『鋼鉄戦記』ロボット闘争・イベントスレッド

1 名前:ゼンガー・ゾンボルト ◆gSANGERfZk :03/10/15 23:22

このスレッドはロボット大殲(仮称)スレッドとして活用される。

参加者は、以下のルールに従う事。

1:物語を活かせ、燃える展開を、戦いを魅せろ!

2:いかなる世でも真に無敵な者などいない。己が力に溺れるな!
  己を省み、切磋琢磨せよ。

3:自律型機体、純粋ロボットの参戦、戦闘は可能。

4:「乗り換え」はシチュエーションが適合し、相手の了解を得られれば許可される。
  だが、あくまでも原典で行われた範囲内で行う事。

5:名無しパイロットは許容されるが、○○専用機などに乗って戦闘することは却下される。
  あくまでも、雰囲気を重視すべし。

待ち合わせ等は以下のスレッドにて行われる。
鋼鉄のコックピット〜ロボット大殲待ち受け&リクエスト戦闘希望受付所〜
http://www.appletea.to/~charaneta/test/read.cgi?bbs=ikkoku&key=053668822

戦闘を常駐で行いたい者はここで登録し、戦闘時間と望むシチュエーションとが一致する者と行う事。

前スレッド妙義の谷のアドレスだ。
http://www.appletea.to/~charaneta/test/read.cgi?bbs=ikkoku&key=1040702396

また、ロボット乗りスレッドのイベントが行われる際は戦闘を中止し、イベントの終了まで待機する事。

そして、このスレッドは容量が500kbになる時点で次スレへと移転する。
これは、閲覧者の回線とサーバーに掛かる負荷を軽減する為の措置である。


2 名前:名無し客:03/10/15 23:43

2
GETTTTTTTTTTTTTTTTT!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

3 名前:名無し客:03/10/23 02:13

極めて遅い――3

4 名前:大十字九郎 ◆TSMAgIUS4A :03/10/31 22:48

『憎悪の空より来たりて

 正しき怒りを胸に

 我らは魔を断つ剣を執る!』

『汝、無垢なる刃、デモンベインッ!!』

<ロボ乗りスレ祭り、開幕>

5 名前:ピエゾ=バイモルフ ◆VOn.4G9bRA :03/10/31 22:53

「やあ、テッサちゃん。
 いや、ここはテレサ・テスタロッサ大佐殿、とお呼びしなくちゃいけないかな?」

バイモルフはモニターの中で小狡そうに笑う。

「ええ、用件はわかっていますよ。 今回の総合火力演習への召集命令を
 なぜ無視したのかっていうことですよね?
 その件については既に報告書を提出しておいたはずですがね。
 何か書式の不備でもございましたか?」

どうやら彼の言う報告書とは、先日テッサのオフィスに届けられた
一通の手紙のことであるらしい。
消印はニ日前、差出し場所は月面上に位置する第三プラント、Moony Valley所属の一施設。
差出人はバイモルフその人であった。
丁寧に封がされた封筒の中にあったのはたった一行
「今回の演習はおやすみさせていただきます」
と書かれた便箋が一枚こっきり。
もはや簡潔を通り越して、質の悪いジョーク、いや、それすらも通り越している。
これにはさすがのテッサも憤りを覚えずにはいられなかった。
ゆえにこうして今、直々にバイモルフを呼びつけてその真意を糺している、というわけだ。

「とぼけないでください、バイモルフ曹長!
 あんなものが報告書として通用するとでも思っているのですか!
 そもそもなぜこの演習を欠席するのか、ハッキリと理由を述べてください!
 正当な理由と認められなかった場合、重大な命令無視ということで
 軍法会議ものですよ。
 あなたには前回の演習を勝手に放送して放映権料を独り占めしたという前科が
 ありますからね。
 もしまた同じようなことを画策しているようなら私にも考えがありますから…」

語気を荒げて詰問にとりかかるテッサ。
だがバイモルフはどこ吹く風、といった調子で切り返す。

「いやー、あの時はちょっとばかり連絡のミスがあったみたいでしてねえ。
 おかげで各方面に御迷惑をおかけしちゃって、申し訳なかったですね。
 でも、今回は正式にVNNのほうから放映権に関する話が行ってるじゃありませんか。
 そこらへんのことは僕よりも大佐どののほうがよく存じあげているはずですが。」

確かにバイモルフの言うとおり、今回の演習の放映については広報部を通じて
VNNと正式な手続きと契約が交わされている。
その事はテッサも報告を受けていたし、幾つかの書類を自ら決裁もしていたので
よくわかっていた。
彼女の知る限り、前回バイモルフが行なったようなモグリの戦闘中継などは行いようは
ないはずだった。

バイモルフは続ける。

「で、今回おやすみさせていただく理由ですが、実は僕のライデン、
 オーバーフローの真っ最中なんですよね。
 ほら、ここ数カ月の間、倫敦だのシベリアだのと、あちこち飛び回って
 いたじゃないですか。
 おかげであちこちガタがきちゃいましてね。
 ここの設備で本格的に分解整備してやらないと、もうにっちもさっちも
 いかないもんでしてね。」

「…わかりました、その件については正当な理由であると認めましょう。
 それで、その整備はいつ終わるのですか?
 もし可能であるなら整備終了後、速やかに合流して…」

「あー、そいつは無理ですね。
 だって、ここって月の裏っ側、辺境中の辺境ですから。
 今から最速の便で発ったとしてもそちらに到着するのは早くて2日後ですよ。
 と、いうわけで残念ですが僕は今回パス、ということで。
 いわゆる不可抗力ってやつですね、ハイ。」

言うだけ言うとバイモルフは一方的に通信を切ってしまった。
画面の中のテスタロッサ大佐殿はまだ何か言いたげであったのだが…

「…さて、とりあえず仕込みの第一段階はこんなところかな。」

バイモルフはそう独語すると席を立ち、通信室を後にした。
その足が向かう先には格納庫。
そこにはたった今、分解整備の真っ最中であると具申した彼の愛機が
静かに佇んでいた―――


6 名前:ロジャー・スミス&R・ドロシー・ウェインライト ◆BIGO8lqz1o :03/10/31 22:59

私は祭りというものをあまり好まない。
しかし、それが仕事である以上、交渉人として仕事はこなさなくてはならないのだ。

「全く、お祭騒ぎが好きな連中が多いものだ。そうは思わないかね、ドロシー?」

そう私に呼ばれ、そのアンドロイドの少女が言葉を返す。
「そう言っている割には楽しそうね、ロジャー」
「そう見えるのか、君には…。仕方が無い、これも仕事…いや娯楽の一つだ。
頼まれたからにはベストを尽くすさ」

馴染みの腕時計をかざすと、この私---ロジャー・スミスは叫んだ。

『ビッグオー・ショウタイム!!』

地を割る豪腕。黒いボディに、クロムの冠。
モニターに映し出される『CAST IN THE NAME OF GOD,YE NOT GUILTY』の一文。

そう、この私、ロジャー・スミスはビッグオーを駆り、娯楽の集大成とも呼べるこの地に来たのだ。
(ロジャー・スミス、会場に到着)

7 名前:ウォン・フェイフォン ◆8PXenoqsmM :03/10/31 23:07

演習場に現れる、三体の巨人。

砂塵の中を、一歩、一歩進んでいく。

一体は漆黒。闇に混じらぬ気高き漆黒。

一体は可憐。頭部から下がるテールは、正しくポニーテール。

一体は異形。悪魔の如き翼に蠍の如き深紅の体躯。

ギアと呼ばれる、機械仕掛けの鋼の巨人が三体。

止んだ砂塵の中から、その全身を現した。

「…時間だな」
漆黒の機体から。

「そろそろ全機、集合ね」
可憐な機体から。

「さて、いっちょやってやりますか」
異形の機体から。

それぞれの主が、コクピットから身を乗り出した。

開戦の狼煙を待つために。


<ヴェルトール、E・アンドヴァリ、ヴィエルジェ、以上三機、入場>

8 名前:大十字九郎 ◆TSMAgIUS4A :03/10/31 23:09

<大地揺する鋼鉄の機神。会場の一角に威風堂々と出現している>

<コクピット内>
 さてと・・・準備は良いか?アル。

アル「誰に聞いておる。
   それと、今回は飛行ユニット「シャンタク」の封印も解除しておいた。
  飛び方はマギウス・ウイングとほぼ同じだ、出来るな?」

 ま、何とかなるだろ。

アル「うむ、汝は実践派だからな。さて・・・」

 ああ、そろそろ始まるか、な。

<“魔を断つ剣”、戦闘準備完了>


9 名前:アズラエル ◆Z3azraelx2 :03/10/31 23:12


私は、ワーロックのハッチに立って、考えた。

……何故私はこの様な所に居るのだろう?

始めは、演習と言う話からであった。
私は前回同様偵察に回る……筈であった。
だが皆に見付かりそしてそのままなし崩しに参加する事に……。
しかしあの時皆の顔が妙に笑っていたのは気のせいだろうか?

「ここまで来たなら仕方が無い……。
 ライア公国軍のサイボーグ兵の実力、地球人に見せ付けてやるとしようか!」

私はそう自分に言い聞かせ、ワーロックのコクピットに入り込む。

ハッチが閉まり、

エンジンが起動する

センサーが起動する

シリンダーが起動する

そして、ワーロックは鉄と肉とシリコンの演習場へ……姿を現す。


10 名前:アイビス・ダグラス&ツグミ・タカクラ ◆IBISu6AG36 :03/10/31 23:13

「航法アビオニクス、問題なし」
「FLCS良し、弾も問題なし」

ユグドラシル三世の格納庫で最終チェックを行うアイビスとツグミ。

「あら、アイビス、緊張してるの? 顔、青いわよ?」
「そ、そんなことない!」

演習直前とあって少々緊張した面持ちのアイビスをツグミが軽くからかう。
いつもの風景だ。

そうこうしているうちに格納庫の中が騒がしくなる。
そろそろ時間のようだ。

「じゃあ、行くわよ、アイビス」
「了解」

コックピットハッチを開き、乗り込む二人。
シートに座り、ベルトをきつく締める。
各部スイッチをONに。計器に灯が点る。
アルテリオンのテスラ・ドライブが低い唸り声をあげる。

「いつもの火薬式カタパルトと違って、電磁誘導式だから初速の上がりすぎに気を付けてね」
「言われなくてもわかってるっ」

ごぅんごぅん、とアルテリオンが発進スペースに移動する。
そして、軽い衝撃とともに発進スペースに固定。

「進路クリア、いけるわ」
「了解…アルテリオン、発進!」

ユグドラシル三世のカタパルトから一条の光が走った。
その名の通り流星の如く。

<アルテリオン、演習場に到着>

11 名前:瀬戸口隆之 ◆o2ONiKid.s :03/10/31 23:13

普通の物に比べると遥かに大きい軍用トレーラーが演習場へと入ってくる。
その荷台には剣鈴を担いで片膝をついて座っている全長9mの巨人。
それは西洋の騎士のごとき装甲に身を包み、盾の代わりに笛を持ち、
その顔には、巨大な髑髏がはめ込まれていた。

演習場近くに停車したトレーラーの中から一人の青年がその地に降り立った。
舞踏服を身に纏い、長い手袋、長いマント、長すぎる剣鈴を身につけている。
吹き抜ける風に、癖のある前髪が揺れた。

「瀬戸口隆之、到着した。即座に士魂の起動に移る」

そう言って、青年、瀬戸口は自らの乗機「士魂号重装甲西洋型」のコックピットへと滑り込んだ。

左腕をコネクタに挿入し、同調を開始する。
「ウィーブネス・アートマッスル、7.4、7.5、7.6。なお上昇中。機温70」
「レーダードーム正常。軟骨形成開始。汗腺解放。機温40度まで下げ…」

次々と確認項目がグリーンへと変わっていく。
士魂号のエンジン、心臓。その鼓動がどんどん高鳴っていく。

「オートスペルキャスター、1、2、3、4、5、6、7、8ON、防壁構築開始。
 防壁構築……完了。背骨人工神経細胞網増殖開始。神経細胞融合」

「各種項目、グリーン。起動用意」
瀬戸口ゆっくりと目を閉じ、神経を集中させていく。
数秒後、瀬戸口は瞼を開き、何処までも青い瞳を見せた。
「起動用意。…スピリット・オブ・サムライ、起動」

瀬戸口は士魂号を起動させると一時の夢、グリフへと落ちていった。
目の前に世界が広がり、自己が溶けていく感触。
眠っていた士魂号が目を覚ます…。

12 名前:ドクターウェスト@ロボ乗りスレ:03/10/31 23:14

チ「というわけでいよいよ始まった基地祭り!
  その口火を切るイベントとして今一刻館総合火力演習が始まろうとしています!
  ちなみにウチは覇道家でメイドをやらせてもらっているチアキと申します、よろしゅう!
  さあ、続々と参加者とその搭乗機が集まってきました!
  こう、どんどこどんと集まってくると、ウチもなんやこう」

ウ「こ、コラ!凡人眼鏡!!我輩を無視して喋り続けるとは何事であるか!?」

チ「誰が凡人眼鏡や!
  、、、あ〜、今なんかしゃべった○○○○がひっじょう〜〜に不本意ながら
  今回解説することになっとります」

ウ「そう!我輩こそが世紀の天才!畏怖すべき天才!恐怖の天才!愛すべき天才!」

チ「恐怖やのに愛すべきって、なんや変やないか?」

ウ「ドクタァァァァァァァァァァァウェェェェェェェェェストッッッ!!!」

チ「聞いてへんし、、、まあ期待はしてへんけど」

13 名前:フロスティ・フェイ ◆COLDmEjybY :03/10/31 23:23

結局の所。

祭りという物は、やはり戦闘のことであったらしい。
「……何故、お洒落とやらをして戦闘訓練をしなければならないのかが、今一つ理解できないのだが」
闇姫の操縦席で、ドレスを纏った私は首をかしげた。
外から見れば、闇姫も同じように首をかしげているだろう。

「まあいい。闇姫、起動」
静かに圧縮言語で命令を告げると、2基のガスタービン・エンジンの咆哮が大きくなる。
操縦者であるDJの動きを、正確にトレースし、10倍のスケールと10万ギガワットのスケールで再現し、超音速で大地を駆ける―――それが、デッドリードライブだ。

これほど大規模な演習に参加するのは、初めてだが……いい機会だ。
この基地のメンバーの実力、見せてもらおう!

(フロスティ・フェイ、会場に到着)

14 名前:宗介&クルツ&マオ ◆MytHRIlPXY :03/10/31 23:33

「皆、揃ってきてるな・・・・・・早く来ててよかったぜ。居場所に困りそうだ」
「先に到着しているのは当たり前だ、今回は大佐殿が指揮官だからな。俺達が遅れるわけにはいくまい」

先刻から続々と集まる機動兵器たちを見回しながらぼやくクルツに、宗介はそう応じた。
彼ら―――彼らの駆る3機のASは、先刻からいの一番に集合して整列していた。
「はいはい、無駄話はそこまでよ。そろそろ開幕だからシャンとしてなさい!
 テッサがせっかく指揮官やってるのに、あたし達のせいで恥かかすわけにはいかないでしょ?」

横に並んで無駄話を続ける二人を、この組のリーダーであるメリッサ・マオがたしなめた。
小兵ではあるが、歴戦をくぐってきたことをうかがわせる、直立不動の3機のAS

一機は、背中に大型のライフルをマウント。
もう一機は手に40ミリアサルトライフルを携え、背には2基の大型パンツァーファウスト。
傭兵組織<ミスリル>の主力である第三世代AS、M9である。

そして、たしなめられていた一方の、M9に似ているが猛禽を思わせる威容のある、純白の機体。
ミスリルの切り札―――相良宗介の駆る最新鋭機、ARX-7<アーバレスト>である。

3機――それを駆る歴戦の傭兵3人は、一様に開幕を今か今かと待ちうけていた。

15 名前:テレサ・テスタロッサ ◆MytHRIlPXY :03/10/31 23:36

>>
「―――――集まりましたね」

大小様々の、しかし各々が独自に威容を放っている機動兵器を見回し、アッシュブロンドの少女は呟いた。
普段からASを擁する部隊を指揮している為に見慣れていたはずなのだが
こうまで種々雑多な――しかし決して烏合の衆ではない――機体の群れを見ると、
やはり一種のオーラじみたものを感じずにはいられないのだろうか。
最後に、自分と一番馴染みの深い規格の機動兵器―――直立不動で佇む3機のアーム・スレイブを一瞥すると、
彼女は居住まいを整えた。
多数の歴戦の機動兵器を前に凛として佇む少女の名は、テレサ・テスタロッサ。
若干十七歳で大佐と言う階級を持ち、傭兵組織<ミスリル>の精鋭部隊の指揮官を任されている才媛である。

「Attention(気をつけ)!!」

野球帽をかぶった神経質そうな中年の士官――マデューカス中佐の号令が響き、演習場の空気が一瞬張り詰める。
場が静まり返ったのを確認すると、テッサは口を開いた。

「皆さん、まずは集合ご苦労様です。
 わたしが今回の演習の指揮を執る、テスタロッサです。よろしくお願いします。
 こうして集まった皆さんの機体―――皆さんの“力”は、わたし達皆の大切なものを守るための力です。
 その力が正しく行使される事を祈って行うのが今回の演習です。
 それでは各員、最大限の励起をお願いします。

 ―――以上、わたしからはこれだけです。皆さん、頑張ってください!」

16 名前:アンドレイ・S・カリーニン ◆MytHRIlPXY :03/10/31 23:42

―――では、これより今回の演習・・・・・いや、任務の説明を行う。

今回の任務は、敵混成部隊の完全制圧にある。
敵の戦力は空戦部隊、火力・防壁部隊、機動援護部隊、そして巨大機動兵器と、
一通り揃った強固な編成と言うことになっている。
そこで、各部をそれぞれの分野に長けた機体で各個撃破、最後に機動兵器への一斉攻撃で一気に制圧を行う。

 まずは戦闘領域上空の制空権の確保だ。
 確認されているターゲットはドローンとVF−11、それから未確認ではあるがゴースト系統の機体が一機だ。
 この任務に関しては、アルテリオン――ダグラスとタカクラに担当してもらう。空域の略図は・・・

※空戦フィールド

              G

                      VF
          VF


       D   D  D   D       D   D
        D D    D D         D D
         D      D           D



                  A
D=ターゲットドローン
VF=VF−11B
G=ゴースト
A=アルテリオン

 と言う具合になる。
 次に、防壁役及び重火力部隊の制圧。これは小細工なしの力押しで進める。
 この部隊の撃破は、同じく火力と耐久度に優れた機体――
 デモンベイン、デモンペイン、ビッグオーに担当してもらう。
 戦場の略図はこの通り↓だ。

     ▽ ▽ ▽   □ □ □

 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○


         ▲ ◆ ●

▽=ゲッタードラゴン
□=量産型破壊ロボ
○=10/80
▲=デモンBEイン
◆=デモンPEイン
●=ビッグオー

 第三に、機動遊撃部隊の制圧。
 これは地上と上空からの二正面と言う形で行う。
 地上からAEX、デッドリードライブ、士魂号で強襲をかけ、
 その後に上空からギア3機及びAS3体を使用して空襲をかける。

 そして最後にメインターゲットの制圧だ。
 DC開発の巨大機動兵器ヴァルシオンがそれであるという情報だが・・・
 これに関しては、各方面の防衛部隊制圧後に一斉攻撃をかけ、殲滅する!

以上、何か質問はあるか?ないならブリーフィングを終了する。
最後に――――

この作戦を遂行できるのは、全世界で我々だけだ。各員、最大限奮起せよ!以上だ!

17 名前:テレサ・テスタロッサ ◆MytHRIlPXY :03/10/31 23:48

それでは、各員出撃準備に入ってください。
アルテリオンのアイビスさんとツグミさん、発進をお願いします。

空挺部隊―――ギア三機とM9、それにアーバレストは、手はず通りユグドラシルIII世に。
そのまま発進準備に入ってください!

その他のステップの皆さんも、順次発進してもらいますので準備は怠りなく!

18 名前:フェイ&エリィ&バルト ◆8PXenoqsmM :03/11/01 00:04

作戦開始。
三機がまず最初に目指すは――彼等の帰るべき家。

「テレサ・テスタロッサ…ね」
「どうした、バルト?」

開きっぱなしの通信回線。
深紅のギアの搭乗者、バルトロメイ・ファティマの呟きは、
漆黒のギアのウォン・フェイフォン、
可憐なギアを駆るエレハイム・ヴァンホーテンの耳にも届いていた。

「いんや、17歳で大佐か…ってね」
「何か、不満なの?」

軽口を叩くように言うバルトに、少々不愉快げに聞き返すエリィ。

「そうじゃねぇよ。それ言ったら俺も18で海賊の頭だぜ」
「じゃ、何よ?」
「……優秀でもよ。若すぎる上官がいるってのは、やっぱ健全じゃねぇ。ってな」

軽口ではない。
一人ごちる金髪碧眼、そして隻眼の男、バルト。
通信機から聞こえる声に目を曇らせるのは、
黒髪を束ねた青年、フェイ。

「…お前も、シャーカーンなんかが居なければな」
「ま、過ぎたことだろうさ。俺も、あの大佐殿もな」
「…………嫌ね」

長く綺麗な栗色の髪を後ろに押さえながら、
ただ一言、通信に口を挟む、少女というには大人びた女性。エリィ。

「…さ、飛ばすぜ。俺達が遅れたらマズイだろ?」

一転、声色を変え、機体の加速をイメージするバルト。
深紅の機体アンドヴァリもそれに応えて空中にふわりと浮かび上がり、
超低空を疾駆していく。

「お、おい!!」
「ちょっと!!」

慌てて後に続く漆黒のヴェルトール、可憐なヴィエルジェ。
人の作りしギア二体も、操縦桿の操作に応え、低空へと飛び出した。

19 名前:宗介&クルツ&マオ ◆MytHRIlPXY :03/11/01 00:08

>>17-18

「ウルズ2了解」
「ウルズ6、了解っ!」
「・・・・・・ウルズ7、了解」

三機のASが、それぞれ異口同音にに返答を返す。

「さーて、それじゃあたし達はギアに抱えてもらうって形になるわけね。
 フェイ、バルト、エリィ・・・・・・だったわよね。それじゃ、よろしくお願いするわ」

指揮官用の長いアンテナを頭部に持ったM9――マオ機はそういうと、ユグドラシルIII世へと機体を走らせた。

見れば、さっきまでそこにいたはずの巨大機動兵器―――三体のギアは、すでに高速で戦艦に向かっている。
「ほら、ぐずぐずしない!急ぐわよ!」
「わかっている!」
「ったく、うるせーなぁ!そんな遅れるような走り方はしてねーだろがよ、姐さん!」

やはり高速でマオ機の後を追いつつ、アーバレストとクルツのM9はさらに速度を上げた。

20 名前:ENEMY−1:03/11/01 00:16

――――その頃・・・・・・一刻演習場、作戦空域。
既に当該空域には、黄褐色の機体が敵をいまや遅しと待ち受けていた。

ターゲットドローン。
こうした演習やトライアルには付き物といわれる模擬空戦用標的である。
空戦能力はバルキリーには及ぶべくもないが、今回はそれなりに数を揃えてV字変態を組んでいる。
その数は―――総数十五機。

一機一機はたいしたことのないものだが、数が集まればそれなりに勢力の体は成す。
こちらに飛来する一機のAMを確認すると、標的機小隊はそれを指向し、接近を始めた。

21 名前:アイビス・ダグラス&ツグミ・タカクラ ◆IBISu6AG36 :03/11/01 00:32

>>20
レーダーに反応。
それを素早く読みとり、報告するのはツグミの役目だ。

「前方よりドローン、計十五機」
「ちょっと…多いかな?」

一瞬、アイビスの顔が不安に曇る。
だが、前を見直した顔には不安はない。
あるのは、意志。

「ターゲットが一番密集しているポイントは?」
「ええと、一時の方向に少し寄ってるわね、プログラムの癖かしら」
「了解っ」

機首を一時の方向に向ける。
そして、急加速。
通常のジェットエンジンではあり得ないほどの急加速で、ドローンの群れに突っ込むアルテリオン。
あまりの速度にドローンの群れは効果的な攻撃も出来ずに散開する。

「敵機拡散、パターン02!」

その散開パターンを分析、もっとも効果的な攻撃を選択、パイロットのアイビスに指示。

「了解、スピキュール、ファイア!」

その指示に応えるまで、僅か0.5秒足らず。
アルテリオンの側面のパイロンから、小型ミサイルが雨あられと撃ち出される。
その攻撃を、反応出来ていないドローン群が避けるのは不可能だった。
一つ、二つ、と空に大輪の花が咲く。

22 名前:ENEMY−1:03/11/01 00:50

>>21

――――急接近。
トップクラスのバルキリーと同等以上のスピードで迫る、銀の流星。
そのあまりの高速に反応しきれず、結果、左翼に固まっていたドローンはミサイルの雨をモロに浴びる形となった。
一機、また一機と吹き飛び――――ついには5機全機が、大きな火の玉に変わった。

が、その爆発のスキに乗じ、今度は残った二個標的小隊――ドローン十機が、一斉にアルテリオンを指向する。
各機ともやはり空戦能力ではアルテリオンに及ぶべくもないが、やはり数が数である。
案の定、数に任せた戦法で攻撃をかけてきた。

一斉に放たれるミサイル。
やはり標的に積む程度の、追尾性も速度も粗悪なものであるが・・・・一機につき二発。
都合十機が一斉に放てば、20発のミサイルがばら撒かれるのと同じである。
狙ったのかどうかは定かではないが――――だからといって危険であるという事に変わりはない。
期せずして発生した弾幕が、銀の流星にむけて降り注いだ。

23 名前:アイビス・ダグラス&ツグミ・タカクラ ◆IBISu6AG36 :03/11/01 01:17

>>22
「アイビス、ミサイルが接近…3秒後に到達!」

ツグミが警告を発する。
だが、それを認識するよりも早くアイビスの体は動いていた。
テスラ・ドライブが唸る。
通常の航空機であればあり得ないような機動。
重力制御を可能としたテスラ・ドライブゆえに出来る機動だ。
その急加速急制動にドローンの放ったミサイルはアルテリオンを見失い、空中でそのまま四散した。

「出来た…ブレイクターン!」
「凄い、Aクラスのマニューバーよ!」

緊張で強張っていたアイビスの顔が緩む。
だが、すぐにその顔に別種の緊張が走る。

「次のターゲット!」
「ピンチのあとにチャンスあり、ね。大丈夫、もう一回分CTM-02があるわ」

にこり、とツグミが返す。
その笑顔に安心感を覚える。

「ミドルレンジまで再度詰める!」

アルテリオンが再び走る。
その後部からはテスラ・ドライブ使用時特有の蒼い光の帯が伸びる。
その姿はまさに流星。

「スピキュール、ファイア!」

再び無数のミサイルが空を、そしてドローンを引き裂いた。

24 名前:テレサ・テスタロッサ ◆MytHRIlPXY :03/11/01 01:47

>>23

上空のアルテリオンは銀の流星の二つ名に恥じぬ華麗な機動で、あっという間に標的を屠り去った。
その様子をモニターで確認した直後、テッサは表情をしめなおし、次の作戦への移行を告げた。

「制空権は確保できたようですね・・・・・・それでは作戦の第二段階に移ります。
 デモンベイン、デモンペイン、ビッグオーは順次発進してください!
 空挺部隊および地上制圧部隊も、先の三機が突破口を開いたら動いてもらいます。
 準備は抜かりなくお願いします!」

25 名前:ピエゾ=バイモルフ ◆VOn.4G9bRA :03/11/01 01:51

――同時刻、月面、第三プラントにて――


格納庫では既にオーバーフローを終え、新品同様に息を吹き返したライデンが
彼を待ちうけていた。
白地に朱で描かれた水鳥の紋様も綺麗にリペイントされている。
バイモルフはしばし足を止め、その出来映えに見入る。
上出来だ。
かつて共にこの機体の開発に携わった旧DD-05の技師達の腕は衰えてはいないようだ。
バイモルフはタラップを駆け上がるとコクピットに滑り込む。
コンソールに灯を入れ、各システムをチェック。

M.S.B.S.―――異常なし
センサー系統―――異常なし
アビオニクス系統―――異常なし
通信系統―――異常なし
FCS―――異常なし
バイナリーロータスユニット―――異常なし

…………

全系統、オールグリーン。
これならいつでも出撃、即実戦が可能だ。
全てが順調であることを確認すると、バイモルフは通信回線を残して全ての電源をオフ。
ハッチを解放するとシートから腰を浮かせて大きく伸びをした。

「…ふぅ、全ては順調っと。 あとは待つのみ、か。」

再びシートに身を沈めると、バイモルフは今回の手筈について考えを巡らせた。

「やれやれ、ビッグママも人の事言えないよねぇ……」



26 名前:MBV-04-10/80:03/11/01 01:53

地平線の手前、蟻の群れのごとくに並ぶ無数の機影。
遠目にも一目でそれとわかるテムジン系のシルエット。
だがその形状はDNAの象徴として世に知られた名機とはどこか異なっていた。
(有り体に言ってしまえばあちこちが簡略化され、貧乏くさいイメージだ。)

その機体の名は10/80。
第一世代型テムジンの簡易生産型として開発され、大量に生産された機種だ。
決して能力の高い機体ではないが、実戦においてはその扱いやすさと
何より数の力によって無視出来ない戦果を挙げている。

その運用ノウハウは大量の頭数を揃えての集中運用に尽きるという。
そう、丁度今、相対しているように。
彼我の戦力差は軽く10倍以上。 通常の戦闘ならば性能差を補って余りある数字だ。


――10/80部隊が前進を開始した。
原形となったテムジン譲りのフットワークは意外に軽快で、10/80戦隊は
整然とした隊形を維持したまま、みるみるうちにその距離を詰めてくる。
その主武装であるビームガンの射程にこちらが捉えられるまで、あと10秒。

 

27 名前:大十字九郎 ◆TSMAgIUS4A :03/11/01 01:58

>>24>>26
 少女の声が、鬼械神に出撃を命じる。その究極の魔導、究極の力、
機械仕掛けの神・・・“魔を断つ剣”に。

『有象無象だな。九郎、蹴散らすぞ!』
『OK、始めようぜ!』

 居並ぶ10/80を前にして、純白の鬼械神はその手を掲げた。瞬間、

『バルザイの偃月刀!』

 召喚された武装は、鞘も柄もない漆黒の刃。幅広い片刃の偃月刀。
 鬼械神の腕がそれを一降りすると、なんと刃は扇状に広がり、円形の投具へと
変化する。そのままの勢いで投じられた刃は、高速で回転し、まるでブーメランの
様に10/80の一団を薙ぎ払っていった。


28 名前:ドクターウェスト@ロボ乗りスレ:03/11/01 02:06

チ「ツグミ・タカクラが駆るアルテリオンが華麗にタゲットドローンを撃破しました!
  しかし砂塵を巻き上げて突撃する10/80部隊がロジャー・スミスと九郎ちゃんに近づいています!
  おおっと!デモンベインが『バルザイの偃月刀』を10/80部隊に放り投げた!
  ざっと見て五機ほどの10/80が撃墜されていきます!しかしそれでも前進をやめない10/80部隊!
  まだまだ敵機は残っています!さ〜て残りの機体を二人はどう片付けるのでしょうか!?」

ウ「ん〜?ふっふっふっ」

チ「なんやねん、急に含み笑いなんぞして。ついにおかしなったか?
  あ〜、もとからやったな、、、」

ウ「なんとでも言うが良いのである!だがこれから始まるショーを見ても、
  そのような事が言えるのであるか、楽しみであるな!」

 ウェストがそう言った瞬間、突如として地面が激しく揺れる、それに反応して10/80部隊の半数が立ち止まった。
その行為が命取りなるとは知らずに、、、
 立ち止まった10/80達の中心の地面に唐突に亀裂が産まれた、そしてその亀裂が凄まじい勢いで広がっていき、
そこから何かが迫り上がってくる。最初に見えたのは巨大な手のひらだった、そして腕、顔、胴体、腰、最後に足、
そこにいたのは右腕を高く掲げた鋼鉄の巨人。

チ「あ、あれって!?」

ウ「見るがいい!アレこそが我輩の最高傑作!」

      「デモンペインロボ!!!!!!」

 それこそドクターウェストがデモンベインを参考に作り上げた破壊ロボ、
スーパーウェスト無敵ロボ28號DX「DEMON PAIN」!!!

 「やっと出番ロボ!地面の中は暇で暇でしかたなかったロボ、、、」

 デモンペインのコックピットでつぶやく少女、エルザ。
 彼女もまたドクターウェストの作品の人造人間である。

ウ「さあ!エルザ!まずは高らかに祝砲を!!」

 「ラジャーロボ!術式魔砲『我、埋葬にあたわず(Dig Me No Grave)』!!!」

 デモンペインの掲げ上げられた掌から光がほとばしり天空へと放たれる。

チ「って、なにやってねや!?周りにぎょ〜さん敵がおるやん!?」

 その言葉の通り、今までその特異な状況に一時対応できなかった10/80達が、
デモンペインに向ってビームソードを振り上げる。

ウ「ふっ、うろたえるでない凡人眼鏡、まあ、凡人で眼鏡である貴様には無理であるか」

 「これかだら凡人眼鏡は困るロボ」

チ「そこの二人!誰が凡人眼鏡や!ていうかそこのロボっ娘!あんたが一番危ないんやろうが!
  すぐ傍で刀振り上げられてて何呑気にくっちゃべって、、、って、ええ!?」

 10/80の一機がそのビームソードをデモンペイン振り下ろす直前、唐突に光に貫かれ、爆砕した。
他の10/80達も次々と光に貫かれ、なすすべもなく爆発していく。見ると降り注ぐ光は一転に集中しているのがわかる。
今も天空へと放たれ続ける『我、埋葬にあたわず』の閃光、それが上空で分裂し、地上に降り注いでいるのだ。



29 名前:ロジャー・スミス&R・ドロシー・ウェインライト ◆BIGO8lqz1o :03/11/01 02:07

量産型バーチャロイド、10/80。噂には聞いた事があるが目にするのは初めてだ。
量産型なので個々の戦闘力はビッグオーに劣るものの、団体で来られてはキリがないだろう。

デモンペインによってその半数を殲滅させられた機械の群れ。
その攻撃から辛うじて生き残った10/80達が、今度はあろうことかビッグオーに向かってくる。

「やれやれ…よりによって、何故攻撃したデモンペインではなくこの私に向かってくるのかね。
全く持って理解しがたいものだな、人の手によって作られし軍隊というものは」

ドロシーがすぐさま答える。

「で、貴方はどうするの?薙ぎ払ったりとかしないの?」

「薙ぎ払うって言葉、君は一体どこで覚えたのかね?・・・しかし、それも一利ある。
ちまちまやるのは私の性に合わないかもしれないな。
それでは参るとするか、ビッグオー・アークションッ!!」

いつもの台詞を叫び、私はすぐさまアーク・ラインのスイッチを入れる。
同時に、ビッグオーの両目から直線的な光線が発射され、並みいる機械の軍勢を薙ぎ払っていく。
機動性の割には装甲が弱いので、確かに『薙ぎ払う』という感覚ではある。
だが、それでも数機かは進撃を止める事は無く、無謀にもこの私に挑みかかってきた。

「これではキリが無いな…ならばこれでどうだ!」

すぐさま脇にある、列をなしたスイッチを拳で強く叩く。
ビッグオーの服部から、これでもかと言わんばかりに無数のミサイルが撃ち出され、
残った10/80を次々と殲滅していく。
そう、ビッグオーの火力を持ってすれば、徒党を組んで襲いかかってくる機械の群れなど相手ではない。
成る程…本当にこれは多少なりとも爽快感があるらしい。

「上手く薙ぎ払ってるわね、ロジャー。…カ・イ・カ・ン、とか言わないの?」

ドロシーが相変わらず困った質問をしてくる。一体彼女は、どこでそんな台詞を覚えてくるのだろうか。


30 名前:ドクターウェスト@ロボ乗りスレ:03/11/01 02:25

ウ「や〜い凡人眼鏡〜」

チ「え〜っと、ただ今『ツグミ・タカクラが駆るアルテリオン』といいましたが、
  アルテリオンのパイロットは『アイビス・ダグラス』でした、すんません、、、」

ウ「まったく、いくら凡人眼鏡仲間だからといってもパイロットを間違えるとは何事であるか!?」

チ「だああああ!うっさいなあ!」

ウ「逆切れ?逆切れであるか?」
  はぁ〜っ、、、これだから凡人眼鏡は」

チ「ぬぬぬぬぬ!?」

 このままではこの○○○○に延々と嫌味を言われかねない、何とか話をそらさねば、、、

チ「そういやターゲットにあんたの作った機体もあったんやったな、何処や?」

ウ「ふっふっふっ、見たいのであるか?やはり天才の我輩が作り上げた作品が気になるのであるか?
  悔しいけれど我輩に夢中!?すなわちギャランドゥ!?」

チ「いや、全然。ていうかギャランドゥってなんやねん」

ウ「ふはははははは!!!それでは見るがいい凡人眼鏡!
  そしてその勇姿に見とれるがいい!惚れるがいい!!!
  かま〜〜ん!!!」

チ「だぁぁぁぁぁ!うるさぁぁぁぁい!!!
  こんな間近でギターなんぞ弾くな、このアホ!」

ウ「だぁ〜〜〜〜っはっはっはっ!あれを見よ!!!!」

 ウェストが指し示す方向にはいつもの破壊ロボ、、、ではなくそれより小型の、
 とはいっても全長30メートルはある機体が4機並んで立っていた。

チ「なんや、いつもよりチッコイやん」

ウ「うむ、量産型であるからな。コスト削減もあってサイズをコンパクトにせざるをえんかったのである。
  装甲もスーパーウェスト無敵ロボシリーズより薄くなっているのであるし、武装も抑えぎみであるしな。
  しか〜し!標準で飛行可能なうえ、運動性も上がっているのであ〜る!
  さあ!まずはロジャー・スミスを血祭りに上げ大十字九郎を恐怖のズンドコに叩き落してやるのであ〜る!
  レッツプレイ!!!!」

 ウェストがギターをかき鳴らし破壊ロボに指令を与える。
 ついでに騒音に耐えかねたチアキにハンマーで殴られたようだが、どうでもいい事だろう。

 指令を受けた破壊ロボの内一機が飛行に使うブーストを使用して、ビッグ・オーに突進していき、
残った機体のうち一機が空中に飛び立つ。残りの二機は走りながらビック・オーに近づいて行く。
はたしてこの四機の破壊ロボをロジャー・スミスはどうさばくのか!?

31 名前:ロジャー・スミス&R・ドロシー・ウェインライト ◆BIGO8lqz1o :03/11/01 02:26

ほとんどの10/80を殲滅したその直後、自信たっぷりとでも言わんばかりのギターの音、
聞き覚えがあるような男の奇声に気が付きレーダーを覗く。
そして、そこには4機の機影がそこに映し出されていた。

「機体照合…形式確認…フン、破壊ロボか。相変わらず趣味の悪い男だ。
空を飛ぶ分だけそちらの方が有利と考えている様だが、その考え方は間違いだ!」

そう叫ぶのと同時に右手のレバーを引き、突進してくる一体を迎え撃つ。ピストンを下げる。
突進してくる破壊ロボに合わせ、ビッグオーの豪腕がうなる。ピストンを降ろし、相手に大きな打撃を与える。

「まずは一機、手応え有りか。次は…そこか!」

瞬時にモビーディック・アンカーを射出し、空中の破壊ロボを捕らえる。
空中で必死にもがく破壊ロボに向けて、クリスタル・ガラスのヘッダーカバーから光芒が放たれ、
目標を一気に焼き尽くしてゆく。

すかさず、残った2体を確認しなおすと、Oサンダーの発射グリップを取りだしトリガーを引く。
高速回転するマシンガンノズルから無数の光弾が放たれ、近付いてくる破壊ロボの内一体を撃ち抜く。
だが、この砲撃は隙が生じ易いのが難点でもある。
光弾を浴びた破壊ロボにO字型の光輪が追い討ちをかけるのを尻目に、
残された破壊ロボがビッグオーの体を羽交い締めにした。

「くそっ、うかつだった!一体残っていたとは!」

その様な私の叫びもままならないうちに、相手は密着した距離から破壊ビームをこれでもかと撃ってくる。

「ぐあああっ!?こ、これではこちらの身が持たない!?」

ビッグオーは大低のビームを跳ね返す事が出来るものの、流石にゼロ距離でビームを撃たれては装甲が持たない。
万事休すか、と思っていたその矢先に、忘れかけていた例の装置が目の前にせり出してきた。

「これは!?」

驚く私に向かって、ドロシーが口を開く。

「これが最善の方法よ。周囲を巻き込まない程度に威力は抑えてあるから、
遠慮無く使うといいわ、ロジャー」

いつから彼女は好戦的になったのか検討もつかない。だが今はそんな問題ではない。
使う事はないだろうと思っていたが、この状況では使わざるを得ないだろう。

「機械人形にしては良く頑張った方だが…これでお終いだ!!」

せり出してきたコンソールを操作した直後、プラズマから形成された光の球体が相手を包み込み、
瞬く間に目標を消し去った。

例えこれが演習であろうと、この私自身が危険にさらされては元も子もない。
しかし、ここまで本気でかかってくる以上、私はこの演習に何か不安を感じていた。

「ドクターウェストに”血祭りにあげてやる”、と言われて怖くなっただけでしょう?」

…ドロシー、その様な邪推は止めてくれないか…。


32 名前:量産型ゲッタードラゴン:03/11/01 02:31


 大地を紅蓮と変えて、そいつらは姿を現した。

 現実に火を放った訳ではない。燃え立つような赤い装甲を照り光らせ、横一列の五機六機が進む
それだけの事が、燎原に業火が広がる様を思わせるのだ。
 全体像は太く、厚い。
 角状の突起が幾つも並ぶ頭部と相まって、そいつらは冠された名に相応しく竜のように見えた。

 ゲッタードラゴン。
 一機一機がそう呼ばれる。今なお未知のエネルギー・ゲッター線を動力源とするパワーは、嘗て
猛威を揮ったインベーダー駆逐の求心力ともなった。
 くすぶる味方機の残骸を踏み躙り、ゲッタードラゴンの一隊は前進する。

 と、朱の武神たちは一斉に歩を止めた。
 全てのゲッタードラゴンの両肩で、杭のような尖りが高速で射出された。
 回転しながら落ちてきた杭は、胸の前で交差する左右の手に収まった時、既に前後二枚の刃を
備えた手斧に変わっている。
 全機の上体が弓なりに仰け反る。機を織るかのような揃った動き。
 同じ乱れの無さで、かつ猛然と赤竜王の群れは駆け出した。大地をどよもす震動は大気をも
揺さぶる。疾走しつつ、先行する三機が両手を振り被った。


 手に手に煌く刃の群れが向かう先は只一振りの、しかし強大なる太刀――“魔を断つ剣”だ。

33 名前:大十字九郎 ◆TSMAgIUS4A :03/11/01 02:33

>>32
 視界に移るのは深紅の竜・・・いや、ヒトガタを持つ紅の魔機。その両手に
戦斧を握る竜王の一撃を、白き鬼械神は真っ向から受けて立った。

『来い!バルザイの偃月刀!』

 召喚。瞬時にデモンベインの手に握られた黒き刃が、戦斧の一撃を正面から
受け止める。そして、他の赤竜に左右から攻められる前に、魔を断つ剣は
新たな術式を解放する。

『断鎖術式壱号ティマイオス!弐号クリティアス!』

 脚部シールドに秘められた、空間歪曲の魔術。歪められた空間が元に戻ろうと
する反動を利用して、白き鬼械神は垂直に跳び上がった。
 そのまま空間歪曲の反動を脚部に内封し、空中で放たれる鋼鉄の蹴り、一閃!

『アトランティス・ストライィィィク!!』

 閃光の如き跳び蹴りが、深紅の竜の胸を蹴り抜いた。同時に“魔を断つ剣”は
再度、“虚空を蹴って”跳躍し、空中でその巨体を宙返りさせた。その瞬間、

『フォマルハウトより来たれ、クトゥグァ!
 風に乗りて来たれ、イタクァ!』

 バルザイの偃月刀がいつの間にかかき消え、詠唱と共に出現する二丁の魔銃。
深紅の自動拳銃と白銀の回転式拳銃は、炎と風の邪神が宿る最強の武器であった。
 自動拳銃・・・クトゥグァよりはき出される弾丸は紅蓮の咆哮。咄嗟に戦斧を
構える竜の防御を貫いて、赤き竜をより赤き炎へと変える。
 回転式拳銃・・・イタクァが打ち出す弾丸は蒼き疾風。それはなんと空中で
幾度も弾道を変え、慣性を完全に無視した軌道で竜の防御をかいくぐり、装甲を
幾度もえぐって胴を貫いた。

 三体の竜が爆散するのと同時に、白き鬼械神の両足が再び大地を踏みしめる。


34 名前:量産型ゲッタードラゴン:03/11/01 02:35

>>33

 機神の降臨したその瞬間と地点に向かい、朱色の熱線が迸った。左右ニ方向からだ。

 背で短めの、矢張り赤いマントが翻る。その雄々しさ。
 云うまでもなく、宙空を馳せるゲッタードラゴンである。
 先行機が撃破される隙を有効活用して、空中高く飛び上がった残りニ機は、高所より反撃を
開始したのだった。

 それぞれの額から放たれる光は、稲妻状の軌跡も同じなら威力も同じだ。
 数多のインベーダーを灼き滅ぼしたゲッターエネルギーの結晶――ゲッタービームである。

35 名前:大十字九郎 ◆TSMAgIUS4A :03/11/01 02:38

>>34
 その瞬間、動きを止めた竜王の額から迸った光は、破滅の意志を持つ紅き
光線。破壊の具現たる二条の刃であった。
 三体の竜王を下し、地上に降りたった鬼械神に回避の方法は・・・ない!

『!』

 慣性を無視し、着地と同時に地を蹴って後方へ・・・いや、竜を追うかの
ように前方へ跳ぶデモンベイン。その予想もしない動きが、紅の一閃を回避
させた。だが、紅い刃は二つ!
 次の瞬間、ドラゴンの放ったゲッタービームが、地上のデモンベインを
粉々に打ち砕いた。

 ・・・そう、粉々に、である。

 あり得ない。魔導金属ヒヒイロカネの装甲を纏った鬼械神が、ただ一撃で
バラバラになるなど。そしてそれを証明するかのごとく、砕け散った鬼械神の
姿は、まるで空間に描かれた絵画のように平面となった。それは、紛れもなく
鏡の破片であった。
 『ニトリクスの鏡』・・・それは、現実と虚構の境を曖昧にする魔鏡。砕かれた
デモンベインは、この魔鏡に映し出された虚像であった。
 そして、本当の“魔を断つ剣”は・・・、

『アトラック=ナチャ!』

 砕かれた鏡の後ろから飛び出した鬼械神が、そのたてがみを振り乱す。一瞬に
してそれは魔力の鎖となり、蜘蛛の巣のごとく空中の竜を絡め取った。その一端を
デモンベインはつかみ、力任せに竜を引きずりおろす。

『バルザイの偃月刀!』

 なすすべもなく引きずりおろされた竜を、再び召喚した黒き刃で斬りつける
デモンベイン。刃は紅き装甲を引き裂き、竜を一刀両断に切り裂いた。
 そして!

