夕陽と月

1 名前:◆Iori/GPRcE :2005/08/08(月) 19:38:19





                それは寄り添わず、ただ並び立つ



 

2 名前:◆Iori/GPRcE :2005/08/08(月) 19:39:19

 
 彼は夕陽の昇る空を見上げながら、昨夜の出来事を思い返していた。


 眩い光と深い闇が交錯する轟音の中で、人は理性を無くしたかのように波を作り上げる。
 一般的なライブの風景と言っても良いかも知れないが、波の動きはベースの音と共に変化する。
 ステージ上で一際目を引く、ベースを奏でる赤い髪の男。

 彼の音と共に波の模様は刻一刻と変化し、さながら獲物を狙う毒蛇の様だ。
 時には歌うように奏でられ、時には機械的にリズムを刻む。
 ギターよりも表に立ち、ドラムのリズムよりも尚正確に。
 それに合わせて動く為に起こり得る一つの現象。

 ふと轟音が止み、戸惑う客の数々。
 赤い髪の男は瞑想をしているかの如く微動だにせず、戸惑う人の群れをただ悠然と見下ろしている。
 その胸に去来する思いの数々。宿命・運命に動かされ続けてきた男。
 その要因を作り上げたのは血か、それとも環境か。
 そんな事は如何でも良いのかもしれない。何事に捕らわれる事も無くただ進んできたのだから。

 「フン…宿命、か…」

 その呟きと共に再び鳴り響く轟音。
 苛烈な生き様は、人によって捕らえ方も変わる。
 それを示すかのように、ただ攻撃的だった彼の音が何処か悲しみを帯びた物に聞こえたのは、気の所為だろうか。

 小さく汚いライブハウス。
 退屈なだけの現実に花を添え、その日の出来事は終わりを迎えた。


 回想を終えて抱いた感想は果してどんな物だったのか。
 静かに昇りつつある月が、それを知っているのかもしれない。
 

3 名前:◆Q1mfyB/Kyo :2005/08/08(月) 19:40:35


 彼は、夕陽と共に在る月を見ながら、今朝の出来事を思い返していた。


 休日ならば、少年野球チームの賑やかな声が聞こえてくるであろう河川敷。
 そこも平日の昼間ともなると人の姿は疎らで、穏やかな時間がただ過ぎていくだけだった。
 彼は、広場の中央に立ち、青く晴れた空を睨みつけていた。
 その視線の先には雲一つ無く、ただ青い世界と、白く輝く太陽だけがある。

 「どこに居ても、付き纏うのかよ」

 彼の口から漏れた言葉は意味深で、本人にしか意図する所は理解出来ない。

 「どいつもこいつも…暇潰しを暇潰しじゃなくしやがって…
  ……それでも変わらないか…俺だしな」

 側に止めてある単車に跨りエンジンを掛ける。
 アイドリングが順調な事を確かめ、彼は走り出した。

 「そう言えば…学校、どうするかな」

 その呟きは風に消え、当ても無く彷徨うだけだった。


 回想を終えて抱いた感想は、これまたどんな物だったのか。
 沈みつつある夕陽は、ただ赤々と輝いていた。
 

4 名前:◆Iori/GPRcE :2005/08/08(月) 19:41:44


 あの二人に任せるとどうなった物か分かりもしないので、不肖私、神楽家当主が説明させて頂きます。

 ・誰に対して話をするのか、それを弁えていただければ何方でも歓迎いたします。
 ・TPOを忘れないようにして頂きたいと、お願い申し上げます。
 ・所謂誰もが集う場所、とは少々異なりますのでご参加はご遠慮ください。
 ・お客様の応対は草薙、八神の両名が行いますが、全てのお客様のお相手をさせて頂くとは限りません。
 ・お客様の問い掛けなどは、他者からの問い掛けに置きなおされる事があるかと思いますが、ご了承下さい。

 以上となりますが、然程難しくは無いと思いますので守られる事をお願い申し上げます。
 それでは、草薙、八神両名とのご歓談をお楽しみ下さい。
 

5 名前:名無し客:2005/08/09(火) 00:20:16

それでは、いつも?の様に
*・゚゚・*:.。..。.:*・゚新スレ乙*・゚゚・*:.。..。.:*・゚


今日ゲーセン行ったからネオコロみてきたけど声聞き取れなかったよ(´・ω・`)

6 名前:名無し客:2005/08/09(火) 00:45:04

新スレおめでとうございます。
始まったばかりですが、「二人の初めての共同作業」について
少しばかり語ってみていただけませんか。

7 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/08/09(火) 04:11:02


>>5

 「そう言えばなんか変わったんだっけ? 八稚女の台詞。
  しかしまあなんだ、アイツもよく舌噛まないよな。アレだけ喋って」

 実際誰でも思う疑問じゃねえか? これって。
 泣け叫べ、そして死ね。これだけでも蹴る殴るやってたら舌噛むぞ。
 人の事言えた義理じゃ無いのは分かってるけどな。
 ボディが、ってのも充分だし。

 「でもよ、俺らが喋る訳じゃねぇからな。アレも。
  俺だと…野中って奴か。アイツが映像に合わせて声吹き込んでるんだよな。
  何で本人の声使わないのか分からないが、俺達の負担減らしてるつもりなのかね。

  それでもまあ、アレも意外に有難いか。結構撮影って疲れるからな。
  何でやられたくも無い相手に殴られたりしなきゃならないんだか。
  いや、今はその話はどうでも良いんだよな。声の話しだし」

 んでだ、どうする俺。アイツの言葉なんて知らないしな。
 どんな台本だったのかも見てないし……
 

8 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/08/09(火) 04:12:38


 下らぬ余興に手を出し、下らぬ制作に携わる。
 可笑しな足踏みばかりを繰り返し、結局前へと進めていない、俺か。
 フン…これも奴を未だ殺せていない咎なのかもしれんな。

 そんな事を考えている割りに、今日は撮影だ。
 以前下らぬ組織が開いた決闘場を再現したいらしい。嫌になる。
 またこんな事で暴力を振るわねばならんのかと思うと、誰かに触れられる事になるのかと思うと、
 見世物として扱われるのがまた増えると思うと。

 嫌になる。嫌になるが、足を運ばねばならん理由もある。
 京の奴も来るのであれば、俺が足を運ばぬ通りも無い。
 隙をついて殺す、呼び出して殺す。手段は何であれ、目的を果せるのならばそれで良い。

 「八神、こないなとこおったんかいな。随分探したでえ?
  これこれ、今回の台本や。何やらシステムやらちょっとKOF違うさかい、一苦労かもしれへんで?
  まあワイとお前なら心配せえへんでも大丈夫やろうと思うけどな。

  ほな、ワイはちょっとサミーの人にゴマすってくるわ。
  何やらギルティギアの次回作はソル、カイ、ロバート。この三人で行く気満々な顔し取ったさかいな。
  ゴマすりしといた方が向こうさんも使い安いやろし、ワイは行くでぇ。
  今度四人で飯でも食いに行こな」

 渡された台本を所在無さげに弄びながら、嵐の様に去っていった男の後ろ姿を眺める。
 ひょんな事から付き合いの出来た奴だが、何時見ても飄々としていて俺とは相容れないと思っていたのだが。
 それにしても若干疑問なのだが、此処最近であの老け込み様は何なのだろうか。
 まるで、これからの苦境を暗示しているかのような…

 そんな馬鹿馬鹿しい考えを消し去り、台本をぱらぱらと捲って見る。
 それにしても参加者は百鬼夜行の如き有様だな。
 侍、巫女、餓鬼に機械、果ては地球外知的生命体と来たか。
 一度は見え、屈服させた奴も居れば、見える事無く終わった奴も居る。
 改めて見返してみると、狂った具合が良く分かる。

 時間の壁が取り払われたのは分かる。そうでなければこの面子は集まらない。
 ただ無作為に集められた、と言う事は無いだろう。何の力も持たぬ者が居ない時点でそれは明らかとなっている。
 では、結局この大会の目的は何だったのだろうか。
 やった事と言えば決められた試合をこなし、首謀者のような者を叩き伏せただけ。
 KOFよりも意味の無い、ただの暴力の渦にしか見えなかった。

 まあ良い、どうせ奴を殺せなかったと言う事実しか残らん大会だ。
 俺にとっては無駄足に過ぎない余興。無駄が嫌いな割りに、随分矛盾している。

 「フン…今に始った事でも無し…」

 そんな自嘲の呟きを漏らしてしまうほど、自身の矛盾は理解している。
 

9 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/08/09(火) 04:13:16


 殺したいのか、殺したくないのか。

 他人から見れば殺したくないように思えているのかもしれないこの状況。
 如何にか打破せねばならん。殺す事でしか打破する道は無い。
 だが、それが出来ない。いや、出来無いのではしていないだけ…下らん。

 殺す。気に入らないから殺す。憎いから殺す。殺したいから殺す。
 それだけの理由をもって殺しに行けば良い。それで充分なのだから。

 「で、取り敢えずは目先のこれか…金もまあ、必要だしな…」

 自分の事について書かれた部分だけに軽く目を通す。
 台詞が多少変わっているようだが…如何でも良い話か。所詮声を当てるのはアイツだ。
 俺の声に非常に良く似た性質を持つ男。
 狂気すらも表現し尽くすと言うのは、流石としか言いようが無い。
 紛れも無いプロの仕事といって良いだろう。

 ……で、交代攻撃…ダブルアサルトか。
 下らぬ児戯をまあ、よく思いついたものだな…
 

10 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/08/09(火) 04:14:01


 ……さて、それじゃあどう答えようか。黙ったままじゃこいつにも悪いしな。

 「良いか? 聞き取れないって事は無い筈だ。断片だけでも何とか聞こえてると思うんだよな。
  俺も軽く触ってみて、アイツを動かすなんて反吐が出たけど、聞き取れた部分もある。
  そう言うのを、何だ、アレだ。仲間内で集めてみてだな。
  そこから台詞を推測してみるのも、面白いんじゃねえかなと思うぜ?

  俺が聞こえたのは後悔って単語だけなんだが、何かの役には立つだろ。
  胸に仕舞って、仲間内で是非解き明かしてみてくれ。
  まあ、待ってりゃその内分かる事なんだけどな…これって」

 実に理にかなった方法で答えられたと思う。思わなきゃやってられない。
 大体八神の事なんて知るか。俺に聞くなってんだ。
 

11 名前:名無し客:2005/08/10(水) 00:47:36

怒りだろうが悲しみだろうが、戦う時何か強い拠り所がないと
生きてけないよね これって間違ってる?

12 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/08/10(水) 20:28:05


>>6

 その問い掛けを持って過去を思い出して行く。
 随分昔の話ではないだろうか。奴との共同作業など。
 忌わしい記憶でしかない。それでも変えようもない事実だと言う事も理解している。

 The King of Fighters'96

 神楽が主催の、初めてオロチとの関係が密接となった大会。
 三種の神器が初めて揃ったのもまた、この大会だ。
 あの頃はまだ何事にも捕らわれる事無く殺しに向かっていたと思うと、今の俺の行動は
 吐き気すら伴い、自己嫌悪に陥って仕方が無い。

 それは兎も角、奴との初めての共同作業と言えば、恐らくあの牧師を沈めた時になるだろう。
 俺の中のオロチが呼応すると同時に、八尺瓊の血が、要らないと思っていた血が同時に滾る。
 戸惑いはあった。奴と共同戦線を張る事も、俺の中の血の動きにも。
 使命と妄執。その二つがぶつかり合う様は酷く不快感に塗れた物だった。

 結果だけを見れば使命が打ち勝ち、害敵を倒したと言う事になるのだろうか。
 だが、俺の思う所は違っている。

 単純に利害関係が一致し、奴と並び立ったに過ぎない。
 血に込められた宿命など何の意味も無く、ただのアクセサリに過ぎない。
 オロチの暴力性も、八尺瓊の使命も、ただの付属物だ。
 俺と言う人間を作り上げる芯には成り得ない。

 記憶を探っていくのはもう止めだ。目の前のコイツに如何言葉として伝えるか。

 「共同作業、か。奴と同じ目的を持って動いた事はあるが、作業を同じくした気は無いぞ?
  俺はあの牧師…ゲーニッツと言ったか。アレを殺す為に拳を振るった。
  その中で炎の色が紅くなった事もまた事実だが、俺が変わる事など無い。
  あの中でも虎視眈々と、奴を殺す隙を窺っていた。
  まあ、あの牧師を殺した所で興が削がれ、殺さなかったがな」
 

13 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/08/10(水) 20:28:38


 そうやって決着を先に延ばし、今の状況に繋がっていると思うと我ながら馬鹿馬鹿しくなる。
 その僅かな苛立ちが顔に表れたのか、目の前のコイツは固まっている。

 「フン…貴様など殺した所で気が収まる訳でも無い。で、共同作業を語ると言う事だったな。
  先にも話した通り俺には共同作業を行ったつもりが無い、と言う事で結論が出たが?
  これ以上聞きたい事があるのであれば、根無し草の奴を捕まえろ。

  俺とは違った答えが聞けるやもしれんが、期待は出来んだろうな。
  所詮相容れる事など無いのだから。」

 そう言って背を向けようとし、ふと思い付く。
 こう言う発言が俺の事を貶めていると知りつつ、それでも口に出す。
 機会は多い方が良い。何かと邪魔が入るのだから。

 「貴様…奴に出会ったならばこう伝えろ。
  どれだけ俺から逃げようとも、必ず追い詰め、殺してやるとな」

 そう言って歩き出す。共同作業など、傍から見れば、これからも何度もあるのだろう。
 そんな思いを胸に抱きながら。
 

14 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/08/10(水) 20:29:20


 「アイツもよく飽きないもんだぜ。本当にしつこいよな。
  まあ伝言は確かに受け取ったし、俺の胸の内に留めて置くよ。
  どうせ果されない誓いなんてのは、仕舞っといても仕方ないだろうけどな」

 当たり前だ。誰があんな奴に殺されてやるってんだ。
 それにしてもコイツ。何だってこんな事聞くんだろうな?
 共同作業なんてした覚えないんだが。

 ん…もしかするとオロチ関係の時の事聞いてんのかもな。
 あれなら三種の神器として、一応八神も居た訳だし。
 そうなると一番初めは…チッ。アイツの時の事かよ。

 あんまり思い出したくねえよな。なんせ負け知らずの俺が一度とは言え負けちまったんだから。
 まあ、あの時は草薙の力全部を振るえてた訳でも無いしな。
 それでも八神と同等以上の力を持ってたって事は、これからもアイツに負けることなんて無いって事だ。
 いや、今はこれ関係ねえか。共同作業の話だし。

 「アイツとの共同作業なんて言えば、神器としてなんかする時位のもんだけどな。
  それで初めてって言えば、ゲーニッツの時か。随分時間が経ったよな…今思い返せば。
  でもだ、俺にはアレが共同作業だ何て到底思えやしないぜ。

  あれは俺とアイツが偶々同じ場所に居て、偶々同じ奴が気に入らなくて、偶々同じ奴を倒したかった。
  それだけの事なんじゃねえかな、って思ってるんだけどよ。
  まあ、それを共同作業と取るべきなのかの判断はそっちに任せようか。
  ただ俺としちゃあ、アイツと手と手を取り合ってなんかするなんて怖気が走るぜ」
 

15 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/08/10(水) 20:29:54


 当然だろ? 何が楽しくて自分を殺そうとする人間と仲良くしなくちゃならないってんだ。
 どうせ負けるつもりもねえから、アイツと戦うのは良い刺激にしかなり得ないけどな。
 俺に一歩及ばずとも、アイツの力はかなりのもんだ。
 何の柵も無く戦って、殺すだとか殺さないだとかが無ければ、いい暇潰しの相手になったんじゃねえかと思う。

 「っと、話はこんなもんで良いのか? 良いなら俺はこの辺りで行かせて貰うぜ?
  こんなに天気が良いんだ。単車に乗って出掛けて見るのも悪かねえ。
  まっ、これからもお前等から見れば共同作業なんてのがあるのかも知れねえな。
  血の宿命だとかそんな物はどうでも良いけど、それのお陰でな」

 血の宿命。気にしてないなんて言ってる奴が、一番囚われてるんだよな。
 そんなもん早々に見切りをつけて、生きたいように生きれば良いと思うんだけどな。
 それが出来ないのが、アイツのアイツ足る由縁なのかもしれない。
 それを祓ってやるのも、一つの使命なのかもな。

 …っと、らしくねえ事考えたもんだぜ。ひとっ走りして忘れる事にしよう。
 難しい事は死ぬ前に考えればそれで良いだろうしな。

16 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/08/10(水) 23:18:30


>>11

 「さぁ? どうなんだろうな、それって。
  俺は戦いたいから戦ってるだけでそんなに深い理由なんてねえよ。
  だってよ、力抜きに考えれば俺は到って普通な日本人だぜ?
  何時も腹は一杯だし、寝る所も不自由しない。両親だって、親父は気に入らないが、居る。

  そんな奴に強い拠り所が生まれるってのは、あんまり無いと思うんだよな。
  テリーやリョウ。コイツらならその考えには賛同してくれるのかもしれないけどよ」

 そりゃ餓鬼の頃から草薙流古武術を骨の髄にまで叩き込まれもした。
 草薙が果すべき使命についてだって、延々と聞かされもした。
 それでも怒りとか悲しみとか、そんな感情に任せて拳を振るった事も無ければ、そんな感情を拠り所にもしてない。

 ただ戦いたいから、負けたくないから。
 それだけの為に努力嫌いな俺が修行だってするし、山に篭ったりもする。
 ん? 負けたくないのが拠り所なのかもしれないな。

 「ああ、一つだけ思い当たったぜ? 俺は、負けたくないんだ。
  それがどんな相手だったとしても、絶対に負けたくない。
  理由なんてこれこそ見つからないけど、それが俺の中での強い拠り所になってるのかもしれない。

  あれこれ難しく考えないで、戦えば分かるってんだ。
  それこそ切れば全ての物事を見通せるように、な?」

 大体、戦ってる最中にあれやこれやと難しい事考えてる奴なんて居るのか?
 憎い相手が目の前に居たって、拳と拳をぶつけてればそんな事だって忘れちまうだろ。
 それが出来ないなんて奴が居たならそいつは格闘なんて止めた方が良いと思う。
 それだけ器用な事が出来るなら、他の事に手を出した方がマシってもんだ。
 不器用な奴が不器用ななりに見つけたのがコレだろ?

 「なんか話し逸れていってるな。間違いかどうかなんて、誰にも分からないだろ。
  俺に限って言えば、それは間違ってるとしか言い様が無いけどよ。
  小難しい事考える前に目の前の相手を倒して見りゃ良いじゃねえか。
  それで万事解決、無病息災、家内安全、ってもんだぜ」

 憎しみだけで戦ってるアイツは、どう答えるんだろうな。
 まっ、結局アイツも深く考えてなんかなさそうだけどよ。
 

17 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/08/10(水) 23:18:59


 絡んできた屑を殴り倒し、何処からともなく声が降りてきた。
 正確には、絡んできた屑が最後に漏らした呟きだったのだろうが。
 その呟きは不協和音のように耳に残り、不快な感情の波を作り上げる。
 波は次の波を呼び、次第に俺の心の中で膨れ上がっていく。
 未だ嘗て無い感情の昂ぶり、とは言わないがそれは大いに俺を苛立たせる。

 「フン…下らぬ世迷い言を…」

 今この呟きを漏らしたこの男は、それを拠り所にして俺に挑んだのではないのか?
 それなのにこの様は何だ。今にも命の火を消すかのように蹲り、ただ喘いでいるだけではないか。
 コイツの悲しみや怒りなどそれだけの物に過ぎなかったと言う事なのかもしれないが、あまりに無様だ。
 強い拠り所だと思っていたものは脆くも俺の前に崩れ去った。

 強い拠り所だと思っていた物は不意に、脆く崩れ去る。
 何かを発端に、些細な事で、風船に穴を開けたかの如く、壊れる。
 例えそれがどのような種類の物だとしても、変わらない。
 俺の憎しみとて…

 「ハッ…下らん。結局はコイツの拠り所が弱かっただけだ。
  一突きで崩れるほどに脆弱な、砂の城であっただけに過ぎん」

 そう、俺の憎しみを崩す事など誰に出来る筈も無い。
 もし崩れ去る事があるとすれば、奴を殺した時だ。
 奴の苦痛が、奴の血が、奴の命が、この憎しみを消し去る妙薬。
 それ以外の方法で、崩れ去る事は無い。

 「貴様の言葉…そこに間違いは無いが、あまりにそれは脆弱だ。
  より強固な物の前には脆くも崩れ去る。
  そして、それが崩れ去ってしまった者に生きる価値など欠片も存在しない。
  そのまま無様に、死ね」

 そう吐き棄て、背を向ける。
 吐いた言葉は己に返り、より波を荒上げる要因となった。
 まあ、もとより長く生きるつもりも無い。

 アレさえ殺せれば、それだけで良い。
 

18 名前:名無し客:2005/08/11(木) 01:50:37

兎に角、暑い夏の夜だった。
丑三つどきに差しかかっても、一向に気温が下がる気配もない。
それどころか、蝉の聲まで聞こえてくる始末だ。
蝉の聲は頭の芯の辺りにこびりついてくるようで、何時まで経ってもじんじんと響く。
湿度にいたっては、まるで空気が剥き出しの肌にまとわりついてくるように思える。

――そんな夜だと、仮定しよう。
そこへ。


「にゃあ」


唐突に、猫が現れた。
人懐こそうな瞳を向けて、ごろごろと擦り寄って来る。

さて、どうする?

19 名前:名無し客:2005/08/12(金) 19:00:47

今まで出場した大会の中で最も出場したことを後悔した大会はなんですか?

20 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/08/12(金) 20:36:50


>>18
 
 何でもない夏の夜だ。何でもない夏の夜だ。もう一度言う、何でもない夏の夜だ。
 普通の、在り来たりな、例年通りの、何の変化も無い、夏の夜だ。
 そんな何でも無い夏の夜に、ぶらぶらと単車で出掛けて、今は公園のベンチに腰掛けている。
 そんな事はどうだって良いんだ。問題は、だ。

 「何でこんなに暑いんだよッ!」

 夏だから。そんな一言で済ませられるのは分かってる。
 だって、夏だから。暑いのは当然で、暑くなくちゃ夏じゃない。
 それでも、それでも、それでも、こんな理不尽な台詞を吐きたくなるくらい、今夜は暑い。

 「それにしたってもう二時だぜ…もう少し涼しくなってくれても良いじゃねえか」

 草薙が幾ら日輪を象徴にしているからといって、何もここまで頑張る必要はねえ。
 日中からの陽射の残滓がありありと夜にまで残っているのは、頑張りすぎだろ?
 最高気温は三十度を超え、それに伴い、何故だか知らないが、湿度まで比例して上がった。
 湿度さえなければ、こんなにも暑苦しい事なんて無い筈だ。
 どこかの馬鹿の陰険さが湿度を上げたに違いない。

 おまけに蝉まで鳴いてやがる。俺に何の恨みがある?
 お前等の鳴き声はより一層暑さを誘うんだから、少しは控えてくれ。
 それともその声は誰かの、どこかの地球意思の、差し金なのか?
 何故そうまでして俺を苦しめようとするのかはさっぱり分からないが、もしそうなら一つ聞いておかなくちゃならないだろう。
 俺の日頃の行いはそこまで最悪なのかオロチ様? さっさと教えろこの野郎。

 「それは兎も角、こうも暑くちゃ走る気もしねえな…」

 どれだけ何かに当り散らしても暑いのが寒くならない事くらいは分かってる。
 どうそれを改善するかが、人間様の知恵の見せ所だ。
 因みに単車で走って涼を取るのは即座に却下だ。

 意外に思うかもしれないが、単車はそこまで涼しくも無い。
 特にこんな湿度もあって、気温が高い日は。
 マフラーの熱なんかも酷いしな。ジーンズが燃えるなんて普通の事だ。
 

21 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/08/12(金) 20:37:22


 そんな訳で単車は却下。使っても移動手段だ。
 家に帰るのも一つの手だが、もう少しぶらつきたい。一人旅ってのは案外楽しいもんだしな。
 当然路銀の用意が多い訳も無く、宿泊所で涼めなんてのも却下。
 コンビニで涼むのも、精々居れて十分かそこら。長い目で見ればこれっぽっちも得策にはならない。

 じゃあ、どうする? この時間じゃ親切な人が家に泊めてくれる筈もない。
 この年になって親切な年下や年上からお金を恵んでもらう訳にもいかない。
 あっ、そう言えばファミレスなんて便利なもんがあったよな。
 あそこなら簡単に二時間くらいは粘れるだろうし、行って見るのも良いかもしれない。
 もう少し時間が経てば、希望的観測だとしても、涼しくなるだろうしな。

 そうなると先ずは、手持ちの金の確認をしなきゃならない。
 何も飲まず食わずで粘る客なんて、客じゃねえしな。
 財布の中を見てみれば…帰りのガス代。それくらいしか残ってないのが現実。
 悲しい事に携帯も持たずに来たからな…ガス代が尽きると帰り着けない可能性が出てくる。

 さて、じゃあ、どうする。今から直ぐに帰るか。いや、寝ないと流石に事故る。
 野宿が出来る雰囲気で無いのも確かだ。暑すぎて。
 そんな時に聞こえた、蝉以外の鳴き声。
 

22 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/08/12(金) 20:38:27


 暑い夜だ。尤も、夏だからだと言ってしまえばそれで終わりだが。
 蝉の声が暑さをより一層引き立てているが、苛立ちを覚えなければならない程不快でもない。
 当然だ。命短き蟲の声。咎め立ててやる気は起きん。
 そんな事よりは、自然が欠片も存在しないようなこの場所で蝉の声が聞こえた方が不思議だ。

 それでも、この気温の高さと湿度の高さは不快ではある。
 シャツが肌に纏わりつく感覚には、誰でも不快感を抱くだろう。
 皮膚の上に無理矢理皮膚を被せた感覚とでも言うべきか。
 時折拭く温風が、その被せられた肌を捲り上げ、また新たに不快な皮膚を被せていく。

 そう言えば、何故こんな時間に俺は外へ出たのだろうか。
 確か何か用事があり出たはずなのだが、その用事を果たす事も無くただ散策を行っている。
 こんな暑い夜でも出歩く人間は減る事も無く、町は喧騒に溢れている。
 草木も眠る丑三つ時、この言葉は今の世の中では形骸と化したようだ。

 そんな煩わしさから逃れるように歩みを進め、目にしたコンビニへと足を向ける。
 用事を今、思い出したからだ。
 夕食の買出しに出向く。ただそれだけの為に俺は何時間もぶらついていた。
 我ながら、呆れて言葉も出ない。

 無駄を嫌う割に、無駄な事ばかりに精を出している。
 目的も果す事無く、温い馴れ合いを演じる事も多い。
 微温湯に浸かったかのような感覚。
 今夜はそれが感覚だけの物では収まらず、肉体的にも感じている。
 
 そんな思考を振り払い、空調の効いた店内へと歩みを進め、適当な飲食物を購入。
 不味いとまでは思わないが、美味くもない食い物の数々。
 取り敢えず肉が食えればそれで良い。この欲求だけは満たしてくれる。
 

23 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/08/12(金) 20:38:53


 家に向かい歩を進める。帰りは路地裏を通る事にした。
 喧騒から隔絶される感覚。
 この時間帯に好んでこんな場所を歩く人間も居ない為、その感覚はより一層増した。

 暗く、狭く、薄ら寒い空気の漂う空間。
 それが心地良いと感じられるのは、性分の所為なのか、此処に居なければならないという圧迫感か。
 どちらでも構わないが、この場所は唯一の戻ってくるべき場所なのかもしれない。

 空を見上げれば狭い空間から覗く、細く鋭い月。
 まるで箱に収められたかのような、そんな空だ。
 暑い夜ですら、この光景を見れば体は冷える。

 その声を聞いたのは、意識が自らの内に飲み込まれる寸前だった。
 

24 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/08/12(金) 20:39:28


 「にゃあ」

 気付けば足元に擦り寄り、構って欲しそうな目線を向けてくる。
 この糞暑いのに、猫だ。毛はふさふさだ。撫でたら柔らかいだろう。暖かいだろう。
 でもだ、この糞暑い時に猫は…猫は無いだろ。
 構ってやるにしても、何しろ暑い。兎に角暑い。

 ただでさえシャツは汗を吸って重たくなって来てる。一応変えは用意してあるが、最後の一着だ。
 それは明日の朝に着替える予定で、今猫と戯れでもしたら確実に今のシャツは汗まみれになる。
 猫は飽き易い生き物だ。少し遊んでやっただけで尻尾を振って帰って行く。
 その後、俺は汗まみれのシャツのままで予定を変えて夜通し走るか、無理矢理にでも眠るかをしなくちゃならない。

 「にゃあ」

 そんな俺の心を知ってか知らずか、それでも猫は額を擦り付け構って欲しいと声を上げる。
 「マーフィーの法則やな。起きて欲しくない事は起きるもんやで」
 空気読め。そんな言葉を俺の脳内に囁いて消えていくな。

 心に悪態を着いても猫はどこにも行ってはくれない。
 それ所か尚も顔を擦り付けてくる始末。

 「ったく、構えば良いんだろ、構えば!」

 少しだけ身を屈め、猫に手を伸ばせば人懐っこい声を上げ擦り寄ってくる。
 抱えてみれば案外軽くて、やっぱり暖かかった。暑いんだけどな。
 撫でたり、喉を擦って見たり、なんだかんだしてやる。
 それに飽きる様子も見せない猫。こっちは少しだけ飽きてきた。

 腰掛けていたベンチに横になる。コイツが飽きるまでは付き合うのも良いと思いだして来た。
 シャツは汗まみれで気持ちが悪い。その上で平然と丸くなるコイツは、気持ち悪くは無いんだろうか。

 空を見上げれば、星と月が広がり、詩のフレーズなんかを思い浮かべてみる。
 忘れられている様な気がしないでもないが、趣味だからな。
 それでも、コイツが居なけりゃこんなにゆっくりと夜空を見上げるなんて事はなかったかもしれない。
 それだけには、感謝だ。
 

25 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/08/12(金) 20:40:01


 「にゃあ」

 猫か。この辺りではあまり見かけない筈なのだが、何故居るのだろう。
 気にするだけ無駄なのかもしれない。
 気紛れに行動するからこそ、猫は猫である。恐らくは。

 どんな気の迷いなのか。それは足元に擦り寄ってくる。
 餌でも強請るのか、それとも構って欲しいだけなのか。
 歩みを進めると、後を追ってくる。
 構わねば離れそうにも無い事を悟り、非常階段と思しき場所に腰掛ける。

 こんな場所でかなり遅い夕食を取る羽目になるとは予想もしなかったが、一人ではない食事も久しぶりか。
 相手が猫だと言うのは、人とは相容れない証なのかもしれない。
 兎に角買って来た水と夕食を取り出し、晩餐を始める。
 生憎コイツに食えそうな代物は用意していない。
 水だけでも与えておけば良いだろう。

 ゆっくりと時間は流れる。
 何時もなら美味いと感じられない飯も、心なしか美味いと思う。
 偶に猫を見れば、ただひたすらに与えた水を飲んでいる。
 それだけの事だ。変哲の無い日常に異分子が混ざっただけで。


 飯は食い終わり、それでもまだ猫は水を飲んでいる。
 余程乾いていたのだろうか。
 まあ、野良猫ならばそんな物かもしれない。

 月を見上げる。細く鋭いだけだと思っていたが、幾分丸みがある事にふと気付く。
 そんな事も分からないほど、何処かが荒んでいたのかもしれない。
 俺の中で荒んでいない部分を探す方が一苦労だと言う事は理解しているが。

 ふと視線を猫に戻せば、ペットボトルに写る自分に対して威嚇を行っている。
 先ほどまでの人懐っこい部分は消え、本能が顕となっている。
 傍から見れば、俺もこう写っているのかもしれない。

 自分の中の弱さを威嚇し、自分に弱さを運ぶ物を威嚇し、回りの全てを威嚇する。
 ………下らない自己分析は終わりだ。どうせ変わる事など無い。
 今更変える必要も無ければ、変わる事のリスクは多大すぎる。
 目的を果すまでは、そんなリスクを抱える必要は無い。

 ペットボトルを蹴飛ばしてやれば怯えたように後退り、心なしか満足げな表情を浮かべている。
 そんな光景に苦笑を浮かべながら、ゆっくりと時間は流れていった。
 

26 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/08/12(金) 20:40:25


 っと、何時の間にか眠ってたか。
 朝日は昇り、不自然な格好で寝てた所為で体の節々が痛い。
 体を伸ばしながらふと思い出す。

 昨夜の猫は居なくなっていた。

 暑い夜に休息をくれた猫。
 誰かの届けたプレゼント、だと思えば良いのかね。
 

27 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/08/12(金) 20:40:47


 俺に飽きたのか、猫は去って行き、路地裏はまた一人の空間へと戻る。
 これで良い。何かと共にある感覚など不要だ。

 俺は、一人で良い。

 それを再認識させた猫には、充分過ぎるほど何かを与えただろう。
 心地良さを排斥しろ。そう在らなければならないのだから。
 

28 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/08/13(土) 23:16:13


>>19

 「ククッ…貴様は、俺にそれを問うのか?
  答える前から答えの予測など成り立つだろうに、愚問と知れ」

 奴を殺す事が出来なかった大会など、全てが後悔の引き金を引く手段になりえる。
 そして後悔など、しても無意味な事は理解している。
 だからこそ、こんな答えが出て来る。

 「俺は奴を殺す余興としてでしか、あの大会を認知していない。
  それが答えであり、貴様の思い浮かべた答えの逆も答えだ」

 後悔と言う言葉が現す物で俺の気持ちを代弁する事はないだろう。
 奴を殺せなかった自身への呆れ。暴力を振るってしまった自分に対する怒り。
 屑が俺に触れる事への怒り。弱者が倒れ、無様な姿を晒す事で生まれる嘲笑。
 傷口から流れ出る血に触れる高揚感。死に至る寸前まで相手を殴りつける事への歓喜。
 死に至る寸前まで相手を殴らなければならない苛立ち。

 それだけの物が生まれる大会。下らない、弱者の集まる大会だ。
 他者を殴りつける事しか出来ない愚かな人間の集まり。
 それに後悔など抱く事などないだろう。
 あるとすれば、俺にもそれしか道が無いと分かった時だけだ。

 「そんな下らぬ事を問うた貴様には、あの大会へ出て見る事でも勧めてやる。
  その一度きりで充分に後悔する事が出来るだろう。
  何時終わるとも知れぬ殴り合いは、常人の精神では耐え切る事も出来ん。

  あの場に居るのは、何処か壊れてしまった人間だけだ。
  殴り、相手に打ち勝つ事だけを糧にして行く者。
  そんな愚者の共演に足を踏み入れた事こそが、俺の後悔なのかもしれんな」

 その後悔も奴を殺す事で断ち切る事が出来る。
 いや、奴を殺して断ち切らねばならない。
 暴力など出来る事であれば振るいたくも無い。他者の血に塗れるのも同様だ。

 下らない余興に付き合わせ続けるのは、宿命や運命と呼ばれる物なのだろうか。
 それならば宿命や運命になど唾を吐き棄て打ち棄てる。
 それが、本当の目的なのかもしれんな。
 

29 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/08/13(土) 23:16:34


 「自分から進んで出てるってのに、後悔なんてするはずねえだろ?
  それでもまあ、出なきゃ良かったかななんて思う大会もあるぜ?
  95の時に親父が生き返ってやがった時は、俺の中では死んだままにしておきたかった。
  深く言うとお袋が五月蝿えからこの辺りで止めとくけどな」

 後悔なんてするはずがねえさ。優勝して、俺が一番強い事を証明出来る場所。
 それが与えられてるんだぜ? 後悔なんてしたら罰が当たる。
 って言うか、後悔してる奴なんて居るのか?
 居そうだな。根暗な赤毛の奴は特に。

 「どこかの馬鹿以外に後悔してる奴なんて居ないんじゃないか?
  どいつもこいつも自分から出てきてる訳だしよ。
  まあ、俺に負けて口惜しいかもしれないが、それは後悔とは別もんだと思うぜ?

  口惜しいのと後悔は字も違えば意味も違うだろ?
  行き着くとこまで行っちまえば、どっちも変わらないかもしれないけどな」

 それでもあの中に後悔と口惜しさを混同する奴なんて居ないと思う。
 どいつもこいつも戦いたがりで、負けても雪辱に燃えて強くなってくる。
 そうやって燃えてる奴をより一層熱くして勝つ。
 これがあの大会の醍醐味で、俺の中での暇潰しに成り得る一番の要因だ。
 物理的にも、精神的にも、燃えてくれなくちゃ、な?

