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吸血大殲第57章−汝、狩り人たれ−

1 名前：緋皇宮神耶：04/10/31 10:21

ここは血を啜る夜の眷属――吸血鬼と、昼の世界を守る狩り人達の場……。
一体どれぐらいの間続けて来たのか忘れる程にその歴史は長く、深く、惨く、そして悲しい……
そして決して終わらないし、終われない……そんな場所――

だけど、そんな場にもたまには質問しにくる人もいるから、遠慮しないで……
その場合、回答者を指名してあげて……気が付けば返答してくれる筈だから……

次スレは、総容量480Kを超えた時に、“超えさせた人”が立てるようになってる。
でも、その人が気付いていない時もあるから……臨機応変に対応して……
総容量500Kが完全移行の目安……

age/sageは各人の任意に……下がりすぎている場合は上げる配慮があれば……いい。
ただし、メール欄に自分の出典は必ず入れて。コレは絶対。

2 名前：緋皇宮神耶：04/10/31 10:27

殺し合って何も残らない殲争にもルールはある……
以下を読んで，闘争に備えておいて――

―参戦基準の判断―
参戦基準は原則、『吸血鬼』に関係がある者とする。
これは原典が吸血鬼を取り扱っている、参戦者が吸血鬼、あるいは狩人である事と定義する。

―逸脱キャラクターの処遇について―
逸脱キャラクターとは原典が吸血鬼と無関係であるものと定義する。
此処はあくまで『吸血大殲』なのだから、吸血鬼と無関係な闘争は決して許されん。
認められるのは、あくまでも『吸血』というロジックに従った闘争のみ。
逸脱者を使いたいのであれば、その闘争を『吸血大殲』に仕立て上げること。
雰囲気がどうこう、という問題じゃない……。
明確かつ説得力を伴った『吸血』のロジック、それのみが必要……

異端が異端として見られないようにするには、相応の努力と実力が必要だよ……
可能性は無限大……やり方ははいくらでもあるから――
既存の闘争やZEROスレ（http://www.appletea.to/~charaneta//test/read.cgi?bbs=ikkoku&key=059908024）
などに目を通して、先達の闘争を参考にするのもいい。

参加者は以上のことを念頭に置いて戦って……生き残るために、明日を勝ち取るため、復讐を果たすために。

関連リンクは>>3、参戦の為の自己紹介テンプレートは>>4。
新規参戦者は>>3のリンクにある『吸血大殲闘争者への手引き』に目を通して、>>4の自己紹介テンプレートを使って自己紹介をして……

3 名前：緋皇宮神耶：04/10/31 10:30

関連リンク……

■『吸血大殲闘争者への手引き』
http://www.geocities.co.jp/Milkyway-Orion/4504/vampirkrieg.html

■吸血大殲予備板（名称不定、現在の本拠地）
http://www.tpot2.com/~vampirkrieg/bbs/vampire/index.html

■吸血大殲闘争専用会議板（闘争の会議専用）
http://jbbs.shitaraba.com/game/1721/

■参加者データサイト『吸血大殲　Blood Lust』（左手作成・過去ログも全てこちらにあり）
http://members.tripod.co.jp/humituki5272/taisen/index.html

■吸血大殲本家サイト
『From dusk till dawn』
http://www.uranus.dti.ne.jp/~beaker/

『戦場には熱い風が吹く』
http://www.vesta.dti.ne.jp/~hagane/

■前スレ
吸血大殲第５６章「散り往く者に墓碑銘は無く」
http://www.appletea.to/~charaneta/test/read.cgi/ikkoku/060968108/
■太陽板の質問スレ
吸血大殲/陰　其の15　混沌屋敷『眩桃館』地下　〜大殲資料の間〜
http://www.alfheim.jp/~narikiri/narikiri/test/read.cgi?bbs=TheSun&key=1021881487

■広報、情報スレ
吸血大殲ZERO　〜二つ目の序章〜【吸血大殲広報スレ】
http://appletea.to/~charaneta/test/read.cgi?bbs=ikkoku&key=1037803005
　

4 名前：緋皇宮神耶：04/10/31 10:31

参戦用テンプレート

出典　：
名前　：
年齢　：
性別　：
職業　：
趣味　：
恋人の有無　：
好きな異性のタイプ　：
好きな食べ物　：
最近気になること　：
一番苦手なもの　：
得意な技　：
一番の決めゼリフ　：
将来の夢　：
ここの住人として一言　：
ここの仲間たちに一言　：
ここの名無しに一言　：

5 名前：緋皇宮神耶 ◆Hiogu1XLj2 ：04/11/01 08:57

Blood And Thunder〜緋皇宮神耶VSバレンタイン兄弟
導入

　日本の北端、ホッカイドウ地方。
八年前に起きた学連総長の暗殺事件以降、この地は人外の闊歩する魔境となった。
　すなわち、吸血鬼の、吸血鬼による、吸血鬼のための連合、「ナイトメア・アイズ」の登場である。
　それまで彼の地を治めていた連合はたった二週間で壊滅した。
圧倒的な戦闘力、圧倒的な生命力、そして何より、圧倒的な恐怖。
　人間をたやすくぼろ雑巾のように引きちぎり、己の妄念に従い、殺し、喰らい、貪り、啜る。
これは、その魔境で起きた挿話の一つである。


　濁った雨混じりの風が、どうどうと吹きすさぶ。雨にけぶる古城、トランシルバニア城。
その奥の更に奥の間。玉座に腰掛ける一人の女がいる。
　金糸を紡いだかのような腰までの髪。白蝋の如き肌を、闇を織ったような漆黒のドレスに包む。
その両目は血のように紅く、なお冷たい。溜息をつく仕草すら一幅の絵のように様になる。
　しかし、その美しさは悪魔が作り出したという表現こそ、相応しい。
彼女の美は、人の血によって作り上げられたものなのだから。

　女の名はカミラ・バトリー。
この地、ホッカイドウを支配する吸血鬼の聖母にして、ナイトメア・アイズを率いる総長である。

　カミラは頬杖をつき、降り続く雨を眺めて、溜息混じりに頬にかかる己の髪を弄う。
　気に入らない。彼女は先ほどから同じことばかり思っていた。
最近、配下の者たちが次々に滅ぼされているのだ。しかも、ほぼ毎日。
　気に入らない。我等は人を喰らう最強の種族。人間などただの家畜に過ぎない。
その家畜が牙をむくとは不遜もいい所だ。ただ狩りたてて殺すだけでは飽き足りぬ。一体どうしてくれようか？
　ふぅ。と、また溜息をカミラがついたとき、壁を通り抜けて配下の一人がカミラの前に傅く。

「カミラ様。急を要する言伝が御座います」
「何かしら……？梶山が私の許可なく女の血を吸ったの？それとも、ミレルがまた牧場の管理にしくじった、とでも？」
　部下を見もせず、カミラはまた髪を弄う。
「いえ、それが……これを……」

　部下が脇に抱えていた物を渡す。ワイヤレスLANとカメラが取り付けられた、見るからに頑丈なノートPC。
カミラはそれを開け、Enterキーを叩く。HDDのアクセス音の後、一拍置いて、画面が表示。
　どこかの軍事基地のように見えた。だが、どうも地下に作られているらしく、そこここに灯る照明のオレンジ色がやたらと目を引く。
オンライン、それもリアルタイムのビデオ・チャット。
『おい博士（ドク）。ちゃんと繋がっているのだろうな』
　スピーカーから男の声が流れた。笑みを歪めた、嫌な響きの声だ。
『えー、少々お待ちを。まったく、日本製は頑丈さだけが取り柄のようで――おお、繋がりました』

　高解像度の液晶モニターに、声の主が現れる。
　小太り――いや、肥満の部類に入るか。まるで自分は地獄の軍団長だとでも思っているかのような、不遜な顔の男。
見るだけで吐き気がする。
『Guten Tag. お嬢さん（フロイライン）。そちらのお天気はどうかな？
　こちらは地の底でね。晴れているのか雨なのかも判りかねるよ』
「かんかん照りの素晴らしいお天気よ、“総統代行”殿？」
　言葉の端に険と毒を乗せ、カミラはでぶの男に返す。
　ビデオ・チャットの相手は、南米に潜伏する第三帝国の忘れ形見、“最後の大隊（Letzt Batallijon）”。
それを率いる“少佐”と呼ばれる男。
『その呼び方は止めてくれ給え。どこで聞き耳を立てられているか判ったものじゃない』
「では、少佐（大隊指揮官）と呼びましょうか？尻尾を巻いて南米に逃げ込んだ第三帝国の敗残兵くずれが、
　我等ナイトメア・アイズに何の御用？」
『何、大したことではないさ。困っている君等を少々手助けしたいのだよ』

6 名前：緋皇宮神耶 ◆Hiogu1XLj2 ：04/11/01 08:58

>>5（続き）

　カミラの眉が微かにすがめられた。
「どこでそんな事を……」
『フロイライン。我々を甘く見ないほうがいいな。我々のシンパはいたる所にいる。
　そう、君の連合、ナイトメア・アイズの人員の中にもね』
　頬の肉を歪める様な、嫌な笑いを少佐が浮かべる。ここでカミラがPCを叩き壊さなかったのは、幸運としか言いようがない。
『聞けば、君等の同胞が毎日のように狩られていると言うじゃないか。咲く花の場所こそ違え、
　その茎を一にする輩（ともがら）として、そんな事を見過ごすわけにはいかんよ。
　そこで、だ。私の部隊から腕利きを二人と兵隊を少々、君等に貸し与えてあげようと。こういう訳だ』
「待ちなさい。私は了承するつもりなど毛頭ないわ」
『なぁに、ただの心ばかりのプレゼントとでも思ってくれればいい。
　存分に使って使って使い古して、使い倒して、使い潰して、使い捨ててくれたまえ。それに――』
　少佐は喜色満面で後をこう継いだ。
『プレゼントなら、もう君等の元に送ってしまったのだよ。“拙速に勝る巧遅無し”とは誰の弁だったかな。
　ではフロイライン、女性との歓談を打ち切るのは名残惜しいが、こちらもそれほど暇ではない。Auf Wiedersehen（ごきげんよう）』

　画面がブラック・アウトするのと、カミラがPCを乱暴に閉じるのとがほぼ同時。
「……あなた……何時までそうしているのかしら……」
「は？」
　部下がきょとんとカミラを見た。
「……目障りよ、死になさい」

　斬。

　PCごと部下はカミラの爪で挽肉にされた。床に引かれた赤絨毯が、その血を吸って更に赤く染まる。
　なんて気に入らない。何ゆえに南米の穴もぐら如きの手を借りなければならないのか。
　そう思ったときに部屋の扉が開き、人影を招き入れる。一人は白、一人は黒。そしてその後ろには武装した影、影、影。
これが少佐殿の言う、“心ばかりのプレゼント”か。

「貴方達が少佐殿のプレゼントのようね。言って聞くような者でもないでしょうから、言うべき言葉はただ一つ。
　『好きにやりなさい』。こちらの吸血鬼も好きに使ってくれて構わないことよ。命令はそれだけ。行きなさい」
　カミラは鬱陶しげに手を振る。
　雨は、いつの間にか止んでいた。

　かくて、殲滅の宴の幕は上がる――

7 名前：バレンタイン兄弟（Ｍ）：04/11/01 09:01

>>6

〜〜　数刻後　ホッカイドウ某地区　〜〜


　先刻まで降り続いた雨は止んだものの、空は緞帳の様な厚い雲に覆われ
日の光は一片たりとも地上に届いてはいない。
　そんな陰気な空の下、さらに空気を重くさせるような罵声が響いた。

「ンだよ、ココの連中はよー。ビビルならビビルで抵抗の一つもして見せロっての」

　黒のニット帽に黒のスウェットの上下。顔中にピアスをつけた若者、
ヤン・バレンタインが不機嫌を隠そうともせずに叫ぶ。

「コッチは、養豚場の豚殺しに来てるんじゃネェっだよ」
　愚痴と一緒に先刻吸ったばかりの鮮血に塗れた唾を吐き捨てる。
「おかげで、血が不っ味ぃー不味ぃー。アイツら良くこんなもん吸ってられっな」

「黙れ」

　そんなヤンの愚痴を白のスーツに身を包んだ眼鏡の男、
ルーク・バレンタインが一言の下に切り捨てる。

「『好きにやれ』なんつったて、これじゃ気分も萎え萎えだっつーの」
　しかし、ヤンの方は一向に応えた様子も無く延々と愚痴り続けている。

「黙れと言っている」
　ルークの言葉にかすかな怒気が含まれる。
「なーー、兄ちゃんもそー思うだろ、なーーー」
「仕事前に、いつもいつもお前はやかましい。仕事はクールにやるもんだろう」
「はい、はいはい。またそれかよ、わかってる。わかってますって」
　ヤンがおどけたように肩をすくめる。
　その仕草が癇に障ったのか、ルークの口調がさらに鋭くなる。
「確かにチンケな仕事だが、それ故に万に一つの失敗も許されん」
「失敗？　ありえねーありえねー。朝メシ前もいいとコロだぜ」

　ヤンが、自分の懐から標的の写真を取り出す。

「こんなションベン臭ぇメス餓鬼の一匹や二匹」

　写真を軽く指で弾く。たったそれだけのことで写真の上半分が散り散りに破け飛んだ。

「神耶だか咲耶だか知らねーが」

　獰猛な笑みを浮かべ



「　ブ　ッ　殺　し　て　や　ら　あ　！　！　」

8 名前：緋皇宮神耶 ◆Hiogu1XLj2 ：04/11/01 09:04

Blood And Thunder 〜緋皇宮神耶VSバレンタイン兄弟〜
>>7

　昼があれば夜が来るのは必然の理である。
　街が眠るにはまだ早い刻限。しかし、この時間に出歩こうなどと考える馬鹿はここにはいない。
みな明かりを消し、早々と家の奥に閉じこもる。
　夜は奴らの時間だ。戸と窓に閂はかけただろうか？
　寝床の周りに聖水は撒いたか？
　忘れてはいけない。戸口に茜と山査子の蔓を巻かなくては。

　だが、今夜は少し違っていた。夜の帳の下りた大通りを歩く者がいる。
歳はわからない。良く言って少女、悪く言っても少女だ。
　短く切られた金髪に、月明かりを弾く黒いコート。感情の欠片も見通すことの出来ないその瞳は、血のように赤い。
その背には、身の丈を軽く超えるトランクケースが背負われていた。
　旅行者か。否、この土地に踏み込むなど自殺志願者でもしない。
少女の名は、緋皇宮神耶という。

「………………」
　神耶が脇路地の闇を見た。
「いるんでしょ……」

　その声に応じるかのように、三体の影が神耶を取り囲む。言わずもがな、吸血鬼。

「貴様だな。我々に逆らう愚か者め」
「我らの同志を殺めた罪、貴様の血で贖って貰うぞ」
「もっとも、泣き喚いて命乞いをすれば見逃してやらんでもないがな」

　にやにやと吸血鬼たちが笑う。自らが絶対者だという余裕の笑みだ。それを見据え、神耶はため息一つ。

「馬鹿じゃないの……？こんな見え透いた手に引っかかって……おびき寄せ……って言葉……知ってる……？」
　神耶の右手がコートのポケットに沈む。引き抜かれた瞬間、そこに握られたコンパクトサイズのS&W M945は、相手をポイントしていた。
　銃声。サイトの延長線上にいた吸血鬼が、眉間を撃ち抜かれて灰と化す。
弾丸は硝酸銀とニンニクを混合したカプセルを内蔵した、銀の45ACPだったからだ。

「き、きさ――」
　今度は左手がコートのポケットに。取り出したのは、工業用の丸鋸を凶悪にしたような回転ブレード。
　親指でスイッチを押し込むと、モーターのパワーで刃が回転し、横一閃。胴体を真っ二つにぶった切られ、もう一匹が灰に。

「ひ……！」
　最後の一匹が背を向けて逃げ出そうとする。
「………………ル……」
　神耶の唇が何事か呟く。次の瞬間、背のトランクケースが開き、鋭い爪を持った巨大な手が伸びてそいつを捕らえた。
「…………さよなら……」
「ぎゃあああああああああっ！！」

　ずしゃっ。

　熟れたトマトを握りつぶすように吸血鬼が飛び散った。
　返り血が跳ねて、神耶の頬にぽつんと点を一つ描いた。そして、するりと巨大な手はケースに収まり、蓋が閉じる。
これで終わりではない。通りの向こうに神耶は声をかける。
「そっちが本命みたいね……出てきたら……？」

9 名前：バレンタイン兄弟：04/11/01 09:05

>>8

　パチ…パチ……パチパチ……パチパチパチ――――

　鮮血と共に降ろされた静寂と言う帳を調子外れの拍手が引き裂いた。
　賞賛の響きなど1mmgも含まれていない、嘲笑の拍手。
　音の主は、闇を切り取ったかのような黒ずくめの姿で現れた。

「おー、スゲースゲー。かっこいー、しびれるー、あこがれるーーー」
　その声にも、表情にも愉悦と嘲笑を色濃く滲ませた男、ヤン･バレンタインがそこに居た。
「それに比べて――」
　足元に先刻握りつぶされたときに吹き飛んだのか、一人の吸血鬼の頭が転がっている。
　流石に吸血鬼と言うべきか、首だけになりながらもソレにはまだ何とか息があった。
しかし――
「つっかえネーなー、テメーらはよー」
　ヤンは何の躊躇いも感慨も無く、それこそ路傍の石を蹴飛ばす気安さで

　　　　　　　　　　　その首を踏み潰した。

　血と脳漿が飛び散り、赤と白の花を咲かせるが、それは瞬き程に時間で灰となり色褪せてゆく。
「囮役ぐれーキッチリこなせっての。撒き餌は撒き餌らしく獲物誘導して来いってんだよ！」
　自らの台詞にさらに怒りがこみ上げてきたのか、何度も何度も足を叩きつけ、灰を撒き散らしていった。

　暫く繰り返すと幾分溜飲が下がったのか既に灰も残っていない地面に唾をはき捨て、先刻から一人佇む少女へと向き直る。
　そのドブ川よりも暗く濁り切った瞳を向けると、これ以上無いほど明確な侮蔑を含んだ挨拶を送ったのだった。

「ハーイ、はじめまして。インバイで、ビッチで、どうしようもないクソ女の神耶ちゃん、コンニチワー。僕様チャン達はテメーを殺すためにわざわざ海を越えてやってきたバレンタイン兄弟ーーー。弟のヤンでーーす。よーろーしーくーねー」

10 名前：緋皇宮神耶 ◆Hiogu1XLj2 ：04/11/01 09:08

Blood And Thunder 〜緋皇宮神耶VSバレンタイン兄弟〜
>>9

　ぱち、ぱち、ぱち。
　神耶の前に、ぞんざいな拍手をしながら黒一色の男が現れた。側の壊れかけた街灯が、そいつの姿をはっきりとさせる。

　にたにたした笑み。顔面にはこれでもかとピアスがじゃらじゃらとつけられている。
　バレンタイン兄弟の弟、ヤン・バレンタインは神耶を殺すために海を渡ってきたという。

「囮役ぐれーキッチリこなせっての。撒き餌は撒き餌らしく獲物誘導して来いっつーの」
　足元に転がっていた首をあっさりと踏み砕くヤン。
「……こっちがはめられた……ってこと……？別に、どうでもいいけど……」
　相手はこちらの裏の裏でもかいたつもりなのだろうが、神耶にとってそれは些細なことでしかない。
　どうせ、魔物は殺すだけなのだ。また、神耶がため息ひとつ。

「殺してみたら……？そうなる前に……私がお前たちを殺す」
　場の空気が、一気に氷点下まで凍りつく。感情を見せない紅の瞳が、す、と細められた。

「そう……私は……お前たちの存在を許さない……私はお前達を…完全に…完膚無きまでに……殺す……」

　それは、神耶の言葉は、間違いなくバレンタイン兄弟への宣戦布告に他ならなかった。

11 名前：バレンタイン兄弟（Ｍ）：04/11/01 09:10

>>10

「フヘハ……ハハ、ハヒヒハ、ハアァハアハハハ――」

　その宣戦布告に、ヤンは堪えきれない愉悦を溢れさせた。

「そうそう。そうこなくっちゃ。いい加減無抵抗なヤツばっかで飽きてきてたのヨ」
　でもな――そう呟ながら、指を鳴らす。
　乾いた音が鳴り響く。と同時に、神耶の周囲に突如ジュラルミンの盾とSMGで武装した集団が、
一切の気配を感じさせることも無く出現した。
　いや、彼らを眼前にして尚気配は感じられない――どころか、腐臭すら漂ってくる。

　――食屍鬼（グール）――吸血鬼に殺さた、意思を持たぬ不死者（アンデット）
その数、ゆうに二十を超える

「これだけの数を相手にどーするよ？」
　言いながら、まるで影に溶け込むかのごとく盾の奥へと立ち位置を移す。

「HEY野郎ども、そこのションベン臭いPussyにきっつーーーい一発ぶち込んでやりな」

　神耶に見せ付けるかのようにゆっくりと指を合わせると、

　　　　　　　「―――――行け」


　ヤンの指が、葬送の鐘の如くホッカイドウの空に鳴り響いた。

12 名前：緋皇宮神耶 ◆Hiogu1XLj2 ：04/11/01 12:05

Blood And Thunder 〜緋皇宮神耶VSバレンタイン兄弟〜
>>11

　金切り声と聞き間違えるように笑ったヤンが、ぱちりとフィンガースナップ。
軍靴の音を響かせて現れる、盾と短機関銃で武装した影、影、影。その数、実に二十。

　どことなく挙措がぎこちない。と、饐えた肉の臭いが神耶の鼻を刺す。

「……食屍鬼（グール）……」
　神耶の眉がしかめられる。
「これだけの数を相手にどーするよ？」
　盾の向こうからヤンの下卑た挑発。だが、乗る必要すらないと神耶は判断した。
殺すときに無駄口をたたくのは馬鹿のやることだから。

「ルヴァウル……やつらを……殺す……」
　神耶の唇が、今度ははっきりと言葉を紡ぐ。
刹那、背のトランクケースが開いて異形の瞳がぎょろりと覗き、男とも女とも違う中性的な声を響かせた。
　これが神耶の下僕、ルヴァウルだ。
＜ごきげんよう、わが同族よ。あなた方には何ら恨みはありませんが、これも我が主人の命。
　大人しく殺されてやって頂けますか＞

　ずるり、ずるり、ずるり。

　ケースの隙間から、鉤爪の生えた巨大な手が飛び出す。その数三対六本。
　神耶の両手がポケットに。引き抜いたのはM945コンパクト二挺。
「殺す」
　両手を広げてトリガー。延長線上のグール二体を射殺。同時にグールも発砲を開始した。
　サプレッサーによって発射音を抑えられた銃声の中を、まるで舞うように動き、トリガー。
＜あんまり張り切らないでくださいよ、神耶。私の出番が減っちゃうじゃありませんか＞
　ルヴァウルの手が、固く固く握り締められて突き出される。
　向かってきたグールが、その拳の一撃で盾ごと粉々に砕かれた。もう一本の手は標的をその爪で易々と引き裂く。
さらに残りの腕でグールを貫き、叩き潰し、轢き潰し、打ち砕く。
　まるで雨のように、黒く腐れたグールの血が飛沫いて散った。

＜ふむん、やはりグールはグールですか。どこの誰かは存じませんが、
　グールに武装を施して、組織行動をさせようとした点は評価しませんと。しかし――＞
　もぎ取ったグールの首をお手玉するルヴァウル。
＜不死身の無敵軍には程遠いようですねぇ＞

　ごきっ。

　空き缶を握りつぶすようにその首が砕かれた。

「ルヴァウル……無駄口が多い……」
　神耶の左手がポケットに沈み、回転ブレードを取り出す。
　斬撃一閃。
　股下から眉間まで真っ二つにされたグールが灰に。
　拳銃をポケットに収め、神耶の右手が腿に仕込んだホルダーから、
シャープペンシルほどの木の杭を三本抜く。

「……これで、終わり……」
　投げつけられた杭は狙いたがわず、グールの脳幹、心臓、頚椎を貫いて灰に変えた。
「……キツい一発……ぶち込まれた気分……どう？」

グールは、時計の秒針が一回りしただけでその数を半分減らされていた。

13 名前：バレンタイン兄弟（Ｍ）：04/11/01 12:07

>>12
　ヒュウ――

　ヤンの口から思わず漏れた口笛。それは賞賛か、それとも……

「ったく。やってくれたな、クソ女」
　再び指が鳴る。その合図と同時に、鈍重ながらも整然とした動きでグールたちが隊列を組み直す。
　盾を掲げヤンの前方に3×3、方形の陣を敷く。
「もう、てめぇは簡単に殺しゃしねぇ。犯して、殺して、もっかい死体を犯してやらあ」
　盾の影から次々とSMGの銃口が出現する。

「行軍（マーチ）！！」

　ヤンの怒声と共、グール達のにじり寄るかのような行進が始まる。
「ヒャアハァァ」
　その声は行進の足音にかき消される事無く、神耶達の耳に届いた。



「小便済ませたか？　神様にお祈りは？　部屋の隅でガタガタ震えて命乞いをする心の準備はＯＫ？」

14 名前：緋皇宮神耶 ◆Hiogu1XLj2 ：04/11/01 12:09

Blood And Thunder 〜緋皇宮神耶VSバレンタイン兄弟〜
>>13

　防御陣形を取り、グールが行軍してくる。何を考えたのか、神耶は脇目も振らずに突撃。
銃は撃つだけ無駄だ。盾に弾かれる。ブレードも同じだ。

　横一列に揃えられたSMGの銃口から、一斉に弾丸が吐き出されていく。その弾道を完全に見切り、神耶は地を蹴る。
地面と平行に跳ぶ神耶。同時にトランクケースからルヴァウルの手が伸び、地面を叩く。
前方向のベクトルを上方に変換し、彼女は空を舞った。

　空中でコートのポケットから野球のボールほどの大きさの玉を取り出し、取り付けられたピンを抜いた。
連動して発光するLEDが秒刻みに消えていく。
　その光があと二つというところで、神耶がそれをグールの集団に投げつけるのと、
気づいたヤンが、手近にいたグールから盾をもぎ取って隠れるのとがほぼ同時。
　目も眩むような真っ青な光が炸裂した。光を浴びたグールがぼろぼろと灰となって散る。
　対吸血鬼用の閃光紫外線手榴弾。それが玉の正体。
＜ち、ちょっと神耶！それ、取って置きなんですよ！？こんなところで使ってどうするんですか！！＞
「……今使わなくて……いつ使うの……？」
　ふわりと着地し、ルヴァウルの異議をさらりと流す。

「ヘ、ヘァハハハハハァ！！やってくれッじゃねーか、子猫ちゃんよー！」
　隠れていた盾を乱暴に投げ捨て、ヤンが腰の後ろに手を回す。
「やーっパただ殺っちまうだけじャモノ足ンねーわ。両手両足撃ちぬいて、血の海ン中で犯り殺してやるぜ」
　腰の後ろから取り出したのは二挺のSMG。
「そら、レッツサタディナーイト！！」
　小太鼓を打ち鳴らすような銃声。神耶は両手に回転ブレードを握り締め、スイッチON。
見る見るうちにびっしりと聖句を刻まれ、シルバー・コーティングされたブレードの回転速度が上がる。
「遅い……目で見てかわせる……」
　回転する刃が銃弾を弾いて火花を散らす。瞬く間に間合いにすべり込むと、優雅な舞のように脇をすり抜けた。
それだけで、ヤンの右脇腹がざっくりと切り裂かれて煙を上げた。

「がああああぁぁぁアアアＡＡＡＡＨＨＨＨＨＨッ！！BIIIIIIITCH！！」
　怒り心頭に達し、ヤンは滅多やたらに乱射乱射乱射。だが、やはりブレードに弾かれるか、当たらない。
神耶がヤンとすれ違うたびに、彼の体に斬撃が刻み込まれていく。
　そして、神耶が回転ブレードをヤンの左腕に振り下ろした。血の尾を引いてすっ飛んだ左腕は、地面に落ちる前に灰となる。
「Fuuuuuuuuuuck！！オレの腕がァァァァァァァァッ！！」

　氷よりも冷たい深紅の瞳でヤンを見下し、神耶は告げる。
「わかったでしょ……格が……違うの……
　灰は灰に、塵は塵に……塵に過ぎないお前たちは、速やかに塵に還れ……」

　神耶は両手のブレードを振り上げ――

15 名前：バレンタイン兄弟（Ｍ）：04/11/01 12:11

>>14

　　　BBangg!!

　銃声は、一発に聞こえた。しかし

　カラン、と音を立て、心棒を撃ち抜かれた二つの回転ブレードの刃が、音を立て転がった。

　カツカツカツカツ――――――――――――

　最早、動く物の居ないホッカイドウの街並みに、アスファルトを叩く乾いた靴音が響き渡る。

「さて、そこまでにしてもらおうか」
　噎せ返るほどの血臭のなか、場違いなほどの落ち着いた声が届いた。
　闇に染まることを拒否したかのような純白のスーツ。自ずから光を放ちそうな豪奢な金髪。僅かな光をも照り返す眼鏡……
「兄貴！！」
　神耶の足元で、ヤンが歓喜の声を上げる。
　しかし表れた白い男、ルーク･バレンタインは、そんなヤンに冷たい一瞥をくれただけで、
「お前は……いつもいつも、やかましいからそういうことになるのだ。いいかげん、クールに仕事をこなす事を覚えろ」
　にべも無く言い放った。

「さて――」
　右手にソウドオフしたカービンライフルを構えながら、鋭い眼光を神耶へと向ける。
「弟達をココまで追い詰めるとは、なかなかの腕前だ。しかし――」
　言いながら、自らの影の中からもう一丁のカービンライフルを取り出す。
「私をNEの雑魚共と同じに思わない方が良い」


　　　　　　BBBanggg!!!

　神耶が反射的に引き抜いた木杭の手裏剣を、その手から放たれる前に全てを打ち抜いた。

「言ったはずだ。NEの吸血鬼どもとは性能（スペック）が違うと！！」

　直後、人間の反射神経を遥かに越えた速度で、大地を、壁を蹴る。
　その速度に置いて行かれた足音のみが空間に響く嵐となり、吸血の鬼が少女の柔肌に牙を突き立てんと襲い掛かった！！

16 名前：緋皇宮神耶 ◆Hiogu1XLj2 ：04/11/01 12:13

Blood And Thunder 〜緋皇宮神耶VSバレンタイン兄弟〜
>>15

　銃声。ヤンに止めをさそうと振り下ろされた回転ブレードが撃ち砕かれた。
「……誰よ……」
　かつかつと靴音を闇に響かせて現れた白スーツに眼鏡の男、ルーク・バレンタイン。
「兄貴！！」
　ヤンが歓喜の叫びを上げた。

「こいつの兄……？ならいい、殺す」
　ホルダーから一挙動で木の杭を抜き、投げつけようとした刹那、それは悉くルークの小銃に撃ち抜かれて砕けた。

「……こいつ……弟とは違う……」
　神耶の眼が険しくなる。
「弟達をココまで追い詰めるとは、なかなかの腕前だ。しかし――私をNEの雑魚共と同じに思わない方が良い」

＜手強そうですねぇ。ですが、魔物はすべからく滅するが我が主の誓い。退く訳にはいかないのですよ。
　だから、滅ぼされていただけますか、バレンタイン兄弟様＞
　ルヴァウルもケースから腕を伸ばし、ルークを威嚇。

「では私も、お前が私達を滅ぼせるかどうか、試してみよう――」
　ルークの姿が掻き消え、声が後から響く。あまりの速さに、音が追いついていないのだ。

　ガガガガガガガガガガガガガッ

　四方八方から響く騒音と聞き違えるようなルークのステップ。常人では視認することすらできまい。
神耶の視覚でも、白く霞む影を視認するのが精一杯だ。
「言ったはずだ。NEの吸血鬼どもとは性能（スペック）が違うと！！」

　神耶は冷静に両ポケットからM945コンパクトを抜いてトリガー。標的の未来位置を予測して撃つも、当たらない。
「……速い……ッ…………」
　ホールドオープン。マガジンキャッチを押し、空マガジンを捨てる。袖口でバネの音がするや、
新しいマガジンが飛び出し、装填される。スライドストップを解除し、初弾をチェンバーに収める。

　構えたその先にルークの姿があった。その顔たるや。ぐわりと開かれたその口腔に並んだ、ぎざぎざの牙。
それがものすごい勢いで神耶の血を喰らおうと迫る。
　そこは吸血鬼を殺してきた神耶、咄嗟に首を傾け吸血鬼の接吻を拒否。しかし、体勢が僅かに崩れたのがまずかった。
「フッ、馬鹿が」
牙をかわされたルークが死角から繰り出した蹴りが、神耶の腹にクリーンヒット。
　スリングショットで打ち出された石ころのように神耶は飛んだ。飛ばされた。飛んでいた。
落下地点は店をたたんで久しい雑貨屋のショーウィンドウ。受身も取れずに突っ込んだ。
　砕けて舞うガラス片が、月明かりを弾いてきらきらと輝く。

＜神耶！神耶！しっかりしてください！早く立ち上がって！！＞
　ルヴァウルの手が倒れ付した神耶を揺する。突っ込んだ際に割れたガラス片で、神耶の体にはあちこち切り傷が出来ていた。
「……が……ぁ……が、はッ……ッ――」
　力なく神耶が立ち上がる。よろよろと踏み出すが、三歩目で吐血した。アスファルトに大輪の血の華が咲く。
「内臓、循環機能にダメージ……回復には時間が要る……」
　それでも神耶は退かない。吸血鬼相手に背を向けるのは死を意味するから。

17 名前：バレンタイン兄弟（Ｍ）：04/11/01 12:15

>>16

「ほう。その傷でまだ動けるのか」
　僅かに驚嘆したかのようなルークの口調には、少なからぬ賞賛の響きも含まれている。
　しかし、その表情には一欠けらの慈悲すら存在していなかった。

「……ッ……ッ――」

　苦しい息を吐きつつ、両手のM945コンパクトの引鉄を絞る神耶。しかし――

「無駄だ」
　無造作に大股で歩み寄りながらも、全ての銃弾を紙一重でかわしていく。
　そのまま神耶の眼前まで歩み寄ると、右手のカービン銃を眉間へと突き付けた。

「チェックメイト」

　眼鏡の奥の瞳に剣呑さが増す。
「反撃しても構わん。最も、貴様ごときの性能で……！？」
　一瞬、訝しげに細められた瞳は、直後に驚愕とともに大きく見開かれた。
「フ……フフフ……フハハハハハハハハハハハ――――――」
と、同時にルークの口から盛大な笑い声が響いた。
「あ、兄貴！？」
　グールの手からその腕ごとSMGを毟り取ったヤンが、兄の突然の奇行に思わず驚愕の声を上げる。
　それほど、ルークの笑いは異様なものがあった。
　標的を目前に置きながら、銃口を突きつけることも忘れ、癲癇を起こしたかのように体を震わせながら白い吸血鬼は笑っている。

　それからどれほどの時間が流れたのだろうか？
　永遠に続くかと思われたルークの哄笑は、始まりと同様唐突に終わりを迎えた。

「クックック……なるほど。今回の実験はそういう趣旨か……」

　神耶に比べればはるかに長身のルークは、文字通り彼女を見下しながら問いかけた。

「おい女。貴様――アレの実験体の生き残りだな？」

　再び眉間へとライフルが突きつけられる。
　その声には、嘲笑と、侮蔑と……落胆が込められていた。


「随分と舐められたものだな。この程度の出来損ないに我ら兄弟が駆り出されるとは」

18 名前：緋皇宮神耶 ◆Hiogu1XLj2 ：04/11/01 12:17

Blood And Thunder 〜緋皇宮神耶VSバレンタイン兄弟〜
>>17

　実験体。この言葉が神耶の心にぐさりと突き刺さる。
「私……は……」
「何だ。この期に及んで自分は人だとでも言うつもりか。笑わせる。
　人間ではないものは皆、“化け物”なのだよ」
　ルークのライフルが神耶の眉間に押し付けられる。

　出来損ない――
　化け物め――

　研究所から飛び出した際、死にかけた研究員が自分に言った言葉――それと同じことを、ルークが言った。
「出来損ないは出来損ないらしく、ごみ溜めの隅で朽ちて果てていればいいものを。まあいい」
　ルークの銃が火を噴く刹那、神耶の両手が霞んだ。拳銃をポケットに収め、無手となる。
　伸びきったルークの手を取り、合気の技のように捻る。ルークの肘間接が枯れ枝のようにへし折れる。
あわせてがら空きのわき腹に蹴りを叩き込んだ。蹴りの威力に負けて肘が千切れ、ルークが吹っ飛んだ。
　あの小さな体にこれだけの力が詰まっていようとは、誰が思っただろうか。
　千切り取ったルークの腕が握っていたライフルをもぎ取る。手に力をこめただけで、ライフルが粉々に握りつぶされた。
「……出来損ないでいいじゃない……その出来損ないが……お前たちを殺してやる……」

　淡々とした口調に変わりはないものの、神耶は明らかに怒っていた。全身に負った切り傷が瞬く間に治癒。
「ルヴァウル」
　ケースから巨大な手が伸びる。
＜神耶。貴女は貴方らしい生き方をすればいいんですよ。何者にも縛られず、何者にも屈しない。
　それが自由というものです。さあ我が主、ご命令を。眼前の化け物を殺し、滅ぼしせしめる、たった一つのお言葉を＞
「命令はただ一つ（オーダーイズオンリーワン）。全滅（オールディストラクション）」
＜承りました。我が主（マイマスター）の命ずるがままに＞
　ポケットから予備の回転ブレードを取り出す。刃が回転するのと同時に駆け出した。
速さはさっきまでとは比べ物にならないほど速い。瞬く間にルークに肉薄。
＜神耶をなじった罪、その身でお支払いして頂きましょう＞
　握り締めたルヴァウルの拳がルークの顎にヒット。惚れ惚れするほどにきれいなアッパーカットが炸裂。白いスーツが宙を舞う。
相手が体勢を立て直すより早く跳躍。
「死ね」
　今度はがっちりと両手を組み合わせたルヴァウルのナックルハンマーが、ルークを地面に叩き落す。
半秒の差で神耶が着地。アスファルトに埋まったルークの頭を、ルヴァウルの手ががっちりと握り締める。

＜丈夫なだけ、壊し甲斐がありますねぇ。今度はこういう趣向は如何です？＞
　ルークの顔面をアスファルトに押し付けて引きずり回す。路面に顔が摩り下ろされて血のラインを描いた。
とどめにレンガ塀に叩きつける。

「……来なさいよ……それとも……仲間がいないと何にもできないの……負け犬」

　呆然と立ち尽くすヤンにむかって神耶は言い捨てた。

19 名前：バレンタイン兄弟（Ｍ）：04/11/01 12:18

>>18

「……負け犬！？…………仲間が居ない？」
　そう呟いたヤンに浮かんだ表情は、怒りではなく、嘲りだった。

「やっぱ、小娘だわテメェ」

　同時に、グールの腕を握り潰しSMGを発砲。
　狙いも何も無いめくら射ち。神耶を目印に出鱈目にばら撒かれた銃弾が、壁を地面を抉り濛々と土煙を舞い上げる。
「ヒハッヒャァ！！」
　奇怪な歓声を上げヤンが跳躍。神耶から溢れた血溜りに顔面から跳びこむ。

　直後――
　　　　　　じる…ちゅばちゅば……ぺちゃ…びちゃ………


　生理的不快感をこれでもかと引出す、不快な吸引音。
　アスファルトに溜まっていた神耶の血液が、文字通り音を立てて消えていく。
　同時に、ヤンの体の傷が瞬く間に消えていった。
　全ての血を飲みきり顔を上げる。
　自らの引きちぎられた左手の付け根を見、舌打ちを一つ打つと、
「ま、これでも無ぇよりはましか」
　自らが握り潰したグールの右腕を、そこに押し付けた。
　するとあろう事か、傷口が修復されると同時に、死体の腕が癒着した。

「へっ！　やっぱ化物とはいえ、処女の血はキクねぇ！！」

　腐りかけた左の右腕で口元の血を拭うと、自らの影の中から右腕で刃渡り60cm以上はあろうかという、巨大なククリナイフを引出した。

「さあ、パーティはまだまだこれからだぜ、子猫チャン」

20 名前：バレンタイン兄弟（Ｍ）：04/11/01 12:20

>>19（続き）

　同時に、大量の瓦礫が崩れ落ちる轟音が響く。
　濛々と舞い上がる土煙の向こう、レンガの山の上に、ルークが立ち上がっていた。

「そう、貴様は吸血鬼を甘く見すぎている」

　言いながら、ひしゃげた眼鏡を投げ捨てる。見たところ目立った外傷は認められない。
　路面には、まるで矢印のように血痕が残っているのにも関わらず、だ。

「そして我々は、吸血鬼と同等の、否！　それ以上の能力を備えている」

　再び、影の中からソウドオフされたカービンライフルを二丁引出す。
　右手に構えた一丁には、刃渡り30cmほどの銃剣が取り付けられていた。


「さあ、第二ラウンドをはじめよう」

21 名前：バレンタイン兄弟（Ｍ）：04/11/01 12:21

>>20（続き）

「ヒャァハア！！」

　怪鳥の羽音の如き笑い声とともに、ヤンが宙に舞い上がる。
　左の右手に握ったままのSMGを再び乱射。
　今回は意図的に、あえて神耶の周囲を狙い撃つ。

「ふん！」

　それに合わせ、ルークの二丁ライフルが正確に神耶の立ち位置を射抜く。
　そして、射撃と同時に加速。
　ヤンのナイフが、ルークの銃剣が同時に神耶に襲い掛かる。

「いっただきぃ！」
「我ら兄弟の連係、貴様如きにかわせはしまい！！」

22 名前：緋皇宮神耶 ◆Hiogu1XLj2 ：04/11/01 12:23

Blood And Thunder 〜緋皇宮神耶VSバレンタイン兄弟〜
>>19-21

　下品な音を立ててヤンが路面に散った神耶の血を啜り、もぎ取ったグールの腕をくっつける。
「浅ましい……」
　傍らのレンガの山の上にはルークが立っていた。あれだけ痛めつけられたにもかかわらず、眼鏡がひしゃげているだけで、
後は傷一つない。

「さあ、パーティはまだまだこれからだぜ、子猫チャン」
　ヤンが己の影から凶悪にひん曲がったナイフを抜き。
「さあ、第二ラウンドをはじめよう」
　ルークが銃剣つきのカービンを携え――

　二人が同時に動いた。
　白と黒の旋風から火線がほとばしる。
　一つは周囲を撃ち抜いて退路を断ち、一つは確実に神耶を狙ってくる。

「いっただきぃ！」
「我ら兄弟の連係、貴様如きにかわせはしまい！！」

＜やはり、甘い。かわす前に叩き潰すという選択肢を失念していましたか？＞
　ルヴァウルの手が伸びる。同時に神耶も地を蹴った。
「……殺（シャ）」

　ルヴァウルの片手がヤンのナイフを受け止める。残りの腕がヤンの両手をまとめて引き千切る。
とどめにボディブロー。

　神耶。ルークの銃剣を右手のブレードで受け止める。押し込まれる刃先をいなし、ルークの周りを一回転。
血飛沫が満月の空を彩った。同時に宙を舞ったのはルークの右腕と左足。外科医も見惚れるような鮮やかな切り口だった。
　駄目押しに回転ブレードをルークの顔面に。鼻の中ほどが真一文字に斬られた。のけぞるルーク。

「戦場じゃ臨機応変に対応するもの……」
＜戦術がパターン化していますねぇ。それじゃあ、私たちに勝てる道理がありません＞

　回転ブレードを構えなおす。
「もう、十分でしょ……そろそろ終わりにしない……？十分あなたたちも生きてきたんだし――」

23 名前：バレンタイン兄弟（Ｍ）：04/11/01 12:24

>>22

「ふべらっ！！」

　赤黒い吐瀉物と血液を撒き散らしながら、奇妙な格好でヤンが宙に舞う。
　再び顔面から着地すると、二度三度とバウンドし、ようやく停止した。
　既に頚椎がありえない角度に曲がっているが、未だ何とか起き上がろうともがいている。

　その様は、潰されかけた昆虫のソレを連想させた。





「くそっ」
　片手、片足を失いながらも、残った四肢を使い何とか神耶から距離をとろうとする。
　が――

「！！」

　突如、眼前に出現した壁が、地面であると気付くのに数瞬を要した。
　そして、気付いた時は既にアスファルトの壁に激突。
　その勢いのまま、前転するようにして仰向けになったルークの視界に、宙を舞う自らの右足が映っていた。

「馬鹿な！　馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な！！」

　残った左手で芋虫の如く這いずりながら、何とか神耶と距離を取ろうと足掻く。
　しかし、懇親の力で蠢くソレも少女の一歩にすら及ばない。

　絶望に顔を歪ませながらも、視界の隅にあるものを捕らえると、観念したかのように少女へと向き直る。

「わ、我々は…か、完成態だ！　きき、貴様如き不完全品に！！」

　絶叫と共に残った左腕を突き出す。
　仕込まれた小型拳銃が左手に出現し、神耶の姿を捉えた。


「ふぃぶふぇ、ふぉうるあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！」

　同時に、意味不明の絶叫を上げ、背後から撃ち抜かれた回転ブレードの刃を咥えたヤンが飛び込んで来る。
　支えの無くなった自らの頭部を回転させるその姿は、まさに人間回転ブレードと呼ぶに相応しい有様であった。

24 名前：緋皇宮神耶 ◆Hiogu1XLj2 ：04/11/01 12:26

Blood And Thunder 〜緋皇宮神耶VSバレンタイン兄弟〜
>>23

　「馬鹿な」と慄いたルークの袖口から小型拳銃が飛び出し発砲。
後ろからは先に壊された回転ブレードの刃を咥えたヤンが、支離滅裂な叫びを上げて頚椎の折れた頭を振り回して飛び掛ってくる。
　神耶はルークの弾丸を軽く首を傾けただけで回避。後ろのヤンに対しては――
「ルヴァウル」
　異形の手が閃いた。まるで子供が蜻蛉でも捕まえるようにあっさりとヤンをその手に握りこむ。
＜弟様だけ先に片付けても寂しいでしょう。兄上様も一緒に死出の旅路というのもいいんじゃないですかねぇ＞
　もう一本の手が、ルークも捕らえる。
「放せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ！！」
「ブゥルアアアアアアアアッ！こンの腐れビッチがァァァァッ！！」
　巨大な手に捕らえられた二人が、必死で逃げ出そうともがく。
＜五月蝿いですねぇ。いい加減覚悟を決めたらどうなんですか？夜族（ミディアン）ともあろう御方がみっともない＞

　ルヴァウルの手が大きく持ち上がる。同時に神耶はポケットに片手を入れ、ある物のピンを抜いた。
＜では、ごきげんよう。冥府の魔王によろしく言っておいて下さい＞
「ばいばい……」
　異形の両手が打ち合わされる。二匹の吸血鬼がぶつかる瞬間、神耶はポケットから取り出したそれを軽く放った。

　ぐちゃっ。

　ルークとヤンが馬鹿でかいルヴァウルの両手に押しつぶされ、続いて真っ青な光に焼かれた。
神耶が放ったのは紫外線手榴弾の最後の一個。
　もはや原形をとどめないまでに叩き潰され、紫外線に焼かれた二匹は――無くなった。
　後には一握りの灰だけが残った。その灰も風に吹かれて散る。
「出来損ないに殺された気分……どう……？」
　神耶の問いかけに答えるものはいない。言葉だけが、満月の夜を漂っただけだった。

25 名前：緋皇宮神耶 ◆Hiogu1XLj2 ：04/11/01 12:28

Blood And Thunder 〜緋皇宮神耶VSバレンタイン兄弟〜
>>24

＜神耶！紫外線手榴弾が残っていたなら残っていたと、何で言わなかったんですか！＞
「……だって……聞かなかったでしょ……」
　ルヴァウルの抗議をさらりと流す。
＜それは屁理屈でしょう！＞
「どちらにしろ、勝ったし、殺したから……何も問題ない……」

　くぅ。
　殺し合いがあった場所には似つかわしくない、かわいい音が。

＜おや神耶。何ですか今の音＞
「………………」

　くぅ〜〜〜。

　また、音。
＜ははぁ……なるほど＞
　ルヴァウルの目が、笑った。
「……お腹、空いた……」
　先ほどの音の正体は何でもない、神耶のお腹の音だったのだ。
＜そうですね。一仕事終わりましたし、ご飯にしましょう。開いているお店があればいいのですが＞
「……食べるのは、私じゃない……」

　てくてくと、夜に沈む街を神耶が歩く。
その頭の中からは、先ほど戦った吸血鬼のことなど、綺麗さっぱり無くなっていた。

了

26 名前：緋皇宮神耶 ◆Hiogu1XLj2 ：04/11/01 12:33

Blood And Thunder 〜緋皇宮神耶VSバレンタイン兄弟〜　レスまとめ
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感想があるなら、感想スレッドに書いてくれると嬉しい……
じゃあ、さよなら……

27 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：04/11/08 21:05

『―――お前は、星に憧れたことがあるか？』

　彼はお喋りな人だった。出会ってから別れるまで、ずっと口を動かしていたような気が
する。口端を皮肉気に吊り上げて、飽きもせずひたすらと語り続ける白髪の少年。

　彼は、無駄口に重ねながら殺したんだ。
　弓塚さつきというわたしを。
　殺したんだ。
　恐怖に脅えて、助けを乞うわたしを。
　嬉々として口で嬲りながら、肉体でも嬲り、殺したんだ。

『天高く、光輝くあの星を羨ましいと思えるお前に、一つ良いことを教えてやろう。
　この世には二種類の人間がいることを―――お前は知っていたか？
　特別な人間と……そうでない人間。世界は大雑把に別れてこの二種類で成り立っている。
　特別な人間は常に光り輝いている。皆から注目され、とても常人が体験することは叶わ
ない人生を歩む。
　人はそれを天才と言ったりする。時によっては、神と崇めたり、悪魔と畏れたりもする
らしい。
　まぁ、得てして"本当に"特別な人間とは自分が特別だと自負したりしないし、己の数奇
な運命を好みもしないものなのだが―――

　特別ではない人間は、そうは思わない。

　憧れ、羨望し、自分もあのように格好良くありたい、と思う。
　そんな彼等彼女等が"特別"になる方法は、一つしかない。

　―――星になるのさ。

　恒星の光を受けて、輝く星になるのさ。
　恒星とは―――即ち、初めから"特別"だったモノのことだ。常に、どんなときでも光り
輝いているモノのことだ。
　星はそんな選ばれた者達の光を反射させて、自らも輝いているように思わせる。

　どうだ、女。
　おまえも―――なりたくはないか？　例え一時でも、光り輝いてみたくはないか？

　……おまえにチャンスを与えてやる。
　次に目覚めたとき、そこが天国だったなら―――おまえは光を反射することすらできな
いゴミクズだったということだ。早々に諦めるがいい。
　だが―――だが、もし赤い瞳越しにこの世界を見れたのなら。強大な力と圧倒的なまで
の生命を手にしてたのなら。そのときおまえは、

　星になれたということだ』

28 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：04/11/08 21:05

>>28

　特別な―――人。
　手に届かない人。

　薄々だけど、分かっていた。
　わたしの特別な人は、きっと本当に特別な人なんだって。
　同じ教室にいて、同じ黒板を見つめて、同じ空気を吸っても、彼はわたしや他のクラス
メイトとは違った。
　特別だった。
　輝いていた。
　白髪の少年は言う。
　特別な人とそうでない人とでは、住んでいる世界が違うのだ、と。
　だから、一緒になること叶わない。遠くから見上げることしかできないのだ、と。

　でも、
　わたしはそれで満足できなかった。
　見上げるだけで満足なんてできるわけがなかった。
　追い着きたかった。
　あの人に追い着いて――― 一緒に輝きたかった。
　あの人と同じ世界に行きたかった。

　だって、憧れだったし、
　羨ましくもあった。
　そして何より

　好きだった。

　どうしようもないくらいに好きだった。
　好きで好きでたまらなかった。
　遠くから見ているだけじゃ満足なんてできない。
　そんなので終わるなんて、イヤだ。
　あの人が好きだ。もっとあの人のことを知りたい。一緒にいたい。わたしがあの人を見
つめるように、あの人もわたしを見つめてほしい。わたしだけを見つめて欲しい。
　ああ、そのためにはならなくちゃいけないんだ。
　わたしも、光り輝く"特別"な人に。
　輝いて、煌めいて、あの人に見つめられるようにならなくちゃいけないんだ。

　わたしはだから、

　星になるしか無いのかな、と思った。

29 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：04/11/08 21:06

>>27>>28吾妻江漣ｖｓ弓塚さつき　『人殺しの気持ち』


　……かつ、かつ、かつ。
　アスファルトの地面、爪先で叩いてリズムを取る。
　……かつ、かつ、かつ。
　一定のテンポで鳴り響く渇いた靴音。それに合わせて、メロディを口ずさむ。小鳥のさ
えずりのように、か細い声で。

「♪――――メリーさんのひつじ、ひつじ、ひつじ……」

　選曲に意味は無かった。何か唄おう思ったら、これが真っ先に浮かんだから唄っただけ。

　―――歌謡曲はそれなりに知っているつもりだったんだけどな。

　家のＣＤラックに詰め込まれた音楽アルバムを思い出す。当たり障りのない流行歌。自
分のお金で、自分の意思で買ったつもりなんだけど―――不思議と、好きだから買った、
という記憶が無い。

　わたしが最後に買ったＣＤ―――確か、藤枝さんがお薦めしてくれたんだっけ。

　……そうやって他人に流されてきた自分。
　わたしが好きだから、わたしが欲しかったから、わたしが聞きたかったら―――そう言
うの、全然無いよ。
　だから、こんな時に唄える歌も無い。
　童謡を唄うわたし。―――でも、こういうのもたまには悪く無い、かな。なんて思った
りもする。別に、誰かに聞かせるわけではないのだから。
　ただの暇潰し。時間が早く過ぎてくれるなら、何だって良い。

　歌声と一緒に、白い息が吐き出された。身体を刺す寒気。もう、冬も真ん中だ。
　かつかつかつ、地面を叩きながらわたしは歌い続けた。メリーさんのひつじ、ひつじ、
ひつじ……。

「……メリーさんのひつじ、かわいいな」

　ピタリ、とそこで口を閉じた。地面を叩くのもやめ、完全に身体を凍らせた。
　―――あーあ、ついに来ちゃったね。
　約五十メートルの距離。どんな耳の良い人でも、わたしの歌声を聞き取れるはずがない。
そのまま、夜の闇に溶け込むように気配を消した。


　数分後。
　薄暗い街灯の明かりに照らされ、一人の女の子が姿を見せる。
　黒い髪。黒い瞳。わたしと同じブレザーの制服姿。
　女の子があたしの前を通り過ぎる。―――わたしに気付かずに。
　彼女はアパートの一室―― 一階、自動販売機群の手前の部屋――の玄関の前で立ち止ま
った。何気無く、そして注意深く周囲を見渡すと、女の子は制服のポケットからキーを取
り出し、玄関の鍵穴に差し込んだ。

　一歩、わたしは足を踏み出す。闇から抜け出し、街灯の光が身体に当たる。目の前には
女の子の背中。満面の笑みを浮かべて、わたしは言った。

「こんばんは、吾妻江漣さん」

　クラスメイトへの挨拶の言葉――――不自然は無い。
　時と場所、そして吾妻さんがわたしの接近に気付かなかったことを覗けば、の話だけどね。　

30 名前：エレン ◆a9Elen2oPw ：04/11/08 21:10

>>27>>28 吾妻江漣VS弓塚さつき　『人殺しの気持ち』

冬の20時過ぎ･･･クリスマスの四日位前。
気温は摂氏1度前後。明日は雪が舞い降りるかもしれない。
この国に来てからの初の雪が。

一般に温暖なこの国に辿り付いてから早8ヶ月。
街はイルミネーションの電光に溢れ、人々は何時も以上に浮ついていた。
普段大人しい親友で通っている美緒も何処か浮かれた模様で、早苗に唆され
兄･･･吾妻玲二とパーティーに来ないか等と今日、勧誘してきた。

「･･･潮時、かしらね」

玲二が少しでも喜ぶなら。彼自身を取り戻せるなら。
そう思い（無論、インフェルノへの対抗手段の存在、という理由があったにせよ）
この国への潜伏わたしは決めた。
そして彼は･･･良くも、悪くも、変わっていったしまった。多分、わたしも。

馴れ合うように心の内を吐露して、「親友」とわたしを呼ぶ友人。
彼を巻き込む訳にもいかず、一人芝居と思い込み時間を裂いて彼女の家まで行き…
4時間も話に付き合って今帰宅したわたし。
銃を持たずとも平穏に渡ってゆける生活に、誰かに寄りかかる事ができる生活に心地よさを感じ始めている
事が怖かった。

既に形骸化しているかもしれない用心をドアの前で行い･･･鍵穴にキーを挿したとき。
聞き覚えのある柔らかな声が耳に響いた。

31 名前：吾妻江漣 ◆a9Elen2oPw ：04/11/08 21:12

>>30　吾妻江漣VS弓塚さつき　『人殺しの気持ち』

「･･･さつき！･･･。なんかちょっと久しぶりだよね。どうしたの？」

わたしは驚愕の声をそのまま｢こんな時間にどうしたの？」の驚きへと転化し、よき友人を
即座に装った。この距離にまで人の接近を把握できなかったのは初めてだったから。

弓塚さつき。
明るい茶色い髪の毛が顔の両端で可愛く揺れる私のクラスメート。
余り話した事はなかったけれど、よく気が付く子で男子からの人気も高いみたいだった。
早苗-----窪田さんに言わせれば
『あーいうのはテレビの向こうで眺められておしまいのタイプ』らしいけれど。

たわいもない雑談。その合間にわたしは彼女のデータを脳内よりフルに引き出す。
そう。
彼女は今月の上旬にあった期末テストにも彼女は出席しておらず･･･確か、
11月28日以来彼女はクラスに顔を見せていなかった筈。
教師は言葉を濁し･･･クラスメートは勝手な憶測を興味半分に垂れ流していた。
テスト期間に入り、彼女への注目が減った事からわたしの興味もそれていた･･･。


鍵をそのまま引き抜いて、わたしは彼女に向き直る。
目尻をできる限り細く柔らかく、友好を表す顔にして。
そして振り返り見る彼女の顔。
血の気がまるでないような、これから降るであろう粉雪のような白面だった。
学校指定制服のブレザーに外套もつけないで･･･夜分に微笑む彼女の顔。

彼女は何処か･･･冬の訪れと共に変わってしまったみたいだった。
秋の赤く暖かい色彩を無味乾燥なモノトーンが支配し、殺し尽くすように。
彼女の人の反応を楽しむような余裕の笑顔。饒舌。

胸騒ぎが彼女を家に上げる事を間接的に拒ませた。

手袋も嵌めていないのに、汗が自分の手に滲む。
間が、少し辛い。彼女の意図が読めなかった。
･･･念を押すように、わたしは眉の角度を1割引き下げ、困惑の表情を彼女に突きつける。
手を胸の前で組んで身体をやや揺する「凍え」のギミックもおまけにつけて。

「兎に角･･･こんな所で話もなんだから。どこか･･･ミスドでも行こう？
部屋、暖房今入りが悪くて、もう、『ありえない！』って位寒いから･･･」

32 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：04/11/08 21:20

>>30>>31
吾妻江漣ｖｓ弓塚さつき　『人殺しの気持ち』

「ううん、ここで良いよ。すぐに終わるから」

　大仰な動作で凍えて見せる吾妻さん――彼女、帰国子女って聞いたけど、これが“オー
バーアクション”って奴なのかな――に、微笑みを投げ掛けた。
　ほんと、まったくもってわざとらしい動作だ。
　他の"人達"にはそれが可愛くも見えるんだろう。
　けど、わたしには戦慄を覚えるほどの恐怖を孕んだ道化芝居にしか見て取れない。

　吾妻江漣。
　半年ほど前に海外から転入してきたわたしのクラスメイト。可愛くて、元気も良いのに、
なぜかまったく目立たない不思議な女の子。
　てっきり吾妻玲二くん――同学年にいる彼女のお兄さん――と一緒に帰ってくるかと思
ったんだけど……へえ、意外だな。

「わたし、ね。吾妻さんに――あ、“江漣”さんって呼んでも良いかな？――江漣さんに
少し教えて欲しいことがあって……それで、わざわざ押し掛けちゃったんだ」

　ごめんね、と苦笑しながら謝った。
　わたしの教えて欲しいこと。分からず、江漣さんは首を傾げた。笑みは絶やさずに。わ
たしが返事を待たずに名前で呼んだことは気にしてないようだ。

「こういうことって……ある程度まで一人でやれるんだけど―――そのある程度に辿り着
いちゃうと、その先はどうしても進めないんだよね」

　教えてもらいたいこと。期末試験の追試の話よりも、遙かに大事なこと。
　彼女を無視する形で、わたし独り言のように喋り続けた。地面に視線を落としながら。

「江漣さんは……ほら、わたしの先輩みたいものでしょう？　―――わたしより、ずっと
上手くやれるから……」



　　　　だから、教えて欲しいんだ。



「ヒトの上手な殺し方を、さ」

　顔をあげた。微笑んだ。真紅の双眸で、彼女の瞳を覗き込んだ。黒塗りの瞳孔の奧で、
わたしの瞳が欄と燃えていた。

33 名前：吾妻江漣 ◆a9Elen2oPw ：04/11/08 21:21

>>32　吾妻江漣VS弓塚さつき　『人殺しの気持ち』

「やっぱりちょっと、家･･･寄ってく？」

わたしは遠慮のない口調で呆れながら･･･「吾妻江漣」として諭すように話してやった。
「エレン」にとって、彼女は全然わかっていないから。
彼女のある種の平凡さとイノセンス。
そこに私は、自分が見透かされているような嫌な感情を持った。
だからその場は自分らしくなく、さつきに深く関わりたくなった。
鍵を開け、部屋に通した。

「適当に座ってて。今、コーヒーでも持ってくるから」

そう言ってバッグをベッドに投げながら彼女を通した「吾妻江漣」の部屋。

親が買い与えた事になっているピアノが隅に置かれ、洋服箪笥･･･UFOキャッチャー
で貰ったゲームの登場人物の縫い包みが３，４、乗ってる･･･とか、木のベッド。これは
ホテルのみたいにラジオと時計が着いていて、有名なエッセイスト（本人は小説が本業と主張する）の本
や小説が入った棚つきのやつ。
そしてブラックのパイプ椅子、それとお揃いの机。横にテニスラケットとジャージが掛かってる。

･･･そこはそんな、ちょっとだけ真面目そうな女子高生の普通の部屋が作られていた。

　なかなか温まらない電気ストーブを尻目に、わたしはコーヒーを置くとベッドに座った。
中々座る場所を決めかねていたさつきには机の前のパイプ椅子に座ってもらってる。

34 名前：吾妻江漣 ◆a9Elen2oPw ：04/11/08 21:23

>>33　弓塚さつきVS吾妻江漣　『人殺しの気持ち』

これは、本の受け売りなんだけれど。
私はそう前置きをして、微笑を崩さずに話し出した。

「さつき。人、って殺したことないの？
　ないって言うのなら。それは･･･きっと、錯覚。
　だって人って、意外と簡単に死んじゃうのよ？
　呼吸を止められれば十分ほどで蘇生は不可能。血液の三分の一が流れ出れば助からない。
　道具は果物ナイフでも、剃刀でも、なんでもいいの。
　その相手を殺すこと･･･それだけが目的なら･･･手段なんて幾らでもあるんだから･･･
『殺す』なんて。いつもみんなしているの」

　窓の外は冷え込み、部屋と外界を隔てる透明な敷居は薄く冷や汗をかいていた。
　”･･･寒いのはいやだよね。また朝、きつくなるから。”
　そんなコトを言っているのに、本棚から薄い小説をとりだし、ぱたぱたと顔を仰いだ。
　その隙間、中庸に収まっていた空色の栞を音も無く抜き取り、再び私は語りだす。

「簡単に殺せるんだから･･･人はその『意思』だけでその相手をほぼ、確実に殺せるって言ってもいいと思う。
･････････あなたがね、今、ここ」

　自分のブレザーの胸元を栞と指先でなぞるように指し示す。

「肋骨の合間をこの位置でなら、一気に縫える。貴女が引き出しのペーパーナイフでさくっとやれば。
わたしはもう、それだけで助からないの。視界が翳んで･･･わたしは憎い貴女を睨み付けるんだけど
･･･だんだん光がなくなって･･･外なんかよりも凍えていって･･･罪深きジョシコーセー
吾妻江漣は天に召されました。Amen.」

　十字を切る際、彼女の表情が初めて歪む。
そんな事には構わず、愛用の枕を寂しがり屋の子供のように抱きながら一方的に話し聞かせる。
さつきの存在の有無など、まるでお構い無しみたいに。

「でもね」

　数えたように二呼吸置く。そう･･･ここからが重要なのだから。

「ロスでは人殺し程度は日常茶飯事だったの…。本当よ？
　でも、そういう事をした友達に面会して知ったんだ…。
　殺した相手の目が頭から四六時中離れない、って」

　“それを聞いたとき。思ったんだ”

「殺された人は････････Phantom（亡霊）としてその人の『世界』で生き続ける…ってね」

　矢継ぎ早。話を畳み掛けた。伝えたかった。内心を吐露した。
　彼女が人にあらざるのであれば、その事を悟っているのかもしれない。
　神の理より外れた法があるのなら、神の理による穢れからも自由になる。
　彼女なら、解を示してくれる。その様な期待もあった。

「つまり────わたしが貴女に言葉で教えられる人殺しの最高の手段。
　わかる？それは──･･･忘れるの。
　世界を全て。それが無理なら、その相手だけを。
　一晩中胸を焦して想った相手を。世界の敵と想った相手を忘れて願い下げるのよ･･･」

雰囲気を出すため、最後は小声で話した。
…作り事として話しているが、それは消して間違いではない。
それが容易であるという説明に、全くの誤謬があるのを除くのであれば。　　

35 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：04/11/08 21:33

>>33>>34
吾妻江漣ｖｓ弓塚さつき　『人殺しの気持ち』

　彼女の部屋に招き入れられてからは、努めて沈黙を守った。
　殺しの授業。すぐに始まった。
　無言で、江漣さんの言葉に耳を貸す。
　わたしが期待していたスキル。何も教えてはくれなかった。
　それでも黙々と聞き入る。―――限界はすぐに訪れた。
　殺された人？
　ファントム？
　堪えきれず、失笑。
　江漣さんの理屈を是とするのなら、ファントムって言うのはわたし自身だ。
　ならばわたしは、世界から忘れ去られた存在、なんだね―――

　太股の上に置いたコーヒーカップ。漆黒の水面に映る弓塚さつき。わたしの顔に張り付
いた嘲りの笑み。―――すごいね。わたし、こんな顔できるようになっちゃったんだ。
　瞼を閉じた。視界が暗転。わたしの顔。闇に消え失せた。そのまま首を横に振った。

「そう言う、“どうでもいい”ことには……わたし、興味無いよ」

　瞼を開く。開ける視界。目の前には、何処にでもいそうな普通の女子高生。きっと、わ
たしもそうなんだろう。
　“普通”の容姿。“普通”の顔立ち。“普通”の性格。
　でも、不思議だね。わたしも江漣さんも、全然普通なんかじゃない。

「わたしが聞きたいのは、ヒトの殺し方だよ。
　わたし……さっきも言ったけど、下手なんだ―――殺し方。どうしても、感情が……怒
りとか、悲しみとか、悦びとかが混じっちゃう。―――それじゃ、駄目なんだよね。
　呼吸と同じ。特別な感情なんて抱かない。だって、それが当たり前のことなんだから。
無関心、無感動にただただ殺して殺して殺しちゃう。
　……そんな、完璧な“殺人鬼”にわたしはなりたいんだ」

　“生まれついての殺人鬼”。―――あの人に、少しでも近づきたくて。

「わたし、知ってるよ。江漣さんはあのヒトと同じ。――ううん、ごめんね。違う、全然
違うんだけど……ある一点においては、まったく同じなんだ、ってこと」

　授業中。休み時間。いつも二人を見ていた。彼と彼女は、一度も言葉を交わすことは無
かった。接点なんて、何処にも無かった。それでも、わたしは彼女に嫉妬をした。
　わたしじゃ理解できなかったあの人も、江漣さんなら理解できるかもしれない。二人は
分かり合えるかもしれない。――そんな僅かほども無い可能性が、わたしにはたまらなく
悔しかった。

　あの人―――遠野志貴くんと江漣さんの共通点。この身体になるまでは、分からなかっ
た。ただ漠然と、二人には似ているところがある、そう思い続けてきた。
　牙が生え、瞳が朱くなると、すぐに理解できた。志貴くんと江漣さん。どちらも、何の
感情も抱かずに人を殺すことができる殺人鬼なんだ、と。
　氷のように鋭く冷たい殺意。それが二人の共通点。
　そこだけしか似ていなかった。そこが何よりも重要だった。

「吾妻江漣さん、そんな目でわたしを見ないで欲しいな。あなたはもっといい目つきがで
きるはず。わたし、知ってるよ？　完璧に隠せているんだけど―――不思議と感じちゃう
んだ。あなたの“冷たさ”が」

　無邪気に笑う。
　分かっていた。
　本物の殺人鬼は笑わないことぐらい。

36 名前：エレン ◆a9Elen2oPw ：04/11/08 21:39

>>35
弓塚さつきｖｓ吾妻江漣　『人殺しの気持ち』

あの人…遠野くん、ね。彼の眼差し･･･
その何処か達観した眼差しは何時かの彼･･･ツヴァイのそれに類似する。
その存在が常に「死」を撒き散らしているところ。
深く言うのならば、「生」と「死」の境を踏破した暗い意思の瞳が特に。

彼女は、それを見破った。それで･･･。その上で今のわたしを引き合いに出すの･･･。

───失望。身勝手に期待した自分に失望した。

動機も無く殺すのであれば…それは殺人ではなく事故に過ぎず、その存在は災害であり意思ある個体ではない。
貴女が憧れた彼はその様な人であっただろうか。

純白の羽毛が詰まった枕を強く抱きながら自嘲気味の表情で彼女を見据える。

目をしばたかせてる弓塚さんの笑顔の向こう側。
彼女はいつも陽だまりの中で、微笑んでいた。はにかんだ笑顔。わたしの中にある彼女の
数少ない記憶はそれ。

今も変わらず、わたし達の世界･･･いいえ、それとは似て非なる世界からも同じ笑顔を作っている。
呼吸や伝わる体温。そこから分るように彼女はもう、人ではないのに笑っている。
魅力的な、誰かに媚びるような表情で。

「･･･ソレでわからないなら、口で教えられる事は何もないわ･･･。
　あなたは永遠に分からない。そう。『死んでも』わからなかったのだから。
　彼らの痛み、苦しみ、そして･･･その恐ろしさが」

視線をやや天上方向に向ける。
平和の象徴が時を告げる時計は、早くも20時の終わりごろ。次の時を告げようとしていた。

37 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：04/11/08 21:45

>>36
吾妻江漣ｖｓ弓塚さつき　『人殺しの気持ち』

　朱い瞳。無意識に、真ん丸に見開いていた。
　唖然とした表情で江漣さんを見つめた。
　彼女が口が閉じられた。沈黙の時間。数秒で消え失せる。

「……そう、そんなつれないこと言っちゃうんだ」

　江漣さんの口から聞きたかった。
　彼女の言葉で知りたかった。
　それは、きっと初めから無理な話だったんだろう。
　彼女の前に姿を現す前から、何とはなしに分かっていた。
　それでも、わたしはヒトの手段で聞きたかった。知りたかった。

　―――だって、彼女はわたしの“友達”だったから。

　僅かに口を開いた。乳色の牙が、ちらりと口元に覗く。
　彼女が教えてくれなくても、わたしが望むことを知る術はあった。
　江漣さんの白い首筋。そこに牙を突き立てれば、いやでも彼女の全てを知ることができる。
　血に刻み込まれた記憶。今のわたしなら、自由に読みとれた。

　ただ、代わりに吾妻江漣という女の子は死ぬ。
　弓塚さつきというわたしが彼女を殺す。

　ずきり。
　痛み。身体の芯の、更に奧。とても脆い、陶器のようなわたしの心が、悲鳴をあげる。
　刃物で貫かれ、抉られているのではないかと錯覚させる痛み。
　ただ、痛みは決して熱くならず、いつまでも氷の冷たさを保っている。
　激痛のあまり、顔をしかめる。が、彼女に悟られぬよう、すぐに平静を装った。

　―――ちょっと、痛すぎじゃないのかな。

　もう、何人もの人を殺してきた。
　知らない他人。どうでもいい知人。今度は違う。吾妻江漣。名前を持った人間。クラス
メイト。わたしの……友人。
　餌になる人間と、仲の良い人間。わたしの中には、２パターンの人種があった。彼女は、
間違いなく後者。今まで殺め、啜ってきた“その他の人々”とは違う。

　そんな彼女を、わたしは殺そうとしている。

　だから、心が痛む。
　だから、心が踊る。

　―――彼女を殺せば、新たな一歩を踏み出せそうで。

　すっと席を立つ。
　目の前に“境界”があった。越えれば、あの人に近づける境界。越えれば、あの人を理
解できる境界。なら、越えるしかない。
　その為だけに、わたしは色々なものを捨ててきた。諦めてきた。無くしてきたのだから。
　そう考えると、想像を絶する痛みも自然と我慢できた。

「江漣さんの口で教えられないのなら……わたしの口で教えてもらっちゃおうかな」

　言って、わたしは異常に発達した犬歯を、見せびらかすように覗かせた。

38 名前：エレン ◆a9Elen2oPw ：04/11/08 21:47

>>37
エレンVS弓塚さつき　『人殺しの気持ち』

白い羽･･･。天上へと舞い上がり、ゆらゆら、ゆらゆら舞い降りる。
壁の鳩時計は嘴を押し出し、押し出し、羽を食む。
9度の悪食な鳩の食事。天子の羽を喰らう平和の象徴･･･
そんな午後9時の皮肉な世界がここにあるの。

女子高生、吾妻江漣の温もりを一杯に包んだ羽毛枕を突然起立した弓塚さんに
渡してあげた。彼女のブレザーの胸に押し当てるように。
温もりの欠片もなくしてしまった彼女に、はじめから暖かさなんて
かけらもない、暗殺者の仮初の情を一杯につめて渡してあげた。

仮初の友人を只撃つ事。
わたしの仮初の名前しか知らない彼女を撃つ事に躊躇いなんか･･･ない。
彼女、放っておくときっと、玲二にも気付いてしまう。
ここでこのヴァンパイアを放っておくわけにはいかない。

鳩が、静寂の部屋に飛び出す。
わたしが引鉄を引いたコルト・パイソン357マグナム。
枕に深く押し当てたリヴォルバーから、わたしは装弾された全弾を鳩の1往復の間に全て
弓塚さんの黄色いブレザーに向けて撃ちだした。

取り易いように何気なくベッド上に放ったバッグを手にし、ベッドを蹴倒し
ロビーに飛び出す。

「その必要は、ないわ。
･･･直接、体で知りなさい･･･。永遠に続く地獄。
そこへ自ら踏み入れたことの意味。あなたのやろうとした事の本当を･･･」

39 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：04/11/08 21:50

>>38
吾妻江漣ｖｓ弓塚さつき　『人殺しの気持ち』


　午後九時を告げる時報が、部屋に響き渡る―――直前、江漣さんが跳ぶようにソファか
ら立ち上がった。
　彼女の動作。目を見張るほどに素早く、耳を疑うほどに無音。素人のわたしにも分かる
くらい、無駄な動きは一切無い。
　わたしの反応。彼女の見惚れるような俊敏さに、一瞬――いや、三瞬は出遅れた。

　この身体になって、失ったもの。……数え切れない。
　この身体になって、得たもの。体育の成績をＣマイナスからトリプルＡに塗り替えてく
れる、驚異的な運動能力。
　出遅れたスタート。巻き返すのはさほど難しくなかった。元より、スタート地点が違う
のだから。


　―――そんな慢心が、わたしにはあった。

　だから、彼女から投げ渡された枕も、あまりに突拍子が過ぎて、思わず素直に受け止め
てしまう。「え？」なんて間の抜けた声をあげながら。

　次の瞬間、信じ難い衝撃がわたしを襲った。

　頭の中で谺する火薬音。身体が宙を泳ぐ。背中から洋服ダンスに激突。同時に、口から
どぷり、と鮮血がこぼれ落ちた。
　そのまま、ずるずると重力に引かれ、床に腰を下ろす。衝撃で、タンスの上の人形が二、
三個落ちてきた。焦点の合ってない瞳で、それをぼんやりと見つめる。
　わたしの表情。唖然したまま、固まっていた。でも、次の瞬間には笑みと代わった。

「……へえ。鉄砲なんて、初めて当たっちゃったな」

　それどころか、見るのも撃たれるのも初めてなんだけどね。

　よろよろ、と力無く立ち上がる。江漣さんと向き合った。彼女の表情。先程までとは明
らかに違った。感情の無い瞳で、静かに冷たく、ただじっとわたしを見据えていた。

　―――この表情をわたしは見たかったんだ。

　どこまでも冷たく、尚冷たく。
　純粋を目指して、殺すこと、それだけに執着して。

　わたしもそうなりたかった。

40 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：04/11/08 21:51

>>38>>39

　自分の胸を見下ろす。胸とお腹に空いた六つの穴。制服に、赤い血が染みだしていた。

「残念、だったね。心臓に一つでも当たったら、江漣さんの勝ちだったのに」

　笑みを浮かべて、言った。半分は嘘で、もう半分は本当の笑み。
　六発の銃弾に貫かれ、壊された肉体。心臓に当たらなければ平気―――なはずは無かっ
た。
　痛かった。とても痛かった。血が出ているんだから、それもたくさん出ているんだから、
痛くて当たり前だった。こんなに酷い外傷を負ったことなんて、今まで一度も無かった。
　頭がおかしくなるほどの痛みが、気が遠ざかるほどの痛みがわたしの身体にまとわりつく。

　―――その痛みが、わたしの内から来る痛みを忘れさせてくれた。

　友人を殺すことに耐えられず、人間だった頃を忘れられないわたしが悲鳴をあげている。
　吾妻江漣。言葉をかわしたのは今日が初めて。彼女のことなど、何も知らない。そんな
関係の彼女を、わたしは友人と呼ぶ。―――わたしの中での友人の条件、それだけで充分
だった。それ以上深く関係を持った人なんて、誰一人としていなかった。江漣さんは弓塚
さつきのれっきとした友人だった。
　友人を殺すことでの罪悪感。言葉では言い表せない嫌悪感。銃弾の痛みで、全て忘れち
ゃえば良いんだ。心の中で毒づいた。
　頭を振って、顔を上げる。薄ら笑いを張り付けて。身体の傷の痛みも、心の傷の痛みも、
彼女に知られたくは無かった。

「鉄砲って……思ったよりもずっと威力があって、ずっと速いんだね。わたし、びっくり
しちゃった。でも―――次はきっと、当たらないよ。もう一回、試してみない？　江漣さん」

　一歩、ゆっくりと彼女に近付いた。
　江漣さんの授業。―――もう、終わっていた。これからはわたしの遊びの時間。

41 名前：エレン ◆a9Elen2oPw ：04/11/08 21:55

>>39>>40
エレンVS弓塚さつき　 『人殺しの気持ち』

「あなた…くるってるわ」

わたしはCDMDコンポのリモコンを手に、ボリュームを最大限に上げる。
一定レベルの防音がなされているこのマンションの部屋。
しかし念の為にサラウンド効果で部屋中を埋める叫び声を盾にするつもり。

倒れたコーヒーメーカー。部屋の乱れた内装。
朱に染まった弓塚さつき。わたしはその順に目に入れた。

そして、そのまま真後ろに飛ぶ。

宙でコルト・パイソンのシリンダーラッチを引き･･･スイングアウト。
排莢、バッグより取り出したスピード・ローダーで再装填を瞬時に終える。
着地。狭いわたしの部屋の入り口へと居間の椅子を１つ放り投げ、彼女を心理的に妨害してから。

ハンマーコックの音は勿論･･･銃声すら騒音に紛れる中で弾丸を３つ、彼女へと突き進めた。

42 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：04/11/08 21:57

>>41
吾妻江漣ｖｓ弓塚さつき　『人殺しの気持ち』

　響き渡る騒音じみた音楽は、室内の空気を一瞬で塗り替えた。
　緊迫感溢れる静寂は、スピーカーからのシャウトにより、一瞬で粉々に砕け散った。
　肌で感じる音の衝撃。不快指数百二十パーセントを振り切るキチガイの歌声。

　―――でも、その絶叫の音階がわたしの耳に届くことは無かった。

　わたしの耳の奧、彼女が呟いた単語が、延々と谺していた。
　頭の中で、繰り返されていた。

　―――わたしが、狂ってる……？

　何よ今更、と一笑に伏すこともできた江漣さんの一言。なぜか、引っかかった。なぜか、
気に入らなかった。
　なぜか。
　答えは分かっていた。

　―――狂っているのは、わたしだけ……なのかな。

　心の中で呟いた。時間は慌ただしく動き始めている。口に出す暇は、無かった。
　わたしの視線の先には、底の見えない銃口を向ける江漣さんの姿。光を吸い込む黒塗り
の蓮根が姿を見せたと思ったら、次の瞬間には、消えた。

　吾妻江漣さん―――わたしを撃つこと、殺すことの逡巡、躊躇いは少しも窺えなかった。

　わたしは、ヒト一人殺す"ぐらい"で耐え難い苦痛に苛まれるというのに、江漣さんを殺
す、と決めただけで発狂しそうなほどに痛かったというのに、江漣さんは眉一つ変えずに、
"ヒト"の癖に当たり前のようにわたしを殺そうとする。

　―――なんて、どうしようもないほどに殺人鬼なんだろう。

「ようするに、お互い様ってことだよね」

　そして、そんな江蓮さんだからこそ、わたしはわざわざ彼女に会いにここまで来たのだ。

　投げつけられた椅子、握った拳を叩き付けた。椅子は呆気なく空中で分解した。飛び散
る破片の奧―――銃口が、ピタリとわたしを見つめていた。顔面に張り付いた笑み、更に
歪ませた。

　江蓮さんの人差し指がゆっくりと絞り込まれていく。彼女の人差し指だけではない。彼
女の挙動そのものが、床に落ち行く椅子の破片が、流れる音楽が、時計の秒針さえもが、
ゆっくりと、緩急に、ビデオのスローモーション再生のようにわたしの視界に写った。

　―――そして、撃ち出された銃弾も。

43 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：04/11/08 21:58

>>41>>42

　迷わずわたしに襲いかかる三発の銃弾。さっき、椅子を打ち砕いた方の手―――握った
拳を広げた。開ききった五指。前方、おもむろに突き出した。
　時の流れの緩慢さは、ここに来て時間が止まったのかと錯覚するほどになる。

　止まった世界。まともに動けるのは、弓塚さつきただ一人だけだった。

　そして、時はまた動き出す。―――分かっている。時間の流れが遅くなったわけでは、
ましてや止まったわけでも無いことは。
　全神経――比喩ではなく、文字通り――を銃口に集中させた異常なまでの集中力と、音
の速度を超えて飛ぶ弾丸すら視界に写せる動体視力、そして常識を超えた身体能力が、そ
う感じさせていたのだ。

「……さっきは、ギリギリだったけど」

　突き出した右腕。きつく握った拳、ゆっくりと開いた。

「―――今度は完璧だね」

　人差し指と中指の間に、中指と薬指の間に、薬指と小指の間に、それぞれ一発ずつ計三
発の、まだ熱の残る銃弾が挟まれていた。

　音速で飛ぶ弾丸を五指で受け止めた―――確認した瞬間、身体中から汗がどっと噴き出
てきた。今更ながらに、恐怖で身体が強張った。堪えようのない疲労感。そして、僅かな
安堵。
　自信はあった。一度目の発砲のとき、わたしは目と鼻の先の距離から心臓目掛けて放た
れた銃弾を、紙一重で避けた。肉は抉られ、内臓は潰されたが、心臓には掠らせもしなか
った。
　咄嗟の対応でそこまで対処できたのだ。集中すれば、完璧に避けることも、完全に捌く
こともできると思った。思ったから、こんな無謀な行動に出たのだ。
　無謀な行動。結果は成功。恐怖と緊張に引きつった笑みを、ぎこちなく江漣さんに向け
た。

「逃げないの？」

　奇妙な確信が、出所不明の充足感が、わたしの口を開かせた。

「わたし、江蓮さんの血を吸っちゃおうと思っているんだ。だって、勿体ないと思わない？
江蓮さん、そんなに冷たいのに、そんなに殺人鬼なのに、わたしなんかにいいようにあし
らわれちゃって―――惨め、だよ。勿体ないよ」

　部屋の中を暴れ回るシンセサイザーの旋律に、わたしの声は完全に掻き消されていた。
それでも、わたしの言葉は必ず江蓮さんへと届く―――そう、信じていた。

「だから、吸うんだ。吸って、もっと殺人鬼になった江漣さんに、色々なことを教えても
らうんだ」

　それは、考えただけでもわくわくするとても愉しい夢。

「吸われたくないなら、逃げないと駄目だよ。だって、江蓮さんじゃわたしは殺せないか
ら、さ」

　右手を軽く一振り。指の間に挟んでいた銃弾三発。飛んで、江蓮さんの足下に転がった。

44 名前：エレン ◆a9Elen2oPw ：04/11/08 22:12

>>42>>43
エレンVS弓塚さつき　『人殺しの気持ち』

僅かな焦りは薬莢の転がる音と同じく乾ききった。
生命は己より優れた者に自然と畏怖するようにできているもの。

それでも、彼女があまりに楽しそうだったから。
思わず、わたしは“ふ”、と鼻で笑う。
相手を仕留めるのに語る口は、顔にはついていないモノ。

ドラムスが途切れ途切れにビートを刻み込み、シンセが巻き起こす不協和音が
部屋中を障害物にして乱反射している。
その中でわたしはとりあえず息をする。長い長い吐息。焦りに意味はない。
音は変わらず交雑するが、その間に弓塚さんの言葉とわたしの心音が室内の主旋律になる。

その世界は恰もジョン・ケイジの迷曲･･･。そう、『４：３３』の様。

わたしの声がメロディ。吐息がリズム。
弓塚さんのお話は喜びに満ちたパーカッション。
気になることといえば、そう。彼女は何をこの曲に聞いているのか、という事くらい。

きゅ、ってわたしは鞄から取り出した玲二のお下がりの手袋を嵌める。
弓塚さんの丁寧な作り話を耳に受けながら。彼女の顔の造作を愛でながら。
その顔は。
白い顔、揺れるツーテールがちょっと色あせて。可愛い笑顔が、声が少し枯れている
事が魅力を少し損なっている。
ひび割れた笑顔なんて、誰がどう見ても『サイテー』で…日常への後悔の念が頭を掠める。

それでも私は落下した銃弾を拾い、一歩、二歩、三歩。
銃を手に下げたまま、黙ってわたしは脚を進めた。

弓塚さんまで迫る事、後5歩と半分の空間･･･。
わたしの指揮により突如の転調。BGMが銃撃の音。マズルフラッシュの３Ｄ放射。
一瞬の光。わたしのすらっとした腕が直線に伸びる影がカーテンに影絵を写す。
コーヒーメーカーがスリリングなＢＧＭに自壊して、赤茶けた内容物をしとどに吐瀉してる。
部屋のピアノは曲悪の音楽センスに耐え切れず･･･がたがた轟音の元、瓦解した。
息も継げないほどのわたしの演奏。
趣味の無い自分らしい、無粋な演奏。残るは最後の小節。もう一方の奏者をそのセンスの
無さで無残に破壊するの。その元凶はしょうこりない･･･マグナム弾の怨嗟の響きっていう代物。

45 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：04/11/08 22:16

>>44
吾妻江漣ｖｓ弓塚さつき　『人殺しの気持ち』

　わたしの精一杯の挑発に、しかし江漣さんが乗ることはない。
　わたしのおおよそ神業じみた芸当に、しかし江蓮さんが驚愕を覚えることはない。
　ただ静かに、哀れみを含んだ視線をわたしに送るだけ。
　彼女から来る掴み所のない雰囲気は、わたしに不安の焦燥と苛立ちの嫌悪を掻き立てた。

　……何なのだろう、この半端な緊張感は。

　でも、意識をそれに裂くことはできない。なまじ臨戦態勢に入ってしまった精神と肉体
は、わたしに激しい破壊の衝動を訴える。
　興奮した頭が、うまく回転してくれない。激しく煮え立つ血が、思考の猶予を奪ってい
く。ただ殺せ、と。ただ壊せ、と。わたしの血と肉は、それだけを望んでいた。

　別に、殺しても良かった。
　別に、壊しても良かった。

　だけど、わたしがここに来た理由は、吾妻江漣という名の女の子を殺すためでは無い。
壊すためでも無い。吾妻江漣という名の殺人鬼と出会うためだ。

　江漣という名の殺人鬼。わたしの求めていた殺人鬼。なりたくてたまらない殺人鬼。

　彼女はゆっくりとした動作で一歩、前に踏み出した。更に一歩、二歩。その行動は明ら
かにわたしの忠告を無視している。
　でも別にそれは当たり前のこと。最初から聞いてくれるとは思っていない。だから特に
不満は抱かなかった。

　わたしが思うのは彼女のことだ。殺人鬼をやっている江漣さんのことだ。
　身体に溜まる消化不良の不信感。唐突にそれは疑問という名の形を成し、わたしに頭の
中で爆発した。

　―――これが、殺人鬼？

　突然の疑問に、思わずわたしは江漣さんの顔を覗き込む。それは最高に無防備な一瞬。
手練れの江漣さんが見逃すはずがなかった。

　拳銃が振り上がった。銃口がわたしの心臓を睨んだ。視界が閃光に包まれた。
　彼女がわたしの隙を見越して引き金を引いたのか、それとも偶然なのかは分からない。
ただ、撃ち放たれた銃弾は真っ直ぐとわたしの心臓へと飛び込んでくることだけは分かっ
た。
　先程の発砲とは違い、不意打ちに近い一撃。かわす余裕も受け止める猶予も無い。しか
し、それでもわたしの人でなしな身体は劇的な反応を見せてくれた。

　反射的に振り上げた左手が、駆け寄る銃弾の進路を阻んだのだ。

　重い衝撃。後方に押し飛ばされた。銃弾は左手の小指と薬指、それに中指を根本から吹
き飛ばして貫通。軌道を上に逸らされた銃弾は、わたしの肩の肉を深く穿ってところで止
まった。

　ベッドに背中から倒れ込む。悲鳴を上げるスプリング。めまぐるしく場面変換をする視
界は、天井を写したところでようやく落ち着いた。

　欠けちゃった左手から血がいっぱい出ているのに、痛みは不思議と無かった。どうでも
良くなっているのかもしれない。血が止まらないことも、鉄砲で撃たれたことも、江漣さ
んがわたしを見ていることも、わたしがここに来た理由も、全部どうでも良くなっている
のかもしれない。

　―――これは落胆、なのかな。

　すごく虚しかった。だから虚脱感に身を任せ、漆喰の天井をぼう、と見つめた。据え付
けられた蛍光灯は白かった。


「……がっかり、だよ」

　仰向けに寝ころび、体重をベッドに預けたまま、わたしはぽつりと呟いた。

46 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：04/11/08 22:17

>>44>>45

　もう何時間もこうして虚ろに蛍光灯を見つ続けているような気がした。
　現実では撃たれてから五秒と経っていなかった。

「江漣さんと会ってから、ずっと、何かが違うって思っていたんだ」

　ベットに寝ころんでいるわたしは、無防備とか、隙があるとか、そんな言葉が馬鹿馬鹿
しいほどにくつろいでいることだろう。
　次の瞬間には、江漣さんは引き金を引いて、わたしの頭は無くなってしまうかもしれな
い。こんな姿勢では、避けることはもちろん、防ぐ自信すらなかった。

　でも、確信していた。江漣さんは―――絶対に撃たない、と。

「いま、江漣さんに撃たれて、やっと分かったようなが気がする」

　むくり、と唐突に上半身を起きあがらせた。

「―――勘違い、だったんだね」

　江漣さんが反応するよりも早く、思い切り床を蹴りつけた。飛び上がる身体。器用に重
心を移して、空中で反転。今度は天井を床にして、それを蹴り飛ばした。江漣さんの撃つ
鉄砲の弾のように一直線に飛んだ。

　江漣さんの膝元に着地。ちょうど彼女が銃口を天井に向けた所だった。どうやら、スピ
ードではわたしの勝ちのようだ。

　膝を伸ばして、起きあがる。そのバネを利用して、江漣さんの下腹部にタックル。見か
け通りに軽い彼女は、簡単に浮き上がった。
　床を蹴った。舞台は江漣さんの私室からダイニングへ。わたしに押し出される形で、江
漣さんも彼女の部屋から強制退室させる。

　加減はしたつもりだった。それでもダイニングテーブルは派手に吹き飛び、椅子は悉く
蹴散らされ、冷蔵庫の上の電子レンジは床へと真っ逆様。
　最後にもう一度だけ床を蹴って、わたしは食器棚に江漣さんの背中を叩き付けた。

　食器棚のガラスは、衝撃で呆気なく粉砕してしまった。傾いた家具から、陶器のお皿が
次々とこぼれ落ちる。お皿は床とぶつかる度に悲鳴をあげた。落ちては哭いて、落ちては
哭いて、その繰り返し。
　わたしは右腕で江漣さんの首もとを押し当て、彼女の身体を食器棚に無理矢理張り付け
た。左手は彼女の右手首を掴み、銃口をわたしに向けられないようにしている。

　わたしは自分の顔を、江漣さんの顔に―――息の当たる距離まで近づけると、微笑みを
湛える口を開いた。わたしの赤色の瞳は、彼女の冷たい瞳を食い入るように覗き込んでい
る。

「やっぱり……違う」

　そこで初めて、わたしは口元を不満気に歪めた。何が気に入らないのかは分からない。
得体の知れない苛立ちが、わたしの中にはあった。

　―――江漣さんは、ずるい。

　そう思うわたしがいた。何がずるいのか、分からないわたしもいた。
　分かることと言えば、一つだけだった。それは、

「江漣さんは殺人鬼なんかじゃない」

　吐き捨てるように言った。





「ただの人間だ」

47 名前：エレン ◆a9Elen2oPw ：04/11/08 22:19

>>45>>46
吾妻江漣VS弓塚さつき　『人殺しの気持ち』

喉が苦しい…痛覚神経が叫ぶ…辛いという信号を…。
冷ややかな丸い指先に押し付けられた箇所が破裂しそうに浮腫んできている。
でも無駄…。あなたは余計な事をわたしに考えさせただけ。思い出させただけ。
あなたは敵。倒すべき…生物的な意味で、敵だという事実について思い出させただけ。
肉体の微弱な痛みは、力の解放を原始の海より目覚めさせる魔法の一滴にすぎないの。

足元には、雪崩のように崩れ去るセラミックたち。痛む体と同じく他人事のように見てた。でも、その内の一枚。
深い緑褐色の茶碗。それは昨日玲二が食事をよそい…食べるのに供した食器…。

─────、「からり」と落ちて、爆ぜた。

Exactly。また買えばいいだけの話。
でも、断裂面が白く覗く日々を刻んだそのものはきっと二度とは帰ってこないの。
そして。
何時まで在るか分からないわたしの日々なら、尚更のこと癒されない変え難いもの…。

そうね…弓塚さん。わたしは人。人間だから…きっと執着して悲しんでるのね。
こんなつまらないことに。此方に来てからの毎日は…人に憧れ、そして同時に人に戻る事を恐れた日々だった。
でも、裏を取ってみれば…わたしは既に、「人」だった。
明日を夢見て、人を気遣う弱い存在。
　わたしは「堕ちた」。玲二の手で…高尚な、世界を俯瞰する死の世界から堕落して
人になってしまったのかもしれない。

じゃあ、弓塚さん。貴女は何？───私を蔑み、妬む視線を向ける貴女は。
勿論…言うまでもないわ。
殺人者？いいえ。吸血鬼？いいえ。女子高生？いいえ。アウトロー？いいえ。恋する乙女？
いいえ。高みを目指す挑戦者？…悪い冗談は止めて。
貴女はただ人から逃げ、人に憧れるだけの『卑怯者』よ。

「ずるいのは、貴女でしょう」

　右袖をびゅうと突き出した。──ブッシュダガーが黄色の袖を刺突する。
　頭を突き出した。　　　　──形の良い、彼女の鼻骨に強烈に。
　銃を離した。　　──蹴り上げ、右手に収める為に。

生物の神経節それは全身に網目のように貼る緻密な筋がある。でも、静止では駱駝が通れるほどの
大きさに等しいの。あなたの腕…血肉と憎しみの麻薬をフルーティなライムジュースで惑わせた
ような凶暴な力の濁流でも、及第には程遠い。
そんな顔しても無駄よ…左手指先は、携帯一つ動かせない。
トリガー、左向け左にシリンダー。優秀なダブルアクション機構によってトリガーは
次弾を呼び、次弾はトリガーを呼ぶ。瞬きの瞬間の戦場のホメオスタシス。
鼓動の様に弾を穿く後、木目のグリップの筋を優しくあやして興奮させ、弾装を廻す。
瞬きする間に5発。室内の電灯が明滅し…。屋外の降り始めた雪に硝煙燻る
機能美がぼぅと浮かんでいるのが見えている。

「そう…わたしは人間。あなたとはきっと、違う」

喉元を押さえ、膝を付いてから一息。
顔を上げ立ちずさり、敵（弓塚さん）の出方を見やる。
朱に塗れ、粘力を帯びた液体つきのブッシュダガーにより、哀れにも
腕を貫き通されたままの彼女を。

48 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：04/11/08 22:22

>>47
吾妻江漣ｖｓ弓塚さつき　『人殺しの気持ち』

　わたしが、ずるい？

　彼女の吐いたその言葉に、わたしの意識は奪われる。
　―――わたしがずるい？　わたしが卑怯？
　コンマ一秒にも満たない刹那の戸惑い。打ち消したのは、右腕を貫く鋭い痛みだった。

「……ッ！」

　無意識のうちに、張り詰められた全身の筋肉が緩む。意識が右腕に集中する。赤く染ま
ったわたしの瞳に写るのは、二の腕に深々と突き立ったナイフの柄。
　逸らされた意識。鼻先で起こった軽い爆発により、強制的に引き戻された。
　視界の奥底から火花が見える。
　わたしは言葉にならない呻き声を漏らしながら、潰れた鼻を手で押さえ、よろめくよう
に二、三歩後ずさった。

　鼻は一瞬で再生した。鼻血もすぐに止まった。わたしは、鼻を押さえていた右手を離し、
露わになったその顔にありったけの殺意を込めて、江漣さんを睨みつけた。
　そして、

　目があった。
　江漣さんとではない。
　銃口とだ。

　思わず声を殺し、目を見張ってしまう。いまのわたし、呆気に取られて酷く間抜けな表
情をしていることだろう。
　わたしを睨む銃口からは、怖ろしいまでの殺意が迸っていた。
　背中に冷たい何かが走る。恐る恐る視線を上に向けた。そこには、銃口に代わってわた
しを見据える死神の顔が。
　全身の筋肉が強張る。わたしの表情が凍り付いた。

　わたしを見る彼女の目。銃口より昏く、右腕に突き立つ刃よりも冷たい。
　―――できない。
　瞬時に悟る。わたしにはこんな目をすることはできない。こんな絶対零度に冷め切った
目で誰か見ることなんて、できない。こんな底知れぬ昏い目をして、誰かを殺すことなん
てできない。こんな殺意ただそれだけに染まった目なんか、できるはずがない。
　わたしは江漣さんになれない。
　わたしはバケモノなのに。人殺しのバケモノなのに。
　江漣さんになれない。
　あの人にも追いつけない。
　あの人はきっと、もっと冷たく昏い場所にいるはずだから。

　―――ずるいよ。

「江漣さんは、わたしが欲しいものを全部持っている！」

　涙混じりの絶叫。まるで負け犬の遠吠え。そしてそんな哀れな叫びも、銃声に掻き消さ
れて最後まで口にすることは叶わなかった。
　わたしの身体が、ダンプカーに跳ね飛ばされたかのように吹っ飛んだ。
　胸の真ん中が何度も爆ぜる。肉が飛び散る。肩も弾けた。

　―――死んじゃう。

　もう限界だった。何度も何度も弾雨に晒され、わたしの吸血鬼の身体はがたがたになっ
ていた。無数の穴が穿たれたわたしの身体、再生する兆しは見えなかった。

　彼女の部屋の手前まで吹っ飛んだところで、わたしは壊れた玩具のように床に崩れ落ち
た。床が見る間にわたしの血で染められていく。
　ひゅぅ、ひゅぅ、と酸素を求めてわたしの喉が鳴っている。それが何処か間抜けじみて
聞こえて、わたしは薄く微笑んだ。

　―――勝てない、のかな。

　油断していたからだ、とか、本気を出せば、とか、そう言う言葉で自分を慰めることは
できた。
　でも現実はいつだってわたしのことが嫌いだから、床に這い蹲って血の池に浸かってい
るのがわたしで、軽い怪我を負いながらも十分に五体満足なのが江漣さんだと言うことを
無理矢理教えてくれる。酷いね。ほんと、現実は酷過ぎるよ。

49 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：04/11/08 22:22

>>47>>48

　わたしは吸血鬼だった。彼女は人間だった。
　でも結果はこれだ。
　わたしは結局、江漣さんにまともな傷さえ負わせることができなかった。
　圧倒的すぎる。人間の癖に……！

　ああ、もうやめよう。わたしは諦めにも似た感情を抱く。
　人間とか、バケモノとか、多分そういう問題じゃないんだ。
　江漣さんは、わたしとは違うんだ。
　わたしみたいな人とは違う、"特別"な人間なんだ。
　生まれついて輝くことを許された、太陽のような人間なんだ。
　わたしみたいな、精々恒星の光を受けて輝く星止まりの"その他大勢"とは格が違うんだ。
　彼女は、自分の力で輝くことのできる"特別"な人間なんだ。

　だから人間のくせに、バケモノのわたしを平気で倒せる。
　だから、だから

「どんなにヒトを殺しても、平気な顔して人間をやっていられる……！」

　江漣さん、どうしてあなたはそんなに人を殺しているのに人間なの？
　わたしもたくさん人を殺した。もう両手じゃ数え切れないほどに殺した。
　でも、江漣さんはもっと殺している。わたしには分かる。だって、あなたの身体に染み
ついた血の臭いは、わたしのそれよりも遙かに濃いんだもん。

　わたしは吸血鬼で、バケモノで、だから人を殺しても全然不思議じゃない。
　でも江漣さんは人間で、女子高生で、なのにバケモノのわたしなんかよりも全然人殺し
が上手くて、たくさん人を殺している。……どうして？
　ううん、答えは分かっている。江漣さんが"特別"だからでしょ？
　特別だから―――そう言う、ずるいことが許されるんだ。

　許される。
　そう、許されるんだ。

　でも、
　一体誰に？　誰に許されているの？

　少なくとも、
　わたしは許せない。

　めきり、と拳が鳴った。うつ伏せに倒れたまま、右拳を血濡れの床に叩き付けた。その
まま、その床に突き立てた拳を支柱にして立ち上がる。それだけの行為が酷く億劫だった。
もしかしたら、いまのわたしは普通の人以下の力しか無いのかも知れない。
　でも、それでも―――

　立って、瞳を彼女に向けた。
　右目の視界が真っ赤に染まっていた。何も見えない。仕方が無く、左目だけで江漣さん
を睨め付けた。
　そして一言。

「……絶対に吸ってやる」

　身体が跳ねた。一体何処にそんな力が残されていたというのか、わたしは床を蹴ると、
一直線に江漣さん目掛けて駆けた。牙を剥きながら。ケモノのように。

　わたしは江漣さんが人間だというその事実が、どうしても許せなかった。
　だから吸うんだ。
　憎いから。　　

50 名前：エレン ◆a9Elen2oPw ：04/11/08 22:24

>>48>>49
吾妻江漣VS弓塚さつき　『人殺しの気持ち』

──ドンナニコロシテモヘイキナカオデ。
　少し微笑み。けして皮肉ではないの･･･その言葉に心の重荷から解き放たれた自分がいるから。
これから私は大義名分の為平気な顔であなたを殺し、平気な顔で食事をし、平気な顔で神様の前に立つ。
そんな風に思って…そして蔑みながら消えていって。吾妻江漣はそういう存在よ。

　罪に絡めとられたこの腕は、愛や友情で飾ることを忘れてあの人だけを追い求める咎ある者と…
一足先に、私の事を審判で伝えて欲しい。いと高き、全能の神様に。

　人に在らざる速度で掴みかかる腕、しかし完成されていないその見え透いた饒舌を私は哂う。
手を往なす左手、連動し、右より叩上げる掌打は、彼女自身の勢いを利用し愛嬌ある丸みの顎を打ち砕き──まだ。
返す両の握力は足掻くブレザーの袖を取り、割って入った私の体のバネで軽く放り出す。
　ミニバレーのボールのように軽く弾かれた彼女の肩に、手に、肘に、腰に銃を穿ち･･･
蠢く彼女を尻目に、私は何気なく自ら壊した自室のピアノの部品を拾う。

　学園祭の催し物で、合唱をやると決まった際に。
自宅にピアノが在る人は挙手するように、等と教師は言った。
黙殺する私を尻目に藤枝美緒が「江漣の家になかった？」と何の気なしに小声で言った事を
聞きとがめたクラスメートが居て。
　そう、危うく役割が回って来そうになったことがあったわね････。

そんな感傷の片隅に彼女も存在していたのだと、おぼろげに思いあたる。
でも、そんなものに興味はないから。そこの景色にあの人は居ないから。
私は最後のスピードローダーを手に、倒れた彼女に圧し掛かり。
銃口を背中側から心臓に位置に突き当てた。
　それは此れほどの力の持ち主を消す際のセオリーとしては、失格の行動かもしれない。
でも。彼女にはわたしに殺されたことを理解してもらいたいから。
わたしは彼女の皺と誇りに塗れた背に、必殺の銃口を黙って置いた。

51 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：04/11/08 22:27

>>50　吾妻江漣ｖｓ弓塚さつき　『人殺しの気持ち』

　わたしの中の血はもう殆ど流れ出ちゃっているんだから、その分だけわたし
の体重は軽くなっているはずなのに、どうしてかとても重い。
　腕一つ、指一本すらまともに動かせないくらいに、重い。

　おかしい、おかしいよこんなの。

　コップいっぱいに注がれた水を全部零せばコップが軽くなるのが道理なんだ
から、わたしの身体だって軽くならなきゃならない。
　逆に重くなるなんて、自然のセツリに背き過ぎていると思う。
　それとも、これもやっぱりカミサマの意地悪なんだろうか。カミサマは吸血
鬼が嫌いでその上わたしのことも嫌いだから、こういう意地悪をするんだろう
か。

　ま。
　別にどうでも良いよ、と思った。
　カミサマなんてほんと、どうでも良いよ。

「さっさと殺せば、ヒトゴロシさん」

　まだ再生しきってない、血と唾液にまみれた顎を動かす。
　素っ気ない口調。別に死ぬのが怖くないワケじゃない。ただ、このヒトに媚
びるのだけはぜったいに嫌だった。このヒトに謝って命乞いして助けてもらう
なんて、そんなことは出来ない。
　大体、何も謝るコトなんてないんだ。だって、わたしは悪くないもん。エレ
ンさんがいけないんだもん。
　わたしを馬鹿にした、江連さんが悪いんだもん。

　この女も、あの白髪の男の子も、遠野くんも２７祖とか言う人達も、みんな
わたしを見下している。何の苦労もなく、持って生まれた力を誇って。

　だから……だから、あなた達はみんな平然と―――

「ヒトを踏みつけにできるんだっ！！」

　涙混じりの叫び。後に残るのは嗚咽ばかり。怒りも妬みも力に変わることは
無い。

「……そうだよ。わたしはどうせあなた達とは違う、その他大勢の中の一人に
過ぎない。力なんて無い。輝くモノなんて持ってない。でも別に……そんなの
はどうでも良かった！　志貴くんと一緒にさえいられれば、それだけで―――」

　でも、志貴くんは助けに来なかった。
　白髪の男の子は、わたしを殺した。
　江連さんは、わたしを見下した。蔑んだ。

　一体、わたしが何をしたって言うの。
　こんな身体にわたしをして、それでもまだ不幸であれ、と。そう言うの。
　なんて酷い。
　なんて理不尽。
　なんで、どうしてわたしばかりそんな目に合わなくちゃいけないのか。

「撃ちなよ」

　出来る限りぶっきらぼうに言う。

「簡単でしょ？　わたしを殺すなんて、江連さんからしてみれば蟻を殺すの
と同じなんだから。だから、撃って殺しちゃえば良いんじゃないかな」

　首を捻り、ぎょろり、と片眼で江連さんを睨め付けて憎々しげに唸った。

「助けて、なんて絶対に言わないから……！」

52 名前：エレン ◆a9Elen2oPw ：04/11/08 22:31

>>51
吾妻江漣VS弓塚さつき　『人殺しの気持ち』

彼女の体から冷気が漂ってくるような･･･。
それは、わたしの思い違い。隙間風が窓から入り、部屋の空気と攪拌されていく。
ハートが痛くて･･･心が泣いているの？わたし。でも、こんな人には聞かせたくない。知られたくない。
アメリカ東部での砂漠の夜。世界の端にあった1泊数ドルの安モーテルのコト･･･。エレンと名づけられたわたし。
あの時、わたしは生まれた。赦された。一人の人として･･･そして多分女の人として。
目を閉じて･･･それだけで彼の声は脳だけじゃなく、体内で反響している。


──夜に舞え、雪。時間をその単一なモノクロで止めきって。


あなたは理解しているの?さつきさん。
一度渡ってしまったら･･･誰にも助けられない･･･。誰に求められない。海へ出てしまったら、元へはもう戻れないもの。
わたしは貴女を殺さないことはできても･･･最初から助けることなんてできはしないのだから。
殺すのはわたし。殺されるのはあなた。そこに疑念の余地は無く。･･･でも。
わたしの心には確実に同情の念が芽生えていた。
それは貴女が吸血鬼で、わたしがPhantom−Einだったからという殺戮者としての事実ではなく･･･
･･･きっと･･･あなたは卑怯者で、わたしは人間であっても。

二人とも似ていて･･･そしてきっと多分･･･恋してる同士だったから･･････。
──そう思いたかった。

───時計は時を刻む。規則正しく、生ある時を。

どうして雪なんか降るのだろう。
こんなに暖かな人たちの世界なのに。外は清らかに･･･わたし達のマンションの一室を笑い飛ばしている。

「助け。Heaven helps those who help themselves．…それは最初から人に言葉で求めるものではないわ」

聖書の言葉ではない。わたしは自由主義者の言葉を都合よく引用した。

乗りかかった弓塚さんの背中の弾力の心地よさ。細い腕、綺麗な分け目の髪。
その一つ一つは穢れも何も知らなくて、きっと彼女のイノセントを象徴するものだった。
跳び箱を15段飛べなくても、3ヶ国語を話さなくても･･･諍いもなく自己完結する世界の象徴でもある。

「呪うのね。二人が出会った不幸を。彼を愛しきれない自分の強さを。
　自分のミスキャストを。あなた自身の迂闊さを。身勝手さを･･･」

自らが組み敷いている相手、その命は既に消えようとしている。数日前まで皆に愛されていたその灯火が。

そんな事は日常茶飯事のはずだった･･･
だから。殺すことに躊躇し、私が心の涙を流しているのではないのは、当然とすれば･･･この涙はきっと、戒め。
羊の群れに紛れ込んだ牙を隠した狼。しかし、その爪は柔らかな羊毛の価値を急落させていく。 　　　　　　　　　　

53 名前：エレン ◆a9Elen2oPw ：04/11/08 22:32

>>52

───降り積もる雪･･･。わたしの心も凍らせて･･･。
そして染め上げて･･･朱に満ちた嘘の世界も･･･。

わたしが自らの手で壊したピアノの鋼線を手にし、彼女の首鋭くかけた。
──どうして生き物が消える際は、こんなに心が静かなの･･･。
声を上げて、誰かに望まれ生まれただろう弓塚さつき。
そして、望まれずに生まれたかもしれないわたしの、僅か数センチの薬夾と
数ミリの存在でしかないワイヤーに削られるその存在。

これは夢･･･。そう。夢だった。どちらも互いの世界の夢。
そして知らぬうちに抱いた夢は、意識と共に絶望になった。冷えた心に染み入る雪。
思い出なんか春になって溶けてしまえば良いの。
わたしが欲しいのは、未来･･･本の少し先の未来･･･。
でも、神様がくださったこの体は･･･指先でさえ触れたモノを全て壊してしまう悲しみの肉。

　恋人が、愛の囁きをするように･･･指を頬に立て･･･髪に手を回す。
　敵を殺害するのにわたしが冗長になっているコトは、昔の自分なら激しい嫌悪に教われたであろう。
　あれほど激しい攻防の最中、僅かにしか乱れなかった心がこんなにも激しく揺れているのだから。

「滅びが、怖い？
　でも･･･好きな相手に受け入れられず･･･人も信じられないのなら･･･。
　それを選択できるのも多分･･･幸せよ」

54 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：04/11/08 22:34

>>52>>53
吾妻江漣ｖｓ弓塚さつき　『人殺しの気持ち』

　自分の血にまみれて、ぱりぱりに固まっちゃったわたしの髪……江漣さんの手櫛で、静
かにすかされていく。
　なんて―――ああ、なんてやさしい手つきなんだろう。
　血と汗と脂の汚れでぼさぼさなのに、まったく引っかかりを感じさせない。
　殺すコトしか知らない女性と思っていたけど……こう言うこともできるんだ、と素直に
感心した。きっと毎晩、してあげている相手がいるんだね。
　じゃないとできないよ。こんなにやさしくて、暖かい―――そう、暖かい。

　江漣さんは、暖かいんだ。

　昔、わたしがまだ太陽の下で、夜を知らずに、何も知らずに、日々の時間の流れに当た
り前のように乗れていたあの頃――― 一度だけ、彼女に触れたコトがあった。
　それはその日の授業とその週の授業が同時に終わりを告げた金曜の放課後。
　掃除当番だったわたしに、江連さんは笑顔で箒を手渡してくれた。
　そのとき、僅かに触れ合った手と手。とても―――とても、冷たかった。思わず瞳を見
開き、彼女の顔を驚きの目で見つめてしまう。
　江連さんの表情は相変わらず屈託の無い、明るさに満ち満ちた笑顔で、わたしの驚愕に
「うん、どうしたの？」と無垢な声で返してくれた。
　元気に溌剌。天真に爛漫。それでちょっとだけマセていて、お節介が過ぎる何処にでも
いそうな花の１７歳―――と言う役柄になりきっている江漣と言う名の女の子。
　わたしはその時、心底恐怖した。
　彼女の作られた笑顔に。
　彼女の冷たさに。

　けど、いま、わたしは―――そんな彼女に、ぬくもりを感じている。
　あんなに冷たかったはずの手が、いまはとても暖かく感じられる。
　どうして。
　どうしてなのか。
　ああ、きっと……きっと、わたしが冷たくなってしまったからだろう。
　わたしが江漣さんよりもっと冷たく、とても冷たくなってしまったから……彼女を暖か
い、と感じちゃうんだ。
　そうだよ。そうに違いない。じゃないと―――酷すぎる。
　信じたくない。考えたくも無い。
　江漣さんの方が暖かくなっただなんて。
　人殺しの癖に、ぬくもりを持っているだなんて。
　光射す道から外れ、闇に堕ちた女の癖に、そんな、そんなコトって―――

　そんな不公平が、許されるはずが無い。

「最後まで……なんてずるくて、嫌味なヒト」

　そう吐き捨てて、わたしはゆっくりと瞼を閉じた。
　虚ろな意識の中、江漣さんの暖かさに浸る。
　ずるいと思いつつも、同時にこのぬくもりが羨ましかった。

55 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：04/11/08 22:35

>>52>>53>>54

　このヒトには勝てない―――いつから、そう思ってしまったのか。
　それがわたしの敗北の切っ掛けだったんだろう。
　勝てない、と諦めてしまった。
　だから勝てなかった。
　死んでしまった時も、心の底で来るはずなんて無い、と思っていた。
　だから来なかった。

　わたしの死と敗北は、いつだって諦めと一緒に訪れる。
　諦めなければ、勝てたかもしれないのに。
　諦めなければ、来てくれたかもしれないのに。
　わたしは諦めてしまった。
　投げ出してしまった。
　ふて腐れてしまった。

　ああ、何だ―――

「全部……全部、わたしの所為だったんだね……」

　わたしの渇いた心は、いつも貪欲に何かを求めていた。
　こんな身体になってしまった時も、生きるコトを望んで、足掻き続けた。
　志貴くんのコトが忘れられなくて―――ずっと一緒になりたいと望んでいた。
　それがわたしの強さ。力の源。

　渇いた砂は、潤いを求めて何もかも吸収していく。
　決して満たされないわたしの砂。
　吸っても吸っても満たされないわたしの砂。
　ごめんね。もう……疲れちゃった。
　そして、涙も枯れ果てたわたしの砂。
　枯渇しちゃったわたしの砂。
　諦めを知らなければ、星にだって手が届いたかもしれなかったのに―――。
　どうやら、気付くのが遅すぎたみたい。
　ごめん。
　ごめんね、みんな。
　ごめんね、志貴くん。
　ごめんね……わたし。

　ほんとうに、ごめんね。

56 名前：吾妻玲二 ◆zusatinwSI ：04/11/08 22:36

>>54>>55
吾妻江漣ｖｓ弓塚さつき　『人殺しの気持ち』


　繁華街を抜け、街灯が道を指し示す夜の住宅街。
　覚束ない足を鞭打って、帰路に着く。
　身体が重い。
　呼吸が荒い。
　五感が鈍りきっている。
　もし、いま背後から奇襲を受けたとして、果たして自分はそれを察知できるのか。
　仮にできたとしても、それを捌けるほどの反射力とスピードを発揮できるのか。それ所
かこの体たらくじゃ―――正面から襲われたって、危険なんじゃないか？
　なんて様だ。
　これだからアルコールって奴は……。

　昔から酒は飲んでいた。だが、それは付き合いの場での嗜み程度でしか無く―――自分
から進んで飲むなんてコトはまったく無かった。
　酒なんて、五感と動きを鈍らせるだけだ。気付け程度ならまだしても、酩酊にまで及ぶ
とそれは逃避以外の何者でもない。かつての自分は酒と言うものを、そう認識していた。
　それが今では―――溺れている、と言っても過言ではない。
　まったく、どういうコトなんだか……。

　新宿副都心。とある超高層ビルの屋上にぽつねんと佇むカウンターバー"雁の巣"。それ
が今の俺の、行き付けの酒場だった。
　一ヶ月に一度、情報入手のために訪れていたはずの店が、次第に月に三回、二週に一回、
週に一回、週に二回―――と足を運ばせる回数を増やし、今では二日に一回は顔を見せる
ほどになっている。
　いけないコトだとは分かっていた。
　安い店ではない。毎日のように飲んでちゃ、値段だって馬鹿にならない―――俺が財布
の中に入れている札と小銭は、俺だけの金じゃないんだ。
　エレン。彼女はこのコトに、まず間違い無く気付いているだろう。
　言ってはいないが、毎晩のようにアルコール臭を漂わせて帰宅するんだ。気付かない方
がおかしい。そして気付いた上で、何も言わない……。

　―――まったく、頭が上がらないよ。

　それに比べて、俺って奴は……。

　何が不満なのか。何に怯えているのか。自分はこうして、仮初ながらも安息を手に入れ
たというのに。
　篠倉学園で過ごす日々は、長い間切望しついに手に入れた理想郷。失うワケにはいかな
い。それが長く続かない夢と分かっていても……いま、この瞬間だけは決して壊させるワ
ケにはいかない理想郷。
　だが俺は悟ってしまった。
　その認識こそが、自分がこの世界の住人ではない事を決定付けている事実を。
　もう戻れない。望んでも辿り着けない。
　自分にとってこの楽園は所詮"夢"でしかない。いつかは覚める。

　分かっている。自分は人を殺しすぎた。この身体は拭えない血臭をこびり付かせ、腐り
かけている。自分は鬼だ。必要だと言うなら、これからも躊躇わず人を殺し続けるだろう。
　結局自分はそういう選択が許される世界の住人なのだ。この世界とは決して相容れない。

　その事実に、俺は泣いた。嘆きを酒で紛らわした。

　どうしてこうなってしまったのか。あの、人並みにクラスメイトを恋し、友人達と馬鹿
をし、平和が当然で自分の安眠は誰にも侵す事の出来ぬ物で、安息は絶対だと信じていた
あの吾妻玲二は何処へ行ってしまったのか。
　俺の中の獣よ。おまえはいつ目覚めた。なぜ俺を支配する。
　いい加減、俺を帰してくれ。身体だけではなく、心も。この楽園に。

　夜はもう、うんざりなんだ。

57 名前：吾妻玲二 ◆zusatinwSI ：04/11/08 22:36

>>54>>55>>56

　異変に気付いたのは、玄関の扉を開けた瞬間だった。
　漂う硝煙の臭いと、血臭。
　咄嗟に靴を確認する。綺麗に整えられた江連の靴と―――見知らぬローファー。女物だ。
　何があった。訝りながら、靴箱の二重底からグロックを取り出し、スライドを引いた。
　土足のままで玄関を上がり、足音を殺して廊下を突き進む。

　鼓動が高鳴っている。意識の覚醒が遅い―――舌打ちをせずにはいられなかった。冷静
を維持できない。これも酒の影響か。
　なんて迂闊な。迂闊すぎる。もしまだ屋内に侵入者がいるのなら、俺の存在はとうに気
付かれているだろう。玄関の扉をがちゃりと開けたあの無遠慮さ。酒か、または安息が俺
を油断させた。

「江漣……」

　彼女の安否が気にかかる。最近は別行動が多かった。いま思えばこれも油断だ。各個撃
破は戦術の基本ではないか。侵入者がインフェルノの刺客か否かは分からない。が、この
ような事態が訪れる事は、ここに住むと決めた時点で―――いや、江漣と共に逃げると決
めたあの瞬間に分かっていたはずだ。
　なのに俺は―――


　声が、聞こえた。


　か細い、女の声。
　江漣の部屋からだ。思わず駆ける。これも油断。だがもはや形振り構ってはいられなか
った。悪い予感が全身を侵している。この胸騒ぎは何だというのか。

「江漣！」

　部屋に駆け込む。大音量で喚くスピーカー。血が、血が、血が。彼女の部屋は至る所が
赤色に染まっていて、それは間違いなく血の色で。
　天井にも血が。
　無残にも飛び血返り血で鮮血が真っ赤に。
　江漣―――。
　俺は知っているぞ。

　酔いが覚めていくのが分かる。意識の覚醒。喉はからからで、痛いほどに渇いている。

　見慣れたブレザーは赤かった。
　江漣は馬乗りの体勢で、鋼線を首にかけ。
　それは死神の鎌のつもりか。
　仰向けに四肢を投げ出す少女。その目は虚ろにも深紅。此処からでも分かる。全身銃弾
に穿たれて、その身体はまるでぼろ雑巾。

　学園の日々は俺の理想だった。

　江漣。

　学園の日々は俺の憧れだった。

　江漣。

　学園の日々は俺の絶対だった。

　江漣。
　俺は、知っているぞ。
　俺は、その娘を、知っているぞ。

　神と言う奴がいるなら問うてやる。
　貴様は俺の理想までも破壊し駆逐し穢さなければ気が済まないのか。

58 名前：エレン ◆a9Elen2oPw ：04/11/08 22:42

>>54>>55>>56>>57

吾妻江漣VS弓塚さつき　『人殺しの気持ち』

「玲二…」

埃舞うフロアの一室で気配が動く。
その影は、姿を見ずとも知れていた。
招かれざる来客は私の兄弟と言う事になっている吾妻玲二。
──私の後継で、恩人。

しかし酒気を漂わせ、呼吸を荒げたまま敵地に潜入する愚かさを
私は彼に教えなかったと言うのだろうか。
ナンセンス。
考えるまでも無い。私の教えた事など、今の彼の要素には微塵も意味を持たないのだ。
今の彼は全てオリジナルの吾妻玲二として生きているのだから。

分かっていた筈。しかし、今更ながらにわたしはその事実に嫉妬した。
そして、その事を再認識させた弓塚さつきに少しばかり嫉妬した。
玲二の表情に現れたその表情の意味を再認識し、嫉妬した。

激情に狩られ、弓塚さつきの顔を見る。
──ミスキャストはどちらであろうか。

死の１歩手前に脇道など無い。
小川の支流に彷徨い、そのまま海に出てしまったら、私達は荒らしの海から引き返すことが出来ない筈だった。
しかし、彼は異なった。
吾妻玲二。
彼は悩み、叫び、涙し、怒り、嘆き、悲しみ、恐怖し…そして安堵する。微笑みを見せる。
いつだって、彼は──貴方はずるい人。
貴方は…この世界で私に無い全ての物を持っているのだから。

彼の銃杷は彼女を捕らえていた。だが、そこから死を招く衝撃が直ぐに走ることはないだろう。
それが真の彼らしさ。そして彼の意思であればこそ…私は異議を挟まない。
この世界は貴方。
神が居ない世があくなき闘争の混沌であるのなら、既に神亡き世の神は彼だった。
彼女が私を殺めても…彼が彼女を殺せぬのなら、彼女を殺すことは、わたしには意味がない。
贖罪は等しくあの世で行えばいい…
彼の選択が非殺であれば、それに準じて彼の世界の一部として消えるのも…
好きな相手に受け入れられず…このまま進むのであれば───それも、また──

───「幸福」なのだろう。
一瞬でも『彼の”シアワセな”世界』に生きるコトが出来たのだから。

59 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：04/11/08 22:44

>>59
吾妻江漣ｖｓ弓塚さつき　『人殺しの気持ち』


　一瞬だけ、期待してしまった。
　奇跡が起こった、と。
　あの人が来てくれた―――、と。

　もちろんそんな都合の良い話なんてあるはずがない。所詮は一瞬の期待、わたしはゆっ
くりと目を見開くと、冷めた目付きで彼を睨め付けた。

「……吾妻玲二、くん」

　弓塚、と彼は震える声で応える。そしてその後にどうして、続けた。絶望と憤怒が入り
混じった彼の表情。今にも泣き崩れてしまいそうな程に脆い。しかしそれとは裏腹に、手
に持つ拳銃の銃口は、ぴたりとわたしを見据えていた。
　なんだ、分かっているんだ。この状況で、誰を撃つべきか。
　驚愕の表情から痛いほどに見て取れる彼の思い。玲二くんはわたしを絶対に撃ちたくな
いと思っている。そうだよね。妹のクラスメイトだもんね。同じ学校の、同級生だもんね。
　でも、同時に分かってもいるんだ。
　撃たなくちゃいけない、とも。

　うん。それで正解。

　優しいんだね、玲二くん。きっとあの人も、同じコトをしたと思うよ。
　自分の無力に嘆きも、する。
　自分の行動に後悔も、する。
　だけど決して道は誤らず、一番最良で、一番残酷な判断を下すんだ。

　それで、正解だよ。

　視線を玲二くんから、背中に馬乗る江漣さんに移す。姿勢的に厳しかったけど、どうに
か視界の隅に彼女を捉えられた。
　少し、驚く。江漣さんが感情に任せわたしを睨んでいる。その無表情からは読み取り難
いけど、目を見れば分かる。激情に駆られたその目を見れば。
　へぇ、と思わず口端を釣り上げた。なんだ、そんな目も出来るんだね。

　でも江漣さん。
　その気持ち、よく分かるけど。
　わたしなんかのコトで自分を蔑み、世を憎み、そして江漣さんを殺そうとした同級生
を哀れむ玲二くん。彼の全身から溢れ出る絶望。彼にそうさせたわたしを江漣さんが憎
み、妬むのは当然。当然、だけど。

　でも江漣さん。

　玲二くんは、来てくれたよ。
　息せき切って来てくれたよ。

　それってけっこう、羨ましいコトなんじゃないかな。
　なのに江漣さんってば―――ほんと、勝手だ。

　あーあ。
　また負けちゃった。さっき負けたばかりなのに、また負けさせらちゃった。負けに負け
を重ねてしまった。これって要するに、完敗。此処まで来ると悲壮感だって消し飛んでし
まう。呆れるほどに自分が無様だ。

　何やってるんだよ志貴くん、と悪づいてみる。
　世界にはこんな羨ましい二人だっているって言うのに。
　

60 名前：吾妻玲二 ◆zusatinwSI ：04/11/08 22:45

>>59

「よいしょ、と」

　突然。
　一体何処にそんな力が残されたいたのか。弓塚さつきはそう呑気な掛け声を上げると、
むくりと起き上がった。馬乗りになっていたエレンごと。
　そんな事態はまったく想定していなかったのか、エレンは成す術も無くころりと床に転
がった。その様子は酷く滑稽で可愛らしく、大凡エレンらしく無かった。
　しかし、彼女はエレンだ。たとえ無様は晒しても、遅れを取るコトは決してない。右手
に持ったパイソンの銃口は、しかと弓塚を捉えている。
　そしてそれは、俺もまた同じコトだった。グロックの銃口は、彼女から離れない。

　弓塚さつき。

　―――どうして。

　先程答えてくれなかった問いが、もう一度。喉まで出かけて、咄嗟に押し留めた。
　代わりに震える喉で、別の問いを搾り出す。

「何処へ、行くんだい」

　さも当然の様に、弓塚は半分潰れた瞳をこちらに向けて、
「ん……要も済んだし、帰るよ」
　と言った。

　あの、誰よりも似合っていた制服姿。今は血に汚れ、銃創に破れ、見る影もない。
　象徴的だった二つ結び。いまは解け、暖かみ溢れる髪は自らの鮮血で縮れ、無残な姿に。
　学園の風景の一部を彩っていた笑顔―――今は、もう、ない。
　弓塚さつき。俺は、君を知っていた。
　だけど、今の君は。

「じゃあ、ばいばい……エレンさん。お邪魔しました、玲二くん。お部屋、汚しちゃって
ゴメンね」

　そう言って、ぺこりとお辞儀をす。出血は止まっておらず、彼女の立つ床には血の影が
出来ていた。構わず、弓塚は歩き出す。
　弓塚さつきの目は、もうこっちを向いていない。ただ前を見ている。その目に、俺は見
覚えがあった。何度も。そしてかつては、俺もしたコトがあろうその目。この先に待ち受
ける運命を知ってなお、進むのか弓塚。君は、もう―――
　背中を見せる弓塚から、俺もエレンも決して銃口は逸らさない。

　―――どうして。

　三度、喉に込み上げるその思い。吐いても返事が無いコトは知っている。弓塚に問うて
も、エレンに問うても、自分に問うても、返事がないコトは知っている。
　何が、一体の俺の何が間違っていたのか。
　彼女の背中を見て、思う。

　撃つしか、ないのか

61 名前：エレン ◆a9Elen2oPw ：04/11/08 22:49

>>59>>60
吾妻江漣VS弓塚さつき　『人殺しの気持ち』

人が消えるときは静かだった。
硝煙はわたしの銃口から上がっていた。
血飛沫は、黄色のブレザーの間から迸っていた。
言葉は、私だけが紡いでいた。

「貴女は帰れない」

灯りの消えたステージ。２人の演者は唐突な銃声に飾った世界を脱ぎ捨てて、ノンフィクションに還る。
…『ばいばい』なんて、元の世界のコトバを使役する彼女を除いた２人のみが。

「なぜなら、もう…海に漕ぎ出してしまったから」

この世界はいつも冷房が効きすぎていた。肌の感覚が麻痺するほどに。
無防備な弓塚さんの背中の肉が質量を減らすと、同時に四角い部屋は十年前から死に絶えていたように
『言い訳』をなくした死の世界はわたしの前に冬の世界として具現し、幻想を駆逐。視界を満たす。

「玲二…元々世界は、此処はこういう場所だったの?」

玲二と彼女を結ぶ斜線に身を乗り出していた私は、振り返らずに彼に問いかけた。
決して大きくない私の声は、ともすれば爆音の電子音にかき消されそうだけれど…
きっと彼には聞き分けて欲しい。…それ以上、何かを語る気持ちにはなれそうにないから。
コトバを打ち切り唇を縦に結んだ時。聞き分けの無い夢との決別のように、半刻を告げる時計が超然と鳴り響いた。
その音に思いを馳せ…知らず私は玄関──弓塚さんの倒れた方──を凝視したまま涙に溺れた。
さながら終戦後、玉音を胸に祖国で黙祷を捧げる帰還兵の様に。
玲二に…貴方に来て欲しくなかった。貴方から『世界』を隠しておきたかった。
僅かな『世界』の修正力から『彼の世界』を守りたかった。
その為に、私だけが自らの意思で『世界』に戻っても構わなかった。
しかし、彼女を屠る前に彼はここに現れ…彼女は私も彼も、殺さなかった。

解れた糸の先を繕い、何一つ不自由の無いような顔で…
そう。靴紐が緩くほどけたのを道端で欠伸を漏らしながら結ぶような…。
又は木漏れ日を清潔感のあるレースのカーテンで覆うような…
例えるならそんな本当に些細な動作で維持できた平和。
その稀有な平和の下、今までこの国へと来てから幸せだった…。きっと。

それを･･･弓塚さんは全て消してしまったのよ？戯れの…そんなつまらない事で。
無防備に背中を向けるような無責任な理由と決断で…どうして貴女はこの世界に現れたの？

そう。その通りよ。
彼の心を守りたかったのは、それは…己の煩悩がため。
彼の安らかな寝顔は、わたしの可能性だった。
だから。『彼女に殺されても構わない』そう思っていても。
貴女は彼の心を犯したという…それだけの理由で私はもう、貴女を許せない。
同情の心は嫉妬と羨望の波に消え失せた。
やはりわたしは人間らしい心など持ち得ないのかもしれない。

私たちのような…意図無く神様のボートから流れ出てしまった流浪の民には、帰るところなど無い。
風のままに、風と共に生き、更には風となり、自ら進む道を選べずに、生きる為だけに躊躇なく生きる。
時折の風見鶏を崇め、それを神の啓示と見。その前に立ちはだかった物は躊躇すら無く貫き消す。
風見を失う風は穏かさを欠き旋風となる。
わたしの中の風は言う。
貴方が憎くて、壊さないと気がすまない。そこに赦しや言い訳はありえない、と。

