■□チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷□■
- 1 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/08(金) 23:28
- 私はローマ法王アレッサンドロ6世の息子にして、
ヴァレンティーノ公爵のチェーザレ・ボルジア。
ルネサンス末期のイタリアで己の王国建設の野望に燃え、
ルネサンスの悪の華と呼ばれた男だ。
この度、諸君と様々な話をするべくここにスレッドを立ててみた。
私への質問でも雑談でも、何でも自由に書き込むがいい。
ではその前に、ここのルールを簡単に…
・私と共に質問や雑談に答えてくれるキャラハンは、ボルジア家やローマ教会の関係者のほか、
イタリア国内外の敵対勢力に至るまで随時募集。
・他スレ住人の越境歓迎。ただし最低限の常識は守って欲しい。
・荒らしや煽り、戦闘行為は一切禁止。
我が野望成就のためにも、多くの書き込みを期待している…それでは開幕だ。
- 2 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/08(金) 23:30
- まずは、私の紹介をさせてもらおう。
名前 : チェーザレ・ボルジア(Cesare Borgia)
年齢 : 1475年に生まれ、1507年に満31歳で戦死。
とりあえずここでは20代、ということにしておこうか。
性別 : 男
職業 : 元ローマ教会枢機卿、還俗後はヴァランス公国及びロマーニャ公国領主、教会軍総司令官
趣味 : 乗馬、狩猟、ファッション
恋人の有無 : フランスに妻と娘を残している。イタリアでも女性には不足していないがね。
妹のルクレツィアとの関係については…ノーコメントだ。
好きな異性のタイプ : 強気な女性であろうと控えめな女性であろうと、美女なら誰でも
好きな食べ物 : 鶏の丸焼き、子牛の腿肉、葡萄酒、菓子
最近気になること : 父の寿命。父上が健在の内に覇権を確立しなければ…
一番苦手なもの : フランス王の横槍。あの御仁のおかげで何度煮え湯を飲まされたことか…
得意な技 : 権謀術数、軍略、裏切り者への報復
一番の決めゼリフ : 「Aut Caesar aut nihil (皇帝か、しからずんば無か)」 我が軍の旗印だ。
将来の夢 : イタリア全土の統一。さしあたってはロマーニャ地方の平定
ここの住人として一言 : ここは我が本拠を置くにはうってつけの場所のようだな。
ここの仲間たちに一言 : 私の王国建設のために、諸君の力を貸して欲しい。
ここの名無しに一言 : 我が妹に妙な気を起こした者には、それなりの報いを覚悟してもらおう。
- 3 名前:名無し山羊 ◆AriEsUrxBE:2003/08/08(金) 23:32
- ………450年後のファシスト党党首にならいくらでも質問のネタが出るのだが………
くッ。所詮私もまだまだ無学か。
この頃のフランス王というと、誰であったか?
- 4 名前:名無し客:2003/08/08(金) 23:33
- 教会軍総司令官(ディ・プリンチペ・デッラ・キエーザ)、チェーザレ様に
おうかがいします。
貴方にとって、ユリウス・カエサルとはどのような方なのでしょうか?
- 5 名前:名無し客:2003/08/08(金) 23:35
- 結局、妹君のルクレツィアさんとはデキてたんですか?
- 6 名前:名無し客:2003/08/08(金) 23:39
- ニッコロ・マキャベリ氏に何か一言をおねがいします。
- 7 名前:名無し客:2003/08/09(土) 00:48
- キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
ファッションが趣味とおっしゃるチェーザレ殿、
枢機卿の赤い法衣について何か一言コメントを。
- 8 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/09(土) 01:37
- >>3
早速客が来たか…しかし21世紀では山羊が言葉を喋るのか?
それはともかく、我々の時代をよく知らないからといってそんなに気に病むことはない。
私とて450年後の出来事は殆ど知らないのだから。
さて、質問の答えだが…時のフランス王はルイ12世。
ヴァロワ=オルレアン家の出身で、1498年に
従兄弟の先王シャルル8世の死により王位を継いだ。
王は豊かなブルターニュ公国の相続人であった先王の未亡人と結婚して
ブルターニュ地方を我が物とするために、前妻との離婚許可を父の法王に求め、
その見返りとして、私に公爵の地位と花嫁を斡旋してくれた。
その後、私はフランス王の援助を得てロマーニャ地方の征服に乗り出し、
代わりに私は傭兵隊長としてフランス軍のイタリア出兵に協力するという関係が続いている。
しかし最近は、フランス王も私の本性に気付き出したらしい…
ボローニャ侵攻に待ったをかけるなど、私の活動を牽制する言動が目立ち始めたのだ。
考えてみればそれも当然か…王もイタリアに対し野心を抱いている。
所詮は王も私も、互いを自らの目的のために利用しあっているに過ぎん。
今のところ、フランス王は私の野望を遂行するに当たって最良の協力者であるが…
やがてあの王がイタリア統一にとって最大の障害となることは間違いあるまい。
- 9 名前:塩野七生@ローマ在住:2003/08/09(土) 02:17
- あら、「わたしの」チェーザレがとうとうスレをもったのね。嬉しいわ。
折角だから、質問していくわよ。
あの時代、貴方が理想としていた統一国家に次いで、統治が巧妙だった
と思われる、「次善の国家」を挙げてくださらない?