 「そんな事より、後悔なんてする暇があればもっと強くなって来いよ、って言いたいぜ。
  骨のある戦いが出来る奴こそが、俺の暇潰しの相手に相応しいからよ。
  弱いまま、前年と同じまま、こんなんじゃ戦う気も失せちまうぜ。
  これは参加者の奴等に向けて言わなきゃ意味無いか。

  まっ、後悔するより強い相手になってくれ。
  そうじゃねえと、対火服も燃やし尽くして、二度と戦えなくしてやるぜ?
  俺は何時までも同じままじゃねえんだからよ」

 さてさて、今年の大会は別に意味もあるんだが、どれだけ楽しませてくれるんだ?
 どれだけ常連の奴等は強くなってくる?
 新規の人間はどんれだけ俺を燃えさせてくれるんだ?
 暇潰し以上になってくれなくちゃ、こっちが困るんだよ。

 熱い戦いを求めてるのは、お前等だけじゃねえからな。
 

30 名前:名無し客:2005/08/15(月) 21:36:53

ネオコロでミズチにアナサーダブルアサルト当てるとKOF97のEDっぽくみえる

31 名前:名無し客:2005/08/16(火) 02:21:57

自分にとって、音楽とは如何様なものだと思います?
また、ご自分にとって心地よい音楽とはどのようなものでしょうか。

32 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/08/17(水) 21:39:46


>>30

 「楽には死ねんぞ…!」

 その言葉を合図に今までだらけていた感覚を元に戻す。
 それでも頭のどこかは呆けていて、懐かしい光景を思い出す。
 97年…随分前のKOFになるが、その時、地球意思とか言う奴を相手に喧嘩をした。

 人類の滅亡も存続も、別に気にしちゃいなかった。
 宿命だとかそんなのは関係なくて、アイツの物言いが気に入らなくて、八神の狂う姿を見てられなかった。
 本人の前じゃ絶対に言わないけどな。他の誰にも言うつもりもないけど。

 血の暴走。

 アイツの中のオロチの血が活性化して起こる現象らしい。
 普段持ち合わせている狂気がここぞとばかりに発揮され、ただ破壊の限りを尽くす。
 それに必死に抵抗しているのは、八尺瓊の血が反応するからなのか、アイツが『八神庵』だからなのか。
 そんな難しい事はどうでも良くて、ただ見ていたくなかったから、打ち抜いた。

 幸か不幸か、アイツも俺も生きちゃいるが、神楽が言うには偶然が呼んだ奇跡だとか。
 まっ、どうでも良いか。
 どれだけ言葉で飾っても仕方の無い事だって多い。
 例えば、夕陽が綺麗な空を詩で表現し尽くすのは無茶だろう。
 それと同じで、これも言葉で表す意味が無い。

 ……っと、回想はここまでだ。
 アイツの背中にまだかまだかと言う怒気が立ちこめてやがる。
 もう少し堪え性持てよ、本当。

 「今行ってやるよ! お前も一緒に焦がしてやるか?」

 帰ってきた答えは何時も通りの馬鹿な言葉。
 それがアイツらしくて良いのかもしれないけどな。
 

33 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/08/17(水) 21:40:08


 「楽には死ねんぞ…!」

 この言葉を合図とし、奴との見た目だけの連携を始める。
 随分昔に、このような光景を見たような気がしないでもならない。
 相手の首を掴み、燃やしながら思い出す記憶。

 人類の滅亡も存続も、俺にとっては下らない話に過ぎなかった。
 血で狂いながらも意識の底にある、ただ一人の誰かを殺したいと言う想い。
 そちらの方が俺にとっては重要で、狂っていく意識の中、狂う事になった要因に手を掛ける。

 血の暴走。

 結局こんな物は俺の中にある『俺』には勝てもせず、叛乱の旗を振り上げる。
 何ものにも囚われはしない、どんな物とて俺を縛る枷にはならない。
 その証明に過ぎず、アレの首に手を掛け、戒めの炎を走らせる。

 認めたく無い話ではあるが、俺の炎ではアレを殺す事は出来ず、本当に殺したい奴に任せるしかなかった。
 遠慮も何も無い一撃。
 存在を無かった事にするまで到らなかったのは、後に聞いた話では奇跡らしい。

 下らない。あんな物で俺を殺せるとでも思ったか。
 俺は『殺す方』だ。だからこそ生き残っただけ。
 奇跡と賞すならば、奴が心底遠慮無く一撃を見舞った事。これだけの事だ。

 回想を止め、掴んだ首をより一層絞める。
 遅い、何をしている。このままでは殺しかねん。
 ……面倒だ。殺してしまうか。

 聞こえる声。馬鹿に返す答えはこれだけだ。

 「貴様の最期はそれが望みか?」

 馴れ合いなど望まない。
 殺すのは俺で、殺されるのは貴様だ。
 他の何がこの間に入る事も無い。それが、何であろうとも。
 

34 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/08/18(木) 20:43:06


>>31

 スタジオの帰りにふと問われた言葉を、今になって思い返す。
 俺にとっての音楽とは何なのか。音楽が、俺にとって何なのか。
 そんな事は今まで少しも考えた事が無かった、と言えば嘘になってしまうだろう。
 時にはこれで飯を食おうかとも考えた。時にはメジャーへ行くのも悪くは無いと思っていた。
 だがしかし、そんな事もせずバンドを転々とし、バーでジャズセッションなどをしてみたり、日の当たる舞台に
 昇る事をあえて望まなかった。

 そこに逃れてしまえば、俺は俺でなくなってしまうかもしれない。
 日の当たる舞台に月は輝けない。何故ならその淡い光は弱過ぎて、強い光の前では消されてしまう。
 そして強い光は俺に暖かさを与える。心の隙間を縫うように、その暖かさは伝わって来る。
 それだけは、それだけは避けねばならない。
 孤独に、孤高に、弱さを棄て、ただ強く、強く在らねばならない。

 その為には、例え本当に望んだ物でも斬り捨てなければならない。
 いや、斬り捨て、刻み、燃やし、灰を水に流す。これだけやってもまだ足りない。
 俺の心の一片にでもその痕跡が残ってはならない。記憶からもだ。
 そうやって得た強さだ。そうやって得た今の力だ。そうやって築き上げた今の、俺だ。

 では何故音楽だけが棄てきれていないのか。
 何故音楽だけを此処まで頑なに続けてきている。何故必要の無い物に手を出した。
 常に矛盾を抱える自分なのだから、今更この程度、などと見逃す訳にも行かない。
 何故音楽が俺の中で特別なのか。解き明かさねばならんだろう。
 始めはバイトの時の暇潰しだったと思う。
 その頃はライブハウスをバイト先とし、何かの折に楽器を鳴らしたのが出会いだった。

 ドラムはそこまで性に合わなかった。簡単だと思って投げた訳ではない。
 リズムを刻み、アクセントを付けるのには欠かせない存在。ドラム一つで印象が変わる。
 そんな屋台骨を支える気になれなかったのが、大きな要因かもしれない。

 ギターも性に合わなかった。
 喜怒哀楽の全てを表現し、時に喜怒哀楽以外のものを表現する。
 刻まれるリフは脳裏に叩き込まれ、駆ける音色は鼓動を早めていく。
 ただこれも光の当たり過ぎる場所に立つのが、問題だったのかもしれない。

 ヴォーカルは、歌う事にそれほど執着はない所為だろうな。
 それでも、ただ一度試しにリハーサルで歌わされた時、気分が良いと思った。
 全力で歌う事が、狂った笑いや暴力的な叫び以外で声を張り上げる事が、あそこまで気分の良い物だと知れた事で
 満足してしまったのが、そう思う原因だろう。
 

35 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/08/18(木) 20:43:34


 最後に問題のベースだ。これが大きく俺を狂わせている。
 音色は至極単純で、重く芯に響く音から抜けるような高音まで揃っている。高音を使う事は先ず無いが。
 機械のようにリズムを取り、時に歌い、時に跳ねる。
 まるで音の中で波に乗るような感覚。それが性に合ったのかも知れない。

 埋もれてしまう事があれば、自己を大いに主張する事もある。
 日常生活では特異な風貌以外は目立たず、暴力の場では暴力を持って大いに自己を主張する。
 そんな所が、似ているのかもしれない。

 それからは何かに取り付かれたかのように弾いていた記憶がある。
 一つの音を出す事で背筋が寒くなり、それを求めるかのように次の音を出す。
 それを繰り返して行けば一つの曲となり、誰かに聴かせる為の音となる。
 バンドを始めたのも、その頃だったか。

 今思い返せば拙い演奏ばかりしていたと思う。
 ギターは走り、ドラムは偶にリズムを崩し、ヴォーカルは歌詞を飛ばし、俺も偶にもたつく。
 それでも、その頃は純粋にバンドを楽しめていた。音を出すのが楽しめていた。混ざる音が心地良かった。
 人付き合いは嫌いで、その頃からバンドを転々としていたが。

 それが今は如何だと言うのだろうか。技術は確かに向上した。
 ベース自体にも手を加え、音色は格段に良くなったと思っている。
 だが、音の一つ一つからは、楽しみが消えていた。音の混ざり合う心地良さも消えた。
 バンドからは人付き合いの煩わしさしか感じられない。

 何だ…当の昔に音楽は棄てられているのではないか。
 今はただ惰性でベースを弾いているに過ぎない。惰性で音楽を聴いているに過ぎない。
 惰性で趣味にバンドと書き残しているに過ぎない。
 そうだ、全ては惰性。既に捨て去り、興味も無い。

 ならば消せる筈だ。消せ、潰せ、音楽など不要だ。
 ベースに手を掛け、ネックを折ろうと力を込める。案外簡単には折れぬものだ。燃やした方が早いのかもしれない。
 不意に響く、弦の振動から成る音。鈍い、音だ。だがその音を聞いて、力は抜ける。
 久しぶりの感覚だ。やはり、この音には敵わないらしい。

 そのままベースを持ち直し、椅子に腰掛けながら演奏を始める。
 世の破滅を願う歌を、暴力その物を歌った物を、終焉に救いは無いと歌う。

 結局、捨て去ったと思ったものは心の中に残っているのかもしれない。
 自分にとって心地良い曲を奏でながら、自分にとって棄てきれない物を確認する。
 棄てられないのであれば棄てなければいい。
 どうせ、こんな物は奴を殺す枷にはならない。

 終わらない歌を歌おう。
 奴の亡骸の前で。

 本当に歌いたかった歌は、今ではもう思い出せない。
 少なくとも破滅や終焉だけを歌った物ではなかった、かもしれない。

 

36 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/08/18(木) 20:44:42


 「俺にとっての音楽って、何なんだろうな?
  俺はバンドとかやるわけじゃねえし、そこまで思い入れもないぜ。
  少しばかりアコギを弾けたりするけど、趣味の範囲内だな。

  聴く音楽にしても真吾が選んできた奴を適当に聞いてるだけ。
  自分でCD買いに行った事なんて久しくないぜ」

 もう少し音楽に熱中してれば、気の効いた言葉を言えるのかも知れない。
 でも熱中してないんだから、答え様がないんだよな。
 適当な言葉で誤魔化すのは簡単だが、それで終わらせるのも忍びないしよ。

 「ああ、そうそう。他人の書く詩には興味があるぜ?
  綺麗な言葉で愛を語る奴も居れば、日常で使われる言葉で明日を詠う奴も居る。
  そんな中からインスピレーションを得て、自分に還元する事も無いとは言えないぜ。
  他人からの刺激ってのは、かなり良いもんだしな。

  だから俺にとっての音楽ってのは、音と共に詠われる詩なのかもしれない。
  俺もアコギ片手に弾き語りなんてしてみようか、とか思っちまうくらいの衝撃があるな。
  本当に良い曲が聴ければ、だけど」

 んで、心地良い音楽ねぇ。あるかな、なんか。

 「アコギ使った曲、かな? やっぱり少し齧ってるからよ。
  綺麗な曲とそれにあった詩があれば、心地良い曲なのかもしれない。
  普段そこまで意識してないからな。思いつきで答えた感が否めないけどよ」

 アコギだからこそ活かされる歌詞ってのは存在してると思う。
 何時だか聞いた曲はまさにその通りだったから。
 あんまり哀愁漂う曲は聞きたくないけどな。個人的に。
 悪くは無いと思うんだが、しんみりしすぎていけねえ。

 少しだけ燃えるような、そんな曲と詩。
 折角だから自分で作ってみるかな。
 持てる技能を活かさない手は無いだろ?
 

37 名前:名無し客:2005/08/21(日) 00:11:49

いおりんへ。

>終わらない歌を歌おう。
>奴の亡骸の前で。

もしも、この言葉が実行出来た暁には、どのような歌を歌うと思いますか?
鎮魂歌? まさかね。


京ちゃんへ。

>少しだけ燃えるような、そんな曲と詩。
>折角だから自分で作ってみるかな。

折角なので、作ったら是非公開してみて下さい。
燃える恋心、なんて言ったらちょっと可笑しいけどね。

38 名前:名無し客:2005/08/21(日) 20:14:10

なんか満月が赤いっすよ

39 名前:名無し客:2005/08/21(日) 20:15:46

満月ってかいたけど今日は十六夜かもしれん

40 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/08/21(日) 22:29:57


>>38-39

 ああ…こんなにも月が紅い…貴様を殺すには、惜しい月夜だな。
 

41 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/08/21(日) 22:30:55


 ケッ…こんなに月が紅いのに、お前の思考はそれだけか?
 

42 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/08/21(日) 22:31:34


 フン…下らなさ過ぎて久方ぶりに涙が出そうだな。
 と言うか、何だ、貴様の顔など早々拝みたくなかったのだがな。
 面倒な事に、出会ってしまったなら殺さぬ訳には行かぬだろう?
 すぐ…楽にしてやる。
 

43 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/08/21(日) 22:31:54


 ハァ…こっちの方が涙が出そうだぜ。
 お前のその下らない言葉が実行された試しがあるのかよ。
 俺が生きてる事が何人にも犯せない証拠だ。
 そろそろ諦めろ…って、やるのかよ…ったく、行くぜ?
 

44 名前:◆Iori/GPRcE :2005/08/21(日) 22:32:18


 交わる二つの異なる炎。
 軌跡は円を描き、踊るように交わり弾け、互いを蝕もうと毒牙を伸ばす。
 されど互いに犯せず、邂逅を重ねるのみ。
 何時まで経とうとも終わらない舞踏。何時まで経とうとも始らない狂宴。

 宿命と運命の歯車に仕組まれた、殺し合いと言う名の宴。
 だがその歯車も歯が欠け、決定的な終わりは見る事が出来ないようになっている。
 何時かその歯が直った時に、二人はどんな結末を迎えるのだろうか。
 今はまだ知る手立ても無く、果てのない舞踏は続いていく。

 草薙と八神。
 過去に手を取り合った仲でありながら、決定的な崩壊を向かえた両者。
 これからの関係修復も、欠けた歯車が握っているのかもしれない。
 

45 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/08/21(日) 23:08:24


>>37

 「そうだな…鎮魂歌などは死んでも歌わんとだけは言っておこう。
  何故あんな奴の死に哀悼の意を捧げねばならんと、貴様は言う?
  死んで当然の存在の死を悼むなど、馬鹿馬鹿しくて付き合いきれん」

 では、一体何を歌うと言う?
 亡骸を前にして、一体どんな歌を俺は歌いたい?
 一体、どんな歌がアレの死に相応しいのだろうか。
 そこから詰めねば話が進まないように思えてきた。

 死者を前にして歌った事など、ただの一度も無い。
 まあ、当然だな。愚図に掛ける言葉など持ち合わせていない。
 ならば、歌を歌う事とて同然無い訳だ。
 しかし今回はそれでは話が進まない。問い掛けに答えを与えねばならないのだから。

 「死者を前にして死の歌を歌っても何の面白味も無い。
  寧ろ、俺が道化に映ってしまうな。」

 普段聴くような曲では、馬鹿な行動にしかならない。
 では、愛だの恋だの下らない、などと吐き棄てれば良いのだろうか。
 これもまた何処か違うような気がする。

 他には…

 「俺が踏み出す一歩、でも歌ってみるか。
  奴の死を持って始まる、新たな俺の一歩を歌う。
  それで良いだろう。別に、何の変化も無いとは思うがな。

  ただ奴への憎悪が消え、暴力に塗れた茶番を演じる事も無くなる。
  それは大きな変化かもしれないが、下らぬ話だ」

 栄光に向かって走る、あの列車に乗って行こう。
 下らない物事ばかりで何の救いも無かった此処から、列車に乗って別の場所へ。
 日の当たる場所には出られないかもしれないが、それでも別に構わない。
 憎悪と狂気から解放された、ただの人として生きてみるのも悪くは無い。

 ベースは持っていこう。その他の必要な物以外は処分する。
 過去など必要無い。憎悪と狂気に縛られた過去など必要、無い。
 音楽をやって、自由気侭に生きていこう。
 それだけで、きっと満足だ。満足、出来る筈だ。

 下らない誰かが死んでくれるのだから。
 必要の無い誰か死んでくれるのだから。

 必要だった誰かが死んでしまうのだから。
 

46 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/08/21(日) 23:09:35


 「あー、曲作るのは時間が掛かりそうだよな?
  だから、かなり時間が掛かっちまうかもしれないぜ。
  それでも気長に待つってのなら、その内公開するかもな。
  出来が良くなけりゃ公開なんてしないだろうが」

 当然だよな?
 人に聴かせるもんや見せるもんに、妥協は駄目だろ。
 自分が納得できない物を人に見せるなんて、な。

 「それでも詩なら、簡単に作れるかもな。
  一応俺の趣味なんだから、即席でも充分良いもんが見せれると思う。
  少し待ってろよ?」

 さてと、お題目は燃える恋心、コイツが言った奴、にしてみるか。
 いや、それにしてもここ最近作る暇もなかったし、腕鈍ってねえだろうか。
 思いついたけど、出来は悪くないだろうけど、なんか他の誰かが主人公な気がする。
 思い違いだよな、絶対思い違いだと言う事で、公開する。


 愛だの、恋だの、下らない
 誰がそんな事を決めたんだろう
 誰にだって 心のどこかに あるはずで
 無くしたと思ってるのは 自分の殻に閉じ篭ってるから?

 見つけてみればいいだろう?
 探しに行けば きっと見つかって 手に入れられる
 一つは必ず どこかにあるって

 夕陽に照らされて 真っ赤に染まった空を見て
 誰かの顔を思い出して 顔まで赤く染まった気がして
 あの人に会いに行きたいなんて 駆け出してみるのも良いんじゃないか?



 「さて、ご感想は?」

 俺の詩のセンスは悪くない筈だ。
 ネーミングセンスも……悪くないって。絶対に。


47 名前:名無し客:2005/08/28(日) 23:12:02

何の為に生まれて、
 何をして生きるのですか?

 何の為に死に、
  何をして死ぬのですか?

  何の為に笑い、
   何をして笑うのですか?

   何の為に苦しみ、
    何をして苦しむのですか?

    何の為に戦い、
     何をして戦うのですか?

     何の為に人は出会い、
      何をして人は出会うのですか?


―――――何の為に?


―――――何をして?



何故?


何故?

48 名前:名無し客:2005/08/29(月) 04:40:13

豆乳は好きか?
豆乳は良いぞー
飲み続けると肌がすべすべになってくる
マジオススメ

納豆も良いよ

49 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/08/29(月) 23:03:08


>>48

 「75円以下がベストだ…」

 っと、何俺らしくない事言ってるんだろうか。まるで何処かのオレンジ胴着が乗移った感覚。
 疲れてるのか、憑かれてるのか。後者の考えは握り潰そう。
 考えるだけでも馬鹿馬鹿しいしな。

 「悪ぃ悪ぃ。変な奴が紛れ込んだ見たいだ。
  んで、豆乳が健康に良いってのは知ってるけど、好きとか嫌いとかは考えた事ねえな。
  あったら飲む事もあるけどよ、自分から買ってまで飲む事は無いしよ。

  そもそも豆乳自体そんなに見かけねえんだけど、アレって何処に売ってるんだ?
  飲み物が売ってる所を見れば良いのか、豆腐の近くに置いてあるのか。
  そこから知らない俺が豆乳についてなんて語れないぜ」

 真吾を使い過ぎなのか? 俺。

 「へぇ。飲み続けると肌が綺麗になるのか…ユキ、知ってるのかな。
  知らないなら教えてやるべきか。
  あー、でも暗にお前は肌が汚いからどうにかしろって意味に取られかねないか…
  流石にこんな下らない事で喧嘩したくないしな。

  なんか機会ある時にでも話してみるとして、男に教えてどうすんだよ?
  確かに俺みたいな良い男はそれなりに気を使わなくちゃならないかもしれないけどな。
  それでも肌荒れの原因はストレスだって聞いた事もあるし、その点俺はストレスなんて
  溜め込む前に発散してるしよ。

  趣味と実益を兼ねた格闘技ってのは、便利だぜ?
  苛々してる時は親父を捕まえてボコボコにしても良いし、稽古の名の元に真吾をイジメて見るのも良い。
  紅丸や大門なら緊張感を持った戦いも出来るし、それはそれで爽快だ。
  なら、豆乳なんかにゃ頼る必要は無いって事だ」

  実に明快な答えが出せたと思う。流石俺。

 「それで、お次は納豆か。納豆はナットウキナーゼだったか?
  血液サラサラになるらしいな。俺には必要なさそうだけど。
  主食は魚が多いしよ。青魚だって嫌いじゃない。

  鯖の一夜干しだとか、鯖の味噌煮なんか美味いだろ?
  最近の子供は贅沢しすぎなんだよ。だからこれの味が分からない。
  困ったもんだぜ。甘やかし過ぎなんだよ。

  小骨が喉に刺さる? 噛み砕けば良いだけじゃねえか。
  魚は骨を取るのが面倒だ? 骨を外す楽しみを知ればそんな事は言えない筈だ。
  本当、過保護なんだよ。そう思うよな?」

 魚は美味しい。それを知って貰うように努力した方が良いのか?
 

50 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/08/29(月) 23:03:52


 ああ…俺は何故こんな料理を作らされる羽目になったのかを知りたい。
 誰だと言うのだ…あの女どもに入らぬ入れ知恵をした奴は。
 見つけ次第殺してやろうか。いや、絞り粕にでもしてやろう。
 豆腐を作る過程で出来るおから以下の塵にしてやるのが相応しい。
 見つけ次第必ず、血液を全て撒けさせ、臓物を引き摺りだし、干乾びた状態にしてくれる。

 忌々しい。そう思うと包丁を握る手に力が篭る。無駄に力が篭る分、食材は無駄に散らばっていく。
 それを一つ処に纏める作業がまた、苛立ちを募らせる。

 「八神ィ? まだ出来無いのかい?」 「まだなのかしら? 八神」

 この声がまた苛立ちを募らせる。と言うか何だ、戻ってくるのが早いだろうが。
 三途で沈んだままで居ろ。貴様等の皺に効くツボを針の山で突いて来い。血の池で美容に対する意識を改めろ。
 そして戻ってくるな。女狐どもが。
 現世に戻ってくる方が体に負担がかかる事にいい加減に気付け。
 何が心配だから戻って来ただ。貴様等が地獄に飽きただけの事だろうに。

 手軽に手に入る無味無臭な毒物は何だ。砒素か。砒素だな。恐らく間違い無い。
 手に入れるのは裏ルートでも使えば良かろう。
 最近殴り倒した餓鬼にその伝がある事は既に確認してある。
 殺そう。毒で殺せば老衰だと思って戻ってくる事もなくなるだろう。

 現世に戻ってくれば老衰で死ぬ。これを覚えさせて置けば二度と戻って来ないだろう。
 清々する。それなら最後の晩餐に付き合ってやるのも悪くは無い。
 しかしなんでまた豆乳と納豆を使えなどと言い出したのか。
 いやまて、これでは振り出しに戻り、しかも既に結論は出ているではないか。

 あの年になると肌年齢も気になるのだろう。
 そう言えば最近また三十路に足を突っ込んだ女に出会ったが、アレもなにやら苦労していたな。
 肌の張り艶が無くなって来ただとか何だとか。

 惨めだ。ああ、こいつらは惨めな敗者なのか。
 これからは年々下降の一歩を辿り、見苦しくも繋ぎとめようと足掻く。
 そうして行く内に化粧は徐々に厚くなり、少し突けば皹が入りそうな面になる。
 香水も付け過ぎで周囲に害悪を齎し、補正下着で弛緩した体を騙す。

 クハハッ…そう思うとなにやら憐れみの念が湧いてきた。
 哀れな敗者は俺に縋って少しでも延命策を取ろうと言うのか。
 ああ、それならば仕方ない。仕方ないな。

 ……仕方ない事などあるか。忌々しい。やはり入らぬ入れ知恵をした者には死を。
 まあ、その前に作り終えよう。背後の殺気が腹立たしいからな…
 

51 名前:名無し客:2005/08/30(火) 02:28:56

豆乳はコンビニだと紙パックの所
スーパーだと牛乳の近くに置いてあるよー
継続は力なりって事で
飲むなら毎日が良いよ


そういえば火傷とか切り傷の直りが前より早くなったかも

52 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/08/30(火) 22:54:03


>>51

 「コンビニはダメだ。あそこは賞味期限間近でも半額処理をしない事が多い。
  その点スーパーなら、何件か回る苦労を入れても、75円以下の物を見つける事が出来る。
  半額を侮る無かれ。俺達はこれで飯喰ってんだよ!」

 オレンジ胴着め…

 「俺に入ってくるなって言ってるだろッ!
  っと、悪ぃ悪ぃ。こっちの話だ。どうも最近電波が混線気味らしい。

  で、豆乳マメ知識? 
  豆ならほかに詳しい奴が居るんじゃねえの、なんて俺は言えないが治癒力まで上がるのか。
  そいつはお得だな。しょっちゅう怪我するし。
  大きい怪我じゃなくて小さい怪我で泣く、こんなのも良くあるしな。

  火傷は他の奴には良いんじゃねえの? 俺は耐性あるからな。
  八神とど付き合ったくらいなら、火傷する事も少ないんだよ。
  草薙の血のお陰なのかね」

 なんでか傷の治りも早かったりするんだよな。
 我の事ながら少しだけ不気味だぜ。

 「まっ、これからは気が向いたら真吾にでも買ってこさせるか。
  そろそろ学校も始まるし、昼飯時に飲んでりゃ効果は出るだろ。
  でも味だよな、味。結構独特だろ?

  不味いとは思わないんだけど、美味いとも思えないしよ。
  豆乳プリンっての食った事あるけど、アレは豆腐の味だったような。
  まあ豆腐も豆乳プリンも良く似たもんか。作り方とか知らないけど。
  それにしても俺が食ったのが悪かったのか、それともどれもあんな味なのか、気になるぜ」

 そう言えば、プリンって色々種類あるよな。
 今はどうでも良い話なんだが。

 「話は変わるが絞りたての豆乳って、味に違があるもんか?
  違うんだったら飲み比べてみて、好きなほう選べば良い訳だ。
  やっぱり市販品は何かしら添加されちまうだろ?
  だから味も結構変わってくると思うんだよな。

  絞りたての豆乳が置いてある店の方が少ないと思うけどな。
  豆腐専門店なんてここらじゃ見かけねえし。

  そうと決まれば群馬まで行って見るか。
  豆腐やあるだろ? ハチロクが置いてあるとか言う。
  見物がてら、ってのも悪くないかもしれないぜ」

 学校は…気にしないで置くか。
 

53 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/08/30(火) 22:54:35


 如何やらあの女狐どもは毎日豆乳を飲み続ける事を決めたらしい。
 怪我の治りの事を聞いて、確信を得たらしい。
 細胞の動きが活発になり、新陳代謝でも上がるのだろう。
 それが肌に繋がっているのだろうから。

 まあ、それは良い。別に続けたければ続ければ良い。
 だが、何故、俺が、毎夜、豆乳を使った料理に、苦心せねばならんと言うのだ。
 朝はコップに注いだ豆乳でも良いらしい。食い合わせを考え洋食にしたからだろう。
 それで満足しているように見えたが、奴等の目は夜はこれで済ませようとするなと物語っている。

 それで俺は悩まねばならんのか。本当に、誰だと言う。
 昼の番組はよくこう言った情報を垂れ流しているな。ならば明日はテレビ局でも襲撃してやろうか。
 それとも美容関係の雑誌か。ならば大手の編集社でも襲撃するか。
 如何する。考えるのも面倒だから、どちらも襲撃するか。

 テロ対策は万全か? 俺と言う一人の襲撃者を止める事は出来るか?
 炭素菌より恐ろしいテロリズムと言うものを見せてくれよう。
 要らぬ情報を振り撒いた罪を思い知ると言い。
 テレビ朝目と集愚社は覚悟しておけ。

 ……今思い返せば炭素菌か。炭素菌は何処で手に入るのだろうか。
 中東辺りに旅立って、何処か襲撃すれば手に入りそうなものか。
 砒素と炭素菌を使えば女狐どもは始末出来るだろう。
 幾らオロチの血があろうとも、中毒くらいは起すだろう。

 夢を描くのは簡単だ。簡単だ。現実から目を逸らせばいいだけだ。
 現実は如何だ。今日も今日とて、また俺が作らされる羽目になるのか。
 と言うか何だ。何故俺の意思に反して手は動いている。
 何故俺の意思に反して、この暑い中、豆乳を使ったシチューを作っている。

 馬鹿か俺は。馬鹿なのか俺は。無駄な事は嫌いではなかったのか。
 何故手を動かす。作らねば殺されるからか。
 否、断じて否。奴等程度返り討ちに出来る。
 背後の殺気など恐れる物か。恐れる、物か……恐れて…
 

54 名前:名無し客:2005/08/30(火) 23:21:51

お前と俺とじゃ人間としての質が違う。
そう・・・センスが違うんだよ。センスが・・・。

55 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/08/30(火) 23:53:04


>>54

 「へぇ…そいつは面白い考え方だ。
  君の目の付け所はとても良い。だからその目を忘れるなよ?」

 大体だな、こんな事言ってる奴に限って口ほどにもねえんだ。
 どうせ言葉は借りもんだろ?

 「まぁ…良いぜ? 丁度暇してたんだ。
  今日は気分が良いからチョットだけ遊んでやるよ」

 真吾相手にするくらいの気持ちで掛かれば、そこまで酷い怪我もさせないよな。
 やっぱりあんまり気分の良いもんじゃねえ。
 殺しちまうのなんて、御免だ。

 「火傷だけは覚悟しとけよ?
  ナパームより熱くて、太陽にすら負けない炎!
  生半可な気持ちならさっさと消えろよ?」

 炎をちらつかせても、この手合いにゃ怯えはねえか。
 そりゃあそうだよな。俺が誰か分かって喧嘩売るんだし。
 でもなんだかな、少しだけやる気が削がれて来たのも事実なんだよな。
 さっさと終わらせたいなら、それなりに真剣にやらなくちゃならないし、
 それやっちまうと大怪我確定させちまうし。

 火傷は侮ると怖い。先に電話…公式試合でもねえから傷害罪が付くか。
 そうなると困りもんだよな。俺には約束だってあるんだし。
 高校だけはまともに卒業しないと、な。

 そうなると温く相手か…ハァ。
 ボディーだけで沈んでくれりゃ、良いんだけどな。

 「行くぜ?」

 顔が売れんのも困りもんだぜ、本当。
 一盛り幾らの雑魚ばっかじゃな…待ち遠しいよな、KOF。
 

56 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/08/30(火) 23:54:26


 「この気分が悪い時によくもまあ、そんな大口を叩く。
  死のフレーズを刻むが良い…俺が貴様の悲鳴でコーラスを奏でてやろう」

 まったく、何故こんな日に限って、出歩いてみれば屑に出会うと言う。
 俺はあの女狐達の相手だけでも苛立っていると言うのに、今夜はこんな屑までか。
 良かろう。借り物の言葉を口から零し、虚言に彩られたままに死ね。

 「如何した? 俺が怖いのか?」

 目の前に無防備に立っているのに、何故来ない?
 殺気に当てられたなどとは言って欲しくないのだが、その可能性もあるか。
 大体だ、相手を選ぶ事が出来んと言うのか。

 獣ですら己が敵わぬ相手なら道を譲ると言うのに…
 人間とは畜生にすら劣るのか、そんな疑問が沸き起こって仕方が無い。

 「……邪魔だ」

 肩を掴んで行こうとしていた方向への道を開ける。
 狂犬にすら成り下がれない屑を相手にするだけ無駄と言うもの。
 態々暴力を振り撒いてやる気にもなれん。

 まったく、顔が売れる弊害が大きすぎていかんな。
 次に殺す奴は決めてあると言うのに…茶番劇は血の舞台と変わるだろうが。
 

57 名前:名無し客:2005/08/31(水) 19:42:12

搾りたては飲んだことがないからわからないけど
市販品でもメーカーと調整か無調整かで味が変わる

とりあえず無調整豆乳はまずい

プリンはパステルのなめらかプリンがおいしいよー
味も色々あるし

58 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/08/31(水) 23:28:34


>>57

 「へぇ。メーカー次第、調整次第。まるでゲームみたいなもんだな。
  いやまあ、普通の事なのかもしれないけどよ。
  作る人間が変われば味は変わるんだから、機械でも一緒か」

 こう言うのが無駄知識? 自慢出来ない無駄知識かもしれないけど。

 「そう思うと豆乳は敷居が高い、のかもしれないな。
  自分の口に合う一品を見つけなくちゃならない訳だし、しかもそれを毎日だ。
  んで、自分の体に変化が出るのが分かるのが、それから暫らく経った後だろ。
  奥が深い。素人は迂闊に手を出せないぜ」

 特に貧乏な学生には。
 俺は金が無い訳でもないけどな。賞金もあるし。

 「健康に生きたいなら、取り敢えず動けば良いとは思うんだけどな。
  現代人の運動不足。これって結構深刻なんだろ?
  なんでも基礎体力が落ちてるだとか、スポーツテストの結果が下がってるだとか。
  世の中は便利になって、人間は動かなくなっちまったって事か。

  そう言えば、近所で子供が遊んでる姿ってのも見なくなったよな。
  それも弊害なのかね。家に篭るより外出た方が楽しいと思うんだけどな」

 豆乳から話が広がり過ぎちまった気がするが、話題は健康だし良いよな。

 「プリンねぇ。豆乳プリンから繋がったか。
  あれこそ味の違いが分かり難いんだけどな。
  いや、分かるには分かるぜ? 俺だって味覚オンチって訳でも無いんだし。

  でもな、分かってる奴が居るのか、ってのが疑問だな。
  現代人は味覚障害も増えて来てるらしいしな。ジャンクフードのお陰で。
  俺の知り合いにも味が分からなくなって来た、なんて言ってた奴が居た。
  そうなっちまうと…なんと言って良いものやら。

  何喰っても同じ味。甘くても甘いと感じられない。美味いのかも分からない。
  世の中ってのは上手く行かないんだな、なんてのがこんな事から分かっちまうのも嫌なもんだぜ」

 便利になった弊害は、大きいもんなんだな。
 今まで深く考えた事も無かったけどよ。
 

59 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/08/31(水) 23:29:16


 今日も今日とて豆乳だ。如何やら味の違いを知ってしまったらしい。
 流石に賞味期限切れで廃棄する物を二日続けて飲ませたのが拙かったか。
 それとも、敢えて温くして飲ませていたのが原因なのだろうか。
 ささやかな復讐が潰えてしまったのは非常に心残りだ。

 だが、コイツらとしては無調整の物の方が好きらしい。
 曰く、調整が入った物なんて化学調味料飲んでるみたいなもんだろ、だそうだ。
 その程度の舌は持ち合わせていたらしいが、尤もな発言と言えよう。

 成分の調整をすると言うのは、突き詰めて言ってしまえば、日持ちさせる為の添加剤を加えるという事に
 他ならないと考えるべきだろう。
 本来そう日持ちしない物を、添加剤を加える事で日持ちさせる。
 この場合に用いられるのは、抗酸化剤やビタミンC。
 それによって日持ちをさせ、メーカーとしての利益を優先させる。

 一概に悪と言い切る事は出来ない。消費者としても日持ちした方が良い場合はある。
 例えば、苦手だが健康の為に飲む奴には、日持ちする方が期限までに飲み切れる可能性が高くなる。
 家に帰り着くのが不定期な人間もまた、期限は長いに越した事も無いだろう。

 だが、本当に健康の事を考えるのであれば、調整などしていない方が良い。
 当たり前だ。何が悲しくて態々科学的に合成された物を体の中に入れねばならん。
 それが人体に何の障害を与えなかったとしても、本来は自然に口にする事は無い物とてある。
 健康に良い物を飲んでいると思っていながら、徐々に化学物質が体の中に溜まると言うのは大いにある。

 紙パックの飲料を飲むとすれば、飲料に溶け出した糊や表面を加工する際に用いられる塗布剤。
 気付かぬ内に体の中に蓄積していくそれが害である可能性は捨て切れぬだろう。
 健康の為にが、不健康への一歩に繋がりかねないと言うのは何たる皮肉か。
 下らない話に過ぎないが、気にして置くのは良い事ではないかとは思う。
 俺の中での言葉である以上、誰に伝わる物でもないのだが。

 現実逃避にも慣れ過ぎていかんな。今夜も目の前には鍋が。
 豆乳でスープでも作っておけば、今夜は良いだろう。
 大体だ、俺に豆乳料理のレシピなど存在せんと言う事にあの女どもは気付いているのだろうか。
 気付いていれば作らせる事は…気付いていても作らさせるか。
 忌々しい事この上ない。某化学調味料を一瓶突っ込んで置いてやろう。

 それにしても、明日もこれかと思うと涙が出るな…失踪でもしてやろうか。
 

60 名前:名無し客:2005/09/03(土) 02:39:25

うひゃーなめくじ踏んじゃったort
なんで台所に居るんだよ。゚ヽ(゚`Д´゚)ノ゚。ウワァァァン

61 名前:名無し客:2005/09/04(日) 00:06:34

最近お二人+α的には何故か豆乳流行りのようですが、
飲んでみたい、試してみたい健康飲料はありますか?



とか。



あ、もちろん冗談ですけどね。

62 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/09/04(日) 22:47:03


>>61

 「ノニジュース。勿論原液のまま未調整で。
  実は今日飲んできたんだけどな。試飲出来たから。
  不味い不味いと言われてるけど、実際そこまででもなかった気がするぜ?

  なんかプレーンヨーグルトそのまま食ってるみたいな味だったから。
  匂いはワインに近い匂いだったし、なんでそこまで嫌がるんだろうな?
  俺の直前に飲んでた奴は相当嫌な顔してたけど」

 まあ、御世辞にも美味いと言える味じゃあない事は確かだったけどな。

 「それでも体に良いって事で買ってたけどな。色んな奴が。
  なんでもダイエットにも効くとか、風邪ひかなくなるだとか、
  色々店員が説明してくれたけどよ、流石に今の俺にゃあ必要ないし買って来なかった。

  大体一介の学生があんなもんに手を出せる訳がねえってんだ。
  一本でも結構な額するんだぜ? それを毎日続けるなんて、な。

  それでも癌やら何にでも効くらしいから、割にあってるのかもしれないが。
  健康状態が最悪な人はお試しあれ、って奴かもしれない」

 なんか店員見たいだな。俺。

 「で、血? そんな文飲む奴、八神しかいないだろ?
  吸血鬼やら除いて、普通の人間だけで話せば、だけどな。
  ああ、それでもスッポンの血なんかは飲んだりするか。
  意外に血を飲むって行為に抵抗がある奴は少ないのか?

  それが何の血か教えられない限り、見た目だってそう変わるもんでもねえ。
  人間の血を、スッポンの血だとか偽っても分からない可能性はあるのかもしれない。
  吸血鬼やら、その手の行為に慣れてる奴は知らないけどよ。

  まあ、普通の人間の俺は血なんて早々飲まないぜ、と。
  口の中切った時位か、血を飲むのなんて」

 そう言えば昔、吸血鬼に出会ったような記憶も…気のせいだな。
 

63 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/09/04(日) 22:47:31


 「何だ、貴様は血を飲まんのか?
  あれこそ健康を促す為の飲料であると思うのだがな。
  特に若い血は柔らかく、喉越しも良い。匂いは若干弱いが、ソレが飲み易さに繋がる。
  バケツに一杯であろうが飲めない事は無いな。無論、肉もあっての事だが」

 さて、この言葉でどれだけ誤解してくれるのやら。

 「年老いた血はいかんな。不味くてとても飲めた物ではない。
  あれは例えるならば老廃物の塊に過ぎんだろう。
  薬や大気で様々な部分が汚染され、泥水に近い物。

  まあ、若くても健康状態、生活如何で不味くも美味くもなるが。
  それでも若いに越した事は無く、女の血が好ましい。
  子を産む前ならより良いな。肉も柔らかい事も相まって」

 そろそろ、頃合か…

 「やはり牛肉は若いものに限る。血の滴るようなレアにするにはな。
  血まで美味く食えない様では、駄目だ。
  血の香りなどが食欲を湧き立たせると言うのに」

 中々の顔か。暇潰しにはなったな。

 「大体、健康飲料として血は適当なのかと問いたい。
  人体の血を入れ替える事はそれなりに長生きする為には必要らしいが、飲む事で
  齎される利益など精々が鉄分の補充くらいのものだろう?
  それならばサプリメントでより効率的に補充出来る。

  普通の人間が血を飲む事で健康になれるかと問われれば否だ。
  それにだ、血を好んで飲むような奴が居るとすれば見てみたいものだ。
  物語には吸血鬼として度々出現したりするが、常世と関わりの無い存在。
  貴様はその類の物を見た事があると言うのか?

  まったく、貴様のような人間がおいそれと血を飲むなどと言わない方が身の為だ。
  何処ぞの馬鹿が狩に来るやもしれんぞ?」

 居るには居るが、それを教えてやる必要もあるまい。
 関わる必要の無い世界の出来事なのだから。
 

64 名前:名無し客:2005/09/06(火) 02:18:26

ぴかーっと晴れた、気持ちの良い休日。
そんな日って、どのように過ごす計画を立てます?

あ、留年は補習で忙しくて休日なんてないかな?

65 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/09/07(水) 23:37:46


>>60

 「泣け、叫べ、そして…掃除しておけ」

 馬鹿馬鹿しい事にこの言葉は流用が利き過ぎる。
 悲しくなるくらい、馬鹿だと分かっていながら、使ってしまう。
 悪癖か。直す努力をしよう。

 「まあ何だ、所詮貴様の不注意だ。
  泣いた所で如何にもならん事くらい理解しておけ。
  その程度の脳味噌は詰まっているだろう?