『最後の一体だな、九郎、やるぞ!』
『ああ・・・シャンタク!』

 その瞬間、デモンベインの背に光が走り、そこに眩いアザトースの粒子を
吐き出す、マントのような飛行ユニットが召喚された。本来、アル・アジフの
正式な鬼械神「アイオーン(永遠)」のオプションたるこの翼の名は、
「シャンタク」!
 飛翔能力を得た白き鬼械神は、剣指で印を切りながら空中の紅き竜へと
飛びかかる。

『おおおおおおおっ!
 乾かず、飢えず、無に帰れぇぇぇぇぇぇっ!』

 空を翔(かけ)る純白の鬼械神。その右手に、万物を滅ぼす昇華術式の
輝き。
 それは“魔を断つ剣”の最強の力、無限熱量を生み出すブラックホール、
ヒラニプラ・システムの生み出す最大にして無敵の破壊力、すなわち、

『レムリアァァァァ─ッ・ インパクトォォォォォォォォォ!』

 閃光・・・紅い竜の姿が、無限熱量の闇に呑み込まれる。

『・・・昇華!』

 爆裂する光を背に、“魔を断つ剣”は荘厳たる姿で三度大地を踏みしめた。


36 名前:sage:sage

sage

37 名前:テレサ・テスタロッサ ◆MytHRIlPXY :03/11/01 23:17

>>28-35

無数の光の線に撃ち抜かれ、火の玉と化してゆくVRの群れ。
…地中から現れたデモンペインが10/80の群れに光の雨を降らせ、その大半を撃ち貫いて黙らせ――

ある機体はその身を大きくひしゃげさせ、またある機体は光弾によって砕け散る。
…続いてビッグオーが、立ちはだかる破壊ロボを順次打ち砕き、そして吹き飛ばしていき・・・・

赤い竜の巨人の群れが、斬り飛ばされ、あっという間に数を減じていく。
…そしてデモンベインが、最後の一体を光の球体で消し去った。

「・・・・・・大佐殿、そろそろ頃合いでは?」
横に控えていたサルペン准尉が、テッサに手短に具申する。
テッサもモニターの状況を見て頷き―――――そして、第三の号令が飛んだ。

「・・・・・・それでは、作戦を第三段階に移行します!
 ワーロック、士魂号、闇姫は敵陣に突撃開始!
 空挺を行うギア部隊とSRTも、発進をお願いします!」

38 名前:フェイ&エリィ&バルト ◆8PXenoqsmM :03/11/01 23:23

>>37
戦闘領域の外。
空中に鎮座する一隻の船。
その姿を例えるならば、
風に跳ねる鯨とでも言ったところだろうか。
空中戦艦ユグドラシル三世。
世界樹の名を持つ、かつて、悪魔の襲来を退けた船。


「…頃合か」

場所はユグドラシル三世のブリッジ。
第三の号令を受け、全モニターを見回す男。
褐色の肌に銀の髪。
そして、バルトのそれとは逆側の眼帯。
彼の名は、シグルド・ハーコート。
バルト不在の間、艦の指揮を預かる総責任者である。

「ラトリーン!!」

「A砲搭アントンとB砲塔ベルタ、
 ハッチ開放から方位盤作動まで
 20秒でいけます!!
 …今回は出番なしですけど」

「バンス!!」

「怪しい電波、無し!!」

「マルセイユ!!」

「若達のギア隊にウルズチーム、
 両者とも既にカタパルト下で待機中、
 いつでもいけます」

次々返ってくる部下の報告。
満を持したというような表情で、
シグルドは号令を出す。

「バトコンレベル1発令!!」

「表層打撃戦区、宣候(ようそろ)!!」

「雷撃戦区、宣候!!」

「対ギア戦区、宣候!!」

「航法区、機関区、宣候!!」

頷いたシグルドは、大きく手を振り上げた。

「カタパルト展開…発進せよ!!」


裂けるほどに大きく開いた鯨の口から、
赤、黒、桃の順にギアが飛び出していく。
それぞれがASと呼ばれる戦闘人形を抱えながら。


E・アンドヴァリ ARX−7アーバレストを運搬し発進
ヴェルトール   M9ガーンズバック(メリッサ)を運搬し発進
ヴィエルジェ   M9ガーンズバック(クルツ)を運搬し発進

39 名前:ENEMY-2:03/11/01 23:36

>>23、>>38

一刻演習場・交戦領域上空。
ドローン3個小隊が撃破されたのを感知し、プログラムに従って二機の戦闘機が新たに宙に舞い上がる。
速度、機体の形状、そして動きのキレ。
それは先ほどのドローンより、明らかに洗練されたものだった。

VF−11B<サンダーボルト>。いまやVF−1にかわって、統合軍において主力を張るまでに普及したVFである。


そしてそれに遅れて、一機の大型カプセルが射出される。
巨大な鋼鉄の卵が空中でパージされると、中からまるで血を思わせるような赤みがかった色の、一機の戦闘機が飛び出した。

ゴーストAIF−9B。統合軍内の一部で問題視されつつも結局は完成を見た、
非常識なまでの起動が可能な無人防衛戦闘機。

先ほどの標的機とは段違いのマニューバーで、ドローンを殲滅した機体―――アルテリオンめがけ。
二条の<雷>と一匹の<幽霊>は、徐々に距離を詰め始めた。


―――そしてそこから少々離れた、地上戦領域に程近い空域。
そこへ目掛けて飛びゆく三機の――抱えられている機体も含めれば六機だが――人型機動兵器。
彼らの進路上に、戦闘空域の端々からドローンが集まってきていた。その数、5機。
どの機体も先ほどのアルテリオンとの交戦を免れたか、いずれも損傷は軽微のようだ。
しかし、本来の設定敵であるアルテリオンはすでに自らの射程から遠い位置にあり―――

結果、プログラムに従って彼らは標的を変更する。
そう・・・一番自分たちに近い位置を飛んでいる、3組6機の人型機動兵器群へと。

40 名前:アイビス・ダグラス&ツグミ・タカクラ ◆IBISu6AG36 :03/11/01 23:42

>>39
「下方から新手! 速い!?」

ツグミが悲鳴のような声で警告する。
だが、その警告よりも速くアイビスは反応していた。
アルテリオンの機体が軽く横にスイング。
つい先刻までアルテリオンのいた空間を機銃弾が切り裂く。

「確かに…速い!」

そちらに目をやると三機の戦闘機。
どれもバルキリー系の機体のようだが、一機だけ機動が違う…いや異常だ。
無人機といえども、基本は有人機と同じ機体と同じ、もしくはランクダウンした機体を使っているため、
その機動範囲も有人機とそう変わらない。
だが、その一機だけは違う。
あり得ないほどの急発進急制動…おそらくは当初から無人機として設計された機体なのだろう。

「VF-11B<サンダーボルト>にゴーストAIF-9B…サンダーボルトはともかく、ゴーストはちょっと厄介かしら」

ツグミがデータの照合結果を確認する。
だが、その声には焦りはない。
アイビスを信頼しているのだ。

「大丈夫…アルテリオンなら、あたしたちなら…絶対に負けない」

スロットルを開く。
巡航速度から、戦闘速度へ。

流星と雷、そして亡霊が交差する。

41 名前:メリッサ・マオ ◆URUZ2MA4eI :03/11/01 23:52

>>38-39
「―――――これはまた、随分と頼もしい戦艦じゃないの」

ASのカメラの写す光景―――
ユグドラシルIII世のその重厚さを目の当たりにしつつ、狭苦しいコクピットの中であたしは独りごちる。
その巨体、その強力な武装、そして―――いずれ劣らぬ熟練のスタッフ。
デ・ダナンに海ではなく空を泳がせれば、こんな感じなのだろうか?
そして、もしこんなのをテロリスト…例えば<アマルガム>あたりが運用することがあれば―――
空恐ろしい想像にうそ寒いものを覚えつつ、
あたしはこのユグドラとそれを所有するバルトたちが味方で、本当によかったと安堵した。
その直後―――――


『カタパルト展開…発進せよ!!』

号令とともに、機体にがくんと強烈なGがかかる。
緊急展開ブースターをつけて飛ぶのとは若干感じが違ったのが新鮮に感じられた。
重力のくびきから逃れ、あたし達SRTとそれを抱えるギアは、上昇を始めた。

そして、各員の意識を締め直そうと通信機のスイッチを入れた、その時―――

『言ってるじゃないのよ!!』
『なんでそうなるんだよ、お前、そういう風に決め付けんなよ!!』
『決め付けてんのは、アナタよ!!』

いきなりスピーカーから飛び込んできた痴話ゲンカに、眉をひそめる。
そして何か言おうとした、次の瞬間――――
『いやぁ、こんな美人さんの機体に抱えてもらうなんて嬉しいねぇ♪エリィちゃんだっけ?
 どう?この演習終わったら一緒に食事でも』

・・・・・・盛大にコンソールに頭を打ち付けてしまった。ったく、あのバカが!
「ウルズ6、今は任務中だぞ!?敵機の迎撃に備えよ!
 ヴェルトールとヴィエルジェも、痴話ゲンカは後にしな!」
『へいへい・・・ったくいちいち口うるせえなぁ姐さん。
 ――――ったく、こんぐらい大目に見てくれたってバチは当たんねぇだろ?
 ただでさえいつも誰かさんみてぇなクソアマを始終拝まされてるわけだし』

―――カチン。
こんガキャ、いきなり何を……!
「あんたねぇ!今の状況を―――」
「・・・・・・口論はそこまでにしろ、マオ。敵が来るぞ」

・・・・・へ?
不意にソースケに横手から声をかけられて、冷静になる。
前方にカメラをズームさせると・・・・・・げ。
さっき殲滅されたはずのドローン――おそらく離れていたために撃破を免れたのだろう――が、11時方向に5機。


『何!?さっきアイビス達が全部落としたとばっかり―――』
『どうやら難を逃れた連中が居たみたいだな』
『ちっ!そーいうコトかよ・・・・・・それに』

クルツが言葉を切ると同時に、ドローンが一斉にあたし達の方を向く。
『どうやら、俺達のことが気に入ったみたいだぜ』
「―――ったく、しょーがないわね・・・・・・!」
このややこしい状況の中、あたしは毒づかずにはいられなかった。

42 名前:フェイ&エリィ&バルト ◆8PXenoqsmM :03/11/01 23:53

加速が三人を圧迫…
次の瞬間には、ギアは空の只中を疾っている。

「…慣れないわね、この感触」

モニターに映し出される流れ行く雲と風景。
それを眺めながら、エリィはひとつ溜め息をつく。

「おいおい、元軍人なのにしっかりしてくれよ」

要らぬ通信を入れるフェイ。
彼なりに気を使ったつもりだったのだが。
それが、微妙にエリィを怒らせる結果となった。

「元軍人だから、なんだってのよ」

突然、剣呑な雰囲気を湛えた声になるエリィ。
少し驚くフェイだが、いつもの調子で言葉を続ける。

「元軍人ならヘッチャラだろって話だよ」

いつもの調子。

「元軍人だからって、その言い草は何なのよ」

彼女もまた、いつもの調子。

「何、怒ってんだよ、お前」

いつもの調子。

「元軍人だったら、高い所怖がる人はいないっていうの!?」

いつもの。

「元軍人だったら、砲弾みたいに発射されてキツくないっていうの!?

いつもの…

「元軍人だったら、苦手なものは何も無いっていうの!?」
「ンな事、誰も言ってないだろ」

たまらず怒鳴り返すフェイ。

「言ってるじゃないのよ!!」
「なんでそうなるんだよ、お前、そういう風に決め付けんなよ!!」
「決め付けてんのは、アナタよ!!」

くだらないすれ違い。
言葉を交わすごとに、次第に次第に溝が広がっていく。
そこに来たのが、エリィの抱えるASからの通信だ。

『いやぁ、こんな美人さんの機体に抱えてもらうなんて嬉しいねぇ♪エリィちゃんだっけ?
 どう?この演習終わったら一緒に食事でも』

「………………」

無言で彼のASとの通信を排除するエリィ。
そして、一瞬途切れた会話…もとい口論を再開しようと
通信機に顔を近づけた瞬間。

警告音。
敵機に補足されている。

「ほら見ろ、見つかっちまったじゃないか!!」

通信機から聞こえるフェイの声。
すでに通信など、敵味方共に筒抜けとなる空域で。

「何よ、今度は人のせいにしようっていうの!?」

バン!!
通信機を叩く音。

「お前ら何やってんだ!!
 エリィ、てめーさっさとエアッド展開しろよ!!
 俺ら、何もできねぇんだからなっ!!」
「っ、言われないでもわかってるわよ!!」

怒鳴り返しながらも、機体の制御に精神を集中することにするエリィ。
祈るように。瞑想するように。己の分身の展開をイメージしていく。

「展開までに三十秒ちょうだい…」
「そういうことだ、ウルズチーム。
 ソースケ、クルツ、メリッサ。頼むぜ!!」

言いつつ、バルトは高度を上げた。
射線確保。思う存分やってもらうために。

43 名前:メリッサ・マオ ◆URUZ2MA4eI :03/11/02 00:22

あたしが舌打ちをした直後、通信機からまだ別の怒声。

『お前ら何やってんだ!!
 エリィ、てめーさっさとエアッド展開しろよ!!俺ら、何もできねぇんだからなっ!!」
『っ、言われないでもわかってるわよ!!』

―――あっちのほうの、アーバレストを抱えた赤いギア。
確か、乗り手はバルトとかいったか?
海賊の頭をやっているという話だったが・・・・・・なるほど、中々結構なリーダーシップ取れてるじゃないの。
少しだけそれに感心していると、心中で賞賛していた相手からこっちに通信が入った。

『展開までに三十秒ちょうだい…』
『そういうことだ、ウルズチーム、頼むぜ!!』
その言葉の直後、見ていたものが下に全てズレる――――いや、こちらの高度が上がったのだ。
どうやら狙いをつけやすいように配慮して、高低差で距離を取ってくれた様だ。
―――ほんと、中々の器ね。

「・・・・・・さぁ、リクエスト来たわよ!準備はいい、野郎ども!?」
『いつでも』
『どこでも』

―――いつもの、あたしにとってはもはや心地いいくらいのノリ。
これだから、こいつらと組んでの仕事は最高なのだ。

「それじゃ行くわよ…

    ――――Are You Ready!? Rock’n Rooooooooll!!」


――――あたしのシャウトを引き金に、
アサルトライフルが。短銃身の散弾砲が。大型のマグナム・ライフルが。
一斉に行く手を阻むドローンに向けて、その凶暴な牙を向く!

44 名前:スカルガンナー:03/11/02 00:30


 ロボットの操縦と云う作業にも、そこに関わっているのが人である以上、操縦者の特質などは、
これは如実に出る。

 例えば大地で叫喚する“魔剣”デモンベイン。
 力強さだけでなく、したたかさをも兼ね備えた粘り腰を人は見るだろう。
 例えば天を狭しと駆け巡る“銀翼”アルテリオン。
 動きの一つ一つが鋭利ながら、切れ過ぎて折れかねない――そんな危うさも滲ませている。

 こいつらにはそれが無かった。機械を表現するには不適切かもしれないが、透けて見える程度の
人間性もなかった。
 当然ではある。これを動かすのは血の通わぬ回路だ。
 温かい血を冷たくさせる――効率よく人間を殺戮する為だけの機構なのだから。

 のっぺりしたヘルメットのような頭部。中央部で二つに割れ、中からセンサー類が赤光を放つ。
 両腕を前に突き出す。二の腕に装備された銃口は、進撃して来る敵機を睨んでいた。
 あるものは寧ろ緩慢に歩みを続け、またあるものはバーニアを噴かせ、宙で距離を稼ぐ。
 蒼褪めた光が放たれる。両手の熱重粒子砲から。
 動きは様々だが、十機程のそれらは全て、如何しようもない影を纏っていた。

 “髑髏の射手(スカルガンナー)”の名前そのままに、どこまでも虚ろな影を。

45 名前:瀬戸口隆之 ◆o2ONiKid.s :03/11/02 00:34

「踊る人形(ダンスドール)、了解。これより地上部隊の掃討を開始する」
司令部からの通信に答え、白銀の騎士は走りだす。
強烈なGが加わり、瀬戸口は顔を歪めた。

景色が流れ、空が、雲が、大地が、とてつもないスピードで流されていく。
――レーダーが敵の機影を捉えた。

「こちら踊る人形、敵機を捕捉した。これより戦闘に移る」

更に速度を上げ、、敵へと近づいていく。既に視認できるまでに近づいていた。
敵機は飛行型のようで、ゆらゆらと動き、それぞれ違う行動を取っている。
数体の敵機の両腕から青褪めた光が放たれた。

「先行入力解除、マニュアルへ切り替え」

冷静に命令を出す瀬戸口。
その命令を受け、それまで取ろうとしていた行動を取りやめ、緊急回避をする士魂号。
光線はすぐ横を通り抜けて行った。

体勢を立て直すとすぐさまスカルガンナーへと突撃していく。
電光石火。
疾風のごとき速さで懐へと入り込み、頭から両断する。
そして剣鈴を地に付けたまま走る。――火花が散った。

剣鈴の重量を利用し、敵の手、足、胴を切り裂いていく白銀の騎士。
一騎当千といった動きで4機のスカルガンナーを撃破していった。

46 名前:フロスティ・フェイ@ドレスアップ ◆COLDmEjybY :03/11/02 00:37

>>15 >>37 >>44

大切なものを守るための力、か。

クルツ達の連れてきた、女―――テッサとかいったか―――の言葉に、私は苦笑した。
まるで、あいつの―――アイスの言う台詞だ。
だが、デッドリードライブが開発された本来の目的は、まさにその為だったという。

「―――それも悪くはないか。行くぞ、闇姫」

ガスタービン・エンジンの咆哮を後に残し、闇姫が疾走する。
最初の目標は、複数体の無人機・スカルガンナー。
”闇姫”よりも二周り小型の機体だ。

「人を殺すために作られたモノに――」

軽く機体を左右に振る。
思った通り、簡単なフェイントに引っ掛かった――所詮は、無人機か。

「人を守るために作られた、デッドリードライブが遅れをとるものか!」

私は”闇姫”を跳躍させた。
一体のスカルガンナーの頭部を蹴り潰し、その勢いのまま、奴らの頭上を飛び越える。
雑魚に構っている暇はない――潰すならば、敵の頭だ。

そいつらは任せたぞ。瀬戸口、アズラエル。

47 名前:スカルガンナー:03/11/02 00:50

>>45 >>46

 腕が飛び出す、ばんばばん。足が飛び出す、ばんばばん。
 別に磁石の威力ではなく、揮われる絢爛たる刃の仕業だ。

 斬られたのが人間なら眼も当てられない惨状だろうが、機械、特にこれが対象ではそういった
感情を想起させる事はない。
 それは彼ら自身もだ。破壊されかけても、何とも思わない。
 だから彼らは立ち上がった。

 ぎくしゃくと、各部で火花を散らせて何とか直立する機がある。
 立ち上がれない程の損傷を受けた機は這いずる。転がった腕のみが銃口を持ち上げる。
 這いずるも手足ない機は生き残ったバーニアを噴射した。自身を砲弾として突っ込んでいく。
 機械の屍の群れ。スカルガンナーは不死身なのだ。

 その中で立ち上がらない、動きすらしない機体もある。頭部を破壊された機であった。

48 名前:アズラエル ◆Z3azraelx2 :03/11/02 00:55

>>47

下らん物を作ったものだ、それを見て私はそう感じた。

確かに私の軍にも無人兵器「Bワーカー」が存在する。
それは警備用、しかも相手も同じ人型兵器であることを前提とした機体だ。

しかし私の目の前で蠢く人形達は違う。
人間を虐殺する為に、弱者を踏み躙る為に作られた人形。
幾ら優れた技術を持っていても、このような玩具を作るようでは、な。

私はこの人形「スカルガンナー」を製作した技術者を嘲い、
そして、この人形を壊す事と決めた。

ダッシュ機構を発動し、黒い疾風と化したワーロックが彼らに向かい突撃。
それと同時に腕部のバルカンを彼らの頭部に向かい発射する。

知っている。彼らは無人機。機体の頭部を撃っても停止などしない。
火力の低いバルカンでは頭部を吹き飛ばすことすら出来ないだろう。
だが、メインカメラを打ち抜くには充分だ。そして……
予備のシステムが起動するまでに接近し、一体目の頭を掴み、引き千切り、
そしてそのまま走り、二体目の首をクローで潰す。
さらにダッシュ機構を発動させたままジャンプし、三体目をの首も蹴り飛ばす。
最後に、着地時に狙いをつける転がった腕を踏み潰し、
掴んだままの二体目の首を最後の機体に叩きつけた。

49 名前:AI@ゼカリア:03/11/02 01:06

>>45
スカルガンナーの戦列を突破し、今まさに右翼中枢を討たんと馳せる士魂号。
だが緑を基調とした単眼の機体は、怯まずに行く手をはばむ。
AGX―10ソルジャー。
侵略者エアロゲイターの尖兵、「神に憶えられし者」の名を持つ鉄のサイクロプス達である。

脇に2体、前列に一体。
後方を守るように配置された3つの機影。
その最前列の機体が、ブーストによる機動で前方に躍り出る。
右手で振るうのはレーザーブレード。その熱量にて万物を焼き切る烈光の刃。
10メートルほど標的へと距離を詰めた―――その瞬間。

閃光が奔る。
援護射撃として発射された光学兵装の銃火であった。
銃撃は続く。
回避した先すら予測して、幾度と的確に火煎が走る。
斬撃は続く。
ヒットアンドウェイ。巧みに接近と後退を繰り返し、光剣が閃く。

ミリ単位の誤差を、実に秒レベルで修正した連続偏差射撃。
常に先の先を取り続けんとする、狂気じみた正確さを誇るコンビネーション。
反撃を試みれば蜂の巣にされ、さりとてこのままでは押し切られて殲滅される。
恐るべきは、何万年と絶えることない侵略によって蓄積された戦術データ。
そしてゼカリアという兵器の処理能力。
夥しい戦乱を潜った、ゼ・バルマリィ帝国汎用型機の最高傑作。
新型ではなく、18代もの改修を重ねた事実は、その機体の優秀さとたゆまない進歩の証。
人類の兵器水準を越えた、悪夢ともいうべき技術の粋がそこにある。

尚も銃撃と斬撃の連鎖は続く。
反撃を赦さず、逃亡も赦さず、全てを赦さず。神の裁きといわんばかりに。

50 名前:瀬戸口隆之 ◆o2ONiKid.s :03/11/02 01:08

>>49

スカルガンナーを撃破し、先に進む士魂を待ち受けていたのは緑色の異星の機体、
地球軍の言う、コードネーム:ソルジャーであった。

前方に一体、両脇にも一体ずつという隊列で接近してくる。
目の前の一体がレーザーソードらしき物を抜き、差し迫る。
そしてその後方からはレーザー兵器と思われる閃光が士魂を狙って放たれる。

「ちっ!幻獣のような戦法を取るもんだな!」

それ士魂は先行入力で入力されたコマンド通り、軽いフットワークで初弾をかわす。
が、回避した先にも光の矢が襲ってくる。

被弾。

「右腕部損傷率5%、まだまだだ」

士魂は被弾した右腕に構わず踊り続ける巨人。小刻みにステップし、反撃の機会を狙う。
一瞬、ほんの一瞬だけできた光の雨の隙間を縫い、士魂が白兵戦を仕掛けてきているソルジャーに斬撃を加える。
切り落とされる右半身。

すぐさま方向転換し、光の雨に飛び込んでいく。
光はギリギリのところで士魂の身体をかすめ、直撃はしない。
しかし損傷は確実に士魂の動きを鈍らせていった。

「神経接続が低下している…。早めにけりをつけなければ…」

51 名前:ENEMY-2:03/11/02 01:09

>>40

先に仕掛けたのは、VF−11からだった。

一機が人型形態―――バトロイドに変形し、ガンポッドを乱射しつつ距離を詰めてゆく。
相手が相手だけに着弾には至らないものの、その鉄火の線は粘り強く、執拗にアルテリオンを追い回す。

また、ゴーストはその常識ハズレの機動性を駆使し、
先のVF−11バトロイドの火線を避け続けるアルテリオンの周りを、執拗に旋回し始める。
時折り思い出したようにビーム機銃をを散発的に撃ち、時にミサイルをこれまた散発的に撃ち出す。
いずれもアルテリオンに回避できない攻撃ではなく、直撃は一度もないものの―――
その高速、その慣性無視級の急制動が、反撃のミサイルの照準を困難にしていた。
アルテリオンを追い続けるガンポッドの火線も、照準の阻害の一助を成している。

この一連の、真夏の蚊を思わせるような執拗なまでの攻撃は、パイロットを辟易させるものには十分だった。

――――そして、その蚊帳の外。
様子をうかがうかのように滞空していたもう一機のVF-11。
ある程度そのいたちごっこが続いていたその最中――――急に拍子を破って、アルテリオンに向けて吶喊する。
形態はバトロイド、その手には――――振り上げられたガンポッド。

銀の流星を打ち砕かんと不意を狙って、銃型の鉄塊が振り下ろされる!

52 名前:AI@ハバクク:03/11/02 01:10

○AI@ハバクク
>>50
後方に、その巨体は屹立していた。
全長の低さの割りに横幅は広く、太い腕部が無ければ立方体とも見紛うシルエット。
AGX−11・ファットマンのコードネームが示すとおりに鈍重な、だが他と比べて二周りも巨大な機体。
それこそは拠点防衛と艦隊戦を主目的とした、重厚なる移動砲台。
ハバクク――「神に抱擁された者」の名を持つ、ゼ・バルマリィ帝国の砲兵。
銀河を席巻する神意の担い手は、今や虚ろなる、だが堅固な壁となりて立ちはだかる。

ゴーグル型のカメラアイが戦況を確認。
敵影の認識はコンマ1秒にも満たない早さ。
取得可能な全ての情報を収集、最適なモーションパターンを検出した瞬間。

脚部が裏返った。変形し滑らかな動きで両肩へとマウントされたのだ。
重力制御による姿勢制御により、体勢は根を下ろした大木のように微動だに揺るがない。
一秒にも満たぬ時間で、上方へ180度旋回した両足。
その足裏に当たる部分から、滑らかに迫り出す長方形の砲塔があった。
それは一対の重金属粒子砲。
実体弾の衝撃と光学兵器の熱量を併せ持った、恐るべきメギドの業火。

  ―――――ターゲット、インサイト。

二本一対の光芒が迸る。が、敵は絢爛なる舞踏。
機械仕掛けの正確さで放たれた炎は、戦いを常態とした鬼を捉える事は無かった。
紙一重で砲撃をかわし、白刃を閃かせながら士魂号が迫る。

だが悠久の戦乱にて生まれた侵略者の兵器は、即座に副兵装を展開する。
突如、頭頂部の装甲が開いたのだ。
その奥に聳えるのは大型のディバイダーミサイル。
完膚なき破壊を連想させる、無機質にして獰猛な弾頭。吐かれる噴煙は魔獣の吐息か。

そして今、鋼の凶獣は放たれる。

近距離にて発射されたそれは完全な不意打ちであり、究極なるカウンター。
必中必殺の好機は今や、絶対絶命の危機に変じていた。

53 名前:瀬戸口隆之 ◆o2ONiKid.s :03/11/02 01:12

>>52

巨大な騎士は次の獲物を捕捉していた。
ソルジャーより二周りも大きく、鈍重そうな機体、ファットマン。
どうやらこいつが後方支援の要のようだ。
巨人の騎士は剣鈴を抜き、構えながら走る。

あと距離100、その時敵に動きがあった。ファットマンは変形し、巨大な砲塔へと変化していく。
砲塔より放たれる二対の光。しかし白銀の騎士は上体を傾け、光の槍を避けつつもなおファットマンへと接近する。
肉薄し、振り上げられた白刃がファットマンの装甲を貫こうと迫る。が、

「な、何!?ミサイルだと!?」

突然目の前に現れたミサイルに少なからず驚愕する瀬戸口。
もう回避は間に合わない。咄嗟に笛を持った左腕を身代わりにした。

――閃光。

身代わりにされた左腕の装甲は醜く歪み、裂け、人工筋肉が露にされている。
鳴り響く警告音。
<神経接続低下、火器管制故障、左腕中破…>

「まだだ、まだやられる訳にはいかない…」

爆発により、吹き飛ばされた騎士が己の筋肉を軋ませ、また動き始める。
士魂号重装甲西洋型は既にボロボロで、運動性能も低下しているはずなのだが更にスピードが上げ、
ファットマンへと襲い掛かる。
ファットマンの周りを跳躍しながら、ある時はすり足をしながら近接攻撃を掻い潜り、
斬りつけて行く。その様子は白刃が舞っているように見えた。
白刃は更に攻撃範囲を広げ、二体揃ってこちらに砲火を浴びせてくるソルジャーへも襲い掛かった。
装甲をバターか何かのように抉り、引き裂いていく。

54 名前:フェイ&エリィ&バルト ◆8PXenoqsmM :03/11/02 01:12

>>43
『――――Are You Ready!? Rock’n Rooooooooll!!』

フェイの抱えるASのパイロット…メリッサの叫びと共に、
三機の腕の中のASが、一斉に首を持ち上げ、腕を伸ばす。
その手に持つは、地獄の楽器。
発射音がデスメタルの如く響くと共に、
無数の弾丸が周囲のドローンに襲い掛かっていく。
弾幕の前に、まず一機が捉えられ、失速して墜落していく。
もう一機、翼を砕かれ、きりもみ回転しながら自由落下する。
回避行動に移るドローン。
ギアに抱えられ飛行中という状況下で、
「近づけない」という目的の元に振るわれる弾丸の鞭は、
ドローンに一切の攻撃を許していない。
三十秒は、あっと言う間だった。

「すげぇな…まさか、二機落とすまでやるとは」

一人ごちるバルト。
かつて、彼の直属部隊として存在していた
ミロク小隊も猛者揃いだったが…
理不尽な戦闘能力の差によって、彼等は血の海に沈んでいった。
無論、彼等を貶すつもりなどはない。
だが――――

(もし、あいつらに、今俺達の腕の中にいる奴等ほどの腕前があれば)

――などという未練がましい思考が頭をよぎるのは、どうしようもない事実だった。
バルトが、そんな辛気臭い気分を頭を振って払っている間に、
フェイのエリィへの通信が聞こえてきた。

「エリィ、準備いいか?」
「急かさないでっ……展開…完了。斉射!!」

ドローンの周囲に展開した12基の遠隔飛行砲台。
精神波<エーテル>感応誘導式攻撃モジュール。その名をエアッド。
パイロットの思考通りに操られる分身に、死角無し。
その全てが、一斉にビームを吐き出す。
回り込み、追いすがり、着実に一機ずつ仕留めていく。
やがて全滅。全機撃破。
…時間にして数秒。最早、進路を塞ぐものは無い。

「降りるぞ…着地点に制圧射撃を!!」

バルトは通信を入れると、すぐさま地上に向かって降りていく。
その悪魔のような翼で滑空するように、一直線に加速。
フェイとエリィも同様に、ブースターを最大出力で稼動し、着地点に突入していく…

55 名前:AI@ハバクク:03/11/02 01:37

>>53 >>54
剣閃は正に百花繚乱。
乱れ舞うという表現が相応しい連撃を前に、巨体は無惨な傷跡を増やす。
かつ、其処に降るのは追撃の使者。
今や反撃の砲火は撃てない。
降下の先はハバククの真上であり、そこは完全なまでに射程の死角。
加えて、士魂の攻撃により右側の砲塔が断裂。神罰の火砲は哀れな鉄塊へと変わり果てていた。
完全なまでの不利――――だが、バルマーの兵器にただの敗北は無い。
破壊されるだけの末路など、無い。

鳴り響くエマージェンシーコール。
明滅するゴーグル型カメラアイ。
サイト内の全標的を補足。
火器管制の全制限を解除。
僅かに転進、旋回。
その、瞬間。


――――頭頂部が。

――――腰部が。

――――両肩が。


全く同時に展開する。
ディバイダーミサイル、そして4連装ミサイルにフォトンバルカンという鋼鉄の牙を覗かせて。


            ――――――轟。


白煙が踊った。ミサイルとバルカンの発射で生じた噴煙である。
前方範囲内の全敵機を標的とした一斉射撃。
今、数多の牙は乱舞する。
感情など無い筈の砲撃が、獲物を前に狂奔する群狼にも見えた。

56 名前:アイビス・ダグラス&ツグミ・タカクラ ◆IBISu6AG36 :03/11/02 01:41

>>51
VF-11の火線を絶妙な機動で躱しながら、反撃の機を狙う。
だが、アルテリオンに匹敵あるいは凌駕する機動性を以てフォローに入るAIF-9B。
二機のコンビネーションに満足に照準が取れない。
それどころか、その正確な火線の前に僅かずつではあるが傷を負っていく。

「うっ、紙一重とはいかないか…」

何度目かの軽い振動。
航行・戦闘に影響はないものの、確実に傷は増えていく。
低いが耳に残るアラート音が先ほどから止まらない。

「くっ…このっ…」

回避しながらの照準では決定打が入らない。
苛立ちが募る。

「当たれ…当たれーっ!」

苦し紛れに放つGGキャノンが当たるはずもない。
そしてそれがさらに苛立ちを生む。

「冷静になって、突っ込むだけじゃだめ!」

ツグミが警告をあげる。
だが、頭に血が上ったアイビスの耳には届かない。

「言われなくてもわかってる!」

そして、そこにもう一機のVF-11が迫る。

「!」
「!!」

反応が遅れる。
ほんの僅かな、だが致命的な遅れ。
そして、絶妙なタイミングでの攻撃。
躱せようはずもない、そんな一撃。

振り下ろされたガンポッドはアルテリオンの銀のボディをひしゃげさせ、破壊する…

57 名前:アイビス・ダグラス&ツグミ・タカクラ ◆IBISu6AG36 :03/11/02 01:41

>>56
…はずだった。

「当たる…ものかぁ!」

だが、それは阻まれた。
ガンポッドを受け止めているのは銀色の腕。
そう、アルテリオンの腕だ。

回避しきれない、と判断した瞬間、アイビスはアルテリオンをCFモードからDFモードに変形させ、
そのマニュピレーターで振り下ろされたガンポッドを受け止めたのだ。

めきり…

アルテリオンの細身だが強靱な腕が、ガンポッドをゆっくりと握りつぶしていく。
パワーでの不利を悟ったVF-11がガンポッドを捨て、距離を取ろうとする。
だが、それを逃がすほど、アイビスは甘くなかった。

「セイバーセット…」

アルテリオンの腕部に装備されたフィールド収束装置が燐光を放つ。
テスラ・ドライブの生み出すフィールドを重力制御ではなく、エネルギーの収束に使う。

「ブレイクフィールド収束!」

その時、フィールドはエネルギーの刃と化す。

「セイバー、ゴーッ!」

それがアルテリオンのソニックセイバー。
全てを切り裂く、光の刃だ。

音よりも速く奔ったアルテリオンのセイバーが、VF-11を両断した。

58 名前:瀬戸口隆之 ◆o2ONiKid.s :03/11/02 01:57

>>55
ハバククより放たれる無数の閃光と爆炎の槍。それらは周囲にいる全ての機体によって放たれた。
ミサイルの嵐が降下部隊へと、士魂へと迫り来る。

瀬戸口は全感覚を士魂号へと預けた。
意識が薄れ、鋼鉄の侍が完全に目を覚ます。

目前に迫るミサイル。

しかしそのミサイルが騎士に当たる事は無かった。
襲い来るミサイルと閃光の隙間を縫って全てのミサイルをかわした。
自らの目標を失い、お互いにぶつかり合い爆発していく。
爆発は次々と後続へ繋がり、閃光が背後から白銀の騎士を照らした。

爆炎を背に佇む騎士の姿は哀しげで何処か泣いているようにも見えた。

59 名前:SAV-326-D/9 GRYS-VOK:03/11/02 02:15

真っ先に砲火の洗礼を受けたのはフロスティの闇姫だった。
友軍によってこじ開けられた突破口から突入したところに、第二ライン上で
待ち受けていた敵戦闘団のグリス=ボックが猛烈な砲爆撃を加えてきたのである。

一見巨大な電気冷蔵庫を思わせるユーモラスなその機体は、いざ相対してみると
その過剰なまでに豊富な火器搭載量と安定した運動性能を合わせ持つ、非常に
厄介な相手であった。
フロスティ機の周囲はたちまち無数の高圧爆風と雨霰と降り注ぐミサイル群によって
炎と煙の地獄色に染めあげられていった。
爆発に抉られ、まき上げられた土砂が視界を塞ぎ、対物センサーが真っ赤になって
アラートを連発する。
さらに新たなミサイル群が接近。

高速で直線軌道を描いて飛来するものがある。
広範囲にバラ撒かれる多弾頭タイプのものもある。
地面すれすれの高度を這うようにして迫る大型誘導弾もあれば
大量の炸薬によって巨大な爆風をまきあげるものもあった。
グリス-ボックの装弾数と弾頭のバリエーションはまるで底無だ。
その全てが闇姫を灰燼に帰しめる、というただ一つの意図の元に放たれている
のは言うまでもあるまい。

60 名前:AI@ゼカリア:03/11/02 03:01

斬波の怒涛は容赦なく。舞い降りる増援に慈悲は無く。
創世神ズフィルードの加護は、人類に鹵獲されたときから消え失せていたというのか。

惨禍を潜り、満身創痍の二体。
今、動いているのがおかしい程の損傷であった。
頭部装甲には亀裂が走り、機械部分がむき出しになっている。
ショートの火花は絶えず明滅を続け。
左腕は裂かれて落ちた。携帯武器は全て砕けた。
被弾箇所を上げればきりが無い。

だが、動く。
搭乗者の生命維持が必要ない無人機ゆえか、高度な技術力の賜物か。
後方に控えるハバククと交信。
連携となるよう行動を確認、戦術パターンを構築。
安全用のリミッターを全解除。
ブースターを最大出力に。
残った腕を腰だめに構えて。

上昇。
地上のハバククより発射され踊り狂うミサイル群。
それを援護にゼカリアは飛ぶ。

加速。
後方のファットマンより斉射された連装ミサイル。
それを援護にゼカリアは疾る。

共に右の拳に灯るのは、非常攻撃用の格闘兵器『ギスト・ブロー』の輝き。
マニュピュレーターに張り巡らせた障壁は、全てを砕かんとする殺意に溢れて。
ゼカリアは突撃する。
突撃して拳を繰り出す。
ゼカリアは特攻する。
バーニアを焼き切らせるほどの勢いで、只、速く。
上方のASと前方のワーロックへ―――自らを巨大な弾丸と化して。

61 名前:アズラエル ◆Z3azraelx2 :03/11/02 03:04

>>60
スカルガンナーを潰した私の前に現れた次の人形は、
バルマーの人型兵器、「神に覚えられし者」……ゼカリア。
本来は有人機であるが、地球軍に鹵獲されてから無人機に改造されたようだ。

本来の敵に使われているこの機体に対し、私が施せるせめてもの慈悲は破壊してやる事だけだ。

と考えてから、多くの地球人達と知り合ってもなお地球に対しての敵対心が残っている
自分に対し、複雑な気持ちになった。

腕部バルカンを乱射して盾となっているミサイルを次々に撃ち落して行く。
ミサイルを全て撃ち落すのと同時に腕部バルカンも弾切れとなった。
ワーロック唯一の遠距離武装である腕部バルカンが失われた今、
ワーロックには白兵戦しか残っていない。
だが、かまわない。おそらく今回使うのはこれが最後だ。

そして、こちらへ突き進んでくるゼカリアを迎え撃つ。
バックステップでゼカリアの拳を回避する。
どのような攻撃でも、命中しなければ意味が無い。
避けられた場合大きな隙を作ってしまう突撃ならなおさらだ。
大きな隙を作ったゼカリアの胸にクローを衝き立て、
さらにスカルガンナーの一体にしたように首を掴み、引き千切る。

まだ動力反応の有る頭部を握り潰してから、私は呟いた。

「これではまるで悪役だな」

62 名前:クルツ・ウェーバー ◆URUZ6oKCII :03/11/02 03:06

>>54、>>60

「…ヒュウ♪見事なもんだねぇ」
目の前で次々と爆散していくドローンを見つつ、口笛を一つ。
俺達の進路を妨害するようにしゃしゃり出てきたドローンを牽制射撃で二機落としたあたりで、
俺のM9を抱えるエリィって娘の機体・・・ヴィエルジェから射出展開された無線誘導砲台が、正確に残存敵を沈めていったワケだ。

「なかなかやるじゃん・・・・・・惚れ惚れするねぇ、君の腕にも美貌にも」
『・・・・・・・・・・・・』
殺し文句を飛ばしてみたが―――――
帰ってきたのは無機質かつ最もシンプルな反応、すなわち無言。ちっ。

そんな事をやってるうちにも―――
『降りるぞ…着地点に制圧射撃を!!』
ギア部隊のリーダー格・バルトの号令の元、三機のギアとそれに運ばれる俺達のASは、
ぐんぐん降下ポイントに向かって接近してゆく。
そろそろ出番か・・・


そう思った矢先、地上から世界一物騒な花束―――ミサイルの雨が、俺達を出迎えた。
『くっ・・・・・・対空砲火もしっかり完備ってわけ!?』
『だが、この程度はあくまで予想して然る範囲だ・・・・・・・・・致し方ないか!』

姐さんとソースケのぼやきを交えつつ、俺達は次から次へと襲い来るミサイルを
さっきの要領でバカ丁寧に撃ち落していく・・・・・・・が、流石に苛烈な猛射のため、無傷と言うわけには行かない。
直撃弾こそないが、爆風やら余波やらでわずかずつながら着実に、俺達6機の損傷度は上がっていった。

『このままじゃラチが開かない・・・・・・少し高いが、ここから降りるしかないわ!
 三機とも、あたし達をここから投下して!』
空中でジリ貧の状態に陥る中、マオが意を決して告げる。
『大丈夫なのか!?』
『・・・・少々予定外だが、この程度なら問題ない。その為にパラシュートを装着して来ているのだからな』
とっさのフェイの質問に、ソースケが淡々と答えた。

『――――わかった!ちょっとしたバクチだが・・・健闘を祈るぜ!
 フェイ!エリィ!』
バルトの号令とともに、俺達を抱えていた三機のギアは、体勢を変えて俺達のASの投下に備える。
<問題はありません、サガラ軍曹はいつもこのぐらいの無茶は平気で行います>
『黙っていろ、アル!』
<失礼しました、カウントダウン開始。5、4…2―――>
アーバレストの制御AI「アル」が、ソースケをからかいつつも秒読みを始め―――――

<Now(今)!>
その声と同時に、俺達のASは中空へと放り出される。直後、

『開傘!』
そのマオの合図と同時に、全く同時に俺達のASはパラシュートを開いた。
さぁて・・・・・・行くぜぇ!

63 名前:クルツ・ウェーバー ◆URUZ6oKCII :03/11/02 03:11

>>63

「イイィイ・・・・・・ヤッホ―――――――ッ!!」

降下中、なおもしつこく飛び来るミサイルを撃ち落しつつ、地上の敵にも狙いを定めることは怠らない。

鹵獲され、ターゲットとなっているエアロゲイターの機体。
その体格に見劣りしないような大量のミサイルを撃ち出し続ける、ゴツいVR。
首と胴体が泣き分かれになって転がっている、骸骨じみた機体。
それらに満遍なくライフル弾を叩き込みつつ、更に降下を続けるその中――――それはこちらに襲い掛かってきた。

地上からの爆圧すら踏み台にしつつ単機でこちらへ飛び上がってくる、緑の機体。
地球側でソルジャーと命名された異星の機動兵器は、こちらに目掛けて光る拳を振りかぶっていた。
とっさに迎撃しようと引き金を引くが――――――――――

かちり。

砲弾の代わりに出たのは、随分と間抜けた金属音だった。―――弾切れ!?

「くそったれ・・・・パラシュート排除!」
業を煮やし、俺はAIに命令し、パラシュートを切り離させる。
・・・・・・え、何をするかって?

「天上直下――――」

――――こうするんだよっ!!

「―――無敵蹴りぃぃぃぃぃぃっ!!」
落下の勢いに任せ、クロスカウンターで直上から蹴りを叩き込む!

流石に意表を突けたこともあり、綺麗に敵を踏み潰す形となって地面に落下。
各関節から吹き上がる気化した緩衝材が、辺り一体に白い霧を作り出す。
落下の衝撃をやり過ごし、完全にスクラップと化した機体の上で、俺は宣言した。

「―――ウルズ6、着地成功!」

64 名前:フロスティ・フェイ@ドレスアップ ◆COLDmEjybY :03/11/02 03:18

>>59
飛来する、無数の物体を視覚センサーで捉える。

「――ミサイルかっ」

デッドリードライブのレーダーは、空中の目標に対してはほとんど役に立たない。
頼りになるのは、視覚・聴覚のセンサー類と―――実践で培った経験と第六感のみ。

私は弾幕の僅かな隙間をコンマ数秒のうちに探し出し、ミサイルの間を縫うように機体を走らせてゆく。
これを抜ければ―――敵の懐に入ってしまえばこちらのものだ。

「……!」
視界の外から、幾つかのミサイルが飛来してきているのに、気付くのが遅れた。
これは―――かわし切れない。

「撃て!」
咄嗟に圧縮言語で命令を下す。
通常の7倍の速度で行なわれるそれに従い、闇姫に内蔵された隠し武器の一つである
機関砲がそのミサイル群を撃ち落した。


65 名前:MBV-707-G TEMJIN:03/11/02 03:21

>>64
グリス=ボックの猛砲火をくぐり抜け、前進する闇姫。
そこに新手の敵の接近をレーダーが告げる。
現在の距離は約2000、敵機を示す三つの輝点はなおもこちらに近づきつつある。

DJとして遺伝子強化されたフロスティの瞳は、その相手の姿をしっかりと捉えていた。
銃器とも剣とも見える長大な武器、スライプナーを構え、青白い放熱ブラストの
尾を引きつつ迫るのは最新鋭主戦闘型バーチャロイド、MBV-707-Gテムジン。
戦闘のあらゆる局面において充分な能力を発揮し得る非常に汎用性の高い機体だ。
白兵戦においてもまた然り。
軽快な運動性と高出力のビーム-ブレードの組み合わせは近接戦闘において
極めて高いパフォーマンスを発揮する。


蒼と白に彩られた三機の影は、後方に控えるグリス-ボックの濃密な火力支援を
受けつつ散開、正面、右、左と三方から迫りくる。
その動きから、察するに、包囲しての近接戦闘に持ち込むつもりらしい。
包囲の輪に捉えられる前に位置を変えたいが、そこに再び後方のグリス-ボックからの
濃密な援護射撃。
位置取りのままならないままに、包囲の体勢は完了してしまった。

三機のテムジンはビーム-ブレードの青白い刃を閃かせ、一斉に襲いかかる。
相対速度は超音速に達している。
次の刹那が勝負の別れ時であることに、疑いの余地はない。 

66 名前:フロスティ・フェイ@ドレスアップ ◆COLDmEjybY :03/11/02 03:25

>>65
援護射撃に加え、三方からの同時攻撃。
流石にピエゾが手配した相手だけに、ソツが無い連携だ。

「だが……」
同時に迫る三体のバーチャロイド。
しかし、実際には僅かな時間のズレがある。
ほんの僅かな、けれど私と闇姫がつけ入るには充分なだけの。
闇姫の速度を超音速から、亜音速へ。そして再び超音速へ。
その間にも細かく軌道を変える。

「遅い!」

振り下ろされた光の刃をかいくぐり、すれ違いざまに、背中より引き抜いたカタナで一機のテムジンを両断した。
さらに、その動きを止めた機体を盾代わりにして、突進。
二本のビームブレードをテムジンの機体で受け止め、速度と2機分の重量を充分に乗せた刀身でもう一機を串刺しにする。
そこで残る一機が、カタナの間合いの外へと後退した。

……ちっ。そう言えば、無人機だったか。
仲間が倒されて焦った隙をつくつもりだったが―――

『あんたねー、戦い方がえげつないのよ』

アイスの幻聴が、呆れたようにそんなことを言ったような気がした。
―――合理的と言え、平和バカ女。
毒づき、残った一機に対して身構える。

先の2機は爆破四散し、既に盾としては使えない。
もっとも、ピエゾの用意した奴だ。
同じ手は通じなかっただろう。

67 名前:MBV-707-G TEMJIN:03/11/02 03:40

>>66
闇姫とテムジン。一つと三つの機影が交錯し、乖離する。
そしてニ機のテムジンが爆発炎上し、散華。
三体一という圧倒的なイニシアチブは瞬時にして失われた。

ただ一機残ったテムジンに搭載されたAIはこの状況を分析し、
眼前のDDを撃破するための戦術を模索、構築する。

テムジンは地を蹴って跳躍すると後方へとブースト、闇姫との距離を稼ぎに出た。
同時に両機の間にパワーボムを投擲、高圧爆風の壁を形成て追撃をカットする。

200m程度の距離を開いたところでテムジンは着地、ビームランチャーで
牽制射撃を加えながら再び前方の闇姫に向かって急加速、正面から再度交錯戦を試みる。
そしてカタナの間合いぎりぎりの距離で突如軌道を転換、
闇姫がカタナを握る右手の反対側、左側面へと回りこみつつビームブレードを展開、
横殴りの斬撃を加えてきた。


68 名前:フロスティ・フェイ@ドレスアップ ◆COLDmEjybY :03/11/02 03:44

>>67
カタナであのブレードは受けられない。
この間合いではこちらの後退よりも、敵の斬撃が速い。
ならば、答えは一つ。

”闇姫”をテムジンへ向けて踏み込ませた。
テムジンのビームブレードを振るう手首を左手で捉え、
同時に、この間合いでは邪魔にしかならない右手のカタナを手放す。
テムジンはこちらの動きに対処しきれていない。

―――今だ!
刹那の交差の瞬間の体捌き。
テコの原理を使い、相手の速度と質量を威力に変える。
テムジンの体が宙で弧を描き―――数百dの威力で地面に叩きつけられた。

バーンに手ほどきを受けた、ロスト・アーツの一つ―――かつて、”1本背負い”と呼ばれた技。
活動を止めた最後のテムジンを見やり、呟く。

「格闘戦のデータは足りなかったようだな」

そしてカタナを拾い上げつつ、次の目標を視認する―――

69 名前:フェイ&エリィ&バルト ◆8PXenoqsmM :03/11/02 04:13

>>55 >>62
『なかなかやるじゃん・・・・・・惚れ惚れするねぇ、君の腕にも美貌にも』

エアッドを操作した直後、収納している最中に入った通信は、
エリィの集中を妨げ、さらに苛立たせる。
戦闘中はと思って、通信拒否を解除したのが間違いだった。
再び手早く通信を閉ざして、バルトを追って降下に入る。
この男、早いところ放り出してしまいたい。
…程なく、その望みは叶えられる事となる。

下方からの一斉砲火。
慌てて回避運動を取るヴィエルジェだが、
数発、回避の間に合わないミサイルが―――空中で爆散。
腕の中に居座る、この男…もといASが、手早くミサイルを迎撃したのだ。
さすがに驚き、感嘆の吐息を…漏らすような暇は、あいにく無かった。
フェイのヴェルトール、バルトのアンドヴァリも
直撃弾こそないものの、至近距離の爆風を受けて
少しずつ損害を増している様子だ。
――無論、彼等の抱えるASも。

『このままじゃラチが開かない・・・・・・少し高いが、ここから降りるしかないわ!
 三機とも、あたし達をここから投下して!』

通信機より響く声。
実際、それしかないだろう。
一旦上空に避難して難を逃れる時間が惜しい。
だが、この高さは。

「大丈夫なのか!?」

フェイも同じ事を思ったのだろう。即座に通信を入れていた。
バルトの抱えている機体のパイロット、ソースケ・サガラが応えるには。

『・・・・少々予定外だが、この程度なら問題ない。その為にパラシュートを装着して来ているのだからな』

違う。
高い高度でパラシュートを展開したら…的になるだけだ。
エリィはそれを言いかけたが、止めにする。
先ほどのナンパ男の手並みを見て…
今の自分の考えは、彼等に対する過小評価。
ふと、そう思えたのだ。

「――――わかった!ちょっとしたバクチだが・・・健闘を祈るぜ!
 フェイ!エリィ!」

一拍。それだけの間を置いて、バルトが号令を出す。
躊躇う時間は終わった。全機、投下体勢へ移行。

<問題はありません、サガラ軍曹はいつもこのぐらいの無茶は平気で行います>
『黙っていろ、アル!』

唐突に通信に割り込む声は。
話には聞いていた。あの試作機にのみ搭載された人工知能だ。
ソラリスにも、人格を移植できるコンピュータは存在していたが。
簡易的なもの以外で、機械が心を宿した例をエリィは聞かない。
…いや、たったひとつ。ナノマシンの群生体の少女という例外があったが。
かつて自分が、命を賭し―――――

<失礼しました、カウントダウン開始。5、4…2―――>

一瞬、跳びかけた意識を、人工知能のカウントダウンが呼び覚ます。
今は妙な感慨に浸っている時ではない。

<Now(今)!>

投下。

投げ落としたウルズチームには目もくれず、
三機は空を疾駆する。
目指すは――壊れかけた重砲撃機。

「大歓迎、痛み入るぜ……
 こ、い、つ、は、お礼だーーーーーっ!!」

落下の衝撃を乗せて。
ギア・バーラー。神の作りしギアと完全にシンクロしたバルトの思考を乗せて。
アンドヴァリが飛行体勢から強引に移行しての飛び蹴りをお見舞いする。
片腕を綺麗にそぎ落とされる敵機…この星での名はファットマン。

「終わらないぜ!!」

踏み止まったファットマンを真正面に捉え、
無事着地したヴェルトールがすかさず距離を詰めに行く。
全弾発射の後。最早、接近を阻む余地は無い。
ピタリと目の前で静止したヴェルトールはその場で腰を据え…
正拳突きを叩き込む。素早く二発。
揺らぐ所に回し蹴り。
もう片腕も千切れ落ちたファットマンの前に最後に立つ者は。

「エラ・ドラゴン」

エーテル機関をフル稼動。
灼熱を顕現させ、瞬間火葬。
原型を僅かに留めたまま、赤熱して溶け落ちていく
ファットマンの前に立つ者は。
エリィの、ヴィエルジェ。
掲げたロッドを静かに下ろし、低空飛行に移る。
すでに遥か前方を進むバルトの動きに応えて。


――目指すは、最終目標。

70 名前:ENEMY-2:03/11/02 04:31

>>57

光と重力の刃に両断され、その一瞬後に爆発四散するVF−11。
だが、有人機と違い完全な機械制御で動いているもう一機のVFとゴーストは、その状況に動揺などするべくもない。
あるのはただ、状況に対応した戦法の転換のみ。

三機から二機に数が減ったことによって、先ほどのような緩慢に消耗を強いる戦法は不可能となった。
ゆえに、彼らは新たな戦法を取ることを余儀なくされる。
では――――――彼らの電子頭脳が弾き出した、次なる戦法とは?