……わたしは、風になれるほど強い心は持っていないのに。

62 名前：吾妻玲二 ◆zusatinwSI ：04/11/08 22:51

>>61
吾妻江漣ｖｓ弓塚さつき　『人殺しの気持ち』


　銃声が、響いた。
　硝煙が、噴いた。

　奥歯を噛み締める。グロックのグリップを、ひしゃげるのでは無いかと思わせるほど強
く握りこんだ。全身を襲うこの無力感。その正体がいま、硝煙が薄れその向こうに。

　学生服姿の少女。四肢を投げ出し、うつ伏せに倒れていた。

　グロックのセイフティは未だ健在。俺はトリガーを引いてはいない。けど、エレンが撃
たなければ俺が撃っていた。だから、だから弓塚同様彼女にも決して問うような真似はし
ない。どうして―――何故撃った、とは。

　事情は、分からない。
　弓塚とエレンとの間に一体何があったのか。
　弓塚は一体どうしてしまったのか。
　俺には、分からない。それを問う度胸もない。

　ただ一つ、これだけは分かっている。弓塚さつきはいま死んだ。

　俺に泣く権利など無い。この涙は彼女にとって屈辱の雨だ。泣くぐらいなら殺さなけれ
ば良い―――俺ならエレンを止めるコトは、十分に出来た。しかし俺は止めなかった。そ
れは俺が弓塚を殺したと言うコトと同意義だ。殺人者は俺だ。
　なのに勝手にも、俺は泣いていた。
　心の内で、弓柄に詫び続けた。

　すまない―――すまない、弓塚さつき。君を、君を殺してしまった。生かすコトが、出
来なかった。俺が生きるため。エレンが生きるため。二人ともに生きるために君を殺して
しまった。すまない、すまない。

　自分はいま、生きている。弓塚を殺したから、生きている。あそこで彼女を逃せば、い
つかまた俺たち二人の前に弓塚は姿を見せただろう。満身創痍でありながら、修羅場を知
るエレンや俺を圧倒するあの偉容。次に会えば死ぬのは俺たちだったろう。だから、殺し
た。当然のコトなのかもしれない。けど、俺にはその事実がどうしても納得できなくて、
とても卑しいものに感じられて仕様が無かった。
　俺は弓塚の笑顔を知っている。
　俺は弓塚の学園の在り方を知っている。
　俺は弓塚に憧れ、恋心を抱いている奴を知っている。
　そして俺は、弓塚の寂しさを知っている。君の痛さを、ほんの僅かながらも、この一瞬
で俺は感じ取ることが出来た。
　そんな弓塚を、俺は殺した。

　まるでゴミじゃないか。俺の人生なんて、俺以外の何者にも価値が無い。そして俺自身
もこの俺を無価値と断ずるのならば、それをゴミと呼ばずに何と呼ぶ。
　弓塚の亡骸は、爪先から徐々に風化して砂となり、部屋の空気に溶け込んでいった。常
識を逸する光景だったが、俺は不謹慎にもそれを見て、美しいと思ってしまった。
　この砂は水よりしなやかで、鉄より強固だ。俺のグロックの熱は水を蒸発させ、鉄を撃
ち抜くだろうが、彼女の砂は決して侵せない。砂の一粒一粒にまで行き渡ったその毅然な
在り方。俺は彼女に敬意を覚え、そして後悔した。
　死ぬ必要は無かった、と。今は絶望しかなくても、生き続ければその先には必ず幸せが
あった。少なくとも、その可能性だけは。死ねば無だ。幸せもクソもない。終わりなんだ。
死なせたのは俺だ。殺したのは、俺だ。俺が死ねばよかった。そう思わずにはいられない。

「エレン……」
　掠れた声を無理に奮い立たせ、佇む彼女に言う。

「君が、無事で、よかった」

　引き攣る笑顔。けど、それは何よりも本心。
　弓塚に死んで欲しくは無かった。俺の愛する世界で、いつまでもあの微笑みを称えて欲
しかった。そのために俺の命を犠牲にするコトは、何ら構いはしなかった。
　しかし、俺には彼女がいる―――エレンがいるんだ。彼女を一人には出来ないし、彼女
を置いて一人逝くコトも自分には考えられなかった。
　結局、俺の我が侭だと気付く。弓塚に希望があったように、俺は己の未来にも希望を感
じていた。それを手放すのが惜しくて―――彼女を死なせた。

　すまない。
　俺は、勝手だ。
　すまない、弓塚。
　こんなに生きるのが辛いのに。
　こんなに生きているのが憎いのに。
　俺はまた、生きることを望んでしまった。
　君の死を、踏み台にして。
　すまない、弓塚。


　弓塚さつきは死んだ。彼女は何も残さず、全ては砂と消えた。ただ、弓塚さつきが死ん
だその瞬間、彼女は吾妻玲二の中の神となった。彼の中に巣食い、彼の精神を蝕む数多の
神の一人となった。

63 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：04/11/08 22:52

>>62
吾妻江漣ｖｓ弓塚さつき　『人殺しの気持ち』


　砂が、見えた。
　砂漠が。
　圧倒されながらも、一歩前に出る。
　まるで眼前に広がる砂の海全てを抱かかえるかのように、両腕を広げた。
　広い。ああ、なんて広いのか。
　自分の中に常に燻っていた砂漠のイメージ。全ては枯れ果て、残る僅かなモノも去った
夢の残骸。吹き付けるのはただ砂ばかりで、渇いた心を癒すはずの雨は、幾度と無く降ろ
うと、砂に呑まれ、貪欲に吸収し、潤いを得るには至らない。
　それは真実だ。どうしようもないほどの、事実だ。そして、それ故にさつきは砂漠を疎
んじていた。ただひたすらに孤独で、ただひたすらに飢えた、卑しい存在だと信じて疑わ
なかった。そんな卑屈なものを心に内包する自分もまた浅ましい、と思い続けてきた。
　わたしは空に憧れ、星を夢見た。枯渇した砂漠に比べ、空はあまりにも高く、洒落っ気
に満ち満ちている。自分もあの輝く星の一つになりたい。枯れ果てた地から星を見上げる
のでなく、肩を並べて燦々と輝きたい。幾度となく、空を見上げてはそう思った。
　だが、ついに砂漠と直に対面する時を迎えてみれば、そんな憧憬は木っ端に粉砕される
事となる。
　見ろ。
　この雄大な光景を。
　地平の果てまで広がるこの砂の海を。

　此処がわたしの家と言うのなら、ああ、それはなんと素敵な事なのか。
　日中浴びせかける灼熱の陽光を、意にも介さず毅然と跳ね返す砂。
　滝の如く降り注ぐ豪雨を全身で抱き止め、その全てを受け入れる包容力。
　吹きすさぶ砂嵐は感情の気紛れ。通り過ぎればそこにはまた、いつもの砂がある限り。
　偉大だ。
　一片の揺らぎもなく、昂然と居座り続けるその在り様。
　偉大だ。
　わたしは愚かだった。自分を支配していた砂漠への偏見は、現実を目にして崩壊する。
　涙が止まらない。歓喜に湧く心が、止まらない。
　砂漠は生きている。そこには多種多様の表情があり、夜には夜の、昼には昼の感情を窺
わせる。砂漠は生きている。そしてわたしもまた、生きていた。

　この身体となって、わたしは自分が死んだと認識していた。死んだ自分の身体。死んだ
自分の心。生きてる人が憎くて、だからその血を啜り、少しでも生命の熱さを身体で感じ
とろうと必死だった。
　だけど、いまわたしはようやく気付く。
　ならば、この身体になる前のわたしは生きていたとでも言うのか。
　感情を殺し続けていた自分。
　周囲の敵、顔の見えない"みんな"の敵になるコトが怖くて、ただ自分の役を演じるコト
に必死だった自分。
　想いは告げられず、ただ不満と鬱屈ばかりが蓄積され続けていく自分。
　それが、"生きている"と言うコトなのか。

　ならば、死んだ後のわたしは。
　自分の衝動に任せて人を殺め、飢えに耐えようともせずに生き血を貪る。
　感情の抑制など無い。怒りが湧けば所構わず当り散らし、笑いたければ夜空の下、存分
に笑った。寂しくて、痛くて、悲しみがココロを支配すれば、涙をながし声を上げてぼろ
ぼろと泣いた。隠そうともせずに、泣いた。
　そして吾妻江漣。憎いと思う人がいた。何の躊躇も無く正面から喧嘩を吹っ掛けてやった。
　自分の不幸の現況を"世界"と断定し、敵対した。
　そう、"世界の敵"としてわたしは好き勝手にやっていたじゃないか。
　それが、それが死者の為せるコトなのか。

　この砂漠と同じだ。わたしは自由だった。止めるモノも縛るモノもいてくれない、誰も
いないこの世界で、わたしはほんとうに自由だった。
　寂しいね。
　寂しいけど、楽しかったよ。

　さあ、帰ろう。この砂漠がわたしの帰るべき家なんだ。一歩前に進み、更に一歩進む。
　暫く歩き、ふと足を止め空を見上げた。そこには星。輝く、星。
　僅かに微笑んでから、首を振り、歩みを再開した。
　さようなら、遠野君。わたしはいつまでもあなたを見ているよ。何千年何万年経とうと
も、変わらずあなたを見つめ続けているよ。でも会うコトは―――もう、出来ないね。
　だから、さようなら。

　わたしはたった独り、弓塚さつき。
　この砂漠の中心で、満天の星空を見上げ続けようと思っています。

64 名前：エレン ◆a9Elen2oPw ：04/11/08 22:56

>>62>>63
吾妻江漣VS弓塚さつき　Epilogue

舞い散る彼女の傍にわたしは肩膝を付き黙祷を捧げる。
背中に感じる玲二の暖かい冷酷さは非情に心地よく心に染み渡る…安らぎ。
だからこそ、彼に私はこう問いかける。貴方の、玲二の暖かさの毒に窒息しそうな
わたしを彼が知らないのが嫌だった。

「弔らわないの？」少しの皮肉。
「彼女をかい？…」気付かない彼？
「…そうね」　　　期待も希望もない返答。

わたしは流れさる砂の前に身を屈める。
彼女だった残滓は両手の器をすり抜け、わたしなんかまるで居ないように黙って宙に舞う。

さらさらさらさらさらさら…

この夜に溶けて流れて逝ければいいのに。わたしも、玲二も。
彼女は何度も弔われるだろう。両親に、校長以下の教職員一同、全校生徒は悲しくて涙すら流し...
───ああ、わたしたちにも…ここの人たちは涙を流してくれるのだろうか。
だとしたら。それを見られないのが救いというべきだ。
そしてわたしも涙を流した。他人事のように涙は瞳を覆い、溢れ…
夜のしじまに溜まり、砂を含み床を汚す。

「君は変わったな」
「キミって」
「君はキミさ」
「わたしは『君』じゃないわ」
「エレン…」
「止めて」

抱きしめられた。腕いっぱいに。
彼がエレンと呼ぶ。わたしの中で、わたしの外で。
エレン、エレン、エレン。
騙しきれないほどの罪。「アイン」がエレンを苛み、「エレン」はわたしを嫌悪感で覆う。

──人殺しのエレン。嫉妬に己を忘れたエレン。命令ではなく、去る相手を背後から撃ったわたし。
それでも玲二はエレンと連呼し、私を愛し、私を責めた。今弔ったばかりのエレンを呼び戻した。

彼女の死を前にしてもわたしの名前はまだ響く。強く、優しく。
その名は忘却し尽くすコトも叶わない、呪われた愛の呪縛。
弓塚さつきを撃ち殺したのはわたしなのに、まだ「エレン」の文字はわたしの為に
この世に残されていた。

ユニットバス。
レースのカーテンはばさりと落ち、私は彼と上下にそのまま向き合った。
ぬるま湯の張ったバスタブの上、体温が触れた。

ふわりと揺れていた髪に湯を塗られ、額に張り付く。湯とカーテンであったものはさらさらと光を反射している。
口は酸素を望み、脳は快楽を求める。

エレン、エレン、エレン。

「わたしは…玲二のエレンでいいの？」

『いい』も何も。…それでも無くせないほどに、私は「エレン」でいたかったのだ。
ただ、きっとそういうコトなのだろう。　　

65 名前：吾妻江漣 ◆a9Elen2oPw ：04/11/08 22:57

>>64

翌朝。クリスマスの３日くらい前。

初雪は北の息吹を乗せ、過ぎ行く季節を美しいものに仕立て上げている。
「朝、顔洗うとき…息を止める必要、なくなった」
折からの積雪にローファーを埋めるように一歩一歩歩く早苗は逆説的な軽口を叩いている。
”これで大手を振って給湯器が使えるじゃない？ラッキー”
そんなコトバに逐次美緒は曖昧に相槌を打ち、わたしは手をこすりマフラーに付く粉雪を払った。
さらさら流れる雪に見とれ、視線を下に落とすと何時の間にか靴紐が解けているのが目に入る。

「さなえもーん、ちょっと肩貸して」

”どうしたの、その頭。”唐突。早苗は今更そう聞いてきた。
今朝会った時からその髪なのに、このタイミング。
早苗の少しアンバランスに下がった右肩に手を乗せたまま渋々わたしは答えてあげた。

「少し疲れたみたい。精神的に。そうするとこういう頭になるの」
「メンタリティで疲れると？初めて聞いた。是非教えなさい。そうなる秘訣」
「ええ…夜更かしと所謂恋煩いの所為？こい、コイ…あーあってる？使い方」
「Veary goooooo」少しも信じてない彼女。
ことさらに舌を巻いて発音するので、“早苗の英語はあのゴジラの叫び声みたいだ”とわたしはは言うと。
「ノン。わたしのマネだね。今のゴジラは。一叫びごとに私に著作権料を払うべきよ」だって。

彼女のいうコトは一々スケールが大きくて笑えた。

戯れ、遊び、靴紐を結び、少し歩く。
この角度に入ると、小高い上り坂の向こう側からわたし達の姿は一望される位置になる。
建造物の陰から外れ、子供達と親達が集う区画の広場へと差し掛かるためだ。
こうして僅か４分の、一生分の邂逅は３０歩の内に終わる。
マンション近くの児童公園入り口前でわたしは突如そう言い…慣れてしまった家路を
逆走した。「わたし、忘れ物」なんて白々しく言って。
それに対しての早苗と美緒。
「何忘れたの？」「アニキ」「捨ててとけば」「悪いよ、早苗」
丁寧に爪が切られた細い指を使いメール文字を打ちながら美緒は言う。
片親の彼女は家を出るときに心配をかけぬようメールを入れている。自主的に。
そんな美緒のディスプレイを覗き込み、機能をカスタマイズする早苗。
彼女の爪は特定の爪だけ顕著に長く伸ばされている。願掛けの一種らしい。
その指でギターリフが印象的な…往年のロックをムリヤリ着信音に入れようとして嫌がられているのも
予定調和の範囲の一ページ。成熟した未成熟な社会の一コマだった。
そしてそれは永久にわたしの心に刻まれる。

それはとても美しい世界だと思った。　　

66 名前：吾妻江漣 ◆a9Elen2oPw ：04/11/08 22:59

>>65





───その日の内に、私たちは日本を後にした。

67 名前：吾妻江漣 ◆a9Elen2oPw ：04/11/08 23:01

>>66
後日。
ある指定暴力団の傍系の頭がその物件に潜伏しているという虚報により、敵対する団が襲撃をかける。
その抗争の最中、高校生兄弟が巻き込まれたという訃報が記事として表れ…。
そして数ヶ月後には誰かが簡単に連続して飛び降り自殺をしたりする───そんな記事がメディアに掲載される。
とてもチープな筋書きの…ゴシップ誌の一ページ未満の文量価値でわたし達の命はこの国から合理的に消しさってくれる。
ネタに困る晩春。苦し紛れの週刊誌は更に狂喜を煽りこう書き立てるだろう。

『呪われたマンション。住人が次々不幸に』

──そのような危険地帯が首都一体に多数あるにも拘らず、治安が世界でも良好なこの国に
これからも、せめてもの幸が多からん事を────

雪は何時しかこの街を白く覆い、面影を薄くする。
それも束の間。

何度目かの春にはこのマンションも消え、私の記憶は意味を無くす。
そしてそれでもわたしはほんの少し、思い出すのだろう。───まだ此の世に漂っていられるのなら。
あの冬の日、淡い色彩を纏った景色の中で左右の髪をふわりと揺らした、あの身勝手な
春にこそ栄える名前の子の事を。
そしてわたしは異国でも変わらずに人を殺め続け…それでも髪を揺らしながら、こう述懐するのだ。

「わたしは貴女を忘れてないわ」とね。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　吾妻江漣VS弓塚さつき『人殺しの気持ち』　Fin．

68 名前：吾妻江漣 ◆a9Elen2oPw ：04/11/08 23:21

吾妻江漣VS弓塚さつき　★★★★★★★…じゃなくって『人殺しの気持ち』
レス番まとめ。

>27>28>29>30>31>32>33>34>35>36>37>38>39>40
>41>42>43>44>45>46>47>48>49>50>51>52>53>54
>55>56>57>58>59>60>61>62>63>64>65>66>67

http://www.appletea.to/~charaneta/test/read.cgi/ikkoku/1099185710/27-67

↑平たく言うと、このURL。

忘れる事が罪だから──忘れない。

こんな話でも…ついつい、ちょっとだけ読んでしまったアナタ。
…そのめぐり合わせついでに…感想、書いてくれたら嬉しいな。
ttp://www.tpot2.com/~vampirkrieg/bbs/test/read.cgi/vampire/1053814090/

69 名前：カペルテータ ◆24CSA/UCGI ：04/11/17 07:12

アーカードｖｓカペルテータ

カペルテのイクサ　〜The Judgement〜

　ぱちり。
　紅き少女の手が、一心不乱に言葉を紡ぐ。
　そう、“それ”は日記という名の日々の記録。後の自分へと託す、今の自分。
　彼女にとって“それ”をつけることは習慣であった。
　毎日毎日、一週間、そして一ヶ月。内容に幾分かの差異はあれど、“それ”を綴る様子に大きな違いはない。
　……そう、今日この時までは。

　かたん、と音がした。
　何事かと少女が振り返ると、そこにはドア。そのドアの覗き窓に、長身の男が直立していた。

ﾚｲｵｯﾄ「やあカペル、お待たせ様。キミのベッドにインドライブするレイオットの登場だよ。さぁ、早速ブギーナイツを激しく楽しもうか」

　しかし！
　これは実はアーカードの変身だったのだ！

　一瞬の逡巡。しかし、この時間はカペルにとっては致命的なミス、アーカードにすれば絶対の好機であった。
　アーカード扮するレイオットの手が伸びる。その先には掠ると痛い４５４カスール弾をしこたまぶちこんだジャッカル。
　冠した名前通りにジャッカルが吼え、ドでかい弾丸が撃ち出された。

トリップ勝負：次のアーカードのトリップが大文字ならカペルの勝利。小文字ならアーカードの勝利。
　　　　　　　　記号なら、志賀透の勝利。

70 名前：カペル：04/11/17 07:25

>>69
　カペルはその瞬間、劇的な反応速度を見せる。振り返り、つい先ほどまで日々の経過を
書き綴っていた日記で、撃ち出されたカスール弾をはたき落としたのだ。
　日記は無惨にも粉砕するが、弾道を逸らされたカスール弾は天井の壁を穿ち、粉砕する
に留まった。

「レイオット……引っかかりましたね」

　その言葉とともにカペルの身体がまるで溶けたアイスのようにぐにゃりと歪んだ。
　そう、このカペルの姿は偽り。実はアルクェイドの変装だったのだ！

「彼女の姿なら誘き寄せられるとは思っていたけど、案の定なようねレイオット」

　場にそぐわぬ無邪気な笑みを浮かべるアルクェイド。しかし、燃えさかる深紅の双眸は
レイオットを射竦めて離さない。
　左手の爪を伸ばし、槍のように構える。一歩踏み込み、次の一歩で跳躍。アルクの身体
が弓のように撓った。次の瞬間、一筋の閃光と共に突き出される強烈な刺突。狙いはのど元。
無慈悲なまでに正確。アルクェイドはレイオットの即殺を確信した！
　

71 名前：カペル ◆SlNONs/RnA ：04/11/17 07:31

トリップ……忘れてました。

72 名前：アーカード ◆ADXxvQRiMY ：04/11/17 07:38

>70
　ぞぶり、という嫌な音とともに、アルクェイドがレイオットの喉を貫いた。
　跳ねる血飛沫。途端に辺りに立ち込める生臭い血の香りに噎せ返るかのように、レイオットは呟いた。

「だが、その一手では――俺を殺しきることは出来んな。アルクェイド＝ブリュンスタッド」

　次瞬レイオットの上半身は弾け、中から現れたのは子供の姿――否、それこそ『本物の』カペルテータだった。

「私のタイプライターを勝手に使った罪は重いです。……シャロン」

――みぃあ

　少女の影からまるで湧き出るかのように、黒猫が疾駆する。
　カペルの目の前に立ち尽くす、白き吸血姫へと向かって。

73 名前：カペル ◆SlNONs/RnA ：04/11/17 07:53

>>72

「な、なにぃ！　キサマ、レイオットではないな！　ま、まさか……
カペルテータ・フェルナンデス！？　おのれ謀ったなキサマぁ！」

　四季の絶叫が屋敷に谺する。彼の血刀が向かい来る黒猫を切り、薙ぎ、裂いて払った。
彼の刀を振るう疾さは神憑りで、まさに疾風吹き荒れる刃。その刃圏に立ち入りしものは
微塵に断ち斬られた。
　だがいかんせん多勢に無勢。いくら四季が疾手の如く刀を駆ろうと、無限に湧き出る黒
猫を止めるには至らない。次第に押され、白い出で立ちは漆黒の波に飲み込まれてゆく。

「ひぃあぁ、うわあああああああ！！」

　恐怖に引きつる四季。闇が、真っ黒に固まった闇がいくら斬っても斬っても無くならない
闇が無限に彼の身体を犯し飲み込み咀嚼する。
　そして最後を漆黒に覆われ、彼の姿は闇に消えた。そこには一房の、彼の白髪残るのみ。

　カペルは四季の消滅を確認すると、何事も無かったかのように席に戻り、日記の続きを
打つことに集中した。

　四季→シャロンに飲まれ戦闘不能
　カペル→勝利

74 名前：カペルテータ ◆24CSA/UCGI ：04/11/17 07:58

レス番纏め
アーカードｖｓカペルテータ

カペルテのイクサ　〜The Judgement〜

導入
>>69
凄い攻防
>>70>>71>>72
エピローグ
>>73

シャロン、お疲れ様。

―――みぃあ

75 名前：黒衣の者(M)：04/12/12 13:34

黒衣の者ＶＳイワン・アイザック『「元」神の子と「元」神父』

街。なんて事はない、この新大陸にはどこにでもある、先住民から奪い立てほやほやの
土地に作られた街の一つ。
そこは、少し前・・・そこが人間の街だったころとは違う汚濁にまみれ支配されていた。
それまで街を支配していた暴力と差別と退廃と傲慢、それに変わって街を支配したのは、
人間の精神を崩壊へと導く、血への渇望・・・狂血病だ。
そこに君臨するのは、新大陸の狂血病患者＝吸血鬼の王、「黒衣の者」。

数ヶ月前狂血病を制御して新大陸制覇の目論みを抱いた防疫修道会の本拠ソリアを殲滅
した戦いで、友輩を救おうと必死の思いで向かってきた実の娘キリエに受けた傷は、既
に完治している。
黒衣の者、未だ健在なり。

街の中心に、かつての真面目な住人の血税を搾り取って都市の繁栄度とは不釣り合いに
大きく作られながらも、その後にこの街を支配した背徳と欲望との闘争に敗れてうち捨
てられた教会、そこに掲げられた大きな十字架の下にしつらえた玉座に黒衣の者は腰掛
ける。

その渾名の通りに黒いマントと僧衣（カソック）に身を包んでいるが、キリスト教聖職
者とはおおよそ最もかけ離れた印象をその周囲に与えている。それは、その顔を目元と
口元以外全て覆う、悪魔をかたどった仮面のせいだ。
二本の長い角、鋭く刻まれた目のスリット、ギザギザとした牙をかたどった口部、そし
てそれ以外がまるで砲弾の表面のようにつるりとしていることが、かえってシンプル故
の不気味さを見る者の精神へと刻みつける。
その恐ろしさおぞましさが、聖域を吸血鬼の城へ、魔の領域へと変化させている。石壁
や床かを伝う黒衣の者の肉で出来た触手も、その「気」と呼ぶべきものに比べれば些細
な装飾に過ぎない。

町中は既に血に狂った者が、吸血鬼たちが溢れていた。
それを黒衣の者は、平然と眺める。かつての彼が出現する以前の街と、大差ないと言わ
んばかりに。
貧困からくる様々の犯罪、銃社会故の残虐な殺人、それら種々様々な要因で生きる糧を
失った女性達の売春行為と、そこから更に発生する犯罪、麻薬、白人による有色人種の
差別、虐待・・・
街は、この国は、そして人間は、黒衣の者が狂血病を蔓延させる前から、互いに血を流
し、狂い堕落し続けてきた。その性質が狂血病によって表へと出た、それだけのことで
ある。
黒衣の者はいうなれば、溢れんばかりに溜まった膿を絞り出したに過ぎないのだ。

そして、その仮面の奥にあたかも火口から覗く溶岩の如く赤光を放つ目が、不意に細め
られた・・・警戒か、愉悦か、嘲弄か、愛玩か、哀れみか・・・ともかく。
その変化は、支配下の者の精神から関知した、この死都への侵入者へと向けられていた。
屍喰鬼級とはいえ狂血病患者を蹴散らす、敵。
しかし敵の襲来と言うのに、むしろ複雑な感情の集合の中それを待ち望んでいるように
も見える。
「試させて、もらおうか・・・その魂を・・・」
かつて己の娘、彼が人間に与えた希望、キリエと戦った時のように。

76 名前：イワン・アイザック ◆plPprIesTk ：04/12/12 13:45

黒衣の者ＶＳイワン・アイザック『「元」神の子と「元」神父』
>>75

　その街は、開拓時代のアメリカ中西部に於いては至極ありふれた、更に言うならば取り
立てて目を引くところなど何もない、つまりはそういう場所であった。


　乾いた赤い土と、舞い上がる土埃によって赤く染まった月。


　地上を睥睨する赤い瞳の様な月の視線を遮るかのように白い蒸気を吐き出す機関車も、
駅に停車した客車のタラップを、ブーツに取り付けた拍車の音をさせつつ降りる巡回神父
らしい男の姿も、ありふれた光景ということが出来るだろう。

　鍔の広い帽子を目深に被り、埃を避けるためであろうコートの襟元から覗くのは聖職者
特有のクラージマンシャツの白いカラレット。
　手にした古い革表紙の書物は典礼書の類であろうか、十字架に似た意匠が施されており、
それを懐にしまい込むと両手に使い込まれたトランクを提げ、一歩、また一歩と板張りの
構内を「街」へと向かう出口へと進む。

　視線の先には、それなりの規模を持っていることが容易に想像できる、高い鐘楼を備え
た教会。
　壁面には蔦を思わせる蔓性の植物『らしきもの』がその植生に従って空虚を埋め尽くさ
んが如き勢いを見せており、「開拓された街」には不釣り合いなまでの時間経過を思わせ
た。


　だが、


　　　　その視線は余りに獣性を帯びすぎてはいないか。
　　　　教会より発せられる気は聖性というには余りに晦瞑（くら）すぎはしないか。
　　　　そして何より――――――

　　　　　　　　　　　　　　　　　蔦は果たして腐肉の色をしてはいないか。


　ナイフで削ぎ落とした様な頬と、同じく刳り抜いたような眼窩の奥の炯々たる光はさな
がら死者で、骨の浮いた指がトランクの留め金を弾くと中から覗くのはストックが外され
た短機関銃。
　銃身上に爬虫類の鰭を思わせる放熱板を備え付けたトンプソン短機関銃と呼称されるそ
れに、大型のドラムマガジンと木製のストックを取り付けると、銀の弾頭がずらりと並ぶ
ブレットループを持つガンベルトの右に。
　銃身を極限まで切り詰めた水平二連式散弾銃は左に。
　短剣の鞘とポーチは後腰に納めると、腕をだらりと下げる。


　鐘楼を櫓と、教会を城とするのであれば衛視は此処其処に見受けられる『彼等』であろ
う。
　血の『赤』よりも更に『赫』い瞳を持つ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　血に飢えた、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　『狂血病患者』たちの群れ。


　犲狼の笑みを浮かべながら、「神父（PRIEST）」、イワン・アイザックは司式者として
宣言する。
　この、血に塗れた聖餐式の。

「悪夢は終わりだ……“黒衣の者”……」

　猛禽の翼を拡げるかの如き腕は祝祷を、両の手にした銃により、ただ、トリガーを絞り
……。
　

77 名前：黒衣の者(M)：04/12/12 13:50

黒衣の者ＶＳイワン・アイザック『「元」神の子と「元」神父』
>>76

どくん、どくん・・・
教会全体に張り巡らされ、街の中にも伸びゆく「腐肉の蔦」、黒衣の者の触手が脈動した。
天空にかかり夜を支配する朱い月、そして町中の死気を吸い集め、その根元・・・黒衣の
者に力として供給する。
言うなれば「黒衣の者」は心臓この触手は血管、そしてこの街自体が一つの巨大な一体の
吸血鬼と化した、と言えよう。この地を訪れた神父が、月を瞳と感じたのも、あながち過
ちではない。

故に、黒衣の者は、駅で起きた事態をいち早く把握していた。
死徒よりも死人じみた姿の狩人、それが悪魔と邪神の闘争に巻き込まれた神父イワン・ア
イザックのなれの果てであるということに、黒衣の者はすぐに気付いた。
おそらく向こうも、この事態が黒衣の者の仕業であることに気付いていて来たのだろう。
互いにこの新大陸の夜の社会では有名人である。噂には聞いていた。

精神感応していた狂血病患者の意識が消滅した。おおかた銀の弾丸が頭を砕いたのだろう。
その間際に関知した、痩身の神父の言葉に「黒衣の者」は仮面の内側でくぐもった笑いを
漏らした。
そして、呟く。
「悪夢ではない。これが現実なのだ。人の子の世界の、現実なのだ。」
そのつぶやきは、もとよりあるかなしかの知性を失った狂血病患者の喉を介して、イワン
・アイザックにも告げられる。そして同時に、黒衣の者は配下の狂血病患者を動かした。
彼がどれほどの意志を持って、この街にやってきたのかを見極めねばならない。
逃げるか、狂信的につっこんで藁のように死ぬか、はたまた。
その第三の道を、黒衣の者は期待する。その可能性が高いと、黒衣の者は認知している。
さしあたって幾人かの、理性の消失度の高い獣同然になった狂血病患者を機関車に突っ込
ませ、石炭を引っかき回して炭塵爆発を起こさせ退路を断つ。
「人の命に逃げ道はなく。」
そして、その駅を出てからこの教会へとつながるルートの道に同レベルの狂血病患者を配置
して行動を阻害、道の左右の建物にやや知性の残った狂血病患者に銃を装備させて配置、狙
撃させる。
「行く先に苦しみは多く。」
皮肉にもそれらは、黒衣の者を追ってきたソリア防疫修道会の下っ端残党や、ソリア壊滅に
これ幸いと新大陸支配の野望を剥き出して上陸してきたイスカリオテや埋葬機関の者共が主
体であった。
「それでも尚・・・というものが有り得るか。見せてみろ、イワン・アイザック。」

78 名前：イワン・アイザック ◆plPprIesTk ：04/12/12 13:52

黒衣の者ＶＳイワン・アイザック『「元」神の子と「元」神父』

>>77

　左手に擬されたショットガンが咆吼を上げ、狂血病患者の……吸血鬼の一人の頭部を破
壊する。
　そこに感じられた一つの気配。
　恐らくはこの事態の――いや、この『悪夢』の当事者であり、実行者であり、幻視者で
ある―― 一つの存在、“黒衣の者”。

『悪夢ではない。これが現実なのだ。人の子の世界の、現実なのだ。』

　“気配”は、唐突に背後の吸血鬼の口から諭すように、喩えるなら改悛を求める司祭の
口振りで応える。

　――即ち、この“死兵”の全数を以て“黒衣の者”の『腕』、或いは『脚』、若しくは
文字通り『爪牙』とするべきであろう。

「く、くくく……」

　そして、その数多の爪、牙、四肢、“黒衣の者”の胎内に於いてなお、イワン・アイザッ
クは嗤う。
　左の腕を背後に向け、再びトリガーを絞る。
　銃声が轟と響き、頭部を失った吸血鬼は握りしめた海綿のようにだらだらと血を吹き出
しながらその場に頽れる。

　肉食獣の笑みを浮かべながら、ブレイクオープンした散弾銃に再装填。
　銀弾頭のシェルが薬室内に飲み込まれ、閉鎖される。

「違うな、“黒衣の者”……これは……お前の悪夢だ……」

　銃口を上げると狂血病患者の群れの遙か先に見える教会の、“黒衣の者”の居るであろ
う一点、聖堂内部に向けポイントする。

「主よ…我はたとえ…死の谷を往くとしても…」

　悲鳴、そして閃光と轟音。
　背後から殴りかかるような爆風にコートがはためき、目深に被っていた筈の帽子が吹き
飛ばされると、その頭蓋が浮き出した額には十字の刻印。


　闇との契約の刻印は既に消えがたく。


『人の命に逃げ道はなく。』

　退路を断つためであろう、蒸気機関車は爆破され既に瓦礫となっている。
　――尤も、その光景すら目にしようともせず、イワン・アイザックは眼前にひしめき合
う狂血病患者の大群に向けて歩を進める。

「災いを恐れない…主がともにいるならば…」

　道の両側に建ち並ぶ酒場やサルーン、様々な店……高所から覗くのは鍔の広い帽子に修
道衣、嘴めいた防毒面と手にしたウィンチェスター、ヘンリー、ボルカニック等のレバー
アクションカービンやスプリングフィールドのトラップドア、果てはスコーフィールド、
ドラグーン、SAAやライトニングなどといった拳銃の影。
　嘗ての防疫修道会士の成れの果てと言ったところだろう。
　キャソックやスータンの姿も見えるところから、恐らくはそれ以外の会派の者達も混じっ
てはいるのだろうが。

『行く先に苦しみは多く。』

　一斉に鳴り響く装填音は一種有機的ですらあり。

　続く砲火は吐息か、鬨か。
　マズルスモークに白く煙る夜の大気の中を颶風と化して駈けつつ右手の短機関銃を横薙
に斉射。
　「シカゴ・タイプライター」の名に違わず１分間に700発の速さで「death（死）」とい
う文字を実に正確に綴り続ける。

「その鞭と杖が…我を鼓舞し慰めん…」

　聖書詩篇23章。
　「賛歌・ダビデの詩」と題された聖句を口ずさみながら空になった弾倉を捨てると、ト
ンプソンを無造作にホルスターに突っ込み後ろのポーチからダイナマイトを一束掴み出す。
　一塊りの吸血鬼に向けて放り投げ、ショットガンをトリガー。
　血風混じりの爆炎の中、肉の絨毯を踏みしめながら更に聖堂目掛け加速する。

『それでも尚・・・というものが有り得るか。見せてみろ、イワン・アイザック。』

　既に声の発せられる場所すらも判らない程に入り乱れた怒号と絶叫と殺戮の煉獄。

　だが。


「これが……苦しみ……だと？　だとすれば……俺の見た『苦しみ』は……こんなものでは
……足りないんだよ」


　更に、深く、嗤う。
　

79 名前：黒衣の者(M)：04/12/12 13:54

黒衣の者ＶＳイワン・アイザック『「元」神の子と「元」神父』

>>78

道路で、建物の影で、打ち倒されていく狂血病患者達。
「吸血鬼」としては大したことはないとはいえ、それでも人外の力を持ち、また一部の者は
銃で武装しているというのに、まるで射的の的のように、あっさりと「撃ち倒される」。

勿論コルクで倒れる的と違い、血飛沫や脳漿、臓腑をぶちまけながらだが。
それでも何発かの弾丸が、ダビデの詩を唱える神父の体をかすめた。元々ソリアの兵が使っ
た、対吸血鬼用の浄銀弾。
それが額に十字架を刻んだ神父の体に、新しい傷を刻む、と、その傷がただの傷に非ざる、
じゅうという焦げるような音を立てた。
神父、イワン＝アイザックが、闇と繋がっている証明。

『これが……苦しみ……だと？　だとすれば……俺の見た『苦しみ』は……こんなものでは
……足りないんだよ』

教会にいながらにしてその全てを見通す「黒衣の者」が仮面の下で、凝視するように目を細
めた。その拍子にぎらりぎらり、赤い瞳があたかも血脂にまみれた刀のように鈍く光る。
それは、むしろ愉悦。
石壁と肉蔦に遮られたこの闇の底にも、銃鳴が響いてくる。
敵の接近、しかし構わずに黒衣の者は目を弓弦のように細く絞り、

直後、かっと見開いた。

黒衣の者にその行動をとらしめた源は、まさにイワン＝アイザックの眼前にて展開した。
それは周囲から襲いかかっていた弾雨が途切れ、周囲の狂血病患者が一掃され次の群が現れ
るまでの、空白の時間に発生した。

突如近くの、安酒を並べ小さくいい加減な宿泊部屋を割った曖昧酒場から、二つの人影が壁
をぶち破って飛び出してきたのだ。

男と、女。
男は、正確にはもう人間の男では無くなっていた。狂血病患者、それもかなり重度の。
通常の喰屍鬼級よりもさらに体が人間離れして変形しており、黒衣の者の仮面に似た角と牙
を持つ悪魔の形相で手足には鉈のごとき大きな爪、背中には未だ飛べるほど大きくなっては
居ないようだが蝙蝠の翼まで生えていた。

女は・・・いや、むしろその年齢は少女といったほうがいいだろう。ほっそりとした体格。
髪の毛は金色と褐色の中間で、少し汚れているが標準以上の顔立ちのおかげで宝石の原石じ
みた美しさとも言える。
服はかなり損傷しており、それでなくても元から薄く肌の露出の多い衣装だった故、イワン
が人間の神父であった事ならば顔をしかめただろう。その格好から想像される彼女の職業は
あからさま、人類最古の商売と揶揄されるものだった故。しかし今は、そんなことは些細と
気にもとめられないだろう。
何故なら、未だ異形へと変化はしていないが、彼女の瞳は赤く輝いているのだから。

そんな男女が、激しく戦い合う。互いに殴り、蹴り、切り裂き・・・そして相手の血を吸お
うと牙を噛みならす。

しばしまるで一つの球のようにもつれ合うと、体格に勝る男だったものが馬乗りになって少
女を爪の生えた手で押さえつけた。そして大きく仰け反ると、口を限界まで開ける。既に人
間のそれの原型を留めていない、否他の種の生物でもあり得ない、ただただ鋭いだけでいび
つで乱雑な牙が、口いっぱいに輝く。
その吸血牙をまるで叩き付けるように少女の首筋に打ち込み、血を啜ろうとしたとき。
その狂血病患者の首が、落ちた。同時に体もひっくり返り、切り落とされた首が地面に接す
ると同時に倒れる。
切り落とされた？然り。
組み伏せられたと見えた少女が相手の腕を払いのけ、手刀を振るうと男の首を切り落とした
のだ。
鋭い、刃となった、吸血鬼の爪で。その手に、その顔に、血が降り注ぐ。唇も染まり、血潮
は飲み下された。そして少女は相手の死体をたった今そいつの首を素手で刎ねたとは思えな
いほど苦労して払いのけると、よろよろと立ち上がった。
そして、そこでようやくイワン＝アイザックに気付いたらしく、びくりとしたように首を回
してイワンの姿を見る。

はっ、と合った視線。髑髏のように落ち窪んだ元神父の目を見る少女の瞳が、血を思わせる
赤から、グレイ・グリーンの人間の瞳へと変化・・・いや、戻る。狂血病患者の首を刎ねた
鋼の爪も、とっくに人間の、綺麗な桜色のそれに戻っている。
血を浴びて、人へと戻る。
何らかの特殊な事情で、半端な吸血をされた狂血病患者は、まれに半陽性、人間として肉体
を維持できなくなった時のみ狂血病患者＝吸血鬼へ変化する存在となる。
東欧の伝承に言う、ヴェドゴニアだ・・・吸血殲鬼。
人間であり、しかし感染源吸血鬼を倒さない限り、じわじわと吸血鬼に近づいていく存在。
そんな少女が、魔を滅する闇の神父の前に、対峙してしまった。
互いに、相手を見る。


それをまた黒衣の者も、己の下僕たる狂血病患者達の目を介して目撃する。
そして、黒衣の者は叫んだ。
「面白い、面白い！まさかこんなことになろうとは！イスカリオテのユダを思い出すぞ、や
はり人間の意志は強い、そうそう私の闇には染まりきらないようだ！」
ばっ、と黒衣が翻る。仮面の上からでもはっきり分かる興奮の表情を浮かべて、黒衣の者は
玉座から立ち上がっていた。
「これでなら足りるか？どうだこの苦しみは！お前はこの状況をどうするのだ、イワン＝ア
イザック！！」

町中の狂血病患者の口から、同様の叫びが迸った。幾種類もの喉から違う声で、それが混じ
り合った、地獄かはたまた天国か、ともかくこの世ならざるところから響くが如き、荘厳に
しておぞましき叫びが、街を揺らした。

80 名前：イワン・アイザック ◆plPprIesTk ：04/12/12 13:56

黒衣の者ＶＳイワン・アイザック『「元」神の子と「元」神父』

>>79

　じくり。
　銀弾に穿たれた傷が耐え難い痛みを――例え闇に堕ちたとしても、決して消えることな
い痛みを――伴って肉を噛む。

　浄銀弾。
　防疫修道会によって開発された狂血病患者浄滅用銃弾が、痩躯のそこかしこを苛み、侵
し続ける。
　死王の駒と化した嘗ての十字架の兵たちの放つ銃弾が神を裏切った神父の肉体を傷付け、
背教の神父の放つ銃弾が嘗ての僧兵たちを破壊してゆく。

　互いの尾を飲み込んでゆくウロボロスの円環を思わせる光景は、そしてここにも。


『これでなら足りるか？　どうだこの苦しみは！　お前はこの状況をどうするのだ、イワ
ン＝アイザック！！』


　荘厳ですらある呪詛のクワイア。
　斉唱される“黒衣の者”の問い掛けを前にソロを務めるのはハンマーを起こす音。

　かちり……かち……。

　切り詰めた散弾銃の二つの銃口が、眼窩じみた視線を少女に投げかける。
　そのままトリガーに指を掛け――――――


《どうした？　この娘もやがては全き吸血鬼となる。何故躊躇う》

　暫しの沈黙の後、《声》は背後から、染み出す様に響く。

《汝を死に導きしものを忘れるな》

　残響が、尾を引くように。

《奴等の野望のために流された血を忘れるな》

　谺が、返るように。

《汝を愛した罪で……》

　幾重にも。

《流された女の血を忘れるな》

　幾重にも。

「……だ……黙れ」

　　　　　　　　　　　　　　　「私……死ぬ時は……イワンの胸の中……って決めているの」

《汝の名を呼びながら息絶えた……》

　　　　　　　　　　　　　　　「死んでしまったら……魂以外はすべて土に帰るんでしょ？」

《哀れな女の魂を……》

　　　　　　　　　　　　　　　「でも、私ね……人の魂は最期に見たものを永遠に……
　　　　　　　　　　　　　　　　忘れないんだと思うの……」

《忘れるな》

　　　　　　　　　　　　　　　「そう……信じてるの」

　そのとき、初めてイワン・アイザックの表情に異なる影が宿る。

《汝は光に唾を吐き……我に救いを乞うた》

　苦悶。

《忘れるな……イワン・アイザック》

　煩悶。

《汝の魂を擲ち、我から得た憤怒を……》

「……黙れ」

《ただ呪い……殺せ！》

「黙れっ、ベシエル！　俺はお前の傀儡ではない！！」

　顔を歪め、吐き捨てると眼前の少女に銃口を向けたまま言い放つ。

「今すぐに……ここから消えるんだな……。それが……俺が与える……唯一の救いだ……」
　

81 名前：黒衣の者(M)：04/12/12 13:57

黒衣の者ＶＳイワン・アイザック『「元」神の子と「元」神父』

>>80

眼前に突きつけられた銃口に、凝固したように半吸血鬼の少女は立ちつくした。
いくら黒衣の者の血を受けたといえど、頭部を粉砕されては「成り立て」程度では即死以
外に道はなく、ましてや彼女は特に不安定なヴェドゴニアである。

しかし、彼女をその場に縫い止めたのは、死の恐怖だけではなかった。
『……だ……黙れ』
人外の存在であるはずの吸血鬼を突破し蹂躙し駆逐し殲滅する、神父の姿をした死神と見
えた相手。
しかし、銃口の向こう、その顔にあるには、強者というには余りにも苦渋に、いやそんな
生易しい言葉では語れない、心的激痛に満ちた、表情。
ヴェドゴニアとしての能力の故か、その背後にある不気味な影の声も、おぼろながら感じ
る。深い、今自分が墜ちかけている闇と同じくらいか、それよりも深い闇だと直感する。
『……黙れ』
低い、苦悩の声。取り返しのつかない過去が、硬く心を戒める軋みの音。
『黙れっ、ベシエル！　俺はお前の傀儡ではない！！』
彼女は、パメラ＝マドゥンという名の人間の娼婦だったころから、神など信じてはいなか
った。そもそも、その神の僕達ですらしばしば端金で彼女を慰み者にした。
否、彼女とて生まれたときからそうであったわけではない。・・・否、生まれたときは神
を信じていたが故に、信じられなくなったのだ。最初から希望がなければ、絶望もない・
・・しかし、人は希望無しに生きていけない。
だから正直、半吸血鬼になったことにも、特に悲嘆はなかった。別に何時死んでもいい、
そう思うほど彼女は絶望の中で腐っていた。救いなどあったこともない。世界はこんなに
も苦しく、悲しい。
だが、この神父は、彼女が今まで見たそれとは違っていた。
（どうして、こんなに苦しそうなのに、こんなに強く、生きているの？）
『今すぐに……ここから消えるんだな……。それが……俺が与える……唯一の救いだ……』
そして、絞り出すように、神父は言った。
恐怖が今すぐ逃げろと叫び、それ以外の何かがとどまれ、彼から離れるなとささやく。
決定できずに立ちつくす・・・
しかし。

「汚悪牡嗚雄尾汚雄（オオオオオオオオ）ォォォォォォォォッ！！！！！」
「牙餓我瓦餓牙（ガガガガガガ）ァァァ！！」
どっ、とばかりに再び狂血病患者の大群が、四方八方から襲いかかってきた。
前現れた者達よりもさらに感染が重度で、殆どの者がその体を異形の者へと変化させてい
た。更にそれだけではなく、それを指揮するように奥に控える幾体かは、教会を覆うのと
同じぎとつくような赤の肉塊が根を張った、黒衣の者の肉を受けた促成死徒まで見える。

まず先鋒の重度狂血病患者が、鋭い爪と牙、かてて加えて蝙蝠の如き翼で飛びながら、イ
ワン目掛けて殺到する。三次元を自在に支配するその動きは、それまでの狂血病患者とは
段違いの速度で。
そしてもう一人、未だ完全な狂血病患者ではない、ヴェドゴニアの少女にもそれは襲いか
かる。
そもそもどの道この街は既に死都、逃げ場所など何処にもなかったのだ。
飛びかかってきた一体の狂血病患者を肩口を切られつつも何とかかわすと、地面を転がっ
て倒れていた元ソリア僧兵の死体から拳銃を奪い、発射。
「消えろって・・・どこにも行けないわよ！」
悲鳴を上げながらも、その身を蝕む血の病の故か、存外正確に反撃し、狂血病患者を撃ち
倒す。スコフィールド４４口径の弾丸が、相手の頭部をぶち抜いた。
「どこにも・・・行けない！」
肩の傷は決して浅くはなくじくじくと血を吹き出し、しかし即致死し殲鬼化するほどでは
なく、ゆるりゆるりと赤い闇の向こうから衝動が誘惑するのみ、かえって歯痒く、苦しい
有様。
そして、呟く。今しも狂血の咆吼をあげんとする口を御そうとするように、祈りの代わり
のように。

「死んでしまっても・・・もう私は土にも帰れない・・・」
「でも、魂は・・・逃げられない宿命でも今の人間の魂は忘れたくない、せめて！
　　　　　　　　　　　　　　　　そう思いたい、信じたい！」
「だから、逃げずに、神父さん、ここで死んでいい？」
それは、イワン＝アイザックが何時の日か聞いた言葉の、別の形だった。
似ては居ない、寧ろ正反対の、しかしそれ故に繋がる、別の形。
そしてそれを、黒衣の者の目が、見下ろしている。

82 名前：イワン・アイザック ◆plPprIesTk ：04/12/12 13:58

黒衣の者ＶＳイワン・アイザック『「元」神の子と「元」神父』

>>81

　ところで、ラカンによれば自己の鏡像を自己と認識し得るのは生後６ヶ月から18ヶ月以
降、それ以前の段階では他者として認識するが、自己イマージュとの原初的同一化という
再認作業の完了によって自我が形成されるという。

　だが、鏡像とは鏡面を軸とする対称の像である。
　逆しまの像を以て、果たして「自己」と呼びうるものであろうか。
　　　　　　　　　　　　　　　「自己」になりうるものであろうか――

　そう考えるならば、これは一種の『鏡像』とも呼べるのであろう。
　闇に洗い流され、色褪せた記憶の中に唯一残る、余りにも鮮やかすぎるアカ。

　　　神よ……あなたは……
　　　　　　　　　どこにいて……私に何を求めているんだ……？

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　答えろ……神よ！

　スコーフィールドを手にした少女は、思いの外健闘していると言っても良いだろう。
　だが、所詮六連発の拳銃弾では、射程距離に於いても連射能力に於いても無理が生じる
事は否めない。
　ましてや高速飛行する相手には尚のこと。

　そして、それはイワン・アイザックにも言えた。
　右手の短機関銃は45口径、連射速度は毎分700発と低いために、例え未来位置を予測でき
たとしても重量低速弾では撃ち落とすことは至難の業である。
　当然、左手のソウドオフショットガンでは散開径が広すぎ、ダメージを与えるには散弾
の絶対量が少なすぎた。

　縦横無尽とはこのことだろう。
　銃火を潜り、前後左右から間断なく爪が牙が痩躯を切り裂く。
　時折銃弾が皮膜質の翼を傷付け、失速したモノたちが撃ち倒されはするが、数で圧倒す
る重度狂血病患者たちは次々に飛来し、無数の傷を穿つ。
　まさに「死兵」。

　既にコートはずたずたで、裂けた袖口や襟元は血に染まり重く垂れ下がっている。
　朱に染まった、という紋切り型がこれ以上相応しくないほどの全身を翻し、それでも銃
弾を放つ神父の手がほんの一刹那――
　――凍り付く。

『消えろって・・・どこにも行けないわよ！』

　鏡像。

『どこにも・・・行けない！』
『死んでしまっても・・・もう私は土にも帰れない・・・』
『でも、魂は・・・逃げられない宿命でも今の人間の魂は忘れたくない、せめて！
　　　　　　　　　　　　　　　　そう思いたい、信じたい！』
『だから、逃げずに、神父さん、ここで死んでいい？』

　赤く染まり罅割れた、鏡像。



「…………ジェ……ナ……」

　我知らず呟くその隙に、振り上げた右の腕に一体が牙を突き立てる。
　左の腕に。
　脚に。
　その首筋に。
　全身に群がり、取り付き、血を肉を啜り尽くさんばかりに。

「……神父さんっ！？」

　全弾撃ち尽くしたスコーフィールドを投げ捨て、足許のレバーアクションカービンを転
がるように手にすると、漸く気付いた少女――パメラ＝マドゥンが悲鳴を上げる。
　ローディングレバーを操作し、照準を合わせ――

「ダメ……これじゃ当たる……っ」

　照準を外すと彼女自身に襲いかかる重度狂血病患者に銃口を向ける。

　祈るようにトリガーを引く。
　神のためではなく、自分自身の、そしてあの神父のために。


　事態を見守るように二つの影は不気味な沈黙を守っている。
　

83 名前：黒衣の者(M)：04/12/12 13:59

黒衣の者ＶＳイワン・アイザック『「元」神の子と「元」神父』

>>82
撃つ。討つ。打つ。伐つ。撲つ。
死体の手からもぎ取ったレバーアクションカービンで、死兵と化した狂血病患者を、ヴェ
ドゴニア、吸血殲鬼、死者を殺すことを宿命づけられた半死者のパメラが撃つ。
同時に突き出される爪を刃を捌き、撃ち返される銃弾をかわす。
生き残るための、と言うよりは精神的な死を避けるために肉体的に最後まで継続する抵抗。

「このっ、このっ！
必死の形相・・・しかしそれには自分のこと意外に関しての、濃厚な焦燥が影を落として
いた。

突然現れたあの神父。狂血病患者と戦う、その「人間」が、自分のすぐ傍らで多勢の敵に
襲われ窮地に陥っているというというのに、何もできないという苦悩。
（仕方がない、ここで銃を撃てばかえって神父に当ててしまうかもしれない、自分に出来
ることはない。）
そう考える。仕方がない、己を納得させねばならない。今、気を散らしては危ない。
（それにあの神父は、相当強いようだった。これまでだって吸血鬼たちを突破してきた。
だから、大丈夫かもしれない。）
違う、そんなのは欺瞞だ。
己の思考の向かう先の矛盾を、その矛盾の発生する理由を、パメラは理解してしまう。
「自分と違って強いと言っても人間ならば」、到底耐えられるはずがない。このままでは
数秒と持たずにずたずたに喰い裂かれてしまうに決まっている。
そして、それに対して己が打つ手を持たないというのも、また嘘だ。
銃でなら、確かに無理だろう。しかし、直接攻撃ならば神父に当てる心配はない。
人間の力では不可能だ。しかし、彼女は既に半分は人ではない。

ライフル銃から外れて血塗れの地面に転がる、折れ曲がった銃剣。それを「使えば」。
同じ吸血鬼の力であるヴェドゴニアならば、狂血病患者を排除して神父を救えるかも知れな
い。

（しかし、神父は最初、吸血殲鬼の姿を取った自分に銃を向けた。）
（だが、「去れ」とは言ったが、撃とうとはしなかった。）
（でも現に、彼は狂血病患者を倒している。）
（私は吸血鬼じゃない！）
（その力を使えば、体は吸血鬼そのものになり、いずれ心もそうなっていく。そうなれば。）
『…………ジェ……ナ……』

しかし。彼が窮地に陥ったきっかけとなったのは、そもそも自分を見て呟いたあの言葉の生
んだ隙ではなかったか。
ジェナ。それは自分の名前では無い、知らない女性の名。自分を見て神父がそれを思い出し
た、おそらく彼にとって思い出深い女性の名。
「っ・・・！！」
ぎりり。歯を食いしばる。苦悩にか、衝動にか、焦燥にか、激情にか。
そして、叫ぶ。
「駄目だっ・・・・見過ごせない！」

ざくり。
阿鼻叫喚の戦場に、かき消えそうなほど小さく、あまりにもありふれた、鉄と肉の立てる音。
しかしそれは、一つの決意の音だった。


「む・・・ぐ・・・！」
大量の狂血病患者に、一斉に襲いかかられて転倒するイワン。その両腕に、首筋に、腹に、
全身に血に飢えた牙が突き刺さる。
激しい痛み。しかし闇に墜ちた身は、この程度で滅びはしない。だが逆に、「滅びない」
という事実が、重く暗くのしかかる。
今またもう一咬みと襲いかかろうとする顎を見ながら、イワンは酷く冷たくそれを認識して
いた・・・その、次の一瞬の驚きまで。
「ヴォアアアアアアアアアア！」
「キィーーーーーッ・・・・ギ！！」
咆吼とともに、その悪魔の喉が鋭い爪に潰された。顎が砕かれ、噛み付いていた相手から強
引に引き剥がされると同時に首を刎ねられた。
イワン＝アイザックに食らいついていた他の重度狂血病患者が、その時点で奇襲に慌てて反
応する。
蝙蝠の翼が羽ばたき飛び上がろうとするのを、折れ曲がった銃剣と爪が片端から引き裂いた。
つんのめる所に、急所である脳髄や心臓を抉る一撃が加えられ、絶叫と共に細胞が崩壊し塵
へと返る。
もう一匹が、まさしく悪魔そのものの尻尾を振り回した。足を取られ、転倒する相手に躍り
かかる・・・直後、跳ね上げられた相手の足が狂血病患者の顎を蹴り上げ、仰け反ったとこ
ろに身を翻しての銃剣攻撃が炸裂。心臓を貫通し、飛散。
その後も残り数体が飛びかかったが、やはり同じように急所を貫かれて死滅する。

それを行うのは、同じように紅い瞳を燃やし、しかし飢える牙を食いしばった少女。
本来あくまで人から吸血鬼に変化するだけで、ヴェドゴニアには特別吸血鬼に勝る力などは
無いはず。
それなのにパメラが重度の狂血病患者を撃破出来たのは・・・即ち吸血鬼化がより深くその
身を蝕みつつある証拠に帆じゃならない。

そんな己を見たイワン＝アイザックの表情を、見ることが出来ずにパメラは身を翻す。
しかしその行動はこの戦いの場にあって戦術的行為でも何でもなく、ただ神父と顔を合わせ
ることに耐えられないが故の行動で。

直後。

突き刺さる閃光が、パメラの足を焼いた。

84 名前：イワン・アイザック ◆plPprIesTk ：04/12/12 14:01

黒衣の者ＶＳイワン・アイザック『「元」神の子と「元」神父』

>>83

　冷たい。
　パメラ＝マドゥンの感覚神経はその様に感じた。
　そして、当然の事ながらそれは錯覚であることを同時に理解していた。

　人間としての感覚。
　吸血鬼としての感覚。
　一瞬の事ながら２つが同居する、この『感覚』が当たり前になったのは一体いつのこと
からだろうか。
　そして、これが吸血鬼化への深度を増す毎に鋭くなっていくことを知ったのも。


　脚が、煮えた油でも浴びせられたかの様に焼け爛れている。
　じくり、じくり、と脈打つ様な疼痛が全身を駆けめぐり、思わず呻きを上げながらその
場に倒れ込む。

　『影』の一つがその手に構える異形の武器。
　長い筒状の部品と、その先端部に取り付けられた半球状の物体。
　半球の円周から放射線状に収束する先には揺らめく炎が灯り、半球内部に貼り付けられ
た一点の曇りもない凹面鏡の表面にその光を照らし返している。
　身に着けている僧衣から、恐らくは防疫修道会士であろうと推測できる。
　だが、そうであるならば、その武器は彼等が通常『浄滅』に用いる電撃杖や火炎放射器
とは有様が全くと言っても良いほどに異なっている。

　まず電撃杖は接触しないと十全な効果を発揮しない筈であり、また火炎放射器であると
するならば射程距離が段違いに大きい。
　何より特有の石油やタール、ナフサなどの化学薬品臭が吸血鬼の嗅覚を以てしても全く
といっても良いほどに嗅ぎ取れない。
　するとすれば巨大な炎の傍に立ったときに嗅いだことのある、空気それ自体が灼けた独
特の匂い。

　這い蹲り、大地に爪を立てて咳き込む様に大きく呼吸する。
　空気を吸い込むたびに、身体中が巨大な心臓になった錯覚に囚われる。
　逃げる？
　莫迦な。
　先刻自ら言ったように、どこにも逃げ場はないというのに。
　彼の神父は、重度狂血病患者たちの攻撃によって浅からぬ傷を負っている。
　息があったことすら不思議なほどだ。
　未だ倒れ伏したままこちらを見ているのだろうか。
　それとも――

「……ク……クク……そうか……お前は『それ』を……受け容れたんだな……」

　果たして、血溜まりが地を濡らし泥濘となった上に、神父は立ち上がっていた。
　滑る足を踏みしめ指差す先には、僧衣の『影』に貼り付く、てらてらと粘液に光る赤い
肉塊が脈打っている。
　白いものが見えるのは眼球であろうか、時折ぎょろり、と辺りを見回すように蠢動して
いる。

「……それが……お前の受けた……聖体（コーパス・クリスティ）と……いう訳か……。
　……ならば……その……救い主の肉（コーパス・クリスティ）は……お前にどんな……
救いを……与えたんだ？」

　暗く、陰になってはいるが理解る。
　その顔は、きっと先程と同じく嗤っている。
　獣の唸りにも似た笑みを浮かべている。

　拾い上げたトンプソンの弾倉が空になっているのを確認し、捨て去ると最後の一つを再
装填する。
　そして左手に持ち替え、疾駆。
　何処にその力が残っているのかと思えるほどの速度で駆け出しながら、断続的に銃を連
射している。

「……俺の……与えるものは……救いではない……。
　俺が……お前にくれてやるのは……死だけなんだよ……」

　ぞくり。
　背筋を冷たいものが駈け上り、パメラ＝マドゥンは思わず自分の両肩を抱き締めた。
　

85 名前：黒衣の者(M)：04/12/12 14:02

黒衣の者ＶＳイワン・アイザック『「元」神の子と「元」神父』

>>84

「ッ・・・・・・！っ・・・・・・・！！」
パメラ＝マドゥンは、恐れていた。
血で全身真紅に染まり、人であれば死んでいるであろう傷をも平然とし、鉄火を操る神父
の姿に。
そして知る、彼が人ではないことを。
（それがどうした、自分ももはや人ではないというのに）
否・・・あるいは「そうである」が故に、畏れるのか。魔の体を持ち、精神を半ば魔に浸
しながら、尚また魔を討つ神父を。


ぶちゅぶちゅと腐肉をかき混ぜるような不快な音を立てて、赤い肉を纏った修道士にイワ
ンの放った銃弾が突き刺さる。
並の狂血病患者ならばそれで終わり、骸に帰るであろう打撃。

しかし、僧衣の男は小揺るぎもせず、所持した奇怪な姿の武器の狙いを定めた。
眉毛もない禿頭に対照的な顎髭の、堅太りな巨漢であるが、その男と所持する奇妙な武器
は、あの不気味な血色の肉で半ば融合している。そしてそれゆえに、その挙動は武器の大
きさから考えれば信じられないほど素早い。
「お前は俺に死を与えることも出来んよ、イワン＝アイザック。その程度では黒衣の者の
肉を受けたこのソリア七会士候補・灼光のルーベンスを倒すことは出来ない。」

カッ

そしてルーベンスと名乗った死徒の持った武器から、強烈な「光」が投射された。射線上
にいた狂血病患者が巻き添えで照らし出され、そして一斉に消滅する。
恐らく聖油を燃やして得られる聖火の光をあの装置で収束して放っているのだろうそれは、
魔を受けた神父の体をも焼く。
体を濡らす狂血病患者の返り血と自分の傷から流れ出た血が沸騰し蒸発し、吸った肺が腐
るような悪臭を立て、傷口が爆ぜ、皮膚が焦げる。
声にならぬ苦悶を噛み殺し、回避行動をとりながら反撃するイワンだが弾丸は殆んど効果
を見せず、そして死徒の肉体の素早さと「光」という攻撃方法の絶対的な速度が、何度も
イワンの体を捕らえ灼く。名乗った灼光の二つ名のままに。
そして、言葉でもまた、攻撃を放つ。
「同じ元聖職者の慈悲だ、答えてやろう。俺たちの受けた救いは、解放の味だ。もはや苦
しみも悩みも無用、ただ甘美を貪れる・・・これぞ原罪以前の楽園、これぞ神の国ではな
いかね？人は知恵の実を齧って以来苦しみを知った。ならばその知恵の実を吐き戻し、生
命の実を口にすればよい。」
ぎしぎしと牙を鳴らすように、腐れた笑みを浮かべるとルーベンスだった死徒は言った。
「お前も、半端な考えや心を捨てて闇を受け入れれば、楽になれるだろうに。」
直後、もう一撃光が。


再びのイワンの窮地。咄嗟に、恐れ畏れながらも、そんな場合ではないとパメラは動こう
とした。
聖光で焼け焦げた痛む脚に力をいれて立ち上がり、銃を拾

タンッ！
「あぐっ・・・！」
拾おうとしたその手を、銃弾が撃ち抜いた。既に殲鬼化した体を、銀が腐らせる。
だが逆に殲鬼化して人外の速度を得たはずの少女の機先を征するとは、信じがたい速度だ。
「のろいぜ嬢ちゃん。人間だったころメキシコ一の早撃ち（ファナー）だったこの俺には、
止まって見える。」
それを行ったのは赤い肉を纏った、もう一体の促成死徒。ガンマン風の装束の男。
やや濃い口ひげを生やしなか精悍な顔立ちだが。
「俺はティグレロ、腹ペコの虎。元から悩みのない俺にはまして良く分からんね。」
その瞳は赤く、その口には虎よりも狂悪な牙が生えている。
そして、ティグレロだった死徒も言った。
「人間にしがみついても苦しいだけだぜ？楽になりなよ、楽しいぜぇ吸血鬼は。」

本当に楽しげな腐った笑みとともに、イワンとパメラに突きつけられる聖光と銃口。
堕ちれば、楽になれる・・・

それは、唐突に提示された、あまりにも甘美な「逃げ道」。


その戦いもまた、黒衣の者の見下ろすがままに。
「く、く・・・解放か。一般信徒を釣るには上等の餌だが・・・それで満足している奴ら
は所詮広き門を選ぶ者。イワン＝アイザック、パメラ＝マドゥン・・・どうする？」

86 名前：イワン・アイザック ◆plPprIesTk ：04/12/12 14:03

黒衣の者ＶＳイワン・アイザック『「元」神の子と「元」神父』

>>85

　灼けた血の臭い。
　焦げた肉の匂い。

　爛れた皮膚が水疱を浮かせたまま炭化し、収縮し爆ぜた肉のばっくりと口を開いた下か
ら皮下組織がその濁った赤を審かにする。
　それでも猶銃爪を絞る指を緩めることなく、イワン・アイザックは「“灼光”のルーベ
ンス」と名乗る修道衣の男を視野に納める。

　びっしりと黒髯が顔を覆う禿頭の巨漢という魁偉と言える容貌は植え付けられた肉塊に
依るものか、それとも元来の歪な精神が僅かばかりでも顔を覗かせたものなのか、憎悪に、
愉悦に、醜くゆがみ晦く澱んでいる。

『同じ元聖職者の慈悲だ、答えてやろう。俺たちの受けた救いは、解放の味だ。もはや苦
しみも悩みも無用、ただ甘美を貪れる・・・これぞ原罪以前の楽園、これぞ神の国ではな
いかね？　人は知恵の実を齧って以来苦しみを知った。ならばその知恵の実を吐き戻し、
生命の実を口にすればよい』

　甘く、誘うような声。
　それは腐肉の甘さ、蛆が涌き熔け落ちる肉の甘さ。
　同じ神への信仰の苦悩を理解するが故の、涜聖への誘い。
　だが、深淵よりも遙かに深い闇を、憤怒と苦悶と悲哀と絶望に彩られた闇を垣間見た、
いや、その漆黒の闇の永劫の虜囚となった神父にとって、その言葉は僅かばかりの動揺を
すらも引き起こすものではなかった。

「……くく……『楽園』……だと……？
　……それは……どんな『楽園』なんだ……。
　……神は……人間が禁断の果実を口にした……その時ですら……傍観していたに過ぎな
い……。
　『これを取りて食らい尽くせ、さらば汝の腹苦くならん、然れど其の口には蜜のごとく
甘からん』
　……お前の言う……『生命の実』とは……そんなものか……」

　先刻より撃ち続けた銀弾は既に残り僅か、赤黒い肉塊に撃ち込まれたそれは些かのダメー
ジを与えているようにも見えない。
　しかもルーベンスの攻撃は「光」――まさに光速でイワン・アイザックに迫る。

『お前も、半端な考えや心を捨てて闇を受け入れれば、楽になれるだろうに』

　しかし、欠片程の焦燥すらも面に出さず、

――当然だろう、イワン・アイザックは、嗤っていたのだから。

「……その程度で……お前は『闇』を……知ったつもりか？
　……ご大層な説教だが……俺が聞きたいのは……貴様等の……叫び声なんだよ」

　ルーベンスが聖光を放つその刹那、傍らに転がる死に損ないの、否、『生き損ない』の
吸血鬼の裂け飛んだ上半身を右手に攫み、放り投げる。
　指向性を持った浄滅の光は投げ付けられた吸血鬼の躯を照らし――それは予想外な反応
を果たす。

　爆発。

　腹腔内に仕込まれたダイナマイトが加熱され、爆炎と黒煙、吸血鬼の躯が蒸発した紅い
霧が視界も開けぬほどに撒き散らされる。

　つまり、それは『光すら遮る』程に。

　濛々と煙る中飛び出すのは神父の痩躯で右手には銀に光る巨大なナイフと左手に切り詰
めたショットガンを大きく振りかぶりナイフを肉塊に突き立てんとショットガンを顎下に
押し当てんと両腕を拡げ迫り駈け趨り既に聖光投射機はその砲口を脇に追い遣られ近過ぎ
て光すら届かず貼り付いた肉塊に撃ち込まれた銃弾はさながら引き剥がす為の楔で修道衣
の巨躯を抱きかかえるかの様に両の腕を振り上げ振り下ろし――
　

87 名前：イワン・アイザック ◆plPprIesTk ：04/12/12 14:04

>>86続き


　パメラ＝マドゥンは恐怖を感じていた。
　只ならざる早撃ちにというだけではない。
　「虎（ティグレロ）」と名乗るメキシコ人の、その表情に。

　顎から頬にかけてを覆う髭と後ろに撫でつけられた髪を差し引いても、その顔立ちは端
正と言える。
　むしろそれらが彼をして一種愛嬌のある面立ちとなさしめている、とも言えるだろう。

　さればこそ、酷薄な表情は凄惨さをいや増し、口許から覗く牙、朱に染まった瞳はむし
ろほんの彩り程度でしかない。

　春を鬻ぐ身であればこそ、人を見る目には自信があった。
　この男は危険すぎる。
　自らの楽しみのために必要と思うのであれば、
　犯すであろう。
　壊すであろう。
　殺すであろう。
　逡巡もなく。
　躊躇もなく。
　眉一つ動かさずに。

　それは、恐らく『人』であったときから。
　だとするならば、その差は大きい。

　『殺す者』と『殺される者』。
　"The Quick"＆"The Dead"。
　唯一、この世界を統べる法があるとするならば、それは「殺さなければ殺される」とい
うことだけだろう。
　"The Dead"になるか――それとも、この"Undead"な魂に従うか。

『人間にしがみついても苦しいだけだぜ？　楽になりなよ、楽しいぜぇ吸血鬼は』

　"The Quick"、余りにも速い銃口はそう囁く。
　この場に於いては、この上もない魅力を帯びた誘いの声。

　だが――

夜闇を切り裂く閃光がそれを許しはしなかった。

　振り返れば、神父の……闇に身を委ねつつも、闇を殲滅せんとする姿。

『でも、魂は・・・逃げられない宿命でも今の人間の魂は忘れたくない、せめて！
　　　　　　　　　　　　　　　　そう思いたい、信じたい！』

　忘れていた、先程自分で口にしたばかりの言葉を。
　地を掻き這いずり回る様にまさぐる指先に触れるのは、冷たい鉄の感触。
　必死に掴み取り、ティグレロの眼から逃れるように抱きかかえたそれは、長い銃身上部
に放熱リブを備えた大口径の水平二連ライフル。
　.600エキスプレス、別名「象撃ち銃」。
　女の腕では到底扱える物ではない。
　だが、殲鬼である今なら――

「真っ平……御免だねっ！」

　叫びと共に並んだ二つのトリガーを引く。
　轟音に歯を食いしばり、伸びかけの牙が軋みを上げた。
　

88 名前：黒衣の者(M)：04/12/12 14:05

黒衣の者ＶＳイワン・アイザック『「元」神の子と「元」神父』

>>87

黒衣の者はそれを見ていた。
紅い瞳が爛々と光る。愉悦、愉悦、大愉悦に。もはや狂悦と言えるほど、仮面の下の牙の顎
が荒い呼吸のようなこらえ切れぬ忍び笑いを吐く。

ナイフで肉を引き剥がされ脳髄を砕かれ、肉の神の僕が一溜まりも無く朽ちる。
イワン＝アイザックは打撃にも屈せず、言葉にも屈さなかった。面白みも美もない。しかし、
故にこそそれは強い。
其れは無骨であるが故に頑健で、罪より生じたが故に黒の如く他に染まらぬ。

黒衣の者の望む其れとは違うが、まさに強き者。

そしてパメラ＝マドゥン。こちらは逆に完全に予定外ではあるが、まさに望みの強き者であ
った。誘惑に耐えその隙をついて、.600エキスプレスの長銃身をまるで極東日本の武士の居
合い抜きを思わせる動きでティグレロの早さを上回る力で撃ち放った。
流石に一撃で破壊されるほど柔な促成死徒ではなく、反撃の銃弾を見舞う。しかし人間でも
小口径の銃弾では死なずに反撃できることもあるのだ、ましてや殲鬼ならば・・・その身に
負傷による出血の結果としてのより一層の吸血衝動を刻みつける「だけ」で耐えることが出
来るだろう。震えるように牙を軋ませながら、少女殲鬼は死徒を砕いた。爆発で肉が吹き飛
ぶ・・・本来耐え切れたかも知れぬが、これ以上は無意味と、黒衣の者が増殖を止めさせた。

其れは不完全な己に恐怖しながらも、尚輝かんとする健気な強さ。

その二つが揃ったことが、黒衣の者にある計画の実行を決意させた。
人の魂を試す、それを目的とした一連の狂血病蔓延行動は、ダンピィルの己の娘キリエとの
ソリアにおける決戦で一つの頂点を迎えた。
あの戦いでキリエは、黒衣の者が目指し求める気高さの形を辛うじて示した。故に生かし、
再びの戦旅を強いた。その生き様を世界に示すために。

しかし頂点とは、逆に言えば一つの限界である。
それを超えるための新たな種子、そして種子に撒く水たる・・・新たなる惨禍。

きゅっと、黒衣の者の目が笑みに細まる。瞳が。
そう、瞳が。何時しか黒衣の者は下僕を介してではなく、直接その瞳でイワン達を捉えてい
た。

街の上空、気配すら気取られることのなく無音で滞空する黒衣の者。背中から生えた八枚の
蝙蝠めいた翼はそもそも皮膜の面積が揚力を得て飛ぶには適さない。それ以外の力、西暦と
同じだけの千八百年を超える齢を持つ、「夜の森の女王」リァノーンに並ぶ最強クラスの死
徒故の超自然の力。翼はその「力」を司る役割に寧ろ使用されているのだ。

その翼が操る力の流れが、今変化する。それまで重力を無視して浮遊していた体が落下・・
・否、重力以上の加速を付けて隼より砲弾より早く急降下する

目標はパメラ＝マドゥン。そして。
「イィィアァァイィィアァァイアイァィアァアアアアアア！！！」
妖鳥の叫びの如き声とともに、黒衣の者は手に持った両刃長剣を振るった。
吸血鬼の腕力、剣の鋭さ、そこに纏う衝撃の力。その打撃は、イワン＝アイザックの左右に
建っていた建物を粉々に砕き、山崩れのようにイワンに襲いかからせた。

その結果を確認するまでも無いとばかりに黒衣の者は身を翻し反転上昇する・・・その腕に
パメラ＝マドゥンの体を抱えて。
「なっ、っ！！？」
悲鳴も抵抗の暇もなくパメラ＝マドゥンをその体内にある黒衣の者由来の狂血病の因子を操
って沈黙させる。
羽を羽ばたかせて力を制御し、黒衣の者は街の中心・・・教会へと進路を取った。

89 名前：イワン・アイザック ◆plPprIesTk ：04/12/12 14:06

黒衣の者ＶＳイワン・アイザック『「元」神の子と「元」神父』

>>88

　銀の短剣によって刮ぎ取られた肉塊は二，三度ぶるぶると顫動を繰り返した後、その活
動を止める。
　つい先刻までその肉塊が貼り付いていた頭部は、銀製の九粍径二十三粒弾によって原形
を留めることなく破壊され、吹き出していたどす黒い血も既に涸れ果てるとぐずぐずと音
を立てるようにその巨躯は朽ち果てる。

　死を受けたまま生き続けるものと死を受けそこから帰還したもの、両者の違いが有るな
らば、それは苦痛を受け容れたか否かに依る。
　煉獄の、尽きることない硫黄の炎よりも更に深い苦痛、それは終わることなく身を苛み、
魂を磨り減らせ、意識を塗り込める。
　その残滓に過ぎぬものが、果たして抗い否み続ける意志に勝利しうるというのか。

　闇は、常にその顎を足許に開き続け飲み込まんと刻を待っているというのに。

　悪魔の報償として得た不死の肉体は、だが刻一刻とその魂を研ぎ減らして往く。
　そうして闇に染まり切ったその先には――


　イワン・アイザックは震える手で長大なライフルを構えたまま大きく息を吐く少女、パ
メラ＝マドゥンの様子を見て取る。
　隠すように背に回された長小銃の銃把を握った右手で撃鉄を起こし、左手で掴んだ銃身
を送り出すように横薙ぎに抜き放つと、銃口が相手を捕らえた瞬間にトリガーを絞り、撃
つ。
　クィックドロウのメソッドを踏襲しながらも東洋の『居合』と呼ばれる刀法にも似た一
連の動きは、その本能からのものか。
　600グレインの弾頭を秒速2000ft近くにまで加速するという大口径高速弾は、吸血鬼の
躯といえども容易に引き千切る。
　四肢に反撃の銃弾を浴び、息も絶え絶えになりながらも其の銃口は残心を示している。

　ぎり。

　牙が口唇を食い破らん程に伸びている。
　鮮血よりも鮮やかな赫に染まった瞳が、月光の下白昼よりもはっきりとその視界を確保
している。
　そして、何より。
　渇く。
　喉が灼ける。
　野蜜より甘い芳香が鼻孔を擽る。
　創世記に描かれた乳と蜜の流れる川とはこれではなかったか。
　地表を覆わんがばかりに流れる『それ』は。

　　『人の子の肉を食わず、その血を飲まずば、汝らに生命なし。……夫れ我が肉は真の
　食物、我が血は真の飲物なり。我が肉を食らい我が血を飲むものは――』

「お前……は……」

　ぞくり、とするような低い声に気が付くと、朱に染まった両の手は既に人の形をなさず。
　獣そのものの爪が食い込み、血が滲む程に握り締めるのは吹き飛んだ『何者か』の腕。
　紫斑の浮きかけた様なそれを、まるで愛おしむかのように、いや、むしろ……。

　急激に涌き上がる嫌悪感と嘔吐感とを誤魔化すようにその場に投げ棄て、恐る恐る神父
の顔を見上げる。
　あれほどよく見えた月下の風景は闇に閉ざされ、声の響きと同じく陰鬱たる表情は窺い
知ることは出来ない。
　紅い光線を投げかける月には雲が懸かり――

　否、この様な疾さで飛来するものが、どうして雲などで有り得ようか。

　其処に在るのは闇色の衣に身を包んだ存在。
　吸血鬼の支配者、旧大陸より来たりしもの、狂血病を齏すもの、死王――或いは、最も
知られた名で呼ぶならば、

“黒衣の者”。

　裂帛と言うにも生温い、大地を裂かんばかりの大音声と共に二条、三条と繰り出される
剣閃は、衝撃を伴いながら周囲の建物を破壊する。
　煉瓦を漆喰で塗り固めただけの壁は絹の如き滑らかな断面を見せながら倒壊し、降り注
ぐ瓦礫はイワン・アイザックの痩躯を大河の奔流さながらの勢いで覆い尽くす。
　怯えたように立ち竦むパメラ＝マドゥンまでもが同じく呑み込まれる寸前、黒い影がそ
の体を包み込み……そして躍る様に紅いソラへ。

　

90 名前：イワン・アイザック ◆plPprIesTk ：04/12/12 14:07

>>89続き


《何ゆえにあの娘を殺さなかったのか？》

　瓦礫を掻き分け、立ち上がるイワン・アイザックに『影』が語りかける。
　既に襤褸と変わらぬ程破れ裂けたコートはなく、黒いクラージマンシャツに包まれた痩
躯は厳冬に立ち枯れた老木さながらで、腰に提げたリグの撓みが不釣り合いなまでにその
重量を主張している。

「あの娘は……まだ人間だった……」

《あれで、か。ともすれば自らの内に在る吸血衝動に流されようとする、あの状態で》

「……だからこそだ……」

　イワン・アイザックの背後に蟠る、墨を流したかの様な深い闇。
　その闇の中に佇む『影』が、イワン・アイザックに語りかけている。
　闇に溶け込む修道衣を身に着け、苦行僧を思わせる蓬髪長髯に無数の皺が刻み込まれた
容貌は死蝋の様に白い。

《……理解しがたいな、イワン・アイザック。
　汝は……まだ自分が人間だとでも思っているのか？》

　啾々たる声は非難の響きを孕みながら問い掛ける。

《言っておく。霊魂の滅した者を断罪するときに、決して躊躇するな》

　白骨の様な指先を向け、『影』は続ける。

《汝に残りし人間であった頃の意識……それは容易に憤怒を鈍らせるであろう》

「……ベシエル……その程度で……俺の憤怒は……鈍ることはない」

　『影』――ベシエルと呼ばれたそれに向けて、イワン・アイザックは言い放つ。
　再び、深い笑みと共に。

「……“黒衣の者”共々……殺せばいいだけのことだ」　

91 名前：黒衣の者(M)：04/12/12 14:10

黒衣の者ＶＳイワン・アイザック『「元」神の子と「元」神父』

>>90

教会。キリスト教の教会。そこに響くは説教か聖歌か、祈りの声か。
否、それは呪文、それは怨嗟、それは慟哭、それは異界への呼び声、異教の祝詞、世界とは
異なる論理と物理が支配する、もう一つの世界へ向けられた呼び水。

それを唱えるは黒衣の者。教会中央の、己の彫像を取り外した十字架に、かつての己のよう
に、少女を磔にしながら唱え続ける。

「フングルイ・ ムグルウナフ・ルルイエ・ウガフナグル・フタグン、フングルイ・ ムグル
ウナフ・ルルイエ・ウガフナグル・フタグン・・・」

異形の肉蔓にまみれた教会。黒衣の者が唱えながら長い剣を引きずり床に刻んだ魔方陣が、
呪の一言一言ごとに反応し妖しく光る。
そしてそれに呼応するかのように、皮肉にも教会に集う善良な信徒のように、椅子にずらり
と止まった鳩の群れが、祈るように首を前後させる。その全身はここがこの街を支配した汚
濁の中心であるとは思えぬように純白の羽毛に覆われている。否、それはある意味で相応し
いのか。

鳩の目は赤く、狂血病と同じく輝いている。

「くあっ、ぐあああああああっ・・・・！」
背中と手足から煙を上げ、そして苦悶するパメラ＝マドゥン。吸血殲鬼に、神聖な気を集積
する十字架は焼き鏝に等しい苦痛だ。
「あの、神父さん、は・・・？」
それでも少女は問い。
そしてがくりとうなだれる。悲しくなったのだ、今更あの男の名前すら知らないという事実
が。確かに一度黒衣の者が下僕を通じて名を呼んだはずなのだが、その時殲鬼から人に戻る
途中で意識朦朧としていた彼女には、それを聞き取ることが出来なかった。
何故だか彼女にも分からないが、その事実が溶けた鉛を呑んだように胸を重く焼く。
「あの程度でくたばるとも思えぬ、来る。そして奴が来たりて、我の牙にかかりしときこそ、
この街での我が目的が完成する。」
答えを期待したわけでもない呟きに、意外にも黒衣の者は答えた。故意かどうかは定かでは
ないが、神父の名を漏らさず。呪文と魔方陣の展開が終了したのか、黒衣の者は壇上の十字
架に固定されたパメラに歩み寄る。
「い、一体、何を、するつもり・・・？」
パメラの問いに。
黒衣の者は壇に一気に上ると、パメラの顔に己の息がかかるほど仮面を近づけた。
そして、ゆっくりと仮面を外す。
「・・・・・・！？」
パメラは絶句した。その仮面の下にあった顔は、今彼女がかけられている十字架に、それま
でかけられていた像の顔と同一のものだったからだ。
すなわちキリスト、ナザレのイエス。
苦界に身を落としたパメラにとって神の教えなど縁遠いものだったが、それでもそれは衝撃
だった。
神の子が吸血鬼ならば、この大陸の惨禍を一体誰が救えるというのか。
その顔が、鋭い牙がむき出しになり顔が裂けるのではないかというほどに、笑いながら答え
た。

「奈落堕ち＜フォールダウン＞だ。」

ばさり。
黒衣が翻る。パメラに背中を見せる格好になった黒衣のものは両手を広げ、演説するように
祝福するように語りながら再び壇を降りる。
「お前という人と吸血鬼すなわち魔の中間にあるもの、ロードヴァンパイア級死徒であると
同時に神の地上代行者キリストたる我、そしてあの男、魔神の呪いをその身に受けた人の意
思を持つ闇であり闇の意思を持つ人でもあるもの、この三位一体に加えこの街を覆う大量の
死、それを触媒にここに魔界につながる穴を開けるのだよ。そうなれば黒人奴隷と先住民の
怨念と白人同士の抗争の死者の念が染み入ったこの新大陸は、一夜で魔界と化す！幾万幾億
の魔物がこの地に溢れ、現在の吸血鬼禍など比べ物にならぬ大災厄を振りまくのだ！！そし
てそれはこの腐った大陸を媒介に即座に欧州に飛び火し、そこからユーラシア全土、世界総
てを闇に覆うだろう！！！倦怠の病に冒されつつある「夜魔の森の女王」にも、「死徒狩り
の神祖の姫」如き小娘にも、これは止められぬ！ましてやソリアの残党どもや未だ結成中の
マグダラ修道会、ヴァチカンに巣食う私を三度も知らぬと抜かした愚か者の後継者どものよ
うな連中にも、絶対不可能だ！」

「な・・・！」
唖然となるパメラ。首を回し横顔だけで彼女ににやり笑うと、再び黒衣の者は語り始める。

「私は人の魂を試してきた。狂血病をばら撒き、その血と狂気の中で人がどれだけ気高い魂
を保つことが出来るかを。それをさらに推し進める。闇の力で叩いて砕き、それでも砕けぬ
ものを探し出し、そして至らぬが可能性のある者を強制的に鍛え上げるのだ。なに、驚くほ
どのことでもあるまいよ。私の弟子どもが詳細にあれこれ設定したそうではないか？この世
の最後の歌を、黙示録を。私はそれを実現してやるのだから・・・我が教徒らには感謝して
貰いたいものだ。」

そう言い切ると、黒衣の者は真正面に向き直った。はっとしたパメラは、霞みかける目を黒
衣の者と同じ方向に向けた。
境界の玄関が、開け放たれている。そこにいるのは闇の神父。
清冽なはずなのに何処か禍々しい月光を背に浴びて、大扉を開くために両手を左右に広げた
シルエットがまるで十字架のように床に長く影を作って、立っていた。

「そういうわけだ。よく来たな、「元」我が信徒。億に一つの勝ち目もないだろうに。」

並の喰屍鬼どもよりも凶悪で、ピラニアのようにたかっては人間を骨になるまで貪る吸血鳩
たちが、一斉に飛び立った。

92 名前：イワン・アイザック ◆plPprIesTk ：04/12/12 14:12

黒衣の者ＶＳイワン・アイザック『「元」神の子と「元」神父』

>>91

　重い音を響かせ、硬木で造られた厚い扉が開く。
　月光を背に受け、影が長く聖堂の床に落ちる。
　その気配に感づいてか、居並ぶ会衆席の参列者、白い羽毛を持つ鳩が一斉に首を巡らせ
赫い眼を向ける。

　こつ。こつ。こつ。

　床を靴底が踏みしめる度に刻まれる足音は三つで止まる。
　薔薇窓に填め込まれたステンドグラスを通して紅い月の光が聖堂を照らし、刻み込まれ
た魔法陣が芒、と鈍く光る。
　その先には磔刑像の代わりに十字架に付けられた少女と、その前に立つ黒衣に身を包ん
だ者。
　額に荊冠を頂いたその姿は。

『そういうわけだ。よく来たな、「元」我が信徒。億に一つの勝ち目もないに』

　"Iesus Nazarenus, Rex Indaeorum"。
　嘗てその様に呼ばれたものが、そうイワン・アイザックに告げる。


　四福音書に於いて、イエスの最期は様々な描かれ方が為されている。
　最も成立の古いマタイ、マルコ書には只「大声にて呼ばわりて死す」とあり、ルカ書に
は「大声に呼ばわりて言い給う『父よ、我が霊を御手にゆだぬ』」、最も成立年代の新し
いヨハネ書には「『事畢りぬ』」とある。
　何れにしても『エロイ・エロイ・レマ・サバクタニ（我が神、我が神、何故我を見捨て
たまいぬ）』との言葉を口にした後、大声で叫び、息絶えたのであろう。
　であるならば、何を叫び、何ゆえにその言葉が隠されることになったのか。
　そして、目の前にいる、この、死の王の意味は……


　真白き翼を拡げ、夜闇の中飛び立つ鳩は洗礼者ヨハネの証した「聖霊が鳩の様に天から
下った」との言葉を彷彿とさせる。
　爛々と光る赫い目が群を為して飛び来る様は、しかしむしろ悪霊（あくれい）の如く。
　拡げた腕が指し示すのは壁面に架かる14枚のレリーフ、「十字架の道行」。
　敬虔な信徒が幾度とも無くその前でキリストの苦難を偲んだであろうそれを嘲笑う様に、
抜き放たれるショットガンと短剣がイワン・アイザックの体の前で組み合わされる。
　さながら、十字架のように。

　第1停留　 主イエス、死刑の宣告を受ける。
　雲霞の如き鳩の群に。

　第2停留 主イエス、十字架を担う。
　降り注ぐ銀弾の驟雨は。

　第3停留 主イエス、初めて倒れる。
　純白の羽毛を赤く染める。

　第4停留 主イエス、母に会う。
　弾雨を交い潜ったものが。

　第5停留 クレネ人シモン、主の十字架を負う。
　痩躯を啄み。

　第6停留 ベロニカ、主のみ顔をぬぐう。
　掴み取られ。

　第7停留 主イエス、再び倒れる。
　斬り裂かれ。

　第8停留 主イエス、婦人たちに会う。
　骸を晒し。

　第9停留 主イエス、三たび、倒れる。
　散り落ちる。

　第10停留 主イエス、み衣をはがれる。
　雪の舞い散る。

　第11停留 主イエス、くぎづけられる。
　野を征く如く。

　第12停留 主イエス、息をひきとる。
　血に汚れた。

　第13停留 主イエス、十字架から降ろされる。
　両の手は。

　第14停留 主イエス、葬られる。
　既に。

　そして。
　目の前に。

「『億に一つ』……だと？
　お前はかつて……言った筈だ……『求めよ、さらば与えられん』とな……。
　俺が求めるのは……お前の……苦悶に満ちた……死だけだ……」

　

93 名前：黒衣の者(M)：04/12/12 14:15

黒衣の者ＶＳイワン・アイザック『「元」神の子と「元」神父』

>>92

「神父さんっ、無事だったの・・・よかった・・・っ、！黒衣の者は、私と貴方を使っ
て、魔界を呼ぶって・・・」
嗄れた咽喉を振り絞り、少女が叫ぶ。それを聞いてか聞かずか、イワン＝アイザックは
進撃した。

白き平和という死が、奔流の如く飛ぶ中を。
真っ向から、打ち落とし、握りつぶし、切り裂き、己の傷など気にも留めず、突き進む
黒の男。

染まらず、揺るがず、変わらず。

そして、彼は辿り着く。

『『億に一つ』……だと？お前はかつて……言った筈だ……『求めよ、さらば与えられ
ん』とな……。俺が求めるのは……お前の……苦悶に満ちた……死だけだ……』

吸血鳩の群れを突破したイワンが、黒衣の者の前に立つ。短剣と散弾銃を突きつけ、も
う一つの暗黒に挑む。

己に向けられた武装をまるで無視し、眼前に立つ相手を黒衣の者はまるでいとおしむよ
うに穏かな視線で眺めた。
そして赤い瞳の救い主は、古にシオンの民にしたように語りだした。

「求めよ、さらば与えられん・・・懐かしいな。聖書など大半は出来損ないの弟子ども
の創作に過ぎぬし、この世に神などおらぬ。だが確かに私はその言葉を言った。」

救世主による教えの否定、神の否定。

「神など存在しない。確かに我等吸血鬼や魔族と呼ばれる異界の生物に対して有害な力
を持つ超自然の存在は在る。だがそれはあくまでイワン、貴様をこの宿業に巻き込んだ
悪魔や邪神の類の一種、善でも正義でもない一つの力に過ぎぬ。」

そしてなお語りは続く。

「私は、堕ちた神祖に噛まれて死徒となっても、それで苦しむことも悔いることも無か
った。病者や死者を治療する奇蹟として、吸血鬼としての新たな命を与える代償として
の吸血は苦い偽善だったが、それも皆のため、人々を救うためと思えば己一人の苦悩な
ど耐えることが出来た。そう、当時の私は明らかに、愛で人を救おうとしていた。」

僅か、懐かしむような色が声に混じる。それを自覚したのか一旦言葉を切った黒衣の者。
そして一拍置いて、黒衣の者は話題を変えて続けた。

「しかし私は神の国がどうとか終末だとか救済だとか、そんなことを言った覚えは無い。
神や信仰は種のようなものだ。心に蒔いて芽吹かせ、実を実らせるものだ。それを勝手
に我が弟子どもが変えてしまった。目先の苦難からの逃避として、あれやこれやと付け
加えて、結局信仰を苦痛和らげの没薬にしてしまった。」

再び語られだした声は、変わっていた。後悔と、少しの怒りの熱が慈愛に混じる。

「お前は神には頼らない、イワン＝アイザック。確かにそれゆえにお前は強いのだろう。
だが逆にそうであるがためにお前の強さでは誰も救うことは出来まい。信仰の本来の面
をもお前は切り捨ててしまったから。現にお前がここに来たのは我を打ち倒すため、そ
してあの哀れな娘を殺すため。」

「っ・・・！？」
その言葉に反応し、びくりとパメラが震える。やはり神父は自分を殺しに来たのか？
今更命など惜しいとも思えないのだが、それでもやはり湧く根源的な消滅への恐怖と、
そしてそれより遥かに大きな、僅かのときとはいえともに戦い、「仲間」と思いはじめ
た存在に裏切られ手にかけられるという嫌悪が彼女を震え畏れさせる。
縋るような目でイワンを見るが、十字架の上からでは痩せぎすの神父の顔は削られたよ
うに影となり、その表情は見えず。そんな影が沈黙を守る。それは拒絶のようで、パメ
ラは苦渋の涙とともに顔を伏せ。

そして黒衣の者はそれまでの慈しむような説諭から口調を一転させ、冷たく断ち切るよ
うにイワンに向けて言い切る。

「お前に出来ることは殺し打ち倒すことだけ、何も創ることも、癒すことも、直すこと
も出来ない。」

朗々とした暗黒の宣言。
直後。
黒衣の者はあたかも野獣の如く牙を光らせると、眼前に突きつけられた散弾銃と短剣を
食いちぎるように咥えこんだ。首を振るい、二つの武器を壁際まで弾き飛ばす。

同時にイワンの鳩尾目掛けて、痩身を圧し折りかねない勢いで前蹴り。

「故にお前では、私相手には億分の一も勝ち目が無い。何故ならこの私ですらかつての
愛に変えて狂気と魔をもって人を正すという望みが、野望にしても望みがあるというに、
お前には何も無いからだ。お前に未来が、希望が無い。故に勝てぬ。そのことをこの戦
いで教えてくれよう。」

相手を吹き飛ばして強引に間合いを取ると、黒衣の者は長剣を眼前にかざすようにして
構えた。

94 名前：イワン・アイザック ◆plPprIesTk ：04/12/12 14:16

黒衣の者ＶＳイワン・アイザック『「元」神の子と「元」神父』

>>93

『お前に出来ることは殺し打ち倒すことだけ、何も創ることも、癒すことも、直すこと
も出来ない』

　獅子吼と呼ぶに相応しい、高らかなる声で斯く言い放つ。
　最早何もない。
　そう、何も――ないのだ。
　嘗て神父であったときの様に神学を以て救済の途を模索し得るわけではない。
　嘗て故郷の牧場で過ごした日々が蘇るわけでもない。
　ひたすらに撃ち壊し殺し磨り潰し抉り斬り刻み、築き上げるのは屍山血河、塵を塵に、
灰を灰に、土を土に還すのみ。
　無已にして無辺。
　無慙にして無情。
　無道にして無碍。
　されど無定見ならず。

　さればこそ、構えた両の手は小揺るぎもせず。
　さればこそ、獅子の牙は違う事無く捉え。

　エナメル質と鋼が咬み合い、軋みを上げる。
　――その歯は戈の如く矢の如くその舌は鋭き剣の如く――
　首の力だけで弾き飛ばされた武器は二つながらに壁際まで転がり続け、その行方を見届
ける間もなく鳩尾辺りに衝撃を受ける。
　その痩躯をくの字に折り曲げたまま並んだ会衆席の一角に背中から蹴り飛ばされ、鈍い
音を立てて撒き散らせた木片に埋もれる。
　ごぼり、と口から一塊の血を吐き捨てると、眼前には長剣を翳す黒衣の姿。

『故にお前では、私相手には億分の一も勝ち目が無い。何故ならこの私ですらかつての
愛に変えて狂気と魔をもって人を正すという望みが、野望にしても望みがあるというに、
お前には何も無いからだ。お前に未来が、希望が無い。故に勝てぬ。そのことをこの戦
いで教えてくれよう』

　喉に流れ込んだ血がごろごろと音を立てる。
　声にならない嗤いを上げ、突き付けられた剣も意に介さぬ体でゆっくりと身を起こすと
黒き変容の主に対して背教の司祭はカナァン人の女さながらに応える。

「……くく……そうだ……貴様の言った『慈悲深き父なる神』など……どこにもいない。
いるのは只……血に塗れた宿命を……傍観するモノに過ぎない……。
だが……く……くく……『出来損ないの弟子』の方が……貴様よりも余程……出来は良い
らしいな……」

　イワン・アイザックは斯くてロマ書三章八節を諳んじて言う。

「また、『善を来たらせん為に悪を為すは可からずや』、或る者われらを謗りて之を我ら
の言なりという、かかる人の罪に定めらるは正し。

――ならば貴様も又……俺と同じく……証された罪人に過ぎない……」

　口唇を歪め、聖句を紡ぎ出す。

「愚かなる者は…心の内に神なしと言えり…彼等は腐れたり…彼等は憎むべき不義を行え
り…善を為す者なし…一人だになし…」

　詩篇五三篇。
　「マハラツ（楽器、或いは曲調の名）にあわせて」と原題にはあるが、この場合調べを
取るのは会衆席を蹴り上げる音。
　二つ、三つと木製のベンチが“黒衣の者”目掛け降りかかる。
　その影からイワン・アイザックは腰に手を回す。
　目指すは燭台……或いは御聖体の灯明か。
　取り出すのは、一束のダイナマイト。

95 名前：黒衣の者(M)：04/12/12 14:18

黒衣の者ＶＳイワン・アイザック『「元」神の子と「元」神父』

>>94

『また、『善を来たらせん為に悪を為すは可からずや』、或る者われらを謗りて之を我ら
の言なりという、かかる人の罪に定めらるは正し。――ならば貴様も又……俺と同じく…
…証された罪人に過ぎない……』
『愚かなる者は…心の内に神なしと言えり…彼等は腐れたり…彼等は憎むべき不義を行え
り……善を為す者なし……一人だになし……』
イワン＝アイザックの言葉に、黒衣の者は笑いを浮かべた。
それは、出来の悪い生徒に対してキョウシがするような、困った笑い。
まるで児童にするが如き表情を、人でなくなりつつあるとはいえ大の大人にするという・
・・・侮辱の嘲笑。

「善悪などという幻想を、魔を宿すことにより世界の別の解を見たであろう君が口にする
とはね。神と同じで、そんなものもまた存在しない。・・・いや、逆に腐るほどあると言
うべきだな。故に無意味だと。」

そして先ほどはイワン＝アイザックが辿った道を、裾を翻して逆の方向から歩む黒衣の者。

「異教徒を滅ぼし聖地を奪還するという善、神を侮辱する獣である未開人を抹殺するとい
う善・・・などのキリスト教徒の善、太陽の神に生贄を捧げるというかつての南米であた
りまえの感覚で行われていた善、病気の治療法を見つけるため我が子で実験を行うという
行為は果たして善か悪か、国家の中に善と悪があり、国家ごとのその善悪の違いが戦を生
み、力で勝ったほうの善悪が正しいとされる。加えて国内において善悪の基準が引っくり
返されることも最近は流行だな。それまでの無能な支配者の首を刎ねて、富裕層を皆殺し
にして、貧乏人たちを助けるという内乱殺戮は正義だ。無論、逆に国全体を守るため苛烈
な弾圧を行い次々処刑と強制収用を行うのも善。それどころか同一の国の人間の中にも善
悪に違いが在る。この国は特にそれが強い。肌の色の違う者を差別するのが悪であると思
わない者が、先の内戦が終わった後にもまだまだ沢山居る。他にも大もうけして使い切れ
ないほどの金を貯めるのは善だが、一日の命をつなぐため貧しさゆえパンを盗むのは悪だ
そうだな。・・・それと、そういえばあの娘を殺すのもお前にとっては善のようだな。そ
して吸血鬼であることは悪と。娼婦であることまで悪であると思わないところは私と同じ
だがしかしは私そう思わぬ故お前の善悪と私の善悪は違うな。さらに言うなればお前のよ
うな魔を宿す人の意義善悪も、やはり私とお前、そしてあの哀れな娘の間では異なろう。」

つかつかと歩む黒衣の者。イワンが蹴り飛ばし飛来するベンチを、剣で片端から叩き落し
ながら、まるでなんでもないと言った風情で。

その背を見るパメラ＝マドゥンは、先ほどの絶望とは違うが、しかし方向は違えど同じく
苦しい顔。断絶の暗黒ではなく苦く、悩むような。
黒衣の者の論理への抵抗、しかし善悪相対によれば己のような存在をも許されるという誘
惑、その誘惑によりしかし他者に己の牙を突き立てたくないという嫌悪が蘇り、だがそれ
故に己の心はまだ人間であるという思いが・・・しかしそれすら、黒衣の者の計算どおり
なのではないか、そしてイワンの善悪ではやはり己は悪なのかという思いと黒衣の者の言
うことなどあてになるかという思いの複雑な相克。
少女の心と脳に、重く焦げるようなつらい負担がかかった。

そんな焦燥を知ってか知らずか、戦いは進行する。イワン＝アイザックが魔に魅入られた
が故に強靭な体で、失った武器の変わりか牽制か次々教会のベンチを黒衣の者目掛けて蹴
り飛ばしていく。重いベンチが多勢で降り注ぐ。人間なら、いや並以上の狂血病患者でも
下敷きでぺしゃんこだろう。

「全く善悪ほど当てにならぬものなどない・・・１８００年以上この世界を見守ってきた
私が断言しよう。世界に在るのは個々人の思考・信念とそれにより発生する行動、そして
その結果の積み重ねである歴史だけだ、そこに善悪など無い。」

木片が舞い散る。椅子は皆黒衣の者の行動を一秒も遅滞させることなく砕け散った。
そもそも黒衣の者は要塞砲の直撃程度の衝撃なら指一本でも止めることが出来る。この程
度ではあたってもよろめきもしなかっただろう。

「そんなものを通してしか世界を見れないとは。失望したよ、イワン＝アイザック。」

そして黒衣の者はイワンの前に立つと、断頭台の刃を落とすが如き冷たく重い言葉ととも
に、剣を振り上げた。

「生き続ける苦しみというものを私は否定しないが、しかし死以外、あの娘を殺し主も心
を捨てた戦いをする以外、希望はあろうに。この「黒衣の者」や悪魔・魔神を代表する闇
に屈し、それを捨てるか？人よ。」

剣を振り下ろす前、そう呟く黒衣の者の狂気の紅い瞳が、僅かに複雑な輝きを宿した。

96 名前：イワン・アイザック ◆plPprIesTk ：04/12/12 14:18

黒衣の者ＶＳイワン・アイザック『「元」神の子と「元」神父』

>>95

《左様、さればこそ貴様よりも『出来損ないの弟子』の方がましだと言ったのだ。
　“黒衣の者”よ、『聞く耳有る者は聞け』と言ったのは貴様ではないのか？
　では、これより『真に汝に告げん』》

　寒風に曝され木々や竹矢来が立てる音を笛に見立てて「虎落笛（もがりぶえ）」と呼ぶ。
　むしろ鬼哭啾々と言うべきであろうか。
　乾いた枯れ枝を数本束ねゆっくりと押し潰せばこういった音になるのであろう。
　そんな《声》が、不意に両者に割って入る。

《我は嘗て、異端審問官として多くの異端者を焼いた。
　それが神の義であると、善であると。
　炎こそが主の恩寵であると、贖宥であると。
　それが故、我は『断罪の聖者』と呼ばれたのだ》

　イワン・アイザックの声ではない。
　何故ならば。

「神は天より…人の子をのぞみて…悟るものと神をたづぬる者と…ありやなしやを見たま
いしに…みな退きて悉く汚れたり…善を為す者なし…一人だになし…」

　未だ聖句を口に、次々に巨大な木製の会衆席を“黒衣の者”目掛け蹴りつけている。
　気休めにもならない、攻撃でもあり得ない行為を空しく継続したまま。

《……さて、貴様は善と悪などは飽くまでも相対的な物でしかない、そう言うのだな。
　然り、所詮善乃至悪などという物は神が定めた『律法』の下にのみ在る。
　義人ヨブは、律法の下に悪とはされなかったが神の試練を受けた。
　何故か》

　斬り払われ砕かれた会衆席の欠片は床を足の踏み場のない程に埋め尽くしている。
　やがて痩躯の神父の背が壁際に押し付けられた頃。

《最早義とは我等の上にない。
　のみならず、人の子は須く罪の下にあるべし。
　さればこそ我等は神に憤怒し、神に憎悪し、信仰を棄て闇に堕ちた。
　憤怒は義ならず、ならば罪なり。
　我等は罪をこそ武器となす。
　嘗ては強き信仰であるが故、その憎悪は弥増す。
　されば……》

　“黒衣の者”は見たであろうか。
　影と思しき中に佇む修道衣の姿を。
　濁った眼球は怒りと憤りに彩られ憎悪はその容貌に深い皺として刻みつけられている。
　断頭の大剣を執行者さながらに振り上げた“黒衣の者”の眼前に立ち現れると、指を突
き付ける。

《信仰の強さが最も強き武器となる。
　なれば憎悪する。
　最も強く在らんが為に。
　さればこれこそ神への信仰を喪った我等が成し得る唯一つの信仰であろう。
　故に我等にあるのは憎悪のみ。
　そう……貴様の如き闇に対する、な》

　そして、二つの嗤いが同調する。
　イワン・アイザックが翳す手に握られている物は、長い鎖とその先に取りつけられた赤
い風防の洋燈。
　聖体ランプと呼ばれるそれは壊れているらしく、油壺から一滴、一滴と聖油が零れ落ち
床に黒い染みを――見渡せば床一面に拡がり、斬り砕かれた木片と、その中に紛れ込んだ
円筒形の物体を濡らしている。

「不義をおこなう者は悟りなきか…彼らは物食う如く…我が民を食らい…また神を呼ばう
ことをせざるなり…

　くくく……『主の臨在を示すが故に絶えず灯されるべし』……だそうだが……貴様がい
る以上……これは必要ないようだな……。
　返すぜ……」

　鎖を握る手を離すと音を立てて洋燈は床に落ち、未だ消えずに残っていた燈明の炎は割
れた風防から聖油に燃え移り床を這うように広がる。
　そして円筒形の物体――ダイナマイトに引火すると爆発と共に聖油の染み込んだ木片、
嘗て多くの信徒が膝を付き、祈り、礼拝の席に着いたベンチの成れの果てが炎を纏いつつ
“黒衣の者”へ飛来する。

「その娘が闇に堕ちるというのならば……俺はそれでも構わないさ……。
　闇で永劫の苦悶に囚われるならば……せめてその前にこの手で殺してやるべきだったが
……くく、そうだ……俺には殺すことしかできない……既に『あの時』……解っていた筈
だというのに……。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――――――Amen」

　

97 名前：黒衣の者(M)：04/12/12 14:21

黒衣の者ＶＳイワン・アイザック『「元」神の子と「元」神父』

>>96

ドガァァァァァァアン！！
轟ッ！！
ズガ、ズガガガッ！

大爆発。聖油を導火線にダイナマイトが爆発、砕かれたベンチの木片が一斉に襲い掛かり
黒衣の者を飲み込んだ。

ダイナマイトと木片の位置関係からその殆んどは黒衣の者に集中し、背後のパメラには距
離があることもあって危害は及ばなかった。

『その娘が闇に堕ちるというのならば……俺はそれでも構わないさ……。
　闇で永劫の苦悶に囚われるならば……せめてその前にこの手で殺してやるべきだったが
……くく、そうだ……俺には殺すことしかできない……既に『あの時』……解っていた筈
だというのに……。』

しかしイワンの言葉は、パメラの心に突き刺さる。自分を殺すという、己には殺すことし
か出来ないという男の信仰告白は悲しく、怖く、苦い。
「あ、の・・・あの時って、何よ、それ・・・殺すしか出来ない、って・・・何でそんな
こと言うのよ！イワン、さん・・・確かにあたしはここで死ぬしかないかもしれないけど、
貴方に殺されるのはいやだよ・・・自分にはそれしかないからなんて理由で、そんな逃げ
たようなことで殺されて、貴方の闇がもっと深くなることに加担させられるなんて嫌、昔
何があったか知らないけど、そんなこと信じないでよ・・・」
故に精一杯の苦鳴を漏らす。

一方爆心により近いイワン＝アイザックは、黒衣の者の体自体が楯となり、この爆発から
逃れられる。パメラ＝マドゥンの言葉からは、逃れることは出来ないが。
そして、本来の目標たる黒衣の者は。

「ふ、は・・・！やるな・・・イワン＝アイザック。先の攻撃は、これの準備か。」
黒衣の者の体は相当激しく損壊していた。
背中一面が焼け爛れて黒衣が未だ燻り、体の幾箇所にも砕けたベンチが、槍衾に突っ込ん
だように突き刺さっている。
「聖油による炎の焼夷に、信者の念が篭った杭状に尖ったベンチの破片が突き刺さる・・
・か。流石に効いたぞ。これは少々再生しにくいな。」
それらの波状攻撃は、傷の大きさに加えて持つ聖なる属性故に、首や手足の欠損程度なら
即座に再生する黒衣の者にも有効なダメージになったのだ。

しかしそれでも尚、黒衣の者は倒れず。

「それにつけても小娘の言うとおりだな。言ったろう、信仰は種のようなものだと。その
ような・・・芽吹かぬものを、広がらぬものを、癒さぬものを、救えぬものを・・・信仰
とは呼ばぬ。信仰が生む暴力もあるが、信仰すなわち暴力ではない。」

ズガッ！
黒衣の者の振り下ろした剣は、狙いを外してイワン＝アイザックの影に・・・否。

「善悪など無い、と私は言った。つまりお前達もまた、善ではないかもしれないが悪とも
呼ばれるいわれは無いということだ。」

狙いを捕らえて影の中のベシエルに突き刺さった。
ジュワワワワワ！
実体を持たぬベシエルの姿が、しかし剣の一撃で異音と共に沸騰した水に映る影のように
揺らぐ。死王の魔の力が、剣を通して注ぎ込まれ、ベシエルの霊を掻き乱しているのだ。

「そもそもからして憤怒は不義ではない。それが怨嗟でないのならば、涙を流し血を流し、
明日へとたどり着こうとする熾烈な命の叫びであるならば・・・それは確かにこの世界に、
希望となる。」

突き刺したまま剣を手放した黒衣の者は、体に刺さった木片をその周囲の己の肉ごと引き
抜く。
そして、同時に語る。

「そう、善悪など無いこの世界に、それでもそれは存在する。希望・・・幾度費えても裏
切られても、それは再生し続ける。我等死徒にも、神祖にすら叶わぬ永劫（アイオン）。
実在せぬ神すらも叶わぬ、光。それはろうそくの炎のように揺れやすく、弱く、すぐに消
えてしまうかも知れぬ。だがそれは、蘇るのだ。そして、あたかも一本の蝋燭が、別の蝋
燭に火をうつすように、潰えても潰えても増え続け・・・いずれ世界を照らすかもしれな
い。」

血肉に塗れた木片が、床に落ちるおとがびしゃびしゃと陰惨に響く中、対照的なまでに静
謐な口調で、死王たる堕ちたメシアが希望について語る。

「今、この大陸には・・・キリエという私の娘がいる・・・あの娘もお前のように異形の
体を宿命付けられた・・・」

木片を引き抜き終えたところで、丁度話題が変わった。

「だが・・・あ奴はその吸血衝動に揺り動かされる体と魂で、狂血病患者の明日のため、
我が心臓より得られるワクチン・純血を求め戦い続けたのだ。」

肉のこそげた体を一揺すりすると、黒衣の者は手を伸ばした。またダイナマイトなどを出
さぬように、イワン＝アイザックの手首を掴んで捻り上げる。
人ではなくなったイワンは痩身に似合わぬ怪力だが、黒衣の者の腕力はそれをさらに上回
り、手の動きを拘束する。

「無償でだ。あ奴自身は生まれながらの半吸血鬼（ダンピィル）故、血の渇きから解放さ
れることは無いというのにだ。自分のためにではなく、他人のためにだ。」

締め上げながら、黒衣の者は語り続ける。その口調は徐々に熱を帯び、強くなっていく。

「今、このときにもそうだ。今もあの我が娘はどこかで戦っている。顔も知らぬ他者のた
め、救えなかった者との約束のため、友と呼びたいもの、友と呼ばれたもののため・・・
何度でも立ち上がりながら、な。」

その強さと熱が頂点に達し、そしてふ、と緩んだ。押さえつける力は弱まっては居ないが、
赤い瞳の作る視線はいくらか柔らかなものになる。

「どうだ、イワン＝アイザック。慶（よ）い話と思わぬか？心砕けたお前の目にも、眩し
さが見えぬか？」

ぎしり。牙を鳴らし、黒衣の者が笑った。

「お前も同じ存在だ。ならばお前にも出来るはずだ。お前も、例えば手始めに十字架に
かけられ吸血鬼により生贄にされそうになっている、あの娘の希望になって見ないか？
そうすれば、希望はいずれお前にも還ってくる。」

黒衣の者の体が、イワン＝アイザックの手首を掴んだ腕が翻る。言葉を一端区切って体を
反転させると黒衣の者は、イワン＝アイザックの体を軽々と放り投げた。
十字架、そこにかけられたパメラ＝マドゥンのところに。

「例えば・・・だ。ソリア決戦を識れば分かるとおり、私は一定以上体を損壊すると下僕
どもに回す力を己の再生につぎ込む。それゆえソリアを覆っていた喰屍鬼は全滅したのだ
が・・・それがヴェドゴニアだった場合、自然（じねん）血盟が解けて人間に戻ることが
出来る、という風にな。希望も奇蹟も、存外そのへんに転がっているものなのだよ。今は
予想もつかなくとも・・・そんな奇蹟は、お前にも訪れるだろうさ。」

イワンの体が宙を舞い、教会の床に叩きつけられると同時に、黒衣の者の語りは終わりを
迎える。
そして最後に、黒衣の者の言葉に驚きながらも、心配そうにイワンを見やるパメラとその
足下に倒れているイワンに向けて、聖句を唱えるように厳かに、黒衣の者は問うた。

「さあ、どうする？選択せよ。希望の明日か、絶望の昨日かを。」

98 名前：イワン・アイザック ◆plPprIesTk ：04/12/12 14:22

黒衣の者ＶＳイワン・アイザック『「元」神の子と「元」神父』

>>97

　片腕で軽々と放り投げられた様は、まるで弄び飽きた子供が投げ捨てた人形のようで、
放物線を描きながら無様に床に叩き付けられると鈍い音を立ててごろりと転がり、丁度磔
られたパメラ＝マドゥンの足許にその身を伏せている。
　拗くれた四肢はあらぬ方向を指し示しながら地に投げ出され、乱れた髪は貌を覆い隠し
その眼光すら窺えない。

『さあ、どうする？　選択せよ。希望の明日か、絶望の昨日かを』

　投げかけられる言葉に漸く首を巡らせると、口角から赤いものを一筋滴らせつつゆっく
りと、未だ立つことすらも覚束無い仔馬の様に、下手な人形師の手繰り寄せる糸に牽かれ
るマリオネットの様に、四つの瞳に見守られ膝を震わせながら立ち上がる。
　この狂った人形劇場（グランギニョル）の終幕を告げる声に応えるために。

「俺が開いたパンドラの筺に……残っていたものは……『絶望』だけだった……。
　闇すらも眩い程の暗黒の中では……それすらも……永劫の苦痛すらも『希望』の光明に
見えたからだ……」

　十字架に架けられた少女に背を向け、荒い息を吐きながら姿勢も定まらない儘“黒衣の
者”に向き直る。

「この俺がそうでないと……果たして言えるのか……？
　この娘が見る唯一つの希望が……この俺だと……」

　血に染まった歯列を剥き出し、皮肉気な笑みを浮かべる。

「俺は自ら動くことはない……俺の意志は……封じられているからだ……。
　故に……俺が選ぶことはない……何も……何もだ……」

　十字架上の少女からはその背しか見えず、また途切れ途切れに語られる口調から感情は
推し量ることは出来ない。
　だが、少女の目にはこの神父が、まるで自分の代わりに十字架に付けられているかの様
な苦痛に苛まれ、呻吟する姿が映った。
　重い鎖が蔓の様に巻き付き容赦なく絞め上げ、全身の骨が軋みを上げつつ中空に吊り下
げられた姿はさながら蜘蛛の糸に絡め取られた獲物で、だとすれば蜘蛛の姿は――

「全てはあの時……『ドメス・ポラダ』に出遭ってしまったことで……『始まった』……。
　……くく、いや……『終わった』んだ……。
　光に背を向け……俺は自ら闇を選んでしまった……それ故に……貴様の娘とやらとは違
う……。
　ヤツを見ただろう……“ベシエル”、幾百年の刻を……己が魂を賭けテモザーレを封じ
た男を……。
　俺と同じく……愛する者を喪った者を……」

　ベシエル――彼の黒髯の男は、今や剣に刺し貫かれその姿を隠している。
　だがその気配は未だイワン・アイザックの傍に蟠り、幽かな瘴気を漂わせている。

「『信仰は種』……か……くく、嘗ては……俺もその言葉を信じていた……。

『路の傍らに落ちし種あり、踏みつけられ、また空の鳥これを啄む。
　岩の上に落ちし種あり、生え出たれど潤沢なきによりて枯る。
　茨の中に落ちし種あり、茨も共に生え出て之を塞ぐ。
　良き地に落ちし種あり、生え出て百倍の実を結べり』

　だが……世に良き地のどれ程あることか……。
　それ以外の全ての種は……見棄てられると言うのか……？」

　慟哭ともつかぬ声が、まことの絶望を知った言葉が、“黒衣の者”に投げかけられる。

「ヨブは……全てを失ったが……神に訴え……やがて新たに失ったものを得た……。
　……だが……死んだヨブの子等が……蘇った訳ではない……。
　ならば……死んだ子等の栄光は……誰が取り戻せると言うんだ……？
　……そうだ……俺の元には……還る希望すら……ない……」

　そして振り返らぬ儘、背後の少女を指して言う。

「この娘が……人に戻れるとして……俺の知ったことでもない……。
　俺は……お前を殺せれば……それで満足なんだよ……。
　……だが……そうだな……」

　ふ、と言葉を切ると、それに付け加える様に小さく、だがはっきりと、獣の嗤いを貼り
付けた口の端から呟きが漏れる。

「人に戻れるのならば……殺す理由はない……それだけだ……」　

99 名前：黒衣の者(M)：04/12/12 14:25

黒衣の者ＶＳイワン・アイザック『「元」神の子と「元」神父』

>>98

「そうか。それがお前の答えか。お前は、お前なりの答えを出したか。」
黒衣の者は、微笑んだ。それは底抜けの青空のように明るく、春の日差しのように暖かく、
風のように軽く包み込み、入り込む・・・
死王ではない、かつての救世主の微笑。
しかし同時に、その五体には桁外れの妖気が満ち満ちてきていた。

ビリリリリリッ！！

内側から膨れ上がる「力」に、黒衣の者の象徴足る漆黒の装束までもが消し飛んだ。その
下には十字架にかけられたやせ細った体ではなく、全身の筋肉を隆々と盛り上がらせ同時
に素早さも併せ持つと知れる肉体が、下帯一つで全身を晒していた。吹き飛んだ装束の替
わりのように、背中から生えた八枚の蝙蝠の羽がはためいた。

鋭い爪を生やした指が、握りしめられる。爪が己の肉に食い込みそこに固定する、人間に
は有り得ない、異形の拳を形作る。
「その答えの是非を私は判断しない。それに基づくお前の行動を私は斟酌しない。何故な
ら・・・」
微笑みが、つり上がる。宣告まで纏っていた仮面よりもさらにおぞましく、救世主の形相
が変化する。蛇でもここまで出来まいというほど巨大に開いた口には、まともな生物のそ
れでは有り得ない異常な量の、顎からはみ出すほどの大量のキバ。

「これにより未来の可能性が生じた。選択が、一歩が、「次」を生む。それは我が術式に、
世界を変える行為に必要不可欠の要素。術式は・・・完成した。」

轟！！

無音の轟き。静寂の絶叫。沈黙のウォークライ。感知不能の歓声。認識できない嬌声。

五感全てをすり抜け魂に突き刺さる魔の波動が、沸き立った。
床に剣を引きずって書かれた魔法陣が、忌まわしい輝きを発する。

「さあ終わりにしよう、その選択を持って。お前を倒し、お前を喰らい、魔界門を開く。」
祝福のように宣言し、拳を、腕を、弓弦のように引き絞る。全身の、死徒の筋肉の躍動は
おおよそこの時代に人類が手にしうる破壊力を遥かに超越し、同じ闇の者といえども抗し
うる余地はない。
ましてや辛うじて立っているだけ、と見えるイワンにそれをかわす術も避ける術もありは
しないように思われた。
誰も、何も知り得ぬまま、この地より世界の終わりが始まる。

そう見えた、一瞬。

ドガッ！

「！！？」
一撃。
黒衣の者の左目に、銀の杭が突き立った。深々と、真紅の眼球を砕く。
奇襲によろめく黒衣の者。

そして、声が響いた。
「終わらないよ・・・」
その声を発したのは少女、パメラ＝マドゥン。十字架に張り付けられていた無力な少女。
しかし今彼女の、吸血殲鬼の赤い瞳には闘志と力が満ちていた。そして彼女の体は、己の
腕を十字架に縫い止める杭を力任せに腕を前に出すことにより十字架から引き抜き、それ
をそのまま打ち振って杭を投擲、黒衣の者の目に命中させていた。

「世界も、人も・・・人でないものも・・・同じだから、終わらないんだ。」
さらに強引に、もう片方の腕を前に出す。十字架から外れた杭を今度は投擲せず、腕から
引き抜くと掌に握った。そこでバランスを崩し前のめりに倒れ込むが、腕の力で床を掴ん
で体全体を前に出し、足に突き刺さっていた杭も十字架から引き抜く。

立ち上がり、未だ杭の刺さった足で歩く。苦痛に表情をしかめながら、尽きかけた体力に
喘ぎながら。

「何度倒れても、何度闇に魅入られても、何度希望を失っても、何度果てない怒りを抱い
たとしても、何度、過ちを犯したとしても・・・終わらないんだ。捨てた捨てたと言って
いても、生きている限り存在し続ける、心があるうちは、終わらないんだ・・・」

吐息のように小さく、呟きのように弱く。
極限まで圧縮された宝石のように堅固に、パメラは誓いながら前へと進む。
いつしかパメラは、イワンの隣に立っていた。

「ふ、心か・・・それにすがる者を何人も見てきたが、いずれ運命に砕かれ、狂気に呑ま
れ、それを失っていったぞ？ましてやその男など、己で己の意志は封じられていると宣言
したばかりではないか？お前が十字架から外れると術が弱まる。戻れ。・・・カァッ！」

嘲笑うと黒衣の者は、拳を繰り出した。衝撃波すら纏う拳が床を砕き、その下の土台、さ
らにその下の土すら砕いて巻き上げる。

そう、壊したのは床、パメラではない。弱々しいままでパメラは倒れ込むようにその拳を
かわすと、足に刺さった杭を踵落としの容量で黒衣の者の体に叩き込んだ。
「ガ！？」
肉を裂かれ苦悶する黒衣の者。同時に倒れるパメラだが、再び立ち上がるとよろよろと歩
み・・・イワンの前に、彼を庇うように立つ。
「そうだよ。人の心は死ぬこともある。いい土に恵まれなかった種のように。乾いた土の
上で、芽を出したい華を咲かせたいと思いながらもかなわず、枯れていく・・・それは悲
しいけど、どうしてもあることだよ。この世界は天国じゃない。」
私もたった今まで、そんな乾いた土の上の種だった・・・
そう、呟いた後。
きっとパメラは眦を決し、黒衣の者に相対した。
「だけど種は最後まで芽吹くことを諦めないんだ！零に等しい可能性でも、あるうちは生
き続け・・・例え潰えても、後に続く種達の苗床になる・・・人の心もまた同じ！私も、
イワンさんだって、まだ何も決まってはいないの！捨てたと言えるほどの悲しみを感じら
れる心が有れば、また拾って選択することが出来る！」
叫ぶ。黒衣の者に対して。
「今私は、闇の怒りの中でも尚、私を殺さないと言ってくれたイワンさんの言葉を、水と
して受け止めた。だから戦うよ。芽吹く為に・・・そして、この砂地に根を張り、水を引
いてみせる・・・イワンさんの為に。それが私の心の、今までただ諦めて、娼婦として全
てを売りながら生きてきた私がいまもう一度する、精一杯の、選択。」
続いて、イワン＝アイザックに対して。
「憎しみの闇に沈んだイワンさんも、とても大切な愛を持っていたからこそだよ・・・そ
んな綺麗な種が枯れるなんて、耐えられない。だからまず、私が頑張る。芽吹くために。
枯れて、貴方の苗床になっちゃうかもしれないけど精一杯やってみるよ。だから、宣言し
てみる・・・」
そして跳躍し、黒衣の者にパメラは挑んだ。
「私は、咲く！」

100 名前：イワン・アイザック ◆plPprIesTk ：04/12/12 14:28

黒衣の者ＶＳイワン・アイザック『「元」神の子と「元」神父』

>>99

　少女の体に纏わり付いた僅かばかりの襤褸と見える布切れは、最早肌を隠せる最低限度
しか残っておらず、鈎裂きだらけのスカートとブラウスにはどす黒い血が染み着き華奢な
体の此処其処に貼り付いている。
　乾きかけた血糊は舞い上げられた土埃と混じり、膠の様にべっとりと蒼白な肌を穢して
いる。
　両の掌と足には大穴が空き、銀に灼かれた傷跡は未だ血煙を上げつつその体を容赦なく
苛んでいる。

　それでも尚。歯を食い縛り。
　少女は地を蹴る。大きく羽撃くために。
　伸びやかな四肢は猫科生物の様にしなやかに、猛禽の様に雄々しく、そして餓えた狼の
様に獰猛に、“黒衣の者”に向けて腕を振り下ろす。
　その手には白銀の杭。
　鈍く光るその先端の向けられた先には。


――“黒衣の者”の、残された隻眼。

　右の眼に向けてまっすぐに振り下ろされるその杭は、白く光る弓形の軌跡を描きつつ瞳
の中心、ひときわ紅くそして冥い瞳孔へと伸び、その鈍い尖端が眼窩を剔り濁った水晶体
と血液を撒き散らせながら埋め込まれてゆく。

　その筈だった。

　否、そうでなくてはならなかった。
　しかしながらほんの数吋手前、銀杭の尖端が指し示しているのは甲から捻れた爪を生や
した異形の拳。
　節榑立った拳頭がその尖端を跳躍した少女の肉体ごと受け止め、今にも崩れかねない僅
かな均衡を保っている。

　互いの視線が交錯し、殺意に満ちた沈黙が支配する永劫とも思える刹那、その均衡を破っ
たのは“黒衣の者”。
　拳を振り抜かれると、パメラの痩躯は嵐の前の羽毛に等しく、苦もなく吹き飛ばされ何
物かに背から衝突する。

「――か……っは」

　衝撃に喉の奥から絞り出すように大きく息を吐き、何度も肩を上下させ喘ぐように声に
ならない叫びを上げる。
　相手は最早二千に届かんとする齢を重ねた吸血鬼であり嘗て救い主・神の独り子・受膏
者等とまで呼ばれた存在であり、そして未だ世を――その是非までは自分には分からない。
只、間違っているとしか思えない――自らの手によって変革しようとまでする。
　翻って自分は……。
　そこまで考えて、ふと、肩に置かれた手の微かな重みに気付く。
　指骨の浮き上がった幽鬼の様な、温もりのないはずの手が何故か温かい。

「……立て。
　お前の後ろ……壁際に銃がある……。
　……弾は一粒弾（スラッグ）で２発……外せばお前は死ぬ」

　擦れた声が背後で聞こえる。
　拳に弾き飛ばされたパメラ＝マドゥンの体を受け止め支えたままで、神父イワン・アイ
ザックは淡々と言葉を継ぐ。

「……俺が走ったら……直ぐに取りに行け……」

　肩に置かれた重みが消えた。
　その瞬間、憑き物が落ちた様に振り向きざま壁際に奔る。
　そこには既に神父の姿はなく、転がる様に切り詰められた散弾銃を拾い上げると、壁に
背を付け、銃口をポイントする。
　まだイワンの痩せた背に阻まれ、“黒衣の者”の姿を捉えることは出来ない。
　徒手の侭で“黒衣の者”に走り寄るイワン・アイザックに一抹の不安を覚えつつ、二度
三度と深呼吸する。
　『外せばお前は死ぬ』という感情の篭もらない、事実のみを突きつけた言葉のリフレイ
ンが重圧となって身を押し潰し、ともすれば銃を取り落とさんばかりになりながら。
　

101 名前：イワン・アイザック ◆plPprIesTk ：04/12/12 14:29

>>100続き

　疾駆する痩身の神父は両腕を拡げ“黒衣の者”に殺到している。
　呪詛の様に聖句を紡ぎつつ、只一直線に。

「…主よ、われ深きふちより主に叫び奉れり…
　主よ、わが声を聴き容れ給え…
　…願わくは、わが願いの声に御耳を傾け給え…」

　鉤爪の様に指先を曲げ、姿勢を低く、鴉の様な影を血繁吹く黒風に乗せて。

「…主よ、もし不義に御目を留め給わば…
　主よ、たれかよく立つことを得ん…
　…されど主に御あわれみあるにより…
　また主の御戒めのために…主よ、われは主に依り頼めり…」

　迎え撃たんと振り下ろされる拳の下を更に低く掻い潜り。

「…わが魂は主の御言葉に依り頼み…
　わが魂は…主に希望せり…
　朝より夜にいたるまで、イスラエルは主に希望すべし…」

　拳風に背が破れ、どす黒い血も疾うに失せ果てた様に凝った肉だけが顔を覘かせる。

「…そは主の御許にあわれみあり…
　また豊かなるあがないあればなり…
　主は御みずからイスラエルを…
　そのすべての不義より…あがない給わん…」

　伸び上がる様に左腕を振り上げると、死角に潜り込む様に“黒衣の者”の顔面を攫み。

「主よ…永遠の安息をかれらに与え…
　絶えざる光を…かれらの上に照らし給え…」

　その視線を塞いで見せた刹那、轟く二発の銃声。
　硝煙の彼方に揺らぐ少女は銃把を握りしめたまま壁に全身を預け、ずるり、と崩れ落ち
る。
　着弾は二箇所、強靱な筋肉に鎧われた“黒衣の者”の肉体は一オンス半ばかりの銀を鋳
熔かした十二番径一粒弾、並の吸血鬼ならば一発で滅びかねないものを喉と腹に受け、そ
れでもぐらりと姿勢を崩させるのみに留まる。
　だが、それで充分とばかりに、

「祈願…すべての信者の創造主…かつあがない主にまします天主…
　主のしもべらの霊魂に…すべての罪の赦しを与え給え…」

指を眼窩と顎下に差し込み、爪を立てて掴み上げると頭を引き倒す様に駈け出す。
　聖句の声も呟きの様に低く小さく、口から血の泡を吐きながら。

　そして、その先にあるもの。
　先刻ベシエルの霊体を貫き通した“黒衣の者”の佩剣が未だ鈍い光を放ちながら突き立
てられている。
　磔刑の十字架の様にそそり立つその腕木の部分、護拳（ガード）を勢いに任せて蹴り上
げると重い剣身を具えた大剣は空を切り裂く音と共に宙に舞い、切っ先の痕を残し亀裂の
走るその床に掴んだままの“黒衣の者”の頭を割れんばかりに叩き付ける。

「…願わくは…かれらが絶えず望み奉りし赦しをば…
　…われらの切なる祈りによりて…こうむらしめ給え…
　世々に活きかつしろしめし給う…主によりて願い奉る……アーメン！」

　照り返す紅い月光が濡れた様に剣を染め、 逆しまに降り落ちる――

102 名前：黒衣の者(M)：04/12/12 14:30

黒衣の者ＶＳイワン・アイザック『「元」神の子と「元」神父』

>>101


断！！！

瞬間その音は、この夜の総てを両断するかのように響き渡った。

剣が、断頭台の刃となりて落ちた。

地平に没する月の如くに。

奈落に落ちるものの如くに。

あるいは、地に与えられし希望の光の如くに。

瞬間、血が噴き上がった。

血が、戦いの終焉を告げて。

死の匂いを撒き散らして。

そして、救われた命のために。


黒衣の者の首は、胴から断たれた。
瞬間首を失った体がびくりと痙攣し、両腕が跳ね上がった。
鋭い鉤爪が光る。突き上げられた手はまるで、天をその手に取ろうとしたように。あるい
は、天上の存在に挑みかかろうとしたように。

その手が、落ちる。

「あ・・・！」
その時、力を使い果たし壁に身をゆだね座していたパメラは、見た。
光を反射した黒衣の者の爪。その腕が落ちる。その向こう、開け放たれたままの教会の扉。

