吸血大殲第58章 Jeux Interdits ―禁じられた遊び― 

1 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/03/06(月) 22:54:45


 ええっと……。
 ここは血を啜る夜の眷属―――吸血鬼と、昼の世界を守る狩人のために戦場だよ。
 やることは主に……殺し合い。ここでは「闘争」と呼んでいる行為。
 だからここに参加するヒトは、わたしみたいなこわ〜いお化けに殺されちゃうこと
だって、理解してから来て欲しいな。
 もちろん、殺してもいいんだよ? ……できるのなら、ね。
 生きていたいなら―――見て見ぬ振りが正解。
 でも、それを超えた欲求があなたの中にあるのなら。
 ……征こう、わたしと一緒に。

 でも、そんな年中殺し合いばっかしているワケじゃないから……。
 名無しさんもいつだって大歓迎。質問もちゃんと答えるよ。

 関連スレも色々あるから、気が向いたら覗いてみて。

 age/sageは……基本はsageで、沈みすぎたらage……が、いい具合かな?
 絶対のルールとして、メール欄には自分の出典は必ず入れてね。


■雑談・質問・相談・何でもアリなスレ
吸血大殲/陰  生まれながらに嵐なら
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1126631761/
(↑の方が、常駐の人数多いよ)

■闘争会議室
吸血大殲闘争会議板
http://jbbs.livedoor.jp/game/1721/
(↑独自のルールがあるから、テンプレートには目を通しておいてね)

■前スレ
吸血大殲第57章−汝、狩り人たれ−
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1099185710/

 参戦に関しての説明は>>2。
 その他の関連リンクは>>3。
  ―――を参照にして欲しいな。


2 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/03/06(月) 22:55:32

■参戦基準の判断
 参戦基準は原則、『吸血鬼』に関係がある者。
 闘争のバックボーンなり、闘争者なりに、吸血鬼≠フ存在が確として認められること。
 これさえ守られていれば大体、大丈夫なはずだよ。

■逸脱キャラクターの処遇について
 叩いて叩いてもうボコボコだよ。(←ウソだよ。そんな恐くないよ……多分)
 此処は『吸血大殲』なんだから、吸血鬼と無関係な闘争は「駄目ゼッタイ」なんだね。
 認められるのは『吸血』というロジックに従った闘争だけ。
 でも、逆を言えば、その条件さえパスすればオーケーってことなんだ。
 条件が難しい、厳しいって?
 うーん……理解する必要はないよ。でも考える必要は……ある。
「吸血大殲」とは何か―――自分の中にある世界をみんなに示せれば、
 きっとそれがあなたの「吸血大殲」になれるはず。

 自分で判断がつかなかったり、分からないことがあったら、どんどん質問してみて。
 >>3のリンクから色々飛んでみて、参考にするのもありだと思うよ。

 とにかく、一番手っ取り早いのは自分の中で、「吸血大殲とは何か」をしっかりと
確立させること。自分に課したルールにちゃんと従えば、問題はないはずだよ。

 ただ「あなたが大殲だと判断したものが吸血大殲です。しかし、みんなの同意を得られる
とは限りません」と言う一句だけは、頭に留めておいてね。

3 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/03/06(月) 22:55:52

関連リンク

■『吸血大殲闘争者への手引き』(ちょっと古いけど――― 一応参考に)
http://www.geocities.co.jp/Milkyway-Orion/4504/vampirkrieg.html

■参加者データサイト
『吸血大殲 Blood Lust』(リン?作成・過去ログも全てここ)
http://lefthand.gozaru.jp/
(その他、ここに無いログが欲しい! ってヒトは、スレでお願いすると神が
現れるかも―――しれないよ)

■一刻館RH−板の闘争会室(こっちだと、タグもちゃんと使えるよ)
吸血大殲 夜族達の総合闘争会議室 其の五
http://www.jfast1.net/~charaneta/test/read.cgi/ikkokuRH/1126639957/

■吸血大殲本家サイト
『From dusk till dawn』
http://www.uranus.dti.ne.jp/~beaker/

『戦場には熱い風が吹く』
http://www.vesta.dti.ne.jp/~hagane/

4 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/03/06(月) 22:57:19

そして、はいはいの4getだよ
⊂(゚ー゚*⊂⌒`つ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡.

5 名前:名も無きクドラク:2006/03/07(火) 00:00:39

名も無きクドラクvs名無しモロイ
 『――Nameless Waltz――』


―――Lobt Gott mit Schall, ihr Heiden all,ihr Volker, preist den Herren,

 男が、居る。

 闇に深く沈む広場、誰一人居ない……否、最早永遠に人が踏み入ることも無いであろう公園。
 周囲を覆うはどこまでも濃く、紅い血の色をした大気。
 先刻まで響いていた悲嘆と絶望も最早存在しない。
 そんな場所に、男は、居た。

―――Sein Gnad und Gunst walt uber uns,er hilft von Herzen gerne,

 その口が発するのはこの地、この時においては不遜とも言えるアンセム。
 漂うは幾本目かになる煙草の紫煙。
 滅びの最中にあっても正しく水を吐き続ける大理石の天使、その水場の縁に腰掛け、詩を紡ぐ。

―――Was er verspricht,Das truget nicht,

 灰が落ち、また火を付ける。
 何度繰り返したであろうか……男は、不意に顔を上げた。
 長い髪に隠れた半眼の奥で、酷く詰まらなそうな表情で呟く。

「馬鹿馬鹿しい……こんな事が楽しいのかい、アンタは」

 何もかもが涸れ果てたかのような声で呟く。
 その、眼差しの先には……

―――Ewig sein Wort wird bleiben,Mit frohlichem Mund von Herzensgrund―――

6 名前:名無しモロイ(M) ◆m6gPuppetA :2006/03/07(火) 00:06:30


名も無きクドラクvs名無しモロイ
『――Nameless Waltz――』

>>5


 ――死を忘れた夜族(ミディアン)達にとって、退屈こそが全てに勝る敵である。
 眷属である六匹の狼に牽かせた戦車(チャリオット)の上で、生ける死者(モロイ)の令嬢はそんな益体もない事を考える。
 今宵は年に一度の人狩りの夜。父である邪な不死者(ノスフェラトゥ)と共に此度の祭りに参列した彼女は、獲物の
あまりの不甲斐なさに退屈を隠し切れず、無言のまま手にした握りをつけただけの有刺鉄線で
周囲の石を抉り、全身で不機嫌さを表現していた。
 お気に入りである黒のイヴニングドレスに似合う様な素敵なダンスパートナーも、持ち出した
ヴァイオリンの音を引き立ててくれる様な絶叫(うたごえ)の持ち主も現れない。

 引き揚げるか否かを思案し始めたその時、

 歌が聞こえた。
 伸びやかなテノールが奏でるのは唾棄すべき聖歌。
 とても、不愉快な。

 あれは(・・・)黙らせなくてはならない(・・・・・・・・・・・)

 歌声を頼りに街の中央へ向かって戦車を走らせる。

 行き着いた先にある公園の中央で、不愉快な聖歌の歌い手は紫煙を棚引かせながら静かに
佇んでいた。
 その男は乾いた瞳でこちらを睨め上げると、淡々と侮蔑の文句を投げつけて来る。

 ――この、男は。

「貴方、不愉快だわ」

 最早機嫌は最高に最悪だ。
 この不快感を堪えるなど、誰が出来よう。

 生まれてまだ百年と経たぬ生ける死者(モロイ)の令嬢は、頭に血を上らせたまま戦車から降りると、
手にした有刺鉄線を振り上げ、男の足元へと振り下ろす。


「死んで頂戴」

7 名前:名も無きクドラク:2006/03/07(火) 00:13:42

 名も無きクドラクvs名無しモロイ
 『――Nameless Waltz――』

>>6

 凶相の女だった。
 端正であろう容姿も、漆黒の装束も、率いる戦車も、その獰猛さを引き立たせる物でしかなかった。

 感じた不快を隠すことも無く此方へと詰め寄ってくる。
 男は動かない。
 灰が、また一つ落ちた。

―――Singn wir zu allen Zeiten.

 だが……気づく者が居るであろうか。男の詩が狂っている事に。

 居るであろうか。
 その隙間に籠められた薄闇に。

「何度でも言うさ……馬鹿馬鹿しい。・・・の居ない場所なんだぜ」

―――Halleluja, mit Freuden.

 渇いた薄ら笑いで男は応える。
 風が流れ、地に落ちたぺルメルと言う名の聖灰が舞う。

 灰は、詩に籠められた呪に乗り公園を覆う。
 ただの広場が見世物小屋の檻へと変貌していく。
 何者も立ち入る事の許されない檻へと。

「そうさ……アイツがいない……居ないんだよ……」

 黒鉄の棘が男を穿つ。
 黒衣が裂け、肉が割れた。

「居ないんだ……居ないんだ……アイツが、アイツがアイツガアイツガ……」

 赤黒い血流れ落ち、男は立ち上がる。
 その片腕は女の襟を掴み、煙草を落とした片手は女の股座へと入り込む。

「居ないんだ居ないんだ居ないんだ。如何していないんだ……なんで居ないんだ……なんで……どうして!!」

 男は女を抱え上げ、天使の御許、背後の水中へと叩き込んだ。

 ―――もしも、この場にヒトの心に通じた者が居たのなら、男をこう断じたであろう。
 狂人、と。


8 名前:名無しモロイ(M) ◆m6gPuppetA :2006/03/07(火) 00:34:32

名も無きクドラクvs名無しモロイ
『――Nameless Waltz――』

>>7


 昏い眼をした男だ。此方に顔を向け、けれど此方の事など何も見ていない男だ。
 総じて――やはり、不愉快な男だ。

 紡いだ呪詛(うた)と零した灰で世界を塗り替えながら、男は何か(・・)に向かって苛立ちをぶつけている。

「……貴方、何を言っているの?」

 打ち付けた鉄棘も意に介さぬ様子で独り言を吐き散らし続ける男に対し、もう一度鞭を振るおうと腕を
持ち上げた所で、

 不意に伸ばされた男の腕に、襟とスカートの裾を掴まれ、天地が瞬時に反転した。

 「…………………」

 お気に入りのドレスが、一瞬にして台無しになった。
 結い上げた髪も、水を吸って滅茶苦茶だ。

 何より。
 淑女(レディ)の股下に手を伸ばす無作法振りが許せない。

狗雑種(ノライヌ)。貴方には、躾が必要だわ」

 全身から水を滴らせながら立ち上がり、手にした有刺鉄線の鞭で戦車の軛を打ち砕いて繋いでいた狼達を
開放すると、思念波で一斉に襲い掛かるように命令を下す。

「彼らに、獣の礼儀からまず教わって来ると良いわ」

9 名前:名も無きクドラク:2006/03/07(火) 01:19:34

名も無きクドラクvs名無しモロイ
『――Nameless Waltz――』

>>8

 この期に及んでまだ涼やかな水の音で狂熱が僅かに退く。
 眼に諦観が戻る。
 だが、全てが治まる訳ではない。
 戦いを前に、男の奥底はかすかに燻り続ける。

「―――悪かったな。少し、夢を見ていた」

 先の狂乱を夢と言う男。人ならざる者の夢とはあのような物なのか。
 ……そう、男もまた、眼前の女と同じ様に人ではなかった。

 男に名は無い。
 強いて言うなら、クドラク、と言うのがそうであろうか。
 東欧の魔人。街に、邑に寄生し、女子供を食み、病を撒き散らし、死者を犯し、そして滅ぼされる。
 ただ、それだけの、数多在る怪異。

「でも……少しばかり夢見が悪かったんだ……」

 しかし、この男には災いを成す意志は無い。
 無くなってしまった。ただ、一つの事を追い求めるあまりに、全てを投げてしまった。
 追い求めるあまりに、渇き続ける。

 ―――女の放った獣が襲い掛かる。
 自然のそれと比べ、二回りも大きい狼が男に群れ集う。

 喰らい付いた。二匹、三匹、四匹と。

「だから、これからやるのは……ただの八つ当たりだ」

 一歩、踏み出す。
 男を堪能する獣たちをそのままに。
 獣は飢えを満たし、男は飢えたままに。

 一歩、一歩、一歩、一歩、一歩、一歩―――

「……悪いな」

 二度男は詫び、女の前へ立ち……牙を剥いて嗤った。
 熱は、収まらない。

10 名前:名無しモロイ(M) ◆m6gPuppetA :2006/03/07(火) 01:55:10

名も無きクドラクvs名無しモロイ
『――Nameless Waltz――』

>>9


 八つ当たり――。
 その気持ちは解らないでもない。こうして男の目の前に立っている理由もまた、八つ当たりなのだから。
 だが、許すつもりは毛頭ない。

狗雑種(ノライヌ)。わたくしは戯言を好まない」

 下がりなさい

 男の身を齧り続ける眷属を思念波で散らし、紅く輝くその瞳で、眼前の男を睨み据える。

 ……生まれながらの化物である生ける死者(モロイ)は、魔女と深い関係があると言われれ、
 特に、女性の生ける死者(モロイ)は生物を支配する力を持つと言う。
 女と言うものは、男などと言うものよりも、より強い魔性を孕んでいるものなのだろう。
 何もせずともその瞳で生物(おとこ)を魅了し、その声で生物(おとこ)を操るのだ。

 女は持ち得る魔力を瞳に注ぎ、

「跪いて許しを乞う。それが貴方に唯一許された所作と心得るのね」

 高慢に、そう告げた。

11 名前:名も無きクドラク:2006/03/07(火) 02:43:43

名も無きクドラクvs名無しモロイ
『――Nameless Waltz――』

>>10

 女の眼力を受けた男の反応は実に素直だった。
 軽く肩を竦め、膝を付く。
 笑ってしまうほどにあっけなく。

 魔眼。
 視線を媒介にした魔力による従属勅命。
 人の身で抗えるモノではなく、悪鬼と言えども状況によっては影響を免れない確固たる力。

「―――」

 両膝を付き、頭を下げる。
 明らかな服従の証。その様は下僕のそれだ。
 更に女の片足を取り、その柔らかな、細い足へ口をつける。

「――――――ク」

 されど―――ここに在るのは人ではない。悪鬼でもない。
 いずれの道からも外れた、外道のみ。

「――――――クク」

 男は上がらぬはずの面を上げる。
 忠誠と、愛情と、どこまでも深い侮蔑を込めて―――

「―――――――――ヒャハ」

 その甲を半ばから食いちぎった。
 諦観と言う名の静から狂乱の激動へと転じる。

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!! お嬢ちゃんよ、こういう時になんて言うか知ってるかい」

 足首を握る。肉の潰れる心地よい音がする。
 口は愛撫のように甲をなぞり、指へと到達する。食い散らかす。悪くない。
 無造作に立ち上がり、足を掴んだまま傍に停まっている玩具のチャリオットに投げつける。
 楽しい。途方も無く楽しい。

「ニッポンのコミックじゃあ『足元がお留守ですよ』って言うんだぜ! ギャハハハハハハ!!!!」

 先ほどの狂気ともまた違う、楽しげな、そして深い悪意の籠もった言葉。
 そして道化のそれにも似た嘲る様な一礼。

「改めて挨拶だ。ようこそお嬢ちゃん、愉快な愉快な八つ当たりにお付き合い頂き恐悦至極。

 ―――これが、俺だ」

12 名前:名無しモロイ(M) ◆m6gPuppetA :2006/03/07(火) 20:17:55

名も無きクドラクvs名無しモロイ
『――Nameless Waltz――』

>>11


 漸く礼儀作法と言うものを理解したのか、跪いて差し出された足に口づける男に、女は満足そうに
頷いてみせた。
 下賎の身ではあるが、造作は悪くない。飼ってやっても良いか、と寛大な気分にもなる。

「解れば良いのよ。そう、そうやって――」

 言葉の続きは、激痛と悲鳴によって遮られた。
 突き立てられた牙。食いちぎられた足。掴まれ、吊り下げられ、再び反転する視界。

「放、しなさい……放せ!」

 抗議の声は、しかし男の上げる高笑いによってかき消され、届かず――


 投げられた。


 固い木材の感触と、冷たい金具の感触と。
 全身を貫く衝撃に、ひとたび鳴りを潜めた不快感が、再び頭を擡げて来る。

 最悪だ。
 最高に最低で最悪だ。

 すぐさま傷付いた足を再生させ始めるが、エネルギーが足りず、半端な再生しか出来ない。
 だが、足りないのであれば補えば良い。

 思念波で狼を一頭此方へ呼び寄せる。その頭に左手を乗せ、

 握り潰した。

 滴る血と断末魔を掌から啜り上げ、集めた精気を再生の為のエネルギーへと充てる。
 乾涸びた残骸を投げ捨て、指先に残る血を舐め取る。
 ……準備、完了。

「所詮、狗雑種(ノライヌ)狗雑種(ノライヌ)と言う訳ね?」

 立ち上がり、埃を払いながら、それでも視線は逸らさずに。

「礼儀も謝罪も必要ないわ。欠片も残さず潰して差し上げるから」

 瞳に炎を宿したまま、手にした有刺鉄線を大きく振り上げ、

「まずはその、躾のなっていない腕から」

 一気に振り下ろした。 

13 名前:名も無きクドラク:2006/03/07(火) 23:12:29

名も無きクドラクvs名無しモロイ
『――Nameless Waltz――』

>>12

 ―――腐った肉の味で完全に眼が覚めた。水の中から上がったような気分。

 俺の眼前には女。腐肉臭ぇ女が一人。今時誰も着ないような真っ黒なドレス。そんな骨董品だからこそ
死に損なってこんな所に居るんだろう。だがまあ、上玉は上玉だ。
 久しぶりの運動の相手としては悪くはねぇ。

 周囲には結界。薄らボケた頭でもやる事はやっていたらしい。
 何にせよ、邪魔を気にせず遊べるのはいいこった。

 たとえ相棒が居なくてもこうして代用品がウジャウジャやって来る。
 だからこの世界は有難い。潰れずにこうして立っていられる。

 悪かった。済まなかった。許してくれ。
 今までのはちょっとしたジョークだ。これからが本番だ。第二ラウンドだ。
 退屈はさせねぇ。輪になって飛んで――― 一緒に踊ろう娘さん。


 鉄線が飛ぶ。―――金物細工の荊。今日日、地元のスラムの小僧共ですら使う事の無い玩具。
 そうか、それか。うっすらと覚えてる。さっきそれで殴られたっけ。

「ハハハッ、またそれか! 俺ぁマゾだからな。あんまり犯られるとクセになっちまいそうだ!!」

 カマを掘られるのも悪くはないが、今日の所は遠慮する。俺だって偶には責める方に回りたいからな。
 後ろに飛んだ。革のコートが削られる。ポッケの中のビスケットと400ドルも飛んだ。
 ビスケットの敵を討つことを誓う。

「まあ、待ってろよ。女の早漏はよろしくねぇぞ」

 天使を背にして俺は言う。欲しいのは得物だ。無くても良いが在った方が公平に決まってるからな。
 とは言え、最初から何を使うかは決まっていた。
 ワザとらしく俺は言う。

「……? おお! 主よ感謝しまーす!! こんな所に救いの御手があろうとは!
 ありがたく頂戴するぜ。ナンマンダブ」

 これから死地に趣く天使の冥福を祈ると、俺は天使の足を無造作に掴む。
 土台ごと持ち上げる。

「これが俺の得物、ルシファーズハンマーだ……ルシファーじゃねぇな。……ま、これで対等だ」

 水を蹴る。飛び上がった俺はそのまままっすぐに女に襲い掛かる。
 天使の鉄槌が叫んで唸った。

14 名前:名無しモロイ(M) ◆m6gPuppetA :2006/03/07(火) 23:43:29

名も無きクドラクvs名無しモロイ
『――Nameless Waltz――』

>>13


 唸りを上げて天より降って来る天使像。まともに食らえば只では済まないだろう。
 ――そう、まともに食らえば(・・・・・・・・)、だ。

 伸びきったままの有刺鉄線を操り、天使像の首へゆるりと絡みつかせ、素早く引き戻して摩擦で
その首を切断する。
 そして優雅に一歩後退。通り過ぎる首無しの天使像は、ぎりぎりの所でその身体に届かない。

「対等? わたくしが、貴方と?」

 更に今度は前方へ跳躍。天使像の上へと飛び乗ると、その上を歩いて男の眼前へと足を進める。

「分を弁えるのね狗雑種(ノライヌ)。冗談にしては笑えなさ過ぎよ」

 不安定な足場をものともせず、一度後方へ脚を振り上げ――

「少し、黙ってて頂戴」

 爪先を、男の顎目掛けて突き上げた。

15 名前:名も無きクドラク:2006/03/08(水) 00:22:04

名も無きクドラクvs名無しモロイ
『――Nameless Waltz――』

>>14

 最近の流行はこんな感じなのか?
 昔はもう少し泥臭い連中も居たもんだが。
 小説とかの影響かねぇ、気位ばかりが高いってのは。

「そりゃ失敬。じゃあ、言い直すわ」

 クリティカルに首を飛ばされた天使の上での与太話。
 最近欝って人と話すことも無かった俺にとっちゃあこれもまた喜びだ。
 ニヤケ顔を抑えられない。女が足を振り上げた後も……白だ。予想外。

 コンクリも踏み抜きそうな足を大口開いて待ち構える。
 飲み込む。

 顎が割れた。血が出た。喉が潰れた。血が出た。
 だが、それがいい。たまらなく。

 笑い顔のまま、俺は言う。
 足を突っ込まれてヒーヒー言ってても普通に喋れるのは化物ならではの隠し芸だ。

「無礼が過ぎるぜ三下。力も無ぇ、魔力も無ぇ、節度も無ぇ、ついでに速さも足りねぇ

 そして何より―――頭が足りねぇ。一分前に何されたかも忘れたのか、ああん!!」

 同じ様なミスを何度も犯す奴には加減はしねぇ。
 無造作に足首に牙を突き立てた。最速で咀嚼し脹脛まで。

 そのまま顎を動かし、引き摺り落とし、落下の結果を待たずに首無し天使を叩きつける。
 そこに居ようと居まいと関係無く。

 何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。

16 名前:名無しモロイ(M) ◆m6gPuppetA :2006/03/08(水) 01:09:38

名も無きクドラクvs名無しモロイ
『――Nameless Waltz――』

>>15


 また、喰われた。
 スカートを覗く不躾な視線。激痛。重力と遠心力。流血。抜ける足先。灼熱。
 三度宙を舞う。疼痛。叩き付けられる。悲鳴。天使像。痛。

 潰される、下半身。

「――――――――――――ッッッッッッ!!!」

 地面を転がり、次の一撃を避ける。まったくの無様。間を置かず、また一撃。
 再生の暇もない。
 ならば、必要なのは、移動手段の確保。

「―――Raven(からすよ)

 痛みを押し殺し、鋭く叫ぶ。
 天へ向かって、朗々と。

夜の冥府の荒磯(ありそ)では、おまえは何と呼ばれるか?

 呪を紡ぐ。此処にはいない何か(・・)に届かせるために。


  ――Never more(またとない)――


 問いに答えたのは一羽の大鴉。
 閉ざされた筈の空間を突き破り、腐肉を啄ばむそのために、不吉な羽音を響かせ降りてくる。

鳥か獣かおまえの(あざ)は?

 女は再び問いかける。

  ――Never more(またとない)――

 答えは同じくNever more(またとない)

「ならばネヴァー・モア。二人といない貴方の翼、しばらく貸して頂戴な」

 降りてきた鴉の脚を掴み、空へと共に舞い上がる。

 侮辱を看過する心算はない。

 いまだ大地に天使像を叩き付け続ける無礼者の足首目掛けて有刺鉄線を絡みつかせ、一気に引き上げると、

「目には目を、と言った所ね」

 空へ向かって放り投げた。

17 名前:名も無きクドラク:2006/03/08(水) 02:09:54

名も無きクドラクvs名無しモロイ
『――Nameless Waltz――』

>>16

 素敵に愉快に滑稽に宙を舞う。押し退けられる大気が肌に心地いい。――― i can fly?
 いや、分かってたって、もう居ないのは。マジで。ただ気が乗ってたから続けただけで。
 嘘じゃねぇから。

 そこまでだった。

「――――――ガッ!!」
 ぶち。

 どんな偉い神様も敵わない定理に従い自然落下したリンゴは、あるべき場所へと収まった。
 壁に叩き付けられたおはぎの様に、あるいは芸人の顔面に叩きつけられるパイのように。
 要するに、それが今の俺だった。俺と言うよりは潰れアンパンと呼ぶべきか。

 137m。

 俺が見上げたその先に、半身ぶちまけただらしの無いメリーポピンズが一匹。
 多少暗いが良く見える……こっちの方が酷いか。
 が、遊ぶのに支障は無い。

 地を這う獣が空を舞うビッチにどう立ち向かうのか。
 目には目を……そう、目には目をだ。

 ―――Country roads, take me home To the place I belon

 流れ出る血と肉が路となる。
 そうだ……この道、ずっと行けば、そう、続いてるんだ。

 ―――West Virginia, mountain momma Take me home, country roads

 あそこだ、あそこがお前たちの往く街だ。空の最中……そうだ。
 往け、お前たちの名は飢饉の担い手、俺の同類だ。

「さあ、犯ってこい。アポルオンの眷属共」

 俺の細胞の一つ一つが―――蝗へと変じていく。
 蝗は群れ集うもの。街のそれを巻き込み、外界からも同族が寄り集まる。際限なくだ。
 故に黙示録と言う名の三文芝居にも記される暴虐の化身となる。

 ゆっくりと身を起こす。辛い。体がパイ生地かなんかみてぇ。
 それでも、俺はゆっくりと上を望み……

「さあ、気位に見合った根性見せな! そいつらは好きモンだからな。穴と言う穴に突っ込んじまうぞ!!」

18 名前:名無しモロイ(M) ◆m6gPuppetA :2006/03/08(水) 03:11:32

名も無きクドラクvs名無しモロイ
『――Nameless Waltz――』

>>17


 歌が聴こえる。
 耳を澄ませばほら、陽気で何処か寂しげな歌が。

 Country roads ――故郷へ帰りたい。

 そう言えば自分の故郷は何処だったろうと、感慨に耽る。
 物心付いた頃にはもう、あの最高に最悪な父親と共に古城の中で暮らしていた。
 父の顔しか覚えはないが、人より生まれる生ける死者(モロイ)のこの身には、人の母親が存在する筈だ。
 今まで気にもしなかったが――自分は、何処で生まれた?

 歌が聴こえる。
 最高に最悪な狗雑種(ノライヌ)だが、その声だけは認めてやらなくもない。

 ……訂正、狗雑種(ノライヌ)はやはり最低だ。

 雲霞の如く群れ集う羽虫の大群。
 満足を知らぬ底無しの天使の群れに、あっと言う間に鴉を喰らい尽くされた。
 翼を失った身体が、先程の男と同じように重力に囚われ、大地へと自由落下を始める。

 飢餓の眷属の暴食は止まらない。
 既に無事とは言えない程に引き裂かれていたドレスを襤褸布へと変え、更にその中へと潜り込んで来る。
 だが、それがどうしたと言うのだ。

 あの男がもたらす凶作と悪疫程ではないが、生ける死者(モロイ)もまた、不運と病を運ぶ存在である。
 眷属如きに食い尽くされる程、この身は安くない。

 纏わり付く蝗を瘴気で弱らせ、張り付いたそれから無差別に精気を啜り上げる。
 潰れた下半身を再び元の形へと再生させる。

 眼前には乾いた大地。

 叩き付けられるその前に、
 外灯の支柱に有刺鉄線を巻きつけ、
 一転、二転、三転。
 そこで手を離し、加速を殺した状態で更に、隅に生えている樹へと身体を投げ出す。

 既に剥き出しになったその白い肌に、醜い朱線が何本も走る。

 着地。

「――つくづく、神経を逆撫でする狗雑種(ノライヌ)ね」

 下着姿でやや顔を赤らめながら、女は伸ばした爪を倒れたままの男の両眼へと突き立てる。

 この姿を見られると言う屈辱から、一刻でも早く開放されるために。

19 名前:名も無きクドラク:2006/03/08(水) 19:52:10

名も無きクドラクvs名無しモロイ
『――Nameless Waltz――』

>>18

 認めなければなるまい。
 ガーターベルトは正義だ。
 それは、万人が求める真理だ。


 ……ぐちっ               ぬちゅっ


 ―――そんな阿呆な事を言ってるから目玉を抉られる。
 そんな俺が大好きだ。

 もっとも、血管は腐り果て、神経は蚯蚓の餌となった今においては眼球と言う物に大した意味合いは無ぇ。
 無くとも見える時は見えるし、あっても見えない時もある。
 その癖、痛みはしっかり感じるんだから人体の神秘は始末に負えない。くたばれビッチかみさま

「しっかし……なんだな」

 あまり意識はしてなかったが、どうもやってる事が特定のベクトルを向いてる気がする。
 その行為に思い入れは無い。今の俺なら必要ならやる、と言う程度の行為でしかない筈だが……

「さっき思ったけど、お前って、実は」

 首に手を回して抱き寄せる。思ったより肉は付いていた。
 ああ、これなら―――やっぱり今日の俺はおかしいらしい。
 理由はまあ、分からないでもない。
 相手がAlternative代用品なら感情もAlternative代用品って事なのだろう。
 心の飢えを腹で満たす。実に俺らしい、無様な話だ。

「……結構甘いんだよな」

 甘くないのもあった方が良いが、甘いのも行けるクチだ。
 堪える気は毛頭無い。これが、戦いにおいて有用なのも事実だからな。

 女は気づいてるかねぇ。
 黒革のコートがカシミヤの如き手触りに変わってる事を。
 最終的には結構でかくなるので肉付きも良くなってるかも知れねぇ。
 プニっとした肉球は俺の自慢だ。

 後ろ足に力を掛ける。立ち上がる。
 だが、元々二本で立つのが難しい体は、重力に従い正しい姿勢へと戻る。
 結果として押し倒す事になった。
 で、大きく口を開けて……芸が無いと思うかもしれねぇが、これがやりたいのだからしょうがない。

「ああ、一つだけ……何度も野良犬野良犬言ってくれたが……俺は野良猫だ。しかも純血だっつーの!」

 今日何度目かの。


 いただきまーす。

20 名前:名無しモロイ(M) ◆m6gPuppetA :2006/03/08(水) 20:57:36

名も無きクドラクvs名無しモロイ
『――Nameless Waltz――』

>>19


 今度こそ、指先に感触が表れる。
 そのまま指先を捻り、抉り立てる。湿った水音が響き、指先から腕へと赤い糸が伝う。
 悪くない気分だ。

「――――――え?」

 いきなり身体が引き寄せられた。
 首の後ろに手が添えられて。これは、つまり――

「な、ななななななな何をいきなり!!?」

 驚きで指が抜ける。男が何かを口にしているが、耳に届かない。
 顔が近い。息が目蓋を撫でる。地に付いていたはずの膝が浮き上がる。

「ちょっと、ちょっと待ちなさい! 待って、待ってってば!!?」

 抗議の声を上げるが、相手はまったく止まらない。
 少しずつ持ち上げられる身体。全身から、力が抜けていく。
 艶やかな毛の手触り。首筋を柔らかく包む……

 包む、 肉 球 の 感 触 ?

「――――――は?」

 押し倒されて気がついた。
 目の前には、一匹の豹。

 大きな口を開けて―――

 暗転。

21 名前:名も無きクドラク:2006/03/08(水) 23:41:35

名も無きクドラクvs名無しモロイ
『――Nameless Waltz――』

>>20

 ―――最終的に、


 それは、小型バス程度の大きさになった。
 それほどの体躯であれば女人の一人を呑み込むのも造作なく、二口目には爪先まで平らげていた。


 見方によっては、豹、とも見えるかもしれない。
 ぬばたまの毛並、光で収縮を繰り返す金眼、顔立ちや尾などもそれに近いであろう。
 だが、自重を支える為に極度に肥大化した四肢の筋肉、間接。
 自然の獣では在り得ぬ、実用性に乏しいとすら言える大仰な牙。


 何より……纏う空気そのものがそれを何処までも醜悪なモノと断じていた。


 これもまた、クドラクと言う怪異の一つの姿である。
 不死となり、魔道を繰り、獣へと転じる。全ては永き争いの為に。


 女を平らげた獣は、ぐるり、と周りを見やる。
 そこに理性の色は無い。獣となれば魂まで獣に染まると言うのか。

 獣は飢えを隠さない。
 矮躯一体では腹が膨れる筈も無く、例え膨れても飢えが収まる事も無い。

 獣は覚えていた。
 先に自身を餌とした餌たちの存在を。
 等価交換とばかりに相手の肉を求め、目を凝らす。

 僅かな時を経て、食事を再開した。
 かの女など居もしなかったかのように。


 だが、忘れること無かれ。
 その胃に収まりし娘もまた怪奇と呼ばれしモノ。モロイと言う名の死怪。
 ただ喰われ果てる―――その様な存在では断じてない事を。

22 名前:名無しモロイ(M) ◆m6gPuppetA :2006/03/09(木) 00:15:20

名も無きクドラクvs名無しモロイ
『――Nameless Waltz――』

>>21


 暗い穴の底で崩れ、溶かされながら、女は詩を口ずさむ。

  ――What are little boys made of, made of?

  ――Frogs and snails and puppy dogs'tails.

  ――And such are little boys made of.

 愉快そうに、心の底から楽しそうに。

  ――What are little giles made of, made of?

  ――Suger and spice and all things nice.

  ――And such are little giles made of.

 甘くて、刺激的で素敵なもの。
 それが女と言う存在である。

 ゆっくりとその闇と同化しながら、甘美なそれは少しずつ外側に向かって侵蝕を始める。
 呪詛に満ちたその身で膜を侵し、突き立てた爪より精を奪い、歌声で細胞の一編も残さずに魅了する。

 甘くて刺激的で素敵なもの――彼の者の名は『毒』。

 深い深い闇の中、熾烈な奪い合いが幕を開けた。

23 名前:名も無きクドラク:2006/03/10(金) 14:50:35

名も無きクドラクvs名無しモロイ
『――Nameless Waltz――』

>>22

 獣がそれに気づいたのは3匹目を平らげた後の事だ。
 胎の底に響く幽かな揺らぎ。
 獣はそれを訝しみ、不快がる。

 ―――揺らぎは謡だ。それは、野狂を侵すアヤカシに他ならない。

 謡に酔った足を止めた。
 不快は僅かな間を経て怒りへと変わる。
 例え獣の知性だろうと人の理性だろうと、己を打倒せんとする者への感情が変る筈もない。
 ましてや、この身を奪いつくさんとする者であれば。

 ふわり、と毛が立ち上がる。
 地のゆらぎにも似た低音で唸りを上げる。

 不遜

 その様にも聞こえる唸りと共に、獣がぶれる。ノイズのように相が揺らいだ。
 姿が変わる。
 鴉であり、狼であり、牛であり、豚であり、魚であり、蛇であり、よく分からない何かであり……
 己が内の敵を消化し尽くすに相応しい姿を求め、次々と姿を変える。


 ……されど、謡は止まらず、汚染は拡大する。
 女は毒餌だった。そして、強き毒を癒すのは獣の業ではない。

 獣が獣である限り、逃れる術はなかったのだ。


24 名前:名無しストリゴイカ(M) ◆m6gPuppetA :2006/03/11(土) 00:40:03

名も無きクドラクvs名無しモロイストリゴイカ
『――Nameless Waltz――』

>>23


 穴倉の中、闇は広がり、狭まり、形を変え、
 捩れ、蠢き、絡み付く。
 その中心で喉を震わせ、ゆっくりと世界を汚しながら、女は優雅に舞い踊る。


   ――You never know as the hearse rolls by

   ――When it may be your turn to die;


 伸ばした爪は剣の如く。
 乱れた髪は白蛇の如く。
 白磁の肌は既に白蝋の如く崩れ。
 紅玉を想わせた瞳は碧玉へとその色を変え、蒼白く燐光を放っている。

 死と再生の密儀(イニシエーション)
 己が死を以って生ける死者(モロイ)
死せる女吸血鬼(ストリゴイカ)へと、その身を変容させる。

 死を喰らい、死を越え、死を運ぶ。
 何よりも死に満ち溢れながら、何よりも死に遠い。

 故に努々忘れるな。

 “死を想え(Memento mori)

 我らは吸血鬼――死して夢見る夢想家なれば。


   ――They invite their friends, and their friends' friends too.

   ――You look like hell when they're through with you.


 零れる吐息が病魔と踊り、
 踵の響きが悪夢を奏でる。

 詞が途切れ、歌が意味を成さぬ哄笑と変わり果てても、女の舞踏は続いていた。 

25 名前:名も無きクドラク:2006/03/11(土) 09:04:30

名も無きクドラクvs名無し>モロイストリゴイカ
『――Nameless Waltz――』

>>24

 幾多もの姿を経由し、元の獣へと戻る。
 響く嬌声。
 試みは無為に終わった。その身は、僅かの後に己とは遠き存在へと堕する事になる。

 ―――許せる筈が無い。
 獣も魔も関係なく、一個の存在として許容できぬ事態。

 獣は考える。否、考えない。野の感性に思考を委ねる。
 ウィルスをどうやって駆除するか。己が内のゴミをどの様に処分するか。
 姦しい娘の声に耳を傾けながら想像し……


 結論として。
 ゴミを焼く事にした。


 傍の水溜りが一瞬で気化し、爆発的に蒸気を巻き上げ拡散する。

 気流が動き、縦横に風が吹き荒れる。

 地は赤熱し、樹は一瞬で炭化し、戦車は既に無く、石はおぞましく融け流れた。


 獣に変化は無い。気流に煽られその体毛が揺れる。
 ……体毛ではなかった。その毛皮は既に黒き炎となり、揺らいでいたのもソレだ。
 黒い炎は火勢を増し、蛇の舌の様に上空に先端を伸ばす。
 体内も既に炎に舐められ、口腔から漏れ出でる。

 今、この地は煉獄とすら呼べうる世界であった。
 出来の悪いミニチュアであったにせよ。

 獣が飛び上がる。
 何十メートルも炎を引き連れ飛び上がり、重力に従い落ちる。
 衝撃と共に火の粉が舞い上がった。

 それを二度、三度、四度、何度となく繰り返す。
 まるで、刀剣の鍛冶のように。その身を打ち、不純物を出すソレを模したかのように。
 また、同時にそれは有用な要素を己に無理矢理に定着させ、我が物とする行為でもあった。

 つるべの様に上下運動を繰り返すソレは、既に獣の姿を成してはいなかった。
 ただの火の塊が何度も地を打ち据え続け……

 一際大きな音と共に落ちて消えた。
 後に残ったのは片手、片膝を付く男。

 「―――あぢぃ」

 付いた部分が焦げていた。

26 名前:名無しストリゴイカ(M) ◆m6gPuppetA :2006/03/11(土) 20:33:19

名も無きクドラクvs名無しモロイストリゴイカ
『――Nameless Waltz――』

>>25


 闇が、燃え上がった。
 穴倉の主は(モロク)と化し、その身の内で焦熱地獄(ゲヘナ)の炎を煽り立てる。

 鉤爪は炎に刺さらない。
 病魔は炎を侵せない。
 血肉のない炎からは精気を奪えず、
 形のない炎を呪詛する事もも適わない。

 けれども、だが、しかし。

 女の舞踏は止まらない。

 舐める炎の手を取って。
 破れたドレスの代わりに、青い炎を身に纏い。
 爛れた素足には、血と炎の赤い靴を履き。

 唯、只管に。

 右から左へ、左から右へ。
 飛ぶ。跳ねる。回る。
 飛ぶ。跳ねる。回る。

 髪が燃え尽き、腕が焼け落ちてなお。

 飛ぶ。跳ねる。回る。
 飛ぶ。跳ねる。回る。

 瞳に既に光はなく、崩れた唇からは頬骨ごと歯が覗く。
 炭となり、灰となり、末端から塵へと還って行く。

 踊る。踊る。踊る。

 世界が熱を忘れ、夜風と月光を取り戻した後も踊り続け――

 座り込んだ男に軽く一礼。
 人を模した炭屑が、崩れて風に溶けて消えた。

27 名前:名も無きクドラク:2006/03/11(土) 23:05:02

名も無きクドラクvs名無し>モロイストリゴイカ
『―― Last Waltz―― .』

>>26

「―――気取りすぎなんだよ。馬鹿女が」

 そして女はそこら中に舞い上がる白煙に混じって散っちまった。
 俺は礼に片手を振って返し、見送った。

 感慨はそれほど無かったり。元を正せばただの八つ当たりでしかないしな。
 まあ、最後の方は前後不覚で暴れまくっただけだから、と言うのも無い訳じゃあないが……

 ただ……早死にだったな、とは思う。

 女はどう見ても百にも届いていなかった。
 幸か不幸か生き物辞めて、これから何年もバリバリやっていこうって歳だ。
 それがその辺の鄙びたジジイと同年代で死ぬんじゃ大損だ。

「―――長けりゃ良いってモンでもないんだがよ」

 ましてや、生きた挙句、俺みたいになるのに比べれば……な。



 クドラクって化けモンがいる。
 邑に寄生し、女子供を食み、病を撒き散らし、死者を犯し、そして滅ぼされる。そんなゲロ臭ぇホモ野郎だ。
 滅ぼすのはクルースニク。かみさまに選ばれた専用の始末人。クソみてぇなぺド野郎だ。

 コイツらは本当に何度も滅ぼしあうんだ。大抵は俺らが負ける。
 それでも懲りずに復活して追いかけたり追いかけられたり。

 それを何度も繰り返すと―――擦り切れる。
 ただ一つの事しか考えられなくなる。ただひたすらそれだけを求める様になる。他の事は全て瑣末事となる。
 そいつが居ないと禁断症状が始まったりもする。さっきのように。

 今はまだ軽症だが、近い内、痴呆の様に曖昧になっちまうだろう。
 どう考えても悪夢だな、こりゃ。 ……だからと言って止められないのも業って奴か。



「ま、どうでも良いか。考えたってしょうがねぇ……よっこらしょっと」

 俺はオッサン臭い掛け声一つと共に立ち上がる。
 体の調子を確かめる。動かない事は無い。
 精神は……まあ好調。渇きは癒えないが、戦いによる高揚は予想以上に効いている。

 代用品も捨てたモンじゃない。これなら、今夜一晩はあの陰気臭い馬鹿野郎に戻らずに済む。
 礼を言わなきゃならないな。もう居ないが。

 馬鹿みてぇに天井に浮いてるお月様を見やる。
 時間はさして経ってない。30分かそこらだろうか。

 周りに気を向けると、良からぬ気配がひのふのみのよ……沢山。
 まあ、今夜ここに居るのは強面の連中ばっかりだ。寄ってくるのも仕方が無いだろう。
 数が多い。退くか行くか……

 考えるだけ無駄か。なる様にならぁな。
 コートに片手を突っ込み、もう片手は―――驚くべき事に焼け残った―――天使の頭を掴む。

 せっかく女にもらったプレゼントだ。使わない手は無ぇ。
 例えあいつの居ない戦場だろうが……楽しめるだけ楽しんでやるさ。

 そして、俺は真っ直ぐに歩き出した。



「―――やっぱ焼けた石は素手で持つもんじゃないな」

 石は保温力が違った。
 あぢぃ。

28 名前:名も無きクドラク:2006/03/11(土) 23:18:25

名も無きクドラクvs名無し>モロイストリゴイカ
『――Nameless Waltz――』

まとめ
 >>5 >>6 >>7 >>8 >>9 >>10 >>11 >>12 >>13 >>14 >>15 >>16
 >>17 >>18 >>19 >>20 >>21 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27

あるいは
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/5-27


つーか俺らこんな強くないっス。演出ってことで6割減くらいで見てくださいっス。
なんつってもほら、俺らただの名無しっスから。

29 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/04/01(土) 18:48:56

弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』

  みいちゃんがいた。ユウコもミキエも、いた。
  みんな、楽しそうに笑っていた。
  わたしの居場所なんて、みんなの記憶の中にすらありそうになかった。

 郊外の自然公園。普段なら人目が多いところには決して近寄らない弓塚さつきだが、
この日ばかりは咲き誇る桜につられて足を伸ばしてしまった。
 桜は―――彼女が愛でるには派手すぎる花だけど、嫌いではなかった。
 周囲を圧倒する荘厳な美しさと、短命故の儚さ。いつ見ても心安らぐ。
 それに、せっかくの春なのだから―――と、人の目から逃れるように裏山から訪れた。

 来なければ、良かった。
 すぐに後悔した。
 そこには、さつきの期待するような光景は存在しなかった。
 公園全体を見渡せば、千を数えるのではないかという花見客。高潔なる桜の木の下で、
好き勝手に乱れる酔客。耳障りな騒音。下品な嬌声。異をむかつかせる酒臭。
 来なければ、良かった。

 昔は、こんな人達を見てもさして不愉快になることは無かったのに。
 どうしてだろう。いまは、壊してやりたいほどに苛立つ。

 かえろっかな―――そう思った矢先の出来事だ。
 見慣れた顔の面々が、さつきの視界に飛び込んできた。
 えみさん? まりちゃん? ―――咄嗟に腰を落として、身をしゃがませる。
 みな私服姿だが、改めて確かめずとも分かる。かつて、まださつきが人として学校に
通っていたから、毎日のように顔を付き合わせていたクラスメイト達だ。

 気付かれるのを恐れて慌てて身を隠したけれども、よくよく考えてみれば池を挟んで
対岸での光景だ。さつきの目ならいざ知らず、常人では顔の判別まではつくまい。
 間抜けな自分。周囲から奇異な目で見られていないか気にしつつ、さつきは立ち上がった。

 かつての友人達。敷かれた青いレジャーシート。人をやめてしまったさつきの瞳には、
紙皿に盛られた惣菜やおつまみの種類までも正確に見分けられる。
 みな手に持つの缶ビールだったり、缶チューハイだったり。いけない飲み物。
 補導されても知らないんだから―――と、くすくす笑う。
 みんな顔を赤らめて、互いにつっつき合うようにはしゃぎ合って、幸せそうだった。

30 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/04/01(土) 18:49:18

>>29

 初めは懐かしいものを見るかのような目で眺めていたさつきだが―――やがて胸を薙ぐ
春風とともに訪れた感情は、虚しさだった。
 ヒカルもリラちゃんもみんな、みんな楽しそうだ。
 さつきの思い出の中にある、みんなのままだ。
 わたしが消えたのに―――わたしは行方不明なのに―――そんなこと、まるで構わず
に笑っている。かつては一緒に微笑みあった仲なのに、彼女達の中にもう自分はいない。

 ―――分かっていたことだけどね。

 帰ろう。来るんじゃなかった。
 そう決めて踵を返した。桜は好きだけど、過去は嫌いだ。
 馬鹿なわたし。この時期、彼女達はこの自然公園で必ずお花見していて、去年まで
その中にわたしもいたって言うのに―――どうして、都合良く忘れているのか。
 帰ろう。帰ってまた、忘れよう。

 そう心は決まったはずなのに、さつきの足はその後も公園から離れられず、日が変わり、
どこの宴会もお開きとなり解散していくのを傍目に―――園内を散策し続けていた。
 クラスメイト達もとっくに帰参している。
 まばらに人は残っているが、もうおおっぴらに歩いても声をかけられたりするような
ことは無さそうだ。勘に触る嬌声も聞こえない。
 さつきのお花見はこれからなのだろうが―――彼女が空を見上げることはなかった。
 地面を見つめながら、自分の惨めさを噛み締めている。

 帰れば、良かったんだ。
 少しでもみんなに近付いていれば、例え境界を挟んでいようとも、まだそっち側
の人間になれるかもしれないなんて甘えた希望を抱いて、留まってしまった。
 馬鹿な、わたし。
 哀れな、わたし。

 なんだか―――胸が、騒がしいよ。

 弓塚さつきは、地面を見つめたまま、力なき足取りで進み続けた。

31 名前:ジャスミン・メンドーサ(M) ◆m6gPuppetA :2006/04/01(土) 19:14:28

弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>29 >>30


 ――ち、しらけちゃったわね……。

 桜満開の公園内をひとりでぶらつきながら、あたしはそう、ひとりごちた。
 学生組は日が替わる前に帰っちゃったし、れい子の奴は急な仕事が入って抜けてっちゃうし。
 結局の今夜のパーティは自然解散。ひとり残されたあたしはやる事もなく、こうやって暇を
 持てあましてるって訳。

 夜風が火照った身体を心地良く撫でて行く。
 この時期特有の少し湿っぽい、柔らかな風だ。
 少し酔っているせいか、その中に混じったアルコール臭や、普段なら顔を顰めるだろう吐臭なんかも、
 今は少しも気にならない。

 肩がぶつかった。
 振り返って見ると、そこには俯いたままノロノロ歩いてる、女子高生っぽい女の子がいた。
 周りの様子も気にしてられないくらい沈んでいるのか、あたしがぶつかったのにも気づいてないようだ。

 ……フラれたとか、そんな所かな。

 桜の下で起こるのは良い事だけじゃない。悪い事だって起きるものだ。
 彼女もきっとそんな当たり前の事の被害者なんだろう。
 そう見当をつけ――流石に失礼だったか、と思い直す。

「……っと、ゴメンゴメン」

 何はともあれ、ぶつかった事に対してはきちんと謝罪をしておくべきだろう。
 既に奥の方まで足を進めてた女の子の所まで駆け寄り、あたしは改めて声をかける。

「あんた、大丈夫だったかい?」

32 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/04/01(土) 19:33:53

弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』

>>31
 絶妙な香水と酒気の按配で、接触するまで気付きもしなかったけど―――確かに、した。
 その臭いにさつきの神経が粟立つ。
 微かな……ほんの微かな、しかし確実に魂にこびり付いた―――血臭だ。
 先まで土を見つめていた虚ろな視線が女性を覗く。
 日本語がじょうずで、とっても綺麗で―――少しだけ馴れ馴れしい外国人。
 それだけだ。
 眼の輝きも澄んでいる。そこから何かを判別するには、まださつきは若い。
 彼女に分かることなど、精々この女性が先程まで――ユウコやミキエと同じように――
咲き誇る桜の木の下で過ごす一時の時間を楽しんでいた、ということぐらいだった。

「―――……どう、して」

 鳴くように細い声。

「わたし、分かるよ。あなたと同じだから。―――そんな、ヒト殺しの癖に。他のみんな
とは違う&ネに。どうして―――楽しんだりできるの。そっち側に平気で混ざれたり
するの。みんなとは違うのに。あなたはもう、外れてしまっているのに」

 女性の言葉には反応せず、口から湧いて出るのは理不尽への苛立ち。
 さつきは睨んだ。健常を気取るいけ好かない女性の瞳。自らの血色の双眸で。

33 名前:ジャスミン・メンドーサ(M) ◆m6gPuppetA :2006/04/01(土) 20:01:42

弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>32


「……ああ、何だって?」

 ただの女子高生とは思えないその物騒な台詞を受けて、さあっと全身の血が引いていく。
 人殺しだの外れてるだの、マトモな人間が口にすることじゃない。
 それなのに――何を言ってるんだ、この子は。

「あたしの人生にケチつけんじゃないわよ」

 確かにあたしは人を殺したことが何度かある。自衛のために仕方なく殺したこともあれば、
 依頼を受けて積極的に狩り出したこともあった。
 そのことについて、あたしは決して悔いていたりはしないし、言い訳するつもりもまったくない。

 だが――何故この女はそのことを知っている?
 いや、どうやってその事に気づいたんだ?

 警戒レベルを上げ、少しずつ彼我の距離を開きながら改めて目の前の少女を注視する。
 やや薄汚れた制服姿でこっちを見上げる彼女の――紅い、瞳ッ!!

「ちっ! このジャスミン様とあろうものが、今まで気づかなかったなんてね!」

 いくらアルコールが入っていたからと言って、あるまじき醜態だ。
 さらにバックステップで距離を取り、手を前にして構えを取る。

「何ものだかは知らないけど、やるってんなら相手になるわよ!」

34 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/04/01(土) 20:21:50


弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>33

「ねえ、知ってる? こういう世界にはハンター≠チていう職人さんがいるんだよ」

 スカートの裾を翻してゆらりと振り返る。幽鬼の如き立ち振る舞い。
 宴会客が持ち込んだキャンプライトや電灯はもうない。
 夜を照らすのは街灯の頼りない照明だけだ。
 そんな闇の中、さつきの真紅の眼光が殺意を孕んで輝く。

「あなた……間違っている。あなたは、わたしの綺麗な思い出を汚している。わたしのいた
世界に、わたしのとっても大切だった世界に―――あなたみたいな人殺し、いらないよ」

 一瞬で間合いを取った足捌き。相当量な鍛錬を想像させる構え。
 へえ、とさつきは口端を上げて嘲笑う。ただの人殺しじゃない。訓練された殺人者だ。
 こんなのが、平気な顔してお花見をしているなんて―――駄目、だね。

「いつもはみんなを狩って、食べちゃっているけど……うん、今日はお花も綺麗だし、特別。
みんなを守ってあげる。あなたみたいな外れたヒトを摘出するハンターになってあげるよ」

 見た感じ武器は携帯しておらず、臭いからして仲間≠ナもなさそうだ。
 鍛え抜かれた人殺しではあるのだろうが―――警戒には値しない。
 そう判断して、さつきは一歩前に足を踏み出した。

 次の一歩で、土を蹴散らす。それで距離は詰まった。空気の壁が全身を遮る。それを
押し切って女に肉薄するさつき。―――勢いをつけすぎた。拳を振り上げる余裕はない。
 まだ、自分の運動能力を把握しきれていない証拠だ。一瞬の逡巡。
 だが、すぐに口元には笑みが戻る。

 構うもんか―――と、さつきはおでこを突き出した。

 石頭なんて言われたことは一度たりともないけれど。
 この速度にこの膂力。岩石程度なら楽に粉砕できるはずだ。

35 名前:ジャスミン・メンドーサ(M) ◆m6gPuppetA :2006/04/01(土) 20:55:46

弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>34


「げ……!」

 腕を振り上げる訳でもなく、肩や肘を突き出す訳でもない、無造作にただ距離を詰めるだけの
 挙動に逆に面食らい、反応に僅かにロスができる。
 気づいたときには既に、懐に潜り込まれていた。

 そのまま低い姿勢で突っ込んでくる相手の頭に対し、慌てて腹筋を引き締めるが、

「はぐっ――!?」

 とんでもない衝撃にこらえ切れず吹き飛ばされ、背後の桜の樹へと叩きつけられる。
 こみ上げて来る嘔吐感。
 少し、吐いた。

 衝撃で一気に振り落ちてくる花弁に塗れながら、衝撃に揺れる頭を左右に振り、
 身体をゆっくりと起き上がらせる。

「やってくれたね――! 今度はこっちの番だよ! 出でよ我がゾンビ、ビクトリーカタナ!

 呼び声とともに現れたのは、防毒マスクを着け防護服を着たあたしのゾンビ。
 こいつは普通のゾンビ使いが使うゾンビのようにあるじの代わりに戦うようなタマじゃない。
 背中に背負った大量の武器からその場にあった武器を差し出す、武器商人のゾンビだ。

 ――You may take the weapon, whatever you want.――

 そう言いながら差し出すビクトリーカタナの持つ、シルバートレイの上から一組のサイを引ったくり、
 その片方を目の前の女の子へと投げつける。

「はん、俄かハンター気取りかい。いい気になるのも大概にするんだね!」

36 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/04/01(土) 21:21:14

弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>35

 勢いを十分に乗せて放った頭突きは、女の腹部に綺麗に叩き込まれた。
 確信する勝利。さつきの思考はもう、食事前の調理法≠ノ移っている。
 ―――が、そんな余裕も次の瞬間には霧散。

 闇から生えるよう現れた防毒マスクの人影―――なんて迂闊。相手は本職だ。
 さつきが慌てて身構えるのと、女が引っ掴んだ三又の鉄棒を擲つのは同時。
 瞳は切っ先を捉えているが―――身体がそれに視神経に追い付いていない。
 避けるのは不可能だ。
 さつきは右手を突き出すと、鉄棒を受け止める―――と呼ぶには若干無様に、
掌を剣先の餌食にさせることで、鉄棒の動きを無理矢理止めてみせた。

「痛ぅ……っ!」

 考える―――踵を返して逃げようか。
 相手はさつきの存在に、さして驚きを見せていない。慣れているのだ。
 自分のような非日常の生物を相手取ることを。

 だが、すでに女はさつきの存在を認めてしまった。
 今日、逃げたとしても明日追ってくるはずだ。
 今はまだ、この街から出て行くつもりはない。
 口封じの意味もこめて、やはりこの出会いは無かったことにする≠フが正解だ。

「―――死んでもらうからね、絶対に」

 乱暴に掌から鉄棒を引き抜くと、力任せに投擲。先に女が投げたような、切っ先を
相手に向けての一直線の軌跡ではない。技術もへったくれもない、ただの投擲だ。
 刃が相手を抉ればご愛敬。そうでなくても、鉄が骨を打ち肉を砕いてくれるはずだ。

 更に、さつきは駆け出して鉄棒の後を追う。女は桜の木を背中に背負っているため、
逃げ場は限られている。―――ここで一気にねじ伏せれば、杞憂も無くなる!


37 名前:ジャスミン・メンドーサ(M) ◆m6gPuppetA :2006/04/01(土) 21:46:33

弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>36


 投げ付けられたサイを、女の子はあろうことか手のひらで受け止めた。
 僅かに目を見開いて見せるが、それだけだ。この手の相手をするのは職業柄慣れている。

 引き抜かれたサイが乱暴に投げ返され、くるくると回転しながら宙を舞う。
 そいつをもう片方のサイで弾き――そのまま走りこんでくる相手に対し、
 すぐさまスライディングするように身体を低く滑らせる。

 ――死んでもらう? 冗談じゃないわ。

 大体、こんなお金にもならない仕事で死んでやるほど、あたしは人生投げちゃいないのだ。

 しゃがみこんだままの低い姿勢で伸ばす右足の向く先は、相手の体重を支える脚の、脛の辺り。
 相手の加速を逆手に取った必殺の足払いが、唸りを上げて襲い掛かる。

38 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/04/01(土) 22:02:41

弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>37

 またも女は、さつきの予想に反した行動に出る。さつきは、女が左右の回避動作に移る
ものだとばかり思っていたので「迎撃」―――このパターンへの反応は考えていなかった。
 殴るには、相手の姿勢が低すぎる。蹴り飛ばすには、歩調が不揃い。
 しかし、だからと言って素直に足下をすくわれては―――次の瞬間、鉄棒の切っ先で
心臓を貫かれてお終いだ。
 背後に控える防毒マスクの動きも気になる。

 もはや、どうするもこうするもない。この状況で出来ることは一つだけだ。

 短いかけ声とともに地面を蹴った。紙一重で足払いやり過ごす。だが、疾走による慣性
がついた状態での跳躍は、蹴り足だけに留まらず女の頭上までも軽く飛び越えてしまった。

「……っ!」

 右足を振り上げて、桜の木の幹に靴底を押し付ける。それを力点に、更なる跳躍。
 花弁で埋め尽くされた枝葉の位置まで跳び上がると、空中で反転。
 今度は枝を蹴り飛ばして、女の頭上に襲い掛かった。

39 名前:ジャスミン・メンドーサ(M) ◆m6gPuppetA :2006/04/01(土) 22:34:41

弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>38


 必殺の一蹴りはしかし、相手が飛び上がることで空振りしてしまう。
 そのまま女の子はあたしの頭上を飛び越え、桜の立ち木の方へ。

 ――驚いた。どうやらパワーだけじゃなく、身のこなしも相当なものらしい。
 不安定な空中で身体を捻り、幹を、そして張り出している枝を足掛かりに強引に進路を捻じ曲げ、
 こちらへ襲い掛かってくるじゃないか。
 まるでルチャ・ドーラみたいな動きである。

 だが、プロレス技ならあたしも負けてはいられない。
 咄嗟に手にしたサイを投げ捨て、タイミングを計り、ぎりぎりまで引き付けておいて――

「これでも――くらいなっ!」

 落ちてくる相手めがけて、ラリアットを叩き込んだ。

40 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/04/02(日) 12:55:58


弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>39

 さつきの爪が、女の肩肉を切り裂くその寸前―――僅かに彼女の身体が傾いだ。
 持ち上げられた右腕。測られる間合い。―――タイミングを合わされている。

「あぁ―――っ!?」

 女が何を狙っているのかはさつきにも分かった。が、天地を逆さに滞空するこの状況では
避けることはもちろん、姿勢を変えることすら敵わない。
 剥かれた腕部の牙が喉元に吸い込まれてゆく。首筋に引っかけられた右腕は、勢いを緩める
ことなく力を振り抜いて―――さつきの矮躯を頭頂から地面に叩き付けた。
 超常の膂力を誇る女吸血鬼と言えど、彼女の体重は少女のそれに過ぎない。自らの跳躍の
スピードも上乗せされ、さつきの身体は三度地面から跳ねては落ち、転がるように宴会客
用に設けられた特設のゴミ捨て場に突っ込んでいった。
 半透明のゴミ袋がいくつも蹴散らされ、アルミの空き缶が地面に広がる。

「あ、―――うぅ……」

 頭を左右に振って、定まらぬ焦点、かき乱された思考を正常に戻す。ペットボトルが
詰まったゴミ袋や保冷用の発泡スチロールがクッションとなってくれたお陰で、衝撃は
殺せたが―――先の墜落のダメージまで無にできるわけではない。
 いくらさつきのスピードを利用したと言え、所詮はヒトの力だ。さして深刻なダメージ
はないものの、頸椎には罅が入り、二の腕や肩には火傷のような擦り傷ができた。
 鈍く痺れる痛みにさつきは顔を歪めつつ、すっと立ち上がる。
 女を甘く見ていた。あの速度領域に追い縋ってきた上に、完全にさつきの動きを読み、
タイミングを合わせたのだ。
 一見すればただのプロレス技だが―――あの状況、あの瞬間にクリーンヒットを
決めるには、かなり鍛えた込まれた動体視力や判断力、それに勘が要されるはずだ。
 さつきには、そこまでの分析力は無いため、女の正確な脅威までは感じ取れない。
 ただ、楽に壊せる相手では無い事だけは理解できた。

 無闇に接近するのは危険だ。いくら使いこなせていないとは言え、土台となる肉体の
ポテンシャルはさつきの方が圧倒的に高い。
 何も相手の間合いで勝負をしてやる必要はないのだ。遠距離から力でねじ伏せてやれ。

 かつ、と金属音。―――爪先がアルミの缶を鳴らした。さつきは一度、瞼を閉じて
意識を集中させると―――次瞬には見開き、精神を統一。
 かっかっかっか、と地面に転がるアルミ缶を手当たり次第にシュート。右足を振り
上げては、猛烈な勢いでシュートシュートシュート。
 十数のアルミ缶が牙を剥く。
 しかしこれは目眩まし。弾幕に過ぎない。さつきのシュート力が如何に強かろうと、
所詮はアルミ缶。殺人の手段にはなり得ない。

「―――ああ!」

 次に両手で交互に引っ掴むものは、ゴミ置き場に積み重ねられたポリ袋。軽いもの。
重いもの。生ゴミで満載なもの、と内容物や重量は様々だ。
 さつきはそれを選り好みせず、全て平等に投擲。まるで子供が駄々をこねて手元の
玩具を投げ付けるかのように、投擲投擲投擲。

 ―――もう、まどろっこしい。

「よーいっしょ……っと!」

 更にさつきは、焼酎やワインなどの空き瓶ゴミ専用のポリペールを両腕で持ち上げる。
その重量は先までの個人規模のゴミの比ではない。
 頭上たかだかと持ち上げられたのも、さつきの怪力があればこそ為せるものだ。

「ヒトが出したゴミはぁ―――ヒトの手で持ち帰らないと……駄ぁ目なんだよ!」

 ぶん投げた。
 

41 名前:ジャスミン・メンドーサ(M) ◆m6gPuppetA :2006/04/02(日) 20:05:56

弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>40


 思ったよりも勢い良く、女の子は後方へ吹き飛んでいった。
 そのまま仮設のゴミ捨て場へと突き刺さり――プラスティック容器の拉げる音や、空き缶の転がる
 けたたましい金属音が辺りを騒がせる。

 ……ちょっと、不味いかも知れないわね。

 今の音を聞きつけたのか、辺りが少し騒がしくなってきた。
 野次馬が被害にあうのは自業自得だが、だからと言ってあまり気分の良いものでもない。
 大事にならないように、出来るだけ此処から離れるべきだろう。
 なのに――

「ああっ、鬱陶しいっっ!!」

 ビクトリーカタナから受け取った槍で、飛んでくるアルミ缶のうちこっちに当たりそうな物だけを選んで
 弾き飛ばしながら、悪態をつく。
 缶の次はゴミを一杯に詰め込まれたポリ袋。
 ビニルの切れ端、竹串の飛び出た袋、良く分からない汁まで飛び散って周囲に臭気を撒き散らす。
 直撃は避けているが――散乱するゴミに、次第に足元を塞がれていく。

「って、冗談きついわ!?」

 飛び交うゴミ袋を何とかしてあちらを見れば、相手の女の子が空きビン満載のポリベールを持ち上げて
 大きく身体を反らしていた。
 そのままポリベールは女の子の手を離れ、

 外れた丸蓋が視界を塞ぐ――左手で払い除ける。
 こぼれ落ちたビンが頭上から襲ってくる――穂先と石突で弾き飛ばす。
 まだまだ沢山中身を残した本体を―――

「―――っっっっ!!!?」

 かわそうとした時、偶然踏みつけた空き缶に足を取られ、無様に転倒する。
 直後、ポリベールとその中身があたしに向かって降り注ぎ―――

「ち、ちくしょう……今日は本当についてないわ」

 身体にまとわりつく空きビンとゴミを振り落とし、髪に張り付いたビニルをはがしながら、
 あたしは何とか立ち上がる。
 全身の痛みに、苦痛の呻きが零れた。

42 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/04/02(日) 20:58:47


弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>41

「感謝して欲しいな。わたしがしてあげたお化粧……お姉さん、ずっと綺麗になったよ」

 くすくす、と肩を揺らして笑った。女の中に焦りと苛立ちが生まれ始めていることは、
その表情から十分に見て取れる。
 相手は不意の遭遇戦に、慣れぬ風土が関わっているためか、本調子ではない。その上、
関わり合いのない一般人≠巻き込むことを恐れてか、動きにも躊躇いがあった。
 さつきだけを見ていないのだ。色々なしがらみに縛られている。

 逆に、この制服姿の少女の方はと言うと、自身の立場の危うさも忘れて女を狩ることに
集中してしまっている。敵愾心と嗜虐の愉悦のフィルタが視界を曇らせているのだ。
 そして、そのように女に敵意を剥き出しているさつきだからこそ、相手の反応が
気に入らなかった。―――なぜ、自分だけを見てくれないのか。
 次の瞬間にも殺されるかもしれないと言うのに。その余裕は何処から来る。
 まさか―――見くびっているのだろうか。こんな小娘、本気を出すまでもない、と。
 殺人者としても、女としても劣っている小娘一人、真面目に相手するまでもない、と。

 ぎりっ―――

 先まで侮蔑の情に歪んでいた口元が、怒りにへし曲がる。噛み締めた下唇から鉄の味を
舐めとり、さつきは改めて心に決めた。―――この女、ぜったいに食べてやる。

 あの路地裏や繁華街を囲む住宅地に比べると、さつきがこの自然公園を利用≠キる
機会は少ない。狩り場と呼ぶには付き合いは薄いが、それでも四、五人はこの公園で
美味しくいただいている。―――この公園も、さつきの領地の一つなのだ。
 今までだってたくさん殺してきた。
 殺人者とは言っても所詮はヒト。
 脆い、ヒト。
 殺せないはずがない。

 いざ、とさつきが腰を沈めたその時―――

 さっと闇を切り裂く閃光が走った。
 光はさつきに照らすと、次に女を睨んで、またさつきに戻る。
 人工灯―――懐中電灯の光だ。

「おらぁ! 二人して何を暴れていやがる」

 老齢を感じさせるしゃがれた声。電光の数は二つ。さつきは両腕で光から逃れるように
身を隠しながら、すがめた瞳で声の主を睨め付けた。
 逆光でシルエットしか確認できないが―――男二人。警ら中の警察官ではない。恐らく、
町内会による自治パトロールだ。このシーズンは酔客やチンピラが公園を荒らさぬよう、
持ち回りで巡回しているとかつて耳にした記憶ことがある。

 そうと分かればさつきの行動は素早かった。
 騒がれるのは面倒な上、気勢を削がれた苛立ちもある。
 邪魔、しないでよ―――と、光の照射を避けつつ疾走。
 距離を詰めると、伸ばした右手の爪を大きく振りかぶった。

43 名前:ジャスミン・メンドーサ(M) ◆m6gPuppetA :2006/04/02(日) 21:41:34

弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>42


 「あたしはあんたなんかに気遣ってもらわなくても、十分キレイだっての」

 頭を軽く振って痺れと眩暈を振り払い、改めて相手の方へと向き直る。
 嘲り、怒り、くるくると巡る表情。噛み締めた唇の隙間から覗く、鋭い犬歯。
 その上体が軽く沈み――

 突如、眼を灼く携行ライトの光。
 続いて響く誰何の声。
 現れたのは二人組の――青年と中年。

「ちぃぃっっっ!!」

 舌打ちしながら駆け寄るが、それよりあの女の子の方が早い。
 このままでは問答な事になってしまう。
 足ではあの娘には敵わない。なら―――
 さっと周囲を見渡し、目当てのものを探す。右下45度付近……あった。

 槍の穂先でそれをすくい上げ、相手の顔面目掛けてそれを飛ばす。
 先ほど彼女が投げ付けたポリベールの蓋だ。
 当たったかどうかの確認をせずに更にダッシュ、男たちと女の子の間に割り込んで
 男二人を突き飛ばすために手を伸ばす――

「邪魔だよっ! さっさと逃げな―――!!」

 間に―――合え!!

44 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/04/02(日) 22:09:48

弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>43

 風を切って進む青い影。正確にさつきのこめかみを狙い据えている。
 無視はできない―――振り上げた爪は、当初の目的である目障りな乱入者の喉を裂く
ことをやめ、プラスティック製の蓋を三枚におろした。
 その隙に、女は乱入者とさつきの間に割って入っている。
 乱入者――老年と中年の境目にある男二人――は、さつきの異様なプレッシャーに
圧倒され、言葉を失っている。先までの威勢の良さは消え失せていた。
 女は、自らの危険を犯してまでこんな醜い肉の塊を助けたのだ。
 かっと頭の中が真っ白に染まる。

 ―――どういう、つもりなんだろう。

「そんなのって無いよ!」

 乱入者を突き飛ばした女性―――完全に姿勢を崩している。
 逆上のままに、さつきはその横っ腹に爪先を叩き込んだ。

「あなただって人殺しの癖に……いい子ぶっている! わたしばかり、悪い子にしようと
している! 人殺しの癖に! 人殺しの癖に!」

 壊してやる壊してやる壊してやる壊してやる。―――この場にいる、全員だ!

45 名前:ジャスミン・メンドーサ(M) ◆m6gPuppetA :2006/04/02(日) 22:30:51

弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>44


 鈍い音、鈍い痛み。女の子の爪先が横っ腹に突き刺さる。
 さらに一撃、また一撃。肩に、腰に、何度も、何度も。
 男どもは腰を抜かしたのか、動かずその場で震えている。
 ……ちくしょう、どいつもこいつも。

「邪魔だって言ってるのが分かんないのかい!!」

 状況を省みない二人組を叱り付る。
 最悪なんてものじゃないわ――ただでさえ時間外労働だってのにッ。

 女の子は何が気に入らなかったのか、人殺しがどうとか喚き散らしてるし。
 ああ、もうあの時さっさと帰ってりゃ良かった――。

「人殺し人殺しってね―――」

 何度か蹴りを受けながらも、隙を見てその場から抜け出したあたしは、
 再召喚したビクトリーカタナから一組のトンファーを受け取ると、
 突き出したトンファーの先で相手の頭を殴りつける。

「あんた一々うるさいんだよっ!!」

46 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/04/03(月) 15:11:46

弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>45

 がつり、と頭部に硬質な衝撃。ぶれる視界。崩れる姿勢。
 慌てて焦点定める。見ると、女の両手には――これはさつきでも分かる。香港の
アクション映画で良くみる武器だ―― 一対のトンファーが握られていた。
 いつの間に?
 三又の鉄棒に、鉄槍、そして今度はトンファー。全て意思の輝きを見せぬ防毒マスクの男
から受け渡されている。消えたと思えば現れる、まるで影のような男からだ。
 どんな仕掛けか、超常の理か―――女とそれに追従する男の間には、さつきの常識ですら
及ばぬ力が作用していることは明白だ。やはり、接近を許していい相手ではない。

 鋭いトンファーの一撃は、痛めた頸椎にとどめを与え、さつきの首をへし曲げた。
 頭―――というよりは首の上に乗っかっているもの≠ニ例えた方が正しくなった
さつきの頭部。力を感じさせぬまま、常人ではあり得ぬ斜め後方を向いている。
 が、意思の灯火は未だ健在。肉薄する女の胸ぐらをぐいと掴み上げると、肩で背負い、
全身のばねと筋力を活かして乱暴に―――投げ捨てた。
 一回りは体格の違う南米系の鍛え抜かれた肉体が、何かの冗談のように宙を舞う。
 さつきはぐきりと、両手で折れ曲がった首を正位置に戻す。視線の先には、放物線を
描いて落下する女の姿。

「―――ん、またちょっと力を入れ過ぎちゃったかな」

 女の軌跡の先が地面であれば、その衝撃で全身を砕くことも可能だったろうが、
生憎と女は石畳が敷かれた歩道すらも飛び越えて、広大な妙正寺池に真っ逆さま。
 受け身が取れぬという利点もあるが、着水のダメージでは致命傷は期待できない。
 流れる水がなぜかさつきは嫌いため、深追いも無理だ―――しかたがない。精々、
春先の入水を楽しんでもらおう。時間稼ぎにはなるはずだ。

 ―――その間に、まだ、わたしにはやることがあるもんね。

 振り返ると、そこには未だ状況を掴めぬ男が二人。あの女性が自らの危険を省みず
守ろうとした男が二人。人殺しの癖に、人を守ろうとした偽善の対象が、二人。
 くすり、とさつきは鈴の音を転がすような笑い声をあげた。
 邪気のない笑みは、それ故に異様さ引き立つ。

 ―――ざーんねん。

 そう呟いて、さつきは口元から牙を覗かせた。

47 名前:ジャスミン・メンドーサ(M) ◆m6gPuppetA :2006/04/03(月) 23:00:43

弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>46


 右腕の先に確かな手応えを感じ、あたしは安堵の溜息をつく。
 後味はあまり良くないが――これ以上の犠牲を出すよりはマシだろう。

「自業自得だ―――ぉぉおおおっっ!?」

 さっきの一撃で仕留めたはずの女の子が、
 首の骨が折れ、まともに頭部を支えきれていない状態の女の子が、
 いきなりこちらへ腕を伸ばし、襟首と胸倉をしっかりと掴み上げると、
 振り回すように持ち上げ――

 投げ飛ばされた。

 そのまま弧を描いて身体は木々の間を抜け、歩道の向こう、池の方へと
 飛んで行き――

 衝撃。
 無理な体勢で水の中へと投げ込まれ、平衡感覚がぐちゃぐちゃのまま
 水中をもがき回る。
 苦しい。痛い。冷たい。息が、

「―――ぷはっっ」

 纏わりついた服がムカつく。
 いまだに油断が抜けていなかった自分にムカつく。
 何より、

「絶対泣かしてやるわ」

 超えちゃいけないラインを自分で割っちまったあんたを、あたしは絶対許さない。

 池から上がったあたしの手にはアマゾネスよろしく弓矢が握られている。
 こちらに背を向け、先ほどの二人組に噛り付く女子高生に狙いを定め、弦をぎりりと
 引き絞ると、掴んでいた矢羽根からそっと指を離す。

 放たれた一箭が、夜を切り裂き唸りを上げた。

48 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/04/03(月) 23:44:24

弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>47

 反応が、二瞬も三瞬も遅れた。
 まさか弓まで用意しているとは思ってもみなかったのだ。池から上がってきたとは言え、
所詮はまだまだ距離は遠い。そう油断して食事≠フほうに意識を割いていた。
 それでも紙一重で心臓を射抜かれることを回避できたのは―――偏に、この餌の味が
あまりにまずかったためか。
 今のさつきは、食事にも狩りにもある程度の経験がある。不快感を殺してまで血を啜る
ほど渇いてはいなかった。その余裕が迫る矢を察知させたのだった。
 僅かに身体を捻ることで――その動きだけで精一杯だ――矢はさつきの肺腑を貫くに
留まる。

「か―――ふっ……」

 予想外に鋭い痛みにさつきは顔を歪めた。吸血鬼化して以来、肉体の変異に伴う内面的
な激痛には馴れつつあったが、外的要因による負傷は経験も浅く、それ故に恐怖を喚起を
させるほどに―――痛い。
 それでも無邪気な笑みだけは殺さず、口を開いた。

「ねえ……死んじゃったよ。お姉さんが守ろうとしたのに……二人とも、死んじゃったよ。
おかしいね―――それじゃあ、お姉さんがしたことって、まったくの無駄だよ」

 両腕にはそれぞれ事切れた男が二人、無惨にぶら下がっている。目に見える傷は
首筋が引き裂かれている程度だ。最近になってさつきは「食事」と「学習」を分ける
ようになっていた。人体の破壊には色々と発見がつきものだが―――いまはそれを為す
べき時間ではない。その判断が、さつきに利をもたらした。
 女の放つ矢は鋭く威力にも優れている。心臓を打たれればひとたまりもないと、
さつきの吸血鬼としての本能が告げていた。
 散々、距離を離すことに拘った癖に―――今では、それが逆に仇となっている。
だが、彼女の足とこの盾≠ェあれば接近すること自体はさして難しくない。
 さつきは両手を持ち上げると、二つの屍体を盾代わりに構えた。
 蹴りこんだ地面が土煙をあげる。抵抗する空気の障壁すらも粉砕せん速度で駆けた。
 一度走り始めたら、さつき自身も調整のきかぬ暴走特急よろしくの全力疾走だ。
 馬鹿正直な正面から吶喊だが―――肉の盾がさつきを守る。
 攻守一体の攻撃と言えた。

49 名前:ジャスミン・メンドーサ(M) ◆m6gPuppetA :2006/04/04(火) 00:20:53

弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>48


 ああ、認めようじゃないか。
 男どもは、あたしの油断と慢心のせいで死んだ。
 確かに、守ろうとしたことは無駄になった。
 だけどね―――

「あんたに対する攻撃を休める理由にはならないんだよ!!」

 あんたはあたしが必ずぶっ殺す。

 前面をガードするように二つの死体を持ち上げて構え、相手は一直線に突っ込んでくる。
 いくらこの弓が強弓であろうとも、あれを貫いて本体にダメージを与える事は出来ないだろう。

 だが、馬鹿正直に相手をしてやる必要も、存在しないのだ。

 手にした弓を投げ捨て、今度は二挺のボウガンをその手に構える。
 両方のボウガンにセットされた矢の中ほどには、ピアノ線がしっかりと結び付けられている。
 右手のボウガンをまず一射。間を置かずにもう一射。

 右方向に射出された矢が立ち木の幹に突き刺さり、
 左方向に飛んだ矢が、外灯の柱へピアノ線を絡み付ける。

 ピン、と音を立てて張り詰める一本のピアノ線が暴走する女子高生の
 進路を塞ぐように張り渡され――

「ははっ、クルマは急に止まれない、と」

50 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/04/04(火) 00:59:15

弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>49

 あ、れ―――

  いま、確かに自分は駆けていた。散らばるゴミや石に蹴躓いた覚えもない。
  両足はしっかりと地面を踏みしめて、真っ直ぐに走っていた。
  お姉さんが立っている場所は、まだ遠い。
  なのに、おかしいな。おかしいよ。
  どうして、両手が離れていっちゃうんだろう。
  どうして―――
  わたしの前には、地面が立ち塞がっているんだろう。

 人外の脚力と肉の盾―――つまり、さつきが得意気に振りかざした二つの要素こそが、
彼女を一瞬にして絶体絶命の奈落にまで転落させた。
 肉の盾によって殺された視界。お陰で、さつきは仕掛けられた張り渡された一筋の
鋼糸に気付くこともできず、自らの神速によって鋼糸の切れ味を極限まで研ぎ澄ませ、
―――胴部は境に、二つに分かたれた。正確には左右の腕と上下半身の四つだ。

 何が起こったのか。派手に斬り飛ばされたさつきの上半身は、地面に転がってもなお
自らの置かれた窮地を理解できないでいた。
 虚ろな焦点が正気に定まるのは、銀糸に滴る己の鮮血を確認したその時だ。

「あ、あ、あ、あああ―――あぁ……!

 大地を朱に塗り替えんと溢れ出す血流。
 どうしてどうしてどうして―――さつきは半狂乱の頭で自問する。
 どうしてこんなことになってしまったのか。一瞬前までは、自分が圧倒していた
はずなのに。勝ちはもう、目の前にあったはずなのに。どうして―――

  これは、間違っている。
  こんな結果、認められない。
  反則だ。ルール違反だ。不公平だ。
  やり直さなくちゃ。
  ちゃんとした結果を導くために、初めからやり直さなくちゃ。

「あ、あ―――」

 背後に大敵である女がいることも忘れて、さつきは地面を這った。やり直しをするために。
全てを元通りにするために。分かれてしまった下半身を求めて、這った。
 両腕も肘よりやや先が断たれているため、匍匐に力が入らない。
 ずりずり、と微々たるスピードで近付いて行く。

「どうして、どうして、なんで、こんな―――おかしい、イヤだよ。駄目だよ、こんなの」

 無心に呟きながら進むさつきの跡には、鮮血の絨毯が敷かれていた。

51 名前:ジャスミン・メンドーサ(M) ◆m6gPuppetA :2006/04/04(火) 01:41:54

弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>50


 バラバラになったまま這いずる女子高生を見下ろして、その様に多少の憐憫の情が湧く。
 いくら相手が化け物じみた存在だとは言え、その姿は女子高生の形をとっているのだ。
 姿形で差別するようなものでもないが、やはり心情的にやりきれないものが残る。
 だからと言ってこの存在を許すか、と言えば答えはノーだ。そこまであたしは甘くない。

 傍らのビクトリーカタナに使用済みのボウガンを預け、かわりの得物を掴み取る。
 止めを刺すために必要なのは命中率や射程なんかじゃない。確実に相手を叩き潰す破壊力だ。

 血溜りを踏み越えて近づき、手にした得物を振り上げる。
 両手でしっかりと柄の部分を握り締め、腰と肩で振り回す必要のあるそれは、分厚い刃のついた
 両刃の戦斧。

「こいつで―――終わりだっ!!」

 こいつを叩きつければ流石のこいつも一巻の終わりだろう。
 そう願い、あたしは手の中の巨大な凶器に全身の力を託した。

52 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/04/04(火) 12:41:53


弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>51

 錯乱状態のさつきは、背後で振り上げられた戦斧の存在にすら気付くことは無かった。
 意識の全ては目指す下半身へ。今の彼女にはやり直すこと、五体を取り戻すこと以外
の全てが塵芥―――自身に迫る危機すらも、思考の範疇にない。

  死ぬのはイヤ。死ぬのはイヤ。死ぬのは、イヤ。
  いま、こんなトコでつまらない喧嘩の果てに死んじゃったら―――何のために、
 人を殺したのか。何のために人を食べたのか。人の倫理から目を逸らして、道徳に
  背を向けてまで生≠ノ固執したのか、わからなくなっちゃう。
  全てが無駄になってしまう。
  それは駄目だ。絶対に駄目だ。
  だから、死ぬのはイヤ。

 生きたい―――その無垢なる思考、「指向」にも繋がる一方向への純粋な念が、
無意識下で強大な呪詛となり、さつきの身体を一個の概念武装にまで昇華させた。
 魂に刻まれた文句は三つ。
「死ぬのはイヤ」「生きたい」「誰か助けて」
 強力な呪いだが―――現実に浸食し、具象化して事実≠ねじ曲げるには、
さつきの不死者としての経験が浅すぎる。戦斧を構える女は、正面からその呪詛を
浴びているが、感ずるのは僅かなプレッシャー程度だろう。
 肉体的影響を及ぼすにはまだまだ足りない。

 だが―――血の媒介を通した場合、その抵抗は呆気なく崩れ去る。
 この公園内に、彼女の血に縛られた道具≠ヘ五つ―――いや、七つか。
 さながら魂の超伝導。流れる水の如く、さつきの意思の奔流で彼等は満たされてゆく。
 それはやがて死≠ニ言う一つの制約を突破させるに至った。

 女がその鍛え抜かれた筋肉を総動員して振り下ろした両刃の戦斧。本来ならばさつきの
後頭部に血華を咲かせるはずだったそれを受け止めたのは―――

 先にさつきが吸った≠ホかりの、自治会の男だった。彼女同様に、鋼糸によって
下半身を断たれている。上半身の筋力だけで跳んで、自ら進んで盾となったのだ。
 更に、もう一人の男も女性の足に両腕を絡ませて動きを阻んでいる。

 ゾンビ。グール。リビングデッド。屍人。僵尸。さつきの未熟さ故に感染≠ノは
至らず、かと言って素直に滅≠迎えることもできず、幽世を彷徨っていた死者が
強烈なさつきの心の猛りに呼び戻されたのだ。
 死者反魂。ネクロマンシーは闇の眷属たる吸血鬼の得意とするところだが、当然
さつきには屍術の知識など微塵もなく、それどころか血≠ノよって死者を縛る
術すらも満足に知らない。
 今、この状況で彼等を目覚めさせたのは、絶対の窮地で生じた「生きたい」という
思念。そして、その背景にある潜在的な能力に寄るところが大きい。

 だが当のさつきは、そんな奇跡≠ノ気付く素振りも見せず、ただ己を求めていた。

53 名前:ジャスミン・メンドーサ(M) ◆m6gPuppetA :2006/04/05(水) 15:20:27

弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>52


 決して油断していたわけじゃない。死に掛けの彼女がまさかこんなとんでもない事をしてくるなんて、
 誰も予測出来なかっただろう。
 流れ出た血からは物理的な圧力を伴って押し寄せる、死を呪い、生を呪う必死の叫びが木霊する。
 その叫びが眠っていた死者を強引に呼び覚まし――気がつけば先ほどあたしが助ける事に失敗した
 二人の男によって、必殺の一撃を邪魔されていた。

「こ――――のっっ!! 離れな!!」

 あの女の身代わりとなって戦斧の餌食になった男の方は良い。今度は縦に切断され、のたうち回り
 ながらもこちらに届かないそれは、やがては朽ち果てて行くに違いないだろうから。
 問題は足に絡みついている男の方だ。半欠けとは言え、成人男性の体の重さは相当なものだ。必死に
 脚を振り回そうともがくが、上手くいかない。戦斧を当てようにも、振り回すスペースもない。

 迷わずあたしは戦斧を捨ててビクトリーカタナの方へと手を伸ばし、新たな武装に手を伸ばす。
 鎖付きの鉄球――モーニングスターだ。握りを支点に勢いよく半回転させた鉄球が、鈍い音を立てて
 男の頭部に直撃し、反動で今度は逆回転。大きくのけぞった男の腕に鎖の部分が巻き付いて――

「どおぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁああ!!」

 そのまま満身の力を込めて引っ張り、未だにあたしの足を掴んで離さない男の両腕をひとまとめにして
 潰れよとばかりに絞り上げながら引きずり回す。無茶な力のかかり方をした代償に、モーニングスターは
 あたしの手からすっぽ抜けてしまったが、同時に張り付いていた男の潰された二の腕の部分も耐え切れずに
 ぶっ千切れ、まるで綱引きの綱が切れたときのように、与えられた慣性を維持したまま吹っ飛んでいった。

「……手間を掛けさせるんじゃないわよ、ったく」

 改めて脚を振り回し、まだ張り付いていた腕の残骸を振り落とす。見ればあの女はまだ、ずるずると
 地面を這いずりまわっていた。その距離は約10mと言った所か。本来なら何てこともない距離なのだが、
 今のあいつとあたしの間には、地面の下から這い出てきたゾンビどもが、自分たちの主の所へは行かせない
 とばかりに、その行く手に立ち塞がっている。

 ――そりゃ桜の下には死体が埋まってるって言う話は良く聞くけどね……。

 本当に埋まってるなんて、普通は思わない。ましてや、それが這い出てくるなんて。

 何はともあれ、こいつらを放っておく訳にはいかない。邪魔であると言う事もそうだが、放っておくと
 後が大変だ。二度と動き出さないように全力でぶちのめす。これがゾンビ屋ならば他に手段があるのかも
 知れないが、あたしは傭兵だ。潰す以外に出来る事はない。

 手にした大鎌をその場で大きく振るい、目の前の死者どもと対峙する――
 ……前に、あたしは手のひらの汗をハンカチで拭った。

54 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/04/05(水) 18:03:12

弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>53

 さつきにとって幸運だったのは、この自然公園を「狩り場」としていたのがヒトをやめて
まだ間もない―――所謂なり立て≠フ頃ではなく、ある程度経験を積みコツ≠
理解しはじめていた時期だったことだ。
餌≠損壊させず、残りカスの始末にも注意を払えた。そんな知恵と余裕が身に付いた
時代の餌場だったからこそ―――こうして五匹の従者をさつきは従えることができた。

 三匹は仕事帰りのサラリーマン。一匹は水商売風の女性。一匹は装飾品の目立つ青年。
みな数ヶ月の間、地中で過ごしていたため肌は朽ち、毛髪は抜け落ち、肉は腐っている。
サラリーマンのうちの二匹など、埋めるのが面倒だったかためか池に沈められていた。
 お陰で他の食屍鬼よりも腐敗が激しい。

 そんな五匹の生ける死者が、落ち窪んだ眼窩で狩人を睨み据え、主人の壁たらんと
立ち塞がる。意思の輝きは当然ない。彼等を突き動かすのは、生者への怨嗟、それに
さつきの呪詛―――死の拒絶≠ノ従うことだけだ。
 さしあたってのターゲットは……当然、目の前で大鎌を構える女だ。

 大釜―――死を刈り取る死神の獲物として、あまりに有名過ぎる武器。
 だが、緩やかな弧を作る刃は死者にも有効なのか。
 死神は果たして死人を二度殺せるのか。
 その疑問に解を叩き出すためか、戦闘のスーツの男が走り――動きは疾い――それに
反応して、残りの四匹も好き勝手に跳躍または疾駆。
 大鎌の収穫者(ハーヴェスター)に死の牙を剥く。

55 名前:ジャスミン・メンドーサ(M) ◆m6gPuppetA :2006/04/05(水) 22:05:41

弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>54


 一斉に襲い掛かってこられたらどうしようかと思ったが、幸いこいつらはてんでばらばらな動きで
 こちらへ向かってきている。ならばそれほど苦労する事もないだろう。あたしの場合、人間相手よりも
 こいつらみたいな化け物を相手にする事の方が多いからだ。

「―――よっと!」

 あたしは手にした大鎌の刃と柄の接合部を地面につきたてて、棒高跳びの要領で飛び上がると、眼前の
 スーツ姿の死者の肩に足を掛け、さらに跳ぶ。
 その際残した鎌の刃を、相手の両の脚の間を潜らせるように引っ掛けるとこの通り。股間から肩口を
 抜けた刃がこいつを真っ二つに寸断する―― 一匹め。

 そのまま鎌を振り回し、横合いから飛び出てきた腐乱死体の身体の中央、心臓部分に刃の先を突き立てる。
 ぐちゅり、と言う水音。そのまま背後の立ち木に縫い止めて――二匹目は自重で崩れ、上半身をぶち切れ
 させた。

 そこでビクトリーカタナから新たな武器を受け取り、すかさず背後へとそれを投げ付ける。鋼鉄製の
 ブーメランは唯一である女性のゾンビの頭を打ち砕き、池の中へと落ちて沈んだ――三匹めも、これで
 終わりだ。

 残るは二匹。じゃらじゃらと生前から身に着けたままの装飾品を鳴らしながら飛び掛ってくるそれを
 回し蹴りで迎え撃ち、ひったくるようにして掴み取ったスレッジハンマーでさらに追撃。何度も何度も
 どつき倒し――全身の骨が粉々になる前に四匹めはその動きを止めた。

 最後に残った一匹のために用意した得物はランス――騎乗槍だ。本来はトーナメント用であるそれを
 小脇に抱え、こちらから突撃をかける。串刺しになった五匹めが吹き飛び、溜池の中へと再び叩き落された。

 全ての死体を叩き潰す事に成功したが、余計な行動をとった為に、元凶であるあの女との距離は先ほど
 よりも離されている。
 稼がされた距離を埋めるために、あたしは再び本来の相手の方へと足を向け、スピードを上げ始めた。

56 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/04/06(木) 16:49:24


弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>55

 女の動きは鮮やかな一言に尽きた。次から次へと目まぐるしく持ちかえられる武装。
 手当たり次第に引ったくっては攻撃を繰り出しているようにも見えるが、その状況に
適した武器の選別を瞬時の行っていることは―――女の働きの結果が示している。

 呪いを受けて黄泉返った食屍鬼はなり損ない≠ニ違い、存在に一応の理由≠ェ
与えられている。―――この場合は、さつきの拒絶意思の代行がそれに当たった=B
理由≠持つ不死者は強い。潜在的な能力に指向を持たせられるからだ。
 たかが食屍鬼。それど死の向こう岸に立つ不死者。
常識≠ゥら解放された存在に、ヒトの身で相対できる理はない。

 ―――が、女はその悉くを瞬く間に屠り去った。

 水を得た魚の如く食屍鬼を狩り散らす弁慶女。精々、腐肉の壁程度の役割すら果たせず
再び土へと還る食屍鬼五匹。―――今こそ認めるべきだろう。
 この女はヒトの身にしてヒトの理を踏破している。真の強者だ。

 しかし、さつきの絶望が生んだ食屍鬼の存在は――無能ではあったが――無価値ではない。
 主人に何者にも代え難い奇跡を献上してみせた。―――僅か三十秒余りの時間≠セ。
 その三十秒間、本来ならさつきの身に追うだったはずの業火を肩代わりしたのだ。

 お陰でさつきは―――戻れた。

「……よ」

 両断された上下半身を無理矢理繋ぎ合わせた女吸血鬼。自らの血溜まりを産湯に見立て、
新たな誕生を想起させるかのように立ち上がる。

「―――……いいよ」

 繋ぎ止めたと言っても結合は不安定。血は流れ落ち、臓腑も這っていたときに殆ど零して
しまっている。その上、斬り落とされた両手は再生の兆しを一向に見せない。
 万全の状態ですら、不死者の再生プロセスはうまく扱いきれないさつきだ。満身創痍の
今では、血止めにも集中を要する。両手の再生など過ぎた期待であった。
 望むのならば下半身同様、わかれた両手を再び繋ぎ止めることだが―――さつきの両手は
女の足下に転がっている。
 無い手で拾い接合部を合わせている間に、今度は首を落とされるのが落ちだ。

「……もう、あなたなんて―――死んじゃっていいよ」

 一命は取り留めたものの、不利は変わらず。しかし恐怖の反動によって生まれた憎悪は
さつきの中の躊躇を殺した。怒りに縛られた瞳が女を射抜く。

 ―――決着の時は近い。

57 名前:ジャスミン・メンドーサ(M) ◆m6gPuppetA :2006/04/07(金) 20:35:32

弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>56


 あたしが死者たちにてこずっていた間に、女はバラバラになった自分の身体を繋ぎ直していた。
 とは言ってもその接合は完全じゃなく、両腕が欠けたままの不完全な状態だが。

「死ねだって? ふん、死ぬのはあんたさ」

 いまだに死に損なっている相手の戯言を、あたしは鼻で笑ってみせた。
 軽口を叩きながら、しかし足は止めずに。

「死に方を忘れたってんなら、あたしが思い出させてやるよ!」

 牽制のために十字手裏剣を投擲し、時々棒手裏剣を混ぜて威力を補強する。
 これで終わるとは思っていない。そこまでお粗末な相手ではない事は、今までの事で証明済みだ。

 ならば今度こそ。
 避けられない距離で。
 必殺の一撃を。

 叩き込んで終わらせる。

 走る。走る。走る。
 散りゆく花の下、最後の決着をつける為に。

58 名前:弓塚さつき ◆Bd0/QJxkro :2006/04/07(金) 22:10:13


弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>57

 器としてのカタチだけ見れば、さつきは回復したとも言えよう。
 事実、下半身を取り戻したことで戦闘も可能になっている。
 だが、その回復=\――接合に伴う体力の消費は深刻だ。
 タダでさえさつきは鋼線によって一度半身をぶった斬られている。常人ならばショック死
してもおかしくないダメージに耐えた上に、間に合わせとは言え不慣れな接合処置。
 ―――いつ崩壊≠ェ始まってもおかしくないほどに、彼女は消耗していた。

 両手はいつか生えてくる。ここは逃げての一手こそ新米吸血鬼に取っ手は賢い選択だが、
憎悪と恥辱の果てに殺意の権化となった今のさつきに賢しさ≠ヘ無縁だ。

「もう……わたしは……誰にも奪われたりしないんだから……!」

 そして儚き少女は踵を返す。女に背を向けて駆け出したのだ。そう、脱兎の如く。
 が、そのスピードは今までの跳躍力と比べれば数段見劣りする。息も荒く、加速力も
ヒトの身である女にすら劣っていた。彼女の擲った手裏剣群が見る間に背に殺到する。

 弓塚さつき、まさかの逃亡―――当然だが、そんなことはない。

 モーニングスターの破壊力に耐えきれず、胴から千切れた自治会――のゾンビか――の
両腕。その片方の下まで駆け寄ると、さつきは右手部分を器用に蹴り上げた。
 空中に浮かぶそれを右腕の切断面に無理矢理押し付けて―――接合。
 肉が蠢き、血管が癒着する。
 サイズも切断部も違うあまりに不揃いな右腕の完成だ。神経もうまく繋がらず、五指まで
力が入らない。所詮は間に合わせ―――だが、この場合はそれで十分だった。

 正面に立ち塞がる桜木の幹を、さつきは懐中にかき抱く。まるで包み込むかのように
抱きしめると―――めきり、と人外の膂力に負けた外皮がさつきの腕を内部に沈める。

「う、わあああああああ!」

 そのまま力任せにぶち折って―――横薙ぎに一閃。殺到する手裏剣群を蹴散らした。
 風圧に負けた花弁が桜吹雪を作る。
 過負荷に耐えきれず、無理にした腹部や右腕の接合部から鮮血が吹き出した。
 まだだ。まだ、あと一撃だけ―――

 跳んだ。女を迎え撃つかのように跳躍。彼女の間合いは―――まだ、遙か遠い。長槍を
持ち出しても届かぬ距離。その位置で、さつきは持ち上げた木樹を、

「わあああああああああああああああ!」

 真っ向から、豪快に振り落とした。

(トリップ判定勝負! さつきがジャスミンに勝てばさつきの勝利!)

59 名前:ジャスミン・メンドーサ(M) ◆QMw2Z3ua32 :2006/04/07(金) 23:37:38

弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>58


 女の咆哮が耳朶を打つ。続いて響く圧壊音。
 ――信じられない光景だ。それほど大きい樹でないとは言え、枯れ木ではない、生きている樹木を
 圧し折った上に、それを持ち上げ、跳び上がるなんて。

 ごっそりと抜け落ちた桜の花弁が豪雪のように降りそそぎ、視界を埋め尽くす。
 こうなってしまうと、五感の内、視覚と嗅覚は役に立たない。味覚は最初から意味がない。
 残る二つの感覚、聴覚と触覚――皮膚感覚を最大限に研ぎ澄まし、相手の位置を探る。
 それを補助するのは経験による行動予測。跳び上がった対象とそのベクトルから、おおよその
 位置は推測できる。

 手の中には一振りの日本刀。鞘に収められたままのそれを握り締め、静かに前へと走り続ける。
 3……2……1―――

「きぃぃぃぃぃぇぇぇぇえええええいいいっっっ!!」

 抜刀斬撃、銀光一閃。

 跳ね上がった切っ先が虚空を切り裂き、女の下へと襲い掛かる。

60 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/04/08(土) 16:51:39


弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>59

 振り落とされた樹木の打点から身を逸らしつつ、同時に繰り出した逆袈裟は
正確にさつきの中心を捉えている。攻防一体の抜刀術。
 呼吸。間合い。瞬発力。どれを取っても完璧な一閃。見事な斬撃だった。

 二人を囲む、百花繚乱の桜吹雪に舞う鮮血。桜大樹の幹は気合いの猛りとともに斬り伏せ
られ、その白刃はさつきの胸部深くに埋まり、ようやく勢いを止めた。
 朱に染まりし血桜乱舞。少女の身体は胸に刃をくわえ込んだまま、慣性と重力の為すがまま
に堕ち―――刃を打ち上げた女と、影を重ねた。
 持ち上げた桜幹は接合した右手とともに、とうに地面に捨てられている。

 力なく日本刀の女に寄りかかるさつき―――その口元は、彼女の首筋に沈んでいた。
 そう、首筋にだ。

 ―――惜しかった、ね。

 犬歯ごしに伝わる血液の胎動を吟味しながら胸裏でぼやく。女の刃―――あと数センチ
深く押し斬っていれば心臓に届いていた。
 桜幹の両断が僅かに刃の威力を鈍らせたのか、さつきの生への執着が刃を止めたのか。
 ともかく、その数センチの差が互いの明暗を分けた。

 血液供給によって、見る間にさつきの瑕が癒されてゆく。貪るように吸い付きながら、
さつきは少しだけ口角を持ち上げて―――くすりと嗤った。

 ―――おやすみなさい、永遠に。


(トリップ決戦。B>Qで弓塚さつきの判定勝利)

61 名前:ジャスミン・メンドーサ(M) ◆QMw2Z3ua32 :2006/04/25(火) 10:03:13

弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>60


 ――こんなヤクザな稼業でやってきている以上、碌な死に方はしないと思っていたが、
 最後の最後で無様をさらしたものだ。
 相手が女の子だから? 相手が化け物だから? そんな言い訳が通用する世界じゃないって事は、
 きちんと理解していたつもりだったのだが。

 けどまあ、あたしがここで死んだ事を泣いてくれる奴も、仇を討ってくれそうな奴もいる事だし。
 そう考えればあたしも割と恵まれているんじゃないかと思う。

 酷く寒い。
 このままあたしは命を吸われ、身体はこの女の子(はな)の養分と成り果てる。
 死ぬ。失う。ここで終わる。

「……ぃこ……とぁ……んだ……ょ……」

 言葉が途切れる。
 意識が溶ける。
 暗い。
 消える。


 ―――あたしが、おわる。


 散った。

62 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/04/25(火) 19:14:32


弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ 『花のもとにて』
>>61

 桜は涙の雨とともに流れて、散った。
 花のもとにて行われていた饗宴も、花弁とともに消えていった。
 変わらないのはさつきだけだ。
 春も終わり、暫くすれば桜に変わって紫陽花の季節になろうと言うのに、さつきは
相変わらず独りで夜を往く。時々、思い出したかのように公園を訪れては―――緑葉
を茂らせる桜の大樹を見上げるのだった。
 その木の下には伝説通りに、やはり。

 ―――わたしと一緒になってくれれば、良かったのに。

 あの時、あの場所で、あの女性にさつきは自分の血を与えた。もしかしたら彼女ならば、
夜の寂寥を紛らわす相方となってくれるかも……と僅かな期待を寄せてしまったのだ。
 結果は無惨。
 女の死の踏破は叶わず、食屍鬼として限界に復活する兆しすらみせなかった。
 徹底的に拒まれたのだ。さつきの血を、夜の誘いを。

 なんて、凛々しくて、気丈で、格好良いんだろう。

 くすり、と笑いを零した。

「そんな最期まで強かったあのヒトの血がね、呼んでいたよ。すっごく穏やかに。あれが、
信頼って言うのかな……脅え≠ネんて全然無くて。まるでちょっと喫茶店にでも寄ろうか、
って誘うみたいに―――『後は頼んだよ』って」

 それが妬ける。

 申し合わせていたかのように、背後には指定制服姿の少女が。
 さつきとは違う学校の制服だ。
 さつきは彼女を知っている。あの女性の血≠ェ、彼女を強く語っていた。
 だから―――さつきは無邪気な笑みを浮かべると、吊り上げた口端から牙を覗かせる。

「あなたも、わたしが貰っちゃうよ」

 対峙する二人の少女。空には、闇を濁す灰色の雲が夜空を蓋している。
 梅雨が、訪れようとしていた。


 ―完―
 

63 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/05/01(月) 22:23:04

弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ
『花のもとにて』

闘争レス番纏め
>>29>>30>>31>>32>>33>>34>>35>>36>>37>>38>>39>>40
>>41>>42>>43>>44>>45>>46>>47>>48>>49>>50>>51>>52
>>53>>54>>55>>56>>57>>58>>59>>60>>61>>62


―――やった、初勝利だよ!

64 名前:名無し客:2006/05/07(日) 12:04:39

なんだか昔に比べるとここも随分と冷めたもんだな。
やっぱり「吸血鬼」だけに絞るから昔みたいに「月夜の退廃、血塗れの狂気、不死身」
等に関係しても吸血鬼に無縁だから参加出来なくなったせいか?
俺はやっぱり吸血鬼に無縁でもいいから昔みたいな闘争が見てみてぇよ!
バージル(DMC1・3)とかマグナ(TOD2)とかザヴロン(デイウォッチ)とかの闘争が見てみたい!!

もう「吸血大殲」でなくていいよ。せめて「魔族大殲」でいいじゃんか!!!



と、マジレスをしてみる。


65 名前:名無し客:2006/05/07(日) 12:09:51

>吸血鬼に無縁だから参加出来なくなったせいか?
すまん間違えた。
正確には吸血鬼に無縁な奴らが多かったら、そのせいで参加可能な奴が減ったせいか?
だった。

マジスマン。

66 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2006/05/22(月) 00:54:34

エリ・カサモトvs弓塚さつき 『世界で一番昏い夜』

「最っっ悪だ」
 毒づいてアタシは弾の切れたサブマシンガン『H・A-M3685』を投げ捨てた。投げ捨てられた銃器が穴だらけの死体の上に落ちて嫌な音を立てる。
  目の前には火を吹いて燃え盛る機動兵器の残骸。赤い炎が火の粉を散らして夜闇を退け、累々と転がる死体を照らし出している。
「何が楽なミッションだ。あんのスカタン」
 脳裏に思い描いた上官の顔面に思い切り飛び蹴りを食らわし、倒れたところにストンピングをくれてやる。
 さらに引き起こし、拉げた顔面にナックルアローを叩き込んでぶっ飛ばしたところでようやく気持ちが落ち着いてきた。

 ――本当は他愛のない仕事だったはずだったのだ。

『反逆軍に資金や資源、兵器の横流しを行っている民間企業の粛清』

 今回アタシに下された命令がそれだった。
 表向きは優良企業。裏は兵器の製造企業。反逆軍から技術供与を受け、見返りに資金に資源をご提供。
『そういうふざけた企業の連中を見せしめにぶち殺してこい』
 噛み砕いていうとこうなる。
 ……横流しの証拠はない。確実にやってはいる。公的な機関が介入するに足る、確たる証拠がないだけで。
『それでも構わないから皆殺しにしろ』
 そういうことだ。
 こういう仕事に嫌気が差して『スパローズ』に転属したっていうのに……暗殺班に居た過去はどこまで追いかけてくるってのか……。
 入手した情報によると、腐れ企業は秘密工場で反逆軍と会合を行い、そこで新兵器のお披露目をするらしいとのことだった。
 アタシは必要最小限の武装を手に、腐れ企業と反逆軍の会合に突入し、そこにいた人間全てを抹殺した。
 これで終わりかと思いきや、そこにいた新兵器が動き出した。難を逃れた奴がいたのか、あるいはオートで起動したのか……。
 手持ちの火器を総動員してどうにか仕留めたが、銃器はクラシックマーダー二発を除いて全弾、爆発物の類は全てを使い尽くした。

 ――ここまではまだよかったのだ。精神的にはクソ仕事だったし、肉体的にも新兵器のせいで散々だったが。

『機器の不調および予定外の事態により、本日中の回収が不可能になった』

 仕事を終わらせて帰ろうとしたらコレだ。
 泣こうが喚こうが迎えは明日まで来ないという。

『今回の作戦は非正規であり、君の身は誰も保証してくれない』
『尚、警察公安等に逮捕されても当局は一切感知しない』
『明日の回収まで身を隠して待て』

「最っっっ悪だ」
 全くもって本当に最悪だった。

67 名前:◆zusatinwSI :2006/05/22(月) 02:38:44


弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜――

 ルスラン・オウトシェフは十五年続けたこの稼業がいまようやく実を結び、自分を
地上楽園へと誘ってくれたのだと考えるようになっていた。

 日本はルスランにとって実に都合のよい国家だ。
 LAに比べると夏は蒸し暑く、冬は寒すぎる風土だが―――いまは亡き祖国を思い出せば
この程度で不平が漏れるなどあり得ない。これ程までにサービスが行き届いた国家でありな
がら法の目はザルに等しく、司法権力は我々の存在についてまったくの無知でいらっしゃる。
 その癖、警察機関は無駄に優秀なため―――外敵への脅威は、彼が経験したLAや、
コロンビア、フィラデルフィアに比べるまでもなく低い。
 実にすこやかで平穏に満ちた日々を送れた。
 まるで自分と言う人間の罪深さを神様がど忘れしてまったのではないかと勘繰ってしまう
ほどだ。まさかこの人生において、護衛もつけずに真っ昼間から繁華街に飛び出しては、
片言の日本語で戯けてみせて、東洋の少女達に笑いの餌を撒いてやることができるなんて。

 チェチェン派のロシアン・マフィアである彼は、祖国崩壊の折りに使い道を失い地下に
燻り続けるようになった「兵器たち」に新たな活躍のチャンスを与えやる死の商人だ。
 人使いの荒いモスクワの中央連中の命令に従って全国に死を振りまいてやっていた。
 そしていま、ようやくにして安住の地を得ることが出来たのだ。

 ルスラン・オウトシェフ。日本国での彼の立場は燦月製薬会社のコンサルティング
アドバイザーであり、イノヴェルチに堂々と名を連ねる者でもあった。
 燦月製薬が行う非合法物資の密輸入の殆どは、ルスランのパイプを経て行われる。
 いまいちイノヴェルチの存在を理解できていない彼だが、中央が燦月製薬との良好な
関係を保つことを熱烈に期待している現状では、暫くはこの巨大な企業の手足となって
働いてみるつもりだった。

 扱いは重役待遇。Sクラスのメルセデスが運転手付きであてがわれ、住居は完璧な
セキュテリティが施された超高級マンションとあらば、それを拒むのはナンセンスだ。
 もはやルスランはこの極東の国で骨を埋めるつもりですらあった。

 そんな絶頂な日々が続くある春先のことだ。燦月の上層部のお偉方から、プルトニウム
と核開発技術者を数人見繕って欲しいと頼み込まれた。
 モノ自体の価値はともかく、さすがに穏やかではない話だ。少なくともこの日本国では
必要ある資源/人材とは思えないし、燦月がそれを必要とする理由もない。
 詳しく話を聞くにより、ようやくルスランはなるほどと納得を示す。

『去る叛逆国家への資金/資源のプレゼント』

 燦月の裏の事業内容の一つだった。

 インターネットの海に潜ればコーラの精製法から核爆弾のおいしい作り方まで分かって
しまうこのご時世。旧共産圏の時代遅れの核技術と、密封性の甘いプルトニウムを欲しがる
なんて随分と酔狂な国家だが―――あくまで「我等は核兵器を作る意思があり、その手段も
ある」と諸外国に見せつける分にはそこそこ有効だ。
 サラリーを頂いて生活の糧を得るルスランに燦月の要請を拒む理由は無く、それほど
難しいオーダーでもない。むしろ核資源など採算の合わぬ代物が捌けて好都合なほどだ。
 二つ返事で了承した。

 となると、話は次のステップへと移る。叛逆国家のエージェント様との密会だ。
 燦月の方でも独自に色々と用意立てているらしく、初回の密会でのルスランの役割は
面通しと受け渡し方法(日本では当然無理なため)を詰める程度である。責任は少ない。
 今回はまだ、俺は脇役だ―――と特に気負いもせず、ルスランは自宅から運転手に
命じて会合場所へと走らせた。


68 名前:◆zusatinwSI :2006/05/22(月) 02:39:29


>>67

 夜を往くメルセデス。高速道路のインターに乗り込もうとしたその時、ルスランの
悪癖が自制心を侵し始めた。不幸は、運転手が有能なためか、予定の時刻よりも大分早く
道程を進んでしまったことになる。
 ルスランはあまり待つという行為が好きではない。あくまで脇役に過ぎない密会で
遅参しても大した咎めは受けないと分かっているなら尚更だ。
 現地で過ごす退屈な時間は少なければ少ないほどいい。

「ドライバー。繁華街へ少し寄ろう」

 日本語は片言も喋れない。流暢な英語で運転手に話しかけた。運転手は無駄な言葉は
紡がず、言いつけ通り進路を変えた。

 ルスランの悪癖。本人は認めていないが、若干ながらも彼にはペドフィリアの気がある。
 小娘を力に任せて征服することに何よりの快感を覚えてしまうのだ。
 日本の女達はハイティーンでもまだまだ外見的には幼い。ルスランの嗜虐心を満たす
には十分な素質を有している。
 少女娼婦の存在が希少な日本の風俗には何の期待もしていない。彫りの深い顔立ちと
流れるような金髪。染み一つ無い白き肌に、2メートル近い体躯。時代が時代であれば
軍の広報部将校として活躍できたであろうこの容姿を用いて現地調達するまでだった。
 少し気になることと言えば、夜も更けているためルスランが目当てとする年齢層が繁華街
を不用心に歩き回っているかどうかだが―――それは杞憂に終わった。
 メインストリートから臨む夜も眠らぬ街では、目を凝らすまでもなく少女達が制服姿で
悠然と青春を謳歌する姿が多数確認できたからだ。

「まったく、天国ってのは無垢であるためにこうも危なっかしいものなのかよ」

 野卑た笑みを浮かべつつぼやくと、メルセデスを更に奥へと進ませた。フットワークは
重くなるが、この国では車も立派なアイテムの一つだ。活かさぬ理由はない。

 やがて彼の鷹の目が一人の少女に目を付けた。

 人混みの中を、特に当てもなく歩く鳶色の髪。化粧っけの無い肌は病的なまでに白い。
 だが二つの瞳は強烈な意思を真紅に灯し、愛嬌のある顔立ちは男心を程よくくすぐる。

 ―――あれに決めた。あれは上玉だ。今まで抱いてきたアバズレとは気品が違え。

 纏った制服はくたびれており、肌や髪も暫く手入れをしていないのか少女の外見から
は貧相な印象を受けた。だが育ちが培った清潔感がそれを圧倒している。清貧の美だ。

 ―――あれは様子を見るに家出少女だな。うまく口説き落とせば俺の家で飼える。

 ちょうど情婦が一人、欲しかったところだ。

「ドライバー。あの娘の脇に寄せてやってくれ」

 踊る口調で指示を出す彼の頭の中には密会先の工場で、人目を逃れて行われる秘め事
の様子で埋め尽くされていた。

69 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/05/22(月) 02:40:01


弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜――

>>67>>68

 ルスランの「現地調達」は彼が望む以上にうまい具合で収まった。運転手に通訳をさせ、
軽薄を気取りながらも、あくまで自分はキミだけに興味を示したことを強調し、警戒心を
和らげる――整った顔立ちを持つ者のみが許される――剽軽な立ち振る舞いを駆使すると、
少女は餌を与えられた子犬のように、素直に後部座席に滑り込んできた。
 このメルセデスはかぼちゃの馬車仕様。少女は日が変わるその時まで、お姫様へと変貌
を遂げてみせたというワケだ。

 但し、彼女を元の姿へと戻したのは十二時を告げる鐘ではなく、甘美なる鮮血の誘い。
 その行為は、密会の場となる建築物の地下駐車場。メルセデスの中で、運転手も交えた
三人で行われた。
 一方的な征服行為は、情動と膂力を未だ扱いきれていないためか、暫くの時間を有した。
 嬲られながらも確実に命が潰えようとしていたその瞬間、ルスランは牙を剥いて己を
食い散らかす少女の姿を見て―――憎々しげに呻いた。

  ―――モスクワの同志たちが異様なまでに執心した夜魔の森の女王=B
  タイプ・ヴァンプ。―――絶滅危惧種だ何だと言われてやがるから、そうそうお目に
 掛かるもんでもねぇと思ったのに……何だよ、イマドキの女学生の中にだって紛れてい
 やがるじゃねえか。やっぱり、中央の頭は古すぎて……いけ、ねえ……や……。


 メルセデスの車体の揺れが収まる。後部座席のドアがゆっくりと開かれると、そこから
姿を見せたのは、襟元や胸、顎などに食いカスをこぼしてしまった°|塚さつき、
ただ一人だけだった。
 打ちっ放しのコンクリートに四方を囲まれた広大な地下駐車場。さつきはまるで異世界
へと紛れ込んでしまったアリスのような面持ちで周囲を見渡してから、首を傾げた。
 久しぶりの食事≠ノ集中するあまり、あの白い馬肉が連れていってくれると言った
「夢の国」とやらが一体どこなのか確認するのを忘れてしまった。
 興奮と狂気を律するのに意識の大半を割いていたため、移動中の記憶が曖昧だ。確か、
高速道路に乗り付けていたような気はする。ということは、つまり―――

「え……わたし、もしかしたら―――歩いて帰らないと、いけないのかな……」

 呆然と空を見上げるが、夜空は天井に遮断されて見えない。ただ珍しい餌がいる、
というだけで理性を失い迂闊にも見知らぬ男の車に乗り込んでしまうなんて。
 今更ながらに、さつきは自分の注意力の薄さに反省した。
 知らないヒトの車に乗ったら危険です。そんなのは基本なはずなのに。

70 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2006/05/22(月) 12:25:17


弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜――

>>69

 仕事が済んだら速やかに撤収するのがセオリーだ。
 通常なら何らかの移動手段が確保してあるものだが、――今回は無い。

 アタシは舌打ちして地下駐車場へ足を向けた。
 場所が場所だけに徒歩で離れる気にはなれなかった。なにせ人里から遠く離れた山間部の僻地である。夜間に軽装で歩きたくはない。
 適当な車をかっぱらってそいつでここを後にしようと考えた。
 機動兵器の松明から蛍光灯へ明かりが移り変わり、打ちっ放しのコンクリートで囲まれた地下駐車場が視界に広がっていく。
 やたらと広い駐車スペースには、普通車から高級車、さらには特殊車両の類までがずらりと停められていた。選り取りみどり。
「もしかしたらメタルスラッグもあったりして」
 くだらない冗談を一人で言って苦笑する。流石にそれはあるまい。
 どれにしようかな、と車を見繕っていると……
 背後で何か気配がした。
 咄嗟にクラシックマーダーを抜いて振り返る。
 そこには――

71 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/05/22(月) 19:31:05


弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜――

>>70

 高速道路に乗り込んだ事実や乗車時間を考えたら、現在地が三咲町から遠く離れている
であろうことぐらいはさつきにも分かる。距離は大した問題ではないのだ。
 やったことは無いため分からないが、彼女が本気で走れば新幹線―――とまでは言わず
とも、一般的な乗用車の走行に追い付く程度のことはできる。トラックか何かのコンテナ
に紛れ込んで、町の近くまで送ってもらえればそれで良い。
 ただ、現在地が掴めないというのが―――彼女からすると非常にまずいのだ。吸血鬼
の研ぎ澄まされた感覚は持てども、さつきは転化≠オてから三咲町より外へ一歩も
出たごとがない。未だ人間だった時分ですら町の外へ出ることなどそうそう無かったのだ。
 なんだか自分を庇護してくれる殻から強制的に孵化させられた気分だった。
 不安……とまでは言わないが、非常に落ち着かない。

「時間は―――」

 そう、距離と位置の他にも、いまのさつきには気になることがある。

 メルセデスの後部座席に上半身だけ突っ込み、ルスランの左腕だけ持ち出した。手首に
巻かれたパテック・フィリップから現在時刻を確かめる。
 鮮血に汚れた文字盤は、午前一時四十五分を示していた。
 夜明けまで、まだ少し時間がある―――が、道筋の分からぬ帰路を進むには心許ない。
今晩はここで過ごし、次の夜更けを待ってみようか。別に急いで帰る理由もないのだから。
 いや、そもそも三咲町に帰る必要自体ないのではないか。

 ―――別に、あの町で自分を待っているヒトなんて誰もいないもんね。

 ただ、少しでも近くにいたいヒトはいた。僅かでも近付きたい彼がいた。最近の三咲町
の空気はあまり面白くないけれど、やはり町から出て行くことは考えられない。

「でも、そうするとヒマだなぁ……」

 路地裏の生活も決してメリハリのあるものでは無かったが、地下駐車場に閉じ籠もるより
も幾らかマシだ。さつきは運転席の残飯≠無造作にのけると、イグニッションキーを
捻ったり、カーナビを弄ったりして現在地を確かめようとした。
 今のうちに帰り道を探しておきたい。
 だが、うまくエンジンが掛からない。きゅるきゅるとバッテリーが動いているのは分かる
のだが、そこから先に進んでくれないのだ。カーナビの液晶も変わらず闇に染まっている。

 ―――そもそも車の運転なんてしたことないんだから、分かるはずないんだ。どうして
地図とか置いてくれないのかな……。お父さんはいつも助手席のわたしやお母さんにナビ
してもらっていたのに。

「ああ、もう!」
 べきり。
「……あ」

 勢い余ってイグニッションキーをねじ切ってしまった。

 びしり。
「……あ、あ」

 更に、調子を確かめるためカーナビを軽く叩いたら液晶が粉砕した。

 更に更に、フロントガラスを軽くこづいただけで蜘蛛の巣状の亀裂が走り、狭い車内で
フロントドアをつい蹴飛ばしてしまったら、根本から折れてコンクリートの地面を叩いた。

「え―――これ、私が悪いのかな。ベンツって確か頑丈な車だったよね……?」

 これ以上車内に留まったら、高級車がスクラップをしてしまう。いくら所有者の命を
壊してやったとは言え、愛車までも破壊するほど非道ではない。慌てて車外に飛び出した。

 ―――と、その時。

 さつきの鋭い聴覚が、コンクリートの床を打つ足音を捉えた。本人も意識しているためか、
今にも空気に溶けてしまいそうな音だが、その奏でるリズムは明らかにヒトのものだ。
 取りあえず、制服にこびり付いた血糊を隠すため、運転手のジャケットを剥ぎ取る。
これも渇いた鮮血でぱりぱりになっているのだが、色調がダークなためそこまで目立たない。
 軽く羽織って、足音のする方へと駆け寄った。

  ええと―――わたしは別に怪しいヒトじゃなくて。道に迷っちゃっただけで。ここが
 どこか教えて欲しくて。良ければ三咲町への帰り道も教えて欲しいだけの善良な一市民。
  わたし、別にお腹は減ってないから……通りすがりの通行人サンは気持ちよく質問に
 答えてくれたら笑顔でバイバイ。もし、なんだか絡んできたら―――

  いいや。その血に直接訪ねちゃおう。
  残った身体は、一晩掛けて色々と遊んであげればいい。
 

72 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2006/05/22(月) 21:55:07


弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜――

>>71

 振り向いた先には、ジャケットを羽織った制服姿の少女が居た。
 ツインテールに結った髪、愛嬌のある顔立ち、そして乾いた血のついたジャケットと血痕が見え隠れする制服。
 ここの関係者か、あるいは関係者の情婦か。 何にせよ血生臭いことになったのは間違いなさそうだ。
 まあ、そんなのアタシには関係ない。関係ない、が。

 ――目撃者を生かしておくわけにはいかない。

 不運な少女が第一声を発するか否かのところでアタシは銃弾を送り込んだ。
 ぱぁん、と乾いた銃声が地下駐車場に響き渡り、少女の額に小さな穴が開く。
 本当に、クソ仕事だ。嫌になる。

73 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/05/23(火) 11:40:22


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――世界で一番昏い夜――

>>72

 地下駐車場に現れた人物は、殺風景な景観に似合わぬ整った容姿の持ち主だった。
 高い背丈に豊かなブロンド、モデルのようなボディライン。日本人離れした顔立ち。
 美しい、という言葉が陳腐に思えてしまう。同性のさつきの目から見ても惚れ惚れ
してしまうほどの女性だ。

  わあ、すっごい。わたしと身長差10センチぐらいありそう。
  日本人、だよね……?
  何を食べて育ったら、こんなになれるんだろう。
  ここまで美人さんだと、悔しいとか羨ましいとか思えないよね。
  ひたすら尊敬しちゃうよ。

「あの―――」

 さつきは得意の邪気のない笑顔を浮かべて、相手の警戒心を和らげる。驚かせて
しまうかもしれないが、敵意を感じさせない態度は彼女の得意とするところだ。
 ちんちくりんだからこそ作れる、柔和な雰囲気だってあるはずだもん、と無意味
に張り合ってみた。

「ここって、ど―――」

 額に衝撃。あれ、と疑問を抱く暇もなく―――意識が削り飛ばされた。血色の双眸は
突き付けられた銃口から覗く深淵を、不可思議そうに眺めている。
 それが何を意味するものなのか、理解できていないようだ。

 視界が外殻から闇に侵され、やがて完全にブラックアウトした。鋭敏なはずの五感も
徐々に鈍り、やがて精神と外の世界を結びつけてくれる神経は活動を停止する。
 さつきは一人、闇に取り残された。

  感じる。
  感じられる。
  ただ、血流の胎動だけが。

 意識が途絶えていたのは数分か、はたまた数時間か。擬似的な死と必然の蘇生を並行
して行った不死の身体が、さつきを目覚めさせた時―――彼女はまだ、自分が置かれた
状況を掴めないでいた。
 いま、一瞬別の世界に飛んじゃっていたような。精々、そう訝しむ程度だ。

 ―――ま、いいか。

 金髪の女性は未ださつきの目の前にいる。
 現実の時間では十秒程度しかさつきは死んでいなかった=B

「あ、うん……ええと、なんだっけ。あ、そうそう。帰り道―――じゃなくて、まずは
そう、ここが何処なのか。……ああ、なんでこんな記憶が曖昧なんだろう。
 ―――と、とにかく! すいません、お姉さん。ここってどこだか、分かります?」

 変わらぬ笑顔でさつきは言った。

74 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2006/05/23(火) 15:23:44


弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜――

>>73

『あ、うん……ええと、なんだっけ。あ、そうそう。帰り道―――じゃなくて、まずは
そう、ここが何処なのか。……ああ、なんでこんな記憶が曖昧なんだろう。
 ―――と、とにかく! すいません、お姉さん。ここってどこだか、分かります?』

 ……ありえない。
 生身の人間が正面から眉間に銃弾を叩き込まれて死なず、さらに話し掛けてくるなんて事は、ありえない。
 それも笑顔でだ。何かの冗談としか思えない。
 だがしかし、――現実だ。アタシがいきなり白昼夢(といってももう夜なのだが)でも見ていない限り。

 ……アレだ。少女の頭蓋骨がたまたま物凄く堅くて、銃弾が弱装のヘロヘロ弾だったのだ。
 そうだ。きっとそうに違いない。

 重ねてだが、”目撃者は生かしておけない。”
 弾は残り一発。
 アタシは、物凄く幸運だけど不運な少女に再び銃弾を撃ち込んだ。

75 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/05/23(火) 22:10:08


弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜――

>>74

 今度は見えた=B
 先程の前後不覚に疑問を覚え視神経は鋭敏に研がれている。また、金髪の女性の
僅かな動揺が、さつきに機転を利かせる余裕を与えてくれてもいた。
 再び向けられた銃口。指にかかる銃爪。
 へえ―――さつきは好奇心を刺激され、感嘆の笑みを漏らす。

  これ鉄砲だよね。ホンモノ?
  うわあ、始めて見ちゃった。

 そして、

  始めて撃たれちゃったね。

 銃爪に定められた重圧がかけられるのと同時か一瞬早く、さつきの右手が弾けた。
抵抗する空気の壁を力で粉砕し、銃口から撃ち出された鉛弾を握り込む。
 タイミングは良かった。が、疾さが足りない。
 銃弾が手の甲を穿った。肉の障壁が銃弾の軌跡を下方に逸らす。音速の牙はさつきの
肩肉を削ぎ取り、その衝撃によって数歩後ずさらせた。

「っ……」

 擬似的な死を与えるまでにダメージでは無かったため、当然激痛が体内を駆けめぐる。
暫く忘れていた火照り≠ニも取れる内部から湧く熱を、さつきはこの痛みから感じた。
 傷口が燃えるように熱い。
 これが痛み。
 転化の代償による内なる鈍痛とはまた違った、新鮮な刺激であった。

「―――酷いこと、するんだね」
 わたしを殺したいの?
「見て……ねえ、血だよ。わたしの、血。せっかくたくさん補給したのに、どんどん
こぼれて行っちゃう。さっきも生き返るためにいっぱい消費しちゃったみたいだし」

 僅かに怒りを孕んだ眼が、金髪の女を睨め付けた。

「これ、もちろん弁償してくれるんだよね?」  

76 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2006/05/24(水) 13:49:06


弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜――

>>74

『―――酷いこと、するんだね』
『見て……ねえ、血だよ。わたしの、血。せっかくたくさん補給したのに、どんどん
こぼれて行っちゃう。さっきの生き返るためにいっぱい消費しちゃったみたいだし』
『これ、もちろん弁償してくれるんだよね?』

 手と肩に銃創を作り、”物凄く幸運だけど不運な少女”改め”人外の少女”は怒りの篭った目でアタシを睨み付けてきた。
 弾切れのクラシックマーダーを突きつけて睨み返す。背中には嫌な汗が浮かび始めていた。
(これは……マズイな)
 人型で銃弾を受け止め、かつ腐ってない。
 反逆軍の化物曹長みたいな類の人間でなければ……おそらく吸血鬼だ。
(最っっっっ悪だ)
 残弾ゼロ、手榴弾ゼロ。さらには距離が近い。
(目撃者は生かしておけないどころの話じゃないわね……)
 これじゃむしろ自分が生きて帰れそうにない。

 ……どうする?

 選択肢その一。逃げる
 走って逃げ切れる相手じゃない。
 車を使おうにも、一番近くにある車をスタートさせるまでに殺される。

 選択肢その二。諦めて弁償する
 少女が必要な血液量がアタシの致死量以下ならあるいは助かるかもしれない。
 が、致死量を上回る可能性の方が高く、なおかつ吸血鬼に血を吸われることは同類に堕ちることと同義だ。

 選択肢その三。徹底抗戦
 弾切れのクラシックマーダーに、手斧、トンファー、それから兵装開発部に押し付けられたナイフ。
 これらの武器でもって眼前の少女を殺す。
 夜の吸血鬼相手に接近戦を挑む。……無謀極まりない。
 極まりない、がこれが一番生還出来そうな選択肢だ。

 ――アタシは選択肢その三を選んだ。

 死にたくなけりゃ殺るしかない。
 弾切れのクラシックマーダーの撃鉄を起こす。がちりという音がこっちの意思を分かりやすく少女に示す。
「悪いけど踏み倒させてもらうわ」
 引き金を引く。
 ガチンと撃鉄が空薬莢を叩く音だけがした。弾は出ない。当然だ。弾切れなんだから。
 これはハッタリと牽制。素人さんには弾が入ってるかどうかなんて一目で分かりゃしない。
 アタシは連続で引き金を引きながら少女に向かって突っ込み、左手で懐中の手斧を掴んで少女の顎をカチ割らんと下から振り抜いた。


77 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/05/24(水) 20:38:38


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――世界で一番昏い夜――

>>76

 二回も銃撃を受けて、さすがのさつきも拳銃の弱点に気付いた。それは銃口の前に
立たない―――つまり、弾丸の進行方向から逃れれば銃弾は当たらないということだ!
 音速で飛来する弾丸を防いだり避けたりするのは難しいが、銃口の斜線上に立たない
ぐらいのことは、人外の身体能力を持ってすればそう面倒でもない。

 ―――えへへ、頭いいでしょ。

 金髪の女性はさつきの予想通り、鮮血の賠償請求を拒否して三度拳銃を突き付けてきた。
 撃鉄が上がる。張り詰めた全身の神経がぴりりと痺れにも似た刺激を訴えた。
 確かに痛いし速いけど、もう通用しないよ。さつきは胸裏でせせら笑う。発射から着弾
までにタイムラグがあり、更にその弾道も銃口を見据えれば大体の見当がつく、とあれば
拳銃もさして恐るべき凶器ではなかった。

「わたしはほんと、その美味しそう首筋に噛み付かせてもらえるだけで、許しちゃうつもり
なんだよ? でも、あなたがどうしても殺し合いをしたいのなら……うん、しよっか」

 銃爪が絞られ、撃鉄が落ちた。さつきの身体は大きく横に飛んでいる。これだけ派手に
跳べば、当たりはしないだろう。
 ―――あれ。でも、おかしいよ。
 先程までには地下駐車場に残響音を谺せていた銃声が、鳴らない。
 回転式拳銃の撃鉄が更に数度落ちる。訝しみつつもさつきは素直に、弾道の斜線上から
身体を引いて回避行動を取った。やはり銃声は響かない。

 ―――あ、まさか。

「騙されちゃった?」

 ただの脅し。
 そう気付いたときには、女性は眼前まで肉薄していた。
 疾い―――人間なのにこんな動きができるなんて!
 かつては同じ人間の身であったさつきの、理解の範疇をこえたスピードだ。

 そして斬り上げられたのは、鉛弾の一発や二発よりも余程に威力がありそうな無骨な
片手斧。斧? 死んじゃうよそんなの! 美しい女性には似合わぬアンバランスな武器
に恐怖を覚えつつ、さつきは重心を後方に流した。
「わあ!」と後ろに倒れ込み、紙一重でかわす。
 そのまま器用にくるりと後方一回転。勢いに任せて跳ね起きた。

 この流れ。追撃をかけられたら、畳み掛けられてしまうの明白だ。戦闘経験など皆無
に近いさつきだが、その結果訪れるものが死であることぐらいは分かる。
 慌てて両腕を持ち上げるとまずは右、それを振り切った直後に左の拳を突き出した。
 パンチと呼ぶにもおこがましい素人技だが、持ち前の膂力がそれをカバーし、コンク
リート程度なら容易く粉砕できる一撃となっている。

 ―――いくら鍛えていたって、あなたじゃわたしに勝てるはずないんだから!
 

78 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2006/05/25(木) 02:25:35


弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜――

>>77

 奇襲先制で繰り出した攻撃が空を切った。
 ヤバい。
 初撃を叩き込んで返す二撃目で仕留めるつもりがアテが外れた。
 かわされたってことは少女は生きてるってことで。
 生きてるって事は、今度はこっちが仕掛けられるってことなわけで――!

 眼前に迫る大振りな右のパンチ。
 素人丸出しのフォームのくせに矢鱈と速い。
「くッ!」
 手斧を振り下ろすのをやめて、後ろに下がる。
 少女の右手が空を切った。ぶおん、とスレッジハンマーでも振るったような音がした。まともに喰らえば一発で終わるわね、こりゃ。
 ――喰らう前に殺る。
 おあつらえむきに少女は空振った右手に上体を持っていかれている。
 心が痛むがその脳天に一撃を喰らわせようとして、少女が左腕を無造作に打ち出そうとしているのに気づいた。
「うぉッと!」
 再び後ろに、今度は大きく下がった。一瞬遅れで少女の左腕がアタシの居た空間を突き抜く。
(こりゃ迂闊に近づけないわね……)
 クラシックマーダーをホルスターにしまって右手を空け、は少女の様子を窺う。
 さて、どうくる?


79 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/05/27(土) 05:04:04


弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜――

>>78

 その威力は砲弾かはたまた鉄槌か。人外の膂力によって繰り出される二つの拳を、金髪の
美女――しかも、ややトリガーハッピー気味――は後方に跳ぶことでかわした。
 両腕は虚しく空を切る。
 かわされた。わたしのほうが絶対、疾かったのに。―――金髪の女性には未知数の部分
があったが、身体能力に限って言えばさつきが圧倒的に勝っている。
 なのに、どうして当たらないの。―――不条理な現実。鍛錬によって培われた女性の
機敏な動作は、さつきの目には「何か仕掛けがある」ずるい手品のように写った。

 完璧なプロモーションと流れる金髪。拳銃と優れた格闘術。吸血鬼の攻撃をも避けて
みせる流麗な動き。まるでアクション映画のヒロインだった。
 彼女を見ているとなぜか、自分が酷く卑しい存在であるかのような錯覚を覚える。
 劣等感。
 美貌だけならいい。そんなもの、いくら自分を飾り立てても所詮わたしは弓塚さつき。
限界はあると人間の頃から気付いていた。
 だが全てを捨ててまで吸血鬼となったいま、唯一得た特権≠ワで脅かされようと
している。人を圧倒する破壊力まで彼女には効果を示さないと言うのなら、この金髪の
女性は本当の意味での「完璧な人間」になってしまうではないか。
 そんなのは、狡い。
 そんなのは納得がいかなかった。

 さつきの目から、余興を愉しむ色が消えた。常に自分の身を叩き、屈服させんとする
不公平≠ニいう圧力。それに対する憎悪が血液を沸騰させる。
 弓塚さつきはいま決めた。彼女を征服してやる、と。

 完璧な人間。完璧な女性。その存在は、許容してあげてもいいかもしれない。ただ、
それを屈服させ、自分の所有物にしておかないと―――気が変になってしまいそうだった。
 ヒトとしても女としても不完全な弓塚さつきなど、存在ごと消えてしまいそうだった。
 だから征服する。完全を、不完全が。

「あ、は」全身から殺気をみなぎらせながらも、不思議と無邪気に笑えた。「わたし、
なんだかあなたのこと気に入っちゃったみたい。初めて会ったヒトにこういうこと言う
のは変かもしれないけど―――予告するね。わたし、あなたの全部を……もらうから」

 となると身体は下手に破壊したくない。食事を散らかしてしまう&ネがなかなか
治らないさつきにとって、それはかなり困難な希望であったが―――やれるはずだ。
 自分も、あのヒトと同じ人殺し≠ネら。

 離れた間合いはあえて詰めない。むしろ近付いたら不利なのはこちらのような気さえ
した。力で勝っているのは確実なのだから、間合い外から攻めればいいのだ。が、手も
足も相手のほうが遙かに長い。それはもう見せつけられるほどに。通常のリーチでは
いくら気張っても届きはしないだろう。

 ちょっとそれ、嫌味だよね。どうしよっかな。
 一瞬だけ考え込み――リーチを補う武器が必要だ――「でえい!」
 手近な柱に拳を突き込んだ。
 コンクリートを豆腐のように穿ち、内部を五指で探る。指先に冷たい感触。あった。
握り込み、力任せに引きちぎる。柱から姿を見せたのは補強の鉄筋棒だった。無理な
力が作用したためさつきが握った部分を中心にくの字に曲がっているが、長さは彼女
の身の丈と違わない。その上、親指の太さほども無いか細い棒だが素材は鉄。
 コンクリートも削るさつきの怪力で振るえば、その威力は―――推して知るべし。

「あは。見て見て。これ、多分お姉さんの足より長いよ。だから―――」

 握りを棒の端に持ちかえ片手で軽々と薙ぎ払った。びゅおう!と空気を裂く軽快な音。
さつきは止まらず、更に振り上げては打ち下ろし、縦横無尽の軌跡を描く。
 まともに狙いさえつけていない膂力に頼った攻撃だが―――近付けさせない、という
一点においては抜群の効果を見せつけていた。

80 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2006/05/28(日) 13:05:28


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――世界で一番昏い夜――

>>79


「あ、は」と少女が笑う。体中から放つ害意とは裏腹の無邪気な笑み。

『わたし、なんだかあなたのこと気に入っちゃったみたい。初めて会ったヒトにこういうこと言う
のは変かもしれないけど―――予告するね。わたし、あなたの全部を……もらうから』

 ゾッとした。今までに感じたことの無い殺気と害意に背筋が凍りつく。
 アタシの身体は無意識にあとずさっていた。
(なんなんだ……こいつ……)
 縋るように手斧を握り締めて弱気を追い払う。
 ここで気力が萎えたら、アタシは……きっと最悪の形で終わる事になる。
 ぎり、と歯を食いしばって少女を見る。

 ――見なきゃよかった。
 コンクリートの柱に拳叩き込んで中から鉄柱抜き出すシーンなんか。
 デタラメっぷりに頭がおかしくなりそうだ。
 少女は自身の身長に匹敵する長さの鉄棒を持ち、笑った。

『あは。見て見て。これ、多分お姉さんの足より長いよ。だから―――』

 来る、横一閃!
 少女が攻撃を行う前兆を感じた瞬間、アタシは膝を落としてしゃがんだ。
 一瞬の差で鉄棒が空を薙ぐ。
 普通の人間が相手ならここはチャンスで、懐に飛び込むところだ。
 飛び込むところなのだが……。
 撓めた膝のバネで真後ろに跳ぶ。振り下ろされた鉄棒がコンクリートを強かに叩いた。
 避けたアタシは尻から着地、勢いのまま転がって跳ね起きた。

 これはマズイ。”接近しにくい”から”接近できない”になっちまった。

81 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/05/29(月) 05:34:59


弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜――

>>80

  しなりを作って鉄筋棒が空を裂く。さつきはその長さを活かし、鉄棒を鞭のように
扱っていた。慣性の抵抗を力で抑え込み、強引に振り上げては薙ぎ払う。
 コンクリートの床が抉れ、駐車されているセダンのサイドミラーが弾けた。天井の
蛍光灯は砕き割れ、空調管が切り裂かれる。
 さつきの鉄筋棒は、慈悲無く差別なく全てを打擲する公平なる鞭だ。ヒトの身で触れれば
忽ち肉塊と化す。―――触れれば、の話だ。

 金髪の女性は、さつきの鉄鞭の暴風を悉く回避してみせていた。その長い手足を十分に
利用して、こ器用に身体が跳ね回っている。
 無駄の一切が排除された軽快な動作は、逆にさつきを翻弄してさえいた。

 しかし、それにしても一度も当たらないなんて―――やっぱりずるい、とドラキュリーナ
はむくれる。どうして全然当たらないんだろう。考えてみた。

 ―――もしかしたら武器が長すぎるから、振り切ってから先っぽが当たるまで時間差が
できちゃっているのかも……。

 近付くことを恐れすぎた結果、どうやら自分は間抜けな戦い方をしていたらしい。
 さつきはふと、人間相手に離れている自分の醜さに気付き―――頬を赤らめた。
 斧ぐらいで何を怖がっていたんだろう。このままじゃお互いに疲れちゃうだけだ。
 殺さなくちゃ。はやく殺して吸って、吸い合って―――わたしのものにしなくちゃ。

 鉄鞭を駆る手を一瞬止め―――空いた左手で、真ん中からぐにゃりとねじ切った。

「今度は二刀流だよ!」

 だから手数も二倍。間合いは半分に狭まったが、その分動きも疾い。さつきは自分の
優位さを見せつけるかのように二本の鉄筋棒を掲げ上げ―――振り下ろして振り下ろして
振り下ろして滝のような乱打を見舞う。
 先までの攻撃が鉄鞭なら、今度は太鼓のバチによる撲殺行為だ。
 弓塚さつきはぎこちなく左右の腕を動かし、更に巨大な死の暴風を呼び起こした。

82 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2006/05/29(月) 23:02:21


弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜――

>>81

(こんなことならショットガンと手榴弾の一発も残しておくんだった!)

 後悔の念を内包しながら縦横無尽に振り回される鉄棒をひたすらにかわし続ける。
 機銃掃射さながらに切れ目のない少女の攻撃にアタシは回避行動を余儀無くされていた。とてもじゃないが懐には潜り込めそうにない。
 これが並の相手なら体力切れまで引っ張ってそこを叩くのだが、相手は吸血鬼。体力面ではこっちの方がおそらく劣る。このままこれが続くようならアタシの負けだ。

 イチかバチか仕掛けてみるか?

 振り抜いたところをさらに押して勢いつけさせてやれば、あの扱い方だ。まずバランスを崩す。その隙に一発叩き込んでやれば――。
 と、アタシが覚悟を決めたところで少女は攻撃の手を一瞬止めて得物を捻り切った。

『今度は二刀流だよ!』

 ――勘弁して。

 リーチは半分になったが手数は二倍。取り回しも良くなって攻撃密度は倍率ドン!
 ……こんなの手斧とトンファーだけでどうしろって言うのよ!
 うりゃーとばかりに迫る鉄棒二刀流。
 防御はできない。丸ごと持っていかれる。となればやっぱり避けるしかない。
 瀑布の如く叩きつけられる攻撃のアウトレンジへひたすらに逃れながら反撃の手段を探す。
 何か、何かないか!?

83 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/06/04(日) 06:04:31

弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜――

>>44

 なんで―――ああ、もう―――このっ!―――ていっ!―――やあ!―――そこだよ!
―――見えた!―――今度こそ!―――えい!―えい!―えい!―――たあ!―――ああ、
もう!―――どうして!―――こんなに!―――こんなに!―――こんなに!

「―――こんなに頑張っているのに、当たらないの!?」

 女性の動きには、もう先までの気品を感じさせる優雅さはない。いい加減切羽詰まって
きたのだろう。紙一重でかわしては転がり、無理矢理間合いを取ってはまた避ける。表情
にも余裕は無く、生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされていることは自覚しているようだ。
 さつきが思っている以上に彼女は追い詰められている。それは確かだ。確かなのだが
―――当たらなければ話にならない。当たらなければ彼女を虜にすることもできない。

 二振りの鉄筋棒から繰り出される苛烈な死のスコール。その悉くを金髪の女性はかわし
気ってみせていた。
 いくら単調とは言え、五十手からなる攻撃をヒトの身で捌けるものなのか。

「もう! 仕掛けてきたのはそっちが先なのに。逃げたりなんかするのって、おかしいよ!」

 間合いから離れた彼女目掛け左手の鉄筋棒を投げつけた。続いて右も。満足に当てる
こともできないのなら、もうこんな武器は必要ない。
 やっぱり頼れるのは自分だけなんだ。―――さつきは両腕を目の位置まで持ち上げると、
交差させ、左右五指の爪を引き延ばした。一つ一つが薄刃のナイフのように鋭い長爪が
十本。それを集束させ、一振りの剣に変える。
 右手に一振り、左手に一振り。今度こそホンモノの二刀流というわけだ。

 コンクリートの床を踏み抜く勢いで、地面を蹴った。無防備とも見て取れる吶喊。
 逃げ回られちゃって当てられないのなら―――もっと早く追い付けばいいんだ!
 二条の閃光が十字を描く。地下駐車場の静寂すら斬り伏せかねん殺意を称えた
長爪の刃が、女性の中心―――心臓向けて滑り込む。 

84 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2006/06/04(日) 20:42:35


弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜――

>>83

『もう! 仕掛けてきたのはそっちが先なのに。逃げたりなんかするのって、おかしいよ!』

 そうは言うけどね、一発喰ったら終わるんだから逃げもするわ。
 振り下ろしの一撃をかわしてアウトレンジに逃れる。
 逃れたところに鉄棒が投げられた。左一本。右一本。
「くっ……!」
 一本は体を捌いて回避。迫るもう一本を手斧で受けた。ぎぃんとライフル弾でも受けたかのような音と衝撃。
「ッ〜〜!」
 痺れる左腕。取り落としそうになる手斧を力を入れて保持。どうにか、問題なし。
 得物を投げてどうする気かと見れば、両手の爪を剣へと変化させる少女の姿。
 アメコミのヒーローかお前は。
 と、突っ込む間があれば周囲を見回す。
 アレは、アレはどこだ!

 ……見つけた!

 少女を窺う。――飛び込んでくる一瞬前。
 せぇの!
 少女がコンクリートを穿つ勢いで踏み込んでくるのと同時に、背を向けてアタシも跳んだ。
 跳ぶ先には赤い金属の円筒――消火器。右手で引っ掴み、
「でぇぇい!」
 上体を捻り、迫る少女へ向かってブン投げた。

85 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/06/05(月) 00:41:10


弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜――

>>84

 金髪の女性―――ミス・ブロンドが手斧での斬り込み以来、初めて見せた抵抗らしき抵抗。
さつきに背中を向けてまで臨んだその決死の行動は―――赤い危険信号。
 苦し紛れの消火器投擲。
 ブロンドは振り返り様に、その円筒の金属缶を投げ付けてきた。上半身のばねを総動員
して、勢いも乗っている。ハンマーを叩き付けるかのような動作で擲たれた消火器は、
吸血鬼と言えども肉を潰し骨を砕く程度の破壊力は有していた。
 が、いかんせんその重さのために動作は緩慢。戦闘経験の浅いさつきでも、大した脅威
とも認識せず、冷静に対処できる程度の攻撃でしかなかった。
 あの手斧での斬り込みに比べれば、何とも醜悪な攻撃か。
 無駄な抵抗と断じられても仕方がない。

 ―――はぁ、幻滅しちゃうな。

 どんなに外見的には完璧でも、中味はまた別問題ってなのかな? 人間、大切なのは
外見じゃなくてハートなの? 落胆を隠そうともせず、面倒そうに宙に浮かぶ鉄塊に目を
向ける。ブロンドの心臓へと馳せる左手の爪の軌道を僅かに変えて、消火器を切り裂いた。

 同時に、蓄圧された窒素ガスが暴走。缶内の圧力ゲージを見る間に変動させ、裂かれた
傷口を押し開く。やがて、消化薬剤を噴出させながら破裂した。

「っ……!」

 一瞬にして視界が白に染まった。さつきは攻撃の手を止めて目を見張る。蓄圧式粉末
消化器の特性と欠点を知らぬ彼女は、自分が招いた事態を理解できないでいた。
 中味の全てを吐き散らした消化器缶が、破裂しひしゃげた腹部を晒しながら地面を叩く。
 金属音が四方の壁に反響した。地下駐車場に谺する甲高い金属の悲鳴。その音で、さつき
はようやく我に返った。時間にしたら一秒も満たない。

 焦燥に駆られるように、改めて白く霞む視界の向こう。あるはずのブロンドの姿を追った。
 

86 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2006/06/05(月) 01:33:28


弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜――

>>85

 消火器っていうのはさ、中に高圧ガスのボンベが入ってるんだよね。
 大雑把に言うと、ボンベに切れ込みを入れて高圧ガスの力で円筒内に入ってる消化剤をホースから放出するって仕組みなわけだ。
 なら。ホース側にガスを逃がさず、中の高圧ボンベを切り裂いたらどうなるか?
 答え。高圧ガスが円筒内を満たして、弱い個所から炸裂する。
 今回の場合、弱い個所っていうのは少女が切り裂いた個所のこと。
 つまり、少女はほぼ真正面から高圧ガスと消化剤の洗礼を受けたはずだ。

 アタシは消火器をブン投げ、少女が消火器を裂いた刹那に右腕で両目を庇っていた。
 消化剤と高圧ガスによる視力へのダメージはない。
 左手の手斧を振り被ってコンクリートを蹴った。
 粉末消化剤の煙幕の中へ飛び込む。

「おらああぁぁぁ!!!」

 少女がいるはずの位置に気合と共に手斧を振り下ろした。


87 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/06/05(月) 02:38:40


弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜――

>>86

 頬を撫でる熱い雫。涙―――そんな、わたし、泣いている。消化薬剤を正面から浴びて
しまったのだ。異物を排除するために涙が流れるのは当然のことだが、さつきは驚愕を
隠そうともしない。わざわざ指先で救い、その塩水を目で確かめすらした。
 涙―――ほんとに、涙だ。

 路地裏で目が覚めて、自分がもはやヒトではなくなってしまったと知ったときですら
出ることのなかった涙。死んだ肉体が冷めた刃で魂を刺し貫こうと溢れることの無かっ
た涙。心がどんなに哭いていても、流れることの無かった涙。
 自分の魂は、とうに枯れ果てたと思っていた。

「あ、は……こういう、刺激にはちゃんと出てくれるんだ。なら、目にゴミが入っても
安心だよね―――」

 どん。身体を揺らす衝撃。気付くと右胸から鋼が生えていた。粉塵の向こう側から
振り落とされた手斧。激痛に愛らしい表情が歪む。涙はでない。胸から溢れる鮮血が
その代用だ。ブロンドの一撃は、肋骨を砕き、肺まで潰していた。

「わあああああああああ!」

 咄嗟にブロンドを蹴り飛ばした。手斧という栓を抜かれ、勢いよく鮮血が噴き出す。
 手斧はシルバーでコーティングされていなかった。ヒトならば重傷だが、いまの
さつきなら死に至る怪我ではない。やがては塞がる。
 だが―――彼女は先に一度、脳天に致命傷を受けていた。無理な再生がさつきの不死力
の貯蔵庫を枯渇させている。この傷で死ぬことはない。死ぬ事はないが―――今すぐ
治るような、楽観出来る手傷でも無かった。
 早急に潤いを得る必要があった。このまま無様な戦闘を続けていれば、例え相手が
人間だろうと、何かの間違いで滅びを迎えてしまう可能性は十分にある。

 踵を返す。この女性は絶対に支配してみせる。それに変更はない。でも、いまは
とにかく―――癒さないと。
 片肺を潰され、口元からも血を溢れさせながらも、さつきは人外のスピードで
戦場から急速に離脱した。
 ブロンドが追ってくるとは限らない。獲り逃す気は無いのだから、これは一時的
撤退だ。逃げるなら逃げればいい。さつきは地上に出たら、相手が誰だろうと構わない、
目に付いたヒトを真っ先に狩るつもりでいた。選り好みをする余裕はない。

 そう―――飛び出して、吸って、また戻ってくればいいんだから。

 五分と時間はかからない。そのはずだ。

88 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2006/06/05(月) 23:15:04


弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜――

>>87

 振り下ろした左腕に肉を裂き骨まで断った手ごたえが返ってくる。
 ――殺れたか?

『わあああああああああ!』

 返答は少女の絶叫とクソ重い衝撃。
 胸部を強かに蹴られ、アタシは空を飛んだ。
 停めてあった乗用車のボンネットの上をワンバウンド。背中からぶつかってフロントガラスに蜘蛛の巣状の白い亀裂を走らせた。

「がはっ……!」
 圧縮を掛けられた空気が肺から押し出され、気道を抜けて口から漏れる。ショックに動作不良をきたした身体がアタシの意に反して咳き込み続ける。
 アタシは咳き込みながら上体を起こし、少女の姿を探した。
 ……いない。

「どこ、へ……ごほっ」
 落ち着こうとしない咳き込みをどうにか下しつつ、索敵する。
 アレで殺れたと考えるほど楽天的じゃない。
 コンクリートには点々と血痕が、地上の方へ続いていた。

「逃げた、か?」

 けほっと咳き込んでアタシはべっこり凹んだボンネットから降りた。

89 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/06/06(火) 18:35:32


弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜――

>>88

 暫く走っていると、階上へと昇るエレベーターホールが見付かった。電源は生きている。
 時刻は深夜。地上の建物がビルだったりデパートだったりしても、この時間まで残って
いる人は少ないだろう。―――が、エレベーターが生きていることは、少なくともそれを
利用するだけの人はいるということだ。
 さつきはエレベーターを使用せず、脇の非常階段を使って一息に駆け上がった。

 途中の案内図でこの建築物が工場であることを知る。さして大規模な代物ではない。
精々、別棟が一つある程度だ。さつきは案内に従って、恐らく一番人がいるであろう
取締室と、その周囲の事務スペース向けて足を駆った。
 胸から溢れる鮮血が、床に点々と紅の軌跡を残す。血が止まらない。やはり、目に
見えない形で消耗しているんだ。急がないと、急がないと、急がないと―――

「―――え、なに、これ……」

 二階からエントランスに飛び出した時点で、さつきは異常に気が付いた。喉をひくつか
せる濃度の高い―――血臭。こんなの尋常ではない。さつきですら、これほどに濃い血の
臭いを嗅いだことはなかった。いったい何人壊せば、ここまで臭ってくるものなのか。

 少し先に進むと、身体の至るところを破壊された死体が二体転がっていた。胸騒ぎを
憶え、更に奥へ。そこには死体、死体、死体―――目にする人間は、全て死んでいる。
それも外因的なダメージによってだ。もはや何者かの襲撃を受け、争った結果の死亡で
あることは明白だった。10分ほど工場を散策し、さつきは一つの結論に至る。

 ―――もう、この工場に生き残っているヒトは誰もいない。

 膨大な死体の数と、巨大な棺と化した工場。窓から外の景色に目をやっても、人家の
灯火は確認できない。さつきは下唇を犬歯で噛んで、呻きを漏らした。あの女だ。あの
女が殺したんだ。わたしの分のご飯まで、あの女が―――

「バカァー! ……一人ぐらい、残してくれたっていいのにぃ!」

 右肩から右手にかけてまで、麻痺によりもう痛みすら消えていた。思うように腕が
動かない。潤いだ―――潤いが欲しかった。何でもいい。とにかく渇きを癒さないと。

 心臓と喉を撃ち抜かれて事切れた青年の死体に目を向ける。生きてさえいたなら、さぞ
さつきを満足させてくれたであろう健康的な体付きだ。フローリングの床に作った自らの
血溜まりに沈んでいる。―――それを見て、さつきはごくりと喉を鳴らした。

 青年の首筋にむしゃぶりつき、活きの悪い℃cりカスを吸い尽くす。まずかったし、
量も少ない。不満げにさつきは口を尖らせると、床に広がる血溜まりに意識を向ける。

 ―――こんなにこぼしちゃって、勿体ないなぁ。

 躊躇はあった。そんなのは、はしたない真似だという葛藤が。だが、衝動と渇きを
抑えるには彼女は飢えすぎていた。次の瞬間には、床に口を近付け猫のように血を啜り
始める。制服や口周りが汚れるのも厭わず、夢中で求め続けた。

90 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2006/06/07(水) 21:54:01


弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜――

>>89

 ようやく真っ当に動き出した呼吸器系統を従え、手斧を片手に少女の血痕を追う。
 やはり少女は地上へと逃れていったらしい。階上へと続く非常階段に血痕は続いていた。

「追う事は、ないわね……」

 あっちから逃げてくれたのなら好都合だ。こっちとしても、交戦は望むところじゃないし。

『わたし、なんだかあなたのこと気に入っちゃったみたい。初めて会ったヒトにこういうこと言う
のは変かもしれないけど―――予告するね。わたし、あなたの全部を……もらうから』

 不意に少女の予告を思い出して、ゾッとした。
 戻ってくる前にとっととずらかろう。
 地下にやってきた本来の目的、――適当な車を入手してこの場を離脱する――をさっさとやっちまおう。

 探し始めて数分でキーが着けっぱなしになっている乗用車が見つかった。
 こんなところで盗まれる心配なんかない。きっとこの車の持ち主は生前そう思っていたに違いない。
 ドアを引いて乗り込み、エンジンを掛けた。ガソリンの残量が半分を切っていたが、そんなのは瑣末なことだ。この場合は動くことがありがたい。
 サイドブレーキを外して車をスタートさせた。アクセルを踏み込み、地上へ急ぐ。
 とっととこんなところからおさらばしたかった。



91 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/06/10(土) 01:42:44

弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜―

>>90

 間に合わせの補給でどうにかを出血を止めたさつきは、返す刀で地下駐車場に駆け戻った。
あのブロンドが素直にさつきの帰還を待っている―――そんなことはあり得ない。
 元々、向こうから仕掛けてきた殺し合いだが、相手がヒトではないと知った今では、
生命のリスクを侵してまで死を望みはしないだろう。
 さつきが姿を消したのをいいことに、さっさと逃亡を図るはずだ。

 ―――だけど、逃がすつもりはないからね。絶対に。

 まずさつきは、地下駐車場の電気系統を支配する配電盤を探した。せっかくの夜なのに、
ブロンドに視界を与える電灯はいい加減邪魔だ。
 入り口付近の管理人室でスチールのカバーに護られた配電盤を見付ける。幸いにも管理人
室は無人だった。しかし時間がない。少しでも躊躇っている間に、ブロンドはまんまと屋外
に脱出してしまう可能性があった。
 握力に任せてカバーをこじ開ける。鍵が吹っ飛び、タコメーターやレバー、スイッチが
数多く据えられた中味が視界に飛び込んだ。電気系統の知識なんてさつきには無い。

 ―――全部壊しちゃえば消えるよね。

 拳を堅く握り、手当たり次第殴りつける。スチール製の配電盤がひしゃげ、メーターの
プラスチックカバーが砕け、スイッチが折れ曲がった。更に爪を伸ばして、好き勝手に
斬りつける。火花が飛び散った。最後に、コンクリートの壁から無理矢理引き剥がして
地面に叩き付け、色とりどりの配線を全て千切ると、ようやく地下駐車場は闇に染まった。

 深淵の中、さつきの血色の瞳が爛と輝く。コンクリートの壁に反響する微かなエンジン音
を耳聡く聞きとがめる。どうやらブロンドは自動車で脱出を試みるようだ。日が昇るまで、
息を殺して潜まれたら厄介だったが、猛スピードで逃げてくれる分にはさつきもやりやすい。
 自動車で逃げるには、地上へと昇る出入り口を通過するしかないのだ。出口で待ち伏せて
いれば、向こうから勝手に飛び込んでくれる。

「まさか、自動車の速さなら振り切れるとか、思っちゃったりしているのかな」

 くすくす、とそれがさも愉快なことであるかのように肩を揺らして笑った。地下駐車場の
出入り口は管理人室の手前にある。余裕を持って待ちかまえることができた。
 車道―――それも、ちょうど両車線の中央に立つ。両腕を組んで、仁王の構えを取った。

 体調は全快―――とはとても言い難い。血は止まったが、相変わらず右半身には痺れが
走っている。左に比べるとどうしても反応が鈍かった。量はともかくとして血液の質が
悪かった。あんな死んだ血では、満足のいく回復なんて見込めるはずがない。
 だが、それでも、手斧の一撃を食らったあの瞬間よりは大分マシだ。パニックももう
収まっている。いまは純粋な渇望と若干の征服欲が心地よく彼女の中を蠢いていた。

「あのお姉さん、やっぱ人殺しだったんだから。ヒトの癖にヒトを殺したんだから……
お仕置きが必要だよね」くすり、と笑う。「でもわたしは許してあげるんだ。そして
わたしのように、ヒトを殺してもしかたがない、ヒトを殺しても許されちゃう存在に
させてあげれば―――うん、きっと人殺しの罪も無くなる」

 これは究極的には善行なのだ。そう自分を納得させると、さつきの口元から笑みが
広がる。エンジン音が、もはや反響を頼りにせずとも耳に入る位置まで近付いてきた。

92 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2006/06/10(土) 21:58:10

弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜―

>>91


 何の前触れもなく照明が消えた。
 一瞬にして視界が闇に閉ざされる。
 こちとら車を運転中だ。視界を塞がれたら待っているのは事故だ。
 ブレーキを掛けて急停車。ヘッドライト点灯。

「非常灯も残さずに落ちたってことは……」

 配電盤の類が壊れた。
 何を楽観的な。壊されたんだよ。

「やばいやばいやばい!」

 車を見つけるのに手間取りすぎたか、少女が戻ってきやがった。
 アタシは車を再スタートさせ、出口へ急いだ。

 ――角を曲がる。
 お待ちかねの出口はもう目の前。
 ……かと思いきやそこには少女の検問。
 車道の真中に仁王立ちで待ち構えている。

 考える余地なんかない。
 アクセルを目一杯に踏み込む。エンジンの回転数が跳ね上がり、速度計が追従してぐんと動く。
 車の正面に少女を捉えて加速する。

 検問ってのは強行突破するもんだと相場が決まってるのだ。


93 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/06/12(月) 10:23:43

弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜―

>>92

 強烈なハイビームが照らし出すのは、スカートを翻す血染めの少女。光の奔流をまるで
舞台上のスポットライトの如く受け止めながら―――さつきはゆっくりと瞼を開いた。
 炎上する視界。闇に慣れた目でヘッドライトを直視したため、眼球がぷすぷすと灼ける。
血管が焼き切れ、血の涙が頬をつたう。―――しかし、さつきは怯まない。限りなくゼロに
近い視界の向こう、純白の大波から飛び出すセダンの輪郭を確実に捉えていた。

 組んだ腕を解く。腰を沈め、口中で呟いた―――「よーい……」
 目を凝らす。神経の集中に伴い、強化される再生プロセス。灼けながらにして治癒を
続ける双眸が、フロントガラス越しにブロンドの女性を確認した。
 にんまり、と笑う。

「どん!」

 二歩、床を踏み抜いた。二段階の加速で光の渦へと飛び込む。距離は一瞬にして縮まり、
相対速度は一ミリ近寄るごとに跳ね上がる。肉薄した傲慢なる鉄(くろがね)の巨獣。
フロントバンパーのあぎとが開くのに先んじて―――

「やあああああ!」

 全体重とスピードをぶち当てた。バンパーが紙のようにひしゃげ、ボンネットが跳ね
上がる。前輪が浮き、衝撃に負けたフロントガラスがひび割れた。
 弓塚さつきは―――この力ばかり持て余す小柄なドラキュリーナはというと、やはり
十倍も二十倍もある質量を相手に力だけで抗するには限界があったのか、跳ね飛ばされ、
紙切れのように宙を舞っていた。
 きりもみしたままリアバンに墜落。そこで更なる衝撃を受けながら後方に流れ、地面
に叩き付けられる。自動車のフロントダメージもかなりのものだが、さつきのそれは
比較にならないほど深刻だ。全身の肉という肉がずたずたで、骨という骨が軋んでいる。

 だが、彼女は立った。糸の切れた人形を鷲掴みにして粗雑に扱うように、限界の身体
を鞭打って駆らせる。口元には変わらず――もはや薄気味悪いほどだ――無邪気な笑み。

「先生が言っていた通りだよ。……ダイエットのしすぎには注意しましょう、って。あは。
ほんとのことだったんだね―――」

 駆けた。走り去るセダンに追い縋る。自動車はまだ加速しきっていないし、地上へと
伸びる通路は緩やかな斜道だ。その先も、道路に出るためにはカーブの必要があるはずで、
暫くアクセルを踏みきることはできないだろう―――つまり、木偶になりかけている
さつきの足でも、追い付ける可能性は十分にあること。
 栗毛色の髪を振り乱して少女は走る。

94 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2006/06/13(火) 04:44:20

弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜―

>>93

 車体が拉げ、フロントガラスが真っ白にひび割れた。ハンドルを握るアタシの身体にも激突の衝撃が抜けていく。

 ただ車で撥ねただけじゃこうはならない。
 少なくとも一方的に撥ねればこんな風に車体が浮くわけが無い。

「自分からぶつかってきたっての!?」

 がくがくと揺れる車体を立て直しながら手斧で白く濁ったフロントガラスを叩き割る。
 後ろは見ない。見るまでもない。――追ってきてる。

「くそがっ!」

 激突の影響でエンジンに不調。なおかつ道程は坂道プラスカーブ。
 出せるだけのスピードは出す。出すが……

「逃げ切れるか?」

 自問するが答えられなかった。


95 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/06/15(木) 06:10:13


弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜―

>>94
 予想外に遠いバックライトの閃光。あの程度の速度領域、いつもの彼女ならば悠然と
追い付けるであろうに―――今はいくら駆けても、姿勢を前のめりにして脚部に力を
こめても、一向にリアライトガラス越しに見えるブロンドの後ろ姿は近付かない。
 呼吸が粗くなり、視界が赤く染まっていくばかりだ。
 顎が上がり、足がもつれた。

 苦しい―――自らの肋骨で貫かれた肺が悲鳴をあげる。酸欠の息苦しさと肉体的な
痛みがさつきを身体面でいじめ抜き、血液の不足が精神面から苛んだ。

 ―――このままじゃ、死んじゃう。

 だからこそ、足を止めるわけにはいかない。この渇きを癒す術は、追い付き、追い抜き、
あの鉄塊を力で蹂躙するより他になかった。
 ここで辛さに負けて倒れたら、後に残るのは滅びだけだ。

「もう……体育の成績、実技は駄目だったんだから」

 既にブロンドの乗る自動車は地下駐車場からの脱出に成功し、満天の星空の下に飛び出
している。
 セダンのスピードが落ちた。車道へと接続された小路で、カーブに差し掛かったのだ。
 好機、とばかりに気力を振り絞って地面を蹴飛ばし、一歩一歩が跳ねるような歩幅で、
瞬時にして接近する。まずそのトランクルームに――― 一撃!

 鋭い右の蹴り足が、リアバンパーやナンバープレートごとトランクアウタを引き裂く。
 スピードは―――落ちない。駄目だ。いくら後部を攻撃したところで、エンジンが
フロントにあるセダンタイプの自動車に効率的なダメージは与えられない。

「追い抜くしか……ないんだね!」

 風をねじ伏せ、空気抵抗を駆逐する。ぼろぼろになったローファー越しにアスファルト
の感触が伝わった。地面は堅い―――踏み抜く心配はない。
 限界を知らぬ弓塚さつきの脚がエンジンの爆発力に挑戦状を叩き付けた。山間部の静まり
かえった車道には、何かに終われるように疾走するセダンと―――並走する少女の姿が。 

96 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2006/06/15(木) 12:11:47


弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜―

>>95


 現実離れした光景には慣れてるつもりだったけど、日常の中に非日常の事象が混じることにはまだ慣れてなかったらしい。

 運転席側のドアミラーに少女の姿が映っている。疾駆する少女の姿。

 ――血まみれで、猛スピードで走る車に、並走している少女の姿。

 吸血鬼って化物が人間の姿をしていながら人間を超越した運動能力を持っているってのは知っていた。
 知っていたけど。

「現実に見ると自分の頭がおかしくなったように思えるわね……!」

 スピードはもうこれ以上出せない。出せば少女の手に掛かるまでも無く死ぬ。
 かと言ってスピードを上げずに振り切るのは無理だ。

 ミラー越しに少女を見る。
 自身の血にまみれたぼろぼろの姿で、口元には無邪気な笑みを浮かべたまま疾駆している。

 ――狂気の塊に見える少女を分析する。

 手斧の一撃は人間なら致命傷、銀製品じゃないから吸血鬼には致命傷にならない。
 でも割と盛大に出血していたからそれなりにダメージにはなっているはず。
 それから一度逃げて、数分足らずで取って返してきたところからおそらく回復はできてない。
 上の連中は皆殺しにしてきたから吸う相手がいなかったんだろう。
 そしてさっきの正面激突(衝突にあらず)。
 いくら吸血鬼の身体強度が高いと言っても生身だ。車のこのガタツキ加減から考えて向こうにもかなりのダメージがあるはず。

 ――推測するに、あの少女は気力と血液への渇望とアタシへの執着だけであの火事場の馬鹿力を出していると思われる。

「なら、このまま走ってるだけでもそのうち崩れる……かな?」

 ちらりと少女を見て、すぐ正面に集中した。

 どのみち手出しができるような装備はないんだ。
 それなら、このままなるようになれだ!


97 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/06/16(金) 04:07:31


弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜―

>>96

 月に切っ先を向ける木々は、まるで逆立つ剣山のように夜の静寂を研ぎ澄ます。
アスファルトの車道は緩やかな螺旋を描きながら森を下っているが―――ゴールは
見えない。終わり無き徒競走。息を切らし、血を滴らせるさつきの表情から徐々に
笑みが消え、代わりに苦悶が支配する。

 ―――ゴールなんて、ない。そんなの、いらない。

「……わたしの、やりたいことはっ!」

 全てを否定できれば、それでよかった。
 その結果が、自分が認められるのであれば。

 横一列に並走しているドラキュリーナとセダン。
 ―――さつきが一歩、リードした。
 更に一歩、二歩。驚くべきことに、この吸血鬼の少女はここに来て、更なる加速を
してみせた。ブロンドの自動車はこれ以上のスピードを出せない。ついにさつきは
セダンのバンパーを完全に引き離した。
 このレース、魔性の力の勝利かと思われた―――その時、さつきの姿勢が崩れた。
脚がもつれ、失速する彼女の横をセダンが猛スピードで通過する。

 末期の燃焼か。さつきの双眸が闇を散らすように燃え上がった。

「勝ったから、もう―――休憩!」

 絶妙のタイミングで車体に近寄る。ロックが弾け、基部が鈍い悲鳴をあげた。スピード
に抗う暴風が車内を掻き回す。助手席のフロントドアを紙のように軽々と千切り取った
さつきは、鉄塊を路傍に投げ捨てると、サイドシートに滑り込んだ。

 まず、にっこりとドライバーシートのダーリンに微笑みかける。ハンドルを握る恋人に、
尊敬と慈愛がこもった瞳を向けるように。そして次の瞬間、呻きとともに牙を見せつけた。

98 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2006/06/16(金) 11:30:38


弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜―

>>97

 読みが外れた。
 少女が人外の脚力でもってさらに加速。
「……追い抜きやがった」
 これ以上のスピードを出せないアタシに少女を振り切る術はない。――これまでか。
 だがその瞬間少女が体勢を崩した。足がもつれる。失速する。
 減速を掛けていない車はそのまま少女を追い抜き、
 ――嫌な音がした。

 音源を見る。

 ……でたらめだ。

 なんで助手席のドアがないのか。
 なんでふらついて視界から消えたはずの少女が助手席に座っているのか。

 少女が微笑む。
 その可憐な表情にみっちゃんのお人形を幻視した。

 少女が牙を見せる。

「いらっしゃい」

 即座にブレーキを踏み込んでハンドルを右へ切った。

99 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/06/16(金) 12:29:11


弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜――

>>98

 剥き出しの牙が、ブロンドの喉笛に吸い付くその寸前―――

「……っ!」

 不可視の衝撃に、さつきの矮躯は押し戻された。
 急ブレーキとともに右に切られたハンドル。
 タイヤが道路を噛み、金切り声を夜に響かせる。セダンのボディが後輪を滑らせ、
車道にUの字を描く。残されたアスファルトには黒々としたブレーキ痕が。

 助手席のドアを引き剥がしたのは失敗だった。慣性の力は凄まじく、気付いたときには
既に、さつきの身体は車外に投げ出されていた。宙空を踊り、ろくに勢いも殺せぬまま
地面に衝突。二度、三度と転がるその様子はぬいぐるみが人形のようで、とても意思ある
者の動きには見えなかった。

 眉間に二発銃弾を食らい、手斧の一撃を身体に浴び、加速する自動車に正面から跳ねられ、
そしていま、時速100キロ近い速度で地面に叩き付けられた。
 人ならば当然、化生と言えども絶死しておかしくないダメージだ。
 だが、さつきは立った。―――さすがに悠然と、とはいかないが、極力そう在るように
意識して、下品にならぬよう気を付けながら、ゆっくりと立ち上がった。
 彼女が着ていたブレザーの制服は既に、自らの鮮血と傷跡によって原型を留めていない。
まるで赤い血肉のように、身体にまとわりついていた。
 鳶色の髪も血と脂で無惨にも汚れ、その愛嬌に満ちた顔立は苦悶で歪みきっている。

 でも、それでもなお、口元だけは、変わらず笑みを称えていた。

「やっと、止まってくれた……」

 セダンは完全に停車している。今からアクセルを踏み込んで逃亡を試みようとも―――
さつきの脚ならば、簡単に追い付いてみせるだろう。いくら瀕死の体だろうと、身軽さと
加速力で鉄の塊なんかに負ける弓塚さつきではなかった。

「月が―――綺麗だね」

 吸血鬼の少女は、あえて待った。赤く染まった月を見上げながら。

100 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2006/06/16(金) 23:47:03


弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜――

>>99

 一難は去った。
 いや、その場を凌いだというのが正しい。
 結局、少女を振り切れずに相対することになったんだから、去ったというのは正しくない。
 チクショウめ。

 助手席から少女は吹っ飛んでったが、あれぐらいで死ぬようなタマじゃない。そんなヤワでかわいい生き物じゃあ、ない。
 止まった車をもう一度少女を振り切れる速度まで持っていくのは不可能。振り切る前にさっきの焼き直しになって今度は首に噛み付かれる。

「……やるか」

 改めて装備を頭の中で確認する。
 手斧が一振り。トンファーが一つ。それから兵装開発部に押し付けられたナイフが一本。
『試作段階の代物で強力だが一回しか使えない』というのが押し付けた奴の言葉だった。
 能力未知数の試作兵器が最後の切り札。上手く行けば生還。しくじれば地獄行き。
 ドロップショットやサンダークラウドのようなまるでお話にならないゴミ兵器の可能性もなきにしもあらず。
 あまりにも状況がステキ過ぎて泣きそうだ。

 微妙に歪んだドアを蹴り開けて車から降りる。
 左手に手斧。
 視界の先には血の赤と夜の闇を纏って月光を浴びる吸血鬼の少女。

『月が―――綺麗だね』

 月を見上げて少女は言った。その姿があまりにも儚かったから、

「ああ。こんな月、そうそう見られないだろうね」

 アタシも月を見上げて言った。

101 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/06/17(土) 03:40:59


弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜――

>>100

   身体の芯から湧き出す激痛とはまた違った、肌を舐める刺激。
 魂を肉から無理に引き剥がそうとしているため痺れが生じているんだ。そう判断して、
さつきはその後に来るべき事態を想像した。―――消滅を意味する運命を。

 ―――まだ、死ねないよね。

 滅びの危機に瀕している弓塚さつきには、もはや人間に対する捕食者としての絶対的優勢
は存在しない。いまここでブロンドが手を下さずとも、放置しておけば自ずと死滅して
しまうほどさつきは消耗していた。
 状況を覆すには、ブロンドの魂の代価を奪う以外に道はない。
 二人はいま、完全に対等だった。

「ね……知ってる? 地球って太陽の周りをぐるぐると回っているんだって。火星も金星
も木星も、地球じゃなくて、太陽を中心に回っているんだって……」

 いま少し血臭を遠ざけ、この静寂を吟味したかったのか、さつきは雑談を続けた。少し
でも油断すればたちまち霧散する身体だが、不思議と緊張は無かった。

「おかしいよね。だって、この夜空を見てみてよ。これが証拠だよ。ほら! 分かる?
お星様は地球の周りを回転しているようにしか見えないでしょ? わたしを中心にゆっくり
と巡っている。この夜の中心は、間違いなくわたしのはずなのに―――」

 星は別に、地球を中心に回転なんてしていなかった。
 誰もさつきのことなんて、見てはいなかった。

「ガリレオさんなんて嫌い。コペルニクスさんはもっと嫌い……ケプラーさんもニュートン
さんも生まれて来なければ良かったんだ。ブルーノさんなんて、焼けちゃって当然だよ!」

 わたしを否定するもの全てを否定する。それが弓塚さつきの在り方だ。

 月光を受けて輝くブロンドに視線をうつす。ああ、ならばせめて、この孤独なる一人歩き
の旅路に無聊の慰めが欲しかった。唯一、地球を中心として崇める衛星のような存在。否が
応でも自分を認めざるを得ない隷属者が欲しかった。

「あなたには、わたしの月になってもらうから……」

 右手の爪を引き延ばす。
 さあ真実を蹂躙しよう。
 自らの神を復権させるため、弓塚さつきは自身を殺意で染め上げた。

102 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2006/06/18(日) 00:10:44


弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜――

>>101

『ね……知ってる? 地球って太陽の周りをぐるぐると回っているんだって。火星も金星
も木星も、地球じゃなくて、太陽を中心に回っているんだって……』

 少女が言う。

『おかしいよね。だって、この夜空を見てみてよ。これが証拠だよ。ほら! 分かる?
お星様は地球の周りを回転しているようにしか見えないでしょ? わたしを中心にゆっくり
と巡っている。この夜の中心は、間違いなくわたしのはずなのに―――』

 言葉はさらに続く。

『ガリレオさんなんて嫌い。コペルニクスさんはもっと嫌い……ケプラーさんもニュートン
さんも生まれて来なければ良かったんだ。ブルーノさんなんて、焼けちゃって当然だよ!』

「……主観の現実と客観の現実は違うもんさ。それでも地球は周っている、ってね」

 左手の手斧を握る。左手を前に体は半身に。右手でトンファーの柄を握り締めた。
 実戦データも信用性も無いナイフは……まだ使わない。

『あなたには、わたしの月になってもらうから……』
 少女が右手だけ爪を伸ばす。殺意が月下の空間を侵していく。

「アンタに従う衛星か。ゾッとしないね」
 最早言葉は必要ない。必要なのは相手を倒す意志と力。

 間合いは、アタシにとって近いとは言い難い。あっちの一足プラスαってところか。
 挙動の始点さえ見逃さなければ反応できる、……はず。

 ――初撃を凌いでカウンターを叩き込んで、仕留める。

 さァ、集中しろ。始点を見逃せばそれだけで決まっちまうぞ。


103 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/06/18(日) 06:48:02

弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜――

>>102

 左肩から先―――痛みが無ければ反応も無かった。肉が鉛に取って代わったのか、ただ
重量だけを伝えてくる。爪の伸びも悪い。最大で剣と見紛うほどの刃渡りを稼げる自慢の
爪も、今ではせいぜいナイフ留まり、鋭利なかぎ爪と言ったところだ。
 手斧にトンファーをそれぞれ両手に構えるブロンドと相対してみれば、その貧弱さは
哀れなほどに露骨。捕食者だったはずの自分。いつの間にか対等以下にまで陥れられて
いることに気付き、さつきのささやかなプライドは呻きをあげる。

「絶対に征服してやるんだ―――」

 言い訳なんてさせない。負け惜しみの余地なんて与えない。善戦した? そんな言葉、
頭によぎらせもしない。―――正面から、叩き伏せてやるんだ。圧倒的な力の差を見せ
つけて、蹂躙してやるんだ。嗜虐心に胸が疼く。対等だなんて幻想もいいところ。人間
の彼女に何ができる。人をこえた自分に、なにができる―――

  全てを支払ったわたしが、全てを得ているあなたに負ける。
  そんな不公平はあり得ない!

「止めて……みせてよ!」

 止められるものなら。

 踏み抜かれたアスファルトが衝撃に爆発する。加速する圧倒的質量――セダン――を
相手にして臆することなかったさつきのエンジンに、三度火が点いた。
 今の彼女では、先までの加速力など再現できるはずもなく、そのスピードにかつての
夜の脅威など―――見る影もない。だがそれでも弓塚さつきは疾かった。
 誰よりも疾かった。

 小手先の技などない。何ものにも頼りはしない。
 反撃、抵抗、撃墜―――やってみればいい。
 正面から風を裂いて吶喊する弓塚さつきを、止められるのなら。

104 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2006/06/18(日) 08:09:43

弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜――

>>103

 少女が動いた。
 足場のアスファルトを炸裂させ突っ込んでくる。
 動きは単純そのもの、一直線にアタシを狙って突っ込んでくるだけ。
 だが速さは規格外。ダメージで速度が落ちていても、なおアタシより速い。

 銃火器なしのこの状況でアレを迎撃するのは、不可能。
 カウンターを取るつもりだったが、その前に繰り出される一撃をかわせるかどうか……。

 逡巡する暇があれば直感が身体を動かした。

 迎撃できず、後の先も取れるか危ういのなら。

 ――先手必勝!

「おおおおらあああああ!!」

 手斧を大きく振り被って、少女の顔目掛けて投げつける!

105 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/06/18(日) 09:57:07

弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜――

>>104

 弓から放たれた矢は留まることを知らない。撃たれた銃弾に軌道修正の余地はない。
 擲たれた鋼鉄の殺意。一個の矢であり弾丸となった今の弓塚さつきには、それを回避する
選択肢は用意されていない。
 自然の法則すらねじ曲げる人外の力。魔性の身体能力を用いればあるいは、避けることは
可能かもしれないが―――命を燃焼させての吶喊。いまここで速度を緩めれば次はない。
 手斧の狙いはさつきの顔面。血と擦り傷で無惨にも変貌した彼女の顔に、末期の一撃を
くれてやらんと牙を剥く。受ければ致命傷―――ならば、それさえ逃れられれば!