アルテリオンはソニックセイバーを振りぬき、その超高速を以てVF−11を両断した。
そしてそれは最高にスピードの乗った瞬間の一撃ゆえ、<サンダーボルト>はアルテリオンを捉えきれなかったゆえのこと。
では、そのスピードが減退する瞬間は?

突進から回頭へと動きを切り替え、一瞬、わずかながらにスピードの緩んだアルテリオン。
その瞬間を狙い、銃撃を繰り返していたほうのVF−11バトロイドが、あらん限りの速度で掴みかかった。


そして、また一方。
アルテリオンにVF−11が掴みかかる瞬間を狙い、ゴーストがその二者目掛けて、
スピードに物を言わせて真っ直線に突き進む。
距離が半分まで縮まったそのとき―――――――亡霊はその背中から、無数の殺意をばら撒いた。
十や十五ではきかぬ数のミサイルを後方に従え、真紅の亡霊が銀の流星に迫る!

71 名前:アイビス・ダグラス&ツグミ・タカクラ ◆IBISu6AG36 :03/11/02 04:34

>>70
「アイビス、背後から敵機接近!」
「え!?」

今度こそ反応出来なかった。
背後から掴みかかるVF-11を回避することも出来ず、押さえつけられる。
機体のサイズ差はあれども、動きが阻害されるのは事実。

そしてそこに迫るAIF-9B。
しかし、接近しすぎることはなく距離を中距離に縮めてミサイルを放つ。
各々様々な軌道を噴煙で描きながら、ミサイルがアルテリオンに迫る。
避けようもないほどの数。
避ける術もないほどの速度。

「やられる…もんかぁぁっ!!」

しがみついたVF-11を無理矢理引きはがし、ミサイル群めがけて投げ飛ばす。
それと同時にCFに変形、スロットル全開。
アルテリオンは最高加速で飛んだ。

ミサイル群の迫る前方に向かって。

「ちょ、ちょっとアイビス!?」
「黙ってて、ツグミ! 舌噛むよ!」

困惑するツグミを無視して、アイビスはスロットルをゆるめずに突っ込む。
僅かの距離で超音速に達するアルテリオン。

「ブレイクフィールド、機首に収束!」

アルテリオンの機首に蒼く光るブレイクフィールドが槍のように収束する。
そして、一瞬のうちに三つの事が起こった。

VF-11がアルテリオンに貫かれ、
ミサイル群が爆発し、
そして、AIF-9Bが爆散した。

そして、アルテリオンは無傷だった。
理由は簡単だ。
ミサイルが一発も当たっていないから、だ。

「…え、な、なに、何で…?」
「そんなに難しい事じゃないんだけどね、理屈は」

そう、アルテリオンは超音速で飛ぶ事によって衝撃波を引き起こしたのだ。
衝撃波を受けたミサイルはアルテリオンに接触する前に爆発四散し、満足な被害をアルテリオンに与える事はなかったのだ。
そして、そのスピードのままゴーストを貫いた、と言うだけの事。

「確かに理屈はその通りだけど…無茶苦茶ね」
「あはは、まあ、助かったからいいじゃない」

72 名前:SAV-326-D/9:03/11/07 01:19

>>63
グリス-ボックは上空から降下した三機の増援を察知。
搭載された戦術AIは新手に備えるべく、直ちに状況分析を開始する。

機種照合――
M9型ASが2機とデータにないASが1。 暫定識別コードE(ENEMY)1-3を付与。
[ok]

位置確認――
E1(M9)が11時、距離628。
E2(M9)が1時、距離569。
E3(unknown)が12時、距離526。
いずれも射程圏内。 全機ロックオン完了。
[ok]

グリス-ボックは迷わず攻撃を開始する。
緑色の箱型の機体が回頭し、E1-E3全機を射界内に捕捉。
両肩にマウントされた大型ミサイルコンテナが展開、E1-E3各機に対し
無数のホーミングミサイルを一斉掃射。
白煙の尾を引くミサイル群はグリス-ボックの頭部及び背部に納められた
照準/火器管制モジュールの指示の下、統率された狼の群れのように
正確にターゲットに襲いかかる。

次いで腕部のサブコンテナから最も近い位置にいるE3を狙って多弾頭弾を解き放つ。
それは空中でホウセンカのように弾けると、無数のマイクロミサイルの雨と化して
E3目掛けて降り注ぐ。

更に彼我の位置関係よりE1-E3各機の接近ルートを算出、その線上に次々と
ナパームを投擲してその足を止めつつ後退、距離のアドバンテージを確保する。

グリス-ボックの火器管制能力と演算能力、そして火力は地上戦に於いてこそ
存分にその威力を発揮する。
それは幾多の戦場で精強なRNAの部隊を壊滅させてきたことで実証済みだ。
例え3対1というこの状況であってもそれらが適切に運用されるなら
敵部隊の殲滅は十二分に可能、AIはそう結論づけた。


73 名前:相良宗介 ◆URUZ7h3pLo :03/11/07 13:32

>>63

「無茶をする………!」

クルツのM9が地上から飛び上がるエアロゲイターの機体を
踏み潰しながら着地するのを見て、一言漏らす。
あの状況の中、躊躇せずにパラシュートを切り離して敵の攻撃タイミングを上手く外して
カウンターを叩き込んだその機転と思い切りは評価に値するが、その落下高度はわずかではあるが、
通常降下限界高度を逸脱していた。一歩間違えばクルツの機体もただではすまなかったろうに…

《私も同感です…あれではまるで、いつぞやのサガラ軍曹です。
 昨年のクリスマスの夜における任務時もそうでしたが……
 今回の演習の各味方機の行動を見るにつけ、あの夜と同じ位にウルトラCの多い状況であると考えます》
アーバレストが地面に着地するのと同時に、アルがまた軽口を叩いた。

「……減らず口は大概にしておけと何度言えば分かる、アル!?
 大体今は合同任務の、しかも戦闘の真っ只中だ。少しは黙ったらどうなんだ!?」
《申し訳ありませんが、この状況でその命令は受け入れかねます。
 今は軍曹殿の仰るように敵陣の只中であり、状況突破の為に管制機能をフル稼働中です。
 その一切をカットしてよいというのなら、黙りますが》
「…………この任務が終わったら、今度と言う今度こそ解体してやる」
《毎度の事ですが軍曹、その発言はまず権限を得てからの方がよろしいかと――――――》

>>72

アルの減らず口は、そこで途切れた。
俺達の眼前に、多数のミサイルが白煙を上げつつ迫って来ていたからだ。

《接近警報、ミサイル多数!》
「ちっ!」
舌打ちの直後、即座に応射のショット・キャノンをミサイル群に向けて、フルオートで発射。
広範囲に拡散するOO-HESH(粘着榴散弾)が蝗の如く迫るミサイルの雨のことごとくを迎撃し、
目の前が一瞬、炸裂する白に塗りつぶされる。

そういえば、同じタイミングで着地したマオ達も狙われた可能性がある。まさかとは思うが……
「―――ウルズ2および6!無事かっ!?」
『こちらウルズ2、損傷は迎撃時の余波によるもので軽微。……ったく、無駄弾使わせんじゃないわよ!』
『ウルズ6だ。同じく機体に問題なし……ただし火器一基全損。
 ちきしょう、ライフル一丁駄目にしちまった』

爆煙が晴れたそのときに入ってきた通信に、僚機のM9ニ体のいる位置に目をやると―――
クルツ機は苦々しげな様子で、背中にマウントしていた76ミリ狙撃ライフル砲を取り外して構える。
マオ機も苛々した様子で、手荒にアサルトライフルの弾倉を排出している。どうやら本当に問題はないようだ。
安堵しつつ、手早くこちらも散弾砲の弾倉を取り替えたその矢先―――

《―――警告、敵機体より数基の熱源反応射出!》
先刻のミサイルの発射元――バーチャロイド・グリスボックが、今度は不意にナパームをこちらに飛ばして来た。
ニ方向に射出された数個のナパームの爆炎は、ちょうど俺と二機のM9を遮断する形となった。
さらに畳み掛ける様に発射された大型ミサイルが分裂して小ミサイルの群と化し、こちらへ再度押し寄せる。

74 名前:相良宗介 ◆URUZ7h3pLo :03/11/07 17:39

>>72

爆焔によって退路を立たれ、さらに前方からの十数発のミサイルの雨にさらされる。
このまま行けば、今ここに立つアーム・スレイブは数秒後に圧倒的な火力に
押し潰され、跡形も残らず吹き飛ぶだろう―――


……ただし、それが俺とこのアーバレストでなければの話だったが。


「――アル!こういう状況だ、分かるな!?……使うぞ、あれを!」
《……イエス・サージェント!》

返事と共に得体の知れぬ、しかし確実に馴染んで来たあの感覚が蘇るのを確認すると、
即座に左腕内蔵のワイヤーガンを発射する。
凄まじい速度で撃ち出された鉤付きのアンカーがワイヤーの尾を引きつつ、弾幕の向こうに
遠ざかるVRの胴体に食らいつくのを視認した瞬間、今度はその根元――左腕のウィンチの出力を最大に。

《軍曹殿、この戦法は―――!?》
「黙って手伝え!」

――VRはそもそも規格からしてASより大型であり、重量もそれに違わずかなり重い。
さらに言うと、グリスボックはその中でも重量級に数えられるVRだ。
加えて、ワイヤーフックを撃ち込まれたグリスボックは後退中である。
自然、綱引きをすればアーバレストが引っ張られるのは自明の理であり―――

「お…ぉぉおおおおっ!!」
左腕のワイヤーからの反動が機体にかかる瞬間、俺は機体を前方に向け、大きく跳躍させた。
高出力のモーターが、ワイヤーを高速で巻き取る。
敵VRに引っ張られている事と、俺がそれに逆らわず跳んだ事もあり、
アーバレストは凄まじい速度で宙を舞い、標的に向かって引き寄せられて行く。
自然、ミサイルの雨に飛び込む事となったが……ラムダ・ドライバによって生まれた不可視の力場の壁が、
それらのもたらす衝撃や爆炎の一切を遮断。
ミサイルの壁を強行突破し―――白のASは鋼線をガイドに、一発の砲弾と化して敵機に肉迫する!

「―――終わりだ」
両の足でそのまま敵機の胸板に“着地”し、散弾砲の銃口を押し付け――引き金を引く。
零距離で放たれた特殊弾頭徹甲弾は、虹色の閃光と共に、重砲撃型VRの胴体を粉々に吹き飛ばした。

《――ウルトラCの多い日ですが、今回の戦法はその中でも特筆に値するものでした。
 全く、ナンセンスにも程があります……『無茶をする』とは誰の言葉でしたでしょうか》
「……そろそろ大概にしろ、アル。まだ任務は継続中だぞ」
再度機体を着地させつつ、口の減らない相棒の言葉を、俺はそう言ってたしなめた。

75 名前:テレサ・テスタロッサ ◆MytHRIlPXY :03/11/07 17:52

>>38-74

モニターの映像を、真剣な面持ちで見続ける。
一機当千の機械仕掛けの戦士たちが、敵部隊の中核を成していた無人機を見る間に掃討していく。


その神速を以て二機のVFと一機のゴーストを屠りさった銀の流星、アルテリオン。
骸骨じみた機械の射手を、異星の兵士をあるいは引き裂き、また打ち砕いていく凶暴な魔術師、ワーロック。
その白銀の機体を縦横無尽に閃かせ、舞を舞うように敵機に死をもたらしていく、絢爛舞踏の士魂号。
その名に恥じぬ闇影のような疾さで、こちらは前者とは違う趣で舞うように敵を蹂躙する剣舞の踊り手、闇姫。
天から舞い降りて敵を粉砕し、蹴散らし、そして焼き尽くす―――神に通ずる威容を備えた、三体のギア。

そして自分の一番よく知り馴染んだ、あの純白のAS―――ARX−7<アーバレスト>が
最後に残ったVRを常識はずれの戦法で撃破したのを見届け、テッサは胸をなでおろした。
一番自分に馴染みのある人物が危機に直面し、それを打破してのけたという事もあり、安堵のため息をつく。

だが、まだこれで今回の演習―――否、任務が終わったわけではない。
まだ最後方に鎮座しているDC開発の最強機体……ヴァルシオンが残っているのだ。
即座に表情を引き締めると、少女司令官ははっきりした声で、再度号令を飛ばした。

「敵防衛用無人機部隊・全機の沈黙及び撃破を確認しました。これより戦闘を最終段階に移行します。
 ―――味方の全機体は、敵重機動アーマードモジュールに一斉攻撃を!」

76 名前:ドクターウェスト@ロボ乗りスレ:03/11/07 22:31

チ「さ〜て、そろそろステップ4!最終ターゲットです!
  機体はヴァルシオン改!え〜と資料によれば、、、って何も書いてないやん」

ウ「刃流示怨であると!?」

チ「なんや、あんた知っとんのかい?んじゃ説明頼むわ」



 〜刃流示怨〜

  宇宙の彼方、今はもう滅びてしまったバイオ星の反バイオ同盟によって作られた
 巨大ロボット。生命体、非生命体の区別なく、バイオ粒子反応を持つモノの破壊、
 抹殺のみを目的として設計された『バイオハンター・シルバ』とともに運用される。
  武装は巨大な剣『バルジオンメーザー』、胸部から発射される『反バイオ粒子砲』
  なお予断であるが、かの映画スター『ブルース・リー』がバルジオンの標的たる
 バイオ粒子反応をもつ戦闘集団『バイオマン』の先代『ブルースリー』であったという
 事実はあまり知られていない。

  民明書房刊『ピーボ君危機一髪!』より


チ「いや、ヴァルシオンやて。バルジオンじゃなくて」

ウ「・・・おや?」

チ「そういやあんた、人が名前間違えたのをめっちゃ笑っとったな?」

ウ「・・・・」

チ「 笑 っ た や ん な ? 」

ウ「は、ハヒ、、、」

チ「確かウチの事を凡人眼鏡とかぬかしたよな?
  と、いうことはアレか?アンタも凡人と同じって事やんな?」

ウ「・・・」

チ「な?そうやんな?
  なんやアンタ自分のこと天才とぬかしとったけどやっぱ只の○○○○やん!
  ようそれで人のこと凡人眼鏡とか言えたな?
  あ?どうしたん?なんか言いたいんか?
  言えへんよなあ、自分間違えたもんなあ」

ウ(お、おのれ!好き勝手に言いおって!?
  バ、、、  バ ル ジ オ ン さ え あ れ ば !!!)



77 名前:Jaguarandi:03/11/07 23:36

うふふ……

なんだか
  おもしろそうなこと
    やってるじゃない


みんな
  いっしょうけんめい
    たたかってるね


…けど

まだひとりも
  しんでないよ

それじゃあ
  もりあがりに
    かけるとおもわない?


せっかくたたかってるんだからさぁ


もっと

 もっともっと

  もっともっともっと

       ほんきでころしあおうよ?


…ねぇ
  わかるよね
    わたしのいってること



だからさぁ……


  いまからわたしが

  みーんなみーんな



     こ ろ し に い っ て あ げ る よ ! !





78 名前:ヴァルシオン改:03/11/08 00:07

>>76 >>77

 これが空に浮かぶのかと、航空機を見慣れた現代人でも嘆じるだろう。
 それほどの巨躯だ。
 尤も巨大さなら、サイズはやや劣るがこの場にある機体の幾つかも大差無いと云える。
 深い蒼に塗られたその機体だけが畏怖を想起させ得るのは、それが持つ存在感ゆえだった。
 威厳と云っても良い。居る場所即ち王座、とでも宣言しているかのような――誰しもが圧倒的な
力を感じる筈だ。

 一見鈍重とみえるボディ、高々と天を睨む衝角、そして手に掲げた巨大刀。
 DC(ディバイン・クルセイダーズ)が誇る究極のスーパー・マシンナリー・ヒューマノイド――。
 ヴァルシオンと云う。その改修型であった。
 演習用に設定された他と同様、無人機だ。まかり間違っても「バイオ粒子反応あり、破壊!」
とか口走る銀色のロボガンマンなどコクピットにはいない。いないったら。


 唐突に、ヴァルシオン改の早期警戒システムは反応を拾った。
 反応だけである。広域レーダーでも目標は引っ掛かっていない。
 この空域には対象となっている演習機以外いない筈で、事実そうなのに、だ。
 不可解な状況を解析する為、ヴァルシオンの戦術コンピューターはモニタリングを続ける。

 導き出される解答は悉く“UNKNOWN”であった。

79 名前:Jaguarandi:03/11/08 00:09

その時、空と大地が震撼した。

にわかに黒雲が沸き起こり、虚空を無数の稲妻が駆け巡る。
それらは空中の或る一点に集中し、スパークを奔らせながら巨大な光球を形成していく。
予期せぬ事態の急変に誰もが驚嘆の眼差しを向ける中、
光球は爆発的な勢いで膨張、成長し、やがて臨界に到達する。
それはビッグバンもかくや、と言わんばかりの畏るべき光景であった。

視界の全てを白一色に染めあげる閃光がモニターを灼き―――

可聴域を上下に大幅に逸脱した轟音がセンサーを絶叫させ―――

衝撃と熱量がその場に存在するあらゆる物体を舐めつくした。


そしてモニターが機能を回復したとき、誰もが己の目を疑った。
目の前に傲然と聳え立つのは形を持った絶望。
巨大な山塊にも似た異様な、それでいてどこか神々しいシルエットと
その中で明滅を繰り返す幾つもの不吉な輝き。
発せられる膨大な殺気は、それに触れるものを容赦なく呑み込み
例外なく恐怖の渦とそれに内包されたある種の陶酔の域へと導くかのようであった。
降りしきる雷鳴の中、浮かび上がる巨影は周囲を睨倪し、咆哮した。


それは殺意の奔流であり、飽くなき破壊への希求であった。
死への誘いであり、純粋な滅びへの指向であった。
狂気の波動であり、無垢なる凶悪の具象であった。


直接意識を貫く衝撃は、暴風雨となって頭蓋の中を荒れ狂う。
精神の最奥を揺さぶられ、自己の意識を吹き散らさんとする波涛に揉まれる中、
何処からか発せられた声なき声が脳髄を貫く。
それは言語を超越した閾域下のうねり。
どこか幼さを感じさせるその声は「……ヤガランデ!」と叫んでいた。


80 名前:ヴァルシオン改:03/11/08 00:15

>>79

 異様な雷鳴が吹きすぎて、後。

 揺るがず空中にあるヴァルシオンのカメラ・アイの中に、通常機動時にはあり得ぬ光が灯った。
 小刻みに機体が震動し始める。素人目にも判る異常さだ。
 センサー内を波打って横切る朱線もまた激しさを増し、遂には全てが紅に染まった。

 全てのメモリーで明滅する“Jagarandi”の緋文字。それは不快なエラー音と共に侵食を続け、
果ても無く続いて列を為す。


 “Jagarandi Jagarandi Jagarandi……”


 唐突にヴァルシオンは止まった。
 赤いままのカメラ・アイが標的機を再認識。
 全てに優先して選択されたコマンドが、登録された全ての言語で繰り返し発せられる。

 左腕が持ち上がった。上腕部のカバーがスライド。
 収納されていた砲身が突き出た。
 標的機を睨む筒先に眩い光点が生じる。光は集束を重ねて膨れ上がったかと思うと、奔流となり
放たれる。
 狂える王は授かった使命を果たす為、行動を開始したのだ。
 メガフラッシャービームを発射しつつ、外見上は黙したままのヴァルシオンは全機構を以って
絶叫していた。

 破壊、と。一切の破壊、と。

81 名前:ミミー・サルペン ◆xL2SHBVDPk :03/11/08 00:17

>>79

「……!?」

突如出現したアンノウン、画面に映し出されたそいつの姿を目にして私は声を失った。
VRのフォーマットを踏まえながらも既存のどのVRとも異なる異様な形状。
その影は映像を通してさえ、見る者に寒気を覚えさせる圧倒的な威圧感を伴って
モニターの中に君臨している。
ヤガランデだ。 間違いない。
アース-クリスタルを擁する南米の禁制領域から遠く離れた
この地でアレが実体化するとは!
しかもそのサイズはこれまでに報告されたどの例よりも巨大。
私の知る限り、ヤガランデが禁制領域外に出現したことも、
実体化したものがこれほどのサイズであったこともなかったはず。
更に時を同じくして告げられるアグレッサーの暴走。
状況は限り無く最悪に近い… 否、最悪そのものだ。


………………


司令部は蜂の巣をひっくり返したような騒ぎとなっていた。
怒号が飛び交い、混乱が場を支配する中で、テスタロッサ大佐以下首脳部は
それでも冷静に対応を協議している。(DNAにはおよそ期待できないことだ。)
本来ならここで私がヤガランデについて説明し、直ちに総攻撃に移るよう具申
するのが正しい選択なのだろう。
そして聡明な大佐とスタッフ達は私の具申を即座に実行することに疑いの余地はない。

だが、それでは遅いのだ。
ことは最早一秒を争う事態に発展している。
私は意を決すると大佐のデスクに歩を進め、そこに置かれていた通話器をひったくり、
独断で攻撃命令を発した。

「司令部よりエマージェンシー! 演習は中止、これは実戦です!
 航空隊は暴走したアグレッサーへの攻撃を続行してください。
 ただし地上からの支援はありません。 独力で目標を破壊して!
 そして地上部隊は攻撃目標を変更、全機、ただちにそのアンノウン…ヤガランデを
 全力で攻撃、撃滅してください!」

通話器を放り出し、振り返るとそこには信じられないといった面持ちの
テスタロッサ大佐がいた。

「申し訳ありません大佐! 釈明と処罰は後程!!」

大佐達が唖然と見つめる中、駆け足で司令室を飛び出してハンガーへと向かう。
今は少しでも戦力が必要だ。 旧式の私のライデンといえど、戦力の足しくらいには
なるだろう。
処分のことは生還してから考えればいい。


82 名前:テレサ・テスタロッサ ◆MytHRIlPXY :03/11/08 00:22

>>78

わたしの号令と共に、累々たる無人機の残骸の向こうから、一機の巨大AM――
ディバイン・クルセイダーズ創始者ビアン=ゾルダークが生み出した
最高傑作と名高い重機動人型兵器、ヴァルシオンが飛び出してくる。手はず通りに。

……しかし、何か様子が変だ。
一見しておかしな動きはしていない―――はずなのだが、一体この違和感はなんだ?
名状しがたい奇妙な感じを覚えつつ、
モニターを意識を戻したその次の瞬間――――――

>>79

           “それ”は現れた。


まず初めに、何もない空間に巻き起こったスパーク。
それに呼応するように、いきなりモニターの向こうが、唐突に夜を迎えたかの如く暗くなる。
虚空に走った電流の帯は、まるで核を得たように少しずつ成長し、雷球と化してさらに膨張していく。
それに呼応するように大きく、高くなるスピーカーからのハム音が耳を虐げ――――

最後に、目と耳を潰そうとするかのような閃光と爆音が、場を支配した。
そしてあの不快な違和感も、それと同時に膨れ上がり――――


視界と聴覚が元に戻った時、目の前にあったのは……これまで一度として見た事のない、暗配色の巨人。
形状はバーチャロイドによく似ていたが、あんなVRはわたしの知る限りどこにも存在しない。
そして――――何よりも強くその姿から感じられる、凶々しいまでのプレッシャー。

>>80
「……おい!一体なんなんだ、あれは!?」
「大変です…ヴァルシオンにも異常発生!こちらの管制及びモニターを一切受け付けません!」「何ぃっ!?」
予定外のアクシデントに、司令部は上を下への混乱に陥ろうとしていた。

まさか、この異変もあの機体のせい?
そう思った矢先――――――き、ききkっ、きぃ?。
こ/・・・この、/体の底から来る様な、寒気と…悪寒、
そして・この思考の?/乱れ方は・・・・・・・・・まさか!

「落ち着け!まずは冷静にあの機体への対処を――――」
皆を鎮めようとするマデューカス中佐の声を聞きながら、わたしの意識はどんどん遠ざかり―――

83 名前:テレサ・テスタロッサ ◆MytHRIlPXY :03/11/08 00:25

>>77-82

脳裏に浮かぶ、発見されるはずの無い……この世にあるはずのない知識のイメージ。
わたしに知識の代償として、意識を要求し侵食しようとする、“ささやき声”。
“囁かれた者”―――ウィスパード能力を有する者のみが垣間見る世界に、今のわたしはいる。
ただし、今わたしに囁く声は、今までのどの“声”よりも、禍々しさに満たされていて―――――

           タスケテ
    たい              喜悦
ころ     気持ちが…     破壊  V         もっとアバレナヨォ
  し                クリスタル
 充足     死  楽しいたのしいたのしいタノシイたのしい  殺
    衝       どす黒いものに                       戮
      動        コワシタイ  /塗りつぶされて――


コワセタノシイ喜悦充足殺戮快楽黒い感情死を与えたい激情暴力衝動恐い気持ちイ――――
だからね―――――

・・・・だめ。

             いまからわたしが
―――そんなこと・・・・・・いけない。
  みーんなみーんな

    こ ろ し に い っ て あ げ る よ ! !

「――――だめ!!やめなさいっ!!!」

その「黒い意識」を叱咤する一声で、わたしの意識は現実に戻る。
意識朦朧としていたわたしをよそに協議をつづけていた士官たちが、
一瞬あっけに取られたように、わたしを見つめている。
その直後―――

「申し訳ありません大佐! 釈明と処罰は後程!!」
わたしの声を勘違いしたのだろうか。
目の前にいたサルペン准尉はわたしにそう言って一礼すると、司令部を駆け出していった。

「一体何をするつもりだというのだ、彼女は?
 ―――――艦長、見ての通り事態は急を要しております。ご指示を」
横に控えていたマデューカス中佐が、わたしに言う。

「あの素性不明の謎の巨大VRモドキの出現と同時に、最終ターゲットのヴァルシオンが暴走。
 現在はまだ動きを見せていませんが、両者とも放置できないと言う点においては同じです。大佐殿、ご命令を」
状況を再確認させてくれる、カリーニン少佐の声。

―――無論、言うまでもない。
あの忌まわしいほどに黒いささやき声・・・・・
介入意識の主であろう、あの機体―――――ヤガランデ。
あれは、いてはいけないものだ。
ウィスパードであるなし以前の…ヒトとしての本能の部分がわたしに、それは居るべき存在でないと強く警鐘を鳴らす。
だから――――

わたしは意を決すると声を張り上げ、ここに居るスタッフ―――いや、パイロットも含めた全ての仲間に向けて告げる。

「―――HQ、アンサズより本演習に参加する全機体へ!
 この指令は演習ではありません、実際に今緊急事態が起きています!
 あの昏い色の素性不明機は、この世界に在ってはいけないものです!
 戦闘可能な機体は全力を持って所属不明機、およびそれに暴走させられたヴァルシオンを撃破してくださいっ!!」

84 名前:アズラエル ◆Z3azraelx2 :03/11/08 00:31

>>83
「ヴァルシオン改、暴走」

その報は「ヤガランデ」に向かって進んでいる私のワーロックにも届いた。

「……反乱組織の兵器などを再利用などするからだ!」

そう吐き捨ててみても何も始まらない。
ヘリ形態への変形が可能な「ヘリオン」ならともかくバルカンの切れたワーロックでは
空中の相手に対して何も出来ないのは明白だからだ。

しかし私は心配などしていない。

ユグドラシルチーム、アルテリオン、デモンベイン&デモンペイン……

皆、自分の信じた道の為に戦い続けている者達。
たかが無人兵器に負ける事は無いだろう。

今は「ヤガランデ」の方に精神を集中すべきだ。


……
………
見えた。
あれが、「ヤガランデ」……。
橙色と黒の配色をした巨体。
私は入力していないし、遭遇した事も無い筈だがアナライズデータが
登録されていた謎の機体。

それを発見した瞬間、奇妙な幻視を感じた。


……強大な殺意、悲しみ、憎悪。

――人間の愚かさが産んだ呪われた神。

……巨大な砲口。それは地球へと向けられている。

――全ての生命を否定する存在。

……それと、護りたい何かを守る為に戦う人間。

――鉢巻の少年、老戦士、少女、女軍人、兄妹、ジャンク屋、レジスタンス、姫と護衛、サイボーグ。

……悪意をその身に宿したワーロック。

――これが、本当のワーロック?

違う。
違う!
違う違う違う違う!

ワーロックは、そんな事の為に造られたのではない!

幻視から醒めた私は、モニターに映る「ヤガランデ」を睨む。


85 名前:瀬戸口隆之 ◆o2ONiKid.s :03/11/08 01:32

>>83

「どう言う事だ?今日は一日中晴れのはずだぞ?」

黒雲が沸き起こり、無数の稲妻が走り出した事に気付いた瀬戸口。
その様な事などお構い無しに状況は目まぐるしく変化していく。
稲妻が一時的に収まり、スパークを迸らせながら巨大な光球を形成をしていく様を見上げる一同の中、
瀬戸口の身体に異変が起こり始めた。

「痛ぅ…」

突然の頭痛。風邪のそれではない、もっと不快ないつか感じたような鈍い痛み。
その間にもスパークはさらに爆発的な勢いで膨張、成長し、ビックバンの様な大爆発を起こす。

閃光がモニターを焼き、衝撃と熱量に機体が揺さぶられ、センサーが全てイカレた。
その中で確かに聞いたのだ、聞こえるはずの無い声を、
「……ヤガランデ!」と叫ぶ声を。

機能障害から立ち直ったモニターが目の前の光景を映し出す。
そこには巨大な鉄の塊とも思える見た事も無い機体が鎮座していた。
どこか神々しくも思えるシルエットをしたそれからはその造形とは裏腹に
明らかに真逆の気配を漂わせている。

それは殺意であり、絶望であり、滅びである。
狂気を身に纏わせた”敵”が目の前に居る。
こいつだけはこの世界に存在させてはならない。
この時俺はそう思った。

しかし異変はこの程度では収まらなかった。
最終目標であるヴァルシオン改の様子がおかしい。

そう勘付いた時、電波の異常により雑音交じりとなった通信機からテッサの声が聞こえた。

『アン…より…全機…へ…
 この、指れ…演習…ません、実際…緊急…きて…ます…
 あの……不明機、は…在っては…けない…です…
 戦闘…機体は…全力をもっ…所属不明機…暴走…ヴァルシオン…撃破して…さい…』

「やはりイレギュラーか…踊る人形了解!全力で敵を殲滅する!」

86 名前:ロジャー・スミス&R・ドロシー・ウェインライト ◆BIGO8lqz1o :03/11/08 01:36

>>79
コクピットのモニターから警告音が放たれた。
同時に、レーダーには突如、見慣れない一体の機体が確認された。

「なっ…何だ、こいつは!?」

私の目の前には、物凄い殺気を立ててその狂気をさらけだす鉄の怪物が立っていた。
その咆哮からも、そしてほぼビッグオーと同サイズとも言えるであろうか、
その巨大な容姿からもこの存在が『おぞましいもの』であるという事は確認できる。

あり得ない。さっきまで何も無かった場所だ。
よもや、そこに「敵」が居るなどと誰が信じようか。
だが、残念な事にその思いは目の前の現実によって打ち消されたのだ。

「…なるほど、そういう事か。来客にしてはあまりにも突然じゃないか」

ありえない光景というものは、いつだって不意に訪れるものだ。
例えそれがいかなる時、いかなる場所であろうとも、それは否定する事が出来ないだろう。
どうやら他の者も、その「存在」を確認し、警戒体制に入っているらしい。少なくともこれは幻覚では無いという事か。
『ヤガランデ』…その咆哮は、自らがそう名乗っている様にも聞こえた。

「不粋な客だな、それではパーティに参加しようという姿勢には見えないぞ。
最も、パーティを滅茶苦茶にしようというのならば、この私が黙ってはいないがね」

そうして、私もまた警戒態勢を取る。
この不粋な怪物に対し油断はならない、油断してはいけない。
その時、私の中の理性が、そう自分自身にささやいている様にも思えた。


87 名前:ミミー・サルペン ◆xL2SHBVDPk :03/11/08 01:38

>>81
パイロットスーツに袖を通しながら足早にハンガーに駆け込むと
私は自分のライデン207号機(旧式の第一世代型だ―――)に飛び乗った。
即座にM.S.B.S.を起動、精神コネクト/イミュレーション開始時の
あの独特の吸い込まれるような感覚に耐えつつ、機体に異常がないことを確認する。
モニターに流れるオールグリーンの表示を横目にしたとき、
私は既に発進コースへと機体を踏み出していた。


(起動時に機体の安全を確認せずに駆動させるのは無論、重大な軍規違反である。
 機体の暴走事故はもとより、最悪の場合M.S.B.S.の暴発現象によって
 精神が「もっていかれて」しまう危険があった!)


ハンガー脇のラックから専用の巨大な二連装ビームランチャー――フラットランチャーを
取り上げると207号機は整備員達の静止を振り切って発進、青白い放熱ブラストの尾を
引きながらフィールドへと疾駆する。
ヤガランデが出現したエリア51までは司令部から約30km。
事態が一刻を争う今、適当なトランスポーターを調達するわけにも、戦闘モードを切って
低速な通常移動モードにするわけにもいかず、ライデンは戦闘体勢を保ったままで
猛然と目標地点へと向かって突っ走る。


(VRは優れた機動兵器ではあるが、長距離の連続走行は耐久面と補給面から
 好ましいことではない。
 また、パイロットの精神と機体をコネクトさせるM.S.B.S.の性質上、これを
 起動したままでの長時間の作戦行動はパイロットに重度の負担を強いることになる。
 このような無茶な行動は特戦隊のパイロットだからこそ可能なことなのだ。)


「コールSHBVD207、こちらはサルペンよ。 誰でもいいわ、聞こえたら返事をして!」

「ZAZA――ZA―」

応答はなし。
ヤガランデ出現に伴う大規模な空電と地形が通信を阻害している。
この207号機は指揮官用に通信機能を強化してあるというのに!
基地にあるような大出力の設備でもないかぎり、交信は難しいようだ。
私は声にならない悪態をつくと機体を再加速させた。
 

88 名前:フロスティ・フェイ@ドレスアップ ◆COLDmEjybY :03/11/08 01:45

>>79
「なんだ、アレは?」

突如出現した謎の機体へと、闇姫を身構えさせる。
あの機体…バーチャロイド系統にも見えるが―――違う。
アレは何かが、根本的に違う”モノ”だ。

そう感じているのは、私だけではないらしい。
瀬戸口の士魂号も、アズラエルのワーロックも、さらにミスリル・チームのASとロジャーのビッグオーも。
…本来の仮想敵であるはずのヴァルシオンではなく、その正体不明機に向き直っていた。

>>83
「…不測の事態らしいな」

テッサの緊迫した声がこの異変の重大さを物語っている。

ふっ…
面白いじゃないか。
これまでの相手は、どれほど高性能だろうと所詮は無人機。
人の意思の介在しないものなど、取るに足らない相手だった。

だが、アレからは確かな意思の存在を感じ取ることができる。
それは ”人” の意思ではないのかもしれないが―――
意思のある相手と戦ってこそ、己の限界を超えることができるというものだ。

「こちら闇姫。了解した、これより所属不明機との交戦に入る!」



89 名前:Jaguarandi:03/11/08 01:54

大地に屹立する破壊の権化は傲然と眼前の供物達を見下ろしていた。
例えるものがあるとすれば、それは魅入られ、動けなくなった獲物を前にして
鎌首をもたげる毒蛇のようでもあったろうか。
そう考えるとヤガランデの巨躯の各所で明滅を続ける光点は、チロチロと出し入れされる
毒蛇の赤い舌のようにも見えてくる。
暫し、獲物達を見据えた後、破壊の王は自らの手で捧げられた祝宴の幕を開くことにした。

巨大な両腕がゆるゆると持ち上がり、居並ぶ生け贄達へと差し向けられる。
その先端が正しく獲物の列を捉えたとき、再び咆哮の思念が放たれた。
物心の分け隔てなく指向されるその殺意は見る者全ての認識を容赦なく蝕み、侵していく。

消滅の意志が右腕の先端より光弾となって現象化し、供儀台の贄を喰らうべく放たれる。
左腕から発せられた破壊への希求が巨大な波動となり、炸裂して大地を嘗め焦がす。

抉られた大地が、引き裂かれた空が苦鳴をあげ、悶絶する。
捧げられた生け贄のみならず、その供儀台たる天地をも貪欲に喰らうのが
この破壊神の流儀。
刃向かうもの、立ち竦むもの、背を向けるもの、意志なくただあるもの、
その全てに対しこの神は平等に死を賜るのだから。
周囲を彩る紅蓮の炎は破壊と殺戮の司による裁きの劫火でもあったろうか。


90 名前:相良宗介 ◆URUZ7h3pLo :03/11/08 02:02

>>79、>>83、>>89

突然、まるで夜でも来たかのように暗くなる空。
何の前触れも無く出現した異常なプラズマ。
高まっていく、耳障りなハム音。
そして――――目と耳を激しく嬲る、爆音と閃光。

この世の終わりでも告げようかといわんばかりの光景の後、そこにあったのは――― 一体の巨人であった。
外見は、大体バーチャロイドに似通ったものを2倍に引き伸ばしたようなものだ。
しかし………あの機体から吹き付けるような妙な威圧感は、まったく感じた事が無い異質なもの。

《かつて無いほどの異常なオムニ・スフィア接続反応!あの所属不明機からです》
・・・・アルに言われるまでもない。
ヴェノムの毒々しさも、ベヘモスの凶悪な重圧感も、こいつの凶悪過ぎる気配を表現するにはまだ足りない――――!

その時だった。通信機から聞こえるノイズ交じりの声に、意識を取られたのは。
『――ザザ―Q、アンサ…より本演習・・・…全機体へ!
 …・・・演・・・・・・・りません、実―――緊急…』

これは・・・大佐殿の声か!?
「アル、もっと感度を上げろ!」
《はい、軍曹殿。ノイズが激しいので完全には不可能ですが、試してみます》

『――――あの昏い・・・・・素性不明機は、この世界に在ってはいけないものです!
 戦闘可能……は全力を持って所属不明機、および…に暴走させられたヴァルシ・・・・・撃破してくださいっ!!』

アルの言葉とともに、どうにか音声は明瞭さを増した。
そして―――告げられた状況は、最悪の更に一枚上の状況。

「ウルズ2、6!聞こえたか!?」
『ああ・・・・・・・・・しかし、何てこった』
『ぶつくさ言っててもどーにもなんないわ、って・・・・・・・・・来るわよ!?』

マオの声と同時に、俺達は反射的にその場から飛び退っていた。

その瞬間視認できたのは・・・・・・・・・巨大な、そして当たれば絶対に五体満足では済まないであろう光の塊。
一瞬後――――三機のASが立っていた場所は、冗談のように大きく吹き飛び、クレーターにその姿を変えていた。

『結局・・・・・・・やるしかないって事か!ウルズ6了解!』
『ええ、まったく疲れる仕事よね・・・・・・ウルズ2、了解!』
二人が先ほどの大佐の指令に、少し遅れた返事を返す。

《・・・・・・軍曹殿》
「そうだな・・・・・・まずはアレの撃破、それからだ――――
 ウルズ7、了解!」

大きく息を吸って呼吸を整え、ショット・キャノンを構え直し――――気合を入れなおして、俺も応答を返した。

91 名前:瀬戸口隆之 ◆o2ONiKid.s :03/11/08 02:13

>>89

次の瞬間、目に飛び込んできたのは、
両の腕をゆっくりと持ち上げ、銃口と見られる部分をこちらに向けるヤガランデの姿。
燐光が銃口に収束されていく。

「皆!避けろ!」

咄嗟に左に飛ぶ。元居た場所を巨大なエネルギー弾が抉り、焼き払っていく。
避けていなければ今頃はお陀仏だった…。

しかし安心したのも束の間、敵は休む事無くエネルギー弾を放っていく。
悪意より放たれる破滅への光は地を抉り、空を裂く。
本来の目標である自分達以外にも全てを破壊するかのごとく光は皆、貪っていった。
それは、地獄絵図であった。

レーザーに焼き払われて、焦土と化す演習場。
次々と放たれる光によって戦場が満たされていく。
激しく上下するコックピットで瀬戸口は言う。

「くそっ、何だって言うんだ!悪しき夢…なのか!?」

そう言うともう何発目だかわからない破壊の光を避けた。

92 名前:ロジャー・スミス&R・ドロシー・ウェインライト ◆BIGO8lqz1o :03/11/08 02:18

>>89
一息入れる間もなく、あり得ない場所に現れた突然の来客から豪腕の持ち主に向けて光弾が放たれた。

「なっ!?熱源反応だと!?意外と積極的じゃないか…くそっ!!」

とっさに鉄の腕を前に構え、防御体制を取る。
検討もつかなかった場所から放たれた攻撃はビッグオーの腕に弾かれたものの、
その衝撃は普段他のメガデウスからもらう攻撃の威力と大差は無かった。
大きな衝撃に、「大いなるO」の体が揺れる。

「ぐぅっ、何て火力なんだ!こんな攻撃を連続で食らったら、
幾らビッグオーでも耐えきれる訳がない!!」

だが、この様な状況であるにも関わらずドロシーは冷静沈着だ。
まあ、元々その様に作られたので仕方が無いと言えばそうなのだが。
すました顔で彼女が語りかける。

「…どうするの、ロジャー。相手は手強いみたいよ、反撃はしないの?」

考えてみれば、彼女の言う事は一般的な意見でもある。
そして、私に何かを気付かせる一言となり得る時だって存在するのだ。

「そうだな、やられっぱなしでは交渉人の肩書きがすたるというものだ。
向こうがそう来るのなら、こちらもそれに応える必要がある!」

そう言って体制を立て直す。
まだやられた訳ではない、反撃の手段は幾らでもある。
さて---問題はどうやって『道』を切り開くか、だ。

93 名前:フロスティ・フェイ@ドレスアップ ◆COLDmEjybY :03/11/08 02:33

VSヤガランテ


亜音速機動から、一瞬で超音速機動へ移行。
機体を横滑りさせるように、ステップさせる。
たった今まで”闇姫”の存在していた空間を、龍の雷撃(ブレス)にも匹敵する光の本流が襲った。

直撃を受ければ”闇姫”は跡形もなく蒸発してしまうだろう。
だが私の―――常人の7倍の反応速度を持つよう、遺伝子書き換えを施された ”DJ” としての能力を以ってすれば、相手の射撃時の挙動から弾道を
予測し回避することは造作もない。

問題は、”闇姫”の人工筋肉である、超伝導磁石の加熱状態だ。
これが一定以上になれば、超音速機動は不可能になる。
―――レッド・ゾーンまで、あと僅か。

ならば。

「短期決戦、あるのみ!」

再びコンマ数秒のタイミングでエネルギー弾をかわし、敵機に肉薄する。
超音速で振るわれた、金剛石皮膜のカタナがその胴体を捉え―――
カタナは、粉々に砕け散った。
金剛石皮膜は硬いが脆い。
しかし、こうも簡単に砕けるものでもないはずだ。

「こいつっ。なんて装甲なんだ!?」

残る得物は、機関砲を始めとする隠し武器群。
しかし、これはあくまで不意を突く為のものであり、カタナの斬撃をも弾く装甲に通じるものではない。
ロスト・アーツは、この図体の相手に振るえるほどには、私は技に熟練していない。

一端、離れるべきか。しかし……

その僅かな躊躇が、大きな隙となった―――

94 名前:ミミー・サルペン ◆xL2SHBVDPk :03/11/08 02:38

>>87
戦域に到着した私の前には惨澹たる光景が広がっていた。
雷雲が立ちこめ、暗く、無気味に唸り続ける空の下、
地面には無数のクレーターが出現していた。
おそらくクレーターの中には熱で融解した岩盤がガラス化しているに違いない。
吹き寄せる熱波によっていたるところで潅木が炎上し、戦場に立つものたちの姿を
赤々と映し出している。
パ、パと断続的に視界に移る着弾の光点と足下から伝わってくる衝撃は
戦闘がいまだ続行中であることを伝えてくる。

「結局・・・・・・・やるしかないって事か!ウルズ6了解!」
「ええ、まったく疲れる仕事よね・・・・・・ウルズ2、了解!」

「くそっ、何だって……だ!悪しき夢…なのか!?」

通信機に入電。
この距離なら空電の影響も通信を断絶するにはいたっていないようだ。
私はコンソールのレーダーを確認、敵味方の位置と損耗状況を確認する。

結果はよい知らせが二つに悪い知らせが一つ。
前者はまずいまだ味方に死傷者が出ていないということ。 ヤガランデの出現から今までの
経過時間を考えるとこれは驚くべきことだ。
ここの部隊の練度は私の想像以上に高いものであるらしい。
味方としては非常に頼もしい連中と言えるだろう。
二つ目は私はヤガランデの側面に位置していること。
味方の支援には絶好のポジショニングである。

そして後者の悪い知らせ。
ヤガランデはなおも健在でその猛威を奮い続けている。
遠目からその巨大なシルエットの両肩に無数の光点が収束していくのが見えた。
これはまずい。 あの武装は……

「広範囲をカバーする光学兵器よ! みんな、散って!!」

私が通信機に絶叫するのと同時に、ヤガランデの両肩から無数の光芒が放たれた。
それは光の波涛となって味方の戦列を呑み込んでいく。


95 名前:アイビス・ダグラス&ツグミ・タカクラ ◆IBISu6AG36 :03/11/08 02:45

VS ヴァルシオン改
>>78
空中戦を制したあたしたちは演習最後の標的に向かう。

「ラスト・ターゲット、だよね?」
「ええ、相手は…ヴァルシオン改ね」

驚きに顔が固まる。

「ヴァ、ヴァルシオン改って…」
「総帥の作っていたスーパーロボットね。聞いてなかった?」

くすくすと笑いながら答えるツグミ。
…ブリーフィングには出てないって知ってるくせに。

>>80>>81>>82>>83

「ともかく、最後なんだから派手に…あら?」
「どうしたの?」

怪訝そうな声に振り返る。

「いえ、通信が…妨害されてる?」
「…どういう事?」

これはあくまで演習のはずだ。
そのはずなのに…

突然、通信が回復した。

『―――――習ではありません、実際に今緊急事態が起きています!
 あの昏い色の素性不明機は、この世界に在ってはいけないものです!
 戦闘可能な機体は全力を持って所属不明機、およびそれに暴走させられたヴァルシオンを撃破してくださいっ!!』

テッサの声が、あり得ないほどの緊迫感をもって響く。
ちょっと待ってよ。これって…

「…ヴァルシオン改が暴走してる…?」

さすがのツグミも、声が震えている。
当然だ。
元DCのあたしたちにとって、ヴァルシオンは畏怖と恐怖の象徴だ。
ビアン・ゾルダークという稀代の天才が創り上げた究極のスーパーロボット…それがヴァルシオンなのだ。

「でも…逃げるわけにはいかない、よね」

意を、決する。
そう、ここで退く事は出来ない。

「…ええ」
「なら…やるしかないっ」

スロットルアップ。
テスラ・ドライブが唸りをあげる。
…もう少しだけ頑張って、アルテリオン。
目指す敵は…狂機・ヴァルシオン改。

96 名前:フェイ&エリィ&バルト ◆8PXenoqsmM :03/11/08 02:50

VSヴァルシオン改

>>77-80 >>83

どくん――――

それは、演習の最終目標…ヴァルシオン改に向かっている最中に来た。
突然、フェイの身体の奥底から湧き上がってくる衝動。
何者かと同調する。共鳴する。反発する――――――
力への意志。破壊への意志。

「ェイ―――フェイ!!」
「どうした、最後の締めって時に」

エリィとバルト、二人の通信で、はっと正気に帰る。
気がつけば、ヴェルトールが若干、方向を外れていた。
制御がおざなりになっていたのだろう。
すぐにでも、すでに前方を進む二機に追いつかなければ。
だが、これは何か…まずい。
これは何か―――

「―――来るぞ!!」
「何が? ……っ!?」
「ん…、ぐっ、何だ…こいつは!?」

次の瞬間、エリィとバルトも感じた。
エーテル機関を介して伝わる。
爆発的な、絶対的な、昏い衝撃。
同時に前からも、来る。
目標機のいるべき位置から、伝わる。
それを一言で呼び表すなら。
――――殺意。


『―――――習ではありません、実際に今緊急事態が起きています!
 あの昏い色の素性不明機は、この世界に在ってはいけないものです!
 戦闘可能な機体は全力を持って所属不明機、およびそれに暴走させられたヴァルシオンを撃破してくださいっ!!』

響く通信。
つけたまま、忘れ去られたラジオのように。
茫然自失に陥った三人に…


「……招かれざる客かよ!!」

乾いた舌での舌打ち。
通信にようやく気付いたバルトは、
アンドヴァリを高速で旋回移動させる。

「フェイ、エリィ、固まってるとやばい!!
 射撃を分散させてしのぐぞ!!」
「了解!!」
「何が…何が来たっていうの!?」
「知るかよ!! おめーは右だ!!」

怒鳴って、痺れる感覚を誤魔化しつつ。
バルトは左寄りに蛇行を繰り返し、加速する。
遥か左の方向を疾るフェイと、少し遅れて右側に出て行くエリィを見守りながら。

―――ただ、攻撃の機会を伺う。

97 名前:アイビス・ダグラス&ツグミ・タカクラ ◆IBISu6AG36 :03/11/08 02:52

>>95>>96
「くっ、さすがに…固い」

幾度めかの攻撃。
だが、あの巨体相手にアルテリオンの兵装では役者不足もいいところだ。
動きを鈍らせるのが精一杯。

「アイビス、前ッ!」

ツグミが叫ぶ。
目の前には…巨大な剣。

「うわぁっ!?」

すんでで躱す。
そんな…接近戦用兵装が使えるほど近づいてはなかったのに。

「機動性も…かなりあるってことね」

そう。
あの巨体に加え、先ほど見せた機動性。
さすがは…究極っていうだけの事はある。

「とりあえず、時間を稼いで増援を待つしかないみたいね」
「だね…こっちに回れる人がいればいいけど」

…だが、泣き言を言っていても始まらない。
やるしか、ないんだから。

「グラビティ・ガイダンス、セットOK!」
「GGキャノン、ファイヤー!!」

機銃弾が掃射される。
だが、あの巨体に対しては、牽制程度にしかならないだろう…

98 名前:大十字九郎 ◆TSMAgIUS4A :03/11/08 02:55

VSヴァルシオン

>>80-83
 暴走・・・司令部のオペレーターから告げられた報告と指令は、事態がこれ以上もなく
悪化しているという証明ですらあった。

『飛行可能な機体で迎撃せよ、か。
 妾はむしろ、あのヤガランテとかいう代物の方が気になるが』
「っても、空中の方が割り当てが少ないんだ。俺達が行くしかねえだろうが。
 それに・・・戦ってるのは俺達だけじゃねえんだしよ」
『フ、汝がそう言うなら仕方あるまい。あの者達を信じ、我らは我らの役目を
果たすとしよう』

 機械仕掛けの神の中でそう言葉を交わし、魔術師と魔導書は意識を空へと
向ける。今や青い破壊神となったヴァルシオンを打ち倒すために、白き鬼械神は
再びその翼を広げた。

「行くぜ・・・シャンタク!」

 飛翔、上昇、疾駆――魔力の光が尾を引き、“魔を断つ剣”は空を翔る。



 ・・・その両足に同じようなシルエットがしがみついていることに気付くまで後十秒(予測


99 名前:ドクターウェスト@ロボ乗りスレ:03/11/08 02:57

>>98

VSヴァルシオン改

 暴走したヴァルシオン改を撃退せんと、彼女の愛する大十字九郎が乗る
デモンベインが空に飛び立とうとしている。

「あっ!ダーリン!?」

 追いかけたくてもデモンペインには飛行能力は無い。断鎖術式を使えばある程度
空中で動き回る事は可能であるが、しかしエネルギーの消費も激しく、高高度まで
たどり着くころには地面に激突するのみであろう。

「ちょ、ちょっと待つロボ!?」

 そう言ってはみても、デモンベインが止まる気配はまったくない。

「こうなったら、、、恋する乙女に不可能は無いロボ!!!」

 そう叫ぶとデモンベインが空中に飛び立つその瞬間、デモンペインをジャンプさせ、
デモンベインの両足をその手でつかませた。なにやらデモンベインから抗議の声が上がる。

「もう、ダーリンったらそんなに照れなくてもいいロボ♪」


 そのころ彼女の創造主たるドクターウェストは!?