その向こう、地平線の光。


朝日だ。


静かな、無音の朝。
教会の壁を戒めていた黒衣の者の肉で出来た触手が、灰となり、消えていく。
町でも、狂乱の一夜を荒れ狂った黒衣の者の死兵達が、そのくびきから解放され、灰へと
塵へと帰っているのだろう。

そして、その朝日を見るパメラは、灰へと帰ることはない。
「あ・・・！あ・・・！」
その顔に、まずは驚きが。
そして。

喜びが宿る。
彼女は、人に戻ることが出来た。

立ち上がる。体は酷く痛み、軋む。だけど、動く。その肌もその爪もその瞳も、元の人の
それに戻っていた。

パメラは歩みだす。ボロボロになりながらも戦いを終えた、イワン＝アイザックの元へ。
己の小さな肩を、何とはなしに撫でる。先の一瞬の激闘の前に、イワンの骨ばった手が置
かれた箇所。冷たいはずなのに、温かかった。

黒衣の者を、かつての救世主を床に叩きつけ、落下する剣を持ってその首を切り落とした
イワン。魔に身を堕とせし神父。
絶望と憎悪を信仰しそれを糧に戦う、「終わりし者」

だけど。

だけどと、パメラは思う。

先ほど、元神父は祈っていた。懸命に祈っていた。


切なる祈りを。
主に、祈り頼んでいた。希望していた。
赦しを。
贖いを。
憐みを。


イワン＝アイザックは、願っていた。それら総てを。
だから、パメラは祈る。祈りも知らぬ育ちゆえ、彼が祈りし言葉の一節を・・・
もし居れば神は怒るかもしれないが、少しだけ変えて。

「・・・願わくは・・・貴方が絶えず望み奉りし赦しをば・・・私の切なる祈りによりて
・・・こうむらしめ給え・・・世々に活きかつしろしめし給う・・・主によりて願い奉る
・・・アーメン。」

呟くように、パメラは祈る。イワン＝アイザックに、己を救いし悲しき闇の男に、彼が内
心では望んでいた、赦しが与えられるようにと。

「ありがとう、ございます。イワン＝アイザック。私の希望、そして、私の愛。」
そう、祈りの後呟くと。
うちなる祈りを中々露にせず、普段は常に否定的な言辞をする彼に、これだけは彼に否定
はさせじと、その骨ばった長身を抱きしめた。
闇である彼に、日の光はまだ強いだろうから、彼を守るために。
これが人に還ることの出来た彼女の、今出来る恩返し。
「私は祈り続けるよ。貴方も、いつの日か・・・闇から人に戻れるように。信じ続けるよ、
貴方の希望を。貴方が自分に希望を持てないなら、その分私が望み続ける。」
そしてこの言葉が、今の彼女の精一杯の告白。



刹那の沈黙。その、後。
「・・・き、希望、は・・・」
「っ！！！」

声が聞こえた。酷く聞き取りにくい、されど聞き間違えるはずの無い、そして。
聞こえてはならないはずの声。

黒衣の者の声が。

「希望は、希望を呼ぶ・・・計画は失敗したが、しかし新しき答えの形は導き出された。
術は砕けたが、式は満たされたか。」
首を打ち落とされた、吸血鬼でも確実に死んでいるはずの傷を受けた黒衣の者が、立ち上
った。
切り落とされ、眼球を穿たれた頭を腕がぎこちなく強引に首の上に載せる。首の断面痕か
ら未だに鮮血をしたたらせながら、黒衣の者は尚滅ぶことを知らない。
滅ぶことを己に赦さない。

「この結末も、この希望も、貴方の予測の範囲内だと言うの？救世主。」
パメラは、滅びと再生を行き来するものに対して呟いた。
イワン＝アイザックを抱きしめたまま。黒衣の者からすら、絶望からすら彼を守ろうとす
るように。

「・・・だとしたら？」

黒衣の者は問いを返す。
陽光が差し入り、黒衣の者の体を燃やし、蝕んでいく。それと同速度で黒衣の者は総ての
死兵から供給先を変更した生命力で己の体を再生させていく。
幾度も朽ち、蘇り、また朽ち、そして尚蘇る傷口が、間欠泉のようにその都度血を噴出す。

「それがどうした、って言ってやるわ。」

決然と。パメラ＝マドゥンは言った。

「希望は、どんな状況でも絶対に消えはしない。絶望をもってしても希望を消すことは出
来ない。だって、希望は明日だから。今日が絶望に潰えても、それがどんなに深くても、
明日は必ずやってくる。その日に希望を取り逃がしても、尚、明日はやってくる。」

もはやただの人間となった自分には、黒衣の者を止める力はないと、知りつつも尚、強く
それに立ち向かうように。叫び続ける。

「吸血鬼にも悪魔にも魔神にも堕天使にも、本物の神様だって、明日が来ることを止める
なんて出来はしない！だから私は、明日を目指して戦い続ける！」

凛としたパメラの叫び。イワン＝アイザックという彼女の希望を抱いた強さの具現。今黒
衣の者が戦いを継続するというならば、彼女はそれに真っ向から受けてたち戦うだろうと
いうほどの気迫。
高鳴る彼女の鼓動が時計のように、今この瞬間も明日へ歩み行くということを、その腕に
抱かれる彼に告げる。


その響きが消えた後、暫く沈黙していた黒衣の者はぽつりと呟いた。

「・・・案ずるな。我が終飾歌句（カデンツァ）は、未だ奏でられぬ。」

放り捨てた仮面を被りなおし、破れた黒衣をその身に巻きつける。
そして。
光の中に、元救世主は背中から翼を生やし、広げた。光に朽ちながら尚も再生し続ける、
三対六枚の蝙蝠の翼。

六枚もあるが、体に比して明らかに小さい羽。しかしその翼に込められた力は、羽ばたく
ことすらなく黒衣の者の体を空へと浮かべた。

そして。

「穢れの果てに希望を見出せし少女よ。そして、闇の身をもってその希望を守りし男よ。
ならば明日へと抗い続けよ。お前たちの希望を、人々に刻み続けろ・・・明日すら断つ
やも知れぬ審判を、乗り越えるために。」

その身を焦がしながら、黒衣の者は暁の空へと飛び去った。

103 名前：イワン・アイザック ◆plPprIesTk ：04/12/12 14:32

黒衣の者ＶＳイワン・アイザック『「元」神の子と「元」神父』

>>102
〜epilogue〜

　溢れかえる人混みの喧噪に紛れる靴音。
　我先にと足早に客車に乗り込む人の群に逆らい、一人の神父が歩みを進める。

　こつり、こつり。

　活気溢れる、と形容するには人々の表情は聊か殺気立ち過ぎている様にも見える。
　出発を今や遅しと待つ汽車は苛立たしく白い蒸気を吐き出しながら乗客の波を飲み込み、
乗り倦ねた人間達は死骸に群がる蟻の様に窓枠や手摺に手を掛け、振り落とされまいと必
死に獅噛み付いている。

　フィラデルフィア。
　ニューヨークとワシントンを繋ぐ直線の丁度中間点に位置するこの都市からも逃げ去る
人波は絶えず、ワシントン行きの旅客列車は一等から三等、果ては貨物車に至るまで押し
潰されん程の人間を満載し絶え間ない抽送運動を繰り返している。

　こつり、こつり。

　対照的に人気の途絶えたニューヨーク行きホームに停止する汽車は窓から覗く人影もな
く、静まり返った中に蒸気機関の呻る音だけが低く流れている。
　大型のトランクを両手に提げた神父は乗降口のタラップをブーツの靴底で踏み締めると
目深に被った鍔の広い帽子の奥に光る目で周囲を一瞥し、そのまま客車へと乗り込む。

　出発を告げる汽笛がヒステリックに撒き散らされ、線路の上に長々と横たえていた車体
を一際大きく揺るがせると汽車は漸くのろのろとその鈍重な身体を動かし始める。
　居並ぶ座席は人の気配が消えた列車の中では一時その役目を忘れ、碑銘のない墓標の様
に沈黙を守り踞座している。
　その内の一つ、入り口に程近い座席に腰を下ろそうとし、

「そこ、座らないで。神父は嫌いだから」

嫌悪感にざらつくソプラノの声が投げ掛けられる。
　ふと首を巡らせた神父の目に、華奢な人影が映る。
　歳は十六前後だろうか、華奢と言っても神父のそれの様に骨の浮いた幽鬼の如き痩躯で
はなく、身に纏った黒い衣装の端から覗く腕や脚は年齢相応に少女らしい丸味を帯びてい
る。
　首元の辺りでざっくりと切り揃えられた髪と神父を憎げに見遣る瞳は、身に着けている
ものと同じく夜闇の黒で、肩口の辺りで引き千切られた様に消え失せている左の袖口から
覗く肌はワイオミングの銀嶺に積もる冠雪の様に白い。
　傍らには大きな蝙蝠傘を立て掛け、首からは弾痕の残る歪んだ腕木の銀の十字架が如何
にも重げにぶら下がっている。
　向かい合う二人用の座席の壁際、神父の立ち位置からは丁度死角に当たる部分に腰掛け
ながら、少女は腰のホルスターに手を掛け睨み付けている。
　そこから顔を覗かせているのはS&WM3スコフィールドのスマートなグリップとコルトSAA
のアーチを描くグリップ。
　大凡この年頃の少女が持つには護身用としても聊か武骨に過ぎる拳銃をしかも二挺、事
も無さ気に差しただけのものだが、グリップは抜き撃つのに適した角度でファストドロウ
に収められており、少なくとも威嚇目的のそれとは明らかに異なっている。

「……」

　神父はその姿を僅かばかりの時間考え込むように見据えると、視線を逸らせ少女が一角
を占める座席の丁度通路を挟んだ真向かい側、同じく窓際の風景を望む座席に腰を下ろす。
　その様子を傍目に見て取ると、少女の顔色が朱を引いた様に怒りに染まる。

「――ウザいっ！」

　立ち上がりざまにSAAを、体を捻る様に引き抜くと銃口を神父に向ける。
　銃爪に人差し指を掛けたまま親指は一杯にまで起こされた撃鉄の上、ほんの僅かでも親
指を滑らせれば撃鉄が落ち、発射された銃弾は痩せた神父の身体を穿ち、そして……。

　しかし、神父は一瞥もせず――とはいえ、窓から入る逆光で表情は窺えず、目許も帽子
の影に隠れて何処を向いているのかすらも判別しかねる状況ではあったが――独言ともつ
かぬ呟きを漏らす。

「……そうか。お前が……くく……」

　その声に、思わず銃爪から指を離す。
　無論、銃口は神父に向けられた侭だが、信じ難いものを見る様に目を瞠るその様子から
は、最早再び銃爪に指を掛けることはないだろう。
　乾いた陰鬱な声は低く、しかし耳にこびり付いて離れることはない。

　それは――絶望の叫びを上げて。
　上げ続けて。
　喉が破れる程に叫びを上げて。
　やがて枯れ果てた叫びの声。
　

104 名前：イワン・アイザック ◆plPprIesTk ：04/12/12 14:33

>>103続き

「……どうした？　俺を殺すのを……く、く……躊躇うのか……？」
「それって、お説教のつもり？　神父にしては随分らしくない科白だけど」

　皮肉のつもりが、言葉の端に非難めいた響きが混じる。

「……『らしくない』、か……確かに……俺はもう……神に仕える聖職者ではない……。
　咎人……神に背き……悪魔に魂を売ったのさ……くく、く……」

　逆光の中、吊り上げた口角が獣染みた笑みを見せる。

「……お前にも……見える筈だ……俺が何と……契約を交わしたのか……。
　……『その眼でなら』……」

　逆光が象る深い闇の中。
　鈍い光を放つ眼が少女を――少女の血の色を映す瞳を睨む。

「……近いな……俺もお前も……奴に惹かれているらしい……。
　そう……もう少しだ……“黒衣の者”よ……」

　じわりと。
　闇に滲み出す様な白貌が、永い艱苦を物語る鬚髯が、刻み込まれた皺の一筋一筋が、紛
然と融け込む漆黒の僧衣が。
　静謐とも見える表情は漣一つ立たず、瞑目した侭神父の影の中に佇む。

「狂血病とも違う……あなた、何者？」
「……言っただろう……“黒衣の者”の娘、キリエ……お前の眼に映る……これが答えだ
と……」
「――そう」

　撃鉄を安全位置に落とすとSAAを腰のホルスターに戻し、座席に着くと窓から外の景色を
眺める。
　腐り落ちる直前の果実さながらの太陽は既に大きく傾き、今にも地平線の巨大な顎に呑
み込まれようとしている。
　日没は目の前、これから夜闇が支配する時間。

「あいつを殺すのは、私だから」
「……奇遇だな……俺もだ」
「ウザいっ」
「……奴を……殺したら……」

　幽かに、キリエと呼ばれた黒衣の少女が肩を震わせる。

「その時は、次はアンタを殺してあげるわ」
「……そうか……」

　その会話を最後に、二人は夕景を目にしたまま押し黙る。


　皮膜質の翼手を持つ蝙蝠と覚しき巨大な生物が、群れなして鮮血を満たした夕空を泳ぐ。
　風に乗って仄かに漂う、血に似た匂い。

「着いたようね」
「……」

　17世紀、ニューネザーランド植民地として始まったこの地は、以来港湾都市として栄え
続け、多くの労働者、移民、ギャングと言った人種の犇めき合う混沌の街となった。
　――その筈であった。
　潮の香りに混じる饐えた鼻を突く匂い、その中に人の息遣いは既に無い。
　埠頭にある終着駅の程近く、肩を並べる建物にも点される灯りは見えない。
　そして、未だ汽車が制動を掛ける気配もない。

「……降りるぞ」

　駅構内に入っても依然速度を保ったまま、白煙を上げて列車が衝突する瞬間。
　神父はダイナマイトを手に。
　少女は傘を手に。

「……それとも……エスコートが必要か……姫君（プリンセーサ）？」
「――ウザいウザいウザいっ！」

　獄炎と爆風に揺るぐ車体から飛び出す、風を孕むコートを纏った長身の影と開いた傘を
手にした小さな影。
　ホームを転げ、勢いを殺し、漸く立ち上がったその場所こそ。

　“黒衣の者”の、新たに築き上げた居城。
　――死都・ニューヨーク。

105 名前：黒衣の者(M)：04/12/12 14:37

黒衣の者ＶＳイワン・アイザック『「元」神の子と「元」神父』

>>104
〜epilogue〜

紐育。活気溢れる新大陸の象徴的都市。

だが今そこは、死の城塞と成り果てていた。イーストリバーとハドソン川を掘に見立てて
マンハッタン島に、魔力でもって突如具現化した巨大な城が、町並みを押し潰して屹立し
ていた。

漆黒の城。その周囲に昼でも闇を撒き散らし、死徒の軍勢に守られた・・・新大陸最強最
悪、既に幾年も狂血の病を撒き散らし悲劇を生産し続けた、吸血鬼「黒衣の者」の要塞だ。
既にアメリカ政府はこの巨大な闇に対して対抗手段を持ちえず、また諸外国も人外の力を
恐れ介入を拒否。
黒衣の者の新大陸制覇を阻むものは潰え去ったかに見えた。
だが。

「・・・集っておるようだな。魂を試され、魂を磨き、ついにここに至った者達よ。」
城塞の最上階。窓の外から紐育の町を見下ろしながら、黒衣の者は呟いた。
既に住民は僅かに逃げることの出来た者を除けば総て喰屍鬼と成り果てたその中に、尚も
闇と戦う決意を持って集まった者達がいるのを、黒衣の者は見抜いた。
ソリア壊滅からほぼ一年、奈落堕ち＜フォールダウン＞失敗からも数ヶ月、黒衣の者が起
こした幾つもの事件、その戦いの嵐を生き延びてきた者達。

「今日で終わる。確実に何かが。今宵は決戦となろう。我は魂の消え滅ぶまで戦い、お前
たちもまたそうするだろう。そして決するのだ。人の魂の行く末を。」

そう言うと、黒衣の者は身を翻した。転じて、室内を見回す。底にはかつての奈落堕ちを
思わせる魔方陣・・・だが良く見れば、それが以前の魔法陣とはまるで形を異にするもの
であることが分かる。
そして同時に、かつてのそれより遥かに巨大であるということも。良く見れば魔方陣は床
だけではなく壁、天井、さらには部屋から溢れ出てこの巨大な城塞の総ての面を覆ってい
ることが分かる。
言うなればこの城は、一つの巨大な魔法の術式で構成されているといえた。

「・・・再臨の時は来た。」

かつてナザレのイエスと呼ばれた男は笑う。魔方陣の中心には、強大な霊的物体が封じら
れている。それは堕天使と呼称される存在。
それとこの巨大魔法術式を持って黒衣の者が狙うのは、奈落堕ち＜フォールダウン＞とは
正反対の現象。

天への扉を開く。
それが、黒衣の者が選んだ最後の手段。自分を元に創られた宗教の黙示録そのままに、高
位な霊的世界との扉を、その世界から堕ちてきた存在とこの城の術式とこの町の満ちる死
とここでこれより繰り広げられる戦いと・・・ここに集う総てを、触媒としてこじ開ける
のだ。
だが無論そこに待つのは救いではない。かつて言ったように、それはあくまで神などでは
なく、神と信仰されることもある、特定の方向性を持つ力でしかないのだから。

起きるのはその力による、それに適応できないものの抹殺だけだ。だが、それはある意味
では正に最後の審判でもあるのだ。少なくとも一つの「生き残る形」のみが地上に存在す
ることとなるだろうから。それを「彼等が最後の審判に選ばれた正しき民」と言うことも
不可能ではない。

「ブルー。兵力は集っておるな。」
黒衣の者は傍らに立つ己の死徒に問うた。アメリカ陸軍の制服を着た、禿頭で眉の無い白
人壮年男性。その目は吸血鬼化しているはずなのに恐ろしいほど深く、そして混沌とした
青。
合衆国陸軍を強化する政策に乗じ己が洗脳同然の手法で徹底的な戦闘機械として鍛え上げ
た一団を持って事実上米軍を掌握した怪人物、ブルー将軍と呼ばれた男だ。その思考の波
長の類似からか望んで黒衣の者の元にはせ参じ、その肉と血を受けた。

「は。我が青の猟兵団、ＧＢＷ（ガンブレイズウェスト）襲撃のときに捕らえた西部有数
のガンスリンガーたち、いすれも貴方の肉を受け血を受け今や遅しと貴方様の命令を待っ
ています。ご命令とあれば何時でも、紐育駅に集いし者どもの攻撃にあたることが出来ま
すが？」
「・・・しばし、待て。」
「は。」

ブルーの言葉を制止すると、黒衣の者は再び窓辺へと歩を進めた。
真紅の目が月のごとく大地を見下ろす。

「未だ主役が来ぬからな。」

血を分けた我が娘。最初の希望。夜闇の聖女キリエ。人の魂を映す鏡たる娘よ。来るがい
い。
お前の積み上げた輝きと悲劇、今宵こそ結論を出させてもらおう。

そして次なる形よ、来るがいい。お前を呼ぶために・・・わざわざこの術式の中心に、お
前の仇敵、堕天使テモザーレを使用したのだからな。
イワン＝アイザックよ。



そして、紐育駅近郊。

「・・・」
吸血鬼に支配されたこの町だが、駅付近には逆に黒山の人だかりが出来ていた。
もはや対抗策を失った政府に変わり、自ら死城を落とし黒衣の者を倒そうと集ったものた
ち。
英国ヘルシング機関から派遣されたミナ＝ハーカー率いる部隊、崩壊したソリア修道会に
代わるかたちで設立されたばかりのマグダラ修道会の部隊などの他に、目立つのはそれぞ
れの理由と宿命に導かれここに集ったものたちだ。

「・・・？いない、のかな・・・」
そんな中を、一人人探しをするように歩いているものが居る。盛んに周囲を見回しては、
群衆の中からある一人を探し出そうとしていた。

小柄で短い黒髪の少年と、やはり小柄な黒髪の・・・こちらは珍しくも日本人の血が混じ
る思しき少女、そしてやや長身でカウボーイが使うような投げ縄を持った少年の三人組は
黒衣の者による西の果ての秘密「ガンブレイズウェスト」襲撃事件によって黒衣の者を追
うこととなったガンスリンガーたち。

その向こうに居るチャイニーズらしき少女と若い温厚そうな神父、大型ライフルを背負い
全身に様々な銃を装備した長身の女と大きな黒目が印象的なインディアンの少女。
チャイニーズとインディアンの少女たちが持っている奇怪なデザインの銃で、魔法じみた
効果を持つ特殊な銃を武器とする「エトガン使いのミンチャオ」とその仲間達であると知
れる。

人波から頭を突き出すような長身の、真っ白い髪のインディアン、対照的に小柄でそして
自分の身長すら上回る長い火縄式の狙撃銃を持った日本人と無精ひげの巡回牧師に色っぽ
い白人女性に、片目を眼帯で覆った髭の老人などで構成されているこれまた目立つ一団は、
黒衣の者に協力し合衆国を裏切ったブルー将軍に一族を虐殺され仇と追い続けるウィシャ
族最後の生き残り、名を捨てただ血の色の「ＲＥＤ」を名乗るインディアンとその仲間達
だ。

だが、彼女の探すものは居ない。
彼女。そう、こんな地獄の直ぐ傍で、人探しをしているのは女性だった。


少女と大人の女の中間、といった年齢。革に部分部分鉄板で装甲を施した服とコートでが
っちり覆われているが、その体は些か性急無謀ながらも、一から実戦で付けたと思しき筋
肉で引き締まっているのが足運びなどからも見て取れる。
鍔広の帽子から溢れる金褐色の髪、グレイ・グリーンの瞳。戦場をくぐり血や泥で幾度も
汚れた顔は、しかしそれによって磨き上げられ清められたように凛然としている。
そう、今は人探しをしてはいるが、彼女もまた戦うためにここへとやってきた。
実際、彼女は相当の武装をしている。手を覆う手袋には指先に吸血鬼のそれを模した鉄の
鉤爪がつけられ、手の甲には火薬の爆発で勢い良く突き出される仕掛けの銀の杭が一本づ
つ。銀の杭の仕掛けはブーツの踵にも仕込まれていて、こちらは恐らく蹴り技を使った時
に同時に作動するものと思われる。飛び道具としては腰に、まるで東洋の侍が刀を帯びる
ようにベルトに差し込まれた大口径ライフル。いざとなれば其れは拳銃の抜き打ちよりも
早く、剣術の居合い抜きの型で抜き撃たれる。
どの装備もこけ脅しではなく、実戦で使い慣れ使い込まれた代物であると、ここに集うほ
どの戦士には一目で分かった。

「おうっ。あんたも人探しみたいだけど、こっちもなんだが、このあたりで小柄で黒髪色
白、片袖のもげた黒い服を着た、１６歳くらいの女の子見なかった？ライフル銃を仕込ん
だ蝙蝠傘をいつも持ってるんだけどさ。知らないかな？「居合い撃ちの遊女」パメラ＝マ
ドゥンさん。」
と、声をかけてくるものがいた。女ばかりで三人組という、特徴的な面々の揃った中でも
少々異色のグループ。
話しかけてきたのは、米陸軍の軍服を着た小さな円眼鏡と尻尾のような三つ網、大きな目
とにやりと浮かべた笑顔でどこかラクーン（あらいぐま）を思わせる顔立ちの女性。
良く見ると右腕は金属製の義手で、なにかの武器が折り畳んであると見える。
後ろで様子を伺っている二人は、一人はやや長身で尼僧服の上に大きなマントを身に纏っ
ている。マントの裏には大量の注射器と薬物とダイナマイト。もう一人は小柄で、腰まで
の短いマント、体をピタリと覆う太腿を露出させる軽装の装束で、手のグローブに打撃で
作動し電撃を打ち込む装置をつけている。ブーツにも仕組みは違うが似たような装置を装
備し、戦闘では其れを使った格闘戦を得意とするのだろう。

あまり好みではない、得意技と昔の職業からとられた、戦いの中でいつしか呼ばれるよう
になった二つ名に女・・・パメラは眉をひそめる。
あの黒衣の者とイワン＝アイザックの戦いに巻き込まれたあと、彼女は人間に戻ったにも
関わらず進んで吸血鬼と戦う道を選んだ。
それまで日々体を売りただ生きるだけだった暮らしと違う。魂と命を賭け誰かを守る・・
・その生き方を彼女は欲したのだ。
そしてヴェドゴニアだったときに積んだ戦闘経験がものをいい、彼女はあの戦いから僅か
数ヶ月で名うてのヴァンパイアハンターとなっていた。

「いえ・・・見ていないわ。黒衣の者の娘キリエのことは。貴方達は、イワン＝アイザッ
ク・・・痩せぎすで頬がこけて目の落ち窪んだ、ダイナマイトとかソウドオフショットガ
ンとか装備した神父姿の人、見なかった？ソリアと米軍葬兵部隊の人。」

答えつつ同時に、三人に問いを返すパメラ。彼女達のことはパメラも聞き及んでいた。
ソリア壊滅事件の生き残り、眼鏡をかけているのが当時ソリアを包囲したアメリカ合衆国
陸軍の対吸血鬼部隊、第一葬兵連隊を率いたラーラマリア＝クリストフォロス少佐・・・
現在は軍を辞め独自に黒衣の者と・・・戦いの最中複雑な関係を結んだ黒衣の者の娘にし
て人を救うために父の命を狙うダンピィルの少女キリエを追っているという。
長身重装備のシスターと小柄で軽装備の少女はそれぞれ「薬読」のアンナロッテと「閃姫」
のサンラミカエラ、元ソリア七会士。

「俺っちらのこと知ってたのか。けど生憎そのイワン＝アイザックって奴は見てねえぜ。
アンタと一緒に黒衣の者と戦ったってのは聞いてるけど・・・」
「しかし、これだけ探しても居ないとなるとこれはキリエもイワンも恐らくまだ来ていな
い・・・？」
パメラの問いに答えるサンタミカエラと、情報を総合し首を捻るアンナロッテ。
共に黒衣の者に深い縁と敵意を持つ二人だ。このアメリカの否世界の命運がかかった最終
決戦に、来ぬわけがないのだが。
「だとすると、次の最終便の列車で来ることになりそうだな。」
と、ラーラマリアが呟く。
「・・・二人とも？」
ぼそり、パメラは呟いた。キリエと会った事は無い。だがイワン＝アイザックの性格は知
っている。少々どころではなく気難しく、自己を否定して他者を寄せ付けようとしない。
何か問題が起こらなければいいのだが。
「まずいかも。いや、キリエは断じて悪い奴じゃないんだけど、『私に関わった人は皆死
んでいくわ。新で欲しくない人とは友達になりたくない』って、えらくつんけんしてるか
ら・・・」
ラーラマリアの口から呟きが漏れる。最悪なことにキリエも似たような性格らしい。
そんな彼女の様子を思い出したのかアンナロッテは頭を抱えている。
「おいおい・・・黒衣の者と戦う前に喧嘩で共倒れなんてなったら最悪だぜ？笑うに笑え
ねぇ。」
ぼやくサンタミカエラ。
だがパメラは、ふっと笑ってそれを否定した。
「大丈夫、大丈夫だよ。けんかにはなってるかもしれないけど、そんな酷いことになるは
ずない。」
確信を持って言う彼女の言葉に、自然聞き入る三人。
そしてパメラは、彼女が信じる根拠を口にした。
「だってどっちにしても、傷つけたくないから遠ざける、という優しさがあるわけだし、
そもそもそんな駄目な人たちだったら、こうして私達がついていこうとしているわけがな
いでしょう？」
「っ・・はは、そうだな。」
パメラの真摯な瞳と言葉に、会心の笑みを浮かべるラーラマリア。
そして。
軋み、汽笛、鉄路が響く。

「来た・・・」
パメラは、呟いた。

「来たか。」
同時、城の最上階、黒衣の者が笑う。

遂に、最後の列車が到着。操り手を持たぬそれは全力疾走のまま駅に突っ込み、爆発。
たった二人の乗客、夜闇の聖女と、そして影の神父が、その中から姿を現した。

人と。

魔と。

その両者の、狭間の者達と。

その総ての未来を賭けた決戦が、幕を開けようとしていた。


・・・とりあえず。
車内で既に口論していたらしく列車から飛び降りるとき挑発的にエスコートしようとした
イワンにキリエらしき少女が食って掛かってるのを何とかしてからだな、とパメラは思う。
思ったならば行動だ。見ればキリエを追う三人も、走り出している。
そして。

「・・・・イワンッ！！」
「キリエッ！！」

人の子らの声が、響いた。

106 名前：黒衣の者(M)：04/12/12 14:39

>>105
黒衣の者ＶＳイワン・アイザック『「元」神の子と「元」神父』

・・・これにて終幕。

107 名前：黒衣の者(M)：04/12/12 14:45

黒衣の者ＶＳイワン・アイザック『「元」神の子と「元」神父』
レス番纏め。

>75>76>77>78>79>80>81>82>83>84>85>86>87>88>89>90>91
>92>93>94>95>96>97>98>99>100>101>102>103>104>105>106

つまり、

http://www.appletea.to/~charaneta/test/read.cgi/ikkoku/1099185710/75-106

こういうことだ。
最後に若干の不手際があったが、読んでくれれば嬉しい。

塵は塵へ、灰は灰へ、人は明日へ・・・
そして感想は、感想スレへ。

ttp://www.tpot2.com/~vampirkrieg/bbs/test/read.cgi/vampire/1053814090/

108 名前：ジプシー・チャン ◆twinsTLaE6 ：04/12/14 22:17

ヘレンｖｓビリー　『牙妓遊戯』

　〈ケイオス・ヘキサ〉Ｄ層、五〇五番街。立ち並ぶ高層建築物の隙間、一見すると何の
凹みかと見紛うほどに貧相で小さなビル。それが雑居式集合ビル"ジェニスンビル"だ。
　一階の入り口には、最低限のセキュリティ―――自動ドアすら備えられておらず、まさ
に千客万来を謳うジェニスン氏が管理するには相応しいビルと言えた。
　入り口の横には、無骨で不用心なこのビルらしからぬ、品の無いネオンの看板が。

『ＷＩＬＬＩＡＭ　ＬＯＮＧ　ＤＥＴＥＣＴＩＶＥ　ＡＧＥＮＣＹ』

　そう、金文字で記されている。
　文字の下には、七色に光彩を変える電話番号。外周には二匹の龍が、威勢良くぐるぐる
と駆け回っている。下手をすれば風俗店の看板と見紛うほどにけばけばしい。
　看板から突き出た赤い矢印が、事務所の在処を示している。地下一階、か。

　一組の男女が、看板を前にして突っ立っていた。
　一人は黒色に輝くチャイナドレスをまとった女性―――と言うには、やや少女の面影を
残したレディ。際どい位置まで伸びたスリットが印象的だ。胸の前で腕を組み、じっと看
板を見入っている。
　一人はブラックスーツの上に、更に昏い長杉を羽織った一見伊達男風な青年。が、如何
にも女を悩ませそうなその甘いマスクは、何処か優しげな色を帯びている。

　二人には共通する事項が多くあった。
　一つ、二人はアジア人であると言う事。人種の坩堝と化している此処Ｄ層ではアジア系
の人間は決して珍しくはないが、チャイナドレスや長杉などを着込み、自らその事をアピ
ールする人間は少ない。
　一つ、二人は本来なら誇るべき美貌を隠すかのように、黒塗りのサングラスをかけ、視
線を隠している。
　一つ、七色の光を浴びる二人の肌は、アジア人種にはしては異様なほどに白く、血色の
流れを疑わせるほどである。

　ブラック・マフィアを気取った出で立ちがまるで不似合いなアジア人二人。
　真っ当に生きてる人間ならば誰もがこう、感想を抱くだろう。
　怪しい。

　だが幸いと時間帯は夕飯時、しかも場所が高層ビル群に囲われるように位置しているた
めか、二人に奇異な視線を向けるような人はいない。
　それに自信を付けたのかどうなのか、男と女は覚悟を決めたように頷き合うと、うちは
なしのコンクリートの門を抜け、地下へと降りた。
　彼等以上に怪しい探偵事務所が待ち受ける、地下へと。




　ジェニスンビルの屋上。どうやって辿り着いたのか、ビルで最も高い位置―――貯水タ
ンクの上から地上を見下ろしていたラフスタイルの少女も、二人の動きを確認すると、退
屈そうに一度欠伸をし、行動を開始した。

109 名前：ビリー・龍 ◆OClOnGFAng ：04/12/14 22:18

>>108 ヘレンｖｓビリー　「牙妓遊戯」

「ふぁ…………」
　欠伸が漏れる。退屈は眠気を誘うもので、
　始終退屈との戦いが繰り広げられるこの事務所の中で欠伸は珍しいものじゃないが、
　客が来てるってのに、それもノックの音が響いている最中に出なくてもよさそうなものだ。
　誰かの欠伸がうつったのに違いない。

　俺は机の上にぶん投げていた両足を地面に下ろすと、
　ちらと部屋に目をやって、許容以上に散らかっていないのを確認し、表に声をかけた。

「どうぞ、開いてるぜ？」
　依頼人かと思うのは早計で、期待したときに限って仕事とは関係の無い
　来客であるのが常だったが、今日に限っては誰でも良かった。
　退屈をしのげれば、このさい宗教の勧誘だろうが借金の取立てだろうが、
　はたまた押し込み強盗だろうが誰でもいい。
　俺は一応、この事務所の主然とした顔を作って来客の入室を待った。

110 名前：ジプシー・チャン ◆twinsTLaE6 ：04/12/14 22:19

ヘレンｖｓビリー　『牙妓遊戯』
>>109

「どうぞ」と言われたので、女は遠慮無くノブを捻った。ドアを開ければ、視界一杯に広
がる事務所の内装。猥雑で雑多だ―――そう感想を抱いて、女は顔を僅かに顰めた。
　男は逆に、一つ一つが個性を放つ調度品を満足そうに視線で舐め回す。あまつさえ「良
い趣味だ……」などと声を漏らしたので、女は裏拳で男を制した。うっ、と呻き、男は慌
てて身なりを正す。

　事務所の主らしき男が、いた。デスクの奥で、革張りに椅子に腰掛けている。彼女等と
同じく、東洋系の顔立ちだ。
　女は勧められてもいないのに、デスクの向かいにある応接用のソファに腰を落とすと、
「あー……ウィリアム・ロン？」
　と分かり切った質問を投げかけた。主は当然と頷く。女は自分の名はジプシーだと名乗り
返した。後ろの男はカザフと言う名らしい。
　女―――ジプシーは自己紹介を終えると、早々と本題を持ち出す。交渉役は彼女だ。
　カザフは、彼女の後ろで静かに佇んでいる。

「まず先に謝っておくけど、ビジネスの話じゃないわ」

　ミスター・ドラゴンは気にしないのか、構わず話の先を促す。

「正直に言うと、いまのあなたは無害……人並みの生活を送り、人並みに稼ぎ、人並みに
面白おかしく生きている。人間じゃないから、とか。ケダモノだから、とか。女の敵だか
ら、とか。私達はそういう理由であなたの今の生活を否定はしないわ」

　話が見えたのか見えないのか、ロン氏の表情が僅かに歪む。それは喜悦とも、逆に苦悩
とも見て取れた。

「ただ……」

　ジプシーは言いながら、自らの視線を隠すサングラスにそっと指をかけ、外した。
　人工の光に晒されたジプシーの瞳。奥で燻る炎が、蒼色に爛と燃え上がる。

「あなたの過去の業。あなたが振りまいた現在の災厄。―――ぜったいに見逃せない」

　まずカザフが動いた。かつんと踵を鳴らし、床にぴたりと足をつける。彼のバーバリー
の革靴から、闇が漏れた。王家の血を連ねるヴァンパイア・カザフの"侵食"だ。
　アラビアン・テイストの絨毯が敷かれた床に、じわじわと蠢く夜が広がる。

「私は"反吸血鬼同盟"のジプシー・チャン。公安局の依頼内容に沿い、あなたを捕縛するわ。
大人しく公安局に出頭すると言うのなら、手錠は緩くしてあげる。それとも―――」

　そこで、すっとジプシーも立ち上がった。
　カザフの"夜"は、既に彼女の足下まで及んでいる。

「―――同族二人を相手にして、戦ってみせる？」

111 名前：ビリー・龍 ◆OClOnGFAng ：04/12/14 22:20

>>110 ヘレンｖｓビリー　「牙妓遊戯」

　俺の顔は皮肉笑いの形に引きつった。
　この手の輩との対話や交渉は、無意味で不毛で無謀だ。そもそも、
　公安に出頭するかここで死ぬかという問いに、意味などありゃしない。

「死に場所は選ばせてやるってか？　たいした親切だな」

――前衛は、女か。男はサポート。
　ポジションの取り方でそう判断する。なら、作戦も決まってこようというものだ。
　俺は今にも襲い掛かってきそうな彼らをいなすように、軽くかぶりを振った。

「あいにくだが、俺は自分の死に場所は自分で決めることにしている。
　あんたらみたいな若造に、それをどうこう言われる筋合いは無いね」

　目の前の女の顔に、敵意か、怒りか、戦闘への興奮か、
　そのいずれともわからぬ感情がちらと、滲み出た。

　瞬間、俺は机の上のガラス製の灰皿を、後方の男の顔面を狙って投げていた。
　自身のほうはその結果など見もせず、転がしてあった銃をひっつかんで床に身を投げている。

――確かに、退屈しのぎにゃ最高だ。
　命の危険があるとくれば、怠け者でも走り出すってわけだ。

112 名前：プリンス・カザフ ◆twinsTLaE6 ：04/12/14 22:20

ヘレンｖｓビリー　『牙妓遊戯』
>>111

　カザフは今回の仕事について、乗り気ではなかった。
　獲物があのロング・ファングだと聞いて。その優男面を引きつらせもしたものだ。

　ジプシーは分かっていない。彼はただの大物な吸血鬼ではない。人間社会における彼の
"有用性"をカザフは十分に心得ているつもりだった。
　個人的には、敬意を覚えてさえいた。詳しい経歴などは一切が闇に伏せられているロング
・ファングだが、彼が人間に必要以上に接触している事は過去の様々な事件を知れば分かる。
ロング・ファングは人間をたいそう気に入り、そして興味を抱いているのだ。だから人間
社会に溶け込んだりもする。
　人間は面白い―――その点に於いて、カザフは理解を示しているつもりだ。
　そして、王家の血を連なるものとしてのマナー ―――吸血衝動の抑制を身につけてる彼
と違い、"吸わずにはいられない"ロング・ファングの悲哀も。

　ただ、同様に一つ、気に入らない事もあった。
　それは長く行き過ぎた代償か。
　彼の生き様とは"退屈しのぎ"。
　暇だから吸血鬼禍を起こし、面白そうだからと人間側の味方をする。
　彼の"暇つぶし"で一体何千何万の人間やヴァンパイアが死んだのか。
　そう言う目で見れば確かに、彼は悪である。

「うるさい！　だったら人間社会から消えればいいのよ！」

　ジプシーが吠えた。
　勝手な理屈だ、とロンの言い分を少なからず理解できるカザフは頭を痛める。
　カザフはポーランドの今は無き吸血王家の最後の一人だ。当然、"タイプ・スクウェア"
ロング・ファングの話も、聞き知っている。

　ジプシーはそんな軟弱とも言える思いを巡らすお坊ちゃん吸血鬼など、微塵にも構わず
しゅあ、と牙を剥いた。蒼色の瞳孔が広がり、瞳を染める。
　カザフの感傷を強制的に打ち切るように、投げ付けられる灰皿。カザフは難なく手で払
い割った。蛍光灯の光を浴びて、輝くクリスタルの欠片の向こうには―――銃口が。
　まずい、とカザフは身構える。おそらく銃弾は魔法鋼のフルメタルジャケット弾。一発で
も胸に撃ち込まれたら、瞬く間に燃え尽きてしまう代物だ。
　警戒するカザフとは逆に、戦い慣れているジプシーは前に出た。彼女特有の猿に似た機敏
な動きで応接テーブルを蹴り上げ、同時に彼女も飛び上がり―――後ろ回し蹴りで、床に身
を投げるロンに木製のテーブルを叩き落とした。

113 名前：ビリー・龍 ◆OClOnGFAng ：04/12/14 22:22

>>112 ヘレンｖｓビリー　「牙妓遊戯」

　俺は蹴り落とされたテーブルを転がって避けた。
　転がりながら乱射――前に出ようとする女にばらまいて牽制し、
　それに紛れさせてその背後の壁を――部屋の配線を狙った。
　壁面が吹き飛び、小さなショートの音とともに部屋の明かりが落ちる。
　その隙に倉庫（になっている部屋）の入り口にたどり着いた俺は、
　棚からグレネードをひっつかむと、ピンを抜いて背後の床に転がした。

　もとより闇で彼らを出し抜けるとは思っていない。
　だがこいつなら――対吸血鬼仕様のＵＶフラッシュグレネードなら多少は時間が稼げるはずだ。
　俺は倉庫に仕掛けられているブービー・トラップを片っ端から起動させながら走り抜け、
　手近な武器を引っつかむと、倉庫の奥の抜け道へと向かう。

　抜け道をくぐる前に、俺は一瞬だけ、一発だけ弾丸の残った拳銃とともに振り返った。
　無理に連中が突破してくれば、この瞬間に倉庫の入り口に顔を見せる、そんなタイミングだ。

――そこまで無謀ではなかったらしい、俺は0.5秒だけ保持した射撃姿勢をといた。
　踵を返す。すでに脳裏は、外に出てからの逃走経路のことに切り替わっていた。

114 名前：ジプシー・チャン ◆twinsTLaE6 ：04/12/14 22:24

ヘレンｖｓビリー　『牙妓遊戯』
>>113

　立て続けに撃ち放たれたマグナム弾は、ジプシーの着地のタイミングに合わされていた。
　不意を打たれた彼女はどうにか二発を避け、残りは固めた拳で叩き落とす。
　だが、いくらジプシーの拳が鋼にも勝るとはいえ、さすがに五十口径の威力を殺すのは困難。
衝撃をもろに受け、ソファに背中からひっくり返る。更に、かわした弾丸は部屋の配線を
穿ち、辺りを闇へと変えた。
　ジプシーが高い声で罵声を上げ、カザフはロンの滑らかな動きに感嘆を覚えた。

　―――が、そうやすやすと逃がすワケにはいかない。

　明かりが落ちた部屋。ジプシーに代わりカザフが前に出る。ソファを飛び越え、隣室に
落ち延びようとするロンの背中に貫手の構えで殺到する。
　瞬間、床が燃え上がった―――いや、そう錯覚するほどの光の奔流が床から沸き上がっ
たのだ。例えるなら、極小サイズの太陽が、部屋に突然現れたような。
　光は瞬く間に二人を飲み込み、部屋の七割を支配していたカザフの闇を焼き払った。

　やられた―――焼け爛れる全身の皮膚を瞬時に再生させながらカザフは呻いた。ジプシー
に至っては瞳を灼かれ、苦悶に鳴いている。ロンの姿はもう見えない。隣室からも気配は
感じ取れなかった。まんまと逃げおおせられたワケだ。
　いまから強行軍で追えば追いつけるかもしれないが―――この調子だと、またトラップ
に嵌められ、巧み逃げられるのがオチだろう。
　格が―――違った。
　カザフはやれやれ、と嘆息する。正面からの消耗戦ならば、こちらにも分があったはず
なのだが―――どうやらロードクラスのヴァンパイアの狡猾さを、侮りすぎていたようだ。

「他媽的！（あいつ！）　干了好事！（やりやがったわね！）　不会便宜！（許さないから！）」

　どうにか再生を終えたジプシーが飛び起きた。その顔面には般若が宿っている。まさに
オウガの怒りだ。カザフが落ち着け、と手で制する。

「超高層ビル群で囲まれている此処ら一帯なら、逃亡ルートも限られてくる。ヘレンなら
追い詰めてくれるさ」
　長杉の裏地に縫い付けられた無線機を口元に寄せ、カザフは言葉を続けた。
「聞いてるかヘレン？　そう言う事だ」
『―――明白了』
　ざざ、とノイズに紛れて若い女の声で、返事が聞こえた。

115 名前：ヘレン ◆twinsTLaE6 ：04/12/14 22:25

ヘレンｖｓビリー　『牙妓遊戯』
>>114

　ヘレンは思う。常に思う。自分は尽くす女だ、と。自分の愛は重く、決して寛大ではない。
週に二度は会ってもらわねば拗ねるし、月に一度はどこかへ連れて行ってくれないと退屈を
覚える。日に一度は電話をかけ、メールは最低三時間に一往復。もちろん浮気は決して許さ
ない。愛してると耳元で囁かれるのは、何時だって大歓迎だ。
　自分は想われている。自分は愛されている。その確認ができないと、安心できないのだ。
　そんな彼女と付き合う条件はただ一つ、至極簡単。自分が嫌うまで自分のことを好きで
居続けること。

　大抵の男は、初めはその愛の条件を"守る"と言う。守れて当然と豪語する。
　ヘレンはヘレンでその気になって、彼のために鼻歌交じりでお弁当を作ったり、デート
コースを練ったりして胸を躍らせる。
　が、数ヶ月数年経ち、ヘレンの愛が一向に醒めないコトに気付くと、男は決まってこう言う。

「キミの、愛は、重すぎる」

　そして、それを言い訳にして約束を破り、裏切り、捨てるのだ。

　自分は、そんな難しいコトを言ってはいない、とヘレンは確信を持っている。
　世の女の子はみな、自分と同じ願望を抱いているはずだ。
　そこいらの女の子と自分で、一体どれほどの差があると言うのか。

　学生を辞め、ヴァンパイア・スレイヤーの仕事に就いてからも、そんな彼女の法則が終
わることは無かった。
　ヘレンの新しい恋人は、吸血鬼の王子様。ポーランドのプリンス・カザフは、かなり常
識知らずなところがあるし、間抜けでひ弱でその上顔色が悪く時代遅れなファンギーファ
ッションだけれど、とてもハンサムだし、優しいし、純粋だ。そしてヘレンのコトをとて
も想ってくれている。だから付き合った。
　なのに、なのに、なのに―――。

　義姉のジプシーとカザフとヘレン。三人でヴァンパイア・スレイヤー稼業を始めた途端、
カザフは義姉とともに仕事一筋の吸血鬼に代わってしまった。
　自分を、あまり構ってくれなくなった。

　つまらない。

　現に今だって、自分を置き去りにして、ジプシーと二人でお楽しみの真っ最中。
　これは、浮気とは断じても良いのではなかろうか。
　ヘレンは無線機から届く恋人の声に、
「明白了」
　と素っ気なく言葉を返した。

116 名前：ヘレン ◆twinsTLaE6 ：04/12/14 22:25

ヘレンｖｓビリー　『牙妓遊戯』
>>115

　ジェニスンビルの地下駐車場。エレベーター脇の非常階段―――ではなく、整備用の埃
にまみれた簡易通路のドアが、ゆっくりと開いた。中から人影現れる。
　やっぱり、こっちに来たわね、とヘレンはＢＭＷの車体に隠れながら、確認し、頷いた。

　ヘレンが、カザフと一緒に強襲役の任に回されず、こんな寂しいところで一人逃亡ルート
を先読みしての待ち伏せをやらされているのは、偏にジプシーの意地悪が原因だ。
　彼女曰く、ヘレンは吸血鬼連中には顔が売れすぎているから、らしい。

　確かに、王家の血を持つヴァンパイア・カザフや、王家の最秘宝である"昼と夜の書"の
八割を飲み込み強大な力を手にしたハーフヴァンパイア・ジプシーより、真っ当な人間で
あるはずのヘレンのほうが、"何故か"名前は売れている。
　人外の力を手にし、夜を縦横無尽に跋扈する吸血鬼共を、兄貴仕込みのカンフーによる、
得意のマーシャルアーツで片っ端から殴り蹴り倒している様からついた彼女の通り名は、
"My Sassy Girl（猟奇的な彼女）"。学生時代に男達からも似たような名前で呼ばれてい
たと言う過去もあり、ヘレンにしてみれば不名誉極まりない通り名だった。

　そんな彼女だから、ジプシーは相手を警戒させないために裏に回れ、と言った。
　けど、ジプシーにしても結局は出会い様に襲いかかっているんだから、警戒も何も無い
じゃない―――ヘレンは胸中で悪態を吐いた。

　かつかつかつ、とコンクリートの床を叩く靴音が、次第に近づいてくる。
　あまり焦りは感じられない。どうやら義姉達は、良いようにあしらわれたようだ。
　情けない限りね。嘆息してから、すくり、と立ち上がった。
　カーキー色の迷彩柄がプリントされたカーゴパンツに、つま先に鉄板を仕込んだジャン
グルブーツを吐きこなし、上着は二匹の昇龍が金糸で刺繍されたチャイナブラウス。その
上にノースリーブのアーミージャケットを羽織るヘレンの姿が、淡い電灯の光に照らされた。
ジャケットに縫い付けられた無数の鞘状のポケットには、日本の苦無に似た"ヒョウ"が、
隙間なく差し込まれている。

　ＢＭＷのボンネットに腰掛け、出来るだけ優雅を装って足を組み、

「はぁい、ニイハオ」

　とターゲットの背中に、快活な声を投げかけた。

117 名前：ビリー・龍 ◆OClOnGFAng ：04/12/14 22:29

>>116 ヘレンｖｓビリー　「牙妓遊戯」

「ニイハオ。景気はどうだい？」
　俺は反射的にそう返した。銃を振り向けながらだ。

　若い女が車両に腰掛けていた。小娘と言っていい若さだ。
　面識は無論無かったが、その容貌は俺の記憶を刺激するものがあった。

「……あんたの名前、聞いたことがあるぜ。
　デコテス公爵を手始めに、出会う吸血鬼をその鉄拳でばったばったとなぎ倒し、
　ついた渾名が『My Sassy Girl（猟奇的な彼女）』。
　表の二人はあんたの連れかい？」

　皮肉笑いが口元に浮かんだ。
　己の首を狙っているにしては、目の前の相手に緊張感が足らなかったからかもしれなかった。

118 名前：ヘレン ◆twinsTLaE6 ：04/12/14 22:30

ヘレンｖｓビリー　『牙妓遊戯』
>>117

　あら、とヘレンは意外そうに驚く。"キャプテン・ドレイク"第三期を観て育った彼女は、
ロングファングと言えば悪の代名詞であり、ファッションは典型的なオールドスタイル。
高笑いと問答無用なカリスマがアイデンティティのはずだが……。
　目の前にいる"ホンモノ"は、彼女がかつて毎週欠かさず見ていたブラウン管の中の
ロングファングとは大分違った。愛嬌のある笑みに、ジーンズと軍用のレッドジャケット。
イメージよりも遙かにイカしている。
　カザフと同じ―――こいつも変わり種だ、とヘレンは直感的に悟った。

　が、しかし。向けられた銃口が気に入らない。
　Ｒ＆Ｖ社製エンチャント・マグナム五十口径モデル。ロングファングの天敵、キャプテン・
ドレイクのシンボルウェポンだ。なんで、宿敵の武器を誇らしげに振り回しているのよ、
とヘレンは眉を顰めた。そして、それ以前にまず真っ先に銃を向けられたのが苛ついた。

　女の子を前にして、一番初めにする行為が威嚇だなんて。

「……その名前、わたしはあんま好きじゃないんだけど。そう、多分あなたの言う二人は
わたしの友達よ。そして、わたしもあなたの事を知っているわ、ロング・ファング」

　たん、と車体を蹴り、軽やかに地面に立つ。
　短く刈った茶髪に、アクセントとして染め抜かれた赤色のメッシュが風に流れた。

「残念だけどわたし、ドレイクのファンなの。もちろん、ナイトウォーカー少佐も大好き。
子供の頃はあの人のお嫁さんになるのが夢で―――今は彼のようになるのが夢」

　だん、と音をたてて地面を踏みしめた。
　背筋を伸ばし、右手を目線にまで持ち上げる。彼女らしい、凛とした構えだ。
　ヘレンの拳法の基本は北派少林寺の華拳だが、自己流にかなりアレンジが成されている。
　対吸血鬼戦仕様とも言えるヘレンのカンフーがいま炸裂せんと牙を剥いたのだ。

「だからロング・ファング―――あなたの事は、昔からだいっっっっきらいなの」

　若さに満ちた、愛らしい顔を精一杯憎々しげに歪め、言い放った直後、ヘレンの身体は
宙に躍っていた。所謂バック宙と言う奴か。すたり、と車のボンネットに足をつけ、車体
のサスペンスの反動を活かして更に跳んだ。ロンに目掛けて――― 一直線に。
　手には、シルバーコーティングされたヒョウが握られている。狙いは彼が構える五十口
径の銃口。ヘレンにしても、まず何よりの脅威はロンが握るマグナム拳銃だった。

119 名前：ビリー・龍 ◆OClOnGFAng ：04/12/14 22:30

>>118 ヘレンｖｓビリー　「牙妓遊戯」

「……そりゃ結構」
　俺は思わず、その二人が同一人物であることを手始めに
　ブラッドジャケットの内幕を思い切りぶちまけたい衝動に駆られた。
　まったく……かつての己の名前を好きだ嫌いだあげくはお嫁さんだそうだ。
　調子が狂うったりゃありゃしない。
　軽くこめかみを押さえて己のペースを取り戻そうとする。

　こんな茶番はさっさと切り上げるべきだった。
　銃で威嚇して押さえていられるならそのまま逃げちまえば……
　バカなことを考えてる間に相手はあっさりボンネットを滑り降りた。

　そのまま宙に舞う。

　残弾が一発という事実が、わずかな躊躇を呼んだ。
　上方に振り向けられた銃口、その射線に絡むようにヒョウが投じられ、
　ヒョウが銃身を叩くと同時に発射された弾丸は、当然のようにあらぬ方向へ飛んで壁面をえぐった。

　舌打ちをする暇もなく、俺は低い姿勢で前に出、降ってくる攻撃をかわす。
　背中合わせに立つ形から、ほとんど反射的に、背後へと銃把を叩きつけていた。
　裏拳の要領だ。

120 名前：ヘレン ◆twinsTLaE6 ：04/12/14 22:31

ヘレンｖｓビリー　『牙妓遊戯』
>>119

　苦虫を噛みつぶしたような表情で銃爪を引き絞らんとするロンの姿は、何処か憎めなか
ったが、それは攻撃の手を緩める理由には至らない。
　うまく銃撃を回避したヘレンは、投擲の勢いをそのまま活かして前方へくるりと一回転。
慣性のついた踵がロンの脳天を襲うが―――これは前に出られ、不発。自然と着地は彼の
背後になる。一瞬、互いが互いに最も無防備な部位―――背中を晒し合う事になった。
　最初にその位置関係を拒んだのは、ロンだった。
　見事な反応速度で、銃把を振り抜いてくる。
　まともに受ければ、頭蓋程度なら容易に打ち砕くだろう。

　が、いくら殺人的な威力だろうと、些か短絡的過ぎる行動である事に違いは無かった。

「覇っ！」

　のかけ声と共に、左肘鉄を銃把に打ち付ける。もちろん、そのままでは肘が砕けるので、
流れを上に反らし、銃把を持ち上げ、勢いを逃がした。逆にヘレン自身は腰を沈め、ロン
の脇下に潜る。その姿勢を壊さずにくぐり抜け、彼の胸下へと回り込んだ。
　深く腰を置いて、股を大きく開き、地にどっしりと足をつけたヘレンの背中が、ロンの
鳩尾にぴたりと据えられている位置関係だ。
　この構え―――ロンにも察する所があったのだろう。彼の表情に警戒の色が走る。
　だが、遅い。

「―――いやぁぁああっ！」

　裂帛の気合いがコンクリートに谺する。両足は地を蹴り、爆発的に湧き出た全身の力を
肩に―――そしてその向こうにいるロンへと集中させ、ぶち当てる。ヘレンが得意とする
六つの必殺技の一つ、クロスレンジによる肩口からの全力を賭した体当たり、八極拳奥義
"鉄山靠"のお披露目である。
　為す術もなく弾き飛ばされるロン。
　ヘレンはすかさず姿勢を直すと、腕を組んで顎をつんとあげ、勝利のポーズを気取った。
目が「どう？　わたしの実力は」と訴えている。その仕草は愛嬌に満ちていたが、やられ
た方としてはたまらないものがあるだろう。
　今まで散々浴びせかけられていたロンの皮肉笑いが余程に気に入らなかったのか、ヘレン
はこれ見よがしにふふん、と鼻で笑った。

121 名前：ビリー・龍 ◆OClOnGFAng ：04/12/14 22:32

>>120 ヘレンｖｓビリー　「牙妓遊戯」

　こんガキャぁ……余裕見せてる暇があるならとどめ刺しにキヤガレ、舐めやがって。
　こみ上げて来た血と一緒に吐き捨てる。
「マクスウェル……休暇をやるよ、久々にな」

　乗用車のドアに半ばめり込んだ体を引っぺがす。
　折れて肺にめり込んだ肋骨が再生する。義眼と義歯を乱暴に引っこ抜き、
　ついでに武器を仕込んだ上着を脱ぎ落とした。シャツ一枚で身軽になる。
　再生した牙が噛み合う感触。俺はそれを見せ付けるように、ニッと笑った。

「おじょーちゃん。三分だけ遊んでやる」
　いいながら、へしゃげた車のドアの窓枠を鷲掴みにした。
　無造作に千切りとり、無造作に投げつける。
　それが３ラウンド目の開始の合図だ。

　俺は踊るようなステップで間合いをつめると、
　加速のついた掌を鋭く振り落とした。

122 名前：ヘレン ◆twinsTLaE6 ：04/12/14 22:33

ヘレンｖｓビリー　『牙妓遊戯』
>>121

　相手の油断が消えた。頭に血が昇っているし、怒りも覚えているが―――それは単純に
"滾っている"だけで、思考は冷静。
　"死なれても構わない"程度の殺意が逆に、ロンの情け容赦の無さを引き立てている。

　要するに、"あ、もしかして本気で怒った？"と言う奴だ。

　シーマのドアを、アルミホイルを裂くかのように軽々と千切り取り、大リーグボール
よろしく投げ付けられる。いつ見ても非常識な馬鹿力ね、とヘレンは呆れた。その可憐な
顔面を、サイドドアが無慈悲に抉らんとする直前―――渾身の力を込めて、蹴り上げた。
　直進する力は前からの抵抗には強いが、下や上からのそれには弱い。当然の理屈を持って
して為された行為だが、頭では理解しても、蹴り上げられた鉄塊が天井にまで届き照明を
砕き割れば、我が目を疑うだろう。生身の人間のやる事ではない。ましてそれが、うら若
き少女となれば尚更だ。
　が、ロンはそんなヘレンよりも更に一枚上手だった。

　ドアの陰に、追い駆ける形で隠れていたのだ。ヘレンは蹴り上げた直後、彼の姿が白昼
に曝された時点でようやくその事実に気付く。しなやかな足は天に伸びきっており、全身
これ隙の塊。咄嗟に返す足で踵落としを見舞うが―――間に合うはずもなく、十分に勢い
につけられた掌が、死神の鎌の如くヘレンの胸に突き刺さった。
　力に逆らわず、むしろ勢いに乗って流すように受けるが、地面に叩き付けられればそれ
以上の逃げ場はなく、肋骨が折れる音を耳の裏で聞き、ヘレンは声にならない悲鳴をあげた。
　内心で舌を打つ。けど、それで済んだのならまだ上等。本来ならば肺を突き破られる一撃だ。
　ヘレンはジャケットから素早くヒョウを抜き取ると、胸を穿つロンの手に突き刺した。
　僅かに力が緩む一瞬、腕を払いのけ、全身の筋肉をバネに変え―――跳ねた。鉄板が仕
込まれたジャングルブーツが、ロンの顎に食い込む。そのまま蹴り上げてサマーソルトキック。
宙でくるりと一回転し、無理矢理間合いを離した。もちろんその一瞬後、真上に蹴り上げ
られたドアが、彼の顔面に落下する事まで計算に入れている。

「三分？　別開玩笑（冗談言わないでよ）。―――じゃあ、わたしも三分間だけ、このま
まで相手してあげるわ」

　胸を抑え、苦痛に表情を歪め、肩で息をしながらも、ヘレンは決して余裕の笑みを崩そ
うとはしなかった。

123 名前：ビリー・龍 ◆OClOnGFAng ：04/12/14 22:34

>>122 ヘレンｖｓビリー　「牙妓遊戯」

「ハ、余裕だな、『Sassy Girl』？」
　頭上から降ってきた鉄板を力任せに払いのける。
　轟音立てるそれをよそに、軽くステップを踏みながら、踏み込む歩幅は二歩、三歩。

　根性のある女も根性のあるハンターも嫌いじゃないが、
　両方合わさると小憎らしいだけ、ってーのは少々新しい発見だった。
　遊ぶ相手にゃ悪くない、か？　まあ、三分だけな。

　間合いをじわりと詰めてやる。退がるかい？　退がらないよな？
　そうでなけりゃ面白くない。ニヤリと笑う。ついでに顔を突き出して誘ってやる。
　見え見えの誘いだが、どのみち吸血鬼をこのまま懐に入れはしないだろう？
　そら、ここだ。

　円の動きでサイドに捌き、右手を鉤爪にして二の腕あたりを引っ掛けに行く。
　どこでもいい、指の先がひっかかりゃ、肉の一掴みは俺のもんだ。

124 名前：ヘレン ◆twinsTLaE6 ：04/12/14 22:34

ヘレンｖｓビリー　『牙妓遊戯』
>>123

　滑るような素早い動きから、憎たらしい笑みが突き出された。蹴り砕いたはずの顎は、
とっくに再生している。先ほど打ち込んだ鉄山靠のダメージと言い、桁外れな再生能力だ。
まったく―――こっちは肋骨が数本折られただけで、満足に呼吸もできないのに。

「可悪！（ムカツクのよ！）　あなたは！」

　あからさまな挑発だったが、その皮肉笑いがあまりにも苛ついたため、ヘレンは肺に突
き刺さる怒鳴り声と共に拳を突き出した。
　女のそれとは思えない強力な突きだったが、ロンはあっさりと受け流した。逆に、右手
を嘴のように窄め、まるで虫でもついばむようにヘレンの肉を狙ってくる。

　―――冗談。

　繰り出すロンの右腕に肘鉄を突き落とし、無理矢理に軌道を反らす。すると、逆の手が
同じように啄んできた。それを払いのけ、更に左から迫る嘴手をいなし、右を叩き伏せる。
　右、左、右、左、右、左……動き自体は単調だが、スピードは神憑り。何より一度でも
受ければ肉が削がれ、潰される。その嫌悪感がヘレンを受けで手一杯に回された。
　右、左、右、左、嵐のように降り注ぐ嘴の雨。紙一重で避け、ブラウスが僅かに千切り
取られた。ジャケットが食い破られた。ヒョウがアルミ缶のように握り潰された。
　底冷えする恐怖が、じわじわと身体を侵してゆく。
　折れた肋骨から突き刺さる痛みが、ヘレンの気丈さを揺さぶった。
　両手を操り、手刀で裏拳で掌打で、無心でロンの嘴手を捌き続けるが、次第に追い詰め
られ行く感覚に歯は震え、その澄み切った瞳にじわりと涙が滲み出た。
　恐怖の涙でもあった。
　が、それ以上に悔しみに満ちた涙だった。
　こんな蠢材（ヌケ作）に負けるなんて、そんなのはそんなのは―――

　ロンの右手が、ブラウスの左袖を根こそぎ持っていた。
　ロンの左手が、ヘレンの二の腕をつかみ取り、

「あぁいぃぃ、呀ぁぁぁぁ阿！！」

　抉り取るよりも早く、その三枚目の鼻面に、頭突きが叩き込まれた。
　

125 名前：ビリー・龍 ◆OClOnGFAng ：04/12/14 22:35

>>124 ヘレンｖｓビリー　「牙妓遊戯」

　目の前を黒髪が踊り、鼻柱が叩き潰され、口の中に血の味が広がり――――

　俺はかまわずに、指先の感触だけを頼りに女の身体を振り回し、
　爪の先を食い込ませ、その肉を引きちぎった。

　血の混じった唾を吐き捨て、再生に合わせてちょいと鼻を戻す。
　指先に残った肉塊を口に含んだ。
　俺は笑った。いつものように血肉はたとえようもなく美味かった。
　俺が吸血鬼である以上、当然のことだった。

――まだやせ我慢、続けるかい？

「少々油のとりすぎだぜ？　少し中華は控えた方がいい」
　自然、唇の端がつり上がってしまい、それが可笑しくて俺はなおも笑う。
　相性は最悪、顔を合わせるたびにいがみあいそうだ。
　もっとも、次があるとは思っちゃいないが。

　残り、一分半てところか。
　予備動作を見せずにひょいと踏み切り、跳躍。
　踵を落とし、着地からシンプルに踏み込んで、拳を叩きつけにいく。

126 名前：ヘレン ◆twinsTLaE6 ：04/12/14 22:36

ヘレンｖｓビリー　『牙妓遊戯』
>>125

「〜〜〜〜〜〜ッッッ！！！！！？？？？」

　あまりにもえげつない痛みに迸る悲痛の叫びはしかし、食い縛られた歯に邪魔されて音
にならない。右手に目をやる。血が溢れていた。血が。真っ赤な血が。
　これは何の血わたしの血。右手を染め上げる血。ぽたり、ぽたりと床にしずくを垂らす
鮮やかな血。幸い、際限なく湧き出る血のお陰で傷口はアカに隠されていた。刮ぎ取られ
た傷痕を見ずに済んだ。
　丹念に咀嚼されて、飲み下された自分の肉片。若く脂の乗った肉塊。生肉を食べる習慣
はヘレンには無かったが、ステーキの焼き加減はレアが好みだ。あれと似た味と言うのなら
なるほど、ロンの"食事"の好みも、理解できなくは無かった。

　は、はぁ、はっ。
　ふとヘレンは、自分の息遣いがやけに荒い事に気付く。身体もやけに醒めきっている。
　汗だ。全身から吹き出す異様なほどに冷たい汗が、体温を犯しているんだ。
　汗と。血と。肉と。
　拳が。
　突き込まれたロンの拳。胸を打った。床を蹴った。衝撃を全身で受け止め、されるが
ままに吹き飛ぶ。人外の膂力を利用して、派手に宙を舞った。
　天井の蛍光灯が地へ天へと、めまぐるしく回転する。
　左手に五本、手早くヒョウを抜き取った。
　右手は痛みと出血の所為で動きが鈍かったが、それでも無理矢理にエンジンを回し、
ヒョウをジャケットから抜き取った。

「わたしに触らないで。わたしを侵さないで。わたしを食べるのもやめて！」

　必要以上の痛みは、意識を逆に覚醒させるものだ。
「この―――」
　絶叫と共に宙空から立て続けに擲たれるヒョウの雨。

「好色鬼（スケベ野郎）―――っっ！！」

　右を投げては左で投げ、その間に右手にリロードしたヒョウを投げ、左で投げ。
　床に着地する時には既に、ヘレンはジャケットのヒョウ全てを投げ尽くしていた。

127 名前：ビリー・龍 ◆OClOnGFAng ：04/12/14 22:37

>>126 ヘレンｖｓビリー　「牙妓遊戯」

「イヤだね。するなと言われるとその気になるのが、根性曲がりの悪い癖さ…おっと」
　しっかしなんだ。口も悪いが手もえげつない。
　美しい花には棘があるってーよりは、ミツバチの隠し針ってところか。
　それもダースじゃ足らないぐらいまとめて飛んできた。

　こんなものをいちいち捌くほど暇じゃない。
　右手を振りかぶり、思い切り振り払う。
　雨の只中に気持ち出来た隙間に、俺は頭と心臓をかばって突っ込んだ。
　たちまち両手が針山になる。まとめてざらっと払い落とし、床に響く金属音を背後に走る。

　このダンスにもう幕間は無い。止まるべき理由はもう無い。
　着地し、構えるじゃじゃ馬に突っ込む。
　ジャブはフェイント、挨拶代わり。次の瞬間には、俺はもう、半歩を踏み込んでいる。

　ハハッ、とまるで笑いのように呼気が漏れた。
　低い構えから、ボディとアッパーを続けざまに打ちこんでゆく。

128 名前：ヘレン ◆twinsTLaE6 ：04/12/14 22:37

ヘレンｖｓビリー　『牙妓遊戯』
>>127

　降り注ぐヒョウの雨を、文字通りスコールでも浴びるかのように受け止め、飛沫を払う
が如く床に散らした。ヘレンは顔を歪め、「化物……」と口内で今更な事を罵った。
　認めるしか無かった。
　ロンはただ享楽的に人を殺め、刹那的に血を啜る、巷に溢れる壊分子（チンピラ）吸血鬼
とはワケが違う。夜に生き、闇に生きる"ホンモノ"だ。あのデコテス公爵ように。ドレイ
ク最大の好敵手なのも、この実力があれば納得だ。

　自らの影を置き去りにしてしまいそうな勢いで、ロンが駆けてくる。
　痛みに勝手が鈍る身体を鞭打ち、繰り出されたジャブを左手で弾き、捌いた。
　気が込められてない―――フェイントだ。
　半歩踏み込むロン。次の手は当然のようにヘレンには読めていた。ロンの格闘術は素人
離れしているし、酷く実戦的だ。が、それでも幼少の頃から打倒リー・リンチェイ、蹴破
ブルース・リーを夢見続け、敬愛するジャッキーに一歩でも近付こうと鍛錬に鍛錬を重ね
続けたヘレンから見れば、ロンのそれは児戯に等しかった。
　だから、動きは、読める。
　が、いくら読めても、その動きに追い付けなければ意味がない。

　神速に達するロンの左ボディ。咄嗟の膝蹴りで甲を蹴り砕き、防ぐものの続けざまに打
ち込まれたアッパーには間に合わない。わざと姿勢を崩し、尻餅をつくように床に倒れ、
紙一重でかわす。

「えぇいーー！！」

　尻餅の姿勢から、ロンの膝に両足で蹴りを叩き込む。その反動を利用して後方宙返り。
　確かに、ロンは本物だ。人間の常識内、人間の器に収まるレベルでいくら反抗を試みても、
彼には勝てない。
　僅かに間合いの外から、槍のように突き出されるヘレンの蹴り足。突き、凪いで、回り、
踵が襲う。息もつかぬスピードで鉄板仕込みの蹴りが、矢継ぎ早に打ち放たれる。
　三分、三分だ―――三分は死んでも意地でも惨めでも保たせてみせる。
　ヘレンは胸中で、まるでそれだけか頼りだとでも言うように呟き続けた。

129 名前：ビリー・龍 ◆OClOnGFAng ：04/12/14 22:38

>>128 ヘレンｖｓビリー　「牙妓遊戯」

　追えばビンタの一つも残して「つかまえてみなさいよ！？」と言ってのける。
　こいつぁ、そんな女だ。

　並みの人間なら膝がくの字に逆に曲がりそうな蹴りを貰い、
　さすがにちょいとよろけた。膝が痛いのは半秒の我慢だ。

　そして、それでも追わなきゃならないのが男の悲しい性ってやつだが、
　そんな俺の鼻っ柱に突きつけられたのはジャングルブーツの凸凹モールドだった。
　最初にあごに貰ったときに気づいたが、このアマぁ、ブーツの靴底爪先に
　鉄板を仕込んで補強――もとい、武装しているのだ。
　ブーツの先からナイフの刃先が飛び出ても、俺はこの際驚きゃしない。

　最初の蹴りを、鼻先掠めさせてかわすと、続けざまに蹴りが襲った。
　曲芸じみた連撃だった。まともに喰らえば頭蓋が抉れかねない。
　大半を受け、かろうじてかわす。
　常人なら腕が3秒でいかれてるところだが、まだ俺には余裕がある。
　が、反撃にはちと間合いが遠い。足の長さで負ける気はしないが、
　この女にまともに蹴りあって勝てるほど器用でもない。

　じゃ、どうするか？
　答えは簡単だ。

　俺は防御を捨てて踏み込んだ。
　延髄にイイのが飛んでくる。吸血鬼でも逝けそうな蹴りだとちらと思ったがもう遅い。
　首の筋肉を緊張させながら、身体ごと叩きつけるようなミドルキックで逆襲する。

130 名前：ヘレン ◆twinsTLaE6 ：04/12/14 22:39

ヘレンｖｓビリー　『牙妓遊戯』
>>129

　ヘレンの体重は軽い。女の子の事情と言う奴で詳しく数字を述べる事は出来ないが、成
人男性ならば軽々と持ち上げられる程だ。故に、彼女の蹴りは重みが乗っておらず勢いも
ない―――そう考えるのは軽率だ。ヘレンの軸足は常人ならば膝を砕きかねない勢いで床
を蹴りつけており、そこから生まれるキック力はウェイトの差を補ってあまりあるものだ。
その上、ブーツに仕込まれた鉄板は"重り"にもなる。十二分に勢いの乗ったヘレンのキック
はもはや凶器の域である。
　そしてスピード。
　放てば放つほどにスピードを増してゆくヘレンの蹴り足はもはや人間離れの極み。人外
の具現者ロンをもってしても捌くの手一杯だ。
　いける―――このまま押し勝てる。僅かな勝機を見出したヘレンは、怪鳥の如き悲鳴を
あげる。瞬間、彼女の身体が翻った。影をも追従させぬ勢いで次から次へと繰り出される
回し蹴り。六つの必殺技が一つ"無影脚"だ。
　これにはさすがのロンも捌くのを諦めたのか、防御を捨てて踏み込んできた。
　自慢の再生力が頼りか。
　今の彼女なら約束の時間―― 一分ももう無いはずだ――までこの連撃で凌ぎきる自信が
あった。翻るブーツがロンの延髄を蹴り抜く。人間相手には決して使わない殺し技だ。が、
今回ばかりは勝手が違った。ヘレンの眼が見開かれる。足の甲が砕ける感触。まるで鉄柱
を蹴り抜いたようだ。馬鹿な―――慌てて次の回し蹴りを見舞う。次瞬、視界が揺れた。
脇腹に奔る衝撃。正真正銘のクリーンヒット。身体が宙に躍った。いや、跳んだ。そのま
ま一回転し、ワンボックスカーのフロントガラスに背中から突っ込む。強化ガラスは蜘蛛
の巣状にひび割れの波紋を作り、次の瞬間には粉砕。ヘレンはもんどりを打って助手席に
飛び込む羽目になった。

「―――か、は」

　なんて容赦のない一撃。視界は揺らぎ、思考は靄がかかったように定まらない。身体は
苦痛に麻痺して怠く、重い。完璧にグロッキーだった。

「く、この……」

　驚愕と屈辱にまみれた喀血を、ハンドブレーキに浴びせかけた。フロントバンパー越し
にゆっくりと、余裕に満ちた足取りで近付く吸血鬼の姿が見える。

　サイドドアを開き、転がり落ちるように車内から出た。まだ、３０秒はある。ヘレンは
震える手を腰へと導き、カーゴパンツと腰の間に挟んでいた七節棍を取り出した。中心部
の太極玉を引っ張り、折り畳まれたそれを一本の芯の通った棍にする。

「さあ、"ロングファング"……クライマックスよ。"モノ"にしてみなさいよ、わたしを」

　精一杯の挑発。
　もはや一人で立つ力も無いのか、組み立てた棍を杖替わりして立ち上がった。

　この男に堂々と勝利してみせよう、と言う気概はもうヘレンにはない。不可能だと分かり、
そう悟ってみれば意外と清々しいものだった。だから―――ロンに勝ちにしてあげるから、
残された時を刻む秒針よ。

「もっと速く、進みなさいよ……！！」

　最後の力を振り絞り、跳躍。振りかぶった棍が、七つの間接それぞれ独立させ、鞭のよ
うにしなった。間合い外から振り落とされる鞭打。常時ならば多節棍を用いてもっと優雅で
力強い技を見せられるのだが、今の彼女には直線的な攻撃で精一杯だった。
　

131 名前：ビリー・龍 ◆OClOnGFAng ：04/12/14 22:40

>>130 ヘレンｖｓビリー　「牙妓遊戯」

　タフな女だぁよ、全く。
　その上挑発までしてきやがる。俺はちょいとばかり親近感を覚えた。
　減らず口に覚えがあったらしい。

「モノにしてみろ？　足元ふらつかせてる癖して口の減らない女だな。
　今なら見逃してやるぜ？　俺は今日のところはがっついてねえんだ」

　聞くわきゃ無かった。返事は節棍の一撃だが、
　先ほどの蹴りの乱舞に比べれば少々鋭さに欠けているのは否めない。
　俺はその先端を、女の顔面に向けて蹴り返した。
　節棍は、逆にしなって持ち主を襲う。
　俺のすることは着地点への先回りだ。

　抜き手。かわされ、手首を返して後ろ襟を狙い――それを女が際どく払う。
　払われた腕で再度裏拳、スウェーにそれも空を切り、
　俺はスイッチして左腕を振り下ろすと同時に足払いをかけた。
　さらにそのまま踏み込み、肘を叩きつけに行く。

132 名前：ヘレン ◆twinsTLaE6 ：04/12/14 22:40

ヘレンｖｓビリー　『牙妓遊戯』
>>131

　渾身の一撃は容易く蹴り返され、その意外な反撃に思わず「きゃ」と短い悲鳴をあげた。
よほどに消耗しているのだろう。普段なら決して出さない弱々しい声だった。恥じるべき
一面を垣間見せた事に舌打ちしつつ、咄嗟に棍を手放してクロスガード。自らの棍に打たれ、
飛翔の勢いは消え、その場に墜落した。
　どうにか着地の姿勢は作れたが、追撃にまで頭は回らなかった。
　まさかのロンの貫手。足の疾さも、此処まで来ると馬鹿馬鹿しくなる。呻きつつ紙一重で
かわした。返す手で突きを狙ってくるのをすれすれで払いのける。と、その腕が裏拳を作り
薙いでくる。畳み掛けるような連撃。今のヘレンには捌く事すら覚束ない。身を低くしてや
り過ごすが、続く足払いに為す術もなく転倒。衝撃で肺から空気が搾り取られ、胸に血の味
が広がっていく。苦痛に顔面を歪めつつ、振り下ろされた左拳はブーツで蹴り飛ばす。止ま
らずロンは肘打ちを繰り出した。―――これが本命か。
　反射的に、身体を転がした。耳元を風が掠める。直後、地を揺るがす低い音。見ると彼の
肘がコンクリートの床を穿ち、窪ませていた。
　冗談じゃない。人外の膂力に寒気を覚えつつ、無様に―――しかし、素早く這い進み、間
合いを無理矢理作る。そこで改めてロンの方に身体を向けた。端から見ると、床に尻をつけ
腰を抜かしているような格好で、酷く間抜けだ。が、もう腰に力が入らず、足の感覚も麻痺
しているヘレンには、これが精一杯だった。

「見逃して……あげる？　―――那句話応是我説的（それはこっちの台詞よ）」
　息も絶え絶えにそう言うと、ヘレンは口端をつり上げて笑って見せた。無惨にも血と痣
と埃で汚れた顔だが、それでも笑顔を浮かべれば――それが皮肉笑いでも――まだまだ健康
的で、愛らしい。

「あなたの死亡遊戯（Game of Death）も終わりまで……あと十秒ってとこ？　カウントダウン
してあげる。まだあなたの番なんだから、逃げるも仕掛けるもあなたの自由よ」

　言いつつ、ヘレンはパンツのポケットに手を突っ込んだ。その感触をさり気なく確かめて、
気を奮い立たせる。あと十秒だ。あと十秒、攻撃の意志は決して緩めない！

　ヘレンはパンツのポケットからヒョウを取り出し、擲った。デザインは先に存分に投げ付
けたヒョウと同じだが、結びつけられたリボンの色がピンクではなく、黒だ。炸裂火薬が
仕込まれた暗器である。
　これで仕留められるとは甚だ思っていない。ただ、ロンの鼻をあかしてやればヘレンは
それで満足なのである。
　もはや本来の戦闘の理由も忘れ、正真正銘最後の一撃をヘレンは見舞う。

133 名前：ビリー・龍 ◆OClOnGFAng ：04/12/14 22:41

>>132 ヘレンｖｓビリー　「牙妓遊戯」

「まだ俺の番？　次は私の番とでも言う気か？」
　減らず口もここまで来るとたいしたもんだ。
　そのしぶとさもたいしたもんだ。
　手加減したつもりは無いのだが――多少矜持が傷つかないでもなかったが、
　俺の攻撃をしのぎきったのは賞賛に値する……ということにしておくことにした。

　残り十秒、時間切れだ。遊びとしてはもう十分すぎた。
　俺はラストアタックをかけるか、とっととこの場から消えるか迷い、
　一瞬、日暮れを迎えたガキどもよろしく、注意が周囲にそれた。

　その瞬間を狙ったんならたいしたものだった。
　ほとんど同時にヒョウが飛び、俺は反射的にそれを足元に払いのけ――
　ヒョウの残した軌跡が、導火線の燃える匂いを立ち昇らせていた。

　俺は横っ飛びに跳んだ。他にできることなぞあるものか、
　せいぜいが口の中で思い切り罵るぐらいのものだ。

　このクソ女！！

134 名前：ヘレン ◆twinsTLaE6 ：04/12/14 22:42

ヘレンｖｓビリー　『牙妓遊戯』
>>133

　―――ジュゥ。

　ヴァンパイアハンター・ヘレンは確かに強い。その拳法の腕前はもはや達人の域に達し
ており、体格の優劣を超越した位置にいた。情けもあるし躊躇いもある不安定な情緒は
泥臭い殺し合いの場に似つかわしくないが、生来の気の強さとお転婆な振る舞いは空気
を自分の色に染められると言う、それこそ常人にはとうてい辿り着けない一種の"カリスマ"
を持っている。それを余すことなく用い、相手のペースをこちら側に引き込めるのが彼女
の何よりの強みなのかもしれない。

　―――バー。

　が、それはあくまで人間の範疇内だ。
　確かに武術の腕は常人から見れば神憑っているかもしれないが、江湖は広い。黄飛鴻や
李小龍を初めとする"拳神"達から見ればまだまだ未熟の極み。少なくともあと十年は巧夫
を積まなければ一人前とは言い難い。
　気の短さと手の速さだけはなるほど、吸血鬼も太刀打ちできない境地に達している。が、
それだけで夜の加護を纏い、不死の生命力を謳い、人外の力を駆使する彼等に太刀打ちで
きるものなのだろうか。
　スラムの陰に蠢き、人を襲い糧を得る魍魎同然の三流相手ならばヘレンの武力を用いれ
ば簡単に仕留める事も出来るだろう。が、彼女の戦歴はチンピラ相手に終わらず、
デコテス公爵を初め、数多くの名の知れた夜族を叩きのめしている。数十匹もの不死者を
相手に大立ち回りを演じ、その悉くを屠り尽くしたと言う逸話もあるほどだ。
　彼女の矮躯の一体どこに、そんな規格外の胆力があると言うのか。
　人間と夜族の間には桁外れなスペックの差があり、それはいくら武で補おうとも決して
埋まる事はない。だから人は知謀を持って彼等を牽制するのだ。

　―――チー。

　ロン相手に奮闘してみせた彼女は、確かに脅威的な強さを持っている。
　が、あくまでそれは人間にしては、だ。
　人外の活躍を作るヘレン。
　その種明かしと言わんばかりに、ブラウスの隙間に手を突っ込み、胸元から小瓶を取り
出した。

　―――リョウ。

　一見すると栄養ドリンクのそれを嬉々として掲げるヘレン。その、狂気すら醸し出す表
情に爆炎が降りかかる。ヒョウの炸裂はロンのみならず、彼女自身も範囲に入っていた。
爆風にもまれるヘレン。皮膚が灼け、衣服が裂け、目に見えて深刻なダメージを追う。
が、彼女は一向に気にしたそぶりを見せない。

　―――ウゥ。

「ああ、もう！　まどろっこしい！　スゥ、サン、アール、イー、はい１０分終了！ 」

　言うと、小瓶の栓を開け、中身を一気に飲み干した。

135 名前：ヘレン ◆twinsTLaE6 ：04/12/14 22:42

>>133>>134

　変化はすぐに訪れた。
　まず所々に負った傷が、見る間に治ってゆく。削がれた肉は再生し、折れた骨格は繋がり、
裂けた皮膚はぴたりと出血をやめた。失った血を補填せんと、心臓の鼓動が跳ね上がる。
まるでビデオの巻き戻し映像でも見るかのように、ヘレンは健康体へと戻っていった。
　そして眼が。
　ゆっくりと瞼を開く。そこから伺える彼女の眼が、蒼く輝いていた。

　反吸血鬼同盟最強のヴァンパイア・スレイヤーであり、ヘレンの兄であり師でもあるリーヴ。
マーシャルアーツの達人であった彼は、人の道を外れた者を打ち倒すには、自らもまた道を
外れなければならないと考えていた。
　人外の力には、人外の力で。
　リーヴが編み出し、後に反吸血鬼同盟においてトップレベルのハンターにのみ使用を許
された禁忌の秘薬。純度１００パーセント、ロードクラスのヴァンパイアの生き血を使っ
て作り出された血清。それを飲む。ただ飲むだけで得られるのだ、彼等は。
　人外の力を。

「さって、プライベートの時間はこれでお終い」

　今までの苦痛に歪んだ表情は一体何処へ消えたのか。お仕事お仕事と呟きながら、肩慣
らしに腕をぐるぐると回す彼女。ストレッチのつもりか、屈伸を数回繰り返す。

「別にそこまで意地を張る必要なんて、何処にも無かったんだけどね。……でも、ムカつく
じゃない。"ズル"をして勝っただなんて、負け惜しでも言われるの」

　ぼろぼろに煤けたジャケットを脱ぎ捨ててから、肩を竦めてみせた。

「要するにプライドよ。人間としての、プライド。あなたには一生理解できないでしょうけど」

　血清が有効な時間は９０分。それを超えるとこの身体は完璧に夜の力に侵され、吸血鬼
と化してしまう。その前に解毒剤を飲まねばならない。
　９０分。
　十分すぎる時間だ。

「じゃ、そろそろ"狩りの時間"にするわね」

　ヘレンは口元から覗く半端に伸びた犬歯を見せびらかすと、
「ぶちのめしてやるから覚悟しなさいよ」
　と私怨に満ちた呻きを漏らした。

136 名前：ビリー・龍 ◆OClOnGFAng ：04/12/14 22:43

>>135 ヘレンｖｓビリー　「牙妓遊戯」

「クソ女」と三回罵り、頭に乗った埃を払い、口中に入り込んだ砂利を吐き出して俺は立ち上がった。
　駐車場の中央で起こった爆発は、粉塵を盛大に巻き上げていて、視界はすこぶる悪い。
　軽く首を振って爆発の衝撃を追い払う。
　ジャケットを探して見渡すと、これも盛大に埃をかぶっており、俺は渋面を作った。
　手ではたいて落とし、羽織る。

　あまりのんびりもしていられない。遊びは終わりだ、――いや、次のゲームがあるというべきか。
　逃走と追跡のゲームは、先手を打たせすぎると失点を取り返すのが酷く厄介だ。
　最悪……は言うまでも無く、それよりマシなケースでも、
　死人と半死人を大量に作り出す羽目になることもある。

　三分でどれだけ包囲が狭まったか――まあ、地の利はこっちにある。
　いざとなればどうとでも――そんなことを考えていると、収まった粉塵の向こうから
『Sassy Girl』が姿を現した。思ったよりも元気そうだ。

「――殺しても死にそうに無い女だな」
　苦笑とともにそう漏らす。最大級の賛辞のつもりだが、伝わることは永久に無いだろう。
――俺はもう半分体を出口に向けていて、憎まれ口に付き合う時間も無いので
　向けられた言葉の８割がたを聞き逃していた。

　覚悟？　まあ、次があったらな。まず無いだろうが……一期一会さ。

「なかなか良かったぜ？　次があったら、もう少しムードのあるところにしたいね」
　ちょいと爽やかに笑顔を見せて、俺は踵を返した。
　ばいばいと挨拶代わりに右手をあげ、出口へ踏み出す。

137 名前：ヘレン ◆twinsTLaE6 ：04/12/14 22:45

ヘレンｖｓビリー　『牙妓遊戯』
>>136

「ちょっと」
　呼び止めても、ロンは聞く耳を持とうとしない。
「ねえ」
　一人で納得し尽くしたのか、すっきりとした面持ちで場を去ろうとする。
「待ちなさいよ」
　そのまま追い縋って、正拳で脊髄を叩き折っても構わなかったが、この男のために足を
一歩でも動かすのは、面倒で仕方が無かった。
　仕方なく、脇に駐車してある２５０ｃｃバイクに目をつけた。さすがに車となるといく
ら人外の膂力を得た今の彼女でも難しいものがあるが、この程度なら片手で事足りる。
　エンジン部を鷲づかみにして、事も無げに持ち上げた。そのまま何気なく、ロンの背中
向けてぶん投げた。一つじゃ気が収まらず、手近に駐車してある自動二輪車を片っ端から
投げ付ける。衝突時の当たり所が悪かったのかそのうちの幾つかは火を噴き、炎上。中に
は爆発するものまであった。

　ようやく全てを投げ終えたヘレンは埃で汚れた手をはたいた後、最後に自分の身も宙に
投げ出した。跳ぶのではなく、まるで駆けているかのように直線的な跳躍だ。そのまま素
早く身体を回転させ、腰を引き上げる。唸る右足が、ロンの頭上へと叩き落とされた。
　少林北派"旋風脚"。
　人を超えた力で蹴り出される右足は、まさに嵐を纏う勢いだ。
　　

138 名前：ビリー・龍 ◆OClOnGFAng ：04/12/14 22:47

>>137 ヘレンｖｓビリー　「牙妓遊戯」

　凶悪な風切り音に振り向いてみりゃ、飛んで来るのは二階さんのバイクだった。
　慌てて飛びのき振り向けば、目に入ったのは……なんだ、ありゃ。

　ああ、まあ、吸血鬼並みの膂力がありゃ、そりゃバイクぐらいは投げ飛ばせる。
　だが、あの女は少々足癖は悪いが普通の女だった……はずだ。
　もっとも、ヒス女よろしく、手当たり次第にバイクを投げつける光景を見りゃ、
　そんな確信はどっかへやっちまうしかない。

「なにしてやがるこの……おわ！」
　二台目と三台目がまとめて跳んできて、飛びのいた俺を掠めて壁にぶち当たった。
　爆発音までして賑やかな事だが、俺は五台目を払いのける最中でそっちを見てる余裕がない。

「……このアマ！」
　俺は飛んで来た七台目を肩口で受け止めた。
　勢いのままに一回転し、もと来た方向に投げ返そうとするが――

　振り向いた俺の目の前には、ごついブーツが風巻いて迫っていた。
　ほとんど反射的な行動だった。無理やり単車を振り向け、盾にしようとする。
――が、体勢が悪すぎた。

　俺の体はバイクごと、ヒス女に蹴り飛ばされていた。

139 名前：ヘレン ◆twinsTLaE6 ：04/12/14 22:48

ヘレンｖｓビリー　『牙妓遊戯』
>>138

　盾代わりに持ち上げられたバイク。Kawasakiのロゴが入ったガソリンタンクに蹴り足の甲
がめり込んだ。ふんと鼻を鳴らし、足を振り切る。タンクは紙くずのようにひしゃげ、ガソリン
をまき散らす。ロンは勢いに負け、バイクを抱えたまま後方へすっ飛んだ。

　着地と同時に疾った。跳んだ。吹っ飛ぶロンに追い付いた。バイクが盾になって邪魔だ。
構わずに拳を駆り、エンジンをシートをマフラーを殴りつける。フレームが意外と頑丈で、
なかなかスクラップにならない。ならば、と車体を蹴り飛ばし反動で身体を宙に浮かした。
反転し、天井に足をつけ、蹴る。更に空中で宙返り。照準をロンとバイクに合わせ、

　―――見せてあげるわ。

「あ阿あぁぁぁいぃやぁーー！！！！　南派少林拳奥義！　仏山きぃーっく！！」

　宙を浮いたまま車体に蹴り蹴り、蹴り。両足でひたすらに蹴りまくる。南派少林拳奥義
仏山キック。要は無影脚本来の型、完成形なのだが、ヘレンは人外の力を駆使する事で
初めてそれを放つ事を可能としている。そのスピード、威力、共に先の連続回し蹴りの比
ではない。先ほどの無影脚が「影も追い付けないスピード」なら、これは「影もできない
スピード」だ。機関銃顔負けの勢いで怒濤の蹴撃ラッシュ。その上、一発一発の威力は
マグナムにも及ぶ破壊力。バイクのフレームは蹴り曲げられ、メーターは粉々に粉砕し、
ハンドルは折れ飛ぶ。タイヤは破裂し、エンジンは炎上、そして爆発。
　二人は炎に飲み込まれる。―――が、それでもヘレンは止まらない。

「この、この、この、このこのこのこのこのこのこのこの、このこのこのこのこのこのこの
このこのこのこのこのこのこのこのこのこのこのぉ、あぁぁたぁぁーーーー！！」

　蹴って蹴って蹴りまくってひたすらに蹴って更に蹴る。止まらずに蹴りまた蹴る、蹴る。
炎に撒かれようが構いはしない。滞空が続く限り蹴り続けるのだ。
　吹き飛ぶロン。跳び蹴るヘレン。二人は燃えさかるバイクを挟んで、駐車場を流星の如く
翔び去り、地上へと続く車道に至る。そこでようやくヘレンの身体が翻った。

「バチ、」
　トドメと言わんばかりに容赦の微塵もない空中回し蹴りが炸裂。
「食らいなっさい！」
　バイクの車体を粉々に蹴り砕き、背後のロンを駐車場の地下出口向けて吹き飛ばした。

　数十秒ぶりに地に足をつけたヘレンは、肩で息をしながらもまるで天を抱くかのように
両腕を伸ばし、足を広げて大仰な決めポーズ。これを忘れて無影脚は語れない。
　

140 名前：ビリー・龍 ◆OClOnGFAng ：04/12/14 22:48

>>139 ヘレンｖｓビリー　「牙妓遊戯」

　五回から先は数えるのを止めた。ちなみに内臓が破裂した回数だ。
　黒コゲの残骸を背中にしょってはいつくばったまま、俺は深呼吸をした。
　気を静める必要があった。煙草が無性に欲しかった。
　指先が懐を探るが、こういうときには無いのが定番だ。
　かわりに筒状の発射器と弾体が指先に触れた。
　煙草をパッケージから出して火をつけるのと同じ調子で、俺はそいつを懐から引っ張り出していた。

　ひん曲がった発射筒を無理やり元の形に戻す。
　弾体を装填する。
　照準を合わせる。
　引き金を引く。

　グレネードが白煙を引いて、ポーズをとったままの『Sassy Girl』へ向けて飛んで行く。
　罵声が漏れた。罵声というよりは、雄叫びだ。意味などありはしねぇ。
　残骸を跳ね除けて飛び起き、走った。
　走りながら、腰の後ろからコンパクトなサブマシンガンを引き抜く。

　視界が赤いのは、炎の色か、血の色か。
　衝動が内側から頭蓋を殴りつける。
　俺はいったい、ここで何をしている？

――ああそうだ。あのイカレた女をぶちのめすのだ。
　爆煙の向こうに人影を認め、俺はサブマシンガンを掃射した。
　流れ弾が乗用車の燃料タンクをぶち抜き、
　火炎地獄と化しつつあった駐車場に止めとばかりに炎と爆風を撒き散らし、

　俺はその只中に、おまけとばかりに手榴弾のピンを抜いて投げ込む。
　盛大に爆発があがる。

　やるときゃトコトンまで派手に……誰のセリフだったか。
　そうだ。ウチの家訓だ。

141 名前：ヘレン ◆twinsTLaE6 ：04/12/14 22:49

ヘレンｖｓビリー　『牙妓遊戯』
>>140

　ロンが何事かを喚いた。次の瞬間、放たれる炸裂榴弾―――直撃はヤバい。
　本能的に、左耳のピアスを引きちぎった。耳たぶの肉が裂け、血滴が舞った。
　今までとは違う、生々しい痛みを堪えながらノーモーションで投擲。
　アクアマリンの宝石が埋め込まれたお気に入りのピアスは、音速で飛ぶ礫と化し、榴弾
の弾頭に突き刺さる。信管を強制的に作動され、榴弾はヘレンの眼前５公尺（メートル）
程度の位置で爆発。衝撃波と爆風を全身で浴び、ヘレンは床に倒された。

「なによ、こっちが少し優位に立っただけで、すぐにムキになっちゃってさ」

　あの状況で反撃を試みるロンに内心驚きつつ、すぐさま立ち上がる。グレネードの爆発
は思ったより範囲が広く、駐車場は白煙に飲まれていた。

「わたしはあなたにもっっと痛めつけられたんだから、ちょっとぐらい我慢―――っつ！？」

　彼女の口をふさぐかのように、立ちこめる爆煙の奥から飛来する銃弾。
　しかも一発ではない。何十発と大量に、軽快な音を響かせながら撃ち込んでくる。

　ヘレンは最初の三発を蹴り飛ばした時点で、銃弾を捌くのは諦めた。先ほどのマグナム弾
に比べれば威力は劣るが、それでも銃弾であることに代わりはなく、正面から挑むには
あまりに速すぎる。ここは回避に徹するべきだ。

「ふふん、この壊蛋（悪党）。ついに素手じゃわたしに勝てないって気付いて、鉄砲に
逃げるわけ。武と武の戦いを穢すなんて―――あなた、ほんとに賤胚子（ゲス）ね」

　軽功を使って軽やかに身を躍らせ、銃弾を避けるヘレン。車の屋根から屋根へと飛び移る
彼女は、口の滑りも軽かった。拳や蹴りが届かないのなら、口で攻撃するまでよとヘレンの
挑発は止まらない。
　しかし事態はそう楽観できる状況でもなかった。
　ロンの機関銃の狙いは正確で、銃弾を紙一重でかわすヘレンを少しずつ追い詰めてゆく。
ヘレンが車のボンネットから蹴り飛べば、一瞬後には銃弾の雨がそこを穿ち、エンジンを
ずたずたに引き裂いて車体を炎上させた。

　ヘレンが投げ付けたバイクと炸裂した榴弾と銃弾の豪雨に晒される自動車で、地下駐車場
は今や火の海と化している。そこに、ついでとばかりに投げ込まれるパイナップル手榴弾が、
炎を更に焚き付け、煉獄の様相を再現しつつあった。
　いくらサウナ好きなヘレンでも、さすがにこれはたまらない。一時的にせよ人の身を捨て、
夜族化していなければ、今頃は綺麗にローストされていたことだろう。

　アイヤー、と叫ぶヘレン。
　咄嗟にブーツの隙間から鈍く光る金属製の短い棒を取り出す。握りの部分に黒布が撒か
れたそれは剣の柄部で、剣格（鍔）を僅かに捻ると、じゃきんと音を立てて銀製の刃が
四段式に飛び出した。見た目は中国の時代劇などでよく見かける伸縮式健身剣だが、ヘレン
が構えるそれの刃渡りは二尺をゆうに超え、作りも両手仕様になっている。
　所謂"双手剣"だ。
　華やかで美しい健身剣と違い、酷く無骨な代物で、まさに人外の徒を狩るためだけに生み
出された武器である。
　が、そんな双手剣もヘレンが扱えば話は別だ。片手で剣を振り回し、時代がかった京劇の
演舞を即興で見せると、刃を返し、

「わたしに負けるのがそんなにいや？　わたしに討たれるのがそんなに屈辱？　わたしだって、
ハンターなのに。わたしだって、その権利はあるのに……！」

　灼熱地獄を駆け抜ける。振るう刃が風を巻き起こし、猛る炎を払いながら疾走。

「わたしの番でしょ！　どうして素直に殴られないのよ！」

　大きく振りかぶり、袈裟懸けに斬り落とした。

142 名前：ビリー・龍 ◆OClOnGFAng ：04/12/14 22:50

>>141 ヘレンｖｓビリー　「牙妓遊戯」

　まともに聞いてりゃお説ごもっともと関心すべきなのかもしれんが、
　なにしろこっちは頭に血がのぼってる。聞くわきゃなかった。

　熱気の生み出す陽炎を透かし見た一瞬。
　そいつは炎の一番強いところから飛び出てきた。
　短機関銃を振り向けるのと間合いに入られるのが同時、
　引き金を引くのと剣が機関部を叩っ斬るのが同時。

『……殴られないのよっ！』
　暴発した銃の向こうから白刃が滑り出、危うく退いた俺の胸板を斜めに横切った。
　深い。心臓まであと数センチってとこだ。
　本来なら肝を冷やすべきだ。冷や水には十分すぎる致命の一撃だったのだ。
　……が。

「誰が素直に殴られるかこの馬鹿娘っ！」
　俺はさらに退きながら引き抜いた投げナイフを投擲、
　時間差で予備の22口径を抜き打ち。クイックショットの暗剣術。

　矜持だのなんだの、そういう細かい事情は忘れた。
　是が非でもへこましてやらにゃ気が済まない。
　ああそうだ。俺の脳味噌は炎のせいでなく沸騰してるとも。
　だがそれがどうした？

　沸騰したオツムと裏腹に、身体は恐ろしいほどシャープに動く。
　なら十分だ。一発かましてやる。他に重要なことなんぞ無いのだ。

143 名前：ヘレン ◆twinsTLaE6 ：04/12/14 22:51

ヘレンｖｓビリー　『牙妓遊戯』
>>142

　擲たれたナイフ。弾くこともできたが、あえて肩で受けた。後ろに退くロンとの距離を
空けるわけにはいかないからだ。
　ナイフの投擲とは思えないほどの衝撃。身体が浮き、スピードが殺される。まるで肩一つ
そのまま持って行かれそうな威力だ。ヘレンは歯を食いしばり、痛みに耐えた。
　次の瞬間、空気が裂けた。ぱん、と間の抜けた銃声が三回四回と立て続けに鳴り響く。

　ここで、まだ。まだ反撃を諦めようとしないのか。
　ロンのひねた根性とタフネスさには、もはや驚愕を通り越して呆れさえする。

「―――っつこい！」

　人差し指と中指を揃えてのばした中華剣術独特の手の形"剣指"を左手で作ると、剣把を
手の平で躍らせ、剣身をくるくると回転させた。その勢いはヘリのローターも顔負けだ。
ロンの撃ち放った銃弾が次々に弾かれてゆく。
　最後の一発を斬り落とした。
　驚くほどに頭が冴えている。ここまで功夫が昂ぶることなんて、過去多くの戦闘を振り
返っても一度としてなかった。
　今ならできない技もでき、避けられないものも避けられそうだった。
　ロンとヘレンの相性は最高すぎて最悪ということか。
　一人ヘレンは納得して、身体を翻した。

　踏み込み足が床を射抜く。静かで重い低温が駐車場に響いた。あまりの威力に地が震え、
駐車されている多くの車が浮き上がる。燃えさかる炎ですら一瞬、跳ねたほどだ。
　もちろん、ヘレンの"震脚"はこの程度のはったりでは終わらない。あくまでこれは、
強烈な踏み込みから生まれた副産物だ。
　震脚によって、たっぷりと増したウェイトとスピード。それを存分に駆使して、ヘレン
はありったけの刺突をロン向けて叩き込んだ。稲妻の如き剣速が、一瞬で三十二手に及び、
まだ止まらない。まさに雷の嵐だ。
　突きを放ちながら、ヘレンの左手が剣指を解いた。ふっとそれが横に流れたかと思った
瞬間、先程まで彼女の肩に刺さっていたはずのナイフが消えていた。手中にもない。既に
それは一条の光となって、ロンの眼球目掛けて飛んでいた。
　刺突はあくまで牽制。かの小李探花に勝るとも劣らぬ必殺の飛刀が、ロンの光を狙う。

144 名前：ビリー・龍 ◆OClOnGFAng ：04/12/14 22:52

>>143 ヘレンｖｓビリー　「牙妓遊戯」

　瞬く間に十数か所をえぐられ、血に塗れながら刺突を捌く。
　弾の切れた22口径と、刃渡り20cmそこそこのナイフという粗末な得物で流し、弾き、
　急所以外に流れた攻撃を無視して本命の攻撃だけを受け、逸らす。

　チャンスを窺っていた。懐に入るチャンスだ。
　相手の剣捌きは（小娘の癖に）年季のいったものだ。
　それを一瞬、封じるためには……

　瞬間、娘の手元が霞んだ。
　俺に出来たのは、わずかに首の角度を変えることだけだ。
　目を貫いて脳幹を抉るはずだったその投擲は、眼球を抉ってこめかみを貫く。

　視界が半分死に、それでも、俺の神経は次の刺突の軌道を読もうと全力で働いていた。
　一つは、読みだ。フェイク抜きで急所を狙いにくるはずだ。心臓を。
　その軌道に左の肘を突き出した。
　剣が前腕骨を貫通する。読みがあたった。
　その瞬間、右手に持ったナイフで剣先をフックし、外に弾き出す。

　おそらく娘が剣を持ち出してから初めて、剣先が完全に俺から外れ、
　俺は一瞬の躊躇もなしに、その空間に踏み込んでいく。

145 名前：ヘレン ◆twinsTLaE6 ：04/12/14 22:52

ヘレンｖｓビリー　『牙妓遊戯』
>>144

　突きをあえて受けてみせ、死に太刀にする。不死の身体を持つロンだからこそ、一瞬の
躊躇いもなくできる行為だ。刺突の軌道を読まれ、次の手の流れを殺されたことに、
自分の剣術に絶対の自信を持つヘレンは驚きを隠せない。
　がしかし、ロンも右目と左手が死んでいる。じきに再生するだろうが、限りなく音速に
近い領域で対峙するこの状況において、その"じき"とやらはまだ遠い。

　ロンが素早い挙動で、容赦なく間合いを詰めてくる。
　踏み込まれるテリトリー。
　後ろに退けばまた双手剣の間合いを取り戻せるが、それではせっかく追い風を受けている
仏山からの"流れ"、を捨ててしまうことになる。いま、この状況で優位に立っているのは
自分なのだ。ロンもそれを知っているからこそ、こうして流れを断ち切ろうとがむしゃら
に攻めてくる。守りに徹しては、いつまでも向かい風を受けるばかりだからだ。
　だから退けない。
　ヘレンの道は、往く道のみだ。

　縮まっていく間合いに拍車をかけるように、一歩、踏み込んだ。
　互いの息が息が触れ合うほどに肉薄する二人。
　こうまで距離を詰められては、どのような攻撃も放ちようがない。
　―――そう思わざるをえないほどに密接する二人。

　ヘレンの右拳が、ロンの胸にとんと当たり、３センチほど離れた。
　瞬間、ヘレンの両面が見開かれ、周囲の空気がざわりと揺れた。炎が怯み、二人を中心
に灼熱の波紋が生まれたほどだ。
　体内で練りぬかれた内功の高ぶりが、全身余すことなく浸透するこの感触。何処か一点
から放つのではない。全身以て発するのだ。

「覇っ！」

　のかけ声と共に、拳がぶれた。
　ぱん、と空気が弾ける間の抜けた音。
　音の障壁をぶち抜いて、ヘレンの拳がロンの胸部――彼の唯一の弱点と言える心臓を
狙って突き出された。
　パンチにしろキックにしろ、その与える衝撃が一番強くなる距離がある。このスイート・
ディスタンスが極端に短いショート・パンチ。長年養われてきた功夫による発勁と、人外
の膂力から生み出される常識外れの加速力を組み合わせたことによって生ずる爆発的な破壊力。
音速を超えた拳。それがヘレンの必殺技が一つ、"ワンインチパンチ"だ。

「ようやくあなたをぶん殴れた」

　言うと、ヘレンは上目遣いにロンをにらみ据え、口だけでふんと笑ってみせた。
　

146 名前：ビリー・龍 ◆OClOnGFAng ：04/12/14 22:53

>>145 ヘレンｖｓビリー　「牙妓遊戯」

　カウンターだった。だが今更踏み込みを止められない。
　躊躇すれば死ぬ。踏み込む。踏み込み、上体だけを半身に捌き――――

　走った衝撃は、トンの級に達していた。

　胸骨をへし折って拳がめり込み、肺が叩き潰された。
　勢いに狙いが逸れたか、単に死に際だけはツいてるだけか……
　理屈はどうでもいい、とにかく、俺はまだ生きている。
　呼気と血が喉を逆流し、なおも俺は踏み込み、踏ん張った。
　衝撃に持っていかれないためだ。
　ブーツの底が路面と擦れて音を発しながら、俺の身体をその場に釘付けた。

「ハ！」
　牙をむき出した。血を吐き出しながら笑った。
『ようやく…』と呟いた女に、俺はまだ終わっていないことを告げた。
　俺の右腕が、たった今己の胸にめり込んだばかりの突き手を掴み取っていた。

「ハッハァ！」
　その腕を引く。腹の底から笑いが漏れてくる。
　俺は笑いながら、女の肩口に己が牙を振り下ろす。

147 名前：ヘレン ◆twinsTLaE6 ：04/12/14 22:54

ヘレンｖｓビリー　『牙妓遊戯』
>>146

　過剰過ぎる筋肉の酷使と急激な気圧の変化によって、毛細血管の悉くが破裂し青黒く変色
したヘレンの右腕。音速を超える拳を放ったとはとても思えない華奢なそれが、ロンの内蔵
を叩き潰す感触をしかと確かめた。

　―――外した。

　ヘレンは思わず、驚愕に目を丸くする。確かに彼女の拳はロンの胸骨を粉砕し、放たれた
勁力が肉と骨を伝播し、肺を押し潰した。背骨も衝撃で砕けているだろう。
　が、心臓はまるで無事である。
　この男は、超クロスレンジから打ち込まれる音速拳の打点を、踏み込みと体捌きによって、
紙一重でずらしてみせたのだ。
　しかもその上―――動かない。大型トラックの正面衝突などよりも遙かに大きい衝撃を受
けるはずの寸勁打を食らって――音速で飛来する拳だというのに――ロンは一歩も退いて
みせなかった。

「あなたって……とことんヤな奴ね」

　仏山無影脚と並んで、ヘレンの決め手とも言える伝家の宝刀ワンインチパンチ。それを
受けてまだ退かぬと言うのだ、この男は。

　内出血の影響で無惨な体を晒すヘレンの右腕が、掴み取られる。抵抗はするが、力比べ
でロンに勝てる道理はない。殆ど為す術もなく身体を引かれ―――次の瞬間には、彼女の
首脇に深々と牙が突き立てられていた。
　強烈な力で抱き竦められ、呆気なく身体の自由を奪われる。こうなると、いくら手練れ
のヘレンとは言え抜け出るのは至難の業だ。まして、もの凄い勢いで体内から血液を吸い
上げられているこの状況では。

「……ったわね」

　小刻みに震える身体。血を吸われるとともに、何かが送り込まれ、体内を静かに侵して
ゆく。鈍る思考。擬似的にエクスタシーを与えられたかのような錯覚に陥る。意識は胡乱に、
全てを流れに任せ、この快感に耽るのも悪くないと思わせる何かがあった。
　しかし、

「吸ったわね」

　それは別に身体のもっと深い、核と言える部分で渦巻く嫌悪感。全身が突き立つ牙の存在
を拒み、総毛立つ。羞恥心はやげて屈辱へと姿を変え、それは怒りへと昇華する。

「あなた、吸ったわね。わたしの血を、吸ったわね！　カザフにもまだ吸わせてあげていない、
誰にもあげていないわたしの初めての血を、吸ったわね！」

　しゃあ、とヘレンが牙を剥いた。血清による一時的な半吸血鬼化の副作用によって伸びた
犬歯は、ロンの雄々しいそれと比べるとあまりにも幼く、未熟だ。

「―――返せぇ！」

　うなじから首脇にかけて、噛み付いた。ぞぷり、と牙が肉に埋まる感触。もちろん、ヘレン
には吸血能力などない。そのまま怒りに任せて肉を引きちぎった。

148 名前：ビリー・龍 ◆OClOnGFAng ：04/12/14 22:55

>>147 ヘレンｖｓビリー　「牙妓遊戯」

　牙を抜く理由はなかった。たとえ己の喉が噛み破られても、だ。
　だが、そのとき俺の耳は、キン、という音を捉えていた。
　弾丸が空を切るそれと似た音だ。

　次の瞬間、もみ合っているその頭上を青白いそれが掠める。
――呪弾だ。
　悟った瞬間、俺は牙を抜き、首筋に食い込む牙を無理やり引き剥がした。
　のけぞった俺の鼻柱を呪弾が吹き飛ばしていく。
　それには頓着せず、俺は後ろに転がるようにして続けて打ち込まれた十発あまりの呪弾をかわした。

　射線の元になにがいるのか見るまでもなくわかっていたが、
　それでも俺は反射的にそちらを見ていた。
　黒いコートに青白い死人の顔。ブラックロッドだ。

　わずかに冷静さの蘇った頭に、周囲の状況が入ってくる。
　炎熱に埋め尽くされた地下駐車場、ブラックロッド、『Sassy Girl』、
　それに加えて、俺の耳は多人数の足音を拾っている。

　舌打ちをする。遊びに時間をかけすぎた。
　決着がつかなかったどころではなく、この状況から逃れるのは容易なことではないだろう。

――だが、ツキはいまもって俺のほうにあったらしい。

　駐車場のどこかで炎熱に炙られた車両がまた一つ爆発し、
　直後、ようやくにしてスプリンクラーが作動した。とんだ手抜き設備だ。
　撒かれた水が熱気に触れて水蒸気と化し、瞬く間に視界を奪う。
　俺は迷わず踵を返した。逃げるなら今のうちだ。

　その瞬間に、『Sassy Girl』の顔が視界に入った。物凄い顔をしていた。
　少しは堪えているかと思いきや――可愛くねぇ。
　脳裏が最前の“熱”を思い出し、俺は使い古されたサインを送ってそれを伝える。
　シンプルなサインだ。すなわち、中指をおったてた。

　出口へと走る。
　出会い頭に姿を見せた一団に奇襲をかける――呪装戦術隊の足元に滑り込み、
　半ダースばかりの重傷者を作って出入り口を渋滞させると、俺はそのまま外に走り抜け――

　俺はそのまま、二度と街には戻らなかった。

149 名前：ヘレン ◆twinsTLaE6 ：04/12/14 22:56

ヘレンｖｓビリー　『牙妓遊戯』
>>148

　牙を抜かれた途端、まるで魂を吸い取られたかのような脱力に襲われ、ヘレンは地面に
膝をついた。目眩で鈍る視界の向こう。肌を灼く蒸気の奥で、陽炎に揺れる人でなしの姿
があった。怒りが疲労を忘れさせた。牙を剥き、目を見開く。追おうと踵を浮かせたが、
とうてい間に合う距離ではない。
　ヘレンはいま一度、地面に"震脚"を叩き込む。衝撃に地が震え、コンクリートの床に亀
裂が走った。それでも収まらぬ彼女は、ロンの中指に己の中指を突き立てて応えた。
　最古の吸血鬼は、陽炎に揺らめきに消えた。

「ちょっと……！」

　まだ全身をのたうち回る怒りの行き場を求めて、ヘレンは公安の特捜官の無表情な顔面
を睨み据えた。ジプシーでもカザフでもない、完全な第三者である彼。
　まったく余計な横槍をいれてくれたものだ。元々これは公安局の依頼なのだから、何故
一任してくれないのか。あなたが邪魔しなければ仕留められたのに。何なら変わりにあなた
を"殴って"やってもいいのよ？
　滾る人外の血の影響も受けて、ヘレンはヒステリックな視線を特捜官に飛ばす。が、特
捜官がちらりと一瞥を返しただけで、そんな気は一瞬で霧散した。
　身の丈を超える杖を持ち、漆黒の制服に身を固める男は、公安局の切り札にして、法の
力の具現とも言えるＳランク特捜官"ブラックロッド"。ヘレンはもちろん、ジプシーや
カザフとて敵う相手ではない。むしろ明らかに違法なヘレンの"投薬"を咎められないだけ
儲けものである。ヘレンは気まずそうに目を逸らすと、頬を膨らませその場に座り込んだ。
暴虐無人、唯我独尊を極める彼女でも、ブラックロッドには逆らえない。
　暫くすると、カザフとジプシーが呪装戦術隊の隊員に連れられて来た。話によると、ト
ラップを強行突破しようとして、逆に返り討ちに合い拘束されていたらしい。まったく
間抜けな話だ。結局、三人がかりで挑んでおきながら、みすみすロンを逃したことになる。

「役立たず」とヘレンがカザフに八つ当たりした。
「相手が悪すぎた」とカザフが肩を竦めた。
「駐車場を壊すことはできても、吸血鬼の一匹も捕まえられないのね」
　とジプシーが嫌みを言った。
「ねずみ取りに引っかかって半べそを書いていたのは誰かしら」睨むヘレン。
「チンピラ吸血鬼に手込めにされかけた子が何か言ってるわ」睨み返すジプシー。
　まぁまぁ、といさめるカザフ。
　ヘレンはふん、と鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
　これで終わりじゃない。このままじゃ終わらせない、そればかり考えていた。

　猟奇的な彼女の真髄は、これからだ。

150 名前：◆OClOnGFAng ：04/12/14 22:59

>>149 ヘレンｖｓビリー　「牙妓遊戯」



　　　　　　一年後―――――

151 名前：ビリー・龍 ◆OClOnGFAng ：04/12/14 23:01

>>150 ヘレンｖｓビリー　「牙妓遊戯」

　俺がたどり着いたのは、雑多な人間達のひしめく街だった。
　上海――そのなかでもいっとう低級な、金の無い奴らと
　法と折り合いのつかない連中のたむろするストリート。
　ちょいと油断をすればあっというまに財布を掏られ、それならまだマシなほう、
　うっかりすれば命ごと盗られかねないそんな場所。
　泥臭い活気と熱気が排ガスとなって街を染める懐かしのスラムの空気。

　居心地の良さに、口元が緩む。
　ゴミはゴミ溜めに、下衆はスラムの裏通りに。

　人の流れを縫い、あるいは流れに乗りながら俺はひしめく人並みを闊歩する。
　少々薄汚れた赤い革製のジャケットは、三日もすればこの街に馴染んでしまうに違いなく、
　俺はいつしか、ここで、またなにか商売でも始めるか、そんな考えを頭の片隅で転がしている。

　路上に出店が張り出し、呼び込みが大声をあげていた。
　小物類から日用品、素性の怪しい貴金属類まで、ありとあらゆる品が並ぶ。
　中で俺の目を引いたのは、肉の塊をぶった切ってその場で調理する宵夜だった。
　まだ血の滴る肉塊が切り分けられ、火にくべられる。
　ジュウと脂が跳ね、肉の焼ける匂いが食欲をそそり、
　そんな俺の視線に気づいたのか、店の主人が俺に声をかけた。
　一皿いくらに秘伝のタレ――――たしかに美味そうだったが、俺はそれを断った。
　断り、歩みを進め……俺の視線は、人並みのほうへと泳いでいる。


　どうせなら、可愛い姑娘（クーニャン）のほうがいいってもんさ。


　こんなスラムに出かける娘はたいがいどっか突っ張った不良娘ばかりで、
　もっとも、俺はそういう娘は好みだった。

　俺が目をつけたのは、パンツスーツに、ちょいと気取った歩み姿。
　後姿だが、美人だろうと見当をつける。
　人ごみがうまいこと途切れたところで気を引こうと声をかけ、
　振り向いた様に俺は微笑みかけるが――――


　はてさて。
　俺は神様が大っ嫌いだが、なかでも運命の神様ってやつがいっとう嫌いなんだ。

152 名前：ヘレン ◆twinsTLaE6 ：04/12/14 23:04

ヘレンｖｓビリー　『牙妓遊戯』
>>151

　―終幕劇―

　軽薄には違いないが、不愉快ではなく、それ所か何処か安心感さえ漂わせる呼びかけ。
　ほんの少しだけスパイスの効いた危険を期待してこの大路を歩く少女からすれば、なるほど、
この誘い文句は理想のそれ。格好の餌だろう。
　真実、どちらが餌でどちらがオオカミかは明白だが。

　が、今度ばかりは相手が悪い。彼女はにっこりと笑って振り返った。
「わたしを何処へ連れて行ってくれるの？」や「一体どんなスリリングな刺激を、教えて
くれるの？」と言った、この街の少女らしい好奇心に満ちた目で、軟派男を見つめる。
　軟派男の方は逆に微笑みを凍らせ、まるで祖母の霊でも見るかの如き形相を作っていた。

　"軽薄"と言う名の襤褸を纏ったオオカミは、餌と勘違いして天敵を捉えてしまったのだ。
　それは巨体を誇る大熊か、はたまた奮迅果敢の勇猛さを見せる獅子か。
　ともかく少女は、男の間の抜けた表情にくすりと笑ってみせた。

　それは一年前のあの日から、まったく変わりを見せない、我の強そうな人を見下した笑み。
　外見的には一年と言う時を経て、やや艶を増したように窺える。もう一年経てば、とても
少女とは呼べぬ、可憐さと妖艶さを併せ持った絶世のものに変貌を遂げていることだろう。
　どちらにせよ、そんな彼女が人外の徒が跋扈する夜の世界で、拳一つを武器にして狩りに
勤しむ"達人"にはとても見えない。剣呑な血臭よりも、ブルガリのオムニア辺りがよく似合い
そうな美達者だ。

　少女は伸びた襟足の髪を無造作に手で上げると、シャツの襟を開き、首筋を見せつけた。
　ストローで突いたような傷跡が二つ、並列している。紛れもない吸血痕だ。連邦指定の
医務局で然るべき処理をしたと証明される刻印も同じく彫られていた。
　それに対する少女の言葉は無かった。
　ただ、きらりと瞳に殺意が宿っただけだ。

　雑踏踏みしめる人混み真っ直中だが、どうやらお構いなしのようである。現に、軟派男
の背後からは彼女とは別に一対の男女が歩み寄ってくる。
　一方は黒いチャイナドレス姿、一方はブラックスーツの上に無造作に漆黒の長杉を纏っ
ている。どちらも少女とは違い、とても穏やかではない雰囲気を携えた、手練れの武芸者
の様相だ。今にも間合いを一瞬のうちに殺し、男に仕掛けてきそうな殺気を携えている。

　少女はそちらにはちらりとも目をやらない。ただ、好奇心と殺意と、そして余裕が混ぜ
合わさった瞳で男を見上げていた。
　この頃になると男も事態を飲み込み、呆れ半分に嘆息を漏らしている。が、その表情は
満更でもなさそうだ。

　互いに、相変わらず言葉はない。
　口を開けば罵詈雑言しか出てこないと、どちらも知っているのだ。
　そんなことに肺を動かし、喉を刺激するのは無駄である、とも思っている。
　こんな奴のために一切合切の体力を用いたくないのだ。
　ただ一分一秒でも早く、相手をぶん殴ってやりたい。少なくとも少女にはそれしかない。

　長い沈黙の末、少女は腰から獲物を抜いた。短い鉄棒に獣皮が撒かれただけのように
見える無骨なそれが、抜く動作のままに討ち薙がれる。途中、剣格が捻られ、四段式の銀の
刃が飛び出している。踏み込み足は強靭で、まるで地面を踏み抜くかのような勢いで蹴りこ
まれている。地が低く揺るぎ、周囲の人間が地震かと疑ったほどだ。

　男はそれを、左手の義手で受けてみせた。
　黒光りするそれと銀刃が重なり、火花が散る。照らされる両者の顔は、怒りとも愉悦とも
取れる曖昧な表情で歪んでいた。
　ただ思うのは、

「まるで子供のようにはしゃぐのね」

　人波を掻き分け近付くジプシーは、二人を見て深く溜息を吐いた。




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　→To be next Game.OK?

153 名前：◆OClOnGFAng ：04/12/14 23:12

「決斗！　決斗！」


ヘレンｖｓビリー　『牙妓遊戯』レス番まとめ

>108>109>110>111>112>113>114>115>116>117>118>119>120>121>122
>123>124>125>126>127>128>129>130>131>132>133>134>135>136>137
>138>139>140>141>142>143>144>145>146>147>148>149>150>151>152

154 名前：名無し客：04/12/31 00:18

さ〜て、もうすぐ新年ですが、毎日欠かさず本スレ覗いてる私のような
暇人は、一体何人いるのでしょう？

155 名前：左手 ◆lefTHaNdTs ：04/12/31 01:45

ここに一人居る。人ではないがの。

156 名前：遠野秋葉 ◆xkLa2AKIHA ：04/12/31 01:50

大体２ヶ月ぶりですけど居ます（何

157 名前：魔刃シャハル ◆HesAhAr5go ：04/12/31 01:54

レアキャラきちゃったー。
いえ、見ていると言えば見ていますが。

158 名前：三輪坂真言美 ◆qJKoTodamA ：04/12/31 01:55

えーっと、見てるだけなら。

159 名前：Kresnik ◆WEISS0lzjQ ：04/12/31 02:02

　レスならいつでも貼れる。
　が、ちょっと待ってくれ。
　……って質問でもないな。自分が見た日にレスがついてたら確認はするよ。
　

160 名前：遠野秋葉 ◆xkLa2AKIHA ：04/12/31 02:04

>>159
後は前にお話したとおり、琥珀待ちですけど………
琥珀に連絡して都合がつかないなら貼りましょうか？

161 名前：アルビノ“山城友香”（覚醒） ◆0DYuka/8vc ：04/12/31 02:06

これが、見ていたりしたわけで。
今のところ、レスに追われてるのが現状だけど。
尻尾を噛めば、ウロボロスになれるかしら？






───そういえば、前スレの途中まとめ、まだやってなかったわ！（何

162 名前：Kresnik ◆WEISS0lzjQ ：04/12/31 02:06

>>160

　ああ、いえ。
　俺はアーヴィの方もありましたから……そちらは、秋葉さんのご都合次第で。
　俺は、俺が居る間ならいつでも構いませんから。
　

163 名前：望月ジロー ◆BBB.k09/yM ：04/12/31 02:18

新参ではありますが、見るぐらいならいちおう私も。

164 名前：Kresnik ◆WEISS0lzjQ ：04/12/31 02:19

>>162

　……と、でも、どちらにしろ今日はそろそろ俺が限界みたいで。
　どうあれ貼るならミスはマズいですし、そろそろ休みます……申し訳ない。
　ただ、最近お見掛けしなかったから、顔が見られて安心しました。

　では、また。お休みなさい、秋葉さん。
　

165 名前：Kresnik ◆WEISS0lzjQ ：04/12/31 02:36

　も、勿論、ええと。
　無視してた訳じゃなくて、ええ。俺は大晦日の準備で、限界だったり、色々。
　……三輪坂さん、お休みなさい。
　

166 名前：レッドアリーマー＠紋章編 ◆99Arremerg ：04/12/31 03:30

…健在だ、無論な。生憎と当面は見物客の身分だがな。
元々我が本分は戦いにこそある…観客が望んでいるなら如何なる闘争も受けてくれようさ。



…当面は他所優先かもしれんがな。

167 名前：ラルヴァ ◆hALARVAIdY ：04/12/31 19:27

生存証明くらいはしとかないとね。

……じゃないと、歴史から抹消されかねないし。

168 名前：名無し客：04/12/31 23:12

≫167　ラルヴァ

お前はそもそも『黒歴史』の中の存在だろう。

169 名前：Reiot Steighnberg ◆PnBlHnYxGc ：04/12/31 23:55

（ぬっと顔を出す）

……ん。
とまあ、そーいうことで。
（手をひらひら振りつつ消える）

170 名前：名無し客：05/01/01 00:12

明けましておめでとう御座います。
本年もまた血みどろな戦いが繰り広げられますように。

171 名前：名無し客：05/01/07 12:42

もう大勢でバトルロワイヤルとかしねーのかな。

172 名前：ラルヴァ ◆hALARVAIdY ：05/01/07 22:48

名前を呼ばれたみたいなので、レスしてみるわ。

>>168
……否定しない（出来ないとも言う）けど、
一応ヴェドゴニア/鬼哭街のイラスト集にも出てるのよ。
だからと言って黒が白になるわけじゃないけどね――――

173 名前：遠野四季 ◆YGYkr81p3k ：05/01/11 18:17

　新年早々、せっかくのレスを無下にするワケにもいかんからな。

>>170
　応。こちらこそって奴だ。
　昔のような華やかさを求める連中には物足りないだろうが、
　この大殲、まだまだ終わったワケじゃない。
　衰退の極みをみせながらまだ足掻きに足掻くどうしようもない闘争狂は多くいる。
　その先にあるのが滅びだと分かっていても、止められやしないんだな。
　何故かって？　なぜそんな愚かな真似を、とキサマは言うのか？

　ヒヒ、単純なコトよ。
　"愉しいから"さ！
　沈む大殲丸と心中することが、じゃあないぜ？
　そんな独りよがりのロマンチズムに縋る気なんて微塵にもない。
　ただ純粋に、ただ愚直に、大殲が好きで愉しいからよ！
　ひははははは！　オレ達は国家闘争主義大殲者党の党員だ。オレは親衛隊の遠野四季だぁ！！
　ひあははははははは！！


>>171
　舞台と状況と前振りだけ用意して、あとは剣林弾雨血飛沫舞い散る殺戮劇。
　懐かしいな。
　あれを数ヶ月周期で繰り返してきた狂乱の日々から数年を経ても、
　未だ身は震え血は滾る、が……。
　いざやる、となると難しいと言わざるを得ないような気はする。

　何よりあの頃とは時が違う。状況が違う。
　面子集めと時間の都合を合わせるのは、かなり困難であろう。
　かつては大殲にぞっこん惚れ、心も体も捧げた連中とて、
　時が経てば他に魅力的な遊び場を見付けたりもする。それが当然だ。
　中には狩られて死んだモノや、職を変え闘争の第一線から遠ざかったモノとているだろう。

　幸いこのオレ、遠野四季は夜を生きるニンゲンだ。
　生活の中心は夜にある。が、他の連中もそうとは限らない。
　やはり真っ当に昼生き夜寝る奴等が大半を占めるだろう。
　そう言う中で時間の都合を合わせると言うのは、コレなかなか難しいものだ。
　かく言うオレも週末はとても参加できぬ身でな。
　琥珀が袖を引っ張り離してくれんのよ……ヒヒ。

174 名前：遠野四季 ◆YGYkr81p3k ：05/01/11 18:20

　しかし、かと言ってせっかくの名無しの意見を「無理だ」の一言で叩き返すのも、な。
　あまり褒めれた行為ではないだろう。
　よしよし、ここは「前向きに見当させてもらう」と日本人らしく答えておこうか。
　なに、「やります、やってみせます！」と答えるのも良いのだがな。
　生憎とオレはそんなに偉い立場にゃいないし、トモダチだってこの通り……少ないのさ。

175 名前：ヴァン・ヘルシング ◆VAN.HnGG5Q ：05/01/13 13:41

　ゴミ掃除か。おれに相応しい場所だよ、全く。
　ああすまん。おれの名は、ヴァン・ヘルシング。ヴァチカンの存在しない部署に所属する、狩人だ。
　おれの名を聞いた奴は二つの反応をする。「畏怖」か「憧憬」かだ。
　お前等はどっちの目でおれを見てくれるんだ？
　最後に。「ヘルシング」と名乗っちゃいるが、英国国教騎士団とも、
　アムステルダム大学の名誉教授とも関係が無い。気をつけろよ。

出典　： ヴァン・ヘルシング
名前　： ガブリエル・ヴァン・ヘルシング
年齢　： 不明
性別　： 男
職業　： ヴァチカン所属のモンスターハンター
趣味　： なし
恋人の有無　： なし
好きな異性のタイプ　： 積極的な女性以外なら、歓迎だな。
好きな食べ物　： なし
最近気になること　： 七年前以前の記憶が無いこと
一番苦手なもの　： 殺しきれない化け物
得意な技　： 武器係、カールの作った武器と己のカン
一番の決めゼリフ　： （胸の前で十字を切り）「安らかに眠れ」
将来の夢　： 記憶を取り戻す、それでいい。
ここの住人として一言　： 化け物が多すぎるな。
ここの仲間たちに一言　： おれが聞きたいのは二つ。「どこに居るのか」「どうやって殺すか」だ。
ここの名無しに一言　：おれが罪人か聖者かは、おまえ自身の目で確かめることだ。

ここに居るに当たって、おれが使う武器を紹介しておく。

・リボルバー拳銃
　護身用のリボルバー拳銃だ。おれは二挺持っている。

・連射式ボウガン
　ガスの力を使って矢を連続発射するクロスボウだ。
　悪くない連射力で、おれも好んで使っている。
　もちろん、やじりに聖水をかければ、化け物だって殺せる。

・回転ブレード
　バネ仕掛けで回転する手持ちの丸鋸だ。手に持って使うほかに、投げつけることだって出来る。

・グリセリン48
　爆薬だ。たった一滴でも相当な爆発力がある。単体では使わず、
　組み合わせて使うのが主だな。

・銀の杭
　杭先が飛び出し式になってる。あとは何の変哲もない銀製だ。

・謎の武器
　カールが12年かけて作ったものらしい。中身はベスビオス火山のマグマと、
　ゴビ砂漠のアルカリ物質を圧縮したものだ。
　こいつは太陽に匹敵する光と熱を出すんだそうだ。正直どう使えばいいかはわからん。

　さて、おれのカテゴリーだが、言うまでもなくAだ。

176 名前：名無し客：05/01/15 21:08

ラルヴァｷﾃﾀｰ
明けましておめでとう御座います。

177 名前：比良坂初音 ◆HtiOHATUNE ：05/01/25 23:55

ふぅ…ここに降り立つのも久しぶりね。
そろそろまた溢れる血潮と硝煙の香りが懐かしくなってきましたもので
また、遊ばせていただこうかしら…

くくっ…ふふっ…うふふふふっ

178 名前：名無し客：05/02/12 01:10

皆さんご無沙汰ですなあ。ち〜とも更新されてないし・・・。
　　はっ！！
まさか、受験シーズンだからかっ！？

179 名前：名無し客：05/02/12 01:21

>>178
お茶でも飲んでマータリとまとうや。

180 名前：Kresnik ◆WEISS0lzjQ ：05/02/12 01:24

　溜めてる分くらいしか貼れないだろうね。

181 名前：名無し客：05/02/12 07:27

太陽板のスレはこの度整理対象になったので次回のテンプレートから外しましょう。

182 名前：魔刃シャハル ◆HesAhAr5go ：05/02/12 09:03

次回……ねぇ。
このペースだと次スレが建つのはいつになることやら。

183 名前：名無し客：05/02/12 11:49

まだあったんだ。太陽のスレ。

184 名前：使い走り：05/03/05 09:08

>>179
ちわ〜、ご注文の烏龍茶をお届けにあがりました。
え、何？注文したのは宇治茶？烏龍茶じゃないんですか！？
あ・ああ・・すいません、すぐに代わりを！
だ、だからころさな・・・・・・・・・・・・・


どさっ・・・

何か重いものを落とすような音が辺りに響いた・・・。

185 名前：名無し客：05/03/26 16:57

ぷっ

186 名前：名無し客：05/04/09 00:38

187 名前：“東の龍王”セイ ◆E5bywsLong ：05/04/09 19:57

>>184
――そう縮こまらなくとも大丈夫、茶運び結構。
わざわざの給仕疲れたであろう、まずは重荷を下ろせ。
（力場思念（ハイド・ハンド）で、“重いもの”――>>184の荷物を落とさせる（ 、　、　、　、　、））


それと、余は宇治茶より烏龍茶のほうが好み。
コタロウも烏龍茶は好きだと申していた。気にしない。
そんなに怖がるな、楽にせよ。


「龍殿、少し遅レスにすぎませぬか？」
……気にしない。

188 名前：名無し客：2005/04/19(火) 22:22:23

189 名前：名無し客：2005/05/05(木) 00:24:49 ID:???

