薬師寺涼子の怪奇事件簿・一刻館編
- 1 名前:◆Isu/fiGbto :2005/11/13(日) 22:18:09
- どんよりとした空模様が続くこの季節。風は肌を突き通すように寒さと鋭さを増し、
葉が徐々に少なくなっていく木々を揺らしながら吹き荒ぶ。
冬が近付いてきている証拠だろう。それを表すかのように道行く人々は足早に、コ
ートなどで硬く身を閉ざし、背を丸めながら歩いていく。地球の温暖化は進む一方だ
というのに、冬の凍えるような寒さだけは消えてはくれない。もっとも、四季折々の変
化が見られなくなるのは、日本人として寂しいものがあるので温暖化はこれ以上進
まないで欲しいものではあるが。
「……はぁ」
この職場に就いてからというもの、こうやって溜息を漏らすことが増えたかもしれな
い。涼やかな秋風とともに現れた災厄の女帝は、秋の風を寒風に変え、私の平穏を
も奪い去っていったのだから、こうなってしまうのも仕方ない。
「なに浮かない顔してるの泉田クン? 折角の美味しい食事なんだから楽しまなきゃ
損よ? それとも、何か別の悩み事?」
「警視。それをあなたがおっしゃいますか」
私に声を掛けたのは、日本人にはあるまじき体型をした女性。黒色のシルクのブラ
ウスにどこかのブランド物だと語っていた真っ赤なスーツ。それに合わせるように、こ
れまたどこかのブランド物だというコート。タイトなミニスカートから覗く脚線美は、全
世界の老若男女を魅了するに違いない。短い茶色の髪はこの寒風にさらされながら
も柔らかに揺れ、春風を思い出させる。目鼻顔立ちも整い、この世のありとあらゆる
美が備えられているといっても過言ではない。
しかし彼女は小市民に許された唯一の平穏と言う時間を奪い去っていった張本人
であり、名前は薬師寺涼子という、私の年下の上司である。二十七歳にして警視庁
刑事部参事官と、エリートコースをひた走り、巨大企業JACESオーナーのご令嬢
でもある。天は迷惑な事に、良心などの人としての美徳以外全てを与えてしまった
のである。恐らく悪魔が微笑んだに違いないのだろう。
かくいう私は泉田準一郎、三十三歳、独身、職業は警察官で、役職は警視庁刑事
部参事官付。特にこれといって秀でたところがあるわけでもない、ごくごく普通の警
察官、だったはずなのだが、何をどう間違ってしまったのか、この麗しき上司の下で
働く事になってしまったのだから、人生何があるかわかったものではない。
しかも夕食に付き合えというのだから、薄給の私としては辞退を願いたかったのだ
が、理不尽で塗り固められた涼子にその願いが通じるわけもなく、今に至るのである。
「何よ、不満だった? 市民の声を聞いてあげるのも立派なお仕事でしょ?」
「いいえ、そうではないのですが……何故私にこんな事を命じるのかが少々疑問で
したので」
「泉田クンなら大丈夫よ。あたしが保障するわ。きっとうまくやれるから」
「はぁ……そうですか。それではご期待にそえるよう、善処いたします」
その根拠のない自信はどこから湧き上がるのかを問いたかったが、無闇にやぶ蛇を
突付くものではない。それを行った者の末路はいくつも見てきているのだから、自分が
そういう目に合うのは御免こうむりたいからである。
「よろしい。あなたはあたしの忠実な下僕なんだから、素直にいうことを聞いてればい
いのよ。それよりもほら、もう着くわよ、『びいどろ亭』。本当にここでいいの? あたし、
たまには他の所も行きたいんだけど」
「いいんです。私はここのハヤシライスが好きですから」
甲斐性無しとは言わないでいただきたい。私は彼女と違って薄給なのだから。
- 2 名前:泉田準一郎 ◆Isu/fiGbto :2005/11/13(日) 22:19:42
- ようこそ、というべきなのでしょうか。どうもこういった挨拶は苦手なもので……とにか
く、堅苦しい挨拶は抜きにしまして、初めまして。
ここは皆様からの声をお聞きする場所となっておりますので、質問などがあれば気軽
にしていってもらえれば幸いかと思います。面白い話ができるのかは疑問ですが、私が
答えられる範囲の事でしたら幾らでもお答えしますので。
特に細かなルールを設ける事はしませんが、私が警察官だという事を忘れないでいた
だきたいものです。こんな場所で捕り物は流石にしたくはありませんので。
それでは、始めていきましょうか。
- 3 名前:名無し客:2005/11/13(日) 22:31:52
- 絶世の美女と、毎日一緒に仕事が出来るなんて、毎日がバラ色でしょうねぇ・・・(しみじみ
お二人が警察官になったのは、なぜですか?