ウ「ぬおおおおお!エルザァァァァァ!!!!
  その様な男について行った日にはどうなるかわかっているのであるか!?
  ああ!エルザがあの卑猥極まる触手に!?触手にぃぃぃぃぃぃ!?」
チ「ああ!もうなんでこいつはこう騒がしいんや?
  そんなに心配せんでも大丈夫やて!
  だいたい九郎ちゃんにそんな甲斐性あるわけないやん!」
ウ「い、イヤァァァァァァァァァ!!!
  ガガ、バンダスボドバ、バンダスボドバ!エ、エルザガ!エルザガ!!」
チ「だああもう!人の話を聞けぇぇぇぇぇぇ!!!
  バンゼガンダザゴグジドンザバギゾビバンンジャ!
  チャンドリリガヅギドンンバ!?」

 どこぞからか巨大ハンマーを取り出し錯乱するウェストを殴り倒すチアキ。

ウ「ビ、ビガラバビゾグスンゼガスバ!?
  『メ』ン『ボンジンメガネ』ゴドビガゾンジョグバボドゾギデジョ
  ギドゴロデデギスンゼガスバ!?」
チ「ああ!?ギグダバ?ギグダバ?
  ラダ『ボンジンメガネ』デデギグダバ!?ザギダヅダンランドベジョゴサァ!」


 と、この様に平和だった。  

100 名前:ヴァルシオン改:03/11/08 03:08

>>

 集中する火線が満遍無く機体表面を舐める。
 バルカン砲は派手な、しかし実りの無い小爆発を生んだだけだった。

 回路の全てが異界の理に倣っても、全システムの作動そのものには異常は無かった。
 火器管制システムも、だ。
 目標機の現行速度、予想加速度、現在位置ならびに推定到達位置をはじき出したレーダーは、
主武装の変更を要求し、それは速やかに承認される。
 右手は剣を収め、反対に左手が持ち上がった。
 開いたままの砲口が傾く。鮮やかな連携を見せる機影三体に向けられた左手の先で、また光が
灯った。
 今度は赤と青である。
 もつれ合い、球体状に変化する暇も惜しむかのように、うねりは爆発して空を走った。

 二色の螺旋――原初に生命を育んだ回転運動は、限りない破壊に形を変えて敵を撃つ。
 ヴァルシオン改が保有する最強兵装だ。それは、クロスマッシャーと云った。

101 名前:ピエゾ・バイモルフ ◆VOn.4G9bRA :03/11/08 03:32

―――同時刻、月面上、第三プラントMoony Valeyにて―――

コクピットに座して待つこと一時間と少し。
幾度目かのあくびをかみ殺したとき、突如通信機がエマージェンシーをコール。
発信者はアニタ・ディーグラフ。 SHBVDのGM、つまりは彼の上司だ。
何事かと訝りつつも、バイモルフは通話をオンにする。

「緊急事態だよ、バイモルフ。」

いつになく緊張した面持ちのグランドマネージャーがモニターに現れる。
ますますもっておかしいことだ。
アニタから連絡が来ることまでは手筈の通りなのに、この緊張感はなんだろう。
バイモルフは何か言おうとしたが、そこにアニタの説明が割って入った。

「よくお聞き、性悪。 たった今サルペンから緊急通信が入った。
 驚いちゃあいけないよ。 例の演習会場にあのヤガランデが出現したそうだ。」

「へぇ、それはまたトンでもない事態で…
 しかしそういうことなら計画は中止ですね。 僕は引き揚げさせてもらいますよ。」

バイモルフは他人事のように言って通信を切ろうとするが、アニタの叱咤がそれを阻む。

「バカ言うんじゃないよ!
 お前には予定通り、現地に飛んでもらうよ!
 いいかい、バイモルフ、こいつは考えようによっちゃまたとないチャンスだよ。
 それぐらい、お前ならとっくにわかっているだろうに。」

「―――はぁ、それは仰る通りですがホラ、僕は予定以上に危険な目にあわなくっちゃ
 いけないわけでして。」

「それがどうかしたのかい?
 手当てならあとでたっぷり支給してやるさ。
 それにこのミッションを決めればお前はまた英雄だ。 それで何か文句でもあるってのかい?」

「ふむ、ヒーロー、ですか。 悪くありませんね。」

バイモルフは「英雄」という言葉に興味を示したらしい。
さすがにアニタは部下の性格をよく理解している。

「わかったらさっさとお行き! 失敗しましたなんてのはなしだからね!」

畳み掛けた後、一方的に切られる通信。
バイモルフはブラックアウトした画面を数瞬見つめていたが、すぐに準備にとりかかる。

「やれやれ――
 相変わらず人使いが荒いこって。」

ぼやきつつもその声色はどこか愉しげであった。

102 名前:アズラエル ◆Z3azraelx2 :03/11/08 03:42

>>89(VS「ヤガランデ」)
「ヤガランデ」が繰り出す光弾を激しいダッシュで回避する。
あの光弾がかすっただけでもワーロックは消滅してしまうのだ。
当たる訳にはいかない。

サブモニターに目をやり、同じ攻撃を他の機体が回避するのを確認する。
瀬戸口やミスリルの三人は回避する事も容易だろうが、
ロジャーのBIG−Oは機動力が低いのでかなり危険だ。

やるしかないか。
……まさかこのような存在を相手に「あれ」を発動する事になるとはな。

私は同じ戦域に居る者達に通信を行う。自分でも声に緊張が篭るのが判る。

「済まん!『ヤガランデ』を15秒……いや、10秒で良い、釘付けにしてくれ!」

その通信と同時にワーロックのダッシュ機構を全開にする。
機械の体といえども体が悲鳴を上げるような加速が掛かり、
限界以上の出力をかけられたダッシュ機構は発熱し
警告ランプが点滅し、ブザーが鳴り響く。

[WARNING WARNING WARNING
 WARNING WARNING WARNING]

だが今の私にはそのような事はどうでも良い。

今は、ただ加速するのみ!

103 名前:相良宗介 ◆URUZ7h3pLo :03/11/08 04:00

>>94

破壊光線―――否、破壊光弾を無差別にばら撒いてのち、
なおも傲然とこちらを睥睨する、招かれざる暗色の破壊神。
ベヘモスに一度見下ろされた時もこんな感覚はしたが、あの時とは明らかに時限の違うプレッシャーを感じつつ、
手短な作戦会議を行う。

『――――で。具体的にはどう動くよ、姐さん?』
『少なくとも固まってたら一網打尽の可能性が高いわね・・・・・・じゃ、散開して攻撃をかける?』
「火力上ではたいして戦果は期待できそうに無いが・・・・・・」
『少なくとも攪乱にゃなるわよ。それとも・・・・・・他に代案ある?』

――――確かに、こんな状況では確実な攻撃方法など思いつきもしない。まして相手は、全く未知の機体だ。
ベヘモスのときもそうだったが、集中したところでASの通常兵器では集合してもたいしたダメージは与えられまい。
むしろ、先程マオの言ったとおり一網打尽になる公算の方が高いだろう。
それに―――

「ラムダ・ドライバを使った攻撃なら、もしかすると活路も開けるかも知れん。やってみる価値はあるかもな」
『決まり、だな。じゃ、いつもの通り――――』
『散開後、ソースケはあのデカブツと近接戦闘。
 あたしとクルツは、少々距離を置いてソースケの攻撃をサポート。これでいい?』

なるほど――――とどのつまりいつも通りのやり口だが、むしろ奇をてらった戦法が通用しそうにない分、
逆に効果も挙げられるかもしれない。
「異論は無い・・・・・・ウルズ7、了解」
『ウルズ6了解。そんじゃお仕事―――――』

クルツの声を追いかけるように、あの“巨人”から光条が疾り―――――

『いきますかぁっ!!』

足元をなぎ払うのを合図に、三機のASはその場を跳躍・散開し、各々の行動に移る!

104 名前:レオス・クライン:03/11/09 15:55

ほぼ同時刻、衛星軌道上、フライトナーズ旗艦『STAI』

演習が始まってから小一時間。
レオス・クラインは一つの緊急依頼を受け取った。
内容は、言わずもがな。
正直、クラインは演習に関してはあまり乗り気ではなかった。
だが、依頼となれば話は別である。

「・・・それで、最終目標はヤガランテと、ヴァルシオン改か。増援の可能性は?」

『正直、無いとは言い切れん。MS級の正体不明機も確認されている。注意してくれ。』

通信が切られた後、すぐに準備に取り掛かる。

「今から『STAI』で現地に向かっても到底間に合わんな・・・。仕方ない、か。」

そうつぶやくと、格納庫内にある一つの機体へと乗り込み、大気圏突入用ポッドに機体を向かわせる。
クラインはポッドを直接戦場へと送り込もうという考えであった。
当然だが、ポッドに収容されている間は、何もできずに撃墜される可能性もある。
だが、

「手段を考えている時間は無い・・・。ならば・・・。」

自分に言い聞かせるかのようにつぶやいた後、ポッドは射出準備にかかり、

「ならば・・・。まずは、動く!それからだ!」

ポッドは、射出された。
それは、戦場に、一つの流星を、生んだ。


クラインのポッドは無事に大気圏の突入に成功。
ポッドのロックは次々に解除され、二つに展開され、一つのACが生まれでた。
展開された場所は、ヤガランテの、真上。






105 名前:フェイ&エリィ&バルト ◆8PXenoqsmM :03/11/10 01:13

>>100
赤と青。
螺旋の光をフェイは見た。
分散した三機のうち、ヴァルシオン改が見初めたのは…ヴェルトール。
ゆらりと持ち上げた腕の先端、地獄の大穴の底より這い出る。
強壮にして暴虐の双竜、クロスマッシャー。

「じょ…冗談じゃっ…!!」

急制動をかけて全く逆方向へと加速。
射撃の偏差を見越しての機動。

――紙一重。
数m右に着弾。
灼熱の舌が大地を嘗め尽くす。蹂躙する。昇華する。
至近距離のヴェルトールとて、ただでは済まない。
砕けた岩塊と爆風とに打たれ、煽られ、失速し大地を転がる。

「ぬっ…くっ、ぁぁぁぁ!!」

数十mに渡って地面を削った後、急速浮上して姿勢を制御。
速度が落ちる瞬間を―――ヴァルシオン改が見逃すはずもない。

「フェイーーッ!!」
「バカヤロー、避けろ、避け…」

モニター上、再び襲い来るであろう竜の巣穴を睨みつつ、
フェイは悲鳴にも似た怒声を聞く。
このままでは――――――

106 名前:大十字九郎 ◆TSMAgIUS4A :03/11/10 02:20

>>100>>105
 見えた。空を背に立つ狂える巨人、青い魔城、暴走した最終兵器ヴァルシオン!

 飛行速度において(足にしがみつく荷物も含め)大きく劣るデモンベインは、
他の四機より大きく遅れてあの鉄騎を射程に捉えた。ヴァルシオン・・・青い破壊神は、
その刃を銀の翼と三機のギアへと向けようとしている。

『チッ・・・させるかよ!』

 叫びと共に飛行ユニット「シャンタク」がアザトースの光を吐き出し、魔を断つ
剣は両拳を突き出すように手を伸ばす。そして、

『クトゥグァ!イタクァ!』

 召喚。次の瞬間、デモンベインの両手には真紅の自動拳銃と白銀のリボルバーが
握られていた。

『行くぜエルザ!俺に続けぇ!』

 やや「ハイ」になった魔術師の叫びと共に、二丁の魔銃が共にトリガー。
青い破壊神へ向けて、紅蓮の魔弾と蒼き疾風が駆け抜けた。


107 名前:ドクターウェスト@ロボ乗りスレ:03/11/10 02:22


ウ「覇ぁぁぁぁぁぁ!!!!」

チ「殺ぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 なにやらドクターウェストとチアキが互いに向かい合い、オーラというか、闘気というか、なんか
そんなもんが背後でそれぞれに白と黒のカブトムシ男を形作ってたりしていた。
 そしてどちらからともなく走り出し、同時に飛び上がった。そして両者の必殺の飛び蹴りが
、、、ってこんな事はどうでも良いですね。演習に目を向けましょう。




『行くぜエルザ!俺に続けぇ!』

「わかったロボ!!!」

 エルザもデモンペインの右腕に内蔵された術式魔砲をヴァルシオン改に向けて構える。

「チャージ完了、、、『我、埋葬にあたわず』ファイア!!!!」

 叫びとともに右掌から緑の閃光がほとばしる。フルチャージならば、並の機動兵器等その名の通り
埋葬することなど不可能なほどに破壊せしめる威力を秘めたビームがヴァルシオン改に向けて突き進む。
しかし射程距離外からの攻撃というだけでなく、相手も『並』の機動兵器ではない。
エルザ自身、相手が少々怯むぐらいで、大した効果はないだろうとは思ってはいたが、そこはそこ

「愛するダーリンの頼みなら断れないロボ♪」

 彼女も恋する乙女という事で。



108 名前:フェイ&エリィ&バルト ◆8PXenoqsmM :03/11/10 02:25

>>106-107


「―――!?」

無防備を晒し、間に合わせの防御体制を取ったフェイは、数瞬遅れて気付いた。
絶体絶命、そこに割り込む魔道の巨人に。
折れぬ、揺るがぬ、崩れぬ、魔を断つ剣。デモンベイン。
そして、魔を断つ剣を断つべくして作られた、究極の模造刀。デモンペイン。
不倶戴天の義兄弟が、同時に光の弾丸を叩き込んだのだ。
破壊の衝動に染められし哀れな剣、ヴァルシオンに向かって。

「…グッジョブ!!」

バルトは親指を立てた。
思考に連動して、アンドヴァリも上空の二体に向けて親指を立てる。

「よし、行ける…」

フェイはこれ幸いと機体を脱出させ、
元通り迂回して距離を詰めるルートに――

「………!!」

―――ルートに、赤と青の奔流が押し寄せた。
打ちのめされ、なおその牙を剥く。
クロスマッシャー。





世界が止まる。色を無くした世界が静止画となってフェイを取り巻く。
フラッシュバック。
不意に、瞼の奥に浮かぶ映像。

十字架のペンダントが揺れる。
紅い宝石が、光る。

「少し、引っ込んでろ」

真っ暗闇より響く声。
まだ幼い、少年の声。

「…お前に殺されたくない」





光条がヴェルトールを呑みこむ。
その瞬間を、エリィとバルトは目の当たりにした。
息を呑む二人。
爆発の後には、何ひとつ残されてはいない。
大きなクレーターがひとつ、穿たれるのみ。
跡形も無く散滅させられたのか――――――――?

突如、レーダーに巨大な反応。
サイズが、ではない。
エネルギーが、だ。
上空を見上げる。

「あいつは………」
「あれは……?」

バルトは彼を知っている。
ゲブラーの大艦隊を、たった一体で壊滅せしめた『エルルの悪魔』。
光り輝く、六枚の翼は堕天使を彷彿とさせ…
見るもの全てが心のどこかで感じ取るだろう。
彼は、絶対的破壊存在。
……その名を、イド。


――――悪魔が、跳んだ。
翼を広げ、ヴァルシオン改へと一直線に。

体当たり。
全身の装甲に亀裂が入る。
体当たり。
神の剣、ディバインアームを叩き割る。
体当たり。
それを扱う右腕を砕き散らす。


「――――ふん、つまらんな」

悪魔は首を回す。
ヤガランデの現れた方角へ。

「あれも…完全じゃあ無い」

それだけ言い残し…飛び立つ。
地平線に消えるまで、ほんの数秒。



「……こんな所に、何をしに…」

苦々しく呟くバルト。

「そんなことより、フェイ…フェイは!?」
「反応は…無い」
「何よ、それ!?」
「それより今は!!…あれをどうにかするんだ!!」

半壊しながらも、なお全身から殺意を立ち上らせるヴァルシオン。
背を向けるのは、あまりに無謀。
だが、バルトとエリィが目を向けた、丁度その時。
…二人の視野に、銀の流星が瞬いた。

109 名前:アイビス・ダグラス&ツグミ・タカクラ ◆IBISu6AG36 :03/11/10 02:31

>>100>>105>>106>>107>>108
蒼く分厚い装甲を持つヴァルシオン改は、
GGキャノンの斉射にもさほど痛痒を受けた様子はない。

「豆鉄砲じゃ効果ない、ってことね」
「なら、叩き込むしかないっていうだけ…だよ」

ツグミが驚いたようにあたしを見る。
でも、すぐに納得したように頷く。

「ちょうどいいことに、増援も来てくれたみたいだしね…」

三機のギアが、二機の鬼械神が、ヴァルシオン改に果敢に挑む姿が見える。
彼らのおかげでこちらはヴァルシオン改のターゲットからは一時外れたようだ。

「ツグミ、弾薬は?」
「オールグリーン。とはいえ、そう余裕はないわよ。
 アレをやるなら、一度だけ」

アルテリオンの各部チェックを進めながら、てきぱきとツグミが答える。
一度、だけ…失敗は、出来ない。

「各部異常なし、テスラ・ドライブも順調よ」

ツグミがチェックを終わらせ報告する。
その間にもギアとヴァルシオン改の戦闘は続いている。
ヴァルシオン改の左腕が輝き…

「ダメッ、避けてっ!」

思わず叫ぶ。
だが、叫びは届くはずもなく…青と赤の奔流が放たれる。

「…くっ…」
「耐えて。今動くには、まだ早すぎる…」

ツグミが冷静にたしなめる。
…そう、今はまだ早い。
あたしたちがやるべきことは、
アルテリオンの最大効果をもっとも適切な瞬間に確実に発揮することだ。

110 名前:アイビス・ダグラス&ツグミ・タカクラ ◆IBISu6AG36 :03/11/10 02:31

>>109
そして、それは…すぐに訪れた。
上空から舞い降りた堕天使が、蒼い破壊神を叩きのめす。
今…だ!

「行くよ、ツグミ…っ!」

こくり、と頷く反応が返ってくる。

「コードナンバーF-77X、テスラ・ドライブ稼動リミット…完全解除!」

ツグミの声とともに、テスラ・ドライブの唸りが変わる。
低く響くような唸りから、高く響く唸りへ。

スロットルを全開。
テスラ・ドライブがさらに唸りを高く高く上げる。
まるで弾かれたようにアルテリオンは宙を裂いて飛んだ。
激しいGが身体を苛む。
この速度の前には、慣性緩衝などなんの意味も持たない。

その異常な速度の中、
ツグミがあり得ないほどの早さで敵機と自機の相対位置予測位置機動半径機動速度を元に最適解を導き出す。
そして、その解に対し、あたしはコンマゼロ三秒以下の精度で反応する。
一見無軌道に放たれたミサイルが、ヴァルシオン改の動きを封じる。

或いは完全であればヴァルシオン改にもこの蜘蛛の糸から逃れる術もあったかも知れない。
だが、それはあり得ないこと。
今だから、この瞬間だからこその完璧な解。

回避運動を取ろうとするヴァルシオン改にさらに迫る。
アルテリオンの機首には、蒼く輝く光の槍。

そして、交錯。

111 名前:ヴァルシオン改:03/11/10 02:38

>>106 >>107 >>108 >>109 >>110

 化物じみているとすら云えるヴァルシオンの複合装甲は、生半可な砲撃などものともしない。
 しない筈ではあったが、ものには限度と云うものがあるのも確かである。
 突如、機体の推定限界を軽々と突破した両機体の猛攻。どちらとも、ヴァルシオンの戦術管制
システムの予想の外にあった。

 無人のコクピット内にエラー音が残響する。まだモニターを埋め尽くしていた神の御名に換わり、
続々と上がるダメージリポートが状況を報せた。
 胸部並びに肩部装甲板、破損。
 左右腕部損壊。左腕ファイア・コントロール不能。被害甚大。

 この時、中枢モジュールは一つの判断を下した。通常の演習プログラミングではあり得ぬ行動
である。
 唯一の対地対空兵装が機動準備を開始する。同時に火器管制レーダーが全機を自動追尾。
 ラスト・アームに断末魔を上げさせる準備だった。

112 名前:大十字九郎 ◆TSMAgIUS4A :03/11/10 02:41

>>111
 「シャンタク」のパワーを全開にし、己の模造を抱えたまま鬼械神は飛翔する。
目指すは、銀の翼に翻弄され負傷した蒼い破壊神ヴァルシオン。
 敵の間合いに踏み込んだ瞬間に、翼の魔力は脚部シールドに流れ込んだ。
空間歪曲とその反動を利用する断鎖術式、それは、

『ティマイオス!クリティアス!』

 歪曲、そして修正。歪曲した空間が生み出す衝撃は、元々「シャンタク」によって
高速飛翔していたデモンベインを弾丸の如く加速させる。
 同時に、同じ機構を搭載したもう一体が、その足から離れて虚空を蹴った。

 ・・・その姿を一瞥し、機械仕掛けの神の中で、魔術師が本能のままに叫びを
あげる。

『アル!デモンペインとタイミングを合わせられるな!』
『無論可能だが・・・何をするつもりだ、九郎』
『見てりゃ分かる・・・エルザ!断鎖術式だ!』

 最後の叫びは自らの影、神の模造たる鬼械神のそのまた模造へ向けた声であった。
そして、白き鬼械神は慣性を無視して虚空を跳躍。模造と並んで、今まさに
体勢を立て直さんとするヴァルシオンに向けて術を解き放つ!


113 名前:ドクターウェスト@ロボ乗りスレ:03/11/10 02:44

>>112

「わかったロボ!」

 デモンペインをデモンベインから離れさせたエルザが大十字九郎の意を受け、エネルギーを
脚部に集中させる。脚部、デモンベインと全く同じ外見、それだけでなくその能力までも同じ、
つまりは断鎖術式と呼ばれる魔術回路。空間、場合によっては時間すら歪曲させる現代科学
の域を超えた脅威の力。

「行っくロボ〜〜〜!!!!」

 いや、それを言うなら彼女もまた、現代科学の範疇に入りはしないだろう。
 人間を超えた能力と感情すら備えた、鋼鉄の体を持つ人造人間。
 ロボット三原則等に縛られる事の無い彼女は、まさしく人が造りし人間と言えよう。
 ある意味、彼女が破壊せんとするヴァルシオン改も、今は彼女と同種の存在なのかもしれない。
 人工知能の暴走、ヤガランデの影響とはいえ他者から与えられた命に従うのではなく、始めて
己が内からの意思によって動いたと言えるのかもしれない、この人型兵器は自由を手にしたのだ。
 兵器・・・彼女もまた闘うための力を持って産まれた存在。

「さあ!愛のラブラブ攻撃ロボ♪」

 まあ、彼女にとってはそんな事はどうでもいい事のようだが。

114 名前:大十字九郎&エルザ@合体攻撃:03/11/10 02:54

>>113
白と黄金の巨人、神の模造とその模造が、一瞬、空間歪曲の作用で空中に静止。そして次の瞬間、
歪んだ時空が急激に修復され、結果一対の鉄騎が物理限界を突破した速度で天空を切り裂いた。
 断鎖術式が生み出す空間歪曲の反動を乗せた鉄脚の一閃、それがアトランティス・ストライク。
そして、

『『アトランティス!』』

 放たれた弾丸は二つ。
 両者の術式が干渉しあったのか、二体の巨神は二重螺旋を描きながらさらに速度を増す!

『ダァァァァブルッ!』『ラァァァァブラブ♪』

 鋭利に歪んだ螺旋が交わるその一点、それは、すなわち蒼き破壊神ヴァルシオン!

『『ストラァァァァァァァィック!』ロボ!』



115 名前:ヴァルシオン改:03/11/10 02:59

>>112 >>113 >>114

 一蹴なる単語の意味は、こんな時にあるのに違いない。
 狂王(マッド・オーバー・ロード)は高らかに蹴り飛ばされた。

 スパークと噴煙を棚引かせて吹っ飛ぶ姿に威厳は最早存在しない。無比を誇った装甲はあちこち
ひしゃげ、裂かれている。
 殆どスクラップに近い。
 突如、アフターバーナーは持てる大推力を以って機体姿勢を無理やり安定させる。
 出来てはいなかったが。
 これ以上の交戦は機体の大破を招く、と云う警告メッセージはモニターに生じなかった。
 今のヴァルシオンを動かす破壊の論理は、当然のように自己に対してすら向けられているのだ。
 機体を取り巻くスパークは更に渦を巻いた。

 軋む火器管制システムは、戦場に散らばる標的全てのロックオンを完了する。十数機全て。

 機体の周囲で空が揺らいだ。陽炎のように。
 空間ごと歪んだのだ。捻れはそのまま広がり、眩い光を帯びて広がり続ける。
 空を侵す光彩の紗幕。
 人が一番表現し易い言葉は――極光(オーロラ)か。

 宇宙創生の名は大仰ではある。
 大仰だが、その破壊光を受けて殲滅される側にしてみれば、そんな絶望を受け入れざるを得ない
のかもしれない。
 攻撃エネルギー広域散布兵器――ビッグバンウェーブの発射は既に秒読み段階に迫り、そして。

 そして――。

116 名前:ドクターウェスト@ロボ乗りスレ:03/11/10 03:00

>>115

ダブル(ラブラブ?)アトランティスストライクの一撃を受けたヴァルシオン改が、
砕け散りながら地表に堕ちて行く。その光景に誰しもが狂える破壊神の最後を信じて
やまなかった。
 彼女を除いては・・・

「ターゲットのエネルギーの増大を確認!?」

 デモンペインのセンサーが捕らえた情報は、言葉どおりに一体となったエルザに余す
ことなく伝えられている。故にこの場にいる全員が勝利を確信し、一時の心の隙に始まった
『ソレ』をだれよりも早く認識する事ができた。

「この反応はエネルギー機関の暴走じゃないロボ!」

 対象を完全破壊すべく『我、埋葬にあたわず』を構えさせる。

「駄目ロボ!?破壊可能な状態までチャージするころには射程外ロボ!」

 この距離で対象を一撃の下に破壊せしめることが可能な武装を持つ機体は只一つ。

「ダーリン!!!!」


117 名前:大十字九郎 ◆TSMAgIUS4A :03/11/10 03:02

>>115>>116
 悲鳴にも似たエルザの叫びが、デモンベインのコクピットに木霊する。それと
ほぼ同時に、“魔を断つ剣”の一柱、魔導書の精霊もまた“それ”に気付いていた。

『クッ!あの機械人形め、もしや、自爆するつもりか!?』

 その推測は必ずしも正しいものではなかったが、今この瞬間に置いては、
結果的に正鵠を射ることとなった。二体同時のアトランティス・ストライクに
よって粉砕されたヴァルシオンは、既に崩壊しつつあったからだ。
 だが、そのような状態だからこそ、暴走に近いエネルギーの放出は周囲に
甚大な被害をもたらすだろう。そして今それを止められるのは、憎悪の空より
生まれし無垢なる刃、“魔を断つ剣”デモンベインをおいて他にない!

『ここまで来て…やらせるかよッ!』

 正しき怒りと憎悪を抱く魔術師の叫びが、純白の鬼械神を突き動かした。
瞬き一つ分にも満たない時間で、つきだした両手に二丁の魔銃が召喚される。
その内には、既にたった一発だけ弾丸が装填されていた。
 専用弾50AE「Minions of Cthugha」と640ルガー「Wendigo the Blackwood」に
更に手を加え術式を強化した、神そのものの力を顕現する、窮極の魔弾が。

『クトゥグァ!イタクァ!』

 光が宿る、神が宿る、白き鬼械神の握る二丁の魔銃に、それぞれの色と同じ
圧倒的な破壊の力が降臨した。

『神獣形態!』

 紅い自動拳銃……クトゥグァから召喚されたのは、同じ名を持つ真紅の獣。
灼熱の炎を纏い、万物を焼却し溶解する火精の王。
 白きリボルバー……イタクァより飛翔したのは、やはり同じ名を持つ銀の
魔鳥。ハスターに仕え、全てを凍り付かせる“風に乗りて歩むもの”。

 引き金を引かれた魔銃から、おぞましくも妖しく美しい二体の魔神が飛翔する。
炎と風、真紅と白銀、対となった姉妹は緩やかに弧を描き、その一点……今まさに
滅び行こうとする破壊神ヴァルシオンを呑み込んで交差した。



118 名前:ヴァルシオン改:03/11/10 03:17

>>116 >>117

 ――そして。
 火獣風獣――旧き神々の銃弾は冥合した。

 熱く、眩く、何にも増して矢張り熱い。
 ヴァルシオンの放とうとした偽りの破壊ではなく、これこそが万物創造の魁となった烽火だろう。
 広がるオーロラなど呑み干して、その発現元たるヴァルシオンも巻き込み。
 空は砕けて燃える。


 荒ぶ火柱の中に、ヴァルシオン改の全ては消えた。
 

119 名前:??????:03/11/11 20:29

ヴァルシオン改が撃破されるほんの数分前。

後方に位置していた機動中隊は壊滅寸前であった。

それも、たった一機の手によって。
その機体は、全身を深紅に染めており、肩には黒いボールの中に9と書かれたエンブレムが貼られていた。
その機体の名は「ナインボール」。

かって、最強とうたわれたレイブンである。


120 名前:作戦司令部にて:03/11/11 23:42


 あらゆる戦場に付き物なのが、混乱に告ぐ混乱である。
 一端戦闘に入れば進行計画など吹っ飛び、兵士は右往左往し、部隊はさ迷う。
 補給は滞り、通信は出鱈目な情報を垂れ流す。
 であるからこそ、演習と云うものの重要性があるのだが。
 その意味では、此処は本当の戦場と化していた。

 少なくともヤガランデ出現以降の司令部の狼狽ぶりは、表するに言葉が無い。
 最悪な電波状態にあって、オペレーターは各機に状況説明を求める通信を
 マイクに向かって連呼する。


>>104
>>119

「ゴールドリーダーより貴官へ、規定のチャンネルで直ちに状況を報告せよ!
 繰り返す、司令部へ直ちに戦況を報らせ――早く、早く!」

※司令部への通信チャンネルは以下の通り、速やかにリンク先へ連絡レスを入れてください。

http://appletea.to/~charaneta/test/read.cgi/ikkoku/057830312/l50
 

121 名前:瀬戸口隆之@絢爛舞踏(代理):03/11/15 23:14

VS ヤガランテ

>>94
>>102
「広範囲をカバーする光学兵器よ! みんな、散って!!」

誰が叫んだのかはわからないがそう聞こえた。
咄嗟に機体の位置をずらし、しゃがみ、跳んで何とか避けきる。
先行入力のキャンセルが遅れていたら死んでいた…。

しかし士魂号の装甲は光弾の多大な熱量は直撃はおろか、掠りさえもしていないのだが
機温を急激に上げていく。熱によりタンパク燃料が湯立つ寸前である。

「化け物が…!」

機体状況を確認し、思わずしかめっ面を作る瀬戸口。
機体の基本性能はエアロゲイターの機体との戦闘によりガタガタに落ち、
火器管制は応答なし、対G性能も著しく低下している。
また、光弾の熱により装甲は殆ど融解しその意味を成さず、機内もかなりの高温である。
原種であれば熱で既にまいっている筈だ。
もはや絶望と思われる状況。

だが、機体はまだ動く。まだ…戦える。

「まだ、動けるな…。なら、最後までやれることはやるさ」

『済まん!『ヤガランデ』を15秒……いや、10秒で良い、釘付けにしてくれ!』
突然の通信、アズラエルの声だ。小型のワーロックで何を…。
いや、あいつは勝機無しに動くような奴じゃない。
俺は皆を信じて今自分のできることをするのみだ。

瀬戸口は青き瞳で昏色の破壊神を一睨みすると、静かに目を閉じた。
この機体の状況では上手く動くかはわからないがやってみる価値はある。
全身の力を抜き、身を委ねる。
―――意識が…白銀の騎士と融合していく…。


122 名前:フロスティ・フェイ@ドレスアップ ◆COLDmEjybY :03/11/15 23:42

VSヤガランデ

>>94
「広範囲をカバーする光学兵器よ! みんな、散って!!」

誰かがそう叫んだ。
だが私には機体を僅かにずらせ、直撃を避けるのが精一杯だった。

「くぅっ」

機体を揺るがす衝撃に、一瞬気が遠くなり掛ける。
そうならなかったのは脳裏に浮かぶ面影のおかげ…。

(『何よ、何時も「私は戦闘のプロだ」なんて偉そうなこと言ってるくせに。
――ここまでなの?』)

「ええぃ、幻影の癖に煩いんだ、お前は!」

言葉を口に出すことで、意識の覚醒を促す。
同時に、損傷のチェック。

―――機体は酷い状態だった。
左腕が消失しているのに加え、左半身は高熱で装甲が融解してしまっている。
何より拙いのは、その熱により人口筋肉が限界を超えてしまっていることだ。
もう超音速機動はできない。
いや、それ以前に満足な回避運動すらおぼつか無いだろう。
やはり駄目か――――


123 名前:Jaguarandi:03/11/15 23:46

ヤガランデとはそも何ものなのか?
それは本来はこの世と交わることのない異界にあって永遠に荒れ狂い続ける
純粋なる破壊への意志、エントロピーの法則の具現ともいえるものである。
そして永劫に己の存在する世界において渦巻き続けていたあるとき、
それは異なる世界の存在とそこへと到達する術を知った。
則ち、アース-クリスタルを触媒としてその世界へと自身を実体化させるという事を。

その驚異に晒された先人達がアース-クリスタルの活性化を防ぐことで
ヤガランデの実体化を阻止せんと結界を形成して数千年、その脅威が完全に忘れ去られた
この時代の人類が好奇心の赴くままにアースークリスタルに触れた結果、
結界はゆらぎ、ヤガランデはその影をこの世へと現わす糸口を得てしまった。

さらに悪いことに、遅蒔きながらその脅威の何たるかを知った人間達は、ヤガランデの降臨を
制御するべくその意識体の一部を一体のバーチャロイドに蒸着させたことで
それまで定まった姿を持たなかったヤガランデは今、ここにあるように
VR的装いを持った破壊神として具体的に降臨する術を得てしまった。
そして一度降臨したヤガランデを元の世界へと追い返す法はそれ以上の力をもってして
その実体を破壊する他にはない――――――――
 

124 名前:ミミー・サルペン ◆xL2SHBVDPk :03/11/15 23:52

>>122
ヤガランデに対して一つの機影が突進していく。
たしか闇姫とかいう名のその機体はRNAの主力機、アファームドをも上回る
速度と運動性(つまりは超音速)で一気にヤガランデの懐へと入り込み、
手にした長剣で自らに数倍する巨体に斬りかかる。
その巨躯に相応して動きが鈍重なヤガランデに対し、接近しての機動撹乱戦法に討ってでる、
それは戦術としては間違ってはいない、むしろ的確な判断と言ってもいいのだが――。


だがその斬撃は城壁のようなヤガランデの装甲の前に空しくへし折られた。
斬りつけられたはずの表面にはかすり傷すら残っていない。
あの剣は先ほどテムジンをいとも簡単に両断していたものだ。
それをまともに受けておいて傷一つ残さないとは―――

「V-アーマーね…」

私は独りつぶやいた。 それは第二世代型VRが持つ防御力場。
V-コンバータの余剰出力によって形成されるそのフィールドは
第二世代型VRに第一世代を遥かに上回る耐弾性能を与えている。
それと同じものをヤガランデも展開しているとは!
しかもここまで強力なものは私も見たことがない。
これでこの絶望的な戦闘にまた新たな厄介事が追加された。

と、今はそんなことを思案している状況ではないようだ。
まだヤガランデの懐にいる闇姫が危険な状態に陥っていた。
闇姫は駆動系に損傷を受けたのか、先程までの俊敏さは見る影もなく失われている。
そこに向けられるヤガランデの右腕の砲口。
あの怪物はまず手近なところにいる獲物から喰らおうとしているらしい。
レーザーで掩護するか?いや、この位置からでは彼女まで巻き込む危険がある。
この場合は、私が囮になって彼女が離脱する時間を稼ぐのが最善だ。

「そこのあなた、掩護します! 急いで下がって!」

通信機に向かって叫んだ後、 私はこの側面という有利なポジションを捨てて前進、
フラット-ランチャーを連射しながらヤガランデに突撃する。
もしこの場面をバイモルフが見たら、無謀な自殺行為だとバカにされるのだろう。
だが私には他の選択肢は見当たらなかった。

―――――私は何故こんな時にあの男のことなど考えているのだろう?
 

125 名前:ミミー・サルペン ◆xL2SHBVDPk :03/11/15 23:55

>>124
「――しまった!」

闇姫への掩護行動に気をとられ過ぎたサルペンは一瞬、反応が遅れた。
ヤガランデの発した光弾の射線はライデンのダッシュ機動と真っ向から交錯する。

「くっ!」

M.S.B.S.ver2シリーズで稼動する第一世代型ライデンには第二世代型機のような
高速機動中の急激な方向転換などという芸当はできない。
咄嗟に急制動、しゃがみ込んで被弾姿勢をとるのが精一杯だ。

衝撃。 そしてモニターを灼き尽くす閃光。

「………?!」

全身を駆け回る痛覚。
痛みを感じるということはつまり、自分はまだ生きているらしい。
第一世代機中では随一の堅牢さを誇るライデンの装甲は完全にとはいかないまでも
パイロットの命を守るという職務を全うしたようだ。
痛む身体を鞭打って機体の損傷と周囲の状況を確認。


M.S.B.S.、かろうじて稼働中。
メインモニター、健在。
通信系統、受信機能のみがかろうじて健在。
FCS、応答なし。
歩行システム、応答なし。

………

どうやら急制動のおかげで直撃だけはまぬがれたらしい。
光弾はサルペン機の直前に着弾、数トン分の土壌とライデンの脚部とを
粉微塵に粉砕、サルペン機は仰向けになって擱座していた。

ちなみに彼女は重傷であった。
機体は全損こそ免れたものの大破しており、そのダメージはパイロットにも及んでいた。
サルペンは朦朧とし始める意識の中、かろうじて生き残っているセンサー類を
一般解放モードに再設定、可能な限り周囲の状況を把握するべく努める。
だがこのままでは肉体の方があまり持ちそうもなかった。

126 名前:フロスティ・フェイ@ドレスアップ ◆COLDmEjybY :03/11/16 00:00

VSヤガランデ

>>102

『済まん!『ヤガランデ』を15秒……いや、10秒で良い、釘付けにしてくれ!』

アズラエルか!
そうだ……私は一人じゃない。
共に戦う仲間がいるじゃないか。
今の私と闇姫に、こいつを ”ヤガランデ" を倒す力は残っていなくとも、仲間たちに反撃のチャンスを与えるぐらいは……!

”闇姫”の右腕をヤガランデに押し当て、予備電力を全て注ぎ込んで人工筋肉の超伝導体を無理矢理活性化させる。

「食らえ、化け物」

押し当てられた右腕が閃光を放った。

超伝導体に蓄えられた電圧が臨界を越えた時、超伝導状態が破れる瞬間に発生する、数万テスラを越える膨大な電磁波。
磁束暴走(マイスナ―・ブレイク)と名付けられたその現象は、 ”ヤガランデ”の機能にも障害を与えていた。

動きを止めるヤガランデ。
同時に全てのエネルギーを使い切った”闇姫”もその機能を停止していく。

>>124-125
モニターがブラック・アウトする寸前、ヤガランテが再起動するのが見えた。
右腕の砲塔が、”闇姫”へと向けられるのが。
磁束暴走を受けて、これか。……化け物め。

『そこのあなた、掩護します! 急いで下が―――』

先程の女の声。
途中で消えたのは、通信機も止まってしまったから。

「無茶を言うな。もう指1本動かせやしないさ」

それでも私に焦りはなく、軽口を叩く余裕すらあった。
だって私は―――

10秒間、ヤツの動きを止めておいたのだから。
後は、仲間たちを信じていればいい。


127 名前:メリッサ・マオ ◆URUZ2MA4eI :03/11/16 00:08

>>103
突如現れた化け物によって、業火と爆焔の赤に染まる演習場。
破壊の光を撒き散らし、なおも暴れ続ける暗配色の正体不明機。
そいつを止めるためにその周囲を飛び回り続ける、あたし達の最も信頼する白い機影。


「―――ほら、どっち見てんのさ・・・・・・こっちだこっちっ!」
アーバレストの攻撃に反応して向き直ろうとする巨大VRもどきの横っ面に、アサルトライフルを斉射。
40ミリ弾の雨がバケモノの顔をしたたかに叩き、ほんの一瞬奴が動きを止め、こちらに向き直る。
こっちを向いた奴の右腕は、すでにまばゆいばかりのエネルギーを湛えていた。
―――ヤバイ・・・・・・!
刹那、冷たい汗がどっと吹き出し、背筋を冷たいものが走る。心臓の鳴るスピードが一瞬だけ早まる。
そして、光の塊が放たれる瞬間――――

こっちを向いていたバケモノの腕が一瞬、横合いからの衝撃でブレた。
射角がずれた光の弾を横っ飛びで回避。すぐ脇を凄まじい熱量の塊が通過。
そのあまりの熱量にM9の左腕が消し炭になったようたが――――
かろうじて直撃は免れたらしく、地面を転がって起き上がる。

『大丈夫か、姐さん!?』
顔を上げれば、遠くにライフル砲を構えているM9。どうやらクルツが、狙撃で射角をずらしてくれたらしい。

「………なんとかね。左腕が逝ったのは結構ヤバイけど、まだ動かせないほどじゃない。でも――」
そこから先は、言わずもがなだった。
あたし達の攻撃では注意をわずかに引き付け、精度を落とす事は出来ても・・・・・・決定打には程遠い。
それなりにダメージの出せそうなラムダ・ドライバを使えるソースケのアーバレストも、回避に精一杯でその余裕も無い。
かといって、これまでの攻撃が有効打となったかというと・・・答えはNO。
さっき打ち込んだアサルトライフルにしたって、向こうにしてみれば豆鉄砲程度にしか感じていないだろう。

そう、現時点のあたし達は決め手と呼べるものに欠けていたのだ。

>>122-126
もう何度目か数えるのも嫌になった回避、攻撃、また回避のいたちごっこを続けている最中。
あたしの視界の隅に光弾を食らって中破するフロスティの闇姫と、
更にそれを庇って行動不能になる一機のライデンが映り込んだ。

「・・・・・・っ!
 このままじゃジリ貧じゃない、何とかなんないの!?」
擱座する二機の姿に耐えかね、歯噛みしてわめいたその時。

>>102
『済まん!『ヤガランデ』を15秒……いや、10秒で良い、釘付けにしてくれ!』
アズラエルからの通信だった。何をするつもりか、などと今さら訊くつもりはない。
おそらく、彼もこの状況を危ぶみ―――そして、打開策としてなにか無茶をやろうとしているのだろう。
ならば・・・・・・・・あたし達にやれることはひとつだ。

「ウルズ6、聞いたでしょ!やる事はわかってるわよね!?」
『ああ!・・・・・・・ったくどこまで俺達に無茶させりゃ気が済むんだ、あのバケモノ!』
「上等よ・・・・・・こうなりゃとことんやってやろうじゃない!」

そして――――アズラエルのワーロックが爆林弾雨の中、ヤガランデに突撃を始める瞬間。
「頼んだわよ、アズラエル・・・!
 ――――撃て、撃て、撃てぇッ!!!」

アサルトライフルとチェーンガンをフルオートで、ヤガランデの顔面に向けて乱射。
また、別方向から76ミリ砲弾の雨が、タイムラグ無しで同じ位置に降り注ぐ。
これで少しは照準精度も落ちるはず・・・後は、彼しだいだ。

128 名前:ロジャー・スミス&R・ドロシー・ウェインライト ◆BIGO8lqz1o :03/11/16 01:09

>VSヤガランデ

交渉事に、いや、いかなる時においても欠かせないものは『冷静な判断力』だ。
たとえ今、恐怖の対象とも断言出来る存在が目の前に居て、
所構わず攻撃を繰り出していてもその本質は全く変わらない。
―――いや、こういう状況だからこそ『冷静な判断』が必要になってくるのだ。

>>102
『済まん!『ヤガランデ』を15秒……いや、10秒で良い、釘付けにしてくれ!』

ワーロックを駆るその男・アズラエルからの通信が入る。援護に回るべきか?
…いや、他の者と比べて鈍重な動きのビッグオーでは援護が難しいだろう。
残念な事に、今はまだ動くべきではない。

>>121-127
―――しかし、それでもこんな自分を卑しく思う事もある。
目の前で、ライデンや闇姫がヤガランデの前に倒れ去る姿を見ても何も出来ないでいる自分。
士魂号やウルズ・チームが猛然とヤガランデに立ち向かって行く姿を見てまだ動かないでいる自分。
信じるだけなら誰にだって出来る。だが、実際に行動に移すのとは訳が違う。
それでもなお、自分の信念を貫き通すというのは、どうやら私の悪い癖でもある様だ。

―――そして、その悪い癖は更に私を憤慨の念に駆りたてた。
まるで全てを把握していたかのごとく一瞬の隙を突き、ワーロックが目標へと加速する。

「アズラエル、一体何をするつもりだ!? …まさか、特攻!?」

限界を越えた加速度で飛翔するワーロック。
次の瞬間、機体の体は上下に分離され、その下半身は鉄の化け物の右手を一気にもぎとった。
…驚いた。何と、何と大胆な一撃なのだろうか。
私は理解した。今こちら側に傾いた流れを無駄にするわけにはいかない、と。
皆が信頼の元道を切り開き、大きな被害を被ってまで作り上げた『勝利』への道。

この流れを私のつまらない意地で無駄にするわけにはいかない。
―――そう考えた上で、レバーを持つ手によりいっそう力を入れる。


129 名前:ロジャー・スミス&R・ドロシー・ウェインライト ◆BIGO8lqz1o :03/11/16 01:11

>VSヤガランデ

>>128
苦戦を強いられる、というのは仕事上ありふれた光景だ。しかし、今回はスケールが違った。
目の前で繰り広げられる、未知なるモノとの戦闘。
仲間がその強大な力の前に敗れるという異常な光景を前に、私は一人呟いた。

「……ヤガランデ、か。お前がどこから来て、何の目的で行動するのかは知った事では無い。
だが、私には分かる。その殺気、その禍禍しいまでの存在感、…そう、お前は倒すべき”敵”だ。
これ以上皆に危害を加えるというのであれば…私は容赦しない!!」

私の叫びと同時に、ビッグオーのヘッダーカバーから光芒が放たれる。
この兵器を選択したのはある種の『畏怖』から来ているのであろう。
仲間を簡単に倒してしまうほどの相手を早く倒さねば更に被害が広がる…
そう、あの時感じた不安もこれだったのだ。

しかし、私の思いとは裏腹に、万物を焼き尽くす事が自慢の光芒は相手にとって脅威的なものではなく、
結果として放たれた熱線はヤガランデの装甲に何一つ傷を付ける事無く弾かれてしまった。
弾薬も、エネルギーも、奴を倒すには不充分な量しか残ってはいない。先ほどの戦闘であらかた使い尽くしてしまったのだ。
万事休す…いや、私はこのまま何も反撃できないまま恐怖に飲み込まれるのか。

その時だった。たった一度きり、あの記憶喪失の街を救うために使った”切り札”が、
今再び私の目の前にインターフェイスとして現れたのは。

「これは…あの時の!?まさか、ドロシー!?」

振りかえると、ビッグ・ファウを灰塵に帰したあの時と同じく、ドロシーがビッグオーと同化し情報を伝達している。

「充填にはまだ時間がかかるわ、ロジャー。それにこれは隙も尋常じゃない。
充填完了までに周囲の皆にあれを足止めしてもらう様に、ちゃんとお願いするべきだわ。
足止めしてもらえば避けられる心配はないと思うもの」

驚く私をよそに、ドロシーは更に言葉を告げる。

「こうするしか方法は無いわ、ロジャー。選択の余地は無いのよ。
あれはいてはいけないものよ、だから…引き金を引きなさい」

そうだ。確かに、その通りだ。
この私がこう言うのも何だが、恐怖を打ち消すには皆の力を合わせ、
大きな力で立ち向かわなければならないのだ。

そう確信した私は安心でもしたのか、確固たる意思を持ってグリップを握る。
―――そして、周囲の者に声をかける。

「皆!今からこのビッグオーは奴にファイナル・ステージを使用する!!
奴は危険な存在だ!!だからこの大いなる力をもって鉄槌を降ろす必要がある!!
ファイナル・ステージの充填完了まで何とかして奴の足を止めてくれたまえ!!」

130 名前:ピエゾ・バイモルフ ◆VOn.4G9bRA :03/11/16 01:21

>>128
突如、二本の光条が空を裂いて疾った。
それは正確にヤガランデの左腕、関節部へと突き刺さる。
予期せぬ方角からの予期せぬ一閃はワーロックを粉砕するべく振り上げられた
ヤガランデの左腕を貫き、融解させ、引きちぎる。

「?!」

耳目が状況を見聞し、脳がそれを解析、理解把握するのに一瞬のブランクが生じる。

「ほら、大尉、今のうちだよ!」

通信機からの声で我に帰ったアズラエルはすかさずヤガランデの射界内から
安全圏へと離脱、唐突に現れた救い主の方向を振り返った。

「やあ、MDF(My Dear Friends) ……」

そこに佇んでいたのは、純白と朱に彩られた一機のライデン。
その両肩ではつい先ほど、サイタマサイタマを救ったレーザーユニット「バイナリーロータス」が
全力照射を行なった後の余剰エネルギーで青白いスパークを噴いている。
間違いない。
この機体、この声、そしてこのタイミング。
それは月にいるはずのピエゾ=バイモルフと彼の愛機であった。

「細かい話はあとで。今はそこのデカいのを片付けなくっちゃね!」

ライデンは展開していたレーザーユニットを素早く折り畳むと移動を開始。
バズーカ・ランチャーで適宜牽制を加えてヤガランデの注意を自分へと引きつける。
片腕を失い、怒りに燃える破壊神はライデンに向かって次々と猛攻撃を加えるが
バイモルフは彼独特の機体制御でその悉くをかいくぐり、飛び越えて躱していく。

「おお、怖い怖い。」

それは強風の吹き付ける谷間での綱渡りにも似た危険な状況だったが
彼はその危険をめいっぱい楽しんでいた。

「さあ、遅れた分、しっかり働かせてもらうとしましょうか!」

軽口をたたきつつ、更に前進するバイモルフ機。
新たにヤガランデの肩口から無数の光箭が次々と伸びて襲いかかる。
だが、それらは気味が悪いほどに当たらなかった。


131 名前:相良宗介 ◆URUZ7h3pLo :03/11/16 01:32

>>103
対戦車ダガー。 頭部チェーンガン。ショット・キャノン。単分子カッター。
投擲。小弾幕。敵の砲撃。回避、反撃。撃ち返して来る。再度跳躍、斬撃。レーザーが来る。回避して再度攻撃―――

アーバレストが搭載するありとあらゆる武器を駆使して、
死角へ死角へと回り込みつつ、あちこちから注意を引くように攻撃を仕掛ける。
忙しくヤガランデの周囲を飛び回って行うアーバレストの攻撃は、
巨大VRもどきの砲撃精度と味方機への照準頻度を落とす事には成功していたが………
ヤガランデ自身はそのいずれの攻撃を受けつつも、まるで堪えた様子が無い。

ベヘモスやヴェノムのように、力場で攻撃を着弾前に退けているのではない。
いずれも装甲に着弾はし、ダメージを与えてはいるのだが・・・・・・
装甲表面を覆う、時折り砲弾を弾く謎の波動、もともとの装甲の頑強さ……そして、大きすぎる体格差。
戦艦に砲弾が一発撃ち込まれても沈まないのと同じ理屈で、決定打を与えるには至らないのである。

「ちっ、これではキリがない・・・・・・」
《警報!高エネルギー体、足元です!》
「くそっ!」
飛び退いて光弾を回避しつつ、更に発砲。
着弾し弾痕が穿たれるが、全く怯んだ様子も見せずに再度反撃の光弾が来る。

それなりに効果を挙げられそうなラムダ・ドライバ使用の攻撃も、これだけ忙しい状況では精神集中もままならない。
現時点でまだ深刻な損傷は無いが、先程から続くいたちごっこに、回避に回す集中力も徐々に音を上げつつあった。
決め手を欠いたこのままではジリ貧か――――そう思ったとき。

>>129
『皆!今からこのビッグオーは奴にファイナル・ステージを使用する!!
 奴は危険な存在だ!!だからこの大いなる力をもって鉄槌を降ろす必要がある!!
 ファイナル・ステージの充填完了まで何とかして奴の足を止めてくれたまえ!!』

―――ビッグオーからの通信だった。
なるほど。あれだけのパワーを誇るビッグオーの奥の手なら、あるいは・・・・・・!
疲労していた心ににわかに希望が湧き、それは即座に、鈍りつつあった動きへの活力に変換される。

「ウルズ7よりビッグオーへ!そちらの意図は理解した!
 こちらは引き続き敵巨大機動兵器の攪乱に専念する!頼んだぞ!」

返事も聞かずに通信を切ると、回避と同時に散弾砲を奴の顔に撃ち込み、再度攪乱に移る。
―――さぁ、もう少しつきあってもらうぞ、化物!