  それにしても、貴様の家は余程に汚れているのか、開放的過ぎるのか。
  何故そんな物が入ってくるかが疑問だな。
  答える必要は無いが。聞いた所で何の得にもならん。

  次は気を付けて置くんだな、とでも言ってやろう」

 ふむ…蛞蝓か。健康食品と偽って食わせてみるのも一興か。
 方法を考えると報復手段としては不出来だ。
 手間が掛かる割に俺の心が満たされる事が無い。
 

66 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/09/07(水) 23:38:28


 「ハハッ…災難そこに極まりって奴か? 中々面白い事やってくれるじゃねえか。
  早々無いぜ? ナメクジ踏んじまうなんてな。
  素足で踏んでたならご愁傷様だ。スリッパとかでもまあ、辛いか」

 靴でなら色んなもん踏んでるんだけどな。俺も。

 「まッ、あんまり気にするもんじゃねえ。思い出して嫌な気分になっちまうからな。
  ただ、梅雨も過ぎたってのになめくじか。
  秋にも出るもんなんだな。初めて知ったぜ。

  カタツムリの殻脱いだ姿なんだろ? アレって。
  違ったっけ? どうでも良い話なんだけどな。これは。

  とりあえず次ぎは気を付けろよ?
  あんなんでも命ある物なんだし、むやみやたらに殺すもんじゃねえさ。
  あー、でも、塩かけて見たいもんだな」

 本当に縮こまるのか見てみたいだけで、殺したい訳じゃねえ。
 いや、それでも一緒か。私欲で殺すなんて、やっぱ良くねえよな。
 

67 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/09/07(水) 23:39:37


>>64

 呆れるくらい、綺麗な青空。気付いたら口が開いてたのは秘密だ。
 雲は無い。太陽が燦々と輝いて、肌がジリジリ焦げる感じがする。
 残暑の厳しさが――俺は暑いのは嫌いじゃないけど――人から体力を奪っていく。
 街を歩く人の顔が疲れて見えるのはその所為だろう。

 それもその筈、台風通過直後の晴天。夏に戻ったような気温と陽射。
 時間は太陽が一番熱く感じられる二時。
 それでも人は波を作って、時に他愛も無い話をしながら、時にウィンドウショッピングを楽しみ、
 それぞれの楽しい時間を過ごしていく。

 「しかしまあ、やっぱり休日なんだな…」

 独り言は雑踏の中へと逃げて行き、もう帰ってきてはくれないだろう。
 言の葉は余韻も生まずに散っていく。
 だからこそ、一言一言の重みが増すんだろうと思う。
 オオ、なんか詩的だな。やっぱり俺は天性の詩人だ。

 待ち合わせの時間より少しだけ早く着いちまって、何となく街行く人を見ている。
 色取り取りの服に、思い思いの髪型、様々な表情に溢れる顔。
 色んな人が居る。色んな人は居る。でも俺を必要とする人はまだ居ない。

 それでも、アイツが遅れる事なんて無い事は信じてる。
 今までだって、俺が待たせる事の方が多かったんだから。
 それでも怒る事もしないで、笑って済ませてくれるのはさながら仏の様で。
 俺がアイツに頭が上がらない、一つの要因なのかもしれないな。

 空が蒼い、日の光は白い、風は秋を感じさせる涼やかさで駆け抜けて、それでも暑い。
 アスファルトの照り返しと、自然の無い街だから、余計に暑いのかも知れない。
 待ってるだけは退屈だ。人間観察なんて趣味は無いし、逆に見世物になった気分。

 チラチラチラチラ。そんな好奇心の塊な目で見るんじゃねえよ。
 俺は動物園に初めて連れて来られたパンダか。

 KOFで勝ち続ける弊害は大き過ぎて、時々嫌になる。
 それでも強い事をアピール出来るのは良い。草薙の拳の強さを広められるのは良い。
 一時は最強だって目指した。誰にも負けない自身もあった。
 だからこそKOFになんて出て、優勝を掻っ攫ったりもした。
 

68 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/09/07(水) 23:40:01


 だけど、ただ一人には勝つ事が出来ない。
 コイツには一生勝てないだろう、そう思わせられる相手が居る。
 ソイツは拳なんて振るえない。多分、相手を殴る為に握った事も無いだろう。
 いや、あるのか。何やら訳の分からない大会出てたし。

 それは置いておいて俺と純粋な殴り合えば、シミュレーションの上では勝率100%。
 機械的に、感情を排除すれば、出て来る勝率。
 当たり前の話。腕力も、経験も、何もかもが違う。

 戦う力なら何もかもが勝っている。でも勝てない。勝てる筈がない。
 待つのはこんなにも退屈なんだ。一年も二年も待つなんて、何にも劣らない責苦。
 地獄の業火で身を焼かれるよりも、刺された傷を抉られる痛みよりも、何よりも辛い。
 それにアイツは打ち勝った。俺は必ず打ち負けるだろう。

 それなら敵う筈なんて、無い。こればっかりは性分の違いだろうけど。
 俺は待つくらいなら会いに行く。止まる事なんて出来ないから。
 だから、探してみるか。アイツの来る方向は分かってるから。

 色取り取りの服。思い思いの髪型。様々な表情の顔。溢れる人の波。
 一人を見つけ出すよりも、待ってた方が早いのかもしれない。
 それでも捜しに行く。

 見つから無い筈が無い。誰よりもアイツの事を見ているから。
 探して、捜して――――

 「アッ、京。何してるの? 待ち合わせ場所はここじゃないと思うんだけど」

 ―――――ああ、やっぱり勝てない。

 「そう言えばそうだな。まあ良いじゃねえか。会えたんだしよ。
  それじゃあ、行こうぜ?」

 蒼い空、焼ける陽射、秋の風と人の波。側には勝てないコイツ。
 休日は始まったばかり。何をしたもんか。
 それを考えるのも楽しいもんだよな。
 

69 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/09/07(水) 23:40:51


 憎々しい青空。憎々しいほど照りつける陽光。未だに月夜は遠い。
 窓から抜けてくる涼しげな風に乗り、淹れ立ての珈琲の香りが運ばれる。
 流れる音楽に身を委ね、ただ点けたままのTVを虚ろに眺める。
 昨夜の台風の話題で持ちきりらしい。実に下らない、他愛の無い話。

 TVは消す。詰まらない物を眺めていてやれるほど、心は広くない。
 珈琲に口をつける。焼けるような熱さ、仄かな酸味、嫌味の無い苦味が口に広がる。
 自分の為に淹れた、自分を喜ばせる為の一品。悪くない味だ。

 流れている音楽は終焉を歌い、破滅を願い、人の悪意を疑わず、人の善意は信じない。
 ギターの悲鳴が鳴り響き、ドラムは地を割ろうかと言う程に打たれ、ヴォーカルは止め処無く溢れる
 怒りと何かを絶叫し、ベースは狂ったように唸りを上げる。
 世の中では流行る事も無く、一部の人間の耳にだけ留まる音楽。
 BGMには不出来な仕上がり。が、このままで良いだろう。

 煙草に火を点ける。微かに揺れる紫煙が珈琲の湯気と踊り出す。
 色の違うそれらを眺め、何をするでもなく、ただ此処に在るだけ。
 何時も通りの休日。良く晴れた日は余計にこうしている事が多い。

 余程の用事が無い限り街に出る気にはなれない。
 休日の街は人が溢れ、それだけで気分が陰鬱になる。
 何故そうも無駄に笑うのか。何故そうも無駄に他人と接したがるのか。
 理解出来ず、理解する気にもなれない。

 それに、綺麗な青空、燦々と輝く太陽。これがあるだけで気が滅入ってくる。
 原因は別で、それらは悪くはない。悪くは無いが、滅入ってしまう物は仕方が無い。
 似合わぬ物の下には出られない、と言うのもあるが。

 嬉々とした目線で見られるのもまた、気に入らない。
 初めて動物園に連れて来られた客寄せパンダにでもなった気分になる。
 神楽の主催した、世界的規模のKOFが実況中継されたのが要因。
 暴力だけの宴を見世物にするのは如何かと思うが、人の興味は尽きないらしい。

 今でも見られる格闘技の中継。何が面白いのか、まったく理解出来ない。
 ただ殴り合い、相手を傷付け、自分も傷付き、見世物と気付きながらも踊る道化達。
 俺もその中の一員だと言う事は理解しているが、暴力の何処に魅力があるのか。
 

70 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/09/07(水) 23:41:21


 人は強くありたいと、心の底では思っているからだろうか。
 進化の過程で失われた、闘争心を呼び起こすからか。
 まあ何にせよ、下らない。早々に見切りは着けるべきか。
 葬送を行わねば、それすらも適わない事だが。

 ああ、今はその思考は潰しておこう。折角の休日だ。
 緩やかに、穏やかに、呆けて過ごしても罰は当たらぬだろう。
 報いとして奴を殺すまでの道程は長くなるが、殺そうと思えば何時でも殺せる。
 問題無い。

 気付けば随分と煙草が短くなり、珈琲から沸き立つ湯気もなくなっている。
 CDも終わってしまったようだ。
 随分思考の底に沈んでいたようだ。何時もの事と言ってしまえばそれまでだが。
 温い珈琲を飲み干し、煙草を揉み消し、CDを入れ替える。
 新しい珈琲を用意し、新しい煙草に火を点け、新たな音に身を委ねる。

 時間はゆっくりと過ぎて行く。未だに空は蒼く、陽光は高く、残暑の厳しさを物語る。
 それでも風は秋の物。抜ける風は涼やかだ。
 この分ならば夜には涼しさを増し、星が煌々と燈り、月が映えた空になるだろう。
 それを見に、夜に出かけて見るのも悪くは無いか。

 少しばかり早い月見と洒落込もう。望月だけが人を惹き付ける訳ではない。
 そうと決まればこのゆったりした時間ももどかしく思う。
 だが、焦っても仕方が無い。
 新たに流したジャズに身を委ね、平々凡々とした時間を過ごす。

 穏やかな休日。
 似合わぬ事に苦笑を漏らし、受け入れるとしよう。
 

71 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/09/08(木) 22:50:11


>>47

 「何の為に生まれ、何をして生きる?」
 

72 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/09/08(木) 22:50:56


 「何だよ、随分哲学的な事聞いて来るんだな。哲学的で良いのかは知らないけど。
  何の為に生まれて、何をして生きる、か。改めて考えると難しいもんだな。
  そこまで考えて生きてる奴も少ないだろ? 今の世の中じゃよ。
  それでも、自分なりの答えは持っておくべきだよな。

  無意味無気力無目的。そんな生き方なんて真っ平御免だ。
  そう思わない奴も、居るのかもしれないけどな」

 俺はどうなんだろう。考えた事もない話。ただ思うが侭に、やりたい様に生きてきた。
 それが答えなのかもしれなくて、それじゃ答えじゃない気もする。

 生きる為に生まれて、生まれたから生きる。
 

73 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/09/08(木) 22:51:28


 「何の為に死に、何をして死ぬ?」
 

74 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/09/08(木) 22:52:08


 死ぬ為に生まれて、生きて来たから死ぬ。

 逆もまた真なり、なんてのは良く言ったもんか。
 死ぬ為に生まれてくる奴なんて居て欲しくはない―――けど、そんな奴だって居た。
 俺のクローン、少しだけ違うが俺の炎を移植されたK’、仮の生を与えられた蛟。
 そして―――無に帰る事を願ったオロチの眷属達。

 死ぬ事を初めから決められて造られた奴、死ぬ事を覚悟の上で生きてきた奴。
 なんでそう、命を大事に扱えないんだろうか。
 同情なんてしてない。けど、納得だって出来ない。

 捨て駒にされる事を知らされぬまま、組織の言いなりになって動いていた奴等。
 目的の果ては死だと分かっていて、それでも尚進んできた奴等。

 死は終わりだと、そう思ってる俺には理解出来ない。
 輪廻転生。確かにそれはあるって事は、身に染みて、理解したくなくてもした。
 でも、今生きてる自分は自分しか居ないじゃないか。
 それなのに、なんで死が目標になっちまうんだろう。なんで、死が誰かに決められているんだろう。

 分からない。考えが纏まらない。答えは見つからない。答えを見つけられない。
 答えなんてあるのか。それともないのか。それとも―――それすらも決められてるんだろうか。
 ―――――柄にもなく暗くなってるな。本当、難しい問い掛けは嫌だぜ。
 

75 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/09/08(木) 22:52:25


 「何の為に笑い、何をして笑う?
  何の為に苦しみ、何をして苦しむ?」
 

76 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/09/08(木) 22:52:50


 笑って過ごしていたいもんだ。何の為に笑うかなんて、そんなのは直ぐに分かるんだから。
 笑っていたいが為に笑って、自然と笑いが込み上げてくるから笑う。
 何にも難しい事はない。誰だって自然に、そうやってる筈で。
 それが出来ないって事は苦しみ続けているんだろう。

 何の為に苦しんでるかなんて、そんなのは、知らない。
 でも、苦しいと感じてるから笑えない。苦しみは笑いを奪っちまう。
 笑えるなら苦しくない。違うか? 俺は違わないと感じるし、苦しいと感じないから笑える。
 苦しみを自分から背負い込む奴なんて、早々いない。

 居るとしたら、余程苦労性なんだろうな。それか、捻じ曲がっちまってるか。
 二つに一つ。簡単な答えで、気付かないかもしれない答え。
 身に染み付いちまってれば、気付きたくても気付けないかもしれない。
 苦しいと思う事が普通だと、そう感じちまってる捻くれ者だって居るだろう。

 身近に一人、居るしな。
 

77 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/09/08(木) 22:53:08


 「何の為に戦い、何をして戦うのか?
  何の為に人は出会い、何をして人は出会うのか?」
 

78 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/09/08(木) 22:53:33


 アイツとは戦ってばかりで、戦う為に戦って、拳を交わして戦っている。
 どんな偶然が引寄せた出会いなのか。
 歴史の裏に操り人形の糸が見えそうな程、出来過ぎてる。

 元々友好関係もない互いの家。随分昔――何時かも思い出せないような昔――は友好関係だってあった。
 アイツが受け継いできた力がなけりゃ、オロチだって祓えなかっただろう。
 何の為に出会ったのか、それは既に答えが出ちまってるのかもしれない。
 認めたくねえけどな。出会いたくない奴だしよ。

 他に出会ってきた奴はどうなんだろう。
 俺は戦う事しか出来ない、不器用って言っても言い奴だろう。
 なら、こうも言えるんじゃないだろうか。

 人に出会う為に戦って、出会っちまったからこそ戦う。
 戦う為に人は出会って、戦って人は出会う。

 紅丸や大門、真吾。俺が戦ってなけりゃ出会う筈もなかっただろう。
 お陰で長々と続く腐れ縁だ。まあ、悪くないけどな。
 

79 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/09/08(木) 22:53:58


 何の為に、何をして、何故。
 そんな事は知ったこっちゃない、と言っちまえばそれまでか。

 「ああ、俺の答えは出たぜ? 
  俺は、生きる為に生きるし、自分で死に場所を決める為に生きて、笑いたいから笑って、
  苦しみなんかどうでも良くて、出会う為に戦って、戦う為に出会って。

  そうやって、自分がしたい様に、何もかもをこなしてくだけなんじゃないかと思う。
  偶に逃げたい時だってあるだろう。でも、それを超えるのも楽しいさ。
  だからさ、笑って生きて笑って死ねりゃ良いぜ。
  難しい事考えるの苦手なんだよ。だからだ、これ以上聞かないでくれよ?

  これ以上考えちまうと知恵熱でダウンしちまう。
  ナパームよりも熱い拳でも、知恵熱にゃあ敵わないんだよ」

 何て苦笑を浮かべながら、反芻する。
 まっ、小難しい事考えないで、ただ在るが侭に生きてくだけさ。
 そうすりゃきっと、それなりに楽しい人生を送れるさ。
 

80 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/09/08(木) 22:54:19


 「ハッ…実に下らん話だ。下らなさ過ぎて、答えたくなくなる程にな。
  何の為に生きる、今更それを問うのか?
  何の為に死ぬ、何の為に笑う、何の為に苦しむ、何の為に泣く。
  挙句の果てには何の為に戦い、何の為に人は出会う?

  実に、下らない。下らない。反吐が出そうだ。
  簡潔に答えてやる。その一言を、確実に脳に刻み込め。
  出来ぬと言うのならば、その頭、切り開いて俺が脳に刻み込んでくれる」

 ああ、本当に、下らぬ問い掛けだ。
 人の在り様を理解していれば、その程度の事問うまでもなかろうに。

 「人は須く、何かを殺さねば生きて行けぬ物だ。
  食用に家畜を殺し、過剰に生産された食物を無駄に殺し、資源を無駄に殺し、
  時に自分を殺し、時に他人を殺す。

  人は何かを殺す為に生きている。そして、俺はアレを殺す為に生きている。
  殺す為に、刃向かった屑の憐れさを嘲笑い、殺す為に暴力を振るう事に苦しみ、殺す為に血の欲求に苦しみ、
  殺す為に泣き叫ぶ屑を殺し、殺す為に戦って、奴とは殺す為だけに出会い、殺した後は殺した為に死ぬ。

  理解したか? 随分簡単な答えだろう?
  理解したなら早々に消えるが良い。
  そのまま其処に居るならば、貴様を殺す事になりかねん」
 

81 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/09/08(木) 22:54:39


 去った事を確認し、自らの思考に篭る。

 全てを奴を殺すが為に捧ぐ、と言ってしまえばそれで終わり。
 まあ、実を言うと其処まで捧げているつもりも無いが、傍から見れば捧げている事に変わりないか。
 不器用と言う言葉では表せ尽くせぬほど、奴を殺す事に執心している殺人機械。
 世間の風聞は、そんな物だろう。否定するのも面倒で、ああ答えてしまったが。

 だが、実際、殺す為に生きていると言う考えは取り消すつもりもない。
 殺す為に生まれて来た。比喩ではなく、本当の事だ。

 『草薙』を殺す。そればかりを幼い頃から刷り込まれてきた。
 『草薙』を殺す。それの為だけに力を付けさせられた。
 『草薙』を殺す。それの為に血に苦しんできた。
 『草薙』を殺す。それの為に血に塗れ笑ってきた。
 『草薙』を殺す。それの為に戦い、殺し続けてきた。
 『草薙』を殺す―――奴に出会うまでは、それだけだった。

 良くも悪くも、草薙『京』は俺を変えてしまった。
 良くも? 悪くも? 何か可笑しい気がするが、変わった事は事実か。

 標的は『草薙』ではなくなり、『京』となった。
 『八神』と『草薙』の争いではなく、『庵』と『京』の争いになった。
 下らぬ動きに連れ回され、挙句の果てに血に狂った。
 狂気と暴力の塊を経験し、より一層暴力に不快感を持った。

 苦しむ事も増えた。可笑しな雑念に囚われる事も増えた。
 笑みを浮かべる回数は変わりなく、人との出会いも変わりない。
 それでも、変わった事は確か。何が如何ではなく、表面的なものでもなく、内面的な物でもない。

 奴を殺せば答えは出る、筈だ。奴を殺さねば答えは出ない、筈だ。
 それまでは、真に何の為に生き、何をして生きるなど保留して置く。
 今は殺す為に生き、殺し続けて生きる事を考え続ければいい。
 余分な感情を抱けば拳は鈍る。

 殺意と憎悪を固めた拳。それに曇りは無い。
 血と油に塗れたこの腕。鮮血に染まらぬ日は、何時になるだろうか。
 

82 名前:名無し客:2005/09/10(土) 22:44:45

あなたたちの、心の隙間を埋めるものは何ですか?

83 名前:名無し客:2005/09/13(火) 12:51:21

御自分に説明書をつけてみてください。

参考

子供に説明書をつけるとしたら
http://life7.2ch.net/test/read.cgi/baby/1107828986/

84 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/09/14(水) 01:21:17


>>82

 「なあ、そろそろ、真面目に、勘弁してくれないか」

 「では卒業は…」

 「済みません。やらせて頂きます」


 ああ、なんだってこんなに天気の良い日に――しかも過ごし易い天気の日に、机に向かっていなくちゃならないんだ。
 世の中には分からない事が一杯あり過ぎて、とても嫌になる。
 特になんだよ、この三次関数って。この英単語はどう読めってんだ。
 なんか眠くなってきたな。机に向かうとどうも駄目見たいだ。

 「草薙。眠るのも良いがそれを仕上げて貰わないと卒ぎょ…」

 「やります。やらさせて下さい」

 ケッ…何かあれば卒業卒業って。何だ、俺はアレか、目の前にニンジンを下げられた馬か。
 ――――事実その通りだから、少しだけ嫌になった。

 大体だな、幾ら教科書見ても良いからって分からないものは分からないんだよ。
 公式がありました。数字を当て嵌めました。さて、どうしろと?
 解けば良いとはよく言ったもので。解き方がよく分からない訳なんだが。
 その前に、本当にこの公式で合っているのかを誰か教えてくれないだろうか。

 別の教科に移りたくても、現代文くらいしか分かるものがないってのも、問題だな。
 これならもう少し真面目に学校生活を送っていれば良かった。
 まあ、こんな事を思うのは大抵祭が終わった後だ。

 授業に出ないから問題が解けない。問題が解けないからテストで点数が取れない。
 テストで点数が取れないから、学校に来るのが嫌になる。
 ああ、なんて素晴らしい出来栄えなんだろう。この悪循環のメビウスの輪は。
 何時からこんな事になったんだろうか。

 KOFに出始めてから、余計に学校に行かなくなってきた気がするな。
 一応その前までは必要最低限の出席日数を計算して、旅に出たりしてたから。
 ああ、そうか。何も俺は勉強が出来ない訳じゃなくって、あくまで出席日数が足りないだけなんだ。
 三年になって授業について行けなくなったんじゃなくて、出席日数が足りないだけなんだ。

 そう考えると俄然やる気が――――出る訳ねぇだろ。
 それでもやっぱり卒業はしたいしな。やるしかねぇか。
 やるしかないんだ。動け、俺の右腕。働け、無意識の脳細胞。
 出来れば俺が寝ている内に卒業まで決めておいてくれないか。
 

85 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/09/14(水) 01:22:21


 心の隙間埋めるもの、ですか。
 人それぞれだとは思いますが、貴方はこんな話を、知っているでしょうか。

 とある所に、一人を殺す為に東奔西走した男が居ました。
 一切合切の全てを殺す事に注ぎ、凡そ人間社会に溶け込むような事はバンド活動以外する事もなく、
 本当に社会生活を営めているのか、それすらも怪しい男が。

 恐らく心に隙間なんてなかったのでしょうね。
 殺す為にだけ張り詰めすぎていて、他の事を気に掛ける余裕がまったくなかった。
 そう、自分自身の事すら気に掛けないで、殺す事ばかりを考えていたのです。

 結局その男は、殺したいと思っていた人を殺す事に成功します。
 社会的制裁は受けなかったようですね。なんでも、試合中の事故に見せ掛けただとか。
 ですが、罪は罪。罰はしっかり受けました。
 罰と言ってもまあ、本人にしか罰と感じていないかもしれないし、その本人すらも罰と感じていないのかもしれませんが。

 罰の内容。それは、その男の今までを消してしまう事でした。
 簡単に行ってしまえば記憶喪失のような物でしょうか。
 張り詰めていた糸が切れてしまった。それが引き金となり、男の全てを洗い流した。
 全てと言っても、殺す事に注いできた物だけが流れた訳ですが。
 そればかりだった男には、何もかもが消えてしまったのかもしれませんけど。

 人生の大半を殺す事に注いできた男には、他の事等何一つなかったからかもしれませんね。
 ほら、聞いた事があるかもしれませんが、殺す事には殺される覚悟も必要だと言います。
 誰かを殺すつもりならば、自分も誰かに殺される事を覚悟しなければならない。
 その男にとっての死神は、自分自身だったのでしょう。

 心には一分の隙間もなく、例えるならば割れる直前まで空気の入った風船の様に、憎悪や殺意に囚われていた。
 他に何も無いのですから、その風船が割れてしまえば男には何も無いのです。
 ああ、いえ、一つだけ、残った物があった。
 如何言う訳か音楽だけは捨てられないようで、ベースを弾く才能だけは残っていた。
 今はそれで、生活させて頂いております。


 ええ、はい。何を隠そう、私がその男だったようです。
 人から嫌になるほど聞かされましたから、これだけ話せるんですよ。
 それでも、何一つ思い出せはしないのですけどね。
 本当に自分の話なのか、私は騙されているのではないか。
 そう言う思いも拭えませんが、話を聞く度に、話をする度に懐かしく感じるのですから、嘘ではないでしょう。

 今の生活は悪くはないですよ。
 音楽だけをやって生活出来る、あまり多いとは言えませんが友人も出来た、殺してしまった誰かには
 非常に申し訳ないとは思うのですが――いや、殺してしまったからこそかもしれません。
 その人の為にも、生きていこうかと…………
 

86 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/09/14(水) 01:22:43


 「と言う話を、考えたのだがな」

 ifの話は好かん。

 「で、心の隙間か。まあ、音楽だろうな。
  それを除けば殺意や憎悪しかないのだから、それ以外に考える必要が無い。
  虚しい人生だと思いたくば思うが良い。

  だがな、隙間に抱える物が多ければ多いほど、どれも零れて行くだけだ。
  両手に余るほど物は持てまい」

 それにしても、隙間か。
 気付かぬ内に、何かで埋まっている事も考えられるのかもな。
 その場合は、埃を被ってとても見れた物ではないだろうが。
 

87 名前:名無し客:2005/09/15(木) 12:07:43

真実なんていつも単純でシンプルだと個人的に思うんだが…
良くも悪くも気楽にいきたいもんだ…俺も二人とは違う意味で闘うときがくるだろうからな…。

二人ほど命がけではないが…社会という宿命に向かってみよう…。

88 名前:名無し客:2005/09/15(木) 15:33:49

ネオコロの専用ダブルアサルトがどう見ても、

「今にも敵にトドメをさそうとしている庵に京がそれを阻止するため後ろから庵を殴る」

ようにしか見えないんですが。
本当のところはどうなんですか?

89 名前:八神 庵&草薙 京 ◆Iori/GPRcE :2005/09/15(木) 23:31:29


 「なぁ、今夜はどんな風の吹き回しでこんな事になってやがるんだ。
  お前と一緒に居なきゃならないなんて酷い苦痛なんだが」

 俺の痛みの方が勝っているがな。その所為で貴様を殺したくなる。
 それはさて置き、今夜はラジオ風味と言う奴らしい。
 神楽の命らしいな。如何やら。

 「ったく、勘弁してくれよ、ちーちゃん。文鳥の名前もちーちゃんだったな。
  いや、まったくもってどうでも良い話だけどよ。
  それとお前、鳥と聞いただけで目を血走らせてんじゃねぇ」

 下らぬ世迷い言を吐く前に、早々に片を着けてしまうぞ。
 貴様と居なければならない状況を一刻でも早く、改善せねば脳が腐る。

 「はいはい。んじゃ、行きますか。っと、これ読めば良いんだな。

  <b>剣と勾玉の人生相談風雑談仕上げ〜シェフの気紛れサラダ(肉オンリー)付き〜<;/b>

  このネーミングはどうなんだろうか」

 課題に追われ脳が膿んだようだな。アレも単位を落とし、貴様の仲間入りかもしれん。
 もっと喜んでみれば如何だ?

 「永遠の大学生と永遠の高校生じゃ、何を言っても、な。
  それにこれ、喜ぶ事じゃねぇと思うんだが、お前の頭がトリップ気味なんじゃねぇの?」

 貴様の万年夏休み病の脳よりはマシだ。
 と言うか何だ、このままでは一生先に進まん気がするのだが。

 「お前が話し振るから悪いんだろ? 自分で蒔いた種は自分で狩れよ。
  いい加減お前の尻拭いなんてしてられないしよ。
  暴走とか、暴走とか、暴走とか」

 さて、次からは解答だ。恐らく。

 「無視すんなよ」

 たった今、随分前からだが、不快な声が耳に入っているだろうと思う。
 暫らくは付き合う事になる。広い心を持って我慢しろ。
 序でに、学生が聞くと留年したくなる毒電波が送り込まれるやもしれん。
 学生はチャンネルを切り替えておけ。

 「ニートになりたくなる衝動、ってのも忘れちゃいけないと思うんだけどな。
  後、暴力的になるとかよ」
 

90 名前:八神 庵&草薙 京 ◆Iori/GPRcE :2005/09/15(木) 23:32:12


>>87

 単純とシンプルでは言葉が被っていると思うのだが。

 「突っ込むところはそれじゃないと思うんだが」

 気楽に生きたいなら行けば良かろう? 誰に断わる必要も無い。
 自分がやりたい様にやって行く。それでこそ人生であろう。

 「お前が言っても説得力が有るような無いような。それにしても、社会が宿命ねぇ。
  その点について自称社会人なお前は何かあるのか?」

 職業・高校生では社会の事など分からんか。
 まあ、誰からも守られる事無く自立して生きていかねばならん事は確かだが、それは誰もが通る道。
 宿命と呼ぶよりは、敷かれたレールの上を歩いて行っているだけであろう。
 歩く行為を18年続けるか、それ以上続けるかには個人差もあるが、そう変る物でもあるまい。
 宿命とは随分意味合いが異なると、俺は思うがな。

 「いきなり常識人ぶってどうしたんだ? 野菜でも食ったのか?」

 貴様と違って社会で送る生活が長いのでな。学生の見る社会観とは違う訳だ。
 そう言う貴様は何か無いのか。歯切れの良い物など初めから期待していない。楽に答えるが良い。
 それを遺言にしてくれても構わんしな。

 「誰かの戯言は聞こえなかった事にして置いてだ、社会に出るのは闘う事とイコールかもしれない。
  出世して楽な生活をしたいってなら他人を蹴落とす必要だって出て来るだろうし、それを望まないとしても
  何かしら足の引っ張り合いはあるだろう。
  それが嫌なら窓際でのんびり過ごす事になっちまう。

  肉体にダメージはねぇけど、精神的に疲れそうだよな。そんなのは。
  楽に生きてきたいもんだぜ。風来坊を職業にしようかね、俺は」

 ヒモでは無いのか? あの女がどれだけ稼ぐかは知らんが。
 ああ、水商売に売るか。とことん下衆だな、貴様は。

 「お前の脳を切り開いて、一度綺麗に洗浄してみたいもんだぜ。
  何をそこまで曲解すれば、俺の人物像がそうなる訳なんだ?
  つーか、お前の方がそうなってそうな気がするんだが」

 ………。

 「黙るなよ」

 冗談を冗談と見抜けなければ、難しい。

 「お前のは見抜ける人間なんて居ないから、なっ?
  そんな日記はチラシの裏に書いとけ」

 最近は経費節約の為なのかは知らんが、両面印刷が多い訳だが?

 「知らねぇよ。新聞なんて読まないし」

 読めないの間違いであろう。
 さて、次へと行くか。

 「仕切るな、と言いたい所だが、頷いて置くぜ
  早く終わらせ無いとここが燃え尽きちまう」
 

91 名前:八神 庵&草薙 京 ◆Iori/GPRcE :2005/09/15(木) 23:33:01


>>88

 「ああ、アレには聞くは涙、語るは怒りな逸話が多過ぎて、放送コードには乗せられないんだ。
  それもこれも全てはこの男が悪い。何か釈明はあるのかね、八神君」

 気味が悪い。それに、釈明も何も無かろう? 放送コードにも乗る。
 一応、死人が出ていないのだから何ら問題無い。

 「俺には打撲やら火傷やらの傷がある訳なんだが。
  それに、なんて言ったっけ、ほら、アイツだアイツ。ウホッ! な奴。
  泡吹いて昏倒してたじゃねぇか」

 グッドマンだ。貴様の例えの方が余程に分かり難い。
 それにだ、貴様の責もアレにはあろう?

 「…ん、まあ、な。流石にあんなに良い場所に決まると思わねぇだろ。
  それもこれも、お前が俺にアイツをぶつけようとするのが悪いんじゃねぇか」

 貴様が後ろから殴りに掛かるから悪いのであろう? 自業自得だ。
 大体だ、何が協力攻撃だ。俺とこれでそんな事が出来る訳が無かろう。
 対戦相手を道具にして殴り倒せと言っているようにしか見えん。
 それなら事故で済ませる事も出来るからな。

 「俺にしてみてもあれは後ろからパートナーの寝首を掻けと言う指令にしか見えなかった。
  だってよ、コロシアムだぜ? 決闘場だぜ?
  最強を決めんなら、やっぱ最後に邪魔になるのはパートナーだろ。
  それなら早い内に殴り倒し解けば問題なんて一つもな…」

 あるだろう。やはり貴様の脳は腐りつつあるようだな。
 あの場では一人が倒れればそれで終わりだったのだが?

 「アッ…」

 やはり馬鹿は獏迦か。

 「……ゴテイネイニカンジマデカエテクレテドウモアリガトウ」

 フッ…礼を言われるまでも無い。事実を述べたまでだ。

 「ああ! もう付き合いきれねぇ! ここでケリ、着けてくれるぜクソヤロウ!」

 ほう…貴様が乗り気とはな。世にも珍しい事があったものだ。
 此処を墓標に眠るが良い…

 「ハッ! 言ってろ。行くぜ?」

 すぐ、楽にしてやる。


 【これより先は非常にお聞き苦しい為、当方の判断により放送を打ち切らさせて頂きます。ご了承下さい。
                                                      ―――――――鏡の巫女】
 

92 名前:名無し客:2005/09/17(土) 23:29:18

赤毛さんへ

この間のKOF大会見ました。
対戦相手のカッコよくて強すぎる七枷社様にとても苦戦してましたねプゲラw

93 名前:◆Iori/GPRcE :2005/09/18(日) 00:51:51


>>83

 様々な格闘ゲームが入り乱れながらも、次第に勢いが衰えていっている格闘ゲーム界。
 それに新風を齎す事になるかもしれない一刻館ファイターズになんと、今でも一線で
 活躍中である草薙京氏、八神庵氏が参戦する事が、本日未明に発表された。

 一刻館ファイターズとは、様々な登場人物に溢れ、登場人物の多くはそのまま作品の
 顔とも言える方々ばかりが集った夢の格闘ゲームである。
 また、使用許可を得ているのかいないのか。それが定かではないものの各格闘ゲームの
 動作方式が採用され、初めての人には取っ付き難い印象もあるかもしれない。
 だが、その印象さえ拭ってしまえば、一度触れてしまえば、これほどまでに面白いゲームは
 数少ないかもしれない。

 先ずはなんと言っても登場人物の多さ。その数はKOFですらも追随を赦さない。
 余談ではあるが、今になってKOFはチーム数を減少させていたりもする。
 ドリームマッチがコンセプトなのだから極力減らさずに居て欲しかったと言うのが
 筆者個人の感想ではあるが、当初の思惑通り龍虎の拳や餓狼伝説出演者を使う事無く、
 新たなKOFを作っていくのかもしれない。これからの動向を楽しみにして行きたい所である。

 話は大きく逸れてしまったが、登場人物の多さには目を見張る物があり、その全てに御本人自らが
 製作の過程に関わっている。そのお陰で誰もがそのまま動いているのである。
 足される事も無く、引かれる事も無く、等身大の憧れを動かす事が出来ると言うのは他には無いだろう。
 まるで自分がその人物になりきったような、そんな感覚を覚えてしまう。


 また各格闘ゲームの動作方式が採用されており、どれを選択するかによって立ち回りにも大きく影響してくる。
 かと言ってどれが強いと言うものでもなく、どれを選んでも相応の楽しみが得られる事は言うまでも無い。
 今回登場される草薙氏・八神氏は数多くの出演経験があり、どの動作方式であろうとも今まで違い過ぎる
 と言う違和感こそは無いものの、新たな楽しみを追加してくれている事であろう。

 気になる調整の方だが、草薙氏はKOF'98がベースとなっており、そこに轢鉄やNBCで新たに追加された
 毒咬みからの新連携など、非常に技の数が多い仕上がりとなっている。
 全てを使いこなす事が出来れば相手に主導権を握らせる事無く勝利を手にする事が出来るだろう。
 また各ボタンごとに服装が異なり、今の所4種類が確認されている。
 定番の学生服、今では御馴染のネスツ編の服装、'03で追加された服装、そしてアニメ版。
 一説には霧島verもあるとかないとか。

 八神氏も調整のベースは'98であり、牽制の手段には乏しいが勢いに乗る事が出来れば暴力的に
 相手を叩き潰す事が出来る仕上がりとなっている。
 また爪櫛が復活しているが、以前はそれほど使われなかった技である。
 選択肢の一つに加われるのか、新たな連携が生まれるのかが楽しみである。
 服装は二種類確認されており、御馴染の二十三夜月を背負った服装、アナザーストライカーで
 用いられた服装とがあり、新規の書き起こしも存在するとかしないとか。これからの情報に期待したい。


 次の項では草薙氏・八神氏の技表を掲載して置くが、カプコン方式、SNK方式は多くの出演経歴を持つ彼らでは
 目新しさも無い為、MB方式の物を独占掲載する事に相成った。
 何人もの記者が一刻館ファイターズ開発者によって闇へと葬られ、多大な犠牲を払って手に入れた情報である。
 哀悼の念を捧げつつ見て貰えれば、彼等も報われると言うものであろう。


 各種動作(投げや避け、攻撃手段等)はMBを参照の事。
 レバーの動作はテンキー表示。
 

94 名前:◆Iori/GPRcE :2005/09/18(日) 00:52:59


 『駆け上がる紅蓮』草薙 京

 豊富な技の数々で相手を攻め立てる事に秀でた彼だが、この動作方式では若干技の数が減っている。
 それでも他のキャラクターに比べれば技は豊富。相手の反撃を赦さぬまま、一気に勝利を掴んで行けるだろう。
 また、仕様として二段ジャンプは出来ない。その代わりにラン動作が付け加えられている。
 これは八神にも言える事となる。

 所謂バッタ。空中に居る事が多いだけにこの仕様の存在は大きいが、地上戦、固めの強力さは他の追随を赦さないと思われる。
 バンカーキャンセルは削除されているので、思う存分に固め、勝利して欲しい。

 ・通常技

 A……所謂遠A。キャンセル可、空中ガード不可。
    出が早く戻りも早い為、隙消しや牽制、攻撃の発端に。

 B……所謂遠B。キャンセル不可。
   こちらも出が早く戻りが早い為、中間距離での牽制に。

 C……所謂近C。キャンセル可。
    ブローバックエッジ対応で、溜めきれば中段に。
    エリアルの始動にするも良し、キャンセルから連続技を決めるも良し。

 2A……所謂屈A。キャンセル可。
    連打が効くほど出が早い為、下段始動の連続技の発端はこれで。

 2B……所謂屈B。キャンセル可。しかし受付時間はかなり短い。
    出が遅くなった代わりに威力が多少アップしている。
    牽制には使おうと思えば使えるかもしれない。

 2C……所謂屈D。キャンセル可。
    可もなく不可もなくと言った感じの足払い。

 JA……所謂JC。横方向の判定は強くなりました。
    出が早い為咄嗟の空対空に。連打? なにそれ。

 JB……所謂JD。横方向に判定が長いので空対空に。

 JC……所謂奈落落し。空中に居る相手ならば叩き落せる。
    めくりも狙えるが、ガード入れっぱなしで対応出来るのであまり意味がないかも。


 ・特殊技

 八拾八式 3+C

 下段判定の二段蹴り。出が早く、弱攻撃からキャンセルで繋がるが、外した時の隙は膨大。
 使い所を間違えないように注意されたし。

 外式・轟斧 陽 6+B

 KOFと同じで通常版とキャンセル版では性能が異なる。
 ガードクラッシュ狙いならば通常版を積極的に使っていく方が良いだろう。

 ・投げ

 一刹背負い投げ…起き攻めに移行しやすいのが利点。
         空中投げも多少の変化はあるもののほぼ同じ。
 

95 名前:◆Iori/GPRcE :2005/09/18(日) 00:53:41


 ・必殺技

 百拾四式・荒咬み  236+A

 出始めにガードポイントが存在し、牽制としての役も担える。
 此処から各種連携に繋げていけるが、今ある情報ではこれ以上は判明していない。

 百式・鬼焼き  623+AorBorC

 Aは無敵時間が無い為対空には向かない。Bは無敵時間有り。基本的に対空は此方で。
 ゲージ消費版であるCは空中ガード不能プラスガードポイント付き。
 兎に角落とせ。日頃の恨みを晴らすが如く落とせ。

 七拾五式 改  22+AorBorC

 Aは出が早いが浮きが低い為追撃が出来ないが、前方への攻撃判定が大きい、有利フレームなどから固めに使える。
 Bは追撃可能。相手が受身を取れるのは着地間際となるので、コンボを叩き込むと良いだろう。
 ゲージ消費版ではAの発生速度プラスBの浮き、轢鉄(性能はKOFで言う弱版)まで出る。そこからまた追撃が可能。

 R.E.D.Kick  421+AorBorC

 スペルミスは未だ直らず。性能の方はKOFとほぼ変らない。
 唯一ゲージ消費版であるCが、ガード不能となったくらいである。

 四百弐拾七式・轢鉄  63214+AorBorC

 此方の性能もKOFと変わりない。ゲージ消費版はスーパーアーマー付きで、追撃可能。
 ゲージを消費してもそれ程有利になる事も無い為、基本的にAとBを使っていけば良いだろう。

 ・アークドライブ(所謂超必殺技)

 裏百八式・大蛇薙  41236+C

 MB版ではコマンドが簡略化され、この様になっている。
 性能の方を語るのであれば、上半身に無敵が存在するので対空に使えない事も無い。
 また、アナザーアークドライブ(KOFで言う所のMAX版)は全身に攻撃判定が発生。威力も若干向上。
 七拾五式 改から繋げるのが最も無難だろう。

 ・ラストアーク(MAX2)

 最終決戦奥義・無式  地上EXシールド成立で発生(飛び道具は除く)

 最近では三神技之壱など名称の変化が激しいこの技だが、今回はこれを採用。
 巨大な火柱を上げ、毒咬み→荒咬み→九傷→七瀬→灼焉と多少の変化がついた。
 狙える時は積極的に狙ってみる価値のある派手さ。威力も高い。
 

96 名前:◆Iori/GPRcE :2005/09/18(日) 00:54:35


 『孤高の紫炎』八神 庵

 今回もそれほどの違和感は無く使って行けるであろう八神。
 大きな性能の変化は無く、二択三択の成否によっては一瞬で勝負は決するだろう。
 暴力的に叩き潰す。舞台を変えてもそれが達成出来るのか。期待が掛かる。

 ・通常技

 A…所謂近A。キャンセル可。空中ガード不可。
   気軽に振れるがリーチに欠ける為、近付かなければどうしようもない。
   連打は効くのでコンボの始動に使っていくくらいの価値しかない。

 B…所謂遠B。キャンセル不可。死に技。以上。

 C…所謂近C。キャンセル可。ブローバックエッジ対応で溜めきれば中段に。
   エリアルにも繋げるがキャンセルからコンボに行った方がダメージ効率が良い。

 2A…所謂屈A。キャンセル可。
   出が早く連打が効く。後述する百弐拾七式・葵花に繋げていくのが吉。

 2B…所謂屈B。キャンセル不可。
   それなりに長い間合い。出の早さも牽制に使って行けるレベルである。

 2C…所謂屈C。キャンセル可。
   対空に使える伸び上がっての攻撃。これもヒット後に百弐拾七式・葵花に繋げるのが無難。

 JA…所謂JA。出が早く横方向に判定が強化された為、咄嗟の空対空に。
   連打? 何だそれは? 喰えるのか?

