>>455
>>456>>457
>>459
>>499
>>504
>>505
>>513
>>558
>>560
>>561
>>573
>>574
>>611
>>617
>>627
>>632
>>633
>>634
>>635
>>636
>>640>>641
>>642
>>643
>>645
>>651
>>659
>>660
>>661
>>666
>>668>>669
>>671
>>678
>>682
>>683
>>686

Epilogue. 〜カトル・カール
>>741 >>742 >>743

745 名前：イグニス ◆IgnisC3BW6 ：2007/12/03(月) 00:43:37

>>710
　
　奇跡(いのり)の残滓。
　朽ちゆく巨木を、刀身から発した赤い煌めきが縦横に蹂躙する。
　やがて光は一カ所へと集まり渦を巻き、そして――崩壊を励起する魔方陣の完成
させる。希薄化していく小源(オド)はもとより、貫いた聖杯そのものからすら貪欲に魔力
を吸い上げた魔剣は、辛うじてカタチを保っていた器を完全に消滅させ――その役
目を終えた。
　基点を失った幻想は幻想たり得ない。故に現実の存在感に押しつぶされて、崩れ
ゆく幹は腐りもせずに、ただの微塵となって大気に溶けた。
　
　奇跡はその幕を閉じ、追いかけていた黒衣の魔女も、かつての同胞の手によって
死んだ。恐らく――死んだ。

　此度の目的は、そのすべてが達せられたと言っていい。
　だが、イグニスの貌に浮かぶのは、苛立ちと――そして、ほんのわずかな、悔恨
だった。宙に舞ったその最中、見えたのだ。
　
　遙か沖。
　白波の壁が、まっすぐにこちらへと突き進んでいることを。
　
「……間に合わなかったか。『抑止力』め――」
　
　恐らくは。
　今回の事件の痕跡を、根こそぎ押し流すつもりなのだろう。
　だが無駄なことだ。結果的に、聖女や森が発生したことはただの偶然でしか
なかったが、その切っ掛けは紛れもなく人為的なもの。
　人の手が介在した事象を、「無かった」事になどできる訳がない。
　だが、意志なき抑止にそのようなことは関係ない。そう――関係がないのだ。
　この私と、同じように。
　
「――――糞っ」
　
　まだ生存者もいるのだろう。
　彼らを救助に向かった、勇気ある何者かもいるかも知れない。
　だが、あの波は――あらゆる善意も悪意も諸共に、森のすべてを消し飛ばす。
　
　ならば、イグニスにできることはない。
　表情を刃と変えて、イグニスは歩き出す。
　
　
　
　
　――――そして、誰もいなくなった。
　　　　　ただ、夢の終わりを惜しむように。
　　　　　一降りの直剣が、なにかの印のように佇んでいた。
　
　
　
（森：消滅）

746 名前：イヴェット ◆ALICEsQkXc ：2007/12/03(月) 00:49:27

挿話　最終巻[翠の森、イヴェットの唄]

Epilog

>>712
>>745


　目覚めて最初に飛び込んだ蛍光灯の白さで、イヴェットは自分が紡いだ物
語の終わりを知った。
　あの翠の天蓋の高さに比べて、有機的な幻想の箱庭に比べて、病室の天井
はあまりに低く、味気ないほどに無機的だった。これが私の救われた世界な
のか、と軽く失望を覚えてしまう。
　シーツの端を頭まで引っ張り上げ、膝を抱いてイヴェットは眠った。瞼を
閉じて、自分の裡だけを見つめた。
　夢を見たかった。永遠の救いがあるはずの、あの森に帰りたかった。
　
　イヴェットの入院先はパリの大学病院センターだった。
　ノルマンディの新興都市��だけ�≠�襲った「大地震と大津波」という自然
災害の、奇跡的な生存者。初めはルーアンの病院に意識不明のまま担ぎ込ま
れ、三日後にパリへ移送された。
　なぜパリなのか。それは、彼等がフランス国内でもっとも活動しやすい場
所だったからだろう。

　個室の扉には「面会謝絶〈Aucun visiteur〉」のパネルがかけられ、両親
や兄弟すら見舞いができないはずなのに。イヴェットが目覚めたとき、一番
初めに彼女に声をかけたのは、医師でも看護師でもなく―――
　魔術師だった。

「私は時計塔の魔術師だ」

　丁寧に、第一声でそう自己紹介してくれた。

　ロード・エルメロイ�U世。針金のような直毛を肩まで伸ばした、目つきの
悪い男。無愛想を絵に描いた面貌の主で、口を動かすことすら億劫そうだ。
　病室にも関わらず平気で葉巻を吹かす。
　イヴェットは化粧をしない男の長髪が大嫌いだったから、ぷいと顔を背け
て空を見上げた。投身防止の強化ガラスが嵌められた窓が鬱陶しい。

747 名前：イヴェット ◆ALICEsQkXc ：2007/12/03(月) 00:50:44

>>712
>>745
>>746


　自称魔術師は疎まれることに馴れているのか、イヴェットの邪険な態度な
ど気にもとめず独り言を始めた。そう、それは独り言だった。この男は、自
分の話をイヴェットに理解させる気なんてまったく無かった。

　　君はこれから私の生徒になる。
　
　意味がわからないんだけど。

　　暫定的にだが協会に所属してもらう。
　　拒否権はない。
　　上層部の中には君をヒトではなく
　「現象」として扱おうと考えているタカ派が多い。
　　それを防ぐための処置だ。
　　君をヒトとして扱うこと。
　　それがあの魔女の希望だったからな。
　　彼女は協会の魔術師ではないが、なかなか世智に長けていてな。
　　極東圏への進出が未熟な協会に、かなりの貸しを作っている。
　　だから、彼女の言葉に逆らうのは一苦労なのだ。
　　私も正直困っている。
　　こんなことに引っ張り込まれて良い迷惑だ。