132 名前:瀬戸口隆之@絢爛舞踏(代理):03/11/16 02:22

VS ヤガランデ

>>125-129

――状況確認、ビッグオー、ファイナルステージの充電開始、
ワーロック中破、闇姫行動不能、味方機と思われるライデン大破――

士魂号重装甲西洋型。それに嵌め込まれた髑髏の目が怪しく光る。
それは生きとし生ける者の輝き。
瞳に生命の輝きを宿した騎士はゆっくりと歩き出し、徐々に加速、
最終的には人工筋肉の限界を突破し、超高速で移動を始める。

――待ってろよ、お嬢さん。今助けに行く――

『呼吸器』が叫びにも似た音を鳴らし、『筋肉』が悲鳴を上げ、『骨』が軋む。
『体温』が上がり、『血』が沸き立ちそうだ。
だが、止まる訳にはいかない。仲間を助け出す為に。

「ウオォォォォォォ!!」

瀬戸口が叫んだ訳ではない。だがそれは明らかな『叫び』。
発声器官を持たない筈の士魂号が叫びを上げる。

昏色の破壊神が白銀の騎士へと向けて滅びの魔光を放つ。
だがそれは騎士が居る筈も無い場所へと撃ち込まれ、地を焼いていく。
――士魂号の動きが速過ぎるのだ。

瞳の輝きを残像として残しながら移動する西洋型。
至近距離の砲撃さえ避け、闇姫、ライデンを抱えて神風の如く走り去る。

誰も居ないコックピットから通信が、文章のみで本部へと送られる。

<踊る人形より本部へ
これより戦闘不能になった機体を搬送する。医療班を手配しておいてくれ
搬送後、本機は破壊神の完全破壊に向かう>


133 名前:フロスティ・フェイ@ドレスアップ ◆COLDmEjybY :03/11/16 02:26

VSヤガランデ

>>132
爆音が完全に遠のいたことで、私は行動に移った。
スカートを捲り上げ、指向性の爆薬を取り出す――この程度の武器を隠し持っておくのは、DJとしては常識だ。
慎重に設置して信管を起動。
歪んで開かなくなったコクピットハッチを吹き飛ばした。

外へ出てみると、そこは既に基地格納庫の中だった。
酷くやられた”闇姫”の隣には、それ以上に手酷くやられた一機のライデンが横たわっている。
ピエゾのものじゃない。確かミミーとかいう女の機体だ。
さっき声をかけてくれたのは、彼女だったのだろうか?
あのおかげで私は助かったものの、この機体の状態では彼女は無事ではすむまい。

「私はいい。ミミーを早く救出しろ!」

駆けつけてきた医療班の手を振り払い、叫ぶ。
彼女の仇をとりたくとも、”闇姫”の損害は甚大。
私にはもう、どうすることもできない――


134 名前:瀬戸口隆之@絢爛舞踏(代理):03/11/16 02:29

VS ヤガランデ

>>133

闇姫とライデンの搬送を終え、簡単な燃料補給と応急処置を終えた士魂号重装甲西洋型
その足元に一匹の大猫が近寄る。それはいつも瀬戸口と一緒に居る大猫であった。
大猫が近くに寄ると白銀の騎士は膝をつき、大猫を手のひらに乗せる。
コックピットが開いた。

しかしそこには誰も居ない。本来居るはずである瀬戸口の姿は影も形もない。
大猫がコックピットに乗り込むとすぐさまハッチは閉じ、パイロットの居ない士魂号は戦線へ復帰しようとする。

ハンガーの入り口まで来た時、少しだけフロスティの方へ向き返った。
が、一瞥するとすぐ興味が無くなった様に前を向き、全開で走り出す。

――後は俺達に任せておけ――

白銀の騎士の後姿はそう言っているかのようであった。


135 名前:フロスティ・フェイ@ドレスアップ ◆COLDmEjybY :03/11/16 02:31

VSヤガランデ

>>134
誰かに呼ばれた気がして、私は振り返った
そこにいたのは、補給を終えた瀬戸口の士魂号。
あいつが”闇姫”とライデンをここまで連れ帰って来たのだと、医療班から聞いた。
あの戦場を2機のお荷物を抱えて離脱するとは……只の軽薄男ではないらしい。
士魂号は、猫をそのコクピットに乗せて格納庫を出ていこうとしている。
そこに何故か瀬戸口の姿はなかったが、不思議と私にはあれが彼なのだと感じられた。

「瀬戸口!後は頼んだぞ。あんな奴、ぶっ飛ばしてこい! 」

信頼を込めて、鋼の背中に声をかける。

――後は俺達に任せておけ――

そう、士魂号が応えてくれた気がした。


136 名前:ピエゾ・バイモルフ ◆VOn.4G9bRA :03/11/16 03:56


>>130
「さて… それじゃ行こうか。」

バイモルフは機体をブーストさせるとヤガランデの左前方へと進出、猛烈な
遊動射撃戦を開始した。
ヤガランデから見て右方向には擱座した味方機とファイナルステージとかいう
大技の準備で身動きのとれないビッグオーが位置している。
バイモルフは珍しくも殊勝な献身的精神を発揮してこれらをヤガランデの射界から
外させるように努めていた。

両腕を砕かれ、その攻撃力を大幅に低下させたとはいえヤガランデの火力は
なおも圧倒的であり、両肩部分の光学兵装――便宜的にTFCイレイサーと名付けられてる――
から繰り出される無数の光箭はその一本一本が重VRであるライデンをも容易に粉砕する
威力がある。

ただし、命中すれば。

バイモルフ機は流麗なスピンターンを繰り返してのZ字走行で
その全てを危なげなく躱していく。
逆にヤガランデの攻撃の間隙を突く形でバズーカでの牽制射撃を加えることで
更に敵の注意を自分へと引き付ける。
どうやらバイモルフは囮に徹することに決めたらしい。

「やれやれ… 舞台の上に立った道化師ってのはこんな気分なのかな?」

数瞬前に自分が位置していた空間を必殺の光条が薙ぎ払っていくのを後目に
しつつ、バイモルフは一人呟く。

「しかしずーっとこのまんまってのも埒があかないよねぇ……」

コンソール脇の通信機がメリッサ・マオ少尉の声で新たな状況を伝えてきたのは
再び迸る光弾を僅かな動きで回避しながらぼやいたときであった。

「…ウルズ2より『ランスロット』へ…… 聞こえてる? ピエゾ?』


137 名前:メリッサ・マオ ◆URUZ2MA4eI :03/11/16 04:00

>>130、>>136
アズラエルのワーロックは下半身を犠牲に、巨人の右腕を見事もぎ取った。
しかし、このままではアズラエルが敵の至近にとり残される事となる。
あたりの状況を再確認するが―――――今ここで動けるのは、あたしくらいだろうか?

闇姫と赤いライデンは擱座、瀬戸口の士魂号はその救出に動いている。
クルツのM9も、ここからは遠すぎた。
左腕もなく出力の落ちたM9で、はたして上手く救出できるか・・・・?
そんな懸念を抱いた、その時――
どこからともなく現れた派手な塗装のVRが、上半身だけのワーロックを掻っ攫い、安全な場所へ運ぶ。
あのカラーリングは―――ピエゾ!?来ないはずじゃ・・・・

そんなあたしの疑問もどこ吹く風で、光箭の雨をすり抜け、鮮やかにレーザーで敵の左腕を吹き飛ばすピエゾ。
本来なら文句のひとつも言ってやりたいところだが、さすがに今は状況が状況だ。
奴を観察していて気付いた点も踏まえ、務めて事務的に話をしようと回線を開く。

「ウルズ2より『ランスロット』へ…… 聞こえてる?ピエゾ?」
『こちらランスロット。どーもお待たせしました♪』
・・・・・・後で覚えてなさいよ、ピエゾ。
私情を押し殺し、話を続ける。

「あの化物の肩・・・・ビーム発射口になってるわよね、確か」
『ええ、そうですよ』
「なら・・・・・・両腕もぎ取ったついでに、あの肩もブッ潰して完全に無力化、っていうプラン考えてるんだけど、どう?」
『―――なかなかいい目の付け所ですね、いいでしょう。・・・具体的にはどうします?』
「クルツにも参加してもらうわ、いい?」
「あいよ、ウルズ6了解。で、どういう作戦だ?・・・・」


作戦は、いたって単純なものだ。
両腕をもがれて混乱しているうちにヤガランデに接近し、
タイミングを見計らって肩部の発射口を攻撃、破壊する・・・・・・という、いたってシンプルな戦法。
手短な通信による作戦会議が終了した後、あたしは作戦開始の号令を下す。

「手筈は分かってるわね、野郎ども?
 じゃあ頼むわよ。Ready・・・・・・・・・・・・・・・・・Go!Go!Go!」
その合図とともにあたしとクルツ、そしてピエゾは、各々のポジションとタイミングを見計らいつつ、戦場を駆け出した。

138 名前:ピエゾ・バイモルフ ◆VOn.4G9bRA :03/11/16 04:04

>>137
「ランスロット了解しました―――」

通信機にそう返すとバイモルフはポジショニングを確保すべく
再びライデンを大きく移動させる。

先程のTFCイレイザーの発射までの所要時間、およびこちらのレーザーの
一般設定射撃(対VR戦モードに比べて機動力に振り分けるエネルギーが
少ないためより強力な威力が得られる)に必要な時間から計算すると
このままではタイミングはギリギリアウトだ。

だがバイモルフはライデンを射撃ポイントに走らせる。
自殺志願?
いや、それはあり得ない。 無茶とか自己犠牲という概念はこの男には無縁のもの。
バイモルフには勝算があった。
少しでも機体を軽くするためにバズーカをその場にうち捨てた後、
バイモルフはためらうことなく機体の全装甲に強制排除をかけた。
丹念に彩られた装甲板を失ったライデンは全身スケルトンむき出しの
異様な姿へと変貌を遂げる。

「やれやれ……リペイントしたばっかりだっていうのにねぇ――――」

全身を覆う鎧を捨て、身軽になったライデンは猛加速して狙撃ポイントへと突進、
ポイント到達と同時に急旋回をかけて照準軸をセット、発射寸前のTFCイレイザーに対し、
レーザーを全力照射した。

直後、モニターを疾る閃光。
それはこちらのレーザーの着弾によるものなのか、それともヤガランデの
発したものなのか、はてさて。

「これで間に合った、かな?」

この期におよんでも冷静なバイモルフ。
そう、騎士たるもの、如何なる状況にあっても取り乱してはいけない。
運命を賭けた博打の場では、なおさらだ。



 

139 名前:瀬戸口隆之@絢爛舞踏(代理):03/11/16 04:10

VS ヤガランデ

>>135-

鋼の肉体が唸りを上げ、風を切る。
全てはあの破壊神を打ち倒す為、自らが好いている人々を護る為。
その為だけに俺は肉体を酷使し、走り続ける。

「キッド!奴をこの世に存在させてはならん。奴は、『悪しき夢』だ!」

体の中、コックピットから大猫、英雄妖精ブータニアスの声が聞こえる。
実際は違うかもしれないがあの昏色の破壊神がしていることは『悪しき夢』と同じ、全ての破壊。
ならば奴も『悪しき夢』、俺達の倒すべき敵。

「ウオォォォォォォォ!!」

返事代わりに叫びを上げる士魂号重装甲西洋型。

―ああ、そうだ。奴は、奴はこの世界に在ってはならない存在。全てを飲み込む闇。
されど我らは闇を払う、光の軍勢。
パンドラの箱の中に災厄と言える『悪しき夢』と共に一つだけ入っていた、『希望』。
我らは闇を滅するが為に戦わん――

雨の人が謡い、舞踏の神が舞う。
いつの間にか燕やら兎やら犬やら猫やら小神族が本部の周りに集まっていた。
神々が『悪しき夢』との戦いに集まってきてくれたのだ。
そして彼ら神々から発せられた青き光は士魂号の、いや、仲間全員の周りに集まり始める。

その士魂号の周りを駆け巡っていた青き光は剣鈴へ集まり、更に輝きを増し始めた。

狙うは一点、奴の腹部。

白銀の騎士が剣を振りかぶり、跳躍。
次の瞬間には青き光を纏った剣鈴が腹部を切り裂いていた。

…しかしまだヤガランデは機能を停止していなかった。

140 名前:ロジャー・スミス&R・ドロシー・ウェインライト ◆BIGO8lqz1o :03/11/16 04:13

>>129-139
倒すべき存在に次々と最大級の攻撃が叩き込まれ、そして動きが鈍ってゆく。
周囲の者達も私と同様の事を考えていたのかもしれない、しかしこれは絶好のチャンスだ。

グリップを握る手に力を入れ、今こそ最大の切り札を放つ時。
目の前にそびえ立つ恐怖など、この一撃で終わりにしてやると考えていた。

「これで終わりだ!!ビッグオー…」

その時。
聞きたくもない、いや聞いてはならない声が私の頭の中に響いてきた。

『それが正しい選択かね、ロジャー・スミス?』

それは紛れも無く、かって空を飛ぶ緋色のメガデウスを駆って私を苦しめた男の声だった。
まさか、そんな事は---ありえない、筈だ。
私は疑念に駆られ、思い出したくもないその名を口にした。

「その声…シュバルツバルト!貴様なのか!?」

すぐに返答が返って来る。

『一方的に恐怖の念だけで相手を殲滅するという事が、本当に正しい事かね?
むしろ、相手の方こそ正しき者なのではないのか?
貴様のような哀れな犬たちが持つ、場違い且つ強大であるべきではない力を、
”アレ”は相応の力をもって修正しようとしているのではないのか?』

「違う!そんな事はない!!奴こそこの場にいてはならない存在なのだ!!」

私は、忌むべき包帯姿の幻影に向かって反論した。
だが、それでもなお”奴”はひるむ事なく激昂している。

『貴様が!アレの存在意義を!否定出来るとでも言うのか!!
いや、違う!!貴様は絶対などでも、正義などでもないのだ!!
腐った街の哀れな飼い犬よ、認めるべき真実を見極めるのだ!!
真実は…真実は貴様が思っているほど単純なものではないのだよ、ネゴシエーター!!』

違う。違う…違う、違う!!

そう叫ぶ間もなく、目の前が真っ暗になった様な感覚に捉われた。
否定すべきものが…全く否定できない。そこには不確定な真実があるからだ。
グリップを握る手の力は次第に弱まり、私は戦意を喪失した。

不幸にも、そこへ足止めをくらったヤガランデが放った一撃が急速にビッグオーへと近付いている事にも気付かずに。


141 名前:相良宗介 ◆URUZ7h3pLo :03/11/16 04:18

>>130、>>139-140

アズラエルの、ワーロックの下半身を犠牲にした、苛烈なまでの特攻。
鬼神の如き勢いでバケモノの胸元から腹部までを大きく薙ぐ、士魂号の蒼き斬撃。
敵味方含む全員の意表を突く形で突如現れ、ヤガランデの左腕を吹き飛ばした、バイモルフライデンの対艦レーザー。

先程までのジリ貧だった戦況は大きく覆り、いまや大局はこちらに大きく傾いている。
現に、先程までの苛烈な敵巨大VRもどきの攻撃は、頻度・砲撃精度ともに大きく落ち込み、
巨体の割にかなりのものを誇っていた敏捷性も、いまや著しく低下している。

不意に上空に目をやる――裏を返せばそれだけ余裕もできたという事だが――と、
そこには、デモンベインの放った赤と銀の光に嘗め尽くされ、大爆発を起こして消滅するヴァルシオン。
空の戦局は、既に終局を迎えていた。

先程より明らかに緩くなった火線の雨をかいくぐりつつ、散弾砲を撃ち込み、更に回避。
こちらも明らかに力を減退したのか、先刻までより若干大きく弾痕が巨体に穿たれた。
いよいよ、このバケモノVRも終わりだ―――――そんな考えが頭をよぎった刹那、ひとつの事柄に気がつく。

この違邦の化物を葬るはずの奥の手の射手・・・・・・ビッグオーの音沙汰がないのだ。
既にそれなりにエネルギーチャージはできているはずだ。まだ足りないのか?
それとも・・・・・・何かトラブルでも起きたのか?
「アル!ビッグオーのチャージは今どのぐらいだ!?」
《現在、スキャン中………スキャン終了。
 ・・・エネルギー充填度、97%オーバーしました。既に発射できる段階です》
「・・・・・なんだと?」

一体、これはどうしたというのだ?
疑問と焦燥感をない交ぜにしたまま、ビッグオーへの回線を開く。

「ウルズ7よりビッグオーへ!敵は大きなダメージを受け、隙も見せ始めている!
 そちらの切り札はまだか!?」
『・・・・・・違う。違う…! 違う、違う!!』

「・・・・・!?」
通信機から返ってきたのは、まるで俺の声など聞こえていないかの様に、虚ろな声でわめき散らすロジャーの声。

142 名前:相良宗介 ◆URUZ7h3pLo :03/11/16 04:22

>>141

「応答せよ、ビッグオー・・・こちらウルズ7!
 一体どうした!?何があった!応答しろ!」
《警報!ヤガランデの両肩部に、異常なまでの高エネルギー反応の集束を確認!》

横合いからのアルの声に我に返り、モニターに目を移すと……
そこにあったのは、まるでライデンのレーザーの如く両肩にエネルギーを充填している、暗配色の巨大VR。
その状況が緊急事態であるという事を示す要素は、二つ。
ひとつは、その両肩にチャージされているエネルギーが、ライデンのそれとは比較にならないという点。
そしてもうひとつは…………その砲口が、ビッグオーを捉えていると言うこと。
そしてその破壊の奔流が、黒いメガデウスに向けて放たれるその瞬間――――

「―――いかんっ!アル!!」
《…了解!》
俺はアーバレストを、その射線を遮るように跳躍させる。

《来ました・・・・・・行けます。行動を、軍曹!》
「お・・・おおおおぉォッ!!!」

棒立ちのビッグオーの前に割って入った刹那、巨大かつ強固な、絶対の盾を脳裏にイメージ。
スティックを強く握り締めると、右腕のマスターアームをぐっ、とひねる。
機体はそれを忠実に再現し、視界いっぱいに広がるエネルギーの奔流目掛けて、力強く拳を突き出し――――
そしてアーバレストのラムダ・ドライバが起動し、不可視の力場が極彩色のエネルギーとぶつかり合った。

《ラムダ・ドライバ、過剰出力中。電磁筋肉、関節部、及び冷却系に過剰負荷発生》
「ぐっ・・・!」
凶悪なまでの破壊力を秘めた奔流との拮抗状態の中、わずかに呻く。
まるでその無茶苦茶なエネルギーを押しとどめるためだけに、機体と俺の精神に酷い重圧がかけられている様だ。
《――機体出力、5%減少。軍曹、気をしっかり持ってください》
「分かっている!」
アルに怒鳴り返しながら、俺は再度、後ろで今だ棒立ちの交渉人に向けて回線を開いた。

「何をやっている、ネゴシエイター!?ここは戦場だぞ!
 戦場で戦うことを放棄すれば、後に残るものはなんだ!?破滅あるのみだ!ならば戦え!
 それに・・・・・・貴様は交渉におけるスペシャリストなのだろう!?
 貴様もスペシャリストの端くれなら・・・・・・・・・己に課せられた任務は、きっちりと遂行して見せろっ!!」

重圧に耐えつつ気力を振り絞り、叱咤を飛ばす。
展開した力場と拮抗していたヤガランデのエネルギー流が完全に拡散されきったのは、その時の事だった。

143 名前:クルツ・ウェーバー ◆URUZ6oKCII :03/11/16 04:26

>>137
姐さんの合図で散開後、すぐさまM9を走り回らせ、あのデカブツの隙を探す。
いくつかの拡散レーザーを回避しつつ、様子をうかがっていると・・・
なんと奴は、棒立ちになっているビッグオー目掛け、両肩からライデンよろしく極太のレーザーをぶっ放した!

>>142
「なにっ!?・・・・・・大丈夫か!?」
いきなりの事態に、つい声を上げる。
光の奔流が収まった後には―――――無事なビッグオーと、それを守るかのように立っているアーバレスト。
どうやらまた、ソースケがラムダ・ドライバの防壁で凌いでくれたようだ。

『これは・・・随分予想外だったわね。第二射が来るとヤバイわ、急ぎましょう!』
「合点承知!」
応えて、さらにM9を加速させる。

そして、必中の距離にまで迫ったその時―――
既にエネルギーは臨界間近にまで高まり、いつ再発射されてもおかしくない状態にまで至っていた。

だがな・・・・・・・・・・・・撃たすわけにゃいかねえんだよ!
狙撃ライフル砲を構えなおすとその砲口は、まるで吸い付くようにあのデカブツの肩の砲口を指向する。
ASの骨格や筋肉を通して、自身がライフルと一体化する、あのいつもの感覚が蘇る。
『クルツ!?何やってんの、早く!』
「お静かに姐さん!俺の射撃に合わせて<ジャベリン>発射だ、いいな!?」


そして――― 一瞬が永遠の長さに引き伸ばされる。
そうだ。
さぁ・・・・・・・・・さぁ撃って来い、クソ野郎。

そして、ヤガランデの肩のエネルギーがひときわ膨れ上がる瞬間・・・・・・引き金を引く。
砲弾は寸分たがわず、発射間際のヤガランデの肩部砲門に飛び込み――――蓄積されたエネルギーと反応。
次の瞬間、マオが超高速ミサイルランチャー<ジャベリン>を発射。
秒速1500メートルを誇る、超音速の「爆裂する<槍>」が肩部に、一瞬遅れて突き刺さり・・・・・・・
ヤガランデはその肩から破壊光線ではなく、盛大な爆焔を吹き上げた。

「おっしゃあ!・・・・行け、ロジャー!!」

144 名前:ロジャー・スミス&R・ドロシー・ウェインライト ◆BIGO8lqz1o :03/11/16 04:29

>>142
『何をやっている、ネゴシエイター!?ここは戦場だぞ!
 戦場で戦うことを放棄すれば、後に残るものはなんだ!?破滅あるのみだ!ならば戦え!
 それに・・・・・・貴様は交渉におけるスペシャリストなのだろう!?
 貴様もスペシャリストの端くれなら・・・・・・・・・己に課せられた仕事は、きっちりと遂行して見せろっ!!』

―――その叱咤で、私の目の前にいた哀れな探求者の幻影は消え去った。
一人の軍人として、いや、共に戦う者として彼、相良宗介は私を幻から解放してくれたのだ。
この私とした事が、肝心な時にあの様な事になるとは。
おそらく、それは目の前にいる化け物がもたらした恐怖から来て、私を脅かしたのだろう。
だが恐れるものではない。我々が立ち向かい、そして打ち破るべき存在なのだ!

「…礼を言う、相良軍曹。どうやら私はちょっとした悪い夢を見ていたようだ。
だが君のおかげで馬鹿げた幻を打ち破る事が出来た。
戦闘中に居眠りをしてしまうなんて、私もまだまだ集中力が足りないな」

そう言って、再びグリップを握る手に力を入れる。
そうだ、この私はネゴシエイターだ、いかなる相手でもベストを尽くしてやる。それがプロたる者の常識だ。

「ヤガランデとやら、どうやらお前の恐怖はここに集う者達には通用しないようだな!
無論、これ以上この私にもお前の幻など全く意味を成さない!
お前が一体何者なのかは問いはしない、だがこれだけは言える!お前は、完全な”悪”だ!
悪しき者、害を皆にもたらす存在を私は決して許しはしない!!
ビッグオー…ファイナルステージ!!」

神の名において鋳造された鉄巨人の中から巨大な砲塔がせり出し、ゆっくりと回転し始める。
次第に、その先端は光と熱を増し、やがてそれは目の前に立つ悪しき存在へ向けられた大きな光の鉄槌となり、地を駆け巡る。
光の鉄槌は相手の体を瞬時にして焼き付くし、その汚れた魂を深くえぐり取ってゆく。
―――そう、これこそがこの黒いメガデウスの”切り札”、ファイナル・ステージなのだ。

ファイナル・ステージによって悪しき存在は撃ち砕かれた。熱を全て放出し、巨大な砲塔が音を立てて切り離される。
ビッグオーの視線の先には、光の鉄槌によって体を焼かれた鉄の魔獣が機能を停止している―――はずだった。

「…な…何て事だ…!」

信じられない事に、そこにはあの一撃を食らってもまだ動きつづけるヤガランデが居たのだ。

145 名前:ピエゾ・バイモルフ ◆VOn.4G9bRA :03/11/16 04:33

>>144
ファイナル-ステージ。
ビッグオーの放ったその一撃はその名にふさわしい絶大な威力であった。
その熱量はライデンのセンサーの許容量をオーバー。
つまりは先のヤガランデの一撃に勝るとも劣らないというわけだ。
ビッグオーとロジャー・スミス氏への認識は改めなくてはなるまい。


「へえ…… ビッグオー、馬鹿にするわけにはいかないね、こりゃ。」

膨大な光量から眼を守るべく手で眼を覆い隠しながらバイモルフは独語する。

そしてそのファイナルステージの幕が降りたとき、回復した視界には
ある種の昆虫にも似たしぶとさで動き続けるヤガランデの姿があった。

「フン… 舞台は終わったってのに、不粋だよ……。
 カーテンコールに君の出番はなしだってのにさ。」

バイモルフはぶうたれながらライデンを回頭させるとヤガランデの巨体を正面にロック。
そのまま残存エネルギーを全てレーザーに注ぎ込んで照射した。



146 名前:相良宗介 ◆URUZ7h3pLo :03/11/16 04:49

>>144
漆黒の巨大な鉄巨人――――ビッグオーが放った切り札、ファイナル・ステージ。
その身から放たれた、視界を嘗め尽くさんばかりの巨大な光が、あのVRの形をした闇を飲み込み―――

―――そして、当たり一体を真っ白に染め上げた光が収まった後。
そこに在ったのは・・・・・・その身をごっそりと光に抉り取られ、大破した体でなお動き続ける、あの巨大人型兵器。
もう終わりだ、俺はそう思っていたが・・・・・・・

《警告!ヤガランデからは今だ動力反応あり!》
「何だと!?」
信じられない話だ。あそこまで破壊されて、なお動けるなど・・・

―――大佐は、アレを「ここにいてはならない、排除すべき存在」だといった。
そして、全力を以て撃破殲滅せよ、とも。
ならば、俺の成すべきことはなんだ?

あちこち傷だらけになった純白のASが、半壊した巨人に向けて走り出す。

―――そう、跡形も残さず、破壊する事だ!

>>145
バイモルフの発射したレーザーが、大破した奴の体を更に打ち砕いてゆく。
さらなる爆煙を吹き上げ、のけぞる奴に向けて更に踏み込み、踏み込み、踏み込み―――
右の拳を、奴の残った胴体に叩き込んだ。

「 終 わ り だ ぁ ぁ っ ! ! !」

その瞬間、数百匹の獣が一斉に咆哮したかのような異常な音が、空間を揺るがす。
アーバレストの拳から流れ込んだ、意志の具現化した“力”は、
そのままヤガランデに残された全てを蹂躙し、破壊し、・・・・・・ばらばらに粉砕していった。

147 名前:Jaguarandi:03/11/16 04:51

憎悪の咆哮が世界を震わせる。
だがそれは先程までのものとは違い、どこか弱々しい空虚さを伴っていた。
絶対の存在であったはずの破壊の化身は今やその実体を失おうとしている。

傲然とその存在を誇示していた常軌を逸する巨躯は力なく地に崩折れ
全身に明滅する殺意の輝きは壊れた電灯のような不定期な瞬きを繰り返すのみ。
そしてあたりを満たしていた圧倒的な重圧感は敗者特有の怒りと怨念へと
その座を譲りつつ、霧散しようとしていた。

再び迸る思念の波動。
それは最早他を圧する力を失った魔神が最後に放った
文字通りの断末魔の叫びでもあったろうか。

そしてヤガランデは全ての動きを止める。
異界より来訪した破壊神はその目的を果たすことなくその巨体を横たえた。


そして状況は再び変化。
地に伏したヤガランデの姿がぼう、と霞みだし、急速に輪郭を失っていく。
アース-クリスタルを依り代として実体化されていた抹消の意志の器は
その主を失った今、この世に存在を続けることが不可能であるが故に。
あれほどの存在感を誇った巨体がみるみるうちにその構成を崩壊させ
自壊、かき消すように消滅していく。

やがてその姿は完全に消失し――――






――――後には破壊の爪痕と恐怖の記憶のみが残された。



後日、行なわれた調査においても、ヤガランデの存在したことを指し示す
証拠となる品は破片の一つに至るまで発見されることはなかったという。


148 名前:テレサ・テスタロッサ ◆MytHRIlPXY :03/11/16 05:33

>>147

―――消えてゆく。
黒い意志の塊をあちこちに発散し、破壊の限りを尽くしていた異邦の破壊神が。
残骸、部品――――いや、もっと根源的な部分から破壊され、空間に0と1を撒き散らしながら跡形もなく。

そして最後にまばゆい光が、ヤガランデを包んだ次の瞬間―――
異界からの破壊神は、この場にいたと言う痕跡の一切まで消滅した。


・・・・・・わたしは、心底安堵した。
最初は、実戦形式の演習・・・・・・それだけだったのに。

戦闘が終わり、随分と様変わりしてしまった演習場。
地形や景観を大きく変えるような激烈な戦闘の中にあって、誰一人として死者を出さずに済んだのだから。

戦いが終わり疲れ果てた戦士達にむけ、わたしは万感を(無論労いの意も)込めて・・・宣言した。

「HQ、アンサズより本演習に参加した全ての人たちへ。
 現時刻をもって、本演習――――いえ、任務の完全終了をここに宣言します。
 皆さん・・・本当に、お疲れ様でした」


<ロボ乗りスレ祭り・デモ:実戦式模擬演習――――――戦闘終了>

149 名前:フェイ&エリィ&バルト ◆8PXenoqsmM :03/11/24 23:07


―――エピローグ―――



ヴァルシオン改の撃破を確認した後。
ヤガランデの撃破…モニターでぎりぎり視認できる最期の閃光を尻目に、
E・アンドヴァリとヴィエルジェの二機は、全速力でイドを追った。

あれだけの巨大なエネルギー反応は
地平線の彼方に消えた時よりすでに無く。
ユグドラシル三世のレーダーからさえもその姿をくらませた機神を追う術は、
ただただ彼の方向に直進するのみ。


ついにイドは発見できなかった。
その代わりに――――
クロスマッシャーの光に呑まれたはずのヴェルトールが、
基地から遠く外れた森の半ばに落着しているのが確認される。

奇しくもそれは、演習…任務の完全終了の通達の直後の事だった。



「フェイ……フェイ!!」

「…………………あれ………?」

「あれ…じゃないわよ、もう……」

「……泣いてるのか…エリィ?」

「知らないっ…………」




<ユグドラチーム 戦闘終了 レス番纏め>

>>7 >>18 >>38 >>42 >>54 >>69 >>96 >>105 >>108


150 名前:ドクターウェスト@ロボ乗りスレ:03/11/27 04:06

    エピローグ   散りゆくは、美しき幻の・・・


「博士!起きるロボ!朝ロボよ〜」
「う、う〜む、もう朝であるか」

 ウェストがベッドから起きあがると、台所から良いにおいが漂ってきた。どうやら朝食が
そろそろ出来あがるか、もう出来あがっているのだろう。
 軽く伸びをしてキッチンへと向う、思えば昔はこの様な朝を迎えることなど想像すらして
いなかった。そんなことを考えている内に台所につく、中を見ると彼の愛する者が朝食の用意
をしている最中だった。
 ウェストが己の最愛の者に呼びかける。

「おはよう・・・チアキ」
「おはよう・・・あなた」








「なんかよぉ・・・いい夢見させてもらったのである・・・
 けどな、ありゃ夢なのである・・・ただの夢なのであるよ・・・」

 岩に叩きつけられ、さきほどまで失神していたウェストが悲しげにつぶやく。

「こんなささやかな・・・そうや、すぐにでも手に入りそうなもんを・・・ウチはこんなにも
 欲していたんやな・・・不器用やな、ウチは本当に不器用な女や・・・」

 同じように倒れこんでいたチアキが、寂しげにつぶやく。
 二人の視線が交わる、そこにはもう先ほどまでの感情は無い。あるのはただ決意のみ。

   「 だ か ら よ ぉ !!」      「 故 に !!」



151 名前:ドクターウェスト@ロボ乗りスレ:03/11/27 04:08





『うわああああああああああああああ!!!!!!!』

 互いの跳び蹴りが決まって意識を失っていた二人、チアキとウェストが飛び起きる。

「ノォォォォォォォォォォ!!!
 あ、あの名状しがたい悪夢を、何処をどの様な角度で見たら良い夢になるというのであるか!?」

「欲してへん欲してへん!!!ウチはあないなもん、これっぽっちもほしない!!!」

『・・・・・・』

 なんとなく互いをチラリと見てみる。

『だああああああああああ!!!!!』

「二人とも何やってるロボ?」

 悶絶している二人の前に、何時の間にやらエルザが立っていた。

「ロボッ娘!?べ、別に何もかわったことなんてあらへんで!」
「そ、そうであるよ!そ、それより量産型の戦闘データは回収したのであるか?」

「それはばっちりロボ!」

「そうであるか!ではこの様な凡人眼鏡が生息するような場所に、長居は無用であるな!!」
「ウチかてあんたみたいなキ○ガイがおる様な所に、これ以上一秒でも長くおれへんわ!!」
「誰がキ○ガイであるか!?我輩の偉大なる才能が、貴様のような凡人かつ眼鏡の存在に理解できぬと
 いって、我輩を陥れるような発言をするとは!?しかし貴様がいかに嫉妬の炎で己の身を焼いて
 『科学忍法タツマキファイヤー』等を繰り出そうと、我輩は知的かつ科学的に

 『 タ ツ マ キ は 日 本 語 で フ ァ イ ヤ ー は 英 語 だ 』

 と返すのみであるからして、己の才能のちんけさに涙を流すが良い!!!」
「ウチがあんたみたいに、完全無欠の精神病院に入るべきのキチ○イに嫉妬するわけないやろうが!
 自分の脳みその中を調べてからモノいわんかい!!!」

 再び言い争いを始める二人。

「二人とも相変わらず仲が良いロボね♪」

『  ど  こ  が  だ  !!! 』

「うわぁ・・・おっかねえロボ」



<ドクターウェストと愉快な仲間たち 総合演習終了>

以下レス番まとめ

>>12 >>28 >>30 >>76 >>99 >>107 >>113 >>114(修正)>>116


152 名前:一刻館総合演習実行委員会:04/03/12 01:16

>>4-151

一刻館総合演習出演機体&パイロット一覧

・「無垢なる刃」デモンベイン by 大十字九郎&アル・アジフ
・「スーパーウェスト無敵ロボ28號DX」デモンペイン by ドクターウェスト&エルザ
・量産型破壊ロボ
from「斬魔大聖デモンベイン」

・HBV-05F8S ライデン by ミミー・サルペン
・XBV/DD-05/02 RAIDEN PROTO TYPE[試型雷電] by ピエゾ・バイモルフ
・MBV-04-10/80
・SAV-326-D9 グリス-ボック
・「幻獣戦機」ヤガランデ
from「電脳戦機Virtual-On」

・ビッグ・オー by ロジャー・スミス&ドロシー・ウェインライト
from「THE ビッグオー」

・ヴェルトール by ウォン・フェイフォン&イド
・ヴィエルジェ by エレハイム・ヴァン・ホーテン
・E・アンドヴァリ by バルトロメイ・ファティマ
from「ゼノギアス」

・ワーロック by アズラエル大尉
from「パワードギア」

・「銀の流星」アルテリオン by アイビス・ダグラス&ツグミ・タカクラ
from「第二次スーパーロボット大戦α」

・「スピリットオブサムライ」士魂号重装甲西洋型 by 瀬戸口隆行
from「高機動幻想ガンパレードマーチ」

・デッドリードライブ「闇姫」 by フロスティ・フェイ
from「コールド・ゲヘナ」

・ARX-7 アーバレスト by 相良宗介
・M9ガーンズバック by メリッサ・マオ
・M9ガーンズバック by クルツ・ウェーバー
from「フルメタル・パニック」


・ターゲットドローン
・VF-11Bサンダーボルト
・ゴーストAIF-9B
from「MACROSS VF-X2」

・量産型ゲッタードラゴン
from「真ゲッターロボ・世界最後の日」


・スカルガンナー
from「蒼き流星SPTレイズナー」

・「ソルジャー」ゼカリア
・「ファットマン」ハバクク
from「スーパーロボット大戦α」

・ヴァルシオン改
from「スーパーロボット大戦EX」


―Special thanks―
Mr.301
エイジス・フォッカー
ユーゼス・ゴッツォ

&You


153 名前:ガウルン:04/03/12 01:22

アファームド・シャドウ<GBH>vsヴェノム 『猛毒と狂気の影 ―Dance Macable―』

飛行型バーチャロイドの爆発が、宵闇に覆われた戦場を赤々と照らす。

炎と煙をもうもうと上げる真紅の機体が、まるで勢いを失った独楽のように
回転しながら落ちていき――大地に激突してばらばらになる。
機関砲の咆哮。飛び交う砲弾、銃弾、光弾、ミサイル。
“無惨”以外の形容を許さないように、破壊され散乱し、未だめらめらと火の手をあげ続ける機械の残骸群。

戦場となった荒野の一角で擱座しているのは、MBV707-F<テムジン>。
バーチャロイドによる限定戦争が始まって以降、その高水準の機体性能により現在もあちこちで幅を利かせる名機である。
否、名機であった・・・・・・とするべきか。
全高十六メートルの人型兵器は、グロテスクな角度で手足を曲げたまま大破していた。
その胸部装甲版は大きくひしゃげ、さらにその中央…
機体内部からは―――酷く生臭い香りを放つ、真っ赤な液体の花を咲かせていた。


「やれやれ―――新型<コダール>の試運転とはいえ、こりゃはしゃぎすぎたかね?
 随分散らかしちゃって・・・後片付けが大変だよ、こりゃ」

無惨なまでに破壊されたVRの正面で、一機の赤い、まるで毒矢の鏃を思わせるような凶悪なフォルムのヒトガタは、
呆れたようなふざけたような口調で肩をすくめた。

機体名<コダールm>。
国際的テロ組織<アマルガム>で極秘に開発された、最新最凶のアーム・スレイブ。
その毒々しいデザインから猛毒(ヴェノム)と通称されるこのASは、文字通りその凶暴さを以て――
目の前のVRの所属していた部隊を、たった一機で全滅――否、虐殺してのけたのだ。

「しっかしこいつら・・・・・・ASよりガタイいいクセして情けないねー。まるでゴミだよ、粗大ゴミ。
 ま、とりあえずこれだけ結果が出りゃエラいさんがたも満足するだろ・・・・・・・・・あん?」

――その時だった。
自機以外の全機体を殲滅させたはずのこの戦域に、もう一機の動力反応。

「・・・あぁん? 確かに皆殺しにしたと思ったんだがな・・・・・・」
けだるそうに機体を振り向かせ、レーダーの指し示す方角を向く。

その視線の先には――先程までの連中とは明らかに一線を画した雰囲気を持つ、一体の人型機動兵器の姿があった。

154 名前:GBH ◆GBHtLmfAD6 :04/03/12 01:31

アファームド・シャドウ<GBH>vsヴェノム 『猛毒と狂気の影 ―Dance Macable―』

>>153

白濁した闇の中。 覚醒する意識。 得体の知れぬ困惑感。
俺は一体何者で何処で何をしているのか。
漠然とした不安感。 具体的な恐怖感。
それらを払拭し、取り除くべく自問自答してみる。

――わからない。

再度問いかけを試行する

――わからない。


三度、問いかけを……





幾度目かのリフレインは全て徒労。
わかったことは自分の意識がここにあるということだけ。
自分自身についての情報は皆無。

視線を移し、己の手を眺め見る。
パイロットスーツのグローブに包まれた、鋼鉄のマニピュレーター。
手に握っているのはコントロールスティックとマチェットの柄。
狭苦しいコクピット。 風が吹き荒ぶフィールド。
それらのいずれもが現実であり、仮想。

俺はパイロット? 俺はVR?
わからない。 いったいどちらが本物の俺なのだろう。

俺は人間なのか、機械なのか、生き物なのか、プログラムなのか。
この意識は脳に宿るものか、それとも回路の上を走るパルスに過ぎないのか。

                      ――――わからない。


漆黒の機体の各所に赤い灯が点り、エネルギーの渦が全身を駆け巡る。
恍惚。衝動。悦楽。 そして虚無。

コクピットの中に瞬く無数の無機的な光。 モニターを流れる無数の文字列。
その全てが重要な情報であり、それでいて無価値なもの。


レーダーが目標を捉え、アラート。
やかましい。 そんなことよりも俺は―――

機体を回頭し、標的をロックオン。
さぁ、ショータイムの始まりだ―――

そもそも俺はいったい、予定通りに、何者で、戦闘開始、なんで戦うのか、目標移動中、
わからない、ロックオンアラート、なぜだ、FCS呼び出し、わからない、くだらない、
何のために、攻撃開始、いったいどうして、ナパームを投擲して牽制、俺は、後に前進、
俺は、なぜ、俺は、俺は俺は俺は俺は………



155 名前:ガウルン:04/03/12 01:42

アファームド・シャドウ<GBH>vsヴェノム 『猛毒と狂気の影 ―Dance Macable―』
>>154

目の前に現れたのは―― 一体のバーチャロイドだった。
確かあれは・・・・・・・・・アファームドとか言う機種だったか。
ついさっきまで屠殺してきた機体の中にも、そういえばあんなタイプの機体が何機か混じってた気がしたなァ・・・

・・・ただ、そいつは明らかに他の連中と比べて異様だった。
真っ黒なVR。その機体のあちこちを血管の如く走る赤いラインは、不気味に輝いている。
まるで、人間のどす黒い内面を抽出して作ったみたいな―――――

「・・・・・・おっと。俺ともあろうモンが何をボーっとしてるんだかね」
敵機の事を考えて忘我していた自分に気付き、頭を振って機体操作に意識を戻す。

今目の前の漆黒の機体に対面したなら、普通の操縦兵なら気圧され、身がすくむどころか
ろくに次の動作に移ることもできないだろう。だが―――

「くっくっくっく・・・・・・ハーッハッハッハッハッハッハァ!
 なかなか殺し甲斐ありそうなのが出て来たじゃねぇか! イイぜぇ!?」
男からあふれ出すのは恐怖ではなく、抑え切れない哄笑だった。
この猛毒と呼ばれる機体を駆る男――ガウルンは、むしろ楽しそうに爆笑し、吼える。
そう、彼もまた、目の前の敵に劣らず狂気じみた精神の男。いまさらこの程度で毒されるほどまともな人間ではない。
それゆえに、この機体の乗り手に選ばれたのだから。

こちらを目掛けて投擲されたナパーム弾。
宙を舞う爆薬―――そしてその先にある、漆黒のアファームド。
それらに対し、明確な愉悦交じりの殺意を向け――

「まずは熱烈な挨拶、痛み入るよ・・・くく。
―――それじゃ、お望みどおり遊ぼうじゃないか・・・・・・?  さぁ、楽しいゲームの始まりだぁ!!」

嬌声とともに右手に構えられたガトリング砲が、怒涛の勢いで火を噴いた!