 JB…所謂JC。下方向への判定が強く、空対地の場合はこれを使うのが吉。
   相手を飛ばせない事が草薙・八神の命題でもあるので有効利用を。

 JC…所謂JD。横方向への判定が強く、滅多に競り負ける事は無いだろう。空対空はこれで。
   KOF'97の鬼性能は復活ならず。当然ではあるが。

 ・特殊技

 外式・轟斧 陰 “死神” 6+B

 キャンセル版と通常版では性能が異なるが、ほぼ利用価値は無い。
 趣味で使う分には構わないが、ガードされた場合を考えるとお奨め出来ない。

 外式・百合折り  4+B

 自分の真後ろを蹴ると言うめくり専用の技。バックステップ中に出すと飛距離が伸びたりもする。
 使い所を誤ると着地後の硬直を狙われる為、各自で布石を考え使っていって欲しい。

 外式・夢弾  6+A・A

 一段目は超必、二段目は各種必殺技でキャンセル可能。
 使い所は多くヒット確認も容易の為、Cや屈Aから繋げて行くのが良いだろう。

 ・投げ

 逆剥ぎ…性能にほぼ変化は無い。
     空中投げはモーションが変化し、引き裂いて終わる。
 

97 名前:◆Iori/GPRcE :2005/09/18(日) 00:55:18


 ・必殺技

 百八式・闇払い  236+AorBorC

 ゲージ消費版であるC以外の性能はKOFと変わりがない。
 ゲージ消費版では豺華の様な火柱が進んでいく物となり、空中にいる相手にも届く。
 使い所さえ誤らなければ主力牽制技となるので、扱いに慣れて欲しい。

 百八式・鬼焼き  623+AorBorC

 八神の技の殆どに言える事ではあるが、ゲージを消費しない限り性能は殆どKOFと変わりが無い。
 これもその一種で、ゲージ消費版はガード不能のおまけが付く程度である。
 闇払いで飛ばし、鬼焼きで落とす。基本ではあるが中々巧くはいかないものである。

 弐百拾弐式・琴月 陰  62314+AorB

 あっても中々使われない技の筆頭ではあるが一段目に禁千弐百拾壱式・八稚女が仕込める為、まだ使い道はある。
 普通に走るよりも此方の方が早い為、移動手段として使えない事もない。

 百弐拾七式・葵花  214+AorB

 主力技。性能はKOFと変わりなく、牽制に、ダメージ源にと活躍する。
 また強制ダウンを奪える為、その後の展開が有利である。
 技のモーション中にCを押せばブレ―キングとして作用する。
 隙の大きいB版をガードされた場合二発目の途中で止める選択肢が生まれた為、ディレイと合わせて厄介な存在となるだろう。

 参百拾壱式・爪櫛  421+AorBorC

 ボタンの違いは移動距離のみ。有利フレームに変化は無いが、気絶値などが若干異なる。
 百弐拾七式・葵花に繋げる事、相手の足払いを避けつつ攻撃出来る事が利点。
 使い道は未だはっきりとしていない為、今後に注目したい。

 屑風  632146+C

 コマンド投げ。相手に無防備な瞬間を作れる為使い所は多いと思われるが、実は少ない。
 原因は発生が微妙に遅い為である。起き攻めに置いておく感じで使う、ダッシュから投げる。
 発生の瞬間に若干無敵があるので対空に使えない事も無いかもしれない。

 ・アークドライブ

 禁千弐百拾壱式・八稚女  2363214+C

 コマンド簡略化の煽りは受けず、そのままである。
 裏参百拾六式・豺華はゲージ消費無しで出せる。コマンドは(236)×4+C。
 アナザー版ではMAX版となり、裏参百拾六式・豺華は使えないが威力は向上。
 キャンセルから繋いでいこう。

 ・ラストアーク

 血の暴走  地上EXシールド成立で発生

 相手に飛び掛り、赤背景に黒い影が暴れる。暴走と言う割に冷静に相手を狙っている辺りが恐ろしい。
 機会があれば狙う程度で充分ではないかと思うが、威力はそれなり。
 取り敢えず使ってみる、などと言う選択肢もありだろう。
 

98 名前:◆Iori/GPRcE :2005/09/18(日) 00:56:27


 本日掲載する分は以上となるが、これからも続報が入る可能性は高い。
 最新の情報は『対戦格闘「一刻館ファイターズ」キャラ設定集』で公開される。
 格闘ゲームファンはこまめにチェックしてみるのも良いかも知れない。

                 Special Thnks http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1068684678/l50
                                       (対戦格闘「一刻館ファイターズ」キャラ設定集)
 

99 名前:名無し客:2005/09/18(日) 22:13:41

もしあなた達が東方シリーズに出るとしたらどんな感じになりますか

100 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/09/19(月) 23:21:57


>>92

 大会中。試合が組まれてなきゃ暇なもんだ。
 暇すぎて神楽に絡んできた。今回はアイツの家が主催だった見たいだし。
 そしたらこうなっちまった訳だ。

 「解説ねぇ」

 取り敢えず真吾に雑誌を買いに行かせたし、時間潰しにはなるだろう。
 ああ、ついでにパンとかも買ってこさせりゃ良かったな。
 気の利くアイツなら買ってきてくれるだろう。それが例え二度目だとしても。

 余談になるけど、実はKOFってのは頻繁に開かれてたりする。
 世界的規模の、って言うのが付かなけりゃだが。
 やっぱり金になるんだろう。殆ど路上で行われてる喧嘩みたいなもんだ。
 参加資格なんてのもねぇから参加者は直ぐ集るし、観覧はその辺の路地でやってたりするから勿論無料。
 それを放送すれば視聴率が高くなり、なんて言うんだ? 波及効果って奴?
 まあそんな感じので大金が転がり込んでくるんだろう。

 これまた如何でも良い話で、仲間内で金賭けてる奴も居る見たいだ。有名所が出なけりゃ荒れは必死らしいけど。
 まあ、今回は俺が出てるから俺に賭ければガチだろう。配当金少ないけどな。

 んで、次の対戦は…

 「ニューフェイスって、お前等何時まで新顔のつもりなんだよ。
  つーか、何で戻ってきてるんだよ。八神の方もだけどよ」

 取り敢えず勝つのは八神かな、予想してみるとすれば。
 アイツらがあの姿のままならそこまで怖くないチームだし。

 「草薙さーん。頼まれた雑誌ッス。ついでにパンとか買って来ましたけど、食べます?」

 「悪ぃな。お前もついでに見てけば?」

 どうやら始まった見たいだ。変則らしいけど。
 代表が出て、それで勝った方が駒を進めるって、オイ。
 チーム戦の意味ねぇだろう。それじゃあ。
 

101 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/09/19(月) 23:22:29


 「痛くしちゃいやよ、ってかァ?」

 「……………………………………」

 「…チッ。何時見ても陰気臭ぇ野郎だな」

 「……………………………………………………………」

 「なにブツブツ言ってんのか知らねぇが、大人しく寝ちまえ!」
 

102 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/09/19(月) 23:23:13


 へぇ。結構良いマイクでも使ってんのか? 嫌に鮮明に声が聞こえる。
 ……打撃の生々しい音まで聞こえるのはどうかと思うけどな。
 それにしても一方的にやられすぎじゃねぇだろうか。ここまで一方的に成る程実力差なんてねぇ筈なんだけど。
 八神が弱くなったって事はねぇから、七枷が強くなったんだろうか。

 つーか、どう見ても八神がガードしてないだけに見えるんだが。

 やる気あるのか、アイツ。俺を殺すって息巻いてたくせに。
 七枷でも暇潰しの相手になるから構いやしねぇけど。

 「草薙さん。解説しなくても良いんですか?」

 「別に良いだろ。なんてったって臨時、しかも特設だ」
 

103 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/09/19(月) 23:24:03


 「弱い、弱いな、赤毛」

 「…………………………何故シェルミーを出さん」

 「アアッ?」

 「…………………何故シェルミーではなく、貴様なのだと聞いている」

 「そりゃあ俺がリーダーだしな。当たり前だろ」

 「………斯様な下らぬ理由で俺の楽しみを貴様は奪ったと言うのか。貴様のその罪、万死に値す
  る。大体だ、何故こんな白髪の野生動物と顔を突き合せねばならんと言うのだ。しかも殴り合
  い。ふざけるのも大概にしろ。良いか、あの太腿には様々な魅力が詰まっている。その程度の
  事は貴様の極微小な脳味噌でも分かろう物だろうが。貴様の筋肉ばかりで何の面白味も無い塊
  とは違うのだ。それにだ、アイツらと組んでしまった以上アイツらに触れる事は敵わぬのだか
  らこの程度の楽しみは俺にも寄越せと言う。何の為にこんな下らない暴力の渦中に居ると言う
  ?事故と見せかけて色々な場所を触れるからだろうが、等とは言わんが京を殺す序での楽しみ
  である事は、俺の極個人的な思い込みではあるが、確かだ。そうでなければ闇討ちしてでも殺
  すに決まっておろう。それなのに何だ、何故貴様が、態々出て来る。どうせ負ける事など分か
  りきっているのだからシェルミーを出せと言う。誤ってクリスと言う餓鬼を出していたなら普
  通に殺していた所だ。まあ貴様もそうするつもりではあるが微妙に因縁があるからな。付き合
  いで殴られていてやったがそれもそろそろ終わりにしようかと思う。それもこれも貴様がシェ
  ルミーを選出しなかった罪。NBCにも出られなかったような貴様がこんな所に出張る事自体が
  可笑しいのもある。それは兎も角何故貴様まで戻ってきていると言うのだ。貴様のような野生
  動物が戻ってきた所で喜ぶのは動物保護団体だけと相場が決まっておろう?若しくは変種を集
  めたがる動物園園長くらいのもの。それなのに何故、何故戻ってきた。インスタント麺でも血
  の池で啜っていれば良いものを。まあいい、そろそろ終わりだ。もう少しだけ殴らせてやる。
  それを冥土の土産として地獄へと帰るが良い。二度と戻っては来るな」


 「テメェ…読み難いは性格から外れてるは何でも好き放題言いやが―――――

 「遊びは―――終わりだ!」
 

104 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/09/19(月) 23:24:32


 最悪の試合だ。
 

105 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/09/21(水) 00:53:04


>>99

 ――紅蓮の祓い手―― 草薙 京

 名前  :草薙 京 (くさなぎ きょう)
       Kyo Kusanagi

 種族  :人間
 能力  :祓う炎を操る程度の能力 (留年する程度の能力)

 年齢  :見た目まんま
 身長  :日本人としては高い

 職業  :高校生
 生息地 :学校?


 発火体質な事を除けば割りと普通の高校生。二十歳ではあるが。
 恐らく留年のしすぎで幻想にまで昇華された。憐れ過ぎて涙も出ない。
 祓う炎を操る程度の能力を持つ。何で飛べるのかは誰にも分からない。
 存在感はあるのだが人付き合いがそれほど好きではないらしい。
 学校では怖がられているのは変型学生服の所為だけではないのだろう。

 武器は炎と体術。弾幕STGに体術は必要なのだろうか。


 能力:祓う炎を操る程度の能力

 1800年の歴史が在る草薙の炎。その威力は地球の意思すらも祓う。
 彼の意のままに操られる紅炎はナパームよりは熱いらしい。
 それでも高性能の耐火服で凌げるとの事。
 本当にナパームよりも熱いのか、問い詰めたい所である。
 

106 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/09/21(水) 00:54:03


 自機性能
  移動速度     中
  低速移動速度  中
  ボム初期数    3
  特殊能力    高速状態と低速状態の移動速度にそれほど差が無い
            被弾時にボムアイテムを放出 (ストックの有無に関わらず)


 炎符 速射タイプ
  高速移動時
   ショット  「百八式・闇払い」
   ボム    「裏百八式・大蛇薙」

  低速移動時
   ショット  「百八式・闇払い」
   ボム    「百八拾弐式」

 祓符 特殊タイプ
  高速移動時
   ショット  「百拾四式・荒咬み」
   ボム    「無式・壱之段」

  低速移動時
   ショット  「百拾五式・毒咬み」
   ボム    「最終決戦奥義・無式」


 炎符の場合高速・低速でショットの効果範囲が変るのみ。
 低速状態の方が前方に特化しているのは言うまでもない。
 ボムの性能が特殊で、裏百八式・大蛇薙であれば画面中にある弾を消し去る事が出来るが、威力は低め。
 百八拾弐式は火線が前方に現れる。前方に特化した分、威力は高いが前方以外の弾は消せない。
 どちらも一長一短である。

 祓符の場合ショット・ボム共に特殊である。
 前方に特化してはいるが、自分の前にショットが出た一瞬の後に、弾が飛んでいく。
 要は拳を振るうと弾が飛んでいく。尚、弾として飛ばすより拳の振りの方が威力が高い。
 次にボムの性能。無式・壱之段は某黒白少女の大砲に酷似しているが、効果時間が短い。
 最終決戦奥義・無式になると火柱が上がった後に殴りだすと言う訳の分からない性能。
 張り付きを極めに極めればかなり強い、かも知れない。
 

107 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/09/21(水) 00:55:55


 ――紫炎の封じ手―― 八神 庵

 名前  :八神 庵 (やがみ いおり)
       Iori Yagami

 種族  :人間
 能力  :封じる炎を操る程度の能力 (狂気と共に在る程度の能力)

 年齢  :見た目まんま
 身長  :日本人としては高い

 職業  :推定無職
 生息地 :寂れた庵



 普段は楽器の演奏で糧を得ているらしい。人付き合いが苦手な為半ば引き篭もり。
 奴が幻想となったのだから殺しに行く、などと言いながら幻想郷の住人となったのだろう。
 封じる炎を操る程度の能力を持つ。何故飛べるのかは誰にも分からない。
 所変わってもあの服装に赤い髪。着流しも所持しているとかいないとか。
 滅多に外に出て来ない為それは誰にも分からない。

 武器は炎と本能を元にした体術。弾幕る気があるのかと問い詰めたい。


 能力:封じる炎を操る程度の能力

 1800年の歴史が在る八尺瓊の炎、なはずなのだがオロチとの契約により紅の炎は紫へと変化した。
 狂気と共にある程度の能力は、その契約を機に八神の一族に架せられた咎である。
 それでも場合によって紅い炎になる事も。
 彼の考え方次第でその炎の色は変っていくのだろう。
 

108 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/09/21(水) 00:57:06


 自機性能
  移動速度     低
  低速移動速度  高
  ボム初期数    3
  特殊能力     喰らいボム有効時間が長い
             被弾時にボムアイテム放出 (ストックが1つ以上ある場合のみ)


 封符 攻撃範囲重視タイプ
  高速移動時
   ショット   「百八式・闇払い」
   ボム     「裏百八式・八酒杯」

  低速移動時
   ショット   「百八式・闇払い」
   ボム    「三神技之弐」

 暴符 特殊タイプ
  高速移動時
   ショット   「百八式・闇払い」
   ボム    「血の暴走」

  低速移動時
   ショット   「百八式・闇払い」
   ボム    「禁千弐百拾壱式・八稚女」


 封符の場合、高速時は広範囲に炎が走っていく。低速になると半分程度に射角は狭まる。
 ボムは到って普通。裏百八式・八酒杯は四本の火柱が画面前方に向けて走っていく。火柱に触れた敵弾は勿論消える。
 三神技之弐は効果範囲に相手が居なければ無駄に終わるが、威力は高い。効果範囲内の敵弾も消える。
 此方の方が使い易くて良いだろう。

 暴符は特殊タイプとなっている。高速状態ではまだマシな物の、低速状態には多少の問題がある。
 高速状態では射角こそ狭くなった物の広範囲ショットと呼べるショットに、効果範囲が狭くとも効果時間の長いボムと
 割と問題なく道中を進めるだろう。
 だが、低速状態となると話は変る。ショットは執拗なまでに一人を狙い、ボムを使えば勝手に相手に突っ込んでいくなど、
 道中で低速状態で進むのは無謀とも言える。
 代わりにボス戦では最大限に力を発揮すると思われるが「禁千弐百拾壱式・八稚女」は扱い辛いだろう。威力は高いのだが。
 低速と高速の使い分けをしっかりとすれば、強いのかもしれない。
 

109 名前:名無し豆腐:2005/09/24(土) 02:04:53

あなたの未来予想図…………一番見たくない、考えたくない未来。
それはどんなものだと思いますか?

110 名前:名無し豆腐:2005/09/26(月) 01:26:20

毎日殺伐したり、補習したり、留年したり、留年したり、留年したりでお疲れ様です。
大変お忙しい日々を過ごしていらっしゃるのでしょうが、ここは一つ、
「思い出すと今でも心があたたかくなる言葉」を教えていただきたく存じます。

111 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/09/27(火) 00:44:20


>>109

 「……グッ…」

 口内に血臭が拡がり、掌に零れた黒く濁った体温を感じさせない血液。
 もう何度目になるか分かりもしない吐血。
 再び咳き込む。止め処無く溢れ出るそれで服が汚れた。
 止まらない。溢れ出る。まるで蛇口が壊れた水道の様に。
 ビチャビチャと音が響く。最早手で塞き止める事も出来ない量。



 零れる。
                         視界が定まらない。
 零れる。
                         膝の力が抜け、冷たいアスファルトに沈む。
 零れる。
                         気付けけば四肢も動かない。
 零れる。
                         赤黒く染まっていく視界。
 零れる。
                         終わりが近いのか。



 寒い。此処は酷く寒い。アスファルトは氷の様に冷え、吹く風は極寒の地に吹きすさぶ寒風。
 余りの寒さに炎を燈す事にした。それは息をするよりも簡単な行為。
 命を燃料として燃え盛る紫炎は、死なない限り永遠に消える事は無く、煮え滾った憎悪の熱を伝えてくる――

 ―――意識が途切れがちになってきた。お陰で数瞬前の出来事すら思い出せない。
 今俺は何をしようとしているのか。それすら思い出す事が出来ず、ただ咳をするだけの人形になった様だ。
 身体が動かない為、咳をしながら血を吐く人形と言う表現は事実でしかないのが本音ではあるが。
 それにしても寒い。身体の芯から熱が消えていく感じだ。炎で暖を取るとしよう――

 ―――薄汚い路地裏で咳き込む音だけが反響している。寒い。
 血液に本来ある筈の熱も。サムイ。感じられない。
 雨が。寒い。降り出して。サムイ。来た様だ。さむい。
 肌に張り付くシャツが気持ち悪い。寒い。
 ただ、咳の音以外では無音だった空間に。寒い。溢れる他の音は心地良い。
 ああ、やはり此処は寒過ぎる。もう一度炎を燈す事にしよう――
 

112 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/09/27(火) 00:45:00


 寒い。四肢の末端は痛いくらいに冷えていて、凍りついてしまった様にも思う。
 その痛みのお陰で意識は妙にはっきりしていて、今まで気付かなかった事に気付く。
 今思えば何故気付けなかったのか。滾る熱を何故感じる事が出来なかったのか。
 血を流し過ぎて意識が朦朧としていたとしても無様過ぎる。
 何度も、何度も、何度も、炎を燈そうとしていたのだから。

 命を削って燃え盛る炎。どんな場合でも例外無く燈る筈だ。
 それでもただ一つの例外はある。それは―――死に到る直前くらいの物だろう。
 燃やす命が無いのだから、燈る炎は亡くなるのは当然で、今が―――その時。
 このまま俺は、雨に打たれ、血溜りに顔を沈め、死ぬのだろう。


 ―――死、ぬ?


 死ぬ。このまま死ぬのか。何も出来ないまま、無様に屍を晒して、死ぬのか。
 確かに死ぬには良い場所だ。誰も寄り付かない様な、日の当たらない、月の光すら届かない路地裏。
 何もかもを拒絶してきた俺には似合い過ぎて、勿体無いくらいだ。
 ああ、勿体無いとも。何も出来なかった者がこんなに良い場所で死ぬなど。

 誰かが言っていた。この紫炎を振るう限り、俺の死期は早まるだけだと。
 それを一笑に伏し、どちらかと言えば嘲り笑い、この炎を振るい続けてきた。
 止る事無く、振り返る事無く、縋る事も無く、頼る事も無く、ただ一人で突き進んできた。
 その道は真紅に染まっていて、鼻を突く腐臭と血臭。振り返ってみれば白い固形物ばかりが転がっている。
 常人が歩けば精神に支障を来たすかも知れない、冥府魔道。
 そこを進み続けて来た。ならば今更死ぬ事など恐れる筈も無い。死はいつも身近に転がっていて、
 慣れ親しんできた物なのだから。

 だが、このまま死ぬのだけは御免だ。このまま死ぬのだけは厭だ。
 俺の目的を果せぬままに死ぬのは御免だ。俺の目的を果せず死ぬのは厭だ。
 奴を殺せぬままに死ぬのだけは御免だ。奴を殺せずに死ぬのは厭だ。
 京を殺せぬままに死ぬのだけは御免だ。京を殺せずに死ぬのは厭だ。
 この憎しみを抱えたままで死ねというのか。この殺意を抱いたまま死ねというのか。

 「クッ……ふざ、けるな」

 声と共に血が溢れ出す。もう長くは無いようだ。こんな時でも冷静な自分が恨めしい。
 もう少し取り乱す事が出来ればどれだけ楽だっただろうか。
 怒りをぶつける相手が居ても、それを叩きつける手段が今の俺には無い。
 それならば、何も出来ないまま、このまま死ぬのだろうと予測してしまっている。

 まあ、恐らくはその通りなのだろう。そろそろ思考も侭ならなくなってきた。
 四肢の感覚など既に断絶。肺の酸素を取り込む機能は損壊。
 感覚神経運動神経共に短絡。心臓はストライキを起し始めた。
 聴覚視覚嗅覚は既に崩壊。涙腺は何故か決壊。
 血液を零す機関に成り下がった口から最後の言葉。
 

113 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/09/27(火) 00:45:30




 「―――最期か。月が―――見たかったな」


 

114 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/09/27(火) 00:46:21


 動かない身体。心は折れていないのに、拳に熱は乗ったままなのに。
 目の前にはアイツが居て、一重に俺を心配してくれているのに―――自分すら省みないで。
 根無し草で、連絡を入れずに離れてて、自分の事しか考えていない俺なのに。
 馬鹿な男だって事は充分理解してても、変えられない。それが性分だ。

 お前との約束だって殆ど守れてないだろ?
 お前には心配しかかけてないだろ?
 お前に残せた物なんて、時間の浪費だけじゃねぇか。
 俺がお前に何をしてやれたって言うんだよ。

 俺は本当に、自分の事しか考えてない奴だったよな。
 今もこうやって、俺はお前を心配してる振りをしてるだけかもしれない。
 だってまだ、戦いたいだなんて思っているんだから。
 本当、どう仕様もねぇ奴だ。我の事ながら呆れてくる。

 闘って負けて、倒れて、お前の傍にも行ってやれない。
 二度と負けないって誓ったのに。何があっても傍に居ると誓ったのに。
 結局何も出来無いのかよ―――俺は。
 本当に、駄目な奴だ。それなのに―――


 何でそんなに哀しい顔してるんだ?
                              止めろよ。こっちまで辛気臭くなる。
 何で涙で顔を濡らしてるんだ?
                              自業自得じゃねぇか。お前が気に病む必要なんて。
 何でそんなに優しくしてくれる?
                              優しくして貰える義理なんて。
 何でそんなに暖かいんだ?
                              太陽はお前の事かもな。
 何でそんなに俺の事を心配してくれる?
                              駄目になりそうだ。


 アア、クソ。本当に何で、動いちゃくれねぇんだよ。
 いつも笑ってて欲しいのに、似合わない涙を拭いたいのに、返したいもんが山程あるのに。
 畜生……何で、何で、何で、何で…………
 

115 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/09/27(火) 00:46:51


 歌声が聴こえてきた。頭には柔らかい感触。
 こんな事を感じられるならまだ元気なのかもしれない、何て思った。
 だから身体を動かそうとして―――駄目だった。
 いつもなら動いてくれる身体が動かないのは可笑しな気分だ。

 歌声はより一層響いて、このまま眠りたくなった。
 そう言えば、誰が歌っているんだろう。ずっと目を瞑っていたから顔も見てない。
 声は聞いた事があるはずなのに、それが誰なのかがどうしても思い出せない。

 まあ何て事は無い、記憶の混濁って奴なのかもしれない。
 どうして身体が動かないのかも分からないし、身体のあちこちが痛い様な気もする。
 何処からか血が出てる気がするんだが、その器官の名前も思い出せやしねぇ。
 自分の名前くらいは分かるけど、他の何かは良く思い出せない。

 「眠ぃし、寒ぃ」

 寝るか。眠いしな。寒いのはまあ、何とかなるだろ。
 誰かの体温みたいなのも感じるし、それは良い匂いで、落ち着く。
 これならグッスリ眠れるだろう。明日の朝まで起きれないかもな。
 ああ、明日は学校か。面倒だしサボるか。身体も動かない事だしよ。

 もう二年も留年してんだ。でも何でそこまでして卒業しようとしてたんだっけ。
 誰かと約束、したんだったかな。一緒に卒業しようって。
 だから辞めないで通い続け……最近サボりがちだったなぁ。
 そろそろ出席日数がヤバイかも知れない。アイツも怒ってるかもしれない。
 雷落とされるのは御免だけど、それも自分が蒔いた種か。

 ん、アイツって誰だ? 靄が掛かっちまって思い出せやしねぇ。
 大切な誰かで、何に換えても守りたいとか思ってたんだけどな。
 俺にとってそこまで大切じゃなかったのかもしれない。
 忘れちまうほどなんだ―――そんな馬鹿な話があって堪るか。
 あいつの事を忘れた日なんて、一日だって無いってのに。

 思い出せ。何としても。それが出来るまで眠る訳にも行かない。
 その為に先ず、目を開けなくちゃな。このままじゃ寝ちまいそうだ。
 酷く重たい瞼をこじ開けるのは辛いけど、眠らない為だし仕方ない。


 目を開けて、アイツが目に飛び込んできて、今の状況も、これからの事も思い出した。


 言葉が出ない。

 思考が纏まらないとかそう言うレベルの話じゃなくて、ただ言葉が出ないだけ。
 言いたい言葉は一つだけ、たった一つだけあるんだ。
 頬を涙が伝う。俺の涙なのか。それともアイツの涙なのか。

 ―――覚悟を決めよう。
 無責任な言葉だけど、言わなくちゃ天国へ行けても後悔しちまう。
 

116 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/09/27(火) 00:47:18




 「今まで本当にアリガトウ―――ユキ」


 

117 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/09/27(火) 22:26:56


 「無い。以上だ。」

 無い物は無い。説明する気にもなれん。
 ならばこの答えでも良いだろう。

 「で、殺伐が如何こうと抜かしているが、それしか出来んのだから仕方あるまい」

 これも簡潔に。他に言葉を紡ぐ必要は無いだろう。
 

118 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/09/27(火) 22:28:51


 (>>117-118は>>110へ)


 闘って、戦って、奪われて、取り返した。
 それでも一つだけ、一つだけ未だ取り戻せていない物がある。

 日本へ、久しぶりに、戻ってきた。
 醤油の匂いがする、何て思いはしないけどやっぱりここが故郷なんだと、空気で実感する。
 他所の国に行くと空気からして違う、と言うのは嘘じゃないと思ってる。
 始めて行く国はどこか拒絶されるような気もする。気にした事なんてなかったけど。
 こんな事を考えるのは久しぶりに帰ってきたからだろう。

 タクシーを捕まえる。紅丸に金は借りておいた。因みに返す気はない。
 アイツが俺に勝ったら返してやっても良いかもな。
 それに、どう言う訳かアイツは返してくれとも言いやしない。
 家が金持ちだからなのか、俺に返す見込みなんてないと思っているからなのか。
 後者だったら自慢の長髪を焦がして短髪にしてやろうと思う。リアルに。

 目指す場所は学校。今の時間ならアイツは授業中の筈だ。
 それも後一時間ほど。向こうに着く頃には丁度下校時間に重なるくらいだ。
 都合は良いけど、なんて言われるかと思うと気が重くなってきた。
 自業自得だと言われればそれまでなんだけどな。


 学校の付近でタクシーから降りる。制服姿の男や女が歩いている。
 朝とこの時間だけが、この何も無い道で唯一賑わう時間。
 知った顔は居るような居ないような、五年も居てもそんなもんだろう。
 同級生の顔と名前すら、よく覚えちゃいないしな。

 流れに逆らうように歩いていく。チラチラと見られるのは仕方ないだろう。
 うざったいけど、我慢するしかないし、こんな場所で暴れたら何を言われるかそれこそ分かったもんじゃない。
 ゆっくりと、のんびりと、ふらりゆらりと歩いていく。
 もう帰っちまってる可能性だってあるんだし、急いだってしょうがねぇ。

 夕陽が綺麗だ。それももう直ぐ見えなくなっちまうんだな、何て感傷に浸ってみる。
 日が昇って沈む。そんな当たり前の事すら、戦いの日々じゃ気付けなかった。
 大体、寝てたしな。昼間。
 逃亡生活を続けるには夜の方が都合が良かったのもあるし、向こうを誘い出すのも夜の方が楽だった。
 まあどうでも良いか。もう終わって、これからはこの日常で過ごせるんだから。

 ふと前を向けばアイツが居て、心底驚いたような顔をした後、笑顔と共に放たれた言葉。

 「お帰りなさい―――京」

 返す言葉は一つだけだろう。

 「―――ただいま。ユキ」

 忘れられない、忘れたくない、温かい言葉だった。
 この後どうなったかは―――まあ、聞かないでくれ。
 

119 名前:名無し豆腐:2005/09/28(水) 01:32:20

子分に持つならどんなタイプの人間がいい?

120 名前:名無し豆腐:2005/09/28(水) 01:42:33

此処暫くで、もっとも自分が輝いていたと思われる出来事を教えてください。

121 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/09/30(金) 01:01:03


>>119-120

 「アレ? こんな所で何してるんです? 草薙さん」

 「オッ? 真吾か。何してるも何も、出るんだよ。これに」

 何て事はない。今日は規模が小さいながらも、それなりに腕の立つ奴が集る格闘大会が開かれている。
 ぶっちゃけ暇潰しにもならないような相手ばかりだとは思うんだが。
 それでも何でそんな物に出ようかと思ったか。理由は簡単だ。
 キャッチボールもしないで投げる投手が居るか? 居ないだろ?

 「折角秘密にして驚かせようかと思ったのに、酷いッス」

 「何がだよ。つーか、もう優勝する気ねぇの?」

 「だって草薙さんに敵う訳が―――

 「ハッ……情けねぇ弟子を持ったもんだぜ。破門にしてやろうか?」

 「―――エッ…?」

 「草薙流はな、例え誰が相手でも勝つんだよ。それが流儀だ。
  なのに何だ? 俺が相手だから勝てませんってか?
  ケッ……そんなの弟子にしてたら草薙流の格が下がっちまうぜ。
  決勝まで昇って来い。じゃねぇと本当に破門だ」

 ったく、アイツは今まで何を見てたってんだ。
 俺の後を追って来てるんだったらそれくらいの事は分かっても良いと思うんだけどな。

 「ちょ……草薙さん!」

 振り返りもしないで参加者で作られた波に消えていく。
 甘えさせる訳にもいかねぇし、何より俺の試合がもう少しで始まる。
 初戦の相手は……自称喧嘩百段? 馬鹿じゃねぇの、コイツ。
 少しでも肩慣らしになりゃ良いんだが、どうなる事やら。
 

122 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/09/30(金) 01:01:57


 まあ、余裕で勝ち進んでる訳だが……物足りねぇな。肩慣らしにだってなりやしねぇ。
 これなら親父でもぶん殴ってた方が有意義だぜ。
 K-1とかプライドにでも出て見るかな……炎ってレギュレーション違反か?
 炎が無くたって充分戦えるとは思うけどな。それに頼って戦ってる訳でもねぇんだし。

 んで、アイツは……そりゃあ上がって来るよな。腐ってもKOF参加者だし。
 リョウやテリー、その他大勢と戦って――勝つとは言わないが――来てるんだ。
 それ相応の実力が備わってきてても何ら問題無いだろう。
 昔のままだったら死んでただろうしな。アイツ。

 さて、試合開始はもう直ぐ。目の前には少しだけ情けない顔にも見える男が一人。
 それでも闘志を漲らせ、相手の喉笛を噛み千切ろうとしている―――殺気は無いんだけどな。
 俺の言いたい事は分かってくれた見たいだ。流石弟子。これからも昼飯のパンを頼むぜ?


 「行くぜ?」

                                                   「……行きます!」


 結果は言うまでもない。優勝の美酒は何ものにも変えがたくて、それでいて良い『暇潰し』になった。
 俺の輝かしい経歴がまた一つ増えた訳だ。
 こんなちっぽけな大会じゃ自慢になんてならねぇけどな。

 俺の後を愚直なまでに追ってくるチャレンジャーっぽい弟子。
 追いつかれるのはまだ先だろうし、俺だって立ち止まってる訳じゃない。
 それでもいつか追いついてくるだろう。

 その時を楽しみにしてるぜ? 一番弟子?
 絶対口にしてやらねぇけどな。
 

123 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/09/30(金) 01:02:28


 今回はこの店でセッションらしい。らしいと言うのも可笑しな話だが。
 行きつけのバーの店主から頼まれたのだから仕方がない。金にもなる。
 それにジャズセッションの方が最近は楽しいと思えるようにもなった。

 殆どの人間が演奏暦十年二十年。その中で揉まれれば自然と熱も篭る。
 客は客で耳が肥えた奴等ばかり。下手な世辞など掛ける事無く、時に罵倒し、時に絶賛する。
 悪くは無い。静かな雰囲気も、アルコールの揺らめきも、紫煙の揺らぎも、心地良い。
 こんな事ならばもう少し早くこの世界に足を踏み込めば良かったと思う。
 ウッドベースを買わねばならんのが問題だが。

 あれはその大きさで先ず、買う事が躊躇われる。
 その中から良い物を選ぶとなると即決で買うには躊躇うような金額が飛んでいく。
 バンドで使いたいと思ったならピックアップを取り付けねばならず、それに十万。
 ピックアップをつける理由はスラップ音を響かせる為で、不要と言えば不要だが。
 まあ何かと金が掛かる訳だ。そんな訳で未だにリッケンバッカーのベースを使っている。
 元々ジャズベースだしな。それほど問題は無かった。ピックアップは交換したが。

 気を取り直して店の中へ歩を進める。調度品が整った店。客の入りは五分ほどか。
 上々だろう。この類の店は知る者だけが来ている店だ。満員など望むべきではない。
 が、明らかに場違いな人間が一人。

 髪は赤く染められ、耳には髑髏をあしらったピアス。タンクトップから覗く肩にも髑髏が刻み込まれている。
 指にはシルバーアクセが多々……スキンにガボール、A&Gもか。つくづく髑髏だな。この男は。
 で、俺がくれてやったブラッディーマリーのリングか。もう少し節操を持てと言いたい。
 この男の名前は覚えていないが、バンドの誰かが連れて来た後輩らしい。
 何の因果か付き纏われているのだが、鬱陶しくて敵わん。

 「八神さんじゃないっすか。奇遇ですね、奇遇」

 奇遇をやたらと強調する馬鹿。
 無視してカウンター席に腰掛ける。時間は未だ早い。一杯呑るのも良いだろう。

 「マティーニを」

 無言で頷きシェイカーを振るう老人。手付きに危ぶむ個所は無く、まるで機械のようだ。
 場違いな声さえ響かなければ例え話ではなく本物となっただろうに。

 「俺も同じの下さい。あー、んでもそれって高いンすか?」

 ……まあ、バンドをやっている人間ならばこうなってしまうのも頷けよう。
 何しろ金が無い。袋麺を啜る毎日と言うのは強ち嘘でもないのだから。
 楽器類だけでも、凝ればの話だが、百万は見なければならない。
 ライブを入れれば箱代とスタジオ代。どちらも安い物ではない。

 特にスタジオ代が嵩んでいく。一度に五百円支払っても十回入れば五千円になる計算。
 完成度をより高めたいと言うのであれば入る回数は倍以上に膨れ上がる。
 箱代はその都度その都度で変化するが、チケットが売れずに参加バンドが少なければ、二万三万、それくらいは飛んでいく。
 とあるバンドマンは生活に余りにも窮していた為コンビニで万引きを繰り返していたそうだ。
 

124 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/09/30(金) 01:02:54


 閑話休題。

 「……で、何をしている、貴様」

 「いや、呑みに来ただけですよ。偶々、偶々ッス。
  そんな八神さんが弾くから見に来たとかそう言うんじゃナイッスよ。マジで」

 アルコールの揺らめきに目を落とし、溜息。殺意が膨れ上がりそうだ。
 月が綺麗だったら殺していただろうな。殺していた。いや、今から殺してしまおうか。
 外に丁度良い路地裏があった。マンホールは完備。
 ―――殺るか?

 だがまあ、こんな無神経な奴で無ければ俺の横になど立つ事すら出来んのだろうな。
 殺気も感じ取れず、空気も読めず、物怖じせず。
 下らない事だ。人との関わりなど俺には不要なのだから。

 「時間、大丈夫なんスか?」

 ……もうそんな時間か。
 機材のセッティングには然程時間も掛からず、演る曲も既に決まっている。
 軽く打ち合わせ、スタート。

 何時もはバスを強調したセッティングだが、コレに手を出してからはミドルを強めに出してある。
 ランニングなどを駆使する為にバスよりもミドルを活かす事にしている。
 無論、ピックなどと言う余計な物は間に挟んでいない。
 チョッパーで行くにはピックが邪魔だったと言うのもあるが。

 熱は加速していく。各々がその曲を壊さない範囲でアレンジを重ねていく。
 それは例えるならば一本の細い綱を渡っていく行為に似ている。
 その綱を踏み外せば……崖の下へと落ち、酷評を得るだけだ。
 妙な信頼関係。それだけがこの演奏での命綱だ。

 互いの技術を信頼出来るから、渡って行ける。
 互いの技術が信頼出来なければ、落ちる。
 綱渡り。綱は細く、脆い。危ういが、挑戦する価値はある。

 夜は更けて行く。グラスの氷が溶けるよりも遅い速度で。
 

125 名前:名無し豆腐:2005/10/04(火) 23:16:05

俺も大人になったな、と自分で思うのはどんなときですか?

126 名前:名無し豆腐:2005/10/05(水) 22:29:14

R商か…ゲフンゲフン、商人でございます。
両家の護身刀からナイフ一本、自爆空母乗用ヘリまで広く取り揃えております。
ご入用の品などあれば何なりとお申しつけ下さい。

127 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/10/07(金) 21:17:31


 肩がぶつかる。
  睨まれる。
   睨み返す。
    絡んで来る。

     だから―――



      ―――殺した。
 

128 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/10/07(金) 21:17:35


      肩がぶつかる。
     睨まれる。
    睨み返す。
   絡んで来る。

  だから―――



 ―――無視して、通り過ぎた。
 

129 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/10/07(金) 21:18:07


 過去と現在。違いは多く、昔の俺は今の俺を嘲笑うだろう。
 それでも構わない。これは俺自身が歩いてきた過程で変化したもの。
 それならば受け入れるしかないのだから。殺すのは奴だけで良い。


 奪うのには―――もう飽きた。
 

130 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/10/07(金) 21:20:56


 (>>128-132は>>125へ)

 肩がぶつかる。
  睨まれる。
   睨み返す。
    絡んで来る。

     だから―――



      ―――殴り倒した。
 

131 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/10/07(金) 21:21:00


      肩がぶつかる。
     睨まれる。
    睨み返す。
   絡んで来る。

  だから―――



 ―――視線だけで追い返した。
 

132 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/10/07(金) 21:21:39


 昔は随分血気盛んだった。何時も誰かを殴り倒してた気がする。
 大抵は弱い奴で何にも満たされないまま、苛々してた。
 時間は少しだけ進んで、俺も少しだけ進んだんだろう。

 弱い者虐めは―――懲り懲りだ。
 

133 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/10/09(日) 23:00:27


>>126

 「取り敢えず手榴弾と銃だ。銃の方は何でも構わん。
  弾と共に持ち運びに便利な物を選べ。
  後は……そうだな。一応防弾ジャケットを。

  受け渡しは現地で。場所は追って連絡する。
  貴様は依頼だけを果せば良い。余計な詮索をすれば―――殺す」

 告げるだけ告げ、電話を切る。正体など直ぐに解かった。
 が、使える物は使わなければ損をするだけ。精々利用させて貰おうではないか。


 KOF97。それ以降依然として京の行方は知れないまま時間は無為に過ぎていった。
 奴が死んだとは到底思えず、奴を殺せるのは俺だけだという事を信じ続け、捜索に捜索を重ねた。
 不本意ではあったが神楽の協力を得て、奴の消息を掴んだまでは良かった。
 それが裏の世界に蔓延る暴力を糧とする屑どもの集まりだと知るまでは、だったが。

 まあ、だからと言って何が変わるわけでもなく準備を進めた。その折に入って来た一本の電話。
 此方もまた屑の集まり。金に群がる亡者。血を金に替え、死体を金に変える。
 武器商人。尤も忌むべき職業で、一度潰してやったと思っていたが根絶は不可能だったのだろう。
 それらが俺を利用しようとしたが為の電話。

 裏に何があるのかを知りつつも、誘いには乗らねばならない。
 人を殺すには有り余るほどの力を使わなければ奴の元へも辿り着けず、殺す事も出来無いのだから。
 炎だけの陽動では多少問題があるのは既に理解している。
 何故なら炎を扱え、大規模の破壊など出来るのはこの世に奴か俺くらいの物なのだから。

 それにこの紫炎は何を燃やしても紫の色を保ったままだ。色から侵入者が誰か暴かれるなど馬鹿馬鹿しい。
 面白くは無いが暴力を手にしなければならないだろう。
 引き金を引くだけで奪え、安全装置を引き抜けば奪える武器。痛みを知らぬままに殺せてしまう道具。
 吐き気がする。が、やらなければならない。


 全ては俺の目的の為に。
 

134 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/10/09(日) 23:00:54


 パン。

 渇いた音が風に靡いて消えて行った。
 コレで人を殺せちまうのかと思うと、正直な所ゾッとする。
 証拠に掌にはじんわりと汗が浮かんでいる。背中にも。

 どうやって知ったか知らないが、奴らは俺を嗅ぎ付けてきた。
 そして一つの銃を置いていく。グロッグ17とか言うらしい。
 万が一の護身。コレで助かったならまたご用命を、だそうだ。

 乾いた風が吹き抜ける。奪ってきた服はまだ肌に馴染んでいなくてなんか違和感がある。
 頭の中でリピートし続ける乾いた音。軽い音。飛んで行く鉄片。穿たれる穴。
 簡単に人は死んじまうだろう。真っ赤な血を吹き散らせながら。
 想像しただけで嫌になって―――銃を投げ捨てた。

 殺すつもりなんて無い。いくら俺のクローンが量産されても、それは変わらない。
 目を覚まして飛び込んできたのは自分の顔をした沢山の人形。
 虚ろな目。虚ろな体。虚ろな―――炎。

 「下らねぇ事しやがって……」

 右手に燈した炎の輝きはどこか燻っている。俺の中の空洞の所為で酸素の配分が巧く行かないんだろうか。
 苛々する。此処まで頭にきたのは久しぶりだ。
 久しぶり過ぎて、あんな物を打ってみようだなんて思ったんだろう。
 そうじゃなけりゃ持ってきた奴をボコボコにしてただろうしな。

 もう一度炎の輝きを見る。それは変わらずに燻ったまま、所在なさげに揺れている。
 俺を挑発するように、俺を鼓舞するように揺れる炎。
 言われなくても解かってる。やる事は、一つだけだ。

 右手を地面に叩きつけ、今持ってるだけの力の全てを解放する。
 上がる火柱は弱々しい、けど―――熱いままだ。

 「―――ぶっ潰す」


 そう、俺をこんな目に合わせてくれた組織――ネスツをぶっ潰してやる。
 

135 名前:名無し豆腐:2005/10/13(木) 02:20:56

お二人の「せくすぃ〜ぽいんと」を、まず自分で述べて、次に互いに
語り合ってみて下さい。

136 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/10/13(木) 02:42:56


>>135

 俺の、せくすぃ〜ほいんとぉ? せくすぃ〜、ねぇ。せくすぃ〜、かぁ。
 俺が思う俺の、ってのが何と言うか、その、アレだな。アレだよ。
 紅ま……ああ、違った違った。ナルシストっぽく聞こえやしねぇか?