ま、この質問をしても、貴方なら
「どの政府も嫌いだ。全て変える必要がある」
と、答えてしまいそうだけれど。(w
それでは。(捨てハン?)
- 10 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/09(土) 12:10
- >>4
ユリウス・カエサルか…我が名「チェーザレ」も彼に由来しているのだが…
カエサルのことを一言で表現するなら、男として生まれたからには
彼のように生きてみたい、そう思わせる存在だ。
そして、彼はイタリア統一にむけて最も参考にすべき手本でもある。
家柄はよくても実力のない、言わば徒手空拳の立場からのし上がってきた才覚、
ルビコン渡河の際に示されたような、古い慣習にとらわれない決断と行動力、
晴れ舞台に出る以前の長き不遇の時代に、ひたすら自らの時が
来ることを待ち続けた慎重さと、彼から学ぶことは多い。
先にも述べたが、私は自軍の旗に「Aut Caesar aut nihil」と書かせている。
いつかイタリアを統一して新たな時代のカエサルたらん、
それができぬようであれば我が人生は無と同じだ…という意味をこめて。
>>5
私は言ったはずだがね…ルクレツィアとの関係についてはノーコメントだと。
私が誰と、どのような方法で愛し合おうがそれは私の勝手だし、
そのことで誰が私を非難しようとも、別に知ったことではない。
…ただ一つだけ言えるのは、私は自ら欲するものを
手に入れるためには、何の躊躇も遠慮もしないということだ。
それがひとつの国であろうとも…血を分けた実の妹であろうとも。
私が欲望を抑えるのは、それが政治や軍事の策として必要である時だけだ。
- 11 名前:名無し客:2003/08/09(土) 15:41
- うぅっ……俺は世界史が苦手なんだー!
- 12 名前:小笠原 祥子 ◆YFLOVE6F5s:2003/08/09(土) 18:46
- ごきげんよう、ヴァレンティーノ公チェーザレ・ボルジアさま。(優雅に一礼)
わたくし、こちら一刻館に住まわせていただいております、小笠原 祥子(おがさわら さちこ)と申します。
お初にお目にかかります……どうぞ、以後お見知りおきくださいませ。
初対面で僭越と思いますけれど……質問をさせて頂いても、よろしいでしょうか?
チェーザレ卿は、あのルネサンスの巨匠、レオナルド・ダ・ヴィンチ氏と大変、ご親交が深かったと
聞き及んでおります。
彼の芸術や軍事工作者としての才能を、公爵さまはいかがご覧になりましたでしょう?
向学のため、是非お聞かせくだされば、幸いに存じますわ。
それでは、ごきげんよう。イタリア統一のご武運を、お祈りいたします。
- 13 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/10(日) 00:06
- >>6
ニッコロ・マキアヴェッリとは、1502年にフィレンツェ共和国の特使として
私の元に派遣された時が最初の出会いだったか…
あれは確か、ウルビーノの街を攻略している時の事だった。
あの時は特使としての立場以上のやり取りは別段なかったし、
彼個人に対しても頭が切れる男という以上の印象はなかったよ。
その後、同じ年に私に仕えていた傭兵隊長たちが
「マジョーネの反乱」を起こした際マキアヴェッリは再び特使として私を訪れ、
反乱が鎮圧されるまでの間、彼はしばらく私の元に留まり続けた。
その間マキアヴェッリは私と親しく会談を重ね、私の行動を観察し続けていたが、
自分の時が来るまではどんな不利も甘受し、その時になったら一気に攻勢に転じ
反乱者たちを容赦なく叩き潰す私のやり方に、彼は強い衝撃を受けたようだったな。
マキアヴェッリと行動を共にする中で彼から感じたのは、無能で矮小な圧政者たちと
外国列強に食い荒らされるイタリアの現状に対する嘆き、そしてイタリアから
これらの害毒を一掃できる、強い君主に対する期待のようなものだ。
そして彼は私の行動に衝撃を受けたことで、その考えに強い確信を持った様子だった…
彼は、中立国であるフィレンツェの大使という立場にありながら、
時に自らの立場を越えて私に好意的な助言をくれることがしばしばあった。
ひょっとしたら、それは彼が私に暴政者たちからイタリアを解放する
強力な君主の姿を見出し、期待してくれたからなのかもしれない。
短い付き合いではあったが、ニッコロ・マキアヴェッリは実によき友であったと思う。
- 14 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/10(日) 00:08
- >>7
枢機卿の緋衣と赤い帽子を受け取ったのは私が18歳の時だったが