　だったら帰れば？

　　私の生徒と言っても君は魔術師になるわけじゃない。
　　その逆だ。
　　君を魔術師にさせないために、私は教鞭をとる。
　　君は君が死ぬまで一生卒業することはない。
　　私が死ねば、私の弟子に教えを継がせる。
　　君は一生をかけて自分という神秘と付き合わなくてはいけない。
　　なに、特別なことじゃない。
　　人間なら誰だってそうだ。
　　みなそれぞれ、自分という神秘を胸に抱えて生きている。

　勝手な言い分ね。

　　家にも帰れる。
　　いままで通り学校にも通える。
　　フランス政府は今回の自然災害の被害者に
　　保護と保障を約束しているから、
　　暫くは何もしなくても勝手に金が入ってくる。
　　ただ一週間に一度、私の下に出頭し、
　　一ヶ月に一回は時計塔で検診を受け、
　　一年に一度は心臓の様子を確かめるため、胸を開く。
　　それだけだ。
　　それ以外は何も変わらない。
　　君は戻れるんだ。
　　マルセイユに。
　　君の家に。

　あ、そう。全然興味ない。

　　この病室にテレビは無いんだな。
　　新聞すら持ち込みを許されていないのか。
　　なら私が教えてやる。
　　……あの災害の死者はついに一万人を超えたよ。
　　行方不明者はまだ四万人近くいる。
　　彼等は永遠に行方不明のままだろう。
　　あの街の九割の人口が失われたことになる。
　　ヨーロッパでは前代未聞の大惨事だ。
　　協会や教会、EUの中には君が原因だと考える者も多い。
　　君が四万人以上の人間を殺したんだとな。

　……。

　　だが、魔女も私もそうは考えていない。
　　あの災害を招いたのはナチで、君は被害者だ。
　　君に選択の余地は無かった。
　　君はただ生きたいと願っただけだ。
　　だから協会が君を庇護する。
　　君の神秘を秘匿し、日常を約束する。
　　そのために学べ。
　　私の下で、魔術師にならない方法を。
　　君はまだ間に合う。
　　そっちに留まれる。
　　幸い、私も十年ほど前に似たような体験をしている。
　　協会であの災害を一番理解できるのは私だ。
　　だから君を―――

748 名前：イヴェット ◆ALICEsQkXc ：2007/12/03(月) 00:52:02

>>712
>>745
>>746>>747


「……退屈ね」

　窓越しに広がるパリの景色を見入って、イヴェットは呟いた。
　話の間、一度も風景から視線が外れることはなかった。一度も自称魔術師
に目を向けることはなかった。
「外」が描く世界の輪郭を、ぼんやりと眺め続けた。

「なんて退屈なのかしら」

　ロードなんとかが眉を訝しめる。イヴェットは無視して続けた。

「あの森で見た翠の景色はこんなものじゃなかったわ。無機は有機と融合し、
現実は幻実と融け合って、一秒ごとに新たな物語を紡いでいた。
　空気はもっと澄んでいて最果てまで見渡せたわ。森を形作る要素の一つ一
つがドラマを持っていて、翠の極彩色に輝いていたわ。
　それに比べて、此処はなんて退屈な世界なのかしら。
　此処はなんて枯れ果てた世界なのかしら。
　此処には何もない。
　此処には誰もいない。
　此処にあの人はいない。
　此処にあるのは形骸だけよ。
　……こんな色褪せた世界、私はいらない」

　自称魔術師の語らいが独り言なら、イヴェットの言葉もまた独り言。「外」
の景色に対して容赦なく弾劾する。
　魔術師協会でもっとも有能なプロデューサーは、むすっと黙り込んだまま
数秒だけ思案し、的確に真実だけを告げた。

「―――しかし、此処が彼女の救おうとしたフランスだ」

　……それは卑怯だ。
　イヴェットの肩が嗚咽に震える。白無垢のシーツに滲む涙。自分の胸を、
自分の心臓を押さえて、声すら出せずに啜り哭いた。

　この鼓動は誰のものなのか。送り出される血は誰のものなのか。私の想い
の高鳴りは、あの人が支配してくれているのか。
　イヴェットの救い。現実の帰還ではなく乙女を独り占めにすること。その
願いは叶ったと考えて良いのだろうか。この心臓は誰のものでもない、私だ
けのものだ、と。―――そう解釈していいのよね、ジャンヌ。

　　こわい吸血鬼と、
　　こわい妖怪と、
　　こわい人形と、
　　こわい魔女と、
　　こわい人間で埋め尽くされていたあの森も、
　　あなたと二人なら愉しんで進むことができたんだから。
　　この退屈な世界でだって、
　　私とあなたの二人なら、いつか一緒に輝けるわ。
　　だから耳を澄ませなさい。
　　私という人生が、あなたの物語を歌い続ける。

　　　　―――さあ、これからは私がお話を聞かせる番よ。



　涙を拭ってパリの空を見上げる。いつの間にか雲は払われ、蒼玄の天蓋は
イヴェットと眼下の街並みに燦々と陽光を降り注がせていた。
　
　彼女は見た。
　奇跡を見た。
　あの蒼穹の天空を自由に羽ばたく、一羽の白い鳩。
　確かに見た。