 どん、と肉が抉れ、骨を断つ衝撃。
 神経を灼熱が這い回り、傷口から体外へ血液が吸い出される。
 鋼を抱え重みを増す身体。

 しかし、止まらない。

 紙一重で首を捻り、顔面への一撃だけは避けた。手斧の牙は喉元をやや逸れ、鎖骨に食い
込んでいる。遠ざかる意識を引き留め、無理矢理に魂に詰め込む。新たな命の補充先は、
もう眼前にまで迫っているのだ。今ここで死ぬわけにはいかない。

 右腕を振り上げ―――られない!
 斧は肉とともにいくつかの神経も食い荒らしたようだ。僅かに動く右腕は、激痛に邪魔
されてうまく持ち上がらない。左腕に続いて右腕まで―――

  構わない! わたしの牙はここにある!

 小さな口を目一杯開く。覗く牙。しゅあと漏れる吐息。見る間に縮まる相対距離。交差の
瞬間を見出したさつきの身体は、最後の足掻きとばかりに地面から跳ね上がり、ブロンド
めがけて一直線に飛びかかる。
 さつきの目には、広がるブロンドの―――白い首筋が。

106 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2006/06/18(日) 15:06:34

弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜――

>>105

 投げた手斧は少女の肩に喰らいついた。
 肉厚の刃は少女の肉を斬り、骨まで断った。
 だが、――致命傷じゃない。倒せていない。その吶喊も、止められない。

 やばいと思ったときにはもう遅い。

 敵の射程内!

 右手のトンファーを少女に合わせて振る。だが、地を蹴って飛び掛ってきた少女を捉えられない。速過ぎる!
 少女はアタシの右腕が描く弧の内に入った。
 内懐に潜られ、反撃手段を失ったアタシに口をかっと開いて迫る少女。

「く、ぬっ!」

 咄嗟に喉笛の前に左腕を割り入れる。

 ヤバいヤバいヤバい!

107 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/06/19(月) 23:58:37

弓塚さつきvsエリ・カサモト
 ――世界で一番昏い夜――

>>106

 柔らかい肉の感触に続いて、喉に豊潤な魂の原液が広がった。
 何たる美味―――張り詰めた緊張を解きほぐすように、快感が全身を労る。
 さつきは一瞬、恍惚に我を忘れた。
 肉体の制御はもちろんのこと、意識さえも深淵の中に溶け込ませ、ただただ
生命の残滓に縋り付き、味わいに耽った。

 惜しくも首筋を逃し、盾代わりに突き出された左腕に食らいついたさつきは
そのため、高校で習ったはずのニュートンの発見―――自身のスピードと慣性
の関係を見事に忘れ去っていた。
 渾身の跳躍である。ブロンドの矮躯一つで支えられるものではない。左腕に
むしゃぶりついたまま、さつきとブロンドはもつれ合うように道路に倒れ込み、
勢いに任せるまま二人して転がった。
 アスファルトに諸肌をやすり掛けされて、さすがのさつきも目を覚ます。
うまく食らいついたと言っても所詮は左腕。生命を脅かすほど吸い付くす前に、
ブロンドの攻撃を側頭部に浴びてしまっては元も子もない。
 さつきは名残惜しげに唇を離し―――ついでに、左腕の肉を噛み千切った。

 この程度の血液補給、消滅に貧したさつきの身体を現世に留めるにはとても
足りないが、それでも慰めにはなった。全身の痛みが晴れていくような錯覚すら
覚える。

 喉を刺す朱が理性に亀裂を入れ、そこから溢れた本能がさつきに訴えかけた。

  もっと。
   もっと。
  この女の全てを
   吸い尽くせ。

 ―――やめる理由なんて、ないよ。

 互いの吐息が重なり合うこの距離、この位置、この関係。身体の操作が満足に
ゆかぬさつきにとっては絶好のポジションだ。むざむざと捨てるつもりはない。
 組み伏せるようにブロンドに身体を覆い被せると、改めて牙を剥きだした。  

108 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2006/06/20(火) 00:12:03

弓塚さつきvsエリ・カサモト
 ――世界で一番昏い夜――

>>107

 飛び掛ってきた少女は猛獣よろしくアタシの左腕に喰らいついた。ぶつ、と肉に牙が喰い込み、そこから血が吸われていく。
 それより問題は、少女の突撃をアタシの体重程度で殺しきれるわけがないってことで。
 二人してもつれ合うように倒れこんだ。それだけに留まらず、ごろごろとアスファルトを転がる。

「っ……く……」

 よりによってアタシが下で止まるか。最悪だ。だが最悪はこれに留まらない。
 ――左腕から嫌悪感を催す音と、激痛がやってきた。

「うあ……っ、ああああ!!」

 めちゃくちゃ痛い。痛い痛い痛いいてえ!
 人の腕を噛み千切りやがった!
 傷口から溢れた血がぽたぱたと庇った喉に落ちた。

 その感覚と激痛に頭が激情する。

 見せつけるように少女が牙を剥く。
 今度は喉だよ、とでも言わんばかりに。

 なめるな!

 左腕で少女の牙を押し返す。喧しく訴えてくる激痛には歯を食い縛って耐える。
 逃れるべく蹴り剥がそうにも位置が悪い。少女の脚がアタシの脚を押さえるように位置していた。
 残っているのは右腕だけ。
 トンファーを握った右手で少女を脇腹を強かに殴りつける。
 一度、二度、三度、四度、五度、六度!
 車に正面から激突した上で全力疾走でシェイクした内臓を更にミキサーにかけてやる!
 離れろぉッ!


109 名前:弓塚さつき ◆QYqnRpgSOw :2006/06/20(火) 00:31:24

弓塚さつきvsエリ・カサモト
 ――世界で一番昏い夜――

>>108

 身をよじり、さつきの拘束から逃れようと足掻くブロンド。体重や身長差を活かした
動きはさすが訓練を受けた者―――とさつきを関心させるが、ここまで肉薄すれば吸血鬼
の単純にして絶大な膂力の前には体格の差など無きに等しい。
 いい加減終わってよ! とばかりに喉へと噛み付く―――のを、先程召し上がった
ばかりの左手が妨げた。

 ―――まだ動くの、この腕は。そんな抵抗、意味なんてないんだから!

「……つあぁっ!」

 突如、激痛の槍がさつきの矮躯を貫いた。死角からのトンファーの一撃。組み伏せたから
と言って油断した―――さつきの体重は軽い。跳ね除けるのは無理でも、腰の入った攻撃
を繰り出す程度、わけはないんだ。彼女はまだ死に体なんかじゃない!

「こ……の……」

 更に一撃、二撃。同じ箇所に鈍器による集中的な打撃。内臓を守る骨格は、自動車との
格闘により機能できずにいる。こんな、こんな下からの、ろくに勢いもつけられない攻撃
―――きかない! 絶対にきかない!
 肉が抉られてゆく。内臓が潰されてゆく。下唇を噛んで痛みにこらえるものの、伸び
た犬歯は呆気なく唇を噛み千切ってしまった。
 距離を開けろ! 間合いを取れ! 甘美な誘い。痛みとともに振り切る。勝利は目の前に
―――ブロンドの生命の器はもう、すぐそこにあるんだ。

「絶対に離れてなんて―――やらないんだからぁ!」

 打撲の痛みも、逃避への誘いも、消滅への恐怖も、全て振り切って、さつきは吠えた。
 意識が薄らぎ、視界が歪む。暗黒に切り取られていく世界。
 ―――真っ白な首筋だけが残った。

 剥かれた牙は何のためにある?
 その存在理由を確認するため、弓塚さつきはブロンドへと吸い込まれてゆく。


(トリップ判定勝負! さつきがエリに勝てばさつきの勝利!)

110 名前:エリ・カサモト ◆WpG0YAOv8A :2006/06/20(火) 00:35:39

弓塚さつきvsエリ・カサモト
 ――世界で一番昏い夜――

>>109


 ハラワタをミキサーに掛けられながらも少女は左腕のバリケードを掻い潜り、アタシの喉を捉まえた。
 喉笛に少女の牙が喰い込む感覚。

「あ……、かっ、ぁ……!」

 血が抜けていく。
 身体から力が抜けていく。抗う意志も、生き延びる意志さえもその牙に抜き取られていく。

 血の代価は未知の快楽。少女に喉笛から血を啜られる度に、底抜けの快楽で身体が震え上がる。

「はあ、あぁぁ……」

 身体が快楽と違和感に蹂躙されていく。
 アタシが死ぬ。終わっていく。

 からんと右手からトンファーが零れ落ちた。

『抵抗を止めるにはまだ早すぎるんじゃないのか』

 そう、――武器に語り掛けられた、ような気がした。

 夢見心地に離陸しようとしていた意識が急速に立ち戻ってくる。
 まだ使われてなかった武器が『俺を使え』と懐中で訴える。

 視界が霞む。頭は胡乱。されど右手はまだ動く。
 少女とアタシの身体の間に――ベストの中に右手を突っ込む。
 指先に触れる武器のグリップ。手繰り寄せるようにそれを握り締める。
(使い方は、握り込んで振り抜くだけ……)
 ケースから抜いて振るような余裕はない。腕も伸ばせないからスピードも乗らない。純粋に斬れる刃であることを祈るばかりだ。
 グリップを握り込む。ケースから抜き様にベスト越しに少女の身体に刃を当てた。
 左から、右へ。ゆっくりと刃を移動させていく。
 試作兵器『ザンテツソード』はその切れ味を遺憾無く発揮して、少女の身体を鳩尾の辺りで切断した。


111 名前:弓塚さつき ◆QYqnRpgSOw :2006/06/20(火) 15:28:10

弓塚さつきvsエリ・カサモト
 ――世界で一番昏い夜――

>>109

 その刃はあまりに無慈悲で、同時に傲慢でもあった。
 触れただけで肉を裂き、骨は断たれる。まるでザンテツの刃が切断≠ニいう概念
その物であるかのように、たやすくさつきの下腹部を解体していった。

 突き付けられる死への誘い。
 押し寄せる消滅の波。
 さつきの命は刃の軌跡に乗るように、急速な勢いで無へと近付いていった。

 だがそんな死の息吹など、神が定めたあらゆる理≠拒絶する今の彼女には
通用しない。さつきはブロンドを食らった。それはつまり、世界が課すルールから
自立するためのプロセスを彼女が完成させた証である。
 魂を取り込み、自らを完成させゆく弓塚さつきは死など畏れない。
 いまこの瞬間、さつきは全てを否定したのだ。

 消滅へと至る法則の原理。
 死に基づいた絶対の定理。
 世界を構築する揺るぎなき摂理。

  ―――そんなものに従う必要なんて、ないんだ。

 いま、さつきは渦の中心にいた。

 肉は裂かれた先から癒着し、骨はより堅く繋がれた。魂の源泉が喉を滑るたびに
傷は癒え、生気が漲る。死を強制するザンテツのヤイバも、倍の勢いで蘇生を繰り返す
さつきの身体の前では焼け石に水に過ぎず、その無為な抵抗からは、人の泡沫の生への
哀愁すら感ぜられた。

 一分と待たずして、弓塚さつきの肉体は――瀕死をこえて、必滅の運命にあったあの
消耗が嘘のように!――再生を終え、健康体へと戻っていた。
 通常の吸血行為ではここまで劇的な効果はあらわれない。それほど、ブロンドの血質
が優れていたのだ。やっぱわたしの目に狂いは無かったね―――今や狩人としての立場
を確立させたさつきは、満悦の表情でブロンドの魂をねぶり、味わう。

 だが、彼女の命を吸い尽くしたりなんかはしない。

 さつきはブロンドが憎い。美しい彼女が、気丈な彼女が、憎くてたまらない。
 だからこそ生かすのだ。憎いからこそ生かして、自分のほうがより優れているのだと、
証明してみせるのだ。殺したりなんかしてはもったいない。

「エリって言うんだね。エリ・カサモトちゃん。……綺麗な名前」

 血によって得た記憶の奔流。いまやさつきはブロンド―――エリの記憶と魂を引き継いだ、
もう一人のエリ・カサモトだ。エリである一部を取り込んだ彼女に、知らぬことはない。
 そして同様に、エリもまた、さつきの一部を受け入れることで、彼女になれる。

「エリちゃん―――」再生した下唇をあえて噛み千切った。さつきの顎は再び自らの血で
赤く濡れる。「さあ、わたしの血を飲もう。飲んで、やめちゃおうよ。あなたがエリちゃん
であることも、ヒトであることもやめて―――世界から自立しよ。ね?」

 子供をあやすように、優しく問いかける。
 その表情は母を想起をさせるほど穏やかで、口元には微笑すら浮かんでいた。先までの、
余裕のない逼迫した焦燥感と、悪魔的な無邪気さが混濁したカオスの属性を抱える彼女
からは想像できない大人びた――そして蠱惑的な――風格だ。

「ほら、遠慮なんてすることはないから……はしたなくむしゃぶりついちゃっても、
いいんだよ?」

 えへへ、と笑う。

 不死の少女に誘われるままに、世界から自立する口付けを求めるか。
 ザンテツの刃の冷たさを忘れず、魂を吸飲されるその時ですら抵抗を諦めなかった、
ヒトとしての本分を遵守するか。
 全てはエリ・カサモト、彼女次第と言えた。


(さつき:Q エリ:W 判定により弓塚さつきの勝利!)

112 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2006/06/21(水) 15:45:48

弓塚さつきvsエリ・カサモト
 ――世界で一番昏い夜――

>>111

 視界が暗い。何も見えない。身体の感覚も殆ど無い。
 酷く、寒い……。
 ――ああ、死ぬんだな。

『エリって言うんだね。エリ・カサモトちゃん。……綺麗な名前』

 どうやら耳はまだ死んでないらしい。
 少女の声が聞こえる。さっきまで死に掛けだったのが嘘のように生気に満ちた声。

『エリちゃん―――』
『さあ、わたしの血を飲もう。飲んで、やめちゃおうよ。あなたがエリちゃん
であることも、ヒトであることもやめて―――世界から自立しよ。ね?』

 少女の囁きと共に、暗い世界に赤く滴る血に塗れた唇が浮かび上がってきた。
 アレを飲めば、死ななくて済む。
 ――この暗くて寒くて孤独なところから離れられる。

  ……死にたく、ない。

 飲めば人ではなくなる。人の血を吸う化物になる。
 ――掃討、殲滅対象の化物になる。

 ……それの、何が悪い?

 生き残るために今まで色んなことやってきた。
 盗んだし奪ったし、殺してきた。死にたくないからなんでもやった。

 ――今ここで死から逃れるために、あの血を飲むことの……何が悪い。

 飲めば帰れないと誰かが言う。
 飲まなくたって帰れないとアタシは答える。

 化物になるぐらいなら人として死ね、なんていうのは実際に選択の場に立った事の無いヤツの科白だ。

『ほら、遠慮なんてすることはないから……はしたなくむしゃぶりついちゃっても、
いいんだよ?』

 少女が誘う。
 抗う術は無く、拒むつもりもない。
 死にたくない。胡乱な頭が訴えつづける。


 アタシは凍てついたように動かない身体を無理矢理動かして、血に塗れた少女の唇に口付けた。


113 名前:◆zusatinwSI :2006/06/23(金) 15:25:01

>>112




   ―――それから、半年の時が経る。





.

114 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/06/23(金) 15:27:06

弓塚さつきvsエリ・カサモト
 ――世界で一番昏い夜――

>>112>>113

 初めは、いびっていびっていびり抜いてやるつもりだった。
 甘えなんて許すつもりも無かったし、餌場を教えたり、狩りの仕方を教授する気も更々
なかった。かつての自分を知る者なら驚くような行為――それこそ、トゥーシューズに
画鋲を入れるような真似――も、今の自分になら平気で出来るはずだと信じていた。

  わたしには母性なんて、無いんだ。

 支配欲や征服欲はあっても、それを維持する気があるのかどうかはまた別の話。
 夜の世界に踏み入ることで、この女のヒトはより美しく、より妖しくなることは目に
見えて分かっていたんだから―――だったら精々、灰被り姫みたいな扱いをしてやる。
 そう、心に決めていた。

 エリ。エリ・カサモト。あなたの選択がどんなに安易で、どんなに滑稽で、どんなに
過ちで満ちたものか、永遠を賭けてたっぷり教えてあげるね―――


 しかし、どんなに醜いペットも三日手元に置けば愛着が湧いてくるものである。まして
エリ・カサモトは不死の夜族としても、狩人に挑む闘争者としても申し分ない才能を有して
いた。弓塚さつきは、高価な――それどころか、世界にたった一体しかない――自分だけの
ビスクドールを手に入れてしまったのだ。
 自分に従順で、誰にも負けぬ才能を秘め、育て甲斐のある―――それでいて可愛げも十分
に持つこの第一子に、さつきが夢中になるのは当然の展開であり、何の不自然もない。
 スパルタな教育方針など、エリの魅力に気付くと共に霧散してしまった。 

115 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/06/23(金) 15:30:43

弓塚さつきvsエリ・カサモト
 ――世界で一番昏い夜――

>>114

 その日、さつきはエリに裁縫を教えていた。無地の布に手早く薔薇を縫ってみせると、
今度はその縫い方などを熱心に指導する。手芸は、手先が器用で家庭科の成績も高かかっ
たさつきが唯一「特技」と言える技術であった。
 もちろん、夜を往く不死者には何の役にも立たない。事実、エリと行動をともにするよう
になるまでは、さつきも自分が手芸を得意としていることなんて忘れ去っていた。
 別に手芸に拘る理由はないのだ。保護者面して教えてやれるのなら、何でも良かった。
 軍属として類い希な経験と才能を持つエリ・カサモトに、さつきが夜の先輩として教える
ことは少ない。むしろ、狩りの腕も戦闘者としても未熟なさつきが、逆にご教授されること
のほうが多かったぐらいだ。当然、女としてもエリのほうが三枚も五枚も上手だから、
化粧や服飾のセンスも学ばされてばかり……。

 母親としてこれは面白くない。だから、エリが知らず、自分が知っているような技術/
知識を見付けると、嬉々としてさつきは教鞭を取った。大概、その手の「授業」は実用性に
乏しく、時間を割いてまで教えるほどのものでもなかったが―――それでもさつきは満足げ
だった。

 今晩の手芸は、その中でもとっておきの切り札だったのだ。
 さて、これを教えてしまったら本当に自分が教えてやれることなんて無くなってしまう。
せっかく手に入れたのに、たった半年でこの自慢の娘を自立させなきゃいけないのだろうか。
それはイヤだ。勿体ないし、寂しいし。ああ、何とか母親として自分の有用性を示さないと
見捨てられちゃう―――

 そんな途方もない不安に囚われ、いっそ自分が娘役になってしまおうかなど考え始めた時
――確かに、傍から見ればそっちの方が余程に自然な関係だった――さつきはその気配に
気付き、裁縫の手を止めた。

「―――また、お客さんみたいだね……」

 弓塚さつき。笠本英里。このドラキュリーナの親子は近年希に見る勢いで、夜の闇社会に
頭角を現し始めていた。本人達は目立つつもりなど無いのだが、少女と美女のアンバランス
なコンビで、その上実力も折り紙付きとだけあって話題性には事欠かない。
 必然、謂われも無き理由でハンターや同輩から狙われるようになる。

「ほんと、面倒くさいよね。前まではこんなこと、全然無かったのに……。やっぱ二人
だと目立っちゃうのかなぁ。―――あ、別にエリちゃんが邪魔だとかそういうワケじゃない
からね。全然、わたし気にしてないから。家出とかしちゃ駄目だよ」

 言いつつ、裁縫道具を無造作に捨てると両腕の爪を伸ばす。気配は既に遮断している。
エリの血を吸い、エリの技術を学んだことにより、さつきの戦闘技術ももはや力任せの
喧嘩殺法とは言えなくなっていた。歴とした殺人者の実力を有している。

「往こうエリちゃん。今夜も競争だからね―――」

 そう言って爪を鳴らす少女の表情は、心なしか、かつてに比べて穏やかで、満たされて
いるように見えた。

116 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2006/06/25(日) 13:38:23

弓塚さつきvsエリ・カサモト
 ――世界で一番昏い夜――

>>113>>114>>115

 あれから半年。
 不死者となって、アタシは生きていた。
 思っていたよりこの生活は悪くない。路地暮らしは昔やってたし、食事も問題ない。何も、問題、ない。
 親である弓塚さつきとの関係も良好。どう見ても年下、かつ実際に年下の娘が親っていうのも不思議な話だけどそんなのは些末ごと。
 どっちが親なんだか分かんないのも、些末ごと。

 今日はさつきに裁縫を教わっていた。概ね教わる側のさつきから教授を受けるのはちょっとめずらしい。(こんなだから親がどっちだかわかんない関係なのだ)
 さつきは手早く巧みに無地の布に薔薇を縫って見せた。上手いわねと驚嘆するアタシに縫い方を教えるさつき。
 ――爆弾作りは得意でもこういうのは苦手だ。
 じっと手元を見ながら針を動かす。素晴らしく上手く出来ない。試行錯誤しながらやるものの、事態は悪化の一途をたどっているように思える。
 恥を偲んでさらに教授を願おうと挙手しようとしたそのとき、気配を感じた。

『―――また、お客さんみたいだね……』

「お呼びじゃないのにね」

 さつきも気付いたようだった。半年前と比べると飛躍的に能力が向上してるから、ま、当然か。

『ほんと、面倒くさいよね。前まではこんなこと、全然無かったのに……。やっぱ二人
だと目立っちゃうのかなぁ。―――あ、別にエリちゃんが邪魔だとかそういうワケじゃない
からね。全然、わたし気にしてないから。家出とかしちゃ駄目だよ』

「しろって言われたってしてやんないわよ」

 さつきに同じく裁縫道具を放り投げ、軽く指を動かして拳を握る。吸血鬼ってのは戦闘には便利だ。
 何せ近距離なら武器が要らない。四肢がそのまま武器になる。

『往こうエリちゃん。今夜も競争だからね―――』

「アイマム。今夜は負けないよ――」

 さあ、夜を謳歌しよう。

117 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/06/25(日) 13:54:40

弓塚さつきvsエリ・カサモト
――世界で一番昏い夜――

闘争レス番纏め
>>66>>67>>68>>69>>70>>71>>72>>73>>74>>75>>76
>>77>>78>>79>>80>>81>>82>>83>>84>>85>>86>>87
>>88>>89>>90>>91>>92>>93>>94>>95>>96>>97>>98
>>99>>100>>101>>102>>103>>104>>105>>106>>107
>>108>>109>>110>>111>>112>>113>>114>>115>>116

IE用
>>66-116(←専用ブラウザのヒトは触れない方がいいよっ)


 この後、わたしとエリちゃんがどうなっちゃうのか。
 ―――それはまた別のお話。
 エリちゃんはこの道を選んで、本当に幸せだったのか。
 ―――それはまた別のお話。

 でも……たまにはこう言う結末があって良いと思うよね?
 わたしだって吸血鬼なんだもん。
 コーカスレースでのわたしへのご褒美は、アリス自身だったってことだよ……。
 さあ、一緒に往こうエリちゃん―――

118 名前:『不死者王』ブラムス ◆vOzBAMUTHU :2006/10/10(火) 00:16:05

『不死者王』対『英雄王』


―――――即ち、そういう事なのだろう。


神々の黄昏、ラグナロク。
その時代を体験した王にとっては、かつて起こったと記憶する現実である。
だが、幾多もの創造を経て変容した世界は、それを認めはしなかった。

過去の実存は神秘へ。
神々は現象へ。
そして――――歴史は幻想へ。
それが今在る『世界』の選択であり絶対宣告。

『世界』は神霊の所有を認めない。
其れは既に力ある現象であり、人々の信仰を集める偶像なのだ。
その定められた因果律に例外があってはならない。



―――そして、こういう事なのだろう。


『世界』とは因果であり法であり、律。
望む結果を絶対とするため、執行者は常に必勝の存在が選ばれる。
絶対の勝利者。
今の世において人はそれを『抑止力』と呼ぶ。



――――故に。

不死者王の魔城。
ノルンの三女を封ぜし、この玉座の間。
旧き主神、オーディンと比肩する不死者王ブラムスと対峙しているのだ。


新しき世が生み出した『原初の王』――――金色の英雄王が。

119 名前:名無し客:2006/10/10(火) 00:44:17

>>118 『不死者王』 対 『英雄王』

―――――世界は彼を選んだ。

 黄金の王は一歩、また一歩と玉座に歩みを進める。
 足首まで埋まりそうな真紅の絨毯が、蝋燭の微かな明りと月の昏い光に照らされるその
様は、血の河を歩んでいると錯覚してしまいそうなほど―――――美しい。
 酷く幻想的で、夢幻の中に居るような雰囲気。
 彼の王だけが、酷く現実的で、生々しい。

 彼が目指すは―――玉座。
 王は、一人でいい。

 いや、王は一人でなくてはならない。
 その分類(カテゴリー)がなんであれ、絶対者として君臨する王は、ただ一人。


 ―――――世界は彼を選んだ。


 退廃的な城。
 人在らざるモノが住まう、異界の魔窟。
 その住人達は、今は姿も見せない。
 声を殺し、息を殺し、ただ『侵入者』の闊歩を見守る臣下のようだ。

 化生としての本能すら畏怖させる、絶対的な存在感。
 彼の王の前に出たとしても、歯牙にも掛からない、取るに足りぬ存在。

――――それが、完全なる王。
      それが、絶対なる王―――――


   ―――――世界は彼を選んだ。


 一歩、また一歩と歩を進め、ついには玉座の前へ。

「下郎、其処は―――――我の席である」

 金色の鎧を身に纏う王は、にべもなく言い放つ。
 それが当然であるかのように。
 

120 名前:『英雄王』ギルガメッシュ ★:2006/10/10(火) 00:46:21

(む―――――>>119のは我だ。突っ込むでないぞ、雑種)

121 名前:『不死者王』ブラムス ◆vOzBAMUTHU :2006/10/10(火) 01:56:51

>>119>>120

 ――――世界のために は在る。


「――――我の、と来たか」

不死者王が笑ったのは、気が触れたというわけでは決してない。
元は旧き時代、その知恵と勇猛さによって『賢王』とまで称えられた古代
ディパンの王こそがブラムスだ。
たとえ魂を冒涜する不死者となっても、その強靭なる理性は健在である。
悠久の時を経ようと、人の心を失うような脆弱さは存在しない。

ならば何故に笑うか?
問いの答えは明快に過ぎる。
今や世界に使役されるだけの、この死霊戦士――――
英霊が、まだ己を支配者などと思っているからに他ならぬ。

「神に報いることなく運命を狂わされたまま生を終え、存在すら自己のものですらなき『英霊』……
 新たなる世界の道具に過ぎぬものが、何かを所有する権利などあるのか?」

さも当然、という口ぶり。
十二の試練を踏破した大英雄にも劣らぬ体躯。
その全身から静かな、だが揺るぎ無い強大な気を放散させながら言い放つ。


  ―――― のために世界は在るのではない。


「お前はもはや王ではない。民も国もなく―――――何よりも、何人にも屈さぬ誇りを失った。
 今、ここに――――抑止の尖兵として立っているのがその証だ」

かつて、世界こそ我が物と宣言した大神オーディン。
金色を鎧(よろう)この王に、ブラムスは仇敵の影を重ねた。
世界の理が分からぬ、傲慢な愚か者――――だが、この男はそれ以下だ。

「子供でも分かる理を解せず、いまだ生前のごとく振舞うとは…愚かだな『英雄王』。
 いや――――」


  ――――だが、世界が神の傲慢を以って奪うのならば


玉座のはるか上、眠るのは魔術の晶石にて封じられしノルンの三女。
旧き真の名をシルメリア。神の所業に怒り、志を同じくした戦乙女。
今の新しき世界は知らない。
かつて、神の傲慢を正すため共に戦い―――そして、王を庇ったが故に封ぜられた真実を。
忘れてはいない、いまだ封印の解けぬ彼女への誓い。
オーディン亡きラグナロクの後。全ての決着をつけ、必ず姉妹たちの下へ送り出す。

自身を神の手より助けた恩義は、未だ何も返してはいないのだ。
もし阻むものがいるならば―――――

「―――新しき最古の王、ギルガメッシュよ」

玉座を離れ、黄金に輝く王の前―――はだかる様に不死者王が立つ。
黒の蓬髪、巌色の肌、そして神々をも屠り大地を歪ませる黒き闘気を立ち昇らせて。


  ――――我は、全霊を以ってそれに反逆する。

122 名前:『英雄王』ギルガメッシュ ★:2006/10/10(火) 10:22:11

>>121


―――――(オレ)のために世界は在る。


 大気は停滞し、生ける者は既になく、朽ちるのを待つだけの城で、相打つ王。
 誰も知るコトのない戦いは、かつて聖杯を求めた戦いに似ている。
 だが―――――決定的に何か異なるコトは、英雄王にはマスターが居ないコトだろう。

 マスターからのバックアップを受け振舞う英霊(サーヴァント)ではなく、世界が作り出したシステムから
外れた者を葬る抑止の守護者(サーヴァント)

「ハッ―――――」

 自嘲から零れる笑みではなく、侮蔑の成分を多く含んだ、禍々しいまでの笑み。


 ―――――世界は(オレ)のために在る。


「今更なにを云うのかと思えば―――――(オレ)(オレ)だ。
 確かにこの身は座からの移し身に過ぎぬが―――――こうして現界した以上、(オレ)(オレ)
あり、世界も、民も、全て我に所有する権利がある。いや―――――義務が在る」

 それが、彼の王の在り方。

「一度現界すればこの世の全てを背負う。
 それができずして―――――なにが王か、なにが英雄か」

 この世の全てを背負い、天上天下唯我独尊の如く振る舞い、全ての責を誰に譲るでもなく
その身に背負う―――――金色の王。
 ただの独占欲や支配欲。それだけでは決してないからこそ―――――


   ―――――だからこそ、世界は例外的に(オレ)を選んだ。


「よかろう―――――『不死者の王』。
 我が御前にて膝を着き、赦しを請うコトにてその不遜な口の聞きかたは赦してやる」

 眼前には十と二つの試練を潜りぬけた英霊にも勝るとも劣らない巨躯。
 されども、黄金の王の前に立つには役者不足。

 十と二つの試練では足りぬ。
 この世全ての試練を集めてまだ足りぬ。

―――――無音の緊張感が張り詰めていた空間に、乾いた指を弾く音が響く。

 目の前の全ては武具となり、武具の数だけ絶望が生まれる。
 必殺ならぬ、必滅の具現。
 果てのない戦いの火蓋は、斬って落とされた。


    ―――――世界は彼を選んだ。

123 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/10/13(金) 23:51:24










            吸血大殲――「獣惨%ノ金曜日」祭リ

124 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/10/13(金) 23:54:40


 せっかくの13日だけれども―――さすがに急すぎる。
 人数を集めるのは無理があるだろう。それぐらいはさつきにも分かった。

 だが、こう考えてみればその問題も解決するんじゃないだろうか。
 つまり「相手がいなければ弓塚さつきの不戦勝が決定」する。
 自動的にさつきの勝ちになってくれるのだ。
 そうすれば三連勝……これはなかなか悪くはない。

 だから取りあえずさつきは、待つことにした。

125 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2006/10/13(金) 23:54:47


―――――まったく、急すぎやしないか?
 

126 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/10/13(金) 23:56:04

うわーん! 誰も来ないって信じていたのにー!
偽志貴くんのバカー!

127 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/10/13(金) 23:56:43

あと5分?!
もういいよ! こうなったら実力で3連勝しちゃうもん!
うわああああ!
(突撃)

128 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2006/10/13(金) 23:57:27


 おいおい。これからは悪夢たる吾の時間。
 居ても不思議じゃないだろう?
 

129 名前:七夜志貴 ◆ZSxIfyU42I :2006/10/13(金) 23:58:34


 じゃ、判り易くコイツでケリを着けようか―――――!
 

130 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/10/14(土) 00:00:41


 連続する一瞬。すれ違う刹那に弾ける火花。鋭く伸ばしたさつきの爪が、オリジナル
へのリスペクトすらできない偽志貴を攻撃する!
 ―――が、疾さにおいて彼に敵うはずがなく。
 偽志貴の喉へと爪が届く前に、さつきは胸に刃が突き立つ振動を聞いた。

「分かっていたよ……結局はこうなるんだって―――」

(弓塚さつき→絶望)

131 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/10/14(土) 00:03:27


 ああ……駄目だったよ志貴くん。偽くんの攻撃レスすらこっちで決めて、
何とか間に合わせようしたんだけど―――駄目、だったよ。
 やっぱ、わたしじゃ無理だったのかな……。

 でも、いっか。時間内に負けたわけじゃない。つまり、この祭りの決着は
つかなかったってわけだから……わたしは負けてないってことになるもんね!
 と言うことで、この勝負はノーカウントだよ。

 ニキ(偽志貴の略)くん、惜しかったね★

132 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2006/10/14(土) 00:05:42


 しかしそのナイフの一突きもまた―――――ほんの刹那だけ遅かった。
 時刻は既に、十三日を過ぎ十四日。
 深夜の殺し合いと言う名の逢瀬は儚く消え逝くシャボン玉のように、終わりを向かえる。

「―――――どうやら、ヤマに嫌われてるみたいだね。お互い」
 

133 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/10/14(土) 00:07:54

吸血大殲――「獣惨%ノ金曜日」祭リ
 レス番纏め

 弓塚さつきvs七夜志貴
「惨なる禁にて獣は日ぬる(←13日の金曜日って意味だよっ)」
 >>123>>124>>125>>126>>127
 >>128>>129>>130>>131>>132

134 名前:七夜志貴 ◆nb.mURders :2006/10/14(土) 00:08:47


 無効試合だろうが構わないさ。
 こんなワケの判らないものに有効も何もあるまい。

 ま―――――またこんな機会もあるだろうし、気長に待つさ。
 

135 名前:◆vOzBAMUTHU :2006/10/17(火) 21:04:09

 ――――この拳で砕けぬものを知らぬ。

      不死の『王』
                   
                             英雄の『王』

                          我が財で斃せぬモノを知らぬ―――――


                 Restart

136 名前:『不死者王』ブラムス ◆vOzBAMUTHU :2006/10/17(火) 21:06:01

>>122(>>135)


  ―――――発現するは破滅の軍勢。


「…世界総てを自らの財として有する。
 ならば、一切の責も我が身に負う……座に属して尚、そうあると?」

世界の道具と化して尚、失わぬ自我と矜持。
度量の広さ、受け入れる器の大なる事こそは王が王たる資格である。
英雄王の、一切を呑み込み喰い尽くさんと在る信念。

「ならば認識を改めよう、貴様は道具ではない。
 世界に組み込まれなお魂を失わぬ、紛れなき英雄の王だ」

肥大化した自我の為す業なのは確かだが、この男は我が物として背負うといっているのだ。
即ち世界の狭量も非情の謗りも、己だけのものとして。
『世界』も無粋なだけではないということか―――不死者王は内心でそう得心した。
倒すに手段は選ぶまい、屠るに欠片の慈悲もあるまい。
だが、少なくとも奸智で陥れる外道ではない。
真っ向からの戦を好む不死者王に世界がこれほどの王を遣わせたというのなら、それは
敵対者に送る最大の礼節とさえいえよう。


  ――――相対するは覇者の財宝。


眼前に展開された刀槍の数々は、何れも伝説に名を連ねうる威力を秘めている。
数多の恐れなき英雄を率いているようなものだ。必滅の具現といっても過言ではない。
成る程、確かに武具のみならば繰り出される攻めに曇りは生じない。
刃そのものは恐れも躊躇も抱くことなど皆無、自在に操れるならばこれ以上の軍勢もないだろう。

無造作にその脚が動く。
一歩、また一歩と緩慢にすら思える―――しかし、力強い前進。

「だが―――赦すのは私の方だ、『英雄王』。
 我が渇き、貴様の財と命にて癒すことを不死者王の名において赦そう」

好機は一瞬。
限界まで張られた弦が弾ける、その寸毫の刹那を待つ。
僅かに間合いが近づく度、容赦なく向けられた切っ先の数々が熱を増し――――

「そして」


  ―――――武具より疾きは、不死の王。


足運びと重心の移動、そして人智の域を越えた化生の脚力。
膨大な力に精緻の技巧が加わったとき、神業を凌ぐ魔技が天地に顕現する。

まるで駆ける大地を縮めるように。
発動にいたる合切の気配を殺し、刹那に満たぬ間に彼我の距離を詰める。
音なき強襲。
王の立ち姿を虚像と見抜き、横に抜ける残像を認識したときにはもう遅い。

「新たな敗北、その双肩に負うがいい」

駆け抜ける勢いを利用しての左裏拳。
率いる兵は心を持たぬ武具、ならば将の首級を挙げれば終わる。
一切の驕りも遊びもない。
その首を刈り取るべく、金色王の背後から必殺の紅蓮が閃く。


   ――――王を狙うは、魔王の一閃。

137 名前:『英雄王』ギルガメッシュ ★:2006/10/17(火) 21:08:51

>>136

―――――これは、『軍勢』対『個』

 全包囲において展開される破滅と終末を司る軍勢。
 忠実にして冷徹な、凶悪無比と言う名を冠するに相応しい兵士達は沈黙を守り続ける。
王の号令を、王の勅命を一言一句たりとも聞き逃さないために。

 沈黙は続く。
 永遠とも思える沈黙は嵐の前の静けさに過ぎず、天を突き地を割るほどの轟音と共に
打ち破られる。

 ―――――兵力に勝る王と、兵の質に勝る王。

 堤防の決壊にも似た轟音。
 その殺意、その狂気は、まさしく大河の氾濫。
 それもただの大河ではなく、血と怨念に塗れた、幾つもの怨嗟が積み上がり生まれた河。

 そんなモノを、誰かがために積み上げたよう筈もなく、まさしくそれは不死の王がその身に
背負う業と―――――黄金の王が背負う業。

 この世全ての業を集めたところで、足りよう筈もない―――――業。

 その業と共に繰り出される、不死の王の一撃は正に必殺。
 生半可な不死では十度死んでもまだ足りず、百度死んでもまだ足りぬ。

 その身に背負う誇りと、信念。折れぬ牙が宿る容赦も慈悲もない、滅殺の拳。

 生ける者を骸と還し、死せる者を灰燼へと還す。
 例えるならばそれは神の怒り。

 だが―――――

   ―――――駒を有する将と、一騎当千の猛者。

「―――――その程度で我を殺せるとでも思ったのか?
 ハッ……笑わせてくれるな、『不死の王』よ」

 両者の間に浮かぶは白銀の剣。
 過度な装飾もなければ、取り立てて眼を見張るような魔力も感じられない。
 当然のように、不死の王の一撃を受け、刃は毀れ、剣としての用をなさなくなる。

「しかし―――――我の財に傷を付けるとはな。
 些か侮りすぎていたようだが……よかろう―――――」

 しかし毀れた刃は徐々に徐々にと復元される。
 そう、これはどれだけ斬ったとしても、切れ味が鈍る事もなく刃が毀れるコトもない。
 これはそんな、伝承の原典となった剣。

「貴様を、我が『敵』として認識しよう―――――『不死の王』」

 乾いた、指を鳴らす音が、静寂と停滞が支配する空間に木霊する。
 しかしそれは破滅への号令。

 剣という剣。槍という槍。
 おおよそ武器と呼べる物の全てが不死の王へと向かい牙を剥き、全てを喰らい尽く
さんばかりの勢いで進軍する―――――!

   ―――――一度命が下れば統べてのものを殲滅する軍勢と、単騎で駆ける強者。

「死に物狂いで踊れ―――――!」
 

138 名前:『不死者王』ブラムス ◆vOzBAMUTHU :2006/10/17(火) 21:24:44

>>137

  ―――――背後より迫るは伝説の軍勢


「―――私に二度同じセリフを言わせたいようだな、英雄王。
 財と自我に溺れる余りに局面の見方も忘れたか」

英雄王の嗤いを背に、不死王が漏らすのもまた嗤い。
前者が相手の不足を嘲るものならば、後者のそれは浅慮を哂う。
生を死に、屍を塵に変える覇王の号令を前にしても。


                         魔剣、名剣、帝剣、裂刀―――――


                誓剣、霊刀、恐剣、霊剣―――――


    名槍、魔槍、剛槍、裂槍―――――

主の勅を受け、縛解かれ驀進する武具の団。
微塵の死角すら無き包囲陣、敵将の一点目掛け殺到する神代の牙を前にしながら尚、不死王は怯まぬ。

しかし距離は一足一刀。


  ―――――沈む王の体躯。

            大気を裂き飛来する壊剣、聖剣、豪剣、兇剣――――

初手が防がれるのは想定の内。
戦とは常に二手、三手先を読むものだ。
無論不死王が、その不文律、兵法の王道を知らぬ道理などない。

そう、互いの距離は一足一刀。


  ―――――背(せな)が捩れ軋みを上げる。

               刺し穿たんと襲来する閃槍、黒剣、宝剣、妖剣―――――

背負うのならば知らねばならぬ。
天の機を知り地の相を読む―――――何よりも多く、誰よりも早く。
我が物と決めた世界を思うがままに繰りたいのなら、王は、その為の手管を識らねばならぬ。

そう、、敵は王の懐に。、、、、、、、

         ――――力が弾け

              到達する軍勢は――――



「兵力に頼るは勝手だが―――小枝で城は崩せぬぞ?」


    ――――それは如何な怪異であろうか。

城内に生じた其れは『渦』である。
魔力のみならず膂力、勁力―――急激な回転により生じた『力』の流れに呑まれ
或るものは根元より砕け、また或るものは嵐に揺られる枝のごとく翻弄される。
最古の王が遣わした恐怖の軍勢、古今に名だたる武威の象徴たちが、かくも悉くにだ。


    ――――昇る拳風は螺旋を生み

誰が知ろうか。
王の武具、暴威の数々が敵へと到達した瞬間を。
先端が触れるは一瞬。
その僅かという言葉すら及ばぬ、刃が力を発揮する拍子を見切り、体躯を捻じり逸らすことで
受け、直撃を流す。従来ならば為しえぬ防御、叶わぬ幻想。
世界の摂理を破るがごとき現象同然の技を、螺旋の動きと積んだ経験が可能にしていた。

剣群が魔城の夜に舞う。
今このときは槍も槌も斧すらも、颶風の渦を形づくる糧でしかなく。
そして何より、不死王が為した挙動は次なる糧に過ぎない。


      ――――其の『王』は軍勢を破り、城を崩した。

                     ――――神々の軍を屠り、天地をも揺るがした。

全ては刀槍が螺旋を舞うと同じく。
地より天。
剣と打ち合えば剣を砕き、兵諸共を木っ端に断つ。それ程の牙が潜むは渦の中心。
英雄王の懐深くへ一筋の魔拳、更なる滅殺の災禍が轟く。


   ――――昇る拳閃は天地を奔る。

                     ――――其の『王』は、独りで大軍を打ち破った。 

139 名前:『英雄王』ギルガメッシュ ★:2006/10/17(火) 22:33:42

>>138

 吹き荒れる破壊の嵐。
 伝承として名を残す数多の武具は、壊れ、毀れ―――――武器としての役目を終え、王の
手駒としての価値さえ失われる。
 例えるならばその様は―――――

―――――数多の英雄が倒れ、朽ち果てていくのと同義。
―――――数多の兵が死に、屍の弔いもされぬまま進軍するのと同義。
―――――道具は道具としての役目を果せば、ゴミとして扱われるのと同義。

「ほう……」

 感嘆とも驚嘆とも付かぬ声を上げる黄金の王。
 よもやあのような防がれかたをするとは想像もしなかったのか。
 それとも―――――純粋にこの様を愉しんでいるのか。


―――――広がっていく破壊の痕

        今では玉座すら影も形もなく―――――


 しかし、愉しむ間すらないほど、容赦なく迫る致死量を超えた、絶死の一撃。
 例えるならばそれは、天翔ける龍が閃光で描く軌跡。
 本来視覚に訴えるはずもない大気中の魔力さえ、不死者王から溢れ出す魔と闘気に共鳴
するかのごとく、光を生む。

 その拳は大気すら切り裂き、地を断ち割り、空をも穿ち、『セカイ』に風穴を開けるに相応しい。
 人は死に絶え、神すら葬り、『セカイ』すら破壊する―――――昇竜。
 今では見るコトも叶わなくなった幻想種だが、暴虐なる幻想の王すら消飛ばすほど、鍛えら
れた拳。裏打ちされる経験もまた脅威ではあるが、純粋で純然な暴力の前には理論などあって
なきが如しである。

「それにしても―――――馬鹿の一つ覚えか? 前進するだけならば畜生にもできると云うもの。
 猪突猛進は大いに結構だが―――――退屈だ」

 暴力は更なる暴力によって飲み込まれるのは当然の摂理。
 弱肉強食が支配するこの世界の掟でもある。

 暴風は暴風を生み、黄金の王が繰り出す数多の武具は、更なる勢いで射出され続ける―――。
 その様は正に絶望の具現。数えることすら厭になるほどの、武具の嵐。必滅の嵐。
 嵐を大嵐で飲み込まんとする英雄王ではあるが、不死者王の一撃をその身で受ける気はない
らしく、一旦両者の間は開く。
 とは云えどちらにしても、彼我の距離など些細なコト過ぎないのは云うまでもない。


 英雄王にはこの世全ての財があり―――――
  不死者王にはこの世全ての武があるのだから―――――

「余興にもならん。
 少々テンポを上げるぞ」

 全包囲に展開される武具はその密度を更に増し、不死者王を包囲する。
 逃れる術を探す方が困難なほど、武具の数は膨れ上がり、不死者王を目指し進軍する―――!


―――――露になるなにかは、

           誰の目にも明らかに移る、麗しの女神―――――


140 名前:『不死者王』ブラムス ◆vOzBAMUTHU :2006/10/30(月) 01:38:20

>>139

         ―――――護らねばならぬ。

                     我が身に代えても、彼女だけは―――――


(外した――――いや、外されたのか?)

最古の王ギルガメッシュは半神の英雄。
強大なる膂力は大地を割り、振るう剣は風を切り裂いた伝承を王は知る。
そして己の敵である対手は力の行使に一切の枷なく、完全無比なる姿で現界している。
数多の強大な魔獣を討ち、バビロニアの神々に比肩したかつての強さの侭として。

(元より、楽には勝たせてくれぬという訳か…)

軍を破り、城を穿ち、竜をも狩る昇竜の拳―――一つの拳が起すには強大に過ぎる旋風は、しかし、
上昇の頂点を以って終となる。その終点を間隙なく攻め立てるのは驟雨のごとく飛来する英雄王の軍団であり、
すなわち洋の東西、神話伝承の古今を問わぬ刀槍剣矛の容赦なき群。

「良かろう、元よりその程度は覚悟している。ならば――――」

刃金の軍勢が殺到する。
正に一分の隙間なく展開され、全てを呑み込む津波を思わせる迫るそれは、無論実体ある“物”である。
エーテルで構成され、神秘によって存在せしめられるも、確たる物質として現界している。
無限の剣。無尽の槍。
当然として全てに刃があり、腹が、柄が有る。

相対する不死の王。
抜山蓋世の巨山の姿を幻視させる体には、だが山には無きモノがある。
巌で出来ているかと思わせる両の腕(かいな)。金剛石よりも尚硬く、鋼より柔軟なる拳腕。
巨木を削りだしたかのごとき二つの脚――――獣を遥かに凌いでしなやかなる、俊敏に並ぶものなき剛脚。

―――故に。

        ―――――災禍の型を紡ぎだす宝具の大群

                  その中の、或る切先の一群を逃す道理は無く―――――



「―――付いて来い。付いて来られればの話だがな」

旋風一閃。
呑みこまんと迫る武具を文字通り蹴散らし、
無影乱脚。
地へ落ちるより早くそれらを足場とすることで宙空を駆け、
そして一陣、疾風怒濤。
更に天井を蹴り、壁を走り抜け天地の別なく踏破せしめるなどという真似は――――地上天上、
全ての武を有す『王』にとっては容易き所業。


        ――――肩を貫く一条は、我が身を盾にした代価

                それは今までの攻勢にて負った、唯一つの――――


片方の拳で飛来する矢を弾き、 / 堅牢無比なる防御は、先陣を余さず叩き伏す重戦士達の様に
残る掌で灼熱の魔力を撃ち、 / 終わりなき攻撃は、間断なく矢雨を浴びせる弓兵隊と同じく
縦横無尽に天地を駆ける。 / 止まぬ疾駆は、自在に荒野を馳せ巡る騎兵団のごとく

一拍子に弾き、撃ち、走る。
一体の攻防を展開する腕は寸毫の速さで交互に役目を変え、互いの飛び交う光条は幾重に連なり、轟音が木霊する。
もはや一所には留まらぬ、神速にして無限の交差。
時には十字、時には稲妻。天から、地から、右翼、左翼、あらゆる方向で武具が弾け魔力が奔り、
朧な闇に描かれるのは、不死王が燃やす双眸と魔力による紅の軌跡。

見よ、近代の世にも劣らぬ戦の光景。
『財』に拠る軍と『武』に因る軍。
これが一対一の決闘だと世界の誰が理解かるか、認めようか。
全方位に展開された弾雨と爆音、この戦場の交響曲を形成するのはあろう事か只二人。

「―――財を出し惜しんでいるのか?
 これでは余興にもならぬぞ、『英雄王』よ」

戦火の中、言の葉が風に流れる。
轟音にさえ掻き消される事なく確かに響く、不死者王の確かな言が。


         ――――未だ知られてはならぬ。

                 我が望みが達せられるには、未だ――――



141 名前:『英雄王』ギルガメッシュ ★:2006/10/31(火) 20:07:23

>>140

「減らず口もそこまで叩けるのならば、まだ余裕か―――――」

 腕を組み、まるで此処が何も起こっていないかのように振舞う王。
 足元で、眼前で、何処に目を向けても繰り広げられている戦争すら気にならぬかのように。
 悠然と余裕ある態度を崩さぬ英雄の祖。

 煌く光芒、鼓膜を破らんとする爆音。
 破壊の後は刻一刻と拡がり、今では城としての機能すら果すコトはなくなった、伽藍の堂で
繰り広げられる、『世界』と彼等だけが知る戦争。
 互いが互いを貪り尽くすまで終わるコトのない舞踏。

 カデンツァの調は熱を増していく―――ように思えた。

 ピタリと、王の武具の数々は動きを止める。
 獲物目掛けて駆けるだけが能であった猟犬は、王を守護する猛犬となる。

「貴様はこれを、城攻めだといったな」

 不死者王から放たれる魔力波と言う名の必滅の光は、黄金の王の下へ、何の障害もなく
突き進む。
 されど、その光が黄金の王に届くコトはない。
 黄金の王の傍らに、盾とも胸当てとも取れる形状をしたモノが寄り添う限り。

 あらゆる邪悪、あらゆる脅威を祓うそれは、とある伝承の原典。
 如何に不死者王の繰る魔力が強力で強大であろうとも、この神秘を打ち崩すには些か弱い。
 幻想はより強力な幻想によって打ち砕かれるのだから――――!

「たかだか『城壁』風情を崩すのに、王たる我が出るのは大人気ないが―――――」

 手には一振りの剣。
 後に『王の怒り』との意味を持つ剣は、彼の心境を表しているかは定かではない。

「黎明までにこの辛気臭い墓標から出ねば、我の気が滅入る」

 手にした剣を振るえば、地は裂け風は荒れ狂う。
 見上げればそこには真円を描く月が浮かび、空は未だ陽光を向かえる準備は出来ていない。

「征くぞ―――――」

 不死者王の疾駆にも劣らぬ速度で駆ける英雄王。
 彼は有する武具の『担い手』ではないだけであって、剣の扱いを知らぬわけではない。弓も、
槍も、全てを存分に使いこなすコトなど、英雄の王足る彼には造作もないコトだ。
 だからこそその一撃もまた―――――必殺。

 しかし不死者王とて木人形ではない。
 交響曲はカデンツァを挟み狂想曲となり、クレッシェンドでまだ続く。

 そう―――――王の思惑を隠したままに。

142 名前:『不死者王』ブラムス ◆vOzBAMUTHU :2006/11/15(水) 00:46:20

>>141

夜気弾け、天地鳴動す。
月下に狂騒を奏でるのは交錯を重ねる刃と爪――――即ち、緋と金色の二輪。
一に轟くのは憤懣を隠さぬ王の剛剣。
ミッドガルドにおいてアース神の移し身であるエルフ―――後に、その王が所有していたと
伝わる『王の怒り』の原典により生ずる剣風は、英雄の膂力が加わることで暴風となる。
さながら『怒り』のみならず英雄王の有する暴虐をも体現した怒涛の剣を凌ぐのは、
あろうことか――――紅い燐光を纏い、五指を束ねて揮われる両の爪であった。

「『弾けて』、」

灯る赤光は不死王が込めた無尽の魔力。
先ほどまで無数の矢となり放たれていた『点』は凝縮され、より強固な『線』となり濃密に
編みこまれている。そして何よりも、神話の時代より旧き不死者王『自身』の纏う神秘こそが
この剣戟を可能としているのである。
鎚を拳で、剣を爪で、爪牙で砕く。それこそが不死者王の『伝承』であり、歩んだ暦程なのだから。
そして――――

「―――――『混ざれ!』」

中空、不死者王の目前。
全ては互いが跳躍から幾多に及び打ち合った後であり、互いの蹴りによって間合いが開いた正しく直後。
刹那の隙を逃さぬと刃を構える英雄王の鼻先に生じた―――“其れ”は、魔力を伴う爆発であった。
王の言霊はいわば引金。
弾丸は『王の怒り』の伝承が生まれた時代の剣――――『踊る炎』と称された剣であったモノ。
すなわち不死者王を貫いたまま残っていた武具が引き抜かれると同時、膨大なまでの魔力を流し込まれ
力ある言葉と共に投じられたのである。
その結果として武具は砕け散り、限界まで漲った力は熱風衝撃と変じて放出されたというのが事の真相だ。
無論だが尋常な業ではない。武具が宿した幻想を凌駕できるだけの魔力に加え、力を繰る知識がなくば到底叶わぬ。
これも強大無比な力はもとより――――その叡智。
神代より遥かに遡る生前。魔導国家ディパンにおいて『賢王』の号で呼ばれ、死後も衰えぬ智を持つから
こそ為しえた、これもまた幻想と呼べる代物であろう。


―――――爆風は続く。

爆風を受け、地に降りた王の向こうで。

―――――爆光は続く。

閃光に眼を灼かれまいと手をかざす王の前で。

―――――爆裂は終わる。

敵を探す王の目前。
“気”を消した不死王より突き出された腕は――――――




                           ずん、            と。


―――内部へ浸透する衝撃。
法外な魔力と膂力に因る頸の発動、気付いたときにはもう遅い。


143 名前:『英雄王』ギルガメッシュ ★:2006/11/15(水) 15:19:17

>>142

 音もなく吸い込まれる拳という名の兇器。
 それは英雄王の魔力の結晶たる金色の鎧を打ち抜き、穿ち、肉にまで達する。

―――――誰が想像しただろうか?

 世界から無尽蔵と言えるほどの魔力のバックアップを受け、生前と何ら変わらぬ力を
振るう彼に、一太刀と言えども傷を負わせるなどと。
 彼にとってこれは余興―――確かにそう言う面もあった。攻めも単調であり、守りすら
疎かな、ただ殺す為の『狩り』に過ぎない戦い。
 しかし両者の実力は拮抗し、あくまで余興に過ぎない彼と並び立つに足る不死者王に
は、そのような愉しみがあるはずもなく―――――その僅かな差によって別たれた明暗。

「ク、ハ―――――」

 闇と朧な月に照らされた空間に拡がる鮮血は、さながら大輪の華。
 その華は芳香で死者を滾らせ、鮮やか過ぎる色味に妬みすら覚えるほどに咲き誇り、
生者であればその鮮やかさは眼に毒なほど―――死の色に満ちた紅。

「―――――ハ、ハ、ハ」

                                                  笑う。

「ハハ、ハ、ハ、ハ―――――」

                                                 嘲笑う。

「クハハハハハハハハハハハハハハハハッ―――――!!」

                                                 狂笑う。

「斯様に脆弱な鎧など―――――要らぬ」

 金色の鎧は露と消え、戦化粧が施された素肌を晒す。
 それと同時に絶死を司る数多の武具の数は更に増え、零距離から『倒すべき者』に
狙いを定め弦を引き絞る。

「―――――『城門』は開かれたぞ、不死者王」

 手に取った一振りの名もない槍―――後に『貫く』と名を持つ―――を持つと同時に
襲い掛かる、有象無象を全て飲み込む剣林弾雨。
 その多くは不死者王の下へと襲い掛かるが、幾つかは狙いを大きく外し、不死者王が
常にその背に守り通していた『モノ』へと牙を剥く。

 そう―――――これは『攻城戦』。
 不死者王は相手陣営に最大の打撃を与えると同時に、最大の愚を犯してしまったのだ。

 この城攻めとはつまり、如何にして門を開けるか。それに尽きた。
 分厚い城門、城壁を崩し、城の中に到り、城主を落とせば勝利は決するのである。
 今まさにその『城門』は、図らずも英雄王を前に開かれてしまった。

 千載一遇の好機に釣られ。

 だからこそ、『城主』は無防備にその姿を晒し―――――

「―――――これで詰み(チェック)だ」

 英雄王は逡巡なく投擲する。
 後にその名が示す通り、寸分違わず心の臓貫き、絶命させる為に―――――。

144 名前:英雄王king of kings:2006/11/22(水) 11:39:57

 誰も識る事のない『戦争』の記述は一旦此処で幕を引き、二人の王は時の狭間に埋もれ
闘い続ける。
 女神の微笑みは誰が為に捧げられ、彼等の血の痕は誰が為に捧げられるのであろうか。


 誰も知らず、
 誰も見ず、
                                  ―――――誰も生きないこの闘争。


 いつかまた再会されるであろう、二人きりの『戦争』は一度終わりを迎え、この場は凄惨で
鮮烈に輝く『船』を迎え入れ、誰もが死に向かい、殺す為に殺し、死ぬ為に死ぬ地獄絵図と
見紛う舞台が開かれる。

 生者と亡者の終わり無き戦いは、忘れ去られたように続く。
 何処までも、どこまでも。



『不死者王』対『英雄王』

  ―――王の矜持(凶事)―――

・レス番纏め(暫定)

>>118>>119>>120>>121>>122>>135>>136
>>137>>138>>139>>140>>141>>142>>143

・IE用

>>118-122 >>135-143

145 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/23(木) 00:53:27


 アハトゥンク!
 このスレは本日より鉤十字騎士団が徴発する。
 一切の闘争行為を中断せよ。
 繰り返す、一切の闘争行為を中断せよ。

 さあ、始まるぞ。過去最大規模の闘争が。
 諸君、大いに期待したまえ!

開催日時:
 11月25日(土)26日(日)
   初日21時〜4時 最終日 20時〜2時

146 名前:6X年前――ハインリヒ・ヒムラーからの手紙:2006/11/23(木) 00:54:57


ふむ、大佐。 計画は順調に進行しているようだね。
ああ、詳しい報告は結構だ。
この頃、君とランドルフ君が騎士団(オルデン)とは別に進めている計画について
私の知らないことは殆どないのだからね。 驚いたかね?
たとえば、「ミレニアム」が君の計画に協力して人員を派遣する、とか。
誇り高き空の騎士達「リヒトホーフェン・サーカス」と内密に連絡取り合っているとか。
トゥーレ協会の会長から全面的な支援を約束されたこと、などもね。
全て、全て承知している。

さて、前置きはこのくらいにして本題に入るとしようか。
君も私も身体が幾つあっても足りないくらい忙しい身だからね。

君の計画についてだが、指揮系統という点で、些か弱点があるように私には思えるのだ。
このような計画――オットー・スコルツェニィがグラン・サッソで実行したような種類のものだ。
この種の作戦においては、指揮系統の不備が致命的な失態を招くということは、
言うまでもないだろう。
これについて、指揮官である君の権威を正当化し、作戦指揮権を明確にする方法が、
同封した便箋の中に入っている。 開けて読んでみたまえ。




     総統兼首相より

―極秘―
グルマルキン大佐は、私の直接かつ個人的命令に基づき、ドイツ帝国にとって
極めて重大な任務に服している。 彼女は私に対してのみ責任を有する。
軍、民を問わず、階級に関わりなく関係者全員が彼女の必要を満たすべく、最大
限の協力をすることを要求する。

                                アドルフ・ヒトラー



読み終えたかね? ならば理解できただろう。
君の計画に対する総統からの言わばお墨付きだよ。
計画の準備段階で、或いは実行段階において、指揮系統に弊害が生じるようなことがあったら
この書類がものを言うはずだ。
今さら言うまでもないことだが、ドイツ帝国に籍を置くものは、すべからく国家と総統に
無制限の絶対的忠誠を履行する義務があるからね。

この書類の真偽、或いは期限について確かめたい者は、総統自身に訪ねるより他はない。
だが、それを実行することは、限りなく不可能に近いことだ。
それは即ち、総統への疑念の表明に他ならないのだからね。
たとえ君の計画について、総統が知らなかったとしても、それは変わらないのだよ。
わかるね?

それでは、行きたまえ。 私はここで、君の壮大な計画の成功と夢の成就を願っているよ。



            ドイチェス・アーネンエルベの活動を強力に支持する者

                               ハインリヒ・ヒムラー

147 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/23(木) 00:55:46


 今計画は国家社会主義労働者党の―――ひいては総統閣下に忠誠を誓ったドイツ
国民全ての悲願である。あの丸眼鏡にヒゲを生やした陰鬱な悪魔―――ヒムラー
SSライヒ指導者は、命令書をグルマルキンに託した時、そう語った。
 偉大なる総統と違い、その語り口調には陶酔も興奮も一切含まれていなかった。
 ただ冷徹に。ただ酷薄に。魔術の文句を朗読するかのように、命令を下した。
 協力を嘆願した。

 モーゼの十戒を納めた契約の聖櫃―――失われたアーク。
 千人長の槍、最古の聖書、エレナの聖釘、トリノの聖骸布、巡礼の道、聖杯、
ヘントの祭壇画。―――イエスの聖遺物と呼ばれる骨董品。
 聖櫃はその中でも飛び抜けて強力な一品だった。
 そしてまた、グルマルキンにとっては因縁深いおもちゃ箱でもあった。
 ナチスドイツどころか、神聖ローマ帝国が建国されてまだ100年と経っていな
かった頃からの関係だ。
 第三帝国と第一帝国の違い―――所属している組織が違っただけだ。
 あの頃は鉤十字ではなく逆十字の騎士団に籍を置いていた。
 4月30日の夜に参加することを許された修道騎士たち―――彼等は力を求め、
彼女と契約した。その見返りとして、グルマルキンは騎士団の陰となった。
 契約。メフィストフェレスのように馬鹿正直に履行する悪魔は二流の証左。
 グルマルキンの真の狙いは聖櫃/聖杯だった。
 だが、ヴァチカンとの闘争に敗れ聖櫃は行方をくらます。
 聖杯は守護者の介入により消失。
 騎士団は壊滅―――生き残りの半数は夜を往く者として闇に消え、残りの半分
は新たに秘密結社を作り、各国に無数のロッジを作った。

 ヒムラーはそのことをランドルフより聞かされていた。
 失われた契約の聖櫃。聖杯と並んでタヌキの大好物。ヒムラーのろくでもない
頭脳がある作戦を思い付く―――新たな地での帝国の建国。
 オペラツィオン・アローン=ハッコーデシュ。
「オペラツィオン・ククルカン」「オペラツィオン・ロンギヌス」と並んで、
鉤十字騎士団主導、トゥーレ協会支援のもと実行に移された。
 ヒムラーが打ち立てた計画―――同時に託された鉄十字の命令書。ランドルフ
とグルマルキンにより120%是正されたヒムラーの作戦は完璧だった。
 だが、鉤十字騎士団の介入を前提に進められていた作戦は、ククルカン作戦
によるグルマルキンの負傷。ランドルフに一任されていたロンギヌス作戦での
思わぬ難航により、騎士団無しで実行されることになった。

148 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/23(木) 00:56:17


>>147
 不運の連続。―――トゥーレ協会の暴走。
 会長のクロノエン大佐は当時、怪僧ラスプーチンによる悪魔召喚に時間を割
いていたため、聖櫃作戦を律する余裕は無かった。
 結果、忌々しい英国の妨害行為。或る考古学者/冒険家の登場と抵抗。
 聖櫃入手まであと一歩というところで、党員の迂闊な行動により聖櫃は暴走。
オペラツィオン・アローン=ハッコーデシュに割かれた人員は全滅し、聖櫃は
大英帝国の手に渡ってしまった。
 聖櫃は英国の戦利品として大英博物館に移送された。
 だが、聖櫃はトミィの宝石箱にむざむざ寝かせていていい代物ではない。
 グルマルキンはククルカン作戦を一時中断し、聖櫃奪還作戦に参加する。
 バトル・オブ・ブリテン。ゼーレーヴェ作戦とはまた別の秘密作戦。
 チャーチルがロンドンを離れ、ノーフォークの辺鄙な田舎村で週末を過ごす
との情報をヒムラーから入手し、ロンドンが手薄になった隙をついて作戦実行。
 だが、これもまさかの抵抗――博物館卿と少女探偵の暗躍――により失敗に
終わる。聖櫃は英国の手にもナチスの手にも帰せず、姿を消した。

 聖櫃入手の失敗/奪還作戦も失敗/ククルカン作戦も失敗/千人長の槍も入手
は敵わず/悪魔召喚はラスプーチンの消滅により頓挫した。
 アーネンエルベの惨敗。
 この敗北により、総統権限を有した命令書は紙くずになるはずだった。
 だがヒムラーは野望を捨てきれず、確実な実績を持つ武装親衛隊よりも虚無
にみちたアーネンエルベに勝利を託した。
 優遇される魔導の士たち。東部戦線で勇敢な兵士達が骸を重ねる中、彼等は
クリームをたっぷりと溶かしたコーヒーを片手に膨大な資料と睨み合った。
 第四帝国建国の命令は継続。
 鉤十字騎士団も解散されることはなく、それぞれの任務に従事した。
 だが、現実はヒムラーの妄想を考慮することなくドイツを浸食する。
 リューネブルク捕虜収容所で彼が奥歯に仕込んだカプセルを噛み砕いた時、
全ては終わったはずだった。―――終わるべきだった。

 だが、現実には一枚の命令書と
 数多の亡霊が残った。

 妄念と我執によって聖櫃を追い求める魔女は、或る時空旅行者と出会うこと
により―――三度、総統の野心のために身を犠牲にすると決めた。
 表向きは。

149 名前:◆SoRDENIEpc :2006/11/23(木) 01:02:27

 意識に、灯が点る。
 闇の中で意識は、朧気な光を放ちながらも、やがて一つの像を結ぶ。

 目を開くと、其処は地下墳墓を思わせる空間だった。
 堆く積み上げられた無数の木箱は柩さながらで、或いは物言わぬ墓標とも見える。
 しかし、其処には墓地特有の悼惜たる念を感じることはない。
 共通するのは唯、やがて訪れる忘却という名の死の匂い。

「Sieg heil , ようやくのお目覚めか。
 かつてのよしみで箱の中から見つけ出してやったはいいが、貴公ら、すっかり壊れてし
まったかと思ったぞ」

 その墓標……否、木箱の一つに腰掛けながら、一際濃密な、死の匂いを孕んだ黒い影が
声をかけた。
 闇に溶ける黒の外套と同色の制服。
 肩よりもやや短く切り揃えられた金色の髪。
 怜悧な美貌は、しかし右目に残る疵痕と共にその奥底に野獣めいた残酷を覗かせている。

「……貴殿か、グルマルキン」

 男は、重い歯車が油を切らし軋みを上げる様に、声を出した。
 それに応じ、グルマルキンは口の端を吊り上げた。

「口は利けるようだな、話が早い。
 貴公ら両名にお誂え向きの任務がある」
「断る」

 間、髪を入れぬ拒絶にも動じず、グルマルキンは更に言葉を継ぐ。

「討ち死にもまた武人の誉れ、勲しか?
 だがな、ガラクタ人形どもの行くヴァルハラなど有りはしないのだよ」

 皮肉気な笑みを浮かべながら。

「そのことは貴公にも十分に理解出来たはずだがな。
 さもなくば此所で朽ち果てるのを待つか、それとも米国人ヤンクどもの晒し者になるか。
 理解できたなら返事を聞こう。
 “Ja”か“Nein”か」

 ――手許へと目を落とす。
 腕の中で身を横たえているのは、余りにも華奢な、未だ少女とも見える姿。
 その豊かな金髪の一房が頬に掛かるのを、武骨な指でそっと払った。

「私に、そうするに足る理由があるというのかね?」
「理由……そうだな。
 望む限りの報償がある、といえばどうするかな」

 自信に溢れるその口振りに、彼は眉根を寄せた。

「……貴殿、何を企んでいる」
「随分な言い種だな。
 『望むものをくれてやろう』、こう言っているのだよ。
 現にその力は我らの手の内にある」

 腰掛けていた木箱の、その一つに手をかけながら、指先でこつこつと叩いて見せる。

「“Die Verlorene Arche”、『神の力』だよ。
 ではもう一度問おう。
 返事は“Ja”か“Nein”か」

 目を閉じる。
 刹那の、重い静寂が周囲を包む。


 ――再び目を開くと、男は意を決しこう告げた。

「“Ja”-“Javohl”.
 鉤十字騎士団スワスティク・オルディン四騎士が一騎、ヘルマン・タッツェルヴルム、同じくヴァルトラウテと共に
現時刻を以て戦列に復帰する」


 

150 名前:モリガン・アーンスランド:2006/11/23(木) 01:27:55


男の口が一番軽くなるのは、ベッドの上。
寝物語に面白い話を聞かせて頂戴、とねだってみせれば、次から次へと喋りだす。
見栄を張りたいのか気を引きたいのか、話してはいけないような事まで。
その男も、そういう類の男だった。

曰く、極秘裏に大きな作戦が動いている。
曰く、その作戦は総統権限まで持ち出されるような代物で、自分はそれに関わっている。

誇らしげに語ってみせる顔は、実に微笑ましい。
ただ、夢想じみたその作戦は確かに面白い話ではあったけれど――――
実行される事はないだろうと、当時の私は思っていた。



そんな事があったのを思い出したのには、当然きっかけがある。
似たような体験を、たった今した所だった。
違うのは、60年越しの作戦である、と言う事だけ。
何かが引っ掛かると思えば、あの時の話と同じものなのかもしれない――思い出してしまえば、
そこに至るまではあっという間だった。

「さて、どうしましょうか……」

疲れからか何時の間にか寝入っていた男から離れ、呟く。
確かめてみよう、と言う気にはもうなっていた。
問題は当たりだった場合どう愉しむか。
折角だから、潜り込んでナチごっこも悪くは無いかもしれない。

――そうね、それが良いわ。

そんな遊びの出来る機会は滅多に無いのだから、混ぜてもらう事にしよう。

「となれば、早い所指揮官さんを見つけないと……ふふ」

顔も声も、男の記憶が教えてくれた。
もう一つ、魔術師だと言う事も。
それだけ分かれば、探し出すのにそれほど手間は掛からないだろう。

「作戦遂行に際しての機密保持についてお話したい事があります、大佐――――
 と言う所かしらね、第一声は」

相手の興味が引ければ、そこから先はどうにでもやりようがある。
むしろ、そこもまた愉しみの一つだろう。
考えれば考えるほど、自然と浮かんでくる笑みが深くなった。

151 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/23(木) 01:28:40


グルマルキン導入

 西南極のロス海―――ロス棚氷上空。冬将軍をゆうに下回る氷結に閉ざされた
極寒の地で、銅色に染まった夜空を滑る一機の機影があった。
 メッサーシュミットMe323ギガント―――張りぼてのモンスター。
 6発の大型エンジンを持つ巨大輸送機。前時代の遺物。
 鉄筋の骨格に布張りという現代では考え付かない頼りない航空機だが「布張り」
という軟弱な印象とは裏腹に、輸送機は悠然と南極上空を飛行していた。
 全幅54メートルに及ぶ巨大な両翼には黒い十字に、L字状の白い縁取りがついた
識別マーク―――鉄十字が描かれている。
 尾翼には、当然のようにハーケンクロイツが。

 グルマルキン・フォン・シュティーベルSS大佐は、領地から遠く離れた極南
の地で、闇に染まることのない夜空を窓越しに眺めていた。
 南極の絶景に見とれている感じではない。
 哨戒機の索敵員のように、油断なく空を睨め回している。
 彼女は、兵員――深紅の男爵率いるサーカス団/機械仕掛けの戦乙女/ジョリ
ーロジャーの魔女/稀代の錬金術師――が詰める貨物室とは隔離された将校部屋
で、狩りの時が訪れるのを待ち受けていた。
 将校部屋と言っても、このような張りぼてだ。マボガニーの机や革張りのソファ
などは期待できるはずもなく、手狭な面積に簡易デスクにパイプ組の簡易ベッドが
置かれただけの質素な部屋だった。別室に比べればかなりまともな環境だが、この
部屋だけを見れば留置所の牢獄部屋と見紛っても不思議ではなかった。
 ギガントが誇る膨大な輸送量、その大半は箱≠フ移送に費やしていた。

 グルマルキンは素組みのデッキチェアに腰掛け、ベッドには別の主を迎えている。
 横たわる女。
 グルマルキンの冷徹なる麗しさとはまた違った妖艶なる美貌の持ち主。
 腰まで伸ばした翡翠の髪に、同色の瞳。
 白磁の肌は純白のシーツ一枚により隠されていたが、その完璧なボディライン
は薄手のシーツ越しに惜しげもなく晒されている。
 愛妾か情婦か、はたまた玩具の類か。
 しかし、その完璧≠フ称号が相応しい体躯に相貌は、娼婦は娼婦でもグランド
オリゾンタル―――最高級娼婦の臭いを持っていた。
 決して誰かの所有物に収まる女ではない。

 ―――退屈な空なんかよりも、私を見て。

 翡翠の瞳で女はそう訴える。言葉に変わることはなく、事実彼女がそう望んだか
どうかはわかり得ない。だがグルマルキンは窓から視線を離すと、怜悧な魔眼で
女の肢体を射抜いた。
 嫣然とした女の微笑みを持ってしても、SS大佐の氷結を溶かすことは敵わない。
 だが同様に無粋を嫌う女丈夫でもある。口元には愉悦の笑みが浮かんだ。

152 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/23(木) 01:29:40

>>151

「……そろそろ時間だモリガン。私は十分愉しんだ。いい加減、制服を着ろ。
我々はあくまで軍事行動の一環として、此度の作戦に従事している。故に偉大
なる帝国軍人―――プロイセンの騎士として、誇りを纏う義務がある。軍服を
着ず、民間人を装うのは騎士道に反する上、重大なジュネーブ条約違反だ」

 女をからかうかのような口振り。本心ではないのは明らかだった。
 だが「時間だ」という言葉に偽りは無かったようで、女が「あら、残念」と
口にする前に、扉がノックされた。
 問い質すまでもなく、音の主は分かっている。グルマルキンの戦友にして
右腕、ハルトマン中尉だ。彼女が親衛隊に配属されて以来の付き合いだった。
 その寡黙さと機敏の良さを買って重用している。
 幾度か戦死させてしまったが、未だにグルマルキンの従順な部下だった。

「入れ」短く応答した。

「グルマルキン大佐」
 彼女の右腕であるハルトマンは、踵を揃えて敬礼をすると――ナチス式では
ない――ベッドの上の半裸体の美女や、それを左眼でねぶる上官の態度には
気にも留めず、淡々と自身の職務に没頭した。
「ヴァルトラウテ中佐殿がムスッペル≠可視範囲に捉えたと仰っています。
5分もせずに、我々でも視認可能な距離まで近付きます」

「聞いたかモリガン、準備を急がねばならんぞ」

 グルマルキンは吸いかけの葉巻を灰皿に押し潰すと、黒服の襟を正し、ネク
タイの位置を治した。サーベルを佩くと、背もたれにかけた漆黒のマントを
羽織り、淡い金髪の上に髑髏十字の略帽を乗せた。
 グルマルキンは戦地にも勤務制服で望む。彼女は野戦服を好まなかった。
 漆黒のSS勤務制服の上に羽織った闇色の外套。これが魔導士グルマルキンの
コスチュームだ。

「ハルトマン、あの狂った兄弟に連絡をいれろ。直通回線だ。傍受を恐れるな。
どうせ各機関の狗どもが聞き耳を立てているに違いないから、高らかに唄え。
フェンリルは巨人に食らいつく∞フェンリルは巨人に食らいつく≠セ。
 ―――いま、我々は悪魔のように進軍を開始する」

 狼は巨人に食らいつく。その言葉にハルトマンの鉄面皮が緊張に漲った。
 ベッドで様子を窺うモリガンと呼ばれた女の口元にも、悪戯っぽい笑みが
広がった。

「……それでは」
「ああ」
 グルマルキンの右の義眼がぼうと輝いた。半世紀前に失われた邪眼晶―――
それに変わって嵌め込まれた霊視眼(グラム・サイト)が蒼い炎を浮かべる。

「―――現時刻よりオペラツィオン・ノイエ・ジールを開始する。狼は巨人に
食らいつく(Der Wolf schnappt nach dem Riesen)。
 炎の庭を制圧せよ。巨人どもの玩具は我々が徴収する」

153 名前:◆2B6Bo7ac06 :2006/11/23(木) 01:41:20





    吸血大殲 Blood Lust 大規模闘争 The Carnival
         空戦祭/南極戦/ナチ祭り

           「新標綱作戦」
       ――Operation Neue Ziel――




.

154 名前:エアシップ・マガジン11月号:2006/11/23(木) 01:45:43


「ツェッペリンによって創造された歴史は、ツェッペリンにより再び浮上する」

 1937年5月。大西洋横断航路に就航していた硬式飛行船ヒンデンブルク号は、原因不明
の出火事故を起こし爆発炎上。この悲劇は巨大飛行船時代の終焉を告げるものとなった。
 ―――それから70年。
「伯爵の曾孫」によって、ツェッペリンは再び空を往く。

「新たな時代のツェッペリン(Zeppelin Neue Ara)」と名付けられた、全長1キロにも
及ぶ超巨大硬式飛行船は、ドイツ製飛行船による空の再征服計画「ネオ・ツェッペリン
・プロジェクト」によって完成された現代飛行技術の結晶だ。
 フンフツェーン・フォン・ツェッペリン伯爵によって発案されたこの企画は、スピード
ワゴン財団やトムスン・アンド・フレンチ商会など多くの有力者による出資協力や、ツェ
ッペリン・ルフトハンザ社などの飛行船企業から人材支援を受け、ヒンデンブルク号爆発
炎上より70年目の今日ついにお披露目となった。
 現在公表されているスペックは以下の通りである。プロジェクトチームによると、より
詳細なスペックは企画の次段階「ツェッペリン事業の開拓」に併せて公表するとのことだ。

  姿勢制御用小型エンジン12基
  推進用メインエンジン2基
  全高約350メートル
  全長約1000メートル
  最大飛行可能距離5000キロメートル

 大雑把なスペックだが、これだけでも「ツェッペリン・ノイエ・アラ号」が如何に巨大
な飛行船かは分かるはずだ。現在のところ、これを上回る飛行物は地球上に存在しない。
「新たな時代」の名に相応しい超ド級飛行船だ。

 プロジェクトの立案者であり、飛行船の設計技師でもあるフンフツェーン・フォン・
ツェッペリン伯爵は完成したド級飛行船に絶対の自信を賭けている。
 彼の野望は曾祖父である飛行船の父<cェッペリン伯爵が成し遂げることのできな
かった「飛行船ビジネスの完成」だ。
 そのためには、今回の規格外な超ド級飛行船がどうしても必要だったと語る。

「現在、空は航空機によって支配されている」
「移動手段、輸送手段としての空の征服者は、以後数世紀航空機のままだろう」
「だが空を楽しむ≠ニいう一点においてだけは、今後の王者はツェッペリンだ」
「航空機の台頭によって忘れ去られた空の魅力は、ツェッペリンによって復興する」
「大空のルネサンスだ」

 空を楽しむため。なぜ、プロジェクトのお披露目の第一段階が超豪華遊覧飛行なのか
という問いに対して、伯爵はそう答えた。富裕層のための新たな娯楽提供が第一の目的。
次に軍事利用。輸送や移動手段としての利用はあくまで二次目的に過ぎないと語る。
 事実、今回の進水式°yび処女航海≠フために用意された「南極上空遊覧飛行の
旅」は最安値のプランで1千ドルだというのに、一般受付を開始する前に各国のVIPによ
って席は買い占められてしまった。伯爵自身は乗り合わせず、離陸地のニュージャージ
ー州レイクハースト――ヒンデンブルク墜落の地だ――で飛行を見守る予定だと言う。

「南極上空遊覧飛行の旅」はアメリカ合衆国ニュージャージー州から出発し、途中アルゼ
ンチンで物資と燃料補給を受けてから南極上空を3日間遊覧、その後は全速力で帰路に就
き、生産国のドイツで着陸するという。全日程7日間の豪華遊覧の旅だ。
 広大な容積を誇るゴンドラは、その殆どが娯楽施設と客室で占められている。飛行船と
いうよりも、空に浮かぶスウィートホテルと言ったほうが正しいだろう。

 ツェッペリン・ルフトハンザ社はこの旅程の成功により、飛行船による観光ビジネス
は一気に注目を浴びることになると強気の姿勢を見せている。


      ―――エアシップ・マガジン11月号特集『再浮上するツェッペリン』より抜粋

155 名前:名も無き男:2006/11/23(木) 01:46:48

―――――世界は薄闇に包まれる。

 何処の国でも日没の光景はさほど変わる筈もなく、徐々に徐々に世界は太陽に暗幕を
掛け、全てに等しく闇の訪れを告げる。だがまだ性懲りもなく太陽は世界に別れを告げる
のを惜しんでいる為、中途半端に赤い光を放っている。
 この広大な甲板もまた例外ではなく、血を連想させるかのような光に包まれ、私と他に
もう一人――この船には似合わない風体の――を残し、訪れる夜を待つだけだ。
 これではまるで、巨大な『船』で、彼と二人きりになってしまったかのように錯覚してしまう。

 そう、私は巨大な船の甲板に立っている。どのパーツを取っても全て独逸に在る資源の
みで造られたと言うこの船は、現代の科学力の粋を結集して建造された―――『飛行船』。
 時代錯誤も甚だしい、まるで御伽噺の中の登場人物になったかのような気になってしまう
形状は、私の中の童心を擽るに相応しい。

 気球に乗って空を飛ぶ。誰もが一度は夢見たような――しかし簡単には叶わない夢では
あるが――を叶えるには充分過ぎる程造り込まれた飛行船。外観を見ただけで思わず私は
溜息を漏らし、開いた口が塞がらなくなってしまったほどに――素晴らしい。
 現代科学の結晶でありながら、まるで時を遡ったかのように感じさせる無駄のないボディ。
しかし、遊び心もしっかりと感じさせてくれるのだから、設計者は浪漫の何たるかをしっかりと
理解しているに違いない。

 全長651m。(気球部分を含めるのであれば1012m)
 全高153m。(気球部分を含めるのであれば351m)
 全幅208m。(これは気球部分を含めた数値である)
 最大速力152Km/h。
 最大乗員数562名。
 エンジンは両翼に2基――姿勢制御用を合わせるならば14基。

 内装は豪奢を誇り、客室は高級ホテルのロイヤルスウィートルームを更に凌ぐとまで言われ、
定員二名の部屋だったとしても、大人十人を詰め込んだ所でなおスペースが余る。
 更に各国のVIPを接待する為に設けられた遊戯室にはルーレットは勿論の事、ラスベガスを
凌ぐ勢いのカジノが開かれている。一日に何千、何万と言うドルが動くのは見ていて圧巻では
あるが、その裏にある『何か』を疑わずには居られない。
 またダンスホール、バーラウンジ、パーティールームなどは最高級のアンティークで彩られ、
華やかでありながらも落ち着きを持った雰囲気を醸し出し、正に上流階級の社交場と呼ぶに
相応しい造りだ。

 また、最大乗員数562名とあるが、実際に持て成される側として乗るのは200名前後。後の
残りはこの船のスタッフで締められ、一人一人にサービスが行き届くようになっている。まあ、
今回の渡航ではスタッフも合わせて200名ばかりしか乗ってはいないのだが。
 言わば今回の渡航は、この飛行船のお披露目を兼ねた物であるからだ。現代科学の結晶
を多くの人に見てもらおうと言うのは分からないでもない心理だ。そしてそのプレミア性に集る
人間が多いのも事実だろう。かく言う私もその一人なのだから。

「失礼致します。そろそろ出航ですので、船内にお入り頂けますか?」
「ああ、失礼。あちらの男性にも声を掛けておいて貰えるかな」

 どうやらもう出航の時間だ。
 私は甲板と――名残惜しくはあるが――暫しの別れを告げ船内へと戻る。
 敷き詰められた赤い絨毯は、外の光すら吸い込み、眼に痛いほど赤く輝く。

―――『Zeppelin Neue Ara』

 そう名付けられた船は正に今飛び立たんとする。
 微かに響くエンジン音に心を震わせながら、割り当てられた客室に戻り、外の景色を眺めて
いるとしよう―――――。

156 名前:Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA :2006/11/23(木) 01:51:35


 ニューアーク・リバティー国際空港。
 ニュージャージー州に存在するこの空港は、ニューヨーク三空港を構成するうちの一つであり、ニュー
ヨーク市の玄関口として、これまでにも多種多様な人間を迎え、あるいは送り出している。
 周辺域の治安は決して良いとは言えないものの(なにしろ、付近一帯が半ばスラム化している)、国際社
会との窓口として日々健全な喧噪を抱いている場所ではあったが――この日、常とは違う、一種異様な
雰囲気が充満していた。

 周囲に意識を向けてみれば、まず目を引くのが、大型の業務用ビデオカメラと、”PRESS”の腕章、そして
いくつものIDカードをぶら下げた報道陣の一群だ。
 ぱっと見たところでABC、CBS、NBCといった国内大手報道局、馴染み――といえるかどうかは判らない
が――のところではBBCニュースなどの姿も見受けられる。
 そのほかに耳に届くのは独逸語、仏蘭西語、北京語に日本語……おそらくは世界各国から集ったであろ
うマスコミのお歴々が、大体にして大差ないであろう報道を、勤勉なまでに自国の家庭へと届けていた。

 そして、そんなマスコミにマイクやカメラを向けられている人々。
 中層家庭とは一線を画するその身なりから、かなりの裕福層――それも、政界や社交界でも一定レベル
以上の権威を有する、いわゆる上流階級の人々だと知れる。
 彼らはアリのように群がるマスコミにも気分を害した様子もなく、あるものは鷹揚に、あるものは誇らしげ
に、これから訪れる至福のひとときに向けて語っていた。


 ――そんな光景から、全力で置き去りにされている人影が二つある。

 ひとりは、痩身の男だった。ろくに手を入れていないぼさぼさの黒髪に、どことなく眠たげな眼差し。
 本来なら視界を覆っているはずのサングラスはだらしなくずり落ち、極めつけは、どこか薄汚れた感の
ある、草臥れた群青色の外套だった。近隣のスラムから紛れ込んできた――そう言われれば、迷わず
納得してしまいそうな見てくれである。

 さらに、奇妙さと言えば、もう片方の人物の方が顕著だった。
 身の丈は男の半分程度。それだけならまだいい。が、屋内だというのに頭からすっぽりとかぶった外套
は、嫌が応にも目立つ。

 どう控えめに見ても場違いな二人組――中にはあからさまに無遠慮の眼差しをぶつけてくるものもあっ
たが、少なくとも、彼らは全く気にしていないようだった。

 ……いや、正確には。
 気にしている余裕が、これっぽっちもなかったのだが。

 つまりは、雰囲気に呑まれていた――と言うのがもっとも正しいだろう。
 もともと、こういった派手やかな空気は苦手としていたし、それ以前に”たかが遊覧飛行”と言う思いもあっ
た。それが、来てみれば世紀の一大事、と言った有様である。
 如何に人目に対して気を遣わない質だとしても、己と言う存在のあまりの場違いさに、少々怖じ気づくの
は仕方ないと言える。

 全くの別世界を目の当たりにして凍り付いている思考を動かしたのは、傍らにいる、己と同じ立場である
はずの少女だった。

「――レイオット?」

 どうしたのですか――そんな言葉を含んだ視線が、外套の下からこちらに投げかけられる。
 彼女の図太さも相当なものだ。いつもと変わらない静謐な視線を受けて、レイオットはようやく、苦笑出来
る程度の余裕を取り戻していた。

「いや――これから、どうしたもんかと思ってな」
「……乗るのではないのですか」
「まあ、その通りなんだが――
 俺らみたいな格好の人間を、果たしてすんなり乗せてくれると思うか?」

 乗れたところで、あまり愉快なことになならなそうだし、と胸中で続ける。
 見れば判るとおり、周りの客は自分たちとはあまりに別世界の住民だ。交流して楽しい思いが出来ると
は思えないし、そもそもまともに会話が通じるかすら怪しい。レイオットにとって、彼らはまさしく彼方の
存在だった。

「まだ搭乗手続きも始まってないし――別にどうあっても乗りたい、ってわけでも無いしな。
 このままおとなしくが一番って気がしてきた」

 事実、それがもっとも無難な選択であろうことは間違いない。
 しかしながら、この場に招待された経緯を考えれば、躊躇無くそれを選択していいものかという懸念が
払拭できないのも、また事実だった。いっそ、寝坊でもしてしまえばまだ諦めがついたものを――

 と、そんなことを考えていた、その時だった。

「レイオット」

 傍らの少女――カペルテータが口を開く。そして。

「誰か来ます」
「……何?」

 視線の先。そこには、やや重武装の警備員の姿。その顔に浮かぶ険しい表情から、こちらをどう思って
いるのかを推察するのは、難しいことではなかった。

「――勘弁してくれ」

 空を仰ぎ見るように、レイオットは呻きをあげる。だがその視界に移るのは、恨めしいほどに晴れ渡った
空ではなく――灰色の、天井だけだ。レイオットは、自分の運のなさを嘆きつつ、自分がここに来る羽目に
なった、その顛末を思い返していた。


157 名前:Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA :2006/11/23(木) 01:52:53



 ――――二週間前。ニューヨーク市、某所。



「――”間違い”?」

 それこそ、何かの間違いではないだろうか――そんな思いを込めて問い返す。
 だが、無情にも返ってきた答えは、俺の問いを肯定するものだった。

「……厳密に言えば、何もなかった、と言うわけではなかったのですがね。
 しかし、生憎とそれが、”魔族(メレヴェレント)”ではなかった――ま、そう言うことです」

 ただ熱いだけの、香りもへったくれもないコーヒーを飲み下しながら、担当官――つまり、今回の依頼の
主は言って捨てた。

「なんにせよ、我が国であんな厄介極まりない化け物なぞ存在していなかった。
 その事実は非常に喜ばしい――貴方にしても、こんな異郷で命をかける羽目に陥らず、違約金をせしめ、
我々は安心を手に入れたというわけだ。……報告を上げてきた間抜けは飛ばしましたがね」

 にこやかに、そして忌々しげにつぶやく担当官に、とりあえず肩をすくめてみせる。
 違約金云々の話など、これっぽっちもした覚えがなかったからだ。
 にもかかわらずそのような話を持ち出してくると言うことは――要は、こちらにこの件について口外するな
という口止め料、と言う証だった。

 そもそもが、奇妙な依頼だった。
 魔法管理局を通さない、名指しの依頼。それだけならばよくあること――正規の魔法士でない俺にとって
は、むしろこちらの方が当たり前ではある。だが、妙だったのはその依頼主だった。
 国外の政府機関……包み隠さずに言ってしまえば、CIA――アメリカ中央情報局からの、直接の依頼。
 異常だった。他国の政府機関からのコンタクト……この時点ですでに”あり得ない事態”だと言うのに、
アルマデウス帝国政府の仲介すらなく、しかもCIAが接触してくる? それも戦術魔法士に?

 あまり知られていない事実だが、アルマデウス帝国の鎖国政策を推進し、国際魔法公使禁止条約を
制定させたのは他ならぬアメリカだ。おかげで、ごく一部の同盟国をのぞき、アルマデウス帝国なんて
国家は無かったことにされているし、そもそも魔法の存在自体が闇に葬られている。
 非公式に、魔法を今も公然と行使するアルマデウス帝国は”世界に対する脅威”である、などと公言
しているような国が――なんだって、魔法士に依頼を?

 だが、そんな疑問を連中が受け入れる訳もなく。
 半ば拉致同然に連れ出され、密入国を強要され、挙げ句の果てが――誤報?

 あり得ない。絶対に。もし事実だとしたら、これ以上たちの悪いジョークもない。
 考えられることはなんだ?
 一介の魔法士を――無資格ではあるが――こんなところまで連れてきた挙げ句、そのまま金を握らせ
て追い返すような、そんな理由。

 ……そんなモノが、在るはずがない。


 止めろ。
 考えるな。
 これ以上関わるな。
 連中がもういい、と言っているのだ――疑問など抱かずに、言われるままに帰ればいい。
 それだけで、少々の金と、何より、今まで通りの生活が戻ってくる。

 ならば、是非もなかった。
 俺はその、仮面をかぶったような笑みを浮かべる担当官に了承を告げると、担当官殿は満足そうに頷き、
そして――問題の、招待券を取り出した。

「まあ、せっかく君をここまで連れ出してはいさようなら、というのもあんまりだ。
 そこで――ちょっとした、旅行を提案したい。どうかな?」
「……旅行?」
「そうだ。君も聞いたことはないかな――『新たなるツェッペリン』号の話を」

 噂だけなら、聞いたことがあった。
 ジェットエンジン全盛のこの時代に、わざわざ復活を果たした硬式飛行船。
 全長1kmという馬鹿馬鹿しいほどの巨体をもつそれは、大空を”航海”するために作られた現時点で唯一
の、そして最初の一歩である――とかなんとか。
 全く興味がないわけではなかったが、まさかそれに登場する機会がこんなところで巡ってくるとは夢にも
思わない。その理由は何だ……?

「何、君が無事帰国するために、ちょっとした根回しが必要でね。
 少々無理をして来て貰った関係で、おいそれと片づきそうにないんだ。そこで――わざわざ我が国まで
足労してもらった礼をかねて、君をこの貴重な空の旅に招待しようと思う。どうだろう?」

 ……つまり、裏工作の為の期間、どこかに消えていろ、と言うことなのだろうか。
 眼差しから、その意図をくみ取ろうとするが――やはり、なんの輝きもこぼさない双眸から、それを理解
するのは不可能だった。何か、深淵に飲み込まれるような不気味な感覚に抱かれながら。

 俺は、その提案を受け入れていた――


158 名前:Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA :2006/11/23(木) 01:54:01


「――そこで、何をしている? 身分証は?」

 警備員の詰問に、ようやく我に返る。数は二人――こちらを睨み付ける彼らの表情は、不審者に対する
それだった。まあ、事実不審者にしか見えないので、仕方がないことではあるのだが。

 一人が警棒を手に前に出ている。
 もう一人は――腰元の何かに、油断無く手を伸ばしていた。銃。
 冗談じゃない。いやいや訪れたこんな場所で、蜂の巣にされる、なんてのは趣味ではない。断じて。
 誤解を解くべく両手を上に上げて、

「いや、俺は、じゃなくて、俺たちは、その」

 説得を始めるべく、口を開きかけた――その時だった。

「……これを」

 詰問を始めた警備員に向けて、カペルテータが何かを差し出していた。あれは――招待券。
 苦いものが、表情に浮かぶ。確かに、アレはこちらの身分をある程度証明するものであるが、このタイミ
ングで見せたとしても、盗んだものだと断じられる可能性が非常に高い。
 かといって、見せなければ見せないで、あまり愉快なことにはなりそうもないわけで――状況は、まさに
八方塞がりという言葉、そのままだった。

 ところが。

 顔色を変えたのは、警備員の方だった。不信感をあらわにしていた表情は一変し、どこか畏れを感じて
いるような、そんな表情へと入れ替わっている。

「し、失礼しました――こちらへ」

 先ほどまでの威圧的な言葉まで、どこかに吹き飛んでいた。

(……なんだ? これは)

 訳がわからなかった。
 こちらは――というか、カペルテータはただ招待状を見せただけだ。何の変哲もない乗船チケットだと
言われていた。そのはずだ。なのに、この態度の変化は――

「こちらから乗船できます。どうぞ、お進みください――」
「……確か、乗船開始は三時間後じゃなかったか?」

「はい。ですが、お二人には、誰よりも優先して乗船する権限がございますので――」

(……権限?)

 まただ。また意味不明の発言。
 あのチケットは何だ? 俺は、いったい何を貰った?

「お早くお願いします。一般のお客様に見られると、その、こちらも困りますので」
「……俺は一般じゃないみたいな言い方だな?」

「衣装などはすでにお部屋に用意しておりますので。それでは、よろしくお願いいたします」

 こちらの発言には取り合わず、警備員は静かに乗船を促してくる。
 もはや”乗らない”などと言える雰囲気ではなく――やや不気味なものを感じながら、レイオットはゆっく
りとタラップを上っていく。

 ――よろしくお願いします、だ?

 それは、船出を迎える乗客に対して相応しい台詞ではないように思う。
 普通こういう場合には、『良い航海を――』などと言うものじゃないのか?

「……なんとも。嫌な感じだな――」

 そのようなレイオットの不安とは裏腹に。
 空模様は、絶好の船出日和――――


159 名前:タバサ ◆3VTTABASAI :2006/11/23(木) 02:51:17

 200X年、某月某日。
 私はアイスラーンの我が家を離れ、アメリカ合衆国ニュージャージー州レイクハーストの地に立っていた。
 超弩級飛行船『Zeppelin Neue Ara』号に乗り込む為、というのはもちろん表向きの理由。そんな道楽に時間を割くほど私は暇ではない。
「話に聞いてはいましたが、これほどの大きさとは……。これが本当に空を飛ぶのならば、科学とやらを学ぶ良い機会かもしれませんね」
 そんなことを呟きつつ、係員と思しき仕立ての良い背広に身を包んだ男性の元へと歩を進め、乗船チケットを提示する。
「タバサ様、ですね? 遠方よりようこそおいでくださいました。ご案内いたします。こちらへどうぞ」
 手荷物検査くらいはあるかと思っていたが、そのまま別の男性によって船内へと案内された。
(いや……男性というより、少年と呼ぶ方が妥当か)
 そんなことを心の中で呟き、服を『着て』いるのではなく、服に『着られて』いる印象が強い案内人の後に続いた。

 ここに至る経緯は、今からちょうど一年前に遡る。



「貴公の力を貸して欲しい」
 私の研究室に訪れたその人物――数百年を生き、ルーンの扱いに長け、
ニブルヘイムの魔を使役する隻眼の魔術師として、学会で何度となくその名を耳にしていた
グルマルキン・フォン・シュティーベルは、挨拶もそこそこに、開口一番そう言った。
 私はその言葉に答えず、胸元の竜眼を一瞥したあと、テーブルに置かれた書物を開いた。
「ふむ……星辰の位置は六十年前よりも良い傾向にあるようですね。最も良い位置となるのは――ちょうど一年後、か」
 私は書物を閉じ、グルマルキンに目を向けた。
「『総統命令第616号 オペラツィオン・ノイエ・ジール』……六十年前に為し遂げられなかった、
レン高原への移住計画の実行――貴殿達の理想実現のため、私の力を欲している。そういう事でよろしいですか」
「ククッ……流石に北方にその人ありと謳われた貴公だ。それだけ分かっているのならば、話は早い。
夢見の中でしか訪れることの出来ぬ異界への門を開く魔術式――貴公も私と同じ魔道を往く者、興味はあるだろう?」
 紙巻きを口の端にくわえ、グルマルキンは薄く笑ってみせた。
「ええ。貴殿達のなさろうとしておられる事には大変興味があります。幻夢境カダスへの門を抉じ開けるなどという所業は、
有史以来、誰一人として為し得なかった事ですからね」
 では――と口の端をさらに歪めてみせるグルマルキンに微笑を返し、私は紙巻きを一本口にくわえた。
「興味はあります。ですが――協力はいたしません。
私はこの世界の真理にいまだ至らぬ身。貴殿達の力になれるかどうか、疑わしいところです」
 それに。彼女達が総統と仰ぐ者とは、色々と因縁がある。
 否――正確には、総統と仰ぐ者の背後にいる、真の総統か。
「そうか。協力していただけぬか。ならば――」
 グルマルキンの“右眼”が、青い輝きを放つ。それを特に気にもかけず、私は彼女に背を向けた。
「協力はいたしません。が……わざわざこんな辺境まで出向いていただいたのです。手ぶらで返すのは心苦しい。しばしお待ちを」
 そう言って研究室の物色を始めた私はふと手を止め、グルマルキンに向き直った。
「そうそう、一つ言い忘れていましたが……」
「……何か?」
 私の言葉に、険しい表情のグルマルキンが短い唸りの様な言葉で応じる。
「貴殿達の邪魔さえしなければ、見学くらいさせていただいても、構いませんよね?」
 そう言って私は、私と同年代の女性が見せるような微笑を浮かべてみせた。



 グルマルキンの来訪から数ヵ月後。彼女からこの飛行船のチケットのみが送られてきた。
 私が手土産に持たせた品々を気に入ってもらえた――ちなみに彼女に差し上げたのは、
古のものが奉仕生物を使役するのに使用していた、冷気を放つ水晶、高名な夢見る人の遺した手記の写し書き、
黄金に輝く蜂蜜酒、等々――のか、あるいは彼女の酔狂か。
 いずれにせよ、せっかく手に入れたチケットを有効に活用しない手はない。
 チケットが届いた次の日に手早く旅支度を整え、三匹の猫と一匹の幼竜を従えて我が家を後にした。



 客室の前で、案内人に幾らかのチップと柔らかな微笑、そして幸運のお守りと称して小さな人形を渡すと、
案内人ははにかみながら私に笑顔を返して立ち去った。
 一人ではもてあましてしまう広さの客室に入る。調度品やその他諸々には目を向けずにトランクの中から手帳を取り出し、ページをめくった。
 上書きを繰り返すうちに黒ずんでしまったページには、グルマルキンの来訪後、
今回の件に関して学会を中心に各方面から集めた情報が記されている。
 曰く、黄金銃を携えた魔女が今回の作戦に参加予定。
 曰く、異界の賢者を招く予定。
 曰く、聖櫃を触媒として儀式を行う予定。
 曰く、白痴の王の力を宿したものが協力しているらしい。
 曰く、支那の地に住まう道師にして真祖も協力するらしい。
 明らかに眉唾物の情報を含めれば、意外とも言える量の情報が集まった。
「真偽は事が起これば分かる、か。さて……」
 私は手帳を片手に持ち、天蓋の付いた豪奢なベッドに身を沈め――
「……グルマルキン殿、貴殿達のお手並み、拝見させていただきますよ。ふふ……」
 これから起こるであろう饗宴を想い、かつてグルマルキンが見せた薄笑いを浮かべた。

160 名前:コダマ ◆K3dMKODAMA :2006/11/23(木) 08:28:18

Where there's Lights, Shadow's lured and fear rains .
光あるところに、漆黒の闇ありき。古の時代より、人類は闇を恐れた。
and by the Blade of Nights, mankind was given HOPE.
しかし、暗黒を断ち切る騎士の剣によって、人類は希望の光を得たのだ。

―――かつて、人類は闇に生きる魔獣『ホラー』と果て無き闘いを続けていた。
しかし、『守りし者』魔戒騎士と、彼らを支える者たちの絆によって人類はホラーに打ち勝った。
人類は、ホラーとその始祖“メシア”を流刑地と呼ぶべき次元の牢獄『真魔界』へと封じた。

だが、今もホラー達は真魔界より現世へ出でるための唯一の手段である、陰我を宿すオブジェへと群がる。
そして、魔戒騎士たちも「守るべきもの」を守るため日夜現れ出るホラーとの闘いを続けている。

そんな魔戒騎士たちを統括しホラーを送還する役目を負う『番犬所』は、正常に機能していた。
そう、表向きは―――。


「……メシアを、蘇らせられない?」
目深に被ったフードで顔を隠した若々しい男の声が、東の『番犬所』を静かに打つ。

「ええ」
男の言葉に答えたのはブランコに乗った三人の少女、彼女らはこの東の『番犬所』を担当する神官。
かつては選ばれた人間だったのだが、何百年という長すぎる時を生きたその魂は、もはや人間のままでは居られなくなっていた。

大人びたケイルの返答を受けて、ベルが言葉を続ける。
「時空の法則……陰我ではなく、因果律の『因果』が狂いだそうとしています」

三人の中でもっとも幼い印象のローズが、さらに言葉を続ける。
「鍵十字の亡霊は、南極の奥地に眠る狂気の王の座に迫ろうとしています」

フードの男――暗黒魔戒騎士バラゴ――は、彼女らの返答に疑問を投げかけた。
「……論理的に言って、その亡霊たちがやろうとしていることがどうしてメシアの復活を阻むことになるんだ?」

これにはベルが答える。
「今この世界を覆う時空の法則は、メシアが真魔界に封じられた瞬間から、長きに渡って不変のもの」
ローズが続く。
「その時空の法則が狂えば、バラゴ様が用意したゲートが役割を果たさなくなる可能性が大なのです」
「つまり、バラゴ様の宿願である『メシアとの融合』は果たされなくなるのです―――」
ケイルが締めくくると同時に、“主”であるバラゴの返答を待つように押し黙る。

「―――つまり、亡霊たちの思惑を潰さなければ、僕は『最強』にはなれないということか」
バラゴは、フード付きローブのポケットに収めていた招待状を握りつぶしそうになる。
その招待状こそ、バラゴの表の顔である心理カウンセラー・龍崎駈音宛で送られてきた
話題の焦点―――「Zeppelin Neue Ara」号の遊覧飛行への搭乗券だった。



161 名前:コダマ ◆K3dMKODAMA :2006/11/23(木) 08:32:02


「―――ええ、ですがバラゴ様のお手を煩わせるまでもありませんわ―――コダマ?」
ケイルが今にも飛び出していきそうなバラゴを止め、沈黙を保ち続けていた従者・コダマに声をかけた。
長身痩躯、しかし寡黙。鍛え抜かれているであろう肉体をタキシードで包み、影のように三神官に寄り添う男。

「貴方が行って、亡霊の夢を覚ましてあげなさい?」
「夢は生きている者が見るもの」
「かび臭い亡霊が見てはいけないもの」
三人は口々に命令をコダマに下し、微笑う。
コダマも、彼女らの言葉に眉一つ動かすことなく従う様子を見せる。

「ああ、そういうことならば僕からも餞がある」
バラゴは、ポケットから搭乗券を―――胸元から小さなガラス瓶を取り出し、コダマに差し出す。

「バラゴ様、それは―――」
「ああ、大事な『変化の秘薬』だ」
バラゴの隠す素顔には、正面から刻まれた十字の傷がある。かつて殺した魔戒騎士によって、『死の呪い』が掛けられた傷だ。
バラゴは、その死の呪いから逃れるためにも、1000体のホラーを喰い続けるためも、変化の秘薬を用いて容貌を変える必要が在った。

「ストックに限りがあるとはいえ、この場合は仕方ないだろう。
……なにしろ、この招待状は『龍崎駈音』に充てられたものだからね」
龍崎駈音本人が『代理人を立てる』といってもキャンセル扱いになる可能性が高いだろう。
招待者が望んでいるのは、どこの馬の骨ともわからない人物ではない。文化人『龍崎駈音』だ。
「コダマ、君はこの薬で『僕の顔』に顔を変えるんだ。服装は……そのままで良いだろう。
どうせ、下らないパーティがあるんだ。礼装しておくに越したことは無い。
声は……そうだな、筆談で『医者に声を出すことを止められている』とでもしておけば良い」

―――コダマは考える。母と“主”の命令は絶対だ、と。
母の願いである「メシアの降臨」、それを妨げるものはあってはならない。
人類を守る魔戒騎士であろうと、滅び去った鍵十字を掲げ続ける者たちであっても。

「出来れば、土産に鍵十字の影に隠れたホラーを狩ってきてほしいが……『養殖物』は味が薄そうだ」
バラゴは知っている。かつて、『第四帝国』の栄光を求めた者達は人工的にホラーを人間に陰我憑依させる技術や
魔術を用いて古代の超兵器を手にしようとしたことを。
だが、所詮は紛い物、黴の生えた遺物だ。メシア復活の糧にもなりそうにない。

「さすがでございますわ、バラゴ様」
「その慧眼に、ますます感服いたしました」
「我らの願いは、バラゴ様とともに」
そして、ケイル・ベル・ローズは心の中で嘲笑う。バラゴは大事な餌なのだ。
ここでしゃしゃり出て、帰ってこれなくなったら元も子もない。
最も信頼するコダマならば、首尾よく目的を果たすだろう。

陰我と因果の糸車に、思惑は絡み合う。
二日後、コダマは遠い異国の地・レイクハーストに、『龍崎駈音』の顔で。
母の願いを叶えるために、その先に光明の見えぬ闘いにその身を投じようとしていた。


162 名前:夜雀の怪『ミスティア・ローレライ』 ◆8hOOMYSTIA :2006/11/23(木) 09:36:09

「ジングルベールジングルベール鈴が鳴る〜♪
来月はー楽しい〜ク〜リスマス、イェイ♪」

澄んだ歌声に乗せて、俗な詩が夜空に響く。
常に落ち着き無く喧しい夜雀は、些細な理由でいつも以上に浮かれていた。
屋台の売り物が早く捌け、払いの渋い客も居なかった。それだけである。
仕事は手早く済ませ、残りを悠々自適に過ごすのが江戸っ子の嗜みというモノだ。

ドイツ地方はライン川の出であるが。
歌詞がジングルベルなのは、商売人は一月以上も前から先取りするモノだと聞きかじったからである。

「? ぅあれ?」

くるくると回ったりアクロバット飛行をしていた視界に違和感が交じった。
地上がいやに明るいのだ。
幻想郷の夜は昏く、夜更かしをする人間はおかしな者だけである。
これではまるで、地に人が溢れているかの様。

ごがめしっ

「〜〜〜〜〜〜!?」

地上の様子に気を取られていたのが不味かったのか。
かなりの速度のままで余所見飛行をしていた夜雀は、回転し高温を発する何かに頭から突っ込んでいた。

「あだだだだd」

エンジンの中へと完全に吸い込まれ、悲鳴さえ異音に遮られる。
バードストライクに遭った鳥と同じ運命にと思われた瞬間、内側から光と何かがひしゃげる音が飛び出した。
更に辺りに飛来した何かが破損したエンジンに光弾を打ち込み、爆散という形のとどめを刺す。

「ゲッホゲッホ……。あーもう!」ガンッ

今や元の形のつかめない金属片が内側から吹き飛ばされ、地上の星空へと消えて行った。
エンジンの残骸を蹴飛ばして煙の中から現れた主の周りを、ただの雀にしか見えない使い魔たちが飛び回っている。
夜飛ぶ鳥が真っ当なモノであるはずはないが。

「誰よ! こんな危ないモン飛ばしてんのー!」

腕を振り回して、夜雀は理不尽に怒っていた。



乱入する様に現れた夜雀は、何故こんな所に現れたのか。
偶然か?

否。
おそらくは縁の様な何かが彼女を呼び寄せたのだ。
彼女はローレライと呼ばれる存在でもあり、この「Zeppelin Neue Ara」の胎に潜む歪みどもと郷を同じくするのだから。


163 名前:或る多重債務者の肖像:2006/11/23(木) 17:40:27


 彼は、いわゆる「人間のクズ」だった。

 それなりの教育課程を何とか卒業し、父祖のコネでルフトハンザ航空という
フラッグ・キャリアに就職できたにもかかわらず、職務に精励もせずに
刹那的な快楽を謳歌するような人間だった。当然出世など望むべくもない。
これだけなら、世間にごまんといるただの穀潰しである。
だが彼は、根拠も無しに己を過大評価できるという特殊な才能を持ち合わせていた。

「なぜこの俺が出世できない」
「なぜこの俺が尊敬されない」
「なぜこの俺に社内の女どもは媚びない」

 浪費は、その苛立ちを(勿論一時的に)忘れさせてくれた。
酒、麻薬、売春婦、ギャンブル……。彼は、およそ金で買えるすべての快楽に手を染めていた。
社員証をちらつかせれば、金融機関は相当の額の金を碌な審査も無しに貸してくれる。
多くの多重債務者がそうであるように、彼もまた借金を貯金と混同するようになっていった。そして。

 彼に対する債権は、既に非合法集団へと移っていた。
彼と違って職務に忠実、かつ熱心なその集団は、もちろん正当な債権回収のために
不当な手段を講じることを厭わない。奇跡が起こって700,000ユーロほどの金が
懐に転がり込んでこない限り、彼の行先は極めて暗いものになるだろう。

164 名前:或る多重債務者の肖像:2006/11/23(木) 17:41:54


「なぜこの俺がこんな事に」

 客観的分析力と克己心の両方を母親の胎内に置き忘れた彼は、
近い将来「泥酔状態で誤って河に落ち水死」するはずだった。が。
いかなる悪魔の助力や知らず、彼にとって起死回生のチャンスが訪れる。

 ”新たな時代のツェッペリン”

 どこかの馬鹿者の趣味でしかないはずの、この巨大な浪費プロジェクトに、
旧ナチス残党が介入しようとしている―――。悪運と、顔も知らない祖父の名前が、
彼の耳にこの値千金の情報を吹き込んだ。彼の祖父はSS(Schutz-staffel)において
それなりの地位を有していたのだ。その残党どもは、今や”吸血鬼”と呼ばれる人外として、
人間社会の外で暗躍している……。

「やってやるぞ」

 彼は生まれて初めて、精力的に仕事に取り組んだ。
曰く、型にはまった高級サービスなど、乗船する有力者達にとっては退屈なだけであります。
曰く、名士・成功者という人種は須く刺激を求めるものであります。
曰く、以上の観点から、船内での接待に関しては他業種よりの新たな人材を募るべきであります。

 入社以来初めて見る真剣な表情に、上司達は(愚かにも)心を動かされた。
いや事実、彼の言にも汲むべき点はあったのだ。平時にこの熱心さを発揮すれば、
彼の人生は彼の望みとごく近いものであっただろうに。
ともかく、かの船において御用達を勤める女性たちの人選及び監督は、彼に任される事となった。
あとは、蜂起の瞬間SS残党達の下に馳せ参じて、用意した口上を吐き出すだけだ。

「わたしの身体には、祖父から受け継いだ誇り高き帝国の血が流れております。
どうかこの処女達の生き血とわたしの絶対の忠誠を持ちまして、不肖なるこの身を末席にお加えください」

 これですべてが手に入る。彼はそう疑わなかった。
 

165 名前:レミア・シルヴェスタW世 ◆MVlNEREMIA :2006/11/23(木) 18:16:19

2006年 某日
アメリカ合衆国 ニュージャージー州 ニューアーク・リバティ国際空港

「…さすがアメリカね、胸焼けしそうな味だったわ」

誰にも聞こえることの無い言葉を彼女は呟いた。
聞こえたところで大半の人間は判らないだろう。
これは料理の味ではなく、血の味を評価したものだとは。

その言葉の主は、アメリカ人の食生活にウンザリした吸血鬼、
レミア・シルヴェスタである。
もともとは吸血鬼の組織ペルソナネットワークの総帥の娘なのだが、
訳あって組織を抜けた、いわゆるはぐれヴァンパイアである。
外見は金髪のロングヘアーに端正な顔立ち、年齢は17歳前後にみえる。
まさに美少女という言葉が似合っていた。

しかし判る人には判る彼女自身から出る異様な感じ。
そして彼女の雰囲気以外からも異様なものがあった。

―――異様なのは彼女が引きずっている箱だろう。
持ち主の身長ほどある黒塗りの箱。
華奢な体をした彼女にはとても不似合いだった。

少し向こうを見れば、マスコミに囲まれているVIP達がいる。
インタビューに誇らしげに答える肥えた人間、
歴史的瞬間に立ち会えるということを誇っているのだろう。
しかし何百年も生き、幾度となく歴史的瞬間に立ち会った彼女には
これが誇れることだとは思えなかった。

まあ、そんな人間達はどうでもいい。
見ていてもあまり面白くない。
エゴに引っかかったら不快だし
観察するのをやめて、別の方向を見た。

「…何をもめているのかしら?」

少し遠めに見える二人の人間が警備員に尋問されている。
一人はスラム街から這い出てきたような汚い男、
もう一人はすっぽりと外套を被った少女である。

本当にただの浮浪者だったら、
血を見ることになりかねない。
血を想像すると自らのエゴに引っかかったが―――

押さえ込んだ。
こんなところで吸血騒ぎを起こす訳にはいかなかった。

やがて二人は警備員に案内されて飛行船に乗り込む。
どう考えてもおかしい、まだ乗船まで3時間はあるはずである。
なぜ彼らを乗せたのだろうか?

「…少し気になるわね」

気になったが、ただそれだけだった。
バステトだったらとっとと調べたのだろうが。

166 名前:レミア・シルヴェスタW世 ◆MVlNEREMIA :2006/11/23(木) 18:16:42

乗船手続きが始まった。
身分証明書、招待状を見せていざ船に乗り込もうとしたのだが、

「メアリ様」

係員が私の偽名を呼ぶ。
何か問題でもあったのだろうか?
もちろん周りから見れば、『大有り』なのである。

「失礼ですがそのトランクはお預かりしなければ…」

当たり前であった。
いくら船内が広いとはいえこんなものを船に持ち込む馬鹿はいない。
持ち込んだほうが安心できるのだが。

「ああ、ごめんなさい。うっかりしてたわ」

なるべく自然な動作で出来るだけの安全装置を働かせる。
余計なところを触ると、即座に剣と銃が襲い掛かる仕組みだ。
こんなところで死人を出すつもりは無い。

やがて二人の係員がやってきてトランクを持っていこうとする。
しかし持とうとしている位置がまずい。

「あ、ちょっとまって」
「はい、なんでしょうか?」

運ぼうとした二人に注意する。

「この…取っ手の部分と、ここ、後はこことここ以外はあまり触らないでほしいの」
「は?」

不審がられた。
でも律儀にそれは守って運ぶ係員。
重さによろめいているが、それはまあ仕方ないことだろう。
中には魔力で軽くしてあるとは言え大量の凶器があるのだから。

係員を見送り、飛行船を見る。
ドイツの酔狂な人間が作った飛行船。
最初に見たときは本当に飛ぶのだろうか怪しく思ったものだ。

「さて、乗り込むからには…」

いくら永久に近い命を持つ吸血鬼とはいえ。
その時間をもってしてもなかなか行けない所がある。
そのひとつは南極である。

「南極を楽しんでこないとね」

この旅は別の意味で彼女を楽しませることになるのだが。

167 名前:レップ ◆ZcW/SSsF6Y :2006/11/23(木) 21:24:30


レップは武装親衛隊髑髏師団に所属する中佐だった。
彼は東部戦線で数々の戦功をあげ、何百人ものボルシェヴィキを殺して
Meister Schutze (マスター・スナイパー)と呼ばれるほどの存在にまで登りつめた。
しかし、最後にかかわった秘密作戦で些細なミスから失敗し、
アメリカ人兵士の手によってスイスの山中に脳漿をぶちまけることになった。

そこで彼の人生は終わった。

あとは天国か地獄かはたまた無か、神のみぞ知る場所に往っておしまいになるはずだった。

だが、それから半世紀以上たった時代、彼が忘れ去られた時代。
祖国を遠く離れた豪華客船で、彼は今コーヒーを飲んでいた。本物のコーヒーを。



168 名前:レップ ◆ZcW/SSsF6Y :2006/11/23(木) 21:24:55


彼が実験材料として南米の大空洞に冷凍保管されていた死体から、
半世紀ぶりに解凍・蘇生され吸血鬼として復活させられたのには理由があった。

エース級の吸血鬼の不足だ。

最後の大隊はヴェアヴォルフと呼ばれる精鋭部隊を有していたが、
第二次あしか作戦の貴重な戦力だから使うことはできなかった。

たった一人をのぞいては。

役札は手元に残しておきたい。
だが、役なし(ブタ)ばかりでは面子がたたないし埒があかない。何より面白くない。
ゆえに、実験の過程品ながらAクラスの吸血鬼であるヴァレンタイン兄弟と、
吸血鬼としては新兵ながら人間としては古参兵たるレップを今回の作戦に投入することにしたのだ。

『秘密結社や騎士団の多い親衛隊の中で、最狂は最後の大隊、その事を忘れないで欲しい。
それを見せ付けようと思って、君を吸血鬼にしたんだ。 つーことでがんばって来てね中佐殿』

つまりはそういうことらしかった。

そう、最後の大隊はヴェアヴォルフと呼ばれる精鋭部隊を有していたが、
第二次あしか作戦の貴重な戦力だから使うことはできなかった。
まだ、使い捨てるわけには行かなかったからだ。

ただそれは、使いつぶされる恐れのない駒ならば投入できるということでもあった。

だから、彼ら三人と、そして多数の人造吸血鬼たちのほかに
ひとりのヴェアヴォルフがこの戦争に投入されることになったのだ。



169 名前:レップ ◆ZcW/SSsF6Y :2006/11/23(木) 21:25:18


レップははラウンジバーでコーヒーを飲んでいた。本物のコーヒーを。

砂糖もミルクも入れていないブラックのジャーマンブレンド。
美味かった。彼が死ぬ前の数ヶ月のあいだによく飲んでいた
タンポポからつくられた代用珈琲とは比べ物にならないほどに美味かった。

バーはアンティーク調の内装だった。
テーブルや椅子のほとんどは本物のアンティークを使っていた。
客を落ち着かせくつろがせることを目的としており、確かによくはできていた。
彼の、そして彼が所属していた帝国の栄光の時代を思い起こさせた。

彼は店の奥にある目立たない席の革製のソファーに腰をかけていた。
その姿は成功をおさめた民間人のそれだった。
整髪料で髪を後ろになでつけ、ブロードの白いシャツに臙脂色のニットタイ。
チャコールグレイのスリーピースにダブルモンクの革靴。
もちろんすべてがビスポークだ。

死人のような顔色は化粧で誤魔化し、バラ色の頬をしていた。

すでに飛行船のほとんどの場所を彼は歩き終えていた。
青写真と見取り図は頭に入れていたが、実際に自分の目で見ない限り信用するわけには行かなかった。
乗客は立ち入り禁止の場所にも入り込み、見つかった場合は好奇心がうずいたといって謝ってみせた。
セレブと呼ばれる人種ははめをはずすのが大好きなので、
立ち入り禁止区域に入り込もうとする者は彼以外にも多くいた。
だから大抵の場合はそれですんだし、そうでない場合は何よりそのチケットがものをいった。
彼の偽名、エーリヒ・ペーターズ名義のチケットだ。

権力を手に入れたものは、大抵の場合その次の段階として永遠の命を欲しがる。
そんな典型的な権力者から『大隊』経由で手に入れた口利きつきのチケットだ。効果は抜群だった。

さすがに機関部や操縦室には入れなかったが、それは制圧後にでも確認すればよかった。

制圧。そう、制圧だ。
今回やるべきことはきわめて単純だった。
飛行船に潜入し制圧しすればいい。そして潜入は済み、制圧のための下調ももう終わっていた。
後は合図を待って行動を開始するだけだった。彼の仲間たちもそのときを待ち構えているはずだった。



170 名前:レップ ◆ZcW/SSsF6Y :2006/11/23(木) 21:25:51


仲間たち?

かりそめといえど、内心どう思っていようとも、仲間には違いない。
それが今回の作戦行動限りのものとは言えど、だ。

もと武装親衛隊の古参兵たちは流石に気心が知れたが、
それでもこの半世紀のあいだにその精神は醜くゆがみ果ててしまっていた。
ほかの面子はといえば、それ以上に気の置けない相手ばかりだ。
魔女に化物に奇怪な騎士団。存在そのものがおぞましい。

タッツェルヴルムとラインダースの二人だけは理解できぬこともなかったが、その信念のありようが違いすぎた。
ゆえに彼らもまたともに生きることのかなう相手ではない。

そして。
彼と同じく大隊から派遣されてきた3人について思いをはせる。

ヴァレンタイン兄弟。一級品の吸血鬼。
最後に見かけたのは南米だった。そこからは別行動だ。
ヤン・ヴァレンタインはニンテンドウDSでNew スーパーマリオブラザーズをやっていた。
ルーク・ヴァレンタインは紅茶を飲みながら米国版ランウエイを眺めていた。

今回の制圧行動の主力は彼らが担っていた。ふたりとももう飛行船に乗り込んでいることだろう。
汚れ仕事だといって拒否はしないが、それでも気分のいいものではない。
やりたいというものがいるのなら、任せてしまってもいいだろう。

短いあいだとはいえ行動をともにした感想とは、
兄のほうは基本的には有能だが神経質で精神的にもろそうな部分があり、
弟のほうは能力があり腹も据わっているが性格破綻者だ。

結論としてはどちらも社会生活不適応者。いっしょに仕事をしたい相手ではない。
能力面では問題ないが、性格面が問題ありすぎた。

ハンス・ギュンシュ大尉
生まれついての化け物。狂った少佐の懐刀。
彼を見た最初の印象は『絶対的な死』だった。
東部戦線で何度も寄り添い、だがなんとか顎にとらわれることのなかったそれと同質のものだった。

人間として、ともに居たいと思う相手ではない。

狂った少佐が選んだにふさわしい、とんでもない化け物どもだった。



171 名前:レップ ◆ZcW/SSsF6Y :2006/11/23(木) 21:26:23


そしてこの作戦を指揮する魔女。
グルマルキン・フォン・シュティーベルSS大佐。
彼が生前あったことのある自称魔術師はビブリオマニアのまがい物ばかりだった。
彼女はそうではない。本物の魔女だ。
魔女、魔女、魔女。人に仇なす存在そのものではないか。
そんなおぞましいものに従わねばならないとは。

だか仕方ない。
正直な話、乗り気ではなかったが、彼には拒否権というものが存在しなかった。
彼の命は狂った少佐の手に握られていた。

それに、しょせん彼は何処までいっても兵士だった。
それ以外のものには成れなかった、いや成ろうとしなかったのだ。
そして、兵士には生きる場所が必要だった。生きる場所、すなわち戦場が。

憂鬱な気分であの魔女の言葉を思いかえす。
祖国の再興。耳にいい言葉だ。
だが、そんなことができるわけもないことを彼は理解していた。

確かにそれは悲願だった。
できることならば、何を犠牲にしてもやり遂げたい希望だった。

しかし、国を形作るのは、国土だけでも武力だけでもなかった。
祖国を再興するためには肝心のものが存在しなかった。

それはもう二度と手に入るはずもないものだった。
だから、いま本当にすべき戦いはこんなものではなく……
いや、考えるのはよそう。兵士の役目は作戦を遂行することだ。それがどれほど胡乱なものであろうとも。


自覚しては居なかったが、彼がグルマルキンを嫌うのにはそのほかにも理由があった。

彼女の顔にはしる傷だ。

彼女の顔にある大きな傷跡がとある人物を思い出させたのだ。
死んだ彼の恋人を思い起こさせた。

彼が殺した彼の恋人を。



172 名前:レップ ◆ZcW/SSsF6Y :2006/11/23(木) 21:27:19


どんなに美味い珈琲だろうと、飲み続ければ飽きがくる。
いつしか彼は飲むのを止め、目の前の少年とぶつ切りの会話を交わしていた。

金髪碧眼の少年だ。まごうことなき第T種のアーリアン。
敬意を払うに値する人物だったが、彼もまたレップとは信念のありようが違いすぎた。

ゆっくりと時は過ぎていった。

腕時計の文字盤に目を落とすと、そろそろ作戦の開始される時刻だった。
用意を整えておいたほうがいいだろう。

そうして彼は腰を上げると目の前の人物視線を据えた。

「わたしは行くよ、フェルデナンド大佐。
わたしはわたしで好きにやる。生きるために戦場に行く。
あなたはあなたで好きにやってくれ。
生きる場所を探しても、死ぬべき場所を探しても、それはあなたの自由だ。」

その声に向かいに座っていた少年がうなずくのを見ると、彼はバーをあとにした。
 

173 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/23(木) 22:44:15

 わたしの名前はイリーナ・フォウリー。至高の神ファリス様に仕える神官戦士です。今年17歳になりました。
 正義をするため東奔西走、乙女の限界に挑戦する板金鎧(プレートメイル)をガシャガシャ鳴らし、
身の丈ほどもある大剣(グレートソード)を振るい日夜邪悪と戦う、冒険者という職業をしています。
 チャームポイントは、見た目からは想像もつかないほどのナイスバデーでしょうか。
 日頃の筋トレを欠かさない結果、幼馴染のヒース兄さんからは「人外の重戦車」などと揶揄され、
その怪力っぷりを冒険者仲間にからかわれたりすることもしょっちゅうです。
 そんなある日のこと。きっかけは、ヒース兄さんの言葉でした。

「……まあ、そんな訳でだイリーナ。俺さまひょんな事からなんと、船のチケットなどという物珍しいシロモノを
 ゲッチューしたのだ。遠慮なく使ってくれなさい」
「えーと、ヒース兄さん? 要するに用心棒ですよね?」
「平たく言うとそういう事になるかナー」(カクカク)

 いつも通りの、冒険の依頼。そう思っていました。
 内容は、冒険者という身分を伏せて、乗客の一人に扮しての、乗客の皆さんの護衛。
 但し、仲間と一緒に行動していると素性がバレやすいって事で、各自バラバラに乗り込む予定……
 の、ハズだったんですが。

「……あ、あれ? こ……これ、船……なんですか……?」

 待ち合わせ場所に着いたわたしは目を疑いました。目の前にあるのは、巨大な風船のような形をした、
見たこともない乗り物だったのです。
 よくよく見れば、周りの風景も、約束の場所と全然違うような……

「ハイハイ、チケットを拝見しますよ……どうぞ。ハイ、後がつかえてるんですからお急ぎ下さい」
「わっ、えっと、その……はい。すみません……」

 どういう訳か、わたしの持っていた船のチケットはあっさりと認定され、乗客として乗り込む事に成功しました。
 いちおう、お金持ち風の娘を演出するために、それらしいドレスで着飾っちゃったりもしてるんで、
それが怪しまれなかった要因なのかもしれません。
 普段なら、わたしの筋力に見合った、極限までに大きいグレートソードにプレートメイル、その他諸々の武器で
完全武装! なんですけど、さすがに目立ちすぎですし、他のお客様の迷惑になりますからね。
 はあ……借り物とはいえ、結構高いドレスだから、うっかり有り余る筋力発揮して、袖とか破らないように
気をつけなくちゃです。

 それはそうと、話に聞いていた船と全然違う! どうしよう!
 わたしが挙動不審に陥っている間に、船は陸地から離れ、空に浮かびました……って、嘘でしょー!?

174 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/23(木) 22:45:03

 目に映る世界が一変し、遥か遠い下の地上はあらゆる建物が豆粒サイズです。
 以前、ヒース兄さんが「西部諸国の科学者が空飛ぶ船の開発に成功したらしいんだナー、これがまた」とか、
いかにもウソくさく語っていたのを思い出しました。まさか、ヒース兄さんのホラが現実のものとなるなんて!

(あーうー、護衛どころじゃないよー。高いよー。こんなの初めてだよー)
 わたしは立ちくらみを覚えつつ、フラフラと展望台の1階までどうにか足を運びました。

「うわー…………」

 そこでは、着飾った紳士淑女たちの舞踏会が開かれていました。
 わたしは以前、ラムリアースの貴族・ルーシィさんのパーティに招待されたことがあるので、全くの初心者って
訳じゃないんですけど……それでも慣れないものは慣れません。明らかに……浮いちゃってる感が。
 ファリス様に誓ってこのイリーナ・フォウリー、やましい所などありませんが、その場の華やかな雰囲気に
圧倒され、赤面しつつ会場の隅っこにコソコソと引っ込んでしまいました。

(……これから、どうしたらいいんだろう)
 合流するはずだったヒース兄さんやマウナたちもいません。
 会場には美味しそうな料理も並んでいますが……不安と孤独で胸が押しつぶされそうになっている今のわたしには、
せいぜい鶏の丸焼き1つが胃袋に納まる程度です。

 ふと、空腹感を少しだけ満たせたわたしは、気分が幾らか落ち着いて、ある事を思い出しました。
 仲間と互いに連絡を取り合うため、ヒース兄さんから渡された魔法の道具。
 ペンダントにカモフラージュした、「通話の護符」(テレコール・アミュレット)。
 もうひとつの護符と、どんなに距離が離れていようとも、合言葉(コマンド・ワード)さえ唱えれば、会話ができる
というスグレモノです。わたしは一縷の望みを託し、物陰に隠れて護符を使おうとしました。

「もしもし、ヒース兄さーん……イリーナです。お返事くださーい……」

 ……沈黙。
 待てど暮らせど、ヒース兄さんからの応答はありません。
 ダメでもともと……と思っていましたが、結構期待しちゃってたみたいですね、わたし。
 ガックリと肩を落とし、半ば夢遊病のように目の焦点の合っていない……そんなわたしの眼前で。

 惨劇が始まりました。

175 名前:高木由美子:2006/11/23(木) 23:32:55

高木由美子 導入 1/3

───我等のか弱き心よ、それは全て御心のままに。
御心。人は幾度いと高きお方のそれに適わぬ事を繰り返したのでしょう。

私は祈った。それは自らの魂の証のため。

夏が逝き、秋めいた風が野ざらしに吹き回る。
神に出会うまでの心象風景は昏く、乏しいものでした。
リルケの詩集に夢中になって夜更かしして…気付けば朝靄。
昼とも夜とも似つかわしくないそんな時間に目覚めてしまった様なって。
そんな風に言えば、きっとみんなもわかってくれると思うけど。
不確かな先の見えない…無為の日々。
無為徒食の私のいけない日々にYHWHは一筋の巧妙を下さったの。


跪き、頭を垂れ、船室の壁に思わず接吻を。
そして────「聖柩」。そんな音を…そう。口の端に少し乗せただけ。
すこぉし悪戯心にお話した、それだけなのに…

どきどき。飛び出しそうな心音。

今の思いは夏の日に花冠を胸一杯に集めて走り回った…
そんな若々しい日の友達の名前を思い出したっていう…そんな時みたい。
私の心は些細な言葉にときめき、うわついた。

幻視。何度も目を通した出エジプト記の掟の箱!───人の造りし、にも関わらずあの方が
認めたもうた造形物!それがここにあるなんて。──空に手を伸ばす。
焦がれる指先、震える心!
当た前のことね。それは朝靄の様に触れられる事を忌避し、あはれ…腕をすり抜けた。
ぐら付く身体。───危ない。



支えられる体、力強い手。けれど当然神の見えざる手ではなく、毛の濃い知らない人だ。
少女──シスターの夢ごこちはそうして終る。
いつの間にか周囲を囲んでいた赤銅髪の紳士ならびに淑女によって。

176 名前:高木由美江:2006/11/23(木) 23:35:57

>>175 高木由美子 導入 2/3

―――あたしの相棒の夢は綺麗だ。
それはあたしの夢?ドリーム?深層心理?性欲、わーーえっちなのはいけないと思います?
それは十戒の一つ?おお、やっぱり我らが主の掟、即ち美!ラーリホー。

そうあれかし!
救いの主に、そうあれかし!
あはははは。泣いたら冷める夢なんてない。
そうあれかし。
死ぬほどおまえを愛しています、神さま。
祈れよ、そして誓え。
芥になれよ、千年王国はここに出来る。絶滅主義による絶滅主義の絶滅により
天の国は心表れるのだ。これは
なんて、イスカリオテ的なーんでしょうっっ!!ハーレルヤー!


第三課 聖遺物管理局「マタイ」。
大層な名前が冠せられてるが、なぁに、栄光浴に直接浸れるっていう
健康ランドとして人気は高い曰くつきだ。

人気があるのは、この場所は地上でもっとも素晴らしい一角でもあるっていうワケもあり。
法王が聖別した宝石、金銀の「べべ」をきた核シェルターに常に流れるハープシコード。
常に礼賛されるべき主の遺品は、生まれ出ずる時からその生の炎が揺らぎ切る…つまり
召されるまでの数十年、脈々浪々と祈りの言葉を捧げ続ける「詠い続ける者」100名がいた。
神に最も近く、愛された彼らは、イェルサレムに一番近いこの場所に住まう事を許された
天使に等しい者たちらしい。
 その中であたしは指示を待つ。13課局長であるマクスウェル枢機卿からではなく、この課の
担当者の口から齎される秘匿の指示を。
 おっとり刀で現れた丸眼鏡の担当者は珍しく歓喜に満ちた表情で流れるように語りだした。
少しの躊躇もなく、只管に。

「神の被造物を哀れにも道具としか見られない愚物どもが、又動いた」

眼鏡の男、アンダーソンは続ける。

「主の善しとされなかった地の果てから、【匣】を我らの領分に呼び戻し…
英国国教会との協約というディレンマ…
あの空寒いエキュメニズムの代償による束縛から、遂に解き放ちおったのだ!」

───ナチズムは何時のときも勘違いでしかないのだ。──シニカルに笑う。

ばたん。そしてその時突如、似つかわしくない雑音。

穢れを知らぬはずの一人の歌い手が発作で壊れたらしい。
しかし天窓からの木漏れ日がきらきら輝き、かの人を照らしているのを見て誰しもが確信した。
今丁度、彼の歌い手は、遂に天から招待されたものなのだと。
未だ硬直から痙攣に似た動きをする遺体に対して皆は一斉にスタンディングオベーション。
あたしも只管拍手喝さい大万歳だ。幸先が良くない?こういうの。
そして思った。こんな素敵なところが増えるのなら、やはり神の国は
沢山沢山地上に溢れるべきなのだと。

定時に流れる賛歌が雄雄しく昇天を祝い始め…
アンダーソンの前からあたしは辞した。
聖櫃の奪取。失われた聖遺物を再び我らの、正しい神の地上代行の手に
なーんて素ん晴らしいイベントなんでしょうっッ。

見てな、ナチ公。神罰の地上代行者第13課【イスカリオテ】の高木由美江が!!
貴様らの錆た釘思考を、最期の一遍まで犯し尽くしてくれる。

177 名前:高木由美子:2006/11/23(木) 23:42:28

>>175>>176 高木由美子 導入3/3

いつの間にか由美子は、会場の隅で人に囲まれていた。

「あ、あの…あ、アナータは神をーーしーンジまースカ?」

この豪華な飛行船の船主は客のあらゆる要望に答えんと欲し…
結果、パーティールームの壁面は一つのスイッチで十字架や祭壇が現れる仕様となっていたのである。

先の大戦に組した事を悔い改める意も含め、このような改造はなされているらしい。

罪を告白するのは社交界に伝わる健康法、ある種のでデトックスとして機能してきた。
一人のシスター、高木由美子が宛がわれた船室から引っ張り出され、パーティー会場の余興として
引き出されているのもやむをえぬこと。
そして彼らWASPと呼ばれるアメリカの上流階層は表面的には気さくで人懐こく…
女をエスコートするのは当然だと考えていた。

黒髪で、眼鏡の似合うシスター。全身突っ込み待ちとしか思えない
彼女の存在が場の特異点と化してしまったのも頷ける。
更に、彼女の押しに弱く曖昧に微笑む姿も相まって、彼らに格好の餌を提供しているのだ。
勿論、むきになって説法サービスをするのが更に良くない。
カトリックにプロテスタントの馴れ合い。パーティー会場ではそんな事すら気にされない。

布地の上質そうなスーツに囲まれ、大声でまくし立てられて。
さっきの幸せな幻想が消えた由美子は、この時ばかりは泣きそうになりながら思った。
へ、ヘルプ、由美江。由美江ーーなんて、都合よく。

…神様、人生が、試練でひどいです><
彼女はそんな風に呟いたとかなんとか。はてさて。

【高木由美子(由美江)現在位置:展望台1F:パーティールームの片隅】

178 名前:リゾット・ネエロ(M):2006/11/23(木) 23:56:47

リゾット・ネエロ 導入部
ナポリの安宿を出てから十日、ここはあの糞ったれな部屋とは別世界だった。
趣味の良い高価なおそらくイタリア製の家具を設置した広々とした客室、衛星放送付きの大型テレビ、
小振りながら品揃えの良いミニバー、そしてベッドルーム、バスルームともに手入れがよく行き届い
ている。

「これで一般客室とはな…」

男は被りを振りながら、体が沈みこみそうな程柔らかなソファに腰掛ける。手には白ワインのボトル、
銘柄はシャトー・ラフィット・ロートシルト…フランス製か。
ワインをグラスに注ぎ口をつける。こんな役得は二度と回ってこないだろう、今のうちにせいぜい
愉しんでおくか。リゾット・ネエロは誰に言うでもなくつぶやいた。


ことの始まりは、二週間前、ナポリの裏町にある薄汚いアパートの一室でのこんな会話からだった。
「仕事だよ、今回は空の旅だと羨ましいね」
「人の部屋に勝手に入るな、それと俺の煙草を吸うな」
「ま、いいじゃない」

初老の男は悪びれることなく、ハイエナのような笑顔を浮かべ煙草をくゆらす。
「ゴトウダ、連絡方法はメールでと言った筈だ」
「俺ああ言った奴、どうも駄目なのよ」

ヴァチカンの教理聖省職員は肩をすくめる。くたびれたスーツに安物の皮靴、オールバックにした髪
には随分白い物が混じっている。お世辞にも泣く子も黙る異端審問官には見えない。

「お仕事の内容ってのがコレ。必要なモノは後日空港で届けるから」
「飛行船に乗ってお空の旅か、で、これは冗談か何かか」
「残念ながら大真面目、空の旅の間にお宅にはそいつを始末してもらう」

179 名前:リゾット・ネエロ(M):2006/11/24(金) 00:00:09

>>リゾット・ネエロ 導入部(続)
「グルマルキン・フォン・シュティーベル大佐。元ナチスSS将校にして、鉤十字騎士団と呼ばれる秘
 密結社に所属。隠秘学・魔術等に造詣が深く、ルーネの全奥義を習得しその齢は数百年を経るもと
 もいわれている。最終追跡は南米にて秘密作戦に従事していたが、その後消息を絶つ…」
「俺よりも適任がいるんじゃないか。エクソシストとかさ」
「いるにはいるんだけどね…、やりすぎちまうのよアイツラは」
「マジでいるのか…」
「そこでお宅に白羽の矢が立ったわけ。シュポンハイム修道院の院長暗殺の件、法王庁はお宅を高く
 評価している。あの鉄壁の要塞に易々と侵入しターゲットのみを抹殺。
 しかも連中がこの事に気づいたのは次の日の朝、公式には卒中となっているけど。大したもんだ」
「誉めても煙草はやらんぞ」

後藤田は少し顔をしかめ、机の上に置かれたマルボロから手を引く。
「この女狐は幾度と無く我々の手から逃れてきた…それどころか何度も煮え湯も飲まされてきた」
「こういった怪物どもはその年齢性別に関わりなく地上から一掃されなければならない。
 彼らは暗黒の王ルシフェルと協定を結んでいるに違いなく、大地を汚している。異端の徒への迫害は
 全てのキリスト教徒の義務である、とね。しかもこいつはあろうことか恐れ多くもかの御方縁の聖遺物
 を汚し、恐るべき作戦を遂行させようとしている。これを遂行させては現法王睨下はあっちでかの偉大
 なるグレゴリウス9世睨下に顔向けできないだろう。失敗は許されない、以上だ」
「了解した。期待にはこたえる」

「で、ペッシだっけ、アンタのパスポートの偽名。何か由来でもあんの?」
「その名前には愛着があるんだ」


―――Bang!

ついに来たか……
「グルマルキン・フォン・シュティーベル、死んでもらう」
【リゾット・ネエロ(M)現在位置:客室:一般個室リビング】

180 名前:津村斗貴子 ◆TOKiKoStGs :2006/11/24(金) 00:13:18


「お飲み物はいかがですか、レディ」
「――いや、結構」

完璧な営業スマイルを浮かべたボーイを、片手を振って下がらせる。
ちょっとしたホールほどはあろうかというパーティルームは、
タキシードやドレスの鎧を纏い、笑顔という仮面をかぶった「紳士淑女」で埋め尽くされていた。

(まったく、居心地が悪いな、こういうところは)

津村斗貴子は、内心溜息をついた。
学校の制服のままで来たのは失敗だったかもしれない。明らかに浮いている。
いや――その顔に走る横一文字の傷だけで、こういう場では浮いてしまうのは自明の理だった。
とは言え、ドレスくらいは用意してきたほうがよかったかもしれない。

(いや――それはダメだ。
 あれは動きずらい。いざ戦闘となった時、ドレスに邪魔されて命を落としたら話にならない)

そう、斗貴子はここに遊びに来たのではないのだから。


181 名前:津村斗貴子 ◆TOKiKoStGs :2006/11/24(金) 00:13:44

>>180

「バカかキミは、遊びに行くんじゃないんだぞ」

数日前、銀生学園高校、屋上。
斗貴子は同級生の少年――カズキを怒鳴りつけていた。
よりにもよってカズキが、「羨ましい、オレも斗貴子さんと一緒に」とか言い出したからだ。

「ってことは斗貴子さん、これは錬金の戦士としての仕事?」
「ああ。キミもナチスという言葉は聞いたことあるだろう」

斗貴子の言葉に、カズキは脳味噌――の試験前くらいにしか使わない部分――をフル回転させる。
確かこの前の歴史の授業で、あの教師はもっともらしく言っていたはずだ。
ナチス・ドイツ。かつてもっとも忌み嫌われた組織。

「ええと、歴史の時間に習ったやつだよね。
 市民への無差別爆撃とか、ユダヤ人を収容所に入れたりとか酷いことしたって……。
 ……まさか斗貴子さん、そいつらが何かまたたくらんで?」

「ああ――厳密にいえばその残党、か。
 最近、ニュースで騒がれている巨大飛行船があるだろう。
 あそこで奴らがまた、何かたくらんでいるらしい」

カズキの言葉に、斗貴子は頷く。
巨大飛行船におけるハイジャック計画、その情報が戦団にもたらされたこと。
そこに投入されるだろう人員、そして予想される被害。
それはおそらく、同様のテロ計画の中でも前代未聞の規模となるだろうこと。

「そんな……そんなこと許しちゃダメだ、斗貴子さん!
 オレが、オレの武装錬金が、そんなことは絶対止めてみせる!」

「バカかキミは。
 錬金術の力を考えろ。錬金の戦士が、恣意で歴史に介入したらどうなる
 たとえどんな悲惨な事態が予想されていても、
 それが純粋に人間がもたらしたものなら手は出さない――それがルールだ。」

錬金術のもたらした武器、武装錬金。
その力は、たった一人の人間に一つの軍隊クラスまでの力を与える。
当然、通常の政治的な事件に、錬金術の力を使うことは許されない。
換言すれば、それは、

「今回の事件に、錬金術がからんでいる?
 まさかヴイクターからみとか?」

「ああ……あるいはホムンクルスか、それとも別種の超常の力か。
 どちらにしても、奴等の――ナチ連中の裏にはそれがある。
 そして、蝋燭の炎に誘われる羽虫のように群がる化物どももな。
 まあ、ナチだろうがそれ以外だろうが、そんなことはどうでもいい。
 化物は全員ブチ殺す! それが私の今回の任務だ」

「だったらなおさらオレも行く!
 斗貴子さん一人、そんな危ない目にあわせられない!
 オレのサンライトハートは、そういう奴らに誰かの涙を流させないためにある!
 斗貴子さんにもらったこの戦う力で、オレは――」

「ダメだ!」

今すぐ武装錬金を発動させんばかりの勢いで詰め寄るカズキに、
斗貴子は首を横に振る。

「考えてみろ。
 キミの武装錬金、突撃槍のサンライトハートは、まさに全てを貫く槍。
 こういう閉鎖空間での戦いには不向きだ。
 自分の武装錬金で、飛行船の隔壁をブチ破って落下、など笑い話にもならない。
 私はそんな馬鹿げた事態の後始末はゴメンだ。

 それに比べて、私の武装錬金『バルキリースカート』なら、
 閉鎖空間での戦闘にも充分対応できる。
 それに、手に入ったチケットは一人分だ。
 我慢してくれ、カズキ」

「――分かった、斗貴子さん」

不承不承、という様子で頷くカズキに、内心斗貴子は安堵する。
彼を戦いに巻き込みたくなかった、できるだけ危険な目にあわせたくはない。
その思いは、彼と出会ったときから変わっていない。
誰よりも守りたい少年……そのカズキが頭を上げ、真剣な目を斗貴子に向ける。

「でも斗貴子さん、約束して。
 絶対に死なない、絶対に帰ってくるって。
 喪っちゃいけない命の中には、斗貴子さん自身の命だってある。
 それを忘れないで」

「ああ、忘れるものか。
 言ったはずだ、キミが死ぬ時が私の死ぬ時。
 キミが生きている限り、私は死なない。
 私とキミは一心同体だからな――ただ」

言いよどむ。
これを言っていいものか。
甘えだと笑われるかもしれない。斗貴子さんらしくない、と言われるかもしれない。
でも、今言える時に、きちんと言っておきたい。

「ただ――正直に言えば、少し怖くはある。
 約束する、飛行船の中の人々は全て、私が守る。
 だから、キミが私を守ってくれ。
 キミの勇気を、ほんの少し、分けてくれ」

「うん……足りない分は、オレから持ってって。
 誰よりもオレが一番よく知ってる。
 斗貴子さんは一番強い錬金の戦士だって。
 だから――」

それ以上は、聞く必要もない。
ゆっくりと近づいてくるカズキの顔を瞳に焼き付けつつ、
「その時」に備えて、斗貴子はしずかに目を閉じた。


182 名前:津村斗貴子 ◆TOKiKoStGs :2006/11/24(金) 00:14:49

>>180 >>181

そっと、唇に指を触れる。
この何もかもが偽りのように見えるパーティルームで、
ここに残る温もりと感触だけが、唯一の真実のように、斗貴子は思った。

(分かっている、カズキ。
 キミにもらった勇気は、決して無駄にしない。
 私が、私の武装錬金が、必ず悲劇を食い止める。
 もう二度と、私の子供の時のような悲劇は起こさせない!)


決意を込めて見つめる窓の向こうで、町の明かりが少しずつ小さくなっていく。
多くの思惑と想いを乗せて、巨大な箱舟がしずかに浮かび上がろうとしていた。


【津村斗貴子:展望台1F:パーティールームの片隅】

183 名前: ◆IgnisC3BW6 :2006/11/24(金) 01:19:27


 とある安宿の一室。
 豚小屋よりは多少はましと思える小汚い草臥れた室内には、二つの人影が見えていた。

 ひとりは男。
 この見窄らしい部屋に似合いの、見窄らしい風体の男だった。
 顔つきからゲルマンの男だと言うのが辛うじて見て取れる――が、奇妙なことに、それ以外の特徴らしい
特徴は、一欠片も匂ってはこなかった。金髪。長身。ややがっしりとした体格。それが、男を表す事の出来
る全ての記号だった。

 いや、それとあともうひとつ。
 その双眸は、血のように赤かった――濁りきってはいたが。

 徹底して、無個性な男。
 だが、その仮面の如き表情は、今までの無個性ぶりを一切否定するかのように、生々しい感情で彩られ
ていた。――恐怖、によって。

 恐怖に見開かれた赤い双眸に映っているのは、紅い髪の――女だった。
 だがその色は、死臭を纏う男の眼とは違い、あたかも燃えさかる炎のよう。
 紅紫というあり得ない色彩の双眸によって男を射抜いている女の表情には、はっきりと微笑が浮かんで
いた。その美貌には凡そ似つかわしくない、獣のような獰猛な笑みが。

 そして女の手には。
 抜き身の、一切の光という光を飲み込むような、禍々しい黒塗りの日本刀が一振り。

 炎のような紅い長髪。何もかもを見通すような輝きをたたえた双眸。そして――黒塗りの日本刀。
 その全てが、女が如何なる存在であるのかを、男に明確に告げていた。

 ――イグニス。
 焔という名を持つ女。化け物専門の殺し屋。”三つの守り”と称される人類の守護者のひとり。
 『最も気高き刃』――
 それは、ニンゲンでなくなったモノが、もっとも出会ってならないモノのひとつ。


 頂点まで達した恐怖が、凍り付いた肉体を駆動させた。
 雄叫びを上げて、男は女を一息に蹂躙すべく飛びかかる。

 そうだ。相手は女。ただの女。如何に強かろうと、初戦はただのニンゲンに過ぎない。
 ニンゲンでなくなったこの俺に、敵う道理など一欠片たりとも存在しない――!

 それは、信仰にも似た思いであり、一面では厳然たる事実でもあった。
 人間では吸血鬼には抗し得ない。その力には、正しく天と地ほどの開きがあった。

 だが――

 しゃっ。
 聞こえたのは、そんな音だった。
 そして、翻る一閃。あり得ない方向に転がる視界。妙に軽い身体。

 ――なんだこれは。何が起こった。

 口を開く。だが、声が出ない。ひゅうひゅうと、零れるのは空気の通り抜ける音。
 なんだ。なんだこれは。なんだこれは――

 ごとり、と言う音が脳に響く。
 床にはねる視界。鈍い痛み。長い髪を揺らす女の後ろ姿。見えるのはそれだけ。

 否――――
 あれは。あれは。あの女の向こう側に転がっているのは。ぴくぴくと無様にけ痙攣を起こしているのは。
 あれは。おれの、からだ――?

 そして、視界にかかる陰。
 視線だけでそちらを見上げる。
 そこには。女の、頑丈そうなブーツの底が、



 ――ごきん。

 それが、男の聞いた最後の音だった。




184 名前:イグニス ◆IgnisC3BW6 :2006/11/24(金) 01:19:55

 腐った血にブーツを濡らしながらも、イグニスは一切それには拘泥せずに、今し方踏み砕いた吸血鬼の
頭蓋を踏みにじった。
 ”夜闇の民”のような、生来吸血鬼であったか、あるいはそれらによって眷属にされた、所謂”天然もの”
とは全く違う、人の手で生み出された吸血鬼擬き――今彼女が手にかけたのは、無数に存在する、そう言っ
た害虫のうちの一体だった。

「ふん。踏みつぶしても踏みつぶしても沸いて出てくる。しぶとさだけは一級品だな」

 未だ蠢く首を失った骸。その心臓に袖口から飛び出したデリンジャーから、きっちり二発の銃弾を浴びせ
る。法儀礼処置の施された純銀軟弾頭の.41リムファイアは、現世にしがみつき続ける哀れな化け物の
心臓を丁寧に粉砕。ややあって、存在の起点をうしなったそれは、まるで水を入れすぎた風船のように、
血煙をまき散らせて霧散した。

 ――それで、お終い。
 狩るべき獲物を仕留め終えた殺し屋にとって、このような場所に止まる理由は、何ひとつとして存在して
居なかった。

 仕留めたモノに対しての感慨など微塵もなく、よどみない歩調で部屋を抜け出そうとする――が、そんな
彼女の視界の隅に、きわめて妙な……ともすれば、場違いとも思える何かが引っかかった。

「…………?」

 それは、部屋の作り同様に粗末な机の上に投げ出された紙束だった。
 意外なほどに上質な紙。だが、問題はそこではない。
 署名代わりに使われている紋章。これは――

「鉤十字――ハーケンクロイツ、だと?」

 思わず声に出していた。
 驚きと言うよりも、呆れが全面に出ていた。ナチス――六十年前の亡霊が、今更のこのこと現れてきた
ことにではない。このような、正式な紋印を用いるような書類の伝達に、あの程度の半端モノを使っている
不用心さに、だ。

 人手不足とは悲しいものだ。そんなことを思いながら、流すように読み進める。
 たいした内容ではないだろうが――だが。

 視線が、ぴたりととある単語をとらえていた。
 それは、彼女のよく知る単語であり、このような場所では決して目にしてはいけない単語である。

 ――聖櫃(アーク)。
 その名とは裏腹に、それは決して表舞台に現れてはいけない、禁断の聖遺物。
 そして。

「グルマルキン? グルマルキン・フォン・シュティーベル――?
 あのカビの生えた骨董品め。生きていたとはな。まだ諦めていなかったのか」

 書類を思わず握りつぶす。
 ナチスが、あの厳格に狂ったあの集団が魔術的なモノに手を出すのは今に始まったことではない。
先の大戦では、それこそ彼らは秘蹟の力を信奉し、全力を挙げてその確保に取り組んでいたものだった。
しかし悲しいかな、彼らは信者ではあっても術者ではなかった。
 素人が素人なりに素人的な考えで計画を推進していった結果、彼らについていた貴重な魔術師は悉く
消耗し、そして――後には何も残らなかった。

 だが再びこのタイミングで、誰も彼もが連中を彼方へと追いやったこの時代において、ここまではっきり
と動き始める理由――それはわからない。だが、相当に成功の公算が高い……高いと見積もっている事
は疑いがなかった。

 ならば。こちらが成すべきことは、もう決まっている。
 書類の全てを焼却し終えると、イグニスは宿を後にする。

 期間は残り半月ほど。それまでに、手を打っておく必要がある。
 まずは。

「――アメリカか」


185 名前:イグニス ◆IgnisC3BW6 :2006/11/24(金) 01:20:31


 ――ニューアーク・リバティ国際空港。
 あの夜から、ちょうど半月後のこの日、イグニスは、喧噪に包まれたターミナル構内にいた。
 大型のトラベルトランクに腰を預けるように、黙してただその時を待っている。

 その最中――耳障りな電子音が鼓膜をたたく。携帯電話の着信音。
 通話キーをスイッチ。

「――私だ」
『……相変わらずのようだな、”剣(セイバー)”。
 もう少しばかり愛想が良くてもいいんじゃないか?』

「人違いだ」

 切断。
 再度着信音。
 通話キーをスイッチ。

「……なんの用だ」
『お前な――それが貴重な協力者にかける第一声か?
 いや、そんなオン仇とは判ってはいるがね。いつもいつも無理を言われてるこっちの立場にもなれよ。
 多少はこっちの苦労をねぎらっても、天罰はくだらないと思うが?』

「下らん雑談に付き合うつもりはない。それで?
 首尾はどうなってる」
『ちっ。……武装その他についてはすでに積み込みは完了してる。
 スミソニアンに保管されてた――なんだ、概念武装だったか? そいつもあんたの指示通りだ。
 後はあんたのお好み次第、だ。”剣”』

「さっきから、その、”剣”というのはなんだ? 訳の判らん呼び方は止めろ。不愉快だ」
『ああ? なんだ、あんたでもそんな些細なことを気にするのか?
 なに、気にするな。ただの呼出符丁(コールサイン)だよ。特に意味はない。
 ……まぁ、別に”炎(ブレイズ)”でもいいんだが、さすがにそれは安易に過ぎるってもんだろう?』

 フン、と鼻を鳴らす。それを了承と取ってか、受話器の向こう側で、男がケタケタと笑う。
 だが、それは一瞬。すぐに声の調子が戻る。

『――要求されたものはすべて用立てたつもりだが――しかし、この最後の荷物。
 本当に役に立つのか? 恐ろしく胡散臭い野郎だったが』
「それはお前が気にするべき事柄ではないな。
 どう使うかは私の自由だ。なんにせよ、お前たちの損ではない。……違うか?」

『仰せの通りで――糞、俺も大概に染まっちまったもんだ。
 魔術に魔法に吸血鬼に化物、挙げ句にナチスだと?
 まだマーベル・コミックのほうが信憑性があるぜ。今の俺ならスパイダーマンが窓に張り
付いてても驚かないね』

「下らん戯言にこれ以上付き合うつもりはない。他に何もないのなら切るぞ」
『……あー。ほんと、つれないねぇ。それなら最後にこれだけ。
 全部終わったら、一度、二人で飲みに行かないか? いい店、この間見つけてね。どうだ?』
「お前の奢りならな」

 切断。


 ざあ――と。波が押し寄せるように、周囲の雑踏が耳へと飛び込んでくる。
 通話のとぎれたプリペイド携帯電話を片手で玩びつつ――口元には、挑発的な微笑を浮かべていた。
 つぶやく。

「準備は万全ではない。が――少なくとも、十分ではある」

 ならば、何も問題はないと言うことだ。
 敵が誰かは判っている。成すべき事も判っている。
 連中がどれほどの規模で行動を起こすのか――この際、それは問題ではない。

 だからこそ――あちこちに、此度の情報を意図的にリークさせたのだ。
 この乗船待ちの客の中には、相当数のエージェントが紛れ込んでいるはずだ。
 決して味方ではない――否、潜在的には敵ですらあるかも知れない。
 だがそれでも、連中の行動を阻害する、貴重な一駒で在ることは間違いがないのだ。

 構内に、乗船受付を開始したとの放送が流れ出す。
 イグニスは手のひらの携帯電話を、放るように屑籠へと投げ入れると、優雅にカウンターへ向け、
歩みを進める。

 紅い髪が、激しく燃える炎のように、揺れていた。


186 名前:ビリー・龍 ◆D727Bb9L.2 :2006/11/24(金) 01:59:14

 牙と棺桶をあしらった枠のなかで、三連のドラムが、縦に回っている。
 俺は慎重にボタンを押した。ひとつ、ふたつ……和風の少女が、二つ並ぶ。リーチだ。
 軽く舌で唇を湿らせ、三番目のボタンに指を置く。慎重に、タイミングを見計らい――

 ガクン

 船が揺れた。乱流に揉まれたか、いやそれにしては鋭い揺れか、そんな一瞬の警報が脳裏をよぎるが、

「ああ、くそ!」
 悪態の前に警戒心は吹っ飛んだ。スロットマシンの3列目には、隈取を施した暑苦しい吸血鬼の顔が収まっていたのだ。
 揺れた拍子に押しちまったらしい。


 遊びに注がれていた熱を冷ますのは、いつだって無粋な外からの干渉だ。
 すっかり興をそがれた俺は、「吸血鬼スロット」(誰が考えたか知らないが、アホなシロモノもあったもんだ)の筐体をバンと叩くと、その場を離れた。

 ぶらぶらと歩きながら、俺はカジノを見渡した。
 紳士淑女の皆々さま方は、今日も賭け事にご執心だ。いやいや、十把一絡げにすべきじゃあ、ない。
 カジノに慣れて存分に楽しむやつ、場の空気を支配しちまう油てかてかのおっさん、巧みな話術で淑女に人気のディーラー、
 慣れない様子でエスコートされる少女、等々、等々。

 その中に入って遊ぶのも良かった。いやさ、ちと飽きちまったのだ。
 この飛行船、豪華はいいのだが、イマイチ俺の興味を引くものがなく、やむなくカジノに入り浸ってたわけだが、
 どんな遊びもぶっ続けじゃ飽きる。賭けそのものにも、人にもだ。
 もうひとつ言やあ、ここのカジノは、ディーラーにもうちっと金使ったほうがいいな。
 ま、場の質は結構な度合い、ディーラーに左右されるっつーことだ。

 そんなわけで、興味を引くものを探して隅っこのスロットマシンまで一巡りしたのだが、さすがに好奇心も打ち止めだ。
 俺はカジノの隅のバーに行き、カウンターに陣取って、投槍にカクテルを頼んだ。ブラッディナントカ。

 バーテンが妙な顔をする。俺が、いいからやれよ、という顔をする。バーテンが後ろを向いてカクテルを造り始める。
 カクテルが出てきた。ブラッディナントカ。赤い。煽る。不味い、なんだこのタルい喉越しは。
 バーテンを睨む。ヤツが知らん顔をする。俺はさらに煽り、不機嫌な顔で頬杖をついた。

 ああくそ。

187 名前:◆sLAdoLfKkE :2006/11/24(金) 12:55:46

――彼は、長く眠っていた。
    本意ではない、しかし仕様のないことだった。
    彼の力の源たる「もの」は余りにも強力すぎ、余りにも危険すぎた。
    御するには彼の卓越した能力だけではなく、別の何かとほんの少しの運が必要だった。
    其れを得るには、時間が必要だったのだ。
    世紀をも跨ぐほどの時間が。

    だが、彼は得た。
    いや、得る術を見出した。

    最果ての異境、この世ならざる地、寒風吹きすさぶ其処に、微かな「其れ」を感じたのだ。
    ならば、得るしかあるまい。

    「そう――全てか無かだ。そうだろう、竜崎天馬?」

188 名前:◆sLAdoLfKkE :2006/11/24(金) 12:56:29

――誰も知らぬ復活から、数日の後。
    誰もが知る復活を遂げようとしている其処に、大勢の粋人――或いは暇人が集まっていた。

ニュージャージー州レイクハースト。
一部の好事家はその地を、飛行船時代の終焉の地、として語る其処。
その地で再び復活の産声を上げんとする其れは、かつて断末魔の声を上げた世界最大の船と比肩してなお、巨きかった。
まるで、冗談か何かのように。
それに比例するように、乗り込む人間の数も多く。
人種、性別、年齢を問わず、多くの、本当に多くの人間が乗り込んでいっている。
ただ共通するのは、いかにもと言う風の好事家、金持ちばかりと言うところか。

だから、彼――勤勉に搭乗手続きを行っていた独逸人、ウォルフガング・ペーターゼン――がその少年に気付いたのは、この上もない偶然でしかなかった。
蜂蜜を少し薄めたような色の金髪と、涼やかな蒼氷色の瞳。
見た目は十歳程度だというのに、それ以上の年輪を感じさせる不思議な少年。

少々の手荷物だけを手に、少年はチケットを差しだした。
いや、むしろ――チケットを「下賜」した。
多くの金持ち連中を相手にしてきたウォルフガングでさえ、思わず頭を垂れてしまいそうな、そんな意図せぬ威厳に満ちたその態度。
そのままウォルフガングを気にも留めず、乗客名簿に名を書き記す少年。
その所作には何の気負いもなく、こう言ったことには慣れていることを如実に表していた。

そして、記された少年の名は、Hans-Joachim Marseille――ハンス ヨアヒム マルセイユ――と言った。

189 名前:ハンス・ヨアヒム・マルセイユ ◆sLAdoLfKkE :2006/11/24(金) 12:56:53

飛行船の上から眺める極点は、酷く美しい。
その実ろくな準備も無しに人間がそこに立ち入れば凍死してしまうのは必定、そんな恐ろしさを秘めた美だ。

「だが、それがいい」

ワイングラスを傾けながら下界を、極点を見下ろす。
その様が不釣り合いには見えないのは、無意識に沸き立つ覇王の質の故か。

「さて……そろそろパーティタイムだが」

ふっと呟き、グラスをテーブルに置く。
まるでそれが合図だったように――――全てが始まった。


【ハンス・ヨアヒム・マルセイユ現在位置:展望台1F:パーティルーム】

190 名前:パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU :2006/11/24(金) 14:52:13

「……ああ、神聖ローマの事ね」

手紙を読み終えたパチュリー・ノーレッジの第一声はこうだった。
手紙の中に書かれたある国名がどこのことなのか、ずっとわからず気になっていたらしい。
手紙。門番やメイド、小悪魔をすり抜けて机の上に現れたそれは、それだけで出した人物の性格を慇懃に物語っていた。
そして、そのような性格でパチュリーに手紙を出す者を、パチュリーは一人しか思いつかない。
それが正解である事は、手紙末尾の署名が本来の用途に則り証明していた。

「相変わらずのようね、ミス・グルマルキンは」

神聖ローマ帝国。かつて中世ヨーロッパにおいて隆盛を誇った国家である。
そして、パチュリー・ノーレッジの知る『彼女』は、常にそこにいた。
彼女に与えられた様々な名、「黒衣の騎士」「軍装の麗人」「騎士団の影」……「魔女」
それら全てを身に纏い、グルマルキン・フォン・シュティーベルは常にそこにいた。
国が一度滅び、再び滅び、三度目に最悪の破滅を迎えても、なお。
国号がドイツになって久しく、戦いの記憶が風化しそうな現代においても、未だ……。

「……どうしたものかしらねえ」

パチュリーの手元にあるのは先程の手紙。そして、それに添えられていたチケット。
ご丁寧に、チケットを使う場所への地図まで添付されている。
ここまでされれば誰でもわかる。これは招待状なのだ。
ただし、「魔女」たるグルマルキンが素直に招待してくれるはずも無い。
何か面倒な仕掛けがあることは予想できてしまう。となると、応じるのはやや躊躇われた。

「いいわ、行きましょう」

……躊躇われるはずだったのだが。

「外に出られる機会もそうそうないし、外の魔法を見るのも悪くないわね。
ツェッペリン、どんな魔法かしら」

ナチスの魔術師達が聞いたら投石を始めそうな言葉を浮かべ、
パチュリーは、おそらく程なくして来るであろう友を待つ事にした。

191 名前:パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU :2006/11/24(金) 14:52:51

……それから数日の後。
パチュリーは、いつものように書を記していた。
ただし、座する場所はいつもの魔法図書館ではなく、南方の大陸の彼方に浮かぶ飛行船の一室。
蛇足を承知で記せば、まさに彼女が招待された場所、飛行船ツェッペリン・ノイエ・エーラの客室であった。

「弱い空気を集めて物自体を弱くする。それを力で動かすのね……興味深いわ」

彼女が記しているのは、この飛行船を動かしている「魔法」。それを知る事で、さらに知識を深めようというのだろう。
魔法? と疑問符が聞こえてきそうだが、彼女にとっては科学も魔法も同じ事、世の理に則り繰る技だ。
彼女にかかれば、ツェッペリンもアポロもケンウッドもマックも、すべて魔法と言われてしまうだろう。

「実践には風を入れる大きな袋と、力を得る機関が必要、と……本当、外の世界の魔法は大掛かりね」

 紆余曲折ありスカーレット姉妹と共にツェッペリンに乗ることとなったパチュリーだが、
この部屋で今動いているのは彼女しかいない。
 姉のレミリアは、この部屋に来てまもなく退屈したらしく、ちょっと遊んでくると言い残して
出て行ってしまった。
 妹のフランドールは逆に、来た当初は物珍しさからか猛然と遊んでいた−パチュリーが是非も
無く付き合わさせられた事は言うまでも無い−が、それで疲れてしまったらしく、今は部屋の
ベットで夢の中だ。
 こうして、パチュリー・ノーレッジは気兼ねなくツェッペリンの魔術を記す作業に入れたのだった。
……が。

「……ああ、もう終わりなのね。感謝するのはやっぱり止めるわ、ミス・グルマルキン」

部屋の外から響く音。
悲鳴と怒声と軍靴の音。

192 名前:◆2B6Bo7ac06 :2006/11/24(金) 15:47:52






      ―――そして、優雅なる飛行は凄惨に塗り替えられる。

193 名前:ヤン・ヴァレンタイン:2006/11/24(金) 15:48:31


「でさー、さしものアイツもブッ切れてさー、ヒャハハッハハッ! 思い出しただけで
笑える面でさー」「やかましいぞ」「俺の事刺そうとしてやんの」「二度も言わせるな」
「馬鹿だよなー、なー? 兄ちゃんもそう思うだろ?」

「仕事前にいつもいつもお前はやかましい。仕事は静か(クール)にやるもんだろう」
「あー、はいはい。ハイハイハイ。またそれかよ。わかってますわかってますよ。兄
ちゃんはいつもそれだ。もう少しホットに生きても良いんじゃねーの?」
「馬鹿か。お前と同じように生きれば死ぬだけだ。今回の仕事は失敗は赦されん」
「失敗? ありえねーありえねー。朝飯前もいいとこだぜ。いやー、それにしてもこの
国もまー貧富の差が激しそうな事で。まったくよー、ビルの天辺で胡座かいてる奴
ってムカツクよなー。なー? そう思わねえ?」
「―――――」

 白と黒。冷静と情熱。
 対極な二人ではあるが、その本質は実のところ同じである。

―――闘争狂の破滅主義者。

 血を血で洗い肉で肉を削ぎ骨を骨で削る。
 争う為に争い死ぬ為に死に殺す為に殺し死なせる為に死なせ、犯す為に犯し
犯される為に犯され、落ちる為に落ち落とす為に落とす。

「チケットを見せて頂けますか?」
「これは失礼」「あいよー」
「―――ようこそ。今世紀最大の楽園『Zeppelin Neue Ara』へ」
「なー、あのコンテナ積んどいて。俺の遊びドーグ入りだから」
「かしこまりました」
「んじゃよろしくー」

 飛行船内部への潜入は驚くほど簡単に成功する。
 それもその筈である。彼等のチケットは彼等の名義ではなく、名のあるさる人物が
手配した物であり、その人物からの口添えもあり、手荷物のチェックすらなく搭乗が
可能な状態になっていたのだから。

 それほどまでに魅力ある―――不死。

 ミレニアムによって開発された技術としての『吸血鬼化』。
 富や権力を持つ者が次に求める物は、それが永続的に恒久に続く事である。
『吸血鬼』となれば、日中出歩けなくなる事などの現状から見た場合のデメリットを
差し引いたとしても、憧れ望む『不死』を得る。

「やー、やっぱヴイアイピーは違うよなー。ケッ! アー、あー、ナー? そう思うだろ?」
「黙れ。襤褸が出る」「んだよこの絨毯。足首まで埋まって腐って落ちちまいそうじゃん。
あー、なに? ウワッ、ウッゼえくらい掃除が行き届いてやがる。さすがブルジョ―――」

194 名前:ヤン・ヴァレンタイン:2006/11/24(金) 15:49:08

「あーアー、部屋まで豪勢なんだからよー。たまんねえよなー、金持ちの道楽はコレだから
嫌いなんだよ、ファック! このソファーにしてもよー、俺の部屋にあるオンボロはなんな訳?
皮とか吸い付いてくんじゃん。ったくよー、備え付けのコーヒーまで選り取りみどり、紅茶から
グリーンティーだってよ。兄ちゃんどれ飲むよ? 全部タダだぜ、タダ。チケットいくらしてんだ
ろーなー? アー、なんだっけ? 一枚ウン千万だっけ? アー、そりゃタダにもなるってもん
だよな。飯って喰いに行かないと駄目なんだっけ? こっちまで運ばせられるよなー? ブル
ジョワな方々と飯なんて喰えねーつーの。つっても血の方が美味いんだけどなー。一人ぐら
い攫ってきてもバレないか? いや、でも目立つと拙いんだっけ。シット! 飯はお預け、金持
ち臭くて臭くて吐きそうな空気、ヤッちゃいけねえ目立っちゃなんねえクスリもハッパも飛ぶか
ら駄目。ナイナイばっかでキリがねえよなー。オレの自由は何処いっちまったんだか。折角、
吸血鬼になったって言うのによー、これじゃあどうしようもねーぜ。アーアー、兄ちゃーん。暇」
「―――寝ろ。もしくは死ね。それでも駄目なら下らないアニメでも見ろ。と言うか死ね。喋るな
死ね」「ヒデー、ヒデーよ兄ちゃん。もう少し可愛い弟を大事にしてくれてもいいんじゃねーの?」
「作戦開始まではまだ時間がある。鋭気を養っておけ。あと可愛くない。死ねばいいと常々思っ
ている」「―――――兄ちゃんのツンデレに乾杯。輸血パック何処置いたっけ? アー、確か冷
蔵庫だな冷蔵庫。冷蔵庫に死体でも入ってねーかなー。そしたらオレが探偵役でこの船の奴等
皆殺しにして万事解決作戦は成功誰からも文句は出ねえよな。っと、漸く見つけたぜ。愛しの愛
しのマッズイ輸血パックちゃん? もう少し味何とかなんねーのかね。ドク辺りが開発してくれて
も良さそうなもんだけど難しいのかねー」

 輸血パックを啜る、黒衣を纏う男の名は――ヤン・ヴァレンタイン。
 どうでも良さそうに瞑想する、白衣に身を包んだ男の名は――ルーク・ヴァレンタイン。

 対照的な二人ではあるが正真正銘の兄弟であり、そのどちらも吸血鬼である。
 目的はこの船を『占拠』し、『堕とす』事であり、それ以外ではこの遊覧飛行に何の興味も示す
事はない―――のだが、弟の方は退屈極まりないようである。

 作戦開始まであと何時間あるのか。
 それは彼等には知らされている筈もなく、現在は搭乗し、ただひたすらに待つのが仕事である。




―――――数時間後




「ヒュウ! 漸く来たぜ、『フェンリルは巨人に喰らいつく』『フェンリルは巨人に喰らいつく』だってさ!
兄ちゃん、仕事だ。待ちに待った仕事だぜ! やっと大手を振ってブチ殺せるんだから愉しまなきゃ
なあ? アーアー、聞こえてる聞こえてるっつーの。『狂犬は臓物を喰い漁る』『狂犬は臓物を喰い
漁る!』オーヴァー? で、兄ちゃん。作戦決行ですよー。パーティータイム!」
「まったくお前は―――まあいい。作戦開始だ。打ち合わせ通り、お前はパーティーホールを抑えろ」
「了解了解。ラクショーだぜ。兄ちゃんもご武運をー、ってか?」

 ただ今より、この船は戦火に包まれる事になる。
 絶叫が木霊し咆哮が轟き、殺したり殺されたり死んだり死なせたりする地獄絵図が描かれる。


―――ここに神は居ない。

                                          居るのは、『亡霊』だけである。

195 名前:ルーク・ヴァレンタイン:2006/11/24(金) 15:50:35

「何だね君たちは。ここからは立ち入り禁止区域だ」


連絡通路に現れた一行―――――。
操縦室区域担当警備コールマン・コンラッドの前に来た連中は、経験豊富な彼をして明らかに
不審と言わしめるものだった。

深く被ったコートの上から北欧系と分かる男が数名。
先頭に立って彼らを先導しているのは、白いスーツにジャケットを軽く羽織った神経質そうな青年である。
手には同じく白い手袋をはめ、長く伸ばした金髪を後ろで束ねた、端正な顔立ちの男。

「これはこれは失礼。実は私達、フンフツェーン伯の個人的な友人でしてね。
 折角だから操縦室の見学をと彼に頼んでいたのですがねぇ……伺っていない?」

あくまで知的で冷静な物腰。
慇懃に応える青年の対応は、それが嘘ではないと思わせる程度には自然体だ。
隣に控えている――この船に派遣された警備会社の後輩でもある――ルドルフならば、それだけで恐縮し
迂闊にもこの場を通しかねないだろう。
彼は気質や実力といった面は悪くないのだが、何分ブルジョアの空気というものに慣れていない。

「失礼ですがそのような話は伺っていませんな。
 とはいえ、此方の手違いの可能性があるので確認は取りますが、一旦お戻りいただきたい。
 我々も何分、規則ですのでご了承の程を」

この業界でもベテランを自負するコールマンは、元々優秀な軍人だった。
内部のいざこざを理由に一線を退いた後、元上司が勤める警備会社に誘われ今に至る。
さて、もとよりVIPのなりをしていようと不審者と見れば疑わねばならないのが警備員だ。
賓客が実は偽装したテロリストだった、という事例も最近多い。(彼と彼の会社を悩ませる一因だ)
今回のクライアントがVIPではなく飛行船の所有者、ツェッペリン・ルフトハンザ社なら尚更だろう。
ならば、ありうる可能性を徹底的に考慮するのが当然の対応というものであり、事実コールマンは
常にそう努めてきた。ゆえにコールマンのそれは石頭ながら、警備員としてベターな対応であるはずだった。
そう、本来ならば。

「おや、そいつは失礼。では――――」

青年が踵を返す、その半ば。
きわめて自然な動作で掲げられた左腕、手の隙間からわずかに垣間見え光る50センターボ硬貨。
白手袋に包まれた指がスナップを響かせ――――


―――聴こえたのは乾いた破裂音。
経歴上実戦経験も豊富なコールマンの考えが正しければ―――それは明らかに、
人体が撃たれたとき発する着弾音だ。そして全てを現実として認識させるのは音の発生源であり、
コールマンが何事かと振り向いた視線の先。
傍らにいたルドルフが眉間を穿たれ、脳漿をぶちまけ崩れ落ちていく光景に他ならない。

「おやおや、顔色が悪いようだが…?」

男の声は既に聴こえない。
ホルスターの拳銃を抜き放つと同時にセーフティを解除、そのまま流れる動作でコールマンは
銃口を突きつける。クソッタレ、そう、クソッタレだ。
この仕事が終わったら結婚する筈だったルドルフ、そんなルドルフをブチ殺したこいつ、そして
こんな事態を防げなかったコールマン自身。全員がクソッタレという以外にない。
だから銃を突きつけて、引き金に手を添える、誰だろうと動けば撃つ。ためらわず撃つ。
これ以上目の黒いうちは誰も腐った真似なんかさせやしない、そう強い意思を込めて「フリーズ!」の
言葉を叫ぼうとした、瞬間。

「―――大丈夫かね?」


――――肝が冷えて、そして潰れた。
体感時間にして1秒以下、さっきまでそこにいた男が後ろの耳元で囁いているのだから。
幾多の訓練と実績を潜った彼ですら、動いたと視認すら出来ぬSFじみた瞬間移動。そうとしか言いようがない。
まるで悪い夢を見ているかのようだった。
そんな一瞬にも満たない間、コールマンがパニックに陥る精神をギリギリで繋ぎとめた時にはもう遅く――――

青年は消えて、軌跡だけがコールマンの周りに弧を描く。
次にその白い姿が現れたとき、歴戦の警備員であったモノは輪切りの肉片となって転がっていた。
人体の急所その全てを切り刻まれ、かつ出血は医学的限界の最小限に抑えられて。

「少し時間を食ったか、急ぐぞ」

惨殺した相手に一切の感慨もなく。
取り出したハンカチでナイフの血糊を拭いながら、白スーツの青年――――ルーク・ヴァレンタインは
飛行船の制圧班を従え、規則正しい歩調で操縦室へと歩き出した。

196 名前:ルーク・ヴァレンタイン:2006/11/24(金) 15:51:12

>>195

――――新要綱作戦(オペラツィオン・ノイエ・ジール)。
それはすなわち鉤十字騎士団の魔女と、総統代行とも接触したあの錬金術師の手による混沌の顕現。
突きつけられた命令書の存在だけではない。
その最高とも云える戦争の舞台を、元よりあの狂った大隊指揮官が見逃すわけもなかったのである。

『最後の大隊』が今作戦に際して派遣した戦力、その数々が何よりも物語っている。
制圧・飛行船の制御を役目として結成されたSSおよびドイツ空軍出身の吸血鬼たちは元より。
狙撃兵として遊撃を務めるレップ中佐、襲撃班には彼とヤンの兄弟。
そして命令系統には属さないが――――『最後の大隊』現時点での最高戦力である人狼(ヴェアヴォルフ)『大尉』。


――――要は入れ込んでいるという事だ。あのお方も。


操縦室から見えるオーロラの遠景。
銜えた紙煙草から紫煙をくゆらせ、ルーク・ヴァレンタインはそう一人ごちた。

喫煙を―――否、それ以前に不法侵入を咎める警備員も操縦員も、もういない。
正確には、「だった」モノが今ダストシュートに運び込まれている真っ最中だ。
代わりに居るのは彼に随行してきた元ドイツ空軍士官の吸血鬼たち。
飛行船操縦に関するマニュアルは既に叩き込んである、あとは本隊を迎え入れるための
細かい調整を終えるのみ。

制圧は当然のように簡単だった。もはや気に留める事ですらない。
桁外れのパワーはただのコイントスを銃弾同然の兇器に変え、袖口から取り出した拳銃の射撃は
1センチの狂いもなく眉間を撃ち抜く。そして、人間には視認すら不可能なスピード。
銃を抜こうとした警備員も。
エマージェンシコールを発動しようとした操縦士たちも。
デクのように殺された連中は、何が起こったという過程もわからず死んでいったに違いない。
そして死因に反し、さしたる流血もなく始末された事実すら。
理由は単純に上からの「部屋に血の一滴すら垂らさず、汚れひとつ無い状態で譲渡せよ」とのリクエスト。
この部屋は制圧後、合流した本隊の司令室として利用するらしい。

仕事は静かに、クールに完遂するものだ。
ルーク・ヴァレンタインの口癖でありモットーである。
人間の限界をはるかに超え、従来の吸血鬼すら凌駕するスペックは彼の効率・完璧を旨とする
志向により活用され、至難を十重二重に束ねたようなオーダーは万全の仕上がりを見せていた。

「さて……通信士、周波数を合わせておけ。仕上げに入る」

その指示と共にルークが取り出したのはシルバーの携帯電話。
呼び出す相手は無論、今作戦でツーマンセルをなす彼の弟、ヤン・ヴァレンタイン。

「こちらルークだ。操縦室の制圧は完了した。
 後は打ち合わせどおりだ。こちらの準備は済んでいる、お前のほうのパスコードを入力しろ」

作戦前、大隊指揮官のブレイン『博士(ドク)』から渡された一組の携帯電話。
それには狂った少佐のリクエストを受け、今回の作戦をより“素晴らしく”演出するための発明が仕込まれていた。
片方が特定の周波数を拾い、同調する事で回線をジャックする。
―――簡単に原理を説明すればこうだ。とはいえ、そんな真似をどうやって可能にしたのかは聞いていないし、
渡されたルークにも興味はない。重要なのはもう片方だ。
片方が受信機の役割を担うならば、もう片方は送信機の役割を果たす。すなわち――――。


「そして存分にその汚い口舌を船内にぶち撒けろ、盛大にだ。
 それがあの方による命令であり、お前の重要な仕事のひとつだからな」

――――これで、弟の宣言は船内にくまなく伝達される。
その地獄の様を想像してか、あるいはおぞましい仕事の完遂ゆえか。
ルークは歪んだ薄笑いを浮かべた。
弟と何から何まで相反する兄もまた――――その狂える根本は同一なのだ。


『フェンリルは巨人に喰らいつく』。
その一節の通り、破滅を呼ぶ大獣の牙は喉元深くに突き立てられた。
ここから先にあるのはただ一つ、“神々の黄昏”にも等しき戦争の地獄のみである。

197 名前:ヤン・ヴァレンタイン:2006/11/24(金) 15:53:01

>>193>>194

 イヤイヤご大層な船だ。
 広くて広くて歩き疲れちまったよ。

 ケツが底まで沈んじまいそうなヤバイくらいの高級(しかもアンティークだってよ、ケッ!)
ソファーに体を沈み込ませて歩き疲れた体を癒しながら眺めるブルジョワジーなお遊戯
は実に実にくっだらねえ訳で。
 兄ちゃんの連絡待ちも辛い辛いツライ……っと、オオ、来た来た。

「アロー、兄ちゃーん。飛行船ブッ潰し隊隊長のヤンヴァレンタインでーす。ハハハッ……
はいハイハイ、リョーカイリョーカイ。んじゃ、後はこっちで好き勝手やらせてもらうぜーッ」

 まずは手始めに―――Bang!