- 4 名前:泉田準一郎 ◆Isu/fiGbto :2005/11/14(月) 02:48:25
- >>3
本当にそう思うのでしたら、是非とも私と変わっていただきたいのですが?
毎日が刺激的かつ、日常と非日常の世界を行ったり来たりできますので、と
ても有意義なのではないかと思います。また、脂汗と冷汗が混ざった汗をか
いてダイエット効果もあるでしょうし、ギャンブルで身を滅ぼす事もなくなるで
しょうから。
薬師寺は普通の絶世の美女とはわけが違うのです。例えば見事な脚線美
を誇る彼女ですが、その足は人々を魅了するだけでなく、人々に畏怖を覚え
させる破壊の鉄槌へと変わってしまう。自分の上司を悪くいうのもどうかとは
思いますが、彼女を普通の女性だとは思わない方がいいでしょう。出会って
しまったら、例え裸足でも逃げ出すべきです。逃げたら逃げたで、全速力で
追いかけてきそうなものですが。
彼女は自己中心的で、傲慢で、だからこそ陽性の魅力に溢れているともい
えるのかもしれませんが……私は普通に、一般的な警察官ですので彼女の
思考や行動には付き合いきれません。ですから、変わっていただけるのなら
変わっていただきたい。
まあ、辞令は下りないのでしょうけどね。
私が警察官になった理由ですか。
個人的に優秀なボディーガードを雇う力のない人々の力になるため、と以
前どこかで話した覚えがありますね。
クサイですか? 当然抱かれる感情だと思いますが、薬師寺のように「警察
権力はあたしのためにある」と言うよりはよほどいいでしょう。
あの人は全てが自分の思い通りになると信じて疑わない。事実その通りだ
と認識させられることもしばしばありますが、そんなよこしまな理由で警察官
は目指すものではないと、そう信じていますから。
彼女が警察という機構のトップに昇る可能性もありますので、私はこのまま
彼女のお守りを続けて、警察という機構が悪い方向へむかないように歯止め
を掛けなければならないと思うと胃が痛みますが、今の所彼女を止められる
のが私しか居ない以上、このまま彼女の部下で居続けなければならないので
しょうね……
- 5 名前:名無し客:2005/11/14(月) 13:07:34
- 泉田さんの名前、小泉純一郎さんと似てますね
- 6 名前:泉田準一郎 ◆Isu/fiGbto :2005/11/16(水) 01:44:29
- >>5
ええ。幸か不幸か、彼が総理大臣に就任した頃からよく言われるように
なりました。それも後一年くらいのものだと思うと、そう悪くもありませんが
「純」一郎と間違われてしまうのは、名付けてくれた両親に悪い気がします。
そもそも「準」と書くこと自体が珍しいので、これ以前から間違われる事も
多々あったのですが、この「準」と言う文字に……私のような一般家庭の事
情を聞いたところで面白い話などできるはずもないので止めておきましょう。
本当に些細な理由ですから。
それにしても小泉純一郎氏ですが、郵政民営化はどう落し所を着けるの
でしょうか。先行きがまったく見えないまま決議されてしまいましたが、地方
の小さな郵便局にして見れば、これは迷惑としか取りようがないのかもしれ
ません。
各郵便局ごとで運営しなければならないのですから、都市部などではつつ
がなく、今まで通りとは言いませんが、さほど変わる事なく運営していけるで
しょう。
ですが、地方の小さな郵便局ではどうなのでしょうか。その部分が未だに
不透明ですので……これから詰めて行くにしても、彼の任期が終わるまで
に決着がつくのかが問題でしょうね。
できればいい方向に進んで欲しいものです。選挙で選ばれた、有権者の
意志の代弁者である議員の方々が頑張ってくれればいいのですが……私
の上司に弱みを握られてしまっている方ですら、代弁者となれるのですか
ら先行きは暗いのかもしれません。
若い方々が意欲を持って政治に参加してくれるのであれば、変わっていく
とは思うのです。ですから、皆様も良く考えて自分の代弁者を選ぶべき……
なんだか随分話が逸れてしまいましたね。失礼しました。
- 7 名前:名無し客:2005/11/16(水) 02:26:21
- 見目麗しい美女がこんなにも近くにいらっしゃると、世間一般で生活する
女性への視線が厳しくなるって事はありませんか?