 確かに俺は容姿端麗運動神経抜群のアイドルに勝りまくってるけど、
 あんまり強調しすぎるとホラ、凡人が嫉妬しちまうだろ?
 そうなるとあんまり良くないと思うんだよな。男の嫉妬は見苦しいって言うからな。
 それに、あんまり女性ファンが増え過ぎちまってもそれはそれで問題なんだよ。

 俺には彼女が居るんだぜ? あんまり心配させたくねぇんだよ。
 そんなちっぽけな事で心配しないとは思うんだけどな。
 何てったって俺が持てる愛情の全てを……何ハズイ事言ってんだろ、俺。

 つーか、話逸れすぎだな。「せくすぃ〜ぽいんと」だったか。
 やっぱりこの声と性格のギャップ、ってのがあるんじゃないか?
 俺結構熱い事言ってるだろ? でも声は結構低いんだよ。
 いや、どっちかつーと甘い声? 心地良い低音ヴォイス、なのかも知れないけどな。
 どっちでも良いか。そんなに変わらねぇし。

 んで、声。人はまず顔から見られちまって、それで印象が八割方決まるらしいけど、
 ビクビクオドオドした声と、自身に満ち溢れた声じゃ印象も変わって来るだろ?
 それと同じ。良い具合に耳に響いてくる声はセクシーに値するんじゃないかと思うぜ?

 世の中には声フェチな奴とかもいんだろ? 多分居るって。
 それには好みだってあるだろうけど、俺の容姿とこの声が合わされば向かう所敵なし。
 抱かれたい男ナンバーワン十年連続受賞、何て快挙が成し遂げられるかも知れねぇな。
 ぶっちゃけ興味無いけどな。一人に好かれてりゃ充分だし。

 つー事で、俺が思う俺の「せくすぃ〜ぽいんと」は、ずばり「声」だ。
 ゲームの中でなら思う存分堪能してくれても構わないんだぜ?
 ただ俺の声に酔って負けちまう、何て醜態は晒すんじゃねぇぞ?
 

137 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/10/13(木) 02:54:35


 んで、八神の事まで語れってか? 俺には無理だぜ。
 つーか、誰に話し合わさせても出てこないと思うんだけどな。
 アイツが「せくすぃ〜」ってタマだと思うか?
 どう見たって、誰が見たって、「イロモノ」だろ。

 百歩譲って……千歩くらい譲ってアイツが美形だとしよう。
 そして仮に、仮にの話だぜ? もし俺が女だったらアイツの何処に色気を感じろって言うんだ?
 あの肌蹴た胸元か? それともあの爬虫類めいた動きか?
 それとも暴力的な所か? あの可笑しな髪型か? 狂人すれすれの笑い声か?

 ホラ、アイツの色気なんて何処にもねぇじゃねぇか。
 あー、でもどっかで腰が良いだとか耳にした覚えも……分かんねぇなぁ。
 男の俺だから、って事はないと思うんだ。女から見たって一緒だろうぜ?

 本当、アイツの良さなんて俺には分かりもしないぜ。
 指だけは大切にしてるような気がしないでもないけどな。
 あんだけ切り裂いてるのに嘘だろ、って思うかもしれないけど嘘じゃないんだぜ?

 何時だったか忘れたけどな、試合終わった後だったと思う。
 あの男が、顔についた傷には無頓着なあの男が、指だけはしっかり治療してんだよ。
 仲間居ないから一人きりで、人が普通は通らないような所でな。

 正直、正直な話驚いたぜ? アイツにもそんな所があるんだ、ってな。
 まぁ、ぶっちゃけどうでも良いんだけどな。

 結論。アイツの「せくすぃ〜ぽいんと」は皆無。
 それが答えだと思うぜ?
 

138 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/10/13(木) 03:11:14


 ハッ……下らん。そんな事を聞いて貴様は如何するつもりだ?
 イベントの関係でインタビュー? そんな下らぬ物に俺を付き合わせるのか?
 と言うか、何だ。阿呆か貴様は。男の俺に聞いた所で仕方あるまい。
 そう言う物は女どもを何処かに集めて聞いて置けば良かろう。

 大体だな、「せくすぃ〜」とは何だ。「セクシー」なら理解出来るが、「せくすぃ〜」だぞ?
 貴様の脳は蛆が湧き返っているのではないか?
 一度切り開き、アルコールで徹底洗浄を行うが良い。
 そうすればそのイカレタ脳味噌も少しはマシになるだろう。

 それでも良いから答えろ? 貴様、随分偉そうな口の聞き方を……肉が出る?
 それならそうと早く言えば良い物を……良かろう。答えてやる。

 で、詰る所セックスアピールか? 雰囲気、だろうな。
 肌の露出など些細な事に過ぎず、俺の動作なども取るに足りぬ事だ。
 その全ては俺の醸し出す雰囲気からなる物なのだろうからな。
 解かるか? 解からぬかもしれんな。

 人は何故月を見上げ、それに見惚れるかを考えてみるが良い。
 手が届かぬ物だと言う事、その輝きが何にも劣らないと言う事。
 確かにそれらも理由の一端としては充分で、それがあるからこそ俺もよく
 見上げるのかもしれん。

 だがな、それは意識する理由なのではないか?
 人が持つ根本の部分、表には出てこない無意識の部分で惹かれている。
 そう考えた事は無いか? 珍しいからな。普通は考えぬだろうが。

 まあそれは良い、何が言いたいかと言えば、月の脆弱性に惹かれるのだろう。
 人は誰しも自分より下の物を眺めて愉悦に浸る、そう言う部分がある筈だ。
 月は陽光を受けなければ輝く事すら適わん脆弱な存在だ。違うか?
 それが無意識の内に弱い物という認識を生み、惹かれる。
 太陽に焦がれる者は早々居るまい。光を求める事はあってもな。

 かと言って、俺が誰かに見下されなければならない生き方をしてきた覚えは無い。
 勿論だ、弱さなど当の昔に捨てたのだからな。
 だからだ、俺の醸し出す雰囲気は前者、意識出来る理由からなのだろう。
 真似し様とも真似する事の出来ない破滅的な生き方。
 それに共感を持つ物も居るのだろう。下らぬ話だがな。
 

139 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/10/13(木) 03:23:28


 それで―――貴様、正気か? 奴にそんな部分があるとでも思っているのか?
 あの万年留年男、自分で十年高校生活を続けていると認めた男にそんな部分が
 あると言うのであれば是非ご教授願いたいのだが。

 センスの無い学生服姿。何処かから盗んで来たと言う、自分の好みが排除された服。
 レザーのジャケットには態々日輪の紋を入れ品を無くし、シャツはジーンズの中へ。
 そんなセンスの欠片も無い男にそんなアピールポイントがあるとでも言うのか?

 一応女も居るようだが、何故アレに惚れていられるのかが理解出来ん。
 あの女も見た目は普通だが……っと、この話はしても無意味か。
 まあ、センスが無いと言う事だけは理解出来るがな。京も、あの女も、共々にな。

 それでも良いから何か一つくらいは挙げろ、か。
 奴に出会って殺し合わない方が余程に簡単に思える難題だな。
 本当に……何かあるとでも、言うのか?

 ……そうだな。不敵な笑み、とでも言ってやろう。
 あの男の恐れを知らぬ笑み、鋭い眼光に居抜かれれば並大抵の女は落ちるのだろう。
 それだけの容姿は持ち合わせている。お陰で馬鹿でも飯の種には困らんのだから、
 ああ言う顔に生んでくれた奴に感謝すべきだろう。

 こんな所で良いのか? それでは報酬をよこせ。
 こんな馬鹿馬鹿しい催しに付き合ってやったのだから当然だろう?
 まだ続きがある、だと?
 

140 名前:八神 庵&草薙 京 ◆Iori/GPRcE :2005/10/13(木) 03:35:28

 ………………。

 「………………」

 ―――これは、何のつもりだ。

 「俺が聞きたいぜ。んでよぉ、雰囲気? このナルシスト蜥蜴が」

 声? 貴様の声帯を切り開いて改造せねばならんようだな。

 「不敵な笑み、つーのは認めてやっても良いぜ? ナルシスト」

 指か。まあ、気を使ってはいるがな。えなり二号。

 「へぇ。どう言う意味だ、それは。狂人」

 そのままの意味だが。高校――正確には――十五年生。

 「聞き間違いじゃないよな、暴走機関車イオリン」

 貴様の腐れた耳に入ってくれる音があったとはな。二階堂の亜流。

 「……………………………」

 ……………………………。

 「―――八神ィィィィィィィィィィ!」

 ―――キョォォォォォォォォオ!

 (殴り合いは編集の都合上カットされましたここを押しても見られません)

141 名前:名無し豆腐:2005/10/13(木) 18:36:15

草薙氏の声で一番良かったのはカプエスん時でした
アンタいつの間にそんな渋カッコ良くなったんですか

142 名前:名無し豆腐:2005/10/14(金) 01:19:50

「喧嘩するほど仲がいい」

この言葉を実感した事はありますか?
また、先人は何を見て、この名言を思いついたと思いますか?

143 名前:名無し客:2005/10/17(月) 16:39:24

京さんが作詞、庵さんが作曲で1曲作ってみてくださいませんか?

144 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/10/18(火) 03:05:14


>>141

  「気の所為だろう。貴様の思い過ごし、と言う事だ。
   大体だ、アレに渋さだと? あまりにも似合わない。違和感があり過ぎる。
   そうだな、アレが卒業する方が未だ現実味があると言う物だ。
   学生気分が抜けない内は―-抜けても変わらぬだろうが―-到底無理だな」

  そう告げながら、俄かに昔の事を思い出していく。
  あの大会があった頃、確かネスツの崩壊に付き合っていた筈。その辺りの時期
 だった記憶が残っている。
  今では随分薄れているが、あの頃は慌しかった記憶もある。血に塗れ、暴力に
 塗れ、殺し、犯し、憎しみを募らせ、紫炎を振るい続けていた。

  奴が消え、下らない事に奴のクローンが量産された。
  それは世界中で騒乱の渦を巻き起こしていた、らしい。
  基地を潰し、ただ吼えていた俺はその事を後で知ったに過ぎないのだが。
  その中でアレにも思う所があったのだろう。


  人とは何か。
  命とは何か。
  自分は何なのか。
  本当に自分は『草薙京』なのか。


  まあ、俺には如何でもいい事に過ぎない。
  所詮俺は奴を殺す事さえ出来ればそれで良い。人形を殺して募らせた苛立ちを奴に
 ぶつけ、殺し合いに興じられればそれで望みは叶う。

  ―――俺らしくも無い。昔の事に思いを馳せ、奴の心情を汲み取ってやろうとするなど。
  何処かズレがある。今では昔の俺に立ち戻る、とは行かないのだろう。
  何時からズレが生じたのだろうか。



  思い返せばそれは―――




                            ―――奴との邂逅が始まりだったのかもしれない。


 

145 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/10/18(火) 03:05:42


  「へぇ。俺の声の魅力に気付いてる奴も居たんだな。中々良い趣味してるぜ?
  やっぱりあの赤毛の蜥蜴は耳が腐ってるんだろうな。そんなんで音楽やって
 て大丈夫なのか、って気がしないでもないんだが気にしてやるだけ損だよな。馬
 鹿馬鹿しい思考回路しか持ってねぇんだから。

  んで、なんだっけ? 何時の間に渋カッコ良い俺になったかって?
  そんなも昔からだろ? 俺は何にも変わってねぇよ。何時まで経っても俺は俺。
  学校行って、授業受けて、飯食って、昼寝して、彼女とデートしてみたり、偶に
 真吾の相手したり、ダチと遊びに行ってみたり、何にも変わってねぇよ。

  お前が気付かなかっただけなんじゃねぇのか?
  俺は、『俺』なんだからよ、それは絶対に変わる事のねぇ、事実だ。例え偽者が
 現れたとしても、な」

  そう、俺は俺だ。
  あの大会があった頃、一つの大問題が発生してて、それを片付ける為に奔走して、
 会いたい奴にも会えなくて、やりたい事もやれなくて、取り戻したい物は何時まで経っ
 ても戻ってこねぇ。そのお陰でいっつもカリカリしてた。

  まぁ、あの大会があった頃には全て片付いてたのかな。確か。いや、未だ片付いて
 なかった気も……ああ、片付いてなかったか。
  それでも、大体終わりは見えてきてたし、奪われた物は取り返せてはなかったけど、
 俺は俺である答えを見つけてた。それが声に現れたのかもしれない。


  目の前には俺。
  銃弾に穿たれた俺。
  炎に焼かれていく俺。
  物言わぬ死体な―――俺。


  そっくりさん。そんなレベルじゃねぇんだから余計に性質が悪い。
  遺伝子までそっくりそのまま、姿形に声、使う武術まで一緒ときやがる。
  正直な所、鏡合わせの自分を見ているようで気味が悪かった。

  それでも俺は『俺』。それが分かったから、今ここに立てているのかもしれない。
  気分の良いもんじゃなかったけどな、やっぱり。



  唯一無二の俺はここに居る。
  それが全てだ。
 

146 名前:名無し客:2005/10/19(水) 04:22:04

その炎って、格闘以外に日常生活での便利な使い道はありますか?

147 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/10/19(水) 04:57:58


>>142

  「ほう……それが何時名言になったと言うのだ? 少なくとも俺は、そんな物を名言
 だと認める事が出来ない訳だが。
  万人が名言と感じたとしても、俺が名言と感じていなければ、それは名言ではない
 ……と言った所で無意味か」

  それにしても下らぬ言葉だ。実感など出来よう筈も無い。
  俺は今の今まで『喧嘩』などした事が無いのだから。

  「まあ、まったく考える意義を見出せぬが、それでも敢えて考えてみるとすればだな、
 喧嘩ならば可愛い物。そう捉えていたのだろう。

  その言葉が何時生まれたのか、どんな背景で生まれたのか、そんな物は一切知ら
 んが度々耳にする言葉だ。それならば随分昔からあった言葉と考えても良いだろう。
 それこそ、戦国の時代、血で血を洗っていた、今では歴史書の語る言葉でしか知る事
 の出来ない過去に生まれた言葉だと仮定する。

  そんな時代の喧嘩だ。殺し合いと言う凄惨な奪い合いに比べれば可愛い物だと思わ
 んか? 奪う事も無い。重傷を負ったとしても命に損傷のない範囲だ。
  死なないだけで人は―――生きているだけで人は幸せだと考えるのだろう?

  ならば死なない喧嘩など可愛い物。
  命の遣り取り、殺し合いでなければ、な」

  俺は今まで喧嘩などした事が無い。傍から見れば喧嘩に見えるのかもしれないが、俺
 の中で戦うという事は即ち、殺し合いを指し示す。
  屑を殴り倒す。屑を殺す。そんな物は戦うなどとは言わない。肩に付いた埃を払う動作。
 それと何ら変わりない、普通の出来事だ。

  喧嘩で済めば良かった。殺し合いなどには興じたくはなかった。
  これらは素直な本心とは言えない。
  分かっている。


  心の奥底では殺し合いに興じている瞬間に悦楽を感じている事を。
  奴の悲鳴を耳に捕らえれば、嘗て無い程に興奮を覚える事を。
  奴との殺し合いに興じる時だけは、下らない何かに悩ませられる事も無いという事を。


  まったく、如何かしている。
  こんな下らない事に思いを馳せ、暴力を振るう事を正当化しようとするなどとは。

  暴力は憎むべき対象。奴は殺すべき対象。

  俺には、これだけがあれば充分だ。
  そんな言葉など知った事ではない。
 

148 名前:名無し客:2005/10/19(水) 05:05:28

庵んのバンドは、どんなジャンルの曲を演奏しているの?

149 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/10/19(水) 05:16:40


  「あー、そうだな。俺個人としてもその言葉には思う事がある訳だ。
  『喧嘩するほど仲が良い』これってさ、当たってると思うぜ?

  ホラ、俺は格闘大会になんかに出てるだろ? グローブも無い、凶器の使用も
 認められるし、関節技に果ては超能力やら気なんてのも使う相手ばっかりが居
 る大会、KOFに。

  そんな大会はさ、見世物になったりする事もあるけど、結局は命知らずな喧嘩
 自慢が、ただ強さを自慢しに来るだけなんじゃねぇかと思うんだよな。この解釈は
 この解釈で当たってると思うぜ?
  だってよ、何でもアリなんだから。

  でだな、俺が初めてKOFに参加する前に、実は別の格闘大会に出てるんだよ。
 全日本異種格闘技大会だったかな、名前は。
  そこでも勿論俺が優勝したんだけど、二位が紅丸、三位が大門。どっちも今や
 チームメイトとしてお馴染の二人だ。

  ここでしか接点ないんだよ。意外だろ?
  今じゃチーム組んだり、飯食いに行ったりする仲なのに、この大会があるまでお互
 いに顔も、名前も知らなかったんだぜ?

  それを結びつけたのが、結局喧嘩なんだよ。如何取り繕ったってそれは変わらない。
 あそこも大概なんでもアリだったからな。シンドイって事はなかったけど、紅丸と大門
 だけは別格だったぜ。なんせ久しぶりに炎を使わないと倒せないと思った相手なんだ
 からよ。アイツらにはその辺りを誇って欲しいもんだ。

  それじゃあそろそろ本題に戻ってだな、実感はした事があるってのが一つ目の答えだ。
  二つ目の、何を見て思いついたかだけどな、やっぱりこうやって知り合った仲の奴等が
 言い始めたんじゃねぇの? 実体験を伴った言葉に勝る物はないからな。

  仲違いをしても喧嘩をすれば元通り、それが漢ってもんだろ?」

  長々と話したけど、喧嘩の一つも出来やしない友人。それは果たして本当に友人なん
 だろうか、何て考えたりもする。
  何も殴り合えって訳じゃない。腹を割って言いたい事をはっきりと言う。本音と本音の
 ぶつかり合い。それが出来て初めて友人なんじゃないだろうか。

  まっ、俺の場合は結局殴り合って、どっちも力尽きて、なんで喧嘩したのかも忘れちまう、
 ってのが普段のパターンになってるんだけどな。
  分かりやすくて良いだろ? 気取ってる紅丸も、寡黙な大門も、一皮向けば実力を試したい
 だけの喧嘩好きなんだから。

  喧嘩になるのは紅丸だけだけどな。
 

150 名前:名無し客:2005/10/19(水) 21:46:59

ちちくりあってください

151 名前:八神 庵&草薙 京 ◆Iori/GPRcE :2005/10/20(木) 02:28:26


>>143

  冗句にしては笑えんな。        「冗談だろ?」

  ほう……珍しく貴様と意見が合致した気がするな。明日は世界が滅びを迎える時
 なのかもしれんが、そうなる前にケリを着けねばならんと思うのだが。どうせ明日死
 ぬのならば、今死んだ所で何も変わらんだろう?

  「お前の冗談はコイツが行った言葉以上に笑えもしねぇな。しかも何時もいつも同じ
 文句ってお前、ボギャブラリーが少ないって事が露呈しちまってるぜ? 大体な、お前
 になんか殺されてやるかってんだ。どれだけ油断しててもな。
  それよりも、まさか受けるなんて言いやしねぇだろうな? 俺はお前の作る曲に歌詞な
 んて書きたくねぇからよ」

  フン……言われるまでも無く受ける気など更々無い。貴様の書いた詩で俺の曲が汚さ
 れる事実に耐え切れる筈が無かろう。いくら俺の器が大きいと言っても、小学生以下の
 駄文を見せ付けられるのは敵わん。金を払ってでも書いてくれるな。

  「ケッ……お前に俺のあり溢れる才能が分かって堪るかってんだ。それよりも何だよ、
 小学生以下の駄文? ハッ……見た事もねぇクセにデケェ口叩いて大丈夫なのか?
 お前が書いた詩なんかよりも絶対に良い物が出来上がるに決まってるだろうが。何年
 書いてきたと思ってるんだか」

  貴様の詩の出来が良い事を誰が判断すると言う? 見せるのがそれ程好きではない、
 などと何処かで言っていたではないか。ならば、それは見るものが居ない詩だ。見る者
 が居なければ、客観的な判断は下される事が無い。俺の曲とは違って、な。

  「チッ……要らねぇ所で頭回してるんじゃねぇよ。ハイハイ、確かに俺の詩は不出来か
 もしれませんよ、これで良いのか?」

  分かれば良い。ただ―――此処からは独り言だ。独り言故に貴様に向けたものでは
 ない。そこの所はきっちりと理解しておけ。

  もしかすると、もしかするとだ、誰かの秘めた詩は誰からも絶賛される可能性も秘めて
 いるのかもしれん。いや、誰からもと言う事は無いだろうが、その誰かなら思い人にでも
 向けて綴っている事が多いのだろう。だからだ、その思い人くらいなら絶賛してくれる可能
 性は大いにある。それならばその詩の出来は良い物だと言えるのではないだろうか。誰か
 が為に向けられた物は、その誰かを喜ばさせる事が出来さえすれば良いのだから。それ
 が、趣味の世界の在り方だろうからな。

  「熱でもあるんじゃねぇのかと疑いたいんだが。それとも悪い物でも喰ったのか? しっか
 しまあ、その誰かは少しだけ感銘を受けてるのかも知れねぇなぁ」

  さて、それでは始めに戻って貴様と意見が合致してしまった件についてだが……

  「戻るな。良い話で終わらせろよ」
 

152 名前:名無し客:2005/10/21(金) 22:28:58

将来は格闘で御飯食べていく予定ですか?
それだとテリーさんみたいなぷー太郎生活か、サカザキさん家のような清貧生活が待っていそうですけど。

ーーそーいえば、草薙さん家は弟子を取ってるわけでもないのに、どうやって生活費稼いでいるんですかね。

153 名前:双葉ほたる:2005/10/23(日) 20:47:16

お兄ちゃーん!!
もうあなたがお兄ちゃんでいいよ。歩くの疲れたし。

154 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/10/23(日) 21:54:00


>>146

  「無い。少なくともこの俺の炎にはな」

  何かに火を点ける時に役に立つ事はあるのかもしれない。ライターの代わりに
 煙草に火を点けることは稀にあるのだから。

  だが――

  「この炎は血と憎悪の塊でな。まともに使えた物ではない。
  煙草に火を点ければ紫煙は血の芳香を漂わせ、落ち葉を焼けば辺りは血臭に
 包まれる。無論、その中で何かを焼いたとしても変わる事は無い。

  業深き炎。
  それが、これだ」

  そんな物を日常生活に使うなど馬鹿げている。
  苛立ちを募らせる事にしかならず、付け加えるならばこの炎は命を削る。

  比喩でも何でも無い。
  読んで字の如く、命を削る。

  それが数秒の事なのか、数分なのか、数時間なのか。
  分かりもしないが着実に、死神の鎌は俺の首を落としに掛かる。
  後戻りは出来はしない。既に皮一枚で繋がっている命だ。

  このまま進み続ければ、このまま紫炎を振るい続ければ、後数年と持たずして俺は
 死ぬのだろう。これは変えられ無い事実だ。今更振るうのを止めた所で多少延命され
 るだけに過ぎない。

  そんな醜い生に縋るのであれば燃え尽きるだけ。
  それがこの紫炎を振るい続けている理由。
  奴の死を道連れに、ただただ進むだけだ。


  ―――例えそれが、馬鹿だと罵られ様とも。


  俺は死に向かう事で悦楽を感じるとしよう。
  まともな道など、歩めないのだから。
 

155 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/10/23(日) 22:17:25


  「そう、だなぁ……野宿の役には立ってくれるぜ?
  つってもまあ、山篭りの時に使うくらいだけどな」

  度々何の目的もないまま、自由気侭に身一つで旅に出掛ける事もある俺だ。そう言う
 意味じゃこの力を便利に思っている。便利に思わないはずがない。
  冬場は暖を取る為に火を点けられるんだから、生き死にに繋がって来るんだし。

  山に篭れば獣除けや飯の時にも役に立つ。
  焼く、煮る、蒸す。なんでも出来る炎の力は便利だ。その気になれば中華だって作れ
 ちまうだろう。技術の問題を考えなければ。

  それでも、本当の意味での日常生活なら、役に立つ事なんてないのかもしれない。
  何かを燃やすなんて機会も滅多にない。
  落ち葉を拾い集めて燃やす。精々がこれくらいなんだから。つーか、これすらも五月蝿
 く言われてたような気もするな。落ち葉の序でに親父を燃やしたのが悪かったんだろうか。

  日常生活。
  有り触れた日常なら、炎なんて要らないだろう。

  「日常生活で炎を使う機会に恵まれる方が珍しいと思うんだけど、それは俺の思い過ご
 しなのか? 使わないだろ。殆どさ。
  だからこんな力は普通の生活を送ってる奴には不必要なもんだろうぜ?

  必要があるとするなら、俺みたいに普通の生活じゃ満足出来ない奴だけさ。
  熱く燃えるような喧嘩をしたいとか、何かに雁字搦めにされちまってるから、とかよ」

  ぶっちゃけ、熱くさせてくれる相手がいないと炎を使う機会なんて本当に無かっただろう。
  炎を使わなくても充分戦える。それだけの実力が草薙流古武術にはあるし、俺の力も下
 手な奴等に劣る事だってないんだから。

  使えて幸せなのか、不幸せなんてのは分かりはしない。
  こんな力のお陰で神様とやり合ったり、変な組織に狙われたのは不幸なのかもしれない。
  けど、この力のお陰で知り合えた連中も居る。
  幸か不幸か、こんなのは死ぬ時にでも考えれば良いか。


  まだまだ先は長い。
  この力で何が出来るのか、何をすれば良いのか。
  そんなのはその内に、見つかるんだろう。
 

156 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/10/24(月) 01:01:31


  ……何で俺がこんな役回りなのかさっぱりなんだけど、今夜のゲストは八神庵さん
 だそうですよ。ハクシュー。

  「屑が。もう少しやる気を見せろ」

  お前が俺の気力をゴッソリ持って行っていると言う事実に気付いてくれないか? 頼む
 から俺の眼に映らないでくれ。その魚の腐ったような目で見られるとその……なんだ、
 困るというより吐き気がしてくるから。

  「奇遇だな。俺も貴様の焦点の合っていない目で見られると偏頭痛が起こり貴様を殺
 したくなって仕方が無い。そろそろ俺の視界から消えてくれないだろうか。
  まあ、物言わぬ屍と姿を変えるなら赦してやらんでも無いがな」

  精神病院にそろそろ通い詰めて、お医者様に匙を投げられ来やがってくれませんか?
 お前の妄想を延々と聞かされ続けるこっちの身にもなれってんだよ、いい加減飽き飽き
 してきたから、八神星に帰ってくれ。

  「何だ? 貴様はそんな星があると信じているのか? 万年夏休み症候群と留年病の併
 発だけでも難儀だと言うのに、思考回路にまで欠陥が見られるとはな。つくづく救えん。
 やはり貴様は早々に死んで、灰すらこの地に残してはならんと思う。灰が残ってしまえば
 誰かがそれを吸い込んでしまう恐れや、土壌の腐敗に繋がってしまうからな」

  冗談を間に受けるなこの蜥蜴から人類への進化過程(思考能力は脱落中)を辿る人間
 に成りたいのか成りたくないのか分からない物体。お前が死んだ方が何かと健やかな世
 界が作れると思うんだ。主に俺の生きる世界が平穏に満たされる。それはとても良い事だ
 と思うんだけどな。

  「人間の皮を被った猿以下の言葉に耳を傾けてやっているだけでも有り難く思って欲しい
 のだがな。
  それよりも先に進めろ。本当に貴様を殺してしまいかねん」

  ハイハイ。言われなくても、俺がお前と居る事に絶えられないから、先に進めちまうさ。
  んじゃなんだ、そこに居る……ホラ、お前だ。>>148の札持ったお前。質問しろ。エッ!?
 俺が読むのか? 冗談キツイぜ……
  まぁ仕方ねぇ。『庵んのバンドは、どんなジャンルの曲を演奏しているの?』だそうだ。
  さっさと答えてくれよ? 庵ん?

  「ロックだ」

  オイオイ、お客さんはそれだけじゃ満足してくれないぜ?

  「ハードロック。ヘヴィ・メタル。スラッシュ・メタル。デス・メタル・ハードコア。ミクスチャー。
  ふむ。大体この程度だろう。掛け持ちが多いと如何にも雑多になってしまうものだな」

  節操無しと言うかなんと言うか。俺は詳しくないから知らないけどよ。
  んで、他には? バンド以外の事もしてんだろ? 台本に書いてあるけどよ。

  「稀にジャズのセッションや、バーでの弾き語りもする。
  此方は所詮生き抜き程度の事だ。そこまで熱を上げている訳でも無い。
  それとは別にスタジオミュージシャンとして雇われる事もあるな。滅多に無いが」

  自慢話はそこまでにしとけ。聞くのがダリィから。

  「流石、自慢の一つも出来ぬ男の言う事は違う」

  誰かの言葉は聞こえなかった事にして、次だ次。

  「ふむ。聞こえたか。声を音としてしか認識出来無いと思っていたのだが」

  ……次だ。
 

157 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/10/24(月) 01:14:33


  引き続き人類とお友達になりたい八神星から来てくれた、人類への進化途中の爬虫類と
 お届けしようと思うのですが……テメェのやる気の無さは一種の病気だな。

  「何、貴様の病に比べれば如何と言う事も無いと思うのだがな」

  流石に俺は爬虫類の言葉は分からないぜ。

  「猿の声が理解出来ると思うのか?」

  ったく、これじゃあ何時まで経っても終われねェから次だ次!
  そこの>>150の札持った奴……ちょっと降りて来い。
  良いから、遠慮しなくて良いって。握手してやるから。それともハグしてやろうか?

  「何を言っている貴さ―――ああ、俺からもご足労願うとしよう。
  さっさと降りて来い。如何なるかが分かっていては辛いかもしれんが……身から出た錆だ。
 その鈍になってしまった心根を叩き潰してやるから早々に降りてくるのだな」

  恐ろしい事に意見が一致してしまった訳だが、ここでお前のやる気を殺いでも仕方ないよな。

  「フン……貴様のやる気を殺いでも仕方ない。ここは手を貸してやろう」

  大体なぁ、男と男が乳繰り合う姿を見て何が楽しい?

  「しかもコイツと俺だと? 冗談にしては不出来すぎるな」

  お灸は温度が高ければ高い方が効くらしいんだ。それなら俺の拳は最適だよな?

  「妖刀を鍛え上げるには何にも勝る執念が大事なようだ。血と肉を捧げ、それに執念を加味し、
 熱く滾る炎で鍛え上げる。この紫炎で一本打って見るのも悪くない」

  さあ―――無料で見せてやるよ。
  草薙の拳を。

  「せめて悔恨無く散るが良い―――遊びの時間は終わったのだから」


  【阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられた為、放送は今回で打ち切られました。】
 

158 名前:名無し客:2005/10/24(月) 21:48:46

2人が仲悪いのは、いつ頃からのことですか?

159 名前:名無し客:2005/10/24(月) 23:55:17

ハードゲイについて語って下さい。

160 名前:名無し客:2005/10/27(木) 20:40:04

もしかしてアッシュに倒されました?

161 名前:名無し客:2005/11/01(火) 03:40:34

ジャイ庵・リサイタル

162 名前:名無し客:2005/11/14(月) 01:53:27

久々に旅から帰還した友人・仲間・悪友・ライバル・仲良く喧嘩する相手に、
掛ける言葉といえば、何でしょうか?

163 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/12/15(木) 04:01:56


  月が昇りきるには早いようで、夕陽の朱が微かに差す空を見上げ思う。


  宿命。
  運命。
  死んだアイツ。


  今までは下らないと握り潰してきた。これからもきっと、下らないと握り潰していく
だろう。その事に何らかの違和感を抱いたとしても、そうする事で不幸になるとしても、
そうする事で死ぬとしても、変わらない。だから今回の事も、あの小僧に頼まれたから
ではなく、神楽の負傷が関係する訳でもなく、アイツの事にも意味は無く、血に起因す
る宿命や運命も関係ない。アッシュ・クリムゾンとやらの掌で踊る訳でもなく、前大会
の最後に現れた屑等の思惑に乗る訳でもない。

  俺の余興の序でに、俺が大会に興味を持った。

  それだけの事。
  下らないと思っては居たが、今回だけは否定する事もしない。後顧の憂いを断ち、奴
 を殺す事に集中する為に出るまで―――

  「酷い矛盾だ」

  少なくとも、アイツは関係あるのかもしれない。俺が人に左右されるとは思いもしな
 かったが、それはそれだ。取るに足りぬ、非常に些細な、誰にでもあるような事なのだ
 から。

  煙草を取り出し、火を点け、揺れる紫煙を見て思い出す。
  小さな石の前で、殺す意思を発しなかった自分と、出会ってしまった奴の顔、あの小
 僧の必死な嘆願。

  そして―――



  溜息なのか、紫煙を吐き出す為の動作だったのか、自分でも定かではないが、紫煙の
 行方は微かな朱の色と月明かりが共存する空へと昇る。

  ゆらゆらと。
  ふらふらと。

  今は誰も気付いていないであろう、俺の状態を表すかのように。
  封は解かれ堰も破壊された。決壊は随分前から終わりに向けて疾走を開始している。
  紫炎が途切れぬ内に、急ぐとしよう。


  全てを終わらせる為に。
 

164 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/12/15(木) 04:04:33


  単車に跨りアイドリングが順調な事を確かめつつ、さっきのやりとりを思い出す。
  死ねだの殺すだの言ってた割に、殺気がねぇのは慣れないもんだ。殺気の塊
 みたいな奴だから余計にそう思うのかもしれない。それとも、非人道的なアイツ
 でもそれなりに人としての感情があるのかもしれない。……残ってると良いよなぁ。

  そんな馬鹿な事は頭の片隅に押しやって(対象の俺はちっとも馬鹿な事とも思
 えないが)、片付けなきゃならない物の整理くらいはしとくべきだろう。

  神楽の事。
  八神の事。
  アッシュ・クリムゾンの事。
  変な奴等の事。

  あれ? こうやって考えると案外少ないのかもしれない。少なくとも上二つは、簡
 単に済ませちまうから所謂朝飯前の出来事だ。
  神楽は『力』を失ったけど、命に何ら別状はねぇ。つーか、『力』なんて無い方が
 アイツの為なんじゃねぇかとも思う。肩肘張って、疲れそうだからなぁ……だから
 あんなにパッド―――関係ねぇか。ねぇな。うん。
  八神は……まぁアイツの事だから心配するまでもねぇよな。気懸かりもあるっちゃ
 あるが、前みたいに巧く行くだろう。これが楽観だと思われたとしても、アイツがそ
 の程度で駄目になるってなら俺が『祓って』やるだけだ。

  残り二つ。これはKOFに出れば解決出来る、だろう。
  今日の話の内容じゃ、やる気は充分とは言わないまでもアイツは真吾の誘いに
 恐らく乗るだろう。それまでに真吾が何回死にそうな目に合うのかと言う予想は置
 いとくとして。……引き際だけは考えとけよ。マジで死んでも知らねぇからな。昼飯
 のパンが無くなるのはとっても辛いから。
  まぁそれは兎も角、面子が揃えば後は勝ち進むだけで、何の問題も無く優勝出
 来るだろうし(真吾なんて不確定要素が合ったとしても)、その中でアイツ―――アッ
 シュと当たる事もあるだろう。もし当たらなかったとしても、前回の捨て台詞から考
 えれば俺達の前に現れる事なんて簡単に推測出来る。あの変な奴等にしても同じ。
 だったら、叩きのめして話を聞けばそれで万事解決ってもんだ。

  さあ、そうと決まればこんな場所からは一刻も早く立ち去りたい。この場所が嫌いっ
 て訳でもねぇが好きって訳でもねぇし、単車の暖気だってもう終わっちまったんだし
 居る理由がねぇ。
  クラッチを繋いで、エンジン音の変化に心地良さを感じながら走り出す。風は生温く
 て汗ばんだ肌には気持ち悪いだけなんだがコレが単車の醍醐味なんだから否定する
 のも酷だろう。

  一時停止でふとかなり暗くなった空を見上げれば、月と夕陽が僅かに共存中。まる
 で、なんて考えながら再び走り出す。
  さてさて、暇潰しじゃない暇潰し。今年は如何転がるんだろう。

  「……行くぜ」

  燃やし尽くしてやる。
  面白くない企みなんてのは。
 

165 名前:矢吹 真吾 ◆Fire/8X51U :2005/12/15(木) 04:07:55


  えー、皆さんこんにちわ。矢吹真吾、絶賛待ちぼうけ中なんですが待ち人が着てくれ
 るのか物凄く不安で仕方ありませんがオレは待つ事しか出来ないんで何とか頑張って
 滅茶苦茶焦りながらも待ってます。実は試合開始五分前でオーダーも決めちゃってリー
 ダー不在なんですけど如何したら良いッスか? あの人は携帯とか直ぐに忘れちゃう人
 なんで電話かけても繋がるかは五分、って言うかぶっちゃけ繋がりませんでした。やば
 くないッスか? そろそろ五分切っちゃう模様なんですけど。あの人は来てくれると信じて
 ますから不安はありません。御免なさい。嘘です。滅茶苦茶不安っス。そんな事より俺
 は誰に向かって話しかけてるんですかね?

  「……挙動不審者だぞ、お前」
  「アッ、やっときてくれたんスね。草薙さん。いやー、オレ心配しましたよ。もしかすると
 来てくれないんじゃないかと思って……」

  極自然体に現れてくれた待ち人は、黒のライダースジャケットに白いシャツ。パンツは
 ジーンズでビシッと決めた……簡単に言うと前大会のような服装で現れてくれた草薙京
 さんでした。個人的に学ラン着てくれないのかなぁとか思いますが、それを言うと途端に
 機嫌が悪くなるので困った物ッス。そりゃ二十歳にもなって高校生活送ってるのは嫌で
 しょうけど……

  「あー、悪ぃ悪ぃ。それより八神は? お前の目論見通りだと、居るんだろ?」
  「……八神さんなら向うで、怒ってるのか怒ってないのか解からない顔で立ってますよ。
 確か十分くらい前には到着してたと思うッス。でも怖いんで話し掛け辛いんスよね」

  実際八神さんは十五分前くらいには現れてくれました。何時も通りの赤い髪、赤いパン
 ツにいつものあの何とも形容し難い丈の短い背中に月の入ったジャケットと(短ラン?)、
 裾の長いシャツ姿で。第一声が「出番まで話し掛けるな」だったんでそっとして……まあ
 怖かったからなんスけど話し掛けてませんでした。意外に律儀な人だと言う事が解かっ
 て真吾驚きです。本人の前では絶対に言えないでしょうけど。

  「ああ、そう。じゃあ真吾、朝飯のパンは?」
  「はいここに。朝なんでフレンチトーストにしときました。飲み物は……って、悠長にご
 飯食べてる場合じゃないと思うんスけど……草薙さんが一番遅かったんですから」
  「なんだよ」その声と共に眉を顰める草薙さん。……怖いッス。「弟子が師匠に意見す
 んじゃねぇ。それにどうせ、俺の順番は最後なんだろ? 飯食う時間くらいあるって」

  KOFでもここまで気負う事をしないのはこの人だけ……いいえ、オレ以外の人は皆こう
 なのかと思うとちょっとだけ悲しくなるんでこの人だけと勝手に決め付ける事にします。だっ
 て、遅刻寸前なんですし。
  そうこうしてる内に係りの人が呼びに来て、華々しくKOF一回戦がスタートです。
 

166 名前:矢吹 真吾 ◆Fire/8X51U :2005/12/15(木) 04:09:30


  ちょっとここで裏事情。皆さんはKOFをゲームセンターなどでプレイされてるとは思
 いますがぶっちゃけアレ、ハイライトみたいな物なんス。実際ですね、アレだけのチー
 ム数で世界的規模の格闘大会なんて開いてる訳がありません。昔々……94とか95
 年の時はあれだけの人数しか居なかったっと言うのが草薙さん情報ですけど、96年
 以降は物凄い勢いで参加者が増えました。神楽さん主催の年から変わったと言って
 も良いんスけど、もう凄い人です。やっぱお金目当ての人も多いんスよねー、大抵弱
 い人(俺の腕から見てもって事です。草薙さんからすると酷い事になってるらしいッス
 よ?)なんすけどね、そう言う人って。

  まあですね、何が言いたいかと言えば一回戦目はそう言う人達だって事ッス。オレが
 一番手を飾れれば良かったんスけど、八神さんに一番手はお願いする事になってます。
 「貴様は指を咥えて見ていろ」との事でして……やっぱあの人暴力好きなんスよ、絶対。
 嫌よ嫌よも好きの内ってよく言いますよね? ね?
 