 ヒュー、金持ってても頭に穴空いちまったら一緒だねえ? どうだい、少しは空っぽな
気持ちが分かっただろ? それじゃあ美味しくいただきます。

 やっぱ金持ちの肉は違うよな美味いモン食ってると脂のノリが違うぜファック!
 やっぱ金持ちの血も違うもんだクソ不味くて飲めたモンじゃねえぜシット!

「アーアー、シーキューシーキューアローアロー? 聴こえてますかぁ?
 たった今よりこの船はボク様ちゃんたち一向にジャックされました。なのでー、南極行っ
てこの船落とすから降りたい方はさっさと窓から落ちて死ねば?この簡易アウシュビッツ
よりはマシだと思うぜ? ユーキャンフライアーンドデス!
 ヒャハハハハ! 知ってる?それなりに高さあると水ってコンクリと一緒な硬さになるら
しいぜ? 蛙みたいに潰れて死んでみるのも面白くない? ヒュゥ――ソークール!
 で、本題に戻りまして、怨むなら純正ドイツ品で固めちゃった設計者と製作者を怨んで
下さいねー。僕たち悪くありませーん。オーライ?
 そしてここからは課題、この船には至る所にグールがいまーす」パチンと指を鳴らし
て、「ほらクズども餌の時間だぜ? たっぷり腹に詰め込んでクソ塗れにしてやれ!」

 そこらで拡がる悲鳴の大合唱! 阿鼻叫喚の地獄絵図! イェーマジ勃起モン!
オレイッちゃいそう!

「つーワケでここは餌場になりましたー。死にたくなければせいぜい歯向かってクダサー
イ。処女か童貞なら俺達のお仲間になれるかもね? ああでも女は犯してから喰うように
男は殺してから喰うように躾てあるので残念でしたー!
 さあ、お祈りを済ませろ便所も済ませろ後は部屋の隅でガタガタ振るえて命乞いするだ
けにしとけよ。オーケイ?」

 さあ、虐殺ショウの始まりだ。全殺しじゃ飽きたりねーから二回三回殺してやるぜファッ
カーども!

198 名前:ハリィ・ケイン(M):2006/11/24(金) 15:55:27


 マクマード基地は1956年にアメリカ海軍が設営した拠点を改修した、民間企業
が運営する南極観測基地だ。ロス棚氷上に位置する当基地は南極最大規模で、
居住可能人数は最大1000名をこえる。
 建造物の数は100をこえ、複数の滑走路やヘリポートも有していた。娯楽施設も
多数用意されており、基地というよりかは一つ集落と呼ぶほうが相応しい。

 ハリィ・ケイン海兵隊少佐は僻地に設営されたこのマクマード基地の規模の
大きさに、驚きを隠しきれなかった。
 半ば私事めいた任務を帯びて南極行きを命じられた時は、左遷もここに極ま
れりとあの無駄に巨大な飛行船を呪ったものだが―――飛行機を何度か乗り継ぐ
だけで、気付けば南極に着いてしまった。
 滑走路に降りてみれば即座にバスに案内され、基地内に運ばれる。基地内の
施設は豊富で、南極の寂寥とした情緒などあったものではなかった。
 出身地であるニューヨークの冬のほうが遙かに厳しい。この基地の防寒設備
は完璧で、基地内にいる限りまず凍える必要はなかった。
 現にいまの少佐の恰好は、肌着の上にシャツを着ているだけだ。
 お望みなら、基地内の温水プールで肌を灼くことだってできた。温水プール
の天井と壁面はガラス張りで、リゾート気分を堪能できる仕様となっている。

 だが、当然、ケイン少佐は南極旅行を楽しむために部下を数人引き連れて
基地を訪ねたわけではない。彼には任務があった―――ブルジョワどもの南極
旅行のお守りという、サービスをする側の仕事が。

 ドイツの酔狂な伯爵によって企画された新生ツェッペリン計画―――その具象
である超巨大飛行船ツェッペリン・ノイエ・エーラ。
 そして、同船による豪華南極旅行企画。
 嬉々として乗り込む各国の金持ち連中―――石油王もハリウッドスターも政府
の重役もマフィアのファーザーも詰めるだけで詰め込み、飛行船は全長1キロの
宝石箱に姿を変えた。
 ことの不幸は、そんな悪趣味な風船にケイン少佐の上司――大艦巨砲主義の
最後の生き残りである、あの吶喊万歳男――ロバート・シャフトゥ海兵隊少将
がフンフツェーン伯爵直々に招待されたことにより始まる。
 アメリカ人ではなくロシア人に生まれるべきだったシャフトゥ少将は、超巨大
飛行船を一目見て気に入り、招待状を狂喜して受け入れた。
 余計だったのはその上、飛行船の護衛まで請け負ってしまったことだ。
 少将は甥が経営する警備会社や友人が多く籍を置くシークレットサービスに
連絡を入れ、飛行船内のVIPを死守するよう頼んだ。いま、飛行船内にはダーク
スーツに遮光グラスというお決まりの要人警護員が、MP5クルツを懐に呑んで
眼を光らせていることだろう。
 伯爵はこの協力を悦び、シャフトゥ少将を特賓扱いにした。更に気をよくした
少将は、船内のみならず船外の警護まで買って出たため、ケイン少佐は南極行き
命ぜられたという―――そういう経緯である。

 南極に至るまでの径路は、各国の空軍が飛行船を護ってくれる。
 問題は南極に到着してからだった。
 条約によって護られた南極には、表向きは――少なくとも少将が利用できる
――軍事力は存在しない。ミサイルや戦闘機が飛んできても、アメリカ国内の
ようにF-16が殺到と登場してはくれないのだ。
 だが、軍事行動は不可能でも対テロ警戒はできる。
 それを理由に少将はケイン少佐をマクマード基地に派遣させた。この基地の
レーダー施設ならば、南極全土をカバーできる。不審な影を察知すれば、即座
に最寄りの空軍基地――できれば海兵隊の駐屯基地か偶然%極付近を航海
していたアメリカ軍空母が望ましいと少将は言った。何としてでもアメリカの
威信を示したいのだ――に連絡を入れる。さすれば、ピザの配達よりも早く
ジェット戦闘機が駆け付けて、悪い海賊を始末してくれるという案配だ。
 ケイン少佐は言わば哨戒役だった。

199 名前:ハリィ・ケイン(M):2006/11/24(金) 15:56:02


>>198

 ―――不審な機影をレーダーが捉えた。

 部下からそう報告を受けて、ケイン少佐は管制塔兼レーダールームに出向いた。
 基地では、少佐は外様の人間に過ぎない。レーダールームに詰めているのも
当然、民間の観測員ばかりだ。
 ただレーダーの精度は確かで、索敵にも十分利用できた。

「不審な機影と聞いたが」
 できるだけ居丈高にならぬよう気を付けて、責任者に問いかけた。
「説明してもらえるか」

「基地から6マイルの距離に、飛行物体を捉えました。こちらに近付いている
ようですね。……そのような報告は受けていないのですが。おかしな話です」

「6マイル(約10キロ)だって?」
 ケイン少佐は思わず眼を剥いた。
「目と鼻の先じゃないか。どうしてそこまで接近を許したんだ」

「かなり低空を飛行しているみたいです。低空網レーダーは基地周辺にしか
張っていないんですよ。まぁ、でも、少佐さんが心配するような展開には
ならないと思いますよ」

「何を根拠にそう言うんだね」
 苦々しげに問い返した。もしこれが飛行船を目指す敵機だったならば、
今すぐに空軍基地に連絡を入れないと手遅れになる。

「足ですよ足。時速200キロも出てやいません。信じられないほど鈍足です。
旧型の観測機か何かでしょう。こんなすっとろい航空機が最新鋭の飛行機
を狙うなんてまず考えられませんよ」

「だが、明らかに飛行船目掛けて直進している」
 モニタが映し出す詳細不明機の進路を睨みながら呻いた。
「飛行船は民間のものなんだ。対空装備なんてスティンガー一発積んじゃい
ない。いくらこの航空機が鈍足でも体当たりはできる。飛行船には格闘能力
なんて皆無だからな。飛行機による吶喊……自爆テロの典型じゃないか。
 ―――本国と最寄りの基地に連絡する。無線を貸してくれ」

 責任者は肩を竦めると、引き出しから双眼鏡を取り出してケイン少佐に
差し出した。「まぁ、その眼で判断してくださいよ」

「なんだと?」
「南極の気温のせいで空気がかなり澄んでいますからね。日没間際のこの時間
でも、6マイルならそろそろ可視範囲に入るはずです。ほら、あすこを双眼鏡
で見てみてください」

 あくまで楽天的な責任者に歯痒さを感じつつ、ケイン少佐は双眼鏡を引った
くると、管制塔のガラス張りの壁に取り付いて機影を探した。
 豆粒大の影が空に浮いている。慌てて双眼鏡を覗き込んだ。倍率とピントを
あわせる。輪郭が明瞭となり、不審機の姿をはっきりと捉えた。

「なんだあの不格好なスタイルは。6発のエンジン? 輸送機か何かか。色調
からして軍用機のように見えるが、それにしては前時代的な……」

 あり得ざるものが視界に飛び込んだ。ケイン少佐の表情が凍り付く。
 訝しそうに眉を寄せる責任者。少佐の喉から呻きが漏れる。

「馬鹿な……正気の沙汰じゃない」
「どういたしましたか、少佐さん」

「―――ハーケンクロイツだ。尾翼に鉤十字を描いてやがる」  

200 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/24(金) 15:58:35


>>198>>199

 ツェッペリン・ノイエ・エーラの接近を間近に控えたMe323ギガント。
 地平の果てまで氷床に閉ざされた南極の風景は、時速250キロ程度のスピード
しか出ない旧型の輸送機では、なかなか代わり映えがしなかった。
 黒服を纏ったグルマルキンは、着替えに勤しむモリガンを残して将校部屋を
出ると、その足で操縦室に立ち入った。
 巨大な外観とは裏腹に、やはりというか、手狭な操縦席である。
 指揮官が泰然と座るような椅子は用意されていない。
 グルマルキンもまた、それを求めはしなかった。
 防弾ガラスに斜光処理が為された窓越しに、船外を眺めた。
 天気は良好。空気も凍て付き、澄んでいる。ヴァルトラウテのセンサーを
信じれば、あと数分で全長1キロにも及ぶ巨大飛行船が目視できる。
 既にMe323ギガントのレーダーでも機影を捉えていた。

「ご苦労だった」
 計器類を弄る二人の操縦士に声をかける。
「諸君等の任務は、私と箱≠新ツェッペリンに移送した時点で終了する。
予定の場所で機を捨てて、海路で南米に帰りたまえ」

「―――しかし」機長が思わず振り向いた。「帰りはどうなさるおつもりです
か、大佐殿。地面を這って退路を築くには少々厳しい環境ですぞ」

 機長の顔は真剣だった。副操縦士もまた、この作戦の辞令を他の作戦参加者
に先んじて受け取ることを嫌っていた。―――最後まで見届けたかった。

「この機なら余分の燃料をだいぶ積んでいます。狂気山脈に先回りして、作戦後、
部隊を収容することは十分可能です」

 機長の血色の瞳が懇願の色を帯びる。機長と副操縦士―――両名とも「最後
の大隊」に所属する操縦士だった。
 エリートで、流水を渡れる程度の力は有している。
 故にグルマルキンに気に入られ、一枚の命令書―――総統権限の名の下に、
強引に本部隊に配属させた。ヒトラーの命令書は特秘命令の上位に位置する。
 いくら総統特秘666号の任を帯びる少佐殿でも、グルマルキンの命令には
逆らえなかった。最後の大隊からは他にも多くの協力を得ている。
 もちろん、総統権限などは名ばかりで―――実のところ、あの狂った少佐
も本作戦を愉しんでいるに過ぎない。

 だが機長と副操縦士―――この二人は「最後の大隊」には所属していても、
親衛隊というわけではない。彼等は空軍(ルフトヴァッフェ)の軍人だった。
 当然、ミレニアム計画に参加したのも戦後からだ。そのためか、戦中から
の心酔者―――少佐の傘下に踵を並べる武装SSの連中ほどには狂えなかった。
 少佐の下で第二次アシカ作戦の実行――事実上の死≠セ――を待つより、
グルマルキンの部下として目的のために武力を用いたかった。

201 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/24(金) 15:59:05


>>198>>199>>200

 二人の目から見て、グルマルキンという将校はあの太った少佐殿に比べて
遙かに冷静で、健常で、軍人的だった。つまりまとも≠ニいうことだ。
 二人は、これを機にミレニアムからの足抜けを希望していた。
 グルマルキンもそんな二人の思いは察している。
 二人とも優秀な操縦士だ。いてくれて助かる人員であることは確かだった
―――が、そのためにあの少佐との仲に罅を入れるのは面白くない。
 何より、本当に迎えは必要としていないのだ。Me323ギガントが狂気山脈に
先回りしても、聖櫃起動の余波で奈落へと墜落するだけだった。

  無粋なニューボーンにしては可愛いことを言ってくれる。
  さて、如何にして断ってみるか。

 思案したその時―――「グルマルキン大佐」
 ハルトマンが敬礼の後、操縦席に立ち入った。グルマルキンが耳を貸すと、
ハルトマンは口を寄せる。「ヴァルトラウテ中佐殿が、超高速で接近する機影
を複数捉えたそうです。ニュージーランドの空軍基地から離陸した戦闘機と
みて間違いないでしょう」

「……ニュージーランド空軍か?」右眼がハルトマンを睨む。
「中佐殿はアメリカ合衆国空軍と識別いたしました」
「USAFだと? ニュージーランドの駐屯地の機だな。太平洋安全保障条約
(ANZUS)理由に出張ってきたか。ヤンキーめ、思ったよりも行動が早い」

「失礼ですが」機長が二人の会話に割って入った。「この旧型の鈍足機じゃ、
現行の戦闘機なんざとはまともにやり合えませんよ。前の戦争ですら鴨撃ち
の的だったんだ。マッハで飛ぶ戦闘機相手じゃ抵抗すらできません」

「分かっている。貴公等は私達を飛行船まで送り届けるだけでいい。他の
心配は無用だ。―――ハルトマン、航空隊を出せ。それで事足りる」
「相手がジェット戦闘機ではライダース大尉には荷が重いと思われます。
新戦乙女隊≠出させますか? 実力を知るには良い機会です」
「いや、その前に我々の力をヴァンシュタイン嬢に見せつけてやろう。どうも
私は彼女に侮られているような気がしてならんからな。サーカスを使え」

 その言葉に、操縦席の二人がぎょっと眼を剥いた。あいつ等を出すのか――
―ただでさえ血色の悪い顔が、恐怖で更に青白く染まる。

 ハルトマンはゆっくりと上司の隻眼に眼を据えた。「よろしいのですね?」

「前座に相応しい連中だ」
 グルマルキンの口端に、嗤笑が広がる。
「―――男爵大尉のフライング・フリーク・ショウはな」

202 名前:アメリカ合衆国空軍(M):2006/11/24(金) 16:00:13


>>198>>199>>200>>201

 ニュージーランド駐屯基地所属アメリカ合衆国空軍第108戦術戦闘飛行隊の
ハンス・グリム中尉は、マクマード基地からのスクランブル要請を受けて、
愛機のF16を駆らせていた。
 A・ダヴェンポート少尉が乗る遼機も同様にF16で、二機編隊を組んでいる。

 中尉にとっては色々と腑に落ちない出撃だったが――南極上空の飛行及び
攻撃など彼は初めてだった――命令に疑問を挟むほど、事態を理解できてい
ないわけでもない。
 対テロ警戒。VIPが乗り込む巨大飛行船を〈世界の敵〉から護ってみせる。
 南極条約に対するエクスキューズは彼の中で出来上がっていた。

 しかも報告によると、敵機はメッサーシュミットMe323ギガントだと言う。
 驚きの事実。Me323だって? 前時代の遺物だ。F16どころかサンダーボルト
ですら楽に撃ち落とせる張りぼてじゃないか。
 しかもご丁寧に尾翼にハーケンクロイツつきと来ている。半世紀前の亡霊―
――頭の中まで半世紀前で停滞しているということが証明されたわけだ。
 楽な仕事でスコアを稼げることを喜びつつ、中尉は機の速度を落とし、高度
を一気に下げた。敵機はあり得ないほどの鈍足だ。
 余裕を持って狙いをつけても十分に間に合う。

 暫くして、目視で敵機を捉えた。驚くべきことにメッサーシュミットMe323は、
その最も特徴的な部位―――前部格納庫のハッチを開いていた。
 観音開き開放されている様子は、ハッチというよりも巨大な城門が開ききっ
た印象を中尉に与えた。船内で何かトラブルが起こったのか、と中尉は訝る。
 それほど常軌を逸した動きだった。
 低高度とはいえ飛行中にあんな巨大な――しかも前部だ――ハッチを開放する
なんて、自ら墜落を望んでいるとしか思えない。
 気圧の急激な変化。船内を蹂躙する寒風。崩れる機体バランス。抵抗を減らす
よう苦心を重ねた設計者のデザインも台無しだった。
 ハッチが開かれた状態で飛行などすれば、当然、空気の抵抗も跳ね上がる。
 いくらMe323の巨大な上部両翼はグライダーとしての性能も兼ねているとは
いえ、あの状態がが続くようであればまともな制御はまず不可能だった。

「クレーピジョンのほうが、まだ的としては優秀に思えるぜ」

 高価な空対空ミサイルを使うまでもない。
 20ミリ機関砲の掃射で事足りる相手だ。
 すれ違う一瞬に叩き込む分間6000発の徹甲焼夷弾(布張りのモンスターには
贅沢な弾だ)で、輸送機をまっぷたつにしてやれる自信が中尉にはあった。
 中尉は湾岸戦争に従軍した時、イラク軍機を二機墜としているが、機関砲に
よる撃墜経験は無かった。―――この貴重な機会を、逃す手はない。

「メビウス・ワンよりメビウス・ツー。あの土手っ腹に直接撃ち込んでやる。
メビウス・ツー、支援を頼む」

 応答は無かった。「……メビウス・ツー?」
 慌てて僚機に目を向ける。所定通り八時方向に確認。
 戦術戦闘飛行隊所属のF16は隊伍を乱すことなく空を切り裂いていた。

「おい、どうしたダヴェンポート少尉―――」

 グリム中尉は異常に気付き、思わず目を剥いた。
 確かに僚機は飛行している。
 だがそこに少尉はいなかった。
 コックピットは空だった。

203 名前:アメリカ合衆国空軍(M):2006/11/24(金) 16:00:44



>>198>>199>>200>>201>>202

 脱出―――なわけはない。風防ガラスが微塵に砕かれている。
 緊急信号も無線での助けも聞こえなかった。まるで空の悪魔にかっさらわれて
しまったかのように、ダヴェンポート少尉は姿を消してしまったのだ。
 攻撃? 馬鹿な。そんな兆候は無かった。計器類に反応も無かった。
 こんな攻撃はあり得ない。―――でも、ならば何が起こったんだ。
 一瞬の錯乱。中尉はすぐに冷静を意識する。自分が判断する必要はなかった。
 まずは報告―――マイクに向けて口を開く。
 が、次の瞬間には喉が凍り付いた。

 少尉が、いた。
 前方、11時の方向。
 機外に。
 空に。
 浮いていた。

「あ……?」

 確認できたのは一瞬だ。F16の空を裂く翼は、少尉の影を追い越した。
 満足に注視する暇は与えられなかった。
 だが、それでもあれは少尉だった。
 アメリカ合衆国空軍の制服を来た、僚友だった。

 異な点は、重力に引かれるように力なく四肢を宙にぶら下げていたこと。
 首から脇の下あたりにかけて、黒い――ああ、なんと禍々しい映像だった
ことか――蝙蝠の翼が生えているかのように、見えたこと。
 あれは錯覚だったのか。頭に酸素が回らず、幻覚を見ていたのか。

 ふと、中尉の身体に影がさした。視線を上げる。自分はいま、錯乱状態に
ある―――その疑念を更に説得づける映像が視界に飛び込んだ。
 顔を引きつらせるなんて驚愕では足りなかった。
 そのまま心臓を止めてしまうのではないかと思われるほどの衝撃が、中尉
の精神を襲った。怪物が―――そうとしか形容できないものが、F16のコック
ピットに取り付いているのだ。

 異常なまでに膨れあがった筋骨と、それを覆う朱い獣毛。
 肩から脇腹にかけて生えた巨大な蝙蝠状の翼。
 ヘルメットから飛び出した尖った耳。
 真っ赤な口内から伸びる長大な牙。
 せり上がった眼窩から覗く血色の視線。
 厚い胸板に括り付けたハーネスには、一対の機関銃をぶら下げていた。

「赤い悪魔―――ガーゴイル……」

 そう呻くだけで精一杯だった。
 次の瞬間、空中戦ではまずあり得ない零距離からの機関銃掃射で、防弾が
施された風防ガラスは砕け散り、中尉は機外に引きずり出された。
 怪物―――ガーゴイルが牙を剥き、口を寄せる。
 鮮やかな真紅の口蓋。
 その禍々しさに目を背けた先に―――中尉は輝く栄光を捉えた。

 蒼いマルタ十字に黄金の鷲―――プール・ル・メリット勲章。
 通称ブルーマックス―――ドイツ最高の名誉勲章。
 それが、中尉が最後に目にした映像だった。

204 名前:モリガン・アーンスランド:2006/11/24(金) 16:02:29

>>151>>152

「――――はい、大佐」

盛大なパーティーを前にして、逸る気持ちを持て余していた。
だから、それを少しでも鎮める為に……そして、クライマックスの瞬間をより愉しむ為に、
とただ待たなければいけない時間を、気が付けば回想で潰していた。
そう。
もう、宴の始まりは目の前だった。

「私は大佐と同じく総統閣下に忠誠を誓う者ですから……
 軍規を汚すような真似は勿論致しませんし、この制服を誇りに思っていますもの」

言葉と笑みに若干の揶揄を添えて応え、傍らに脱ぎ捨てたままの制服に手を伸ばす。
袖を通すのは、傍らに立つ上司と同じ作りのものだ。
階級によって違いはあるのだろうが、そもそも余り気にした事はなかった。

「そうですわね……お集まりのVIPの方々を、退屈させてもいけませんし。
 私達の演出で、盛り上げてさしあげないと」

告げられる報告と掛けられた声を横に聞きながらなお、特に急ぎもせずに手を動かしていく。
このSSの制服を身に着け終わる頃には、もう秒読みだ。
それが待ち遠しいような、けれど勿体無いような――――

――まるで、遠足前の子供のよう。

愉しみで、仕方がなかった。

205 名前:『紅い悪魔』レミリア・スカーレット ◆remyaGVniw :2006/11/24(金) 18:37:57

コンコン―――

「パチェ…?入るわよ」

今この私、レミリア・スカーレットがいるのは紅魔館に属するここヴワル大図書館。
私はパチェの部屋のドアで立ち止まって二回ほどノックをしてから声をかけて、
ガチャッ―――とドアを開けて部屋の中に入った。

「実はパチェに言っておきたい事がある…て、貴女にもそれ()が届いていたのね…」

それはおよそ一時間ほど前の出来事だった。
私がいつもの様に自室で紅茶を飲もうと部屋に入った時に―――何故か一枚の分厚い封筒みたいな物が
私のテーブルの上に置いてあったのだ。

一応それをよく確認してみると…どうやらあのグルマルキンからの招待状らしく、中には
飛行船のチケット―――そして外の世界の地図まで入っていた。
しかもご丁寧に飛行船の詳細な場所までもその地図に記載されていたのだった。

してその手紙の内容とは―――

『紅い悪魔・レミリア・スカーレット嬢宛て

 久しぶりだな、紅い吸血鬼のお嬢さん。今頃この手紙を見ているお前は、何の前触れもなく
私からの招待状が届いた事に大層驚いていることだろうな。
実はこちらの世界でとても巨大な飛行船の情報を手に入れてな―――
何でもその飛行船では世界中のVIP達が集う豪華なパーティーが行われるらしい。
そして私は運良くその飛行船へのチケットを手に入れたのだ。
だからそれを他ならぬ貴様にもプレゼントしてやろうと思ってな…ククク、この私から
の誠意あるご招待を光栄に思うがいい。ちなみに日時は×月×日の×時の時間だ。
せいぜいこの豪華なパーティーに遅れないようにすることだな―――クククク。

                      グルマルキン・フォン・シュティーベルより』

―――と、そう書かれていたのだった。
そして今現在に至る。

「…ふぅ、何だか最後の部分は私への皮肉っぷりが見え見えね…。実に貴女らしい
やり口だわ」

そして、とうのパチェもグルマルキンからの招待状が届いていたらしく…それから
二人で話し合った結果―――結局は紅魔館の留守を咲夜達に任せて二人で外の世界へ行くことになった。
途中で紅魔館から抜け出してきたフランがやってきたけど―――どうやらフランにもあの女からの
招待状が届いていたらしく…私はその事を渋々了承して最終的に私とパチェ、フランの三人で
外の世界に行くことになった。

―――さて、これから何が起こるのかしらね。

206 名前:『紅い悪魔』レミリア・スカーレット ◆remyaGVniw :2006/11/24(金) 18:39:50

>>205

「お待ちしておりました。レミリア・スカーレット様にパチュリー・ノーレッジ様、
フランドール・スカーレット様ですね?どうぞこちらへ―――」

今現在―――ようやく私達はグルマルキンの言っていた…実に見上げるぐらいに
巨大な飛行船『ツェッペリン・ノイエ・エーラ』に辿り着き、
そして飛行船の乗船口で待っていたであろう乗組員に
飛行船のチケットを渡した後―――その乗組員の案内によって
実にうちの紅魔館に負けずとも劣らない豪華な客室に案内された。

「へぇ……なかなか豪勢な所じゃない。グルマルキンも案外気が利くわねぇ」

私はそんな感想を述べながら、辺りの客室などを見回していた。

ちなみにフランは、先程パチェを連れてどこかへ行ってしまった。ちなみに
『お姉さまも一緒に行こう』って言っていたけど…私は拒否したわ。

―――それから1時間が経って、ようやく戻ってきたフランと…何故かぜぇぜぇ…とフランに
引っ張られて相当苦しそうな息をしながらパチェも戻ってきた。
…きっとフランに無理矢理あちらこちらへと付き合わされたのね…。
それからフランは眠そうな顔をして、そのままベッドに直行して眠ってしまった。

そしてしばらくは暇だった。何か良い暇つぶしを探そうと、私はパチェに「暇つぶしに行って来るわ」
…とそう言ってから部屋を出ようとした所―――何やら部屋の外から激しく響く音が聞こえてきて、
悲鳴と怒声と軍靴の音が入り乱れてきたのだった。
それらを聞いた私は―――

「…ああ、成る程ねぇ…。たった今とても最高な暇つぶしを思いついたわ。
ウフフ…グルマルキン、悪いけど私達をここに招待したのは間違いだったわね」

私達をここに招待したグルマルキンの本当の目的に気付いた私は、そう不敵な笑みを
浮かべながらそう呟いた。

―――ウフフフフ、本当に楽しいパーティーはこれからよ―――

207 名前:ヴァルトラウテ/タッツェルヴルム ◆SoRDENIEpc :2006/11/24(金) 20:03:18


 鋼造りの戦乙女は、眼を閉じていた。
 眼を閉じながら、情報の奔流をその翼に捉えていた。

 メッサーシュミット・Me363、通称ギガント。
 地平線から未だ滑り落ちずにいる未練がましい太陽にその身を朱に染め、天翔る『巨人』は
氷原の上を、神話さながらの姿で征く。
 特徴のある正面ハッチ前面、ここにヴァルトラウテは自らの許を定めた。
 主力戦車を数台搬入可能という、現行の輸送機と比較しても桁違いに広いその格納庫内部は
その居住性の高さもまた随一である。
 グルマルキンが私室にその一角を用い、また『主賓』である輸送荷物の管理に更に一区画を
占めたとしても猶余りある、そのことは充分に理解していた。
 わざわざ片隅に身を寄せたのは他者からの知覚センサーへの影響を受けないため、そう説明
してはいたが、実際のところは他の者たちとの接触を嫌ってのことに過ぎない。
 本作戦の協力者、との触れ込みの男は、一度不躾に彼女の顔を覗き込んだかと思うと、その
白銀に輝く羽を見るや途端に興味をなくしたように顔を背けた。
 モリガン、という聞き慣れぬ名の女将校は、少なくとも照会する限りでは正規の親衛隊員
ではなく、得体の知れないという点では先の男と同類である。
 尤も、「モルガナ」というドイツ語形の名でない、という時点でそれは少なからず予測でき
得る。
 そして何より、彼女から発せられる、吐き気を催すほどの“気配”。

 彼等両名の存在が、ヴァルトラウテをして不快の感情を抱かしめたと思われる。
 事実、今この時も彼等に一瞥もくれず背を向けたままでいる。
 然るに、彼女はこの布張りの機中で最も風を感じられる場所にその翼を広げている。

 ノーム・ローヌ1200馬力、六発のエンジン音を聴覚センサーより選別排除。
 哨戒飛行中の友軍ルフトヴァッフェ各機、IFFマーカping。
 不可視波長光、反射を計算内として各センサー調整――終了。
 動体反応、半径30km空域まで拡大――捕捉。
 照会――98%の確率で目標と確認。
 視認可能距離まで残り――三秒、二、一。

「……ハルトマン中尉」

 ヴァルトラウテは急拵えの将校部屋、つまりグルマルキンの私室から僅かに距離を置きつつ
待機している彼女の忠実なる副官に声を掛けた。

「目標“ムスッペル”を視認範囲内に捕捉。五分後には彼我相対距離15kmにまで接近。
 貴方たちにも目視可能距離に入ります。作戦指揮官『殿』にそう伝えて」

 “ムスッペル”、天がける船“ナグルファル”の操り手。
 作戦目標を暗号名でこう呼んだ。
 正式船体名、『ツェッペリン・ノイエ・エーラ』。
 全長1000mに及ぶ、ツェッペリンの名を継ぐ新世代の巨人。

 それを“狼”の顎が捉えた。
 即座にハルトマンは作戦開始の報を手に取って返した。

「緊急、“フェンリル”より達する、“Der Wolf wird nach dem Riesen schnappen.”。
 繰り返す、“フェンリル”より達する、“Der Wolf wird nach dem Riesen schnappen.”。
 各員、状況を開始せよ――」



 

208 名前:ヴァルトラウテ/タッツェルヴルム ◆SoRDENIEpc :2006/11/24(金) 20:03:52

>>207



「……聞こえた? タッツェルヴルム。
 並行してバックアップ継続、情報交換モードにて開始」
了解ヤボール。頼むぞ、ヴァルトラウテ」

 ヘルマン・タッツェルヴルムは脚部に内蔵された小型ロケットエンジンで地表10m、レーダーで
捕捉不能な範囲を飛行していた。
 交信内容確認後、Me323の進行方向へと先行すべく更に加速、500km/hを超えた時点で眼前に
目標『ツェッペリン・ノイエ・エーラ』の白い船体が姿を現した。

「侵入経路確認。50mまで接近後上昇、船体接続部より内部に潜入」
「動体反応は?」
「2……いえ、3。武装は小型火器のみ」
了解ヤボール、接触する」

 装備していた長距離航行用燃料増槽、及び低視認化用に身に着けていた44年式冬季迷彩型
アノラックを破棄、その下には32年式親衛隊勤務服。
 カフタイトルにはフラクトゥール書体で“SWASTIC-ORDEN”。
 黒衣を纏った砲弾は、巨大な蛇が鎌首を擡げたかのような軌跡を描きつつ鋭角に上昇し、
この巨人の踵へ喰らい付いた。


 一つには物珍しさが手伝った、ということもあるのだろう。
 この飛行船の気嚢部分とゴンドラとの繋ぎ目、言ってみれば風船にぶら下がっている『ハリガネ』
を間近で目にしてみたい。
 そうした子供染みた好奇心が刺激されたのか、それともこの『航海』で冒険心を満たせなかった
のか。
 いずれにしても一組の男女が、ロマンスの前菜代わりにと見物に来る理由としてはそれだけで
充分であった。

 そして、戦場にロマンティシズムは不要なものでもあった。
 よしんば入り込む余地があったとしても、それは戦士の受け持つべき範疇である。

 牽引鉄骨の一つに手を掛けると、タッツェルヴルムはエンジンを停止、飛行状態を解除して
気球周辺を移動するために設営されている通路に降り立った。
 目の前には防寒具に身を包んだ一組の男女、そこから僅かに離れて一人。
 極めて事務的に腕を振るうと、男女は手摺を乗り越え眼下の雪原へと落ちる。
 もう一人、こちらは厚いコートの内側から脇に吊った小型の軽機関銃をドロウした辺り
SPであろうと思われる。
 即座に応射したのはスイス製・ブルッガー&トーメMP-9、銃弾は腹部に三発ずつ二回、更に
頭部を庇った腕に三発。
 9mmの弾頭は、いずれも音を立てて命中し、全て足元に転がった。
 弾痕から覗くのは鈍い鉄の色。
 その即応性と射撃精度の高さへの返礼として、タッツェルヴルムはその右拳を以て応じた。

 大量の血を吐き、体をくの字に折り曲げ、SPの体は甲板へと落下した。


 その日の甲板清掃は、ツェッペリン・ノイエ・エーラの乗員の中でも最も年若い二等航海士
ペーター・ヘンドリクセンの担当であったが、同時刻彼は自室で五発の銃弾にその身を引き裂か
れ、その苦役から永遠に解放された。
 

209 名前:レップ ◆ZcW/SSsF6Y :2006/11/24(金) 21:18:04


照準器をのぞいていた。
極寒の地で、氷像のように動かずに銃を構えていた。
1942年の東部戦線も地獄のような寒さだったがここはそれ以上だ。

無理もない。彼がいるのは南極上空。
生身の人間が生きることのできる環境ではない。
そんな場所で硬式飛行の甲板に酸素補給装置もつけずに伏せていた。

降下兵用のブーツを履き、1937年型 野戦服を身につけ、マフラーで口元まで覆い、
凍結防止加工のされたゴーグルをかけ、全天候型の狙撃用コートを着込み、
フードで頭をすっぽりと覆って、身を切るような冷たい風のなかに彼はいた。

呼吸の回数は極力減らし、なおかつ浅く呼吸する。
間違っても深呼吸などはしない。肺が凍りつくからだ。
もっとも肺が凍りついたところで死にはしないが、痛いし苦しい。

耳につけたヘッドセットからは作戦状況がきこえてくる。

ヴァレンタイン兄弟主導による船内を制圧は完璧だった。
タッツェルヴルムも鬼神のごとき活躍を見せている。
当然、武装親衛隊の古参兵たちの活躍は見事としかいいようない。
流石は腐っても鯛といったところか。

どうやらうまくいっているようだ。これならば手を貸す必要もないだろう。
汚れ仕事だといって拒否はしないが、それでも気分のいいものではない。
やりたいというものがいるのなら、任せてしまってもいいだろう。

そんなことを頭の隅で考えながら、彼はその光景を注視していた。
リヒトホーフェン・フリークス・ショウによる一方的な虐殺を照準器越しに見ていた。



210 名前:レップ ◆ZcW/SSsF6Y :2006/11/24(金) 21:18:26


彼が制圧作戦の進行中である船内から甲板に出てきたのには理由があった。
もうじき到着するはずの輸送機に戦闘機が迫ってきているという報告を聞いてだった。

メッサーシュミットには航空戦力たる第一戦闘航空団と新戦乙女隊が乗り込んでおり、
飛行船にもロンギヌス13が乗り込んでいるという『噂』は聞いていたが、
その実力を把握しきれていないレップは万一に備え甲板に出てきていた。

もっとも音速を超える戦闘機を狙撃するなど狂人の発想に他ならないのだが、
ほかに手段がないのならば、いざというときはやるしかないと思っていた。

だが、その心配は杞憂だった。
リヒトホーフェン・フリークス・ショウはあまりにも圧倒的過ぎた。

銃を構えたままゆっくりと視線だけ動かして、
ほかに機影がないことをもう一度確認すると、彼はゆっくりと安全装置をかけた。
そして、その銃床を肩からはずすと、銃杷の尻を甲板に置き、ゆっくりと銃から体を離した。
彼が構えていたのは大口径狙撃銃だった。『少佐』の用意した玩具だ。



211 名前:レップ ◆ZcW/SSsF6Y :2006/11/24(金) 21:18:56


対装甲目標用超長距離精密狙撃銃ガーベラ4

それは銃というにはあまりにも大きすぎた。
大きく、ぶ厚く、重く、そして無骨すぎた。それはまさに大砲だった。
全長は2m以上あり、劣化ウラン弾およびナパーム爆裂焼夷弾を使用する狂気の産物。
あるドラキュリーナのためだけに作られた砲の試作品を改造してできた凶器。
連続して10発も撃てば銃身がイカレ使い物にならなくなる悪趣味な玩具。

何よりもその驚くべきところは15kmを超える射程距離だ。
しかもそれほどの射程を誇りながらスコープが装着されていなかった。
倍率のない照準器しかついていなかった。もとよりスコープなどつけられるようにできていないのだ。
明らかに人間が使うことを考慮していない銃だった。

こんなものを渡されるぐらいだったら重機関銃のほうがはるかにましだった。
狙撃の名手が使うのはやはり狙撃銃だろうという悪趣味な冗談で押し付けられた継子だ。

はたして役に立つのだろうかと彼は疑問に思っていた。
それはこの銃の存在自体に対しての疑問だけではない。
銃の調整という点についての疑問でもある。

緩衝材で包み込んできたとはいえ、手荒な扱いを受けるコンテナにつまれて運ばれてきたのだ。
衝撃で零点規正がずれてしまっている可能性が高い。
光学照準器をつかっていないのが逆に救いとなっているが、それでもズレはズレだ。
とくにこれほどの長距離を狙う狙撃銃では僅かなズレが致命的なものとなる。

こんな不確かなものを使う機会がないことを彼は望んでいた。



212 名前:レップ ◆ZcW/SSsF6Y :2006/11/24(金) 21:19:32


静かだった。

追い詰められて甲板に出てきた乗客を3人船から放り出して殺し、
仕事を投げ捨て甲板に逃げてきたSPを2人ほど銃殺したところであとは静かなものだった。

彼が殺したSPの死体を使って、元武装親衛隊の吸血鬼が血で甲板に馬鹿でかい
ハーケンクロイツを書いていたが、それは放っておいた。

時折聞こえてくる銃声や爆音を除いてしまえば、
ゆか一枚したで地獄のごとき光景が繰り広げられているとは思えない静けさだった。

流石は豪華客船だ。防音装置の質が違う。
彼はそうつぶやくと、軍服ポケットからシベリア
―――質の悪いロシアの煙草―――を取り出し、口にくわえて火をつける。
このロシア製の安煙草は葉の詰め方がゆるくて小枝が混じっているため、
ときおりそれが音を立ててはじけたが、
デミヤンスクの包囲攻撃のとき以来、この煙草が病みつきになっていた。

ゆっくりと煙草をふかした。
そして数分の後、それが近づいてきた。

メッサーシュミットMe323ギガント。彼が生きていた時代の遺品だ。
この作戦の要たる聖櫃とこの作戦の指揮者たる魔女。
その2つを乗せた骨董品が近づいてくるのを彼は肉眼で確認した。
その特徴的な姿を、それにしるされた鉄十字を、
なにより悠然と描かれたハーケンクロイツを。

もはや機長と副操縦士の顔すら見て取れる距離まで近づいていた。
紅い瞳に白い牙。死人のように血色の悪い顔。いや、ように、ではない。
彼と同じくその二人も生ける死者だった。二人とも作戦前のブリーフィングで見た顔だった。
ルフトヴァッフェの死にぞこない。半世紀前の亡霊だ。

そして、その後ろに居る黒服を着た美女こそが。

彼は小さくつぶやくと、煙草を投げ捨て足で踏み消した。
フッケバインの訪れを、彼は感情を押し殺した顔で出迎えた。
 

213 名前:◆13th/X9pTg :2006/11/24(金) 22:13:27


(――冗談じゃない)

毒づく言葉なら思いつく限り吐いた。
だというのに、下院議員グラハム・ルーデンスはその言葉を繰り返していた。

(――冗談じゃない、冗談じゃない、冗談じゃない!)

背後から聞こえて来る悲鳴、哄笑、銃声、絶叫。
全力疾走している筈の彼から、それは一向に遠ざかって行かない。
むしろ段々と範囲を広げ――彼に追いつき捉えようとしている。

(――冗談じゃない、これからなんだ! 俺はこれからなんだ!)

豪奢な船旅の中、全ては思惑通りに動いていた。
政財界の大物との顔繋ぎ。
更には次回の選挙に便宜を図って貰えるという密約。
遥か上空では妻の目が届かないのを良い事に、ほんの少し火遊びも楽しんだ。

世界は自分の思う通りに動くし、自分もそのように振舞えば良い。
数分前までは、彼は自分の万能感に酔い痴れていた。

しかし、そんな物は錯覚でしかなかった。

圧倒的な暴力として現れたナチス、吸血鬼――。
それらの存在によって、希望や明るい未来といったものは、あっけなく否定されてしまった。
彼が『冗談じゃない』と繰り返すのは偏に、その現実を自分の内で否定する為。
只の現実逃避に過ぎない。

(――冗談じゃない、冗談じゃない、冗談じゃない――!)

気を抜けば挫けそうになる足を必死で動かし、彼は目的の場所へ辿り着いた。
豪華な客室とは比べ物にならない程、広大で殺風景な空間――格納庫だ。

自らの保身を第一に考える彼は、どんな時も非常口や脱出手段の確認を忘れない。
無論、この格納庫に保管されている脱出グライダーの存在も乗船時に確認済みである。

ハッチの隙間から入り込む極寒の冷気は、死を身近に感じさせた。
だが、化け物に訳も分からないまま殺されるのに比べて、それは余程慈悲深い死に思える。

意を決した彼がグライダーへと近付いた時。
微かな違和感が過ぎった。

(なんだ……あのコンテナは?)

見た事も無いコンテナが其処に在る。
『昨日まで無かった筈の』コンテナが。

(中身は……何だ?)

或いは、その疑念さえ無ければ――彼は死なずに済んだのかも知れない。

214 名前:ロンギヌス13 ◆13th/X9pTg :2006/11/24(金) 22:14:04

>>213

「――作戦開始時刻だ。出るぞ」
「Jawohl (了解)」

機械的な音声と共に、コンテナを突き破って十三本の槍が突き出される。
脱出用グライダーに手を伸ばそうとしていた男は、哀れにも一本の進路上に棒立ちだった。
槍は当然のようにその体を貫き通し、脊髄を砕き、絶命に至らせる。

そして――血を滴らせる槍に続いて、鈍色の塊がコンテナを捻じ曲げて現れた。

コンテナから這い出したのは、黒金の鎧に身を包んだ総勢十三名の槍兵だ。
ただし、鎧の背部にはプロペラ、肩部には折り畳み式の翼が備わっている。
ずんぐりとした胴部と合わせて、その姿にはプロペラ機を無理やり押し縮めたような印象があった。

両腕には全員一様に同じ槍とMG34機関銃を装備し、篭手にあたる部位には鉤十字が描かれている。
そう、彼等もまた現世へ迷い出たナチスの亡霊なのだ。

十三名、槍、鉤十字――これら全ての条件を満たす存在は唯一つ。
大戦中、ハインリッヒ・ヒムラーによって組織された十三人の騎士団。
手には聖槍(ロンギヌス)の模造品を携え、その身を覆うは機械仕掛けの鎧。
『噂』の中でのみ、存在が語られる“聖槍騎士団”――別名“ロンギヌス13”である。

「成る程……ここが今回の劇場という訳ですな」
「舞台装置としては申し分無い。後は役者次第といった所だ」
「我々も今回ばかりは傍観者ではいられまい」
「然り。彼の地へと踏み入るには我等も協力せねばならん」

彼等は口々に何事かを呟き、兜の奥に眼光――否、単眼式カメラ・アイの光を点す。

「そう……今宵は我等も役者に過ぎない。存分に歌い踊るとしようではないか」

血の滴る聖槍を掲げ、唯一白い鎧を纏った存在が口を開く。
それを合図にして、黒い鎧の十二機は槍を構えてハッチへと向き直った。

「――Feuer (撃て)」

槍から雷光が迸り、頑強な構造体を粉々に打ち砕く。
破壊されたハッチから望む大空。其処が“ロンギヌス13”の戦場だ。

「では行くぞ。まずは友軍を出迎えてやらねばな」

ヴリル・エンジンからの出力がシャフトを通じてプロペラのブレードを回す。
旧時代の構造とは思えぬ推進力を得て、聖槍騎士団は次々に中空へとその身を躍らせた。

215 名前:ケイト・コナー ◆g6orsKate. :2006/11/24(金) 22:14:12

ケイト・コナー導入(1/2)


「やっぱり断れば良かったかしら」

 甲板で風にあたりながら私はこの旅に参加したことを後悔し始めている。

 現代に蘇った伝説。あのヒンデンブルグ号の再来、ツェッペリン・ノイエ・
アラ号の処女航海である遊覧飛行に私が参加できたのは、勿論自費参加などで
はなくましてや地方公選弁護人選挙に勤しむ夫のコネでもない。
 この時期にそんな事があれば(そもそもこの旅行も際どいのだろうけど)マ
スコミや敵対候補の好餌となり当選は遠のくに決まっている。
 こうして私が空の人となっているのは、ヴァチカンからのご褒美。
 引退の身ながら魔王ゴラメッシュを討伐した事への報酬だとコルレッティ神
父さまはおっしゃっていた。
 いつからヴァチカンがそんなに気前良くなったのかは知らないけど、そんな
事よりもっとハンターの増員に力を注いで欲しいわ。

「ティミーだけでも連れてくれば良かったかしら……ローラにいつも任せるの
は気が引けるし」

 私がこの旅を楽しめていない理由の1つが2人の子どもと夫、家族のことが
気に掛かるから。
 チケットを手にしたときは興奮のあまり二つ返事で参加を決めたけど、いざ
出発が近づくにつれ旅行中のことが気にかかり出し、一時は取りやめようかと
も思ったほどだ。
 それでも、あの事件以降めっきり私に甘くなった夫のスチュアートと親友の
ローラに促されてこうして参加してしまっている。


「ハクシュン!……そろそろ戻ろうかしら」

 防寒着を着ているといえ甲板にこれ以上留まるのは、掛け値なしに命に関わ
りそう。
 旅行で風邪ひくほどバカバカしいことはないんじゃないかしら。
 それだけじゃない。ここで風邪をひくことは致命的にマズイ。最近ようやく、
それでも全盛期に比べれば圧倒的にたりない勘がそう私に訴えかけている。気
をつけろと。

 理由は、実のところ分かっている。
 この匂いだ。15年前に、そしてつい先日も嗅いだあのクソッタレな匂い。
 腐肉と茹でたカリフラワーの匂い、ぐちょどろの内臓と山羊の糞の匂い。
 神と人の敵対者どもの匂い。悪魔の匂いだ。

 人間の腐ってるやつほど背徳者は多い。そしてそんな奴らにあいつらは憑く。
 だったら、こんな一大プロジェクトにアイツらが絡んでいても不思議は無い。
 だからアイツらが居たのは偶然。私の見えないところにアイツらが存在し、
私の知らない内に狩人が訪れ、私の気づかない時にソレは滅ぼされる話。
 そう、今回は私になにも関係の無い話 よ。

 私をここへ招待したのが ヴ ァ チ カ ン であったとしても。



 客室に戻ったのと、私が結局無関係で居られないという現実を突きつけられ
たのは同時だった。

「神父さま。無事戻れたときは――」

 銀の十字架を握りしめ、私は神に祈る。
 船内には先ほどから下品な口調しゃべり続ける男の声が響いている。


 ああ、部屋のカーペットの取替え、スチュアートに頼んでおけばよかったわ。




216 名前:◆g6orsKate. :2006/11/24(金) 22:15:09

ケイト・コナー導入(2/2)

 数日前ヴァチカン


「彼女でなくては駄目なのですか、枢機卿」
「では訊ねるが、他に適当な人材がいるかね?」

 そう返されコルレッティ神父は返答をためらった。
 枢機卿の言うとおりなのだ。今、アメリカに送り込めるハンターは数える程
しかいない。
 熟練のハンターは皆任務についており、残るハンターはまだ若い。

「ですが、彼女は引退している身です。それならば、まだ新人を送り込んだ方
がいい」
「だがブランクもものともせず、彼女はゴラメッシュを倒した。この実績は考
慮せねばならぬだろう。それに未熟な子を死地に追いやるなど、私には出来ん
ね」

 だったら引退したハンターを死地に追いやるのはいいのか。そう訴えたい内
心を押さえ、あくまで平常を保ち説得を続ける。

「そもそも、なぜ<陰の力>から人を出す必要があるのですか? <陰の力>
は純粋に悪魔退治が仕事です。こういった荒事向きではない。他の機関が既に
動いていると聞いていますが」
「だからこそだ。ヴァチカンの他機関は無論、それ以外からも。誰もが聖櫃を
狙っている。ヴァチカンとしても万全を期す必要があるし……なにより、君の
機関だけ人材を派遣しないのはバランスに欠くではないかね?」
「だが、騙して送り込むことはないのではないですか」
「真実を言って彼女が動くかね。そうなれば、我々は彼女に劣るハンターを送
り込まなければならない。理解したまえ神父。彼女が君にとって娘同然だとは
いえ、特別扱いはできないよ」
「…………」

 話し合いは無駄だった。
 既に上層部は彼女の派遣を規定のものとしていたのだ。


 ケイト・コナーへ文字通り地獄の招待状が送り届けられたのはその日のうち
であった。


217 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/24(金) 23:40:16



 銃を抜く暇も与えられず蜂の巣にされたSP/相手は、日頃の訓練が一切通用
せん相手だと知り、狂騒のままに喉元を喰い千切られた警備員/持ち前の騎士
道を発揮させて、本物のゲルマン騎士に頭蓋を噛み砕かれた青年実業家/
「私はドイツ人だ。当時は国防陸軍に従軍していた」―――老獪な航空会社
名誉会長は「敗北主義者」の誹りとともに短剣を刺し込まれた/ハリウッド
スターは「俺様ちゃんの○○と結婚して離婚したから」という理由でヤン・
ヴァレンタインに殺され/スーツに唾がついたという理由で副操縦士はルーク
・ヴァレンタインに殺された/レップとタッツェルヴェルムに挑んだ警備員は
自分が如何に無謀だったかを知る前に殺された。

 狂騒/パニック/慈悲の叫び/怒声/懇願/悲鳴/混乱/パニック/
 パニック/銃声/絶叫/銃声/銃声/銃声銃声/銃声銃声銃声銃声銃声。
 一秒単位で増えゆく死体。金持ちは死んだ。金を持たぬ者も死んだ。
 狂おしき人類平等の到来―――賓客達はやがて学んだ。
 彼等は誰にでも平等だ、と。彼等の前では誰もが平等に死ぬ。
 生きるための条件。目に付かぬこと。騒がぬこと。喋らぬこと。死体と自分
―――その差を無くすこと。自分達が死体ほどに静かであれば、彼等は命を奪
わない。
 彼等は自分達を人質とすら見なさない。その程度の価値すら与えてくれない。
 なんて屈辱。だがその屈辱に耐えてでも賓客達は生きたかった。
 だから彼等達は黙った。それだけが生きるための道だった。

 混沌/騒乱はやがて制圧され、狂騒に変わって押し殺された恐怖が飛行船を
支配する。賓客達の学習―――彼等は生きるために死ぬことにした。
 速やかに実行される戦後処理。片付けられる死体。黙々と作業に没頭する夜
の眷属達―――近付くエンジン音。俄に船内が騒がしくなってきた。
 今度は賓客共の狂乱ではなく、兵士達の怒声。

「連隊指揮官殿が到着された!」
「手が空いているものは回廊に集まれ!」
「整列、整列だ!」
「良いか、決してSS大佐殿の右眼を見るなよ!」
「死体を片付けろ。血糊を拭け。速く!」

 接近するメッサーシュミットMe323ギガント―――ギガントの名を冠する
輸送機も、全長1キロに及ぶ飛行船の前ではただのグライダーに過ぎない。
 メッサーシュミットが速度を緩める。飛行船の尻に取り付いた。
 ごうん―――音を立てて、再度前部ハッチが開放される。
 吐き出される新戦乙女隊/第一戦闘航空団リヒトホーフェン・サーカス/
合計16機のルフトヴァッフェ。―――散会。
 新戦乙女隊は哨戒/索敵のために飛行船周辺を縦横無尽に飛び回る。
 サーカス―――飛行服を着たガーゴイル達は、スパンダウ機関銃の代わりに
手にした工具で早速ハッチと飛行船甲板を繋ぐ架橋作業に取りかかった。

 ブリッツクリークの基本―――橋を破壊される前に敵を駆逐せよ。
 もしも破壊工作を許してしまった場合は、速やかに架橋/追撃の再開。
 ただし今回の架橋場所はドナウ川ではなく南極の大空だ。

 リヒトホーフェン兄弟を抜かした6人の飛行士による突貫の架橋作業―――
五分とかからずに結ばれるツェッペリンとメッサーシュミット。
 だが、その繋がりはあまりに脆弱だ。
 ツェッペリンとメッサーシュミット―――曲芸じみた飛行速度のシンクロ。
 どちらが少しでも速度計算を誤れば、即座に橋は瓦解する。

 だが前部ハッチから姿を現した無数の人影は、臆することなくパレードを
開始した。手すりすらない空中の架け橋―――風に煽られて足を踏み外すのが
落ちだ。人間なら誰もがそう思う光景だった。

218 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/24(金) 23:40:47


>>217

 凍て付く寒風/不安な足場/エッフェル塔4つ分以上の高度―――全ての障害
を気にも留めず、死神の首魁達は悠然と歩みを進める。
 甲板を経て回廊へ。
 ホテルの大廊下と見紛う長大にして広大な道―――グルマルキンは幽鬼のよう
に音もなく/しかし強烈な存在感を発して前進する。

「ジーク・ハイル!」
 迎えるは百戦錬磨の兵士ども。勝利万歳の咆吼がゴンドラを揺らす。
 その数、数十。
 掲げられたナチス式敬礼が槍衾のように天へと伸びていく。
 回廊の左右両端に一列に並んだ親衛隊。
 一行は、モーゼが波を切り開くが如く、親衛隊の間を突き進む。

 行進の先頭―――肩で風を切って進むグルマルキン/ゲームのボス。

 次列―――グルマルキンに続いて進む女神が二人/右後ろには、大佐に付き
従うモリガン。膨大な規律を課す制服を持ってしても、彼女の肢体から発する
頽廃の波動を抑え込むことはできない/左後ろには清廉なる美貌を引き締め
前進するヴァルトラウテ。整いすぎた容姿はそれ故にあらゆる穢れを許さない。

 グルマルキン/モリガン/ヴァルトラウテ―――三人の共通点。
 鏡のように磨き抜かれた長靴。しわ一つない漆黒の勤務制服。汗と血と硝煙
とガソリン―――最前線に付きまとうあらゆる汚れ≠ニ無縁の美貌。
 そこが一行を歓迎する武装SSとは決定的に違った。

 続く第三列―――打って変わって不可解な身なり。
 親衛隊の制服は身に纏っていない。純白のドレスシャツの上に、蒼いチェニ
ックを着込み、その上から更にマントを羽織っている。衣服にはそれぞれ凝っ
た意匠が施されていた。―――まるで中世の宮廷魔術士の如き衣装。
 頭頂から真ん中で分けられた鳶色の髪。日焼けとは無縁の生っ白い肌。鋭い
目付きを隠すかのようにかけられたシルバーフレームの丸眼鏡。
 口元には皮肉気な笑み。誰もが抱く印象―――端正な顔立ちを持っているが、
磨く技を知らぬ研究者。
 前の三人と違い、背筋を伸ばすこともせず、ただ歩いているだけだ。
 両脇の親衛隊員から浴びせかけられる奇異の視線すら飄々と受け流していた。
 稀代の錬金術師レザード・ヴァレス/黒猫の魔術士と組んだ人でなし。

 更にレザードの背後/第四列から第五列。ここにきて隊列の様子は一変する。
 甲冑を着込んだ人型のドラゴン―――四匹の竜牙兵。
 レザードの魔なる眷属として使役されたドラゴントゥースウォーリアー。
 この異形の竜の役目は戦闘ではなく聖櫃の移送にあった。
 聖櫃―――四匹の竜牙兵が神輿の如く担ぐアカシヤ材で作られた箱。金環
の装飾が無数施され、中味は金張りの重い蓋によって閉じられている。
 蓋には、やはり金でできた二体のケルビム像が天使の翼を広げていた。
「縦2.5アンマ。横1.5アンマ。高さ1.5アンマ」の聖櫃―――失われたアーク。

 鍛え抜かれた武装親衛隊の表情に、緊張が漲る。
 意思の灯火が見えぬこの竜牙兵が、少し躓いただけでも聖櫃は起動し―――
飛行船はおろか、南極までも闇に堕としてしまうのだ。
 緊張を覚えぬ方が難しかった。

 そんな兵員どもの畏怖を意にも介さず、グルマルキン一行は歩を進めた。
 竜牙兵の後に続くのは、漆黒の勤務服に身を包んだ親衛隊だ。
 所々で、その制圧の様子を目で確認しながら進むグルマルキンは、やがて
パレードの終点―――操縦室へと辿り着いた。

219 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/24(金) 23:41:18


>>217>>218

 グルマルキン率いる一行が操縦室に辿り着くと、そこでもナチス式敬礼の
歓待を受けた。グルマルキンは適当にそれを捌くと、室内に目を見回した。
 かなり広大な間取りで、外への視界は良好だ。
 外殻が円形に設計されているため180度以上の視野を確保していた。
 これとJG1(第一戦闘航空団)/新戦乙女隊/ロンギヌス13の哨戒報告を利用
すれば、レーダーでは捉えきれない外敵――つまり、我々の同類だ――の接近
を早急に補足できる。実に好都合の設計だ。

 室内は硝煙の臭いと血臭が鼻につく以外は死体一匹見当たらない。
 制圧は完璧に済んでいるようだった。
 素早い上に、優雅な仕事をしてくれる。確か操縦席制圧の責任者はヴァレン
タイン兄弟の兄、ルークのはずだが―――いた。
 白いダブルスーツに返り血一つつけず、鷹揚な態度でこちらを見ている。
 敬礼は無かった。それも当然だった。彼は党員でも部下でもないのだ。

「ご苦労だったなルーク・ヴァレンタイン。弟のように操縦室を血桶にして
くれていたら、モップを持って掃除させるつもりだったが……その必要は
ないな。安心したぞ。何せ弟のほうはだいぶ酷かった」

 くく、と喉を鳴らして短く嗤う。
 室内にいたはずの操縦士や通信士はみな殺されたか、生きたままで空に放り
投げられたのだろう。操縦席はメッサーシュミットの時同様、ルフトヴァッフェ
の吸血鬼操縦士が席についていた。

「よし。各員、所定の位置につけ」

 号令とともに一行が散会する。
 グルマルキンは後方の、おぞましき魔術の化生―――竜牙兵を引き連れて
聖櫃を護送する錬金術師に身体を向けた。漆黒のマントが翻る。

「レザード・ヴァレス。貴公も作業に取りかかるがいい。貴公は予定通り、
箱≠ェ安定するまでここから離れるな。制御と解除に全神経を傾けろ。まだ
箱≠ヘだいぶ不安定だ……無用な衝撃を与えるのは何としても避けたい」

 言われるまでもない―――と稀代の錬金術師は答えると、わざとらしく眼鏡
の位置を治し、グルマルキンから離れた。箱≠引き連れて。
箱=\――契約の聖櫃(アーク)。
 数多の強力なガラクタを詰め込んだと言われる最強の玩具箱。その正確な中味
は、多数の犠牲を払って手にした彼女とレザードですら未だ知り得ていない。
 分かることは、この箱が世界の理(ことわり)に干渉し、ねじ曲げるだけの力
を有していること。無用な接触は即座に崩壊を招くということ。
 その二点だけだ。その二点で十分すぎた。

「せいぜい気張るんだな、異界の術者。我が盟友よ」
 レザードの背中に声をかける。
「さすればブリュンヒルドの加護も得られよう。ヴァルハラへと続く死霊の門は、
すぐそこまで迫っている。―――あとは貴公の働き次第だ」

 グルマルキンの嗤笑―――レザードへの皮肉。
 錬金術師は肩を竦めることでそれに応えた。

「グルマルキン大佐」
 錬金術師との会話を切り上げた、その頃合いを縫ってハルトマンが声をかける。
「放送の準備が整いました。こちらです」
 言って、指先を向けたその先に―――

「ほう」とグルマルキンは口端を歪めた。

 広大な操縦室―――その一角に、真っ赤な天鵞絨の絨毯が敷かれていた。
 壁面には同色の隊旗が貼り付けられている。
 隊旗にはDeutschland Erwache(ドイツよ目覚めよ)の文字が刺繍で施され、
旗の中央には当然のように漆黒のハーケンクロイツが描かれていた。

「上出来だ。実にナチ的≠カゃないか。これだけ大袈裟にやれば、否が応でも
我々が何者か知ることになる。クククっ―――良いだろう、ハルトマン。カメラ
を回せ。我々が何者で、何を目指し、何を為そうとしているか、舞台主が観客
どもに説明してやる」

220 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/24(金) 23:41:53


>>217>>218>>219

 船内各所に取り付けられた液晶装置。
 パーティルーム/カジノ/サロン/回廊には大型のプラズマビジョンが据え
付けられ、客室ならばテレビを兼ねた出力端末がその役目を果たしている。
 各施設を繋ぐ廊下などにも、広大な船内を迷わぬようにと設置された案内図
にタッチパネルの液晶装置が使われていた。
 トイレや格納庫にすら、映像出力装置は存在した。

 金と技術を詰め込めるだけ詰め込んだ巨大飛行船―――夜族どもの襲撃と
ともに沈黙していたそれら液晶装置が突如、一斉に明かりを灯したのだ。
 スピーカーからはノイズが迸る。
 制圧され、ナチの亡霊に銃口を突き付けられている被害者も、一難を脱して
吸血鬼どもの死角に逃れている逃亡者も、あらかじめこの事件を察知しており、
今はただオーダーを実行する時を窺っているだけの潜入者も、この船内にいる
モノはみな、否が応でも耳に入れ視界に留めざるを得ない状況がいま作られた。

 液晶はまず、堂々たるハーケンクロイツの隊旗を移した。
 カメラが引かれる。次に映し出されるは二人の美女―――隊旗を挟んで直立
する、ヴァルトラウテとモリガンだ。
 それぞれ口元と引き締めて、カメラよりもやや上部を見つめていた。
 ヴァルトラウテとモリガン―――性質の異なる美貌。
「潔癖/妖艶」「天使/悪魔」という二面性を対局させたかのような構図。
 共通するのは、二人が絶世の美女であるという事実と、ともに黒革の長靴/
乗馬ズボン風のボトム/黒革のベルト/漆黒の上衣/鉤十字の腕章という狂気
の制服で全身を固めているということ―――その二点だけだ。
 大半の乗客は、この映像を目にしたとき、国籍問わず真っ先に思った。
 ―――狂っている、と。

 更にカメラが引かれ、赤い絨毯をも移すようになると、画面外から漆黒の
マントで全身を覆ったグルマルキンが大儀そうに登場した。
 淡い金髪に透き通る白肌は、二人に勝るとも劣らぬ美貌を有していたが、
生憎とこの女、それ以上に禍々しすぎた。失われた額から右頬にかけて斜めに
走った疵痕。失われた右眼から覗く蒼い義眼―――グラム・サイト。
 残った左眼は右の義眼異常に冷徹で、腰に佩いた軍刀よりも鋭利な視線を
液晶越しに飛ばしている。まず堅気には見えず、人間とも思えなかった。

221 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/24(金) 23:42:26


>>217>>218>>219>>220


「極点での豪奢な遊覧を愉しむ諸君」

 スピーカーが震えた。

「まず、突然の非礼を詫びさせてもらおう。私は本作戦の指揮を務めるグル
マルキン・フォン・シュティーベルSS連隊指揮官だ。SS戦闘部隊の特別部に
所属している。部隊名は極秘事項のため明かせないが、私もまた偉大なる総統
閣下に永遠の忠誠を誓ったゲルマン騎士であることはお分かり頂けるはずだ」

 グルマルキンは冷徹な面持ちのまま、淡々と語った。

「私がこの映像を持って諸君等との接触を求めたのは、我々に対して抱く誤解
を解き、我々の行動―――本船の接収を理解してもらうためだ。
 せっかくの遊覧――新たな時代のツェッペリン。素晴らしい船だ――を阻害
してしまったことは私も悲しく思う。情報伝達の混乱により命を落とした乗客
が幾人かいるみたいだが、そのことについては我々親衛隊が一切の責任を取る。
被害者はみなしっかりと『立って歩ける身体』に戻すため、諸君等の不安は
杞憂に過ぎないとここで保証しよう。
 また、一部の先走った愚か者のせいで本船は我々にハイジャックされたなど
という馬鹿げた勘違いをしている輩もいるみたいだから、その過ちもここで正
させてもらおう。いま現在行われている我々の行動は、全て然るべき権力機構
からの保証を受けており、ハイジャックやテロ行為などという―――忌々しい
レジスタンスどもが行う卑劣な違法行為とは、まったく趣を異にするものだ」

「ここに」
 漆黒の魔女は、マントの内側から一枚の書類を取り出し、カメラに向けた。
「我々の行為の正統性を保証する文書がある」

 カメラがアップになり、書類―――命令書の文字が視認できる距離まで近付
いた。命令書の上部には国章である鷲の印と金色の鉄十字章が印刷されている。
 10秒ほど命令書をアップで映すと、カメラは再びグルマルキンを映す。

「ドイツ語が読めぬ奴も多いだろう。私が諸君等にも分かるよう、英語で訳して
やる。つまりは、こういう意味なのだ。

     総統兼首相より

―極秘―
 グルマルキン大佐は、私の直接かつ個人的命令に基づき、ドイツ帝国にとって
極めて重大な任務に服している。 彼女は私に対してのみ責任を有する。
 軍、民を問わず、階級に関わりなく関係者全員が彼女の必要を満たすべく、
最大限の協力をすることを要求する。

                           アドルフ・ヒトラー

 ―――理解できたかね?」

 ここで初めて、グルマルキンの凍て付いた表情に狂相が浮かんだ。

222 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/24(金) 23:42:59


>>217>>218>>219>>220>>221

「この船舶はドイツ国籍だ。それが意味することとは何か? そう、つまりは
偉大なるドイツ帝国の財産だ。そして私は、この命令書が示すように本作戦を
実行するため、総統権限を授かっている。分かるかね? これは不当なハイジ
ャックや侵略行為ではなく、総統権限に基づいた正統なる徴発なのだ。臨時の
ため、情報伝達が些か遅れてしまったことは詫びるが、この船舶がドイツ帝国
の財産である以上、我々が本船を管理することに異議申し立てをする権利はない
と知ってくれ。この命令書の正統性に疑問を挟むのであれば、それは総統閣下
に対する疑問と同義だ。それは立派な反逆行為であり、我々も然るべき対処を
せざるを得ない。故に言葉は選び、できる限り口は謹んで頂きたい。
 我々の目的はあくまでこの船だ。だから、大人しく部屋の隅でがたがた震え
ている分には諸君等の命を保証する。下船を望む者がいれば、できる限り請け
負おう。最下層のハッチに人員を配備しておく。飛び降りたければいつでも声
をかけてくれたまえ」

 グルマルキンの狂気―――その正体はどこに秘められているのだろう。
 SS大佐は口振りは冷淡で、全ての事柄を至極当然のように語る。
 ナチス親衛隊が存在し、ハーケンクロイツを背に熱弁を振るっていることも、
武装集団が超巨大飛行船を徴収≠オたことも、「総統権限」などというもの
が通用すると信じていることも、全て許容して語っているのだ。
 まるで、それについては何ら意外に思うところは無いとでも言うように。

「さて、」

 もう用無しだとばかりに命令書を懐にしまう。

「遅れてしまったが、これより我々の目的及び、本船の目的地について簡潔に
説明したいと思う。まず目的だが、諸君等の中にアメリカ人はいるかね?
 乗船名簿に目を通す限り、かなりのヤンクが乗り合わせているはずだ。植民
地の人間が豪華客船に乗り込むなど増長も甚だしいが、まぁいいだろう。最寄り
のアメリカ人に尋ねてみたまえ。『ジョージ・ルーカスを知っているか?』と。
 それで事足りる。私は生前のジョーンズ博士に何度か会っていてね。作中で
はだいぶ歪曲されていたが、彼が人類最後の冒険家であることは保証しておく。
 それと諸君等には残念な報せになるが、この船に合衆国大統領は乗り合わせ
ていない。つまりジョーンズ博士の参戦も期待できない。悪いが10年待っても
我々の作品がルーカス・フィルムによって映画化されることはないだろう。

 次に目的地だが、これを知らぬと諸君等も不安だろうからはっきりと言う。
本船は目的地を南極点より変更し南緯82度、東経60度から南緯70度、東経115度
に向けて発進する。諸君悦べ。我々は諸君等を南極旅行のフィナーレに相応
しい、前人未踏の地へと案内するのだから。
 いくら金を注いでも不可能な旅ができるぞ。

 そう、目指す地は最高34000フィート(約10363メートル)に達する高地。
 その裏側≠ノ禁断の高原を有した古の都市。―――狂気山脈。
 そこが諸君等の旅の終点であり、我等が第四帝国の始まりの地だ」

 カメラが引かれる。最後にグルマルキンは右手を掲げ、勝利万歳と叫ぶと、
そこで映像は途切れた。

223 名前:モリガン・アーンスランド:2006/11/24(金) 23:43:39

>>150>>152

グルマルキン大佐に遅れる事暫く、将校用の部屋――尤も、そこは事実上私の部屋でも
あったのだが――を出る頃には、架橋作業はもう終わる所だった。
解放された前部ハッチの向こうに見える甲板や回廊には、別働の実行部隊が既に整列している。
いくつもの視線が注がれる中、まずは大佐が、そして私ともう一人が続く。
ヴァルトラウテ中佐、ナチスお手製の戦乙女。
その美貌は戦乙女と言う形容に相応しく清廉で気高い。

――からかい甲斐がありそうなのだけれど。

ちらりと視線を流してみても、見えるのは横顔だけ。
今更確認するまでも無く、酷く嫌われているようだ。
けれど、その態度こそが私の関心を惹くのだと彼女は気付いているのだろうか。

狂気じみた――いや、正しく狂気そのものが充満する空気の中、パレードは進んでいく。
古ぼけた聖なる箱を抱いて行き着く先は、この巨大な飛行船の頭脳であり、狂騒の宴の
始まりを告げる場所だ。
到着した時には、全ての準備が整えられていた。
命じられて、カメラの前に踏み出す。
極めつけの茶番でありながら、誰もを釘付けにせざるを得ない数分が過ぎる。
乗り合わせた誰も彼もが気付いただろう。

始まったのだ、と。

224 名前:少佐:2006/11/25(土) 00:01:32



   南米 ジャブロー

  『最後の大隊』本拠地 「豹の巣」(パンテルシャンツェ)


「大尉、こんなモノが来ているだがね

 はっはっはっ、実に面白いな。我々の他にもこういう素敵な連中がいるなんて
 実に喜ばしいじゃないか

 我々は野心の昼と諦観の夜を超え暗い闇の底で六十年待った
 それは何故か?

 MPが敵兵の身体の穴を穿ち倒れふした其処から地面を紅く染めあげられるのに見惚れ、
 敵兵の投げてきた手榴弾に味方が薙ぎ倒され、紅い絨毯が敷き詰められていくのが忘れられないからだ

 火炎放射器から吐き出される吐息に包まれ、転がり悶えつつ、断末魔を歌う兵士には愛しさを覚える

 地雷に踏み、轟音ともに吹き飛ばされた味方がもがきつつ嘗て自分の手足のあった空白を
 見た時の貌は忘れられる事なぞ出来ようもない

 ティーゲルの砲が塹壕に直撃し、血塗れになった敵兵が飛び出した自分の臓物(中身)を集めながら、
 母の名を叫ぶ様は思わず同情すら感じる

 メッサーシュミットの、死神の爪から逃れようと英米連中が狂奔するも虚しく爪に引き裂かれる様は最高だ
 その死神達も最後は英米の物量の前には蟻に集られた砂糖の山の如く脆く崩れていった事は胸を引き裂かれる

 君も私も……我等『最後の大隊』は望んでいる
 殺したり殺されたりしようと、戦争の歓喜を味わおうと、この夢の続きを見ようと長く永く待ち望んでいる


 だが、そんな我々の六十年の年月の何倍の年月を重ねつつ混沌の実現を望んでいる連中がいる
 あのグルマンキンのお嬢さん(フロイライン)、中々に面白いじゃないか
 彼女は何を思いこんなに楽しい事を考えたのだろうな、ご丁寧に総統の命令書まで携えて、だ
 実に数百年、血と怨念に塗れて腹に抱え込んで世をひっくり返してやろうと生きてきた訳か
 いやはや本当にやれば中々出来るお嬢さん(フロイライン)じゃないか




 大尉、『オペラツィオン・ノイエ・ジール』への参加を命じる
 既にヴァレンタイン兄弟、レップ中佐、他幾らかの兵員を送っている

 が、彼等と大尉は役割が違う、否、あの作戦に関わる連中との誰とも異なる
 大尉は『ヴェアウォルフ』、随一にして唯一の戦鬼
 呼吸する様に殺戮を行い、戦場を駆ける地獄への先導役

 行きたまえ、大尉
 敵も味方も血の涙を流そうが犬の糞の様に死のうとも我々の知った事じゃない
 数百年の血や怨念も我々の前には取るに足りぬものだ
 戦争を、地獄の様な戦争のみが我々には価値たりうるからだ
 戦場に埒を開け、地獄の堰を切るのは我等『最後の大隊』である事を示してやれ!」


225 名前:シュレディンガー准尉:2006/11/25(土) 00:02:04



   南極上空

   ツェッペリン・ノイエ・アラ号 制御室前



「始まったみたいだね、大尉
 あのお姉さんも心にも思ってもない事をよく喋れるよね、僕にはとても出来ないね
 何か怖い顔して部屋から出て行ったよ
 ヴァレンタイン兄弟も今の所はきちんと働いてるみたいだ

 船の中も外も慌しくなってきたし、直に派手な花火が上がるよ
 皆で仲良く地獄行きの遊覧飛行のはじまりだね、もちろん片道切符で帰りなんて無い
 その事に果たして何人気づいているのかな


 ………で、大尉はこれからどうするの?

 あ、いや……わ、分かってるよ、地獄を作りに行くんだよね、少佐の行ってたみたいにさ
 じゃ、僕はこれで。少佐と一緒に戦争を見せてもらうよ」


226 名前:阻止側―――反撃の時:2006/11/25(土) 00:10:31

>>222

「これこそ正しく電撃戦(ブリッツ・クリーク)ですよ」

 と、その高名なるヴァンパイアは白い牙をこぼした。

「聖櫃(アーク)強奪から三日と空けず、史上初の飛行船ハイジャックとはね。流石はナチ、ポ
ーランド侵攻を思い出させる鮮やかさだ」
「指揮官が敵を賞賛するような真似は止めておけ、ボンド中佐」

 現在の上司である英国王立国教騎士団局長、サー・インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲー
ツ・ヘルシングに冷たく窘められ、彼――ヘイミッシュ・ボンドは肩をすくめた。


 窓の外の滑走路に、夜気が広がってから大分経つ。
 ヴァージニア州はラングレー空軍基地内の一室である。クリケットのコートのような会議卓に
着席しているのは、僅か数名だった。

「偵察衛星『ウイング・ザ・アーク・ビショップ』からの映像によれば……」

 やや遅れて入室したサングラスの男、シェルダン・サンズが云った。少々エラが張っているが
美男子といっていい。
 着ているTシャツには、自分の勤務先が大きく「CIA」とプリントされている。
 正気とも思えないが、かつて彼らがカストロの髭を溶かす薬に知恵を絞ったのと同程度には
真剣な振る舞いなのだ。

「『ツェッペリン』の航路に変化は見られない。どうせコウテイペンギンの観察が目的じゃないん
だ、このままならいずれあそこへ到着するだろう。
 ――今からでも正式に軍を投入すべきじゃないか? 間に合わせの工作員ではなく」
「その件については説明した筈だよ、ミスタ・サンズ」

 ヘイミッシュ・ボンド中佐はシガレットに火をつけながら云った。無造作に着こなした上等のタ
キシードは、寧ろ件の飛行船の乗客に相応しい。
 彼はMI6以前からの伝統的な英国情報部、『ディオゲネス・クラブ』に属するスパイであり、同
時にヴァンパイアでもある。
 ヘルシング機関に属する某二名と同じく“女王陛下の吸血鬼”という訳だ。


「この際南極条約は置くとしても、ハイジャッカー達は聖櫃を抱えているのだからね。
 大規模な軍事行動での鎮圧は危険すぎる。絨毯爆撃の挙句、“大量破壊兵器は見つかりま
せんでした”と釈明しても始まらない」
「ミサイルで気嚢ごとを吹き飛ばそうものなら、余波でこの世界全てが消滅してしまうかもしれな
いわ。ある意味、原水爆以上の危険物よ、あの契約の箱は」

 黒髪の美女がそう云い、霜が降りるように薄っすらと笑った。
 アーカム財団が擁する特殊エージェント『スプリガン』の重鎮である彼女、ティア・フラットは、
年齢の見当がつけ難い。
 若々しい美貌と、それと不似合いの沈着さが自然に同居している所為だ。
 大きなサングラスで表情を窺わせないサンズは、ふんと鼻を鳴らした。


「その為に各国、各機関が予めエージェントを潜入させたのだ」とインテグラが眼鏡を光らせる。

 英国国教騎士団、通称ヘルシング機関の長である彼女は、これは生来のものに違いないふ
てぶてしさで続けた。

「あのデカブツにな。何分急場の仕掛けではあったし、ハイジャックそのものの抑止には至らな
かったが……。
 しかし奴らの目的が何であれ、あの場所へ近づけさせてはならん」

 インテグラは端を切った葉巻を口の端に咥え、低い声で云った。


「あそこへ――狂気山脈へ」

227 名前:阻止側―――反撃の時:2006/11/25(土) 00:11:16

>>226

 その最標高三万四千フィートに達する連峰自体が、超太古、地球に飛来した他天体生命体の
築きし一大城砦なのであった。
 地球の生命を創造し、邪悪なる神々の眷属とすら覇を競った彼ら『古のもの』が姿を消した後
も、夢魔的な連なりは未踏のまま、南極の氷の元で眠りについている。
 頂上の台地に、あらゆる魔導書にほのめかされる幻の『レン高原』を擁しながら。


「1930年のミスカトニック大の調査報告を見ても、あそこが地球上でも有数の危険地帯である
事は明白だ。
 そんな場所に連中がハイキングを敢行する理由――魔道の練達としてミス・フラット、貴女の
ご意見を伺いたい」
「考えられる限り最悪の想像でよければ、ヘルシング卿」
「結構。連中の行動理念を推し量ろうとするなら、それは常に正鵠となるでしょう」

 インテグラは静かに吐き捨てた。『魔女』は頷くと、己の推測を語り始めた。
 そして語り終えた。

 沈黙が落ちた。突如テーブルの上にマジノ線が生じたかのような沈黙だった。


「いやはや」とサンズは首を振った。「イカレてる」

「奴らの沙汰などとうに知り抜いている、欧州(われわれ)、そして英国(われわれ)は。
 奴らには戦後などという言葉がない事もな」

 インテグラは葉巻を噛み締めながら言葉を継ぎ、意思を告げた。


「だが、させるものか。今度こそ捨て置きはせん。
 狼の時など果てさせる。奴らの狂った戦争は、速やかに惨めな戦後へと修正してやる」


 一同は等しく首肯した。

228 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2006/11/25(土) 00:35:44


「笠本軍曹。君は寒いところは好きかね?」
 唐突に。
 口元に髭を蓄えた情報局の上官殿からアタシはこんな質問を振られた。
「寒いところは嫌いです。ついでに言うなら暑い所も嫌いです」
「そうかそうか。で、君には南極行きの空母に乗り組んでもらう」
 じゃん、とばかりに満面の笑顔で上官殿が取り出したのは、命令書。それも所謂特務の類を命ずるときに使われる特別製の命令書だ。
「…………」
「なぁに。何も起こらなければ気ままな南極旅行だよ笠本軍曹。世界で最も安全な船に揺られての安穏な旅行だよ。
 骨休めだと思ってゆっくりしてきたまえ軍曹ーはっはっはっはー」

 この段階でアタシは確信した。
 ああ、これは物凄く面倒で厄介な何かが起こるんだな、と。


§


 命令書と簡単な荷物を伴侶に空母へ乗り込んだアタシはゲスト扱いで個室を与えられた。
 そしてそこで殆どの時間を過ごす事になった。
 空母の乗組員にしてみれば部外者にうろうろされても鬱陶しいだろうし、アタシも邪魔臭そうに見られるのはゴメンだから丁度いいと言えば丁度いい。
 しかし退屈はしなかった。艦載機のパイロットやら何やらの暇を帯びた連中が入れ替わり立ち代りやってくるのだ。

「実は俺、基地に恋人がいるんすよ。戻ったらプロポーズしようと思ってるんです。花束も買ってあったりして」

 備え付けのテーブルを挟んでアタシの対面に座った若いパイロット、パトリックは人懐こい笑みを浮かべて言う。
 若くて弄られ属性持ちでそのくせ腕はいいという三拍子のこいつは、空母側がつけたアタシのお目付け役だ。
 信用が無いことを嘆くつもりはない。至極当然だと思う。そしてこいつをつけてくれたことに関していえばむしろ感謝した。
 こいつと話しているとなかなか退屈しない。
 立て板に水とばかりにパトリックはよく喋った。ちょいちょいと会話の方向を誘導してやれば聞きたいことを勝手に喋ってくれる程度には。
 アタシが退屈しないのは結構だけど、空母側はもうちょっと人選を考えるべきだったわね。こうもぺらぺら喋っちゃう人間をお目付け役にしちゃダメでしょ。

 曰く、「TACネームはPJ。PJってのはパトリック・ジェームズの略」
 曰く、「趣味はポロ。あの馬に乗ってやるヤツ」。
 曰く、「南極に行くのは超豪華飛行船旅行を楽しむVIPの安全確保のため」

 このご時勢に飛行船なんて酔狂なもんで旅行とは全くOKANEMOTIの考えることは分からない。
 全長1キロにも及ぶ船体があるらしいと聞いてあまりのアホさ加減に頭がくらくらした。
「そんなの良い的じゃない」
「そりゃあ笠本さん、戦闘を想定したモンじゃないんですから……」
 苦笑を返すパトリックに自分が戦争ボケになりつつあることを実感した。困ったもんだ。

 ――それはさておいて。

 航海は滞りなく進み、南極海に到着した空母は飛行船の進路に近い海域で待機状態に移行した。
 これで何も起こらなければ、飛行船が帰路に着くのに併せて空母も帰途に着くのだが……。

 艦内放送のスピーカーがパトリックとアタシの弛緩したひと時を切り裂いた。

「! スクランブル!? スイマセン笠本さん俺行きます!」
 パトリックは椅子を蹴倒すようにして立ち上がり、大急ぎで廊下へと消えていった。
「いってらっしゃいを言う暇もなかったわね」
 床へ倒れた椅子を起こしながらアタシは溜息をついた。スクランブルのサイレンが喧しい。
「何がゆっくりしてきたまえよ」
 今頃甲板はドラ猫の準備と発艦におおわらわだろう。
 しかし万全の警護体制で固められた飛行船を狙うなんてどこのおアホ様だ。
「まさかマーズピープル絡みじゃないでしょうね……」などと思考を巡らせていると、部屋に備え付けの電話が鳴り出した。
 受話器をとる。
「笠本軍曹、至急CDCへ来てください。軍曹宛に連絡が入っています」
「アイアイサー」
 空母の内部構造については初日の案内で大体把握していた。最短ルートを通ってCDCへ入ると――。

『柿崎がやられた!』
『なんだ!? いきなり火を噴いたぞ!』
『全機ブレイク! ブレイク!』
『ああ! ジャン・ルイがやられた!』
『オメガ11、イジェクト!』
『ニノックス2が落とされた!』
『なんなんだこれは!? 敵は化物じゃねえか!』
『アクイラ2もやられた!』
『くそったれ! きやがれ蝙蝠野郎!』
『Die,You SOB!』
『助けてくれ! ああ! 神様!』
『ちくしょう! ちくしょう! ちく……あああああ!!』

 無線から聞こえるパイロット達の罵声怒声悲鳴。
 状況を伝えよと怒鳴り返す情報士官達。
 アタシが入ってきたことに気づいた通信士官の一人が手招きし、レシーバーを渡してきた。

『笠本軍曹ですか?』
 聞きなれた声だった。メガネをかけた穏やかな雰囲気の面が脳裏に浮かぶ。
「ハ。笠本軍曹であります。ジェルミ上級曹長殿。……で、一体何?」
 第一声だけ固くやって、あとはいつもどおりに。通信機越しのジェルミ上級曹長、もとい相棒のフィオ・ジェルミを促す。
「テレビ見ました?」
「こちとら朝から晩まで空母のゲストルームに篭りっきりでね。テレビなんかモニターディスプレイすら久しく見てないよ」
「それはそれは……。えーとですね。まず今エリちゃんの乗ってる空母の航海目的は知ってますよね?」
「お金持ちのいっぱい乗った全長1キロのお化け飛行船の護衛って聞いたけど?」
「はい、その通りです。それでですね、その飛行船、『ツェッペリン・ノイエ・エーラ』っていうんですけど……ハイジャックされちゃいました」
「頭の痛くなる話ね。どこのどちらさんがやってんの?」
「ハーケンクロイツの亡霊です。どうも外部から乗り込んだようでして、不審な輸送機が接近していくのが確認されてます。
 その際不審機の撃墜に向かったF−16が二機、落とされてます」
「敵は蝙蝠の化物みたいよ。今も現在進行形で空母のF−14Dが落とされてるわ」
「うわぁ……」
「で、アタシの仕事は? 海の上から飛行船に向かって手榴弾でも投げるの?」
「エリちゃんの今回の任務は、飛行船に積まれた聖櫃の奪還です」
「聖櫃(アーク)? レイダースのアレ?」
「それです。アレを奪還してください」
「アタシは今洋上の空母のCDCにいるんだけど」
「スラグフライヤーと武器弾薬を満載したコンテナが搬入されてます。それを使ってください」
「――何もかもあの髭オヤジが描いた筋書き通りってわけ?」
「一応エリちゃんは保険だったみたいですよ。準備が出来次第発艦してください。以降の指示はフライヤーの方の回線で行います」
「……了解」
 通信終了。レシーバーを通信士官に返し、アタシはCDCの出口へ足を向け――。

『うわああああああ!!』

 パトリックの悲鳴と機体の弾ける音が聞こえた。

「…………」
 CDCを出て格納庫へ急ぐ。

「敵は、とってあげるわ」


§


 十分後。
 アタシを乗せたスラグフライヤーは、カタパルトにセットされていた。

『笠本軍曹、離陸を許可する』

「了解。やってくれ」

 回転数を上げ、エンジンが唸る。
「実はカタパルト発進って初めてなのよね……」
 機体が蒸気の力で打ち出される。
 流れる風景。動き出す視界。
 Gに身体が押し付けられる。
 離艦。
 操縦桿を引いて上昇。

『エリちゃん、針路を九時方向へ取ってください。飛行船はそっちにいます』

「了解。指示を頼むわフィオ」

 聞きなれたフィオの声に従って針路を取る。
 さて、極点での戦闘再びと行きますか。


229 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg :2006/11/25(土) 01:10:17

>>228


「ロング様」と幾つかある偽名の一つを呼ばれ、また別の名を長谷川虎蔵と称するその不逞の
輩は、億劫そうに目を開けた。
 左目だけを。右目は黒い眼帯で覆われていたので。


 十名も詰めれば満員となる空間には、やかましく跳ね返るエンジン音が充満していた。
 飛行中のヘリの内部である。現在の乗客は、厚ぼったい防寒具で着膨れし、だらしなくシー
トに寄りかかった虎蔵ただ一人だ。
 被った毛皮の帽子(シャプカ)の下の顔は、見ようによっては女性に紛う程に整っている。が、
不意に笑った口に牙が並んでいそうな、猫科動物を思わせる剣呑さもないではない。
 もっとも現在は弛緩していた。だれきっていた。

 操縦席の方からやって来て虎蔵を呼んだのは、彼を雇用した機関の人間だった。同じく防寒
具を着込み、白髪混じりの長い髪を後ろで束ねた老人だ。
 英国のさる名家に仕える執事だという。片眼鏡をかけた慇懃なその男の姓を、虎蔵はどうし
ても思い出せない。名前がウォルター某というのは確かだったが。

 流石に身を起こした虎蔵は、寝起きの声で訊いた。

「何かな。まだ予定の空域には早いんじゃないか?」
「それが予定に少々の変更が生じまして」

 ウォルター氏は言葉上は恐縮したように説明した。

「敵航空戦力が予想以上に強大であるとの報告が入っております。中途まであなた様を空輸
する手筈でしたが、如何せんこの大山猫(リンクス)では……」

 と老執事は現在彼らが搭乗している輸送ヘリの名を上げて、首を横に振る。
 英海軍が保有するリンクスHAS.Mk2の事だ。

「やや心許ないとの判断が下され、このプランは先程中止となりました」
「はて、じゃあ俺はお役御免?」
「いえいえ、中々以ってそういう訳には。ここから先は」

 ウォルター氏はハッチへ近づくと、虎蔵が止める間もなく引き開けた。
 途端に外気が殺到して来た。勢いも冷たさも雪崩のようで、これは何しろ南極上空なのだか
ら当然であり、飛行中に開ける方が寧ろおかしい。


 何物の生存も許さぬほど澄み切った闇の空には、ただ轟々と寒風が荒んでいる。
 リンクスより下方二十メートル程の空中に、一つの機影があった。
 ややずんぐりした印象を抱かせる小型戦闘機だ。寝こけていた虎蔵が気づかぬ内に、こん
な至近距離まで接近していたようだ。

 戦闘機は空中で静止状態にあった。どうやらVTOL機であるらしい。
 轟風に揺れる機内で、実によく通る声で執事は云った。

「あちらへ便乗して行って頂きます。同作戦に従事しております友軍機――名だたる特殊部
隊スパローズが誇るSV-F07V『スラグフライヤー』でございます。
 魔空の戦場に連れ立つならば、これ以上の戦友はないかと」
 

230 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg :2006/11/25(土) 01:11:08

>>229

「緊急発進(スクランブル)が掛かったあちらが、丁度この空域を通り過ぎる寸前で助かりまし
たな。既に状況は通信済みですので、後はロング様が飛び移るだけでして、はい」
「いやいやいや。あれ単座やん。どこ乗れ云うの」

 本当に突っ込むべき箇所はそこではないが、と内心思いつつ長谷川虎蔵は叫んだ。
 完璧なまでの慇懃さで、執事は更なる無理無体を強いた。

「主翼の所へ。貴方様なら振り落とされはせんでしょう」


 わっはっは、と取り合えず虎蔵は笑った。他にどうしようもなかったので。
 ひとしきり笑ってから怒号した。

「阿呆か、んな気の触れた真似なっぞ!」
「報酬は契約時に提示した額の二倍、お約束しましょう」

 顔色を変える事無く老執事は云い放ち、虎蔵は神秘的な沈黙の中に篭った。
 が、すぐにそこから出て来ると重々しく「五倍」と述べた。所詮さもしき物欲の徒である。


「はは、それは少々飛躍が過ぎますな。二倍半では如何?」
「四倍。ビタ一負からんぞ」
「三倍。これ以上はとてもとても。ああ、帰りの便は手配してもよう御座いますよ」
「……人の足元見腐ってからに」
「交渉成立ですな」と執事は笑った。「では、いってらっしゃいませ」

 事前に渡されたゴーグルを装着しつつ、虎蔵は舌打ちをした。複葉機のパイロットが愛用し
ていたと思しき年代物である。
 ハッチと空中の境にかけた足を止め、虎蔵はふと思い出したように訊いた。

「なあ。西洋の大部分を構成する一神教徒てのは、自分とこの主要産業である殺人とペテン
を“戦争”と“商業”っつう風に言い繕って澄ましてるという説、あんたどう思うね?」
「慮外ながら、その辺りの事情は東洋も然程変わりはすまいかと存じますが」

 と、ウォルター氏はとてもいい笑顔で云った。

「それにこういった手管こそ、所謂英国式(キングス・イングリッシュ)でございまして。
 ――御武運を、エドワード・ロング様」
「やかましわい!」

 四十五度を保って辞儀をする執事へ罵声を浴びせ、虎蔵は空へと飛び出した。


 闇天の夜空というのは只でさえ温度が無い。極地の空ともなれば、無いのではなくマイナス
である。
 たちまち襲い来る風圧に歯を食いしばる間もなく、虎蔵の躯は突風にさらわれて――突如
安定した。空中を滑るように、確かな己の意思に依って降下していく。
 背中からは翼が生えていた。巨大なサイズは置くとして、それは鴉の羽であった。


 三つ編みの長髪が風に煽られ、蛇のごとくうねる。帽子はどこかに飛んでしまった。
 大幅にずれかけた軌道を修正し、虎蔵はスラグフライヤーの主翼に降り立った。
 凍える強風の一撃を喰らい、主翼の端に手をかけ、必死に躯を固定する。
 コクピットの方を見る。パイロットは女らしかった。どんな表情かはよく判らない。
 恐らく呆れているのじゃなかろか、と虎蔵は考えた。
 互いが逆の立場だったとしても、虎蔵もそういった感想を持つのは間違いない事のように
思われた。


「ねーちゃん」と、口に片手を当てて虎蔵は怒鳴った。「終点まで頼むや」
 

231 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2006/11/25(土) 01:44:27



 久しぶりに出た外は、沢山の刺激に満ちていた。

 例えばそれは数え切れないほどの人間だったり、紅魔館よりも大きな空飛ぶ船(飛行船
と言うらしい。外の世界で使われる魔法だとパチュリーが言っていた)だったり、そして
その騒々しさは、幻想郷のどこでも聴けないほどだったり!!

 私は、恐らくここで一生分をお姉さまに感謝したことだろう。
 あのお姉さまが、何の気まぐれか、私を連れて行ってくれることに頷いたからだ。運命
を見据えるレミリア・スカーレットが何を見たのかは知らないけれど、少なくとも私にと
ってはとても嬉しい出来事だった。グルマルキンと言う人が招待状をくれたおかげだ。後
で会ったらお礼を言っておこうと思う。お姉さまは「言わなくていいわよ、あんな奴に」
とかぶつぶつ言ってたけれど。

 船に乗ってからも、それはそれは、魔理沙たちが初めて紅魔館にやってきた時よりも大
騒ぎだった。何しろ私があちこちで大暴れ。ちょっとした悪戯で近くのお姉さんに軽く噛
みついてみたり、スロットとか言う玩具で遊んでいて(なんと吸血鬼の絵柄が回っている。
そろえるとコインが出てくる)、力が入りすぎてドラムを回すレバーを折ってしまったり
と、そこそこ迷惑をかけたかもしれないけど、私には全く気にならなかった。(でも後で
お姉さまとパチュリーに叱られた。ちゃんと謝ったけど、またやるかも知れない。てへ)

 多少の不自然な所は、パチュリーと一緒に魅了の魔眼と魔法でごまかした。パチュリー
に聞いたところ、こういう細かいところはあいつの方が得意らしくてちょっと癪だった。
今度、魔理沙や小悪魔でちょっと練習してみようかと思う。もちろん、変なのじゃなくて、
私のことがちょっと素敵に見えたりとかそんな感じのやつ。

 そういえば、外の世界にもまだ吸血鬼はいたみたいで、それっぽい人に声をかけて挨拶
したら逃げられた。……ちょっとだけ悪いことをしたかも知れない。反省した。でも、あ
の風貌はきっと忘れられないから、次は人気のいないところでちゃんと挨拶しよう。

 ――そうして私は久しぶりの外を満喫して、広々とした客室でぐっすりと寝てしまった。

 本当に、ここまで楽しくて、面白くて、騒がしい時間を過ごしたのは久しぶりだった。
 だから、思ったよりも疲れてしまったのだろう。

 窓から見える風景は綺麗な満月と青い夜空に彩られていて、星が涼しく瞬いていた。北
の国はとても空が綺麗だと本で知っていたから、これがそうなのだろうと、私には不思議
に納得できた。

 ……魔理沙や霊夢、咲夜にも見せてあげたかったな。

 そんなことをまどろみながら考えて、私は気持ちのいい月の光に抱かれて夢の中。
 ――少し、船が揺れて、私は目を覚ました。

「……ふにゃ?」

 揺れただけじゃ、目は覚めない。
 夜の匂いを感じる。
 姉以外の、吸血鬼の気配。
 思わず跳ね起きると窓の外が目に入る。
 そこでは―――

「……わあ」

 花火が、上がっていた。

 駆け巡るガーゴイル。火花を散らす鴉。そして炎を吐いて雲を引く鋼の鳥。

 美しい華と火を纏って舞い躍る姿は、まるでサーカスのよう。

 そう、これは、ダンスパーティの続き。

 夜に住まう者の贈る、最も激しく美しいショウ。

「―――私も、」

 私も、一緒に躍りたい。
 炎の杖を振り、鮮やかな波紋を振り撒きながら、星の虹を砕いて―――!!

 気が付けば、私はドアに駆け寄っていた。窓を破らなかったのは、戻った時に寒そうだ
ったからだ(といっても、結局この時点でこの船が沈んでしまうことには気づかなかった
けど)。しかしドアには鍵がかかっていた。かけた覚えはない。お姉さまやパチュリーも
いつの間にかいない。だから、かけたのは恐らく外の誰かだろう。
 ―――でも、そんなのは私にとっては無駄だった。

「きゅっとして、」

 だって、全てこの世にあるならば。

「どかーん!」

 私に壊せぬ物は無し!




 ドアが弾けて砕け散る。
 これで意地悪な魔法は消え去った。

 ―――ドレスとダンスは淑女のたしなみ。始まる前から整っている。
 後は舞台に上がるだけ。

 私は廊下に飛び出した。
 舞台へと、夜という名の舞台へと、最高の姿で上がるために。




【現在位置:客室・外へと移動中】

232 名前:リザ・ワイルドマン:2006/11/25(土) 02:09:39

「うわ〜でっけ〜」

 現代文明の技術の結晶とも呼ばれる巨大な白い船体。その
全長は1キロにも及ぼうか?
 飛行船。かつて(と言っても、もはや90年近く前の話だが)空に
おける主力兵器の座を欲しい侭にした20世紀の象徴。しかしその栄光は
あまりにも短く航空機の発達によりその座を譲った。そしてそれ兵器として
用いられる事の無かった飛行船が旅客用として現代に甦ったのだ。

 軽いくせのあるショートカットに腹筋の割れた腹とヘソが露出したラフな服装の
少女、リザ・ワイルドマンはこの度の遊覧飛行のために荷物やら服やらを詰め込んだ
バックを軽々と担ぎ飛行船に向けて歩いていた。
 ひょんな事からこの遊覧飛行への招待券を手に入れた事が事の発端だった。
そしてわざわざアメリカくんだりの(なんか知らないが過去に大規模な事故が合ったらしい)
ニュージャージー州レイクハーストから始まる「南極上空遊覧飛行の旅」という奴に乗る前から
期待が膨らむ。

「ごちそうも喰えるんだろうな〜うひひっと!」

 獲物ならぬ食事を前にした少女はバックを片手でひょいと持ち上げると軽やかに
飛行船のタラップを上ってゆく。食事だけではない。なんでも客室は高級ホテルの
ロイヤルスウィートルーム凌ぐ豪華な物であるらしく、おもてなしもなんとも凄い物で
あるらしい。
 これから始まるであろう7日間の旅に、能天気な期待と想像を膨らませながら
リザ・ワイルドマン―――――その身体に狼と人の血を受け継ぐ少女の姿は飛行船の
中へと消えていった。

【リザ・ワイルドマン:展望台1F:パーティールームの一角】

233 名前:サクラ ◆6jagu9Uf/. :2006/11/25(土) 03:07:08




 西暦2198年―――モスクワ




       ■┐“呼”  ―――電磁気学・電磁気学制御
       └┘     『銃身展開・準備・生成』



 左手に三つ、右手に四つ。都合七つの変異銀(ミスリル)ナイフ。
 羽ばたくように投擲。



       ■┐“呼”  ―――電磁気学・電磁気学制御
       └┘     『弾体加速』



 空中に展開した電磁場が収束、架空の銃身を形成し、ローレンツ力のハンマーが変異銀ナイフを
2000m/s 超過まで加速。
 光を弾いて大気を割く白銀の弓。
 物陰に潜んでいた複数の敵影を的確に射抜く。

「―――――っ、」

 残心。
 今だ敵の気配は消えず。
 状況は継続中と判断。

 シティ・モスクワの煙るほどに濁った冬の夜―――
 少女は走り続ける。
 アパルトメントの上、いつわりの階層隔壁を背負い、山程の変異銀ナイフを呑んだ外套を翻す。
 追跡する敵影―――
 長く長く延びたビルの影にその身を隠し、深い夜の静寂に気配を隠す。



       ■┐“文書”  ――― 一般処理
       └┘     『運動係数・五倍・継続』


                    ■┐“警告”  ――― 一般処理
                    └┘     『攻撃察知』



 複数の敵に追われながらも少女の表情に焦りの色はない。
 少女は明らかに状況に慣れている。
 多角的に行動して闘争ルートを潰そうと目論む敵に対し、手を変え品を変えて的確に処し続ける。
時に機転で。時に武力で。追いすがる敵の長い腕はひたすらに空を掻き少女を捉える事能ず―――。

 氷檄とナイフとゴーストハックの限りない応酬。



       ■┐“呼”  ―――分子運動制御
       └┘     『羽』


                   ■┐“警告”  ――― 一般処理
                   └┘     『攻撃察知』


       ■┐“呼”  ―――仮想性身体制御
       └┘     『生物化』


                   ■┐“警告”  ――― 一般処理
                   └┘     『攻撃察知』


                        ■┐“警告”  ――― 一般処理
                        └┘     『攻撃察知』



 目まぐるしく変わる状況。
 常夜灯の光の中に。
 深すぎる闇に紛れて。
 廃ビル。裏路地。運河の脇―――少女の影踊り敵の影踊り。



       ■┐“呼”  ―――電磁気学・電磁気学制御
       └┘     『銃身展開・準備・生成・弾体加速』


                     ■┐“警告”  ――― 一般処理
                     └┘     『攻撃察知・分子運動制御』


                   ■┐“警告”  ――― 一般処理
                   └┘     『攻撃察知・仮想性身体制御』



 冷々と夜が更けるにつれて追跡者はその数を減じ。
 青々と月が醒めるにつれて黒衣の少女は息を切らし―――



       ■┐“呼”  ―――制御系・連弾
       └┘     電磁気学制御・分子運動制御・仮想精神体制御
              『銃身』/『鎖』/『生物化』



 傾き続ける天秤。
 消費されていく戦力と選択肢。
 限界を迎えた逃走劇は次のシークエンスにその席を譲る。




234 名前:サクラ ◆6jagu9Uf/. :2006/11/25(土) 03:07:59




「―――ふん」


 死屍累々と横たわる街路。
 戦いの幕引き。静まり返る空間。
 黒衣の少女は返り血に濡れた白い顔を歪め―――己の殺した敵たちを睥睨する。


 これは―――

 これは連中の招いた結果だ。
 都市正規の魔法士ならともかく、未熟な検体を実践に放り込むとは愚の骨頂。
 殺してくれと―――
 殺してくれと言っているような物ではないか。

 だから殺した。
 全部で二十九体。
 紅に染まる細い腕は、しかし汚れてはいない。この返り血は確固たる意思の元に自分が正義を行使
した標であり、決して罪咎の証左などではないのだと―――少女はそう思っている。


 シティ・モスクワ。
 少女の敵。
 都市運営―――エネルギー供給の手段として魔法士の『脳』を使い潰す、マザーコア・システム。
 信じがたい悪徳だと思う。
 沢山の命を救うために一人を人柱に捧げる理念は矛盾している。全ての命は平等だ。使い潰されて
いい命など、この世には一つとして存在しない。
 腹が立つ―――
 それが判らないシティの上層部にも。
 それを問題視さえせず安穏とした生活を享受するシティの市民にも。
 だから―――
 だから少女は糾弾する。
 血煙と武力とで―――
 真っ向から世界に相向かい。


 マザーシステムへの反逆者―――武装テロリスト『賢人会議』。
 それが少女の名前である。


 収束する状況に安堵と同時、静かな怒りを覚える。
 自分の殺した魔法士―――そしてその向こうにいる、自分に魔法士を殺させた存在に。
 呼吸を整え、こみ上げる感情をどうにか宥め透かした―――その時であった。



「―――――っ!」


    ■┐“警告”  ――― 一般処理
    └┘     『攻撃察知』



 やはり罠だった。
 敵の技量が稚拙すぎるとは思った。
 頭数だけを揃えた捨石で相手の体力を削り、頃合を見て本命を投入する物量作戦。
 人間の命を数量的思考で割り切ろうとするシティらしいストラテジー。
 ―――その思想に吐き気がする。


■┐“呼”  ―――制御系・連弾
└┘     電磁気学制御・分子運動制御・仮想精神体制御
                『銃身』/『鎖』/『生物化』


 反射的にI-ブレインを操作、電磁気学制御と分子運動学制御と仮想精神体制御を纏めて立ち上げ、
音源と気配から逆算した想像上の敵影を振り返りもせず標準。
 炸裂。
 轟音。
 回避された。
 百万分の一秒後には時空間を圧縮して背後に迫った近接戦特化の魔法士―――『騎士』が、少女の
首筋目掛けて大剣を振りかぶっている。(攻撃察知:)即座に反応。(仮想精神体制御)闇色の外套が強靭な
翼に転じ相手の一撃を絡め取った。(電磁気学制御)同時―――左翼に展開した電磁場の銃身が唸りを上げ、
白銀の魔弾が騎士を射抜く。(攻撃察知:)更にに反応。後方に迫る数百の氷の矢をI-ブレインの数値のみで
大雑把に補足し、(分子運動学)対抗して展開した大気分子の鎖で片っ端から射ち落とす。(警告:)
部の悪い勝負―――単純な力比べでは少女は敵に抗しえない。
 (呼:)少女は弾幕の盾を捨てた。(仮想精神体制御)アスファルトの一部を生物化し、巨大な黒い腕を
形成する。唸りを上げた巨腕は真っ向から氷の刃を受け止め、半壊しつつも敵に着弾。(運動係数制御:五倍)
それを確認する前に少女は走り出す。

 少女の額には玉の汗。
 幾度となく情報制御を行った少女のI-ブレインは疲弊。
 すでに満足な戦闘を行える状況にはない。

 しかし、



    ■┐“警告”  ――― 一般処理
    └┘     『攻撃察知・超光速情報解体・世界面制御』


「―――――は?」


 これまでに見たことのないエラーメッセージに対し、少女の思考が空白となる。
 少女の周辺に世界面の強烈な歪みが発生。世界の本質的構造たる「情報の海」の数式群に論理的破綻が生じ、
直ぐにその矛盾を解消しようと演算子と積分記号の列が踊った。時空間の連続性が破棄され、物体の存在は
コペンハーゲン解釈的な存在分布に還元され、そして、そして―――

 次の瞬間には、少女の姿はどこにもない。




235 名前:サクラ ◆6jagu9Uf/. :2006/11/25(土) 03:08:51



      ††††††††††††††††††††††††††††††††



 シティ・モスクワを襲撃しマザー・システムの重要因子たる披検体を強奪したテロリスト「賢人会議」は
逃走中にシティがモスクワに貸与した魔法士三十五名と交戦。その大半を撃破するも時空面干渉能力者の攻撃に
より、論理的には無限の深度を有する『空間の井戸』へと落とされた。

 諸々の過程を経て被験体は全て奪還。
 敵側の関与者は射殺―――
 かくしてシティ・モスクワの逃走劇は、追跡側の勝利に終わった―――。



      ††††††††††††††††††††††††††††††††




236 名前:サクラ ◆6jagu9Uf/. :2006/11/25(土) 03:10:36




 漫ろに道を行く。
 どこまでも。
 どこまでも続く一本道。
 辺りは―――
 辺りは暗い。
 何もない。
 誰もいない。
 何も眼に映らない。
 ああ―――
 『ああ』
 溜息が漏れる。
 私は―――
 私は何処を歩いている。
 いつから。
 何のために。
 思い出せない。
 何故だろう。

 そうだ。
 指標を―――
 『指標を作ろう』
 そう思い立った。
 薪木を燃やした。
 辺りは明るくなった。
 道が判った。
 どちらに歩けばいいのかが明瞭となった。
 胡乱だった歩みに指針が生まれた。
 漸くに私は―――
 毅然たる態度で世界に差し向かう事が出来た。
 そうして。
 遂に歩き出した本当の理由は―――知れなくなった。
 歩いた。
 歩いた。
 昼も。
 夜も。
 それしか出来ない仕掛け人形のように。
 歩みを止めることはなかった。
 何かが足を急かしていた。
 省みる事はなかった。
 何かが歩みを速めていた。
 歩く理由を己に問うことはなかった。
 何かが私を偽っていた。
 私は―――
 止まる事も省みる事も自問する事も出来ない盲目の人形に―――
 成り果てている。
 成り下がっている。
 何のことはない。
 私は最初から今に至るまで盲人なのだ。
 ああ。
 くだらない。
 しかし私は、それに気づく事さえ出来ずに、歩き続ける―――。

 さくり。
 ああ。
 さくり。
 また。
 さくり。
 もう。
 さくり。
 私はこんなことを―――
 さくり。
 私はこんなことをしたくはないのに。
 さくり。
 そちらが悪いんだ、そちらが仕掛けてきた―――
 さくり。
 私は私はただ私の中にある確固たる正義を貫いているだけで、
 さくり、
 ここに自我はないのだ。私自身の意思はないのだ。当たり前の事だ。正しい事だ、
 さくり、
 違う違う違うのだシティが供物として魔法士を犠牲にするというのなら誰かがそれに抗わねばならない
誰かが糾さねばならない誰かが是正せねばならないその誰かが偶々私であっただけで私に私の行為に私の
意思は全く伴っていない私は正義を執行するだけの自動人形であって自動人形に罪咎が押し付けられるはずは、
 ああ。
 でも、
 何故だ。
 これを。
 これを君が見ていたら。
 きっと―――
 言うのだろう。
 もういいよと。
 濡れた眼で。
 こちらを見上げながら―――
 『もういいよ』
 ほら。
 そう言った。

 無理だ。
『どうして』
 今更だ。
『どうして』
 もう。
『どうして』
 もうこんなにも―――
『どうして』

 傍らで私を糾し続ける少女を抱きしめる。
 ひっく、ひっくと。
 嗚咽を上げるその小さな頭を撫でて。

「もう遅いんだよ―――何もかもが。だって、こんなに―――」

 そこで振り返る。
 眼に映るのはたる死屍累々の道程である。
 老人がいる。子供がいる。男がいて女がいてそのどれもが血に塗れて、苦悶の表情を浮かべて横たわり
互いに絡まりあってずるずると道のように延びている。四肢を欠いた者がいる。顔の判別が付かないほどに
首から上を壊された者がいる。ずだずだに引き裂かれた者がいて手酷い拷問を受けたとしか見えない者がいて。
その、その赤い道は―――
 私の足を伝い―――
 漆黒のドレスに尚赤黒い―――胸の返り血へと続いていた。

「こんなに――――――殺したんだ」



      ††††††††††††††††††††††††††††††††



 そこで眼が覚めた。

「………痛ぅ」

 嫌な夢を見ていた気がした。
 頭を振って立ち上がる―――軽い頭痛。無視する。

 何処だかわからない。過剰に豪奢な家財を並べた部屋らしき場所である。
 不規則なリズムで微細な振動が体に伝わる。もしかしたら駆動中の乗り物の中かもしれない。
 兎も角、体の損傷を確かめるのが優先事項だった。少女はI-ブレインを立ち上げ、全身の神経情報の返り値を
把握し、主要な神経と血管の無事を確かめて―――

「―――は?」

 同時に気付いた。
 タイムスタンプが、2198年の二世紀近く前を指していた。


【サクラ:客室(空き部屋)→現状確認を兼ねて外へと】




237 名前:エアハルト・フォン・ラインダース ◆CnAdcTa152 :2006/11/25(土) 03:17:35

(1/5)
 高度10.000mを越える成層圏。
100年前には神々の領域と考えられていた世界。
地上より遥かに薄く、静謐な空気の中を、私はたった一人で飛んでいる。
厚さ数センチの透明なガーランド・ハウベ以外には、隔てるもののない満天の星空。
煌めく幻想的な美しさに私は圧倒され、生命を吸い取られるかのような錯覚すら覚えた。
 そう、私が卑怯者の烙印を押され、蔑まれるようになったあの夜と同じように。

 私の名はエアハルト・フォン・ラインダース。
かつて、大ドイツ空軍のエクスパルテンと呼ばれた男だ。
 

238 名前:エアハルト・フォン・ラインダース ◆CnAdcTa152 :2006/11/25(土) 03:18:14

>>237
(2/5)
「貴様に汚名返上の機会を与えてやろう」

 基地司令のアルトラル大佐の下に出頭した私を待っていたのは、意外な一言だった。
灯火管制下、間接照明が照らし出す薄暗い部屋。
壁に伸びた人影が不気味に揺らめく。 時刻は丁度日付が変わる数分ほど前か。

始めは何故戦闘途中で機体と僚機を見捨てたのかという詰問だった。
夜間哨戒に出ていた我々の二機編隊は、高高度でRAFのスピットファイア三機の奇襲を受けたこと。
最初の一掃射で僚機のハルトマンは撃墜されたこと、その後私は三対一で追撃されたこと。
グリフォンエンジンを積んだ敵のスピットと空冷のFw190Aとでは高空性能に圧倒的な開きがあること。
ゆえに追撃は振り切れず、私には機を捨てて脱出するより他はなかったこと。
私の口からはそういった事柄が語られて、その間に数本の煙草と一杯のシュナップスが消費された。

「今までの戦歴がなければ、ただでは済まんぞ」

 一通り話し、時にはフォッケウルフとその用法についての議論へと発展した会話は
大佐のこの一言によって締めくくられた。
私はくわえていた煙草を床に捨て、踏み消しながら窓の外に広がる夜空を見た。

「あれは!?」

 闇の中を西へ向かいって伸びていく一条の光。
人間の乗った戦闘機や爆撃機とは違う冷たい航跡。
尋常ではない速度。 おそらくは音速の壁を越えているだろう。

「V2号ロケットのテストだ。
世界初の弾道ミサイル。 いずれあれが戦いの鍵を握る時代が来る」

 私の疑問は司令の一言で氷解した。
フォン・ブラウン博士の研究しているロケットの噂は聞いていたが、ここまでこぎつけていたとは。

「……嫌な時代だ。
人間は銃剣で渡り合うくらいのところで、やめておくべきだったと思うよ」

「今さら戻ることなどできん。 前に進む以外に道はないさ」

 二杯目のシュナップスを煽りながら呟く私と、無表情に答えるアルトラル大佐。
彼は制帽を被り直すと、私についてくるようにと促した。


239 名前:コーディー:2006/11/25(土) 03:18:44

導入

2つの声が聞こえる。 【闘いてぇ―――】 【―――ただ、まともに生きたい】
相反すれども内在する、強過ぎる2つの意志は気付けば俺から全てを奪って行く。
―――虚無だけを残し
――自分が原因で有る事には変わりない。自分で望み、自分で野蛮に壊したのだ。
そしてそれと同時に気付く「ソレ」。「正義」を理由に人の血を啜っていた惨めな己を。
真実を代替わりに俺はただ絶望した。それしかできなかった。
『――これが貴方の言う普通にできない生き方?』
愛想を尽かし去って行った幼馴染の女の言葉を思い出しつつ、ただそれしか―――

【飛行船倉庫】
遥か高度に浮かぶ飛行船 名前は…何だったか?まあ、俺にとっちゃどうでも良い
名前のその船に…俺は今乗っている。…そもそも何故この飛行船に居るのか?
倉庫の奥で眠っていた俺は気だるげに身を起こしつつ記憶を探る。…ああ、そうか。

何て事は無い。いつもの様に脱獄し、いつもの様に街という街を彷徨い、いつもの様に
危険な場所に潜り込み、そしていつもの様に喧嘩する。脱獄してそんなに日も
経ってないからあの街に戻る気も無いし、戻っても何も無い。他所の街や国でこうして
暴れてる方がまだ気も紛らわせるし、少しは冷めた気分も熱くなる。
こんな歯応えの無いチンピラの群れでもちったあ肥やしには
なるだろ。…大層な銃や刃物ちらつかせてこの様とは酷く萎えさせるが。
…じゃあやっぱり物足りねぇのか。
こんな燃えカスにもまだ闘争心は残ってるんだと矮小な喜びを感じていたその日…

何でもドデカイ飛行船で遊覧飛行をするという噂を聞いた…。偶然なのかどうかは
知らないがその離陸地に俺は居る。別段金持ち共の道楽なんざに興味も無ぇし、餓えてもない癖に
たらふく肥える豚共を見るのもウンザリだ。…だがまあ、此処以外の大陸へ
行く移動手段には使えるか。と、ふと考えた。大方燃料の補給やら何やらで降りる事も
有るんだろうし、そこの隙をついて降りりゃまさにタダの移動遊覧旅行。
たまには密航するのに空路を使っても良いだろう?と


…簡単な説明をするとこんな感じだ。それにしても見つかる覚悟で(その時は暴れる)進入したが、
俺を見るなり何かの出し物や芸人と勘違いするとは――おめでたい連中なのか、それともそれだけ
色々なVIP様が乗っているのか…?どちらにせよ余り人目にはつきたくないからこうしてこの船の一番下の
倉庫で寝転がっている。…

移動の為とはいえ、こうして体も動かさず一人でジッとしていると疎ましい思考ばかりが俺の脳の中を覆う。


手を伸ばしてもその「満たされない何か」は消えて行き、言葉にならぬ苛立ちばかり。
誰にもできない生き方とはこんな堕落した生き様の事か?その為に全てを無くしたのかと思うと心の
底から馬鹿馬鹿しくなる。

ジレンマと闘争心の狭間、全ての煩悩から切り離すが如く、男は再びその意識を閉じた…

【コーディー :下層部倉庫】

240 名前:エアハルト・フォン・ラインダース ◆CnAdcTa152 :2006/11/25(土) 03:19:06

>>238
(3/5)
 司令に連れられて足を踏み入れた格納庫。 電灯のスイッチが入り、暗闇が駆逐される。
そこに待ち構えていたのは、一機の真新しい戦闘機。
その美しさと偉容に、私は息を飲んだ。

「これは……! 液冷型のフォッケウルフか!」

 基本の形状はFw190。
だが、延長された機首と右側面に設けられた空気取入口を私は見逃さなかった。
間違いない。 この機の心臓部はBf109や、アメリカのP51と同じ液冷エンジンだ。
では冷却器はどこに?
その答えは機種の幅広のプロペラの後にあった。
フォッケウルフの設計陣は、冷却器を機首部分に環状に配置することで
この美しく、合理的な機首形状を実現していたのだ。
 そして機首に合わせて長く伸ばされた尾部と主翼は、細く、引き締まった拳闘士のような印象を機体に与えていた。
そこにいるのは、無骨な軍馬と評されたフォッケウルフとは異なる別の何かだった。
 夜戦任務のためなのだろう。 全面を黒一色に塗られた新型機に、私は心を奪われていた。

「フォッケウルフTa152H-1。
コットブスの工場で完成したばかりの最初の量産機だ。
原型はFw190だが、性能は格段に違う。 生まれ変わったと言ってもいい。
高度12,500mで、時速760km。
これに匹敵する高高度戦闘機は、メッサーシュミットのジェット機を除けば現在何処にもない。
しかもジェットは耐久性と信頼性とでこいつのJumo213Eに劣る。
武装はプロペラ軸内に30mm機関砲Mk108が一門、翼部に20mm機関砲MG151貴様には今夜、こいつである任務についてもらう。
出発は0200。 詳しくはこの命令書を読め。 読み終えたら破棄しろ。 いいな」

 傍らにいたアルトラル大佐が機体について説明してくれた。
だが、その間も、私の視線はこの新たな翼から離れることはなかった。
大佐が命令書の詰まった封筒を私に押し付けて、先に行ってしまっても、まだ。


241 名前:エアハルト・フォン・ラインダース ◆CnAdcTa152 :2006/11/25(土) 03:20:05

>>240
(4/5)
 時計の針は午前一時四十分を回った。 間もなく出発の時間。
私は飛行服に身を固め、滑走路脇に引き出されたTa152の傍らに佇んでいた。

「指定の空域に飛び、『フェンリル』の指揮下に入って『Z』を所定ポイントまで護衛せよ」

 夜間爆撃に出ていたJu87の一隊が着陸灯も点けずに帰投してくるのを横目に見つつ、今一度命令書の内容を反芻する。
 何もかもが不明な作戦だった。 二機編隊(ロッテ)での行動というルフトヴァッフェの教本を無視した単機での任務。
夜空の向こうに何が待ち受けているのか、その時の私には知る由もなかった。

 夜風の吹き付ける滑走路に最後のJu87が着陸した。 次は私の番だ。
整備員の手を借りて、コクピットへとよじ昇る。
シートに納まり、計器と機材の点検を手早く行った。
燃料、水、メタノール、全てが満タン。
機関砲弾も全段装填済み。 全て、異常なし。
次いで私はメインスイッチを入れた。
Ta152の鋼鉄の心臓――ユンカースJumo213Eに火が入る。
幅広のプロペラが廻りだし、排気管から炎が立ち上る。
ゆっくりと機体をタキシングさせ、滑走路へと機体を移動。
全てが順調で不気味なまでに快調だった。
一度だけ深呼吸して、私はキャノピーを閉めた。
そこに現出したのは完全与圧式の鉄とガラスの棺桶。 たった今、この瞬間から、それが私の全世界となった。

「マイスタージンガーよりグリューネヘルツ1、離陸を許可する」

「ジーガー(了解)」

 管制塔より指示が飛ぶ。
 整備員達の手で車輪止めが外され、漆黒の機体は滑るように滑走を開始。
数百メートルを駆けた後、機体は大地の束縛を離れて闇色の空へと羽搏いた。
ギヤを上げ、フラップを戻して上昇に移る。
エンジンは極めて快調。 数分後には雲の上に出るだろう。
 この闇の先に何があるのか。 卑怯者の汚名は返上出来るのか。
 少なくとも、この瞬間の私にはそれらはどうでもよいことだった。

242 名前:エアハルト・フォン・ラインダース ◆CnAdcTa152 :2006/11/25(土) 03:20:45

>>241
(5/5)
 飛び立ってから数時間が過ぎ去った。
高度10,000メートルの高空はひたすらに静かだった。
聞こえてくるのはJumo213Eの唸りだけ。
航法装置と時計があと少しで所定の空域に到達することを知らせてくる。

「グリューネヘルツよりフェンリル、応答願う。
繰り返す。 グリューネヘルツよりフェンリル、応答願う……」

 所定の周波数にて『フェンリル』をコール。
予定通りなら『フェンリル』から応答が返ってくるはずだ。

「こちら『フェンリル』。 グリューネヘルツ、現在位置を知らせよ」

 さして間を置かず、陰気な声が返って来た。
どこか不安にさせる声色。 もし死人が喋るようなことがあるのなら、こんな声を出すのかもしれない。

「こちらグリューネヘルツ。
 現在位置は……」

 ここで機を少しバンクさせ、下方を見やる。
雲の少ない透き通った夜空は、月明かりと相まって非常に良好な視界を得ることができた。
目標Z――信じられないほど巨大な飛行船「Zeppelin Neue Ara」は確かに其処にいた。
幼い頃、ニュース映画で見たヒンデンブルグ号など物の数にもならない威容。
月光を受けて白く輝く船体は、さながら深海に潜むモビィ・ディックだ。

「こちらグリューネヘルツ!
現在位置、Zの上空10,000メートル!
フェンリル、指示を請う!」

 頭に叩き込んだ命令書の中身を思い出しながら、無線機に向かって叫ぶ。

「フェンリルよりグリューネヘルツ。
 別名あるまで現在位置にて待機せよ」

「ジーガー!」

 再び返ってくる死人の声。
得体の知れない不安を感じながらも、私は声の主に従った。
私はドイツ空軍のパイロットだ。
他にどんな道があるというのか?


243 名前:シエル ◆kcbhGUILTY :2006/11/25(土) 04:07:41

>導入

緊急の呼び出しと言う時点で嫌な予感はしていた。
それがナルバレック直々の、となれば、また無理難題を押し付けられる事になるのだろう
と覚悟してもいた。けれど――――

「流石に、これはないでしょう……」

小さな窓の向こう、眼下に広がるのは空。
高度にして4000m程の、気温なんて聞きたくないような酷寒の空だ。
こんな所で何をしているのかと言えば、任務に他ならなかった。

------------------------------------------------------------------------------------

「最後の大隊は知っているな。連中が動いた」

正確にはその一部がだが、と付け加えて、椅子に腰掛けたナルバレックは葉巻を咥えた。
吸い込んだ煙を吐き出しながら続ける。

「前々からナチの残党共に動きがあったのは確かだが、その目的までは掴めなかった。
 それが、つい先ほど明らかになったんだよ。
 連中がめざしているのは南極――目的は、 」

南極にナチ。
これ以上無いほどの僻地に彼らのようなオカルト好きが興味を示すものと言えば、
一つしかない。

「まさか……レン高原ですか!?
 でもあそこは……」

「――――そうだ。こちら側ではない。
 ……随分と詳しいな。その知識もロアの置き土産か?」

無意識に口走っていた言葉が、冷笑と共に浴びせ掛けられた痛烈な皮肉で遮られる。
顔に出せば相手を喜ばせるだけ、と分かっていても動揺は見て取れたらしい。

「だが、私の話はまだ終わっていない。黙って聞け。
 奴らの目的地は、お前の言った通りレン高原。そして、其処へ至る為の道を――――
 『聖櫃』で開くつもりらしい」

冷ややかでいて、愉快で堪らないと言わんばかりの笑みを、不快げに歪めて続けた。
吐き捨てるように、心底忌々しげに。

――――尤も、そんな話を聞いていて愉快になれるはずもありませんが。

失われた聖櫃――正に最大級の聖遺物だ。
それを使って道を拓く。つまりは奈落堕ちを故意に発生させると言う事だろう。
あの最後の大隊が、狂った吸血鬼達が喜んで手を貸しそうな話だった。

「当然、好きにさせるわけにはいかないし、そのつもりもない。
 任務だ。阻止しろ。お前の持ちうる最大の戦力で、だ。
 足は用意してある、今すぐ発て」

------------------------------------------------------------------------------------

これが昨日の深夜。
あれよあれよと荷物を抱えたまま空の旅を繰り返してここに至る、と言うわけだった。
因みに、目的の飛行船に乗り移る手段は――――

「……そろそろ時間で――ん?
 これは……なんだ、この電波……総統?」

機のパイロットである青年の、困惑した声が聞こえた。
ハッチを開いた瞬間、防寒着に身を固めていても刺すような空気が流れ込んでくる。

「気にしない事です。何でもありませんよ。
 私はここで降りるので、そのまま引き返して下さい。では、有難うございました」

ヘルメットに組み込まれたマイクにそう告げ、視界一杯に広がる青と白の世界に目を向け――――


私は、自由落下を始めた。


【飛行船上空:船目掛けて落下中】

244 名前:ロタール・フォン・リヒトフォーフェン:2006/11/25(土) 05:31:25


 ニュージーランドの空軍基地からスクランブルしたF-16二機。
 A・ダヴェンポート少尉―――ロタール・フォン・リヒトホーフェンが撃墜。
 ハンス・グリム中尉―――マンフレート・フォン・リヒトホーフェンが撃墜。

 新ツェッペリン護衛のために南極くんだりまで出向いたアメリカ軍空母。
 明確な敵意を持って出撃したF-14D、多数。―――後に全滅。
 マンフレートは三機、ロタールは二機を仕留めた。
 戦闘飛行中隊(ヤーシュタ)―――残る六人の飛行士は、兄弟のおこぼれに
食らいつくので精一杯だった。いつにも増してリヒトホーフェン兄弟は獰猛だ。

 エア・フォースvsルフトヴァッフェ。―――ドイツ側の圧勝。
 飛行船内からF-14Dと飛行中隊の格闘戦を眺めていた吸血鬼兵達―――最新鋭
戦闘機が一機墜ちるごとに喝采の声をあげた。
 リヒトホーフェン兄弟―――第二次世界大戦を前線で経験した古参兵からす
れば、ジークフリートに等しき空の英雄。制空の覇者。
 ドイツ空軍無敵伝説の再来。誰もが半世紀前を思い出し、血を滾らせた。

 ドイツ空軍第一戦闘航空団(ヤークトゲシュヴァーダー・アイン)
 通称「JG1」
 だが、伝説は彼等をこう呼ぶ。
 ―――リヒトホーフェン・フライング・サーカス、と。

245 名前:ロタール・フォン・リヒトフォーフェン:2006/11/25(土) 05:31:54

>>244

レッドバロンの弟=\――その称号に何よりも苦しみ、それ以上に誇りとして
受け入れるロタール・フォン・リヒトホーフェンは、飛行船内でもっとも高い
位置―――つまりは気嚢のいただきで、南極の風を全身に浴びていた。
 上半身は裸体。下半身はゆったりとしたフライトボトムをはいている。
 揺れる金髪に不敵な美貌が示すように、変身能力――醜きガーゴイル――は、
今は解かれている。この身体では残り5分と寒さに耐えきれないだろうが、
その短い時間を今は愉しみたかった。直接薄肌に受け止める凍て付く風――
―分厚い毛皮越し感じるそれとは異なる風情を孕んでいた。

 変身能力―――JG1の飛行士全てが有する。サーカスがサーカスたる由縁。
 だが、巨大な怪物(ガルガンチュア・ガーゴイル)から人型へと常時自在に
変化を可能とするのは8人の飛行士の中でもリヒトホーフェン兄弟だけだった。
 他の6人は変身時に常に苦痛を必要とする。肉が盛り上がり、骨が軋みを上げ
る痛みを制御しきれないのだ。逆に、彼の兄は―――偉大なるレッドバロンは
身体の一部のみを変化させることすら出来た。
 変身能力の完全なる制御。―――エルダーですら至難の技能。
 だが、マンフレートはロタールと違い変化を解こうとしなかった。その赤い
悪鬼の姿のまま、気嚢の上で弟同様に風を浴びている。
 レッドバロンの弟は時々思う。
 兄は人で在ることと怪物で在ることに、違いを見出せないのではないか、と。
 寡黙な英雄は何も語らない。

 レッドバロンの理念―――狩ること。
 スコアを伸ばし、操縦席から飛行士を引きずり出して血肉を啜ること。
 それのみに集約されている。
 生まれついての狩人。ロタールや他の飛行士とは違う在り方。
 マンフレートは愉しむために狩りを行わない/ロタールは狩りを愉しむ。
 狩人と狩猟家―――それが兄弟の性質を分かつ、絶対の部分だった。

 寡黙な英雄は変わらず空を見つめている。
 ロタールは気付いていた。彼は英雄なんかではないことに。
 ロタールは英雄だった。他の6人の飛行士もドイツ史に花を添える撃墜王だ。
 彼等は生きながらにして伝説だった。
 だが、マンフレートは違う。
 彼の中では未だ第一次世界大戦が続いていた。
 レッドバロンに戦後は決して訪れない。

246 名前:ロタール・フォン・リヒトフォーフェン:2006/11/25(土) 05:32:15

>>244>>245

 ロタールは真なる怪物から目を逸らすと、残る飛行士の姿を追った。
 JG1の残る6人―――シュタルハイン/ハマー/ウーデット/シュターヘル/
エンメルマン/シュライヒ―――頼れる英雄集団。
 今はシュターヘル/シュライヒ組とエンメルマン/ハマー組がの2組が哨戒
に当たっている。
 極寒の空の中、あえて身体を動かす4匹のガーゴイル―――ヤンクの飛行士
の血を一滴も啜れなかった落ちこぼれ。
 飢えの極みにある悪鬼たちは獲物を求めて空を徘徊する。

 ロタールの足下―――船内ではVIPどものブラッド・バーが開かれている。
 連隊指揮官のお墨付きで、上質な生きた血を飲み放題。
 だが、マンフレートはJG1の飛行士にブラッド・バーの参加を許さなかった。
 過剰な血液摂取は吸血鬼を陶酔状態に陥らせる―――感覚の麻痺。
 第一戦闘航空団は常に感覚を研ぎ澄ますことを強制されている。
 つまり常時飢餓状態であれということだ。
 飢えを満たすには狩るしかなかった。
 臨戦時にのみ―――狩ることなき吸血行為を、マンフレートは許さない。

 また船内に立ち入ることを許さないのは別の理由があった。
 JG1の指揮官にしてオーナー―――グルマルキンSS連隊指揮官殿は、ミレニ
アムとサーカスの接触を望んでいない。
 JG1の8人の飛行士―――第一次世界大戦に行われた吸血鬼改造計画の成功例。
 最後の大隊―――博士(ドク)と呼ばれる男はロタールもよく覚えていた。
 カリガリ博士やテン・ブリケンの助手として計画に加わっていた研究員だ。
 ニューボーンでありながらエルダーの能力を持つJG1の飛行士―――その
技術を博士は欲しがっていた。何としてでも。何を犠牲にしてでも。
 グルマルキンの返事―――当然の如く「ナイン」。
 JG1は鉤十字騎士団の切り札だった。
 今作戦でも鉤十字騎士団が独自に擁する唯一の戦力だ。
 だからこそ、ロンギヌス13や新戦乙女に「手出し無用」の令を出してまで、
JG1にアメリカ空軍を蹴散らさせた。―――見え透いた示威行為。
 同じナチと言えども彼等は一枚岩ではない。

247 名前:ロタール・フォン・リヒトフォーフェン:2006/11/25(土) 05:32:48

>>244>>245>>246

 ブルーノ・シュターヘル―――半世紀以上を生きながら未だ吸血衝動を持て
余す醜悪な殺人者。飢えに耐えきれず、哨戒任務も忘れて新戦乙女隊の魔女
を見入っている。このまま放置すればその白い喉元に食らいつきかねない。
 新戦乙女隊との衝突。あまりぞっとはしなかった。
 魔女集団のリーダー―――マンフレートとは別種の冷徹さを持っている。
 口説く相手としては上等すぎたが、空で踊るのはごめん被りたかった。
 少なくもシュターヘル如きに墜とせる相手ではない。

 ―――さて、どうしたものか。

 シュターヘルの非紳士的な行為に、シュタルハインやウーデットが頭に血を
昇らせている。貴族出身を矜持とする彼等の目には魔女集団すらも淑女に映る。

『リヒトホーフェン大尉』
 スピーカー越しに響く冷徹の声―――グルマルキンからの無線連絡。
 応えるレッドバロン。おまえが応答しろ、と無言で目線を寄越してきた。

「ロタールだ。何かあったのか」
『姿勢制御エンジンが一発死んだ。原因は不明だ』
「バードストライクか? こっちでは何も確認してないぞ」
『ならば今から確かめろ』

 ぶつり、と一方的に切られた。舌打ち―――SS大佐はJG1を何がなんでも
今作戦の主役に仕立て上げたいようだ。

「シュターヘル、シュライヒ。名誉挽回のチャンスをくれてやる。第6姿勢
制御エンジンに行って周辺を確かめろ。敵≠ェいれば適当に狩ってやれ」
『本当か?』
 シュターヘルの歓声―――飢えも限界を迎えている。
 シュライヒは「ヤボール」と短く返事をすると、無線を切った。
 取りあえずの安心。
 例え工作員が潜んでいても、この二人ならば対処はできる。

 マンフレート・フォン・リヒトホーフェン―――赤い悪魔は依然沈黙を
保っていた。何かを待つように、ただ空を見上げて。
 南極の空はロタールが知るどこよりも高かった。

【JG1×6 周辺空域:気嚢上部に待機】
【シュターヘル/シュライヒ 周辺空域:ローレライの下へ出撃】 

248 名前:ヴァーミリオン・CD・ヘイズ ◆/CD/iS.AAU :2006/11/25(土) 06:35:53

導入


「くそったれ―――何故、気付かなかった」

超巨大飛行船『Zeppelin Neue Ara』一等客室。
室内に設置された30インチのモニターで、狂気に満ちた演説の一部始終を見せ付けられた
『異端なる空賊』ヴァーミリオン・CD・ヘイズは、下唇を強くかみ締め、そう吐き捨てた。

状況は、最悪といえた。
咄嗟に端末に繋いだ有機コードから脳内のI-ブレインが得た情報。
映像の発信源は、間違いなく艦首、操縦室。
いわば船の心臓部が、初手の段階で相手に奪われたのだ。
そして恐らくそこまでの道程で立ちはだかる警備兵や、操舵士、
一般客に拘わらず、全ての乗務員を皆殺しにして、心臓部に居座ったのは―――


「ナチ、だと? こいつはいったい何の冗談だ? 今は何時代だってんだ、くそ」


悪態が次から次へと溢れ出る。
そうしながらも、ヘイズは現状を把握するための作業を休むことなく続ける。
手元の携帯端末から無線通信を用いてアクセス。
接続先は、念のため周辺空域に待機させてあるヘイズの相棒―――
百五十メートル級高速機動艦『HunterPigeon』。
その、自立制御システム。

『―――申し訳ありません。南極上空、電磁波の影響が最も強い瞬間を狙われました。
こちらでも、感知が出来ず―――』

ノイズ交じりの合成音声。
制御システムの仮想人格『ハリー』の通信が、頼りなく客室内に響く。
携帯端末のモニタに映し出された線と円だけの単純な顔も、今は無残にノイズで歪んでいる。

「ちっ、その様子だと外の様子を探るのは絶望的だな―――既に航空戦力が展開された後だろう。
仕方ない。ハリー、現状を維持しつつ空域内で待機。状況に応じて飛行船とは一定の距離をとれ」

『―――了解コピー

それだけを残し、携帯端末に映った顔は沈黙した。
ハリーが自発的に通信を切断したのか、それともノイズの嵐で通信を維持できなくなったのか。

ともあれ、舌打ちしつつヘイズは更に状況の把握に努める。
少なくとも自分のような魔法士が、電子戦で旧時代の亡霊なんかに負けるはずが無い。
そんな自負が、ヘイズのI-ブレインと作業の手を休ませない。

客室モニタに有機コードを繋いだまま、各所に設置されたカメラの情報をI-ブレインに直接送り込む。
制圧されたのは、操縦室とそれに続く廊下、そして―――飛行船中層部・展望台パーティールームでの、
阿鼻叫喚の騒乱の様子。既に、地獄は幕を開けている。
敵の総規模は―――少なく見積もっても、50名以上。それでもかなり楽観的な数値ではあるが。
そも、潜入してきた部隊以外に、一体何人の刺客を「客の中に」紛れ込ませたのかが分からない。
そう―――自分が、表向き乗客としてこの船の護衛任務に就いているように。
一方、機械系等で姿勢制御エンジンの1基にトラブル―――完全に機能停止している。
単なる事故か、ナチによるものか、はたまた抵抗勢力によるものか、判断は一切つかない。


最早、一刻も猶予は無かった。
端末に繋がれた有機コードを引き千切るように乱暴に抜き、ヘイズはその場に立ち上がる。
即座に、目的と手段を設定。

最終目的―――操縦室の奪取及び船内コントロールの復帰、予定航路への進路修正。
その為の手段―――自分と同じ命を受けたはずの「仲間」との合流。

状況は既に、彼一人で全て―――乗客とこの飛行船―――を救えるような状態ではない。
ならば一人でも多く、意志を同じくする者を集め、互いに連携を取り合い進んでいけばいい。
一人では『組織』には勝てない―――ヘイズ自身の何よりも信頼の置ける、経験則。

「それにしても、やれやれ―――全く面倒な事に巻き込まれちまった」

ジャケットの裏に忍ばせていた自動式拳銃を引き抜き、スライドを引いて、弾丸を薬室に送る。

「この仕事を請けたときから、嫌な予感はしていたが……乗客の命がかかってるとあっちゃ、
笑い話にも出来やしないな」

シニカルな微笑を浮かべつつ、ヘイズは勢い良く客室を飛び出した。
これから船内で巻き起こる全ての悲劇を、彼の全力を持って阻止するために。



249 名前:ヴァーミリオン・CD・ヘイズ ◆/CD/iS.AAU :2006/11/25(土) 06:37:06

>>248

最初から、奇妙な依頼ではあった。
常日頃から世界中を飛び回っているHunterPigeonとヘイズに直接接触してきたエージェント。
「エイブラハムの末裔」と名乗ったその機関の遣いは、実に簡単な、いや、簡単すぎる
仕事内容を提示してきた。

「明日、○○時にニューヤークを出航する巨大飛行船の護衛に就いて欲しい」

そう言って渡されたのは、件の飛行船のチケットと、前金としてのトランク1杯の札束。

余りにも、話がうますぎた。
だが、ヘイズは依頼を受けた……いや、受けざるを得なかった。
そう、正直な話、困窮していたのである。

この時代、彼の相棒である高速機動艦は、それを維持するだけで莫大なコストがかかる。
そしてこの手のなんでも屋家業に舞い込む仕事はと言えば、安全なものであればあるほど
当然報酬は雀の涙、危険であればあるほど、高く跳ね上がるものだ。
だが危険な仕事であればあるほど、同時に彼の相棒が破損する確率も跳ね上がり、
同時に規格外の修理費を高額報酬の大部分で当てる羽目になる確率も上がる。

要するに、この時代。
彼の稼業は、非常に「割に合わない」のだ。

そんな中舞い込んだ、割の良すぎる仕事の依頼。
彼に、選択肢は無かった。
裏を取るだけの時間的余裕も無かった。
そうして彼は二つ返事で、書類にサインを行った。

そう、この船が世界のパワーバランスを揺るがしかねない、重大な「荷物」を抱えていた事。
彼の調査力をもってすれば直ぐに判明したはずのその事実すら、ヘイズは知る事がなかった。


                     ※


(……全くもって、オレという奴は学習能力に乏しいらしい)

客室が立ち並ぶ廊下を慎重に進みながら、ヘイズは一人苦笑とともに思う。
無茶な契約をして死に瀕した事も、一度や二度の話ではない。
だが、同時に。
この仕事を受けたことに、僅かばかりの幸運を感じてもいた。

何故なら、もう二度と、自分の目の前で、繰り返させるわけにはいかなかった。
余りに、一方的な虐殺―――
そう、彼の現在の相棒「HunterPigeon」で嘗て起こった、彼の家族達の「死」。
もう、あんな悲しみを、他の誰にも味あわせる訳には―――

「いかねぇ、よな」


ヘイズの笑みが深くなる。しかしそれは、既に自嘲的な物ではない。
己の決意をより強く示す、意志の光を強く湛えた笑みだった。



(ヘイズ、行動開始―――場所:客室廊下)

250 名前:ふみこ・O・V ◆HPv8dyzZiE :2006/11/25(土) 06:46:00

>>221
 ふみこは眼下に広がる光景を、ただ何とはなしに眺めていた。
 特に何があるというわけではない。ただ一面、南極の氷が広がっているだけだ。

 何もない。
 ここには何もない。
 だからこそ、そこには平穏があり……そして、その平穏があるからこそ、ふみこは今、すぐ
そばで起こっている異常を強く感じていた。ナチスの残存勢力による飛行船のハイジャッ
ク。そして、その目的……これが異常でなくて、一体なんだというのだろうか?

 インカムからグルマルキンの演説が聞こえてくる。
 だから、スイッチを切った。
 全くの茶番だ。聞くに堪えない。
 彼女の言う事には、一分の真実もありはしない。
 総統の命令書。それを手に、今は亡き総統の意思を受け継ぎ立ち上がる忠義の士。
狂気山脈を踏み越え、その先にあるレン高原での大独逸の復興。ドイツの……いや、
今となってはナチスのみが信じる、理想の達成。

 全て嘘っぱちだ。全て。
 グルマルキンがそのような忠義の輩ではない事は、誰が見ても明らかだ。彼女には彼女
の思惑があり……ナチスの残党は、その為に利用されているに過ぎない。

(いや……)

 と、この作戦における主要な人物たちを思い、ふみこは頭を振った。

(あの女だけじゃない、か)

 明らかにチンピラ以外の何者でもないヤン・ヴァレンタインとルーク・ヴァレンタイン――そ
して、彼らの背後にいる戦争狂。常にグルマルキンの側に寄って立つモリガン・アーンスラン
ド。そしてレザード・ヴァレス。

 ここは舞台か、さもなければチェス盤の上だ、とふみこは思った。
 彼女らは舞台を作る演出家であり、ゲームのプレイヤーであり、そして観客だ。
 とすれば、差し詰めナチスは役者であり駒といったところか。それも、群集(モブ)で雑兵
(ポーン)。せいぜい彼らが満足いくよう、派手に動いて散るのが役どころというわけだ。

 魔女オゼット・ヴァンシュタインならば、このような茶番にわざわざ参加してやる義理はない。
 しかし、ナチス所属のオゼット・ヴァンシュタイン中尉となると、話は別だった。
 軍人にとって命令は絶対だ。それが例え、どんなに信憑性のないものであったとしても。
総統の命令書を盾に命令されれば、ナチス党員ならば誰だって従わないわけにはいかな
いのだ。それにはむかうのは、ふみこの軍人としての矜持が許さなかった。

 しかしそれでも、不満というものはある。
 だからふみこはこの作戦に参加することに乗り気ではなかったし、今も気分が乗らないで
いるのである。

251 名前:ふみこ・O・V ◆HPv8dyzZiE :2006/11/25(土) 06:46:36

>>250
 ふと、超巨大飛行船の周囲を警戒するように飛び回る魔女たちが目に入った。
 彼女ら"新戦乙女隊"は、今回、ふみこに与えられた武器である。
 決して、同僚や部下ではない。
 七人の魔女たちは少しも意味を違わず、ふみこに与えられた"武器"だ。

 第二次大戦時に発足し、救国の部隊として期待されるも、全く役に立たなかった戦乙
女隊。しかし、どうやらその立案者はあの後も生き延び、この馬鹿げた発案をどうにかして
役立つように出来ないかどうか、六十年もの間ずっと試行錯誤し、とうとうそれを形にして
しまったらしい。

 今回の作戦に召集されたふみこに紹介されたのは、最新鋭の――科学的にも、魔術
的にも、だ――装備に身を包んだ、感情の無い十四の瞳だった。

 彼女たちを育てた男は、得意げに言った。
『上官からの命令には一切服従……焦りなどの感情の波から来るミスが無く……たとえ
腕が吹き飛ぼうとも、自らの職務に忠実……』etcetc...
 そして最後にふみこの肩を叩き、『君に彼女たちを任せる。存分に使い、十分な戦果を
挙げてくれ』、そう言ったのだった。

(馬鹿馬鹿しい)
 その説明の大半を聞き流しながら、ふみこはそう思っていた。
(戦争は人がするものよ)
 ふみこは目の前の七人……いや、七体の人形に嫌悪感しか抱かなかったが、しかし、
押し付けられてしまったものは仕方ない。

 ふみこは、彼女たちを道具だと考えるようにした。それも、使い捨ての。
 そう考えれば、確かに優秀だと言えない事も無いかもしれない。
 マッハで飛行しながらパンツァーファウストをぶっ放し、呪文を唱えれば地上に向けて地
獄の業火が降り注ぐ。
 うん、悪くない。
 ふみこは火力信奉者だった。

 だが、それでも。
 それでもやはり、ふみこは今回の作戦には乗り気ではなかった。正直なところ、参加する
気は無かったのだ。自身に下されている総統命令を盾に、グルマルキンの召集を跳ね除
ける事も出来た。

 だが、彼女はそれをしなかった。
 何故か?

 ふみこは歌いながら辺りを見回した。
 超巨大飛行船の周辺を飛び回るのは、魔女だけではない。
 悪魔さながらの姿をしたリヒトフォーヘン・サーカス――彼らは既に先ほど、F16を落とし
ており、その実力は折り紙つきだ。尤も、その裏に透けて見えるグルマルキンの意図が、ふ
みこは気に入らなかったのだが――に加え、前時代の甲冑に身を包んだ聖槍騎士団達。
 ふみこは彼らを見ながら、目を細める。

「懐かしい匂いね。……いくさ場の」
『気に入っておられますな』

 ふみこの声に応えたのは、虚空からの声だ。
 しかし、ふみこは動じることなく、髪をかきあげてそれに応える。

「戦争と男が私の生き甲斐だもの。それより、準備は出来ているんでしょうね、ミュンヒハ
ウゼン。いえ、今は森の魔王と呼んだ方がよかったかしら?」
『懐かしい名ですな』

 ミュンヒハウゼン……ふみこに仕える万能執事にして地獄の軍団で重きをなしていたグ
レーターデビルは、過ぎた日々を慈しむような空気を、その言葉に滲ませた。

『無論、準備は万端でございます。ご命令があれば、何なりと』
「今回はお前に働いてもらうかもしれないわ。準備をしておきなさい」
『はっ』

 ふみこは考える。
 ナチス。魔女。ハイジャック。
――どう考えても悪役だった。ならば。

「ふふっ」
『どうなされました?』

 主人の突然の上機嫌に、ミュンヒハウゼンが声をかける。
 尤も、この万能執事には、既にふみこの思い付きなど把握しているのかもしれないが。

「いえ……今回、あんまり乗り気がしないから、また記憶を閉じようと思っていたのだけど。
考えが変わったわ。どうせ今回は悪役なのだし、徹底的にそれを貫いてみようと思って」

 方針は決まった。
 ならば、後は突き進むのみ。
 ふみこはその口元に鋭利な微笑を浮かべると、目を細めて言った。

「さあ、楽しみましょう。戦争の時間よ」

252 名前:哀川潤 ◆MzXQXe8zTc :2006/11/25(土) 09:38:13

 ――アメリカ合衆国ニュージャージー州、ニューアーク・リバティー国際空港

その日、人類最強の請負人こと哀川潤はそこに居た。
飛行機に乗るため? 否。
本日めでたく処女航海となった超巨大硬式飛行船、Zeppelin Neue Araに乗る為である。



数日前――



「よーう、玖渚ちん。 元気にしてたかー?」
『あー! 潤ちゃーん! どしたのどしたのどしたの?
潤ちゃんから電話してくるなんて超珍しいじゃん!』

「いやー、あのな? ちょっと玖渚ちんに頼みたい事が有るんだけどさ、いいか?」
『うに? 何何何ー? 僕様ちゃんに頼みって何ー?』

「飛行船の『Zeppelin Neue Ara』号って知ってるだろ?」
『うにうに、勿論知ってるんだよ? あの無駄にバカデカい飛行船でしょ?
結構ニュースにもなってたからねー』

「ソレのチケットさー、一枚用意出来ねーか?」
『あ、出来るけど? もしかしてもしかして潤ちゃんその船で一仕事だったりする訳?』

「うんにゃ、違う違う。 今受けてた依頼が終ってさ、次の仕事も少し後だし。
珍しくオフ状態っつー事で、ちょっと乗ってみてーなー。って感じ。
玖渚ちんに頼むのが一番手っ取り早いかなー、なんて思った訳よ」
『へー、潤ちゃんがオフかー。 ホントに珍しい事尽くめだね。
もしかして真夏に雪が降ったりして! ホントうにょいって感じだね!
分かったよ潤ちゃん、すぐ手配して届けるようにしとく』

「おお、さんくー。玖渚ちん。愛してるぜ」

最後の部分だけ戯言遣いの声色を遣い、携帯電話の通話を切った。

ぱたん、めしゃばき。

そのまま携帯をクズカゴに投げ込む。
余談だが、哀川潤によって捨てられた携帯電話は、
貸せ貸さないでモメて気絶させられた青年の所持していた物である。

さらに数日後、玖渚機関の人間からチケットを受け取り、今日に至る――



「…さてと――」

と、その超弩級飛行船を見上げる。流石にデカい。
その姿はまさに巨鯨、いや。そう形容してもまだ役不足な程。

「――乗り込むとするか」

そう言ってシニカルに笑うと、赤色は飛行船に乗り込んだ。

【哀川潤:客室】

253 名前:イグニス ◆IgnisC3BW6 :2006/11/25(土) 18:32:34

>>222

 自分に割り当てられた客室から、”荷物”を回収するために最下層の倉庫区画へと向かうべく,、小走りに
回廊を進んでいる最中。
 豪華客船、と言う名目の船には決して存在していては行けないモノが視界に映った。
 無粋な――だが極めて機能的に作られた野戦服。鉄帽。表情を多うマフラー。
 腕の中には、懐かしのエルマ・ベルケMP40短機関銃(シュマイザー)。
 そして――いち早く獲物にありついたであろう、赤黒く濡れた塹壕用シャベル。

 武装親衛隊(Waffen-SS)。
 六十年ほど前の欧州戦線では馴染みの、髑髏の兵隊。

 こちらがひとりだったからか、あるいは私が女だったからか――奴の行動は、思わず感心してしまいそう
になるほどに迅速だった。塹壕用のシャベルを振り上げながら、獣のような挙動でこちらへと肉薄――
すなわち、蹂躙である。

 鉄帽とマフラーの隙間からのぞく眼差しには、如何なる感情も含まれては居ない――在るのは、ただの
殺意。歓喜ではなく、興奮でもなく、情欲でもなく――ただ作業として獲物を狩り尽くす、純粋な殺人者の
瞳。思わず感心する――そこには、新生者にありがちな、哀れな獲物をいたぶってやろうなどと言う下衆
な意図は、一欠片とて見受けられなかったからだ。

 だが。油断はあったのだろう。
 所詮は人間、だと。状況もあった。
 私は奴らを知っていたが――奴らは私を知らなかった。

 その、わずかの差が。
 この私に、吸血鬼の反応を、ほんの一瞬だけ上回らせていた。

 ――斬、と。
 鞘の内側を駆け抜けた黒塗りの刀身が、シャベルを握りしめた両腕を跳ね飛ばす。
 凶器を振り下ろした体勢のまま、驚愕に目を見開く一匹の兵隊。
 だがその姿に何の感慨も抱かず、返す刀で私は一息に、その首を切り落とした。
 司令塔と両腕を失った肉体が、理性の制御を離れびくびくと痙攣を開始する。間髪入れずにコートの
内側から、やはり黒塗りの投剣――月牙を抜き出すと、捻るように心臓へと叩き込む。
 崩れたバランスを立て直すすべを持たない生きた骸は、そのまま壁へと崩れ落ち――まるで小便のよう
にあちこちから血を垂れ流すと、ぐったりと動かなくなる。

「まずは、一匹――」

 そこに。
 艦内スピーカから、聞き覚えのある声が聞こえてくる。
 あの女だ。

 まったく、趣味の悪い演説だ――愛刀を鞘へと収めながら、そんなことを思う。
 だが、あの女がいよいよ動き出したと言うことは、もうさほど時間は残されていない、と言うことでもある。

「動き出すのが少しばかり遅かったか――まあいい、やることは変わらん」

 言いながら、またもやコートの内側から取り出した、銀色のジッポライタを弄ぶ。
 フリントホイールを逆に回転。二十回ほど回したところで、火もつけずにその場に放り捨てる。

「ま、これは私からの再会のお祝いだ。たっぷり堪能してくれ」

 さて、と声を上げる。船内には、思ったよりも大量の兵員が入り込んで居るようだ。
 となると、手持ちの火器だけでは心許ない。早急に、運び込んだ得物を確保する必要がある。

 ともかく。愉しいことになりそうなのは、間違いはなさそうだった。

「……と。その前に、だ」

 軍装から、通信機と思しきモノを取り上げる。何かの役には立つだろう。



 ――そして。
 自らが作り出した死骸には目もくれず、イグニスは倉庫へと続く回廊を、ひとり軽い足取りで進んでいく。

【現在位置:倉庫上層へと向かう回廊】


254 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/25(土) 18:33:59


>>253

「くだらん茶番だ」

 カメラが止まるのを確認して、グルマルキンはシガレットをくわえた。

「だがこの声明で、勝手に電波を盗み取っている各国首脳はゲームのルールを
理解できたろう。この船に聖櫃が積まれていると知って、攻撃をするような気
狂いはいまい。核なんぞよりもよほどに強力な抑止力だ」

 すばやくモリガンが火種を差し出す。軍用の無骨なオイルライターではなく、
指先に直接火を灯す不可思議な手品───SS大佐はその奇術に驚くわけでも
なく、かといって礼も言わず、当然ように火種に口を寄せた。
 暫く紫煙を堪能する。
 モリガンの視線が熱く身体を射抜くのが分かった。
 少しでも油断すればたちまち虜となる恐るべき視線だ。
 その魅了をすり抜けあえて高圧的に接する。
 いつ立場が反転するかも分からぬ砂上の楼閣。
 その緊張感が心地よく愉快だった。
 グルマルキンとモリガンの関係───上司と部下。倒錯的な主従の関係。
 だが蓋を分けてみれば、水面下では主導権の綱引きが行われている。
 モリガン。半世紀前から親衛隊の保安部に所属する将校だと自称したが、その
真偽は定かではない。もし彼女が表立ってグルマルキンを取り込んできたら、
その時こそ、この黒服が誰よりもよく似合う女の素性を知るときになるだろう。
 グルマルキンとモリガンの関係───両者とも、暗黙のうちにこの綱引きを
愉しんでいる。

 対するヴァルトラウテの嫌悪に満ちた視線。
 グルマルキンは不意に嗤笑する。
 ヴァルトラウテはモリガンを徹底的に拒んでいた。
 まともに顔すら合わせようとしない。
 高潔なるヴァルキューレを模したヴァルトラウテ。機械仕掛けの彼女では、
モリガンが有する肉の耽美を理解できないのだ。
 戦場を馳せる戦乙女は寝台の上でも鋼の甲冑を纏う。
 だが気に病む必要はなかった。
 ヴァルトラウテの潔癖───半世紀前からの付き合い/自身もその対象。
 今更、歩調を合わせる気にはなれない。その必要もない。

 女将校達のそれぞれの思惑───さて、ヴァンシュタイン嬢もこの場にいれ
ば面白かったのだが。モリガン/ヴァルトラウテとはまた性質を異にする髑髏
十字の魔女はグルマルキンのお気に入りだった。
 SS連隊指揮官殿が愉しいピクニックを満喫しているそのとき───船内通信
士がマイク越しに問答を始めた。ハルトマンに視線を投げて状況把握に出向
かせる。十秒と待たず返ってきた。顔が緊張に強張っている。

「二人殺られました。カール・ハインツ下級騎兵曹長とエルヴィン・レンバッハ
上級猟兵―――両名ともミレニアムの武装SSです」

 舌打ち。ハインツとレンバッハ―――どちらも雑魚ではない。東部戦線で生き
ながらにして地獄を見た本物の戦士だ。「詳しく状況を教えろ。なぜ死んだ」

「まずハインツ下級曹長が殺られたみたいです。両腕を斬り飛ばされて、心臓
を貫かれていました。一分と経たずにそれを発見したレンバッハ上級猟兵が、
灰化する前のハインツ下級曹長を発見―――急いで走り寄りました。その時
すでに抵抗者の人影は無かったみたいです」

「死体に罠が仕掛けられていたな?」

「ヤー。ジッポを発見―――その直後に小爆発です。至近距離から銀の破片を
浴びて、レンバッハ上級猟兵も即死しました」

 舌打ち。戦友を生き餌する手口―――手慣れている。工作員の手管ではない。
戦場での在り方を心得ている者の仕業と見て間違いなかった。
 最低でも一人、厄介なレジスタンスがいる。―――サーベルで斬りつけたか
のような綺麗な両腕の切り口/心臓を一突きに穿った正確さ/ジッポ爆弾の置
き土産。あまりに洗練された手口に、一人のハンターがイメージされる。
 もし予想通りならば最悪だ。―――死体は回廊で発見、か。

255 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/25(土) 18:34:23

>>254

「ハルトマン、無線のマイクを持て」
 無線の装備は全ての兵員に義務付けられている。
 情報伝達の速さこそが本作戦の生命線だ。

『───グルマルキンだ。すでに報告を受けているだろうが、一人殺られた。
痕跡から、並の使い手ではないことが分かる。食屍鬼や兵卒程度では相手に
ならんだろう。各員、大いに悦べ。我々の出番だ。ようやく我々に仕事が回って
きた。狂気山脈に至るまで呑気に遊覧を堪能するなど我々の流儀ではないからな。
各員それぞれの裁量で戦功をたてよ。相手を選ぶな。民間人を装う卑劣なレジス
タンスに抗する術はただ一つ───塵殺だ』

 無線機をハルトマンに投げ返すと、代わりにミクロサイズの携帯無線機を装備
した。同様のものをモリガンにも手渡す。

「後の指示は無線で飛ばす。間違ってもこの操縦室にレジスタンスを入れるな。
聖櫃だけは何としてでも死守しろ───分かっているなレザード・ヴァレス!」

 錬金術師は皮肉気に口端を吊り上げるだけだった。

「ヴァルトラウテ、指揮官代行は貴様だ。私と連絡が取れないときは貴様の
判断で指示を出せ。間違っても退却命令など出してくれるなよ。あの頃から
変わらず、我々には死守命令しかありえない」

 黒革のホルスターからワルサーを抜き出し、初弾を装填する。
 明らかな臨戦支度。

「大佐、どういうわけですか」寡黙を常とするハルトマンが狼狽した。
「おまえはここに残れ。中佐の補佐をしろ」
「大佐、まさか打って出るおつもりですか? 相手は単騎です。ヴァレンタイ
ン兄弟に任せれば……」

「ナイン!」
 グルマルキンの威圧に満ちた声が室内を震わす。
「これは切っ掛けに過ぎない。私には分かる、これを口火に連中はわらわらと
群がり、我々を縛ろうとするだろう。連中≠ヘ死に物狂いで我々を止めよう
とする。だから我々も死に物狂いで馳せるのだ───狂気の山脈へと!
 フェンリル狼はグレイプニルの足枷すら引きちぎる。黄昏の時まで誰も我々
を止められはしない」

「しかし大佐はこの作戦の要です。万が一の時があったら……」
「そのための指揮官代理だ。そのためのレザード・ヴァレスだ。何も問題は
ない。───行くぞモリガン。おまえに戦場というものを教えてやる」

 もはやハルトマンが何を言っても無駄だった。背中にヴァルトラウテ中佐
の憐れみの視線を感じる。ハルトマンは誰にも気づかれぬように嘆息する。
 大佐は猪武者とは程遠い人物だ。が、理想の地を前にして血が騒いでいる
のだろう。これは興奮を静めるための出撃だった。
 グルマルキンはモリガンを引き連れ、操縦席を出て行った。

【最上層:操縦室→中層部:回廊】

256 名前:飛竜 ◆HIRYUmxRKo :2006/11/25(土) 18:53:20

>導入

 南極の凍えた空に、場違いとも思えるハンググライダーが舞っていた。
 ハンググライダーを駆るのは、闇を生地にして仕立てたかのような黒装束に身を包み、鮮やかな真紅のマフラーで首と口元を覆う“影”。
その左胸には、赤く染め抜かれた『飛』の一文字。

 “影”の名は飛竜。暗殺、諜報など、世界の“影”を一手に担うプロフェッショナル集団『ストライダーズ』の特A級ストライダーである。


『指令:飛行船内部へ侵入し、武装制圧集団の首魁、グルマルキン・フォン・シュティーベルを抹殺せよ』

 その指令が下ったのは、武装親衛隊特別部付魔術師、グルマルキン・フォン・シュティーベル大佐が
処女航海中の飛行船『Zeppelin Neue Ara』を制圧してから、数分後のことだった。
 それを依頼したのが誰かは分からない。もっとも、誰の依頼かなど関係ないし、興味もない。
 任務遂行に必要な情報――侵入経路、内部構造、そして敵対勢力の規模と暗殺対象のデータ。
それさえ分かれば、他の情報など不要だ。

 眼下に広がる雲を割り、空飛ぶ城砦とでも形容すべき『Zeppelin Neue Ara』の巨大な気嚢が姿を現した。

「潜入目標を補足。これより任務を開始する」
 インカムの先――ストライダーズ本部に報告し、ハンググライダーから手を離す。目指すは、空中城砦最上部。

 目覚めの時間だ、亡霊ども。くだらん夢に満足したか?

【現在位置:飛行船気嚢部へ向け自由落下中】

257 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/11/25(土) 19:26:31


弓塚さつき参戦導入 1/2

 ちっちっちっ―――室内を満たす緊張を一秒ごとに切り刻む壁掛け時計の秒針。
 部屋の中央にはパイプ椅子が組み立てられている。
 壁に掛けられたハーケンクロイツの隊旗。
 それを背後に背負う事務用のデスクは、パイプ椅子と正面から相対している。

 デスクには一般SSの事務員の姿が。顔を上げては椅子に座る少女を睨み、顔を
下げては一心に書類に書き込み、また顔を上げて睨む。その繰り返し。
 緊張する少女。視線が落ち着かず、天上を眺めたり床を見下ろしたり。

『質問』
「解答」

『―――なぜ、本作戦への参加を希望されたのですか』
「わ、わたし、今までずっと自分に自身が持てなかったんです……。将来、
自分はどうなっちゃうのかな、とかずっと不安に思っていて―――その時、
この作戦の募集チラシを見たんです。この作戦でなら―――この作戦でなら、
わたしも力になれる、頑張れるって思ったんです!」

『面接に来るのはうちが初めてではありませんね』
「最後の大隊のところにも行ったんですけど、身長が足りないから駄目だって
言われちゃいましたぁ。ヴァルキュリア戦隊も『間に合っている』って……」

『何かこれが得意ということはありますか?』
「えっと……殴り合いなら―――」
『うちのヘルマン・タッツェルヴェルと互角に殴り合えると?』
「……無理です」
『空が飛べたりしますか?』
「……できません」
『変身能力は?』
「……ありません」
『銃器類を扱えますか?』
「……撃たれたことなら何度かあります。撃ったことはありません」
『夜会に参加した経験は? ダンスはできますか? ディナーのマナーは?』
「……ま、マイム・マイムなら踊ったことがあります」
『あなたはアカシャの蛇の直系らしいですね。固有結界を扱えますか?』
「はい! 設定だけならあります!」

 沈黙。

『……ユミツカさんは家も棺桶も持っていないみたいですね。昼はどのように
して陽光を避けているのかですか?』
「え、あの……公園の遊具ドームの中に潜り込んだり、廃ビルに隠れたりして
過ごしています……」
『真冬でも? その制服姿で?』
「はい……」
『―――素晴らしい!』
「……へ?」

『合格です』
 面接官が立ち上がり握手を求めてくる。弓塚さつきは慌てて応じた。
「え―――あの、そんな流れでしたっけ?」

 雪上迷彩が施された防寒コートとミトンのかわいらしい手袋が、その場で
支給された。更にカーキー色のショルダーバッグも渡される。中にはコンパス
と世界地図とGPS端末、信号弾、誘導灯、それに衛星携帯電話が入っていた。
 血液パックも数日分詰め込まれている。

 面接官が笑顔で口を開く。
『ブレザーの上からそれ等を身につけてくれれば結構です』

「え―――黒服じゃないんですか? わたし、それを期待して……」
 笑顔で首を横に振られた。
「で、でも……飛行船には乗れるんですよね? あの豪華飛行船には?!」
 笑顔で首を横に振られた。

「……あれ?」

258 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/11/25(土) 19:30:23


弓塚さつき参戦導入 2/2
>>>257

『弓塚さんには本作戦でもっとも大事な任務を与えます。それは、目的地へと
近付いたツェッペリンの誘導です』

 誘導です。
 誘導です。
 誘導です。

 耳の奥で面接官の朗らかな言葉が谺する。―――はっと覚醒。
 気付けば弓塚さつきはシャーベット状の雪に横たわり、身体を半分埋めていた。
 氷点下の毛布は彼女から優しさと温もりと声明を容赦なく奪っていく。
 このままじゃ死んじゃう―――慌てて立ち上がる。が、正面から吹き付ける
ブリザードに堪えきれず転倒。学校指定のローファーでは地面に噛み付くこと
もできず、山地の急な勾配を転がり落ちてゆく。
 限界を3度は迎えた不死の身体。
 もはや立ち上がる気力もなく、重力に引き摺られるがままに落ちていった。
 氷柱に受け止められ、何とか振り出しに戻ることだけは回避する。

「死ぬ……絶対に死ぬ」

 凍て付いた唇から漏れる、呻きとも嘆きともつかぬ声。
 死ぬ。もう死ぬ。いい加減死ぬ。
 数日前から1000度は繰り返したであろう、弓塚さつきの呪詛。
 だが、どういうワケか一向に効果を現してくれない。

 ―――お、お腹減ったなぁ……。もうペンギンさんもいないよ。

 気圧の変化により、携帯食代わり血液パックは破裂してしまった。
 GPSと衛星携帯電話は使い方が分からず叩いてみたら、砕けてしまった。
 空気が薄い。呼吸を必要としないさつきだからこそ耐えられたが、常人なら
高山病にかかって当然の環境だ。

 山頂は高度3万4千フィートにも達する長規模山脈。
 人間どころか、化生の侵入すら拒んでいた。
 あまりにも困難な、壁。
 だが、それでも彼女には山を登る義務があった。
 この狂気の山を踏破しなければならない理由があった。

 あの雲の上で、みんなが待っているから。
 カジノにダンスパーティにふかふかのベッド―――超豪華飛行船への搭乗。
 これはチャンスなのだ。
 超最底辺で生きるさつきがセレブの仲間入りをする、最後のチャンスなのだ。

「だから、わたしは……ここで止まれないよ!」

 さつきの耳の奥で、盛大な拍手の音が聞こえた。人類(?)初の狂気山脈
踏破を成し遂げた彼女に、みなが敬意を払う映像が脳裏に浮かぶ。
 それがあるから、彼女はまだ頑張れた。

 アムンゼンもスコットも裸足で逃げ出す偉業―――ミニスカートで南極制覇。
 弓塚さつきの旅はまだ終わらない。

【現在地:狂気山脈を登山中】

259 名前:レップ ◆ZcW/SSsF6Y :2006/11/25(土) 19:44:28


未確認飛行物体が高速で接近。

ヴァルトラウテSS中佐からの報告。敵に決まっていた。
彼女の示した方角へ向き直ると、甲板を移動し適切な狙撃地点を確保する。

どうせ敵はこの飛行船を撃墜することはできない。するわけにはいかない。
我々が一番警戒しなければならないのは接近され乗り移られることだ。

ならば遠くまで討って出て守りが手薄になるよりも、近場で守りを固めたほうがいい。
だから、ロンギヌス13 、新戦乙女隊、第一戦闘航空団が迎撃するにはまだ少し遠い。

もっとも、相手の速度ならすぐに彼らの戦場に踏み入れるだろうが。

現時点で射程の一番長い武器を持っているのはレップだった。
だから彼は、信用できない銃を手に、凍えそうな甲板に伏せて射撃姿勢をとっていた。

ヴァルトラウテSS中佐からの、正確な方角、距離、高度、彼我の角度の報告。
刻々と最新のもの変わっていくそれ。あまりの詳細さに感動すら覚える。




260 名前:レップ ◆ZcW/SSsF6Y :2006/11/25(土) 19:44:51


>259

見えた。そして正気を疑った。

あまりにもばかばかしい光景。小型の航空機の翼の上に人が乗っていた。
まるで、ロシア人の得意とするタンク・デザント戦術。狂気の沙汰だ。
乗るほうも乗るほうだが、乗せるほうも大概だった。

驚き、あきれ、そしてすぐに気を引き締める。
あんなことができるなど、まともな生物ではないということだ。
思考的にも、肉体的にも。乗せるほうも乗るほうも。
そんなものは、すぐに殺さなくてはならない。殺すべきだ。

しっかりと銃を肩付けし、安全装置をはずす。

五感と、そして直感を研ぎ澄ます。
目で距離を測り、角度を見て取り、風を読み、肌で湿度を感じ、温度をはかり、全身で気圧を感じる。

自分の頭の仲で組み立てられた狙撃式。ヴァルトラウテSS中佐からの情報。
完全に一致。

銃がしっかりと固定されていることを再度確認すると、ゆっくりと息を吐いていき、止める。
遊びがなくなるまで引き金をゆっくりと絞っていく。
ある地点で抵抗を感じた。第一段階の終わりだ。あと一押しで撃発する。

照準器ごしに標的を確認。敵航空機の中心を狙う。数瞬先の未来を予測し狙いを修正。
引き金に添えた指に、そうっと力を加える。

すさまじい音を立てて弾丸が発射される。

もれる舌打ち。引き金を引いた瞬間に判った。やはり照準が狂っている。
それはほんの僅かだが、これではあたらない。

抵抗を感じた地点まで引き金をゆっくり戻す。
すばやくボルトを引き排莢するとボルトを戻して次弾をこめる。

第2射。

予想していた通り目標の数十cm横を通り過ぎた。

だがこれで、銃の癖はわかった。照準はずれているが出鱈目ではない。
その誤差を組み込んだ上で狙撃すればいい。観測射撃は十分だった。

抵抗を感じた地点まで引き金をゆっくり戻す。
すばやくボルトを引き排莢するとボルトを戻して次弾をこめる。
薬室には狙撃用に成形された劣化ウラン弾。

ここからが彼の本当の狙撃だ。

【中層部:甲板】
 

261 名前:高木由美子:2006/11/25(土) 19:51:46

>>222 グルマルキン大佐の初志表明を受けて。

突然の演説、独逸国籍の船にしても、この手のブラックユーモアって
ちょっとやりすぎではないかしら?
あるご婦人は冷静さを装って、扇を口に囁きました。

「戦う民主主義」。
そんな憲法を保持し続ける事を願われた共和国にとっては
禁じ手だった、、、そんな風に思うのです。
 場は悄然となりました。無理もありません。
GPS携帯で事実確認を急ぐ方、笑い飛ばす方。
機関室は何処か?なんて。

───ああ神様、私たちを、この方たちをお救い下さい。

この人たちは「運」が少しだけ悪かった、それだけなのです。
【茨の中から落ちし種子あり。荊、育ち塞ぎ足れば、実を結ばず】
自分たちが荒れ果てた荊地に迷い込んでしまった一滴…そんな風に
考えられたら、少しは気もまぎれるはずなのです。

次第に焦りから、紳士の方々は苛立ち、私なんか目にも入れずに
突き飛ばし、怒号を放ち。………
途方にくれた私は祈りながら、白亜の壁によりかかりました。
そこが最期のよりしろだ、なんて。そんな風に思うように。
…丁度その頃でしょうか。
あの忌まわしい異変が、、災厄が撒き散らされたのは。
【展望台1F:パーティールーム】

262 名前:レザード・ヴァレス(M) ◆jBiAWniQ.. :2006/11/25(土) 20:00:09



彼の心は穢れを知らぬ子供のように純粋で、冥界の悪魔より遥かに狡猾。
見初めた乙女のためならばいかな代償も厭わぬ純情。
目的のためなれば手段を選ばぬ非情。
一心に女神を求むる無垢さ。
神を超えんとする邪欲。                 例え神が怒ろうと
全ては歪んだ野心。
総ては偽らぬ愛。                                     止まる訳がどこにある?

           例え因果がその牙剥こうとも。

                ――――全てが複雑に捻れ編まれた一本の“芯”。

                     我が願い適えぬ理由、何処に在る。

                  進まぬ道理が何所に有る?                   総てが旅の果て。
                                                    全ては次元の彼方。
   どれだけ律に背こうと                                  律を越えんとする執念。
                                               一心に手段を求むる只管に。
                                        元より巡らすその策動に陣営は問わず。
                               焦がれた彼女のためなれば世界の破滅も厭わぬ狂気。
                    その悲願は鉤十字の魔女と逢い、夢郷の門を解き放つことで達成される。




 ――――ようやく、此処まで辿り着いた。


彼は眼鏡の位置を直し、笑いを浮かべ眼前のそれに視線を移した。
遥けき伝説に謳われし伝説の聖遺物、『聖櫃』。

彼がミッドガルドよりこの“世界”に赴いて後、話にだけは聞いたことがある。
曰く、『神の遺物』
曰く、『神の御業』
曰く、『禁忌の函』
曰く、『禍福の根源』
曰く、『失われたアーク』
その旧き箱に秘めるとされるは天地創造の欠片、かつて十の戒めを刻み込まれ、
投じられる事で天地を割った石版。創生神が遺わした神威の奇蹟。
その力は加護ではなく、一つの国と民を滅ぼした、むしろ災厄の形を以って顕現すること幾度。

だが―――――この男にとって。
こんなもの.....の由来も、正体すらも如何でもよいのだ。

必要なのは唯一。
数多の想念を溜め込み、発動するその絶大な“力”―――――。
異界の錬金術師レザード・ヴァレスの悲願を適えるだけの、威る力が存在する一点のみ。
故に彼は手を組んだ。
異界の敗残者、鉤十字を掲げる狂った亡霊どもと。その他の者とすらも。
故に彼は此処にいる。
パラケルススより遥か昔、彼が『賢者の石』を有したと識る魔女と共に。

因果律は確かな歪みを見せている。
本来この次元に存在せぬ彼が歴史の陰で名を残したことに“なっている”事実、それが何よりの証左。
律は乱せる。秩序は破壊せしめられる。
その賢者の石にも記されておらぬ真実が、彼の狂気を狂喜に変える。

今、彼は異界を越えて此処に実存しているのだ。
唯一絶対の目的の為に、為だけに。

確たる知性に彩られたその瞳に宿る“色”は誰よりも濁り、かつ誰よりも澄んだ矛盾の色。
そのようなものを孕む人間の、魂のあり方とは一つしかありえぬ。
それは即ち―――――。
 

263 名前:レザード・ヴァレス(M) ◆jBiAWniQ.. :2006/11/25(土) 20:02:13

>>262 続き

「では――――レン高原への門も待ちかねている、いざ制御と参りましょうか。
 ですがその前に…そこの士官殿。命脈…いえ、パイプラインの制御系はどちらか?」

司令官グルマルキン大佐により、司令室の兵はレザードの要請あれば最大限協力するよう命令されている。
すなわち「盟友である錬金術師の為す事 全ては今作戦遂行において最優先事項である」と。
魔女の携えた命令書が亡霊たちに対すお墨付きであるならば、レザードの指示は―――『聖櫃』
制御および起動に関する案件ならば―――現司令室においてそれ以上の絶対権限を有するといえた。

故に、程なく部外者である彼が目的の操作設備に案内されるのも至極当然。
これからの作戦に必要な『儀式』を始めるのだから。

「結構。では――――――」

コンソールの前で光芒が躍る。
現代文明の最先端に進入するは、逆行の果てに科学を超越した神秘の技法。
言霊と方陣展開による、紛れなき真の魔法である。

         竜脈は地霊の気を以って網を為し――――

                命脈は血の息吹に因って河と成る―――――


其れ”は魔力を伴う術式であった。
ツェペリン船内全域を、正に網の目のごとく張り巡らされた電精と熱、そして情報のケーブル。
その内部を怒涛の速度で走りぬけ、原子レベルで周囲に式を刻み込む。
刻まれた式はまた式を生み、刻んで進む。
内部の構造材を微細な、だが力あるルーン文字で隙間なく埋め尽くすために。


          表壁に疾く刻まれ奔るは神の叡智――――――

                 血肉は至精を孕み其の密を増し――――


これはあくまで外的な強化を促す魔術『レインフォース』とは似て非なる、肉体内部の神経を経(パス)として
直接必要な魔力術式を送る「強化」の呪法。
他ならぬ神々の争いにより失伝され、稀代の錬金術師が『賢者の石』から得た技術が一つ。
そう――――これぞこの男だけが有する神代の叡智。


                 ――――泥は石に拠りて鐵へ。

聖櫃の周囲を空間レベルで結晶化せしめ、霊的影響を無にした『凍結魔法』も。

            ―――――鐵は火に拠りて鉅に。

聖櫃を運ぶにたるレビ氏族の魂を竜牙兵に宿らせ、厳格な様式を欺き笑う『輸魂の呪』も。

        ――――――そして、鉅は賢者に拠りて黄金と成る。

位相の赤/風向きの蒼/冷温の緑/音壁の灰/磁気の黒。
まばゆき五色五重に展開された光芒の五星、今もなお制御の根幹を成して稼動する『多重方陣』も。

    ―――――故に其の楼閣は 霊験を経て城砦へと刷新されん。


そして、今。
聖櫃制御が最後の要、飛行船そのものを巨大な霊的媒体と変容させる―――


「古が『霊起の呪』、今ここに―――――“Rune Reinforced”!」



『神の御業』――――失われたアーク。
そう呼ばれ古今人類に遍く畏れられた聖櫃は今、『神々の御業』によって陵辱される。
因果の律を越え来訪した狂人、ミッドガルド最大最悪の錬金術師に。

船に音なき息吹が満ち、レザードがその場を離れ聖櫃のある場に戻ったと同時。
脚をくず折らせ、体を開き変形するのは運搬を担った竜牙兵たち。
その4体がチェスの駒を思わせる威容へと変わったとき、聖櫃は自動的にそれら4つが
構成する四角の中央――――結界装置の中心へと収まった。
儀式はまだ終わっていない、むしろこれからが本番だ。
これだけの施術をして未だ不安定にある聖櫃の制御を行うため。
陵辱された神秘をあるべき姿へ調教するために。

尚も紡がれる言霊。胎動するかのように明滅する方陣。
幾多の術式は更なる構成を編まれ、連動の果てに渾然となる。


―――――断言しよう。
此処に神はいない。


                       居るのは、神を犯す狂気だけである。


【現在位置:操縦室】


264 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/11/25(土) 20:03:14


          吸血大殲 空戦祭
           「新標綱作戦」
       ――Operation Neue Ziel――


 導入レス番纏め

第一章 亡霊 ―die Geist―
 プロローグ>>146>>147>>148
 ヴァルトラウテ>>149
 モリガン・アーンスランド>>150
 グルマルキン・フォン・シュティーベル>>151>>152
 タイトル>>153

第二章 遊覧 ―Sightseeing―
 ツェッペリン・ノイエ・エーラ>>154>>155
 レイオット・スタインバーグ>>156>>157>>158
 レミア・シルヴェスタ4世>>165>>166
 イグニス>>183>>184>>185
 哀川潤>>252
 リザ・ワイルドマン>>232
 アドルフ・ヒトラー>>187>>188>>189
 コダマ>>160>>161
 麻宮アテナ>>163>>164
 イリーナ・フォウリー>>173>>174
 リゾット・ネエロ>>178>>179
 津村斗貴子>>180>>181>>182
 ビリー・ロン>>186
 高木由美江>>175>>176>>177
 タバサ>>159
 パチュリー・ノーレッジ>>190>>191
 レミリア・スカーレット>>205>>206
 ミスティア・ローレライ>>162
 ケイト・コナー>>215>>216
 サクラ>>233>>234>>235>>236
 コーディ>>239
 ヘル・レップ>>167>>168>>169>>170>>171>>172

第三章 制圧 ―Vormachtstellung―
 ヴァレンタイン兄弟>>192>>193>>194
 ルーク・ヴァレンタイン>>195>>196
 ヤン・ヴァレンタイン>>197
 ヘルマン・タッツェルヴェル>>207>>208
 ロンギヌス13>>213>>214
 モリガン・アーンスランド>>204
 リヒトホーフェン・サーカス>>198>>199>>200>>201>>202
 ヘル・レップ>>209>>210>>211>>212
 エアハルト・フォン・ラインダース>>237>>238>>240>>241>>242

第四章 声明 ―Erklarung―
 ナチパレード>>217>>218>>219
 モリガン・アーンスランド>>223
 ハイジャック声明>>220>>221>>222
 オゼット・ヴァンシュタイン>>250>>251
 リヒトホーフェン・サーカス>>244>>245>>246>>247
 大尉>>224>>225

第五章 反撃 ―Aufbegehren―
 反撃の時>>226>>227
 エリ・カサモト>>228
 長谷川虎蔵>>229>>230
 飛竜>>256
 シエル>>243
 ヴァーミリオン・CD・ヘイズ>>248
 フランドール・スカーレット>>231

第六章 開幕 ―Eroffnung―
 イグニス>>253
 グルマルキン>>254>>255
 弓塚さつき>>257>>258
 ヘル・レップ>>259>>260
 高木由美江>>261
 レザード・ヴァレス>>262>>263

265 名前:ジェームズ・ホワン(M) ◆ko.IhfiTmE :2006/11/25(土) 20:10:28

まったく、キースの奴も物好きだネェ
サングラスをかけた痩せぎすの東洋人こと、僕…ジェームズ・ホワンはそう呟いて、下らなさそうに空を仰ぐ
ナチどもに協力しろといわれた時は自分の耳を疑った。
エグリゴリのエージェントとして数限りない非合法行為の数々に手を染めてきた自分が
何故、あのような遺物どもに協力せねばならぬのかと、

だが、彼らの狙い、そしてキースの狙いが明らかになるにつれ、
くだらないと思っていた話に俄然興味を覚えつつある自分に気が付いた。
かの女将校殿のお言葉を耳にして、僕…いや俺は一言だけ呟いた
好きにすればいいんじゃない…と。
さぁて、仕事に移るとするか、せめて能力分は働かないとキースにも大佐殿にも
顔が立たないだろうからねぇ。

【現在位置:飛行船最後尾】

266 名前:ジェームズ・ホワン(M) ◆ko.IhfiTmE :2006/11/25(土) 20:21:04

ゴメン、場所変更

【現在位置:客室最後尾】 ね

267 名前:Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA :2006/11/25(土) 20:21:09

>>222

「……なんと、まあ」

 唐突に始まり、そして唐突に終わった演説――だかなんだか――に、思わず気の抜けた感想が零れる。

 他人とのごたごたを嫌って客室に引きこもっていたのが、功を奏した形ではあった。
 どたどたと通路を駆け抜けていく物騒極まりない軍靴の音も、遠くから響いてくる明らかな銃声も、幸運
にも客室ひとつひとつにまで目を配る余力はないようだった。
 いや、あるいは。連中にしてみれば、乗客の事など、心底どうでもいいのかも知れない。
 目に付けば殺し、目に付かなければ無視する――そんな程度の代物。

 それにしても――

「……第四帝国だ? こんな地の果てで? 正気か?」

 それを連中に問うことが、間抜け以外なにものでもないことを自覚しつつも、そう口にせずには居られな
かった。
 そしてなにより。あの首魁と思わしき女の眼だ。
 自分で言っていることなんぞ、ほんの少しも信じていない……そんな眼。
 それにだ。わざわざあんな外連味たっぷりに、全艦に向かって自分たちの目的を明かしてやる理由が
どこにある?