あの堅苦しい衣装はどうも性に合わなくてね…
決まりきった恰好をしてもつまらないので、私は法衣を古代ローマの将軍が
身に付けていたマントの如く着崩して、ローマの街を闊歩していたよ。
勿論私の外に、そのような法衣の着こなしをする枢機卿などいない。
古代ローマ式のやり方というのは、教会では最も忌み嫌われていたからね。
それで他の枢機卿の顰蹙を買って、父上からもしばしば注意を受けたものだ。
話は赤い法衣から外れるが、さるパーティにトルコ風の衣装を着て出席し
「枢機卿たる者にあるまじき振る舞い」と叩かれたこともあったな…
当時はオリエント趣味が若い世代の間で流行して、私や弟たちも
我先にと競ってトルコ風の衣装を身に付けていたのだが…
信仰心とやらに凝り固まった頑固者には、所詮ファッションのことなど分からぬものだよ。
- 15 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/10(日) 00:18
- >>9 塩野七生@ローマ在住
「巧妙な統治が行われている次善の国家」か…本来であれば、
貴方のいうとおり「どの政府も嫌いだ」と言いたいところだが、
それでは答えにはならないからな…せっかく質問をくれた以上、
何らかの回答を出さなければならないだろう。
無能な僭主たちの跋扈するイタリアの都市国家は言うまでもなく論外だし、
フランスやスペイン、それにローマ皇帝の支配するドイツにしたところで
行われているのは未だに古い時代の悪習を引きずる統治だ。
如何に強大な国であろうとも、諸侯や教会に足を引っ張られて
君主の思うがままに政治を動かせぬ国が善き国であるはずがない。
その意味なら、オスマン帝国の方がよほどましというものだ。
あえて妥協して、ヨーロッパにおける「次善の国家」を探すとしたら…
恐らくはヴェネツィア共和国がそれに近い存在だといえるだろう。
確かにヴェネツィアも、最近では地中海をオスマン帝国に奪われ
国運は傾きつつあるようだが、未だにあの国の経済力と軍事力は強大だ。
そして何より、かの国には指導者の一人や二人が死んだところで
全く影響しないほどの確固たる統治体制が整っている上に、
妙な倫理観にとらわれない現実主義に徹した政治が定着している。
ヴェネツィア共和国を崩すのは容易なことではない。
フランスと同様に、時が来るまではあの国を敵に回すべきではないだろう。
しかし貴方は、よほど私の行動を細かく観察しているようだな。
「貴方たちの政府は嫌いだ。変える必要がある」とは、
先に述べたマキアヴェッリとの始めての出会いの中で
彼を含むフィレンツェの使節に対して、私が言った言葉なのだけどね…
- 16 名前:ルクレツィア・ボルジア:2003/08/10(日) 02:58
- ここが、お兄さまの新しいお城ですのね……きょろきょろ。
ごきげんようお兄さま。ここでは、なにを話しても
だれからも責められないんですよね? くす。
では、お兄さまに質問です。次に挙げる女性について、
一言づつお願いします。あと、だれをいちばん愛していたのかも……。
「ノーコメントだ」なんておっしゃらないでくださいね?
○ダルブレ家のシャルロットさま
○スフォルツァ家のカテリーナさま
○ボルジア家のルクレツィア
>>9
……お兄さまばかり追いかけていないで、
ヴェネツィアのお船のことでも書いてみてはどうですか?
……え。もう、書いてる?
……で、でもお兄さまはあなたのものではありません!
- 17 名前:うめそう君:2003/08/10(日) 03:24
- アギ
- 18 名前:名無し客:2003/08/10(日) 22:57
- これはこれは。ヴァレンティーノ公爵閣下。
閣下の時代においてナヴァール王国とスコットランド王国は如何でしたか。
閣下の晩年においてナヴァールは密接に関わってまいりますが、イングランド
の更に北方、ケルトの伝説深きスコットランドを閣下はお知りでしょうか。
ヴェネツィアの商人たちは行っておったようですが。
- 19 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/10(日) 23:26
- >>11
歴史を覚えることが苦手だからといって、どれほど嘆く必要があるものか。
確かに歴史から物事を学ぶのは大事なことではあるが、
過去のことばかり振り返っていても仕方があるまい。
私は過去に拘泥するぐらいなら、私は望む未来をいかにして築くかを考える方だ。
猫額の領地や空虚な信仰心にあくせくする者の事績など、
わが野望のためには何の参考にもならぬのだからな。
>>12 小笠原 祥子