　鳩の目指す先には、きっと




（イヴェット・ドゥ・マルセイユ→「外」に帰還）



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Fin

749 名前：ふたりはユーゲント！ ◆ORDEN1uWpQ ：2007/12/03(月) 00:53:51

グルマルキン・フォン・シュティーベル

Epilog

>>748


　―――英国海峡のイギリス側。

　ドーバー市の「アルビオンの白い崖」から、海に沈みゆく新興都市の様子
を眺める影二つ。ドーバーの断崖絶壁をウィンザーチェアーか何かと思って
いるのか、吹き付ける潮風に恐れを抱くこともなく地面に腰掛け、素足をぶ
らぶらと宙に投げ出している。
　二人とも、ようやく年齢が二桁に届いたばかりの子供盛り。透き通る白肌
に繊細な金髪、宝石のような碧眼、そして愛らしくも鋭い容貌はコーカソイ
ドの理想を結晶化させたかのように整っており、二人が並んだ姿は大英博物
館が蒐集に動き出すのではと余計な憂いを覚えてしまうほどだ。

　ローファーに黒のソックス。人形のような素足がまぶしい半ズボンに、一
人は金釦のピーコート、一人はニットのベストという英国トラッドなスタイ
ル。―――そんなイギリスを満喫する少年二人は、肩を並べて数十メートル
下の海面に釣り糸を垂らしていた。
　リールもガイドもついていない、尖端から釣り糸を垂らすだけのシンプル
な素竿。フランスの災害を四十キロ離れた海岸から見守りながら、魚がかか
るのを今か今と待っている。

「んー、なかなか釣れないね」
　自分の釣り竿を眺めながら、右の少年が一言。無邪気な反面如何にも悪戯
が好きそうで、忍耐が必要な遊びは苦手そうだ。

「もう少しだよ。君はほんとに我慢ができないなぁ」
　幼顔に理智を称えた少年が答える。こっちは明晰な顔立ちをしており、頭
もさぞ切れるだろう。その分だけ怜悧な感情も見え隠れする。

「だってさー」
　我慢できない方が足をぶんぶんと振り回す。
「今回のこと、こっちではかなり動揺が走っているんだよ。僕もあの人も、
まさかこんなことになるなんて思わなかったからね。
　……ほんと、いやんになっちゃうよ。だって童話の世界だよ。メルヒェン
だよ。ファンタジーだよ。あの人が大好きな餌だよね。それに関われなかっ
たんだ。いつものようににやにやと笑っているけどさ、けっこー悔しがって
いると思うな。『おいおい、私も混ぜてくれたまえよ』ってねー」

　我慢できる方が、ふふと笑いをこぼす。

「あの人らしいね。だけど、悔しいのは僕だって同じさ。今回の作戦の現場
監督や発案者はあいつだけど、最高責任者は僕なんだから。なのに気付いた
ら何もかもが終わっていたんだ。
　この調子だと、僕にどんな類が及ぶか分かったものじゃない。少しでも情
報を持ち帰って、クロエネン派のご機嫌を取っておかないと。すぐにシュミ
ット派の連中が僕を引きずり下ろそうとしてくるよ」

　あーやだやだ、と首を振る。

「大変だねぇ、そっちは」
　我慢できない方がしみじみと頷く。
「こっちに来ちゃえば？」
「目的が違うからね、そっちとこっちでは。一緒にはなれないよ。せっかく
のお誘いはすごく嬉しいんだけどさ。―――おっと」
　我慢できる方の釣り竿の尖端が海面に引っ張られた。
「かかったかかった」と我慢できる方。
「すごいすごい」と我慢できない方。

　細腕で釣り竿を豪快に振り上げ、遙か下方の海面から釣り糸を呼び戻す。
　釣り上げられた魚は宙を泳ぐと、魔法のようにするりと少年の手に飛び込
んだ。狙い通りの得物が釣れたことに、二人は揃って満足そうに頷く。

「よし、脳は無事みたいだ」

750 名前：ふたりはユーゲント！ ◆ORDEN1uWpQ ：2007/12/03(月) 00:54:32

>>749

　その魚はグルマルキン・フォン・シュティーベルの生首だった。
　金髪を海水で滴らせ、青ざめきった表情に生命の気配はない。閉じられた
瞼は永遠に見開かれることはなさそうだ。
　死魚が釣れたにも関わらず、少年の笑みは崩れない。

「あのお姉さんも分からないなー」
　我慢できない方がグルマルキンの死に顔をしげしげと眺める。
「どうしてハードを潰さなかったんだろう。吸血鬼じゃないんだからさ、心
臓なんて潰したって魔導師にとっては致命傷じゃないのに」

　彼女の脳の回収が二人の少年の目的だった。吸血鬼の不死性の源が心臓に
あるのなら、魔導師にとっての心臓は智識が詰め込まれた脳だ。これを回収
して解析すれば、あの森で何が起こったのか知ることができる。
　同時に、生命のサルベージも可能だった。

「オゼット・ヴァンシュタインは有能な魔導師だ。知らなかった、なんてこ
とはあり得ない。いくら極限の状況でもね」

　我慢できる方が、両手で生首を抱き寄せる。

「魔導師としての最後の情が、智識を殺すことを躊躇わせたのか。いや、彼
女に限ってそんなセンチメンタルはあり得ない。すると、やっぱり。……う
ん、そうなのか。無意識かもしれないけど、きっとそうなんだ」