最近碌な書き込みがないな。この闇に住まうものどもよ、ここらで問おう。

そのあぎとにあるべき鬼の牙は
　　　　　　　　　　　−−−折れたのか？

190 名前：Kresnik ◆WEISS0lzjQ ：2005/05/05(木) 00:30:03 ID:???

　まさか。
　どっちにせよ……少なくとも、俺は死んじゃいない。

191 名前：ミラ・ヘルシング ◆KpWAN/OGRE ：2005/05/05(木) 15:18:05

　だったらあなたが相手してよ……もぅ。
　わたしは少し、ただ少しだけ退屈を享受していただけだから……。
　こういうのもいいかな、って。
　でもあなたがそれを赦さないのなら。あくまで闇を望むのなら。
　おっきな牙の持ち主が、あなたの胸を穿つでしょう。

　なんてね。

192 名前：マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. ：2005/05/20(金) 03:29:05

…………はてさて。
この地に足を踏み入れるのは何ヶ月、いやいや何年ぶりであったか。
まあ我らにとって数年数十年などたいした歳月ではあるまいが、人間にとってはそうもいかんか。

さて……そう言って出てきたはいいが>>189よ。
あいにくとわらわは、鬼の牙などというものは持っておらぬのう。
夜に生きるものではあるし、この牙は確かに血を吸うためのものではあるが。

さりとて、おぬしの気持ちそのものは分かる。
この地にはわらわも幾度か身を置いた。
ここがこうまで寂れてしまっておるのは、まさしく寂しいものじゃからしてな。
ま、どこぞで一つ動き出したようではあるが。

そうじゃ、わらわとて居たたまれんのじゃ。ここがこのままというのは、な。
ゆえにわらわはこうして出てきた。一つ宣言をするために。

――我に秘策あり、と。


ふふ、なーんてかっこつけてみたが、まー要するに二、三提案があるということじゃ。
もしかしたらここを活性化させられるかもしれん、そういう提案がな。
どうじゃ、誰か話を聞いてはくれんか？

193 名前：名無し客：2005/05/20(金) 03:42:52

聞きましょう、聞くだけならね。
話されない言葉は誰にも届かない。
しかし、一度話せばその言葉は残ります。
たとえ今ここに居ないとしても、ここは耳のいい人が…まァ「人」に限りませんがね。
なんにせよ、たくさん居そうですから。

194 名前：Kresnik ◆WEISS0lzjQ ：2005/05/20(金) 03:47:31

　っつーか、一つだけじゃなくて動いてるんだけどな。貼れてないだけってのもある。
　それぞれの都合があるんだ。
　今はそれだけで善しとするべきかとも思ってるよ。

　方法ってのが場所に対するモンなのか、個人的なモンか……前者で効果があるなら
是非、だろうけど。
　

195 名前：ブラムス ◆vOzBAMUTHU ：2005/05/21(土) 03:22:40

…或いは、折れれば楽になれるやもしれんがな…（微苦笑
この孤高とさえ言っていい至高の座、千の年月を越えても満足を覚えるには遠い。
故に未だ彼方の昏がりで闘いを求め、動いてもいる。
満足のゆくものが出来上がっていないため、此方の側で待たせる状況が続いてはいるがな。

>>192
……この場であるかぎり或いは必然なのだろうが、やはり奇異と言う他は無いな。
いや…ならばこれも何かの宿縁と捉えるべきか。

構わぬ、不死者を統べる私でよければその耳を傾けよう。
存分にお前の秘策を朗じるがいい。

196 名前：望月コタロウ ◆BBB.k09/yM ：2005/05/21(土) 03:28:46

うんっ！　ぼくも聞く聞くー。
だって、兄者もここに一応参戦してるんだもん。他人事ってわけでもないし。

……マリちゃん、どんなアイデアがあるのかな？

197 名前：マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. ：2005/05/21(土) 03:49:50

>>193の名無し、クルースニク、ブラムス、コタロウ……うむうむ、皆良い返事じゃ♪
きっとそう言ってくれると信じておったぞ。

さて、では前置きはこれくらいに……っと、そうじゃなその前に。

>>194　クルースニク
>>195　ブラムス
確かに、そうであったな。
会議板にて正に深く静かに進行しておるものも多い、と。
わらわ自身は離れ気味であったがゆえの、まあ不覚じゃ。
まあ、>>192のは「新たに一つ動き出した」と脳内補正して、あとは許してくれんか。


では、改めて……提案を。

198 名前：マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. ：2005/05/21(土) 03:50:24

まず、ひとつ……レギュレーション。


『登録制度の撤廃』


読んで字の如く。
最初の「自分はどこの誰々だ、参戦する。能力は〜」というプロセスを完全廃止、
誰でも――無論、>>2の『吸血』のロジックというやつに従った上で――好きなときに好きに相手を募って
やり合えるようにする、という事じゃ。

……この登録制度、本来はこのスレがキャラネタ板にあった頃に、誰が実際に住み着いておるのか明確にするために
用意された代物であった。
じゃが、それはあくまでその頃の話。
全体がコミュニティの様相を呈すこの板にあって、あえて参戦登録というプロセスを踏む必要は、
わらわには感じられん。
のみならず、むしろこのプロセスを要するがために、二の足を踏む者もおったのではないか？
そうとすらわらわは思うのじゃ。

状況（環境と言うべきか）は変わり、必要性はほぼ消失し、デメリットばかりが残る。
であれば、この登録制度……必要あるまい？

ああ、重ねて言うが『吸血』のロジックは絶対じゃ。
参戦というプロセスをはずす以上、ここはなおさら崩すことを許されん大前提。
これ無くして、ここは吸血大殲たり得ぬのじゃからして。


ふたつめ。
関連板・関連スレ、>>3の関連リンクについて。

例えば相手募集スレ、感想スレ、議論スレ。
今現在はそれらは大殲板（http://charaneta.sakura.ne.jp/vampirkrieg/）にあり、適宜こちらを使うことになっておる。
しかし、ここはやはり他からすれば外部板であり、足はどうしても遠のきがちじゃ。
一方この一刻館にも感想スレ議論スレはあり、何らかの募集等には相談スレが使われる。
で、あれば……我らがこれらスレを活用しても、メリットこそあれデメリットはないのではないか？
すなわち


『関連スレの一刻への統合。
可能な限り、一刻館内のスレでまかなうようにする』


相手募集は相談スレ、感想・議論スレは言わずもがな。
こうして一つところに集めることでより集客率（と表現させて貰う）を高め、活性化への一助とする……
と、そういうわけじゃ。

なお、この場合大殲板内の当該スレは不必要となる。
そうなった場合、あの板は今後どうすべきかという事になるが……はてさて。
わらわ個人としては、これは向こうの管理人に任せるのがベターかと思うが。
潰す、継続する、形を変える……いずれにしても、な。

その他……
ZEROスレは、広報用としての意義はもはやほとんど残っておらんな。
質問用と改めて銘打つか、一種の無法な地下スレとして放置か……まあそんなところか。

個々の会議スレ。
会議板（http://jbbs.livedoor.jp/game/1721/）を使うのも良いが、RH-板に立てても良いのではないかと思う。
どちらでも良い、併用……というのが妥当なところかのう？

199 名前：マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. ：2005/05/21(土) 03:51:42

と、まあ長々と書いたが……要するにアレじゃ。

『鋼鉄戦記』ロボット闘争・イベントスレッド
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1066227747/
鋼鉄のコックピット　〜ロボット大殲待ち受け＆戦闘リクエスト受付希望所〜
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/053668822/

ここのような、募集→闘争というシンプルな形にしてみよう、
という提案じゃな、これは。
多少なりとも、状況改善になりうるのではないかと思うのじゃが？

ちなみに、上記に付随して

・いつか望月某が提案しておった「板トップに募集バナー設置」を
　このタイミングで行う

・登竜門スレと提携し、一種の実践稽古のような形で相手を募集、
　参加者の技能向上を図れるようにする

というような案もあったりするが。

ま、今日のところはこんなところかのう？
どうじゃろうか、わらわの案は？

200 名前：Kresnik ◆WEISS0lzjQ ：2005/05/21(土) 03:58:05

　今更だな。
　っつーか、登録に関しちゃ実は登録してない俺は耳が痛い。

　正直どう変わるか……ここまで固定観念が住み着いてると大差無い気もするけど、
反対する部分はないよ。どうせ俺は俺でやれる時にやれるだけだし、第一、そんなに
時間だって残ってない。意見を上げるとするなら、何も。
　オーライ、どっちも認めるよ。

　主体になってたメンバーの意見がどうなのかは知らんが、最近見てないからな。
そこまでは解らないし、俺の意見は肯定でも否定でもない。
　俺からはそれだけだ。
　

201 名前：Kresnik ◆WEISS0lzjQ ：2005/05/21(土) 04:01:10

　あ、でも一つ。
　会議板の方はある程度数が建っちまってるし、あれはあれでいいんじゃないかな。
級に俺達関連のスレがこっちの予備板に建っちまっても、悪戯に増え過ぎれば見辛
くもなりかねない。

>>199

　反対はしないよ。
　ただ、これだけ凍結したままの会議も多いし、動くならまずはそっちになるだろうか
ら……既存の面子が動ける期待は、あまりないんじゃないかと思うけどさ。
　

202 名前：左手 ◆lefTHaNdTs ：2005/05/21(土) 09:34:30

登録……そんな物もあったのう。
……細かいことは置いといて。

>>198-199
よりシンプルな物に移行するのは決して悪いことではない。
ないが……
個人的にはそこまでやるならいっそ全く新しいのを作った方がいいと思う。

組織としては形骸化し、人の流れは停滞し、人員は老朽化しつつある。
ついでに下手に古いが故に敷居が高い四重苦。

これを生かそうとする位なら全てをリセットし、ゼロからやり直す方がまだしも建設的じゃな。
既存の者でも未だに殺る気のある奴ならばそれでも集まってくるだろうよ。
現状のスレは会議の方の消化場所にすればいい……動いてる会議も少ないし十分じゃろう。

まあ、それをやる根性のある者が居なければどうしようもないのだがの。

203 名前：閑馬永空：2005/05/22(日) 00:03:25

外様の身ゆえ、日の当たる所に参じるのは憚りあるも、暫し……。

>>198-199
極論を云えば、本すれと会議室さえあれば大殲と云う形式は成り立つ訳ではある。
往時の勢いを……とまでは無理だろうが、何がしかの効果はあると存ずる。
それは例えば、一時的な効果に終わってしまうにせよだ。

一つ目について。
「登録はしたが闘争は無し」「登録はせずとも歴戦」などの例、いずれも多々ある。取っ払って
も不具合はあるまい。
話はやや逸れるが、「殺伐雑談スレ」などは、見るとそれなりに動いているようだ。
あの辺りを通じ、別の層を呼び込めるやもしれんな。

二つ目について。
現状、会議板を除き、旧大殲板系列は本すれの進行には関係ないと云える。
これにも特に重ねる意見はない。

この辺りの新制度が整ったら、告知も兼ね、過日のように祭り（短文主体で）でも開いてみるの
も良いかもしれんな。
ああいう催しが切っ掛けで参戦という向きは、意外と多いし喃。


また>>202で左手翁の言、「りにゅーあるではなくりぼーん」も、さて実際に先頭に立つ者はと
問えば、本人も仰せの通り更に至難と思う。
人材の点もだが、何しろSS風れすにてやり取りと云う、すれっどの立ち位置からして人を呼び込
み難いものがある。
で、あるならば、べすとは望むべくもないが、べたーなら――と云うと些か言葉が良くないか。
許されい。

新規参入、集客の大幅な見込み有りや無しやと云われれば、首を傾げざるを得ないのが本音だ。
そこを弁えた上で、しかしマリアベル殿の意はよく判るし、改正には賛成しよう。

204 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/05/22(日) 07:36:39

　予備は別に閉鎖でいいんじゃなーい？　残すべきスレ……なにか、あるかな。
　ログならあたしも、そこら辺でうじゃうじゃと湧いてる野郎どもも持ってるから、
「ほしぃー(>_<)」って言えばすぐ手に入るしね。
　会議板はまぁ、移りたい奴が移ればいいじゃん？

205 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/05/22(日) 07:46:33

　で、次はどんなロートルが顔を出すか賭けてみよーぜ。

　大殲には顔を出さねぇ癖に、一刻には頻繁に顔を出す熱帯吸血姫（別人説濃厚？）
　大殲には顔を出さねぇ癖に、地下スレにはそこそこまめにレスを返す機械人形。
　大殲には顔を出さねぇ癖に、地下スレにはそこそこまめにレスを返すカニバル野郎。
　大殲には顔を出さねぇ癖に、自スレではまめにレスを返しまくる天文部部長。
　大殲には顔を出さねぇ癖に、自スレで大殲とは一切関係ありませんって顔で電波振りまくシスコン野郎。
　大殲には顔を出さねぇ癖に、一刻の自スレにも顔をださねぇー人間失格レイオット・スタインバーグ。

　さぁー、どれが来ると思う？
　倍率はまだ出てないよー。さぁ、賭けた賭けたー。
　

206 名前：名無し客：2005/05/22(日) 10:02:39

>>205
大殲には顔を出さねぇ癖に、レコ姫フィギュアがガチで　ぱ　ん　つ　は　い　て　な　い事を確かめてる堕落天使。

207 名前：七荻鏡花 ◆gox9SAToRI ：2005/05/22(日) 10:32:48

ここで流れを破って「大殲には顔を出さねぇ癖に、地下スレも放置気味のサトリ」が登場してみようかしら。

>>198-199
そうね、大筋まりべーの意見に賛成だわ。
反対する要素もほぼないし。
で、案件への個別回答ね。

一つめ、登録について。
撤廃でいいでしょ。
ただ、動いているキャラの把握はしたい気がするのよね。
だから、スレなり立てて自己紹介だけでもしてもらうとかはどうかなって思うわ。
一応本スレで参戦時にやるけど、それだけでまとめたスレをってことね。
自己紹介で敷居高いって言うのはさすがにないと思うし。

二つめ、関連スレについて
反論無し、ってとこね。
あたしも巡回板は減らしたい（笑）

>>202
リセットするのはいいけれど、それなら大殲ってのにこだわることもないのよね。
コミュニティとして閉じてるから入りにくいって言うのはわかるけれど、同じものを作ったら比較されるだけだもん、そりゃ二の足も踏むってものよ。
だから、革袋は変えないままで少しでも中身を新しくするのがいいんじゃないかな。

>>203
祭りには賛成。
あのノリは集客にもなるしね。
……今のあたしに祭りで突っ走る力があるかは別だけど（笑）


ま、こんなとこかしら。

208 名前：魔刃シャハル ◆SaHarLKKlw ：2005/05/22(日) 12:59:02

顔は出していますじょ？　ええ、極稀頻度ですが。

>>188-189
現状、登録制度も関連板自体もあってなきが如しという雰囲気ではありますが
ここで改めての宣言する意義はあるのではないでしょうか。
私の様に（M）主体のモノもいるでしょうから。

まぁ、正直関連板は今のところ混沌の渦ですから見ても見なくても、と言った
状況ですし。

ただ、現状でもやる気がある方ならばやるでしょうしやる気がないならやらない、
一度参加した程度で満足するならそれまで。
その程度だとは思うのですけれどもねぇ。

209 名前：孔濤羅 ◆dTAoloUdks ：2005/05/23(月) 00:02:13

手短に。

>>198-199
登録制度撤廃については全面的に賛成しよう。
動いているキャラの把握については、
ＺＥＲＯスレを再利用するという手もあるのかと愚考する。

関連板については、会議板が避難所としての意義を持つ程度ではないだろうか。

210 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/05/25(水) 21:58:41

>>205
――さて。
知らん間に酷いことを言われて傷付いた俺がいるわけだが。



いやまあ、それは冗談として。
何かやりたいんだったら好きにすりゃ良いと思うよ。
別に俺からとやかく言うことなんざないしな。


――その前に、やり忘れたことを片づけて行かゃならんのだから。

211 名前：イーヴァ ◆cpOCEg7EVA ：2005/05/25(水) 22:59:31

>>205　ドライさん
何だか久しぶりに呼ばれたので、顔出し。
酷いなー、ドライさん。
顔出してないのは、うちのルークとレギュレーションが噛み合う対戦相手が居ないからだよー。
用も無いのに顔出すのもちょっと気が引けるしね。

>>198-199
で、肝心の改革案についてだけど……
昔みたいに人が多い時なら兎も角、
現状で登録制が参加の足かせになってるって言うなら、廃止も已む無しだと思うよ。
会議板は残しておいた方がいいんじゃないかな
有れば便利だし、何よりも、途中経過を人目に晒したくない人だって居るだろうしね。

212 名前：エミリオ・ミハイロフ ◆EMILIozylo ：2005/05/25(水) 23:22:53

>>206
くく……非道い言われようだね……それじゃまるで僕がただの助平みたいじゃないか……。
事実だけど。
……と言う訳で、呼ばれたみたいだから出てきたよ。

>>198-199
で……マリアベルの意見だけど、反対する理由は僕には見当たらないね……。
他のも言ってるけど、稼動中のキャラ、稼動予定のキャラ……なんかを把握する為のスレは必要だろうと思う。

関連スレもこっちに移してもそんなに問題ないんじゃないかな……会議スレを移設は流石にアレだと思うけれど……。
だからまあ、募集スレ程度になるかな、移すとしたら……ね。

>>203
祭はいいね……大殲がどう言う雰囲気か知りたい向きにはうってつけだし。

……そんなところか。
さて……次に来るのは誰かね……。僕としては
大殲には顔を出さねぇ癖に、地下スレにはたまにレスを返してるっぽい売れない歌手
の登場を期待してみたかったりなんかしたりする……。

213 名前：マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. ：2005/05/27(金) 04:13:07

ほうほう。
これはまた懐かしい顔ばかりが次から次へと現れ……

お前が言うなと言われそうじゃな。うむ。


ま、さておいて。

意見は三々五々、集まってきたといったところか。
とりあえず登録制撤廃はほぼ満場一致と見て良さそうじゃな。
まあ一部にあるとおり、既に有名無実といった雰囲気じゃし……な。

ちなみに>>202左手のリセット案じゃが……
わらわ個人としては、一理あるものの推奨しがたい、といったところかのう。

新たにスレを作る、そこまではいいが……さてそれは、なんと名乗らせるべきか？
>>207鏡花と重複するが、「吸血大殲」の名を引き継げばいずれ比較されてしまうじゃろう。
それではあまりリセットする意義を見いだせぬ。

では名を含めて一切を新たに生まれ変わらせるのは？

まあ、構わんのじゃがな。
ただわらわは、あくまで「この場所」を再度活性化させようというつもりで、この提案をしたものでな。
そこを捨ててまで、そういう方向性で話を進める気にはあまりならんと。
まー止める気もないのじゃが。

……うむ、本気で重複しておるな。
「鏡花に同意」で済む話になってしまうが……まあ、よかろう。
そういうわけじゃ。

あーただな、これを機に一旦スレを立て直す、みたいな形はアリかもしれんとそう思った。
根幹からいじるわけじゃし、それぐらいはやってしまっても良かろうかとな。

で、ついでにその自己紹介スレとやらも立てる、というのは？
ZEROスレ再利用という案も悪くはないが、こういう用途ならば専用に一個用意しても
別に構わんのではと思うのでな。
ちなみに任意記入型かのう？　自己紹介スレは。
もしくは相手募集スレと統合するか、じゃな。

214 名前：マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. ：2005/05/27(金) 04:13:44

まあ、そんな風にして……無理はせずとも、本当に好きなときに始められる形にするのが良かろうな。
変に縛られてしまわんように、という提案なのじゃからして。

さて、上記をふまえて関連リンク等については……

自己紹介スレ（+必要なら相談スレ）
会議板（……あえてRH-を持ち出すこともないのか、と気づいた）
ZEROスレ（特に意見もないようなのでさしあたり地下スレとして放置で（何 ）
前スレ

まずここまでは確定じゃろう。そして……

太陽板のスレは落ちたそうじゃしパス、大殲板も同じくパス。
左手のデータサイトは……自己紹介でまかなえそうな気がするが、はてさて。
手引きも、今となって果たしてどれほど必要か。
所謂「本家サイト」も……ほとんど関係が切れた現状でリンクを貼り続けて良いものかどうか、ちと悩むところ。

と、ここまでが保留、ないしは削除とすべきではないかという具合じゃな、わらわとしては。
見てのとおり、可能な限り切りつめたものゆえもう少し意見を求めたいところではあるが。


以上、現状の纏めとして上げさせて貰った。
どんなもんかのう？



っとそうそう、>>203閑馬の「祭りはどうか」というのがあったな。
わらわも、これは賛成しておこう。理由は他と同じくじゃ。
……ただまあ、やはり突っ走れるかどうかというのと
何より、主催・現場進行役が現在おるのかどうかという懸念もあるのじゃが、のう。

わらわ？
無理無理。

215 名前：◆IiARCUEIDg ：2005/05/27(金) 22:29:28

>>205
――うん。
熱帯………と言われたのは初めてだと思うけど、あまり傷つかないのは何故だろう？



それはさて置き。
やる気と時間と根気と根性があれば大丈夫。
わたしは無いし、既に終ってる身だしね。


―――某二人、本当にごめんね吸血衝動に負けちゃった。

216 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/05/30(月) 23:40:37

　んー、アレだな。
　閑古鳥が鳴いている現状で、マンモス経営を続けてるってのが見直すべき問題の一つなんだよな。
　昔はそりゃ異常なぐらい賑わっていたモノさ。板の分散スレの移動ルールの制定、どれも実に
必要だった。けど、いま、果たしてそんな広大な大地が必要なのか。
　今のあたし達が闘争をやるにも、質問に応えるにも、雑談を交わすにも、たった一つの狭い狭い
スレッドただそれだけがあれば十分なんじゃないだろうか、ってコトだよな？
　ああ、もちろん、所業を背負えば現世に還る。盛者必衰、命の鐘の響き在り。栄えるものはいつか
は朽ちていくモンだ。それをどーこー言うのはナンセンスさ。
　あたし達の魂は死んだワケじゃねー。
　それぞれがそれぞれ別の場所で、別の形で輝いているに過ぎないってね。

　要はアレさ。現状に合わせたシステムにする。そう言うこったろう。
　だからそうだなぁ……まず、広報スレは無くても良いっていうか、むしろ無い方が良いんじゃねーか？
「あってもなくてもどっちでもいい」
　あたしもそう思う。だったら無いほうが余計な混乱を招かないってモンだ。

　予備板の削除はいつだって可能だぜ。告知してリトルボーイを投げ込んでやるだけだからね。
　皆さん、ログの取得は済ませた？　アモンへの敬礼は？
　長年の務めを果たした、予備板への黙祷の準備はオッケー？

　ただ……あれだな。大殲の中には、一刻を見てねぇーんじゃねぇか……って思う奴もいるんだよね。
　最近まったく顔を出さない連中に、特に。
　もちろん告知はするし、閉鎖後も誘導はするけど……気付いたら消えていたって寂寥感漂うよね。
　

217 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/05/30(月) 23:41:08

　あとはー、あとはー。

218 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/05/30(月) 23:49:43

　あと、マリアベルの言う自己紹介スレやら募集スレも、どうなんだろうな。
　あれば確かに効率的だ。実に効率的で分かり易く、親切だ。
　けど、いまの大殲に��効率�≠ﾁて必要なのかな？
　そんな寸詰まり起こすほど、ベルトは埋まっちゃいないんじゃないかな。
　余分な板を閉鎖するんだ。余計なスレだっていらねー、とあたしは思うぜ。
　いまの規模ならば、一つのスレッドで賄えるよ、きっと。
　新スレ立てても大して伸びず、即死回避の保守書き込みばかり……って言うのも寂しそうだし。

　シンプルに。ただひたすらにシンプルに。
　これがあたしの言いたいトコロかなー。
　いっそ、会議板も消してみんなをこう、まっさらな気持ちで闘争を始めまくろうか！
　……ああ、うん、もちろんウソだよシズマ。レップもか。白狼もだね。

219 名前：ファントム・ドライ ◆3W9BaKcRLo ：2005/05/30(月) 23:53:22

　まずは予備板の閉鎖とＺＥＲＯスレの首をかっさばくコトだな。
　おーし、反対意見がある奴は、歯を食いしばって前に出ろ。
　理屈はいらねー。ここは大殲だ。殺した奴が勝者だ。生き残った奴だけが支配者だ。
　あたしを相手にトリップ勝負で勝った奴だけ、意見を聞いてやるよ！！

220 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/05/30(月) 23:53:46

ageage

221 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/05/30(月) 23:54:24

因みに、数字＞大文字＞小文字＞記号、な。

222 名前：蒼崎橙子 ◆0z2eQUL9ek ：2005/05/31(火) 00:03:07

0123456789A~Za~Z記号

223 名前：蒼崎橙子 ◆0z2eQUL9ek ：2005/05/31(火) 00:03:25

ふむ。

いや、特に意見は無いのだがね。

224 名前：Reiot Steighnberg ◆/PTrcz1x.U ：2005/05/31(火) 00:07:34

……んじゃま、久々に。
ひとつ、運試しといってみましょうか――

225 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/05/31(火) 00:08:01

トーコはアルファベット小文字だから、まずはあたしの勝ちー。
稀代の魔術師ともあろう奴が、情けない限りだね。

226 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/05/31(火) 00:08:03

…………いや、まあ。
世の中、こんなもんだよな、実際。

227 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/05/31(火) 00:08:51

レイオットも記号だから、あたしの勝ちー。
魔術師チームは雑魚ばかりだなぁ、オイ。

228 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/05/31(火) 00:10:15

ちなみに意見なんてものはこの間言ったように微塵もなかったりするのだが。

……ドリップ運最悪はいまだ健在か。くそっ。

229 名前：蒼崎橙子 ◆0z2eQUL9ek ：2005/05/31(火) 00:12:06

おまえの目は節穴か？

そもそも、トリップの強弱は大文字、小文字、数字、記号の順のはず。
それを無理矢理捻じ曲げるのは関心しないね。

230 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/05/31(火) 00:17:55

>>228
　見なフィーア。レイオットが夜の『負け犬横町』へと消えてゆくよ……。

>>229
　そっちこそ無茶な注文つけやがるじゃねぇーか。
　三番目のあたしが「３」って数字を出したんだ。
　これはもう役上がりにしてくれたって、罰は当たらねーだろう？
　まぁ今回はあんたの勝ちにしてやるけどよ……。

　と言うことで削除依頼はあんたがしてこいよ！

231 名前：左手 ◆AisexUBX5Q ：2005/05/31(火) 00:24:47

特に意見はないがトリップ勝負と聞いては黙ってはいられぬの！

232 名前：左手 ◆lefTHaNdTs ：2005/05/31(火) 00:26:12

ああ、まあ、うむ。
適当で良いのではないか。
うむ。

233 名前：蒼崎橙子 ◆0z2eQUL9ek ：2005/05/31(火) 00:30:32

何を削除しろというんだ、何を。

まあ、一つ言えば……こうしたちょっとした会話で出てくる相手に吸血鬼がいない、というのが問題な
のだろうね。

234 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/05/31(火) 00:31:24

確信を突く奴って、あたし嫌いだなぁ……。

235 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/05/31(火) 00:32:17

確信→核心
ていうか、あたしけっこう勝ち越してるのね。
三戦二勝一敗だよ！

236 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/05/31(火) 00:36:03

ていうかＺって、声録り直しとか言ってるけど、ハマーンむかしと声違うんじゃね？

237 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/05/31(火) 00:36:50

とか、そう言う話はしたらめーだよぅ。

238 名前：Kresnik ◆WEISS0lzjQ ：2005/05/31(火) 00:37:42

　もう何のスレだか。
　闘争しようよドライ。

239 名前：蒼崎橙子 ◆0z2eQUL9ek ：2005/05/31(火) 00:40:02

これはまた、一番言ってはいけない人間が言ったものだね。

240 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/05/31(火) 00:41:08

おう、白狼は取りあえずトリップでカタつけようぜ。
ていうかトーコ……あんたいつまでそのトリップなんだよ。

241 名前：左手 ◆lefTHaNdTs ：2005/05/31(火) 00:41:51

と言うか、今のここに言っていい人間は殆ど居ない

242 名前：馬呑吐 ◆NpqLp96rfA ：2005/05/31(火) 00:42:48

今更つけ加えル意見もナイが、呼ばれなくても即参上ッ！
天・地・玄・黄！
(黒ビキニパンツ一丁でマッスルポージング中)

貴様等！　真・幽棲道士の威光にこぞりてひれ伏すが良イヨ！

243 名前：蒼崎橙子 ◆0z2eQUL9ek ：2005/05/31(火) 00:43:14

トリップを失くしてな。探すのも面倒だし、かといって無いのも寂しいだろう？

244 名前：Kresnik ◆LgrZ68Qpz2 ：2005/05/31(火) 00:43:41

　レスはそれなりに返してるッ！
　今は待ち。
　あと一つ積み。ただ今は一気にはやれないから一つづつ。

245 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/05/31(火) 00:45:25

吸血鬼ｷﾀ━━━━━━ヽ(≧∇≦)ノ━━━━━━!!!!!

246 名前：Kresnik ◆LgrZ68Qpz2 ：2005/05/31(火) 00:45:40

　会議のまま貼れてなかったり色々事情はあるんだよ。
　各々。
　でも近日中に丸ごと一つ貼れるっぽい。

　つーかトリップ勝負ってこれで良かったんだっけ？

>>242
　懐い。

247 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/05/31(火) 00:47:27

　　　　　　　 （ ￣）￣）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 （￣（￣ ）
　　　　　　　 ｜｜　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ｜　|　 |
　　　　 　 　 （　　　 ⊃　 　 　 ∧＿∧　　　　　∧＿∧　　　 　 　 ⊂　　　 ）
KITA━━━（　｡Ａ ｡）━━━（　 ﾟ∀ﾟ ）っ━━（ ﾟ∀ﾟ　 ）っ━━━（ ｡Ａ ｡ ）━━━!!!!!!
　　　　　　　　∨ ∨　 　 　 　　(つ　　 / 　　　(つ　　 /　　　 　 　　∨　∨
　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　 （⌒）　　 　 |　 （⌒）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　.し⌒￣ 　　 .　し⌒￣

248 名前：左手 ◆lefTHaNdTs ：2005/05/31(火) 00:48:44

あー、なんじゃ。
取り合えずクル助……そこの喧しいドライを食え。

249 名前：Kresnik ◆LgrZ68Qpz2 ：2005/05/31(火) 00:49:30

>>247
（捕食）

250 名前：Kresnik ◆LgrZ68Qpz2 ：2005/05/31(火) 00:49:51

　ていうか俺は人間です、翁。

251 名前：左手 ◆lefTHaNdTs ：2005/05/31(火) 00:51:36

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿ ＿
　　　　　　　/＼/＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ // /　 /＼
　　　　　　　＼/＼/　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿,,,,//彡ノ 　　　　　　　/ // /　 /　/
　　　　 ／＼　　　　　　　　　　　　　　　＿,──~^　く　 　三ｿ彡彡-,ミ-、　　　￣ ￣　 /　/
＿　　　＼　 ＼　　　　　　　　　　　　／　　 ＿,- ..　 る 　 三ミﾐ 彡彡ー　　　　　　　　/　/
|　 |　　　 .＼　 ＼　　　　　　　　 ,,,-~　,r--~二、 '';;:　 　　−=-=- 三二-、　　　　 　/ ../
|　 |　　　　　＼ 　＼　　　　　　 / o .／　　ヽ”ノ 　;;　　 　 三,,-=三＝---　　　　　 / ./
| 　|　　　　　　 ＼ 　＼　　　　 /　／　　　＿＿,,---~~　 i a　|ー＝--二ー　　　　 ￣　　　＿＿
|　 |　　　　　　　　＼／　　　　 |／ ,,,--"~　　　　　　　　〆.／=--二,,,,-=ヾ　　　　　　　　/　　 /　　 ＿
| 　|　　　　　　　　　　　　　　　 |,,／　　　　　　　　　　 ヽ,／　　　　　 iヾゞ|　　　　　　　　 ￣￣　　／／
| 　|　　　　　　　　　　　　；。　　ヽ＿＿＿＿＿,,──"~~　　　　 /　　　　 |　　　　　　　　　　 　 ／／
|　 |　　　　　　　　,＿/|／i　：　ﾟ　＼ー-,,,＿　　　　＿,,,,-　 　 ノ-、　　＿|i　　　　　　　　　　 ／／
|　 |　　　　　　　　彡|;;;／ｿ；;;;/i　　 ~-,＿　~~~`─"　　　 ,,,／　 |i,,,-=~　 ＼　　　　　　　　／／
|＿|　　　　　　　 ／　~　/／;;|/i彡　　　 ~￣`────"　　　／＿,,,,,---~~~ヽ　　　　　　￣
　　　　　　　 /二二^,へ、　　/　　　　　　,,--~二i　　　　　,,-~^^^~^ヽ　,　　　　 ＼
　　　　　　/＞-　~　　~ヽ-/~＼　　　／ 　 ー┤　　 ,,／　　　　　　　 |　　　　　 ヽ
　　　　　　/=--　　　　　 ヽ,,　　ヽ＿/＿＿ ,--=-="~　　　　　　　　　/　　　　　　 |
　　　　　 ./>=--　　　　　　　￣|￣|　~　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　 |
　　　　　 l　￣~~`------,,,,＿,,,|　 |　　　　　　　　　　　　　　　,,,,,--"　　　　　　　　 |
　　　　　 |　　　、　　　　／＼　|＿|＿＿　　　　　　　　　 ,,-=~　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　 |　　　ヽ 　　／　　　／　　　　/~^=────-" |　　　　　　　　　　　　　　 |

絵はこちらで用意した。
ああ、安心しろ。お主を人間だと思ってる奴は皆無だ。

252 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/05/31(火) 00:51:43

フュンフが食われた！？
左手、あんたぁ……！
レフトハンドソードってあれだよな。まさにあんたのためにある武器だよ。

253 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/05/31(火) 00:52:30

＜
＜　 フィーアーーーーーーーーーーーーーっっっっ！！！？？？？？
＜
　 ∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨＼　 ／∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨
　　　　　　　　 　／:|.　　　　　　　|　|　　　　　／:|
　　　　　　　 ／　 .:::|　　　　　　　∨　　　 ／　 :::|
　　　　　　　 |　　...:::::|　　　　　　　　　 　/　　　::::|
　　　　　　　i　　　 　 ￣￣⌒ﾞﾞ^――／　　 　::::::::|
　　　　　　/＿,,___　　　　　　 . _,,,,__,_　　　　　:::::::::::＼
　　　　 　／　　　ﾞ^＼ヽ..　 , /ﾞ　　　¨＼,.-z　　　::::::::::＼
　　　　 　「（ａ．ａ）　　　| 》　 l| 「（ａ．ａ）　ﾞ》　ミ..　　　.::::::＼
　　　 　/i,.　　　　　 .,ﾉ .l|　 《 　　　　　 ..|´_ilﾄ　　　　::::::::::＼
　　　　/　＼___,,,,,_／ .'″　　^=u,,,,_ v／.. 　　　　　　:::::::::::::l!
　　　 |　　　　　　　　　　　￣　,,､　　　　　　　　　i し.／::::::::.｝
　　　|　　/ 　,,__＿＿　_,／￣　＼　＼　　　　　 ﾉ　(　　::::::::::|
　　　 |　　|.. |　／└└└└＼../＼　　＼　　 　'~ヽ　::::::::::::::｝
　　　　|　 　.∨.|llllllllllllllllllllllllllllllllllllllll|　　　　　　　 　　　::::::::::｛
　　　　| 　　　|.|llllllllllll;／⌒／⌒　　〕　　　　　　　　　　:::::::::::｝
　　　　 |　　　|.|lllllllll;　　　./　.　　 .　|　　　　　　　　　　::::::::::［
　　　　 .|　　　|.|llllll|′　　/　　　　.　|　　　 .|　　　　　　:::::::::::|
　　　　　.|　　 |.|llll| 　　　| 　　　　.∧〔　　　/　　　　:::::::::::::／
　　　　／　｝.∧lll　　　　|　　　　../　/　　／　　　:::::::::::::::::＼
　　 ／　　　/|　＼┌┌┌┌┌/.／　／:::　 　　　　:::::::::::::::::＼
　　　　　　(　ﾞﾞ^^¨^¨ﾞﾞ¨　￣￣￣　／:::::::::::　　　　　　 　　::::::::::＼

254 名前：Kresnik ◆LgrZ68Qpz2 ：2005/05/31(火) 00:54:02

　相手を間違えた……ッ！
　しかもなんかヘンなAA使われたし。

　ていうか俺、レス返すって散々迷惑掛け通しで返してる辺りが救えないけど。
　だからまああれだな、アーヴィ！　ミラッ！
　もしも居るなら今ココでカタを付けようじゃないか……。

255 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/05/31(火) 00:56:15

ミラはもう寝たよ。すやすやと。
あたしももう寝るよ。
いつまでもこんなトコロで油売って、仲間と勘違いされると困るし。

256 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/05/31(火) 00:56:42

じゃ、あとのコトは白狼に任せたから！
グッナイムーン♪

257 名前：左手 ◆lefTHaNdTs ：2005/05/31(火) 00:56:49

仲間も何も完璧に主犯ではないか。

258 名前：Kresnik ◆LgrZ68Qpz2 ：2005/05/31(火) 00:57:19

　始めたの誰だよっ！

259 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/05/31(火) 01:05:35

……まぁ、あいつはそー言う奴だからな。
いちいち文句言うだけ無駄っつーか。

しかし、特に暴れたわけでもないのに妙に疲れたな、今夜は。
帰って寝るか……んじゃ。

260 名前：エミリオ・ミハイロフ ◆EMILIozylo ：2005/05/31(火) 19:30:30

……なんか祭ってやがった……！

261 名前：エリ・カサモト ◆SV001MsVcs ：2005/05/31(火) 20:55:50

（チッ）出遅れた。

262 名前：津上翔一 ◆SNAGITOv0E ：2005/05/31(火) 22:25:38

祭ってたんだ！出遅れすぎたっ！？

263 名前：魔刃シャハル ◆SaHarLKKlw ：2005/06/01(水) 02:01:18

というか祭ﾏﾀﾞｰ?（AAry

264 名前：魔刃シャハル ◆SaHarLKKlw ：2005/06/01(水) 02:04:50

>>238 名前：Kresnik ◆WEISS0lzjQ 投稿日：2005/05/31(火) 00:37:42
＞　もう何のスレだか。
＞　闘争しようよドライ。

>>249 名前：Kresnik ◆LgrZ68Qpz2 投稿日：2005/05/31(火) 00:49:30
＞>>247
＞（捕食）

265 名前：:名無し吸血鬼：2005/06/01(水) 11:58:37

つか何人居るんだ？

266 名前：Kresnik ◆WEISS0lzjQ ：2005/06/01(水) 15:03:55

　これだけいるなら祭れる筈ではある。
　どこにどれだけ居るのかは知らんが。

267 名前：モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus ：2005/06/01(水) 16:54:46

居るには居るのよね……すっかり空気――と言うか、顔も出していないけれど。

268 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/06/18(土) 00:38:33

　なーんか、予備板のほうで大殲板の管理人がガタガタ抜かしてたぜ。
　なんでも重要なお知らせがあるんだってさ。行ってみる？

269 名前：:名無し吸血鬼：2005/06/18(土) 00:50:36

予備板に飛べませんぞ？　俺だけ？

270 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/06/18(土) 00:52:31

我ながらお節介だとは思うが。

http://charaneta.sakura.ne.jp/vampirkrieg/
此処な、此処。

271 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/06/18(土) 00:58:26

>>269
　けっこう前にアドレス変わったんだよ。
　リンク貼っておけば良かった。ごめんね。

>>270
　Thank you.

272 名前：:名無し吸血鬼：2005/06/18(土) 13:44:27

流れをまったく無視した書き込みをしてみる。

みんなの好きな音楽をあげてみよう！

273 名前：名無し吸血鬼：2005/07/07(木) 18:12:25

てか、ここ見に来てがっかりした。
言っちゃ駄目だけど・・・昔は良かったね

274 名前：レッドアリーマー・ジョーカー ◆99Arremerg ：2005/07/10(日) 00:06:00

>>273
……。
（俺は…こんな流れの為にここで戦ってきたわけでは……ない）


＞マリアベル
……状況が停滞してしばらく経つが、頃合ではないのか？
一先ずの意見は出揃った。
既出なうえに乱暴な話だが、他の者が顔を出さん…という事は賛同と取っても
構わんだろう。適当に期日を決め、結論を出すべきだと思うが。

俺自身の意見を述べれば、結論としては賛同だ。
紹介スレッドと募集スレに関しては、俺は不要とは考えん。

……ここからは俺自身の生き方と、戦いそのものを愚弄するような意見だがな。
ここもまたキャラネタであり、ＲＯＭという観客を楽しませる所に違いはない。
下種な言い方だが、要は娯楽だ。
その観客の立場から考えれば、ここで戦っている連中の軽い情報くらいは欲しい。
そこで紹介の存在が必要になる。と、その程度の事に過ぎんのは確かだが。
募集スレは闘争者同士以外に、「こんな闘争が見たい」という要望も募る
といった形にするのもありだろう。

http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/053668822/l50
要するに、ここと同じ形式ならばどうだという事だ。
少なくとも無駄にはなるまい。

俺の意見は以上だ。
……“あの時”のような興奮を……闘争者と観客、二つの立場から期待する。　

275 名前：マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. ：2005/07/12(火) 03:32:26

……相済まん。
確かに、些か無反応がすぎたようじゃ。

ひとまず、近いうちに新テンプレの草案を上げる予定じゃ。
それを最終案として見てもらい、しかして新スレを立てると。
と同時に管理側に掛け合い、トップページにバナーでも掲げてもらうとするか。
……うむ、その前にバナー画像を用意せねばならんな。
現在の大殲板にあるような、文字ロゴ画像という形でどこぞで頼むか。

自己紹介・募集スレはやはり立てようと思う。
ドライの言うことももっともではあるが……まあ、なんじゃな。効率と言うよりも便利さゆえじゃ。
面子の情報くらいはわかったほうがよいという意見もあることじゃからして。
かゆいところに手が届くようにするぐらいは、構わんじゃろう？

他、関連スレは……こちらはドライの意見をとってみようか。
すなわち、切れるだけ切る。
確かにZEROスレなども、無ければ無いでそのほうがよいかもしれんのでな。

あとは今後、会議スレを立てる際にはどちらへ誘導すべきか。
今まで通り会議板でと思う一方、打ち合わせ用の板として根付いておるRH-を使うことも捨てがたい。
或いはすべて心機一転とするなら、いっそ今後はRH-へとすべきか？　とも考えておるのじゃが。


ふむ、現状報告としてはこんなところか……
ではまた、近いうちに。

276 名前：ティベリウス（M）：2005/07/12(火) 23:27:23

ハァーイ、吸血大殲の皆さん、お元気ぃ？
「ブラックロッジ」のアンチクロスが一、ティベリウスよん。ヨ・ロ・シ・ク☆


……ってあらあら、まだまだ色々揉めててお忙しい様ねえ……
アタシも衷心から頑張って、って一言言っといてあげるわね。


……さてそれはそうとそんなお忙しい最中で申し訳なくはあるのだけどん。
一応今決まってる段階の大殲再編のお話で行くと……確かココが闘争募集の場所、って事でよかったかしらん？
ごめんなさいねぇ、アタシ、ゾンビだけに物覚えが曖昧で☆


ンじゃココからが本題よん？

>>274とかの赤き魔物ちゃん、お久しぶりねぇ……今はちょっと姿変わっちゃってるようだけど。
http://charaneta.sakura.ne.jp/ikkoku/kako/048/048737948.htmlの>961-963以来かしらん？


実はアタシも、ちょっとアンタに話があってやってきたのよ。
見たところティトゥスちゃん以上に今のシケた現状に憤ってて、随分とタマってるようじゃない？
アタシもあのときの屈辱がまだどうにも拭いきれていないのよ……

……あの時大導師様の邪魔が入らなければ、アンタをギッタンギッタンに磨り潰して
大十字九郎ちゃんぶっ殺す前の前菜として蛆虫の餌にするところだったんだけどね？

そういうわけで、僭越ながら大殲の再活性の企画第一弾として。
アタシとのあの時の続き……今度は大導師様の邪魔もなしよ、どうかしらん？
リターンマッチって事であの時の姿で来るもよし、今の素敵なカッコで来るもよし。

ああ、ちなみに。
一応アタシの魔導書『妖蛆の秘密』、スター・ヴァンパイアっていう外宇宙の吸血妖魔を招喚する事が出来るわ。
アタシのベルゼビュートの兵装にも組み込まれてる事だし。アタシもある意味不死者だし。
レギュレーション「吸血」が欲しいって言うのなら……これで、どうにかならないかしらん？


んじゃ、そういうコトだから☆
ただ、コレもあくまでダメ元の提案だから。
もしダメって言うならその時は、アタシも潔く諦めるけど……ま、考えといて頂戴な。
無理矢理ヤんのもアタシ大好きだけど、流石にコレばっかりは……ねぇ？

277 名前：レッドアリーマー・ジョーカー ◆99Arremerg ：2005/07/13(水) 00:49:00

>>276
ほう…？
この気配…いや、この『腐臭』、忘れるはずもない。
久しいとだけ言っておこうか、魔導師。

……で、俺と戦いを所望するだと？
成る程…あの時の決着をつけるというのか。
それを此処の、再起の狼煙に打ち上げるという算段なのだな。


　（この“熱”……滾るのは俺の血か。
　　久しい敵の登場に俺の闘志が久しく昂ぶりを見せている。
　　……だが………）


………済まんな、魔導師ティベリウス。
お前もここの流れを見た以上、承知しているとは思うが…
ここは『吸血大殲』、血を啜る魔物ども本人が闘う地平だ。
お前の案では、この地を構成する文字通りの“血の掟”レギュレーションを潜れはしまい。
……俺も、大殲の本来の住人ではないのでな。戦士として、俺もその“血の掟”に従う所存だ。
よって今回、この地においては断らせてもらう。

最も…これだけでは無碍に過ぎるというもの。
お前の案の返しとして、俺の代案も挙げてはおく。
もっとも、これは『俺』以外で良ければの話だ。
それで構わぬなら、マキシモフ家の当主…デミトリ・マキシモフが貴様の相手をしよう。

お前が俺との因縁に拘る、というのは承知している。
……しかし、これが今の大殲での“血の掟”に従ったやり方だ。
戦士の片方は血を啜る者でなくてはならん、というな。
まあ、俺の案も貴様と同じ所謂“ダメ元”の提案に過ぎん。
お前の気が乗らなければ…この遺恨は今までと同じ、互いの預かる所となる。

…俺の答えは以上だ。後の是非はお前が決める。
生憎だが『俺』とお前では戦えん。
それを踏まえた上で、お前の望む決断を下すがいい。

278 名前：ティベリウス（M）：2005/07/13(水) 01:09:05

>>277　赤き魔物ちゃん

……そう。なら仕方ないわね。
本当ならアンタと決着つけておきたかったところなんだけど……
流石にそんな強固な壁があるんじゃねぇ？
もともとアタシの案自体、アタシ自身苦しいかなと思ってた事だし。

アタシ達アンチクロスは大罪人。
「汝の欲するところを行え」のままにルール違反も上等な存在じゃあるんだけど………
流石に無理に事を進めて、二度も大導師様に痛い目に合わされるのもゴメンだし？

そういうわけで今回の話は反故よ、ホゴ！
アタシの方から取り下げさせてもらうことにするわ。
恨みを晴らせなかったのはシャクだけどん……じゃぁぁあああねぇぇぇええ！
おーっほっほっほっほっほっほ……！

279 名前：凶アリア(M) ◆EMAgaKipC. ：2005/07/13(水) 02:51:55

赤色の魔族さまと死せる不死人使い殿。
僭越ながら、此の地における「闘争の盟約」という「掟」につき
申し上げたき議がございます。

魔族さまの仰るところであります

>ここは『吸血大殲』、血を啜る魔物ども本人が闘う地平だ。

この件につき、吸血大殲スレにおいて『血を啜る者ども自身の闘争の場である』と言う程には
厳密なロジックは過去、存在しえなかったと私には思えるのです。

此度のスレッド建設者である緋皇宮様が>>１にて仰っている如く

『此処はあくまで『吸血大殲』なのだから、吸血鬼と無関係な闘争は決して許されん。
　認められるのは、あくまでも『吸血』というロジックに従った闘争のみ。
　逸脱者を使いたいのであれば、その闘争を『吸血大殲』に仕立て上げること。
　雰囲気がどうこう、という問題じゃない……。
　明確かつ説得力を伴った『吸血』のロジック、それのみが必要……』

との解釈が通説のロジックなのではないでしょうか。

私は不死人使い殿と魔族さまの因縁というものを憚りながら存じ上げません。
そこで、その因縁を所謂「吸血」のロジックに則り闘争することは、現段階では不可能なのやも
しれません。

しかし、世界観、即ちバックグラウンドの部分で吸血鬼を合理的に配置することができるのであれば…
お二方の闘争可能性そのものは全く零とは言えぬのではないでしょうか？
無論、その様なことをしてまで諍いごとを目的とし、この場で見える事が上策言う訳では
決してありません。直に争わずとも、時が因習や因縁を打破することもありましょう。

勘違いして頂きたくない事は…
私はこの機会に意見具申いたしましたのは、お二方の闘争の可能なる旨を示唆する為ではありません。

今後全ての闘争において、赤き魔族さまの仰る狭義解釈が大殲の闘争であると言う様な
ルールが<<必ずしも全てではない>>事を確認しておきたい、というのが私の目的なのです。

一介の凶の狂言なれど、この件、脳裏の片に乗せていただければ幸いです。

280 名前：マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. ：2005/07/15(金) 04:16:57

テンプレ>>1

――吸血大殲。
ここは吸血鬼、並びにそれとほぼ同義の吸血種、およびそれらを狩るもの達が

或いは侵略・支配のために殺し合い、
或いは信念・信仰のために殺し合い、
或いは護り・救くるために殺し合う。

そのための、闘争また闘争のスレじゃ。
……ふふ、わらわのような美少女は場違いか？

なれどもわらわとてノーブルレッド、吸血種。人の血を糧とするものじゃ。
ゆえにわらわが望まずとも火の粉は降りかかる。そうなれば払わねばならん。
このわらわとて、この地にあって例外ではないという事じゃ。
すなわち

このスレは吸血鬼を軸とした「闘争」を行うスレ。特に吸血鬼・吸血種ならば等しく戦闘行為の権利を有す。
リアルタイムでのやりとり、後述する「会議スレ」を用いたロングスパンのやりとり、
はたまた乱入歓迎のバトルロイヤル……どのような闘争でも良し。
逆に「吸血大殲」の名に違う、吸血鬼の絡まぬ戦闘行為はこれを御法度とする。

ルールと言うべきものは、たったこれだけじゃ。
上記さえ守られておればどのようなスタイルでも構わん、という事じゃな。
たとえ同時進行などがあっても気にせずに、好きにするがよい。

なお、相手募集には専用の募集スレにて。
打ち合わせ等を交えたやりとりを行うならば、一刻館RH-に会議用のスレを立てると良いぞ。


では、始めるがよい。
夜の眷属たちの、人の守護者たちの――血の闘争を。

281 名前：マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. ：2005/07/15(金) 04:17:31

テンプレ>>2

＜関連リンク＞

・一刻館RH-（会議スレを立てる際はこちらへ）
http://www.jfast1.net/~charaneta/ikkokuRH/

・闘争相手募集・闘争要望スレ
（※当レスの投入前に募集スレ建立、そののちここにURLを代入）

・吸血大殲本家サイト
『From dusk till dawn』
http://www.uranus.dti.ne.jp/~beaker/

『戦場には熱い風が吹く』
http://www.vesta.dti.ne.jp/~hagane/

282 名前：マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. ：2005/07/15(金) 04:18:03

募集スレ・テンプレ

ここは、吸血鬼やら狩人やらがやり合うための待ち受け所。
何をするにしても、相手がおらねば動きようが無かろう？
ゆえにここで、その相手を募り、探し出そうというわけじゃ。
それとあとまあ、こういった闘争カードが見たい、というようなリクエストなどもここに書くと良い。
それが引き金になって、本当に実現するやもしれんぞ？

ひとまずは下記のテンプレートにて自己紹介、自己評価。
その上で、相手を募ると良い。
能力評価はS〜Eにて……そうじゃな、Bを人外の者の標準、Dあたりが人間の標準、といったところか？
ま、あくまで目安ということになるじゃろうがな。

出典　：
名前　：
年齢　：
性別　：
職業　：

※能力評価
接近戦闘　：
射撃・遠隔戦闘　：
魔術等の技能　：
防御力　：
回避技能　：
回復力・再生能力等　：

得意な技・能力、武装等　：
補記事項　：

そしてめでたく？　相手が決まればあとはどうということはない。
いざ、彼の地へ……じゃ。

（※本スレアドレスをここに代入）

283 名前：マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. ：2005/07/15(金) 04:18:31

というわけで、テンプレを書き上げてみた。
募集スレはロボ大殲のそれやら過去の何やらをあれこれ吟味してこさえてみたが……さて。

ま、何か意見があれば言うが良い。調整しよう。
無ければ、これで立ててみようと思う。

……の、じゃが。
あーそのすまん、少々こちらも私事が立て込みに立て込みまくっておってのう。
ちと、均等に力を割り振るのが厳しい状況じゃ。
ゆえに赤き魔物の言うように期日を決めさせてもらう。

そうじゃのう……一週間か。7/22までじゃな。
それまではこちらも、まともに返答が出来なくなる。
その間に、何かあればここに書き込んでおいてくれ。


……と、それとじゃ。
横合いから失礼するが。

>>279　凶アリア

ふむ。
確かに、それはそのとおり。過去に定められた取り決めであったな。
吸血鬼そのものが戦わずとも「『吸血』のロジック」に適うものであるならば認められると。うむ。

……じゃがな凶アリアよ、ちと聞いてくれんか。これはあくまでわらわ個人の意見じゃがな。
その方法による闘争、可能とはいえ推奨はし難い……というのが、正直なところなのじゃ。

考えてみるがよい。
「当事者が吸血鬼の絡まぬキャラであり」「しかし吸血鬼の存在が必要不可欠な状況背景」
というのは……言うは易く行うは難し、というものではないか？

無論、無理じゃとは言わん。やろうと思えば出来る話なのやもしれん。
じゃが、それを形の上でもクリアできたとて……果たして万人を「これぞ吸血大殲」と納得させられる代物にまで
昇華できうるか。
そこまでクリアせねばならんじゃろうそれは……茨の道ではないか？

繰り返すが、その一切が認められんわけではない。封じるべきことではないのじゃろう。
しかし現実的には些か厳しい。
それよりは、吸血鬼を使うか相手に指定するか、がよほど楽じゃとわらわは思う。
なにより、要らぬ懸念を抱えんで済むゆえにのう。

ま、それだけじゃ。
付け加えるならば、>>277赤き魔物の場合は、相手の提示した方法に対する返答としての意味合いが強かろう。
上記の方法を否定するものでも、狭義解釈を押し通したいわけでもあるまい。
わらわはそう思うぞ？

284 名前：凶アリア(M) ◆EMAgaKipC. ：2005/07/15(金) 07:24:43

>>283　旧き純血種さま
言うは易く、行なうは難しとは如何なものでしょう。
私は世に広く「案ずる良い有無が易し」という言葉も聞き及んでおります。

私は私の作中で主の帰還を待っております。
それと同じように、このスレッドに人が戻ることを祈ってはいるものです…。
そして現に今、闘争を進めております。
しかし。
多数、散発的な意見を述べる方がこの地に現れるのに対し、全く本義である闘争が進まない。
（会議板、本スレ、ＲＨマイナス等のスレを見た推測であり、水面下で進められてる方がいれば
申し訳ありません）
これは「多忙」などと言うのは『いい訳』であると思うのです。
然程重要とは思えぬレスのみであちらこちらのスレッドに顔を出す者がいた場合。
他のスレであれば「本スレにレスをしないのは可笑しい」「本義を忘れるな」
と揶揄されるのが必定。しかし、この大殲はどうしてそれが起こらないのでしょう。
疑問符が非常に大きくつきます。

旧き吸血の君。
貴方はこの地に改革を求め、活性化の為に手を尽くしてらっしゃいます。
しかし「いらぬ懸念」等と仰りますが、誰が懸念されるのでしょう。
場というものは現に動いている者が作るもの。

大殲の復興を望む「新規の者」は果たしているのでしょうか。
旧き方は復興をして、そして。どうすると言うのでしょう。

郷愁のみでこの地を復興させるのであれば、それは要らぬ老害の謗りを受けても
やむを得ぬと存ずるのです。

285 名前：凶アリア(M) ◆EMAgaKipC. ：2005/07/15(金) 07:48:45

案ずるより生むが易し、ですね。
悪文、ご迷惑おかけします。

286 名前：凶アリア(M) ◆EMAgaKipC. ：2005/07/15(金) 12:41:46

大殲のルールをどうしたいのか。
私の意見を申し上げます。

「異端は拒まず。
　しかし、糾弾される可能性は強い」


このルールを推奨する理由はいたって簡単です。

１．その方が思考の制約がなく面白い
２．収集が付かないというほど人が来るとは思えない
３．どの道ルールを口にする方々の大半は参加する意思、意欲、時間的余裕がない

１、について。
制限があるから面白い、という意見はございましょう。
同意する部分もあります。
しかし、制限があろうとなかろうと、興味深き文を構築できる方は面白いものを
作るでしょうし、私のような駄文しか書けぬ者はどちらにしてもつまらぬものなのです。

吸血鬼にこだわる、という方々は、それはそれで自らに制約をかけていただいて
楽しんでもらえれば宜しいでしょう。
闘技場等との区別はどうするか？
闘技場など既にありません。代替する場所はないのです。
この地のタイトルについては原作者の方々も既に見捨てておられましょう。
看板に偽りがある程、血濡れに満ちた文がなくなるのなら
自然淘汰に任せれば宜しいでしょう。
以前の吸血の時の所謂基準問題も、過ぎた行いをするものが過分に増えたのが
原因なのです。何が闘争か、については空気を読んでいただければそれで解決いたしましょう。
「空気を読む」という言葉を理解できぬ方々にはこのスレは
使いがたくなるのが欠点ではありますが。

結論の付いたことを蒸し返すな、という意見を覚悟の上でこの文を書いております。
意見等あればお願いします。

287 名前：名無し吸血鬼：2005/07/15(金) 13:47:39

と言うか…、やりたいのは原典回帰？　それとも発展進化？
前者か後者かによって根本的に進む方向性が違うような…

マリアベル嬢は前者で凶アリア嬢は後者の視点で話している様な気がします。
内部事情を詳しく知らないので誰が主導で改革を行っているのか、どんな改革
が必要とされているのか解りませんが、まず前提条件の統一をされてはどうでしょう？

288 名前：Blue：2005/07/15(金) 14:07:36

　もはや語る名前も無く、さりとて名無しで意見を言うのも言葉に重みがなくなるので、敢えてこの名
前で意見を言わせていただく。

　まず、私の意見を端的に述べるならば、それはもはや吸血大殲という名に拘る必要はないという事
である。かつて我々は、吸血大殲という名に拘った。その名を護る為に異端を放逐し、新たなルール
を制定した。

　しかし、その結果はどうであろうか？
　ご覧の通りである。
　吸血大殲という場は衰退を極め、今やこの場所は在りし日の残滓に過ぎなくなった。

　敢えて言おう！
　この場所は、既に一刻の容量を食うだけのゴミであると！

「吸血のロジックを考えろ」

　原作者赤こと鋼屋ジンはそう言った。
　我々はその時、丁度酷い嵐の只中にあり、原作者の言葉は至極真っ当であり、当然のように思
えたかもしれない。かつての鋼屋ジンという男にある種のカリスマ性があった事は、私も認めよう。しか
し、彼のした事を冷静に思い返して頂きたい。

　確かに、意見自体は至極真っ当であるように思える。
　だが彼は、原作者という立場を利用し自らの意見をぶち撒け、場を引っ掻き回すだけ引っ掻き回
して、結論が出る頃には姿を消していたのである。これでは、かつて大殲を荒らした男と何も変わらな
いではないか。

　断言しよう。
　彼には決して、大殲を正しい道へと導こう、などという使命感があったわけではない。
　ただ、暴言を吐く事によって自らの鬱憤を晴らしたかっただけなのである。

　この場所に既に愛着など欠片も無かったにも関わらず、自らの名前を晒し暴言を吐く。「対等に話
し合え」と言いながら、自分は原作者なのだから言う事を聞けと迫り、吸血大殲というweb小説とこの
場所には直接的な関係はないとそれを拒否されると、一言も無く姿を眩ます。

　重ねて言う。
　この場所においては、鋼屋ジンという男は荒らしなのである。

　さて。

　吸血のロジックを考える。
　確かに至極真っ当な意見である。
　だが、それを参加者全員に強要した結果、我々はこのような衰退を招いてしまった。

　では、その「ロジックを考える」という考えが存在しなかった時はどうだったろうか？
　かつての参加者の方ならば、良くご存知だろう。
　確かに、多くの問題があった。そこで行われていたものは、決して吸血の名を冠するのにはふさわし
く無かったかも知れない。しかし、それを補って余りある程の多くの名勝負があり、やりとりがあった！
我々はそれに感動し、或いは興奮し、この場所への参加を決めたはずではなかったのか？

　この場所は"闘争"を行うための場所なのである。
　決して、ロジックなどと言うくだらないものに捕らわれ、愚にも付かない意見を細々とかわす為に存在
する場所ではない！

　吸血のロジック？
　大変結構。考えたいものは考えれば良い。
　しかし、あくまで基本は闘争。何も考えず、馬鹿どもがただただ争い日々を過ごす。それだけが、こ
の場所の存在意義である。

　先にも述べた。もはや、この場所はゴミであると。
　ならば、もはや意地を張り通す必要も無い。ゴミに世間体などあるものか。形振り構わずやれば良
い。確かに、ここは吸血大殲という看板を背負っている。だが、真の闘争とは決して看板から生まれ
る物ではない。

　ストーリーが無い？
　知った事か。
　文章が稚拙？
　存分にやれ。

　やりたい者が好きにやりたい事をやる。
　我々はいつも、そうして来たのではなかったか。何故、それを制限されなければならないのか。それを
して、誰に何の徳があるというのか。

　もしこのように門戸を広げても、もはや手遅れかも知れない。
　或いは、私のこの一言が、大殲を決定的に終わらせてしまうかもしれない。私も、それを考えないで
はなかった。恐らく私は、かつての鋼屋ジンと同じように、暴言によって荒らしているだけなのだろう。だ
から、無視してくれても構わない。

　だが、看板と原作者の呪いとも言うべき言葉に縛られ、無様に足掻く姿を、私はこれ以上見るに耐
えない。だからこそ、敢えてここで言う。門を広げろと。

　だからと言って、私は決して全てを受け入れろと言っているわけではないという事を、ここに
表明しておく。

　最後に。
　このような乱筆乱文に最後まで目を通してくれた方々に、百万の感謝を。

289 名前：名無し吸血鬼：2005/07/15(金) 14:19:48

『薬になるかもしれない毒』の一ファンとして、面白かったと言っておこう！

290 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/07/20(水) 23:08:30

　まったく話の流れと関係ないんだけど、唐突に祭りのネタを思い付いた。

��電車男大殲　――Train Train Vampirkrieg――��

　詳細は一切合切不明。ただ何となくの思い付き。
　ただ、舞台はＮＹかＬＡのサブウェイが良いだろう。様々な派閥のギャングが交差する
サブウェイ。女が一人で乗れば絶好のカモ。襲われるの容易だからドラマも起こしやすい。
　しかし、そこから一体何をどうしろと言うのか。
　誰か実際に開催できるレベルまで補完してくれ。

＞みな様
　まぁ、あたしも言いたいコトが色々無くもないけど！　あたしなりの大殲観もあるわけだけど！
　そりゃあくまであたしの正義。
　んなのは誰も見たくないワケで、クソ拭く紙の裏にでも書いているさ。

　で、多分それぞれが��大殲�≠ﾆ言うモノに、同じような勝手な��正義�≠�持っているんだと思う。
　あたしが眺めてみたトコ、その正義は互いに衝突し合って火花を散らす―――なんて仕様じゃなく、
互いに互いを認め合え、尊重し合えると思うんだ。
��己の信ずるものが大殲です。ただし他人の同意を得られるとは限りません�≠ﾁてかぁ？
　そんな適当具合で良いんじゃないかなぁ、とあたしは思うよ。うんうん。
　今までそれでやってきたワケだし。

　マリアベルの��活性化�≠ﾁて言うの？　だって、ねぇ。
　別にそれであたし達が今まで通り闘争をできなくなる、とかそう言うヤツじゃないんだから。
��余計なことするな�≠ﾍ可哀想だよぅ。―――え、誰もそんなこと言ってない？

＞マリアベル
　あたしとの闘争のレス返せよぅ。
＞アリア
　あたしとの闘争のレス返せよぅ。
＞青
　あたしとの闘争のレス返せよぅ。

　ふふふ、あたしってば自分の意見を言わず、こういう逃げを打てるから便利。
　あ―――でも、白狼やシズマに突っ込まれる前に撤退行動を開始しないとな。

291 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/07/20(水) 23:09:04

こんな偉そうで毒にもクスリにもならない意見を吐くあたし。
でも青が放置されていて可哀想だったんだよ！

292 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/07/20(水) 23:45:26

6684 名前：PE[sage] 投稿日：2005/07/20(水) 23:18:11
電車男というフレーズに今更感を隠せない。

6685 名前：PE[sage] 投稿日：2005/07/20(水) 23:18:55
でも目立つ場所じゃ言えないの！　怖いから！

【チキン・オブ・チキン】

293 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/07/20(水) 23:50:56

デンシャオトコっていま滅茶苦茶流行ってるんじゃないの？

294 名前：名無し吸血鬼：2005/07/21(木) 00:00:01

もうブームは終わりましたYO!
TVドラマで再燃するかもしれんけど。

295 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/07/21(木) 00:07:58

>>294
　じゃあ、今の流行りってなんだ？　メイド・カフェ？　メイド・カフェ祭り？
　クレーム側と接客側に別れて……難しいな、オイ。

296 名前：Blue：2005/07/21(木) 07:01:50

>>290
返したよ。

297 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/07/21(木) 07:19:00

>>296
黒服のヤツだよ？

298 名前：Blue：2005/07/21(木) 07:25:20

ああ、だから黒衣vsff。

299 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/07/21(木) 07:53:43

確認しちまったあたしが負け組ってコトか……！

300 名前：Blue：2005/07/21(木) 08:15:57

m9（^Д^）

301 名前：名無し吸血鬼：2005/07/21(木) 15:17:54

「星戦争前話３」を記念して『裏切り者祭り』とかドーデショー？

302 名前：マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. ：2005/07/23(土) 02:14:31

そして確かに一週間経った、が……ふむ。

なるほどこれは……わらわが固く見過ぎておった、と見るべきなのであろうな。
案ずるより産むが易し。各々の考えでやらせるべき、か。

確かにわらわ個人の考えは原点回帰じゃ。
なれど、それを声高に主張して斬り合う気などは毛頭無い。ドライの奴めと同じくな。
>>283後半が考えすぎ、強硬、というのであれば……この場にて取り下げよう。
流してもらえると、ありがたい。

さて、しかしそれでは……改めて、どのあたりを見据えてこの件の落としどころを決めるか。
ちと、探ってみたいところではあるが……


……ふむ。
祭り、祭りか。

いつかはああ言ったが……そうじゃのう、一度走らせてみるのも面白いか。
大々的に告知して、希望者を募って、盛大に。
どうじゃ、これならばある程度は需要も計れるじゃろう。
新規層、既存層、どちらのもな。

で、あればじゃ。
それこそこの場合においては、門戸は限りなく広くしたほうがわかりやすかろう。
ドライの、或いは名無しの言うようなシチュエーションも悪くはないが、それよりももっとわかりやすく。
そう、すなわち


――在りし日のあの狂宴を。
　　誰も彼もが集いて殺し合う、あの「血祭り」を。


って何者じゃわらわ。
およそ美少女らしからぬ、血なまぐさい台詞じゃなこれ。
ま、こればかりは仕方あるまいか。それこそ流してくれ、じゃ。

ともあれ、わらわはこれを提案する。
一夜限りの、ばーりとぅーどな闘争の宴。
そんな祭りを、走らせてはどうか？　とな。

具体的には……

・チャット等の打ち合わせは無し
・参加キャラの制限も無し（※一刻全体イベントにしてもいいかも）
・死んでもへこたれない

つまり、完全なる勢い重視で一晩突っ走る。

・舞台はバトロワみたいな島で

あくまで状況を用意する程度、じゃな。
シチュエーションには凝りすぎずに。
それこそ先述の「血祭り」と似たようなものじゃが、まあ良かろう？
これぐらいには、シンプルに行こうではないか。

なお、開催時期にはお盆以降を目処に、と提案してみるぞ。
あのあたりには、俗に言う夏の祭典（※コミケ）があるゆえにな。
その後のほうが、都合もつけられやすいのではと思うのじゃ。

どうじゃ、この案は？

303 名前：マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. ：2005/07/23(土) 02:15:17

ふむ。
説明ばかりでもなんじゃし、過去の「祭り」のログでも貼ってみるとしようかのう。

「血祭り」
http://big.freett.com/vanp/taisenrog5.html　>377以降

ヴェネツィアを舞台にした通称「水祭り」
ま、こちらは上記よりはシチュエーションに多少凝ってはおるが。
参考資料というやつじゃの。

http://big.freett.com/vanp/taisenrog17.html　>4以降

304 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/07/23(土) 03:02:50

>>302
　祭りそれ自体はいいねー。ていうか、あたしもちょっとマヂで考えていたから。
　まぁ、あたしのは��たまーに懐かしい面子で揃って、がやがや騒ぐのも良いだろう�≠ﾁて
程度のモンだったんだけど。
　ほら、もはや大殲の闘争なんて��三ヶ月越し半年越し�≠ｪ当たり前で、
��一ヶ月で決着がつけばリアルタイム�≠ﾁてぐらいの時間概念じゃん？
　一つの闘争での摩耗が激しいのなんの―――もちろんそれがまた愉しいんだけど。
　ただ、その摩耗のお陰でそう軽々と闘争を出来なくなっている。これは事実。
　いや、別にやるヤツもいるんだろーけど。そう言うヤツは大概、多くのレスという負債を
抱えたままダークサイドに墜ちてゆく……。
　好きだからこそ、愛しているからこそ、精神を注ぎすぎてより崇高なモノを作ろうと思う。
　その結果のフォールダウン……。

　ま、まぁ、ほら。だからむしろ、��一日二日で終わっちゃって尚かつはしゃげる�″ﾕり
って言うのは、今の大殲じゃ逆に気軽なモノなんじゃないかなー、と思っちゃうワケよ。
　気負ってやるモノではなく、気分転換って言うのかな。そんな感じ。
　そう言う意味での祭り、をあたしは考えていた。

　実際やるかどうかはともかくとして、考える愉しみってのもあるからねー。

>>301
　まりまりはああ言っているけど、その��シチュエーション�≠ﾁてのはやっぱ捨て難いよな。
　当然、状況を限定すればするほど門戸は狭まるワケで、背負うモノも比例して大きくなるんだけど。

��エピソード３を記念して、裏切り者祭り�≠ﾍ良いねぇ……。
　もはや限定しまくって誰が参加できるのかも分からないぐらいにハラショーだ。
　あたしが思い付く限りでは……

　玲二と、―――ヒカゲぇぇぇぇ！！！
　ヴェドゴニアのソータなんかも、フリッツやモーラを裏切る展開あったよな。
　月姫だと……アルクェイド？　そう考えると、色々なヤツが参加できそうだね。
　問題はそんな裏切り者連中が集まって��だから何なんだ�≠ﾁてコトなんだけど。
　あたし達真っ当な健常者諸氏でそいつ等を囲って、��あ〜♪　裏切っちゃったのね〜��
と裏切り者の挽歌でも謳うか。

　あと、因みに言っておくけど、客観はともかくとして、彼自身の主観では、裏切りなんて
した覚えは毛頭無いはずだよ。むしろ裏切ったのはジェダイでありオビ・ワンである！
　その傲慢さがまた格好良いんだよなぁ……。

>>300
　何気なく３００ゲットしておいて、随分な顔文字だなﾌﾟｷﾞｬﾌﾟｷﾞｬ━━━m9(^Д^≡^Д^)9m━━━━!!!!!!!!!!

305 名前：ファントム・ドライ ◆03/PHantOM ：2005/07/23(土) 03:08:46

　時事ネタで行くなら、アレはやっぱ捨てられないだろ。
　アレだよ、アレ。

　―――そう、��世界の中心でアイを叫ぶ祭り�≠ｾよ！

　何かテキトーな吸血鬼に噛まれ、吸血病とか何とかそんなのにかかっちゃったまたまた
テキトーな人間サマが織りなす一大スペクタクルアルティメットラヴロマンス叙事詩！！
　ラストはもちろんあたし達のアイドル、うっぴー（ウピエル・シグムンド）が
「♪ひとみを〜閉ーじてー」を唄っちゃうワケだ。
　もう渋すぎる。
　

306 名前：q凶アリアp(M) ◆EMAgaKipC. ：2005/07/23(土) 11:51:40

祭りとは多人数が現れ収集が付きにくいものと聞き及びます。
しかし、それが同時に魅力でもあると。
であれば、旧き吸血の君の仰るように単純に状況程度を用意するような段取り
が良いかと思います。

一つの島の中に妖魔、夜族の方が集えば、自然とストーリーは生ずるもの。
その中では、あえてシチュエーションは用意せずとも興味深い話ができるものでは
ないでしょうか。
例えば───────


アズライト「もう、レティシャに会えなくなって…100年かな…悲しくて、辛いから
　　　　　　途中で数えるのを止めて暫くたつけれど…。何処に居るの…会いたいな…。
　　　　　　ぐすっ。あ、あれ？あ…もしかして。あの髪…あの姿…」

ドライ　　「白狼、アンタは解ってねぇ。クソほども解ってねぇのさ！！
　　　　　　愛すべきはエピ�Vでは皇帝に決まってる。
　　　　　　あのやられっぷりと────────あん？って…」

アズライト「れ、れ、れ、レティシャーーー（ドライに抱きっ）」

ドライ　　「っめェ…誰だよ。っていうかタダで何処に触ってやがる」

白狼　　　「ねこっぽ」

アズライト「…誰、って…そうなんだ。君も、記憶を落としちゃったんだね。
　　　　　　思い出して欲しいよ…ほら、昔こうやって…レティシャがお腹が
　　　　　　痛い時に暖めてあげたこと…憶えてるはずだよ（だきっ）」

ドライ　　（銃声）

白狼　「うさっぽ」

と言った展開を、我が主であれば一つの島の中で延々と別の人相手に繰り返すでしょう。
相手をして下さる女性が居れば、それこそ延々と………自動的に。
フリーなシナリオをそれぞれ組めるという点で、私はマリアベル様が言う様な祭りの形に
賛成いたします。




（ぴこぴこ）
・・・あ、主？・・・悲しそうな顔をされてますね。如何されましたか？
（ぴこぴこ）　

307 名前：ジョセフ＆シーザー ◆FpJojoHp9A ：2005/07/23(土) 22:37:51

シーザー「さてと来てみたのはいいが一応聞きたいことがある。
　　　　　俺たちは石仮面の男すなわち吸血鬼や普通の人間を糧としている
　　　　　柱の男と戦っている波紋使いなんだが・・参加してもいいのだろうか？」
ジョセフ「まあとりあえず最初にすることは・・。吸血鬼のみなさん！ハッピーうれピーよろピクネー！」
シーザー「何をやっているんだJOJO・・」
ジョセフ「いやー吸血鬼だって色々いるだろ？だから中には友好的な吸血鬼もいるかもしれないじゃないか！
　　　　　だから最初は対話と挨拶が大切だろ！ハッピーうれピーよろピクネー！！」
シーザー「（こいつは本当にあの究極生物を倒した男なのだろうか・・再び疑問だ・・）」

308 名前：ハインケル・ウーフー：2005/07/24(日) 03:06:31

>>307
　ジョゼフ・ジョースター、シーザー・アントニオ・ツェペリ―――ふん、どちらも一級品だ。
　私みたいな、イスカリオテのような、汚らしいゴミ処理係とは違う。
　れっきとした英雄、称えられるべき戦士だ。
　二人を知らないような輩はモグリ、そう蔑まれても仕方がないくらいのな。

　そう……だから、逆に問い質したい。
　おまえ達二人に参加の権利が無いと言うのならば、いったいその権利とやらは誰にこそ
相応しいのか。ジョースターとツェペリの血を連ねるものすら拒む権利を、誰ならば
受けられるのか。お二方で駄目だと言うなら、例えベルモンドの人間とて不可能かと。
　私はそう、考える。
　当然。いくら名誉ある血を受け継ごうとも、本人がクズならその血も腐るがね。
　その辺は、結果で示すしかないだろう。

　私は生憎と吸血鬼では無いけれど「初めまして」。この大殲で、自分を示すには実戦しか
ないと私は心得ている。だから、不安ならば存分に戦えば良いんじゃないか？
　まぁ、存分に戦うと言うのはなかなか難しいものなんだがな……。

309 名前：クロワ ◆KurowahR5A ：2005/07/24(日) 04:58:51

　ふぅむ…祭りねぇ…面白そうな事が起こりそうじゃねぇか。
　ま、そりゃ一先ず置いといて…だ。
　話し合いも、小康状態に入ったようなんで、一つ訊きたい。

　―――俺にゃ、ここに赴く資格…ってのが、あるのかどうかを。
　専門は悪魔や妖魔…時と場合によっちゃ、大量発生した魔物まで狩る俺だが、
吸血鬼相手ってのは…残念ながら無いんだな…こりゃ。
　……そういう訳なんでね…良ければ、一つ教えてもらえると有り難い。

310 名前：ハインケル・ウーフー：2005/07/24(日) 05:27:58

>>309
　何を馬鹿なコトをニコラス神父。
　おまえには戦う理由があり、戦わなければいけない状況がある。
　ならばそれだけ十分だ。
　後の是非は、事実と結果をもって証明される。

　―――と、これは失礼。どうやら人違いしていたみたいだ。
　く、クロワ神父？
　いや……あなたとよく知ってる男と、何度か一緒に仕事をしたコトがあったものでな。
　悪かった。忘れてくれ……。

　ま、まぁどちらにせよ悪魔祓いならば、吸血鬼と戦う動機付けなど如何様にでもなるし、
どうとでもなるんじゃない？
　と言うか、私が良くてあなたで駄目という理屈は無いでしょう。

　あと、あなたも含めて勘違いされている方が多いので言っておくが、大殲は一人では成り立たない。
　例えアーカードという吸血鬼の中の吸血鬼だろうと、彼一匹では大殲にはならない。
　しかし、そこに私やクロワ神父というカードを切ることで、初めて大殲として成り立つ。
　お分かりか？　あなたたった一人の存在では、是非は決めようがないんだ。
　あなたが他の誰かと混じり合い、血を流すことで初めて、それが大殲か如何が判断される。

　では、どうすれば大殲をやれるか。
　それは自分の中に確固とした��大殲観�≠�持つことだと私は考える。
　その信念に従って生きれば、自ずと取り捨て選択もできるようになるでしょう……。

　兎にも角にも。取りあえず「始めてまして」クロワ神父。
　

311 名前：千鳥かなめ ◆Kana/lWMBI ：2005/07/24(日) 05:54:03

ふーみゅ。そーいうお祭りってのも面白そうね。できたらあたしも一口乗らせてほしいなぁ。

っと、自己紹介が遅れたわね。あたしは千鳥かなめ。所謂ふつーの女子高生よ。
いやまぁ……あたしみたいなのは場違いっつー批判は覚悟の上で聞くんだけどさ。
できたらその遊び、あたしも混ぜて欲しいなぁって。

もちろん、ふつーの女子高生たるあたしの生活に、吸血鬼のきの字もないわけで。
そーいう意味では、完璧アウトなんだけどさ。
ただ、このイベントに限ってでもよ、そーいう制限全部取っ払って>>298のＢｌｕｅさんや>>302のマリアベルちゃんの言うよーに、
一切合財オールＯＫのお祭りにしてくれれば、そしたらあたしが参加しちゃったりもできるわけ。
「なんか超人的などたばた撃ち合いに巻き込まれちゃった一般人、哀れなる美少女女子高生」なんてのもね。

っつーか、あたしとしてはそっちの方が絶対面白くなると思う。
実際、あたしみたいなヤツは多いと思うわよ、きっと。
んでもって、トップにバナー掲示してもらうとか、投票ＣＧＩ借りてみるとか、イベントのためだけにスレ一つ立てちゃうとか、
もうそんな感じで一切合財巻き込んだお祭りにしちゃう、その方が絶対面白いわよ、うん。
反省点とかも出てくるかもしれないけど、そりゃもう後で考えればいいことであって。
後はとりあえず勢い任せてＧＯＧＯＧＯＧＯ！！　ってなもんでさ。


とか言っておいて何だけど、あたしも8月はいろいろちょっと忙しくなるのよね。
だから日取りがいつになるかは知らないけど(まあ明日ってことはないだろうから多分８月なんでしょ)、場合によっては出れないかも、だけどね。
出れたら参加するわ、ってか主催者二回やってそろそろ飽きたし、今度は一参加者に戻って暴れたいー！

コホン。ま、んなところで、ちょっと考えておいてくれると嬉しいかな。

312 名前：クロワ ◆KurowahR5A ：2005/07/24(日) 06:33:07

>310
　…？俺を知ってる男？
　―――まぁ、良く要領は得ないが…忘れてくれってんなら、
『人違い』も含めて忘れるさ。

　ふむ、全く以ってアンタの言う通り…
なんだが、俺らしくない事に迷いに迷っちまってな。
　……訊くには今が丁度良いタイミングだと思って、出てきた訳だ。
　取り敢えず、答えと助言に感謝するぜ…。
　―――と、あぁ…良い忘れてた。
　ま、『神父』…なんて堅っ苦しい肩書き付きで俺の名前を呼ぶ事ァない…
ってだけだがね。
　さて……そんじゃ、今度は『狩場』ででも会おうぜ…第１３課、
火消し役のシスターさん。
　……鉢合わせする確率としちゃ、低そうだがな…。

313 名前：ハインケル・ウーフー：2005/07/24(日) 07:51:38

>>311
　ま、待て。落ち着けおまえ。
　千鳥かなめ。おまえの言い分はよく分かった。
「吸血大殲としてではなく、一刻館の祭りとして行いたい」そう言うのだな？
　それは分かった。よく分かった。
　その是非についても私は伏せる。
　思いつきで姿を見せて、レスを返している私には正直手に負えない問題だ。
　私に出来るコトなんて、精々>>307や>>309のような簡単な疑問に答えることぐらいだからな。
　追々、相応しい連中が答えるだろう。

　しかし、誤解は正しておこう。あくまで私なりの見解だがな。

　>>288の青の「好きにすればいい」の発言は、ただ大殲の門戸を全開にしようと言ってるに過ぎない。
　入場してから、後の生活にまで保証していないんだ。
「全ては自己責任」奴の言い分は結局、それだ。―――そのはずだ。
　分かるか？
　いくら入りやすい門にしたからと言って、中が過ごしやすいかどうかは別問題なんだ。
「自由」と言うモノには、途方もない責任がのしかかる。
　考えてもみろ。なぜ我々ヴァチカンが栄えたのか。
��指針�≠ｾろう？　導くための標が必要だったんだ。
　青はそれを取り払えと言っている。これは残酷なことだよ。
　標もなく、導くべき方向性もなく、自由にやれ。
　そこで一体どれだけのものが、自らの中に��大殲�≠�確立させ、それを具現できる？
　良いか、奴は確信犯で言っている。だから聞け。
��初心者には甘くない�≠ｻれが青の言い分だ。

　逆に、>>283はシンプルだ。シンプルだからこそ分かり易い。
��吸血鬼を相手とする闘争のみを許す�≠ｱれならば、行われる全ての闘争が大殲となる。
　いちいち自分で��大殲とは何か�≠�思考する必要は無くなるわけだ。
　これは大殲に慣れたものには面白味が無いだろうが、初心者には優しい。
　これ以上に無いほどの確実な��指針�≠ｪあるわけだからな。

　上記のやり取りは、どちらが正しい云々ではないんだ。
��門の開き具合�≠ﾅ行き違ったに過ぎない。中身を覗けば同じ大殲だ。

　一切合財オールＯＫのお祭り……の是非は前述のように、私は伏せる。
　だけど、おまえ個人の参加ならば問題ないんじゃないか？
『なんか超人的などたばた撃ち合いに巻き込まれちゃった一般人、哀れなる美少女女子高生』
　面白そうじゃないか。
　非力なものがいてこそ、力あるものの存在が際立つし、守る側のものも生まれる。

　祭りではないが、小笠原祥子とやらが参加した闘争もあったからね。
　……未完のまま会議室で眠っているが。

　ただ、それなりの覚悟は持ちなよ。
　一刻館の祭りがどのような感じなのかは知らないが、大殲はおまえも認めている通り、
キケンな場所だ。��超人的などたばた撃ち合い�≠ｾって起きてしまうほどにな。
　死んでもへこまない。殺されても泣かない。生き残れるだなんて思わない。
　それが大殲流儀の祭りだ。
　あえてそこに踏み込もうとするおまえの決意―――愚かだが、私は尊敬するよ。
　何か、協力できることはないかな。銃の手ほどきぐらいで良ければ教えるぞ？

314 名前：ハインケル・ウーフー：2005/07/24(日) 08:04:38

>>312
　……っ！　誤字だ。
「いや……あなたとよく知ってる男」ではなくて、「あなたとよく似ている男」だ。
　訂正する。悪かった。

　件の祭りになら、私も参加する予定だ。相棒と一緒にな。
　……面倒だけど、これも仕事だから。
　それに、魂の冒涜者連中が集まるのは分かっている以上、無視はできない。


　さて、私も行こうかな。今晩は柄にもない長口舌で疲れた……。
　私宛のレスは誰か代理の人間が答える。

315 名前：ジョセフ＆シーザー ◆FpJojoHp9A ：2005/07/24(日) 19:05:29

>>308　ハインケル・ウーフー
>そう……だから、逆に問い質したい。おまえ達二人に参加の権利が無いと言うのならば、
>いったいその権利とやらは誰にこそ相応しいのか。
シーザー「そうか・・俺たちは吸血鬼と因縁のある血縁だし実際JOJOは戦ったことあるしな。
　　　　　じゃあ俺たちはここにいていいわけだな」
>自分を示すには実戦しかないと私は心得ている。
ジョセフ「俺は策士だしなあ、賭け事でもなんでも示すことはできるぜ！」
シーザー「ダービーにイカサマ負けした癖に・・」

>>309 クロワ
ジョセフ「お、祭りがあるのか、だったらもう俺は震えるぜハート！燃え尽きるぜヒートだ！！」
シーザー「待て！JOJO！祭りは祭りでも俺たちの考えているFestivalではないかもしれんぞ！」
ジョセフ「おいおいそんなこといってたら、祭りの最中にかわいそうな女の子を見つけられなくなるぜ。」
シーザー「・・・そうだな！すまないJOJO！疑ってすまなかった。よし俺も心の波紋疾走だ！！」

>311 千鳥かなめ
シーザー「かなめさんというのですか・・こんなところにくるということは
　　　　　どうかお困りのご様子かい？だったら私が手伝・・」
ジョセフ「おぃシーザー。彼女、祭りに関しての案を出しにきただけだぜ」
シーザー「そ・・そうなのか・・それは失礼いたしました、かなめ様」
>ふつーの女子高生たるあたしの生活に、吸血鬼のきの字もないわけで。
ジョセフ（3部）「うーむ・・」
シーザー「どうしたんだJOJO・・って誰だお前は！！」
ジョセフ（3部）「うむ、少し気になることがあったから3部Verになって、その時のワシが持っている
　　　　　　　　念写をやってみたのじゃが・・」
シーザー「なにかかなめ様にきになることでもあったのか？」
ジョセフ（3部）「彼女の学校を念写してみたのじゃがチェーンソーを持った人外な人間が写真に写っておるんじゃ」
シーザー「JOJO・・作品によってはそれぐらい人外なやつは多いぞ」
ジョセフ「でもな・・手榴弾を口で噛み壊したり、あの異常なまでの筋肉って柱の男と共通点がありそうなぐらいすげぇぜ」
シーザー「そうだな・・まさかその人間は吸血鬼・・って・・」
ジョセフ「いつの間に元に戻っているんだ！JOJOぉ！とシーザーお前はいう」
シーザー「いつの間に元に戻っているんだ！JOJOぉ！・・・ハッ！！」

316 名前：飛竜一行＃ＮＩＮＪＡＭＡＮ：2005/07/28(木) 02:39:56

　 　 　 　 　 　 　 　 　| ＋　激しく文字レス　＋
　 　 　 　 　 　 　 　 　| 一刻館にて夜の眷属と、猟犬どもとの
　 　 　 　 　 　 　 　 　| 血腥い宴会が開かれている場所があると聞き、
　　　　　 　　/￣ ＞ ┿　　やって来た。
　 　　　　　　|ﾟUﾟヽ|　∩ そんな中手間は掛けさせたくないが１つ答えて欲しい。
　 　　　　 ⊂| ｙ 　二ノ この場所はＡＡを使うキャラハンの参加も可能なのか？
　 　　　　　　〉　´⌒l 不可ならば早々に退散するが･･････。
　　　　　　　（__ノ ^Ｕ


　月山　　　　　　　=Ｖ=　｜＿｜
┃━┏┃　ﾟUﾟ　　　　ﾟ∋ﾟ　ﾟДﾟ
＋　激しく右端からソドム(弟)、俺、ジン･サオトメ、パイロン　＋

317 名前：飛竜一行 ◆peXhLN2G0U ：2005/07/28(木) 02:49:07

　　　　　　　　　　　||
　　　　　　　　／￣||＞
　　　　　　　　|/ ⌒ヽ＋激しくここじゃ＃は半角で打つんだな･･･
　　　　　　　　|　| |激しく早速で悪いがトリップ変更＋
　　　　　　　　∪ / ﾉ
　　　　　　　　 | ｜|
　　　　　　　　 ∪∪

　　　　　　　∠￣＼
　　　　　　〜|/；U；| ＋激しくこれでも太陽板じゃ
　　　　　　　(　 ｙ　ヽ　神呼ばわりされてたんだぜ＋　　　
　　　　　　　ゝつ　(ﾉ
　　　　　　　と＿）＿）　且

318 名前：ケイン・ウォーロック ◆CainO7erKI ：2005/07/28(木) 07:47:12

……ふん。
あの馬鹿者は朝に弱いし、この程度の事で賢者殿や龍殿の手を煩わせる訳にもいかん。
ゼルマン？　奴にはそもそも期待するだけ無駄だろうにっ。

そういうわけで僭越ではあるが、ちょうどここに居合わせた俺のほうから答えさせてもらうが……


>>316-317　この場所はＡＡを使うキャラハンの参加も可能なのか？
……アスキーアートだと？
いいだろう、俺の見解でよければ答えてやる。


まず初めに参加の件だが――
貴様らの言う『参加』が、いまここで言われている『祭り』に参加するというものであれば
『参加する事』自体は不可というわけでもないだろう。
ただその際には、>>313のシスター・ハインケルが言った条項を十分肝に銘じておくべきだろうがな。

次にこの“『吸血大殲』というスレへの参加”の場合の話だが……

はっきり言えば、俺から見れば怪しいと言わざるを得ん。
確かに貴様らもそれなりの修羅場こそくぐってはいるのだろうが―――それでもここは『吸血大殲』。
ここの住人として闘争がしたいのなら、必ず（とは、定義で論議中のこの状況下では言わんが）
ほぼ間違いなくそれに見合った『吸血鬼との戦い』というロジックが必要とされる。
お前たちが闘争の際に誰からも納得できるそうしたロジック、そして納得させる戦いを
提供できるというのなら、問題はないのかもしれんがな。

分かりやすく端的に言えば、
『やりたければ好きにやれ、ただし咎めだてられるのも覚悟の上で』ということだ。
そのあたりは>>1-4までにまとまった記述がしてある。
まだ見ていないならよく見ておけ。そして肝に銘じておけっ。

それと、これはこの大殲という場とは別に、俺個人としての疑問なのだが――



貴様らがAAを使うのは分かった。
だがそれで、実際に本格的な闘争もAAばかりで行うつもりなのか？
もしそれで貴様が首を縦に振るつもりなら、俺からもはっきり言わせてもらうが――

正直、無茶もいいところだと思うぞ？


そもそもアスキーアートという代物は、その一瞬の場の様相――
いわば文字通りその場の『絵』をレスで表現する機能には優れている。それは認めよう。

だが、実際の闘争――
例えばこのスレの>>5-153までの闘争を見てもらえば分かると思うが、闘争とは大概ほぼ例外なく
その流れ行く戦場の空気、闘争者、そして敵対者の動きの描写の応酬が逐一必要となる。
まさかそれを、全部アスキーアートで行うつもりだとは言うまい？

まあ、初めから闘争そのものを全てネタ闘争でやるつもりだと言うのであれば
全編AAのみで行う闘争というのもアリかもしれん。
だが実際のところこの場におけるAAの使いどころとしては、
よくて闘争の中の一コマ、インパクトある一瞬を表現する挿絵程度でしかないと思うがな。
あるいは騒動の最中に単発で顔を出す『賑やかし』ぐらいか。

少なくとも闘争を行う際に文よりもAAばかりで描写を行うようなやり方は、
禁止こそするつもりはないが俺からはとても薦められん、とだけ言わせてもらおう。
神呼ばわりだか何だかは知らんが、それで燃える闘争とやらが出来るかどうかは別問題だということだ。

ここに有るほかの者達には、またそれぞれの言い分もあるかもしれんが……
この件に関しての、俺からの見解は以上だ。


しかし任務のためなら冥王すら斬り捨てる無神論者の貴様らストライダーが
自分達の事を神呼ばわりというのも……これはこれでおかしな話ではあるな。ふん。

319 名前：マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv. ：2005/07/30(土) 01:40:21

うーむ。
とりあえず二、三、というか。

祭り参加の件じゃが、わらわとしては先の理由（>>302）から今回はテストケースの意味合いを含む。
ゆえに、少なくとも今回においてはあまり制限はしたくない。
来る者拒まず、じゃ。
無論、>>313ハインケルの言うような「覚悟」は持ち合わせてもらわねば困るが、な。

>>316飛竜一行についても然り。
ただし、おぬしらの場合は別の問題があるがのう。
>>318ケインとやらと重複することとなるが、おぬしらの（>>316-317を見る限りでの）スタイルは確実に場を選ぶ。
要するに「AA主体のやりとり」となれば、それを場にそぐわぬ、相手をするのを躊躇われる……
そう考える者が現れることは、想像に難くないという事じゃ。

有り体に言えば「空気を読んでくれ」という話になってしまうが、そこだけはゆめゆめ、気をつけることじゃ。


さてそれはそうと、おぬし。>>318ケイン・ウォーロックとやら。

先に注意をしてくれたのは済まなかったが、少々棘が目立つぞ。
特に最後の二行、まさしく蛇足というものであろう。
今は一応、話し合いの最中。無用な波風を立てかねん物言いは、謹んでくれんか？
ひとまずは、祭りの開催等について進めておきたいわけじゃからしてな。


現状の見解としては以上じゃ。
なおわらわとしては、どちらにせよ開催時には板トップでの宣伝等は考えておる。
せっかくやるのじゃ、これぐらいの活動は罰は当たるまい？

320 名前：飛竜一行 ◆peXhLN2G0U ：2005/07/30(土) 04:24:20

>318
　　　　　　∠￣＼
　　　　　　 　|/ﾟUﾟ|〜
───╂⊂|ｙ　　二０ +　激しく文字レス　+
　　　　　 　　〉　´⌒l
　　　　 ＿__（__ノ ^Ｕ＿__


+　激しくお前やマリアベル嬢の言う事は正しいし、俺が使うＡＡは
激しくこのスレッドには合わないだろうと考え
ここは何も言わずに消え失せる事にした。

が、せっかく俺のため朝の忙しい中答えてくれたというのにお別れの挨拶としては、これだけでは素っ気無い。
補足も兼ねて最後に三つ言っておきたい。

�@俺の言う神とは、功績のあったFLASHや小説の職人、良くなりきれたキャラハンを指す。
（これぐらいはネットの基本用語として知っておくべき事と思うが、まあそんなつまらん事を自慢気に語った俺も馬鹿だったか････････）

�A俺はどちらの意味でも「俺は神だ」と名乗った覚えはない。
呼ばわりされた事は1回だけあるがな。まさか俺がどこぞの宗教団体の教祖にでもなったと思ったか？+

�Bその初対面の人間に対する態度と口調、現実の世界では使わないようにな。
頭では分かっていてもハッと出てしまって大目玉なんて事はザラにある。

>>321−1000
+激しくこのスレッドに幸多からん事を。+
　　　　　　　 。 ◇◎｡ｏ.:O☆οo.
　　　　　　　。:゜ ◎:0☆:o∠￣＼☆｡∂:o゜
　　　　　　 ／。○。::∂O::+|/ﾟUﾟ|。☆◎o:0
　　　 　 ／◎.|￣￣￣￣￣∪∪ ￣￣￣￣|:◎:
　　　 ／　☆｡|+ 激Happiness visit you!! +|☆
　 ▼ 　 。○. ｉ___._ｏ◇☆ ＿＿＿＿＿＿＿|。.:
∠▲―――――☆ :∂ｉo☆ ゜◎∂:.

321 名前：ケイン・ウォーロック ◆CainO7erKI ：2005/07/30(土) 05:00:37

>>318
……うむ。
まあ、俺の考えてもらいたかった事が正しく分かってもらえたようで何よりだ。
先刻（>>318）のことも、門戸を閉ざして門前払いしようとしたわけでもない。
参加の際にもやり方さえ工夫すれば、ということで、な。

それと、>>319のミス・マリアベルがたしなめてくれた様に、
俺も物の言い方に大人げがなさ過ぎた。
この事に関しては素直に謝罪しよう。　すまなかった。

最後に一つ釈明させてもらうと、>>318の最後の二行（神呼ばわり云々の項）は
そちらの説明してくれた事も全て承知の上で、単に「飛竜というキャラ」を冷やかすためだけに言った言葉であって
断じてお前達自身（中の者）を罵倒するつもりで言った訳ではなかったのだ。
余計な一言で誤解と不快の念を生じさせてしまったことに関しては、真に申し訳なかった。　重ねて謝罪する。


そして>>319のミス・マリアベルにも。
今のこのようなデリケートな話し合いの場で、徒に場に波風を立てるような発言をするものではなかったな。
俺も発言に大人げがなさ過ぎた。　真に申し訳ない。　以後は慎む事としよう。

322 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2005/07/30(土) 23:05:11

　え、えぇと……難しい話は分からないんで、インテグラ様に任せるとして……。
　マスターからの伝言を預かっていますので、発表しマスね。

"このまま理屈だらけでは埒が明かない。前哨戦で存分に埒を明けよ"

　……らしいデス。

　た、多分マスターは練習的に小祭りを開こう、と。
　それが狙いじゃないかなー。
　……イヤ、わたしにはマスターの考えなんてとても分かりませんけど。

　既に面子も発表されています。
　妖魔のアセルス＠サガ・フロンティア２　マリオネットからの参戦デス。
　アサシンの佐々木小次郎＠Fate/stay night　どっからか現れました。
　戦術魔法士レイオット・スタインバーグ＠ストレイト・ジャケット　強制参加らしいデス。
　それと、ヘルシングからわたしことセラス・ヴィクトリア……よろしくお願いしマス。

　レイオットさんは、どうも話などまったく通していないので、マリオネットでの参戦も許す、
とマスターは言ってます。
　参加の拒否権はわたしと同じく用意されていないみたいデスね……。

　日時など詳しいことは、聞いてませんけど。恐らくは平日の夜に決行じゃないですかネ。
　乱入大歓迎らしいデス。横から思いっきり叩いて来い、と。
　でも、あくまで小祭りなので、面子が揃わなくとも構わないとマスターは言ってました。
　四人はいるのだし、あくまで練習的なものデスからね。

　というコトで、上記のわたしを含めた皆さんはお手柔らかにお願いします（ぺこり
（そんな話聞いてねぇよ、とかは無しデス）
　わたしも必死なんデスよ……。

323 名前：アドルフ・ヒトラー ◆sLAdoLfKkE ：2005/07/31(日) 10:23:54

祭り、か。
このところ退屈していたところだ、丁度いい。

長々と参加までの心境を書くほど私は暇ではないのでね。
この下らなくも素晴らしい祭りに参加させてもらう、とだけ言っておこう。
私が真の覇者たるためにな！

324 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2005/07/31(日) 13:38:27

突然デスけど、小祭りは明日になりました。
マスターの意向なので、もう決定デス。
月曜の夜、開かれます。

325 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2005/07/31(日) 14:33:44

　え、えぇと……皆さん、突発的小祭り大闘争の詳細が決定しました。
　突然のコトに関係者の皆さんも「聞いてねェよ」と驚かれるでしょうけど……ゴメンナサイ。
　わたしも聞いてませんから、許して……。
　インテグラ様曰く『突発祭りなれば、唐突に起こすのは当然だろう？』ですので、諦めてください。

　では！　詳細を発表したいと思います！


【タイトル】小次郎祭り（超仮題）
【舞台】柳桐寺
【開催日時】八月一日（月）
【開催時刻】夜間。十九時辺りが目安？　参加者の都合に合わせます。
【闘争時刻】行われる闘争の時間も、同じく夜間です。深夜を想定してください。
【ルール】乱入オッケーの勢力無し、で。ひたすら殴り合いデス。
【会議の有無】メール欄と会議室を駆使しマス。基本は打ち合わせ無しの方向で。

【シチュエーション（闘争の状況）】
　こ、これは……デスね、そのまんまでっかいお寺で乱闘、としか考えていません……。
　それだけデス。
　柳桐寺と言うのは、タイプムーンさんのFate/Stay nightに出てきたながーい石階段のある
お寺です。大きいです。山の上にあります。
　そのお寺には何故か佐々木小次郎と言う自縛霊がいるんデスよ。だから「小次郎祭り」に
しました。因みに小次郎さんには明日突発祭り開催とも何も連絡していません。
　もしかしたら、都合が合わなくて小次郎さん無しで小次郎祭り開催になるかもしれませんネ。
　あはは……。

　主な闘争箇所としては、境内（英雄王様とシローさんが戦っていましたね）と
石階段（長いデス）、石階段から境内へと繋がる門（小次郎さんが自縛っています）
お寺の裏の方（確か、まーぼーさんや慎二くんがいたトコロです）。あとお寺の中……ですかね。
山にお寺あるので、森林戦も出来そうデス。お寺の中は原作でも描写が無いのでテキトーに。
　フェイト原作知らない！　という方もご安心してください。ほんと、ただのお寺デスから。
　聖杯戦争や何やらもあまり意識しない方がよろしいかと。

　そんな感じで、お願いします（ぺこり

326 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2005/07/31(日) 14:49:31

　これだけじゃ参戦の仕様がねぇよ、と言う方のために、今現在分かっている
柳桐寺の状況を説明をしたいと思いマス。
　いいデスか？　しっかり聞いてくださいネ。

　ま、まずは当然の如く、小次郎さんが門前で暇そうに自縛しています。
（都合により祭り勃発時には成仏している可能性大）

　あ……あと、弓塚さつきちゃん（by月姫）が寺の裏のほうで燻っています。
　吸血鬼になってしまい、人の眼から姿を隠すために潜伏しているようデス。
　どうしてお坊さんがわんさかいて、霊力ももの凄く高い柳桐寺なんかに隠れるのかは
わたしには良く分かりません……さつきちゃん曰く、女子高生の都合らしいデス。
　これはれっきとした祭り参加者デス。
　真っ先に参加してくれました。よっぽど出番が欲しかったみたいデスね。

　そ、それと、カジさん（by夜刀の神つかい）も参加です。
　どうやら何か命令をマキリさんから請け負い、寺に訪れたみたいデスね……。
　カジさんは原典がマイナーなので説明しますと、極ありきたりの吸血鬼デス。
　人間の頃はボーソーゾクだったっぽいデス。
　スペックなどは……わたしと同じで、極標準の吸血鬼ですネ。
　何か必殺技を持っていたり、とかはしません。

　あと、レイオットさんが何故かカペルさんと一緒にお参りに来ています。
　どうして深夜に、しかも柳桐寺でお参りしているのかは不明デス。
　これも話まったく通していないので、参加してくれるかどうかは微妙……マスタぁー。
　しっかりと話を詰めておいて欲しかったデス……。


　と言うコトで、いま現在参加者は（無理矢理）四人決定しています。参加動機に
迷っている方は、以上の方達を結びつけてみてはどうでしょうか。
　突発乱入もちろん歓迎デス。
　けど、事前表明をしてくれたら他の人も参加し易いので、良ければお願いします（ぺこり

　他、何か質問などあれば……私が答えられる範囲でお答えしマス。

327 名前：東方仗助：2005/07/31(日) 14:58:45

>>325

　……。
　………。
　…………。

　ハイハイ、こちら東方……って、承太郎さんじゃあないっスか！
　お久し振りっス……いやぁ、元気スよ。おふくろも全ッ然！　変わってないっス……はぁ、用、
オレにっスか？　承太郎さんがジキジキにってキンチョーするなぁー……いやいや、男東方、
何なりと……（ラッキィ〜〜〜承太郎さんが「頼む」ってコトはよォ〜〜〜、予算がサミシー夏
の軍資金も援助して貰えるかもしんねーじゃねぇーかよぉーッ！）
　……。
　なんスって？
　はぁ、……「矢」？
　「矢」って――例の。
　……つまり……はぁ。
　あ、『調べるだけ』、ね。
　ヤだなぁ、ちょっと『ゾクッ』としちゃいましたよォ……オーケイ、お任せ下さい！　『寺』に行っ
て調べて来い、っつーコトですよね。チョロいモンっスよぉ〜〜！
　トコロで、……それで、っスね。
　へ？　いや、ははは……『お見通し』ってコトっスかぁ〜？　ちょっとだけでイイんですけどォ、
　お――おお！
　グレート！
　何も問題ねェーっスよ！　『明日』！　早速行ってきます！
　あ？　『幽霊』？　『幽霊』が出るんスって？　かーっ！　承太郎さん『幽霊』なんて信じてン
スかァー！？　『ウワサ』なんてタダのウワサっスよ、ウ・ワ・サ！
　んじゃ！　『軍資金』の方、ヨロシクお願いしますッ！



　……グレート！　『十万』！　夏の『勝ち組』はこれでイタダいたも同然だぜぇ〜〜〜ッ！



（……でも、『幽霊』か）
（ホントかな……マジにいたらちょっと怖いよなァ……）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　...To Be Continued！

>>325

　えーっとォ。
　「fate」っつーの、マジに知らねぇーんスけど、認識ズレちまったらスイマセン。
　『寺』っつーのは『フツー』の寺の構成で、ダダ長い『階段』があると思えばイイんスよね？
　

328 名前：ファントム・ドライ ◆QyCal3DreI ：2005/07/31(日) 15:12:37

　柳桐寺って……昨日、アインの奴に呼び出されたのも確かそこだったよな。
　あそこで決着をつけよう。
　あの山奥の寺でなら、誰にも覚られずに思う存分殺り合えるって……。
（寺に住み込んでいる人はどうするんだろう）

　と、言うことで。
　その祭りとやらには興味ねぇけど、同じ時間にあたしはその柳桐寺とやらに
居合わせているから、ま、一応ここに挨拶だけはしておくよ。

　名前はファントム。綴りは正確に頼むぜ。
　

329 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2005/07/31(日) 15:21:44

>>327
　そうデス。（断言して良いのかな……）
　山の上のほうにお寺があって、ふもとからそこまで一本の長い石階段が続いていマス。
　寺へと至る道はそこだけデス。
　あとは、山の林間を縫って強行軍で寺へと至るしかありませんネ。

　寺は境内がけっこう大きいデス。あとはふつーのお寺じゃないかと……わたし、日本の
知識そんなに無いから、断言はできませんケド。

　噂の幽霊さんは、階段から境内へと至る門にいます。
　基本的に暇人っぽい幽霊さんデス。

>>328
　あ、ここにも幽霊さんが。な、なんかほんとに怪談じみて来ましたネ……。

330 名前：東方仗助：2005/07/31(日) 15:35:43

>>329

　『ビンゴ』！
　オッケぇ〜〜〜、状況だけ掴めりゃあ、ナンにも問題ねぇースよォ〜！
　ワザワザ答えて頂いてありがとうございましたァ！

（……でもよォ）
　『幽霊』だけじゃなくて『吸血鬼』ィ〜？
　どーなってんだっつーんだぁ……？
　ダイジョーブなんだろうな、クッソォ……、



（あれ？）
（……なんでブロンドのお姉ちゃんの『言葉』がワカんだ、オレ……？）
（ま、いっか）
　

331 名前：長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg ：2005/07/31(日) 15:38:14

>>324-326　セラス
おいおい明日かい。また急だな。
平日の夜は如何にもキッツーだが、まあ良かろ。
おーい、ひと口噛ませんか。

そういや会議室を使う場合、会議板で埃被っとる総合会議室スレ、でいいのかな？
又は先ごろからの移転案を鑑みて、RH−板に新規で立てる？

後、開始は二十時以降だと少し嬉しいかも。

332 名前：ミレニアム一刻館支部員：2005/07/31(日) 15:56:58

失礼、一つ質問が。
PCではなく、携帯からでも参戦可能ですか？

333 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2005/07/31(日) 16:19:13

　よ、予想外の反響！？　もはや前哨戦の粋を超えてるカモ……？

　で、では改めまして。この前哨戦的死亡遊戯（デス・ゲーム）題して『小次郎祭り』は
わたくしことセラス・ヴィクトリアの主催（マスター代理）に寄り、

　自由と正義の　英国国教騎士団
　永遠なる命を君に　燦月製薬
　君と雨に唄えば　マゴーラカ教団

　の提供でお送りさせて頂きマス。
　ふつつつかモノで、色々と足りないトコロもあると思いますけど、が、頑張ります！
　わ、わたし自身の参戦はー……よ、余裕があったら、と言うコトで。

>>330
（そう言えば、わたしも……キャルさんとかどうするのかしら）

>>331
　え、エドワード・ロングさん！　まさか来てくれるなんて……もちろんデス！
　もちろん歓迎致します！
　じゃあ、参戦掲示板に名前書いておきますネ。
　……えぇと、虎道場よりロング師範代参戦、と。

　会議室の方はそうデス、ねー。ＲＨ−板はわたしよく分からないデスし、会議板は……
それこそ幽霊出そうだから……び、微妙かしら？
　違う板と言うのはやりにくいので、六月一杯で廃棄が決定したはずなのに、何故か
未だ生き残っているＺＥＲＯスレ（↓URL）でも使いましょうか。
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/059908024/
　会議室でも何でも無いデスけど、一番分かりやすいかなー……と。
　どうせなら完走させて沈めたいデスしね。

　あ、それと会議室の主な役割ですけど、基本的な役回りは導入部
（書かない人は書かなくてもオッケーです）の仮張りや、辻褄合わせ。状況の確認、など。
　祭りの進行に必要不可欠なものなので、レスを書いたら、書き込む前に会議室を更新
……して欲しいデス。
　まぁそこらへんはまた追々説明します。ハイ。

　時間はじゃあ２０時開始と言うコトで。（←てきとー

>>332
　け、携帯デスか……？　わたしも四年ぐらい前に、リアルタイムの闘争を携帯でやったコトが
ありますけど―――かなりキツかったですよ？
　まして祭りなら尚更デス。
　レスの推敲が出来ないため、誤字脱字は目立つし、スレの流れが速いからなかなか追い付けない。
それに何より、打つペースがキーボードに比べるとかなり遅れてしまいます。
　闘争のレスは、人それぞれデスが、早くて１０分。遅くとも３０分で一つは返しています。
（これが祭りは体力消耗が激しいと言われる所以デスね……）
　あまりにも遅いと、祭り全体の動きに支障が出てしまいマスからね。

　素直に言いますと、携帯はお薦めできません。
　参加不参加は隊員サンの自由デスが、多分泣きを見るコトになりますよ……はい。
　経験者は語る、デス。

　端末が無いのなら、ネット・カフェなんてどうデスかね？
　それならば問題無いと思いますけど。
　あ、でも漫画喫茶は規制されている可能性がありますから……解除申請が必要デスね。
　小祭り当日、常駐さんがいると思いますから、その都度頼んでみてはどうでしょうか。

　どうしても携帯と言うのなら……試しにレスをてきとーに書いてみるとか？
　死にスレの http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/059908024/を使って
みてください。

　因みにわたしは、祭り当日はかちゅとJaneとれぐねの巡回プラグインと、
外部板ヘッドラインを駆使して臨みます！（えっへん
　でも、スペックの性能差で闘争の優劣は決まらないと西川さんも言ってましたから……
気合いでカバー？


　以上の長文、携帯で読んでみてどうですか？　かなりきついと思うんデスけど……。

334 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2005/07/31(日) 16:24:02

もうすぐ日が暮れるので、わたしは取りあえず消えます。ではまた後ほど。
（こ、小次郎さん、気付いてくれるかしら……）

335 名前：アドルフ・ヒトラー＠少年 ◆sLAdoLfKkE ：2005/07/31(日) 17:52:53

（どうやって参加理由引っ張り出そう……orz）

336 名前：名無し吸血鬼：2005/07/31(日) 18:33:40

内容は理屈抜きの血祭り系で考えて良いよな？
ストーリーありの水祭り系じゃあこのシチュは無理だｗ

337 名前：葛城ミミコ＆望月ジロー＆望月コタロウ ◆BBB.k09/yM ：2005/07/31(日) 18:38:15

（――ﾄｩﾙﾙﾙﾙﾙﾙﾙﾙ、ﾋﾟｯ

――はいもしもし、葛城ですけど…あ、陣内部長！？
はい、はい、明日ですか？　ええ、まあ空いてますけど……

え、出張？　それもまた特区の外に！？
もしかしてまたあのときみたいに―――はい、はい。

あ、でもそんな危険なところへ出向いてまで交渉と保護だなんて……
ええ、そりゃもう当然です。とゆーかそうでなきゃあたし死にます。

うぅ、わかりました…。（ぶつっ

「ミミちゃん、どうしたのー？　顔色悪いけど」
「何かお仕事の事で問題でも？」

ええ、最悪よっ。　またあんたたちの時みたいに『外』まで出張！

うぅ、こないだ偶然に“できちゃった”とかいう
さる古 血（オールド・ブラッド）の『子』の保護だなんて…相当な重労働になりそうよ、これ？
しかもいろんな条件や人や戦力が絡んでて荒事避けられないって…

「大丈夫だよ、ミミちゃんっ。ぼくたちがついてるんだよ？」
「またショウゴの奴も随分な難題を……まあ安心してください。
　こうした危険から雇い主を守ってこその護 衛（クローザー）なのですから」

ええぃ、こうなったらとことんやってやるわ、こんちくしょうっ！
もうあたしはあたしの交渉（しごと）するだけだから。
ややこしい事になりそうだけど、ジローさんもコタロウ君も気合入れてよ！？

……さて、久方の出張か。
現場になる柳洞寺とかいうお寺の位置、地図で確認しとかなきゃね…。

338 名前：戦士長・火渡(M)：2005/07/31(日) 18:45:50

……『柳桐寺の調査』？
調査任務なら犬飼で充分だろ、俺が出張るようなヤマでもねえ。

「ですが、この任務は大戦士長直々のご指名ですから拒否権はないかと……きゃん！」
（無視）……照星サンが、かよ……まったく、あの人は何時までたっても俺を子供扱いなんだな……。

んで、何を調べるんだ？ 核金の探索なんざ俺の範疇じゃあ―――
「あ、いえ……『柳桐寺に巣食う“怪物”の調査・及びその撃破』だそうです。
敵対勢力との遭遇に際しては『慎重な対応を望む』と―――」

要するに、『俺の戦りたいように戦っていい』、ってコトだよな……！
ハッ、照星サンも気が利いてるぜ！
「いえ、そうではなくて……」


>>333
そういうわけだ、この錬金戦団・再殺部隊々長、火渡もこの祭りに参加してやる！異存はねェな！

339 名前：ウルフ ◆Arwolf8zuU ：2005/07/31(日) 19:33:37

うがーーー！
いつの間にか楽しい事をやろうとしてるぞ、こいつら。
何かみた憶えのあるやつらも何人か居るし…
久しぶりだ。ウルフも遊ぶ。遊ばせろ。

遊ぶ、っていうからには、ニンゲンとかそういう連中に合わせないと
イマイチ面白くない。だから「るーる」を知っておくと少し便利だ。
ウルフはルールを知ってる。賢いウルフは知ってる。

だからウルフが大殲の事を知らない連中が一応知っておいて置いた方がいー事
を話してやるぞ♪

って言っても色々長いことを言うのはめっさ面倒だから１つだけ。

ウルフはお前らの事を「匂い」で大体どんなヤツが見当が付くけど
知らない奴同士も沢山居るだろ。
だから、参加する奴は簡単な自己紹介とかをするといい。
───コンパっていうのでよくやってるヤツだ。面白いぞ♪

ずーーっと吸血大殲に参加してきてるやつ等は
http://members.at.infoseek.co.jp/humituki5272/taisen/right.htm

この辺りを見ておくとどんな力を持った奴か、大体解るようになってる。

細かく書いてる奴とそうじゃない奴とがいるけど、今回初めて祭りで遊ぶ
っていうヤツは力とか、元の作品とか…知っておいてほしい事を参加表明と
一緒にここで話しておくといいんじゃねーのかなー。

祭りじゃないのなら、めんどーだし相手になる奴だけと話せばいいけど
沢山だとそういうわけにもいかない。きっと自己紹介はしておいた方がいい…



っていう訳でウルフもなんか新しく書くぞ。
おい、タカハシ。何か書いておけ。

─────え。明日タカハシはアルバイト？

・・・・・・。
ウルフは今回は出れないみたいだけど、今度の祭りがあるからそこに出る。
出る奴は、せいぜい簡単に見せ場もなく消えないように考えろ。
素敵な死に方とか、素敵な殺し方とかそういうのをここの馬鹿たちは求めてるからな。　

340 名前：ウルフ ◆Arwolf8zuU ：2005/07/31(日) 19:47:04

>>336
あ。質問だ。タカハシ喋るチャンスをやるぞ。ＧＯＧＯ−

タカハシ：

「ウルフ。君って言う奴は───僕、夏休みもゼミの勉強とかで忙しいのに。
　…えっと。すいません。馬鹿な奴が騒いでて。

　>>336さんの言うとおり、今回の祭りは所謂『血祭り』形式らしいです。

　ただ、件の血祭りは適当な島だったみたいだけど、今回の祭りは
　日本にあるお寺、っていう結構具体的な設定みたいですね。
　周りのみんながどうこう、っていうよりは…あなた自身がどうしてそんな所に
　いるのかな、っていう事について納得できる理由を持てれば幾らでも参加していいと
　思うよ。僕は。」

ウルフ：
「金髪婦警もいってるけど、よその国の連中も今沢山居る。
　その辺りに便乗したりする形でそこに来る理由を考えても愉快だ。
　ドライがアインに呼ばれたから、とか言ってるけど、アインが来る保障もない。
　すごい適当だ。
　なんか>>335辺りで羽ちびが悩んでたりするけど、今回の祭りは深く考える事
　よりもおもいっきりの勢いがウルフは見たい。
　だって今回の祭りは本番前の練習みたいな感じらしーぞ♪」

341 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2005/07/31(日) 23:53:08

　す、すいません、勘違いしている方（別に上の方々ではなくて）がいるみたいなので言っておきマスけど、
これはあくまで"前哨戦"。上で散々祭り祭り言ってきたものの練習って奴です、ハイ。
　デスから、「明日かよ、聞いてねえよ！」と驚かれなくてもけっこうデスし、慌てて準備する必要もありません。
　これはあくまで前哨戦。繰り返します！　これは前哨戦なんですー！
　だ、だだから落ち着いてくださーい。

　上へのレスは今から返しまーす。
（まさかこんなに反響があるなんて……）

342 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2005/08/01(月) 00:21:30

　皆さん、頑張って一日で終わらせましょうネ！
　わ、わたし、ちょっと次の日とか都合つかないデスよ……？
　ていうか、こんな前哨戦で力尽きられて本命の血祭りの方不参加、とか言われたらわたし
泣きますからねー。

>>335
　アドルフさん、こっちの前哨戦にも参加デスか？　ありがとうございます！
　参戦理由……むむむ、アドルフさんの参戦理由。マスターとは因縁深い方デスからね、
わたしも慎重に考えませんと……。
　そ、そうだ。サーヴァントとして参戦してみては？
　あ、アドルフさんなら英雄の条件満たしていますよ！

>>336
　えぇーと……この祭りは"バトル・ロイヤル"です。
　一つのお寺（というか山）にそれぞれがそれぞれの思惑で訪れ、闘い合う……らしいデスね。
　詳しくは>>339でウルフさんが言ってますけど、最低限の理由さえあればあとは存分に
暴れるだけで良いとわたしは考えてますよ＾＾

>>337
　ジローさん、ミココさん、コタローさん、参加ですか。
　あ、ありがとうございます！
　色々と大変な面子が揃って来ましたけど、雨にも負けずに頑張ってクダサイ！

>>338
　火渡さん、参加デスか！　あ、ああ、ありがとうございます！


>>339
　ウルフさん、参加デスか。あ、ありがｒｙ


　……ふぅ、挨拶はではこれほどにして、と。

343 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2005/08/01(月) 00:23:07

　て、て、ていうか未だに小次郎さんの反応が無いんデスけど、大丈夫なんでしょうか……。
　小次郎さん抜きの「小次郎祭り」だなんて、わたしイヤですよぅ。
（やっぱり何にも話通して無かったのが悪かったのかしらー）

344 名前：名無し吸血鬼：2005/08/01(月) 00:30:58

通してなかったのかｙｐ！

345 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2005/08/01(月) 00:36:05

　と、取りあえずデス、ね。開始時刻は明日（もう今日だわ……）の２０時で決定、デス。
　以後、祭りの進行や設定についての質問、導入レスの仮張りなどなど色々と祭りに
必要不可欠な会議的要素は、


吸血大殲ZERO 2　〜続・序章〜【吸血大殲広報スレ2】
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/059908024/

　で、進めていきたいと思います。

　こ、こちらでも引き続き質問や参加表明は受け付けるんで、どしどし連絡してくださーい。
（ああ……わたし目立ってる。なんでこんな大任をわたしなんかが……）

>>344
　ご、ご、ごめんなさい！　な、何しろ急な決定だったもので……。

346 名前：ＫＵＳＡＮＡＧＩ ◆k2zTougaRE ：2005/08/01(月) 00:59:57

　いや、面白そうな事やってるじゃねえか。寺で喧嘩の祭りなんだろ？
　そんなアツイモンに出ない訳にはいかねえよなァ？
　闘争狂ってよりはただの一介の喧嘩好きだがまあ、構わねえだろ。
　グダグダ前に喋るよりゃ、さっさと拳突き合せろってなァ。

　んで、自己紹介って奴でもしとくかね。
　俺は草薙京のクローンである以上は特殊な事なんざ何にもねえ。
　炎が使えて、ただ格闘技が出来るだけって事だ。
　その炎も出来そこないだからなァ？ くたばっちまうだけかも知れねえが。

　それじゃあ明日の八時。楽しみたいもんだよなァ？
　

347 名前：源義経＆武蔵坊弁慶（Ｍ）：2005/08/01(月) 01:27:53

義経「ひょっひょっひょっ…これは真に懐かしき戦（いくさ）の臭いよな。
　　　敵を切り伏せ、屍を野にさらす…この上なき悦楽よ。
　　　鎌倉殿の命もある。我等もこの戦、はせ参じようぞ」
弁慶「左様。なれば我と牛若様、この狼煙の戦にてお相手つかまつる。
　　　くく、くくく…この戦、存分に楽しむと致しましょうぞ、牛若様」

義経「さて、名乗りが遅れたが我も名乗るとしよう。
　　　我は源九朗義経、我が名をよもや知らぬなどと言うまいな？
　　　我が太刀と小柄の業、その身に刻むを誉れと思うが良いぞ。
　　　ひょっひょっひょ…」

弁慶「我が名は武蔵坊弁慶。はて…我が名を存ぜぬ輩がいるとも思えぬがな。
　　　この棍と鉄球の奥義、肉片となるまで貴様らに味あわせてやろう。
　　　ぬははははは！」


義経「『めた』なことを申せば、我等は『源平討魔伝』と『なむこくろすかぷこん』の
　　　原典に基づいておる。それらを知っておればなおの事、我等との戦を楽しめような。
　　　ではお主ら、戦の始まりまで待つが良い。
　　　その時が来たら殺してしんぜよう…ひょっひょっひょっ」

348 名前：アサシン：佐々木小次郎：2005/08/01(月) 01:54:24

　――――気づくと見覚えのある場所に男は居た。



　何故、己が此処に居るかは分からない。


　ふむ、何故と言っても詮無き事かかと男は一人ごちる。
　花は咲く、鳥は鳴く、風は吹く、月は輝く―――――――それらが事に理由等存しようも無い。
　神ならばその理由を知ろう。
　神ならぬ名も無いこの身には天地の理だと知れる筈も無い。



　だが。

　修羅を生き抜いた男には一つ確かな予感があった。

　今、路傍に咲く花々は近く朱に染まろう事。
　今、夜を囀る鳥の歌は近く骸を囀る歌となろう事。
　今、肌に透き通る風は近く纏わりつく死風になろう事。
　今、白く輝く月は―――――――………




　刻一刻と開幕が迫る。
　最後に残った者は空を見上げて何を見るのか。
　見るのは漆黒の闇か、血の様に朱い月か、はたまた………

349 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2005/08/01(月) 20:09:38

【代表者から一言】

　柳洞寺。元々は何でもない寺だった。
　聖杯と呼ばれし因果に縛られた寺、ではあるけど。それは"求める人達"に必要なもの。
　わたし達には関係のない代物。

　だけど今日、柳洞寺は戦場と化す。夜族達の戯れの地と化す。
　火種となったものはなんだろう。何が原因でこうなってしまったのだろう。
　それぞれがそれぞれの思惑で動き、交錯していく。

　きっと誰かは死んでしまうだろう。
　誰かは大切な人を失ってしまうだろう。

　また、誰かはこの日を境に永劫の夜を歩むことになるだろう。

　もしかしたら、生きて帰れる人もいるかもしれない。
　もしかしたら、勝利という名の杯を手にできる者も生まれるかもしれない。
　もしかしたら、誰も彼もが死んでゆくかもしれない。
　この途方もない饗宴の、果てに。

　吸血大殲・夏の血祭り前哨戦　"小次郎祭り"

　いま、この瞬間より―――開催デス！　

350 名前：名無し吸血鬼：2005/08/01(月) 20:10:01

　……山は、それ自体が生き物のようだった。
　山門から吹き下ろす風は生温かく、揺れる木々は呼吸をする肺のよう。
　空気の密度は何処までも重く、あたかも深海の如し。
　並の者なら一歩踏み出す度に悪寒が走り、息苦しいまでの圧迫感を感じるだろう。


　だが、今、此処に居る者達は皆違っていた。
　皆、これから起こる凄惨な宴に今か今か心を躍らせている。
　常道から外れてしまった者達の宴。
　この宴では誰もが捕食者であり、誰もが贄である。




　前口上はこれくらいにしておこうか。
　此処に踏み込んだ時点で既に『貴方』は逃れらないのだから。




　　　　　　―――――――汝、自らの力を以って、最強を証明せよ。

351 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：2005/08/01(月) 20:11:18

　厳粛なる夜の静寂に包まれた柳洞寺。その境内。本堂の裏。穏やかなる夜の風情には
とても相容れぬ人影が二つ、あった。
　影の正体は一組の男女。女の方は、まだ年端もいかぬほどに幼い。見ればすす汚れた
学生服姿だ。男を石砂利の地に組み伏せ、上になり、唇を男の胸元に這わせている。
　息も荒く、貪るように男に挑んでいる様子を見るに、罰当たりな逢い引きである
―――傍目からは、そう窺えることだろう。

　当然、正体は違う。

　少女の衣装。すす汚れたブレザー。すり切れたスカート。染みの目立つシャツ。
二つ結びの髪は油で汚れ、体臭もきつかった。鼻につく、血臭。
　両の手の指先は紅く、口元を濡らすそれも―――紅い。

　少女は男の喉元から唇を離すと、手の甲で口元を拭った。何度かの深呼吸。
荒かった息遣いが平常に戻り、少女は興奮状態から覚めてゆく。
　少女は改めて男を眺めた。そして嘆息。

「また、こんなに汚しちゃった……」

　最近は食事の度にこれだ。今日こそは綺麗に食べよう。今日こそはマナーを守ろう。
はしたない真似なんてせず、行儀良く食べよう。そう決心して臨んでも、一度喉に
潤いが戻ると、あとは歯止めがきかず、貪り尽くすばかり。
　気付けば今夜のディナーは原型を留めぬほどに壊れている、という具合だ。

　それでも、今日はまだ綺麗に食べれたほうかもしれない。ディナーの腕や足、臓腑
は四方に飛び散っているけれど、肩から上は返り血一つ浴びていない。この調子で胸、
腹と順を追って汚さないようしていけばいい、と少女は思った。

【弓塚さつき・参戦】

352 名前：ファントム・ドライ ◆QyCal3DreI ：2005/08/01(月) 20:12:00

　ひとしきり泣いた後、あたしはジャケットのポケットから携帯を取り出して、電源を入れた。
ダイヤル帳から"アヅマ"を意味する漢字を探し出す。日本語は分からないあたしだけど、吾妻
の字は何度か目にしたことがあったため、すぐに見付けられた。
　登録件数は二件。『エレン』の項目で通話ボタンを押す。二度三度のコール音。繋がる電話。

「アインか」
　きっかりと一拍だけ置いて、声が帰ってきた。
『……キャルね』
　相変わらずに落ち着いているアインの声音。あたしは構わず言葉を続けた。

「どこか、邪魔されない場所を指定しな」舌を舐めて、言う。「決着をつけよう」

　もうウンザリだった。涙の後が目立つ美緒の顔。あたしの内側から溢れ出す、留めようの
ない憎悪。玲二の、苦しみ。
　終わらせたかった、何もかも。くだらない毎日の繰り返し。くだらない人生。くだらない、
想い。いい加減愛想も尽きた。

『……玲二は？』
「二人だけだ」
　まず、決着をつけるべきはアイン。彼女を抜け駆けて玲二を討つ気にはなれない。
『そう……』

　アインが指定した場所は、郊外の山寺・柳洞寺。そこの境内で夜、待つという。
日中ならともかく深夜となると、人目につくコトはまるで無いらしい。
　アインが罠を仕掛け、自分を有利に導く可能性。十二分にあった。彼女は、そう言うこと
ができる人間だ。
　それでも、

「オーケイ、いいだろう」迷いはなかった。「ところであんた、篠倉学園の上にある
廃墟を知っているかい」
『……むかし、女子寮だったところ？』
「ああ、そうだ。そこに美緒はいる。……何か、着るものを用意してやってくれ」
　返事を待たず、切った。

　さあ、終わらせよう―――何もかも。

【キャル・ディヴェンス　推参→参道】

353 名前：ＫＵＳＡＮＡＧＩ ◆k2zTougaRE ：2005/08/01(月) 20:12:19

　昨日当てになるはずもねえ情報を耳にした。
　曰く、柳洞寺とか言う場所でデカイ喧嘩があるらしい、と。
　こいつはあくまで俺の解釈で、実際の所は違う見てえだけどな。

　「で、馬鹿みてえにのこのこ出向いた訳か…」

　長い長い階段を前にボソッと呟き、拳を握る。
　初めから鵜呑みにゃしてないが、少しでも期待できるなら良いじゃねえか。
　派手に暴れたい気持ちは誰にだってあるもんだろ？

　――――――さて、それじゃあ行きますか。

　横合いの林に足を向け、草木を踏みながら歩を進める。
　何故だか山門から入っちゃいけねえ気がする。
　妙に粘つく空気が、息苦しいほどまでに立ち昇る血臭が、それを暗示させるかのようで。

　暫く歩けば目の前に塀が。そいつを飛び越え、中に入れば普通の寺だ。
　本当にこんな場所で何かが起こるなんて信じられもしない。
　それ程までに静謐で、厳粛。

　「まあ良いか、取り敢えずは何処かで休んでようかねェ」

　暫く歩いて見つけた賽銭箱。その側に腰掛け、掌で焔を弄ぶ。
　静かで良い夜だ。喧嘩するにゃあ持って来い。

　さあ来いよ。誰でも良いぜ。俺の焔の前に立ってみろ。
　一切合財残さねえ。肉も、骨も、灰も、後悔も。
　派手に、盛大に、殺し合おうじゃねえかッ！

　【KUSANAGI・参戦　賽銭箱付近】
　 

354 名前：カジ＆ハセ：2005/08/01(月) 20:12:47

　山の麓、柳洞寺へと繋がる石階段の入り口―――が窺える国道の脇に駐められた一台の自動車。
メタリックブルーのスカイライン2000GT-R 通称"ケンメリ"。
　全面スモークウィンドウ。過剰なまでに低く改造された車高。紫のステッカーには白抜きで
"爆麗党"の文字が。そして中から響く二つの、声。