こちらこそお初にお目にかかる…ようこそわが居城へ参られた。
わが覇業達成に向けての激励、実に痛み入る…
近い将来、全イタリアの王として貴方と再会することを約束しよう。
…さて、貴方の質問は私の親友レオナルド・ダ・ヴィンチについてだったな。
レオナルドがウルビーノの城にいた私を訪ねてきたのは1502年のことだ。
私も彼が高名な画家として名を馳せていることは知っていたが、
私を訪ねて来た彼の望みは全く別なところにあった。
彼は長年に渡って築城や土木工事、都市計画のアイデアを温め、
それを実行してくれる君主を探していたのだ…そして彼は、
私に自らの夢を現実化できる理想の君主の姿を見出したというわけだ。
私はレオナルドの計画の数々を聞き、それを図面化したノートを見せてもらううちに
これは誇大妄想でも何でもなく、間違いなく私の役に立つものと確信した。
まだわが国は建設途上だ…戦のためには城塞を築き
強力な武器を揃えなければならないし、国を富ますためには
街を整備し、道路や運河を造ることで交通の便を図る必要もある。
これらを成し遂げるには、レオナルドのアイデアは正にうってつけだった。
以来、私はレオナルドにはわが領国の建築技術総監督の座を任せ
城塞の設計や新たなる武具の研究に力を注いでもらっている。
時には軍に同行し、城攻めのアイデアを出してもらうこともあるな。
そして芸術家としてのレオナルドだが、現在彼にわが軍の
新たな軍服をデザインして貰っているところだ。
わが軍はただ強いだけではなく、誇り高くそして美しくあらねばならない。
いずれ、彼ならではの意匠を凝らした軍装に身を包んだ
わが兵達が全イタリアを席巻する日がやって来るだろう……
その日こそが、私と彼の理想が成就する時だ。
- 20 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/10(日) 23:28
- >>16 ルクレツィア
おお、よく来てくれたルクレツィア。
この地に築いた新たな居城は、誰よりも真っ先にお前に見せたかったのだ。
ここに来たからには何も気兼ねせず、ゆるりと過ごすがいい。
さて、お前の質問だが…いずれも私に深い関わりを持つ者たちに関することだな。
本来なら、プライベートに関する話題を話すのは
私の趣味ではないが…他ならぬお前の願いだ、特別に答えてやろう。
○シャルロット・ダルブレ
我が妻シャルロット…長いこと顔を見ないが、息災でいるのかどうか……
彼女との結婚はボルジアとフランスの盟約に基づく結果であったが
私はシャルロットを深く愛していた…自らの野心を忘れて、
このまま彼女と永久に過ごしていたいと思ったこともあったぐらいだ。
だが新婚から僅か数ヶ月で私はルイ王のミラノ遠征に同行することになり、
そのままイタリアへ戻ってしまったので…見送りに来たシャルロットと
リヨンで別れて以来、もう何年も会っていない。
イタリアへ帰ってからも彼女とは文物のやり取りを続けているし、
一度シャルロットをイタリアへ呼び寄せようとしたこともあったのだが
その時は彼女が病気との理由で実現には至らなかった。
噂では、フランス王が手を回して彼女の出国を邪魔していたとも聞くが……
私と別れてすぐに、シャルロットが娘を産んだという知らせを受けた。
妻からは、フランスに帰って娘の顔を見に来て欲しいと懇願されているのだが
今の私は領国平定の道半ばだ…ここでイタリアを離れるわけにはいかない。
彼女のことは一時たりとも忘れたことはないが、再び会える日がくるかどうか…
- 21 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/10(日) 23:28
- >>16(続き)
○カテリーナ・スフォルツァ
私が戦場で初めて合間見えた敵…その美貌と情の深さもさることながら
頭脳も切れ、戦場では自ら甲冑を纏い男勝りの勇気を示した
正に「イタリアのプリマドンナ」と讃えられるに相応しい女傑と言えるだろう。
だが、カテリーナには「いかにして国を治め、領民を導くか」という考えが完全に欠落していた。
彼女は恐怖と暴力、そして弾圧によって領国を動かすことしか知らず、
それ故に領民たちの憎悪と離反を招き、結果我が軍門に下ることになったのだ。
…ラヴァルディーノ城塞を落としたその日に、彼女と過ごした一夜は忘れられない。
あの時私が取った行動を、世間は「高貴な女性に対する侮辱」だの
「鬼畜の所業」だのと散々騒ぎ立てたが…なに、大したことはない。
私は自分自身に、己の初陣に相応しい恩賞を与えたに過ぎないのだから。
○ルクレツィア・ボルジア
フッ、戯言はよせ……他の誰よりも、私が愛しているのはお前だけだ。