156 名前:GBH ◆GBHtLmfAD6 :04/03/12 01:48

アファームド・シャドウ<GBH>vsヴェノム 『猛毒と狂気の影 ―Dance Macable―』
>>155

前方の敵機を視認。
赤い血の色をした一機のアーム・スレイブ。
データ照合開始――――unknown

正体不明の敵。
正体不明の自分。
訳の判らない世界で訳の判らないモノ同士、訳の判らない理由で戦っている。

悪くない。
この戦いに勝利すれば戦いに勝ったモノという、自我の拠り所が得られた上、
存在を継続することが許される。
敗北者には―――わからない。

考えられない、考えたくない。
俺はこいつを殺して俺になる。

それだけで充分、他は目に入らない。

――赤いそいつは、手にしたガトリング砲を構え、せせら笑うように一斉射。
着弾寸前だったナパーム弾を苦もなく粉砕、爆散させた。
二つの人型の影の間に、徒花と呼ぶに相応しい無意味な花が咲き乱れる。
その赤い光に照らされながら、敵機は灼ける砲身を構え直す。

次いで加えられる猛砲火。
空間を裂いて飛来する無数の殺意。 気に入らない。
だから真っ向から全速力で突っ込む。

無数の弾体が全身を撫で回し、削り取る。
容赦なく、無慈悲に俺の生命を削り取る。

この痛覚―――気に入らない。
生の証―――気に入らない。

装甲材を無数の欠片と飛散させながら、右手のターミナス・マチェットを構え、
ヤツに向かってブーメラン投げの要領で投擲する。
その軌道は、狂気の主のみが持ちうる正確さで真紅のASの正中線を捉えていた。


157 名前:ガウルン:04/03/12 02:45

アファームド・シャドウ<GBH>vsヴェノム 『猛毒と狂気の影 ―Dance Macable―』
>>

「ハ―――ッハハハハハハ、ハァ――ッハッハッハッハァ!!」

笑う。
嗤う。
嗤う。

貪欲なまでの愉しみを噛み締めつつ、なおも哄笑する。

打つ。
撃つ。
討つ。

基部から無数の薬莢が吐き出され、大地を打つ。
六連装の凶悪な砲門から、無数の小砲弾を撃つ。
殺意の載った無数の鉄火が、目の前の粉砕対象を討つ。

雨あられの如くばら撒かれた35ミリ砲弾が宙を舞うナパームを引き裂き―――爆発。
爆風が互いに互いの姿を覆い隠すが―――ハイになったそのままの感覚で、さらに爆発の中にガトリング砲を乱射。
爆焔の向こうの敵に、容赦なく鋼のスコールが牙を剥く。


「・・・しかしまさか、この程度でくたばったなんて・・・・・・ふざけた事言わねぇよなぁ?」
ひとしきり弾を斉射し終えて興奮が冷めた所で、もうもうと上がる爆煙にむけて、ぽつりと一言。
半ば確信に近い期待を込めたその一言が終わるか否か――その瞬間。

「―――!?」
それは猛烈な、殺意のこもった、形ある危機。
反射的に危険を感じ取り、ガトリング砲を構えなおして――――

ぎぅんッ!
「―――!? ちっ!」
構えなおした六連装ガトリングの砲身に、深々と大振りのマチェットがめり込んでいた。
舌打ち一つ、すぐさま無用の長物と化したガトリング砲を放り捨てる。
晴れかけた煙の向こうに見えるのは―――黒煙よりもなお黒く昏い、狂気じみた一機のVR。

「・・・・・・まさかバカ正直に、ここまでバカみたいに突っ込んでくるたぁな!
 いいぜお前、最高だよ! あぁんッ!?」

むしろ挑みかかるように叫ぶと――ヴェノムはガンマンの早撃ちにも似た
素早い動作で、腰部ラックに装填された単分子カッターを引き抜く。
高速回転する単分子のエッジが、凶暴な唸り声をあげつつ―――――

「こいつはおひねりだ・・・・・・ありがたく取っときな!」
目の前の敵の蛮勇に対する、思いきり殺意の載った返礼として振り下ろされる!

158 名前:GBH ◆GBHtLmfAD6 :04/03/12 03:19

アファームド・シャドウ<GBH>vsヴェノム 『猛毒と狂気の影 ―Dance Macable―』
>>157

ギン、と金属同士が引き裂かれ合う耳障りな響きが谺する。
凶なる刃は狂なる銃火を穿ち、半ばまで断ち切って止まる。
ガトリング砲という毒牙を失ったヴェノムの腸を引きずり出すべく、GBHは突進。
機体の背部から流れ出る青白い放熱ブラストが不吉に輝く。
その速度は実にマッハを超えている。 音を置き去りにしていく静寂な世界。
発生する衝撃波で大地を抉りつつ、残されたもう一本のマチェットを構え、振りかぶる。

こいつが俺の意志に従っているのか、俺がこいつの意志に操られているのか。
それとも俺はこいつでこいつは俺で……

何度思考を円環させてもわからない。 わかるのは眼前にいる赤い影――敵――を
断ち切り、引き裂き、踏みしだき、食いちぎり、焼き尽くし、奪い尽くしたいと
俺だかこいつだかを動かすモノが切に願い、実行することを求めているということ。

無音の世界の中、彼我の軌道が交錯。
敵機が新たに抜き放ち、振りおろす大型のナイフ状の刃物と横殴りに叩きつけられる
GBHのマチェット、二つの凶刃の描く死線が交わった。

一瞬後、GBHの世界に音が帰ってくる。



159 名前:ガウルン:04/03/12 04:15

アファームド・シャドウ<GBH>vsヴェノム 『猛毒と狂気の影 ―Dance Macable―』

>>158
―――がぎぎュぃんッ!

こちらが振り下ろしたナイフは、耳障りな金属音とともに弾かれた。
正確には敵のVRのマチェットとかち合った結果、引き分けのような形で弾かれあったのだが。
多分に不本意な結果ではあったが・・・・・・こちらの倍近い体躯と質量、
音速に達するような速度、そしてなにより、こちらよりも必然的に大振りな得物。
対格差と出力でASに倍するVRの突進を受け止めたのだ、むしろ僥倖というべきだろう。


「――だがなぁ・・・・・・その分だけこっちが有利になるポイントってのは知ってるか?」

ガウルンは、ニタリ、と凶悪そのものの笑みを浮かべると
ナイフごと弾かれた腕をなめらかに動かし、あっという間に体勢を立て直す。
さらにそこから熟練された手つきで、変幻自在に単分子の刃を振るう。

上段、下段、右、左、切上、逆切上袈裟逆袈裟刺突抉り――――――――
四方八方あちこちから斬りつける斬撃は、一太刀ごとにさらに加速してゆく。
相手の対応する動きの間隙を縫うように、いくつもの傷が黒いアファームドに刻み込まれてゆく。

「いくらガタイがよくて出力がでかくってもなぁ・・・・・・こんな間合いで果たしてここまで小回りが利くもんかね!?」
 ほらほら頑張れよ、どうしたのかなぁ? このままじゃ膾だぜぇ!? ハァ――ッハッハッハッハァ!!」

さらに一つ、また一つと装甲版に傷が追加され、装甲の破片と火花が、さながら本物の血煙の如く跳ねる。
体格差を逆に利点に変え、赤い猛毒はさらに凶刃を加速する――――――

160 名前:GBH ◆GBHtLmfAD6 :04/03/12 04:33

アファームド・シャドウ<GBH>vsヴェノム 『猛毒と狂気の影 ―Dance Macable―』

>>159

手にした刃は殺意の具現となって赤い影に打ち込まれる。
必殺の威力と必中の速度で繰り出される斬撃。 俺が俺になるための聖餐の刃。
血の色をした贄を屠るべく満身の力で叩き付ける。

だがその一撃は苦もなく躱された。
刃を振り切って体勢の崩れたGBHにヴェノムの毒牙が容赦なく奮われる。
胸部の装甲材にずぶりとめり込む刃。 これまでになく深い、灼けつくような痛み。
その刃先はさらに抉りこむように体内へと侵入してくる。
コクピットがの中がスパークし、モニターの幾つかが断線、ブラックアウトする。

――痛い。

どくどくと流れ出る生命。
傷口から溢れだし、拡散していく。


――楽しい。

殺し、殺される悦楽。
ハハハハハ、俺は今確実に生きている。

それが嬉しい。
それが苦しい。

頼む、誰かこの歓喜の場から救い出してくれ。
この苦痛の牢獄にいつまでも閉じ込めてくれ。


さっきから笑いが止まらない。
斬られながら笑い、突かれながら笑い、刻まれながら笑う。
半ば動かなくなった左手で遠距離投擲用の炸裂弾のスイッチを入れたときもまた。
再度切り込んできたヴェノムの鼻先に丸い球状の弾体を突き付ける。

閃光と轟音が世界を支配したのはそれから正確に一秒後のことだった。

161 名前:GBH ◆GBHtLmfAD6 :04/03/12 07:00

アファームド・シャドウ<GBH>vsヴェノム 『猛毒と狂気の影 ―Dance Macable―』

>>160

灼熱の痛覚。 索敵開始。 感覚の麻痺。 敵機再捕捉。
赤い液体。 視覚系に異常。 右腕のマチェット。 何も見えない。
割れるような頭痛。 頭部に重度の損傷。 折れた刃。 殺意の牙。
敵は何処だ。 俺は何だ。 ヤツは何処だ。 俺は何だ。 ヤツは……


地面に横たわる身体。 何故俺はこんなことをしている。
肩口から千切れ飛んだ左手。 苦痛と喪失感。 そして陶酔。

赤く塗れたコクピット。
お前ははまだ生きているのか。
俺はまだ生きているのか。

――わからない。

バネ仕掛けの人形のように立ち上がる。
数合に渡る打ち合いと先の爆発のダメージとで、最早切断武器としては
用を為さなくなったターミナス・マチェット。 だが手放さない。
これは大事な俺の一部。 俺の牙。俺の爪。 そして俺の命。

あの赤い姿を求めて朦朧とする頭を経巡らせる。

―――見つけた。
ロックオンサイトの中央、真正面にヤツを発見。

嬉しくて、悔しい。
殺す。 殺してやる。

今やっと理解した。
俺の生命。 俺の存在。
それらは皆貴様を殺すため、俺を殺すため、その他この世の一切合切を
終わらせるためにあるのだと。

さぁ、終わらせよう。
俺の存在意義を満たし、お前の存在を消し去り、俺とお前を等しきものにしよう。
混じりあい、無に帰り、俺になり、お前になり、どちらでもありどちらでもなくなろう。

前方に佇むヴェノムに向かって再びブースト、突進する。
直後、足下で爆発。 左脚がもげ飛ぶが気にしない。
残った右足で地面を蹴る。
蹴り脚を大きく前に振り、蹴撃の体勢に。
そのまま真直ぐ正面へとフルブースト。 漆黒の凶影が空を裂き、疾る。

見ればヤツもまたこちらに向かって全速で突進してくる。
まるで鏡を見ているかのよう。 それも至極当然のこと。
俺は、お前なのだから。

背部のV-コンバータが俺の喜びと怒りと哀しみと愉しみとに打ち震え、唸る。
ああ、俺はついにお前と融け合える。
お前を食い尽くし、喰らわれ尽くされる。
こんな嬉しいことはない・・・・・


162 名前:ガウルン:04/03/12 07:08

アファームド・シャドウ<GBH>vsヴェノム 『猛毒と狂気の影 ―Dance Macable―』
>>161

「くははははははは・・・・・・・はぁッはっはっはっはっはっはっはっはぁ!!」

留まらない。
停まらない。
止まらない。

先程から、己に倍する黒い巨体を切り刻み続ける手も。
高速回転する単分子のエッジに抉られ、ひっきりなしに噴き出す火花と循環液の返り血も。
そして、ますます狂気の色を強めていく、自分自身の哄笑も。

そして、幾度目かの単分子カッターが振るわれた直後――――――――

びしり。

装甲版が抉り切られる音よりも、エッジの回転音よりも小さな、しかし確かな音と手ごたえが伝わる。
その瞬間、自分でもある意味自我が曖昧になりつつあったガウルンは、ふと我に帰った。
ただ“ハイになる”のとはまた違った、自分の者と似て非なるどす黒い快楽。

(―――ちっ、なんだったんだ今のは?)
いつの間にか自分がそんな、妙な感覚に囚われている事に気付き――― 一瞬だが、その刃を振るう手が止まる。
それは一瞬の出来事。

だが、相手の反撃行動はその一瞬に滑り込む形でやってきた。
ごく一瞬の集中の断絶から再度我に帰り、再度そのAS用の大型ナイフを突きこもうとしたその瞬間――――
ヴェノムのカメラアイの映像は、白一色に染め上げられた。



「――――ぐっ! 糞が・・・・・・やってくれるじゃねえか」
悪態をつきながら、ガウルンはヴェノムを立ち上がらせる。
ナイフ攻撃が止まった一瞬――――敵VRはそこに至近距離で、ハンドグレネードを滑り込ませたのだ。
互いにゼロ距離の爆発であった為、両機とも大きく吹き飛ばされて―――現在に至る。
格段に写りの悪くなったカメラに目を凝らすと、奥のほうでやはり大きく吹っ飛ばされたアファームドが立ち上がるのが見えた。

ヴェノム――<コダールm>。
ラムダ・ドライバをとっさに発動させたとは言え、至近距離の爆発であった為、頭部が半分ほどひしゃげ、えぐれ飛んでいた。

――黒いアファームド。
ただでさえ傷だらけの状態でさらに爆風を受けた為、機体のあちこちをすでに紫電が踊っている。
が、その機体が醸し出すおどろおどろしい気配は、未だにかすみもしない。

その妙な気配に、先程自分が囚われかけた妙な感覚とダブったものを感じ取る。
本能のどこかが、こいつは本質的に危険だとやかましく告げていた。

・・・・・・・・・チッ。カシムでもねぇのに何なんだ、この感覚は?
しかもカシムのときと違い、その危険さには不快感しか付いてきていない。
その事実が、この不快感をさらにいや増す。

「そろそろ飽きてきたよ、あんた・・・・・・・・・」
長時間稼動と限度を越えた衝突で馬鹿になりかけていた単分子カッターを構えると、
ヴェノムはそれを無造作に、黒いアファームドのほうに投げつける。
いささか狙いが甘かったのか、それは機体ではなく、そのすぐ脇に飛び―――――

その足元に転がっていた、先程のガトリング砲。
その露出した弾倉に、スパークしつつある壊れかけの単分子カッターは勢いよく突き立った。

一瞬後、衝撃とスパークと弾薬の三要素が重なり合い、爆発。
それを合図に毒々しい赤色のASは、全速力で黒いVRに吶喊する。
その右手には、いかなる物理をも超越した原理の光と、異音を絡みつかせて。
「―――死にな」


163 名前:GBH ◆GBHtLmfAD6 :04/03/12 07:20

レスアンカーリンク訂正
>>161は>>162への、>>162は>>160へのレスとなる。

順番に読むには
>>160 >>162 >>161 という形になる。

ここまで読んでくれた諸氏には、実に申し訳ない―――


164 名前:ガウルン:04/03/12 08:21

アファームド・シャドウ<GBH>vsヴェノム 『猛毒と狂気の影 ―Dance Macable―』

>>161

黒いVRに向かって、赤いASが全速力で吶喊する。
赤いASに向かって、黒いVRが迎え撃つように疾る。

―――こちらの行動に合わせるようにして、黒いVRは壊れかけのボディに鞭打って走りこんで来る。
そのさなかにも先程のダメージと爆発との負荷が重なり、機体のあちこちが既に爆装状態で火を噴いている。
まさに死に体と言っても差しつかえのない状態だった。

だがそんな状態にあっても、この狂人じみた男ガウルンをして怖気を走らせるような
どす黒いプレッシャーはなおも衰えない、いや、むしろさらに餌食を欲して膨れ上がっている。

目の前のVRの腕がちぎれる。
増幅、膨張。
こちらに向けてバーニアをふかした反動で、その足がもげる。
爆発散大、さらに増幅、膨張。

そんな奴に突進するさなか、ガウルン自身にも、先程触れたあのどす黒い思念が膨れ上がりつつあった。
だが、それはむしろ拒絶ではなく親和。似通うゆえに、より膨れ上がる。

俺は奴を殺さねばならない。なぜなら俺が危ない。
俺は奴を殺したい。生意気だから。愉しいから。ムシャクシャするから。邪魔だから。
目の前のガラクタを叩き壊したい。目障りだから。愉快だから。
跡形もなくぶち砕きたい。スカッとするから。何より憎たらしいから。
人間の攻撃衝動を具現化するラムダ・ドライバも、その昏い衝動を糧にさらに駆動率を上げる。
ヴェノムの右手の辺りの大気が軋み、ぎゅんと鳴りうるはずのない異音で吼える。

奴が蹴りを繰り出す。用法が違うがもはや九死一生ともいえる機体で。
極限近くまでよく似たエネルギーと思念が接近し、共鳴する。

そうか、奴はそこまでして俺を殺したいか。俺に殺されたいのか。
だったら俺もお前を潰してやる。殺してやる。
踏み躙ってやる。完膚なきまでに凌辱して蹂躙してやる。
嬉しいだろう? 悲しいだろう? 悔しいだろう? 愉しいだろう? 俺もそうだ。

そして奴の背中から膨れ上がった黒いプレッシャーは、暗黒色であった奴をさらに黒く包み、迫り来る。
こちらの機体まで飲み込まんとして、さらに膨れ上がる。
そしてそれによって加速した蹴りが、赤いASをぶち抜く為にさらに伸びた。
だが―――

「―――野郎と心中する趣味はねえんだよ、カスが」


ガウルンがそういい捨てるのと同時に、ヴェノムの右手は、それより速くアファームドに叩きつけられた。
はちきれんばかりの昏い意志の力を糧にしたラムダ・ドライバの力場は、
やすやすと突き出された足ごと、そして膨張しきった黒いプレッシャーごとアファームドを貫通。
直後、ヴェノムは大きく後方に飛び退るのと同時に―――――
黒いアファームドは、最期はその姿と裏腹に明々とした爆発を起こし、跡形もなく吹き飛んだ。



「・・・・・・ったく、何だったんだ? こいつは。今回潰したVR部隊のモンでもねぇイレギュラー。
 その上あの、ラムダ・ドライバじみた異様なプレッシャー・・・・・・ワケがわからねぇ」
黒い未確認のアファームドが爆発した痕を眺めつつ、ガウルンは呟く。
ヘタをすると自分さえ取り込まれていたかもしれない、あの昏くて黒い妙なものは一体―――?


・・・・・・が、そんな疑念もすぐに、この男にとってはどうでもよい事と化す。
『・・・・・・ミスタ・Fe?』
「なんだい・・・・・・ミスタ・Agかよ。こっちは今疲れてるんだぜ? 御大層なテストとやらで」
『そんなことを言っていいのかな? こっちは君の一番欲しいものを用意できてるって言うのに』
「・・・何? ・・・・・・・ああわかった、すぐ戻るよ。じゃあな」



通信を切ると、ガウルンは先程の戦いより、なお一層凶悪な面構えを笑みの形に歪めた。
そう、この男にとって最高の愉悦――――彼の愛すべき、殺すべき宿敵と遊ぶ舞台が近いことを知って。
「―――――さぁ、思い切り愉しく遊ぼうじゃねえか、カシム・・・・・・・・・ククク」

凶暴な笑みを浮かべ、忍び笑いに肩を揺らすと、猛毒の名を冠する赤のASは、指示された回収ポイントへ歩き始めた。

165 名前:◆GBHtLmfAD6 :04/03/12 09:55

アファームド・シャドウ<GBH>vsヴェノム 『猛毒と狂気の影 ―Dance Macable―』

>>164

エピローグ

「…つまり我々は結果として無駄足を踏まされた、ということか。」

リヴィエラ級空中空母三番艦「サイレント・ミスト」の甲板上で、インター・バスケス卿は
傍らに立つ旧友、ボルサー大尉に言う。

「ふむ、我が白虹騎士団の三番隊筆頭として、直接シャドウと対峙する君の立場からして
見れば、確かにそういうことになるな。」

「だが、総じて見れば、今回の一件は我々にとって有益な様々な情報をもたらしてくれた。」

ボルサー大尉はまだ若い友人に対し、諭すような口調で言う。
僅か二年の間に七つの戦功を挙げ、あっという間に新米から今の地位にまで登り詰めたバスケス
であったが、その表情はどことなく、愁いを帯びているように見える。

「確かに今回の出撃は最初から最後まで、イレギュラーの連続だった。
 いや、そも、今回我々が出撃したこと自体が、最大のイレギュラーなのだがね。」

「イレギュラー、か。 そうだな、限定戦争の現場にテロリストが侵入してくるのは
 まず、イレギュラーだ。 そしてそのたった一人のテロリストの手でDNAとRNA両軍の誇る
 VR部隊が全滅するのもイレギュラー、更にはその時点で我々に救援要請が回ってくるのも
 イレギュラーなら、まるで我々の行く手を知っていたかのようにシャドウが発生したのも
 紛うことなきイレギュラーだ。
 そして極め付けはそのシャドウがテロリストの手によって撃破、粉砕されてしまったという
 ことだ!」

つい語気を荒げるバスケス。 それに対しボルサーは、対照的にごく静かな物言いのままでいる。

「…何が言いたい、バスケス?」

「今回は偶然の重なり、と呼ぶにはあまりに不自然に過ぎる、ということだ。
 もしかしたら我々は何者かの作為の手の平で踊らされていたのかもしれない。」

「で、それがどうしたというのかね。
 今回はむしろ、一介のテロ組織がシャドウをも凌駕する兵器を所持していることが明るみに
 なったというだけでも、我々にとっては大きな、そして衝撃的な新情報というものだ。
 今頃情報部あたりはてんやわんやの騒ぎになっているはずだろうな。
 ま、騒ぐのは連中に任せておけばいい、問題は今後あの『シャドウをも凌駕し得る兵器』が
 テロ屋に使用された時、一体誰がそれに抗するか、ということだ。
 私の知っている限りでは、あの『ヴェノム』とかいう兵器に対応できるだけの戦力は、我々
 を置いて他にはない。 つまり、今後我々はシャドウのみならず、あの機体の相手をすること
 も、視野に入れておかならない、ということだ。
 違うかね? 三番隊筆頭殿。」

「…あぁ、わかっているとも。
 今後は我々もテロの影に怯えなくてはならない、か。」

やや自嘲的に呟くと、バスケスは隣に駐機してあった愛機を眺めやる。
VR-707type a3テムジン。
白虹の騎士の名に相応しく白一色に塗られた典雅な機体は、陽光を受けて白く輝いた。
それは如何な害毒にも屈しはしない、という決意の顕れでもあったろうか。



166 名前:◆GBHtLmfAD6 :04/03/12 09:58

アファームド・シャドウ<GBH>vsヴェノム 『猛毒と狂気の影 ―Dance Macable―』

レス番まとめ

>153 >154 >155 >156 >157 >158 >159
>160 >161 >162 >163 >164 >165

167 名前:ニコラ・バルタザール:04/03/22 05:15


虚空の部屋。
いや、部屋と呼べる空間なのだろうか。
鉄板張りの床の他は、全て闇の世界。
その中央部に浮かぶ、巨大な球体。
表面に多数浮かぶ、カプセル詰めの老人達の映像。
彼等は一様に、前面に投影された映像を見つめる。



「終わりだな、シェバトも…」

「我等が肉体を失い、人の甘さを棄て、早500年」

「意外にあっけないものよ」



ガゼル元老院。
姿形を知られず世界に暗躍する国家、ソラリス。
さらに、その中枢部に暗躍する、事実上の統治者達。
肉体をすでに失った彼等はコンピュータ上に人格を移し、
すでに500年の長きに渡りソラリスを、世界を支配してきた。

彼等の眺めやる映像は、黒煙を各所より噴出し、
そのうちのいくつかから、新たに炎が加わりつつある、巨大建造物。
空を浮遊し、円盤状であるそれは、未確認飛行物体とでも呼ばれるべきだろうか。
輪の中央を抜くように十字型に組まれた橋の中央にそびえ立つ巨大な塔と、下に連なる空中都市。
塔は辛うじて形を保ってはいるものの、爆発でも起これば崩落することは疑い無い。
大木は、すでに内側から朽ちているのだ。

そして、大木の周囲を飛び回る蜂。
赤い蜂だ。
針の先端より、敵を殺す毒ではなく、
破壊力を伴った光の塊を塔に打ちつけ、さらなる死を振り撒き続ける。
我が物顔に空を制し続ける蜂の下には、敗れ去った虫達。
黒い虫、赤い虫。そして大量の白い虫。
己の巣を守らんとし、戦い敗れた鋼鉄の虫達。
彼等は、かつてギアと呼ばれる人型兵器であった者達だ。
それに乗り込んだ人間達が、その中でどうなっているか。
塔の中に籠もる者も、飛び続ける赤い蜂も、そのようなことを気にしている暇はないだろう。
前者は逃げ道を、後者は獲物を求めることに、この上なく集中しているのだから。



「…では、あれを使うか」

「絶対客観空間に働きかけ、対象を虚空の彼方に飛ばし去る転移装置」

「実験台としては、上々だ」

「手抜かりは無いな」

「すでに、内部に仕込んである」


映画を見ながらトランプでもするかのように相談しあう、画面上の老人達。
彼等の視線が再び映像に集まった時、それは始まった。


巨大建造物が、白い光に包まれていく。
大量の電撃を発しながら。
すさまじい勢いで震動する、中央部の塔は、半ばからぽきりと折れ、
それに呼応するかのように引き裂かれていく円盤部。
赤い蜂も、多数の残骸も、まとめて巻き込んで。
あらゆるものが、光の中へと吸い込まれていく。


やがて、光が収まったその時。

そこには、何ひとつ存在してはいなかった。



「…成功か?」

「どこに行ったかわからぬがな」

「それでいい」

「アハツェンも、よく役目を果たしてくれたな」

「それでいい」


老人達は、大儀そうに頷いた。



話は、この老人達の、『この世界』の与り知らぬ場所で進行することになる。


168 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/22 05:20

>>167
――――その出来事はまさに、青天の霹靂だった。

中国大陸、北京。数千年の歴史を誇る中国の首都であり、その旧き顔を残しつつも
完全無公害にして無限リサイクル可能な夢のエネルギー源・シズマドライブの開発によって
さらなる発展を続ける世界有数の都市。

そしてまた――――世界征服をたくらむ秘密結社・BF団と日夜戦い続ける国際警察機構の支部も、その一角に存在する。
そんな、軽い緊張をはらんだ平穏の中にあった北京支部に
エマージェンシーコールが鳴り響いたのは、宵の口に入った時の事であった。

いわく、北京郊外――ちょうど北京支部から目視できる位置に、巨大な未確認飛行物体が突如出現し、落下したとのこと。
先日のBF団の地球静止計画の傷跡も大きい昨今のこと。
BF団の巨大新兵器やも知れぬその物体、迂闊にエキスパートを派遣するわけにも行かず……
しかも手元には動けるA級エキスパートもいない。よって――――
今動かせる国際警察機構の戦力の中でもっとも巨大であり、怪ロボットにも対抗しうる戦力として、
彼らに白羽の矢が立つ事になった。


国際警察機構北京支部基地、大格納庫。
そのハンガーより一体の、身の丈30メートルに及ぶ重量感あふれる巨人が、バーニアを噴かせて今飛びたつ。
その肩には巨人に比してもあまりに小さな、一人の少年を乗せて。

「一体なんなんだ、あれは? まさかBF団の新兵器?
 …まぁいいか、それを確かめるための偵察任務なわけだし。とにかく行こう。ロボ!」
草間大作。国際警察機構の切り札である巨大ロボット“ジャイアント・ロボ”を操って戦う少年。

“―――ガォォォォオン!”
鋼の重低音で咆哮し、少年の号令に応えて飛翔する鉛色の巨人―――ジャイアント・ロボ。
彼の父、草間博士が少年に託した、原子力で動く剛力無比のロボットである。

169 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/22 05:22

>>168
「何なんだ……これ、いったい」
落下した正体不明の物体――おそらく、小さな都市か島ひとつ分はあるであろう巨大な落下物。
その上空、ジャイアント・ロボの肩の上で、大作はそう呟いた。


―――落下した未確認巨大飛行物体……否、これは建造物とでも呼ぶべきか。
眼下に広がるそれは、それこそ本当に島ほどの巨大な存在の上に、本物の街をそのまま持ってきたような…
まさに天空都市の名残とでもいうような光景であった。
もっとも出現と落下の衝撃によってか、本来なら幻想的とでも称すべき都市の景観は
“地盤”ともろともにあちこちが砕け、一部廃墟の様相を呈してすらいたが。
そんな荒涼とした街並みを眼下に、少年を乗せた鉛色の巨人はその上空をゆっくりと飛ぶ。

…そのときだった。
慄然とするばかりだった少年の耳に、爆音が飛び込んできたのは。

「………なんだ!?」
遠くから響いてくる大きな衝突音に我に帰り、音の聞こえてきた方角を向く。
そこに在ったのは――――激しくぶつかり合い、砕けた都市を揺るがす二機の巨大ロボット。

「……行こう、ロボ!」
――いまは事ここに至って、あれこれ考えている段階じゃない。
少年は気を引き締めなおすと、鋼鉄の従者に命を下す。

“――ガォオオオオン!”
少年の指示に従って、巨人が吼える。
G型特殊鋼の巨人は二機の激突する戦域に向かい、その背後の大きなロケットを噴かして急行した。

170 名前:ニコラ・バルタザール:04/03/22 05:25

>>169

月夜。
太陽の代わりになど決してなり得ない光によってのみ照らされる、
なにやら巨大な残骸。
ジグゾーのピースを合わせれば、円の形を取るだろう。
その片隅、瓦礫の山の一角に、一人の少女の姿があった。
銀髪の縦ロールを大きなリボンで飾ったその髪形は、ほどけば足まで届くであろう。
だが、その髪は、ほどけていないにも関わらず、地面についたまま。
頭を押さえ、座り込んだミニスカートの少女は、つい先ほど、意識を取り戻したばかりなのだ。

「く……………何…が…………」

まだ朦朧とする意識を支えるかのように、誰に対することもない言葉を口に出しながら、
少女は周囲を見回し…現実を目の当たりにする。

「………シェバトが……」

空中都市シェバト。
ソラリスに抗する秘密国家のなれの果てが、これであった。
『生前』の宿敵すらいない世界に放り出され、少女の眼前で無残な姿を晒し続ける。
当然、少女には、ここがどこか、など、わかるはずもないのだが。
だが、ひとつだけ、はっきりとわかったことがある。


私は。

私達は。

負けた。


瓦礫の中に、ひとつだけ顔を出していた、銃身を詰めたライフル。
その主は。私に、お父さんは、もうお父さんじゃないと言ったあの人は、生きているのだろうか。
…そこで、最も重要な、確認すべきことに思い当たった。


「ゼファーさまっ!!」

跳ねるようにその場を立ち、瓦礫の山を掘り返そうと、近場の岩に手をかける。
押す。必死に押す。
今まで仕え続けてきた、強く、優しい女王の名を呼びながら。
だが、動くわけがない。動かせるわけがない。

やがて少女は膝を落とし、その岩に取りすがる。


『酷なことですが…マリア、あなたが決めなさい』

『それによ、こんなこと言いたかねぇんだがよ…
 あれはもう、お前の親父さんなんかじゃ…』

『やめて!! きいた風なこと言わないで下さい!!』

『…そうか、じゃあ仕方ねぇや。腹くくるか』


ほんの数時間前…マリア自身が感じる限りでは、数分前の会話が脳裏に蘇り、焼きついてくる。


「わたしの……せいだ…」

少女、マリアは泣かない。
泣くこともできない。
ただ、なにひとつ為し得なかった自分に震えるだけ。
なにひとつ、守れなかった自分を、呪うだけ。





「マリア。無事だったか、マリア」


「……お父さん!?」

懐かしい声を聞いた。
安堵と喜びの入り混じった表情で、その方向を見上げたマリア。

次の瞬間、たちまちその顔は引きつった。

目前まで迫っていたのは、シェバトを荒らしまわった、赤い機体。



そう。


この光景を創り上げた張本人こそ、彼女の父親だ。
彼女の父親が設計し、自らその中枢ユニットを担う大巨人。
アハツェン。すなわち、18。
それが、この機体の名前であった。


171 名前:ニコラ・バルタザール:04/03/22 05:26

>>170

「マリア、私と共に来い。
 お前は私の娘だ。人間のバカさ加減はよく知っているだろう」

「…お父さん、正気に戻って、お願い、お父さん」

「見るがいい。このアハツェンの威容を。
 人間の知恵と、鋼の強靭さを併せ持った、新たな進化の1ページを」

「なにをいっているの!? お父さん、おかしいよ!!」

「お前にも教えてあげよう、マリア。
 この力で、お前をいつまでも守ってあげよう」


泣きわめく少女の訴えを聞き流すように、
赤い、ずんぐりむっくりとした巨人は少女を掴み取ろうと手を伸ばす。


「…お父さん!!」



かすれた悲鳴のような、マリアの叫び。
それに呼び寄せられるように。
真横から、突如として伸びる蒼く巨大な腕が、赤い腕を突き飛ばした。


「…ぬうううっ」

大音響と共に転倒し、新たな瓦礫の山を築くアハツェン。
代わってそこに立ったのは。


「ゼプツェン…!!」

ゼプツェン。すなわち、17。
マリアの忠実な僕たる、蒼き大巨人。

……だが、その体は、満身創痍そのものだった。
殴りつけた右腕の手はすでに無く。
左腕は丸ごと失われ。
頭部は、片側半分がごっそりと削られ、内部機構が露出している。
そこでマリアは、自分が何故生きているか思い当たった。

このゼプツェンが、自分を守ってくれたからだ。


「創造主たるこの私に逆らうか…ゼプツェン。
 だが、その有様で、どれほどのことができるというのだ?」

倒れたままのアハツェンが、二基の巨大な背部ブースターを作動させ、
地面を削りながら飛翔する。
そして、右腕に担いだエネルギーキャノンを突き出し、
ゼプツェンに対し、体当たりを加える。


「…ああっ」

為す術もなく吹き飛ばされる蒼き巨人は、
続けざまに繰り出される打撃を捌くこともできない。
キャノンの砲身を槍に見立てて襲い来るアハツェンは
ゼプツェンの残された右腕を叩き潰すと、
距離を離し、それの正規の使い方を披露せんとする。
そして、その威力も。


「止めだ」

右背部ブースターが、キャノンと連結される。



「お父さん……お父さん!!」

少女の悲痛な叫びが、夜を切り裂いた。


172 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/22 05:30

>>170-171

先程から視界に移る光景が、どんどん大きくなってゆく。
大推力で飛翔するロボを撫でる――それでも自分にしてみれば台風並の――風を受けつつ、少年と巨人は戦場へ急ぐ。


徐々に近づくにつれ・・・・・・2機のロボットの戦闘の様子が徐々につかめてくる。
この、とても穏やかならざる空気の中で向かい合う、ロボによく似た印象とフォルムの2体。
そのうちの片方―――赤い巨人は、その右腕から生えている砲口を、目の前の巨人に突きつけている。
容赦も、遠慮も、そして慈悲もなく。

一方―――眼前の敵機と対になるように向かい合う青の巨人。
既にその装甲と頭部は砕け、両腕を失って地面を何度も這わされ、何度も蹂躙されつつも…
斃れることを拒否するように、是としないように、何度も立ち上がろうとする。

目の前の巨人たちのぶつかり合いを目の当たりにし、大作はただ途切れ途切れに言葉をもらす。
「―― どうして、どうしてこんなことを……。 それにあのロボットたち、一体何なんだ…?
 あの蒼いロボット、どうして何度も何度も立ち上がろうとして――――――」
その光景にどこか胸が痛むような、既視感のようなものを感じながらも――どんどん戦場までの距離は減っていく。

――――500メートル。
わずかである距離が、さらに縮む。

―――300メートル。
戦場が、細部まで見えてくる。

――150メートル。
張り詰めた空気が、痛いくらいに肌で感じられる。
そして二機の交戦領域まで、100メートルを切った瞬間―――

    「お父さん……お父さん!!」

戦場の轟々と唸る風にくらべれば、とても小さな叫び声。
大作の耳には、その声が確かに届いた。
満身創痍の鉄巨人に守られ、そのすぐ近くに座り込む少女の、悲痛なまでの叫び声―――


「―――――パンチだっ!! ロボ!!!」

胸中ににわかに巻き起こった激情と共に、我知らず大作は叫んでいた。
それに応じる重厚な咆哮(ウォークライ)とともに、ジャイアント・ロボは赤の巨人に吶喊。

次の瞬間、全推力で噴かされるロケットバーニアによる突進速度の援護を受けたG型特殊鋼の拳は、
兄弟と娘を撃とうとする赤の巨人の横面に、1500トンに加速度の上乗せされた衝撃を余すことなく叩きつけていた。

173 名前:ニコラ・バルタザール:04/03/22 05:31

>>172

叫びは誰に届いたのだろうか。
突然のことに、目をぱちくりさせるマリアの前に立ったのは、
ゼプツェンとよく似たフォルムを持った、巨大な人型兵器。
…良く知るギアとは、相当異なった外見をしているが。
ひとまず、事実として。
この鉛色の大巨人は、ゼプツェンの危機を救ってくれた。
それだけ確認すると、慌てるように瓦礫から駆け下りて、
ゼプツェンの元に走り寄る。


「…ゼプツェン、ゼプツェン!!」

マリアの呼びかけに、ゼプツェンは半壊した頭を声の方向に向けた。
ひび割れたセンサーから紫電が走る。
機能の停止も、時間の問題だろう。
こうなれば、賭けるしかない。
新たに現れた、同クラスの巨大人型兵器に。

…賭ける。
何を賭けるのか。
ゼプツェンの生存を祈るというのなら。
それは、取りも正さず、アハツェンの破壊…父親の死を意味する。
どうすればいい。
何を願えばいい。


マリアの葛藤をよそに、またも派手に吹き飛ばされ、崩落した残骸に埋まったアハツェンが
ブースターを作動させ、飛び散る瓦礫と共に、再びその姿を現した。


「…私のアハツェン、いや…そこの失敗作と、
 似たようなコンセプトを持った機体のようだが」

空中にホバリングで浮遊しつつ。
胸部の装甲版が展開していく。
その中から、二門の砲口が顔を出した。


「類似品ごときが本物に触れるなど、到底許容できんな」

背部ブースターの頭頂部が展開し、回転するジェネレーターが顔を出す。
それが蓄電し発光すると同時に、胸部の砲口から、無数のレーザー光が放たれた。
一本一本はか細いが、並のギアの装甲を貫通するには充分な威力を持ち、
同時に熱攻撃力を以って、前に立つ者全てを焼き尽くし制圧する殺戮兵器が、
闇夜を照らし、今、炸裂する…


174 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/22 05:40

>>173
その重厚感を無視するかのように軽々と宙を舞う、一瞬前まで目の前にあった紅の巨体。
突き出した拳もそのままに、ひび割れた足場を踏みしめるロボ。
轟音と共に瓦礫の中に突っ込む赤の巨人を見据え、大作は深く静かに猛っていた。


あのロボに似た、重厚な紅の機体に攻撃を仕掛けるきっかけとなった少女。
ボロボロになってもなお彼女を守る、今一機の蒼い巨人の姿。
これらに大作は、強い既視感と言葉にならない感情を覚えていた。

父親の名を何度も呼びながら、自分を守るロボットの傷つく姿に涙しながら、座り込んで叫ぶ子供。
そして、そんな子供を自らを省みず必死になって守ろうとする、健気なまでの巨人の姿―――

……ああ、そうか。
あの子とあの蒼い機体は――――そう。
昔の僕とロボに、よく似てるんだ。
遡る想い、甦る過去。
父・草間博士がBF団の魔手に倒れ、自分にロボを託して逝った、あの日の僕らに。

そして―――そんなロボットと子供を嘲笑うかのように再起し、傲然と構える
もう一機の――おそらく兄弟機であろう――紅の巨人。
昔の僕らが彼女とあの蒼い巨人だというのなら、アレはまさしく――父を奪い、残った子まで殺そうとする、憎むべき敵。
自分の父に致命傷を負わせ、さらにロボの兄弟機・GR2を駆って自分を襲ってきた―――あの組織。
仇敵BF団の大幹部の姿が、目の前で浮上してゆく敵にダブって見えた。

『…私のアハツェン、いや…そこの失敗作と、
 似たようなコンセプトを持った機体のようだが』
スピーカーから、今の大作にとって異様にカンに障る声が流れる。
……うるさい、黙れ。

『……ごときが本物に触れるなど、到底許容できんな』
怨敵の再現とも呼べるような赤い機体が、独善的な物言いで何か喋っている。
・・・僕はおまえへの聞く耳なんか持ってない。そもそもはなからそんな気なんか欠片もない。

宙に浮かぶ敵機の胸部が開き、そこから覗く二門の砲口。
そこから放たれる無数の光条がロボを、大作を。
そしておそらくはその後ろの少女を、彼女を庇う蒼い巨人を狙って放たれる。

だが―――

175 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/22 05:44

>>174
「・・・・・・・バリアだ、ロボ!!」

再度響き渡る、大作の号令。
それに追従する咆哮と同時に、ロボは自らの周囲にバリアを展開。
襲い来るビームは、片端から力場の壁に弾き散らされて粒子に還る。どうにかバリアを貫通しえた光線も、
頑強極まるG型特殊鋼を貫くにはあまりに力を殺がれており、装甲表面を叩いて消える。
結果、無数のビームと言う名の殺意の雨は、その対象であるゼプツェンやロボを一度たりとも貫くことなく止み消えた。


「許さない……お前みたいな奴は、絶対に許さないっ!!」

大作は、純粋に怒っていた。
子供に父親の名を叫ばせて泣かせ、それを護ろうとする者さえ踏み躙ろうとする目の前の敵に。
目の前の敵に仇敵をダブらせ、怒りをはらんだ口調で大作はさらに叫ぶ。


「やれ!! ジャイアント・ロボっ!!!」

少年の怒りを汲み取るように、鋼鉄の巨人は再度咆哮とともに背中のロケットを噴かし、上空の巨人に飛びかかる。
そのままタックルで地面に叩きつけた直後、押さえ込むロボの背負ったロケットが
まるで右肩に担がれるかのように前にせり出し、その先端に砲口が開く。
ロケットの先端から更にせり出した砲口は、光の粒子を掻き集めながら、そのまま敵機体の右肩に押し当てられ―――

「ロボ! ロケットバズーカだ!!」
その大作の号令と共に、大筒と化したロケットは至近距離で、膨大なエネルギーの奔流を吐き出した!

176 名前:ニコラ・バルタザール:04/03/24 05:17

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜

>>175

「………くっ!?」

勝利を確信していたマリアの父親、つまり、この赤い巨人アハツェンは、
レーザーをほぼ完全に無効化し、咆哮と共に迫り来る巨躯に対処できなかった。
三度吹き飛ばされ、瓦礫に叩きつけられ盛大な土煙、大音響と共に大地に沈むアハツェンが
そのセンサー・アイにて捉えた映像は。

背部からせり上がった、巨大な砲口をこちらに突きつける、敵機の姿。
砲の先端より光があふれ出す。莫大な破壊力と共に。
回避運動。間に合うはずもない。
放たれた光芒は右腕部の肩から下を、ごっそりと持っていった。
破壊されたのはそれだけではなく。
今の今まで這いつくばっていた地面そのものが抉れ、飛散し、陥没し、
小規模なクレーターを形成していた。


「これほどまでとはな…」

ブースターを最大出力で稼動させ、爆風の中心部からどうにか逃れたアハツェンは、
先ほど失われた右腕より切除(パージ)されたエネルギーキャノン砲を左腕に持ち、
槍を構える騎兵のように、敵機と対峙する。


「…いいだろう。認めてやろう」

背部ブースターから、またもジェネレーターが顔を出し、回転を始める。
それと同時にキャノン砲を前面に突き出し、ブースターの噴射を開始。


「その調子がいつまで続くか、見ものだな」

爆音と閃光。
ほぼ瞬時に、最大速度まで加速したアハツェンが、
キャノン砲の先端に、敵機を串刺しにせんとばかりに
全重量、全出力をかけた突撃を開始する。
繰り返し、繰り返し、猛烈な体当たりを以って敵機に襲い掛かるが…


177 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/24 05:19

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜
>>176

「……くぅぅぅうう…………っ!!」

眼が眩みそうなまでの出力と輝きと熱量で、吐き出されるエネルギーの奔流。
気を抜くと振り落とされかねないほどの、大出力砲撃の反動による機体の揺れ。
猛烈に巻き上がって視界を侵す、凄まじい規模と勢いの爆煙。
ロボの頬から張り出した梯子を必死に握り締め、開いた片腕で顔を覆いつつ、大作は呻く。

「―――やったか…!?」
爆焔と砂埃とが晴れ、状況が次第に露わになる。
ロボがロケットバズーカを撃ち込んだ足元は、その余波によってきれいに吹き飛び、
この廃墟都市の基盤に、小さく浅いとはいえクレーターを穿っていた。

眼下一帯にはクレーターとロボ以外、綺麗さっぱり何もない。
そう、ロケットバズーカを直に叩き込まれたはずの敵機―――あの紅の巨人さえも。

これは、おかしい。
いくら大威力のロケットバズーカとはいえ、あそこまでの巨体を誇る機動兵器を
跡形も残さず消し飛ばすなど、到底不可能である。だとすれば――――
奴もただでは済んでいないだろうが、間違いなくまだ生きている。どこへ――――!?

『…いいだろう。認めてやろう』

上方からかかった声に、顔を上げる。
そこに――爆心地、クレーターの上空直上に、紅の巨人は確かに浮上してこちらを見下ろしていた。
バズーカのゼロ距離射撃によって吹き飛んだ片腕の、ロングバレルキャノンの砲身を左手に持ち替え。

『その調子がいつまで続くか、見ものだな』
そして殺気をはらんだ声とともに、紅い鉄巨人は――――こちらへ大推力で突進してくる。
左手に握る長大筒を槍の様に構え、真っ直ぐに、その全重量を載せて!

「――――う…わぁあああっ!!」

一瞬後、轟音が響く。
猛烈な衝撃がジャイアント・ロボを、そしてその機体にしがみつく大作を襲った。
槍として突き出されたロングバレルは、とっさに防御としてかざされたロボの右掌を深々と貫通していた。
だが――――

178 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/24 05:21

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜
>>177

「……くっ―――!」

倒れない。
崩れない。
屈しない。
まだジャイアント・ロボは二本の足で、しっかりと大地を踏みしめている。
右手こそ串刺しにされたものの、赤い鉄巨人の突進を、ロボはしっかりと受けきったのだ。

そんなロボの姿に鼓舞されたか、大作の戦意もいまだ萎えない。
「――ロボ、いけるな!? 反撃だ!!」
歯噛みしながらも気を持ち直し、毅然と相手を睨みつけ、さらに次なる命令を叫ぶ。
相手を打て、と。

「パンチだ、ロボ!!」

―――ガオォォオオン!
応じる鋼の重低音とともに、空いた左拳が振り下ろされる。
標的は無論、いま己の右手を貫いている敵機。
1500トンの総重量を目一杯に載せた鉄拳が、赤い鋼鉄のヒトガタを再び打ち据え、殴り倒す。
殴り倒された反動で、たまらず槍を手放すアハツェン。ロボの右手が自由になる。

今度はそれに続き、刺さったままの砲身ごと握り固めた右の拳が、がら空きのアハツェンの胴体に叩き込まれる―――!

179 名前:ニコラ・バルタザール:04/03/24 05:21

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜

>>177-178

突撃を逆手に取られ、キャノン砲を奪われたアハツェンは、
回避する暇も与えられずに、次なる一撃で大地に沈む。
腹部の装甲板が陥没し、紫電と火柱とを吹き上げる。
鉛色の巨人は、今やアハツェンを圧倒し、
一方的に叩きのめす態勢に入っていた。

マウント・パンチだ。
次から次に叩き込まれる重厚な一撃はアハツェンの頭部装甲を剥ぎ取り、
わずかに残った右肩部も潰し、爆散させていく。


その、数百メートル先。

大破したゼプツェンの前で、その様を目視するしかないマリア。
父親の破壊される様を、見ているしかないマリア。
また一方で、それを望まざるを得ないマリア。

あのギアは、このまま、あの赤い機体を破壊するだろう。
お父さんを、破壊するだろう。





あれは、お父さんじゃあない。
あのひとは、そう言っていた。

でも、お父さんだ。
お父さんは、あそこにいる。

あそこにいるのに。



ソラリスでも、いつも私を守ってくれて。


つらい顔をしたことは一度もなくって。


何があっても、私とゼプツェンがお前を守る。


そう言ってくれた。


優しそうに微笑んで。


いつも。


いつまでも。


そばにいてほしかった。



――――――ほしかったのに。




それが今。



永遠になくなる。




目の前で。







「―――――やめて!!」


マリアは駆け出した。叫んでいた。
大粒の涙を瞳に溜め、感情を爆発させてわめき散らしていた。


「お父さんを、お父さんを殺さないでっ―――
 お父さん、お父さぁぁん!! お願い、やめてぇぇぇっ!!」


180 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/24 05:24

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜
>>179

大音響の衝突音が、廃墟と化した都市に鳴り響く。
一発、また一発と。
それはただただ純粋な、単純な、そして圧倒的な破壊の轟き。
唸りを上げる拳という名の鋼が、大地に倒れる鋼を叩きつぶし、砕き、引き裂く音だった。


何度も超重量のG型特殊鋼に殴りつけられ、機体のあちこちをひしゃげさせて倒れる紅の鉄巨人・アハツェン。
さらに数発の拳を受け、それでもなお起き上がろうとする紅巨人を厳然と見下ろす、鉛色の巨人とそれを従える少年。
いまやこの戦いの形勢は、完全にジャイアント・ロボに傾いていた。
――これで、終わりだ。

「――ロボ、とどめを」
大作少年の命を受け、組み合わされた両の拳をゆっくりと持ち上げていくロボ。
……これで、カタが付く。
……これで、あの子を泣かせていたこの赤い巨人を沈黙させられる。
そして、眼下の敵機を沈黙させるべくかざされる拳が、ロボの頭上まで持ち上がる―――その時だった。

       「お父さんを、お父さんを殺さないでっ―――
         お父さん、お父さぁぁん!! お願い、やめてぇぇぇっ!!」


か細いがなぜか不思議と耳を打つ、あの少女の悲痛な叫びが、大作の耳朶を打ったのは。

「―――――!?
 ・・・・・・・・・・ロ、ロボ!! 待てっ!!!」

唐突に届いた少女の声に当惑し、慌ててロボを引き止める大作。
その声に従い、少年の従者たる鋼鉄の巨人も、振り上げた腕もそのままに動きを止めた。

―――お父さん。
・・・・・・・・・お父さんだって!?