「おい、カジ」
　助手席、細身のまっちろいダブルスーツに身を包んだ伊達な男と、
「なんだ、ハセ」
　運転席、純白の特攻服を纏ったリーゼントの若者。

　どちらも人間味のある服装をしながら、どちらも常人ではあり得ぬほどの殺気を孕んでいる。
　二人は夜刀の神。この世の理から解き放たれた夜の眷属だ。
　最近、巷を騒がせるマゴーラカ教団員の中でも、精鋭中の精鋭であり、他の力を持て余し
ただ暴れるばかりの連中とは違い、れっきとした戦闘能力を持つエリートだ。

　今回、二人は主人である蟆霧の命に従い、とある木乃伊を強奪するために東京を離れ、
柳洞寺にまで訪れた。
　柳洞寺に先祖代々祀られし木乃伊―――蟆霧の言葉を信ずれば、永き時を眠れるお仲間、らしい。
その回収のために二人は駆り出されたのだ。
　ただ奪って帰ればいい。それだけの仕事。別段難しいものではなかった。
　だが―――

「カジ」
　スーツの男は改めて呼んだ。
「だから、なんだ」
　カジと呼ばれた若者は、苛立ち混じりに返事をする。

「雰囲気がおかしい。空気が張り詰めている。蟆霧様の話ではただの寺だったはずだ」
　それにしては、人の気配も感じるし、殺気も充満している。
　カジは面倒そうに「そうかよ」とだけ返した。

「カジ、おまえは石段から登らず、獣道を抜けて柳洞寺に昇れ」
「ハセ、てめえはどうするんだよ」
「カジ、俺は山の周りの様子を探ってくる。その間におまえが木乃伊を奪ってくるんだ」

　冗談じゃねえ、とカジの怒声。

「ハセ！　面倒ごとは全部押し付けて、てめえは気楽にお散歩か！　ふざけるなよ！」
　そのカジの眉間に、突然バヨネットが突き立った。まるで魔法のように、眉間に現れたのだ。
ハセの飛刀術。かなりの早業だった。だが、カジは夜刀の神。眉間にバヨネットの一本が
突き立った程度では、何の影響もない。あくまでハセの威嚇行為だ。

　ハセは覚めた眼でカジを睨め付けたまま、静かに「行け」とだけ言う。
　カジの舌打ち。車から降りると、一歩で５メートルはありそうな歩幅で山林の間を駆け抜け、
やがて見えなくなった。

【カジ参戦　山林を疾走中】
【ハセ参戦　ふもと周辺を探索中】

355 名前：葛城ミミコ＆望月ジロー＆望月コタロウ ◆BBB.k09/yM ：2005/08/01(月) 20:14:04

（『カンパニー』チーム導入）

――数日前、特区。
『オーダー・コフィン・カンパニー』会議室にて。


「『アカシャの蛇』の直系を！？　陣内君、正気かねそれは」
「ええ、無論です。
　……情報部と協定血族の情報ルートから、その 古 血（オールド・ブラッド）――
　ミハイル・ロア・バルダムヨォンの血を引く吸血鬼の転化が本土、三咲町で確認されたとの一報も入っています」
「で、それが何故、我々がその『子』を確保――失敬、保護するという理由に？」
「彼女はロアが自分でも気付かずに転化させてしまった、いわゆる御落胤です。
　ゆえに『アカシャの蛇』も彼女の事は全く知らず、彼女は彼女で『転びたて（アンダーイヤー）』であるために自分の立場もまだ理解できていません」
「ふむ、それで？」
「彼女はいわば事故的に発生した血統難民（ブラッドオーファン）。
　親であるかの『アカシャの蛇』も全く関知していないし、何より法王庁の埋葬機関や真祖の姫君まで動いている。彼も長くはないでしょう。

　そして何より、彼女も突発的にそうなってしまっただけに、『普通の生活』を望む気持ちはより強いはずです。
　なればこそ彼女には特（ こ）区（ こ）に平穏な生活を求めてもらい、
　また無用な黒の血が流れるのを防ぐべきなのではないかと」
「君の熱弁は理解した。　しかしかの血統にはまだ分からないところもあるし、『親』自体悪名高い27祖クラスだ。
　第二の九龍の血統（クーロン・チャイルド）にならない保証は？」
「明確ではありませんが……彼女もその『親』も、血族を作るという事はしていません。
　まして彼女はまだ日の浅い『転びたて』。ならば今のうちに我々で保護し、最低限の常識を教えればまだ、救いはあるのではないかと」
「………ふむ、まあ分からなくもないが……やけに熱心だな」
「………実はこれは、『夜会（カヴン）』のゼルマンからの頼みでもありましてね。
　『カンパニー』としても意義のない話ではないし、あの『緋眼』に貸しを作るのも悪い話ではないでしょう」
「わかった、この話は一応承認することとする。
　で、派遣するのは誰かね？」
「はい、例の『銀刀』の一件でも働いてもらった、彼女に命じます。
　そして、その護衛（クローザー）にも―――」



――そして、当日夕刻。


「えーと、柳洞寺柳洞寺……ここでいいのよね」
あたしは地図を畳むと、長い石段に足をかけ始めた。

後ろにはまさしく凸凹な、しかしあたしにとっては最高の護衛が二人。
「うー、歩きつかれたよう、兄者っ。　喉も渇いたし…
　ねえ、ジュースの自販機とか……いだっ！？」
「人間のミミコさんが頑張っているのに、吸血鬼のお前がそんな軟弱でどうしますかっ。
　……それで、今回の保護・交渉対象が潜伏しているのは、このお寺だと？」

……情けない泣き言を漏らす弟にいつもの鉄拳制裁をかましつつ、
護衛（クローザー）の兄・ジローさんがあたしに確認する。

「ええ……情報部からの情報と地図にも一致するし、多分。
　しかし部長も酷よね、こんな特区の外の危険地帯で。
　しかも話の通っていない吸血鬼を一人説得しろって言うんだもん」

「……そのあなたの上司の意地の悪さには同意しますがね。
とにかく今は仕事が先でしょう、事ここに至っては」

「ふーん……それで、今回の『お仕事』の相手の人、名前なんていうの？」

「えーと、ちょっと待ってよ……あ、あったあった」

部長から渡された、情報部からの資料を取り出して再確認。
ええと……

「――『弓塚サツキ』、か。うまく応じてくれるといいんだけど…」

「まずは首尾よく相手に会わねば話になりません。荒事は避けられないと聞きましたが、さて」
「大丈夫だよっ、ぼくと兄者でミミちゃんは守るからっ」

……ありがと、コタロウ君。
頼りになるんだかならないんだか（ジローさんは無論頼りにするが）な励ましに。
石段のぼりの最中もあって、あたしはため息をついたのだった。

＜調停員（コンプロマイザー）葛城ミミコ、『銀刀』望月ジロー、及びその弟望月コタロウ、参戦。
　場所：山門までの石段・中腹＞

356 名前：戦士長・火渡(M)：2005/08/01(月) 20:15:32

任務内容：
『冬木市・柳洞寺への潜入調査　柳洞寺に巣食うとされる“怪物”の調査及び撃破
　また、本任務中の対抗勢力との遭遇の際は流動的かつ慎重な判断を求む』


―――戦団から送られてきた任務命令と現場周辺の資料に目を通す。
場所は冬木市内のホテルの一室。冷蔵庫から冷えた缶ビールを取り出し喉に流し込む。

「……上層部は核金絡みのヤマだと踏んだわけか」
準備調査では『聖杯』と呼ばれる聖遺物についての情報も記載されているが、
アーサー王が捜し求めたという伝説の聖遺物そのものではないと戦団は判断した様だ。
現在、横浜の女子高に伝わると言う『奇跡の聖石』についての潜入調査も同時進行していた事、
そしてこの冬木市には錬金術に通じる魔術の痕跡が残りすぎていると言う事―――
この二点が、上層部を動かし、“奇兵”である彼を動かした。

「鬼(ホムンクルス)が出るか蛇(信奉者)が出るか…って所だな、こりゃ」
―――錬金術が生み出した、半不老不死の人食い生命体・ホムンクルス。
そして、そのホムンクルスに忠誠を誓い自らも半不老不死にならんと願う信奉者。
どちらにしろ、今回の任務は戦闘行動が不可欠ということか―――。

残っていたビールをあおり流し込み、缶を握り潰す。
「どんな不条理が来ようと関係ねェ、俺の不条理でねじ伏せちまえばそれで御終いだ」
椅子に掛けていた戦団の戦闘服に袖を通しながら部屋を後にし、
愛飲する長タバコを咥え、指先で火を付ける―――。

「さぁパーティの始まりだ！邪魔をする奴がいればどいつもこいつも薙ぎ払う！」
男は、昼の暑気よりも熱く吼え猛った。

【戦士長・火渡参戦　山門に続く参道の手前】

357 名前：エリ・カサモト ◆SV001MsVcs ：2005/08/01(月) 20:16:05

『日本国内におけるモーデン軍残党の存在について』
「20XX年の第三次クーデター未然阻止作戦終了後も世界各地でモーデン軍の残党が暗躍し、再起の機会を伺っているのは周知の事実である。
　日本国内においてもそれは例外ではなく、合法非合法問わずの手段を用いて再起のための資金活動を行っている。
　同時にオカルト的なものを戦力化しようと多方面に手を伸ばしているともいう。
　現在冬木市では行方不明事件が多発。各国の地方都市で急増する行方不明事件とほぼ連動するように増加の一途を辿っている。
　また各国の行方不明事件にモーデン軍残党が一枚噛んでいるという情報があり、冬木市の事件もその一部である可能性がある」


「………で、なんでアタシが日本の地方都市に調査へ来なきゃならないかな」
　この類は警察やら公安やらの仕事じゃないの？
　現地入りして三日。散々歩き回って収穫はゼロ。
　強いて言えば連中のやり口とは何かが違う気がするぐらいだろうか。

「あー。やだやだ」
　愚痴交じりに走らせていたレンタカーを停めて車外に出た。
　空を眺めて煙草に火を点ける。

　―――ふと見ると石段が視界の端に見えた。

「神社？　…お寺かな？」
　石段をパッと見ただけで区別がつくほどアタシはその手に詳しくない。
「ま、賽銭箱ぐらいはどっちにもあるわよね」
　車のライトを消してエンジンを止め、鍵を掛ける。一応の用心というやつだ。
「厄落としでもしてもらいますか」
　アタシは石段に向けて足を踏み出した。

【エリ・カサモト　参戦　現在位置：参道入り口付近】

358 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/08/01(月) 20:17:04

「……暑ぃ」

　まるで呪いのごとく下界を照り付ける太陽を、サングラス越しに睨み返す――
　だがまあ、そんなことでこの異様な蒸し暑さが去るわけはない。

　たらりと頬をつたう汗を、忌々しい思いでぬぐいながら、俺は早くもこの国に訪れたことを後悔
し始めていた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　******************

　――日本。
　東洋の片隅に存在する小さな島国ではあるが、その国土面積に見合わぬほどの影響力を世
界に対して持つ、奇妙な国だ。
　”科学万能”――その言葉をまさしく体現したかのようなこの国に、科学というものに真っ向から
刃向かうような……つまりは、俺のような魔法士なんて代物が足を踏み入れているのには、勿論
訳がある。


　――発端は、俺の手元に届けられた一枚のチケットだった。

「――日本行き？」
「そうだ」

　俺の問いかけに対して事務的に頷いたのは、顔見知りの二級監督官ではなく、彼女の直属の
上司である、カート・ラベル局長だった。
　お互いに、全く知らない間柄ではなかったが、労務省魔法管理局・トリスタン支局を束ねる要職
にある人物である。
　その彼が、こうやって無資格魔法士であるところの俺の家に、わざわざやってくること自体が、
すでに一種の醜聞だ。挙げ句その用件が、外国行きのチケットを一枚届けるだけ。

　――そんなことが、あるはずがない。
　そんな俺の雰囲気を察したのか、それとも単に事務的に話題を継続しただけなのか
　役人、というイメージをそのまま人物化したような、一片の隙もない表情で淡々と続けた。

「要するに、だ。レイオット・スタインバーグ。君には、日本に行ってもらいたい。
これは、労務省魔法管理局からの正式な依頼だ――無論、非公式ではあるがね」

「……俺に、国外に出ろ、と？
　無資格を――いや、それ以前に、戦術魔法士に国外で活動しろと？　本気か？」

　むしろ正気か、と問い掛けた方がいいような話ではあった――半世紀前のイネルネフェルト事
変以後、アルマデウスは魔法技術の流出を徹底して規制してきた。それはもう病的なまでに。

　そんな状況で、今度は無資格の魔法士を――
　法による規制の及ばない危険物を、野放しにするという。話としては、たちの悪い冗談の類だ。

　……だが、目の前のこの男が、決して縦断など言わないことも知っていた。
　それを裏付けるように、ラベル局長は表情をかけらも崩さずに、

「もちろん本気だとも。ちなみに正気でもある。
　本件は、日本政府からの要請なのだよ。これも無論、非公式な話だが」

　フユキ、という街があるらしい――
　それなりに歴史はあるものの、特に名所や名品、伝承などがあるわけでもなく、そこそこの発
展を遂げてはいるものの、まあ取り立てて珍しくもない一地方都市、というのがフユキという街
だった。

　だがこの街に、最近奇妙な出来事が多発しているらしい。
　住民の原因不明の衰弱、連続する行方不明者。はたまた、正体不明の異形の目撃談、その
他もろもろ。それだけならまあ、不思議な偶然、で片づけることも出来たかもしれない――が。
　過去にも複数――それも、一定の期間をおいて発生している、という事実を知れは、そうも言っ
ては居られない。

「……前回は十年前、原因不明の大火災が突如として発生し、付近住民を根こそぎ飲み込んだ
そうだ。

　つまり、日本政府は――これが、未確認の魔法災害ではないか、と疑っているのだよ。
　もしそうなのだとしたら、魔法発祥国の責任において原因を究明しなければならないし、
　事態を鎮圧するのが我々の義務だ。しかし――

　君も知っての通り、我々にしても限りある人員を国外に派遣する余裕がない。
　万一これが本当に魔法災害だった場合、迅速に対処するために戦術魔法士の派遣は必須
　であるにもかかわらず、だ。だから――」

「員数外である俺を派遣、何事もなければそのまま帰還。
　よしんば本当に何かあった場合でも、速やかに事態の収拾が行える、か？
　ずいぶんと買いかぶられたもんだな」

「無資格ではあるが、君は紛れもなく一級の実力を持った戦術魔法士だ――
　そこに関しては不安はない。どこかの組織に自分を切り売りしたりする可能性もない。
　そういった意味では、非常に適任だと考えている。それに――」

　……非公式の活動であるために、正規資格を持った魔法士が渡った、という記録が残るのは
まずいのだと、彼はいった。
　その点、書類上俺はただの一般人だ――ビザの取得に関する問題はあるが、魔法士が国外
に出るよりは遙かに手続きは簡単だ。それは判る。

「……だがその場合、装備品はどうする？
　正規ルートを使えないとなると、持ち込みには相当に骨が――」

　折れる、と言おうとした口は、そのまま凍り付いていた。
　なぜなら、この目の前のおっさんは、よりにもよって公務員にあるまじき発言をしたからである。

「それについては問題ない――適当な密輸業者を手配しておいた。
　モール土および武装一式はそれで持ち込む形になる。
　なお国内での運用に関しては、防衛庁、警察庁の許可証を手配済みだ――これもまた、向こ
うで用意した偽造品だがね」

　唖然とする俺を前にしても、カート・ラベルの鉄面皮が崩れることはない。
　こちらからの質問がそれ以上ないのを確認すると（というか、質問する気力がなかったのだが）、

「ふむ。では結構。
　出発は三日後――それまでに準備をしておいてくれたまえ」

　そういって、カート・ラベルは去っていった。
　――このように、有耶無耶のうちに俺の日本行きが決定したわけだ。
　しかし。

「……暑い」

　夜になったところで、この地獄のような暑苦しさは尽きることがない。
　確かに日中よりはましになったが、結局のところ、その程度である――

「……それにしても。ホントに何事もない街だよな、ここ」

　くる前に散々と不穏な話を聞かされていた割には、ここフユキというのは暑苦しい以外はごく
普通の街だった。
　半ば拍子抜けしつつ、まあ観光だと思えば腹も立たないか――なんて自分を誤魔化しながら。


「……ところで、寺と神社って、何が違うんだろうな？」
「……掲げている宗教の違いだと思います」

　こちらのどうでもいい問いかけに、律儀に答えてくるカペルテータ君。
　いつものように外套を頭から被っているのだが、果たして暑くはないのだろうか――などと
心配になってくる。

　まあ、これがさっさと終われば冷房の効いたホテルに戻れるわけで。
　俺は、今夜の探索予定である柳洞寺という山寺の、参道前に車を寄せていた。

　（参道前：モールド・キャリア内）

359 名前：東方仗助：2005/08/01(月) 20:17:17

【東方仗助−導入】

「……マジでこれ、持ってってオッケーなんスか？」

　と、仗助が聞いたのも無理からぬ事と思えた。
　いきなり「これを使え」と言われたのは、1200ccのバイク（ざっと見て八十万相当）で――なら、
それをポンと差し出してきた神父が何者かというのは、まずは最大の疑問点だ。

「構わないよ。どうせ俺のじゃない……SPW財団から君へ、だそうだ」
「ラッキィ〜〜！　え？　それじゃこれ、『借りる』じゃなくって、『貰う』でオッケーなんスか？」
「らしいよ」

　ハンドルの握り心地を確かめてエンジンに火を入れる。肩先まで這い上がる振動が心地イイ。
サイコーってヤツだ。夏のボーナスに加えてこのプレゼントは、ただ『軍資金』を頂くだけで良か
った仗助にとって想像を遥かに越えるハッピーなのだ。
　素晴らしい。

（しっかしよぉ〜、こんなに貰っちまってイイのか？　くぅ〜〜〜〜！　スカッと＆サワヤカの笑み
が毀れて仕方ねぇーッ！　承太郎さん！　ありがとうッ！）

　各部の調子を確かめながら、ふと仗助は脇で腕組みしている神父に目を走らせた。
　司祭服の男はパッと見で日本人で、SPW財団の関係者――アメリカに本拠地を置く、父親の
友人の財団――には見えない。妙と言えば場所も妙で、現在地は電話で「取り敢えず行ってく
れ」と言われた町外れの教会だ。行ってみればそこは本当に町外れで寂れ尽くし、人の気配す
ら感じられない――と、辺りを見回した所で声を掛けられた。
「”東方仗助”君？」
　立っていたのは神父だった。
　そして改めて思う。
　誰だっけ、この人。
「……あのぉ〜、えーっと、もし勘違いだったらスイマセン」
「ん？」
「オレ、神父さんに会ったこと、どっかであったり……」
「ないだろうね。初対面だ」
　ひょいと肩を竦める神父。身長は仗助より十センチ以上も低いが、それは単に仗助の身長
が日本人離れして高いだけで、日本人平均はクリアしているように見える。考える。この、違
和感はなんだ――それが違和感と言うほどではないなら、それは「神父らしくなさ」と言うべ
きか――妙な雰囲気が神父を取り巻いているからだ。
　仗助は神父を見据える。
　神父は平然と立っている。
「……スイマセン、ヘンなこと聞いたっス」
「いやいや。承太郎さんが宜しく、ってさ」
「あ……、はい。いや、任せて下さいっスよ〜〜〜！　『調査』なんてチョロいモンっスからね」

　ま、いいか。
　出した結論は単純で、そもそも承太郎が「行け」と言った場所が間違っていないなら、この
人物を疑う要素は微塵もない。何も解らないなら解らないなりに対処すればいいのだ。それ
が人生を踏み出す『コツ』で、振り返らないのは仗助の哲学だった。
（待ってろよォ〜〜〜、オレの『十万』！）
　軽く肩を伸ばしてコリをほぐすと手鏡で髪型の乱れをチェックし、全ての確認を終えた仗助
はバイクに盛大な息を入れた。
　出足は快調で、未来は快調で、そして夏休みはバラ色の予定だった。
　とりあえず、この時点までは。

　■

　目的地に滑り込む。
　長い山道が見えた。
　そのまま突っ走るかどうか一思案した後、結局バイクを降りる。
　辺りは暗く、夜気は必要以上に湿り、そして当然ながら暑かった。

「オイオイ……マジに『出そう』って雰囲気じゃねーかよ……」

　石段の三段目を昇って呟く。
　「これはワリに合う仕事だ」と自分で言い聞かせて。

（場所−山道）
　

360 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/08/01(月) 20:19:57

>>358
（訂正：住宅街-峠道付近・モールドキャリア内）

361 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：2005/08/01(月) 20:20:50

　この寺にさつきが転がり込んでから、一週間が経とうとしている。
　彼女が寺を"お食事処"に利用する理由―――繁華街のほうでは、飢えの求めるがまま
に貪った結果、騒ぎが大きくなり住み難くなってしまったからだ。
　さつきは反省し、最近は麓で攫い、ここ柳洞寺で食事に勤しんでいる。裏から壁を飛び
越えて侵入しているために人目もついていない。
　さつきはいまの生活がそこそこに気に入っていた。街並みの喧騒を離れたためか、己の
身体への不快感が大分緩和されているからだ。

　―――辛いのは、もうイヤだよ。

　頭を振る。さつきは最近、あまり深く考えないようにしていた。
　ただ漠然と生きよう、と。何も感じずに生きようと、そう心掛けていた。
　意識を定めて生きるには、この現実はあまりに辛すぎる。

　出涸らしの男を、適当に物陰に捨てると、さつきはいつものように手水舎に向かった。
血に濡れた手と顔を洗うためだ。
　潤いを得たせいか、気分は不思議と良かった。さつきは、鼻歌でも歌い出しそうなぐらいに
足取りも軽やかに、石砂利を蹴って手水舎へと向かった。

【弓塚さつき　本堂裏手→手水舎】

362 名前：葛城ミミコ＆望月ジロー＆望月コタロウ ◆BBB.k09/yM ：2005/08/01(月) 20:31:33

「うー、それにしても随分と長い石段よね……
　どーしても汗かいちゃうわ、もうっ」

そんなことをぼやきつつ、やたら長い石段を登り続ける。
山門が視界に見えてきたが……まだ結構段あるし。ちくしょう。

そんなボヤキを漏らしたところで――

「そのうち、本格的に冷や汗かく事になりかねませんよ。
　私たちより下のほう、随分にぎやかな事になってきてるようです。暑いのにご苦労なことです」

「……さらっと皮肉言ってる場合じゃないでしょ！？」
「とにかく――急いだほうがいいんじゃないかな？　兄者、ミミちゃんっ」

――ええい、もうっ。

「こうなったらさっさと目標接触が先！　急ぐわよ！？」
「了解しました。では――！」

……え！？
ジローさんがその言葉とともに、あたしをひょいと小脇に抱える。

「あー、なんか荷物もって逃げるひったくりみた」（げしっ
「やかましい！　飛ばしますからお前も急ぎなさいっ」
「あうぅ……ら、ラジャーだよ兄者」

（ジロー・コタロウ・ミミコ、石段をダッシュ。
　場所：石段→山門へ）

363 名前：ファントム・ドライ ◆QyCal3DreI ：2005/08/01(月) 20:32:17

　アインは確かに言った。人目につかない、と。柳洞寺は夜は静かだ、と。
　確かに、一見するとそうも見えなくはないかもしれない。
　だが、真実は違う。

「……おいおい、どういうコトだこりゃ。カミサマを祀る地、なんかとはまるで無縁な気配だぜ」

　人の気配に慌てて参道を外れ、身を隠したものの、このまま参道から石段を突っ切れば
誰かしらと出くわす可能性は大いにあった。

　―――もしかして、嵌められたか？

　考えて、頭を振る。アインがそうする理由が、思い付かなかった。
　となると、不足の事態だろうか。

　あたしは取りあえず、野道から林間を抜けて境内を目指すコトにした。
　どうにもこうにも、アインに会ってみなければ話にならない。

【キャル　参道→林間から境内目指して移動中】
　

364 名前：ＫＵＳＡＮＡＧＩ ◆k2zTougaRE ：2005/08/01(月) 20:36:49

>>361

　のんびり座ってりゃ、空気が突然変わりやがった。
　何が原因か、そんなのは分かりきってるさ。
　酷く濃くなった血臭と、それに付随する殺気の塊。

　良いねェ。ゾクゾクするってのはこう言う事を言うんだろうなァ。

　月の明りに照らされた境内で一人で震えてるのは君が悪ィ。
　どうせならダンスの相手と、都合よく見つけたアイツと、踊らぬ訳にはいかないか？

　それにしてもどんなオンナだってんだ、アイツは。
　口の周りに、手、服。血塗れじゃねえか。
　世に言う吸血鬼、って奴なのかもな。ケッ…下らねえ。
　そんな迷信信じてどうする。馬鹿馬鹿しい。

　取り敢えず、話し掛けて見ねえとなァ。

　「オイ、そこの嬢ちゃん。
　　そんなに真っ赤に染まってどうしたよ？」

　そんな事を言いながら威嚇に炎を出してるのは何故なんだァ？
　得体の知れない恐怖なんて真っ平御免だぜ。
　恐怖なんて、恐怖なんてなァ。

　「チッ…這えッ！」

　軌道は一直線に、威嚇の一撃。
　得体の知れねえ餓鬼なんだ。殺しちまっても良いよなァ？
　

365 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/08/01(月) 20:36:57

>>358>>360

「……しかし、外灯のひとつぐらいないもんなのか」

　住宅地から少し外れただけで、其所は夜の支配する世界に変わり果てていた。
　生暖かい風が身体を撫でていく感触に顔をしかめつつ、峠道を越え、ようやく参道へと辿り付
いた。
　せいぜいが五、六分程度の道のりだというのに、既にシャツは汗で濡れている。
　よく日本人はこんな環境で平気で過ごせるもんだと飽きれば自利の感慨を抱いて、俺とカペ
ルはその医師で作られた長い長い参道を上り始めた。

　目的とした柳洞寺はちょうど山の中腹に位置している。おかげで、参道の両側には木々が茂り
森となり、夜の闇と相まってその向こう側を見渡すことは出来なくなっていた。

　しかしながら、参道は意外にも明るい。
　星明かりを遮る機器が参道を覆っていないためか、青白い光を受けて一直線に伸びる石階段
が、視界にはっきりと写る。

「出来ることなら、もっと涼しい時にこられたらまた感想も違うんだろうがな」

　確かにそれは、幻想的な光景ではあるのだろうが――
　この不快な気候では、そんな感動など欠片も価値がない。

　寺の入り口――山門までは、あと凡そ十分から十五分といったところか。
　このクソ暑い中、山登りじみたことをしなければならない己の不幸を嘆きつつ、俺と無言のまま
のカペルは、一段と陰鬱（主に俺が）雰囲気で、足を進めていた。

　……気のせいか、周囲がにわかに騒がしくなった、そんな気がした。

366 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/08/01(月) 20:37:33

>>365
（現在位置：参道→山門に移動中）

367 名前：メスドラーマ・エルムドア：2005/08/01(月) 20:38:47

「要は試験、と言う事なのだな。」
白銀で飾られた鎧をまとい、その美しい銀髪を風になびかせながら男は影に向って問い掛ける。

『ええ』
『”ジェミニ”はあなたを器として認め、死を乗り越えさせた』
『されど、我らが眷属たる力があるか？』
『”ジェミニ”の真の力に耐えうる力があるか？』
『それを見極めるのが、今の私達の務め』

答えた影はあまりにも奇妙な影だった、いや、影と言うのは正しい表現ではない
日をさえぎる物が無いこの場所で、影など生じようはずは無い。
ならば、影に見えるこれは何なのか？

闇

光の元に具現化する、黒き闇なのである。
「随分と用心深いな。」
整った白き顔。その頬が僅かに歪む
「まぁ、あいつらしいと言えばあいつらしい。
それに、”統制者”の命令とあらば…従わざるをえんな」

かつて、その男は”銀の貴公子”と称えられていた。
いた…と言う表現を用いる理由は、歴史上では既に故人だからである。
彼の故郷で起きた”獅子戦争”において、彼は確かに死んだ。
彼が住んでいたランベリー城には、彼の死を悼む弔問客が絶える事無く訪れている。

しかし、その男はここに存在する。
イヴァリースの伝説に残る、”聖石”の力によって蘇ったのだ。
しかし、伝説は伝説であり真実ではない…
彼は確かに蘇った。しかしそれは人々に伝わる神の力ではなく…

「”死の天使”の名の元に…ここを血に染め”血塗られた聖天使”へと捧げよう」

遥か昔、異界に追いやられた”ルカヴィ”と言う名の魔物の力によってである。

「ここに生きるすべての死こそ、我が望み、我が眷属の望み、そして聖天使の望みだ」

彼の男は異形なる者へと化していた。
それは、奇しくも彼の者が生前につけられたもう一つの通称その物だった。
”銀髪鬼”
メスドラーマ・エルムドアは、心身ともに、そして名実共に銀髪鬼としてこの地に降り立ったのである。
【ダテレポにより、裏手の池に具現】

368 名前：源義経＆武蔵坊弁慶（Ｍ）：2005/08/01(月) 20:44:14

　――――祇園精舎の鐘の音 諸行無常の響あり


　　　　　　娑羅双樹の花の色 盛者必哀の ことをあらわす―――

宵の口も過ぎた頃。
雲流れる空の下、場所は山の中腹に聳える柳桐寺。
そこの裏手に生い茂る林に突如――――それらは『虚空を割って』顕れた。

先ずは小兵、平安の甲冑に烏帽子姿の美丈夫である。
胴丸の意匠そなえた赤絲威の大鎧。
だが赤絲のみならず、小札（こざね）も、
脛当（すねあて）や籠手までもが、まるで血のように深く紅い。

「ひょっ、ひょっ、ひょっ…」

だが、最も異様なるはその容貌。
白無垢などというものではない、陶磁器を髣髴させるまでに不自然な肌の質感と白さ。
そしてそれを際立たせる紅玉のような眼。
よほど清廉さは愚か人間らしさとはかけ離れた、妖（あやかし）の美貌。
姿形は人間なれど、とてもそうとは感じさせぬ、いわば『妖人』。

「鎌倉殿の命により“ゆらぎ”に乗って来てみれば、なかなか面白い見世物よな」

夜風に乗って運ばれる血の臭い―――
ひょ、ひょ、ひょ、と甲高く。
紛れもなき戦場の臭いを嗅ぎ、小兵が嗤う。
耳まで裂けた亀裂の笑みを浮かべ、人のものとは思えぬ耳障りな声色で。

「左様。この“気”…正に戦（いくさ）のようで、牛若様」

その小兵の後ろに控え、地鳴りのごとき声音で答えるは、身の丈ゆうに九尺を越える筋骨
たくましき大男。
裏頭の袈裟に裳付衣、括袴（くくりはかま）に身を包み、先端に鉄球を付けた棍を担いだ
いわゆる僧兵の出で立ちである。
男もまた、その双眸は爛々と人ならぬ輝きを発している。
衣の隙間から覗かせる岩のような肉体、そしてそこから発散する夥しい殺気は
それだけで常人すら殺せようか。
人間なのは姿形だけ。獣臭と邪気ただよう、いわば『魔人』。

そこの妖幻なる小兵、名を源九朗義経。
それに付き従う魁偉なる大男、名は武蔵坊弁慶。
人の世とは近くも遠き魍魎の世界より。
討たれて後、黄泉より返った魔道に堕ちし源氏の一角である。

全ては偶然か、必然か。
彼等が今ここに立つのは、時空を壁を脅かす『ゆらぎ』と、この冬木の霊的条件に由来する。
柳桐地下にある、英霊を呼び出すことすら可とする魔術装置『大聖杯』―――
聖杯に巣食う“穢れ”が、一振りの剣を呼び寄せた。
邪剣『ソウルエッジ』。
魂を喰らい次元すら斬る、禍々しき異界の剣（つるぎ）。
あまたの力を欲する者たちがそうであるように、源氏もまたこの剣を求めていた。
邪剣を追跡できるよう、その漏れでる力を借りての転移を行えるほどに、だ。
その結果、彼等源氏の武将をこの地へと“招かれた”形となったのである。

「…最も『そうるえっじ』は一足早く失せおったようだがな。
　しかし、鎌倉殿の邪魔となる“芽”は早々に摘まねばならぬ。
　ひょひょ……そうよな、鬼若？」

「全くの通りで。我も、はよう堪能…もとい、“芽”を摘みとうございまする。
　この戦…並みならぬ気に満ちておる様子ゆえ」

義経の甲高き笑いに続くは、弁慶の下卑た笑み。
これは戦（いくさ）だ。
彼等が生前から望んでやまぬ、敵を屠り首級をあげる戦そのものに他ならぬ。
死と怨嗟で彩られた、げに心地よき戦の風。
それを感じる歓びに躯の芯から酔い、訪れる殺戮の予感に、嗤う。
殺し、潰し、屠り、晒す。
なんと至高の悦楽か。

「しからば、参ろうぞ。ヒョッヒョッヒョッ…」
「―――御意」

小兵と僧兵、凶相を浮かべ相笑う。
笑いながら野を馳せて木々を分け入り、境内へ。
戦場（いくさば）よ待て。これより魔性源氏の双璧が参る。
死風に酔い、戦の悦楽を貪りつくす為だけに。

（場所：裏手の林→境内へ移動中）

369 名前：空条承太郎：2005/08/01(月) 20:46:41

「……で、良かったんですよね、空条博士？」
「ああ」

　言葉少なく答えて、空条承太郎は缶コーヒーを啜った。
　195センチの承太郎が自販機の前に立つと、「自販機と同じ身長の人間がジュースを買う」
という、奇妙にシュールな光景が成り立つ。
　知ってか知らずか、傍らに立つ神父は同じようにコーヒーを――承太郎がブラックなのに
大して「激アマ」と評判のそれだったが――啜り、途中で一気に飲み干すと、「さて」と山頂
を見上げた。
　暗い頂は真夏の陽光を飲み尽くして、流覧左見右見にも視界が効きそうにない。
　少なくとも好んで入る人間はいない筈だ。

「それ自体は好都合ってヤツだがな……」
「？」
　不思議そうに自分を見上げる顔に「いや」と返し、承太郎は山林に足を向けた。
「さっさと埒を開けちまうとするか……目的さえ果たせば、こんな場所に用はねーしな」
　隣で神父が頷く。
　先程まで来ていた夜に紛れそうなカソックは、今や白雪さながらの純白のそれに取って代
わっている。思い返せば、SPW財団経由で紹介された「矢」の調査に関する協力者は、あろ
う事か神父だった。ただの神父だとは思っていない。
　が、状況さえ進めばそれで構わない。
　叔父（と言うのも妙な話だが、「年下の叔父」という物がこの世に存在すると言う事実は、
経験してみなければ解らない――口に出したことはないが）に先行させ、それをサポートす
る形で山頂の調査を実行する。財団が齎した情報は、「山頂付近で”奇妙な現象”が多発し
ている」という至極曖昧な物ではあったにせよ、情報の価値はゼロ以上であるならば「アリ」
なのだ。
　深く被った帽子の位置を直すと、熱い夜気を吸い込む。

「やれやれ……さっさとケリを付けるぜ」

（空条承太郎＋１−山林下部）
　

370 名前：戦士長・火渡(M)：2005/08/01(月) 20:54:41

―――思惑が狂った。ただ、そう感じた。

「……なんだってクソ寂れた山寺にこんなに人気があるんだ？」
口を滑り出る言葉には、焦りが滲み出る。
霊験あらたかかどうかは知らない。祭りがあるとも聞いてはいない。

剣呑な風合いを漂わせたカタギらしからぬ若い女性に、（>>357）
ノッポの不良学生（>>359）……

「おう、ガキども。これからこの寺は戦場になる。
　わかったらさっさと家に帰ってママに甘えてきな」

可能な限りに優しい言葉を掛けると火渡は懐から正六角形の金属――核金――を取りだし
内なる闘争本能を篭めて、叫ぶ。

　　　武　装　　錬　金　　！！

瞬間、核金は分解し火渡よりも巨大な砲弾へと姿を変える……
これこそ焼夷弾(ナパーム)の武装錬金(ブソウレンキン)・ブレイズ オブ グローリー！！

具現したブレイズ オブ グローリーは太陽を思わせる火球へと姿を変え、その上に火渡を乗せ山頂の境内を目指す。

「悪いが、チマチマ小競り合いするのは趣味じゃねェんでな…一気に行かせてもらうぜ！」

【火渡　参道・石段→境内へ】

371 名前：カジ：2005/08/01(月) 20:56:12

　勾配が急な野道を風の勢いで突っ切る。
　カジとしては、こんな些末な仕事面倒なことこの上ない。さっさと目的を達して帰途に
つきたいのが本音だった。
　やがて、地がなだらかに。森が開けた。

　―――着いたか？

　地図も何も持たず、勘と勢いを頼りに進んでしまったため、まさか迷ったか、と懸念
していたところだったので、助かった。
　カジは顔を綻ばせながら、躍り出た。

　しかし、一面に広がる風景からはとても神社仏閣の様子は窺えない。
　そこには、ただ広大な池が。

　そして、どうにも不審な人影が一つ。
　銀髪のガイジン、が池のほとりに突っ立っているのだ。

　別にガイジンだから不審などとは言わない。その人物、なんと鎧武者姿なのだ。
　そして、それが何とも様になっている。

　さすがのカジも、相手にせぬわけにはいかず、足を止めた。

「おい、てめぇー。んな勘違いした格好で、何やってるんだ、おぉ？」

【カジ　山林→裏の池】
　

372 名前：カジ：2005/08/01(月) 20:56:35

>>371は>>367へのレスだ。

373 名前：エミリオ・ミハイロフ ◆EMILIozylo ：2005/08/01(月) 21:00:31

　良い夜だった。闇が全てを覆い尽くす、雲一つなく、緩やかな風が頬を撫でる、とても良い夜。
　けれど、僕は機嫌が悪い。
　理由は二つある。
　一つはいつまで経っても鳴いてくれない小鳥。出来る限りの優しさを見せても、顔が歪むほどに殴りつけても、呻き声一つあげやしない。
　もう一つは、治まらない頭痛。氷を使う男に出会ってから、今もずっと続いている。殺したのに、ずっと、ずっと続いている。奴は僕を知っていた。奴は一体何者だったんだろう。殺した今となっては、知る術はない。頭痛は治まらない。

　こんな時は散歩に限る。適当に何人かを見繕って……血祭りにあげれば、多少だけど、気は紛れる。
　そんな理由から、僕は夜の街の上を飛び回っていた。


「……ん？」
　不意に鼻腔をくすぐる妙な臭い。この臭い、どこかで嗅いだ事がある……。僕はその臭いの元の上空に留まり、思いを巡らせてみた。
「ああ……あの時か。刹那の奴が、『影高野』とかを潰した時の……。とすると……ここはその絡みかな……？」
　口にはしてみたけれど、実際のところはどうでも良かった。

　例の妙な臭いに混じって、嗅ぎなれた匂いがしたからだ。
　僕の大好きな匂い……血の匂いが。

「ふふ……あはは……！　黙示録の天使のお出ましだ……一人残らず、射抜いてやるよ……僕の光で！」

【エミリオ・ミハイロフ参戦】
【現在地：本堂上空→本堂前】

374 名前：東方仗助：2005/08/01(月) 21:01:45

「いつも思うけどよ……なんで古い『寺』の階段っつーのはこんなにクソ長ぇんだ？　上り下りすん
のも『修行』だっつーんならよ……オレは絶ッ対ェー！　坊主にだけはなりたくねーな……」

　階段を昇って半分。
　不意に胴間声が耳朶を横殴りにした――して、直後。

>>370

「ンだァ、ありゃあ……？」

　飛んでいった――馬鹿ヅラのオヤジが火の玉になって、だ。
　幽霊？　まさか。世界中の幽霊がアレだけ騒がしければ「ゲゲゲの鬼太郎」の立場がない。
　意味が解らない、という思考に辿り着くより早く、思考が一つの結論を結ぶ。
（……まさか、オイ）

「”スタンド使い”……？　ちょっと”キナ臭く”なってきたっスよ……承太郎さん……」

　足早に階段を駆ける。
　山頂はすぐだった。

（→山門付近）
　

375 名前：望月ジロー ◆BBB.k09/yM ：2005/08/01(月) 21:06:11

そんなこんなで。

下の方がなにやらトラブルの元が多そうなので早々に山門を抜け、境内へ。
まず一番初めに目にできるのは、手水舎なのですが――む！？

>>361、>>364

「兄者、人が居るみたいだよ？」
「……ジローさん、あれっ！」

コタロウとミミコさんが同時にまくし立てる。
無論私も気づいていないはずはない。

一人は色黒の青年。
そしてもう一人は――見た目そのままの、女子高生の服装。
だが……気配で分かる。
この娘も我々と同じく吸血鬼（ブラック・ブラッド）なのだと。

「ミミコさんっ。あの女の子――彼女で、間違いありませんね？」
「ええっと……ええ、間違いないわ。暗くて見づらいけど概ね写真の通りだし」

顔写真で本人かどうか確認する。
間違いはなさそうだ。　しかし今一人の男は……？

――しかし、そんな訝りも一瞬のこと。
「兄者っ、あの人！」

弟の声に振り向くと、男の振るった手の先から大きな炎の華が走り――
交渉相手、弓塚サツキへ。


「……ちっ！」

とっさに意識を爆ぜる自走火柱に集中。
私の意志は力場思念（ハイド・ハンド）――文字通り見えざる手と化し、走る炎を叩き潰す！


「……そのお嬢さんとはこれから、我々と交渉予定がありましてね。
　あいにくですが遠慮してもらいましょうか、そこのあなた？」

（場所：山門→境内・手水舎）

376 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/08/01(月) 21:08:42

　ようやく――山門にたどり着いた。

　大したことはないはずの距離なのに、妙に疲れた気がするのは、繰り返すが慣れない気候の
ためだろう。正直、なにをこんなにまじめに仕事をしているのか、という気にすらなってくる。

「……そもそも、調査のたぐいは戦術魔法士の仕事じゃねえはずだよな。
　普通はこういう場合、調査のために魔法監督官が同行するのが筋ってもんだろうし。
　くそ、あの狸親父――徹底的にこき使うつもりか」

　あの忌々しいカート・ラベルの顔を思い浮かべようとするが、これがどうにも上手くいかない。
　確かに俺は人の顔を覚えるのは苦手なのだが――これはむしろ、あのおっさんの方に問題が
あるような気がしてならない。

「……ったく。やってられるかってんだよ。
　なあカペル、ざっと見て回ったらとっとと――」

>>361>>364

　其所まで呟いて。
　ようやく俺は、カペルテータの真っ赤な双眸が、山門の向こう――寺の境内に、じっと向けられ
ているのに気がついた。

「……カペル？」
「……微弱ですが――魔力のような反応があります。現在移動中」

　その台詞に、俺は反射的に腰元から銃を引き抜いていた。

「……魔族か？　それとも――」
「判りません。今まで……感じたことのない感覚です」

　それはつまり、その反応とやらは、魔法士の類でもないということで。

「――こういう当たらんでもいい自体には見事に大当たりだな、くそ。
　カペル、お前ははそこで……」

　待っていろ、と告げようとした、その瞬間――！

　>>370
　背後から、『太陽』が駆け抜け、山門を突破した。

「な――！？」

　思わず、カペルを振り返る。
　だが、こちらの視線を受けた彼女の回答は、無言で首を左右に振るのみだ。
　つまり――アレも、違う。
　魔族の類ではない。

「ちっ！」

　舌打ちしつつ――後から考えても、何故そんなことをしたのか判らなかったが――その太陽を
追って、俺は反射的に境内へと掛けだしていた。

　手にした銃が、これ以上なく心細く感じるのは久々だ。

　境内へと親友をハタした俺の目の前に現れたのは果たして、一組の男女である。
　だがまあ、それはお世辞にもほほえましい、なんて物ではなく。

　露骨に危険な気配を発した（恐らくは）学生服姿の男と――明らかに自分の物ではない、赤黒い
血痕にまみれた、一人の少女の姿だった。

「……これは――一体どういう状況なんだ？」

一般的に考えれば、被害者は少女、ということになるのだが。
　どうやら、そう簡単な話でもないらしい。普通の少女は、血まみれで笑ったりはしないものだ。

　リボルバー拳銃の銃口を正面に構えながら、とりあえず俺が出来ることといえば、流れる空気
を読むことぐらいだ。

（場所：山門→境内・状況把握中）

377 名前：エリ・カサモト ◆SV001MsVcs ：2005/08/01(月) 21:11:12

　咥え煙草で黙々と参道を歩く。
　林間から見た石段は参道が曲がっていたせいで思っていたより遠くにあった。
「この上石段登るなんて嫌になるわ。引き返そうかな…」
　呟いて煙草の灰を落とす。

>>370
　横を変な何かが飛んでいった。
　いや、何かっていうか……人魂？　それもでかい奴？　変なオッサン乗せて？

『おう、ガキども。これからこの寺は戦場になる。
　わかったらさっさと家に帰ってママに甘えてきな』

「……戦場？」
　馴染み深い言葉だ。そしてここには余り似つかわしくない言葉でもある。
「行ってみるか」
　日本の地方都市くんだりまで来て手ぶらで帰るのも癪だ。
　何かの情報なり何なりを土産にできそうな機会を逃すことはない。

　アタシは先に進む足を速めた。

（現在位置：石段上り口）
　

378 名前：メスドラーマ・エルムドア：2005/08/01(月) 21:13:08

>>371（カジ）
しばらくの間、池を眺めていた。
聖天使の復活にはどれだけの血が必要なのだろうか？
恐らくは、この広大な池の水に等しい量の血を大地に降り注いだとて、
とてもでないが足りないだろう。

しばらくの間、池を眺めていた。
木々が揺らぎ、何物かが近づいているのは数刻前より感じていた。

それでも、私は池を眺めていた。
なぜなら、今だ戦いの間合いではないから。
そして、数秒もたたない内にざわめきは影となりて林に浮び、
やがて影は日に照らされ、人の姿となって私の前に現れた。

＞「おい、てめぇー。んな勘違いした格好で、何やってるんだ、おぉ？」
私は声をかけられて、初めて視線を池から外しその者へと写した
　　　　　　　　　　　なぜなら――――闘争の間合いに入ったから。

「勘違い。 だと？」
私はその的外れな質問に応える事にした。
「ここは戦場だ。ならば、それ相応の装備をするのが当然だろう？」

体全体を奴に向け

「それとも…」

姿勢を低くし、

「ここが戦場である事に気がつかない愚か者なのか？」

と言う返事と共に、正宗の柄に手をかける事無く、無手で奴へと突進する。
さぁ、血染めの儀式の始まりだ。

379 名前：源義経＆武蔵坊弁慶（Ｍ）：2005/08/01(月) 21:14:48

林を抜け、裏手へ。
獣じみた欲で一番近い血臭と殺気を追った先は、境内。
ここもまた、一つの戦が火蓋を開けていた。

「ほう、女子（おなご）と男、か。それと……血を啜る妖（あやかし）か。
　少々足りぬが、宴の前菜（にえ）としてはそこそこよな」

腰の太刀も納めたまま義経が呟く。
片や血の臭いを隠さぬ、年端もいかぬ少女。
片や黒髪と黒衣に褐色の肌した、獣のごとき男。
いや―――少なくとも三者か。
見事な朱一色の衣を纏った、侍とその従者らしき者。
充満する血の臭いと妖気と殺気。それらが渾然一体となって、死風に流れる。

「逢引きとは、下衆な真似をし申したか？
　いや、男がもう二人とは修羅場であるかな？
　へぇ、へへへへ…」

遅れて現る武蔵坊の巨体。
肩に担いだ棍を軽く振り、既に戦の体勢は整っている。

さあ、喰らえ。
贄はここだ。
待ちきれぬ。
戦はここだ。
最初の獲物は、彼奴等にしよう。

たまらぬ。
我等が戦の始まりだ。

（場所：境内）

380 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：2005/08/01(月) 21:19:09

>>361>>375

　さつきは、唐突に現れた学ラン姿の男をきょとんとした目で見つめる。
　何を、言っているんだろうか。さつきには理解できない。
　彼女がぼうっとしている間にも、男は振りかぶり、鮮やかなる炎を地に走らせた。
　さつきへ向けて一直線に迸る。

　慌てて身構える。だが、炎がさつきを灼くことはなかった。唐突に炎が爆ぜたのだ。
　見ると、更に数人の人影。

「なん―――なの」
　わたしは、手を洗いに来ただけなんだけど。
「真っ赤に染まってだとか、交渉だとか。……そんなの、知らないよ。どういうこと？」

　面倒に巻き込まれるのは、イヤだった。
　いまさっき現れた男女が、学ランの相手を請け負う雰囲気。
　ならば―――

　踵を返して、さつきは駆け出した。山門を目指す。

【境内から山門へと移動中】

381 名前：カジ：2005/08/01(月) 21:26:55

>>378
「うお―――」

　唐突に仕掛けられた。ある程度の覚悟はしていたが、まさか容赦なしだとは。
　肉体と肉体がぶつかり合う。銀髪の腰に入った吶喊。重く、カジの身体に響いた。

「……こぉんの、上等！」
　銀髪の額に向けて、額を駆る。ただのパチキ、ではない。自分の頭蓋骨をも
粉砕覚悟の一撃だ。
　カジの肉体ならば、その程度負傷はいくらでも再生がきいた。

【裏手の池】

382 名前：ＫＵＳＡＮＡＧＩ ◆k2zTougaRE ：2005/08/01(月) 21:27:06

>>375

　……ナンだァ？ 俺の焔が消えやがった、だと？
　七面倒臭ェ理由付けなんざどうでも良いぜ。
　あるのは溜まったフラストレーション。
　破壊衝動に変えてぶつけちまっても良いよなァ？

　『……そのお嬢さんとはこれから、我々と交渉予定がありましてね。
　あいにくですが遠慮してもらいましょうか、そこのあなた？』

　しかも、遠慮しろ、か。上等だ、上等だよ。久々に頭にキたぜ。
　全身真っ赤なアイツが何か知りやしない。
　でもよ、これだけは一つだけ確実に、分かってる。

　「仕事、仕事かい？ 兄ちゃん。
　　それでも人の御楽しみを奪っちゃいけねえなァ？
　　上に輝く太陽も、見過ごしちゃくれねえぜェ？」

　こんな時間に日が昇る事がねえのは知ってるさ。
　それでもああやって在る以上突っ込んでみるのが礼儀だろ？
　それに、陽光はそんなに嫌いじゃねえしなァ？

　真っ赤なアイツに向かって駆け出して、顔にめがけて一撃見舞え。
　そうすりゃ一寸は気も晴れる。
　嬢ちゃんは逃げたが、今は見逃すか。
　美味しい美味しいディナー、メインディッシュは最後に取っとくもんだろ？

　それに周りに溢れてきやがった連中だって、直ぐにも血が見たいだろうさ。
　どいつもこいつも、血が好きだって顔してる事だしなァ！
　

383 名前：木島閑音：2005/08/01(月) 21:29:08

閑音がひょんなことから耳に挟んだその情報は、とてもとても奇妙な物だった。

日本の柳洞寺―――この場所自体は、特に語るべきこともない普通の寺だ。少なくとも彼女の情報網においては―――
という寺院に、数々の吸血鬼、化物、及び異能力者が集っているという。
中でも彼女が注目したのは………その中で一際異彩を放つ二つ名だった。

『銀刀』。

かつて香港島全土を巻き込んだ、人類史上最悪の吸血鬼禍「九龍（クーロン)ショック」にて、
忌むべき吸血鬼の血統「九龍の血統（クーロン・チャイルド)」をその手の銀刀で屠りに屠った、
歴史上の英雄と呼ばれし存在である。
その名を見た途端、彼女が思考したことは唯一つだった。


………食べたい、、、、。


そう、彼女は人間でありながら吸血鬼を食し、その力を得る事を幸いとする存在……「食鬼人（イーター)」である。
食えば食うほど力を増し、より強力に成長する食鬼人（イーター)の彼女は、より強い力を求めていた。
同時に、彼女から全てを奪った吸血鬼の存在を、憎みに憎んでいた。
だからこそ、閑音はその情報を聞いたとき、一も二もなく即座に日本へと飛んだ。
より強い力を得るため。吸血鬼をこの世から滅殺するため。
矛盾しない、どころか一石二鳥とさえ言える二つの目的を遂げるために。


そして今、柳洞寺境内へと続く参道に……彼女はいた。
既に闘いの空気が漂ってくる境内を、長く伸びる階段の下から見上げ―――呟いた。


「……今夜は騒がしいディナーになりそうね」

（木島閑音・参戦。現在位置：参道）

384 名前：エミリオ・ミハイロフ ◆EMILIozylo ：2005/08/01(月) 21:29:50

「……」
　見た事もない造りの建物の前に降り立ち、辺りを見回す。
　嗅ぎ慣れた匂いを、戦いの音を、そして人影を求める。

「そんなに……遠くはないみたいだね……」
　自然に顔が緩んでいた。僕はゆっくりと歩き出した。焦る事はない。夜は、始まったばかりなんだから。

【本堂前→境内に向けて移動】　

385 名前：アサシン：佐々木小次郎：2005/08/01(月) 21:32:35

　―――それは異常とも言えた。


　血の匂いが香る中で、身を打つ様な殺気が飛び交う中で、
　山門に立つ男はまるで涼風の様にそれらを受け流している。
　あまり透明なそれはさながら一つの絵とも言っても良い。

　だが、それこそが異常なのだ。
　殺気も何も感じさせず、戦場（いくさば）に立つ等、余人に出来ようか。

「宴は始まった様だな……では参ろうか。

　これより、此処は何人たりとも通しはせぬし、出しもせぬ」


　アサシンのサーヴァント、佐々木小次郎、推参。

　【アサシン：佐々木小次郎参戦　山門前で待機、以後、此処に固定】

386 名前：笑石 ◆EMISHIvcMk ：2005/08/01(月) 21:34:25

　常はさね　思わぬものを　この月を　過ぎ隠らまく　惜しき宵かも

　月が綺麗な夜だった。
　良い夜である。だがそんな良い夜にはとうてい似合わない、本来あるべきではないものが、今宵には多く混ざっていた。戦を示す焔の臭い、粘り付くような血の香り、そして何より――――『感知』に掛かる人ならざる者の気配。
　より強く『感知』を働かせ、笑石(えみし)はそれらの位置を探る。感知を頼りに辿り着いた騒動の中心は、柳洞寺という名の寺であるようだった。その事実を知り、彼は「ふん」と不機嫌そうに呼気を漏らす。
　仏法と衆生の護り手として、寺院の境内で狼藉を働く者どもを捨て置くわけにはいかない。それが人外の化物であるのなら、なおさらのことだ。
かくして千年を戦い続けた仏石像の化生は、新しい戦に飛び込むべく、月光の下を走り始めた。

(笑石：柳洞寺へ向けて移動中)

387 名前：望月ジロー ◆BBB.k09/yM ：2005/08/01(月) 21:36:42

力場思念――俗に言う念動力で、交渉相手の少女に向けられた炎を叩き潰して。

「さて、どうします？
　人間相手に銀刀を振るうのも趣味ではないのですが――」

>>370
そこへ、不意をつく形で暗闇の境内がライトアップされる。
一瞬太陽かと思いはしましたが――私の体に影響はない。熱気程度で。

「きゃっ、いったい何！？」
「うわ、もう昼が来た！？」
すっとぼけた反応をする弟と慌てるミミコさんをよそに、私は一考する。

この炎の使い手――色黒の青年も、空の火弾の主も、炎を操る能力持ちとは。
特に上空の相手は、『緋眼のゼルマン』に匹敵する器。
この状況でどうする――？

そう思った矢先。

>>379
あまりにこの21世紀に時代錯誤な、鎧武者の集団が現れる。
人間でもない、かといって吸血鬼とも違う――何者？

そう思い、彼らに意識して視線を向け――そこで驚愕する。

「……まさか……クロウ？
　どうして、あなたがこんなところに居るのです！」

私の剣の師匠であるあの古血の大吸血鬼と、完全一致ではないがよく似た気配。
戸惑いを隠せない。その隙に――

>>380
ミミコさんの交渉の相手、弓塚サツキが山門から石段へと逃亡する。

「あ、ジ、ジローさん！？　どうすれば――」
「……流石にこの状況、ただで返してくれそうにありませんねっ。
　ここは私が引き受けますから、ミミコさんは彼女を！」

「兄者、ぼくは！？」
「バウワウから『銀刀』を私に！　お前はミミコさんを頼みます！」
「……あ、うんっ！」

コタロウは少々慌てた様子ではあるが心得たもので、背中のクマを私に向ける。
手を突っ込み、『銀刀』を引き抜く。

「さあ、行きなさいっ！　私もすぐに追いつきます！」
「うん、兄者気をつけてね！」
「ジローさん……無事で！」

弟とミミコさんが、サツキ嬢を追って山門へと駆けていく。

「……さて、この状況、どういなしたものですかね」
ぼやくような言葉とは裏腹に、牙が血の滾りとともに伸びるのを、私は感じていた。

（ジロー、乱戦のしんがりとして残留。場所：境内・手水舎
　ミミコ＆コタロウ、さつきを追って山門へ。　場所：山門）

388 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/08/01(月) 21:37:05

>>374

　……一体何処から現れたのか、思わず首をかしげるような面々を前に、思う。

（……魔族でもない。かといって魔法士でもない。そもそも、魔法がらみでもない）

　と、いうことは――この事態は想定外であり、自分の対処の範疇を超えているということだ。
　人使いの荒い魔法管理局といえども、こんな例外に対処しろ、なんてことは言わない――
言わないと思う、多分。

　だからまあ、今この場において俺が最優先で行うべきは、速やかにこの場から離脱する、と
言うことに他ならない――俺だけならまだしも、ここにはカペルもいるのだ。
　こんな訳のわからない連中につきあってけがでもさせたら、またシモンズ監督官殿に大目玉
を食らってしまう。

　結論。
　とっとと尻尾を巻いて逃げる。

　植え込みに身を潜ませながら山門へと走り出す。
　と、其所に――

　とても、特徴的な髪型の少年が血相を変えて飛び込んでくる。
　無視を決め込もうとして――不覚。思わず目があった。

「……参拝客――って訳でもなさそうだな。
　アンタもあのパーティーに参加するつもりか？　それなら、俺は全く無関係なので、
出来ればそっとしておいてくれると助かるんだが。」

　苦笑しつつ、声を掛けた。

389 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/08/01(月) 21:39:40

>>388
（境内から山門へ。身を隠しつつ移動中）

390 名前：東方仗助：2005/08/01(月) 21:41:28

　境内の惨状はヒドかった。
　ヒドいと言うより、常軌を逸していたのだが、逸し方が跳び抜けていて、仗助は軽く頭を振って、
それから様子を見回した。状況を把握するのに時間は掛からない。修羅場には慣れていたし（こ
の場合の『修羅場』は、広意義でのそれだ）――そもそも、異常さは石段で既に経験済みだ。
　それでもコレは酷い。

　炎が散っていた。
　サムライ（おいおい、なんで「コスプレ」がいるんだよ）が立っていた。
　挙句に――
　挙句に、学生服の女の子が走ってくる。

　どうするか。
　どうするか――考えるよりも行動は易く、そして確実だ。
　異常ならば異常で捻じ伏せる。仗助の至上哲学は単純明快にして、故に無駄がない。

「”全部ブチのめす”ってのはメンドーだしよぉー……邪魔になりそうだったらブチのめそう」

　ひとりごちて、そこで首を振り向けた。
>>388
　やる気のなさそうな（つまり「ブチのめす必要のなさそうな」）男が突っ立っている。
　やる気がないという点では仗助と正反対だが（何せ十万が掛かっている）、乱稚気騒ぎの蚊帳
の外という点では同類項だ。

「……言われんでもそっとしとくっスけどね。……どーなってんスか、これ？」
　

391 名前：戦士長・火渡(M)：2005/08/01(月) 21:43:45

―――ふと、鼻をつく二種類の異臭。
一つは、きな臭い臭い―――嗅ぎなれた、火が燃え爆ぜる臭いだ。
そしてもう一つは饐えた金属質の臭い―――これも嗅ぎなれた、乾き切った血の臭いだ。

血の臭いの源は―――（>>380）
薄汚れた制服に身を包んだ少女だった。

「オイ、そこの嬢ちゃん。そんなに急いで何処に行こうってんだ！？」
彼女の頭上から声を掛ける。
既にブレイズ オブ グローリーの特性・火炎同化は発動し、その肉体は炎そのものとなっている。

よしんば彼女に敵意があったとしても、火渡を傷付けることは難しいだろう。

「まずは質問に答えてもらおうか―――テメエ、人食いか？」

【火渡　山門側・境内入り口上空】

392 名前：メスドラーマ・エルムドア：2005/08/01(月) 21:47:59

>>381
ドスッ
肩に幾ばくかの衝撃が走り、鈍い音が耳を駆け抜ける。
いや、確かに不意打ちだった。

『しかし、まさかまともに喰らうとは…』

心の中で舌打ちをする、なぜならこれでは取るべき間合いの参考にならない。
相手がどれくらいの間合いで攻撃体制を取り、どれくらいの速さで攻撃を繰り出すか？
それを試す為の不意打ちのタックルだったのである。

『ハメドるや白刃取りを使うには、もう一度この身を晒さねばならんのか…
　いや、この程度の実力ならばそれに頼らずとも…。』

その時、私は慢心していた。
慢心は安堵と嘲りで心を満たし、恐怖から逃避する事。
恐怖を認めそれと戦う”勇気”より離れた心、その心理状態ゆえに私は油断し、

＞「……こぉんの、上等！」
敵の反撃を許してしまった。
吹き飛ばしたと確信していた敵が踏みとどまり、あまつさえ体勢を立て直し
こちらに向かい頭突きを仕掛けてこようとは…

「チッ、油断したッ！」
この間合いではハメドるのもかわすのも不可能。
故に足を踏ん張り、兜を割られないように、かつダメージが最小限になるように角度を調整して受ける。

ガァァァァンッ
衝撃音が響き渡り、私は後ろに吹き飛んだ。
受けた衝撃に逆らわずに。

数回後転をした後に体勢を立て直し正宗を構える。
「ひ弱な人間を想定していた故に油断した。次は、こうは行かんぞ？」
さっきとは打って変わり、じりじりと間合いを詰めていった。

393 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/08/01(月) 21:49:04

>>390

　見た目の奇抜さとは裏腹に――案外と落ち着いた声音に、息をつく。
　どうやら、一応『マトモ』な部類の人間らしい。いや、俺に人様のことが言えた義理ではないのだが。
　腰のホルスタに銃を戻しつつ、

「……まあ、俺の下手くそな日本語が通じてるようで何よりだ。
　どーなってる、といわれてもな。それはむしろこっちの台詞というか、なんというか」

　とりあえず、サーカスの興業といってもある種納得してしまいそうなトンでもない光景であること
は間違いが無いのだが。

「……ま、とりあえずこの場は関わらないに限る。
　こんなところで怪我するのも馬鹿馬鹿しいし、な」

　それじゃ、俺はこれで――
　そう呟いて、立ち去ろうとしたそのとき。
　目の前には、山門で待っているはずのカペルの姿があった。

「……どうした？」
「……山門に。誰か、現れました」

　そう――時は既に遅く。
　門には、何人をも通さない門番が発生していた――

（山門前：境内）

394 名前：望月ジロー ◆BBB.k09/yM ：2005/08/01(月) 21:49:07

ミミコさんとコタロウが、無事にその場を離脱するのを確認―――

>>382
――する暇も有らばこそ。
学ランの色黒青年が、私に向けて突進、拳打を放つ。
吸血鬼でこそないようですが、この速度―――拙いっ！？

ちょうど抜く前の、銀刀の鞘でその拳を受ける。
衝撃が走るが、この程吸血鬼（ブラック・ブラッド）のこの身にはたいした痛痒でもない。

「……なかなかいい拳打ですが、少々無駄が多すぎますね、人 間（レッドブラッド）。
　まずはもう少し落ち着きを身に着けて、十年修行してやり直しなさいっ！」

拳を引く暇も与えず、前蹴りを腹部にめがけて放つ！
……無論全力だと殺しかねないので、その辺は最低限の加減はしてますが。

395 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：2005/08/01(月) 21:57:46

>>391
　空を仰ぎ見る。そこには炎の塊が。
　さつきは、驚きに身を固めた。
　あまりに眩しい炎―――さつきからすれば、不快以外の何物でもない。

　咄嗟に山門に目を走らせる。
　そこには他とはまるで比較にならないほど、澄み切った殺意が。
　感じるだけで切れそうな鋭利なそれ。これ以上はとても近付けたものではない。
　山門からの脱出を諦めたさついは、今度は裏から湖へと目指す経路を考えた。
　獣道だが、参道を目指すよりかはよほどに安全だ。

　しかし、そのためにはまず、この炎をどうにかしなければならない。

「わたしは―――」
　上目遣いに炎を睨み、さつきは口を開いた。
「わたしは、生きるためにしようがなく吸っているんだよ。だから、誰にも責められる
覚えはない。放っておいて！」

　地面の石砂利、掴み取り炎に向けて投げ付けた。無駄な抵抗―――に見えるが、さつきの
膂力で放たれたそれは、一粒一粒が肉を抉り骨を穿つには十分な勢いだ。
　石飛礫の散弾と言えよう。

　その隙に、またもさつきは背を向けて駆け出した。

【さつき　境内山門付近→境内の外壁沿いに疾走（本堂を迂回）】

396 名前：長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg ：2005/08/01(月) 21:58:23

>>385　佐々木小次郎

　参道を登る足を止め、ひと息ついて長谷川虎蔵は上を見た。
　十秒ほど首を傾げ、ううむと唸り、首を戻してまた登り出す。

　長谷川虎蔵は怪しい男である。
　中身は付き合ってみなければ判らないが、取り合えず外見は胡乱だ。
　夏場にダブルの黒スーツ、同色の長いコートに帽子という出で立ちは、時代錯誤ではないに
しろ不審者呼ばわりされてもおかしくない。右目の眼帯は、これはもう駄目押しであろう。
　更に挙動まで不審な事に、この男はこんな時分、菩提寺でもない山寺を訪ねる用事などさし
てないのである。煙草を一服と、ついでに勝手に屋根へ上がってひと眠りできれば云う事はな
いと、本当にそれだけ。


　暫く前に一仕事終え、懐中の暖かさに任せて花街で流連（いつづけ）した虎蔵だったが、何に
せよ飽きは来るものだ。
　続けて味わえる女はそうはおらん、等と嘯いて（その実、飽きが引けばまた柳暗花明の灯火
周辺をふらふらするのだろうけれど）、精進を落とそうじゃないかと柄にもない事を考えた。
　白粉臭い女ッ気から離れられれば何処でも良かった為、足の向いた先は此処である。
　つまり山寺だった。


「……つーか何だこりゃ。女ッ気は兎も角、明らかにドンドンパチパチじゃねーか」

　ぶつぶつ呟きつつ、それでも虎蔵は石段を踏み踏み上へ向かっている。
　半ばまで登ったので、今更下るのも面倒くさくなった。
　それだけなのであった。

　すぐに重厚な門が見えてきた。
　その前に立つ朧な人影も。


【長谷川虎蔵　→山門前へ】

397 名前：東方仗助：2005/08/01(月) 21:58:27

>>393　レイオット

「いや、確かに「ヘタ」だとは思うけど――」遠慮なく言って、仗助は頭を掻いた。「アンタ、フツーっ
ぽいし悪ィ人じゃないっぽいしさ」

　物事を重く捉え過ぎれば行動が鈍る。
　思考は単純である方がその強度が高い――嘗て、彼の年上の友人はそんな事を言った。成る
程と納得もしなかったが――仗助は、単純である事が間違っているとも思わない。

「つーかよ……アンタ、ちょっとマズそうだから下がってろ」

　硬く言う。
　そして――ポケットに手を突っ込んだまま仁王立ち、暗天を見上げる。
　月が瞬いている。
　瞬く月より毒々しく、夜に太陽が咲いていた。

>>391　オヤジ
「マジでサッパリ全然ワカんねーがよ……取り敢えずオッサン、あんた――言ってるコトは正直ま
るで解んねーが……ジョシコーセー相手にちょっとカッコ悪ィぜ……」

　ポケットから右手を出す。
　夜気が揺れた。
　大気が震えた。

「その「スタンド」よォ〜〜〜！　アンタ、何やってんのか教えてくれるとウレシーんだけどなァ！」

　ズン――と、存在が振動した。
　「スタンド」！
　それは「魂」のヴィジョン！
　力ある幻影！
　仗助の傍に立つ、「力ある分身」！
　”人型”と呼ぶべきそれ――即ち！
　ロボットを模したような逞しいボディーと、顔の大半を隠すマスクを被ったような姿！　身体の各
部をハートで飾った奇怪な『人形』こそ、仗助の「スタンド」！
　名を――

「「クレイジー・ダイヤモンド」……見えてんなら、「スタンド使い」と見なすぜ……」
　

398 名前：ＫＵＳＡＮＡＧＩ ◆k2zTougaRE ：2005/08/01(月) 21:59:34

>>387　『銀刀』

　駆けて行く最中に見たアイツの得物。
　日本刀を操るとはねェ。あんな奇抜な服装の割に武士道遵守か。
　ったく、訳のわからねえ情報だった割に、こんなにも当たりだ何てなァ。
　思いもよらず笑みが出る。

　暑くて熱い夜だよな、本当によォ。
　こんな場所に居合わせた好機に感謝を、ってか。
　柄でもねえ言葉が脳裏に浮かぶほど、この状況には感謝してる。

　そんな事考えてるから、こうなる訳だ。

　一撃は柄で受けられ、たいした防御も出来ずに腹に一撃。
　ったく、コイツ、相当の腕持ってるじゃねえか…

　「ク…ハハッ…生まれてこの方修行なんてしてねえよッ！」

　痛みを堪えて、もう一発。
　次ぎは焔を纏わせて、無駄な事考えずに殴りに行く。
　顔なんて狙えやしねえ。身を起こす力がねえから。

　ボディが甘いぜ、って誰の台詞だったかな。
　覚えちゃいねえが、がら空きに見えた腹に一発ぶち込め。
　これで届かなきゃ仕方がねえさ。

　奇策でも考えるか、届かなかったらよ。
　

399 名前：ポップコーン屋のおっちゃん・村山哲司（53歳・バツイチ）：2005/08/01(月) 22:04:56

「ヘッ……もう最近のガキどもは辛気臭い寺になんか来てくれねぇってか……」

かつて、祭りがあった。
それは香りすら記憶に残っているような、極々最近のものだ。
しかし今では、その面影は微塵も無い。

このまま祭りも、自分も時代の変遷と共に忘れ去られ消えてゆくのだろう――

漠然とした思いを抱き、彼は自らの店を畳む準備を始めていた。

――だがッ！

「音……？　いや違う！　こいつぁ声だ！　人の声だッ！」

店の内側からでは分からないが、確かに人の声がする！
それも一人や二人ではない、大勢の！

「へ、へへへ……まだ店を仕舞う訳にゃいかないようだぜ相棒ッ！！」

傍らのポップコーン機に素材と調味料を絶妙の配合で投入。
間違いなく、このポップコーンはテキ屋人生二十五年の中でも最高の出来だと言える！

「俺のテキ屋魂が！　これを見逃すわきゃあねぇ！！」

　そして彼は躍り出る。

　客の前へ？

　いいや――

「さぁ、いらっしゃいいらっしゃいッ！　今日は特別五割――ええい、八割引で大奉仕だッ！
　今このポップコーンを食わない奴は後悔するぜッ！」

　彼が出る場所は、何時だって戦場だ！

（場所：戦場、もとい境内）

400 名前：木島閑音：2005/08/01(月) 22:05:26

参道に着いて、閑音が見上げた参道の階段の先には―――
あろう事か、今夜の対象（ターゲット)の姿があった。（>>362）
ただし、対象だけではない。金髪蒼眼の、幼い子供の姿をした吸血鬼と、婦人警官のような制服を着た
外見だけなら自分より僅かに年上の女性が、『銀刀』の傍にはいる。
子供の方は、『銀刀』が「聖域」から連れ出した吸血鬼―――詳細は不明だが、何か特別な力を持っているかもしれない。
『銀刀』を食らった後のデザートにはちょうど良い――そんなことを思った。
そして女の方は、現在『銀刀』が護衛している『カンパニー』の調停員（コンプロマイザー)だろう。
こちらは閑音にとっては然程興味のない対象だ。
そんなことを考えながら、彼らアンバランスな三人組が階段を登って行くのを見送って―――彼女は、静かにその後を追った。

（場所移動　参道→境内）



元々見た目は幼さの残る少女でありながら、食鬼人（イーター)として吸血鬼並みの身体能力を持つ
彼女にとって、『銀刀』の後を尾けるのは容易だった。唯でさえ彼の傍には足手纏いとも言える普通の人間がいる。


そして辿り着いた境内には―――既に数々の異能力者や化物が集結しつつあった。
なるだけ乱戦は避け、吸血鬼のみを狙いたい閑音は、それら異能力者には眼もくれず、境内の入り口付近を走り抜け―――

見つけた。『銀刀』。

しかし、先ほどまで共に居た筈の子供吸血鬼と調停員（コンプロマイザー)の女は姿を消し、
代わりに『銀刀』は、目付きの悪い学ラン姿の男と格闘戦を演じている。（>>382 >>394）
男のほうはデータに無かったが―――彼女にとって邪魔な存在には変わりはない。


「……何してんのよ、そこの学ラン」

そんな呻きの様な言葉を発しながら、閑音は二人の戦闘の横合いから飛び出した。

「『銀刀』―――望月ジローは私の今夜のメインディッシュ。あんたはお呼びじゃないわ」

401 名前：ハセ：2005/08/01(月) 22:06:23

>>386笑石

　ハセは、風景に似合わぬ伊達なスーツ姿のまま、ぶらぶらと周囲を流していた。
　どうにも腑に落ちない点がある。人の気配が多すぎるのだ。寺の住み込みの坊主、と
考えるには、それらが放つ気配はあまりに剣呑過ぎた。
　そして、はるか山頂へと至る道の途中にそびえる柳洞寺。ハセの居場所からはその
様子など窺いようもないが、先程から激しい物音と、瞬く閃光が幾数回。

　いったい、何が起きている。
　カジは無事なのか？

　気持ちが逸った。今すぐにでも助けに駆け付けたかった。
　だが、自分はあくまでバックアップ。
　いままここで、柳洞寺に乗り込むわけにはいかない。

　そこに、人影（>>386 笑石）。

　迷わず石段を昇り柳洞寺を目指そうとしている。
　堅気の人間では無いのは、その様子からも明らかだ。

　―――これ以上の面倒ごとは、困る。

　距離はまだ１０メートル以上もある。
　向こうはハセの隠した気配にはまだ気付いていない。
　ならば。

　閃光が三条、迸る。抜き手を見せぬ早業。三本の銃剣が、影の背中を求めて駆け抜けた。

【ハセ　石段最下段】

402 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/08/01(月) 22:09:35

>>397

「初対面の印象ほど当てにならない物もないけどな――」

　こちらを悪い人じゃない、なんて言い切った彼に、思わず苦笑をこぼす。
　法に照らし合わせれば、身分詐称、武器密輸、必要資格未取得――控えめに見てもブタ箱
行きが確定と来ている。
　世間一般からすれば、そんな奴は問答無用で”悪い人”と相場が決まっているものだ。

　だが、逆に。
　悪い人ではない――そんな風に言い放てる彼こそが、いわゆる良い人間なのだろう。
　に引くではない笑いがこぼれそうになる……表には出さないが。

　其所に。
　表情をこわばらせて彼が対峙したその向こう側には、全身を文字通り燃え上がらせている、
一人の男の姿があった。

　腰元から銃を引き抜き、改めてその全身が燃え上がる男に突きつける。

「……まあ、こんな物ぶら下げた奴が”悪い人じゃない”かどうかは知らんが。
　こんな化け物任せっきりにして逃げ出すほど、腰は引けてないつもりだが？」

　リーゼントの少年に向けて、囁いた。

403 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/08/01(月) 22:10:58

>>402
（場所：山門前・境内・東方とともに火炎の男に向き直る）

404 名前：カジ：2005/08/01(月) 22:14:41

>>392　エルムドア

「うおおおおおおおお！」

　カジの眉間から血が滲み出る。先の頭突きは、自分にも余計な衝撃を与えていた。
　踊る視界。ぶるり、と頭を振って意識を覚ます。
　とにかく、間合いは開けた。拳さえ使えればこっちのものだ―――とカジは考える。

　が。
　見るに、いつの間にか銀髪は物騒な段平を抜いているではないか。
　実に鮮やかな動き。

「てめぇ、抜きやがったな？　こうなったもう引き返せねぇぞ、こらぁ！！」

　まどろっこしく間合いを詰めてくる銀髪。
　こっちから仕掛けた。
　地を這うような跳躍から、全身のバネを利用して回し蹴りを見舞う。

【裏手の池】

405 名前：アサシン：佐々木小次郎：2005/08/01(月) 22:15:10

>>385 >>396　長谷川虎蔵

　　最初はただ刀を振っているだけだった。
　　読み書きも満足に出来ぬ男にはそれしか出来なかったのだ。

　　何人斬ったかは分からない、数えても居ない。
　　だが、ある時、男はふと思ったのだ。

　　自分の剣は人は斬れる。
　　だが、風は斬れぬ、水は斬れぬ、空は斬れぬ。
　　何故だろうか。

　　人は男のその疑問を戯言と笑った。
　　しかし、男のその疑問は戯言でも何でもなく本当に純粋で真っ直ぐなものであったのだ。


　一歩。

　「最初の来客が来たか。

　　………ふむ、中々楽しめそうではあるな。
　　私はここの門番でな、此処を通りたくば力づくで通れ。
　　そのまま尻尾を巻いて帰るのであれば止めはせぬが」

　更に一歩。
　アサシンは石段を下り、長刀の切っ先を虎蔵へと突きつける。


　………長刀が月光を受け、鈍く光った。

406 名前：エミリオ・ミハイロフ ◆EMILIozylo ：2005/08/01(月) 22:16:23

　僕のいる所から数十メートル離れた辺りで、すでにパーティーは始まっていた。

　……パーティーに夢中になっているせいか、気配を殺さずに近付いて行ってる僕には気付きもしない。きっと、今声を掛けたって、ダンスの最中のこいつらは僕に見向きもしないだろう。

「だったら……こっちに目を向けさせれば、良いんだよね……」
　暗闇の中で、じっと手を見つめる。黒一色の世界に、光が宿る。光は形を変え、一本の矢になった。
光の矢を右手で握り、更に光を集める。一本だった矢が僕の手の中で十数本に増えた。

「……こうやって……さ！」
　左手に顕現させた光の弓に矢を全て番え、乱戦の只中へ、放つ。狙いなんかはつけてない。こっちに気付けば良い。


【境内（本堂側）にたむろしてる連中に光の矢】

407 名前：Kapeltetha ferrnandess ◆LOSJACkEtA ：2005/08/01(月) 22:20:27

>>391（火渡）>>397ジョウスケ>>402レイオット

　対峙する三者を、カペルテータ・フェルナンデスは黙して見つめていた。
　眼前で燃え上がる炎のごとく、真紅の双眸は、ひたすらに静謐なまま――

　仮に真正面からそのまなざしを受け止めたとしても、其所に空虚以外のなにかを見出すことは
恐らくは無いだろう。

　だがそれでも――今この場において、カペルテータの眼差しは、たったひとつの意志を以て
レイオット・スタインバーグを注視する。

　しかし、”敵”と対峙した彼に、彼女のその僅かな自己主張は届くはずもなく。
　やがて、カペルテータは意を決したように、その一歩を踏み出した――そう。

　この混沌の場において、自らの意志を余すところ無く伝える、彼の物の元へ。
　それは――

　>>399

「ポップコーン、ひとつください」

　何処までも空虚な声音で、カペルテータは500円硬貨を差し出し、告げていた。

（山門前・境内。ポップコーンをゲットした！）

408 名前：東方仗助：2005/08/01(月) 22:22:01

>>402

　横目で青年を眺めて、仗助は口の端を歪めた。

「「グレート」……お兄さん、ちょっぴりカッコイイんじゃあねーかよ……」

　銃器の不法所持など、「スタンド」の危険性に比べれば微々たる物でしかない。
　尤もそれが見えてすらいない青年には仗助の行動の意味も取れまいが、それを言うなら――
言うなら、待て。
　待てよ、オイ……？
（バケモノ？　バケモノっつったのか、今？　「スタンド」は目には見えない……つまり、上空のあ
のオヤジの「スタンド」が「炎」だとして……フツーのヤツにはどう見え……そりゃあよぉ……「炎」
が見えないんだから「浮いてるオヤジ」ってトコだろうが、それが……「バケモノ」？）
　上空を睨んだまま、青年に硬い声で告げた。

「……アンタ、あのオヤジが「何に見える」って？」

（山門付近）

409 名前：戦士長・火渡(M)：2005/08/01(月) 22:22:35

>>395　弓塚さつき
灼々と輝く紅蓮に立ち、答えを待つ。
答えがNOならば、逃げ道に一つも作ってやり一般人の犠牲者からマイナス１だ。
答えがYesであったなら―――

ホムンクルスであろうとなかろうと、不条理の存在は火渡の持つ不条理でねじ伏せる。
いや、ねじ伏せてきた。7年前の失敗から、ずっとだ。

＞「わたしは―――」
＞「わたしは、生きるためにしようがなく吸っているんだよ。だから、誰にも責められる
＞覚えはない。放っておいて！」

「―――ハッ、“生きるため”か……良い答えだ……。
つまりテメエは紛れも無く俺の獲物(エモノ)だッ！！」

待ち望んだ答えに歓び、火炎操作を開始しようとした刹那―――
彼女が投げ放った石砂利が、火渡の身を穿つ。常人ならば間違い無く致死の一撃だろう。

が。
「――――やるじゃぁ、ねえか」
火渡は身じろぎさえせず、全てを受けとめていた。
火炎同化―――文字通り、肉体を火炎と化す特性。
焼け石に水の例えをなぞるかのような抵抗に嗜虐的な笑みを浮かべる。

「そこいらのホムンクルスじゃねェ―――ってことは食人鬼か吸血鬼の類か」
体に食い込んだ石砂利は融解を始めている。

>>397　東方仗助
＞「マジでサッパリ全然ワカんねーがよ……取り敢えずオッサン、あんた――言ってるコトは正直ま
＞るで解んねーが……ジョシコーセー相手にちょっとカッコ悪ィぜ……」
「あぁ？！　事情が判らねェならすっこんでろセーガクが！ さもないとそのリーゼント捻り上げるぞ！？」
唐突な横槍に、燃え立つ闘争心に水を差された格好になる。
売り言葉に買い言葉。オッサンと呼ばれる歳でもない。

＞「その「スタンド」よォ〜〜〜！　アンタ、何やってんのか教えてくれるとウレシーんだけどなァ！」
「スタンド……？ オイ、テメエなんか拙いモノでもやってやがるのか…！？」

＞「クレイジー・ダイヤモンド」……見えてんなら、「スタンド使い」と見なすぜ……」
見えるはずはない。
あくまでも火渡は錬金の戦士だ。
スピリチュアルな力を根源とする能力で戦うという共通点は有ったとしても、交わる事のない力なのだから。

「……クソッ、ガキのたわ言に何時までも付き合ってる義理はねぇ」
目くらまし代わりに炎を地面に叩きつけ、先ほどの女子高生を追いかける。

そう遠くまで行ける筈もない、そう踏んだからだ。

【火渡　境内山門側から外壁沿いに向かう】

410 名前：源義経＆武蔵坊弁慶（Ｍ）：2005/08/01(月) 22:29:59

>>387　望月じろう

「ほう、我を知っておるか。血の妖（あやかし）よ。
　如何にも、我は源九郎義経。源氏の武者よ」

人の世、即ち物質界に最も近く遠き並行世界。
それが“この”義経の居た魍魎界である。
互いの世界は近きが故に、各々の『源義経』が存在する。

「何故？決まっておる、この戦を愉しむためによ。
　敵を無残に切り伏せ屍を野に晒す……。
　血飛沫を浴び、骸を積み上げるのは正に至上の悦楽よ。
　ヒョッヒョッヒョ…」

この妖の血は、如何ほどの輝きを見せるのか。
血を啜る妖の血は黒いと聞く。
黒の真珠があるという。正しくそれのような美しさだろうか。
どのような苦悶の表情を見せるのか。
――――何と太刀を潜らせたい欲望に駆られる相手よ。
そう、愉悦を狂気に駆られた眼差しと笑みで表しながら。

>>380　弓塚さつき
「むう？…逃げおったか。
　やれやれ、女子とは全く気変わりの激しきものよの」

呆れ気味に嘆息するのは、女子を刻む機を逸したがゆえか。
彼のいた時代、かの巴御前を除き女子が戦に赴くことはない。
ゆえに女子を切って捨てる、というのは極めて貴重な体験なのである。
その“機”を逃した。
義経にとって、この落胆は意外にも大きい。

「…まあ、よいわ。
　代わりに残ったぬしら、纏めて刀の錆にしてくれようぞ」

ひょ、ひょ、ひょ、と口を裂いての高笑いをあげ―――

>>406　えみりお・みはいろふ
その瞬間、後ろへ軽く跳躍。
丁度弁慶の肩の位置、片足で枝に留まる鳥の如く足場を移す。

「牛若様！」
「案ずるな、鬼若。掠めてもおらぬ。
　……しかし、小癪な“鳥”が現われたものよな」

天より義経を襲ったのは、一条の光の矢。
空を仰げば彼等を不遜にも見下ろす、白拍子のごとき美貌の男子（おのこ）。
さて。
みれば地上の者どもは新たな妖が参じ、動き、すでに一騎打ちの様相か。
いまだ乱戦の気配は濃いにしろ、ならば仕掛けるは少々無粋と義経達は判断した。
魔性となって久しい源氏なれどその程度の侍の誇りはあったのである。
―――それ以上に、あの翼を生やした白拍子。
彼奴にこの借りを返さねば、この鬼気収まるものではないか。
“彼奴等”の戦に関わるのは、それからでも良い。

「先ずは鳥を落とすか、鬼若」
「はっ…鷹狩でございますな？」
「妖が持っていた銀（しろがね）の太刀が気がかりな主には、悪いがな」
「お気になさいますな。機はまだ有り申せば…フフ、フヘへ」

何時の間に持っていたのか。
義経の両手には、左右合わせて八本の小柄が。
弁慶の巨大な左手には、黒光りする数個の鉄球がそれぞれ握られている。

次の刹那、吹くは轟風。
魔性の者ゆえの法外な膂力で、空の白拍子（>>406）へと放たれる小柄と鉄球の群れ。
正に風を切り、飛ぶ鳥を落とす勢いとはこの事か。
特に鉄球は投げる指の変化を受けてか、一つ一つが不規則に軌道を変え飛来する。
その隙間を埋めるように飛ぶのは鋭い小柄の刃だ。

だが、げに恐るべきは。
それらの投擲は全て、地を馳せながら繰り返されているという事。
これは回避と撹乱、そしてお誂えの戦場へ誘い込む為。
仕留めれば良し、無理ならば追い立てるという二段構えの戦い方である。

源九郎義経。
魔性に堕ちれど、その戦の才は健在であった。　

411 名前：エリ・カサモト ◆SV001MsVcs ：2005/08/01(月) 22:32:36

　境内の中から聞き慣れた音がする。
　銃声こそないものの、それは紛れも無い白兵戦の音。
　どうやら中は本当に戦場の相を呈しているらしい。
「正面から行くことはないわね」
　石段を左手から飛び降り、進む道を山林に変える。
　石段から少しずつ外れて山を登り、寺の外壁に到達。
　あとは適当な所から中に入り込むのみ。
「よっ、と」
　境内に進入成功。
「さて、しばらく観察と行きますか」

（現在位置：境内山門側左手角）

412 名前：ポップコーン屋のおっちゃん・村山哲司（53歳・バツイチ）：2005/08/01(月) 22:32:49

>>406 >>407

「お嬢ちゃんみてぇなのに食われりゃこいつも本望だろうさ……そら、落とすなよ？」

　金を受け取り、ポップコーンを手渡す。
　たったそれだけの行為なのに何故か幸福感が満ち溢れる。

（これだ……！　俺が求めていた物は、これだっ――）

　そして生き甲斐を確認した瞬間。
　彼の胸を光が射抜いた。

　咄嗟の判断で身を捻り、ポップコーンに血が被らないように吐血。
　職人としての誇りが、作品を自ら汚す事を許さなかったのだ。

「へ、へへ……悪いな、これが最初で最期のポップコーンになっちまって……」

　微笑だけは崩すわけにはいかない。
　幸福を作り上げる事が彼の生き甲斐。彼の人生。
　それを壊す事など出来る筈が無い。

「だがな、俺が残したのは……テキ屋の魂だ！　人間の魂だ！」

　そして、命の炎を燃やし尽くした最高の笑顔を浮かべ――

「だから――ゆっくり味わって食うんだぜ、嬢ちゃん」

　戦士は、逝った。

（死亡）

413 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/08/01(月) 22:32:55

>>408（ジョウスケ）

「……”何に”？」

　視線は、その燃えさかるなにかに向けられたまま。
　しかし、その何処かとまどったような少年の声音に怪訝な物を感じつつ、改めてみたままを告げた。

「何に？　決まってんだろ――
　燃えながら空飛んでる変な野郎以外、彼処に何があるってんだ？」

　しかし、実際のところあんなモノにおそわれたら、文字通りひとたまりもない。
　いや、あんな異様な存在であっても何とかする方法はある。対処できる武器がある。

　だがそれは――ここには、無いのだ。

　だがその火炎の男は、不機嫌そうに――さらに言うなら、銃を携えた俺を完全に無視して――
少年に対し吐き捨てると、あの地にまみれた少女を追って何処へと消え去った。

「……さて少年。あのおっさんは何処ぞに突進していったみたいだが。
　どうするね？」

　いつの間にか>>407ポップコーンなどを抱えているカペルテータに視線を移しながら、そんな
ことを問いかけた。

　

414 名前：望月コタロウ＆葛城ミミコ ◆BBB.k09/yM ：2005/08/01(月) 22:33:31

>>380
今回ミミちゃんが交渉する相手―――弓塚サツキって女の子。
ぼくたちや他の人がごちゃごちゃ集まってきているので、怖がって逃げ出しちゃった。

さらに、ぼくたちの居た境内にも、どんどん怖い人たちが集まってきている。
なぜか聖域でお世話になったクロウとよく似た人も居たのが気になったけど――（>>379）

>>387
……こんな状況じゃ仕方ない、のかな？
兄者はしんがりになってぼくたちに先に行けという。
よぉし、ぼくが兄者の代わりにミミちゃんを守るんだ！

「コタロウ君、何やってんの！？　逃げられちゃうっ」
「わかったミミちゃん、ぼくが守るから！　行こう！」

兄者は強い、大丈夫！
ぼくは兄者を信じて、ミミちゃんと一緒に、サツキ――サッちんを追いかける！

そして、山門まで来たところに。

>>385
なんかすごくカッコいい、お侍さんが立っていた。
テレビの時代劇でもこんなカッコいい俳優さんは見たことない。
なんか兄者にも似てる気がする。

＞「宴は始まった様だな……では参ろうか。
＞　これより、此処は何人たりとも通しはせぬし、出しもせぬ」

……なんか言ってるようだけど、とにかくカッコいいので。

「ねえサムライのお兄さん、カッコいいねー。
　あの、もしよかったら、ぼくにサインを――」
「阿呆かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ！！」

後ろでミミちゃんにつかまれ、物凄い勢いで引き戻される。

「……あ、あの、門番さん……ですか？」
ぼくに一発きっついゲンコツを食らわしたミミちゃんは、ちょっと離れたところからお侍さんに声をかける。

「えっと、あの、ここに髪を二房に分けた女の子が――」

>>395
そこへ、大きく石がはじける。
じょしこーせーって感じの、あのお姉さん――サッちんだった。

「ミミちゃん、あっち！」
「あーもう、こんなややこしい時に！
　ごめんなさい門番さん、やっぱなんでもないですっ！！」

ミミちゃんをひょいと担ぎ上げると。
ぼくは小さくなるサッちんの背中を、必死に追いかけ始めた。

（山門→さつきを追って外壁沿いに追撃、本堂迂回中）

415 名前：東方仗助：2005/08/01(月) 22:34:26

>>409

「グレート……グレートに意味不明だぜ、こりゃ……「ブッ飛んだ」石の速度がフツーじゃねー上に、
それを追い掛けてったあのオヤジが「スタンド」使いがねーっつーのは、一体どういう了見だ……？」

　リーゼントを馬鹿にされたのは少々「ムカっ腹」が立ったが、「キレる」程でもない。
　舌打ち一つ、尋常でない速度で駆けて行った女子高生と、それを追って飛んで行った火達磨を、
（実にシュールな光景だ）見送る。頭を掻く。>>399に向き直る。

「……ポップコーン一つ。もうワケ解んねぇーつーの」

　実際、「やっていられな」かった。

（境内−ポップコーン）
　

416 名前：望月ジロー ◆BBB.k09/yM ：2005/08/01(月) 22:34:34

>>398 学ラン青年
私のカウンターで放った前蹴りは、見事クリーンヒット……するも。
色黒の青年はなんと、そのまま身を折るだけ（　、　、　、　、　、　、）で、その場に踏みとどまった。
手加減したとはいえ、吹き飛ばしてもおかしくはなかった筈なのですが――

その逡巡が、攻撃の隙を与えるという結果に。
全く業腹極まりない――私も未熟。

＞「ク…ハハッ…生まれてこの方修行なんてしてねえよッ！」
その身を折った低い体勢から、今度はボディブロー ――しかも拳に炎を纏わせて。
まずい！

「……ぐぅっ！」

とっさに力場思念で拳の軌道を逸らし、どてっ腹に受けるのは避けられたものの――
脇腹を掠めた拳の威力と炎が、私の腹に衝撃を走らせる。
炎も血を焼くという点において、吸血鬼の弱点。
ある意味ケインとゼルマンの戦い方の混合タイプ――嫌なものです。


……脇腹を焦がされた怒りで、眼がさらに血走り、牙が伸びる。

「やれやれ、このスーツも安物ではないのですけどね……
　いいでしょう、身体能力は認めますが……それにかまけるのがどれだけ愚かなものか、教育してやります」

まだ抜かれぬ『銀刀』を腰のベルトに差込み、私は拳を構える。
そこへ――

>>400
横合いから、さらに一人の女性が歩み出る。
・・・吸血鬼（ブラック・ブラッド）でもない妙な気配だが――

＞「『銀刀』―――望月ジローは私の今夜のメインディッシュ。あんたはお呼びじゃないわ」

「……事もあろうに私を名指しとは。
　香港で売った悪名はいい事もありますが、大抵面倒ばっかり呼ぶものですね」

一度はしまいこんだ銀刀の柄に手をかける。

「しかし事もあろうに『メインディッシュ』とは……舐められたものですね。
　こうした真夏の夜には吸血鬼に襲われる美女、というのが相場なのですが？」

油断なく、いつでも抜ける体勢で身構え――

>>406
そこへさらに、膨れ上がる妙な害意。
吸血鬼の人間など問題にならない感覚が、それを肌で位置まで感じ取る。

光の矢が、無差別に振りまかれ―――

「―――舐めるな！」

怒りのあまり吹き出した、物理的圧力すら伴う気配の霧――
眩 霧（リークブラッド）が爆風と化して、私への光の矢を吹き払う。

気配で居場所は分かっています。
どこの馬の骨かは知りませんが――

光の矢の射手めがけて、力場思念――念を衝撃波の塊と変え、返礼に叩き込む。

立会いへの横槍の無礼、思い知りなさいっ！

417 名前：望月ジロー ◆BBB.k09/yM ：2005/08/01(月) 22:35:51

（>>416補足。　場所：境内・手水舎―本堂間）

418 名前：長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg ：2005/08/01(月) 22:35:59

>>405　vs佐々木小次郎

　あっちこっちから叫喚の響きが聞こえて来る中――そして何故かポップコーンの香ばしい匂い
が漂う中（>>399）、アナクロやのうと長谷川虎蔵は心中で独語した。
　人の事は云えたものではない。少なくとも虎蔵とて、時代に沿っていないのは確かである。

「いや、いきなり光り物出されても困るんだが……取り合えず、だ」

　虎蔵はへっへっへと笑う。『じゃあ僕尻尾を巻きます』とは流石に云い出しかねた。
　異様な侍姿の青年、異様な長刀を前にして、緩い笑いだ。
　その長刀だけでなく、月は別の場所でも淡い光を反射させた。虎蔵の左右の手で。
　スーツの両袖を滑り降り、姿を現したのは二本の刀である。
　月の光が垣間見せたお巫山戯のようだが、これは歴とした虎蔵の十八番、暗器の技であった。

　ゆらり、と二刀流が上がる。
　へらへら笑いはそのまま、声音だけは酷く冷たい温度を発し始めた。

「――お前、舐めてんのか？」


【長谷川虎蔵　山門前】

419 名前：メスドラーマ・エルムドア：2005/08/01(月) 22:36:44

>>404（カジ）
衝撃に逆らわず数m吹き飛んだ私と違い、彼はその場で踏みとどまったらしい。
先ほどの頭突きの余韻が彼の体を駆け巡っているらしく、必死に頭を振り回し意識の回復に努めている。

「なるほど…人ならざる身だと、あそこまでの無茶が出来るのだな」

恐らくは同属であろう奴の姿は、”人間”であることの癖が抜けぬ私にとってはいい教材だ。
だが、惜しむらくは、

＞「てめぇ、抜きやがったな？　こうなったもう引き返せねぇぞ、こらぁ！！」
肉体の優秀さに反比例する頭脳の無能さだ。
じりじりと間合いを詰める私に苛立ったのであろう、
その肉体のポテンシャルを引出し、鋭い回し蹴りを私に見舞ってくる。

「速い…な。剣を振り回しては追いつけないな」
人間の能力を遥かに上回るそれは確かに速く、この正宗での残撃を繰り出す暇は無い

「…が、仕掛けるタイミングがあまりにも速すぎる。故にこれならば間に合う」
正宗を瞬時に鞘に収めると、懐から一振りの刀を握り締めると、奴の前に突き出し

「三界六道貫く秘剣、仏の道許さずも 共に地獄の火とならん！ 菊一文字！」
刀魂放気、刀にこもる魂を解放し衝撃とするこの一撃を放つ。
ゴォォォォォォォゥッ
一文字の波動が、飲み込まんとサジへと襲い掛かる。
（裏の池の辺で戦闘中）

420 名前：笑石 ◆EMISHIvcMk ：2005/08/01(月) 22:36:58

　石段を駆け上る途中、背中に衝撃。
「……？」
　振り返れば、刃先の掛けた三本の刃物が、乾いた音を立てて石段に落ちた。
　背後からの奇襲――――考えるまでもなく理解し、襲撃の方角へと『感知』を発動させる。
　薄暗い夜闇。常人なら視界など効きはしまい。だが、笑石の持つ『感知』の力は、微弱ながらも
確かに、そこに存在する者の存在を示していた。
　そういえば、と思い出す。京の都に出没していた益荒(ましら)も奇襲や策略などの狡猾な手段を得意と
していた。尤も、奴の得物は主に弓矢であったのだが――――今となってはそんなことは関係
ない。
　問題は、奇襲の主が自らに害意を持つ者であり――――『感知』が告げるその気配は、紛うこと
なき化物の物であるということだ。
　巨体が、跳躍する。
　石段の始まり、そこに立つ白のスーツを纏った青年へ向けて。どこからともなく抜き放った大剣
を上段に構え、落下の速度、岩石の重量を以て青年へと振り下ろす。

(石段中部から下部へ跳躍)

421 名前：源義経＆武蔵坊弁慶（Ｍ）：2005/08/01(月) 22:39:07

>>410
（場所：境内から移動）

422 名前：ＫＵＳＡＮＡＧＩ ◆k2zTougaRE ：2005/08/01(月) 22:43:46

　アアッ、クソッ。イテェ。内臓までイッてるんじゃねえだろうなァ。
　踏み込みから見て全力じゃねえのがまた、ムカツク。
　ったく、楽しい夜とは名ばかりの虐殺にならねえようにしねえとなァ。

>>400　木島

　そんな事を思えば横合いからの声。

　「『銀刀』―――望月ジローは私の今夜のメインディッシュ。あんたはお呼びじゃないわ」 

　「五月蝿ェ、女…犯して喰うぞ」

　痛くて苛突いてんだ、少し黙れ。
　焔と遊んでろ。

　腕を振って焔を走らす。
　避けても、受けても、時間くらいは稼げるさ。

>>406　エミリオ

　ったく、次から次へと…ウゼェ。
　しかも眩しい。漸く太陽がなくなったんだ。
　この薄暗さの中を心地良いと思いやがれ。

　それにしても出鱈目な軌道。出鱈目な数。
　それも当たらねえなら動かぬまでだ。
　どうせ構って欲しいんだろ？ 今はそれどころじゃねえってんだ。
　目の前の赤い奴、コイツと殺り合いたいんでなァ！

>>416　銀刀

　「やれやれ、このスーツも安物ではないのですけどね……
　いいでしょう、身体能力は認めますが……それにかまけるのがどれだけ愚かなものか、教育してやります」

　「説教と余所見は…後にしてくれやッ！」

　このまたと無い絶好の機会、試してみるのも悪かねェ。
　もう一撃、甘く見られてる内が勝負。
　大技一発打って、そいつを影に一端間合いを離さねえと死んじまう。
　それだけの力はコイツにゃある筈だ。

　右手に焔を集め、凝縮。
　いつも通りスームズに、とは痛みの所為でいかねえが、それでも最速。
　アイツの気が逸れてる内に、打つ。

　「焔に…還りやがれッ！」

　大蛇薙ぎ、形だけの焔の集まりだが、殺傷能力はある。
　それに如何にもコイツは炎が嫌いらしい。
　なら、最適だよなァ？

　喰らってくれれば恩の字だ。
　外れても仕切りなおしに持ってけりゃあ良いんだけどなァ。
　そこを見逃してくれるのかは、神のみぞ知る所、か。
　

423 名前：Kapeltetha ferrnandess ◆LOSJACkEtA ：2005/08/01(月) 22:44:35

>>412

　崩れていく男の姿を目にしても、カペルテータの表情が揺らぐことは無かった。
　そのあり方を見つめ続ける眼差しは、まるで凍り付いた湖面のようで。

　なもなく骸とかしていく男を前にしても、その感情にはさざ波ひとつ起こらない。
　流れていく、己の瞳と同じ色の液体をただじっと見つめて――

　カペルテータは、境内の内側へと視線を移した。
　死は、揺るがない。
　何人たりとも逃れるすべはない。
　故に、彼女がそれを悲しむことはない――

　夏の夜。
　カペルテータは、一粒。
　ポップコーンを、男の遺作を、口に放り込んだ。

　>>415

　そして、自分と同じく、ポップコーンを求める成年に視線を向ける。
　彼女は、もう一粒ポップコーンを口に放り込んで――

　東方仗助に向けて、山盛りのポップコーンの器を差し出した。

「どうぞ」

　男の遺作は――なんの変哲もない、ただのポップコーンである。

424 名前：sage：sage

sage

425 名前：東方仗助：2005/08/01(月) 22:49:30

>>423

　ポップコーンの器を差し出された。
　屈む。
　自分のそれとを交互に一瞥して、一つまみ受け取ると、一つまみ差し出す。
　その行為自体に意味など皆無だが、ハデな状況には並べて意味などないと知れた。
　ただの乱稚気騒ぎなのだ。
　パーティー同然だ。
　首を鳴らし、状況を整理する。
　こう結論できればラクだろう。
　「この現象自体がスタンド攻撃だ」――なるほど、解り易い。

　寺を眺めて、さて、と青年を振り返る。

「……ンじゃ、オレは寺に用があるから行くっスけど……どーします？　ダイジョーブっ
スか？　ここに突っ立ってても」

（境内→寺へ：現在は境内）
　

426 名前：アサシン：佐々木小次郎：2005/08/01(月) 22:53:49

>>385 >>396　長谷川虎蔵

　先ず、花を男は斬ろうとした。

　宙をひらりと舞う桜の花弁相手に何度も男は剣を振った。
　だが、これが中々上手く行かない。
　生半可な速度では桜は剣風に乗ってひらりとかわしてしまう。

　それでも、男は愚直に剣を振り続けた。
　不可能ならばそれでも良い、だが、やりもせずに不可能というのは可笑しかろう。
　男はそう思っていたのだ。

　季節は三度巡った。
　春には桜相手に剣を振り、夏には雨相手に剣を振り、秋には紅葉相手に剣を振る。
　何百、何千、何万回、何十万………どれだけ剣を振ったか、分からない。

　――――――そうして気づくと、

　桜も雨も紅葉も疾風となった男の剣には容易く斬られる様になっていた。

『――お前、舐めてんのか？』

「は、気分を害したか。許せ、私の役目上、此処を通す訳にはいかぬのでな」

　くつくつと笑い、柳に風と感じでアサシンは虎蔵の冷風を受け流す。

「だが、引き返すつもりも無い様だな。何より、その二刀が雄弁に語っている」

　目の前の男はどれ程の者か。
　願わくば、強者であらん事を………

　一歩退き、アサシンは透き通る様な声で告げた。

「我が名はアサシンのサーヴァント、佐々木小次郎」

　成程、名乗るというのは存外に気持ちの良いものだなとアサシンは思いつつ……一拍。

　しんと周囲が静まり、そして更に一言。

「―――――――いざ、参る」

　銀光が跳ねる。
　狙いは虎蔵の首、初手から必殺である。

　【佐々木小次郎、長谷川虎蔵　場所：山門前】

427 名前：望月ジロー ◆BBB.k09/yM ：2005/08/01(月) 23:02:24

先ほど横槍ならぬ横矢を入れてきた不届き者（>>406）に、力場思念で鉄拳制裁。

>>422
眼は前の二人に向けたままなのだが――
一瞬でも力場思念発動で注意力をもって行かれる、その隙を衝かれた。

色黒の学ラン男――『留年男』と心中で命名――が大きく手を振りかぶり、私に振り下ろす。
そして生まれる、大きな威力と勢いを備えた、爆炎の帯。
さながら炎の剣と評してもいいその一撃を――

「シャァァァァァァァァッ！」

ちょうどそのとき取っていた構え――居合いで真っ向から迎撃する。
無論炎に対抗するために、力場思念を一瞬でありったけ絡みつかせて。

一閃で炎が、ショットガンで燃える建材を吹き飛ばしたかのように吹き飛ぶ。
が……

「……流石に、ただでは済ませてくれませんかっ。おのれっ」

切り裂いた炎の余波も、置き土産として私の左肩を焼いた。
再生能力で少しずつ直ってはいるのですが――やはり痛いものは痛い。

視界を元に戻せば、あの留年男は炎を利用して大きく間合いを開けたようだ。
こちらも積極的にやりあう積もりはない、早いうちにミミコさん達とも合流したい。
あとは――


こっち（>>400）のお嬢さんが、逃がしてくれればの話ですが。
火傷の引きつる痛みを噛み殺しつつ――銀刀を正眼に構え、
油断なく八方からの気配を探る。

明鏡止水というわけではないが――― 一意専心、されど其れは円なる一として。

428 名前：カジ：2005/08/01(月) 23:02:28

>>419　エルムドア

「ぐぅ―――ッ！」
　全身に叩き付けられた衝撃。
　まるでダンプに突っ込まれたのかと、錯覚させるほどに凄まじい。

　肋骨の悉くが砕け、肩の肉が裂けた。回し蹴りの姿勢のまま、放射線を描いて十数メートル
の距離を空で舞う。そして無様に墜落。

「く、そ、がぁ……！」

　口元から溢れ出す喀血を気にもせず、カジはよろよろと立ち上がる。
　幸いなことに、心臓へのダメージはない。暫くすれば砕けた骨や裂けた肌は再生する。
　だから。

「分かってんだろ……俺はまだやれる、やれるぜぇ……？　てめぇのその気障ったらしい
銀髪むしってやるからよ……覚悟しとけやぁ！」

　懲りずに正面から殴りかかる。カジの喧嘩はこれだけだ。今までもこれで勝ち続けて来た。
これからだってそれに違いはない―――そう、彼は信じる。
　だが、彼とて学習はする。
　もう素手で突っ込むなどと言う愚かな真似はしない。拳に煌めく真鍮の輝き。

「オラァ！　"メリケンサック"だ！　てめぇ、これで死んだぜぇぇーー！！」


【裏手の池】

429 名前：木島閑音：2005/08/01(月) 23:04:22

>>416

「しかし事もあろうに『メインディッシュ』とは……舐められたものですね。
　こうした真夏の夜には吸血鬼に襲われる美女、というのが相場なのですが？」

『銀刀』―――ジローが溜息混じりに発した言葉に、閑音は不敵な微笑と、嘲りの言葉を返す。

「―――そういうか弱いヒロインっての、今時流行らないわよ。時代遅れ。
今この時、狩るのはわたし、、、、、、、、狩られるのはあなた、、、、、、、、、。
分かるかしら？　―――『銀刀』

そう言って、彼女が戦闘態勢を整え、機先を制す隙を伺い始めた―――その時だった。



>>406 >>422

機先を制す機会が、やって来た、、、、、。

学ラン男から発せられた焔。
彼女の視線の向こう側にいた少年から放たれた、光の矢。
両者は偶然にも、ほぼ同時のタイミングだった。

戦闘開始に備え感覚を研ぎ澄ませていた閑音は、そのどちらにも素早く反応する。
まず最初から狙いをつけられていない光の矢は、避ける必要が無い。そのまま彼女の脇に着弾し、爆発を起こす。
その爆発の勢いに押されるようにして、彼女は思い切り大地を蹴った。
焔を放った学ラン男には一瞥すらくれず、その足先はジローへと向かう。
その突貫が、直接焔の斜線から逃れる動作を兼ねていた。

二十メートルとない距離を全力で駆け抜けながら、閑音は懐から二本の食器を取り出す。
左手にフォーク、右手にナイフ。
フォークの方には特別な細工は為されていないが―――ナイフのほうは、唯のステンレスとは違う
鈍い輝きを放っている。……そのナイフは、銀製だった。

同時に閑音は左手を振り、フォークを投げる。
これは続けてジローに大技を繰り出そうとしている学ラン男への牽制。
そして本命は、右手の―――

「この武器はあなたにとっては痛いわよ―――巧く避けてみれば？」

ナイフを、突進の勢いそのままに、ジローに向けて突き出した。

430 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/08/01(月) 23:06:15

>>426

「……いやまあ。
　巻き込まれるのも馬鹿馬鹿しいんで早々に引き上げる予定だったんだがね」

　言葉を切る――巻き込まれては居ない。
　巻き込まれては居ないが……しかし、何処にも行けるわけではない。
　ポップコーンを口に放り込んでいるカペルテータを見ながら、さてどうするかと考える。

「……ま、ここでぼうっとしててもしゃーないしな。
　安全なところまで付き合おう」

　なんだかなぁ、と胸の中で呟きながら、明日は一日部屋にこもって過ごそうと決心した。

431 名前：エミリオ・ミハイロフ ◆EMILIozylo ：2005/08/01(月) 23:09:58

>>410
　夜の風を切り裂いて、僕に押し迫る、無数のナイフと鉄球。
「でもね……」
　顔の前で両腕を交差させ、防御姿勢を取る。次の瞬間、僕の周りを光の障壁が取り囲んだ。

「僕には……こんなオモチャは通用しないよ……」
　上空から日本の鎧に身を包んだ細身の男と、白い布を被った山のような大男を見下ろす。

「こんな所じゃなくてさ……もう少し、広い場所で遊ぼうよ……ふふ……」
　目を細め、口を薄く開いて笑って見せながら、僕はさっきまでいた建物の方へと飛んだ。もちろん、下の二人がちゃんとついて来れる程度のスピードで、だ。
どこからともなく焦げた血の匂いがしたけれど（>>412）、多分、運のない奴が当てるつもりのない矢に当たったんだろう。

　時々空中に留まりながら、下を見る。あの二人（>>410）はちゃんとついてきてるようだった。
「くく……偉い偉い」
　そう言いながら再び先を進もうとした瞬間。
「っぐうっ！」
　背中に衝撃。何かが思いきり背中にぶつかった（>>416）。僕の身体はバランスを崩して、砂利の敷き詰められた地面に叩き付けられた。

「げふっ……がはっ……」
　砂利の上に膝をつき、咳き込む。くそっ……どこの誰が何をしたのかは……あの二人組を殺った後で、確認させてもらう事にする……！


【現在地：本堂付近の社務所（？）前】

432 名前：ＫＵＳＡＮＡＧＩ ◆k2zTougaRE ：2005/08/01(月) 23:16:13

>>427>>429

　如何やら巧く行ったみたいだな。
　しっかし、ざっくり斬れてやがるなァ。オイ。右肩から血が止まらねえ。
　無理矢理焼くかァ。止血にゃその方が早いしな。

　しかもよく見りゃ脇腹にフォークまで刺さってやがる。
　どんな原理で投げりゃ体に突き刺さるんだよ。

　まあ良い。まだ生きてる。生きてるって事はやれる。
　右肩焼いて、もう一度仕切り直しだ。
　あのオンナに赤いアイツ。

　どっちも俺にゃあ過ぎた相手かも知れねェ。
　それでも、それでも沸き立つ感情は抑えきれたモンじゃねェ。
　戦いを求める心ってのは、麻薬にも勝る。

　「さァて、第二ラウンド。行かせて貰おうかァ！」

　離れた場所から焔を這わせ、虚をつけりゃ良いんだけどなァ。
　虚さえつければ、どっちかの腹に一撃入れて、燃やし尽くしてやろうじゃねえか。
　ヒト…じゃねえけど、甘く見んなよッ！
　

433 名前：望月ジロー ◆BBB.k09/yM ：2005/08/01(月) 23:18:20

>>429
先刻の波状攻撃を凌ぎ切り、正眼の構えをとって意識を集中しなおす。
肩の再生は――あの炎自体に破邪の力でもあったのか、浅くはあるが治りは遅い。

肩の痛みに一瞬集中が、ほんのわずかに切れる。
その「ほんのわずか」を突いて、さらに凶刃が私を襲った。

吸血鬼でこそないが、それなりに生きた力ある同族にも匹敵する突進。
そして私の横手から迫るナイフには――我が愛刀と同じ、銀の輝き。
避けきるには―― 一瞬足りない！


「くあっ……！」


避けることの出来ぬ一瞬。
とっさに力場思念で切っ先を逸らし、まともに突き立てられるのは避けたが――
脇腹の筋肉を、銀のナイフが浅く斬る。

銀の傷は再生が遅い、ダメージも通常のものより大きい。
だが――

「……時代遅れ、ですか。　大いに結構。
　あなたのような女性がゴシック・ホラーの素晴らしさを介さないのは、実に残念ですが……」

その大きなダメージは、怒りを呼び起こす。
吸血鬼の闘争衝動に火がつき、さらに牙が長く伸びる。

「女性を殴るのは趣味ではありませんが――
　貴様やカーサのような性悪なら、話は別です！」

ナイフがそれてふらつく女の顎に――刀を握ったままの拳で、全力でアッパーカット。
これで吹っ飛ばせれば、ここを抜ける隙も出来るのですが……！

434 名前：ハセ：2005/08/01(月) 23:20:26

>>420笑石

　まさかこうも呆気なく防がれるとは。
　意外な展開に戸惑うハセ。そこを襲う刃の顎。

「ちぃ―――！　何者か」

　動きは疾い。だが、大きな跳躍と無駄にでかい大剣のお陰で、避けることはそれほど
難しくはなかった。石段を蹴り飛ばし、後方へと逃げる。
　跳びながらも、ハセは無防備な姿を見せたりはしない。
　更に右手で二本、左手で二本。
　スーツの袖から抜き出した計四本のスウィッチ・ナイフを投擲した。

【石階段　下段】

　

435 名前：望月ジロー ◆BBB.k09/yM ：2005/08/01(月) 23:24:09

>>433の補足です…済みません。
（場所：境内・本堂―手水舎間）

436 名前：長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg ：2005/08/01(月) 23:25:21

>>426　vs佐々木小次郎

　サーヴァントだとか、クラスだとか、物干し竿だとか。
　幾つかの単語を脳裏で明滅させている間に斬光が降って来た。
　彼我の位置の優劣は云うまでもない。上が勝っている。
　おまけにこの太刀筋は鋭利という言葉では評しきれない。さしもの虎蔵も心中「これ、ヤバい
んじゃね？」と呻きかけた。

　夜と同色の衣が翻る。
　冷や汗を掻き掻き、魔剣士の体捌きとほぼ同時に虎蔵も跳躍していた。
　虎蔵の首のある位置は、大体変わっていなかった。ただ体勢が天地を逆にしていた。
　空中に見えぬ足場でもあるような動きは、こうなると寧ろ飛翔に近い。


　鉄音が沸き、火花が咲いて散った。


「――問われず名乗るもおこがましいが！」

　斬首の一刀を弾き返し、さかしまの夜鴉はそう叫ぶ。

「六十余州に隠れのねえ、賊徒の首領・長谷川虎蔵！」

　名前以外出鱈目な名乗りついでに、上空から地上に向けて「斬り上げる」太刀が煌き一つ、
もう一つ。


【長谷川虎蔵　山門前】

437 名前：メスドラーマ・エルムドア：2005/08/01(月) 23:31:07

>>428
＞「く、そ、がぁ……！」
至近距離より浴びせた”菊一文字”の衝撃、
並みの人間であれば、原形を留めぬそれを奴は受け止めなおも生き延びている。
肌が剥がれ肉が裂かれ骨が砕けても、なおもこちらに殺気を向ける。


＞「分かってんだろ……俺はまだやれる、やれるぜぇ……？　てめぇのその気障ったらしい
銀髪むしってやるからよ……覚悟しとけやぁ！」
それは、自分が不死成る者、人を超えた者ゆえの意地なのだろうか？
だが、私に言わせればそれは明らかに過信だ。

＞「オラァ！　"メリケンサック"だ！　てめぇ、これで死んだぜぇぇーー！！」
拳に真鍮の輝きを乗せ、私に襲い掛かる。
しかし、体が追いついていない。威力は先ほどの蹴りより上だろうが先ほど見せた鋭さはもはや無い。

「その拳、人間だった頃の私でも見切れる。」
後、5歩…4歩…3…
「自分を能力を過信しすぎたようだな、既に決着は付いているッ」
２…1…ゼロッ
輝く拳が、眉間に迫る。が、

ガシィィィィィッ

その拳は私の顔を捉える事が無かった。
白刃取り―――侍の秘技で私の得意技でもあるそれを発動させた。
今の私に恐怖や慢心は存在しない、ここにあるのは敵に立ち向かう”勇気”のみ。

「さて、満足したか？」
――捉えた拳を放り捨てて、相手の体勢を崩し
「ならば、終わりにしてやろう。」
――――懐から、一振りの刀を取り出し、
「この呪われし刀の亡霊の端となれッ！
「刀に宿りし幾千の、亡霊の呼びて いざ抜かん！ 村正！」

私を中心に、解放された亡霊が舞い踊る。
この村正に食われた幾千の魂が、仲間を増やさんとカジへと向けて群がっていく」

「まだ聞こえるか？ もし、この亡霊の群れから逃れる事が出来たなら、また相手をしてやろう」

私はそう言い残すと、奴の事を見向きもせず境内へと向った。
【移動　裏の池から境内裏へ】

438 名前：東方仗助：2005/08/01(月) 23:32:17

>>430

「ンじゃあ……ま、『助かる』って言っとくっスよ……ショージキ、ここの状況ってヤツは
オレも把握し切れてねーんで……」

　青年と少女――全く表情の変化のない少女を見下ろして、仗助は再び寺へと視線を
向けた。さて。やることをやるべきだ。
　迷っていては「十万」、もとい、「依頼」を果たせない。

「……「こそっ」と行くっスよォ〜〜なんかもー、巻き込まれるのはゴメンだぜ……」

（境内→寺へ）

439 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/08/01(月) 23:38:28

>>438　東方仗助

「こそっと……てもな。別に、わざわざそんなことしなくてもこの通り、誰もこっちのことなんざ
見ちゃ居ないわけだがね」

　実際、こうやってぼうっとたたずんでいても、なにやら持ち上がっているお歴々はこちらに
は全く興味を示さない。

「……ま、俺も一応調べ物でこの町に来てるわけでね。こんな訳のわからんことになってるが、
さくっと終わるのならそれに越したことはないよ、俺も」

　はむはむとポップコーンをつまみ続けているカペルテータを伴って、寺院本堂に足を踏み入れる。
　境内の喧噪とは打ってかわり、少なくともこちら側は、夜本来の静謐さを保っているように思えた。

（場所：境内→寺院へ・東方仗助と）

440 名前：源義経＆武蔵坊弁慶（Ｍ）：2005/08/01(月) 23:43:00

>>431
「ヒョヒョヒョ…あれを悉く防ぎおるか。
　中々に厄介な“鳥”よのう」

白拍子の張った“結界”に弾かれ落とされる刃と鉄球。
成る程、一筋縄ではいかぬか。
砂利の地面を駆けながら、そう義経は軽く感嘆する。
その上こちらの誘いに気付いているのか。
これ見よがしと、慌てる素振りもなく飛翔する様は余裕そのもの。

「遊んでおるな。あの男子、我等をこうも愚弄しおって…！」
「ひょひょひょ、逸るでない鬼若。
　この辺りは我の狙いでもあるからな、構わぬわ。
　それに、戦とは何が起こるか分からぬものぞ？例えば……」

轟音。
妖気を捉える源氏といえど、そこに色も形も見えはせぬ。
だが相手が背に攻撃を受けたように見えた以上、それが先の戦場にいた者からの
攻撃には違いあるまいと当りをつけた。
ともあれ好機。義経の笑みが自然と深くなる。
口が裂け、細い眼がなお細まる。獲物を狩り立てる歓喜の色に瞳が染まる。

「ヒョッヒョッヒョ…あの乱戦で矢鱈に撃てば、返しの流れ矢にも当たるわ。
　乱戦の定石が分からぬとは、所詮“鳥”よな」

瓢箪から駒とはこの事、これを逃す源氏の将ではない。
義経、走りながらも鯉口を切り抜刀。
流れる所作で逆手に持ち替え。

「―――では、殺して進ぜよう」

阿吽の呼吸とはこの事か。
言の葉を吐くと同時。義経が跳躍、刹那の間、宙に浮く。
背に迫る弁慶を足場に、跳びかかり己の太刀で斬りつけながら、
その後を追う弁慶が白拍子へ一足で肉薄。先端に鉄球の付いた棍を振りかぶり、下ろす。
まるで一つの生き物のように、一糸乱れぬ襲撃を仕掛ける。

「源九郎義経（みなもとのくろうよしつね）」
「武蔵坊弁慶！」

そして主従、相互いに法悦に満ちたまま。
眼前の獲物を前に意気揚々と名乗りを上げる。
片や首を寸分狂わず狙う疾風、片や真芯を捉えた鉄槌。
兇器と化した源氏の鬼二人が、吼えた。

「お相手しよう」
「参る！！」

（場所：本堂付近）

441 名前：東方仗助：2005/08/01(月) 23:43:40

>>439

「キミが悪ィっつーか……ま、古ィっちゃ古ィけど、ナンでもねー場所だよな……『マズい』のは
よォ〜〜〜、誰か住んでんじゃねーかってことだぜ……」

　不法侵入。頭に浮かんだ単語を振り消す。
　寺は広く、当然部屋は多く、目的の物を探すのは骨が折れそうだった。

「……分かれて探す、ってのがベターだとは思うけどよ――」

　独り言すら、静謐に反響した。
　外界の騒々しさを完全に飲み込んで、静寂は侘しさだけを強調する。

（寺院内。グレート、後少しで目的達成だ！）

442 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：2005/08/01(月) 23:44:24

>>409火渡

　気付けば戦場と化していた柳洞寺。弓塚さつきを追う火柱だけではない。
　見渡せばあちこちで、戦闘の火花が散っている。
　もはや静寂に包まれた清涼なる寺の風情―――などは、欠片も残ってはいなかった。

　さつきは本尊を迂回しながら駆け抜ける。その頬は、不服そうに膨らんでいた。

　せっかくお気に入りの餌場だったのに。
　わたしの別荘にしよう、って。そう思っていたのに。
　ここで静かに暮らしていたかったのに。

　全てが台無しだった。理不尽に対する怒りがこみ上げる。
　ぶち壊しにされた。ならばめちゃくちゃに壊し返してやりたかった。

　だけど―――猛スピードで駆けるさつき。それを追う火柱。
　ただでさえ直視が厳しいほどの火炎を纏っているのだ。それに付け加え、自在に炎を
操れるとなれば、さつきの天敵以外のなにものでもない。
　怒りに任せて挑んでも、灰に還されるのがオチだ。

「もう、わたし出ていくから。こんな場所いらないから。追いかけて来ないでよ！」

　さつきの並はずれた脚力を持ってしても、火柱の追跡からは逃れられない。
　見る間に距離を縮められてゆく。
　焦るさつき。その視界の先に見慣れたものが写った。

　庭園の掃除道具が詰められた用具庫。好機―――さつきの真紅の双眸がぎらりと輝く。
　意識を集中させ、血の縛りに寄る"令"を下した。

　瞬間、用具庫の戸が弾けた。
　中から一匹、二匹、三匹、と身体のどこかしかを欠けさせた人の姿が。
　どれも腐りきっており、たまらなく臭い。
　さつきが食い散らかした食屍鬼だ。
　彼女の未熟な血の縛りでは、満足に食屍鬼を操るなどという芸当は不可能だが、
肉の壁程度にならばなってくれるだろう。
　逃げるまでの時間稼ぎには、それで十分だった。
　

443 名前：エリ・カサモト ◆SV001MsVcs ：2005/08/01(月) 23:45:25

　境内の惨状を見聞きしつつすっかり短くなった煙草を踏み消す。
　炎が舞うわ光の矢が降り注ぐわ飛んでるやつは居るわで塀の中は散々な騒ぎになっていた。
「…にも関わらず建物の中が静かね。廃屋ってわけじゃなさそうだけど」
　確認のために手近な戸を開けて中を覗き込む気にはなれない。

「…動くか。ここだけ見ていても仕方ないし」
　懐中からクラシックマーダーを抜き、装弾を確認。
　アタシは表の喧騒を後にした。

（移動：境内山門側左手角から塀沿いに寺院へ）

444 名前：片倉優樹 ◆nlYUUKi3kA ：2005/08/01(月) 23:45:29

祭り　片倉優樹　導入（1/2）

今日の酒は不味かった。
それは勿論、日本酒は元々余り飲まない所為も考慮に入れるべきだろう。
しかし、それでも余りに喉を通らない。

久保田の碧寿。容易に普段から飲めるような酒ではないんだけれど。


あたし事、片倉優樹はこうみえても酒には煩いつもり。
何時だって酒を飲まないと生きていけない因果な体なのだからそうなったのは
仕方ないと断言してもいい筈だ。
だからこの酒がこんなに美味しくないことには体調の不安すら感じる。
昨今、ラベルだけを売り与え、中身は程度の低い酒を出す。そういう話を聞かないわけではないのだが。

仕方ない。あたしが満足に味わえないのなら、誰かに捧げて引き分けにしよう。

出てるかどうかも解らないけれど、あの月に乾杯。

天井めがけて1.8リッターのガラス瓶を抱え、あたしは一口に甘い中身を浴びる様に煽った。
物理的に量が多くて少し戻しそうになり、即座に洗面所へと駆け走った。　　

445 名前：木島閑音：2005/08/01(月) 23:46:56

>>427 >>432 >>433

期せずして学ラン男との同時攻撃となったが、『銀刀』―――ジローは手に持つ銀刀と卓越した運動能力、
更には吸血鬼特有の念動力までも使用して窮地を見事に切り抜けて見せた。
学ラン男が放った猛火を弾き飛ばし、更には必殺のタイミングとなるはずだった閑音の突きを―――避けてのけたのだ。
手元に僅かな違和感を覚えたのは、彼の念動力が閑音の手先を僅かに狂わせた所為だろう。

そして、必殺の一撃を避けられ、閑音が僅かに見せた隙を―――ジローは見逃さなかった。
懐から突き上げるような、吸血鬼の強大な膂力で放たれるアッパーカット。
当然、避けられるはずも無く―――

拳が顎に当たり、閑音は宙を舞った。
彼女が吹っ飛んだ勢いは留まる所を知らず、彼女の頭部どころか身体全体を縦方向に回転させる。
一回転、二回転、三回転――――くるくると、玩具のように、軽い閑音の身体は回りながら飛んでいく。
そして、地面に―――




叩きつけられる事無く、両足から綺麗に着地した。

閑音はジローの打撃をかわせないと悟った瞬間、自ら身体を打撃の方向へ勢いよく飛ばし、威力を軽減させていた。
もし彼女が咄嗟にその動作をしなければ、今頃彼女の頭部は此処にはついていなかったに違いない。

だが、着地と同時に、閑音はがくりとその場に膝を付いた。痛みと同時に吐き気と眩暈を感じて呻く。
頭部への打撃により、脳震盪を起こしているのだ。

（くっ……さすがね。『銀刀』の名は伊達じゃない―――ってところかし……<b>らっ！>/b>）

思考を中断して、閑音は弾かれた様に横に飛んだ。
直後、一瞬前に彼女のいた地点を、地を這う焔がなぎ払う。（>>432）
先程の「先客」―――学ラン男の仕業だ。

「っつ―――この、邪魔だって――――――」

悪態を突きながら、彼女は着込んでいる白いジャケットの裏に右手を伸ばす。
そこから取り出されたのは、手の指と同じ数のフォークだった。
ただし、これも普通のフォークではなく―――異様に柄が太くなっている。
発電装置を仕込んである特別製だ。スタンガン並みの電圧は出る仕組みになっている。

「言ってるでしょっ！！」

言い放ち、閑音は右手のフォークを学ラン男に一斉に投げつけた。

446 名前：片倉優樹 ◆nlYUUKi3kA ：2005/08/01(月) 23:47:12

>>444　片倉優樹　導入（2/2)

次の日の夜。あたしは電車で数駅、徒歩で20分の山里の中…とある神社の護国の裏山、森の中に潜み居た。
浦さんも人が悪い。…勿論それは、今更に思ったことじゃないけれど。

この寺にある臭気は偉容を極めている。
何でも浦さんに言わせると、ここは日本有数に地脈が歪み、霊力が混沌としている地形らしい。

「水があるところに里が出来る。それと同じことですよ、優樹さま」

浦さんはそう言ったけれど、あたしには少々理解しかねる。
怪（ｱﾔｶｼ）だって生物だ。うらぶれた、日の指さぬ場所が必ずしも体調に良いものを与えるわけでは
ないでしょうに。

口が寂しい。懐より200mlのステンレス製、3年来愛用のウィスキーボトルを捻り口に含んだ。
気分を害している時は、トリスでも久保田でも同じようなものだ。
ああ、無事に帰れたら太一君には謝ろう。
あたしも酒の飲み方なんて大雑把にしか知らないものだ、という件について。

あたしは一人でふざけながらも、怪の中でも優れているとされる五感を鋭くときすます。
今日は天中殺だ。妖魔が暴れ、人は狂う。
怪（ｱﾔｶｼ）同士の争いは止める謂れはないが、外に及ぶことはご法度だ。
怪の身でありながら人の政府に属する浦さんは、人と妖魔のバランスを特に注視する。
深夜、この森に、神社に近寄る者などそうはいない。
だが、傷つき節制を忘れた怪が人里に出るようなことがあれば、両者のバランスは一度に崩れよう。

「あたしはその、監視役ですか。はは…」
あたしの呆れた声に浦さんは
「いいえ。制圧役です。貴女の力ならきっと彼らを抑えられます。貴女だからこそ出来ることなのです」
「…まあ、精精仕事はさせてもらいますよ」
「<彼ら>は呼ばないのですか？」
「多いと目立つでしょ？あたしでダイジョウブですってば。まぁ、何かあれば連絡させてもらいますか」

浦さんとのやりとりを回想してた。
そして少し後悔した。戦いの強い気迫がここまで伝わる。
あの人たちがこちらに来たら。少々ぞっとしないかもしれない。

深呼吸。精神系統制御。
森林のフィトンチッドを吸い込み軽く屈伸。

「深夜勤務手当て、出るのかな…」

どうでもいいことを呟いて、普段は関心のない金勘定を頭の隅においてみた。

（現在位置＠片倉優樹：参道に程近い位置の裏山）

447 名前：木島閑音：2005/08/01(月) 23:48:43

>>445　追記。　現在位置：本堂奥・池の手前

448 名前：笑石 ◆EMISHIvcMk ：2005/08/01(月) 23:52:02

>>434　ハセ

　飛び退った獲物と入れ替わるようにして、笑石と大剣は大地へと降り立った。否、それは大地へ
と「突撃した」と表現するべきだろう。重量を受け止めた石段は砕け、土煙が舞い上がる。
　その土煙を裂いて、四本の刃物が飛来する。それを鬱陶しそうに大剣で掃い、体勢を立て直す。
それと同時に、笑石は何かに気付き、驚いたように眼を見開いた。
「この気配……」
　『感知』が伝えてくる気配は、単なる魔性の者ではない。――――あの魎月と同じ、血を吸う鬼
の臭いだ。
　自然、にやりと口の端が吊りあがる。
「俺は笑石(えみし)という」
　その名の由来となった、凶悪なまでに朗らかな笑顔を浮かべ、笑石は眼前の吸血鬼へと向き直る。
「貴様は鬼だな――――ならば殺す」
　その笑顔と共に、仏道と衆生に害なす人外を殺す――――己の存在価値を執行すべく、大剣を構
え、突撃を開始した。

(現在位置：石段前)

449 名前：千鳥かなめ ◆Kana/lWMBI ：2005/08/01(月) 23:54:32

首筋にちくりという感覚。
――ぱむ。

「あわっ！？」

首筋に平手をたたきつけた、その痛みであたしは目を覚ました。
右手を見ると、平べったく潰された蚊。
この蚊を無意識のうちに叩き潰した衝撃で、目を覚ましてしまったらしい。

「ふぁ……」

軽く伸びをして、あくび一つ。
それと同時に頭の回転が戻ってくる。

「そか。あたし、ここにお参りに来て。
　そしたら急に雨に降られちゃって、あたしあわててこの本堂にもぐりこんだんだっけ。
　で、雨宿りしてるうちにうつらうつらっと。
　……って、うわやばっ！　もうこんな時間だし！」