「なになに？」我慢できない方が興味深げに尋ねてくる。

「こいつをあそこで殺したらさ、終わっちゃうじゃないか。せっかく二人の
間で培ってきた関係が。因縁とか嫌悪とか、そういう相克がぜぇーんぶ」

　鬼ごっこを続けるために、生き延びる可能性を残してグルマルキンお姉さ
んの首を海に捨てた。お姉さんはその賭けに勝った。そう言いたいの？
　我慢できない方の問いかけに「知らないよ」と肩を竦める。予測は予測に
過ぎず、真実は本人にしか分からない。

「『うっかり殺し損ねちゃいました』よりかは、よっぽどロマンチックだろ
う？　彼女はきっと、またこいつを殺しに来るよ。こいつも彼女に殺される
のを心の底では待っている。そういう関係なんだ」

　オトナの付き合いって奴だよね。我慢できる方は嗤う。

「……そうかなぁ？」
　我慢できない方は首を傾げた。
「ランドルフ君の趣味は色々と危なすぎて、僕にはついていけないよ」
「戦争中毒の君には言われたくないなぁ、シュレディンガー君」

　じゃあ、どっちもどっちだね。我慢できない方―――シュレディンガーが
同意を求めると、我慢できる方―――ランドルフも笑顔で答えた。
　うん、どっちもどっちさ。

　英物海峡の向こうでは、魔導災厄が終わりを告げ、現実に馴染む自然災害
へと様相を変えようとしている。

　―――グルマルキンったら。
　ここまで派手に失敗してくれるなんて、ほんとに可愛らしいじゃないか。
　飛行船に続いてこの騒ぎだ。暫くは僕も忙しくさせられそうだよ。
　……ああ、だから早く君のために躯を用意してあげないと。

　ランドルフは、銀盆にのせたヨハネの首を愛でるように、グルマルキンの
額に唇を這わせた。口端に浮かぶのは酷薄な嗤笑。

「躯がないと、お仕置きもしてやれないからね」

　うはー。ランドルフ君ってば部下思いだね。シュレディンガーが無邪気に
囃し立てた。



[NAZI-SEITE → DAS END]

751 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：2007/12/03(月) 01:02:58

カーテンコール
[Forest]



　周波数の合わせ方が分からない。
　満ちてゆく痛みのノイズ。
　なんて耳障り。
　聞くに堪えない。
　だから逃げ出した。たまらなくなって街を出た。
　自分という砂漠から一歩でも遠ざかりたくて。
　逃げて逃げて、めちゃくちゃに逃げていたら、

　―――マンホールにローファーを滑らせた。


「……痛ったぁ」
　
　鼻の擦り傷より泥だらけの制服が気になった。
「あーあ」とため息。着た切り雀の一張羅なのに、これじゃあんまりだよ。
　立ち上がってあたりを見回す。だいぶ長いこと逃げていたと思ったのに、
やっぱりわたしはここにいる。逃げ切れなかったんだね。
　肩を落として自分で自分を慰めて、そこから先はどうしよう。
　見知らぬ街の見慣れた路地裏。どんなに大きな街でも、裏側の表情はそん
なに変わらない。陰気で、かび臭くて、誰だって目に留めたく無いいやあな
ものが、次から次へと投げ捨てられてゆく。
　食べ残しの女の子だってほら、こうやって表からは絶対に見えないところ
に捨てられちゃうんだ。
　ここは無価値の集会場。どんなに眩しい街でも、どんなにカラフルな街で
も影の色は変わらないんだ。

　……暫くは、ここにいよっかな。

　どこかは分からないけど、棲み方なら分かるから。―――それに、なんだ
かこの街は今までとちょっと違う。表と裏がすごく近い。
　こんな深い場所まで光が届いてくる。声が響いてくる。雑踏がざくざくと
アスファルトを鳴らしている。
　騒々しいから耳に痛い。下品にきらきらしているから目が痛い。ここの夜
は、私が知っているのとはちょっと違う。
　だから久しぶりにお出かけをしてみたくなった。

　制服姿を誤魔化すために借りたコートは群青色。男物だけど、お陰で真っ
赤な指先がすっぽり隠れる。マントみたいに裾を羽ばたかせて外へ。

「すっごぉい」

　電車はもう終わっている時間なのに、街はまだまだ起きている。
　高層ビルに切り刻まれた夜空を仰ぐ。ネオンの太陽が咲いていた。ひーふ
ーみーよー……手が二本じゃ全然足りない。
　こんなに明るいと、間違ってお昼に飛び込んだんじゃないかって心配にな
っちゃうよ。ほんとに不思議な気分。夜なのに昼なんて。
　この街は眠らないのかな。この街に夜はないのかな。

　―――それって、わたしはいらないってことだよね。

　ふぅん。そういう街なんだ。あんなに大きくて昏い場所があるのに。そこ
にわたしはいちゃ駄目なんだ。そういう態度をとっちゃうんだ。
　それって……なんだか、お腹がすいてきちゃうよね。

　駅前の交差点に迷い込む。なんだか見覚えのある場所。ビルの壁にはおっ
きなテレビ。街頭ビジョン。これなら何時間でも信号待ちできるよね。
　確か、平日は学校に行かなくちゃいけないわたし達には、絶対に見れない
テレビ番組が収録されている場所。
　……なんだったかな。なんて名前だったかな。