そのことは、何よりもお前自身が一番よく知っているではないか。
お前に近寄ってくる虫はどこの誰であろうとも、この兄が根こそぎ退治してみせる。
だからつまらぬ心配など一切無用だ。
- 22 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/11(月) 22:54
- >>18
ナヴァーラにスコットランドの現状か…勿論両国ともよく知っているぞ。
ローマにいれば、ヨーロッパ各国の情報は比較的容易に入手できるからな。
それに、覇業を志す者が情報を疎かにするわけにはいかん。
今さほど縁のない国でも、いずれは何らかの形で関わってくる可能性があるのだからな。
尤も妻の実家であるナヴァーラはともかく、遠いブリテン島のさらに北のはずれに
位置するスコットランドと、今後関わる機会があるかは疑問だが…さて、本題に入ろう。
ピレネー山脈の南に位置するナヴァーラ(ナバラ、ナヴァール)王国は
わが妻シャルロットの祖国であり、現在はシャルロットの兄…
即ち私の義兄にあたるアルブレ家のファン3世が、
本来の王家であるフォア家出身の妻と共に王として君臨している。
かの国も以前は遠くバルセロナの地まで版図を拡大するほど繁栄を誇っていたが、
その後は現スペイン国王フェルディナンド5世の出身王家でもある
新興のアラゴン王国に押されて、昔日の勢いを失っているのが現状だな。
最近ではヨーロッパの主導権を握ろうとするスペインとフランス、それにローマ皇帝の
勢力争いの矢面に立たされて、義兄上も何かと苦労が絶えないようだ。
スコットランド王国はスチュアート家が王位を握るようになって
130余年…現在の国王はジェームズ4世のはずだ。
以前のかの国では王権に対する貴族の反乱が絶えなかったそうだが、
ジェームズ王は若年ながら優れた政治力と学識を発揮して対立の収束に成功し、
現在では国力の増強と学術の振興に力を注いでいると聞いている。
スコットランドは昔から南のイングランド王国との関係が最悪で
そのためにイングランドの仇敵であるフランスと近い関係にあるようだな。
- 23 名前:名無し客:2003/08/12(火) 00:54
- 以下の方々についてご感想を。
・項羽
・曹操
・チンギス=ハーン
・織田信長
・土方歳三
- 24 名前:名無し客:2003/08/12(火) 20:44
- 公爵様さえご健在ならばイタリアは、サヴォイア家の統一より遥かに早く
強大な王国になっていたかもしれませぬ。誠に残念です。
公爵殿は異教徒オスマントルコ帝国
とも友好関係を維持されていたのではなかったでしょうか。
- 25 名前:名無し客:2003/08/12(火) 21:14
- カテリーナ・スフォルツァとは……やっぱりそういうことになってたんですねー。
弟さん達に一言お願いします。特にホァン様について。
- 26 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/12(火) 23:25
- >>23
見たところ、君が挙げているのは全て東洋人の名前のようだが……
上の3人はキタイ国やタタール人の国にそれぞれ君臨した王者であろう。
下の二人についてはちょっと馴染みがないが…
兎に角、この者たちに対する私なりの評価を述べればよいのだな。
・項羽
この男は1,700年前のキタイ国で覇権を競った勇将と聞いている。
圧倒的な武力を背景に、統一帝国を築いていた時の王朝に対する
反乱軍を統率し、帝国滅亡後一時は覇者に最も近い存在となったとか。
だが、この男は軍を率いれば圧倒的な才能を発揮したが
その一方で国を治める能力というものは全く欠けていたようだ。
それ故に個々の戦場では常に勝ち続けていたが、
いつの間にかライバルに国力差を付けられ、民心も離れ遂には滅亡の憂き目を
見ることになった…カテリーナ・スフォルツァと全く同じタイプだな。
如何に勇名を誇ろうとも、ただ強いだけでは人の上には立てぬ。
兵や民の心を掴む術や長期的な展望なくして、覇権を握ることなど到底無理な話だ。
- 27 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/12(火) 23:26
- >>23(続き)
・曹操
この曹操は、先の項羽の時代から400年後のキタイに現れた英雄か。
時の王朝が滅亡へと向かう中で、富強な領国を築いて兵を養い民の支持をも得て
当時のキタイでは随一の実力者にのし上がったということだそうだな。
この男は覇業のためには敢えて悪行とされることも平気で行ったので
後世の評判は芳しくないようだが…そのことの何が悪いというのだ?