時計を見て、思わずこめかみをおさえる。
時間を忘れるほど、あたしは真剣に爆睡していたらしい。

「あーもう、とにかく帰ろっと」

首を振りながらあたしは本堂の扉を開け――

「――なっ……！」


まず、にぎやかだと思った。
こんな時間にこんな人数がこんな場所に。あまりに不自然だ。
そして何より不自然なのが、ここにいる全員が殺気だっているということ。

そう、あたしはこの空気を知っている。
何度も経験した。目の前を銃弾が飛び交い、錆びた鉄の臭いがする場所。
ソースケが戦争バカから、一人の傭兵に戻る場所。
これは、間違いなく……

「……戦場、よね」

まずい。やばい。どうしよう。
そんな言葉が頭を駆け巡る。何度も経験してきた、でもそこにはソースケがいた。
けど今はいない。あたしは一人。そしてあたしはこういう状況では、無力だ。
ではあたしは素直に殺されてやるのか？　あたしはそんな可愛い女の子だったか？
違う。

「どうなるか分からないけど……こちとら伊達に修羅場くぐってきてるわけじゃないのよ。
　悪あがきってヤツ、あがいてあがいて、あがきまくってやろうじゃないの！」

そう、それがあたし――千鳥かなめなのだ。
見ていてソースケ。あたしは必ず、あんたのところに帰るから！

(現在位置：本堂の中、本尊の前)

450 名前：アサシン：佐々木小次郎：2005/08/01(月) 23:56:11

>>385 >>396 >>426 >>436　長谷川虎蔵

　花は斬れた。
　ならば、次は何を斬るか―――――男はそればかりを考えていた。

　空を見上げる。
　燕が空を縦横無尽に舞っていた。

　燕にするか、と男は呟いた。
　うら暖かい春の日の事だった。


『六十余州に隠れのねえ、賊徒の首領・長谷川虎蔵！』

　虎蔵の名乗りとともに雷光がアサシンに落ちてきた。
　鉄と鉄がぶつかり合い、音を奏でる。

　普通ならば、ここで受け止めて終わりだろう。
　が、アサシンにそんな常道等存在しない。
　刀の反りで雷光は受け流され、銀光は方向を変え、今度は逆から速度を増し疾風となりて、
　空中の虎蔵に首に翻る！

　並みの者ならこれで首を落として終わりだろう。
　だが、これで到底終わらぬ事をアサシンは確信していた。

【佐々木小次郎、長谷川虎蔵　場所：山門前】

451 名前：ＫＵＳＡＮＡＧＩ ◆k2zTougaRE ：2005/08/01(月) 23:56:37

>>445

　キレイにオンナが吹っ飛んだ。綺麗過ぎる飛び方だ。
　キナ臭いモンも感じるけどよォ、これがまたと無い好機かァ？
　アレだけ吹っ飛べば脳震盪の一つくらい起してんだろしよ。

　巧い具合に俺の焔も向かってやがる。
　駆けろ、駆けろ、賭けろ。行け、行け、逝け。
　太ェフォークが何だってんだ。刺さったら痛いだけだろ？

　軌道はどう足掻いたって直線でしかねェ。
　ギリギリで避けりゃ――――ッツ。

　電気かよ、ふざけんな、クソッ。
　それでも止まるか、止まってやるか。
　縺れる足がもどかしい、足を殴って再起動。

　後数歩だ。動けねえアレの腹に一発見舞って燃やしてやるよ。
　俺は誰にでも平等だ。焼き加減はウェルダンで。

　「オラッ！ 真っ赤に―――

　腹に一撃は決まった、あとは燃やすだけ。

　(現在地：本堂奥）
　

452 名前：カジ：2005/08/01(月) 23:56:39

>>437　エルムドア

　まさか拳、しかもメリケンサックつきを"白刃取る"なんて。
「てめぇ、そりゃ反則だぞ……！」
　流される拳。それに釣られて、姿勢が崩れた。

「……野郎！」
　身体を転がして間合いを取る。いまは体勢を立て直すことが重要だった。
　しかし、意外にも銀髪は追撃をかけてこない。

　チャンスだ―――とカジは立ち上がる。が、そこで見たものは、人でなしのカジの目から
見ても、あまりに非現実極まりない現象だった。
　周囲数メートルを埋め尽くすような、怨嗟の塊。
　死霊の行進。数千の亡霊が、我先にとカジを目指す。

「な、なんだとぉ―――！？」

　いくら拳を駆っても。いくら蹴りを見舞っても、亡霊には擦りもしない。逆に亡霊は
平然とカジの肉を貪り、骨を砕く。

「ぐ、がぁぁー！」
　トカゲの如き再生能力が、更にカジを苦しませる。
「ハセ、はせぇーー！　助けてくれ、うわああああああ！」
　その絶叫も、心の臓を食われたことにより、やがては途絶えた。

【カジ→死亡】
　

453 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/08/01(月) 23:57:06

>>441　東方仗助

「……確か、ここの坊さんってまとめて病院に入院してるんだっけか？
　別に食中毒って訳でもないらしいが」

　背後に居るであろう少年に声を掛けてみる。
　調べ物――とはいったものの、実のところ既に、ここ柳洞寺に於けるこちらの仕事はほぼ
終わったも同然だった。すなわち、白。魔法技術漏洩の疑いなし。

　……どちらかといえばむしろ、呪いだとか怨念だとか、そっちの類の方が濃厚ではある。
　にもかかわらず、柄にもなく少年の仕事に付き合っていたりするのは、気まぐれ、というこ
とももちろんあるが――何となく、いやな予感がしたのだ。

「……そんでもって、悪い予感ほどよく当たったりするんだが、ね」

　明かりのない室内は、なにかがよどんで見えたような気がした。

（場所：寺院、本堂）

454 名前：戦士長・火渡(M)：2005/08/01(月) 23:59:22

>>442　弓塚さつき

「いい加減止まれってんだよテメエ！」
火球を疾駆させ、少女を追い駆ける火渡。
端から見れば犯罪の匂いがする取り合わせかもしれない。
だが、明かに罪を裁かれるべきは彼女―――弓塚さつきという名だった少女だ。

『不条理を不条理でねじ伏せる』
それこそが、火渡の戦闘(バトル)スタイル。
錬金術・魔術・吸血鬼……あらゆる不条理がまかり通るこの世界に
条理や合理が付け入る隙間など存在しない。

――――それが、7年前の唯一の失敗から学んだ全てだ。

「もう、わたし出ていくから。こんな場所いらないから。追いかけて来ないでよ！」
逃げながらも癇癪を起こすさつき。
「判ってねえなテメエ…テメエの居場所はもうどこにもねぇんだよ！」

次の瞬間。
境内の端の庭園の物置の扉が吹き飛び、中から人影が現れる。
「―――ありゃあ……“喰い残し”か！」
明かに生命の輝きを宿さない瞳、五体がどこかしら欠損した姿、理性を感じさせない動き。
吸血鬼の中には餌を意のままにすることの出来る者もいると聞くが……。

―――守れなかった悔しさに泣いた、あの日。
―――何も出来なかった無力を思い知った、あの日。
「……テメエは……もう許さねェ！！」

火球を踏み台に飛翔、闘争本能を凝縮しブレイズ　オブ　グローリーを圧縮。
威力をそのままに効果範囲を限定……500M……300M……150M……50M……12M！
「周囲12Mのピンポイント爆撃！
　瞬間最大五千百度の炎！！
　食らって驚け、焼夷弾の武装錬金！！　ブレイズ　オブ　グロォリィィィィィィ！！！」

サッカーのオーバーヘッドキックの要領で、空中で反転し効き足で用具庫ごと
“喰い残し”目掛けて蹴り放つ！

455 名前：チョコラータ（M)：2005/08/02(火) 00:00:18

【チョコラータ＆セッコ――二人は仲良し】


「”異常状況”での心理状態が如何なる物か……その状況を切り抜ける人間は、果たして
どんな精神を有しているのか……人間精神に纏わる尤も興味深い要素の一つは……」

　暗転をホバリング音が割く。
　チョコラータは呟く。
　上空250メートルを停滞するステルスヘリの中、彼は呟く。

「……それは、『新鮮』さだ。新鮮さに対する基本的な渇望と、それが沈滞し易い物である
という奇妙な傾向だ……セッコ。解るか？　セッコ……」

　静かな呟きに合わせて、カリカリカリ、と音が応じた。
　何かを齧るような音だった。
　チョコラータは頷く。

「この新しさへの欲望――見知らぬ物、そう、例えば冒険や興奮と言った物に対する欲求
こそがこの地上の支配者へと人間を押し上げた――解るか、セッコ？　人間を「高み」へ
と昇らせる物こそが、『新鮮さ』なのだ……牛はこの欲求を僅かにも持っていないし、ライ
オンですら数マイルに留まる――ライオンですらだ。これはそう、非常に興味深いと思わ
ないか……？」

　カリカリ、と音が重複する。
　チョコラータは微笑む。

「よぉ〜し。よしよしよし、セッコ。お前は賢い子だ……いい子だ……これから！」

　ホバリング音の音程が変わる――ヘリが降下を始める。
　ステルス性を有するヘリは夜陰に紛れ、ゆるりと降下を始める。
　一瞬――
　夜の闇が、闇の粒を飲み込んだ。
　チョコラータは笑う。笑う。爆笑する。

「よぉ〜〜〜〜〜〜し！　よしよしよしよし！　行け！　セッコ！　始めるのだ！　「新鮮さ」
を思うままに享受する為にッ！」


（寺上空−チョコラータ　寺院地下−セッコ）

456 名前：望月コタロウ＆葛城ミミコ ◆BBB.k09/yM ：2005/08/02(火) 00:06:37

ミミちゃんを担いだまま、走って走ってひた走る。

「ちょ、ちょっとコタロウ君、転ばないでよ…！？　下硬いんだから！」
「大丈夫だよっ、絶対追いつくからっ！　……あわっ！？」

意気込みすぎて空回りしちゃったのか。
石畳の段差の出っ張りにつまづいて、盛大に転ぶ。

「ふべ！？」「うぎゃっ！？」

……あ、あいたたた……。
ミミちゃん大丈夫かな―――――ひっ！？

ミミちゃんのほうを向けば、そこに居たのは悪鬼だった。
「コ〜〜タ〜〜ロ〜〜ウ〜〜君〜〜〜〜〜！？」

お、怒ってる怒ってる！
しかも顔すりむいたみたいでさらに怒ってる！
何とかこの場をごまかす手段はないか、必死に辺りを見回して―――


気がつけば１５メートルもあるかないかの先に、追いかけていた人影があった。

「ミ、ミミちゃんミミちゃん！あれ！」
「ごまかそうッたってそうは行かないわよっ、この――

　……って、もう追いつけてる！？」

目の前には全身火ダルマになったおじさんと、それを見上げて追い詰められてるっぽいサッちん。
これって……やばいんじゃないのかな？　兄者、どうしよう……！

「ミミちゃんっ、交渉相手のサッちんが追い詰められてるみたいだよ！？
　ぼくが助けなきゃ、お仕事失敗しちゃうよっ！」

「コ、コタロウ君、落ち着いて……！」
ミミちゃんに襟首をつかまえられ、ぼくは勇気ある突撃をとめられる。
うがー！　このままじゃまずいのにー！


>>442
そう思ってあせっていたら。

サッちんの眼が光り、掃除用具入れから内側から弾ける。
そして壊れた扉から出てきたのは――

「……ぞ、ゾンビ！？　うわぁああ！」
「………いやああもう！　何でこうなるのよ！？」

よく見たらゾンビたちの多くは、あの火だるまになったおじさんのところへ歩いていく。
サッちんは――それを盾にして……

「また逃げる気だっ！　ミミちゃん、追いかけよう！」
「ちょっと待って、一匹こっち来てるし……！？」

あ、あわわわ……怖い。
でも、兄者はもっと怖い奴らと戦って負けないんだ。ぼくだって……！

「うあああああッ！！」

怖さを振り切って、思いっきり走ってゾンビに体当たり。
いつも兄者にしごかれてる特訓の成果、見せてやるぅっ！

ゾンビは体当たりで大きく吹き飛び、そのまま3メートル近くまで吹っ飛ぶ。
そしてミミちゃんが――

「うわああああっ！！」

倒れたゾンビの頭にピストルを、一発打ち込む。
ゾンビは動きを止めて、灰になる。

サッちんは――ああもうまた離れてる！
「ミミちゃん急ごうっ！」
「ｾﾞｪｾﾞｪ……わ、わかってる！　わかってるから、ちょっと息させて…！」

（場所：お寺の本堂外）

457 名前：ハセ：2005/08/02(火) 00:13:07

>>448　笑石
　まさか、二度も自分の飛刀を凌ぐとは。ハセの背中に冷たい何かが走る。
　様子見に辺りを散策していただけのつもりが、とんだ大魚を拾ってしまったものだ。

　―――こいつ、狩人か。

　あの日向と同じく。
　ならば相手が悪すぎる。

　逃げるか。無様だが、現状を顧みるにそれが一番的確な判断と思えた。
　無理をしてここで粘る必要など、ハセには無いのだから。

　しかし、その時。ハセの中から一つの気配が消えた。

「カジ―――！？」
　先程まで掴んでいた彼の気配。まるで消えてしまったのだ。
　ハセの胸に風が吹き荒ぶ。
「カジ、返事をしてくれカジ！」
　カジが死ぬ？　そんな馬鹿な。

　もはやここに留まる理由は無くなった。カジの居場所。柳洞寺の裏の湖で、最後に確認している。
　山門と本尊を一直線に駆け抜ければ、ハセの足なら五分とかからない距離だ。

　大剣を構えて吶喊する笑石とやら―――こいつを駆逐せねば、先には進めない。

「そこをどけ、キサマぁ！！」

　全身に仕込んだナイフや銃剣の、ありったけを解放。雨の如く笑石に向けて降り注ぐ。

【石段　下段】

458 名前：エミリオ・ミハイロフ ◆EMILIozylo ：2005/08/02(火) 00:14:17

>>440源九郎義経＆武蔵坊弁慶
　膝をつき、荒い息の中で聞こえた声。『殺して進ぜよう』、だって……？
「ふふ……く、くく……はは、あははははははははっ！！」
　嗤った。心の底から。嗤いながら砂利の上を転がり、飛び込んで来た細身の男の斬撃を、大男の鉄球を躱す。

　躱し切れずに左の肩口に刃が食い込んだ。大男の鉄球が左足のつま先を文字通り叩き潰した。

「あはは……痛いなぁ……。でもね……痛いのって、嫌いじゃないんだ……むしろ、好きな方なんだよ……っ！」
　大技直後の一瞬の隙をつき、手に集めた光を細身の男の顔目掛けて投げつけた。

　力が充分じゃないから殺傷力はないけれど、目くらましにはなるだろう。上手く行ってくれたら……空から仕切り直しだ。

【本堂付近】

459 名前：―完全で瀟洒な従者―　十六夜咲夜 ◆M6sKnivesI ：2005/08/02(火) 00:15:38

「変わったものが飲みたいわ」

　突然そんなことを言い出す、我が主。
　いや、まあ、割といつものことのような気もするのだけど。

「変わったもの、ですか？　お嬢様」
「そう、変わったもの。
　咲夜の血は悪くないけどね。でもそれ以外の人間のはちょっと飽いてきたわ。
　霊夢はなかなか飲ませてくれないし」
「はあ」

　から返事。これもやはりいつものこと。
　というのも、だいたいこういう時は、お嬢様は実際にはもっと具体的に……

「ってことで咲夜、ちょっと坊主の血を手に入れてきなさい。
　出来たら「外」のね」

　ほらやっぱり。

　けれども私は不服など口にしない。
　私はお嬢様の従者、であればお嬢様の命には従うのみ。
　ええ、それはもうお嬢様のためでしたら

「わかりました、リッター単位で手に入れてきますわお嬢様」
「いやそんなにいらないから」



　……で、私は今ここにいる。
　寺だ。なんの変哲もないただの寺。
　変哲があるとすれば……ちょっとばかり、殺し合いが起きてるという程度。
　私にとってはたいしたことではない。
　まあ、少し……

「……生きて戻ってくる確率が、低めだけど。
　ま、これも変わった血には違いないか」

　手には、いつも通りのナイフ。いや手に限らないが。
　そして服装は、いつも通りのメイド服。ええ、お仕事ですから。
　血で汚れると洗うのが大変だが、他人の血で汚れることなどやはりいつものこと。
　問題は、何もない。

「必ず、お土産付きで戻りますわ、お嬢様」

　さ、お仕事お仕事。


（十六夜咲夜、参戦。場所は墓地側の山間→境内へ）

460 名前：千鳥かなめ ◆Kana/lWMBI ：2005/08/02(火) 00:20:11

深呼吸を一つ。ついでににやりと、無理やりにでも笑ってみせる。
さらに無理をして、軽くジョークを飛ばしてみる。

「ったく、こんな寺に群がってくるなんて、まるで藪の中の蚊ね。
　にしては随分、でかくてバカみたいな蚊だけど」

ジョークとしての出来は三流だったが、気を落ち着ける効果はあったと思う。
そうだ、冷静にならなければ何も出来ない。
跳ね上がる心臓が、少しは落ち着いてくれたと信じて、思考を次の段階にうつす。

思い出せ。
ソースケはこういう時になんと言っていたか。
あたしは記憶をたどり、ゆっくりと「プロの傭兵」としてのソースケの姿と言葉を思い返す。

「いいか千鳥、戦場ではまずは――」

まずは考える。
そう、まずはそこから始まる。
とりあえずは装備の確認からだ。

ソースケに持たされた警報ブザー……論外、自分で場所を知らせてどーするの。
手錠は、とりあえず今は使えない。
毒霧や栓抜き――駄目ね。相手はプロなんだから、こんな玩具が通じるとは思えない。
イヤリングの閃光弾も、どこまで使えるか。

「となると、まともに使えるのはこれだけか」

まずはスタンガン。これは出力を最大にしておく。
ヘタをすると心臓麻痺でショック死だが、相手のことに構ってられるほどゆとりがあるわけでもない。
これをスカートの腰のところにしばりつけておく。

次に催涙スプレー、これは制服のポケットに。
いざと言うときのけん制くらいには役に立ってくれるだろう。

そして最後に、まともに役に立ってくれるだろうものは……

「この電気銃、か」

端子を射出し、５メートルまでの距離の相手なら寸時に気絶させることが出来る。
おそらくまともに使える武器はこれだけだろう。
だが、弾は二発きり。

「まともに使える武器は二発で打ち止め、ってのは辛いわね」

銃が欲しい、と思った。
あれなら六発は撃てるし、弾の交換も出来る。
何より、相手を確実に殺せる。
そう、殺さなければこちらが殺されるかもしれない。だったら殺しておくのが一番確実――

「――駄目よ、駄目。何考えてるのあたし」

頭を振ってその思考を振り払う。
なれない武器なんて使ってもしょうがないし――第一、あたしは銃なんて持つべきじゃないのよ。


とりあえず右手に電気銃を、左手にライトを持つ。
装備はこれでよし、次に行動の優先順位。

「まずはここから逃げること、それが第一よね。
　でも――あたし以外に巻き込まれてる一般人がいるかもしれない。
　だとしたら、その人たちとも合流して逃げないと」

よし、これで決定。
あとは、動き出す時期のみね。

(場所・本堂、本尊前のまま)

461 名前：東方仗助：2005/08/02(火) 00:22:49

>>453

「そーなんスか？　『日本人』じゃねーのにオレより詳しいっつーのはよぉー、なんかワケもなく
ショックだぜ……しかし」

　床が脆い。
　天井も脆そうだ。

「シュールだぜぇ〜〜〜〜「オバケ屋敷」ってよォ……西洋風じゃなくてこういうのも全然アリ、
ってカンジじゃねーか……」

　扉を片っ端から開けていく。
　部屋を一つづつ確認して、それらしい場所を（タンスの中を開けるのは遠慮した。「ドラクエ」
じゃねーんだから）調べ尽くし、部屋から部屋へ移っていく。
　やがて位置は中央へ。一際大きい扉を開け、

「……あのよォー、確かに「女物」っぽいモンがあった部屋はあったけどよ……」

　て。
>>449
「……こーゆー子の持ちモン、ってカンジじゃなかったよな」

　武器（らしい）を広げて座り込んでいる女子高生を三秒だけ注視して、青年に振り返った。

（本尊）

462 名前：木島閑音：2005/08/02(火) 00:24:42

>>451

元々脳震盪のせいで狙いはついていない。それを見越して手数を増やした５本同時の投擲だった。
ただ―――そのうちの一本を食らってもまだ足を止めないのは、さすがに閑音の予想外だった。
一本とは言え常人を容易く昏倒させるだけの電力は仕込んであったはずだが、学ラン男は自らの足を殴って
自らを奮い立たせ、なお閑音の方へ向かってくる。
こちらはまだ足が止まっているというのに―――

そして、学ラン男の渾身のボディーブローが、閑音の細い腹部に直撃する。

「――――――がッ！」

たまらず血反吐を吐き出す閑音。同時に苦痛に歪んだその表情が―――薄ら寒い笑みへと代わる。


「つかまえ、た」

閑音は笑みを讃えたまま、突き出された男の腕を即座に両手で掴み、卓越した身体能力を駆使して一瞬で男の腕に全身で組み付いた。
その態勢は―――格闘技の関節技（サブミッション)、腕ひじき十字固めそのものだった。
零距離で、その上脳震盪でこちらの攻撃の狙いが定まらないのなら―――避けようの無い攻撃をすれば良い。

「腕一本。高い代償だったわね」

閑音の宣告と同時、撓んでいた学ラン男の腕が一瞬で強引に引き伸ばされて―――

463 名前：エリ・カサモト ◆SV001MsVcs ：2005/08/02(火) 00:29:24

　寺院に到着。さらにそこから本堂まで進もうとして、止まった。
　………嫌な感じがする。
　足を止めて身を隠し、辺りを窺う。

>>440
>>458

「冥府から蘇ってきた武者と僧兵とサイキッカー？」
　どうでもいいが、いや…よくはないか。その閃光は夜闇に慣れてきた目にはちょっときつい。

　さて進むか戻るか。どうしようか、な……？

（現在位置：本堂付近の物陰のどれか）

464 名前：千鳥かなめ ◆Kana/lWMBI ：2005/08/02(火) 00:30:39

>>461
>>461

「……こーゆー子の持ちモン、ってカンジじゃなかったよな」

かけられる声。
振り向くと、そこに二人の男の姿。
さて、ここからが肝心。

「動かないで」

電気銃を両手で包み込むように構え、声をかけてきたほうの男に向ける。

「後ろのあなたもよ。
　あたしは千鳥かなめ、巻き込まれただけの一般人の女子高生。
　現在は状況把握に困惑しているところよ。
　一般人だし、あなたが危害を加えないというならあたしも手を出すつもりはないわ。

　こちらの自己紹介はこれで終わり。
　で、あなたはあたしの「敵」になるの、それとも「味方」になるの？
　５秒以内に答えて。返事がなければ敵と見做して二人とも撃つわ。
　それが嫌なら答えるか、武器を捨てて手を頭の上で組んで、床に腰を落としなさい」

――足の震えに気づかれないように。
――跳ね上がる心臓の音に気づかれないように。
――言葉の端々が揺れていることに気づかれないように。
――何より、生き残れるように。

あたしはそう願った。


(本尊前)

465 名前：長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg ：2005/08/02(火) 00:30:48

>>450　vs佐々木小次郎

　あに図らんや、虎蔵の首はあっさり刎ねられた。
　しかし確かに終わりではなかった。


　泣き別れの首と胴体は、まだ空中にある内に別な物に変わった。
　真っ二つに断たれた刀に、である。それは瞬く間の出来事で、魔剣士の横手の石畳を蹴った
五体満足の虎蔵が、突進力を乗せた諸手突きを放ったのとほぼ同刻であった。

　長い長い妖剣は断ったのだ。対手の首ではなく、刀を。
　そして斬った当人は、首を落としたと“思い込まされる”。
　鍔元に結びつけられた人形（ひとがた）の和紙の仕業である。それが付された対象物は、ま
るで様相の異なる別物のように彩られ、晦まされ、引っ掛けられ――而して仕掛け人はその隙に
乗ずるのだ。

　世に身代わりの術と云う。理論はさて置き、その実際がこれであった。


【長谷川虎蔵　山門前】

466 名前：チョコラータ（M)：2005/08/02(火) 00:32:09

>>461

「そろそろか……ククッ！　いいぞ……セッコ、セッコ、セッコッ！　行け、セッコ！　お前が！
そして！　おれのッ！」

　無音に近いプロペラの回転音に紛れ、その声は小さく――夜陰に紛れ、狂気めいて響く。
　チョコラータの身体が幽かにブレた。
　確認する者はない。
　確認もできない。
　その時間――間隙、時間にして約コンマ二秒の内に、チョコラータの「精神」は開放された。
　精神の開放。
　「スタンド」の開放！
　チョコラータの意思の開放！

「「グリーン・デイ」！」

　それは！
　あらゆる生命を食らい尽くす「カビ」の散布！

「『準備』は完全だッ！　『容易』は万端だッ！　「グリーン・デイ」！　ヤツらをブチ撒けろッ！」

（チョコラータ−寺上空「スタンド開放」）

467 名前：ＫＵＳＡＮＡＧＩ ◆k2zTougaRE ：2005/08/02(火) 00:34:09

>>462　木島

　――――燃え…チッ」

　右肩焼いてんのを忘れてたからか、それとも電気の後遺症か。
　いつもならアッサリ燃えんのになァ…焼きが回った、ぜ。
　女と言えどもこいつの力は半端じゃねェ。

　ふざけんな、と言いたいが外れねえモンは仕方ねえよなァ。
　仕様がねえ、折れろ。俺の右腕。

　音は脳に心地良く響いて、激痛も脳に心地良く伝わる。
　痛い。痛い。痛い。アー、痛ェ。
　それもこれも自分の招いた不運なら仕方ねえさ。
　それでもこの状態は、好都合。

　距離は零。相手も直ぐには動けない。焔を出すだけなら左手だって充分だ。
　代わりにこっちも動けやしねえ。
　保身を取るか、心地良い終わりを取るか。

　二者択一の脳内抗争。
　どっちが勝つか、決まりきってる。

　「ククッ…ハハッ…テメェも、燃えろ」

　躊躇いも無く焔を燈し、相手の何処かに殴りつける。
　痛みで狙いなんてつけれるか、馬鹿野郎。
　でもよ、テメェは、燃えろ。

　俺も燃えるけどなァ。

468 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：2005/08/02(火) 00:34:15

>>454　火渡
　時間稼ぎにも足止めにもならなかった。それどころか、一瞬で五匹の食屍鬼を蒸発させた
煉獄の炎は、それだけでは飽きたらずさつきへも牙を向く。
　逃げた。必死で駆けた。
　だが、努力も虚しく炎の渦は一瞬でさつきへと追い付く。
　その衝撃で、彼女の矮躯を紙くずのように空を躍る。

　灼熱に灼かれていく肌。更に衝撃に煽られ、為すがままにさつきは吹き飛ぶ。
　混濁する意識。思うのは「どうして」ばかり。

　どうしてわたしがこんな目に合わなくちゃいけないの？
　わたしはただ、生きていたいだけなのに。
　わたしはただ、志貴くんに―――


「う、あ……痛ぅ」
　痛みに目が覚めた。恐らく数秒、意識が飛んでいた。
　気付けば見慣れぬ景色。
　炎に誘われるがままに、百メートル近く吹き飛ばされてしまったのかもしれない。
　―――なんて威力。
　ただ、幸いなことに直撃ではなかった。お陰で五体は未だに満足。
　しかし、全身の火傷は酷い。あと数分は動けそうになかった。
　その間に、あの火柱に追い付かれたら―――

「く、うぅ……」
　さつきは全身を蝕む苦痛を耐え、地べたを這って進む。

　―――とにかく、逃げなくちゃ。

　死にたくなかった。
　こんな身に落ちぶれ、それでも今まで必死で生きてきた。
　いま死んでは、何のために心を殺して、現実から目を逸らしてきたのか分からない。

　死にたく、ない。
　その一念が、さつきを動かす。
　言うコトをまるで聞かない下半身。引きずって、さつきは進んだ。
　しかし、その速度は亀のそれだ。やがては追い付かれるのは、目に見えている。
　所詮は無駄な足掻き、なのかもしれない。

【弓塚さつき　柳洞寺裏手（湖へと続く場所）】　

469 名前：望月ジロー ◆BBB.k09/yM ：2005/08/02(火) 00:36:32

>>445、>>451
私が殴り飛ばした白いジャケットの女。
そのまま倒れて寝ててくれればよかったのですが――受身を取って、どうにか着地する。

ただ、それなりに本気入れて殴った事もあり、足に来ているのが救いともいえましょうか。

そして色黒の――『留年男』。
ちょうど私が殴り飛ばした女に矛先を向け、突撃する。

――隙が、出来た！

この機を逃す訳には行かない。
両者の注意が私からそれたその一瞬に、瞬発力を爆発させる。
時速200キロを優に超過する世界に一歩で飛び込み――全力でその場を抜け出す！


「一抜けた、ですね」
そう嘯きつつ、コタロウとの共感能力で、二人の気配を探る。
どうやら山門から回って、本堂付近に居るらしい。
この乱戦だ、早く合流しないと――

>>454
そこへ。
あのゼルマンに匹敵するかもしれない炎使いが、炎の弾――否、焼夷弾を本堂めがけて蹴り落とす。
くッ、まごまごしている暇はない……！

>>440
しかもその進行上には、あの『わが師の醜悪な“もどき”』とその従者が。
うまくすり抜けられるか……？

憂慮しつつも、足は緩めない。
逆にもっと加速する勢いで、足を酷使する。
収まりきらない 眩 霧（リークブラッド）を、地上を飛ぶ飛行機雲の如くたなびかせて。


（場所：境内：手水舎付近→本堂エリアの本堂外を移動中）

470 名前：東方仗助：2005/08/02(火) 00:39:06

>>464　千鳥

「『グレート』……またこういうパターンかよ、慣れたぜ」

　軽く両手を上げて――、しかし、即座に降ろした。

「生憎と銃とかそーゆーモンはオレには通じねーし……そもそも撃たれるリユーがねーし、
更に言うならオレは一般人でしかねーよ」

　一応な、と付け加えるのも忘れない。
　身分的には一般人で、それ以上でも以下でもない。

「「味方」か「敵」かって言われりゃ「味方」でイイが、状況をまるでワカってねーよーだから
イチオー説明してやんぜ……」

　掻い摘んで一分以内。
　誇張もなく衒いもなく洗いざらい話して、仗助は軽く肩を落としてみせた。

「……つまり、外はウゼーカンジでドンパチやってるよ。どうせオレもそろそろ「帰ろう」と思
ってたし、外までなら連れてってやるよ」

（本尊）

471 名前：―完全で瀟洒な従者―　十六夜咲夜 ◆M6sKnivesI ：2005/08/02(火) 00:40:12

とはいえとりあえず、当面の目的は坊主の血。
ならば、本堂に入るべき、ね。
そしてその後、どうやって手に入れるか？
……って、これぐらい血腥ければ特に考える必要はないか。
紛れて、僧侶たちを皆殺しにしてしまったとしても。

どっちにせよ……今はまだ、あまり派手に動きたくはないわね。
そっと、本堂へ。

（場所移動：境内付近→本堂へ）

472 名前：笑石 ◆EMISHIvcMk ：2005/08/02(火) 00:45:32

>>457
「そこをどけ、キサマぁ！！」

　多分に鬼気を含んだ叫び。
　叩きつけられる気も、明らかな殺意を纏ったものへと変じている。
　その叫びと共に、鬼の全身より現れる、刃金、刃金、刃金。切っ先の尽くをこちらへと向け、弾丸
もかくやという速度でこちらへと向かって来る。
　その様は、まるで罪業を滅ぼす剣の山だ。ならばさしずめ、眼前の鬼は咎人を責め立てる獄卒か。

「――――吼えるな化生。殺すのは俺だ」

　そんなのは錯覚に過ぎない。
　滅ぼされるべきは眼前の鬼。滅ぼすのは俺だ。
　狂ったような笑みは変わらず、剣の山へと突撃する。飛襲する刃金は、その尽くが、石でできた
肌に突き刺さることなく砕け散っていく。
　だが――――巖の身を蝕んだ歳月の所為か、はたまた、巖に穴を穿つ水滴のように続けられ
た攻撃の所為か、そのいくつかが笑石の身へと突き刺さり始める。
　それでも笑みは変わらず、突撃は止まらない。

「終わりだ、鬼め。地獄へ逝けいっ！」

　肉薄、そして怒号と共に一閃を振り下ろした。

473 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/08/02(火) 00:46:09

>>461　東方仗助　>>449　千鳥かなめ

「詳しいってか――何日か前のニュースでそんな話を聞いた覚えがあるだけだ。
　まあ、俺の聞き間違いの可能性もあるので、その辺は何とも――と」

　呟きながら向かいの扉を開く。
　右手に銃を携えて、万が一の場合いつでも発砲できるように、銃身を軽く前方へ。
　装填されている45マグナム弾のような大口径弾は、例え急所でなくとも、十分に人間を
ショック死させることが可能な、十分な破壊力がある。
　それでなくともこの銃、サーカムT12ハードフレア・カスタムは、射撃時の反動を押さえ込む
ために、銃身を競技用のモノに換装ある特注品だ――少なくとも、眼前にこれを突きつけられれば、誰でも
一瞬はたじろいでしまう程度には。

　まあ、それはともかく――

「……こーゆー子の持ちモン、ってカンジじゃなかったよな」

　呆然と呟いたジョウスケの視線の先には。
　険しい表情で銃を突きつけてくる、場にそぐわない少女の姿があった。

　>>464

　反射的に、構えていた銃杷から手を離し、引き金に掛けていた指をトリガーガードに引っかけ、人差し指だけで銃を持ち
あげてみせる。

「撃つな！　怪しいものじゃない――事もないか。
　とにかく、敵対するつもりはない。
　こっちもそちらと同じで巻き込まれ組でね、正直どうしたモノかと困ってるところなんだよ」

　……口を開いたのは失敗だったか、と思わなくもない。
　お世辞にもまっとうな人間とは見えないこの俺だ――よけいなことを言っても、相手を
怪しませるだけで終わる可能性も高い。
　ともかく、両手を広げて、敵意のないことをアピールする。

>>466

「……俺の日本語、通じてるか？　敵意はない――だから、銃をおろしてくれ」

　言われたとおりに長腕を頭の後ろに組み直し、ゆっくりと腰を下ろそうとする――瞬間。
　異変は、唐突に現れた。

　ぼろ、り。

「え―――？」

　いきなり崩れ落ちた視界に、思わず疑問の声を上げる。
　おかしい、俺は今ゆっくりと腰を下ろしているはずだ。それがなんでまた、こんな上から
落ちてるような感じで、ぐんぐんと下に――

「レイオット！」

　珍しく、カペルテータが声を上げた。何事かと、下を見る。
　見下ろした、俺の視界に移ったその光景は、

「なっ、」

　ぼろぼろと。
　青白いなにかに急速に浸食され、末端から崩れ落ちていく、紛れもない、己の姿だった――

（場所：本堂・グリーン・デイ発動中）

474 名前：片倉優樹 ◆nlYUUKi3kA ：2005/08/02(火) 00:52:22

>>455　チョコラータ
>他本堂付近各位を受けて

上空よりヘリの爆音が聞こえる。
夜間飛行の許可がこの時間帯に降りているのだろうか。
あたしは自分の感を信じたくない。
私的なレベルの争いだと聞いていたのに、これは少々逸脱行為じゃないだろうか。

持ち場を動くことは下策だ。
それだけは、間違いがない。
それでも、あたしは動く。公僕というのはこういうものだと示しておかないと後々
肩身が狭くなる。非常に嫌な職業だ。警察官というものは。
助ける相手になりそうな僧侶、というのもまぁ因果な人たちではありますが。
それでも人には違いなく。
僧侶が台帳によると少なくとも数十人がこの寺には在籍していると知っている上。
当然あたしは一応捨てては置けない。

急ぎ、本堂へと身を低くし。あたしは駆けた。
人と化生の渦巻く本堂へと一直線に。

475 名前：東方仗助：2005/08/02(火) 00:54:56

>>473

　瞬間。

「クレイジー・ダイヤモンド！」

　仗助は弾けるように反応した。
　仗助の精神は弾丸のように蠢いた。
　傍ら、指先から瓦解していく青年の腕――それが。
　一瞬で、元の肉を取り戻した。崩壊した腕が、再生した。

　眉を顰める。
　腕。毀れた指の破片に視線を落とす。先端が黒い。何かを塗されたように、穢れのように。
穢れ。汚れ。壊れた物。壊れる物。それは。一見して、それは――
（……カビ？）

「『グレート』……グレートにヤベぇぞ、コイツぁ……ッ！」

　毀れた指の破片。
　その位置から距離を離し――本尊へ、細かい階段を三段ほど昇り、広い本尊の前へと歩み
を寄せた。

「お兄さん……オレから離れんなよぉ〜〜〜そっちのアンタも！　ちょっと……コイツはグレー
トにヤベーからよ……」

（場所−本尊）

476 名前：ハセ：2005/08/02(火) 00:57:42

>>472
「うわああああ、止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれぇぇ―――！」

　投げて投げて投げてただひたすらに投げて投げて投げ尽くす。
　だが、その悉くは笑石に届くことなく、砕け散っていく。

　―――バケモノか。

　ハセもまた、その領域に片足を突っ込んでいる身だからこそ分かる。
　いま相対している相手は、まさにそれだ。

　自分では、敵わぬ。蟆霧様ならばいざ知らず、自分程度では―――

　最後の一本が、尽きた。

　大剣を振りかぶる笑石の姿。死神の鎌を構えるそれに、ハセは見えた。
　そして、次の瞬間には。
　両断された心臓。
　肉体は霧散し、灰へと還る。

「カ、ジ……」

【ハセ　死亡】

477 名前：メスドラーマ・エルムドア：2005/08/02(火) 00:57:49

>>468
熱風が頬を撫でる、そう遠くない所で煉獄が生じているらしい。
風が運ぶのは肉が焼ける匂い、そして…大いなる憎しみ

「面白い、人の身でありながらそこまでの憎しみと悲しみを持ちえるとはな。
　ひょっとすると、まだ見ぬ”肉体”であるかも知れん」

熱風を辿り煉獄へと歓喜にも似た感情を持って走っていく。
ソレの発生源にたどり着いた時に見たものは、天空より見下ろす炎を纏った男と
我らが血族と思われる満身創痍の少女、そして焦土と化した大地であった。

「ともあれ…まずは火を消さねばな。
三界六道貫く秘剣、仏の道許さずも 共に地獄の火とならん！ 菊一文字！」

敗者である小娘は無視し、刀魂放気を打つ。
あの炎を吹き飛ばす威力がこの剣にあるとは思っていない。
が、燃える物が無ければ火は燃え続ける事はできない。
用具箱や”食い残し”の燃えカスなど吹き飛ばし、周囲一体をまっさらな地平へと変貌させ、
小火は消し止めた。が、依然として火元である火柱は上りつづけている。

「厄介な争いになりそうだな…だが、いやだからこそこの争いには価値がある」

正宗を構える私は、不敵な笑みを浮かべていた。

478 名前：メスドラーマ・エルムドア：2005/08/02(火) 01:00:06

>>477の相手は、火渡＆さつき
現在地は境内から池へと続く道で頼む

479 名前：木島閑音：2005/08/02(火) 01:00:32

>>467

ゴギッ。

骨の砕ける生々しい音が響き渡り、男の右腕は本来有り得ない方向へと曲がった。
閑音が満足の笑みを深くした、その時―――

背中から、衝撃が来た。


「―――ッカ！　あ……ぐ……！」

焔をまとった拳で殴られ、声にならない苦鳴を上げて喘ぐ閑音。
同時に皮の焼ける嫌な匂いが鼻を突く。レザージャケットが炎上したのだ。

（コイツ―――形振り構ってない！？　わたしとした事が……油断した！）

学ラン男は閑音と全く同じ事を考えていたのだ。即ち、零距離での、避けられない攻撃を叩きつける。
そして焔というアドバンテージがある分―――この間合いでの殴り合いは、確実に自分の方が不利だ。
その事にもっと早く気づくべきだった―――舌打ちして、彼女は素早く関節技を解き、男との間合いを離す。
レザージャケットは未だ炎上を続けている。このままこのジャケットを着続ければ、大火傷は必至だが……
彼女は焦らずにジャケットの懐から一本のフォークを取り出して、背中に器用に突き立てる。
すると………突き立ったフォークを中心に白煙が上がり、見る間に燃え上がる焔を沈下させ、変わりに白い霜で塗り替えていく。
これは液体窒素を仕込んだ冷却用のフォークだ。元々は別の吸血鬼対策に用意していた物だったが、こんな所で役に立つとは
閑音自身も思いもよらなかったことだ。

処置を終えた後、改めて閑音は学ラン男に向き直り―――

「あなた、いい加減邪魔だって言ってるでしょ。………死になさいよ」

ナイフを構え、突進する。
地を這う焔を警戒して、左右のステップを混ぜながらの超高速の突撃だった。

「これで、終わり」

480 名前：アサシン：佐々木小次郎：2005/08/02(火) 01:00:56

>>385 >>396 >>426 >>436 >>450 >>465　長谷川虎蔵

　燕を斬るか。

　そう決心した男は燕に向かって、剣を振るった。
　ただ無心に。

　桜が咲き、蝉が鳴き、葉が紅く染まり、地が一面白く塗り潰される。
　それが何度巡ったか。

　だが、燕は斬れなかった。
　どれ程剣速を増そうとも、男の技量が既に鉄をも容易く断つ技量に達していようとも。
　燕は斬れなかった。

　燕は空気の震えを感じ取る。
　そして縦横無尽に飛ぶ軌道を変える、一本線に過ぎぬ刀では燕は捉えられない。

　男は既にその事実に気づいていた。
　しかし、男は剣を振るうのを止めなかった。

　妄執か狂気か。
　否、どれでもない、ただただ純粋な幻想（ユメ）だった。


　手応えはあった―――――しかし、違和感。
　天性の才能、数え切れぬ程斬った故の経験がこれは違うと告げていた。
　一瞬後、アサシンの側面の空気が揺らぎ、突風と化した。

　アサシンの判断は早かった。
　何の迷いも無く、揺らいだ側面を省見もせず、後方へと飛んだ。

「ふむ……面白い、ああいうかわし方があったとはな。
　私の剣は邪剣でな、並の者なら既に首を落としている。
　それをこう返してくれるとは嬉しいぞ。だが………」

　虎蔵は気づいていたか。
　アサシンは虎蔵と同じ高さの平地へと飛んでいた事に。
　アサシンが初めて構えらしきものを取った事に。

「これを見事躱せるか？　秘剣――――――」



　――――――燕返し



　稲妻が落ちた。
　虎蔵に向かって今までの剣速を遥か上回る速度で一直線に打ち落とされる剣撃！

　そして――――――

　全く同時に円を描く様にもう一つ電光が走った！


　信じられるか？
　今、この瞬間にアサシンの剣は二本同時に存在している！


　そうして、幻想（ユメ）は幻想し、奇跡となりて男の前に現れた。

　魔剣、燕返し。
　名も無き男が練り上げた修羅の業、究極の一である。


【佐々木小次郎、長谷川虎蔵　場所：山門前】

481 名前：源義経＆武蔵坊弁慶（Ｍ）：2005/08/02(火) 01:01:17

>>458
―――あれを凌ぐとは、こやつもやはり手練（てだれ）という事か。
肩口へ逸らされた刃の手応えを感じ、義経は内心で舌を打つ。
躯がざくろのように四散せぬという事は、鬼若の一打も外されたか。
ならば次に来るのは敵の反撃。
体勢を立て直すと同時に即座、全身の神経を張りつめさせ備える。
無手か、刃か、光条の矢か―――いや、相手が狙うは或いは。

収束する光と熱。そして、放散。
先ずは場を凌ぎ体勢を立て直すことを選んだか。
張り詰めた神経が反応し目蓋を閉じんと欲す―――が、刹那の差で間に合わぬ。
眼を凝らしたのも原因か。

「牛若様！」

戦場では僅かな時間でも、前後不覚に陥るのは死を意味する。
それを知らぬ戦の天才義経ではない。
虚を付いて隙を作る…その“手”は過去に自らが散々行ってきた所業だ。

ゆえに、そのような時の“返し手”の想定だけはしていた。

「鬼若ァ！」

――――彼奴を逃すな。
応えの叫びには新たな布陣への合図も込められていた。必殺の情念と共に。
敵の反撃は己に向かった分、弁慶への被害は微々たる物と予測していた。
それならば、「あれ」が使える。

―――応よ！！
眼の奥がちりちりと焼ける。“像”も些か定まらぬ。
が、己が主君と比べれば大事はない。
血肉がこびり付いた棍を捨て一足跳び、義経に近き手を伸ばす。
己には見えている。主君の眼を焼き、また空へ逃げようとする白拍子が。
なれば容易いことだ。
己が主君の眼となる、あの方の刃を届かせる腕（かいな）となる。
血走った眼を見開いて、主君義経の体をつかみ上げ――――

源義経の体が宙を舞う。否、正に矢の如く空を飛ぶ。
強力を誇る弁慶の全力で“投げ飛ばされた”が故の飛翔だ。
すでに狙いは臣下が付けた。元より見えぬ己では捉えは出来ぬ。
己に叶うは、剣を振るうて斬り付すのみ。
太刀を正眼に構えたまま、重心を変え全身を回転せしめる。
その体捌きと剣閃は車輪の如く。
回転の力と速さを加味して、幾度も怒涛のように刃を走らせ断ち切る魔剣。
これぞ天狗、鬼一法元より学びし奥義『回天斬』。

――――戯れは終わりぞ、白拍子。
軌道は最短にして一直線。
陸を離れ、飛び立たたんとする異国の“鳥”に剣が飛ぶ。

（場所：本堂付近）

482 名前：木島閑音：2005/08/02(火) 01:01:37

>>479　また追記。現在位置：本堂奥。

483 名前：千鳥かなめ ◆Kana/lWMBI ：2005/08/02(火) 01:11:13

>>470　東方くん

「味方」

東方、と名乗ったその人の言葉に、あたしは思わずひざを付いた。
息が荒い。たったこれだけの駆け引きで、こんなに緊張するなんて。
こんなのをいつもやってるソースケは凄い、つくづくそう思う。

でも、まだこれから。
これからなんだ。

「了解、状況は過不足なく認識できたわ。
　こちらの武器はこの電気銃くらい、しかも弾は二発だけだから、一人じゃ心細かったの。
　一緒に来てくれるというなら助かるし、あたしだって足手まといにはならないわ」

一気に言うと、また息を吐く。
さて、これからどうするか。
彼の言うとおりに本堂から出て強行突破が一番だが、その前に、

「その前に燃やすわ」

と宣言した。

部屋の片隅においてあるストーブ。
その中に――あった、まだ灯油が残ってる。
その灯油を仏像にぶっ掛けながら、あたしはこうその理由を説明する。

「どっちにしろ、このままじゃ駄目でしょ。
　警察なり何なり、外の人に気づいてもらわなくっちゃ。
　そのためにはここを燃やすのが一番なのよ。
　少なくとも山の上で寺が燃えてて、気づかないバカはいないわ」

――本音を言うなら、警察には疑問がある。
今これだけ騒いでて誰も来ないってことは、あるいはどこかから圧力がかかってるのかもしれない。
でも、

(でも、あいつなら気づいてくれるかもしれない)

ソースケ。
あいつには、今日ここに来ることは伝えてある。
おそらく帰りが遅くなったあたしを今、心配してくれてるはずだ。
あいつならきっと、気づいてくれる。
そして助けに来てくれる。

そう、怖い。
今あたしは凄く怖いんだ、本当は。
だから、言いたい――助けて、ソースケ。

「……ま、そういうことよ」

その恐怖心を隠すために、あえてつっけんどんに言い捨てる。
そして振り返り――


>>473

――人が崩れ落ちていく。

>>475

――そして瞬時に、東方くんの手で再生される。
これは……

「上に！」

短く言い捨て、あたしは本尊の足の上に飛び乗った。
寝ていたせいか、普段より体が軽く動く。

「こいつら下から来る！　下に行ったらやられるわよ！
　それにこれ、ただのカビじゃないわ」

――ラムダ・ドライバと同じ、慣れ親しんだ感覚。
これはおそらく、

「こいつら、現存の物理法則から明らかに逸脱した存在ね。
　よくわかんないけど人為的に――いいえ、生物兵器の類かしら。
　こちらの世界とは別の法則が働く、悪意ある誰かの放った生物兵器と見るべきでしょうね。
　そしてその性質は＜下からの攻め＞――なかなかに趣味が悪いようね」

認識の拡大、知識と類推の連続。
＜囁かれし者＞の知識の一端が、わたしに告げる。

「ともあれ、わたしの知識ではこれまで、までよ。
　ベクトルとしては東方、あなたに近いわ。
　何か対策、さくか、情報は知らないの……！？」

……まずい、＜囁き＞のヤツにのっとられかけてる。
わたしは、あたしは負っける……もんかあ！
とにかく、これだけは聞かないと……。

「東方くん、聞いて。
　こいつらが燃やせば消えるなら、あたしは燃やして逃げられる。
　それと敵は、生物兵器の常道を考えれば風上、もしくは上。
　上、上、そう、上空！
　こちらのカードはこれだけ……あとはあんたたちが頼りよ」

484 名前：葛城ミミコ ◆BBB.k09/yM ：2005/08/02(火) 01:12:06

――あの『交渉相手』、弓塚サツキが使役したグールを銀弾頭の銃で灰に返したあと。
デタラメな爆音がしてそこを振り返ると――――

>>454
グールのうち、あたしたちに向かってこなかった多数が―――綺麗に消し飛んでいた。
冗談じゃない、この男。
吸血鬼でもないのに、あのゼルマン・クロックの燃料気化爆弾レベルの炎と渡り合えそうな炎使い。
そのまま一匹のグールに足止め喰らってなかったら、あたしたちも消し炭だったろう。

「う、あわ……」
コタロウ君もその炎が大地を舐めた後を見て、浮き足立っている。
そして、弓塚さんは――

>>468
グールもろとも炎に巻かれて、大火傷を負っていた。
このまま助けにいけば、また第二波に焼かれるかもしれない。でも――

――しっかりしろ、葛城ミミコっ！
――おまえは吸血鬼と人間の幸せのために奔走するのが仕事だろうがっ！

頬をぴしゃりと叩く。
気合を入れなおすと―――

「コタロウ君、遊んでないで仕事するわよっ！
　まずは助けなきゃ！　あの娘！」

「あ、遊んでなんか――」
「だったらなおの事気合入れるっ！　ほれ！」
「よぉぉーしっ！」

あたしは大火傷を負ってはいずる弓塚さんのもとへ、コタロウ君を連れて駆け出した。

（場所：柳洞寺本堂付近→柳洞寺裏手へ）

485 名前：戦士長・火渡(M)：2005/08/02(火) 01:12:43

>>468　弓塚さつき

威力範囲を絞ったとはいえ、その膨大な熱量は気流を生み出し荒れ狂う。
庭園の一部は焼き尽くされ面影すら残していない。
無論、似つかわしくない食屍鬼たちも無に帰している。

そして―――不幸な加害者・弓塚さつきも無傷では済まなかった。
全身にケロイド状の火傷、しかし徐々にでは有るが回復していっている。
「チッ……ホムンクルスもだが、吸血鬼の再生能力ってのは厄介だな、加減すると殺しきれねェ」
ずりずりと、地を這いながらだが、確実に歩み、止まろうとしないさつき。

「だが、それもここまでだ」
周辺の炎と同化し、さらに火炎同化を強化。左手に炎の渦を生み出す。
「テメエの居場所はここじゃねェ――――」
右手の親指を下に向け。

「――――煉獄だ」

炎の渦を放とうとした瞬間。

>>477　メスドラーマ・エルムドア
風圧が炎上する空間を襲う。
燃えるものを全て吹き飛ばすその威力。
「ちっ……邪魔する気か、テメエも」

火渡は空いた右手でポケットを探り、タバコを取りだし一服する。
タバコの先端からはバーナーの様に炎が揺らめき、吐き出す煙の代わりに炎を呼吸した。

【火渡　境内裏・池へ通じる道】

486 名前：ＫＵＳＡＮＡＧＩ ◆k2zTougaRE ：2005/08/02(火) 01:12:53

>>479

　クッ…ハハッ…良いねェ。その歪んだ顔。
　燃えろ、燃えろ。無くなっちまえよ、とは行かねえよなァ。
　本当、もう少し力残ってりゃ、考え様もあったんだけどな。

　面倒臭ェ事に余力もねえか。
　仕切り直した間合いにすら踏み込む力がねえなんてよ。
　起き上がれただけで恩の字って奴か。

　さて、どうする。焔は消えた。相手はまだ生き生きしてる。
　こっちに残るは腕一本と、大蛇薙一発分の力くらいのモンか。
　で、相手はなんか持って突っ込んでくる。
　ナイフか、ありゃ。避けられねえし、死ぬか。俺。

　それでも死に華咲かせましょう。
　真っ赤な死に華咲かせましょう。

　悟られねえ様に闇払いを少し混ぜて、折れた右腕に力貯めろ。
　相手の裏を掛け。相手の裏に賭け。
　これで最後だ、死んじまえ。誰も、彼も、俺も。

　刺さった。腹か？ 心臓か？
　痛ェ事しか理解できやしねェ。面倒なもんだよなァ。
　これなら皮膚の下に鉄板でも埋め込ませとけばよかったぜ。

　「受け取れよ…なァ？」

　折れた右腕掲げれば、刺激が脳へと伝わって、血から零れた意識が戻ってくる。
　痛みは快楽に変わってきやがった。ヤベェな。マゾか、俺。
　それでもオンナが離れる前に放ってやるさ。

　「焔に…還りやがれ…」

　そいつで終い。意識も飛んだ。
　何にもねェ。死ぬのか。

　歪んだ顔が見れねえのも、辛いもんだよなァ。

　【KUSANAGI　死亡】
　

487 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/08/02(火) 01:22:34

>>475　東方仗助

「――これ、は」

　さすがに、血の気が引いているのが自分でも判った。
　なかなかに貴重な大変ではある――まさか、足下からぼろぼろと崩れていく己を見ること
が出来る機会など、そうはないだろうから。

　まあもっとも、二度と見たいとも思わないが。
　ふと考えてしまう。あのまま崩壊が収まらなかったら――

　――あまり、楽しい想像にはなりそうもない。すぐさま試行を中断する。

　しかし。

「……おい。今の――お前が？」

　確かに聞いた。”クレイジ・ダイヤモンド”。
　その叫びと同時、末端から崩れていた俺の肉体は、まるで時間が逆転したかのように
たちどころに元の姿を取り戻したのだ。

「くそ、一体何が――何が何だかさっぱりだ、今回は」

>>483　千鳥かなめ

　下から――それは、つまり。
　”言われたままに座ろうとしたから、その性でカビにとりつかれ”たということか。
　しかし、そんな生き物など聞いたことがない。
　生物兵器とは言うものの、果たしてそんな代物を人間に作ることが可能なのか。

　いや、それ以上に問題なのは。
　下に降りることが出来ないと言うことは――
　ここから逃げ出すことが出来ないと、そう言っているに等しいのではないか。

「……まあ、いやな予感はよく当たるんだ、これが」

　さてどうしたモノかと思案していると。
　彼女が、なにやらトンでもないことを宣った。

「……燃やしてって、おい。本気か！？」

ただでさえ逃げ出す場所が限られている上に、その上ここまで燃やすだなどと、それこそ
正気を疑う発言に、思わず声を上げていた。

　上。そう、下に行くことが出来ないのならば当然上に逃げるしかない。
だが、このカビの化け物がどうやって現れたのかすら判らない状況で、本当に炎が決定打
となるかも疑問である。

　そもそも――

「燃やすったって。誰か火、持ってるのか？」

488 名前：セッコ（M)：2005/08/02(火) 01:24:33

>>483　千鳥かなめ

　そして、辿り着いた(、、、、、)。
　目的地に辿り着いた。
　狩り場へと到着した。
　地下十メートル――広大な寺院の敷地の、巨大な寺院の真下、その土の中で、セッ
コはカチンと歯を鳴らす。携帯電話を取り出す。短縮で呼び出した――相手はチョコラ
ータだ。信頼できる彼の仲間だ（と、少なくともセッコは思っている。チョコラータは優し
いし、砂糖菓子をくれて頭を撫でてくれるからだ。「よぉ〜しよしよし、いい子だ……」）。

「チョコラータぁぁぁぁぁぁぁ……「見付けた」ぜ……ヤツ等……この「真上」に居る……」
『よぉ〜しよしよしよしよし……可愛いセッコ……いい子だセッコ……「ビデオカメラ」は
ちゃんと用意してるか？』
「うん！」
『ベネ（よし）！　よぉ〜〜〜〜〜し、流石だセッコ、セッコ、セッコ！　帰ったら砂糖菓子
を上げよう。何個がいいかな？　二つ？　三つ？』
「う〜〜〜」
『じゃあ五個か！』
　携帯の向こうで声がする。ウレシそうだ。セッコも嬉しい。
「うん！　うんうんうんうんうん！」
『このイヤしんぼめっ！　よし！　それじゃ五個だ！　頑張れよ、セッコ……おれはお前
に期待してる……お前の「オアシス」は無敵だッ！』
「うん！　うんうんうんうんうん！」
『行けッ！　立派に「撮って」こい！」
「うんッ！」

　地面を上がる(、、、)。
　クロールの容量で土を掻く。セッコの身体は上昇していく。地中内の三次元移動――
セッコの「スタンド」――「オアシス」！
　そっと本尊の真下に辿り着いたことを確信すると、まずはビデオカメラのスイッチを入
れて――「どれ……これだ……スイッチ……」――半分を、レンズを本尊側に向けて、
そっと置く。認識できる場所には三人。
　一番近い位置に居たのは女だった。土の中を泳いで十メートル、真上に「生きている
人間」の存在を確信する。
　一掻き。
　セッコは上昇する。
　土も――木も、僅かに挟まれていた鉄板すらも意味はない。
　その存在自体を悉く融解された全要素は掌で掻き出され、あらゆる物質を掻き砕く(、、、、)
クロールを、少女に降り掛けた。

（本尊真下−セッコ）

489 名前：メスドラーマ・エルムドア：2005/08/02(火) 01:25:51

>>477（火渡）
＞「ちっ……邪魔する気か、テメエも」
八つ当たりを邪魔されたその男は、明らかに苛立っていた。

「そのトラウマ(怒り・哀しみ)、神や宿命に向けられていたのならばやりやすいのだがな…」
奴は憎むべき物、そして倒すべき物を正しく理解し、
力を身につけ、そしてそれを行使している。
ならば、私にすべき事はその信念を曲げさせ、
『所詮、人間には限界がある』と言う事を叩き込む事。

「思い知らせてやる、”人間の限界”をなッ！」
―――じわり


　　　　　―――じわり


まずは奴の攻撃間合いを見切るべく、じりじりと間合いを詰めて行く。

490 名前：―完全で瀟洒な従者―　十六夜咲夜 ◆M6sKnivesI ：2005/08/02(火) 01:26:16

……爆音が聞こえる。上空から。
あれはいったい、何がやってきてるのか。
あんな音を立てる妖怪はいない、というかここは外なのだし。

分からないのは分からないので、そのままにしておく。
あとで判断すればいい。

それにしても坊主達は無事なのやら。
既に死んでました、などというのは勘弁して欲しいんだけど……

そんなことを思いつつ、ちょっと本尊のところへ…………？


え？

>>473>>475　レイオット、仗助

……カビがはえて、瞬時に治った？
いや、突然何が起きてるのよ。
あの三人はいったい？

……まあ。

「あの……何かあったの？」

とりあえず、声をかけてみた。
特に凶悪そうではないし、であれば変に潜伏するよりは
こうして状況判断に努めたほうがいいだろう。

……いやな予感はするけど。

491 名前：エミリオ・ミハイロフ ◆EMILIozylo ：2005/08/02(火) 01:28:37

>>481源九郎義経＆武蔵坊弁慶
　光塊による目くらましに、細身の男が怯んだ。上手く行った――これなら、飛べる！
　無事な右足で砂利の地面を蹴り、跳躍。片足だけだから、飛距離は足りない。でも……飛んでしまえば、こっちのものだ。
　そう、思った。

『鬼若ァ！』
　細身の男が、周囲を揺るがすほどの音量で叫ぶ。その声に応える様に、大男が自分の得物を捨て、細身の男に一足飛びに近付いて……掴んで、投げた。

「……なっ！？」
　驚いた次の瞬間。

　ぞぶり。

　脇腹に、鋭い痛みが走った。見下ろす必要なんてない。細身の男の構えていた刃が、僕の脇腹に、深く、食い込んでる。

「ぐ……ぅ……ごぶっ……」
　言葉にならない呻きが、唾液の混じった赤い血が、唇からこぼれる。

「はは……あは、あはは、くはははははははっ！！」
　また、嗤った。多分もう、これで終わりだ。だけど……僕一人だけじゃ、終わらない。僕だけでは、終わらせない。

　脇腹に刃を食いこませたまま、僕は両腕を大きく広げた。

「光よ……！！」
　僕の全身を光が包み込む。そしてその光は――あらゆるものを呑み込む濁流に変化した。

【本堂付近】

492 名前：遠坂凛 ◆Rin/.ruSTE ：2005/08/02(火) 01:28:55

屋敷の自室内でも、爆音は聞えた。
ただ事じゃない――いや、その程度では表現し切れない程、普通じゃない事が起こっている。
そんな予感に駆られて、わたしは夜の街に飛び出した。

当然、わたしのサーヴァントと共に。

「アーチャー、場所判る？」

普通の人間の耳では、大まかな方向しか見当がつかない。

「柳洞寺？ 遠いわね……運んで。急ぐから」

端から見たら独り言。
けれど、その声に応えるように傍らに赤い影。
抱き抱えられると、凄まじい早さで景色が流れていく。


――――辿り着いたそこは、赤く燃えていた。


喧騒と言うには生温い、業火の燃え盛る音に閃光。
眼前には――死体と、それから敵がいた。

「……大事な時期だって言うのに、わたしのテリトリーで好き勝手してくれたもんね。
　良いわ、全部纏めて落とし前つけさせてやるから」

493 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：2005/08/02(火) 01:30:22

>>484　ミミコ

「近寄らないでよ！」
　駆け寄ってくる二つの影に、さつきはびしりと言い放つ。
「……それ以上、寄ってこないで」

　息も荒く、肩を揺らすさつき。制服も肌も所々で焼け散り、再生の兆しを見せているとは言え、
あの愛嬌のある顔立ちは見る影もない。
　だが、それでも―――さつきは折れない。

「わたしに、なんの用？　"交渉"とか言っていたっけ。そんなの、してどうするのかな。
わたしは、誰とも話し合う気なんて無いよ」
　さつきはよろり、と上半身を起こした。未だ下半身の感覚はない。
「それとも、さっきの火柱みたいに―――わたしを狩るつもり？」

　あの、火柱。今は注意を逸らしてくれたようだ。
　ならば、今のうちに逃げなければ。

「……もし、そうなら」さつきの口元から覗く、牙。「わたしも容赦無し、だよ」

494 名前：長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg ：2005/08/02(火) 01:30:57

>>480　vs佐々木小次郎

　タイムラグは一切無かった。
　剣を執る者が二人いるかのように、飛燕の剣は完全同時に軌跡を描いた。

「な――ッ！？」

　驚愕の呼気を洩らす余裕も惜しみ、未発に終わった刺突の刃を捨てる。
　一本では足りない。戦闘を勝ちに終わらせんとする場合、彼我の戦力差は一対三を揃えるの
が戦場の鉄則だ。即ちこの場合は――


「カイヤッ！！」


　両手から光芒がまろび出た。先ほどと同じく暗器術、だが数が違う。
　片手に束ねて三本ずつ、玉散る刃は計六本。
　これは最早尋常な剣術ではない。肉食獣の爪に相当し、それを上回る速さ且つ鋭さを備えた
邪法剣であった。

　断鉄の勢を以って、虎蔵は左右の六刀を薙ぎつけ、薙ぎ上げる。
　一にして二なる必殺の剣閃を、凶鳥の如き雄叫びが迎え撃った。


【長谷川虎蔵　山門前】

495 名前：遠坂凛 ◆Rin/.ruSTE ：2005/08/02(火) 01:32:15

>492追記

【石段下】

496 名前：―完全で瀟洒な従者―　十六夜咲夜 ◆M6sKnivesI ：2005/08/02(火) 01:33:46

（>>490　本尊へ）

497 名前：東方仗助：2005/08/02(火) 01:38:05

>>483

「ソイツは「アリ」だな……」同じように階段を上がってきた青年を一瞥する。「カビ」に浸蝕され
てはいない。「……オーケー……そいつを採用だ。これが「スタンド」なら――」

　言い終えるよりも早く、爆音がした。
　床が破裂した(、、、、、、)。
　盛大に木片が舞った――地面から人間が飛び出してきた。
　――「スタンド」。
　仗助の身体は――精神は即座に反応する。
　クレイジー・ダイヤモンド――仗助の精神のヴィジョン。力ある概念の形。
　二メートル以内なら、弾丸よりも早く行動するその「人形（ひとがた）」の拳が、飛び上がって
きた人影を殴り付ける。驚愕する。殴って――あろう事か、不意打ちの形になる仗助の拳をす
ら、人影は受け止めていた。衝撃こそ殺しきれず、そのまま着地――しない。地面が融解し、
ドロドロと溶けるように潜っていく(、、、、、)。

「――スタンドならヤベーな……「一人」じゃねぇ……コイツ等、最低でも二人いるぜ……！」

　言って、周囲を見回す。警戒する。そして。
>>490
　新たな侵入者に、頭を抱えた。

「何かも何も……グレート、ヘヴィに最悪だ」
　

498 名前：木島閑音：2005/08/02(火) 01:38:15

>>486

閑音の狙いは正確だった。
呆気無いほど簡単に、ナイフは学ラン男の心臓を貫く。
より確実に止めを刺すために、閑音は刺さったナイフを捻り、次いで引き抜く。
これだけ完全に心臓を破壊され、その上出血しては、死は免れないだろう。
閑音は今度こそ、己の勝利を確信し―――



「受け取れよ…なァ？」



耳元で、学ラン男が囁いた。

（！！　こいつ、まだ―――）

危険を感じて閑音が飛びのくのと、男の全身から猛烈な焔が巻き上がるのとが同時に起こる。
急激に膨れ上がった焔は距離を離さんとする閑音をも飲み込んで、天をも焼かんばかりに膨れ上がった。
境内裏の戦場が一瞬にして真っ赤に染まり、そして―――


炎が晴れたとき、木島閑音の姿は未だそこにあった。
ただし、先程と全く同じ姿ではない―――レザージャケットを脱ぎ捨て、下に着込んだ桃色のタンクトップが露になっている。
顔は黒く日焼けしたようになり、あちこち煤けてすらいた。

「全く―――最後まで、手こずらせてくれたわね」

技の直撃は避けたものの、一瞬で全身を焔で焼かれかけた為、レザージャケットを犠牲にせざるを得なかったのだ。
しかも彼女のレザージャケットは、彼女の持つ食器―――ナイフやフォークを仕舞ってある、いわば武器庫のような物。
つまり閑音はたった今、その武器の殆どを失った事になる。

そんな悔悟の念も篭めて悪意たっぷりに閑音は捨て台詞を吐き、残った焼死体には眼もくれず周囲を見渡す。
残った装備はカジュアルパンツの方に仕込んでおいた予備の発電装置つきフォークと、銀製ナイフが三本づつ。
そして焼失寸前にジャケットから抜き取った三本ほどの冷却用フォーク……これが全てだ。
これだけの装備で『銀刀』や他の吸血鬼を食べ切れる、、、、、自信は正直言ってなかったが、
今この状況で容易く引くわけにも行かなかった。


「―――『銀刀』。どこへ逃げても無駄よ。必ず追いかけて、いただいて、、、、、やるわ―――」

499 名前：東方仗助：2005/08/02(火) 01:38:23

（場所：本尊）

500 名前：笑石 ◆EMISHIvcMk ：2005/08/02(火) 01:50:10

>>476
>>492
灰となり、塵となり、やがて空となった吸血鬼の屍を見遣ることもせず、笑石は山門を見上げる。
雑魚を一匹始末しただけで、まだまだ終わってなどいないのだ。
そこまで思考した段階で、『感知』に一つの反応があった。寺から降りてきたものではなく、新た
に現れた気配だ。そちらへと眼を向ける。
そこにいたのは、赤い、夜闇を拒絶するような色をした、一人の少女だった。

――――人間？　いや。
「迷い出たか亡霊。盆にはまだ早いぞ？」

笑石の視線は少女から外れ、傍らに浮遊する、一つの霊体に向けられていた。
少女と同じ色の、苛烈なまでに赤い色をした青年の霊は、少女を護るようにそこに在った。
あの人間に憑いているのか、笑石はそんなことを考えた。確かに、少女と霊体の間には、何某
かの『縁』が見て取れる。
なら、絶ってしまえば良い。簡単なことだ、あの亡霊を斬るだけで済む。

「死した者ならば、相応に大人しくしているが良い。俺の手で六道へと還してくれる」

その宣言と共に笑石は、いつもしているように眼前の化物へと斬りかかった。

【石段下】

501 名前：戦士長・火渡(M)：2005/08/02(火) 01:50:45

>>489　メスドラーマ・エルムドア

炎を掻き散らした剣閃を放った鎧姿の男。
「そのトラウマ(怒り・哀しみ)、神や宿命に向けられていたのならばやりやすいのだがな…」

「生憎だが、俺は神とか宿命とか言うモンを信じちゃいねえ。だから恨みさえしねぇ」
彼の言葉に、一息に炎を呼吸し。
「俺の居る世界は不条理が服来て歩いてるくらいじゃねェと到底生きてゆけねェのさ」
半分ほどの長さになったタバコを握り潰す。

「―――で、テメエは一体どんな御託を並べてくれるんだ？」
左手の炎を両手で揉み解し、両手に分裂させる。

「思い知らせてやる、”人間の限界”をなッ！」

―――限界、人間の限界と来たか。
変わり映えのしねえ摺り足で距離を詰めて、か。教科書通りにも程が有る。

「そんなモン、テメエ如きに教えてもらう必要はねェな……」
闘争本能は静まったわけでは無い。むしろ先程より燃え上がっているくらいだ。

「―――俺と苦楽を共にした同胞の一人に、俺と共にどうしようもない不条理に自分の限界を思い知らされた奴がいる」
上着を脱ぎ捨て、地に放つ。
「あの日以来、俺は不条理を不条理でねじ伏せる戦り方を身につけ、
　奴は―――人間の限界を超える為に自らを鍛え、全てを守る戦り方を身につけた」

そして、上着を火種にして着火する―――！
「テメエの言う“人間の限界”なんてモンはとっくに底が知れてるんだよッ！
アイツが越えられたものに、何をどう怯えろってんだ！」
僅かな火種では有るが、火炎同化の強化には充分な炎。

「来いよ、チマチマしたのは好きじゃねェんだ」
拳は固めた。さぁ、この一撃で黙らせてやる。

【火渡　境内裏の池に通じる道】

502 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/08/02(火) 01:52:32

>>490　十六夜咲夜

　雰囲気にそぐわない、何処か脳天気な声が聞こえたのは、ちょうどそんな時だった。
　……なにかあったの、と来た。

「……まあ、簡単に言うと絶体絶命大ピンチ、ってことになるんだが。
　そちらも……その、迷い込んだ口か？　だったらおめでとう――
　多分、この辺で起こってることの中で、一番の貧乏くじだ」

>>497　東方仗助

　突如として地面から繰り出された一撃だが、今度は幾分、冷静にそれを見ることが出来た。
　あれはなんだ、なんて間の抜けた質問はしない。
　あれはなんだ？　そんなもの――敵以外の何がある。

「二人――つまり、こんなどうしようもないのがほかにもいると。
　最高だな。今夜は大盤振る舞いだ」

　下に降りることは出来ない――それはつまり、置いてきた商売道具を取りに行くことすら
出来ないと言うことだ。
　そうなれば、俺に残された武器はこの手の中の拳銃、そしてその中に込められた銃弾6発
のみ。シチュエーションとしては、これ以上ないぐらいに過酷だ。

（場所：本尊・犠牲者増速中）

503 名前：葛城ミミコ ◆BBB.k09/yM ：2005/08/02(火) 01:53:47

>>493　弓塚さん
コタロウ君と二人で、満身創痍の彼女に走り寄る。
吸血鬼（ブラック・ブラッド）の再生能力もあり、徐々に回復しているのは分かるが――消耗は眼に見えている。
早く救わないと――そこへ。

＞「近寄らないでよ！」
＞「……それ以上、寄ってこないで」
まるで鞭打つような、剣呑な響き。思わずあたしもコタロウ君も、身をすくめ、足を止める。

らんらんと輝く赤い眼は、警戒の色をあらわにしている。
落ち着け葛城ミミコ、交渉はまず相手の心を解きほぐすことから――

＞「わたしに、なんの用？　"交渉"とか言っていたっけ。そんなの、してどうするのかな。
＞　わたしは、誰とも話し合う気なんて無いよ」
＞「それとも、さっきの火柱みたいに―――わたしを狩るつもり？」
＞「……もし、そうなら」「わたしも容赦無し、だよ」

……これが、本当に『転びたて（アンダーイヤー）』の眼光なのか。
少なくとも特区でいつも疲れさせられている、一山いくらの吸血鬼のチンピラなど問題にならない。
人間としての原初の恐怖が、胸のうちをかきむしる――――だが。
「……黙りなさい！」

……逆に一喝する。
ジローさんやセイさん、ケインさん、ゼルマンさん。それにカーサ。
こちとらいずれ劣らぬ歳経た 古 血（オールドブラッド/rt>）相手に、一歩だって引いてはやらなかったのだ。
いまさら何処の力ある血の直系だって、怖がってなどやるものか！

「まずはウダウダ言う前に、傷を治すほうが先でしょうっ！
　衣食足りて礼節を知る。まずは傷直すのに専念してっ」

そうぴしゃりと言い切り、

「コタロウくん、バウワウから血液パック出して」
「うんっ」

血液パックを放って寄越す。
ジローさんのお弁当用だったのだが…構うもんかっ。

「とりあえずそれ、おいしくないかもしれないけど。
　お腹ふくれて落ち着いて、それから話を聞いて頂戴っ」

………これで、落ち着いてくれればいいのだけど。

504 名前：チョコラータ（M)：2005/08/02(火) 01:55:38

>>497

「”旅行”という行為に価値見出すのは人間だけだ……」チョコラータは一人ごちる。「”新しい
場所”や移り変わる景色を見ているだけで、「人生に飽き尽くした」人間でもない限りは”快感
の情が湧くものだからな……」

　ヘリの位置を下げる。
　状況は快調だ。セッコは優秀だ。人は死んでいる筈だ。
　素晴らしい。
　チョコラータは至ってご機嫌だった。

「だが……”動いている気配”が多いのは解せないな……おれの「カビ」を受け付けない”人
間”が居ると言う事か……？　セッコに任せておくだけでいいのか……？　興味深いなァ、こ
れはスゴぉ〜〜〜く興味深いじゃあないか……」

　射程は山全域。
　カビの効果は生命の死滅。
　ヘリの高度を限界まで下げると、森林を探った。
　着陸する広さのある平野を確認する。

（セッコに任せておく……それも一つの方法だ――だが）

　ホバリング音が止む。
　ハッチを開け放ったチョコラータの視界に、巨大な寺院が移った。

「”観察”は重要だからなァ〜〜〜〜ッ！」

（ヘリ→着地：寺院を見渡せる平野「スタンド効果継続中」）

505 名前：葛城ミミコ ◆BBB.k09/yM ：2005/08/02(火) 01:58:44

>>503補足。
（場所：柳洞寺裏手、池の近いエリア）

506 名前：アサシン：佐々木小次郎：2005/08/02(火) 02:00:50

>>385 >>396 >>426 >>436 >>450 >>480 >>494　長谷川虎蔵

　燕を斬った。
　その賜物か、風も水も斬れる様になっていた。
　そのものを斬るのではない、流れを斬る。
　男は剣士として夢想の域に達していた。

　次に何を斬るか……男は考えた。

　………

　………

　人を斬りたい、それも自分の剣を存分に披露出来る互角の相手を。
　だが、それは叶わぬ願いだった。
　名も無き剣士の挑戦を受ける者等、居はしなかったのだ。


　虎蔵の猛禽の爪がアサシンの二筋の死線を迎え撃つ！

「ぬっ……！」

　きぃぃぃんと一際甲高い音がして、両者が弾かれた。

「……嬉しいぞ、生前はお前の様な者と死合う事等到底出来る身分ではなくてな。
　こうやって再び幽世から無為に呼び出された事を最初は呪ったものだが、
　これなら呼び出された甲斐があるというもの」

　だが、とアサシンは言葉を続ける。

「確かに二の剣に対して複数の刃で挑むのは理に叶う。
　しかし、人の手は二本しかない。本来の燕返しは三の斬撃から成る。
　先のは足場が悪く、二の斬撃しか放てなかったが………」

　………今、二人がいる足場は先ほどの攻防より広い。
　再び、アサシンは秘剣の構えを取り、一気に虎蔵の方へと踏み込む！

「―――――――いざ」

　決着は一瞬！

【佐々木小次郎、長谷川虎蔵　場所：山門前】

507 名前：エリ・カサモト ◆SV001MsVcs ：2005/08/02(火) 02:01:39

>>491

　物陰から伺っていた「武者＆僧兵タッグｖｓ閃光サイキッカー」の決着がついた。

　僧兵が武者を掴んでサイキッカー目掛けて投げ、投げられた武者はサイキッカーの脇腹に刀を食い込ませたのだ。


「ああ、アレは死んだわね」
　観戦サイドだから言えることをしれっと言って、さて次はどうするか…と思案しようとしたところで、

　サイキッカーの身体を光が包んだ。

　そして光の濁流とでも言うべき形となって、僧兵と武者を襲う。

「…え？」

　見物料代わりに一緒に連れて行く、とでもいうのか。
　光の余波ともバックファイアともいえるものが、こっちへ…来た。

「ひえぇぇぇっ！？」
　物陰どころか戦車の装甲すら遮蔽物になるか怪しい威力の余波が迫る。

「だあああああ！！！」
　180度回答全力ダッシュ。

　背後で身を潜めていた物陰が消えていく。
　直線では逃げ切れないと右へ思い切り飛んだ。
　炸裂する余波がアタシの身体を吹っ飛ばす。

　吹っ飛ばされて…土の上に転がった。

「っは……！　あ、づ…ぅ……」
　どうにか、まだ生きてるらしい。

（現在位置：本堂付近裏手より）

508 名前：千鳥かなめ ◆Kana/lWMBI ：2005/08/02(火) 02:04:58

>>490
メイド服の女の子が来た。
しかも、間抜けに声かけられた――やばい！


「上に、下にいるとかびにやられる！
　それと、上空に敵一人！」

端的に情報を渡す。
ただの女の子があたし以外にもいたってのは誤算だけど……何とかするしかない。

「何とか、する……」

呟きながら汗をぬぐう。
緊張もあって喉が渇いた。飲みたいが、まさかここで飲むわけにも行かない。
そして――

>>483　>>497

――何が起こったのかわからない。
ただ、何かが攻撃してきて、それを東方くんが守ってくれたらしい。
ますますもってやばい。下にまで敵がいる……もう、待てない！

「燃やすわよ」

再び、端的に事実を告げる。
少なくとも、ここで床を燃やせば、下にいるやつは床の上の炎でとじこめられるはず。
それに、ここから逃げなきゃいけない。そのための、「道」を作る必要もある。

「まずは……」

マッチをひと刷り。
けど、これだけではいくら石油をかけてあるとはいえ、この巨大な本尊を燃やせはしない。
だけど、この催涙スプレーにこれを近づければ……

「昔からの王道だけど、即席火炎放射器のできあがりってワケよ！！」

スプレーから噴出するガスは炎となり、この巨大な仏像を包み込む。
枯れきった木製の仏像は、あっという間に燃え上がった。
そして、最後の仕上げは……

「うりゃああああああっ！！」

全体重を込めて、仏像を蹴りこむ！
年月で朽ち、そして今また炎に焼かれた仏像は、既にその自重に耐え切れなくなってきていたらしい。
あっさりと基部からへし折れ、本堂の出口の方向に倒れこむ。

――今あたし達が立っている位置から、出口のおよそ３メートルほど手前まで一直線に。
しかも、今あたし達がいる位置より高い。
炎に包まれたこの本堂に、今まさに出来た「炎の回廊」。
さあ、これで、

「これで道が出来たわよ！！
　このホトケさんの背中つたって、一気にこの＜カビ＞のないとこまで逃げる！
　……みんな、やれる！？」

509 名前：千鳥かなめ ◆Kana/lWMBI ：2005/08/02(火) 02:05:17

>>508
(場所：本堂)

510 名前：セッコ（M)：2005/08/02(火) 02:07:06

>>502

　床を彫り抜ける。
　ずるりと顔を出すのは本尊真正面――「カビ」の侵食区域だが、セッコにそれは無関係だ。
生命全てを食らう「カビ」はスタンドだが、セッコは「スタンドを身に纏う」スタンド使いである。
　故に。

「テメぇ〜〜〜よォォォォ〜〜〜」カビの浸蝕区域に平然と顔を出した彼は、「うぶな事……」

　本尊の全員を睨み据えるように床から這い上がってきた(、、、、、、、、、、、)。

「うぶ……じゃなくて……鯖……違う……鯔……――テメェェェェェッ！　今「味なこと」とか言
ったろォォォォなァァァァァ！　知ってんだよォォォォ……「国語の教師」か、テメーは！」

　視線は「スタンド」を叩き込んできた長身の男から――銃を構えた傍らの男へ。
　「数」が多いと言うのは、然程の問題ではない。
　セッコにとって、それは問題にならない。
　瞬時に溶け込んだ。地面に溶け消えた。
　一秒数メートルの速度で地面を掻き取り、目標の真下へ。

「そこに居るんだろォォォォォォォッ！　テメーはッ！」

　上昇は一瞬。
　銃を構えた青年の背後から、跳ね上がるピラニアの如く。
　セッコの指先が頭部に振り上げられた。

(本尊)

511 名前：猫アルク：2005/08/02(火) 02:14:53

・・・・・・・・・・・・にゃ？

512 名前：メスドラーマ・エルムドア：2005/08/02(火) 02:15:18

>>501
＞「そんなモン、テメエ如きに教えてもらう必要はねェな……」

＞「テメエの言う“人間の限界”なんてモンはとっくに底が知れてるんだよッ！
　　アイツが越えられたものに、何をどう怯えろってんだ！」

＞「来いよ、チマチマしたのは好きじゃねェんだ」

「やはり…な、貴様はそう言うと思っていた」

私が人間だった頃にルカヴィを前にしたとしたら、同じことを言うだろう。
だが、そのルカヴィの知識と力を得た今なら

「だが、”今の”私の前ではそれすらも戯言だ」

と言える。

人間の常識で考えれば、睨み合いの持久戦になるか？
それとも、激しく打ち合う総力戦になるだろう。
　　　―――だが、私はもはや人間ではない。人間のルールに従う義務は無いのだ。

「行くぞッ」
まるで玉砕を望むかのように、一直線に火渡に向い突っ込んでいく。
その姿は、まるで先ほどの吸血鬼の悪足掻きのようだ。
しかし、私と奴とは違う。２、3歩駆け出した後、すかさず一つの魔法を発動する。

「ダテレポ」

私の姿は時空のゆがみと共に虚空に掻き消え―――
　　　　　　　　　　　―――それと同時に、火渡の真上に具現化した。

513 名前：猫アルク：2005/08/02(火) 02:15:30

もしかして………
あちしだけ？
あちしだけかにゃーーー？

どこぞのシナリオもない路地裏ついんついん吸血鬼なんて、問題外！
あちしが。このあちしこそがーーー




型　月　正　ヒ　ロ　イ　ンとして、誰の挑戦でもうけちゃるにょにゃーーーーーーーーーーーーーーー！！

　　　　　　　　　　　 _,,.r:';´<,i
　　 ＿_　　 _,,..-―:''''''''": : /　<;i
. i'´;,;,;,_: `''": : : : : : : 丿L: : `､i''i`
　'i,'''7　`i: : : :.:i'､: ::i､: :^: : : : :`<
.　 `､∧/ : ;,;,;,;i,,,,ヽi,r '´|￣`ヽ: `､
　　　`'7: f´　 |　　 ii　　!　　.ﾉ:::..r'´￣`ヽ
　　　 ,!: :ヽ ＿__ ,ノ `ー┬ ´i:::...i　　　　　!
　　　,!: .: :.:i,　　`┬'´`T´　 ,!r.､ゝ　　　 .ﾉ
.　　 i:.::;;; .::::`.､　　`ー´ _,ノ'''´k''´`ー'''´
.　　 ﾚ'　V´`'v'ヾ;'''k'-''´i,´　　　i
　　　　　　,r''''´i´真　　`､　 'i,　__,,,!
. r'´￣`ヾ´i,　　!`､型` 、'i´
.i　　　　　! .レ'7　 `､ .月 `､!
.ヽ　　　,ノ　　 i＿＿_`､　代 `､
　　￣　　　　　ヾ;;::::::::::::`:､ 表./
.　　　　　　　　 ,! i`'''''''''''''´i`Y
.　　　　　　　　 ! i　　　　　 ! i,
　　　　　　　 _,,! .i　　　　　 i　!__
　　　　　 ,／　,／　　　　　 ヽ､　`ヽ､
　　　　,r"__,／　　　　　　　　　 `ヽ 、`､
　　　　￣　　　　　　　　　　　　　　 .￣
　

514 名前：猫アルク：2005/08/02(火) 02:16:22

>>513　猫アルク


って・・・・・・・・・・・・　な、何にゃーーーーーーーーーーーーーーーーーー！！！！！！！！！



（残虐シーンにつき、遠くからのイメージでご容赦ください）







　　　　　　　　　　　　　　　（ﾉﾟ」ﾟ）ﾉ　ぎにゃー
　　　　　　　　　　　　　　　　 |ﾐ|
　　　　　　　　　　　　　　　　//
　 　 　 　　　　　　　　　　/　 /
　　　＿／ｸﾗﾘｽｶｰ＼_　/　/
　E=└-○--○-┘
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣

515 名前：猫アルク：2005/08/02(火) 02:17:11

>>514

（＊でも、やっぱりさりげにズーム＊）

　　　　　　　　　　　　/ｱﾙｸ∧
　　　　　　　　’；┼l| #)´Д）’；.　こ、これってまるっきり「ナ（全略）───」じゃないにょかよう────
　　　　 　　　 　l|l l|l∴ つ つ
　　　　　 　　　|　|l | |’,；ヽ ヽ_
　　　　　 　　 ,| ｌ ┼| 　/ヽ＿）
　　　　　　 　 |　| 　|.し'




こっそり推奨BGM
ttp://www2s.biglobe.ne.jp/~circus/nanicolle/neko.swf


運転手・談

「あれ、なにか轢いた気が……ってなんでげーむおーばー？　うそ？　なっとくいかない！もう一回勝負ーー！」　

516 名前：猫アルク＆クラリス（M)：2005/08/02(火) 02:18:33

猫アルク＠月姫　VS　クラリス＠シティコネクション・ロケット

───痛み分け────

クラリス：「何それ、死なす！！超死なすーーー！！コンティニュー。絶対、コンティニュー！！」

ムリ。続きません。永久に。



　ｽﾃﾎﾟﾃﾁｰﾝ

レス版纏め　>>511　>>513　>>514

にゃー！思い上がるにゃよ人間（ヒューマン！）　ｷﾞｬﾌﾝ。　　

517 名前：―完全で瀟洒な従者―　十六夜咲夜 ◆M6sKnivesI ：2005/08/02(火) 02:19:20

>>497　東方仗助
>>502　レイオット

最悪？
貧乏くじ？

>>508　千鳥かなめ
「上に、下にいるとかびにやられる！
　それと、上空に敵一人！」

……なるほど、それは確かに最悪な貧乏くじね。
カビに殺られるなんて、ぞっとしない。

状況把握終了。
私は別に迷い込んだわけでもなければ、ここで単独行動をしようと言う気もない。
しばらくは、あの三人と行動をともにしましょうか。
さて……

目の前で、特に気を吐いている少女が手持ちのものを利用して火をかける。
なかなかの機転、と思う間もなく

本尊けっ飛ばした。

「……大した行動力ね、あなた」

半ば呆れ気味に、けれども微笑みつつ。
結構、新鮮ね。こういうのも。

「ええ、問題ないわ。
　こう見えても、身体能力には多少の自信があるし」

そう言って、駆け寄る。
一蓮托生などと言う気はない。
けれども、少しの間は……ともにやってみましょうか。

518 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：2005/08/02(火) 02:20:15

>>503　ミミコ

　まず、傷を治すのが先決。そう怒鳴られた。さつきの人生において、人間時代にまで
遡っても、誰かに怒鳴れたコトなんてなかった。
　唖然と口をあける。
　二人は自分の正体を知っているのだろうか。

　街を徘徊する殺人鬼。とても悪い人殺しなのに。
　あの火柱にこんな目に合わされても、ある意味しかたがないと言うのに。

　さつきの驚きはやがて、反感へと姿を変える。
　自分を差し置いてこれ以上勝手に状況を進めさせるなんて、させるわけにはいかない。

「―――わたしは、一人でやれるもん。誰にも頼らず、一人で生きてけるもん」

　放られた血液のパック。思わずさつきは、眉を顰める。まさか自分に、これを吸えと。
今まで散々、新鮮な食べ物ばかりを食してきた人間に、カロリーメイトを与えるようなものだ。
　それは侮辱に当たらないのだろうか。

　だけど、身体が渇いているのもまた事実だった。

　これ以上、近寄らせないよう警戒の視線は離さぬまま―――血液パックに手をつける。
　ストロー突き刺し、憮然とした面持ちで吸った。冷たく、無機質な血。マズかった。
　しかし、それでも渇きは癒える。再生速度もこの調子なら速まりそうだ。

「……それで、何なの。どうしてわたしに構うの」

【本尊裏　池へと至る途中】

519 名前：チョコラータ（M)：2005/08/02(火) 02:20:19

>>494>>510

　妙だ。
　双眼鏡を覗いていたチョコラータは、元々細い目を更に細めた。
　視界、山門付近に映るのは、未だ活発に動く二組だ。
　観察は重要だ(、、、、、、)。
　何故この二人が動いているのか？
　何故「カビ」が生えていないのか？
　興味は付きない。
　興味が湧いてくる。

「グリーン・デイ……」

　スタンドを一旦、解除する。
　状況を把握しなければならない。
　寺院にはセッコがいる。
　観察だ(、、、)。
　

520 名前：チョコラータ（M)：2005/08/02(火) 02:20:33

（森→寺院）

521 名前：アーチャー ◆LjUStice7U ：2005/08/02(火) 02:23:04

>>500
「――――――っ！」

　口上と共に落ちてくる刃を、即座に投影した白の短剣、陰剣莫耶で弾き返す。

　戦う理由など問う必要も、つもりもない。
　サーヴァントとは兵器と同義。主の剣となり、盾となり、敵を殲滅する為だけに存在するものだ。
　眼前にいる敵の事情など知る必要はない。
　背後にいるマスターが敵と認識するならば、あるいは自分達に剣を向けてくるならば斬り伏せるだけ。

「生憎と、静かな死後など、とうに捨てた身でな」

　スタンスは無為とも取れる自然体。
　片手に鉈にも似た中国風の一刀を携えて対峙する。

　敵も自分も現世に於いての位置づけはそうは変わるまい。
　精霊にまで祀り上げられた霊同士。ならば、倒す手段もまったく同じ。
　即ち―――

「―――ふむ。同類か。
　物霊風情がよくも吼えるものだ。亡者を還すのは魔術師の仕事だろうに―――！」


　　　　　　　　　　　――――圧倒的武力による殲滅のみ。


　ゼロから瞬時にトップスピードまで加速する突進。
　手には二刀。白と黒の陰陽剣、干将・莫耶。
　緋色の外套が影となる速度を以って疾走しつつ、刃を振りかぶる。

　狙いは二点。
　左手の白剣は心臓部へ。
　右手の黒剣は頸部へ。

　僅かな時間差と共に放たれた斬撃は、
　アーチャーの名そのまま、弩から矢が繰り出されるかの如く、一直線に牙を剥く！



【石段下：笑石VS遠坂凛・アーチャー、戦闘開始】

522 名前：長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg ：2005/08/02(火) 02:29:23

>>506　vs佐々木小次郎

「手は二本しかねえからな。数が足りんのは、そら仕方ねーさ」

　稲光が走った。黒衣の男の周囲でである。
　青白い蔓（かずら）じみた光は繋がって輪を成し、凶相が形作る凄笑を浮き彫りにした。

「なら――補わないとなッ！！」


　雷光は強さを増し、分裂した。数は八個、形は球。
　忠・考・悌・仁・義・礼・智・信。本人には八徳など欠片もない癖に、使役するのは赤子の頭
は充分あると思しき八つの霊珠である。

「仁義八行、彼宿の霊玉、天風矢来の豪雨と成りて、撃って砕いてぶち抜け辣奸！　喝ッ！！」

　一息の呪言に号令され、射出される霊珠の群れにやや遅れて虎蔵も飛び出した。
　――それは三人いた。
　分身、と云っても実体はない。超高速移動の余禄である残像に過ぎないが、纏った殺気だけ
はどれか一つの真物と等しい剣呑さだ。

　殺空の大曼荼羅を描き抜いて飛び来る魔球は八個。
　何れが虚か実か、分け身三体が手に手に掲げた銘刀業物、占めて十六。
　珠が唸る、刃が光る。魔人の搾り出した攻勢の全ては、魔剣士へと殺到した。


「死に様、晒せぇ！！」


【長谷川虎蔵　山門前】

523 名前：源義経＆武蔵坊弁慶（Ｍ）：2005/08/02(火) 02:33:29

>>491　えみりお

―――――手応え、あり。
義経がにやり、と笑う。
芯から真っ二つとはいかなかったが、感触は確かに臓腑を断ち割るそれだ。
刀身から伝わる腑の生暖かさに、背の芯から愉悦が湧く。
この“鳥”、確かに仕留めたり。
だが、

「…が、何ィッ！？」

突如、骸同然の敵から膨れるように湧き上がる極光。
そう―――それは極限まで純な、極楽より差す光そのものだ。
違うのは其処に釈迦の慈悲はなく、閻魔のごとき無情な裁きを内包している事。
この奔流、白拍子が最大の業であるのは明らかであった。

「牛若様ァ！！」

義経の白い顔に青みが差す。
これは、直撃すれば確実に己を焼き払う。それこそ塵芥も残さぬほどに。
眼に宿る明らかな恐怖と焦り。すかさず刃を抜き離れようと蹴りを出す。

弁慶も同じく焦っていた。
極光は白拍子の前方、即ち己のいる地上にも向けられている。
何たる不覚。
照準の僅かな“ぶれ”が主君のみならず己の危機を呼ぼうとは。
主君が必死に間合いを離そうと試みる。
だが、それでは僅かに間に合わぬ。

――――これも戦か。
見事という他はあるまい。己と主君が獲物と見なした相手も此方と同じく
『狩る者』であったのだ。
ならば逆に屠られても詮無きこと。
それが戦（いくさ）というものであり、また醍醐味というものだ。

――――だが、このままでは終わらぬ！終わらせぬ！
己の全てを駆使し、末期の果てまで足掻いてこその戦なり。
その時、武蔵坊弁慶は神速の動きを見せた。
懐より取り出だした鉄球一つ。
それを手に構えたと思えば、既に狙いを定め打ち出している。
鉄球は外さず義経へ。
胴にめり込み、止まらぬ勢いで光の外へと僅かに押し出す。
それを確認する前に、渾身の力で前へ跳躍。



――――かくて熱波が蒸発を促し、光の濁流が蹂躙を為す。


「…ばぁかめぇ……片腹いたいわ！」

半分近く肉が焼け、骨の一部すら煤けて覗く。
それでも地に屈さぬは仁王立ちを為した男の意地か。
寸でのところで直撃を免れた義経もまた、
顔も含めた全身の半ばが焼け崩れ、異界の美醜を際立たせている。
太刀を杖にしての立ち姿は、明らかに並ならぬ手傷を証明していた。

「“鳥”にしてやられたわ…ヒョ、ヒョ…敵ながら見事なものよ。
　だが……勝ったのは我等ぞ」

血反吐を吐きながらも、義経達は静かに勝利を宣言する。
この死と隣り合わせの心地よき“風”。
これが、これこそが彼等の望んだ戦である。
源氏の兵どもは重い傷と裏腹に、魂に生気が漲るのを感じていた。

>>469　じろう

「さ、て…まだまだ宵の口よな」

義経が視線を向けるは、妖気を篭った濃霧を撒き散らして進む赤の侍。
次から次へと獲物と死が舞い乱れ、休む暇もない。
これこそが戦の真髄。
己が手傷を負ったとて、それが留まる理由になろうか。

義経と弁慶。
共に得物を拾い、ないしは構え、来る戦に備えて嗤う。
―――ああ、この流れる血と昂りなんたる心地よさであろう。

（場所：いまだ本堂付近）

524 名前：戦士長・火渡(M)：2005/08/02(火) 02:35:22

>>512　メスドラーマ・エルムドア

「やはり…な、貴様はそう言うと思っていた」

「だが、”今の”私の前ではそれすらも戯言だ」

―――なんとも不遜な言葉。
まるで自分は矮小な人間では無いとでも言いたそうなツラだ。

「ハッ、人間を捨てて見下してるつもりかも知れねぇが―――」

「行くぞッ」

こちらの言葉を切るように駆け出す鎧武者。
「テメエの不条理は―――」

「ダテレポ」
その姿が不意に掻き消える。

瞬間移動能力か。
目の前から、真正面から消えると言う事は出現する場所は背後か足元……そして、

真上だ。
――――勝ち誇った笑顔。気に入らねェ。

「児戯にも劣るんだよッ！！」
弓を引くように固めた右拳を後ろに引き半身に構え、

奴の斬撃をその身で受けとめた。

―――切り裂かれた俺の体から吹きあがったのは、鮮血ではなく火炎。
火炎同化の恩恵、それは周囲の炎を操作できるだけではなく
自身の肉体の火炎化による物理的ダメージを無効に(、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、)すること。

例え炎を切り裂いても、炎が消えるわけでは無いからだ。

断面から吹きあがる炎に照らされた驚愕の表情。そいつは飽き飽きだ。
驚きに硬直した相手を全力で殴る事は容易い。
最高のフォロースルーを伴った五千百度の拳と炎が、奴を境内の外まで弾き出していた。

【火渡　エルムドアをホームラン　境内裏手】

525 名前：千鳥かなめ ◆Kana/lWMBI ：2005/08/02(火) 02:36:30

>>510

本尊の上を走り出そうとした時。

＞「うぶ……じゃなくて……鯖……違う……鯔……――テメェェェェェッ！　今「味なこと」とか言
＞ったろォォォォなァァァァァ！　知ってんだよォォォォ……「国語の教師」か、テメーは！」

床から這い上がってくる――そう、まるで床などないように、浮かび上がってくる奴がいた。
こいつが――敵、もう一人ってこいつか！

狙いは、あのレイオットって人。
東方くんは……駄目、間に合わない。メイド服の人は戦力として分析できない。
つまり、彼を助けられるのはあたしだけ。

――どくん。

心臓が震えた。また汗が噴き出してきた。
人一人の命が、あたしにかかっている。あたしの行動しだいで、レイオットって人は死ぬ。
この重み。

それでも、やらなければいけない。

焦りと裏腹に、思考は冷静を保っていた。
＜ウィスパード＞の拡大する認識と思考は、時間すら止まっているように感じさせる。
実時間にすればわずかだろうその一瞬が、無限に拡大される。
その思考に追いつかない身体が憎い――が、ウィスパードとて一人の人間に過ぎない。
ないものねだりはできない。なら、やれることをやっていくしかない。
そう、思い出せ。考えろ、ソースケならどうするか。

左手のライトを捨て、銃を構える。
――銃はＴＶのように片手では撃てない。まして君のような女の身体ではな。

両手で包み込むように、花をそっと愛でるようにやさしく、しかししっかりと構え。
――反動を殺すために、脇をしっかり締めて撃つ。

電気銃だから反動はない――けど、狙いがぶれることだけは避けなければいけない。
――そうだ、そして狙うときは胴体を狙う。

あとは引き金を引くだけ。
けど、そこでまた弱気の虫が顔を出す。
本当にこれが当たるのか？　あんな化け物相手に、こんな護身具が役に立つのか？

……ううん、駄目。そんなことを考えちゃ。
もしこの状況、ソースケならどうする？
躊躇う？　いや、違う。あいつならきっと撃つ――こう言って！！

あたしは「その台詞」とともに、引き金を引いた。

『獲物を前に舌なめずり――三流のすることだな！！』


(本尊跡地)

526 名前：葛城ミミコ ◆BBB.k09/yM ：2005/08/02(火) 02:39:16

>>518
渡された血液パックを一瞥したあと。
憮然としながらも、弓塚さんはパックに口をつけ、血を飲み始めた。
パックがしぼむのに反比例して、傷だらけだった彼女の体の再生速度も速くなる。

＞「……それで、何なの。どうしてわたしに構うの」
彼女はパックの血を空にしたあと、あたしたちにそう問うて来た。
まだ警戒こそ解いてないが、先刻の神経過敏状態よりよっぽどマシな状態になっている。

無理もない、こちとら自己紹介すらまだなのだから。

「……そういえば自己紹介、まだだったわね。
　あたしは葛城ミミコ、吸血鬼と人間の共存の為に働く会社――『オーダー・コフィン・カンパニー』の者です。
　それで、こっちが――」

「ぼくは望月コタロウ。えと、ぼくはミミちゃんの護衛やってるんだ。正義の吸血鬼なんだよっ」
おどけるような脱力するような自己紹介かましてくれて、こっちの力まで抜ける――が、それはさておき。

「弓塚サツキさん、失礼ですけどあなたの事はちょっと調べさせてもらってました。
　ある方からのお願いでもあったんですけど――

　あなたはある日、突然吸血鬼になってしまった。
　そして――こうして、ろくに人間らしい生活も出来ずに苦しんでいる。そうですね？」

あえておためごかしをせず、事実をもって話をする。
これも交渉の際の、誠意の一つ。

「確かに、もうあなたは人間には戻れません。れっきとした吸血鬼なんですから。
　でも――人間らしい生活なら、また送ることができるんですっ。

　横浜沖にできた新興の水上都市――特区。　聞いたこと、ありません？
　あそこだったら、あなたでも普通に生活できるようになりますから。あなたみたいな人も一杯います。
　ちょっと苦労はするけど、でも、絶対普通の居場所は見つかりますから！
　あたしたち『カンパニー』も協力しますっ。だから――」

一気に切り出す。
ちょっと強引かもしれないけど、でも――あたしは間違いだと思うことは言っていない。
本心でぶつかる。これがあたしのやり方だ。

「一緒に、来てみませんか？」

一歩足を踏み出す。
魔眼も、とっさの暴力も、知ったことか。

そして――ゆっくりと、うずくまる彼女に、手を差し伸べた。

527 名前：遠坂凛 ◆Rin/.ruSTE ：2005/08/02(火) 02:42:29

>500 >521

剛剣――そう言って良いだろう。
それは明らかに人間の域を超越していた。
――――けれど、わたしのサーヴァントもその程度はとうに超えている。

弾かれる剣閃。
ランサーの奴より速いって事は無さそうだから、そう簡単には押し込まれないだろう。
応じて間合いを詰める後姿を見守り、

「でも、時間は掛けたくないのよ」

呟くと同時に指示を出した。
無論声には出さず、レイラインを通して。

『怯ませて一端距離を取って。同時に仕掛けるわよ』

と。


【石段下】

528 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/08/02(火) 02:46:33

>>508　千鳥かなめ

「……なんともはや、豪快なお嬢さんだことで」

　燃やされ、挙げ句蹴り倒された仏像を見て、呆れ混じりに呟いた。
　強い娘だ――姿も年齢も全く異なるが、その新お強さは知り合いの彼女を何処か連想さ
せる。
　だから――というわけではないのだろうが。
　何となく楽しくなって、口元に浮かぼうとしている笑いを、止めることが出来ないでいた。

「了解だ、お嬢さんたち。とりあえずは先に行ってくれ。
　どうやら――」

　言いながら振り返る。

>>510　セッコ

「……まだ、お客さんが残ってるみたいだしな」

　床下から、まるで其所が水面であるかのようにゆらゆらと顔をのぞかせる”男”を、正面の視界
へと納めた。

「……それを言うなら――」

　なにやら言葉が出てこないで悶々としている男に向けて、いつものように銃を向ける。

「――”味なこと”だろうがっ！」

　同時、銃声が轟いた。連続で二回。
　銃声というモノを聞き慣れない人間からすれば、一度としか聞こえないほどの連続だ。
　だが銃口から放たれた銃弾は確かに二発、まっすぐに男の頭部へと飛翔する――

　しかし、次の瞬間。男は現れたときと同じような唐突さで床下へと”潜水”。
　目標を失った銃弾は無様に床へと突き刺さるだけにとどまった。

「くそっ――」

　吐き捨てつつ周囲を索敵――今までの短い遭遇から考えて、奴には地面を水のように自
由自在に動く事の出来る”能力”があると仮定する。

　必殺を期した攻撃はターゲットの直下から、相手の視覚を付いて繰り出される一撃――

　>>525　千鳥かなめ

　銃声、というにはあまりにもささやかな音が、熱によって囂々と呻る大気を突き抜けて耳へ
と飛び込んでくる。

　――肉体が反応するには、それだけで十分だった。

　自動的――といっても良いタイミングで駆動した肉体は、下半身をそのままに状態だけを
翻し、同時に視覚に入力された敵影に対して、再度引き金を絞っていた。
　その間、僅かに一呼吸ほど――銃声と、手首に伝わる反動が、半ばトランス状態にあった
俺の思考を復活させた。

　男の身体から鮮血が飛沫く。
　放たれた45マグナム弾は、確かに目標を貫き、その肉体の一部を削り取っていた。

（本堂跡）

529 名前：エミリオ・ミハイロフ ◆EMILIozylo ：2005/08/02(火) 02:50:27

>>523源九郎義経＆武蔵坊弁慶
　身体が、地面に放り出された。受け身を取る事も出来ない。そんな力すら、僕には残ってなかった。

　血が流れすぎたせいだろうか、視界が一気に真っ暗になって行く。でも、耳だけは聞こえていた。

『……が……勝っ……は我……』
　細身の男の声が聞こえた。――そうか。あいつは、生き残ったのか……。

　終わったのは、僕一人だけだったらしい。

「……せめて……もう、一度だけ、お前の……鳴き声が……聞きたかっ……たよ……パト……リシア……」

　誰に聞かせるでもなく呟いた僕の声は、意識と一緒に急速に夜闇に溶け込んで行った……。

【エミリオ・ミハイロフ、死亡】

530 名前：望月ジロー ◆BBB.k09/yM ：2005/08/02(火) 02:52:39

>>484
コタロウ（とミミコさん）の気配を共感能力で辿りながら。
漏れ出す気配が物理現象に干渉して生まれる 眩 霧（リークブラッド）の白煙を身に纏い
時速200キロオーバーの世界を駆け抜ける。

そして――

>>523
通らねばならぬ、見ているだけで不愉快な師のまがい物。
そしてその、巌のような従者の居る領域に差し掛かる。
このまま普通にこちらに気付かれると通り抜けるのは至難の業だが――


>>491
見れば丁度あの不愉快な主従は
あの光の矢の射手の最後の一撃で、かなりのダメージを負っている。
ならば五体満足なときに比べても、通り抜けるのは実に容易い。


流石に技を繰り出している不愉快なまがい物と、
その従者の図体が、進路を一部遮る。
このままの高速だとぶつかりかねない。なら――！

「うりゃっ」

ちょうどこちらに向き直りきらず、脇腹をさらしているのをいい事に。
主を放り投げて隙だらけになっている大男――ムサシボーもどきと命名――
の脇腹に、力場思念を叩き込む。

……こっちは急いでるんです、通行の邪魔は事故の元ですよっ！？

ちょうど弾き飛ばした巨漢は主をも巻き込みながら、大きくよろめく。
さあ、さっさとここを抜けねば……！


そう、思ったところで。
コタロウと繋がっている“共感”から、好ましい意志がわずかながらに伝わる。
もしや、首尾よく話が進んでいるのでしょうか？
ならば――

「手土産に、このわが師への侮辱とも言うべきまがい物どもを成敗していくのも――悪くありませんね」
獰猛な笑みを浮かべ、足を止める。
そう連中に向かって聞こえるように韜晦しながら、私は銀刀を正眼にかまえた。

531 名前：チョコラータ＆セッコ（M)：2005/08/02(火) 02:54:54

>>525>>528

「どぉぉぉなってるんだァァァァァァッ！」

　腹から絞るような叫びだった。
　事実、絞った。身体を捩るようにして辺りを見回した。死体がない。ただの一体も死体は
ないし、そもそも「グリーン・デイ」の効果の痕跡が残っていない。
　観察は重要だ――が、これは予想外だ。携帯の短縮を押す。

「セッコ……聞こえるのか……セッコ……」
　セッコ――三度目の呼び掛けで返事は返ってきた。
『チョコラータ……チョコラータ……？』
「ああ、おれだ……セッコ、どうしたんだ、セッコ……どうなっている……」
『わかんねぇぇぇよぉぉぉぉぉ……なぁ、チョコラータァぁぁぁぁぁ……「敵」はスタンド使い
だ、って言わなかったよなァァァァァァァチョコラータァァァァァ！　撃たれた……血、血が
出てるよおおおお俺の顔をををををヴェロヴェロベロベロベロベロオオオオオ血が、ナメ
ても止まんねえぇぇぇぇ、止まる、アイツ――野郎！　野郎ッ！　チョコラータ！　チョコ
ラータの「カビ」を治してやがッた！　あの「スタンド使い」ッ！』
「落ち着けセッコ……「治す」スタンド使い……？　それがこの原因なのか……？」

　顎に手を置く。
　チョコラータは考える。
　「治す」能力者。
　そう――ならば。

「帰って来いセッコ……ここからは一緒だ……おれが再び！　グリーン・デイを発動す
るッ！　視認できる距離でッ！　確実に始末するッ！」
　

532 名前：アサシン：佐々木小次郎：2005/08/02(火) 02:59:14

>>385 >>396 >>426 >>436 >>450 >>480 >>494 >>522　長谷川虎蔵

　迫り来る十六の斬撃、射抜かんと向かってくる八の魔弾。
　締めて二十四の死がアサシンに向かってくる！
　迎え撃つは究極の一、燕返し！

「秘剣――――――」

　……そう、これが二十四『同時』ならば如何にアサシンとて防げようも無い。
　だが、一瞬でも時間差がある以上、そこに付け入る隙がある。
　燕は風を、空気の流れを感じて一瞬の隙に身をかわす。
　燕を斬る者が風を、空気の流れを、感じ取れない事があろうか。

　アサシンは今迫り来る死風を確かに感じ、そして

「――――――――――――――燕返し」

　一の太刀。

　優美な月光が魔弾を迎え撃つ！
　斬るものは魔弾ではない、アサシンが斬るのはそれらの魔弾の流れである。
　視界に飛び込んで来る三の魔弾、内１つが一の太刀に弾かれ、悲鳴をあげる。
　否、それだけに終わらない。
　弾き飛ばされた魔弾は他の魔弾へと方向を変え、二の魔弾、三の魔弾………と打ち落とす。
　更に弾かれた魔弾が向かうは他ならぬ主の虎蔵の心臓！

　二の太刀、三の太刀。

　稲妻の如き速度で虎蔵を迎え撃つ。
　その剣閃は先に仕掛けた筈の虎蔵より更に早く、その首を落とさんとす！


　刹那の交差、そして………！

【佐々木小次郎、長谷川虎蔵　場所：山門前】

533 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：2005/08/02(火) 02:59:59

　望めば、人並みの生活に戻れるコトだってできる。
　いまのこの、氷柱で全身を貫かれたような痛みから逃れ、不安に苛まれることもなく、
またあの頃のように、ぐっすりと眠れる毎日を過ごせる。
　それはいま、さつきがどんなに望んでも届かぬ夢。

　少女の、差し伸べた手。

　彼女は吸血鬼を否定しない。あの火柱のように、排除を望まない。
　優しさで包み込もうとしてくれる。

　少女は信用できる―――と、さつきは思った。根拠はない、が。
　彼女の言う楽園は現実にあり、そこでリハビリを積めば……



　さつきの頬に穏やかな笑みが浮かぶ。
　孤独な女吸血鬼は右手を持ち上げると、少女の差し伸べた手を

　払った。

　優しく、払った。
　そしてゆっくりと首を振る。

「……わたしは、行かない。行けないよ」

　―――だって、そこにあの人はいないから。

　ならば楽園などに用は無かった。
　元々、さつきの思う"あの人"の居場所は決して楽園などではないのだ。
　途方もなく昏い最下層。彼がそこの住民だからこそ、さつきはこの身体になっても
まだ希望を持てた。生きたいという意思を持てた。

　だからさつきは、楽園を拒んだ。

「ごめんね」そう、舌を出して謝った。

　飛びように跳ね起きる。火傷は八割方再生していた。
　二人を尻目に、さつきは駆け出す。

【弓塚さつき→池へ】

534 名前：―完全で瀟洒な従者―　十六夜咲夜 ◆M6sKnivesI ：2005/08/02(火) 03:01:52

>>510　セッコ
>>525　千鳥かなめ
>>528　レイオット

そう、敵は下にもいると言っていた。
言っていた、けれども。

……全く、外というのはこんなにデタラメだったかしら？
床下を文字通り潜り、奇襲を仕掛ける奴だなんて。
さすがの私でも、床をぶち抜くようなナイフは持ち合わせてはいない。

だが。
少女が、そして男が、一瞬のタイミングで銃――だったと思う――を撃った。
それはわずかでも、その一瞬は確かにダメージを与えていた。
その一瞬は。


――ありがとう、一瞬を作ってくれて。
それだけあれば、私には十分。

さあ――――時よ、止まれ。
そして私のナイフよ、舞え。






……そして時は動きだし。

床のそいつの、頭上わずかのところから。

二十を超える鋭利なナイフが、正に一瞬で、殺到した。


「お粗末様。あなたがね」

（時間停止使用）
（本尊あと）

535 名前：チョコラータ＆セッコ（M)：2005/08/02(火) 03:02:16

（チョコラータ−寺院付近、潜伏中）

536 名前：千鳥かなめ ◆Kana/lWMBI ：2005/08/02(火) 03:09:47

>>525

(――え！？)

一番驚いたのは、実は自分だった。
あくまでウィスパードの力が与えるのは知識。
たとえ思考速度が上がったとしても、身体がそれについていくわけがない。
なのに今回は、――思考速度に追いつくとはさすがにいかないが――身体が動く。
思い起こす。

あの時の、首筋のちくりという感覚。(>>449)
普段より、なぜか軽く動く身体。(>>483)
さっきから続く、この喉の渇き。(>>508)

――パズルのピースが、はまった。

いや。
それ以前に、あたしの力でこのでっかい像を倒せた段階で気づくべきだったのかもしれない。
明らかにあたしの身体能力は上がっている。
そしてこの状況が指し示す結論は、ただ一つ。

「参ったなぁ、もう」

ぽりぽりと首筋、そこにある二つの傷（・・・・）のあたりを掻く。
こういう時ばかりは、さすがにウィスパードの力が恨めしい。
分からなければ、あるいは幸せだったかもしれないのに。

(――ううん、逆か)

気づけたからこそ、できることがある。
残された時間は少ないけど。



――――おそらく、あたしは寝ている間に既に「咬まれて」いたんだろう。
そして、定番どおりにあたしも吸血鬼なった……。
やれやれ、って感じね。これで文字通りあたしも化け物ってワケか。
でもまあ、それで助かったともいえる。
吸血鬼としての身体能力がなかったら、多分あたしは真っ先に死んでただろうから。

けど、この力だっておそらく「同類」の中では弱いほうなんだろう。
新人の吸血鬼なわけだしね。
それでも、どんなに弱くても、力があればやりようがある。
どんなに弱くても、残された時間が少なくても、やりたいことをやることはできる。


>>534
後ろでは、肉を裂くような音がしている。
振り向くと、どういう手品か、あの「敵」に無数のナイフが突き刺さっている。
あいつも、メイドさんのナイフで完全に沈黙したと見てよさそうだ。
だからあたしは、声を張り上げる。

「行くわよ――外へ！！」

537 名前：エリ・カサモト ◆SV001MsVcs ：2005/08/02(火) 03:10:49

「いっ……たぁ…………」

　光の余波で吹っ飛ばされてギシギシいう身体を起こす。
　あちこちに擦り傷と打撲。骨折は……なし。

「ここ以上怪我する前に…離脱ね…」
　骨折り損のくたびれ儲け、という言葉を頭に軋む身体を引きずってアタシは山門の方へ移動を始めた。

（移動：本堂付近裏手から寺院付近まで）

538 名前：チョコラータ＆セッコ（M)：2005/08/02(火) 03:11:04

>>534

「とりあえずそこから移動しろ……セッコ……セッコ？」

　携帯を握っていたチョコラータの表情が時間を止めた。
　瞳孔が伸縮する。
　セッコ、セッコ、セッコ――数回繰り返す。

「……「治す」スタンド使い」

　境内の影で立ち上がる。
　標的は見付けた。
　実に。
　実に――興味深い観察対象だ。

（境内）

539 名前：葛城ミミコ＆望月コタロウ ◆BBB.k09/yM ：2005/08/02(火) 03:12:42

>>533
「……わたしは、行かない。行けないよ」


彼女は、あたしの差し出した手を――払った。
乱暴な拒絶ではなく、ゆっくりと優しく、悲しげな笑みを浮かべて。

そして彼女はあたしたちに背を向け、業火閃く戦場に姿を消していく。

「ミミちゃん……行っちゃうよ、サッちん。
　追わなくていいの？」
「……いいの。」

少しばかり、悔しさに唇をかむ。
だがあそこまでしっかりとした決意のもとの拒絶では、百万言を弄したところで彼女は納得しないだろう。
彼女にも、それなりの理由と強い意志が感じられたから。


「……しょうがないけど、これも彼女の意志なのよ。
　さ、急いでジローさんと合流よ！　仕事が失敗に終わった以上長居は無用よ！？」
「……うん、わかった！」

少々後ろ髪引かれるものはあったものの。
すっきりした敗北感を噛みしめつつ、あたしたちはジローさんの素へと向かう。

（場所：柳洞寺裏手→境内本堂付近へ）

540 名前：木島閑音：2005/08/02(火) 03:13:03

兎に角戦いの痕跡を追うこと。そうすればあの『銀刀』の居場所に必ず突き当たる―――
その一念から、閑音は火傷の痛む身体をなかば無理矢理に動かして、本堂―――とは言っても、
“元”本堂と呼ぶに差し支えない炎上っぷりを見せているのだが―――の表側へと回る。


果たして、彼女の目指す者はそこに居た。
最早見間違うはずも無い、紅いコートの吸血鬼の姿。
そして一方は……この本堂へ突入した時にも見かけた、怪しい風貌のサムライと巨大な僧。
ただし、その全身の半分以上をどこかへ持ってかれて、、、、、、いるようだった。
何らかの攻撃を受けたのだろうが―――常人ならば明らかに致命傷だ。
にもかかわらず生きているということは、何らかの化物には違いないのだろうが………


「……食べても不味そうね、あれは」

ポツリと素直な感想を漏らして、サムライと僧に対峙する『銀刀』を見やる。
あの二名の化物の実力は不明だが、見たところあの酷い状態で『銀刀』に勝利するのは難しいだろう。
ならば、『銀刀』が奴らを屠った後に手を出しても―――遅くはないし、むしろ妙な横槍が入らないだけ「食い」易くなる。
木島閑音がそんな思考に行き当たるのは、しごく当然の流れといえた。


（ま、精々頑張りなさい、『銀刀』。そいつらを殺ったら、次はわたしがあなたをいただくわ）

木島閑音：様子見。場所：本堂表側

541 名前：笑石 ◆EMISHIvcMk ：2005/08/02(火) 03:18:15

瞬く間に奔る、白と黒の閃光。
その二撃を辛うじて防ぎながら、眼前の亡霊へと言葉を吐く。

「同類だと？　笑わせるな。仏法と衆生の護り手である俺が、お前のような亡霊と同類であるなどと、天地が逆さになってもありえんことだ」

言葉と共に、腰だめの薙ぎ払いを放つ。大振りだが、しかしそれゆえに避け難い軌跡が、轟、という音をたてて描かれた。

「そして仏道を妨げる魔縁を殺すのは、そうあることを望まれた俺の責務だ。
亡霊も、鬼も、妖もその例は漏れん――――無論、お前もだ」
だから、殺す。笑石の思考は、どこまでも単純で、それゆえに救いようがなかった。その顔はあくまで、生まれつき模られたまま、決して崩れない笑みを浮かべている。

――――だが、笑石の崩れ得ぬ笑みの下には、焦燥が広がっていた。
先刻、血を吸う鬼を始末した時、全身に受けた小刀の攻撃。
千年という歳月が蝕んだ、己が身体の劣化。
今、二刀を受けた時、身体に走った衝撃。
そして何より、眼前の赤い男が持つ戦士としての技量に。鬼などとは違う、修練の末に培われた技術を相手に、侮っていては勝てぬと理解したのだ。

「疾く滅ぶが良い、魔性！」

眼前の敵へと専心する笑石の眼に、少女の姿は映っていなかった。

542 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/08/02(火) 03:19:42

>>534　十六夜咲夜　>>536　千鳥かなめ

　言われるまでもない――モグラ野郎の死を横目で確認しつつ、彼女らに続きようやく、
屋外へと抜け出した。

「……カペル、無事か？」

　はい、と帰ってくる彼女の声は、それこそなんの変化もない。
　それを聞いて改めて、ようやくいろいろと終わりそうだと実感できた。
　やれやれ、ようやくこのくそったれな夜も終わりかと、生暖かい空気を、胸一杯に吸い
込んだ。

　ふと思い出して、銃のシリンダーをイジェクト。残弾は二発。
　今夜は随分と経済的だと口調を浮かべて、まだ燃えさかっている寺院から距離をとるべく、
カペルテータを伴って足を進めた。
　

543 名前：笑石 ◆EMISHIvcMk ：2005/08/02(火) 03:21:49

>>541は>>521、>>527に宛てたレスで、居場所は『石段下』だ。

544 名前：長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg ：2005/08/02(火) 03:31:04

>>532　vs佐々木小次郎

　一颯の風が吹き過ぎた。


　その僅か前に起った事は、順番通りに書けばこうだ。
　玉突きの要領で送り返された魔弾は、過たず主人の左胸を貫いた。――虎蔵はふっと消えた。
　まやかしの残像だったのである。
　続いてたばしる殺戮の弧線にもう一人の虎蔵もも両断され――またもや消え失せた。

　残る一人、これこそ真の長谷川虎蔵と佐々木巌流小次郎はすれ違い――そして風が吹いたので
ある。
　鬼速神速にて揮われる鋼の一刀、それが生み出す斬戮の風だ。

　すれ違って止まらず、虎蔵は小次郎の背後数メートルまで駆け抜けている。
　斬撃を振り抜いた姿勢のまま、虎蔵は彫像のように立っていた。

　その時。
　どの刃風が切り落とした訳でもあるまいが、脇の木立の葉が一枚、はらりと落ちた。
　低い声で、長谷川虎蔵は吐き捨てた。

「――巌流島だったら、こっちが勝ってたんだがな」

　虎蔵の躯は前にのめった。ばらばらと地面に転がり落とす六刀の内、からくも一本に縋って
倒れるのだけは防ぐ。
　その首筋から胸にかけては、黒く大きい染みが出来、今猶面積を拡大し続けていた。


【長谷川虎蔵　山門前】

545 名前：東方仗助：2005/08/02(火) 03:33:32

>>534>>536>>542

「グレート……何やったんだァ、今の……」

　落ちた。
　「潜る」方のスタンド使いが地面を転がった。
　それで終わりだ。
　スタンド使いは動かない。

「”行く”……そいつはスゲー同感だけどよ……」

　走り去る全員を見送って、炎上する寺院に肩を竦めた。

「コイツはカタ付けとかねーと……」

　言うや、ガツンと一撃。スタンドで床を殴り付ける。
　物質の再生――存在の回帰。抉れた床が、焼け落ち始めた像が、壁が、破片すら伴って原型を
取り戻していく。巨大さ故に再生には数秒を要したが――それで、御終いだった。

「……”放火”で逮捕、なんて笑えねーっつーの」

　嘆息。
　辺りを見回す。全ては元通りだ。
　何もかも――何もかも。死体すら消え失せて、周囲には何もない。
　死体すら。

（……あれ？）

　寺院を後にする。

（なんか……妙じゃあねーのか……？）

（寺院→境内へ）

546 名前：源義経＆武蔵坊弁慶（Ｍ）：2005/08/02(火) 03:36:57

>>530

「ひょ、ひょ、ひょ…随分と強い侮蔑の眼差しを向けるのう。
　これはまた礼儀知らずな妖（あやかし）よな？」

持ち上げた太刀を八双に構え、言い放つは源九郎義経。
半ばまで醜く焼け溶けた面持ち、ほぼ死に体でありながらこの余裕。
畜生の下、外道の底まで堕したといえど、流石は源氏の将であろうか。
先ほどまで荒かった息遣いも、もはや平素と変わらぬそれへ戻っている。
戦の法悦による痛みの麻痺と歴戦の武士（もののふ）たる気勢がなせる業であった。

「手土産だと…？　ぶぅわかめ！
　それは此方の台詞よ。
　ぬしが持つその銀（しろがね）の太刀、手土産に頂戴してくれるわ」

無防備なわき腹に強念を叩き付けられど、堪えて嗤うは武蔵坊弁慶。
その狂える眼差しは赤き衣の妖のみならず、それが持つ銀の太刀へも注がれている。
あれぞ、百本目の刀に相応しき業物よ―――――
もはや主君と同じく満身創痍である筈の身に痛みはない。苦しみもない。
ただ、戦への渇望と『太刀』への黒い情念あるのみ。
拾った棍を諸手で構え、いつでも打ち込める体勢に入っている。

>>540
眼前の相手以外は目に入らぬ。
横槍あれば勝手に体が動いて屠る、既にその域へと達している。
外法と妄執の極みなれど、今の彼等は喪神にして無想。
熱く血走る両者の双眸。全身の肉がみちみちと軋みを上げる。
この上ない気迫が体躯に満ち、活力と化す。

「――――では」
「――――これより」

摺り足で義経は左に。
同じく摺り足で弁慶は右に。
徐々に挟撃の布陣へ移り――――そして。


「「殺して進ぜよう！！」」

撃に激に撃に激に重ねて激に―――――！！
一つ一つが神速にして精緻、そして必殺。
二方より渾身の力を宿した怒涛が連撃、嵐のごとく乱れ舞う。

547 名前：―完全で瀟洒な従者―　十六夜咲夜 ◆M6sKnivesI ：2005/08/02(火) 03:36:58

>>536　千鳥かなめ
>>542　レイオット
>>545　東方仗助

「ええ、そうね。長居は無用。行きましょうか」

使ったナイフを回収しつつ、少女の鬨の声に受け答える。
どのみちこの様子では、坊主云々も目も当てられないことになってるだろうし。
それにここで離反しても、少々面倒だ。

回収し終わり、少女の横に並ぶ。
……ふと。

「……緊張でもしすぎてる？　なんだか顔色悪いみたいだけど」

心配、というわけではないが……少し、尋ねてみた。
それはまるで、我が主、吸血鬼たるお嬢様のそれにも見えたから。

（本堂→境内へ）

548 名前：アーチャー ◆LjUStice7U ：2005/08/02(火) 03:52:31

>>492　>>500　>>521　>>527　>>541
　――――鬼神。
　文字通りそのままの姿で敵は笑みを象る。仏の笑みを。
　殺意に彩られたそれは、見る者を戦慄させるに足るものだ。

　望まれるが故に、そうあらねばならない。
　仏道の為に殺戮を望まれ、救済の結果を出させられる。
　誰かの為に殺戮を望まれ、無関係の者への救済を繰り返させられる。
　精霊格にまで昇華されたモノは、何かしらそういった枷を背負う。
　呼び出された英霊然り、目の前の敵然り―――そして、自分然り。
　敵対していながら存在する、奇妙な同一項。

「――――哀れだな。
　まあ、仏像如きに何を言った所で、正しく釈迦に説法だろうが」

　言葉を紡ぎながら、二つの刃を叩き付ける。
　相手から繰り出される大剣の一撃は、真っ当に受けられる代物ではない。
　故に、二刀を以って旋回させつつ怒涛と弾き、斬り付け、突き穿つ。
　豪風と旋風が輪唱し、大剣と短刀が重奏していく。

「いずれにせよ……塵に還るのはそちらだ。
　所詮モノに過ぎない仏像が、亡霊を裁くなどおこがましいにも程がある」

　相手を自分のみに向ける為の、挑発の言葉と同時に振り上げられる二刀。
　防がねば、石であろうと岩であろうと、鋼であろうと確実に切断しきる連撃。
　防ごうと、確実に相手を弾き飛ばすだけの力任せの斬撃。

　裂帛の気合と共に、破邪の剣を相手の両肩へと叩き付ける…………！

549 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/08/02(火) 03:57:48

>>545　東方仗助

　……長居は無用、とばかりに歩き始めた面々をぼんやりと眺めて。
　ふと、どうでも良いことが思い返される。

「――なあ、ジョウスケ？　そう言えば、ゴタゴタしてたんで忘れてたが。
　そっちの捜し物とやらは、見つかったんだっけ――ジョウスケ？」

　なにやら訝しげに周囲を見回す少年。
　思わず、同じように周囲を見回してみる。

「……カペル。なにか――感じるか？」
「いえ。この近くには、今のところは」

　ふむ、と呟いて、改めて周りを見回してみる――あと一時間ほどで夜明けを迎える世界は、
まだ暗くよどんだ夜のままだ。
　其所に何が潜んでいるか、なんて、それこそ判ったもんじゃない。

「ともあれ、これ以上のもめ事はごめんだ――お前さんも、とっとと帰った方がいいぜ。
　……じゃあな」

　そして、俺とカペルは山門に向かって歩き出す。

（場所：境内）

550 名前：アサシン：佐々木小次郎：2005/08/02(火) 04:00:40

>>385 >>396 >>426 >>436 >>450 >>480 >>494 >>522 >>532 >>544　長谷川虎蔵

『――巌流島だったら、こっちが勝ってたんだがな』

　ふ、と笑い、アサシンもぐらりとよろめく。
　全方位から迫り来る魔弾を全て弾き落とした訳ではない。
　内２つがアサシンの左わき腹を大きく抉り、右の太股を貫通していた。

　彼の足が緩やかにすうっと薄く透けていく。
　虎蔵の魔弾は確かに致命傷だった。
　だが、血に塗れたその立ち姿は依然として優美。

　彼は満足だった。
　彼が生前成し得なかったもの、勝敗も生死も問わぬ戦い。
　それを成す事が出来たのだから。

　ならば最後まで立ったままで綺麗に終わろう、彼はそう考えたのだ。

「は、いやいや、我が秘剣、まともに正面から打ち合って、破る事が出来る輩が居るとは思わなんだ」

　名も無く、誰も彼を覚えているものは居ない。
　そもそも彼は佐々木小次郎という名前を与えられただけの殻であったのだから。

「良い戦いであった。
　我が身は全て虚なれど、この死合いは真実そのものであった。
　……礼を言おう」



　花が散り鳥が消え風が止み、虚空の月さえ翳った頃。
　そこにいた筈の剣士は、その存在自体が幻だったかのように、跡形もなく消え去っていた。
　確かな真実を一つ手にして。

【佐々木小次郎消滅、場所：山門前　以後、通行可能】

551 名前：望月ジロー ◆BBB.k09/yM ：2005/08/02(火) 04:05:18

>>546　クロウもどき＆ムサシボーもどき
私の挑発に怒ったのか、あるいは悦んだのか。
我が師クロウのまがい物とそれに付き従う、武蔵坊弁慶もどき。

双方ともに、油断ならぬ気をまとって二手に分かれ――

＞「「殺して進ぜよう！！」」

一気に私を挟み込む形で、棒鉄球と刀の乱撃が私を襲う！
一度に一方を相手にするのなら、是非もなく捌いてみせる。
しかし片方に背を向けるのは愚の骨頂。　いかに吸血鬼の体といえど、まともに喰らえばただでは済まない。
両者どちらの攻撃も、まともに喰らえば致命傷。ならば――

「……どちらも、中途半端にしてやるまでですっ」
凄絶な覚悟とともに、力場思念の出力を上げる。
そして同時に、体の神経を研ぎ澄ませ――どこまでも一刀如意に集中する。

ちょうど、両者を180度目一杯の視界に納める形で。

「………っおおおおおおおおおおおおおおおォォォォッ！！」

襲い来る右からの棒鉄球の雨を、あらん限りの力場思念で払いのけ、防ぐ。
同時に舞い来る左の刃を、渾身の剣さばきで必死に弾く。

「が、く、……ぅ、」
そこは流石に注意も散漫、防御もやはり二正面に割かねばならず穴が出る。
いくつもの鉄球が体を打ち、幾太刀もの刃が肉を抉る。
だが――そんな意表をつく連携でも、いつかは必ず隙を生む。　狙いは―― 一瞬。
その一瞬の為に、ひたすら耐える。

そして不意に、幾撃目かの鉄棒が大振りになった瞬間をめがけ―――力場思念で棒を大きく弾く。
同時に左の銀刀で、相方の一瞬の連携のこぼれに動揺した刃を同じく強く弾く。

「ォォオオオオオオオオオオオオ……」

そして大きく弁慶の巨躯が、泳ぐ一瞬を狙い――――

「チェストォオオオオオオオオォォォオォオオッ！」

示現流、一の太刀。
力をただ一撃に全てつぎ込んだ、その必殺の一撃が。
次の瞬間には弁慶の体を大きく、袈裟懸けに斬り裂いていた。

「………さあもう残るは、貴様だけです。紛い物」

打擲され切り刻まれた体で、それでも獰猛な笑みはそのままに、私は奴をにらみつけた。

552 名前：片倉優樹 ◆nlYUUKi3kA ：2005/08/02(火) 04:18:13

>>525　千鳥さん
もはや、空が青くなりつつある。

この場所は方向感覚を狂わせていたようだ。
走る方向が覚束ないと思ったら、強い磁力が働いている、という寸法か。
森を抜けた。
やっと貫けたけれど…既にどれ程駆けたかも解らない。