「「アルタよ」」

752 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：2007/12/03(月) 01:05:01

>>751


「「アルタよ」」

　ぎょっとして、思わずビジョンを見上げる。
　―――スタジオ・アルタ。
　確かにそんな感じの名前だったけど。
　まさか、テレビの奥から教えてもらうなんて。

　そこでわたしは、ココがどうしようもなく街をやめてしまっていることに
気付いた。気付いたら、街なんてどこにも無くなっていた。

　あれだけいた人の波が、綺麗さっぱりに消えている。あんなに空を狭くし
ていたビル達が、みんないなくなっている。
　見下ろせば、わたしのローファーが踏み締めているのはアスファルトじゃ
なくて草と土だった。

「え……？　え？」

　意味が、分からない。
　気付いたらわたしは森の中にいた。深くて暗い森の中に。
　確かに、数秒前まで眠らない街にいたはずなのに。瞬きだってしていない
はずなのに。―――どうしてこういうことが出来ちゃうの。

　ヒトはいなくなったわけじゃない。
　ビルは消えたわけじゃない。
　みんな変わっただけ。信じたくなかったけど、街を歩いていた人達はみん
な自分の身体を幹にして、両手を枝に変えていた。
　ビルは千年規模の世界樹に！
　みんな、みんな樹になっちゃった。街そのものが森になってる！
　
　……こんな不安は初めてだよ、志貴くん。
　森にはわたししかいないのかな。みんな樹になっちゃったのかな。
　誰もこの原因を教えてくれないのかな。恐る恐る歩き始めて生存者を探す
と、すぐに希望が歓迎してくれた。
　
　ヒトがいた！　わたしよりちょっと年下の女の子。フリルとレースがたっ
ぷりついたカーテンみたいなお洋服を着ているお洒落さん。
　わたしは駆け寄って、この森のことを尋ねようとするんだけど―――

　くすくす、と笑われて。
　思わず後ずさる。
　女の子は、傲慢だけど無邪気に。優雅だけど純粋無垢に。
　わたしにおねだりをした。


「―――……私はアリス。ねえ、お話を聞かせて」










　　　　　　　　　　　　　　　　　　　それはそれで、また、別のお話。

753 名前： ◆ALICEsQkXc ：2007/12/03(月) 01:09:37

ジャンヌ・ラ・ピュセル　救国の軌跡
レス番まとめ

（※過度な物語の服用には十分注意しないと駄目よ？）
Prologue　―森蝕―
　>>3>>4>>5>>6>>7>>8>>9>>10>>11

〈L'arbre de la fee〉
　>>12>>13>>14

[状況の語らい]>>15>>16>>17>>18
[黒猫キティの慟哭]>>41
[ゲストの追憶]>>42>>43>>44>>45>>46>>47>>48>>49>>50>>51
※状況確認の強化のために記す
挿話　第一巻「クッキング・フォレスト」
　>>52>>53>>54>>55>>56

一度目の救国
ｖｓディオ・ブランドー 　―The forth part of king Henry VI―　
　>>57>>58>>59>>60>>61>>62>>63>>71>>72>>73>>74
　>>82>>96>>97>>112>>115>>124>>125>>126>>130>>137
挿話　第二巻「マルセイユの乙女」
　>>142

〈L'arbre de la fee〉
　>>143>>144>>145

二度目の救国
ｖｓミスティア・ローレライ　―イツマデ Still When―
　>>152>>153>>157>>158>>159>>164>>174>>176
　>>177>>187>>193>>198>>211>>215>>223>>227>>230

挿話　第三巻「おもいっきり森電話」
　>>240>>241>>242>>243

〈L'arbre de la fee〉
　>>244

三度目の救国
ｖｓエリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ　―ポワティエ平野で朝食を―
　>>249>>250>>251>>257>>258>>259>>260>>261>>265>>266
　>>269>>274>>277>>283>>288>>294>>295>>297>>304
挿話　第四巻「聖杯伝説」
　>>316

〈L'arbre de la fee〉
　>>317

四度目の救国
ｖｓメディスン・メランコリー　―576年目の森林教室―
　>>320>>321>>322>>323>>326>>328>>329>>331
　>>335>>351>>354>>363>>388>>389>>443
〈L'arbre de la fee〉
　>>448

五度目の救国
ｖｓ聖女��ジャンヌ・ダルク�＝@Rust Riddle 〜錆色の舞踏曲〜
　>>452>>460>>461>>462>>463>>464>>466>>477
　>>486>>487>>493>>494>>498>>500>>507>>511
挿話　第五巻「夢のきざはし」
　>>517>>518>>519>>520

〈L'arbre de la fee〉
　>>521

挿話　偽典「黒猫キティ！　悪い悪い子猫ちゃん！」
　>>522

六度目の救国
ｖｓグルマルキン　―アリス戴冠 Queen ALICE is born in the Reims―
（※ちびふみこ乱入）
　>>522>>523>>524>>525>>531>>556>>572>>580
　>>586>>598>>599>>600>>601>>602>>603>>604
　>>605>>606>>607>>608>>610>>613

最後の救国［dernier defile］―パリへ―
　導入
　>>614>>620>>621>>622>>623>>624>>625

ｖｓ姫
　>>628>>639>>646>>649>>657>>664
　>>673>>679>>685>>688>>693>>730>>731

ｖｓイグニス
　>>646>>701>>702>>703>>704>>705
　>>707>>708>>710>>711>>745
Epilog

挿話 最終巻「翠の森、イヴェットの唄」
　>>746>>747>>748

[NAZI-SEITE]
>>749>>750

カーテンコール［Forest］
>>751>>752

754 名前：光の三妖精 ◆FairyH0Oi2 ：2007/12/03(月) 01:45:17

>>721



ざざーんざざーん。
青より深い蒼い色。
穴あきチューブが転がった。
しぶきを上げて、森を飲み込む。
唸りを上げて、塔を飲み込む。
諸手をあげて、塗りつぶせ。


「ねえねえ、目の前の光景以上に嫌な予感がするんだけど」

「あら、奇遇ね。私もそんな気がしてきたわ」

「ところでさ、この音何かな？」

「さあ、後ろを振り向けばわかるんじゃない？」


前門の黒、後門の蒼。
押して駄目なら引いてみろ。
でもでも背中はすぐに壁。
引けないならば押してみろ。
でもでも壁は倒れない。
前も後ろもストレスだらけ。
歪んだ力はどこへ行く？