自分を泣かせ、苦しめたはずのあの巨人を、父親と呼ぶ少女。
そしてその巨人と相対し、とどめを刺そうとしていた自分。
唐突に突きつけられた事態を、事情も知らぬ自分が理解しきれるはずもなく―――
無敵のロボを御する12歳の少年は、ただただ当惑するばかりだった。

181 名前:ニコラ・バルタザール:04/03/24 05:25

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜

>>180

それは突然始まった。
鉛色の巨人の攻撃が止まった、ほんの一瞬の間に。
劣勢に立たされていたアハツェンの背部のジェネレーターから
奇怪な電光が迸り、刹那、空間自体が赤く染まった。
それが収まった直後、今までアハツェンを圧倒していた敵機は
動きを完全に停止させ、塑像と化す。

毒電波発生装置。
機器の神経系…回路に干渉し、一時的にほぼ完全停止させてしまう、
破壊力を一切持たない必殺兵器である。


「…いい子だ、マリア」

その優しい口調とは裏腹に、ぞっとするような声だった。


「攻撃をやめなければ、効果的な打撃を与え続けることができたというのに。
 まったく、人間というのは度し難い生物だ」

アハツェンは立ち上がり、残された左の掌で、敵機を軽く小突く。
糸の切れた操り人形のように、ズズン…と倒れる鉛色の巨人。
こうなっては、鉛の巨像とでも言った方がいいのかも知れない。


「そして、その結果が…これだ」

ブースターの噴射光が瞬くと同時に、
アハツェンは敵機の尻を蹴り上げた。
今度は、鉛色の方が派手に吹き飛ぶ番だった。


「そのようことで、このニコラの最高傑作、アハツェンを下そうなど。
 片腹痛いとしか言いようが無いな」

ジェネレーターが蓄電を開始、やがて発光し…
再び、展開した胸部装甲の下の砲口から、多数の光条が放たれる。
先ほど、敵機のバリアーによって、事実上無効化されてしまった拡散レーザー。
そう、バリアーによって無効化されたのである。


「お父さん、やめてぇぇ!!
 もう、いや!!
 こんなの、いやだよぉぉぉぉぉぉぉ」

泣き崩れるマリアの訴えは。
父親には、届かない。



そして。

マリアもまた、レーザーの豪雨の中に、身を晒しているのだ。


182 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/24 05:29

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜
>>181

超重量の鉛色の巨人が、轟音を上げて地面に倒れ伏す。
硬い瓦礫と石畳の上に、少年は投げ出され、たたき付けられる。

「・・・・・・ロ、ロボ・・・・・・・?」
痛みに全身を苛まれながら、少年は呆けたようにそう洩らした。

――――訳がわからなかった。
女の子とあの蒼いロボットを苦しめていた赤いロボットが、実は彼女のお父さんで。
そのお父さん――そう呼ばれた赤い機体は、全く無慈悲に女の子と蒼のロボットをいたぶっていて。
その機体を止めようとして、黙らせようとして戦うロボを引き止める女の子も。

そして―――そんなロボがなす術もなく蹴り飛ばされ、大地に倒れていることも。

何もわからない。
なぜ、この未確認巨大都市が落下してきたのかも。
どうして、彼女のロボットと赤のロボットが戦っていたのかも。
どんな理由で、父親であり、彼女にあのロボットを授けたはずの父親が娘を殺そうとするのかも。
同じようにジャイアント・ロボを授けられているからこそ、まるで大作には理解できない。

そして、急にロボが命令に対して沈黙してしまい、全く動かなくなってしまった理由も。

「・・・・・・くっ」
困惑のまま、それでもよろよろと起き上がる。次はロボだ。
何もかもが全くわからないが、とにかくこのままではいけない―――そんな焦燥感に駆られ、少年は巨人の名を呼ぶ。

「ロボ・・・・・・どうしたんだ? 立て! 立って戦おう!」

――無言。
先程までは、静かに言った言葉にすら従ってくれたのに。

「――ロボ・・・・・・応えてよ! このままじゃ・・・・・・!
再度の呼びかけ。無敵の鉄巨人は、微動だにしない。

「どうしたんだよ!? お願いだ・・・・・・・・・・動いてくれっ! ジャイアント・ロボっ!!」
少年の必死の叫びにも、鋼の従者は応えない。
意志の光こそ途絶えてはいないが、まるで主の声が届かないかのように。

183 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/24 05:30

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜
>>182

・・・・・・そんな時だった。
彼女の“お父さん”――――そして奇妙な光によってロボの動きを止め、蹴り倒したあの紅の巨人。
その胸部の歪んだ装甲版が展開し―――あのレーザーの雨を降らせた二門の砲座に、危険な光が宿ったのは。

そして―――

「お父さん、やめてぇぇ!!
 もう、いや!!
 こんなの、いやだよぉぉぉぉぉぉぉ・・・!!!」

さっきまで遠くに聞いていた少女の叫びを、少年がすぐ近くで聞いたのは。
距離は10メートルも離れていない。
そしてあのレーザーは、広範囲に拡散して放たれる兵器だ。
このままでは、あの子も巻き込まれる。

―――そして、ロボは動かない。

「・・・・・・・・・くっ!!!」
大作は意を決して、レーザーの射線から女の子を庇おうと、痛覚だらけの身体に鞭打って疾走する。
そして、そんな少年の行動を嘲笑うかのように、レーザーが解き放たれ―――――

184 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/24 05:32

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜
>>183

その瞬間、だった。


――――――――ガォォォォォオオオオオォォォォオォンッ!

ひときわ大きな鋼鉄の咆哮が、夜の廃墟に響き渡る。
無機質なはずの、応えぬはずの大きな双眸に、より強大な光が宿る。
物言わぬ鉄塊に戻ったはずのジャイアント・ロボが、いままでの沈黙が嘘だったかのように力強く立ち上がる。
大破した蒼い巨人を、少女を、それを庇おうとする自らの主を、その身を挺して光の雨から遮ったのだ。

「――――ロボ!」
絶望の中に希望を見出し、少年は鋼鉄の相棒の名を呼んだ。

ジャイアント・ロボの操縦者にして主である大作少年の身に迫る危機を
独自に察知し、そこから主人を救いだすために。
主人の命を最優先に守る為に機体を50倍の出力で再起動するオートガード回路が作動し、
行動命令を阻害する妨害電波の枷を力ずくで破ったのだ。

さらに容赦なく降り注ぐ、破壊光線の雨。
先程と違いバリアを展開していない為に、破壊力の落ちていない100%のビームを全身に雨あられと浴び、
頑強で鳴らすG型特殊鋼のボディさえも次々とその身を削られ、損傷率を右肩上がりで上げてゆく。


「頼む・・・・ロボ! いまは・・・・・・いまはもう少しだけ耐えてくれ・・・・・・!」
少女をレーザーの射線から身を挺して遮りながら、大作はそう呟く。
いまはこの子を放って置くわけにもいかない。
この娘の大事な存在であろう蒼いロボットも、出来れば守ってやりたい。
幸せは犠牲無しに手に入らないのか、その命題に人生をかけて挑む大作の、これがこの場に於ける回答だった。

そんな中――――ロボの巨躯をもってしても庇いきれない角度から、一発のビームが、
最悪の軌道――大作と少女を巻き込む軌道で、放たれる。

「・・・・・・う・・・ぁああっ!!」

―――間に合わない。
女の子を連れて逃げる余裕も、身をかわすだけの暇もない。
せめてこの、どうにも放っておけなかった女の子だけは守り通そうと、大作はその身を硬くする。

185 名前:ニコラ・バルタザール:04/03/24 05:33

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜

>>182-184

倒れたままの巨人に浴びせられる、無差別無慈悲な無数の光。
地べたに投げ出された操縦者の少年が、少女、マリアを庇いに行ったのをセンサーで視認し、
紅の巨人の外部スピーカーから、明らかに嘲笑と取れるような含み笑いが漏れる。


「こういうタイプと思ってはいたが、ここまで読み通りとはな。
 娘のことは頼んだぞ。後で謝礼もくれてやろう」

出力を弱めることもなく、レーザーを放ち続ける。
横たわるロボを蜂の巣にするために。
最早、勝負は決していた。
勝負ですらなくなっていた。

だがここに来て、ニコラ…アハツェンの計算は外れることになった。




――――――――ガォォォォォオオオオオォォォォオォンッ!



ただの鋼鉄の彫像と化していた巨人が、吼えた。


「…馬鹿な、何故立つ」

毒電波の効果は長時間持続するものではない。
だが、その効力が失われるには早すぎる。
シールドでも施されていたというのか。
いや、それならば、最初から通用するはずもないし、
なにより、この毒電波の防御法は、
開発者であるニコラの脳内、アハツェンの中枢にしかない。
それを破るには。


「そうか。リミッターを外したな」

毒電波は、回路のシステムにダメージを与える。
そのシステムを半ば解除する状態にしてしまえば、
限定的ながら動作することも可能となるだろう。
ましてや、敵は見てくれ通りのハイパワーだ。
現在、今まで出していた力の安全圏を遥かに超えた出力を叩き出しているはずだ。


「だが、バリアーは張れまい?」

アハツェンに表情があれば、残忍な笑みを浮かべたことだろう。
毒電波は、少年とロボとの意思疎通を未だ閉鎖したままなのだ。

少年と娘、そしてゼプツェンを庇いに行った巨人に対し、
さらなるレーザーの照射を行う。
右腕を失った機体のシステム上の負荷も解消したのだろう。
出力は、次第に上がってきていた。


「さあ、どうする? 何をする? 何ができる?」

次第に次第に削り取られていく敵機の身体を上機嫌に見つめるように、
剥き出しとなったセンサーが、禍々しい光を放った。


186 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/24 05:42

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜
>>184-185


――――だが。
放たれたその最悪のビームは、本来訪れるはずの最悪の結果までもたらす事はなかった。


「――――うぉおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉらぁぁぁぁああっっ!!!」

その軌道上に投げつけられた、一本の赤い鎖につながれた斧が、破壊光線を弾き散らしたからである。


「この斧は・・・・・・まさか!?」
大作は、自分たちを救った斧が飛んできた方角に顔を向け―――――そして破顔する。
視線の向こうに立っている、大作の兄貴分を自認する黄色い中華服の、色黒の大男の姿を認めて。

「やれやれ・・・・・・勘弁してくれよ大作。
 お前に何かあったら、死んじまった戴宗の兄貴や楊志の姐さんに顔向けできなくなっちまうんだからよ」
「―――鉄牛さん!」
国際警察機構の誇るA級エキスパートの一人にして、あの地球静止計画を生き延びた豪傑は、そういって苦笑した。

「しかし一体どうしたんでぇ、大作?
 増援としてこっち来る道すがら見てたが、さっきっからやられっ放しなのはどういうこった?」
「ええ、鉄牛さん。実は・・・・・・」
兄貴分のエキスパートの問いに、大作は自分が庇っていた少女と、半壊状態の蒼いロボットを視線で示す。

「成程、そういうことか・・・・・・・ちっ」
直情傾向の強いこの男もそれなりに事情を察したのか、舌打ちすると鉄牛は鎖斧を振り回し、
再斉射されるビームの弾幕の中に身を躍らせていく。
「あ・・・・・・て、鉄牛さん!?」
大作の制止すら、あっという間に振り切って。

「オイこらァあ、この化け物っ! よくもさっきまでウチの弟分をやってくれやがったな!?」
…信じがたい事に、飛び来るビームの数々を回転する鎖斧で次々と防ぎ、叩き落し、大音声を上げながら
鉄牛はその名に恥じない猛烈きわまる前進を続ける。そして――――

「―――――目にもの見せてやるぜぇ! 黒・死ィィィィィイイイっ!!!」

鬼神のごとき雄叫びとともに、口から黒い烈風――比喩では無しに――を吐き出し、なおも爆進。
さらに右手から放たれた鎖斧が、吐き出された黒い風に乗って――
レーザーをバラ撒き続ける胸部に向かって伸びる。そして常人の枠から外れた腕力で放たれ、
黒い烈風の援護を受けた斧は――そのまま二門ある胸部の砲門のうち片方を打ち抜き、爆砕する!


「旋・風ぅぅぅぅぅぅぅぅゥゥゥゥゥウッ!!!!」

さらに追い討ちをかけるように服の左袖から、奇術めいた馬鹿馬鹿しさでもう一本の鎖斧が滑り出る。
しっかと投げ放たれた二つ目の斧は、これまた意志を持つかのように風に乗り、弧を描いて――
こちらは紅の巨人の背中に、とても人間サイズの手斧がつけたとは思えない、大きな一文字傷を刻む。
その一文字は、先程ロボを呪縛したあの光の光源・・・・・・・
バックパックに仕込まれたあの機構にも、致命的なダメージを与えていた。


「・・・・へっ、どうでぇ!?」

187 名前:ニコラ・バルタザール:04/03/24 05:43

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜

>>186

倒れてきた巨人。
そして、目の前に落ちてきた、歳もそう違わないであろう少年。
そのどちらも。
『お父さん』の無差別な攻撃から、マリアを守るために駆け寄ってくる。
自らの傷や痛みも省みず。

だが、マリアの頭は『お父さん』のことでいっぱいだった。
『お父さん』のやっていることから目を背け、泣くことしかできない。
ふと顔を上げると、そこには一直線に迫るレーザーの光が見えた気がした。

お父さんは、私も、この人と、あのギアと一緒に殺してしまうつもりなんだ。

何か、もう、どうでもよかった。
光の中に消えて、全部、それで、終わり。




「――――うぉおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉらぁぁぁぁああっっ!!!」




…マリアの涙は、そこで止まった。

諦念の窮まった人間の行き着く先のそれとはまた違う。
一言で言うならば。



「……………………え?」


開いた口が塞がらなかったのだ。

突然飛んできて目の前に刺さった斧が、レーザーを弾いた。
それが、刹那に彼女が見た全てであった。


「この斧は……まさか!?」

少年の声と同時に、全く同じ動作をすると。
視線の先にいたのは、屈強そうな色黒の大男。


「やれやれ・・・・・・勘弁してくれよ大作。
 お前に何かあったら、死んじまった戴宗の兄貴や楊志の姐さんに顔向けできなくなっちまうんだからよ」

「―――鉄牛さん!」

どうやらこの人の知り合いらしい。
半ば意図的に、それ以上のことを考えるのをやめて、
『お父さん』に視線を移す。


188 名前:ニコラ・バルタザール:04/03/24 05:44

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜

>>187

「――――――――ありえん。
 あの斧にビームコートが施してあったとしても、
 レーザーの発射に割り込んで投げるなど」

完全に機械とひとつとなり、人を棄てた身の彼も。
この事態を前に動揺するなと言う方が無理というものだった。


「オイこらァ、この化け物っ! よくもさっきまでウチの弟分をやってくれやがったな!?」

ありえない存在が、なにやらわめきながら、かっ飛んでくる。


「……ぬぅっ!?」

拡散レーザーの出力を、現状の限界にまで高め、
熱攻撃力をも高めた無数の光の針を撒き散らし、それを迎撃する。

…だが、ありえない存在は、どこまでもありえない。

拡散型とはいえ最大出力のレーザーを。
かすめただけでギアの装甲の表面が融解する熱量を。
全てかわし、あるいは、鎖斧で防御し、一直線に飛来する。


「―――――目にもの見せてやるぜっ! 黒・死ィィィィィイイイっ!!!」

「…なんだ、『これ』は!!」

「旋・風ぅぅぅぅぅぅぅぅゥゥゥゥゥウッ!!!!」

斧が、レーザー砲に突き刺さり、爆砕する。
そして、それに前後して。
ジェネレーター小破。
こと、毒電波装置は、完膚なきまでに破壊されていた。


「・・・・へっ、どうでぇ!?」

「ふっ……くっくっくっくっ」

スピーカーから漏れる、愉快そうな笑い声。
それに続くのは、どこか狂気をはらんだ悦び。


「シェバトの賢者どもに遺伝子操作でもされたか。
 それとも、ウェルスと違ったヒト本来の力の発露か?
 …いや、そんなことはどうでもいい。どうでもいいのだ。
 面白い。実に面白い。
 モルモットとして極めて興味深い。
 掴まえていろいろ実験させてもらうとしようか」


189 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/27 05:00

誇らしげに言った言葉は、まるきり倫理観の感じられない、独善極まる台詞となって帰ってくる。

「――――モ・・・・・モルモットだとぉッ!?
 てめぇ、ひと様を――――いや、人間様をなんだと思ってやがるんだ!!」

先刻の赤い機体の発言を聞けば、人並みに倫理観のあるものはそれを嫌悪し、怒りすら感じるだろう。
ましてこの男の名は鉄牛。
梁山泊の誇る108人のエキスパートの中でも、血の気の多さにかけては人後に落ちない男である。
案の定その言葉に激昂し、さらに鎖斧を振りかざして巨人に挑みかかる。

鉄牛を捕まえようと、紅の巨碗が幾度となく伸ばされ、落とされ、振り回される。
さらに先程までの鋭さはないものの、光の雨も容赦なくばら撒かれる。
だがくりだされたその捕り手のすべては、目の前の男を一度も捉える事無く空を切っている。
見た目こそあまり身軽そうではないが、それでも超人の域に至っているエキスパートの端くれ。
この程度の鈍重な動きに捕まっているようでは話にならない。

だが一方で、鉄牛の振るう斧も・・・・とてもこの巨人に有効打を与えているとは言えなかった。
そもそも絶対的な大きさが違うのである。先刻のような必殺の技でもない限り、痛手らしい痛手は望めない。
また回避自体は苦にもならないのだが、先程の黒死旋風のような大技を撃つだけの余裕もまたない。
まさにいたちごっこそのものの攻防の中、鉄牛は悪態混じりにアハツェンに怒鳴る。

「へっ! 俺達がモルモットならよ・・・・・・てめえは一体何様だ!?
 あんな小さな手前の娘っ子まで手にかけようとして恥じようともしやがらねぇ、
 禽獣虫魚にも劣る人非人じゃねえかっ! 俺は手前みてぇなのが一番気に入らねぇんだよっ!!」

怒号とともに伸び来るレーザーを、巨腕を回避しながら、男はさらに斧を振るう―――――

190 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/27 05:03

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜
>>188-189

「―――相変わらずだけど・・・・・・なんというか、あの人らしいというか」
安堵と呆れと信頼を程よく混合した表情で、大作は肩をすくめる。

・・・・・・先程、状況を確認した途端、駆け出した鉄牛。
凄まじい勢いで紅い巨人に一撃を加えたのち、今なお巨人と切り結んでいる
鉄牛の姿を呆然と見つつ、大作は一人ごちる。
そこで不意に我が身の事に思いが至り―――すぐそばに座り込んだ、銀髪の女の子の存在を思い出す。

「き、君・・・・・・大丈夫かい?」
少し不安定な足取りで近寄り、声をかける。

―――が、少女は応えない。
まるであの紅の巨人――この少女の父らしい――以外の事など目に入らないかの様子で、
前方の鉄牛と巨人との戦闘に見入っている。
まるでそれ以外の情報を、意識的に自分から遠ざけるように。

「・・・・・・・・・・っ」
この少女は、今の状況に向き合えていない。
何か、この子に言ってやらねばならない。
殻(オブラート)の内にくるむような事以外の何かを言って、目を覚まさせなければいけない。


―――だが、一体何を言えばいいのか?


『あの機体は僕たちで倒します』? 何をバカな事を。
それはつまり、彼女が“お父さん”を失うということ。
そんな事が少女にとって、何ほどの救いになろうものか。言える訳がない。
父を失う悲しみは、自分が一番よく知っているのだから。

かといって、目の前で大暴れするあの機体をどうにかしないことには、この状況はどうにもならない。
この女の子も、それを庇ってボロボロになった蒼のロボットも、何も救えずに終わる。
この少女にとってのあの蒼の鉄巨人は、自分にとってのロボと等価値なのだ。見捨てたくなどない。
それにあの紅の巨人を放置すれば、これ以上の破局を招く事は目に見えている。

―――幸せは犠牲無しに得ることは出来ないのか、時代は不幸無しに乗り越える事はできないのか。
自らの父が死に際に残した、大作が人生をかけて向き合い続ける命題が、ここでも重く少年にのしかかる。


倒すべきか、倒さざるべきか――――


191 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/27 05:06

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜
>>190

―――だが、少年のそんな答えの見つからない葛藤は、唐突に中断を余儀なくされる。

紅の巨人が見境無しにばら撒いた、一発のビームの流れ弾によって。
「・・・・・・っ!?」
今度こそ、避けようもなかった。
前と違って、自分も忘我しているその間に飛び込んできたビームだ。そもそもリアクションすら取れやしない。
だが――――

「―――バカ野郎、何ボサッとしてやがる!?」
その間に飛び込んできた、黄色と黒のコントラストが一陣の風となって、自分と少女を抱えて横に飛ぶ。
流れ弾に気付いた鉄牛がとっさに横っ飛びで大作と少女を掻っ攫い、再度の光の暴威から救い出したのである。
射線より少し離れた場所で、抱えた二人を放り出すように解放すると、鉄牛は荒い息をつく。

「・・・・・・・・・ったく、ヒヤヒヤさせるなよ・・・無事か、大作?」
「ええ、僕だけじゃなくって彼女も無事で―――――――・・・って、鉄牛さん!?」

言いかけて、大作は一つの事柄に気付く。
鉄牛の中華服の背中が黒く焦げ、その表面に大きな火傷を負っているということを。

「へっ・・・・・・かすり傷だよ。今ので少々、どじっちまったかな」
「で・・・・・・でも、その傷!」

軽い口調で答えてこそいるものの、この豪傑が負った傷はそれほど浅くはない。
深刻な傷でこそあるまいが、先程までのような動きが許されるものでもないのは明白であった。

そんな短い問答の矢先にも、無慈悲にももう一発のレーザーが、三人を狙って放たれる。
今度と言う今度こそ、かわし様がない。
現実逃避を続ける少女、非力に過ぎる大作、頼みの鉄牛も怪我のためにとっさに動けない。
まさに絶体絶命。そしてレーザーと言う名の破局が三人を薙ぎ払わんとさらに伸び―――――


今度は上方横手から延びてきた、巨大な鋼鉄の掌が、その凶光を遮った。
主である少年を生命の危機から護るために再度伸ばされた、
大作がいやと言うほど知っている大いなる相棒の掌だ。見間違えようはずも無い。

「―――――ロボ!」
先刻ビームの雨にさらされ、全身をその着弾痕で傷だらけにしながらも・・・
鋼の従者はゆっくりと、しかし力強く、そこに佇んでいた。

192 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/27 11:40

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜
>>191

その鉄壁を誇っていた装甲は既にあちこちが痛々しいまでの損傷を負い、
ビームによって潰されたのか、左眼のあるべき部位には、人一人が入ってしまいそうな穴が
ぽっかりと開いてしまっていた。

――だが。
こちらを見下ろすその嘘のない隻眼は、満身創痍など意にも介さぬ炯々たる光をたたえている。
その眼が訴えていた。
我に命を。君の意志を。ともに戦う機会を。その意に従い、我は再びその身の意義を果たさん―――と。
先程の鉄牛の敵機への攻撃によりジャミングが解かれ、より明確な意志を持って、大作の命を待っている。

・・・・・・そうだ。今は答えはどうあれ、この状況を何とかする為にみんな戦っている。
鉄牛さんも、ロボも―――そして、あの女の子を庇って傷つき倒れている、あの蒼いロボットも。
だから、自分も戦わないと。
ただ状況に惑い、嘆くだけでは何も変わらない。 あの地球静止計画でも、それを学んだのではなかったのか。

―――“答えとは求め続ける事にこそ、その意味もあれば価値もある”

先のBF団との最大の決戦にて、梁山泊の二指南が一人・小李広の花栄に言われた言葉が、まじまじと思い出される。
そうだ・・・・・・まずは。
今は答えを出す事はまだ出来ないが、だからと言って何もしないのでは、決して答えは得られない。
だから――――

未だにうつろな目で紅い巨人を見上げる少女に向かい、大作は告げる。
「・・・・・・大丈夫。君のお父さんを殺したりなんかしない。
 けど・・・・・・このままにもしておけない。
 だから―――――今は戦う。戦って・・・・・・かならずなんとかしてみせるから」

今の彼女に、声が届いたかはわからない。
だが、さっきの叫びに対する自分なりの返答は、こうして告げた。
あとは・・・・・・戦いの中でその問いに対する答えを見つける!

「鉄牛さん・・・・・・彼女をお願いします」
それだけ、静かに兄貴分のエキスパートに告げると、大作は自分を見下ろすロボに駆け寄り、命ずる。

「――――行くぞ、ジャイアント・ロボ!」

その命に真摯に応じるかのように、あの鋼の重低音が再度咆哮する。
差し出されたロボの手を駆け上り、顔から張り出した梯子の位置まで一気に駆け上がると―――
先程の攻撃で潰れた左目、その眼窩に入り込み、内部のむき出しになったコードで体を固定する。

主を再度取り戻したジャイアント・ロボは背中の2つのロケットを噴射し・・・
目の前に佇む紅の鉄巨人目掛けて、廃墟の空にその巨体を再度舞い上がらせた。

193 名前:ニコラ・バルタザール:04/03/30 23:36

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜

>>189-192

予想外のダメージ。
ジェネレーターの破損により出力が下がり、
鉛色の巨人の足にはめた枷であった、毒電波発生装置は
すでにその用を成さない。
だが、『そんなことはどうでもいい』。
今や蜂の巣となった、かの巨人に脅威も感ることはない。
ニコラ…アハツェンの目の前にある、超一級の実験動物。
あれをソラリスに持ち帰り、研究するのだ。
レーザーの出力を落とす。
蒸し焼きを手に入れたところで仕方ない。
ましてや炭素の塊など、持っての他だ。

そしてセンサーをフル稼動させ動きを追い、
捕獲しようと腕を伸ばす。
そのことごとくを逃れ、細かな攻撃を加えてくる実験動物は、
先の言葉に激昂したのか、何やら怒鳴り散らしている。


「へっ! 俺達がモルモットならよ・・・・・・てめえは一体何様だ!?
 あんな小さな手前の娘っ子まで手にかけようとして恥じもしやがらねぇ、
 禽獣虫魚にも劣る人非人じゃねえかっ! 俺は手前みてぇなのが一番気に入らねぇんだよっ!!」

「人非人? 当然だ。一緒にするな。
 それよりも、娘を手にかける、だと? 何を勘違いしている。
 私はこの力の素晴らしさを教え、与えてやりたい。それだけだ」


涼しげに言い放つと、突然、赤い機体の胸部が向きを僅かに変える。


「我が娘。ニコラの娘。
 マリア・バルタザールに、ヒトの身体など釣り合わんのだよ」

損傷した部分に火花を上げながらも回転し、蓄電するジェネレーター。
発光、直後、撃ち出された拡散レーザーは、
明らかにマリア、そして、鉛色の巨人の主を狙って放たれた―――――――


194 名前:ニコラ・バルタザール:04/03/30 23:37

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜

>>193

――――――お父さんの言葉を、聴いた。

私に力を与えると。
シェバトのみんなを殺した、あんな力を与えると。
私にヒトの身体はいらないと。
大きなリボンがよく似合う、綺麗な髪だ。
そう言ってくれたお父さんが。
私を、レーザーで焼こうとしている。


私の身体が、宙に浮く。

吹き飛ばされたんじゃない。
さっきの変な人に、抱えられていた。


「・・・・・・・・・ったく、ヒヤヒヤさせるなよ・・・無事か、大作?」

「ええ、僕だけじゃなくって彼女も無事で―――――――・・・って、鉄牛さん!?」

「へっ・・・・・・かすり傷だよ。今ので少々、どじっちまったかな」

「で・・・・・・でも、その傷!」


お父さんは、この人達も焼こうとする。
シェバトのみんなみたいに。

そして、私も――――――――




今度はそこに、腕が割り込んできた。
大きな腕が。

ゼプツェン?

違う。


「―――――ロボ!」

さっきまでお父さんを壊そうとしていたギアだ。

私が泣いて、そのせいで、ぼろぼろになったギアだ。


男の子は嬉しそうだった。

また、お父さんを壊しに行くんだ。


わかってる。

そうでなきゃ、この人は何も守れないから。

何もできなくなっちゃうから。


私みたいに。


みんな、なくしちゃうから。



「・・・・・・大丈夫。君のお父さんを殺したりなんかしない」


お父さんを殺さない?


「けど・・・・・・このままにもしておけない」


このままにもしておけない?


「だから―――――今は戦う。戦って・・・・・・かならずなんとかしてみせるから」




あなたに。


―――――何ができるの?








「――――行くぞ、ジャイアント・ロボ!」


差し伸べた手に主を乗せ、飛翔する巨人。
背部ロケットより爆発的な噴射光を放ち、
その巨躯を、一直線に敵手へ。


「そろそろ、幕の引き時だ」

紅の巨人も、それに応え。
腰を捻り、大上段に拳を固め。


「――――潰せ、アハツェン!!」

ブースターの噴射と同時に、全出力、全体重をかけた一撃を繰り出した。


195 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/30 23:41

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜
>>194


背負った二機のロケットバーニアを噴かして空を爆走する、総重量1500トンの鋼の巨人。
肩の上に主たる少年を乗せ、満身創痍の機体に鞭打ち、紅の巨人へまっしぐらに突貫する。
時速200キロを優に越える世界の中、ロボはまるで弓を引くように
ゆっくりと拳を引き、力を溜めるかのように構える。

みるみる互いの距離が狭まり、それに伴い
大作の視界の中でその威容を強めていく、隻腕の赤きヒトガタ。
向こうもまるで鏡写しか何かのように、その身を捻って拳を構える。
迎え撃つ気だ。

そして、彼我の距離がそれこそ、両機体にとって指呼ともいえる間合いにまで迫る瞬間――――


「―――叩け! ジャイアント・ロボ!!」『―――潰せ、アハツェン!!』
両者の声―――撃発の意志が同時に叫ばれる。

全く同時に、対峙する二機が唸りを挙げる。

全く同じタイミングで、紅と鉛、一対の超重量の拳が交差する。
そしてその一瞬――――雷鳴すらもかき消さんばかりの大轟音が、廃墟と化した天空都市を激震させた。


「・・・・・・う、ぐぁ・・・っ!」
ロボの抉れた左眼窩の中で、大作が呻く。
2つの超重量の衝突のショックに大きくよろめきながらも、2機の巨人は倒れない。
衝撃で後ずさりながらも、満身創痍の体躯を奮い立たせ、再度向かい合う。

アハツェンの拳は、ロボの右肩に叩き込まれていた。
レーザーの雨にさらされ、耐久力が著しく低下していた装甲が
そのロボ並みの大質量の衝突に耐え切れるわけもなく―――大きく陥没。
肩部に内臓されたミサイルがその反動で爆発し―――ロボの右肩部はごっそりと抉られ、その内部をむき出しにした。

一方のロボの左拳は、いびつに歪んだアハツェンの胸部装甲―――
先程までレーザーをばら撒いていた、残ったもう一門のレーザー砲の真上に直撃。
内蔵の砲門はもはや作動率を云々する以前に胸部装甲版ごと、超重量のパンチに押し潰され―――こちらも爆発。
アハツェンの胸部装甲はそれによって大きくひび割れ―――その隙間からは紫電と炎、そして煙を噴出していた。

お互い、己の損傷を歯牙にもかけないように―――二体の巨人が再度対峙する。
紅巨人のセンサーアイとロボの右眼が視線を交差させる中、大作は叫ぶ。

「・・・・・・どうして、どうしてですか!?
 僕は事情なんか知りませんが・・・・・・それでもあの女の子は、あなたの実の娘さんじゃないんですか!?
 なのにどうして、あそこまでひどいことが出来るんですか!?」

肩を砕かれ、それ自体もずたずたになった右腕を持ち上げる。
ぼこぼこに歪み、へこみ、その隙間から循環液と――二の腕を満たす大量の流体金属を
血液のようにだらだらと流しながら、一歩を踏み出し、拳を振るう。
空いた左の眼窩から響く、大作の悲痛な憤慨とともに。

「・・・・・・それが、それが父親のやることなんですか!?
 お願いです、あの子の為にも―――目を覚ましてくださいっ!!」

196 名前:ニコラ・バルタザール:04/03/30 23:44

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜

>>195

振り上げた拳が空を切り。
破裂音にも似た大音響が響き渡る。
それと全く同時に、両者の足元が陥没。
拳圧の余波は大地に波紋を描き、無数の瓦礫が宙を舞う。


「貴様っ………!!」

鋼鉄(くろがね)の腕は紅の胸部装甲板を破砕し、
内蔵されたレーザー砲を跡形も無く潰し去る。


だが、しかし。

紅の腕もまた、鉛色の右肩部に一撃を叩き込み、
その破壊力と震動を以って、内装火器もろともスクラップに変える。


「見苦しい…そして、気に入らんな」

若干間合いを放しつつ、心底不快そうな声を外部スピーカーに響かせるニコラ、アハツェンは、
目前…センサーの前方、百数十mに立つ巨人を駆る少年が、何やら叫んでいるのを捉えた。


「・・・・・・どうして、どうしてですか!?
 僕は事情なんか知りませんが・・・・・・それでもあの子は、あなたの実の娘さんじゃないんですか!?
 なのにどうして、あそこまでひどいことが出来るんですか!?」

紅の巨人は、やれやれ、といった風に半壊した頭部を器用にすくめてみせる。
鉄屑同然となった右腕を、それでも振り上げ、繰り出す巨人の一撃に対し、
こちらも同様に左拳を真正面から叩きつける。
何かが脱落する音。
どちらの腕からだったか。
その間にも叫び続ける、鉛色の巨人の主。


「・・・・・・それが、それが父親のやることなんですか!?
 お願いです、あの子の為にも―――目を覚ましてくださいっ!!」

「聞いていなかったようだな。
 マリアには、ヒトなどという下らぬ種より脱却し、
 この素晴らしき力を得、私と共に新たな歴史を築いてもらうのだよ。
 アハツェンが、この身体が、私に目を覚まさせたのだ」

二基のブースターを噴射。
左肩口から巨人に体当たりを食らわせようと、一気に加速する。
さほど離れてもいない間合いの最中に、アハツェンは自らを赤い巨大な砲弾と化した。


197 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/30 23:51

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜
>>196

悲憤とともに繰り出される、壊れかけの腕に握られた――ひび割れた鉛の巨拳。
事も無げに、まるでこちらの悲憤を嘲笑うかのごとき勢いで繰り出される、紅の巨拳。

真正面からぶつかる、二つの鋼と鋼。
再度ぶつかり合うその衝撃に耐え切れず、固められた両機体の拳の指は砕け、ひしゃげ、紫電を散らす。
だがロボの方は、それだけではではすまされない。
あちこちに大きなヒビをこさえ、大量に流体金属が流出してしまった右腕は
本来誇るべき強度と威力を発揮しきれず―――結果、二の腕の中ほどまでが衝撃に敗け、圧壊した。

そこへさらに浴びせかけられる、容赦のない相手の言葉。


「そんな・・・・・・そんなっ!!」

大作は悲嘆する。
拳同士の激突で競り敗け、砕け散るロボの右拳に。
よく境遇や関係こそ似ていたようだが、自分の持つ父親像――草間博士とは似ても似つかない、
銀髪の娘の父親を名乗る、目の前の巨人の物言いに。

「・・・・・・くっ・・・・・・・そんなの、そんなの・・・何か絶対に違いますよ!
 時代を乗り越えるなら、何も犠牲にしなくても何か方法はあるはずなんですよ!
 そんな事のために、あの子の一番大事な友達まで傷つけて、泣かせて・・・・・・! そんなのは僕は認めない!
 いい加減、本当にあの子のことを――――――」

その台詞は、最後まで続く事を赦されなかった。
言い切る前に凄まじい勢いで突っ込んできた紅い巨人に、強烈なぶちかましを喰らったのだ。
不意をつかれ、なす術もなく吹っ飛ばされ―――仰向けに倒れこむ。

「―――ごほっ、ガッ・・・・・・! う、げほっ・・・ぐっ!」
衝撃と全身の痛みに激しく咳き込み、口からは一筋の血が垂れ落ちる。
突き倒されたときの衝撃は、十二歳の少年の身体にも容赦なく襲い掛かっていた。

「うぐ・・・・・ロボ、大丈夫か・・・・・・・・・?」

“ゴォォォォ・・・・・・・ン”

相棒を心配する問いに、帰ってくるのはいまだどうにか健在といえる、重低音の唸り声。
ただ、さすがに損傷度が無視できないレベルにあるためか、幾分か弱々しくなっているのは否めなかったが。

「―――立とう・・・・・・ロボ…。 まだ倒れられないよ、まだ・・・っ!
 僕は、こんなの、絶対に認めない・・・・・・・・・!」

ダメージと疲労に憔悴しきった様子ながらも、まだ再起の意志を示す大作。
まだあの命題の答えを出すには早く、しかもこんな答えなんかには絶対に納得ができない。
少年のその意志を汲むかのように、疲弊しきった鋼鉄の身体に鞭打って、ゆっくりとロボは身を起こしていった。

198 名前:ニコラ・バルタザール:04/03/31 00:02

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜

>>197

私は、見ていることしかできない。
二機の、二人の、戦い。
私には、聞いていることしかできない。
二機の、二人の、声。

あの人は、ギアの左眼から。
お父さんは、外部スピーカーから。


「・・・・・・それが、それが父親のやることなんですか!?
 お願いです、あの子の為にも―――目を覚ましてくださいっ!!」

「聞いていなかったようだな。
 マリアには、ヒトなどという下らぬ種より脱却し、
 この素晴らしき力を得、私と共に新たな歴史を築いてもらうのだよ。
 アハツェンが、この身体が、私に目を覚まさせたのだ」

「そんな・・・・・・そんなっ!!」

あの人のギアの腕がくだけた。
お父さんから最初にもらった一発で、もう壊れていたんだろう。


「・・・・・・くっ・・・・・・・そんなの、そんなの・・・何か絶対に違いますよ!
 時代を乗り越えるなら、何も犠牲にしなくても何か方法はあるはずなんですよ!
 そんな事のために、あの子の一番大事な友達まで傷つけて、泣かせて・・・・・・! そんなのは僕は認めない!
 いい加減、本当にあの子のことを――――――」

お父さんは、最後まで言わせてあげなかった。
加速をかけて体当たり。
あの人のギアは、地面に転がる。

お父さんは、ゆっくり、ゆっくりと、
空から、あの人のギアに迫っている。

あの人のギアは、立ち上がる。

もう、なにもできなくなりつつあるのに。

あの人は、お父さんを殺さないと言った。

でも。


今、お父さんが。

あの人を、殺そうとしている。


――――もう。

――もう、いやだ。

たくさんだ。

壊れるのは。死ぬのは。


お父さんを止める方法は。

ただ、ひとつ。



「お父さん!!」

お父さんが、動きを止める。


「私、行く!!
 お父さんについていく!!
 だから…もうやめて!!
 もう、壊さないで…もう、傷つけないで!!」


―――これで。

これで、いいんだよね。


ありがとう、わたしをまもってくれたひと。

ありがとう、一緒に戦ってくれたゼプツェン。


もういいの。


――――もう。


199 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/31 00:06

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜
>>198

ボロボロになったG型特殊鋼のボディが、ゆっくりと立ち上がろうとする。
だが、先程からの猛攻によって受けたダメージはあまりにも大きく、その影響は動作系にも色濃く現れている。
もともとそれほど所作が素早いロボでもないのだが、瓦礫の山から起き上がろうとするその様はあまりにも緩慢。
見ているほうがイラつかされるような、それほどの状態にまで追い込まれていた。

そして、そんな風に遅々たりとも起き上がろうとするロボとは対照的に―――
同じく満身創痍ながらも、まだ幾分か余裕を残している紅の鉄巨人は、これまた緩慢に空中から少年に、
そして彼の駆るジャイアント・ロボに迫ってゆく。

ようやく上半身を起こし、“尻餅をついた状態”にまで身を起こした、青鉛色の巨人。
刃向かってくる主従を嬲るかのように、ゆったりと中空より迫り来る紅の鉄巨人。
同じ『緩慢』とはいえど、余裕と云う名の一点において、両者には埋めようの無い差があった。

「・・・・・・くぅっ・・・! ロボ、もっと早く・・・!」
迫る敵機。焦る心。
だが、いささか傷つきすぎた機体は忠実に意志に従おうとも、その焦りには追いつかない。


――― 一方。
そんな彼らの様子を離れて見守っている、鉄牛と銀髪の娘。

「ちっくしょう・・・・・・・なんとかならねぇのか!」
色黒の巨漢の口からも、焦りが口をついて出る。
できる事なら今すぐ飛んで行って加勢したい所だが――それではこの娘と、彼女のロボットを護りきれなくなる。
それに、まだ防戦なら可能だが、今の手負いの身体では十分に暴れる事もできない。
そんな焦燥感に、鉄牛が歯軋りしていると――――

不意に、ただ黙って見ているだけだった少女が、歩き始めた。
二体の巨大人型機動兵器―――鋼鉄の巨人たちが対峙する、戦場へ。

「おい・・・・・・嬢ちゃん? どこへ行くつもりだ?
 そっち行っちゃ危ねぇってばよ! だから待てって、おい・・・・・・!」

鉄牛の静止も聞かずに、彼女は歩みをどんどん速めていく。
そして―――。

「お父さん!!」

少女は何かを決心するかのように、口を開く。
ただ、その声は重く湿った、諦念の響きにまみれていて。

「私、行く!!
 お父さんについていく!!
 だから…もうやめて!!
 もう、壊さないで…もう、傷つけないで!!」

―――続いて叫ばれた彼女の言葉に、戦場は完全に固まった。
必死に起き上がろうとするロボ――その左目の中の大作も。
彼らにとどめを刺さんとする、紅の巨人――――娘の『お父さん』も。
状況を静観するにまかせていた、すぐそばにいた鉄牛も。


「・・・・・・・・・な、どうして…?
 どうしてそんなこと言ってるんだ、あの子は・・・・・・・・・・?」

唐突に聞かされた女の子の言葉に、大作はただただ、唖然とすることしかできなかった。

200 名前:ニコラ・バルタザール:04/03/31 00:08

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜

>>199

ニコラ、ことアハツェンは、娘の声に気付き、そちらに向き直る。
そして、その言葉の一字一句を聴覚機能に収めると、
ホバリングしつつ、ゆらり、ゆらりとマリアの方へ進み始めた。


「…やはりお前は、私の娘だよ。マリア」

優しい声。だが同時に、ほくそ笑む顔が目に浮かぶかのような。

最早、アハツェンは背後のロボを警戒などしていなかった。
こちらの損傷もかなりのものであるにせよ、次の攻撃で
動力部の破壊も可能であると踏んでいるのだ。

―――かの機体の動力源が何であるか、目星はすでについていたが、知ったことではない。
娘が放射能汚染されたところで、人機融合を果たせば何の関係も無い。
距離的に即死の恐れもあるので、そのあたりは考慮せねばならないが。


「さあ、乗るがいい。マリア。
 新たな世界を見せてあげよう」

小さな地響きを立てて着地した紅き巨人は、
娘に、その手を差し伸べた。
あくまで、優しく。

だが、それは。
どう見ても、父親のそれではない。


マリアにも、それは半ばわかっていた。

倒れ、それでも立ち上がろうとする鉛色の巨人の方を向き、
可能な限り大きな声で、伝える。


「もういいんです!! もう戦うのはやめて下さい!!
 これで…これ以上誰も傷つきませんから!!」

明るい声。
明るい表情。

…しかし。
瞳からは、一筋の水滴が頬を伝っていた。


その雫が、地面を叩き、散った瞬間だった。



爆音が、またも大地を揺るがした。
倒れた鋼鉄の巨人でも無い。勝ち誇る紅の巨人でもない。
右腕も、左腕も失った、第三の巨人の怒号。
17、すなわち、ゼプツェン。
蒼き巨人の背部ブースターが、それそのものが爆裂せんばかりの勢いで稼動し、
紅の巨人に、体当たり…いや、捨て身の特攻を行ったのだ。


「…ぬおおおおおっ!!」

アハツェンは、咄嗟にその頭を押さえ込んだものの、
抑え切れず、じりじり、じりじりと地面に脚をめり込ませながら後退していく。
なおも噴射光を最大出力で放ち続ける、ゼプツェンのブースターは、
すでに末端部で赤熱が始まっていた。
だが、それでも噴射を止めようとはしない。
半壊したその身で、紅の巨人を大地の中へと押し込んでいく。


「ゼプツェン…………」

マリアは、不思議そうにその光景を見上げる。


「どうして、ゼプツェン……もういい、もういいのに。
 もう、傷つかなくてもいいのに…」


201 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/31 00:13

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜
>>200

唐突に叫ばれた、自分たちが今まで庇ってきた銀髪の少女の声。
その声に振り向き、狙っていたロボに背を向け、ゆっくりと宙を漂って少女に近寄る紅の巨人。
その所作だけ見れば、確かに紅の巨人が娘に対して行っている行為は、娘を迎えに来た父親のそれだ。
だが、その所作はあまりにも綺麗にまとまりすぎていて――――作り物じみていて。

だが、自分たちが考えもしなかった娘の行動に思考が凍りつき、何もできない。
大作も、鉄牛も、何も考えられずにただ立ち尽くし、その一連の、醜悪な茶番劇を見ているだけ。

「もういいんです!! もう戦うのはやめて下さい!!
 これで…これ以上誰も傷つきませんから!!」

未だ立ち上がろうとしているジャイアント・ロボに向かって、少女が大声で呼びかける。
こちらを安心させようとして――――そしておそらくはその裏で、無理矢理自分を納得させようとして。
思考が止まった大作の頭に、その言葉はとても空虚(そらぞら)しく響く。

そして、そんな彼らの思惑を暗に嘲笑うかのように、暖かみの感じられない
嘘だらけのやさしさで塗り固められた、“父親”の巨大な掌が少女に向かって伸ばされ―――――


・・・・・・そこで、固まっていた大作達の時間は動き出す。
少女を護ろうとして傷つき倒れ、大地に横たわっていたはずの蒼き鉄巨人が
残された全推力――――否、限界を無視した出力で、紅の兄弟機にぶちかましをかけたのだ。
その様、まさに乾坤一擲。

紅の巨人も抵抗するも・・・・・・不意を衝かれた事もあったのかはたまた捨て身の特攻の成果か、
その猛烈な押しに抗し切れずに、少しずつ天空都市の廃墟に、その身をぐいぐいと沈めていく。

さらなる異変と云う名の衝撃でマヒした思考が元に戻り、我に返る大作達。
その瀕死の巨人の、最後の奮闘に見入る中――まるで疲れた様な、虚無感に彩られた鈴の音の如き声が響く。
自らの従者を眺めての、少女の言葉だった。

「どうして、ゼプツェン……もういい、もういいのに。
 もう、傷つかなくてもいいのに…」

202 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/31 00:17

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜
>>201

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!!!!」
水鏡の如く平坦で冷たかったはずの感情が、あっという間に沸点を振り切り煮えたぎる。

理解している、つもりだった。
どれだけつらい、苦しい思いをしてきたかも、容易に想像がついていた。
だが、だからこそ――――その一言だけは、どうにも赦してはおけなかった。
この直情傾向が強すぎる色黒の巨漢には、それだけは我慢がならなかった。

「この・・・・・・・・・・・・大バカ野郎っ!!」

気が、つけば。
少女のすぐそばにいた鉄牛の平手が、少女の横面を―――

ぱん! と音を立てて、叩いていた。

「・・・・・・・・・・・・・・!?」
信じられないものでも見たかの如く混乱した表情を浮かべる少女の襟首を掴んで自分の方に向けさせると
鉄牛は溜まっていた激情を、義憤を、立て続けに吐き出し続ける。

「『どうして』・・・・・・だと? 『もういい』だと!? ふざけるんじゃねぇ!!
 じゃあどうして、あの蒼いのはあんなにボロボロになってたんだ!? ええ!!?
 あの“自称”父親のデカブツから必死こいて、文字通り身を削ってまでおめえを庇ってた理由は一体なんだ!!?

 ――――それもこれも全部、お前のためだったんじゃねえのかよ!!?」


ただただ驚愕するばかりで、答えられない少女。
声のトーンを落として、鉄牛はさらに続ける。
「俺や大作、それにロボはまだ・・・・・・半分任務って事もあるし、そんな事はどうでもいい。
 だがな、あのロボットはよ・・・・・・そんな理屈抜きにあそこまでおめえに尽くしてんじゃねえか。何でだ?

 ―――それだけ、大事な存在だからじゃねえのかよ」

そこまでいうと少女の襟から手を離し、両肩に手を置くと―――
いまだ紅の巨人を大地に押し付け続ける蒼の巨人に目線を移し、今度は静かに、ぽつりと言った。

「だがな・・・お前さんのやってる事は、
 そんな大事に思ってくれてる奴の気持ちを、全部台無しにしてる事になるんだぜ」

203 名前:ニコラ・バルタザール:04/03/31 00:19

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜

>>201-202

「この・・・・・・・・・・・・大バカ野郎っ!!」

ぱん!

乾いた音が、マリアの耳に響いた。
痛みは無かった。
ただ、意識がこちらに呼び戻されたのだ。


「・・・・・・・・・・・・・・!?」

襟首を掴まれ、向き直らされたその先には、
たった今平手を振るった、色黒の大男。
鉄牛、と呼ばれていたか。


「『どうして』・・・・・・だと? 『もういい』だと!? ふざけるんじゃねぇ!!
 じゃあどうして、あの蒼いのはあんなにボロボロになってたんだ!? ええ!!?
 あの“自称”父親のデカブツから必死こいて、文字通り身を削ってまでおめえを庇ってた理由は一体なんだ!!?