「大体にして、六十年前の命令書だと?
 髭の伍長も国すらもすでに無くなってる軍隊の命令書のなにが正当だってんだよ。
そもそも、ほんとにンなこと書いてあるかどうかが疑わしい――」

「……少なくとも、読み上げられた文面はその通りでした。
 署名も、見えた限りでは正式なものです」

 こちらの愚痴に、思わぬ反応をカペルテータが返してくる。
 思わずその顔をのぞき込む――室内、それも個室と言うこともあり、すでに外套はかぶっていない。
鮮血のように鮮やかな髪と双眸が、こちらをしっかりと見つめている。

「……判るのか、独逸語?」
「読む程度なら。聞き取りと発音は無理ですが。後は公式戦史などで」

「あぁ、そう――」

 あっさりとショッキングな告白をされて、一瞬頭が凍り付く。
 ……なんというか、立場がないと言うべきか。まあ、それはともかく、だ。

「……今度俺にも教えてくれ。
 しかし、あの命令書とやらが正式なものであっても、こちらとしてはそれに付き合う義理なんざこれっぽっ
ちもないんだ。大人しくしてれば安心だって保証もない。さて――」

 これからどうするか――そんなことを呟いた、その時だった。

>>253-254

 遠くで。
 小さく、音が聞こえた。
 なんというか、これは――

「……爆音?」

 だが、こんな空の上でなにが爆ぜたというのか。
 嫌な予感が止まらない――――

 それを肯定するように。
カペルテータが、決定的な一言を口にした。

「レイオット。船のあちらこちらから。魔力が――」

 どうやら、この無粋な途中乗船のお客様方は、人間ではないらしい――

 くそったれっ!


>>255

 ややあって。
 周りが、にわかに騒がしくなる。
 ――駆け足。銃声。悲鳴。また銃声。その繰り返し。

 悟る。始まったのだ、と。
 部屋の隅でがたがた震えて、命乞いをしていればいい時間は、終わってしまったのだと。

「……前回はシージャック、今回は南極の大空でハイジャックか。
 決めた。もう二度と、旅行になんか行かないからな――」

 乗船の際も取り上げられず、腰に括られたままのホルスタから銃を取り出す。
 <ハードフレア>カスタム・リボルヴァ。45口径。回転式弾倉に装填されている六発の銃弾。
 それら一端取り出し、ナイフで弾頭部に十字の傷を作る。即席のホロー・ポイント弾。

 だが――相手は、化け物だ。六発程度でケリが付くのか?
 握り込んだグリップに、じっとりと汗がにじむ。出来なければ、連中の餌になるのはこちらのほうだ。

 そこに。

「……これを」

 カペルテータが、意外なものを差し出してくる。
 これは――

「……ハードボーラー?」

 AMTハードボーラー。
 俺の持っているLWFウルフハウンドと同じく、コルト・ガバメントのバリエーションモデル。
 競技用に開発された大口径拳銃だが、およそ十五歳ほどの少女の持つ得物ではない。

 ……いや、これは。

「……お前が俺のところに来たとき、持っていた奴か?」
「はい」

「……いいのか?」
「ローランドさんに整備して貰っています。弾も、新品です」

「……判った。借りておく」

 そして、決断。

「……趣味じゃないが、打って出るぞ。こんなところでじっとしてても時間を無駄にするだけだ」
「はい」
「連中が――扉の前に来たら開けてくれ。タイミングは任せる。まずは、ここから抜け出すぞ――」

【現在位置:客室】

268 名前:コダマ ◆K3dMKODAMA :2006/11/25(土) 20:23:39

>>217-222
そして豪奢なる宴は、突如吹き込んだ『死の風』によってたちまち血と狂気に染め上げられる。
パーティールームに詰め込まれていた各界のセレブリティは、たちまちの内に死者の列に
並べ立てられていく。生まれたときのように、泣きながら並べられていく。

コダマ――今は『龍崎駈音』は、幸いにも未だその行列には並んでいなかった。
だが、それも時間の問題だろう。そう、それは時間の問題なのだ。

―――頃合か。

『龍崎駈音』は、右手に持っていたカクテルグラスを床に取り落とすのと同時に
左手で視界を遮るように顔に押し当てた。
グラスの割れる音が、呼び鈴のように高く鳴り響き近くに居た武装したグール達を呼び寄せる。
紳士淑女の仮面を剥ぎ捨てたがごとくに、本性を露わにした矮小な人間たちが逃げ惑う。

そう、今は『仮面』を脱ぎ捨てるように本性を現す時のだ。

“テレビでおなじみ”の『龍崎駈音』が、髪を撫で付けるようにそのまま左手を上げると
そこには誰一人見知らぬ顔があった。

コダマは、ライフルを構えた目の前のグールの両手首に蹴りを打ち込み。
そのまま足を地に下ろすことなく、グールの頭蓋を踵で叩き割る。

そして、もう二体のグールの襟首を掴んで引き寄せると同時に後方に宙返り。
高さが足りないのでバック宙ではなくバック転。
ふさがった両手の代わりに、グールの頭で接地してバック転を完了させた。
卵の割れるような音。そして、血のプリンのような脳髄を露出させるグールが三体。

コダマは、新しい『死の風』を今宴席の場に吹き込んだのだ。
【現在位置:展望台1F・パーティールーム】

269 名前:Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA :2006/11/25(土) 20:24:01

>>267
訂正:【現在位置:中層部・客室】

270 名前:喰屍鬼(グール):2006/11/25(土) 20:24:13


――――死者は安らぎを得るが、彼らは死して尚得られない。


喰屍鬼(グール)とは、“死に損ない”とはそういうものだ。
彼らも元は哀れな被害者に過ぎない、だが相手が最悪の極みだった。
吸血鬼に血を吸われ死んだ非処女、非童貞のものは血肉を求めるグールと化す。

彼らの行動原理は最悪にして単純明快。
進み、
殺し、
啜り、
喰らう。

人の命を、その血肉を。
死に損なって得た腕力と耐久力で、生ける死体たちは蹂躙の限りを行うのだ。
破れ爆ぜ砕け散り絶えるまで。
喰らった獲物を同胞へと感染させ、ねずみ算式に数を増殖させながら。

発生数は被害者の数だけ。
客室に、催事場に、死体が残るあらゆる場所に。
本能というには余りにおぞましい行動原理のまま、彼らは例外なく進攻を開始する。

(続く)

271 名前:パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU :2006/11/25(土) 20:24:14

大気を支配する血臭。死を孕んだ静寂。狂気に満ちた魔女の薫陶。
まことに残念ながら、これらの状況に接して素直に恐怖するだけの感性はパチュリーにも友にもなかった。

「まったく、とことん相変わらずのようね、ミス・グルマルキンは。趣味の悪さまで」

端的な感想を述べながら、パチュリーは友を先導するように廊下を進む。
確か、この先には気球部分に通じる回廊があったはずだ。
このまま進めば先の演説の場所に到達し、運がよければかの演説の主にめぐり合えるという仕組みである。

「私は彼女に挨拶をしていくつもりだけれど。レミィ、貴方はどうする?」

[現在地:中層:客室廊下(回廊側に移動中)]

272 名前:sage:sage

sage

273 名前:喰屍鬼(グール)〜広がる絶望:2006/11/25(土) 20:29:05

>>270

 おぎゃあ! おぎゃあ!

「お願いだから泣き止んで!」

  その女性は赤子を必死にあやしていた、文字通り必死である。
 この状況でテロリストに目をつけられたら命に関わる。

  赤子は赤子で周囲の緊迫した空気に当てられてか、泣き止む
 気配は一向に見せない、寧ろ、泣き声は大きくなる一方だ。

  女性は扉を見る、鍵はしっかりかかっている、大丈夫大丈夫。
 声は外には漏れていない、そう漏れていない、このまま時間が
 経てば嵐は過ぎ去ってくれるに――――………





 ぐしゃ

  泣き声は止んだ。さっきまで泣いていたものは肉の塊になって
 地面に転がっている。母親の口回りは紅く化粧されている。少々、
 髪の毛や何か赤黒いモノも顔に付着している。

「あ……あ…」

  女性はそのままよろよろと立ち上がり、破壊された扉から外へと
 歩き出す。
  他の客室からも女性の様に顔を赤黒く塗装した客達が次々と顔を出す。


  ―――――かくして、絶望は増殖していく、どこまでも


 (客室一帯、一般客が次々に喰屍鬼(グール)化

  喰屍鬼(グール)に喰われると犠牲者も喰屍鬼(グール)化しネズミ算式に増殖。

  以降、喰屍鬼(グール)達は無差別に人間を襲います)

274 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/25(土) 20:29:21

 かつて俺の国では、他国より発達した遺伝子科学技術を以って、様々なものが作られた。
 他の国では人道的問題などの理由で忌避される人間そのものの改造も、そのような論理感
覚の欠如した連中にとっては、あまり大した足枷にはならなかったらしい。
 俺ももう詳しい事は知らないが、連中は相当の無茶をやっていた。『前時代の遺児』とは、そ
うした中でも特に愛玩用として動物の一部などを移植された子供達を言う。
 俺も、ある意味ではその一部だ――――が、あまりそれについて語る積もりはない。

 リザのバアさんというのは、そうした「華やかなりし頃の遺物」の一人だ。頭にあるのは猫とも
鼠とも取れぬ獣の耳で背丈も小さい婆だが、伊達に歳を喰っちゃいない。
 普通の人間と違って如何なる保護も受けない彼等は、独自のコミューンを形成している。バ
アさんはそんなコミューンを取り纏め、マフィアやギャングといった荒事の得意な連中が溢れ
る地下の一角を担うだけの力――――暴力とはまた異なる"力"を、持っている。

 俺(と"自称"相棒のバドー君)は、上下関係無く広い交友関係と情報網を持つバアさんを仲
介屋にして、様々な――――本当に様々な仕事を斡旋して貰っている。
 今回の仕事もそうした中の一つであり、それ自体は取り立ててマズい事じゃない。実際、バ
アさんにはそれなりに世話ンなってる。本人の前じゃ絶対言わないけど。

 ……仕事の内容は、あまり気持ちのいいものではなかった。
 何処かの莫迦な好事家が世界中から歳若い女を集めて何かしようとしている、という事。
 その中に地下のコミューンから連れ去られた『前時代の遺児』も混じっている、という事。

 故に俺が出張る事になった訳だが、問題はそこまで往く過程と、そこに至っての手順だ。

 何しろ、豪華客船なのだ。然るべき立場の人間でない限り、武器を持ち込む事は禁じられて
いる。真逆押し込み強盗よろしく、銃を持って乗り込む訳にもいかない。
 いや、別にそういうのもアリかもしれないけど、飛行船が降り立った空港には、世界中から集
められた報道の連中が固めていた。そんな中で余計な真似をすれば、俺は世界中に「銃を持
った若造、図に乗って強盗やらかす」と報道される事になるだろう。酷過ぎる。

 まぁ、これについての問題は解決している。リザのバアさんが手を回して、警備員用武器品
目の中に俺のモーゼルとルガーを割り込ませてくれたらしいのだ。
 この船の警備員やシークレットサービスは、厳格で合理的な現代軍人の出身者が多い。恐
らくそんな骨董品を使おうとするぐらいなら、もう少しマシな銃を手に取るだろう。
 だから、上層部倉庫区間の何処かにある警備員用武器ロッカーまで辿り着けば、俺は船の
中にいながらにして武器を手に出来るし、その足で仕事に向かえる――――情報では、集め
られた女達は全て上層部の倉庫の何処かに軟禁されているという。

 俺が問題にしているのは、どうやって警備員用銃器なんて物騒な代物が満載になっている
場所まで辿り着くかという事であり、それ以外の事態は考えていない。
 確かにその女達がまるで無防備なまま放置されている訳はなく、まず間違いなくドンパチに
なるだろうとは思っていた。そのための武器だし、それは前提以前の話だ。

 しかし少なくとも、この船が半世紀前の地獄から舞い戻ってきたナチス第三帝國の亡霊共に
ハイジャックされるという――――その考えはなかったわ。


275 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/25(土) 20:29:42

 俺は船内を歩きながら、地図を確認しようとして、本来それがあるべき液晶モニターが一時間
ほど前に見知った制服の見知らぬ狂女共を映して以来沈黙している事を思い出した。
 嘆息して、取り敢えず目の前にあったアルミの扉を開けてみる。かしゅっ、という何だかSFっ
ぽい空気圧で開いた扉の向こうにいたのは、

 ――――腐った皮膚、ところどころ欠損した身体、食欲しかない濁った瞳、

 どう見てもグールです本当にありがとうごz

 ――――アアァアァァァ

 俺が思考を終えるより先に、そいつらは掴んでいた頭を放り出して俺の方に歩き出した。
 どうやら俺は連中の新しい「エサ」として認識されたらしい。ぐちゃり、べちゃり、とタイル張りの
床を叩く足が、何とも気持ちの悪い音を立てていてうぼぁ。

 「チッ……嬉しくねえよ」

 俺は躊躇せずキッチンの中に足を踏み入れると、軽く身を屈めて伸ばされた腕を回避した。
床に転がってた包丁を拾い、立ち上がる際の勢いを利用して、目前の胴に突き刺す。
 劣化版吸血鬼だけあって、心臓を刺されたそのグールは動かなくなった。しかしキッチンの
中には白衣を着込んだグールが他に六つおり、安心してはいられない。

 「ったく。折角のキッチンだっつのに、セガールは何処往ったんだ?」

 バリバリと頭を掻きながら、俺は右手に握った包丁を振るい、横合いから掴み掛かろうとした
グールの頸を一文字に切り落とした。が、それだけで先端が折れた。
 矢張りきちんとしたナイフでもない限り、骨を断つのは難しい。そんな事を考えながら後ろに
下がり、腰に引っ掛けていたウォレットチェーンの先端を左手に持つ。

 「おら、よっと」

 そのまま前方に助走をつけて、跳躍――――標的としたグールの頸にチェーンを引っ掛け、
逆一本背負いの要領で思い切り引っ張ると、いやな感触が手の中に伝わって来た。
 着地と同時に振り向くと、グールの頸が折れて、背中の方に倒れていた。濁った目が俺を睨
みつけていたので、顔を顰めてその額に折れた包丁を突き刺した。

 「これじゃ埒が空かねえ」

 俺は嘆息すると、先刻拾ったVz61スコーピオンを持ち上げ、引金を絞りつつ横に薙いだ。
 チェコスロバキアの傑作短機関銃。恐らくSPかSSが使っていたのだろう。警備員が使ってい
たのはハンドガンだし、こういう銃は服の下に隠し易くて私服SSに向いている。
 毎分九百発の発射速度は特に近接戦闘において有利に働く。例えば――――今みたいに。

 ぱららら、ぱらららら、という小気味良い銃声と共に、三十二口径の弾丸がばら撒かれる。単
発の威力はそれなりでも、指切りのバーストで撃ち込めば充分通用する。
 反動を強引に腕力で押さえ込みながらの掃射は、四匹いたグール共の頭を撃ち抜いた。

 東洋大陸の連中が使っていたという、反動を利用しての掃射だ。馬賊撃ちだったか。
 流石の怪物も頭がなくなれば動けないらしい――――死んだかどうかは判らないけれど。

 「ふぅー……――――」

 軽く息を吐いて歩き出す。
 ふと、右手のスコーピオンを見ると、グリップ底部に鉄の輪がくっついているのに気が付いた。
銃が落ちないようスリングを取り付けるためのランヤードリングだ。

 「ラッキー、か?」

 恐らく本日初となる笑みを浮かべて、そこにウォレットチェーンの先端を噛み合わせた。軽く
引っ張ってみるが、何時ものモーゼルと似た感じで使えない事はない。

 満足して頷いた俺は、ぐるり、と周囲を見回して呟く。

 「さてと……ここはどこだ?」

 今思い出したが――――俺は道に迷っていたのだった。

 【中層部・展望台二階:キッチン・業務員用出入り口】


276 名前:夜雀の怪『ミスティア・ローレライ』 ◆8hOOMYSTIA :2006/11/25(土) 20:31:52

油臭い。
油臭い。油臭い。
油臭い。油臭い。油臭い。油臭い。油臭い。油臭い。油臭い。油臭い。

今ミスティアの思考の大半は、このような言葉で埋められていた。
その上お気に入りの服は所々焦げ、おそらくは雑巾にしか成るまい。
これならば前掛けを外すべきではなかったと思う。

航空燃料による油汚れを想定した前掛けなど、大凡あるまいが。

どうやってこんな物を飛ばしたバカに地獄を見せてやろうかと思案していると、ミスティアは視界の隅に飛来するモノを捉えた。
それは200年ほども前のおぼろげな記憶を掘り起こせば、教会や城などに狛犬宜しく建っているのを見た覚えがある。
いわゆる、ガーゴイルに似ていた。

「あんた達の仕業!? 私が飛ぶ先にこんなモノ置いておいたの!?」

しかしそれは彼女にいささかの感銘も与えなかったらしい。


【周辺空域:大破した小型エンジン近く】

277 名前:『紅い悪魔』レミリア・スカーレット ◆remyaGVniw :2006/11/25(土) 20:36:34

>「まったく、とことん相変わらずのようね、ミス・グルマルキンは。趣味の悪さまで」

…全くその通りね。あの女は絶対にこうなる事を知っておきながら私達を―――
このまさしく惨劇の舞台へと化した飛行船に招待したのね…。
全く…あの女らしいといえばありゃしないわね―――。

>「私は彼女に挨拶をしていくつもりだけれど。レミィ、貴方はどうする?」

…と、私の友人のパチェの問いに対して私は―――

「そうね―――まずは当の本人に会ってみるのも悪くはないわね。いいわ、
私も一緒にいくわよパチェ」

―――そのように答えて、私とパチェは客室から出て、とても濃い血の匂いがする客室の廊下を…
おそらくグルマルキンがいるであろう回廊に向かって歩いていった。

[現在地:客室廊下→回廊側に移動中]

278 名前:エデュアルト・シュライヒ@JG1:2006/11/25(土) 20:46:20


>>247>>276
 ミスティア・ローレライvsリヒトホーフェン・サーカス×2

 エンジンは目視で確認する限り、修理の余地は無かった。
 姿勢制御エンジンの一発程度、破壊されたところで運行の支障にはならない。
 それより気に掛かるのが―――

「なんだ、あれ?」
 エデュアルト・シュライヒが、思わず呟いた。
 エンジンから飛び出した巨大な飛行物。
「羽根が生えている……鳥か?」

「いや、違うぜ。あれは―――」
 ブルーノ・シュターヘルの獰猛な笑み。覗かせた牙から唾液が滴る。
「女だ。俺の、女だ」

 シュライヒが制止する暇も無かった。
 吸血衝動に理性まで蝕まれたブルーノ。大きく翼を羽ばたかせると一気に加速。
 弾丸のように一直線に少女/鳥目掛けて突き進む。

「くそ、馬鹿が」
 シュライヒ。呻きながら胸元の無線に怒鳴る。
「姿勢制御エンジンに見慣れぬ鳥がいる。女かもしれん。少なくとも、人間
じゃない。連隊指揮官殿に連絡だ。人間じゃない奴がエンジンをぶっ壊した。
繰り返す、人間じゃない奴にエンジンをぶっ壊された。―――くそ!」

 返事を待つ暇は無かった。ブルーノを追ってシュライヒも翼を羽ばたかせる。


【現在地:周辺空域 姿勢制御エンジン付近】

279 名前:リゾット・ネエロ(M):2006/11/25(土) 20:46:51

男は荷物を開きだした。中身は砂鉄入りのリストウエイトやアンクルウェイト
などのスポーツ用品だ。彼はそれらにナイフで切れ込みを入れると、あらかじ
め広げておいたピクニック用のシートに中身を空ける。
男がシートの中央に立つと、黒い粉はまるで意志を持っているかのように彼の
足を伝い這い上がっていく。黒い霞は一瞬で服や肌を覆い包み、ものの数秒足
らずで男を黒いシルエットに変えた。そしてその黒い影はその色あいが次第に
薄くなっていき、やがて完全に姿を消した。

メイクの方は仕上がった。『メタリカ』による保護色は磁力でこまかい砂鉄を体
に付着させ、周囲の景色を描いて姿を見えなくする。だがこういった建物等の
限定された空間では屋外のように砂鉄は存在しない、だからこうやって持ち込
む必要がある。

「さてと… オレはこれからターゲットを探さねばならないが、
 奴はまずどこに姿を現す? 操縦室にデンと構えているか、
 それともハリウッドのB級映画見たくパーティ会場で人質をいたぶって
 遊んでいるのか…? とりあえず回廊の方へ行ってみるとしよう…」

呼吸を整えて殺気を静めて足音を殺す、気配を消す一連の動作。
意識してやってはいない、長年培ってきた暗殺者として習慣だ。
リゾット・ネエロは自室から抜け出した。

280 名前:リゾット・ネエロ(M):2006/11/25(土) 20:50:22

>>178>>179 >>279
「あれがグルマルキン大佐か…。それにしても何の冗談だこれは」
回廊の左右両端の両側に居並ぶ武装親衛隊。その中を部下を引き連れ威風堂々
と進んでゆく美貌の女将校、まるでチャップリンの『独裁者』の悪質なパロディだ。
そして後に続く時代遅れの衣装を纏った伊達男。今度はオペラ座の怪人か?
さらに伊達男に付き従う四体の異形の巨人、何かの荷物を移送しているらしい。
そうアレこそが…「聖櫃か」

世界で最も有名なオモチャ箱。
中身は呪い師の杖に、元エジプトの王子が書いた拙いヘブライ語の石版が二枚。
ユダヤ人とキリスト教徒にとってはソロモンの黄金にも勝る宝らしい。
最も彼の仕事はこの世で最も尊い宝の奪還ではない、罰当たりな泥棒めの元締め
の寝首を掻くことだ。その身に余る栄誉は顔も知らぬ信心深い同士に任せよう。

リゾットは回廊へと通じる広間からこの奇妙な一団をつぶさに観察していた。
「守りが硬い、ここでの暗殺は無理か…」
見てくれはB級映画さながらだが、アレで隙というものがない。
それに理由はもう一つある。それはターゲットの左後ろに付き従う女将校だ。
奴はこちらに注意を向けた形跡がある、気取られたという訳では無いみたいだが
僅かに意識に引っかかったような、そんな素振り。
――――勘が良いのか、もしくは何らかの能力か…

もしあとほんのもう少し近づいていたら… そう考えるとケツにつららをブチ込
まれたような気分になる。

「ルートから予測して行き先は操縦席か…、さすがに警備が硬い
 回廊を正面から通り抜けるのは無理か」
そう言い残すと影は音も無く消えいった。

【現在地:客室回廊付近→格納庫へ】

281 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus :2006/11/25(土) 20:50:36

>254>255

「あら、随分な仰りようですわね、大佐」

笑みを浮かべて言いつつ、ちょっとした手品を披露してみせる。
慣れたもので平然と煙草に火をつける大佐とは違い、他の面々から伝わる微かな驚き
が愉快だった。
種も仕掛けもないただの力だが、大佐に付き従うに相応しい魔術師然として見えただろう。
そんな風に思うのは、周囲の者達だけだろうが。
グルマルキンという魔術師本人は、遊んでいるだけだ。
手玉に取るか取られるか、篭絡するかされてしまうか――――
正体不明の私を敢えて傍に置き、こういうやり取りを愉しんでいるだけ。
私と似ていると、言えなくも無かった。

「……ふふ、それはそれは」

やや弛緩していた空気が、固い声で告げられた報告で引き締まる。
当然だ。
空に浮かんだ巨大な密室の中に、自分達の胎の中に敵が居る、と言う意味なのだから。
こんな作戦が気付かれない筈はないし、気付けば阻止しようとする。
これは当然の事。
そして、私の待ち望んでいた事でもあった。
狂気は殺意にすり替わり、宴は血に塗れていく。
それもまた、当然の事。

「ご安心を、ハルトマン中尉。
 私も共に行くのですから、万が一など起こり得ません」

――始まったばかりなのにホストに退場されては、私も困るわ。

薄く微笑んで、無線機を身に付ける。
腰に下げた黒皮の鞭に軽く触れ、指先で撫でた。
後に続こう。
私はまだ親衛隊の一員なのだから。
今は、まだ。


【最上層:操縦室→中層部:回廊】

282 名前:イグニス ◆IgnisC3BW6 :2006/11/25(土) 20:53:15

>>255

 だんだんと薄暗い雰囲気となっていく回廊を進む。
 時間は無駄には出来ない。すでに外では、交戦が始まっているようにも見えた。
 連中が下手を打って、この船を撃沈でもされたら元も子も無いのだ――

 速やかに首魁を血祭りに上げて、あの危険極まりない”聖櫃”を、封印する必要があった。
 掛け値無しに冗談ではない――もしもアレが本当に起動するようなことにでもなれば、人外と人界とを
隔てていた結界が、”門”の使用無くして破られる可能性があるからだ。いや、確実に破られることになる
だろう。

 そうなれば――
 どんなに甘く見つもったとしても。世界は再び、神代の頃のように、人は神秘に蹂躙される地獄となる。
それだけは、許容するわけにはいかなかった――人類の守護者を自称するものとして、断じて。

 だから――速く、速く、速く。
 微塵の動揺も抱かずに、しかし鋼の如き信念を胸に。
 イグニスは、倉庫へと続く回廊をひた走っていた。

 と――

「……っ!」

 反射的に、イグニスは立ち止まった。
 見知ったモノを感じたのだ。通路の向こう側から、僅かに嗅ぎなれたなれた腐臭。
 そして――瘴気の如く立ち上る、この魔力は。

「……どうやら私は、存外に運がいいらしいな」

 気配に対し正対しながら、イグニスは嘯く。
 彼女は速やかに暗器が無数に仕込まれたコートを脱ぎ捨てると、ドレス姿に刀一本という出で立ちで
そいつを迎えていた。
 ふと思いついて、奪い取った無線機を手に取る。
 電波状態は、良好のようだった。
 それに向けて――告げる。

「やあ――久しぶりだな、大佐。
 あの骨董品共々、戦場に逆戻りか。宮仕えも苦労するじゃないか、ええ?」

 静かに姿を現す人影。
 その顔を認めて、愉しそうにイグニスは謳う。

【現在位置:中層部――倉庫へと続く回廊】


283 名前:ロンギヌス13 ◆13th/X9pTg :2006/11/25(土) 20:53:56

>>243 >>256

「ク、ククク……上空から身一つで降下か! 何とも馬鹿げた連中だ!」

白い甲冑を纏った存在――『1』のナンバーを戴くロンギヌス1(アイン)は歓喜に身を震わせる。
レーダーで航空機の存在を捉えてはいたが、遠巻きに眺めるだけで近寄ろうともしない。
これでは混沌には程遠い、そう思っていた矢先の出来事だ。

「何とも素敵な連中がいるものだ……いいだろう、その蛮勇は我々が喝采してやる。
 ツヴァイ、ドライ、フィーアは私に続け。
 フュンフ、ゼクス、ズィーベンはもう一方の的を狙え。
 後の者は指示があるまで、現空域にて待機せよ」

四機と三機の編隊を組み、彼等は機体を旋回させて迎撃へ向かった。
身を苛むGが、接近している『敵』の存在が、更に高揚感を煽る。

「――全機構え、照準」

丁度降下して来る標的の直下へ回りこみ、各機は左腕にマウントされたMG34機関銃を掲げる。
鈍く光る銃口は、全て自由落下中の標的へ。

「まずは開幕の挨拶だ、受け取るがいい」

重機関銃が低音の咆哮を上げ、無数の銃弾を夜空へ吐き出した。

【周辺空域:気嚢上部】

284 名前:麻宮アテナ:2006/11/25(土) 20:55:09

>>164、>>222

 『勝利万歳!』

 ……ええと。これって新手のドッキリでしょうか。
大昔のアメリカのラジオ番組では火星人が攻めてきたっていいますし。
火星人よりはまだナチスのほうが真実味が……あるわけないですね。

 で、でも! やっぱりこれはドッキリなんです!
だって主任さんがニヤニヤしながら「よーしわたしが交渉してくるぞー!」って
スキップしながら出て行きましたし! きっとこのドッキリのことを、
各部署の責任者とかは知っていたに違いありません。そうに決まってます。

 しばらくたっても帰ってこない主任さん。
胸の中で、いやーなものが広がっていきます。イヤな感じ。
周りのメイド服の女の子たち、つまり私の(ごく短い間の)同僚さんも、
そわそわしたりぶるぶるふるえたり。なにかきっかけがあればパニックが起こりそう。
倉庫(兼、臨時のスタッフルーム)という閉鎖空間でのそれは、
考えただけでも恐ろしいことです。

 壁に備え付けてある受話器を手にとって、内線番号****。
5〜6回のコールの後、回線が繋がりました。

「もしもし? こちら下部倉庫、臨時客室乗務員控え室です。
さっきの船内放送は……」
「ちっちっち。いきちっち。おんなのこ〜の〜いきちっち」
「……え、なんですか?」
「いきちっち」
「……」
「……」
「ちょっとおたずねしますが、今のドイツの首相さんのお名前は?」
「あどるふひとら〜」
「……」
「……」
「とても参考になりました。ありがとうございました」

 がちゃん。最悪の事態です。
幸いここは倉庫。無断で申し訳ないですが、使えるものを物色させてもらいましょう。
飛行船を動かせるだけの人手を確保しないと、このまま南極まで片道旅行です。
それ以前に、あの自称正当な徴発さんたちから逃れられるか、という問題もあるのですが。
とにかく今は、行動あるのみ。

 <現在地:下層部倉庫>

285 名前:ヴァルトラウテ/タッツェルヴルム ◆SoRDENIEpc :2006/11/25(土) 20:55:34


 >>208 >>255
 闇色のマントを翻し悠々と死地に――無論、彼女自身のではなく、彼女が作り出そうとしている
――赴く背を視界の端に、ヴァルトラウテは彼女のなすべきことを始めることにした。
、無理矢理に指揮杖を押しつけられた形になるが、こう言った時に大仰に肩をすくめて見せる
のは彼女の流儀ではない。
 あらゆる情報処理を並行しつつ、困惑の表情を浮かべたままのハルトマンに声を掛ける。

「……ハルトマン中尉。
 こちらからの指示が在るまでは待機を。
 グルマルキンからの直接の指示がある時には、彼女に従いなさい」

 とはいえ、この忠実なる副官殿は『上官の前では不動の姿勢』という基本を守ったままで
椅子に腰掛けるよう勧めたところで到底耳を貸しそうにはない。
 きっとムンスター博物館でも戦車の隣に『伝統的ドイツ軍人』という説明書きを付けたまま
微動だにしないであろう、間借り中の副官殿はまず置いて、ヴァルトラウテはその白銀の翼を
もう一度、ゆったりと羽搏くように拡げた。

「小規模の爆発。小型の液体爆薬だと思われるわ。
 巧妙に擬装されていて、詳しい位置までは特定できないけれど」
「他には?」
「……不明な反応が多すぎてよく分からないの。
 数は――20前後」

 暫し間を置いて、タッツェルヴルムは応えた。

「了解した。まずは場所を移動、甲板から客員フロアに降りる」
「気を付けて、タッツェルヴルム」
「……ああ」

 【場所:接続部通路から甲板、中層部へと続く階段へ】

286 名前:タバサ ◆3VTTABASAI :2006/11/25(土) 20:57:28

>>220-222
 部屋の壁面に設置された出力端末に、グルマルキンの姿が映し出され、彼女の演説が始まった。
「状況が動き出しましたか。では、私もそろそろ――」
 ベッドから立ち上がり、トランクを手にしようとした時。端末に映し出された一人の女性の姿が、私の動きを止めた。

「ほう……これはまた」
 機械によって映し出された姿でも感じられる程に高い魔力が、碧髪の女性の周囲に渦巻いていた。

「彼女が異世界よりの賢者? ……いや、違う。この魔力は魔術師のそれではない。とすれば……」
 私の持つ知識で彼女の持つ魔力に該当するのは一人。
「確かめてみるとしましょう。どのみち、ここでこうしていても見学は出来ない」
 自身を納得させるかのように小さく頷き、トランクを手に部屋を後にした。

【現在位置:中層部客室→回廊へ】

287 名前:ジェームズ・ホワン(M) ◆ko.IhfiTmE :2006/11/25(土) 20:57:45

>>273
「ふん、悪趣味な真似をしてくれるねぇ」
僕はそれだけを呟いて、そっと席を立つ、これでは機内食をじっくりと味わえない。
僕に気が付いたグールがその牙を突きたてようとするが。
何故か僕の身体には触れることが出来ない。

ま、その種明かしはまた後で、少なくともこんな連中に披露するつもりにはなれない

「さてと、これじゃ僕は今のところ用なしだな、展望台にでも行こうかね」
どうやら派手に暴れてるのもいるみたいだしね。

 【中層部・客室部から、展望台へと移動】

288 名前:夜雀の怪『ミスティア・ローレライ』 ◆8hOOMYSTIA :2006/11/25(土) 21:01:26

>>162>>247>>276>>278
 ミスティア・ローレライvsリヒトホーフェン・サーカス×2

殺到してくる羽付の異形。

「話聞きなさいよ、っと」

言いながら、未だに煙を噴くエンジンにか細い腕を突っ込む。
それは耳障りな音を立てながら、バキリと一つの大きな残骸を引きずり出した。

それは歪んだファンだった。

「人の話は」

それを背中側に振りかぶり、

「最後まで聞けってママに教わん無かったのっ! っと」

言いながらミスティアはシュターヘル向けて、サイドスローに投げつけた。


【現在地:周辺空域 姿勢制御エンジン付近】

289 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/25(土) 21:02:38


>>281>>282 イグニスvsモリガン&グルマルキン

 無線からがなり立てられる報告―――グルマルキンは短く舌を打った。
 各所で抵抗の火花が切られ始めている。予定よりもだいぶ早い。
 想定外の戦力を持つ連中がだいぶ乗り合わせているみたいだ。

「モリガン、急ぐぞ」
 心持ち足速に。しかし、決して走らずに。
 グルマルキンはモリガンを引き連れて回廊を闊歩した。
 長靴の踵が床と噛み合い、音を鳴らす。
 そのマーチが―――突如、止まった。

「イグニス……人類の守護者、もっとも気高き刃!」

 陰のように現れ、グルマルキンの進路を妨げた焔の女。
 忌々しげに魔術士は呻いた。

「やはり貴様か―――相変わらずしつこい女だ。まだ私の邪魔をするか。
まだ私の前に立ち塞がるか。まったく……何百年繰り返せば気が済む」

 マントから手を出す。
 左手にはP38が握られている。
 初弾は既に装填済みだ。

「悪いが、貴様と違い私には目的がある」
 すっと―――銃口が持ち上がった。
「貴様の虚無に付き合う暇はない。ここで永遠を抱いて果てろ」
 絞られるトリガー。
 同時に、グルマルキンは叫んだ。

「モリガン!」

【中層部:回廊】

290 名前:ハンス・ヨアヒム・マルセイユ ◆sLAdoLfKkE :2006/11/25(土) 21:03:02

>>187>>188>>189
銃声と悲鳴、そして血の匂い。
その感覚に、ふと昔を思い出す。

――そう、かつてはこの感覚の中に身を置いていたのだ。

「グルマルキン・・・か。あの魔女か。
 半世紀以上経っても変わらんと言うのはどうなのだろうな、お互い」

既に映像を映していないプラズマテレビを見やり、踵を返す。
始まったのなら、ここにいてもそう面白くはない。
それよりは、この艦が目的地に辿り着くことを優先すべきだ。

「別に、荷担する気もないのだがね」

呟き、歩を進める。
さすがに、無辜の一般市民を殺す趣味はない。
何しろ――面白くないから。


【場所:パーティルームから回廊に向かう途中】

291 名前:ヤン・ヴァレンタイン:2006/11/25(土) 21:04:44

「ギャーギャーギャーギャー煩いぜ蟲ケラども、さっさと死ね、死ね」バンバンバンババン
ガバン! 擬音つけるならこんな感じで虐殺虐殺虐殺虐殺「喰えるときに喰っとけよー、
後で餌ねえとか泣いてもしらねえからなー」ご多分に漏れず俺もお食事中だ「やー、しっ
かし何喰ってコイツ等生活してんの? 黄色の脂肪がドロドロドロ零れてきてんじゃん?
あーあー、食欲減退すんぞこれ」

 椅子にふんぞり返って生首から滴る血を飲み下す。
 やっぱこの瞬間がやめられねえやホント。マジでこれだけでもイッちまいそう。

【パーティールーム、お食事中】



292 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/25(土) 21:09:17


 グールとか吸血鬼なんかの存在を知ったのは『下』での事だ。
 あくまで資料の一つとして見せられただけで、実物を見た事はない。
 しかしデータを見る限り、頭の悪い腕力だけの鈍間という印象だった。

 あぁ、実際に戦っても、その印象は変わっていない。
 但しそれは単体で見た場合であり、連中が数を揃えた場合の事は考えていなかった。

 実際、胴体を折られても這いずって来るというのは、中々に由緒正しいゾンビではないか。

 「ハッ、ハァ――――!」

 とはいえこの俺がそんなのに捕まる筈もなく、助走を付けてそいつの頭を踏み潰し、そのま
ま跳躍して向こうにいた別のグールの顔面にドロップキックをくれた。

 俺はVz61の弾倉を変えつつ、辺りを見回した。取り敢えず結構な数を殺したのだが、かつて
この船の乗員だったグール達は減るどころかむしろ増えている。

 「……ていうか、いい加減に飽きたな」

 先刻から上に登ってくるグールを蹴散らしていたが、生きた人間どころかハイジャック犯であ
るナチ公ですら見掛けないってのはどうしてなんだぜ?

 「はぁ……仕方ない。上に往ってみよう」

 当初の目的は「攫われた女達の確保」だ。彼女達は上層部の倉庫にいるらしいから、まずは
上に往く必要がある。真逆ここで下に往っても意味がないし。
 別に拾っておいたハンドガン――――ベレッタM92FSを腰から抜き、手近にいたグールに狙
いを定め――――少し照準をずらして、その背後にあるモノに銃口を向けた。

 「Bang――――ッ、と」

 9mm×19のパラベラム弾は、過たずキッチンの棚にあったガスボンベを撃ち抜いた。
 空気が――――正確にはガスが抜けていく音が聞こえて、俺はすぐにその場を立ち去る。

 「行き掛けの、って奴だッ!」

 勿論、連中が外に出られないよう、調理器具や棚を倒していくのも忘れない。

 コンロの種火は点いたままだった。少しすればそれに発火して爆発するだろう。もしかしたら
誰か……生きている人間が来る可能性もあったが、知った事じゃない。
 俺だって「多少身体が頑丈なだけの人間」なんだ。形振り構ってるほど俺は強くない。

 ――――俺に他人の世話する余裕なんかないんだ。

 【移動:キッチン → 展望台3F・カジノ】

293 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2006/11/25(土) 21:09:39

>>229>>230 長谷川虎蔵
>>259>>260 レップ

 飛行船へと向かう途中、フィオから寄り道の指示が入った。曰く『ヘルシング機関からのお願いが来まして。一人乗せて欲しいそうです』
 言われるがままに指定の空域に向かい、一人乗せた。
 機体上部に。――機外の上部に。
 リンクスから乗り移ってきたのは三つ編みの――多分男だろう。
 背中から黒い翼を生やした男はフライヤー上部にしがみ付くと大声で怒鳴ってきた。

『ねーちゃん、終点まで頼むや』

「アイ了解」
 進行再開。極寒の空を裂いて飛行船へといざ再出発。
《意外と冷静ですね、エリちゃん》
 レシーバーの向こうでフィオが言う。
「メタスラ乗せるのと大して変わらないわ。大体。今更どんなトンデモ人間だの兵器だの見たってそうそう驚かないっての」
《それもそうですねぇ》
 くすと相棒の笑う声。オーケー、緊張はお互いに無いみたい。
「機体針路、間違ってない?」
《大丈夫です。そのまま飛行を続けてください》

 程なくして彼方に何か大きなものが見えた。

 全長一キロメートル。その巨体は遠方からでも確認できた。

「でけェ……まるでクジラね……」

《周辺には護衛の化物がいるはずです。注意してください》

「了解。さ、て。お客さん、終点よ!」
 後ろへ向けて怒鳴るが、聞こえているのかいないのか。
 正面へと視点を移す。

「! 何か光った?」

 飛行船の方に見覚えのある光の瞬き。――マズルフラッシュだ。
 直後、曳光弾が闇の中を飛んでいった。

「フィオ! 飛行船に武装は!?」

《されてません。民間機ですから》

「じゃなんで銃撃なんて受けるのよ! 上の! 荒っぽく動くよ! 飛べるんだったらとっとと降りな!」

 マズルフラッシュ再び。
 今度のは避けなきゃ当たる。
 右へ回避機動。

「こっちの武装の射程外。ち、接近しないとダメか」
 銃撃掻い潜って蝙蝠野郎をブチ落として接舷して乗り込め?
 ああもうくそったれ。やってやろうじゃないのよ!


【現在地:飛行船周辺空域 機体後方】


294 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2006/11/25(土) 21:10:31

>>231 >>273

 白い廊下と紅い絨毯を、躍るように走る。
 ときおり揺れるゴンドラと、誰かの声と、何かが壊れていく音。
 早くしないと始まってしまう。いや、もう始まっている。
 だから、私は胸を高鳴らせながら走っていた。
 外へ、外へ、夜のサーカスの開演へ。

 ―――見えた!

 紅と白の廊下の果てに、小さな扉が見える。
 何でも危ない時に使うらしい。
 でも今の私には、舞台に上がるための道。

 ……ふと、扉の前でうろついているグールが見えた。
 足元に人間が転がっている。血と何か肉の塊のようなものを撒き散らして。
 少し、醒めた。



 ……品がないなあ。
 壊しちゃえ。



 グールが私の存在に気づく。
 でも遅い。
 無粋な真似をした奴にはお仕置が必要だ―――お姉さまの言葉だ。
 私も同感だから、ちょっときつくやろう。

「せーの!!」


 §


 ツェッペリン・ノイエ・エーラ、客室最後尾。
 緊急脱出用の扉が備え付けられている地点。

 そこが―――何の脈絡もなく炎を吹き上げた。
 垂直ではなく、水平にである。
 その前にあったはずの無様な屍喰らう鬼と哀れな犠牲者は間違いなく火葬され、扉は道を空けた。
 焼け爛れた船体。そこから、鮮やかなドレスと宝石のような翼を持った少女が飛び出していた。
 するするとゴンドラを繋ぎとめる鉄骨を縫いながら、気球のカーブに沿って、一番上に。
 そこは、垂直尾翼の頂点。最も舞台を俯瞰できる特等席。

 かくして、フランドール・スカーレットは舞台に上った。
 その手に、燃え盛る長大な炎の剣を宿して。


【上層部・客室部から外への扉を破壊し、周辺宙域は後部へ】

295 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/25(土) 21:12:40

>>173>>174

 パーティールームの雰囲気は……その時を境に一変しました。
 楽しそうな談笑が陰惨極まる悲鳴に変わり。
 豪勢な料理には血のソースがべったりと付着し。
 舞踏会は乗客たちが血で血を洗う凄惨な戦場へと姿を変えてしまいました。

「なっ…………!?」

 どうしていきなりこんな事に?
 むっとするような血臭。そしていきなり部屋全体に、自信に満ちた女性の声……グルマルキンさん、と
名乗っていたみたいですが……が響き渡ります。正直、わたしには彼女が何を言っているのか、ほとんど
理解はできませんでしたが……いかなる理由があるにせよ、何の罪もないパーティのお客様たちを、こんな
邪悪なアンデッドに変えることに正義があるとは思えません!

 最初は戸惑っていましたが、襲われている人々をこのまま見過ごすのは、ファリス様の正義の名折れ!
 わたしはまだ生き残っている乗客の皆さんと、アンデッド……喰屍鬼(グール)と呼ばれる者たち……の
間に立ちはだかりました。武器はありません。それでも……やらなければっ!

【イリーナ・フォウリー:現在地:パーティールーム】

296 名前:ヴァーミリオン・CD・ヘイズ ◆/CD/iS.AAU :2006/11/25(土) 21:12:43

船内の大まかな状況及び構造は先刻引き出した情報と事前に渡されたデータから把握している。
現在殺戮に見舞われているのはこの客室区画を出て回廊を抜けた先にある展望室内のパーティールーム。
先ずはあの場所に駆けつけ、乗客の可能な限りの保護と、応戦しているはずの味方
(いれば、だが)の支援、及び協調。それが当面のヘイズの行動目的となる。
更に、データによれば客室後部に緊急脱出用のハッチがあるが、現在それを使うのは危険に過ぎる。
航空戦力が既に展開されていた場合、脱出する乗客を狙い打ちにするくらいのことは
あの狂った亡国の悪霊たちは事も無げにやってのけるだろう。

だから、今のヘイズに出来たのは、せいぜい行きがかりに配置された客室を一つづつ回り、

「今の放送を見ただろ? いいか、何があっても今はここから動くな。
安心していい、オレは味方だ。何とか奴らを全員この船から追い出して、あんたらを助けてみせる。
それまで少し、待っていてほしい」

そんな信頼されるかどうかも分からない文句をかけて回る事だけだった。

我ながら、偽善的な事を言っていると、思う。
だが、やらないよりはマシだろう。
そして同時に、この守られるかどうかも分からない、非常に不安定な約束が。
彼自身を突き動かす動力にも、成るのだった。

そうしている内にも、船内の各所から響く銃声。
これが激しく響くという事は、何者かの抵抗の意思があると見て、先ず間違いはないだろう。
そしてその音は、これから彼が向かう先―――飛行船中層部の回廊からも、響いている。

「……早速、出番ってわけか」

自動式拳銃を握る手に力がこもる。
I-ブレインは先程から常時稼動状態にある。稼働率は―――二十パーセント。
全力稼動には遠く及ばない数値。やはり雲層の近い上空では、これが限界か。

だが―――やるしかない。

ヘイズは拳銃を顔の脇に構え、回廊に続く自動扉を開け放った。


(現在地:客室廊下→回廊へ)

297 名前:エデュアル・シュライヒ@JG1:2006/11/25(土) 21:13:16


>>288 ミスティア・ローレライvsリヒトホーフェン・サーカス×2

 雑作もなく自分の身の丈ほどもあるファンを引きずり出す少女/鳥。
 シュライヒは確信する。―――こいつは本物のバケモノだ。
 無線の支持を待たずに交戦に入る。

 擲たれたシュリケン―――巨大なファンは、数十発の7.62ミリ弾を浴びせ
かけられ、粉砕している。シュターヘルの正確無比な射撃。
 理性は無くしても、JG1としての誇りまでは失っていないようだ。

 だが、直進をやめようとはしない。
 トリガーを絞る指も緩めず―――掃射を続けた。

「お嬢ちゃん! ちょっと良いから吸わせてくれねぇか?」

 二門のスパンダウ機関銃から吐き出される弾丸の雨が、少女に迫る。


【現在地:周辺空域 姿勢制御エンジン付近】 

298 名前:ヤン・ヴァレンタイン:2006/11/25(土) 21:14:39

>>268

 ヒュウ―――は、人間やっぱ捨てたもんじゃねえな。
 蟲ケラは蟲ケラなりに反抗してくれるって事かよシット!

「おい、手前等出番だぜ。あそこの紳士に向かってお涙頂戴のハッピーエンドをプレゼント
してやれ! 何人巻き込もうが関係ねえ! 殺せ、動くものは殺して殺して殺し尽くせ!
ここは戦場だ生き残りたい奴なんて一人も居ねえんだよ!」

 ザッと隊列を組み向けられる銃口は、毎分――何発か忘れたけど――まあ人を穴だらけ
にしてもお釣りが来るくらいに鉛弾を吐き散らす。吐き散らす吐き散らす。

 さあ、死ね。死ぬ時間だ。

【パーティールーム】

299 名前:ルーク・ヴァレンタイン(M) ◆jBiAWniQ.. :2006/11/25(土) 21:16:51

>>282 >>289

魔女の出撃よりも僅かに後。
残像虚像の跡も残さず、グルマルキン達から離れて駆ける一つの気配。
ミレニアムのA級実験体。
吸血鬼の枠すら超えたスピードの持ち主、ルーク・ヴァレンタイン当人である。

当然、グルマルキン大佐本人からエスコートの命令など受けてはいない。
彼の独断、否。正確には彼に命令を与えた男の独断だ。
露払いのオーダーに異論を挟む義務も道理もルークにはない、
仕事とはクールに完遂すべきものであり、絶対に遂行されるべき存在なのだ。

「さて、此方も存分に埒を空けさせてもらうか。
 ―――ミレニアムなりのやり方でな」


通り過ぎた光景には魔女と守護者。
戦争の口火、その灼熱の間隙を縫い圧倒的なスピードで通り抜ける。
往きすぎようが気にしてはいない。彼の獲物は彼だけが決める。
確実な一対一での殲滅。彼はあくまで総統代行のオーダーに従うのみだ。

「後続は絶っておいてやる、感謝しておけ」

そう魔女たちに残して。

【中層部回廊】



300 名前:高木由美子:2006/11/25(土) 21:17:03

>>261
あ、ああ、、、い、いや…
こないで、こないで。
さっきまで私をからかってた、貿易商のひと。
オセアニアの資源が枯渇した島国を援助して、見返りに小さな島嶼一角を
譲り受けるつもり───そんな、雲の上みたいな事を話していた、、
思い上がってても人柄は悪くない人。
 その奥様。自作ブランドを娘と共に立ち上げ、それが第二の人生の始まりだと
豪語していた化粧の上手な方。
旦那様が目を話した折に、『夫は私が外に出歩くのを快く思ってくださいませんの』
───シスターになれば私もよかったわ。
寂しい笑みを、お年に似合わぬ笑窪と共に浮かべられたものでした。

それが、迫る、迫ってくるの…。卑猥な目で、声で、体で、動きで。
嫌なのに。

後ずさり、転び…震えるからだ、不随意に、
眼鏡が、かちんと、落ちた。
(パーティールーム)

301 名前:パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU :2006/11/25(土) 21:19:38

>>271 >>277

グール。歩く死体、人でなしの怪物。
どこからかあふれ出た元人間の群れは、すでにパチュリーたちの視界のあちこちに入り始めている。
大抵のものは無視していたパチュリーだが、不意に足を止め、溜息をついた。

グールが1体、出入り口に張り付いている。入り口に授乳を強要する赤ん坊のような風情だ。
このまま通り抜けようとするなら未知との遭遇を覚悟するべきだろう。
主に捕食という観点において。

「面倒ね……」

そういいつつも、彼女は軽く姿勢を整え、手の先をグールに向けた。
左手に本、右手に障害、それをつなぐ脳裏に、知識。

「Fire been Summer,Summer been Red. 燃え上がれ」

サマーレッド。
詠唱が終わると同時に、右手からサッカーボール大の炎の玉が放たれる。
それはグールに命中し、その先のドアもろとも四散させた。
もちろん、肉を焼き尽くして腐った匂いを消す事も忘れていない。

「アンデットは火に弱い。……あら」

手を下ろしたパチュリーがふと視線をドアの先に向けると、そこには懐かしい顔がいた。

「ご機嫌麗しゅう。ほんの少しの感謝と残り全ての苦情をあげるわ、ミス・グルマルキン」

[現在地:客室廊下→回廊]

302 名前:シエル ◆kcbhGUILTY :2006/11/25(土) 21:20:54

>283

甲冑が空を飛んでいた。
槍を携えたその姿は、中世の騎士そのままに見えない事も無い。

但し、左腕にマウントされた機関銃が無ければ。

「……まあ、ですよね」

身体一つで空中に居れば、落ちる以外に出来る事はない。
下から狙えば、的を撃つより簡単だろう。

――――恨みますよ、ナルバレック!

私に出来るのは覚悟と、それから頭を両腕で守る事くらいだ。
一発。
髪の毛が頭皮ごと一房持っていかれる。
二発。
太股を斜めに貫通していった弾丸が、肩から掛けた荷物を掠めて火花を上げた。
三発、四発、五発、六発。
両腕が肉片に変わり、左の頬が吹き飛び、首が千切れかけた。

「ご丁寧にどうも。これはささやかなお返しです」

それでも落ち続ける私の下に、一つの甲冑がいた。
その首に腕を掛けて囁きながら、落下の勢いを利用して体勢を入れ替える。
私が上で、甲冑が下。
ちゃんとした足場があれば、動ける。
兜を踏み付けて跳躍し、軌道を修正して更に落ちた。

【飛行船上空:船目掛けて落下中】

303 名前:コーディー:2006/11/25(土) 21:21:07

>>284
上で何か騒ぎが聞こえた様な気がする。事実、銃声、悲鳴、色々な混濁した
物が切り離した意識の端から感じたのだ

「…んだよ。」
苛立ちながら目を覚まし、頭を掻き毟りながら辺りを見回す。誰も居ない…
筈だが、遠くから何か沢山の黄色い声が聞こえる。質からして女…

「ぎゃあぎゃあ喚くな、偏頭痛になっちまう…」

苛立ちと寝起きが判断を鈍らせたのか声の集まりへと文句を投げつけた

304 名前:ふみこ・O・V ◆HPv8dyzZiE :2006/11/25(土) 21:21:19

>>288>>297
「始まったか」

 エンジン部より聞こえてくる銃撃の音。
 心地よい戦場の音楽だ、とふみこは思い、そしてその表情を引き締める。

「フィア、フュンフ、ゼクス、ズィーベンは戦闘区域に向かえ。敵を発見し次第、友軍と協
力しこれを排除せよ。アイン、ツヴァイ、ドライは……」

 ふみこは、既にそれ(>>293)を視界に納めていた。
 口元に獰猛な笑みが宿る。

「私に続け! あの間抜けを打ち落とすぞ。構え……撃てッ!」

 号令と同時に、構えられた四つのパンツァーファウストが、スラグフライヤーに向けて火を吹
いた。

305 名前:飛竜 ◆HIRYUmxRKo :2006/11/25(土) 21:21:30

>>283
 重機関銃の咆哮が南極の空に響く。
「迎撃か」
 呟きと同時に、腰に差した光剣――サイファーのグリップを握る。

 一閃。

 プラズマ粒子の斬線が銃弾を消し去る。

 落下を続けながら、銃弾を放った相手に視線を向ける。

 威嚇など無用。来るなら貴様らの本気で来い。


【現在位置:気嚢上部の高度500m前後】

306 名前:レミア・シルヴェスタW世 ◆MVlNEREMIA :2006/11/25(土) 21:22:30

>>221-222
グルマンキン・フォン・シュティーベルによるハイジャック声明。
それと同時に客室の外では慌しい軍靴の音。
銃声、悲鳴、銃声、悲鳴。
それらの繰り返しが行われていた。

「―――物騒なものを持ち出したわね、グルマンキン」

彼女とは知り合ったことは無い。
しかし遠い記憶の中には彼女の姿と名前がはっきりと刻まれていた。

「いいわ。付き合ってあげるわ、このパーティー」

思ったより退屈な航海になりそうだったが、
それもここまで。これからは化物らしいパーティーが開かれる。

客室を出て倉庫に向かう。
あのトランクは無いよりはマシ程度の武器が入っている。
それにこんなところでせっかく集めた武器を全て手放す気はなかった。

倉庫の扉に手をかけるが、あかない。
鍵でもかけているようだった。

「扉自体は頑丈のようだけど…無駄ね」

扉から少し離れ、自分の手に黒い球体を作る。
闇の波動だった。

「――――――ハッ」

その球体を扉に撃ち付ける。
扉はへこみ、吹っ飛んだ。

「さて、早くトランクでも…?」

何故か倉庫には大量の人間がいた。

【現在地:倉庫の扉付近】

307 名前:コーディー:2006/11/25(土) 21:23:44

>>303 書き忘れ
【現在位置 下層部倉庫】

308 名前:ビリー・龍 ◆D727Bb9L.2 :2006/11/25(土) 21:25:33

 俺は呆れていた。いまどきナチとは恐れ入った。
 あの戦争から何年経ったと思っているやら。

「バーテン、おかわ……」
 いねえでやんの。まあそれどころじゃないわな。
 騒然としたカジノルームを見渡す。どこからか銃声が聞こえてきた。

 戦火の音だ。
 俺は欠伸を漏らしながらそれを聞いた。

 寝覚めの欠伸だ。
 パーティだってのに、寝てるわけにもいかねーよ。

 俺はカウンターをまたぎ、ジンのボトルを見つけると、軽くあおった。
 気付けにゃちょうどいい。

 ついでに、果物ナイフを数本ばかり拝借。
 右往左往する客を押しのけてカジノの外に出る。

(カジノ→キッチンを経由してパーティルームへ)

309 名前:哀川潤 ◆MzXQXe8zTc :2006/11/25(土) 21:25:47

>>222

「かははは、なーんだぁ今の演説は。 もしかしてあれか?
 処女航海っつーんで余興の一環か? それにしてもナチスたぁー大きく出たな」

――面白すぎるぞこの野郎どもは。

漆黒のSS軍装を着用して堂々と、正に堂々と言った表現が相応しい演説が一席
備え付けのTVから唐突に飛び込む、ソレを見てさも可笑しそうに哀川潤は個室で笑っていた、が。


ばどむ。 と同じく唐突に客室のドアが開け放たれ入って来た元人間、グール。
目に腕に足に胴体に、全身に生気などは無い。


「ひひひ、ちーとばかし人の部屋に入って来るにはマナーがなってねーなぁ
 アンタ、何モンだ?」

勿論であるがグールに答えられる訳がない。
更に言うと哀川潤はグールが存在している事など知りはしない
だが雰囲気が普通の人間と違う事位は即座に了解する。

「答えねーのか、なら仕方ねーなぁ、お仕置だ」

即座にグールとの距離を詰めジャンプ一番、グールに膝蹴り。
下から上の急角度で右膝がグールの顎に炸裂した、そのまま上に吹っ飛ぶグール。

「あり?」

なんの手ごたえも無、いや―― 手ごたえがおかしい。
まるで死体を蹴り飛ばしたような。
むくりと立ち上がるグール。

「ははーん…、成程。既に死んでるってヤツ?
 流石はナチス、何でもアリだな。 面白くなりそうだ――」

立ち上がったグールに立て続けに追撃、右の正拳、力ずくの一撃――
鈍い音。その一撃でグールの心臓部はブチ抜かれる。

「さてと…どーすっかなー?」

【哀川潤:客室】

310 名前:フィア ◆HPv8dyzZiE :2006/11/25(土) 21:26:11

>>304
 エンジン部では、既に異形の化け物どもが戦闘を始めていた。
 エンジンの残骸を投げつける羽の生えた人間らしき存在と、それを器用に破壊しながら
吸血衝動のままに襲いかかろうとするガーゴイル。

 しかし、フィアはそれを見ても何も思わない。
 彼女はただ、リーダーから与えられた指示を完遂するだけの機械だからだ。

「目標発見。これより友軍の援護を開始する。照準定め……撃て」

 無表情にフュンフ、ゼクス、ズィーベンに指示を出しながら、彼女もまた、パンツァーファウ
ストをその鳥に向け、引き金を引いた。

311 名前:ジェームズ・ホワン(M) ◆ko.IhfiTmE :2006/11/25(土) 21:26:36

「チッ」
僕は一言吐き捨て展望室に行くのをあきらめざるを得なかった
何故なら、ドアの取っ手がグールどもの血でべったりと汚れていたからだ。
やれやれと僕は肩をすくめながら階段を下りて貨物室へと向かう…。
ここはまだ汚れていないが、ドビラに鍵がかかっている…。

そっと扉に触れて透視…中に誰かいるようだ…まぁいい。
僕はそのまま空間を飛び越えて部屋の中へと入る…よくよく考えて見れば
この能力を使えばドアの取っ手云々は関係なかったなと思いつつ。

【現在地:下層貨物室】

312 名前:Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA :2006/11/25(土) 21:26:53

>>267

「――行きます」

 カペルテータが、勢いよく扉を開け放った。

「ふっ――」

 鋭く吐き出される呼気。瞬間、俺は両手に収めた拳銃のトリガーを、視界に入った人型のなにかに向け
て、引き続けていた。

 だが――

「ん……?」

 居ない。誰もいない。
 今し方、13発のマグナムを叩き込んだ人影も、先ほどまで周囲に溢れていた腐臭を伴った気配も、
なにもかも。

 いったい、なにが起こった―――?
 そんなことを思いながら、一歩足を踏み込んだ、その時だった。

「――――!」

 衝撃。足に何かがぶつかる。意識がはじける。小指に、激痛が走る。前進に、苦悶という名の電撃が走り
抜けた。

「――――!」

 あまりの出来事に声も出せず、反射的に足を庇うように蹲る――が、それが、”奴ら”のねらいに他ならな
かった。
 かがみ込んだ、次の瞬間!

 がごぉぉぉん……!

 そんな音を立てて、頭上から振ってきた何かが、無防備な後頭部を強打した。

「あ――?」

 意識が、ゆっくりと薄れていく。
 何か深いところへと沈み込んでいく感触に抗えない。
 静かに闇へと引きずり込まれようとしている視界に映ったのは、安っぽい金色の、そう、これは――

(……タ、ラ――イ……?)

 そこまで考えたのが、限界だった。
 誰もいない室内で、誰にも看取られることなくレイオット・スタインバーグの意識は消えていく。
 もし、後もう一瞬でも彼に意識があったのなら、見ることが出来ただろう――その、タライの内側に記され
た、伝説の一文を。



『駄目だコリャ』



 正しく、真実であった。 

313 名前:Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA :2006/11/25(土) 21:27:34

>>312

「……レイオット?」

 訝しげに、カペルテータが声をかけてきた。
 瞬間、どこかに吹き飛んでいた思考が現実へと帰還する。
 ――いや、なんだ今の光景は。ていうか――タライ?

 あまりと言えばあまりの白昼夢に我ながら愕然としながら、何でもない、と軽く手を振って告げる。

 納得したのかしていないのか――それは判らないが、カペルテータにはそれ以上追求する気はないようだった。
 再び、扉の向こうへ意識を向ける。

 ざっざっ、と。音がする。近づいてくる。カペルが頷いた。改めて銃を構える。
 息をつく――が、殺意はない。相手は死骸だ。ただそれが、まだ動いているだけ。
 モノに対して殺意など沸かない。だから、撃つときも泉のように平坦な心で。

 連中が本当に吸血鬼だというのなら――こちらの戦意に感応し、奇襲のつもりが逆に奇襲を受ける可能性がある。
 得物が限られている以上、生き残るためにはこちらの先手が必須事項だった。

 だから――撃つ。壊す。それ以外は考えない。
 思考をフラットに。
 たとえそれが人間であっても――開いた扉の向こうに見えたモノ、その全てを破壊する。

 そして。カペルテータが、一息に扉を開いた。

 視界に入ってくるのは、鉄帽を被った、返り血にまみれた兵隊の姿。真っ赤な目。腐臭。
 ――撃て。

 その単純な命令が、計十三の大口径弾を撃ち出した。

 まさか、客室にこもっている乗客から奇襲を受けるとは思っても居なかったのか。
 その異様な外見とは裏腹に、二体の兵隊は思ったよりもあっさりと片付いた。
 まあ、避けるまもなく脳みそに四発以上のマグナム弾を食らって生きていられても、それはそれで困るのだが。

 素早く、頭を失った死体を部屋の中に引きずり込み、SMGと予備のマガジンを失敬する。
 ついでにシャベルも。鍵の閉まった部屋をこじ開けるのには、重宝しそうではあった。

「……MP40とはまた随分な骨董品を持ち出してきたな。しかもよく手入れされてるし」

 見れば、カペルテータはすでに外套を被りなおし、準備万端、というところだった。
 どこに行けばいいかは判らない。
 だが、ここにいてもいいことは何もない。

 俺たちは、客室を後にする。

【現在位置:客室周辺・通路上】

314 名前:コダマ ◆K3dMKODAMA :2006/11/25(土) 21:28:32

>>298
子供のように、ソファーにずっかりと腰を下ろしたニット帽の男――ヤン、とか言っていたか。
そう、ここは戦場だ。
お前達の望んだ戦場だ。
だが、この戦場の先にあるものを“母”は望んでいない。

コダマは、わずかに口角を吊り上げて不敵な笑みを浮かべると同時に。
ヤンの指先が高らかに鳴り響く。
同時に、隊列を組んだグールたちが銃を構え銃火が百花繚乱咲き乱れる。

―――無駄な足掻きを。
コダマはそう感じた。

右足を一歩、踏み出すと同時に、泳ぐように外から内に。
両腕が空間を巻き取るように、軽やかにかつ正確に回転する。空手で言う『回し受け』という防御法だ。
コダマの両腕が金属音を立てると同時に、絨毯に焼け焦げが出来ていく。

―――今度はこちらの手番か。
コダマは両手を眼前で交差して、一呼吸。
「Arrrrrrrrrrr――」

両手に光が宿りだす。
これこそが、『コダマ』の名の意味。言霊を『木霊』に乗せて、力を生み出す。
“母”より受け継ぎしコダマの力。
強く差し伸ばしたた指先から放たれた光球が、グールの群れに噛み付いた―――。

【現在位置:展望台1F・パーティールーム】

315 名前:『紅い悪魔』レミリア・スカーレット ◆remyaGVniw :2006/11/25(土) 21:28:50

>>301

>グール。歩く死体、人でなしの怪物。
それらを見た私は―――

「フン、たかがグール程度でこの私を何とかできると思っているのかしら?」

言葉よりも早くそのグール達に攻撃を開始し、すぐさま私の周りにいた死体供を
バラバラに切り裂いてやった。

「―――フ、ざっとこんなものね……て、あら―――?」

>「アンデットは火に弱い。……あら」

>手を下ろしたパチュリーがふと視線をドアの先に向けると、そこには懐かしい顔がいた。

パチェがそんなセリフを口にした時に私がパチェの視線の先を辿ると―――
そこには確かに懐かしい顔がその場に立っていた。

「フフフ…まさか本当にここで会うなんてね―――グルマルキン」

[現在地:客室廊下→回廊]

316 名前:ヴァルトラウテ/タッツェルヴルム ◆SoRDENIEpc :2006/11/25(土) 21:29:16


 >>285

「銃声?」
「船首側のフロアは現在ヴァレンタイン兄弟、ヤン・ヴァレンタインが制圧行動中。
 反応が幾つか見える――屍食鬼の他に……これは、違うわ。
 動体反応、屍食鬼を三体殲滅」
「了解、接触する」

 ヤン……といえば、あの『最後の大隊』からの――あの『少佐』からの借り受けものだ。
 少なくともむざむざ殲滅させて良いものでもあるまい。
 タッツェルヴルムは、叶うならば間に合わなければいい、そう考えもした。
 しかし借りを作っておくのも悪くはあるまい、と血のパーティが今や酣と繰り広げられる
フロアを目指した。

 【場所:1F、パーティルームへ】

317 名前:高木『由美江:2006/11/25(土) 21:29:29

>>300
アー。嫌。
くそアマと別れたいからって勝手にぶち上げた宗教を信じたりしてる奴ら
とか、マジ逝かれてるし。
汚物を一層の汚物にしやがるヤツ、廃棄物処理法で御用だ。
あたしのでる幕以前だろ、しっかりしろよ、行政府。

落下した眼鏡を少し薄めの唇でくわえ。
レンズを舐めてからぐしゃりと握る。大丈夫、また買えるし。
めがねさまの心。それは、目に見えなくとも心の扉にかけたる一対の
可憐でたおやかに佇む姿麗し曲線のびろーど。
信ずればある、心のめがね。

それはさて置き右手ー、背中へ。左手ー、十字を空へと切り結ぶ。
さっそく想定外、おおおおーー、とか喚くグールを目の前に…
とりあえず足蹴にしてから一言だけ、呟くさ。

「欧米か?…日本語喋れ、異端ども。クソクセェ言語を喋りたいヤツは自殺しろ」 

318 名前:高木『由美江』:2006/11/25(土) 21:30:12

>>317
居場所はパーティールーム

319 名前:ハンス・ヨアヒム・マルセイユ ◆sLAdoLfKkE :2006/11/25(土) 21:30:16

>>290
阿鼻と叫喚の地獄。
そう言うに相応しい場になったパーティルームの扉を開く。
血の匂いは、そう好きなわけでもない。

「さて、まずはグルマルキンに会おうかな・・・どこまでのプランが立っているのか聞かないと。あ、でも何処にいるんだか」


少し思案して扉を放置して上に向かう。
――これも、また運命か。

行く手を阻む屍食鬼は、とりあえず「消し飛ばし」無人の野を行くかの如く。


【場所:パーティルーム→展望台2Fを経由して客室方面に向かう】

320 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/25(土) 21:31:31

>>308

 3Fへと往く途中の階段で、上から何かが来る気配がした。
 気配――――という上等なものではない。カツンカツン、という単純な足音だ。
 それもグール特有の引き摺るようなモノではない、明らかに意志を持つ人間のソレである。

 弾倉を入れ替えたスコーピオンを壁の角から突き出して構える。
 グール相手ならここまでは必要ないが……『敵』ならここまでして充分ぐらいだ。

 「――――誰かいるのか? そのまま来ると撃っちまうぞ」

 普通は声を掛けられれば、何らかの反応を示す。
 味方なら自分でそういうだろうし、敵なら――――どうとでも出来る。

【2F〜3F間の階段】

321 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus :2006/11/25(土) 21:32:20

>>282>>289

突然、声が聞こえた。
あまり質の良くないイヤホン越しの、ややざらついた――それでいて、澄んだ声。
その調子は揶揄するようで、笑いさえ含んでいた。

「……大佐、お知り合いですか?」

こん、と指先でイヤホンを叩きつつ、問う。
答えは概ね想像がついていたのだが、敢えて。
明確な返答は無いまま、歩みだけが速まる。
その行く手に一つの気配があるのには、気付いていた。
隠す気が無い、と言うべきだろうか。

――そう、因縁の相手、と言う事。

二人同時に足を止めた先には、燃える様な赤。
真紅の髪に、同じ色のドレスを着た女が居た。

「噂程度には聞いた事がありますわ……あれが、気高き刃。
 歓迎したい所ですが――――招かれざるゲストには相応の持て成しを」

銃口が上がる前に、大佐の影で既に鞭を振るっていた。
目の前の彼女は避け、その先の赤い女に。


【中層部:回廊】

322 名前:ヤン・ヴァレンタイン:2006/11/25(土) 21:36:48

>>315

「煩え吼えんな死ね」指を鳴らして「ほら、俺達の十八番を奪おうとして動きが止まってんぜ?
殺れ、殺せ、喰らいついてでも動きを止めてシャワータイムを奴さんにプレゼントしてやりな!」

 痛みを知らない無敵モードのグール達。元乗客元兵士元警備員元添乗員、どれもこれもが
思考能力の欠片もなく銃弾をばら撒き喰らおうと追い迫る。
 ハハハハハッ! マジ良い眺め。

 死ね潔く。
 死ね快く。
 死ね安らかに。

【パーティールーム】

323 名前:ケイト・コナー ◆g6orsKate. :2006/11/25(土) 21:38:49

>>222

「冗談……」

 ナチスの再来? 狂気山脈?
 冗談じゃないわ!

「取り合えず現状確認しないと」

 先ほどからの振動と怒号。既にハイジャック犯は動いているらしい。
 荷物をあさると出てきたのは、銀の十字架と聖水瓶が2本。

「……これが映画の主人公なら、銃の1つでもあるんでしょうけど」

 贅沢は言ってられない。
 ドアに耳をあて様子を探りつつ、慎重に廊下へと出て行った。


【現在位置:客室廊下】


324 名前:夜雀の怪『ミスティア・ローレライ』 ◆8hOOMYSTIA :2006/11/25(土) 21:39:58

>>297>>304 ローレライVSサーカスVSウィッチ

降り注ぐ弾丸を急上昇していなす。

「へぇ。鉄砲もずいぶんと撃ちまくれるようになったのね〜」

急上昇に紛れて、ガーゴイルどもの下方から使い魔達に不意打ちをさせる。

「吸えるモノならね〜、坊や!」

その最中に迫るさらなる影。
箒に乗った、見慣れた見知らぬ魔女。

「うえー。イメージ悪いなぁ。まー、頃合いかな」

星一つ見えぬ昏き夜の深淵に
確かに聞こゆる鳥の歌声
去れ! 人の子よ
耳に届く旋律は
魂つみ取る夜魔どもの腕よ!


澄み渡る歌声に乗せた、呪わしき魔力。
その歌を聴いた者は、その視界を、心を犯される。

「今日からお前達は! 夜は目が見えなくなるよ!」

コーラスに乗せて妖力の弾丸が渦のように降り注ぐ。


【現在地:周辺空域 姿勢制御エンジン付近】

325 名前:イグニス ◆IgnisC3BW6 :2006/11/25(土) 21:40:21

>>289

 銃声――だが、当たらない。
 理由は簡単。奴が打つよりも、私のほうが速く動いていただけのこと。
 走りながら抜刀。闇色の刃金は黙したまま空を切る。

 すでに語るべき事は何もない。
 私は奴を殺すだけだし、奴も私に殺されるだけだ。
 幾度もこのような場面をお互いに迎えてはいたが――今回で、それを終わりにすると、言外に私は告げ
ていた。

 それに、だ。
 ゆっくりと問答をしている余裕などそもそも無い。
 グルマルキンひとりならいざ知らず――その傍らに居る将校服姿の女に、私は思わず目を疑った。

 ――モリガン。モリガン・アースランド。
 どういう理由でナチに、否、この女とくっついているのかは知らないが――この魔女なんぞとは比較に
ならない。正真正銘の夜魔――化物だ。

 だが、今殺さなければならない相手は”コレ”ではない。
 奴が動き出す前に、グルマルキンの首を獲る――!

 ――だが。流石に、そうは問屋が卸さない。

>>321

「ちっ――!」

 進行方向から一撃。直進から、はじけるように側面に飛ぶ。瞬間、今し方、私がいた空間をなめるように、
鋭い鞭の一撃が薄暗い回廊を叩いていた。ただの一撃で床に亀裂が入る。どうやら、受けることも許して
はもらえないらしい。

 舌打ちをしつつ、横に飛んだ体勢のまま、ベルトに止められていた月牙を、グルマルキンに向かい
投擲する――!

【中層部:回廊(倉庫付近)】

326 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg :2006/11/25(土) 21:40:28

>>259>>260 レップ
>>293 エリ

「弾がでけーと見易いのはいいが」と長谷川虎蔵は翼を大きく広げた。

 キャノピーの向こうで女パイロットが何か叫んでいる。
 大体何を云いたいかは察せられたので、虎蔵は機体を掴んでいた手をぱっと離した。


 主翼部分から飛び立ち、虎蔵は夜空を滑空する。友軍機があっという間に遠くなる。
 超高速で空気抵抗を粉砕しながら、数瞬前にいた空間付近を抜き去って行ったのは弾丸だ。
目的地からの迎撃である。
 彼が某機関より依頼され、内部を制圧したハイジャック犯を皆殺しにする為に向かっている
巨大飛行船からだった。


 未だ空の彼方にあるが、ここからですら度外れたその巨体は際立っている。浮力だの揚力だ
のといった小理屈は、かくも巨大な物体が空に遊ぶ情景の前にはほとんど意味を為さない。
 さて大空雄飛の浪漫は置くとして、と虎蔵は呟く。

「――大した城攻めだな、こりゃ」

 空飛ぶ白銀の城の周囲には、無数の影が舞っていた。
 随伴機ではない。いや、役割としてはそうであろうが、どれ一つとしてまともな戦闘機では
なかった。


 ちッと舌打ちを一つして、矢庭に黒衣の風来坊は歌い出した。

「わんだばだばだばだばだばだばだばだばだばだばだば、
 わんだばだばだばだばだばだばだばだばだばだばだば」

 これ以上ない程にやけくそな大声である。
 威勢だけは無闇といい節回しを高々度の風に千切り飛ばし、虎蔵は目的地へと黒翼をはため
かせた。

「たー、たらったったーん、たらったったーん、たらったー、
 たー、たらったったーん、たらったったーん、たらったー」


>>304 ふみこ

 飛来する砲弾。数は四。
 虎蔵は両手を振った。と、両手には白刃が二本、逆手に握られている。
 躯の至る所に武器を隠し込む暗器術の妙手である。

 直接彼を狙ったものではなかったが、虎蔵は火線へと身を躍らせ、

「ま、運賃分だ。後は知ったこっちゃないがさ」

 すれ違い様に二太刀を閃かせる。


 翼を翻して虎蔵が離脱した直後、砲弾四つの内二つは小爆発を起こした。


【周辺空域:飛行船周辺空域、機体後方より接近中】

327 名前:ロンギヌス13 ◆13th/X9pTg :2006/11/25(土) 21:40:53

>>303

「――やはり、な。銃弾程度では拍手にしかなるまい」

アインは銃弾を受けて千切れ飛ぶ対象の体を見ながら、確信をより一層強める。
二つの標的の内、こちらに対してのみ異能を感知するペルソナ・センサーは反応を示している。
何らかの異能の力を備えている事は間違いない。

「この程度で死んで貰っても困る所だ。聖槍(ロンギヌス)、構えッ!!」

銃撃を中断。右腕の聖槍を構えてバトルモードをクロスレンジに切り替え。
フォーカスを調整するモノアイ・カメラがキュイイと音を立てて引き絞られる。

「奴を串刺しに――ッ!?」

そのまま接近戦を想定していたが――相手は幾分冷静のようで、侵入を優先したようだ。
女はドライの頭を踏みつけ、そのまま素通りを画策している。

「だが……させんよ」

いち早く反応したアインがその身を捻り、槍を突き出す。
聖者の傷を癒す奇跡すら無効化した聖槍・ロンギヌス。
コピーといえど彼が持つ槍にもその力の一端は備わっているのだ。

「追加だ。これも、受け取っていけ」

>>305

(銃弾を避けるでも、防御するでもなく、切り落とした。
 ペルソナ・センサーに反応も無い只のヒトだというのに――これか!)

その視線から感じる抜き身の殺意を受け、彼等もまた、右腕のロンギヌスコピーを構える。
これこそが聖槍騎士団の誇りであり象徴。
聖槍を使用するという事は、彼等が本気で当たるという証明となのだ。

「ならば受けてみせるがいい! 模造品といえど、聖槍は伊達ではないぞ!」

三機が各々の槍を構え、その穂先を虚空に走らせる。

一閃。
二閃。
三閃。

計三つの斬閃が、落下する敵手を迎え撃つ!

【周辺空域:気嚢上部】

328 名前:麻宮アテナ:2006/11/25(土) 21:40:59

>>284
 他人の荷物を勝手に開けるのは、気持ちのいいものではありません。
”スタッフ以外はお手を触れないでください”とか、なるべく公共性の高いものを選んで開封。
といっても……。

「警備員さんの予備の備品、くらいかなぁ」

 気を落ち着かせるために、独り言をいいながらの作業。
使えそうなものは警棒くらい? 聖ゲオルギウスの槍とか賢者の石とかあればよかったのに。

>>303
『ぎゃあぎゃあ喚くな、偏頭痛になっちまう…』

 荷物がしゃべった! じゃない、荷物扱いで人が? 密航者?
でもなんだか状況を把握できてなさそう。私も大して変わらない状態ですけど。

「ええと、当機の客室乗務員のアサミヤです。只今当機はナチス残党を標榜するハイジャック集団に
操縦室を占拠された模様、詳しくはこれから様子を見に行ってみないと……。
このまま黙ってても状況、よくなりそうにありませんから」

 よく見るとこの人、かなり身体ができてます。絶対何かやってる。
普通に格闘やるなら私より強いかも。ああでも、いいのかなあこういうこと頼んで。

「ええと、もしよろしければ、私と一緒に来てほしいんですけど……。
もちろんすごく危険そうだから、都合が悪いならしょうがないです。でも……」

>>306

 ど か ん。

 ドアが破られた、と思ったら、全然知らない人でした。
軍服を着ていないから敵ではなさそうです。というかそう思いたいです。
わざわざドアを破ってここまで来たということは、この人も相当に……。

「あ、あの、外の様子はどうなって……」

>>311
 ってまた誰かが! しかもテレポート! 同類さんですか!
メイドさん服なんて変わった服着たらこれですか。どうせ私なんてこんなものですか。

「ええと、みなさん! 客室乗務員のアサミヤです!
只今当機はハイジャックされた模様、状況確認のため手を貸してください!」

 それでも仕事は果たさないと。お客さまとついでに自分の安全確保。
そのためにお客様を危険に巻き込むのも本末転倒な気がしますが。

<現在位置:下層部倉庫>

329 名前:ビリー・龍 ◆D727Bb9L.2 :2006/11/25(土) 21:41:20

>>308
(予定変更、客室へまわった)

 客室の通路もまあ、なにやら殺気立っていた。
 ま、豪華客船だけあって混み合いは……。。。。。。

 なんだこいつら、グールじゃねーか。
 肩を回す。マクスウェルの抑制を解除。

 つっても、こいつら相手じゃおもしろくないが。

 よってきたグールのド頭を、壁に叩きつける。グシャ。
 おしのけながら通路を進む。もうひとつ、グシャ。
 ふと目を上げると、俺と似たようなことをしているやつを見つけた。
>>309
 目があった。サングラス越しだが。

「よう」
 マヌケな挨拶だ。
 ま、さっとばかりにあげた手は血塗れなんだがな。

(客室)

330 名前:喰屍鬼兵(M):2006/11/25(土) 21:43:15

>>295

―――目の前の動くモノは喰らい尽くせ。
―――目の前の動くモノは撃ち尽くせ。
―――目の前の動くモノは犯し尽くせ。

 そう行動原理を刷り込まれた兵たちはただひたすらに這い回る。
 這いよる悪霊。這いよる亡霊。
 痛みを知らぬ悪霊。痛みを知らぬ亡霊。

 ただ、前進し、撃つ。
 単一思考。

―――故に、兵力としては申し分なく。
―――されど、此処の力は劣る。

 ただただ襲い掛かる。
 無為に死ぬ為に。塵のように死ぬ為に。
 無為に殺す為に。塵のように殺す為に。

331 名前:ルーク・ヴァレンタイン(M) ◆jBiAWniQ.. :2006/11/25(土) 21:44:17

>>296 >>301

「まったく…」

壁をけり天井を走り回廊を馳せる。
通過点にいた魔女を通り抜け/こいつが一人目。
次に侵入者をその視界に収め/こいつで二人目。
位置的に、両者の中間に入り込みその場で旋回する白い影。

激動から訪れた一瞬の静寂。
右手にカービン銃。
左手も同様。
既に懐から引き抜いた凶器を構え、

「―――やかましいぞ貴様ら」

交差された両腕の先、銃口からフルオートで殺到する7.62mm弾の群れ。
火箭と小気味よい破裂音を伴い、鉛の悪鬼が獲物たちに牙を剥く。

【現在地:回廊】
 

332 名前:ジェームズ・ホワン(M) ◆ko.IhfiTmE :2006/11/25(土) 21:47:03

>>328
「うん、しってるよ」
僕はただ一言そう答えた、何故なら
「僕もその一味だからね、といったらどうするお嬢さん?」
僕は目の前の少女にそういう挑発めいた言葉を投げかける。

この子、僕のテレポートを見ても驚いてなかった…まさか、ね。

<現在位置:下層部倉庫>

333 名前:ハンス・ヨアヒム・マルセイユ ◆sLAdoLfKkE :2006/11/25(土) 21:47:37

>>319>>329
展望台の階段を軽やかに駆け上り、客室のエリアへ。
そこら中で発生している怒声に罵声に悲鳴に銃声は気にしない。
それよりも・・・

「げ」

らしくもない、声が漏れた。
視線の先には、真っ赤なジャケット。
ルート・ヴァンパイア、真祖とも呼ばれるアレは……

「ビリー龍、か」

とりあえず、無視も出来ない・・・と言うか、あちらも気付いているだろう。
にじり寄るグールを薙ぎ倒しながら近づく。

「いつからこんなのに乗れるほど懐が暖かくなったのかな、ビリー?」


【場所:客室、ビリー龍と遭遇】

334 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/25(土) 21:47:58


>>301>>315
>>321
 vsレミリア・スカーレット

 聞き慣れた声がかかった。
 イグニスに向けて拳銃弾を撃ちはなった直後に、だ。
 慌てて銃口を向ける―――そんな無様な真似はしない。
 くつくつ、と喉で嗤った。

「このタイミングで鉢合わせるとは……パチュリー・ノーレッジ。無事、私の
招待状は受け取ってくれたみたいだな。それは重畳。そして、何より」

 ワルサーをホルスターにしまう。代わりに腰に佩いたサーベルを抜き放った。
 ハンドガードに、黄金の蛇が二匹絡み付く装飾が施されている。
 魔導師グルマルキンの杖―――ケリュケイオン。

「―――来たな、レミリア・スカーレット! 感謝するぞパチュリー、私は
こいつが欲しかった」

 サーベルに鍛え直したヘルメスの杖が、魔女の呪詛に応えて魔力を増幅させる。

「我が足に翼持つサンダルあり。
  真空に風を起こし、星の光を踏み、我が身と魂とを速やかに運べ。
 いざ―――駆けよ!」

 グルマルキンの全身を覆うマントが突如爆ぜた。
 漆黒の暴風がグルマルキンとレミリア・スカーレットを覆い隠す。

「イグニス、命拾いしたな。精々、生き汚く足掻け。
 モリガン、ルーク! 後は任せたぞ」

 二人を包み隠したマントは限界まで収縮すると、やがてその場から消え失せた。


【転移呪文発動。中階層:回廊→中階層:キッチンに転移】

335 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2006/11/25(土) 21:50:29

>>231 >>273 >>294 (グール灰燼・外へ)


 空の上は、星が涼しく瞬いていた。
 北の果てが近づいていると、私には思えた。
 雪がとても―――幻想郷の何倍も多いらしい。
 雪は好きだ。きらきら光った白は宝石みたいで。
 だから、そこに近づくのがとても楽しみだった。

 ―――歌が聞こえる。
 歌劇はすでに始まっていて、私は舞台に上がっている。

「……ふふ」

 笑みがこぼれる。
 炎が花開く。光が走る。無数の役者が夜空の舞台で踊っている。
 さあ、私も混ざろう。

 ―――世界で一番過激なショウタイムに!!

「Shall we dance !!」

 高らかに私は舞台に上ることを告げ、大きく身体を旋回させた。
 翻るドレス。黄金色の髪が風に流れるのが見える。
 私は炎の剣を振りかざし、飛び散る火の粉とともに一回転。

 スルトの炎剣。世界を焼いた滅びの神装。
 その名を関したスペルが―――蒼い夜に紅い光を捧げた。
 伸びる炎が遠くに見える山を薙ぎ払い、吹き飛ばす。
 飛び散る炎があちこちで花開き、世界を照らし出す。

 その光景は、“炎の庭”の再現のように―――綺麗だった。


【周辺宙域:空戦参加者に対しての無差別攻撃】

336 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/25(土) 21:51:56

>>330

 武器はありません。といってもそれは……今わたしの「手持ちの」武器がないというだけの話!

「ここはわたしに任せて、安全な場所に逃げて下さいっ!」

 わたしは、傍らにあった植木鉢を片手でひょいと持ち上げ、喰屍鬼(グール)に向かって投げつけました。
 高速で飛んできた植木鉢が頭部に命中した怪物は、派手な音と共に吹っ飛び……奥にいた2体とまとめて
壁に激突します。しかし流石はアンデッド、ひるみはしましたが這いつくばって再び立ち上がろうとしています。

「ダメです、この程度じゃ……軽いし、全然しっくり来ませんっ!」

 もっと重く、耐久力溢れる喰屍鬼(グール)も、一撃で倒せるような武器。そうそう都合よくは……
 ……ありました! 大理石で作られた石像! 何かエライ人っぽく髭とか生えていますが、今は緊急事態です。

「すみません。邪悪を殲滅するために……役立てさせて下さい!」

 さすがに持ちにくく、人一人の体積のある石の像ですから、相当重いです……でも、持ち上げられないほどでは
ありません!

「どぉぉぉぉっっっっせぇぇぇぇええぇぇぇぇぇいっっっっ!!」

 気合一発、石像を頭から掴み、両手で抱え……襲いくる怪物に向かって……わたしはそれを振り下ろしました!

【イリーナ・フォウリー:現在地:パーティールーム】

337 名前:レミア・シルヴェスタW世 ◆MVlNEREMIA :2006/11/25(土) 21:55:20

>>328
客室乗務員の一人が遠慮がちに聞いてくる。
外の様子だって?決まっている。

「どこかの亡霊がハイジャックしたのよ、飛行船を」

>>311>>332
テレポートで現れた軍服を着た男。
しかもハイジャック側の一味と言っている。

「―――あなた、聖櫃なんて物騒なもの持ち込んで何するつもり」

間違いなくモニターに映っていたあの箱。
あれの用途は間違えれば…

【現在地:倉庫】

338 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/25(土) 21:55:29

>>320のアンカーはミス。グール殺しただけ。

>>309 >>329 >>333

 ――――バンパララバンララバンパララ

 ベレッタとスコーピオンの二挺拳銃で素早くグールを片付けた。
 どうやらグールになりかけの奴だったらしい。だから足音が規則的だった訳だ。

 「世の中には珍しい事があるね」

 俺はそんな事を呟きながら三階まで辿り着き、例の非常口マークが書かれた扉を開ける。
 そこは一面グール、吸血鬼、その他諸々がいい感じに混ざり合った混沌だった。

 「えーと、テラカオスって言うのか、コレ」

 生きている人間らしいのは、全身真っ赤なスーツの女と見目麗しき(皮肉と僻み)金髪碧眼
の美青年。それと紅いジャケットを着たのは――――何、だろう。

 スコーピオンとベレッタを持ち上げ、腕をクロスした、結構気に入っている構えを取る。

 「取り敢えず、どれが敵でどれが味方でどれが殺していい奴だ?」

 【客室に到着】

339 名前:コダマ ◆K3dMKODAMA :2006/11/25(土) 21:56:06

>>322
コダマの放った光球は、数体のグールを臓物花火に変えた。
しかし、如何せん多勢に無勢か。
死体に宿っていた大なり小なりの陰我に強制介入した呪いが、新たなるグールを次々と生み出していく。

―――あの原理は何かに使えそうだ。
コダマの脳裏にはそんな考えが浮かぶ。しかし、そのアイデアを煮詰める暇など当てられては居ない。

「Ahhhhhhhhhhhh……」

再び木霊を放ち、光を補充する。
同時に重厚な弾幕に対し、

蝶のように、竜巻のように、舞い上がり弾幕を飛び越える。
着地と同時に水面蹴り、回し蹴り、浴びせ蹴り。
グールの群れを掻き分け、ヤンへと肉薄していく――!

【現在位置:展望台1F・パーティールーム】







340 名前:コーディー:2006/11/25(土) 21:56:49

>>306
…扉が壊され、見知らぬ女が入ってくる。怪力…にしちゃ異様すぎる壊れ方。
「…さっきから乳臭ぇ匂いしかしねぇなぁ…」

状況把握も何もロクでもない事態が今俺の周りで起こっている。それだけは
いくらオツムの足りん俺でも理解できた。

>>328
…やべぇ。いくら苛立っていたとはいえ、ここの乗務員にみつかっちゃ元も子も
無い。チッ…口止めする様頼んどくか。そう思い、らしいごまかしを始めようと
したが…

>「ええと、当機の客室乗務員のアサミヤです。只今当機はナチス残党を標榜するハイジャック集団に
>操縦室を占拠された模様、詳しくはこれから様子を見に行ってみないと……。
>ええと、もしよろしければ、私と一緒に来てほしいんですけど……。
>もちろんすごく危険そうだから、都合が悪いならしょうがないです。でも……」

「…何だ。俺より面白い祭りやってたのか。」

ハイジャック、ハイジャック――。へぇ…
酷く嬉しそうな顔をしながら応える

「つるんで悪党退治なんてとうの昔に飽きたんだ…悪いな

    ――ま、道案内なら話は別だが?」
…やっぱ乗務員だけあってこの飛行船の内部熟知してそうだしな

>>311
…アテナとかいう小娘がまた別の方向に声をかける。また知らぬ
奴が此処に来てるらしい。ハイジャックと関係有るのかどうかは知らないが

「…避難しにきた、て面じゃあ無ぇよなぁ…?」

341 名前:シエル ◆kcbhGUILTY :2006/11/25(土) 21:57:53

>327

「がっ、ぁ――――」

踏み台にした甲冑のやや左下方に、もう一体居た。
それの突き出した槍が、肋骨を砕きながら身体を貫く。
焼けるような痛み――胸の間から覗く血塗れの槍の穂先。
宙を舞う私の身体が、ずるりと滑り落ちて――――

――――痛み、が、

引かない。こみ上げてくる熱いものを吐き出すと、それはすぐに冷えて固まった。
落ちる。
このままでは届かない。
そして、胸の傷が塞がらない。

「……あ、あぁぁぁっっ!」

死力を振り絞って、肩の荷物を身体の前に出す。
仕舞いきれずにはみ出たグリップを掴む。
そして、これ本来の機能とは別に増設したばかりの装置のトリガーを引いた。
ワイヤーアンカー。
射出された鋼の鉤爪付きの蜘蛛の糸が、飛行船目掛けて飛んでいった。

【飛行船上空:失速して墜落しそう】

342 名前:Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA :2006/11/25(土) 21:58:22

>>313

 通路を進む。当てもなく。
 時折沸いて出てくる兵隊だか死体だか――ともかく、敵意を持ってこちらによってくる諸々に、当たる当
たらないには特にこだわらず、闇雲に銃弾を浴びせていた。

 だが、きりがない。
 通路という通路から次々に沸いてくる死者の群れ。ともすれば、こちらもその一員に巻き込もうと進軍す
るそれは、正しく死の河と称するに相応しい。

 ……このままでは、そう遠くないうちに連中の仲間入りするのは、間違いがなかった。

「くそ――通路じゃ、弾避けもありゃしねえっ!」

 何か訳のわからないものに対して罵り声を上げながら、カペルを引き連れて走る、走る、走る。

 やがて――到達したのは。
 乗船中、一度として足を踏み入れたことのない、パーティールームへの扉だった。
 後ろからはぞろぞろと歓迎できない客の群れ。

「ああくそ――入るほか無いってのかよ!」

 罵りながら、シャベルを扉の隙間へとねじ込み、その内側へと転がり込んだ――

【展望室1F:パーティールーム】

343 名前:『紅い悪魔』レミリア・スカーレット ◆remyaGVniw :2006/11/25(土) 21:59:02

>>334
VSグルマルキン・フォン・シュティーベル

>「我が足に翼持つサンダルあり。
  真空に風を起こし、星の光を踏み、我が身と魂とを速やかに運べ。
 いざ―――駆けよ!」
グルマルキンの全身を覆うマントが突如爆ぜた。
漆黒の暴風がグルマルキンとレミリア・スカーレットを覆い隠す。

「―――っ!!?」

私はいきなり先手に出たグルマルキンの行動に手も足も出ずに…
突如巨大化したグルマルキンのマントが私とグルマルキンを包み込まれてしまい―――
そのままその場から瞬間移動させられてしまった。

【現在位置:グルマルキンの転移呪文により中階層:回廊→:キッチンに同時転移】

344 名前:ケイト・コナー ◆g6orsKate. :2006/11/25(土) 22:00:04

>>309

 グール、グール、グール、グールだらけ!
 いつからここは、地獄の釜の底になったのよ。ああ、そりゃたった今さっきなんでしょうけ
ど。
 まあグール程度ならいなすのに問題はない。それよりも問題なのは……

「ヴァンパイア!?」

 どうしよう。誰かと話している様でまだ私には気づいていない。
 このまま部屋に篭って助かる見込みがない以上出ていくしかないのだけど、あいつに
見つからず出て行けるだろうか?
 吸血鬼狩りの経験は何度かあるが、あれは全盛期だった15年以上前の話。装備も
今とは全く違う。今闘えば、話にすらならない。
 聖水に銀の十字架……いかにもな装備だが、利かなかったらおしまいだ。

「取り合えず話してる相手を確かめないと……」


>>338

 と、新たな乱入者登場。

「……何も好転してないけどね」

 ああ、アリー、ティミー、ママ頑張るからね!


【現在位置:客室】


345 名前:サクラ ◆6jagu9Uf/. :2006/11/25(土) 22:02:36




「―――いったい、何が、どうなっている」

 自問する。勿論答えはない。
 辺りを見回し、状況を確認。 I−ブレインで推論の手がかりになりそうな物証はないか
洗いなおす―――二秒後には返事が戻ってきた。答えは「NO」。
 少女の脳に同居している超高速演算装置―――「I−ブレイン」のメッセージは、何時も
簡潔にして明瞭だ。しかしこういうときに限ると、あまりに明瞭であるのもどうかと思う。
絶望を取り繕う余地くらいは与えて欲しいものだが―――。

「まあ、………それを言っても仕様がないか」

 やれやれ、と溜息を零す。
 そのまま手足の長い絨毯が引かれた部屋を突っ切り、重い樫作りの扉の、
 取っ手を、



(警告:攻撃感知)



「―――っ!」

(分子運動学制御:『銃弾』)

 瞬時に反応する。
 一秒後には体の周囲に数百の見えざる『固定大気分子の銃弾』が出現。
 運動量を与えられて射出されたそれらは分厚い木製のドアを紙の如くに破り、扉の
向こう側にいる敵を容赦なく蹂躙する。
 その間、少女は身じろぎもしない。
 蜂の巣へと変じていくドアを真正面から睨みつけ、能力を展開し続けている。

 敵反応消失。
 同時、扉を蹴破る。向こう側のグールごと押しつぶす。


 半ばの予想通り、廊下は血の海だった。

「く―――」

 どうやらこの場所―――恐らく運行中の巨大飛行船―――は、事情は知れないが
混戦状態にあるらしい。
 ただ。
 まあ。
 戦いというのなら。
 もう、とっくに慣れているのだけど。

 ―――それで、落ち着きを取り戻した。

 走り出す。
 横たわる死者の群れを、立ち込める死臭を無視するかのように―――。


【客室→展望台1F パーティールームへ】




346 名前:麻宮アテナ:2006/11/25(土) 22:03:49

>>332
『うん、しってるよ』
 なにを呑気に悠長に……。
『僕もその一味だからね、といったらどうするお嬢さん?』

 ……そういうことですか。だったらどうするもなにも。

「先ほど申し上げましたとおり、私は臨時とはいえ乗務員です。
お客さまの安全のために走り回る義務があります。
あなたがあの集団の一味とおっしゃるなら……」

 一見矛盾しているようですが、超能力者同士の戦闘に勝つには、近接戦闘。
どうせ光弾とか火球とか岩とか飛ばしあっても、相手にシールドされるんですから。
気力に自信があるならそのまま持久戦に持ち込むのも手ではありますが、

「……てぇつだってーっ!!」

 短期決戦! 横殴りの警棒を避けさせておいて、本命の足技でアドバンテージ、
そのまま立て直す暇を与えず押し潰す!
ここで他のふたりが「私もハイジャックです」「奇遇ですね。実は私もハイジャックでした」なんてことになったら
私大ピンチ。お願い神さま、あとのふたりは味方でありますように!

347 名前:飛竜 ◆HIRYUmxRKo :2006/11/25(土) 22:05:29

>>327
 パワードスーツが三機、右手に携えた槍と共にこちらに迫って来た。
「それが貴様らの本気か。良いだろう」
 背中に差した登攀用の鎌――クライムシクルを左手で抜き放ち、一番近くまで来ていたパワードスーツの翼に打ち込む。
 そのまま、腕の力のみで倒立し――。
「堕ちろ」
 二機目に向け、右手の得物を一閃させた。

「……ちっ」
 三機目の携えた槍がすでに眼前に迫っていた。
 鎌を引き抜くと同時に一機目を足場にし、気嚢上部へと乗り移った。

「潜入目標へ到達。左大腿部に損傷。任務遂行に支障はない。任務を継続する」
 本部へ報告しつつ、尾翼方向への移動を開始した。

【現在位置:飛行船上空→気嚢上部から尾翼方向へ移動中】

348 名前:ビリー・龍 ◆D727Bb9L.2 :2006/11/25(土) 22:06:07

>>329
 美人さんに愛想を振りまいていたら、背後から声がかかった。
 ああ、なんかホールドアップしちまいたい気がした。
 なんでこんなところで会うんだよ。

「仕事だ、仕事!」

「スパイ捕まえるはずが、誤情報で乗っちまったというわけだ。
 俺のせいじゃねえぞ、マヌケ(で金持ち)なクライアントのせいだ」

 振り向く。金髪の美少年がいたんじゃやりにくくって仕方がない。
 とくに女口説くのはな。

>>338

 今度は本当にホールドアップだ。
 俺は後ろ向きのまま、両手を挙げた。
 上げながら、ナイフを抜き出したのだが。
 手品はいいぜ、覚えておくと命が三年は長くなる。ま、荒事氏に限るが。

「敵も味方もあるもんかよ。とりあえず、銃口向けてきたやつが敵だ」

 言うなり身を翻した。
 同時に果物ナイフをそいつの喉元に三本、投げつける。

(客室エリア)

349 名前:パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU :2006/11/25(土) 22:06:18

>>271 >>277 >>301 >>315 >>331

一瞬の無音の世界。
理解はその間で十分すぎた。敵だ。

敵は一人。敵かどうか分からない誰か一人。敵はパチュリーとその両方に何かを向けている。
穴の開いた金属→殺意→武器。
理解が行き届いた瞬間、パチュリーは懐から1枚のカードを投げ捨てていた。

スペルカード。
彼女らの世界の魔具。力を圧縮し、効率よく展開するためのアイテム。
左手より展開すれば、それは盾になり
右手より展開すれば、それは矛となる。
カードが謳う。魔女がつぶやく。

『Ore been Metal,Metal been Fatigue. 広がり、砕け、討ち貫け』
「金符、メタルファーティグ」

瞬間、パチュリーの眼前に金属の板が出現した。
敵の放った銃弾が板に吸い込まれていく。
まさに盾、と思われた刹那。

盾が砕けた。
鉛の悪鬼に喰らわれてではなく。
鉛の悪鬼を喰らいつくさんとするかのように。
              ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
スペルカード。それは矛にも盾にもなりうる。

弾を喰らい尽くした元、盾……腐食した金属は、さらに乱入した敵も多い尽くすかのごとく広がった。

350 名前:リヒトホーフェン・サーカス:2006/11/25(土) 22:06:50


>>304>>310>>324>>335

 滅びが始まった―――眼下で展開される、命を賭したフライング・サーカス。
 船内の狂騒は空よりも更に激しく、無線越しに伝わる狂騒はロタールをより
歓喜に震わせた。思ったよりも速く、終わりとは来るもんだ。
 だが、リヒトホーフェン兄弟は動かない。
 4人の飛行士を待機させたまま、じっと空を。
 自らの活躍の時を待っていた。

 と、その時―――

「こいつは……」
 ロタールの口にくわえた煙草からこぼれ落ちる。
 マンフレートですら目を剥いた。

「ムスペル・ヘイムか……」
 フランドールのあげた盛大な花火に、ロタールは感嘆の声を漏らした。


          ※ ※ ※


 反応する暇なんてありはしなかった。
 少女/鳥が歌い始めた≠サの時―――シュライヒの視界は暗転した。
 世界がまったく消え失せてしまったのだ。
 例え、視角が死んだとしてもシュライヒは優秀な聴覚を持っている。
 まだ戦える。そのはずだった。

 が、突然の事態に咄嗟に竦んだ身を―――炎が貫いた。
 滅びの剣がシュライヒを一瞬にして灰に還したのだ。
 死を感ずる暇すらなかった。

〈エデュアル・シュライヒ→死亡〉


         ※ ※ ※


「シュライヒ? シュライヒ! 死んだのか!」
 同じく視界を失ったブルーノ。
 炎の剣による攻撃は紙一重でかわしたものの、その余波だけで全身が
焦げ付いていた。重度の火傷が痛みとなって彼を蝕む。
 痛みが怒りと代わり―――やがてそれは狂気に変じた。

「殺す! 誰もかれもを殺す!」

 飛行はやめない。銃身が加熱するのを無視してブルーノは撃ちまくった。
 狙いは当然のように―――事態の元凶たる少女/鳥。
 決死の突貫だ。


【現在地:周辺空域 姿勢制御エンジン付近】 

351 名前:ヤン・ヴァレンタイン:2006/11/25(土) 22:06:53


 は、まったく。欠伸が出んぜ。遅すぎる。待ち人来たらず外は大荒れの模様でしょう!
クソッタレ、暇だよ暇。暇暇暇暇暇ヒーマー。

「あー、クソが。そろそろ出撃してやんよ。王様気取りはもう止めだ」

 一歩進むごとに一人殺すじゃペースにあわねえんだよな。死にやすすぎるオモチャ
にはウンザリだ。ウンザリだ。死ね。

>>339

「もうちょっとお前はグールと遊んでろ。ソーローは嫌われんぜ? ヒャハハハハッ!」
しっかし煩い。煩い煩い煩い「おい、喉潰せ。耳障りで仕方ねえから」

 グールに伝令。命令には忠実だから助かる。
 ま、死んだら死んだ、生きてたら殺すだけだよなー。ぶっちゃけ。

>>317


「なあシスター。この阿鼻叫喚の地獄絵図はカミサマが望んだのかい? それともこれ
は悪魔の仕業? 見解を聞きてんだけどなー? どうよ?」

 愛用の銃(カスタマイズしまくったマシンガン)を手に(二丁だぜ!)見下してみる。

352 名前:哀川潤 ◆gt7r2hts/U :2006/11/25(土) 22:07:25

>>329 ビリー・龍

>「よう」

知らない奴と目が合った、続けて挨拶された。
しかもそいつの上げた手は血塗れと来てる、最高に愉快だ。

「おお、らーいらい」

お返しとばかりに手を上げる。
まぁ、あたしの手も血に塗れているんだけどね。

手を降ろすと何をするでもなく、そいつに近づく、その前に。


>>323 ケイト・コナー

「おーいおい、何覘いてんだこの野郎。
出てくるなら出て来い、出てこねーんだったら亀の様に閉じ篭ってろ!」

誰に言うでもなく大きく声を上げ、それから近づいた。

【哀川潤:客室:ビリーと遭遇、ケイトに声を掛けた】


353 名前:ヴァルトラウテ/タッツェルヴルム ◆SoRDENIEpc :2006/11/25(土) 22:08:10


 >>316 >>317 >>322 >>330 >>336 >>351

 みしり、と音を立てて握りしめた扉板は、その厚さゆえに未だ形状を保っていた。
 さもなければ粉々になっていただろう。

 何故ならば、乱射された銃弾のために把手が千切れ飛んでいたからだ。

 僅かに背を屈めながら、黒衣の巨躯が姿を現した。

「敵対行動中が三――金属反応、剣だわ。
 残る二は不明」
「了解」

 修道衣を纏った女、一。
 パーティドレスを纏った女、一。
 そして、一。

「さて、君たちのお相手、不足でなければこのヘルマン・タッツェルヴルムが務めさせて
いただこう」

 右の拳を握り締めながら、名乗りを上げた。

 【場所:展望台1F、パーティルーム】
 

354 名前:リゾット・ネエロ(M):2006/11/25(土) 22:09:13

>>334 >279
「やれやれ、何だったんだアレは…」
リゾットは誰に言うでもなく一人ごちる。ゾンビとでもいうのか…
眼から光を失い、肌が腐れおち、肉が削げ…あれはどう見ても死体だった。
やつらにも保護色は効果があったらしい、彼には眼もくれず目の前のご馳走
に喰らいついていた。

あの身震いするような化物の間をすり抜け、彼は以外にも難なく階下の
格納庫へと降り立ち、倉庫区画を通り抜ける。
途中、武装親衛隊の軍服を着込んだ連中とも出くわしたが、大方気のせいか
何かと思われたらしい。しかしどうも連中勘が良すぎる。
さてどうやって目標に近づくか、そう思案した矢先…

「我が足に翼持つサンダルあり。
  真空に風を起こし、星の光を踏み、我が身と魂とを速やかに運べ。
  いざ―――駆けよ!」

あれはターゲット!? 奴の姿はもう無い…
「…逃したか」

【現在位置:倉庫区画出口→中層部回廊へ】

355 名前:ジェームズ・ホワン(M) ◆ko.IhfiTmE :2006/11/25(土) 22:10:06

>>346
「ひどいなお嬢さん、人が折角交渉を持ちかけているのに」
そう軽口を叩こうとする暇もなくいきなりの攻撃
は、このお嬢ちゃんケンカ慣れしてやがる、それに後ろの2人も只者じゃなさげだ。
僕は空間移動で間合いを取ると、
そのまま空間を振動させ、衝撃波を自称乗務員の進路へと放った。

356 名前:大尉:2006/11/25(土) 22:10:47

>>336 (イリーナ・フォウリー)

 髑髏の印をつけた兵達の歌が船内放送から流れている………
 誰かが流したのだろうか?

   『いや、誰か助け―――がぁぁぁぁぁっ!』

 Hackenkreuzfahnen,
 鉤十字の旗は、

(中層部展望台3階 カジノ)
    『な、何だ、この化け物達は!? く、来るなッ!!』

 Schwarz, weis und rot
 黒く、白くそして赤く

(中層部展望台3階 サロン)

『お、お姉ちゃん、止めてよ! ……きゃああああっ!!』

 Grosen und mahnen,
 挨拶と呼びかけを

(中層部展望台2階 キッチン前)

『お……ぁぁぁ……………』
           『ぇぇぇぇぇ……ぁ』

 Seid getreu in dem Tod!
 決死の忠誠にて行おう!

(中層部 客室近辺)

       『鍵を閉めておけば連中も入ってこれ――――――うあああっ』

 Deutsche, seid Bruder,
 ドイツ人よ、兄弟よ、

(中層部 客室近辺)
  『神様、神様、神様ッ!』

 Reicht euch die Hand!
 その手を掲げよう!

(中層部 倉庫近辺)          『あは、あはははははは、これは夢よ、夢なんだわ……』

 Heil uns'rem Fuhrer,
 我らの総統よ、万歳

(中層部 展望台1階 パーティールーム近辺)            『がっ…うぁぁぁぁぁ』
      『いぃやぁぁぁぁぁっ』

 Heil dem Vaterland!
 父祖の国よ、万歳!


 ガン、と鈍い音がして扉が跡形も無く粉々になった。
 一人の独軍36年型オーバーコートに身を包んだ男が無言でパーティールームに入ってくる。
 男は周囲を軽く一瞥すると、一人の少女、イリーナに視線を定めた。

                  コツコツコツ
            コツコツコツ
      コツコツコツ

 軍靴が床を打つ音が少女の方へと向かってくる。


 <現在地:パーティールーム>

357 名前:ヴァーミリオン・CD・ヘイズ ◆/CD/iS.AAU :2006/11/25(土) 22:11:26

>>331

扉を開け、回廊に飛び込んだヘイズを待っていた物は。
果たして、凶悪なる銃弾の洗礼だった。

霰のごとく、だがそれよりずっと恐ろしい、一発一発が人に容易く死をもたらす威力を籠めた、鉛の弾丸。

即座に、I-ブレインが弾道予測を開始。
他の魔法士とは違い「予測演算」のみに特化してしまった失敗作の生体コンピュータが、その性能を発揮する。
フルオートでばら撒かれた数十発の弾丸の軌道を、完全に捉える。
金持ち主義と言うべきか、過大なほど幅広に作られた回廊のほぼ半分を埋め尽くす、弾幕。
今時点からヘイズが回避行動を開始したとして、後0コンマ数秒後に到達するこれらの銃弾を
回避できるコースは―――皆無。

「―――ちぃッ!」

即座に、I-ブレインの稼働率を百パーセントに再設定。
脳内を圧迫する負荷が強烈にのしかかるが、無視。
フル稼働するI-ブレインが、一瞬にも満たない時間で目的の演算を完了する。

(予測演算成功。『破砕の領域Erase Circle』展開準備完了)

同時に、勢いよく地面を蹴りつける。
広い回廊に過剰なほど大きく響いたその靴音が、周囲の空気分子の配列を変化させ、『論理回路』を形成。
分子で刻まれた情報解体の命令コマンドが、予定通りに、弾幕の一角を
跡形もなく塵と化す。
ヘイズは、踏み込みの勢いのまま空いた弾幕の隙間に転がり込み、姿勢を立て直す暇もなく
左手に銃を構え、引き金を絞る。

銃声が二度、三度。

当てる為の射撃ではない。
相手を次の攻撃に移らせないための、牽制のための射撃。

弾幕の向こうに見えた白髪の優男に向けて、ヘイズは返礼を寄越した。



358 名前:ハンス・ヨアヒム・マルセイユ ◆sLAdoLfKkE :2006/11/25(土) 22:12:10

>>348
「仕事、ねえ。
 マヌケなのは(いつものように)キミの方じゃないの?」

女とご歓談中のビリーにくすくすと笑いかけながら、軽口を返す。
だが、気は緩めない。
緩められる相手か、これが。

>>338
ほら、ね。
ホールドアップしながらナイフを抜いて、それを投げつける。
小技だけど、油断は出来ない。
これがルート・ヴァンパイア。
これがビリー龍。

「キミらしくてわかりやすいね。
 ならそこのバカはキミに任せるよ」

そう言って、たっと走り出し・・・転んでみせる。
そう、隠れていた女(>>344)の前に、わざと。


【場所:客室】

359 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus :2006/11/25(土) 22:12:57

>>325>>334

手応えは無し。
身のこなしそのものは人のそれなのに、良く見ているものだ。

「……させはしないわ」

着地を待たずに投擲された飛び道具に向けて、続けざまに鞭を振るう。
弾けるような音が、狙い通りに的を捕らえた事を告げた。

「私の上司は忙しい。貴女のエスコートは私が受け持つわ。
 所で――――今、驚いたかしら? 私の顔を見て」

一歩踏み出し、改めて女を観察する。
何処まで知っているのかくらいは、確かめた方が良さそうだ。


【中層部:回廊】

360 名前:レミア・シルヴェスタW世 ◆MVlNEREMIA :2006/11/25(土) 22:14:44

>>346

>「……てぇつだってーっ!!」

客室乗務員の癖に肝が据わっている。
いきなり殴りかかったのだ、警防で。

「―――――しょうがないわね」

別にあの人間が死のうとどうでもいい、が
あの男からは詳しい事情が聞きたい。
もし生きて捕まえたら敵の本拠地も割り出せるかもしれない。

―――変身

犬歯が伸びる爪が伸びる。
彼女の姿は人間から吸血鬼へと変貌した。

指で虚空に魔法人らしきものを書く。
その瞬間5,6匹の吸血蝙蝠が現れた。

「あなたたち、手伝ってあげなさい」

吸血蝙蝠を先にけしかける。
不意打ちとしては十分だ。

自らはなった蝙蝠の後を追った。

【現在地:格納庫で手伝い中】

361 名前:レップ ◆ZcW/SSsF6Y :2006/11/25(土) 22:15:15


>294 フランドール・スカーレット

客室最後尾に備え付けられた緊急脱出用の扉が内側から炎を吹く。
熱気とともに飛び出した少女は、彼の横をすり抜け悠然と垂直尾翼の頂点に君臨する。

そろそろ慣れ親しんだ常識は、捨てたほうがいいのかもしれなかった。
あれもまた人を外れたもの、ありえざる生き物なのだろう。
ただしいまのところレップには興味がないようだった。
ならばまだ、脅威ではない。


>304 ふみこ・O・V

同時に四つのパンツァーファウストが、彼の狙っていた航空機向けて発射された。
新戦乙女隊による攻撃だ。


>293 エリ・カサモト
>326 長谷川虎蔵

彼の狙っていた航空機が乗せていた人間と分離した。
その人間のほうが何もない空間から取り出した刀でパンツァーファウストを2発撃墜した。

彼の直感が告げていた。あれは早いうちに殺しておいたほうがいい。

狙いを航空機から黒い翼を生やした男へと向ける。
黒い翼。まるで悪魔だ。

悪魔は地獄へ帰るがいい。
彼はそれを実行すべく銃の引き金を引いた。


>335 フランドール
少女が大きく身体を旋回するとプロミネンスが虚空を焼く。
それが収まると思うや否や炎の弾丸が流星雨のように空を流れる。

甲板に居たレップは被害を受けなかった。
だが、その精神力で押さえ込んだもののその心には強い思いが浮かんでいた。
化け物め。忌々しい、化け物め。

【中層部:甲板後部で周辺空域の敵を迎撃中】


362 名前:大尉ブラッド ◆/Z/IFjxeWc :2006/11/25(土) 22:15:32

ざわ・・・
  ざわ・・・

そんなざわめきがカジノにこだまする。

「あの、軍服のおっさん、おかしくねえか?」
「……ああ、どんないかさま使えばあんなチップの山が作れるんだろうね?」
「しかも、右目にあんなでかい傷跡……マフィアか何かじゃねぇ?」

テーブルに積まれた山のようなチップ。青ざめるディーラー。

「昔・・・ジュウゾウとやっていた時の方が手応えがあったと言うものだがな・・・。
 ヒットだ。もう一枚カードを貰おう。しかし、そんなに青ざめていては君の手まで透けて見えるぞ?」

>>220-222
その時だった。プラズマビジョンの映像が変わり、ハイジャックの声明は高らかに艦内に響き渡る。
右目に大きな傷跡を付けた男は立ち上がり、そして近くにいた派手な格好の女性に喰らいつき

その血を、嚥下した。干涸らびた死体が赤絨毯の上に転がる。

「余興に相応しい、愉快な勝負だったが、残念だな。ここからは仕事の時間だ。」

周りの人間が恐怖で青ざめているのを無視して男は進む。何人か、向かってきたが敵ではなかった。
死を畏怖した行動は死を畏怖せぬ行動の前では、一歩だけ遅い。

自らの目で確かめねばならない。

第四帝國という幻想は我が理想にふさわしいか。
そして、あの噂は真実なのか。確かめるために。

そのために受領した大尉(ハオプトマン)の地位だ。せいぜいその地位に相応しく。
不死の化生は、殺戮を開始し、その歩をゆっくりと進める。
それからしばらくして、カジノはあらかた制圧し、食事も良い状態の物が何人かとれた。
では、次は客室を制圧しておくか。来たるべき時まで私は第四帝國の大尉なのだから。

【現在位置:3F-カジノ→展望台を経由し2F客室方面へ】

363 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/25(土) 22:16:48

 ていうか何で上に往ったのに下に来てるんだろう、俺。

>>348

 「そうかよ、お前が敵か」

 戦いでの選択肢は多ければ多い方がいいだろう。
 しかし、生き方の選択肢は、配食所のメニューみたいに少ない方が楽でいい。

 「そんなん利くかっての!」

 俺は左手のベレッタで投げられたナイフを弾き飛ばすと、スコーピオンを連射。無論、このど
う見ても人間ではない奴が、そんなもので死ぬとは思っていない。
 そのまま突撃――――と見せ掛けてスライディング。股下を潜り抜けにいく。

 「Fuck Off!!」

 当然、スコーピオンに噛ませたウォレットチェーンが、後ろから襲いかかる。

>>358
 滑りながら左手のベレッタを突き出し、倒れた金髪にポイントした。
 こいつが俺を殺そうとした赤服と"親しげ"なのは、見てて判っている。

 「誰がバカだ、誰が!」

 威嚇だから当たらないだろうが、俺をナメたのが失敗だと気付かせてやる!

 【依然客室にて】


364 名前:高木由美江:2006/11/25(土) 22:16:52

>>317>>351 ヤン・ヴァレンタイン
赤いざんばらりんー 赤いざんばらりんー 欠落したおれの神経にひびくぜー。

頭、腰、尻、腕、体を全て大分類小分類中分類、解剖学の世界に導き
標本と化してさしあげました。ウフ、リサイクル精神旺盛なひと。
これからの宗教はリサイクルも推進すべきだと考えました。
縦横に、刃。この前に、グールなど物の数には入らぬ。

知らないフリをしたが、周囲には既に数人、戦闘能力を有した者が
諦め悪く食屍鬼を打ち倒しているようだ。ヒューよく、やる。

だが、判ってない。判ってないね。あんたら。
こういうのは親方日の丸、否。
親玉を消し去る。これが鉄則、大原則。そちらへ只管向かうけど。
親玉、諦め悪く何かいってますよ、先生。
欧米語で何か仰る背高帽子。仕方ないので目視(黙視?)してあげましゃう。

「見解?──見解、だと?」

さんばらん。丸テーブルが半月になり。ほざくゴミクレへと蹴り飛ばす。
半分の片割れを足蹴にふみふみ。うふ、女王様モード。
タンカを切って、一番ゆみえー、仕方がないから相手しまーす。

「あたしが、ヴァチカンが!イスカリオテが!アンタの目の前に来た。
これで我が主(おお、哀れみたまえ!)の意思を疑うか?」
【一階パーティールーム】

365 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/25(土) 22:18:29


>>343 vsレミリア

 ヘルメスの杖の魔力を借りて空間転移魔術―――発動。
 暗転、跳躍。舞台は回廊からキッチンに文字通り飛び移る。

 展望台2Fキッチン―――無から生み出された漆黒のマント。
 中からグルマルキンが現れる。
 続いて、魔女の胸にかき抱かれたレミリアが解放された。

「ここなら落ち着いて話ができるな」

 巨大なキッチンを見渡す。300人以上の乗客を賄うための施設だ。
 かなり広大だったが、いまは人気がない。
 グルマルキンとレミリアの二人きりだった。

「我が船にようこそ、レミリア・スカーレット」

 マントから煙草を取り出し、一本くわえる―――瞬きで着火。

「早速だが、私はおまえと戦うつもりはない。おまえを招待した
理由はただ一つ―――おまえは私のものになる。
 おまえは聖櫃を開く上での鍵として最適だ。どうだね?
 私と一緒にレン高原でハネムーンといこうではないか」

【中層部:キッチン】

366 名前:パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU :2006/11/25(土) 22:20:32

>>271 >>277 >>301 >>315 >>331 >>349 >>334

「っ! レミィ!!」

叫んだときにはもう遅い。
彼女の友の姿は、彼女の因縁の姿とともに消え去っていた。

「……戻ってきなさいよ」

紫の魔女にできたのは、小さくつぶやく事のみ。

[場所:回廊]

367 名前:Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA :2006/11/25(土) 22:20:56

>>322>>330>>336>>339

「――うげ」

 ――ばたん。と。
 扉を抜けた向こう側は、さらなる地獄だった。
 おそらくはかつては乗客であったであろうグールの群れ。
 やたらとテンションの高い男――立ち上る腐臭から、まともな人間ではないことが判る。

 そして、乗客を庇いながらひとり鉢植えだかなんだかでグール二殴りかかる少女がひとり。
 援護すべきだ――と、理性が告げる。

 だが、予備の銃弾が心許ない状況では、無用な仏心など自殺と同義だ。
 幸いにして、未だ誰もこちらには注目していない――逃げるべきだ、と本能がささやいた、ちょうど
そんなときだった。

「……レイオット」

 どこか困惑した口調でカペルが告げる。
 あり得ない一言を。

「あれは――アセンブラではないですか」
「――何?」

 彼女が指したモノ――それは、オブジェとして飾られていた甲冑だった。
 起立させられている他とは違い、玉座のようなモノに座らされているそれは、他のそれとは趣が確かに
違う。だが――

「おいおいおいおい……」

 周りの喧噪を横目に、小走りに近づいた。
 手を触れる。

 ……コレは、玉座じゃない。

「キャリア・フレームだと……?」

 ならば、それに腰掛けている甲冑は。
 飾りとして取り付けられている張りぼてを、シャベルで払い落とす。
 それは――紛れもなく、アセンブラ。タクティカル・モールドだった。

「――なんの冗談だ、これは!?」

 思わず叫びを上げる――だが不覚にも、それが周りの注意を引いてしまっていた。
 舌打ち。選択肢は、無い。

 手早くキャリア・フレームの解放処置。鋼が開き、そのうちに取り込むべき生け贄を欲している。

 手早く衣装を脱ぎ捨てる――いろいろと不安ではあったが、他に選択肢がない。
 このままでは確実にくびり殺されるだけだ。なら――

「カペル! 3分だ、時間を稼げ!」

 悩んだ挙げ句、カペルの手にMP40を押しつける。残り1弾倉――なんとかなるはずだ。

 破り捨てるように衣服を脱ぐと、一時の時間も惜しいとばかりに、鋼の内側へと身を躍らせる――

【現在位置:パーティールーム】

368 名前:フィア ◆HPv8dyzZiE :2006/11/25(土) 22:20:56

>>324>>335
 フィアは聞こえてくる歌声に、心がさざめくのを感じた。
 視界が狭まる。だが、そんな事は彼女にとっては些細な事だった。
 得体の知れない不快な思いが、彼女の胸を過ぎる。

(――やかましい歌だ)

 そんな事を思うのは初めてだった。
 だが、彼女はその思いの正体に気付かない。
 それは彼女が忘れさせられたもの……"怒り"という感情だった。

(あいつの歌声を消してやる)

 降り注ぎ、身を焼く火の粉(>>335)を払おうともせず、フィアは呪文の詠唱を開始する。

「我は求め訴えかける。
 風の精霊よ。
 汝の震える身体を、我が温めよう。
 汝の震える心を、我が励まそう。
 震えよとまれ。
――《静寂》」

 瞬間、一瞬……ほんの一瞬だけ、周辺から全ての音が消え去った。
 静寂の魔法が炸裂し、全ての音を掻き消したのだ。
 視界が晴れる。歌が聞こえなければ、呪いは通じない。

 見れば、ガーゴイルが鳥女に向けて突撃を開始している。
 好都合だ、とフィアは思った。あれを盾にして、鳥女を貫いてやる。

 手で後方の魔女たちに援護を要請する。
 そして自分は、

「――」

 抜剣。
 そう呟きながら剣を抜くとそれを構え、MG34の掃射援護を受けながら、マッハの勢いで
鳥女に突撃した。

369 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2006/11/25(土) 22:21:49

>>304 ふみこ
>>326 虎蔵
>>335 フランドール

 こっちに向かって狙い飛んでくるパンツァーファウスト。
「モーデン軍のデタラメ具合に匹敵するデタラメ具合ね。ナチス連中ってのは」
 パンツァーファウストを撃ってきたのは魔女だ。――魔女である。
 それもひいふうみよ。四人。四発。

 後ろに乗っていたお客さんが弾道に身を躍らせ、二発斬った。

「お見事」
 残った二発を左に捻りながら降下してかわす。パンツァーファウストはロケット兵器であって、ミサイルのような誘導兵器ではない。
 弾道上、そして有効範囲上から逃れれば、当たらない。
「よし、避け切った!」
 手早く機体を起こし、周辺を見回して敵を探す。

「……冗談きついわよこれ」

 ――炎の柱が迫っていた。

 冗談じゃない。操縦桿を右へ。推力を偏向させてマックスへ。

「づあああああああああ!!!」

 胴体下部を掠めるように通り去っていく炎の柱。

《エリちゃん? どうしました?》

「どうしたもこうしたもあるかぁッ! 炎の柱が空を薙ぎ払ってったのよ!」

 デタラメ加減に心拍数とテンションが跳ね上がっていた。
 いきなりファイナルミッションってのはちょっと勘弁してほしいわ。


【周辺空域:飛行船周辺空域、機体後方より接近中】


370 名前:ケイト・コナー ◆g6orsKate. :2006/11/25(土) 22:22:35

>>352

 うっ、向こうにはしっかりバレてた。
 どうしようか……声から女性のようだが、目の前の相手がヴァンパイアだと気づいてな
いんじゃないかしら。だったら何とかしないといけないけど。

 迷いながらも聖水の瓶の蓋は開けておく。
 こうなれば不意打ちしかない。あの女性が襲われる前に……

>>358

「っ!」

 ああ、ダメだった。
 前の前に娘くらいの少年が転がった瞬間、私は部屋から飛び出して少年とヴァンパイ
アの間に立っていた。
 右手には銀の十字架、左手には聖水。

 こうなれば仕方ない、両方が利く前提でいくだけよ。
 この十字架でも、眼球に突き立てれば少なくとも利くでしょう。物理的には。

【現在位置;客室】


371 名前:麻宮アテナ:2006/11/25(土) 22:23:11

>>355
 初撃で体勢を崩そうと思ったら短距離テレポート。
ESP戦闘に慣れた相手。手強い、と思うまもなく衝撃波。
他にふたりいるぶんだけ、シールドを大きく展開して防御。
ああ、避けないと燃費悪いのに!

「実は私も、さっきの船内放送の途中で『あ、これなら大人しくしてれば……』とか
思ったんですよ。正直に言うと。最初は。でも『勝手に飛び降りろ』なんていう人と
交渉が成立するなんて思えません。それともあなたがあそこまでいって
『やっぱり乗客を傷つけるのはやめよう』って言ってくれるんですか?
それなら私は飛び跳ねて喜びますけど」

>>360
『あなたたち、手伝ってあげなさい』

 少なくとも片方は味方! 良かった!
彼女に呼ばれたらしい蝙蝠さんが、ハイジャックに群がります。
予定を変更して、私は中距離戦を。帯電した髪の毛が逆立つのがわかります。
両手にエネルギーを収束……!

372 名前:コダマ ◆K3dMKODAMA :2006/11/25(土) 22:24:10

>>351
泳ぐように、切り開くように、グールの群れを掻き分ける。
しかし、未だに王手には届かない。いったいどれほどの人間を駒にしたのか。

「おい、喉潰せ。耳障りで仕方ねえから」

数体のグールがコダマの後ろから襲い掛かる。
どうやら、蹴りを食らい損ねて巻き添えを食っていたグールが復帰したようだ。
グールはコダマの首にしがみつき、喉を潰そうとする。

「クッ」
コダマは言霊の乗らない呻きを吐き捨てた。

わずかに、喉の緊張が緩み。
コダマの喉がごきり、と乾いた音を立てた。

コダマは理解する。―――喉が潰されたか!
すでに光は使い切っている。しばらくは徒手空拳でやりくりするしか他ない。
―――さしあたっては、この喉のお礼をするか。

コダマはしがみついているグールを、背負い投げの要領で前に放り投げると同時に肘を叩き込み
喉を潰してくれたグールの首と胴を分離させる。

>>364
と、同時に抜刀したシスター服姿の女がグールを次々に切り伏せていく姿が迫る。
―――武器が必要だな。
武装グールが持っていたと思しきスコップ(刃が赤く錆びている)を蹴り上げて、
バトントワリングのように回転させながら構えた。

勝負はこれからだ。

【木霊使用不能】
【位置:パーティールーム】

373 名前:ロンギヌス13 ◆13th/X9pTg :2006/11/25(土) 22:24:33

>>335 >>341

「聖槍に貫かれてもあの程度で済むか……あれは中々いい玩具だな。
 独り占めするには勿体無い。中の連中にも存分に楽しんで貰おうじゃあないか」

拍子抜けする程、槍をあっさりと収めるとアイン以下四機は女が船体に取り付くのを見送った。
元々、まともに相手をする気などありはしない。
生身での降下を試みるような連中の顔を見ておきたかった、その程度の理由なのだ。

(博打を好む熱情家を期待していたのだが……中々どうして。
 虫どもは案外、冷静なようだ)

そうして感慨に耽っていると――炎が空間を薙いだ。(>>335)

アイン、ドライは咄嗟に急加速をかける事で範囲外に逃れた。
だが、反応の遅れたツヴァイは直撃を受けて大破。フィーアは左腕ごと機関銃を持っていかれた。

「ク、ククク――やってくれる!
 予想だにしない打撃、予想だにしない展開!
 これこそ戦争……正しく戦争だな!」

爆散するツヴァイには目もくれず、三機は炎を放った者の元へ向かう。

(ツヴァイ撃破、残りアイン、ドライ、フィーア)

【移動→気嚢上部からフランドールへ接近】

>>347

「な――正気か!」

一歩落ちれば間違いなく命は無い、超高空。
そこで軽業師のように倒立してみせる男に対し、ゼクスは若干躊躇を覚えた。

そして、それが命取りだった。

敵手の振るう光刃によって、致命の一撃を受けたゼクスは甲冑ごとその身を両断。
燃料、およびヴリル・エンジンの誘爆を招いて大破する。

「だが、只では通さぬ!」

最後尾のズィーベンが振るった槍が体を捉える――が、浅い。
そのまま侵入者はするすると飛行船に取り付いて移動を開始する。

「くそっ……編隊を組みなおせ! アインと合流するぞ!」

(ゼクス撃破、残りフュンフ、ズィーベン)

374 名前:リゾット・ネエロ(M):2006/11/25(土) 22:25:35

>354
「ちっ、瞬間移動だと!?あれじゃ本当に魔法だな」
リゾットは毒づくとその場を立ち去る事にした。女が二人ハリウッド顔負けの
アクションを演じている。アレに巻き込まれたらかなわない…

375 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/25(土) 22:25:54

【vs大尉】

>>356

 幾度、喰屍鬼(グール)たちを打ち払ったのか、数えるのも億劫になってきたその時。

 ざわり。
 背筋が泡立つような、不気味な悪寒がわたしの全身を駆け抜けました。

 男の人です。軍服を纏い、高い襟と目深に被った帽子のため、顔はよく見えませんが……
 その間から除く、突き刺すような視線と殺気が、わたしを捉えました。

 今までの無機質かつ、鈍重なアンデッドとは、完全に一線を画す存在。
 ……くっ。気圧されている場合じゃないとは、分かっています。分かっていますが……

「おおおおおおああああぁぁぁっっ!!」

 わたしは半ば恐怖にかられるように、すでにボロボロになった石像を振りかざし、その男の人に
挑みかかりました。

 その判断がすでに、彼の術中にハマっているとも知らずに……

【イリーナ・フォウリー:現在地:パーティールーム】

376 名前:ヤン・ヴァレンタイン:2006/11/25(土) 22:26:03

>>364

 ヒュウ―――ソークール! イカシタイカレタシスターなこって。

「ああ、オーケーオーケー。殺し殺され死に死なせ。そんな戦場にかみさまは降りたって
死と絶望と血と臓物を食みながらクソッタレな晩餐会を開いてくれる訳だ。おーおー、イカ
スイカス。何せ俺たちとクソもかわらねえ。そんな俺たちと一緒中身様ならこのパーティー
も大層気に入ってくれるだろう―――――さ!」

 テーブルの下から這い出して不意打ちパラパラパラ、メクラ撃ちパラパラパラパラパラ、
四方八方縦横無尽に打ち尽くす。
 さあ死ねクソアマ。オレを踏んだ代償は高いぜ?

「ファッキンジーザスクライスト!」

377 名前:ビリー・龍 ◆D727Bb9L.2 :2006/11/25(土) 22:28:28

>>363
 はっは、銃弾を両腕で受ける。
 元気なヤツだ、だが突撃はやりすぎだろうが。

 と思いきや。視界から消えたヤツは床を滑ってた。
 俺は前に身を投げ出した。
 股潜りざまにキンテキはいやだ。

 いや、その見込みはハズレだった。宙にいる間にチェーンが飛んでくる。
 足に当たった。バランスが崩れる。宙を掻いた右手がなにかにひっかかった。

 右足をまわしてチェーンをからめにいく。痛いが。骨まで千切れねーだろ、
 右手を支点に右足を振り、チェーンをぶん回す。

>>358
「うるせえ!」

 罵声と体を別に動かすのは覚えていて損のない特技だ。

>>370
 視界の端に女が映った。見たくないものも映った。
 いやーな予感がしたが、ダイブの最中にどうこうなるもんでもない。

(客室エリア)

378 名前:イグニス ◆IgnisC3BW6 :2006/11/25(土) 22:29:52

>>359

 渾身の一投はあっさりとはじかれた。
 舌打ち。当然の結果とはいえ、絶好のチャンスを不意にした己に反吐が出る。
 だが最大の誤算は、奴のそばにこのような大悪魔が身を寄せていたことだった。

 あの女、相当の快楽主義だというのは知っていたが――こんなくだらない遊びにまで首をつっこんでくる
ほどに退屈していたのか? 実に迷惑な話だ。

「上司だと? ハン――アーンスランド家のご令嬢が地獄の犬の尻持ちか。
 随分と落ちぶれたもんじゃないか、ええ?」

 切っ先を向け、構える。奴を見失った以上、こんなところで時間をつぶしている余裕など無い。
 ここまでの化け物を相手にしておいて口惜しいが――ここは、引く。

「生憎と私はお前の暇つぶしの相手をしてやる余裕はない。
 玩具なら、他を当たれ!」

 吐き捨てながらジッポーを投げつける。
 すでに起爆スイッチは押していた。

 私と奴、そのちょうど中間に到達した刹那。
 全てを白く塗りつぶす閃光が、回廊を埋め尽くす――


 視界が効かないこの瞬間に、グルマルキンを追って私は上層へと向かうべく、走り出す……!

【現在位置・回廊】

379 名前:コーディー:2006/11/25(土) 22:31:00

>>346 >>360
>てぇつだってぇー

…全く、人の話聞く前にドンパチ始めやがった。オトボケなのか、
しっかり者なのか…?まあ、何だって良い。
見るにあの女(あの技ぜったい人じゃねぇ)も協力側らしく、
敵はどうやら目の前の野郎一人。
いつだって悪党は男の方か…?やれやれ

「…悪党退治はとっくの昔に卒業したんだがなっ!」
3人で協力…反吐は出るが懐かしいこの組み合わせを思い出しつつ

男へ向かい走り出した

【現在位置 下層部倉庫 アテナ レミアと共同戦線中】




380 名前:ハンス・ヨアヒム・マルセイユ ◆sLAdoLfKkE :2006/11/25(土) 22:31:22

>>363
(キミがだよ、低脳)

怯えたように転がり、その銃弾をすんでで躱す。
もともと当たりそうにもなかったけれど、これも演出。

「うわぁぁぁぁっ!」

ついでに、もう一つ演出を追加。

>>370
ほら、こういう演出に弱い人間はいるものだ。
そういうのは、有効に使わないとね。

「た、助けて・・・っ」

>>377
(だって、どこかのルート・ヴァンパイアほどしぶとくもないし、マメでもないんだよ)

そんなことを心の中で返しながら、少年の演技を続ける。
・・・結構楽しいね、これ。


【場所:客室】

381 名前:矢車想 ◆dMMbM6zhZs :2006/11/25(土) 22:31:38

どうせ俺なんか…まともに殺しあうことさえ出来ない。

…三分経った。

【 兄貴塩 】

382 名前:哀川潤 ◆MzXQXe8zTc :2006/11/25(土) 22:31:41

>>338ハイネ
>>348ビリー

>「取り敢えず、どれが敵でどれが味方でどれが殺していい奴だ?」

ホールドアップ掛けといてその質問はねーだろ。
挨拶してきた奴が二丁拳銃にナイフを投げたのを見て。

「どーみてもお前が敵みてーな空気じゃねーか!」

ああ、敵じゃなかったら後でどーにかすりゃあいいか。

二丁拳銃にダッシュで近づき、右足を思いっきり振りかぶって蹴り飛ばそうと――

【哀川潤:客室:ハイネに攻撃】


383 名前:『紅い悪魔』レミリア・スカーレット ◆remyaGVniw :2006/11/25(土) 22:32:07

>>365
vsグルマルキン・フォン・シュティーベル

ようやく空間転移が終わったのか…私はすぐさまグルマルキンから
一旦距離をとってから辺りを見回してみると―――
どうやらここは展望台2Fキッチンの内部のようだ。
そしてさらにここには私とグルマルキン以外に人がいる気配が一切ない…
ということは―――今ここにいるのは私とグルマルキンの二人だけ…
ということになる。

>「ここなら落ち着いて話ができるな」

まず最初に口を開いたのはグルマルキンであった。それから―――

>「我が船にようこそ、レミリア・スカーレット」

>「早速だが、私はおまえと戦うつもりはない。おまえを招待した
>理由はただ一つ―――おまえは私のものになる。
>おまえは聖櫃を開く上での鍵として最適だ。どうだね?
>私と一緒にレン高原でハネムーンといこうではないか」

―――と、マントから煙草を取り出し、それに火をつけてフゥ―――
と少し煙を吐いてから続けてそう言った。
それを聞いた私は―――(ふん、こんな状況になった今でもまだそんな戯言を吐くわけ?)
―――とそう心の中で呟きながら私はこう言った。

「…へぇ―――それはそれは随分と大胆なお誘い…とそう捉えてもいいのかしら?
それはそれで随分と都合が良すぎないかしら?それからもし私が嫌よ―――て言ったら…
貴女はどうするのかしら?」

【中層部:キッチン】

384 名前:ジェームズ・ホワン(M) ◆ko.IhfiTmE :2006/11/25(土) 22:32:11

>>371
群がる蝙蝠をまた空間移動で軽くあしらいつつ、乗務員の様子を見る
どうやら彼女の力は無尽蔵ではない、何らかの形でエネルギーを消耗すると見た。

「ふん、僕は僕の役目を果たすまでさ、雇われの身なんでね」
ともかく乗務員の言葉に鼻白んで応じる僕
「ただ、ああいう馬鹿げた騒ぎ自体はあまり好きじゃないな」
ガタガタと背後からドアが軋む、奴らめ…人の匂いを嗅ぎつけてきたか…

「ともかく」
僕はさらに衝撃波を彼女に向かって放つ
「仕事である以上、そして君が君たちが抵抗する以上は排除させて貰うまでさ」
我ながら白々しいと思う、何だかんだで僕はこの状況を楽しんでいたりするのだから

385 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2006/11/25(土) 22:33:50

>>231 >>273 >>294 >>335 >>350 >>373


 紅い赤い炎が草原のように夜を大地を染め上げている。
 暴虐な破壊と化したレーヴァテインは、今は細身の片手剣のようなカタチに納まっている。
 私の高鳴りは終わらない。

 手ごたえは二つと少し。
 もちろん、それで舞台は終わらない。
 見える。
 夜雀の歌を背景に、夜の中を真っ直ぐに飛翔するパートナーの姿。

「……あは」

 Shall we dance.

 相手を務めてくれる紳士がやってきた。

 私はレーヴァテインを投げ上げると、スカートの端を摘み上げて一礼する。
 やがて落ちてくる炎の剣を掴むと、くるりと何回もバレエのようにターン。
 揺れるコマのような軌跡を描いて、炎が走る。
 そこから放たれたのは、無数の炎と炎と炎。
 嵐のような弾幕が、私の素敵な騎士たちへと駆けていった。

 ―――ダンスホールで、最後まで私と踊るのは、誰?


【周辺宙域:ロンギヌス・アイン、ドライ、フィーアと交戦】

386 名前:大尉:2006/11/25(土) 22:35:33

>>375 (イリーナ・フォウリー)

     コツ

 軍帽の下から覗く二つの光、それはじっと見つめていた。

『おおおおおおああああぁぁぁっっ!!』

 石像が振り上げられる。

   コツ

 軍帽の下から覗く二つの光、それはイリーナをじっと見つめていた。

 コツ


 ン――――――

 軍帽の下から覗く二つの光、それはイリーナの喉笛をじっと見つめていた。


 <現在地:パーティールーム>

387 名前:リゾット・ネエロ(M):2006/11/25(土) 22:37:02

>>378 >374
今思えばさっさとズラかれば良かったのだ。
彼は本日最大のミスを犯す、彼は女に気取られて不用意に屍喰鬼を近づけすぎたのだ。
間抜け面のそいつは、ぶつかって初めて見えないご馳走に気づく。

「GUAAAAAAAAA!!」
なんとも品のない声…

「喰らえ、メタリカ!!」
辺りが閃光に包まれた瞬間、首の上に乗った不細工なそれは剃刀の刃だらけになって
ぶっ飛ぶ。

【現在位置:中層部回廊】

388 名前:シエル ◆kcbhGUILTY :2006/11/25(土) 22:37:30

>373

ワイヤーの長さには限度がある。
それが尽きる寸前、先端が気球部分に噛み付くのが見えた。
安堵に小さく息を吐こうとして、激痛に噎せる。

――――何で……聖槍だとでも言うんですか。

痛い、が死にはしないらしい。
あの槍に貫かれ続けていれば分からないが、抜けている以上じきに元に戻るだろう。
ワイヤーの巻上げスイッチを入れ、グリップにぶら下がるようにしてようやく辿り着いた。

【飛行船気球部の上:聖槍の傷は癒えず】

389 名前:夜雀の怪『ミスティア・ローレライ』 ◆8hOOMYSTIA :2006/11/25(土) 22:37:34

>>324>>335>>350>>368
「うわちゃちゃちゃちゃちゃちゃー!」

突然振り回された炎の一閃は避けたものの、舞い散る火の粉が肌に熱い。
服は雑巾にすら成るか疑わしい。

「どっから! を?」

不運としか言いようもない。
対峙していたガーゴイルの一体が闇に落ちた直後、振り回された害なす魔杖になぎ払われたのだ。
代わりとばかりに相方が狂乱しながらミスティアへと迫る。

「キレて勝つのは、主人公くらい。お前はどうかしら?」

単調な射撃に混ぜて、後方から無数の使い魔にブルーノを撃たせる。

同時に。
ミスティアの歌が途切れた。
干渉を感じた方から、凄まじいスピードで迫る帚星。

(魔女の芸は神風かしら〜)
声にならない中、自殺でもしに来たかと鉤爪を伸ばして迎え撃つ。


【現在地:周辺空域 姿勢制御エンジン付近】

390 名前:高木由美江:2006/11/25(土) 22:38:29

>>364>>376 ヤン・ヴァレンタイン
弾幕とは、沙漠の砂の様。
束の力は面に舞う。
閃光(マズル・フラッシュ)の猛き灯り。そは、由美江の丈なす黒髪を
ふわぁり、包む。
疾走、吶喊、しかし耳鳴りの起こる破壊の翼は容易に彼を滅ぼさせぬ。

逆境だ。しかし由美江は笑う。
刃を一度収め、左右に揺さぶり…後足半歩退き間合いを譲る。
僅かなリロードを狙い、再び、加速。
「ああ、あたしに殺られたら洩れなく逝ける場所で申し立てな。
パーティー?違うね。これは、『謝肉』だ。清算【聖餐】だ。
料金の取立ての行列だ。罪の重さに軋み、死ね」

くらいな、この剣。垂直に構えた鞘から抜き出す変則的な抜刀を。

『島原抜刀流──────
 ───・・・腰間秋水鉄可断・・・"秋水"───────────────』

【一階・パーティールーム】

391 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg :2006/11/25(土) 22:40:30

>>335 フランドール

 放たれた威炎(ビッグ・ファイア)は空を灼く。燃えて落ちるのならば、この魔空とてとうに
消え果ているだろう。
 綺麗なるものはおしなべて無情である。それがゆえに美しいのだ。

「……どっ!」

 翼を広げ、或いは畳む。四肢を振って姿勢を維持し、そんな機微の判らぬ野人は絶叫した。
 もっとも余裕が無いといえばそうだ。直撃は無かったが、防寒具のあちこちが焦げている。

「何処のどいつだ! こんな所で大魔法撃ち腐った莫迦はァ!」


>>361 レップ

 飛行船の何処かで、ちかりと煌く光がある。
 否、それは「光った」と思ったその瞬間、速やかに標的の喉笛へ牙を立てているのである。
 熟練の狙撃とはそういう現象なのだ。


「あ」


 間抜けな一声と共に、翼あるものは木っ端微塵に四散した。
 散らばる黒い羽毛は凍てつく風にかき混ぜられて、すぐに見えなくなった。


【現在地:周辺空域 長谷川虎蔵 死亡】

392 名前:ふみこ・O・V ◆HPv8dyzZiE :2006/11/25(土) 22:41:16

>>324
 歌はこちらにも、小さくだが聞こえてきていた。
 伝説に語られる、ローレライの《呪歌》。
 ふみこほどの魔女ならばその影響は蚊ほどにも受けはしないが、それでもその歌はふみ
この癇に障った。
 ふみこは歌うのは好きだったが、他の女が気持ち良さそうに歌うのは嫌いだった。

(けれど、流石に持ち場を離れるわけには行かないわね。あれ(>>369)もある事だし)

 魔女は向かわせた。
 あれがどれほどのものかは知らないが、歌をやめさせる事くらいは期待したいな、とふみ
こは思った。

>>369
 見れば、敵機はもはや鼻先――勿論、マッハで移動した場合の鼻先だが――に迫っ
てきている。

「さて、私は私の仕事をしましょうか」

 ふみこは虚空から再びパンツァーファウストを取り出し、回避運動を続ける敵機に照準
を向けたその刹那――

>>335
『お嬢様!』

 ミュンヒハウゼンの声と同時に、身体が勝手にそれを避けていた。
 ふみこの長い髪が大きく揺れ……そして、その先端を地獄の炎もかくやと言わんばかり
の業炎が焼く。

「何事だ!」

 言いながら、ふみこは上を見上げる。
 ミュンヒハウゼンの報告を待つまでもなく、それは一目瞭然だった。
 少女――いや、幼女が楽しげに笑いながら、巨大な炎の剣を振り回し、そして次々と
炎の弾をばら撒いている。
 その光景に、ふみこは思わずキレた。

 何だあれは。
 あんなものが私を邪魔したのか?
――お仕置きが必要なようね。

「ミュンヒハウゼン!」
『はっ』
「敵機との回線開け。5秒でだ!」
『了解いたしました……開きます』

 その声を待たずに、ふみこは大声で敵機の通信に割り込んだ。

「聞こえているな。こちらはルフトヴァッフェ所属、オゼット・ヴァンシュタイン中尉だ。本来なら
ばまず真っ先にお前を撃ち落してやるところだが、事情が変わった」

 凄まじい量の弾幕を、まるでサーカスのように左右に、上下に、円を動いてかわしながら、
ふみこは空を見上げた。

「あんなのがいたのでは、お互いに仕事は果たせんだろう。気に食わんが、一時休戦だ。
アレを墜とす。手伝え」

【周辺空域・後方】

393 名前:ルーク・ヴァレンタイン(M) ◆jBiAWniQ.. :2006/11/25(土) 22:41:31

>>349 >>337

完璧なタイミングでの掃射。
万全なポジショニングでの発砲。
完璧主義者のルークがゴミの出鼻をくじいたと確信したその時―――


「なん…だとう!?」

想像を超えた現象。
錬金術師が見せたそれとも異なる魔術形態。
銃弾を防ぐために現出したと思えば砕け、牙を剥く鋼の破片。

異常という他はない消失。
闇の世界を垣間見た彼をして不可解たらしめる超常。
弾幕の一角が手品のように消失したのは何故か。

理解の範疇を超えた状況に、ルークの精神はたじろぐ。
何なのだ。
何だというのだ?
こいつらは一体何なのだ?

その隙を逃さぬと飛来する鉄の飛礫/迫る銃弾。

だが、
だが、
だが、

「だが!その程度がどうしたというか!」

焦りは怒りになり、絶叫という形で爆発する。
誰だろうが倒せぬ筈がない。
この私を、この特A級の吸血鬼を、このルーク・ヴァレンタインを。
そう罅割れのような激情がルークに滾る。

当然出なくてはならぬ回避。
目前に迫る飛礫の一つ一つさえ、彼はたやすく視認できる。
すべるような後退。
そこから両脚は弾け、移動による虚像は十字稲妻の軌跡を見せていた。
横へのダッシュも。
後方へのステップも。
錐揉みの旋回も。
天井への着地も。
――――全てが留まらぬがゆえの残像、捕捉すらさせぬこの力。

「私は貴様らが持ち得ぬ吸血鬼の!
 その全ての能力を有している、いや!それ以上の能力をなあ!」

今のルークは一陣の疾風、それも限りない猛火を孕んでいる。
少女も男も併せて狙う。
移動と同時に吐き出され続ける鉄火の弾幕。
風の疾さ、獣の早さ、そして銃火の速さが目まぐるしく交錯を重ね――――


  ―――――貴様から死ね。

魔術の存在だけは分かる。
ならば、先ずは知りすらしないものから殺す。そうルークは選択した。
片方のカービンを捨てナイフに持ち替えるのは刹那。
銃弾を寄越した男の左死角に回りこみ、首筋へ滑らせた。

【現在地:回廊】


394 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/25(土) 22:41:35


>>383 vsレミリア・スカーレット

「私はおまえを良き友人だと思っていたんだがな。その口振りから察するに、
どうやら私は勘違いをしていたようだ。―――だが、」

 再びケリュケイオンのサーベルを抜き放つ。

「このツェッペリンに途中下船はない。
 おまえのレン高原行きはもう決定されている」

 口元を歪める。

「それとも宵闇の覇者よ―――お得意のゲームで勝負をつけるか?
 ゲームのルールはそうだな……私が勝てば、おまえは私のものだ。
 逆に、私が敗れれば―――私と一緒に地獄へ逝かせてやる」

 床を蹴った。刃を振り上げ―――斬り下げる。

【中層部:キッチン】

395 名前:津村斗貴子 ◆TOKiKoStGs :2006/11/25(土) 22:41:52

(出遅れた!!)

それが、斗貴子の悔恨だった。



談笑の場は、既に血と硝煙の戦場へと姿を変えている。
突然の銃弾、そしてそれに呼応するように次々と応戦していく「客」。
その中で、斗貴子は完全に出遅れていた。

最初の一拍、そう僅かに一拍遅れただけだった。
だがその一拍が、戦いにおいては命取りになる。
ゆえに、その一拍を譲った斗貴子は、ただ見ているしかなかった。
繰り返される戦い――そして、その中で巻き添えとなって血を吹く罪なき人々を。

(彼らを殺したのは私だ!)

その返り血を浴びながら、ただ震える無力な一少女を装いながら、
斗貴子はその拳を握り締める。自らの爪が食い込むほど、強く。

(私の甘さが、戦いを忘れた私の甘さが彼らを殺した!
 あの時、ためらわずに奴らの一人でもブチ殺せていれば!
 その一人分だけでも、犠牲者は少なくて済んだ!!)

だから、斗貴子は決意する。
学生から、戦士・斗貴子へと戻ることを。
化物は全部ブチ殺すことを!


(まずは、今の利点を考えろ。
 私はまだ、ただの少女としか捉えられていない。
 だとしたら、私の手はただ一つ。

 ――不意打ち!)


おびえ、すくみ、逃げ出す風を装い、相手を探す。
確実に、不意を突いて、一撃で倒せる相手。
今戦っている者は置いておく。戦闘中の研ぎ澄まされた感覚を、誤魔化し切る自信はない。
となると――

>>345
(――いた!)

ドアを撃ち破って入ってきた少女。
だがその撃ち破り方――無数の「見えない弾丸」――を見るに、
ただの少女でないことは確実。
ホムンクルスか、それ以外か、いずれにしても――

(化物はブチ殺す!)

無音、無動作による武装錬金、発動。
そよ風ほどの空気の動きすら起こさず、四本の刃が実体化する。

二つは両足に。
一つは腹に。
そして本命の一つは、頭部に。

四つの銀光が、少女へと奔った。


 <現在地:パーティールーム>



396 名前:レミア・シルヴェスタW世 ◆MVlNEREMIA :2006/11/25(土) 22:42:52

>>384
捨て駒とは言え空間移動で攻撃をかわされた。
それでも命令はあの男に噛み付くこと。
殺されるまであの蝙蝠たちは執拗に追いかけ続けるだろう。

黒い球体を作る。さっきの飛び道具、黒い波動だ。

「ちょこまかちょこまかと―――少しはじっとしなさい」

客室乗務員に気を取られているうちにこの衝撃波を放った。

397 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg :2006/11/25(土) 22:43:11

>>391

 ――かに見えた。

 流す冷や汗を瞬時に凍らせ、虎蔵は十数メートル横の空間にいた。
 防寒具の下に着ていたロングコートとダブルのスーツ、それにネクタイ姿だ。
 色は全て、背中の翼と同じ黒である。
 左右の両肩には、大きな数珠の連なりが巻かれている。修験道の行者か、或いは天狗――それ
も鞍馬山にでも潜んでいそうな方を連想させる出で立ちだ。

 狙撃は正確だった。撃たれた事は撃たれたのだ、別のものが。
 粉微塵になって風に紛れていくのは、仔細に観察すれば木片である事が判るだろう。それと
防寒具の切れ端、方術で使われる人形(ひとがた)の呪紙。


 そう、これは機動(マニューバ)ならぬ詐略(マニューバ)――変わり身の術であった。


「この高度での狙撃か!」

 ぎら、と無い筈の右目が青く光った。殺気が撃ち出された大まかな方角を捉えたのだ。
 虎蔵の周囲に紫電が散った。と、それは収束し、青く光る二つの霊珠となる。
 大きさは握り拳以上。人を殴打すれば只では済まないそれは、

「――そこぉッ!」

 振り下ろされた勅令に依って、高速で射出された。
 凄まじく迅い、しかし単純とも云える直線軌道を以って。


【現在地:死亡は擬態、飛行船周辺空域にて交戦中】

398 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/25(土) 22:43:18

>>377
 「あぁ?」

 頸に引っ掛けようとしたチェーンは、奴の体捌きによって奴の右足に絡まった。
 狙いは外れたが、引っ掛かりはしたので、そのまま脚を払ってやろうとすると――――

 「う、おおぉっ!?」

 赤ジャケ(仮名)は手を支点にカポエラよろしく足を振り回した。
 何というクソ力か、チェーンどころか俺の身体まで一緒に宙を飛ぶ。

>>382
 と思った瞬間、今度は赤スーツの奴が俺目掛けて蹴りをぶち込んできた。

 「――――チッ」

 俺は飛んできた蹴りに足の裏を合わせて、逆にその反動を利用してやる事にした。
 衝撃で足の筋肉がブチブチと引き千切れたが、気にせずそのまま飛んで行く。
 当然、その勢いはチェーンを巻いていた赤ジャケの足をも強く締め付けた。

 「Jack Pot!!」

 スコーピオンのランヤードリングが壊れ、支点を失ったチェーンが上手い具合に赤ジャケの
足を引っ掻く。チェーンを引き摺ったまま着地する。

 「ッ……!」

 赤スーツの蹴りが痛い。俺は動けなくなったまま、取り敢えず金髪のガキを睨む。

>>380
 「何で誰も気付かねえんだよ、ファック!」

 そこで『無害な美少年』を気取っている奴こそ、一番の厄ネタだってのに――――!

 【客室付近で戦闘中】

399 名前:リゾット・ネエロ(M):2006/11/25(土) 22:45:04

>>387
「糞、なんて女だ、…よりにもよって爆弾とはな」
特にダメージはない。腹立ち紛れに今度こそ完全にくたばった死体に蹴り
を入れる。まあ、こいつを楯にしたお蔭で彼は無傷に済んだのだが…
「とりあえず上層を目指すか…」
【中層部回廊→展望台へ】

400 名前:矢車想 ◆dMMbM6zhZs :2006/11/25(土) 22:45:17

麺が延びてしまった…

401 名前:タバサ ◆3VTTABASAI :2006/11/25(土) 22:45:42

>>286
 すっかり嗅ぎ慣れた臭いの充満する回廊を、一人歩く。
 一介の魔導師に過ぎない私が、この臭いに慣れているのもどうかしていると思うが。
「出来れば荒事は避けたいところではありますが、さて……」
 そんなことを呟きながら、懐へと手を伸ばし、横合いから現れた影目掛けてフラスコを投げつけた。

「この船に乗り合わせたのは幸いだったのか、それとも不幸だったのか。それは、永遠の眠りの内で考えなさい」
 フラスコに詰められた冷気をまともに受け、彫像と化した哀れな食屍鬼に語りかけ、さらに歩を進める。と――

 青年が赤いジャケットの男に銃を向け、赤いジャケットの男は振り向きざまにナイフを数本、青年に向けて投げつけていた(>>348>>363)。

 変に刺激しても得はない。ましてや、赤いジャケットの男は――私の記憶に間違いがなければ、ケイオスヘキサのルートヴァンパイア、ロングファングのはずだ。
 彼の持つ“女殺し”の魔眼に対抗する術は、こちらにはない。

「……!」
 ひとまずこの場を離れようと思ったその瞬間、力を感じた。
「まさか……この感じは。いや……これはナチスの作戦、いた所でおかしくはない……」
 全身を支配する正体の分からない震えを無理矢理に押さえつけ――
「どこに隠れておいでですか、アドルフ殿!」
 力強く叫んだ。何故か、口元を緩ませながら。

【現在位置:>>380付近の回廊】

402 名前:ブルーノ・シュターヘル:2006/11/25(土) 22:45:43


>>389 vsローレライ

 背中から浴びせかけられる一斉掃射―――ブルーノは予期せぬ方角からの
集中攻撃に、為す術もなく身を焦がした。

「大尉!」

 死を覚悟したとき、自然と叫びが漏れた。

「大尉! マンフレート大尉!」

 英雄の名を連呼しながら、ブルーノは凍て付く大地へと墜ちていった。

〈ブルーノ・シュターヘル→死亡〉

403 名前:Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA :2006/11/25(土) 22:46:56

>>367

 ばぢんっ――!
 聞き慣れた音。いつものように鋼に包まれる僅かな苦痛。
 脳髄まで突き刺さる鋼の冷たさ。
 その全てが、一瞬とはいえ俺に地獄を忘れさせた。

 そして。アセンブラが、キャリアフレームから解き放たれる。
 だが、軽い――何だ、この軽さは?

 そしてこの、ゴーグル越しに見える文字は。まさか……HUD(ヘッドアップディスプレイ)って奴か、
コレは?
 キャリアフレームに固定されたやけに重いスタッフを、背中のコネクタに接続。瞬間、意味不明の文字が
視界を埋め尽くす。これは――チェックリスト?

 その時。耳元から、俺をこの旅に招いた、CIAの男の声が響いたのだ――





『……以上だ。さてレイオット・スタインバーグ。改めて依頼だ。連中の企みを阻止する手伝いを頼む。
 報酬は――君の命だ』

 ――ぶつん。
 そう言って、テープは途切れた。
 やられた――というのが、正直な気分だった。当然、怒りも。
 だが、そんなことに気を取られている場合もないこともまた、事実だった。
 奴を一発ぶん殴るためにも、ここは生きて帰る必要がある!

「さて――とりあえずは。本当に使えるのか、このモールドは」

 電子工学を応用した新式モールド。
 信頼性には疑問符が付くが、選択肢は他に無い。指示通り、なれない手先で呪文書式選択。
 そして――エンター。無音詠唱完了。スタンバイ、の文字がディスプレイに浮かび上がる。

「――くそったれっ! いい加減腹が立ってきたぞ畜生!」

 いいように使われている自分。自分が巻き込まれた状況。我が物顔であたりをうろつく化け物の群れ。
 何もかもに――腹が立つ。

「一発目だ、派手に吹き飛べ――顕っ!!」

 撃発音声詠唱。間髪入れずに、照準した空間――グールどもの群れの中心部に、突如として爆炎が
顕現する。<ブラスト>――第一の業火。

 ただ戦闘のために生み出された魔法という名の凶器が、戦場に解き放たれた瞬間だった。

「さあさあ、次に片付けられたい塵はどこだっ!?」

 普段にもなく猛りながら、俺は討つべき敵を探して、叫びを上げていた。

【パーティールーム】

404 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/25(土) 22:49:37

【vs大尉】

>>386

 削れたりとはいえ、凄まじい質量の物体が振り下ろされているというのに、その男の人は
まるで動じません。それが逆に、わたしの中の恐怖をさらに膨れ上がらせました。

(避けない……避ける気もない……避ける必要すらないってこと……!?)

 この時、わたしは彼の真意に、まるで気づいてはいませんでした。
 彼……大尉……は、「避けよう」などとこれっぽっちも考えてはいなかったという事を。
 あくまで、わたしを仕留めるために、ただずっと見据え続けていたという事を。

 わたしが不用意な攻撃を仕掛けた事に後悔した時……彼は、『動き』ました。

【イリーナ・フォウリー:現在地:パーティールームにて大尉と交戦中】

405 名前:ヤン・ヴァレンタイン:2006/11/25(土) 22:49:55

>>390

「ああ、そうかいそうかい通りで爽快な訳だ。罪の清算ができるってならそれはそれは
当然の如く爽快だよな。ケッ! だからどうした! 罪が消え去るまで消え去れないな
ら俺はずっとこの世に留まって重ね続けてやるよ罪を積み罪に埋もれ死ぬまでな」

 閃光轟音絶叫絶命の雨霰。誰が死んで誰が生きてるのかも判りやしないし見えやし
ない。 女の姿? んなもん当然見えやしねー。

 だから何時の間にか片腕がないのに気付くのさ。だから笑って済ませてやろうぜ?

「ヒャハハハハッ! ウワ痛えー。マジ、腕取れちゃってんすけど。まあ良いぜ。一本や
二本取れたところで殺せっからさ」そこそこ間合いは近い訳だし?「なあシスター? そ
の、こう言う事を聞くのは場違いだと思うんですけどね、シャンプー何使ってんの?」

 土手っ腹に銃を押し付け首筋にガブリと歯を突きたてよう。
 処女だろ、処女。最近減ったレア者なのよ?
 ま―――銃の引鉄は引くんだけどな。

【パーティールーム】

406 名前:サクラ ◆6jagu9Uf/. :2006/11/25(土) 22:52:23



 何処も彼処も死人だらけだった。
 立っている死人がいて倒れ伏せている死人がいて。
 稀に生きている者がいて。
 けれどその者も直ぐに死んで。

「………鈍い! 頭数ばかりの雑魚どもが!」

 裂帛、絶叫、乾坤一擲。
 紫電を帯びた変異銀ナイフの牙が死者の列を襲う。
 死体の群れに隙間が出来る―――体をねじ込む。
 走る。
 五倍運動加速/二十倍知覚加速―――の世界の中を。

 やがて少女はパーティールームへと辿り着く。


「―――くそ、厄介な状況だな」

 先客は―――
 四人、否、五人。
 その各々が各々と戦っていて、利害状況が推し量れない。ただし裾の長い白衣の
男が、卓越した戦闘能力を誇っているであろうことは―――大雑把な予感だが―――
理解できる。
 そして、その脇―――遮蔽物に隠れて、男が服を着替え、甲冑を身に纏おうとしている。

 ………どうしたものか。

 埒もない思案に耽っていた―――その時だ。

(警告:攻撃感知)

「―――っ、」

 反応が遅れた。
 振り返ろうとしてやめる。大雑把な音源と気配から相手の位置を逆算し、攻撃の気道を読み、
生物化させた闇色の外套―――『翼』が、両足への斬撃をからめとっていた。
 しかし敵の「手」は四本―――二つの翼では、受ける事適わず。
 二つの刃が月光を弾いて舞った。
 血煙が上がった。
 そして―――

「―――仕舞いか」

(身体能力制御:五倍)

 黒衣の少女は、額と脇腹から血を流しながらも―――
 既に刃圏を逃れ、中空―――
 天地を逆にし―――少女に向き合う体勢で、変異銀ナイフを構えている。

「それならこちらも―――これで仕舞いだ」

 再び、銀の刃が月光を弾く。
 ただし、今度は―――荷電加速の紫のいかづちを纏って。


 (パーティールーム:津村斗貴子と交戦中)


407 名前:『紅い悪魔』レミリア・スカーレット ◆remyaGVniw :2006/11/25(土) 22:52:23

>>394
VSグルマルキン・フォン・シュティーベル

>床を蹴った。刃を振り上げ―――斬り下げる。

私はまた先手に出てきたグルマルキンに対し、私はすぐさまグルマルキンが
繰り出す袈裟斬りを身体をすばやく横に身を翻してかわした。

それから私はまたグルマルキンから距離を取って臨戦態勢に入った。

「ウフフ、それはまた大胆な事ね…。
 でも私が読み取る運命は―――そのどちらでもないわ!!」

今度は私の攻撃。私は音速を超えるような速さでグルマルキン目掛けて
―――先程グール供を蹴散らした鋭利な爪で攻撃を仕掛けた。

408 名前:ジェームズ・ホワン(M) ◆ko.IhfiTmE :2006/11/25(土) 22:53:10

>>396
このような攻撃、兄貴に比べれば恐ろしくも何ともない。
「そういう芸当が出来るのは君だけじゃない、そういえば君は大きく構えてばかりだね
ここは1つ」
彼女の足元に空間断層を設置する、突っ立てれば勿論両足が飛ぶ
「君も少しは踊ってみればどうだい?」

>>379
しかし優位に酔っていたのもつかの間
戦況を考えず飛び出した男が一瞬僕の視界に入った。

409 名前:ケイト・コナー ◆g6orsKate. :2006/11/25(土) 22:53:33

>>380>>377
>「た、助けて・・・っ」

 怯える少年の声が私の背中を押した。

「大丈夫よ。おばさんが守ってあげる!」

 そう言いながら鎖で動きを封じられているヴァンパイアへと駆ける。
 先日の事件依頼、トレーニングを再開したとはいえ短期間では全盛期には程
遠い。たった一瞬だが、その愚鈍さに嫌気がさす。

だけど今私の後ろには子どもがいるのよ。
 親として泣く子1人守れなくてどうするの!?

 左手の聖水瓶を逆手に、十字架を順手に持ちかえ、隙を見せたヴァンパイアの顔面
めがけて瓶を振り上げ、十字架で目を狙う。
 悪魔退治で、目を潰すのは常道だった。ヴァンパイアの場合心臓に杭が基本だけど
この状況で十字架を打ち込むなんて不可能よね。

 ちらちと視界の端に、他の人が目に入る。
 ……どうやら、あの少年を守れそうなのは私だけみたい。


【現在位置:客室 ビリーと交戦中】


410 名前:ホムンクルス・金城(M) ◆TOKiKoStGs :2006/11/25(土) 22:53:44

>>386
「ヒャッホゥ!!
 隙だらけだぜ、オヤジいいっ!」

無数に折り重なる死体。
その下から、ヤンキー風の男が飛び上がる。

「俺様は選ばれしLXEのメンバー、ホムンクルス金城!
 そして、これが俺の武装錬金、ピーキーガリバー!!」

叫びと共に、男の右篭手が巨大化する。
ヒトの胴体ほどは優にあろうかという、巨大な鋼鉄の拳。

「これが、俺の武装錬金の特性!
 テメエもこの鋼鉄の拳の前に這い蹲りやがれ!
 押しつぶせ、ラピュタフォオオオルゥッ!!」

もはや畳三畳分ほどにも巨大化した拳、いや平手。
文字通り天空の島の落下するがごとく、大尉を押しつぶそうと巨大な平手が振り下ろされた!


<現在位置:パーティルーム>



411 名前:ロンギヌス13 ◆13th/X9pTg :2006/11/25(土) 22:54:15

>>385

ペルソナ・センサーは最早異常とも言える反応を示していた。
これでは事実上、役に立たないのと同じだ。

集結した異能者か、または持ち込まれた聖櫃が原因か――。
判断材料は挙げればキリがないが、今は分析の時ではない。

今は――戦の時だ。

「……先に仕掛けて来るか。
 丁度いい、そろそろ我々も本気でかからねばならんと思っていた所だ。
 各機、散開!」

アインの号令に合わせて、ドライ、フィーアが別々の方向へと進路を変える。
それを確認したアインもまた、上方から覆い被さるような進路へと変更。

「一気に突破する。総員、気を引き締めてかかれいッ!」

迫り来る炎の礫、礫、礫。
豪雨のように迫り来る雨に対し、鋼の騎士達は円を描くような機動で弾の隙間を掻い潜る。
だが、本質的に鈍重である彼等が何時までも避け続けられる道理はない。

幾つかは彼等を捉えようとするが――

「使用を承認する。消し飛ばせ」
「Jawohl (了解)」

各機、呪文板(スペル・タグ)を選択。無音詠唱。
ロンギヌスコピーを発動体として、脳裏に描いた破壊をこの世に顕現させる。

熱も炎も伴わない、爆発的なエネルギーの炸裂が炎を蹴散らす。
轟く雷鳴が礫を一瞬にして打ち消し、消す。
別方向では先程とは裏腹に、凄まじい熱を伴った爆発が炎を吹き散らす。

そして火炎の向こうから――槍騎兵達は槍を携え突撃する!

(アイン、ドライ、フィーアが交戦中)
【周辺空域】

412 名前:麻宮アテナ:2006/11/25(土) 22:54:16

>>379
 どうやらこの人も当面は味方。
よかった、今日の私はラッキーデー!

『…悪党退治はとっくの昔に卒業したんだがなっ!』
「再入学おめでとうございます!」

 これで3対1、というかここまで戦力が揃ったなら、
私は嫌がらせに徹したほうがいいかも。

>>384
『ふん、僕は僕の役目を果たすまでさ、雇われの身なんでね』
「転職しましょう!」
『ただ、ああいう馬鹿げた騒ぎ自体はあまり好きじゃないな』
「だったら農業とか、静かで自分と向き合えるお仕事を……」
『仕事である以上、そして君が君たちが抵抗する以上は排除させて貰うまでさ』

 言いながら更に衝撃波。あなた喜んでやってませんか!?
溜めのエネルギーを諦めて再度のシールド。このままコツコツやられたら
こっちが先に息切れしそうです。でも私は百戦とはいかなくても五十戦練くらいは
大口叩いてもいいと思うんです。当然乱戦でどうすべきかも知ってる!

「このっ!」

 相手の精神にノイズを叩き込みます。あのテレポートを邪魔(ジャマー?)できれば、
他のふたりが袋叩きにしてくれるはず!

>>396
『ちょこまかちょこまかと―――少しはじっとしなさい』
「じっとしなさーいっ!!」

 このままハイジャックさんを精神的にぶん殴る!ぶん殴る!ぶん殴るっ!

<現在位置:下層部倉庫>

413 名前:リゾット・ネエロ(M):2006/11/25(土) 22:55:04

>399
「ブラッドバス(血の風呂)か、…ここは?」
元パーティールーム、いや、やはりパーティールームかここは
あたり一面、血、血、血。日本刀を振り回すシスターに機関銃をぶっ放すチンピラ…
あの不細工なグールも数が多い。とてもじゃないが付き合っていられない…

【展望台一階・パーティールーム】

414 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus :2006/11/25(土) 22:55:06

>>378

「あらあら、其処まで知っているの」

素性どころか、遊び好きなのまで周知のようだ。
人間にしか見えないのにグルマルキンとの因縁があり、そして私の事まで知っている。
不思議な――不可解な女だった。

「……なら、一つ遊びを愉しむコツを教えてあげるわ。
 役になりきる事、よ」

制服の襟を摘んで微笑んでみせる。
だが、相手の方には愉しむつもりは無かったらしい。
言葉と共に放られたものが、中空で閃光を撒き散らす。
瞬間で視界が白く埋まった。
その中を足音が遠ざかっていく。

「詰めが甘いわね。
 私の素性を知っているなら、知らない筈は無いでしょうに……焦っているのかしら?」

そう、音が聞こえる。
鞭に身を変えたままの使い魔の囁きを聞きながら、後を追って歩き出した。


【中層部:回廊、イグニスを追跡中】

415 名前:矢車想 ◆dMMbM6zhZs :2006/11/25(土) 22:56:26

【現在地・展望台】

誰の味方をするわけでもない。
どうせ俺なんか…

笑え、笑えよ。

しかし、展望台から見る眺めは絶景だなぁ〜
だが期待はするな、俺達は闇の世界の住人だ。

カップ麺は延びてしまったが、それでも食わないよりはマシだ

416 名前:フィア ◆HPv8dyzZiE :2006/11/25(土) 22:56:40

>>389>>402
 ガーゴイルは死んだ。幾つもの鉛玉を食らいながら、何もわからぬと言った風情で。
 何の感慨もわかなかった。
 当然だ。彼女に感情は無い。
 あるのは、効率的に敵を攻め立てるにはどうすれば良いか、という考えだけ。
 その為には、あのガーゴイルには死んでもらう必要があったのだ。

 まぁ、作戦の為に死ねたのだ。アレも本望だろう。
 歌が途切れたその時に、彼女の心は既に平穏を取り戻しつつあったが。
 それでも心に残った感情の残滓が、フィアにそんな事を思わせた。

 剣を両手で構える。
 沈みゆくガーゴイルの身体が、ちょうど鳥女とフィアの間を遮った。

(……今)

 フィアは箒を加速させその身体を貫くと、そのまま鳥女へと突っ込んだ。
 剣はもう使えないかもしれないが、鳥の鋭い鍵爪を遮りはするだろう。
 リーチの分、こちらが有利な筈だ、とフィアは冷静に考えていた。

417 名前:ヴァルトラウテ/タッツェルヴルム ◆SoRDENIEpc :2006/11/25(土) 22:57:44


 >>353 >>372 コダマ

「――反応が、弱くなった? どういうこと?」

 首に獅咬みついていた屍食鬼の、その一体を前に投げ捨てると、流れるような動きで肘を落とす。
 礼服に身を包んだままの姿だが、僅かにその顔を――東洋人らしく、表情に乏しい――歪めたのが
見て取れる。

「分からん。だが……」

 その男の前へと進み出でた。

「私が確かめるほか、なさそうだな。
 君のその手際、まずは称賛を送ろう」

 鉄塊さながらの、拳を振り下ろしながら。

 【場所:展望台1F、パーティルーム コダマに接触】

418 名前:ハンス・ヨアヒム・マルセイユ ◆sLAdoLfKkE :2006/11/25(土) 23:00:20

>>398
(それはね、キミのやり方がマヌケだからだよ)

くすくすと心の中で笑う。
ああ、本当に馬鹿の相手は楽だ。
勝手に死んでくれる。

>>401
――そこで、声が聞こえた。
   よく知った声、だが、今は・・・困る。

ボクがそうであることは、まだ知られたくない。
折角の盾と・・・非常食を得たばかりなのだから。

だから、返答は返さない。
返せない。

>>409
(そう、だから頑張ってね・・・おばさん?)

そんなことを心の奥で想いながら、怯えた少年で居続ける。
その方が、都合がいい。

【場所:客室】

419 名前:コーディー:2006/11/25(土) 23:02:11

>>408
「BINGO!!!」

叫び声と共にジェームズの顔面へと唸りを上げストレートを放つ。
当たろうが避けられようが知ったこっちゃない。それは只の布石…

拳がぶれると同時にマシンガンの如く高速ジャブが襲う。
威力では無く速射性
一発 二発 三発

…おっと、ボディにも一発!

余裕面歪めなっ…!

顎へと的確にアッパーを放ちひとまずコンビネーションを終える。

【現在位置 下層部倉庫 アテナ レミアと共闘中】

420 名前:ビリー・龍 ◆D727Bb9L.2 :2006/11/25(土) 23:02:50

>>409
 なにかが降りかけられた。足をとられていた俺は、何する間もなくそれを浴びた。
 それは皮膚を焼いた。
 それは、特殊な痛みだ。聖なる武器、神のお恵み。
 聖水か、くそ。
 それは顔面を伝って目に入り、俺の視界を白く濁らせた。

 罵声が漏れた。動物じみた声が喉を振るわせた。
 さっきの女だ!