どんなに汚い手段を使っても、最終的に国を豊かにし民に平和と安全をもたらす君主と
正義や慈悲の名の元に国をどん底に突き落とし、民に惨めな暮らしを強いる君主と
その時代の民にとってはどちらがありがたいか…考える必要さえあるまい。
真に志を抱く者は、己の野望のために例え後世の悪名を被ることになろうとも、
一向に気にしないものだ…その意味では、彼の生き方は私の手本になるものだと思う。
惜しむらくは、時を同じくしてこの曹操に対抗できる二人の群雄が現れたこと、
そして彼自身の寿命のために、野望の成就を見ることなく世を去ってしまったことだな。
時を得さえすれば、紛れもなくキタイに覇を唱える帝王に君臨できたことであろう。
- 28 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/12(火) 23:27
- >>23(続き)
・チンギス=ハーン
チンギス=ハーンの名は、ヨーロッパでも知らぬ者はあるまい。
300年前に東はキタイから西はペルシア、果てはヨーロッパまでをも
恐怖のどん底に陥れたタタール人…彼らの上に君臨した帝王がこの男だ。
チンギス=ハーンの現れる前と後で、世界は大きくその様相を変えることになった。
これまで全く別の世界として成立していた世界の西と東が、結果的に
この男のおかげでひとつに繋がるようになったのだ。
そしてチンギス=ハーンが残した遺伝子は、現在においても脈々と受け継がれている。
かつてほどの力はないとはいえ、ロシアでは未だにチンギス=ハーンの子孫たちが
幅を利かせているし、オスマン帝国もその前身はアナトリア半島に駐留していたタタール軍だ。
その飽くなき征服欲で古のアレクサンドロス大王以上の大帝国を築き上げたチンギス=ハーン…
男として覇道を志すならば、一度はこれほどの大仕事を成し遂げてみたいものだ。
イタリアを統一した次には、フランス・スペイン・ドイツをはじめ全ての国を
私の元に従えヨーロッパに統一帝国を築く……このような夢も悪くない。
- 29 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/12(火) 23:28
- >>23(続き)
さて、下の二人だがどうやら私よりも後の時代に生きた者たちのようだな……
しかし、質問の趣旨からいってこの者たちだけを飛ばす
という訳にもいかないだろうから、ここは面倒な時間の壁とやらは忘れて、
純粋に彼らに関する感想を述べさせてもらおう。
・織田信長
私の時代より70年後に、ジパングに覇道を唱えた一代の英雄だな。
一回の小国の領主から、己の実力と強運によって
分裂状態にあったジパングに強力な統一政権を築こうとした男…
だが彼の野望は、部下の裏切りにより一夜にして頓挫してしまったという。
宗教的良心やら古き権威やらを一切信じず、ただ合理性と現実的な有効性だけ
を判断の基準として行動できるこの男の性格…正に私と瓜二つではないか。
私は転生などというものは一切信じない質だが、万に一つ私の死後に
魂が何者かに生まれ変わることがあるとしたら…それは彼かもしれない。
残念なのは、彼が部下の裏切りに対して何らなす術もなく果てたことだ……
彼は事前に裏切りを察知することができなかったのか?
私ならば、そう易々と裏切り者たちのいい様にはさせないがね。
一時は裏切り者どもにいい目を見せても、他でもない
この私自身の手で必ずその報いを受けさせる…それが私のやり方だ。
- 30 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/12(火) 23:30
- >>23(続き)
・土方歳三
今から約360年後のジパングで、剣術集団を率いて反体制派を
情け容赦なく始末し、かの国の都に血の雨を降らせた悪名高い男か…
だが私は、この男の真の実力が発揮されたのはむしろその後、
新政府軍と旧政権軍残党の間で繰り広げられた内戦の時期ではなかったかと思う。
何でもこの時期彼は独学でヨーロッパ式の戦術を学び、将としての面目を一新したとか。
その後旧政権の残党が次々に敗戦を繰り返す中で、彼の軍だけは常勝不敗を誇ったという話だ。
この男の将としての実力は、旧政権軍に同行していたフランスの士官が
彼ならフランス軍の参謀としても十分その力を発揮できると太鼓判を押したほどだという。
この男が私の時代に生きていれば、是非傭兵隊長に欲しいぐらいだ。
彼ならば我が忠実なる友のドン・ミケロットにも劣らぬ、優れた将となるであろう。
- 31 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/14(木) 00:24
- レスに入る前に、昨日の訂正…というより補足をさせてもらおう。
昨日のレス中で、私はオスマン帝国がタタール軍から発生したと書いたが
あれは定説というよりもひとつの異説でね…史実として明らかな
オスマン帝国の成立は、1299年にルーム=セルジューク朝に使えていた
トルコ人の遊牧部族長オスマン=ベイがオスマン1世を名乗って
アナトリア半島の平定に乗り出したのがその始まりだ。
一説ではオスマン率いる遊牧集団は、タタール軍の圧力に押されて
アナトリアへ難を逃れてきたのだとか…ただいずれにしても、
オスマン帝国の成立にあたってタタールの存在を無視することはできないだろう。
しかし、ここ最近のかの国の発展振りには目を見張るものがあるな。
先のスルタンの「征服王」メフメト2世がコンスタンティノープルを落し、
1000年以上続いたビザンツ帝国を滅ぼしたのがほんの50年足らず前の話だが、
この知らせはヨーロッパ各国に、表現しようもないほどの衝撃を与えたそうだ。
しかし考えても見れば、当時のビザンツ帝国はコンスタンティノープルと
その周辺だけで僅かな命脈を保っていたに過ぎない、イタリアの都市国家にも劣る弱国。
どう足掻いたところで、新進気鋭のオスマン帝国とは比べ物になるはずもない。
遅かれ早かれ、あの国は滅びる運命にあったのだ…過去の栄光だけに縋り
虚栄の内に滅び行く者に対しては、私は一片たりとも感傷を覚えないね。
それはともかく、当時のヨーロッパ人はオスマン帝国と聞いただけで
鬼か悪魔の如く恐れ忌み嫌い、スルタンのメフメト2世個人に対しても
「強欲で狡猾、冷酷にして好色の専制君主」などと陰で囃し立てていたとか。
その話の大半は恐らく事実だろうが、まるでどこかで聞いたような話だな……
- 32 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/14(木) 00:27
- >>24
サヴォイア家…私の時代より後には、この家の者がイタリアを統一するというのか。
しかし如何に統一事業を達成した創業者に卓越した力があろうとも、
後に残る者が愚物ばかりでは、やがて国は衰えいつかは滅びるというもの。
将来私がイタリアをこの手に握ることができたとしても
子孫にろくでもない輩しか出ない、などということになれば先は長くあるまい。
そうならぬためには、いついかなる時代でも優れた指導者を
ストックすることのできる体制を整えておく必要があるだろう。
まだそこまでの具体的な考えは、何も巡らせていないのだが…前置きが長くなったな。
さて…君が言っている私とオスマン帝国の友好関係とは、
ひょっとして私…というより父とジェム王子のことを言っているのかね?