「これが世紀末って奴かしら？」

「確かにこれは世も末ね」


ざざぁ、と彼らに影が差す。


「とにかく逃げないとまずくない？」

「もう手遅れだと思うけどね！」


ぱちんと弾けた太陽と月。
右に左に大騒ぎ。
右で転べば花火が上がり、
左で転べば瓦礫が崩れる。

あらまあ大変、どうしよう。
キャンバスびしょ濡れ水浸し。
せっかく描いた夢物語が、
たった一手で水の泡。




これじゃあ続きは描けないわ。
それじゃあ買いに行きましょう。









雀がちゅん。
二羽でちゅちゅん。
三羽揃えばどうなる事やら。


「ふわぁぁ〜……　おはよぅ〜」

「はい、おはよう」

「相変わらずのお寝坊さんね」


気付けば元の幻想郷。
不思議な森は魔法の森に。
いつも通りの普通の朝に。


「はぁ、それにしてもアレは災難だったわ……」

「アレ？　何かあったっけ？」

「もう忘れたの？」

「普通は覚えてはいないものよ。そんなに前のことは」

「そうよ。昨日の事を覚えてたって、今日は楽しくならないわ」

「昨日の教訓を覚えておいて、役立てようとは思わないの？」

「これっぽっちも」「思わないわね」

「はぁ……」




気付けば河童の川流れ、
流れ流れて紅の門。
幻想が終わり、夢に戻る。





新しい絵は順調かい？
順調すぎてあくびが出るわ。








つまらないからかきなおし。
こんどはおみずはいらないわ。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　「それじゃあ、今日は川遊びの日！」





　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　[幻想（ゆめ）は続くよどこまでも]

755 名前：ネコアルク・カオス ◆qYdq.chaos ：2007/12/03(月) 22:57:06

>>721>>724

　

　
　
　
　
　
　
　
　
　
『ツナミノキワミ、アッーーーーー！！』
「ネコに抑止力ホンキ出されてもニャあァァァァァァァァァァァ………」
　
　
＜ああっ、吾輩がやられたっっ！？＞
　
　
つか津波られた、根こそぎ。
　
【現在地：Ｆ地区ヘリポート→波の中】

756 名前：ネコアルク・カオス ◆qYdq.chaos ：2007/12/03(月) 22:59:51

>>755
　　　　　　　　　　　　　　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――――彷徨■世界は、渦巻く螺旋
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――――生まれていく思■の回廊
　　
　
　
――――ネコの感情が極端に走るとき、残酷は生まれる。
　
　
しかし何だね。
あのタイミングで地球の抑止力が、そっくり大津波にクラスチェンジするとは
この吾輩の目を持ってしても読めなかったか。
というか今までが新手の時間稼ぎだったとは、
今までドジッ娘とばかり思っていたガイアの知略に吾輩びっくり。
　　
やれば出来る子って、単なる方便じゃなかったということか。
こうなると菌糸類の根源に関する認識を改めねばならんね、これが。
吾輩覚えた……うむ、理解は幸せ。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――――紡ぐ糸はただ流■て、言葉埋めて堕ちてゆく
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――――そ■に何もありはしない　
　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　
　
――――――で。
何だね。
こういう時こそ４号の出番ではないかと思うのだが、如何かなキミたち？
そろそろ、水圧で体もギシギシと軋んできたのですが。
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――――そん■世界に私は　見（まみ）えた貴方に
　
　
　
……え、１号から５号はオーバーホール中？
あるのはレシプロの６号だけ？
　
　
うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ！
おまえら、ホントに国際救助部隊かぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！？
　
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　欠片集め　恐れた日々に――――
　
　
　
【現在地：海の底】
　
ネコアルク・カオスｖｓ光の三妖精
　
三妖精　導入
>>612
ネコアルク・カオス導入
>>663
　
>>665
>>667
>>677
>>680
>>690
>>691>>692
>>696
>>700
>>713
>>715>>717>>718>>719
>>721
　
エピローグ〜スタッフロール
>>754
>>755>>756

757 名前：―永遠に紅い幼き月―　レミリア・スカーレット ◆DEVILbzibY ：2007/12/04(火) 00:30:18

紅魔館の優雅な住人たちｖｓカトル・カール
―Forest Lagoon―

Epilog
>>686

　特別客車が一般車両に連結されるのを待って、プレステ＝ジョアンは魔笛
を森に谺せた。ピストンがしゃかりきに前後運動を始め、シリンダーに流れ
込んだ蒸気が動輪の前後運動を促す。
　終幕を担った海嘯が森という舞台を観客席から覆い隠すと、紙一重で離陸
が間に合った鉄道車内で、レミリアはティーカップを優雅に唇に運ぶ。