 ――――それもこれも全部、お前のためだったんじゃねえのかよ!!?」

少し、ひりひりする頬を片手で押さえていると、
大男は、声の調子を落として、先を続けた。


「俺や大作、それにロボはまだ・・・・・・半分任務って事もあるし、そんな事はどうでもいい。
 だがな、あのロボットはよ・・・・・・そんな理屈抜きにあそこまでおめえに尽くしてんじゃねえか。何でだ?
 ―――それだけ、大事な存在だからじゃねえのかよ」

ゼプツェン。
お父さんと一緒に。
いつも。
いつでも。
守ってくれた。
私を、守ってくれた。


「―――ったら」

言葉にならない、呻きにも似た言葉。
だが、次に口から出た言葉は、はっきりしていた。


「だったら、どうすればいいんですか!!
 何をすればいいんですか!!
 何ができるんですか!!」

涙を、ぽろぽろと零して。
溢れる感情は抑えきれなくて。


「私は何も出来ない。
 何もしてあげられない。
 壊されるゼプツェンに、何にも…

 こんなのいや!! 嫌なんです!!
 私だって、嫌なんです!!

 ―――でも、
 でも、どうすればいいんですか!!」





―――ゼプツェンには、そのようなことは関係無かった。

背部ブースターの各所が融解し、全体がひび割れ、
それでもなお、突撃をやめない。
ただ、護るべきものを護る…それだけを、己が身を以って語る。


「…そうか、それほどまでにマリアの脆弱なヒトの身が大事か」

嘲るような、また同時に、憤怒のような声。
防御一方に回っていたアハツェンが、あえて腕を外し、
ゼプツェンの破壊寸前のブースターに手をかける。


「鉄クズめが」

持てる握力を一極集中。
地面に沈める、いまいましい圧力の元を、その手で強制切除した。
ブースターは二機の背後に抜け、その推力に従い
地面を長距離に渡って削り取った後、力尽きたように爆発する。
残された蒼の巨人には。
動く手段は、残されていなかった。

抑えつけるものが無くなったアハツェンは、
背部のブースターを軽く吹かして浮上。そして。


「分際を思い知れ」

今度こそ完全に抵抗できなくなったゼプツェンを、
蹴りつけ、蹴り飛ばし、蹴り潰す。
破壊するための効率的な攻撃ですらない。
ただ、いたぶりつけるためだけの一方的暴力であった。


204 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/31 00:24

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜
>>202-203

――――ぱん!

死力を尽くして噴かされる、蒼の巨人のバーニアの轟音以外に音のしない戦場に…乾いた音が一つ響く。

ようやく回路が復調しかけてきたロボを起き上がらせながら、視線を音のした方向…眼下に向けると―――
彼女の身柄を預けた兄貴分のエキスパート――鉄牛が、その激情と義憤を以て、彼女を力一杯諭していた。
ひとしきり言い放たれた漢の言い分に、ややあって、銀髪の少女が口を開いた。

「だったら、どうすればいいんですか!!
 何をすればいいんですか!!
 何ができるんですか!!」

女の子は叫ぶ。涙を流しつつ。
さっきまで自分を誤魔化そうとしていた反動か、堰を切ったように感情をぶちまけて。

「私は何も出来ない。
 何もしてあげられない。
 壊されるゼプツェンに、何にも…

 こんなのいや!! 嫌なんです!!
 私だって、嫌なんです!!

 ―――でも、
 でも、どうすればいいんですか!!」

「……………っ」

彼女の言葉に、一つだけ自分から言える言葉を返そうとしたその矢先。
爆音と大きな振動が再度戦場を大きく揺るがし、意識が強制的にそちらに引き戻される。
視線を向けなおしたその先では――――

蒼の巨人の捨て身のタックルによる重圧を無理矢理撥ね退けた紅の巨人が、
力つきて動きを止めた蒼の巨人を、まるで蔑むかのように蹴り飛ばし、足蹴にし、踏み躙っていた。
まるで先程の渾身の抵抗を無駄だったと嘲るように、一発、また一発と。


205 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/31 00:29

>>204

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!
 やれ、ロボっ!!!!」

その光景が視界に入るやいなや、瞬間的に大作の中の何かが発火する。
気付いた時には既に、思い切り叫んでいた。

そして以心伝心と云う言葉を地で行くように、その至極単純な、大雑把なはずの命令を
まるで少年の意を汲んだかのように、鋼鉄の巨人は正確に再現する。
復調した動作回路をフル活用したかの如き素早さで、ロボの左拳が
蒼い兄弟機を踏み躙る紅の巨人の巨躯を、またも勢いよく殴り飛ばしていた。


大きく吹き飛び、瓦礫の山に再度その身をめり込ませる
紅の敵機には目もくれず、先程の少女に向き直ると大作は声を張り上げる。

「だったら・・・・・・・・・あの蒼いロボットが君の為にした事、信じてあげましょうよ!
 少なくとも――これだけはしてあげられるじゃないですか!?
 何もないなんてそんな悲しい事、言わないでくださいよ!」

大作はなおも、必死な声で呼びかけ続ける。

「僕には事情なんかわからないけど……あの蒼い機体は
 君をあの紅いロボットに渡しちゃいけないって思ったから、あそこまで頑張ったんでしょう?」

まるで蒼いロボットの意志を訴えるように。代弁するように。

「なら・・・・・・・・・そこまで君のために身体を張ったっていうなら、信じてあげるって言うなら・・・・・・
 あのロボットの気持ち、無駄にしちゃダメですよ・・・・・・!」

最後に血を吐くようにそれだけ彼女に告げると、
大作――ジャイアント・ロボは、先刻の方向に再度向き直る。その先には―――

身を半ば埋めた瓦礫を押しのけて立ち上がる、彼女の父親を名乗る鉄巨人・アハツェンの姿があった。

206 名前:ニコラ・バルタザール:04/03/31 00:31

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜

>>204-205

少女の涙に答えたのは、今まさに、
再び義憤のままに『お父さん』を殴り飛ばした鉄巨人の主。
歳もそう違わないであろう、少年。


「だったら・・・・・・・・・あの蒼いロボットが君の為にした事、信じてあげましょうよ!
 少なくとも――これだけはしてあげられるじゃないですか!?
 何もないなんてそんな悲しい事、言わないでくださいよ!」

少女は何も言わない。
涙を浮かべたまま、少年の方を見やっている。


「僕には事情なんかわからないけど、あの蒼い機体は
 君をあの紅いロボットに渡しちゃいけないって思ったから、あそこまで頑張ったんでしょう?」

蒼い機体、ゼプツェンは、今や悲惨な姿をその場に晒していた。
頭部も、腕部も、脚部も、その形をすでに成さず、
辛うじて残った胸部と、頭部センサーがチカチカと明滅するのみ。
少女は、少年に言われて、改めてその姿を直視していた。


「なら・・・・・・・・・そこまで君のために身体を張ったっていうなら、信じてあげるって言うなら・・・・・・
 あのロボットの気持ち、無駄にしちゃダメですよ・・・・・・!」



「―――結局のところ、無意味ではあったがな」

それと同時に、あくまで嘲笑しながら立ち上がるアハツェン。
ブースターの噴射を行い、推力でその補助を為す。


「頑張った。ただそれだけだ。何の実りも無い。ご苦労なことだ」

今の一撃で不調をきたしたのか。
すでに半壊した首を、二、三回左手で押さえた後に、ロボに向き直る。
二機の対峙。
次が、最後の一戦となるだろうか。


「では、いい加減に消えてもらおうか。
 もうデータは充分すぎるほど貰ったのでな」

言うか早いか、アハツェンは飛翔する。
ジェネレーターは小破しても、ブースターの出力はほとんど死んでいない。
機体そのもののダメージは大きくても、
その図体に似合わぬ機動性はほぼ健在のままである。

無論、そこから繰り出される体当たりの威力も。
天駆ける赤き流星…むしろ、隕石と呼ぶべき巨体は、
一直線に鉛色の巨人に襲い掛かる。

たとえかわされようとも、再び、三度空に舞い、
何度でも彼の敵の下へと飛来するだろう…


207 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/31 00:37

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜
>>206

こちらに向かって、宙を舞う紅い巨人はぐんぐんと迫ってくる。
いまのロボにも劣らぬレベルの損傷を追いながらも、その大推力はいまだ健在のブースターを噴射して。

敗けられない。
少女の為に頑張りぬいて力尽きた、あの蒼い鉄巨人の為にも。
奮闘した彼、あるいは彼女のことを思い出し、安易な逃げを止めて踏みとどまったあの女の子の為にも。
そして、あの蒼の巨人の、そしてそれを信じた少女の意志を無駄にしないためにも。
――――退く訳には、いかない。

その大推力と超重量に物を言わせ、一直線に、真っ正直に突っ込んでくる巨人。
その姿は機体色の事もあり、さながら赤熱しながら突っ込んでくる隕石の如く。
相対するこちらは先程の猛攻の損傷の為、背中の二基のロケットバーニアのうち一機、出力は万全とは言いがたい。
もともと少々鈍重なうえに、ダメージのためにそれに輪をかけて反応もよろしくない。

両の足で地面を踏みしめ、その場から一歩も動かず、紅の巨人を睨みつける。
避けられる要素は、殆どない。
だが、それより何より―――――退くつもりなど、初めからない!

大作は敵機を見据えるロボの中で、一人決意する。

―――止める。

目の前に迫り来る、真っ赤に焔える大質量を。
自分の娘さえも取り込もうとする、目の前の“父親”の狂気を。
そして……突如としてこの世界に振ってわいた、悲劇極まるこの出来事を!

無論、殺すわけには行かない。それでは、少女の本当の救いにはならない。
だから、今はただ、純粋に―――

「・・・・・・・・・・・止めるぞ、ロボ!!!」

“――――ガォォオオオン!”
少年の意志に答え、鋼鉄の咆哮がふたたび轟く。

突き刺すように、盾にするように…否。 あるいはそれは、只唯止める意志の発露として。
ロボは両足を踏ん張り、二の腕の半ばまでがなくなった腕を、全力で突っ込んでくる巨人に突き出す。

―――衝突!

208 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/31 00:40

>>207(続き)

「――――うぁぁああ・・・・・・あぁっ…!!」
激突の衝撃で、ジャイアント・ロボの右腕はその肩口までが完全に圧壊、爆発。
大質量の衝突と右腕部爆砕のショックが、容赦なく鋼鉄の主従を襲う。

・・・・・だがその甲斐あってか、紅の巨人の体当たりは完全に止まっていた。
どうにか死力を振り絞って踏みとどまり、距離がゼロになったジャイアント・ロボの目の前で。
――好機!

「―――ロボ! 全砲門発射だ!!」
その言葉とともに・・・・右胸部内蔵の小型ミサイルポッド。
一門きりの左肩のミサイル。二門だけになった腰部スポンソン小砲座。
満身創痍のロボの全身に内蔵された火器、その生き残った全てが、一斉に顔を出し―――猛砲撃を開始する。
激闘によって半分以下にまで減ったものの、その無数の至近距離での砲撃による小爆発が
敵機を幾度も襲い、その巨躯からダメージと均衡を小刻みに奪う。
アハツェンがたまらずにたたらを踏み、程よく機体が離れた所で――

「ロボ、今だ! もう一撃!!」

半壊したその赤い横面を狙い、傷だらけのG型特殊鋼の拳が繰り出される!

209 名前:ニコラ・バルタザール:04/03/31 00:42

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜

>>207-208

体当たりは、見事に敵機に命中、
すでに用を為さぬその右腕を、今度こそ粉微塵に爆砕する。
だが、アハツェンの外部スピーカーから漏れた呻きは。


「味な真似を………!!」

零距離からの一斉砲火
体当たりを逆手に取った、決死の反撃。
その全ての砲が、あらゆる噴進弾が、
アハツェンの紅い塗装を、紅い炎によって燃やし尽くしていく。
当然、その程度で留まるわけもなく、
ついに左手の先が爆散し、腕のみとなる。
…しかし。


「ロボ、今だ! もう一撃!!」

繰り出される鋼鉄の拳が横面に突き刺さる寸前。


「馬鹿が」

前面にしか命中していなかった一斉砲火は、
背部のブースターには何ら被害を及ぼしてはいない。
アハツェンとしては、ここで取るべき選択はひとつだった。

すなわち。
至近距離から加速しての体当たり。
瞬間的に最高に近い速度まで達することができるのは、
今までの戦闘で実証済みだったはずだ。
今度こそ打つ手もなく、自らの身体によって新たな瓦礫の山を築く鉛色の巨人、ロボ。
そして、そのすぐ傍にあったのは。
そのすぐ傍で、見ていたのは。

ゼプツェンの残骸。
そして、それを見つめ続ける、少女、マリア。


210 名前:ニコラ・バルタザール:04/03/31 00:43

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜

>>209

踏みにじられ、四肢の半ばを奪われた、蒼の巨人。
その形のほとんどが原型を保たず、
戦闘能力は、最早、欠片すらもない。

だが、それでも。
頭部センサーは光を放ち続けていた。

それはとても弱弱しくて。
今にも消えてしまいそうで。

だが、それでも。
そこには、不屈の力があった。

何者にも砕かれることのない、
何者にも盗めない宝石。

それに、今、ようやく。



ゼプツェンは。

――――――壊れてなんかいない。




マリアは、気づいたのだ。


信じること。
それだけが、ただひとつ、できることだというのなら。


「…私は、何もできないけど。
 何をやっても、無駄かもしれないけど…」

右の袖で、顔を拭って。
それでも涙は止まらなくて。


「忘れてた………
 一番、しなきゃいけないこと」

赤く腫らした目を、紅の巨人に向けて。
一歩前に出、両足で地面を踏みしめて。

そして、意を決して。
彼女なりの答えを。


「…お父さん!!」


「聞こえる? お父さん。

お父さん、言ってくれましたよね。
 何があっても、私とゼプツェンがお前を守る、って。
 つらいときは元気づけてくれて。
 いやな顔なんか、全然しなくて。

 私は、そんなお父さんが好き。

 ―――――私は、お父さんに戻ってきて欲しい。
 人として生きていたお父さんに、戻ってきて欲しい」






アハツェンは、ロボを大地に沈めることに成功していたのだ。
遠くから聞こえる声など、大して気にもしない。


「では、止めだ。」

左腕を、大きく振り上げ、
ロボの顔面…主ごと叩き潰そうとした。

―――――したのだが。


「………な、何だ、この不快なノイズは…
 このアハツェンに、欠陥が生じたとでも言うのか!?」

今度は、紅の巨人が塑像と化した。
そして、数秒の痙攣の後、外部スピーカーから、
今までと同じ、だが、今までと全く違う声が響いてきた。


「――――マリア、そして少年よ。聞こえるか?
 動きを止めている間に、アハツェンを破壊しろ!!」

「なんだ、外部スピーカーの誤動作!?
 制御できん、何故だ!?」

初めて聞こえてきた、狂気にかられることのない、力強い、優しい声が。
後に聞こえた悲鳴など、打ち消してしまうような。

それは、間違いなく『父親』の声だった。


211 名前:黒旋風の鉄牛 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/31 00:48

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜
>>209-210

鉄牛と少女が状況を見守る、倒壊した建物の瓦礫の山。
そこに撥ね飛ばされたロボが倒れこみ、盛大にその破片を撒き散らす。

「・・・・・・この、くそったれがぁっ!」
自分たちと目の前のロボ、二つの窮状に毒づきながら、
自分たちに降りかかる瓦礫を斧で叩き落していく鉄牛。

そして、岩塊の雨が収まったその直後――――
またしても不意に、銀髪の少女が二機の巨人の方向へ歩き始める。

「・・・・・・おい、ちょっと待てよ!? おめえまだ―――」

言いかけて、そこで鉄牛は言葉を止めた。
先程とは違い、娘のその足どりが、落ち着きと確固たる意志にあふれていたからだ。

212 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/31 00:51

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜
>>209-210

全力で、顔よ砕けよとばかりに繰り出した、超重量の左フック。
だが次の瞬間伝わってきた衝撃は、ロボの左腕からのものではなく、その胴体からだった。


「―――――――!?」
その暴力的なまでの・・・・否、暴力そのものの唐突さと衝撃に、声一つ上げられない。
一体何が起こったか理解する暇もなく、視界がブラックアウトする。

「・・・・・・くっ・・・・・・・・」
ふたたび開かれた視界は、目の前の紅の巨人を見上げるものに変わっていた。
ようやく理解力が、現実に追いつく。
全く意外なことにあの近接距離から、超加速をかけたアハツェンのぶちかましが炸裂し、ロボを再度撥ね飛ばしたのだ。

「・・・・・・ロ、ロボ・・・。 まだだ・・・・・」

さっきから脇腹が馬鹿になったみたいに痛い。 右腕もだ。 多分何本か折れているかもしれない。
だが、身体は折れても――――意志を引き継いで今戦う、この心は折るわけには行かない。
その意志だけを支えに、先程より一層ひどく全身を苛む疲労と激痛に歯を食いしばり、少年は再度呟く。

大作のそのか細い、しかしそこに在る意地だけはまだ色濃い言葉に従い、鋼の従者はゆっくりと身を起こしていく。

だが、それに伴ってゆるやかに上昇する大作の視界に映るのは―――
自分ごとロボの頭を叩き潰そうとする、半ばでちぎれた鋼鉄の上腕。
避けられない。防ぎようもない。何より今の状況全てが、そんな余裕を与えてくれない。

「・・・・・・こ、これまでなの…!?」
悔しさと焦燥感と少量の絶望に歯噛みしながら、
先程とは逆にこちら側を潰そうとするその腕を、ただ呆然と見つめ―――

213 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/31 00:56

>>212(続き)
―――その最中、大作は一つの声を聞く。

少女の声。
先程までの絶望に浸かった声とはまるで別人のように、しっかりとした、意思のある声だった。

しかし、そんな事などまるで意に介さないように、
紅の巨人はその腕を、自らの頭上にまで持ち上げる。一瞬後には一気に振り下ろすだろう。
自分を、ロボごと叩き潰す為に。
少女を、自らの手中に収めるために。

だが次の瞬間―――戦場に響いたのは、破砕の轟音ではなかった。

「――――マリア、そして少年よ。聞こえるか?
 動きを止めている間に、アハツェンを破壊しろ!!」

それは先程までの狂気と全く同じ声音で、しかしそれとは全く逆に、理性と力強さをそなえた声。

「なんだ、外部スピーカーの誤動作!?
 制御できん、何故だ!?」

理性ある自らの声に、紅の巨人の“狂気”の声が狼狽する。
目の前の機体の動きは、それとともにぴたりと止まる。先程のロボの再現の如く。


突如として投げかけられた、娘の父親の“理性”…否、“良心”の声に、大作は我に返る。
我に返って、狼狽する。

「・・・・・・は、破壊って・・・・・・!?
 でも―――そんなことしたら、あなただって・・・・・・!!
 なにか……何か他に方法はないんですか!? それじゃあの子が可哀相過ぎますよ!!」

少年は叫ぶ。やりきれなさに、その不条理さに。

『幸せは犠牲無しに得ることができないのか、時代は不幸無しに乗り越える事はできないのか』

父の遺した、かの命題に答えるために戦った先に提示された…その一つである辛すぎる回答を目の前にして。

214 名前:ニコラ・バルタザール:04/03/31 00:58

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜

>>211-213

「・・・・・・は、破壊って・・・・・・!?
 でも―――そんなことしたら、あなただって・・・・・・!!
 なにか……何か他に方法はないんですか!? それじゃあの子が可哀相過ぎますよ!!」

叫ぶ少年。
そして、その下で、同じように戸惑いと嘆きの表情を浮かべる、娘。
紅い巨人は動かぬまま、それを一瞥すると、話を続ける。


「いいか、良く聞け。ニコラはもういない。
 ここにあるのは、ソラリスに魂を奪い取られた人形に過ぎん」

「…で、でも。お父さんは現に今……」

はっと我に返るように。
今度は娘が、なけなしの希望を乗せて『父親』に聞き返す。


「私は洗脳される前に、このアハツェンに、ゼプツェンと共鳴して作動する
 良心回路を仕込んでおいた。この私の声は、そこからのものだ」


その言葉の意味するところを、マリアは痛すぎるほどに理解した。
この声はプログラム。
お父さんの残した、最期の遺志のひとかけら。
声は、語調を優しくして、マリアに、そして少年に続けて語りかける。


「それに…今の戦闘の間に、私のデータは全てゼプツェンに転送している。
 身体は失っても、心はゼプツェン…いや、マリア。
 我が最愛の娘と共にあることができる…これからも、ずっとな。
 少年…頼む。君にしか頼めそうにない。私を破壊してくれ」

「お父さん、待って!!」

うろたえるように、必死で呼び止めるマリア。
本当のお父さんが、今、そこにいるというのに。
プログラムだと頭で理解はしていても…


「言ったはずだ。マリア。私はお前と共にある。
 ついては、このいまいましい贋物を早いところ壊して欲しいだけだ」

「でも……でもっ…!!」

「私を解放してくれないか。マリア」

「………………」

マリアは押し黙る。
涙は、もう止まっていた。
枯れ果てたようなその眼を拭い、
しばらく、『父親』の姿を見上げ、そして。



「ダイサクさん、でしたよね……」

何度か聞いていた、あのギアの主の名前を、
混沌とした記憶の中から掘り出して。
今にもその場に崩れ落ちてしまいそうな調子で身体を震わせ。
それでも。


「…お願いします。
 お父さんの魂を、救って下さい。
 あの、お父さんを騙るニセモノを…どうにか…して下さぃ……」

それでも、明確な意思を、大きな声で、伝えた。



「何故だ、何故動かん、アハツェン!!
 アイザックの老いぼれがゼプツェンにジャマーでも搭載していたのか!?
 どうなっている!? 動け、動けぇぇ!!」


215 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/31 01:04

>>214

『何故だ、何故動かん、アハツェン!!』

狂気にとらわれた『父親』の形骸―――
そのノイズ交じりの叫び声が寒々しく深夜の廃墟に響く中、鋼鉄の巨人を従える少年は葛藤する。
“本体”の狂乱を見越し、巧妙に隠されながらも残されていた、真なる娘の父親の一言に。

この子の父親を、この手で奪う――――そんなことが、本当に自分にできるのか?
理不尽に実の親を奪われる事の悲しみは、同じように父親を目の前で失っている自分が一番よく知っている。
自分も味わったその悲しみを、この僕が少女に与えていい道理なんかがあるというのか。

シズマ博士。 神行太保の戴宗。 青面獣の楊志。 そして銀鈴。
かつて救おうとして救いきれなかった者たちの姿が、脳裏をよぎる。
もしかしたら、まだ見つからないだけで他に救いの道だってあるかもしれないのに。

だが、現実は正直で残酷だった。
実際にいまここでこの巨人を止めてしまわなければ、さらなる事態の悪化は目に見えている。
今でこそ“良心”が“狂気”を押し止めているものの、いつまた狂気が良心を駆逐するかわかったものでもない。
そして、それが次の瞬間でないという保証はどこにもないのだ。

ここで、この巨人である娘の父を―――

                      終わらせたくない/終わらせねばならない。

追い求め続ける命題と、突きつけられた現実。
最悪の二律背反に、決着を託された少年は苦悩する。


そんな少年の様子を見かねたように、大作の兄貴分である巨漢――鉄牛は、静かに少年に声をかける。

「―――大作・・・・・・・・・・・聞いてたか、今の言葉?

 あの娘っ子の親父さんは、いつかこうなると初めからわかってたんだ。
 お前がやらなくとも、いつか必ずこうなるって。
 ……だから、お前が自分を責める事はねえ」

「――だけど!」
「―――黙って聞けっ!!」
少年の逡巡を一喝して抑えると、鉄牛はさらに話を続ける。

216 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/31 01:13

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜
>>215(続き)


「それによ…だからこそあの親父さんの声は、こうして魂削って、被害を最小限にしようとしてるんじゃねえか。
 てめえの娘を外道に引きずり込まない為に。手前のしょった責任を、命張って果たす為に。

 それに・・・・・・戴宗の兄貴たちの事を思い出してみろ。あの場に至って、止めて欲しそうにしてたか?
 もしそんな事言ってたら、間違いなく誰であろうと兄貴はぶん殴ってたはずだ」

「・・・・・・・・・」
「だからよぅ、大作・・・・・・・・・お前が、あの嬢ちゃんに言ったのと同じだ。
 そこまでするあの親父さんの心意気、無駄にしていいもんでもねぇ筈だぜ」

あの地球静止計画をともに生き延びた兄貴分の言葉に、彼らの散り際に思いを馳せる。
――そうだ。
各々その形はどうあれ、みんな自分の信念に殉じていったのではなかったか。
それを否定するのは、彼らに対する侮辱ではないのか。

そこまでに考えが至ったところで、自分などよりもっと決める権利がある筈の、銀髪の少女に目を向けた。
彼女は自らが告げる事実の大きさに戦慄き、全身を小刻みに震わせながらも―――
しかし、それさえも耐え抜き。

明確に意志の通った大きな声で、大作に告げる。

「…お願いします。
 お父さんの魂を、救って下さい。
 あの、お父さんを騙るニセモノを…どうにか…して下さい……」


「―――――わかり…ました」

彼女のその一言で、大作の中でも覚悟は固まった。
その決意は少年にとっても――――とても苦くてつらい、苦渋の決断ではあったが。
全ては・・・・・・・・・・足元にいる女の子の意思、そして彼女を護る為に目覚めた、一人の父親の意志を守るために。



「終わりにしよう・・・・・・・・・・・・・・ロボ、やってくれ」


――――そして。
大音響を立てるはずの超重量の鉄拳は、とても静謐に、巨人の中枢が存在する胸部に叩き込まれた。

217 名前:ニコラ・バルタザール:04/03/31 01:15

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜

>>215-216

鋼鉄巨人の最後の拳は、時が止まるかのように、ゆっくりと、
紅巨人の胸板に吸い込まれていき…無数の亀裂を発生させ、止まった。


「…ダイサク君、と言ったな……礼を言わせてくれ。
 君が攻撃してくれなければ、私は表に出ることなく消滅していた。
 良心回路にかけられたプロテクトにエラーを起こさせたのは…君だよ」

紫電が疾ると同時に、各所に小爆発。
機体が断末魔を上げ始めたのだ。
だが、ノイズばかりが聞こえてくる外部スピーカーから漏れる音声は、
至って穏やかなものであった。


「最後に、ようやく最後に娘の声を聞くことができた…君の、おかげでな。
 ――――ありがとう。こんなに嬉しいことはない」

半壊していた頭部が崩落、そこから火柱が上がる。
それにより背部ブースターへと火は回り…


「……マリアを…頼…だぞ、ゼプツェ………クラウディア……」

上半身が、粉微塵に吹き飛んだ。
残された脚部は、二、三歩、後ろに後退し、倒れ…

それっきり、動かなくなった。


218 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/31 01:22

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜 最終楽章
>>217

――――最後の爆発。そして・・・・・・崩壊。
目の前に佇んでいた、紅の鉄巨人が瓦解してゆく。


御しがたき狂気に突き動かされて。

この廃墟と化した堕ちた天空都市に破滅をもたらし、娘を追い詰め。
割って入った少年達を窮地に追い込み――最後に優しき自我を取り戻した、18と名付けられた
父親の大いなる鋳型の、それはあまりにも儚い最期だった。


ロボの眼窩から這い出し、その足元―――紅の巨人が散った場所に降り立つ。
娘の父親が最期に自分に言い残した言葉に、大作はしばし俯き、心中で自問する。

自分の心の中に住む、今は亡き己の父親―――草間博士に。
そして―――己に殉じて散っていった、仲間たちに。

「父さん・・・・・・戴宗さん、銀鈴さん、みんな――――これで、よかったんですよね?」
答えは戻らない。 全ては自分で見つけ、見極める事だから。
この厳正な事実を再度噛み締めると、大作は祈った。
娘を守り通したあの蒼の機体に、父親の魂が宿り、彼女を見守る事を。

――そう、今もこうして戦い続ける、自分とジャイアント・ロボのように。

まばゆい光が、地平の向こうから昇り始めてくる。既に夜は明けていた。

騒乱と悲劇の夜は既に終わりを告げ、そこから先へ進むべく、朝焼けの光がやってくる。

219 名前:草間大作 ◆GR1XeT3sC2 :04/03/31 01:28

>>218(続き)

「――――さーて・・・と、ようやく終わったか…」

不意に、頭にゴツくてでかい掌が乗せられ、自分の髪をくしゃくしゃに撫で回す。
「わ……て、鉄牛さん!?」
「ご苦労だったな………よくやったぜ、大作」
「あ………はい」

それだけ答えると、目の前の巨漢はけろっとした様子で少年の背中を叩く。

「オラ、何ボケッとしてんだ。 忙しくなるのはこれからだぜぇ?
 帰還したらすぐに、中条長官への口頭報告。
 報告書の作成、事後処理、それからこの落下物と事件の本格調査―――――」

そこまで言うと一度言葉を切り、少女と地に伏せる蒼の巨人を見やり。

「……それから“生存者の保護”に、こっぴどくぶっ壊された巨大ロボット“二体”の修理だ。
 まさかまだ保護されてる身分だからって逃げやしねぇよな? もうお前も、いっぱしのエキスパートなんだからなぁ」
「・・・・・・」

そのいかつい顔に意地悪い笑みを浮かべると、さすがに大作は渋い顔をする。
その小さくもしっかりとした背中を再度叩くと、鉄牛はぶっきらぼうに、わざと偉ぶって言った。

「それじゃ、帰還準備だ! ボサッとすんなよ!?
 俺は救援と巨大ロボ二体の回収要請してやるから、おめえは“生存者の保護”! さっさとしろい!」

「は……はい!」
その大仰なユーモア含みの振る舞いに、鉄牛さんらしいや、と苦笑を洩らす。

砕け散った巨人の残骸に手短に、深く黙祷を捧げると。
同じくその紅い残骸に祈る、朝日に輝く銀髪の少女に、大作は手を差し伸べた。



「そういえばまだ……名前、ちゃんと聞いてなかったよね。
 僕の名前は草間大作。君は?」

220 名前:ニコラ・バルタザール:04/03/31 01:36

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜 最終楽章

>>218-219

アハツェンは、砕け散った。
お父さんの、最後の想いと共に。


―――違うぞ、マリア。
私はお前と共にある。

廃墟と瓦礫の山に吹きすさぶ夜風の音色の中に、
マリアには、そんな声を聞きとった気がした。
気のせいだとは思わない。
お父さんが、そう言っていたのだ。


「………お父さん……」

だけれど。
もう、手の届かない場所に行ってしまった。
正直なところ、まだ、信じられない。
今までずっと会えなかった、お父さんの声を、
今の今まで聞いていたのだから。
気持ちの整理、なる言葉が、
頭に浮かんでくる段階ですらない。

私は、どうすればいいのだろう。

そんな、私の後ろで。


「……それから“生存者の保護”に、こっぴどくぶっ壊された巨大ロボット“二体”の修理だ。
 まさかまだ保護されてる身分だからって逃げやしねぇよな? もうお前もいっぱしのエキスパートなんだからなぁ」

「・・・・・・」

「それじゃ、帰還準備だ! ボサッとすんなよ!?
 俺は救援と巨大ロボ二体の回収要請してやるから、おめえは“生存者の保護”! さっさとしろい!」

「は……はい!」

あのギアのパイロットの人…
お父さんを、救ってくれた人が、
お父さんのいた場所に、深く黙祷をしてから。
私に手を差し出した。


「そういえばまだ……名前、ちゃんと聞いてなかったよね。
 僕の名前は草間大作。君は?」

…………………。
よくわからないけど
少し、反応に困った。
それでも。


「……マリア。マリア・バルタザールです」

結局は、その手を握り返すことにした。






ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜  終



221 名前:◆GR1XeT3sC2 :04/03/31 02:33

ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜
レス番まとめ

>167 >168 >169 >170 >171 >172 >173 >174 >175 >176 >177 >178
>179 >180 >181 >182 >183 >184 >185 >186 >187 >188 >189 >190
>191 >192 >193 >194 >195 >196 >197 >198 >199 >200 >201 >202
>203 >204 >205 >206 >207 >208 >209 >210 >211 >212 >213 >214
>215 >216 >217 >218 >219 >220

この戦闘に関して、ご意見・ご感想等があればこちらまで↓
http://appletea.to/~charaneta//test/read.cgi/ikkoku/1080605646/



ジャイアント・ロボvsアハツェン 重吼交響曲〜激突、紅と蒼の巨人〜



                                     終



     だが






                              戦いは






                   つ づ
                       く





     次  回  予  告

数ヶ月の沈黙を破って、GR計画のために再度本格的に動き始めた秘密結社・BF団。
敵の作戦阻止に向かう大作とロボ。そしてエキスパート達。
しかしそれは巧妙に仕組まれた、策士諸葛亮孔明の謀略であった!

手薄になった北京支部に、BF団の魔の手が迫る。
そしてその時、異邦の少女と、それに付き従う蒼の巨人もまた……!

          「ゼプツェン、行きます!!」


次回、『GR計画I・蒼鉄咆哮 〜狙われたGと新たなるG〜』

 乞 う、 ご 期 待 。

222 名前:カチーナ・タラスク少尉 ◆JcROcToPUs :2005/04/19(火) 23:22:47

『盾か拳か』
航海日誌 新西暦187年某月某日。クソッたれなあのL5戦役からおよそ2ヶ月経過。
レフィーナ艦長についてアタシ達オクト小隊は、ラッセル、レオナ、
タスク、そしてあたしを入れた4人の実働メンバーはアステロイドベルトのイカロス基地で、
周辺空域の警備任務に当たっている。…基本的にはフルメンバーで動いているのだが、
今回は少しばかり事情が異なる。マリオン・ラドム博士が月のマオ・インダストリー社から
ジガンスクードの改造プランが送られ元々整備兵だったタスクと、
パーツの建造関連に意外に詳しいラッセル。
この二名がジガンスクードの追加パーツの建造を行う為、イカロス基地に残り、
あたしとレオナの二人で通常の警備に当たっている。

「レオナ、そっちの空域の状態はどうだい?」

追加パーツが建造される、と言ってもまずはパーツそのものをくみ上げないと戦力にはならない。
装備させ、不具合があるか確認するのはまだ先だから、とあたしはタスクに少しばかり話し合って
ジガンに乗る事にした。その間、数分と行った所だがタスクは快くアタシの提案を受け入れてくれた。
実際ジガンの火力はたいしたものだから、か弱い女二人での道中を行くにはこれ以上ないくらいだ。
DC戦争から使ってたヴァルシオン改も良かったが、やはりあたしにはジガンが良く合う。
元々はDCの機体だったため、解体処分を受けるかと思っていたが、
あの兄さんがクロガネと一緒にどっかへ持って行ってしまったのは頂けない。
こういう任務の時こそいざと言う時の火力が必要なんだ。

「サルガッソー空域周辺の重力異常、見られません。
 カチーナ少尉、何もあそこまですることはないんじゃないでしょうか」

“話し合い”の内容についてレオナが言って来る。
あそこでか弱い女二人、で笑ったタスクが悪い。第一、レオナもむっと来ていたじゃないか。
少しばかり、ジガンが赤くなった所で元々赤いんだから問題は殆どない。

「……レオナ、気づいてなかったのかい?アレ全部塗料だよ。
 アタシも殴った瞬間は驚いたけど」
流石にレオナも絶句する。手品が得意って言ってもアレは流石に趣味が悪い。
後でシメる事にする。今度は流石にレオナも止めまい。

「…レオナ?」

ジガンのレーダーに反応あり。レオナも気づいてガーリオンのBMモードを入れ替える。
ジガンは火力があるが、加速力が遅いのが玉に瑕だ。この反応パターンは重力震。
エアロゲイターのものに近い。
近いっていうのはエアロゲイターのタイプとは微妙に異なっているって事。
新手だろうがなんだろうが敵だったらぶっ潰す、それ以外ないのは当然の事。
アタシも気合を入れてジガンのテスラドライブのモードをクルーズから小回りの効く
コンバットへと切り替える。

「フォーメーションはツーマンセルのパターンE!イカロス基地、聞こえるか?
 重力震を確認。これより、オクト小隊オクト1とオクト4、二名は調査に入る」

最後にイカロス基地へ通信し、交戦のための準備をしておく。
どっちにしろサルガッソー空域から来るんだ、絶対まともじゃない。
あたしは内心ワクワクしながらどんなのが出て来るかレーダーとモニターをチェックし始めた。

223 名前:??? ◆RFEJdNUaqs :2005/04/19(火) 23:33:42

『盾か拳か』

>>222

 虚無。
 端的に宇宙を――特にこの宙域を表すならばこれ以上適当な言葉は無い。

 見える物といえば、僅かに漂うデブリと塵。
 生命そのものを拒絶するような静寂が支配する、真空の真っ只中。
 見た者が己の目を疑うような光景が、其処にあった。

 何の冗談か、人に見える影が、座禅を組んで静止しているのだ。

 しかし、よくよく見れば人の形をしてはいるが――影が纏っているのは青黒い鋼の装甲。
 影は二十数mにも及ぼうかという巨大な人型のロボットだった。

「…………」

 そのコクピット内では、機体と同じように座禅を組んだ青年が瞑想を続けている。

(……こんな時こそ、心を平静に保つのだ……。
 神経を研ぎ澄まし、気の流れを捉え、全てを見極めろ……)

 彼は大軍に押される内に仲間とははぐれ、奇妙な閃光に包まれた後には此処に居た。
 幾度と無く試みた通信は不通。奇妙な電磁波の悪影響により、現在位置の把握も不可能。
 更に――何故か敵までもが周囲に見当たらない。
 正に八方塞がりと言う他無いのが、現在の状況だ。

 しかし、そこでパニックに陥ってしまっては掴める希望も掴めなくなる。

(それこそが師の――ッ!?)

 突然、網のように張り巡らされていた彼の意識に違和感が生じた。
 並みのセンサーよりも遥かに鋭敏な感覚が、接近する物体を感知したのだ。

「来たか……」

 操縦者の動きと同調するシステムにより、彼と鋼の巨人が同時に立ち上がる。
 暗闇の向こうから来る者は、果たして敵か、味方か――

224 名前:カチーナ・タラスク少尉 ◆JcROcToPUs :2005/04/19(火) 23:40:52

『盾か拳か』
>>223

――――アステロイドベルトのサルガッソーの入り口、相対距離にして
500km。それがあたし達とアンノウンの距離だった。

「……レオナ、ありゃなんだい?」
接触回線でレオナに話しかける。モニタにはレオナが唖然としているのが分かる。
多分、あたしも大口をあけて“!?”としているんだろう。

それは、座禅と言われる東洋の宗教儀式だったはずだ。オペレーションSRW前に
似た様なのをライディース=F=ブランシュタイン少尉やゼンガー・ゾンボルト少佐が
行っているのを見た事がある。あたしにもやらないか?と誘われた事は誘われた。
複雑に組むのは脚だけだから楽かもしれないがラーダのアサナであたしは懲りた。
とまれ、座禅を組んでいるそのアンノウンは非武装に見えたが、ここまで怪しいと
いっそ清々しいくらいあたしの目に映った。

「機動兵器…でしょうか?一見、非武装なのが気になりますが…。
 グルンガストの例もあります。どこからか出してくるかもしれません。
 ましてや異星人の物だったら…」

実際、異星人辺りの機体と考えた方が早そうだ。
念の為、レオナにデータベースを検索してもらう。意外な事に類似したケースがあった。
オペレーションSRWにあたし達がホワイトスターに突入したすぐ後に出たと言う
分類コードEG−X、コードネームマスタッシュマン。それが類似したケースだった。
その後マスタッシュマンはエアロゲイターの機体と交戦しつつ、地球方面へと落下。
恐らくは生きていまいとの報告だったが、どうやらここにいたらしい。

あたしはレオナとの接触回線を切って、とりあえずは通常波の通信が届く辺りまで接近し、
官姓名を聞き、民間かどうかに関わらず投降を呼びかける。
重力震があったと言う事はEOTが関わっているのはガチだ。
そんなのはまっとうなヤツじゃない。最悪撃墜してから基地まで運ぶのもアリだろう。

「そこのアンノウン、応答しろ!こちら地球連邦軍イカロス基地のカチーナ少尉だ!
 貴官の所属、官姓名を述べよ!繰り返す!そこのアンノウン、応答しろ!」

あたしとレオナはアンノウンの外見から予測される性能…、グルンガストの二倍強の攻撃距離、
移動距離からかなり間合いを開けつつアンノウンへと呼びかけた。

225 名前:??? ◆RFEJdNUaqs :2005/04/21(木) 22:42:55

『盾か拳か』

>>224

「連邦、だと……?」

 入ってきた通信を耳にした瞬間、彼は知らず知らずの内に拳を固めていた。

「未だそう名乗るか、恥知らずめ!」

 地球連邦軍――現在、その名を持った組織は『無い』。
 異星人との戦争において『敗北、占領』された地球は軍を解体されてしまったのだから。
 だが、未だに連邦軍を名乗る者は存在する。
 勝利を諦め、異星人に降る事で命と権威の保障を求めた裏切り者達だ。

「答える必要は、無い!」

 接近する二機にオープン回線を開き、感情を叩き付けるように叫ぶ。

「民衆の盾という役目も忘れ……人々を見捨てた貴様等にはな!」

 湧き上がる怒りは気へと転じ、乗機の変換機を経てエネルギーのうねりへと変化。
 そのエネルギーを加える事で、機体は更に力を増して行く。

「話は終わりだ……さぁ、行くぞ!」

 巨人が右掌のみを相手に向ける特異な構えを取り、一歩を踏み出した。
 地面はおろか、足場すら無い筈の宇宙とは思えない確かさで。

「武機覇拳流、瞬・幻・足ッ!」

 二歩目を踏み出す、と思った直後――既に機体は数十m先へと移動。
 進んでいく度にその速度は上がり、十歩目には残像を発生させる程の高速に達していた。

 瞬発力を気によって高め、相手を幻惑すると同時に間合いを詰める。
 この歩法の前には間合いの開きなど――無意味!

226 名前:カチーナ・タラスク少尉 ◆JcROcToPUs :2005/04/21(木) 23:59:38

『盾か拳か』
>>225
高速で機体が迫る、早すぎてカメラが処理し切れずモニタにすら残像が残る。
これは危険どころではない状況だ。だが、あたしは……
は?今、なんつったこのヒゲ?
『答える必要は、無い!』
『民衆の盾という役目も忘れ……人々を見捨てた貴様等にはな!』
あー、そうですかそうですか。戦ったのは自分だけ。後は皆引き立て役のやられキャラ
そう言う事ですか。自分が倒れたから世界はもうとっくに異星人に支配されてるに決まってる。
そう言いたいんでございますでやがりますですっつー事か?ザケンな。
殺す、こいつは殺す。悲劇のヒーローぶってロボに乗ったまま、
座禅組んでるような○○ガイなんざ、機体はブチ壊す。
乗ってる奴はタコ殴りにしてパンツ剥いてイカロス基地の広場で逆さ釣りにして晒す。
決めた、そう決めた。

「レオナ!バックしつつぶっ放せ!」

あたしもグラビコンシステムの斥力場とテスラドライブによる反発を応用し、
回避ではなく、攻撃のためのポジショニングをとる。
あたしなら、真っ先にデカイ方から先にぶん殴る。小さい標的なんて後回しにしても問題ないからだ。
泣かす、こいつは絶対泣かす!
最近はレオナはあたしと良く組む。あたしが相手を挑発し、レオナが冷静にしとめる。
オペレーションSRWの時に良くやったコンビネーションが今も生きるからだ。

「こんの、クソボケがぁッ!!人が丁寧に礼儀正しく職質してやってんのに、
 悲劇のヒーロー気取りかクソ野郎!軍隊が民間人見捨てる?どこのUFO研究家だ!
 見捨てたんならあたしは中尉から降格されないで今頃常夏の島でバカンスやって遊んでるんだよ!
 見捨てられたら、アステロイドベルトのイカロス基地で冷や飯食ってないで、
 最新の新型機のテストパイロットで高級士官食堂でスペシャルディナーでも食ってるっての!」

元はスペースコロニーの独立運動を威圧するために造られた巨大機動兵器、
ジガンスクードの主砲、ギガ・ワイドブラスターをぶっ放す。
狙いなんて相手が高速機動の時点で意味はない。相手が達人なのは機体で良く分かる。
一品モノっぽい機体でああまでおかしな言動は達人とかでないとやってられないからだ。
だからもっとも攻撃に最適な位置を大きくよぎるようにギリギリを掠めればいい。
レオナのバーストレールガンによる精密射撃が相手の関節部にぶち当たれば、
相対速度で大ダメージ間違い無し!

だが、予測が外れた。敵は最初からあたしではなく、レオナを目指していたのだ。
「レオナァァァァアッ!」
レオナの乗る機体、イスルギ重工が生み出し、指揮官用に造られたガーリオンの
バーストレールガンは確かに、敵のヒゲに当たっていた。当たっていたが――――
敵の残像を虚しく貫くのみであったのだ。

あたしは機体を加速させ、レオナに迫ろうとするヒゲ野郎へジガンの拳…
ギガントナックルを叩き込もうとするが、時は既に遅い。
レオナは神速の歩法によって産み出された衝撃波に飲まれ、高速でアステロイドの一つへぶち当たった。

227 名前:??? ◆RFEJdNUaqs :2005/04/23(土) 01:56:21

『盾か拳か』

>>226

「事実を認めようともしないか……語るに落ちたな!」

 音速を超える弾丸を、巨人は更にそれを超える速度で回避して行く。
 脚部に気を集中する事で、いわゆる縮地法を再現する技――それが瞬幻足。
 しかし、縮地法はあくまで人間の技であり、ロボットには真似事すら不可能な筈だ。

 では、前提が逆だとしたらどうだろうか。
 瞬幻足が、人間が使うの為の技ではなく、ロボットが使う為の技だったとしたら?

 馬鹿げた話だが、その技は確かに存在する。
 彼が口にした流派『武機覇拳流』とは、ロボットを用いてロボットと戦う為の格闘術なのだ。

「まずは――」

 超高速の歩法によって、今や敵機との距離は約2kmまで詰まっていた。
 狙うは、こちらよりも小さめの黒い機体。あの程度であれば拳を振るうまでも無い!

「ひとつッ!」

 質量差と速度の相乗効果により、大きく吹き飛ばされた相手が隕石に激突する。
 完全破壊とはいかなかったが、戦闘不能には追い込めばそれで十分だ。

 即座に振り向き、カメラ・アイの眼光でもう一方の機体を射抜く。

「悲劇のヒーロー、多いに結構!」

 再び瞬幻足の体勢に入り、駆け出す。

「背負わなければならない物を捨ててまで戦いに赴くなど、戦士としての恥だ!
 それは貴様等、軍人も同じ筈だろう……!」

 流石に相手も棒立ちではいない。
 咄嗟に分厚い装甲を掲げて防御の姿勢を取った。
 盾のような拳は殆ど全面を覆い、直撃しても打ち抜く事は敵わないだろう。

 だが――

「違うかぁッ!!」

 固めた拳は止まる事無く、叩き付けられる。
 やはり巨人の拳をもってしても、一撃で盾を砕く事は出来ない。

(ならば、砕けるまで叩くだけだ!)

 何度も盾に拳を弾かれながら、それでも拳を繰り出す。
 右を弾かれたならば左の拳を。左を弾かれたならば右の拳を。
 愚直なまでに真っ直ぐに、拳の連打を打ち込み続ける!

228 名前:カチーナ・タラスク少尉 ◆JcROcToPUs :2005/04/26(火) 19:04:53

『盾か拳か』
>>227
防御に徹しながら、あたしはレオナへと呼びかける。反応はまだ、ない。
吹っ飛んだ時の相対速度から考えてもセンサーが伝える機体の状態はテスラ・ドライブ
とスラスター、そして関節部分のサーボモーター、そのいくつかが現在起動不能。
…実質ほぼ戦闘不能と教えてくれている。
指揮系統によるオートモードのバイタルチェックの方では気絶中とある。
あたしが気張らなければレオナがピンチだ。

さすが最強の盾。斬艦刀にも耐えただけの事はある。
拳の乱れ打ちにもまだ耐えてくれている。盾に甘えてばかりもいられない。
――――反撃、開始だ!

「お前もッ!オペレーションSRWに出て来ておいて!あたしらが戦ってるのを見てたくせにッ!」

グラビコンシステムを一瞬だけリミッターカット。エンジンをフルドライブとまでは行かないが
出力を引き上げる。ジガンのシールド部分にエネルギーをチャージ。
ジガンが盾は盾でもただの盾じゃないって事を身を持って教えてやる!

「軍が!」

グラビコンシステムによる反発力が生じ、拳をぶつけようとするその体制が本当に一瞬だけ乱れる。
超達人クラスならこの瞬間をチャンスに変えてこようとする!一発、デカイのが来るはずだ!
あたしには特別な力なんて無い。あたしには特別な機体だってない。特別な訓練とかもうけてはいない。
だけど、だけど!
あたしだって、DC戦争をL5戦役の中で無力に生きてきたわけではない!
あたしの武器は特別ではないが、自分を信じて戦い抜いてきたその証拠なのだ!

「民間を見捨てて敵に降伏なんて出来るわけがないだろうが!
 だからこそのオペレーションSRWだ!そして、異星人達をぶっ飛ばしたんだ!
 それを何もしていないように誤魔化すお前こそ語るに落ちてるんじゃねーか!」

カウンターでジガンスクードのシールド部分に集中したエネルギーを直接相手へと叩きこむ!
これがっ!ジガンスクードの技、ジーズサンダーだ!
ただ撃っただけでは弾かれて、無駄撃ちに終わってしまう。
しかし!今は、シールドに受けているダメージがシールドに集まったエネルギーを暴走させている!
シールドがぶっ壊れたとしても!そのエネルギーは相手の間合いに届く槍となる!


229 名前:名無し客:2006/12/29(金) 20:27:520

ここもう機能してないのか?
久々に来たのに、廃れてる;

Powered by 0ch Script

■ 掲示板に戻る ■ ■過去ログ倉庫めにゅーに戻る■