167 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/12/15(木) 04:09:59


  俺が俺である内に、全てを終える。
  時間は無いと考えても良いだろう。
  世界規模の格闘大会。
  裏を返せばそれは―――


  生贄を捧げる儀式。


  オロチ復活への加速。
  血で血を洗うが故の疾走。
  肉で肉を潰すが故の暴走。
  骨を骨で壊すが故の迷走。

  故に、時間は、無い。
  だから早々に終わらせる。
  その手段が暴力であろうとも。


  今現在潰すべき目標は三体。
  烏合の衆より劣る、蛆虫以下の下賎な存在。
  叩き潰すのは容易。

  「すぐ楽にしてやる……」

  宣言は死への祝詞。
  悲鳴はそれに彩りを与え、詰まらない戯曲の出来上がり。

  終わりは―――近い。
 

168 名前:矢吹 真吾 ◆Fire/8X51U :2005/12/15(木) 04:12:46


  本当にあっという間に終わってしまって、解説やら実況の人が口を挟む前に終わって
 しまって、それでも草薙さんは当然見たいな顔をして、八神さん本人は虚ろな目で、一
 回戦が終わっちゃいました。正直俺、この状況に存在する意味あります?無いんじゃな
 いかと物凄く不安になってきました。って言うか、このチーム名なんスか? 『京&庵チー
 ム』って。俺はオマケですか? 確かにオマケ集めるのは好きッスけど自分までオマケに
 なるとは思いもしなかったッス。しかも誰もツッコミいれてくれないし! 真吾哀しいッス!
 誰かオレに救いの手を! ……虚しいッス。

  それはさて置き今現在は控え室で二回戦を待ってます。説明しますと、一日二試合組
 まれてました、以上。インターバルは充分あるんで体力回復は完全に出来ますから、次
 の試合が辛いなんて事は無いッス。ぶっちゃけると一回戦は八神さんが頑張りすぎちゃっ
 たんで疲れも何も無いんスけどね。
  だからモニターで中継してる試合とか見てます。割合緊張も無く煎餅片手に(十時のお
 やつッス)。サイコソルジャーチームのちっちゃな女の子があれで高校生だった事に驚き
 を感じて見たり、エージェントチームのヴァネッサさんにラモンさんは久しぶりに見るなー
 とか、怒チームは偶にどっちが上官なのか解からなくなるなーとか(ラルフさんとウィップ
 さんの事ッス)、K’さんは少し落ち着いたよなとか、アンチ極限流って実はしっかりとした
 理由を持ってる人如月さんだけなんじゃとか、そんな事を思いつつギスギスした空気の
 中に居ます。お……重いッス。

  無言で戦いが繰り広げられてる感じと言えば解かって貰えますでしょうか? 八神さん
 の圧力も然る事ながら、草薙さんもいつもの三割増しくらいで威圧感倍増中。迂闊に声
 を出そう物なら赤と紫の炎が飛んできそうで……幸せかもと思ったのは皆とオレだけの
 秘密にして置いて下さい。まだ真っ当な道を歩きたいッスから。

  「……あー、キムさんテリーさん、ダックさんの餓狼チームの試合ッスねー。相手チー
 ムはメイ・リーちゃんが道場の門下生と組んだチーム見たいッスねー。いやー気になりま
 せんか? お二人とも」
  「下らん」八神さん。「別に」草薙さん。
  真吾、めげません。
 

169 名前:矢吹 真吾 ◆Fire/8X51U :2005/12/15(木) 04:14:30


  「……でもなんで、メイ・リーちゃんは門下生の人と態々組んだんですかね? 強い
 人と戦って腕を上げたいならキムさんに頼み込んでジョンさんと出ても良いと思うん
 スけど……そっちの方が残る確率も上がっていいと思うんッスよ」
  「……」沈黙の八神さん。どこか呆れてるような?
  「……ハァ」ウワッ、こっちは溜息。「何か拙い事言いました? オレ」

  「……」また沈黙ッスか! 馬鹿にしたような目で見られるのは嫌ですね……
  「馬鹿な弟子取ると苦労するぜ、まったく」不機嫌の王様みたいな声……俺の運命や
 如何に!?
  「えーっと、何だ。確かメイ・リー……あの可愛い顔してキツイ事をズバズバ言う女の子
 が何で独り立ちしたかだったよな?」ええそうッス。可愛いと思うのは草薙さんの好みでしょ
 うけど。「そんなの簡単じゃねぇか。何で解からないかの方が不思議くらいなもんだが……
 結局、師匠を超えたいんじゃねぇか? 確か正義の味方になりたいんだよな」なんでそんな
 に詳しいんッスか? 隠れファンか何かッスか? 「五月蝿ぇなぁ。それよりも解かったのか
 よ?」ええ、まあ。「んじゃ、昼飯な。弁当支給される見たいだから茶だけでも頼むぜ」お茶
 も支給されると……「師匠の言う事は聞いとくべきだと思うけどなぁ?」……解かりました。
 八神さんは何かいります? 「……煙草を。金はくれてやる」銘柄は何スか? 「コレと同じ
 ものを」

  時々思うんス。何でこんなにパシリ根性が身についてるんだろうって。
 

170 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/12/15(木) 04:16:46


  「オイ、何でそんなに不機嫌なんだよ。お前」
  「暴力を振るって機嫌が良くなるとでも?」
  「そうじゃなくってだ。何でそんなに糞も面白くねぇ顔してるかって事。いつもの不
 機嫌面より笑えねぇぜ?」
  「……下らん。俺は何時も通りだ」
  「はいはい」

  ああ、こいつにまともな解答を期待する俺が間違ってたんだな。どうかしてたぜ、
 まったく。つーか、こいつと居るとペースが狂うんだよな。こっちまで不機嫌になっ
 ちまうのはその所為だ。別に俺の活躍の場が取られたから不機嫌になっただとか
 そんな事はないと思う。思いたい。暇で仕方なかったのはあるけど……まあ最近
 のKOFは大抵こんなもんか。弱い一盛り幾らの雑魚が増え過ぎなんだよ……量
 より質だろ、質。

  それにしても、キムも容赦ねぇよな。実の弟子相手だろ。忘れてんのか? まさか
 なぁ。普段は正義正義五月蝿い事を除けば良い奴なんだからそんな事がある訳ねぇ、
 よな。な? ……考えない事にしよう。去年ちょっと話した時の不安はなかった事にし
 てぇから。

  それにしても……テリーにキム、ダック? 前の二人は常連で戦い方も何と無く解
 かってきてるが……ダックっつーの? コイツの動きはなんか、踊ってるみたいだなぁ。
 格好から見てそっちの方が得意そうな感じだけど(今更このセンスは如何かと思うが、
 向うの奴等は着たい物を着る主義らしいからノーコメント)、如何して中々面白そうな相
 手だね。実力的に一歩劣る感はあっても、ペースに巻き込まれちまえば……楽勝とは
 言い難いよなぁ。このレベルまで来れば勝つなんてのは早々容易くねぇけど。

  んで、正義のヒーローの方は……明らかに役不足だな。一人の健闘で勝ち抜けるほ
 ど今回のルールは甘くねぇ。三位一体とは言わないが、一人一人の実力が高いに越し
 た事はねぇし、チームワークなんてのも必要になってくる。このチームは後者が充分で
 も前者は明らかに欠けてると言っても良いだろう。ワンマンチームなんてのは聞こえは
 良いが、所詮一人の看板しか居ないって事だし。仲が良いのは良い事だろうけど、もう
 ちょっと実力者選ぶべきじゃねぇかなぁ。ショートの女の子は好きだってのに……オフレ
 コな?

  「貴様……そこの灰皿を寄越せ」
  「ん」

  煙草の煙が漂い過ぎてると思うのは気の所為か?

  「お前、吸い過ぎじゃねぇの?」
  「フン……ストレスの捌け口だ。仕方あるまい」
  「へぇ。俺はてっきり誰か殴ってストレス発散だと思ってたぜ」
  「貴様が対象ならば、それも大いにありえるな」

  会話はここで終了。これ以上話す意味がねぇ。

  煙が揺れる。
  微かに紫を帯びたそれは、何事も無かったように消えていく。

  「戻ったッス。ウワッ! 煙草臭! 窓開けましょう、窓」

  ―――感傷なんて似合わねぇよな。こいつ見てると特に思うぜ。
 

171 名前:矢吹 真吾 ◆Fire/8X51U :2005/12/15(木) 04:19:16


  皆で仲良くお昼ご飯(幕の内弁当)―――なんて、幻想。何てやってみるッスけど、相
 変わらず空気は重いままッス。それでも少し和らいだかな?微妙な具合ッスけど、居辛
 いって事はなくなったような気がします。相変わらず八神さんは無言のままで(それでも
 ご飯を食べてる事に驚きッス)、草薙さんも無言のままなんスけどね。テレビは相変わら
 ず試合中継を続けてくれてます。今は極限流チームが戦ってますけど、今年はロバート
 さんが居ないんスね。代わりにキングさんが入ってますけど……それで極限流チーム
 を名乗るのはどうかなって、オレとしては疑問が残る所ではあります。結構好きなんスよ
 ねー、ロバートさん。気さくに話し掛けてくれたりしますし。もっとも極限流の人には
 全て同じ事が言えるんですが。

  しかし毎度毎度貧乏キャラの地位を確立していくこの人達ですが、道場とかそれなり
 に流行ってるんじゃないんスかね? 少なくとも草薙さんの道場よりは儲かってると思う
 んスけど……

  「そう言えば、お二人ともこれからどうやって生活して行くんスか? 格闘家って柄じゃ
 ない八神さんは特に」
  「どうせ先も長くない。生きて後数年であれば、このまま気侭に生きていくだけだ。ベー
 スを弾き、その日を暮らせる金があれば良い」
  「はぁ……そうッスか。草薙さんは?」
  「俺? 家でも継いで気侭に生きてるんじゃねぇか? 少なくとも下らない因縁は俺の代
 で解消しちまうだろうし、何の気がねもする事なくな」
  「でも草薙さん……収入はどうするんです? 門下生取らなきゃお金は稼げないですし」
  「アッ」アッって……「そこまでは考えてなかったなぁ」考えてないんスか!
  「でもま、何とかなるだろ。親父も働いてねぇけどお袋の収入で喰って行けてるんだし」
  「ユキさんのヒモッスか?」
  「……アッ」……この人、本当に馬鹿なんじゃ……「イヤイヤイヤ、俺は親父と違って働
 くさ。デカイ格闘大会―――K-1でもプライドでも良いから、それに出て優勝しちまえば良
 いんだ。楽勝楽勝。草薙流と俺はそんじょそこらの格闘技やってる連中とは違うからよ」
  「なんか取って付けたような理由ッスねェ……」
  「五月蝿ぇなぁ。良いだろ。俺がこれから如何生活していくかは、少なくとも高校卒業す
 るまで時間もあるんだし、その中で考えれば上等だろ? それに俺の腕と持って生まれた
 容姿があればテレビに出るなりして余裕で喰ってけるって」
  「阿呆の考え休むに似たり、取らぬ狸の皮算用、序でに言えば馬鹿は死んでも直らな
 い、と言った所だな」
  「アァッ? それどれも意味違うじゃねぇか」ツッコム所はそこッスか……間違えたのかな、
 オレ。
  「ほう……貴様、意味が解かるのか?」
  「解かるに決まってんだろ」
  「あまり嘘を吐く物では無い」
  「お前の脳構造よりはしっかりとした出来だと思うがね」
  「貴様に脳が存在した事が驚きだ」
 

172 名前:矢吹 真吾 ◆Fire/8X51U :2005/12/15(木) 04:21:38


  駄目だこの二人……草薙さんの馬鹿さ加減が八神さんにも伝播して馬鹿スパイラルが!
 もしかしてオレもその一員? ウワァ……最悪かもしれないッス。誰かに代わって欲しいと
 は思わないッスけど。やっぱ草薙さんの一番弟子であるオレがチームの一員じゃなきゃ、
 この二人を何とか纏めたオレがチームの一員でなきゃ駄目だと思うッスから。

  「お前の罵詈雑言は何時も似たり寄ったりだよな。ボギャブラリー少ないんじゃねぇ
 の」
  「貴様を見て思いつく言葉がこれだけしかないだけだ。当然の帰結だな」
  「ああ、ああ。そうですか。お前の顔見て思いつく言葉もたかが知れてるぜ」
  「意外だな。思いつく言葉があったとは」

  イヤァ……やっぱ誰か代わってくれないッスかね? しかしなんでこんなに仲が悪い
 のかとちょっとだけ考えてみる事に。
  草薙さんの方は命を付け狙われてるからってのは簡単に解かるし、八神さんの方にし
 てもそれだけ嫌いなんだなってのは解かります。でも……何時からこうなっちゃったん
 スかね? 八神さんが初出場した時には既に「草薙、殺す」でしたし。ん? 「草薙、殺す」
 だって? 今は「京、殺す」ッスよね? 変わってないッスか? 非常に小さな違いッスけど。
 でもこれって、如何いう意味なんスかね。丁度良いんで聞いてみましょうか。……罵詈
 雑言が飛び交う中に飛び込むのは嫌ッスけど。

  「あのー、お取り込み中申し訳無いんッスが……なんで、そんなに仲が悪いんスか?」
  「コイツを見ていれば、好悪の感情の中で悪が優先されるのは仕方あるまい」「コイツ
 見てて仲良く出来ると思うか」

  ……意外に息合ってるんじゃ……

  「……そうッスか。それじゃあ、いつごろからそうなっちゃったんです? そんなに昔から
 仲が悪いんですか?」
  「……」「……」
  「いや、お二人とも黙らないで」
  「貴様が語ってやれ」「お前が言ってやれよ」
  「何故俺が」「何で俺が」
  「……」「……」
  「仲、もしかして良いんじゃないッスか?」
  「殺すぞ」「お仕置きが必要か?」
  「……済みませんでした」

  ハァ……難儀ですねぇ。

  「なぁ、真吾。デザート食いてぇな。俺」ハッ? いきなり何を? 「だから、デザート。こう微
 妙に残暑の残る日はアイスとか食うのも乙なもんだろ? だから、な?」な? って……「な?」
  「……解かりました」

  ―――本日二度目。真吾、行きます……
 

173 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/12/15(木) 04:23:36



  「なぁ?」

  下らない、誰かの声。

  「何時からだっけ?」

  真剣に殺意が湧いた。視線を合わせる事なく、問う。

  「殺されたいか、貴様」
  「んな訳ねぇだろ、馬鹿かお前は」
  「それでは何故、そんな事を聞く?」
  「いや、何時からの事だったかと思ってよ。ほら、最初から殺す殺す連呼してたじゃ
 ねぇか。だから、な」

  馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、まさか此処までとは……まあ、他家の風習など知ら
 なくて当然と言うのもあるかもしれんが、こんな馬鹿を延々と憎まされ続けていたと思
 うと言葉も無い。

  「俺の事情を知れとまでは言わんが……餓鬼の頃から『草薙を憎め』と言われ続け
 れば出会った瞬間に殺意も湧く。当然だろう?」
  「当然じゃねぇよ。馬鹿かお前。そんな下らない事で狙われてるのかと思うとゾッとす
 るぜ」
  「今はただ、貴様を殺したいだけだがな。他は如何でも良い」
  「そっちの方が健全……そんな訳あるか! いい加減諦めろ」
  「何時から貴様は、起きたまま夢を見られるようになった?」
  「ハァ……まったく、付き合ってられねぇよ」

  そう。それで良い。
  馴れ合いなど不要。

  片付けねばならぬ事が済めば貴様だ。一片も残さず灰に変え、全てを終わらせる。
  やり場の無い憎悪も、殺意も。この下らぬ血も。全て。

  煙草に火を点ける。何本目か数えるのも飽きたが、徐々にフィルターに付着した何か
 が増えてきている。
  こうしている間にも終わりが近付いてきているのだろう。
  血の活性化は止められない。この儀式が続く限り加速する。この儀式が終わっても、
 元通りになる事は無い。

  封じ、祓うか、死ぬか、か。

  分の悪い賭けだが……勝つしかあるまい。
 

174 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/12/15(木) 04:25:41


  ……まったく、解かる訳ねぇだろうが。出会った途端に殺されそうになる。出会った
 途端に殺そうとしてくる。そんな下らない因縁なんて、俺に、解かって堪るか。
  少なくとも俺はそう言う世界とは縁遠い人間だと思っていた。人が毎日死んで殺さ
 れるなんてのはブラウン管の向うの話でしか無いと思っていたから。毎日の様に…
 …そこまで変質的でもコイツは無いけど、死ぬだとか殺すだとかに関わってきたとし
 てもいまいち実感が湧かない。

  身内で亡くなった奴も居る。死ぬってのが如何言う事もそれなりに、殺すって事が
 如何言う事かもそれなり知ってるつもりだ。つもりでしかないのかもしれないが、俺の
 中では少なくとも真実と言っても良いだろうと思う。こんなのは個人の主観でしか無い
 んだから。
  それでも、解からない事は解からないまま。理解出来ない事は理解出来ないまま。
 ブラウン管の向うはこっち側に来る事も無い。

  俺は誰かを殺したいなんて、そこまで思った事は無い、と思う。ぶん殴って白黒つけ
 たいと思う事は多々合っても、ソイツの存在を消してしまおうと、そいつを誰の記憶から
 も風化させてしまおうなんて事は―――無い。
  でもコイツは、それを簡単に成し遂げちまう。

  あっさりと、慈悲も容赦も無く、殺してしまう。

  育った環境。そんなのは言い訳になら無いと思う。それを理由にして良いのなら、紛
 争地帯の奴等は誰もが誰もを殺す事が出来ちまう。
  理由は何だって良い。

  生きたいからでも、死にたくないからでも、何だって良い。

  綺麗事なのかもしれない。甘っちょろい戯言なのかもしれない。
  それでも、
  人殺しは、
                                         駄目じゃないのか?

  だから俺は、コイツが嫌いなのかもしれない。
  ま、嫌いな理由なんて幾らでもあるんだからその中の一つかもしれないが。
  根暗。爬虫類。蜥蜴。ファッションセンス皆無。偉そうな態度。上から見た発言。等
 等。

  何の因果でこんな奴と組まなくちゃならないんだ―――怨むぜ、ご先祖様。
 

175 名前:矢吹 真吾 ◆Fire/8X51U :2005/12/15(木) 04:27:34


  「戻ったッス……指定なかったんで適当に買ってきましたけど、別に何でも良かったッ
 スよね?」「ああ、溶けてなけりゃ何でも良いぜ。雪見だいふくに限り溶けかけでも可」「何
 スか?その微妙な好みは。アレは溶けてない方が良いですって」「解かってねぇなぁ。こ
 う、なんつーの? ゲル状? まぁ、そんな感じが良いんだよ」「良く解かんないッスねー」
 「試してみろって。マジオススメだからよ」

  そんなこんなで草薙さんにアイスを手渡し(ガリガリ君)、一息ついてます。テレビはまだ
 点けっ放しでライブ映像を届けてくれています。今戦ってるのは……パンフレットによると
 餓狼MOWチームらしいッスけど……グリフォンさんに牙刀さんは前大会の時に会ってま
 すけど、この女の人、ジェニーさんって人は初めてッスよね? 動きが良いんで……って
 言うか、服装ヤバイッス。チラリズム狙いッスか? それとも狙わず天然? 恐るべし、B・
 ジェニー!?

  「そう言えば……この牙刀さんって前はビリーさんに山崎さんと組んでませんでした?」
  「あー、そう言えばそうだったかもな。だから如何した?」
  「いえ……怖い人の集まりが居なくなったのはとっても嬉しい事なんで物凄く嬉しいんで
 すが、なんか似合わなくないッスか? 如何見ても浮いてるって言うか、キャラに合ってな
 いと言うか」
  「組む理由なんて人それぞれだろ? 俺とコレが組んでる時点で、その疑問は捨てて置く
 べきだと思うぜ?」
  「そう言えばそうッスねー。じゃ、今年は山崎さんとかビリーさんは何してるんでしょう?」
  「怖い奴は嫌いなんじゃなかったのかよ?」
  「気になっちゃったんですから仕方ないでしょう?」
  「……山崎ならば、裏路地で賭場を開いていた」
  「はぁ……儲かるんスかね」
  「金に群がる亡者は後を絶えん。盛況な事だろう」
  「ビリーなら、多分、サウスタウンで忙しいんじゃねぇかな。一騒動あったしよ」
  「何か……俺の知らない所で色々あるんすねぇ」
  「お前が知ってる事の方が少ねぇよ、世の中」「貴様が思っているより知っている物事の方
 が少ない」

  ツッコミが致命傷に……次の試合は出られないかもしれないッス……話変えよ。
 

176 名前:矢吹 真吾 ◆Fire/8X51U :2005/12/15(木) 04:29:39


  「……そう言えばさっき、妙な女の子に会いましたよ? 何でもお兄さんを捜してると
 かで」
  「話題の転換が苦しくないか?」
  「そんな事はありません! ないッスから!」
  「ま、それならそれで良いけど……どんな子だよ?」
  「青い髪で、ツインテールって言うんスかね? 二つお下げがあって、なんだろ。中華
 風の服着てる子でしたねぇ」
  「まさか、『お兄ちゃん』じゃなかったか? その兄貴の呼び方」
  「ええ、そうでしたけど知ってるんスか?」
  「知ってるっつーか、なんと言うか、なぁ?」
  「俺に話を振るな。大体時系列から考えてあの小娘がこの場に現れる事は可笑しい
 と言う物。フン……それを言ってしまえば奴等もそうなるか……」
  「八神、そう言うメタな話は止めろ。ただでさえ反感買ってる面があんだから……」
  「いやお二人とも何を話してるかさっぱりなんですが」
  「知らずに済む事は知らないままでいろ」「解からない方が良いぜ?」
  「……そうッスか」

  なんか……やってけそうにないんですが気のせいッスかね? 何か二人とも超越しっ
 ちゃってると言うか悟りの境地に入っちゃってると言うか、同じチャンネルが映ってない
 のかもしれません。強くなるにはこんな次元に辿り着かなくちゃならないんスかねぇ。
 ……だったらオレ、このままでも良いような……いいえ! 絶対に追いついて見せるッス。
 あの日輪に。

  それにしても話し振りからするとお二人ともお知り合いかなんか何スかねぇ。可愛い子
 でしたけど話し通じないのにはちょっと……大分困りました。なんでオレがお兄ちゃん何
 スか? 父さんの隠し子なんて事は絶対にないでしょうから、あったら困りますけどまあ
 髪の色が違うんで絶対有り得ない話なんスけど、アレが電……人悪く言うのは駄目だよ
 な。うん。

  「あの子が所謂電波なのかねぇ」「知るか。だが、まあ……」

  ……この二人は……もう良い大人なのに。
 

177 名前:矢吹 真吾 ◆Fire/8X51U :2005/12/15(木) 04:32:25


  刻一刻と時間は過ぎて、三時のおやつを買いに走らされて一息ついた後もまだ試合は
 続いて、アッシュさん達の試合風景画テレビでは見れてます。カードであんなにザクザク
 斬れるもんなんスねぇとか感心しながらシェンさんの大味な攻撃は相変わらずだなとか
 思ってみたり。よくよく考えると、まったく正反対な人が揃ったチームッスよね。うちもまあ
 似たようなものですがこことは違う印象が……なんだろ、ああ―――仲が、悪いんだ……
  表面的でも繕ってくれれば良いのに。

  「……シュ」
  「何か言いました? 草薙さん」
  「いいや、何も。お前には関係ねぇよ」
  「そッスか」

  緑の炎って気味悪いッスねー。なんか、この人を巧く現してるような気がするッス。なん
 となくですけど。何か裏にありそうでないような。あっても演技なのか素なのか解かんないッ
 ス。これこそ知らなくてもいい事なのかもしれませんけど。

  「アッシュさんってどうやって炎出してるんでしょうね。草薙さんと八神さん、K’さんくらい
 だと思ってましたよ、炎出せる人って」「知るか」即答アリガトウゴザイマス。八神さんは?
 「……」ノーコメントッスか。
  「一回話し聞いてみようかな、オレ。何かきっかけになれば……」「止めとけ」「止めておけ」
  何スかその早いツッコミ。芸人志望ですか?
  「でも……」
  「でもも糞もねぇ。止めろっつってんだよ。聞けねぇなら破門にすっぞ」
  「……はい」

  「でも、怨みでもあるんスか? 前大会で因縁でも? オレ途中で草薙さんの所に負けちゃっ
 たんで最後がどうなったのかしらないんスよね。優勝したのが草薙さんの所だって聞いただ
 けで。神楽さんも教えてくれませんでしたし」
  「……別に、何にもねぇよ。ただちょっと、ちょっとだけむかつく。それだけだ」
  「言い訳にしては見苦しいな」
  「何だよ、突っ掛かるんじゃねぇ」
  「本当の事を話てやれば良かろう。知る資格の有り無しは、聞いた本人が定める所だ。そ
 れに……所詮、下らぬ細事に過ぎんのだから、な」
  「関わらなくて良いんだよ。コイツは。他の奴だって俺達の間に入る必要はねぇ」
  「何故だ? 己のしでかした罪だろうが」
  「馬鹿は程々にしろよ。関係ねぇったら関係ねぇんだよ。普通の奴は知らなくて良いんだ」
  「フン……何時までそれが持つ事か……」
  「アア? 表出るか、オイ」
  「望む所だと言えば良いのか? 後の事も考えずに、な」
  「チッ……」
 

178 名前:矢吹 真吾 ◆Fire/8X51U :2005/12/15(木) 04:33:30


  「と、取り敢えず、負けた訳じゃないんですよね? ね?」
  「当たり前だろ。俺が負けるとでも思ってんのか?」
  「試合には勝ったが勝負には負けていたような気がするがな」
  「お前……いい加減黙れ」
  「本当の事だろう?」
  「お前もだろうが、八神」
  「貴様ほど俺はアレに腹を立ててはいないが?」
  「ったく、減らず口は立派だな」
  「貴様もな」

  如何してこんなに仲が悪いんスかねぇ……意味深な発言が多くて何がなにやらサッパ
 リですが、兎に角アッシュさんが嫌いな事は解かったんでそれで充分ッス。
  草薙さんの敵は俺の敵ッスから。
 

179 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/12/15(木) 04:34:53


  何だよ、クソッ。妙に突っ掛かってきやがって。やっぱ性格悪ぃよ、コイツ。何で組
 んでるのかサッパリ解かんねぇああ組みたくない組みたくない組みたくない!
  解散だ解散……衆議院じゃねぇんだからそんなに簡単には解散できないけどよ。
 次回こそ組まねぇ。絶対組まないからな。誰がなんと言ってもどんな因果が廻ろう
 とも絶対組んでやらないし組まれてやらない。絶対だ絶対。

  まぁ、アイツの言った事は概ね間違いじゃないから余計に苛々するんだろう。
  試合には勝って勝負には負けた。
  実際そうだ。その通りだ。寸分違わず間違いは無い。

  神楽の力は奪われて、オロチの封は解かれた。

  これを負けと言わずに何を負けと言うんだってくらいに負けた。
  生涯二度目だ。
  ここまで盛大に負けたのは。

  今回はアイツにこの屈辱を味わってもらおう。
  怒りに身を焦がし、憤りに身を焦がし、敗北の二文字を噛み締め、敗北の二文字を刻
 み込み、敗北の敗北たる由縁を知りやがれ。

  アッシュ……クリムゾン!
 

180 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/12/15(木) 04:35:56


  ……チッ。妙に苛々する。
  お陰で静観するつもりが、これか。
  まったく、時間は無いようだな。

  アッシュ・クリムゾン、か。
  ヤツの狙いなど如何でも良い。何故神楽の力を狙ったのか。何故俺の力を狙い、京の
 力をも狙うのか。そんな事は些細な事でしかなく、ただ障害になるかもしれんと言う事実
 だけで充分だろう。

  何人も、俺の邪魔をする事など出来ん。
  何人も、俺の障害となるようならば叩き潰す。
  何人も、俺の敵になる事など出来はしない。

  ただ一人の例外を除けば。

  勝つ事も、負ける事も、同様に無価値で、無意味だ。
  だから俺にとっては、あの男と白黒着ける事などは無価値で無意味。
  ただ邪魔だから叩き潰す。
  殺したいのは一人だけ。

  結果が全てだ。
  他の物など望むべくも無い。
 

181 名前:矢吹 真吾 ◆Fire/8X51U :2005/12/15(木) 04:37:42


  ところ変わって試合中です。長くて長い苦痛に満ち溢れた時間から解放されたお二人
 は、オレの事何か忘れたかのように暴れております。……オレにも出番プリーズ。

  「湿気た面してんなぁ。シャッキッとしろよ、シャキッと」
  「それじゃあオレにも出番下さいよ草薙さん」
  「それとこれは別だろ……解かった解かった、明日はお前が一番初めに出れば良いさ」
  「マジッスか? オレ頑張りますから、荷物だなんて言わせませんから!」
  「あ、ああ……頑張れよ」

  明日は本当に頑張ろうと思います。今日は型を千本……明日に疲れが残るから五百
 にしとこ。

  「でもなんだかんだ言って息合ってませ―――」闇払い、強襲。「御免なさい嘘です俺が
 悪かったです許してくださいお願いしますから豺華とか大蛇薙ぎの準備はやめて試合に
 集中して下さると嬉しいのですよハイ」

  こっ……この人達目が笑ってないのを通り越して笑ってやがる!? マジだ。マジで殺る
 気充分。殺意と憎しみだけが友達さー!? 土下座いいや土下寝で詫びても許してくれる
 かはフィフティフィフティ。父さん母さん、先立つ不肖の息子をお許しください。……死にた
 くないッス……

  「冗談は程々にな? な?」

  オーケイです。オーライ。心と書いて魂と呼ぶべき場所に刻み込んで置く事にします。
  この二人はからかっちゃいけない。

  「なっ……長いようで短かった今日の試合も終わりッスねー、ははは」
  「んー、まあな。まだまだ退屈だけどよ」
  「草薙さんを満足させる相手なんて早々居ないッスからねー」
  「だから退屈なんだよ。あーあ、例年通りってのも面白くねぇよなぁ。誰か乱入して来いよ、
 乱入。ちったあマシになんだろ」
  「そんな事言ってると……ウワッ、マジッスか」

  何あのデカイブーメラン。

  「……真吾、行くか?」
  「いやぁ……草薙さん、どうぞ」
  「んだよさっきまで出たい顔してたじゃねぇか!」
  「あんなのは例外ッス!」
  「俺も御免だ」
  「何時の間に戻ってきてんだよ!」
  「黙れ。疲れたから休む。貴様等で始末しろ」
  「ちょ! 八神さん!」「オイ! 八神!」

  煙草吸って一休み。マジで出ない気だ、あの人。
  ……まぁ気持ちは充分理解できますけど。

  「どうしましょっか?」
  「どうもこうも、速攻で終わらすしかないだろ」
  「……ですよね」

  こうして、オレの長いようで短い一日は終わりを迎えましたとさ。
 

182 名前:◆Iori/GPRcE :2005/12/15(木) 04:38:23


  暫しの休息を向かえたKOF。
  しかし、その熱き戦いの宴の火は消える事なく揺らぎ続ける。

  誰が勝利を掴むのか? 栄光は誰の下へ? 勝利の女神の微笑みは?

  全ては未だ闇の中。
  盛る炎の照らす先に答えはあるのかもしれない。


  The King of Fighters XI


  静かに幕開く宴。
  終焉は何処。
 

183 名前:名無し客:2005/12/16(金) 22:21:11

「拳法殺し」ハート様

http://www7.big.or.jp/~sosan/hokuto/heartsama.html

貴方ならどうやって彼を倒しますか。

184 名前:名無し客:2005/12/17(土) 16:31:52

お前の心に拳はあるか硬く握り締めたズシンと響く重たい熱さ。

185 名前:名無し客:2005/12/19(月) 15:46:23

二人が組んでるところ見ると、サマージャンボの宝くじが
俺にも当たりそうな気がするな。

根拠はねーが、それくらい低い確率だと思ったけどよ。京&庵チーム。

186 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/12/23(金) 01:09:10


>>158

  「中田ヒデ何チャラさんはそっくりですね。
  これじゃ駄目? 駄目か?良いと思うんだけど? ああ、駄目。そうか」

  何語れってんだよ……ったく。

  「四六時中家に居てテレビ見てる訳でもねぇしなぁ……それこそ飯食う時に点いてた
 奴をただ何と無く見るくらいでしかねぇんだよ。だから芸人? ま、そんな奴の事に詳し
 い訳でもねぇし、語れって言われても、なぁ?」

  真吾辺りなら詳しいのかもしれない、多分。

  「ただそうだな……自分の賞味期限を把握して謙虚にやってる姿勢は結構好感が持
 てるかもしれねぇ。

  露出が増えて天狗になりました。今では如何見ても落ち目です。本当に有り難う御座
 いました。

  これじゃあ目も当てられないだろ。実際そう言う奴見てると腹立つんだよな。ただ何と無
 く一発ネタが受けただけの奴が妙に画面の前に出張ってくると、何かこう……訳もなく悲
 しくなると言うかなんと言うか。解かるだろ?」

  あの人は今。
  これを見ると泣けてくるよな……

  「取り敢えずこんな所で良いか? そろそろ時間がアレなんだよ」

  クリスマスが近い。つーか、もう明後日の事だ。
  プレゼントの用意に奔走したくなる頃合って奴で、何で先に用意しとかなかったんだろうな
 んて自己嫌悪に陥ってみたりしつつもこれが毎年の事なんで心の中で苦笑いを浮かべる俺
 が居て、こんな事で頭を悩ませる事が出来る俺は幸せなんだろうなと、その些細な幸せを噛
 み締める。

  「じゃ、寒ぃのもあるから行くぜ?
  風邪引くなよ」

  単車……この時期乗れねぇんだよな。悲しいけどオフシーズンは整備と改造に金を掛ける
 事にするのが殆どの単車乗りに共通して言える事だろう。

  雪で滑ってコケル。
  コレはコレで怖いが、一番は爪先が凍ったりするのが厭で仕方ない。シフト操作だけで体力
 と精神力がゴッソリと……脱線したな。

  取り敢えず電車かバス、もしくは徒歩で街の方へ、か。
  クリスマス。クリスマス。
  楽しいかは……楽しいだろうな。
 

187 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/12/23(金) 01:26:19


  「下らん。他人の嗜好に口を挟んでやる気は毛頭無い」

  当然だ。態々他人に干渉する等は阿呆のする事に他ならない。

  「と言うよりも、何だ。貴様は興味でもあるのか? あるのならば近付くなと言って
 置くとしよう。少なくとも俺にはそんな嗜好は存在せんのでな」

  ……忌々しい記憶は闇へ。
  刻み、燃やし、埋め、更にその地を焦土と化す。
  有名税とはよく言ったものだが、名誉毀損に当たる税を払わねばならん事実には
 些か不満を覚えない訳でもない。いや、覚える。

  「まあ、男が男を求めると言うのは、一般的な事例から見れば可笑しな現象である
 のは確かだろう。だが少し目先を変えてみればだ、それは男が女を求める事に、女
 が男を求める事に、女が女を求める事に、何の違いがあると言うのだ?
  俺には大して違いがあるとは思えん。
  感情など所詮、気の迷いに過ぎんのだからな」

  人を好く好かない。そんな物は一時の機の迷いに過ぎない。
  人間の構造など簡単な電気回路と同じ。感情はその何処かに短絡が起こったか、
 ヒューズの許容量に変化が生じたのか、可変抵抗の値に変化が生じたのか。そのど
 れかにしか該当しない。俺はそう思っている。
  時が経てば経つほど嗜好が変化していくのはその為だろう。

  一生好きだ。
  一生愛する。
  一生を賭けて添い遂げる。

  短絡。絶縁。接続。断裂。
  その繰り返し。何かの繰り返し。
  それで変わってしまう、脆弱な、感情。

  「まあ、感情は気の迷いだとは言ったが中には気の迷い以外の感情も存在するのか
 もしれん。例えば俺の憎悪や殺意。これは一生変わる事なく燃え盛り続け、燻る事とて
 無い。

  まあ、これも気の迷い。
  短絡によって生じた欠陥。

  そう断じてしまうのであれば、それまでの事だがな」

  矛盾。
  解消されないそれを抱えたまま、進む。
  正しいのか、正しくないのかは、知る所では、無い。
 

188 名前:◆Iori/GPRcE :2005/12/24(土) 00:03:18



                   12月25日 AM 01:00

 

189 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2005/12/24(土) 00:03:43


  街は華やかに彩られ喧騒が途切れる事も無く、道行く人々は微笑を浮かべ歩いて行く。

  誰かの生誕を祝う。

  それは既に形骸と化したイベントに成り果て、誰も彼もが熱に浮かされたように一夜
 二夜と宴を開く。
  詰まらない物だと思う。

  何が楽しくて笑うのか。
  何を愉しみに笑うのか。
  何故他人と触れたがる。

  所詮、何かに付けて騒ぎたいだけではないのか。
  誰かが生まれた日。それは果たして騒ぐ為の口実になるのか。

  下らない。

  窓から見下ろす風景に飽き飽きし、部屋に戻ってみても誰も居ない。
  当然だ。自ら避けた結果なのだから。

  ベースに触れる。
  寂しげな音が漏れたのは気の所為だろうか。

  グラスを手に取り、琥珀の液体を流し込む。
  酔いが回る事も無く、美味いと思う事も無く、不味いと思う事も無い。
  ただ一つ確かに感じる事が出来るのは、今では吐く事も無くなった血の匂いがしただ
 け。

  力は消えた。
  お陰でもう悩まされる事が無くなった病に似た物。
  目の前が紅く赤く染まる事も無く、突然沸き起こる殺意に悩まされる事も無く、胸に開
 いた穴を埋める手立ても無い。

  だから苛立ちは消える事も無く、新たな炎が燃え盛る。

  だが今は、今くらいは、何かを口実に忘れて飲み明かしても構わないだろう。

  流れる旋律に身を任せ、この日本でも誰か一人くらいは祝ってやるのも良いかも知れな
 い等と思いも寄らない行動に出て見るとしよう。酒に逃れる口実くらいにはなるだろうか
 ら。
  何かが少しだけ理解出来た事に苦い物が浮かぶが、まあ如何でも良い事だ。偶には耳を
 傾けるのも悪くは無いと言う事だろう。

  耳を傾けた序でに、似合わぬ言葉を口にしよう。
 

190 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2005/12/24(土) 00:05:43


  「飲んでるか?」「飲んでるよ」「そうか」「それよりこの馬鹿に酒飲ませたの誰だ?」
 「俺だけど?」「……後始末きっちりしろよ」「構ってやれよ、偶には。そう。偶には」「五
 月蝿ぇなぁ。結構相手してやってるって」「嘘は駄目だぜ? なあ、ユキちゃん」「エッ…
 …まあ、はい」「ユキ……お前もか」「カエサル気取りは相手してやってから言おうぜ?」
 「解かった解かった。やれば良いんだろ、やれば」

  二階堂紅丸主催、毎年恒例のクリスマスパーティー。賑やかに過ごせるし飯も美味い
 んで言う事無し……だった筈があのナルシストの馬鹿が誰かに酒を飲ませた所為で賑
 やかさに拍車が掛かったのは良いが飯が食えなくなってむかつく。序でに言えばユキに
 も構ってやれないから余計にむかつく。

  「京……誰が序で?」
  「!? ガハッ……」読心術かよ。

  迂闊な事が考えられなくなったのが物凄く痛いです。

  「くーさーなーぎーさーんー。飲んでますかー」本日を台無しにしてくれた馬鹿登場。
  「ホラ、水だ。飲め」
  「いいえ、水は手に持ってるッスー」それは酒だ馬鹿野郎。
  「俺の水が飲めないって言うのか?」
  「ふつーは酒だとーおもうのれすー」
  「良いから、飲め」
  「ハイ、真吾逝きますー」漢字が違うって……

  「ばたんきゅー」

  流石に一気は早かったか……南無。急性アルコール中毒で死なれても困るから紅丸を
 呼びつけて介抱させる。人の良い大門は付き添いをしてくれるそうだ。……多分子供を寝
 かしたいだけなんじゃとか思うが、好意を無碍にするのは悪いだろう。
  そんな訳で、多少広めの空間に二人っきりの状況が出来上がりましたとさ。……暫らく
 ぶりだよなぁ。

  「楽しいか?」
  「毎年同じ事を聞くわね」苦笑いも可愛く見えるのは惚れた弱みかもしれない。
  「そうだっけ? ま、毎年変わり映えの無い面子で騒いでるからさ、飽きてんじゃねぇかと
 少しだけ不安なんだよ」
  「そう思ってるなら別の所に連れて行ってくれても良いんじゃない?」
  「あー……」
  「冗談よ」物凄く真剣に聞こえたのは気の所為ですか?
  「……来年は、考えさせて頂きます」色々な事が片付いてたら、だけど。

  「無理、しないでね」
  「……何言ってんだ?」
  「エッ……ただ何と無く出た言葉なんだけど……なんでだろう?」
  「いった本人も解からない物を俺が解かる訳が―――」