　パーラーカーの車内はメイドの瀟洒な働きによって、お嬢さまが不平を漏
らさない程度には内装を回復させていた。
　どっから持ち出してきたのか、いつの間にか車内を飾り立てるレンブラン
ド「目をつぶされたサムソン」の絵画―――額縁ごと外せば、壁にぽっかり
と風孔が空いていることが知れるけど、そこらへんはご愛敬。
　あの惨状から見た目だけでも体裁を整えただけで、まぁまぁの働きと言え
る。……彼女が本気になれば、一秒もかからずに蹂躙前同様の内装を提供で
きるのだが、そうはしないのがこのメイドの魅力だった。

　彼女は今夜働きすぎた。お仕着せの下の裂傷は見ないふりをして、一緒に
ティーテーブルを囲む友人に視線を向ける。

　左手にティーカップ。右手には鈍器のような書物。……車内は爆発で満ち
たはずなのに、どうして本棚は無事なのかしら。
　不思議だったけれど、彼女が愉しそうだから言及の必要はない。

「ほんと、退屈をしないで済んだわ」
　優雅にお行儀悪くショートケーキ（らしき何か）にフォークをぐさぐさと
刺す。
「一つ目の停車駅でこれなんだもの。次は何が待っているのかしら。森の次
は海？　……流水はちょっと面白くないわ。私が愉しめる遊び場じゃないと
駄目よ。咲夜、車掌にそう言っておきなさい」
　
　メイドは帰りたそうだった。洗濯物でも取り込みたいのか。
　友人も帰りたそうだった。森でもぎ取った知識の果実を、図書館で思う存
分に解体したいのだろう。
　―――でも、そうはさせないわ。だって、旅はまだ続くのだもの。

　レミリアはテーブルの上に「お土産」をそっと置いた。ドーム状のガラス
ケースに保護された鉢から幻想の苗が覗いている。
　世にも珍しい、物語を奏でる苗木だ。香霖堂に持ち込めば、さぞ良い気分
に浸れるに違いない。当然、自慢はしても壌土はしない。

「咲夜。帰ったら、この苗を紅魔館の庭に植えるのよ」

　―――そこでなら、誰に邪魔されることもなく、幻想の根を広げることが
できるわ。思うがままに物語の葉を茂らせることができるわ。
　幻想郷が水を与え続けるから。
　あなたは、もう自由よ。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　THE END

758 名前：パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU ：2007/12/04(火) 00:46:11

>>757

Epilogue/Patchouli Knowledge

魔法図書館。日の光も入らず昼も夜も無い場所。
昼でも夜でもない場所を、歪な色の焔が照らす。

「解き明かしてしまえば、それはそれでつまらない物ねえ」

緑色の焔。外の世界の騎兵隊が使っていた、消えない炎。
魔女の興味を強く惹いたそれは、魔女の手によりその真理を暴かれていた。

「火を強く帯びた液状の土……水による干渉は土によって退けられる。単純な公式だわ。
　まあ、それはそれで綺麗だとも言えるけれど」

それは外の世界による理解とは異なる。
石油を原料とした可燃物が発火して云々、と言うような講釈とはパチュリーは無縁だった。
彼女は幻想郷の魔女だ。科学者ではない。


ふと、パチュリー・ノーレッジは考える。外の世界で出会った兵隊たちについて。
彼らを人でありながら人外に堕とした理由が何なのか、パチュリーは知らない。
だが、それを根源で察する事は出来る。

彼らは、歪だったのだろう。
火でありながら水を拒む、この炎のように。
パチュリーはそれを、この炎から識った。

パチュリーは彼らの歪に興味は無い。
だが、彼らのような歪が、この炎のように興味深い何かを生むとすれば。


「………」


手拍子一つ。
生肉が焼けるような音を立てて、炎が消えた。

Ending　No.38　パチュリートゥルーエンディング　Congratulations!

759 名前：―完全で瀟洒な従者― 十六夜咲夜 ◆Clock/PR2Y ：2007/12/04(火) 01:23:32

>>757
　　
　あれからは色々と散々だった。
　兎に角散々だった。

　傷だらけで帰ろうが仕事は待ってはくれない。
　時間を止めて、手当てをして、着替えて、掃除をして、どうにかこうにか内装を取り繕って、お茶を淹れて。
　まあ、何時も通り、普通に、何も変わりなく、忙しかった。
　
　次の駅でもきっと忙しい筈だ。
　その次の駅も。
　次も。
　次も。
　帰ってからも。
　
　でもまあそれは、背負ってしまった時間を消化しているだけだろう。
　それでもきっと、借金の返済は間に合わない。
　だからずっと、私は何時までも、忙しいままなのだ。
　
　これだから「外」は嫌なのだ。必要のない時間を五万と用意してくれている。
　厄介事には事欠かない。
　何処かの箱入り娘の眼が輝くものばかりが溢れている。
　
――憂鬱だった。
　何処までも果てしなく憂鬱だった。
　
　忘れていたかった痛みも、優しくはない。
　時間は何時だって優しくない。
　優しいものなんてこの世界にはきっとない。
　
　こんな思いをするなら忙しく働き続けていた方がきっと良い。
　そうに違いない。
　忙しいのは――嫌いじゃない。
　
　忘却が出来ないのなら、なにかで紛らわせれば良い。
　壁の穴を埋めても良い。
　ナイフを全て研ぎ直すのも悪くない。
　
　お茶を淹れて一息つくのも悪くはない。
　
　紅い赤い月の夜だから、次の駅でもきっと、紅い赤い月の夜。
　きっと、また憂鬱だ。
　
　だから――早く帰りたい。
　斬った張ったは疲れるし、なにより――忙しくなってしまうから。
　重い籠を背負い続けるのが日常でも、少しは身軽になりたかったから。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【FIN.】