- 8 名前:泉田準一郎 ◆Isu/fiGbto :2005/11/18(金) 22:54:11
- >>7
ええ……彼女の美貌を毎日のように見ていますと、世間一般で「美人」
と呼ばれる方を見ても、彼女の美貌をより際立たせるに過ぎないと感じて
しまうことが多々あります。事実、グラビア誌を賑わす女性と偶然……い
え、彼女が絡んでいたので必然だったのかもしれませんが、出会ったこと
もあります。
それでも彼女の美は地に落ちることはありませんでした。創造の女神が
悪戯心を発揮したのか、天使と悪魔が同時に微笑んでしまったのか、足
の小指の爪という些細なパーツですら、一万人以上の男を魅了してしまう
のでしょう。
彼女……薬師寺涼子という女帝は、ただ立っているだけの状態ですら絵
になってしまう。もし蝋細工で彼女の人形でも作ったとすれば、好事家なら
ずとも、世の男どもは買ってしまうのかもしれません。そういえば、実際に
そんなことをいっていた男は彼女に裁かれ―――私も手伝いましたが、裁
かれていたように記憶しています。
ですが、涼子の美をより一層引き立てているのは、生き方そのものではな
いかと、私は思っています。例えば行動を起こすごとに美を増していくとでも
言いましょうか。何故か彼女の行く所には必ずと言っていいほど凶事が起こ
るのですが、それの解決を目指す彼女が一番輝いているのではないでしょう
か。
障害となる男を捻じ伏せ、黒幕の化物を打倒するときに放つ妖艶といっても
過言ではない笑み。それを間近で見てしまえば……言わずとも分かるでしょう。
まあ、彼女はその性格で随分損をしていると思いますが。警察の中にあれば
お偉方の隠し事を暴き弱みを握り、警察の外へと出れば政治家などの弱みを
握り、良くも悪くもあの人は敵を作りすぎている。いっそ襲われてしまえば、私
の苦労もなくなるのでしょうが、それはそれで後味が悪い。
彼女の部下――であり、下僕であり、通訳であり、参謀長であり、イスである
私は、辞令が出るまではお供することになるのでしょう。
比喩でも何でもなく、長生きとは無縁の世界に足を踏み込めそうです。それが
良いことかは、さて置きですが。
ああ、そうでした。もし薬師寺涼子という傍若無人、天上天下唯我独尊な、超絶
と頭に付けてもいい美女に出会ったとしても、こんなことを泉田準一郎という警官
が話していたとは他言なきようお願いしますね?
- 9 名前:名無し客:2005/11/18(金) 23:48:48
- 様々な怪事件に遭遇し、おぞましい世界を見てきたであろう椅子氏ですが
今までの経験から言って「一番恐ろしいもの」はなんだと思いますか?
いやまぁ大方の想像はつくんですが念の為。
- 10 名前:薬師寺涼子 ◆iu36Witchc :2005/11/21(月) 02:58:07
- 泉田クン? 居ないの?
まったく、何をしてるのよ。あたしがわざわざ訪ねてきてあげたのに! まあ、
良いわ。彼が来るまで少しだけ時間潰しに相手してあげるわ。感謝しなさい?
>>8
彼が「一番恐ろしいと思うもの」? 何をいってるの? 彼にはあたしがついてる
んだから恐ろしいものなんてあるはずがないじゃない。どんな凶悪犯もあたしの
前には平伏すの。それが例え化け物でも、ね?
ああ、でも彼ならこんなことを言いそうね。
「人間が一番恐ろしいですよ」って。
たしかにその通りよね。ただ、偉そうに振舞ってるだけの高級官僚なんてやつら
も権力だけは持ってるから、彼みたいな普通の人じゃかないっこないし。でも一皮
剥いちゃえば変わらない、変態親父の集りだったり? 知ってる? 今テレビを賑わ
すあの有名政治家は、裏じゃSMクラブに通いつめてたり、別の某は息子が大麻
所持ですって。ふふ……叩けばいくらでもホコリが出てくる出てくる。いつかテレビ
で逮捕劇なんかが見れるわよ? つまらないバラエティー番組を流すくらいなら、
こっちのほうが楽しめるのに、それも揉み消しちゃうんだもの。バカに権力は持た
せちゃダメね。
アナタだからそんなことが言えるんでしょう? あっ、そう言えばそうかもね? 下々
の人とは違うことを失念しちゃったみたい。謝らないわよ? 忘れてただけなんだし。
それに、そんなことであたしが頭を下げると思うわけ? 失礼しちゃうわね。
私は利権を得るためにこの力を使ってるんじゃなくて、ただ楽しいから根掘り葉掘
り調べるの。それであの人たちがビクビクしてるんだけど……オマケね、オマケ。ま、
好き勝手やれるから集めといて不便はないんだけどね。これで強請ったりしてれば
あの人たちの仲間入りだけど、お金も権力も持ってるあたしには必要ないし。あたし
や泉田クンに危害が及ぶならいくらでも使うけどね。
こんなに良い上司を持った彼は幸せ者じゃない? 感謝に感謝して欲しいわね。生
死の境で綱渡りするスリリングな体験だってさせてあげてるわけだし。
っと、来た来た。
遅い! 上司を待たせるとはナニゴト?