 記憶と勘に従って、這いずりながら、右腕を振り回した。
 指先を鉤に、床すれすれに。
 そこに足首があるはずだ。

>>398
 絡まっていたチェーンが外れた。
 足首はずたずただが、こんなものはいい、すぐに直る。

(客室エリア)

421 名前:大尉:2006/11/25(土) 23:05:02

>>404 (イリーナ・フォウリー)
>>403 (レイオット・スタインバーグ)

 この老人は既に齢80を超える。
 東部戦線で何度も死神の顎に囚われそうになりながらも生き抜き、
 そして、その後平穏な暮らしをけがえの無い家族とともにすごして来た。

 この老人は今でも悪夢にうなされると言う。
 人は戦場で惨たらしく死んでいった戦友たちを思い出してかと問うが、
 老人は首を横に振って答える。

「友軍の大尉を思い出すのさ、今でも忘れられねえ。
 夜中に目を覚ました事も数え切れずさ。

 何? 味方を何故そんなに恐れるかって?
 そりゃ、最もだ、その大尉は味方としてはそれ以上ないくらいの奴だった。
 『マルメディの悪夢』って異名があったくらいで殺した敵の数は数知れず。

 あの大尉の眼だ――――――」



  *        *        *

 鈍い音ともに石像がぱらぱらと原型をなくしていく。
 大尉の右手が握られ、一つの砲弾を形作っていく。

 ぱん、と乾いた空気の音とも砲弾は発射 目標:目前の恐慌する少女

 砲弾は炸裂すれば目標は吹き飛び二発目の人間の砲弾となって、
 猛る男(>>403)へと飛んでいくだろう。

  *        *        *


「あれは人のできる眼じゃねえ。地獄を見てきたとかそんなものとも違う。
 陳腐な物言いになるが、奈落そのものの眼だ。

 怖いんだよ、あれに呑み込まれたらどうなるか、死ぬ死なないなんて話じゃない。
 もっとおぞましいことに………あの――――』


  *        *        *

  ――――――獣の眼光が少女の形をした砲弾が飛んでいくであろう先の男、
 レイオット・スタインバーグの眼をじっと見つめていた。

422 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/25(土) 23:05:25


>>407
 vsレミリア・スカーレット

 刃と刃が噛み合い火花を散らす。
 咄嗟に切り返したサーベルが、レミリアの爪を受け止めたのだ。
 ぎり、とケリュケイオンが軋みをあげる。
 舌打ち―――膂力ではレミリアに分があった。
 鍔迫り合いを続けるのは得策ではない。

「我が手にカドゥケウス、
 またの名をケリュケイオンあり」

 サーベルの刀身に、びっしりとルーン文字が刻み込まれる。
 ヘルメスの杖を媒体に、本来ならばグルマルキンでは扱えぬギリシアの神々
の魔術を操作する―――そのための紋様だった。

「万物を融合し、
 黄金と成す、
 叡智の技を秘めし杖。
 ―――いざ、振るわん!」

 サーベルを握る手とは逆―――左手がマントから飛びだした。

「忍び寄れ、左の蛇。変異させよ、紫のアケートゥム!」

 左手の変容―――狼のあぎとに姿を変えたグルマルキンの左腕が、
 レミリアに向けて牙を剥いた。

【中層部:キッチン】

423 名前:高木由美江:2006/11/25(土) 23:05:29

>>390>>405 ヤン
殺り切れぬ敵に、軽口は続く。
次激に続く暇もあればこそだが…腹に風穴。

吹き出る腹部の血液に、やっぱり今はデトックス。
血抜きの効用は冷静さを取り戻せるタメの効用?
大体「シャンプー?」何それ。水をかぶると猫になるのかにゃー?
濡れ濡れの体、エロは禁止だ。だからその液体で滑りをよくした私の刃、
折角だから差し込んであげましょう。
鉄鞘にリッター単位に吹き出た血液を含ませて…

鞘の走りは、人間以上のぬくもりぃぃぃ!はじけてる心臓(エンジン)!
体躯は悲鳴をあげるぅ!
礼儀知らずの可愛いあたしのバイブルー。
誰も助けられないー何故なら、あたしはー狂信ー。

───満身で、鞘を顔部に、突き出す。
更に一言

「ハインケルと同じの」

一応、回答。意味不明。やっぱり意識レベル低いのか。
自分。
【一階パーティールーム】

424 名前:飛竜 ◆HIRYUmxRKo :2006/11/25(土) 23:06:24

>>347>>373
 先ほど交戦したパワードスーツは追って来ない。追って来ないならば、それで良い。

 尾翼を通り過ぎ、ゴンドラ部へと移動を開始。左手に握った鎌一つで、易々とゴンドラ接続部へと到着した。

「こちら飛竜。侵入可能な場所を知らせろ」
『後部格納庫ハッチが破壊されている。後部格納庫より潜入せよ』
 機械合成の音声が応答する。了解の応答を返し、再び移動を開始した。

【現在位置:気嚢部→ゴンドラ接続部→下層部格納庫へ向け移動中】

425 名前:哀川潤 ◆MzXQXe8zTc :2006/11/25(土) 23:07:12

>>377ビリー

「取りあえずあたしはアンタと一緒にあの二丁拳銃をやっつける。
 それでいいだろ!? 落ち着いて話もできやしねーからな」

あたしの蹴り足に合わせて飛んでった二丁拳銃を見据えて声を掛ける。
足応えからすると結構いい感じだったがどうだ――?

>>398ハイネ

「銃振り回してチェーン使ってってなぁ、アンタはチンピラか?
チンピラならチンピラなら大人しくしてろ!」

二丁拳銃が動けなくなった所を見るとやはりそれなりに効いたらしい。
少し前にすれ違った金髪少年を睨んでいる二丁拳銃に向かって走り出し――

「うらー!あたし相手に余所見してる暇なんざねーぞ!」

ジャンプ、そのまま足を真上に大きく振り上げて。


踵落とし――。



【哀川潤:客室:ビリーとvsハイネ】


426 名前:リゾット・ネエロ(M):2006/11/25(土) 23:07:17

>>417 >413
「ち、あの女か!」
リゾットは毒づいた、あの時完全に気配を消していたのにも拘らず
あの女は確かに彼の存在に気づいた。
「…どうする、二階へとむかうか、それともこの場で始末するか…」

427 名前:コダマ ◆K3dMKODAMA :2006/11/25(土) 23:07:22

喉の痛みを庇うため、拾い上げたスコップはコダマにとっても驚異的な働きを果たしてくれた。
突いては槍、薙いでは薙刀、切れば剣。
なるほど、戦場における白兵戦で最も血を吸ったと呼ばれるだけはある。

>>417
そして、そこに現れたのは機械の肌を持つ男女。

「―――君のその手際、まずは称賛を送ろう」

男が、鋼鉄の拳を振り下ろす。

スコップが、原型を止めぬほどに破壊される。
木製の柄も、鉄製の刃も。
コダマは、スコップを投げつけると同時に横へ飛んでいた。
見っともない動きであろうが、関係ない。喉の回復のための時間を稼ぐのが先決だ。

コダマは悠然と、そして泰然と立ち上がりタキシードの埃を払う。
そして両手の手袋をキュッっと直し、拳を固めファイティング・ポーズを取った。

山のごときこの男を越えるために。
【現在位置:パーティールーム】

428 名前:レミア・シルヴェスタW世 ◆MVlNEREMIA :2006/11/25(土) 23:07:30

>>408

>「君も少しは踊ってみればどうだい?」

私の足元に現れた空間の断層。
足が消し飛ぶほどの威力はある。

「あら?私をダンスに誘ってくれるの?」

バックステップ、そしてもう一球黒い弾を作り、
前の男の脇を通り、敵の横腹に命中するよう球を投げる。

【現在地:格納庫で共闘中】

429 名前:夜雀の怪『ミスティア・ローレライ』 ◆8hOOMYSTIA :2006/11/25(土) 23:09:11

>>389>>402>>416
風穴を開けて落ちるだけの死骸がミスティアへと迫る。

否。
近付くのは恐れのない魔女で、死骸はもはやただの盾に過ぎない。

ミスティアは盾へ向けて鉤爪を振るう。
盾はその役を果たすだろうが----

彼女には幾らでも、何処からでも付け狙う使い魔がいる。
真っ正面から受けながら、頭上・真横・真下から、使い魔が妖気の固まりを放った。


【現在地:周辺空域 姿勢制御エンジン付近】

430 名前:パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU :2006/11/25(土) 23:09:17

>>271 >>277 >>301 >>315 >>331 >>349 >>334 >>366 >>393

「熱くなってくれたかしら?」

生み出されては砕け続ける盾の背後に身を隠し、パチュリーは小さく息を吐いた。
敵の放つ弾丸は速いが、直線的だ。それなら金属の盾で防ぎきれる。
もし、弾の代わりに彼が突き進んできたらまた別の札を用意しなければならなかっただろうが。

盾の影で機会を図る。
このままでは負けこそしないものの、状況の逆転は難しい。
と……敵が動きを見せた。

>―――――貴様から死ね。

もう一人の誰かを狙い振るわれるナイフ。瞬刻とはいえ、明確な隙。
逃すか。

 Fire, Fire, Fire!
「火よ、焔よ、焼け!」

単音詠唱を三連。それと共に小さな炎の弾が無数に生み出され、敵を追いすがっていく。
その数、二十四。

[現在位置:回廊]

431 名前:イグニス ◆IgnisC3BW6 :2006/11/25(土) 23:09:37

>>414

 走り抜ける。だが気配は一向に離れる様子はない。
 要は、追いかけられていると言うことだった――まあ、無理もない。
 単なる目つぶし程度で諦めてくれるようなタマなら、そもそもこんなところで遊んでなど居ないだろうから。

「適当に玩具を見繕うしかないか――」

 幸い、あちこちで戦闘が頻発している。
 適当な化け物をぶつけてさえやれば、あの快楽主義者のことだ――こちらのことなど忘れて、新しい
獲物に食らいつくことだろう。

 だが――

「……存外に足が速い。流石に巻くのは無理か」

 呟きつつ、残り少なくなったジッポをいくつか――こちらは閃光弾ではなく、爆弾――の起爆スイッチを
入れ、通路へと二、三と放り出す。

 爆発を待たず、イグニスは比較的損傷の少なく見える、客室へと転がり込んだ。

【中層:誰もいない客室】

432 名前:ヴァーミリオン・CD・ヘイズ ◆/CD/iS.AAU :2006/11/25(土) 23:10:05

>>349 >>393


ヘイズが銃弾を放つと同時、回廊の向こう、己とは丁度正対の位置にいた人影もまた、動いている。
そう、まるで旧時代の魔術師のような不可思議な格好をした、十代前半の可憐な少女。
それはあまりに、この血生臭い、硝煙漂う闘争の場に不釣合いな人物だった。

―――不味い。

乗客の一人が、迷い込みでもしたのだろうか。
いずれにせよ、このまま放っておけば、彼女は数瞬後には物言わぬ肉塊に成り果てる可能性が高い。
助けなければ、今すぐ―――

だが、目の前の敵―――今しがたヘイズに出会い頭で銃弾を放った、白髪の男―――が、
それを許さない。

ヘイズの撃った銃弾をいとも容易く回避し、広い回廊の全てを最大限に活用した、立体的な高速移動。
その身体能力は、「騎士」タイプの魔法士―――常人の三十倍以上の運動速度に定義した―――と、同等。
まさか魔法士ではないだろうが、確実に、唯の人間の動きではない。

高速移動とともに、放たれる弾幕。
通常の人間なら、これもまた、到底回避は不可能な代物。

だが―――生憎、ヘイズも唯の人間ではない。

最初の不意打ちとは違い、対処は容易かった。
知覚困難な相手の動きを、逐一データとして取り込み、予測演算の糧とする。
自らの力を過信しているのか、無駄な動きが多い。
射撃のタイミングも一定で、変化に乏しい。
僅かに斜線をそらした脇を、銃弾の雨が通り過ぎていく。
次の射撃は1.003秒後―――前方・射角63度。回避。

射撃を悉く回避された相手がとる次の行動も、既に予測が終了している。
片手の拳銃を捨て、短剣による近接攻撃―――
拳銃の刺客に回りこんでの、急所への斬撃。


―――鈍い音が響いた。

ナイフによる斬撃を、左手の拳銃で受けた音。
見てから受け止めたのではない。
斬撃の軌道上に、あらかじめ銃身がおいてあった、、、、、、、、、、、、、、のだと。
相手が気づくのには、そう時間はかからないだろう。
そして同時に、相手の繰り出した攻撃の力のベクトルも、既に読みきっている。
絶大な膂力に真向から向き合わず、巧妙な力の増減で軌道のみをずらす。

同時に、回りこむように銃身の位置が男の脇腹に移動。ほぼ零距離―――行動を予測するまでもなく、はずしようがない。
ヘイズは容赦なく、発砲した。
叫ぶ。


「おい! そこの女の子! ここは危ねぇ、早く逃げろ!」

とにかく、彼女を危険に巻き込むわけには行かない。
その一念から出た台詞だった。

433 名前:津村斗貴子 ◆TOKiKoStGs :2006/11/25(土) 23:10:44

>>406(サクラ)

(外れた!?)

必殺の一撃のはずだった。
おそらくかばうのは頭部や腹部、だが手足まではかばいきれないだろうと踏んでいたのだが、

「ちいいっ!」

思考は、現実が中断させる。
紫電を纏い、こちらへ飛来するナイフ。
それそのものが、銀の弾丸のように、一直線に。

「私を舐めるなっ!!」

斗貴子の足から生える四本のロボットアーム。
それはまさに斗貴子の「手」となり、その特性である「俊敏にして正確」を体現する。
右足の二本がナイフを弾き飛ばし、地に落ちたそれを残り二本が串刺しにする。

「そのスピード、どんな手品かは知らないが――舐めるなよ化物!
 そんな単純な軌道が読めないほど、錬金の戦士はヤワではない!」

言いながら、左足のロボットアームのロックを解除。
刃の部分を手にとる。
未だ曇りないその刃を、お手玉でもするかのように片手でもてあそび、

「とは言え、物をもらっておいてお返しもなしでは失礼だな。
 呉れてやる――使え!」

少女めがけて投げつけた。


<現在地:パーティルーム、サクラと戦闘中)

434 名前:エアハルト・フォン・ラインダース ◆CnAdcTa152 :2006/11/25(土) 23:11:01

>>237-242

>>369 vsエリ・カサモト

 眼下の光景に異変。
目標Zの周囲に無数の火線が走り、更にはひと際巨大な火柱があがる。
間違いない。 あれは艦砲。 それも戦艦の主砲クラスだ。

「フェンリルよりグリューネヘルツ。
 敵機を邀撃せよ。 繰り返す。 敵機を邀撃せよ」

 状況を問いただそうとした矢先にくだされる命令。 そして沈黙。
どうやら『フェンリル』は私に状況を説明するつもりはないらしい。
だが、今はそんなことを問いただす時ではない。

 操縦桿を倒し、機首を真下に向けて急降下の体勢に移る。
同時にスロットルを全開。カウリング両脇の排気管から青い炎が立ち上る。
高度一万メートルからの垂直急降下。
速度計の針が恐るべき勢いで伸び、それに比例して猛烈なGが私をシートへと押し付ける。
 高度7000、6800、6600、6500……
6000を過ぎたあたりで巨鯨の尾に食らいつこうとする赤青の翼端灯と機体の影を視認。
機体をロールさせ、その未来位置へと機首を向ける。
 高度5000を切ったところで光像照準機の中心に敵機のシルエットを捉えた。
 速度は既に1000km/hを越えている。 機体が振動を起こす中、迷わず引き金を引く。
プロペラ同軸の30mmと翼内の20mm、都合三本の火線が赤い尾を曵いて夜空を切り裂いた。

【周辺空域:飛行船周辺空域、機体後方に急降下】

435 名前:ジェームズ・ホワン(M) ◆ko.IhfiTmE :2006/11/25(土) 23:11:35

>>412 >>419
「テメェ…三下の分際でこの俺を殴っていいとでも思ってるのか!!」
男の拳を掴んだままやけに高い天井まで一気にテレポート、そのまま床下へと投げ飛ばす。
「そこの小娘!テメェもだ人の頭の中でゴチャゴチャほざきやがって!」
男の身体をブラインドにして衝撃波、このタイミングでは逃れられまい

もっとも、ジャミングの影響で、紙一重で逃れられる可能性はあるが。


<現在位置:下層部倉庫>

436 名前:レップ ◆ZcW/SSsF6Y :2006/11/25(土) 23:12:51


>326 長谷川虎蔵

!?

男は弾丸の直撃を受け虚空に四散したかに見えた。
だが、同じ男が十数メートル横の空間にいた。

まったく同じというわけではない。服装が違った。
防寒具ではなく、ロングコートとダブルのスーツ、それにネクタイ。
何より特徴的なのは体に巻きついた大きな数珠。

目を凝らせば先ほどの男が散ったところに木片が舞い散っているのが見えた。

鋭い舌打ち。これが変わり身というやつか。
ニンジャを相手にするのははじめでだが。

だが、変わり身なんぞをつかうということはあたれば死ぬということだ。
ならば分身も含めてすべて打ち落とせばいい。

レップは集中する。目に移る男の姿だけでなくこの戦場すべてに。

男が電撃を放ち、それが収束し弾丸となる。
それはすさまじい速度でレップに迫った。

精度が甘い。放っておいても外れるが・・・・・・。

狙撃姿勢から右足を曲げ、膝をすばやく体にひきつける。
右ひざ右手のひら左ひじを支点して瞬時に跳ね起きる。

四足獣のような姿勢から、銃をつかむ。
戦闘服の下で筋肉が盛り上がり両手でで巨銃を保持。

その位置から姿勢を低くしすばやく移動する。

弾丸は彼の元居た位置から少しはなれた場所に激突。
あまり精緻な仕掛けを得意とする方ではないのだろう

走りながら銃口を男に向ける。
思い返せば驚くべきことに男は超音速の弾丸を見てかわしていた。

ならば。

ボルトを引き排莢すぐさま次弾を装填。

男の今までの回避の軌跡を瞬時に確認。
避ける方向を予測。変わり身を使った場合のため周辺宙域を絶えず確認。

狙いを定め引き金を引く。すぐさま排莢、装填、再度の狙撃。排莢、装填、さらにもう一発。

予測射撃。それは狙撃の基本でもあり奥義でもある。

【銃身損耗率60パーセント】
【中層部:甲板後部で周辺空域の敵を迎撃中】



437 名前:ヤン・ヴァレンタイン:2006/11/25(土) 23:15:39

>>423

 あははー、兄ちゃーん。なんかお花畑が見えてきたような気が一瞬だけしたぜー。
大丈夫かなー俺。血がドバドバ出ちゃってんすけど。マリオクリアしてー! いやどう
でもいいか、これ。あー、眼が霞む。霞む霞む。折角肌が見れそうなのにー。
 鼻の奥に鈍い衝撃。俺の高い鼻が! 自慢の鼻が! ピアス取れた! ファック!

「なあおい、そろそろ大人しく寝てくれよ? じゃないと手荒に強引に抱かなきゃなん
ないだろー?」とか云いつつちゃっかり二発目の照準合わせ「まったくよー、死に難い
だけで死ぬときゃぽっくり逝くんだぜ?」さてだが何処狙ったもんか「でさー、ハインケ
ル? 誰それ、男? 女? フタナリ?」ま、いいか何処でも「赦せねー、赦せねえなー
―――だから死んじゃえ♪」

 太腿辺りにしとくか。良いよね、白いし柔らかいしエロイし何より喰い応えもあるし?
 マジ勃起もんの姿ですけどね、今もソートー。

【パーティールーム】

438 名前:矢車想 ◆dMMbM6zhZs :2006/11/25(土) 23:16:34

>>426
下が騒がしい。
どうやらここにまで争いに染まりつつあるようだ。
周りには雑魚の死体。

綺麗な顔してるだろ??
これ死んでるんだぜ?

【現在地 展望台】


死体の鼻にティッシュを詰めて遊ぶ

439 名前:『紅い悪魔』レミリア・スカーレット ◆remyaGVniw :2006/11/25(土) 23:16:39

>>422
VSグルマルキン・フォン・シュティーベル

>「忍び寄れ、左の蛇。変異させよ、紫のアケートゥム!」

>左手の変容―――狼のあぎとに姿を変えたグルマルキンの左腕が、
>レミリアに向けて牙を剥いた。

「……なっ!!?」

私は突然グルマルキンの左腕が急に獣に変化した時に―――私は咄嗟に
交わすのが遅れてしまって…左腕ごとその獣に喰い千切られてしまった。

「…っああああぁぁぁ!!!」

私は左腕に襲い掛かった激痛に私は顔を歪めた。そしてそれを見下ろしていた
グルマルキンが何やらニヤッっと不敵な笑みを浮かべた。
それを見た私は…こちらも不敵な笑みを浮かべてこう言った。

「……ふ、フフフフ―――流石にこれは私としたことが…ちょっとばかり
貴女の事を甘く見ていたみたいね…。でも忘れたかしら?
私も一応 吸 血 鬼 なのよ?この程度の傷ぐらい―――」

そして私が何か呟いた後…すぐさま左腕が見る見るうちに再生した。

「―――すぐに元通りよ―――」

【中層部:キッチン】

440 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/25(土) 23:17:43

>>425
 赤スーツの女が踵落としを喰らわせる。
 見た目も『感じ』も人間だが、真逆あの吸血鬼を助けるマネをするとは。

 顔を上げると女が高々と脚を上げていた。
 おぉ、このトシになって見るとは思わなかったぜ、伝説の踵落とし。

 「ふ、ぅ――――」

 小さく呼気を漏らして、ほんの僅かにスウェーバック。
 眼前を明らかに殺す威力で打ち込まれた踵が通り過ぎていく。

 そのまま立ち尽くしていたら――――目と鼻の先に女の顔があった。

 「…………ッ!」

 ――――――――リリィ。

 頭痛。ノイズ。胃が逆流する。視界が反転する。
 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪いキモチワルイ駄目だマズイ――――

 「あのな」

 気を失いかける頭を強引に抑える。ここで倒れたら、追撃喰らって確実に死ぬからだ。

 「アンタ、が、助けた、紅いジャケ、ット……は、あれ、は、人間じゃ、ない」

 説得、などという事を思いついたのは、動けなかったための時間稼ぎに近い。

 「選べ、よ。俺かアイツ――――」

 吐き気が収まらない。それでも、何とかその台詞だけは、はっきりと言ってやりたかった。

 「人とそうじゃないの、どちらの味方を、選ぶのか」

 少なくとも、俺は人間だ。

 【場所:客室、哀川とキスの距離】

441 名前:シエル ◆kcbhGUILTY :2006/11/25(土) 23:19:00

>388

幸か不幸か手の届く所にあった整備用のハッチから、内部の通路へと転がり込む。
そのまま、暫く起き上がれなかった。

「ごほっ……う、ぅ……」

身動きする度に、胸の傷が痛む。
折角持ってきた第七聖典が、重くて仕方ない。

――――墜落せずに済んだのも、これのおかげなんですけれど。

声を出すのも当然痛いので、心の中でぼやきながら辺りを見回す。
さっきから、実に五月蝿い。
ただでさえ痛みにくらくらしているのに、騒音の所為で頭痛がしてきそうだ。
その騒音の音が、意外なほどに近くにあった。

――――メインエンジン?

どうやら、規模から見ても間違いなさそう。
全長1kmの船の心臓が、手の届く所に――これを上手く押さえられれば。

――――足を遅れさせるだけでも、時間が稼げるわけですし……

問題と言えば、機械を弄る知識がさっぱりと言う事だった。


【最上部:主機関傍で壊したら不味いですよね、と考え中】

442 名前:サクラ ◆6jagu9Uf/. :2006/11/25(土) 23:20:18



(>>433 津村斗貴子)



「この一撃をかわすとはな―――何者かは知らないが、相応の強者と見た」



 賓客の死体が横たわるパーティー・ルームの一隅は、すでに華やかな酒宴の席
とは遠くかけ離れた陰惨な状況だったが―――しかしそれでも、見ようによっては
未だにパーティーの一幕を演じているとも取れた。

 黒いドレスの少女。空を跳ね、顔に傷持つ少女と踊る。
 死臭のフレグランス。剣激のダンス・ミュージック。


 刃を投擲する少女に対し―――
 黒衣の少女は白皙の美貌に鬼相を走らせる。

「だが、それほどの者が―――何故奇襲を選んだ! 利益のためか自己防衛か、
あるいはこの混線を沈めるためか―――いずれにせよ許容はしない!

 私は―――《賢人会議》。

 力で以って人を裁くものを―――裁くための力だ!」


 刃の一撃は黒衣の少女喉元に迫る。
 中空で反転したその姿勢からは、すでに回避する術はないと見えた。
 だが。

(分子運動学制御:『羽』)

 黒衣の少女は『翼』周辺の空気分子を操作し、人工的に揚力を発生させた。
偽りの風を掴んだ真っ黒な翼が大きく羽ばたき、顔に傷持つ少女へと迫る。


「今この瞬間から、貴様は私の標的に成り下がった。最早貴様の信念も思想も、
聞いてやる気は一切ない。言葉を持たぬ虫の様に、無為に死ね」

 旋風のごとくに距離を詰める少女の両手には、変異銀ナイフ。
 相手の喉下を目掛け、一挙動で突き出す。


【展望台一階・パーティールーム】

443 名前:ケイト・コナー ◆g6orsKate. :2006/11/25(土) 23:22:54

>>420
 利いた!
 聖水は確実にヴァンパイアを苦しめている。

 良かった。最近は聖水も十字架さえも、無視する不信心なヴァンパイアが増えてるっ
て話だったから心配だったけど。
 とはいえ、相手は足を犠牲にしながらも鎖の呪縛から逃げ出してしまった。

 残る聖水は1本。あとは十字架だけ。
 流石にこれでは手の打ちようがない。ああ、神父もせめてこっそり武器を送りつけるくら
いしてくれても良かったのに。生きて帰っったら絶対に一言言ってやるわ。

 既にあがり始めた息を精神力で押さえつけ、後ろの少年に駆け寄ると問答無用で抱
えあげる。
 抱えられて流石にもがいたがここは無視。ああ、ここがカリフォルニアだったら、一発で
警察に御用ね。ここにまともな警察がいない事を祈るわ。


>>425>>440
 さっきの女が、二丁拳銃を手にした男――こっちもまだ少年と言えそうだ、に向かって
いる。
 ああ、彼女東洋系だったのか。
 格闘技を身に着けている私から見ても鋭い一撃。どうやら彼女も普通ではないよう
ね。
 だったらもう気にかける必要も無い。
 さっさとここを逃げ出すだけよ。


 取り合えず上かしら?

【客室→展望室3Fへ向かって移動】


444 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/25(土) 23:23:49

【vs大尉】

>>403
>>421

>鈍い音ともに石像がぱらぱらと原型をなくしていく。
>大尉の右手が握られ、一つの砲弾を形作っていく。

 わたしの意識は飛びました。
 次に気がついた時には、視界が切り替わり、わたしの背中に何かが衝突しました。
 それが人間(レイオットさん)だと気づいた時……わたしにぶつかってきたんじゃない、
わたしが吹っ飛ばされて、彼に激突したんだとようやく理解できました。

「…………あう……ぅ……がはっ!?」

 数瞬遅れて、大尉に砲弾を打ち込まれた腹部に、先刻とは比べ物にならないほどの激痛が走りました。
 痛みに続き、耐え切れないほどの嘔吐感。地べたに這いつくばったわたしは床に血反吐を撒き散らしました。

 本来なら、今の一撃で死んでいてもおかしくないほどでした。
 でも、わたしの持っていた石像が、先に大尉によって破壊されたせいで、バランスを崩してしまったのが
不幸中の幸い……どうにか致命的な箇所は避けられたようです。それでも凄まじく痛いですけど。

「あの……その、すみません……だ、だいじょう、ぶ……ですか……?」

 自分の方がよっぽど息も絶え絶え、な感じなんですが、それでもどうにか、ぶつかってしまった鎧姿の
男の人に、わたしは声をかけました。

【イリーナ・フォウリー:現在地:パーティールームにて大尉に吹っ飛ばされ、レイオットにぶつかる】

445 名前:パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU :2006/11/25(土) 23:23:51

>>271 >>277 >>301 >>315 >>331 >>349 >>334 >>366 >>393 >>430 >>432

>「おい! そこの女の子! ここは危ねぇ、早く逃げろ!」

もう一人の誰かが声をかけてきた。どうやら、彼には人を心配する感情があったようだ。
だが生憎、パチュリーは。“動かない大図書館”パチュリー・ノーレッジはそれに値するほど
弱体ではない。

「そうでもないし、逃げるのはあまり趣味じゃないの。昔散々したから」

最初の否定語が「危ない」に当てられたことに彼は気が付いただろうか。

「それからね、子でもないわ」

魔女はつぶやく。無感動に。むしろ面倒そうに。

446 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2006/11/25(土) 23:24:20

>>385 >>411(vsロンギヌス)


 ああ、素晴らしいパートナーだ。
 私の炎を消し飛ばし、迫る騎士の一団は、差し出す手の代わりに私へ槍を突き出す。
 速い。流れ星のように速い。
 でも、彗星にはちょっと足りない。
 私の知る速さには届かない。
 だから―――

「焦っちゃ駄目よ。レディにはきちんとご挨拶しなくちゃ」

 私はくるりと身体を翻らせて、ダンスの申し出を受け入れる。
 一撃目は炎の剣で受け流す。
 二撃目はふわりと身体を横に流して避ける。足が翼を離れる。
 そこに三撃目。かなり速い。それも身を翻し―――

「いたっ!?」

 手を掠めた。少し見積もりが甘かったみたい。お姉さまに見られたら怒られるかしら?
 おかげで炎の剣は落としてしまった。
 でも、まあいいや。また作れる。

「もう、もうちょっと優しくして欲しいわ、ね?」

 私はそんなことよりも楽しくて仕方がない。
 さあ、さあさあ―――一緒に踊りましょう。聖なる槍の騎士さん。

 タクトを振るように魔法陣を指で描き、私は無数の光の弾丸を放った。
 放射状に波紋を広げるように放たれる弾は、季節はずれの花びらのよう。
 それが、夜の冷たい風に乗って、騎士たちと踊る。


>>391

 ―――と、声が聞こえた気がした。
 誰だ、とかそんな意味だと思う。良く聞き取れなかったけどそれは分かる。
 周りを見回すと―――なんと背中に大きな羽根を生やした鴉のおじさん。
 あ、こっちみてる。

「はーい!! わたしわたしー!! おじさんも一緒に遊びましょう!?」

 だから、大きな声で返事をして、ぱたぱたと手を振った。

447 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2006/11/25(土) 23:24:26

>>392 ふみこ
>>434 エアハルト

 炎の柱から逃れるための回避機動でぶれた機体を立て直し、旋回する。
「バルカン、ミサイル――スタンバイ」
 後はトリガーとボタンだけでコイツらは解き放たれる。さて、獲物は――。

 そのときだった。

『聞こえているな。こちらはルフトヴァッフェ所属、オゼット・ヴァンシュタイン中尉だ。本来なら
 ばまず真っ先にお前を撃ち落してやるところだが、事情が変わった』

「っ、回線ジャック!?」

『あんなのがいたのでは、お互いに仕事は果たせんだろう。気に食わんが、一時休戦だ。
 アレを墜とす。手伝え』

 軍人軍人した声だった。さぞや理知理性の塊みたいな顔をしてるんだろう。
 触ったらすっぱり斬れそうだ。
 ――きっとプライドも高い。
 そんな声の持ち主がこっちに協力を要請してきている。

「つまりそんだけやばい状況ですかぁ、と。確かにあの広域掃討攻撃はやばいわね」
 答えは瞬時に決まった。

「こちら情報局スパローズ所属、エリ・カサモト二等軍曹。要請に応じる。……後ろから撃つなよ!」
 やることが決まればあとは行動あるのみ。どこのバカだか知らないがケツを引っ叩いてやる。

 いきなり上方から機銃掃射。
 フライヤーの真ん中から主翼近辺にかけて銃弾が喰らい込んだ。

「べ!?」

 HUDがダメージを表示し、計器やらなにやらが状態を訴える。アラートが喧しく鳴る。
 ぐらついた機体は僅か二秒で安定を取り戻した。ダメージ表記は残るものの、計器は安定し、アラートも止む。
 ――非常に高い継戦能力。SV-シリーズの特長だ。

「くそったれ。どこのドイツだ!?」


【周辺空域:飛行船周辺空域、機体後方】



448 名前:リゾット・ネエロ(M):2006/11/25(土) 23:24:56

>>427 >426
「…感づかれる前に始末する!」
 完全に気配を消し女の側面に回る。幸い二人はタキシードの方に意識が
 いっている、チャンスだ。メタリカの能力、それは磁力線により血液中
 の鉄分を金属製品に換えて排出、酸素欠乏を起こす。

 15m・14・13・12・11…射程距離内!
「メタリカ!!」

449 名前:フィア ◆HPv8dyzZiE :2006/11/25(土) 23:26:07

>>429
 ギンッ、という鈍い音がした。
 恐らくは防がれたのだろう。
 鳥女の姿は見えなかった。死体が、フィアと鳥女の間を遮っているからだ。

 瞬間、先ほどの怒りの感情の残滓が、彼女に苛立ちを覚えさせた。
 冷静な機械である彼女は、そういったノイズを知らない。
 だから、その瞬間……ほんの一瞬だけその感情に支配され……結果――いつもの彼
女ならば絶対にありえない事だが――周囲に突然現れた気配を察知するのが、遅れた。

「……ッ!?」

 気付いた時には遅かった。
 何処からともなく現れ、彼女を包み込む大量の鳥たち。
 彼女の腕に、腿に、首筋に、眼球に、容赦なく突き立てられる鋭い嘴。

 振り払おうと、剣を振り回す。
 しかし、いくら薙げども払えども、鳥たちはいくらでも湧き出て、フィアという餌に食らいつい
てくる。

(死―――)

 自分は死ぬのだ、とフィアは思った。
 心の奥底で、先ほどとは違った感情が疼くのを感じた。

 身体の力が抜ける。
 意識が遠のく。

 フィアの身体が大きく揺れ、箒から転がり落ちた。
 彼女が最後に見た光景は、フィアの死すらを材料とし、敵を駆逐しようと詠唱を開始す
るフュンフ、ゼクス、ズィーベンの姿だった。



 空を、業火が包み込んだ。

(フィア死亡)
【周辺空域】

450 名前:ビリー・龍 ◆D727Bb9L.2 :2006/11/25(土) 23:27:33

>>420
 俺はサングラスを外し、指先で、両目を抉り出した。
 この眼球は使い物にならない。聖水に晒されて邪魔なだけだ。
 即座に再生がはじまり、左目の視界がほんのわずか戻った。
 ぼやけてやがる。聖水が残ってんのか?

>>425>>440
 ハ! 美人と共闘だ。愉快だ、俺と共闘とは。

「いいね。運動の後はコーヒーの一杯も飲みたいもんだ!」
 片目を押さえながら返す。その手の下では右目が再生している。
 俺の口元は笑っていた。
 魔物と共闘。人と魔物と。仲良く肩を組み。口笛でも吹きたい気分だ。
 対するは……

 さっきのいきのいいのがいた。視界が、ようやく戻ってきた。
 ぼやけた視界で狙いをつけ、俺は、狙い済まして最後のナイフを投げた。
 吸血鬼の筋肉を、全身をばねとして。
 俺の“味方”の肩越しに。
 やつの、左目を狙い。
 ただの果物ナイフは、破壊的な凶器と化してヤツを襲った。

(客室エリア) 

451 名前:高木由美江:2006/11/25(土) 23:28:25

>>423>>437 ヤン
「ハァン?」プーさんファミリーの子豚バリの上手なハァンでしたとさ。
「おめでたいよ、あんた。ハッピーの海を大いばりで泳ぎ渡れるつもりか?」

悲しいときー悲しいときー 逝かれ吸血鬼に本編でセクハラされるときー


笑みは、消した。敬虔な心よ、全て集え。

今一度、殺し果す。何時姦淫する勿れ。
一面、颯、っと紅葉化粧。
奔れ刃よ、無塵の彼方。輝け、それは私の誇りのために。
近づく男に目にも魅せん。

腰部間接を自らはずし、更に舞いちる桜の仇花。血液の霧想。
相手との相対位置、粗零。脚を使わず膂力を秘めさせ、
謡い集う必殺の────

『島原抜刀居合流───烈風──』
軋む異音。回転力より生ずる刃を横凪、すぅ───と威力は迸る。

452 名前:高木由美江:2006/11/25(土) 23:28:51

>>451は 【一階 パーティールーム】

453 名前:飛竜 ◆HIRYUmxRKo :2006/11/25(土) 23:29:05

>>347>>373>>424
 格納庫に到着。障害はない。
「潜入成功。標的は操縦室だったな」
 左大腿部の血は止まらない。が、休んでいるだけの時間はない。障害の存在しない、あっても少ないと思われる倉庫に向かい、疾走する。

――が、そこは見事なまでに戦場と化していた。

【現在位置:下層部格納庫→倉庫へ移動、>>412>>419>>435の戦闘に遭遇】

454 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/25(土) 23:29:56


>>439

「……別に私も、この程度でおまえを仕留められるとは思っていない」

 完璧に不意をついたつもりだった。
 それでもレミリアは余裕を崩さない。
 彼女を殺し切るにはもっと火力/威力/膂力が必要だった。
 今のグルマルキンの武装では、それは難しい。

 ―――が、彼女にレミリアを殺す気は無かった。
 あくまで抵抗をやめさせるのが目的だ。

 フェンリルの頭を常態に戻す。左手にこびり付いたレミリアの鮮血―――
見せつけるように、自らの舌で舐め取った。

「私は貴様と違い、血を啜る習性は無いが……ククっ。これはなかなかに
美味だ。この甘美なる舌触り、ゾクゾクしてくるじゃないか。レミリア・
スカーレット―――やはり、おまえには私が相応しい!」

  我が唇よ、
   秘術を示せ。

 キッチンのコンロが突如爆砕した。オーブンが蓋を開き、炎を吐き出す。
 室内のあらゆる炎が、ルーンを握るグルマルキンによって支配された。

「―――食い込め、玉虫色のカドミア!」

 炎はいくたびをうねりを上げながら、
 やがて無数の火弾となってレミリアに降り注ぐ。

【キッチン】

455 名前:ヴァルトラウテ/タッツェルヴルム ◆SoRDENIEpc :2006/11/25(土) 23:31:08


 >>417 >>427 コダマ

 消えた、という訳ではない。
 サイドへのステップで拳をかわして見せたのだ。

 両の足はしっかりと地に着けている。
 拳は体の前へ。
 英国人ライミーのボクシングや仏国人フロスクのサファーテのようにフットワークを用いではいない。
 東洋の武術であろうか。

「カラテ、か或いはコッポー、というものかね?」

 東洋の少年、遠い昔に拳を交えたことなら在ったが。
 その奇妙な動作だけはしっかりと覚えている。

 振り下ろした拳は、身代わりとばかりに投げられたスコップを、リノリウムの効いた床ごと割砕いた。
 更に一歩、大きく踏み込みながらその腕を横薙ぎに振るう。

 【場所:展望台1F、パーティルーム コダマに接触】

 

456 名前:コーディー:2006/11/25(土) 23:33:15

>>435
反吐ぶちっ…撒かれたらしい。上手い具合にコンビネーションが決まったのに
油断したか?それともそれよりもデカイ執念か。トドメのアッパーをああも
的確に掴まれるとは。ムカつき通り越してヤべぇな…

気付けば天井に居た。そして急降下。
「――イテッ!」

勢い良くバウンドしたがそのままその勢いを利用し、回転し立ち上がる。
只のイカレ野郎じゃないかと思ッてたがこんな辺鄙な能力使うとはな…
テレポートなんざサイコパワーだのヨガだのでもう腹一杯だぜ…
…これくらいで深手負う程まだヤワな体にはなってはいないがダメージには
代わりない。が、それよりも久しいこの感覚に何処か喜びを感じていた

「…懐かしい匂いだ」

そう呟き、床を思い切り殴り付け破壊し、その破片をジェームズ目掛けて
投げつけた後再び向かって行く

何やら後方で険しい顔してる
娘>>412に「残念、すぐに退学届け出す予定がな」と呟きつつ

【現在位置 下層部倉庫 レミア アテナ と共闘中】

457 名前:吹き荒ぶ風のゲーニッツ ◆W/0x/8ia0o :2006/11/25(土) 23:34:27

「やれやれ、ついに起きましたか…。
私もそろそろ向かうとしましょう。
愚かなる者どもが騒がしいのは、耳障りなものです。」

この血みどろの喧騒の中、客室でただ一人、聖書を読みながら余裕に構えていた一人の男がついに動き出した。
【現在位置:客室】

458 名前:津村斗貴子 ◆TOKiKoStGs :2006/11/25(土) 23:35:00

>>442 サクラ

一直線に、迫って来る。
先ほどのナイフが銀の弾丸なら、こちらは黒の弾丸。
だがその質量は――そこに込められた殺気は、比べ物にならない。
少女が吼える。

『だが、それほどの者が―――何故奇襲を選んだ! 利益のためか自己防衛か、
 あるいはこの混線を沈めるためか―――いずれにせよ許容はしない!』

「知れたこと! 貴様をブチ殺すためだ!
 そのための手段を選ぶ必要はない、貴様に許可してもらう必要もない!」

『今この瞬間から、貴様は私の標的に成り下がった。最早貴様の信念も思想も、
 聞いてやる気は一切ない。言葉を持たぬ虫の様に、無為に死ね』

「さえずるな化物! 元から貴様は標的以下の蛆虫にすぎん!
 化物が裁きを騙るな! 人を裁くのはただ人のみ!
 貴様ら化物はブチ殺す! 死ね、死ね、死んでしまえ!!」

刃より先に言葉が切り結ぶ。
その間、双方の位置に全く変化はない。

突き進む少女。
ただそれを待つ斗貴子。

「だが、それでも一言だけ言葉を与えてやる」

ゆっくり、左手を上げる。
斗貴子がした行動は、ただそれだけだった。





鮮血。





銀の刃は斗貴子の左手を貫き、引き裂き、鮮血を撒き散らし、
喉元をわずかに傷つけて、止まる。
そして――斗貴子は微笑む。

「さよなら、だ」

次の瞬間、残る三つのバルキリースカートが、少女の手足めがけて殺到した。


<現在位置:パーティルーム、サクラと戦闘中>



459 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus :2006/11/25(土) 23:35:42

>>431

足音の前進が止まった。
何かが床に落ちる音、続いてドアの閉まる音。
つまり、罠か。

「乗ってあげるわよ、ええ」

追い続け、床に落ちた音から距離を取って足を止める。
すぐ傍の客室のドアを開いて盾に。
同時に、炸裂した。

「物騒な落し物ね……全く」

頑丈な木製のドアの表に、雨の様に何かが降り注いでいた。
殺傷力を高める為の鉄片でもセットになった、対人用の手榴弾のようなものだったのだろう。
その分爆発力が犠牲になったお陰で、ドアが持ってくれたと言う事だ。

「とはいえ――――」

爆発の余波で、音が掻き混ぜられてしまった。
後を追い続けるには、些か不都合がありそうだ。


【中層部:回廊、イグニスを追跡中】

460 名前:大尉ブラッド ◆/Z/IFjxeWc :2006/11/25(土) 23:37:46

銃声は客室の方からも聞こえており、カジノほど制圧は楽では無いことを物語る。
だが、制圧が任務であるならば、制圧の先に目的が存在するならば、今は戦おう。
ともかく死なないと言うことは戦場では、唯一無二のアドバンテージなのだから。
階段を静かに下りていく。目の前で繰り広げられる乱戦。そこから逃げ出してくる親子・・・か?

>>380>>409>>443

「・・・これはこれは。少しばかり黙っていて貰えないだろうかね?
 この作戦は大儀がある。こう騒がれては・・・困るのだ。

 しかし、親子連れか・・・黙って客室に帰りたまえ。それとも、この場で屍になりたいのか?
 伊達や酔狂で丸腰の軍人が止めていると思わないことだな。」

帽子を被った金髪の軍人が二人の前に現れる。その軍服はカジノでの制圧を物語るように、
所々に返り血が付着し、口元に血を吸ったような跡がくっきりと浮かんでいた。

【現在位置:展望台付近→2Fの階段付近で両者に遭遇】

461 名前:麻宮アテナ:2006/11/25(土) 23:37:47

>>419
 重そうなジャブの連打、やっぱりあの人も相当なものでした。
「実は俺ってタダのボディビルダーなんだよね☆」って言われたらどうしようかと思いましたけど、
なにしろ今日の私はラッキーデー! 密航者さん強い! ナイスコンビネーション!

>>435
『そこの小娘!テメェもだ人の頭の中でゴチャゴチャほざきやがって!』
「しゃべるのが商売です!」

 また衝撃波、3回も見れば十分。仰角32°4.13メートル前方に短距離テレポート、つまりあなたの真上!
自由落下に任せてサイコソードでの斬撃連打、このまま食いついて近接戦闘を続けていれば、
あの女の人がいる。あわよくば私がバッサリ。たしかにハイジャックさんは強いです。
でもあの女の人なら、女の人ならきっとなんとかしてくれる……!

>>456
 よかった。ちゃんと健在でした。
実はちょっとドキッとしたんですが。
密航者さんもきっとナントカしてくれる!

<現在位置:下部倉庫>

462 名前:タバサ ◆3VTTABASAI :2006/11/25(土) 23:38:34

>>401>>418
 返事の代わりに、聞こえてくるのは闘争の怒号。
「それもそう、か……あの御仁に、私の今回の目的は分からないのですからね」
 くすりと笑い、歩き出す。力の出所と思しき方向へ。

「ご心配なく、アドルフ殿。貴殿の邪魔はしません。私は自身の知識を深めるために、ここに来ているのです。場合によっては――共同戦線を張れるかもしれませんよ?」
 歩きながら、いまだに姿を見せない彼に呼びかけてみる。共同戦線を張れるかはともかく、知識を深めるためというのは事実だ。

【現在位置:客室エリアの回廊】

463 名前:ヤン・ヴァレンタイン:2006/11/25(土) 23:38:38

>>451

 音が、消える。
 まあつまりは簡単な話。

 あらゆる感覚が痛覚に負けやがった。(、、、、、、、、、、、、、、、、、)

「あーあー、俺真っ二つ的な感じッスか? いやーいやー」クソ痛えぞファック!「どうしたもんか、
どうしたもんかねー?」痛いイタイ痛いイタイ「まー、なんだ」痛い遺体?「終わりにしようぜ」

 少しずつちりちりと炎に包まれていく。まあそう言う事。
 何も残さず一切合切を無にして行く戦争という名の虐殺ショーは、敗者にはこう言う末路が待っ
てる訳だ。そりゃ当然。なんたって何も残さない為に戦争をする為だけに派遣されてる俺達なん
だから――ッ!

「ま、地獄で待ってるぜーッ!」

 最後の最後の銃弾をバラ撒くのは忘れません。当然当然。
 俺は生き汚く罪を積み重ねすぎた吸血鬼なんだから。

「ヒャハハハハハハハハハッ!」

【死亡】

464 名前:大尉:2006/11/25(土) 23:39:04

>>444 >>410 (ホムンクルス・金城(M))

 イリーナを打ち抜いた拳の砲弾は止まらない。
 否、逆にそれどころか砲弾は加速していく、人間では考えられない夜族の律。
 巨大な鉄の手へ向かって一直線に飛んでいく拳の砲弾。
 この砲弾は大きさ以外は強度、威力、速度、全てにおいて鉄の手を上回っていた。
 果たしてそれをホムンクルスは気づいていたのか?




 ――――尚、大尉はこれの方向を見ていなかった。
 向けられていた視線の方向は最初から最後まで少女イリーナと男レイオットの2人のみ。

465 名前:Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA :2006/11/25(土) 23:39:11

>>421 >>444

 ――ぞくり。
 背筋に、はっきりと悪寒が走る。
 反射的に振り向く――そこには。
 ただ、男が立っていた。

 一見してナチスのそれと判る軍服姿。コートの裾からのぞく銃口らしき何か。
 だが――そんなモノは、見えてはいても全く目に入らない。

 その眼。飢えた獣のような双眸に、思わず俺は圧倒されていた。

 ――そして、その硬直が、決定的にこちらの反応を遅らせた。
 吹っ飛んでくる何か。反射的に迎撃――しようとして、俺は思わず息を呑んだ。

「人間っ!?」

 まるで砲弾のように吹っ飛んでくる少女。
 動けない。間に合わない。結果。

 ――激突。

「ぐっ――」

 モールドを着込んでいたおかげか、こちらのダメージは、幸いにも大きくはないようだった。
 HUDに表示されているステータスもグリーン……正常のまま。
 残り拘束度端子十五。全力戦闘可能。

 血反吐をはきながら、それでもこちらを心配するように声を上げる少女に、思わず呆れが出る。
 どちらかと言えば、自分がまだ生きていることを喜ぶべきだ――

「……そこでじっとしてろ。動くと身体に触る」

 少女を床におろし、改めてスタッフのステータスを確認する。
 階層式になっている呪文選択リスト。コレを作った奴は頭が逝かれている、と確信しながら、俺は目的の
呪文書式を選び出していた。
 選択。そして――無音詠唱。

「――イグジストッ!」

 <アクセラレータ>を発動する。瞬時に全身の筋力が限界まで膨張。人体構造の限界値まで筋力が
増幅される。灰色熊とも真っ正面から殴り合えるほどにまで強化された身体が、

「おおおおおおっ!」

 その、長身の男に向かって走りだすっ!
 それこそ、砲弾の如きスピードで戦場をかけながら、俺は新たに呪文を口頭詠唱。
 リストから探して無音詠唱している時間はない。――ほんの、一呼吸で詠唱が完了する。

「<スラッグ>――」

 左手を握り込む。殴りかかるように構え、そして――

「イグジストッ!」

 拳を振り下ろす。瞬時に、魔法が発動した。あらゆるモノを粉砕する力場が、拳を起点に展開される。
 その一撃を、獣の眼をもつ男に向けて叩き込む――!

【パーティルーム:”大尉”と交戦中】

466 名前:『紅い悪魔』レミリア・スカーレット ◆remyaGVniw :2006/11/25(土) 23:41:05

>>454
VSグルマルキン・フォン・シュティーベル

>キッチンのコンロが突如爆砕した。オーブンが蓋を開き、炎を吐き出す。
>室内のあらゆる炎が、ルーンを握るグルマルキンによって支配された。

>「―――食い込め、玉虫色のカドミア!」

>炎はいくたびをうねりを上げながら、
>やがて無数の火弾となってレミリアに降り注ぐ。

「(…今度は炎の集中攻撃!!この多さだと避けきれない!!
く…こうなったら…!!」

そして私がまた何かを呟いている最中に、火炎弾の嵐が私に集中して
降り注いで行き―――ズドドドォォォーーーン!!!と…すべて私の立ち位置に
すべて着弾した。―――しかし、そこにはレミリアの姿はなく…代わりに
一匹の蝙蝠がグルマルキンの頭上に浮遊しており―――そしてその蝙蝠が
地面に着地すると同時にそれは―――レミリアの姿に変化した。

「…ふぅ―――危ない危ない…。もしあの時(紅魔郷)の
 緊急回避方を思いだしていなければ―――今頃私は相当深手を負っていたでしょうね…」

…と、私は明らかに冷ややかな表情でそう呟いた。

【キッチン】

467 名前:コダマ ◆K3dMKODAMA :2006/11/25(土) 23:41:10

>>455
「カラテ、か或いはコッポー、というものかね?」
男が問い掛けてくる。
しかし、喉を潰されている今も木霊を生み出せる時でもコダマは喋らない。
答えの代わりに、握った拳を手刀にして見せる。

対する男も、振り下ろした状態からさらに一歩間合いをつめての裏拳を放つ。
コダマは、拳の進む方向に側宙しこれを回避する。二度、三度と側宙を続ける。

足元には先ほどに潰したグールが山積みだ。
―――これはいい。

コダマは、グールの残骸を蹴り上げると、後ろ回し蹴りを使って男にグールを飛ばす。
ただの目隠しにしかならないだろう。だが、盾と時間稼ぎには十分だ。

【現在位置:パーティールーム】

468 名前:sage:sage

sage

469 名前:ふみこ・O・V ◆HPv8dyzZiE :2006/11/25(土) 23:43:07

>>447
「後ろから撃つような真似はしない。安心しろ」

 そして、回線を切り、呟く。

「……少なくとも、あのお嬢ちゃんを教育してやるまではね」

 さあ、お仕置きの時間だ。
 愉しい時間になりそうだ――ふみこがそう思い、笑ったその瞬間。
 不意に訪れた戦闘機が、敵機――いまや友軍だが――に銃弾の雨を降らせまくる。

「ちっ」

 舌打ちをしながらミュンヒハウゼンに命令。
 開かれた回線に向かい、ふみこは苛立ちを含んだ声で怒鳴った。

「こちらはオゼット・ヴァンシュタイン中尉だ。今すぐ攻撃を停止せよ。あれは友軍だ……今
だけのな。我々の当面の敵はあれだ。見ろ、上を。そこに幼女が飛んでいるのが見えるだ
ろう!」

 ふみこは言いながら、わかりやすいようにまたがった箒――ガンナーズブルームと呼ばれる
大砲の照準をつけると、フランドールに向けて撃った。

「アレだ。アレは我々にも敵にも等しく敵対するものだ。私と友軍機は、これよりアレの迎撃
に向かう。邪魔はしないで貰いたい」

 同時に、箒を上空へと走らせる。
 狙いはスルトの魔剣を振り回す少女―――フランドール・スカーレット。

【周辺空域】 

470 名前:夜雀の怪『ミスティア・ローレライ』 ◆8hOOMYSTIA :2006/11/25(土) 23:43:23

>>449
「ヒッチコックをリスペクト〜」

穿り返してやった魔女が力を失って箒から落ちる。
とどめを打ち込んでやろうとした刹那、

「うっそ!」

見切りの早いことこの上ない。
死体になって行く真っ最中の味方を切り捨て、ミスティアへと爆炎が降り注いだ。

爆炎が晴れた中、そこには焼けこげた、ブルーノの死体が浮いていた。

「っつー……」

とっさに突き刺した死体を盾にしたものの、あちこちが痛む。

「ご苦労様、盾。今からあんたはYou can fllllllllllllyyyyyyyyyy!!!!!!!!!!!」

残った魔女の一人へと向け、ガーゴイルの残骸を投げつける。
使い魔たちには分散的に妖弾を撃たせ、死骸を投げつけた一人を鉤爪の餌食にしようとミスティアは空を疾駆した。


【周辺空域】

471 名前:ロタール・フォン・リヒトフォーフェン:2006/11/25(土) 23:43:34


>>446 フランドールvsリヒトホーフェン×3vs大勢

「なんだ、あの魔王は。スルトの炎を自在に操るって案配だ」

 眼下のドッグファイトを見下ろしながら、ロタールは呻いた。

「ロンギヌス13と新戦乙女隊も殺到していやがるな……当然だ。あんなバケモノ
を放置していたら、船なんてたちまち沈んじまうぜ」

 レッドバロンは相変わらず無言。
 機を窺っているように、ただの出し惜しみにも見える。
 どのみち、ロタールには兄の心理など理解できない。

「マンフレート、俺が行くぜ。あれは危険だ。さっさと潰しちまうに限る。
 ―――バウマー、ハマー、俺に続け」

 すっと息を吸い込む―――骨が歪み、肉が変化した。
 胸部の筋肉が盛り上がり、両腕から生えた翼が風を受け止める。
 美男子から悪鬼への変化。
 ロタールは、気嚢の地面を蹴飛ばして空に舞い上がった。
 向かう先には自在の炎を操る魔王の姿が。

【周辺空域】

472 名前:ジェームズ・ホワン(M) ◆ko.IhfiTmE :2006/11/25(土) 23:49:12

>>428
衝撃波を放った後、僕…いや、もう言葉を飾る必要は無い、は
効果を確認することなくそのまま小娘のさらに後方で偉そうに構える女へと疾駆する。
「女ぁぁぁっ!」
攻撃を放ったばかりですきだらけの胴にまずは一撃、さらにそのまま肉体の内部の空間に
衝撃波を起こしてやる

と、空中に気配
「交わしたか小娘がぁ!」
自分の上空から迫る相手に一声吼える、さらに複数の気配…ここは不利だ
ましてこんな任務で命を賭けたくもなく、全力を出すつもりもない…ならば。
「まずはお前からだ!!」
そう叫ぶと肩を焼かれるのも構わず、小娘の襟元を掴み…そのまま空間移動を開始した。

【現在位置:倉庫から客室】
>>457の目の前に

473 名前:高木由美江:2006/11/25(土) 23:51:17

>>463 ヤン
「地獄?黙示の時はここで終わりだ」

──1人、芥。
刃を振るい、液体を落として鞘に戻す。
闘争の匂いだ。血、硝煙、炎。戦場を焦がす香がまだ、ある。
法衣の裾をびりりと破り、腹部の止血。
血が出ると戦えなくて困る。
獲物は全て私の者なのだから。
次なるゴミ処理の為サーチを始める。

474 名前:ルーク・ヴァレンタイン(M) ◆jBiAWniQ.. :2006/11/25(土) 23:51:20

>>430 >>432


「な、馬」

―――――ノイズが、

あり得ぬ回避。       銃撃は何故当たらない。
あり得ぬ対応。       このスピードで何故食い下がれる。
あり得ぬ反応。       何故ナイフの軌道に銃身が何故何故何故!

「鹿」

―――――ノイズが、

あり得ぬ反撃。       何故この男の銃弾が当たる?
あり得ぬ痛打。       何故こんな人間の銃撃を喰らう?
あり得ぬ能力。       この男はこの人間は何だ、何だというのだ!?

―――――ノイズが、

「なあァァァァッ!」

あり得ぬ砲撃。        何故火の手がここで上がる。
あり得ぬ誤算。        何故魔女が仕掛ける。
あり得ぬ迂闊。        何故この程度が間に合わぬ!?


絶叫と驚愕と恐慌が止まない。
脇腹を撃ちぬかれると同時、火球の第一波に身を焼かれるヴァンパイア、ルーク。
もはや心身を鎧う冷静も平静も矜持もない。木っ端微塵に砕かれた。
彼最大の弱点である精神的な脆さ。
それが今、最大の形で彼の判断力すら奪い去る。
恐怖ではなく憤怒という形で。

「…ふ、ざける…な」

吹き飛ぶ体勢を無理やり建て直し前傾。
手放したもう片方カービンを拾う暇もなく、袖口からせり出して構えたのは一丁のベレッタ。
ルークが準備したサブアーム。最後に残された理性の砦。
限界まで傷ついた肉体は限界まで酷使され、全力の出鱈目な疾走が螺旋を描く。
暴風が肉薄する先は―――七曜の魔女。


「ふざけるナァァァァァァぁぁぁァァ貴ィ様らアァァァァァァァッッッ!!」


  女を殺して女を殺して女を殺して女を殺す。
  その顔に銃口でぶち抜いて引きずりながら残らず吹っ飛ばしてから必ず必ず必ず必ず!
  その後であいつを必ず――――殺す。


「俺はあ! ルーク! ヴァレンタインなんだああ!!」


【現在地:回廊】



475 名前:ハンス・ヨアヒム・マルセイユ ◆sLAdoLfKkE :2006/11/25(土) 23:52:29

>>443
おばさんに抱きかかえられる。
へえ、思ったよりも鍛えてる、かな?
――美味しそうだ、と思ったのは内緒。

>>462
聞こえてくる声に、思わず苦笑が漏れる。
いつもの如く――知識に取り憑かれていることだ。

だが・・・今は少しでも手が欲しい。

(なら、手を貸してくれないか?
 余りこの姿でキミと会いたくはなかったがね。
 ちょうど今・・・厄介なモノに出逢ってしまったところだ(>>460))


【場所:2Fの階段付近】

476 名前:哀川潤 ◆MzXQXe8zTc :2006/11/25(土) 23:53:55

>>450ビリー

「んな?どーしたよ? 行き成り妙ちきりんな声上げて」

赤ジャケットの方を振り返る、顔の辺りを押さえて居る赤ジャケットが居た。

「…はぁ?」

目を抉り出している途中だった、しかもサメの歯が生え変わる様に次の目が出てきた。
流石に言葉に詰まる、長い間請負人をやっているがそんな生物は見た事も聞いた事も無い。

>>440ハイネ

>「人とそうじゃないの、どちらの味方を、選ぶのか」

瞬時に意味が分かった、赤ジャケットは人間じゃあ無い。
だったら二丁拳銃は?

「それ答える前にさ、質問があんだけど。やっとマトモに喋れる状況だから聞いとくぜ。」

感覚で分かる。人間だ――

「アンタはあたしの敵なのか? はっきりさせようぜ」

二丁拳銃をボコったのは突如銃を付き付けられたから、敵で無いのならボコる必要は無い。
赤色は二丁拳銃とやはりキスの距離で、訊いた。

「それとあたしが質問してる時に茶々入れんじゃねぇ」

超高速で迫り来るナイフの腹を殴り飛ばした。
見当違いの方向に飛んでいくナイフ。
つつ… と血が垂れて行く右拳。

【哀川潤:客室:ハイネに質問中。】

477 名前:イグニス ◆IgnisC3BW6 :2006/11/25(土) 23:56:14

>>459

 爆発、爆発、爆発。
 時間をおいて全てが十全に起爆し、粉塵と僅かな残骸とがばらまかれる。

 そして――重なるように炸裂した爆音のせいか、一時的にせよこちらを見失ったらしいモリガンの足が
止まるのが判った。

 その機を逃さず、扉を蹴り開けた私は、転がるように通路へと躍り出る。
 すでにこの手には2丁のディファイアント・デリンジャー。
 法儀礼処置済みの41口径リムファイア・カードリッジが、このごく至近距離といってもいい間合いから
放たれる。

 ――その数、四。

 空になったデリンジャーを放棄し、銃弾の後を追い掛けるように走る。同時に抜刀。
 踏み込み、横凪に斬りかかる――

【中層部:回廊。モリガンと交戦開始】

478 名前:コーディー:2006/11/25(土) 23:58:05

>>461
…よくやった。あの娘も何処か異様な力は持っているが、最早少し
経つと慣れるモンだ。ビバ喧嘩ライフなんて呑気な事は言えんが…
今はジレンマに潰されてる場合じゃない

よし、俺も一発挟み撃ちの形でどぎついの…を?

>>453
っ―――忍衣装がふと影を掠めた気がした。

「…ガイ?」

戦場の最中、アイツが居るのはおかしくは無いが流石に空中までは…
と、思ったが違っていた。アイツは「赤」だ。「青」じゃない…

>>472
しまった…動きを止めちまった!
気付けばあの二人は消え…残るは虚空…

「…チィ」

どうやら連れ去れた、か…?

【現在位置 下層部倉庫 レミアと共闘 アテナ誘拐 飛竜と遭遇】



479 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg :2006/11/25(土) 23:58:21

>>436 レップ

(! 動きを読まれた!?)

 しかしながら、放たれた弾は空を切った。――確かに虎蔵の躯を貫いたのに。

 見る者がいれば、その飛影が二つ三つと増えているのに気づいたろう。
 超高速移動がもたらす残像――分身の術だ。
 ぶふ、と虎蔵は肺病やみのような咳をした。血も口元から溢れる。

 当たりはしなかったが、巨弾は脇腹を掠めていたのである。大口径弾もこの位になると、至近
距離を過ぎただけで内臓にダメージを与えられる。

 敵の大まかな位置は知れたが、こちらの攻撃は失敗した。
 そしてこうも弾雨が錯綜する状況では、一息に敵艦へ取りつくのは些か至難と云える。
 バレルロールを繰り返し、口元から血の引きつつ旋回せんとしたその時。


>>446 フランドール

 虎蔵を呼ぶ少女の声がした。ぶんぶん振る手のおまけつきである。
 ただでさえ虎蔵は子供など好かない。増してやこの状況、この台詞ときては、


「――この糞餓鬼! 阿呆んだらァ!」


 虎蔵は二刀を捨てると、空いた左手を懐に入れ、何かを引きずり出した。
 優美な和弓である。
 どう考えてもスーツの内ポケットに収まる質量ではない。面妖な技という他無い。

 馬手は矢を引きずり出している。常軌を逸した事に十数本も。
 それら全てを束ねて番え、虎蔵は少女へ矢を射掛けた。
 射っては内懐の矢筒より同量の矢を抜き出し、番える。そして射る。その繰り返し。


 番えては射ち、射っては番えて一瀉千里、横殴りの雨粒にも等しき矢来の嵐は妖少女だけで
なく、空域に躍る機甲の魔性ども(>>411)へも襲い掛かった。


【現在地:飛行船周辺空域にて交戦中】

480 名前:サクラ ◆6jagu9Uf/. :2006/11/25(土) 23:58:31


(>>395 >>406 >>433 >>442 >>458 津村斗貴子)


(警告:I-ブレインの疲労蓄積、35%)

 心の中で舌打ちする。
 顔には出さない。
 相手には悟らせない。

 電荷が不安定な雲上での戦闘は、常ならぬ負担を少女のI-ブレインに強いる。
出力はどうにか安定しているが、能力の切り替えがスムーズに行えないし、
何よりもI-ブレインの疲労蓄積速度が普段とは比較にならない。

 このままでは―――。
 その想いが少女を焦らせた。
 相手の得手である近接戦闘への移行―――見ようによっては無謀とも言える。

 風の速さで迫る黒衣の少女。
 小さな口から敵意の言葉を撒き散らす。
 真っ向受けて立つ傷持つ少女。
 相対し怨嗟の言葉を撒き散らす。

『さえずるな化物! 元から貴様は標的以下の蛆虫にすぎん!
 化物が裁きを騙るな! 人を裁くのはただ人のみ!
 貴様ら化物はブチ殺す! 死ね、死ね、死んでしまえ!!』


 ―――化け物か。
 ―――そうだな。

 黒衣の少女は漠然と悟る。
 己が何と戦っているのかを。
 相手は―――
 相手は、『化け物』の命を勘定に入れていない。
 いや、詳らかな事情はしれない。しかしながら人に仇なすもの、不要な力を持つものに
対して、尋常ならざる憎悪を抱いている事は判る。
 世界はそれを、正しいというのだろう。
 確かに―――
 確かに、化け物は滅ぶべきなのだ―――それが世界の、多数派の意見。

               、、 、 、 、 、 、 、 、、 、
「―――言っただろう、貴様の言葉は聞こえない」

 そう。
 聞こえない。

 己を糾弾する世界の正義など。
 少数派を駆逐し多くを守らんとする正義など―――
 届かない。
 聞こえない。
 そんな。
 そんな正義など。
 そんな世界などは滅んでしまえ。


 黒衣の少女が射殺すほどに凄絶な眼光を傷持つ少女に寄越し、
 三つの刃が空を舞い―――

(飛行に使っている「翼」は―――盾には使えない!)

 少女は片手に持った変異銀ナイフで一撃を受け。
 その一撃で変異銀ナイフは跳ね飛ばされる。
 ニ撃目の刃が少女の右腕を跳ね飛ばし。
 真紅の血が天鵞絨の闇に跳ね。

 少女は既に隻腕。さらに空手。
 既に抗う術はなく。
 最後の一撃をその首筋に、抗うことなく受け入れ―――。


 否。


(仮想精神制御:生物化)

 最後の一撃は。
 中空に浮かぶ白銀の腕に受け止められた。


「ああ、ただな、」

 白銀の腕が一撃を受けて崩壊する。
 さらさらと―――その正体は。

「先ほどの刃は使わせて貰った。何で出来ているかは知らないが、随分と強度があったな―――
成る程、これが世界の敵を駆逐するための力というわけか」

 生物化させて腕に変えた―――先刻の「刃」。

 次の瞬間に、黒衣の少女は動いた。
 黒い両の翼が舞った。
 日本刀の鋭さで以って空気を噛み、相手の心臓と首筋を目掛けて跳ね踊った。


(パーティールーム)




481 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/25(土) 23:59:12


>>466 vsレミリア・スカーレット

「これも通用しないというのか……」

 焦土と化したキッチンを眺めながら、改めて真紅の悪魔の実力を思い知る。
 思いの外、頑丈だ。そして、それ以上に生死を賭した闘いに馴れている。
 伊達に数世紀を生きてはいない、か。
 ならば、

 サーベルを掲げ―――その切っ先で、バルバドスの紋章を宙に描いた。
 バルバドス―――30の軍団を治める偉大なる狩猟の侯爵。
 レミリア同様に、未来と過去の全てを知ると聞き伝えられている。
 その力の一部を剣に宿す。赤熱するケリュケイオン。
 柄を握り直し―――余裕の表情でグルマルキンを睨め付けるその美貌に
刀身を叩き込む。

 が、これはフェイク。
 レミリアの顔を傷付けるのはグルマルキンとて本望ではない。
 真の狙いは胴体―――マントが突然、羽ばたいた。中から飛び出す無数
の爪―――部分的に召喚した悪鬼の腕が、レミリアを引き裂かんと殺到する。

【キッチン】 

482 名前:シエル ◆kcbhGUILTY :2006/11/25(土) 23:59:18

>441

「さて……」

思わず呟いたら、口の中に血の味が広がった。
今更ではあるものの、良い気分ではない。
それに、この味は記憶を嫌が応にも引きずり出すから嫌いだ。

――――取り敢えず、加減すればいきなり墜落もないですよね。

第七聖典は一旦置いて、黒鍵を一振り。
適当なパイプを纏めて数本、制御用と思しきコードの類も一束同じく切断した。

――――これで思惑通りに行ってくれれば良いんですが。


【最上部:主機関周りをちょっと破壊】

483 名前:& ◆r27F715Zes :2006/11/26(日) 00:00:03

「やれやれ、情報収集も楽ではありません。
このような化け物どもの相手をしなければならないとは…。
邪魔です。」
左手で聖書を読みながら、右手の手刀で近づくグールを八つ裂きにしながら、ゆっくりと歩み進む。
そして、客室のドアを開けて客室回廊へと出る。

「ほほう、この飛行船一面血だらけですね。
どうやら祭り好きな方が多いようだ…。
できるだけ係わり合いにはなりたくないものです、できるだけ、ね…。」
【現在位置:客室回廊】

484 名前:リゾット・ネエロ(M):2006/11/26(日) 00:00:34

>>455 >413
「ち、あの女の仲間か!」
 リゾットは毒づいた、あの時完全に気配を消していたのにも拘らず
 あの女は確かに彼の存在に気づいた。奴もまた同じ能力者…?
「…どうする、二階へとむかうか、それともこの場で始末するか…」

 そして、「…感づかれる前に始末する!」
 完全に気配を消し男の側面に回る。幸い奴はタキシードの方に意識が
 いっている、チャンスだ。メタリカの能力、それは磁力線により血液中
 の鉄分を金属製品に換えて排出、酸素欠乏を起こす。

 15m・14・13・12・11…射程距離内!
「メタリカ!!」

【展望台1F パーティールーム】

485 名前:レミア・シルヴェスタW世 ◆MVlNEREMIA :2006/11/26(日) 00:01:08

>>472
突進してきた。
放った直後、かわす体勢が取れない。

「―――――――――っ!?」

腹がえぐられれた。これだけならまだ反撃の余地がある。
しかしその後男は私の内臓を爆破した。

体が宙に浮き、倉庫の壁にぶつかる。
ここまで酷い外傷だと、回復に時間がかかる。

「クッ…油断…したわね」

目の前の男が転送する、客室乗務員とともに。

何とか立てるが、傷が酷い。
再生するまで少し時間がかかりそうだった。

【現在地:倉庫】

486 名前:& ◆r27F715Zes :2006/11/26(日) 00:01:50

名前が出ていなかったようです。

487 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2006/11/26(日) 00:01:51

>>446 フランドール
>>469 ふみこ

『アレだ。アレは我々にも敵にも等しく敵対するものだ。私と友軍機は、これよりアレの迎撃
 に向かう。邪魔はしないで貰いたい』

「アレか。ったく。どんな機動兵器かと思えば、女の子ときたか。バカと冗談が総動員だわ」
 舌打ちして操縦桿を引く。角度を合わせ、機体針路上に破壊魔少女を捉える。

「あー。心が痛むわ」

 射程内。オープンファイア。
 スラグフライヤーに装備された火器が一斉に火を噴いた。
 機体下部から発射された短距離ミサイルを筆頭に、二門のバルカン砲が唸りを上げて鉄火を吐き出す。
 曳光弾交じりの銃火が南極の空を焼き裂いた。

【現在地:飛行船周辺空域にて交戦中】

488 名前:ホムンクルス・金城(M) ◆TOKiKoStGs :2006/11/26(日) 00:01:53

>>464 (大尉)

畳三畳の大きさは必要なかった。
ただ、一発で充分だった。

一発の弾丸は、平手をあっさり打ち砕き、
その先の金城の胴体の6割ほどをあっさり抉り取り、
それをかばおうとした左手の肘から先をも肉塊へと変える。



だが、それでも金城は生きていた。


「ヒャッハァ!」

奇声と共に、ばね仕掛けの人形のように立ち上がる金城。
その胴体は見事に半円状に抉られ、そこからは血が流れている。
だが、ホムンクルスにとってそれは致命傷ではない。

「そう! 致命傷でなければ俺は戦える!
 だがまずは褒めてやるぜ、あの錬金戦団最強クラスの戦士ですら、
 この俺を倒すには実に百発の拳を必要としたってのによ!!」

その百発の間、一撃も反撃できなかったことは無論言わない。

「今は俺の拳も指一本のみ――だが、指一本あれば充分!
 必殺、ブロブティンナグフィンガアアアアアッ!」

指一本を軸に高速回転。
それはそう、巨大な――削岩機ドリル
そのドリルを、金城は

「今日は勝負を預けてやるぜ!
 また会おうぜ、軍人さんよぉっ!」

隔壁にブチ当てた。
頑丈な飛行船の隔壁も、武装錬金の前には紙切れ同然。
次々と鋼鉄の壁には穴があき、人一人が逃げ出せるほどの広さとなる。
その大穴から金城は飛び出し、

「しまったあああっ!
 ここ、空の上だったああああっ!」

一直線に落下していった。





ホムンクルス、金城。
その数多い弱点のうち、もっとも巨大な弱点は、


バカなことである。




「ヒィィィイヤッホオオオオオオオオオオオオオッ!!」

エコーと共に落ちていく彼のその先は、まだ誰も知らない。
誰も知りたくもない。


<現在位置:パーティルーム→空>
【ホムンクルス金城:退場】

489 名前:フュンフ ◆HPv8dyzZiE :2006/11/26(日) 00:02:00

>>470
 フィアが死んだ。
 その場合、指揮権はフュンフに移る。
 それが彼女たちの間で交わされた約束。
 だが、しかし、

 フュンフはブルーノの死体を眺めながら、上手く隠れたな、と思った。
 だが、あれでは良い的だ。

「銃構え。う……!」

 彼女は、命令を最後まで下せなかった。
 フュンフは飛来するガーゴイルの死体を冷静に避けると、改めて照準を合わせるために
鳥女に目を向け

「がっ!?」

 フュンフの喉笛から、血が噴出していた。
 彼女が、一瞬にして詰め寄ったミスティアが、その白い喉元に向けて鍵爪を振るったのだ、
と理解したのは、使い魔たちが撃つ弾の、ちょうど三発目が身体を貫いた時だった。
 それが身体を貫通した時、フュンフは考えるのをやめた。
 正確には、彼女はもう、考える為の頭を持たなかった――文字通りの意味で。

 残されたゼクスとズィーベンは戸惑った。
 フィアが死に、フュンフが死ぬまでの間は約2秒にも満たない。
 指揮権はゼクスが受け継ぐ予定だったのだが、余りにも早い指揮権の交代に、彼女た
ちはついていけなかったのだ。

 弾幕をかわすものの、それで精一杯。
 巧みに弾幕をかわしていたゼクスが、脇から高速で近づいてきた鳥女の鍵爪に貫かれる
様を、ズィーベンは見た。

 次は自分の晩だ。
 そう思うと、彼女は得体の知れない寒気に襲われた。
 それが、フィアが死に際に感じたものだと言う事は、彼女は知る由も無かった。

(フュンフ、ゼクス死亡)
【周辺空域】

490 名前:龍崎駆音 ◆1Jcr/Y7RhE :2006/11/26(日) 00:02:31

−幾つもの争いを見つめる黒服の男−

もっと戦うがいい・・お前達の血がこの世界に彩りを与える・・フフフ

491 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/26(日) 00:03:03

>>465

>「……そこでじっとしてろ。動くと身体に触る」

 レイオットさんの優しい言葉に、はい、と返事したつもりでしたが、血の混じった喉からはこじれた風邪のような
くぐもった音しか出ませんでした。痛みに耐えかねたわたしは……神聖語を唱え、ファリス様に癒しの助力を請いました。
……先刻よりはマシになりましたが、それでも痛みはひっきりなしにわたしの腹部をさいなみます。

 それに何より、痛み以上に……彼の『目』の恐ろしい威圧感が、わたしの脳裏から離れません。
 レイオットさんも、常人にはない、わたしが見たこともないような強烈な技を繰り出していますが……それでも、
彼一人であの恐るべき大尉に勝てるとは、到底思えませんでした。

 次は、わたし。
 今度は、確実に殺される。

 二人の戦闘の最中、大尉の視線が一瞬、こちらを捉えました。

「う……ああ……いや……」
『イリーナ!』

 恐怖と絶望にさいなまれ、涙すら浮かべていたわたしの耳に……次の瞬間、意外な声が響きました。

【イリーナ・フォウリー:現在地:パーティールーム……の片隅】

492 名前:大尉:2006/11/26(日) 00:03:21

>>444 (イリーナ・フォウリー)
>>465 (レイオット・スタインバーグ)

 男はパーティールームで数少ない生存者だった。

「ひぃぃぃぃ……」

 男は既に小便を済ませていた……床に水溜りが出来ているが。

「……主よ、救いたまえ…」

 男は今神様にお祈りをしていた。

「助けて、助けて、誰か……」

 男は部屋の隅でガタガタ震えて命乞いをしていた。




 部屋の中心近くに居る軍服の男に疾風の様な速度で鎧を着た男が向かっていく。

「あ?」

 そして、軍服の男が部屋の中心からふっと消えた――――それが男の最後の記憶だった。


 べちゃっと男の顔が軍靴に踏み潰される。
 脳髄を撒き散らしながら男の頭は飛散する、そこから飛び散る目玉には…当然男は
 知覚なんて出来てなかったが…その網膜に焼きついていた光景、それは……



 ――――軍服の男の異形の銃、メーターモーゼルの銃口が鎧の男に向けられている光景


 直後、乾いた花火の音がパーティールームに木霊したが、その音を哀れな男の聴覚が認識する事はなかった。

493 名前:ケイト・コナー ◆g6orsKate. :2006/11/26(日) 00:04:59

「私ね、カリフォルニアのサン・ディアブロから来たの。家には娘と息子がいて、娘は14
歳でちょうどアナタくらい。息子はまだ2歳。夫は今選挙運動の真っ最中。今頃、スマイ
ル浮かべて挨拶周りかしら?……大丈夫、大丈夫だから」

 通路は障害物だらけ。散乱しているのは人間のパーツだったり、グール共の死体だっ
たり。老若男女、赤ちゃんの死体を目にしたときから私は何を言っているのか自分でも
分からなくなっていた。
 もがく少年を押さえつけながら通路を駆けている。くそっ! このフカフカは走りにくくて
仕方ないわよ。今度カーペットを取り替えるときは、こういうのは絶対ダメね。あ、でもそ
んなお金元々ない……ああ、そうじゃないそうじゃない!!


>>460
>・・・これはこれは。少しばかり黙っていて貰えないだろうかね?

 あ……目の前の上層階へと続く階段には、1人の軍人が立ちふさがっていた。
 服には返り血、口元にも。上はカジノなどがあるはずだが、ざわめきも悲鳴も聞こえて
はこない。そして何より、この吐き気を催す特有の匂い。

 私は迷うことなく、最期の聖水を軍人、ヴァンパイアへと投げつけた。
 お願い効いて!!

【現在位置:客室から展望室3Fへの階段】


494 名前:タバサ ◆3VTTABASAI :2006/11/26(日) 00:05:00

>>475
 頭の中に、直接声が響く。彼の念話か。微妙にノイズが混じっているような気が
するのは、彼の雑念が混ざっているからだろう。
「厄介なモノ? 貴殿にもそのようなものがあったとは……良いことを知りました。
さておき、その『厄介なモノ』というのは、どちらに?」
 手にしたトランクを開け、拳大の水晶球を一つ取り出す。
『厄介なモノ』が何か分からない以上、用心に越したことはない。

【現在位置:客室エリアの回廊、ハンスと念話中】

495 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/26(日) 00:10:58

>>450 >>476

 『アンタはあたしの敵なのか? はっきりさせようぜ』

 「俺は――――」

 言葉に詰まる。
 そういう事はあまり考えていなかった。
 唯、目の前にある障害を取り除くのに精一杯で。

 『それとあたしが質問してる時に茶々入れんじゃねぇ』

 女の手が飛んできたナイフを打ち落とした。
 狙いは俺の左目だった。それを弾いたって事は、必ずしも女は赤ジャケの味方じゃない。
 どっちか決めあぐねているのか――――俺の一言で全てが決まるとでもいうのか。

 「俺は――――」

 しかし、判らない。
 俺は誰の味方なのか――――誰の、敵なのか。

 「……よく判らない。敵とか味方とか、俺が決めてきた訳じゃないし」

 仕事の邪魔だったから倒した。そのぐらいの感覚だった。
 邪魔する奴は撃ったけど、今まで明確な殺意があった事はあまりない。

 尤もそれは――――ある特定の場所の出身者を除いて、だが。

 「まぁ、少なくとも……最初は、アンタの敵じゃなかった積もりなんだけど」

 言いながら走り出す。狙いは女の肩――――を通り過ぎてあのバケモノ。
 眼球を再生させるなんて真似をするぐらいだから、もう間違いなく人間じゃない。

 「取り敢えず、テメエは俺の味方にゃならねえんだよ――――!」

 キレイに狙いをつけてベレッタを撃ちながら、思い切りジャンプ。
 そのまま両足でドロップキックを叩き込む――――!

 【客室、ビリーに突っ掛かる】

496 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/26(日) 00:11:03

>>491

『イリーナ! おい、イリーナ! 寝てんのか! 返事をしろ!』

 現実逃避しかかっていたわたしの意識を揺り戻したのは、聞き慣れた幼馴染の声でした。
 え? でもヒース兄さんがどうして……? あ、ひょっとして、今までのは悪い夢か何かで、
朝起きたらいつも通り「青い小鳩亭」のベッドの上だった……とかそういうオチなんじゃ?

 そんな考えが脳裏をよぎりましたが、目の前の風景は何も変わっていません。
 そう。ヒース兄さんの声だけが……わたしに起こった変化であり、希望でした。

「え……ヒース兄さん……の声? どーして?」
『馬鹿野郎! お前にもしもの時のために通話の護符を渡しておいたろーが!
 時間になってもお前だけ、船に現れなかったんだぞ! どこで油売ってやがる!?』

 ヒース兄さんの声には苛立ちが混じっていましたが、相当に切羽詰った様子でした。

「あう……わたしの方から呼びかけても、何も起きなかったのに……」
『イリーナ。お前、使う時にちゃんと合言葉唱えたか?』
「…………あ」

 我ながら……こりゃまた、とんだうっかりさんです。

【イリーナ・フォウリー:現在地:パーティールーム……の片隅】

497 名前:ヴァルトラウテ/タッツェルヴルム ◆SoRDENIEpc :2006/11/26(日) 00:11:43


 >>484 >>467 リゾット コダマ

 声もなく、その男の手は手刀を形作る。
 巨大な砲身の如き腕を、くるくると舞う様に避けてみせると、傍らの屍食鬼共の残骸、積み
重なったそれをしなやかな動きで蹴り飛ばしてくる。

 それを拳で迎え撃とうと

「タッツェルヴルム! 六時方向、距離3m」
「ぬ……ぅ!?」

 ぎし、と体の動きが鈍る。
 タッツェルヴルムやヴァルトラウテ――彼等自動歩兵バトルシュカ・ゾルデンに流れるのは血液ではない。
 だが体組織の大部分を機械化しているために、その影響から逃れられない。

 タッツェルヴルムは吼える。
 飛来する残骸、背後からの不明な攻撃。
 両の腕を風車と回し、右の拳で屍骸を迎え撃ちながら、左上腕部の兵装を展開。
 二〇mmの銃口が三つながら、指示のあった場所へと火を吹いた。

 【場所:展望台1F、パーティルーム コダマに接触・リゾットに不意打ち】
 

498 名前:&amp:2006/11/26(日) 00:12:50

>>472
(部屋を出ようとしたが、突然現れた二人に驚いた様子で)
「おっと、びっくりしましたよ…。
ところで、あなた方は何者ですか?
突然現れたので、さすがにびっくりしましたよ…。」

(聖書を手から離さず、それを開けたまま右手に持っている)

499 名前:ゲーニッツ:2006/11/26(日) 00:13:48

やれやれ、名前が出ないのでこれで行きます。

500 名前:『紅い悪魔』レミリア・スカーレット ◆remyaGVniw :2006/11/26(日) 00:15:11

>>481
VSグルマルキン・フォン・シュティーベル

>「これも通用しないというのか……」
そうグルマルキンが呟いたのは果たして私への賞賛か、はたまた
これほどのしつこさに呆れを通り越しているのかは知らないが―――

「…そうね、でも私としては出来ればこんな小賢しい真似はしたくなかったんだけどね……。
でも…そろそろ決着をつけましょう―――」

本当は私はスペルカードを使用したかったのだが…しかし私のスペルは予想以上に強力なのを
私自身は知っていて…もしそれを使ったならば―――この飛行船に多大な被害をもたらせてしまうだろう…。
しかもこの飛行船の内部にはパチェ達がいる。それを考えると、私は供を危険にさらさせてまで使う気にはなれなかった…。

そしてまたグルマルキンがサーベルで私目掛けて切りかかってきた。
それを私はその攻撃をかわして反撃に躍り出よう…としたが、

ザシュッ―――!!

「……ぐはぁ……」

しかし、またもやマントから今度は―――無数の鋭利な爪が姿を現し、
私はその爪によって身体を引き裂かれてしまった。

少なくとも私はこの戦い……おそらくは私が負けるであろう―――とは思ってはいたが
…まさか本当にその通りになるなんてね…。

それからまだ身体が再生しきれていない私の元に―――グルマルキンが私の傍にやってきた。

【キッチン;レミリア、グルマルキンとの戦闘で重傷を負う】

501 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus :2006/11/26(日) 00:15:50

>>477

この状況でも、辛うじてその動きは捉えられた。
つまり、それ程に苛烈な動。
正しく炎のような、攻めへの転換。

「っ――――!」

銃声。
ドアを閉じていなかった客室の中に、倒れこむように身を躍らせる。
左肩を、脇腹を、首筋を、銃弾が掠めていった。
最後の一発が、握っていた鞭を弾く。

――く、

拘っている暇はない。
当然後に続く一撃が来る――――

ひとまず諦め、床を転がって何かにぶつかる。
掴んだそれを、銃弾の来た方に放り投げた。


【中層部:無人だった客室で交戦中】

502 名前:ヴァーミリオン・CD・ヘイズ ◆/CD/iS.AAU :2006/11/26(日) 00:17:28

>>445 >>474


銃声とともに吹っ飛ぶ金髪の男。
同時に、「どこからともなく」爆発が起こり、その背中を大きく焼かれる。
即座にI-ブレインが熱源の出所を解析、そして―――有り得ない結果をはじき出す。

熱源は―――誰あろう、ヘイズが声をかけた少女からのもの。
一瞬遅れて、少女からの返答が耳に届く。

「そうでもないし、逃げるのはあまり趣味じゃないの。昔散々したから」

その外見からは全く想像のつく余地のない、無感動な、枯れた声音。
更にI-ブレインの解析は続く。
自ら行った情報解体以外に、情報の改変が行われた形跡は、無し。
つまり、彼女が発射した火球のメカニズムは、『魔法士』の能力とは、別物だ。
この純然たる事実が意味するものは、彼女が、それこそ本物の―――

(魔法、使いだってのか? 吸血鬼といい、ゾンビといい…もう、なんでもありだな)

苦笑しながら思う。
この世界が実の所、科学のみでは解明できない事実に溢れていると言うのは、
既に理解するところではあったが、さすがにここまで来ると、ヘイズも力なく笑うしかない。


「ふざけるナァァァァァァぁぁぁァァ貴ィ様らアァァァァァァァッッッ!!」

次に響くのは、男の絶叫。
開いた片手の袖口から短銃を引き出し、ヘイズにではなく、「魔女」に向けて特攻をかける。
自ら名乗った「吸血鬼」の伝承そのままに、常人離れした速度で。

ヘイズは、即座にI-ブレインの稼働率を再び引き上げる。
演算で予め導き出していた男の突進の軌道、その延長線上。
「魔女」の1メートル手前に向けて、遠くから右手を翳す。

(予測演算成功。「破砕の領域Erase Circle」展開準備完了)

高らかに、親指と中指を打ち鳴らした。

同時に狙い通りの場所に展開する、領域内の全てを原始の塵に帰す、情報解体の領域。


そう、彼女が本物の「魔女」であるかどうかなど、ヘイズには何の関係もない。
ただ、目の前で襲撃を受けた彼女の事を、放って置く理由は、なかった。


(現在位置:中層部・回廊)


503 名前:コーディー:2006/11/26(日) 00:18:10

>>485
…虚空の最中 後ろで呻いてる女
致命傷なのに立てるその様は、コイツもか――と思わせる異様ぶり。
人間じゃないのは良く分かる。

「…ま、人だろうがそうでなかろうが痛み有るから生き物なんだろうなぁ。

――生きてるか?」

レミアに手を差し伸べながら…先程の熱い熱が去り、冷えた心がまた戻る。
熱くするにゃ、祭りで散らすしか――
そう、上から聞こえる数多の騒音を聞きながら感じていた

「…上手く力が収まらねぇや、熱い匂いばかりでさ」

【現在位置 下層部倉庫 レミアを介抱中? 飛竜と一時的遭遇】


504 名前:飛竜 ◆HIRYUmxRKo :2006/11/26(日) 00:18:22

>>478
 囚人服の男の発した言葉に、立ち止まる。
「――メトロシティのコーディーか。残念だが、俺は貴様の知っている武神流の男ではない」
 メトロシティ。かつて任務で赴く予定だった都市。
 もっとも、その任務はなくなったが。だが――今考えるべきことは、そんなことではない。
「貴様はここで何をしている。返答次第では、貴様を斬る」
 腰を落とし、光剣のグリップを握る。

【現在位置:下層部倉庫、コーディーと対話中】

505 名前:麻宮アテナ:2006/11/26(日) 00:18:43

>>453
 第4の闖入者!? もうこうなったらラッキーデーの自分を信じるしかありません。
味方でありますようにありますように。

「この人は悪い人です! 手伝ってくださいー!」

>>472
 一撃が当たる、近接戦闘では有利?

『まずはお前からだ!!』

 襟を取られました。柔術かと思った直後、予期しない、でも慣れた感触。
テレポート……同意しない知的生命体を一緒に、というのは相当に厳しいはずなのですが……!
平時と違う空間での一瞬、そんなことを考えたら目の前には。

>>498
「げ、げーに……」

 言葉が続きません。よく知っている顔。
もう見ることはないと思っていた顔。

「……い、生きてたんですか」

 天へ還るとか言ってたのに。それともまさか「天」っていう地名がどこかにあるとか。
落ち着いて、麻宮アテナ。死んだ人がまた出てくるくらいなんなの?
そもそも事態の始まりが死んだ帝国の亡霊たち、今更驚くことなんてない。でも。

「……でもなぜ、そしてどうやってここへ? ゲーニッツさん」

 だれですか今日がラッキーデーなんて言ってたのは。

<現在位置:客室>

506 名前:パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU :2006/11/26(日) 00:19:00


>>271 >>277 >>301 >>315 >>331 >>349 >>334 >>366 >>393 >>430 >>432
>>445 >>474

「敵だからね、貴方は」

それはどの問いへの解であったのか。

「敵に容赦はしないの、レミィの流儀でね……っと」

安穏としてはいられないようだ。暴風のようにこちらに向かってくる吸血鬼に、
手元から札を「2枚」取り出して応じる。
札が謳う。札が謳う。魔女が唄う。

『Wood been fruit,fruit been sweet、果実は』
『Ore been Saw,Saw been hew、刃によりて』
「収穫される」

『Ore beat Wood,Hew eat sweet』
「金木符」

暴風が少女を引きずり倒そうとする、まさにその、瞬間だった、

「レミィと同じ種族なら……せめて、残酷に」
『エレメンタルハーベスター』

暴風に喰いつくかのように、回転のこぎりの群れがあらわれたのは。

[現在地:回廊]

507 名前:エアハルト・フォン・ラインダース ◆CnAdcTa152 :2006/11/26(日) 00:20:12

>>468 ふみこ

 標的に一掃射を加えた後、引き起こしをかけて急上昇。
離脱行動へと移る。
手応えはあったが、撃墜は未確認。 再攻撃をかけるか?

「こちら…オゼット・…シュタイン中尉…。今すぐ攻撃…停止せよ。あれは友軍……
今だけ…な。我々……敵は…だ。見ろ、上……。そこに……が飛んで…見え……」


 無線機が拾ったノイズだらけのコール。
波長は正式な我が軍の周波数帯だが、ノイズが酷い。
聞き取れた内容を総合すると、上空にいる敵機を優先して撃墜せよということらしいが……

 続いて目にした光景を、何と言えばよいのだろう。
視界を横切る一条の光。 照らし出されるのは箒に乗った魔女。
そして光が指し示した先にいるのは……なんということだ。
幼い女児が空を飛び、笑っている。
 私は悪夢の世界に迷い込んでしまったのか?

「…だ。アレは我々…も敵にも等し…敵対………。私と友軍機…、
……アレの迎撃に……。邪魔…しない…貰い………」

 放心状態にあった私を我に帰らせたのは、再び無線機が拾ったオゼット中尉の声だった。
同時にキャノピー側面を、目標とされた少女の放った光弾が掠めて行く。
どうやらこの悪夢の世界においても、敵、味方というものは存在するらしい。

「こちらラインダース大尉! オゼット中尉へ! ジーガー(了解)!」

 無線機に向かって叫ぶと同時に、機体後部から信号弾を打ち上げる。
色は白。 ドイツ軍ではこの色は味方を意味する。
彼女がルフトヴァッフェの一員であるなら、わかるはずだ。

 それだけやると、私はTa152を上空へと向かわせた。
何処に攻撃をかけるにせよ、まずは上方を占位する必要がある。


【現在位置;周辺空域 悪夢的光景に衝撃を受けつつ上空へと離脱中】

508 名前:コダマ ◆K3dMKODAMA :2006/11/26(日) 00:20:54

>>497
―――いい反応だ。機械もなかなか侮れない。
コダマは引っ切り無しにグールをボール代わりにしたサーブを続ける。
迎えうつ男―――タッツェルヴルムと言うらしい―――は、拳で残骸を叩き落とし、時には打ち返してくる。


>>484
瞬間。
「メタリカッ!!」
何者かの声が響き、タッツェルヴルムの動きが鈍る。

―――修正しよう。機械には機械の弱点があるらしい。
コダマは一気に間合いを詰めるための助走を始める。

同時に、背後の空間が銃声とともに砕かれ始めた。

【現在位置:パーティールーム】

509 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2006/11/26(日) 00:21:05

>>479 >>487(虎蔵、エリ)


 風と雨が夜に来る。
 炎と光が星に舞う。
 無数の矢と弾と炎が、私へと向かってくる。
 炎は私へと弧を描きながら襲い掛かる。
 矢は私を狙っているけど、あちこちにばらけている。
 弾は―――速く鋭く私を狙っている。

 綺麗。まるで―――花火のよう。
 これは私も負けていられない。
 とりあえず、かわしてあげよう。誰よりも素敵に踊ろう!!

「あはは、あはははははははははははははははっ!!」

 私は身を翻らせて、迫り来る弾幕に飛び込んだ。
 一瞬前までいた場所に弾が殺到する。
 いくつかはかすめて服を破くが、気にも留めない。

 だって、そんなことより―――今この瞬間が一番楽しいのだから!

 身体をよじって燃え上がる弾を外す。
 雨のように注ぐ矢は払い除け―――少し刺さって痛い。
 さて炎の塊―――は実は鉄の塊だった。
 当たると痛そうだ。
 よし壊そう。
 全ての目は、私の手の中に。

「どかーん!!」

 それを、ちょっとつつく。
 それだけで、鉄の塊は紅い華を咲かせた。
 凄い音がする。壊して良かったかも知れない。当たってたらパーティは終わりだ。
 ぱらぱらと風に流れていく炎と煙をたなびかせながら、私は大きく高度を取った。
 空へ。高く。もっと高く。
 月を背に、世界そのものを見下ろせるように。
 ―――あちこちで閃く光。まるで地上に生まれた星のよう。
 その中で、帯を引いて私に近づいてくるものは……。

「……素敵。こんなに来てくれたんだ」

 そう、いよいよ舞踏会のクライマックスがやってきた。
 だから、私もそれに相応しいスペルで迎え撃つ。
 何よりも美しく、しかし飛行船には当てないように繊細に。
 私は狙いを定めた。

「いくよっ」

 杖を呼ぶ。式そのものを顕現させる。
 月を背に杖で円を描けば、星と光が私に従う。
 ―――せーの。

「スターボウブレイク!!」

 しゃあああああん……。
 硝子を砕いたような、綺麗な音が響く。
 私の背後で生まれていた星の帯が砕けて、地上へと降り注いでいく。
 その一欠けら一欠けらが全て、力ある虹色の魔力へと転じ、破壊をもたらす。

 かくして、世界一大きな飛行船は世界一大きな虹で祝福されることになったのでした。


【周辺宙域:月を背に全体攻撃】

510 名前:夜雀の怪『ミスティア・ローレライ』 ◆8hOOMYSTIA :2006/11/26(日) 00:21:12

>>470
旨い。
流れ来むこれは、極上の、初雪を踏みにじるような。

「あとふたつー」

鞠のように頭が彼方へと飛ぶ。
人形のようにさえ見えた魔女達が、戸惑うかのように受けているであろう感情。

「後がないよー」

仲間の死に結局は動揺し、弾幕に気を取られる魔女の心臓をえぐり取る。
はやにえの様に爪に刺さったそれを、スナックのように口に運ぶ。

「はーい、ダスエンデー」

おそらくは彼女らが感じた最初で最後の、恐怖。
目の前で生み出した背丈ほどもある妖気の固まりを放ち、ミスティアは興味を引くモノを探して離れた。


【周辺空域を移動中】

511 名前:ビリー・龍 ◆D727Bb9L.2 :2006/11/26(日) 00:22:08

>>476
 アァ、風向きが変わってきた。
 女心は秋の空たぁ言うが、ころころ変わりすぎだぜぇ?

 ま、しょーがないか。
 所詮は化け物と人間との仲は長続きしない。
 古来よりのお約束ってものだ。

>>495
 俺はひょいと、その弾丸を避けた。
 まー種を明かせば、銃撃のクセとタイミングを見て、瞬間に射線を外しただけだが。
 持ちネタの中じゃそれなりに受けがとれるほうだ。

 ほ! 飛び蹴りとは威勢がいいな!
 受け、サイドに捌く。横に流れたその踵を捉え――
 悪い癖だ、遊びたくなる。
 俺はちらっと流し目を>>476にくれてやった。そうして、にやりと笑う。

 ニヤリと笑い、右手でヤツの体を振り回し、床に叩き付けた。

(客室エリア)

512 名前:sage:sage

sage

513 名前:リザ・ワイルドマン:2006/11/26(日) 00:23:13

>>345 >>395 >>406 >>442 >>433 >>442
>>458 >>480

(出遅れてゴメン!!)

 今、自分を襲っている状況をなんと表現すれば良いのだろうか。ほんのつい
数十分前までこのパーティールームは各国から乗り合わせた政財界の重鎮達や
観光客、そして乗組員による煌びやかなパーティが行なわれていた。現代の
技術の結晶で作られた飛行船でのパーティー。安全性は勿論、防犯も完璧、な
筈だった。それに沢山の笑顔と感動があった筈だったのに。突然不気味な、声が
船内に響き渡った直後、パーティールームは赤い地獄と化した。
 こういうのを正に天地がひっくり返るというのかもしれない。まあ兎も角。

肉やら野菜やらをがっついていた白いテーブルの下に反射的に潜り込んだのは
正解だったようだ。悲鳴、怒号、絶叫そして何か銃声やらまで響きあっという間に
赤よりも赫く染まってゆく中でそこだけは奇跡的に無事だったのだ。

そして今、テーブルクロスの下から外をのぞき込み、二人の少女の闘いを
見守っている。

「なんなんだよあいつ等…」

 リザは呟く。赤く染められたパーティールームを舞う二人の少女
片方は顔に傷を持ち足に四本の刃を纏う。一方彼女と戦うのは黒い
外套を羽織う茶色の瞳と透き通るような白い肌の少女。

 二人の戦いはさらに激しさを増してゆく。その闘いの最中、そう理性の
面では判っていた。この闘いに関わるのは危険であると。しかし、しかしである。
 ある臭いが、彼女の鼻を通して彼女のもう一つの血を――――人狼の血をを
騒ぎ立てる。

「間違いない…これは”あの臭い”だ…あたしの大嫌いな…」

再びテーブルクロスの中に頭を引っ込める。二人はこちらには気づいては
居なかった。だがやはり今ここで動くのは極めてまずい。静かになるまで
待つのが上策だろう。

 しかし、彼女の血はこの場において無意識の内にある”音”を出してしまっていた。
すなわち―――――


「グルルルルル……!!」


狼の唸りを。

<現在位置:パーティルームの一角。テーブルクロスの下に隠れている>

514 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/26(日) 00:24:26

>>491>>496

 絶望的な状況に置かれ、トラブルのごった煮に巻き込まれた経緯を、わたしは混乱しながらも
かいつまんでヒース兄さんに説明しました。

『イリーナ。そこからどうにかして脱出できるか?』
「そんなの、分かんないよ……この船、すごく高い所を飛んでるし……落ちたら、きっと助からない。
 船の中も化け物でいっぱいだし……わたし独りじゃ、生きて帰ることなんて……」
『しっかりしろ、イリーナ! 希望を捨てるなッ!
 簡単に諦めるんじゃねえ! そんなだから普段脳みそ筋肉言われるんだぞこの鉄塊がッ!』

 いつもはおちゃらけているヒース兄さんが、鬼気迫る真剣な口調でわたしを叱咤しました。
 口汚く罵られているというのに、何故かその言葉がわたしに勇気を与えてくれている、そんな気がします。

『いいかイリーナ。ひとついい事を教えてやろう。
 依頼の説明した時、俺さま言ったよな? いつでもお前が完全武装できるよう、あらかじめ船の客室の中に
 お前の装備を運んでおく手筈になってる、と』
「う、うん。だけど……この船は……」
『それがだな。さっき仲間で手分けして俺たちの乗っている船を捜しまくったが、お前さんの装備は
 どこにも見当たらなかった』
「…………え?」
『運搬を頼んだ連中は、確かに運び込んだと証言している。もしかしたらイリーナ。お前と一緒に……
 お前の装備もそっちの船の中に転がっている可能性がある! そいつを探すんだ!』

 ヒース兄さんの言葉は、当てずっぽうの苦し紛れのホラだったのかもしれません。
 本当はわたしの装備をすでに見つけているのに、わたしに希望を与えるために言っているのかもしれません。
 でもそれでも……ヒース兄さんがわたしを心底気遣って、励まして、生きるための希望を作ってくれようと
している……その気持ちは理解できました。

 泣いている場合じゃありません。
 絶望して、悲劇のヒロインなんて気取っている場合じゃありません。
 今必死で戦ってくれている、レイオットさんを助けないと。

 わたしは涙をぬぐい、意を決して駆け出しました。

【イリーナ・フォウリー:現在地:パーティールーム→客室を目指して移動】

515 名前:ジェームズ・ホワン(M) ◆ko.IhfiTmE :2006/11/26(日) 00:24:53

>>505
「クソ…身体が上手く動かネェ」
ARMS移植直後…キースに見栄を張りすぎたか?

だが、こんな外れ仕事で死ぬつもりは…ともかく小娘をどうにか
そういえば…俺は小娘を探す、いた…だが小娘は俺のことなどまるで構わず
目の前の神父をただ唖然とした表情で眺めていた。

<現在位置:客室>

516 名前:ハンス・ヨアヒム・マルセイユ ◆sLAdoLfKkE :2006/11/26(日) 00:26:14

>>494
(言ってくれる。ボクにだって弱みの一つや二つはあるよ。
 ああ、場所は・・・)

頭の中で念じる。
飛行船の内部図は既に頭に叩き込んである。
それを示せば、彼女のことだ、拾ってくれるだろう。

>>493
(・・・早くしてもらわないと、諸共に、かも知れないしね)

目の前の男に宿る「モノ」
それが何かであることに気付いたボクは、心の中で溜息をついた。
・・・聖水なんか効くはずもない。
だって、あれは・・・


ボクと、同じ・・・モノだ。


【場所:客室から展望室3Fへの階段】

517 名前:& ◆VaCJKT0uuY :2006/11/26(日) 00:26:20

>>505
あなたは確か…く…誰でしたか?
思い出せない…。
(頭を抑え、顔をしかめて考え込む)

私のことを知っているようですが、私はあなたをどこかで…。
…まあ、いいでしょう。
死ぬ前のことなど、今の私には関係のないことです。
(聖書をポンと閉じて、懐にしまう)

さてと、私にはまだ仕事がありますので…。
これで別の場所に行かせてもらいましょうか…。
(再び客室から出ようとする)

518 名前:Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA :2006/11/26(日) 00:26:30

>>491>>492

 視界から、奴が消えた。

「……っ!?」

 そして、繰り出された拳は虚空を叩き、何もない床が無意味に砕け散る。
 加速された知覚ですら、欠片も捕らえられないような驚異的な身体能力。

 ぞっとする――つまりそれは、いままでやり合ってきたどんな化け物よりも、厄介だという事実に他なら
なかったからだ。

(止まったら――殺られる?)

 それは確信だった。事実――呆然と動きを止めたこちらに対し、それだけでも十分に人を殺しうるほどの、
濃厚な殺気が叩き付けられている……!

 振り向いたのは、ほとんど反射に近い。
 だが、俺が見た光景は

「…………!?」

 まるで、冗談そのものだった。
 乗客のひとりを踏み殺しながら、銃をこちらに突きつけている。それはいい。
 問題はその銃だ。なんだ、あの正気とは思えない長銃身は――!

 銃声。
 撃たれた。
 その理解が、硬直した身体を解き放つ。普通ならば、決して避けられない一撃。
 だが――奴が化け物なら、こちらも、時間制限付きとはいえ、まともではなかった。

「お―――おおおっ!」

 回避。間に合わない。だが、とっさの動きが直撃を防いだ。崩した体勢に、銃弾の射角が浅くなる。
 貫通しない。

「ふっ――」

 沈み込んだ身体を、バネのようにはじけさせる。再び、男へと肉薄すべく室内を駆ける。
 本能が叫んでいた。
 距離を取っては、勝ち目がない。ゼロ距離で、魔法を叩き込んでやる必要がある――

 男の懐めがけて、レイオットは爆ぜるように進む。
 下手な回避など許さないほどに――それ自体が一個の銃弾の如く、ただまっすぐに。

【パーティルーム:大尉と交戦中】


519 名前:レミア・シルヴェスタW世 ◆MVlNEREMIA :2006/11/26(日) 00:27:12

>>503
歩こうとしてよろめく。
やはり傷の完治には時間がかかりそうだ。

目の前の囚人服の男が手を差し伸べた。

>「…ま、人だろうがそうでなかろうが痛み有るから生き物なんだろうなぁ。
>――生きてるか?」

「――――数百年前から生き物をやめているわ。
生きているかどうかなんて愚問ね」

手をとって立ち上がる。
―――何年ぶりだろうか、人間の手を握ったのは。

「それより…あいつから目的を聞き出さないと…」

【現在地:格納庫】



520 名前:津村斗貴子 ◆TOKiKoStGs :2006/11/26(日) 00:28:35

>>480(サクラ)

心臓を貫かれた。





そう、一瞬錯覚した。
錯覚。そう、錯覚だ、と斗貴子は言い聞かせる。

身体の一部を持っていかれた感覚。
これは、本来の肉体の損傷ではない。
自分の一部でもある、武装錬金の破壊によるもの。
だが、バルキリースカートは三本とも無事。
と言うことは、

(あいつめ、私の与えたバルキリースカートを利用したのか!)

顔には出さずに歯噛みする。
あれで仕掛けてきたなら、即武装解除して武器を奪う策略だったのが、完全に裏目に出ている。
敵も「練成」――無論どんな方法かは分からない――して、完全に自らの武器として防御したのだ。



そこまでの思考は一瞬。
そして、その思考より早く、身体が、その延長の武装錬金が動く。
今あるバルキリースカートの刃は三本。
そのうち、一本は少女の「武装」に相殺されてすぐには動けない。
だが、残りの二本は瞬時に反応。黒の刃を、銀の刃で受け止める。

それでも、状況は変わらない。
片方が攻め、片方が受ける。
完全な千日手――に見えた。

だが。
それでも斗貴子は叫ぶ。

「駆逐? そんな生ぬるいもののはずがあるか。
 殲滅、虐殺、消滅! それが私に必要な力だ!」


……ここで、あらためて復習しよう。
斗貴子のバルキリースカートは、あくまで「四本」の刃として練成される。
サクラが防御したことで、四本のバルキリースカートの一本は喪われた。
そう、「奪われた」のではなく、完全に「喪われた」のだ。
4−3=1。小学生の数学。
それが意味するものは、


「さよならは言ったはずだ――」

「四本目」を再練成。
目の前の喉元、無防備なそこに目掛け、

「――別れたはずだ!!」

銀の刃が襲い掛かる!


<現在地:パーティルーム サクラと戦闘中>
「さよならは言ったはずだ――」




521 名前:リゾット・ネエロ(M):2006/11/26(日) 00:29:43

>>497
「ち、やばい!」
火を噴く重機関砲、まともに喰らえばお袋さえも分からない姿になるだろう。
否、ミンチだ。しかもメタリカは近距離パワー型ではない、弾を弾くことは
愚か避けるなど到底無理だ…

と同時に、リゾットの体は何かに引っ張られるかのように背後へ飛ぶ。
そのすぐ下を濃密な火線が通過していく。
仕掛けは簡単だ、磁力線で建物の鉄筋に自分の体を逆に引きつけさせたのだ。

ただしそれなりの代償はある、彼は凄まじい勢いでコンクリの壁に激突したのだ
口からは血が溢れるし、肩の辺りで否な音もした。だが鉛のシャワーを体一杯に
受けるよりははるかにましだ。
「何ぃ!メタリカが効かないだと…、奴の体は一体!?」

【場所:展望台1F、パーティルーム 奇襲失敗】

522 名前:大尉ブラッド ◆/Z/IFjxeWc :2006/11/26(日) 00:33:11

>>475>>493
ボトルは手刀で払われ、赤い絨毯の上に破片が舞う。
その衝撃で掛かった本来吸血鬼に効くはずの聖水は、この男の前では意味を成さなかった。

「ふむ、聖水か。何度か体験したことはあるがこんな物では我がウイルスは死なぬよ。」

吸血鬼ウイルス・・・ナチスが秘密裏に研究していた不死身の吸血鬼を作り出すウイルス。
十字架も聖水も、自身が不死の化け物になったという信仰心、罪悪感から来る幻想に過ぎない。
そう言うことを、この男は知っている。

この身体にウイルスを宿したあの日から。
あの男を葬るために化け物になったあの日から。

「元々私は科学者の出でな?信仰心で自らを傷つけるほど、私は馬鹿ではないのだよ。
 しかし、これでは厄介だ。息子共々、すぐ楽にしてやろう・・・」

深いため息をついた後、ブラッドは二人にその毒牙を向けた。
死を畏怖せず、身体の極限までを駆使した、純粋なる怪力、圧倒的な暴力。

【現在位置:客室から展望室3Fへの階段 ケイト&ハンスと交戦開始】

523 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/26(日) 00:34:12


>>500 vsレミリア・スカーレット

 マントの奥から飛び出す、槍衾にも似た無数の爪。容赦なくレミリアの
身体を穿つ。フェイクを交えての二段攻撃とはいえ、やけに呆気ない。
 ―――この女は、私を相手に本気を出すつもりなど更々無いのだ。

 自分の力を畏れていた。
 制御を誤り、船を―――仲間を墜とすことを、何よりも畏れていた。
 このグルマルキンとの勝負よりも、だ。

「哀れだな、レミリア・スカーレット……」

 右手にサーベルを下げたまま、レミリアの下に歩み寄る。
 荒い息/自らの血で染まった頬―――手を伸ばし、愛でるように撫でた。
 そのまま指先は首筋を這い、胸元へ。爪に穿たれた肉へと下がってゆく。
 その疵痕を指で抉った。レミリアの苦痛/グルマルキンの歓喜。

「だが、私はおまえと言う女を侮りはしない。この状態でもなお、貴様は
私を殺しきれる。それだけの力が貴様には秘められている」

 指先についたレミリアの血―――舐め取り、嗤笑する。

「つまり負傷し、僅かでも力が落ちた、いまがチャンスというわけだ」

 右の義眼―――霊視眼が見開かれた。
 レミリアの眼を覗き込む。

「タブラ・スマラグディナ、
 またの名をエメラルド碑板にいう、
 上のごとく、
 下もしかり。
 真理なり。
 いざ、力を―――示せ!」

 グラム・サイトを通してグルマルキンの情報がレミリアに流れ込む。
 束縛の術式をレミリアの体内に刻み込むことで、この強力な器を
制御しようというのだ。

「貴様の意識を奪うことは敵わんが……これは強制的な契約だ、レミリア
・スカーレット。貴様に思考の余地はない―――私に下れ」

【キッチン】

524 名前:ルーク・ヴァレンタイン(M) ◆jBiAWniQ.. :2006/11/26(日) 00:35:36

>>502  >>506

進攻が風を生み、螺旋が回廊を抉る。
ルーク・ヴァレンタインの特攻はもはや愚直だがそれ故に凶悪だ。
しかし彼は知るべきであった。
覚え注意するべきであった、氷の平静を保つべきであった。
己以上の凶悪が今ここに存在するという事実を。


情報の消失という埒外の破壊の到達は、今こそ魔女に食いつかんとするその時。
爪先から腰まで、下半身が完膚なきまでに消失し――――
体勢を崩した彼を待っているのは。
驚愕を恐怖で上塗りする形で待ち構えていたのは。

そう、慈悲なき回転する刃金の群れ。

「吸血鬼、である、この、私が…あ!」

蒼炎による全身の炎上。
それは“役立たず”と彼らに認識された敗北の通告であり烙印。
埋め込まれたマイクロチップは如何なる機構か、ルークの全身を発火させ炎に包む。
彼を刃金の歯車に蹂躙させたまま。


「この、私、がぁ――――」


――――後には敗残者の灰だけが残った。


【ルーク・ヴァレンタイン 回廊にて死亡】
 

525 名前:コーディー:2006/11/26(日) 00:35:39

>>504
「…その街の名前は言うな…」

酷く懐かしく酷く疎ましいあの街。自分の全てを受け入れ、そして否定された街。
何故か今この時あの場所の名前は思い出したくなかった。
…いや、そんな事より何故コイツは俺の名前を知ってる?おろか武神流まで…
その無駄に放つ殺意と手に持つ武器からは、コイツもまたまともな人間じゃない
というのは良く分かった。曰く、熱い血――

「…ハン、見りゃわかんだろ?喧嘩旅行だよ。ハイジャック犯とやら相手に
今は喧嘩祭り真っ最中…悪党退治はとうの昔に卒業した筈だったんだがな

…お前も野郎共の仲間か?

――それとも只の死にたがり?」

そう言いつつ飛竜のグリップを凝視しながら構えた…

【現在位置 下層部倉庫 飛竜と会話中 レミアを介抱?】


526 名前:哀川潤 ◆MzXQXe8zTc :2006/11/26(日) 00:36:06

要は与えるか奪うか。全てはその二択だ。
そしてあたしはその岐路に立っている。最も、結論は既に出ているが――

>>495ハイネ >>511ビリー

>「まぁ、少なくとも……最初は、アンタの敵じゃなかった積もりなんだけど」

「かはは、最高の答えじゃねーか。よくできましたーっと!
 それじゃああたしの答えを教えてやるぜ、両方だ。
 化け物だろうが関係無いね、信じて裏切られる方が好きなんだよ」

やはり可笑しそうに笑い、立ち上がる。

「そーいや訊くの忘れてたぜ、赤ジャケット。
 アンタはあたしの…敵か?」

人間ハイネ化物ビリーの間に、赤き征裁が立つ――

【哀川潤:客室:ビリーの返答待ち。】


527 名前:大尉:2006/11/26(日) 00:36:13

>>491 (イリーナ・フォウリー)
>>518 (レイオット・スタインバーグ)


 『マルメディの悪夢』 ハンス・ギュンシュ

  第二次世界大戦中に敵味方から恐れられたドイツ軍の兵士、階級は大尉
  異形の銃、モーターモーゼルを片手で操り、射殺されたとされる連合軍兵士は軽く三桁を下らない

  極秘部隊の所属とされているが、その部隊の名称は不明、部隊の存在すら疑われている。
  しかし、この男については当時のドイツ軍兵士多数からその活躍を証言されている事から、
  この男の実在は間違いないと思われる。

  戦後A級戦犯として指定されるもその逮捕されたという記録は無く、消息不明

  (連合軍の戦後資料の一部より抜粋)

 それは異常な光景だった。

 視線は常にレイオット・スタインバーグに向けられていた。
 銃口は常にレイオット・スタインバーグに向けられていた。

 そう、常に向けられていた。
 空中に跳躍した時も、天井を蹴った時も、テーブルを破砕しながら部屋を駆け巡っている時も、
 数々の死体が肉片と踏み潰され肉片と化しながら部屋を更に赤黒く染めている時も。

 二人がこの三次元空間のあらゆる座標に位置していても常に視線と銃口は一定のベクトルを向いている。
 変わっているものといえば大尉とレイオットのベクトルの長さである。
 徐々に徐々にその長さが値を小さくしていった。

 <現在地:パーティールーム>

528 名前:ふみこ・O・V ◆HPv8dyzZiE :2006/11/26(日) 00:36:40

>>509
 降り注ぐ星の欠片。
 幻想的な風景。
 男との逢瀬に添えられたならば、そのロマンティックな光景は十分に雰囲気を盛り上げた
だろう。

 だが、降り注がれるふみこにとっては、冗談ではない事態だった。
 降り注ぐ虹色の欠片。その一つ一つが、膨大な魔力を秘めた破壊の結晶なのだ。

「クソガキが」

 ふみこは吐き捨てるように言った。
 実際に、歯を食いしばって、その表情を悔しそうに歪めていた。

――自分を差し置いて、こんな大魔法を行使するとは。
 気に入らない餓鬼だ。絶対に教育してやる!

 ふみこは負けず嫌いな女だった。
 迫る魔力塊をスレスレで避けながら、ふみこは上昇を続けつつ、指示を出す。

「アイン、ツヴァイ、ドライ、聞こえているな。一度安全圏まで散開し、5秒で戻れ。その後
は詠唱開始。あのクソガキの尻に百叩きを食らわせてやれ!」

 通信終了、同時に詠唱を開始。

「清聴せよ!
 アーデラスウードアーデラスウード、邪悪なる暗黒神、美と地獄の王に太古の同盟を持
て要求する。大魔術師シモンの系譜、炎熱の魔女たる我は地獄の炎をもて敵を焼く」

 ふみこが、その身に青いオーラを纏った。
 不意に、周辺の空気が熱くなる。

「完成せよ! 地獄の炎!」

 呪文は完成する。
 同時に、誰も見たことが無いほどの大火が、フランドールどころかその周辺一体を包み
こみ、爆発した。

529 名前:麻宮アテナ:2006/11/26(日) 00:36:50

>>517
『死ぬ前のこと』

 たしかにそういいました。やっぱりこの人はあのとき……。
ううん、この人が生き返った手段なんて今はどうでもいい。
問題なのは……。

「あなたは、ここでなにをしようとしているんですか?」

 ハイジャックさん(>>515)とも慎重に距離を取ります。
生前のゲーニッツさんは牧師さんを名乗っていましたから、
ナチスがどうとかっていう人たちの仲間ではない……と信じたい。でも。

「……え、ええと、お客様に申し上げます。現在室外は大変危険です。
特に御用がないようでしたら、お部屋で事態の好転をお待ちしたほうが良いと思いますが」

<現在位置:客室>

530 名前:ゲーニッツ:2006/11/26(日) 00:38:04

>>517
いえ…、気が変わりました…。
(そう言うと、アテナの方を向き直る)

ここは取引と行きませんか?
私とあなた方には現在、互いに協力者が居ません。
ですから、私とあなた方で組むというわけです。
くくく、どうですか?
(不適な笑みを浮かべ、片手を握手の手として差し出す)

531 名前:イグニス ◆IgnisC3BW6 :2006/11/26(日) 00:38:41

>>501

 この状況でも反応できる。
 流石ではあるが、かといって驚くべき事ではない。
 故に、当然この反撃を規定のもの。判っている反撃ほど恐ろしくないモノもない。
 振り上げた剣の柄で、放り投げられてきた何か――血に濡れたナチの鉄帽――を叩き落とした。

 タイミングをずらして撃ち込んだ銃撃は、全て避けられたようだった。だが、その代償として――
奴の体勢は、これ以上なく崩れている。

 仕留めるのならば――今だ。

「ふっ!」

 呼気を吐き出す。瞬間、床を蹴った私の身体は側面の壁に向かって飛び上がり――さらに、壁面の
凹凸を足場に、さらに跳躍を仕掛けた。

 そのまま剣を逆手に構え、モリガンへと落下する――

【中層:客室にてモリガンと交戦】

532 名前:高木由美江:2006/11/26(日) 00:41:24

>>473>>513 リザ
次の回廊へ、移動を果そうとした今。
───匂う、匂うね。

感が伝えた。

一つの匂いを感ずる。誤魔化せぬ、「人でなし」の雰囲気。
神が創造された幾多の命に属さぬ、認められぬ体を感じる。
人が戦い!人が死に、人がDeadになり、Deadが消える中、人にあらざるものが
片隅で震え上がる夜だとは認められぬ。

「出てきな。…どうする?狂信と共に、地獄の釜で糞塗の中に落ちて
果てるか?このまま消えて事故者として追悼されて、精精天の門で楽隠居かい?」
サンクトゥス(感謝の賛美)=聖なるかな、聖なるかな!を口の端に、
卓の前に超然と、立つ。
【パーティールーム】

533 名前:サクラ ◆6jagu9Uf/. :2006/11/26(日) 00:41:51




(>>395 >>406 >>433 >>442 >>458 >>480 >>519 津村斗貴子)



 ざくり。


 損傷/喪失/欠落。

 I-ブレインがエラーメッセージの列を寄越す一瞬手前、少女のうなじを死神の手が
触った気がした―――それほどに冷たい喪失感。失ってはならないものを失った
感触。生命を駆動させるための最低限のラインを外れてしまったという実感。


「、あ」


 声ならぬ声を上げる。
 それは斬撃を受けた声帯が千切れる最後の音。
 少女の首筋にまっすぐに突き立った四本目の刃は、何よりも雄弁に彼女の最期を
告げていた。
 倒れこむ。

 ―――馬鹿な、

 遅れて、鮮血が飛沫き、少女の白い顔を染める。

 ―――こんなところで、私は潰えるのか、

 徐々に光が失われていく瞳―――最期の力で、目の前に佇む少女の姿を見据える。
 その背後に、

 ―――あ、

 立っていた。

 ―――ああ。

 今までに殺したものたちの幻影。自分が犯してきた罪の幻視。
 男がいた。女がいた。子供がいて老人がいて、そのどれもが血に塗れて、黒く濁った瞳で
黒衣の少女を睥睨していた。言外の糾弾。「ざまを見ろ」言外の糾弾。「これでいいんだ」
言外の糾弾。「お前の手前勝手な正義など」言外の糾弾。「ここで潰えるべきなのだ」
言外の糾弾。「偽善者め」言外の糾弾。「朽ち果てろ」言外の糾弾―――

 ―――ああ、そうか。

 僅かに睫毛を震わせ、少女の命は絶えた。
 それは今際の際、彼女を糾弾する千の葬列の中に―――かつて少女が助けられたなかった
幼き友を探そうとする、せめてもの努め事だったのかもしれない。


(現在地:パーティールーム:サクラ―――絶命)





534 名前:ロンギヌス13 ◆13th/X9pTg :2006/11/26(日) 00:42:16

>>446 >>479 >>509

「チィ……全速の突撃でも捉え切れんか!」

舌打ちを一つ零した後も、アインは冷静に、機械の如く戦術を組み立てる。

「フュンフ分隊と――アハトの分隊も呼べ。
 こいつには手加減をしていられん」

『これ』は三機で仕留めきれるものではない。
総力を挙げて当たる必要のある相手だ。
それが分かっているからこそ、魔女を含めた他の者も一斉に向かってきているのだろう。

程なくして、フュンフ、ズィーベンとアハトが率いる三機が到着する。

「各機、あの化け物の全方位を囲むように飛べ。
 意趣返しだ、奴を銃弾の嵐の中に放り込んでやる」

合流を果たし、五機編成となった彼等は即座に炎の根源を包囲に入るが――

降り注いだ矢が(>>479)、空域全体を覆う虹(>>509)がそれを妨害する。

ダメージを負っていたフュンフ、ズィーベンは出力の低下により、それを避けきれない。

フュンフは虹の濁流に飲み込まれ、甲冑ごと光の中へ。
ズィーベンはカメラ・アイに矢が突き立ち、そのまま頭蓋へ到達。
脳漿を撒き散らしながら、氷原へとまっ逆さまに落下して行く。

「……思い通りにはならん、という事か。
 だがそうでなくては、我々が出て来た意味が無いというものだ!」

フュンフ、ズィーベンを失っても、アイン、ドライ、アハト分隊の機動は微塵も狂わない。
それどころか、瞬時に補正を加えてみせた上で新しいフォーメーションに移行している。

「では、ドライ――」

包囲が完成する寸前、アインから指令が下される。

「死ね」
「Jawohl (了解)」

左腕とMG34を失ったドライは、これからの作戦にとって邪魔者でしかない。
ならば有効に使ってやるのが筋というものだろう。

ドライは自爆装置の起爆を三秒後にセット、敵へ向かって真っ直ぐに飛行する。
気が逸れればそれで良い。自爆に巻き込まれるならば最高だ。

程なくして――ドライの機体が巨大な火球となってはじける。

「今だ! 全機一斉射撃ッ!」

総計、五機が構えた機関銃より発射される弾丸。
それが空間を埋め尽くすほどに圧倒的な、暴風雨となって吹き荒れる。

(残りアイン、ツヴァイ、アハト分隊(三機)、ツェーン分隊(三機・待機中))
【周辺空域】

535 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/26(日) 00:44:01

>>511
 赤ジャケは銃弾を避けていた。矢張りそう簡単に当たっちゃくれないか……
 つっても、撃つより前に避けてる分、多少やり易いってのはある。
 直線的に進む銃弾を避けるのは、「人間ヤメてりゃ」難しくないんだから。

 しかし、真逆トドメの蹴りを躱され、足を掴まれるってのは予想ガイです。

 「って、またかよおおおおおぉぉぉっ!」

 そいつはクソバカ力でもって、再度俺の身体を振り回しやがった。
 しかも今度は横ではなく縦――――要するに俺は床に叩きつけられている。

 「が、っは――――」

 息が止まる。骨が軋む。常人なら確実に死んでいるところだ。
 否、俺だって無傷では済まない。内蔵の幾つかが完全に潰れているのが判る。

 「ご、ぼっ」

 口から血反吐を吐きながら、何とか銃口を向けようとしていると――――

>>526
 「……おせ、えよ」

 あの赤スーツの女が俺と男の間に割って入るのが見えた。

 『化け物だろうが関係無いね、信じて裏切られる方が好きなんだよ』

 「ククッ……いい奴だねぇ、アンタ。そういうの、嫌い、じゃ、ない」

 ていうか、俺軽くやべえ。意識がもう保てなくなってk

 【客室:半分気絶】

536 名前:レップ ◆ZcW/SSsF6Y :2006/11/26(日) 00:46:04

>479 長谷川虎蔵
>509 フランドール

標的の男は動きを止め、悪魔のような少女に向けて弓を引く。

馬鹿が。レップは男に狙いを定めるとゆっくりと引き金を。

その時、世界が光につつまれた。
ガラスの砕ける音とともに、尋常ならざる破壊の力があたりにばら撒かれる。

くそっ!

銃を抱えたまま甲板の上を転がり、遮蔽物の陰に隠れる。
そして、光の嵐が過ぎたすぎると、次は炎の嵐だ。

魔女のバアさんの呪いか!?これでは持たんぞ、船が。

数十秒の後。
ようやく収まった災厄に、遮蔽物の陰から這い出すと。

それと目が合ってしまった。
半鳥半人の姿をした妖怪と。

瞬時に銃を構え、引き金を引いた。

【銃身損耗率70パーセント】
【中層部:甲板後部でローレライと戦闘開始】



537 名前:飛竜 ◆HIRYUmxRKo :2006/11/26(日) 00:46:16

>>525
「そうか。ならば、俺の敵ではない」
 構えを解く。が、得物からは手を離さない。どこかに敵が潜んでいないとも限らない。
 給仕らしき女と共に消え失せた男が戻ってくる可能性もある。

「敵ではないが……貴様ではハイジャック犯は止められん。そこの女(>>485)を連れて、脱出しろ」

【現在位置:下層部倉庫、コーディーと対話中】

538 名前:ゲーニッツ:2006/11/26(日) 00:46:19

>>529
【>>530は取り消しです】
(アテナの言葉を聞いて、立ち止まる)
あなたの言うとおり、私はナチスとはなんら関係はありません…。
オロチの力で復活しました。
ここにはオロチに関する秘密があると聞いて、偵察に来たまでです。
あなた方がここでどんな目に遭い、何をしてきたのかなど私の知ったことではありません。
突然ですが、ここで提案です。
どうやらあなたは、死ぬ前の私を知っているようだ。
くくく、面白い…。
あなたのことを知りたくなってきましたよ。
どうですか、あなたたちさえ良ければ、互いに共同戦線など張るというのは?
お互いに悪い話でないはず…。
まあ、私のことが信用できないのであれば、断っても構いませんが。
決めるのはあなたたちです。
(不敵な笑みを浮かべ、そのように言い放つ)

539 名前:『紅い悪魔』レミリア・スカーレット ◆remyaGVniw :2006/11/26(日) 00:46:40

>>523
VSグルマルキン・フォン・シュティーベル

>右の義眼―――霊視眼が見開かれた。
>レミリアの眼を覗き込む。

>「タブラ・スマラグディナ、
>またの名をエメラルド碑板にいう、
>上のごとく、
>下もしかり。
>真理なり。
>いざ、力を―――示せ!」

>グラム・サイトを通してグルマルキンの情報がレミリアに流れ込む。
>束縛の術式をレミリアの体内に刻み込むことで、この強力な器を
>制御しようというのだ。

どうやら私はグルマルキンにとても強力な契約を施されたらしい…。
今でも私の身体の中で…【汝―――その女に忠誠を誓え】―――という声が脳裏に木霊する。

―――フフ、どうやら私は今やグルマルキンの忠実なる下僕になったのが今でも判るわ。
でも、それについて悪くはない気がするのは―――何故かしらね―――?

>「貴様の意識を奪うことは敵わんが……これは強制的な契約だ、レミリア
>・スカーレット。貴様に思考の余地はない―――私に下れ」

その問いに対して私は―――

「―――ええ、判りましたわ、グルマルキン様―――」

―――と、満面の笑みを浮かべてそう答えた。

【キッチン:レミリア、グルマルキンの忠実なる部下となる】

540 名前:パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU :2006/11/26(日) 00:46:53


>>271 >>277 >>301 >>315 >>331 >>349 >>334 >>366 >>393 >>430 >>432
>>445 >>474 >>502 >>506 >>524

「最近のヴァンパイアは火葬まで自分でするのね」

自分を殺そうとしていた吸血鬼に、パチュリーが口にしたのはその一言のみだった。
感慨も安堵も見せず、その場にいたもう一人の青年に向き直る。

「それで……そこのあなた、敵ではなさそうね。
 レミィがグルマルキンにどこに連れて行かれたのか。分かる?」

彼女の興味は、自らの友にのみ集中しているようだった。

541 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/26(日) 00:47:03

>>491>>496>>514

「すいません! 客室はどちらでしょうか!? ってあれ?」

 わたしが入った部屋は間が悪かったのか、喰屍鬼(グール)の溜まり場になっていました。
 狭い通路を急いで抜けようとしている今現在、手にする武器は何もありません。

 急いで回れ右をして、息を切らせつつ駆け続けます。走るたびに傷が痛みますが……へこたれてられません。

 いくつか扉を開けている内に、鈍重な喰屍鬼(グール)たちといえど、次第に数を増し、追いつかれるのも
時間の問題になりました。途中、色んな人たちが喧騒を繰り広げているのが目に映りましたが、構っている余裕も
ありません。

 とうとう逃げる余裕のなくなった、客室の最後の部屋……わたしは閉じ込められるような形となりました。

【イリーナ・フォウリー:現在地:客室に到着、袋小路の部屋に閉じ込められる】

542 名前:ヴァルトラウテ/タッツェルヴルム ◆SoRDENIEpc :2006/11/26(日) 00:47:12


 >>508 >>521 リゾット コダマ

「……これは、一体?」
「一時的に強力な磁力線を感知。正体はこれだわ」

 非磁性体の真鍮、鉛を多用した弾薬、射撃系統に問題なし。
 鋼の装甲はしかし、その影響をまともに受けていた。
 しかも、それを好機と駆け寄る礼服姿の男。

「更に磁力線を感知。目標2は七時方向、10mまで移動」
「了解」

 タッツェルヴルムは地を蹴った。
 巨体が舞う。

 磁力によって引き寄せられているというのならば、より強い磁性体があるとすれば。
 そう、人体に含まれる鉄分よりも、より質量の大きな鉄塊があれば。
 即ち、タッツェルヴルムの機械化された体がそれだ。

 【場所:展望台1F、パーティルーム コダマ・リゾットとの戦闘】

543 名前:ロタール・フォン・リヒトフォーフェン:2006/11/26(日) 00:49:45


>>509 リヒトホーフェン・サーカス ×3

 オゼット・ヴァンシュタイン――ロンギヌス13――新戦乙女隊――
ヘル・レップ――敵機らしき不細工な戦闘機までもが、あの可愛らしい
魔女に向けて攻撃を仕掛けていた。
 みな、この空域でもっと危険なジョーカーが誰か理解しているのだ。

「俺達も遅れるな。この空域の支配者は誰か教育してやれ。ハマー、
まずはおまえが―――」

 空を滑空しながら、的確に下すロタールの指揮―――驚愕に途切れた。
 星が、星が降ってきたのだ。
 先のスルトの剣を間近で目にしていたロタールでも、これには驚いた。
 破壊の規模が違いすぎる。
 だが、呆気に取られている暇は無かった。

 天から降り注ぐ閃光―――ローリングの連続で回避する。
「があ!」
 ハマーが避けきれず、脚部を閃光に貫かれた。一瞬、動きが止まる。
 その一瞬が命取りになり―――無数の星の雨に、ハマーは粉砕された。

〈ハマー:死亡〉

 パウル・バウマーのほうは紙一重で何とか回避に成功している。
 あの威力で三機中二機が無事。奇跡的とも言えた。
 だが、次に撃たれたら―――

「最高にスリリングじゃないか」

 飛翔、旋回―――パウル・バウマーが魔王向けて機銃を連射する。
 続いてロタールの支援射撃。
 合計四門の機関銃から放たれた7.92ミリ弾が魔王へと殺到した。


【周辺空域:フランドール大決戦】

544 名前:ビリー・龍 ◆D727Bb9L.2 :2006/11/26(日) 00:50:13

>>526
(あんたがそう望むなら、俺はあんたの味方さ)

 俺はその台詞を飲み込んだ。
 問いには答えず、俺は問い返した。

「そいつは……」
 彼女の背後で這いつくばっている>>535男を指差して俺は言った。

「俺の敵さ。俺はそいつを殺す。あんたはどうする?」
 一歩、踏み込む。俺の口元は笑っていた。

(客室エリア)

545 名前:Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA :2006/11/26(日) 00:52:16

>>527

 外れない。
 視線が、銃口が、照準が。
 外れない。全く外れない。飛ぼうが撥ねようが走ろうが――如何に動こうが。

 それは、自明だ。
 獲物を捕らえた狩人の視線は、けっして外れることはない。
 だから――俺も、その視線を一切気にしないことにした。

 走る。ただ走る。
 一歩でも距離を詰めろ。一呼吸分でも近づけ。
 離れるな距離を取るな、近づけ近づけもっともっともっと!

 地獄を駆け抜けながら、悪魔の視線に囚われながら、それでもそんなモノなど知ったことではないと
断じる。呪文書式選択――ウンザリするようなスペル・セレクタから目的のそれを選び出し無音詠唱。

 そして――補助呪文をプラグイン。詠唱の一言一言が、大きく重いスタッフの先端に、鮮烈な赤光の
幾何学模様を描き出す。――魔法陣。それは、眼前の敵に対する、必滅の意思の表れだ。

 一歩。また一歩。
 距離を常ながら、レイオットは詠唱を続けている――

【パーティルーム:大尉と交戦中】

546 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2006/11/26(日) 00:52:32

>>539

 輝く虹の欠片。雪のように硝子のように広がる世界。

「―――お姉さま?」

 悪寒めいた寒気が走った。
 私には運命を見通す力はない。
 けれど、不吉な予感だというのは何となく分かった。

「……どうしよう」

 かすかにとまどう。
 スペルは発動しつづけている。
 切り上げてお姉さまの下に向かってもいいけど―――

「……大丈夫。お姉さまは死んだりしないわ」

 その確信だけは揺るがない。
 だから、私は意識を元に戻した。
 目の前に迫る相手へ。
 忘れてしまってはとても失礼だもの。
 だから、シンデレラの鐘が鳴るまでは、いっしょに踊りましょう―――


【飛行船上空:姉の異常感知?】

547 名前:矢車想 ◆dMMbM6zhZs :2006/11/26(日) 00:52:41

【現在地…展望台】

一枚二枚…三枚。ハァ〜
ため息をつきながら俺は最上階で花びらを数える。
小さい頃からエリ−ト街道まっしぐらだったのに…あぁ時は無常だ。

今では涙すら枯れてしまった。

俺はここで待とう。
誰が来るともわからないここで。

548 名前:ケイト・コナー ◆g6orsKate. :2006/11/26(日) 00:52:50

>>522
「マレディツィオーネ!」

 ごめんなさい神父。思わず口をついて出た言葉に、親代わりのコルレッティ神父の渋
顔が浮かんだ。でも悪態の1つでも吐かなきゃやってられないわ。
 相手はガッチガチの科学者ヴァンパイア。信仰心もなければ神さまへの畏怖も無い様子だ。これじゃ、残る銀の十字架も単なる棒でしかない。

「ウイルス? あまり病気持ちにお近づきにはなりたくないのよ。家に小さい子がいるから
うつされたら困るのよね」

 そう言い返しながら、抱えた少年を床に、少々乱暴に下ろす。
 ……頭だけは打たないように気をかけたので大丈夫だろう。

「ああ、この子は私の息子じゃないわ。さっき拾った子。無関係だから放っておいてくれな
いかしら?」

 無駄だろうと分かっていながら、注意をこちらに向けるためにそう話しかける。少年が
なんとかここから逃げるまで時間をかせがないと……
 格闘技は、幼い頃からハンターになるために仕込まれたが、軍人の、しかもヴァンパイ
ア相手にどこまで通じるか。絶望的だわ。

 でも、だからこそ、先手はこっちが取らなくてはいけない。

 息を溜め、一気に間合いを詰める。狙うのは足。
 膝を砕いて、あの子が逃げる時間を稼ぐ!


【現在位置:客室から展望室3Fへの階段 ケイト&ハンスと交戦開始】


549 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/26(日) 00:55:03

>>491>>496>>514>>541

 扉が弾け飛びました。
 化け物たちが今まさに、部屋の中になだれ込もうとしていた矢先に、出鼻を挫かれる形となりました。
 部屋の奥から、闇の中でも銀色に輝く巨大な質量を持った存在が、ぬっと姿を現します。

「ファリス様……これも貴方様のお導きでしょうか。この運命に感謝します」
 全身にしっくり来る重量感。懐かしい、友達のような感覚。一歩動くたびに響き渡る金属音、そして振動。
「貴方様がこの異界の地にわたしをお遣わしになったのは、今この場を支配せんとする邪悪を
 打ち滅ぼすための一翼となることを、このわたしに……お望みになったからですね」

 白を基調とした、凄まじい質量の板金鎧(プレートメイル)を着込み、わたしは両手に愛用の大剣(グレートソード)を
握り締めました。淡い銀色に輝く刀身は、ドワーフの鍛冶屋ブルスさんに頼んで作ってもらった最高品質の業物で、
吸血鬼などの邪悪な存在をも傷つける銀の力を帯びています。そしてわたしの背中には……無数の武器や防具が、
手にされる瞬間を待ちきれないかのように、所狭しとひしめいていました。

「ならばこのイリーナ・フォウリー、為すべき事はただひとつ!
 ファリス様より与えられた力を以って、はびこる邪悪を成敗し、その正義を示す事ですっ!」

* * * * * * * *

「国からの仕事の結果がこれか! 補償しやがれ、こんちきしょーっ!」
「イリーナ! イリーナ、イリーナ、イリーナぁああっ、顔見て、やっと安心できた……」
「そう簡単に逝ってもらっては困りますな。ワタクシが用意したサーガが無駄になってしまいます」
「「まま! 今度こそ、死んだらダメでつ!」」

* * * * * * * *

 見ていて下さい、ヒース兄さん。マウナ。ノリス。ガルガドさん。エキュー。バスさん。チビーナたち、
そしてファリス様。
 わたしは、ファリス様の使徒として……最後の最後まで諦めずに、戦い抜いて見せます。
 わたしを助けてくれたレイオットさんの下に帰り、二人で生き残るために。
 そして……ヒース兄さんたちの待っているファンの街へ、「青い小鳩亭」へ……帰るために!

「汝らはっ…………邪悪なりっっっっ!!」

【イリーナ・フォウリー:現在地:客室から脱出、パーティールームへと向かう】

550 名前:夜雀の怪『ミスティア・ローレライ』 ◆8hOOMYSTIA :2006/11/26(日) 00:55:32

>>509>>536
色とりどりの弾幕。

「うわっと、何処見てんのよまたー!」

距離が遠かったのが幸いしたか、まともに当たることはなかった。
近ければかなり際どいところだったろうが。

「ってこんな派手なのは外っぽくないな〜」

幻想郷の弾幕バカがどうも外らしいここへと出張ってきたのか。

確かめようとした瞬間、人間と目があった。
虚を突かれた夜雀と違い、素早く放たれた弾丸が肩口を引きちぎって通り抜ける。

「ぐっ。このお題は高く付くわよー、ニンゲン!」

狙いをレップへと定め、唄い、弾幕を放った。


【周辺空域:レップに向けて飛来】

551 名前:コーディー:2006/11/26(日) 00:55:37

>>537
途方も無く強い…が事情を聞く限りじゃどうやら俺と戦う理由は無いらしい。
チッ、やっぱ問答無用で殴っときゃ良かったか?それだけではいざ知れず
俺に逃げろと来たものだ。冗談は…

「―――冗談は人生だけにしとけよ兄ちゃん」
此処をどうしようがお前の勝手だが、せっかくの殺し合い、
最後まで楽しむのがパーティーの醍醐味じゃねぇのかい?飲んだくれて
反吐ぶちまける程のな…?」

ゴキ、と首の骨を鳴らしながら

「止めるか止めないかは俺が決める。アンタは…そうだな。
協力なんぞ要らんが、首謀者の居場所くらい教えてもいいだろ?」

別段首謀者だろうがどうだろうが興味も無く、ただ闘えればそれで良いが、
それでも聞くだけの価値はありそうだ。

【現在位置 下層部倉庫 飛竜と会話中】



552 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus :2006/11/26(日) 00:55:38

>>531

ようやく。
ようやくだ――音が聞こえるようになった。
使い魔の囁く声が告げる。

「っ、ぐ――――」

上だ、と。
だが、咄嗟に大きく動ける体勢ではなかった。
横に一度転がった所で、右の上腕を床に縫い止められる。

「……ふふっ。捕まえた、わ」

この刀身の先にあの女が。
左の腕を伸ばして掴もうとする。
同時に、床に転がっていた鞭が跳ねた。
女の四肢を絡め取ろうとするかのように、まるで生きているかのように。


【中層部:無人だった客室で交戦中】

553 名前:津村斗貴子 ◆TOKiKoStGs :2006/11/26(日) 00:55:52

>>533 (サクラ)

倒れている。
目が開いている。
死体だ。

敵の死体など見慣れている。
なのになぜ動揺を感じるのか。
なぜ、この死体に見慣れた少年の姿がかぶるのか。


命の選択はできない、少数を切り捨てて多数を救うなんてダメだ、と言った少年に。
偽善者、とののしられても戦い続けた少年に。



「――バルキリースカート!」

その連想をしたことすら罪であるかのように、斗貴子は四本の刃を振るう。
頭蓋を粉砕し、脳を踏みつける。
さらに四肢を切断、遠くに放り投げる。
これがどんな能力を持っているのかは未だ不明な部分も多いが、
これだけしておけば、少なくともしばらくは攻撃できないだろう。

そう、それだけだ、と斗貴子は自分に言い聞かせる。
これは理性的な行動だ。敵の脅威を確実に排除する行動だ。
決して――そう、決して危険な連想から目をそらすためのごまかしではない。



「武装、解除」

四本の刃が手の平サイズの金属片――「核鉄」に戻る。
それを左手の甲にあてがった。
核鉄の治癒効果も、この短時間ではそう効果もないだろうが――血止めくらいにはなる。
もっとも危険なのは生命力とでも言うべきものの消耗だが、こればかりはどうしようもない。

(それでも、構わない。
 まだ私は戦える。化物どもをブチ殺せる)

そう、心中で呟く。
繰り返し繰り返し、反芻する。
次の獲物を探しながら。


<現在地:パーティ会場>



554 名前:リザ・ワイルドマン:2006/11/26(日) 00:56:08

>>473>>513>>532

 一瞬、心臓が垂直飛びを行なったような感じだった。無意識に声が漏れた事は
自分でも気づいている。しかし、あの二人の少女は全く気づく様子はない。
だとするならば、別の誰か(他に誰が居るというのか?)がリザの気が付いたのだろう。

『出てきな』

 という女性の、しかし鋭い声が心臓を鷲づかみにする。女性の声は続いていた。

『…どうする?狂信と共に、地獄の釜で糞塗の中に落ちて
果てるか?このまま消えて事故者として追悼されて、精精天の門で楽隠居かい?』

そのあまりにも下品というか、神秘的というか兎に角その両方をかき混ぜたような
言葉はリザにこのテーブルクロスの”外”の状況に興味を抱かせた。

 なんか良くわからない言葉が聞こえていた。足が――――足の影が白いテーブルクロス
の中から今は幾分赤く染められた照明の光によって映し出されている。

 一瞬、躊躇したが取り合えず話をする事にしてみた。もしかしたら話の判るやつかも知れない。
あるいは乗客か何かが生き残って居るのかもしれない。

「ああ、今出でくよ」

 女性に負けず強い口調の声でテーブルを押し、立ち上がった。白いテーブルクロスに包まれた
テーブルがひっくり返りリザ・の全身が現れた。そして声の主の姿も直前にあった。

(現在位置:パーティルーム>

555 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2006/11/26(日) 00:59:16

>>509 フランドール

「嘘、凌ぎやがった!!」

 ミサイルとバルカン二門+その他の火力の中を踊るようにして少女は掻い潜り、いくつか喰らいながらも凌いで見せた。
 ミサイルに至っては命中する前に破壊しやがった。

「やってくれんじゃないの。この『おてんば娘(フラッパー)』」
 少女はさらに高度を取り、高みへと飛び上がる。
 アタシはさっきまで少女が居た位置を通り過ぎ、素早く旋回。再び機体前方に少女を捉える。
「月をバックに何やらかすつもりだァ?」
 一度凌いだのならもう一度仕掛けるまでだ。二度凌がれたなら三度。それでも凌がれたら、――当たるまでやってやる。

 機首上げ、推力アップ。
 今度はさっきより距離を詰めてミサイルを撃ってや――。

 正面から虹色の光弾が雨霰と降ってくる。

「くそったれ……!」

 ――このまま突っ切るか!?

 No。 スラグフライヤーに乗ったままでは無理だ。

 ――下へ逃げて有効範囲外へ離脱するか!?

 Yes。 突っ切るよりは生存率は高い。

 操縦桿を前に倒し、推力を偏向させ、一気に真下へ機首を向ける。

「がああああああ! このクソガキ! 絶対ケツ引っ叩いてやる!!」

 氷面、海面が近づく。 機首上げ! 推力ノズルを真下へやって落下慣性相殺!

「墜ちてたまるか!」

 海面スレスレで機体が浮力を得る。速やかに後方へノズルを向けて全速で前へ!
 操縦桿を引いて心臓に悪い高度から安心できる高度まで上昇。

「避けきれたか!?」

 機体上部、後方を仰ぎ見る。

 ――降ってくる虹色は、そこにあった。ギリギリ、逃げ切れない。

「ついてねえわ」

 機体の半分から後ろに数発被弾。
 爆ぜる装甲。火を噴く機体。
 再び赤くなる計器盤。
 自動消火装置作動。
 あと一発持たないと表示するHUD。

「はッ。それでもまだ飛べるか。流石SV−シリーズ!」

 急旋回して引き起こし、再三少女を前方に。

「ケツを叩くっつったら叩く。絶対に叩いてやるわ。このおてんば娘」


【現在地:飛行船周辺空域、低空より上昇中】


556 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg :2006/11/26(日) 01:00:10

>>509 フランドール
>>528 ふみこ

 星より来たりし七色の光、そして大渦を巻き上げる焔――これが幻想で済まない辺り、現実と
はまこと厳しい世界であると云わざるを得まい。


「……程があんだろうが手前ぇら!」

 叫び、虎蔵は弓矢を捨てた。
 パン! と両の掌を合わせて離すと、そこには巨大な数珠がある。
 手妻の類いと訊けば似たようなものだ、と答えるであろう。大陸渡りの方術の一種だ。

 急上昇、急降下に急旋回。襲い来るGに引き裂かれそうになりながら、恐ろしい密度の破壊の
雨を掻い潜って夜鴉は飛ぶ。
 かわし切れない破壊の流星、また猛火の息吹きは霊珠が防いだ。が、そもそもかわし切れる
物量ではない。
 幾つかの妖弾でその身を打擲され、或いは焼かれながらも切り切りと黒い凶鳥は舞う。


「仁義八行、彼宿の霊玉、天風矢ら……うおっと!」

 詠唱しかけた呪言は回避動作によって中断され、虎蔵は血混じりの舌打ちをした。

「ええい、以下略になったれ! 喝! 喝! 喝!」

 振った拳に導かれ、八個の霊宝霊珠は動き出した。浮遊状態から一気に加速。
 互いを追い抜き追い越し、天の少女へと牙をむく。

 時に稲妻状、時に放射螺旋を描く機動は、素人目には複雑玄妙と見えるであろう。
 しかし心得ある者からすれば、何だか大雑把な弾道であった。


【現在位置:周辺空域で交戦中】

557 名前:コダマ ◆K3dMKODAMA :2006/11/26(日) 01:00:49

>>542
コダマは助走する。跳躍のために。
コダマは一直線に走る。最短の距離を最速で。
コダマは加速する。ただ一撃をもって屠るために―――。

タッツェルヴルムの拳が来ようとも、ただ一撃を打ち込み破壊する。
その果てに己が身が砕けようとも―――。

否。コダマにはここで果てる気は無い。
魔戒騎士とは「守りし者」であると、古代より言い伝えられる。
騎士道云々ではない、愛するものを守り抜く心こそが魔戒騎士の強さなのだと。

その意味を持ってすれば、コダマも騎士であるといえる。
なぜならば、彼は“母”を守り抜くことを誓っていたからだ。
その強さはただ“母”のためにある―――。


―――しかし。
覚悟を決めて放ったコダマの飛鳥蹴りは、むなしく空を切った。
タッツェルヴルムはコダマではない方向へと跳躍していたからだ。その方向とは、

先ほどの銃撃を打ち込んだ方向であり、誰とも知れぬ声のした方向だった。
【現在位置:パーティールーム】

558 名前:タバサ ◆3VTTABASAI :2006/11/26(日) 01:03:36

>>516
 どうにも調子が狂う。声質に威厳が感じられない。
それに、一人称が『ボク』とは……。
 そんなことを思っていた私の脳内に、船内の立体図が映った。
「――なるほど、そこにおられましたか。それよりも今は……」
 床を蹴って走り出す。目指すは、彼の言う『厄介なモノ(>>522)』。

>>522
「氷華スルフニル! 汝の冷気を矢と為し、我が敵を射抜け!」
 手にした水晶球を頭上高く、放り投げた。水晶球に封じられた極寒の冷気が無数の氷の矢となり、『厄介なモノ』へと襲い掛かる。

【現在位置:客室エリア回廊→展望室3Fへの階段、ブラッドへの攻撃開始】

559 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/26(日) 01:04:45


>>539 vsレミリア・スカーレット

「ふ、ふふ―――くく、ハハハハハハ!」
 キッチンに魔女の哄笑が谺する。
「手こずらせてくれたが……ようやくだ。ようやく、おまえという女をモノ
にできたぞ。これで私の野望もチェックメイト、というわけだ」

 だが、その余裕の口振りとは裏腹に全身は汗で濡れていた。
 グラム・サイトでレミリアの中≠覗き込んだとき、彼女の片鱗を知って
しまったのだ。レミリアの欠片―――畏るべき情報量だった。術式に少しでも
綻びが生じれば、逆にグルマルキンが支配されていたに違いない。
 レミリアの体内に――肉という肉、臓器という臓器、骨という骨に、拘束の
ルーンを三重に施したとはいえ、未だ制御は安定していない。
 グルマルキンの魅了―――長持ちはしそうになかった。

「構わん……狂気山脈まで保てば良いのだ」

 全身に穿たれた無数の疵痕―――一つずつ、丁寧に治癒のルーンを重ねる。
 頬に飛び散った血は、舐めて綺麗にしてやった。
 さて、これでどうにかまともな身体に戻ったが……。

「おまえという女に集中している間に、だいぶ状況が変わってきたみたいだな」

 レミリアを胸元にかき抱く。
 グルマルキンはマントを翻すと、二人を漆黒で覆い隠した。
 二度目の転移呪文―――グルマルキンの口端が持ち上がる。

「さて、この玩具を自慢しにいくとするか」

【中層部:キッチン→転移】

560 名前:大尉:2006/11/26(日) 01:06:17

>>549 (イリーナ・フォウリー)
>>545 (レイオット・スタインバーグ)


 ――――――READY……?


 その銃口はずっと待っていた。
 自らの口から殺意の塊が吐き出される時を今か今かと待ち望んでいた。
 銃の持ち主の銃の引き金にかかる力は依然ととして一定のままである。

 銃口の向けられた対象が少しずつ大きさを、輪郭をはっきりさせつつある。
 まだかまだかと銃は出番は待ち続ける、引き金の位置は未だ変わらず。

 更に獲物の大きさが大きくなる……この距離なら引き金を引けば当たる距離。
 撃て撃て撃て撃てと銃は出番を主にせがむ、が、引き金にかけられた指は動かない


 途端、銃口がその見つめる位置を変えた、今まで頭にあった銃口の視線が
 標的の持つ点滅するスタッフに向けられ、そして、引き金が一気に絞られ


 ……FIRE――――――!

 <現在地:パーティールーム>

561 名前:エアハルト・フォン・ラインダース ◆CnAdcTa152 :2006/11/26(日) 01:08:15

>>509 vsフランドール

 悪夢の戦場から逃げるかのように、急上昇をかけるTa152
 無数の小さな雲の欠片が、次々と視界を流れ去って行く。

「貴様は、戦わずして戦闘機を捨てた卑怯者だ!」

「何がエクスパルテンだ。 戦友を見捨てるなんて!」

 脳裏に、あのマンハ湖の夜の記憶が蘇る。
湖面へと落下傘降下し、ずぶ濡れになって岸辺に這い上がった私を待っていたのは、
救援隊の兵士達の嘲笑と罵倒。
そしてほぼ無傷で着陸していた愛機Fw190。
アフリカ戦線以来、生命を共にして来た愛機からの無言の抗議。

「違う! 私は……」

「私は……!」

 追憶は、眼前に現出した無数の光によって中断される。
機首方向、月を背にして浮かんでいるのは先ほど「敵」と伝えられた少女。
そして無数の星の雨。
空の男の、いや人間という生物の本能が、数秒後には避け得ぬ死が訪れると謳う。
そう、「このままのフォッケウルフ」では。

 発進前に整備の人間から手短かに解説を受けた切り札――MW50パワーブースターをスイッチ。
 水/メタノール混合液の噴射を受けてJumo213Eが咆哮する。
爆発的な加速。 ぐん、と機体が持ち上がる感覚。
これまでに倍するかのようなGが容赦なく襲うが、意識はまだある。 目も見える。
 いける。
 渾身の力を込めて引かれる操縦桿。 機体の構造材が軋み、悲鳴を上げるが無視する。
縦ロールの機動で降り注ぐ星の嵐を躱し切り、そのまま宙返りから水平飛行へ移る。

 前方には、少女の姿をした怪物。
 だが私はもう逃げはしない。 反撃は、ここからだ。




562 名前:レップ ◆ZcW/SSsF6Y :2006/11/26(日) 01:08:44


>550 ミスティア・ローレライ

無数の魔力の弾丸が迫ってくる。

走り、しゃがみ、跳びはね、転がり、
それでも、すべて回避することはできなかった。

右足にを大きくえぐる。ふくらはぎが半分千切れた。
姿勢が崩れ、勢いのまま甲板の上に倒れて転がる。

それでも鬼塊のような精密さですばやくボルトを引き排莢するとボルトを戻して次弾をこめる。
薬室にはナパーム爆裂焼夷弾が装填される。

この足ではいつまでもかわし続けられない。

ならば殺られるまえに殺るのみ。

「くたばれバケモノ!」

瞬時に銃を構え、狙いをつけ、引き金を引き、排莢し、装填し、引き金を引き、排莢し、装填し、引き金を引き。

そして銃身にひびが入った。


【銃身損耗率100パーセント】
【大口径狙撃銃を破棄。通常兵器に持ち替える】
【中層部:甲板後部でローレライと戦闘中】


563 名前:イグニス ◆IgnisC3BW6 :2006/11/26(日) 01:09:05

>>552

「それはどうかな――捕まえたのは、こちらも同じだ」

 剣から手を離し、こちらを掴もうと手を伸ばした奴の腕を、逆に私が掴み返した。
 脚のベルト部から再度、月牙を抜き出す.
 この距離では外さない。外させない。相手はすでに捕まえている。

「これで――終いだっ!」

 そう口にして、月牙を叩き込むべく、腕を振るったその時だった。

「――――!」

 鞭が。
 奴の手を離れ、床に転がっていた鞭が。
 あたかも意志を持つかのように跳ねたかと思うと、こちらの四肢を拘束するように絡みついてきた。
 これは――しまった、使い魔かっ!

「くっ――」

 月牙は取り落とさなかったモノの、完全に拘束されている。
 あまりの間抜けさに、自分を罵るが――このミスは、まさしく致命的だった。

 ――どうする?

【中層:客室にてモリガンと交戦中】 

564 名前:コーディー:2006/11/26(日) 01:09:57

>>519
「…息して食ってんなら変わんねぇよ。燃えカスだろうが死に底無い
 だろうがな…」

…どうせ生きるならこんな燃えカスになりたくは無かったが…
ああ、五月蝿ぇ。失せろ煩悩…お前だけはいつまでも取り付きやがる…

「…ああ、冷める前にさっさとぶちかますか」

【下層部倉庫 レミア 飛竜と会話中 動向はまだ決まりかねてる】

565 名前:リゾット・ネエロ(M):2006/11/26(日) 01:12:13

>>542
「サイボーグ…質の悪い冗談だ」リゾットは自らの失敗に歯噛みする。
奴の動きは電波障害を受けた家電さながら、メタリカは決して効果がない
わけではない。強い磁力線を浴びておそらくどこかの回路がショートした
のだろう。フレミングの左手の法則という奴だ。

「もう一度近づいて喰らわすか…いや無理だろうな」
相手も馬鹿ではない。二度と接近は許さないだろうし、あの避け方はもう使え
ないだろう、今度はクレー射撃の的のように粉々にされる。

おそらく奴には探知能力は無い。アレは自発的な動きではなく、何らかの指示
を受けた後の行動だった。

宙を舞う巨体、俺の磁力を追ってきたか以外に元気そうじゃないか。
「あの女か…どうやら藪をつついて蛇を出したな、だが!」

前もって彼は保護色を解除していた。そして躊躇することなく左手をメタリカ
で斬り飛ばし壁に手首を貼り付ける。さらに血液中の鉄分は全てベアリングに換
える、これで一切の生命反応は消えたはずだ。
「磁力線を追ってくる事は読んでいた…。勇み足のツケは…反省して
 そのことを前向きに利用しなくてはな…」

【現在位置:パーティールーム】

566 名前:麻宮アテナ:2006/11/26(日) 01:12:40

>>538
 ゲーニッツさんと組む。たしかに過去、私はゲーニッツさんと戦いました。
でもそれはこの人が憎かったからじゃない。新しく生まれたチャンスで、
こんどこそ戦わずにすむのなら……。

「私は……」

 そう、少なくとも今は敵じゃないかもしれない。
将来の敵ではあるかもしれないけど、戦うべき優先順位からいえば
ハイジャックさんたちのほうがずっと差し迫っています。
「オロチに関するヒミツ」がなんなのか私にはわからないけど、
それを理由に今戦うのは得策じゃないはず。

 ……いえ、こういう言い方はずるいですね。
そうです、私は感情でこの人と戦いたくない。
ちょっと道を違えてしまっただけの人。もし生まれかわったこの人が
善良に暮らしていけるのなら。私がその後押しをできるのなら。

「私はこの船を、この船にたまたま乗っていただけの、
ナチスとか狂気山脈とか古の都市なんて全然関係ない人を助けたい」

 たぶんそれは、牧師さんとしてのゲーニッツさんの生き方にも適う、はず。
覚悟は決まりました。

「当面だけでもそれに協力してくれるのなら、私はあなたを信用します。
”汝偽証するなかれ”って、十戒にもありますしね。
牧師さんはそれを破ったり……しませんよね?」

>>515
「そういうわけで、すみませんがこちらのお客さまのご協力を仰ぐことと相成りました。
あなたはどうしますか?」

 できればこんなところで戦闘続行は避けたいです。
戦うべき相手は他にいるんですから……。

<現在位置:客室>

567 名前:哀川潤 ◆MzXQXe8zTc :2006/11/26(日) 01:13:17

>>535 >>544 ハイネ ビリー

答えは一つしか有り得ない。

「はぁ? あたしの目の前でそんな事させる訳ねーだろ! そのくらい判れ!
 このスッタコが! あー、しかし残念だ、あたし達結構いー感じだったのにな、
 ほんとーに残念だ、なぁ? 赤ジャケット?」

其処で一度二丁拳銃を振り返る。

「それじゃあ行くぜ、あたしは優しいからな、死なねぇ程度に殺してやるよ。」

開幕一番。ジャンプからこめかみへの空中回し蹴り。

【哀川潤:客室:vsビリー】

568 名前:世紀王シャドームーン ◆eFPVf3T9.6 :2006/11/26(日) 01:13:19

>>547
展望台に降り注ぐ蒼い稲妻―――――――

 「ガシャン―」無機質な金属音を響かせ、白銀の影が姿を現す。


……殺戮の宴。この場所に漂う闇に惹かれ…貴様も現れたのか?
矢車想よ。此処は快適なようだな………フフフ…。

【現在地:展望台 矢車の前に現れる】






569 名前:高木由美江:2006/11/26(日) 01:14:04

>>532>>554
あなやミステイク?……ワンスモア。普通に茶・赤毛っぽい女の子?
でもでもでも?ほら。赤毛って本人に言わせると例えようのないくらいサイアクだとか
聞いたり聞かなかったりするじゃない?
異端審問の基本は言いがかり、もとい、綿密な捜査が第一歩。
朱に滴る腹部を押さえつつ、柄に手をかけサジェスチョン。

「異端審問だ。覚えがあるだろう?ド腐れが」
鞘を相手に突き立てる。相手の異端の度合いを測る杓子のような威厳を持って。
「意義があるなら腕一本よこしな。抵抗しなければそれでアンタは人っていう事じゃない?」

570 名前:ハンス・ヨアヒム・マルセイユ ◆sLAdoLfKkE :2006/11/26(日) 01:14:58

>>522>>548>>558
全く、これは厄介だ。
確かに能力者としては三流、だが――獣性細胞のその性質は一部だけであっても厄介に過ぎる。
怪力とおそらくは再生。
並みの人間では太刀打ちなど叶うまい――

だが、そこに援軍が来た。
第七騎兵隊、と言うには少々華奢か。
だが、その能力は本物、そして――

「ちぃっ!」

思わず舌打ちが口をつく。
このままでは「おばさん」にも氷の矢が突き立つ。
それは――少々面白くない。

床に転がったまま、意識を集中する。
念ずるは一瞬の空間転移。
「おばさん」――ケイトを氷の矢の突き立つであろうコンマ数秒前に数秒間だけ別の空間に跳ばす。
今のボクならば、造作もないことだ――!

氷の矢が殺到する。
ケイトを、ブラッドを貫くはずのそれは――目標の一つを失い、そのままブラッドにのみ集中した。


【場所:展望室3Fへの階段】

571 名前:高木由美江:2006/11/26(日) 01:15:29

>>569 はリザ・ワイルドマン宛て、且つパーティールーム。失礼。

572 名前:飛竜 ◆HIRYUmxRKo :2006/11/26(日) 01:15:36

>>519>>551
 コーディーに背を向け、歩き出す。
「俺は操縦室に向かう。そこに俺の斬るべき相手がいる。付いて来たいのなら、好きにしろ」
 数歩歩いたところで立ち止まり、振り返った。
「付いてくるのなら、そこの女(>>519)を連れて行くか置いて行くか、決めてからだ。貴様の仲間なのだろう」

【現在位置:下層部倉庫、コーディーと対話中】

573 名前:ヴァーミリオン・CD・ヘイズ ◆/CD/iS.AAU :2006/11/26(日) 01:18:02

>>506 >>524 >>540

「―――ふぅ」

ヘイズの放った『破砕の領域』に下半身を丸ごと食い尽くされ。
少女の産み出した刃金の乱舞に上半身をずたずたにされ。
炎上して崩れ落ちる男の無残な姿を確認し、ヘイズは溜息を一つ吐く。

(警告。警告。演算素子に重大な負荷を確認)

ひっきりなしに鳴り続けるI-ブレインからのアラートメッセージ。
言われるまでもなく、脳髄から発せられる偏頭痛という形で、異常は現れている。
拳銃を仕舞い込んだ左手で頭を軽く抑えながら、うめく。

(たった二回の『破砕の領域』でこれか―――無理すればどうにかなるとはいえ、厳しいな)

これでは、彼の切り札である『虚無の領域』の使用すら危ぶまれる。
単なる『破砕の領域』の連続使用だけで、I-ブレインが強制停止しかねない。
この先の戦闘は、かなり厳しいものになりそうだ……と、そう考えたとき。


「それで……そこのあなた、敵ではなさそうね。
 レミィがグルマルキンにどこに連れて行かれたのか。分かる?」

横合いからかけられる「魔女」の声。
どうやらヘイズの行動は、彼女に言葉以上の誠意を示したらしい。
「敵」として認識されなかっただけでも、僥倖だった。

「レミィ? それは君の仲間か?
グルマルキン、ってのは例のナチどもの頭だな。先刻の演説で見た。
さてな……オレがここに来た時、丁度そこの吸血鬼の銃弾を浴びせられたんでな。
生憎、周囲に気を配る余裕はなかったよ」

お手上げ、と言うように、両手を挙げて肩をすくめながら言う。

「だが―――君の友人がグルマルキンに攫われてる、って言うんなら、
オレと君の利害は一致してるぞ。オレは一応、この飛行船の護衛を頼まれた身でね……
敵の総大将を倒せれば、話は実に手っ取り早く片付くな」

微笑とともに、手を差し出す。

「どうだ? そっちさえ良ければ、俺と一緒に行くか。
少なくとも、足手まといにはならんと思うけどな? 小さな『魔女』さんよ」



574 名前:レミア・シルヴェスタW世 ◆MVlNEREMIA :2006/11/26(日) 01:18:28

>>564
息をしている、食物を食う。
それが生物の証。

しかし―――私は

間違いなく生物というカテゴリーから外れているだろう。
丈夫なんてものじゃない、不死身を会得しているのだから。

>「…ああ、冷める前にさっさとぶちかますか」

「ええ、早くしないと逃げられかねないわね。
武器も確保しないといけないし…」

奥の方のトランクを指す。
私が飛行船に持ち込んだ装備。

「あのトランクを持ってきて…
少しは力になると思うから…」

【現在地:格納庫】



575 名前:ジェームズ・ホワン(M) ◆ko.IhfiTmE :2006/11/26(日) 01:21:50

>>566
「そういうわけで、すみませんがこちらのお客さまのご協力を仰ぐことと相成りました。
あなたはどうしますか?」

小娘が俺を見る…その目はやけに温もりを感じさせる目は何故か兄貴を思い出させた
だから、俺は。
「悪いな…」
ただそれだけを呟くと、差し伸べられた手を払いのけ、あいつらとは逆の方へと向かう。
再生能力が上手く機能してないのか、スーツの下がぬちゃりと濡れた感触。
「クソ…俺も年貢の納め時か…」

<現在位置:客室>

576 名前:Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA :2006/11/26(日) 01:21:59

>>560

 距離を測る。
 一歩。まだ一歩。
 足りない――この距離では、まだ足りない。

 だが、自壊寸前の高効率駆動を呼び無くされている事象誘導機関は、魔力回路の速やかな解放を要求
している。心臓の鼓動の如く明滅する魔法陣――それにともなってひどくなる頭痛と闘いながらも、戦う為
の機械と化した思考は、その要求を蹴り続けていた。

 まだ。まだ足りない。まだ、まだ、まだ、まだ……!

 そして。

 その一歩を踏み込んだ。

「<マグナ・ブラスト>――」

 行ける。届いた。そう直感する。
 男の視線。何の意志も移さない視線が、こちらのスタッフを見据えている。
 それは、こちらを脅威だと知覚したと言うことだ。こちらの一撃が、彼にダメージを与えうるモノだと認めた
と言うことだ。――この一撃は、彼に届きうると言うことだ。

「――イグジストっ!!」

 スタッフの先端から、辛うじて視覚化された魔力が解放される。
 事象誘導機関によって形を与えられた魔力は、あらかじめ指定されたターゲットへと向かい走り抜ける。
 術式の着弾と同時、魔力は解放され、第二の業火が顕現する。

 それは、既定の事実。その、はずだった。だが――

 「……?」

 聞こえた。確かに聞こえた。
 これは――銃声……?

 そして。
 銃弾と魔法が。互いの軌道の直上で交わり。

 その中央で、破滅的とも思える紅蓮を顕現させる――!

「う――うおおおおおおおおっ!?」

 己の魔法に巻き込まれる形で。
 熱と衝撃とにあぶられながら、俺は、壁際まで無様に吹き飛ばされていた。

【パーティールーム:大尉と交戦中】

577 名前:矢車想 ◆dMMbM6zhZs :2006/11/26(日) 01:24:25

>>568
待ってたぞ…俺の相手はお前か。


銀色の化け物を見るや否や…俺は無言で走り込んでいく。

−左のローリングソバットで虚をつき右ミドルで怪物の肩を蹴り飛ばす−


どうせ俺は…大殲の日向は歩けない。

578 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus :2006/11/26(日) 01:25:14

>>563

悔しげな声が聞こえる。
止めを、と言う所でこれでは、無理もないが。

「……形勢逆転、と言う所かしら。
 貴女、詰めが甘いって言われた事ない?」

掴まれた腕を振り払い、逆に掴んで引き寄せる。
突き立った刀を抜くと、上下を入れ替えた。

「ともあれ、これでチェックメイト」

ぼんやりと、こちらを睨みつける女の顔が見える。
そう思ったら、急速に視界が戻っていく。

「……ただ殺すだけでは芸が無いものね。
 私の目を見なさい。夜の女王の目を、夢魔を統べる者の目を。
 貶めてあげるわ、『最も気高き刃』さん――――」

視線は外さず。
押し倒した体勢のまま薄く笑って、唇を奪った。


【中層部:無人だった客室で交戦中】

579 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/26(日) 01:25:41

>>545>>549>>560>>576

 巨大な刃を枯れ枝でも扱うかのように振り回せば、喰屍鬼たちの頭蓋があっけないほどにひしゃげ、潰れていきます。
 優雅さとはほど遠い攻撃ですが、重量感溢れる一撃は、確実に彼らの動きを止めていきました。

(……でも、数が多すぎるっ! このままじゃ、レイオットさんが……!)

 わたしは大剣(グレートソード)を背中に納め、巨大な棍棒(クラブ)を手に取りました。
 ゆっくり階段を降りていく時間も、喰屍鬼を相手にしている時間もありません。

 それならば……!

「ぬおおおおおおおおおお!!!!」

 わたしはありったけの雄叫びと共に跳躍し……床に向けて渾身のクラブの一撃を放ちました。

 ……ビシ。メキメキ……
 喰屍鬼(グール)たちの激しい死闘のため、材質的にも限界が来ていたっぽい床は音を立ててひび割れていき……
わたしの全身をかけた一撃の衝撃も手伝って……多分わたし(の装備)が重かったせいもあるんでしょうけど……
勢い良く陥没しました!

(今行きますっ! どうか……間に合って下さい、レイオットさん!!)

【イリーナ・フォウリー:現在地:客室→パーティールームに『強引に』帰還、つーか落下・笑】

580 名前:夜雀の怪『ミスティア・ローレライ』 ◆8hOOMYSTIA :2006/11/26(日) 01:25:50

>>562
「この! そろそろ! 当たれ!」

鼠のように逃げ回るレップに苛立ちながら、当たるを幸いの妖弾を打ち込む。
そして、ついにそれらの一つが彼の足を抉った。

「ヒット! 南無さ、ん!?」

とどめと大物を叩き付けようとしたミスティアに、果敢に狙いを付ける狙撃手。
銃口の先の弾までが見える。
避けられない。

ミスティアの居た辺りをナパームの火が照らす。

「ツケ追加! っ痛い、熱い、殺す!」

直撃よりはマシと銃弾をなぎ払った腕を失い、怒りに燃えたミスティアが猛禽そのものの速度で甲板に飛来した。

「あなたが私にくれたもの〜、とびきりホットなナパーム弾〜♪ 挽肉にしてやるわ!」

残った鉤爪を振り上げてレップに迫る。


【中層部:甲板後部でレップと戦闘中、左腕損傷】

581 名前:ビリー・龍 ◆D727Bb9L.2 :2006/11/26(日) 01:28:13

>>567
 蹴りが俺のこめかみを正確にヒットした。
 10センチばかり頭がかしぐ。俺は鼻で笑った。
 こんなものでは、どうにもなりはしないのだ。

「ハン……バカヤロウ。人間相手と勘違いすんな。
 そんな蹴りじゃどうにもならんぜ?」

 俺は足元からナイフを拾い上げた。
 ただの果物ナイフだ、たいして切れ味は良くないが、まあいい。

 そいつで俺は、手首の関節から己が左手首を切り落とした。

 血が吹き出る。血流とともに、血管が、骨が、肉芽が盛り上がる。
 ほんの数秒で、左手首は再生――いや復元した。
 わからせるにゃ、これが一番だった。

 血塗れのナイフを相手の足元に投げ出す。

「やるなら、ここ――」
 心臓を指差した。

「でなきゃ、ここだ」
 後頭部を指差す。まあ、こっちは念入りに潰す必要があるが。

「殺せなきゃ、足元のそいつが死ぬだけだぜ?」
 そうしておいて、スタンスを広げ、構えをとる。

 さあ、どこから千切ってやろうか。
 俺は踏み込み、彼女の手首をとりに行った。
 文字通り、千切りとるために。

(客室エリア)

582 名前:パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU :2006/11/26(日) 01:30:05

>>271 >>277 >>301 >>315 >>331 >>349 >>334 >>366 >>393 >>430 >>432
>>445 >>474 >>502 >>506 >>524 >>540 >>573

「親友よ」

レミリアとの関係にはこだわりがあるようだった。

「そう……残念。私より前にここに来ていたようだから、少しは心当たりがあるかと思ったのだけれど」

そういうと、彼女は大げさに溜息をついた。
ひょっとしたら疲労の分も混じっていたのかもしれないが、判別はできない。

「そうね……あなたのような戦闘技能者が来てくれるなら心強いわ。ミス・グルマルキンには私も因縁があるしね」

そういうと、彼女は手を伸ばし、ヘイズの握手の手にそっと触れた。

「よろしく。ええと……指鳴らし」

彼女のヘイズの認識はそれだったようだ。酷い話である。

[現在位置:回廊]

583 名前:ロンギヌス13 ◆13th/X9pTg :2006/11/26(日) 01:31:06

>>524 >>573 >>582

「――回廊方面で友軍の被撃墜報告を確認」
「所詮は“出来損ない”か。もう少しは持ってくれると思っていたがな」

様々な暴威が乱れ飛ぶ周辺空域。
其処にあって、彼等はなお『待機命令』を守り続けていた。

何故か。

それは船外だけに留めず、船内にも混乱をもたらす為に他ならない。
肝心の船内も狂人揃いではあるが――何分パワーバランスという物は計算し辛い。

船内にも満遍なく、混乱を。狂熱を。その為に彼等は機を待ち続けていた。

「これで回廊が手薄――大手を振って殴り込めるという訳だ。
 続け、ツヴェルフ! ドライツェーン!」

ヴリル・エンジンの出力を上昇。それに伴ってプロペラの回転数も上昇、速度が跳ね上がる。
回廊方面に敵影を確認した三機は聖槍を突き出し、真っ直ぐに飛翔する。

(エルフ、ツヴェルフ、ドライツェーン回廊へ)
【周辺空域】

584 名前:リザ・ワイルドマン:2006/11/26(日) 01:31:25

>>513>>532>>569

テーブルの向こうに居た声の主は―――――シスターだった。
東洋人の顔をした、どことなく凛々しいけれど妙な雰囲気を持つ。

ただしその手には刀が握られていたのだけれども。

その姿に一瞬、安堵した。先ほどは奇妙な台詞を聞かせてくれたシスターだが
まぁ、性格のひねたシスターという奴も居てもおかしくは無いだろう。

だが、その安堵は次の台詞に一瞬で打ち砕かれた。

『異端審問だ。覚えがあるだろう?ド腐れが』

『意義があるなら腕一本よこしな。抵抗しなければそれでアンタは人っていう事じゃない?』

 いつの時代から来たんだよ。

声には出さないが心の中で毒づく。出現する時代を400年ぐらい間違ってないか?

楽しい旅行の筈が中世の忌まわしき物との出会いに変わってしまった。

突き立てられた鞘にビビりもしたし、ド腐れという言葉にむかつきもしたが、
深く息を自らを落ち着かせ目の前の相手――――由美江に返事を返す。

「…あたしはな…半分は人間なんだよ…それにこの船には観光で乗り込んだ
 だけだぜ?」

半分は人間、そしてもう半分はそれ以外の物。現代のキリスト教が
隣人愛と寛容に満ちていればこの場はやり過ごせるだろう。

 「なんだっけ?ほらあんた等の偉い人たちが、隣人愛ってのを
  説いてるだろ。この場は何も無かった事にしてくれないか?」

<現在位置:パーティールーム>

585 名前:大尉ブラッド ◆/Z/IFjxeWc :2006/11/26(日) 01:31:56

目覚めたときには、あの男は自分で自分を殺していた。
それが、あまりに滑稽だった。なんのために化け物になったのか。
それだけが心残りだった。そして叶わないやるせなさだけが残った。
そうして、決して叶わない夢へと自分を駆り立て。心はいつしかすり減っていき。
今は第四帝國の大尉。そして、生ける屍、死した生者。目の前のモノを屠る惨殺者。

>>548>>558>>570
「安心したまえ、お嬢さん。私のウイルスは不活性、感染力を失してしまっているのだよ。
 死んだ後に愛おしい家族を牙にかけると言うことはない。

 だから……無駄に抵抗せずに、死んでくれないだろうか?」

そうして飛んでくる母親、その後ろから援軍はやってきた。
詠唱されて発現する魔術、殺到する氷の矢。しかしそれは目の前の母親………

をすり抜けて、ブラッドの身体を貫いたが、わずか数秒。
ブラッドは元の身体を取り戻していた。傷がついたのは軍服だけ。

「ふむ、魔術師か。良い攻撃だと褒めてはやろう。だがな、つい先刻大量の食事がとれてな?
 ちょっとやそっとのことでは私は斃れんさ。

 そして、お嬢さんの言うことは本当のようだな。
 確かに、その子供は貴様の息子にしては出来すぎている。鳶が鷹をとは言うが、あまりに異質だ。」

ブラッドは見逃していなかった。あの少年は空間をねじ曲げた。
それが何を意味しているかはまだわからなかったが、厄介なものであるという認識は出来た。

「これでは仕方がない、食事をもう一度だけとっておくか・・・。
 魔術師の血を頂けば、次はどんな化け物になれるのだろうな!」

走る。ただ、それだけで良い。不死者はそれで良い。死の恐怖は抱かない。
─────目の前にあるのは、我が食料に他ならない。だから、走れ!
もう一度、その圧倒的な暴力を持って、ただ前に進み、ただ喰らうだけ!