  忘れてたが櫛名田の生まれ変わりだとかそんな話もあったよな……それなら、今の状況
 で何か不安みたいな物を覚えるのも頷けなくも無い、か。

  「大丈夫、俺だぜ?」
  「……アナタだから信用出来ない」
  「酷ぇなぁ」
  「フフ……冗談よ」
  「ま、無理はしないし必ず戻ってくるから来年もまた同じ台詞を言ってやるよ」
 

191 名前:◆Iori/GPRcE :2005/12/24(土) 00:06:27





                   Merry Christmas



 

192 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2006/01/10(火) 03:40:49


>>161

  何処だか知らないこじんまりとしたライブハウス。何でか俺はそんな場所にいて、変
 な男がそばに居る。何でこんな場所に居るのかは簡単に説明が出来る。ユキが一緒
 に見てみたいなんて可愛い事を言うもんだから来ただけだから。でもだ、この隣に居る
 変な男の事は簡単になんて説明出来ない。何時の間にか居たから。何でだよ。

  「草薙京じゃないか、君は」
  「だったらなんだよ、プライベートだからサインは無しだぜ?」
  「八神ならいざ知らず、君のなんて頼まれたって」
  「喧嘩ならいつでも買ってやるぜ、プライベートでも」
  「いやね、要らないものははっきり断わらないと後々大変だろ? 宗教の勧誘や新聞
 の勧誘と一緒でさ」

  取り敢えずこんな会話をした割に、未だに隣に居るってのはどんな神経をしてるんだ
 ろう。素人さんはこれだけ言えば逃げてくのに。つーか、どっか行けよ。マジで。
  それよりも、ユキ遅ぇなぁ。混む時間帯じゃねぇと思うんだけど。

  「……君さ、今日誰出るか知ってる?」
  「あ? 知らねぇけど、彼女が見たいって言うから来ただけだし」
  「あー、そう。面白い事になったのかな」
  「なんだよそれ」
  「今日の出演者はね、八神庵だよ」
  「……マジかよ。神経疑うぜ、ユキ……」
  「ハハッ。こっちは感謝したいくらいだな、そのユキって子に」
  「なんでだよ」
  「久々に本気でプレイする彼に会えると思うと、さ」
  「聞いてばっかで悪いが、如何言う事だ、それ」
  「そのまま聞いた通りだって。真剣に演奏する八神庵が見れるかもしれないって事。
 今日の占いは当たった見たいだ。これからは少しだけ十二星座占いを信じたくなった
 よ。ああ、本当についてる。何年ぶりだよ、楽しみだ。君にも感謝しないとな。その彼女
 にも、感謝だ」
  「オイオイ、一人の世界に閉じ篭らないでくれ」
  「ああ、済まないね。これは悪い癖だって分かってるんだが中々止められないんだ。
 楽しい事や嬉しい事があると、ついね。君にもそう言う事の一つや二つはあるだろう?
 それと一緒だよ、何も変わらない」
  「合ったとしてもアンタほど酷くないぜ。それよりも、何でそんなに嬉しいんだ?
 アイツの演奏なんて所詮素人に毛が生えたようなもんじゃねぇか」
  「君は本当にそう思っているのか? それならその耳は一度切り落として鼓膜も取り
 替えてしまった方が良い。そうだ、ついでに脳も取り替えてしまった方が良いかも知れ
 ないな。人の感性を司るのは結局、脳だからね」
  「喋り方の割に意外に口が悪いんだな、アンタ」
  「今更気付いたのかい? やっぱり君の脳は交換した方が良いのかもしれないね。
 そうすれば高校の方も……おっと、失言だったかな、失礼」
  「嘘臭ぇ謝罪なんているか、馬鹿野郎」
  「いやいや、これは素直な謝罪のつもりなんだけどな。気を悪くしたようだからきちん
 と謝る。僕も社会人だからね。それくらいは心得ている。そうだ、お詫びに僕の主観で
 しかないが、彼の音楽にでも語ろうか?」
  「まあ、それでアンタの気が済むなら」
 

193 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2006/01/10(火) 03:43:51


  「じゃあ少しだけ、と言っても悪い癖で長くなってしまうかも知れないけどね。それ
 は君が彼女を待つ時間だと思ってくれれば良い。どうせ待つ時間は退屈だろう?
 こんな話でも時間だけは潰せるんだ、悪い取引じゃあない。っと、前置きが長くなっ
 てしまったね、本題に入ろうか。彼の音楽についてだが、『ジャイアン』を知っている
 かい?」
  「アレだろ、猫型ロボットの」
  「そう、正解だ。あの傍若無人極まりない、アニメ版の正確の彼そのものと言って
 も良い。映画版じゃないのがミソなのさ。映画版の彼は良い人過ぎるからね、それ
 はあの八神庵には似合いもしないだろう?」まったくだ。「まあ彼、八神の方は下手
 じゃない分救いようがある。下手という形容詞は確かにつくかもしれないけれどね。
 なんと言っても彼は気分次第でそのプレイの性質を180度、いいや、捻りを加えた
 360度変えてしまうんだ。それでも最低水準は軽く凌駕しているし、下手なプロより
 も数段巧い。でもね、それは巧いだけなんだ。機械で作った旋律と何ら変わりない
 音しか出せないようでは素人に毛が生えたなんて言われても仕方ないだろう。でも
 彼は、その時々で感情の篭りようの桁が違う。それこそ無機質の塊、機械のような
 旋律から、人その物のような感情豊かな―――と言っても怒りが大半を占めるん
 けれど、時に寂しさの要因も混じるのかな。そんな酷く人間臭い音を出してくれる事
 が、極偶にあるんだ。まさしく『ジャイアン』のような、傍若無人さでね。リサイタルを
 やるから見に来い。見に行ったは良いけれどあまりにお粗末な歌、それが『ジャイア
 ン』だ。彼の場合は見に来いとも言わないけれど、容姿やその音に魅せられた連中
 がこぞって集ってしまう。それなのにお粗末な機械の旋律ばかりを聞かせてくれる。
 一番酷かった時期は、そうだね。君が負けたなんて噂が流れた96年から97年か。あ
 の時の彼は酷かった。それこそ正に機械という形容がピッタリの、ベースを弾く為だ
 けに居た機械に過ぎなかった。ある彼に意味心酔している僕がこれだけ断じてしま
 えるほど、酷い物だったよ。瞬きすらして無いんじゃないかと思えるほどにね。それ
 が変わり始めたのは99年。君が失踪した時期に重なるんだ。あの時の彼の音は、
 そうだね。例えるなら焦りと怒り、そして信頼のような物が篭っていた。驚いたよ、機
 械のような男が急に、なんだ。機械が人間になるなんて夢物語に存在していたのか
 も怪しいのに、魔物が人間にと言うのはあったね、ゲームだけど。それはさて置き、
 急に人間らしさが戻ったんだ。僕は君が鍵なんじゃないかと踏んでいるんだが、そ
 んな事は到底本人には聞けないからね。僕だって命が惜しいし、聞いた所で教えて
 くれる筈なんて無い。無駄な事はしない主義なんだ、これでもね」アンタの話は無駄
 の塊だよ、長いし。「退屈そうだね? まあ、それでも続けるのだけれど、何処まで話
 したかな。そうだ、君が鍵なんじゃないかと言う所まで話したね。そう、鍵だ。君が彼
 に人間性を取り戻させる鍵。君が色々と厄介な事に関わっていて、君を付け狙う彼も
 また厄介な事に関わっているのかもしれないが、僕個人としては君と彼が関わってい
 る限り彼の人間味溢れるベースが聞けるのだから歓迎したい気持ちで一杯だ。勿論
 君と彼にとっては最悪の事態なのかもしれないが、それでも良い音楽が聴ける事を望
 むファンとしては、ね……っと、取り敢えず此処までにして置こうか。待ち人がそろそろ
 到着するかもしれないからね」
  「そうだな、良い暇潰しにはなったぜ。退屈だったけど」
  「ハハッ。君は顔に似合わず案外キツイ言葉を放つんだね」
  「オイオイ、今更だぜ。最初に気付かない時点でアンタの脳味噌も取替え時だな」
  「オヤ、これは一本取られたかな」
  「思っても無い事は言うもんじゃねぇよ、っと、来た見たいだな。最後に一つ聞くぜ。
 今夜は良いライブが見れるんだな?」
  「保障するよ。彼がステージに立ったその日から見ている者としてね。今夜は間違い
 無く良いステージが見られるだろう」
  「オーケイ。その言葉、信じるぜ」
 

194 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2006/01/10(火) 03:45:13


  まったく長い話だった。アレだけ喋ってよく疲れないもんだ。感心すると同時に出来
 れば二度と関わりたくないような、そんな気がする。……こう言うときに限って二度三
 度と縁が出来ちまうんだから俺の人生は少しだけ不幸なんじゃないかと思う。

  「京がこんなに早く着いてるなんて珍しいわね」

  今日は一段と綺麗に見えるユキ。化粧の違いなのか着てる服の差なのか、それと
 もこの状況と場所がそう見せるのか。ま、元々可愛いからな。流石俺の彼女。
  でも辛辣な台詞、何も言い返せないのが俺の弱みでもあるんだが。

  「偶にはそう言う事もあるさ。それよりもユキ、八神が出るんだって?」
  「それを教えちゃったらアナタ、付いて来てくれないじゃない」

  流石俺の彼女。可愛い顔して考える事は小悪魔的だ。……俺の思考が読み易い
 だけ?

  「まあ、そうだけど……それにしても一言くれたって良いじゃないか」
  「はいはい、次からはそうする事にしますね」
  「本当、頼むぜ? お前まで巻き込みたくねぇんだから」
  「あの人なら大丈夫だと思うけどな」
  「そんな考えは甘いと思うぜ? アイツは手段選ばない奴だし」
  「そう? 意外に良い人なんじゃないかと思うけど」
  「嘘だろ? エイプリルフールには幾らなんでも早過ぎるぜ」
  「アナタが知らないだけよ、京」
  「何だよ、それ」
  「秘密にしておくわ。どうせ信用してくれないだろうし、ね」

  何だ、この信頼は。あの男が信頼されるなんて、俺の彼女であるユキに信頼され
 るだなんて、嘘だろ。悪い夢でも見てるんじゃないかと軽く頬を抓って見てもこれが
 現実だと言う事しか教えてくれない鋭い痛み。力入れすぎたかな……
 

195 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2006/01/10(火) 03:47:58


  「なんだ、ユキと言うのはこの子だったのかい? 草薙君」
  「アンタかよ……で、そうだけど?」
  「まさかこんな偶然があるとはね。何かの数奇な巡り合わせ、十二星座所か干支を
 信じても良いくらいの気分だよ。それは兎も角、久しぶりだね、ユキ君」
  「アッ……お久しぶりです。オーナーさん。友達がいつもお世話になっています」
  「いやなに、世話になっているのは此方の方だよ。これでも客商売なんだ、お客様は
 神様と言う奴だよ。いつもご贔屓にしてくれて有り難うと言わなければならないのは此
 方の方だ」
  「なんだよ、知り合い?」
  「ああ、そうだとも。彼女は確か……二ヶ月前くらいに初めて訪れてくれたんだったか
 な。その時は年の頃が同じくらいの女の子三人連れだったように記憶しているが、如何
 だっただろう。八神が出ているステージだった事は覚えているんだがね。そうだそうだ、
 一人だけ浮いているような、そんな子だったね、君は」
  「ええ、まあ、初めてでしたから」
  「ヘェ。だから一度見て欲しいって訳か」
  「そう言う事だろうね。それにしても初めてか。初めてでこのサイズの箱は辛かっただ
 ろうし、何より彼のライブだ。面白い物ではなかったんじゃないかい?」
  「いいえ、楽しめましたよ。それに、小さい小さいと言いますけどこれくらいが丁度良い
 んじゃないかなと思います」
  「まあ、そうかもしれないね。一体感を演出するにはこれ位の、百人入るか入らないか
 位のサイズが丁度良いのかもしれない。それに、彼等は所詮はアマチュアだ。プロと違っ
 て共通の認識と言う物が生まれ難い。しかもイベント物だろう? そうなると知らないバン
 ドも出て来るからね、アットホームな感じとまでは言わないが気楽にやるには良いのかも
 しれない」
  「あー、本当に話長いな、アンタは」
  「ちょっと……失礼でしょ、京」
  「いや、良いんだよ、ユキ君。彼の言っている事は正しい。僕の話はいつも長いと誰から
 も言われていてね。反省して直そうとはするんだが一向に直らない。性分なんだろうけれ
 ど、此処まで来ると一種の病気なのかもしれないな」
  「んで、何の用だ? 挨拶だけにしちゃあ、ちょっと話が過ぎるだろ」
  「いや、挨拶だけのつもりだったんだよ。ただそれが伸びに伸びてこう言う結果になって
 しまっただけでね。ちゃんと説明したじゃないか。僕の話は長いってね」
  「まぁ、そうだけどよ。デートだぜデート。気を使えよ」
  「ハハッ。それもそうだ。それじゃあ楽しんでいってもらえれば幸いだ」

  「京……口が悪いとは思ってたけど、礼儀まで知らなかったのね」
  「オイオイ、ああでもしないとアイツは喋り続けちまうぜ? 俺はお前が来るより前にあの
 長い長い話に付き合ってたんだよ。ちょっと食傷気味だ」
  「フフッ……それは分からないでもないかな。確かに話が長い人だから。私も初めて聞い
 た時は面食らっちゃったし」
  「だろ? で、大分話は戻って、何で八神なんだよ」
  「それは勿論、楽しめると思ったからに決まってるでしょ?」
  「本当に楽しめるのかよ。大体アイツのやる曲なんて……」
  「聞いてからのお楽しみ。文句は後で聞くから、ね?」
  「……オーケイ。まったく、敵わねぇよな」

  そろそろ開演時間。と言っても直ぐにアイツが出て来る訳じゃあないんだろう。それまでは
 他のバンドの曲に耳を傾けるとして、楽しむ事になるんだろうが……何か雰囲気が可笑しく
 ないか。右見ても左見ても、街で会ったら目も合わせて貰えませんみたいな奴ばっかりなん
 だけど……
 

196 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2006/01/10(火) 03:50:59


  チューニングは終えた。今夜演奏する曲目は既に覚えてあり、不備など無い。メンバー
 との意思の疎通―――そんな物は不要だ。
  客の入りを覗いて見れば、それなりの人数が入っているように見える。が、それも如何
 でも良い。
  俺はただ、自分の演奏が出来ればそれで良いのだから。

  「君は相変わらずだね、八神君」
  「貴様か……如何でも良かろう。そんな事は」
  「やれやれ、本当に変わらないな、君は。初めて出会ったその日から何も変らないと言
 うのはある意味賞賛できる事だとは思うけれど、そろそろそれも終わりにしないと君は本
 当に取り残される事になるよ。いや、でも少しは変わってきているのかな。昔は僕と会話
 すらしようとしなかった君なんだから」
  「……無視しても話を進めるのだから、適当な所で断ち切れば良いと判断しただけだ。
 それと、変わらないのは余計な世話と言う奴だろう」
  「やれやれ。それじゃあ伝えたい事だけを伝える事にしようか。これは君にとっても重要
 な事なんじゃないかと思うからね。君が僕の話に飽きる前に伝えなくてはならないだろう。
 そこで本題だ、草薙京が、来ているよ。彼女と一緒にね」
  「……何だと。それは本当か?」
  「僕が君に対して嘘を言った事があるかな? 僕の記憶によればそんな事は無かった
 筈なんだけれど、君が疑うと言うのならそれでも良い。ただ、君の喰い付きようを見るとや
 はり彼が鍵だと言うのは間違ってなさそうだね。如何にも、鍵の方向性は変わってしまっ
 た見たいだけれど、鍵は鍵だ。変えようも無い事実だね?」
  「まあ、良い。俺は所詮、ベースを弾く事が出来れば良いのだから」
  「それは機械としてとしてかい? それとも『八神庵』としてかい? 僕の個人的な主観で
 語らせて貰うならば『八神庵』としてのプレイが見たいものだけれどね。お粗末な機械の演
 奏は失笑すら出来た物ではない、例えるならば産業廃棄物だよ。それだけ酷い。見れた物、
 聴けた物ではないね。アレを聴くくらいならアイドルグループのCDを聴いていた方がマシだ。
 おっと、この言い方では失礼かもしれないかな。これではアイドルの歌や曲が聴けた物では
 無いと言っているのと同じだ。懐古主義ではないが一昔、いや、二昔前の彼等の曲は遊び
 めいた部分も多かったが本物だった。今はまあ、商業ベースに乗らなければなら無い為に
 質が落ちてしまったが、中々面白いと思えるものも偶にある。そう、偶に。哀しむべきだね、
 これは。君の波の荒さと同じで。君の波の荒さは異常だが、今の音楽業界の荒さもこれま
 た異常だ。如何して此処まで差が激しいのか考えて夜も眠れなくなってしまった事がある
 けれど、今は考えない様にしているよ。どうせ答えは出ない物だ。それに、音楽に携わる
 者は結局人なんだから浮き沈みが合って当然だ。君の沈み方は常軌を逸しているけれど、
 っと。これでは延々とループするだけだからそろそろ止めておこうか。幾ら君でもそろそろ
 準備くらいはするだろう?」
  「今日は止める前に終わってくれて感謝、と言った所か。まあ、準備など当に終えた。後
 は出番を待つだけだな」
  「ああ、それは良かったと言うべきかな。僕が君の出番まで喋り続けた所で問題が無い
 んだから。実際はあるんだけどね。フロアの仕事を放り出して来ているんだから、他のス
 タッフには迷惑を掛けている。まあ、彼等もこう言う事態には慣れて来ているようだけれど、
 流石にオーナーとして如何かと思うから失礼するよ。良い演奏を期待している」
  「言われるまでも無い」
 

197 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2006/01/10(火) 03:52:13


  何組ものバンドが入れ替わり立ち代り会場を沸かせる。どいつもこいつも知らない奴
 ばかりだが、縦ノリのリズムのお陰で退屈せずに聴く事が出来た。
  つーか、下手な奴等より面白いじゃねぇか、これ。

  隣で楽しむユキの以外な一面が見れたのも良い収穫だろう。こんな音楽が好きだっ
 たなんて知らなかったが、こんなのを見ちまえば好きになるのも頷ける。現に俺も、こ
 れから機会があれば足を運んでみるのも悪くは無い、とか思えてきたし。そう思えば、
 ユキにしても最近こう言うのも悪くないと思い出してきたのかもしれない。……ストレス
 も溜まるだろうしなぁ、受験勉強で。俺やってないから解からねぇけど。

  ああ、このバンドはこれで終わりか。となると、次で最後。まったく、アイツがトリかよ。
 つっても、アイツの居るバンドが、だからアイツがトリな訳じゃねぇんだけど……空気が
 変わり過ぎだろ、オイ。

  「保障するよ。彼がステージに立ったその日から見ている者としてね。今夜は間違い
 無く良いステージが見られるだろう」

  この言葉が現実となる空気、と言えば良いんだろうか。
  ま、期待しててやるぜ、八神。
 

198 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2006/01/10(火) 03:52:38


  ステージに上がる。
  普段通り、淡々と自分のすべき事をするだけに過ぎない。

  客席を見渡せば、確かにそこに存在する誰か。
  目が合ったような気もするが、気の所為だと言う事にしておこう。気味が悪いからな。

  既に調整済みである自前のアンプに繋ぎ、軽く音を出す。
  重く、芯から響く音に酔いながら、演奏の開始を告げる声を待つ。

  高揚感、とでも言うべきか。
  何度か味わった、ステージに立つ事による微かな緊張感が沸き起こる。
  俺らしくも無い……気負っているとでも言うのか。馬鹿馬鹿しい。


  「―――Ready?」


  短く熱い、今夜限りの舞台は始まる。
  叩き付けるように、畳み掛けるように、全てを飲み込むように。

  何時も通り、ベースを鳴らす。
 

199 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2006/01/10(火) 03:54:02


  時間はあっという間に過ぎた気がする。
  周りの連中もそんな顔だ。
  それだけ密度の濃い時間だったんだろう。人の密度も凄かった。……汗臭ぇ。

  「どうだった、京?」
  「エッ……まぁ、なんだ。楽しかったぜ、最後以外は」
  「……やっぱり素直じゃないわね」
  「本音だよ、本音。嘘なんて吐いて如何するんだよ」
  「はいはい」
  「ったく、信じろよ……」
  「さ、じゃあ帰りましょうか」
  「そうだな。送ってくぜ」

  単車じゃないから電車か。あんまり好きじゃねぇが、この時期は仕方ないと思って諦
 める。
  夜風は火照った体には気持ち良いが、それも暫らくの間だけだろう。流石にこの時期
 の風は五分と当たっていられない。それでも、ユキと居る分マシかもしれないな。
  ……こう言うのは惚気の内に入るんだろうか。

  まぁ、なんだ。誤魔化しても仕方ねぇか。結局、楽しかった。認めたくないけど認めよう。
 悔しいが、八神のバンドが一番盛り上がった。俺の中でも、周りの反応でも。アイツだけ
 の力って事は無いんだろうが、その存在感だけは圧倒的としか言いようが無い。

  あんまり目立つ存在じゃないと思っていたベースが、あそこまで目立って、しかも圧倒
 的なまでに叩き付けられる音は、挑戦的で挑発的で、何処か物悲しかった。
  ケッ……面白くねぇ。笑いのネタに出来るとばかり思ってたのによ。

  まったく、ユキの悪戯で此処までダメージを受けるなんて……八神め、次ぎ会ったら
 ぶちのめしてやる。
 

200 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2006/01/10(火) 03:55:18


  「お疲れさま」
  「……また来たのか、貴様」
  「釣れないな、折角労いに来て上げたのに。しかも僕の仕事はこれからが忙しいと言
 うのに、だよ? もう少し暖かい言葉の一つでも言えないのかね、君は」
  「貴様は俺に何を期待している?」
  「それは勿論、今夜のような演奏だよ。今夜は良かった。久しぶりに君の持ち味が完
 全に引き出されていたんじゃないかな。歴代で一番良いかもしれない。二番目は初め
 て出会った時だが、その時以上だったね。今夜の君は」
  「誉めた所で何も出ん……それよりも、仕事に戻れ。忙しいのだろう?」
  「そんなに邪険に扱わないでくれよ、君は本当に社交性に欠けるね。厭世観が強す
 ぎるのか、それとも人と付き合う事に慣れていないのか……やれやれ、これも考えれ
 ば考えるほど解からない物だね」
  「失せろと言っている。この程度の事も理解出来んのか?」
  「解かったよ。じゃあ、最後にもう一度。お疲れさま。また今夜のようなライブを頼む
 よ。出来れば毎回、ね」

  機材の片付けをしながら、少しだけ今夜のライブを振り返る。
  俺は淡々と自分のすべき事をしたに過ぎない。が、アレの耳には普段より良い物に
 聴こえたと言う。
  原因は……考えたくも無いが奴の所為か。
  つくづく調子を崩してくれる男だ。
  次に出会えば殺してしまおう。邪魔さえ入らなければ。

  夜はまだ始まったばかりだ。
  打ち上げに参加しないのはいつもの事だ。だから、帰って一人グラスを傾けるとし
 よう。今夜の酒は、恐らく美味い物だろうから。
  

201 名前:名無し客:2006/01/21(土) 17:44:42

フン…結局ヒトは時として『自分が憎み嫌っていたもの』と同じ存在になるのさ…。

202 名前:◆Iori/GPRcE :2006/01/27(金) 22:36:49


  「―――京」


  彼はその呟きと共に、右手に煌びやかな紫炎を燈らせる。


  「―――八神」


  相対する彼は応え、左手を抱えるように目が痛くなるような真紅の炎を燈らせる。


  「行くぞ」「行くぜ」


  二人の声は重なり、相反する炎も同時に消え、互いに計ったかのように疾駆を開始する。


  満身創痍と言ってもいい二人。

  赤毛の彼の服は所々破れ、血の滴る生々しい傷跡が覗いている。

  変型学生服を着込む彼もまた同じ様な状態だ。

  それでも互いに持てる力の全てを出し切るように、腕を振るい、炎を駆り、牙を剥く。



  まるでそれしか解かり合う術が無いかのように。

  まるでそれが自然かのように。

  まるでそれが戯れかのように。

  まるでそれしか知らないかのように。

  まるでそれが―――生きる意味かのように。



  見守る観客は無く、音も無く、声も無く、生も無く、死も無く。

  ただ信念だけがそこに在った。
 

203 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2006/01/27(金) 22:37:32


  「―――ょう、京。やれやれ……京」

  誰かに呼びかけられた。
  お陰で古い回想から抜け出せたのは良いが、五月蝿くって仕方が無い。
  だからその声の主を怒鳴り付けてやろうと思って―――

  「もう酔ったのかよ。相変わらず強いのか弱いのか分からない奴だな、お前は」
  「五月蝿ぇよ、ホーキ頭」

  だんだん意識がはっきりして行くのが解かる。だからなんでこんな場所に居るのかも解
 かる。隣に何故こんな奴が居るのかも解かる。詰る所隣の奴に久しぶりに飲みに行こうと
 誘われたからこんな場所に居てコイツが隣に居る訳だ。理解出来て記憶もはっきり。オー
 ケイ。俺は酔ってない。

  「んじゃ……取り敢えず軽めのカクテル。何かお勧めの奴くれよ」

  隣に座るホーキ頭(金髪だから余計にピッタリな気がする)は軽く肩をすくめる素振。そ
 れが絵になってるようななってないような微妙な雰囲気を醸し出し、失笑したくて仕方が
 無いけど笑うと何故か理不尽にキレルので笑わない。これは長く付き合ってきたからこそ
 解かる微妙な間合いの取り方というべきかも知れない。学びたくない間合いだったけど。

  「で、何の話をしてたか微妙に間が開いちまって忘れちまったんだが、そこの親切な色
 男さんが教えてくれる事に期待して、乾杯」

  丁度良い頃合で運ばれてきたカクテルを一呷り。よく冷えたアルコールが喉を通り、胃
 に落ちる。アルコール特有の喉を焼くような辛味は嫌いじゃ無い。酔える酔えないは別に
 して。

  「ユキちゃんを俺に譲るってところまでだったかな?」「嘘吐け」「アレ、違ったか?」
 「お前みたいなナルシストに俺のユキはやれない。つーか、やらない。殺してでも奪い取
 るならぬ、殺してでもお前にはやらない、って奴だ」「惚気るなよ」「五月蝿ぇよ。それ
 より本当に何の話をしてたんだ? まあどうせ下らないお前のナンパの話だろうけど。昨
 日はあそこであの芸能人風の女の子をナンパしただとか、一昨日はまた違う女に手を出し
 ただとか、そんなのだろ?」「……お前、本人を目の前にして下らないとか言うか、普通」
 「下らないもんは下らないんだよ。そろそろ誰か一人に決めりゃ良いだろ」「フッ……天
 下の色男は一人の女には縛られないのさ」「本命に振り向いて貰えないだけなんじゃねぇ
 の? どっかの時代遅れ美形侍(結核持ち)みたいな感じでよ」「オイオイ、一緒にしない
 でくれよ」「どうだかね」

  ここまで憎まれ口を叩けるのはコイツか、八神くらいの物なのかもしれないなんてふと
 思う。……最悪か? 俺の交友関係。
 

204 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2006/01/27(金) 22:38:03


  「で、下らない話はさて置き。調子は如何なんだよ?」
  「勿論最高さ。やっと念願でもある女性とチームを組めた事だからな。無様な姿は見せら
 れない」
  「その髪型で? その服のセンスで? ハハッ……笑えるな」
  「凡人には理解出来ないだけ。解かる奴は解かってくれるのさ。俺様の魅力を。で、そっ
 ちこそ如何なんだよ? 愛しの愛しの八神庵と二大会連続で手を組むなんて、そっちの方が
 俺より何倍も笑える話しだぜ」
  「稲穂狩りの後は焼畑が一般的だったか?」
  「冗句だよジョーク。でもな、実際調子は如何なんだ? この大会じゃチームワークは必
 要不可欠なんだし、お前とアイツでそれが期待出来るとは到底思えないけどな」
  「騙し騙しやってる、って感じか。幸い未だ『強い』チームには当たってねぇしよ。それ
 に……不気味なくらいアイツが静かだからな。それなりに連携ってのが出来てる」
  「真吾が大活躍でか?」
  「……解かってるなら聞くんじゃねぇよ……ったく」

  そう、俺と八神じゃチームワークなんて望めもしない。だから間に真吾が入る。休む間も
 無く呼び出される真吾は八面六臂の大活躍だ。しかもパシリ仕事のオマケ付き。安らかにこ
 の時間は眠っている事でしょう。明日また起こる苦労も知らずに。

  「ま、俺が居る限りアイツらが足引っ張っても優勝は間違いねぇけどな」
  「待て待て、俺様のチームは三位一体でこの大会との相性は完璧だ。お前一人で勝てるほ
 ど甘くないぜ?」
  「真吾と八神自爆させて残り一人を俺が倒せば問題ねぇよ。勝負に負けても試合に勝てば
 優勝だからな」
  「お前なぁ……」
  「冗句だよジョーク。いざとなったら嫌々でも手を組むさ、アイツと。実力だけは……認
 めたく無いけど十分あるしな」
  「因果なもんだよな……お前達の関係も」
  「ハァ!?」
  「いや、詳しく知ってる訳じゃ無いから何とも言えないが……Ifがあるとすれば自然と
 手を組んでたかもしれねぇと思ってよ」
  「馬鹿言え。お前ならいざ知らず、俺とあの馬鹿で素直に手を組めると思うか?」
  「……クッ……違いない」
  「だろ?」
 

205 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2006/01/27(金) 22:38:24


  他愛も無い話はグダグダに酔うまで続き、正直な所これ以上は覚えていなかったりする。
  それでも最後に交わした一言だけが、焼き付いて耳から離れない。


  「取り敢えず、お前に買って日本で一番強いのは俺様だと世間に知らしめてやるよ」
  「言ってろ。俺が居る限りお前は何時までも二番目のままさ」
  「相変わらず自信過剰だな」
  「お前もな」

  「じゃあ、手を抜くなよ?」
  「お前なんて手ぇ抜いたって楽勝だぜ」

  「それじゃ、アディオス」
  「ケッ……じゃあな」
 

206 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2006/01/27(金) 22:39:05


  煙草を燻らせ、店で流れている音楽に身を任せる。
  グラスには琥珀の液体が注がれ、そこに浮かぶ氷の塊が静かに揺れている。

  古く、そして懐かしいと言ってもいい過去の情景。
  今更思い出すとは、如何言う事なのだろうか。

  「隣よろしいですか?」

  ガラリとした店内で態々隣に座ると言うのは、顔見知り以外の何者でも無いだろう。
  ふと目を向ければ、

  「お久しぶりね、八神」

  真紅の髪を短く纏め、不敵とも妖艶とも取れる年長者の持つ独特の笑みを携えた女。
  名前は……如何でも良い事か。

  「……座りたければ座れ」
  「まだまだ青いわね。もう少し紳士的な対応が出来なきゃ駄目よ?」
  「黙れ」

  紫煙が淡い光に照らされ、踊る様を眺める。
  ただ無為に過ごす時間は無い筈なのに、こうやっているのは終わりを待ち望んでいる
 からか。

  「……何か喋ったら如何なの? レディに失礼だとは思わない?」
  「レディと言う年でもあるまい。それに、人の物に手を出すほど餓えていない」
  「あら、一夜限りの過ちと言うのも悪くは無い。違うかしら?」
  「もう少しまともな嘘を吐け。少なくとも、目も笑えるくらいに」
  「もう、相変わらず面白くない子ね」
  「フン……」
 

207 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2006/01/27(金) 22:39:28


  何時の話だったか。
  あの脳に欠陥しか無い奴らの集りを潰したのは。
  そう昔でも無い筈なのに、今では遠い遠い過去のような、そんな気がしてならない。
  その時にこいつも居たような気がする。何らかの目的を持って。まあ、俺に関わって
 くる人間など何かしらの目的がある奴等ばかりだが。

  「で、今回は何が目的だ」
  「エッ? 一人で呑むのも寂しいなと思って。駄目かしら?」
  「……フン……まあいい。貴様の様な人種が早々易々と目的など話さんか」
  「失礼ね。プライベートと仕事はきっちり分けるのが夫婦円満の秘訣なんだから」
  「大方旦那の弱点でも調べ尽くしてあるのだろう?」
  「あら、バレテる?」
  「……そう言う仕草は十五年程前なら似合ったかもな」
  「……八神、拳に酔って見る?」
  「ほう……暴力に呑まれたいか?」

  ぶつ切りの会話。
  成立しないコミュニケーション。

  「……興が殺がれた。帰る」
  「あら、もう少し付き合ってくれても良いのに」

  払う物は払ってある為、そのまま振り向く事も無く席を出る。
  グラスに残った酒は名残惜しくもあるが、どうせ不味い血の味しかしないのだから呑
 めなかった所で問題は無い。

  「ターゲット補足ならず、か。とんだ無駄足だったわね」
 

208 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2006/01/27(金) 22:39:48


  ふと思う。
  酒を酌み交わせる仲の者など一人も居らず、遠慮無く腹を割って話せる相手が居ない
 自身の人生を。
  らしくない感傷だと言う事は解かる。
  ただ今夜は月が綺麗だったから、そう思うのだろう。

  煙草に火を点け、ゆらゆらと揺れる紫煙に掛かる朧げな月を見る。
  鋭く細い月は孤高なままに、空に浮かんでいた。
 

209 名前:◆Iori/GPRcE :2006/01/27(金) 22:40:17


                「どうしてもやるのか」

         「御託は要らんぞ……」

     「貴様の死をもってな!」

                           「ケリを着けようぜ、八神!」

      「テメェの炎は何色だ」

               「今更命乞いか?」
                            「だろうな……」

           「言いたい事はそれだけか?」

  「炎がお前を呼んでるぜ?」

               「行くぜ!」
                  「行くぞ!」

                              「くたばり損なったか?」

      「なら燃え尽きろ……潔くな!」

                   「テメェの都合じゃ生きちゃいねぇよ」

  「大人しくしていれば楽なものを」                    「満足したか? 八神」
 

210 名前:◆Iori/GPRcE :2006/01/27(金) 22:41:31


  >>202-209まで、>>162へ。
 

211 名前:矢吹 真吾 ◆Fire/8X51U :2006/02/11(土) 23:04:10


>>183

  これはあったかもしれないし無かったかもしれない、そんなお話しッス。
 

212 名前:◆Iori/GPRcE :2006/02/11(土) 23:05:58


  「なぁ八神、コイツ如何倒すよ。お前なら」
  「……何を言っている、貴様」
  「だからコイツ(http://www7.big.or.jp/~sosan/hokuto/heartsama.html)、如何やって
 倒す?」
  「阿呆が……燃やせば事足りるだろうが」
  「あ、それ無しな。面白味に欠けるから」
  「汚物は消毒せねば……いや、まったく……自らの錘を着けても無意味だろうに」
  「お前実は……まあ如何でも良いか。じゃあテメェは力に従えば良いんじゃねぇか?」
  「……ッ……貴様ッ!」
  「まあまあ、そう怒るなって。冗談に決まってるだろ?」
  「チッ……これが終われば殺してやるからな、貴様」
  「はいはい、その言葉はそろそろ聞き飽きたぜ」
  「邪魔が入っていなければ、既に聞く事も無いだろうがな。冷えた屍に聞かせる言葉
 も無い」
  「邪魔が邪魔がって言うけどなぁ……そう言えば確かに、邪魔が入らなかった事がねぇ
 ような気も……」
  「解かれば良い。それにだ、今回貴様と組んだのも後顧の憂いを無くす為。忘れるな、
 貴様を殺すのは……」
  「解かった解かった。ったく……これが女だったらリアルツンデレに出会えたってのに
 ……何でむさ苦しいコイツがこんな性格なんだよ。嫌になるぜ、本当」
  「何をブツブツと……まあ良い。貴様の用件にさっさと答えてしまうとすればだな、膝や
 肘等の関節部を破壊してしまうのが楽だろう。この巨体であれば自重を支えるだけでも
 相当の負荷が掛かっているだろう。伝承者のように脂肪の扉を抉じ開け秘孔を突く無駄
 をせずとも殺す事は可能だろう」
  「なんだよ。結局俺の答えと変わらねぇのか。詰まんねぇの」
  「……それはとてつもなく気に入らんな。別の解答を用意しよう」
  「アァ? なんだよ、それ」
  「そのままの意味だが、何か?」
  「お前……その捻くれた根性如何にかしろよ、マジで」
  「二十も年齢を重ねれば性格の矯正など不可能だ。それに、貴様言われる筋合いは
 無いと思うがな」
  「ケッ……人が折角心配してやってんのに何だよ、それ」
  「偽善者気取りか?」
  「やんのか、テメェ―――」
  「フン……それも良いな」
  「六百六十年重ねた怨み辛みを祓ってやるぜ……八神!」
  「千と八百年重ねた草薙の歴史も貴様で終わりだ……京!」
  「はい、お二人ともストップ。ブレイクブレイク」
 

213 名前:◆Iori/GPRcE :2006/02/11(土) 23:07:06


  「邪魔すんな、真吾」
  「小僧……死にたいか」
  「いやですね、そんな些細な事で殺し合いを始められてもですね、チームメイトの俺と
 しては物凄く困る訳ですよ、ハイ」
  「男には譲れない戦いがあるんだ……お前にも解かる日が―――」
  「解かる訳無いじゃ無いッスか! そんなチョットムカツイタから殺し合うなんて!」
  「いや……まあ……そうかもな、冷静に思えば」
  「そうッスよ。で、何の話してたんスか?」
  「ん、それは……ハート様を如何倒すかだ」
  「……そんな事で言い争いッスか」
  「何呆れてんだよ。殴るぞ」
  「暴力反対ッス!」
  「まあ良いや、真吾、お前なら如何倒す?」
  「オレに勝てるとは思えないッスねー。倒せてモヒカンくらいじゃ無いッスか」
  「モヒカンでもヤベェんじゃねェか?」
  「自分の弟子を信じてくださいよ……草薙さん」
  「エ、イヤ、それは……まあ、気にすんなって」
  「気にしますよ……」
  「……そう言えば八神、結局如何やって倒すんだ? 別の手段とやらでよぉ」
  「オレの事は無視ッスか―――」
  「……まだ続ける気か、貴様」
  「取り敢えずな。質問されてる訳だし」
  「またメタな話題を……」
  「エッ? 如何言う事ッスか?」
  「だから早く教えろよ」
  「また無視ッスか―――!」
  「草薙と八神の違いを利用すれば良い。草薙の闘法と八神の闘法の違いとでも言う
 べきかもな」
  「もったいぶらないでとっとと教えろよ」
  「貴様の使っていない脳細胞を働かせてやろうと言うのだ。感謝して欲しい物だな」
  「テメェ……ま、答えくらい直ぐに解かるぜ。戦いに関しちゃ俺は天才だからな」
  「ほう……で、その解答を聞いてやろう」
  「″斬り裂く″んだろ?」
  「……流石にこの程度は解かるか。これであれば肉の壁があろうが、ガードの上だろ
 うが関係無い。まあ、いざ殺すとなれば頭部を狙う可能性が高いが……正攻法で考え
 るならこれを主軸に立ち回る事になるだろう」
  

214 名前:◆Iori/GPRcE :2006/02/11(土) 23:07:44


  「結論も出た事だし、満足かね」
  「だからメタな話は止めろと……炎が先に使われたのは痛かったが……消毒が……」
  「お前そればっかりじゃねぇか。いい加減飽きたぞ」
  「これで二度目だ。馬鹿めが」
  「五月蝿ぇなぁ。細かい事にいちいち拘んなよ」
  「貴様の揚げ足を取るのはそれなりに面白くてな」
  「趣味悪ぃんだよ、テメェは」
  「そろそろ尺の使い過ぎだと思う訳だが?」
  「だな。終わるか」
  「貴様の顔を見るのも飽きたからな」
  「奇遇だな、俺もだよ」


  「結局オレの意味って……」
 

215 名前:◆Iori/GPRcE :2006/02/17(金) 01:14:32


>>184



  ―――古く懐かしい夢を見た。


 

216 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2006/02/17(金) 01:16:44


  俺は道場って奴が心底嫌いだった。


  道場には神様が居るだとか妖怪が出るだとか、餓鬼の頃は散々聞かされてきた気がす
 る。それを信じていたか如何かは今では思い出せない。
  その神様や妖怪ってのは怖くは無かった。俺にはそれらを祓う力があるんだから、見え
 ない何かに怯える事も無かったし、見える何かにも怯える事は無かった。誰と喧嘩をして
 も当然のように勝ったし、唯一の例外を除いて負ける何て事を考えた事すらなかった。

  そう―――唯一の例外を除いて。

  話を元に戻して、俺は道場って奴が嫌いだった。
  理由は静かだったから。

  神聖な雰囲気なんてのは馴染がない俺は(無くて当然だ)、その雰囲気にただ圧倒さ
 れていた。それだけ道場の静けさって奴は特殊な物で、静謐だとか厳粛だとか、意味も
 良く解かっていないのにこう言う事を指すんだろうと一人納得しちまえるほどに、耳が痛
 くなる程静かだったんだ。
  今思い返せばあの何とも言えない匂いも嫌いだった。毎日道場の空気は入れ替えてる
 筈なのに、何故か何時も篭っている匂い。湿った木の匂いだったのか何なのか、今の俺
 にはその匂いが何だったのかも思い出せない。馴染みすぎた所為で。