あたしが、ここに来るまでの間。何があったのだろう。
シューズの紐を一度，故意に緩め、再び結ぶ。
腐臭。これは解る。血の、体液の臭いだ。
大地に染み入るそれを手で取って人差し指と中指で伸ばしてみた。

・・・・。

やめておけばよかった。

取りあえずの負傷者の捜索を行うため、本堂へ目を向けた。
そこから人なる気配は。心音は、体温は。殆ど何も感じられない。

絶望の香を、今、あたしは感じている。

────取りあえず、人を探せ、優樹。

息を止め、嗅覚を削り、強すぎる刺激から無感知になり、燃え猛る本堂へ向かった。
だが、その気合はすぐに安堵へと変わり…そしてまた、嫌悪へと戻る。

本堂に人は当然居ないことは見て取れる。だが、寺院跡地にたたずむ２人の少女。
・・・・・・”この女生徒がやったの？”常識は否定し、状況は肯定する。

やや大げさに話様子を見ることとした。
単純な詐術や話術は自分の得意とすることだと思っていたから。
友好的な笑みを作る。顔は愛嬌のあるほうらしいので大丈夫だろう。


「早く非難した方がいいですよ。そちらの女中服の貴女は特に、ですか」

何故ここにあたしが居るのか。
こちらのシチュエーションも怪しいが、それはそれでいい。
特異な状況下での相手の反応を見るには、これくらいが丁度いい。
女生徒風の彼女をあたしはしかとねめつける。

【片倉優樹：現在位置　寺院本堂前　跡地】　

553 名前：長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg ：2005/08/02(火) 04:22:00

>>550　vs佐々木小次郎

　刀を杖代わりにした虎蔵は、名も無き一剣客が入寂する一部始終を眺めていた。
　うつし世ならぬ存在なればこそ、夢のように消えゆくのだろうか。

　ぽつり、と洩らしたのは少ししてからだ。

「……野郎に有り難がれたって、嬉しくも何ともねーやな」

　半ば倒れるようにして、虎蔵は側の木の根元に座り込んだ。


　波騒は世の常である。
　波に任せて、泳ぎ上手に、雑魚は歌い雑魚は躍る。
　けれど、誰が知ろう。百尺下の水のこころを。
　水のふかさを。


「んなもん――どっちが虚でどっちが実だって、大して変わりゃしねーっつうんだ。
　チャンチャンバラバラ好きなら、それで構わねえじゃんかよ、な」

　嗚呼、魚歌水心。


【長谷川虎蔵　山門前にて再起不能】

554 名前：源義経＆武蔵坊弁慶（Ｍ）：2005/08/02(火) 04:26:50

>>551
いかな武士（もののふ）とて、死する時は容易く死に逝く。
今の武蔵坊弁慶がそうであった。
けたたましい得物の打ち合いに生じた一分の、しかして絶対なる隙。
正しく致命、一刀必殺の極意が炸裂を見せたが故にである。
袈裟懸けに一閃―――相手の魂魄もろとも斬り飛ばさんとする太刀筋。
崩れ落ちぬが、もはやこれまで。
命の灯火が確かに潰え、直立不動の『仁王立ち』―――。
だが、

「これで、勝った、と、思うなよ…！！」

もはや聞こえぬ程にか細き末期の呪詛。
望月の剣士が武蔵坊を切り捨て、向き直した時、




既に―――源九郎義経の姿は掻き消えていた。


大往生する弁慶の骸を足場に飛び越え、その身はもはや空高く。
これぞ名高き『八艘飛び』
相手より高く、
炎上する本尊より高く、
天高く昇る月に届かんとただ、高く。

「ヒャァァァァァァア……！！」


放つ一刀は全身全霊。
膂力も気力も妖力も、全てをつぎ込み一刀に充てる。
妖気は押し出す推進力を生み、只管に体躯を加速せしめる。
それでも残った分は刃毀れした太刀へ注ぐ、必ずや両断し仕留めるために。

「――――ヒョゥウゥアァァアァァーーーーッ！！！！」

義経は笑む。凄絶極まる笑みにて掛かる。

奴は掛かった、我等が最後の策に嵌ったぞ、鬼若。
彼奴がぬしを斬る絶対の好機なれば、これぞ我が絶対の好機。
その為にぬしは死んだ。
もはや我も死ぬ。
だが只では死なぬ。
戦の華は、死であり殺。
なればうぬの命も、持っていく。
それが戦よ。
戦の華よ。



音は越えた、何も聞こえぬ。
大気を両断する勢いで、必殺の一刀を下すのみ。

555 名前：笑石 ◆EMISHIvcMk ：2005/08/02(火) 04:37:14

>>548
　巌と鋼が、宵闇の中でぶつかり合う。
　大剣が、短刀が、噛み合い、離れ、再び噛み合う。
　そこに華麗さはない。あるのは、互いに鎬を削る無骨さだけだ。

　一撃一撃が、己が身を削る。否、砕く威力を持っていることを、笑石は理解していた。ひび割れ
たこの身では、防ぐことなど到底かなうまいと。
　だから、必殺の一撃を放ち続けた。
　否、それは普段と変わらない。違うのは、心構えのほうだ。「殺せる」として剣を振るうのではなく、
「殺す」として剣を振るう。
　その心構えは、自分が在り続けた千年の中で、久しくなかったモノであると思い出した。
　一瞬、刹那にも満たぬほんの一瞬、笑石の胸に去来する記憶があった。
　千年前の平安京。血と、恐怖とで平安京を牛耳った魔性。最古とも表される、生まれ付いてより
の『血を吸う鬼』。
「――――魎、月」

　油断していたわけではない、慢心していたわけでもない。
　だが、刹那にも満たぬ一瞬でも、戦闘から意識が外れてしまったそれは、紛うことなき隙だった。
　そこに叩き付けられる、必殺の一撃――――！
「っ――――！」

　右肩を狙う一刀は、辛うじて大剣で受けることが出来た。だが、左肩に落ちた一刀は防ぐことか
なわず叩き付けられ、脇腹までの深い亀裂を刻む。
　それだけに飽き足らず、叩き付けられた衝撃は、笑石の重量を物ともせず、後方へと吹き飛ばした。

「ぐ……っ！　お、のれ……衆生に仇なす亡霊風情が……！」
　地の底より響くような声。
　敵を射抜く瞳は、赤く光っていた。まるで地獄を填め込んだかのように、宵闇の中で爛々と。
　柔和とも取れる笑顔を浮かべながら、その瞳にだけは笑みがない。そこにあるのは、己が使命
を果たさんという意志、金剛心というほどに揺るぎがない、降魔調伏の意志だ。

556 名前：千鳥かなめ ◆Kana/lWMBI ：2005/08/02(火) 04:45:57

>>552
本殿から出てきて、あたしはやっと息をつく。
時計を見る。もう時間がない。
あと３０分もすれば日が昇る。
それまでにどこか日の当たらない、それこそ地下にでも隠れないと、あたしは――


>>552　片倉さん
＞「早く避難した方がいいですよ。そちらの女中服の貴女は特に、ですか」

――そこで、声をかけられた。
言っていることはもっともだ。親切そうにも見える。
けど。

「ご忠告どうも。
　でもあんたも変よね。あんたみたいな子が、どうしてこんなところで平然と人に忠告なんてできるのかしら？」

外見で騙されはしない。
あたしがそうであるんだから、こいつが化け物じゃない保障なんてない。
いや、むしろこいつが親玉と言うこともありえる。

「――メイドさん」

あたしは隣のメイドさんに、小声で声をかける。

「あたしが合図したら、目を閉じて。
　そして逃げるのよ。あいつはあたしが抑える。
　あんたには、待っててくれる人がいるんでしょ！？」

外に誰かが待っててくれる。
あたしがソースケに守られてるように、この人も誰かを守りたいんだろう。
そのための、あんな凄い力なんだろう。
根拠もなくそう思った。

「安心して、こっちだってそのまま死ぬつもりもないし、精一杯悪あがきしてみせるから。
　だから、あなたも」

それだけ言うと、あたしは目の前の子に視線を戻した。

「ありゃりゃ、あたし疑われちゃってるか。
　参ったなあ、ほら、銃だって捨てるわよ」

言いながら、ぽいと電気銃を投げ捨てる。
その大きな動作にカバーさせて、その影でこっそりとイヤリングを引き抜く。
そして、

「――今よ！！」

イヤリングを地面にたたきつける。瞬間、視界を奪う閃光があたりを覆った。
目を閉じてるあたしは、それでもかろうじて動ける。
あとは、メイドの彼女があたしの指示通りに目を閉じてくれていることを祈るしかない。
やることはやった。後はただ――行くのみっ！！

全身の筋肉に溜め込まれた力を、意識して開放する。
目が金色に光るのを感じる。自覚することで、「吸血鬼」としての力が解放されるのを感じる。
あたしとて視界が完全に戻ったわけではない。
彼女がそのままの位置にいることを信じ、全力で一直線に駆ける。
右手には既にスタンガン。出力最大。セーフティ解除。

――かつて、ソースケが言っていた。
何も考えずに突っ込んでいく相手が、実は一番厄介なのだと。
あたしは、その言葉を信じる。
迷いも、小細工もいらない。
ただ愚直であろうとも一直線にぶつかって、それを叩き潰す。
それがあたしだ。今までもこうやってきた。そしてこれからも！！

目の前に、影が見えた。
それが本当に彼女であるかどうかは分からない、だがそう信じるしかない！
勢いのまま、腰だめに構えていたスタンガンごと体当たりする。
そして、そのまま撃発トリガーを、

「当たれええええええええええええええっ！！」

――引いた。

557 名前：東方仗助：2005/08/02(火) 04:54:58

>>549

「探し物……は、「無かった」ってトコだとは思うんスけどね……」

　肩を鳴らす。
　懸念はある。
　自分で言った筈だ。
　「スタンド使いは二人」だ――と。「カビ」のスタンド使いが逃げたのなら、何の問題もない。
現に、カビは生えていない。なら、何も。何も問題はない筈だ。

「ま、とっとと帰るってのには同感……もー、なんつーかそろそろ、「ワリにあわねー仕事」に
なりかけてるしよぉ……」

　苦笑が漏れる。
　帰るだけだ。後始末はなんとかなるだろう。してくれる筈だ――と言うのは、ムシのいい話
ではあるにせよ、こちらとしても予想外だったのだ。

（山門へ）

558 名前：望月ジロー ◆BBB.k09/yM ：2005/08/02(火) 04:55:39

>>554
向き直りし先に、九郎義経（の紛い物）の姿は既になく。
背後で仁王立ちのまま、雲散霧消する弁慶もどきの気配も消え行く中。

――それでも吸血鬼として。
剣士として。
護衛者として。
磨き上げてきたその感覚は、敵をつぶさに追い続けていた。

弁慶の死すらも魂すらも糧とした、天高く飛ぶ九郎義経の一刀。

「……異なる存在とはいえ、伊達に我が師クロウの名を持っていないというわけですか」
口の端に乗せ、紛い物という言葉を訂正し、心中で謝罪する。
我が師と魂も身も全て違えど、この漢も正しく『九郎義経』なのだと―――認める。

「……いいでしょう。
　どちらのクロウの剣が勝るか、決着をつけましょう！　『クロウ』っ」

むこうのクロウの剣が八艘の船を一飛びで越す跳躍を束ねた剣であるのなら。
こちらのクロウの剣は、生死八方の船を縦横無尽に飛び回る跳躍の剣。
我が師からみっちりと仕込まれた、鞍馬流の奥義――我等の八艘飛び。


八方への超速の跳躍は繰り返され、それはやがて一つの嵐と化す。
無数の跳躍から繰り返される銀の刃が、幾重にも重なりて音速の一太刀を迎え撃つ！


「チェァァアアアアアアアアアア―――――――――――！！」


そして、嵐が収まり。
両者の動きの一切が静止する。
互いの間を風が一陣通りぬけ―――――



「ぐふ……っ！」
気力が切れ、片膝をつく。
袈裟懸けにつけられた一太刀が、私の体から一条の黒い血をしぶかせる。


そして同時に。
もう一人の『クロウ』は―――従者の魂すら引き継いだかのように、仁王立ちで。
全身より、無数の血の噴水を吹き上げた。


「……ひとえに風の前の、塵と等しく――ですか。
　もともとこれ、平家滅亡を詠った歌だったのですがね……」

疲労の色の濃い笑みで。
銀刀を杖に体を支え、私はそれだけを口から漏らした。

559 名前：遠坂凛 ◆Rin/.ruSTE ：2005/08/02(火) 04:59:29

>548 >555

いける。
二刀で手数に勝り、接近戦での取りまわしはあの大剣よりアーチャーの獲物の方が勝る。
そして一撃の重さは十分――となれば、全てを受け切れる筈も無い。
このまま行けば一撃はそう遠くない内に入る。
そのタイミングだ。

「…………」

剣戟は続く。
響く音は重く、一撃一撃が共に全て致命になりかねないそれをなおも積み重ね――――
まだ続く、と思った瞬間、アーチャーの右の一刀が直撃した。
……恐らくは、わたしでは判らないレベルの隙があったんだろう。
なんにせよ、チャンスには違いなかった。

「――――アーチャー、今っ！」

叫んで、握り込んでいたトパーズを全力で投擲。
相手の体勢が十全ならまともには当たらないだろうけど、今なら別。
尤も、直撃しなくても篭めた風の魔力は食らい付くわけだけど。
わたしの手から宝石が離れるより早く飛び退いていたアーチャーもまた、この機を逃しはしないだろう。
……これで、終わりよ。


【石段下】

560 名前：―完全で瀟洒な従者―　十六夜咲夜 ◆M6sKnivesI ：2005/08/02(火) 05:08:06

>>556　千鳥かなめ

……やっぱり、そういうことか。

この少女の、突然の……そして妙に悲壮な態度。
駄目押しに、話しかけられたときに首筋をちらと確認。

やっぱり、そういうことか。
咬まれてるじゃない、あなた。
やれやれ、ね。

待ってる人は、確かにいる。
けれどもそれは、彼女の言うようなニュアンスではない。
お嬢様は主、私は従者。
たとえ絆と言うべきものが深くとも、それは変わりはしない。

だから。


「……ああ、言い忘れてたけど。
　実は私、ここの僧侶達を殺しに来たのよね」

言われたとおりに目を瞑り、彼女の猛攻が済んだところを見計らって……
あえておどけるように、言い放った。
私はあなたの思うような人間ではないのだ、と。

そして……同時に疾走。
横へ回り込み、目の前の少女？（>>552）にナイフを投げつけた。

「だから私のことなど、心配する必要も謂われもないわ。
　ほら、あなたこそさっさと逃げなさい？

　夜明けは、近いわよ？」


それは嗜虐か、反発か、それとも……
まあ、そんなことはどうでも良かった。

561 名前：チョコラータ（M)：2005/08/02(火) 05:21:41

>>557>>549

「セッコからの連絡が途絶えた……「カビ」は何故か生えちゃいねぇ……」

　声が聞こえた。
　這うような――呪うような声。

「だが……」

　影から這い出る。
　世界の要素に合わせるのなら、チョコラータに似合う世界は「夜」しかない。
　影のように深く、夜のように黒く――そして、罪のように純粋だった。

「――グリーン・デイ。……この「カビ」は避けようがないだろうなァァァァァァッ！」

　影は溶けつつある。
　朝は迎えつつある。
　だが、吼える。
　全てを食らう、悉くを蝕む、あらゆるを殺す、それは――
　黒緑よりも遥かに濁った、チョコラータという男の精神の顕現だった。
　朝を汚し、光すら穢す――悪意の毒が開放される。

（境内−本堂付近）

562 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/08/02(火) 05:26:19

>>561　チョコラータ

　きっかけは、本当に些細だった。
　足下に転がっていた石に、無様に躓いた、たった、それだけ。

　だが――自分の身に何が起こっているのか。
　それを知るには、そんな些細なきっかけだけで十分だったのだ。

　つまずいた、足のつま先。
　そこから、青白い、あの忌々しい、異常なカビが、今度こそ全身を浸食すべく、ゆっくりと進
行しつつあった。

「ジョウスケ――カビだっ！　まだあいつは、片付いてないっ！」

　カペルをその場へと残し、全力でもと来た方向へと走り出す。
　――弾は、あと二発。

（境内・本堂付近）

563 名前：木島閑音：2005/08/02(火) 05:32:00

>>554 >>558
たった数瞬の応酬を見て、木島閑音は嫌というほど思い知らされていた。


この吸血鬼―――『銀刀』には、恐らく勝てない。
きっぱりと言って、次元の違う戦いだった。
高速で繰り出される二人の化物の連携攻撃を悉く防ぎきり、ついには崩し。
見事打ち破って見せた、紅いコートの剣士……望月ジロー。
彼女、木島閑音自身が幾つもの修羅場を踏んできたが故に分かる、明確な差がそこにはあった。
現状の装備どころか、完全武装で挑んでも、勝てるかどうか……いや、勝てるビジョンが見えてこない。
少なくとも普段の彼女であれば、ここで即座に撤退の判断を下し、この場から逃げ去っていることだろう。


だが。
だが―――しかし。


彼女は逃げなかった。逃げようともしなかった。

何故そんな非合理的な判断を下したのか―――それは、閑音自身にもよく分からない。
吸血鬼への憎しみゆえか、強さへの執着ゆえか。
―――確かにそれもあるだろうが、完全な正解ではない。

そう、彼女は少しばかり驚いていた。
自分自身にそんな度胸と―――「引かずに戦う」という「信念」が残っていた事に。

カラン。カラン。カチャン。
乾いた金属音が石畳に響き渡る。
それは、閑音が手元に残っていた武器のうち、仕掛けの為されていたフォークを投げ捨てた音だった。
それもわざとジローに気づかせるような、派手な音を立てて、だ。
今更こんな小細工が通じる相手ではない―――それが分かったから、彼女は敢えてそれを捨てたのだ。

「また会ったわね、『銀刀』。今の勝負、凄かったわよ」

言いながら、両手に残った最後の武器―――銀で出来たナイフを一本ずつ握り締める。

「でも、まだわたしがいる、、、、、、―――分かっていたわよね？」

一歩、一歩。確実に、自らジローとの間合いを詰めていく。

「最初の宣言どおり、わたしはあなたを『狩る』わ。そしてあなたを食らい―――もっと多くの吸血鬼を殺す」


そして最後に、閑音はただ。
その顔中で、不敵な笑みを浮かべた。


「さぁ、決着よ。望月ジロー、、、、、」

同時に口に三本目の銀製ナイフを―――口に咥えた。
少しでも手数を増やすための、変形三刀流。偶々彼女が日本で見たアニメで、脇役の剣士が使用していたスタイルだった。
はっきり言って苦肉の策、以外の何者でもないが―――やらないよりはマシ。彼女はそう、本気で考えていた。

そして、突進―――馬鹿の一つ覚えといわれようが、彼女の最も得意とする戦闘スタイルはこれである。
自らの足に絶対な自信を持っているからこその、特攻だ。
そして彼我の距離は一瞬にして縮まり、


銀と銀が、

幾筋もの光条を描き、

交錯した。



（場所：境内表側）

564 名前：源義経＆武蔵坊弁慶（Ｍ）：2005/08/02(火) 05:35:44

>>558

「み、ご、と……」

大往生のまま、灰となり崩れ落ちる九郎の骸。
末期に吐くのは呪詛ならぬ賛辞。
それは生前、化生ならぬ一人の侍であった頃の残滓なのか。
未だ九郎義経に残っていた、人の心であったのか。
今はもう、何人もそれを窺い知るすべはない。

一陣の風が吹く、戦の風が。
それは灰となった源氏どもの骸を乗せると何処かへと吹いて、そして消えた。

（源義経ならびに武蔵坊弁慶：本堂付近にて討ち死に）

565 名前：東方仗助：2005/08/02(火) 05:38:47

>>562

　ハッと振り返るも、遅い。
　既に身体の末端をカビに侵された青年に歯噛みすると、仗助は本堂の男を睨んだ。

「てめェ……マジでしつこすぎんぜ、クソッタレ……！」

　青年を一瞥する。カビ――再浸蝕する殺人要素。本堂で宣言する男の元に駆け付ける――駄目だ。
仗助と本堂を隔てるように存在する地面の隆起は、そこに行くまでに身体を食い尽くす。
　左右を一瞥する。そして。
　――見付けた(、、、、)。
　走る。
　今度は山門付近で上がり始めた剣戟の音にも一切目もくれず、一気に寺院脇のスペースへ。小高
く隆起し、「下る必要のない」場所へ。逃げるのではない――逃げではない。
　チョコラータから遠く走り離れるこの行為は、しかし逃げではない。

「絶ッ対ェーッ！　テメエはッ！　ブチのめすッ！」

（本堂前→境内内）

566 名前：チョコラータ（M)：2005/08/02(火) 05:43:45

>>562>>565

「そういう事だァァァァァッ！　このウスラマヌケ共がぁぁぁッ！」

　そして、哄笑を上げてチョコラータは踊り出る。
　全員が抜けた本堂の入り口に立ち、高々と宣言する。
　グリーン・デイ！
　殺人カビ！
　一気呵成に再浸蝕を始める無音の殺戮者の死の宣告！

「やはり……“効いて”いたな……そのまま朽ちろ……おれの足元にッ！　詫びろッ！　おれ達の
心を乱したその行為をッ！」

　そう。
　不可視を以って成る死滅の絨毯を敷き、彼は笑うのだ。

【本堂前】

567 名前：片倉優樹 ◆nlYUUKi3kA ：2005/08/02(火) 05:51:27

>>556　千鳥さん
>>560　十六夜さん

　対峙した女生徒と、女中服の彼女の会話をあたしの耳は楽に捉えていた。
その内容は「怪」と人。その2人が行ってるとは思えない奇妙なやり取り。

妖であれば、自分の行動だけに責任を持てばいい。
あたしは何も、逃げろと言っただけ。
人であれば、人の法に従うだけですむ。
人の法に縛られる所以もなく、あたしに向かってくる理由など誰にもありはしない。
理由なく反発される覚えはあたしにはない。

彼女は・・・・・・・・怯えてる？一帯何に。
彼女は間違いなく何かを隠していると断定した。体の神経節が軋む。
神経の輪が太くなり、意思が末端まで冴え冴えと行き届く。
彼女の攻撃が─────来る────　神経融合【ブレイク】！！

　　　　　　　　　　　　　0.001秒　　　　　　　0，002秒　　０．０００１秒
────銃をかりそめに捨て────地面に落下する────指輪─────破裂し──────
フラッシュバンク様の閃光。音と光を撒き散らす敵味方構わぬ道具だ。
しかし、あたしの神経伝達速度は瞬時に何時もの数倍に伸びている。
────左手を、女性とに翳し───スタンガンを持つ甲を─────たたき付け────ふりおろす─
────横合いから───！！！！！！！！！───ナイフが───あたしに・・・刺さり。

鋭敏に成った神経に、痛覚は鋭く迫り。声にならない声。
そこに、スタンガンが襲っていた。

・・・・・・・・・・・・・遮断！！

くああああああああああああああああああああ！！

手を、伸ばし、二人をとらまえようと…おぼつかぬ足取りで先を見た。
でも・・・・・・・止めた。
二人が。人と怪の2人が仲よさそうに話しているのを見て、心のどこかが痛んだから。
きっと、その痛みは今朝の酒が美味しくなかったのときっと同じことなんだろう。
なんて、そう思考する。

「君たちはいったいなんなんだろうね…」

答えて欲しいわけじゃない。顔を覗かせかけた朝日を見て、トリスの残りを口に入れ、飲み干した。
それは痛む神経に非常に良くなじみ、美味しかった。…素晴らしい夜明けに乾杯。
美味しくない、呪われた月よさようなら。

あの2人くらい見逃しても、何も問題はないと思えた。そして、早く帰って同僚のどうしようもない
後輩、太一くんに今日の事を少し話して聞かせたいと考える。そして一から職務倫理について教養して
あげないと。
まだ出勤時間前なのに、仕事の事を考えている自分を笑い・・・女性との末路を見た。

片倉優樹　現在位置変わらず　元本堂前〜エピローグへ〜

568 名前：望月ジロー ◆BBB.k09/yM ：2005/08/02(火) 06:02:58

>>563
――確固とした事実として断言します。
私は、正しく疲労の極まった状態でした。


先刻の『クロウ』の主従を敵に回したときの傷も。
炎の拳士を相手にした時の火傷も。
傷自体はその回復力で癒えてはいたものの―――疲労までは、流石にごまかせない。

さらに後のない状況として。
既に夜の帳を世界は脱ぎ捨て、東の端から祝福の光――太陽光を纏い始めている。
そんな最中で――私を狙い続けていた、悪食のお嬢さんが最後に立ちはだかる。


＞「最初の宣言どおり、わたしはあなたを『狩る』わ。そしてあなたを食らい―――もっと多くの吸血鬼を殺す」
「狩る――ですか。　実にお盛んなことですね。
　ですが分かりますまい、あなたのような輩に――――護るべき剣の真の強みなど」

……いいでしょう、むこうも得物を捨て、たったの三つの武器に全てを。
なればこちらも、持てる全ての力を、この一振りに。

絶対に護らねばならない者の姿を中心に、力を紙縒りの如く、鋭くたわめ――
無心にして火の剣と称された、思考より先に迸る最速の刃。
残るありったけの力を爆発させ、ただ一心に突貫する三つの銀の脅威を祓うべく――――――

「―――――」


考える間もなく、刃は既にその全てが振りぬかれていた。
続いて、断たれた三つの小さき銀の牙が、地面に落ちる音。

銀刀を、ゆるりと鞘に収める。
鍔鳴りと同時に、女の両手と頭より、三条の赤い噴水が舞った。


「……あいにくと、私が食われてやれるのは。
　最愛なる彼女と、その移し身のみと決めているのですよ―――」

最後にそれだけ口からこぼすと、今度こそ膝から地面に崩れ落ちる。
辛うじて手で体を支えるものの、流石に疲労も限界だ。
しかもこのままだと日の出の日光で、生きたままミイラになってしまう――ああ、まずいっ。


……見る者が見れば言うかもしれませんが、情けないとは言うなかれ。
これも流石に私にとっては、ある意味いかなる剣戟よりも死活問題なものでして――

ああ、ミミコさん、コタロウ、早く来てくださいっ……！

569 名前：エリ・カサモト ◆SV001MsVcs ：2005/08/02(火) 06:08:32

　ギシギシ音を立てる身体を騙し騙し引きずって物陰を歩き、一息ついた。

　夜明けが近い。
　――夜が明ければこの戦闘は終わる。

　何故かアタシはそんな風に思っていた。

　寺院付近から境内に抜け、山門をくぐって寺から出よう。
　進入時に使った手段と同じ手では出られそうにない。身体がよく言う事を利かない今じゃ塀を飛び越えるのは無理だ。

　……あともう少しだってのに。

>>558 >>563

　境内表で依然戦闘継続中ときたもんだ。

「クソ…」

　毒づいて背中の建物に背を預ける。

>>561 >>566

　男の声が聞こえた。

　次の瞬間、身体に纏わりつく不快感。

「なんだ？」

　身体に視界を巡らす。

　そこには、擦過傷から生えていく――カビ。

「……何の冗談よ。コレ」

　一瞬にして脳は結論を下す。
　生物、細菌兵器。

「クソが…っ！」

　撒いたのはあの声の主の男だ。
　風に乗せて正体不明のとんでもない菌をばら撒きやがった。

　死にたくなければ大急ぎでここから去る必要がある。
　だが、アタシは逃げられない。
　身体は既に軋んでいる。素早く動く事は出来ない。
　擦過傷だけではなく健常な皮膚にまでカビの侵食が及び始めている。

「こうなれば…」
　クラシックマーダーの撃鉄を起こす。

「死なば諸ともよ。カビ野郎ッ！」

（現在位置：寺院付近から境内付近。さらに本堂前まで移動開始）

570 名前：アーチャー ◆LjUStice7U ：2005/08/02(火) 06:09:01

>>492　>>500　>>521　>>527　>>541　>>555　>>559　VS笑石

『ぐ……っ！　お、のれ……衆生に仇なす亡霊風情が……！』
『――――アーチャー、今っ！』

――――――

―――

弓道に一射絶命という言葉がある。
文字通りその一射によって相手を絶命させよとは、つまり、常に必殺必中であるということ。
如何なる状況であっても冷静に、如何なる事情があっても確実に。
先の先を取る必要などない。
必要なのは戦力戦況、一切合切を含めて相手を射抜く事。

それこそがアーチャー（Archer）のサーヴァント。

代表される七つのクラスが一、弓兵の名を冠せられた英霊が持つ強み―――！

「――――――ヒュッ！」

吹き飛ばすと同時、瞬時にして跳びずさって取った間合いは凡そ３０ｍ。
槍兵でもなければ詰める事さえ許されないその距離。
ここに来て初めて、この戦いは弓兵の領域となった。

「I am the bone of my sword...（我が骨子は捩れ切り裂く）」

大気を揺るがす言霊が紡がれる。
手には漆黒の弓。番えられるは空を切り裂き、硬き稲妻と謳われた名剣。
剣戟でもない、魔術でもない、本当に一射絶命。これこそ乾坤一擲。
ぎり、と弦が、背筋が軋んで引き絞られる。
弓を握りこむ親指の先に、敵が映る。
爛々と光る、燃えるような紅い瞳を持った自分自身が。


「“偽・螺旋剣”（カラド・ボルグ）」


矢が、吼えた。
己と相手の悲哀を謳うかの如く、放たれた剣は空気を噛み砕きながら敵へと疾る。
しかし、防がれればそれは、深手を負わせる程度にしかならない。
凛が投げた宝石とて、防がれれば、あるいは避けられれば意味をなさない。

ならば、二つが相乗となればどうか？


「――――――吼えろ」

爆ぜた。
トパーズの豪風を糧として矢が牙を得て疾る。
“追い風”によって爆発的加速を得た螺旋を描く軌跡は、
その“矢”の名に相応しく、文字通り稲妻を伴う剣となり―――




　　　　　　　　　　　　　　　　　　「“壊れた幻想”（ブロークン・ファンタズム）」





――――敵の背後にある石段ごと破壊する勢いで、爆散した。




【石段下部：破壊】

571 名前：チョコラータ＆セッコ（M)：2005/08/02(火) 06:09:25

>>566　>>565

　駆け出す仗助の背中を眺めて、チョコラータはせせら笑う。
　行動をではない。
　状況(、、)を、だ。

「『何をする気』かは知らんが……フン」

　遠くなる仗助の背中で、地面が隆起した。
　爆発した。

「お、おおおおぉォォォォチョコラータアァァァァァァァッ！」
「ベネ（よし）！　セッコッ！　そうだッ！　流石だッ！」

　高さにして凡そ六メートル――上空へと飛び上がったセッコの速度は、走る仗助のそれを
遥かに凌駕している。

「おれ達の勝ちだッ！　セッコッ！」

　流星さながらに下るセッコの拳が、仗助の後頭部を強襲した。

【本堂前】

572 名前：葛城ミミコ&望月コタロウ＆望月ジロー ◆BBB.k09/yM ：2005/08/02(火) 06:16:40

大荒れに荒れ、一部では地形ごと変わり果てた境内をひた走る。
まさかジローさんがやられるなどということはとても考えづらいが……
このままではどんな敵よりも勝利し得ない最強の敵が、ジローさんを蹂躙するのは目に見えている。

そう、この戦場を照らし始めた日の光――本物の太陽が。

「……にしても明るくなったくせに走り辛いわね、もう勘弁してよ…！」
「ミミちゃん、それより兄者兄者―――――あ！？」

>>568
コタロウ君の声と視線で、あたしもそれに気付く。
既に満身創痍の中日光の下で四つんばいになり、全身から煙を吹いている赤コートの青年を。

「………た、助けてくださいっ……！」

普段の引き締まった優男振りからはとても想像できない情けない声をあげながら、ジローさんがうめく。
あーもう、ホントに世話が焼けるんだからこの最強の護衛殿はっ！

「コタロウ君、バウワウ卿から大至急日傘出して差しててっ。
　あたしはジローさんに肩貸すから………ほら、ジローさん、帰るわよっ」

「……ご迷惑をおかけします……」
「はいはい、後で血……ちょっとだけあげるから頑張んなさい、もうっ」

いつもとは比べ物にならないほどへろへろになった声の護衛（クローザー）に肩を貸すと。
あたしたち三人は戦場の残り火に巻き込まれないようそそくさと、柳洞寺をあとにしたのだった。


（ジロー＆コタロウ＆ミミコ、戦線離脱）

573 名前：木島閑音：2005/08/02(火) 06:19:22

>>568


―――やはり、届かなかった。

最後の武器である銀製ナイフを悉く断ち割られ、さらにはそれらを握っていた箇所の頚動脈を全て切断されて。
これ以上ないというくらいに、木島閑音は―――完膚なきまでに、敗北した。

か、は。
最後の短い吐息を、大量の血液と共に吐き出して、閑音はその場に崩れ落ちる。
余りにも急すぎた出血は、彼女の意識を急激に彼岸の先へと連れ去ろうと魔の手を伸ばすが―――
閑音は何故か、それに抗った。
抗いながら……

「自分の生と死は、果たして勝ちあるものだったろうか」

そんな下らない事を考えた。
それは本当に刹那の時間であったろう。だが、その刹那の時間で、閑音は答えを出した。


（………悪く、ないわね）


そう、悪くはなかった。
傍から見れば、呪われた人生だったかもしれない。
故郷を吸血鬼に潰され、父も母も弟も殺されて。
復讐を誓って求めた物は「力」ただそれだけだった。
その為に一番手っ取り早い方法は、吸血鬼を「食う」事だと教えられ。
殺して殺して殺して、食らって食らって食らって。
ふと気付いたときには、自分の求める物が分からなくなっていた。
復讐のために殺すのか。力のために殺すのか。それとも―――殺すために殺すのか。
何も分からないまま、殺して食らって滅ぼし続けた。

それでも、最後に―――何か自分だけの「信念」で持ってあの吸血鬼に挑み、完全に止めを刺されたというこの「終わり」が―――
彼女にとっては、全く「悪くないこと」のように思えたのだ。


だから、ただ彼女は、安らかな笑みを讃えて。

（さようなら、世界。そしてさようなら―――クソッタレなわたし、、、、、、、、、）

静かに、逝った。





（木島閑音、死亡）

574 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/08/02(火) 06:20:49

>>571
　脚は、既に止まっていた――それもそのはず。
　なぜなら、既に俺の脚は、つま先から膝までがカビに浸食され、ぼろぼろと崩れ出して
いたのだから。
　だが、問題はない。
　ここからなら、まだジョウスケの姿をちゃんと見ることが出来る。

　問題はない。
　ここからなら――奴の姿を、はっきりと見ることが出来る。

「存外にしぶといよな、モグラ君。だが……」

　はっきりと見ることが出来る。
　故に――的とするには、なんの問題もない。

「いい加減に――くたばれよっ！」

　取り乱さずに済んでいたのは、あの少年――ヒガシカタ・ジョウスケの存在が大きいだろう。
　こそ脚も元通りに戻る、そう理解しているからこそ、こうやって冷静に銃をとることも出来る。

　そして――トリガー。
　二度ほど死に損なった男を今度こそ葬るべく、銃弾はまっすぐに、、セッコと呼ばれた男の
背中に向けて飛翔した。

（境内・本堂付近）

575 名前：チョコラータ＆セッコ（M)：2005/08/02(火) 06:28:32

>>569.>>574

「無駄だと言うのがまだ解らんのか……しかし、それもまた興味深いが――セッコ！」

　走ってくる女を睥睨し――チョコラータはまだ笑った。
　状況は既に確定的で、そして尚且つ決定的だった。
　パワー自体は最大級とまでは行かない「グリーン・デイ」だが、拳銃弾などなんら問題としない。
　セッコ、と更に境内の相棒に目をやって、チョコラータは心底から目を見張った。
>>574
　思い切り、つんのめっていた(、、、、、、、、)。
　銃撃など普段なら物ともしないセッコの「オアシス」は、だが――全身に突き立てられたナイフの
傷そのままに、弱りに弱りきっていた。エビ反るように中空で仰け反る。突き入れようとした腕は空
を切り、そして、そのままに無様にただ空を掻いた。

「て、」眼下。銃撃を加えた男を呪うように睨む。マスクの奥の瞳が瞋恚に揺れる。「テンめぇ
えぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ！」

（本堂＆境内）

576 名前：笑石 ◆EMISHIvcMk ：2005/08/02(火) 06:31:47

『我が骨子は捩れ切り裂く(I am the bone of my sword...)』

　浪々と詠じられる呪言。それに伴い湧き上がる、膨大な『力』の奔流。
　体勢の整わぬ現状では、かわせはしまい。だが、まともに受ければ、間違いなくこの身は砕か
れるだろう。
――――けれども、受ける以外に手立てはない。
　ならば、受けよう。仏法と衆生の守護者たるこの身を以て。

　笑石を動かしているのは、信仰という名の人間の『想い』の力だ。『想い』の力は救いであれ災
いであれ、強大な力を持つ。
　そして、『想い』に動かされる者の想いもまた、『力』となる。
　『想い』を強く、持つ。降魔調伏を天命とする仏法と衆生の守護者である己が亡霊風情に負け
る道理はないと、強く、意識する。

『“偽・螺旋剣(カラド・ボルグ)”』

　放たれた『矢』。
　眼前に迫る『力』の奔流を見遣り――――

「っ――――!?」
　完全な思考外からの衝撃に、たたらを踏む。
　見遣れば、先刻、赤い亡霊と共に現れた少女が、笑石に向けて攻撃を放っていた。

　――――何故だ！　あの少女は眼前の亡霊に憑かれているのではなかったのか。俺はあの少
女を、人間を護るために闘ったというのに。
　かつても、似たようなことがあった。
　人を護ろうと魔性を殺したというのに、石を持って人々に追われたことがあった。
　ある時は、憎悪によって。
　ある時は、恐怖によって。
　衆生の護り手としてあることを望まれた俺は、護るべき衆生から排斥された。
　そして今も――――

「お、れは……」
　――――間違っていたのか。
　千年という永き時を、人外を狩ることで仏法と衆生を護らんとし続けた俺の在り方は、間違って
いたというのか。人々に笑っていて欲しいと、そのために生み出された俺の存在が間違いだったと
いうのか！

　『想い』は失われた。幻想は、壊れてしまった。

『――――――吼えろ』

　そこに突き刺さる、『力』の奔流。先んじて少女より投じられた輝きに導かれるようにして迫る、異
形の『矢』。――――耐えられるはずなどは、なかった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　『“壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)”』

　矢に込められた『力』が爆発し、笑石の全身を嘗め尽くす。
　全身を覆っていたひびは確かな亀裂へと成長し、上半身と下半身は分断され、辛うじて人型を
保っているのは、左腕を失った上半身と、右腕に握られた大剣だけだ。
　そのわずかな残骸も、『力』を失い、朽ちてゆく。視界は、もはや皆無に等しい。
　そんな中、わずかに見えたのは鮮血のような赤い影。己が敵対していた、赤い亡霊の姿をそこ
に見た時――――

「お、おぉぉ……おおおおぉぉぉぉぉぉ――――っ！」

　完全に石像へと帰したはずの身に、再び血潮が宿ったような気がした。宵闇を砕かんばかりの
咆哮が、笑石の喉より溢れ出す。
　その身は、その意志はすでに不退転だった。降魔不動の意をもち、己が身に残された渾身の
力を以て、笑石は右手の大剣を投擲した。
　大剣は唸りを上げて回転しながら、赤い影――――笑石が、亡霊が護ろうとした人間の少女へ
と襲い掛かった。

577 名前：笑石 ◆EMISHIvcMk ：2005/08/02(火) 06:33:01

(>>576は>>559と>>570へのレス)

578 名前：東方仗助：2005/08/02(火) 06:35:04

>>574.>>575

「そーいうとこ……尊敬するぜ……あんたのそういう所よぉ……長い付き合いじゃねーけど、そ
ういうとこ、スゲーと思うからよォ〜〜〜〜〜ッ！」

　そうだ。
（ここで「逃げる」のは……スゲーカッコ悪いコトだぜ……）
　走る。足は止めない。駆け抜ける。
　目的地は、だからこそすぐだった。

「有ると思ったぜ(、、、、、、、)……！」

　巨大な鐘が鎮座していた。
　近隣に山と呼べる山がここにしかないなら、寺と呼べる寺がここにしかないなら、当然だろう、
そこには鐘がある。
　鐘の背後に回り込む。その時間も惜しいと、仗助はスタンドを励起した。一指し指を突きつける
方角は本堂。
　――クレイジー・ダイヤモンド。
　夜を割くように白い人形が拳を振り翳す。
　振り下ろす拳は――

「ドラァ！」

　――叩き付けられた拳は、戦車砲の威力すら凌駕した。
　大鐘が連結部から引き千切られる。砕け飛ぶ。
　粉微塵になって吹き飛ぶ大鐘――その破片は、
「このくれーだったら「スタンド」で避けられるよなぁ……しかしよぉ〜〜〜〜」
　「カビの男」に直撃するように、或いは避けるように飛んだ無数の破片は、

「クレイジー・ダイヤモンド……「破壊した物は再生する」……その鐘もな……」

　男を中心に、再生した(、、、、、、、、、、)。

　本堂へと突きつける指の先で、鐘が転がった。
　人間の頭部を鐘の天辺から突き出した奇妙なオブジェ――再生する鐘に閉じ込められた(、、、、、、、、、、、、、)
男が転がるのを確認して、叫ぶ。

「ソイツをッ！　ニーさんッ！　ソイツをブチ込んでやらねーと「カビ」は止まらねぇーッ！」

（境内→鐘堂）

579 名前：エリ・カサモト ◆SV001MsVcs ：2005/08/02(火) 06:38:43

>>575
　アタシの身体からはギシギシ、だけではなく、ボロボロ、という音が聞こえてきそうだった。
　まだ四肢は繋がっている。末端がどうなっているかは考えない。
　銃を保持して引き金を引ける指はまだ残っている。

「くたばりやがれ…！」
　立て続けに引き金を引き、　弾倉内の六発を、もれなくカビ野郎にプレゼントする――――！！

（現在位置：境内本堂前）　

580 名前：千鳥かなめ ◆Kana/lWMBI ：2005/08/02(火) 06:39:50

>>567

視界が戻る。
あたしのスタンガンは、確かに彼女を捉えていた。
そして彼女の右手には、突き刺さるナイフ。
とどめは、させていない。けど、それはもういいこと。

＞「だから私のことなど、心配する必要も謂われもないわ。
＞　ほら、あなたこそさっさと逃げなさい？
＞　夜明けは、近いわよ？」

メイドの彼女があたしにかけてくる言葉。
どうも彼女は全て知っていた上であたしに協力してくれたらしい。
――たまんないなあ、もう。

「ありがと。ごめん、でももう遅すぎたみたい」

既にあたしの背中では、太陽が昇り始めてる。
完全に姿を現すまで、あと一分もかからないだろう。
残念だけど、今から逃げられるような場所はない。
あと一分、あたしは終わり。それは、身体中からあがってきている煙が告げている。

――その一分、何をしようかとあたしは考える。
大切な一分、最期の一分。

ソースケの顔を、まず思い出した。
ごめん、あたし今痛い、身体のあちこちが。
でも今まであたしは、どんなに危険な目にあっても痛いと感じたことはなかった。
それはあんたが守ってくれてたからなんだね、ありがと。

あんたはあたしを守ってくれた。
けどあたしはあんたに、何も残してあげられなかった。
吸血鬼は灰になる、らしいからおそらく死体さえ残してあげられないんだろう。
もらいっぱなしで、何も返してあげられなかった。
自分の存在すら、残してあげられなかった。
それだけが悔いだと、思った。

――そうだ、写真を撮ろう。

不意に、そんな考えが頭に浮かんだ。
いつもカメラを持ち歩いてる友達の顔が浮かんだからかもしれない。
今この瞬間、最高の笑顔を浮かべて写真に残そう。
ほら、ちょうど日の出。背景としては最高じゃない。

ポケットからケータイを取り出す。
幸い、カメラ機能は壊れてないみたいだ。
カメラを起動しつつ、あたしはメイドさんに声をかける。

「あー、メイドさん。悪いけど少し頼まれてくれる？
　ここに後で、ざんばら髪で頬に十字傷がある男の子が来ると思うのよ。
　そしたらこのケータイ、渡してくれないかな？」

残念だけど、その返答を待ってる時間もないみたいだ。
あたしは太陽を背に立ち、ケータイのカメラを自分に向ける。
準備はこれでよし。
でもシャッターを押すのはまだ。
太陽が昇りきったその瞬間、その時一番の写真になると思うから。
そう、その瞬間にあたしは浮かべてやるのだ。今までの人生で一番の笑顔を。
だからあたしはタイミングを計り、そしてボタンを――















静穏な境内に、二つの音が続いて響いた。
携帯電話のカメラの、「パシャ」という合成音声。
そして、持ち手を失った携帯電話が落ちる、「カチャリ」という音。
そしてまた、再び境内は静穏に包まれた。












全ては終わった。
そこに残っているのは、まだぬくもりの残る制服。
その中の、一塊の灰。
そして、

携帯電話のメモリーの中に遺された、日の出をバックにした満面の笑みだけだった。




(千鳥かなめ、消滅)

581 名前：チョコラータ（M)：2005/08/02(火) 06:46:40

>>579

　発砲音に反応する。
　チョコラータは『ギャング』である。
　職業と経験に即した反応は――だから、スタンドの発言と言う形で成された。

「この程度でェェェェェェェェッ！」

　「形」を成したチョコラータのスタンドは、酷く歪に歪んだフォルムをしていた。
　細い手足は長く、節くれだった関節が自己主張する。彼自身はそれを「素敵だ」と感じて
いたし、事実それは――

「おれ達の『栄光』を！　邪魔できると思うなァァァァーッ！」

　飛来する銃弾を払い除ける事くらいはできたのだ。
　鈍い音が断続的に響いた。六回だ。
　足元に毀れた弾頭に笑みを漏らし、そして、

>>578

　その瞬間、チョコラータは束縛された。
　手も足も出せないという言葉通り、文字通りに頭以外を鐘に閉じ込められた。

「おおおぉおおお前はァァァァァァァアッ！？」

　本堂前でカビに侵された男に視線を向ける。
　銃口が狙っていた。

（本堂）

582 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/08/02(火) 06:57:02

>>578

「全く、好き勝手言ってくれる――」

　苦笑しつつ、鐘に編み込まれた「カビ」の元凶をにらみ付ける。
　正直なところ、そろそろ体勢を維持するのも限界だった。
　カビは既に下腹部にまで及んでいる。脚はすでに風に舞い、あたりに振りまかれていた。

「この距離で当てろ、だと？　俺の腕を知っててそう言うんなら――相当におめでたい！」

　だがどのみち、残り後一発なのだ。こちらに向けて怒りの絶叫をあげるモグラもどきを完
全に無視して――酷く冷静に、最後のトリガーを引いた。

　必殺、必中を期した一撃。
　だが――その直前。風が吹き。

　かろうじて身体を支えていた一部が、カビとなって崩れ落ちた。体勢は、当然崩れる。

　つまりは――それで、終わりだった。
　銃弾は、頭部ではなく。
　元凶を戒めているはずの鋼に直撃し、鈍い、鈍い音を響かせていた。

（境内・本堂付近）

583 名前：東方仗助：2005/08/02(火) 07:14:08

>>582

　終わった――ように見えた。
　鐘に束縛しても、スタンドの効果は消えない。
　カビは命を食らい続ける。
　お終いだ。
　チェックメイトだ。

　だった、筈だった。
　それに足掻こうと、仗助は駆け出そうとした――まずは眼前の『潜る男』へ。
　それも、しかし、”筈”で終わった。

　全ては一瞬だった。
　一瞬は鮮烈だった。
　眩いほどに唐突で、荒唐無稽で、だからこそデウス・エクス・マキナを連想させる滑稽さがあっ
た――が、仗助はそんな語彙が好きではないし、そもそもそれを認識できる人間はいなかった。
　そうとも、それは馬鹿馬鹿しい。

　いた。
　そこに存在した。
　視認すら遠く届かないような唐突さで、中空で体制を立て直した「潜る男」の真下に――白い、
今しも迎えた朝焼けのように白い男が、いた。
　誰も目に映さなかっただろうし――映せなかった筈だ。轟音や爆音、微かな予兆すらない。そ
んな物は無駄だとばかり、無音に、無動作に、そして無情に存在しているのだから。
　微風より優しく――荒風よりも無情に。
　白衣が翻る。
　正に無造作に――ただ、常軌を逸して速く。白衣は中空で身を捻ると、真下から男を蹴り上げ
た。オーバーヘッドキックのような無造作で更に上空へと男を打ち上げ、白衣は尚も滞空時間
を伸ばしていく。
　閃く白衣が「潜る男」を穿つ。
　余程――跳躍する時の爆発力が凄まじかったのか。
　昇り始める朝日よりも、その位置は高いように見えた。

　仗助は、高く高く上る白衣がこんな言葉を零すのを、確かに聞いていた。

「――幕を下ろしましょう、承太郎博士(、、、、、)」

（仗助−鐘堂）

584 名前：空条承太郎：2005/08/02(火) 07:21:32

>>583

　――そして、全ては形而上に祭り上げられる。
　あらゆる要素が停止していた。
　空気すら流動を止めたその空間で行動ができる存在は――「動く」という行為すら阻害される
その世界――、即ち、”時間の停止した世界”で行動できる存在は皆無である筈だ。
　「食人カビ」も、「空に舞うスタンドの男」も。
　熱量すら。
　熱さにも寒さにも、謹厚さにも陋劣さにも差別なく、満遍なく、そして逃れる存在すらなく――
　それは平等に、「停止」していた。
　そして――
　それは。
　停止と言う概念を観測できる者が存在するからこそ、「停止」と呼ばれる。
　悉く、須らく。
　その世界で、彼は一人ごちる。
　「カビの男」の眼前に立った彼は――

「スター・プラチナ・ザ・ワールド……「時は止まる」……」

　世界が停止した「世界」で、告死する。
　空条承太郎。
　「史上最高」として伝えられるスタンド使い――スタンド、「スタープラチナ」のスタンド使い。
　ならばこそ、彼の傍らで佇む長身の人形こそ、「星の白金」だ。一切の無駄を省かれた筋肉が
覆う身体はヘラクレス然として逞しく、威圧感よりも神々しさこそが先に立つ。
　そして承太郎はそんな一切合切の要素を気に止めず、

「どうやらやれやれ、間に合ったようだな……仗助……散々待たせて悪かった……だがしかし、
頼りになるヤツが居たようでどーやらギリギリセーフってとこか――」

　ただ。

「――オラァ！」

　分身が両の拳を振り上げただけだ。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァァァ！」
　だが、しかし。
　そも―― 一撃一撃が、仗助のクレイジー・ダイヤモンドを上回る破壊力は、
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオ
ラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァァーッ！」繰り出される拳の速度は、
既にマシンガンすら、ガトリングガンすら凌駕していた。鐘の形が変形し砕け中身、即ちチョコラ
ータが露出しても尚且つ殴り続け――限界停止時間5秒、「殴り始め」から開始してその時間、
実に一秒に満たない――ともあれしかし、彼にとっては充分に過ぎた。「オラオラオラオラオラオ
ラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァァーッ！」

　後には残らない。
　生命など残らない。
　絶対破壊は、存在に意味など残さない。
　全てが崩壊する。
　あらゆる存在が破壊される、極限の、究極の――正に、無敵の、「世界」を統べる能力(ザ・ワールド)――そ
れこそが――ここに。

「そして「時」は動き出す……もっとも、テメーの「時」は二度と動かねーが……」

　均衡が崩れ、圧縮された世界が回帰する。
　世界が流動を始める。
　「ザ・ワールド」――“止まった世界“で粉砕された存在以外の全てが、静寂を取り戻した。

（本堂前−時は動き出す）

585 名前：アーチャー ◆LjUStice7U ：2005/08/02(火) 07:21:49

>>576
　慢心とは言えずとも、射を放った後からくる衝撃で一瞬反応が遅れた。
　たった一瞬。
　だが、その瞬きの間で十分すぎた。

　必殺必中の一撃だった。
　では、その必殺を受けてなお反撃を試みる敵は何者なのか。
　威力が劣っていたのか、それとも何かの力が働いたのか。
　そんな思考を巡らせる刹那の間さえない。

　朽ちる寸前の敵から投じられた大剣が、やや離れた位置にいる凛へと牙を剥く。

「―――――――ッ、凛……！」

　剣を投影する間さえ惜しい。
　敵に突進した最高速度より尚速く、神速じみた速度で少女へと駆ける。
　それでも追いつかない。
　自分が届く一瞬前に、主が絶命する姿がはっきりと脳裏に描かれる。

「たわけが…………！」

　怒号と共に、正しく一陣の赤い風となって、地を蹴る。
　だが後一歩足らない。

　―――失えというのか。

　此処で見殺しにすれば、本当の目的である衛宮士郎の殺害は叶う。
　未だ現界しているキャスターと契約すれば現界を保つことも可能だ。
　自身の殺害。
　それだけを支えに、守護者という地獄を続けてきたのではなかったのか。

　だが、そんな思考など頭に浮かぶ間もなく消滅する。
　忠義や騎士云々以前の問題だ。
　彼は彼であるがために、己の主を見捨てるなど、一片たりとも露ほども考えなかった。
　何よりも大切な、誇るべき一人の少女を守る事のみが頭を占めている。

「―――――伏せろ、凛！」

　地を割らんばかりの疾走。
　敵に何らかの力が働いて反撃できたように、
　弓兵もまた、何かに取り憑かれたかの如く、
　かの最速の槍兵さえも凌駕しかねない加速を以って、
　少女を突き飛ばすように、旋回する断頭台じみた刃へとその身を晒し―――――



「―――――っ！」




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　鈍い、音がした。




【石段下】

586 名前：遠坂凛 ◆Rin/.ruSTE ：2005/08/02(火) 07:33:42

>576 >585

咆哮が聞えた。
舞い上がった土煙を引き裂くような、魂を搾り出すような。

「――――」

……違う。
これは、この音は。
何かが風を切る音だ。
白く霞んだ空気の向こう、崩れ落ちる影――音はそこから聞える。
そこまで認識した、その刹那だった。
轟、と。
先程まで相対していた相手の持っていた大剣が、大気を切り裂きながらこっちへ――――
不味い。アレを避ける程の動きは、終わったと思って気の抜けていたわたしには出来そうにない。
そう覚悟して、思わず目を瞑った。

……筈なのに、衝撃は何時までも来ない。
代わりに、ぶつんと言う何か芯のある物を切断するような音と共に。
半顔に、熱いモノがびしゃりとぶちまけられた。
瞼を開く。

「……アーチャー！ ちょっと、大丈夫……！？」

わたしを庇うように軌道に割って入った赤い背中。
それから、突き出した右腕の先から零れ落ちる紅。


――――右腕が、半ばから斬り飛ばされていた。


考えるより早く片方のリボンを解いて上腕をきつく縛る。
同時に考える。
元通りにはなるけど、今すぐは無理だ。
おまけに、上からはまだ銃声のようなものが聞える。
退くべきか、行くべきか――答えは、すぐに出た。

「退くわよ、アーチャー。
　どの道この騒ぎじゃわたし達だけじゃ抑えられないし、現状で上に行ってもやられかねない。
　ここで無理をする意味はないわ」

肩を貸しながら石段の上を一瞥して、背を向けて歩き出した。


【石段下/サーヴァントと共に撤退】

587 名前：笑石 ◆EMISHIvcMk ：2005/08/02(火) 07:40:41

>>585　>>586

　失った筈の視力で、笑石は見た。
　亡霊が――――否、赤い弓兵、アーチャーがその身を呈して少女を助けるのを。
　少女は己が身を護った弓兵へと駆け寄り、奴を連れて、どこかへと去っていった。
　何故、その光景ばかりがはっきりと見えたかはわからないが、もしかするとそれは、死の直前に
真実を教えてくれようとする、御仏の慈悲だったのかもしれない。だとすれば、酷く冷徹な慈悲もあ
ったものだ。

　そして笑石は、理解した。
　自分は間違っていたのだと。
　何が間違っていたのかはわからない。文字通りの石頭でははっきりとはわからないが、何かが
間違っていたのだろう。

「くく……」
　笑いが漏れる。
　千年間、仏法と衆生の護り手を名乗り、人ならざる『魔』を殺し続け、最期に悟ったのが「自分の
今までしてきたことは間違いだった」。
　絶望するよりも先に、滑稽さがこみ上げてくる。

「あぁ、でも――――」
　理解力のない石頭でも、一つだけわかることがある。
　何が間違っていたか、ではなく、何が間違ってはいなかったか、だ。
　俺の想いではなく、俺の行動ではなく、俺を造り崇めた人々の想い。つまり、「人々に笑ってい
て欲しい」、と。その想いだけは


　――――決して、間違いなんかじゃない。


　その思考を最後に、千年の永きを在り続けた笑い仏は消滅した。――――造られた時と同じ、
邪気のない、朗らかな笑顔を浮かべて。

【笑石、消滅】

588 名前：―完全で瀟洒な従者―　十六夜咲夜 ◆M6sKnivesI ：2005/08/02(火) 07:43:11

>>567　片倉優樹
＞「君たちはいったいなんなんだろうね…」

そんなことを呟く、目の前の少女……ではない、のでしょうけど。口ぶりからして。

何なのかと言われても、先ほど少しばかり死の危険を渡ってきただけの、行きずりの関係でしかない。
ただその子が、どうやら吸血鬼になっていたようだというだけで。

私は人間、主は従者。
同じ人間は異能の私に冷たく、紅魔館の皆は異能の私に分け隔てはない。
そんな私に、今更人間だ妖怪だという区別があるものか。
私は紅魔館のメイド長、お嬢様の従者。それだけでしかない。


…………それが幸運なのは、認めるけれども。
だから、そう。

「……あいにくと、答えは持ち合わせてはいないわ。
　やっぱり『こちら』は生きにくい、という事しか、ね」

私が彼女に答えを示すだの、ましてや導くだのという資格は、あろうはずがなかった。

>>580　千鳥かなめ

そして、彼女。
どうやら既に、悟りきってるようだ。逃れる術はないのだと。

＞「あー、メイドさん。悪いけど少し頼まれてくれる？
＞　ここに後で、ざんばら髪で頬に十字傷がある男の子が来ると思うのよ。
＞　そしたらこのケータイ、渡してくれないかな？」

先ほど言ったような、行きずりでしかない私にそんなことを頼む、か。
あんな風に突き放したのに、まったく高く買ってくれることだ。
そしてそんな私の返答を待たずして、彼女はそのケータイ？　で何かをして……塵と、化した。

拾い上げる。
写っていた。
朝日を背に、正しく輝くような笑顔の彼女が、そこには残っていた。

……なんだかとても眩しいのは、果たして、朝日のせいだけなのだろうか？


どうしたものかと、思案……すぐに決断。
どうせ今更、夜闇に乗じて……などと出来るはずもないのだ。
これぐらいは最後まで、行きずりとして付き合うのも、悪くはない。

未だそこここで喧騒が聞こえる中、適当な木に背もたれ、主観時間を早める。
やがてやって来るという「男の子」に、何と言って渡そうかと考えながら。






「……ああ、あなたね？　彼女が言ってたのは。
　いえ、ちょっと彼女……千鳥かなめ？　ふーん、なかなかいい名前だったのね。一度くらい呼んでみたかったものだけど。
　ともあれ、そのかなめからの預かりものよ。あなたに渡してくれって、ね。
　……ええ、彼女はもういないわ。残念だけど体も残ってない。あるのはこの服と、灰だけ。
　でも、そうね。彼女は強かったわ、とても。こんな一握りの灰という代償では重すぎるほどに。
　だからこれも、集めておいたわ。
　大事になさい。彼女の生きた証なのだから。

　それじゃ、私はこれで……え、私？
　何でもないわ、ただのメイドで奇術師よ。あの子に助けられただけのね。
　だから私のことなどは忘れて頂戴。こっちでは、そうあるべきなのだから」

589 名前：―完全で瀟洒な従者―　十六夜咲夜 ◆M6sKnivesI ：2005/08/02(火) 07:53:47

>>459 >>471 >>490　本堂へ
>>497 >>502 >>508 >>510 >>517 >>525 >>528 >>534　セッコ出現→撃退
>>536 >>542 >>545　脱出　男性陣と別行動

>>552 >>556 >>560 >>567 片倉巡査部長と遭遇、かなめの捨て身
>>580 >>588 千鳥かなめ、灰化

そして私は、そのまま姿を消した。
……その近辺で、新聞等に寺院での惨殺記事が報じられることは、無かった。

（十六夜咲夜　退場）

590 名前：東方仗助：2005/08/02(火) 08:11:47

>>584

「ハッ……って、う、お、おおおおォォォォ！？」

　あらゆる現象が一瞬で起こった。
　「カビの男」が居なかった。
　存在すらしていなかった――代わりに、
「じょ――」
　承太郎が立っていた。状況を把握する。理解する。
「承太郎さ――」首を振る。脇目も振らずに駆け出すと、半身を「カビ」に食い潰された青年に
駆け寄り、スタンドの癒しを施した。生きてさえいれば、治すのは容易い――生命への冒涜以
前に医者にケンカを売るような自分の能力を、こういう時は心強く思う。
「……じょ、承太郎さん、なんで――」

　と、そこまで言った所で頭上に気配がした。
　声もした。若い声、日本人の声だ。

「ブチ――」

　それは一声。
　見上げる――そこには。
　頭上数メートルのそこに、肉塊寸前の「地下のスタンド使い」を片手に下げた白衣が、

「――砕けな」
　降ってきた。
「うおぉぉぉぉぉっ！？」

　力任せとしか言えない一撃だった。
　魔神の鉄槌、神の雷霆、比喩としてはそれより過激で醜悪な表現が似合いそうな――峭寒
の惨烈と峻厳さに満ちた一撃だった。
　さながら、斧を叩き付けるように――首を片手で掴んで地面へと打ち付けると、白衣の男は
更に立ち上がって懐から引き摺り出した二丁の拳銃を肉塊に乱射した。蹴り飛ばす。そこで
漸く満足したのか、白衣は肩は仗助に振り向いて「やあ」と言った。「おはよう」ともついでのよ
うに言った。
　どこかで見た顔だった。
　記憶の中で、無数の線が像を描き結ぶ。

「あ――アンタ、あの時の！」
「そう」
「バイクくれた神父さん！？」
「俺のじゃないけどね」
「「スタンド使い」！？」
「違うよ」
「じゃあなんでこんな――」
「相手が弱ってたからじゃないかな」
　どう考えてもそんな筈はない。口には出さずに顔に出した。
　白衣の男は小さく微笑んで、それから承太郎に顎先を向けた。
「「矢」に関しては、俺達の組織でも調査の対象になっててね……とはいえ、こっちは研究を
始めたばかりで専門家は居ないし、だから――」そこで彼は頭を掻き、「……なんて、俺はよ
く知らねーんだけどさ。……ともあれ、承太郎博士に――もちろん海洋学者だ、ってのは知
ってるけど、別口で依頼させて貰ってね」
「ぜ、全然ワケ解んねー……アンタも解んねーけど、承太郎さん、一体それじゃ、ここに来た
意味って、」
　承太郎に視線を向ける。
　承太郎は事も無げに答えた。
「俺達も寺の中を調査してたんだよ」
「……ノォーッ！　じゃあなんなんスかァーッ！？　オレがやる必要って――」
「途中で、「スタンド使い」が近辺に来ている事を確認したんでな……案の定と言うか、やれ
やれ、ヘヴィーな状況になっていたから、頃合を見計らってカタをつけさせて貰ったんだが
……不満そうだな」
「そりゃあ……そうっスよ……十万じゃワリに合わねーっつーか、ヘタしたら死んでたんじゃ
ねーっスか？　『グレート』にヤベぇ状態だったんスからねェ〜〜！？」
「悪かったな……まあ、何事もなくてやれやれだ」
「……」
（『軍資金』を上乗せする、くらい言ってくれねーのかよォ〜〜〜〜ッ！）
　ブツブツと愚痴ろうが、承太郎が取り合わないのは解っている。
　疲れと安堵に身を浸して屈み込んでいた仗助は、ふと承太郎に肩を叩かれて顔を上げた。
「さて、所で仗助……さっき「ブッ飛んでいった」奴とそこで「ブッ倒れている」ヤツが元凶だ
った訳だが……何か言ってやれ」
「ナニかって……」

　何かも何も、言えることなど一つしかなかった。
　気絶気味に倒れている青年と、駆け寄ってきた赤髪の少女――本堂内で行動していた数
人、エトセトラ。全てが全て元凶はこの連中で、どうにもならない理不尽さはそこに凝縮され
ているような、それ自体が理不尽な思考に陥ってしまう。
（ともあれ……よぉ）
　立ち上がる。
　何処かへ「飛んで」行った「カビの男」と、ピクリとも動かない「潜る男」を見下ろして、

「「「テメーは俺を怒らせた」」」

　セリフは三度、重なるように朝空に響く。
　空が眩しい。
　仗助は思う。

（アンタら、最後の最後に出てきただけじゃねーのか……）



【チョコラータ＆セッコ−再起不能(リタイア)）】
　

591 名前：リチャード・ウォン（M）：2005/08/02(火) 14:11:44

　私の手駒、エミリオ君の記録ですよ。

参戦>>373
移動〜戦場へ>>384

乱射>>406 (被害>>412 制裁>>416 無視>>422 利用>>429)

VS源義経＆武蔵坊弁慶（Ｍ）>>410 >>431 >>440
>>458（観戦者>>463） >>481

アークエンゼル〜光の濁流>>491 >>507 >>523

終焉>>529

　蜉蝣の一期（ふゆうのいちご）……とでも言うべきでしょうかねぇ。

592 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/08/02(火) 21:38:45

>>590

　――かくて。
　一夜の悪夢は去り、またもや呪いの如き太陽が下界を照りつける。
　サングラス越しにその無遠慮な日差しの元凶をにらみ付けて、俺は深く深く息をついた。

　俺が意識をようやく取り戻したときには、其所には誰一人として残されては居なかった。
　あの少年――東方仗助（ようやくまともに発音できるようになった）ですらも、その姿は何処
にもない。
　まあ、これだけの騒ぎの後だ。
　警察が介入してくる前に、とっとと逃げ出したんだろうが――いや待て。
　警察。それは拙い。だって下に停めてあるキャリアには、不正規のルートで搬入した重火
器（そう、文字通り重火器だ）が、それこそ山のように。

　こんなところでぐずぐずしてる場合じゃない――本国に照会が行ったとして、ラベル局長が
俺を助けるなど、それこそ妄想も良いところだ。
　身体の何処にも以上がないことを確認した俺は、いつものように――そう、こんな事があっ
たって、いつものように平然と其所にいるカペルテータを伴って、とっととこの忌々しい寺院
からの脱出を計った。

　そして、ようやくホテルにたどり着いて――そこで、ようやく気がついた。

　……なんというか。無いのだ。
　身分証も。パスポートも。そして――当座の現金が入っていた財布も。

　車上荒らし――その単語がようやく頭の奥底から出てくるまで、たっぷりと二十分は必要
だった。

　警察に届け出ることも出来ず、パスポートもないので帰ることも出来ず。
　どうしたモノかと頭を抱えた俺が、今何をしているのかといえば――――


「おにーさん、ポップコーンひとつ」
「――はいよ」

　百円硬貨二枚と引き替えに、カップに山盛りになったポップコーンを手渡す。
　暑さを凌ぐために頭に巻いたタオルが、何とも言い難い。
　つまり、まあ。
　アルマデウスに――というか、トリスタン市に連絡が取れるまでの間。
　食い扶持を稼ぐために俺が始めたことと言えば、寺に放置された>>412屋台を拝借しての
ポップコーン売り。
　横でもちゃもちゃとポップコーンを口に放り込むカペルテータに一瞥をくれて、俺はまた、
深々と息をつく。


　無資格戦術魔法士、レイオット・スタインバーグ。
　この胡散臭い風体の男は、実はまだフユキにいるのです……

　……いつになったら帰れるんだ。実際。

（レイオット・スタインバーグ、日本で立ち往生）
（帰国予定：未定―――）

593 名前：レポートＩ ◆k2zTougaRE ：2005/08/02(火) 22:05:26

　この度のサンプルNo,10000のデータ。

　　導入　 　>>353
　　衝突 　　>>364>>382
　vs銀刀  　>>398>>422
　　幕間　 　>>432
　vs木島　　>>451>>467>>486

　以上より、闘争本能が先に立ちすぎた為に自滅したとも言える。
　次代のクローンＫはその辺りの兼ね合いを取り、如何に闘争本能を削がずに
　理論的な戦闘思考を持たせるかが重点となるだろう。

　どちらかと言えば思考回路その物を除き、命令による統制にした方が良いのではないか。
　これによる弊害は確かに考えられるが、自立した思考回路のままでは統制など取れる筈も無く、
　兵器としての運用も適わないだろうと思われる。
　

594 名前：遠坂凛 ◆Rin/.ruSTE ：2005/08/02(火) 22:16:27

>エピローグ

結局、後は誰かに見咎められる事もなく屋敷に辿り着いた。
あの場に一体何人ほど居たのかは判らないけど、戦場はそれ程広がらなかったらしく
追撃を受ける事もなかった。
尤も、わたし達の動きに気付いていなかったんだろうけど。
……そう思うと、何とも言えないもどかしさのようなものを感じる。
結果に今更文句は言わない。けど、あそこで何が起こっていたのか知りたい――――
だから、わたしは電話を待っていた。
事が聖杯戦争に絡み、最早隠蔽するにも不可能な大事件。
そうなれば必ず掛かってくる筈の電話を。



「大体判ったわ。……そっちは自分で適当にどうにかするわよ。じゃ、切るから」

綺礼と長々話をしていると小言に展開しそうだから、必要な事だけ聞いて切った。
で、聞いた話を総合してみると、昨夜から今朝にかけて、柳洞寺周辺は特異点とでも言うべき
状況だったらしい。
死体は幾つも転がっているわ、何処其処燃えているわ、ぶっ壊れているわ。
軽く地形も変わったりしていて、あの山で正に戦争が起こったようだったそうだ。
……クラスは確定出来ないけど、柳洞寺には間違いなくサーヴァントが居た。
当然柳洞寺を巣にしていたサーヴァントが動いていたはずだ。
ならば、それを相手にして互角に闘えるような連中が複数……
少なくとも一人二人では利かない程度にはいた事になる。
そんな連中が全力でぶつかれば、地形くらい簡単に変わるだろう。

介入した個人、もしくは組織の総数すら不明。
……冬木の管理者なんて言っても、所詮魔術師の関わる世界でだけだ。
其処から遠ざかる程に情報は遠くなる。
事実、あれだけの尋常でない力を持った連中がこの街に集まっていた事にすら気付けなかった。
『聖杯戦争の真っ只中にマスターやサーヴァント以外に気を配る余裕なんて無かった』
そう言えば言えない事は無いだろうけど、流石にこれはどうかと思う。
もっと情報網を強化するべきだろうか。

……違う、それはひとまずどうでも良い。
今のわたしに判るのは――――

偶然に必然、全ての糸が絡まりあって――結果、あそこは戦場になった。

そんな、言われなくても判っているような事だけみたいだった。




以下、レス番纏め

>492（>495） >500 >521 >527 >541（>543） >548 >555 >559 >570 >576（>577） >585 >586 >587

……やれやれ、協会の方にはなんて言ったら良いのやら。

595 名前：笑石 ◆EMISHIvcMk ：2005/08/03(水) 10:13:41

吸血大殲　小次郎祭り　笑石レス番纏め

>>386　登場

>>401　>>420　>>434　>>448　>>457　>>472　>>476　vsハセ【石段下部】

>>492　>>500　>>521　>>527　>>541　>>548　>>555
>>559　>>570　>>576　>>585　>>586　>>587　vs遠坂凛&アーチャー【石段下部】

596 名前：◆QaSCroWhZg ：2005/08/03(水) 23:49:56

東山三十六峰、草木も眠る丑三つ時。
千鳥か雉か駒鳥か、突如聞こえる呼子の笛、しじまを破る剣戟の音！


夏の血祭り前哨戦　"小次郎祭り"
アサシン：佐々木小次郎vs長谷川虎蔵　レス番纏め
>>385 >>396 >>405 >>418 >>426 >>436 >>450 >>465
>>480 >>494 >>506 >>522 >>532 >>544 >>550 >>553


月に叢雲、花には風よ。
三太刀七太刀酌み交わし、何処で鳴いたか不如帰（ほととぎす）。

597 名前：源義経＆武蔵坊弁慶（Ｍ）：2005/08/04(木) 02:21:44

夏の血祭（ちまつり）前哨戦“佐々木小次郎祭り”一幕
源平討魔伝“義経大殲異聞”　れす番まとめ

出陣
>>368　>>379
因縁序幕
>>387
乱戦〜白拍子
>>406 >>410（>>420) >>416 >>431 >>440
>>458 >>481 >>491 >>507 >>523 >>529
因縁決着
>>469 (>>523) >>530 (>>540) >>546 >>551 >>554 >>558
終幕
>>564


神様は死んだ
悪魔は去った
太古より巣食いし
狂える地虫の嬌声も
今は、はるか
郷愁の彼方へ消え去り
盛衰の於母影を
ただ君の切々たる胸中に
残すのみ
神も悪魔も降り立たぬ荒野に我々はいる
　

598 名前：戦士長・火渡(M)：2005/08/04(木) 20:37:16

>>524>>533

―――鎧野郎をぶっ飛ばして数分。
火渡の武装錬金は解除され、肉体と同化していた炎は消沈している。

右手を確かめる様に握り、開く。それだけを繰り返すこと、数度。
「―――まだ、痛ェな」

いくら火炎同化で外部からの攻撃をある程度無効化するといっても、
内側から生じたダメージ(、、、、、、、、、、、)までは、そうはいかない。
反撃のために炎の噴射の威力を、最大限に引き出す為に打った強固な鎧への打撃。
それは、専門用語で言う所のボクサーズフラッチャーと呼ばれる、拳の骨折を引き起こしていた。


「……防人の『シルバースキン』なら、打撃の反動もシャットアウトしてるんだろうがな」
ひとりごちながら急ぐ足を速める。
武装解除して核金に戻す事によって、核金の基本能力である『治癒力の促進』を機能させる。
それでも、骨折まではこの短時間では治りはしない。
気休めにしかならないが、折れたまま無理をするよりは大分マシだ。


――――いつしか、目の前の風景は開けた池へと変わっていく。人気は皆無。
「……追い越しちまったってワケか」
それならそれで構わない。待つ時間を利用して、少しでも回復させるだけだ。
火渡は、ズボンのポケットからタバコとオイルライターを取り出し、一服を始める。
火炎同化状態ではない今、タバコは独特の青みがかった白煙を立ち上らせていた。

599 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：2005/08/04(木) 20:43:56

>>598　火渡

後ろ髪を引かれる思いを抱きつつも、さつきは走った。
　彼女は分かっている。彼女は知っている。
　いま、自分がやるべきコト。いま自分が成すべきコト。

　生きる―――。
　生きて、生きて、生き抜いて。
　そしていつの日か。

　柳洞寺から猛烈な勢いで離れる。饗宴の夜が遠ざかって行く。さつきの身体を包む安堵。
今日もまた、生き残れた。あんな出鱈目で理不尽な状況からも、生きて帰れた。
　それが、たまらなく嬉しい。

　道が、開けた。視界一面に広がる池。どことなく禍々しい雰囲気を持った池。その手前に、
見覚えのある人影が。
　さつきは足を止めた。

「……どいて」

　愛嬌のある顔を精一杯凄ませて、睨み付ける。
　溢れ出る殺気。

「わたしは行かなくちゃいけないの。生きなくちゃいけないの」

　会いたい人がいるから。会って、伝えたい想いがあるから。

「だから―――どいてよぉっ！」


【池】

600 名前：戦士長・火渡(M)：2005/08/04(木) 20:57:11

>>599　弓塚

「よぉ、遅かったじゃねェか……待ちくたびれたぜ」

―――ちょうどタバコ二本分、というところか。
足元に吸殻を放り、踏みにじる。
“これがお前の未来の姿だ”と言わんばかりに、力強く。

「……どいて」
やや幼さが残る顔立ちを歪め、凄む少女
「やなこった」

「わたしは行かなくちゃいけないの。生きなくちゃいけないの」

「―――言ったろ。テメエの居場所はもう何処にもありゃしねェ。
そして、人食い(ヒトクイ)に成り下がったテメエが生きる事を許せねえ俺がここに居る―――」

「だから―――どいてよぉっ！」
「悪ぃが―――」
無音無動作で武装錬金を発動させる。
火渡の足元に、表面に正六角形を隈なく配した巨大な砲弾が生み出され宙へと舞い上がる。
焼夷弾の武装錬金(ナパーム　ブソウレンキン)・ブレイズ　オブ　グローリー！！

「―――死んでもらうぜ、テメエが食った連中みたいにな」

【境内裏手　池】

601 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：2005/08/04(木) 21:46:02

>>600

「そう……」

　一歩、前に踏み出す。それは生きるための前進。
　何もない自分。空っぽの自分。それを満たすための前進。潤いを求めての、前進。

「でも、わたしは往くよ」

　更に一歩、前に進む。そんなさつきの歩みに合わせるように、現実もまた一歩、更に一歩、
と侵食されてゆく。彼女の想いが、世界を蝕んでいるのだ。
　リアリティ・マーブル。
　弓塚さつきという存在が、世界に対して支配を開始した。

　どんな潤いもやがては渇き、どんな幸せもついには枯れる。
　彼女は砂で出来ていた。決して満ちることの無い砂で。

　少女はここに孤り、枯渇した庭園で月を仰ぐ。

「……あなたなんて、そこで渇いてちゃえ」

　世界が急速に色褪せてゆく。
　彼女の周囲のマナ。悉くが渇き、果てた。
　その力の向こう先―――迸る黄金の炎が。

【池】
　

602 名前：戦士長・火渡(M)：2005/08/04(木) 21:58:17

>>601
――――7年前、最初で最後、唯一の任務失敗。
土石流に偽装した証拠隠滅によって“喰い尽くし”は行方不明。
“喰い残し”は土石による損壊、“敵”は嵐に紛れて逃亡、現場となった小学校を含む集落は丸ごと全滅―――

心の底に楔のように食いこみ、澱のように残り、未だに俺達を縛りつける記憶。
その時、『不条理を不条理でねじ伏せる』ことと共に学んだ事が有る。

――――失われた還らないものを、嘆き続けることは無意味だと。
死人は死人でしかないと切り捨てるべきだ。涙が枯れ果てるまで嘆いても生き返りはしないと、割り切るべきだと。
そうやって現実主義者(リアリスト)で在り続けてきた。

そんな俺にも、死人たちへの手向けとして出来る事が有る。
ホムンクルスをブチ殺し続ける事。それだけが、死人を切り捨て、割り切る唯一の手段だと思えた。


「―――確かに、テメエを受けてくれる世界がまだどこかにあるかもしれねェ。
同類で固まるのが、生き物の基本性質としては正しい姿かもしれねェ」
現に、俺の敵であるホムンクルスは共同体(コミューン)を形成し、餌場の確保・活動資金の調達などをシステマチックに行う。
吸血鬼の中にもそういった共同体を作りだし、人間社会に寄生することを考える賢しい奴も居るだろうが―――。

「――――だがな、正しいからとてそれが常に罷り通るとは限らねェ」
ハンドポケットで庇っていた右手を抜き放つ。
痛みはまだ残るが、戦闘には支障はない。昂ぶった闘争本能が肉体を凌駕してくれている。

「幸い、ここには水気があって人気は俺達以外にはない―――つまり、さっきは加減した
俺の武装錬金を思う存分使う事が出来るってワケだ」
それでも、効果範囲をある程度は絞らなければ境内に居る連中を巻き込むだろうし、
本堂にいるかもしれない仏僧連中を巻き込みかねないだろう。

「そう……」

俺の言葉を、どこまで拾い上げたかはわからない表情で。
俺の殺意を、闘争本能を、どれほど受けとめたかわからない様子で。

少女は歩み出す。

「でも、わたしは往くよ」

その足取りは、世界を侵食する。
少しづつ、だが確実に。ゆっくりと、疾り出す様に。
全てが枯れ果て、死に往く世界に彼女は佇み、生を謳歌する。
その姿は―――頽廃的な美しさの権化と呼ぶに相応しかった。

「……あなたなんて、そこで渇いてちゃえ」
―――言葉は、涙枯れた世界を調律した。

「食らえ―――五千百度の炎！」
―――言霊は、枯れて逝く筈の世界を万死の焦熱で掻き抱いた。

『ブレイズ　オブ　グローリィイイイイイイッ！！』

【池】

603 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：2005/08/04(木) 22:23:58

　炎は周辺一帯を灼熱で侵し、吹き荒ぶ砂は焦土を作る。
　信念の火柱は少女の世界を灼き焦がし、退廃の風は男の正義を渇かした。
　あとには、何も残らず。
　柳洞寺での一夜が舞台であるこの場では、話はここで終わりを見せる。



　―――何処かの街の歓楽街。
　駅前の石像に腰掛け、暇を持て余す制服姿の少女の影。
「もう……散々な夜、だったよ」

　弓塚さつき　小次郎祭の足跡

【参戦】
　>>351

【接触】
　vs KUSANAGI
　>>361>>364>>375>>380>>387

【逃亡】
　vs 火渡
　>>391>>395>>409>>414>>442>>454>>468>>485

【交渉】
　vs ミココ
　>>484>>493>>503>>518>>526>>533>>539

【決着】
　vs 火渡
　>>598>>599>>600>>601>>602

604 名前：戦士長・火渡(M)：2005/08/04(木) 22:28:59

>>602
【エピローグ】

「―――まったく、締まりませんね貴方は」
「けど照星サン、“柳洞寺の化物”は俺の武装錬金で――――」
戦団御用達の病院のベッドの上で、俺は上司である大戦士長・坂口照星に事後報告を始めていた。
最終的には全身打撲と右拳の骨折で全治1ヶ月。核金による治癒力促進を考えれば1週間もかからないだろう。

「―――で、その化物はどのような姿をしていたのですか？」
「どのような、って……ホムンクルスじゃないメスガキの吸血鬼だったんスけど……？」
あの後、本部から取り寄せた資料を再確認（手元にあった物は燃やしてしまった）して始めて、
冬木市では連続して行方不明事件が発生していた事を知った。

俺はこの任務は『聖遺物関連の調査』と『化物退治』を並行して行う、とばかり思っていたがどうやら勘が外れていたらしい。
つまり、最初から上層部は『“柳洞寺の化物”＝ホムンクルス、またはそれに類する人食いの化物』であると考えていたわけだ。

「勇み足と一人相撲ばかりでは困りますね、いい加減部下も出来たのですから」
「部下なんてうぜェだけッス、照星部隊の頃の方がまだ楽ってモンでしたよ」
はぁ、とサングラスを指を抑えながらため息をつく照星サン。

「まぁ、今回の任務に関しては想定を大きく上回る規模の隠蔽工作の必要に迫られましたのですが……
現場であった柳洞寺は、一種の特異点となっていた事実は否めないでしょう」
「……特異点、ッスか」
「ええ、我々錬金戦団だけではなく公式・非公式を問わず様々な勢力が入り乱れ、その結果本堂と庭園の一部が消失、境内裏の池が蒸発と……」

―――本堂？ 本堂が焼けた？
「いや、ちょっと待ってください照星サン―――庭園と池には覚えがあるけど本堂なんか俺は……」
「言い訳は無用です」

黒眼鏡で双眸を隠したその笑顔は、笑顔が、笑顔を、笑顔で―――


結果：全治1ヶ月→全治3ヶ月、少なくとも1ヶ月の入院を要す

【火渡：ヴィクターIII再殺任務着任まで……数ヶ月】

605 名前：戦士長・火渡(M)：2005/08/04(木) 22:40:34

前哨戦・夏の小次郎祭り
武装錬金外伝　『果てしない炎の中へ』

始まり
>>356>>370

遭遇と追跡
>>391（>>395）>>409（>>442）>>454（>>468）

障害と排除の為の覚悟
（>>477）>>485（>>489）>>501（>>512）>>524

終わらない終わりへと続き続ける
>>598（>>599）>>600（>>601）>>602

エピローグ・老頭児は健在なり
>>604

………任務後の方が任務中より負傷してるのもどうかと思うんだがな。

606 名前：ダン･スミス ◆7D9tT9Kp9I ：2005/08/05(金) 01:28:06

化け物どもが楽しく綺麗に頃し合うスレッドがあるっつーんで参加を申し込みに来た。
ククッ････結構探したぜ。

早速で悪いが、俺の参加は合か？否か？

607 名前：メスドラーマ・エルムドア：2005/08/05(金) 02:49:31

―――ふと、真鍮の牛と言う処刑具がその男の頭によぎっていった。

真鍮の牛とは、文字通り真鍮で出来た牡牛の実物大模型であり、
背中には開閉する扉が付き内部は空洞になっている。
使用法は、空洞に人間を放り込み、扉を閉め、閉じ込めたまま牛を熱するのである。
犠牲者苦痛をあげる声が内部で反響し、外部からは牡牛が鳴いているように聞こえる。
宗教的に未開な地に持っていけば神聖なる生贄の儀式として成り立つかもしれない、そんな処刑具である。

なぜ、その男はそんな物騒な物を思い浮かべたのか……
それは、目の前の惨状を説明をせねばならない。

「グッ……ガァァァァッ」
それは、異様なる光景である。
真っ赤に焼けた鎧を着込んだ男が、うめき声を上げながら転がっているのである。
それも、秒単位ではない。もうかれこれ10分近くは赤く焼けた鎧にその身を焦がされているのである。
それでもなお生きている”ソレ”は、明らかに異様である。

『これはまた…』
時間を少し遡れば、今繰り広げられている光景の異様さは更に増す。
目の前に転がっている”ソレ”は、ついさっき天より降って来た。
ここから見える山の上の寺の本堂付近から、炎を纏いながら放物線を描きつつここへと飛んできたのだ。
寺から弾き飛ばされ、その身を焦がされているその姿はさながら天罰を受けた悪鬼である。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―――最も、この比喩は強ち間違いでは無いのだが。


『人間風情に、随分と手酷くやられた物だな？』
それは、今に至る過程を考えれば異様な光景である。
”ソレ”は今ここにまだ存在している。
いや、”ソレ”だけでは無い。それが身に纏っている鎧冑一式が赤々と燃えながらも今だ存在している現状。
それは、”ソレ”が辿っていた過程を考えれば明らかに異様なのである。

608 名前：メスドラーマ・エルムドア：2005/08/05(金) 02:50:09

―――――「ダテレポ」
魔法の発動と共に元居た空間は歪み”ソレ”の姿が掻き消える。
その歪は”ソレ”の敵の真上に生じ、再び”ソレ”が具現化し両断せんと剣を構えながら落下していく。
空間を渡る”ソレ”は明らかに人ならざるものだが、”ソレ”の敵はそれに勝るとも劣らない人を超えた力を持つ者だった。

「児戯にも劣るんだよ」
炎を纏ったその男は、迫り来る斬撃を無視するかのように拳を絞り……
　　　　　　―――その身に刃を受けた。何の躊躇も無く。

”ソレ”の刃は肩口から脇腹を突き抜け炎と化したその男を両断した、が、
その結果、何も変わってはいなかった。
彼は構えたまま、そこに立っていた。
いや、何も変わっていないと言うのは間違いである。
なぜなら、彼は構えから攻撃に移っていたから。
脚、腰、肩、腕、それぞれ限界までに縮められていたバネが一斉に解放され、
その力は五千百度の炎を纏った拳をのせて、”ソレ”に襲い掛かった。―――――

これが、彼が焦がされながら天から振ってきた過程である。


しかしながら、この”ソレ”が過程が異様なのでは無い。
最も異様なのは、こういう過程を通った”ソレ”が身を焦がされようと生きている事
鉄すら溶かす五千百度の炎を直撃されながらも、なおも身に纏った鎧ごとそこに有ると言う事である

609 名前：メスドラーマ・エルムドア：2005/08/05(金) 02:50:53

『まずは…やはり冷やしてやらんとな。「行方知らぬ風たちよ、我が声に…』
うめき声を上げる”ソレ”を見下しながら、黄金色の鎧を身に纏った男が呪文を口にする

「ガァァァッ…クッ…待て…その必要はッ…」
しかし、苦悶の声をもらしながら焼かれている男が、絞り出すような声でそれを制する。

『ほう？ 返事をする余力があろうとはな』
「これぐらい…自分の力でッ…「風無くば、刃の音こそ風とならん！ 風に散る某の命とせん！ 村雨！」」

ひとたび抜けばその刃には露を帯び、幾人の人を切ろうともその血は洗い流され刃に血糊が付くことが無い。
その姿は葉を洗い流す村雨に等しく、故に村雨と名づけられた刀。
その魂が解放され、あたりに癒しの雨が降り注ぐ。
雨はソレに降り注がれると瞬く間に赤々と燃える鎧を冷やし、”ソレ”―――メスドラーマ・エルムドアに染み込んでいった。

そして雨が降り止む頃…むくりと彼は立ち上がり黄金色の鎧の男と対峙した。

『随分と手酷くやられた物だな、せっかくの”銀の貴公子”が台無しだ』
「私は負けたわけではないッ…まだッ…まだ決着は付いていないッ」
『いや、今日の所はこれまでだ』
「なッ、私の力を見くびるのかッ」
『ああ、今のお前はまだ”エルムドア”、脆弱なる人間のままだ。
　お前はまだ闇と混沌の力を使いこなせていない。』
「私が力を使いこなせていないだと？ 見くびるなッ、なんなら…」
『もう一度貴様の肉体を用意する手間を、この私にかけさせる気か？ ザルエラよ』
「クッ…｡」
『そう慌てるな。じきに馴染んで行く。肉体も、精神もだ。』
「…｡」
『ああ、そうだ。そんな事よりも、ランベリーの地下に良い物を２、３本用意しておいた。
　ドーター産だから味は保証できないが、鮮度だけは抜群だ。
　今宵はこれを飲んで、今日の傷と疲れを癒すが良い。』
「…ああ、そうさせて貰おう」
『それから、レディとセリアをお前の側に置いておこう。奴らから闇を学ぶといい』
「それはどう言う意味だ？」
『来るべき我らが聖天使の復活の日、その記念すべき日に”人間”は必要ない。そう言う事だ』
「…ハシュマリムの言う通りだな。だからこそ、今宵は人間に敗北を喫した」
『次に会う時は、完全なる”銀髪鬼”に会いたい物だ。』
「ああ、分かった」
『では私はこれで。こう見えても中々忙しい身だからな。ダテレポ』

そう言うと、黄金色の鎧の男は虚空へと消え去った。二つの闇を残して。

「さて、私も帰るとするか。付いて来い、セリア、レディ」
明らんできた空の下、銀髪をなびかせながら二つの闇に問い掛ける。
そして…
「ダテレポ」
呪文があたりに響き渡ると同時に、その姿はここより消え去った。

メスドラーマ・エルムドア　レス番綴り

登場
>>367

カジとの遭遇＆対決
>>371（>>372）　>>378　>>381　>>392　>>404　>>419　>>428　>>437　>>452

新たな”肉体”の可能性を秘める男『火渡』との対決、そして敗北
>>477（>>478）　>>485　>>489　>>501　>>512　>>524


【ランベリー城地下にて】
「さて、飲み終えた入れ物はどうすべきか…やはりきちんと掃除をすべきだな。」

　三界六道貫く秘剣、仏の道許さずも 共に地獄の火とならん！ 菊一文字！

「ふぅ、これで片付いた」

610 名前：名無し吸血鬼：2005/08/06(土) 11:30:20

さて、小次郎祭りも無事終わり。後に本格祭りを控えているわけだけど、
『新しい大殲のルールからは外れてるけど、絶対に終わりまで見たい闘争』
と、いうのをみんなであげてみないか？
会議板や、テストスレで残ってる闘争で、このまま終わらせたくない！
っていうのが数多くあると思うんだけどどうだろう？

611 名前：名無し吸血鬼：2005/08/06(土) 11:36:14

>>610
またお前か。

612 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2005/08/06(土) 12:51:33

>>606
　さ、参加を決めるのはじ、自身の観念に寄りマス。
　あなたが"行ける"と思えば、それは行けるから……だ、大丈夫じゃないんデスかぁ？
　もちろん、他人の同意を得られるかどうかまでは保証できませんが……。

　ま、まぁ取りあえず初めまして（ぺこり

>>610
　あ、新しい大殲のルール……？
　そんなのが出来たんデスか。知らなかった……あぅ。

　会議室で終わりまで見たい闘争―――「棺桶屋ｖｓ殺人貴」
　二年近く、会議板の最下層を護り続けてくれています……。

　あと、会議板は怨念の吹き溜まりデスから……
　あまり、見ないコトをお薦めしますヨ。
　じゃないと、"当てられ"ちゃいます。

>>611
　え、えぇと……どちらサマ？

613 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2005/08/06(土) 12:53:38

　と、とにかく！
　今回の"コジロー祭"は無事終了、と言うコトで。
　み、皆さん、お疲れ様でした。
　本祭りのほうはまた、わたしとは違う方が音頭を取りマスので、ちょっとスムーズに
行くかなぁ……と思いマス。
　では。
　またいつの日か、会える時を愉しみに待っています。

614 名前：東方仗助：2005/08/06(土) 14:46:33

>>590　微修正　＆　纏め

>　何かも何も、言えることなど一つしかなかった。
　気絶気味に倒れている青年と、駆け寄ってきた赤髪の少女――本堂内で行動していた数
人、エトセトラ。全てが全て元凶はこの連中で、どうにもならない理不尽さはそこに凝縮され
ているような、それ自体が理不尽な思考に陥ってしまう。
（ともあれ……よぉ）
　↓
>
　気絶気味に倒れている青年と、駆け寄ってきた赤髪の少女――本堂内で行動していた数
人、エトセトラへ。全員に降りかかった凶報の元凶は、どうにもならない理不尽さは、形も残
らず殴り潰された「カビ」と物言わない「モグラ」、あらゆる因果がそこに凝縮されているような、
それ自体が理不尽な思考に陥ってしまう。
（ともあれ……よぉ）



東方仗助　纏め
>>359　>>374　>>397　>>408　>>415　>>425　>>438　>>441　>>461　>>470　>>475　>>497
>>499　>>545　>>557　>>565　>>578　>>583　>>590

空条承太郎
>>369（登場）　>>584（決着）
　

615 名前：東方仗助：2005/08/06(土) 14:48:11

【ポップコーンを会に行こう】



「「スタンド使い」をブチのめすような生身の人間に”神父”なぁ……イマイチ要領を得ねーハナシ
だよなァ、そいつぁーよォー……」
「オレだって同じ意見だってのよ……承太郎さんはその後スグに帰っちまうし、あの神父さんは
気付いたらどこにもいねーしよぉー……」
「その外国人ってのはどーしなんだよ、仗助よォ……そっちもスタンド使いだったっつーのか？」
「違ェよ。だからワカんねーんだよなぁ……」

　夏休みに入って約一週間、近場では花火があるらしい。
　夏休みで部活にも入っていない仗助が学生服なのはポリシーだが、隣を歩く友人が休日に学
生服を着る理由は聞いた事がない。胸元にゴテゴテと金属で＄マークを刺繍したような学生服
を学生服と呼ぶのがそもそも疑問だから、仗助は既に聞くことすら諦めていた。無駄なことだ。
　ポケットに手を突っ込んで空を見上げる。
　夏はやはり暑く――否応なく数日前の夜を掻き抱かせた。しかもサイフの中が温まっているだ
けに尚更忘れ難い。「プリンス」のベストと新譜を買ってもまだ持て余す程度には資金は潤沢で、
だからこそ思い出す光景も鮮明だった。

「でもよォ……マジで「散々」ってカンジの夜だったぜぇ〜……あー、カタが痛ェのなんのよォー」
「まー、でもヨカッタんじゃねーの？　オメー仗助、「一晩」で十万っちゃーよぉー、ガクセーには
かなりオイシー仕事にゃ変わりねーぜ」
「そりゃそうなんだけどよ……」
「十万だぜ？　じゅ・う・ま・ん！　だったらよォ〜、オレだって手伝ってやっても良かったってのに
……お」

　友人が足を止める。
　そのゴツい背に激突しそうになって、仗助は眉を顰めた。

「なんだよ億泰、テメ、急に――」
　言う。
　友人は「ニカッ」と口元を歪めて肩越しに振り返った。
　仗助は更に顔を顰める。
　イヤな予感がした。
「仗助ェ〜〜〜、お前、「ポップコーン」食いたくねぇ？」
「「ポップコーン」〜〜〜このクソ暑いってのにかぁ〜〜〜？」
「イイじゃねーかよォー、「十万」入ったんだろォー、そこに>>592屋台が出てんだよなぁー、珍し
いじゃんよォー……しかもよ、仗助……そこの「看板娘」っつーんかなぁー、ズーッと屋台のソバ
に立ってる子がいるんだけどよぉー、ナカナカこれがカワイー子なんだよなぁー、ちょっと「ガキ
過ぎ」んのが残念だけどよぉー、外人なんだよ、見るカンジではさぁ〜〜〜」
「タカり前提で語ってんじゃねーよオメー億泰……でも、ま、ポップコーンか……どれどれ……
この街ってよ……娯楽施設に乏しいから「テキ屋」の組織形態ってあんまり把握できねーんだ
よなぁ……ショバ代とかしっかりしてんのか……」そこで仗助はまじまじと友人の顔をもう一度
凝視した。「……外人？」
　屋台がある、と言われた場所に視線を投げる。
　道路を挟んで対面の車線には、確かに屋台が出ている。
　ポケットから小銭入れを出して、仗助はポップコーンの屋台の前に立ち、
「ポップコーン二つ……」
　空を見上げる。
「――グレート、スタンドも月までブッ飛ぶこの衝撃……何やってんだよ、オニイさん」

　夏の夜の残滓が――実にどうでもいい形で燻っていた。
　

616 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/08/07(日) 01:19:05

レス番まとめ

>>358　>>360　>>365　>>366　>>376　>>388　>>389　>>393　>>402
>>407（カペ）　>>413 >>423（カペ）
>>430　>>439　>>453　>>473　>>487　>>502　>>528　>>542　>>549　>>562 >>574　>>582

（そして、その数日後）
>>615

617 名前：ギーラッハ：2005/08/07(日) 03:35:24

＞騎士王
　前菜もあらかた片付いたようであるし、騎士王よ、数年前に交わした闘争の約定、
そろそろ果たしてみようとは思わんか？
　互いに主を持つ身だ。いとまを見出すのが至難だと言うことは承知しての誘い。
　会議室に場を設け、僅かな時間を縫っての仕合となることは必死だが……。
　如何だろうか。

　汝が此処の流れを目に通しているか否か、確信を持てぬのだが。
　生憎と他に連絡を取る手段を知らん。
　故に、返事はゆるりと待つ所存だ。
　

618 名前：セイバー：2005/08/07(日) 06:54:52

>>617
――――――待つ必要など無用です。
其処に可能性(聖杯)ある限り、この身が退くことなどあり得ない。

お互いの信念と剣にかけて、古き約定を果すとしましょう。

619 名前：ギーラッハ：2005/08/07(日) 15:28:33

アルトリア王―――いや、今はセイバーの名であったか。
多忙の身でありながらにこの即答……汝の誠意しかと受け止めた。
ならば己も全力で返答するしか他はなし。
早速会議室を設けた。
以後の話し合いは其処で進めるとしよう。

騎士王アルトリアｖｓ紅の騎士ギーラッハ　―Le Morte Darthur―
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/1721/1123395934/

そして……我が主人、リァノーンの名に賭けて誓う。
此度の闘争、必ずや終わらせてみせる、と。

620 名前：木島閑音：2005/08/08(月) 01:41:03

吸血大殲前夜祭　〜柳洞寺祭り〜　レス番纏め

導入　>>383　（参道）
発見　>>400　（参道→境内奥）
三つ巴　>>416 >>422 >>427 >>429 >>432 >>433 >>445　（横槍>>406）
VS　KUSANAGI >>451 >>462 >>467 >>479 >>486 >>498　（銀刀離脱>>469）
銀刀追跡・様子見　>>540　（境内奥→境内表側）
VS銀刀・決着　>>563 >>568 >>573

621 名前：エリ・カサモト ◆SV001MsVcs ：2005/08/08(月) 18:14:39

>>590
アタシが手榴弾による爆殺に踏み切る前に、
しくじったフォローを知らない男がきっちりと済ませた。
気づけば鐘男は破片と肉塊に過程をすっ飛ばして粉砕されていた。

心残りはあるけど、これで死ねる。
――なんて思ったら身体の違和感が消えていた。

擦過傷と打撲の鈍痛はあるものの、カビが…ない。

多分助かったんだろう。どうにかこうにか。

今日日珍しい髪型の学生が「鐘男を殺せばカビは止まる」らしいことを言っていたし。

色々と考える事も心配することもやる事もあったが、もう全部面倒臭かった。
元々命令があって来たわけじゃないし、報告書を書く必要もない。
帰って寝よう。

クラシックマーダーをしまってアタシは帰途に着いた。

622 名前：エリ・カサモト ◆SV001MsVcs ：2005/08/08(月) 18:19:04

レス番まとめ
>>357　>>377　>>411　>>443　>>463　>>507　>>537　>>569　>>579　>>621

あ、賽銭入れ忘れた。

623 名前：葛城ミミコ ◆BBB.k09/yM ：2005/08/09(火) 01:00:45

＜葛城ミミコ一行・エピローグ＞

>>572
よろよろになったジローさんに肩を貸し、この戦場から離脱する――
しかし、それからが大変だった。

具体的には、

>>566ほか
あたり一面を食い荒らしていくカビから
三人できゃーきゃー言いつつ逃げ回り（途中で消えたが）、

>>570
じわじわ昇る太陽から逃げるように石段を降りる最中、その一部が綺麗に爆破されていて
死にかけの成人男性一人抱えた状態で降りるのにかなり難儀したことなど。

そして尋常じゃない衰弱具合のジローさんにやむなく少量、あたしの血を吸わせて持ち直させ
迎えに来てくれていたリンスケさんのバン――後で聞いた話だが、陣内部長が気を利かせて寄越してくれたらしい――
に三人で転がりこんだ時には、もう三人とも疲労困憊のきわみにあり。
結果、今回の戦場となった寺がある冬木市近郊の『カンパニー』支部で一日ほどの休養を余儀なくされた。

ああ、不本意ながら一日仕事休んじゃった。
せっかく今月こそは無遅刻無欠勤通すつもりだったのに。給料も一日分天引きだ。
おまけに今回、部長から直々に命じられた、『彼女』との交渉の仕事も失敗に終わった。

なんてこった、これでは部長になんて言われることか……ああ、憂鬱だっ。
冬木市から特区への帰りの夜行列車の中で、そんなため息を漏らしていたのだが――



「……で、彼女――弓塚サツキは明確な意志とともにこれを拒否。
　さらに『銀刀』の日の出と交戦のダメージによる消耗、及び状況の混迷化などの悪条件により
　交渉は非常に困難と判断、撤収――か」
「……どうも、申し訳ありません」

あたしの報告を受けての、眉一つ動かさない陣内部長。
その抑揚を感じさせない平坦な相槌に、ただただうなだれるしかないあたし。
そうだ。あの時は結局戦闘の最中ということであっさり行かせてしまったが
本来ならもっと粘るべきではなかったのか。

彼女を特区に招くことが出来なくとも、
せめて戦域離脱までの手助けはするべきではなかったのか。

後から後から後悔が少しずつ鎌首をもたげてくるが――

「………まあ、今回の件は『銀刀』の時以上に特殊かつ危険なケースでもあったからな。
　彼女のみならまだしも他勢力が多数入り乱れての大乱戦の最中だ。
　そもそも無理があったと言えるかもしれん」

……そんなあたしに、陣内部長は落ち着いた口調で言った。

「……え？
　で、でもあたし、今回の交渉、結局失敗した訳で……」

「……それに、君や『銀刀』、そしてその弟君に死なれては我々としても困るからな。
　何より特区近郊でもない分バックアップもろくに出来ない状況だったのだ。無理もさせられない。
　現場の人間としては、今回の君の行動と判断は妥当だったという事にしておくよ」

「……そ、それってお咎めなしってことですか！？
　でも今回の仕事、外注ということでしたよねっ！
　失敗という事になって、調停部の責任になるから部長の立場も――」

………そう、有り難くはあるが心配すべき点も一杯ある部長の返事に
慌てて危惧を飛ばすあたし。しかし――

「……今回の一件、確かに大きな筋からの外注ではあったが…
　その依頼元も、どうにか我々の顔が繋がる相手だ。　君が心配する必要はない。
　それよりも君はこれまで通り、通常業務を全力でこなしてくれたまえ。ミミコ君」

ぶ、部長…………………。

「……………はいっ」

その平静さの中にごく微量の労わりと厳しさを混ぜた部長の言葉に、居たたまれない者がこみ上がり。
あたしはぺこりと頭を下げ、足早に部長のデスクから離れた。


今回交渉して――悲しげな笑みであたしの手を拒んだ、弓塚サツキ。
あたしと同年代で転化した吸血鬼（ブラック・ブラッド）。
彼女と同じ路地裏での生活を知っているだけに、どこかその境遇を放って置けないと感じた女の子。

結局あんな形で別れる事になってしまったが、次に会うときは――
下手をすれば彼女とは、もっと悪い立場で向き合わねばならないかもしれない。

……願わくば、次はもっと穏健な形で――


今回の件を一つの大きな経験、糧として心に刻みつつ。
今日も吸血鬼と人間の平穏の為に――あたしはいつもの忙しい日常に戻るのであった。


「あーらミミコ、聞いたわよっ。　また仕事ヘマったそうじゃない？
　しかも部長からの直々の仕事を、ジロー様に手伝っていただいてまで！」
「やかましいやいっ。こっちは特にお咎めなしよ？
　つーかあんなデタラメな状況でまともに仕事が運ぶと考える方がおかしいのよっ。あんたもやってみろこの短慮！」
「まっ、自分の失敗を棚上げして揚げ足取り？　これだから地味な上に甘い仕事振りのみそっかすは――」
「何だともっぺん言ってみろこのノータリン！」
「言ったわねこの低能庶民！」
「ええ言いましたとも大口ばっかりの中身なし女！」
「あー、あのミミコ先輩にスワン先輩、そろそろその辺にしたほうが……」



　　　　　　　　　　　　　　　　　　SEE YOU ANOTHER BBB！

624 名前：◆BBB.k09/yM ：2005/08/09(火) 01:05:05

報告書
オーダー・コフィン・カンパニー調停部所属　調停員　葛城ミミコ

【行動記録（ レス番まとめ）】

>>337　　　辞令受領
>>355-367　　　状況混迷化、行動開始

>>375（>>379）（>>380）（>>382）（>>383）>>387（>>410）

交渉相手『弓塚サツキ』と接触、救援のため襲撃者と戦闘開始。
また多数の乱入者及び交渉相手の逃走につき、以下は二手に分かれて行動開始

【行動記録：護 衛（クローザー）・望月ジロー】

炎使い、及び乱入者との交戦（>>469で離脱）
>>394（>>398）（>>400）（>>406）>>416-417（>>422）>>427（>>429）
（>>431）（>>432）>>433>>435（>>445）（>>451）>>469


因縁奇縁、師の残照との果たし合い
>>530（>>540）（>>546）>>551（>>554）>>558（>>564）


暁の最終戦
（>>563）>>568（>>573）

【行動記録：調停員（コンプロマイザー）・葛城ミミコ、護 衛（クローザー）・望月コタロウ】

保護対象の逃亡、そして追跡
（>>380）>>414（>>442）（>>454）>>456（>>468）

一念発起して接触、交渉
>>484（>>493）>>503（>>518）>>526

交渉失敗、撤収開始
（>>533）>>539


>>572
護 衛（クローザー）と合流。
しかし夜明け及び戦闘によるダメージの限界、戦況の混乱につき戦線離脱、撤収

625 名前：◆Kana/lWMBI ：2005/08/11(木) 06:47:05

『ちーっす、ソースケ。
　あー、ごめん。あたしちょっと今日、お参り行ってくるわ……そ、いつものあのお寺。
　せっかくだし、あんたの戦運とかそーいうのもばっちり祈っておいてあげるから、感謝しなさいよ？
　それと雨降ってきたら傘お願いね。

　――ねえ、ソースケ？
　あたし、時々思うときあるんだ。あたしやソースケとかの……運命って言うのかな。
　そういうのって、物凄く大きくて、物凄く強くて、ひょっとしたら負けちゃいそうだなって。
　もし負けちゃったら、今までの全部って、なかったことになっちゃうのかなあって。

　でもね。
　最近あたし、そうじゃないんだって思えてきたんだ。
　最初から諦めちゃったっていうんなら、そりゃあたしも悔しいわよ。
　けど、もし精一杯、最後の最後まで悪あがきした結果だったら、それでいいんじゃないのかな。
　大事なのは最後までせいいっぱい悪あがきすること、違う？

　……あはは、変な話になっちゃったわね。お寺とか来るとどーも辛気臭くなっていけないわ。
　ま、大丈夫よ、だいじょーぶ。今までだってあたし達、うまくやってきたじゃない。
　だから心配しないで、ぜんぶうまくいくわよ」
　


――携帯電話に残されたその留守電をたよりに相良宗介がその寺を訪れた時、千鳥かなめは既にいなかった。
そこにいたメイド服の少女が話すことはあまりに奇天烈だったが、それが事実だと不思議に納得できた。
それでも、彼は涙を流すことはなかった。彼にとって「死」はあまりに日常の一部だったからかもしれない。
いや――それ以上に、そこに遺された笑顔が、全ての結果を物語っていたからか。
だから彼はただ、その事実を受容できた。

＞「でも、そうね。彼女は強かったわ、とても。こんな一握りの灰という代償では重すぎるほどに」
「肯定だ。彼女は――」

答えかけ、宗介は考える。
彼女をあらわす一番的確な言葉は何だろうか、と。
しばしの逡巡の末、彼は彼にとって一番の賛辞を口にした。

「――彼女は、専門家（スペシャリスト）だからな」


（レス番まとめ）
>>449>>460>>461>>464>>470>>473>>475>>483>>487>>488>>490>>497
>>508>>509>>510>>517>>525>>528>>534>>536>>542>>547>>552>>556
>>560>>567>>580>>588　

626 名前：ダン・スミス ◆x55TKw8DVw ：2005/08/12(金) 13:15:29

じゃ、自己紹介でもとくか。
俺の名はダン･スミス。同盟(キラー７)の一人だ。
今は下衆な笑い声の化け物と死合ってる。
化け物専門の殺し屋って事でカテゴリーはＡになるかな。

で、さっき言った化け物から取った薄い血液を触媒にして発射する「魔弾」が俺の能力だ。
これで撃たれりゃ穴が開くどころじゃ済まなねえぜ。文字通り跡形も残さず消え去っちまう。
まあ、杭を打ち込む手間が省けていいかもしれねえがな。
後、本編じゃあ使われなかったが、自分の思念で弾丸の軌道を操ることも出来る。

出典　：キラー７
名前　：ダン・スミス
年齢　：３３
性別　：男
職業　：殺し屋
趣味　：仕事
恋人の有無　：無し
好きな異性のタイプ　：それどころじゃねえな。
好きな食べ物　：好き嫌いは無い
最近気になること　：自分の過去
一番苦手なもの　：盗人
得意な技　：魔弾
一番の決めゼリフ　：殺しってのは殺傷能力の品位で決まるんだ
将来の夢　：大将の首を取る事
ここの住人として一言　：誰からの死合いでも受けるぜ。神？いつも死合ってるよ。
ここの仲間たちに一言　：種族は違えど、似たもの同士だ。仲良くしようぜ。
ここの名無しに一言　：殺し合いが好きとは、気が合いそうじゃねえか。

627 名前：ダン・スミス ◆x55TKw8DVw ：2005/08/12(金) 13:38:41

言い忘れたんだが、闘争中の人格交代はアリなのか？
　　　　　　|　 | 　 |
　　　　　ノ　ノ　ノ　　　　　　　　　／￣￣￣￣￣￣￣￣
　　　 ／￣￣￣￣＼　　　　　　  |
　　／　　　○　　　○ ､ 　　　　　|
　　|WWW　　　　￣￣￣￣ヽ　　＜　ＹＯＵ　ＢＡＳＴＡＲＤ！
　　|WW　　　　　─────） 　　|
　　ヽWW　　　　＿＿＿＿ ノ　　 　 ＼＿＿＿＿＿＿＿＿
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　　　　　　　　　　　　　　 　　　 　　　　　　　＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿|＿＿| ＿
　　　　＿__　　　　　　　　　０二)ニ∩ニ)二) ﾟДﾟ; ）⌒＼　子供は寝る時間だ
@;;;;;;;｡))))＝========＝＝)/>z<|li>v<,:;:;:;:;ヽ
　　　　　　 　　 ~^~^￣￣￣＼＼∃⊂　)-､と)＿ﾉ　 /
　　　　　 　　 　　　　　　　　　 ￣￣￣ ＼＿＿＿_ノ丶
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　↓
　　　　　　　　　　　　　　　　　　（□∀□）つl二>

628 名前：ジョセフ＆シーザー ◆FpJojoHp9A ：2005/08/21(日) 12:18:34

ジョセフ「シーザー！！大変だ！！田舎にいっている間に祭り始まっているじゃん！！」
シーザー「こういうこともたまにはあるだろう・・・ところでJOJO・・
　　　　　田舎ってイギリスに誰も親族いないんじゃないのか？」
ジョセフ「まあ〜こまかいことは気にするな。後なもう一つ問題がある」
シーザー「なんだ？」
ジョセフ「え〜俺の孫と隠し子がいること〜」
シーザー「な・・・待て！！ということは俺たちは時間を跳んできたってことになるのか？」
ジョセフ「まあ・・俺の場合、セト神の能力って納得ができる奴もあるけどな〜」
シーザー「どーせ俺は二部止まりだ・・・」
ジョセフ「まあそういうこと考えないでやるのが一番っぽいけどね〜」
シーザー「とりあえずどういう内容かを再確認だ確認後しばらくしたらレスをする」
ジョセフ「とういこと〜ってことでまたね〜」

629 名前：ダン･スミス ◆MPEc6a5cAY ：2005/08/23(火) 19:52:55

>628
アンタらも新入りか。仲良くやろうや。

ところで、今回の祭り・・・・聞くところによるとセラスもマリアベルも来れねぇらしい。
新入りが名を上げるちょっとしたチャンスだと思わねえか？

と、それからアンタらも早く自己紹介した方がいい。
まあ、アンタらを知らん奴なんていねぇと思うが、ここのルールらしいからな。
http://www.geocities.co.jp/Milkyway-Orion/4504/sannka.html

630 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：2005/09/11(日) 16:26:43

　お祭り、あらためてお疲れ様。
　で、凛（？）さんの言葉じゃないんだけど……
　いま、わたしが闘争やりたいって言ったら、乗ってくれるヒトっているのかな。
　ちょうど、進めている闘争が相手のの事故で、一時中止になっちゃったから暇なんだ。
　わたし、つねに誰かと闘ってなきゃ……どーでもいいヒトを襲っちゃうから。
　できれば、暇にはなりたくないんだ。
（自分が止めてる数多くの闘争には月に向かってどげね。）

　わたしが、交友範囲はわたしを含めて、

　弓塚さつき＠月姫
　セラス・ヴィクトリア＠HELLSING
　ミラ・ヘルシング（アーヴィ装備）＠ブラッドジャケット
　アセルス（本家じゃないよ）＠サガ・フロンティア

　ぐらい……かな？
「我こそは！」と思うヒトは、立候補して欲しいな。

631 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：2005/09/11(日) 16:30:49

あ、あと、クルースニクさん。
ミラちゃんから、伝言を預かっているよ。

　『アーヴィとあなたの闘争、長い間止めてしまったけど……
　　これを機に、改めて再開と行きたいの。
　　お互い、多忙なのは承知の上での誘い。どうかしら？
　　オッケーなら、色々と話し合いが必要だと思うわ』

だって！　ミラちゃんって、わたしより全然年下なのに、すっごく大人っぽいよね。
なんか「せくしー」って言うのかな。うぅ、センパイの立場がないー。

632 名前：Kresnik ◆WEISS0lzjQ ：2005/09/11(日) 16:46:51

>>631

　オーライ、ブラッドサッカー。
　が……、このタイミングか。
　正直今月は難しいけど、俺は別に。
　テストの分は、それじゃもう貼っちまっていいのか？

　一応優先する相手がいるからそっちの日程の後になるけど、それで了解して貰えるなら。
　

633 名前：ミラ・ヘルシング ◆KpWAN/OGRE ：2005/09/12(月) 00:24:52

>>632
　……神父さま、間違ってるわ。
　わたしの闘争に「今月はキツイ」とか「来月ならオッケー」なんて、そんな言葉はあり得ない。
　訂正して。「今年はキツイ」「来年ならオッケー」に。
　そう―――わたしは、あなたとの闘争で学んだ。
　わたしに、リアルタイムなんて不可能。

　今月は忙しい？　なら、来月まであなたのレスを待てば良いだけ。
　今年が厳しいのなら、来年を待つわ。
　わたし達には、その時間があるのだから。……くす、くす。

　もちろん、優先すべきモノがあるならそちらを優先してくれて構わないわ。

634 名前：ミラ・ヘルシング ◆KpWAN/OGRE ：2005/09/12(月) 00:28:43

　リアルタイムは無理だ、と悟ったわたしだから。
　会議室にスレを立てて、改めて勝負に望みたいの。

　――― 一度、本スレに張られたモノを、また無茶な。

　……と、言いたい気持ちは分かるわ。
　でも、納得できない部分が多いし……。
　ゼロから仕切り直し、なんて無謀なコトは言わないけど。
　色々とやり直したいトコロが多いのよ。
　せっかくの、あなたとの闘争なんだから……。

635 名前：Kresnik ◆WEISS0lzjQ ：2005/09/12(月) 00:36:53

　……？
　ああ、人称変化の訂正なら待つよ。俺が動けない間にそれでも問題ないし。
　俺の方は特に訂正する部分もないし、正直、俺自身が動かせる時間もないから。
　会議に俺のレスを全部貼り直すくらいなら、時間さえあればいつでも。
　秋葉さんのと同じで、微妙な訂正くらいならその時加えればいいしな。
　

636 名前：ミラ・ヘルシング ◆KpWAN/OGRE ：2005/09/12(月) 00:38:29

>>635
そう？　それなら助かる、わ。
一応、了承を得ておきたくて……じゃあ、あとはこっちで。
やるようにやらせてもらうわ。

637 名前：Kresnik ◆WEISS0lzjQ ：2005/09/12(月) 00:41:11

　オーケイ。
　じゃ、手が必要なら言ってくれ。
　貼って行くくらいなら、気付いた時にでもやれるから。
　

638 名前：Reiot Steighnberg ◆LOSJACkEtA ：2005/09/13(火) 03:06:00

――マタイ神父へ。

まだその気があるのなら、いつかの戦争の続きをしよう。
導入の一部を向こうに貼り付けた。

続きは、もう少しだけ待ってくれ。

639 名前：黒桐鮮花 ◆.a6n7AZAKA ：2005/09/14(水) 00:52:26

>>630
――では、わたしが拙いながらもお受けしましょう。
わたしも、なんだか前回の祭りで、随分と影響されてしまったようですね（苦笑

相手はさつきさんご本人を希望します。
わたしでよければ、お返事いただけるかしら？

640 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：2005/09/14(水) 01:00:39

>>639
　もう、誰も来ないと思っていたら……へえ、大物が釣れちゃった。
　鮮花ちゃんなら、わたしでも勝てるかも―――ごほんごほん。
　ううん、何でもないから。気にしないで。
　闘争の件は、わたしは全然いいよ♪
　闘争形式は、せっかくだから本スレ進行（りあるたいむ）にしようか？
　リアルタイムって言っても、そんなレスに慌てる必要は無いから……。

641 名前：黒桐鮮花 ◆.a6n7AZAKA ：2005/09/14(水) 01:04:43

>>640
――今、何か不穏な言葉が聞こえたのは気のせいかしら。
わたしなら勝てるとかどうとか。
一応腕力その他なら式のお墨付きなんだけれど、わたし。
新鮮なお野菜を中心とした食生活と、それに――鍛えてますから。

リアルタイムですね、わかりました。
適当なところでお互い切り上げて明日に続く、という形でいいですか？
打ち合わせはどうしましょう、ここでいいのかしら？

642 名前：黒桐鮮花 ◆.a6n7AZAKA ：2005/09/14(水) 02:32:48

花が開く。

夜空の黒を花火の光が一瞬包み込み、そしてまた黒に戻る。
その様は、まさに一時しか咲かない花のようで、だからわたしは、

「――ああ、だから『花火』というのね」

という、よく分からない感想を漏らしていた。





今日は花火大会の日。
そう言って嬉しそうに新聞の挟み込みチラシを持ってきたのは幹也だった。
結局それからすったもんだの末、何故か事務所の面子総動員で出かけるハメになった。
案外お祭り好きの面子が揃っているのかもしれないと、なかば自嘲もこめて思う。
かくいうわたしも例外ではないと、着ていく服を選んでいる時に気づいてしまったから。

そしてわたしは今、幹也たちと別れて一人で歩いている。
幹也と式が二人揃っている姿を見たくなかったから。
けどそれはひょっとしたら――式の、夜の徘徊へのかすかな憧憬だったのかもしれない。

夜の街は、まったく別な貌。
そこはまるで、初めて来た、見知らぬ場所。

行き交う人を、わたしは誰も知らない。
行き交う人も、わたしが誰か知らない。
こんなにも大勢の人がいるのに。
こんなにも、人で埋まっているというのに。
わたしが黒桐鮮花（わたし）であることを知る人は、誰もいない。
それは、礼園という限られた空間では、決してありえないこと。

だからわたしは、少しだけ愉快な気分になった。
まるで子供の頃、こっそりと草むらに入っていった時のような高揚感を胸に抱き。
黒桐鮮花、ではなく、無色透明な誰か、として、
知らない街の知らない人の間を、ただ徘徊する。
あまりに不安定で、不安な。
だけれどあまりに自由な。
不安と期待の間を綱渡りしながら、わたしは歩く。
かすかにステップを踏んで。


――そう、わたしは今自由。
そして一人。
まわりにはこんなに人がいるのに。
けれど彼らはわたしを知らない、わたしは彼らを知らない。
知らないということは、いないということと同じ。
だからわたしはこの大勢に包まれて、孤独になれる。

それは一時の孤独。一時の幻想（ユメ）
前も同じようなことをしたことがあった。
けどその時はすぐに終わってしまった。見知った顔に出会ってしまったから。
でも今日は、この幻想（ユメ）はもう少し長く続いてくれるだろう。
今日はもう、誰にも会うことがないだろうから。



空を飛ぶことにあこがれた人のように、自由な夜空を見上げてみた。
また一つ、大輪の花がはじけて消えた。

643 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：2005/09/14(水) 03:24:28

>>642　黒桐鮮花ｖｓ弓塚さつき　其の導入

　今夜はやけに人が多い。週末だと考えても異常だ。夜になれば、真っ当な人間なんて
滅多に通らないこの路地裏にまで、幸せそうな顔をした男女が幾人も迷い込んでくる。
　自分の世界に土足で入られた気がして、何人かは狩った。
　でも、そんな憤りが虚しくなるくらいにヒトは続く。中には場違いな浴衣姿の子もいて、
末期に見たある男の服装から、わたしは逃げるようにその場を去った。

　なんで、今日に限って―――

　その理由を知ったのは、頭上で唐突に大輪の花が咲き誇ったときだ。
　ビルとビルの間から広がる夜の空が光に侵されている。
　わたしは未だ慣れることのできない明かりに目を細めながら、それを見上げた。

　ああ、今日は、そうか―――

　地域の花火大会。隅田川や東京湾なんかに比べると、とってもちっぽけな規模だけど。
　毎年恒例となっているそれに風流を求める地元の人間は多い。
　わたしも、かつてはその一人だった。

　毎年欠かさず行っていたよね。
　中学二年生までは両親と。それからは、決まった友達と。
　確か、二年前―――高校に入り立ての夏。隣のクラスの男の子に誘われたっけ。
「一緒に行きませんか」って。
　突然だったし、恥ずかしかったし、人の目も気になって。わたしはイヤだった。
　でも、わたしとその男子の中を取り持としてくれた友達の手前もあったから。
　渋々了承したんだよね。
　あの時は、ほんとイヤだったな。結局、まともな会話なんて一つもなくて。ぎこちなく
気まずい空気のまま、花火大会を終わらせて。やっぱり友達や家族と行くのが一番だって、
改めて理解したんだ。

　ああ。
　そんな日々があった。
　あったんだ。

　次々と咲いては散っていく光の明暗。咲けば咲くほどに、わたしの眠らせた記憶が甦り、
散れば散るほどに現実を思い知らされる。
　そのあまりの眩しさに―――わたしは目を背けた。

644 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：2005/09/14(水) 03:24:48

>>643　黒桐鮮花ｖｓ弓塚さつき　其の導入

　どん、どん、と地面に轟く火薬音。
　耳を塞いでも、壁の厚い廃ビルに逃げ込んでも途絶えてくれない。
　耳からではなく、お腹から響いてくる。

　いい加減にやかましく苛立たしい。でも、この音からは逃れられない。
　ならば、別の方法で怒りを発散するべきだと、と言う答えにわたしは行き着く。
　だから、路地裏に迷い込んできた兎が一匹、二匹。吸って散らかした。
　わたしは遊びをこれしか知らない。
　今夜はヒトが多い。更にもう一匹、吸ってみた。
　その間も、頭上で咲いた花がわたしを照らす。

「……退屈」

　お腹、減ってないのに食事をしても満たされるわけがない。
　でも、わたしはこれしか遊びをしらない。
　どうしようかと考えあぐねながら、わたしは繁華街の一角、雑居ビルの路地裏を歩いた。
　普段なら、街灯の明かりばかりが頼りなく闇を照らす場所だ。
　いまは光の花のせいで、唐突に昼に変わっては、夜に沈んでいる。

645 名前：比良坂初音 ◆HtiOHATUNE ：2005/10/06(木) 00:45:26

比良坂初音ｖｓ神崎毬絵　―少女探偵魔焔事件簿『女郎蜘蛛の糸』―

導入

夜の街に絹を裂くような悲鳴がとどろく、
そして闇を走る漆黒の影、その手には美しい少女が抱えられている。
影は警察の非常線をあざ笑うように突破していく、その軽やかな動きは人間のそれとは思えない。
そして、街外れまで影がたどり着いたその時だった。

「私のお膝元で随分と勝手な真似をしてくださること」
影の背後で声が響く…影が振り向いたその先には、まるで闇から抜け出したかのような漆黒の服を纏った少女、
比良坂初音が立っていた。
初音の姿を見て、影がぎらついた気配を放ちだす、その下卑た気を感じ、少女は吐き捨てるように呟く。
「下衆…」
初音の細い手が一閃し、そこから鋼をも断ち切る斬糸が放たれるが手ごたえはなかった。
「逃げたわね…鼻が利くこと」
影は初音の攻撃を受ける寸前に消えうせ、そこにはぐったりと横たわる少女の姿だけが残されていた。
そしてようやく追いついたパトカーのサイレン。
初音は少女を残したままその場を去るのだった。

そして数日後、
「姉様、見てください！」
初音は奏子が広げた新聞の記事に目を走らせる。
そこに書かれていた内容は…
『連続誘拐魔、未だ手がかり無し、当局は神崎毬絵氏に捜査協力を依頼』

「あの神崎毬絵がこの街にやってくるんですよ、姉様」
無邪気に喜ぶ奏子を尻目に、
初音はまた自分がよからぬ騒動の渦中に巻き込まれつつあるのを感じていた。

646 名前：神崎毬絵 ◆M0h24jMARI ：2005/10/06(木) 00:47:39

>>645　―少女探偵魔焔事件簿『女郎蜘蛛の糸』―　導入

　八重坂の、とある喫茶店に座る一対の男女。
　二人とも年若く、傍目からは学生カップルにしか見えない。
　まさかこの二人が、稀代の名探偵とその助手だとは誰も思うまい。
　カップルの片割れ、赤毛の女性がさっきまで読んでいた新聞から顔を上げると、
苛立たしげに声を放つ。

「警察は正式な発表すらしていないのに、もうバレたの？　ほんっと、この手の連中は、
何所からネタを嗅ぎ付けてくるのかしら。事件が解決するまでは放っておいて欲しいわ」

　ゴシック文字ででかでか印字された『少女探偵 神崎毬絵ｖｓ連続少女誘拐魔』の見出し記事。
神崎毬絵は疲れた様子で嘆息すると、テーブルを挟んで向かいの席に座る助手の三枝に放った。
　女性的な顔立ちが美しい三枝少年は、慌てて新聞紙を受け取る。

「それだけ注目されているんですよ。連続少女誘拐魔なんて、マスコミから見れば
お姉さんへの絶好の当て馬ですから」
「現実に被害にあった女の子がいるのよ。活劇浪漫譚を期待するなんてナンセンスだわ」
　毬絵はじろり、と三枝を睨んだ。
「そ、その通りですね、ごめんなさい……」
　途端、すまなそうに身を縮こまらせる三枝少年。ただでさえ愛らしい顔の持ち主なのだ。
その行為には、さしもの毬絵も自責の念が生まれた。

「……三枝くんに言うことじゃないわね。わたしこそ、ごめんなさい」

　毬絵はもう一度息を吐くと、天井でゆっくりと回転するレトロな扇風機を見上げた。
　自分でも分かっている。―――苛立っているのだ。

　警察から事件の依頼を受けたのは、マスコミの報道とは異なり真実は一週間前だ。
　被害にあっているのは罪も無き女の子達ばかり。少女探偵は元来そんな弱者を守る
ためにいるのだから、毬絵は警察の要請に嫌な顔一つせず了承した。
　捜査方法は至ってシンプルに。警察とは別個に行動し、情報だけは共有する。
　毬絵の駒は助手の三枝少年と自分の足だけだが、その分警察よりも動きが軽い。
　それを活かして八重坂に潜入したのだが―――

　結果は芳しくない。どころか、惨敗だ。

　わざわざ正体が露見しないよう変装をして、昼には地道な情報収集。夜ともなれば、
危険を承知で誘拐現場付近を徘徊―――自分を餌にして、誘拐魔を誘き出す囮捜査
までしたと言うのに、犯人の足取り一つ掴めないのだ。
　否、そんな尋常な話では済まされない。
　先まで頻繁に続いていた連続少女誘拐事件。それが、神崎毬絵が捜査に乗り出した
直後を境にぴったりと止んでしまったのだ。
　この手の事件を起こす犯罪者は、必ず常習の癖がある。連続少女誘拐事件は、未だ
始まりに過ぎず、このまま放っておけば事件は大きくなるばかりだ―――それを
恐れて捜査に乗り出した毬絵からすれば、意外も意外だった。

　あんな悪質な誘拐魔が、この程度で満足するはずがない。
　毬絵はそう信じている。だとしたら―――誘拐魔の身に、何かが起こったのか。

　そこで毬絵は、三度目の疲労の溜息を吐いた。連日深夜まで続く夜の囮捜査。
ここ一週間、神崎毬絵はろくに睡眠を取っていない。いくら女装させた三枝少年と交代制
で徘徊しているとは言え、体力的にもう限界だ。

「―――お姉さん、休みましょうよ。一度頭の中をすっきりとさせた方がいいですよ」

　分かっている、分かっているのよ三枝くん、と眠気覚ましのブラックコーヒーを啜り
ながら毬絵は答える。

「でも、わたしが呑気に寝ている間に他の少女がもし犠牲になったら。わたしが呑気に
寝ている間に、誘拐された娘達の身に何かがあったら―――それを考えると、もう少し
頑張らなくちゃね。こんな何も得ていない現状で休んだら、少女探偵失格よ」

　三枝少年は無言で肩を竦めた。毬絵はこうなると強情だ。彼女の母の彩華なら強引に
でも休ませるのだろうが、自分では良いようにあしらわれるのが目に見えている。

647 名前：神崎毬絵 ◆M0h24jMARI ：2005/10/06(木) 00:48:16

>>645>>656　―少女探偵魔焔事件簿『女郎蜘蛛の糸』―　導入

「……じゃあ、どうしますこれから。僕の少年団も聞き込みの協力をしてくれているん
ですけど、まともな証言は何も……」

　情報が不足しているのだ。不謹慎な物言いだが、あと一回や二回、事件が起きてくれ
なければ証拠の掴みようがない。

　毬絵はコーヒーカップから唇を離すと、三枝の質問には答えず、店のウィンドウから
外を見た。八重坂駅へと続く道は、通勤ラッシュが始まるせいか人通りが慌ただしい。
　―――そう、いまは午前の六時。
　三枝と毬絵は深夜の囮捜査から帰宅したところなのだ。
　二人とも自分の正体が露見せぬよう、三枝は詰め襟の学ランを脱ぎ、毬絵も純白の
ワンピースと自慢のベレー帽と言う��少女探偵�≠ﾌユニフォーム姿ではない。
　ジーンズやミニスカートを履き、ジャケットやカーティガンを羽織った姿は、
一般の若者同然だが、それも今は所々が着崩れている。

　外を眺める毬絵。その意思の強そうな瞳が、一人の人間を捉えた。
　ブレザーの制服姿の女生徒。テニスラケットのケースを背負っている。
　通学の時間にはまだ速い。朝練か何かだろうか。

「―――三枝くん」
「はい？」
「橘加菜子さんと葛木楓さんと福島由里さん。この三人に共通することは」
　どれも誘拐事件の被害者だ。しかし、毬絵の望む答えはそれではないだろう。
「……三人とも、八重坂高校の生徒です」
　三枝は名探偵の突然の問いかけにも臆することなく答えてみせた。

「六人の被害者女性のうち、三人が八重坂の生徒……」

　偶然か、と問われれば偶然だろう。状況から考えても、誘拐魔は��少女�≠ﾆ言うこと
以外に誘拐の対象に頓着していない。通り魔的な無差別事件と判断して間違いない。
　三人が八重坂高校の生徒なのは、八重坂近辺には他に高校が無いと考えれば、偶然の
一言で済ませられる。

　だけど―――

「三枝くん、確かいまあの学校では変な怪談話が流行っているのよね」
「え？　ああ、はい。何でも、駐輪場やプールに濡れた水着姿の女の子が現れて助けを
求めたり、図書館にやはり女の子が出没して……その、男子生徒を籠絡するらしいです」