【場所:展望室3Fへの階段】

586 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/26(日) 01:34:33


>>559
>>540>>573
 漆黒の風が回廊に走った。
 風はマントの姿を取り、それが無造作に羽ばたかれる。
 転移の呪文により、キッチンから瞬時に移動してきたグルマルキンが、
パチュリー・ノーレッジの前に姿を現した。

 回廊―――先刻までモリガンとともに歩いていた場所を見渡す。

「―――ルークは死んだか」
 ふん、と鼻を鳴らす。
「パチュリー・ノーレッジ―――さすがは全ての知を司ると言われるだけはある
……あの程度のニューボーンでは相手にもならんか」

 有能な手駒を一つ失ったはずのグルマルキンだが、焦燥の色はない。
 どころか、全身を支配する歓喜を必死で押し隠しているように見えた。
 つまりは余裕で満ちているのだ。

 ふと、グルマルキンはパチュリーの隣に立つ男―――知識の魔女と
握手を交えた姿勢のまま、こっちを見ている―――の存在に気付く。
 が、すぐに興味を無くした。
 今の彼女の狙いはパチュリーだけだ。

「しかし、此度の饗宴愉しんでくれているみたいだな。大変結構。そうで
なくては、私も招待した甲斐がない。―――さて」

 グルマルキンの顔に走る喜悦。

「そろそろメインディッシュのご開帳といこう」

 ゆっくりとマントの裾を持ち上げる。
 中から姿を見せるのは紅の悪魔。
 長身のグルマルキンに抱かれて、マントの内側にすっぽりと隠れていた。

「……どうかね? かつての貴様の親友だ」
 いまにも牙を剥きそうな笑顔。
「そして今は―――私の女だ」

 見せつけるように、レミリアの頬に舌を這わせた。

【中層部:回廊】 

587 名前:レップ ◆ZcW/SSsF6Y :2006/11/26(日) 01:35:50

>>580 ミスティア・ローレライ

猛スピードで迫る魔鳥。
倒れるようにして避けるが、避けきれない

緑色の爪が迫り、レップの顔をかすめる。
熊にでも殴られたような衝撃。抉り取られる左目。

崩れ落ちるからだ。
スリングが切れ背負っていた突撃銃が甲板に落ちる。

まだだ。まだやれる。

強引に体を起こす。
両手ででジャガイモつぶし―――柄つき手榴弾―――を取り出すと、
指のあいだに四本づつまとめてはさみローレライへ向けて思いっきり投げた。

同時に右手で甲板に転がっているStG44をつかむと安全装置を解除。

放物線を描いて宙を舞う手榴弾に銃撃をくわえる。

空中爆破(ハイバースト)。

破片と爆風が凶器となり、
ローレライへ襲い掛かる。

【レップ:左目失目】
【中層部:甲板後部でローレライと戦闘中】



588 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2006/11/26(日) 01:35:51

>>509 >>528 >>534 >>543 >>555 >>561(大空戦)

 腕を指揮するように振るたび、虹が砕けて星が降る。
 光と音の織り成す滅びの交響曲がそこにある。
 私が奏でている。闘いの歌を。
 そして―――いよいよダンサーの出番。
 さあ、私と一緒に、

「きゃっ!!」

 自分の周りが、一瞬で炎に包まれた。
 スペルを展開していたおかげで傷はない。
 けれど、スターボウブレイクは壊れて使えなくなってしまった。
 まあ、解除するつもりだったから問題はないけど―――

「―――ッ!?」

 続いて突進してくる片腕の甲冑姿。それはまるで闘うことを諦めない狂った戦士のよう。
 ……嫌な気配がする。
 とっさに障壁を張る。
 再び、光り輝く花が咲いた。
 そう、爆発した。
 そしてその隙を縫って、弾が走る走る走る。

「っととと!!」

 もう少し遅れていたらゲームオーバーだった。
 一瞬前までいた場所を五本の火線が突っ込んでいく。
 けれど、最も過激なダンスは終わらない。そう、まだ終わらない。

「……っと、ホーミング!?」

 どこかで見たような丸い物体。数珠玉だったか陰陽玉だったか。
 それが八つ、かなり出鱈目な機動を描いて私に迫る。
 ……普通にこっちに向かって飛んでくるなら避けようもあるけど。
 これはちょっと大変。

「よーし、ついてらっしゃい!!」

 私は身を翻すと、誘導弾をひきつける。
 速度を増して迫る玉は身体を翻して避ける。
 絡み付くように私を縛る機動を描く玉は無理やり速度を落として追い越させる。
 くるくると、世界が巡って回る。その視界の中で八つの玉が踊っている。

「とりあえず―――ひとつふたつみっつーっ!!」

 光が連続して走る。ただ単純に魔力を収束させて撃つだけの簡単な魔法。
 それが誘導弾に撃ち込まれ、吹き飛ばしては砕く。
 篭目が切れる。
 私はそこに向かって真っ直ぐに飛んだ。
 ―――振り切る。振り切れる。振り切った。

「あと、少し―――!!」

 その勢いのまま空中でターン。ずいぶんとぼろぼろになったドレスが翻る。
 見えた。最後の相手。
 そう、ショウのトリに相応しい、空で踊るガーゴイル。
 無数の火線がほとばしる。
 それを―――避けようがない。
 だから、突っ込む。そこに隙間があると信じて。

「あはっ、あははははははははははははっ、いやっほー!!」

 あちこちに掠めたり当たったりして痛い。
 でもそれより楽しいから気にならない。

「いくよ―――避けて見せてちょうだい!?」

 鋭く伸ばした右の手に、再び炎の剣を生む。
 それを真っ直ぐガーゴイル達に構えて―――

「いっけええええええええええええええええええええ!!!」

 旋回しながら突っ込んでいく。
 紅い炎が渦を巻き、一つの槍となって、サーカスの一団へと突っ込んだ。


【周辺宙域:大空戦・リヒトホーフェンサーカスに突撃】

589 名前:ヴァルトラウテ/タッツェルヴルム ◆SoRDENIEpc :2006/11/26(日) 01:37:51


 >>557 >>565 リゾット コダマ

 眼下に着地する礼服姿の男。
 先刻までタッツェルヴルムのいた場所だ。
 一条の矢の如き蹴りを足下に、その巨体からは信じられない動きでタッツェルヴルムは飛んだ。
 しかし

「呼吸音、心拍――消えた?
 動体反応……違う、質量が小さすぎる」

 ヴァルトラウテの声に焦燥の色が浮かぶ。
 タッツェルヴルムは、ただ一言、問うた。

「酸素濃度の低い場所は? もしくは鉄イオン濃度の高い場所は」
「位置は変わっていないわ。
 情報、仰角そのまま、位置固定。距離5m」
 「了解ヤボール

 純粋な鉄は高いイオン化傾向を示す。
 つまり、著しい酸化傾向と、それによる鉄イオンの放出。

 脚部から白煙が立ち上る。
 ロケットエンジンに点火、急速に距離を縮めると勢いもそのままに拳を叩き付けた。
 着地に備え、左腕の機関砲は銃口を足下に向ける。

 【場所:展望台1F、パーティルーム コダマ・リゾットとの戦闘】
 

590 名前:イグニス ◆IgnisC3BW6 :2006/11/26(日) 01:38:18

>>578

「む――ンッ!?」

 唇に、生暖かい感触。
 唇の隙間から入り込んできた軟体動物のような何か。それが舌だ、と理解できた瞬間。私の意識は沸騰
した。だが――動かない。いや、動けない。視界から身体に入り込んでくる何か。

 だんだんと膜が張られるように、意識がどこかに遠のいていく。

 ”吸われていく”――そう悟ったときには、ぷつり、と、何もかもが暗闇に沈み込んでいた。








 ――背中が、ざわついている。

【中層部・モリガンと交戦中】

591 名前:麻宮アテナ:2006/11/26(日) 01:40:27

>>575
 払われた手。この世の中なにもかも円く、とはいきません。
それでも当面の戦いは回避できました。良かったと大喜びするべきでしょう。
でも。

「……でも、あなたはどこへ行くんですか?」

 私の手についた血は私のものじゃない。
あの人、ずいぶんムリしてる。考えてみれば当たり前ですよね。
3対1なんて私なら死んじゃってるかも。それだけの能力がありながら、

「あなたは、どこへ行きたいんですか?」

 去っていく背中に向かって、やっぱり私は問わずにはいられませんでした。



<現在位置:客室>


592 名前:大尉:2006/11/26(日) 01:43:55

>>579 (イリーナ・フォウリー)
>>576 (レイオット・スタインバーグ)

 部屋中に響く轟音
 部屋中を覆う閃光

 大尉の身体もゴムボールの様に飛んでいき、壁に叩きつけられる。



 …………


 何事もなかった様にむくりと大尉は起き上がる。
 手にあるメーターモーゼルはその特長ともいえる銃身は無く、嘗て銃だった
 という証明は残るグリップの部分のみが示している。
 軍帽は吹き飛び、顔の半分は焼け爛れている。三十六年型オーバーコートも
 上半身部分は丸々焼けこげてしまっている。
 そこから見える身体も肉が焼け爛れ、赤黒く染まっている。

 ――――それでも、大尉の瞳は変わらず吹き飛んだレイオットの方を見据えていた。

 こつ
   こつ
     こつ

 大尉の軍靴の音が部屋に響く。レイオットがさっき詰めようとした間合いを今度は
 大尉が詰めていた、悠然と。

       こつ
         こつ
           ずごん
              こつ
                こつ

 先ほどの少女、イリーナが上から降ってきた。それでも大尉の歩く事には変化は無い。
 変化があるとすれば……

                  こつ      メリ
                    こつ    メリメリ
                      こつ  メリメリメリ

 大尉の人間だった顔が、上半身が毛むくじゃらに、指には鋭い刃の様の爪が生えていた事だ。
 『最後の大隊』の真の『ヴェアヴォルフ』が此処に今その姿を現した……!

593 名前:世紀王シャドームーン ◆eFPVf3T9.6 :2006/11/26(日) 01:43:57

>>577
…フッ…お前は相当獲物≠ノ飢えていたようだな―――― ぬん!!

白銀の世紀王は全く微動だにせず蹴りを受け止める。
そして男の顔面を恐るべき力で掴み上げ、後方に投げ飛ばしてしまった―

此処には誰も来る事はあるまい……今宵限りの宴…
貴様や俺に相応しい場所だ。 …貴様の闇を見せてみろ。

世紀王がその赤い刀身を持つ剣で切り裂かんと迫る――

【展望台:矢車と交戦】

594 名前:ゲーニッツ:2006/11/26(日) 01:43:58

>>566
く…ふふふふ…ははははははははは!
(アテナの言葉を聞いて、頭を抑えて俯いたと思ったら、高笑いを始める)

実に面白いことを言ってくれますね、アテナさんとやら…。
そんな青臭い言葉を平気で吐ける者がまだ居たとは…。
ククク、神父の誓いですか…。
そんなものはとっくの昔に捨てました。
この世の中に、まともなことなんてほとんど有りはしないんですよ。
日々先々で起こる混乱、あまねくカオス…。
これが世界の現実というものです。
それを整えるためには、コスモスとするには、オロチの力が必要なのです。
オロチこそ、我が神。
神父という職など、その建前に過ぎないのです。
(目を閉じて、口に笑いを浮かべながらアテナを指差し、言い放つ)

どうしましたか、組む気が失せましたか?

>>575
やれやれ、死に逝く者を止める手立てはありません…。
せめて、あなたが本望の最期を迎えられるよう、神に祈っています。

595 名前:哀川潤 ◆MzXQXe8zTc :2006/11/26(日) 01:47:39

>>581

左手を切り落とすパフォーマンス、生えて来る左の手。
まるで何処かの漫画の緑色の宇宙人の様だ。
そしてナイフを投げて遣す。

「くははは、やっっっと楽しくなって来たな。
あたしはな、不利に成る程燃えるってタイプなんだぜ?
お前も正々堂々って言ったタイプか?益々燃えてくるぜ?」

心底面白おかしいと言った風に笑う。
ナイフなど要る訳が無い。

「さーって。どーすっか……なっ!」

声と同時に左右同時で思いっきり胸に掌底をブチ込む――

【哀川潤:客室:引き続きvsビリー】

596 名前:津村斗貴子 ◆TOKiKoStGs :2006/11/26(日) 01:52:34

閉じた瞼の裏に温もりを感じる。
核鉄を通じて増幅された生命力が、静かに傷を癒していく。

「――よし、治癒終了」

瞼を開き、目の前の核鉄を傷口から取り上げる。
無論完璧な治癒には程遠い状況だが、今はそんなことを言っている場合ではない。
今喪われた一刻が、何人の命に化けるか分からない状況だ。
だとしたら、今やるべきことはただ一つ。

「一つでも多くの化物をブチ殺す!」

そう呟くと、周りを見回す。
戦法は前回と変わらない不意打ち。
目標――発見。対処――選定。行動――開始!



>>569>>584

「――あの、すみませんシスター」

近づいて、おずおずと話しかける。
前の学園の制服を着てきたのが幸いした。
その制服の各所にある十字のマークを見せながら、

「私、キリスト教系の学園に通ってるんです。
 ですから、シスターのお話を聞きたくて。
 いえ、お話でなくてもいいんです。お声だけでも是非。
 そう、」

一息。

「お前の呻き声を聞かせろ、化物ッ!」

瞬時に練成された四本の刃が、シスターの頭部目掛けて奔った。


<現在位置:パーティルーム 由美江、リザと戦闘開始>





597 名前:ケイト・コナー ◆g6orsKate. :2006/11/26(日) 01:52:48

>>558>>570

 氷の矢が私たちへと向かい――私に向かった矢だけが消える。
 今のは……魔術? 実際目にするのは初めてね。ハリー・ポッターが大好きなアリーが
見たら喜ぶかしら?

 放ったのは、そのままハロウィンにでも参加できそうな格好の女性。
 うん、あれはきっと間違いなく魔女だ。まったく、この船が一体全体どうなっているんだ
ろう。
それより、問題なのは彼女が敵か味方かということ。私に向かった氷の矢を消してれ
たので、敵ではない……と思うのだけど。


>>585
>確かに、その子供は貴様の息子にしては出来すぎている。

 思わず動きを止めた私を、いや、その後ろの子を見ながら軍人は妙な事を口走る。
 まあヴァンパイアの言うことなんて一々真に受けても仕方ないのだけど。

 相手は目標をあの魔女に代えたようだ。
 流石に異端とはいえ命の恩人を見過ごす訳にはいかないわね。それに、私じゃ無理で
も彼女なら、この化け物を何とかできるかもしれない。

 先ほどの再生を見る限り、間接を砕いたところで意味はなさそう。なら――


 再び一気に駆け、足払いを狙う。


【現在位置:展望室3Fへの階段】


598 名前:ロタール・フォン・リヒトフォーフェン:2006/11/26(日) 01:52:53


>>543>>588 フランドール大決戦

 炎の渦――騎兵の突進――無数の硬球による乱打――そして機関銃の掃射。
 集中攻撃。まさしく集中攻撃だった。
 それぞれが決死の思いを託して、この魔王を潰しに掛かったのだ。
 もはや枢軸国も連合国も無かった。生きるための闘争だ。

 ―――だが、それでも。
 それでもこの女は―――

「これに耐えきるのか?!」バウマー軍曹の悲鳴。
 ロタールの舌打ち。神に祈りたいのはこっちも同じだ。
 煉獄の炎を纏った魔王―――こちらを照準に定めて、自分自身を射出。
 相対速度で距離は一気に詰まる。
 バウマーは慌てて上昇―――間に合わず一瞬にして消し炭と化す。
 ロタールの悪態。「馬鹿め」

〈バウマー→死亡〉

 魔王は些かも速度を緩めずそのままロタール目掛けて突貫する。
 互いに速度を出しすぎている。ターンもローリングも間に合わない。
 ロタールに許された選択―――銃身が焼き切れるまで撃ちまくるしかない。
 魔王同様、ロタールも自らの身体を弾丸に変えて突進した。

 吐き出される無数の空薬莢。正確無比なロタールの射撃。
 当たっているはずだ―――五割以上は命中しているはずだ。
 それでもこの魔王は止まらない。なんてことだ!

「しょうがねえ。ブルーマックスはくれてやる!」

 そして正面衝突。砕け散る四肢/燃え上がる肉片/喜悦の弧を描く口元。
 半身を失いながらロタールはその最後の足掻きで、フランドールの身体に
取りついた。全身を侵す炎/あと数秒で灰と化す。
 だけど、その前に―――焼け爛れた口元から長牙が覗いた。
 狙うは口元。

 ロタール・フォン・リヒトフォーフェン。
 撃墜王の矜持を賭けた最後の足掻き。

【場所:フランドール・スカーレット】

599 名前:夜雀の怪『ミスティア・ローレライ』 ◆8hOOMYSTIA :2006/11/26(日) 01:53:08

>>587
鉤爪がレップの左目を抉り取る。
倒れ込むところを蹴り付けようとし、放り投げられた物体に目が行く。

今日食らった爆発物は既に数発。
当たりは付けられたが、片腕の分手数が遅い。

が。

彼もまた失った左目のせいで狙いが甘い。
爆発を受けるのを覚悟でレップへと突進し、

「でも実はこれ、サシの勝負じゃないの〜。知ってた?」

追いついてきた使い魔たちが、妖気の弾丸を放って援護した。
同時にミスティアの背中から、爆風が襲いかかる。


【中層部:甲板後部でレップと戦闘中、ただいま絶賛爆風受け】

600 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/26(日) 01:54:26

>>576>>592

「あいたたた……と、お待たせしましたレイオットさん! 無事……じゃ、なさそうですね」

 さすがに、3階から一気に1階に自由落下というのはいささか無茶だったみたいです。
 パーティールームは真っ黒焦げになり、先刻の男の人……大尉……は、さらに獣じみた外見と
殺気を撒き散らしています。

「むうん、貴方……ワーウルフ(人狼)だったんですね!」

 わたしの言葉にも、大尉は無言のまま、無表情のまま……無造作に間合いを詰めてきます。
 その威圧感に、恐怖を感じないとは言いませんが……さっきみたいに無鉄砲に突っ込んでいく愚だけは
避けなければいけません。わたし独りじゃ、敵いっこないってのは身にしみて分かりましたし。

「レイオットさん! 大丈夫ですか!? 動けますかっ!?」

 わたしは獣人化した大尉に、銀の大剣(グレートソード)を構えつつ、大声で後ろに呼びかけました。

【イリーナ・フォウリー:現在地:パーティールームにて、本気モードの大尉と交戦開始!】

601 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus :2006/11/26(日) 01:54:47

>>590

味わう。
蕩けるようで熱く、そして甘い。
思わず吸い過ぎてしまう前に唇を離すのが、惜しいほどに。

「……どう? 私の口付けは――――」

ぐったりとした女にそう問い掛け、異変に気付く。
ぐったりと、ではない。
意識が無いのだ。そこまで精を奪ってはいないのに。
そして、異変はそれだけではなかった。

「これは……何?」

女の気配が変質していく。
人から、そうでないものへ。

――備えていた方が良さそうね。

何時の間にか解けた鞭を手に、立ち上がる。
横たわった女に、視線を注いだまま。


【中層部:無人だった客室で交戦中】

602 名前:コーディー:2006/11/26(日) 01:55:20

>>574
「…あれか?」

奥にある黒光りする奇妙なアレ…。
とりあえず、言われた通りに取りに行く事にする。
…サイズからしてそれなりに色んなモノが入りそうだな。
刃物なり銃なり、ナイフなり、ナイフなり…ん?

「…ナイフでも入ってんのかい?」

ふと、思い浮んだその武器の名前を呟いた。そういや何か足りないなと
思ったソレの名前を

>>572
「操縦室…ま、メインを乗っ取ってねぇでハイジャックもクソも無ぇか」

上等…それだけ聞けりゃ充分だ。コイツも行くみたいだが、まあこの際
考えずにその首謀者ぶっ飛ばしに行くか。だが…
レミアを見る。見る限りじゃかなり手酷い傷は負っている。
命の危機かどうかは知らんが、痛み具合を見るにまともに動くにはまだ無理が
有るな、とは思う。
放るか、連れて行くか…

「…どうしたい?」(>>574)
コイツの意見を聞いてみた


603 名前:コーディー:2006/11/26(日) 01:56:28

貼り忘れ
【現在位置 下層部倉庫 飛竜 レミアと会話中】

604 名前:ヴァーミリオン・CD・ヘイズ ◆/CD/iS.AAU :2006/11/26(日) 01:56:49

>>582 >>583 >>586

「ま、そういうわけだ。こちらこそよろし……指鳴らし?」

あまりにあんまりな言い様に、思わず眉根を寄せるヘイズ。

「そ、その呼び名はちと勘弁してほしいもんだ…
オレは、ヴァーミリオン・CD・ヘイズ―――ヘイズ、で構わん。
で、キミの名前は―――」

そこまでを言ったところで。
ヘイズが、彼女の名を聞く機会は、失われた。

I-ブレインが本来有り得ない情報の変化を感知。
空間の捩れ―――小型のワーム・ホールの展開。
その不自然の塊、そう、『魔術』の結果から現れたのは。


「―――ルークは死んだか」

底冷えのするハスキーボイスと、漆黒のマントを羽織った美女。
つい先刻、客室のモニタから見た、美しくも凶悪な嬉色に満ちた顔。

この馬鹿げた狂宴の主催者―――グルマルキン・フォン・シュティーベル。

「……まさか、親玉自ら姿を見せるとは予測できなかった、、、、、、、、な」

握手を解き、たった今出現した相手に向き直る。

「だが、手間が省けた。生憎こっちも、面倒なのは嫌いでな」

左手をジャケットの懐に忍ばせて、予断なく周囲を見渡す。
回廊の窓からは、急速にこちらに接近する敵影。
まだ正確な姿は確認できないが、航空戦力の一部隊―――飛行歩兵、か。

更に、喜悦の表情とともに、グルマルキンのマントの中から現れたのは―――

「親友って……まさか、彼女、か?」

傍らの魔女に問う。
返答は無い。無いが―――
その無表情に明確に浮かぶ驚愕が、そのまま答えと成った。


「……やっぱこりゃ、面倒な事になってきやがった、か」

苦笑に濃い緊張と疲労の色を浮かべ、ヘイズは一人呟いた。

605 名前:キックホッパー ◆dMMbM6zhZs :2006/11/26(日) 01:57:38

>>593
ごふっ…うはっ…ハハハ!!

お前、笑え。笑えよ…。
血を拭い舐めながら俺は笑う。
−笑ったな…はぁ〜はは。−
ホッパーゼクタが俺の元へ現れ…
−ピョン ピョン−

「…変身。」
俺の体が変わる。
緑色の地獄の戦士へ…

ハァ〜アハハハ!!!

右ロ−から左ミドル、流れるような連続技ならフェイントの右ハイを放つ

606 名前:ビリー・龍 ◆D727Bb9L.2 :2006/11/26(日) 01:59:08

>>595
 俺は両掌を受け落とした。心臓狙いか。
 胸をこすらせて腹に。腹部で受ける。
――衝撃。たいしたこたぁ、ない。それを腹筋で抑える。
 縮まった間合いで、右腕を伸ばす。

 首筋狙いだ。そこになにがあるか。血の通った管。
 ノって来た。流血。誘われるように。
 右の二本抜き手。

(客室エリア)

607 名前:Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA :2006/11/26(日) 02:02:09

>>592>>600

「くっ――」

 爆発の衝撃で意識を失い、そして壁に叩き付けられることで目が覚めた。
 奴は――生きている。
 魔法の射線を銃弾で遮るという神業を見せた挙げ句、俺と同様に爆発に巻き込まれながらも――
まったくの無傷で、奴は、

「……いや」

 ……無傷どころの話ではない。
 ゆっくりと歩を進めながらも変貌を遂げるその姿は、その。
 正しく、化け物のそれだった。

「――冗談きついぜ」

 炎にあぶられたためか、声がかすれている。ゆっくりと立ち上がる――その時、視界に見慣れた、あるい
は見慣れないモノが映った。甲冑を纏った――先ほどの、少女の姿。

「……また随分と物騒な出で立ちだな」

 大丈夫か、と言う問いに、そんな言葉で返事を返す。
 さて――まだ地獄は終わりそうもない。

 にぃ、と思わず笑いを浮かべながら、俺はスタッフを構えなおした。

【パーティールーム:大尉と交戦中。残り拘束度端子:12】


608 名前:& ◆ZbPpNmhcfc :2006/11/26(日) 02:03:24

>>566
あなたにまだ組む気があるのなら、操縦室に向かうのはどうですか?

(聖書を広げ、目を通しながら提案する)

あそこならば、この飛行船の操作が可能かもしれません。
さらに、全体の状況も把握しやすくなる。
この気の流れの様子を見ても、ここに居る愚かなる者たちは、戦いに明け暮れているようです。
この隙を突かぬ手は有りません。
さあ、どうします?
(再び不適な笑みを浮かべてアテナに聞く)

現在位置:客室

609 名前:マンフレート・フォン・リヒトフォーフェン:2006/11/26(日) 02:03:32


>>556 エドワード・ロングvsリヒトホーフェン・サーカス×3

 ロタールの死亡/翼が欠けたフライング・サーカス―――8機の精鋭部隊も、
残すところ、あと3機。フォン・エンメルマン/エーリッヒ・フォン・シュタ
ルハイン―――残ったサーカスは、動揺を隠せない。
 眼下に広がる光景。
 幾百と戦場を見下ろしてきたJG1ですら、知ることのない世界―――地獄。
 あの魔王はなんだ。
 あの魔女はなんだ。
 あの鴉は―――

 そこでマンフレートは立ち上がった。
 弟の死には一切関心を示してない。
 冷徹な目が、黒翼を持つ東洋人―――エドワード・ロングを見据えている。
 ぞわり、と真紅の毛が逆立ち―――跳躍。空を駆け抜けた。
 慌てて続くエンメルマン/シュタルハイン。
 意思を確認するまでもなく、二人にはレッドバロンの狙いが知れた。
 男爵大尉はあの東洋人を、狩りの相手に選んだのだ。

【周辺空域】

610 名前:コダマ ◆K3dMKODAMA :2006/11/26(日) 02:03:38

>>589
どうやら、タッツェルヴルムと通信の相手の女は先ほどから何らかの攻撃を行っている
人物を探しているようだと言うことに気づく。

それも、視覚には捉えられないタイプの隠蔽を行う特殊能力によるものだ。
でなければ、これほどに機械化の進んだタッツェルヴルムに発見できないわけが無い。
つまり、『見えざる相手』を探している今こそ好機であるということ。
―――コダマの全身に緊張感が漲る。

その時だった。
コダマは喉がすうっ、と収まるような感覚を覚えた。

―――これは、まさか。

即座に右手を眼前にかざし
「Ahhhhhhhhh……」

やはり、声が出る。木霊を生み出せる。
潰された喉が再生したのだ。これならば、勝てる……!

【現在位置:パーティールーム】

611 名前:レップ ◆ZcW/SSsF6Y :2006/11/26(日) 02:05:26

>>599 ミスティア・ローレライ

背後からの使い間の攻撃。身体にいくつもの風穴を開けられ、
StG44―――突撃銃―――を思わず取り落とす。

床の上を転がる突撃銃。
拾っている暇はない。床についた右手の指先にそれが触れた。

大振りなシャベル。この甲板上で殺された武装親衛隊の隊員の遺品だろう。
見れば持ち主の腕がまだついたままだった。

ためらわずにつかんだ。同時に大きく振りかぶる。
爆風でこちらに吹き飛ばされてくるローレライにむけて、

それを全力で振るった。


【レップ:満身創痍】
【中層部:甲板後部でローレライと戦闘中】


612 名前:シエル ◆kcbhGUILTY :2006/11/26(日) 02:05:26

>573>582>586

ちょっとした破壊工作――と言っても、体感できる変化はなかった――を終え、
歩き出したは良いものの――――

「ちょっと……けほっ、広すぎはしませんか」

若干迷った挙句、何とか開けた場所には出た。
ここはどうやら乗客が歩き回る事の出来るエリアらしい。
なら案内板の一つでもあるだろう、と視線を彷徨わせながら歩いていく。

「……あら?」

あの人だかりは何だろう。

――――と言うか、あれ。

この騒ぎの張本人と、偶然遭遇してしまった。
どうやら青年と少女の二人組みと剣呑な雰囲気のようだ。

「ええっと……あ、ようやく普通に喋れる。
 そっちのお二人さん、助っ人はいりませんか?」


【中層部:回廊でヘイズとパチュリーに声を掛けた】

613 名前:パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU :2006/11/26(日) 02:09:34

>>271 >>277 >>301 >>315 >>331 >>349 >>334 >>366 >>393 >>430 >>432
>>445 >>474 >>502 >>506 >>524 >>540 >>573 >>582 >>583 >>586 >>604

ヘイズね、と相手の名前を復唱する機会は彼女には無かった。

「お帰りなさい、ミス・グルマルキン……最低のショウをどうもありがとう」

虚空から現れた黒の魔女に、紫の魔女は慇懃に礼を返した。
この二人の魔女の間にどのような因縁があるのか。余人にうかがい知る事は難しい。

だが、よく観察すれば、パチュリーが少々落ち着きをなくしたことに気が付いたはずだ。
おそらく原因は、グルマルキンと共に消え、今は姿が見えない少女。
彼女の友人の姿が、無い。

そして、それは……。

「……っ!!!」

マントの中から現れた彼女の姿によって一気に顕在化した。

「グルマルキン、あなたレミィを……なんて事を……っ!」

驚愕と怒りの顔、握られる拳、たぎる魔力。
遠くからこの世界の魔術で飛ぶ面々の気配がしたが、そんな事は関係ない。
パチュリー・ノーレッジの脳裏は、正しく怒りに染め上げられていた。

[現在地:回廊]

614 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2006/11/26(日) 02:11:08

>>509 >>528 >>534 >>543 >>555 >>561 >>588 >>598(大空戦)


 ―――燃える炎の繭の中。
 身体に取り付かれる感触。

「えっ?」

 視線を落とすと―――
 ガーゴイルの彼がいた。
 ……そっか、最後まで一緒に着いてきてくれたんだね。

「ありがとう―――とても楽しくて、素敵だったわ」

 口づけは、甘んじて受けておいた。


 炎が解ける。剣は消えて、槍は失われる。
 ゆっくりと、ほとんど灰になりかけている彼と離れた。
 その姿は、最後まで見届けることに決めた。
 これもレディのたしなみ。
 最後までダンスパーティに付き合ってくれたことへのお礼として―――
 灰が、夜に散っていく。紅い炎の残滓を残して。
 それを、かすかな寂しさと一緒に私は最後まで見届けた。

 ほんの少しの幕間。
 私は夜にたたずんでいる―――


【周辺宙域:ロタール隊、撃墜】

615 名前:sage:sage

sage

616 名前:イグニス? ◆IgnisC3BW6 :2006/11/26(日) 02:12:25

>>601

 ぐい。と。
 力なく垂れ下がっていた首が起き上がった。
 虚ろに開かれた紅紫の双眸――違う。
 紅紫ではない。その瞳は、まるで宝玉のような深紅の輝きを――

 鞭に、使い魔に拘束されていた右腕を一閃する。
 刹那――まるで予めそうであったかのように、魔をはらんでいた鞭が虚空へと消える。
 右手。左手。右足。左足。そして――



 人間ではあり得ないほどの、濃厚な魔力。その渦にの中心で。
 イグニスの背から、純白の翼のような何かが、閃光を伴って現れる――!




 純白の魔力を纏ったイグニスは、人間ではないモノの眼差しで、夢魔の女へと向けて、呼吸する程度の
鮮やかさで、高濃度の魔力塊を撃ち出した。

【中層:客室・モリガンと交戦中】

617 名前:ロンギヌス13 ◆13th/X9pTg :2006/11/26(日) 02:13:04

>>588(大決戦)

「あれでまだ――落ちんか! 全く大した化け物ぶりだよ!」

アインは心の底から感心したように――いや、感動したように言う。
まさか、これ程の化け物に出会えるとは思わなかった。
コイツはまるで存在そのものが、我々が好む狂熱そのものではないか!

「だが、“神の雷”を受けきれるとは思えんなッ!」

全機が射撃を一旦停止、槍の距離ではないというのに、それぞれが右腕を翳す。
槍の先端には紫電。遠目からでも分かる大電流が、槍に流れているのだ。

「受けよ――ガイスティブ・ブリッツ!」

槍から迸った蒼い稲妻は空を切り裂き、唯一点――破壊の根源へと突き進む!

618 名前:ロンギヌス13 ◆13th/X9pTg :2006/11/26(日) 02:14:52

>>617追記
【周辺空域】

619 名前:レミア・シルヴェスタW世 ◆MVlNEREMIA :2006/11/26(日) 02:15:20

>>602
「ナイフからグレネードランチャーまで揃っているわよ」

鍵を開ければそこにはびっしりと敷き詰められた武器類。
中世の剣にはじまり、槍、斧、拳銃まで揃っている。

「ナイフが既望だったわね」

ナイフを渡す。
魔力も何もこもっていない、普通のナイフだ。

「ま、そんなものでいいなら譲るわ」

ナイフ一本ぐらいどうってことは無い。

>「…どうしたい?」

「―――あいつとの決着をつけるわ
やられっぱなしというのは性に合わないもの」

一人になってでもあいつを殺す。
そう決意した。

【現在地:格納庫】

620 名前:麻宮アテナ:2006/11/26(日) 02:16:27

>>594>>608
『く…ふふふふ…ははははははははは!』

 前にもこうやって笑われたような気が。
いえ、私が笑われるのはぜんぜんかまわない。
笑って嘲って、それで気が晴れるならそれでもいい。でも。

 やっぱりこの人は……でも。

『どうしましたか、組む気が失せましたか?』

 しばらくの間でも、騙しててくれてればよかったのに。
そうしたら、ひとまず共闘して後のことはその後って。
でもオロチはすべてを無に帰そうとする、この世にまつろわぬもの。
この人が自分のためでなく、今なおオロチのために戦い生きるというのなら。

「……現実は現実としてありますけど、それを変えることは、
少なくとも変えようとすることはできるんじゃないでしょうか。
そしてそれをやるのは、神さまでも大昔に死んじゃった総統閣下でもなく
人間だと思うんです」

 理香ちゃんなら「死んでる神の分際で生きてる人間様にエラソーこくんじゃねえ」って
言うところなんだろうな。私もそう思う。この世にいないものがいるものに迷惑かけるのは
間違ってる。

「理由はわかりませんけど、あなたは生きてます。
それって、大事にできませんか? オロチなんて追っかけなくても、
あなたはあなたの人生を生きられるし、他の生き方だって見つかるはずです。
道はいっぱいあるはずですよ。そうでないと、私は今こうして生きてません」

 ああ、うまい言葉が見つからない。

「あなたなりの信仰を捨てろとは言いません。
そんなこという権利なんて私にはありませんしね。
でも、それを心の中に眠らせておくことって、できませんか?
少なくとも、オロチがどうこうっていうよりは世界のためになると思うんです」

 おねがい、ひとこと「そうですね」って言ってください。
そうしたら私は、その言葉を信じる、一生懸命信じるから。

<現在位置:客室>

621 名前:大尉:2006/11/26(日) 02:16:35

>>600 (イリーナ・フォウリー)
>>607 (レイオット・スタインバーグ)

 何時の間にか大尉の右手に握られていた拳銃、ルガーP08。
 メーターモーゼルに比べれば文字通りの豆鉄砲にしか見えないソレが
 何度も何度も火を噴いた。

           ぱりん
  ぱりん

                    ぱりん

 ガラスの断末魔が何度も響き、そして、パーティールームには夜が訪れた。
 照明が全て破壊され、文明の光は消え、原初の闇が部屋内に充満する。
 文明の残り香といえば、暖房から吐き出される吐息だけである。

 その吐息の中を一つの鉄塊が一陣の風を伴って飛んでいく。
 握り潰され、鉄塊となったルガーがイリーナの顔へと………!

 平行して狂風が鉄の塊を追い抜き、イリーナの側を疾リ抜ける。
 狂風の行き着く先はレイオット・スタインバーグ、ただ一人である!

 <現在地:パーティールーム>
 

622 名前:エアハルト・フォン・ラインダース ◆CnAdcTa152 :2006/11/26(日) 02:17:54

>>588 小さな悪魔

 右方向にバンクさせて、操縦桿を引く。
小さなトイフェルの周囲を大きく反時計周りする形で機動。
振り返ると背後に細く飛行雲を引いているのが見える。 構うものか。
今重要なのは、如何に迅速に目標の背後を取る。 この一点のみだ。

 上手い具合に標的は、群がる友軍機?達からの攻撃に追われ続けている。
移動を続けてはいるが、その方向には一定のベクトルが見出せた。

 再度、周囲の状況を確認。
 この夜空で最大の光源となる月の方角。
 目標の未来位置。 そして攻撃後の離脱コース。

 見えた。
 標的の背後方向。 上方から月を背にして接近し、一斉射して後に
そのまま急降下して雲の中へという理想的な攻撃コース。
燃料も残弾も充分。
あと必要なのは、は私の勇気のみ。

「俺は……もう、逃げない!」

 外界から隔絶された与圧コクピットの中、自分以外聞くものはいないと知りつつ私は叫んだ。
叫びながらフルスロットルでダイブ。
 再びJumo213Eが吠える。
 Revi16B照準機の中心、僅かな点にしか見えなかった標的が、幼い悪魔の背中となって結像する。

「Blitzen!」

 目の前の悪夢に向かって、操縦桿のトリガーボタンをめいっぱい押し込む。
タタタタ、という規則的な発射音。
四発の重爆撃機をも容易に破砕し得る三門の機関砲が吠え猛り、
曳光弾が照準機の中の小さな悪魔の影へと吸い込まれていった。

【現在位置;周辺空域】

623 名前:リゾット・ネエロ(M):2006/11/26(日) 02:18:48

>>589
と、そこには男の左手首と、四肢を切断され有刺鉄線で縛り付けたグールに
成りかけの男がもがいていた。当のリゾットは調度死角に位置する死体の山に
埋もれていた。呼吸を完全に殺し、薄れゆく意識のなか待ち続けていたのだ。
「こいつは俺では破壊できない…ならば!!」

サイボーグには人間以上にデリケートな部分がある、つまりは回路!
わずかな電位差で変調をきたすであろうそこに最大級の磁力線を叩き込む!!
血液中に鉄分を戻し、磁力で奴の体に取り付き、頭部を掴む。
直下触り、自らの能力において最大の効果を発揮する最後の手段。

【現在地:パーティールーム】

624 名前:ロンギヌス13 ◆13th/X9pTg :2006/11/26(日) 02:23:29

>>586 >>604 >>613

槍を携え、真っ直ぐに突進する彼等のカメラ・アイに敵の狼狽する姿が見えた。
対する敵手があの魔女だ。恐らく、また『悪戯』で心を掻き乱しているのだろう。

(全く――そんな回りくどい事をしなくても十分だろうに)

男の方がこちらに気付いているようだが、遅い。
既に彼等の体は三つの砲弾に等しい。
無傷で逃れる事はほぼ不可能――そう言って良いだろう。

(絶望というのは! こうして圧倒的な力で与えるものだ!)

突撃する三機の槍騎兵は、立ち尽くす二人を死の圏内に捉えた。

(エルフ分隊、回廊へ突入)
【回廊】

625 名前:高木由美江:2006/11/26(日) 02:23:40

>>584 リザ
「…禁制の実に手を触れんと心昂ぶるは、学園を追われたイブのみかは───」

観光?神は創世記、人を作られ、それを善しとされた。
その人は罪に塗れ、天を終われることとなる。
神の似姿である人すら、世界を違える事は適わぬ事実に…涙は禁じ得ぬ。
キリスト者はその為に祈る。
況してや人との交雑種などを自ら明かすとは、ああ神よ。この者は
自分が何を言っているのかも判らないのです、クライスト。

「隣人愛、さればこそ、故なく───微塵り失せな『人』と神の世界の為に」

鞘を指で押し出し───

>>596 津村斗貴子

横手に、びゅう───。切っ先が大音声を上げ、デスサイズと刃が寸分狂わず相穿つ。
熱灰塵り乱れ、火の粉は暁の落し子の模様。、ちりぢりの刃の奏では再び会場に音楽を。
意訳をすらば、すらば───闘争の魂か。
数号打ち合い、腹部を僅かに支えつつ、一度退き間合いを置く。

「逆十字だ。中世魔術の残骸が。二匹とも高齢者の夕餉の様にこの世から消えな」

【一階・パーティールーム】

626 名前:『紅い悪魔』レミリア・スカーレット ◆remyaGVniw :2006/11/26(日) 02:24:34

>>586 >>613

グルマルキン…いや、グルマルキン様と一緒に転移した私が見た光景は―――
最初にグルマルキン様と出会った場所の“回廊”であった。

そして私とグルマルキン様の目の前にいるのは…およそ三人。
私の親友のパチェと、誰だかは判らない二人組みがいた。

>「グルマルキン、あなたレミィを……なんて事を……っ!」

どうやらパチェは今の状況を把握したらしく、グルマルキン様に向かって
そう叫んだ。―――ああパチェ…ごめんね…、私があんな下手な真似をしなければ
こんな事にはならなかった筈なのに…。
しかし、今の私はグルマルキン…様には逆らえない。何故ならまだ私の身体を蝕む
契約がまだ完全に解けていないからだ。
それからふと思った私は、パチェにこう言った。

「パチェ…それ以上グルマルキン様に八つ当たりしないで。それにこれは
私が望んだ結果でもあるのだから…。だからね、パチェ…今ここで死んでくれるかしら?」

何しも私は本心でこう言った訳ではない。少なくとも暗示が解けるか、
または何か暗示が解ける隙を狙ってある意味の時間稼ぎをしようと…そう考えて言ったのである。

【回廊:レミリア パチェと交戦する事を決意する】

627 名前:哀川潤 ◆MzXQXe8zTc :2006/11/26(日) 02:24:49

>>606

首狙いか――
多少無茶な体勢になりつつも、その狙って来ている腕を蹴り、撥ね上げる。
跳ね上がった瞬間を狙って始まりの体勢に戻す。

「くはっ、いいねいいねいいね。更に燃えてくるぞ――
 ホラ、仕切り直しだ。赤ジャケット。」

正直な所攻め手に欠ける気がするが、取り合えず力ずくの手数で攻めてやれ。
乱打だ乱打、それも四方八方からの。
壁に飛ぶ。更に壁、床、挙句の果てには天井までも足掛りにする。

【哀川潤:客室:引き続き変わらずvsビリー】


628 名前:リザ・ワイルドマン:2006/11/26(日) 02:25:17

>>569>>584>>596>>615高木由美子及び津村斗貴子

 どうもまずい返事だったらしい。

『…禁制の実に手を触れんと心昂ぶるは、学園を追われたイブのみかは───』

言葉の意味は良くわからないがおの表情から、それを感じ取る。
やっぱり中世の暗黒時代からの使者に半分人間(ハーフブリード)であること
を言ったのはミスだったようだ。

『隣人愛、さればこそ、故なく───微塵り失せな『人』と神の世界の為に』

 クソ。共産主義者か無神論者でも居れば良いのに。
鞘に掛けられた指の動きを見るまでも無く身構えて―――――

『――あの、すみませんシスター』

 唐突に横から声が聞こえ、そちらに首を動かし――――ぎょっとした。
それは先ほどもう一人の少女と舞うように戦っていた少女だった。
もう一人の少女の方も姿は見えない。

まさか――――――

 再び人狼の血が警告を発する。自らに危険が迫っている。この少女は今
目の前に居るシスターと同じぐらい危険であると。

少女は続けていた。

『私、キリスト教系の学園に通ってるんです。
 ですから、シスターのお話を聞きたくて。
 いえ、お話でなくてもいいんです。お声だけでも是非。
 そう』

 少女が一息ついた時、思わず自分も唾を飲み込む。
次に来るのは―――――!!

『お前の呻き声を聞かせろ、化物ッ!』

その次の瞬間、少女の足から四本の刃が突然出現し、そして――――シスターと
自分に襲い掛かってきた。

「おいおい!!」

 声よりも先に身体が反応していた。ゴキンという骨と筋肉が変形する音と共に
両腕が人狼の”それ”に変化した。

そしてその両腕は向けられた刃を受け止める。

ガッシィインという轟音が会場に響き渡る。


<現在状況:パーティー会場、斗貴子に奇襲を喰らう)

629 名前:夜雀の怪『ミスティア・ローレライ』 ◆8hOOMYSTIA :2006/11/26(日) 02:28:14

>>611
覚悟していたとは言え、あちこちガタが来ている体を爆風が呵む。
が、速度が出たことは僥倖と言ってしまえるほど、気は高ぶっている。

肩や銃を取り落とし、武器のないレップは引き裂かれるのを待つのみ。

のはず。

金属音を立てて爪が阻まれる。
予想外の事態に、ミスティアは大きく飛び退った。
未知の武器を隠し持っていたのか。

爪を弾いたのは余計な腕が一本付いただけの、何でもないただのスコップ。
不愉快とは感じなかった。
むしろ面白い。

「鉄砲拾ったら? 待つよー、それくらい」

ミスティアは支配下にある使い魔を包囲するように集め、

「抜きな、って事よ〜。もっともこれを受ける気があるならね!」

自身も妖気の固まりを漂わせながら、言い放った。


【中層部:甲板後部でレップと戦闘中】

630 名前:世紀王シャドームーン ◆eFPVf3T9.6 :2006/11/26(日) 02:28:17

>>605
…我が名はシャドームーン。影の王子と呼ぶ者もいれば――――


           ―――――『地獄王子』…と呼ぶ者もいる。

どうやら貴様は我が相手に相応しいようだな………フフフ……


キックホッパーの連続技を受け、世紀王は後退していく。「…いい動きだ…」
しかし…まだまだ闇≠ェ足りん。 ハァ!!
肘のエルボートリガーを正面で交差させ振動させる――――
真空の刃がキックホッパーの胴体を斬り裂く。

本物の地獄から生まれ出でし王の拳、その身で受けてみるがいい………
「シャドー・パンチ!!」

何者をも屈服させる世紀王の拳が、地獄の戦士を捉える。
さらに赤い輝きを放つ魔剣を振り下ろし、全身をズタズタに切り裂かんとする!


【現在位置:展望台でキックホッパーと交戦中】


631 名前:ゲーニッツ:2006/11/26(日) 02:29:13

>>620
…………。
ふ…、あなたもよくしゃべる方だ…。
あなたの言うとおり、無こそが私の目指しているものです…。
しかし、それ以外にこの世界の混沌を整える法があるというのなら、私は試していた。
それが無駄であったから、それが無理であったから、私はオロチの力に目を向けたのです。
自らの体に眠るオロチの力を開眼させたのです。
(目を閉じ。考え込むようにして顔を覆い、語る)
(そして、目を見開いてアテナに答える)

しかし、私は今愚かしくも、あなたの青臭い言葉に少し感銘を受けました…。
分かりました、せめて今はあなたの青臭い正義に付き合いましょう。
今はオロチへの執着を捨てましょう。
しかし、記憶が戻ってからは保障できません。
あなたのことを思い出せば、私はあなたを裏切るかもしれない。
その時は、後ろからでも私を撃つとよいでしょう。

632 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg :2006/11/26(日) 02:29:58

>>588 フランドール

「……だぁーもう糞ッ! やっぱこういうのは向いてねー!」

 数珠を見事にいなされ、長谷川虎蔵は歯噛みした。
 と、一人を斃し、何やら放心したような隙(>>614)を逃すような男ではない。
 すわと飛び掛ろうとして――何故か虎蔵は、全く別の方角をはっしと睨んだ。


>>609 リヒトフォーフェン

 近づいて来る何かがある。
 紅い影と、それに続く影二つ。大いなる蝙蝠の戦士団だ。

「また――獣くせえ吸血鬼もいたもんだ」

 苦笑して懐を探った手が引き出したのは、今度はというかまたもやというか、段平だ。
 それも二本の刀が柄頭の部分で連結した双身刀である。
 ゆっくりと口に咥え、軽く手を振った。少し身を捩じらせた。
 それだけの動作で袖から背から、無数の刀が飛び出した。


 馬手に三本、弓手に三本。咥えた口には両義の二本。
 ぬばたまの羽振(はぶ)る背(せな)から鞘込めの、替えの陣太刀、三対六本。
 夏なほ寒き氷の刃、締めて合わせて十と四。


 風を切って速度を上げ、真っ向からの突撃。
 狙いは文字通りの格闘戦(ドッグ・ファイト)である。
 只々斬魔剣を揮う歓喜に満ち満ちて、大鴉は闇天を駆ける。またとなし(ネヴァー・モア)と啼
きもせず。


【現在位置:周辺空域で交戦中】

633 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/26(日) 02:33:27

>>607>>621

 部屋の明かりはすべて破壊され、あっという間に暗くなりました。
 暗闇の中で大尉が動き……わたしの顔面に何かが飛んでくる風圧が迫ります。

 ガンッ!!

 それが、大尉の握りつぶした拳銃であることなど露知らず、わたしは顔面にまともにそれを
食らいました。鼻の頭から焼けつくような衝撃が走り、思わずよろめいてしまいます。

 大尉の狙いは、わたしではありませんでした。
 彼はわたしの脇をすり抜け……立ち上がったばかりのレイオットさんに向かって行きます!

 この暗闇です。そこにあのスピードで狙われたら……!
 わたしは鼻の痛みと鼻血を堪えつつ、ファリス様に聖なる光の力を授かるべく神聖語を唱えました。

 ホーリー・ライト! 光るのは一瞬ですが、これでレイオットさんに、大尉の位置が伝われば……!

【イリーナ・フォウリー:現在地:パーティールームにて、レイオットさんと共闘、vs大尉】

634 名前:矢車想 ◆dMMbM6zhZs :2006/11/26(日) 02:34:02

>>628
「なにぃ…!!」


蹴りを受けても平然としてやがる。
ええい!!仮面ライダーBLACKの登場人物は化け物か…と思いながら泣きそうになる。

「シャドーパンチ」


「うがっ!!へぶらっ!!」

とんでもない衝撃で全身がズタズタになるのが分かった。
同時に俺の体は空を舞い、展望台から客室へと

吹き飛んで 行った


「うわぁぁぁぁぁあ!!!」

635 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2006/11/26(日) 02:34:02

>>509 >>528 >>534 >>543 >>555 >>561 >>588 >>598 >>617 >>622(大空戦)


 少しだけ気を抜いた所に、その雷は荒れ狂った。

「うあっ!?」

 体が意に反して跳ねる。
 電気。雷。木気。たぶんその類。
 普通なら跳ね除けられる―――けれど私の身体は随分と鈍くなっている。
 ちょっと無茶をしすぎたかも知れない。いっぱい当たってるし。
 ガッツが足りない。

「っこの、いきなりなにするのよっ!!」

 レーヴァテインを振り回して追い払う。
 そこに―――鋭い殺気。
 夜の冷たさに紛れて、背筋を走った。

「―――後ろ!?」

 身体を墜落させるように高度を落とすと、一瞬前までを弾幕が薙ぎ払っていくのが見えた。

「……そっか、まだ踊り足りないのね!? いいわ、付き合ってあげる!!」

 冷えた身体に熱が再び生まれる。
 そうだ、まだこの劇は終わっていない。次の幕が、その次の幕がある―――!!
 私はレーヴァテインを振りかざした。
 再びショウの始まりを告げるように。


【周辺宙域:ロンギヌスの雷撃直撃、レーヴァテインで反撃。エアハルトの攻撃回避】

636 名前:& ◆VaCJKT0uuY :2006/11/26(日) 02:34:07

>>632
久しぶりです、このような澄んだ言葉を耳にしたのは…。
オロチ四天王失格ですね、私は…。

637 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus :2006/11/26(日) 02:35:24

>>616

「――――そう。
 口付けた時点で気付かなかった私が、間が抜けていたのね」

人ではない。有り得ない。
これは人でなしだ。化け物だ。
それも、実に極上の。

――甘んじて受けましょう。

どの道、避けようも無い。

「但し……ただ当たってはあげないわ。
 貴女にすべき事があるように、私にも目的があるのよ」

貫かれたばかりの血塗れの腕に、その一瞬でかき集められるだけの魔力を注ぎ込む。
そして、飛来する魔力塊に腕ごと叩き付けた。
使い魔の3割ほどと腕一本、それに魔力。全部持っていかれた。
そこまでしても、逸らすのが精々だった。

「話が通じるのかどうかは分からないけれど……続けるつもり?」

失ったものの埋め合わせは、先程の精でも到底追いつかない。
予想外の収穫を愉しむべきか、それとも仕込んできたものを優先するか。
決めかねる程度にはどちらも魅力的だった。


【中層部:無人だった客室で交戦中】

638 名前:タバサ ◆3VTTABASAI :2006/11/26(日) 02:37:46

>>548>>558>>570>>585>>597
 氷の矢を放った数秒後、舌打ちの念と共に、ほんの僅かだが空間の歪みが感じられた。
「今のは……そうか、そういう事ですか……」
 1秒にも満たない思考を経て、理解した。
対象を視認出来ていないうちから放った氷の矢が、いくつか対象外へと向かったのだ。それを避けるために、彼は空間を歪めた。
「ちっ……私としたことが、しくじるとは」
 悔やんでも仕方がない。次の手を考えなければ。
 そう思った矢先

 凄まじい勢いで突っ込んできた男に組み敷かれた(>>585)。
 いや――轢かれた、と言った方が正しい。
「くっ……こ、のっ……!!」
 どうにか引き剥がそうと手足を振り回す。が、それもさほど間を置かずに男の圧倒的な力によって押さえ付けられた。

 男の獣じみた荒い息遣いが聞こえる。私はどうすることも出来ずにそれを眺めながら……
(強姦される女性は、こういうものを見ているのだな)
 冷静に、現状の分析をしていた。

【現在位置:展望室3Fへの階段前】

639 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/26(日) 02:40:20




 ――――ハイネ。



 「…………ッ!?」

 誰かに呼ばれたような気がして、俺は覚醒した。
 左手にベレッタ、矢鱈とぼやけた視界の真ん中には、紅い背中がある。

 気絶していたのは五秒かそこらだが、起き上がれずに無様な死んだフリをする。
 仕方がない。俺みたいな野良狗は、地ベタ這いずって生きるしかないから。

>>581
 紅い背中の向こうで、男の声がする。目だけを向けてそちらを凝視する。

 『やるなら、ここ――――でなきゃ、ここだ』

 男は自分の心臓を、続いて自分の後頭部(脳?)を指差した。

 ……そうか、そこがテメエの弱点か。

>>627
 紅い背中と男が暫くジャレていたが、やがてその関係が変わった。

 俺の前にあった紅い背中が飛び跳ね、男の後ろに回りこむ。位置が変わったのだ。
 反応した男がソイツを追いかけようと振り向くと同時、俺もすかさず立ち上がった。

 「ッづ――――あああぁアアァァァァァァッ!」

 身体中が悲鳴を上げる。まだ治ってない部分は山ほどある。

 それでも強引に、左手のベレッタを心臓にポイント。
 トリガートリガートリガー。全弾連射したが、五発ぐらいしか出なかった。

 ならば、と右手で腰のチェーンを手繰り寄せ、バケモノの首に巻き付ける。

 「今だ、やれッ! 脳をブチ抜けェッ!」

 アンタを無視した形になるけれど、と続けようと思って、やめた。

 【客室:ビリーを『捕まえた』】

640 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/26(日) 02:41:24


>>604>>612>>613>>624>>626

「憎いかパチュリー・ノーレッジ!」

 知識の魔女同様に、鉤十字の魔女も蓄えた魔力を一気に解放する。

「この私が憎くて憎くて怒りで世界を染め上げたいか。知性の女が、
静謐の女が! 怒りに我を忘れるか! 掛け替えのない友人のために!」

 ケリュケイオンを抜刀。
 その硬質な輝きが、グルマルキンを狂気で照らす。

「だがな、貴様の怒りはお門違いというものだ。レミリアは貴様ではなく、
私を選んだ。貴様に友人などいない。―――少なくとも、ここにはな」

 ふと視界の隅に人影―――見覚えがある。あれは埋葬機関の代行者だ。
 舌打ち―――厄介なところで厄介な人間が紛れ込んできた。
 パチュリーと並ぶあの男も気に掛かる。
 ……が、逆にいま一網打尽にするチャンスでもあった。

「妬みは醜いぞ、パチュリー……レミリアの全ては、私のものだ」

 見せつけるように唇に唇を近付ける―――あからさまな徴発。が、それでも
パチュリーの心が乱れるのをグルマルキンは霊視眼で捉えた。
 レミリアの唇―――寸前で止めて、ほくそ笑む。「……やれ、聖槍の騎士よ」

 轟音/衝撃/風圧―――パチュリーとグルマルキンの間に三機の鉄塊(>>624)
が割り込んできた。絶妙なタイミングでの加勢―――これなら殺しきれる。

 ワルサーP38を抜き放つ。
 埋葬機関の女に照準を合わせる。
 トリガー。
 あとはひたすらにトリガートリガー。

「くはは! 楽しいな、パチュリー!」

 グルマルキンの嗤笑が谺する。

【回廊】

641 名前:アドルフ・ヒトラー ◆sLAdoLfKkE :2006/11/26(日) 02:44:30

>>585
(不活性ウィルス、ああ、なるほど)

ようやくに得心がいく。
これは――この出来損ないは、あの裏切り者の同僚というわけか。

かの大戦末期、見出されたと言われるバンパイアウィルス。
それに起死回生の可能性を見出したアドルフ・ヒトラー。
だが、遅すぎた。
その最終検体は狂気の独裁者の死の数日前、Uボートと共に海底深くに没した、と言われている――が。

(まさかあれが、変異した獣性細胞の一種だったとはな)

そう、それが歴史の裏の裏にあった事実。
バンパイアウィルスは獣性細胞であった、と言うこと。
そして――

それを知った研究者の一人が、最終検体を破棄したと言うこと。
その研究者の名前が――ナディア・バートリ。

(まあ、手ずから始末したが・・・あれは、面白かった)

そう、面白かった。
死の間際でさえも、静謐な瞳のままだった彼女。
それは湖の静寂に似て、同時に沸騰した溶岩にも似ていた。


>>597
・・・わざわざ助けたというのに。

少し溜息が漏れる。
まあ、仕方がないか。
あれも母であると言うことの発露なのだろう。

(ボクには理解できない感覚だけどね)

そのまま立ち上がる。
今これでボクに注目しているのは――

>>638
彼女だけだろう。だが、まあ・・・茶番も終えざるを得ないか。
懐から、ルガーを抜く。
標的は、タバサを組み敷いているあの男――ブラッド。
パン、と想像以上に軽い音が響く。

「彼女から離れたまえ、大尉。
 淑女を押し倒すのが、誇り高き第三帝国軍人の姿かね。
 ――もっとも、出来損ないのキミが、誇りなどと言うモノをまだ持っているならば、だがね」

 硝煙上がる拳銃を手に、立ち上がったその姿。
 ピンと張りつめたその空気、その緊張感。
 それは、まさしく――

「少なくとも、ボクの――アドルフ・ヒトラーの前で、醜態をさらすなよ、失敗作」


【現在位置:展望室3Fへの階段前】

642 名前:コーディー:2006/11/26(日) 02:44:49

>>619
武器のデパートとはこういう事か。
「…気がききすぎんな、オイ」

手に取ったナイフで適当に2,3回周囲へと振る。
悪くは無ぇ。これで数有ればもっと悪くないが、さっきのトランクの中には
びっしり武器が詰まってたから心配は無いだろう

>「―――あいつとの決着をつけるわ
>やられっぱなしというのは性に合わないもの」

バケモンで武器のデパートで意地っぱりの闘りたがり…やれやれ、つくづく
好き者だね…お互い様だろうが

「…ロクに歩けねぇでケリも糞も無ぇだろ。」

レミアの肩を担ぎながら言い放つ

「…血に濡れるんなら俺も混ぜな…」
あの忍者モドキについていけないのは惜しいが…ハラワタ血塗れの
女放っぽいて自分だけ楽しむのもどうも後味が悪い。…あのお嬢様の
その後も少し気にはなるし、な

「悪いがこういう訳でな…先行ってお楽しみやっといてくれ。但し…
俺の分残しとけよ?」

酷く惜しみつつそう飛竜に言い放った。

【現在位置:下層部倉庫 レミアの闘いに協力 惜しく感じつつも飛竜の誘いを蹴る】




643 名前:Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA :2006/11/26(日) 02:46:01

>>621>>633

 一転して暗闇。
 明かりになれきった視界は容易には回復しない。故に、何も見えないでいる。
 周囲かrは途切れない戦闘音。上下、左右、あちこちから響くそれは、今俺が戦っている狼の化け物の
発見を困難にしていた。

 アクセラレータで加速された感覚。
 それを頼りに、敵を探す――身体に残ったダメージが今だ俺に疾走を許さない。
 立っているのが精一杯。つまり、俺に執りうる手段は迎撃だけだ。

 耳を澄ませ。気配を感じ取れ。
 あの獣は、間違いなくこちらを狙っている――

 闇を見据えるように仁王だちになる。ゴーグル内部のHUDのグリーンの表示が目に焼き付く。
 壁に叩き付けられた際に、スタッフはすでに取り落としていた。
 拾いに行く時間もない。

 使えるのは、詠唱時間の短い<スラッグ>のみ。
 拳ひとつであの化け物と殴り合うのだと思うと、何故か笑い出しそうになる。

 瞬間――獣の気配。拳を構える。
 近い。だが、距離が判らない。見ろ。感じろ。奴は、おそらくもう。目と鼻の先にいる――

 そして。
 どういう理屈かは全く判らなかったが。
 あの狼の姿が、ほんの一瞬。視界の隅に映り込む。

「そっちか――――!」

 歓喜にも近い雄叫びを上げながら、俺は、

「――汝が死よ、」

 撃発音声。

顕れよ(イグジスト)っ!」

 魔力を展開した拳を、獣へと叩き込む―――!

【パーティールーム:大尉と交戦中】

644 名前:津村斗貴子 ◆TOKiKoStGs :2006/11/26(日) 02:46:58


>>625由美江
>>628リザ

刃が受け止められる。
シスターに向けた二本は、その刃に。
そして横の少女は、――変化した豪腕に。

「動物型ホムンクルスか! 化物めっ!」

舌打ちして、刃を引く。
バルキリースカートの最大の弱点は、その破壊力の低さにある。
突撃槍の武装錬金、サンライトハートのような破壊力はない。
つまり、リザのようなタイプに対しては、もっとも相性が悪い武装錬金。

だが、斗貴子は考える。
武装錬金は自分の分身。自分を信じられない者は決して勝てはしない。
ゆえに、考える。

威力を増す方法。
サンライトスラッシャーのように、勢いを増せれば――

「――さっきの化物!(>>458)」

空中からの勢いを込めた一撃。
斗貴子の左手を、心を貫くほどの一撃。
その痛みが、その記憶を蘇らせる。



「バルキリースカート、高機動モード!」

叫びと共に、斗貴子が飛ぶ。
いや――天井にバルキリースカートを突き刺し、一気に自分を引き上げたのだ。
かつて、斗貴子はバルキリースカートを脚代わりに、天井や壁を飛び跳ねての高速移動をしたことがある。
だが今度は、撹乱のための高速移動ではない。

「狼女、まずは貴様から――」

天井に突き刺した四本のロボットアームを、二本の脚をたわめる。
この一撃、この一発にかける。その思いが、力となる。
そして、限界までたくわえられた力が――爆ぜる!

「――臓物ハラワタをブチ撒けろッ!!」

四本の刃を一つにそろえ。
全てを貫かんとする強い意志を込め、銀の弾丸となり、斗貴子は突進した。


<現在位置:パーティルーム、リザ・由美江と戦闘中>



645 名前:ふみこ・O・V ◆HPv8dyzZiE :2006/11/26(日) 02:47:57

>>635
「いいえ、終わりよ」

 その声は、狂喜するフランドールの、すぐ背後から聞こえた。

「クソガキが。随分と手間取らせてくれたわね……」

 声が低い。
 周りの温度を、3度は低下させるような声だった。

 ふみこの眼鏡には、皹が入っていた。
 降り注ぐ星を掻い潜り、神の雷をかわし、銃弾の雨を潜り抜け。
 流石のふみこも、その全てを無傷でかわしきるなどといった真似は不可能だった。
 勿論、安全な道を通れば無傷でも可能だったかもしれない。しかし、それは出来ない
相談だった。この悪魔を葬るためには、今が最大の好機であり……その機会を、自分可
愛さに犠牲にするなどというのは、愚か者のする事だからだ。

 だが、しかし。
 それでも怒りは沸いてくる。

「覚悟なさい。最近では体罰は人権無視だ、なんて意見もあるようだけれど、そんなのは
平和ボケした親の台詞だわ。子供は痛めつけて躾けるのが一番よ。そうでなければつけあ
がる――」

 ぐい、とフランドールの肩が恐ろしい力でつかまれた。

「――お前のように」

 言うと同時に、ふみこは物凄い勢いでフランドールを振り回すと、そのまま虚空へと放り
投げた。それを満足げに眺めながら、ふみこは笑って「ああ」、と言った。

「人権もなかったか。人ではないものね、君」

 そして鋭く目を細めると、ふみこは再びミュンヒハウゼンに通信回線を開かせる。

「絶対に外すな! その時は末代まで貴様の無能を喧伝してやる!」

【周辺空域】

646 名前:レップ ◆ZcW/SSsF6Y :2006/11/26(日) 02:49:02

>>629 ミスティア・ローレライ

千切れかけた足で立ち上がった。

ミスティア・ローレライの挑発めいた言葉を受けて、
スコップを投げ捨て、甲板上に転がっていたStG44を手に取る。
弾の少ない古い弾倉を捨て、新しい弾倉を叩き込んだ。

辺りを見回す。虚空では地獄のような戦いが繰り広がられ、
彼の守るべき飛行船はだいぶ損傷を受けてしまっていた。

そしてレップの目の前には独逸の古い伝承に出てくるような魔鳥がいた。

血が足りない。何より傷の再生がひどく遅い。
折れた肋骨が心臓に傷をつけたのかもしれなかった。

これで決まりだな。ここが彼の終点だ。
生き返ったばかりだが、今夜、この飛行船の甲板の上で彼の第二の人生は終わる。
あまり望ましい最後ではなかったが、まあ、それでもいいだろう。

だが、最後に一仕事を済ませておくか。

彼はそうつぶやくと、軍服ポケットからシベリア
―――質の悪いロシアの煙草―――を取り出し、口にくわえて火をつける。
このロシア製の安煙草は葉の詰め方がゆるくて小枝が混じっているため、
ときおりそれが音を立ててはじけたが、
デミヤンスクの包囲攻撃のとき以来、この煙草が病みつきになっていた。

大隊に協力するある執事から聞いた言葉を思い出す。

ひたいにもう一つ目があるつもりで狙え。
人間だったころの打ち方なんぞ忘れてしまえ
人と同じように撃ったら人と同じようにしかあたらん。

あるロード級ヴァンパイアが自らの継嗣に継げた言葉

額に第三の目があるような感じで撃つ。
人の撃ち方ではない吸血鬼の撃ち方。
直感した。正しい、だが違う。これはちがうのだと。
確かによくあたるがこれでは化け物と同じようにしかあたらない。

ならば。

煙草を甲板に落とす。
五感と、そして直感を研ぎ澄ます。神経をぎりぎりまで張り詰めさせる。
目で距離を測り、角度を見て取り、風を読み、肌で湿度を感じ、温度をはかり、全身で気圧を感じる。
人の技術と吸血鬼の身体能力を掛け合わせ更なる高みへと到達する。

「いくぞ」

残った右目でローレライとその使い魔を捕らえ、
それらすべての位置関係を三次元的に把握、すべての感覚を駆使して得た情報とあわせ射撃式を構築。

瞬時にローレライに銃口を向け、照準。

脳内には精密な三次元座標。
それを元に、相手の動きを、避ける方向すら何重にも予測して4次元的に狙撃する。

そしてレップは引き金を引いた。
銃弾の雨がローレライへと襲い掛かる。

【レップ:満身創痍】
【中層部:甲板後部でローレライと戦闘中】



647 名前:ヴァルトラウテ/タッツェルヴルム ◆SoRDENIEpc :2006/11/26(日) 02:51:33


 >>610 >>623 リゾット コダマ

 拳の先が破裂する。
 正確には拳頭の破砕装置、機甲戦において重戦車の装甲すらも打ち砕く鉄の拳が捉えた先は。

「四時の方向、距離2m」
「囮か」

 タッツェルヴルムの巨躯に取り付いた男――先刻まで姿すら見えなかったが、男だ――は、
頭を掴みに掛かっている。
 予測されることは、実に簡単だった。
 磁力を用いての回路切断。
 機動に深刻な損傷。

 ならば、と。
 逆にその手を掴む。
 工作機械の様な圧力で腕を……男の左の手首から先は、先刻自ら切り捨てたものだ。

「目標1までの距離は」
「15m、角度72度11分」

 其処までの時間、およそ1秒。
 重力加速度の1.5倍ものGが掛かる最中、礼服姿の男に背を向けながら、白煙を上げつつ
飛来する。

 【場所:展望台1F、パーティルーム コダマ・リゾットとの戦闘】

 

648 名前:ビリー・龍 ◆D727Bb9L.2 :2006/11/26(日) 02:53:16

>>627
 どうやって叩き落そうか。思った瞬間にそいつは来た。

>>639
 背中に着弾。心臓の真上だ。
 まあ、実のところこのジャケットは防弾なんだが。
 背中から心臓を抜くのは難しい――さらに数発。
 そのうちの一発がジャケットを抜けた。心臓のすぐ脇の動脈を抜く。
 それが俺の動きを一拍遅らせ、俺は甘んじてチェーンを首に絡めることとなった。

 腹から血を吹きながら、振り向きざま肘を叩きつけに――

(客室エリア)

649 名前:イグニス ◆IgnisC3BW6 :2006/11/26(日) 02:56:05

>>637

 ――そして次の瞬間、意識を取り戻した。

「――ぐっ」

 あり得ない喪失感。
 急速に消耗していく魔力いのちに、イグニスは小さく呻きをあげた。
 このままでは――まず、い……

 先ほどとは別の意味で途切れかかる意識をつなぎ止め、イグニスは溢れ出ようとする魔力を再度封印し
た。本来の力――それを行使するには、現世に満ちる魔力はあまりにも稀薄だ。
 このまま解放を続けていれば、殺される以前に――消滅してしまう危険すら在った。

 翼が失せ得る。魔力が静まる。
 後に残されたのは枯渇寸前ながらも、それでも膝を崩すことをよしとしない、人類の守護者――そう名乗
る、女の姿だけが残っていた。

「――失せろ。私にはこれ以上、お前に付き合っている時間はない」

 倒れ込み無くなるのを自制して、呻く。
 ひび割れた声。無様だ、とイグニスは己をあざ笑った。

 決して使うまいと思っていた力を使った自分に。
 使わざるを得ない状況に追い込まれた自分に。
 それまでの全てを否定するした自分に――

 イグニスは、己に怨嗟の声を上げる。

「聞こえなかったのか。失せろ」

 床に転がっていた剣を拾い上げ、イグニスはそう吐き捨てた。

【中層部:無人だった客室で交戦中】

650 名前:マンフレート・フォン・リヒトホーフェン:2006/11/26(日) 02:58:31


>>632 vsエドワード・ロング

 全身これ刃の塊と化した黒翼の突撃―――先頭を滑空するレッドバロンは、
あえて正面から受けずにローリング/ヨーイング。大きく旋回して回り込む。
 東洋人に背中を向けることになるが、それを支援するのが続く二機だ。

 東洋人に正面から挑むのは、フォン・エンメルマン―――スマートな悪魔像
を彷彿とさせる飛行士とは違い、醜く太った―――まさに肉塊。
 なぜこれで飛行できるのか不可思議なほどだ。
 その重量級ガーゴイル――いや、コボルトか?――が、軌道を些かも逸らさず
に接近/肉薄/衝突。刃という刃がエンメルマンの肉に埋もれる。
 ―――埋もれるだけで、断てない。

 フォン・エンメルマン/銃弾すら受け止めてみせる、超軟性の贅肉の持ち主。
 更に―――歯で受け止めた刃を噛み砕く/飛行機の翼すら食い千切る長牙。
 正面からぶつけるに相応しい重量級のヴァンパイアだ。

 続くシュタルハイン中尉の掃射―――スパンダウ機関銃が火を吹く。
 東洋人の頭上―――急激なピッチングで、頭を大地に向けたレッドバロンの
掃射―――計4門の機関銃が東洋人に狙いを定めた。

【周辺空域】

651 名前:東方不敗マスター・アジア ◆Tvb8aHTe.o :2006/11/26(日) 02:58:50

「ここから、凄まじい闘気が沸きあがっておる…。
一体何だというのだ?」

【客室の飛行船の窓を破って、その男は現れた】

「調べてみる価値はあるだろう。」

現在位置…客室

652 名前:リザ・ワイルドマン:2006/11/26(日) 03:00:55

>>644斗貴子

「ホムンククルスだぁ!?あたしは人狼と人間の!!」

そこまで言いかけた時、斗貴子は叫び宙に舞い、そして天井に
刃を付きたてそしてあっという間に二本の足と四つの刃がたわ
められてそして真っ直ぐに突っ込んできた。

『――臓物(ハラワタ)をブチ撒けろッ!!』

そう叫ぶ斗貴子の顔は正に戦乙女に相応しい。

「…人の話を…最後まできけぇえええええええ!!」

恐らく斗貴子あの攻撃は喰らえば間違いなく致命傷になる
しかし、だが手が無いわけではない!

「はぁああああああああ!!」

 突っ込んでくる斗貴子の速度を予測すると、その脚の力を
総動員し、ただし”横に”飛んだ。

そうあの速度では――――――

尚も弾丸となって飛ぶ斗貴子の横腹あたりに強烈な拳を放つ。

――――急激な方向転換は出来ない。

この攻撃を避ける、そして自慢の脚力で全力逃走する!!

<現在位置:パーティールーム、攻撃の回避と逃走を企てる>

653 名前:飛竜 ◆HIRYUmxRKo :2006/11/26(日) 03:01:39

>>619>>642
「そうか」
 互いに背を向け、それぞれの目指す先へと向かう。

 ――だが。
 中層部へ向かう途中で足を止め、コーディーたちの元へと踵を返した。
「状況が変わった。グルマルキン・フォン・シュティーベルは客室エリア回廊で交戦中だ」
 客室回廊へは、コーディー達の向かう方向からのほうが近い。

【現在位置:下層部倉庫、コーディー達と同方向へ】

654 名前:矢車想 ◆dMMbM6zhZs :2006/11/26(日) 03:04:46

>>651
今までの出来事が走馬灯のように巡る

眼鏡「三島とよぶなハゲ」

天道「お前は天の道を…」

影山「不協和音なんだよ」

うわぉぉぉ!!!

全然、いい思い出がない。
そうこうしてるうちに、俺は壁を突き抜け謎のおやじに激突した。

「うおおぉぉぉ!!!!」

【現在地 客室】

655 名前:世紀王シャドームーン ◆eFPVf3T9.6 :2006/11/26(日) 03:06:48

>>634
……………。 機械的な音と共に世紀王は指先を客室に向け、男の心臓を
貫く赤いビームを放とうとする――――――

しかし、静かにその腕を下ろす………



…フッ…闇の住人か。ならば来るべき我が世界において……再び見えよう。
今はその命、預けておくぞ…………   フフフフ……。

蒼い雷が降り注ぎ、世紀王は姿を消した――――――。

【展望台:フェードアウト】

656 名前:大尉:2006/11/26(日) 03:06:55

>>633 (イリーナ・フォウリー)
>>643 (レイオット・スタインバーグ)

 様々な匂いが部屋に充満している。
 酒の匂い、東西の様々な料理の匂い。

 ……数時間前まではこれらの匂いが部屋の主だった、今は――――――

 それらを上書きするかの様な血の匂い。

 この部屋の床にぶちまけられている全ての料理に使われたソースよりも遥かに
 多い量を以って、全ての匂いを呑み込んでいた。
 そして、時間とともに更に匂いは濃くなっていく。
 部屋中の闘争者/生存者から現在進行形で匂いの元は搾り出されているのだから……


 イリーナの方から闇夜のカーテンを打ち払う光が広がる。
 その光は部屋の主とも言える香りが更に今勢力を強めている事を明らかにした。

 大尉の左腕の肘から先が無い、匂いの元がぽたぽたと地面に落ちている。
 が右腕の方はそんな事を意に介せず(同じ腕だというのに!)、更に勢いを増し、
 暴風となって、レイオットへと向かっていく。
 その圧力は大尉が人間だった時の拳の砲弾とは比較するのも馬鹿らしい……!


 <現在地:パーティールーム>
 

657 名前:夜雀の怪『ミスティア・ローレライ』 ◆8hOOMYSTIA :2006/11/26(日) 03:07:46

>>646
相手は一人。
一匹が適切だろうが、一人の方が良いだろうと思う。

満身創痍の古参兵の前で、ミスティアはムダを為している。
集めている使い魔も、その威力もすべてムダだ。
どうせ禄に避けられまい。

が、そのムダが良い。

スコップ片手に挑むドン=キホーテを鴨撃ちにするのは退屈に過ぎる。
勇者には聖剣が、兵には銃がふさわしかろう。
過程がすべてで、結果は余録。

使い魔を媒介にした唄が辺りに盲を広げ、ミスティア本人はそこら中を叩きつぶす妖気の驟雨を練る。

「レクイエムよ」

真夜中に夜鳥のコーラスが響き、弾幕が降り注ぐ。


【中層部:甲板後部でレップと戦闘中】

658 名前:高木由美江:2006/11/26(日) 03:08:46

>>628リザ
>>644津村斗貴子
三すくみの内に、狼の雌は軽々と身をかわし去る。

軽くみられたものだ。第13課ともあろうものが。これは、名折れだ。

「火の勢いは、止まらない。言いな、イエスと」

空に飛び刃を稼動させるスカートをめがけ、空中をわたしも駆ける。
丁々発止、逆巻く空気。跳ね上げ、打ち下ろし───
地に降り、鞘を拾う。
腹部の傷により、視界の薄くなる中…
神の国と地獄の門をひたに感じ、敵影だけを求め、構える。

659 名前:&amp:2006/11/26(日) 03:08:57

>>653



660 名前:ヴァーミリオン・CD・ヘイズ ◆/CD/iS.AAU :2006/11/26(日) 03:09:28

>>612

背後から女の声がかかる。
かなり若い、自分より年下であろう女の声。
だが、今のヘイズに背後を振り向く余裕は無い。
唯一つ、その声のあまりの柔らかさに、嘘が無いことだけは感じ取れた。

「あー…そうか。そりゃ助かる。
正直人手が足りず、どうしようかと思ってたところだ。
どこの誰かは知らないが、とりあえず」

振り向かず、顎で回廊の外を指し示す。

「そっちから来る奴らの相手をしてくれると、非常に有難い」


>>613 >>624 >>626 >>640

「……なるほど、そういうことか」

凶相の女の丁寧な説明で、納得がいった。
―――グルマルキンは、何らかの方法で『魔女』の親友を洗脳し、味方につけた。
そうして今、自らの下僕と化した彼女を見せ付けに、わざわざこの回廊まで馳せ参じたらしい。
全く持って、最悪に下種な発想だった。
本来第三者であるはずのヘイズにすら、怒りの火種を灯させるほどに。

「理解した。そして、決まった。
これから、どう状況が変化しようと、この場の誰が死のうと生きようと、関係ねぇ。
グルマルキン・フォン・シュティーベル。あんたは今この瞬間から―――」


もう直ぐ、闘いの合図が鳴る。先程窓を確認したときから、逆算していたタイムリミット。

3、2、1―――ゼロ。

「―――このオレの、殲滅すべき敵だ」


轟音が回廊全体を揺るがす。
接近してきていた飛行物体の、回廊の外壁への激突、そして粉砕。
ヘイズは宣言と同時、身を投げ出している。
彼の定めた標的、グルマルキンの側へと。


「くたばれよ、過去の亡霊」

拳銃を抜き放ち、トリガーを引く。
狙いは、額―――必殺の一撃。
予測演算で予め回避する方向を踏まえて定めた照準。まさに相手にとっては死の弾丸だ。


(場所:中層部・回廊)

661 名前:哀川潤 ◆MzXQXe8zTc :2006/11/26(日) 03:12:29

>>639 >>648

>「今だ、やれッ! 脳をブチ抜けェッ!」

「よくやった、アンタちょっとマジでカッコイイぜ?」

脳を完全にブチ抜くつもりなど―― 勿論無いが、暫く倒れていて貰わないと困る。
半分ぐらいふっ飛ばせば多分大丈夫か?

「よし。仕舞だぜ、赤ジャケット。
 心配するな、あたしは優しいんだ」

力任せの一撃が、赤ジャケットの頭左半分目掛け―― 襲い掛かる。

【哀川潤:客室:vsビリー 祝ハイネ復活】




662 名前:名無し客:2006/11/26(日) 03:13:17





663 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus :2006/11/26(日) 03:14:40

>647

「……そう。短い間だったけれど愉しかったわ、思っていたよりずっと。
 では、失礼するわね。……ああ」

見るからに消耗した――あれは身を削る切り札だったのだろう――女に背を向けようとして、
振り返る。

「是非また会いましょう、『気高き刃』さん。
 その時も、キスさせて頂戴」

唇にね、と笑って言い、今度こそ客室を出た。



「……で、状況はどんな具合なのかしら」

今のどさくさで無線機は外れ、問い質そうにも直接出向くしか方法が無い。
新たに召還した使い魔で消し飛んだ腕の代用を作り上げると、操縦室へ向かった。


【中層部:客室>最上部:操縦室へ向けて移動】

664 名前:コーディー:2006/11/26(日) 03:14:43

>>653
「グル…?」

グルマルキン・フォン・何とか。突如何の事かと分からなくなったが
恐らくこの船でドンパチやってる輩のボスなんだろう。

「ハン…つくづく『3』とは縁が有る。もう失くした物の筈がな…」

…まあお陰でまた暫し考えずに済みそうだ。敵は案外間近、即ち
途方も無く激しい殲滅戦。色々手間は省け…そして

「…ファイナルファイト第2Rといくか」

【現在位置 飛竜、レミアと下層部倉庫から中層部客室まで移動中】

665 名前:レミア・シルヴェスタW世 ◆MVlNEREMIA :2006/11/26(日) 03:15:33

>>642

>「…ロクに歩けねぇでケリも糞も無ぇだろ。」

肩を担がれる。
出血は既に止まっていたが、内臓の修復が未完、
そして決定的に血が足りなかった。

「問題は―――ないわ。
少し血が足りないけど戦おうと思えば…いくらでも」

吸血鬼の再生能力は高い。
銃弾で撃たれた程度なら瞬時に再生するほどだ。
しかしここまで酷いと例外である。

>「…血に濡れるんなら俺も混ぜな…」

彼からも決意が伝わってきた。
私の後についてきてくれるのだ。
後ろの男も気が変わったらしい。
私についてくる。

「―――――レミア」

呟くように言った。

「レミア・シルヴェスタ。私の名前よ。
あなたの名前は?」

私を支える人間にこういった。
傍の人間にのみ聞こえるような声だ。

担がれつつ階段を上る。
あの男の後を追わねば。

【支えられつつ倉庫→客室に移動中 そしてジェームズとの決戦へ】

666 名前:レップ ◆ZcW/SSsF6Y :2006/11/26(日) 03:16:45

>657 夜雀の怪『ミスティア・ローレライ』

歌とともに世界に闇が広がっていく。
空を埋め尽くすほどに大量の魔力の弾丸。

それが、一斉にレップへと迫る。

無数の魔弾がレップの身体をえぐり、穿ち、貫き、弾き飛ばす。
血反吐と、臓物と、肉と、骨を撒き散らしながら、
彼の身体は放物線を描いて宙に浮き、
大空を航海する豪華客船の甲板から虚空へと放り出された。

彼の身体の破片は極寒の空で凍りつき、月光を反射し、きらきらと舞い堕ちてゆく。

その後、彼の姿を見たものは、誰も、居ない。


【レップ:滅】
【中層部:甲板→周辺空域:虚空】



667 名前:エリ・カサモト ◆SV001MsVcs :2006/11/26(日) 03:17:18

>>635 フランドール
>>645 ふみこ

 今まで他の連中が少女へ仕掛けた攻撃の数々で確信した。

 このおてんば娘は通常の攻撃では沈められない。

「と、なると。奥の手しかないわね」

 唇を舐めて湿らせ、操縦桿を親指で撫でる。
 ちらりと目をやるのは左手のスロットルの先にある警告色で彩られたSVシリーズ特有の最終兵器システム。

「……やるか」

 後のコトを考えると頭が痛くなるが、仕方ない。
 今を踏破してこそ、未来があるんだから。

 前を見る。視界の中には、おてんば娘を折檻する魔女の姿があった。
 振り回して、――ぶん投げる。

「おーお。魔女ってのは肉弾戦苦手なんじゃなかったっけ?」
 俄か友軍のルフトヴァッフェ魔女から通信。

『絶対に外すな! その時は末代まで貴様の無能を喧伝してやる!』

 ――言われるまでもない。

「誰が外すか、このチャンス! 確実に仕留めてやるわ!」
 機首向け。バルカンフルオート掃射。
 ミサイル、最短発射間隔で連射。
 おてんば娘を機体の針路上に捉え続け、徹底的に攻撃を加える。
 これで沈められる相手なら、ここまで長引かない。
 確実に仕留めるにはダメ押しが必要だ。

 少女との距離はあと五秒待たずしてゼロになる。

 ――よし、もう外さない。

 SVシリーズには伝統的に搭載されている取って置きの攻撃手段がある。
 機体そのものを弾丸とした特攻攻撃、『メタスラアタック』
 この特攻攻撃はスイッチ一つで発動する。
 搭乗者はその場で外へ射出され、安全域から機体が砲弾となって突っ込んでいくところを見守れる。
 機体を捨てる、まさに最終兵器だ。

「おてんば娘! 泣いて謝ってももう遅いよ!」

 ガラスカバーが施されたスイッチに拳を叩きつける。
 スラグフライヤーは機体保護のためのリミッターを解除し、発揮できる出力の全てを推力へと、運動エネルギーと変換し、最速の砲弾と化してブッ飛ぶ。
 先の速度なら五秒掛かるところを一瞬で詰め、少女にぶち当たる。

 アタシは座席ごと射出され、パラシュートで降下しながら機体が爆散する光景を眺める。


 ――――はずだった。


 フライヤーが爆発的に加速する。
 キャノピーが飛ばず、座席も飛ばない。

(!! 作動しない!?)

 メタスラアタックのシステムは作動したが、連動するはずの脱出装置が作動しなかった。

 おてんば娘の顔立ちがはっきりと見えた。

「ああ、こんなにかわいい顔してたのね」

 それがアタシの見た最後の光景だった。


【飛行船周辺空域、機体後方にてエリ・カサモト、死亡】



668 名前:リゾット・ネエロ(M):2006/11/26(日) 03:19:10

>>647
腕に掛かるすさまじい負荷にリゾットは悲鳴を上げた。
腕には念のために鉄骨を通してある、だが長くは持つまい。
ターゲットを仕留める前に両腕を失う訳には行かない。

リゾットはゆっくりとだが確実に左腕の切り口を男の顔に向けた。
タッツェルヴルムの顔に引っかかる動脈血、返り血など歴戦の雄は
大して気にも留めていない。それが命取りだ…
メタリカ、こいつらは体外に出てもある程度は活動できる。
(別に触れずとも、ぶち壊す方法はあるんだぜ…)

ロオオオオドオオオオオ…
不可視の群体が、堅固なる要塞に進入していく…

669 名前:コダマ ◆K3dMKODAMA :2006/11/26(日) 03:20:30

>>610 >>647
と、その時。
白煙を上げて飛翔するタッツェルヴルム。
あの重量に加えて、人一人を背負い、かつかなりの速度での飛来。
激突すれば、蛙のように平面に潰されてしまうだろう。

コダマは、迷いも、容赦も、諦めも、何も持たなかった。

「Wahhhhhhhhhーッ!!」

コダマは、喉を震わせ強く木霊を生み出す。
言霊が生み出した力はコダマの手に宿ることなく、コダマの頭上に集約された。

その瞬間、コダマの肉体を覆うのは赤い鎧。
悪魔のような姿と、雄雄しき赤い剣。
その名を魔獣装甲コダマ。コダマの更なる強さを引き出した姿である。

コダマは、飛翔する。
飛び掛る鉄槌を断ち切るために。


【現在位置:パーティールーム】

670 名前:東方不敗マスター・アジア ◆Tvb8aHTe.o :2006/11/26(日) 03:22:02

>>654
「ぬうっ!?」

【突然壁を突き破って飛んできた謎の男をとっさのガードで何とか弾き飛ばす】
【立ち直って、流派・東方不敗の構えを見せる】

「貴様、一体何者!?
このワシに不意打ちを仕掛けるとは、中々度胸があるというもの…。
それとも、事故であったのか?
まあいい、どちらにせよ、おまえにはこの状況を聞かねばならんのでな。
この邪気は一体何だというのだ、ワシの勘には、人外のものに感じられてならんのだ!」

【重い剣幕を以て、矢車想に問い尋ねる】

671 名前:ジェームズ・ホワン(M) ◆ko.IhfiTmE :2006/11/26(日) 03:22:14

>>665

「よう…来たか」
階段を上がり終えた連中にゆっくりと会釈する俺。
ゆっくりとタバコに火をつける、空の旅にライターはご法度だというのに
傷がチクリと痛む、まだ再生しない…。

「さてと、行かせてもらうか、まずは貴様からだ!女!」
叫びとタバコを宙に投げ、同時に空間移動、女の背後へ。
振り向くが遅い、小刻みな瞬間移動を繰り返しながら次々と衝撃波を女の身体に
叩き込んでいく、背後に別の気配…素早く退いて宙に投げたタバコを掴む
この間、1秒にも満たない。

「さぁ、殺してみろよ!」

【中層部:客室】

672 名前:東方不敗マスター・アジア ◆Tvb8aHTe.o :2006/11/26(日) 03:23:06

>>670
追加:現在位置…客室

【突然壁を突き破って飛んできた謎の男をとっさのガードで何とか弾き飛ばす】
【立ち直って、流派・東方不敗の構えを見せる】

「貴様、一体何者!?
このワシに不意打ちを仕掛けるとは、中々度胸があるというもの…。
それとも、事故であったのか?
まあいい、どちらにせよ、おまえにはこの状況を聞かねばならんのでな。
この邪気は一体何だというのだ、ワシの勘には、人外のものに感じられてならんのだ!」

【重い剣幕を以て、矢車想に問い尋ねる】

673 名前:大尉ブラッド ◆/Z/IFjxeWc :2006/11/26(日) 03:24:33

>>597>>638>>641

まず、狩人の渾身の足払いを避け、目の前の魔女へと走り、そのまま投げて組み伏せる。

「ふん、このものかね?蛇遣いの男はもう少し楽しませてくれたというのに。
 研究に没頭するあまり、自らの体躯の扱いには長けていないようだな!」

そのまま、喉笛に喰らいつこうとした瞬間。銃声が響き渡る。
後頭部を貫いた銃弾は力尽きて落ちて魔女の前に落ちた。
後頭部が一瞬で再生し、振り向いた瞬間。硝煙燻る銃を片手に彼は毅然とした姿でそこにいた。

>『彼女から離れたまえ、大尉。
  淑女を押し倒すのが、誇り高き第三帝国軍人の姿かね。
  ――もっとも、出来損ないのキミが、誇りなどと言うモノをまだ持っているならば、だがね』

身体が震える。裏の世界に身を置いて、風の噂には聞いていた。
だが、そんなモノはありえないと知っていた。そう思っていた。
そして、その風の噂は今、目の前に存在している。

>『少なくとも、ボクの――アドルフ・ヒトラーの前で、醜態をさらすなよ、失敗作』

笑いが、そして歓喜の震えがが止まらなかった。そうだ、あの男は死んだはずだった。
だが、どこかに真の総統が生きているなどというたわいもない噂話。

「………そうか!貴様が本物のアドルフ・ヒトラーとはな!
 長生きはしてみるものだ!化け物にもなってもみるものだ!
 家族と故郷トランシルバニアの仇、今こそとらせて貰うぞ!
 貴様を討つ。そのために私は吸血鬼になったのだからな!

 それから、私は第三帝国では科学者だといったろう?貴様に喰わせてやる誇りなど持っていない!
 私は偉大なる第四帝國の大尉(ハオプトマン)Z・ブラッドだ!」

そして、目の前の魔女に振り返り、

「貴様と総統、2人一度に相手をするのは厄介すぎる、ここで死んでくれ?」

吸血鬼は牙を剥く。自らを仇敵が斃せるだけの存在になるために。

674 名前:津村斗貴子 ◆TOKiKoStGs :2006/11/26(日) 03:27:03

>>652(リザ)

ビルを破砕するハンマーがある。
巨大な鉄球を反動をつけて打ち込むことで、頑強な鉄筋コンクリートも砕け散る。
最初に斗貴子が連想したのは、それだった。
伝わる圧倒的質量、そして衝撃。

(……重いッ!?)

回避は、できない。
とっさにバルキリースカートの刃二枚を重ねて受けたが、その刀身すらたわみ、砕ける。
そして、その先に、


>>658(由美江)

刃が、迫った。
気づいた時には、腹部に熱を感じる。
わき腹をなぎ払う一撃。
それが胴を両断しなかったのは、幸運か、それとも――

(――あの狼女のせいか)

巨大な拳によって、横に弾き飛ばされた。
それが結果として、刃の軌道から斗貴子の身体を救ったのだ。
もしあのまま突き進んでいれば、今ごろは――




「――武装、解除」

砕け散ったバルキリースカートを、核鉄に戻す。
核鉄の状態ですら、あちこちにひび割れが入っている。
もし同じような攻撃を受ければ、今度こそ核鉄が砕け散るかもしれない。
もちろん、それを悟らせるわけにはいかない。
だから、斗貴子はあえて余裕を見せる。

「やるな、シスター。
 その戦士としての力量に敬意を表し、私も名乗ろう。
 錬金の戦士・津村斗貴子。
 そして――武装錬金ブソウレンキン!」

核鉄が分解、そして再構成。
二本の脚から生える四本のマニュピレーター、さらにその先に鋭い刃が接続される。
自在に動く四本の刃の腕。これが、

破壊鎌デスサイズの武装錬金、バルキリースカート!」

四本の刃を相手に向け、静かに微笑む。

「戦士としてのキミに敬意を表し、先手を譲ろう。
 さあ……来い!」


<現在位置:パーティルーム、 由美江と戦闘中>

675 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/26(日) 03:27:50

>>656

 ホーリー・ライトによって照らされた先で、レイオットさんと大尉は互いに一撃を見舞うべく交わりました。
 魔法を使った今、スピードでは到底大尉には敵いません。
 あの一撃を、レイオットさんが耐えてくれさえすれば……!

 わたしは大剣(グレートソード)を放り、右手に棍棒(クラブ)と、そして左手にエメラルドのついた大楯
(ラージシールド)を持ち替えました。

 そして……息を大きく吸い込み、手にした棍棒(クラブ)を……光が一瞬照らした場所へと……

「行ッけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


【イリーナ・フォウリー:現在地:パーティールームにて、レイオットさんと共闘、vs大尉】

676 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2006/11/26(日) 03:29:41

>>509 >>528 >>534 >>543 >>555 >>561 >>588 >>598 >>617 >>622 >>645 >>667(大空戦)

『ここで終わりよ』

 声が聞こえて、一気に吹っ飛んだ。

「え?」

 世界が自分の望んだ方向とは全く違う流れを作る。
 ぐるぐると回りながらどこか良く分からない方向へ。
 月は見えているけど、自分がどこにいるかを見失ってしまった。

「な、えええ―――!?」

 遠心力を無理やり食い止めて空中に静止する。
 ―――そこで、幕を下ろす合図が響いた。

「――――あ、」

 顔を上げた先には、無数の炎を撒き散らす鋼の鳥。
 そこに乗っている人間の姿もはっきりと見えるほど近い距離。

 ……え?

 爆発した。
 サーカスの最後を飾るように、眩い光が何もかもを覆い尽くして。







 私は、重力に引かれる。
 冷たい風に攫われて、消える意識の間際。
 星の光の、涼しく瞬いている姿が、くっきりと記憶に残っていた―――


【周辺宙域:戦闘不能―――死亡?】

677 名前:イグニス ◆IgnisC3BW6 :2006/11/26(日) 03:32:42

>>663

 夢魔が姿を消したと同時――耐えきれずに、膝をついた。
 息が荒い。脂汗が止まらない。
 無意識にとはいえ使ってしまった”力”の代償。
 だが、まだだ。少なくとも、今はまだ――

「消えるわけにはいかない。こんなところでは……」

 剣を杖代わりに立ち上がる。少し休めば、また戦えるようになる。
 だから、今は――


 ――――すこしだけ、やすませて。


 崩れ落ちるように、部屋の中へと倒れ込む。
 掌からは剣はこぼれ落ち、イグニスはしばしの間、意識を手放した――


【中層・交戦後の客室。一日目終了】

678 名前:夜雀の怪『ミスティア・ローレライ』 ◆8hOOMYSTIA :2006/11/26(日) 03:33:09

>>666 レップ
面子は実利よりも重視されるべきだとは思っている。
しかし、

「棒立ちのままってのは流石にやめとけば良かったなー……」

服がもはや服として機能しているか疑わしい。
あの気迫でこれだけ受ければ死んでも不思議ではない。
というよりは、死にかけて半分以上後悔していた。

「まあいいか……。これはこれで面白かったし」

普段の弾幕ごっことはまた違った趣がある。
幻想郷に来る前とはまた違った、もっとましな感覚も。

取りあえず、めり込んだ弾丸をそのままにしておくのは都合が悪い。
のろのろと弾丸を穿り出しながら、ミスティアは大きな疑問にぶち当たっていた。

「あー。でも何でここで暴れてたっけかな……」


【中層部:甲板、一時戦闘不能】

679 名前:矢車想 ◆dMMbM6zhZs :2006/11/26(日) 03:33:13

>>672
気がつくと俺は見知らぬ場所にいた。
思い出せない…天道を倒して…思い出せない。

目の前には見知らぬ初老の男がいる。
何やら、凄い剣幕だ。

「あの…何か。」

だが相手は戦闘大勢を取りこちらを威嚇している。

まさかワ−ムか…?


俺も戦闘大勢に入る。
完全調和、パーフェクトハ−モニーは冷静でなければならない。

「敵は廃除する…それが組織の命令だ!!」

初老の男へ浴びせ蹴りを放つとザビ−ブレスを翳し変身する。

「…変身!!」

680 名前:エアハルト・フォン・ラインダース ◆CnAdcTa152 :2006/11/26(日) 03:34:09

>>622

 雲の中を3000メートルほど飛んでから抜けた。
現在位置、Zの前方約2000メートル、高度4500。
曇り止めの乾燥剤チップが貼られたガーランド・ハウベ越しに
空に浮かぶZの巨体と無数の炎が見えた。
エルベ河の畔で見た蛍火のように宙を舞い、瞬いては消えていく炎。
あの瞬く炎の中に、先ほど相対した小さな悪魔もいるのだろうか。

 確かめに戻るべく機首を巡らせんとした時、私は一つやるべきことを憶いだした。
相変わらず空電だらけ、ノイズだらけの無線機を調整し、なんとか聞こえるレベルに持って行く。

「グリューネヘルツよりフェンリル! グリューネヘルツよりフェンリル!
 この作戦は一体なんだ! 『Z』の護衛任務とは何だ!
 あの化け物たちは! 船内で何が起こっている! 答えろ!
 繰り返す! グリューネヘルツよりフェンリル! グリューネヘルツよりフェンリル……」

 酸素マスクを外して集音機に向かって怒鳴りつける。
応答があるまで、何度も何度もコールする。
あの死人のような声は二度と聞きたくはなかったが。


【現在位置:周辺空域 本船前方のやや離れたあたり】

681 名前:ロンギヌス13 ◆13th/X9pTg :2006/11/26(日) 03:36:04

>>632 >>650 >>676

叩き付けられる一斉攻撃と、更に迫る後続。
これで滅びない化け物が居るとするならば――それは相手にしてはいけないモノの類だろう。

「惜しい存在ではあったがね……現在は供給過剰、といった所だ」

誰に言うでもなく、アインが呟く。

「さて、目下の敵は沈んだが……」

次の標的はレッド・バロン率いる部隊と交戦を開始したあの黒スーツの男だ。(>>632)
アインはツヴァイ、アハト分隊を率いて旋回。次の戦場を目指す。

「まだまだ、楽しめそうじゃないか」

恐るべき事に――男はあれだけの戦闘を終えた後でも、その力を些かも失ってはいない。
リヒトホーフェン・サーカスの吸血鬼どもを相手取ってあれだけの大立ち回りを演じているのだ。

「さぁ、まだまだ楽しむぞ! 幕が下りるにはまだ早い!」

上空から襲い掛かるリヒトホーフェンに対し、五機は下方から突き上げるようにエンゲージ。
7.62mm弾を牙と成し、顎に捉える形でMG34を構える。

【周辺空域】

682 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg :2006/11/26(日) 03:36:04

>>650 リヒトホーフェン

「て、手前ぇこのデブ! 離さんか汚豚がぁ!」

 揮った刃を肉と脂肪に噛み止められて焦った瞬間、虎蔵は気づいた。
 囲まれている。このままでは連中の幾つあるか知らない撃墜マークを一つ増やす事になる。


 相手の福々し過ぎるボディを蹴った。刃を引き抜くのと、ついでに蹴る反動で倍になった速
度を以って、錐揉み状態で素っ飛ぶ。
 上と横、二方向からの銃火をまんまと避けたその急激なロールの最中、虎蔵の足は更に空を
蹴っていた。太っちょの撃墜王(エース)目掛けて。

 蹴りを当てる事が目的ではなかった。そもそも相手に足刀が届く距離ではない。
 別の何かがズボンの裾から投擲されたのだ。
 云わずと知れた、隠し持つ刀である。四、五本あるそれらは全て切っ先を「デブ」に向け、夜
空を手裏剣の如くに飛来する。

 さて虎蔵本人は、と云えば。
 咥えた双身刀を構えなおし、上方を征した紅い方ではなく、サポート役のもう一方に飛んで
いった。
 旋回させた異形剣を、斬鉄の勢に乗せて叩きつけながら。


「――掻っ捌ァ!」


【現在位置:周辺空域で交戦中】

683 名前:レミア・シルヴェスタW世 ◆MVlNEREMIA :2006/11/26(日) 03:37:06

>>671
空間を飛ばされた。
1秒間に何発もの衝撃波が叩き込まれる。
血こそ吐いた、だが―――。

>「さぁ、殺してみろよ!」

「―――――――えぇ」

コーディーから離れて自力で立つ。
引きずってきたトランクから黒い布が飛び出す。
漆黒のマント、禍々しさすら感じられた。

それに包まったレミアは――――

「お望みどおりに」

まさに伝承どおりの吸血鬼であった。

「真っ赤に染めてあげるわ!」

すぐさまに吸血蝙蝠を召喚する。
数は7、8匹。それを弾丸のごとく撃つ。
意思を持ち、呪われた蝙蝠の、追跡する弾丸。
それを5発、目の前にいる男に放った。

「この程度では終わらない」

トランクから飛び出す剣。
それを持って、敵との距離を詰めた。

【現在地:客室でジェームズとの決戦】

684 名前:シエル ◆kcbhGUILTY :2006/11/26(日) 03:38:54

>613>622>624>638>658

二人の少女達は知り合いで、その片方を洗脳ないし魅了したあげく、わざわざ見せびらかしに来た。
と、どうやらそういう事らしい。

「……取り敢えず、私の事はあの女性の敵であると思ってもらえば間違いありません。
 ですから、同じ立場の人がいるのならば連携して当たった方が良いかと思いまして」

――――外?

指差した方を向くと、見えた。
突っ込んでくる甲冑姿が3――あれを、ですか。

「3対1はちょっと人使い荒くないですか?」

第七聖典を腰だめに。
横合いから殴りつける彼らの、更にその横合いから――――

「……とはいえ、個人的に借りもあるので引き受けました。
 行きますよ、セブン!」

向けられた銃火の下を潜る様に突入の瞬間鉄の塊ごとぶつかっていき、
纏めて貫く勢いでバンカーのトリガーを引いた。

685 名前:高木由美江:2006/11/26(日) 03:39:29

>>674 錬金の戦士

「錬金の戦士・津村斗貴子。上等だ。イスカリオテ──高木、由美江──推して、参る」

残る時は僅か、鉦のなる時間は既に近い。
次の刃をわが身そのものとする。

創造の時が7日に過ぎぬので在れば、彼我の差異等瞬きの内ではないか。
忘るる勿れ、一日は千日のようであり、その逆もまた真なり。
無限の寂寥、憂鬱の熱情。冷えた心に宿る無明を今剣に宿し────


「島原抜刀居合 ゛鍾馗゛」

時は止まる。──────満身創痍の肉体であるが縮地を用い
一挙に、刃を──振るう。

【一階・パーティールーム】

686 名前:ビリー・龍 ◆D727Bb9L.2 :2006/11/26(日) 03:45:06

>>661
 注意が逸れた。
 ま、はっきり言えば。侮っていたのは確かだ。
 首にお荷物しょいながらでも、コンマ一つぐらいなら対応できるつもりだったのだ。
 あんのお嬢さんに、俺のドタマどうにかする力があるとも思っちゃいない。

 んが。俺の対処は間に合わず、
 その一撃は、俺の左側頭部〜後頭部を抉った。
 抉ったのだ。
 呆れッちまう。これで人間かよ。

 俺の体はぶっ倒れた。
 脊髄からの接続が絶たれりゃ無理もない。脳の命令がいかねーんだ。
 もっとも、完全に絶たれたわけでもない。
 マクスウェルを使えば、どうにかならんでもない。

 それまでほっといてくれりゃー、な。
 デク人形のようにぶっ倒れ、俺は目だけ動かして見上げた。

 気にいらねェ。
 くそったれが。

(客室エリア)

687 名前:ケイト・コナー ◆g6orsKate. :2006/11/26(日) 03:47:47

>>597>>638>>641>>673

 軽くいなされた払いも、あっさりと押さえ込まれた魔女も、そして銃声も、既に私の頭か
ら消えてしまっていた。
――――振り返ればそこには、威厳を払い慄然と屹立するあの少年の姿。

少年は銃を構えたまま、ヴァンパイアへと話しかける。
いや、命令を下している。当然の様に。言葉に嘲りを呑んで。

>「少なくとも、ボクの――アドルフ・ヒトラーの前で、醜態をさらすなよ、失敗作」

「アドルフ……ヒトラー?」

 あの髭の? ナチスの親玉の?
 冗談にしては出来が悪すぎる……そう笑い飛ばしたかった。

 だけど、あのヴァンパイアは彼をヒトラーだと認めている。そして、私もあの噂はヴァチカ
ンにいた頃に耳にしたことがある。何より、彼の放つ威厳が有無を言わさずそれを証明
している。
間違いない、彼こそがナチスドイツを率い世界に戦いを挑んだ全盛期最大の犯罪者にして1大カリスマであったその人だ。

さっきまで、怯えていたあの少年が。
私に連れられもがいていたあの少年が。

 「冗談でしょう!?」 と、叫んだつもりだった。
 でも、口から出たのか枯れたうめき声。

 ヴァンパイア、ブラッドが魔女へ向かっている。
 だけど私にはもうそれをどうにかしようという気は起きなかった……


【現在位置:展望室3Fへの階段】


688 名前:ヴァルトラウテ/タッツェルヴルム ◆SoRDENIEpc :2006/11/26(日) 03:49:00


 >>668 >>669 リゾット コダマ

 両手に掴んだ腕は、人のそれとは明らかに異なる感触。
 軋みを上げる鉄骨仕込みの腕を握りつぶす――

よりも早く、礼服姿の男に到達する。

 いや、今は「赤い鎧の男」と呼称するべきだろう。

 振りかぶる剣、その剣尖が触れるのが先か。
 背後の男がタッツェルヴルムを破壊するのが先か。
 それとも、押し潰されるのが先か。

 僅かな違和感。
 思考にノイズが走る。

 【場所:展望台1F、パーティルーム コダマ・リゾットとの戦闘】


 

689 名前:津村斗貴子 ◆TOKiKoStGs :2006/11/26(日) 03:50:39

>>685(由美江)

(――来る!)

一瞬のうちに眼前にまで迫る――縮地!
一気に振るわれる刀――「居合」!
もしもこれが初めてなら、斗貴子は胴を両断されていたに違いない。
だが――斗貴子は既に、同じような刀の使い手と死合ったことがある。
故に、

「――いい攻撃だ」

四本の刃は、髪の毛一筋の差で、その刃を受け止めていた。

「太刀筋も、力量もいい。私の四本の刃で、お前の刃一つにようやく拮抗できるほどだ。
 いや、お前が万全なら、私の刃は押し負けていただろう」

拮抗する力が押し合う。
刃と刃がきしみ、悲鳴を上げる。

「だが狙いが素直すぎる。だから私に防御を許す。反撃の機会を与える。
 私の刃は四本でキミの一本と互角。
 だが――人を殺すのは刃のみではない。
 人を殺すのは、あまりに簡単だ。指二本で充分なくらいに、な」

ゆっくりと上げる右手。
その人差し指と中指が、由美江の眼前に突きつけられる。
そして、

「脳漿をブチ撒けろっ!」

その両目へと突きたてた。


<現在位置:パーティルーム 由美江と交戦中>


690 名前:ロンギヌス13 ◆13th/X9pTg :2006/11/26(日) 03:53:26

>>684

それが見えたのは、対角線上のエルフのみだった。

「――ッ! かわせ、ドライツェーン!」

叫んでも既に遅い。
殺意を込めた突撃の勢いは十二分。最早止めようがないのだ。

バンカーの前に躍り出る格好となったドライツェーンは直撃を受けた。
馬鹿げたサイズの杭の前には、銃弾程度ならば傷も付かないマリオネッテ・イェーガーの装甲すら役に立たない。
その装甲はあっさりと砕け――それ所か、有り余る威力が体を貫通する。

「……成る程。そういう武器か」

直撃を逃れたエルフ、ツヴェルフの二機は聖服の女に向き直る。

「他の分隊から交戦データは戴いている。貴様もただでは死なん事は承知済みよ!」

ぎゃん、と穂先が跳ね上がった。
槍以外の攻撃は効果薄い――それを知っているからこその選択だ。

振り上げられた二本の槍は、二条の光となって振り下ろされる!

(エルフ、ツヴェルフ回廊にて戦闘中)
【回廊】

691 名前:コーディー:2006/11/26(日) 03:53:59

>>665
先ほどの傷がもう大丈夫とでも言いたいのか、先刻よりはまともな
足取りと口調では話している。人が食らうと確実に死ぬ傷だと言うのに。
化け物になった方がこんな下らんジレンマに苛まれる日々も無くなるんだろうか…。
痛みも何も全て途方も無い時の流れが忘れさせて…

などと思う自分が酷く馬鹿馬鹿しく感じた。そう、
…馬鹿馬鹿しい。


「…名乗る程のモンでもない。昔はコーディーとか呼ばれてた。
もうどうでもいい名だがな…」

捨てた名、捨てた街。このレミアという女は自分の名は捨ててはいないらしい。
そう考えると余計自分の惨めさに笑えてきた。今はそんな事を考えてる暇は
無いというのに


>>671
…などと考えてる間に最早戦いは始まっていたらしい。全く、ここ最近
考え事ばかり増えてきた。いい加減にしろよこの煩悩…

乱れ飛ぶ衝撃波。少なくとも今このレミアの傷を見る限り交わすのはまだ
キツイであろう。更に言うとその衝撃波の余波は担いでいる俺にも来る。

「チッ…」

否応無く肩から血を噴出しながらレミアと離れる形となる。
…だがまあ、一つ言うとすればこういう意地っ張りは執念という言葉がよく似合う。
自力で立ち上がり>>683 変身…は、ちと驚いたがまあ、今更常識ばかりに
捉われる生き方はもう止めた身だ。驚くという行為は暇な時にでもしとくさ…
飛び道具を放ち、ジェームズに間をつけるレミア…。どうやらあのジェームズとか
いう奴もあの女を標的に絞る事ばかり考えてるのか、俺や飛竜は見えていない。

「…長生きできんタイプだね。 ――生かす気も無ぇが」

握り締めた拳は血管を浮かばせ、筋肉は隆起する。下手な連携で反撃を
食うのならば、バクチだが大きな一撃で飛ばした方が得策だろう。

「C R U S H ! 」
ジェームズの横方向へと距離をつめ、肉眼で確認できるか否かの
超高速回転…竜巻が巻き起こる。コーディーの前方に。
人一人は軽く納まるサイズの竜巻が形成されると同時に強烈なアッパーを
ジェームズ目掛けて放った。竜巻とアッパーによる二段構えの
必殺「クリミナルアッパー」…

「飛びな…」

【現在位置 中層部客室 ジェームズと交戦中】

692 名前:タバサ ◆3VTTABASAI :2006/11/26(日) 03:56:43

>>638>>641>>673>>687

>>641
「ふふ……このタイミングで名乗るとは。いかにも貴殿らしい」
 だいぶ幼い姿に変貌してはいる。
 声質も幼く、威厳はない。
 だが――その身体に流れ、その姿を包む力の本流はまさしく。まさしく、私の知る『彼』のものだ。

>>673
 相変わらず両手は押さえ付けられている。
 が、しかし……アドルフとの会話の最中、わずかに押さえ付ける力が緩んだ。
 両手が使えない以上、大した物は召喚できない。それでも構わない。少しでも注意をそらすことさえ出来れば。
「『死んでくれ』と言われて……はい分かりました、と答えるとでも?」
 頭上で牙を剥く男に向け、微笑を浮かべてみせる。
 組み敷かれた掌に、小さなナイフ――刃渡り数センチの、果物ナイフとでも言うべきもの――を召喚した。
「そんな素直な女なら――ここでこうしては、いません、よっ!」
 掌のナイフへと、魔力を奔らせる。
 ナイフが宙に浮かび――意思を持っているかのように、男へと迫った。

【現在位置:展望室3Fへの階段前】

693 名前:ハイネ ◆DOGS.MVbhk :2006/11/26(日) 03:57:58

>>648
 男は俺の銃撃一発でよろめいたが、それだけだった。どうやら防弾ジャケットだったらしい。
 クソッタレめ。バケモノならバケモノらしく、生身だけで戦えってんだよ。

 男は胸から血を噴きながら、こちらを見もせずに肘を叩き込んできた。
 矢鱈強烈なエルボーだったが、ギリギリでベレッタを持っていた方の腕で受ける。

 「ッ、ざァんねん!」

 否、受け止める、なんて上等なモンじゃない。
 何とか致命傷を避けるため、腕の骨折を受け入れただけの事だ。
 衝撃は確実に俺の心臓を止める。潰れなかっただけマシ、だろうか。

>>661
 『よくやった、アンタちょっとマジでカッコイイぜ?』

 「そりゃ、どうも」

 正直女は苦手なんだが、こういう明け透けなのは割かし気楽でいい。

 女の腕が振り下ろされる。
 無論、そんな一撃で本当に脳をブチ抜けるとは思ってない。
 それでもあれだけ強烈な蹴りを入れるんだから、その膂力は相当なものだろう、と。

>>686
 ……思ったが、本気でフッ飛ばしやがった。

 「ハ――――いや、アンタ、すげえや」

 口から出たのは純粋な賞賛の言葉だった。と同時、俺の身体は沈んでしまう。
 力が入らない。そういえば心臓が一時的に止まると動けなくなるんだったか。

 「チッ、カッコ悪りいの……」

 ずるずると男の身体と共に倒れかけたが、何とか踏み止まって赤スーツの襟を掴んだ。
 男は死んだ。しかし、俺にはまだやるべき事が残っている。

 「この船に……若い女達……軟禁、されてる……助けて、やらないと……」

 身体に力が入らない。そういえば、他の内蔵も潰されてたんじゃなかったか。

 「あと……武器倉庫……俺の、銃……大事な……」

 もう駄目なのだろう。
 陳腐だが「最後の力を振り絞って」女に言う。

 「アンタに、任せる……た、の、ん、だ、ぞ――――」


 ――――――――そして、暗転。


 【客室:再起不能】

694 名前:マンフレート・フォン・リヒトホーフェン:2006/11/26(日) 04:01:18


>>681>>682 vsエドワード・ロング

 両断されるシュタルハイン/穿たれるエンメルマン。
 残された英雄―――レッドバロン/たったひとりの伝説。
 栄光あるフライング・フリークス・ショウも、一世紀近い時をこえていま、
フィナーレを迎えようとしている。

 が、しかし、マンフレートは考えない。弟が死に、戦友が死に、目的その者
が死のうとしている今でも―――彼は感慨を抱かない。
 目の前には黒翼の東洋人。
 任務すら彼は忘れた。
 狩ること。
 狩って/喉元に食い付いて/啜ること。
 それが彼の全てだった。

>>682
 甲冑の騎士からの援護射撃。それに合わせる形で、マンフレートは急降下した。
 相手はシュタルハインを切り伏せた姿勢から、まだ立て直しきっていない。
 恰好の的―――スパンダウ機関銃の銃爪を引き絞る。
 更にY軸をまさかの直角移動。
 親衛隊の襟章同様、稲光の如き軌道で東洋人の翻弄しつつ―――接近。
 その間も銃撃はやめない。

【空】

695 名前:ふみこ・O・V ◆HPv8dyzZiE :2006/11/26(日) 04:04:53

>>676
 爆発、閃光。
 その光の中を、まるで天使のように落下していく悪魔の羽を持った少女、フランドール・
スカーレット。

「次に出てくる時は、きちんとした教育を受けてきなさい……まぁ、生きているのかどうか知
らないけれど」

 少女が、闇に紛れて見えなくなる。
 さて、と、ふみこは一息ついてあたりを見回した。

 激しい戦闘は、もう大分なりを潜めていた。
 今は遠くで、リヒトフォーフェンとロンギヌスが、東洋人――あれは確か、エドワード・ロン
グと言ったと思ったが――が激戦を繰り広げているが、それだけだ。

 どうしたものやら。
 ふみこはしばし考え込み、

『お嬢様』

 そんな彼女に、万能執事が話し掛けた。

「どうした」
『はっ。ご命令のものが揃いましたので、ご報告までに』
「そうか」

 言葉こそ短かったが、その表情は、まるでいたずらを思いついた子供のような――いや、
それに悪意を200パーセントくらい増量したような顔をしていた。
 さて、これを使うべきか、使わざるべきか―――

『お嬢様、どうやら先ほどの戦闘機乗りが、司令部に何やら問い合わせているようです』
「ふむ? 回線開け」

 聞こえてきたのは、この作戦の真意を問う声だ(>>680)。
 どうやら、今のナチスにも、真に国を憂える誇り高き男がいるらしい。
 こういった男は嫌いではない。
 ならば、とふみこは思った。

「ミュンヒハウゼン、艦内通信を乗っ取れ。演説を行う! 例のものはいつでも映像に出
せるように準備しておけ」
『仰せのままに』

 全ての準備は一瞬にして整った。
 さあ、悪役として振舞おう。
 尤も、誰にとっての悪役か――それはわからなかったが。

『準備出来ました』
「よし」

 ふみこは箒の上に立つと、身なりを正した。

『聞こえるか、諸君! どうかご静聴願いたい。私は、ナチス所属、オゼット・ヴァンシュタイ
ン中尉である』

 全てのスピーカーからふみこの声が響き、全てのモニターにふみこの姿が映った。

『私は今、この度の作戦が一人の女によって仕組まれたものであるという証拠をつかんだ。
それが、これだ!』

 モニターの映像が切り替わり、とある写真が映される。
 そこに映ったのは、一枚の文書の写しだ。

『読めるだろうか? ここにはこう書いてある。読み上げよう』

696 名前:アドルフ・ヒトラー ◆sLAdoLfKkE :2006/11/26(日) 04:05:17

>>692
「だろう? このぐらいのタイミングが劇的でいいのさ」

 軽口を叩きながら、状況を見る。
 ブラッドはまずタバサを狙うことにしたらしい。
 ケイトは・・・呆然としている。
 無理もない、でもそれも計算の内。

>>687
「そう、ボクが真のアドルフ・ヒトラー」

 優しい、そう優しい視線でケイトを見つめる。
 その蒼氷色アイスブルーの瞳はどこまでも静かで、優しかった。
 ――母性に縛られた女を絡め取るほどに。

「おいで、ケイト――いいや、ママ」

 声がケイトの耳朶に響き、その心を縛る。
 不可視の手がケイトの腕を取り、招き寄せる。

「ママの躰を、貰うよ。
 ボクが、ボクになるために」

 そして、首筋に深く、深く。
 ――牙を、埋めた。

>>673
 ゆっくりと牙を抜く。
 支えを失ったケイトの躰を横に転がし、これ見よがしに銃口に息を吹きかける。

「家族と故郷? そんなものの仇か。
 安く見積もられたものだな、ボクの命も」

 その瞳に宿るのは、傲岸と意志。
 その心に巣くうのは、不遜と不屈。

「ああ、やはりそうだったか。
 トランシルバニアで見つかったバンパイアウィルス、アレの罹患者で――一人、そういうのがいたな。
 終戦の声も聞かずに、眠り続けていた役立たずが。

 喜べ、ブラッド。もう一つ、理由をやろう。
 お前の同僚の女はな――」

 唇がつり上がる。
 天使の美貌が悪魔の微笑を浮かべる。

ボクが、殺した

 罪の告白――否、挑発の言葉と共に、ルガーが再び火を噴いた。


【場所:展望室3Fへの階段前】

697 名前:高木由美江:2006/11/26(日) 04:07:39

>>689 津村斗貴子

「だが狙いが素直すぎる。だから私に防御を許す。反撃の機会を与える。
 私の刃は四本でキミの一本と互角。
 だが――人を殺すのは刃のみではない。
 人を殺すのは、あまりに簡単だ。指二本で充分なくらいに、な」

──刃が、体に入ってきた、らしい。
だが既に私の体は反応しない。

地獄の沙汰はもう降りた。
脳漿も何もかもぶちまけ、体は只の土くれになり、彼岸の彼方へ旅立った。

(高木由美江──リタイヤ)

698 名前:ふみこ・O・V ◆HPv8dyzZiE :2006/11/26(日) 04:13:24


ふむ、大佐。 計画は順調に進行しているようだね。
ああ、詳しい報告は結構だ。
この頃、君とランドルフ君が騎士団(オルデン)とは別に進めている計画について
私の知らないことは殆どないのだからね。 驚いたかね?
たとえば、「ミレニアム」が君の計画に協力して人員を派遣する、とか。
誇り高き空の騎士達「リヒトホーフェン・サーカス」と内密に連絡取り合っているとか。
トゥーレ協会の会長から全面的な支援を約束されたこと、などもね。
全て、全て承知している。

さて、前置きはこのくらいにして本題に入るとしようか。
君も私も身体が幾つあっても足りないくらい忙しい身だからね。

君の計画についてだが、指揮系統という点で、些か弱点があるように私には思えるのだ。
このような計画――オットー・スコルツェニィがグラン・サッソで実行したような種類のものだ。
この種の作戦においては、指揮系統の不備が致命的な失態を招くということは、
言うまでもないだろう。
これについて、指揮官である君の権威を正当化し、作戦指揮権を明確にする方法が、
同封した便箋の中に入っている。 開けて読んでみたまえ。




     総統兼首相より

―極秘―
グルマルキン大佐は、私の直接かつ個人的命令に基づき、ドイツ帝国にとって
極めて重大な任務に服している。 彼女は私に対してのみ責任を有する。
軍、民を問わず、階級に関わりなく関係者全員が彼女の必要を満たすべく、最大
限の協力をすることを要求する。

                                アドルフ・ヒトラー



読み終えたかね? ならば理解できただろう。
君の計画に対する総統からの言わばお墨付きだよ。
計画の準備段階で、或いは実行段階において、指揮系統に弊害が生じるようなことがあったら
この書類がものを言うはずだ。
今さら言うまでもないことだが、ドイツ帝国に籍を置くものは、すべからく国家と総統に
無制限の絶対的忠誠を履行する義務があるからね。

この書類の真偽、或いは期限について確かめたい者は、総統自身に訪ねるより他はない。
だが、それを実行することは、限りなく不可能に近いことだ。
それは即ち、総統への疑念の表明に他ならないのだからね。
たとえ君の計画について、総統が知らなかったとしても、それは変わらないのだよ。
わかるね?

それでは、行きたまえ。 私はここで、君の壮大な計画の成功と夢の成就を願っているよ。



            ドイチェス・アーネンエルベの活動を強力に支持する者

                               ハインリヒ・ヒムラー



 それはまさしく、ヒムラーがグルマルキンに対して宛てた手紙だった。
 無論、この写真は本物ではない。ふみこが命じ、ミュンヒハウゼンが作った真っ赤な偽者
だ。だが、それと本物が全く同じ文章であったのは、運命の皮肉としか言いようがなかった。

『お分かりいただけるだろうか? 今回の作戦に、総統の意思など無かった! 誇り高き
ナチスの魂は、利用されたのだ! 一人の女の野心のために!』

 ふみこは、大げさな身振り手振りで熱弁を振るった。
 演説には、パフォーマンスも必要だと言う事を、彼女は知っていた。

『その反逆者の名は、グルマルキン・フォン・シュティーベル。彼女こそ、総統の名を穢し、
ナチスの誇りを貶める裏切り者だ! 誇り高きナチスの同胞たちよ。今回の任務に、我ら
が信じた正義は無い。繰り返す。我らの信じた正義は無い!』

 ふみこは一息つくと、何かを決意したような瞳で正面を見据えた。

『よって私はこれより、聖櫃の奪取に向かう。心ある同胞たちよ、どうか私に協力して欲し
い。それでは、諸君らの賢明なる判断を期待する』

699 名前:飛竜 ◆HIRYUmxRKo :2006/11/26(日) 04:14:21

>>671>>683>>691
「この機、逃しはしない」
 床を蹴る。女の放った蝙蝠と、コーディーの竜巻を隠れ蓑に、男との距離を一足で詰める。

「黄昏に消え去るがいい――」
 握り締めたサイファーを横一文字に。プラズマの軌跡が、男を両断せんと迫る。

【現在位置:中層部客室、ジェームズと交戦中】

700 名前:哀川潤 ◆MzXQXe8zTc :2006/11/26(日) 04:17:27

>>686 >>693

「流石にこりゃあ後味悪過ぎだぜ、なぁ、アンタもそう思うだろ?」

なんつったってそこら中血塗れだし、脳漿まで飛び散ってるし。
軽口を叩こうと二丁拳銃の方へ行き、襟を掴まれた。

>「この船に……若い女達……軟禁、されてる……助けて、やらないと……」

「なぁーる、それでお前がこの船に乗ったって訳だな?
 おいおい、無茶して喋るなよ?」
よく見なくてもコイツの体がボロボロだって事ぐらい直に分かる。

>「アンタに、任せる……た、の、ん、だ、ぞ――――」

「分かった、あたしを誰だと思っているんだ?人類最強の請負人、哀川潤だぜ?
 その依頼、確かに請け負った。」

二丁拳銃がの体から力が抜け、ずるりとオチた。
そーいやコイツの名前、聞いてなかったな、まぁいい、全部終ってから聞こう。
暫く起きそうにねーからな、一先ず二丁拳銃を適当な客室に寝かせた。

「さて、それじゃあ仕事に取り掛かるとすっか――」


【哀川潤:客室:一日目了、To Be Continued】

701 名前:ジェームズ・ホワン(M) ◆ko.IhfiTmE :2006/11/26(日) 04:17:32

>>683 >>691 >>699
「空間を操るってのはこういうことも出来るんだぜ」
腕を一振り、蝙蝠たちは空間断層の中に消えていく、だが剣は間に合わない
左腕で弾いて軌道をずらしつつも、視線は彼女の身体に、だがそこで轟音
竜巻か!?
「さらに一言言っておいてやる、俺は見るだけで空間を操れる!」
一睨みで彼女周囲の空間を振動させる、ただし今度は傷つけるわけではない
吹き飛ばすためのもの、場所はもちろん例の竜巻の中だ。

結果など見ない、何故ならもうその時にはじっと機会を伺っていた忍者が
すでに迫っていたからだ、ここは冷静に反撃を…
だが、忍者の目を見た瞬間、自分の中で何かが弾けた…理由?そんなものは関係ない
「てめぇ…その目は何だぁ!兄貴と同じ目しやがって!殺してやる!」
忍者の首を刎ねんと空間断層を、まるで行く手に設置するかのごとく放った。

702 名前:ジェームズ・ホワン(M) ◆ko.IhfiTmE :2006/11/26(日) 04:17:52

【現在位置:中層部客室】



703 名前:津村斗貴子 ◆TOKiKoStGs :2006/11/26(日) 04:20:11

>>697由美江

突き刺した二本の指を抉り取る。
そこに刺さった眼球を投げ捨て、脳漿をブチ撒け、バルキリースカートで首を切り落とす。

「これで、二体」

まずは順調と言っていい、と斗貴子は思う。
このまま一体でも多くのホムンクルスをブチ殺すのだ。
臓物をブチ撒け、脳漿を抉り出し、そして完膚なきまでに砕くのだ。

そう――もうこれ以上、血を流させないために。


<現在位置:パーティルーム、由美江戦終了>

704 名前:ふみこ・O・V ◆HPv8dyzZiE :2006/11/26(日) 04:20:42

>>695>>698
 ふぅ、と一息をつく。
 この演説で実際に戸惑うものなど、恐らく今回の作戦に従事するものの中では一人も
いまい。いや、一人はいるか。先ほどの男……あれは恐らく、戦うだろう。自らの誇りのた
めに。だが、それ以外が寝返るとは到底思えなかった。

 彼らにはどうでも良いことなのだ。ナチスの誇りなどと言うものは。
 ただ戦い続けられれば良い。そういった気違いしか、ナチスにはもういないのだ。

 だからふみこは、そんな事を期待したのではなかった。
 そんな事はわかっている。
 だからふみこがこの演説に期待した効果は、そんなものではなかったのだ。

「さて」

 ふみこは口元に笑みを浮かべ、悪人の表情を浮かべた。
 どう見ても悪人だった。
 悪人以外の何者でもなかった。

「これで大手を振って、このバカどもと戦えるというわけね。私はあくまでナチスの誇りを護
るために戦う義勇の士。決して総統命令に逆らうわけではないわ。そうよね?」

 その問いかけに同意者はいない。
 尤も、ふみこも同意を求めていたわけではなかったが。

「さて、大義名分も手に入れた事だし……今までの憂さを晴らさせて貰おうかしら」

【周辺空域】


705 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/26(日) 04:24:49


>>660 vsヴァーミリオン・ヘイズ

「レミリア、パチュリーはおまえに任せた。存分に遊んでやるがいい」

 銃撃をかわした代行者に目を向ける。
 彼女の相手は聖槍騎士団が務めるだろう。
 となると、グルマルキンの相手は―――/ヘイズの銃撃。

 一応の不意打ち。だが、グルマルキンは霊視眼でエーテルの揺れ幅を読んでいる。
 予測された銃弾の軌道―――ワルサーのグリップで受け止めた。
 舌打ち。これでもう、この拳銃は使い物にならない。

「……なんだ、貴様は。貴様など私は知らん。私は忙しい」

 歪んだワルサーを投げ捨てた。代わりに右手のサーベルを掲げる。

「だから死ね」

 右手に巻き付く召喚陣。
 ソロモン王に仕える15番目の悪魔―――エリゴス/60の悪霊軍の指揮官/
甲冑を纏いし悪魔将軍。その右腕をグルマルキンの右腕に召喚する。
 肥大する筋肉/はち切れる黒袖。
 グルマルキンの右手だけが、悪魔の姿に変わる。

 ぶん―――とサーベルを一閃。風圧がヘイズの髪を逆立てた。

「私にくたばれと言ったな? 貴様にそれができるのか?」

 弓のようにしなる身体/接近/三条の閃光/更に派生する九つの光芒。
 エリゴスの力が限界を容易く駆逐する―――合計十八手の刺突。
 その全てが、一人の男に向けて放たれた。

【回廊】

706 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg :2006/11/26(日) 04:32:28

>>681 ロンギヌス13
>>694 リヒトホーフェン

 機械の羽と魔性の翼、而してどちらも化け物だ。
 それらは共同して襲ってきた。銃弾という、人の作り出した鉄火を撒き散らしながら。


「……ぬ!」

 吸血鬼を真っ二つに斬り捨てたばかりの虎蔵には、これらを避ける機動を取る事は不可能で
あった。ぴたりと息のあった連携戦術である。
 ならば、と音も無く巨大な数珠が出現し、黒衣の周りを回って守護の輪となる。――が、これ
とても如何せん遅かった。
 上下から襲う機銃弾は霊珠の護りをすり抜け、かなりの量が虎蔵の五体に食い込んだのだ。


 陸続と珠が砕けて散る様は、どこか花弁が毟られ落ちる光景を思わせる。
 ともあれ変わり身も分身もあらばあれ、実の躯に受けては如何ともし難い。
 しかしそこで翼のはばたき一つ、大きく水平に逃れんと出来たのは、流石に異能人の最後の
面目であったろうか。
 至る所から血汐の線を引いてはいたけれど、それでも黒翼は翻った。


【現在位置:周辺空域で交戦中】

707 名前:レミア・シルヴェスタW世 ◆MVlNEREMIA :2006/11/26(日) 04:34:33

>>701
蝙蝠も消され、剣もかわされ、
最後には竜巻の中に消えようとしている。

だがやつは目測を誤った。
私が何故7匹中5匹しか飛ばさなかったのか。

―――――行きなさい

静かに命令。
残りの2匹は呪われた弾丸となる。
最終目標は奴の頭。

好みは竜巻に飲まれようとしている。
マントに包まり出来るだけのダメージを防ごうとする。
弾丸もはじく闇の身包みだが、どこまで耐えられるか。

【現在地:中部層客室 ジェームズとの決戦】

708 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/26(日) 04:45:25


>>695>>698>>704

「ヴァンシュタインの狗め―――」
 あまりの突飛な行動に、屈辱すら湧かなかった。
「道理で従順なはずだ。これが狙いだったか」

 船内放送をあますことなく聞き届けたグルマルキンは、ようやく髑髏十字の
魔女の真意に気付いた。グルマルキン同様彼女も欲しかったのだ。大義名分が。
 グルマルキンと敵対するに足る根拠/理由が。

「くく……魔女というのは難儀なものだな。理由一つ無ければ、気に入らん
ものを潰すこともできんとは。―――互いに苦労する」
 その愉悦の顔を引き締めた。
 愉悦―――負け惜しみと誹られてもしかたない状況。
 愉快が不愉快に転じてゆく。状況は悪化の一途を辿っていた。
 ここに来て、親衛隊同士で争うことになるとは……「やってくれるな」

『レザード・ヴァレス、ヴァンシュタインの声明は確認したな?』

 無線連絡/極秘の直通回線。

 ヴァルトラウテには繋げず、レザードに直接連絡をする。

『奴は間違いなく操縦室に向かう。私は手が離せん。貴様が迎撃しろ。今の声明
は恐らく、ヴァンシュタインが思っている以上に有効だ。レップは死んだみたい
だが―――タッツェルヴェルとヴァルトラウテはもはや仲間と思うな』

 返事を待たず打ち切る。レザードへの信頼―――欠片もないが、いまここで彼が
聖櫃の護衛を放棄するとは思えない。取りあえずは頼るしかなかった。
 呻きつつ、グルマルキンは意識を相手に―――ヘイズへと戻した。

709 名前:ヴァーミリオン・CD・ヘイズ ◆/CD/iS.AAU :2006/11/26(日) 04:52:50

>>705

必殺必中の弾丸は、いとも容易くグルマルキンの持つ小銃によって防がれる。
こちらの予測演算を上回る反応速度。I-ブレインが自動的に戦闘データを修正、
演算の正確さをより完璧にする。

突如禍々しい異形へと転じる、グルマルキンの右手。
またしても魔法士の能力とは違う―――恐らくは、本物の、魔術。
人ならぬ膂力と反応速度を得た右腕から、放たれる無数の刺突。

予測演算は既に完了。そこから導き出された最適の回避行動通りに、ヘイズは身体を動かした。
正面、右、右下、左、左上、次の左はフェイント、またしても右―――ここで、グルマルキンの刺突が
ヘイズの左上腕部を掠めていく。予測位置から0.5cmものズレがあった。
痛みに顔をしかめるが、それによりヘイズの回避行動に支障が出なかったのは幸運だった。
右に、左に、最小限のステップで、繰り出される剣先の僅か横に身を置いていく。

―――避け切った。
視界の端に、飛沫く紅い液体。
思ったより深く、左腕を切り裂かれていた事に気づいたのは丁度この時。
銃把を握り締める左手から、血の気の引くのが自覚できる。
だが、躊躇も逡巡もしなかった。
痛む左腕を無理矢理引き起こし、再び銃を構える。


「あんまり、オレを舐めるなよ」

次の狙いは心臓部。予測演算によれば、先の刺突で、後0.8秒は彼女は胸部をずらす事ができない。
この近距離で、それだけ時間があれば、十二分だった。


「言われなくてもやってやるさ。今すぐに」


発砲。
必殺の一撃を放ちながらも、ヘイズはI-ブレインによる予測演算を停止しようとはしない。
まるで、まだ戦いは続く―――その事を、予知、、しているかのように。

710 名前:ロンギヌス13 ◆13th/X9pTg :2006/11/26(日) 04:52:55


>>695 >>698 >>704
先程まで共同戦線を張っていた筈の魔女が裏切った、という事を伝える通信が聞こえてはいた。

だが、気に留める必要はまるでない。
元々ロンギヌス13にとっては、ナチスは『どうでもいい物』なのだ。
混沌を呼び込むのに最適なのがナチス・ドイツという形だった。
ただそれだけの偶然に過ぎない。

現在はただ、戦争を。狂熱を。彼等が望むのはそれだけだ。

>>706

銃撃を受け、男は流石に動きに精彩を欠く。
仕留めるには今こそが好機――そう見て取ったアインはアハト分隊に指令を下す。

「――逃すな、ここで仕留めるぞ」

アハト分隊は即座に発砲を打ち切り、右腕を大きく反り返らせる。
マリオネッテ・イェーガーが生み出す膂力は、人間のモノとは文字通り桁が違う。
その速度と威力で、聖槍を放てば――

「模造品とはいえ、聖槍をその身に受けて死ねるのだ。誇りに思え」

アインが言葉を投げかけると同時。
引き絞られていた鋼の腕は、その力を解放して槍を超高速で打ち出す。

銃弾すら凌ぐ速度で飛来し、砲弾をも凌ぐ威力を秘めた聖槍。
それが三本――大気の壁を貫いて突き進む!





711 名前:コーディー:2006/11/26(日) 04:55:30

>>701>>707
かき消される竜巻…チッ、イロモノってのはつくづく奇怪な技ばっか
使いやがる。威力込めただけ有って中々響くねこの悔しさは…
だがこれくらいで根を上げてちゃ喧嘩士なんざ務まりゃしねぇ。
半分以上、燃えカスだが

次手として攻めに回るもレミアが何やら次の攻撃で再び蝙蝠を放つ。
牽制目的か…と思ったが、雰囲気からしてそうでも無い。そういや何故その
蝙全部撃たなかったのか…。何か考えが有るなら一旦サポートするか。

幸い、先刻までのここで別の戦闘が有ったのか破損が激しい…。

バシュッ―――!

レミアの弾を避けようと何らかのアクションを起こそうとするジェームズ
目掛け蹴りを放つ。とはいえ、距離が離れ届かない。それは当然だ、
別に当てるのを目的でやった訳では無いのだから…ただ蹴り飛ばしただけ。

破損により砕けた床の破片、埃を。
勢い良くそれ等はジェームズの顔面へと向かい…

駄目押しに蹴った体勢のまま飛び上がり奴の顔面に
俺は回し蹴りをかましてやった。

【現在位置 中層部客室 ジェームズと交戦】

712 名前:エアハルト・フォン・ラインダース ◆CnAdcTa152 :2006/11/26(日) 05:01:43

>>695 >>698
 「グリューネヘルツよりフェンリル! グリューネヘルツよりフェンリル!
 くそっ!ダメか!!」

 何度コールしても、聞こえてくるのは空電のノイズのみ。
『フェンリル』は、私の詰問を黙殺するつもりらしい。

 なるほど。
私は最初から使い捨ての道具として、この得体の知れない作戦に組み込まれていたわけだ。
 使い捨ての道具。
卑怯者と呼ばれる男には、似合いの役柄だ。
汚名返上の機会など、最初からなかったのだ。
こみ上げる自嘲と自暴自棄の念。
この空には、もう私が戦う理由などない。 このままフォッケウルフとともに飛べるだけ飛んで死んでやるか。
思考が限りなく破滅的な方向へと向きかけたとき、無線機が再び鳴る。

(>>695 >>698)

 暴かれた真実。 軍を私しての作戦。
党や総統への背信も、聖櫃とやらもどうでもいいが、祖国の名と誇りを汚す者を、許すわけにはいかなかった。
私は何故、今日まで戦い抜いてきた?
熱砂のアフリカで、ロシアの雪原で、或いはノルマンディーの嵐の中で飛び続けたのは何のためだ?
 答えは一つ。 一つしかない。
私はフォッケウルフの機首を再び巡らせた。
私とドイツの誇りを取り戻す戦いのために。

【現在位置;周辺空域 本船正面より接近中】

713 名前:飛竜 ◆HIRYUmxRKo :2006/11/26(日) 05:08:48

>>701>>707>>711
 自身に向けられた、明確すぎる程に明確な殺気。
「っ!」
 精神よりも前に、身体がとっさに横に飛んでいた。
 空を斬ったプラズマ粒子の残滓が、二つに分かれる。

「少しは使えるらしいな。だが、そんな手品で倒せるほど、俺は甘くはない」
 腰を落とし、腰に差したサイファーを構え――床を蹴って跳躍。
 女の放った蝙蝠を、コーディーの繰り出した蹴りを、奴は必ず空間移動で躱す。ならば――その移動先と予測される位置に、あらかじめ一撃を『置いて』おく。

 男の視線、筋肉の僅かな動作、息遣い……そして狩猟者としての勘によって導き出された位置へ、サイファーを一閃させた。

【現在位置::中層部客室、ジェームズと交戦中】

714 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg :2006/11/26(日) 05:18:24

>>710 ロンギヌス13

 正常な状態でもかわせたか如何か。それほどの迅さである。
 飛来する三本槍は、虎蔵の胴体を昆虫標本のように刺し止めた。


 鮮血が奔騰した。
 躯中を槍襖とさせられ激痛にのたうちながら、それでも虎蔵には驚愕するだけの余裕があっ
た。――自分が落下していく、という事実にだ。
 背中から生えた翼が消えている。「そんなものは最初から無かった」とでも云うかのように。

「“封じ手”、だと!? ……この槍か!」

 絶叫はドップラー効果の尾を引いて、討たれた鴉は夜の底の底へ落ちてゆく。


 その時、取り合えず虎蔵が迷った事は、一応この男の名誉の為に記しておかねばなるまい。
 たったの数秒であれ。この場所で自分がこれから起こす事がどういう結果を招くか――考えが
及ばぬ程能の無い人間でもないのだ。

 でもやった。「まあしょうがねーよな」という思い切り軽い決断で以って。


「――すぅぅぅぅぱぁぁぁぁぁッ!!」


【現在位置:周辺空域で交戦中】

715 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg :2006/11/26(日) 05:19:41

>>714

 眼帯が弾けた。
 その下からせり上がった“眼”――握り拳より一回りは大きいそれは、ある種の金魚そっくり
である。

 右手も一瞬で変化している。爪は鋭く伸び、筋肉が盛り上がり太さは倍増しに。ついでに上
膊部にも巨眼が生じていた。
 おまけに腕全体を羽のような突起が取り巻いている。
 最早どこからどう見ても異形そのものだ。

 以前虎蔵がその全てを掌中のものとした異界の生物、『低気圧の主』の大魔力が、今ここに顕
現したのだ。
 それは偽りの聖槍による檻を、彼我の力の差で挫くものであった。


 霧散した筈の黒翼は、より大きな形状を取って蘇る。
 魔獣の咆哮にも似て風は叫んだ。形が無いとは思われぬ程に嵐は躍った。
 そして風を吹かせ、嵐を呼ぶ天来魔(あまえびす)は、足場無き空中を高らかに踏み鳴らして
引っ裂けるように哄笑した。


「五悪の風は東咸へ通じ、積卒こぞりて的殺の門へ!
 見たか知ったか覚えたか! 天鼓雷音、神鳴る力!!」


 この空の全ては、妖嵐暴風に蹂躙されようとしていた。


【現在位置:周辺空域で交戦中】

716 名前:ジェームズ・ホワン(M) ◆ko.IhfiTmE :2006/11/26(日) 05:21:46

>>707 >>711 >>713
「バカな!技まで兄貴と同じなはずはない!」
確実に屠るはずの一撃を回避され、さらに。
「まだいたのか!」
明らかに冷静さを欠いた自分の身体に迫る蝙蝠の牙をそのまま瞬間移動でやり過ごそうとしたのだが
「くっ」
埃が視界に入る、普段ならどうということはない…だが一瞬気がそれる、さらに回し蹴り
これは強烈だったが、それでも今度は瞬間移動が間に合う。
しかし距離を稼げない、背中に致命的な隙が出来てしまう。
そこに、かの忍者の剣が一閃したのだった。

結果から言えば、それは背中の皮をわずかに切り裂いたに過ぎなかった。
だが…もはや自分の敗北は明らかだ、そんな自分に空が目に入る。
(やるか…)

窓際まで移動する…連中はただ見ているだけだ…逃げられるはずがないとでも思っているのだろうか?
「甘いよ…」
呟いた瞬間…自分の持てる全ての力を結集させ、全方位に空間の断裂と衝撃波をバラ撒く、
同じ力の使い手が言うところの「魔剣」である…そして俺は忍者のガキに向かって叫ぶ。
「小僧、生きて帰れたらウィンドという男を捜してみろ!」
その捨てゼリフを残し、俺は窓から空中へと身を投げ出した…。

(生き汚いのがとりえなのさ)
そう心の中でまた呟き、俺は重力と風にこの身を任せた。

(ジェームズ・ホワン :リタイヤ)

717 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/26(日) 05:28:42


>>709 vsヴァーミリオン・ヘイズ

 戦場を馳せる悪魔将軍の刺突。その全てが紙一重でかわされた。
 グルマルキンの美貌を驚愕が彩る。避けきっただと―――馬鹿な。
 必殺を確信しての攻撃/自ずと生まれる慢心の隙。
 突き付けられる銃口に、魔女の顔は青ざめる。
 回避の隙などとてもない/詠唱など間に合うわけがない。

 銃撃/衝撃―――口元から溢れ出す血塊。
 長靴が床から離れ、身体が宙に舞う。はためく外套/背中から倒れ込んだ。
 撃ち抜かれた心臓―――グルマルキンの思考を待たず、治癒のルーンを三重
に刻み込む。それでも活動を停止させないので精一杯だった。
 ダメージは甚大/右手の召喚も強制解呪されてしまった。

「貴様ぁ……! 私の動きを読んだな。契約の悪魔の動きをも」
 サーベルを杖代わりに立ち上がる。
「ふざけた男だ―――ただの人間ではないな」

 血反吐を吐き飛ばす。
 せっかくの上質の身体―――今のダメージで、一気にガタが来た。
 早急に心臓を取り替える必要があった。
 相性/血液型など関係ない。魔術で誤魔化せば急場は凌げる。
 とにかく、この心臓は限界だ。男/ヘイズを睨め付ける。

 ―――男の内臓など受け付ける気にもならんが、仕方ない。

 床に突き立てたケリュケイオンの軍刀。そこからルーンが溢れ出す。

 「我が手にカドゥケウス、
  またの名をケリュケイオンあり。
  万物を融合し、
  黄金と成す、
  叡智の技を秘めし杖。
  いざ―――振るわん!」

 サーベルを切り上げる。指向を持たぬ純エーテルの塊/もはや制御する
余裕が彼女にはない/エネルギーの奔流となって/撃ち出した。

「―――いでよ、右の蛇。放て、赤のサルファ!」

 血反吐を交えた絶叫が、回廊に谺した。

【回廊】

718 名前:コーディー:2006/11/26(日) 05:47:33

>>716
蹴りは交わされたが目潰しの効果は有ったのだろう。
余り有効打とはいえないが飛竜の攻撃を背にくらい窓際へと移動しつつ有る。

…この展開。野郎、勝てないと見て自決するつもりか?
「ざけんなよ、死ぬまで喧嘩して 」
『小僧、生きて帰れたらウィンドという男を捜してみろ!』

聞く耳持たず。案の定飛び降りて消えやがった…散り際に飛竜に何か
言ってたが、ソレの内容はともかくも生きて終われたら聞いとくか。
今は只目の前の一人の男の散り様だけしか目に届かず…

「…大馬鹿野郎が」

…何故俺はこんな散り方が未だできぬのか。世にまだ未練が有るゆえか
単に戦場で死にたいのか…燻った闘争心だけがその理由を探していた



「…さっさと本命ぶっ叩くぜ。」
…ジレンマという苛立ちを打ち消すかの如く求む。ただ闘いを。
飛竜とレミアに言い放ち俺は、このフロアを歩き出した…。

【現在位置 中層部客室 一日目終了】

719 名前:飛竜 ◆HIRYUmxRKo :2006/11/26(日) 05:58:09

>>716
 位置は読み通り。だが、浅い。切っ先が軽くなぞった程度だろう。

 体勢を整え、再度構えなおす。が――
 男はふらふらと、力のない足取りで窓際へと移動する。何かを仕掛けるつもりか。
 いつでも飛べるよう、足の力を抜かずに、男の動向を追う。

 そして――空気の流れが変わった瞬間、肺の中の空気を吐き出すと共に、手近な部屋に向かって跳躍した。
『小僧、生きて帰れたらウィンドという男を捜してみろ!』
 その叫びと、力の濁流を置き土産にして、男は窓の外へと消えていく。


「こちら飛竜。Zeppelin Neue Ara内に於いて、高槻崖と交戦。高槻は船外へと退出、生死不明。
こちらの損傷は軽微、任務を続行する」

【現在位置:中層部客室】
【一日目終了】

720 名前:大尉ブラッド ◆/Z/IFjxeWc :2006/11/26(日) 11:45:14

さて、話は数日前にさかのぼる。

『………と、いうわけです。如何でしょう大尉(キャプテン)。この計画に荷担されてみては。
 もしかしたら風の噂の真実、確かめられるやも知れませんよ?』

裏の世界では知られた運び屋『Dr.ジャッカル』が某国にいたブラッドの元を訪れ、
今回のハイジャック計画を淡々と話し、こともあろうに荷担しては如何です?など告げたのは。

『それから、今回の依頼されていたものを、隕鉄より作られた『T(ツングース)鋼』を使った一品です。
 お守りと思って、お受け取りください。それでは・・・』

そう言って渡されたのは一本のナイフ。
風の噂と言う言葉に突き動かされたのか、第四帝國という途方もない夢に何を見たのか。
程なくしてブラッドはグルマルキン大佐と接触。その不死性から大尉の破格の称号と待遇を受け取り。
カジノの制圧任務を経て、ついぞ宿願の仇敵との接触に至る。

>>687>>692>>696
さて、話は現在に戻そう。ブラッドが魔女の喉元にその牙を突き立てようとした瞬間。

>『そんな素直な女なら――ここでこうしては、いません、よっ!』

ナイフが現れて、その頭部を貫くが、不死の化け物にはのれんに腕押し、柳に風。
ふと一瞬だけ、過去に想っていた女性の姿が脳裏によぎった。それが酷く懐かしい。

「………気丈な女は嫌いではない、がな。今は黙っていて貰いたい!」

ようするに、無力化してしまえばいい。踊るナイフを無理矢理捕まえて、
もう一度己の怪力を持って投げ飛ばす。壁にぶつけてやればしばらくは黙ってくれるだろう。
今は目の前の敵を、目の前にある宿願を果たすために。

>『そう、ボクが真のアドルフ・ヒトラー』

真の総統、つまり自分が殺そうとしていたのは哀れな影武者。
それを討ち果たしたところで如何に仇がとれようか。如何に願いが果たされようか。

>『ママの躰を、貰うよ。
  ボクが、ボクになるために』

そういってヒトラーは牙を剥き、母と呼んだ女に手をかける。
それで良い。目の前の敵は人を辞した非道の化け物でなくてはならないのだから。

「そうか………貴様はそうでなくてはな!故郷に手をかけ、我が家族を殺した張本人よ!
 それで良いのだ、やはり貴様は傲慢不遜な虐殺者でなくてはな!」

そうでなければ復讐という大儀も、あの日この身体に制止を振り切ってウイルスを取り込んだことも。
この不死の化け物として生きた60数年も浮かばれはしないのだから。

>『喜べ、ブラッド。もう一つ、理由をやろう。
  お前の同僚の女はな――』

脳裏に浮かんだのは自身の同僚であり友人であり、密かに想っていた女性。

『これは私の夢なのよ……』

そう言って彼女は夢を語った。自分の子供達に故郷を誇るために。
そうして、三人で笑いあった日々が今ではとても懐かしい。
あの日、邪眼の男に見せられた幻想は悪くなかったが。所詮、夢でしかないのだと。

>『ボクが、殺した』

そうヒトラーが告げ、自らの身体を弾丸が貫いたその時。
ブラッドの全ての機能が一旦停止し、そして全ての機能がもう一度、狂ったように暴れ出す。
乾いてしまったはずの血が逆流する。無くなってしまったはずの心臓が早鐘を打つ。
思考回路は火花を上げて、狂気と狂喜が失せたはずの脳髄を駆けめぐる。

パズルのピースが一つ一つ埋まっていく。全てはこの時のためにあったのだと。

ならば、あの『死神』と呼ばれる男が持ってきたナイフは、ただのお守りなどではなく。
このパズルを完成させるための、果たせなかったはずの願いを叶えるための最後のピース。
だがこの懐刀は、逆転の一矢は。突き立てるその一瞬まで、隠さなければならない。

そうでなければ、空間を曲げるあの男に、我が願いは届きそうもない。

「処刑とは流石に怪しいとは思っていたが。そうか……貴様か、ヒトラー!
 確かに安い私怨かも知れん。だが殺す理由には充分だ。」

そんな理由で、何人の命が散ったか。そんな理由で、どれだけの戦争が起こったか。

「そして貴様はその安い理由で私に殺される………それだけだ。」

ブラッドは走る。その一瞬の隙を突くために、全力で仇敵を屠るために。
人であることを捨てて、吸血鬼と化したその有り余る暴力を抱いて。

【現在位置:展望室3Fへの階段前】

721 名前:麻宮アテナ:2006/11/26(日) 18:31:13

>>631
『私は今愚かしくも、あなたの青臭い言葉に少し感銘を受けました…』

 あ、こういう自嘲癖。
この人もやっぱり、たくさん苦労して生きてきた大人の男の人なんだな。

『せめて今はあなたの青臭い正義に付き合いましょう』

 「うるさい小娘」と一蹴されるかって不安だったけど、
この人は私の青臭い正義――自分では正義とは思わないけど――を聞き入れてくれた。
かつての敵が味方になるというのは、戦力を云々言う以前に、
精神的にとても力になる。うれしい。ありがとうございます。
どうかこの危うい協力関係が、最後の最後までバランスを保っていられますように。
後ろから撃つ? とんでもない。少なくとも私のほうが先にあなたを……なんてことは絶対にない。

 聖書を手にした味方はどこかへ去った。
たぶん、あの人はあの人なりに戦うつもりなのでしょう。
私という子供の言葉につきあって。だったら私も、やれるだけのことをやれるだけやります。

722 名前:麻宮アテナ:2006/11/26(日) 18:32:36

>>721
 そんなふうにちょっぴりみなぎっていると。

>>695>>698
『聞こえるか、諸君! どうかご静聴願いたい。私は、ナチス所属、
オゼット・ヴァンシュタイン中尉である』

 ああ、まだおかしなことを言い足りないんですかあなたたちは。
いっそコメディアンにでもなればいいのに。出来の悪いギャグと同レベルなんですし。
あ、体力有り余ってるならプロレスラーとかいいかも?
大昔リングの上で「ハイル・ヒトラー!」ってやる外人悪役レスラーがいたそうですけど、
実は彼ユダヤ人だったとか。仕事っていうのはときどき辛いものですね。

 私の機嫌なんかもちろん無視して、モニターの中のヴァンなんとか中尉は
大袈裟な身振りを交えて熱弁(私にとってはちょっとアレなお芝居)を振るっています。
チョビ髭の上等兵閣下といい、ナチスという組織はこういうの好きなんですね。

『……よって私はこれより、聖櫃の奪取に向かう。心ある同胞たちよ、どうか私に協力して欲しい。
それでは、諸君らの賢明なる判断を期待する』

 ……ええと、つまり今のムダに力が入った大演説を要約するとこんな感じでしょうか。

 “内ゲバでぶっ殺死だぜ4649ベイベー! 出発(デッパツ)だオラァ!”

 “  !?  ”

 「賢明な判断」ですか。了解、私は私なりに色々やってみます。
懸命かはわからないですけどね。

<現在位置:客室から回廊部分へ移動開始>

723 名前:ロンギヌス13 ◆13th/X9pTg :2006/11/26(日) 19:53:50

>>714 >>715

異形。
そう表現する他無い存在が、其処に在る。

聖槍に貫かれ、男の身は既に滅んだ筈だ。
では、あれは何だ。滅んだ者が蘇ったとでも云うのか。

それこそ有り得ない。
蘇りを否定した槍の力を捻じ伏せるなど、聖者にすら起こせない奇蹟だ。
ならばこれは――奇蹟という生易しい言葉で括れるものではないのだろう。

これは、全て呑み込む波濤のような、圧倒的な暴威だ。
眼前に立てば、抵抗も防御も無意味だと思い知る。

「ク、クククク――ハハハハハハハ!
 いいな! これはいい! 素晴らしい演目が最後に待っていたものだ!」

だが、彼等は怯まない。

望みの物は目の前にある。
望んだ戦争は此処にある。
ならば、取るべき行動は唯一つ。

突撃、突撃、突撃あるのみ。

「さぁ、全機突っ込め! 戦争はまだ終わっていないぞ!」

五機のマリオネッテ・イェーガーが破滅に向けて突進する。
その腕に武器も構えず、愚直なまでに一直線に。

【周辺空域】

724 名前:シエル ◆kcbhGUILTY :2006/11/26(日) 20:05:09

>690

高く、歪んだ耳障りな音。
貫く、重い手応え。

「ええ、こういう武器です。
 本当は吸血鬼用なんですが、そうでなくても痛いですよ?」

切り離された杭が、ページになって散っていく。
本来なら、其処に刻まれた転生批判の文言が吸血鬼を滅ぼす――そういう武器だった。

「……ああ、あの時の人たちとは別の人なんですね。でも、装備は同じ、と。
 なら――――それに当たるわけにはいきません」

短くサイドステップ。足が付くより早く第七聖典を左の一機へ投げつける。
大きさで私の身の丈ほど、重さは私とは比較にならないほどの質量だ。
一動作分の時間は稼げるだろう。
着地と同時に、両手に黒鍵を一振りずつ。
今度はもう一機の振るう槍を左の刃で絡めて流し、前に踏み込む。

「長物を扱うなら、もう少し脇を締めるべきですよ」

右の突きで狙うのは喉元、装甲の継ぎ目。


【中層部:回廊】

725 名前:Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA :2006/11/26(日) 20:15:31

>>656

 繰り出された拳と拳が交錯する。
 ともに人外の域に達した一撃は、まさしく砲弾のそれと大差なかった。
 人外の化け物と。人間の枠を一時的にでも脱した愚か者。
 避けることなど微塵も脳裏には思い浮かばず、ただあるのは必中、必殺の一念のみ。

 互いに掴み掛からんばかりの間合いで炸裂した必滅を期した拳は、狙い違わず人狼の腹部へと
潜り込む――!

 瞬間、打撃というアクションをトリガーとして発動した<スラッグ>は、ターゲットに弾着すると同時に
その効果を発動させる。
 破砕、と言う一点にのみ収束し錬磨された戦法は、物理法則による干渉を無視し、一切の減衰なしに
その破壊力を叩き込んだ。

(仕留めた――!)

 手応え。
 伝送率100%の破壊の波は、間違いなくこの化け物のはらわたを粉砕した。
 その実感がある。
 狩った。殺した。理性ではそれは理解している。




 だが。
 この、抑えの効かない悪寒は、いったい何だ――――!?

【パーティルーム:大尉と交戦中】

726 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg :2006/11/26(日) 20:21:44

>>723 ロンギヌス13

 血汗に塗れ、ざんばらに髪振り乱して敵を迎える表情は、本人は笑みの形の積りらしい。
 歪みきってとてもそうは見えないけれど。

 虎蔵の左手がぶるんと振り抜かれる。
 袖口からの刀剣数本の出現は同時に手裏剣撃ちとなり、定規で線を引くように放たれた。
 上空へ。狙いは襲い来る五機の機甲猟兵ではない。飛ぶ先はてんでばらばらな方角だ。


 空いた左手は人差し指と中指を残して握り込まれ、剣指と呼ばれる印を結んで縦横無尽に呪
形をえがく。槍が貫いたままの腹部からは大腸や小腸がはみ出しており、激しい動きに合わせ
て一緒に揺れた。
 果然、雲の向こうへ飛び去る刀から大音響と光が発せられた。――投擲した刀は、全て稲妻と
なり、稲光に変じたのである。

 幾柱もの雷は下方目掛けて電光石火にひた走り、そして矢張り敵機ではなく、高々と天を突
く虎蔵の剣指へと落着したのだった。


「――雷神(なるかみ)不動ッ!!」


 血走った叫びを上げながら、魔人は雷を宿した剣の指先で敵小隊を指し示す。
 指向性を与えられた高密度の雷撃(サンダーブレーク)は逆流れに迸った。
 巨大なる青龍の如くうねりながら。


【現在位置:周辺空域にて交戦中】

727 名前:マンフレート・フォン・リヒトフォーフェン:2006/11/26(日) 20:26:28


>>695>>698
>>712
>>714>>715

 黒翼の東洋人/あり得ざる異形への変化―――その非常識さは、自身も変身
能力を持つマンフレートでも驚くほどだ。
 それに何よりこの男―――風を喚び/風を操作した。
 風に乗り、風を切ることで空を自在に操るマンフレートからすれば、危険極
まりない相手だ。早急に仕留める必要がある。

 と、そこで無線のスピーカー越しにオゼット・ヴァンシュタインの声が響く。
 内容は自身の反旗を示し、同胞を募る者であった。
 先までの協力/魔女の名に恥じぬ茶番だったというわけだ。

 レッドバロンの中には第二次世界大戦というものが存在しない。
 彼の中ではヒトラーは永久に伍長だし、ヘルマン・ゲーリングに至ってはJG1
のスコアをカウントする男に過ぎなかった。
 彼に戦後は訪れない。彼は未だ、第一次世界大戦を戦っているのだ。
 故に暴かれた真実にも、ヴァンシュタインの裏切りにも興味がない。
 マンフレートとしては、相手にする必要もない事態だが―――
 捨て置けぬ動きを見せる機体があった。

『レッドバロンよりグリューネヘルツ。レッドバロンよりグリューネヘルツ』
 ラインダース大尉に無線で呼びかける。
『なぜ戦域を離れる。今の我々の敵はあのスケアクロウだ。あれが我々の敵だ。
そっちには味方しか存在しない。グリューネヘルツよ、戻れ。繰り返す、その
方向に敵はいない。戻るんだグリューネヘルツ。軍人の務めを思い出せ』

 義務的にそう伝える。
 マンフレート自身は呼びかけながらも、東洋人との戦闘域から離脱。
 この場はロンギヌス13に任せて、自身はラインダース大尉を追った。

【周辺空域】

728 名前:ヴァルトラウテSS中佐 ◆SoRDENIEpc :2006/11/26(日) 20:26:57



「“新戦乙女隊”、JG1『リヒトホーフェン・サーカス』、聖槍騎士団――航空戦力、残存率
40%」

「ヤン・ヴァレンタイン、ルーク・ヴァレンタイン兄弟、共に戦死」

「レップ中佐、通信途絶」

「屍食鬼部隊、損耗率30……29,28%。比較増殖率-17.5%」

「制圧率、未だ――」

 戦況不利を告げる数々の報告が、臨時の発令所となった操縦室内に怒濤と押し寄せる。

「グルマルキンは?」
「現在、独自●●行動中です。
こちらからの通信は繋がぬように、と」

 ヴァルトラウテはその端正な横顔を僅かに歪めた。
 独断専行だけならばまだしも、作戦の詳細すらも未だつまびらかにされてはいないのだ。
 そこに、航空戦力から、ラインダース大尉の通信。(>>680)

「こちらは司令室、指揮官代行のヴァルトラウテSS中佐です――
 大尉、聞こえますか?」

 電磁障害が大きいためか、こちらからの通信が聞こえている様子はない。
 調整の為、周囲の電波状況を把握しようとし、

「……逆位相の周波数での妨害? これは一体」

 言いかけ、手を止めた。
 一斉にこちらへと向けられているのは、巨大な銃口。
 MAG-7小型散弾銃、恐らくは対自動歩兵用にとスラッグ弾とバックショットを交互に装填
されたものだろう。

「そこまでです。お掛けください、中佐」

 口を開いたのは操縦系統を統括していた士官の一人。

「グルマルキン大佐よりのご指示です。
 作戦遂行の為、どうか邪魔はなさらないように」

 用意された椅子に腰を掛けると、丁寧にその腕といわず脚といわず、全身を拘束される。
 その屈辱に耐えるように唇を噛む、その姿を嘲笑うようにヴァンシュタイン中尉の通信が
回線を通じて操縦室のモニタ全体に流れ出した。(>>695 >>698)



729 名前:『紅い悪魔』レミリア・スカーレット ◆remyaGVniw :2006/11/26(日) 20:27:42

>>705
VSパチュリ―・ノーレッジ

>「レミリア、パチュリーはおまえに任せた。存分に遊んでやるがいい」

私はグルマルキン…様からパチェと二人っきりで戦う事を許可された。
それを聞いた私は―――

「ええ、判りましたわグルマルキン様」

―――と、そう返事を返した。
(ふぅ……どうやら何とかなったわね…)
私は心の中で渋々そう呟いた。何故ならグルマルキン様がパチェの処分を
私一人に任せてくれた事で、私が一番懸念していた出来事が回避されたからだ。

確かにパチェは魔法の能力に関しては絶対的に強い。それも親友の私が認めるぐらいに…だ。
だが―――パチェは生まれつきながら重度の喘息持ちであり、
それが原因でスペルを完全に唱えきれない上に…その分隙も生じてしまう。

しかもグルマルキンは予想以上にずる賢い。
もしそこをグルマルキンに付かれれば…パチェは絶対的に不利だ。
もし、逆上したままのパチェがあのままグルマルキンと戦う事になれば―――
近接戦闘に乏しいパチェはきっと殺されるだろう……。

それだけは絶対に避けたいと思う願いが通じたのか…
はたまたグルマルキンの思惑通りかどうかは知らないが―――
最悪私の親友が死ぬ可能性が低くなったのは不幸中の幸い…と捉えてもいいのだろう。

それから私は改めてパチェの方向を向いて―――

「そういう事よ、パチェ。だから私が…貴女の相手をしてあげる。でも心配は要らないわ。
……かつての親友としてのよしみで一瞬で終わらせてあげるから―――
貴女にも身に覚えがあるこのスペルカードでね―――!!」

―――そう叫んだ後、私は“神槍”「スピア・ザ・グングニル」のスペルカードを使い、
私の右手に終結した魔力の塊を…私の背丈以上はありそうな魔力の槍に変化させ、
そしてパチェ…の真横目掛けてぶん投げた!!

私の手から解き放たれた魔力の槍は―――私の狙い通りパチェの真横をすり抜けて
壁か何かに着弾して、派手な爆音と共に激しい爆風を巻き起こした。

【回廊:レミリア パチュリーに攻撃開始】

730 名前:『紅い悪魔』レミリア・スカーレット ◆remyaGVniw :2006/11/26(日) 20:28:35

>729
VSパチュリー・ノーレッジ

私は―――先程の爆風で吹き飛ばされて気絶しているパチェに近づいて…
そのまま気絶しているパチェを抱きかかえて、そしてグルマルキン様のいる
方向に向かってこう言った。

「グルマルキン様。一旦私はこのままパチェを連れて何処か別の場所で決着をつけたいのですが…
よろしいかしら?」

その問いに対しグルマルキン様は何も言わない。しかし、少しながら首を縦に振ったのを見た時…
どうやらOKのようだ。私はそれを確信して―――

「ウフフ…有難うございますわ、グルマルキン様。では私はこれで―――」

―――そうグルマルキンに感謝の気持ちを言い放ち、そのまま気絶したパチェを連れて
まだ戦場と化している回廊を後にした。

【現在位置:レミリア 気絶したパチュリーを連れて 回廊→甲板?に移動(人気のいない区域)】

731 名前:レミア・シルヴェスタW世 ◆MVlNEREMIA :2006/11/26(日) 20:30:17

>>716
竜巻が消えたとき、そいつは飛んでいた。
髪が風になびき、そのまま見えなくなる。

「――――終わったわね」

窓から吹き抜ける風にマントがはためく。

「行きましょう、グルマンキンを追いに」

竜巻で体はズタボロだ。
顔、腕、いたるところから血を流している。
しかしすぐに再生するから問題ない。

黒いトランクをひきずる。
おぼつかない足取りで回廊へ。

【現在地:客室→回廊へ移動中】

732 名前:コーディー:2006/11/26(日) 20:30:51

>>722
何やら船内から甲高い女の声が聞こえる。恐らくこの船の通信でも
乗っ取って何か演説でもしてんのだろう。聖何とかの奪取だの同志だの
言ってたが倉庫にずっと居た俺には何が何やらさっぱり分からねぇ。いや、
始まりからして「ハイジャック」って事くらいしか理解できてない身としては
何にせよさっさと喧嘩おっ始めるにはコイツの意図通りに動いた方が得策と
いう事か…?

「…チッ、面倒臭ぇな」

ともかくも、争いの中心地にいかねば始まらない。そう思い歩を進めると

向こうから先刻まで共闘し、誘拐?された娘の姿が有った。

「…よう、身包み剥がされてなくて何よりだ」

【現在位置 中層部客室 アテナと再会】

733 名前:リゾット・ネエロ(M):2006/11/26(日) 20:32:07

>>669 >>688 >668
どうやらもうヤバイらしい、この鉄屑野郎は俺の腕を捻り上げ、信じられない
速度で背後のタキシード野郎目掛けてぶっ飛びやがった。どうやら俺ごとあい
つを叩き潰すつもりらしい。
その上、当のタキシード野郎はいつの間にか甲冑を着込んで馬鹿でかい刀を振
るい俺ごと鉄屑野郎をぶった斬るつもりらしい。どちらにしろ俺はただでは済
まない。

だが、俺もただで殺られるつもりはない!!

メタリカは鉄屑野郎の体内に配線に潜り込んだ。今頃は目に付いた回路を片端
から切断し、そこいらに磁力を振りまいている事だろう。
ダメ押しに自ずからも磁力線を全力で開放する。射程距離内にいるものはすべ
からくこの影響からは逃れられない。その結果何がもたらされるかは分からな
い、少なくともタダではすまない。

【場所:展望台1F、パーティルーム】

734 名前:ヴァーミリオン・CD・ヘイズ ◆/CD/iS.AAU :2006/11/26(日) 20:32:37

>>717

ヘイズの放った銃弾は、今度こそ狙い違わず、的確にグルマルキンの胸部を、
更にその内部、胸骨に納められた心臓を貫き、破壊した。
衝撃にもてあそばれるようにしてそのまま凶悪な魔女は吹き飛び、血の糸を引きながら
倒れ伏した。

だが―――案の定。
I-ブレインは目標の停止を確認していない。
ヘイズは予断なく左手に銃を構え、右手は空手のまま、ただ中指と親指を重ね合わせる。
やがて頼りない足取りで立ち上がったグルマルキンを前に、ヘイズは苦笑交じりに言った。

「唯の人間じゃないのはお互い様だろ―――普通は、今ので死んでるぞ」

強烈な殺意の篭もった視線を、正面から見返す。

「けどな、安心しろ。これから直ぐ楽にしてや―――」

二の句を継ごうとして、I-ブレインが目の前の異常を感知する。
杖代わりに突き立てられたサーベルから、高密度の分析不能なエネルギー反応。
滔々と告げられる、力ある言葉―――彼の知らない、「魔術」。


「―――いでよ、右の蛇。放て、赤のサルファ!」


エネルギーの津波が、大きく唸りを上げてヘイズに襲い掛かる。
同時に、稼働率を引き上げていたI-ブレインが分子運動の予測演算を完了。
ヘイズが、予め構えていた右の指を打ち鳴らし、更に右足で床を踏み抜いた。
その音により構成された論理回路が、彼とエネルギー波の中間地点に発生。
強大な破壊力の塊を、無力化する―――

が。
半分暴走状態で打ち出された強大な魔力は、それでも全ての威力を殺されたわけではなかった。
そうと気づいた時には、I-ブレインは既に『回避不能』の警告メッセージが、


衝撃。


「が、はっ――――――!」

為す術なく、身体が舞い上げられた
20メートル以上の距離を吹き飛ばされるが、ヘイズは持ち前の体術で姿勢を立て直す。
辛うじて地に倒れ伏す事だけは避けられた。
地面に右手をつきながら、荒く息を吐き、自分の状態を確認する。
左上腕部の裂傷は今の衝撃で更に広がり、全身は余すところなく裂傷・打撲で埋められた。
幸い、どれも致命的な部位の損傷ではない。
ただし、今も全身を苛むこの痛みが、これからの予測演算に多少の修正を必要とすることだけは、
確実だろう。

「くそ、次から次へと―――よくもまぁ、手品の種が尽きないもんだ」

唇の端から垂れる血液をぬぐい、ヘイズは悪態を吐き捨てた。

735 名前:ロンギヌス13 ◆13th/X9pTg :2006/11/26(日) 20:34:04

>>724

全身を鋼鉄で覆った彼等にも、僅かな隙間はある。
首や間接部など――伸縮を必要とする部位には継ぎ目に強化樹脂が使用されているのだ。
女はその一点を狙い、刃の切っ先を刺し込んで来た。

「――あの打ち込みをいなしてみせるか」

ツヴァイツェーンは喉に刃を受け、ひゅうひゅうと呼吸音を漏らす。
血泡の詰まった音声は、機械を通してよりおぞましい響きを持っていた。

「成る程、人外との戦いには余程慣れているようだ」

呪文板(スペル・タグ)はマハガルーラを選択。無音詠唱。

「だが、覚えておくがいい」
「戦う為に戦う者に――」

体勢を立て直したエルフもまた、接近距離の二人へ向けて穂先を向ける。
呪文板、マハラギオン選択。無音詠唱。

「「命は不要だと!」」

叫びを契機とし、槍を通じて魔法が解き放たれる。
吹き荒れる炎、そして踊り狂う疾風の刃。
エルフも、そしてツヴァイツェーン本人すらも命については何の頓着も無い。

この二名は、ただ戦闘を行うだけのマシーンなのだ。

(ツヴァイツェーンは成否に関わらず死亡。残りエルフのみ)
【回廊】

736 名前:コダマ ◆K3dMKODAMA :2006/11/26(日) 20:35:13

>>688
天井スレスレの高さまで舞い上がったコダマは、万有引力を更なる蛮勇を持って踏破する。
天井を足場に、反動を加え加速した肉体のベクトルを整える。

刃の一撃に沈む相手とは思えない。
ならば、その攻撃力をまずは奪う―――!

タッツェルヴルムの肩口に向けて振り下ろされる剣。
その赤い輝きが、赤き血潮を求めてタッツェルヴルムに喰らいついた―――

【現在位置:パーティールーム】

737 名前:ビリー・龍 ◆D727Bb9L.2 :2006/11/26(日) 20:35:32

>>700

 30分ほど寝ていたようだ。
 30分てーのは、ようするにマクスウェルが神経系の代替物を見繕って無理矢理(論理的に、あるいは電気的に)つなげるまでの時間だ。
 30分のあいだ、俺の体は死骸同然に転がっていたわけだが、
 それをどうこうしようというやつも現れなかった。

 経路がつながっちまえば、修復そのものは数秒ですむ。
 マクスウェルが再生命令を発し、後頭部が復元。

 寝ぼけた頭で起き上がる。
 あたりを見回した。
 俺をK.O.した世にも珍しい女は消えていた。
 ズタボロの男もいなかった。

 いるわきゃー、ないか。

 戦火の音と、非常警報の遠い響だけが俺の周囲の音だった。
 くそったれ。

 俺は首を回した。ごきごきと音がする。

(客室エリアにて起床)

738 名前:大尉:2006/11/26(日) 20:36:33

>>675 (イリーナ・フォウリー)
>>725 (レイオット・スタインバーグ)


 戦鬼のそれは鋼よりも硬く重く、戦車砲から吐き出される弾よりも速い拳の砲弾だった。
 人が熱く焼ける鉄から造り出したそれと違いをあげるとすれば
 着弾時に閃光や爆発を死の副産物として産み出さない事ぐらいか。




 ――――――炸裂音は戦車のそれと同じだった

          最もそれが分かるものは既にこの部屋には居なかったが



 戦鬼は立っている、左肘から先は無く、腹に大孔が穿たれている、両の足は血の池に浸かっている。
 しかし、戦鬼は変わらず立っている。

 そして、光る二つの眼がイリーナへと向けられる。


        ――――汝、未だ闘争の契約を果たすか?――――


 <現在地:パーティールーム>
 

739 名前:ケイト・コナー ◆g6orsKate. :2006/11/26(日) 20:38:31

>>696

 彼の視線に見据えられた時、私はもう目を逸らすことができなかった。
 ――胸が高鳴る。甘く切なく、熱く狂おしく。
 ――胸が痛む。深く鋭く、大きく激しく。

 その呼びかけは、安堵と隠れた恐怖をもって私の心を鷲?み、体ごとそばへと引き寄
せる。

 「躰を、貰うよ」その、おぞましい言葉にさえ、私はただ首を縦に振るしかな
かった。


初めにあったのは僅かな痛み。
彼が私に優しく、深く突き立てる。彼が私の中に入ってくる。

「あっ……」 漏れたのは微かな喘ぎ。

次に襲ったのは急激な喪失感。
失ったのは、血か、命か、魂か、それとも人の尊厳なのか。

「あぁ……あ……はあああああっ」 今度は長く。

   失うと同時に何かが私の中に。
   名状しがたい感覚が、熱と共に私を蝕む。
   まるで皮膚の下を何かが這うような感覚。


 僅かに正気にかえった時、私は床に転がっていた。
 彼に突き放されたのだろうか? たぶんそうだろう。
 それを酷いと思うより、それが無性に哀しかった。

「ん…ひぃッ、あ……な、なあっ――」

 たまらずその場で悶える。まるで芋虫みたいに。
 熱は首から全身へと広がり、脳も既に熱に浮かされている。
 細胞の1つ1つ、神経の1本1本が侵されていく感覚は、私をじょじょに陶酔で満たして
いく。

「あっ……ひいっ、あくっ、はあんっ、ああっ……くうっ、あふっ…いやぁ」

 耳に響いてくるのは私の嬌声と私を呼ぶ声。『ママ、ママ』それは幻聴。
 目に映るのは荒れ狂う悪鬼たちの饗宴と愛しい家族。「アリー、テぃミー……すチュあ
ート」それは幻覚。
 脳裏を過ぎるのはただ絶望と今は亡き最愛の人。


『おいで、ケイト――いいや、ママ』

 今ただ私の目に映るのは――――

「坊や。ああ……私の可愛い坊や。ああっ、はあんっ、うくっ……坊やあっ!」


 人間ケイト・コナーの思考が最期に見たのは、ただただ真っ白な光。


【現在位置:展望室3Fへの階段】


740 名前:タバサ ◆3VTTABASAI :2006/11/26(日) 20:43:55

>>696>>720>>739

>>696
 私がこの状況を打破しようとあがいていたその時。
 少年は語りかける。自身を見失い、呆然としている女性に。
 天使の如きその姿で、母性をくすぐる甘い声で、終焉を告げる。

>>720
 ナイフが男の頭部に突き刺さる。が、気にしているそぶりすら見せない。
 心の中で、小さく舌を打つ。ダメージを与えられないのは分かっていた。しかし、気を緩ませることさえ出来なかったとは……。
 この宴の終焉を見届けられなかったのは残念だが、この竜眼さえ無事ならば――

「なっ!?」
 腕一本で無理矢理引き起こされ、壁に目掛けて投げ付けられた。
 思考する猶予も、受身を取る暇も与えられず、私の身体は壁に叩きつけられた。
 背中に壁のひしゃげる感覚が伝わり、耳にその音が聞こえる。
「か……はっ……!」
 鉄錆に似た味が口中いっぱいに広がり、私は壁伝いに崩れ落ちた。

>>739
 終焉を告げられた『ママ』の、恍惚とした表情と、黄金銃を持つ魔女――オゼット・ヴァンシュタインの演説(>>695>>698)の中、
私の意識は急速に暗闇へと飲み込まれていった。


【現在位置:展望室3Fへの階段前、壁際】

741 名前:コーディー:2006/11/26(日) 20:45:01

位置の間違い
>>732 現在位置 回廊

742 名前:シエル ◆kcbhGUILTY :2006/11/26(日) 20:45:04

>735

入った。
切っ先に感じる肉の手応え。
見れば、刀身には赤いものが伝っている。

「――――な」

なのに、怯んでいない。
苦痛を感じているのかすら、分からない。
血を吐いているとはいえ、その狂気には些かの衰えも無い。

「が、っ――――ああぁぁぁぁぁ!」

驚愕は一瞬だった。
全身を渦を巻く炎が、燃える風の刃が焼き/切り刻んでいく。
無我夢中で、右の黒鍵を――火葬式典を、発動した。


【中層部:回廊】

743 名前:哀川潤 ◆MzXQXe8zTc :2006/11/26(日) 20:45:28

>>700

「じゃま、倉庫とやらに行ってみっかー。
 銃借りるぜ?二丁拳銃のおにーさん」

客室内に貼られていた飛行船案内図に目を通す。

「倉庫ねぇ…? 上部と下部に各一箇所か。
 どっちか何て聞いてねーし、両方回りゃあいいな。
 まず下から行くとすっか。」

>>722

再度 ぶつり。 とテレビから映像が流れてきた。
要するにナチス側の仲間割れ。ってこったろ。

「ったく、これじゃあドイツじゃ無くて日本軍だろ
 あたしにゃー関係無いね。

ほんじゃま、行くぜ――」

【哀川潤:客室→下層部倉庫】


744 名前:ロンギヌス13 ◆13th/X9pTg :2006/11/26(日) 20:47:25

>>726

「――来たぞ! 来たぞ来たぞ来たぞッ!!」

打ち上がった花火を見守る子供のように、その声は躍っている。
自分達を滅ぼす雷が来る。一切を無慈悲に打ち砕く、破壊が来る。

――嗚呼、なんと素晴らしいのだろう!