  でも、本当に道場が嫌いだった理由は他にあった。認めたくないけど、モノローグで嘘を
 吐くのも馬鹿馬鹿しいから言っちまおう。

  親父に負けちまうから、嫌いだった。大嫌いだった。

  あの髭面を何度も何度もへこませてやろうと考えて、あの憎たらしいニヤニヤとした笑
 みを浮かべる顔に一発叩き込んでやろうと考えて、俺に何度も何度も誤らせてやりたい
 と本気で考えて、泣いても許してやるもんかと心に誓っていた。
  それでもあの頃の俺にはまだ力も無くて、発展途上の体を酷使したとしても親父のムカ
 ツク顔に届く事は無くて、何度も何度も床に叩きつけられ、気を失っては一日が終わる、
 そんな時期もあった。
  あの頃は手加減なんて一切していなかったんだろうと思っていたけど、振り返れば随分
 手を抜かれていた事が解かる。致命的な隙に、致命的な一撃を叩き込む事なく、軽く意識
 が飛ぶくらいで抑えていたんだから。……それでもやり過ぎじゃねぇか? まあ、俺の宿命
 とやらを考えれば仕方の無い事だったのかもしれないけど、一歩間違えれば死んでるんだ
 し。

  道場は嫌いだった。
  でも、

                            心の何処かで好きだったんじゃないかとは思う。
 

217 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2006/02/17(金) 01:18:08


  今の俺はそれなりに道場が好きだ。煩わしい喧騒から隔絶された、唯一の場所にして
 俺が歩み始めた場所だ。今の俺があるのはこの道場のお陰で、道場が傷付く度に俺も
 傷付き、その分成長してきた。

  その道場には今、床に誰かが倒れる音が響いている。

  無音だった筈の空間にいつの間にか人が二人。若かりし頃の(中坊くらい?)の俺と、
 今より少しだけ若い(と言ってもそんなに変わってない)親父。

  倒れたのは勿論―――親父だった。

  「ざまあみろ」と心の中で親父に吐き棄てる俺。「よくやった」と自分を労う俺。
  そんな事を思いながら、改めて気付く。俺の親父嫌いは餓鬼の頃からのトラウマみた
 いなもんだって事を。……これじゃ語弊があるから、刷り込みにしとこう。

  そんな思考を片隅に追いやり、これが何時起こった事なのかを、埃を被って放置され
 ている思考回路を使って思い出す。……失礼な! 俺だって頭は使うってんだ! 脳内
 一人ボケツッコミは寂しいもんだなぁ。

  ……喉下まで来ても出てこない言葉のように思考の片隅から出てこないこの情景。見
 覚えは確かにある筈なのに。
  切っ掛けが欲しい。
  そう思うと、何処からともなく声がする。目の前に居る二人から聞こえる声じゃない。
 二人の口はしっかりと動いている。二人の声は二人の声と認識出来る。ただ、脳に直接
 響くような、そんな声。

  「ワシが二人は居らんと手が付けられんのぉ」
  「今の俺なら一度に四人が襲い掛かってきても瞬時に倒せる自信がある。だから全世
 界の奴と喧嘩したって負けねぇよ。何が言いたいかと言えば、親父が二人居ようが四人
 になろうが俺には勝てねぇって事さ」
  「自惚れすぎやせんか、京」
  「アッ!? んな台詞はもう一度俺に勝てるようになってから言えよ、お父さん?」
  「……」
  「ハハッ……さぁ、もう一戦行こうぜ? 失神するまで続けてやるからな」
  「ちょ……ちょっとまて、京。腰の具合が……」
  「誰だよ、昔俺が肩痛めても戦わせ続けた奴は」
  「……ワシですね」
  「改まんなよ……気持ち悪ぃ」
 

218 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2006/02/17(金) 01:20:14


  流石俺、昔から言いたい放題。親父をこれっぽっちも尊敬して無いその姿にある種の
 感動を覚えながら、記憶の扉の鍵が開いて鮮明な記憶が思い出される。
  これは当主になってから暫らくしての出来事。親父をボロボロになるまで殴り倒して得
 た当主の座。それにちょっとだけ溺れてた時の事か。……ちょっとだけだぜ? 嘘なん
 て吐いてないからな!
  すると……この後の展開は―――

  「そうじゃ……八神の当主も変わったらしいぞ? 何でも歴代一の腕を持つだとか言う
 が、どうじゃ? 勝てそうか?」
  「誰に物言ってんだよ、親父。俺が負けるなんて事はありえない。向こうが歴代一なら
 俺は世界の歴史の中で一番だ。俺の拳に打ち抜けないもの、焦がし尽くせないものなん
 て存在しねぇ。身を持って解かってる事だろ?」
  「まあそうじゃが……京。主は覚悟せねばならん。草薙の宿命に立ち向かう覚悟を。そ
 れこそ八神などオマケに過ぎんくらいの宿命じゃからのぅ。ただ熱いだけの軽い拳では駄
 目なんじゃ。覚悟の篭った重い拳でなければ……」
  「へぇ……覚悟ねぇ。ま、小難しい事考えるのは好きじゃねぇからさ、目の前にそれが壁
 として立ちはだかるなら、壊してでも融かしてでも乗り越えるだけの覚悟はある。それが例
 え生死を賭けるようなものだったとしても臆する事なく進んでやるぜ? 俺の背負う日輪は
 伊達じゃねぇ。本家本元の太陽すら焦がし尽くしてやる。それが俺の覚悟だ。解かったか、
 親父」
  「……そこまで言うなら、京、お前を信じよう」
  「解かれば由。んじゃよ、何時までも寝てないでおっぱじめようぜ?」
  「……ワシは気が進まんのじゃが」
  「グダグダ言うな! 当主命令だ!」

  昔の俺はその言葉の意味を良く考えないで言ったんだろうな、何て大人な意見を口に
 する。八神の一件に関しては見通しが甘過ぎる。親父の嘘にも気付かないんだから仕方
 ない。……何が宿命のオマケだ。寧ろ宿命がオマケだよ。俺が「俺」に話し掛けられるなら
 伝えてやったに違いない。

  八神には気を付けろ、って。
  十年以上追い掛け回されるぞ、って。
  それでも一番楽しめるあい……これは良いか。

  若ぇよな、俺。何て一人呟いて目を逸らす。
  無鉄砲な所は変わってない。容姿にしたってそこまで変化は無い筈だ。
  それでも、今の俺とは何かが違う。

  まるで届かない位置に描いた夢を見てるみたいだ。

  夢の中で夢を見る?
  馬鹿言えよ。


  途端、パキペキポキと渇いた音が響いて、
  ガラスが割れたような音がして、

                                          唐突に夢が途切れた。
 

219 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2006/02/17(金) 01:20:57


  起きてみれば何の事は無い、授業中。
  数学の教師は訳の解からない数字と記号を黒板に書き写し、早口に要点を説明する。そ
 れを回りの奴等は必死に書き写し、解かって無くても解かったような振りをする。
  生きていく上じゃ理解していない事を理解しているように振舞う必要があるなんて聞いた事
 があるようなないような。

  結局それが、あの頃の俺との違いなのかもしれない。

  解からない事があっても、解からないまま我武者羅に直走っていた俺。
  今の俺は―――変わんねぇ気がするんだけどなぁ。汚れちまったのかな?

  ふと窓を見やれば輝く太陽。

  草薙、草薙と呼ばれてる気もするがそいつは無視して目を細める。

  太陽は輝いていた。
  今の俺でも、掴めるのかな。

  チョークが飛んでくる。
  シリアスさせろよ、まったく。
 

220 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2006/02/17(金) 01:21:33


  俺は道場と言う物は嫌いではなかった。


  耳が痛くなるような静けさも、自分一人だけが世界から斬り離されたような錯覚も、自分
 の感覚が鋭く研ぎ澄まされるような気分も、嫌いではなかった。
  だから俺は、ただ一つの例外を除いて道場と言う物が嫌いではなかった。好きだったと言
 えるだろう。よく一人で何をする訳でもなく佇んでいた事は今でも覚えている。そう昔の話
 では無い為当然とも言えるが。

  何が俺を惹き付けたのか。

  それは今になっても理解出来ない。理解しようとも思わなくなった、と言うのが正解なの
 かもしれない。だが、こんな時にくらい振り返ってみるのも良いだろう。

  日当たりはそれなりに良く、何時も新鮮な空気が入っていた。
  夏は茹だるほど暑く、冬は体の芯から凍えるような寒さに襲われる、とても過ごし易いと
 は言えない場所。
  時間にも寄るが基本的に人は近寄らない為静かだった。

  最後の一つは当時から一人を好んだ俺にとっては好都合だった。
  肉親と言っても、所詮は血の繋がりがあると言うだけの他人に過ぎない。そんな奴と談笑
 するのも煩わしく、また言えにうろついていた親族の者もまた、煩わしい存在だった。そう、
 煩わしい存在だった。

  喧騒から離れ、自身の内に篭るでもなく、ただ呆けさせてくれる。
  道場は、俺にとってはそんな場所だった。
 

221 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2006/02/17(金) 01:22:46


  そんな静かだった場所に、唐突に音が響く。
  振り返って見て後ろに広がっていた光景は―――ただ一つの例外だった。

  恐らく過去の俺が、当時俺に八神の業を仕込んでいた男を殴り倒していた。
  この時間だけは道場と言う物に心底嫌気が差す瞬間。即ち、暴力が此処を支配する時間。
  この瞬間だけは、如何しても絶えられなかった。

  拒絶したとしても無理にでも引き摺られ、暴力を振るう事を強要される。
  草薙を殺せしか言わない人の型を相手に毎日のように繰り返される、殺人技術の伝達。

  草薙を殺せ、草薙を殺せ、クサナギヲコロセ。
  お前は草薙を殺す為に生まれて来た。お前の宿命は草薙を殺す事だ。お前の運命は草
 薙を殺す事に縛られている。草薙を殺せないお前に生きる価値は無い。草薙も殺せ無いよ
 うでは生きる価値も意味も何一つとして存在しない。怨め。呪え。そして、殺せ殺せ殺せ殺
 せ殺せころせころせコロセコロセ。

  ……随分とまあ、面白くない記憶だ。素直にこんな事を覚えていなくても良い物を……
  それもそうか。今でもそれをある意味では頑なに守ってきているのだから。

  唐突に声が響いた―――


  「……これならば……草薙も、殺せ、るだろ……う……」
  「フン……死体寸前のお前……いや、貴様に言われた所で説得力など無いな」
  「それで、良い……草薙を殺す為の礎となる、のも、悪くは……無い」
  「下らん……何故そこまで拘る。っと、これは何度聞いても同じ事しか繰り返さんか」
  「そう、だ。我、が一族、の悲願……」
  「聞き飽きた。さっさと生を手放すが良い。惨めにも生きる為に足掻いても良いが、所詮
 それは死ぬまでの時間が少しだけ長くなるだけだ。しかもその火傷では生き長らえても表
 は歩けまい。だからだ、死ね。…………死ね」

  変わらんな、昔から。
  ただ、口調が今の物へと近付いたのはこの頃だったか。
  つくづく嫌味な餓鬼だ。反吐が出る。
 

222 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2006/02/17(金) 01:23:12


  「……当主、の命に従、おう。必ずや、草、薙を殺して、くれ」
  「遺言を聞く訳ではないが、殺してやる。必ず、な」

  ―――やれやれ。
  こうも変わらんと余計に呆れてしまう物だ。
  昔から一つも成長していないと言う事か、それともこの頃から達観し過ぎているのか。
  どちらで考えてもあまり気分の良い物ではないのかも知れない。

  それでも、変わらずアレを殺すと言う気持ちを持ち続けていられるのはマシだろう。
  風化してしまわぬ憎しみ、殺意。
  その炎が未だ燈っているのだから。

  「草薙を殺す、か……『俺』を殺した罪、贖って貰おう」

  その呟きと共に、

                                             夢は途切れた。
 

223 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2006/02/17(金) 01:23:36


  目覚めればそこは何時もと何も変らない殺風景なリビング。テーブルの上にはグラスが
 一つ。中には琥珀の液体が注がれたままだ。如何やら眠ってしまったと言う事だろう。
  窓の外に細い三日月が浮かび、外が晴れている事は窺われる。
  その月を眺め、「俺」と言う歪な存在を省みる。


  ただ一人を殺す為に歩んできた人生は、果たして価値ある物と言えるのだろうか。
  ただ一人を殺す為に歩んできた人生は、果たして人生と呼ぶに相応しい物なのか。
  ただ一人を殺す為に歩んできた人生は、果たして「俺」の意思だったのだろうか。


  何度も己に問い掛けた。
  その度に答えは出ない。


  月を掴もうとするが如く、か。


  もう少し酒に酔ってみるとしよう。
  時期外れの月見酒も、悪くは無い。
 

224 名前:矢吹 真吾 ◆Fire/8X51U :2006/02/25(土) 22:53:50


>>185

  今日は試合が無いのでお休みの日です。
  疲労困憊(パシリ疲れじゃないッス!)でダラダラと過ごしています。


  俺だけ。


  草薙さんも八神さんも出掛けちゃってますからねー。八神さんが出掛けるのは少しだ
 け意外だった気もしないでもないんですが。まぁ、草薙さんや俺と一緒に居たくなかっ
 ただけかも知れませんね、これは。
  何気なく点けるテレビは旅番組。KOFの試合で色々行きましたけど、やっぱ旅行として
 行く訳じゃないんでなんか羨ましいッスね。のんびり温泉に浸かって、誰にパシラされる
 事もなく……ハッ!? 真吾、お前はパシリじゃない! パシリじゃないんだッ!

  ……ボケーッとテレビを眺めてよう。それが良いッスよね。
  精神の安定上。


  旅番組は終わって……ん? KOFの特番? しかも生? 今日のゲストは京&庵チーム?
  ハハッ……またまたご冗談を。俺が出ないのにそんな訳ない訳な……って、ちょ、おま、
 嘘!? しかも八神さんまで!?

  謀ったな! 草薙さん!

  「フハハハハッ! 真吾。君は悪くはないが、君のその職業が悪かったのだよ!」

  そんな声が、脳内に響く。
  呼ばれてないんスよね、絶対そうだ。俺は呼ばれなかっただけなんだ!
 

225 名前:◆Iori/GPRcE :2006/02/25(土) 22:55:12


  「それでは本日のゲスト、草薙京さんと八神庵さんです」
  「どうも」
  「……」
  「陰気だな、お前」
  「必要以上に話して如何なる?」
  「えー、それではインタビューの方始めても良いでしょうか? それと、一応ですね、
 生なんで……喧嘩は止して下さいね?」
  「そこの阿呆から聞きたいだけ話を聞け」
  「そこの陰気な猫背に話は聞かなくて良いから、始めようぜ? ああ、それと。喧嘩
 なんてしねぇよ。多分な」
  「それではまず……もう聞くまでもないですけど一応お名前をお願い出来ますか?」

  「草薙京だ」
  「八神庵だ」
  「何だよ、答えるのか?」
  「この程度はな。事故を起した原因にされても困る」
  「五秒だったか? でもそれはラジオだろ」
  「貴様の醜悪な顔が全国に流れるのが事故だ。少しでも映さんようにせんとな」
  「テメエ……」
  「……はい! 続いて行きますね。お二人がチームを組んだ理由を教えて頂けます
 か? 私としては……失礼な話だとは思うんですが、宝籤が当たるよりも低い確率だ
 と思っていたのですが……」
  「……聞くな」
  「あー、ノーコメントってオッケー?」
  「それは何故でしょうか? また何か惨事が起きる―――」

  「黄泉路を急ぐ気か? 貴様。聞くなといっている」
  「俺はそこまで言う気はねぇけど、これだけは如何しても言えないんだ。ま、一応納
 得して貰う為に言うとすれば、真吾が五月蝿かったから、かな?」
  「フン……まあ、そう言う事にしておこう」
  「はぁ……そう言えば、矢吹さんは如何なさったんですか?」
  「ん? 腹痛だって。内臓系は甘く見ると、なぁ?」
  「そうですか……残念ですね。(私が止めるのか? この二人を? 危険手当は出る
 んだろうか……)」
  「やっぱ師匠としちゃあ弟子を気遣うのが―――」
 

226 名前:矢吹 真吾 ◆Fire/8X51U :2006/02/25(土) 22:57:17





  クーーーーーーーサーーーーーーーーーナーーーーーーギィィィィィィィィィィ!!!




  俺も呼ばれたんだな!
  それなのに教えなかったんだな!
  俺の信頼を返せよッ!
 

227 名前:◆Iori/GPRcE :2006/02/25(土) 22:57:45


  「色々お聞きしてきましたが、これで最後です。優勝は狙えるでしょうか?」
  「当たり前だろ? 俺は何時でも何処でも俺の強さを証明してみせる。例え誰が相手で
 も草薙の日輪を止める事なんて出来ないぜ!」
  「取り敢えず、死なないだけの準備をしておけ。下手に死なれては困るからな」
  「えー、なにやら物騒な言葉が聞こえたような気もしますが、優勝するのは当然だと言
 う事でよろしいでしょうか?」
  「当然!」
  「弱者が敗れるのは当然だろう?」
  「それでは長い間お疲れ様でした。優勝インタビューできる事を楽しみにして、今回は
 お別れさせてもらおうと思います。それではまた」


  「フン……何も起こらないとでも思っているのか。平和だな」
  「言うなよ。偶には何も無い大会だって信じさせてやれ。今くらい、な」
  「そうは言うがな。気付いているのだろう?」
  「……お前に向かって炎が疼くからな。薄々」
  「ならば話は早い。早々に片を着けるぞ」
  「解かってるよ、んな事」
  「足を引っ張る様ならその場で殺す」
  「お前が引っ張るなって話しだぜ」

 

228 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2006/03/05(日) 01:38:56


>>201

  部屋を見渡す。
  それなりにデカイ液晶テレビでは映画が映し出され、隅々まで清掃は行き渡っている。
 ベッドもデカイ。ついでに言えば部屋の広さは格別だ。ルームサービスのメニューも充
 実してて、味に文句を付けるなんて出来やしない。
  俗に言う三ツ星ホテルのスウィート、って奴なんだろう。あまりにも俺には似合ってな
 い気がしないでもねぇ。
  神楽の奴は相当気を使ってこのホテルの手配をしてくれたんだろう。流石金持ち。


  それでもちーちゃんよ。
  俺は出来ればもっと気を使って欲しかった。


  広くなくても良い。飯が不味くても良い。ベッドが汚れてたって気にしない。
  だけど、


                           何で三人で相部屋なんだよ。



  四六時中俺にこの陰険野郎と顔を突き合わさせるなんて拷問を用意する花の女子大生
 は、彼氏が出来なくて当然だと思う。やっぱどっかズレてるんじゃねぇの?

  八つ当たりは終えて、これから如何しようか考える。流石に寝るには未だ早い時間だ。
  それでも隣で馬鹿面下げて寝てる弟子。その顔に濡れタオルを掛けようか思案しながら、
 ただ流れている映画を見て見る。
  題名なんて覚えてねぇけど、洋画だってのは解かる。アクションなのか恋愛物なのか、
 見てる野郎が野郎なだけにホラーとかサスペンスなのかもしれないが、話は中盤の山。コ
 イツも映画なんて見るんだな、なんて事をふと思う。人間らしい感情もあるんだな。
  字幕を目で追ってみれば―――

  ―――フン……結局ヒトは時として『自分が憎み嫌っていた物』と同じ存在になるのさ。
 

229 名前:草薙 京 ◆Q1mfyB/Kyo :2006/03/05(日) 01:40:05


  「クックックッ……」

  オイオイ、何処に笑う所が合ったんだよ? やっぱコイツの回路はどっか可笑しいな。

  「滑稽だとは思わんか、京」
  「何がだよ?」
  「今の台詞だ」
  「あ? ああ、あの自分が憎み〜とか言う奴か」
  「当然だ、馬鹿めが」

  神様、コイツの上から物を見た態度を如何にか更正して下さい。……無理か。神があ
 れじゃあな。

  「で、何が滑稽な訳だ?」
  「憎んでいる物と同じ、それで気付け」
  「ああ、そう言う事」

  こっちから願い下げだ、馬鹿野郎。

  「フン……興が殺がれた。続きは見たければ見ろ」
  「何だよ、どっか行くのか?」
  「貴様に行き先を言わねば外出も出来んのか?」
  「チッ……勝手に行け。部屋に戻れなくてもしらねぇからな」
  「戻る気など無い。貴様の阿呆面を見ているだけで虫唾が走る」

  ああ……やっぱりアイツの思考回路は可笑しい。憐れな奴だと蔑んでやるとしよう。
  で、本当にあの馬鹿は出掛けて、規則正しい寝息と、時計の針が進む音。映画の音声
 だけが聞こえる、そんな空間に早変わり。心なしか張り詰めていた空気も緩んだ様な気
 がする。
  さて、これから如何したもんか。映画を見るにしろ頭から見なきゃ話の内容も掴めたも
 んじゃねぇし、そんなに面白そうだとも思わないからこのまま続きを見たいとも思わない。
  かと言って他にする事と言えば、何かがある訳じゃねぇ。


  「ま、解からないでもねぇけど」


  ポツリと、呟いてみた。
  さて、本当に如何したもんか。

  鳴り響く電話。
  それは救いの手だった。
 

230 名前:八神 庵 ◆Iori/GPRcE :2006/03/05(日) 01:40:54


  空には月も星も輝かず、ただ暗澹とした雲が敷き詰められている。
  そんな夜に出歩く羽目になった事も憂鬱だが、何よりあの台詞が気に入らない。


  憎む物と同じになるなど、戯言も良い所だ。


  ……戯言と解かっていながら腹立たしいと言うのも矛盾しているが、それでも気分が悪
 い言葉には変わり無い。
  あの言葉をそのまま取ってしまえば、俺は奴と―――


  馬鹿馬鹿しい。


  奴と俺は交わる事が無い線のような物。
  同じ方向に進んだとしても、決して交わる事は無い。
  それは炎の色が、雄弁に語ってくれている。

  蒼の炎と紅の炎。
  その二つは消して混ざり合う事は無く、ただお互いを喰らい潰そうと争う。
  命果てるまで永遠に。

  「……酒でも飲むか」

  誰も通らないような裏通りに足を向け、そんなバショにある隠れたバーへと進んで行く。
  酒に溺れた所で拭えるような気分ではないが、飲まないよりマシだろう。


  「交わる事など―――」
 

231 名前:名無し客:2006/03/08(水) 19:26:19

たえず崖から身を投げて、
落下していく途中に
翼を生やしていかなければならんのさ

232 名前:名無し客:2006/03/13(月) 14:37:43

当たり前 を積み重ねると、特別になる。

233 名前:名無し客:2006/03/25(土) 22:27:36

庵さんお誕生日おめでとうございます。
ことしはどのように過ごされましたか??

京さん、ユキさんのお誕生日ちゃんとお祝いしましたか?(ニヤリ)


234 名前:名無し客:2006/04/09(日) 22:06:55

昨日は真吾の誕生日だったな、祝うの忘れてた

>>226
そういや真吾くん、君がTVに出てないから追っかけが
(´・ω・`)←こ〜んな顔してたぞ?

京の追っかけだと思ったが2000小説では違うんだな、君のアナザー。

235 名前:名無し客:2007/07/03(火) 21:25:400

つい最近、ここの再開を知りました…お帰りなさい!!
実はずううううっと待っていた次第で定期的に覗いてた。
嬉しくてドキドキしてる。

近日発売予定のMIAについて思うところを教えて。
あと、立体になった自分の出来栄えには満足ですか??

236 名前:名無し客:2007/07/11(水) 00:40:350






――消失。
 ――消滅。
  ――焦燥。
   ――傷痕。





                                      ――再生。








                   終わりに向かう為の。


                        再生。



 

237 名前:八神 庵 ◆XSG8Iori.Y :2007/07/11(水) 00:41:320


 三月二十五日、空は灰色の雲に覆われ、天の涙は頬を伝う。
 暗く、重苦しく、一筋の明かりすら存在できない、そんな日だ。
 生誕を祝う声が届くはずも無く、一人の時間は無為に過ぎて行く。

 BGMは窓を打つ雨音と、轟く雷鳴。
 救いのない協奏曲に身を任せ、救い難い狂騒曲を思い出す。

 世界とは無情なものだ。
 人間は無慈悲なものだ。

 誰一人として救えはしない。
 誰一人として生かしてはくれない。
 誰一人として、思い返す事もない。

 無情で、無慈悲で、救いがない。

 救われたいと願ったのは何時だったのか。
 助けてくれと手を伸ばし足掻いたのは何時だったのか。
 孤独と孤高の違いに気付いてしまったのは何時だったのか。
 隣に微笑んでいた「アイツ」をなくしたのは何時だったのか。

 何時だったのか。
 忘却する事こそが、生きる為に必要だった事に気付いてしまったのは。

 何時だって此処には救いに溢れた詩が満ちていた筈なのに。
 何時だって此処には手を差し伸べてくれるものが居た筈なのに。
 何時だって此処には、微笑んでくれる誰かが居た筈なのに。

 何時だって、気付けば失ってしまっていた。
 いや――気付けば壊してしまっていた。
 

238 名前:八神 庵 ◆XSG8Iori.Y :2007/07/11(水) 00:42:040


 この手で。
 この腕で。
 この血で。


 壊れていた。
 壊していた。
 壊し続けた。
 壊れ続けた。
 壊れたかった。
 壊れたかった?
 壊したかった。
 壊したかった?
 壊し続けたかった。
 壊し続けたかった?

 救いたかった。
 救いたかった?
 救われたかった。
 救われたかった?

 壊す事しか出来ないのに。
 壊す事しか出来ないのに?
 壊れる事しか出来ないのに。
 壊れる事しか出来ないのに?


 過去を思い返しても何も存在しなかった。
 そもそも、過去と言うものが何かも判らないから。
 現在を見ていても虚ろだった。
 現在の状況が巧く把握できないから。
 未来は見るまでも無く暗かった。
 未来など想像出来る筈もなかったのだから。
 

239 名前:八神 庵 ◆XSG8Iori.Y :2007/07/11(水) 00:42:370


 生きているのか、死んでいるのか。


 曖昧だった。
 曖昧過ぎた。


 空模様の方が、余程に判り易い。
 窓辺に立ち、煙草に火を点け、外に眼を向ける。
 肺に送り込まれる紫煙に味を感じなくなったのは、何時からだったか。
 もはや香りを愉しむという意味もなさなくなったそれに縋っているのは、人間的な部分を残しておきたいからか。
 馬鹿馬鹿しい。現実的に考えればニコチン中毒でしかない。
 それ以上の意味などない。

「煙は嫌いだけど、匂いは好きかな――」

 フラッシュバックした憧憬を握り潰すように煙草をもみ消し、二本目に火をつける。
 肺に送り込まれる紫煙からは、匂いも、味も、ない。
 あの頃から一度たりとも煙草は変えた事がないというのに。

――変わってしまったのは自分自身か。

 窓に写る自分の顔は、血色の悪い、いつも通りの無表情。
 窓に伝う雨が表情を歪めているが、零れる物など枯れ果てている。

 再び外を眺める。
 誰も出歩く事のない街は、死んでいた。
 外の暗さに合わせてか、随分早い時間から電灯が点いている様だが、死体安置室の風情だ。
 死んだ街に燈る明かりは、陰鬱な影しか伸ばしてはくれない。

 死神の影だ。
 鎌は既に首の皮を落とし、肉を繊維の一本一本を吟味し、味わい尽くすように、徐々に徐々に切り刻む。

 死の色。
 死の匂い。
 死の触感。
 死の誘惑。

 呪いの翳。
 その翳は、何処でも、何時でも、寄り添っていた。

 殺せ、殺せと喚き散らす、ヒステリックな声。

「生きて――」

 恨め、恨めと叫ぶ、血族。

「幸せに――」

 絶望しか、この世には、無い。
 

240 名前:草薙 京 ◆Kyo.K/ZxGI :2007/07/11(水) 00:43:410


 四月二日、空模様は雨。
 単車に乗って走る事もできない、と言う程ではないが態々出掛けるのは億劫で仕方ない空模様だ。
 四月と言えども、雨が降れば少し肌寒いのも理由の一つなんだけど。寒いのは苦手でね。

 この一年も色々な事があって、色々な事があり過ぎて、もう直ぐ新学期が始まってしまう。
 新学期、か。辞めちまおっかな、ほんと。制服に袖なんて通した記憶が此処最近ねえし。
 教室で机を並べて勉強ってのも、なんだかなぁ。
 学校に行けばユキに出会える事くらいしか得がねぇってのも、考えものだ。
 別に学歴で食ってくつもりは無いからな。

 ベッドに投げ捨てた雑誌を拾い上げて、パラパラと眼を通す。
 夏物の情報か――いつも思うんだが気が早いよな。まあ、鮮度の悪い情報に価値はねぇんだろうが、今この夏
流行るアイテムはこれ! とか言われてもピンときやしねぇってんだ。雑誌そのままっつーのもいまいちセンスねぇ
しな。

 それにしても、割りと暇だ。
 いつもは暑苦しい、ウザッタイだけの真吾も、こういうときには便利な奴だったと感じてしまう。

 パラパラと雑誌を捲って行って、辿り着いた最後のページには――KOFの宣伝かよ。
 今年も勿論、開催されるんだろうな……まあ、関係ねぇかなー。
 今年からは。

 どうしようもない因縁に毎度毎度巻き込まれるのは御免なんだよな。
「草薙」としてではなく、「俺」として。

 宿命だとか、運命だとか、下らないと思ってはいたが、此処まで笑えないなんてな。
 何時もいつも人を不快にさせるだけ不快にさせて、さようなら、だ。
 マジで勘弁して欲しいぜ。

 外の雨が手伝って、気分が暗く黒くなっていく。
 しとしとと窓を撃つ雨の音すら不快だ。

 道場でも行くか。
 鍛錬って気分じゃねぇけど、誰か居れば、誰か来るなら、ぶちのめしてみるのも悪くは無い。
 

241 名前:八神 庵 ◆XSG8Iori.Y :2007/07/11(水) 00:44:110


 雨の降る街を歩く人は少ない。
 傘も差さずに、となるとそれだけで稀有な存在となる。態々好き好んで濡れたがる人間と言うのは、居ないのだ
から。
 そんな少数派に属し、目的も無くただ歩く。

 数は少ないとは言え、奇異の視線が降り注いでいる。
 だが、そんなものはいつもの事だ。気にする必要も無い。

 ビチャビチャと歩く度に音がする。
 ビチャビチャと、耳を打つ。
 ビチャビチャと、踏みしめる。

 紅く染まった道を歩いている錯覚を覚える。
 腐臭がするように感じる。

 心臓が荒々しく不正確に波打つ。
 血液は視界を染め、それでも足りずに全身を駆け巡り、ポンプに負荷を与え続ける。
 負荷を与え続けられた心臓が痛み、血液の通る管もまた、膨張しすぎた結果、激痛を生み出している。

 痛みこそが生きている証だと言うのであれば、それはまったくの嘘だろう。
 痛みがあったとしても、生きていない人間など数多い。
 この世は行きながらに死んでいる人間が多い。多過ぎて、気付かないだけだ。

 死ぬ為に生きるのでもなく、生きる為に死ぬのでもなく、生きているから死ぬのでもなく。
 死んでいるから生きている。

 痛みとは、死んでいる事を自覚させる為の刺激でしかない。
 死んでいるのだから、早く死ねと、訴えるだけだ。

 カラン、と骨の倒れる幻聴――そこで意識が戻った。

 針のように鋭く冷たい雨が、体を打ち続ける。
 体温は根こそぎに奪われ、血液を抜き取った死体が歩き続ける。
 いつものように。
 

242 名前:八神 庵 ◆XSG8Iori.Y :2007/07/11(水) 00:45:240


 四月四日、空は灰色に覆われて、夕方からは雨だそうだ。
 景色は足早に俺を置き去りにして、風の心地良さと、排気音だけが唯一近くに感じられる。
 時期としては少しだけ早い海辺のツーリング。此処で背中に人の体温が感じられれば幸せなんだろうが、残念
な事に一人だ。これはこれで飛ばせるから悪くないんだが、寂しいものは寂しい。
 まあ、下手すりゃ雨だ。濡れて風邪引かれても困るし、一人の侘しさに比べればまったく問題はねぇな。

 アスファルトの照り返しがないツーリングは何処か物足りない。夏場は文句ばっかり言っている気もするが、身
を焦がすような暑さは切っても切れない縁だ。
 手間も掛るし、快適とは言えない乗り物だが、だからこそ愛着が湧くっつーか、まあ、そんなとこだ。

 特に何の意味も無く、走りたかっただけのツーリング。

 行きたいところに行って。
 食いたいものを食って。
 見たい景色を見て。

 自由気ままに、風来坊を気取ってみる。
 何時だって「俺」は「俺」として気ままに生きてきた。
 きっとこれからだってそうだろう。

 変わった事はあったし、そもそも変わった事ばかりだった。
 生きるか死ぬかで殴りあう日常ばかりが続いてりゃ、可笑しな人生だって胸を張って言える筈だ。
 自慢になんねぇよ!

――気を取り直して。

 目的っつーほどの目的がない非常に現代っ子の俺としては、特にやってみたい事がねぇんだよな。とは言え誰
かみたいな極端な思考じゃなくて良かったとも思っちゃいるが。
 とは言え、生きてるからなんとなく生きている訳じゃない。生きる目的を探す為に生きている―-なんて言えば聞
こえが良いが、結局生きる為の目的なんてねぇ。
 熱くなれるものは五万とあるだけマシなんだろうけど。

 生きているのか死んでいるのかなんていうのはきっと些細な問題だ。
 熱くなれる何かがあって、それを躊躇わずに口に出来るんなら、きっと生きているなんて言ってもいい筈だから。

 哲学的に物を考えるのは疲れるぜ……。
 後は特に何も考えずに走って、帰るとしよう。
 って、もう降ってきやがったか。
 

243 名前:八神 庵 ◆XSG8Iori.Y :2007/07/11(水) 00:45:580


 目的の無い散策にも少しの休息を。
 電車の音が煩いガード下で一息を付く。
 味も、香りもしない、くしゃくしゃな煙草に火を点け、空を見上げても月はなく、空は泣く。
 水を吸うと鬱陶しくて敵わない前髪を掻き上げ、肺に深く紫煙を落とし込む。

 何時も通り、乾いた空気だけが、吐き出されて。
 電車の音だけが、煩く響く。
 何時も通り、何の意味も無い、肺を汚すだけの行為に耽る。

 虚ろな――今。
 

244 名前:草薙 京 ◆Kyo.K/ZxGI :2007/07/11(水) 00:46:280


 ああ、クソ。帰るまでに何処かで休むか!?
 

245 名前:八神 庵 ◆XSG8Iori.Y :2007/07/11(水) 00:46:460


 バイクの排気音と、ヘッドライトの明り。
 

246 名前:草薙 京 ◆Kyo.K/ZxGI :2007/07/11(水) 00:47:110


 ん、先客か?
 

247 名前:八神 庵 ◆XSG8Iori.Y :2007/07/11(水) 00:47:340


 好機とでも呼ぶべきか、運命の悪戯は、制御は出来ないらしい。
 まあ、気付いてしまっている悪戯は悪戯と呼べないが。

 煙草を揉み消し、二本目に火を点ける。
 俺も、そして奴も気付いているだろう。
 だからこその、無言。

――肺に送り込む紫煙は、微かに、香りがする。

「なんでだよ……ったく」
「知るか」

 それでも、溜息と共に吐き出される空気は、何時も通り乾いていた。
 

248 名前:草薙 京 ◆Kyo.K/ZxGI :2007/07/11(水) 00:48:070


 つくづくツイていない日はツイてない。
 不幸と不運は連鎖してインフレして行くんだから性質が悪い。

 思わず漏らした独り言に対する反応は、酷く素っ気無い、いつもとは違う反応だった。
 まるであの時のように。

――どうでも良い話だぜ。

 どう足掻いたって仲良く手と手を取り合ってお友達って訳にはいかねぇ相手なんだし。
 濡れたままっつーのも気色悪くて嫌なんだが、そんな事を聞き入れてくれる相手じゃない以上は、仕方のない
事で、ここらで終わりにするには丁度良いシチュエーションだろう。

 雨の降るガード下。
 電車の音だけが響いて。

 邪魔が入る事も無ければ。
 誰の眼にも留まる事が無い。

 始まりは何時も雨、なんてフレーズがあったな。
 コイツと出会ったのは、雨だったかは覚えてねぇけど。
 終わりが雨だって良いんじゃねぇか。
 

249 名前:草薙 京 ◆Kyo.K/ZxGI :2007/07/11(水) 00:48:320


 誰も涙を流さないなら。

 代わりに泣いてくれる誰かが居てくれるのだから。

 それはとても。

 悪くないと。

 言っても良いだろうから。
 

250 名前:八神 庵 ◆XSG8Iori.Y :2007/07/11(水) 00:48:570


 気が付いたら何時も同じ事ばかりを言っていた。
 そして何時も同じ結末へと到る。
 諦める事なく出会えば戦い続けたけれど、何時も邪魔が入ってばかり。
 邪魔さえ入らなければ、すぐに殺す事は出来たのだけど。

 何度やっても、何度やっても、殺す事が出来なかった。

 あの炎は何度やろうとも翳る事なく。
 こちらの炎も飽きる事なく舌を伸ばし這い回る。

 大技をぶつけ合った所で実力の拮抗は揺ぎ無く。

 次は殺すと言いながら、それが何度も続いて此処へと到る。
 

251 名前:名無し客:2007/07/11(水) 00:49:240


「――さて、終わりにするか、京」
「ああ――手前の負けで、ゲームセットだ」
「受け取れ――貴様への手向けだ」
「あん?――なんだこれ」
「見て判らんか、阿呆が」
「煩ぇな、判ってるぜ。だからこそ、だ」
「もう――貴様にも飽きたのでな」
「あぁ?」
「世界に二つと無い代物だ――手向けには悪くない」
「んじゃ――手前の手向けにゃこいつでもやるよ」
「――くっ……はは」
「んだよ?」
「いや、何も無い」
「おい、一本寄越せ」
「―――――」
 

252 名前:八神 庵 ◆XSG8Iori.Y :2007/07/11(水) 00:49:430


 二本目の煙草を消し、三本目へと火を点ける。
 今しがた受け取ったばかりの――ジッポで。
 日輪が刻まれ、かなり使い古した感のあるそれは、蓋が若干甘いものの、悪くは無い作りだ。

 枯れた香りは、確かに感じられて。
 生きている事を久しぶりに実感し。

 死に逝く体も。
 一度限りの活力を燈す。

「――面倒な前置きは無しで良いな、京」
 

253 名前:草薙 京 ◆Kyo.K/ZxGI :2007/07/11(水) 00:50:060


 久しぶりの煙草の味。
 火を点けたジッポには細く鋭い三日月が彫られていた。
 手入れもきっちりしているらしく、無数の細かな傷意外に痛みは無い。
 意外と細かいんだな、アイツ。

 同じ匂いのする煙がゆらゆらと揺れて。
 熱くなれる一瞬がすぐそこにあって。

 生きている事を実感し。
 一撃必倒を誓う。

「ああ――望むところだぜ、八神」
 

254 名前: :2007/07/11(水) 00:50:300


 紅と紫の閃光。
 

255 名前:草薙 京 ◆Kyo.K/ZxGI :2007/07/11(水) 00:50:560


「結局こんな終わり方かよ」
 

256 名前:八神 庵 ◆XSG8Iori.Y :2007/07/11(水) 00:51:150


「――まったく、似合いの結末だ」
 

257 名前:草薙 京 ◆Kyo.K/ZxGI :2007/07/11(水) 00:51:420


「じゃあな――旅にでも出るぜ」
 

258 名前:八神 庵 ◆XSG8Iori.Y :2007/07/11(水) 00:52:010


「もう二度と出会う事も無いだろう」
 

259 名前:草薙 京 ◆Kyo.K/ZxGI :2007/07/11(水) 00:52:220


「それを祈るぜ――しぶとく生きんじゃねぇぞ」
 

260 名前:八神 庵 ◆XSG8Iori.Y :2007/07/11(水) 00:52:420


「案ずるな、所詮――八神は短命の一族だ」
 

261 名前:草薙 京 ◆Kyo.K/ZxGI :2007/07/11(水) 00:53:060


「手前は長生きしそうだから困るんだよ」
 

262 名前:八神 庵 ◆XSG8Iori.Y :2007/07/11(水) 00:53:230


「貴様が死ぬのを見届けるまでは死ねんな」
 

263 名前:草薙 京 ◆Kyo.K/ZxGI :2007/07/11(水) 00:53:490


「で――これ、どうするよ」
 

264 名前:八神 庵 ◆XSG8Iori.Y :2007/07/11(水) 00:54:080


「邪魔なものは始末して――俺も何処かへと脚を向けるだけだ。何時も通りにな」
 

265 名前:草薙 京 ◆Kyo.K/ZxGI :2007/07/11(水) 00:54:290


「オーケイ。手前と組むのは吐き気がするから、俺は向こうから行くぜ」
 

266 名前:八神 庵 ◆XSG8Iori.Y :2007/07/11(水) 00:54:460


「奇遇だな……俺はあちらへ向かうとしよう」
 

267 名前:草薙 京 ◆Kyo.K/ZxGI :2007/07/11(水) 00:55:070


「んじゃ――」
 

268 名前: :2007/07/11(水) 00:55:320




                「すぐ楽にしてやる」「行くぜ」


 

269 名前: :2007/07/11(水) 00:56:150




                空には朝日と、三日月が浮かんでいた。




                                                        Fin.

270 名前:書けませんよ。。。:停止

真・スレッドストッパー。。。( ̄ー ̄)ニヤリッ

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