彼は先のスルタン・メフメト2世の息子で、10年ほど前に父のスルタンが死に
その後の跡目を兄のバヤズィット2世と争って敗れ、各国を転々としていた。
やがて、先の法王インノケンティウス8世の下ローマ法王庁が
彼の身柄をオスマン帝国に戻さないことを条件に、スルタンとなった兄から
年金を受け取り、彼をローマに住まわせることになったという次第だ。
それで父がアレクサンデル6世として新法王に即位した後、スルタンから
金30万ドゥカートの謝礼と引き換えにジェムの始末を依頼されたそうだが、
父はその申し出を蹴ったそうだ…何も彼の身を憐れんだからではない。
ジェムをオスマン攻めの尖兵に起用すると威嚇することだけでも
彼の存在はスルタンの侵略行動に対する抑止力として役立ったし、
また彼がローマにいることによって、スルタンに対して
より旨みのある条件で取引を持ちかけることができたからだ。
以上のことからも分かるように、我々は別段オスマン帝国と友好関係に
あったわけではないが、父は「敬虔なキリスト教徒」ならば
その存在すら到底許すことのできない異教の帝国を、他のヨーロッパ諸国と
同様の取引対象として見ていた…つまり、ローマ法王でありながら
父はローマ教会と異教徒との共存を可能と考えていたのだ。
未だに時代錯誤の十字軍遠征などと馬鹿げた夢想に耽る者も少なくない中で、
父はオスマン帝国との関係では常に現実だけを見据えていたし、
必要とあればかの国と手を結ぶことも辞さなかったはずだ。
それは私とて同じこと…国の舵取りで大切なのは宗教的良心や信義などではなく、
あくまでもその関係が現実的に役に立つかどうかということだからな。
- 33 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/14(木) 00:28
- >>25
カテリーナ・スフォルツァとの関係……?
別段驚くことではあるまい、あれは戦が終われば誰だって同じようなことはする。
たまたま私が法王の息子で、相手がイタリア一の女傑と呼ばれる存在だったから
皆がよりスキャンダラスに騒ぎ立てるだけのこと……
何を非難されようとも、私は一片たりとも痛痒を覚えたりはしないが。
…それで、弟たちのことだったな。
父は何人もの愛人に子どもを産ませているが、ここは母を同じくする
二人の弟…ホアンとホフレについて話すことにしようか。
同じ母から生まれた妹のルクレツィアについては既に語っているからな。
まずホアンだが彼は私より一つ年下で、我々の異母兄にあたる
ガンディア公爵ペドロ=ルイスが夭折した後、その跡を継いで
2代目のガンディア公爵となり、兄の許嫁まで譲られた。
父はスペインのフェルディナンド王の重臣として将来を嘱望されながら
若死にした兄に抱いていた希望を、ホアンに託すつもりだったのだ。
父は弟を教会軍総司令官の地位にまで抜擢し、
彼がボルジア家一の武将に成長することを期待していた。
だがホアンが父の期待に十分応えられたかといえば、その結果は……
ローマの北を支配していたオルシーニ一族相手の初陣では
敵の挟み撃ちに遭って惨敗、ホアンはやっとの思いでローマへ逃げ帰る始末。
続くオスティア城塞での海賊との戦いも散々な内容で、スペインのとある武将の
手助けを借りてようやく陥落させることができたものの、父がホアンのために
用意していた最高の勲章「金のバラ」は、結局その武将に渡る羽目になってしまった。
…若いうちは、戦場で失敗してもそれは別に構わぬ。
ホアンに失敗から何を学んで、自らを伸ばそうとする姿勢さえあれば
どんなに失敗を繰り返しても、いつかは将として一人前になれただろう。
だが、現実にホアンがやったことといえば…兵達の訓練を
見ることもなければ兵法を学ぶこともなく、ただファッションに情事と
その場の享楽に溺れるだけの毎日…あの有様でよく父も辛抱できたものだ。
- 34 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/14(木) 00:29
- >>25
そしてあの日、母上の屋敷で催されたパーティーに私と共に出席したホアンは
その帰り道見知らぬ仮面の男と一緒に夜の闇に消えて…
次に彼が発見されたのは、テヴェレ川の川底から死体として引き上げられた時だった。
あの時には、何人も容疑者の名前が挙がったものだよ……何しろホアンは、
その傲慢な性格と自分勝手な言動のせいで、多くの者から恨みを買っていたからな。
やれ屈辱的な言葉を浴びせ掛けられた、やれ戦場で置き去りにされた、
やれ妻を寝取られた…とホアンの周囲に動機のない者はいないぐらいだったが
結局この一件は父の命令で捜査打ち切りが命じられ、未だに犯人は不明のままだ……
…で、私がホアンを殺しただって……フフッ、一体何のために?