- 11 名前:泉田準一郎 ◆Isu/fiGbto :2005/11/21(月) 03:00:09
- 冬の足音は刻一刻と迫り、太陽は5時を前に身を潜めるようになってしまった。
月の明りで道を歩くのは風情があって良いことだが、この寒さだけは勘弁願いた
いものである。そろそろコートを出さなければなどと小市民的なことを考えつつ、
私は最近新たに命じられた職務に向かっている途中である。
「時間が確保できた場合にのみ、市民のお相手をしてあげなさい」
これが彼女から申し付けられた命令の委細である。だから、今の私はこうやっ
て設けられた場所に出向き、市民の方々と語らうつもりだったのだが―――
彼女がいた。
我が麗しの上司にして、私にこの仕事を命じたその人であり、私の小市民的幸せ
を奪っていった上司。薬師寺涼子その人である。今夜の服装も派手の一言に尽き
る。魅惑的な脚線美は隠す事なく、日本人離れしたプロポーションを誇示するかの
ような服装。見ている私としては、目のやり場に困って仕方がない場合もあるのだ
が。
「遅い! 上司を待たせるとはナニゴト?」
「失礼ですが警視。会う約束などしたでしょうか?」
「疑問文を疑問文で返さない!」
「……失礼しました。お待たせして申し訳ありません」
これが彼女である。理不尽極まりない言動には慣れてきたが。いや、理不尽すぎ
て返す言葉もないだけかもしれない。
「それより、何か急用ですか?」
「エッ? ほら、ヴォジョレー解禁したでしょ? だから飲みに連れて行ってあげるわ。
感謝しないさい?」
「はぁ……それはありがとうございます」
彼女の行動に理解を求める方が難しいのかもしれない。しおらしい薬師寺涼子で
は、魅力は半減してしまうだろうから。
「よろしい。飲みに行く前に一言答えてあげなさい。泉田クンの一番怖いものって
何?」
アナタですよ、と喉まででかかった言葉を飲み込み。
「今まで様々な化物、それこそ本でしか見たことがないような化物を見てきましたが、
やはり一番怖いの人間でしょうか。様々な人を見てきましたからね」
アナタを含めて。
「やっぱりね。だから言ったでしょう?」
「何がですか?」
「キミは気にしなくてもいい! さっ、飲みに行くわよ」
「お供させていただきます、と言いたいところですが店はどちらで?」
「あたしの家」
「聞き間違いでしょうか?」
「あたしの家だって言ってるでしょ!? チーズ切るくらいなら私でもできる!」
「失礼しました。それではお供しましょう」
彼女の料理の腕前は、はっきりと言ってしまえば最低である。以前彼女の家で振舞
われた料理は、私の胃に甚大な打撃を与えたのである。恐らくあれは実験台にされた
と見ても良いだろう。それほどまでに凄まじい物だった。
しかし、今夜はそれもないという。それならば、できが良いと言われるワインを楽しむ
のも良いだろう。
夜は始まったばかりなのだから。
- 12 名前:名無し客:2005/11/21(月) 08:44:40
- >薬師寺涼子嬢
もし
@「パトレイバー」の後藤喜一警部補
A「新宿鮫」の鮫島警部
B「地雷震」の飯田響也
みたいな人物が部下だったら、どうしますか?
- 13 名前:名無し客:2005/11/21(月) 17:15:55
- お涼の新たなる仇名。
「オベ避けお涼」
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1123657827/344
- 14 名前:13:2005/11/21(月) 17:17:00
- スマソ、間違えた。
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1123657827/347
- 15 名前:名無し客:2005/11/21(月) 17:38:42
- もし、あなたにとって尊敬に値する人物が存在するとしたら
それはいったい、どんな人物ですか?
- 16 名前:名無し客:2005/11/23(水) 04:12:00
- 泉田君がいなくなったら、薬師寺さんは困りますか?
- 17 名前:名無し客:2005/12/12(月) 21:19:26
- HEY!
カ〜ノジョ〜
オチャしな〜い?
- 18 名前:名無し客:2006/01/01(日) 08:36:00
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