760 名前：―永遠に紅い幼き月―　レミリア・スカーレット ◆DEVILbzibY ：2007/12/04(火) 06:40:22

紅魔館の優雅な住人たちｖｓカトル・カール
―Forest Lagoon―
レス番まとめ


紅魔館導入
>>146>>147>>148
カトル・カール導入
>>149>>150>>151

>>154>>155>>156
>>185>>186
>>188
>>189
>>191>>192
>>196>>197
>>201
>>245>>246>>248
>>273>>275
>>292>>293
>>330
>>358
>>360>>361
>>398
>>399
>>409>>410
>>411
>>412>>413
>>415
>>419>>420
>>426
>>433>>434
>>435
>>446
>>451
>>455
>>456>>457
>>459
>>499
>>504
>>505
>>513
>>558
>>560
>>561
>>573
>>574
>>611
>>617
>>627
>>632
>>633
>>634
>>635
>>636
>>640>>641
>>642
>>643
>>645
>>651
>>659
>>660
>>661
>>666
>>668>>669
>>671
>>678
>>682
>>683
>>686

Epilogue. 〜カトル・カール
>>741 >>742 >>743

Epilogue. 〜紅魔館
>>757 >>758 >>759

761 名前：エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ ◆SV001MsVcs ：2007/12/15(土) 01:39:43

　エピローグ
　
　

　白い湯気、湿った空気、瞬く星空、背中に当たる岩肌。
　どこか遠くから聞こえる『かぽーん』という音。

　足の先から首の下までを包む暖かい湯の感触。

「……はあーーーー。……今回は疲れたわぁ……」

「短時間に高密度な戦闘が立て続けでしたからねぇ……」

　アタシとフィオは先日の作戦の褒賞で出た休暇を使って骨休めと洒落込んでいた。
　今は日本のどこぞにある温泉旅館で露天風呂に浸かっている。日本の風情あふるる命の洗濯ってやつね。
　なんでもここの湯は疲労した心身に効くんだとかなんとか。
　そう言われるとそんな気がするんだから人間ってのは安いもんよね。
　
「いきなりフライヤーが落とされて病院の屋上に降下して」

「そこでゾンビの群れと気持ち悪い化物と交戦」
　
　>>252

「どうにか化物を吹っ飛ばして病院を後にしたら」

「遊園地に迷い込んで女の子を助けつつ、得体の知れない化物軍隊と戦闘」

　>>305

「装備が乏しくなって銃砲店へ補給に入ったら」

「マルチアーノ12姉妹の五月と遭遇、交戦」

　>>735

「どうにかこうにか切り抜けてみれば」

「津波が来るから作戦中止」

「脱出に急いだその先で」

「妖精に出くわしてさあ大変」

　>>　http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1164893612/734

「……一日中戦い続けね」

「へとへとですよ。最後はバスタオルのお化けにされちゃいましたし」

「アレは災難だったわねー……」

　粘りのある白い濁り湯を指で遊んで苦笑する。
　どこの戦場から帰ってきても接着剤塗れはないだろう。ある意味伝説だ。

「ま、それも終わっちゃえば語り草よ。スラグフライヤーの上でサンドイッチを食う女兵士の伝説にまた1ページってね」

「はぁ……。無事に帰ってこれたからよしとしましょう」

「そういうこと」

　白い湯に全身を浸して二人で脱力する。
　溜まっていた疲労が温泉に溶けて流れていくような感覚。
　死地から生きて帰ってきたからこそ一際感じられる心地よさ。

　――やっぱり平和が一番か……。

「ピースフォーエバー」

　フィオの手がちゃぽんと湯を鳴らした。


　THE　END

762 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：2007/12/15(土) 11:00:43

＞吸血大殲　森祭　全闘争記録レス番まとめ

森祭テーマ（ストーリー関連）闘争

>>753

※過度な物語の服用には十分注意しないと駄目よ？
by黒アリス

街滅亡警告１
>>658
街滅亡警告２
>>697
街滅亡　終焉
>>724 >>725 >>725 >>726 >>727

ミスティア・ローレライ　歌謡ショウ
>>687>>689>>695>>736>>737>>738>>739


通常の闘争

エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミｖｓリサ・トレヴァー
>>252
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レイオット・スタインバーグｖｓ魔神王リィーナ
>>291

死神（デス）ゼアド vs ＜呪われし公子ゲイナー＞
>>286
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“姫”一行（怪物王女）VSスレイド
>>405
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ヴィルマ・ファキーリvsマルチアーノ１２姉妹
>>469
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有里湊ｖｓＤＩＯ　ＤＩＯの世界／Burn my――
>>544
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赤頭巾 vs プリマヴェラ　〜あるひもりのなか〜
>>655
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エミリオ・ミハイロフ ｖｓミスティア・ローレライ
>>672

日守秋星ｖｓ西園寺世界　-WORLD HANT
>>733
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メイ＠マルチアーノ12姉妹ｖｓエリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ
>>735

ネコアルク・カオスｖｓ光の三妖精
>>756

紅魔館の優雅な住人たちｖｓカトル・カール　―Forest Lagoon―
>>760

エリ・カサモト＆フィオ・ジェルミ　エピローグ
>>761

763 名前：黒いアリス ◆ALICEsQkXc ：2007/12/15(土) 19:32:14

　　　　　　　　　　　　　　　　　　―――これはこれで、また別のお話。

764 名前：停止しました：停止

真・スレッドストッパー。。。（￣ー￣）ニヤリッ

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