「そうだ! これでいい! 最早止まらない、止まらないぞ!」

恐らく、自分達が消えた後もこの破壊は続くだろう。

船に損害があれば、中には夢のような恐慌が訪れるだろう。
そのまま落下して世界に災厄を撒き散らすのもいいだろう。

ここに至って、彼等の目的は完全に達成された。
戦場を発した狂気と混沌が、世界を壊す。
これは最早、決定された事項なのだ。

「ハハハハハハハハハハ!
 因果地平の彼方で待っているぞ――貴様らも、早く来るのだな!」

そして、閃光に撃たれた五機の姿は灰すらも残さずに消え去った。
世界そのものから抹消されたように――跡形も無く。

(空戦部隊、全滅)

745 名前:アドルフ・ヒトラー ◆sLAdoLfKkE :2006/11/26(日) 20:50:57

>>720
「虐殺者、か。そうでなければ世界が一つにならないのなら、そうしよう。
 如何なる汚名を受けようとも――為さねばならぬ物がある」

 一瞬、その瞳に去来したのは、悲しみにも似た感情。
 だが、それは苛烈な意志の炎に灼かれ消える。

「理由はそれでいい。
 だが、その理由では――」

 腕を振り上げる。
 そして、まるで剣でも持っているかのように振り下ろす。
 不可視の刃が――
 大尉ブラッドの左肩から右脇腹にかけての「空間」を切り裂いた。

「ボクは、殺せない」

>>739
ブラッドの「空間」を裂いてボクは「ママ」に向き直る。

「・・・呼んだかい、ママ。
 ボクならここにいる・・・ふふっ、どうやら上手く「適合」したみたいだね。
 よかった」

 獣性細胞を与えられた者のほとんどは、劇症感染を起こしてそのまま死に至る。
 実験結果では九割に近い確率だった、が・・・運が良いのか、「ママ」は劇症感染を起こすことなく、獣性細胞を受け入れた。

「普通なら、その身体に動物の因子を与えるんだけど・・・今日は特別さ」

 そう、今は常の状態ではない。
 肉体を構成する獣性細胞、そのものが枯渇してきている。
 故に、この身体にならざるを得なかった・・・無論、それだけではないが。

 どちらにせよ、だ。
 「ママ」に近づく。一歩、二歩・・・そして、ママの頬に手を当て、微笑みかける。

「ねえ、ママ。
 ボクは、このままじゃ「足りない」んだ。
 わかるよね? ボクはね・・・ママの、躰が欲しいんだ」

 頬に当てた手が、ずぶずぶと「ママ」の身体に入り込む。
 それは聖なる侵入。歓喜という名の終焉。
 苗床によって増殖した獣性細胞を、そして苗床となった「ママ」を――ボクは、喰らいつくした。

>>740
 そして、ボクは立つ。
 死を喰らい、再生して。

「タバサ、起きたまえ。
 この出来損ないを片付けるぞ」

 念ではなく、言葉で。
 威厳に満ちた、だが静かな声。

 ――その姿は、既に少年期を過ぎようとする頃に近づいていた。


【場所:展望室3Fへの階段前】

746 名前:エアハルト・フォン・ラインダース ◆CnAdcTa152 :2006/11/26(日) 20:51:45

>>727 レッドバロン


『レッドバロンよりグリューネヘルツ。レッドバロンよりグリューネヘルツ』

 無線機が異様なしゃがれ声を拾う。
振り返る。 追いすがってきたのは、異形の影。
夜気を打つ蝙蝠の翼。 異様に節くれだって捻じ曲がった血の色の体躯。
童話で何度も聞かされた悪魔そのものの姿。

 そして、見た。
 太い真紅の首に下げられたあれを、誰が見間違えよう。
ドイツ空軍の兵士なら誰もが憧れと畏敬をもって讃える最高の英雄の証。
紺碧のプール・ル・メリット。
そしてコールサイン“レッドバロン”

では、背後にいるあれは子供の頃憧れた英雄、赤い男爵リヒトホーフェンだというのか。
否だ。 断じて否だ。
べルサイユ体制下、絶望的な恐慌と貧困の惨禍のただ中にあって
祖国の生んだ英雄として、希望の星として語り継がれた勇者が、このような化け物であるはずがない。

『なぜ戦域を離れる。今の我々の敵はあのスケアクロウだ。あれが我々の敵だ。
そっちには味方しか存在しない。グリューネヘルツよ、戻れ。繰り返す、その
方向に敵はいない。戻るんだグリューネヘルツ……」

 力任せに引きちぎられた無線機のハーネスと、フルスロットルでの反転が
背後の赤い悪魔への解答。そのまま全速ですれ違う。

 瞬間、交錯する視線。
キャノピーの向こうに見えた異形のレッドバロンの顔。
それは何故か愉しげに笑っているかのように見えた。

747 名前:Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA :2006/11/26(日) 20:52:51

>>738

 破壊していた――それについては疑うべくもない。
 狼の、牙の並ぶ口腔からは生臭い鮮血が溢れていたし、肋骨と腹筋と脂肪は悉く粉砕されかき混ぜ
られ、破れた腹腔からは挽肉上のなにかが体液まみれになって垂れ流されている。

 破壊していた。それについては間違いがない。
 ただ――その破壊が。
 奴の致命傷には、これっぽっちも結びついていなかっただけのこと。

 音そのものは、あっけなく感じられた。
 ごきん、か。或いは、どかん、か。
 ただ、何かが爆発したような衝撃だけが全身を襲っていた。
 刹那に感じる浮遊感。ほんの一瞬だけ、身体も思考も虚空へと飛び去り、何とも言えない恍惚感を
味わった後――

 再び壁へと叩き付けられた衝撃で意識を無理矢理取り戻した。
 衝撃で割れたHUDの破片が顔に突き刺さっている。
 だが、痛みはない。
 ぴくりとも動かなくなった身体。
 だが、痛みはない。
 装甲の隙間からじっとりとしみ出している鮮血。
 だが、痛みはない。

 かすれる視界には、すでに地獄と化したパーティールームは映ってはいなかった。
 ただ、破砕された壁だったモノが数枚、眼前に広がっており――戦場の音は、遠くにある。

「ああ、負けたのか――」

 それだけを理解して。
 大きく、残った力を全力で使いながら、肺にたまった息を吐き出す。
 血のにおいに、薄く苦笑が漏れた。
 そして、ゆっくりと意識が薄れていく。
 おそらくは、もう二度と目覚めることはないだろうが――あんな化け物とやり合った結果だ。
 まあ、それも悪くない。

 もはやぴくりとも動かない身体を放棄するように。
 俺は、あっさりと意識を手放していた。

 ただ。
 最後に小さく、カペルテータの声が、聞こえたような気がした。

【レイオット・スタインバーグ――リタイア】

748 名前:飛竜 ◆HIRYUmxRKo :2006/11/26(日) 20:53:06

>>719>>731>>732
 本部への報告を終えた直後、何者かによる演説が船内放送で流れた(>>695>>698)。
「仲間割れ、ではないな。最初からこれが目的で乗り込んだか」
 こちらにとっては好都合。障害は少ない方が良い。

 回廊に出る。
 死んでいてもおかしくない傷を負った女が弱い足取りで先を行き(>>731)、
コーディーが先ほど船外へと消えた男が連れ去っていった給仕の女を見つけ、なにやら話をしていた(>>732)。

「奴は恐らくこの先だ。急ぐぞ」
 コーディーの脇をすり抜け、振り返らずに先へと進んだ。

【現在位置:中層部客室エリア回廊、アテナと遭遇】

749 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/26(日) 20:55:20

>>725>>747 (レイオット・スタインバーグ)
>>738 (大尉)

 無我夢中で棍棒(クラブ)を投げつけましたが……その先に待っていたのは、無惨な結果でした。

「レイオットさん? レイオットさぁーーーーんっっっ!?」

 死闘を繰り広げた直後とは思えない、まるで変わらず無表情のまま佇む、大尉の『目』。
 彼にとっては、わたしもレイオットさんも、単なる『標的』でしかないのでしょう。1つの
標的を倒したなら、次。敵対する標的がいなくなるまで、ただ機械的に『障害』を排除する。

「レイ、オット……さん……」

 遠い異境の地にて。共に戦った時間はごく僅かでしたが……それでも。
 それでも、レイオットさんはわたしにとってかけがえのない「戦友」であり、「命の恩人」でした。
 わたしの心の中に、沸々と怒りが湧き……次の瞬間、それは吐き出されていました。

「……許せませんっ」

 わたしはエメラルドの大楯(勇気ある者の楯)を背負い、床に置いていた銀製の
大剣(グレートソード)に持ち替え、大音声で叫びました。

「……このイリーナ・フォウリー。ファリス様の名に誓って……」

 大尉の、射抜かれただけで命を奪われそうな、鋭利な剣のごとき殺意の視線に、打ち負けまいと。
 これから待ち受ける定めに、死にもの狂いで抗うかのように。

「……貴方の蛮行を。全力で阻止しますっ!!」

 それが、わたし自身にとって……悲壮であり、己の破滅へと足を滑らせるための宣言であることを。
 わたしはすでに、予感していたのかもしれません。

* * * * * * * *

 そしてこの時、わたしは気づく由もありませんでしたが……
 パーティールームの暗闇の中、地を這い、蠢いている「もの」がいました。

 喰屍鬼(グール)に血を吸われた犠牲者もまた、喰屍鬼(グール)と化すということを。
 そして彼らは、頭や心臓を大破されない限り、そう簡単には活動をやめないということを。

 レイオットさんや大尉の死闘に全神経を集中させていたわたしに……「それら」がじわじわと
近づき、わたしを喰らおうと忍び寄っていることに。

 まだわたしは気づいていませんでした。

【イリーナ・フォウリー:現在地:パーティールームにて、大尉と交戦中】

750 名前:エアハルト・フォン・ラインダース ◆CnAdcTa152 :2006/11/26(日) 20:57:34

>>746
【現在位置;周辺空域にてレッドバロンと戦闘開始】

751 名前:レザード・ヴァレス(M) ◆jBiAWniQ.. :2006/11/26(日) 20:57:36

>>708 >>728


―――混沌は加速し、まさに地獄の様相を呈していた。


そこは此処、発令所もかねた操縦室においても変わることはない。
飛び交うは既に喧騒というに相応しい通達、報告に犯意の数々。
ここからでも垣間見える空の激戦、顕現した焔の庭園に焼かれたのは誰か。
そして――――船を落とさん勢いで唸る竜巻。
第三帝国の魔女が発した宣言も相まって、混乱は加速度的に熱狂を増してゆく。


 「やれやれ…全く騒がしい。全ては順調の極み。我々の描いた計画の通りに進んでいるというのに…。
  伝説に聞こえた鉤十字も、存外に人の子というわけですか」

だが、その船体をも軋ませる喧騒の中においてもレザード―――彼と聖櫃、そして展開された方陣―――
のいる一角だけは何も変わっていない。まるで、彼の周囲だけが俗世から切り離されているかのように。

否、“それ”がただ騒がしくないだけだ。
変化は確実に、かつ劇的なまでに始まっている。
『聖櫃』の制御―――――正確には、その『周囲』の制御だが。
もたらされる禍福の幅、正しく天地のごとく極端に極まれり聖遺物。
これ自体に手を加えるのはレザードにとってすら危険であったし、元より危険を侵すつもりも皆無であった。
必要なのは聖櫃を必要な機で、必要なだけの力を発現させること。
いわば此度、この聖なる箱は爆弾以外の何物でもなく、そうなるよう彼は今まで調整を行ってきたのだ。


       『レザード・ヴァレス、ヴァンシュタインの声明は確認したな?』

 「ほお……これはこれはグルマルキン公。ええ、十分に聞こえました。
  お教えした念話も忘れるとは、そちらも随分とのっぴきならぬ状況のようですが」

先ずは、『霊起の呪』―――その呪式に込められた真意。
船全域に漂う負の想念は集められ、聖櫃周囲の方陣へとパイプラインを通して集積される。
五色の多重方陣の制御は凍結魔法の解除と並列。
霊的な外気に晒さぬよう封印を解きつつ、方陣を再構成、最低限機能を維持したまま一つだけ“孔”を作る。

   『奴は間違いなく操縦室に向かう。私は手が離せん。貴様が迎撃しろ。今の声明
   は恐らく、ヴァンシュタインが思っている以上に有効だ。レップは死んだみたい
   だが―――タッツェルヴェルとヴァルトラウテはもはや仲間と思うな』

いわば、集められた怨念は火薬であり。
空けられた“孔”は導火線。
そして、もはや薄皮一枚にまで減じられた方陣に包まれた『聖櫃』は。

  「心得ました。元より私が此処にいるのは、こういった事態も兼ねてのこと。
   それと――――――」

最後の言葉は口から発せられていなかった。
今彼がグルマルキンと交信するのはテレパシーの一種、ミッドガルドの魔道でも
基礎的な念話の術だ。


「――――聖櫃の制御術式、今現在を以って完成しました。
  あとは起爆剤となる優れた魂の収集、そして起動式を打ち込むのみとなる。
  起動式は前もってお教えした通り……其方が予備ごと倒れられれば私が、
  私が倒れたならば其方にお願いしたい」




「さて、如何様に駒は動くか―――――」

【現在位置:操縦室】

752 名前:sage:sage

sage

753 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/26(日) 21:00:37

>>729>>730

 レミリアがパチュリーを引き連れて回廊から姿を消す。
 レミリアへ施した魅了の術式は不完全だ。
 監視下から外すのは心許なかったが―――かと言って、レミリアにいちいち
命令を下す余裕もグルマルキンには無かった。

>>734

「貴様……これでも死なんと言うのか」

 数世紀を跨いで生きるレミリア・スカーレットならまだしも、こんな人間風情
に魔導士グルマルキンの魔術が二度も防がれた。―――なんて屈辱。
 乱れる呼吸/溢れる血塊―――押し留めて、前進する。
 致命傷こそ負わせられなかったが男はもう半死の体だ。魔術士の矜持を穢され
た恨み―――サーベルに託して、引導を渡してやるのはさほど難しくない。
 だが、その前にやるべきコトがあった。

 今にも完全に動きを制止しようとしているグルマルキンの心臓―――欠損した
機関を補うための贄が必要だ。
 霊視眼が肉体を透視して男の心臓を睨み付ける。
 健康状態は良好。一時凌ぎ程度の役には立つ。
 口端を吊り上げてグルマルキンは嗤笑した。

「悦べ男。貴様は生かしてやる」

 左手を払いのける。マントを翻した。
 黒翼のように羽ばたく外套―――内側から闇が溢れ出す。

「但し、心臓だけだ」

 マントの内側に刻み込まれた召喚陣/二本――四本――八本――十六本――
男を抱き込むように、悪魔将軍ヴェパールの腕が現れる。
 指先には鋭い爪。
 男を解体し、その心臓だけ取り出すために馳せた。

【回廊】

754 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2006/11/26(日) 21:01:05

 落ちる。
 落ちる。
 落ちる。

 ただひたすらに。
 眼下の光景は地獄絵図。

 落ちる。落ちる。
 落ちる。落ちる落ちる落ちる―――――。


「流石にちょっと拙かったか、コレ」


 まあなんだ、少し時間は遡る。
 一見以来が舞い込んで、それは可及的速やかに解決しなきゃならない事項だった。
 ナチの決起? 馬鹿げてる。馬鹿げてやがる。
 狂気山脈? 狂ってんだろ。ソークレイジー、だ。

 そんなワケで軍が持つ高高度戦闘機に運ばれ現場まで直行。
 その後のやりとり。

「さて、と。行くぜ。さっさと帰れよ、死ぬから」
「オーライ。俺もまだチキンのローストを喰いたいからな。自分がそうなるのはゴメンだ」
「ハハッ―――違いねえ。ハッチ開けろ」
「オーケーオーケー―――って、オマエパラシュート……」

そんなもんは必要ねえ(、、、、、、、、、、)―――――!」


 で、今に至る。
 そろそろ気球とキスできそうな距離。

 ああ、コイツは拙い。拙い。拙い?
 Ha―――! 上等だよ。

 背中の剣を一振り。相棒の調子は万全。当然オレも、だ。
 さあ行くぜ相棒? パーティーは始ったばかりだ!

「Show Time!」

 気球の一部を破壊しながら(穴が空いたワケだ、シャッター下りてたけど)速度を殺す。
 目指すは甲板。そこから例の『ブツ』目掛けるか、頭を潰すか。
 まあ何にせよ―――

「主役は舞い降りた―――なんてな」

 赤のコートは風に棚引き、オレはタダ一人甲板に。
 グール? 物の数じゃねえよ。

755 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2006/11/26(日) 21:01:53

>>754
【現在位置・甲板】

756 名前:ロンギヌス13 ◆13th/X9pTg :2006/11/26(日) 21:01:53

>>742

力と力の衝突により、炎と風はかき消された。
だが――黒煙の向こうからは、依然平坦な機械音声が聞こえて来る。

「――いい足止めだ、ツヴァイツェーン」

だん、と地を蹴る音。
鈍重な筈の甲冑が、増幅された脚力によって宙に浮かぶ。
エルフが超低空の滑空を行い、接近する。
短距離とはいえ、速度と質量を併せ持ったそれは槍騎兵の突撃と呼ぶに相応しいものだった。

「この至近距離から、かわせるかッ!」

槍の穂先は塵と煙を貫き――更には女を貫かんと真っ直ぐに突き進んだ。

(残りエルフのみ)
【回廊】

757 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg :2006/11/26(日) 21:01:58

>>744 ロンギヌス13

「どやかまわしいわ!」

 いかずちが次々と機影を爆破していく噴煙の向こうで、尚も天翔ける影がある。
 巨大化した右眼と尋常な左眼、二の腕に生じた眼がそれらを捕捉した。
 赤い戦闘機(>>727)、黒い戦闘機(>>746)。


「狼は死ね、鳥も死ね! 芥(あくた)の一つも残してゆくなッ!!」


 虎蔵は弦から矢が放たれるように飛翔した。ほとんど向きは垂直である。
 飛びながら回転。端からGなどを無視した機動だ。
 如何に異界の法則を現世に揮おうが、先刻から受けた疵は深い。常人なら既に死んでいる。
 そんな限界を飛び越えた状況だからこそ、虎蔵の意識はこれまでより研ぎ澄まされる。
 空を飛ぶ、という事に五感が集中する。上昇と浮遊、重力という呪縛からの解放。
 そして風。

 それを他者に説明する事は出来ない。隠秘の知識は主観的なものである。
 兎も角、虎蔵は風を理解した。その時、ある種の終局が訪れた。


 長谷川虎蔵は――これでも一応――人である。人の形をしているものは、多かれ少なかれ人
なのだ。これは大前提。
 さて風を――天地自然を真に理解する事は、能く人の為し得る業ではない。これが小前提。
 となれば非論理的結論として、風の風たるを五味五体で「解って」しまった虎蔵は既に人では
なく、人の形を保つ訳にはゆかぬのであり、ここに三段論法は落着する。


 黒衣は疾風の渦に溶けて消え、長谷川虎蔵という名称の個体もこの世界より消滅した。
 今この場にあるのは勢いを増すばかりの風だ。周辺域との気圧差だ。
 『低気圧』と云う名の、しかし度外れた規模の気象現象であった。


 自然は常に平等だ。えり好み無く、それ相応の現象をもたらす。
 だから風は凶事(まがごと)をおらび、雲は災禍の螺旋を巻き、雷は悪めいて荒れ狂った。
 その諸々は一丸となって、大空を馳せる戦士達が護り或いは陥とさんとする白銀の城を強襲
したのであった。


【現在位置:周辺空域 低気圧そのものに変成して消滅】
【→暴風竜巻が飛行船を襲撃】

758 名前:柳生・ジャグワァ・玄兵衛:2006/11/26(日) 21:05:57


 今や空を飛ぶ地獄と化した巨大飛行船『ツェッペリン・ノイエ・エーラ』。
 南極上空を戦場と変えたその船へ、水平線の彼方から吹き飛んでくる光があった。

 ――――ミサイルである。

 超音速でかっ飛ぶ、黒い大型ミサイルである。

 ミサイルの横腹にはアルファベットが白く描かれている。

『CONTRA』――そう描かれていた。

 炎の尾を曳いて飛ぶ巨大な矢はツェッペリンの中心を狙っていた。
 飛行船を防衛するはずの随伴機は既に無く、民間船に防御火器はない。

『すわ、ツェッペリンが吹き飛ぶ!』

 見る者全てがそう思う中、ミサイルのその針路を大きく変え、ツェッペリンの上部を掠めるようにして垂直に上昇した。

 どむん、という爆発音。南極の空に大きなファイヤーボールが花咲いた。



「ウゥム。流石に大陸間弾道ミサイルに掴まって来るのは疲れたでござる」


 飛行船の甲板に、一人の男、否。
 ――『漢』が立っていた。

 黒い肌の筋骨隆々とした巨躯に、橙色の鎧武者のようなバトルスーツを纏った漢だ。
 右目にはハイテク眼帯を着け、頭に髷を結い、その背中には一振りの刀を括っていた。

「柳生・ジャグワァ・玄兵衛、参るでござる!」

 高らかに漢、ジャグワァは言い放ち、背の刀を抜いた。




[柳生・ジャグワァ・玄兵衛、乱入。現在位置:甲板]

759 名前:麻宮アテナ:2006/11/26(日) 21:06:59

>>731、>>732
 10歩と踏み出さないうちに、見知った顔ぶれと再開。
やっぱり今日の私はラッキーデー、なのかな。

『…よう、身包み剥がされてなくて何よりだ』
「これで身包み剥がされたら、赤ビキニになるしかありませんよ私は」

 軽口がうれしいです。そして、ちらっと見たマスクの男の人。

>>748
『奴は恐らくこの先だ。急ぐぞ』

 こちらを振り返りもしない任務の鬼。でもあなたも、他のふたりも。

「3分、時間をください。きっと役に立てると思います」

 返事を待たずに、みんなの患部に触れていきます。
最初は女の人、この人がいちばんダメージがひどい。
命を救う力、私の中の力が、この人に移りますように。

 剣のような鋭い目のマスクマンさん。腿にひどい怪我。
傷ついた身体を治す力、私の中の力が、この人に移りますように。

 そして、密航者さん。「仲間なんて」っていうふうにうそぶいてた人。

「でも、仲間ってけっこういいものですよ。こんなふうに痛いのが治まるんですから。
もしかして、心の痛みだっておさまるかも」

 私の中にある力、どうかこの人たちを後押しして。
みんながあるべき場所に帰るのを手伝って。私の力はたぶん、そのためにある。

<現在位置:回廊>

760 名前:イグニス ◆IgnisC3BW6 :2006/11/26(日) 21:09:42

>>677

「――――くっ」

 意識が戻る。
 全身に拭いがたい倦怠感。何が起こったのか、ここは何処なのか、何をすべきなのか――
 そんなことを思うより前に、起き上がった私がしたことは、傍らに転がっている剣を手に取ることだった。

「……どうなっている?」

 戦場音楽がさらに近くなっている現実に、小さく声をこぼす。
 だが当然、答えが返ってくるはずもなく――忌々しいとばかりに、口の中に溜まった血塊混じりの唾を
吐き出した。

「……やれるか?」

 自問する――倦怠感は依然として重く身体にのしかかっている。獲物も、この手にしている剣と、あとは
ベルトに保持している月牙が数本。先ほどまでのモリガンとの戦闘にあたって、残っていた爆薬も失って
いる。

 だが――それだけでもあった。
 身体は少なくともまだ動くし、消耗も消滅に至るまでには達していない。武器なぞ、この身ひとつがあれ
ばどうとでもなる問題だ。

 ならば――まだ、進むことが出来る。

「余分なモノに構っている暇はない。聖櫃は――操縦席、だったか」

 目的地、目標を再確認。
 そして、私は再び戦場へと舞い戻る。目指すべきは――上層だ。

【中層・客室→上層部へ向かうべく、回廊を走る】

761 名前:◆c8rTIGERaI :2006/11/26(日) 21:12:28



 荒れ狂う炎。火花を散らすケーブル/飛行船の神経。
 独逸の生んだ巨神は、闘争の惨禍にその身を傷つけられていた。
 その火花の中を―――数名の人間が走る。
 いや、その速度は尋常にあらず。装束も尋常にあらず。
 彼等はハイジャックを敢行し―――その戦力に出血を強いられつづけている、第三帝国
の亡霊の一員。一兵卒なれど、吸血鬼たる身体能力とゲルマン魂は他の部隊員にも引けを
取らない。
 だが―――

「クソ、クソッ、クソッ!! なんでこんなに抵抗があるんだよ!? 平和ボケした連中
しかいなかったんじゃねえのかよ!!」
「空はどうなってるんだ―――みんな落ちたのか?」
「チクショウ!! ふざけやがって……魔女どもめ!! 狂気の産物どもめ。ガキだぞ? ガキ一匹があのリヒトフォーフェンサーカスを、ロンギヌスの殺戮騎士どもをふっとば
しやがったんだぞ!? どこの三流アクションだ!!」

 だが、彼等は完全に恐慌へと陥っていた。
 最強を誇る航空部隊が、ハイジャック戦力が、次々と滅ぼされていく。
 ヴァチカンのエージェントか。それともナチに仇なすものか。
 分からない。だが―――確実に彼等は迫る死を感じ取っていた。
 故に、走る。

「けどおい―――アレはまだ完全にグール化してないぞ? 動かした所でいくらも持たん
ぞ―――それに、言うことも聞くかどうか!!」
「ほかに手段はないんだ!! 最後の大隊どもが日本から掘り起こしてきたアレを使わな
きゃ、レン高原見る前に戦争が終わっちまうぞ、アホ!!」

 彼等が向かっているのは、倉庫だった。
 あらゆる手段で搬入しておいたハイジャックのための物資がそこにはある。
 だが、すでに銃や火薬で解決できる範疇は超えている。奴らは銃や火薬よりも物騒で、狡猾なのだ。
 目には目を、歯には歯を。
 他に方法はなかった。
 だから、彼等は“魔人”を解き放つ。
 死してなお恐れられる無双を、虎を、くびきから解き放ってしまう。

762 名前:“濃尾無双”岩本虎眼 ◆c8rTIGERaI :2006/11/26(日) 21:14:14

 彼等が探していたものは、一つの早桶だった。なんでも日本流の棺桶だそうだ。
 丸い形に屈葬のような形で葬るらしい。

「あったぞ……こいつだ」
「おい、凍結が解除されてるぞ。誰か弄ったか?」
「いや、ちょうどいい。とっとと開けて―――」

 そうして、一人が桶の蓋に手をかけた時だった。
 ―――銀色の光が、走った。

「ウェ」
「……」

 かすかに漏れる声と、その光が、その場にいた全てのSSの最後の記憶となった。
 がらがらと早桶が崩れ落ちる。
 そこからぺたり、ぺたりと滑り出す姿は―――言うなれば、腐っていた。
 一歩踏み出すごとに、肉と腐汁がうどんのようにこぼれ落ちていく。
 外へ出すのが早すぎたのかも知れない。
 だがその顔ははっきりと、老虎としての恐ろしさを醸し出している。
 その両手には、大小二本の刀。
 ―――奇怪なことに、その刀は柄尻を、人差し指と中指で掴むことで構えられていた。
 しかしもっと驚くべきことは―――その右手が、常よりも一指多いこと。

 ああ、誰が知るだろう。
 彼こそがかつて、掛川において“濃尾無双”と恐れられた剣客ということを。
 神妙古今に比類なき、魔剣を奮う、剣鬼(おに)が往く。
 闘争の匂いに、仕合の気配に誘われて。

 例え体が腐り落ちようとも、すでに死した身であろうとも。
 その剣気と業は、紛れもなく岩本虎眼その人であった―――


【岩本虎眼参戦―――現在位置:倉庫・宛てもなく移動中】

763 名前:マンフレート・フォン・リヒトフォーフェン:2006/11/26(日) 21:14:26


>>746 vsエアハルト・フォン・ラインダース

『貴君はまたしても裏切るのだな……残念だ、ラインダース大尉。とても残念だ。
貴君ならば我々の虚無を理解できると思っていたのだが。まことに残念だ』

 珍しく多弁なマンフレート―――もはや聞き手に伝わることもないだろう無線
のマイクに言葉を投げ続ける。応答せよグリューネヘルツ、応答せよ……。
 反転したフォッケウルフTa152H-1がマンフレートに機種を向けた。

 マンフレートの凍て付いた創痕の瞳が風防ガラス越しに、ラインダースの表情
を確認する。怒りに燃えていた。激動に滾っていた。
 彼はまだ、生きていた。

「しかたがない―――狩りの時(タイム・トゥ・ハント)だ」

 わざとらしく英語で呟くと、スパンダウ機関銃の引き金を絞った。

【空域】

764 名前:ヴァルトラウテ/タッツェルヴルム ◆SoRDENIEpc :2006/11/26(日) 21:16:06



 >>733 >>736 リゾット コダマ

 ざらついた感触が、思考を鑢で削り取っていく。
 磁力の暴走が頭を、全身を苛んでいく。
 それでも、僅かに聞こえる声は。
 助けを求める声は。(>>728)

「……ェルム、タッツェルヴルム! おねがい、ああ……」
「――ヴァル、トラウテ」

 背に取り付いた男が、その磁力を解放してゆく。
 引き寄せられる足下に落ちたカトラリー、砕けた鉄骨、会場を彩る数々の燭台、彫刻……
その全てが男と、タッツェルヴルムの体に銃弾の雨と降り注ぐ。

 赤い鎧の男、その鎧は影響を受けないのか、手にした剣を地も割らん限りに振り下ろす。

「――済まないが、やらねばならんことが出来た。
 ここで手をこまねいている訳にはいかんのだよ、私は」

 剣先が捉えたのは、背に取り付いていたはずの男。
 そして貼り付いた鉄造りの品々。
 まるで蔦のように絡み合ったそれらが剣を捕らえている。

 黒い旋風が舞った。
 腕を千切れよとばかりに振り抜く裏拳が、鎧の胸へと。

 【場所:展望台1F、パーティルーム コダマ・リゾットとの戦闘】

 

765 名前:大尉:2006/11/26(日) 21:17:09

>>749 (イリーナ・フォウリー)
>>747 (レイオット・スタインバーグ)

 闘争の契約とは何ぞや?

 血と肉、そして己の魂の全てを賭けて行うものである。
 己の指の肉を噛み切り、滴る血をインクとし契約書に己の名を記すもの。
 その後に書かれる文句はこうだ。

 『私は自らの魂を地獄の窯の中に投げ込もう
  炎が私を焦がすのだ、何もかも一切合財焼き尽くそうとする

  炎は時には刃の形を取り、時には銃の形を取る
  そうやって私を灰に、否、無に帰そうとする

  私はそれを喜んで受けよう、私という存在が地平の彼方に消えるまで』

 よろしい。
 では、そこの少女、イリーナ・フォウリーはどうかね?

『……このイリーナ・フォウリー。ファリス様の名に誓って……


 ……貴方の蛮行を。全力で阻止しますっ!!』

 闘争の契約は今再び為された。

 『そして、業火は銀の大剣の形を取って私を焼こうとする

  炎が私を焼こうとする前に私はこの右の手を以って薙ぎ払わん

  相手にはこの右手が終焉を告ぎ手に見えるだろう

  それも又契約だ、私が焼かれるのも相手が焼かれるのも

  何時焼かれるか、何時無に還るのかという違いしかないのだ』



 大尉は契約を未だ続ける。
 壁を蹴り、人には視認すら不可能な速度を以って右の手を契約を果たす為に目の前の少女に振るう!


 <現在地:パーティールーム>
 

766 名前:シエル ◆kcbhGUILTY :2006/11/26(日) 21:18:39

>735

「っ、ぁ……」

視界は焼かれた。
喉は切り裂かれた。
右腕はその両方で、足は引き攣れて動かない。
それが『元に戻る』のに必要なのは呼吸もう一つ分。

「…………!」

当然の様に、それは与えられなかった。
爆炎の名残の煙越しに、背中から貫かれた傷が今度は前から。
聖槍に貫かれ、突撃の勢いのままに壁に縫い止められる。

――――学びませんね。

痛い、が、槍だけで私は殺し切れない。
笑って、左の黒鍵を最後の一機の眼前に突きつける。
切っ先は届きはしない。
けれど、その距離は火葬式典の手中だ。


【中層部:回廊】

767 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2006/11/26(日) 21:18:57

 ああ、クソッ!
 一体全体何だこの数は。悪魔にグール、魑魅魍魎が揃って盛大なパーティーかよ。

 右から迫るグール。左から迫る『ブツ』の魔力に見せられた悪魔。
 右手からはエボニーを。左手からはアイボリーを。


 さあ落ちろ。奈落の海へ。
 さあ帰れ。混沌の闇に。


「Party time!」

 轟音で畳み掛けるように。
 速射は止まらずマガジンが空になるまでは数秒。

―――数秒もあれば十分に駆け抜けられる。


 さあ逝けよハライソへ。
 さあ融けろ地獄の業火で。


【甲板→船内へ】

768 名前:フランツ・フェルディナンド ◆ZcW/SSsF6Y :2006/11/26(日) 21:19:59


少年だった。
金髪碧眼の永遠の少年だった。
彼は操縦室の壁にもたれ戦況を見守っていた。
大きく揺れる船の中、ただ状況を判断していた。これまでは。

先ほど船内に流れた放送。ヴァンシュタイン中尉の裏切り。
ヴァレンタイン兄弟は滅び、レップ中佐も死に、ジェームズ・ホワンはリタイヤ。
ロンギヌス13と第一戦闘航空団も壊滅寸前、新戦乙女隊はあるじもろとも裏切った。
ヴァルトラウテ中佐は縛られ転がされ、タッツェルヴェル准将は挙動不審。
そしてこの突如発生した超大型の大気圧。高度を下げてゆく飛行船。

終わりの始まりが訪れていた。

誘われるままに参加したこの作戦。ここに来てようやく目的が定まった。

あの同士を見捨てた敗北主義者の魔女(ふみこ)を殺す。
そして次に、かつて信じていたものの名誉を汚したあの魔女(グルマルキン)を殺す。
そしてその次に、祖国の名誉を汚したこの船に居るすべてのものを殺す。

・・・・・・本当は、そんなことどうでもいいのだと、心の奥底ではわかっていたのだが。
なんのことはない。少年は死に場所をさがしているのだ。あの日からずっと。

そして彼はゆっくりと壁から身を起こした。

【現在位置:操縦室】



769 名前:ヴァーミリオン・CD・ヘイズ ◆/CD/iS.AAU :2006/11/26(日) 21:21:45

>>753

グルマルキンの身体を中心に、四方八方から襲い掛かる、人ならぬ腕。
指先に輝く鈍い光沢が、その爪の凶悪さと鋭利さを如実に示している。

「冗談、じゃ、ねぇ―――!」

生贄なんぞになるのは、真っ平御免だ。
目まぐるしく脳内で繰り広げられる予測演算と、それに伴う強烈な頭痛。
そして全身の鈍痛。
歯を食いしばって耐えながら、ヘイズは左手の銃を取り落とす。
それは、降伏の証ではなく。
もっと強力な攻撃の、手数を増やすため。

(予測演算成功。『破砕の領域Erase Circle』展開準備完了)

空いた両腕を、あたかもオーケストラの指揮者の如く、高く大仰に構える。

「……吹き、飛べ」

両腕の指を、弾く。
同時に両足も、踵で強く床を踏み抜いている。

産み出された小さい音の合奏が、四箇所に情報解体領域を展開。
そのうち三つは、伸び行く細い腕の到達予定地点―――全てを巻き込む形で。
そして残りの一つは、その大元。
グルマルキンの身体の、中心部に。

回避も防御も不可能な、局所的な虚無が、襲い掛かった。


(現在地:中層部・回廊)

770 名前:◆jBiAWniQ.. :2006/11/26(日) 21:22:48

さて―――――

混沌の中。
レザード・ヴァレスは述懐する。
聖櫃を運び込む、わずか数日前の出来事を。




 ――――月面。

ツェペリンが過去からの来訪者ならば、これは未来への道を拓く使者。
建造中の軌道エレベーター『ヤコブ』と同じく、来るべき宇宙開発の基点を担う礎。
その死角とでもいえるポイントに“彼ら”は潜み、牙を研いでいた。

機械生命体『レプリロイド』―――ロボット工学の権威トーマス・ライトが構想し、後に彼の理想を
継いだ“擬似生命体の父”ケイン博士によって実用化の道を経たロボットの先にある、ヒトを模した
ヒトに最も近き機械仕掛けの隣人。
その短くも極めて濃い歴史の中、宇宙開発の為に生み出されたコピー能力保有者。
用途に応じ姿形・能力を自在に変容させる最新世代の申し子、『新世代型レプリロイド』達。
だが、彼らは彼ら以外の世界に造反した。
一人の―――レプリロイド創造期より現存する反乱者―――を首魁に据え、古き世界に対し
最終決戦を仕掛ける機を窺っているのだ。

新世代レプリロイドの反乱と暗躍。
それは世界が察知し、今なおもって隠匿している宇宙開発計画の暗部である。


――――この“場”にとって、人間とは最大の異分子である。



「此処は、貴様のような……否、“人間”の来てよい所ではない。
 本来この世界に存在せぬ貴様とて、例外ではないぞ―――――?」

玉座に淡く光るのは剥き出しの回路。
リアルタイムで未だ修復を続けている彼らの首魁。忌み嫌われた名を持つ首魁。

其処は要塞にして居城。
月面秘匿ポイントに建造された城塞は、首謀者の名をとり“Σ-Palace”のコードで呼ばれる。
その恐るべし拠点、王の玉座に突如として現れたのは――――――。

「我が正体に見当がおありとは…いやはや。
 流石は新しき“種”と自らを謳うだけのことはある」

多重に突きつけられた銃口―――衛兵隊による包囲の前でなお飄々と言い放つ“人間”。
その表情には一切の恐れなく、むしろ首魁を除いた彼らの方が圧されつつある。

「だが―――その大義ある者は、常に古き世界よりの刺客に敗れる可能性を有する。
 いわば因果の強制力…それは、貴方が何よりもご存知のはず」

「何が、言いたい?」

「いえ…ただ少々その耳にお入れしておこうかと。
 これより旧き亡霊が目論んでいる計略、そしてそれにより得られる結果を」


そう言って、男の口から語られた計画は――――――



「く、

     く、

                  く…」

蓋のように落とされた静寂の中。
笑っている。
“彼”が。
進化を夢見、幾度となく倒れながらも果てぬ怪物である“彼”が。

「それは、実に興味深きこと――――して、我らに対し何を望むか?」
「これは話が早い。私が望むのはあなた方の持つ力……すなわち、
 新世代を担う優良種として創られ持ったその、“戦力”」
「だ、そうだが。お前たち?」


『…決定ならばそれに従おう』
『オレ、かまわないとおもうよ』
『計算によって弾き出された確率は99.98%…反対をする理由は見当たりませんが?』
『俺としちゃあ…反対する気はないがねぇ?』
『世界が破滅を望んでいるのなら、仕方ないよね』
『HA!能無しどもが滅びるンだろぉ?ならサイコーだね!』
『新たなる世界のためならば、当然だ!』

虚空に湧いたホログラム。
既に世界八箇所にて潜伏中の『新世代の申し子たち』、指揮官クラスの8体による合議の結果は
完全な“一致満場”を示した。

「良かろう、異界の人間よ。お前に我が“仔”らを貸す。
 存分に――――――」

レザードの周囲から波が引くように下がるのがガードロイドなら、“彼”の傍らより進み出た
一体もまた、同じナンバーを持つ同一機体。
それはダウンロードされたDNAデータを確認後、原子レベルでその存在を変質させてゆき―――、


「――――汝が目的を成し遂げるがいい」

  ハハハ  ア  ハハ ア

           ワ ハハ

                  ハア ハハハ  ア

“彼”の哄笑――――地獄から響くような機械音声が、笑いの形をとって闇に響く。

771 名前:夜雀の怪『ミスティア・ローレライ』 ◆8hOOMYSTIA :2006/11/26(日) 21:24:29

>>678
手近な死体から服をはがし、ボロ布同然の服を捨てる。
悪趣味な鈎十字が描かれてはいたが、大人の男が着ていた服だけあって上着だけでも丈に問題はない。

「思い出した思い出した。初志貫徹ー」

荒れ狂う暴風を浴びながら空に浮かぶ。
未だ戻らない左腕の袖は、風を受けてばたばたと音を立てていた。
状態は完治にほど遠いが、死者の怨嗟が満ちる空中のニブルヘイムは容易に活力となる瘴気に不自由しない。

「これを叩き落せば意趣返しには丁度良い。誰が飛ばしてるのか結局分かんなかったけど〜」

分不相応に空を目指した人間は、その翼をもがれ地に落ちる。

破滅的な暴風を伴奏に、ローレライの唄は朗々と響く。
死を満載にした方舟を墓地に佐々布レクイエムのように。


【周辺空域:飛行船の破壊を助長】

772 名前:MAP攻撃警報:2006/11/26(日) 21:25:16


>>757

【caution!】MAP攻撃警報【caution!】

 長谷川虎蔵の低気圧召喚は雷雲/積雲を呼び寄せた。
 飛行船は甚大な損傷を受け、高度を墜としてゆく。
 各所発生する火災/気圧変化/突風の波。
 狂気山脈は既に地平の果てから覗いてみるものの―――このままのペースで
船が沈んでいけば、正面から山地に激突にしてしまう。

 これより飛行船内は非常警戒/脱出促進の状態となる。
 船内の各所でレッドランプが瞬き、サイレンが鳴り響く。

【影響→全闘争者】

773 名前:「墜ちた森の巨人」バンブー・パンデモニウム(M):2006/11/26(日) 21:25:19

>>770

>>731>>732>>748>>759

        ―――――その時、立ちはだかるように


「駄目だよ、そんなことをしちゃ」

        ―――――無垢な声音と同時に轟くのは

僕は少しばかり、この船だと巨大に過ぎた。
だから質量を変えて一回りだけサイズは下だ。
それが兵士の姿から1秒以下でこうなる。
そう、こうやって歩いて轟音を響かせるだけの。

        ―――――白と黒、中華の獣を模した機械の魔人。


「“彼ら”の邪魔はしてはいけない、何故なら」

3メートルは超えてしまう馬鹿馬鹿しい巨体。
新世代の中でも最大級の火力とパワーを誇る、それが僕だ。
さて何が起こったのかみんなが認識する前に、そうだね。

        ―――――その馬鹿馬鹿しく太い腕が向けられ


「世界は滅びたがっているんだから」


        ―――――不意に発射されるのは、破滅的な威力の巨大弾頭。


ごめんね。
けど、もう“破滅”は始まっているんだ。

774 名前:浅倉威 ◆PwJYAgPlQA :2006/11/26(日) 21:26:49

>>767
−−アハハハハハ!!!!−−−

悪鬼渦巻く戦場に堕ちて来た狂喜の声。
それは、殺し合いのゴングには相応しいものだった−−

−−「…ここか…祭の場所、は」−−

背後から鉄パイプが襲う、最悪な狂喜を帯びて−

775 名前:コダマ ◆K3dMKODAMA :2006/11/26(日) 21:28:15

>>736 >>764
―――しかし。
コダマの剣が捉えたのは、先ほどからタッツェルヴルムの背中に張り付き
何かを行っていた男。身体から砂鉄が零れ落ちている。

「――済まないが、やらねばならんことが出来た。
 ここで手をこまねいている訳にはいかんのだよ、私は」

タッツェルヴルムの強き意思を感じさせる言葉。
その次の瞬間。
コダマと男は壁を突き破り―――船尾の客室にまで吹き飛ばされていた。
しばらく身体を動かすのも辛いダメージを負ってしまった。

これを幸いとし、コダマは魔獣装甲を解除し思考を巡らせる。
『いかにすれば、“母”の願いである時空の崩壊を止められるか』について。

【現在位置:客室ブロック】

776 名前:ビリー・龍 ◆D727Bb9L.2 :2006/11/26(日) 21:28:50

>>737 >>760

 俺はまた首を回した。タルい――倦怠感は常に心理的なものでしかない、が。
 客室エリアを出、回廊に回る。

 ちょうど、その広い通路に出たところで、左手から走ってくる者があった。
 燃えるような赤毛が踊っている。
 向こうもこちらに気づいた。バッタリ、だ。

 その瞬間に、殺気……殺意が吹き付けてきた。
 ああ、敵認定か。

 俺は片頬を歪ませて、徒手のまま構えを取った。

(客室エリア→回廊のはずれ)

777 名前:コーディー:2006/11/26(日) 21:31:11

>>748
淡々と話し先へ進む。どうやら向こうにお目当てが居るらしい。

「速やかかつ迅速に…か。オイオイ俺の分も残せっつったろ」

冷める前にさっさと始めた方が良いのは同意だが、コイツは
全部殺っちまいそうで先行させるのはどうも不味い気がした。とはいえ
呼び止めても止まる奴でも無さそうだが…などと考えているとあの娘>>759に
少し止められたらしい

>>759
>これで身包み剥がされたら、赤ビキニになるしかありませんよ私は

「…そんなサービス引っかからんぞ」

…脱衣癖でも有るのかね?などと口走る前に

肩に触れられた。いわゆるこれもこの娘の
使う「力」なのだろう。肩の傷が塞がっていくのを感じる。何ともまあ…
ビバ喧嘩ライフにしては色んな初体験味わってんなあ、俺…。

>でも、仲間ってけっこういいものですよ。こんなふうに痛いのが治まるんですから。
>もしかして、心の痛みだっておさまるかも

仲間…。少なくとも俺が語る価値は無ぇな。痛みも全て自身の自業自得。
それだけにこの言葉に返せる絶対的な答えなど今の俺には有りもしなかった。

「…失くしてから気付いても遅ぇよ」

【現在位置 回廊 】

778 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2006/11/26(日) 21:32:35

 右へ、左へ。縦横無尽に駆け縦横無尽に狩る。
 そこら中血まみれ絶賛ショウタイム中に尽き触れると危険、だ。

 右へ、左へ、上へ、下へ。

 駆け巡る。
 駆け巡れ。

「ウゼエんだよ!」


>>774

 辺りに居たグールを散らしながらただただ駆ける。
 突如襲い掛かる鉄パイプ。鉄パイプ?

 銀刀一閃。

 鉄パイプは音もなく切断され、両断され、形を無くす。

「ママのところに帰って寝てろ―――!」

 殺す事もせず走り抜ける。



 気付けば赤い光に船は満たされ、凄惨で壮絶な現場は眼に痛みしか与えない。
 ああ、クソッ! 時間がねえのか?

 とりあえず開けたホールへ。
 此処もまた悲惨。悲惨すぎて吐き気がする。

「誰か生きてるか―――!」

 まあ、言ってみただけだ。

【パーティーホール】

779 名前:「墜ちた森の巨人」バンブー・パンデモニウム(M):2006/11/26(日) 21:33:19

>>773

【現在位置 回廊 】

780 名前:柳生・ジャグワァ・玄兵衛:2006/11/26(日) 21:36:26

>>757 暴風雨

 甲板に戦意旺盛に降り立ったジャグワァだったが、吹き荒ぶ暴風、雷、竜巻に煽られて――。

「ムゥン!?」

 いきなり吹き飛ばされた。
 如何に熱い斗魂とゲリラ戦術の素質を先天的に合わせ持つ、最強の闘士である”魂斗羅”と言えど、大自然には勝てないのだ。

「うおおお落ちるでござるううううううう!!」

 紙切れか木っ端のように甲板を舞うジャグワァ。
 虚空に放り出されるギリギリのところで手すりを引っ掴んで堪えた。

「そ、外は危険でござる! 拙者空は飛べないでござるよ!」

 強風の日の洗濯物よろしく身体を床と平行にしていたジャグワァはその筋力で身体を甲板へと引き戻し、刀を一閃した。
 頑丈なはずの飛行船甲板が綺麗に正方形に切り抜かれた。

「柳生流『床抜きの術』でござる! とりあえず中へ入るでござるよ!」

 切り抜いた穴へと、魂斗羅ジャンプでジャグワァは飛び込んだ。

「む、ところでこの下はどこでござろう?」


[現在位置:暴風雨から逃れて船内のどこかへ]



781 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/26(日) 21:36:41


>>769 vs:ヴァーミリオン・CD・ヘイズ

「な―――」

 男の、まさかの突貫/弾かれる指の音色。
 ヴェパールの腕の悉くが粉砕―――否、塵へと還ってゆく。
 グルマルキンの霊視眼が捉える驚愕の事実。
 情報の強制分解―――悪魔将軍のかいなが、原始レベルで崩れていた。
 そしてそれはやがて、グルマルキンの身体へと。

「馬鹿な……!」
 咄嗟にケリュケイオンを床に突き立てる。まるで水面へと沈むかのように、
ヘルメスの杖は床の下へと完全に埋もれた。
 だが、グルマルキンの身体は―――間に合わない。

 胴部を中心に消滅してゆく。身体に施したあらゆる令呪が強制キャンセル。
 ルーンの治癒も自然干渉も効果を為さない。

「きさま……貴様ぁ!」

 やがて肺がが消え去り、喉が分解される。もはや言葉にならぬ絶叫で、
グルマルキンはひたすらに呪いの言葉を吐き続けた。

〈グルマルキン・フォン・シュティーベル→死亡〉
【回廊】 

782 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/26(日) 21:36:53

>>765 (大尉)

>壁を蹴り、人には視認すら不可能な速度を以って右の手を契約を果たす為に目の前の少女に振るう!

 大尉は、わたしの宣言に対し……迅速なる襲撃で以って応えました。
 スピードでも、戦士としての技量でも、到底、敵わない。それは最初に対峙した時点で明らかです。

 一歩前に踏み出し、わたしは得物である銀の大剣を大きく振りかぶりました。
 それは、わたしにとっては戦術と呼べさえもしない、無謀な試みでした。
 己を覆う板金鎧(プレートメイル)の耐久力と、常人よりはタフな己の肉体に賭けた、一歩間違えば
為す術もなく死に果てる……相討ち覚悟の挑発でした。

 大尉の必殺の拳が、わたしの振るう大剣を遥かに凌駕するスピードで突き進んできた、まさにその時。

 意外な闖入者が、わたしと大尉の間に乱入しました。

「…………ッ!?」

 それは喰屍鬼(グール)たちでした。腕をもがれ、脚をもがれ、人としての原型を留めずとも、なお
食欲のみによって突き動かされる哀れな人形たち。彼らは……わたしの背中にある「勇気ある者の楯」の
エメラルドの虜となり、わたしを喰らおうと飛びかかってきたのです。

 そこに、大尉の右手が重なりました。
 まともに喰らっていれば、たとえ完全武装でも致命傷は免れなかったろう、その一撃の威力が。
 ほんの僅かでも削がれたことに。そして、大尉の驚異的な動きが一瞬でも止まったことに。

 死中にほんの一筋の、幸運が垣間見えたこと……これも、きっとファリス様のご加護です!

「ファリス様。どうかこのわたしに……最後の力をっ!!」

 わたしは、身の丈ほどもある巨大な銀柱と化した大剣(グレートソード)を、一思いに振り抜きました!

【イリーナ・フォウリー:現在地:パーティールームにて、大尉と交戦中】

783 名前:イグニス ◆IgnisC3BW6 :2006/11/26(日) 21:37:58

>>776

 それはおそらく、偶発的な遭遇だったのだろう。
 奴はナチどもの制服を纏ってはいないし、なによりそいつから感じられる狂気の質は、連中のものとは
根本的に違いすぎた。
 どこか人を食ったような――それでいて、隠しようのない”乾き”に苛まれた眼。

 そう、これは――”天然物”の吸血鬼のそれだ。
 思わず舌を打つ。真っ向からやり合うには、こちらの消耗具合は尋常ではない。
 故に――速攻で片付ける必要があった。
 無論、相手がそれを許してくれるかどうかは別の問題だったが。

 抜き身のままの剣を構え直す。左手には牽制のため、残り少なくなった月牙を二本。
 加速し、その間抜け面に向け、下からすくい上げるように、逆袈裟の一撃を叩き込む――

【中層・回廊の外れ――対ロング・ファング】

784 名前:sage:sage

sage

785 名前:ロンギヌス13 ◆13th/X9pTg :2006/11/26(日) 21:40:52

>>766

「ク、ククク――殺すか。そうか、私を殺すか」

突きつけられた切っ先を見据え、エルフが笑う。

「しかしな……手遅れだ、全て!」

大きく揺れる船体と、鳴り響く警報。(>>757、>>772)
外部のアインを通じて状況は把握出来ている。

この船は――レールに乗ったのだ。
外れる事が出来ない、終末へのレールに。

「滅べ滅べ、諸共に滅べ! 破滅はもう来ている!」

槍の柄を両腕で握り、穂先を体に埋め込んだまま引き上げる。
突き刺して死なぬのであれば、壁と体を引き裂き、体を分断してしまおうというのだ。

自らに襲い掛かる攻撃など、最早考えてもいない。
全ては滅ぶのだ。考える必要もない。
【回廊】

786 名前:ふみこ・O・V ◆HPv8dyzZiE :2006/11/26(日) 21:42:12

>>757
 ふみこは見た。
 怪異に変化したエドワード・ロング――長谷川虎蔵が、"風"を理解してしまったその瞬
間を。

「……人であることを辞めたのね。あれではもう戻れないわ」

 それよりも、と、ふみこは小さく呟く。
 空の様子がおかしかった。
 理由はわかっている。エドワード・ロングだ。

「嵐が来るな……」

 冷たい風が、ふみこの頬を撫でた。
 恐らく、大嵐が来る。
 そんなものが船に直撃したなら、いくらこの超巨大な飛行船とはいえ沈むだろう。

 別に、沈むのは構わない。
 しかし、聖櫃がその制御を失い、南極が消滅……挙句の果てに、そこに開いた次元孔
から他世界の有象無象、などといった事態は、少々気に入らなかった。

「これより我々は、ツェッペリン・ノイエ・アラの操縦室を制圧する。アイン、ツヴァイ、ドライは
私に続け!」

 言うが早いか、ふみこが、そして彼女の忠実な武器たちの箒が一直線に駆け抜ける。
 嵐は、既に飛行船を飲み込んでいた(>>772)。
 爆発し、燃え上がるツェッペリン。
 幻想的に響くローレライの歌(>>771)が新たな爆発を引き落とし、いまやこの船はその
命運を尽かせようとしていた。

               ―――――

 ツェッペリン・ノイエ・アラの操縦席に座る吸血鬼たちは、目の前に現れた魔女たちに目
を見開いた。
 何せ彼女らは、自分たちに向かい――正確には操縦室の壁を破壊するために――、
パンツァーファウストを構えているのだ。しかも、四つも。

 いくら頑丈に作られているとはいえ、あれだけの砲撃を受ければただではすまない。
 この船も、そして自分たちも。

「や、やめ……!」

 それが、彼らの最後の台詞だった。

 魔女が魔女に号令を下す。
 飛んでくる弾頭に、彼らの顔が恐怖に引きつる。


 着弾。
 そして、爆発。

               ―――――

「突撃!」

 ふみこの勇ましい号令の元、操縦室の正面にぽっかりと開いた巨大な穴に向け、魔女
たちが殺到する。彼女らを迎え撃つべく、操縦室に詰めていた吸血鬼たちが襲い掛かり……
そして次の瞬間には、彼らは地に付していた。
 心臓に杭を突き立てられ。
 あるいは、聖別された水銀弾をその身にしこたま叩き込まれて。

「さて……宣言通り、来てあげたわよ」

 不遜な笑みを浮かべながら、ふみこは聖櫃の前に陣取る男――レザードを見た。
 炎を反射し、眼鏡がきらりと光った。

【操縦室】

787 名前:『紅い悪魔』レミリア・スカーレット ◆remyaGVniw :2006/11/26(日) 21:42:32

>>730
私がパチェを抱きかかえたまま回廊から外へと飛び去り、そこから素早いスピードで一気に
気球の部分まで飛行し…そして私が最終的に辿り着いた先は―――
まだ人気のいない気球部分であった。

ここにはこの飛行船を動かすエンジンなどが配備されていた。しかもここの中は
まさに見渡す限り約一キロメートルの長さぐらいであった。
私が最初に見た時はそれぐらいにでかいとは思ってはいたけど…しかしこうまで広いと
かえって興ざめしてしまうのは気のせいだろうか…。

それから私は適当な地面に着地して、まだ気絶しているパチェを地面にそっと下ろした。
だが、私に掛けられたグルマルキンの魅了はまだ完全に解けてはいない…。
今でも心の中に潜む影が―――

【汝、主の意向に背くべからず…。汝に命ずる―――今すぐにその女を始末せよ】

―――と、私に問いかけたと同時に…私の身体が勝手に私の意志とは別に動き始めた。
そして、急に口が利けなくなったみたいに…私は一切言葉を発することが出来なくなった。

「(な…!?ちょ…ちょっとやめて…嫌、私はパチェ…を…殺したくない……!!)」

しかし私がそう心の中で叫んでも身体が言うことを聞かない。私は次第にパチェに近づいて―――
そのままパチェの首に手を掛けようと、私の両手がパチェの首に向かって徐々に近づいていく。
大声でパチェに逃げてと叫びたいが、しかし…先程の口封じのような感覚がそれを許さない。

「(まさか、パチェを絞め殺そうとするの…!? この私が…!!?
いや…、それだけは嫌ーーー!! だ、誰か…誰か私を止めてーーー!!)」

私は心にしか響かない叫び声を、ただ延々と叫び続けた。

【現在位置:回廊から外へ→気球部分に移動】

788 名前:“濃尾無双”岩本虎眼 ◆c8rTIGERaI :2006/11/26(日) 21:45:52

>>761-762

 ひたり、ひたりと剣鬼が歩く。
 襲いくる死体は輪切りになり、奇怪な置物と成り果て。
 血を吸う鬼も臓物と血を撒き散らして魔剣に散る。

 そこにいるのは―――間合いに入ったもの全てを斬る魔人そのものであった。

「た、種ェ、種ェ……」

 ときおりこぼれる言葉は、在りし日の記憶か。
 また一人―――死体が露と散る。
 岩本虎眼は、確実に戦場(いくさば)へと近づいていた。


【倉庫:カジノ経由で展望室に移動中】

789 名前:大尉ブラッド ◆/Z/IFjxeWc :2006/11/26(日) 21:46:52

>>739>>740>>745
魔女を払いのけて進む。その一瞬を掴むため。
喰われた母のことを一瞬考える。ああ、あの息子達も自分と同じになってしまうのかと。

そんな考えなど捨てろ。そうして生きてきた。捨てろ!そうして化け物になった!
狂気じみた叫びを上げて、私は仇敵に走りより……

>『ボクは、殺せない』

左肩から右脇腹にかけて「空間」ごと切り裂かれた。一瞬の再生。
チャンスはあるとはいえ、不死とはいえ力をこのまま発揮できる時間は少ない。
この男アドルフ・ヒトラーに、手の内を見せずに攻撃が届くのだろうか?

>『タバサ、起きたまえ。
  この出来損ないを片付けるぞ』

魔女が起きられては厄介だ。2対1では力を付けているあの男には届かない。
なればここで懐刀を抜き一気に勝負に打って出る!走れ!その一瞬で牙を抜け!

「総統、コレを知っているかね?」

Dr.ジャッカルから渡された『T鋼』のナイフ。コレが最後の切り札だとすれば。
コレが一瞬の切り札だとすれば。コレが出来損ないと呼ばれた男の最後の牙ならば。

─────突き立てて、さあ我が宿願を果たそう。

【現在位置:展望室3Fへの階段前】

790 名前:ビリー・龍 ◆D727Bb9L.2 :2006/11/26(日) 21:47:08

>>783

 ああ、殺る気だ。最初の一撃で終わらせようって踏み込みだ。
 俺はそれに応えた。そういう気迫は好みなのさ。いや、飲まれないための知恵でもあるが。

 踏み込む。両腕で、その一閃を受けに行く。
 十字受けだ。左手首が斬り飛ばされ、右腕の肉を削りながら刃が骨をすべる。

 痛ぇ。

 両者の距離が縮まる。
 はは、こんなところで会うにしちゃ、美人だなぁ、あんた。
 間近に見てそんなことを思う。

 お互いの体が、すれ違う。
 すれ違いざま、俺は牙で、彼女の首筋を狙った。

(回廊の外れ)

791 名前:シエル ◆kcbhGUILTY :2006/11/26(日) 21:52:18

>785

「滅びを……望んでいるのは、貴方がた、だけですよ」

ず、と壁と私を切り裂きながら槍が動く。
上へ。
込み上げる血を吐き捨て、声を上げた。

「――――死にたいのなら、一人で死になさい!」

肩から先だけを使って、左の黒鍵を投擲する。
その切っ先が鋼に触れるか触れないかの瞬間、火葬式典を発動した。


【中層部:回廊】

792 名前:哀川潤 ◆MzXQXe8zTc :2006/11/26(日) 21:53:14

>>743

「ああちくしょう! 裏引いちまった! 上だったか!
 さっきっからこの飛行船揺れて仕方ねーし! 落ちんじゃねーのか!」

パーティールームに続く階段を5段飛ばしで駆け上がる、盛大に愚痴りながら。
パーティールームの無駄に豪華なドアを蹴り飛ばし開ける。
中はパーティーの為の部屋等ではなく、純粋に修羅場だったが。

「ひひひ、愉快だぜ、おら――」



どいつがあたしの敵だぁ――!?



【哀川潤:パーティールーム】

793 名前:イグニス ◆IgnisC3BW6 :2006/11/26(日) 21:56:46

>>790

 刃が奴の身体を捕らえる。
 左手首を斬り捨てた。右腕の、肉と骨とを削り取る。

 だがそれだけ。正しくその程度。吸血鬼はこの程度では制圧できない。
 すれ違う身体――首筋に生暖かい、怖気を催すような吐息がかかる。

 意図は察した。
 残念だが、二度も化け物に精を与えるような無能を、私自身が許さない。

 肉と骨に食い込んだままの刀の鍔から手を離し、低くかがみ込むように身体を入れ替える。
 左手に握り込んだままの月牙を、奴の顔へと叩き込む――


 その時。
 その口元に浮かぶ、特徴的な長い牙が、私の視界に飛び込んでくる。

「ロング・ファング――貴様、こんなところで何をしている!?」

【中層・回廊の外れ――対ロング・ファング】

794 名前:エアハルト・フォン・ラインダース ◆CnAdcTa152 :2006/11/26(日) 21:57:50

>>763 レッドバロン

 赤い男爵の放った凶弾が雨霰となって私のTa152を襲う。
操縦桿とフットペダルを操り、左側に半横転。
機体のすぐ脇を曳光弾が矢のように通り過ぎて行く。
原型機Fw190譲りの良好なロール率は、死の運命からかろうじて私を救ってくれたらしい。
 ガガッ、と鈍い衝撃音が数発もらったことを教えてくれたが、
7.62ミリが翼に穴を開けた程度ではフォッケウルフは堕ちはしない。
 ついでに言うなら、防弾板で威力を削がれた機銃弾の一発ぐらいでは、
人間は死にはしない。
脇腹が多少熱いが、何も問題はない。

「……落とす!!」

脂汗のにじむ手で、操縦桿を握り直す。
 反転急上昇しながら、使用限界まで残り僅かとなったMW50のスイッチを入れる。
急激な加速とともに、再び上昇。
全速力でレッドバロンの背後へと回り込むべく機を操る。
いける。 相手は速度でこちらより劣っている。
Ta152の速度を持ってすれば、後背を占位するのは決して難しいことではない!

>>757

 突如発生した暴風雨に横っ面をはたかれたのは、その時だった。
静かだった気圧計が悲鳴をあげ、桁材がみしみしと鳴る。
脇を見やると、主翼が冗談のようにたわむのが見えた
機体はとうに制御を失い、木の葉のようにくるくると空を振り回される。
計器版の針はすべてが無茶苦茶に踊り狂い、上下左右の感覚も飛んだ。
これほどの大嵐に見舞われたのは、北アフリカでただ一度だけ。
唯一救いがあるとすれば、アフリカの砂嵐と違って視界だけは確保されていること。
 操縦桿を操り、フットペダルを踏みしめ、スロットルを噴かす。
あらゆる手段を持って機体の制御を取り戻しながら、
私の眼は敵から、赤い悪魔から離れることはなかった。

【現在位置 周辺空域 】

795 名前:sage:sage

sage

796 名前:大尉:2006/11/26(日) 21:59:22


>>782 (イリーナ・フォウリー)

 時に闘争の契約とは酷く不公平なものだと思わないかね。
 いや、私が言うのも問題ではあるがね。


 公平と如何なるものを指すのか?
 同じ武器を有していれば公平か?
 同じ期間訓練していれば公平か?
 同じ性別、同じ種族なら公平か?
 同じだけの幸運、凶運で公平か?

 闘争に公平などありえない、それは契約をするものなら誰もわかっている事だ。
 だが、不公平であると思うのであれば契約書にサイン等しなければいい。

 ――――なるほど、ならばサインする自由については公平という事になるのか。

     ならば、私も彼女も全く公平じゃあないか




『ファリス様。どうかこのわたしに……最後の力をっ!!』

 紙くずの様に屍達は飛び散る――――単純な物理法則の問題。
 それらが飛び散る時間だけ髪の毛半分程だが時間がかかるという話。
 その髪の毛半分程の時間が闘争の契約者たる少女にとって文字通り神の恩寵であったと言う事。


 銀の閃光の後、後大尉の右の手がごろりと地面に落ちた。
 同時に大尉の右足が跳ね上がり、砕け散る喰屍鬼(グール)達の一団とともに
 今後は少女大の銀色の流星がパーティールームを駆け抜けていった。



 <現在地:パーティールーム>
 

797 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/26(日) 21:59:31


 骨子の一つ一つが、
 肉片の一つ一つが、
 内臓の一つ一つが、
 神経の一つ一つが、
 細胞の一つ一つが、
 精神の一つ一つが、

 ゆっくりと、噛み砕かれるように塵と化す。
 肉体的苦痛は無かった。
 だが、魂レベルで感ずる絶望の痛み―――正気を逸し、狂気の世界へと精神
を誘うほどに耐え難い代物であった。
 闇が忍び寄る/虚無の爪がグルマルキンの肢体に手をかける。
 魔術士の死/その代償/悪魔の贄/取り込まれる魂/這い寄る漆黒。

「うわああああああああああああ!」

 その全てを拒絶した。

>>781
 棺桶にも見える木材でできた長持。その蓋が突如、内側から蹴り飛ばされた。
 上半身の起こし、中から姿を見せる―――グルマルキンSS連隊指揮官。
 生きながらにして死を体験させられた魔女/擬似的な蘇生。
 あの男―――ヴァーミリオン・ヘイズによって虚無に還された瞬間、この
人形≠フ人工霊が反応。グルマルキンの意識を呼び寄せたのだ。

「くそっ……」
 恐怖に乱れた吐息を必死で整える。
「あらかじめ運び込んでいたスペアのボディを、まさか使うことになるとはな」

 蘇り―――と一言で済ませても、その体験はあまり愉快なものではない。
 彼女が死んだことは確かなのだ。あのような恐怖――魔女の死は悪魔の贄を
意味する――二度と体験したくはなかった。

>>772
「しかし、くそ―――どうなっている」

 コンテナに収めていた軍服を取り出し、着替えながら状況を確かめる。
 船内の揺れ/甲高い悲鳴をあげるサイレン/倉庫を赤く染める赤色灯―――
尋常な事態ではない。船が沈もうとしている。……冗談ではなかった。

「航空戦力はどうした。ロンギヌス13とJG1は全滅したのか? ……くそっ」

 無線は持ち合わせていない。
 ここに閉じ籠もっていても埒が明きそうになかった。

「あの男への復讐は後回しだ。今は聖櫃を起動させなければ……」

 ケリュケイオンのサーベルを呼び出す。
 床から浮かび上がるヘルメスの杖。それを抜き放ち鞘に納めると、
グルマルキンはマントを羽織り、コンテナを飛び出した。

〈グルマルキン・フォン・シュティーベル→復活〉
【中層部:上層部倉庫】 

798 名前:sage:sage

sage

799 名前:コーディー:2006/11/26(日) 22:02:11

>>773
「…あん?」

ズシン、ズシン と轟音を響かせながら何かが来る。
3mを肥える…いや超えるそいつは殺意を見せながら言い放った。

『世界は滅びたがってる』と

…ガタイが良いのとはしょっ中やり慣れてるがこりゃまた…。
悪夢なら…もっと見せろ!

「んなら、俺と一諸にデートした後でも滅ぶのは遅くあるまい?
…イカレパンク野郎!」

先手必勝。振り上げた拳をそのままそのドデかい足に突き刺す様に
振り下ろした。とりあえずぶち抜け…

800 名前:レミア・シルヴェスタW世 ◆MVlNEREMIA :2006/11/26(日) 22:04:50

>>759
さっきの客室乗務員だ。
どうやらまだ生きていたらしい。

>「3分、時間をください。きっと役に立てると思います」

何をする気か、まず私のほうに近づいてきた。
私の血まみれの腹部に手を当てて、
体の中に命を吹き込まれる。

「―――ヒーリング、人間なのに珍しい技を使うのね」

これを使うやつといえば私の天敵しかいなかった。
神の名において裁きを加えに来る―――今はどうでもいい話だ。

「ありがと。結構楽になったわ」

内臓が修復され、痛みが消える。
周りの二人も同様に傷が直されていく。

「さあ、急ぎましょう、早くグルマンキンに―――」

>>772
突如衝撃が飛行船を襲う。
響くサイレン、船内は傾気、いたるところで爆発音が聞こえる。

よろめいたが何とか体勢を持ち直した。

「クッ!いったい何が…」

>>773
目の前には、化物がいた。
パンダの顔を持つ悪趣味な機械。
墜落する飛行船内にやつは現れた。

「自動人形?いや、違う。あれは―――」

もっと違う異質な何かだ。
それが私たちに向かってミサイルを撃つ。
回避――――間に合わないか!?

【現在地:回廊でパンデモニウムと交戦】

801 名前:ロンギヌス13 ◆13th/X9pTg :2006/11/26(日) 22:04:56

>>791

甲冑が炎に包まれ、オーバーヒートを起こした各部で小爆発が起こる。
壊れた玩具のようにガクガクと震えながら、それでも声は喋り続ける。

「滅びを望んでいるのが我々だけ、か。
 ク、ククク――笑える冗談だ」

鉄の腕は萎え、鉄の足は力を失い、その脅威は消え去っていく。

「世界を滅ぼしたがっているのは、お前達だ。
 我々は手助けをしてやっただけに過ぎない」

ロンギヌス13とは、人間の集合無意識の発露である、『噂』から生まれた存在。
破滅を導くものが『噂』されたという事は、破滅を望む者が居るという証左。
この破滅は、最初から定められていたのだ。

「――喜べ。望みどおりに、世界は終わるぞ!」

絶叫を残し――鋼の甲冑は爆散した。

(エルフ死亡。ロンギヌス13全滅)

802 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2006/11/26(日) 22:05:43

>>792

 ああ、なんだ、クソッ!
 毒吐くしかするコトがねえくらいにグールの群れ、群れ、群れ。
 ああ厭になる。

「吹っ飛べ!」

 巨剣で穴を開け道を作る。
 そうオレはモーゼみたいなモンなのさ。

 頭を垂れて灰に還れ。
 塵は塵に、灰は灰に、虚無は虚無へ―――!

「で、アンタはなにしてんだ、こんな所で」

 右手の銃口をピタリト眉間にロック。
 左手の銃口は奏で続けるロック。

 剣? 収めたんだよ、背中に。

【パーティーホール】

803 名前:リゾット・ネエロ(M):2006/11/26(日) 22:07:07

>>775
磁力に引かれ、飛んでくる鉄、鉄、鉄。
バスタブに放り込まれたドライヤーのようにショートする鉄屑野蝋。
ざまあみろ…、ところがその矢先、鉄屑野郎はあろう事か俺をぶん回しやがった!
その先には、例の肉斬り包丁…。避・わ・せ・ね・え!!

俺はぶっ飛んでいく自分の両足を眺めながら、大理石の美女に加速した分熱いキッス
をかました。

【リゾット・ネエロ スタンド名『メタリカ』死亡】

804 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/26(日) 22:09:28

>>778>>802 (Dante)
>>792 (哀川潤)
>>796 (大尉)

 大尉との間合いが急速に詰められた、その時。

>「誰か生きてるか―――!」

 パーティールーム内に、新たな声が響きました。

 ほとんどの人たちは死んでいるか、喰屍鬼と化していて、わたし自身も……これから先
どの程度生きていられるか……ほんの数瞬後には、物言わぬ残骸と化しているかもしれません。

 それでも……わたしはまだ、ここにいます。
 せめて生きている証に。その言葉の呼びかけに応えるために。

 わたしは力一杯、大剣を振り下ろしました。
 唯一、この恐ろしい大尉に勝っているのは、常人を越えたこの筋力、そして膂力だけでしたから。

 手ごたえは、ありました。
 次の瞬間、わたしの息は詰まり、衝撃が胸を捉えました。

 悲鳴を上げる事すらままならず、ひしゃげた板金鎧と共に、派手に壁まで吹っ飛ばされ……
 わたしは気絶する間際……新たにパーティールームに足を踏み入れた女性の姿を、その目に捉えました。

【イリーナ・フォウリー:現在地:パーティールーム。大尉と戦い、満身創痍】

805 名前:ビリー・龍 ◆D727Bb9L.2 :2006/11/26(日) 22:11:32

>>793

 痛ぇ。刃がアゴから頬に突き刺さった。
 何をしてるのかと聞くなら、こいつを抜いてからにして欲しいもんだ、
 喋れやしない。

 再生した左腕で、俺は月牙を俺の顔に突き刺している手首を掴もうとした。
 武器を放し、手が離れていく。
 まあ、俺に掴まれたくはないだろうなぁ。

 月牙を引き抜き、ようやく俺は答えを返した。
「何をしているかはないだろう。俺はたまたま乗り合わせただけだ。
 俺が何であるか知ってるなら、俺が何をしているかはわかんじゃねーのか?」

 月牙で己の肩をとんとんと叩きつつ、問いを返す。
 そのとき、船が揺れた>>772

 俺は顔色を変えなかった。変える必要も無い。
 ちょっかいをかける機会を伺いつつ。

(回廊の外れ)

806 名前:レザード・ヴァレス(M) ◆jBiAWniQ.. :2006/11/26(日) 22:12:52

>>786

血と火箭の絵の具を用い描かれるは、爆音と爆炎の地獄絵図。
そして亡霊が開いたこの戦争の黙示録、終章に訪れるのは……。


「これはこれは……随分とお早いお着きだ。
 そんなにこの聖櫃が魅力的ですか? 何と、魔女の嗜好というのは理解しがたい」

不遜に返すは不遜。
彼が常にそうするように―――余裕じみた冷笑を浮かべ、皮肉を返すは異界より来る錬金術師。
狂える理性、レザード・ヴァレス。

元より死者となった不死者には一瞥すらくれない。
彼らは全てが大望の贄、それ以上でもそれ以下でもない。

「それで…我が御前で、我が御する聖櫃の前で何を望まれる?
 よもや我らの願いに手を貸すというわけではありますまい」

その言葉と同時。
紺の姿。レザードを基点に力ある“白”が舞う。
『大いなる教書』――――彼が常に懐で抱える其れはミッドガルドの叡智が縮図。
紙片の一枚、記されたルーンの一文字一文字に膨大なる魔力が宿る。

「是非とも、今後の後学としてお聞かせ願いたいものだ。
 この私が――――――」


全てが生贄。
総ては礎。
亡霊も。
聖櫃も。
世界も。


「―――――この世界より、あまねく時空の律を破壊せしめる前に」


力ある紙片の数々が陣を為し、レザードの周囲に展開される。
彼の心と同じく、全てを阻み激滅す壁のように。


807 名前:マンフレート・フォン・リヒトフォーフェン:2006/11/26(日) 22:13:02


>>794 vsエアハルト・フォン・ラインダース

 見事な反転上昇―――マンフレートのトリガーにタイミングを合わせた
ラインダース大尉の回り込みが、生きた伝説の尻に食らいつく。
 翼を90度立ててその場で零距離上昇反転することも可能だが―――突然の
ブレーキによる衝撃/スピード・ゼロのマンフレートに突貫するファッケ
ウルフの機影を考えれば、得策とは言えない。
 ローリングを交えて振り切るしかないか―――

>>757
 風が乱れた。
 続いて暴風/豪雨/雷鳴―――ああ、なんてことだろうか!
 あの黒翼の悪魔は、自身を低気圧に変えたのだ。
 先の魔王にも負けず劣らずの奇跡―――自重100キロもないマンフレートは
風に煽られ、為す術もなく舞い上がる。
 だが、レッドバロンは決して墜ちることはなかった。

 彼に風を操る能力はない。だが、風を知ることならできた。
 翼に受け止め、乗り、滑り―――切り裂く。
 右翼を45度持ち上げ、ファッケウルフの側面向けて回り込む。
 その間もスパンダウ機関銃の掃射は続ける。銃身が焼き付くその時まで、
マンフレートはトリガーを絞り続けるつもりだった。

 だが、ラインダース大尉を仕留めるのは7.92ミリ弾などではない。
 マンフレートの口元から覗く牙が雨に濡れる。
 リヒトホーフェン・サーカスの撃墜スコア、カウントの基準―――
 パイロットの血を啜ったか、否か。

【周辺空域】

808 名前:飛竜 ◆HIRYUmxRKo :2006/11/26(日) 22:13:10

>>759(>>772)>>773>>777>>800
 給仕の女が、船外で左大腿部に受けた傷に触れる。その手が離れると、傷口は塞がっていた。
 もともと任務に支障が出るほどの傷ではなかったとはいえ、傷があるのとないのでは動きも違う。

  非常事態を告げるサイレンと退出勧告のアナウンスがけたたましく鳴り響いた(>>772)。
「ちっ……時間がない。走れ」
 他の者に告げ、走り出そうとした瞬間。

 ――突如として眼前に現れた、パンダを模した機械獣が巨大な弾頭を放った(>>773)。

「疾っ!」
 眼前の機械獣へと向け跳躍し、光剣を一閃。
 弾頭を両断し、弾頭の片割れを足場にしてさらに跳躍。
「給仕の女、破片を防げ!」
 叫びと共に、
「はぁっ!」
 機械獣の頭部目掛け、無数の斬線を繰り出した。

【現在位置:中層部回廊、バンブー・パンデモニウムと遭遇】

809 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2006/11/26(日) 22:13:36

>>787


 遠くから、雷と風の音が聞こえる。
 楽しそうに、嬉しそうに、何もかもを壊しながら踊っているのが聞こえる。

「―――あ」

 私は、目を覚ました。
 冷たい雪の感触が背中を走って、思わず身震いをした。

「……そっか。ダンスパーティは終わったんだね」

 空を見上げる。月と星が、変わらず輝いている。
 綺麗な―――丸い丸い月。
 服はボロボロのままだけど、体に残っていた傷はもう大丈夫。
 痛みと疲れはまだ消えない。けれど、動くには十分だった。
 立ち上がると、ぽろぽろと当たった弾と矢がこぼれ落ちた。
 さあ、あとは帰るだけ―――

「……あ、そうだ。お姉さまとパチュリー」

 そこで思い出す。
 みんなはどうしているのだろう。たぶんきっと飛行船の中にいる。

 ―――悪寒が甦る。

 そうだ、みんなで帰らなくちゃ、駄目だ。
 私一人が戻っても、あの館は空っぽのままだ。
 みんな、みんな、一緒に帰らないと、このパーティは終わらない。

 待ってて、お姉さま。すぐにいくから。
 軽やかに雪を蹴って空を飛ぶ。
 遠目からでも、荒れ狂う嵐の中に舞う白い鯨が見える。
 体が熱い。疲れは――もうなかった。すっかり忘れて、雪の中に埋めてきた。

「―――レーヴァテイン」

 何度も振るった炎の剣を、再び手の中へ。
 くるりくるりと、ワルツを踊るように周り、私は炎の渦を作り出す。
 狙いは―――よし、とりあえずあの風船あたり。あとは、どうとでもなる。

「……せーのっ」

 これぞ、レミリア・スカーレット直伝。高貴なる吸血鬼の技。
 ―――デーモンロードクレイドル。

 私は、一閃の槍となった。


「お姉さまあああああああああああああああああああああああああああああっ!!」


 出せるだけの声で、呼ぶ。
 世界が回る。星と月が激しくワルツを踊る。
 私の視線の先には―――どんぴしゃ、お姉さまの姿。
 大きな風船の中。薄皮一枚なら、私の目には硝子も同じだ。

 ―――けれど、あいつは、何をしているのか。
 なんでパチュリーの首を絞めているのか。
 近づくにつれ、目が、姿がはっきりとしてくる。

 え、魅了?
 あのお姉さまが?

 ………………。

「なにやってんのばかああああああああ――――っっっっ!!」

 いつもえらそうなことをいってるくせに、あっさりたぶらかされてるんじゃなーい!!

 そして私は、勢いのままお姉さまに突っ込んでいった―――


【フランドール・スカーレット復活―――気球へ突撃、爆発】

810 名前:sage:sage

sage

811 名前:シエル ◆kcbhGUILTY :2006/11/26(日) 22:16:08

>801

まるで幻のように。
哄笑を残して、最後の一機は消えた。
私を縫い止めていた槍も同時に消え、ずるずると壁に沿って崩れ落ちる。

「或いは、貴方達と同じ事を望む人がいるのかもしれません。
 ……でも、その貴方達を止める者もまた確かにいるんですよ」

流石に疲れた。
それに流れる血は止まらないし、死にはしなくても痛いし。

――――ちょっとだけ、休憩を。

そんな風に考えながら、意識を手放した。


【中層部:回廊で交戦の末意識不明に】

812 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus :2006/11/26(日) 22:17:57

>>728>>804

操縦室の扉をそっと開く。
対峙する魔女と錬金術師、そして、

「……あらあら」

椅子に掛けた状態で拘束されているヴァルトラウテ。
その様は囚われの戦乙女そのままで、悔しげな顔が実にそそる。

――そろそろ、幕かしらね。

この辺りが最後になりそうだ。
私は私で愉しむ事にして、他は他でやってもらうとしよう。

「一体、これはどういう事か説明してもらえる?
 場合によっては助けてあげられると思うのだけれど」

影のように、音を殺してヴァルトラウテの背後に回る。
その耳に唇を寄せて、そっと囁いた。


【操縦室:他の面々の興味を引かないようにヴァルトラウテに接触】

813 名前:哀川潤 ◆MzXQXe8zTc :2006/11/26(日) 22:20:22

>>802

>「で、アンタはなにしてんだ、こんな所で」

「あぁん? それが人に物尋ねる態度かぁ?
 もっとそれなりの聞き方があるだろーがよ!」

ここに到着して突如にホールドアップ、全く、ふざけた話だ。
それにしても銃を突きつけられたままってのはそもそも論外。

「アンタは敵か?敵か?敵だな?違うのならそう言えよ?」

銃の持ち腕を右手で掴み、そのまま右にずらす。

そのまま間髪入れずに左のミドルキック――

【哀川潤:パーティールーム:vsダンテ】



814 名前:コダマ ◆K3dMKODAMA :2006/11/26(日) 22:20:58

>>775 >>803
コダマは自分の肉体で破壊された客室の中で考える。
痛みは薄れ始めている。もう少し思索に耽れそうだ。

まず、“母”の願いを叶えるためにはどうすればいいか?
『時空の法則を破壊するほどの力を持つ、聖櫃によるレン高原への侵入を阻止』

そのためには何をすればよいか?

『1.聖櫃を使用する術法の破棄』
『2.飛行船を狂気山脈に到達させない』

この場合、もっとも確実なのは2番だ。
幸い、先ほどから強烈な低気圧で船は揺らいでいる。
メインでも補助でもエンジンを破壊すれば良いだろう。脱出経路の確保は可能だろうか―――。

コダマは、客室のドアから回廊へと進み出た。

【現在位置:客室近辺の回廊】


815 名前:イグニス ◆IgnisC3BW6 :2006/11/26(日) 22:21:28

>>805

「ならとっととそこを退け。
 今貴様に構ってやる暇はない。上の馬鹿どもを始末せんとならんのでな」

 拾い上げた刀の切っ先を向けつつ、間合いを取る。
 視線は決して合わせぬように。身体の挙動にのみ注意を割く。
 奴の手には置き去りにしたままの月牙。わざわざ獲物を与えてしまった形になるが、
牙に囚われるよりはマシだった。

 退け――そう言って退いてくれるようなタマなら、苦労はしない。
 だがこの、発生時期が私にしても不明なこの老かいな吸血鬼なら、どんな気まぐれを起こすか判ったも
のでは無いことも、また事実だった。

 消耗は激しい――息が切れないように呼吸に意識を払いつつ、踏み込むべきタイミングを探していた。

 瞬間。

>>772

 ぐらり。
 と。今まで安定した飛行を保っていた飛行船が、突如として揺れる。
 気流の変化か――?
 事実はわからない。だが問題は、この些細な揺れで、踏ん張りが効かずに体勢が崩れたこと――

「――クソッ!」

 即座に立て直す――しかし、それが決定的な隙になったことは疑いがなかった。
 剣を構え直す……が、間に合うか!?

【中層・回廊の外れ――対ロング・ファング】

816 名前:タバサ ◆3VTTABASAI :2006/11/26(日) 22:23:34

>>745>>789

>>745
 薄れる意識を叩き起こす声がする。
 暗闇から引きずり出す声がする。
 私を鼓舞させる声がする。

「――っ!」
 閉じていた目を見開き、立ち上がる。
 まだ頭は痛む。身体も痛む。格闘戦など望めまい。
 だが、立てれば良い。腕を動かせれば良い。彼とて、それ以上は望んでいないはずだ。だから、それだけで良い。

「アドルフ殿。こちらは、いつでも」
 トランクから杖を取り出し、少年から少し成長した姿に微笑を送る。

>>789
 男はナイフを抜いた。
 T鋼製――T鋼!?
「やらせは――しない!」
 携えた杖を一振りし、床に魔方陣を敷設。
「万物を縛る普遍を司る精霊よ、今ここに! グラース・ハイパーカノン……シェリング!」
 黒光りする大砲を召喚し、重力の精霊の宿る砲弾を、男に向けて発射した。

「この男を――アドルフ・ヒトラーを倒すのは、私です!」

【現在位置:展望室3Fへの階段前、壁際】

817 名前:『紅い悪魔』レミリア・スカーレット ◆remyaGVniw :2006/11/26(日) 22:24:17

>>809
私がパチェの首に手を掛けてそのまま上に持ち上げたその時に…
突如何かが爆発したような音が聞こえた。
一体何が―――と思って私が何とか爆発音が聞こえた方向に自分の意思で
懸命に顔を横に向けると…そこには懐かしい顔…フランがそこにいた。

「(……フ、フラン……? ひょっとして…私を止めに来てくれたの…?)」

そう、私は最初にフランを客室に残して以来―――私はフランがいるという事を忘れていた。
そしてそのフランが今―――私の目の前にいる。
そしてフランが私に向かって何かを叫んだと同時に……急に私目掛けて突っ込んできて…

「ぐはぁ……!!」

私はフランの突進攻撃を横腹にもろに喰らって…その衝撃で私はパチェの首を掴んでいた
手を離し、私はそのまま2,3メートルほど吹っ飛ばされた。
そして私は吹っ飛ばされたと同時に私は意識を失った。

【現在位置:気球部分にてフランの突進攻撃を喰らって気絶中】

818 名前:麻宮アテナ:2006/11/26(日) 22:24:28

>>773
『世界は滅びたがってるんだから』

 なにをおかしなことを……。もし人間が滅びるとしても、それは人間の勝手。
わざわざあなたに心配してもらう必要はありません。

>>799
 密航者さんが仕掛ける。凄い度胸と判断力。
でも敵もさるもの、損害をものともせずミサイル!
女の人(>>800)はまだ動けない、反射攻撃が間にあうかどうか……!

>>808
『給仕の女、破片を防げ!』
「承知しましたお客さまあっ!」

 シールドを広く展開して破片を全部弾き飛ばします。
そう、今の私はひとりじゃない。4人が長所を合わせれば。

「……あなたなんか特価5,980円の電子ジャーとおんなじですよ」

<現在位置:回廊。パンデモニウムさんと交戦中>

819 名前:ヴァルトラウテ/タッツェルヴルム ◆SoRDENIEpc :2006/11/26(日) 22:25:28


 >>775 >>803 リゾット コダマ

 鋼の巨人は膝を付いた、と見えた。
 いや、ただその姿勢が僅かに崩れただけ。

 ここで膝を付く訳にはいかない。

「もう二度と、お前を見殺しにはできんのだ……
 二度とお前に、同じ思いを味わわせる訳にはいかんのだ、ヴァルトラウテ」

 天井を見上げる。
 全身の損傷率は計り知れない。
 それでも猶、征かねばならない。

 船体が大きく揺れる。
 鳴り響く警報、赤色灯が幾重にも血にも似た光を投げ掛ける。
 タッツェルヴルムは軋みを上げる関節駆動部を無理矢理に動かすと、空へと駈けた。

 厚い天井を貫き、黒い砲弾と化した男は、ただ彼を待つ場所へ。

 【場所:展望台1F、パーティルームから操縦室へ】

820 名前:柳生・ジャグワァ・玄兵衛:2006/11/26(日) 22:27:14

>>780
>>788 岩本虎眼

 行く手を阻む物をざくすぱざくすぱと斬り捨て、ジャグワァは船内を移動していた。

「ムム。テキトウに進んでいたら現在位置が分からなくなったでござる」

 元よりジャグワァが甲板より進んで来たのは、人が通ることを想定されていない、壁だの天井だのといったところである。
 ナビも何もなくテキトウに進んでいれば現在位置を見失い、道にも迷う。
 それでもジャグワァは渡された見取り図を広げることなくざくすぱざくすぱと道を切り開いて行った。

 地図に頼るのは女々しいでござる!

 ふと、ざくすぱざくすぱと道を切り開いていたジャグワァの手が止まった。

「やや、この濃密な剣気は――」

 柳生・ジャグワァ・玄兵衛は、魂斗羅である前に、サムライ戦士であった。

「こっちでござるな!」

 一閃で壁を斬り破り、ジャグワァは剣気の漂ってくるそこへ踏み入った。

「ここは、展望室でござるか?」

 きょろきょろとジャグワァは辺りを見回し、展望室へやってきた者を見咎めた。

「何奴!」

 ジャグワァが刀を向けた先には、 両手に大小二本の刀を携え、ひたりひたりと歩む者。
 ――――腐乱した肉体の剣鬼がそこに居た。

「やや、面妖なやつでござるな……」

 ジャグワァは刀を持った右手を前へ、半身に構えなおした。

「しかしこの剣気はそれがしのものに間違いござらん。面妖奇怪なエイリアンにも思える化物に見えるでござるが、サムライには相違ないでござる」

 油断無く、サムライ戦士は刀を構え、間合いを取る。

「拙者、柳生・ジャグワァ・玄兵衛。それがし、名前はなんと?」


[現在位置:甲板から壁抜けで展望室まで移動。岩本虎眼と相対]

821 名前:アドルフ・ヒトラー ◆sLAdoLfKkE :2006/11/26(日) 22:27:24

>>789
 空間の断裂。
 だが、それをも意に介せずブラッドは走る。

「ほう・・・
 再生能力は随分と高い。
 だが、それだけだな。
 速度も膂力も標準以下、大尉ブラッド、やはりキミは出来損ないだ」

 冷静な分析。
 その言葉に誇張はなく、感慨もない。
 ただ単なる事実の確認。だが、それはこの上もなく絶望的な事実。

 ――その、筈だった。

 ブラッドがナイフを抜く。
 ちっぽけなナイフ、だが、その輝きを目にした瞬間。

 どくん!

 動悸が、激しくなる。
 すうっ、と眉間から頬にかけて浮かび上がる醜い傷跡。

「それは、まさかっ!」

 そう、そのまさか。
 獣性細胞を滅する力を秘めたT鉱、そこから作り出されたナイフ。
 常人にはただのナイフだが、獣性細胞を持つモノにとって、それは――猛毒となる。

>>816
 そのブラッドを牽制すべく、目覚めたタバサの魔法が飛ぶ。
 その隙に後ろに跳び、距離を取ろうとする。
 よし、これで・・・

>>772
 充分な距離を取って空間を切り裂けば、T鉱のナイフなど――だが、一つのアクシデントが発生した。
 突如、飛行船が揺れたのだ。

「うっ!?」

 揺れに思わずたたらを踏む。
 そこに、ブラッドのナイフが、突き立った。



【現在位置:展望室3Fへの階段前】

822 名前:ビリー・龍 ◆D727Bb9L.2 :2006/11/26(日) 22:31:11

>>815

 ゆれた。女の体も傾いだ。
 つい、踏み込んだが、あんまりフェアじゃねぇな。遊びにしても面白くない。

 これも反射的に、だな。俺は、彼女の傾いだ体を支えた。
 次の瞬間、構えなおされた剣が俺の鼻先に突きつけられ、
 俺は苦笑いをして両手を挙げた。

「上で何が起こってるのか、教えな」
 それでチャラにしてやる、と言わんばかりに。
 嫌味クセえかな? まあいいや。

(回廊の外れ)

823 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2006/11/26(日) 22:32:30

>>813

 ヒュウ―――キレイな顔して言うコトキツイぜ。

「敵か、味方か―――? さあね」

 ミドルキクをひょいと避け銃を乱射。マガジンが空になるまで。
 女に向けた銃ではなくグールへ向けた方を。

 当然だろ?
 それが紳士の嗜みってもんだ―――まあ、オレが紳士かどうかはさておき。

 そしてハイキックをプレゼント―――するように見せかけてターン。
 グールを灰に。グールを塵に。
 女にゃ手を上げないのさ、明確な『敵』じゃない限り。

 ヒョイとバケモノみたいな愛用の銃を――女をロックしていた銃を――女に向かって放り投げる。

「さて、夫婦漫才は終わりだ。ここからがショウタイムだぜ?」

 迫り来る脅威は威圧感と共に。
 まったく、雑魚だらけのパーティーだとばかり思ってたんだけどな。

「名前は?―――アンタの」

【パーティールーム】

824 名前:「墜ちた森の巨人」バンブー・パンデモニウム(M) ◆jBiAWniQ.. :2006/11/26(日) 22:34:37

>>808


             ――――爆発と同時に走る閃光


「…流石、古き世界の執行者というべきかな」


見事なものだね、ぼくのシールドを貫くなんて。
片耳、頬、首筋、口。
とくに片耳は切り落とされたけど、大丈夫。
僕は彼らを破壊できればいいんだから。
とりあえず右腕で振りはらって、と。

              ――――巨腕により生じる荒々しい風。

>>799

「はは、そこで追撃かい?」

           ――――衝撃は巨体に浸透するが

うん、人間にしては見事なパワーだ。
けど悪いね。相手が悪すぎた。いや、世界は僕達だけを選んだんだ。


「無駄だよ、僕は」

そうだね、君達と付き合ってからでも遅くはない。
だって僕は今、そのためにいるんだから。


          ―――――構えた手から飛び出すのは、極大の爪。 


「戦車を蹂躙できる程度には設計されてるからね」

さあ、お返しだ。
きっと気に入ってくれると思う。
その夢をさましてあげよう。

          ―――――破滅の暴風、触れれば散る乱撃が舞う。


>>818

「そうだね。けど、それだと君達はただの生ゴミだ」

前進もしてみよう、ゆっくりと。
彼女にもプレゼントをしないとね。

          ―――――破滅は、緩やかにだが確実に前進する。

【現在地:回廊】

825 名前:ヴァーミリオン・CD・ヘイズ ◆/CD/iS.AAU :2006/11/26(日) 22:37:43

>>772 >>781

憎々しげな呪詛の呻きを残して、グルマルキンの身体は「破砕の領域」で
消し飛ばされた場所を中心に、自壊を続け塵と消えた。
その一部始終を確認して、ヘイズはその場に弱弱しく膝をつく。

「やった……か」

殆ど休息を挟まない、吸血鬼と魔女との連戦。
その上、I-ブレインにかかる負荷の高いこの状況で、『破砕の領域』の連続使用。
ヘイズの脳も精神も肉体も、限界の一歩手前まで疲労していた。

「やれやれ…予想以上にしんどいぜ、こりゃ」

言いながら周囲を見渡す。
先程彼と協力関係を結んだ、小さな『魔女』の姿は、いつの間にか消えている。
彼女の親友と言われた少女とともに。
どこか闘いの場所を移したのか、それとも……


その時、飛行船が大きく傾いだ。
同時に、回廊に空いた穴から雪崩れ込む、強烈な突風。
更に、続けて衝撃。一瞬の無重力。
その時響いた大音声と、外から聞こえるエンジン音の弱さ。
それら全てが導き出す状況は、たとえ素人でも直ぐに理解できる。

すなわち、この飛行船は。


「落ちかかってる…ってことか。しかし、なんだこの突発的な異常気象は?
一体外で、何が起こったって言うんだ?」

疑問に答えたのは、更なる飛行船への衝撃。
まだ辛うじて残っていた回廊の窓に嵌まった強化ガラスが全て砕け散り、ばらばらと落ちる。

「時間がないぞ、急げ―――ってか」

身を起こす。自らの肉体損傷をチェック。
ジャケットの袖を引き千切り、左腕の裂傷に強く巻きつけ、止血する。
鈍痛は未だ止まず、疲労も濃いが…動けなくは、ない。
I-ブレインは相変わらず高負荷に対する警告を吐き出し続けている――が、
機能停止には至っていない。それも、何時まで持つかは知らないが。

結論―――まだ、戦える。


「さて、まずは……」

歩き出す。いや、走り出す。
各所で巻き起こる火災と、混乱と、激闘の最中を。
辛うじて、飛行船を墜落ではなく、不時着に押さえ込む事が出来るかもしれない唯一の場所―――
船首、操縦室を目指して。

(場所:中層部・回廊→操縦室を目指し移動)

826 名前:“濃尾無双”岩本虎眼 ◆c8rTIGERaI :2006/11/26(日) 22:38:07

>>820

 酸鼻なる血臭が、老虎の鼻を突いた。
 そこは、かつて狂える血吸い鬼が狂乱の宴を繰り広げた場所。
 死体と灰が藁のように積み重なる、展望室最上階。
 血に染まった窓から、紅い月が覗いていた。

 次々と襲い来る不逞の輩を切り刻んでいた虎眼の動きが、止まる。

 その濁った目の先には―――

『拙者、柳生・ジャグワァ・玄兵衛。それがし、名前はなんと?』

 一人の、剣客。
 ……そうだ、そうだった。
 腐れた脳味噌に、記憶が甦った。
 それは、彼の若かりし頃。彼があちこちで道場破りをし、名声を高めていた頃。

 ―――出来ておる喃。

 いくつもの、優れた剣客と出会い、死合っていった記憶が甦る。
 ゆえに、虎眼は、はっきりとした意識を取り戻す。
 曖昧なる魔境から、正常なる狂気へ。

「無双虎眼流―――岩本虎眼」

 己が名を告げ、剣客は小刀を捨て、一刀へと切り替えた。
 ゆっくりと―――その刀が担がれる。

 虎眼流の、必勝形である。


【展望室最上階・パーティールーム:ジャグワァと交戦開始】

827 名前:イグニス ◆IgnisC3BW6 :2006/11/26(日) 22:41:07

>>822

「何……?」

 思わぬ言葉に、よりによって相対した敵に身を支えられたという屈辱すらも一瞬凍り付く。
 というか――この男、この状況下で何を言っている?
 何も判らぬ状況で戦っていたと?

「――いや、ある意味で貴様らしい行動だな。ロング・ファング。
 それとも、ビリー・ロンとでも呼んだ方がいいのか?」

 刀を突きつけたまま言葉をつつける。
 それに対し苦笑して両腕を上げつつけるロング・ファング――
 その様子から、こちらに対する戦意は、少なくとも消えているのだと納得することは出来た。

「……放送は聞いていたな?
 アレは表向きのことだが、やろうとしてることそのものはおおむね真実だ」

 聞いているのか居ないのか――そんな曖昧な表情の男に僅かにいらだちを募らせながら、奴に判り
やすい単語で締めてやることにする。

「つまりだ――奴らがやろうとしていることは。
 この先にある狂気山脈を起点とした、大規模な”奈落堕ち”だ――」



【中層・回廊の外れ――対ロング・ファング】

828 名前:ロットン・“ザ・ウィザード”:2006/11/26(日) 22:41:18

 吹き荒れる嵐。
 その中にも関わらず、その男は立っていた。
 飛行船の尖端、空に最も近い場所。

 長身である。
 痩躯を、風を孕む黒いコートに包んでいる。
 両手には、モーゼルM712。
 7.62mmの弾頭をフルオートで吐き出す、最強の軍用銃と呼ばれた通称『ブルームハンドル』。
 それを、二挺である。
 右の手は下げたままで、左の手は顔の辺りにまで高く掲げられている。
 その氷の彫像めいた端整な顔立ちに目を覆うサングラス。

 彼は、傾く船体の、その上でも猶その姿勢を保ったままであった。
 口を開く。

「……待ちくたびれたぞ。
 子細あってこの“狩り”へ馳せ参じた。
 恨みはないが――その命、もらい受ける」

 紡がれるのはただ静かに、だが力強い言葉。
 嵐の中でさえ、力ある言葉。

「――俺の名は、“ウィザード”。
 ロットン・“ザ・ウィザード”だ」

 そう、嵐の中でさえ、彼は其処にいたのだ。
 あらゆるものを薙ぎ倒し、吹き付ける嵐にも。


 それが例え船体の、破壊された残骸が吹き付ける最中でさえ。

 嵐に舞う一際巨大な残骸が、彼の体を撃った。


 「……あ」

 落ちた。


 「あ―――――……」



 後に某国南極観測基地隊員に救出された男性は、こう語っている。

 ――どうしてこんなところに。
 「それは言えない。
  僕はプロだ、プロは依頼人(クライアント)について話はしない」

 ――えー……そうですか。
   ところでそんな格好で寒くはないですか?
 「防弾ジャケットを着ているからだよ。
  いざというときにね。
  君も着ると良い、役に立つ」

 ――着ませんから。
   ところでお名前は?
 「“ウィザード”、ロットン・“ザ・ウィザード”だ」

 ――本名ですか、それ。
   まあ、寒いでしょうからブランデーでもどうです?
 「僕は下戸だ。ビールで吐く。
  ホットミルクならいただこう」


【ロットン・“ザ・ウィザード”、登場と同時に退場】

829 名前:大尉:2006/11/26(日) 22:43:12


>>813 (哀川潤)
>>823 (ダンテ)

 骨が創られ
 血管が創られ
 肉がそれらを守る為に創られ
 皮がそれらを覆う為に創られ
 獣毛が創られ
 鋭い爪が創られ
 腕が一つ創られる

 喪われた左の腕は元の姿を取り戻す。
 人の腕は主によって天国の扉を開ける為に創られた。
 この戦鬼の左腕は地獄の窯の蓋を開ける為に今創られた。

 開けられる地獄の窯に投げ入れられるのは戦鬼か、悪魔狩人か、人類最強か?


 戦鬼の瞳は悪魔狩人の像を映す――正確にはその喉笛が映り込んでいる。

 この地獄への箱舟で何度目の疾走になるのか?
 戦鬼は地を這う様に駆ける、周囲の障害物はその勢いで弾け飛ぶ、
 テーブルも椅子も死体も、それらの雨の中を駆け抜け、戦鬼は悪魔狩人の喉を狙う!

 その腕で、その牙で!



 <現在地:パーティールーム>
 

830 名前:ふみこ・O・V ◆HPv8dyzZiE :2006/11/26(日) 22:46:35

>>806
 レザードの周りを幾重にも取り囲むように、本のページが舞った。
 その一枚一枚に膨大な魔力が秘められている事を、彼と同じく魔術を嗜むふみこは感
じとっていた。

 あれをこの狭い空間で発動されれば、こちらも無事では済まないだろう。
 ならば、機先を制するまで。
 ふみこはすばやく右手を掲げると、それを聖櫃に向けて突き出した。

「動くな!」

 鋭く一喝。

「臨戦態勢というわけね。悪くは無いわ」

 単純なのは嫌いではない。
 一気呵成に攻め上がり、悉くの敵を蹂躙する。
 それが、ふみこのスタイルだ。
 彼女は電撃戦の信奉者だった。

「けれど、少し落ち着きなさい? 私は貴方と事を構えに来たわけではないのだから。あく
まで戦うというのであれば、それでも構わない。けれど、その瞬間に聖櫃の制御を崩すわ。
……わかるでしょう?」

 レザードの表情は変わらなかった。
 しかし、彼もその意味は理解している筈だ。
 聖櫃の暴走は、即ちこの地域一帯の消滅を意味する。
 いかにこの男とて、間近で発動する聖櫃の力を受けて致命傷を負わずにいられるほど、
力を持ち合わせてはいない筈だ。

「私は話をしに来たのよ。レザード・ヴァレス」

 ふみこは言った。

「この船は沈む。聖櫃が間に合うかどうか……それは賭けよ。それも貴方はわかっている
筈。ならば……」

 ふみこの眼鏡が、再び光を反射した。
 唇が、にやり、とでも聞こえてきそうな笑みを作る。
 その表情は、まさに悪人だった。

「ならば、私につきなさい。レザード・ヴァレス」

 その瞬間、一人の青年将校の眉がぴくりと動くのを、ふみこは見逃さなかった。
 しかし、今はそれを無視する。

「報酬は、聖櫃の起動。もっと安全な場所で、もっと安全に、一切のリスクを侵す事無く
聖櫃の起動を行わせてあげるわ。起動には私も手を貸してあげる」

 この話が理解できない馬鹿ならば仕方ない。
 だが、レザードという男は利口な男だ。ふみこはそう見ていた。
 この男は脅威だ。負けるとは思わないが、全力を出さねば勝てはすまい。
 だからこそ、今は衝突を避けたかった。

 まるでセプテントリオンのようだな、とふみこは思った。

「今の私の目的は、この騒動に決着をつけること。その為に、私は貴方と取引したい。
私が願うのは、そこの……」

 目を向ける。
 気取られないようにしているつもりなのだろう。
 しかし、人にあらざる気配は、用意に消しきれるものではない。

「――女狐の始末よ」

 ふみこの視界に映るのは、今まさに囚われのヴァルトラウテをかどわかさんとするモリガン・
アーンスランドの姿だった。

831 名前:エアハルト・フォン・ラインダース ◆CnAdcTa152 :2006/11/26(日) 22:51:10

>>807 レッドバロン

 悪鬼の銃弾が真横からフォッケを凪ぎ払う。
 鮮血が散り、朱に染まるコクピット。
機体の横腹に穿たれた無数の弾痕から氷点下の外気が容赦なく入り込む。
無数の罅が蜘蛛の巣のように走るガーランド・ハウベの向こうで悪鬼が笑う。笑う、笑う。

 だが、まだ私とTa152は飛んでいる、敵も見える、手が動く。
力の限り飛べ。 命のある限り飛べ。プロペラが止まったら手で回してでも飛べ。
かつて、私を仕込んだ飛行科の教官はそう言った。

 先の暴風と銃撃とで計器の大半は死んだが、敵の姿はすぐ其処に、真横に見えている。
銃創と冷気とで半ばマヒした左手をスロットルレバーにかける。 最後のフル加速。
青白い排気炎を吐き出してJumo213Eが吠える、哮る、叫ぶ。
急激な水平加速いよって、真横にいたレッドバロンは瞬く間に後方へと流れ去る。

 そのまま血糊に滑る操縦桿を渾身の力で引き絞り、ハーフループ、そして反転。
第一次世界大戦でレッドバロンと並び称された空の英雄、マックス・インメルマンが編み出した
空戦機動インメルマン・ターン。
縦方向にUターンすることで、後背方向の敵機を再補足する空戦技術の基本とされる機動法。

 揺らぐ意識と薄れる視界の中心、前方やや下方にレッドバロンを捉える。
そのままトリガー。 もう距離も偏差角も関係ない。
敵は私の正面にいる。 あとはただ、打ち砕くのみ!
Mk108の30ミリとMG151の20ミリが、無数の死となって極地の空を駆けた。

【現在位置 周辺空域】

832 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/26(日) 22:52:26


>>797>>822>>827 vsイグニス&ビリー

 ―――なんてことだ、なんてことだ。

 廊下に倒れている親衛隊から無線を取り上げ、現状を確かめる。
 操縦室でレザード・ヴァレスとオゼット・ヴァンシュタインが交戦。
 ハルトマンは死亡。
 飛行船の高度は徐々に下がっていき、このままだと墜落する。
 墜落するのだ。

「……ふざけるな!」

 苛立ちに任せて無線機を投げ付けた。壁に当たって砕け散る。
 もはやこんなもの、何の役にも立ちはしなかった。今は早急に操縦室へ――
―あの髑髏十字の魔女を縊り殺し、聖櫃を起動させなくては。

 階段を駆け上がり、回廊へ。
 そこで眼にする一組の男女―――片割れは見知った女/イグニス。

「貴様、まだ生きていたのか!」

 咄嗟にホルスターからルガーを抜き放ち、トリガー。
 銃撃を浴びせかける。
 今ここで彼女の相手をしてやる余裕は無かった。
 マントを翻す、二人に背を向けて駆け去った。

【中層部:回廊→ゴンドラ接続部へ】

833 名前:コーディー:2006/11/26(日) 22:59:16

>>824
貫き、伝わる…とはいえ機械に傷みなんざ有るのか?
しねぇよりはマシだが、足下に衝撃を食らわせたのはあくまでバランスを
崩す為。ガタイの良い相手にやる基本的な崩し戦法だが…流石に人と同じ
風にはいかねぇか。 …見ろよあの余裕面

当然空いた上から反撃が来るのは当然。
…爪、か。あんなモンで斬られたら流石に俺でもオダブツ。哀れ
メトロシティの元ヒーロー、あっけない幕切れとなる。…別段そんな肩書き
有ろうが無かろうがどうでもいいが…そんな呆気無い終わりで死んだ日には
今まで闘うだけで生きてきた人生の「何か」に申し訳が立たん。

>戦車を蹂躙できる程度には設計されてるからね

「俺も気に入らない奴はぶっ飛ばす様に人生設計してるんでね。
…ちったぁ揉まれてみろ僕ちゃんよ」

襲い来る爪…全てをなぎ払うかの如く奴の爪目掛けアッパーを放つ。
ギリギリだが、推定3mの奴の体を覆うサイズの竜巻もろとも発生させ。

…こいつをぶち折ったら次はテメエだ

「C  R U S H !!」

目の前の巨体の爪目掛け渾身の「クリミナルアッパー」を放った

『現在位置 回廊 パンデモ二ウムと交戦中』

834 名前:イグニス ◆IgnisC3BW6 :2006/11/26(日) 23:00:57

>>832

 本日二度目のご対面。
 もはや社交辞令的な挨拶など必要ない。
 時間がない――私にも、この船にも、そして……恐らく、聖櫃起動までの猶予も。

 奴の射撃の腕が大したものでないことは、わざわざ確認するまでもない。
 故に、銃口がこちらを向いていようが構わずに、私は奴の背を追った。

 すでに(>>822)ロング・ファングの事などどうでもいい。
 少なくとも、連中の目的が奴の趣味に合わなければ、こちらとこれ以上敵対する理由はないはずだった。

 待て、などと無意味な台詞など吐かない。
 追いつくまで走るだけ。そして――

【中層部:回廊→グルマルキンを追ってゴンドラ接続部へ】


835 名前:大尉ブラッド ◆/Z/IFjxeWc :2006/11/26(日) 23:00:58

>>722>>816>>821
不死と言うことは死の恐怖から解放されると言うこと。
死の恐怖を取り除けば、人間は1歩踏み出せる。ジュウゾウはカミカゼなど言ったか・・・。
そして、我が仇敵は死の恐怖に怯んだ。自らが滅ぶという恐怖に。

だから、その一瞬を……。

>『万物を縛る普遍を司る精霊よ、今ここに! グラース・ハイパーカノン……シェリング!』

重力が身体を拘束し、耐えきれない身体の組織が壊れ、そして再生する。
悪鬼の形相をたたえた、それはまるで悪夢のような光景。

>『この男を――アドルフ・ヒトラーを倒すのは、私です!』

だがな、魔女。貴様は知らない。60数年の歳月を絶望で過ごしたあの日々が。
家族を奪われた苦しみを、思い人を殺された狂おしいまでの恨みを。
だから、私はこの男を殺すのだ。そうだ、この程度の重力など苦ですらない!そう思った瞬間。

機体が大きく揺れた。そして、突き立てたはずのナイフは自身の背中に。空間をねじ曲げて到達した。
私と総統は違う化け物だ。だから、私の身体はすぐに再生………しない。

「………な、何。私は貴様と同じなのか、アドルフ・ヒトラー!
 貴様を倒すために、化け物になったと言うのに!所詮貴様と同じ舞台に立っただけでしかないのか!」

響き渡るサイレンは誰がための葬送曲か。誰がための鎮魂歌か。
死の恐怖に打ち勝ったはずの男は。死の恐怖を退けたはずの男は。

今、目の前にある。大いなる絶望の前で。消え失せたはずの死を思った。

『負けず嫌いのブラッドには1番のワインを………』

ふと、そんな言葉が聞こえた。酷く懐かしく、そして愛おしい。
あの日飲んだ、幻想とともに三人で飲んだナディアのワインは未だこの心に流れているか?
未だこの身体に流れているか?ならば、宿願を。復讐を。仇討ちを。果たせ!

「そうだな……私は出来損ないでも、負けず嫌いなのだよ。総統!
 貴様を倒すまで、私は止まってはいられないのだ!」

潰れた身体を再生させる。ナイフで突かれた場所が戻らなくても。
全ての力を集中させる。破裂しそうな身体よ、目の前の敵を斃すために!
今一度だけ動け!猛毒がこの身体を走りきってしまう前に!
最後の力を込めて背中から引き抜いたナイフを手にブラッドは悪夢になる。

【現在位置:展望室3Fへの階段前】

836 名前:哀川潤 ◆MzXQXe8zTc :2006/11/26(日) 23:03:48

>>823

>「敵か、味方か―――? さあね」


「はは、アンタ結構やるねぇ。あたしの蹴りを避けるなんざ。」

そいつが投げてきた銃を左手でキャッチする。
そして新しく迫って来るヤバい何かの方に振り向き――

「ああそうだ、余興は閉幕、これからが本番って奴だ。
 あたしの名前か――?


 哀川潤だ。 ついでにアンタの名前も教えろよ。」


>>829

「くはは、来たぜ来たぜ、ヤバいのが来やがったぜー!」

一直線に狂気が向かってくる、その先はあたしじゃあ無い、隣のだ。
その狂気が腕を振り上げて――

「ふふ」

思わず笑みが漏れる、面白くて仕方ない。
ジャンプ、両手を組んでただその狂気の頭に向かって振り下ろす――

【哀川潤:パーティールーム:ダンテと共闘vs大尉】

837 名前:ビリー・龍 ◆D727Bb9L.2 :2006/11/26(日) 23:04:41

>>827

「どっちでもいいさ。お宅のお好みのままに」

 まー、軽口をたたきながら居られたのもそれまでだった。
 その規模での奈落落ちは、その地域だけの影響では済まされない。
 この世界の霊相全てを歪めちまうだろうに。
 しかもここは――場所が悪い。

 しかしまあ、俺は不思議なことに納得もしていた。
 戦中のナチの狂気ってのは、そういうもんだった。
 破滅にまっすぐ落ち込んでいく、そういう匂いが常にした。

>>832

 ありゃあ魔術将校か?
 衣装に見覚えがあった。戦中、ドイツに非公式に存在した階級だ。

「追うのか?」>>834
 声をかける。言わずもがなか。つーか無視かよ。
 俺は跡を追った。
 名前ぐらい聞きだしたいもんだ。

(回廊→ゴンドラ接続部へ)

838 名前:レミア・シルヴェスタW世 ◆MVlNEREMIA :2006/11/26(日) 23:06:19

>>808>>818
弾頭は完全に防がれた。
男が弾頭を叩き割り、客室乗務員が破片を防ぐ。
もしあのまま直進していれば、この回廊を貫き、
私は空に吹き飛ばされていただろう。

男が刀でやつを切り裂く。
あらゆる箇所にひびを入れ、片耳をも切り落とす。

>>824
だがその人形は顔を切られたにもかかわらず、なお前進する。
その飛び出した巨大な爪で襲い掛からんと。

「―――ガラクタごときが調子に乗らないで」

何も呆けていたわけではない。
手には高濃度の闇の波動。
あの装甲を貫けるかどうかは疑問だったが、
足止めぐらいにはなる。

「鋼鉄と油に与えられた偽りの生命。
今ここで絶ってくれる!」

相手の胸部に闇の波動を打ち込む。
これだけではまだ力不足だ。
トランクから剣を抜き、跳躍。
一気に人形の胸に飛びつき、闇の波動で傷つけた胸に剣をつきたてた。

【現在地:回廊でパンデモニウムと戦闘中】

839 名前:マンフレート・フォン・リヒトフォーフェン:2006/11/26(日) 23:07:38


>>831 エアハルト・フォン・ラインダース

 ファッケウルフの加速。レッドバロンの視界から瞬く間に機影が消え失せる。
 が、マンフレートも負けてはいない。骨が軋みをあげるほど身体を捻りあげ、
航空史を塗り替える90度直角方向転換。スピードの圧力を全身で受け止める。
 強烈な加重に肉が潰れ、骨が砕けた。
 だが、これでファッケウルフの後部に―――

「?!」

 迫り上がったマンフレートの眼窩が驚愕に歪む。
 ファッケウルフ―――想像を絶する180度ループ/180度ロール。
 インメルマン・ターン。
 尻に食い付かれるはずだったファッケウルフは、一瞬にしてX軸上でマンフ
レートと頭を向けあった。縮まる相対距離/回避は不可能。
 互いに絞り込まれるトリガー。
 マンフレート―――7.92ミリ弾を吐きだし/20ミリと30ミリを一発ずつ喰らう。
 それだけで片翼が吹き飛び、下半身を丸ごと失った。
 更にファッケウルフの突貫/マンフレートの眼がぎらりと光る。ボロ切れと
化したレッドバロンが、風防ガラスに叩き付けられ/取り付き/しがみついた。
 スパンダウ機関銃は二門ともハーネスから千切れ、空に消えた。
 しかし彼には爪があり、牙があった。
 まだ戦えた。
 まだ啜れた。
 バードストライクにより罅の入った風防ガラスに爪を突き立てる。
 パイロットを引きずり出すために。

【周辺空域】

840 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2006/11/26(日) 23:10:49

>>829>>836

「そのくらいはやれねえと悪魔狩人なんてやってられねえのさ」

 迫り来る脅威は迅速に行動を開始。
 狙うはオレの首、か。
 やれやれ、思考まで単純過ぎて涙が出そうだぜ。

「潤―――Hum。いい響きだな。気に入ったぜ。
 オレ? オレは―――ダンテさ。新曲とは関係ないけどな!」

 その声と同時に背中の一刀を引き抜き、頭上に掲げ、一撃をやり過ごすべき力を込める。
 キスが出来そうな距離。

「獣クセエんだよ―――!」

 腹にケリをお見舞い―――鉄でも蹴ったみてえ。
 馬鹿かコイツ。お陰で距離は取れたけど。

 次弾倉装填。次弾装填。ロック。ファイア。

 速射に継ぐ速射。
 潤に当たらないコトを願いながら。当てねえけど。

【パーティーホール】

841 名前:柳生・ジャグワァ・玄兵衛:2006/11/26(日) 23:10:57

>>826 岩本虎眼

『無双虎眼流―――岩本虎眼』

 無双虎眼流の岩本虎眼!

 ジャグワァは眼を見開いた。
 遠く鎖国惑星OH!エドを故郷とするジャグワァだったが、その名は知っていた。

「濃尾無双の、虎眼流でござるか」

 眼前の腐敗老が小刀を捨て、一刀となり、刀を担いだのを見て、ジャグワァは背筋がぞくりとするのを感じた。
 双方の間合いはまだ遠い。一足踏み込んで振るっても届くかどうかである。
 だが、ジャグワァには肌で分かった。

 ここは既に虎眼の間合いであると。

 魂斗羅として、サムライ戦士としてのカンが、既にジャグワァが危険な場所にいることを教えていた。

「ジャグワァ、お相手仕る、でござる」

 虎眼が腕を振るった。水平方向の斬撃。――頗る、速い。
 刀の長さよりも遠い間合いからの斬撃である。普通に考えて、当たるはずがない。
 だがジャグワァは、その高速の斬撃に回避動作を取った。
 目の前に高速で前転を打つ。
 そしてジャグワァは見た。己が首のあった場所へ、虎眼の刀が届いているのを。
 恐るべき速さと、そして伸びがあった。
 初見必殺とでもいうべき恐ろしい斬撃である。
 しかしジャグワァとて一人で一個中隊を壊滅させるサムライ戦士、おさおさ引けは取らない。

「やるでござるな!」

 前転からの起き上がり様、ジャグワァは逆袈裟に刀を斬り上げた。
 刀身は赤い炎を纏わせて。


[望室最上階・パーティールーム:岩本虎眼と死合]


842 名前:sage:sage

sage

843 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2006/11/26(日) 23:21:52

>>817

 ……ちょっと、勢い余り過ぎちゃった。
 てへ。
 でも誤魔化せなかった。

「あちちちち熱い熱い熱いっ!!」

 どうやら突撃した時の爆発で何かに引火してしまったらしい。
 私は容赦なく火だるまになった。
 何度か転がって火を消すと……ああ、せっかくの服が台無し。
 これじゃあモップにもならないや。

 まあ、それはいいとして。
 私は煤を払いながら目を回してるお姉さまに近づくと。

「こらー!! 起きなさーい!! いつまでボケてるのよー!?」

 がくがくと首を振り回す。
 聞きたいことは一杯あるけど―――とりあえずパチュリーのことに関しては小一時間問い詰めておこう。
 あと魅了の件とか色々。

 びゅうびゅうと風が開けた穴から吹き込んでくる。
 張り巡らされた細い細い道がぎしぎしとゆれて、まるで折れそうな木々みたい。
 ……そう、この船はそろそろ壊れてしまう。
 その前に、どうにかしないと―――


【気球内:お姉さまを起こす】

844 名前:タバサ ◆3VTTABASAI :2006/11/26(日) 23:22:33

>>821>>835

>>821
 空間が歪む感覚。
 天敵、とも言うべきT鋼製のナイフを消し去るはずだったのだろう。だが――船の揺れ(>>772)がそれを狂わせ、
天敵はいまだこの場に。ただし、アドルフを狙っていた凶刃は、それを持っていた男の背に刺さっていた。

>>835
 重力の精霊が宿った砲弾を受けてなお、男は立っていた。
「ふむ……貴殿の妄執、余程の様ですね。少し興味が沸きました」
 杖を手にしたまま、腕を組んで壁に寄りかかる。
「私はここで見学させていただきます。貴殿の名は存じ上げませんが、
貴殿が見事アドルフ殿を討ち果たしたならば――私を犯そうが、貪ろうが、どうぞお好きなように」
 そう言って再びくすくすと笑ってみせる。

 実際のところは。
 背中に、胸元に、じっとりとした汗が吹き出ていた。
 少しでも戦線から離れていないと、そのまま崩れ落ちてしまいそうなまでに消耗していたのだ。

【現在位置:展望室3Fへの階段前、壁際】

845 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/26(日) 23:22:45


>>827>>837
 ―――やはり追ってくるか。

 イグニスという女のしつこさは前述の通り。大人しく逃がしてくれるとは
思っていなかったが―――背部に眼を開き、追っ手の様子を窺う。
 オマケも一人、追従しているみたいだ。
 あれは吸血種? なぜ、異能を嫌うイグニスと行動をともにする?
 ここに来て、厄介な相手に睨まれたものだ。

 タラップを駆け上がる。ゴンドラから気嚢へと移動。だが、このまま二人を
引き連れて聖櫃の下へと駆け寄るのは下策だ。
 ふみことイグニスが共闘されでもしたら、目も当てられない。

 ……仕方ない、誘き寄せて始末するか。

 接続部から気嚢部の移動用通路に飛び出す。
 通路の至る所に、打ち捨てられた亡骸―――従業員/親衛隊/乗客。

 屍霊術は得意ではないのだが、幸いにも道具が多い。
 足止めぐらいにはなるだろう。
 グルマルキンは詠唱を口ずさみ始めた。

「無念多き屍どもよ、
 永劫続く苦痛と共に不死を授けん
 ―――ネクロマンシー!」

 食屍鬼やゾンビの類とは違う、一つの目的のために仮初めの生を与えられた
死霊戦士が立ち上がる。その数八体。死体はまだ多くあったが、あくまでルーン
魔術が専門のグルマルキンではこれが限界だった。

「適当に相手をしてやれ」

 ビリー/イグニスへと群がる死霊戦士。
 一方、グルマルキンは非常口を蹴り開け、船外へと飛び出した。
 気嚢の外壁に据え付けられた整備用のタラップを昇り、上を目指す。

【ゴンドラ接続部→船外:気嚢部分】

846 名前:レザード・ヴァレス(M) ◆jBiAWniQ.. :2006/11/26(日) 23:23:17

>>830

「ほう…?」

悪魔との取引とは正しくこの事か。
意外の極み、埒外と呼ぶ他はないオゼットの提案。
森羅万象。
万物とは彼が野望の道具に過ぎぬ。
だが――――

「其方を信用するには余りに材料が足らず、かつ一方的な申し出。
 交渉というより脅迫以外の何物でもない」

             ――――術式を再確認―――――

        ――――怨念の集積状態 不足―――――

  ――――予備転移、及び増幅術式の確認―――――


    ――――現状での全起動、困難とすべき―――――


「しかし―――――悪くはない。元より山脈の到達こそが計画の要。
 それがこのような形となっては…練り直すより他にはないでしょうからね。
 何より…あの魔女に義理立てする道理は、ない」

これもまた常にそうするように―――眼鏡をわざとらしく直し、レザードは不敵に笑む。
手はあるが、それを易々と許すほどこの魔女は愚鈍ではあるまい。
ならば互いに利用する。“今”は、だが。
彼女が同士討ちをさせたいのなら、それに乗るのも近道ではあるだろう。
そもそも、彼の目的はただ一つしかないのだから。


『――女狐の始末よ』
「…だ、そうですよ。モリガン・アーンスランド?」

向き直り、指を鳴らすと同時。
3枚の紙片が舞ったと思えば、その数一枚につき8条、計24本の槍が飛来する。
聖気を纏う閃熱の光槍『イグニート・ジャベリン』
槍の軌跡がヴァルトラウテを外し巧妙に狙うは一つ、夜魔の女王と謡われたモリガンであった。


       ――――術式の起爆剤としても、その魂は頂きたい故。

【現在地:操縦室】


847 名前:飛竜 ◆HIRYUmxRKo :2006/11/26(日) 23:27:24

>>818>>824>>833>>838
 破片は給仕の女の持つ力――武神流の男の言う『サイコッパーワー』だろう――が防いだ。
 斬線は届いた。だが、機械獣を止めるにはまだ足りない。
「――!」
 何気なく振るわれた太い右腕を腹部に受け、吹き飛ばされた。そのまま受身も取れず、壁に激突する。
「時間がない。潔く死ね」
 崩れ落ちる前に、腕の力で壁を蹴って跳躍。同時にサイファーの出力制御を開放する。

 そして、剣を携え跳躍する女と共に――
 機械獣の胸目掛け、サイファーの切っ先を突き出した。

【現在位置:中層部回廊、バンブー・パンデモニウムと遭遇】

848 名前:“濃尾無双”岩本虎眼 ◆c8rTIGERaI :2006/11/26(日) 23:27:35

>>841
 強靭にして精妙なる握力を以ってして放たれる斬撃。
 切先三寸切り込めば人は死ぬのだ。

 だが―――虎眼の魔剣を、ジャグワァなる剣客は見事な前転でくぐった。
 神速の一撃を見切り、一瞬で弱点を見切るその手管。
 まさしく手だれのもの。一流の剣士そのものであった。

 前転の勢いのまま繰り出される袈裟懸けの斬撃。
 ―――肉を焼き、油が滴る異臭と音が響く。
 しかし刃は虎には食い込んでいなかった。

 それは恐るべき柔(やはら)の技。
 虎の肉体はあたかも蒟蒻のように柔らかく反り、袈裟懸けの一撃を避けていたのである。
 そしてその体勢から繰り出される一撃は、
 ―――猫科の肉食動物の如き、異様な掴み。
 その奇怪な握りと、極限までの脱力から生み出される神速の一撃。
 最小限にして最速。虎眼流の真髄である。


【現在位置:展望台・パーティールーム】

849 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/26(日) 23:29:32

>>804

 天に召されたファリス信者は、天界に転生し、永遠の幸福を得られる……
 それが、ファリス様の教えです。
 わたし、ちゃんと行けるのかな……そんな事を考えていました。
 ヒース兄さん、みんな、ごめんなさい……

「…………あれ?」

 目覚めたわたしの視界に入ったのは、未だ真っ暗闇の天井でした。少しだけ目が慣れたので、
ぼんやりと輪郭だけは掴むことができました。

 ……生きてる、みたいです。わたし。
 板金鎧(プレートメイル)は、大尉に打ち込まれた胸の辺りを中心にボコボコにひしゃげ、
かなり動きにくいし、全身に激痛入りまくりですが、それでも、薄皮一枚助かったっぽいです。

 これも、ヒース兄さんに励まされて……全力で戦った報い、なんでしょうか。
 どうにか意識を取り戻し、あの恐ろしい大尉がどうなったのか? 新たに足を踏み入れた人たちは
無事なんでしょうか? それが気になり……わたしは頭を持ち上げました。

【イリーナ・フォウリー:現在地:パーティールーム。生死判定には成功っぽい・笑】

850 名前:アドルフ・ヒトラー ◆sLAdoLfKkE :2006/11/26(日) 23:29:37

>>844
 くすり、と笑みを浮かべる。

「なら、ボクが勝ち残ったならば――好きにさせて貰うよ、タバサ」


>>835
「残念だったね、ブラッド。
 ボクは、時間と空間を超越したもの――知らなかったのかい?」

 我が身に突き立てられたはずのナイフは、ブラッドの背中に突き立っていた。
 空間の扉を開く、まさに時間と空間を超越したものにのみ許された絶技。

「そう――キミは、ボクと同じでボクとは違う。
 出来損ないの獣性細胞の保有者――失敗作だ。
 そして――」

 ブラッドの身体を投げ飛ばす。

「――キミは、ボクと同じ舞台にすら、立っていない」

 立ち上がり、突進するブラッド。
 その腕を優しく掴む。
 そして、もぎ取り、滅する。
 残すのは、T鉱のナイフだけ。

「止まっていいのさ。
 ここでキミの旅は、終わりだ――さあ、彼女の待つ其処へ逝くがいい」

 手が、優しくブラッドの頬を撫でる。
 薔薇色の唇が、土気色の唇を塞ぎ――それを御印として、その存在全てを消滅させた。


【場所:展望室3Fへの階段前】

851 名前:大尉:2006/11/26(日) 23:32:37

>>836 (哀川潤)
>>840 (ダンテ)


 「おばあちゃん、どうしたの、その、おおきな おみみ」
 「あ。ああ。こりゃ おまえのこえが、よっく きこえるようにさ」

 「でも、おばあちゃん、どうしたの。その、おおきな おめめ」
 「こりゃあ、おまえのことが、よっく みえるようにだよ」

 「そうなの...........だげど、おばあちゃん..............どうしたの、その、その、おおきな、おくち」
 「フフフ、これはね、ヒヒヒ..........」

「おまえを たべるためだあ!」


                           『あかずきん』より

 撃ち込まれる銃弾、戦鬼の身体に穿たれる穴。
 銃弾の数だけ戦鬼の重さは増していく、戦鬼の速度も増していく。
 頭に人類最強の鉄槌、左即頭部はクレーター1つ発生―――突進は止まらない。

 変わらず右の瞳に映るのは悪魔狩人の喉笛、その像はより色濃くより大きくなり――――


 『狼は―――――――――悪魔に食らいつく――――――』


 童話のあかずきんはひとのみ、神々の黄昏ではティールの腕。
 ここでは悪魔狩人の喉笛がその牙にかかった!

 戦鬼は噛み千切ろう等とはしない、そのまま仕留めようと、闘争の契約を果たそうと
 悪魔狩人の喉元に食らいついたまま、部屋中を駆け抜ける



 紅と灰の彗星が部屋中を暴れまわり、天井に、壁に、床に幾つもの破壊の孔が作られる。
 それでも止まらない、止まらない、止まらない、悪魔狩人の生命の鼓動が止まるまでは!


 <現在地:パーティールーム>
 

852 名前:フランツ・フェルディナンド ◆ZcW/SSsF6Y :2006/11/26(日) 23:33:31

>>830 ふみこ・O・V
>>846 レザード・ヴァレス

少年は魔女に話しかける。

「君は仲間を裏切るのか?裏切りをそそのかすのか?
 ・・・・・・これで君を殺す理由が二つ出来た。

 ひとつは、君が仲間を見捨てる敗北主義者の裏切り者だということ。
 もうひとつは、君が我々の殉ずるべき場所を奪ったということだ。

 敗戦の日。あの日私はすべてを失ってしまった。
 だから、たとえ嘘でもよかったのだよ。
 最後まで騙し通してくれれば、それに殉ずることができたのだ。

 今をいきる君とは違う、わたしや彼ら、この場に居る多くのものは今もなお過去を生きているのだ。

 我々ははこの世界においてかりそめの客だった。
 生ける死者だった。それだようやく意味を持ち、また生きることができるようになった。
 そして大儀のもとに死ぬことができるようになった。

 たとえその現実がどうであろうと、我々には大儀という幻想が必要だったのだよ。
 君の行いはそれをまた無に帰してしまった。
 ・・・・・・これで私はまた殉ずるものを失ってしまった。」

少年はそういうとホルスターから拳銃を抜き、安全装置をはずす。
初弾は装填済みだった。

「君にはこの場で死んでもらう。ではいくぞ。死にたくなければ君の力を示してみろ」

そして少年は人間とは思えない速度で駆け出しながら、
銃を無造作に魔女とそのしもべに向けると引き金を引いた。

【現在位置:操縦室】



853 名前:ビリー・龍 ◆D727Bb9L.2 :2006/11/26(日) 23:33:32

>>845>>834

 前に障害物が並んだ。まー恨めしそうな顔しちまって。
 たいした障害にゃならんが、すぐ前を行くねーちゃんが疲れた顔をするのが見えた。

 疲労した体にゃ辛いか。
 俺は加速して並んだ。
 隣に声をかける。

「名前は?」
 怪訝な顔を返された。

「先に行きな。あれは任されてやる」
 上を指差す。頭上を飛び越えろってことだ。

 腐肉の先頭に接触。俺は最初の一体を蹴り倒すと、俺は後ろを向いて足場を作った。
 ほれ、ジャンプだ。

(ゴンドラ接続部)

854 名前:『紅い悪魔』レミリア・スカーレット ◆remyaGVniw :2006/11/26(日) 23:39:25

>>843
「う、うぅ…私は一体何を…?」

私はフランに身体を激しく振り回されて、ようやく私は意識を取り戻した。
どうやら先程の衝撃で魅了の効果がかき消されたのか…今まで私の脳裏に
呟きかけたあの声も聞こえなくなった。

「(…まさかさっきの衝撃で私にかかっていた魅了が解除されたというの?
だとしたら……フフフ、例え心無い感情で私を支配しようとしても―――
真に心ある姉妹愛や友情愛には適わない…ということね)」

私はそんな感想を述べたと同時に起き上がり、そしてパチェの方を向いた。
どうやらまだパチェは気絶したままらしい…。まぁそれはそれで
私の心情としては薄々救われた…とでも言うべきなのだろうか…。

そして私はとても心配そうな顔をしているフランに―――

「…フラン…私を止めてくれて本当に有難う。まさか妹である貴女に救われるなんて…
思っても見なかったわ…」

そう言い放ち、私はそのままフランに抱きついた。

【現在位置:気球内部 レミリアに掛かっていた魅了が解除される。そして気球内部が多大に損傷】

855 名前:イグニス ◆IgnisC3BW6 :2006/11/26(日) 23:42:50

>>853

 迷っている暇はなかった。
 何を考えてこの吸血鬼がこちらに協力しているのかは判らない。
 敵でないだけでこの場は十分だと思っていたが――
 忌々しいことに、奴の協力は、心底ありがたい。

 奴が作り出した足場に向けて駆け出す。
 その横を通り過ぎる瞬間、

「――イグニスだ」

 礼の意味を込めて、名を告げた。
 剣を逆手に、足場を踏み込み――跳躍。

 魔女の背を追って、ゴンドラを駆け抜ける――――

【現在位置・ゴンドラ→船外:気嚢部分へ グルマルキンを追跡中】

856 名前:麻宮アテナ:2006/11/26(日) 23:43:11

>>824
 ……この人、いえこの機械は、後のことを全然考えてない。
首尾よく私たちを全滅させても、自分が壊れたらなんにもならないはずなのに。
彼は、自分が破滅することを怖がっていない。
これが機械の怖さ、そして悲しさ?
だれですか、彼をこんなふうに作ったのは。
自我まで与えておいてこんなふうに使い捨てるなんて。でも今は。

>>833
『C  R U S H !!』

 もう声になっていない、密航者さんの連打からのハリケーンアッパー。
人間相手の閉鎖空間なら、そのまま壁際に追い詰められる必殺コンビネーション。
そして女の人が(>>838)果敢に近接戦闘。飛び道具だけじゃなかったんだこの人!
さらに、一瞬の間もおかずにマスクマンさんの刺突(>>847)。ここで一気に押し潰す!

「ロボットは天敵、確かにそれは一面の真実。でも」

 電子ジャーの真上にテレポートして、自然落下で飛びつきます。

「こういうときはお互いさま……やああっ!!」

 瞬時に発生させた4つの雷球をゼロ距離で叩き込む。
装甲は無事でも中のシステムは只では済まないはず。
アース線もつけてないみたいですしね!

<現在位置:回廊。パンデモニウムさんと戦闘中>

857 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus :2006/11/26(日) 23:44:33

>>830

「……あら、随分な言い草ですわね。
 私が人を化かしていたとでも?」

ほくそ笑む。
お互い分かった上でのこのやり取りの馬鹿らしさに。
錬金術師が魔女に付けば孤立しかねない、この状況に。
こうでなくては盛り上がらないと言うものだ。

「――――名が売れているのも考えものね」

アーンスランドとは名乗っていない。
だと言うのに、知っている連中が多すぎる。

「まあ、仕方のない所かしら。
 敢えて飛び込んだのは私自身、なのだし」

レザードが放った閃光の槍――数は中々に多い、が。
その軌道には穴があった。
良心なのか何なのか、ヴァルトラウテを外している。
その身体を盾にするように、陰に入る。

「裏切り者には死を――――なんて、ね」

そう呟くと、ヴァルトラウテが腰に下げていた拳銃を抜いて撃った。


【操縦室】

858 名前:ヴァーミリオン・CD・ヘイズ ◆/CD/iS.AAU :2006/11/26(日) 23:45:44

(>>825 から)


回廊を駆け抜け、暴風吹き荒れるゴンドラ接続部を這うようにして進み、上層の気球部へ。
長い長い道程を、飛行船の広さに悪態をつきながら走る。

そうして辿り着いた操縦室の、入り口。
中から響く轟音と、I-ブレインが感知するエネルギー反応、硝煙の匂い。

「クソったれ、ここもとっくに闘いの渦の中ってわけか。
まぁ……あれ程いた護衛が居なくなってる分、手間は省けたが」

ヘイズはそう言いながら、扉を開け放つ。

その中は。
彼の予測を遥かに超えた、陰謀と悪意の渦巻く戦場だった。


(現在地:最上層:操縦室内に到着)

859 名前:ヴァルトラウテ/タッツェルヴルム ◆SoRDENIEpc :2006/11/26(日) 23:46:19


 >>846


 刹那、高い防弾処理の施された操縦室の窓ガラスが砕ける。
 その腕が、拳が、対戦車砲88mm Pak43にも似た一撃が、そして黒衣に包まれた巨躯が。
 その巨躯、タッツェルヴルム、創痍の魔竜。
 目の前には魔女の饗宴。

 ――そして、囚われた乙女が。

「ヴァルトラウテ……!」

 魔術師の光槍が夜魔を貫こうとし、その前には、目の前には……

 魔竜は咆哮した。
 鋼の拳は、ただこの魔術師を撃たんが為に。

「オォォォォォォ……ッ!」

 【場所:操縦室】

860 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2006/11/26(日) 23:46:55

>>851

 オレが止められない?
 んな馬鹿なコトが―――

「が、は―――」

 尋常じゃない痛み。
 背中、頭、足、腕、眼、脳、内臓―――。

 体の至るところが悲鳴を上げる。
 オレ自身は悲鳴は上げずとも、訴えかける各器官の悲鳴は壮絶だ。
 断末魔の絶叫、と言っても間違いじゃない。

 アバラはイッたな、こりゃ。
 腕も上がるかどうか。
 視界はあんのか?

 わからないコトだらけ。
 わかるのは唯一にして絶対である痛み。
 痛み、痛み痛み悼め。

 周りが見えない獣人風情が―――最後に笑うのはオレだよ。

【パーティーホール】

861 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/26(日) 23:48:57


>>855 vsイグニス

 まさか足止めにもならんとはな。
 足下―――15メートルは離れている赤髪を確認して、
 グルマルキンは呻いた。
 あの吸血鬼が全てを引き受けたみたいだ。
 ―――余計なことを。

 どちらにせよ、この位置関係は望ましくない。
 眼下を見下ろし、次に空を見上げる。全長150メートルの気嚢。
 先はまだまだ遠い。
 両腕に強化のルーンを施す/腕力を頼りに昇る昇る昇る。
 いまはイグニスへの攻撃よりも、
 彼女との距離を離すことを優先したかった。

【船外:気嚢】

862 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/26(日) 23:52:34

>>851 (大尉)
>>860 (ダンテ)

 視界に入った、赤い男性と赤い女性。あの常人を遥かに越えた人狼(ヴェアヴォルフ)相手に一歩も引かない
気迫と戦いぶりに……わたしは羨望すら覚えました。

「すごい……かっこいい……」まだまだ……わたしは修行が足りないようです。

 赤衣の男性……ダンテさん……の放った銃弾を浴びながらも、大尉は突進を止めず……その顎(あぎと)を
振るいました。見とれている場合ではありません、このままでは彼が……!

 わたしは全身を引きずるようにして立ち上がりましたが、大尉から受けた傷は予想外に深手でした。
どうにか銀製の大剣(グレートソード)は手放さずに持っていましたが……それを振り下ろすだけの体力は
戻ってきていません。わたしは己の非力ぶりを呪いました。

【イリーナ・フォウリー:現在地:パーティールーム。哀川潤、ダンテと共闘。vs大尉】

863 名前:柳生・ジャグワァ・玄兵衛:2006/11/26(日) 23:52:37

>>848 岩本虎眼
 驚嘆に値する動きだった。
 虎眼はジャグワァの一撃を、身体を仰け反らせてかわしてみせた。

 見事でござる!
 しかしそこから反撃は無理でござ――

 刃を返し、追撃を見舞おうとしたジャグワァであったが、最強の闘士としてのカンが待ったを掛けた。
 そしてサムライ戦士としてのカンと本能が下がれと命じた。
 身を仰け反らせ床を蹴ってバク転。緊急回避。ジャグワァは後ろへ飛ぶ。

 ――紙一重。

 武者の鎧にも似たジャグワァのバトルスーツの前に、縦一文字の閃が入っていた。

「あの状態から、即座に反撃でござるか。見事でござる。しからば――」

 ジャグワァは構えを解いた。刀を背中の鞘へ納め、両手を垂らす。

「こちらも手の内を明かさせていただく、でござる」

 目を閉じる。
 ゆっくりと円を描くようにサムライ戦士の右手が動き、刀を掴んだ。
 迸る熱い闘魂と剣気。

「いくでござるよ、虎眼殿」


[現在位置:展望台・パーティールーム]

864 名前:イグニス ◆IgnisC3BW6 :2006/11/26(日) 23:56:45

>>861

 走る。走る。
 寒さと、そして高度故の酸素の薄さが、消耗を余儀なくされていた身体をさらに痛めつける。
 だが止まらない。奴の匂いはすぐそこに――

「――グルマルキンッ!」

 思わず、叫んでいた。
 余計な行動に使う余力など無いというのに。
 気嚢部のはしごに取り付き、登り始める――が、冷気に硬直しかかっている指が、上手くかからない。
 舌打ち。そして――己の手に思い切りかみついた。

 ……痛覚が戻る。
 辛うじて、満足できる範囲には動いてくれる。
 上る。ここが最上部だというのなら。奴にとっても、これ以上逃げ場など無いはずだ――

【船外:気嚢部 グルマルキン追跡中】

865 名前:大尉ブラッド ◆/Z/IFjxeWc :2006/11/26(日) 23:59:58

>>835>>850
>『残念だったね、ブラッド。
  ボクは、時間と空間を超越したもの――知らなかったのかい?」

心の何処かで、死を待っていた。いつかこういう時が来ることを。
そうだ私は死を恐れぬ変わりに、己の不死を何処かで恐れていた。

>『そう――キミは、ボクと同じでボクとは違う。
  出来損ないの獣性細胞の保有者――失敗作だ。
  そして――』

吹き飛ぶ己の身体、届かなかった宿願という名の。そうか、妄執か。

>『――キミは、ボクと同じ舞台にすら、立っていない』

身体が消えていく。これが『死』か。随分と暖かく感じる。
無限の輪は欠け、悪夢は終わる。せめて人並みに死にたいなどと冗談で言ってはいたが。
これも私の果たされぬ願い一つだったのではないのか。

『もうやめましょう、ブラッド。先祖に対する冒涜はいつか貴方の身を滅ぼすわ……』

(あの日、君の言ったとおりだった。もう、随分と長く生きすぎた気がする。
 さあ、君の元へ。逝けるかな………私は。)

>『止まっていいのさ。
  ここでキミの旅は、終わりだ――さあ、彼女の待つ其処へ逝くがいい』

(ああ、来てくれたのか。復讐も妄執も、せめて最後は淡い幻想(ゆめ)の中で………
 それじゃあ先に逝って待っている。せめてジュウゾウお前はもっと後で来い。)

もはやブラッドには仇敵は見えていなかった。
そして不死身の悪鬼は、思い人の腕の中で口づけとともに静かに召されていった。

【場所:展望室3Fへの階段前 第四帝國大尉(ハオプトマン)Z・ブラッド消滅】

866 名前:ふみこ・O・V ◆HPv8dyzZiE :2006/11/27(月) 00:02:35

>>852
 ふみこその身を屈めてその銃弾をかわしつつ、内心で驚愕を覚えていた。
 撃たれた事にではない。
 話しかけられた事に対して、驚愕していた。

 それは、全く予期していない事だった。
 激昂するでもなく、逆上するでもなく、こうして冷静に話かけられるとは。
 しかも、彼の口から紡がれるその内容ときたら、どうだ。

(――侮っていたな)

 ふみこはそう思い、歯噛みした。
 今も残り、このような作戦に嬉々として参加するナチスの残党は、もっと気狂いばかりだ
と思っていた。だが……そうではなかったのだ。彼らは知っていた。自分たちがもはや、過去
の亡霊である事に。しかし、彼は……いや、彼らはそれ以外の生き方を知らなかったのだ。
 だからこそ、総統の命令書を携えたグルマルキンが現れた時、彼らは狂喜したのだろう。
 何故なら、この作戦に従事する事によって、彼らは再び死の世界から現世に戻ってくる
事が出来たのだから。

 生きているのに、死んでいる。
 時代は彼らを忘れ、自分たちだけが過去に取り残されているという孤独感。
 六十数年にも及ぶそれに耐えながら、やっと彼らは戻ってこれたのだ。
 陽のあたる場所に。

 しかし、その場所は、ふみこによって砕かれた。
 今、彼の胸中に渦巻く絶望は、いかばかりであろうか?
 ふみこには想像もつかなかった。
 しかし……

「――夢は醒めるものよ」

 ふみこは呟きながら、魔女たちに指示を出す。
 MG43を構えた魔女が、フランツに向けてマシンガンを掃射。
 同時にふみこは柱の影に走りこんだ。

「君の想いはわからなくは無いわ。けれど、それは夢。夢は決して、現実を浸食する事は
出来ないわ……明けない夜は無い。たとえどんなに深い夜が訪れようと、必ず騒がしい
朝はやってくる」

 物陰から、時折マシンガンを乱射しながら、ふみこは少年に聞かせるように言った。

「生きる意味が無いというのなら、何故探そうとしなかったの? 全てを失ったというのなら、
何故新たに得ようとしなかったの? 君は何もしなかった。だから、孤独に打ち震えて六十
年もの時を過ごさなければならなかった。……ふん。そんな君に、私への文句を言う権利
は無いわ」

 その声に、一切のぬくもりはなかった。

「良いでしょう。貴方が何かに殉じたいというのなら、私がそれを与えてあげる。私を討ちな
さい! 同胞を売った、裏切り者であるこの私を! それが君の大儀。君の人生の目的!」

【操縦室】

867 名前:エアハルト・フォン・ラインダース ◆CnAdcTa152 :2006/11/27(月) 00:03:14

>>839 レッドバロン

 「――やったか!?」

 光像照準機の中で怪物が四散して吹き飛んだ。
悪魔の翼が千切れ飛び、脚部が分解して落下していく。
あれならもう、生きてはいまい。
レッドバロンだったものが、夜空の彼方へと消え堕ちて行くのを見届けると、
私は最後の仕事――この事件の首謀者の誅戮――を果たすべく
傷だらけ、穴だらけになった愛機の機首を巡らせた――が。

 突然、視界が真紅に染まった。
血が眼に入ったのか? 否、そうではない。
どうやら私をこの悪夢の戦場へと導き、背後から見て嘲笑っていた悪魔は
まだ笑い足りなかったらしい。
 そこには、ガラス一枚隔てたところには、討ち果たしたはずのレッドバロンがいた。
上半身だけになって。
自らがフォッケの側面に開けた弾痕に巨大なかぎ爪を引っ掛けて。
そいつは私が気がついたのを悟ると、牙の生えた口の端を吊り上げて笑みの形を作った。
笑みの下で、プール・ル・メリットが揺れる。
悪夢はまだ、終わらない。


 レッドバロンの爪がキャノピーにかかり、引き裂きにくる。
原型を留めているのが不思議なくらいに傷だらけになった防弾ガラスが
ピシピシと音をたてて欠け落ちる。
そうか、貴様は失った半身の代わりに私の命で埋め合わせようというのか。
だが、それはできない。 貴様のような怪物にくれてやるものなど、私には何も無い。


 失血と冷気に蝕まれ、朦朧とした意識の中で私が取った行動は
奇しくもあの夜の――機体を捨て、卑怯者の烙印を押されたマンハ湖の夜と
寸分違わぬものだった。

 感覚のなくなった脚で機体をロール。 背面飛行へ。
そのままキャノピーを強制排除。

 高空の低温から私を守ってくれていたキャノピーは、振り落とされまいとしがみつく
怪物――レッドバロンの成れの果てと共に凍てつく闇の中へと
永遠に消え去って行った。
それが私の、エアハルト・フォン・ラインダースがこの血塗られた空で見た最後の光景だった。

【エピローグへ】

868 名前:パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU :2006/11/27(月) 00:07:46

……悪い夢と現実を見ていたのだ、とパチュリーは思った。

レミリアが魅了を受け、
パチュリーに自ら相対し、
グングニルをわざと外し、
グルマルキンから離れた場所に逃れ、
それでも魅了に囚われ、
パチュリーを殺そうとして、

……フランドールにど突き倒されたなんて。

* * *

>>854
抱きしめあっている姉妹がぼやけた視界に入り、一先ず詳細は後回しにして水に沈める事にする。
まだ意識が朦朧としながらも、小さくつぶやく。

「お目覚めは済んだ、レミィ……?」

869 名前:「墜ちた森の巨人」バンブー・パンデモニウム(M) ◆jBiAWniQ.. :2006/11/27(月) 00:08:00

>>833


「簡単には滅ぼせない、そう言いたいのかい?」

               ――――暴風に対峙する旋風。

可能性。それは生命が持っているもの。
けど未来へのそれは人間を選ばなかった。選ばれたのは僕達だけだ。
分かるかな?
分からないだろうから、君達は終わるしかないんだよ。

                ――――刃金の爪は砕けるが、巨腕はそのまま打抜かれ

>>838

「じゃあ、君は何だい?」

謎のエネルギー。
僕の体は避けるようにはできてない。
だから当たる。はは、貴重な体験だな。
お礼を言わないとね。

                ―――漆黒の波動が破滅の勢いを止める


「君は生命ですらない。偽りなのは君の方じゃないか」

剣とエネルギーが体を貫いてダメージが僕を蝕んでいく。
死ぬのは問題ない、僕たちはコピー能力を持つ。
僕のデータがある限り、僕は無限に存在するのだから。
問題なのは君達が生きている、そう。それだけだよ。

「僕たちは無限だ。新しい世界を担うに相応しい、ね」

体を揺さぶって、さて、離せるかな?
とりあえず反撃を考えないと。


               ―――巨体が引き剥がすべく左右に揺る寸前


>>847

                 ――――刹那を突くは、非情なる光剣

「そうだよ、時間はない。この世界に残された時間はね」

素敵な協力だね。
そうやって生命と生命が力をあわせるのがあるべき姿。
けど、君達の絆は所詮偽りで不完全だ。


「もう少しで彼らの“破滅”は発動する」

だから消えなくちゃいけない。
君たちのような古い存在はその世界ごと。


                   ――――その一撃にたじろぐ素振りも見せず


「太古の時代の『聖櫃』…世界はその時から、破滅を考えていたんだよ」

全力で後退。
これは距離をとらないと駄目だ、間に合うかな?

                     ――――損傷もそのままに、巨体は
後方へ飛ぶ


>>856

               ―――――紫電が四つ、巨体の内部を焼き尽くす

「そう、だけど何も問題はない」

着地と同時にコピー能力。
うん、これで足裏はアースになった。
僕の滅びは近づいているけど、まだ最後に。


               ―――――背に榴弾、両手に弾頭。総てが弾ける。


「僕たちはこの古い地球を捨てるんだからね」

全弾、全部。
この通路ごと破壊するつもりで撃とう。
ああ、当然これで君達をすべて倒せるとは思ってないよ。


               ―――――爆裂。爆発。膨大な火力は盛大に躍り



最後の一刺し。
音速加速の一撃で通路ごと滅ぼすから。

               ―――――爆風の奥で構えるは地獄の巨刃。

870 名前:哀川潤 ◆MzXQXe8zTc :2006/11/27(月) 00:08:41

>>840 >>851

「ダンテねぇ、くは、いい名前だ。うん、いい名前だ。」

一瞬も止まらない状況、三人の体も動きも止まらない。
側頭部に一撃、更にダンテの銃弾をブチ込まれても尚その狂気は止まらず。

ダンテの喉笛に、突っ込んだ。

「とぉぉぉまれぇぇぇえ!このくそばか!」

ダンテから受け取った拳銃から全弾を狂気にブチ込むが止まる気配など皆無。
どうした物か。

>>862

と、視界に入る無駄にデカい剣を構えた女の子。
つまりだ!あの女の子から剣借りてあの狂ったヤツを一刀両断。
うわ、あたし超冴えてねえ!?

「ちょっとそれ貸しやがれ!」

返答を聞かず有無を言わさず近付いて剣をひったくる。
そのまま手近な壁を蹴って舞い戻り。


――狂気に向けて叩き付ける様に振り下ろした。


【哀川潤:パーティールーム:イリーナから剣を分捕った。vs大尉】

871 名前:“濃尾無双”岩本虎眼 ◆c8rTIGERaI :2006/11/27(月) 00:08:43

>>863
 ―――神速の一撃は、またも凄まじき柔(やはら)の技で凌がれた。
 恐るべき速度。なにより見切り。
 そして、対手がゆっくりと刀を納め、再び掴む。

 立ち上る闘気を、虎は全身で感じた。

 その目で。耳で。鼻で。舌で。肌で。髪で。牙で。刃で。

 故に。

 虎眼は刀をゆっくりと引き寄せ、構える。
 握りは先ほどと変わらず。

 身体をひねり、発条のごとく力を篭らせていく。

 そして―――刀身に、左手が添えられ、掴まれる。


 ぎ し り 。


 空気が軋んで、恐るべき剣気の放射が成される。


 ぎ り り り り り り り


 食いしばる歯に皹が入る。万力の如く刀身を締め付ける左の指。

 それは、相対する者全てを裂く、虎眼流神妙古今に比類なき魔技。

 その刃からは、何人たりとも逃れられぬ―――








「虎眼流―――“流れ星”」









 流れ星の如く。
 一閃が瞬いた。


【パーティルーム:虎眼流流れ星、発動】

872 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/27(月) 00:09:39


>>864 vsイグニス

「落ちぶれたものだなぁ、気高き刃よ!」
 タラップを昇りながら叫ぶ。
「人間に成り果てた貴様には、この環境は辛かろう」

 グルマルキンは表皮の裏側に刻んだルーンにより、外気を可能な限りシャット
アウトしている。寒さは感じるが、凍て付くことは無かった。
 魔術士として当然の備えだ。

 数分かけてようやく気嚢を昇りきった。待ち伏せしてイグニスを蹴落とすのも
良かったが―――あの女の賢しさをグルマルキンは知り抜いている。
 ここは相対して真っ向から挑んだ方が得策だ。
 イグニスという女の弱点はそこにある、と魔女は見抜いていた。


              ※ ※ ※


 気嚢上部/競技場のグラウンドよりも、更に広大な面積を持つ鋼の風船。
 吹き付ける冷気にマントを煽られる魔女が、その中央に佇んでいた。
 手にはケリュケイオンのサーベル/気嚢に突き立てている。

「―――さて、イグニス。貴様との長い付き合いも終幕だ」

 気嚢から生えた制御翼―――設置されたメインエンジンが煙を吹き、炎を
吐いている。エンジンはほぼ全て全滅だった。推進力はゼロに近い。
 舌打ち。だが、まだ気嚢が生きていた。
 浮力さえあれば慣性で狂気山脈までたどり着ける。
 グルマルキンの野望は潰えたわけではない。

 右眼のグラム・サイト/瞳に映った蒼い炎を猛らせた。


【現在地:気嚢上部/飛行船頭頂】

873 名前:タバサ ◆3VTTABASAI :2006/11/27(月) 00:11:58

>>850>>865

>>850
「ええ。構いませんよ。出来るのならば」
 微笑を浮かべてみせる。笑い声を発するのも、割と厳しい。

>>865
 そして妄執の男は、彼を捉えていた想いが氷解したのか、羅刹の如き躍動を感じさせないほどに――
安らかな表情で崩れていった。

「終わり……ですか……。そういえば――かつて貴殿と出会ったのも、南極の地でしたね」
 私はそのまま崩れ落ちた。

「私を置いて先を往くも良し、私を連れて行くも良し……どうぞ、貴殿のお好きなように。
置いて往かれるのならば……私はここで休んでいきます」

【現在位置:展望室3Fへの階段前、壁際】
 

874 名前:「墜ちた森の巨人」バンブー・パンデモニウム(M) ◆jBiAWniQ.. :2006/11/27(月) 00:13:42

>>869

【現在位置:回廊】

875 名前:ふみこ・O・V ◆HPv8dyzZiE :2006/11/27(月) 00:14:01

>>858
 戦闘の最中、不意にドアが開いた。
 その先に立っていたのは一般人。

(馬鹿が、何故こんなところに)

 ……いや。
 と、ふみこはすぐに思いなおす。
 一般人が、この激戦の最中、一人でここまでこれるわけが無いのだ。
 ならば、彼もまた、何らかの能力を持つ人間と見て間違いはないだろう。

 ふと、レザードたちの方に目を向ける。
 ヴァルラウテを守るために現れたタッツェルヴルムは、勘違いの末レザードを攻撃しようと
している。それはそれで構わなかった。レザードが死んでくれるのなら、ふみこにとってそれ
は万々歳だ。
 だがそれでは、モリガンの方が留守になってしまう。

(足止め程度になれば良いのだけれど)

 ふみこはそう思いながら、その男に声をかけた。

「そこの民間人! 先ほどの放送は聴いたな? 私はオゼット・ヴァンシュタイン中尉だ。
そこにいる女を拘束しろ。そいつがこの事件の首謀者だ! 見た目にだまされるな、魔法
を使うぞ!」

 彼がふみこを手伝う理由も、モリガンを拘束しなくてはならない必要も、全く無い。
 だがそれでも、突然直面したこの状況に麻痺した判断力では、それを理解する事は出
来ないだろう。
 そして、そういった状況で命令を受けると、人は何とはなしにしたがってしまうものだという
事を、ふみこは知っていた。

【操縦室】


876 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus :2006/11/27(月) 00:17:18

>>859

予想外の人物が、乱入した。
その拳を向けるのは錬金術師。
総身に漲る怒りは、この戦乙女の為の物なのだろう。

「騎士様の到着、と言う所かしら……お熱い事」

矛先がこちらを向く前に、手を打っておくべきだろうか。
二対一になっては、些か面倒だ。
差し当たって出来る事は――――

「……立てる? 立てるのなら行くと良いわ。
 裏切り者の錬金術師が、次も外してくれるとは限らないわよ」

ヴァルトラウテの戒めを左手で引き裂き、そう声を掛ける。
同時に、拳銃を捨てた右手に使い魔を鞭の形で召喚した。

「――――聞こえた? 騎士様」

振るう。
一、二、三、四、五、更に、更に。
闇色の鞭はのたうつ刃さながらに、錬金術師を襲った。


【操縦室】

877 名前:Dante ◆deViLHuNtM :2006/11/27(月) 00:17:58

>>870

 吸い込まれるかのように剣は獣人の心臓へと至る。
 そこにそうあるべくして収まったかのように。
 浮かぶ苦悶の表情を見ると自然と顔がにやけちまうな。クソッタレ。
 イロオトコが台無しだぜ。

 まあ、潤のお陰で漸く強靭な腕から逃れるコトができた。しかし一息つく間もなくマガジンを
換装。法儀礼済み純銀弾―――あの剣と同じ材質、だと思う。
 もう一つを潤に投げて寄越し換装を指示。

「決め台詞は―――」
「くはは……読めてるよ」
「ああ……そうかい。じゃあ―――」






                              『Jack pot!』

878 名前:マンフレート・フォン・リヒトフォーフェン:2006/11/27(月) 00:18:00


>>867 vsエアハルト・フォン・ラインダース

 今まで幾百度とこの体勢からパイロットを狩ってきた。
 だが、その全ての経験を―――一人の男が否定した。
 180度ロール/解放される風防ガラス/射出されるキャノピー。
 取り込まれる重力。近付く大地―――狂気の山脈!

「―――見事だ」

 そう呟くので精一杯だった。
 ブルーマックスが月の光を受けて蒼く輝く。
 英雄の最期。


〈マンフレート・フォン・リヒトフォーフェン→死亡〉
〈リヒトホーフェン・サーカス→全滅〉

【周辺空域】

879 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/27(月) 00:21:14

>>870 (哀川潤)

 一瞬、何が起こったのか理解できませんでした。
 手にしていた銀の大剣(グレートソード)が、赤い女性によって無造作にひったくられたのです。

>「ちょっとそれ貸しやがれ!」

 すごい。今日この場で起こった、どんな出来事よりも、度肝を抜かれました。
 この遠い異界の地においても、わたしと同等、いやそれ以上の筋力を持つ女性が存在するなんて!

 彼女が「人類最強の赤」と呼ばれる、史上最強の請負人である事をわたしが知るのは、もうちょっと
先の話、なのでした。

【イリーナ・フォウリー:現在地:パーティールーム。哀川潤、ダンテと共闘。vs大尉】

880 名前:フランツ・フェルディナンド ◆ZcW/SSsF6Y :2006/11/27(月) 00:22:05

>>866 ふみこ・O・V
彼のぽっかりと開いた心の中に、魔女の言葉が胸に響く。

彼ははあの日以降の生に満足を得ることが出来なかった。満ち足りることが出来なかった。
どんなに生きようとも、共鳴する組織に属そうとも、心をささげるには至らなかった。

満ち足りることのないその生は、満ち足りることのないその彼は、
存在自体が黒く悪い夢のようだった。

だがいまや、魔女によって理由を得た。生きる理由を、そして死ぬ理由を。

恨もう。そして感謝しよう。

彼はそう小さくつぶやくと、迫る銃弾の雨を速度を上げて回避。
何発か食らうが、瞬時に再生した身体組織が弾丸を押し出す。

手にした拳銃を撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ。
そのままの勢いで全弾撃ち放つ。崩れ落ちる魔女の下僕。

弾のきれた銃を魔女に投げつける。
同時に走る速度をさらに上げる。
小柄な身体を、姿勢を低くしてさらに小さくし、床すれすれの体勢で一気に間合いをつめる。

そして地を這うような姿勢から、銃弾に身をさらしながら、拳を振り上げ魔女におそいかかった。

【現在位置:操縦室】

881 名前:イグニス ◆IgnisC3BW6 :2006/11/27(月) 00:24:12

>>872

 気流に煽られ、ドレスの裾が激しくたなびいている。
 突き殺ような冷気は相変わらず。だがそれを気にしているような余裕はなかった。

 グリマルキン・フォン・シュティーベル。
 此度の舞台を演出した魔女が、いよいよ真正面から私に立ちふさがった。

「私も、お前の遊びに付き合わされるのにはほとほと疲れたよ。
 まさか、本当に生きていたとはな。せっかく長らえた命だ、かび臭い穴蔵で自己満足に浸っていれば、
それなりに満足のいく人生が送れただろうに」

 言いながら、彼我の戦力を確認……目を覆うばかりだった。
 こちらは得物のこと如くを失い、予め手配していたものも未だに倉庫の奥で眠りこけている。
 身体は満身創痍、技の切れも万全の状態からすればお話にもならない。

 対して奴は、全身に充ち満ちた魔力、挙げ句に手にしているのは魔杖の類。
 傷ひとつ、疲れひとつ無い肉体は健在――まるでどこかで新品にでも取り替えてきたようだ。

 いや、もしかしたら本当に新品なのかも知れない――探せば船内に、無様に朽ちた奴の死体が転がっ
ていたとしても、不思議でも何でもなかった。

 状況は不利を通り越して最悪。だが――だが。

 それが、どうしたというのだ?
 私が奴を殺すのは決まり切っているし、この船が沈むのも時間の問題。
 狂気山脈などにはたどり着けないし、聖櫃も起動しない。かくて、世界は事も無し――そう。

 他に、選択肢などありはしないのだ。

「最後だ、グルマルキン――見果てぬ夢を抱いて、お前はここで死ね」

 吐き捨てて――全力で、奴に向けて駆けだした。

【現在地:気嚢上部/飛行船頭頂 交戦開始】

882 名前:柳生・ジャグワァ・玄兵衛:2006/11/27(月) 00:24:25

>>871 岩本虎眼
 ぎしり、と音が鳴る。

 ――空気の軋む音。

 ぎりりりり、と音が鳴る。

 ――――引き絞られる音。

 ジャグワァは辺りの剣気がどんどん濃密なものへ変わっていのくを肌で感じていた。
 今まで生きてきた中で、これほどまで濃密に場を満たす剣気は味わったことがない。

 まさに、――比類なき剣鬼。

 しからば、鬼を打ち倒そう。我が一閃、柳生・ジャグワァ・玄兵衛、必殺の一撃で!


『虎眼流―――“流れ星”』

「激震! 黒神剣!」

 ジャグワァは眼を見開き、光の中、刀を、振るった。


 広いパーティールームが、縦一文字、真っ二つに両断される。

 剣閃の中心に、岩本虎眼の正中線を捉えて。



[パーティルーム:ジャグワァ、『激震! 黒神剣!』発動]

883 名前:アドルフ・ヒトラー ◆sLAdoLfKkE :2006/11/27(月) 00:25:33

>>865
「・・・眠れ。
 それがせめてもの、慈悲だ」

 踵を返す。
 既にそこには、もう何もなかった。

>>873
「ああ。そうだったな。
 このまま一緒にダンスに行きたいところだが・・・少々辛そうだな。
 ・・・休んでいくといい。
 ボクは、このまま操縦室に向かう」

 手にしたT鉱のナイフが輝くたび、ボクの身体の獣性細胞が呼応する。
 今なら、いつもでは出来ないことでも出来る気がする。
 そう・・・今なら。


【場所:展望室3Fへの階段前→3Fに出る】

884 名前:反ファシストの愛国戦士ハメコ・ロッス(仮名) ◆HAMEiX9aqU :2006/11/27(月) 00:26:11

>>871

フ、フフフフフ。
ガーッハッハッハッハッハ!!

天が呼ぶ。地が呼ぶ。人が呼ぶ―――

む、ちょっと待った。
天という表現は政治委員どのの注意があったので修正せねば。


(しばらくお待ちください)


同志レーニンが呼ぶ。 露西亜の大地が呼ぶ。 人民が呼ぶ―――
祖国のためにファシストを倒せと俺を呼ぶ。

ナチスの悪行を裁くため、祖国防衛の戦士ザンギエ……げふげふ
「紅の熊」こと覆面レスラーハメコ・ロッス(仮名)ここに見参!
ファシストどもにスクリューハメ血の粛正だ!!
ウラー!ロジーナ!!


                r,''ヘ_
              _,,,,_⊂-くノ`ヽ,
          _  〆_゙'ir''⌒"  )  とぉう!!
         ξ⊂!  っ》`   く ∠___
         .''\ノ''''‐`` i、 ,ノ  │,-ヽ7=、、 ,,rー'"`-、
           \_゙l、,,,_,/i゙、 ,ノ 〈 ゛  `ヌ⌒ )/=i、 l
                 `゙゙'''"`'ミ--/-,_  ´ /"  `''
                        \ .,,、`lニン-゛
                      \__ノ


※スターリングラードの戦いでファシストの戦車から身を挺して味方を庇った
勇者ミハイル・パニカウのようにファシスト(>>871)めがけて吶喊するハメコ・ロッスのイメージ画像



       ┏┓┏┳┓
     ┏┛┗┻╋┛            \  i
     ┗┓┏┓┃             ── + ─
       ┃┃┃┃ ┏┳┳┓       // | \
       ┗┛┗┛ ┗╋┛┃     /  / |
                  ┗━┛   /   /
               ̄ 二─ _
                -、\ \
       /         \ヾ、\  ヽ
      //          |!  i    |
    ///           |      |
   \\ ___            |       |
.   /\ ヽ\        |      |
   / _  / U         |! リ    |
  (、< ,  /.        / / /  /
 /    \          _//_ /
.  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄      _二─

※>>871に一撃で葬り去られた同志ザンギエフハメコ・ロッスのイメry


【反ファシストの愛国戦士ハメコ・ロッス(仮名)、登場と同時に退場!】

885 名前:ふみこ・O・V ◆HPv8dyzZiE :2006/11/27(月) 00:31:50

>>880
(迅い……!?)

 油断しているつもりは無かった。
 しかし、少年のスピードは、ふみこの予想の遥か上を行くものだった。
 繰り出される拳。

「ちっ!」

 それを、どうにかスレスレの位置でかわして見せる。
 拳が掠ったわき腹が、じん、と痛んだ。

(吸血鬼? いえ、そうは見えない)

 どちらにせよ、この位置ではマシンガンが邪魔すぎた。
 ふみこはかわしたその態勢からカウンターのように少年の腹に膝を食らわすと、浮き上が
ったその身体の側面に向けて鋭い回し蹴りを放つ。
 軽く吹き飛ぶ少年の身体。
 それに向けて、ふみこはありったけの弾をぶち込むと、弾切れし、鉄の塊となった長物を
少年に向けて思いっきり放り投げた。

【操縦室】

886 名前:ビリー・龍 ◆D727Bb9L.2 :2006/11/27(月) 00:34:04

>>881>>872

 少々手間取った。
 こっちにゃ他に道は無いから、迷うことは無かったが。
 どうやら気嚢の上に登っていったらしい。元気な話だ。

 俺も後を追うことにした。
 この妙な義務感がどこから来ているのか、実のところよくわからんが。

 俺は首を捻った。
 女のケツを追っかけるだけでも理由にゃあ、なるか。
 そのほうがシチ面倒くさい理屈をこねるより、マシだ。

 タラップを登りきる。
 そこでは女が二人、対峙していた。
 暴風と薄い空気と低温のなかで。

 その光景だけでも、あるいはここまで登ってきた甲斐があったかもしれない。
 くだらん感傷ではあるが。

(気嚢上部)

887 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/27(月) 00:38:41


>>881
 広大なフィールド/罠を仕掛ける余裕はなく/イグニスの手持ちの武装も
貧弱極まりない―――グルマルキンは確信して、口元を歪める。
 人類の守護者―――無謀/自暴とも見える疾駆。
「愚かな」―――グルマルキンの呟き。

「これが焔の化身の成れの果てか……」

 姿勢を変えず、ルガーを抜き放つ。
 グルマルキンの射撃術―――褒められたものではない。
 満足に当てることすら不可能だった。

 だが、銃身の裏側に必中≠フルーンを刻み、更に加速≠重ねて施せば
「グルマルキンでも当てられる」不思議な鉄砲が出来上がる。
 即興のエンチャントバレルだ。

 トリガーを四度絞る。
 耳たぶ/肩/脛/麗しの長髪に的確に9ミリ弾を撃ち込んだ。


【周辺空域:飛行船最上部】

888 名前:ヴァーミリオン・CD・ヘイズ ◆/CD/iS.AAU :2006/11/27(月) 00:39:54

>>875 >>876

混戦の様相に困惑するヘイズに、声を掛けたのは軍服姿の眼鏡を掛けた美女だ。
彼女が、先程演説を行ったナチスの将校らしい。
強い口調の言動に対し、ヘイズは思考をめぐらせる。

先刻の放送を聞いた限り、彼女もまた過去の亡霊の一味であった事に変わりは無い。
だが、彼女の言った事件の首謀者ことグルマルキンは、他ならぬ彼自身が殺した。
という事は今その遺志を継いでいるのが、そこにいる鞭を持った―――これもまた
目が覚めるような美女―――女だというのか。

咄嗟に、眼鏡の女の言葉の真偽を判断する事は、出来なかった。
出来なかったが―――唯一つ、確かな事がある。
今彼女は、オゼット・ヴァンシュタインは。
明確に、グルマルキンらと対立の姿勢を見せている事。
この馬鹿げた闘争を、止めようとしている事―――



意思は、決まった。

「ちっ、やるしかないってのか―――!」

言いながら、右手を高く掲げ、I-ブレインの予測演算を開始する―――完了。
『破砕の領域』起動。
高らかに打ち鳴らされた指が、分子構造に干渉し、全てを無に帰す凶器を発生させる。
狙いは、たった今美女が振り下ろした、鞭の軌道上。
予測演算に従えば、これで彼女の獲物は無力化できるはずだった。


(現在地:最上部・操縦室)

889 名前:フランツ・フェルディナンド ◆ZcW/SSsF6Y :2006/11/27(月) 00:40:47

>885 ふみこ

床にたたきつけられる少年の身体。
銃弾の雨に蹂躙される彼の肉体。あふれ出す血液。飛び散る肉片。

そして変貌が始まった。

ひしゃげた弾丸が耳障りな音を立てて体内から押し出され、
折れた骨格が音を立てて元に戻り、傷跡が見る見るふさがっていく。

少年がゆっくりと起き上がる。そして少年の体が膨れ上がる。

筋肉が膨張し、黒服を内側から押し上げ引きちぎり、その身体を異形のものへと変えた。

少女のようなそのすべらかな肌は、いまやびっしりと黄金色の剛毛で覆われ、
その端正な顔も耳元まで口の大きく裂けた獣のそれになっている。

数瞬の後。
そこにいるのは、黄金の体毛を生やした巨躯の人狼だった。

<狼男>はひときわ大きく遠吠えをあげる。ウォークライ。戦いの雄叫び。
<狼男>は足を深く曲げる。たくましい筋肉のこぶが、黄金の体毛の下で別の生き物のようにうごめく。

そして跳躍。太い腕を振りかぶり、一気に魔女へと襲い掛かった。

【現在位置:操縦室でふみこ・O・V と戦闘中】


890 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2006/11/27(月) 00:45:02

>>854

 ばかすかやってるうちに、ようやくお姉さまは目を覚ました。
 もう、私より寝起きが悪いんだから。

「ちょっとお姉さま、なんで魅了なんて―――」

 いつもえらそうにしてるくせに。
 お姉さまらしくないわ。
 咲夜が怒るわよ―――

 とりあえずいろいろ言いたいことはあった、けれど。

 ぎゅっと抱きしめられたら、急に言う気がなくなってしまった。
 ……ま、いいや。

「……無事でよかったわ、お姉さま」

 心の底から呟いて、されるがままになる。
 頬に触れる髪がちょっとくすぐったかった。

「……いきましょ、お姉さま」

 私は軽くキスを返して、そっと立ち上がった。
 ……ちょっとふらつくけどまだ大丈夫。
 だって―――お姉さまに元気を貰ったんだから。


>>868
 そうして―――パチュリーがこっちを見ていた。
 ……ちょっとだけ気恥ずかしい。

「……で、お姉さまとパチェをこんな目にあわせたのは誰?」

 それを振り払うように大きな声で喋る。
 周りは風の音でごうごうとうるさいから、ちょうど良くはあった。

「しっかり、お返しはしなくっちゃ、でしょ?」

 そう。
 お姉さまに魅了をかけて、パチュリーを痛めつけた奴をぶん殴りに行かないといけない。
 私は、満面の笑顔でそう言った。


【気球部分:レミリア、パチュリーと合流】

891 名前:大尉:2006/11/27(月) 00:45:58

>>862 (イリーナ)
>>870 (哀川潤)
>>877 (ダンテ)

 どんな不死身の化け物でも心臓を貫かれれば死ぬ
 これは共通にして絶対のルールである
 無論、この戦鬼とて例外では無く――――――




 何百年かね?

 村人達の鉄砲も異端審問官達の刃も聖騎士団の槍も
 戦車の鋼の咆哮も爆撃機の爆撃も『死神』の糸も

 戦場が数百年かけても君を殺しきる事が出来なかった
 人が戦争で死ぬ数が二桁三桁増えたというのに、だ

 念願叶ったという訳か、これで?


 ―――――こくり


 ふむ……そうか、ならばもう何も言うまい
 ご苦労だった



『かくして私の血と肉と魂は炉の中にくべられる

 炉の中の亡者達が歓喜の貌で手を差し伸べ出迎える

 手は私の手を、腕を、足を灰へ、無へと返していく

 最後に残った首から上だけの部分で炉の外を見上げ

 そこから見えるものたちに』


 ――――――――――――Gute Nacht



 <現在地:パーティールーム

  ミレニアム 最強戦力「大尉」死亡 リタイア>


892 名前:レザード・ヴァレス(M) ◆jBiAWniQ.. :2006/11/27(月) 00:47:34

「さて……」

状況は更なる混沌。
とりあえずで放ったジャベリンは当然として避けられ、
刹那として飛び込み、魔女に掛かるは亡霊の将。
夜の女王が健在にしろ、横合いから仕掛けるには万全の好機。
この到来、彼にとって如何な僥倖か。

>>859

そこに突如、轟音と共に鋼拳が揮われる。
不死の王にもけして劣らぬその剛拳。
ホムンクルスの肉体といえど、レザードが喰らえばただでは済むまい。
しかし――――――

「ほう……?
 その作り物の戦乙女風情を護って、エインフェリアでもないガラクタが私に手を上げる?」
 所詮は壊れた機械、処分するにしか値しないという訳か」

その鉄拳は、冷笑を浮かべたままのレザードの目前で止まった。
大いなる教書の紙片。その高純度魔力の具現が強度を増し、敵の拳に絡みついたのだ。

「ですがご安心を。
 ……彼女は夢魔には渡しません。私が丁重に扱うゆえ。
 玩具程度には使えるでしょうから」

冗談ともつかぬ口調は絶対的な余裕の表れ。
既に彼の命により、タッツェルヴルムの周囲には紙片の包囲網が完成している。
破滅をいざなう魔道の軍勢、12もの術式が。


「ですから。        とっとと消えろ」

               『プリズミック・ミサイル』

12方向から同時、一斉に放たれるは七条の熱光。
一つ一つが呪いを掛けられた光の矢は、余さずタッツェルヴルムに降り注いだ。

>>858>>888

「この男だけは厄介か…」

もはや鋼の巨人には一瞥もくれず、レザードが見据えるはヘイズという男。
船の呪式に隠した物見のルーンにより、彼の能力はある程度見当がついていた。
すなわち、存在の消失。
この計画にとって最大の障害たりえる相手である。

モリガンと戦う男に気付かれぬよう紙片が舞い、陣形を作る。
この最大の障害を取り除くための罠を。
 

893 名前:ヴァルトラウテSS中佐 ◆SoRDENIEpc :2006/11/27(月) 00:50:45


 >>859 >>876

 逆上したタッツェルヴルムは目の前の魔術師に――
 次に向かうのは、この夜魔の女、モリガンと名乗るこの女であろう。
 それを見越してのことだろう、縛めを解くと逃げるように耳元で囁く。
 ねっとりとした、湿り気を帯びた声で。

 ――――吐き気がする。
 今、私が彼の許に駆けつけたとて、足手纏いとなるだけだろう。
 今の状況を、なるべく冷静に分析する。


 ヴァンシュタイン中尉は、傍らで状況を静観していた少年を相手に。
 尋常の身体能力ではない。
 ヴァンシュタイン……彼女もまた、先程までを見る限りではグルマルキンを敵に回すと
いう点で一致している。
 してはいる、だがその手段は。
 否、更に言うならば手段には目的が付随する。
 目的は――こちらにとっては必ずしも良好な関係を築けるという訳ではない。
 然るに。

 モリガン、彼女は魔術師に目標を定めたところで闖入者たる男――制服ではない、見覚えもない、
何らかの目的を以て乗り込んできたことは確かだろう。
 ならばその目的は。
 ヴァンシュタインのバイアスを掛けられた示唆によって動かされていることに変わりはない。
 然れば。

 グルマルキンは――無事だ。
 今は。

 【場所:操縦室】

894 名前:コーディー:2006/11/27(月) 00:52:27

>>869
綺麗に折れる。爪もろともこいつの自尊心も壊してやりたかったが…
癪な事に相手が一歩上手らしい。爪は折れたが振るわれた豪腕は止まらない。
渾身…その言葉が示す通り、正直避ける為の動作が遅れた。
クリミナルアッパーの威力でスピードは半減されたが…

ドゴッ―――!!

宙を舞い、地に叩きつけられる。これが人相手なら倒れると同時に
砂でもぶっかけて目潰しでもしてたんだろうが、相手は機械だ。通用するとは
思えん。何より距離が離れ過ぎている。

…アバラ逝ったかこりゃ?