　よくある怪談話だ。益体の欠片もない。そう、三枝少年が無言で付け加えた。
　確かに、これを誘拐事件と結びつけるのは無理がある。
　二人の少女の活動範囲は高校の敷地内のみなのだから、八重坂の主に繁華街で起こって
いるこの事件との関連は薄い。
　でも。

「目撃証言が多すぎるし、やけにリアルなのよね……その話」

　それに、ここ一ヶ月の間に唐突に生まれた話でもある。ただの低俗な怪談話と断ずるには、
不可解な部分が多すぎた。―――証拠が枯渇して喘いでいる現状では尚更だ。

「……どうせ煮詰まって行く当てなんて無かったところだわ。天賦の才なんてとても
持ち合わせていないわたしは、喫茶店なんかで腐れてないで足を使うべきね、足を」

　そして少女探偵は舞台を女郎蜘蛛の巣へと移す。

648 名前：比良坂初音 ◆HtiOHATUNE ：2005/10/06(木) 00:49:39

>>646-647―少女探偵魔焔事件簿『女郎蜘蛛の糸』―　導入

「あっ、来ました来ましたよ姉様っ」
昼下がりの教室、初音の隣で校門を指差す奏子、その指の先には白尽くめの美少女が悠然とこちらへと向かってくる。
奏子だけではなく、他の生徒たちも一様におおはしゃぎで窓の外を見ている。
つきあってられないとばかりに手にもった新聞へと視線を移す初音。
その紙面には、『連続誘拐魔にもの申す』の見出しが特大ゴシックで記されている。
そう、今校庭に足を踏み入れた少女探偵神崎毬絵は大胆不敵にも全国紙の紙面を使い、
連続誘拐魔に挑戦状を叩きつけたのだ。
（自分を囮にするとは、なかなか勇敢ですこと）

事実、この街に乗り込んでからの彼女は誘拐犯を挑発するかのような行動に終始している。
テレビ・ラジオの取材、それからサイン会etc。
今日この学校にやってきたのは生徒会主催の懇親会だそうだ、何でもダメ元でアポイントを取ったら快諾をもらったらしい。
それはともかく見る間に生徒たちに取り囲まれる毬絵の姿を見ながら呟く初音。
「勇敢なのは結構ですけど、あいつの好みに合うのかしらね？」

懇親会は大盛況の内に幕を閉じた。
それでもなお毬絵の姿は我先にと群がるミーハーな生徒たちに取り囲まれたままだ。

そんな中、初音の目に物陰でうずうずと人波の中をうかがっている奏子の姿が入る。
「あら…どうしたの？」
「あ…あの、その…何でも無いんです」
慌てて両手を背中に隠す奏子、だがそれを見逃す初音ではない。
「隠すことはなくってよ、ファン…なのでしょう？」
「すっ…すいませんっ！姉様がありながら私っ！」
涙ぐむ奏子、その手にはサイン色紙が握られていた、それを見て仕方が無い子とばかりに微笑む初音。
「いやねぇ、そんなことで泣くなんて…しょうのない子」
初音は奏子の頬を流れる涙をやさしく拭うと、その手を握る。

649 名前：比良坂初音 ◆HtiOHATUNE ：2005/10/06(木) 00:50:42

>>648―少女探偵魔焔事件簿『女郎蜘蛛の糸』―　導入

そう念を押すと初音は奏子の手を引き、人ごみの中へと入っていく。
だが、収まることを知らない混雑が初音の行く手を阻む、
らちが空かない…そう判断した初音は何人かの生徒の耳元で囁く。
「あっちへお行き」
その言葉を耳にした生徒たちは先程までの狂騒はどこへやらといった風に、次々と道を空ける。
そして２人はようやく毬絵の元へとたどり着いた。

「ほら、かなこ」
緊張のあまり硬直状態の奏子をうながす初音、奏子はぎこちなく色紙を差し出す。
にこやかに色紙にペンを走らせる毬絵、その様子を観察する初音。
（見た目は申し分なしね）
確かに毬絵の佇まいは写真やテレビで見るよりも遥かに整っている、さらに醸し出す凛とした雰囲気は
当代一の美少女名探偵と呼ぶにふさわしい。
（確かに放っておかないでしょうね…相手が人間なら）

もちろん美醜も重要だが、魔族と人間ではその嗜好は大きく異なる。
この目の前の少女は確かに美しい姿をしているが、
だからといって魔族にとって魅力的かどうかは別問題だ。
ついでに確かめておくとするか。
「神崎毬絵さん、でしたっけ？握手よろしいかしら？」

差し出された毬絵の手を握る初音、その手のぬくもりを通して、
様々な情報が初音の中に流れ込んでいく。
（この娘…綺麗な顔をして相当な手練ね）
まず鼻についたのは夥しい数の男の精と女の蜜の香りだ、皆が知ればきっと幻滅するだろうが。
まぁ彼女には彼女の嗜好というものがあるのだろう…所詮アイドルなど知れている。

それよりも初音にとって気になったのはその血の匂いだ…獣の匂いがする。
魂は強い輝きを放ってはいるが、それに反比例するかのようにその血は黒く淀んでいた。
（先祖かあるいはもっと近い血縁に大罪人がいるわね…）

初音は小さくだが溜息を付く、いかに美しくてもこれでは魔族の嗜好にはそぐわない。
残念ながら遠路はるばるくたびれ損といったことになりそうだ。
（ご苦労なこと…ふふふっ）
初音は握手を終えるとそのまま意外そうな顔をしたままの奏子の手を引き、その場を離れる。
やはり自分で何とかするしかないと思いながら。

650 名前：神崎毬絵 ◆M0h24jMARI ：2005/10/06(木) 00:51:02

>>648>>649　―少女探偵魔焔事件簿『女郎蜘蛛の糸』―　導入


　―――そして神崎毬絵は、夜の八重坂高校に潜り込んだ。

　わざわざ正門から侵入したりはしない。いくらフェンスに囲まれているとは言え、危機意識
の薄い日本の高校だ。足がかりが目立つ木などが、平気で植えられている。
　するすると木を昇り、フェンスを跳び越える毬絵。
　その行為だけを見れば、道行く人はこのコソ泥がまさかかの少女探偵だとは思うまい。
　それは毬絵も重々承知である。
　これは立派な不法侵入だ。事後承諾で許されるような範囲を逸脱している。

　―――が、毬絵にもまた、どうしても確かめなければならないことがあった。

　昼の懇親会。
　捜査に行き詰まった毬絵は、最後の手段としてマスコミを利用した。自らをマスコミの餌
にすることで、見返りとして自分の存在を大々的に謳ってもらう。
　下世話な手段であるし、今後の他の依頼を考えればリスクは大きい。何より、このアピール
が逆効果となり、更に誘拐魔を地下深く潜伏させてしまう可能性も十分にあった。
　だが、既になりふりを弁えている時期は過ぎている。
　少女達を救うためには。これ以上、少女の貴重な涙が流れるのを止めるためには。
　事件解決のため、人身御供になることなど神崎毬絵は厭わない。
　お祭り騒ぎも同然な懇親会もそのためと言えた。
　気になる怪談話は、毬絵が正面から八重坂高校をかき乱しているうちに、裏で三枝率いる
少年団が情報収集に駆け回る。それが少女探偵の狙いだ。

　しかし、異変は学園に一歩踏み入ったその時起こった。
　空気が明らかに変わったのだ。
　やけに生温い大気。
　身体もだるくなり、まるで不可視の重りを背負っているかのように錯覚してしまう。
　初めは体調の不調に過ぎないと思った。連日のマスコミ露出に夜の囮捜査。さすがに疲労
が祟ってきたか、と内心で舌打ちしたほどだ。
　が、女生徒達と笑顔で握手を交わすに至り、立ちくらみを覚えたときはさすがにおかしい
と気付いた。神崎毬絵のタフさは伊達で済まされない。
　大体、このような自体には陥らぬよう栄養補給と適度な仮眠には��一応�°Cを付けていた。
　一週間程度の不眠で泣き寝入るほどの無茶はしていないはずだ。

　ならば、この不調は何を訴えているのか。毬絵には心当たりがあった。
　幾度となく経験してきた下衆の手口。
　見られたくないものを隠すには、この手の禁忌を犯すのが一番だ。

「本来あるものを、無かったことにする」

　その矛盾に、人よりも敏感な体質の毬絵は拒絶反応が出ているのだ。
　結界、催眠、洗脳、誘惑。―――オカルトには疎い毬絵だが、職業柄と経験上それ等への
耐性は常人を遙かに凌いでいる。
　毬絵は悟った。この学園には、何かがあると。

651 名前：比良坂初音 ◆HtiOHATUNE ：2005/10/06(木) 00:52:32

>>650 ―少女探偵魔焔事件簿『女郎蜘蛛の糸』―　導入


「姉様っ！どうなさったんですか！姉様っ」
「何でも…ないわ」
ふらふらとよろめく足取りで『巣』へと帰った初音、今の彼女は恋人の前ですら、
取り繕う余裕すらないほど疲弊しきっている。

あれから初音はついにあの影の正体を突き止め、そして勝利したのだ。
だがその戦いで彼女は深傷を負ってしまった、少女誘拐などというセコイ真似とは裏腹に、
その正体は恐るべき使い手だった。

壁にもたれかけ、はぁはぁと苦しい息を吐く初音、精気をごっそり持っていかれた…補充が必要だ。
あの忌々しい少女探偵とやらが目を光らせている今、できることなら穏便に息を潜めていたいのだが。
こうなってしまっていてはやむをえない。
「食事をしないといけないわ…」
食事、その言葉の意味する所は1つしかない。
だが何か言いたげな奏子の唇を初音は指で塞ぐ。
「案ずることはないわ…でも明日は学校には来てはだめよ…いいこと？」
奏子はまだ何か言いたげだったが、やがてぺこりと一礼するとそのまま『巣』を去っていった。

そして翌日…1人の生徒が姿を消した。

652 名前：神崎毬絵 ◆M0h24jMARI ：2005/10/06(木) 00:53:21

>>651　―少女探偵魔焔事件簿『女郎蜘蛛の糸』―

　毬絵は気配を殺して校庭を進む。静寂の帳に包まれた夜の八重坂高校。
　昼には懇親会で訪れたばかりのはずのそれが、彼女の目にはまるで別物に移っている。
　人気が無くなり、闇に囲われるだけでこうも変わるものなのか。
　夜の侵入劇などそう珍しくもない毬絵ですら、これには緊張を覚えずにはいられなかった。
　無機質な鉄筋造りの校舎が、威圧を称えて夜を往く少女を見下す。
　だが、ここで踵を返すわけにはいかない。
　神崎毬絵には目的があった。
　それは恐怖などで殺されるわけにはいかない、彼女自身の存在を賭けた目的だ。

　どういう事情か、昼の懇親会の時と比べて結界の力は弱まっているように感じる。
　胸を苛つかせる不快感は消えないが、吐き気を催したり頭痛に苛まれたりすることは無さそうだ。
　ならば、これを好機に確実な情報を掴む。

　いま、この八重坂高校は何に侵されているのか。
　助けを求める水着の少女。
　男を誘う図書室の少女。
　なぜ、こうも強力な結界が張られなければいけないのか。
　まるで、何かを隠すように―――

　そして、それ等と連続少女誘拐事件との因果はあるのか。

　まず、目指すは第一棟校舎だ。高校のセキュリティなどたかが知れているが、その中でも
一棟の設備はあまりにお粗末だ。毬絵の腕ならば、ガラス一枚割らずに侵入できるだろう。
　懇親会のとき、頭に焼き付けた校内図を呼び起こす。

　事務員が警備のために泊まり込んでいるであろう、宿直室は正面玄関脇の第三棟。
　校舎裏からの侵入にはまったくの死角だ。
　このまま校舎内に潜り込めば、よほど派手に騒がぬ限り補足されることはないだろう。
　そうして、歩む足を急がした直後。

　毬絵の敏感な嗅覚が、捉えてはいけない臭いを捉えた。
　否、彼女の鍛え抜かれた鼻でなくてもこれには気付く。
　それほどまでに露骨な、

　腐臭。

653 名前：神崎毬絵 ◆M0h24jMARI ：2005/10/06(木) 00:53:31

>>651>>652　―少女探偵魔焔事件簿『女郎蜘蛛の糸』―

　ばっ、とスカートの裾を翻して毬絵は進路を変えた。
　足音は消して―――しかし、大胆なまでに派手に駆ける。
　もはや校舎内の探索など、彼女の頭からは消えていた。
　いまはただ、半ば確信を持った予感に従い、駆けている。

　旧体育倉庫と思わしき木造の建物を横目に、フェンスを跳び越え、校舎裏のろくに整地
もされていない裏山へと赴く。
　そして毬絵は、絶句した。

　否、腐臭を嗅ぎ付けたとき半ば展開は予想できた。
　次に訪れる何か。今更、毬絵が見て驚くようなものではない。
　しかし。

　折り重なるように積まれたいくつかの死体。
　新しいのもあれば、腐りきって原型が窺えぬのもある。
　五体満足な身体もあれば、破壊の限りを尽くされたものも。

　分かるのはただ、学生服を纏ったその姿からも―――それが、八重坂の生徒だと言うコトだ。

　申し訳程度に穴が掘られて、そこにうち捨てられた死体の数々。
　隠そうとなんて意図があるようには、まるで思えない。
　事実、毬絵の鼻は離れた第一棟付近からも腐臭を感じ取ったほどだ。
　こんなあけすけの死体遺棄、ここで一日の大半を過ごす生徒諸氏に気付かぬはずがない。

　だが現実、通報の記録なんて過去にはなく。死体にも、腐臭にも誰も気付かなかった。
　誰かがそう、仕向けた。あるべきものを、まるで無いかのように��させた�＝B

　更に毬絵を混乱させたのは、その死体の殆どが男子生徒だと言うことだ。
　連続少女誘拐事件の被害者は、見当たらない。
　何が。いったい何が、この学園では起こっているのか。

「……わたしの読みが、甘すぎたのかもしれないわね」

　毬絵は冷静を気取るように、口端を吊り上げてひとりごちた。

654 名前：神崎毬絵 ◆M0h24jMARI ：2005/10/06(木) 00:53:44

>>651>>652>>653

　―――死体なんて、今更見て驚くほどにわたしはうぶじゃない。

　これよりも凄惨で、残虐な光景を何度も目にしてきた。
　時には、自分が死体を��作る�¢､にすら回った。

　だけど、それでも。
　昼の懇親会を思い出す。ただ無邪気に、わたしに握手を求めてきた少女達。
　遠巻きから、まるで鑑定士にでもなったかのような目付きで、わたしを定める男子達。
　中には、やっかみの視線もあった。

　ただ、みんな毎日の訪れを、当然のように受け入れていた。

　次の日もまた。その次の日もまた。
　生きているであろうことに、誰しもが何の疑いも持っていなかった。

　いま、ここで腐り行く彼等もそうだったに違いない。
　それを愚かだと言うのなら、わたしは否定しない。
　生き足掻く力こそが、明日への近道だとわたしは信じている。
　何の労力も無く過ごせるほど、毎日は安くない。

　だけど、それでも。
　わたしは、身の内に滾る怒りを静めようとは思わなかった。
　当然の平和を蔑ろにする誰かがいるのなら。

　それを許せるほど、わたしは大人にはなれない。

655 名前：比良坂初音 ◆HtiOHATUNE ：2005/10/06(木) 00:54:11

>>652-653-654 ―少女探偵魔焔事件簿『女郎蜘蛛の糸』―


厄介なものを見られてしまった。
「流石は少女探偵…といったところかしら？」
物陰で舌打ちする初音、その傍らにはここまで無造作に引きずってきた死体がある。
それにしても、何故彼女にはまやかしが効かなかったのだろうか？
やはりその身に流れる黒き血のなせる業か…。
（どうしようかしら？）

実際に死体を見られたとしてもまだ焦る必要はない。
そこに死体があったというだけで、殺害の疑いが自分にまで降りかかる恐れは皆無といってもいい。
それにそもそも彼女の追う事件とは無関係だ。
しかし…万が一、この一件が魔の世界に知れると厄介な事となる。
魔の世界は決して一枚岩ではない、
これを口実に秩序を乱す不届者との名目で公然と自分を狩りに来る輩も現れるだろうし、
また本来の敵である退魔師たちも襲撃を仕掛けてくるに違いない…そうなれば…。

初音の脳裏に奏子の姿が映って消える。
失いたくない…ようやく辿り付き、そして見つけたのだ。
たとえ仮初の日々であっても、この平穏な暮らしを出来るだけ長く過ごしていたい。

「殺すしかないわね」
『食事』の効果で人間程度には何とか動くことは出来る、だが蜘蛛もそう多くは操れそうに無いし、
術の乱発もできない、まして相手には効果が薄い…勝負どころで一度二度が限界だろう。
（余計な仕事をするもんじゃなかったわ）
一言毒付いて初音は物陰から姿を表す、相手も気がついたようだ。
それと同時に初音は斬糸を毬絵めがけ振り放った。

656 名前：神崎毬絵 ◆M0h24jMARI ：2005/10/06(木) 00:54:58

>>655　　―少女探偵魔焔事件簿『女郎蜘蛛の糸』―

「……だれ？」
　何の前触れすら無く―――間近で、唐突に人の気配を感じた。
　張り巡らされた結界に、積み重なる死体と真夜中の少女探偵。
　もはや何が起ころうと驚きではない。毬絵は身構えつつ振り返る。

　―――と、目に付いたのは時代錯誤も甚だしい漆黒のセーラー服だった。

　八重坂高校の指定制服ではない。
　そして、毬絵はその服を昼に目にしている。あれは確か、自分に握手を求めた―――
　冷静な思考は、そこまでが限界だった。
　毬絵のトレードマークであるワンピースは、夜にあってその白さを更に際立たせる。
　闇にあってなお白さを保つ彼女の服が、揺れた。

　初音の瞳が自分の瞳が交錯したとき、彼女の眼が炯々と輝いたのだ。
　そして、次の瞬間には一条の煌めき。
　その光を見届けては死ぬ、と。数々の死線を潜り抜けてきた毬絵の本能が、訴えた。

　咄嗟に横に跳んだ。直後、毬絵が立っていた位置を光が舐める。
　かわしきれず、風を受けるスカートが縦に裂かれた。
　際どいスリットの如きその傷跡から、毬絵の白い素足が覗く。

「……っ！」

　攻撃の正体は分からぬ。
　その軌跡から考えても、銃器や刀剣の類ではないことは確かだ。
　ともあれ―――

「少女探偵だからと言って、女の子には誰でも優しいと思わないことね！」

　相手が問答無用である以上、自分の安全のためにもここは応戦しかない。
　毬絵はスカートをはためかせると、慣れた動きで太股から伸縮三段式警棒を取り出した。
　回避の跳躍から着地するのと同時に、更に跳ぶ。今度は女生徒目掛けて。

　警棒を一振り。かしかし、と音を立てて銀の鉄棒が月に輝く。
　呼吸のタイミングは完璧だ。肺に溜まった息を吐くと同時に―――

　毬絵は返す動作で、黒服の女生徒の顎先目掛けて警棒を薙いだ。

657 名前：比良坂初音 ◆HtiOHATUNE ：2005/10/06(木) 00:55:34

>>656 ―少女探偵魔焔事件簿『女郎蜘蛛の糸』―

外れた！
だが初音は毬絵の一撃を軽々と避け…もっとも突っ込んでいれば直撃だったが
そのままバックダッシュで校舎へと下がる。
ある程度予想はしていたとはいえ、その力の衰えに初音はまた頭を悩ませる。
魔人としての身体能力はお世辞にも高いとはいえない彼女が何故ここまで生き残れたか
それは、豊富な特殊能力とそれに裏打ちされた鋭い感知能力のおかげといってもよい。
だが、今の彼女はその感知能力すら不十分な状態でしか扱えない。
今の攻撃がその証拠だ、ベストの彼女ならば造作なく毬絵の首を切断していただろう。

彼女の目となり耳となって働いてくれる下僕たちもおそらく多くは呼び出せない。
となれば…お互いの武装と戦闘技術による勝負以外に無い、だが、
初音は毬絵の顔を思い出す、あの不敵な表情は幾多の修羅場を潜ってきたであろう証明、
容易に出し抜ける相手ではない、それにまさにこれは相手の土俵、
常に己を有利な状況において戦うのがセオリーである蜘蛛族にとってこれ以上の逆境はない。

と、そこに足音が聞こえてくる、長引けば不利、牽制は無用、一撃で決める。
そう思い定め、初音はまた糸を、今度は廊下の真ん中を塞ぐように立っている柱越しに放つ。
数も射程も普段とは比べ物にならないが、糸の斬れ味はまだ健在だ。
コンクリートの柱を豆腐のように切断し、その向こうにいる毬絵めがけ糸が疾った。

658 名前：神崎毬絵 ◆M0h24jMARI ：2005/10/06(木) 00:55:44

>>657　―少女探偵魔焔事件簿『女郎蜘蛛の糸』―

　毬絵の警棒術は伊達ではなく、英国のとある友人から教えを乞うたスコットランドヤード式だ。
　銃器の携帯を許されない彼等制服警官は、帝都警察のそれよりも遙かに洗練された棒術を扱う。
　毬絵もまた同様で、突いて良し叩いて良し防いで良しの三段式ロッドをかなり信頼し、
相手を無力化させるためにはまず、これで武装していたほどだ。
　どんなに体重差のある男性が相手でも、顎先に鉄棒を叩き込めば一撃で沈められる。
　毬絵は警棒術への信用と自信は絶大だ。
　だからこそ。

　―――まさか、こうもあっさりと避けられるなんてね。

　胸中でそう呟いて、毬絵は苦々しい表情を作った。
　不意打ちからの反撃とは言え、呼吸も歩調も完璧だった一撃だ。
　多少の心得がある程度の女子高生がかわせる代物ではない。
　それに、この桁外れの足の疾さ。
　脚力には自信がある毬絵を持ってして、影すら掴めぬほどだ。
　あの女生徒は、いったい何者か。
　夜の校舎。月明かりを頼りに闇の廊下を突き進む毬絵は、気配を殺しながら思案した。

　女生徒が退いたとき、彼女もまた一時の撤退を考えた。
　状況はあまりに未知。闇雲に追撃をかけるにはあまりに危険過ぎたからだ。
　警察の応援を呼び、数を頼りに包囲をかけて事件の究明に乗り出す。
　それが��賢い遣りかた�≠ｾ。
　だが、毬絵はあえて愚者の選択をした。
　いま此処で、あの女生徒を逃がすわけにはいかないのだ。
　状況から考えて、あの黒髪の美女が裏山の死体と密接な関係があることは疑いようがない。
　そして、八重坂に多発する連続誘拐魔のそれともだ。
　事件の解決の糸口―――焦るわけではないが、みすみすと見逃すことはできない。
　あの女生徒だけは、何とか確保しないと。

　毬絵は時刻を確かめるように、左手にまかれた腕時計に目をやった。
　やけにゴツい、男物のブレゲだ。稀代の名探偵であった父の遺品である。
　時計の短針は二の数字をさしていた。あまりにも更けすぎた夜。
　毬絵は廊下に面した窓から外の風景を眺める。―――人通りは無く、梟の鳴き声一つしない。

　あまりに静まりきった闇だから。少女探偵はその音を耳にすることができた。
　まずはしゅるしゅると何かを紡ぐ不可解な音。直後に空気を切り裂く、音。
　毬絵は手にした警棒を振り払い。柱はまるで冗談のように切り分けられて。自慢の警棒も
また、何の役に立つこともなく三枚におろされた。こうなってはもう、ただの鉄くずだ。
　毬絵は宙に身を投げて、地面に倒れ込むと同時に身体を転がす。頭に乗せたベレー帽が落ち
ぬよう、手で押さえながら。
　直後に不可視の刃が廊下を壁を天井を刻む、刻む刻む刻む。

「は―――」
　何とかひとしきり捌いてから、息を吐いて調子を取る、毬絵の顔は蒼い。改めて己の読み
の甘さを痛感したのだ。
　切り崩された柱の向こう、悠然と佇む女生徒の姿。
　漆黒の黒髪や制服は、窓越しに月光を受けていながらまるで輝きを見せない。まるで闇に
同化しているかのように��黒�≠ﾆしてそこにあった。ただ、双眸だけは炯々と輝いている。

　―――闇だ。

　今まで、闇に侵され、闇に狂わされた犯罪者を星の数ほど見てきた。
　けど、違う。彼女は違う。これは違う。
　さすがの神崎毬絵も、闇そのものと相対するのは初めてであった。

「……こんなことなら、機関銃を持った殺人鬼や、死体の皮でジャケットを作るような変態
に待ち伏せされていたほうがよほどにマシだったわ」

　言うが早いか、毬絵は脇の教室に飛び込んだ。
　この想定外の事態。まず、毬絵は己の誤解を正さねばいけないことに気付く。探偵と容疑者、
と言う関係であっても、探偵が優で容疑者が負と言う方程式になるとは限らない。
　いつもの如く「観念しなさい」の茶番劇は通じないのだ。上履きに踏み慣らされた木張りの
床に伏しながら、毬絵は三十に上る机と椅子を縦にして隠れた。
　兎にも角にも、近付けなければ話にならない。

659 名前：比良坂初音 ◆HtiOHATUNE ：2005/10/06(木) 00:57:26

>>658 ―少女探偵魔焔事件簿『女郎蜘蛛の糸』―

教室に逃げ込んだ毬絵を追う初音、相手は教室の机と椅子を盾にしこちらの様子を伺っている。
間髪入れず初音の糸がまた疾る、普段なら逃げ回る獲物をじっくりといたぶり殺すところだが、
状況が状況だけに遊んではいられない。
とにかく相手に考える時間を与えてはその分こちらが不利になる。
何しろ知恵比べでは到底叶わないはずなのだから…。

８Ｍほどの間合いをキープしながらしばらく攻撃を続ける初音。
この間合いならば彼女の得意とする射撃も容易には扱えまい。
普段なら銃撃など恐れるに足らないのだが…今の肉体強度では万が一急所に当たれば一大事だ。

（かなこのおかげかしら？）
先日、奏子が見せてくれた雑誌には、
犯人めがけ勇ましく銃を構える毬絵の姿が掲載されていた。
「毬絵さんは射撃の名手なんですよ！」
そのことを興奮した様子で話す奏子、だがその声を思い出すと、
なぜか原因不明のムカムカが初音の胸に込み上げてくる。

（いけないわ、頭に血を上らせては、落ち着くのよ）
初音は一瞬動じた昂ぶりを振り払い、自分に言い聞かせると、あえて攻撃の手を止め、そのまま後退する。
このまま押し切りたいのはやまやまだが…。
射撃戦は得てして単調になりがちだ、どこかでリズムを変えなければパターンを読まれ、
手痛い反撃を食うことが往々にしてある。
それに彼女がこのまま無抵抗のまま終るはずもない、ここは誘いを入れてみるか？

660 名前：神崎毬絵 ◆M0h24jMARI ：2005/10/06(木) 00:58:32

>>659　―少女探偵魔焔事件簿『女郎蜘蛛の糸』―

　あえて逃げ道が限られる教室に転がり込んだ理由。一つは、その障害物を利用するためだ。
　女生徒の不可思議な武器―――いや、今なら分かる。
　極細の糸が、刃になってあらゆるものを断ち切っているのだ。
　どういう仕掛けで繰り出しているのかは分からないが、素直に受ければ途端に八つ裂きである。
　ここは机や椅子などを利用して、少しでも切れ味を鈍らせるしかない。

　―――が、当の女生徒は、障害物など何知るものぞと言った風情で、机も椅子も黒板も
容赦なく切り刻んで、その奥に隠れる毬絵を狙う。
　少女探偵は休むことなく、身体を動かし。床から机へ。机から机へと。飛び乗っては
かわし、かわしながら跳び、時に身体を転がして床すれすれに駆けた。
　が、所詮は狭い教室内であるから回避の動作にも限界はある。

「誘き寄せたつもりだったんだのにね……」

　こうも人間離れした技の前では、そう軽々と形勢逆転はさせてもらえないらしい。
　ならば―――と毬絵は覚悟を決めた。
　平和を守るための矛。
　エゴじみた響きが好きではないのだが、いま此処で抜かねば毬絵は死ぬ。
　女生徒の呼吸に合わせ、糸を避ける―――そのステップを踏んだまま、右手に引っ掴んだ
木製の椅子を黒服の少女目掛けて投げ付けた。
　少女は、うまい具合に身体を後ろに退いている。あの姿勢から攻撃は出せまい―――
更に残る左手で、もう一つ椅子をぶん投げた。
　いくら鍛えているとは言え、少女の膂力で投げられたものだ。その威力はたかが知れている。

　―――だが、目くらましにはちょうど良いだろう。

　毬絵の腰が、ぐいと沈む。
　両目の視線の先には、宙を飛ぶ椅子越しに女生徒がしっかりと射抜かれている。
　右手がスカートの裾をあげ、太股のホルスターへと手が伸びた―――と思わせた瞬間には、
既に彼女の手には一個の銀塊が。まるで魔法の如き鮮やかな手並み。
　小振りなオートマチックの自動拳銃は、神崎毬絵の証とも言える代物だ。

　照星は照門と瞳を結んで黒髪の殺人者へと一直線に伸びている。
　毬絵は躊躇わずに、正確に三度だけ銃爪を引いた。
　十字のマズルフラッシュが夜の教室に輝く。
　しかし、響くはずの銃声はどういう絡繰りか闇に谺することはない。

　少女探偵神崎毬絵の悪を断つ刃。神崎式無音拳銃である。

661 名前：比良坂初音 ◆HtiOHATUNE ：2005/10/06(木) 00:59:23

>>660 ―少女探偵魔焔事件簿『女郎蜘蛛の糸』―

「さぁ…どうでるかしら」
あえてスキを作ってやったのだ、ここでおそらく何らかのリアクションを起こすはず。
と、その時潜んでいた毬絵が動く、
立ち上がった毬絵の手から放たれた椅子が二つ、これはおそらく目くらまし
（来るわね…）
毬絵が初音を射界に捉えたのは、これ以上はない必殺のタイミングだ、
ただし相手が人間ならばの話。
初音にはわかった、毬絵がトリガーを引いた瞬間、音はなくとも発せられた硝煙と火薬の香りが、

（人間相手なら騙せたのでしょうけど、魔物相手では不足ね）
ゆえに魔物相手の射撃戦の場合、ハンターたちは相手の感知能力を凌駕するほどの火力、射程、
浄銀弾などの特殊装備、あるいは跳弾などの特殊なスキルをもって攻撃するのが一般的だ、
初音は素早く身をひねり、射線から逃れる…掠めるように弾丸が3発初音の傍を通過する。
と、その方向に向かいまた糸を放った。

662 名前：神崎毬絵 ◆M0h24jMARI ：2005/10/06(木) 00:59:47

>>661　―少女探偵魔焔事件簿『女郎蜘蛛の糸』― (2)

　目眩ましの椅子には見向きもせず、正確に毬絵の放った弾丸だけかわす。
　ああ、言葉で言うには如何に容易かろうか。
　だが、それを実際になし得るものなどそうはいない。ましては、セーラー服姿の女子高生が、
ひらりとスカートを翻しながら、何気なくかわしてみせるなんて―――

　―――射線を読まれた！？

「そ、そんな。冗談でしょ……！」

　確かに弾丸の軌跡は真っ直ぐにしか伸びようがない。
　その射線上に立たなければ、当たりようはないだろう。
　だが、そんなのは毬絵だって百も承知だ。
　故に、囮の椅子を投げ付け、ビリー・ザ・キッド顔負けのクイックドロウで撃ち込んだ。
　射線など、読む暇すら与えなかった。
　そのつもりだった。

　―――どうやら私の動きそのものが、彼女の意中で踊らされているようね。

　冷や汗が、止まらない。
　正面からこうまで神崎毬絵を自在に弄ぶ者――― 一体この女生徒は何者なのか。

　カウンターで放たれた銀糸の刃。射撃姿勢が解けていない毬絵にかわす術はない。
　それでも無理に身体を倒し、回避を試みるが―――
「く―――ッ」
　鮮血が舞った。左の二の腕を貫く糸。衝撃に負け、思わず後ろによろめく。
　このままではまずい。圧倒的に女生徒のペースに乗せられている。

　毬絵は左腕から血が溢れるのも気にせず、更に無音拳銃のトリガーを絞る絞る。
　重厚な反動が身体を伝って左腕に響く。それは激痛と姿を変えて全身に伝播した。
「くぅあ……！」
　だが、攻撃の手を止めるわけにはいかない。
　足掻きの弾丸が更に一発二発と女生徒向けて撃ち込まれる。

663 名前：比良坂初音 ◆HtiOHATUNE ：2005/10/06(木) 01:00:31

>>662 ―少女探偵魔焔事件簿『女郎蜘蛛の糸』―

「無駄よ…うふふふ」
毬絵の必死の反撃をあざ笑う初音…ただ最後の時を引き伸ばす、それだけのための無秩序な反撃、
そんなものでこの蜘蛛を討つ事は叶わない。
当の初音もそれを充分承知している、だから彼女は笑う…心から。
手も足も出ぬ獲物をじっくりと嬲り殺すことこそ蜘蛛の性だ、本当になんて楽しいのだろうか？
もはや勝利を確信した初音は止めを刺さんと、また腕を振り上げる、狙いは毬絵の両足。
だが…ステップを踏みながら軽々と銃弾を回避していた、初音のリズムに僅かながら狂いが乗じた。
（え！足が！）

先の戦いでの消耗は初音の想像を超えていた、どだい人一人程度では賄いきれるものではなかったのだ。
そして…ほんの少しだけふらついた初音の身体を弾丸が捉える。
「がっ！」
吼えるような悲鳴を上げ、教室の外に吹き飛ばされる初音。
とっさに防護用の網を張ったが、衝撃を防ぎきることはできなかった、口の中に溢れる血を飲み込む。
どうやら内臓をやられたようだ。

だが初音は立ち止まらず、そのまま全速力で追撃を仕掛けてくるであろう毬絵から離れる。
接近戦にさえ持ち込まれなければまだ手はある…。

664 名前：神崎毬絵 ◆M0h24jMARI ：2005/10/06(木) 01:00:46

>>663　―少女探偵魔焔事件簿『女郎蜘蛛の糸』― (3)

　死に行き着くまでの時間を、少しでも稼ぐための射撃。
　だが、その当てずっぽうの中の一発が女生徒の胸を貫いた。
　たまらず教室から飛び出す彼女。毬絵は更に追い打ちの弾丸を三度浴びせるが、それが
女性に届くことはなかった。
　ホールドオープンした無音拳銃のスライドを一瞥して、毬絵は声にならない呻きをあげる。

　―――追わなければ。

　左腕の出血は止まる気配を見せない。思った以上に、深い。
　毬絵は自慢のスカートの裾を破り、左腕と口を器用に使って包帯代わりに巻き付ける。
　途端に、純白の生地が赤く染まった。

　―――追わなければ。

　空になったマガジンを落とし、やはり片腕でリロードする。スライドを口で引いて弾丸
を薬室に送り込んだ。神崎式無音拳銃に、新たなる死の息吹が吹き込まれる。

　―――追わなければ。

　毬絵は挫ける心を必死に奮い立たせ、教室から飛び出した。この行為は愚かだ。
　弾丸を胸に浴びたと言えど、あの女生徒の戦闘継続が不可能になったとは思えない。
　それ程までに彼女の攻撃は脅威で、そのプレッシャーは桁外れだった。

　いま逃げれば、毬絵の命は保証される。命を削ってまで、追撃をする必要はない。
　彼女とてあの傷だ。��もしかしたら�≠ｻれが祟って死に至るかもしれない。
��もしかしたら�≠ｻれに懲りて、暫くは姿を隠すかもしれない。

「―――��もしかしたら�＝H　��もしかしたら�＝I？　冗談じゃない……冗談じゃないわよ」

　左腕から流れる血が、床に点々と血痕を描く。

「その��もし�≠ﾌために、これから何人の娘達が死んでゆくの。屈辱の涙を流すことになるの。
あの女は、いま止めなくちゃいけない。少女探偵に��もし�≠ﾈんて言葉はない」

　さらわれた少女達と。あそこで腐臭を漂わせていた生徒達。
　そこにどんな繋がりがあるのか。あの女生徒はその答えを導く重要な鍵だ。
　見逃すなんて真似はとてもできない―――

　夜の校舎。毬絵の血と同様に、女生徒の血―――と言うより体液らしき濃緑のそれが、夜の
廊下にしるしとなって続いている。思いの外、彼女の傷も深いらしい。
　毬絵は一呼吸つくと足を駆った。
　右手には銀に輝く拳銃。少女探偵神崎毬絵の名に駆けて、あの女は捉えてみせる。

665 名前：比良坂初音 ◆HtiOHATUNE ：2005/10/06(木) 01:01:31

>>664 ―少女探偵魔焔事件簿『女郎蜘蛛の糸』―

やはり追ってくる…未だ姿は見えないが荒い息の中、初音は確信する。
また喉にこみ上げる血潮…今度は飲み込めず…口を押さえた手の隙間から緑の鮮血が溢れ出す。
「これしきで…」
強がりを言うが、もう限界だった…これ以上戦えばガス欠で気絶してしまう。
ここを放棄して逃げることは出来ない…何よりもやっと手に入れられる平穏な日々を…、
そして何よりかなこを失いたくない…。
渡り廊下の角に差し掛かる初音、現在位置はＴ字状の廊下の交差点。

「ここで決着をつけるわ、探偵さん」

雲が晴れ、月明かりが夜の校舎を照らしていく中、足音が少しずつ初音へと近づいてきていた。
そして、少女探偵がおそらくは目にするもの、
それは後方を糸の壁で囲い、じりじりと動かない足を引きずり逃走を図る少女の姿、
しかし、その糸の壁はあまりにも脆く頼りなげだった。

だが、初音には計算があった、確かにいかにも急場しのぎの糸の砦だが…あえてそう見えるようにしているだけだ。
罠は２つ、１つは白い糸に混じって毬絵の首の高さに設置した黒く塗られた糸、
知らずに進めば首が落ちる。
そしてもう１つ、その罠の一歩先に、今度は足元スレスレに無色透明の糸を仕込んだ。
この糸に触れれば、周囲に展開した白糸が収縮し、触れた者を虜にする、こういう仕掛けだ。

つまり二段構えの罠、いかに神崎毬絵といえど
最初の罠をかいくぐったその瞬間は油断が乗じるはず…。
拳銃の射程ギリギリの位置にその身を置いて、初音はその時を待っていた。

666 名前：神崎毬絵 ◆M0h24jMARI ：2005/10/06(木) 01:02:06

>>665　―少女探偵魔焔事件簿『女郎蜘蛛の糸』―

　たったったっ、と。もはや足音を殺すのも忘れて廊下を駆ける。溢れる血は身体から体温
を奪い、左腕は鉛の棒が埋め込まれたように重い。出血し過ぎたか。
　廊下に落ちた女生徒の緑の血痕と、毬絵の真紅のそれが混じり合った。

　こうなった今、もはや毬絵は確信するしかない。あの女性は人間ではない、と。

　稀代の名探偵として、日本……否、全世界から英雄の扱いを受けていた毬絵の父。その
正体は、闇が光を駆逐することに悦びを得るように、闇を駆逐することを至上の愉しみと
する光だった。言わば、光の世界に寄生する闇。
　殺人鬼が、吐き気のする強姦魔が、無辜な人間達を陵辱して自己の存在を確立させるように。
　父は、そんな社会の闇を真実の光の下へと暴き出し、時には殲滅して自分を確かめる。
　犯罪に対する憎しみや、被害者に対する慈しみなんて欠片もない。
　ただ、ゲームの駒を進めるかのように、事件解決への道を模索する。
　そんな毬絵の父―――

　晩年、彼は夜の世界に取り憑かれていた。書斎から一歩も出ず、時にぶつぶつと呟きを
漏らしながら不可思議な書物を読み漁った。
　警察が上部の指示により握り潰した事件書類や、公安の��部外秘�≠ﾅある事件をどっから
ともなくは引っ張り出して、その解明に全力を注いだ。
　挙げ句には、内閣情報調査室との極秘での情報共有にまで至るようになり。
　そして父は消えた。
　毬絵の情報収集力、調査能力を持ってすら未だにその行方と真相は分からぬが。
　父は己の悦びのために、己すらも犠牲にした。そう、毬絵は受け止めている。

　そしてこの少女探偵はいま、確信している！　父が一瞬でも垣間見た夜の世界。
　魅了され、取り憑かれた夜の世界が。いま、偶然にもここで顎を開いて待ち受けている！
　見ろ！
　毬絵の視線の先。廊下の奥。月明かりに照らされ、闇に浮かび上がる少女の姿を。
　背中を見せ、無様にも逃げる醜態を晒しているにも関わらず、その色褪せぬ美しさに、
毬絵は思わず溜息を漏らす。
　あの女は闇だ。何者の干渉も受けない。何人にもその色を変えることは許されない。
　純粋なる闇だ。

　―――勝てるのか、勝てるのか、勝てるのか。

　毬絵は自問する。成り行きとは言え、片足を半分突っ込んでしまった闇の領域。
　だが、あの少女がこれからも人を殺し続けると言うのなら。
　全身を闇に染めてでも止めなければならない。

667 名前：神崎毬絵 ◆M0h24jMARI ：2005/10/06(木) 01:02:14

>>665>>666　―少女探偵魔焔事件簿『女郎蜘蛛の糸』―

「……だから！」
　銃把を握り直す。床を蹴った。少女探偵は逃げる女の背中を撃つなんて真似はしない。
　それは真実だ。―――だけど。
「必要とあれば、不意打ち闇討ちなんだってしてみせる……それが神崎の血よ」

　トリガーを引いた。女生徒の背中の手前、脆弱な糸の砦を穿ち散らす。呆気ないほどの
解けては消えていく糸達。―――おかしい。アレだけの脅威を持った鋼の糸が。どうして
こうも容易く切れてゆくのか。それほどまでに先の負傷が痛手となったのか。
　―――あの女は、その程度の女なのか。

　瞬間、毬絵の瞳が眼前横一文字に伸びる漆黒の糸を捉えた。銃撃の雨の中、唯一生き
残った黒い糸。避けろ、少女探偵としての経験がそう命ずる。あまりに紙一重の回避。
自慢の赤毛が糸に触れて、はらはらと落ちた。

「……やっぱり、食えない女ね！」

　無音拳銃を振り上げた。照準は女生徒の背中。撃てる。必要ならば、撃てる。今が
その時だ。気後れなんて何もないはずだ。背後からの射撃。しかし、あの女は殺人鬼だ。
何人もの若者を殺した。同情の余地なんてない。いま殺さなくては、次の犠牲者が。
　撃て。撃たないと。撃つんだ神崎毬絵！

　―――だが、毬絵の脳裏によぎるのは昼の情景。握手を求める女生徒。その手前で、
おどおどとサインを求めた気弱そうな女の子。
　何故、いまこのタイミングでそんなことを思い出すのか。
『ほら、かなこ』
　そう言って、女の子の背中を押す彼女の姿には慈しみの心が見えた。

　自分の記憶力がこの時ばかりは恨めしい、と毬絵は思う。それがトリガーを絞る躊躇いと
なるのなら、今だけは刃になりたいと彼女は感じた。
　ただ斬るだけの刃に。ただ屠るだけの道具に。そこに感情なんて無ければ躊躇いもない。
一個の兵器としてあの女生徒を―――

「じゃないと撃てないだなんて……少女探偵失格よ！」

　良心を黙らせて、心の叫びを押し殺して。毬絵はトリガーをきりりと引き絞る。
　―――だが、ハンマーが落ちる僅かに手前。毬絵の足が、不可視の糸を蹴った。
　途端に、四方から襲い来る白い嵐。
「な……！？」
　さすがの毬絵も息を呑んだ。二段構えの罠。完全に油断した。このタイミング、避けよう
なんてとてもない。白い糸が束となって毬絵を支配した。

668 名前：比良坂初音 ◆HtiOHATUNE ：2005/10/06(木) 01:03:45

>>666-667 ―少女探偵魔焔事件簿『女郎蜘蛛の糸』―

「これで鬼ごっこはおしまいね、探偵さん」
糸に拘束され、蓑虫のようになっている毬絵に話しかける初音。
その白糸は人の力で外すことは叶わない、勝負ありだ。
止めを刺すべくゆっくりと毬絵へ近寄る初音、毬絵の視線を感じる。

視線に込められた強烈な敵意と憎悪、それはこれまで倒してきた連中と同じ、だが…
その憎悪の中に一抹の憧れにも似た感情も見え隠れしている。
（これも貴方に流れる血のなせる業かしら？）
毬絵の目の前までたどり着いた初音、もう手を伸ばせば届く位置だ。
「ごきげんよう、探偵さん…このまま殺してもいいのですけど、その前に確かめたいことがございまして」
そう言うなり初音は指を直接毬絵の額へと突き入れ、ずぶずぶと指で脳を掻き分けていく。
「見定めてあげる…貴方が何者なのかを」

指を通じて毬絵の記憶が流れ込んでくる、そして初音の脳裏に映ったもの…そこは暗闇の牢獄…さらに中で繰り広げていた光景は…
暫しの時間が経過した後、初音は毬絵の額から指を引き抜く。
これで納得できた、何故彼女がここまでして戦うのかが…。
社会正義だの道徳だの、そんなくだらない理由なら、五体を引き裂くつもりだったが
自らの苦難を乗り越えた上で、傷ついた少女たちを救うというのならば、これは充分な理由になる。
それに彼女は分かっていた、あの時毬絵は充分に自分を背後から撃つことが出来た、だが躊躇ったことを…。
（これは何かお返しをしないといけないわね…それにかなこが貴方のファンなのよ）

夜明け前。
八重坂の街を走る１人の少年。
「おねえさん…どこ行ったんだろ？」
神崎毬絵の片腕として知られる三枝恵一郎だ、彼はふらりとホテルを出て以来連絡が取れない毬絵の身を案じ
こうして夜の街を探し回っていたのだった。

そんな彼の目に、１人の少女の姿が入る…まるで図ったかのようなタイミングで、
少女は誰かを抱えているようだ、抱えられているのは…。
「おねえさんっ！」
少女に駆け寄る恵一郎、少女の正体は無論、比良坂初音だ。
「ああ良かった…」
初音は恵一郎の姿を見て安堵の息をついてから、口を開く。
「大捕物でしたのよ、あの誘拐魔に浚われて死を待つばかりだと観念していたところに毬絵さんが現われたの」
「それじゃあ！」
「ええ、犯人は観念して炎の中に身を投げたわ…おかげで助かったわ」
初音は恵一郎に気を失ったままの毬絵を預け、そのまま夜明けの街へとその身を翻す。
（手加減と心を覗かせてもらったお返しよ…記憶を残してはあげられないけど）
「あ…あの？」
「残りの女の子たちも家に戻っているはずですわ」
そう言い残すともう初音の姿は消えていた、恵一郎の記憶の中からも…。
（あれ？今の人って…どんなだっけ？まぁ明日になったらわかるか）

669 名前：神崎毬絵 ◆M0h24jMARI ：2005/10/06(木) 01:04:14

>>668　―少女探偵魔焔事件簿『女郎蜘蛛の糸』― 　エピローグ

　目覚めるとそこは、病院のベッドだった。母の彩華と三枝少年が、心配そうに毬絵の顔を
覗き込んでいる。まどろむ意識の中、毬絵は二人に見守られていることに安心感を抱き、
更なる眠りの世界へと―――

「―――って、違う！」

　跳ね起きた。左腕に違和感。顔を顰めて目を遣ると、随分と大仰に包帯に巻かれているで
はないか。点滴用か輸血用か、何本かチューブも伸びていた。

「な、なに……」

　―――なにが起こったと言うの。

　病室は個室で、それもかなり上等な部屋なのだろう。わざわざ用意された化粧台の脇の全身
鏡から、自分の姿を改める毬絵。至る所に打撲のためか、湿布が貼られている。
　いつもワンピースも脱がされ、いまは簡素な病院服姿だ。
　毬絵は咄嗟に、太股に手をやった。―――ない。神崎式無音拳銃が。ホルスターも。自身を
守る武器がないことに気付き、毬絵は床に身を投げようとして―――母に止められた。

「毬絵ちゃん、落ち着いて。もう終わったの、終わったのよ」
「そんな、まだ……まだあいつは！　あの女は……！」
　―――あいつ？　あの女？
　そこでようやく、毬絵は我に返った。自分はいったい、何を興奮しているのか。何故こんな
安全な病室に眠っていながら、自分の拳銃を探したのか。否。それ以前に、何故病室にいる。
どうしてこんな重傷を負っている。あの女って誰。わたしは、わたしは―――

「連続誘拐魔を探して……そして……そして……」
「そうですよ！　毬絵おねえさん、お手柄ですよ！」
「……へ？」
「だから、事件解決ですってば！」
「私が、だれを？」

　母の彩華も、心配そうに毬絵を見つめながらも「やったわね、毬絵ちゃん」と言った。
　他の看護婦や医師達も「さすがです」だとか「おめでとうございます」だとか。
　そんな祝辞の言葉を述べ、気付けば病室は他の患者も混ざって一同の拍手に包まれていた。
　その中心で毬絵は、納得のいかぬ顔で頭を痛めている。　

670 名前：神崎毬絵 ◆M0h24jMARI ：2005/10/06(木) 01:04:46

>>668>>669　―少女探偵魔焔事件簿『女郎蜘蛛の糸』― エピローグ

　それから一週間が過ぎた。未だにマスコミは、神崎毬絵の事件解決を餌に騒ぎ立てている。
　毬絵自身は未だ煮え切らぬ思いなのだが。解放された少女達は口を揃えて「毬絵さまのお陰です」
と証言し、事実毬絵も��名誉の負傷�≠ﾆやらを負ってしまっているのだ。
　燃えカスとなった誘拐魔の遺体も警察の方で発見されている。
　神崎毬絵が連続少女誘拐事件を解決した。状況が、明らかにそうと語っているのだ。
　ただ、足りないのは毬絵の記憶だけである。

　結局、毬絵は納得の行かぬまま八重坂病院の退院が決まり、帝都へと帰還することになった。

「それでは、お世話になりました」

　と、最後まで面倒を見てくれた医師（多分に下心もあったのだろうが）に挨拶をする毬絵。
そのついで、とばかりに彼女はある疑問を口にした。

「結局、わたしのこの傷は刃物か何かによるものだったんですか？」

　と言って、包帯で固められた左腕を持ち上げる。回復の方向には向かっているものの、
傷は深く神経も傷付いたらしい。全快するまでには時間とリハビリが必要なようだ。
　医師は難しげに顔を歪めて言った。

「いや、わたしもこの手のものは専門ではないから何とも言えないけど。ナイフや日本刀に
してはあまりに鋭利過ぎると思うんだ。ほんと、細胞と細胞との境を縫って裂いたような。
実に鮮やかな切り口だったよ。……例えて言うと、そうだね。極細のワイヤーとか、糸だとか。
でも、そんなものいくら振り回したって武器に成りうるとは思えないし……」

　極細の糸。
　ずきり、と毬絵の頭に痛みが走った。が、それだけで何かを思い起こすことはない。
　毬絵は結局「そうですか。いや、わたしにこんな重傷を負わせるぐらいだから。一体
どんな獲物を使ったのか知りたかっただけです」と無難に返事をした。

　八重坂駅へと続く帰り道。彩華や三枝少年と並んで歩く毬絵は、終始無言だった。
周囲の目を避けるためにも、タクシーで駅まで行こうと提案する二人を頑なに拒んでの徒歩。
　理由は、毬絵自身にも分からない。
　ただ、帰り道。通り過ぎた八重坂高校の正門前でふと立ち止まった。
　見上げる校舎。丁度、下校の時刻と重なったのだろう。帰宅部らしき生徒達が、正門から
続々と姿を現す。構わず学校を見つめ続ける毬絵に、三枝少年が話しかけた。

「どうしたんですか、毬絵さん」
「……う、ううん。何でもない。何となく見ていたかっただけ。さあ、行きましょうか」

　そう言って、また歩みを再開する。それを納得のいかぬ表情で、ついていく三枝少年。
　毬絵の白いスカートが、夕陽に照らされ朱く燃えていた。





　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――終劇――


　

671 名前：比良坂初音 ◆HtiOHATUNE ：2005/10/06(木) 01:09:17

おつかれさまでした。
レスまとめは

プロローグ
>>645>>646>>647>>648>>649>>650>>651>>652>>653>>654

本編
>>655>>656>>657>>658>>659>>660>>661>>662>>663>>664>>665
>>666>>667>>668

エピローグ
>>669>>670

以上ですわ。

672 名前：アンナ ◆SNOWp.DzXw ：2005/10/17(月) 03:06:49

　陽の無い昼からこんばんわ。……初めまして、の人もいるかも。
　シュロッターシュタイン共同墓地のアンナよ。
　ここでは、主に闘争会議板の管理をさせてもらっているの。
　名前ぐらいは覚えておいてね。

　……で、どうして闘争ができないわたしが表に顔を見せたのかと言うと、一つ告知があって。
　実は、もうすぐハロウィン……わたし達からすれば、気持ち悪い復活祭なんかよりもよほど
に大事なイベントがあるじゃない。毎年訪れるハロウィン……それがわたし達の一年の区切り。
　そこで、いい加減色々と雑多な（そこがステキでもあるんだけど）会議板の大掃除をしようと
思うのよ。新たなる夜の訪れ。エリック・ドレイヴン、つまりはクロウの復活を祝うためにも。
　身辺の整頓は大切だわ。

　でも、せっかくのロマンチックな真っ赤なパーティルームを、わたしのほうで勝手に「これ
原作知らないからつまんない」「これレイオットさんが勝ちそうだからヤだ」なんて理由で
消すわけにはいかないじゃない？　だから、まず自己申告でいきたいと思うの。

「この闘争は復活の目処が立たないため、削除してくれても構いません」
「この闘争は相手が行方不明で、今更自分も再開のモチベーションを維持できないため、
消して欲しいです」
　と、そんな感じで。

　もちろん、闘争は一人でするものじゃないから。相手の了解を取るのが望ましいわ。
　ここで呼びかけるなり、会議スレッドをageるなりして両者の意見を確認するといいかも。
　削除依頼は

大殲会議板管理スレッド（兼削除依頼）
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/1721/1024965933/

　で、「殺人貴ｖｓ棺桶屋」以外の全ての闘争を受け付けるわ。お願いね。

　ちなみに、全て過去ログ倉庫送りだし。わたしのほうでも、情報は保管しておくから。
もし気が変わって再開したいと思ったら、管理スレで復活の要望を出してくれれば従うわよ。　

673 名前：アンナ ◆SNOWp.DzXw ：2005/10/17(月) 03:07:07

　闘争会議室を立てる以上、相応の責任は生まれるわ。
　レスは返すべきだし、闘争は終わらせるべきよ。
　でも、その過去を負債と感じてしまって、新しいものに手を出せないのは悲劇でしょ？
　もし会議室に山ほど積んだ闘争があって。その闘争を片付けるモチベーションは無くて、
でもやはり悪いと思って、新しい闘争にも挑めない……。
　それは、それは自業自得かもしれないけど。
　そこまで背負うほど、闘争なんて重くないわよ、ええきっと。
　あんなの、野蛮に殴り合っているだけじゃない。ツイストを踊る方がよっぽど楽しいわ。

　だから、心機一転の意味もこめて。今までの負債を捨ててリニューアルスタートで。
　そう言う意味での、スレッド掃除も兼ねていると思って欲しいかな。

「○○スレの再開は無理そうだから、消したいんだけど……相手と連絡をどうやって
取ればいいのか」の相談も受け付けるわ。
　全てを解決するのは無理かも知れないけど……わたしもやれる限りの協力はできるから。

　ああ、と。
「待ちたい。例え来なくてもここでずっと待っている」なんて人を拒むつもりはないから。
　そこだけは安心してね。

674 名前：名無し吸血鬼：2005/12/24(土) 22:30:32

閑古鳥が鳴いてるなあ。誠に残念だが、会議室の方は進んでますか、住人諸兄？
私は特に「義手小僧ＶＳ白神父」の完成を心待ちにしてる。どうかがんばってほしい。

675 名前：jhm：2005/12/25(日) 16:36:32

つｊｋｍｇｈんｂ

676 名前：名無し客：2006/02/26(日) 20:11:28

なんだ。

677 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2006/02/28(火) 03:44:32

セラス・ヴィクトリアｖｓミア・フォーテー
　　『The afterglow　――残照――』

Prologue

　ここに、一枚の写真がある。

　写真に写る二人の少女。それを取り巻く男達。
　二人の少女は、どちらも年相応か、それ以下の華奢な体格をしていた。
　ただでさえ二人だけ異性――しかも幼さを感じさせる顔立ちをしているのだ。
　それに体格も相成って、二人は写真の中で酷く浮いていた。
　周りを囲む十人近くの男達は殆どみな屈強で長身。
　ウェイトも充分にありそうな健康男児ばかり。
　何処かアンバランスさを感じる一枚の写真。
　しかし、二人の少女を含め、みんな愉しそうに笑っていた。写されていた。

　写真の男女。揃って、紺の制服にボディアーマーを身につけていた。
　腕章には「POLICE」の六文字。

　―――彼方の記憶。
　瞼を閉じれば、それはすぐに美しい情景として写し出されることだろう。


「珍しいな、思い出に耽るなど」

　セラスの背後。突然、声が降りかかる。慌てて振り返った。金色の髪に小麦色の肌。
　彼女の視線の先、部屋のドアの一歩手前に一人の女が佇んでいた。

「インテグラ様……」
「写真、か。その類のものはてっきり全て処分したと思ったんだがな」

　つかつか、と靴音を立ててインテグラは歩み寄る。

「す、すみません」

　椅子を蹴倒すように立ち上がった。頭を下げた。

「謝るのならばアーカードに謝るんだな。あいつのことだ。このことを知れば、
また嫌味の一つも言われるぞ」
「は、はぁ……」

　インテグラはセラスが持っていた写真に目を向けた。視線に気付いたセラスは、
彼女におそるおそる写真を差し出す。

「ほぅ、警官時代のものか」
「はい。―――とは言っても、みんな死んじゃいましたけどね……」

　俯き、自嘲気味に笑った。

「……チェーダース村の事件か」
「はい……」

　イギリス市民、セラス・ヴィクトリアが国家と平和のために殉職した地、チェーダース村。
　彼女の第二の人生が始まった地、チェーダース村。
　数多くの同僚が、上官が、哀れな哀れな生き死体と化した地、チェーダース村。
　思えば、全ての始まりはこの村だった。

「正確には、数名生き残っているはずなんですけどね。後方待機や��遅刻�≠ｵた人もい
ますから」
「……」

　インテグラは、無言で瞼を閉じた。数秒の沈黙。僅かな黙祷。最期まで英国のために
戦った彼等へ、可能な限りの敬意を示す。
　そして、瞼を開いた。
　死者を思うだけでは、彼等が浮かばれることはない。必要なのは��手向け�≠ｾ。

678 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2006/02/28(火) 03:44:57

>>677


「セラス、仕事だ」
「え？」
「私は、お前を呼ぶためにここに来たのだ。一匹だが、かなり強力な奴が現れたらしい。
アーカードが表で待っている。四十秒で仕度を終えて、行け」
「は、はい！」

　セラスは慌ててアルミ製のロッカーに走り寄ると、勢いに任せて開け放った。
　ライフルと弾薬を取り出し、ナイフを腰の鞘に収める。最後に壁に立てかけてある長大
なケースを無造作に肩に下げ、僅か十秒でセラスは戦闘準備を終えた。

「セラス」
「はい？」

　彼女の背中を見つめながら、インテグラは葉巻をくわえた。

「……この写真に写る、死んで行った者達のためにも―――奴等を殺し尽くせ」

　息を呑む。答えは一つしかない。

「ヤ、ヤー！！」

　短い敬礼。終えると、セラスはドアを蹴り開け、アーカードが待つ正門へと向かった。
　インテグラは一人、主の消えた私室に取り残される。
　彼女は再度、写真に視線を落とした。
　写真の中央には、二人の少女。一人は気弱そうな金髪の見知った顔―――セラス。
　今と変わらず、おどおどした態度。顔を引きつらせ、無理矢理笑顔を作って見せていた。
　残る一人。セラスと似たような髪型をしていた。蒼髪に碧眼。セラスの肩を抱き、カメラ
に向けてピースサイン。元気が有り余り過ぎている。そんな少女だった。

　同僚。友人。少女とセラスの仲。親友か。そうで無くとも、それなりに親密な関係だった
のは、この写真を見れば明らかだった。
　蒼い髪の彼女。セラスと同じ部署。ならば、あのチェーダース村での惨劇の渦中にも、
身を置いていたのだろうか。それとも、セラスの言う後方支援に回されたため、運良く一
名を取り留めたのだろうか。
　真実。インテグラには知る由も無い。知ったところで、どうすることもできない。
　何より、彼女自身、さして蒼い髪の少女に興味は無かった。

「……」

　インテグラは、木製のデスクの上に写真を置いた。
　写真の中の彼等彼女等の笑み。いつまでも絶えることは無かった。

679 名前：名無し吸血鬼：2006/02/28(火) 03:45:15

セラス・ヴィクトリアｖｓミア・フォーテー
　　『The afterglow　――残照――』


「吸血鬼らしきものが出現した、ヘルシングからの応援を頼む」

　そこに彼と彼女―――即ち、ヘルシングが出向いた理由は、それだけだった。
　あまりに曖昧で、抽象的な出動要請。
　だが、現場の責任者としてもそうとしか言えなかっただけの理由がある。

　吸血鬼"らしきもの"。

　封鎖された事件現場の責任者である警部は、吸血鬼が絡んだ事件を前に一度だけ体験
していた。かのチェダース村の事件である。彼はそこで、多くの部下を失った。
　多くの同僚を失った。

　今回の事件―――某新興宗教の総本山であるグリム教会で、かなり過激な戦闘行為が
行われているとの通報を受け、彼を含めた警官隊は直ちに現場に急行した。
　充満する血の臭い。寒気がするほどの沈黙。外観から見るだけで、教会内は"死"で
満ちていることが察せられる。
　警部は内情を探るための突撃隊を編成。正門入り口と、天窓からの突入をさせた。

　させた直後、突撃隊からの音信が途絶えた。

　突撃隊の音沙汰が忽然と消えた事実を知った瞬間、警部は"臭い"を感じ取った。
　この臭いと、同じものを彼は知っていた。約一年前、チェダース村で感じたあの死臭と
同じものが、グリム教会から漂っていた。

　その事実が、彼にヘルシングの要請をさせた。

　吸血鬼を確認したわけではない。
　だが、同じ"臭い"がするのだ。彼の忌まわしき記憶が、叫び訴えているのだ。

　あの教会の中にいるの者は人間ではない――――、と。

680 名前：『ミア･フォーテー』 ◆4ypZOMBIEQ ：2006/02/28(火) 04:01:12

『The afterglow　――残照――』

>>677 >>678 >>679


壊せるだけ壊して残ったものは、瓦礫と肉塊と底無しの虚無。
ひとたび人としての生を失い、今また人の心を失った。
それは本当に有り触れた悲劇。けれど当人にとっては世界の終焉に等しく。

「だからと言って、今さらだよね」

出来ることは、何もない。

グリム教会。
私が、二度殺された場所。
その中央で。
積み上げられた生体兵器の成れの果ての山の上で。
ただ座って。

ひび割れたチャペルの音と。
遠く響くサイレンを背にして。

震えながらもこちらに向かって銃を構え、引き金に指をかけるかつての同僚達を。
指先から飛び出した半透明の女性が吹き飛ばし。

私は、座っていて。

ただ、座っていて。

「私には、何も残っていない」

他人を信じられるだけの愚かさも。
憎むべき真実も。

681 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2006/02/28(火) 04:02:23

セラス・ヴィクトリアｖｓミア・フォーテー
　　『The afterglow　――残照――』

>>680

「……う、うわ」

　立ちこめる血臭。足を踏む場も無いほどに地面を埋め尽くす死骸。
　視界に広がる想像を絶した惨状に、セラスは思わず足を止めて驚愕の声を上げた。

　吸血鬼が立て籠もっている可能性があると言われるグリム教会。その中庭は、もはや原
形を微塵も残してはいなかった。教会特有の荘厳さも、病院を彷彿とさせる頑なまでに汚
れを拒む純白さも、全ては破壊され尽くしていた。

　そこにあるのは"死"、ただそれだけだった。

　―――でも……これって、人間じゃ無いような……。

　地面を埋める死骸は殆どが、髑髏の仮面被った人型だが、セラスの目はなぜかそれ等を
"人"とは思わせてくれなかった。
　人でありながら、人ではない存在。そう、彼女自身や師であるアーカードと同類か、そ
れ以下の食屍鬼に、髑髏仮面達は見えた。

「このヒト達って……何なんでしょうかね……」

　沈黙を微妙に気まずく感じていたセラスは、彼女の前を歩くアーカードに話題を振った。
　が、彼は返事どころかろくな反応もせずに、無言で突き進む。
　置いていかれまいと、慌ててアーカードを追い掛けるセラス。彼はまるで我が庭を歩く
ような悠然とした態度で歩を進める。

　―――殲滅対象の女の子は、どこなのかしら。

　これほどの大虐殺を行ったのが一人とは信じられないが、その信じられないことをして
くれるのが、セラスであり、アーカードであり、吸血鬼なのだ。
　頭上を飛び回るヘリからは、一人の少女だけが確認できたと言っている。
　まず間違いなく、その少女がこの惨状を起こした張本人だろう。

　ふと、アーカードの足が止まった。熟考に視界を奪われていたセラスは、それに気付か
ずに、彼の背中に顔をぶつけた。

「……マスター？」

　視界を埋めるほどに大きなアーカードの背中。―――揺れていた。
　視線を上に向ける。彼の肩―――震えていた。

　―――嗤っている？

　無言で肩を震わせ、愉悦に顔を歪ませ、彼はそこで立ち止まった。
　なぜか。その答えは、アーカードの背中の向こうにある。
　セラスは、顔だけ突き出し、彼の背中越しにアーカードの視線の先を覗き見た。

　そこには、累々と積み重なった死骸に腰をおろした少女の背中があった。

　風にたなびく純白のローブの裾。アーカードのそれに比べ、少女の背中は酷く小さく見
えた。物理的にでは無く心理的に。
　寂しくて、悲しくて、そんな思いで塗り重ねられた少女の背中。それを見て、無言で嗤
うアーカードの背中。何もかもが違う二人。セラスに分かることは、どちらも狂っている、
ということだけだった。

　狂った二人のうちの一人―――アーカードが、ゆっくりと、宙に弧の軌跡を描かせなが
ら、少女の背中に腕を差し向けた。手には、無骨な鉄塊―――巨大な拳銃が握られていた。
銃口はピタリと、少女の後頭部に定められていた。
　何の勧告もせず、何の言葉もかけず、アーカードはトリガーに指をかけた。銃口が火を
噴くのも、時間の問題だった。

　セラスは、そんな彼を黙って見守るしかなかった。
　彼女の背中を、食い入るように見つめるしかなかった。
　少女の背中。――――どこか、見覚えがあった。
　しかし、セラスの思い浮かべる彼女の背中は、こんなに小さくはなかった。アーカード
に及ぶほど大きかった。"生前"にセラスがいつも見つめていた彼女の背中は、寛容で、優
しく、頼りがいがある、とてもとても大きな背中だった。

682 名前：『ミア･フォーテー』 ◆4ypZOMBIEQ ：2006/02/28(火) 04:03:33

『The afterglow　――残照――』

>>681


真っ赤な闇が笑っている。
確かに喜劇にには違いない。どうしようもない、道化劇。

あの銃が私を殺す？
面白そうだ。赤い涙を流したまま、私も笑った。

このまま終わっても良い。
終わらなくても良い。
どうせ意味なんてないんだから。
自分自身を嘲笑って。

だから、気がつかなかった。
後ろに佇む、見知った影に。

彼女は、そこにいたのに。

683 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2006/02/28(火) 04:04:47

セラス・ヴィクトリアｖｓミア・フォーテー
　　『The afterglow　――残照――』

>>682

　ゆっくりと、永遠の時を感じさせるほどに緩急に、それでいながら、一秒と使わずに、
少女は振り向いた。少女がこちらに顔を向けた。
　少女の顔を目にした二人の反応。酷く、対称的だった。

　彼は口元の笑みを更に吊り上がらせた。
　彼女は、少女の笑みを見た瞬間―――表情を凍り付かせた。

「げ」

　張り詰めた空気に似合わない、間の抜けた声。セラスの口から無意識に漏れた。

　切れ長の瞳―――昏く、濁っていた。
　何かを捨てたかのような、何かを諦めたかのような、能面とはまた違う、人とは
思えない冷たい表情。
　口元には―――笑み。
　嘲りの笑み。自嘲の、笑み。アーカードの笑みとは真逆の、笑み。

　ぞくり。セラスの背中に、悪寒が走った。

　――――こんなのは、違う。

　彼女はいつも感情を前面に押し出していた。彼女の瞳は、常に生気で満ち溢れていた。
彼女は、人を見下し、己を蔑むような笑みは、絶対にしなかった。

　彼女は、人前では絶対に涙を見せなかった。

　強情で、正義感の塊で、お節介で、とっくに成人をしている癖に、最近の中学生よりも
よほどに乳臭くて、嘘が吐けなくて、馬鹿で、馬鹿で、馬鹿で馬鹿でどうしよもないほど
に"人間"をやっていた―――そういうのが、ミア・フォーテーなのだ。

　――――だから、こんなのは、違う。

　なら、目の前にいる彼女は誰か。
　誰なのだろう。分からない。でも、なぜかセラスは、彼女の名前を必死に叫んでいた。

「ミア先輩！？」

　勢いに任せて、アーカードの前に躍り出た。やはり、見間違えるはずがない。セラスの
瞳に写るのは、ミア・フォーテーその人だった。

「ちょっ……タイム！　マスター、タイム！」

　アーカードがミアに向けた銃口。手の平で押しのけた。アーカードは何の反応も見せず、
ただ無言で嗤い続けていた。

「先輩！　わたしですよ！　セラスです！　セラス・ヴィクトリアです！　ほら、警察学
校で一年下だった"マンマユート"のセラスですよ！」

　マンマユートのセラス―――警察学校時代の、セラスの二つ名。彼女からしてみれば、
あまり思い出したくない二つ名だったが、それでもミアに己の存在を思い出させるために
セラスは必死に叫んだ。

　ミア・フォーテー。アーカードが吸血鬼となったセラスの師と言うのなら、彼女は間違
いなく、人間だった頃のセラスの"師"であった。

684 名前：『ミア･フォーテー』 ◆4ypZOMBIEQ ：2006/02/28(火) 04:05:30

『The afterglow　――残照――』

>>683


彼女が、そこにいた。
彼女は、困惑していた。
彼女は、焦っていた。

「セラス―――――――ああ、久しぶりだね」

最後に会ったときより、少し大人びた雰囲気を漂わせて。
でも、やっぱりどこか怯えた様な眼差しで。
楽しかった過去。零れた水は戻らない。

宿舎から抜け出す時、いつも垣根で転んでいた彼女。
オープンカフェの日替わりケーキセットを落とし、半泣きの表情でこちらを見上げていた彼女。
教官に怒鳴られ、よく頭に拳骨を落とされていた彼女。

彼女が、そこにいた。

「本当に久しぶりだ。元気だった？」

死んだと聞いていた。
でも、生きていたらしい。
……私と、同じか。
あるいは―――

彼女もまた、銃を手にしている。
つまり、私を殺すのだろう。

「あんたも、私を殺すの？ 良いよ。殺しなよ。殺せるのなら。さあ―――」

両手を広げて、おどけて見せる。
悲しいほど、様になっていない格好で。

ただ、その時を待った。

銃爪が引かれるその時を。

685 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2006/02/28(火) 04:06:07

セラス・ヴィクトリアｖｓミア・フォーテー
　　『The afterglow　――残照――』

>>684

「な、え――せ、先輩？」

　期待はずれの、予想だにしなかったミアの反応に、セラスは狼狽した。

　―――あれはお前の知っているミアでは無い。

　誰かが、彼女の心にそう語りかけた。しかし、頑なに否定。目の前にいる幼さが多分に
残る顔立ちをした女性は、どこからどう見ても、セラスの知り得るミア・フォーテーだ。

「あ、いや、その……こ、コロす？　わ、わたしが先輩を殺すわけないじゃないですか。
何でそんなこと―――あ、ああ、こ、この武器は違いますよ。これは、たまたまというか、
何というか、その―――」

　前触れ無く、突然言葉を打ち切った。目を見開き、表情を強張らせた。

　―――なぜ、ミア・フォーテーはここにいるのか。

　そんなことを疑問に思わないなんて、まったくどうかしている。

　ここはグリム教会。ミアが――そして嘗てはセラスも――勤めていた警察署の所轄だ。
　だから、彼女が現場に居合わせても、おかしくは無い。おかしくは無いのだが―――

　ヘリから確認された少女。積み重なる死骸の山に座り佇むミア。何かが狂った現実。
　アーカードは無言で嗤い続けていた。ミアは鮮血の涙を流していた。

　この死骸の山を作ったのは、彼女。ヘルシングの殲滅目標は彼女。
　否定したかった。理由など、根拠などいらない。
"ミア先輩だから"。その一言があれば、十分だった。
　それに彼女は、吸血鬼ではなかった。
　彼女からは、吸血鬼の"臭い"がまったくしなかった。
　しかし―――"人間"の臭いも、彼女から感じ取れることは無かった。

　頭を振る。全ては憶測だ。

　―――そう、そうよ。そ、それにこのヒト達が悪者だった可能性だって……。。

　死骸の山に目を向けた。

　―――髑髏の仮面なんか付けちゃって、どう見てもミア先輩の"敵"ってキャラよね。

　ふと、気付く。セラスは思考を打ち切り、口を開いた。

「そ、そう言えば、先輩……ここに警官隊が突入したはずなんですけど……見てませんか？」

　上擦った声。緊張気味に強張った表情。セラスはごくり、と溜まった唾を飲み下した。

686 名前：『ミア･フォーテー』 ◆4ypZOMBIEQ ：2006/02/28(火) 04:09:05

『The afterglow　――残照――』

>>685


「死んだよ」

答えは、呆れるほど無造作にあっさりと。

「私が壊した。私を壊そうとしたから。おかしいよね、これ以上、壊れる事なんてない筈なのに」

それは既に、何の価値も認めていなかった所為で。
聖堂に響き渡る声には、一片の揺らぎも無く。
静かに。ただ、静かに。
事実を告げる。

「セラス。あんたも私を壊すつもりなら、覚えてきなよ。同様のリスクを背負うって事を」

そして私は唇の端に愉悦を刻む。
瞳に昏い炎を灯す。
立ち上がり、
その手に一挺の荷電粒子兵器。

『私は世界を憎悪する』

最後の絆を断ち切って、世界を敵する立場に立つ。

『復讐ではなく、義憤ではなく』

ただ、憎悪する。

『何もかも、無くなってしまえ』

そうすれば、これ以上憎まなくても済むから。

687 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2006/02/28(火) 04:10:14

セラス・ヴィクトリアｖｓミア・フォーテー
　　『The afterglow　――残照――』

>>686

　絶句。
　今度こそ、絶句。

　セラスは言葉を失った。驚愕に顔面を強張らせた。全身を凍り付かせた。

　―――先輩が人を殺し、た……？

　あり得なかった。人をやめ、人の天敵である吸血鬼となったセラスでさえ、殺人を犯し
たことは未だ一度としてないのだ。
　なのに、必要以上に人間だったミアが、人を―――まして警官を殺すなど、

　―――あり得ない。

　そう、あり得ない。セラスの知るミア・フォーテーは、絶対に"殺さない"女である。
　例え悪人であろうと、だ。
　ならば、目の前で武器を向ける彼女は誰か。目の前で嗤う彼女は誰か。
　ミア・フォーテーでないと言うのなら、一体誰なのだ。

「ただの負け犬だ」

　声は背後から、唐突に降りかかる。

「え？　―――ぐえ」

　後ろの襟首を掴まれと思った瞬間、浮遊感に身体が犯された。ミアの形をした"何か"が
視界からぐんぐんと遠ざかる。セラスの師の大きな背中も遠ざかる。
　そして衝撃。
　セラスは、背中から死骸の山に突っ込んだ。

688 名前：アーカード ◆UOArcardog ：2006/02/28(火) 04:12:27

セラス・ヴィクトリアｖｓミア・フォーテー
　　『The afterglow　――残照――』

>>687

「もう満足だろう。"あれ"はおまえが長い間、相手にするものではない」

　背後からセラスの襟首を掴み、力任せに後方に投げ飛ばしたアーカードは、数メートル
ほど後方で死骸に埋もれるセラスに、視線すら向けずに言った。

　彼の目は、ミアを凝視したままだ。
　彼の口は、嬉々と歪んだままだ。
　彼の全神経は、ミア・フォーテーに注がれていた。
　彼の高ぶる想いの全ては、ミア・フォーテーだけのものだった。

　しかし、彼の銃口だけは、彼女を見つめてはいなかった。

「さて、そろそろ"初めまして"と行こうか、負け犬の君」

　負け犬の君―――口にした途端、アーカードの口元に嘲りが浮かんだ。

「本当は後ろから、馬の交尾のように、勢いだけが取り柄の若造のように、撃って撃って
撃って撃ち貫いて、ゴミほどの価値も無い考えが詰め込まれた脳味噌とともに死臭漂う地面
にぶちまけ、その性根に似合わず清らかな血を舐めてやろうと思ったんだがな。
　おまえが作り上げた死体の地面を、おまえの血で赤にして、その赤い血を這い蹲って舐
めてやろうと思ったんだがな」

　彼の手中にある巨大な拳銃。突然、パッと消え失せた。

「阿呆のせいで、台無しだ」

　やれやれ、とそこだけ狂喜の感情を消し、彼は呻くように言った。
　そして、またすぐに笑みを取り戻す。

「だから"初めまして"だ。おまえと私で、"初めまして"を存分に愉しもう」

　アーカードの口、三日月状に吊り上がった。
　アーカードの切れ長の目、満月の如く見開かれた。

「"初めまして"、私の名前はアーカード。おまえが憎悪する世界の狗だ」

　ククク、と喉を鳴らしてアーカードは嗤った。月を背に、嗤い続けた。

689 名前：『ミア･フォーテー』 ◆4ypZOMBIEQ ：2006/02/28(火) 04:13:16

『The afterglow　――残照――』

>>687 >>688


「負け犬か。そうだね。そうだ。私は負け犬だ」

かつての私は、運命に届かなかった。
そして負けた。
だから、今の私がある。
何も考えずにただ走っていられる時代は終わったのだ。
今度こそ、追いつかせない。
運命の輪が回るよりも早く、それを打ち壊す。

「初めまして。そしてさようなら」

手にした銃の、『金剛ブレード』の銃爪を引く。
吐き出される銃弾。一直線に飛び去って。

この程度で傷付くような奴ではないだろう。
硝煙が晴れるのを楽しみにする。


殺すとか殺さないとかはどうでも良いんだ。
今はこの一瞬の、衝動に身を任せるだけ。

死を超えて、何が残るのか。
あれはきっと、その答えを知っている。

690 名前：アーカード ◆UOArcardog ：2006/02/28(火) 04:14:09

セラス・ヴィクトリアｖｓミア・フォーテー
　　『The afterglow　――残照――』

>>689

「クク」

　軽く一笑。降りかかる銃弾の雨を前に、アーカードは毅然とした態度で立ち尽くす。
　怯まないのは勿論のこと、彼は避ける素振りすら見せなかった。まるで銃弾が撃たれた
ことに気付いていないかのように、不敵に嗤い続けた。

　そして、銃弾はアーカードを抉る。

　肉が弾け、骨が砕け、脳漿が舞った。
　銃弾の雨に晒されたアーカードの身体は、呆気ないほどに素直に弾丸を受け止めた。
　着弾の反動で、力無く踊る両腕。爆ぜる真紅のコート。
　しかし、彼の両足だけは、どんなに撃ち貫かれようが、微動だにも動かなかった。
　地面という磁石に吸い付けられたかのように不動の両足。
　銃弾で弄ばれ、次第に仰け反っていく上半身。
　地に伏すことなく、彼は全ての銃弾を身体で受け止めた。


「もう"さようなら"を始めるのか？」

　何事も無かったかのように、不敵な台詞を口ずさむ。何事も無かったかのように、仰け
反った上半身を立て直す。何事も無かったかのように、視線をミアに向ける。
　だが、彼の身体はフルオートの鉛弾を受け、ぼろ雑巾のままだった。

「もう"初めまして"はお終いか。良いだろう」

　三発ほどの直撃を受け、歪んだ顔面を更に笑みで歪ませた。

「ならば、"さようなら"といこうか」

　彼はコートの中身をミアに見せ付けるように、ゆっくりと真紅の襟元を広げた。

　コートの中身は、黒だった。

　微塵の容赦も無い漆黒が、そこにはあった。
　決して光が差し込むことのない黒が、そこにはあった。
　純粋で貪欲なる闇が前触れ無く、"瞳"を"開いた"。
　何も無い平坦な黒の中に、突如無数の目が生まれたのだ。
　数十の瞳から放たれる視線は、全てミアを射抜いていた。

「では、"さようなら"だ、ミア・フォーテー」

　言って、彼の闇は牙を剥いた。
　言って、彼の頭は消し飛んだ。

　そう、首から上が吹っ飛んだ。遅れて銃声。
　頭を失ったアーカードの闇は、一斉に瞼を閉じ、コートの中身はただの黒へと戻った。
　がくり。首のない身体が、糸の切れた人形のように力を失い膝を付く。
　そのまま、前のめり倒れ伏した。

　地に伏した彼の後方、数メートルの位置。地面に尻餅をついたセラスが、震えていた。
13.7mmアンチ・フリークスライフルを構えたまま、震えていた。
　ライフルの銃口からは硝煙。
　セラスは青ざめた表情をミアに向けた。

「せ、先輩……う、う、そ……ですよ、ね？」

　そこには、未だ現実を見れない少女がいた。

691 名前：『ミア･フォーテー』 ◆4ypZOMBIEQ ：2006/02/28(火) 04:16:02

『The afterglow　――残照――』

>>690


あまりと言えばあまりの展開だが―――まさか、あのセラスが、ね。
『マスター』と呼んだこの怪物を、自分で撃つとは。
少しは成長したと言うか、何とか。
もっとも、気勢を殺がれた感は否めない、かな。
なんて考えて苦笑したりしてみて。

「何故、嘘を吐く必要があるんだ？ 真実は、ここにあるのに」

くしゃり、と靴の底に湿った感覚を感じ、私は彼女の前に降り立った。
踏みつけた物は、頭を無くした怪物の骸。
『ブレード』の先でくい、と彼女の顎を持ち上げて。

微笑みを、一つ。

「で、どうするんだ。どうしたいんだ？ その銃で。『マスター』を撃ってまで」

一言ずつ区切って。
彼女の真意を伺うように。
きっと彼女も昔の私と同じで。
何も考えずに撃ったのだろうけど。

「ねえ、セラス。あんたは、どうしたい―――」

692 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2006/02/28(火) 04:17:33

セラス・ヴィクトリアｖｓミア・フォーテー
　　『The afterglow　――残照――』

>>691

　肩にかかる反動。耳を突き抜ける轟音。地を叩く空薬莢。頭の欠けたアーカード。

「あ……あ……」

　なぜ、撃った。なぜ、撃った。なぜ、撃った！？
　自問の自答。
　セラスの頭の中で、思考という名のエンジンがフル回転でエクスキューズを探し求める。
　オーバーヒート寸前の思考回路。見付からない答え。止まらない震え。
　セラスは焦点の定まらない瞳をミアに向けた。

　なぜ、撃った。なぜ、撃った。なぜ、撃った！？
　自問の自答。セラスの目に、うっすらと涙が溜まる。

　―――……先輩が、死んで欲しく、無かったから。

　それは肉体が死しても色褪せることのない本心。
　答えになるはずもなく、言い訳にすらなり得ない、どうしようもないほどに脆弱な、
セラスの本心。それが彼女にトリガーを引かせた。それが彼女に"師"を撃たせた。
　震えが止まらなかった。
　渇きが止まらなかった。

　―――本当に、それだけか？

　なぜ、撃った。なぜ、撃った。なぜ、撃った！？
　自問の自答。
　セラスには分かっていた。
　涙でぼやけた視界に写る、何かを捨ててしまった彼女では、酷薄な笑みを浮かべ、
冷たい視線で自分を見下ろす、何かを諦めてしまった彼女では、

　―――死した肉体と虚ろな魂を持ち合わせながら、狂おしいほどに生きている
あのアーカードには、決して勝てないことを。

　セラスには、分かっていた。分かっていたから、撃った。
　死んで欲しくは無かったから。
　負けて欲しくは無かったから。

　嘗てのミアならば、勝てたかもしれない。
　脆くも強く、弱けどなお強く。
　多々なる矛盾を抱えていたあの頃の、セラスの知る嫌味なほどに人間であったあの頃の
ミアならば、アーカードに勝つ可能性は僅かながらも、十分にあった。

　あの頃のミアなら―――そう、いま、セラスの前にいるミア・フォ−テーでは、彼に勝
つことは出来ない。何処か疲れた表情。諦めの自嘲。そして、瞳の奧で燻る憎悪。
　そこに、セラスの知るミア・フォーテーはいなかった。
　いまのミアは、アーカードと同じ"境界"の向こう側に立つ者なのだろう。それは地を覆
う千の死骸と、彼女の身体から発せられる常人ならぬ雰囲気――寒気がするほどの、空虚
――が証明している。
　人をやめ、境界を超え、絶大なる力を得たであろう彼女。しかし、それでも……いや、
だからこそ彼女はアーカードには勝てないのだ。絶対に。

693 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2006/02/28(火) 04:18:08

セラス・ヴィクトリアｖｓミア・フォーテー
　　『The afterglow　――残照――』

>>691>>692

　あの不死者の王を打ち倒すのは、同じ��王�≠ﾅはない。
��王�≠ﾅは勝てない。いまのミアでは、勝てない。

　―――先輩が、負ける……？

　あり得なかった。
　セラスの中でのミアはアーカードと同じ"不敗"の存在だった。
　勝ち方にこそ違いはあれど、アーカードもミアも、最後には必ず立っていた。
　立って、勝利していた。
　アーカードが負けるなど、セラスには想像できなかった。
　常に滅ぼし、常に殺し、常に勝者であったアーカードが負ける。
　それは、言葉にするのも馬鹿馬鹿しいほどの愚昧な妄想。
　同様に、ミアが負けることも、想像できはしない。考えられはしない。
　希望だった。憧れだった。そんな彼女が負けるなどあってはならないことだった。

　ミア・フォーテーが負ける姿など、見たくは無かった。

　―――だから、撃ったのか。


「だ、駄目ですよ先輩……駄目なんですよ……」

　頭の欠けたアーカードの上に立つ、ミア。彼女の手に持つ、銃とも剣ともつかない武器
から伸びる刀身――もしくは銃身――の切っ先が、セラスの顎を持ち上げた。

「せ、せ、先輩は、わ、わたしと違って……その、転んでも、必ず立ち上がって、殴られ
ても、必ず殴り返して、どうしても負けられなくて、その癖、わ、わたしや、他のヒトの
ためなら、平気で自分を犠牲にして……」

　見開かれた瞳。細まる瞳孔。セラスの表情。笑っているのか、泣いているのか。口端を
吊り上げていながらも、目には涙を溜め、顔を強張らせ、震え続けていた。

「で、でも、いまの先輩は―――」

　無心で喋る。思い付く言葉全てを口にする。求められてはいない。問われてはいない。
構わなかった。懺悔の如く、セラスはひたすらに喋り続けた。

「転んだら、もう立ち上がらない気がして……」

　溜まった涙。ついに溢れ、零れた。頬を伝い、セラスが顎を置く刀身に落ちた。

「だ、だから、駄目……駄目なんです、よ……」

　何かが壊れていく。身体が死しても、夜の住人となっても壊れることの無かった何かが。

　支えだった。
　あの日、あの時、あの場所で、太陽を捨て、ヒトの身を捨て、夜を迎え入れてまで"死"
を拒み続けたのは、彼女がいたからだ。彼女の教えがあったからだ。死んだら全てがお終
いなんだ、と常に彼女が口にしていからだ。
　彼女がいなければ、自分はあの村で……いや、もっと前に、どうでも良い事件で、どう
でもよく死んでいたことだろう。
　彼女がいたから、自分は今日まで生きて生きて生きて、生き抜いてこれたのだ。

　だけど、セラスの知る"ミア先輩"は、もういない。

　セラスの中で、何かが壊れていく。音を立てて壊れていく。
　もう治ってはくれないのかな。セラスは気の抜けた思いを頭に巡らせた。

　―――だって、治ってくれないと、わたしも壊れてしまいそうだから―――

694 名前：『ミア･フォーテー』 ◆4ypZOMBIEQ ：2006/02/28(火) 04:19:21

『The afterglow　――残照――』

>>692 >>693


「うん、そうだったね」

涙に濡れた切っ先を一振りして弾き飛ばし、
自身は彼女の視線と同じ高さに来るように膝を折って。
他人事の様に、肯き返す。

「ずっと走り続けてきた。
. 走って、走って、転んでも、這いずってでも
。
. だから、今だって止まれないんだ。
. 先に何があるかなんて知らない。
. 大丈夫だよ、セラス。私の中に諦めは存在しない」

―――だからこそ、救い様が無いのだけれど。

「心を砕かれようと、魂を砕かれようと、私は私として此処に在る。
. 私は私の意志で前へと進む。
. 操り人形には絶対にならない。だから―――」

閉じた瞳の向こうにいる、彼女はどんな表情をしているのだろう？

「選ぶんだ、セラス。
. 敵対の方法を。
. 私は世界を憎悪する。私は私の意志で、世界を終わらせる。
. あんたのマスターは世界の狗として在る事を選び、結果そこに斃れた。
. あんたは、どうしたい？
. 私の瞳には炎しか宿らない。木漏れ日のごとき慈愛は神の棲み家たるこの場
所で灰燼と帰した。
. 救いは既に此処にない。それでも私を救おうと願うなら、私の世界を終わら
せるしかない。
. さあ、覚悟を決めろセラス・ヴィクトリア。忘れたのか？」

瞳を開き、かつての後輩をしっかりと見据え、私は彼女に決断を迫る。

「あんたの中にある、銃爪を引かせるその力は、誰の為のものなんだ？」

695 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2006/02/28(火) 04:21:09

セラス・ヴィクトリアｖｓミア・フォーテー
　　『The afterglow　――残照――』

>>694

　涙で濡れる視界の向こう、微笑みを浮かべる彼女がいた。
　その眼差しは憎悪と絶望に染められながらも、強固な意志を持っていた。
　その語り口は冷たく凍えようとも、母なるぬくもりを持っていた。

　それは、目の前の彼女がミア・フォーテーその人だということの確とした証。

「……や、やっぱ、あなたは先輩だったんですね」

　しゃくり上げて、嗚咽混じりの掠れ声。これ以上彼女と視線を交わすのが辛くて、
セラスは瞳をミアから逸らし、俯いた。その口元には自嘲の笑み。

「ふふ、わ、わたしってば……本当に馬鹿。もしかしたら先輩は先輩じゃなくて、何処か
のそっくりさんかもしれないだなんて……たまたまわたしのこと知っていて、それで、
それで……」

　ミアの目を見ず、地面に向けて語り続けるセラス。アンチ・フリークスライフルは既に
投げ捨てており、その小さな両手は自分の肩を抱いていた。震えが収まらない肩を、両腕
の力で無理矢理抑え込むかのように。

「でも、やっぱ先輩は先輩でした……」

　そこまで言うとセラスは顔を上げ、ミアを鼻先の位置で睨み据えた。
　その瞳は珍しく、激情に染まっている。

「救い？　世界？　そ、そんな……そんな難しいこと、わたしに分かるはずないじゃない
ですか！」

　感情を露わにまくし立てる。
　声を大にして叫ぶセラスの姿は、彼女を知る者からすれば意外に見えるかもかもしれない。
　事実、セラスが人前まで怒鳴り声を上げたことなど、彼女自身の記憶にも無かった。

「先輩……先輩！　ちゃんと分かっているんですか？　先輩は人を殺したんですよ！？」

　人を殺す。それだけは嫌だった。どうしても駄目だった。
　それはミアも同じはずだ。同じはずだった。
　何がいけなかったのか。何が狂ったのか。涙が溢れる。悔しかった。やるせなかった。
　セラスはミアが殲滅対象であることを忘れ、叫び続けた

「人を殺しておいて……！」

　軽蔑と失望。そしてそこから来る憤り。
　半ば自棄になりながらも、セラスは感情をミアにぶつけた。

「人殺しが……偉そうなこと言わないでくださいよ！」

696 名前：『ミア･フォーテー』 ◆4ypZOMBIEQ ：2006/02/28(火) 04:21:49

『The afterglow　――残照――』

>>695


『人殺し』。
その台詞を受け、瞳を閉じる。

短剣を突き立てられた自分。
頭部を吹き飛ばされたゾンビ兵士。
撃ち落された戦闘ヘリ。
焼き尽くされた生体兵器。
凶弾に倒れた仮面の男。
切り裂かれた女医。
精神を打ち砕かれ、崩れ落ちる狂科学者。

そして知った真実。
そして甘受した現実。

瞳を、開く。

「ねえ、セラス」

乾いた唇から滑り出すのは、とても意地の悪い質問。

「あんたが手にしているものは、一体何の為の物なんだ？」

右足を、一歩前へ。

「あんたは、どんな目的を持ってここに来たんだ？」

左足を、一歩前へ。

「人を殺さない事がそんなに高尚な事なのか？」

一歩前へ。

「なら、何であんたは武器を手にするんだ？」


――――― 一歩前へ。


彼女の隣に立ち、返答を待つ。
返事は、まだ無い。

697 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2006/02/28(火) 04:23:24

セラス・ヴィクトリアｖｓミア・フォーテー
　　『The afterglow　――残照――』

>>696


　もはやセラスは、ミアの瞳を見据えることすら出来なくなっていた。発砲の反動で尻餅
をついた姿勢のまま、がっくりと項垂れている。
　俯いた表情は、前髪に隠れて詳しく窺えないが―――それでも、下唇を噛んでいること
だけは見て取れた。

　怒って、いるのだ。

「―――ずるい」

　それは、この惨劇の舞台に上った役者にしては、酷く場違いな言葉に聞こえた。
　いや、セラス・ヴィクトリアという役者その者が、この舞台に相応しくないのかもしれ
ない。
　ともあれ、セラスは言った。

「ずるいですよ……先輩」

　腰の鞘に刺された、英国国教騎士団員に支給される抗不死ナイフ――ミスリルパヨネッ
トを、一息で引き抜いた。真銀の刃が月明かりに照らし出され、何とも神秘的に輝いた。
セラスはそれをまるで親の仇のように見つめる。

「先輩はどうして……そんな、一人で行っちゃったんですか……」

　セラスの言葉は明らかにミアに向けているにも関わらず、瞳はナイフの刃を一心に注視
していた。ミアを見たくないのか、それとも見れないのか……。

「わたしは武器を……わ、悪い敵をやっつけるために持っているんです！　決まっている
じゃないですか！　人殺しのためになんて……できるはずがないですよ！　人を殺しちゃ
駄目なんです！　高尚とか、そんなことは知りません！　とにかく駄目なんです！」

　またも感情を発露する。それは無論、怒りなのだろうが―――何処か、駄々をこねてい
るようにも見えた。
　相手がミアだからこそ、セラスはこうして自分の感情を見せられるのかもしれない。事
実、上司であるインテグラや師のアーカードには、セラスは決して自分を見せない。

　セラスのいる世界では、人が殺し殺されることなど、日常茶飯事とはいかないが、さほ
ど珍しくもないのが現実だ。アーカードが行う殺戮が現場をセラスが目にしたのは、一度
や二度ではない。
　そのとき、セラスはアーカードを責めはしなかった。僅かな不満を見せることはあった
が、厳しく諫められたらそれで終いだった。

　―――が、いまは違う。

　なぜセラスはここまでミアに噛み付くのか。
　それは、


「……だって、先輩が駄目って言ったんですから！」

698 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2006/02/28(火) 04:23:52

>>696>>697

　そこでようやく、セラスはナイフを見つめることをやめた。
　突然立ち上がると、両手でミアの肩を突き飛ばした。
　ミアは蹌踉めいて、数歩後ずさる。

「全部……全部、先輩が言ったことじゃないですか！　先輩が人殺しはいけないって言う
から、わたしはそれをずっと信じて……」

　両手で覆うように持たれた抗不死ナイフ――セラスのナイフの構え方は、明らかに素人
のそれだったが――の切っ先は、導かれるようにミアへと向いた。

「わ、わたし……先輩から、色々なこと教わりました。そ、それは時々、変なのもありま
したけど――好みのタイプとか――でも、それでもわたしはわたしなりに真面目に先輩の
言葉を聞いていました！　正しいと信じていました！」

　でも、

「―――全部、嘘だったんですね」

　ナイフを持つセラスの手、震えていた。

「そんなのって無いですよ！」

　自分の生き方を教わった相手から、その生き方を否定された―――セラスでなくとも、
それは辛い現実である。

「先輩はわたしをずっと騙していたんですか！　それとも、裏切ったんですか！？」

　セラスの真紅の瞳に何かが宿った。
　鈍い闇色に輝くそれは、ミアの瞳の奧に燻る何かと酷似していた。
　牙を剥く。喉を鳴らし低く呻いた。恐らく、威嚇行為――なのだろう。
　セラスは何かに憑かれたように、ミアに敵意を見せた。
　しかし、涙で汚れた彼女の顔に何の凄みもない。

　やがて、ミアに助けを乞うように口を開いた。

「ああ、先輩……わたし、わたし初めて……生まれて初めて―――」

　それは懺悔なのかもしれない。

「人を憎い……と思っています」

　セラスは、笑っていた。
　でも、泣いてもいた。

「わたしは―――ミア・フォーテー、あなたが憎い」

　ナイフを握る手の震えは、いつの間にか無くなっていた。

699 名前：『ミア･フォーテー』 ◆4ypZOMBIEQ ：2006/02/28(火) 04:24:37

『The afterglow　――残照――』

>>697 >>698


目の前にあるのは、かつての自分を映した歪んだ鏡。
無邪気な頃の自分。戻れない過去。言い方は色々ある。しかし、意味は無い。

「騙す？ 私がそんな器用なことが出来る訳無いじゃない。
. 私が言ったから？ 私が死ねといえば死ぬのかあんたは。
. 裏切った？ 勝手に期待して失望するのが裏切りか。

. 確かに、殺すのは今でも嫌いだ。だけど、その結果が今の状況なんだ。
. 殺さなくてもすむなら殺したくないよ。でも、それじゃ何も変わらないのも事実だ。
. だから……」

そこで一息つく。

「殺すんだ。敵は。容赦なく。敵に属する全てを。全て打ち破って。私は」

一振りのナイフを構え、ぐしゃぐしゃの顔で牙を剥いて。
そんな彼女に微笑んで、私も『ブレード』を握り直す。

彼女は言った。私が憎いと。

「それで良いんだ、セラス。理屈も理由も必要なく、ただ憎もう。その憎悪はきっと、あんたに力を与える」

崩れた天井から、瓦礫が落ちる音が響く。
差し込む月光を流れる雲が遮り、両者の表情を覆い隠した。

「だけど、それでも私には届かない」

再び差し込む月光。
冴え渡る蒼い光が、柔らかく狂気を演出する。

「だって―――――」

巻き起こる、旋風。



「――――――――私の方が、憎いから」

700 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2006/02/28(火) 04:25:45

セラス・ヴィクトリアｖｓミア・フォーテー
　　『The afterglow　――残照――』

>>700

　夜の闇の中、二人は無言で相対していた。
　沈黙が滾々と現実を支配していく。
　―――音一つしない。
　まさか、世界にはこの朽ちた教会ただ一つしか存在しないのではないか。
　聖堂の扉を開けたその先にあるのは、待機状態の警官隊ではなく世界の果てではないのか。
　沈黙する世界はそんな錯覚をセラスに覚えさせた。

　ああ、とセラスは感嘆の声を上げる。

「―――先輩」

　セラスは何とも儚げな笑みを口元に湛えて、

　なんか、とても虚しいですね。

　と言った。

　同時に突き出されたセラスの牙―――抗不死ナイフの切っ先は、寸分の狂いも無くミア
の心臓に向けられていた。
　ミアとセラス。二つのシルエットが、ゆっくりと重なっていった

701 名前：『ミア･フォーテー』 ◆4ypZOMBIEQ ：2006/02/28(火) 04:26:30

『The afterglow　――残照――』

>>700


「――――うん」

本当に、虚しいね。

突き刺さったナイフが偽りの生を否定して、だけれどやっぱり死には届かないで。
胸には痛みの一つも無く。ただ、異物感だけが声高に主張して。

抱きしめるように私は両手を彼女の背後に回し、
空いてる左手は彼女の肩をしっかり掴んで、
銃爪に指を掛けたままの右手が、彼女に鉛の雨をプレゼントする。

自身にも降りかかる鉛弾を全身で感じながら、私は彼女に微笑み返した。

702 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2006/02/28(火) 04:27:09

セラス・ヴィクトリアｖｓミア・フォーテー
　　『The afterglow　――残照――』

>>701

　ゼロ距離フルオート射撃で背中に撃ち込まれる銃弾の数、雨霰。
　小口径弾の牙はセラスを容赦なく蹂躙した。内臓が粉砕し、肉が弾け、骨が穿たれた。

「―――か……はっ」

　ごぽり。喉から吐き出された血塊が、ミアの顔面右半分を真紅に染めた。
　痛みがセラスの華奢な体躯を駆け巡る。遠ざかる意識。
　彼女の胴体は、壊れた内臓が詰まったずた袋と化していた。

　―――こ、これだけで。

　百近くの銃弾の雨に晒された。たったそれだけで。

　―――もう、もう駄目だと言うの

　セラスは滅びに近付いていた。

　―――なんて、脆弱なのだろう。

　かの不死者の王は、何千何万の銃弾を浴びようとも平然していた。
　それに比べて、この駆け出しの新米のドラキュリーナは何と脆弱なことだろうか。
　僅か百余りの銃弾を撃ち込まれただけで滅びに瀕している。
　―――否、むしろそれで当然なのだ。
　相対するミア・フォーテーという名の"怪物"と比べると、セラスは余りに脆弱に見えて
しまうのである。"成り立て"としてのセラスは、至って標準だ。
　が、この場合は"標準"では駄目なのだ。"化け物"でなければならないのだ。
　そしてセラスは、化け物ではない。
　しかし、

　―――嫌だ。
　―――ここで死ぬのだけは、嫌だ。
　―――いまここで先輩に負けるのだけは、嫌だ。

　膝は折らなかった。
　地面につきもしなかった。
　まだ、やれる。

「うわあああああああ！！」

　ミアの身体に突き立てたナイフを―――抜く。
　返す刃で肩を掴むミアの細い左腕を断ち切った。
　間髪入れずに顔面に頭突きを入れ、反動で幾ばくかの間合いを取る。
　開かれた間合いは、セラスが地面を蹴ったことでまた一気に詰められた。
　彼女の咆吼は止まらない。

「うわあああああああああああ！！」

　セラスの手中でミスリル金属のナイフが踊った。
　順手から逆手へと持ち直した瞬間、迸る閃光の数四条。
　更に一条、二条。全てミアの身体に刺し込まれた。

703 名前：『ミア･フォーテー』 ◆4ypZOMBIEQ ：2006/02/28(火) 04:29:51

『The afterglow　――残照――』

>>702


断ち切られた左腕が床に落ちて。
けど、そのまま切っ先は止まらずに。
私の胸を。腹を。腕を。
何度も行き来する。
刻まれる赤。
零れ落ちる赤。
噴出す赤。
彼女の血が噴き出して、私の血が零れ落ちて。
同じように全身に銃弾を浴びても息絶えない化物でも。
やはり違うのだと認識させられる。

彼女は生きている。
私は死んでいる。

彼女が疲れるまで、そうして殺意を受け止め続けて。
大きくナイフを振り上げた隙に、後方へ宙返り。
両足で綺麗に着地して、

「10点、って所？」

右腕だけで『ブレード』を一振り。

――――――― 斬。

704 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2006/02/28(火) 04:30:39

セラス・ヴィクトリアｖｓミア・フォーテー
　　『The afterglow　――残照――』

>>703

　―――――――斬。


「……くぅ！」

　鮮血が飛んだ。胸に刻まれた一文字の裂傷。
　ミアが振るったブレードの刃が、セラスを斬り裂いたのだ。
　タイミング的にも間合い的にも、避けられるはずの一刀だった。
　しかし先に受けた銃弾の掃射が、予想以上に彼女の身体を傷付けていたのだ。
　重い身体は、咄嗟の反応を鈍らせる。
　避けられるはずの攻撃も、受けてしまう結果に繋がるのだ。
　彼女の身体はもはや限界だった。

　セラスは血塊を吐き捨てて叫ぶ。

「まだまだ……！」

　肉厚のブレードに弾き飛ばされた矮躯。
　セラスはその細い両足を地面に突き立てて、踏みとどまった。

　セラスの身体は既に限界を迎えている。
　しかし、
　彼女自身の限界はまだらしかった。

　地面を一度、大きく蹴ってミアに迫る。一定以上の間合いは取りたくないと言う思いが
セラスにはあった。セラスの武装がナイフ一本なのに対し、ミアの武装は―― 一つなこと
に変わりはないのだが――鉄塊の如きブレードと、その両脇に据え付けられた突撃銃二挺
である。空いた間合いでの戦闘は、素人目から見てもミアに分があった。

　超接近しての戦闘なら、小回りの利くナイフが獲物のセラスにもまだやりようはあるだ
ろう。逆にミアのブレードは、明らかに近接戦には向いていない。大きすぎるのだ。
　しかし、

　―――どうしよう、抗不死ナイフがまったく効かない。

　そう、先程からセラスは何度も何度もミアの身体を呪化処理が成された真銀の刃で抉り、
斬り裂いている。にも関わらず、ミアは平然とセラスの目の前で宙返りなどをしてみせた。
あり得ない。ミアは本当の意味での不死身だとでも言うのだろうか。
　何度刺しても怯みを見せない彼女の姿は、ノーライフキングの姿を彷彿とさせた。

　間合いが詰まる。これはセラスの間合いだ。ミアの間合いではない。どうする？　また
ナイフをミアの胸に突き立てるか？
　―――先輩のことだから、どうせ効いてくれないわ。
　では、どうする。
　セラスは一瞬――の更に一瞬の中で逡巡する。

「先輩……」

　ナイフを地面を投げ捨てる。空いた右手、硬く握った。

「最初から……」

　ありったけの空気を肺に詰め込んだ。瞬間、全身の痛みが呼び起こされる。耐え難い激
痛。構うものか、とセラスは拳を振り上げた。
　そして―――

　息を吐く。
　風が唸り上げる。
　視線の先には白い頬。

　スクールの後輩、セラス・ヴィクトリアは、人生の先輩とも言うべきミア・フォーテー
の頬を殴り飛ばした。

「―――最初から、こうしていれば良かったんですネ……」

　セラスは殴打の感触を確かめるかのように、拳を開いては閉じた。

705 名前：ミア･フォーテー ◆4ypZOMBIEQ ：2006/02/28(火) 04:31:40

『The afterglow　――残照――』

>>704


「………………………」

吹っ飛んだ。

叩きつけられた。

思考が断絶する。
呆然としていたような記憶がある。
混乱する。
立ち上がる。
塵を払う。
回線が繋がった。

「………………………くく……」

小刻みに肩が震えているのが自分でも分かる。
内に潜むものが何なのか、自分でも分かる。

俯いたまま／無言で踏み切って／地面を擦る様な低い姿勢／突き出される右の拳／左脚を深く／なくした右腕の代わりに
バランスをとり／抉るように前へ／彼女の左頬に／一瞬の躊躇いも無く／一遍の迷いも無く／静かに／また激しく／

打ち抜いた。

「――――――――上等！！」

706 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2006/02/28(火) 04:32:26

セラス・ヴィクトリアｖｓミア・フォーテー
　　『The afterglow　――残照――』

>>705

　踏みとどまった。

　ダンプカーに跳ね飛ばされたかのような衝撃に貫かれても、奥歯が上も下も木っ端微塵
に砕け散ってしまっても、脳が激しく揺さぶられ、意識が一瞬別世界に飛んでいってしま
っても、

　セラスは踏みとどまった。

　倒れなかった。膝をつかなかった。後ずさりもしなかった。

「―――なんだ」

　折れた歯を血塊と共に吐き出す。びちゃり、と地面に赤い花が咲いた。

「ちゃんと……殴り返せるんじゃないですか」

　セラスは、殴られた格好のまま固まっていた顔をミアに向け直した。血の滲んだ右頬は、
不思議と見る者に痛々しさを感じさせることは無かった。なぜだろう。きっと、セラスが
笑っているからだ。

　そう、笑っているのだ。

　いつものぎこちない愛想笑いではない。口端を吊り上げて、挑戦的な笑みを作っている。
ミアを見る上目遣いの瞳も、何処か鋭さを感じさせていた。

　これがあのセラスだと言うのか―――もし、この場にヘルシング局長サー・インテグラ
ル・ウィンゲーツ・ヘルシングがいたら、そのような驚愕の言葉を漏らすだろう。インテ
グラやアーカードの知るドラキュリーナ・セラスは、ここにはいなかった。
　そして、ミアの知る人間の彼女もここにはいない。
　人間のセラスも、吸血のセラスも、こんな好戦的な笑みは決して浮かべない女だった。
大体、拳で誰かを殴れないどころか、そう言う場にいるだけで竦んでしまう物怖じの激し
い女性だったはずである。

「殴りますよ―――わたし。何度でも、殴りますよ」

　しかし、その笑みはやはり無理に取り繕ったものだったのだろう。引きつるような笑み
はすぐに消え、またいつもの"泣き虫"セラスに戻る。

「だって……だって！」

　ミアを殴った拳を見つめるセラス。その瞳からは、涙が飽きもせずまた溢れようとして
いた。

「泣いて駄目なら、懇願して駄目なら、憎んでも駄目なら！」

　訴えの叫びと共に、地を蹴った。

「殴るしか無いじゃないですか！！」

　振り上げた拳の行き先は、我が侭を言ってさぼり気味な彼女へ。しっかりと憧れの先輩
をやってくれないから―――セラスはミアを殴るのだ。何度でも、何度でも。だから届け
拳よ。今まで意地悪された分も、ついでにやり返すのも悪くはない。
　セラスは涙を流しながら、少しだけ微笑んだ。

707 名前：ミア･フォーテー ◆4ypZOMBIEQ ：2006/02/28(火) 04:33:17

『The afterglow　――残照――』

>>706


振り上げた拳を突き出した額で受け止め、ニヤリと一笑。
そのまま踏み込んで相手の眼前に入り込み、

「ああぁ！？ 生意気言うのはこの口かぁ！！？」

むにゅっと頬を掴んで引っ張る。
縦縦横横上上下下。
そのまま平手で張り倒し、

「言ったよね。私を止めたいのなら……」


―――あれ、変だな。

―――私、笑ってる？

―――でも、何か楽しい。

でも、それで良いんだろう。自分でも言った筈だ。
人の本質など、何も変わらない。

なんて考えてる場合じゃなくて。

思考を切り替える。
クリアな状態で、何時でも動けるように。
姿勢を正す。
血反吐を吐くまで叩き込まれた、彼女にとっても懐かしい構えを。
欠けた左腕が、少し寂しいけれど。

深呼吸一つ。

「―――――全力で来い！！」

708 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2006/02/28(火) 04:34:28

セラス・ヴィクトリアｖｓミア・フォーテー
　　『The afterglow　――残照――』

>>707

　―――嗚呼。

　　ごめんなさい……。
　　わたしは、謝らなければいけない。
　　ごめんなさい。
　　ごめんなさい、マスター―――。

「ひゃ、ひゃめひぇ〜」

　ミアに頬を弄ばれ、ついそんな声を漏らしてしまった。
　―――懐かしい。
　警察学校時代から、ミアは事あるごとにセラスの柔らかい頬を両手で掴んではおもちゃ
にしてきた。引っ張られたり捻られたりすると、やられるほうは大変痛いので、セラスは
常に瞳を涙に浮かべて「やめひぇくだひゃいヨ〜」など声にならない声を上げるのだが、
もちろんミアは無視してグニグニ。こっちは泣きが入っていると言うのに、さも楽しそう
に笑いながらグニグニ。飽きるまでひたすらグニグニ。そして何故か今もグニグニ。しか
も今日は平手打ちまでサービスしてくれた。バシ。ぐえ。危うく倒れそうになる。セーフ。

　　――本当に、ごめんなさい……。
　　マスターは、この茶番をどんな顔して見ているんでしょうか。
　　わたしが顔を吹っ飛ばしちゃったせいで、確認できません。
　　こんなことなら、胴を狙っておけば良かったです。

　　……多分、きっと呆れてるんでしょうね。
　　こんな、
　　こんなことをして。
　　吸血鬼なのに、人間じゃないのに、
　　こんなことをして―――

「な、なに先輩風吹かしちゃってんですかぁ！！」

　　―――ごめんなさい。
　　ああ、マスター。
　　実は、さっきから血が騒いでいるんです。
　　訴えているんです。
　　あの女を殺せ、と。
　　殺して、犯して、吸え、と。
　　引き裂いて臓物を食し、血を啜れ、と。

「せ、先輩なんてもう先輩じゃないのに……そんな、そんな偉そうなことを言わないでく
ださいよ！」

　　心臓の鼓動が一つ脈打つたびに、身体が熱くもなりました。
　　破壊の衝動は激しく、
　　壊したい。
　　とてもとても壊したい。
　　彼女を壊しタい。

709 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2006/02/28(火) 04:34:52

>>709

「あなたはいつだってそうよ！　わたしが虐められてたら、いつも庇ってくれて……守っ
てくれて……！！」

　　けど、
　　マスター、ごめんなさい……。
　　なぜか、
　　なぜか、わたし……
　　今度ばかりは、
　　その衝動に従えないんです。
　　うるさい、とか
　　黙れ、とか
　　思っちゃうんです。

　　―――こんなわたしは、吸血鬼失格ですよね。

「でも、」

　　だから、

「わたしを一番虐めてたのって、」

　　今だけ、
　　わたし、
　　今だけは

「絶対先輩です！！」

　　吸血鬼をやめます。

「自分勝手で、我が侭で、その上しかもいじめっ子で……最悪過ぎます！」

　　―――人間をやります！

「もうちょっと真面目にやってくださいよ―――ッ！」

　握った拳を振る。その行為の意味はきっと破壊ではない。最悪な先輩を殴る。その行為
に秘めた思いはきっと、殺意ではない。闘争とか戦争とか掃討とか駆逐とか殺戮とか、そ
ういうのではないのだ。
　打ち倒し、打ち倒され。殺し殺され。闘争の愉悦を味わうために、歓喜をその手にする
ために。何度でも。鉄火を持って始まるうんたらかんたら。
　―――そういう、難しいことはマスターに任せます。

　　わたしは、
　　殴る。
　　殴りたいから、
　　殴る。

710 名前：ミア･フォーテー ◆4ypZOMBIEQ ：2006/02/28(火) 04:35:56

『The afterglow　――残照――』

>>708 >>709


大層なお題目も、悲壮感も必要ない。
これはケンカだ。

派手に行こう。
馬鹿馬鹿しい程に。
何も考えずに。
拳を打ち揮え。

大振りの、純粋に『戦闘』と言う概念から見るのなら『無駄が多い』を
通り越して『無意味』と言うべきその一撃を同時に繰り出して。

ボディに一撃。
呼気が吐き出された。
だが、手応えあり。
アタマを狙ったのだが―――肩にずれた。
やはり本来有るべきものが欠けているとバランスが取りづらい。

「あははっ！ 真面目にやって欲しけりゃ、それなりのものを見せてみろっての」

うん、楽しいね。

711 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2006/02/28(火) 04:36:43

セラス・ヴィクトリアｖｓミア・フォーテー
　　『The afterglow　――残照――』

>>710

　肩に受けた衝撃は強力で、セラスの身体は宙を浮き、十メートルほど後方に吹っ飛んだ。
　痛烈な痛み―――歯を噛み締めることで、押し殺す。
　両足を踏ん張り、前傾姿勢を取った。右手を地面に付けることで、急ブレーキ。勢いを
殺しきると、セラスは「先輩」と軽い口調で言った。
　摩擦で擦り切れた右手の平。血が滲んでいた。拳を作ることで、視界から消した。

「もう歳なんですから……」地面を蹴って、ミアに一瞬で肉薄する。「無理はしないで、
引いちゃいましょうよ！」

　笑み混じりの軽口を叩くと同時に、右拳が唸った。

712 名前：ミア･フォーテー ◆4ypZOMBIEQ ：2006/02/28(火) 04:37:34

『The afterglow　――残照――』

>>711


頬を打ち抜く一撃。
本当なら眼から火花が飛び出るほど痛いんだろうけど。
痛みはない。
でも、そんな事はどうでもいい。
今、大切なのは――

「私が歳？　あははっ、そう言うセラスは――」

　　――後方へ押し流される身体をぐっと踏ん張って堪え、
　　――腹筋と背筋を駆使して体勢を立て直し、
　　――反動をつけてお返しのパンチ。

「いつになったら保護者なしで出歩けるようになるのかな！？」

生意気な後輩を張り倒すこと。

713 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2006/02/28(火) 04:38:28

セラス・ヴィクトリアｖｓミア・フォーテー
　　『The afterglow　――残照――』

>>712

　胸を穿つ衝撃。浮き上がる身体。ミアの拳はセラスのそれよりも遙かに固く、膂力は
バケモノであるはずのセラスですら「信じられない」と思うほど常人離れしていた。
　つまり、今の一撃は痛かったのだ。

　―――そ、そんな、わたしはまだ、独り立ちなんて無理デスよ。

　痛みと相成って、常ならばそう言うであろう口。
　だが、ミアの前では素直にはなれない。なれるはずがない。がむしゃらに抗って
　でも打ち倒したい相手に、セラスは無いはずの意地を必死で掻き集めた。
　絶対に倒れてやらない。
　絶対に負けてやらない。

「ほんとはそんな、若いわたしが羨ましい癖に……よく言いますよ！」

　倒れず殴り返した。ミアの身体は冷たく硬い。肌に突き刺した衝撃に、セラスの拳が
悲鳴をあげる。―――構わず振り抜く。
　ミアの唇が裂けたのか、セラスの拳が潰れたのか、鮮血が宙に散った。
　痛い。
　痛いが、この痛みは不快ではなかった。
　瞳に溜まる涙も、痛みから来るものではなく―――もっと、どこか深い場所から
溢れ出しているような気がする。

　―――先輩、やり直しましょうよ。

　わたしと同じ場所から。研修から、やり直してみましょうよ。

　喉まで出掛かるその言葉を何とか飲み下して拳を振るう。ミアはセラス以上に意固地な
女であるし、今や彼女はセラスの知らぬ様々なしがらみに縛られているに違いない。

　一緒にやり直しましょう。

　そう言うのは容易い。だが、その言葉がミアをより責め立てることになると、セラスも
ようやく分かりかけていた。
　やり直すことなどできないのだ。一度染まった色を白に戻すことなど不可能なのだ。

　ならば、どうすればいいのか。
　どうすればミアの憎悪が静まるのか。
　彼女の罪が消えるのか。

　分からない。考えてもとても分からない。
　この手の答えは哲学者や神学者が永遠の命題として考え抜くものだろう。
　今ここでセラスが頭を悩ましても、答えなど出るはずがなかった。
　つくづく自分の頭の悪さがイヤになる。
　そして、そんな自己嫌悪の原因となるミアもセラスは大ッ嫌いだった。

　だから殴り、答えが分からぬからやはり殴った。
　もう自分には殴ることしか出来ぬような気がしたから、また殴って殴った。

714 名前：ミア･フォーテー ◆4ypZOMBIEQ ：2006/02/28(火) 04:39:37

『The afterglow　――残照――』

>>713


それから、私たちは時を忘れて殴り合った。

掴みかかり、肘を突き入れ、足を掛け、地面を転がり、
泥だらけになりながら、それでも笑みは絶やさずに。

残酷なまでに優しいひととき。
けれど。

生きる事を止めた私の体は、もうセラスの一撃を
受け止めることが出来ない。

まだ彼女は気づいてないけれど。

既に肩はイカレている。
既に肋は砕かれている。
そして今、踏み込んだ足の膝が自壊を始めた。

支えきれなくなった身体が大きく崩れ、彼女に向かって傾いで行く。

支えきれなくなったのは多分、心の弱さのせい。
つかの間の楽しさに酔い、ココロのチカラをなくした私は。
彼女のように憎悪よりも強い力を見つける事が出来なかった私は。

夜明けを待たずにここで朽ち果てるんだろう。

それでも。
私は『私』である事を止めるつもりはないし、後輩の前で
無様な姿を晒す訳にもいかないから。

ただ、笑って。

拳を、





『――――、――――――――』

　

715 名前：セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2006/02/28(火) 04:40:38

セラス・ヴィクトリアｖｓミア・フォーテー
　　『The afterglow　――残照――』

>>714

　拳は硬く握ったはずなのに。
　それは岩さえも穿つ一撃を持っているはずなのに。
　もう殴ることでしかやるせなさを発散する術が、無いはずなのに。

　―――ああ、なぜかしら。

　いつの間にか、セラスは拳をほどいていた。

　ミアはまだやる気だ。まだまだ可愛い後輩を殴るつもりでいる。
　その拳はセラスの頬を見据え一直線に飛ぼうとしていた。
　放棄することは許されない。
　手を止めるのは侮辱だ。ミアに対しての。そして自分への侮辱だ。

　だが、一度緩んだ力が戻ることは無い。
　セラスは、ミアの拳を受け入れるように―――いや、まるで彼女そのものを抱き止める
ように、両腕を開いた。ミアもまた、釣られるように身体を倒す。

　セラスの拳が二度と彼女の頬を射抜くことが無かったように、
　ミアの拳がセラスに届くことも無かった。

　倒れるミアを受け止めたセラス。―――そんな、と彼女は軽い衝撃を受ける。
　軽いのだ。まるで空気を抱いたかのように、ミアの身体は軽かった。
　この体重のどこから、あんな重い一撃が繰り出せたのか。
　そう考えているうちにも、ミアの存在は瞬く間に希薄になってゆく。

　―――駄目だ。

　ミアは、もう空気の如き自重すら支えきれないのかもしれない。
　その原因がセラスの殴打なのか、はたまた別の因果が働いたのか。それは分からない。
　ただこの意地の悪いセンパイが想像以上に消耗していることだけは確かだった。

　―――駄目だ。

　倒させては、駄目だ。
　ミア先輩が倒れるなんて、そんなこと。
　絶対に駄目だ。

　自分が抱き止めなければ。
　今という時ぐらい、自分が先輩を守ってあげなくては―――

　そう決心した顎先に、衝撃が走った。
　ミアの、拳。
　彼女はまだ諦めていなかった。

「ふ……」

　思わず笑みがこみ上げる。そう、そうだ。それこそのミア・フォーティだ。
　それは今までのどんな一撃より軽い力無き拳。
　だが、セラスは初めて涙を見せた。

「先輩、バカ―――」

　意識が急速に遠ざかってゆく。奈落に堕ちてゆくように、視界が闇に縁取られた。
　全身を蝕んでいた緊張が解けたいま、セラスはもうこれ以上意識を保つ術がない。
　耳元で、ミアが何事かを囁く。聞き取れたような、聞き取れなかったような。
　曖昧な思考ではそれすら判別ができなかった。

　ただ、先輩の馬鹿、と。それだけを思った。

　―――わたしが倒れちゃったら、誰も先輩、支えられないじゃないデスか。

716 名前：ミア･フォーテー ◆4ypZOMBIEQ ：2006/02/28(火) 04:41:44

『The afterglow　――残照――』

>>715


―― 結局、セラスはいつまで経ってもセラスのままで。
せっかく伝えたい事があったのに、もう、意識を飛ばしてる。
縺れながら私に覆い被さるようにして倒れた彼女の身体からは、
土と鉄と彼女の匂いがした。


柔らかい風と、柔らかい月の光と。
荒れ果てた大地と、薄汚れた瓦礫の山。

彼女の肩越しに見えるその風景は、本当に優しくて。

だから。

その風景に溶け込むようにして佇んでいる、つまらなそうな表情を
浮かべた黒くて真っ赤な彼女の保護者に、しばらく気付けなかった。

彼女のマスター。
“さよなら”の決着、そう言えばつけてなかったっけ。
とは言え、今からつけようと言われても無理だろうけど。

じっとこちらを見据える一対の瞳。
……あれ？ まだ何か用があるのだろうか。

「はは、偉そうな事言って、結局このザマだ」

口を突く戯言。
ああ、違う。そうじゃなくて、

「まだ、何か？」

717 名前：アーカード ◆UOArcardog ：2006/02/28(火) 04:49:29

セラス・ヴィクトリアｖｓミア・フォーテー
　　『The afterglow　――残照――』

>>716

　いつからと問われれば、答えは初めから。
　婦警の一撃など、元よりこの不死者の王には何のダメージも与えてはいない。
　消し飛んだはずの頭部を再生させたアーカードは、何を言うでもなく、じっと、
絡み合うように地面に倒れた二人を見下ろしていた。
　闇に輝く真紅の瞳が、今は何処か穏やかだ。
　数刻前までは周囲を圧倒するプレッシャーを放っていたのが嘘のように、ただそこに
佇んでいる。まるで案山子のように、突っ立っている。
　その表情は、苦虫を噛み潰すが如く歪んでいた。
　不機嫌そうに口元を曲げ、二人を――いや、今はミアを――睨め付ける。不愉快を気取る
ことは多々あるが、ここまで感情を露わにするのはこの男にしては珍しかった。

　月を背負うアーカード。
　地に寝そべり、消えゆく道が定められたミア。
　渋面のアーカード。
　憑き物が落ちたかのようにあっけらかんとしたミア。
　対照的な、二人。

　暫く真紅と蒼紺が交錯する。

　―――まだ、何か。
　そう問われて初めて、永劫の夜を往く男は、思い出したかのように口を開いた。

「……貴様、なんだその醜態は」

　奥歯を砕きかねん勢いで言葉が吐かれる。

「無様にも程度というものがある。それ程の力を持ちながら、抱えきれない憎悪を
秘めながら、底の見えぬ絶望を宿しながら―――その結末が、これか。
　無様に殴り合い、無様に果てるのか。貴様、それでも化け物のつもりか。
　これでは、まるでまるで―――」

　ふん、と鼻を鳴らす。

「人間ではないか」

　僅かに―――彼を知らぬ者ならば、気付けぬほど僅かに、アーカードは喜悦の
笑みを口端に走らせた。

「貴様、この私を謀ったな。あの絶望から、あの憎悪から、化け物如きが戻ってなど
来られるものか。
　……ハ、確かに怖ろしい女だよ貴様は。あの婦警を育てただけのことはある。
あの婦警を倒しただけのことはある。……だからこそ、まったく残念だ。この結末、
この終末、私は怒りを抑えきれない。貴様のような無様な女が滅ぶだと？　なぜ、
そんなことが許される。羽根がもげた哀れな鳥は、地を這う事もできずに地上で足掻き
もがく。貴様も同じだミア・フォーテー。
　……おまえと言う女は、生きたままただ足掻いていれば良かったんだ」

　なのに彼女はここで滅ぶ。
　それはとても贅沢な価値の潰し方だった。

「ツケはしっかりと婦警に払わせるつもりだ。覚悟しておけ」

　やはりアーカードの表情はどこか憮然と、不機嫌そうだった。

718 名前：ミア･フォーテー ◆4ypZOMBIEQ ：2006/02/28(火) 04:50:33

『The afterglow　――残照――』

>>717


ニンゲン、かぁ。

「あははっ、そっか。人間かぁ」

ダメだ、笑いが止まらない。
声を上げて笑ってしまう。
嘲笑でもなく、哄笑でもなく。
微笑みでも、不敵な笑みでもなく。

ただ、笑う。

そんな私を、やっぱり彼はつまらなさそうで眺めていて。
でも、気にしないで私は笑い続けた。

ひとしきり笑った後に、残った右腕で何とか上体を起こし。
セラスの頭を崩れかけの腿の上に乗せて。

セラスには言えなかった最後の挨拶を。

「アーカード、だったね。今度こそ“さよなら”。それと、」

セラスを、よろしくね。

719 名前：アーカード ◆UOArcardog ：2006/02/28(火) 04:56:50

セラス・ヴィクトリアｖｓミア・フォーテー
　　『The afterglow　――残照――』

>>718

「引き受けよう��ミア先輩�＝B貴様が育てた後輩は、私のような夜（化け物）でもなく、
貴様のような陽（人間）でもない。どちらも半端に囓った―――どちらも内包した、
化け物でも人間でもない、��他の何か�≠ﾆなろう。……私と貴様は、そのための供物。
　そうだ。そう言う意味では貴様はただしく、天寿を全うした。務めを果たした。
後はこの私が、引き受ける。それだけは約束しよう、ミア・フォーテー」

　言って、アーカードは深く、とても深く一礼した。
　強き人に敬意を評して。セラスという輝きをアーカードの下まで導いた人間に、
感謝の意を込めて―――彼は深く、頭を下げ続けた。
　やがてミアの全身は砂と代わり、最後まで残ったその笑顔も、風に流される。
　アーカードはようやく頭を上げると、ミアの砂の行方を追い続けた。それは月
に吸い込まれるように、天へと昇り、そしてかき消えていった。

「セ、ん、パイ……」

　そんなアーカードの余韻を粉砕するセラスの寝言。気絶しているのか寝ているのか、
むにゃむにゃと寝返りまで打ちだした。
　相変わらず緊張感のない女だ―――と、不死者の王は短く舌を打つ。
　頬に走る涙の跡も、見苦しい。
　目を開けば、普段の赤眼を更に赤く腫らしていることだろう。
　人間から化け物に堕ちることは数あれど、化け物から人間に戻ることは希だ。そんな
限界を突破してみせたミア・フォーテー。
　果たしてここで寝言を呟くこの女は、本当に彼女の教育を受けた後輩なのか。
　本当に、これがノスフェラトゥキング、アーカードの血を受けた者なのか。
　常人ならば落胆の三つや四つは覚えるところだろうが―――彼は特に表情には出さず、
ぬぅっと彼女に顔を近付け、

「起きろ」

　と一言。

「あ……ん？　―――ひぁ、うわっ！」

　セラスの驚きの悲鳴が、
　月へと昇った彼女の葬送曲。

720 名前：〈吸血鬼〉セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2006/02/28(火) 04:57:26

>>719

Epilog

　―――数ヶ月後。ロンドン、炎上。


　セラスは―――セラス・ヴィクトリアであるはず彼女は、夜を駆けていた。
　煉獄の業火に包まれたロンドン向けて跳んでいた。
　流水を越え、陽の光をものともせず、仕えし主人の下へ。

　目的は一つ。
　敵をやっつける。
　ベルナドット隊長と約束したから。
　やっちまおうって。
　ロンドンをこんなんにしやがった敵共をやっつけちまおうって。
　約束したから。
　彼女はやっちまうために、駆けた。

　もう、彼女には、自分がセラスであることに確たる自信がない。
　セラスは確かにいる。だが、他にも多くの輝きが、彼女の中にはあった。
　まず、ベルナドット隊長がいた。
　隊長の血が巡っていた。

　そしてミア先輩。
　人間であった頃の先輩（マスター）の血を、セラスは受けていない。
　だが意思の結晶である彼女の砂をセラスは浴びていた。
　彼女もやはり、ここにいるのだ。
　だからセラスは、ミアの怒りをいま感じている。
　先輩が守っていたロンドンが燃えている。それに対する怒りが。

　―――分かってます、分かってますよ先輩。わたしがぶっ飛ばしてやります。

　あいつ等、先輩が大好きだったケンジントン公園のジェラード屋も、燃やしました。
　わたしの初めてのお給料で、無理矢理奢らされたあのジェラード屋です。
　先輩はいつも金欠気味で、わたしが奢られたことなんて一度も無かった。
　でも……だからって燃えていいなんて思わなかった。
　それをあいつ等は燃やしました。
　だからわたしも、あいつ等をぶっ飛ばして、燃やし尽くしてやります。

「―――先輩、一緒に征きましょう」

　今度こそ、二人一緒に輝いて。

　夜を纏った吸血鬼が、陽を背負って死都へと駆ける。



セラス・ヴィクトリアｖｓミア・フォーテー
『The afterglow　――残照――』


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Fin

721 名前：〈吸血鬼〉セラス・ヴィクトリア ◆g4BCFhuKeI ：2006/02/28(火) 15:16:56

セラス・ヴィクトリアｖｓミア・フォーテー
　『The afterglow　――残照――』

闘争レス番纏め

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>>677-720

先輩、わたし、―――大丈夫ですから。
わたしは、もう、何も、恐くありません。　

722 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：2006/02/28(火) 15:26:21

……はい！
婦警さん、ゾンビさん、ほんっとーにお疲れ様。
57章の最後を飾るのに相応しい闘争だったと思うよ。
―――と、言うことで。
この57章は容量がけっこういっぱいいっぱいなんで、
そろそろ次スレに移ります。
次スレを立てたら、ここに告知するから……
そうしたら、順次移行してね。

723 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：2006/02/28(火) 15:26:40

吸血大殲第57章−汝、狩り人たれ−
レス番纏めインデックス

○Blood And Thunder〜緋皇宮神耶VSバレンタイン兄弟
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レス番纏め>>26

○吾妻江漣ｖｓ弓塚さつき　『人殺しの気持ち』
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レス番纏め>>68

○アーカードｖｓカペルテータ
　カペルテのイクサ　〜The Judgement〜
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レス番纏め>>74

○黒衣の者ＶＳイワン・アイザック『「元」神の子と「元」神父』
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レス番纏め>>107

○ヘレンｖｓビリー　『牙妓遊戯』
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レス番纏め>>153

○柳洞寺　小次郎祭り
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1099185710/348-625

○比良坂初音ｖｓ神崎毬絵　―少女探偵魔焔事件簿『女郎蜘蛛の糸』―
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○セラス・ヴィクトリアｖｓミア・フォーテー
　　『The afterglow　――残照――』
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>>721

724 名前：弓塚さつき ◆zusatinwSI ：2006/03/06(月) 23:01:35

次スレだよ……。
ここはあと、三日ぐらいでスレストかけちゃうから、
奈落堕ちに巻き込まれたくないヒトは、早めに移住しようね。

吸血大殲第58章　Jeux Interdits　―禁じられた遊び―
http://charaneta.sakura.ne.jp/test/read.cgi/ikkoku/1141653285/

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