自分の事なのに酷く客観的。痛みより闘争。傷より闘争…そういう事か。
空を眺めながらそう考える。
数秒考えた後、何も無かったかの様に立ち上がる。
…実際かなりの痛みだが…それよりも目先に有るコイツを壊す事しか
考えれないのは、やはり何処か自分が「壊れている」証拠なのだろう。いや…
堕落した時から気付くべきだった…もう後戻りできない事に

弾が放たれた。あの機械は死ぬつもりで全て放っているのだろう。俺が
飛んでいる間に他の奴等が隙をついて致命傷を与えたという事か。
そう考えると少しは役には立てたらしい…だが、まだ生きている。
まだ攻撃している。ならば俺はどうする?簡単さ…
全部ぶっ飛ばす

「C R U S H !」

先程以上に威力の入ったクリミナルアッパー。何かが吹っ切れたのだろうか
こうも異常な風力を起こせるとは。その風は俺の眼前に迫る弾を全て防ぎ…
そして四散して行き空で爆発を起こす。

「…どうした?お前の言うご大層な力は、
死に損ない一匹も殺せんその半端な腕か…?」

…そして俺の右腕も限界を超えた代償として爆発した。
右手が…赤い

【現在位置 回廊 】

895 名前:“濃尾無双”岩本虎眼 ◆c8rTIGERaI :2006/11/27(月) 00:53:39

>>882

 ―――そして、十字に光が交錯する。
 吹き飛ばされたのは―――果たして。


 ぼとり、と何かが落ちる。
 見た目は動物の如き皮革。
 しかし、それについた目と耳と髪。
 岩本虎眼の右顔面である。

「……出来ておる」

 血泡のつまった音で、虎が呟く。
 それは、奇しくもかつて破れた魔技と同じ結末であった。

 ゆっくりと―――無双の剣客が倒れ伏した。
 その刀を、決して放すことなく。


【岩本虎眼―――死亡】

896 名前:イグニス ◆IgnisC3BW6 :2006/11/27(月) 00:53:59

>>887

「――――」

 銃弾が身を掠める。
 耳たぶ。肩。脛。そして、強風に流されている髪の中。
 今までのそれが嘘のような命中精度――だが、驚きはない。”その程度はやるだろう”、と言う程度には、
グルマルキンという魔女はそれなりに”戦える”魔術師だった。
 そう、魔術師。”大佐”という階級を持ちながらも、決して奴は軍人ではない。戦士ではない。
 それが、私がまだ生きていて、まっすぐに奴に突き進んでいられる最大の理由だった。

 こちらの無様な姿をあざ笑い、嬲るように銃撃を繰り返す。
 殺す、と宣言している敵を前にして遊びが入る――奴個人の嗜虐趣味を満足させる、ただそれだけのた
めに弾を無駄にする。
 こちらの様を見下している奴ならば、必ずそうする――その確信が、躊躇無く私を不安定な足場の元、
全力で走らせている。

 不安定故に、歩幅が崩れる――それが功を奏したのか、おそらくは必中を期していたであろう銃弾は
肌を掠め、鮮血をしぶかせる程度でその役目を終えている。

 だが、まだ奴には遠い――間合いまでの距離、あと数メートルと言ったところ。
 その僅かな距離と時間を稼ぎ出すために、最後に残った月牙を二刀。
 薄ら笑いを浮かべる奴の顔に向けて投擲した。

【現在地:気嚢上部/飛行船頭頂】

897 名前:レザード・ヴァレス(M) ◆jBiAWniQ.. :2006/11/27(月) 00:54:44

>>892

【現在位置:操縦室】

898 名前:ビリー・龍 ◆D727Bb9L.2 :2006/11/27(月) 00:58:52

>>887>>896

 ありゃー。
 一方的になりそうだった。
 こいつは、面白くない。
 俺はあの赤毛の――イグニスというおじょーちゃんに肩入れしているのだ。

 俺は、結局手前の懐にしまいこんでいた月牙を抜き出した。
 投擲にはあんまり向かないが――そして、この風の強さでの投擲は難しい。
 しかしそこはそれ、吸血鬼の馬鹿力でどうにかなるもんさ。
 あとは勘だ。

 俺は慎重に足場を固め、魔術師目掛けて、月牙を投げつけた。

(気嚢上部)

899 名前:ふみこ・O・V ◆HPv8dyzZiE :2006/11/27(月) 01:00:22

>>889
「ヴァアヴォルフか!」

 ふみこはそれを知っていた。
 第二次大戦中、彼女が戦乙女部隊として従軍していた頃、ナチスのヴェアヴォルフ部
隊と接触した事がある。その頃の戦乙女隊の仕事は専ら情報伝達だった為、その実力
を間近で見たことは無かったが、宣伝部は彼らのことを、一部隊で都市を落とす事が出
来る救国の部隊、と声高に喧伝していたものだった。

 凄まじいスピード、そして恐るべき力で繰り出される、人狼の一撃。
 先ほどまで物陰に身を隠していたふみこは、その一撃から逃げる術を持たなかった。
 右も左も、ここではあれを避けるには狭すぎる。

 ふみこは意を決し、賭けに出た。
 腕を組み、衝撃に備えながら、頭の中で簡単な術を思い浮かべる。
 直後、衝撃。

「ぐっ……!」

 凄まじい痛みが、ふみこの両腕に走った。
 だが、折れるほどではない。まだ、動く。

(やはりそうか)

 振り下ろされた人狼の腕を受けながら、ふみこはほくそ笑んだ。
 使ったのは、硬化の魔術。
 身体を硬化させ、あらゆる衝撃に耐える呪文。

 かつて、まだ精霊の力が大気に溢れていた頃、ふみこは息をするように、その神秘を思い
描くだけで魔法を使えた。しかし、時代が進むにつれ、信心は薄れ、神は死に、ふみこ程
の大魔術師といえど、手順を踏まなければ力を行使できないほどに精霊の力は薄まって
いたのだ。

 だが、この場所は違う。
 ふみこは、この場所の空気に懐かしさを覚えていた。
 まだ神が生き、精霊が人と共存していたあの時代の力強い魔力を感じる空気だった。
 原因は、恐らく聖櫃。
 聖櫃から漏れ出る膨大な魔力が、大気に満ち溢れているのだ。

 ならば、とふみこは腕を振るった。
 同時に、怪力の呪文で身体を強化する。
 そのまま人狼の腕を掴み、大きく振り回して投げ捨てる。
 同時に腰から三本のナイフを抜くと、そのうちの二本を投擲した。
 勿論、刃は銀製。狼にはよく効く筈だ。

【操縦室】


900 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/27(月) 01:01:26

>>891 (大尉)
>>877 (ダンテ)
>>870 (哀川潤)

「…………か、勝った…………んです、ね…………?」

 生きた心地など欠片もなく、実際何度も死にかけましたが。
 大尉の肉体が消滅したのを見届けて……わたしは力が抜け、がしゃん、とその場に膝をつきました。
(鎧を着てるのでぺたん、じゃないところがちょっと悲しいですが)

 しかし、赤い男性(ダンテ)さんは瀕死の重傷です。間に合うかどうか分かりませんが、わたしは
ファリス様に癒しの奇跡を願い、命の恩人たる彼の傷を塞ぎました。

「と、ところで……助かりました! どうもありがとうございます!!」

 わたしは、わたしの大剣(グレートソード)を軽々と振るった赤い女性に対し、ぺこりと一礼し、
興味津々に尋ねました。

「えっと、その、できれば……貴女のお名前を、是非ともお聞きしたいんですがっ!」

【イリーナ・フォウリー:現在地:パーティールーム。ダンテ、哀川潤と行動中】

901 名前:コダマ ◆K3dMKODAMA :2006/11/27(月) 01:03:05

>>814
―――しかし、とにもかくにも出会う者が明らかに少ないこの状況。
吹き飛ばされた後、実は気絶していたのか。

コダマは、自らの手で事態を終息させる時機を失っていた。
だが、全てを終息させる『手段』を失ったわけではなかった。

「Ahhhhhhhhhhhh……!」

コダマは両手いっぱいに木霊より生み出した光を蓄え。

それを真上に目掛けて打ち込んだ。

構造上、ゴンドラ客席ブロックの真上に位置している『主燃機関』、そして『燃料タンク』目掛けて。

【現在位置:回廊・客席側】

902 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus :2006/11/27(月) 01:06:10

>>888>>892

鞭が消えた。
忽然と、跡形も無く。
つまり、使い魔の三割もまた消滅したと言う事だった。
これで残ったのは右腕の分、四割ほどだけだ。

「……千客万来とは、こう言う事なのかしら」

舌打ちと共に吐き捨て、今の消失を仕掛けた張本人らしい男を睨み付ける。
どの道もう幕引きだ。
ごっこ遊びも潮時だろう。
後出来る事と言えば、精々暴れる程度。

「深く考えるのも面倒臭い。良いわ――――」

制服の胸元を引き千切る。
それだけで黒い制服が布切れに変わった。

「――――ラストダンスよ、派手に踊りましょう」

魔物である私本来の姿――とはいえ、背中の翼はないのだが――に戻ると同時、
薙ぎ払う様に右腕を振るう。
その軌跡はほの光る弧を描き、飛んだ。屠るべき二人の獲物を求めて。


【操縦室】

903 名前:レミア・シルヴェスタW世 ◆MVlNEREMIA :2006/11/27(月) 01:07:27

>>847>>869

私の剣が刺さり、それと同時に男の剣も刺さる。
だが、損傷を与えてもなおこの巨体は余裕があるように見える。

>「じゃあ、君は何だい?」
>「君は生命ですらない。偽りなのは君の方じゃないか」

「ええ、私には既に生命が無い。
数百年前に闇の洗礼を受けたそのときから
私は不死身になり、生き物で無くなった」

>>856
客室乗務員が電流を放つ。
このまま取り付いたままだと私にまで被害が及びかねないで、
人形の巨体を蹴り、後ろに飛んだ。

「だけどね――――」

人形も後方へ飛ぶ。
電流のダメージは無いようだ。

「あなたみたいに偽りの物に頼ってはいないの。

私は偽りの物を使うのではなく、ただ命が欠損しているだけ。
この身に命は無くても魂はある。

だけどあなたは両方とも偽り。
いえ、あなたの血、肉、感情全て―――偽りなのよ」

はじけるように発射される弾丸。
マントに包まり、それらを防ぐ。
衝撃は大きく、口から血を吐く。
しかし死ぬほどではない。

【現在地:回廊にてパンデモニウムと戦闘】

904 名前:『紅い悪魔』レミリア・スカーレット ◆remyaGVniw :2006/11/27(月) 01:08:59

>>890
私はしばらくフランに抱きついた後に、私はパチェの方を向くと―――
どうやら既にパチェは気が付いていたらしく、先程までの私達の様子をじっと見ていた様子だった。
そう思うと、私はちょっぴり恥ずかしい気持ちに陥ってしまった……。

>>868
>「お目覚めは済んだ、レミィ……?」

パチェのその一言に対して私は―――

「…ええ、もう十分過ぎるくらいにね―――」

―――と、そう返事を返した。…さて、これからどうするべきだろうか?
そう考えた時にフランが―――

>「しっかり、お返しはしなくっちゃ、でしょ?」

―――そういった時に、私はようやく果たすべき目的を見出すことが出来た。

「…そうね、この溜まりに溜まったこのツケは―――存分に払ってあげるのが礼儀というものね」

そうレミリアが言い放ったその裏には、あのキッチンの出来事では、多数のリスクと仲間の危険を
その身に抱えていたとは言え……あの女―――グルマルキンに手も足も出ずに敗北を喫したことに対して
はどうしても払拭できそうになかったのだ。そして挙句の果てには不完全とは言え、半分グルマルキンに
魅了されてとことん利用される始末…。でも、今そんな事はどうでも良い……。
飛行船がもうすぐ墜落する状態になり、そして二人が無事だという今となっては…
もう今の彼女―――レミリアの力を束縛する理由はなかった。

「…今に見ていなさい、グルマルキン。あの時の私は中途半端な力しか出せなかったけど―――
もう下手な制御をする気は完全に失せたわ。今度は私の本気を見せてやろう―――!!!」

そうレミリアが言い放った時、レミリアの気が一瞬にして爆発した。
それから私は―――

「さて、パチェにフラン―――。今からグルマルキンがいる所へ行きましょう―――」

そう言って、グルマルキンのいる場所へと向かっていった。

【現在位置:気球内部→周辺空域:飛行船上部へと移動】

905 名前:アドルフ・ヒトラー ◆sLAdoLfKkE :2006/11/27(月) 01:09:25

>>883
 階段を上り、展望台最上階へ。
 大尉ブラッドが掃討したあとの其処は、人の気配の欠片もない死の空間となっていた。

 カジノのスロットを一つ掴みあげる。
 そして、窓目掛けて容赦なく投げつけた。
 吹きすさぶ寒風、だがそれも気にはならない。

 T鉱のナイフを持つ事で、その身体の獣性細胞が呼応し、活性化している。
 その効果か、既にその肉体は青年時のものとなり、寒さなどものともせぬほどの熱が身体を駆けめぐっていた。

 窓に歩を進める。
 どのみち、この有様では目的地にはたどり着けまい。
 ならば、この船を降りるべきだ。
 可及的速やかに。

 そして、窓の外に身を投げ出す。
 活性化した、全身の獣性細胞が沸き立つ。
 そして、彼は、アドルフ・ヒトラーは――――飛んだ。
(ttp://charaneta.just-size.net/bbs/fupbbs/obj/obj245_1.jpg)



【場所:羽を生やして飛行船を離脱、何処かへ】

906 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/27(月) 01:14:03


>>886>>890
>>896 vsイグニス

「当たらない? ええい、拳銃というのにはどうにも馴れないな。発砲から
着弾までの間が長すぎる。レップの奴はどうやってコレを当てているんだ」

 呻いて、拳銃を投げ捨てた。
 必中のルーン/その瞬間≠ノおいて確実に標的を射抜くが、未来視の性能
をかけているわけではない。一瞬後の標的の動きまでは捕捉してくれなかった。
 故に、微妙な精度の狂いを生じさせる。

 が、元よりこの程度でイグニスが止まるとは思っていなかった。
 止める気もなかった。
 忌まわしき因縁―――一瞬で精算するにはあまりに惜しい。

 グルマルキン/射撃後に生まれた僅かな隙。
 それを見越したイグニス/珍妙な刃を投擲する。
 体制的に防御は厳しい。―――が、口は自由に動く。

「我が手にカドゥケウス、
 またの名をケリュケイオンあり。
 万物を融合し、黄金と成す、
 叡智の技を秘めし杖。
 いざ―――振るわん!」

 ケリュケイオン―――刀身にびっりしりと浮かび上がる魔術文字。

「猛り立て、右の蛇。輝け、白のアルケー!」

 殺到する二つの刃向けて、大降りに薙いだ。
 周辺を支配するエドワード・ロングの残滓/暴風。
 その一部を拝借して、イグニスの刃に叩き付ける。
 風圧―――グルマルキンの魔術量を考えれば、あり得ないほどに弱い。
 ロングの支配が強すぎて、グルマルキンの干渉を許してくれないのだ。
 胸裏で舌打ち。だが、それでも刃の勢いを殺すには十分だった。

「この程度が貴様の足掻きか? ……醜いな」

 駆け抜けるイグニスへケリュケイオンの切っ先を向ける。
 その瞬間、イグニスの背後から迫り来る―――同型の刃。
 だが、イグニスの投擲とは段違いに疾い。
 慌てて刃を振り上げる。巻き起こる突風/不可視の壁―――突き抜けた。
 圧倒的な膂力で放たれた刃は、風圧を切り裂いてグルマルキンの首筋へ
噛み付く。威力を殺したことで首が飛ぶことは無かったが―――

「……な、んだと」

 喉からこぼれた血塊が気嚢を赤に染めた。


【気嚢最上部】

907 名前:飛竜 ◆HIRYUmxRKo :2006/11/27(月) 01:14:48

>>856>>869>>894>>903
 通路を覆いつくさんばかりの白煙が、機械獣の姿を覆った。
 機械獣は己の持つ全ての弾頭を発射したらしい。
「死に損ないが」
 床を、壁を、天井を蹴り、縦横無尽に跳び回りつつ、幾条もの剣閃を繰り出す。
剣閃が繰り出される毎に、両断された弾頭が床に転がっていく。

 機械獣の身体が、唸りを上げて突進してくる。
「――黄昏に消え去るがいい」
 その巨体が触れるより早く、大きく跳躍。質量を持った残像を従え、機械獣の鉄の身体に幾つもの斬撃を刻み込み――

「ラグナロク!」

 その残像と共に蒼炎を纏った力強い蹴りを、機械獣の頭部へと見舞った。

【現在位置:中層部回廊、バンブー・パンデモニウムと交戦】

908 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/27(月) 01:15:20

>>906は>>898のレスも兼ねる。

909 名前:哀川潤 ◆MzXQXe8zTc :2006/11/27(月) 01:16:05

>>862 >>877 >>891 >>900

大尉の体が塵に変わる。

「ほれ。返すぜこれ、さんくー」

その剣を持ち主に投げ返す。
ダンテは――、その、何だ。疲れたとか言って寝ちまった。
喉笛のキズは女の子が近付いて来て直してた、魔法ちっくなの、すげぇ。

>「えっと、その、できれば……貴女のお名前を、是非ともお聞きしたいんですがっ!」

「あぁ?あたしの名前か?あたしは哀川潤、人類最強の請負人だ。」

そこで船体が嫌な感じでぐらりと揺れる。
間違いなく墜落モードだ、早いとこ、仕事すっか。

【哀川潤:パーティールーム:ダンテとイリーナが一緒。】

910 名前:柳生・ジャグワァ・玄兵衛:2006/11/27(月) 01:16:24

>>895 岩本虎眼

 岩本虎眼が奥儀、――『流れ星』

 柳生・ジャグワァ・玄兵衛が奥儀、――『激震! 黒神剣!』

 二つの奥儀は、奇しくも二人の間に十字の軌跡を描き出した。


『……出来ておる』


 ジャグワァの眼前で、剣鬼がゆっくりと倒れ伏した。


「拙者の、勝ちでござる。虎眼殿――」

 振り抜いた刀を払って、鞘に納め、ジャグワァは気づいた。

「否――」

 ジャグワァの首に、一筋、赤い線が疾る。

「相打ちでござった」

 ぐらりとサムライ戦士が前へ傾ぐ。

 虎眼の流れ星は、ジャグワァの首を切断していた。
 一閃は虎眼の方が速かったのである。

 ――剣鬼、岩本虎眼のあまりにも速すぎる一閃とジャグワァの熱い斗魂が首を飛ばすに至らせなかったのだ。

 ずるりと滑り落ちそうになる頚部を手で支え、ジャグワァは傾いだ身体を起こした。

「ムゥンッ!!」

 後ろへ勢いよく、一回転するぐらいの――ドッギャァーンとでも鳴りそうな――勢いで吹っ飛びながらジャグワァは血の詰まった喉から死に際の声を叫んだ。

 ――柳生・ジャグワァ・玄兵衛、魂斗羅としての、壮烈な死に様である。


[柳生・ジャグワァ・玄兵衛、死亡]

911 名前:フランツ・フェルディナンド ◆ZcW/SSsF6Y :2006/11/27(月) 01:17:18

>>899 ふみこ・O・V

驚愕していた。
自分の一撃を、女の細腕で受け止められるとは思っていなかった。

心臓に銀のナイフが突き刺さる。
彼の唯一にして最大の急所であるその心臓に。
いくら彼といえ心臓までは復元再生出来ない。滅びのときは近かった。
首にある頼りない小型の人工心臓では脳を生かすのがせいぜいだった。

<雄叫>ウォークライ。

金色の狼は、ふたたび雄叫びを上げた。

彼岸と此岸、生と死の狭間を、戦意が塗りつぶしていく。
意思で、思いの力で、現実を克服する。

<人狼>は楽しんでいた。
<人狼>は戦いを歓んでいた。

何のことはない。
そう、彼はこれを待ち望んでいた。これだけを、この戦いの喜びだけを待ち望んでいた。
それだけを追い求めて彼はあの日以降の余生を送っていた。

彼は満たされていた。

この胸の高鳴り。心が燃えている。歓喜のときだ。
だから、彼は、全身を喜びで震わせ、全身にみなぎる力をその脚に乗せ走り出す。

音速を超えるその速度で縦横無尽に室内を走り回る。
暴風のように蹂躙する。

床だけではない。
いまや重力の楔を振り切り、壁が、天井が<狼男>の床だ。

壁を蹴り床を蹴り天井を蹴り死体を蹴って疾走(はしる)。

疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、
疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、
疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、
疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走、疾走。

そして、その勢いのまま長い顎を振りかざし、その顎(アギト)を大きく開くと、魔女ののど笛めがけて襲い掛かった。

【現在位置:操縦室でふみこ・O・V と戦闘中】



912 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/27(月) 01:18:53

>>905
「そ、総統―――?!」
 それはグルマルキンが負傷時に見た幻覚か。

【気嚢最上部】

  

913 名前:ヴァルトラウテ/タッツェルヴルム ◆SoRDENIEpc :2006/11/27(月) 01:20:49


 >>892


「作り物、と言ったな」

 その拳は、如何なる仕掛けか紙片によって阻まれている。
 一葉の紙片。
 しかし、僅か0.1mmにも満たない紙片――否、純粋な魔力の結実たる書のひとひらは、永劫の
距離にも等しく。

「玩具、と言ったな」

 眼前に迫る幾條もの光矢。
 幾重にも連ねた、番えざりし矢は、ただ巨躯を抉り取る。
 高出力の熱量に、鋼鉄の装甲板が沸騰し、白く蒸気へと化す。

「ヴァルトラウテを……嬲るか、下司が!」

 左腕の兵装を展開。
 防護板の一枚が衝撃で弾け飛ぶ。
 既に両腕はその鋼の色を灼けた斑濃に染めている。
 しかし。

 貫けぬなら、砕けばよい。
 ただ純粋な力で。
 重ねた力で。

 脚部のロケットに点火。
 更に三門の機関砲が銃弾を濃密な弾幕と変える。
 更にその腕を大きく振り被り、拳を形作り、撃ち抜く。

 二重、三重に鋼の意志を質量に変え、ただ重ね合わせた。

 【場所:操縦室】

914 名前:イグニス ◆IgnisC3BW6 :2006/11/27(月) 01:23:37

>>898>>906

 信じられない、ものを見た。
 二刀の月牙が叩き落とされる――それは、すでに織り込み済みの事実だった。
 奴がその二刀を回避する、ほんの僅かな時間を稼ぐための。

 だが、足りない――後一歩。後ほんの一呼吸。それが、届かない。
 その一歩をひねり出すための方策を瞬時に脳裏で描き出そうとする――その、瞬間だった。

 背後から、気流をものともしない勢いで投げつけられたナニカ。
 あれは――あれは。

 月牙……?

 誰がそれを投げたのか。何処にあんなものがあったのか。
 そんな疑問が脳裏を掠めるが、喉から紅いものを溢れさせ、呆然としているグルマルキンの姿に――
そんなものは、粉々に吹き飛んでいた。

 しゅ――と。歯の隙間から零れた呼気が、そんな音を奏でる。
 踏み込む。最後の一歩が届く。遠かった距離が完璧に埋め合わされる。

 だがその事実に、ほんの僅かな感慨も抱かずに。
 血をしぶく奴の首筋に向けて、渾身で刃を振り下ろしていた。

【現在地:気嚢上部/飛行船頭頂】

915 名前:ヴァーミリオン・CD・ヘイズ ◆/CD/iS.AAU :2006/11/27(月) 01:24:04

>>902

「はは、その格好は、ちょっとばかり刺激が強すぎるな。
もうちょっと清楚なドレスだったら、踊りにも付き合ってやれたんだが」

飛び出す軽口の安っぽさとは正反対に、ヘイズの口調には余裕が一切無かった。
この世ならぬ異装に変じた美女から撃ち出された、円軌道を描く弾丸。
I-ブレインの予測演算が鈍い―――高負荷と、攻撃手段が己の知りえない魔術を源にしている為か。

兎に角、ヘイズは前方に身を投げ出す。
その一瞬後、彼の背中を鋭い光の奇跡が薙ぐ。
紙一重の回避行動―――やはり、彼に余裕は無い。

「悪いが……早めに切り上げさせてもらう」

左腕を跳ね上げ、自動式拳銃を構え、照準。トリガー。
まずは戦闘能力を奪う事を優先し、たった今振り上げられた右腕と、左腕を狙う。
これで、抵抗を止めてくれれば良いが―――


(現在地:最上部・操縦室)

916 名前:コダマ ◆K3dMKODAMA :2006/11/27(月) 01:25:30

>>901より

飛行船もまもなく、その寿命を迎える。
コダマはその手助けをしているに過ぎない。光球を引っ切り無しに打ち込む。

やがて飛行船最上部の気嚢にまで光球は達し、目に見えて動きが変わる。

―――頃合だ。

コダマは船内の表示に従い、緊急用脱出設備へと走り出す。
駆け出すようなその足取りは、やがて来る暗中の未来へと向けられていた―――。

【コダマ:緊急脱出口から脱出、戦線離脱】

917 名前:パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU :2006/11/27(月) 01:28:48

>>854 >>868 >>890
「それでこそよ、レミィ」

魔女の一人や二人に傅くなどレミリア・スカーレットではない。
魔女をなぎ倒し紅に染める者こそレミリア・スカーレットなのだ。
     ・ ・ ・ ・
かつてそのように染められた一人であるパチュリーはそう思い、飛行船の周囲の気配を探る。

「でも時間はそんなに無いわよ。
 あちこちで精霊とそうでないものが壊れ始めてる。そろそろ沈むわ、この魔法は。
 借りを返すなら……」

>>906
既視感。
視界が開けた先で/赤神の女と対峙する。
/ミス・グルマルキン・フォン・シュティーベル

「一瞬でないとね?」

その時、パチュリーは確かに笑った。

【現在位置:周辺空域:飛行船上部 グルマルキンを確認】

918 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/27(月) 01:31:59

>>909 (哀川潤)

>「あぁ?あたしの名前か?あたしは哀川潤、人類最強の請負人だ。」

「哀川、潤さん……ですね! 貴女と出会えたこと、わたしきっと生涯忘れません!
 わたしはイリーナ・フォウリーです! よろしくお願いします哀川さん!!」

 傷の痛みと疲労はどこへやら、羨望と尊敬を最大限に込めてお礼を言ったつもりでしたが、
哀川さんはなぜか苦笑いを浮かべていたりするのでした。

 哀川さんの話によれば……この船の中に女性が捕らわれているとか、で。
 しかももう、この船自体がすでに不安定になってきていて、数分と持たない状況みたいです。
 ならば、わたしの取るべき道はひとつ。

「分かりました。不肖イリーナ、哀川さんのお仕事を手伝わせて下さい!
 ここから脱出するのはそれから、という事で……よろしいですねっ!」

【イリーナ・フォウリー:現在地:パーティールーム。ダンテ、哀川潤と行動中】

919 名前:ふみこ・O・V ◆HPv8dyzZiE :2006/11/27(月) 01:41:34

>>911
 人狼が、吼えた。
 それは、誇り高き獣の咆哮。
 その咆哮は、満足に満ちていた。

 狼が狼として生きられることに対する満足。
 戦うべくして生まれたものが、戦いの中に身を置ける事に対する満足。
 自分自身に対して、誇りを持って死ねる事に対する満足。

「嬉しそうね」

 ふみこは笑った。
 自身もまた、嬉しそうに。

「最後になるけれど、謝っておくわ。私は貴方の生き方を奪ってしまった。貴方の誇りを奪
ってしまった。その事に対する、謝罪を

 そこで言葉を一旦区切ると、ふみこの目が再び鋭い切れ味を宿した。

「けれど」

 彼女は知っていた。
 そんな事をして、彼が喜ぶ筈が無い事を。
 誇り高き人狼に対して、それは余りにも礼を欠く行いだ。
 だから、ふみこは構えた。
 最後に残った銀色のナイフを、左手に。

 同時に、人狼が轟音と共にその場から消えた。
 それが錯覚だという事を、ふみこは知っている。
 彼は、音速を超えたのだ。次の瞬間には上に、下に、左に、右に……まるで重力などを
あらゆる場所を踏み台にして、狼は疾走を重ねる。

 ふみこは、それを一切追おうとはしなかった。
 この狭い空間で、音速を超えるヴェアヴォルフを目で補足しようなどというのは愚か者の
する事だ。だから、ふみこは待った。
 息を吐き、そして吸う。

(……来る!)

 そう思った瞬間には、それは現れていた。
 顎を開き、その鋭い牙を光らせたヴェアヴォルフ。
 狙いは喉笛。
 獲物を狙う狼の、定石。

――だからこそ、読みやすかった。

 ふみこは既に振りかぶっていた左手を、全力でヴェアヴォルフにぶち込んだ。
 閉じる顎。銀のナイフに貫かれる頭部。

「……許しは請わないわ」

 静かに、言う。
 噛まれ、深い傷を負った左手をずるり、と人狼の長い口から引き抜き。

「死になさい、化け物」

 残されたナイフが、爆発した。

【展望室】

920 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2006/11/27(月) 01:42:27

>>904 >>917 >>906

 お姉さまが気炎を吐いて歩き出す。
 それを見ながら、パチェが悪戯っぽく笑う。

『でも時間はそんなに無いわよ。
 あちこちで精霊とそうでないものが壊れ始めてる。そろそろ沈むわ、この魔法は。
 借りを返すなら……』

 そして視界がくるりと回る。

『一瞬でないとね?』

 転移した、というのがわかっても一瞬びっくりした。
 目の前にはなんか吸血鬼っぽい女の人。
 かび臭い鍵十字なんてつけてる。
 お姉さまを見ると―――すごく怖い笑み。
 ああ、この人がグルマルキンさんか。
 ちょっと綺麗な人だ。吸血鬼だけど。

 だが許せぬ。

 軽く一礼して、挨拶する。
 そして、それで終わり。

「初めましてグルマルキンさん。私、レミリア・スカーレットの妹、フランドールと申しますわ。




 ―――そして、さようなら。私のお姉さまに魅了かけて手篭めにしようだなんて、百万年早いわ」





 だから、遠慮なく。
 全力―――全開。

「レーヴァ、テインッ!!」

 高らかに宣言すると、定められた術式が私の魔力で顕現する。
 その芯は―――ありとあらゆるものを破壊する力。私の異能。
 高く掲げられた剣が炎を散らして、空の星と混ざっていく。
 涼しく瞬く星が、熱く紅く燃え上がっていく―――

「お・し・お・き――――――――――――っ!!」

 私はそれを―――火の粉を撒き散らしながら、思いっきり投げつけた。
 多分ものすごくいい笑顔。怖い意味で。
 余波だけで、飛行船の気球が爆ぜて、燃え上がる。
 まさに手加減抜き。文字通り必殺技そのものだった。


【外・気球上部:レーヴァテイン投げ】

921 名前:哀川潤 ◆MzXQXe8zTc :2006/11/27(月) 01:44:44

>>918

「あたしを苗字で呼ぶな。苗字で呼ぶのは敵だけだ。
 んじゃ、時間もねーし、さっさと行くぜ」

ダッシュで上層部倉庫に向かう、下じゃねーんなら上しかねーよな?
揺れが酷くなって来た、いや、そもそも何で落ちるんだ?
ナチスの仲間割れの結果か何かか?

まぁいい、考えてる時間が勿体ねぇ。

【哀川潤:上層部倉庫に向かってまっしぐら。:イリーナ同行。】


922 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/27(月) 01:45:14


>>914 vsイグニス&ビリー

 第三の刃―――投擲の主を探す。
 イグニスの肩越しに、強化された右眼の視力が捉えた。
 先程の吸血鬼―――また、あいつか! なんと忌々しい!
 が、驚愕はそれで収まらなかった。
 男の皮肉気な笑み/口元から覗く牙―――ロン・ファング。

「かっ、はっ……〈タイプ・スクウェア〉だと?!」

 驚きは言葉に変換できず、喀血に紛れる。
 呼吸が難しい。速く刃を引き抜いて/止血し/反撃を―――

 忍び寄る漆黒の刃/反撃を―――
 首筋に馳せる/反撃を―――
 眼前に迫る/二度目の死

「まだだぁ!」

 左手で刃を受け止めた。強化のルーンは間に合わない/刃が肉に埋まる。
 迸る灼熱の痛み/二の腕まで達する刃/縦に切り分けられた左腕。
 だが、止まった。
 グルマルキンの首級、未だ健在。

「うわあああああああああああああああああああ!!」

 マントに浮かび上がる召喚陣/ソロモン王34番目の悪魔/フルフル。
 漆黒の外套が巨大な牡鹿の頭に姿を変える。
 蠢く外套―――イグニスの腹部にぶち当てた。重力を無視して跳ね飛ぶ
「気高き刃」―――向かう先には〈タイプ・スクウェア〉

 だが、これで終わらせるつもりは更々無い。
 悪魔伯爵フルフル/26の軍団を束ねる半人半鹿/悪天候を自在に操る。
 ロングの低気圧―――悪魔伯爵の力でねじ伏せた。
 グルマルキンの全身に刻み込まれるルーン文字。
 周囲の空気が帯電し、火花をあげる。

 止まらぬ出血。―――構わず詠唱開始。

「我が手に杖と力あり。
 我が唇に言葉あり。
 駆けめぐる叡智は座標を刻み、
 駆け抜ける想念は鍵を盗む。
 見よ、我が前に―――」

 ケリュケイオンを振り上げる/落雷がその刀身に集中/更にそれを振り
下ろすことで/

「―――いかなる壁もなし!」

 怒鎚を守護者と吸血鬼に向けて擲った。

【周辺空域】 

923 名前:タバサ ◆3VTTABASAI :2006/11/27(月) 01:49:07

>>873>>883

「ん、んん……」
 あれからどれくらいの時間が経ったのだろうか。
 まだこうして生きている。ということは、この船も落ちていないことになる。
「とはいえ、時間の問題でしょうね。さて、どうしたものか」
 胸元の竜眼に目を向ける。今回の首謀者の纏う魔力を感知し、竜眼が青白い光を放っている。

「――ふむ、首謀者が複数? 一つはグルマルキン殿として、もう一つは……恐らく、異世界の賢者とやら、か」
 トランクを手に立ち上がり、展望室へ。

「彼はもう、往った後か」
 展望室には誰もいなかった。窓は割られ、眼下には南極の白い大地が広がる。

 トランクの中から、一つだけになった水晶球と傘を取り出し、
「――風守ラファール! 汝の風を翼と為し、我に大空を舞う力を!」
 水晶球を頭上へと放り投げた。

 私の身体は風のヴェールに包まれ、割られた窓をすり抜けて、船外へと舞った。

【現在位置:展望室3Fへの階段前→展望室→船外】

924 名前:『紅い悪魔』レミリア・スカーレット ◆remyaGVniw :2006/11/27(月) 01:49:11

>>917
そして私達が飛行船上部に辿り着いた先には……
パチェの言っていた通り、あのグルマルキンがいた。
どうやら傍にいた赤髪の女によって深手を負った様子だが…
だがそんな事は今のレミリアには関係ない…。

そして私がグルマルキンに対して―――

「久しぶりね、グルマルキン。生憎だけど、貴女が掛けた魅了は私の妹のフランのお陰で
この通り解けたわよ?今度は私がお前に借りを返す番だ…と思ったが、どうやら
相当な深手を負ったみたいだな…。まるであの時とは正反対って所だな?」

―――そう言い放った。途中からレミリアの口調が変わったのは、これが彼女の本当の人格なのだ。

「まぁだからと言ってこのまま苦しんでいる貴様を放っておくほど私は鬼ではない。
だから貴様の幕は―――この私が下ろしてやろう―――!!!」

私がそう言った矢先に、既に私はスペルを唱えきっており…あの時回廊で使用した
神槍「スピア・ザ・グングニル」…の約十倍はあるであろう巨大な槍を右手に掲げて―――

「受け取るがいい―――これが私の本当の力だ!!!」

そしてグルマルキン目掛けて巨大な魔力の槍を投げつけた。

【現在位置:飛行船上部 レミリア 渾身の一撃でグルマルキンに神槍を解き放つ】

925 名前:フランツ・フェルディナンド ◆ZcW/SSsF6Y :2006/11/27(月) 01:50:15

>>919 ふみこ・O・V

薄れていく意識の中で、彼は思い出していた。
希望にあふれていたあのときの光景を。
生涯でただ一度、自分が信じるもののためにただ走っていたあのときのことを。

あのときに死んでおくべきだったのだ。
あれからは生ける死者だった。
自分で、自分を、殺したのだ。

だから、生きながらにして死んでいる自分を殺してくれた魔女に感謝の言葉を送った。
頭がほとんど吹き飛んでいたので、うまく伝わったかはわからないけれども。
だが、まあ、伝わったと思う。きっと。

そして、彼の生涯は終わった。

【現在位置:操縦室】
【フランツ・フェルディナンド :死亡】


926 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/27(月) 01:52:55

>>921 (哀川潤)

 哀川さんは名字で呼ばれるのが嫌だったんですね。なるほど納得です。

 そこからのわたし達の活躍は、語るのも物憂いくらいで。
 時折襲ってくる喰屍鬼(グール)の残党は、片っ端から潤さんが腕一本、あるいは指先ひとつで
ダウンさせていきます。……わたしの出番はほとんどなさげです。もっとも、寝ている
ダンテさんを背負ったまま戦うのは、さすがのわたしでもちょっと厳しいので助かってますが。

 そんな訳で。
 わたし達が上層部倉庫へとなだれ込み、目的の部屋に到着するのに、さほど時間はかかりませんでした。

【イリーナ・フォウリー:現在地:上層部倉庫に移動。ダンテ、哀川潤と行動中】

927 名前:「墜ちた森の巨人」バンブー・パンデモニウム(M) ◆jBiAWniQ.. :2006/11/27(月) 01:54:05

>>894>>903>>907

何も言わなくていい。
もう何も言わなくていい。
大丈夫だよ、僕はきみたちを理解した。

                  ――――リミッター解除

君達は救えない。
本当に救いがたい愚か者だ。
心の底から、いつわりない本心でそう言わせて貰うよ。

                    ―――――ただ、全てを

だけど、もう何も問題はない。
僕が滅ぼしてあげよう。救ってあげよう。
この、小さな空間ごと僕が全力で突き抜ければ。
僕の質量が音速に達して、衝撃は君たちごと世界を滅ぼす。

                     ―――――全てを無に帰す


何も心配はいらない。
そう、何も心配はいらないんだ。

          『Σコード・葉断突』


待て、これは―――――



『あなたみたいに偽りの物に頼ってはいないの。

 私は偽りの物を使うのではなく、ただ命が欠損しているだけ。
 この身に命は無くても魂はある。

 だけどあなたは両方とも偽り。
 いえ、あなたの血、肉、感情全て―――偽りなのよ』


その『誇り』――――それが君の可能性か。
永遠を前にくじけようとしない。その精神の強さ。


竜巻が見えた。
僕を阻むそれは初速の勢いを殺す。
そうか―――『諦めない』これが君の可能性か。


閃光と斬撃が躍った。
音速に加速する途中、そのコンマをタイミングを突くなんて。
『恐れない』―――そうか、世界はまだ君を。


「見える、見えるよ。これが“黄昏”か――――」



――――そうか。
間違っていたのは僕たちだったか。
けど僕は止まれない。


さあ、最後の『可能性』よ。
種の闘争は終わった。
この僕に見せてくれ。君の持つ輝きの全てを。


そして、僕の総てを止めてくれ。


【現在地:回廊  パンデモニウム、絶命しながらなおも吶喊中】

928 名前:ビリー・龍 ◆D727Bb9L.2 :2006/11/27(月) 02:04:02

>>922
 魔術師がこちらを見た。
 俺は、笑いを返した。皮肉笑いを。
 これも巡り合わせだ、別に恨みは無かったんだがな。

 しかしヤツぁ、死んだわけじゃなかった。

 イグニスの体が吹き飛ばされた。こっちに。
 いや、狙ってんのか、くそ。
 そのまま受け止めてもいいが、速度が付きすぎていていた。
 俺は平気だが、彼女の体がもたないだろう。

 俺は同じ方向に身を投げた。
 片腕でイグニスの体をキャッチ、同時に左腕で甲板表面を掴む。
 いや、掴めない。鉤に曲げた指が甲板表面を引っかく。

 風にも煽られ、数メートルばかり滑ってようやく止まった。

 俺は顔を上げた。
 頬が引きつった。

 イカヅチと>>922、炎と>>920>>924、巨大な力が頭上で――

 俺はもういっぺん伏せた。

(気嚢上部)

929 名前:パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU :2006/11/27(月) 02:05:34

>>920 >>924
彼女の姿はもはや視界内にある。
であるならば、やる事は二つしかない。

「グーテンナハト、ミス・グルマルキン。
 なにやら大変なようだけど……そんな事はどうでもいいわね。
 私の友の埃を穢した罪は重いわ」

一つ。

「そういうわけだから……さようなら」

二つ。

決別の言葉と同時に投げられるはスペルカード。
そして、パチュリーは呪文を唱え始める。
喘息で長い呪文は唱えられないと標榜する彼女がそれを行う、その理由は一つしかない。
大呪文。

『Moon stay on the Earth,beyond Dark Dark Sky』
「それは天に在りし移ろい行く一片の影。
 光なき空に輝くただ一つの断片」

詠唱と共に、彼女の周囲に光が点る。
カードは謳う。夜空の女神に畏敬を込めて。
魔女は唄う。友たる姉妹に敬愛をこめて。
                 ・ ・ ・
「闇色の空に静かにありし紅色の女神よ。
 今在りて、裁け。
 月符……サイレントセレナ!」

そして、光が放たれた。

【現在位置:飛行船上部 グルマルキンに渾身のスペル】

930 名前:麻宮アテナ:2006/11/27(月) 02:07:06

>>927
 悪意或る鋼鉄が迫って来る。
どうしてそこまで私たちを憎むのか。言葉は通じない。
でも圧倒的な、自分の存在全てを賭けた意志の力。
こんなのに当たるのは、あまりにもリスクが。でもこの狭い通路、避けるスペースも無い。
私ひとりなら大丈夫かも。ひとりだけ? 冗談じゃないですよ。でもどうすれば。

>>894
『C R U S H !』

 密航者さんの続けざまの攻撃。やめて。こんなの殴り続けたら拳のほうが……!

『…どうした?お前の言うご大層な力は、死に損ない一匹も殺せんその半端な腕か…?』

 死に損なってるなら休んでくださいよ、お願いだから。
人が痛いおもいをしてるのって嫌なんですよ辛いんですよ苦しいんですよ。

>>903
 全方位にばら撒かれる弾。他の人をフォローする余裕がない、情けない。
女の人はマントを楯に何とか防げて……いない。血を吐いてる。やめてよ。
マスクマンさんの――私の倍くらい速い――斬撃連打(>>907)が、
鋼の装甲を切り刻む。なんでこれでぶっ壊れないんですかあなたは!

「あなた、何のために」

 戦いの時、いつも思っていました。反応速度に身体がついてこない。
超加速された戦闘思考は電気信号の伝達速度より速くなっても、
身体のほうは人間の限界を超えられない。ごく当たり前の話。
でも何故か今は、自分のイメージどおりに身体が動いて。
空気の抵抗も身体の強度も無視したように、するりとなめらかに動く。

「そんなに派手好きなら見せてあげますよ」

 頭の中に閃く炎。一瞬後に、それが身体を包む。
髪の毛が逆立ち燃え上がる。もう止められない、止める気もない。

「やったなああああああっ!!」

 地響き立てる震脚と一緒に突進、鉄山靠でぶち当たりながら、
視界を真っ赤に燃やし尽くす……。

931 名前:麻宮アテナ:2006/11/27(月) 02:07:40

>>930
 火の鳥の姿を借りて、破壊の翼で空域をなぎ払った直後に感覚が戻りました。
今いるのは虚空。抱き合う相手は殺人機械。心中を避けようにも、
飛ぶことも瞬間移動もできず、身体から出てくるのは荒い息だけ。
そんなことやってる間にも、重力に掴まれて凄いスピードで落下しています。
これはまた、意識が引き千切れそう……。



「お土産買ってきなさいよ?」
「あのね理香ちゃん、私仕事で行くんだよ?」
「そんなことはどうでもいい。お土産を買ってくるんだ」
「……わかったよぅ」



 ああ、約束守れないじゃないですか。ごめんね理香ちゃん。
お土産買ってあげられなくて。ただいまって言えなくて。
それから……ああ、でもこれは言わないほうがよかったのかな。
いろいろ言ってたけどさ。私本当は理香ちゃんのことすごく……。

 すごく……ごめんね、理香ちゃん。

<麻宮アテナ:脱落>

932 名前:レザード・ヴァレス(M) ◆jBiAWniQ.. :2006/11/27(月) 02:08:58

  ――――発端は、一つの綻びであった。

   神話が実存として在る世界、ミッドガルドの一廃都において彼は知る。
   自らが築き上げた完全なる筈の計略において犯した、ただ一つの失策。
   それは賢者の石にも記されておらぬ厳然たる真実。
   黄昏も新生も、全ては最早不動なる律の一つ。
   創造神レナス・ヴァルキュリアの誕生により時の流れは固定された。
   そしてそれは即ち、彼が描いた絵図―――神を倒す力を得、焦がれる女神を我が物とする―――
   の前提、過去を遡る目論見が潰えたという事に他ならない。
   だが―――――。




   「ククク、ク、フフフフフ…」

   ――――それを理解して尚。
   冷笑が、

   「ククク、フフフハハハ、ハハハハハ…」

   ――――天才の頭脳は次なる解を導き出し。
   次に狂笑が、


   「ハハハハハハハハハハハハ!
    ヒハハハハハハハハハハハハハハハヒャッアハハハハハハヒャヒャヒャハハハハ!!」



   そして哄笑が木霊する。
   亡失都市ディパンの最下層。
   かつて神に抗する為造られ、過去を遡る力を発揮した時空転送装置の御前で。
   魔道の灯火による逆光を受け、笑い哂うは巨大なる影法師。
   それを生み出し彼が紡ぐのは破滅への。


  「――――いいだろう…。
    次元の律が、我が望み妨げるというのなら―――――」



   狂気とは理性しか持たぬこと。
   そして理性のみを推し進める『激情』を秘めること。

   ―――汝、

   「それを形作る秩序など、我が破壊し尽くしてやれば良いだけなのだからなあ……!」

   かつて神を超えるために力を求め。
   今は戦女神を我が物とするためだけに策動する。
   その、おぞましく歪んだ愛情ゆえに。

   ―――運命の女神が与えたもうた宿命を拒絶すべし。

   この男こそは、かの賢者の石を手に『神々の黄昏』を生き残り―――――
   因果の歪みによって異界にも名を残した稀代の錬金術師。

   彼の者の名はレザード・ヴァレス。
   果てなき狂気の体現者である。


   ――――――全ては、一年前。

 

933 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/27(月) 02:11:51


>>922>>920>>929 vsレミリア・スカーレット

 イグニス/ビリー―――突如、グルマルキンの視界から消え失せた。
 いや、正しく言えば妨げられた。
 眼前に現れる少女二人/パチュリー・ノーレッジ/フランドール・スカー
レット―――驚愕。馬鹿な、オゼットに殺されたのではないのか?!

 数刻前の空域/その映像の端々が思い出される/まさに魔王の所業。
 掲げられた炎の剣/光の奔流/―――幻想の都の秘奥。
 その威力はあまりに膨大で、あまりに兇悪。
 受ければ微塵に砕け散る。

 対抗するは、振り下ろされたサーベル/エドワード・ロングの怒鎚。
 ケリュケイオンとレーヴァテイン/雷気と火気が正面から衝突する。
 その衝撃でマントが弾け飛んだ/略帽が空に消えた。
 だが、威力自体は拮抗している。

「まだだ、まだ終わらん……!」

 右手にサーベルを構えたまま、左手で宙にルーンを刻む。
 フランドール本体を潰せば、この炎も―――

 その時、頭上から聞き慣れた声が降り掛かった。

「―――レミリア? レミリア・スカーレット?!」

 レミリア/一切の躊躇無く/魔力の塊/グングニルを投げ付けた。
 キッチンでの一騎打ちからは想像出来ないほどの威力。
 絶叫/絶命―――あげる余裕すら与えられなかった。
 槍に貫かれるままに船外へと弾き飛び、
 グルマルキン・フォン・シュティーベルは南極の塵に消えた。

〈グルマルキン・フォン・シュティーベル→死亡〉

【周辺空域】

934 名前:レザード・ヴァレス(M) ◆jBiAWniQ.. :2006/11/27(月) 02:12:55

>>932 続き

>>902

「…相変わらずお気まぐれな事ですね。
 貴女の魂が、どれだけの価値を有しておられるかも知らず」

刃の軌跡、そこを丁度阻むように展開される五枚の紙片。
対魔力の式で限界に強化されたページは悉く撃抜かれる―――が、
逸れた軌道と弱められた威力は、レザードの頬を掠めるにのみ至る。
なおも皮肉げな薄笑いを浮かべる異界の錬金術師。


「さて、終焉も近い。
 狂気の山々は覗けるほどすぐそこに、高原への門はいざ開かれんとしている」


>>913


「だから」
        『シャドウ・サーヴァント』

剣指を上げ、ページを発動。
横合いに控えていた術式、影法師の突撃がタッツェルヴルムを吹き飛ばす。

>>902

「邪魔をするな」
      『『『『クール・ダンセル』』』』

その数、十。
召喚された氷精たちの剣舞がモリガンを襲い。

>>888
「貴様も」
          『『『『『バーン・ストーム』』』』』

兼ねてより仕込んだ罠。
周囲五方向。
吹き上がる爆炎がヘイズの足元に発生し。


>>913
「貴様も」
          『ライトニング・ボルト』

迅雷の束がタッツェルヴルムを貫かんと牙を剥き。

>>919
「貴様も」
        『ダーク・セイヴァー』

三方より生じた漆黒の刃がオゼットに迫り。


「貴様も」 術が。
「貴様も」 術が。
「貴様も」 術が。
「貴様も」 術が。
「貴様も」 術が。
「貴様も」 術が。
「貴様も」 術が。
「貴様も」 術が。


「貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も
貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も
貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も
貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も
貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も
貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も
貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も
貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も
貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も貴様も
貴様も貴様も貴様も貴様も!」



爆発/雷光/吹雪/閃光/剣戟/爆裂/投槍/凶刃/爆発/雷光/吹雪/閃光/剣戟/爆裂/投槍/凶刃
/爆発/雷光/吹雪/閃光/剣戟/爆裂/投槍/凶刃/爆発/雷光/吹雪/閃光/剣戟/爆裂/投槍/凶刃
/爆発/雷光/吹雪/閃光/剣戟/爆裂/投槍/凶刃/爆発/雷光/吹雪/閃光/剣戟/爆裂/投槍/凶刃
/爆発/雷光/吹雪/閃光/剣戟/爆裂/投槍/凶刃/爆発/雷光/吹雪/閃光/剣戟/爆裂/投槍/凶刃
/爆発/雷光/吹雪/閃光/剣戟/爆裂/投槍/凶刃/爆発/雷光/吹雪/閃光/剣戟/爆裂/投槍/凶刃
/爆発/雷光/吹雪/閃光/剣戟/爆裂/投槍/凶刃/爆発/雷光/吹雪/閃光/剣戟/爆裂/投槍/凶刃
/爆発/雷光/吹雪/閃光/剣戟/爆裂/投槍/凶刃/爆発/雷光/吹雪/閃光/剣戟/爆裂/投槍/凶刃―――――――

全ての属性。
全ての破壊。
全ての術式。
そして、その全てを集約させても足らぬ其の狂気。

「全て死ね!!我がために死ねぇ!!
 そして聖櫃の贄となり術式の糧となりぃ!!!!!」

レザードの狂気は止まらぬ。
教書の乱舞は留まらぬ。
彼が焦がれて止まぬ女神への、歪んだ一念は止められぬ。

「因果地平を破壊する、我が悲願の礎となれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」


方陣に護られ、その聖櫃は静かに光る。
彼らの魂が送呈される時を、待つ。

【操縦室】


935 名前:哀川潤 ◆MzXQXe8zTc :2006/11/27(月) 02:13:59

>>926

囚われの女の子達を開放、倉庫に閉じ込められてたっつー事で、グール化だけは避けられていた。
不幸中の幸いって奴?ついでに銃も。

「さて、最後は依頼主の回収か、世話ァ焼けるぜ」

まぁとにかく、こういう状況って燃えないか?

「ほら、急ぐぜ?」

本当に、時間が無さそうだ。

【哀川潤:上層部倉庫から客室にまっしぐら。:色々同行】


936 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/27(月) 02:15:04

>>933は>>920>>929>>924へのレスだな。 

937 名前:イグニス ◆IgnisC3BW6 :2006/11/27(月) 02:17:36

>>922>>928

 振り下ろした刃はまっすぐに――奴の左腕を切り裂いていた。
 だが、そこまで。切り裂いただけ。切り落とせない。

(なん――だと……!?)

 誤算だった。
 常ならば、先にやって見せたように腕の一本や二本、なんの障害でもないはずだった。
 だが――刃は通らない。つまりは、私の身体は女の腕一本も切り落とせないほどに、消耗し、衰弱しきっ
ていた。

 後一歩のところで――誤算続きに歯噛みする。が、現実が覆るわけでもない。
 グルマルキンが、怒声混じりに魔術を発動させた。それが何かを確認する間もなく、腹部にえぐる様な
一撃。思わず血反吐を零しながら、あっけなく私の身体は吹き飛ばされていた。

 ……件を手放さなかったのは、意地と言っても良い。
 弱り切った肉体にあっても、決してさめない殺意だけが、今の私を支えていた。

 だが、それも――限界。

 すでに、体勢を立て直す程度の力も、私には残されていなかったのだ。
 身を切るような冷気と、鉛のような身体と。
 そして、決定的な敗北感が、この日二度目の――そしておそらくは最後であろう気絶を、私にもたらし
ていた。

 この、抱き留められるような感触は、きっと錯覚に違いないから。

【現在地:気嚢上部/飛行船頭頂】

938 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/27(月) 02:23:22

>>935 (哀川潤)

 潤さんの言っていた捕らわれの女性も無事保護することができました。
 しかし……落ちていく飛行船からどうやってこの人数、脱出すればいいんでしょう?

 捕らわれた女性の弁によれば、こういう時のために、脱出口があるみたいですね。
 彼女の案内に従い、わたし達は客室にある、緊急用脱出口へと急ぎました。

「えーと……これ、何ですか? どうやって使うんでしょう?」
「イリーナ、お前……パラシュートも知らんのか! まあいい、とにかく皆に倣って
 背負え! 扱い方を説明している暇はない! まあ、その……何だ。人間必死になれば
 都合よく何でもできるもんさ。ホラ、よく言うだろ『火事場の泥棒力』って!」

 ……何か違う気もしましたが、わたし達は「パラシュート」なる道具に、その命と生き残る
望みを託すことになったのでした。

【イリーナ・フォウリー:現在地:客室:緊急用脱出口に移動。ダンテ、哀川潤、他諸々と行動中】

939 名前:哀川潤 ◆MzXQXe8zTc :2006/11/27(月) 02:33:24

>>938

流石に人数が多い気がするが、問題は無い。
客室から連れて来た依頼主・二丁拳銃にもパラシュート装備。

「ああ?心配だ?そんな事心配すんじゃねーよ、こう言う物語の終わりはな



ハッピーエンドって相場が決まってんだよ」



そう言うと、赤色はシニカルに笑った。

【哀川潤:パラシュートで脱出:二日目了】

940 名前:レミア・シルヴェスタW世 ◆MVlNEREMIA :2006/11/27(月) 02:35:20

>>927
一気に突撃してくる人形。
このまま来れば、こちらの命は無い。

「まだ…こちらに向かってくるというの!?」

人形は既にズタボロだった。
生命の輝きを失い、ガラクタとなった。
だがそのガラクタは巨大な砲弾として私に向かってkる。
(グレネードランチャーでも打ち込むしか…)
そう考えたそのときだった。

>>630-631
火が、全てをなぎ払った。
床が裂け、せべてが崩壊し、何もかもが無にかえる。

「――――――――クッ!」

虚空に放り出された。
周りの3人も同じようだった。

―――――――――生き残った仲だ。
このまま死なせてしまうのは――――悔しい。

スカイダイビングの要領で客室乗務員(>>931)に近づく。
人形にくっついていたがその背中を引っ張り。

「―――まだ死ぬには早いわよ」

抱き寄せた。
だがもう時間が無い。

姿を変えた。
漆黒の巨大な蝙蝠。
足で客室乗務員を持ち、地面すれすれで飛ぶ。

客室乗務員は助けられた、しかし後の二人は――――

「――――コーディ」

呟く、しかし彼の姿は見えない。
私はそのまま彼女を連れてその場を飛び去った。

【レミア:麻宮アテナをつれて脱出】


941 名前:パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU :2006/11/27(月) 02:42:29

>>933
借りは返した。
グルマルキンは、少なくとも今は滅びたようだ。戻ってくるにしてもそれは別の話。

パチュリー・ノーレッジは考える。
何故自分達はここにいるのか。

観光旅行/沈む船で旅行ですって?
外の魔法を見る/十分満たし、もう壊れるわね。
因縁の相手に会う/会ったわ、十二分に
屈辱の借りを返す/たった今終わったわ。

結論。
「さて、もうする事も無いでしょう。帰るわよ、レミィ、妹様?」
                         ・ ・
そういうと、パチュリーはスペルカードを五枚取り出し、呪文を唱え始めた。
彼女の鬼札。賢者の石。
奇しくもそれは、グルマルキンが成そうとした聖櫃の儀に似た、異界−幻想郷−への門を開く儀式であった。

【船外→幻想郷へ】
【パチュリー・ノーレッジ 二日目、了】


942 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/27(月) 02:42:51

>>939 (哀川潤)

 ハッピーエンドって相場が決まってんだよ」

 ……そう、ですよね!
 わたしは潤さんの力強い言葉に、半ば後押しされるように、意を決して大空へ飛び出しました!

「…………え、あれ? パ、パラシュートがみんなみたいに開きません! なんでー!?」

 わたしが知る訳もないんですが……実はこの「パラシュート」なる道具、装備している人間が
重すぎると、揚力の関係上すんなり開かないとかそういうトラブルがあるみたいで……

 うわーん! わたしが重いんじゃないよ! 装備が重いんだよー!?

 この最後の最後の土壇場で、まさかこのような死亡オチが待っていようなんて……
 そう思い、諦めかけた矢先。
 わたしの目の前に広がる景色が突然変わりました。

 先刻まで見えていた白い大地が……茶色の地面に。そしてわたしが落下した高さは、ほんの
数メートルに過ぎない状況に変化しました。

【イリーナ・フォウリー:現在地:パラシュートで脱出途中、ご都合的に元の世界に送還される・をひ】

943 名前:ふみこ・O・V ◆HPv8dyzZiE :2006/11/27(月) 02:45:05

>>932>>934
 人狼を倒し、一息つく間もあらばこそ。
 聞こえてきた狂笑に、ふみこは目を細めて振り返った。

「何?」

 瞬間、ふみこの勘が「避けろ」と囁いた。
 我知らずして、身体がステップを踏んでいた。
 刹那、その残像を、黒い刃が通る。

 何事かと目を凝らす。この魔法は、恐らくレザードのものだ。
 しかし、仮にも手を組んだ私にまでそれを放つとは、一体どういう事だ?
 ふみこは目を凝らし、その男をにらんだ。

 だが、しかし。
 そこには、あの理知的で常に皮肉げな笑みを浮かべたあの錬金術師はいなかった。
 いるのは、何かに狂った一人の男。
 奇声をあげ、その場にいた全ての存在に魔術という名の暴力を叩き付けようとする一人
の……いや、これは、

(人では……ない?)

 室内は、もはや大変な荒れ模様だった。
 所狭しと雷が降り注ぎ、炎が吹き荒れ、黒き刃が生きとし生けるもの全てを貫こうと舞
い踊る。

「レザード・ヴァレス……まさか、これほどとはね」

 ふみこは、焦っていた。
 この男が得体の知れない力を持っていることはわかっていたが、まさかここまでとは。
 しかし、ふみこはその表情をおくびにも出さなかった。

 焦りなどという無粋な表情を顔に出すのは、二流の女のやる事よ。

 そんな事を思いつつ、呟く。

「仕方ない、か。ミュンヒハウゼン!」
『はっ』
「聖櫃を破壊する。艦内の通信を再び開け。生きている人間がいるのかどうかは知らんが、
一応の警告を出す」
『了解しました』

 次の瞬間には、全ての準備は整っていた。
 ふみこは軽く咳払いすると、出来る限りの大声を張り上げる。

『艦内に残る全ての人間へ! 私はオゼット・ヴァンシュタインン中尉だ。不測の事態が起
こった。これより、この周囲数百kmは消滅する。繰り返す、この周囲数百kmは消滅する!
生き残りたい者は必死で逃げろ。以上!』

 ふみこは乱暴に通信を切った。
 乱れた髪を軽くとかす。
 どんな時でも典雅に、典雅に。
 それがふみこ・オゼット・ヴァンシュタインの生き様だった。

「さて……最後の仕事と行きましょうか」

 ふみこは荒れ狂う嵐の中、残った右手を聖櫃に向けた。
 その手から、青い輝きが放たれる。
 その輝きがふみこの腕からゆっくりと伸び、聖櫃を優しく撫でた。
 たったそれだけで、聖櫃の制御が乱れる。
 組み上げるのは時間が掛かっても、壊すのは一瞬だった。

「……よし」

 聖櫃が発する光が、少し強くなる。
 同時に、ヴヴヴヴ……という得体の知れない音が響き始めた。
 ……聖櫃が、暴走を始めた証だ。

 それを確認し、ふみこは自分の箒に飛び乗った。
 急いでここから離脱しなければ、たとえ彼女といえど、消滅は免れないからだ。

【周辺空域へ】

944 名前:弓塚さつき ◆zusatinwSI :2006/11/27(月) 02:51:08


>>257>>258 vs弓塚さつき エピローグ

 苦難に耐えた。それ以上の悲劇も乗り切った。
 彼女はもう、何も怖くなかった。
 そう、弓塚さつきはついに狂気の山脈を踏破したのだ。

 凍り付く酸素も無いほどの死んだ世界。本来ならば南極全土を一望できる高度
だが、今は突然の雷雨とブリザードにより視界は劣悪の極みにあった。
 絶対零度でもこうは寒くないだろうというぐらい、何というか、凍て付く。
 氷点下すら滅多に経験しない都会人の弓塚さつきにとっては、もう、これは
間違いなく絶対絶対絶対絶対ぜったいに零度だった。

 だが、それでも彼女は辿り着いたのだ。山頂に。
 あとは待つだけだった。
 安眠とご飯と温もりをたくさん詰め込んだ、幸福の到来を。

 10分待った。空は晴れない。
 30分待った。ブリザードはやまない。
 1時間待った。期待もまだ止まらない。
 更に1時間、1時間半、2時間、2時間半―――予定の時刻を迎えた。
 船は来なかった。
 来なかったのだ。

「……いつもそうなんだよね」
 体育座りのまま、呟いた。
「別にいいんだ、最初から期待していなかったから」

 さあ、三咲町に帰ろう。決意して立ち上がる。
 ―――うそ、無理。立ち上がれない。
 全身がカチカチに凍り付いていた。ごろんとその場に倒れ込む。
 このまま転がって帰らなきゃいけないの?
 それはあまりに無様だ。
 仕方ないからさつきは、晴れて氷が溶けるまで待つことにした。
 待つことにはなれている。
 今までずっと待ってきたんだもん。
 これからだって待てる、待てるよ。

 実を言うと寒さはもう感じていない。
 それどころか不思議な温もりすら感じていた。
 雪の毛布がさつきを優しく抱き止めてくれる。
 このまま眠っちゃうのも良いかもしれない。そんな誘惑が彼女を満たした。
 薄れゆく意識。
 ぼやける視界。
 光が彼女を満たした。
 ふと、影が陽光を遮る。
 あれは―――
 あれは、天使さま?
 ああ、天使さまがお迎えに来てくれた。
 ねえ、志貴くん。
 わたし、天国に行けるみたいだよ―――


 天使は興味深げにさつきの顔を視線で睨め回すと、

「テケリ・リ、テケリ・リ」

 ―――そう、奇妙な鳴き声を漏らした。


〈弓塚さつき→リタイヤ〉
【現在地:狂気山脈→新世界へ移動】 

945 名前:コーディー:2006/11/27(月) 02:57:51

>>930>>931>>940
右腕が爆ぜる もう限界とでも言いたいのか?トコトン我侭な野郎め…
血が止まらん マジで痛ぇ だがそれ以上にムカついて仕方無ぇ…
俺と同じ止まれないアイツ…ふと、レミアのトランクから転がっている手榴弾。
アイツで特功でもかましゃイチコロだろうな。俺の命を引き換えに――

決意…するのがもう少し早ければ良かったのかもしれない。あのガキ…アテナ、が
突如切れて特功かましやがった

「…馬鹿、がっ…」

他人なんざどうでも良い…どうでも良いが。俺よりも遥かに年下のガキが俺の為に
体張るなんざ馬鹿みてぇじゃねぇか。
惨めじゃねぇか。死に場所も得れねぇで残った俺は…どうなるんだよ!

アテナへ差し伸べようとするその手に力はこもらず、只血が吹き出るだけ。
その内、今俺の下に有る床は無くなり…いや、全てが傾き虚空となる。
空に放り出された俺は只、重力に身を任せ遥か下の闇へと吸い込まれて行く…

成る程。ベルガーが死ぬ間際もこんな感じか。
悪党だろうと、それを理由に血を吸ってた大悪党の俺にもいよいよ報いが来た。

――コーディー

ふと、女の声が聞こえた。遥か上に気を失ったアテナと、それを担ぐレミア…
「…生きてやがったか」

ふん、当然だ…死ぬのは俺一人。それだけで良い。
生へ輝こうとする者は生き、堕落と堕ちる者は死ぬ…当然の摂理だ

「当然の…な。」

【仲間って良い物ですよ?】
あの娘が何の虚も無く言い放つその言葉を思い出し…ふとかつての仲間の事を
思い出す

「…これが答えなんだろうよ…ガイ…」

「…ジェシカ」

その言葉を最後に男は一人、遥か闇へと消えて行った…

【コーディー 船から墜落 行方不明?】

946 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2006/11/27(月) 03:02:03

>>933 >>941

 ―――あっさりと、お姉さまをたぶらかしてくれた悪女は滅んでしまった。
 まるで、夏の夜の夢のように。砂作りの楼閣のように。
 ……ちょっと、やりすぎちゃったかなあ。
 そんなことを思っていると、パチュリーが転移魔法の準備を始めた。
 さあ、帰ろう。みんなで一緒に。

 空を見上げる。
 嵐の中、それでも雲一つなく、月と星が瞬いている。
 ふと、寒さを感じた。
 ……そういえば服はボロボロだし、すっかりお祭りの熱も冷めてしまっている。
 疲れのせいか、眠気までじわじわと湧いてきた。

「……ん」

 だから、私はお姉さまに後ろから抱きついた。
 吸血鬼なのに暖かいと感じるのは不思議だった。
 体の力を抜けば、すぐに眠りの時間がやってくる。
 お姉さまには悪いけど、このまま寝ちゃおうっと。

 ―――お休みなさい。




 こうして、私の舞踏会は終わったのでした。
 残ったものは―――お姉さまと知識人と、素敵な勲章が、一つ。


【フランドール・スカーレット:退場】

947 名前:『紅い悪魔』レミリア・スカーレット ◆remyaGVniw :2006/11/27(月) 03:12:45

>>933
VSグルマルキン・フォン・シュティーベル

―――私が解き放った魔力の槍はそのままグルマルキンの身体に深々と突き刺さって…
そのままグルマルキンは飛行船から落下した。すでに元の冷静な状態に戻った
私がそれを見た時、私はグルマルキンを倒したという事を改めて理解した。
もし、例えあの状態で生きていたとしても―――この高さから落下してしまえば……到底助からない。
少なくとも私はあの時の借りを返した…それだけでも私は十分満足だった…。

>>941>>946
>「さて、もうする事も無いでしょう。帰るわよ、レミィ、妹様?」

そうパチェが呟いたと同時に、パチェの瞬間移動魔法が展開され…

「…そうね。帰りましょう、私達の場所へ」

そして私達は、この世界を後にした。

【現在位置:船外→幻想郷へ】
【レミリア・スカーレット パチェ、フランと共に脱出】

948 名前:sage:sage

sage

949 名前:飛竜 ◆HIRYUmxRKo :2006/11/27(月) 03:15:06

>>930>>931>>940>>945
 給仕の女の全身が炎に包まれる。炎は不死鳥の形を為し――女ごと暴走する機械獣へと突っ込んだ。

 そして――遅れてやって来た、船の崩壊。
 給仕の女も、元英雄も、蝙蝠の女も、自分自身も、虚空へと落ちていく。

 自由落下の中、蝙蝠の女が給仕の女を抱きとめる姿が目に映った。
 元英雄の姿は見えない。先に落ちたか、それとも。

「――短い間だったが、お前達と共に戦えた事を、誇りに思う」

 その身が海に沈む直前、不意に口をついて出た言葉。
 任務遂行のみを生きる糧と、支えと、全てとしていた男の――人間としての最後の言葉だったのだろうか。

【現在位置:船外→南極の海 生死不明】

950 名前:ヴァーミリオン・CD・ヘイズ ◆/CD/iS.AAU :2006/11/27(月) 03:24:22

>>915 >>934 >>943

銃弾を放った、その直後―――

I-ブレインが、己の周囲の急激な温度上昇を感知。
最早お決まりの条件反射で、ヘイズは脳に『破砕の領域』のための予測演算を命令し、
同時に右手を掲げる。

撥音と同時に、『破砕の領域』が発動。
突如吹き上がった高熱の炎の壁の一角を丸ごと消し飛ばし、
空いたスペースへと転がり込む。
またしても魔術―――演算の間に合う、ぎりぎりのタイミング。
背中が激痛に灼かれ、周囲に肉の焦げるきな臭い芳香が漂う―――が、無視。
姿勢を建て直し、周囲の状況を確認する。


一人の男が、狂っていた。

あたり一面に、無差別な魔術を撒き散らし。
その背後に、巨大な―――匣を置いて。
更に、I-ブレインが異常を感知。
正体不明な高密度エネルギーの反応。発信源は、その匣の内側からだ。

「こいつは、一体―――」

言ううち、更に追い討ちの如く、宣言が響き渡る。


『艦内に残る全ての人間へ! 私はオゼット・ヴァンシュタイン中尉だ。不測の事態が起
こった。これより、この周囲数百kmは消滅する。繰り返す、この周囲数百kmは消滅する!
生き残りたい者は必死で逃げろ。以上!』


「何だと?」

オゼット・ヴァンシュタインの突然の宣言。
戸惑うヘイズ。

そのうちに、オゼットが右手を匣に向けて掲げる。
ヘイズには意味の分からない、奇妙な動作。
だが、その行為がもたらす変化だけは、彼の脳内のI-ブレインが感知している。

エネルギー反応の急速な拡大。
その詳細は分析不能ながら、単純な熱量にそれを変換した場合の、規模は―――
核爆発、数百発に匹敵。


オゼットの発言が、これで完全に証明された。

「クソったれ……そんなの、見過ごせるかよ」

今ここでこのままエネルギーの暴発を許せば、この飛行船が丸ごと消滅するどころの騒ぎではない。
世界地図があっさりと書き換わり、そこには怒りと悲しみと嘆きだけが、残される。
何百、何千もの人間が―――絶望に突き落とされる。
それだけは、阻止しなければならない。
その為の手段は、今この手にある―――大きな賭けではあるが。


「やるしかねぇ、……って、何度目だっけかな、この台詞」

呟きながら、しかし既に準備は進めている。
脳を苛む負荷に耐えながら、無理矢理にI-ブレインの稼働率を引き上げる。

(システム稼働率120パーセントに再設定)

彼の生体コンピュータが持つ機能の文字通り全てを、これから行う攻撃のための準備に割り振る。
―――演算は、完了した。


(予測演算成功。『虚無の領域Void sphere』展開準備完了


後は、唯の一動作で、トリガーは引かれる。
ヘイズは今日何度繰り返したか分からない、その動作―――右腕をゆっくりと、掲げた。
そのまま親指と中指を、匣に向けて構え、

ぱちんと、打ち鳴らした。


最初に発生したのは、ほんの小さな、『破砕の領域』には遠く及ばない規模の論理回路。
だがそれは、情報解体のための論理回路ではなく、次のステップに連なる情報制御演算を行うためのもの。
その小さな論理回路は直ぐに周囲の空気の原子配列を組み替え、置き換え、己よりも一回り大きな論理回路を
形成する。
更にその論理回路が、空気の原子配列を組み替え―――
無限に連鎖する論理回路の形成が、何時しか巨大な匣の全てを包み込んでいく。

これこそが、ヘイズの切り札―――『虚無の領域』だった。
いかなる防御も情報強化も、全て打ち破り範囲内の物質を完全なる無に帰す、究極の攻撃方法。


そして、匣の全体を、論理回路が覆ったとき。
極あっさりと、「それ」は発動し、全てを塵にした。

951 名前:レザード・ヴァレス(M) ◆jBiAWniQ.. :2006/11/27(月) 03:27:55

>>943

狂気は破壊を、破壊は地獄を、地獄は破滅を、破滅は更なる狂気を。
禍々しきウロボロスの輪廻は無限絶対殺戮式を構築し天地を崩す解へと導こうとする。
レザードを。
レザード・ヴァレスを。
この因果律に逆する元凶を。
狂える天才、最凶最悪の災厄を。


  「な…貴ィ様ァアア!!」


全ては止まらぬ、堰を切られた濁流と同じく。
例え――――


 「ヒヒ、ヒヒヒヒヒヒ…ヒハハハハハハハハハハハハァハハハァ!!
  何かと思えば周囲ぃ、百ぅ? 無駄だ無駄だ無駄だだァ!」


聖櫃が今、本来の形で起動しようとも。


「我が破戒しィィィィ!!! 破壊に付されるべきは世界ィ!!!
 この、下らぬ泡沫のような因ィン果地平そノものナのだからナぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!!!」


誰も、この狂気は止められぬ。


「起動したならば好都合!!
 ここから先はァァ、我が魔力で成し遂げればいいのだからなァァァ!!!」


     ―――――我が手に携えしは悠久の眠りを呼び覚ます天帝の大剣

これぞレザードがグルマルキンに託し、聖櫃発動の引き金とした起動式。
ミッドガルドの歴史になく、神々の叡智でもヒトの到達でもなく。
彼だけが編み出した完全完滅の大魔法。


    ―――――古の盟約に従い

笑う。

破滅の嵐は留まらず。

笑う。

魔道の弾雨は留まらず。

笑う。

破壊の輪廻は留まらず。

笑う、
笑う、
笑う、
笑う。
レザードは狂いながら笑い、笑いながら狂う。
元より彼には狂気しかないのだ。
一念を通すための執念しかないのだ。


    ――――我が命に答えよ


そして狂気に従い、



「――――『grand trigger』!!」


因果は歪められる。
発令所の天地が闇に染まり、床全てに噴出すは混沌の灼熱。
魔界のマグマを億倍に凝縮されたそれは、天地開闢に匹敵と思わせる爆発を呼び起こさんと――――――――

【操縦室 狂気山脈目前にて】

952 名前:ヴァルトラウテ/タッツェルヴルム ◆SoRDENIEpc :2006/11/27(月) 03:30:27

 >>934

 高出力の電流、高熱の奔流。
 それに耐え切ることの出来る程には、タッツェルヴルムの躯は――

  弾け飛ぶ装甲板。
  炎を上げる駆動部。
  装弾機構が誘爆し。
  内蔵された推進剤が小規模な爆発を起こす。

 ――既に崩壊が始まっていた。


 何故、立っていられるのか。
 建って、と言った方が良いのかも知れない。

 駆動可能状態には既に無い。
 それでも崩れ落ちないのは、唯“Meine Ehre heisst Treue”という意志に他ならない。

 意志。
 機械に意志は存在しない。
 唯の機械には必要ない。
 彼はこの時、

「私は守らねばならんのだ。
 お前を――ヴァルトラウテ」

 閃光の前に、その身を投げ出した。(>>951)

 【場所:操縦室】
 

953 名前:ふみこ・O・V ◆HPv8dyzZiE :2006/11/27(月) 03:47:14

>>951>>952>>950
 ふみこは遥か上空から、ツェッペリンを見下ろしていた。
 暴走は、確かにさせた。
 だが、それを見届けるまでは、およそ安心する事は出来なかった。
 あれを仕留められなければ、恐らく南極どころではない被害が出る。
 だからこそ、その結末をこの目で確かめなければならない。

 聖櫃の暴走まで、ふみこの予測では60秒余り。
 残り時間は、後五秒。

 四、
 三、
 二、
 一……

「……何も、起こらない?」

 ふみこは怪訝そうにツェッペリンを睨み、
 しかし、その刹那、爆発的に変化は起こった。
 閃光の変わりにツェッペリンを包んだのは、青白く輝く光の粒子。
 ふみこは、すぐにそれを理解する。
 それは、余りに強烈で濃すぎる為に、肉眼でも確認できるほどの質量を持った魔力の
奔流だった。

「この量……聖櫃が破壊されたのか?」

 あくまで声を荒げずに、静かに呟くふみこ。
 考え得る限り、それ以外には無かった。
 何者かが、暴走する聖櫃を破壊したのだ。この夥しい量のリューンは、それ以外に考え
られない。

 だが、これでは何の影響も及ぼさない。
 魔力は、所詮魔力でしかない。
 そこにベクトルを与えてやらねば、酸素となんら変わる事の無い要素だ。
 だからふみこは、与える事にした。
 その、きっかけを。

「ミュンヒハウゼン! 衛星砲準備。全砲門開け! 照準合わせ……撃てぇッ!」

 ふみこの号令と同時に、空から雷が降り注いだ。
 いや、正確には雷ではない。
 それは、軌道上に浮かんだ衛星から放たれる、レーザー砲の一撃だった。

 それが、ツェッペリンを取り巻くリューンに突き刺さる。
 瞬間、耳を劈く爆音と共に、周辺の空域が炸裂した。
 その中で、ふみこは見た。
 ツェッペリンの周囲の空間がぐにゃりと歪み、見も知らぬ世界が広がっているのを。

(次元の孔が開いたか)

 好都合だ、とふみこは思った。

「このまま押し込むぞ。第二射用意、撃てッ!」

 ふみこは続けざまに二回、三回、四回と発射を命じ、その度にツェッペリンは次元孔へ
と引き寄せられていく。
 飲み込まれ、消え行くツェッペリン・ノイエ・アラ。
 それを眺めながら、ふみこはすっと片手を天に向けた。

「これでお終いよ。何処へなりとも消えなさい、化け物どもッ!」

 言うと同時に、振り下ろす。
 それに呼応するかのように、最大出力のレーザーが飛行船を貫いた。

【周辺空域】

954 名前:ヴァルトラウテ/タッツェルヴルム ◆SoRDENIEpc :2006/11/27(月) 04:04:45

 >>950 >>953


 灼けた配線を其処に見た。
 砕けた腕を其処に見た。
 崩れ去った膝を其処に見た。


 駆け寄るヴァルトラウテの姿が、タッツェルヴルムには皮肉にも死者を迎えるという戦乙女の
其れに見えた。
 否、彼の戦乙女は常に傍らにいたのだ。

 其れこそが、守るべきものだったのだ。
 死を賭する忠誠Totenkopfも、鉄の忠誠Eiserneskreuzも、あらゆる徽章は彼女の為に献げうるべき
ものだったのだ。

 半ばまでの腕を差し出すと、その腕を取った。

「駆動系の一部を接続するわ。
 もう少しは保つでしょう?」

『――――……』

 既に発声機関は破壊されている。
 言葉にならない意志だけが、彼女に届いていた。

「……いいえ、気にしないで。
 最後の刻を迎えるのは、同じ方がいいから」

『――――……』

「今度は、私が貴方の盾になるから」

                   永遠に。

 その言葉を終えることなく、二人の姿は光の中に包まれ。












 そう、永遠に。

 【epilogueへ】

955 名前:レザード・ヴァレス(M) ◆jBiAWniQ.. :2006/11/27(月) 04:11:37

>>950 >>952 >>953


「馬鹿、な」

起動式発動の寸前、その絶対顕現を阻む鋼鉄の戦士。
戦乙女を護るため身を呈した姿は、彼の知る不死者王を思わせ――――

                 ――――その男は気付いただろうか。


「馬鹿な」

刹那の遅延を逃さぬと顕在化した『虚無』。
命と引き換えにと投じられた乾坤一擲の一撃は、起動させるべき聖櫃を消失せしめ。

                 ――――彼の野望を阻む存在に。

「馬鹿なあ!」

放出された莫大な魔力は結果、悪しき夢を狩る魔女の前に簒奪され。
天空よりの砲撃が船もろとも彼を打ち砕く。

                 ――――決して因果の律などではなき。

「馬鹿なアアアアアアア!」

爆炎と爆光、閃光と轟音と破壊の前に。
船は躍り、彼は滅びの業火へ晒される。
そして、次元への、孔。

                 ―――――“人”の持つ力の存在を。


かくして狂気山脈の前。
果て度なき深淵はいざ開き、放り出されたレザードの前に広がる光景は。



                     これが。





        これが、

                これが、あのグルマルキンの欲した、もの



「ふ、ふははははは、フハハハハハハハハハハハ…!!!」

呑み込まれるツェペリン。
滅び行く黄昏。
もはや聖櫃の影は無い。

「あそこには、我が大望を適える力が眠っている!
 なれば深淵の果てへの旅路を往くのも悪くはない! そう!!」

しかし、その中で尚も“狂気”は。狂気だけは。
彼の狂気だけは潰えなかった。潰える筈もなかった。

「私にとって重要なのは、ヴァルキュリアよ!」


虚無の彼方で哄笑が響き渡る。
そう、これは終焉ではない。
己が更なる力を身に付け、愛しい女神を我が手にするための新たな旅路なのだから。
全ては終わりではない。
総ては始まりに過ぎない。
神は永劫、ならば我も永劫の存在となろう。
そう新たな誓いを胸に宿し、狂気そのものとなった錬金術師は深淵へと吸い込まれ――――――


「私が、あなたを愛しているという事実なのだから!!」
 

956 名前:◆jBiAWniQ.. :2006/11/27(月) 04:12:45

>>955












 ―――――そして、レザード・ヴァレスという存在は因果律から消えた。


957 名前:ヴァーミリオン・CD・ヘイズ ◆/CD/iS.AAU :2006/11/27(月) 04:13:25

>>951 >>953

(システムに致命的なエラーが発生。強制シャットダウン―――)

その警告メッセージと共に、I-ブレインは一切の応答を寄越さなくなった。
あれ程自分の脳髄を苛んだ頭痛も、今は嘘のように消えてなくなっている。
この分だと、自分の中の欠陥品のI-ブレインは、休息どころか二度と再起動しないかもしれない。

だが、今のヘイズにとっては、最早関係の無い話ではあった。
完膚なきまでに脱出の手段を亡くした、ただ死を待つばかりの身となっては。
この気候ではHunterPigeonの救援は期待できないし、そもそも連絡する手段も無い。
持ってきた携帯端末も通信素子も、先までの闘いで破壊されてしまっている。
それよりもまず、この悪天候で自分なしのあの戦艦が無事でいるかどうかも怪しかった。

「ま……流石にこれは、どう足掻こうが無理、だよな」

弛緩した全身をその場に投げ出し、ヘイズは一人、呟く。
I-ブレインが停止し、身体も思うように動かない今、もう自分に残された力は何も無い。

「結局…いつも貧乏クジを引かされるのはオレ、ってわけか」

力無く、笑う。どうしてこんな事になったのか。
何時から、何処から間違っていたのか、ヘイズには判らない。
だが……それでも、悔いは、ない。
彼は、彼の出来る事を精一杯やって、誰かを守ろうとして、そしてその結果、こうなっただけだ。

「―――悪いな、親父。ちっとばかし早く、そっちに行く事になりそうだ。けど……」

ヘイズの周囲を、死という名の絶望が取り囲む。
地に闇が、空に光が満ち、そして―――


「勘弁、しろよな」


ヴァーミリオン・CD・ヘイズという男の物語が、幕を閉じた。


(最上部:操縦室にて。ヴァーミリオン・CD・ヘイズ……消滅)

958 名前:夜雀の怪『ミスティア・ローレライ』 ◆8hOOMYSTIA :2006/11/27(月) 19:30:09

>>771
100年はブランクのあった船を惑わす歌か。
それとも辺りに渦巻く暴風か。
はたまた胎内の猛毒達に犯されたか。

いずれにしろ「Zeppelin Neue Ara」の軌道は蛇行し、既に目標を失っている。
もしくはあまりに正確に、目標を狙い定めている。


喜ばしき美しき神々の煌めきよ
(破壊をもたらす死の閃光よ)
楽土から来た娘よ
(地獄へ誘う戦乙女よ)
我等は炎のような情熱に酔って
(我等は灼熱の闘争に酔って)
天空の彼方は貴方の聖地に踏み入る
(地獄の底は死地へと踏み入る)



それにとどめを刺すような閃光が、数度。

そして、目的地へのあまりに荒々しい着陸。


兄弟達は己が道を駆け抜ける
(同穴の狢は己が正義の拘泥する)
勝利に向かう英雄のごとく喜びに満ちて
(誰も彼もが死地に喜び参じるように)



鎮魂の歌を捧げる歌姫の眼下、煉獄もかくやという破壊が広がる。
狂気山脈の麓、「Zeppelin Neue Ara」は永遠の物となった。


戦場の消滅を見届けると、ローレライは何処かへ飛び去った。


【周辺空域を離脱。エンディングへ】

959 名前:◆K3dMKODAMA :2006/11/27(月) 21:38:44

『聖櫃』は永遠に失われ、「Zeppelin Neue Ara」号は虚空へと消え去った。
コダマは母の力を借り、東の番犬所に帰り着いた。
コダマの力によるものではないにしろ、時空の法則は致命的な歪みを刻まれることも
世界が崩壊することも無かった。そう、『世は全てこともなし』だ。


だが、世界は終わらなくとも。
この戦いは少なくとも三つの結果をもたらした。

一つは、各国のVIPの“消滅”による権力・勢力構造の崩壊、そして大改編。
刷新を通り越して、0からのスタートに近い物となり、
庶民はその影響の下で数年間は耐えねばならないだろう。ますますホラーの暗躍が容易な世の中になるかどうかは、まだわからない。

もう一つは、メシア降臨のための時間稼ぎをするための切り札の入手。
コダマは、客室を回っているときに“偶然”ある物を発見した。
この船を満たした銃火と陰我が生み出したのだろうか―――銃にまつわる歪んだ想いの結晶たる『ボルヒャルドピストーレ』の陰我、
『ボルファナツの魔弾』である。
これは、やがて炎と氷のホラー・モロクに憑依された女の父親に渡ることとなる。


そして、今一つは、「Zeppelin Neue Ara」号の残骸。
大部分は時空の歪みの中に消えたが、大空中戦の余波、魔のごとき低気圧、レーザーの一斉射撃と
常識を超える破壊の渦の中で、砕けた構造材は海の中に消えたかに思われていた。

しかし、人間としての終焉とグールとしての再生に翻弄された乗客たち。
見果てぬ夢と野望の舞台で踊り狂った亡霊たち。
限りなく人間の側にあろうとした者たち。

彼らの陰我を宿した船は、海底で時を待つ。
陰我宿すオブジェとして、あるホラーの復活を。
かつて、『白夜の魔獣』と呼ばれた悪夢の再臨を。
その、ホラーの名は――――

To be continued 『牙狼―GARO― 白夜の魔獣』



960 名前:魔導輪ザルバ ◆eEHWZARUBA :2006/11/27(月) 21:41:10

遥かな古より、ヒトは空に憧れを抱き続けてきた

それがどうだい、今じゃ空は大渋滞だ
そして空にも陰我は渦巻く―――

『飛翔』

どこまで行っても、逃げ場はないぜ?


コダマ レス纏め

導入
>>160 >>161
開演
>>268
VSグール with ヤン・バレンタイン
>>314 >>339 >>372
VSタッツェルヴルム
>>427 >>467 >>508 >>557 >>610 >>669 >>736
輪切り
>>775
終演
>>814 >>901 >>916

961 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/27(月) 23:19:50

>>942

 オーファン王国・ファンの街。冒険者の店・「青い小鳩」亭。

「約束の時間に遅れるなんて……イリーナらしくないわねえ」
「あはははー。筋トレのしすぎで疲れて寝ちゃったんじゃないのー?」
「はう、その……みんな、ごめんなさい。ご迷惑とご心配おかけしました」

* * * * * * * *

 わたしは戻ってきました。遠い異境の地の、血生臭い闘争で溢れかえったあの「飛行船」から。
 結局、本来引き受けていた護衛の仕事に関しては、わたしは間に合うことができず……大怪我も
していたので、留守番と称して療養していたため……ヒース兄さん達はわたし抜きで仕事をしなければ
ならず、わたしのあずかり知らぬところで、結構大変だったみたいです。

 何故、あのような事件にわたしが巻き込まれてしまったのか……その本当の答えは、出そうにも
ありません。異界を渡る勇者の伝説、というのは珍しい主題ではないのですが、魔界とも、妖精界とも
違う、あの不思議な世界に渡り、生還した人間の話というのは……伝承にも例がないそうです。

 どうにか一命を取り止め、ファンの街に戻ってきた時。わたしは泣きました。
 あの飛行船に乗り合わせていた乗客の皆さんや、レイオットさんを助けられなかったこと。
 恐るべき人狼(ヴェアヴォルフ)と戦い、力及ばずに敗れ去ったこと。
 絶体絶命のわたしの下に、偶然にも駆けつけてくれた赤衣の男性と女性。力の差。羨望。
 それらをひっくるめてもなお、わたしの中で真っ先に出てきたのは……自分が生きていることが、
たまらなく嬉しかった、という感情でした。

 緊張の糸が切れ、激痛と疲労の極みに達して動けないでいたわたしを、最初に見つけてくれたのは
ヒース兄さんでした。あの時のヒース兄さんの……安堵とも、憤怒とも、悲嘆とも取れなかった複雑な
表情。わたしはそれを忘れることは……きっと、できません。

962 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/27(月) 23:20:50

>>961

 異境の地で起こった出来事を洗いざらい、ヒース兄さんの前でぶち撒けると……わたしは感極まって
ヒース兄さんの胸に寄りかかりました。ヒース兄さんは、わたしの話を茶化すこともなく、ずっと真剣に
聞いてくれましたし、泣きじゃくるわたしを拒みもせず、気が済むまでずっと胸を貸してくれました。

「……わたし、やっぱり、足手まといかな? ただ人より力があるってだけで、不器用だし、
 空気読めないし……お荷物なんでしょうか?」
「馬鹿言え。お前、前に言ってただろ。『自分ひとりじゃ大して強くない。みんながいるから
 強いんです』って。エルルンによ」
「うん、でも……」
「でもそれは、お前がお荷物って意味じゃないぞ。お前の戦った相手も、お前がそいつに深手を
 負わせて、銀のグレートソードを持っていたからこそ、倒せたんだろ」
「…………」
「お前も、及ばずながらも立派に役目を果たしていたって事じゃ、ないのか?」
「それは、あの場にいた人たちや、ヒース兄さんが……」
「確かに助けはしただろう、でもな。実際に奴に立ち向かったのは、他ならぬお前自身だ。
 人間ってのはな。誰かに言われて動くモンじゃない。最終的には、自分で決めるモンなんだよ」

 ヒース兄さんの辛抱強い言葉の前に……わたしはやがて押し黙りました。
 今までも、そして今回の事件においても……わたしは、色んな人たちに助けてもらいました。
 己の力がいかにちっぽけであるか。それを痛感し、悔やみもしました……でも。
 わたし自身、決して無力ではないことを。
 あの場で共に戦った皆さんに対し、僅かでも力になれたことを。
 ヒース兄さんの言葉を聞き、信じたい気持ちになりました。

963 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/27(月) 23:22:01

>>961>>962

「……とりあえずイリーナ。お前は寝坊したって事にする。装備があちこちボロボロな点については、
 俺さまこっそり修理に出せるようにしてやるからよ」

 気持ちの整理のつかないわたしを、励ますように。淡々とヒース兄さんは言いました。
 みんながわたしの話を信じる信じないはともかく、たった独りで生死の境をさまよったことを話して、
余計な心配をかけるのが、今のわたしには辛かったので……ヒース兄さんの気遣いはありがたかったです。

「……ありがとう、ヒース……兄さん」
 わたしの表情が和らぎ、笑顔が浮かんだのを見て……ヒース兄さんは初めて、照れ臭そうに言い澱みました。

「アー、その、なんだ。元気になったんだったらそれでいいんだが……
 スゲェな、お前の行った世界。お前みたいな人外の筋力を持つ重戦車でも、ヒロイン気取れるほどの
 化け物勢揃いだったみたいだし……」
「…………」
「しかもその、哀川潤ってぇの? お前のグレートソードをひょいと借りて軽々と振るっていただと?
 ホントに女か? 体長3メートルはある筋骨隆々のオーガーか何かの間違いなんじゃねーか?」
「……てい」

 みしっ。
 ヒース兄さんの顔面から、骨のきしむ音がしました。

「うわら……ば」(ぱた)
「潤さんの悪口は許しませんよ。わたしの、目標なんですからっ!」

 潤さん。ダンテさん。レイオットさん。……皆さん、本当に、ありがとうございました。
 まだまだ、わたしは修行不足です。
 でもいつかきっと、わたしも皆さんみたいに……強くなってみせます。
 単なる腕力だけじゃなくて、心も折れない強さを。いつかきっと。

 みんなの笑顔を守れるように……ハッピーエンドを掴めるように!

【イリーナ・フォウリー:現在地:ファンの街……生還】

964 名前:イリーナ・フォウリー:2006/11/27(月) 23:22:57

イリーナ導入
>>173>>174>>295

vs喰屍鬼兵
>>330>>336

vs大尉・その1(レイオットと共闘)
>>356>>375>>386>>404>>421>>444>>464>>465>>491>>492>>496
>>514>>518>>527>>541>>545>>549>>560>>576>>579>>592>>600
>>607>>621>>633>>643>>656>>675>>725>>738>>747>>749>>765
>>782>>796>>804

vs大尉・その2(ダンテ、哀川潤と共闘)
>>778>>802>>804>>813>>823>>829>>836>>840>>849>>851>>860
>>862>>870>>877>>879>>891

救出、そして脱出
>>900>>909>>918>>921>>926>>935>>938>>939>>942

エピローグ
>>961>>962>>963

965 名前:ビリー・龍 ◆D727Bb9L.2 :2006/11/28(火) 00:05:58

>>933

 一応の決着がついたようだった。少なくともこの場所では。
 まあ、あまりのんびりもできなさそうだが。この船、そう長くは飛んでいられめぇ。

>>943

『…げろ』
 ほーら来た。

――いや、事態はもうちっと悪そうだった。
 警告(と思われる放送)は暴風に遮られて散りぢりに聞こえただけだが、
 この肌のあわ立つような感覚は、近場で穴が開く感覚だ。
 あちら側から見たくも無いようなシロモノが溢れ出てくる前兆だ。

 奈落落ちの直前の感覚とよく似ていた。
 ただ、ベクトルがどっち側かという話だ。

 俺は跳ぶことにした。
 宙へ――否、ポテンシャルの壁を越え、空間の向こうへ。
 これだけの場がありゃ、跳ぶこと事態は難しいことじゃないだろうが、
 あまりやりたくはなかった。
 こいつは、どこに跳んでいくか少々心許ないのだ。
 それでも、ここに留まるよりはマシだ。

 俺はイグニスの身体を抱え直すと、ステップを踏んだ。
 跳ぶ――<径>を飛び越え、見知らぬ土地へ。
 行き先は、神のみぞ知る――俺はちらと、頬をゆがめた。

(飛行船の上→何処かへ――) 

966 名前:ビリー・龍 ◆D727Bb9L.2 :2006/11/28(火) 00:24:06

(――欠伸を漏らしつつ)

導入部
>>186>>308

ちびアド、哀川、ハイネ、ケイトらと遭遇
>>329>>333>>338>>344>>352>>358>>363>>370>>377>>382>>398>>409
>>420>>425>>440>>450>>476>>495>>511>>526>>535>>544>>567>>581
>>595>>606>>627>>639>>648>>661>>686>>700(お寝んね)

>>737(起床)

イグニスと遭遇
>>760>>776>>783>>790>>793>>805>>815>>822>>827

グルマルキンと遭遇 美人のねーちゃん(イグニス)に助太刀
>>832>>837>>845>>853(>>861>>864>>872>>881)>>886
>>887>>896>>906>>914>>922>>928>>933

脱出
>>965

967 名前:ロットン・“ザ・ウィザード”:2006/11/28(火) 00:39:06



俺の名は“ウィザード”、ロットン・“ザ・ウィザード”。
子細あって――我が“レス番”、纏め上げる!


>>828


……。
―――纏め上げる!


>>828
>>828
>>828


あ。

【どう見ても出オチです、本当にアリーヴェ・デルーチ(飛んで行きな】

968 名前:マンフレート・フォン・リヒトホーフェン:2006/11/28(火) 03:26:32


リヒトホーフェン・サーカス
闘争レス番纏め

導入
>>264を参照

vsミスティア・ローレライ
>>162>>247>>276>>278>>288>>297>>304>>310>>324>>335>>350
>>389>>402
(ブルーノ、シュライヒ死亡)

フランドール大決戦
>>471>>509>>528>>534>>543>>555>>561>>543>>588>>598>>614
(バウマー、ハマー、ロタール死亡)

vsエドワード・ロング
>>556>>609>>632>>650>>682>>681>>694>>706>>710>>714>>715
>>723>>726>>744>>757
(エンメルマン、シュタルハイン死亡)

vsエアハルト・フォン・ラインダース
>>712>>727>>746>>807>>831>>839>>867>>878
(マンフレート死亡→リヒトホーフェン・サーカス全滅)

969 名前:リゾット・ネエロ(M):2006/11/28(火) 22:16:140

>>178 >>179 >>279 >>280 >>354 >>374 >>399 >>413
>>484 >>521 >>565 >>623 >>668 >>733 >>803(輪切り)

その内、顔に傷のある医者(山賢版)にでもくっつけて貰うさ…

970 名前:◆2B6Bo7ac06 :2006/11/28(火) 22:40:480


epilog

 上空に穿たれた時空の孔。南極の氷土を水蒸気に変えた光子の刃。
新たな時代を背負ったツェッペリンは光に呑まれながらも、なお飛ぶことを
諦めず新世界へと旅立った。
 オペラツィオン・ノイエ・ジール―――ナチスの威信を賭して実行された
半世紀ごしの作戦/魔導士グルマルキンと錬金術師レザードの積年の野望/
時代から見放された亡霊どものヴェンデッタ。
 様々な思惑/策謀が交錯した一大作戦は旗艦の沈没/グルマルキン率いる
親衛隊特務混成部隊の全滅/聖櫃の消滅により幕を閉じた。
 指揮官グルマルキン死亡/副官ヴァルトラウテ回収不能/参謀レザード消滅/
栄光あるルフトヴァッフェ三十機全て墜落大破。飛行船に搭乗した戦闘員/
非戦闘員併せた三百余名のうち、生存者は十名に満たず/ナチス側での生還者
はオゼット・ヴァンシュタインのみ。―――残されたのは膨大な虚無だけだ。

 小規模の時空断層が生じた狂気山脈付近/飛行船が奈落へと堕ちた地。南極
に住まう生物ですら住み着くことが困難な極寒地帯を力なく這いずる影があった。
 人ではない。
 四つの足で氷床を踏みしめながら進む黒豹―――いや、これは巨大な黒猫か。
 立ち上がれば人の背丈ほどはあろうかという猫がよたよたと歩いている。
 常ならばさぞ鮮やかであろう黒毛がいまは無残に焼け爛れていた。
 南極でもっとも過酷な気候を誇る狂気山脈の麓だ。
 その凍てつく空気は黒猫の生命の残滓を容赦なく奪ってゆく。
 更に追い討ちとばかりに、内臓にまで到達した腹部の裂傷が黒猫を苦しめた。
 神槍に引き裂かれた腹部からは鮮血が溢れ出し、南極の大地に点々と標を刻
み込んでいた。―――しかしそれでも黒猫は歩みを止めない。
 いま止まれば自分がどこに行くか、彼女はイヤと言うほど心得ているのだ。
 不履行者ファウストと違い、黒猫は神に見初められてなどいなかった。

「―――哀れだな、グルマルキン」

  しわがれた声が黒猫の進行を阻んだ。

「ドイツの栄光と科学力、その全てを委ね、更に契約の箱までベットしたと
言うのに……あなたは一欠片の勝利を手にすることすらできなかった」

 黒猫の隻眼が動揺に揺れる。
 声の主/狂気の山脈を背にして、蔑みの眼で、か弱き動物を見下していた。
 上質なスラックスにドレスシャツ。その上からフロックコートを羽織り、
白手袋で素肌を隠している。気取った衣装だが、歳のためためか嫌味はない。
 老年に食い込んだ設計者は不機嫌そうに黒猫の元へと歩み寄った。
 この寒波/この暴風/この冷気だと言うのに、堪えた様子はない。

971 名前:◆2B6Bo7ac06 :2006/11/28(火) 22:41:280

>>970

「貴様、どうしてくれる」
 猫の首を白手袋が覆った。合わせて十指にゆっくりと力が込められる。

「私の船は行ってしまったぞ。私の伴侶とも言える船が行ってしまったんだぞ。
私自身とも言える船が、私そのものが―――どうしてくれる。どうしてくれる
んだグルマルキン・フォン・シュティーベル!」

 憎悪に囚われようと所詮は人の力。普段のグルマルキンならば容易く捻り伏
せたであろうが―――今の全てを失った黒猫には、抵抗すらできなかった。
 遠ざかる意識/黒毛に食い込む指/怒りに眼を血走らせるフンフツェーン。
 飛行船伯爵は自信の呟きによって更に憎しみを掻き立て、両腕の力だけで
巨大な黒猫を吊り上げた。「どうしてくれる、私の船を。ツェッペリンを!」

 ワルプルギスの夜に迷い込む小動物が、やがて白目を剥く。
 その時、

「―――なぁんてね」
 突然、老健な声がボーイソプラノに裏返った。

 解放された黒猫/どうと氷の床に身を横たえる。
 伯爵の背丈が目に見えて縮み始めた。
 スラックスの余りきった裾がべったりとブーツを覆い隠す。

「殺しはしないよ、グルマルキン」

 息も絶え絶えな黒猫に、邪気のない口調で話しかける。

「確かにあの玩具は、僕にしてはらしくなく心血を注ぎ込んでしまったし
気に入ってもいた。作戦の責任者が君じゃなければ三度は縊り殺していたに
違いない。何と言ったって君は僕の宝物を三つ――ツェッペリン/アーク/
サーカス――も壊してくれたんだからね」

 持て余し気味なフロックコートの袖で顔を拭う。
 改めて面を上げたとき、そこに伯爵はいなかった。

「だけど、それでも僕は君を殺さない。殺してやらない。なぜなら、僕の一番
の宝物は君だからさ。君を失うことに比べれば、船の大破なんてどうというこ
とはない。箱だってまた探せばいい。―――ああ、君が無事で良かった」

 とても無事ではない状態の黒猫は、畏れに身を竦ませる。
 極端に細長い瞳孔―――ヨルムンガンドの瞳が瀕死の魔術師を射抜いた。

「宝物っていうのはね、輝くだけで何の役にも立たないからこそ美しいんだ。
グルマルキン、君にはその素質がある。さ、帰ろう。お仕置きが待っている」

 言うと伯爵だった者はフロックコートを脱ぎ捨てた。
 朝を迎えつつある南極。
 白みがかった空の下、
 ヒトラーユーゲントの制服/狂気の残り香が
 朝を犯した。

972 名前:◆2B6Bo7ac06 :2006/11/28(火) 22:42:350


グルマルキン・フォン・シュティーベル
闘争レス番纏め

導入
>>264を参照

vsイグニス→vsレミリア
>>281>>285>>282>>289>>321>>325>>299>>301>>315>>334

vsレミリア・スカーレット
>>343>>365>>383>>394>>407>>422>>439>>454>>466>>481
>>500>>523>>539>>559

vsパチュリー&ヘイズ
>>540>>573>>582>>586>>604>>612>>613>>624>>626>>640
>>660>>705

オゼット・ヴァンシュタインへの怨嗟
>>695>>698>>704>>708

vsヴァーミリオン・ヘイズ
>>709>>717>>729>>730>>734>>753>>769>>781

蘇生
>>797

vsイグニス&ビリー
>>832>>834>>837>>845>>853>>855>>861>>864>>881>>887
>>896>>898>>906>>912>>914>>922

vs東方仲良し三人組み
>>917>>920>>929>>924>>933

エピローグ
>>970>>971

973 名前:パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU :2006/11/28(火) 22:54:310

魔法図書館。日の光も入らず昼も夜も無い場所。
昼でも夜でもない場所を、小さな何かが飛んでいく。

「意外にうまくいくものね……反転、と」

パチュリーの言葉に答えたそれは、空中で向きを変えて彼女の元に戻ってくる。
パチェの眼前で止まったそれは、先日時空の彼方に消えた飛行船の姿をしていた。

ツェッペリン・ノイエ・アラ。外の世界の稀代の「魔法使い」が形にした空飛ぶ豪華。
パチュリーによりその魔法を記されたツェッペリンは、彼女の手により子をなした。
ただし、その子は文字通り小さく、親と同じものとは言いがたかったのだが。

外の魔法の結晶を眺めながら、パチュリーは考える。外の世界とこの世界の違いとは何か。
それはおそらく、物質と精神との違いだろう。
外の世界の魔法使いは魔法を物質に込め様々な物品を生み出し。
この世界の魔女は、魔法を精神に込めて難しい事を考えるのだ。

「知恵の輪と知恵の蛇、ルービックキューブとフェルマーの定理ね。
 フェルマーの定理は眺められないわねえ」

何となく結論らしき物を見て、パチュリーはまた、ツェッペリンを空に浮かべる。
ツェッペリンはぽんぽん言いながら空を駆けていった。

外の世界とこの世界。ハノイの塔と階乗計算。
どちらがいいか悪いかはわからない。
しかし、パチュリーは、塔を動かすのも、頭を動かすのも好きだった。

Ending No.37 パチュリーノーマルエンディング(もっと沢山殺そう!) Congratulations!


974 名前:パチュリー・ノーレッジ ◆fPATcHE/tU :2006/11/28(火) 22:56:030

パチュリー・ノーレッジ 闘争レス番纏め

導入〜ツェッペリンへようこそ〜
>>190 >>191 >>205 >>206

最初の幕間〜遭遇、別れ〜
>>271 >>277 >>301 >>315 >>334 >>366

交戦〜VSルーク・ヴァレンタイン〜
>>331 >>337 >>349 >>393 >>430 >>432 >>445
>>474 >>502 >>506 >>524

次の幕間〜最後の休息〜
>>540 >>573 >>582

急転〜withレミリア・スカーレット〜
>>586 >>604 >>613 >>626 >>640 >>729 >>730
>>787 >>809 >>817 >>843 >>854

カーテンコール〜VSグルマルキン・フォン・シュティーベル〜
>>868 >>890 >>904 >>917 >>920 >>924 >>929 >>933

閉幕〜さようなら南極の空よ〜
>>941 >>946 >>947

afterwards
>>973

975 名前:夜雀の怪『ミスティア・ローレライ』 ◆8hOOMYSTIA :2006/11/28(火) 22:59:050

ここは幻想郷。
人が消えると言われる獣道に、不定期に立つ屋台がある。

「そこで私が千切っては投げ千切っては投げ〜」
「へー。ふーん」

羽を生やした店主らしき妖怪に、気のない返事を返す妖怪の客一人。

「何よその気のない返事。こうしてまだ手が生えてこないのに〜」
「だってあんた魔法の森をいかに高速で抜けるか! とか言って木にぶつかって、もう1ダースくらい同じ事やってたじゃない」
「いやまあ」

正規の開店時間(と言っても正確な物はない)ではなく客と言っても知り合い。
だらだらとだべりながら、売り物の八目鰻を焼いたりあげたりしている。

「でもさー。結構大変だったんだよー、多分変な仏教徒」
「坊さんだったの? アンデッド使って良いのかなぁ……」
「だってさ。拾った服に付いてたマーク、寺の記号にそっくりだったよ〜」

結局彼女は、戦った相手が何だったか知ることはなかった。
知っていれば何らかの感慨を受けることもあったろうが……。
彼女の中では狂信的な仏教徒に襲われた、という結論に落ち着いてしまっていた。

「ブッディストも過激になったのね。そう云えば外では仏さんを大事にしない奴は死ね、って言う劇があるとか聞いたなぁ」
「昔の日本でも僧侶は、通りすがりの武器を奪ったりしてたらしいわ〜」

二人はさもありなんと頷き、

「「ぶっそうだねえ」」

そう声をそろえた。


ヴァーサス・サーカス
>>162>>247>>276>>278>>288>>297>>304>>324>>350

サドゥン・ウィッチ
>>368>>389>>416>>429>>449>>470>>489>>510

スナイプ・ナイト
>>509>>536>>550>>562>>580>>587>>599>>611>>629>>646>>657>>666>>678

レイ・ゼム・レクイエム
>>771>>958

976 名前:レップ ◆ZcW/SSsF6Y :2006/11/28(火) 23:07:320

レップ 闘争レス番纏め

導入
>>167 >>168 >>169 >>170 >>171 >>172
>>209 >>210 >>211 >>212

空中戦闘
>>229 >>230 >>259 >>260 >>293 >>326 >>361 >>369 >>391 >>397 >>436 >>479 >>536
>>550 >>562 >>580 >>587 >>599 >>611 >>629 >>646 >>657 >>666 >>678


977 名前:フランツ・フェルディナンド ◆ZcW/SSsF6Y :2006/11/28(火) 23:08:120

フランツ・フェルディナンド 闘争レス番纏め

導入
>>172 >>768

vs ふみこ・オゼット・ヴァンシュタイン
>>852 >>866 >>880 >>885 >>889 >>899 >>911 >>919 >>925


978 名前:高木由美江:2006/11/28(火) 23:10:110

汝に問おう。人が生きる期間とは?
──マタイ受難曲を心の曲として。

【導入】>>175>>176>>177
【開幕】
>>261
【死屍鬼現る】
>>300>>317
【ヤン・ヴァレンタインとの闘争】
>>318>>364>>390>>423>>451>>452>>473
【リザ・ワイルドマンと】
>>532>>569>>571
【津村斗貴子】
>>625 >>658>>685
【敗北】
>>697

979 名前:ロンギヌス13 ◆13th/X9pTg :2006/11/28(火) 23:15:590

ロンギヌス13レス番纏め

導入
>>213>>214

降下班迎撃(vsシエル、飛竜)
>>283>>327>>373

フランドール大決戦(vsフランドール・スカーレット
>>411>>534>>617

別働隊、回廊にて交戦(vsシエル)
>>583>>624>>690>>735>>756>>785>>801(別働隊全滅)

全滅への経緯
>>681>>710>>723>>744(空戦部隊全滅)

980 名前:◆sLAdoLfKkE :2006/11/28(火) 23:39:070

【導入】
>>187>>188>>189

>>290>>319>>329>>333>>338>>348>>358>>363>>370>>377>>380
>>398>>401>>409>>418>>443>>460>>462>>475>>493>>494>>516
>>522>>548>>558>>570>>585>>597>>638>>641>>673>>687>>692
>>696>>720>>739>>740>>745>>772>>789>>816>>821>>835>>844
>>850>>865>>873>>883

【なんか飛んでいきました】
>>905

981 名前:ケイト・コナー ◆g6orsKate. :2006/11/28(火) 23:42:430

ケイト・コナーレス番号纏め

・導入――ママの事情
>>215>>216

・行動開始――ママ始動
>>323>>344

・客室廊下――頑張るママ
>>352>>358>>370>>377>>380>>409
>>418>>420>>443

・階段での接触と顛末――闘うママ
>>460>>475>>493>>516>>522>>548
>>558>>570>>585>>597>>641

・結末――ママ逝く
>>687>>696>>739>>745

982 名前:sage:sage

sage

983 名前:タバサ ◆3VTTABASAI :2006/11/29(水) 00:36:190

タバサ レス番纏め

導入
>>159

行動開始、アドルフ(ハンス)との対話
>>286(>>380)>>401>>418>>475>>494>>516

VS大尉ブラッド(ハンス、ケイトとの共闘)
>>522>>558>>570>>585>>597>>638>>641>>673>>687>>692>>696>>720>>739>>740
>>745(>>772)>>789>>816>>821>>835>>844>>850>>865>>873>>883

脱出
>>923

984 名前:イグニス ◆IgnisC3BW6 :2006/11/29(水) 00:50:360

>>937>>965

 ――目が、覚めた。

「……ここは?」

 反射的に零れたつぶやき――が、同時に、全身に走る激痛。
 何の予兆もなく訪れたそれに、身じろぎひとつ出来ずに、私は小さく呻きをあげた。

 そこで、ようやく、酷く疲れていることを思い出す。
 筋肉痛にきしむ身体を無理矢理に動かす。とりあえずしたことは、自分の身体を確認することだった。
 そこに、意外なものを見る。全身に巻かれた、真っ白な、だが傷口からしみ出した体液で所々汚れてい
る包帯。僅かに鼻につくのは……薬品の匂いだ。

 少なくとも、傷口は塞がっているらしい。
 そのことに僅かに安堵を覚えて、ようやく周囲へと意識を向ける余裕が出来た。

  己の身体の様子から、病院か……とも思ったのだが。

 見る。
 ……薄汚れた壁。ほこりの溜まっている天井。そして――身体にかけられていた古びたシーツ。
 挙げ句に、身じろぎする事に軋みを上げるベッド。病院などではない。
 この光景はむしろ、安宿のそれだ。

 一体、なんでこんなところに――?

 そこまで考えたところで。
 ぎい、と、見てくれと同じような安っぽい音を立てて、側面のドアが口を開ける。
 その向こう側に立っていたのは――

 食事らしき紙袋を携えて、皮肉げな表情に笑みを浮かべる、あの吸血鬼の姿だった。

 ……唐突に、意識を失う直前に感じた感触を思い出す。
 それが何を意味するのかを理解する前に。

 私は、不機嫌そうに鼻を鳴らして、その来客を迎え入れていた――



【”最も気高き刃”イグニス――生還】
【以下、レス番まとめ】

>>183>>184>>185(導入)

>>253>>255(行動開始)

>>282>>289>>325>>321>>334(対モリガン&グルマルキン)

>>359>>378>>414>>431>>459>>447>>531>>552>>563>>578>>590
>>601>>616>>637>>649>>663>>677(対モリガン・アースンランド・1日目終了)

>>760(2日目開始)
>>776>>783>>790>>793>>805>>815>>882>>827(対ロング・ファング)

>>832>>834>>837>>845>>855>>861>>864>>872>>881>>887>>896
>>898>>906>>914>>922>>928>>933>>937>>965
(対グルマルキン・ロング・ファングとの共闘)

そして――
>>984(その後))

985 名前:哀川潤 ◆MzXQXe8zTc :2006/11/29(水) 01:24:050

>>939

 ――日本・京都府、骨董アパート

「おういーたん、久しぶりー」
「久しぶりです哀川さ」「哀川って呼ぶな」


後日談。


「…で、玖渚から聞きましたよ?あの飛行船に乗ってたって。
 どうやって生きて帰って来たんですか?」
「あー?まるであたしが生きて帰って来ちゃ不味い様な事言いやがって
 今回は本っっっ気でヤバかったんだぜー?」

それからあたしは出発から此処に至るまでの物語を語った。
目の前の戯言遣いが人外を見る様な目だったので苦笑。

「話聞けば聞く程何で生きて帰って来れたか判りませんよ…」
「あたしは人類最強の請負人だ、それで十全だろ?」
「……ですね」

その言葉を聞くと赤色はシニカルに笑い――
この物語は、終る。

【哀川潤:後日談了】

                    《God Night》is the END.


986 名前:哀川潤 ◆MzXQXe8zTc :2006/11/29(水) 01:25:090

>>985
哀川潤:闘争レス番纏め

導入
>>252

vsハイネ
>>323>>329>>338>>352>>363>>370>>377>>382>>398
>>420>>425>>440>>450>>476>>495

vsビリー・龍
>>511>>526>>535>>544>>567>>581>>595>>606>>627
>>639>>648>>661>>686>>693>>700

幕間
>>743>>792

vsダンテ
>>802>>813>>823

vs大尉
>>804>>829>>836>>840>>849>>851>>860>>862>>870
>>877>>879>>891>>900>>909

始末
>>918>>921>>926>>935>>938>>939>>942

物語の終わり
>>985

987 名前:大尉ブラッド ◆/Z/IFjxeWc :2006/11/29(水) 01:32:040

第四帝國大尉Z・ブラッド レス番纏め

事の起こり、カジノ制圧 >>720>>362

客室へ >>460
>>380>>409>>443

階段付近での遭遇 >>522>>585>>673
>>475>>493>>548>>558>>570>>597>>638>>641

仇敵は此処に在り! >>720>>789>>835
>>687>>692>>696>>772>>816>>821>>844

不死者の死 >>865
>>835>>850

アドルフ・ヒトラー爆誕 >>905

988 名前:フィオ・ジェルミ ◆SV001MsVcs :2006/11/29(水) 01:34:100

《エリちゃん!? 大変! エリちゃんが撃墜された!!》

 エリ・カサモト レス番まとめ

 導入
 >>228
 飛行船へ接近。レップより狙撃を受ける。
 >>293
 長谷川虎蔵と別れる。ふみこ、フランドールより攻撃を受ける。
 >>369
 ふみこと一時休戦。共同でフランドールの攻撃に移る。エアハルトよりトップアタックを喰う。
 >>447
 フランドール・スカーレットと交戦開始
 >>487
 スターボウブレイクに回避機動を取るも、避けきれず被弾。
 >>555
 フランドールにメタスラアタック敢行。脱出装置が作動せずスラグフライヤー諸共爆散。
 >>667


989 名前:―――月面にて。 ◆jBiAWniQ.. :2006/11/29(水) 01:38:110


「堕ちた森の巨人」バンブー・パンデモニウム(M) 戦闘記録


追憶〜月面にて  ―――異端者と反逆者―――
>>770

任務:最終防衛線死守

第一波砲撃〜状況開始
>>773
>>799>>800>>808>>818

損傷軽微〜小破 反撃開始
>>824
>>833>>838>>847>>856

損傷:攻撃続行〜中破〜イエローゾーン突入 全弾発射と同時に『Σコード』申請開始
>>869
>>894>>903>>907

『Σコード』承認・発動 レッドゾーン突破〜反応消失
>>927
>>930>>931
>>940>>945>>949


交戦:特A級ストライダー
交戦:ドキュメント『F・F』を参照
交戦:ドキュメント『KOF』並びに『P・S』を参照
交戦:詳細不明(潜伏班による調査報告を要す)

報告:『バンブー・パンデモニウム』撃破
結果:防衛線死守は成功 但し最重要案件である『起動』には失敗
   レザード・ヴァレスの消息――――不明



 『さくせん、失敗したね』
 『沈黙による賛同コード発信より48時間後の現在に至るまで計算させていただきましたが、
  結論からいって所詮は旧世代であった、ということです。
  かつ彼からのシグナル消失時間、そして南極極点において発生したエネルギーの観測から逆算した結果、
  発動時“我々”による作戦行動は完全に成功していた』
 『にも関わらず、0.02%の失敗を引き寄せた…ですか。
  やはり旧世代ではこの程度ということだ…実に愚かしい』
 『HA!やっぱり能無しのクズ野郎どもかよ、使えねーな!』
 『まぁまぁ……落ち着きなよ、兄弟。所詮は、ゴミを再利用した程度の実験だった…って事だろ?』
 『…ともあれ、これで我々がとるべき行動は決定したな』
 『そういう事だ。古き世界はやはり我らの手によって破壊しなければならん!』
 『そうだね。不完全とはいえ“僕”を倒した戦闘能力、そこだけは警戒事項だけど』



 「まあ良い、我が“子”らよ。作戦を、続行せよ……そう」




   ―――――――我々の『新世界』のために。
 

990 名前:るーく・ばれんたいん(M) ◆jBiAWniQ.. :2006/11/29(水) 01:42:240


ルーク・ヴァレンタイン レス番纏め
『人情紙光線 ギャラリーオブギャオリンス』

制圧
>>195>>196

先行
>>299

襲撃、戦闘、死亡
>>296>>301>>331>>337>>349>>393>>430>>432>>474
>>502>>506>>524



刻まれました。
ノコギリに。


指パッチンに消されました。



ノコギリに……。


【完(滅)】

991 名前:◆jBiAWniQ.. :2006/11/29(水) 01:47:310


レザード・ヴァレス レス番纏め

1日目
>>262>>263

2日目
>>751>>786>>806>>830>>846>>857>>859(>>875)
>>876(>>888)>>892>>902>>903>>907>>913>>
>>932>>934>>943>>945>>949>>951>>952>>950>>953
>>955>>956
































此処は因果地平の吹き溜まり。
巻末にして裏表紙、犬達がパロディという名の寸劇を舞い、伝説の存在よりネトゲチャンピオンが強いという
理不尽と暴虐と財宝の園。いけいけ僕らのセラフィックゲート。


その一角で。


「さて、みなさん」


彼はこの上なくさわやかな笑顔を浮かべると、


「異世界にまで進出してレナスゲッチュという我が計画は
 ものの見事に失敗したわけですが、私は元気です」


そう、グングニル欲しさの女神達に告げた。


992 名前:◆SoRDENIEpc :2006/11/29(水) 02:32:530

Epilog

――Suche
――Reflexion

Intro>149
  >207>208

Fuehrung>285>316>353>372>417>427>455>467>484>497>508>521>542
  >557>565>589>610>623>647>668>669>688>728>733>736>764>775
 >803>819>846>859>876>892>893>913>932>934>951>952

Ende>954


――ist die Antwort, die nicht besagt ist.



993 名前:エアハルト・フォン・ラインダース ◆CnAdcTa152 :2006/11/29(水) 05:13:520

2007年11月28日未明、南極大陸にて

 その日私は大気観測調査のために、僚友のシュミットと二人でドルニエDo228機でノイマイヤー基地を発った。
天候は快晴。 白夜のため、夏の南極は日が沈むことはない。
調査はさしたる障害もなく順調に進み、予定された行程は全て恙無く終了した。
今日の調査で採取された大気エアロゾルの観測データは、地球環境の研究に於いて
重要且つ貴重な資料となるだろう。
 このような偉大な事業に携われたことは、私の誇りである。
 全ての調査過程を終え、帰投の途についた頃にそれは忽然と私達の前に現れた。

「おい。 あれはなんだ?」

 最初に異変に気づいたのは、隣席でナビゲーションを担当していたシュミットだった。
彼の指差す先――進行方向に向かって右側の方角――を見て、私は息を飲んだ。
そこには、地図上のどこにも存在していない巨大な山脈が、真白い尾根を連ねていたのである。

「バカな! こんなところに山脈だと!?
 これほどのものが、今まで衛星にも捉えられずに存在していたのか!?」

「オレとお前、両方の眼に見えているということはつまり、あれは夢とか幻覚の類ではないらしいな。
 これは大発見だぞ! すぐ基地に無電を打て!」

 興奮冷めやらぬ、といった表情で無線機を操作するシュミット。
だが、空電が酷く無線は一向に繋がる気配はない。

「……くそっ! ダメだ。
 どうする? こうなったら俺達だけで行ってみるか?」

「だな。 幸い燃料にはまだ余裕がある。
 あの山脈の一番手前の辺りまで行って帰るくらいなら充分保つが、どうする?」

 そこから先は省略してもよいだろう。
私もシュミットも、自らの意志で極地という過酷なフィールドに身を置く男だった。
それだけ言えば十分なはずだ。


 数十キロほど飛ぶと、我々の目の前にはこれまで見たことも無い巨大な氷壁が広がっていた。
視界の果てから果てまで連々と続く純白の壁。
そのスケールの大きさに、私もシュミットも終始圧倒され、言葉を発せずにいた。

 氷壁に沿って飛ぶこと数分、いや数十分だったかもしれない。
それは、白一色だった世界の中に突如として現れた。
 フォッケウルフTa152H-1。
前世紀の大戦で、我が祖国ドイツが生み出したレシプロ戦闘機の最高傑作。
地球の裏側にあたるこの氷の大地には、決して存在し得ないはずのもの。

 だがしかし、それはたしかに存在していた。
真っ黒に塗られた機体の横腹に描かれた鉄十字の国籍章。
細く絞り込まれた胴体後部と大型の垂直尾翼。
氷の絶壁の中腹に、機首から胴体半ばまでを突っ込む形で埋もれてはいるが、
それは間違いなく、記録写真で何度も見たフォッケウルフの姿だった……



「―――低気圧が来てる。 戻ろう」

 突如現れた異様な光景に、呆然としながら上空を旋回していた私は、
シュミットの言葉で我に帰った。
南極で嵐に遭うということは、しばしば死と同義となる。
私はもう一度だけ、氷に眠るフォッケウルフの頭上を旋回すると、
ノイマイヤー基地への帰路についた。

「泣いているのか、お前?」

「ああ、あのフォッケウルフを見たら、何故か、な」

「そうか。 そういえばお前の家は飛行機乗りの家系だったっけな。
 もしかしたら、あれに乗っていたのはお前の一族の誰かだったのかもしれないぜ?」

「はは… まさか、な……」

 風が強くなり、雪が降り出した。
振り返ってもそこにはもう、幻の山脈の姿は影も形も見えることはなかった……





     ――――2007年度ドイツ南極観測隊員、マンフレート・フォン・ラインダースの日記より



―― レス番まとめ ――

【発進】
>>237 >>238 >>240 >>241 >>242

【戦闘】
>>369 >>434 >>468 >>507 >>509 >>561 >>588 >>622 >>680

【発覚】
>>695 >>698 >>712

【終局】
>>727 >>746 >>750 >>763 >>794 >>807 >>831 >>839 >>867 >>878






 今はアメリカに保管されているドイツ空軍の記録によると、
フォッケウルフTa152が南十字星の下を飛んだという事実は無い。
 私とシュミットが見た幻の山脈は、その後同じ空域を何度飛んでも
その威容を現すことはなかった。
 だが、あの日あの時、私は凍れる大地で確かに見た。
氷の中で眠るTa152-H1と、操縦桿を握ったまま息絶えていたパイロットの姿を。
 眼を閉じると、私には今でもあの氷の墓標の姿が見える……


                                                  ―― Das Ende ――


994 名前:後日談 ◆HPv8dyzZiE :2006/11/29(水) 05:43:240

 新世代の飛行船"ツェッペリン・ノイエ・アラ"のハイジャック事件は、結局のところ、謎の
爆発事故として処理された。その事件は数週間の間テレビを賑わせ、各国のVIPの突然
の死は数ヶ月にわたり世間を混乱させたが、今はもうそれも終局に向かいつつある。

 ふみこはといえば、あの後しばらくの間、開いた次元孔の後始末に追われ、怪我の養生
も出来ないような有様だった。彼女はその忙しい毎日に露骨に顔を顰めつつも一応の収
束を迎えるまで事態の収拾に尽力し、先日、ようやく彼女の本来の任務――即ち、日本
を襲う霊障の排除――に戻る事が出来たようだ。

 彼女が再び大きな事件に巻き込まれるのは、この数ヶ月先。
 "式神の城"事件での事である。

【終】

《レポート》

戦場に戻る魔女
>>250>>251

サーカスと魔女とローレライ
>>162>>247>>276>>278>>288>>297>>304>>310
>>324>>350>>368>>389>>402>>416>>429>>449
>>470>>489

ふみこvsエリ
>>293>>304>>326>>369

停戦
>>392>>447

奇襲、共同戦線
>>434>>469

vsフランドール・スカーレット(纏まらないので自分のレスだけ)
>>528>>645

叛旗
>>695>>698>>704

沈み逝く船、そして相対
>>786

錬金術師レザード・ヴァレス
>>806>>830

ex.扇動
>>875

今を生きる者、過去を生きる者
>>852>>866>>880>>885>>889>>899>>911>>919
>>925

狂気の神レザード・ヴァレス
>>932>>934>>943>>951>>952>>950

光の幕・終局
>>953


995 名前:終幕―――独白と幕間 ◆495/xezQ72 :2006/11/29(水) 19:38:570



 あの―――夢のような夜が過ぎて。
 私は地下室でいつものように本を読んで、静かな時間にいる。
 今思うと、あの舞踏会は本当に夢だったのかも知れない。夢と現は近しく同じ。マーブ
リングになっても気づく人は無し。全てが幻で、真冬の夜の夢だったか。そう思うと、私
は不思議な寂しさに囚われる。あんなに楽しい出来事が、とても素敵なパーティが、今さ
ら違うといわれても、私は絶対信じない―――だってあの夢は本当の出来事だもの。
 風の冷たさも、星の涼しさも、船の輝きも、身体を撫でた熱さも、全てがリアル。
 ―――こんなの、夢でも現実と変わらないじゃない?
 だから私は何度も何度も思い返す。忘れないように、また来ますようにと願いながら。
 そしてそれは―――私の新しい思い出となる。

 それは初めて人に出会ったこと。
 初めて外へ出たときのこと。
 初めて隕石を壊したこと。
 初めて本を読んだこと。

 今でも、私はどれも忘れていない。
 たとえその形が、壊れて風の中だったとしても。

 §


「やれやれ、こんなにぼろぼろにして……どうしたのかしら、妹様は」

 紅魔館の一室。咲夜はほとんど原形を留めていないフランドールのドレスを繕っていた。
なにしろ帰ってきた時にはほとんど服の姿を成しておらず、色々と見えるほどに色々と危
険な状態だった。何をやってきたのか聞きたくなるのも当然である。
 ただその当事者たる妹は「ダンスしてきただけよ」と涼しく応えるだけで、結局明確な
応えは手に出来なかった。姉―――自分の主に聞いても「なんでもないわ」とそっけなく
返される始末。知らぬは昨夜ばかりなり。

「―――あら?」

 ふと、繕っていたドレスのポケットから、ころりと出てきたものが、一つ。

「勲章……かしら?」




996 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2006/11/29(水) 19:41:060



 ―――そして、私は今宵も外へ出る。

「ちょっとー! 今度は何処にいらっしゃる気ですかー!?」

 制止の声は届かない。
 だって今の私は無敵だもの。
 さあ、また外へ行こう。
 まだ見ぬ素敵な世界に出会うために―――!!



997 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2006/11/29(水) 19:42:070

http://charaneta.sakura.ne.jp/ikkoku/img/1141653285/997.jpg (27KB)




















 ―――胸元で、しゃらんと勲章が翻る。
 十字に燕尾を刻んだ、蒼い蒼い勲章。
 その表には「Pour le Merite」。
 その裏には「Lothar von Richthofen」。
 シャープな文字が躍っている。
 それは、彼女の舞踏会の記憶。素敵なパーティの証。
 大切な思い出。再び会うためのチケット。


 願え願え。願わば全ては現実へ。
 夢は―――現実の裏側なのだから。






「―――さあ、今日は何処で遊ぼうかしら?」




998 名前:『悪魔の妹』 フランドール・スカーレット ◆495/xezQ72 :2006/11/29(水) 19:44:260

フランドール・スカーレット 大殲まとめ


導入―――グール灰燼・外へ
>>231 >>273 >>294

開演―――無差別攻撃
>>335 >>350 >>361 >>369 >>373 >>389 >>391 >>392

前奏曲―――vsロンギヌス
>>385 >>411 >>446

行進曲―――対フランドール同盟大集合
>>469 >>471 >>479 >>487

交響曲―――“大空戦”
(vsロンギヌス13&長谷川虎蔵&ふみこ・O・V&エリ&リヒトフォーフェンサーカス&エアハルト)
>>509 >>528 >>534 >>543 >>555
>>561 >>588 >>598 >>617 >>622

鎮魂歌―――vsロンギヌス13&エアハルト&ふみこ&エリ―――撃墜
>>622 >>645 >>667 >>676


即興曲―――復活・レミリア解放・vsグルマルキン・脱出
>>787 >>809 >>817 >>843 >>854
>>868 >>890 >>904 >>917 >>920
>>924 >>929 >>933 >>941 >>946

終幕、そして―――
>>995-997




撃墜数:
・リヒトホーフェンサーカス
(エデュアル・シュライヒ ハマー バウマー ロタール・フォン・リヒトホーフェン)
・ロンギヌス13
(ツヴァイ フュンフ ドライ)
・エリ・カサモトwithスラグフライヤー


計:八機―――「ブルーマックス」を入手しました!!

999 名前:『紅い悪魔』レミリア・スカーレット ◆remyaGVniw :2006/11/29(水) 20:16:250

>>947
あの飛行船での事件があってから数日が過ぎた。
私は紅魔館の自室でいつもの様に咲夜が淹れた紅茶で優雅なティータイムを満喫していた。
私は今でもあの時の出来事を忘れてはいない。

そしてあれからパチェとフランはと言うと―――どうやらパチェは
外の世界の科学と言う魔法が気に入ったらしく、今でもヴワル大図書館の中に
篭りっ放しである。小悪魔から聞くところによれば、何でもあの飛行船“ツェッペリン・ノイエ・アラ”
のミニチュアを造ったらしいとか…。そしてフランは―――どうやら紅魔館の外へ飛び立ったらしい…。

「…全く、あの門番―――全然使えないわね…」

…と、門番に対し苦言を言うも、そう言うレミリアの表情は何処か和らいでいた。

「フフフ、どうやらあの子も―――本当の遊びという概念に目覚めたのかしらねぇ」

そう言って、レミリアはティータイムを終えて、それからずっとレミリアの傍にいた咲夜に―――

「どうしました、お嬢様?」

「―――ちょっと博麗神社の所まで行ってくるわね」

そして私はまた普段どおりの幻想郷の一日を過ごしていく。

「(フフ、出来ればまた外の世界に行ってみたいものね)」

心の中で、レミリアがそう呟いたが…それはまた別の話である。

【エピローグ 完】


1000 名前:『紅い悪魔』レミリア・スカーレット ◆remyaGVniw :2006/11/29(水) 20:17:540

レミリア・スカーレット レス番纏め

>>205>>206
【導入→開幕】

>>277>>315
【回廊に移動→グルマルキンに遭遇】

>>334>>343>>365>>383>>394>>407>>422>>439
>>454>>466>>481>>500>>523>>539>>559
【レミリアVSグルマルキン】

>>586>>626>>640>>729>>730
【衝撃!!? レミリアVSパチェ】

>>787>>809>>817>>843>>854>>868
【フラン復活 レミリア正気に戻る】

>>904>>917>>920>>924>>933
【最後の決着 そしてグルマルキンの最期】

>>947
【パチェ フランの三人で飛行船を脱出】

>>999
【エピローグ】

1001 名前:大尉:2006/11/29(水) 20:21:450

ハンス・ギュンシュ大尉 闘争記録

導入 >>224 >>225

vsイリーナ&レイオット+1(場所:パーティールーム)

>>336 >>356 >>375 >>386 >>404 >>410 >>403 >>404
>>444 >>464 >>465 >>488 >>491 >>492 >>518 >>527
>>545 >>549 >>560 >>576 >>592 >>600 >>607 >>621
>>633 >>643 >>656 >>675 >>725 >>738 >>747 >>749
>>765 >>782 >>796

vsイリーナ&ダンテ&哀川(場所:パーティールーム)

>>778 >>792 >>804 >>813 >>823 >>829 >>836 >>840
>>849 >>851 >>860 >>862 >>870 >>879 >>891

1002 名前: ◆LOSJACkEtA :2006/11/29(水) 21:11:330

>>>>950>>952>>953>>955

【現在位置:南極大陸――狂気山脈を望む大地】


 ――そして、何もかもが収束を見せた。
 とある魔女の野望も。異界の錬金術師の狂気も。破滅へと駆け続けた偉大な飛行船も。
 何もかもが消え去り、あらゆる怪異が消え去った極寒の地は、あたかもそのような事象など何もなかっ
たのだと言わんばかりに、澄み切った青空を覗かせていた。

 狂宴の残滓として残されているものは、遙かに天上から振り下ろされた、裁きの一撃が穿った大孔と、
飛行船を構成していたであろう瓦礫の一部。
 それだけが、まるで「忘れるな」と言わんばかりに、一切が平穏へと回帰していく只中にあっても、己の
存在を主張し続けていた。

 だが――それすらも、ほんの僅かの間だろう。
 そう遠くないうちに、それらの傷跡は氷雪へと覆われ、ほんの僅かな面影だけを残し、時間というものの
彼方へと押し流されていく。
 それこそが歴史というものであり、如何な狂気や怪異が成した事象であれ、世界という巨大な生き物の
前には、ほんの些細な出来事でしかないことの証左だった。

 全ては、あるべき姿に――
 飄々と吹き抜ける風が、傷ついた極寒の大地を、撫でていく。
 癒やすように。慈しむように。だがそれは、これまでにも幾度となく繰り返された、世界の姿――




 そこに。
 ぼふ、という間の抜けた音を立てて。
 瓦礫と氷雪を押しのけるように、腕が一本、生えてきた。

 腕だけではない。
 頭。肩。胴。そして――脚。
 共通しているのは、その全てが傷だらけの、いや、すでに一部が損壊している装甲を纏っている、と言う
こと。あたかも中世騎士の纏っていた全身甲冑を思わせるその姿。

 全てが平穏へと立ち戻ろうとしている最中にあっては、異形、ともとれる装甲を身に纏った人物。
 それはぎこちなく首を巡らし、周囲を見回したかと思うと―――

1003 名前:Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA :2006/11/29(水) 21:12:190

>>1002


「――――あれ?」


 と。何とも間の抜けた声を発していた。
 そして、その声をきっかけとしてか、傍らの地面が同じように隆起し――その中から、信じがたいものが
現れた。ええと――その、なんというか。これは。

 ――金だらい……?
 その金だらいは、上に乗っかったままの雪を振り落とすかのように小刻みにふるえると、さらにすっと浮
き上がり。

「――おはようございます。レイオット」

 その中から、カペルテータ君が現れた。

「……おはよう。その――お前、なにやってるんだ?」

 至極当然の疑問。だが、返ってきた答えはさらに意味不明なものだった。
 きょとん、とした表情でしばらくこちらを見つめた後――何か得心したような仕草で頷き。

「――タライがなければ即死でした」
「……いや、そうではなくて」

 なんというか、つっこむ気力すら失って、俺は肩を落とす。
 金だらいを傘のように被ったままのカペルは、やはり不可解そうに小さく首をかしげている。

「……ともかく、移動するか。こんなところ、寒くて敵わん。
 というか、よく今まで凍死しなかったもん――だ!?」

 立ち上がろうとした、その瞬間。
 全身に、重く鈍い、それでいて耐え難い苦痛が、突如として襲いかかる。
 何事だ――と声を上げるよりも速く。
 ある意味でおなじみとなったこの痛みに、その原因を思い出す。――アクセラレータ。身体強化呪文。
 その、副作用が、全身を襲っているのである。
 先ほど何の痛みもなく動けたのは、ある意味で奇跡に近い。
 或いは。冷気で、感覚が鈍っていただけかも知れないが――少なくとも、苦痛に呻く今の俺には、何の
解決になっていないのは事実だった。再び、雪の中へと崩れ落ちる。

「……これは……参ったな……。しばらく……動けそうも……ないぞ……」

 すでに喋ることにすら苦痛を感じるようになっている。
 まあ、強化率から考えて、あと半日もすれば動けるようになるはずではあるが――
 この極寒の地で、ろくな防寒具もなく、生きていられるとはとうてい思えない。

「……俺等が……くたばる前に……。救助隊とかって……来てくれると……思うか……?」

 絶え絶えと言葉を続ける俺に、冷酷にもカペルは首を左右に振ってくれた。
 そして――何を思ったのか、頭からそれを外して、こちらに差し出してくる……タライ。

「…………ああ――良い、天気だな――」

 何もかもがどうでも良くなって、視線を空へと移らせる。
 空は、出航のその時と同じように。嫌になるぐらいに晴れ晴れと澄み渡っていた。



 ……奇跡的に南極探検隊が二人を救助するのは、凡そ三時間後のことだったのだが。
 モールドの精で、ハイジャック犯との関連が強く疑われることになるのは、今の二人にとっては、どうでも
いいことだった。


【レイオット・スタインバーグ&カペルテータ・フェルナンデス:どさくさに紛れて生還】

1004 名前:Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA :2006/11/29(水) 21:18:350

レス番まとめ

導入
>>156>>157>>158

祭り開始
>>267(>>312:白昼夢)>>313

パーティールーム突入(レイオット&イリーナvs”大尉”
>>342>>367>>403>>421>>444>>465>>491>>492>>518>>527
>>545>>560>>576>>592>>600>>607>>621>>633>>643>>656
>>725>>738>>747

その後。(何故か生きていた二人)
>>1002>>1003

1005 名前:コーディー:2006/11/29(水) 21:50:250

【エピローグ】

「−―…で、何でココにお前が居るんだよ」
『――修羅の巷に踊る影。武神流、戦場に場所は問わぬ…よくぞ生きてくれた』

あの世を覗くつもりが俺の寝顔をコイツに覗かれるとは色々な意味で虚しい…。
山中の何処かでぶっ倒れた俺を武神流…ことガイに回収され、そのままコイツの
米軍の知り合いの私設軍隊の救助船まで運ばれた。俺と共闘していた他の面々…
ストライダーとかいうあの蒼い忍者は海面に浮いていた所を回収。怪我自体は
酷くはなかったがもう少し遅ければ不味かったらしい。同じく、アテナとレミア等
女面々も南極を彷徨っている所を私設軍の連中が回収。コッチもコッチで色々
やばかったらしい。――俺?囚人服で南極の山ん中放っぽり出されて無事な訳が
無ぇだろう。右腕の出血多量も手伝ってあのままガイがこなけりゃ恐らく――

…ま、つまりは全員「ギリギリ」だったって訳だ。

ガイ曰く、今回の騒動の犯人はグルマルキン・フォン・シュティーベルとかいう女。
他にも途方も無い凄腕ばかりが乗船していたとは聞く。確かに二度程交戦したが
どれもマジでやらねば勝てる気はしねぇ…の連中の段違いの邪気とやらに
数日前から気づき出向こうとしたものの、まさか空――飛行船でやるとは思っても
見なかったらしい。とはいえココで諦めないのが正義の塊の恐ろしい所。
米軍上層部の不正を正す為に設立した私設軍の知り合いに頼み秘密裏にこの
飛行船を追跡していたようである。ソイツもガイと似た正義の塊だったのが
幸いしたのか、2つ返事でわざわざ救助船貸すとは…扱い易いな正義って。
「…せっかくの大喧嘩だってのに首謀者はおろか中枢にすら行けなんだからな。
――ハン、大きな餌逃して何が無事生還だ」
『事情も知らぬし、何よりお主や拙者だけでは勝てる闘いとも思えぬ。生きて
帰れただけでも良しでござろう…首謀者も含めて』「…生きてんのか?」
『微かだが弱々しい力を感じる。このままで終われる戦いでは無い…』
「――上等。良い暇つぶしだ」

――船内には飛行船で共闘した面々が居た。何をどう話したかは覚えては居ない。
久しく誰かと同じ目的を共有するその感覚に、酷く疎ましさを覚えつつ、だが
生きてるのはコイツ等の力も有ってこそ、と感謝らしい何かは感じていた。
頬を突き外の虚空を眺めながら只漠然と…   ああ、退屈だ。



【オーストラリア メルボルン空港】

あくまでまだ手配されてるのはアメリカのみらしい。警官は俺を見ても別段
気にも留めず…それとも単にあの私設軍隊持つアイツの権力で黙殺されてる
のか?まあ、何だって良いや。何にせよ隠蔽工作に俺達の分の偽造パスポート。
こんな裏への手回し正義の塊のアイツが許すとは思えんが、アイツも今は
表立って行動はできないのだろう。正義の名の下、米軍上層部の腐敗とそれを
行う犯罪組織共を裁くには、まだ途方も無い時間が掛かるとは聞くしな…
正義の塊は難しい。そして扱い易い…

『…街に戻らぬのか?お主の帰りを待つ者が必ず――…』
「お涙頂戴のヨタ話なんざ言う口聞く耳無ぇよ」

アテナ、レミア、飛竜。ひとまずの別れとはいえ、別段何か別れの際の台詞など
こいつ等に言う気も無かった。闘う身ならいずれ敵として会う可能性も有るだろうし、
何より何か感謝を言う資格も無い…。ガイにそう言い放ち、踵を返し
俺は去った…筈なんだが決まらないのが俺なんだよな…

『武神獄鎖拳!!!!!!!!!!!』

流石武神流。死地から生還した怪我人に手加減が無ぇ。流れる様な連携で
俺をしこたま殴った後蹴り飛ばしやがった。ちゃんと礼くれいは言っておけと
言う事なんだろう…。…まあ、お陰で何かフッ切れたが…ま。今度やる時は
とことんボコにしてやると心の片隅でガイに誓いながら

1006 名前:コーディー:2006/11/29(水) 21:51:050

       「…楽しかったよ。」


ああ、クソ。それでもこんな短的な事しか言えねぇ。一度社会から離れると
こうも伝える言葉が無くなるのか…。こんなでも良ければ…こんなので
せめて良けりゃ受け取れテメエ等…。

「C R U S H !」

周りの迷惑なんざ知ったこっちゃない。その場で高速回転した後、余った
左手で竜巻を巻き起こしながらアッパーを放ち…

そしてその竜巻が収まった頃には俺は空港から姿を消していた。

飛行船でレミアから支給されたナイフを、返すぜとばかりに
地面に突き刺して―――


その後、メトロシティの元英雄がどうなったのかは定かでは無い。
刑務所にはまだ戻ってはおらず、オーストラリアにて
マフィアと抗争していたという目撃情報も有る。昨今では、日本にて
彷徨っているとの情報も有った。求むまま闘い、気ままに歩き、また
探しているのだろう。自分の満たされない何かと、まだ付いていない今回の
騒動の「再戦」を求めて――


1007 名前:囚人:2006/11/29(水) 21:51:240

レス番纏め

英雄遊覧(始まり)
>>239

退廃遊覧(アテナ レミア 遭遇)
>>303>>340
ファイナルファイト(VSジェームズ ホワン)
>>379>>419>>478>>691>>711>>718

ストライダー(飛竜遭遇)
>>453>>525>>551>>653

休息遊覧(休憩)
>>503>>564>>642>>691>>777

アテナ再会
>>732

デッドエンド?(VSパンデモ二ウム)
>>799>>833>>894

アイロニー(生還?)
>>945

その後>>1005>>1006


1008 名前:サクラ ◆6jagu9Uf/. :2006/11/29(水) 22:27:030



レス番まとめ

(導入)
 >>233-236

(探索/迷走)
 >>345

(vs津村斗貴子)
 >>395 >>406 >>433 >>442 >>458 >>480 >>519

(死亡)
 >>533



1009 名前:◆QaSCroWhZg :2006/11/29(水) 23:50:300



「惨憺たる“戦後”だな、こうなる事も織り込み済みだったとはいえ。――」
「は。ですが最悪の事態だけは免れ、敵は一兵残らず朽ち果てました。
 その結果を以って何よりとすべきかと」


 英国はロンドン郊外に居を構えるヘルシング機関本部――その局長室で交わされた主従
の会話である。
 あの事件以後の、つまり『ツェッペリン・ノイエ・アラ』墜落からの大混乱が如何なるもので
あったのかを知るのは容易い。テレビをつけるか新聞を買うか、またはネットに繋げば済む。
 もっともそれで判るのは、この事件が世間的にはどう後処理されたかという事のみだ。
 本当に大事なこと、乃至本当にどうでもいいことは、何時の世もマスコミには取り上げられ
ないものだった。


「しかし、こちらの伯爵(グラーフ)は意気盛んな事だな」

 葉巻をくゆらせながら、インテグラはほんの僅か苦笑する。
 デスクの上に置かれた『ロンドン・タイムズ』の一面では、飛行船王の末裔が熱弁を奮ってい
る。惨憺たる大事故にも関わらず、既に二号機建造計画に着手するのだという。
 笑みを紫煙に紛らせて消し、インテグラは脇に控える執事の名を呼んだ。

「ウォルター、我々は――勝ったのか?」


 鞘に剣を収めるような声で尋ねた女は、すぐ「いや」と自分で否定した。
 再び口を開いた時には、声には直立する槍の穂先のような硬度が戻っていた。

「いや、我々は確かに勝った。奴らは負けた。それが消え得ぬ事実だ。
 せめて胸を張らねば、奴らに魂までも踏み躙られた人々の、そして戦いの業火にその身をく
べた戦士達の墓碑を見据えられはしない。
 平穏は靴底でこそ嘆かしめるものだ。――そうだろう?」
「その通りでございます(Exactly)」

 深々と執事は頭を下げた。彼の仕えるべき主は、未だそこにいた。




「時にお嬢様、このロングという男の処理はどう致しましょう? 状況として概ね間違いない
かと存じますが、戦死という扱いで?」
「いや」とヘルシング局長は首を振った。「行方不明。それで良かろう」
 

1010 名前:◆QaSCroWhZg :2006/11/29(水) 23:51:550



 風はびょうびょうと哭き、時におんおんと吼え、そして流れる雲は黙して語らない。
 それを散りゆくもの達への鎮魂とも、散って逝ったもの達の怨み節とも取る人間もいよう。

 だがしかし、きっと風も雲も何も考えていないのだ。
 何にでも己の容(かたち)がぴたりと嵌ると思うのは、恐らく人の不遜であろう。


 そんな地上の些末事になど斟酌せず、兎も角も風はうたう、在りし日のうた。


長谷川虎蔵 レス番纏め

導入
>>228>>229>>230

妖精の舞う空
>>259 >>260 >>293 >>304 >>326 >>335 >>361 >>391 >>397 >>436 >>446 >>447 >>479 >>509 >>528 >>536
>>556 >>588 >>609 >>632 >>650 >>681 >>682 >>694 >>706 >>710 >>714 >>715 >>723 >>726 >>744 >>757

その後
>>1009

1011 名前:飛竜 ◆HIRYUmxRKo :2006/11/30(木) 00:30:580

終局
>>949
 眩しさに眼を開ける。
 最初に見えたのは、紅い装束。武神の名を継ぐ忍。次いで、共に戦った者達の姿。
 それぞれが傷を負ってはいるものの、生きていたらしい。
悪運が強いのか、それとも往生際が悪いのか。

 そして、紅い装束の男――凱が口にした、一つの事実。
『首謀者が生きている』
 ならば、往くべき道は唯一つ。例えこの身体が滅びようとも、二千年の時を経ようとも。


 短い再会の後に訪れた、それぞれの道を往く時。
『…楽しかったよ』
 ぶっきらぼうに告げる元英雄に、口元を覆うマフラーを外し、
「ふっ……貴様らしい挨拶だ」
 微笑を浮かべて見せ、背を向けた。

 背後でなにやら騒ぎが起こっていたが、振り向かずに歩を進める。
「さよならだ、戦友達。二度と会うこともないだろうが……お前達の事は、忘れない」

 任務は続く。世界の影に生きる男は、再び世界の影へ消えていった。


導入 ―防衛圏〜踏み込め!―
>>256

VSロンギヌス13 ―銃弾回廊―
>>283>>305>>327>>347>>373

下層部侵入→倉庫にて戦闘に遭遇 ―動輪―
>>424>>453>>478(>>505)

コーディーとの対話→中層部回廊へ ―一撃―
>>504>>525>>537(>>485)>>551>>572(>>519>>564>>574)>>602(>>619)>>642>>653>>664

コーディ&レミア&飛竜VSジェームズ・ホワン ―野獣―
>>665>>671>>683>>691>>699>>701>>707>>711>>713>>716>>718>>719>>731

オゼット・ヴァンシュタインの演説、アテナと合流 ―逆転の速力―
(>>695>>698)>>732>>748>>759

非常警報、コーディ&レミア&アテナ&飛竜VSバンブー・パンデモニウム ―大走破―
>>770>>773(>>777)>>799>>800>>808(>>772)>>818>>824>>833>>838>>847>>856>>869>>894>>903>>907>>927>>930-931>>940>>945

落下 ―雲塊―
>>949

終局 ―さらに…―
>>1011

1012 名前:ヤン・ヴァレンタイン:2006/11/30(木) 00:31:250


―――死者が吼えるな虫唾が走るぜ。


・導入

>>193>>194>>197>>291

・パーティーホールはかく語り

>>298>>322>>351

・死とは生と対極の概念である?

>>376>>330>>405>>423>>451>>463


 うるせーよクズ黙れ蟲ケラのように死ね―――

1013 名前:ヴァーミリオン・CD・ヘイズ ◆/CD/iS.AAU :2006/11/30(木) 01:10:410

―――そして、全ては虚無へと還る―――

ヴァーミリオン・CD・ヘイズ レス番纏め

行動開始 〜Overture〜
>>248 >>249

銃火の洗礼 〜First contact〜 (withパチュリー VSルーク)
>>296 >>331 >>349 >>357 >>393 >>430 >>432 >>445 >>474 >>502
>>506 >>524 >>540 >>573 >>582

魔女の饗宴 〜Beauty&stupid〜 (VSグルマルキン パチュリー離脱 ロンギヌス13&シエル介入)
>>586 >>604 >>612 >>613 >>624 >>640 >>660 >>705 >>709 >>717 (以上一日目)
>>734 >>753 >>769 >>781

間章 終わりの予兆 〜Caution〜
>>772 >>825

そして破滅へ 〜Last dance〜 (ふみこの接触 VSモリガン VSレザード VS聖櫃)
>>858 >>875 >>888 >>892 >>902 >>915 >>934 >>943 >>950 >>951
>>953 >>957


以上。

1014 名前:レミア・シルヴェスタW世 ◆MVlNEREMIA :2006/11/30(木) 01:29:480

>940

約3時間前、私と客室乗務員は奇跡の南極脱出を果たした。

吹き荒れる吹雪のせいで完全に道に迷い―――元から南極に道など無いが―――
雪洞で吹雪が収まるのをまとうとしたところ、
隣で「なんだか眠くなってきちゃった」とか言い始めたので、
はたきつつ励ましていたところをコーディーの仲間の私設軍に拾われた。

今乗っているのは南極発オーストラリア行きの砕氷船。
船の中でコーディーとも会い、マスクをつけた男も生きていた。
結局誰も死んでいなかったのだ。

防寒具をつけながらも肌寒い南極の空気。
凛と張り詰めた夜はまさに吸血鬼に好ましい一時だった。

この夜の中、海を見ながら考え事をする。
もちろん今日の出来事についてだ。

「――――――結局真相は氷の中ということね」

グルマンキン・フォン・シュティーベルは死亡し、
聖櫃は行方不明(恐らく破壊されたのだろう)
新たなるツェッペリンは炎上、南極の空を赤く染め上げた。

「操縦室にまでたどり着ければ今回の真相がわかったのに、
邪魔が入りすぎたわね」

空間を飛ばし、私に穴を開けた男―――
あいつは身投げをし、行方不明となった。
生きているならば今も南極をさまよっていることだろう。
―――生きていない可能性のほうが大きいが。

もう一人、いや、ひとつの邪魔。
高度な技術で造られた自動人形。
あれと戦ったおかげで南極をさまよう羽目になったし、
何よりも真相を確かめられなかった。
面白くない。非常に面白くない。
いったい何のためにあんな骨董品を用意したのかがわからないなんて、
寄生体ではないが、気になるのだ。

「―――――朝日、か」

気がつけば月は落ち、空は明るくなった。
不浄のものを焼き尽くす聖なる太陽。
こんなものは吸血鬼にとって不似合いだし、眩しいし、熱い。

あんなものに当たっていたら灰になりかねない。
私は船内に戻ることにした。


コーディと何を話したか?
そう
―――何を話したのだろうか。
生きていたのね
詳しく覚えてない、というより忘れたことにする。

よかった、生きてて

――――――――――吸血鬼にとってひどく不似合いな言葉だったような気がしたから。

1015 名前:レミア・シルヴェスタW世 ◆MVlNEREMIA :2006/11/30(木) 01:30:160

>>1014

2006年某日
オーストラリア・メルボルン空港

>「…楽しかったよ。」

この言葉しか彼は残さなかった。
そういって消えたのだ。どこに行ったかも判らない。
いや、知ろうとしない。知ってはいけない。

「――――――馬鹿」

ありえないことにコンクリートに刺さったナイフ。
これを抜いてトランクにすばやく仕舞う。

「折れたらどうするのよ」

空港でナイフを取り出す非常識さと、
空港の床にナイフを突き刺す非常識さを素直に罵った。

1016 名前:レミア・シルヴェスタW世 ◆MVlNEREMIA :2006/11/30(木) 01:31:330

レミア・シルヴェスタ レス番まとめ


序幕 新たな時代のツェッペリン

>>165>>166

第一幕 倉庫の侵入者(vsジェームズ・ホワン with アテナ&コーディー)

>>306>>311>>328>>332>>337>>346>>360>>371>>379
>>384>>396>>408>>412>>428>>453>>472>>485

第二幕 負傷と邂逅(with 飛竜&コーディー)

>>503>>519>>537>>564>>572>>574>>602>>619>>642
>>653>>665

第三幕 切り裂かれる空間(vsジェームズ・ホワン with 飛竜&コーディー)

>>671>>683>>691>>699>>701>>707>>711>>713>>716

第四幕 再会、そして共闘(with アテナ&コーディー&飛竜)

>>718>>719>>731>>748>>759

第五幕 デーモンの全て(vsバンブー・パンデモニウムwith アテナ&コーディー&飛竜)

>>773>>800>>808>>818>>824>>838>>847>>856>>869
>>903>>927

第六幕 崩れゆく世界(with アテナ&コーディー&飛竜)

>>930>>931>>945>>949>>940

閉幕 それぞれの道

>>1014>>1015

1017 名前:柏崎理香:2006/11/30(木) 03:47:050


 どこのピラミッドから発掘されたのか、というのが、
ベッドに横たわるこの子を見た感想だった。
肩と背中の骨にヒビ、いちいち挙げるのも嫌になるほどの筋肉繊維の断裂、
そして殴打されたとおぼしき頬。まぁ最後のは軽傷みたいだけど。
とにかく、全身を包帯で縛られたこの子は、率直に言って生けるミイラに見えた。

「なんでこんなに無茶やったんだか」
「う〜ん、女の人生には色々あるんだよ。ごめんね」
「きいたふうなことを」

 快適極まりないはずの豪華飛行船は謎の遭難、死傷者多数。
自分だけトンズラしようと思えばできたはずなんだろうけど、
この子がそれをするはずない。軽口を叩いてはいるけど、
実際に「色々」あったんだと思う。鬼より強いこのお人よしを、
これだけ痛めつける出来事が。いつもどおりこの子は多くを語らない。
あたしを怖がらせるのが怖いから。あたしが離れていくことが怖いから。

「でもね。ちゃんと治るって、お医者さんも言ってたよ。
リハビリとかもちゃんとやれば、桜が咲くころにはすべて元通りでしょうって」
「今初冬だろ。名前も知らんようなやつらのために自分からボコられに行って。
あんた知ってる? リハビリって言うほど楽じゃないんだよ。なんでわざわざ……」
「う〜ん、なぜかそうしちゃうんだよ。ごめんね」

1018 名前:柏崎理香:2006/11/30(木) 03:47:400

 ミイラをあまり疲れさせるわけにもいかないから早めに退出したけど、
病院の濁った空気から逃れたことを喜ぶ気にはなれなかった。
入り口には「報道に携わるもの」とか自称するバカどもが押し合い圧し合いしている。
子供は大人を見て育つと知れ。病院で騒ぐおまえたちのアタマに隕石が落ちますように。

「桜が咲くころ、か」

 あの子は桜が好きだもんな。見るのも食べるのも。
だけど病院の敷地に植えられた木々は北風にふるえ、つぼみは固く縮こまっている。
冬桜、なんて都合よくはいかないらしい。現実だね。

「さくら〜、さくら〜、ふゆざくら〜 ♪」

 なんとなく歌がこぼれた。なんの歌だっけ。
こんなぶっちぎりアナログテイスト溢れるのは、たいていあの子にムリヤリ聴かされた
懐メロ系だと思うんだけど。アイドルとかやってるわりに趣味が古いよね。
桜が咲くころにはすべて元通り、か。



 桜 桜 冬桜
 春にそむいて咲くがいい
 ただひそやかに 心にそっと降り注ぐ



「ただひそやかに、か。あんたそれでいいの?」

 振り返っても2階の窓にはカーテンがかかっていて、
困ったようなあの子の笑顔を見ることはできなかった。
 

1019 名前:柏崎理香:2006/11/30(木) 03:48:580

 内患
>>163、>>164

 帝国の亡霊は斯く語りき
>>220、>>221、>>222

 行動開始
>>284

 味方、敵、味方……
>>303、>>306、>>311、>>328、>>332、>>337、>>340、>>346
>>355、>>360、>>371、>>379、>>384、>>396、>>408、>>412
>>419、>>428、>>435

 ストライダー登場
>>453

 新たな一手
>>456、>>461、>>472

 三者三様
>>498、>>505、>>515、>>517、>>529、>>538、>>566、>>575
>>591、>>594、>>608、>>620、>>631、>>721

 続・帝国の亡霊は斯く語りき
>>695、>>698、>>722

 再会そして再開
>>732、>>748、>>759

 破滅開始
>>772、>>773、>>777、>>799、>>800、>>808、>>818、>>824
>>833、>>838、>>847、>>856、>>869、>>894、>>903、>>907
>>927、>>930、>>931

 桜の木の下で
>>1017、>>1018



 あの子の相手してくれた人たち……って、人じゃないのもいるのか。
とにかく、大変だったでしょ。ダンケね。

1020 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/30(木) 20:09:290


周辺空域闘争 ――フランドール・ザ・ウォー――
レス番纏め

導入
 >>264

ロンギヌス13 ―飛竜、シエル迎撃―
 >>243>>256>>283>>302>>305>>327>>341>>347>>373

ローレライの囀り ―vsサーカスand戦乙女隊―
 >>162>>247>>276>>278>>288>>297>>304>>324>>350>>368
 >>389>>416>>429>>449>>470>>489>>510

スカーレットの魔王 ―フランドール大決戦!―
 >>228>>229>>230>>231>>273>>294>>259>>260>>273>>293
 >>304>>326>>335>>350>>361>>369>>385>>391>>397>>411
 >>436>>446>>469>>471>>479>>487>>509>>528>>534>>543
 >>555>>561>>588>>598>>617>>622>>622>>645>>667>>676

魔弾 ―ミスティアvsレップ―
 >>536>>550>>562>>580>>587>>599>>611>>629>>646>>657
 >>666>>678

低気圧の主 ―虎蔵vsサーカスandロンギヌス13―
>>609>>632>>650>>681>>682>>694>>706>>710>>714>>715
>>723>>726>>744>>757

ラインダース大尉の逡巡 ―裏切りの布石―
 >>622>>680

裏切りのヴァンシュタイン ―オゼット空域離脱―
 >>695>>698>>704>>786

ラスト・フライト ―ラインダースvsレッドバロン―
 >>712>>727>>746>>807>>831>>839>>867>>878

ローレライの歌 ―epilog―
 >>771>>958


空戦参加者 ―All Cast―
 ミスティア・ローレライ >>975
 フランドール・スカーレット >>998
 エリinSV-F07Vスラグフライヤー=@>>988
 長谷川虎蔵 >>1010
 シエル
 飛竜 >>1011
 ロンギヌス13 >>979
 ヘル・レップ >>976
 ラインダースinフォッケウルフTa152H-1 >>993
 レッドバロンwithリヒトホーフェン・サーカス >>968
 オゼット・ヴァンシュタインwith新戦乙女隊 >>994

1021 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/30(木) 20:13:280


 吸血大殲 Blood Lust 大規模闘争 The Carnival
      空戦祭/南極戦/ナチ祭り
 「新標綱作戦」 ――Operation Neue Ziel――

 参加者総レス番纏め

導入纏め >>264

足掻きの乗客たち
 麻宮アテナ >>1019
 ケイト・コナー >>981
 哀川潤 >>986
 コーディ >>1007
 イリーナ・フォウリー >>964
 レミア・シルヴェスタ4世 >>1016
 ビリー・龍 >>966

阻止の狩人
 コダマ >>960
 リゾット・ネエロ >>969
 イグニス >>984
 飛竜 >>1011
 高木由美江 >>978

東方からの来訪者
 ミスティア・ローレライ >>975
 パチュリー・ノーレッジ >>974
 フランドール・スカーレット >>998
 レミリア・スカーレット >>1000

栄光のルフトヴァッフェ
 ロンギヌス13 >>979
 マンフレート・フォン・リヒトホーフェン >>968
 エアハルト・フォン・ラインダース >>993
 ふみこ・オゼット・ヴァンシュタイン >>994

反撃のエア・フォース
 エリ・カサモト >>988
 長谷川虎蔵 >>1010

新たな怪物
 アドルフ・ヒトラー >>980
 弓塚さつき >>944
 レイオット・スタインバーグ >>1004

総統の子ら
 ヘル・レップ >>976
 フランツ・フェルディナンド >>977
 大尉ブラッド >>987
 大尉 >>1001
 ヘルマン・タッツェルヴルム >>992

傭兵者たち
 ヤン・ヴァレンタイン >>1012
 ルーク・ヴァレンタイン >>990
 バンブー・パンデモニウム >>989

ワルプルギスの魔女たち
 タバサ >>983
 サクラ >>1008
 ロットン・ザ・ウィザード >>967
 ヴァーミリオン・CD・ヘイズ >>1013
 レザード・ヴァレス >>991
 グルマルキン・フォン・シュティーベル >>972

1022 名前:グルマルキン・フォン・シュティーベル ◆2B6Bo7ac06 :2006/11/30(木) 20:16:570


吸血大殲第58章 Jeux Interdits ―禁じられた遊び―

■闘争レス番纏め
 名も無きクドラクvs名無しモロイストリゴイカ
 『――Nameless Waltz――』
 >>28

 弓塚さつきvsジャスミン・メンドーサ
 『花のもとにて』
 >>63

 弓塚さつきvsエリ・カサモト
 ――世界で一番昏い夜――
 >>117

 弓塚さつきvs七夜志貴
 吸血大殲――「獣惨%ノ金曜日」祭リ
 >>133

■途中経過レス番纏め
 『不死者王』対『英雄王』
 ―――王の矜持(凶事)―――
 >>144

■祭り纏め
 吸血大殲 Blood Lust 大規模闘争 The Carnival
 空戦祭/南極戦/ナチ祭り
 「新標綱作戦」 ――Operation Neue Ziel――
 >>145〜
 纏め
 >>1021


 このスレはこれより奈落へと突入する。
 生き足掻く者はただちに去れ。

1023 名前:シュレディンガー准尉:2006/12/01(金) 02:37:280

『最後の大隊』より本空戦祭の〆として、デス&マーダーファイルをお送りします。
尚、前提としてファイルは………

  デスファイル、マーダーファイルともルール違反者(携帯による参加者)はノーカウント
  荒らしを行いアク禁を受けた人物もノーカウント

  ザコキャラは数が多すぎるのでフォントサイズを縮小表示
  リストの番号は祭の時間軸、流れの順に記載

  戦闘不能による行動不能や離脱、寝落ちによるフェードアウトは死亡者に数えない
  最終的に死亡と断言されていない者もカウントせず

となっていますので、閲覧の際にはその点に注意してください。
又、マーダーファイルは、

  複数による連携攻撃による場合は事実上のトドメを刺した者をマーダーとしてカウント
  自滅による死でも直接的に死因と因果関係がある場合はマーダーとしてカウント
  複数名殺害したものは殺害数を表記

としてカウントしていますので、ご注意下さい。


1024 名前:吸血大殲 空戦祭 デスファイル:2006/12/01(金) 02:39:010

NO.1
死亡者名 「リヒトホーフェン・サーカス」 エデュアル・シュライヒ (ザコ)

>フランドールのレーヴァテインにより即死&焼死、灰になる
>断末魔 無し
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/350

NO.2
死亡者名 「ロンギヌス13」 ツヴァイ (ザコ)

>フランドールのレーヴァテインにより爆砕
>断末魔 無し
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/373

NO.3 「ロンギヌス13」 ゼクス (ザコ)

>ストライダー飛竜のサイファーにより両断される、我がサイファーに断てぬもの無し
>断末魔 無し
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/373

NO.4
死亡者名 長谷川虎蔵

>レップ大佐の狙撃により、木っ端微塵
>「あ」
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/391 


NO.4
死亡者名 「リヒトホーフェン・サーカス」 ブルーノ・シュターヘル (ザコ)

>ミスティアの弾幕に被弾、撃墜。死骸はミスティアシールドとして以降徹底的にリサイクルされる。
>断末魔 「大尉! マンフレート大尉!」
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/402

NO.5
死亡者名 「新戦乙女隊」 フィア (ザコ)

>ミスティアの使い魔の食事になりながら、同僚のフュンフ、ゼクス、ズィーベンに消し飛ばされる。
>断末魔 (死―――)
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/449

No.6
死亡者名 ヤン・ヴァレンタイン (初のメイン死亡者)

>由美江の島原抜刀居合流───烈風──にて両断され、致命傷。『最後の大隊』により焼却処分。
>断末魔 「ま、地獄で待ってるぜーッ!」「ヒャハハハハハハハハハッ!」
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/463

NO.7
死亡者名 ホムンクルス・金城

>断末魔 「しまったあああっ! ここ、空の上だったああああっ!」「ヒィィィイヤッホオオオオオオオオオオオオオッ!!」
>大尉の拳一発で戦闘不能、床に穴を開けて逃走しようとしてそのまま転落し南極の大地の赤い染みに。
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/488

NO.8
死亡者名 「新戦乙女隊」 フュンフ (ザコ)

>ミスティアの鉤爪により、喉を貫かれる。
>断末魔 「がっ!?」
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/489

NO.9
死亡者名 「新戦乙女隊」 ゼクス (ザコ)

>弾幕をかわしている間に鉤爪が頭部に炸裂、ホームラン
>断末魔 無し
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/489

NO.10
死亡者名 ルーク・ヴァレンタイン

>ヘイズの「破砕の領域」で下半身消失後、パチュリーの「エレメンタルハーベスター」で上半身を削られ、最後に大隊から焼却処分
>断末魔 「この、私、がぁ――――」
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/524

1025 名前:吸血大殲 空戦祭 デスファイル:2006/12/01(金) 02:39:550

NO.11
死亡者名 「新戦乙女隊」 ズィーベン (ザコ)

>恐慌状態に陥り、鉤爪の餌食になる、肝は肝好きの死なない女が羨ましがる程度に踊り食いされた模様
>断末魔 無し
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/510

NO.12
死亡者名:サクラ

>斗貴子の新練成されたバルキリースカートの4本目の刃による奇襲を予測し切れず、首筋に刺さり致命傷、誰も救えぬまま惨めに散る
>断末魔 「、あ」
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/533

NO.13
死亡者名:「ロンギヌス13」 フュンフ (ザコ)

>フランドールの「スターボウブレイク」で虹の構成要素となる。
>断末魔 無し
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/534

NO.14
死亡者名:「ロンギヌス13」 ズィーベン (ザコ)

>虎蔵の矢が脳天直撃セガサターン、景品はセガサターンシロ
>断末魔 無し
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/534

NO.15
死亡者名:「ロンギヌス13」 ドライ (ザコ)

>フランドールに向けて、「悲しいけど、これも戦争なのよね」
>断末魔 「Jawohl (了解)」
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/534

NO.16
死亡者名 「リヒトホーフェン・サーカス」 ハマー (ザコ)

>フランドールのスターボウブレイク直撃、撃墜。スターフォックスではローリングは光弾反射するが空戦祭ではそうでなかったのが敗因
>断末魔 「があ!」
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/543

NO.17
死亡者名 「リヒトホーフェンサーカス」 パウル・バウマー軍曹 (ザコ)

>フランドールのレーヴァテインで燃え尽きる、真っ白に
>断末魔 「これに耐えきるのか?!」
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/598

NO.18
死亡者名 「リヒトホーフェンサーカス」 ロタール・フォン・リヒトホーフェン (ザコ)

>フランドールに神風特攻、玉砕
>断末魔 「しょうがねえ。ブルーマックスはくれてやる!」
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/614

NO.19
死亡者名 レップ大佐

>満身創痍で弾幕戦に挑み、「真夜中のコーラスマスター」の前に無数の氷塵となり、戦場を彩った
>断末魔 無し
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/666 (獣の数字)

NO.20
死亡者名 エリ・カサモト

>切り札のメタスラアタックが故障により、メタスラカミカゼアタックに変化、玉砕
>断末魔 「ああ、こんなにかわいい顔してたのね」
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/667

1026 名前:吸血大殲 空戦祭 デスファイル:2006/12/01(金) 02:40:230


NO.21
死亡者名:「ロンギヌス13」 ドライツェーン (ザコ)

>第7聖典が炸裂、アークドライブの無敵時間とハイパーアーマー属性を知らなかったのが敗因
>断末魔 無し
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/690

NO.22
死亡者名 「リヒトホーフェン・サーカス」 フォン・エンメルマン (ザコ)

>虎蔵のアビリティ「投げる」>刀×5が炸裂
>断末魔 無し
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/694

NO.23
死亡者名 「リヒトホーフェン・サーカス」 エーリッヒ・フォン・シュタルハイン中尉 (ザコ)

>虎蔵の石川五右衛門(燃えよ、斬鉄剣)ばりの空中スタント渾身の一刀で真っ二つにされる
>断末魔 無し
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/694

NO.24
死亡者名 高木由美江

>斗貴子のゴールドフィンガーをその両の瞳に炸裂、逝かされる
>断末魔 無し
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/697

NO.25
死亡者名:「ロンギヌス13」 アイン(ザコ)
NO.26
死亡者名:「ロンギヌス13」 ツヴァイ(ザコ)
NO.27
死亡者名:「ロンギヌス13」 フィーア(ザコ)
NO.28:
死亡者名:「ロンギヌス13」 アハト(ザコ)
NO.29
死亡者名:「ロンギヌス13」 ツェーン(ザコ)

>おれは長谷川虎蔵(中略)悪を討つ必殺パワー サンダーブレーク悪いやつらをぶちのめす〜にて全滅
>断末魔 「ハハハハハハハハハハ! 因果地平の彼方で待っているぞ――貴様らも、早く来るのだな!」
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/744

NO.30
死亡者名:ケイト・コナー

>ゲドウ アドルフの夕食になる。アドルフ「ママを食べてパワーアッップ!」
>断末魔 「坊や。ああ……私の可愛い坊や。ああっ、はあんっ、うくっ……坊やあっ!」
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/745

1027 名前:吸血大殲 空戦祭 デスファイル:2006/12/01(金) 02:40:550

NO.31
死亡者名:長谷川虎蔵

>低気圧そのものに変成して消滅、完全なるヒューマイノドタイーフンに………
>断末魔 「狼は死ね、鳥も死ね! 芥(あくた)の一つも残してゆくなッ!!」
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/757

NO.32
死亡者名:グルマルキン・フォン・シュティーベル(1st)

>ヘイズの『破砕の領域』が炸裂し、消滅
>断末魔 「きさま……貴様ぁ!」
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/781

NO.33
死亡者名:「ロンギヌス13」 エルフ (ザコ、ロンギヌズ13全滅)

>シエルの黒鍵から火葬式典で文字通り火葬される
>断末魔 「――喜べ。望みどおりに、世界は終わるぞ!」

http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/801

NO.34
死亡者名:大尉ブラッド

>アドルフのミラクルデスキッスを食らい、吸い尽くされ消滅
>断末魔 (ああ、来てくれたのか。復讐も妄執も、せめて最後は淡い幻想(ゆめ)の中で………
      それじゃあ先に逝って待っている。せめてジュウゾウお前はもっと後で来い。)
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/865

NO.35
死亡者名:マンフレート・フォン・リヒトフォーフェン (ザコ、リヒトフォーフェンサーカス全滅)

>フォッケウルフTa152H-1を鋼の棺桶とされ、狂気山脈に激突し、果てる。
>断末魔 「―――見事だ」

http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/878

NO.36
死亡者名 「新戦乙女隊」 アイン (ザコ)
NO.37
死亡者名 「新戦乙女隊」 ツヴァイ (ザコ)
NO.38
死亡者名 「新戦乙女隊」 ドライ (ザコ、新戦乙女隊全滅)

>「風魔の小次郎」の不知火並に即死
>断末魔 無し
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/880

NO.39
死亡者名:ハンス・ギュンシュ大尉

>ダンテの身を賭しての足止め、銃撃から人類最強によるイリーナの銀のグレートソードの一閃
>断末魔 ――――――――――――Gute Nacht
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/891

NO.40
死亡者名:“濃尾無双”岩本虎眼

>趣味一撃死のサムライに『激震! 黒神剣』にて一撃死、ゲージMAXカウンター大斬りで威力倍率ドン
>断末魔 「……出来ておる」
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/895

1028 名前:吸血大殲 空戦祭 デスファイル:2006/12/01(金) 02:41:360

NO.41
死亡者名:柳生・ジャグワァ・玄兵衛

>これぞ、虎眼流! 実は相打ちでこちらもゲージMAXカウンター大斬りで威力倍率ドンだった、小斬り一撃でも当たれば死んだ説が噂される。
>断末魔 「ムゥンッ!!」
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/910

NO.42
死亡者名:フランツ・フェルディナンド

>ふみこのナイフの破砕により明けない夜が開け、醒めない夢が覚まされる
>断末魔 無し
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/925

NO.43
死亡者名:「墜ちた森の巨人」バンブー・パンデモニウム

>アテナの鳳翼天翔(嘘)、コーディーのクリミナルアッパー、飛竜のラグナロク等の総攻撃で損傷率200%
>断末魔 そして、僕の総てを止めてくれ。
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/927

NO.44
死亡者名:グルマルキン・フォン・シュティーベル(2nd)

>フランドールのレーヴァテイン、パチュリーのサイレントセレナ、レミリアのスピアザグングニルでオーバーキル
>断末魔 「―――レミリア? レミリア・スカーレット?!」
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/933

NO.45
死亡者名:弓塚さつき

>狂気山脈を踏破、無茶しやがって………(AA略
>断末魔 「テケリ・リ、テケリ・リ」
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/944

NO,46
死亡者名:ヴァルトラウテSS中佐
NO.47
死亡者名:タッツェルヴルムSS准将

>聖櫃(アーク)の力の奔流に呑み込まれる、ずっと一緒……
>断末魔 『――――……』「今度は、私が貴方の盾になるから」
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/954

NO.48
死亡者名:レザード・ヴァレス

>聖櫃(アーク)の暴走で出来た次元の孔もとい虚無に呑み込まれ、因果律から消失
>断末魔 「私にとって重要なのは、ヴァルキュリアよ!」「私が、あなたを愛しているという事実なのだから!!」
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/955-956

NO.49
死亡者名:ヴァーミリオン・CD・ヘイズ

>GENKAITOOPAしてしまい、力尽きる。
>断末魔 「―――悪いな、親父。ちっとばかし早く、そっちに行く事になりそうだ。けど……」「勘弁、しろよな」
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/957

EX(補完分) NO.1
死亡者名:リゾット・ネェロ

>タッツェルヴルムの大リークボール一号として投げられたリゾットがコダマの大刀により打たれる、魔球破れたり
>断末魔 無し、暗殺者はクールに去るぜ……
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/803

EX(補完分) NO.2
死亡者名:エアハルト・フォン・ラインダース

>狂気山脈にてフリージングコフィンで愛機ごと氷の棺の中に埋葬される。黄金聖闘士でもこの棺を壊す事は出来ない。
>断末魔 無し
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/993

1029 名前:吸血大殲 空戦祭 マーダーファイル:2006/12/01(金) 02:42:350

NO.1 フランドール・スカーレット (殺害数 8(内訳ザコ7))

>犠牲者 「リヒトホーフェン・サーカス」 エデュアル・シュライヒ (ザコ)

決まり手 レーヴァテイン
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/350

>犠牲者 「ロンギヌス13」 ツヴァイ (ザコ)

決まり手 初見殺しの炎の剣
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/373

>犠牲者 「ロンギヌス13」 ズィーベン (ザコ)

決まり手 スターボウブレイク
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/534

>犠牲者 「ロンギヌス13」 ドライ (ザコ)

決まり手 ドライのバイナルストライクによる自爆
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/534

>犠牲者 「リヒトホーフェン・サーカス」 バウル・バウマー軍曹 (ザコ)

決まり手 パターン化するまでは必殺の剣
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/598

>犠牲者 「リヒトホーフェン・サーカス」 ハマー (ザコ)

決まり手 Enemyの文字のnとeに入らなかった故に撃墜
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/543


>犠牲者 「リヒトホーフェン・サーカス」 ロタール・フォン・リヒトホーフェン (ザコ)

決まり手 悪魔のキス
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/614

>犠牲者 エリ・カサモト

決まり手 エリのバッドラック>整備不良のコンボ
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/667

NO.2 ストライダー飛竜 (殺害数 2)

>犠牲者 「ロンギヌス13」 ゼクス (ザコ)

決まり手 サイファー
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/373

>犠牲者 「堕ちた森の巨人」バンブー・パンデモニウム

決まり手 格闘ゲームキャラによる作品・メーカーの壁を越えたヴァリアブルコンボ
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/927


NO.3 ミスティア・ローレライ (殺害数 6(内訳ザコ5))

>犠牲者 「リヒトホーフェン・サーカス」 ブルーノ・シュターヘル (ザコ)

決まり手 弾幕
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/402

>犠牲者 「新戦乙女隊」 フィア (ザコ)

決まり手 使い魔によるお食事
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/449

>犠牲者 「新戦乙女隊」 フュンフ (ザコ)

決まり手 指が五本ない鉤爪
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/489

>犠牲者 「新戦乙女隊」 ゼクス (ザコ)

決まり手 油仕事でギトギトな鉤爪
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/489

>犠牲者 「新戦乙女隊」 ズィーベン (ザコ)

決まり手 本編では鉤爪なんて飾りですよ! 神主はそれが分からんのです! だった鉤爪
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/510

>犠牲者 レップ大佐

決まり手 真夜中のコーラスマスター
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/666

No.4 高木由美江

>犠牲者 ヤン・ヴァレンタイン

決まり手 島原抜刀居合流───烈風──
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/463

NO.5 大尉

>犠牲者 ホムンクルス・金城

決まり手 金城の自滅
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/488

1030 名前:吸血大殲 空戦祭 マーダーファイル:2006/12/01(金) 02:43:010

NO.6 パチュリー・ノーレッジ

>犠牲者 ルーク・ヴァレンタイン

決まり手 ヘイズの破砕の領域>エレメンタルハーベスターのダブルアサルト
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/524

NO.7 津村斗貴子 (初の非の打ち所の無い純度100%の人間を殺した「完全な」人間(殺人者)) (殺害数 2)

>犠牲者 サクラ

決まり手 バルキリースカートの新練成された4本目の刃のクリティカルヒット
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/533

>犠牲者 高木由美江
決まり手 かませ犬返上を賭けた指撃
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/697

NO.8 シエル (殺害数 3(内訳ザコ3))

>犠牲者 「ロンギヌス13」 ドライツェーン

決まり手 第7聖典(コマンド 41236+C)
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/690

>犠牲者 「ロンギヌス13」 ツヴァイツェーン

決まり手 ツヴァイ自身のマハガルーラ+エルフのマハラギオンによる誘爆
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/735

>犠牲者 「ロンギヌス13」 エルフ

決まり手 黒鍵(214+A、B、C)から火葬式典(ボタン押しっぱなし)
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/801


NO.9 長谷川虎蔵 (殺害数 7(内訳ザコ7))

>犠牲者 「ロンギヌス13」 ズィーベン (ザコ)

決まり手 虎蔵鏑をとつてつがひ、よっぴいてひやうどはなつ。
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/534

>犠牲者 「リヒトホーフェン・サーカス」 フォン・エンメルマン (ザコ)

決まり手 スパイラル(X−MEN)ばりのダンシングソードもとい刀(236+パンチ)射出
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/694

>犠牲者 「リヒトホーフェン・サーカス」 エーリッヒ・フォン・シュタルハイン中尉 (ザコ)

決まり手 ビシャモン(ヴァンパイア)ばりの掻っ捌(4タメ6+パンチ二つ同時押し)
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/694

>犠牲者 「ロンギヌス13」 アイン (ザコ)
>犠牲者 「ロンギヌス13」 ツヴァイ (ザコ)
>犠牲者 「ロンギヌス13」 フィーア (ザコ)
>犠牲者 「ロンギヌス13」 アハト (ザコ)
>犠牲者 「ロンギヌス13」 ツェーン (ザコ)

決まり手 雷神(なるかみ)不動(MAP兵器)
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/744


NO.10 アドルフ・ヒトラー (殺害数 2)

>犠牲者 ケイト・コナー

決まり手 獣性細胞ぱっくんちょ
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/745

>犠牲者 大尉ブラッド

決まり手 喰えば喰うほど強くなるッ!
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/865


1031 名前:吸血大殲 空戦祭 マーダーファイル:2006/12/01(金) 02:43:380

NO.11 ヴァーミリオン・CD・ヘイズ

>犠牲者 グルマルキン・フォン・シュティーベル(1st)

決まり手 破砕の領域によるハイパーカウンタ
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/781

NO.12 エアハルト・フォン・ラインダース

>犠牲者 マンフレート・フォン・リヒトフォーフェン (ザコ)

決まり手 フォッケウルフTa152H-1という名の鋼の墓標
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/878


NO.13 フランツ・フェルディナンド(殺害数 3(内ザコ3))

>犠牲者 「新戦乙女隊」 アイン (ザコ)
>犠牲者 「新戦乙女隊」 ツヴァイ (ザコ)
>犠牲者 「新戦乙女隊」 ドライ (ザコ)

決まり手 車田漫画の雑魚が1コマでやられる程度の銃撃
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/880

NO.14 哀川潤

>犠牲者 ハンス・ギュンシュ大尉

決まり手 正義と勇気のスリープラトン(ダンテ+イリーナ+潤)
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/891

NO.15 柳生・ジャグワァ・玄兵衛

>犠牲者 “濃尾無双”岩本虎眼

決まり手 『激震! 黒神剣!』にてむざーんむざーん
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/895

NO.16 “濃尾無双”岩本虎眼

>犠牲者 柳生・ジャグワァ・玄兵衛

決まり手 『流れ星』にてワーオ、ワーオ、ワーオ
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/910

NO.17 ふみこ・O・V

>犠牲者 フランツ・フェルディナンド

決まり手 銀のナイフからキラークイーン第一の爆弾ッ!
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/925

NO.18 レミリア・スカーレット

>犠牲者 グルマルキン・フォン・シュティーベル(2nd)

決まり手 レーヴァテイン、サイレントセレナ、スピアザグングニルによるミックスレイド『ラグナロク』
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/933

EX(補完分) NO.1 タッツェルヴルムSS准将

>犠牲者 リゾット・ネェロ

決まり手 南斗人間砲弾
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/803

1032 名前:備考:2006/12/01(金) 02:44:140

殺害数トップ3

1位
フランドール・スカーレット

殺害数 8(内ザコ7)

長谷川虎蔵

殺害数 8(内ザコ8)

2位
ミスティア・ローレライ

殺害数 6(内ザコ5)

3位
シエル

殺害数 3(内ザコ3)

フランツ・フェルディナンド

殺害数 3(内ザコ3)


死亡者総数 

51名(内ザコ25名)

1033 名前:書けませんよ。。。:停止

真・スレッドストッパー。。。( ̄ー ̄)ニヤリッ

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