確かにホアンが死んだ後、父が彼に期待していた道を継いだのは私だ。
そしてホアンが受けるはずだった数々の栄誉を、こうして私が実際に受けている。
だが、それは私が将としての実力を発揮して結果を残すことができたから…
そう、ホアンの実力では到底自らの王国を建設することなど叶わぬことだ。
尤も、彼にそこまでの気概と才能があったかははなはだ疑問ではあるがね……
ホアンには気の毒だが、彼が死ぬことによってボルジアは
何もかもが上手い方向に進むようになった……これは事実なのだよ。
ホアンについて長々と語っていたら、ホフレのことを話す時間がなくなってしまったな…
ホフレはまだ若すぎる…海のものとも山のものともつかぬ段階だ。
先年よりドン・ミケロットの下で軍務につかせているが、今後どうなるかは
彼次第だとしか今のところは言えないね…ただ彼の妻のサンチャ、
彼女とは昔からよろしくやらせてもらっているよ…ホアンに邪魔立てされることもなくね。
- 35 名前:名無し客:2003/08/17(日) 01:57
- 公爵閣下は、ヴェネッツイア共和国とは色々対立されていたようですが。
閣下は経済もおろそかにはなさいませんでしたね。
- 36 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/17(日) 18:45
- >>35
うむ……ヴェネツィア共和国は、イタリアの平定にあたって最大の障害。
わが勢力が拡大すれば、遅かれ早かれヴェネツィアとの衝突は回避できまい。
元々ロマーニャ地方は、ヴェネツィアも勢力の伸張を狙っていた地。
当然ヴェネツィアは、ボルジアが力を増していくことを快く思っていない。
隙あらば私からロマーニャを奪回しようと、虎視眈々とその時を狙っているはずだ。
しかし、未だわが国とヴェネツィアとの国力には天地の差がある…
衰えたりとはいえども、ヴェネツィアは目下のところイタリア最強の国家だ。
まだわが国には、ヴェネツィアと正面切って戦うだけの実力はない。
故に今行わなければならないのは、私の征服活動に対するヴェネツィアの
干渉を封じ込め、かの国が私に敵対するいかなる口実をも与えないということだ。
そのためには、時に相手の弱みを握り互いを化かし合いもすれば、
時には相手にへりくだって歓心を買うこともする……それが政治というものだ。
- 37 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/17(日) 18:46
- >>35(続き)
それと君の二つ目の質問である「経済」だが…
これは軍を動かすために必要な当面の金策、それから精強の兵を養うために
必要な国力の増強、この二つの意味ということでいいのかね?
無論、これらの対策なら常に考え、手を打っている。
何某かを成し遂げようと志す者は決して金銭を毛嫌いはしないものだし、
長期的な計画を抜きにして、真に強い国を築くことも不可能なのだから。
まず金策の方だが、教会軍総司令官の職権を活用して
ローマ教会に貯蓄されている財産を引き出し、当面の軍資金に充てている。
十字軍遠征用の資金としてヨーロッパ各地の信者たちから集められた金、
それに枢機卿たちが就任の際に、法王に寄進した寄附金…
これだけ集めれば、ひとまず何かをなすために必要な額にはなるだろう。
これだけの金があるのに、少しも役に立てず眠らせておく必要はあるまい?
だから私は、「教会の旗手」として、「教会を盛り立てる」ために
堂々とここに集まった資産を使わせてもらっているのさ……
それと、今ひとつの国力の増強策だが…これについては、国土事業の
総監督を任せているレオナルド・ダ・ヴィンチの知恵がいずれ生きてくるはずだ。
これらの策についてはまだ計画の段階で、これらの策が実行に移されて
その成果が現れるのは今しばらく先のことになるだろうが…
都市が整備されて道路や運河網が完成すれば、自然とわが国に富は集まってくる。
そして国が富めば、私の理想である国民軍…傭兵や外国からの援軍に頼らず
自らの民だけを兵として組織した軍を、より精強なものにすることができる。
そうなれば、傭兵に頼りきったイタリア諸国をわが足元に従えることなど造作もない…
真に力のある者は、己自身の力だけで何事かを為すことができるものだ。
- 38 名前:名無し客:2003/08/18(月) 01:55
- 5人の配下をどの年代からでも自由に選んで
連れていけるとしたら…誰を連れていく?
- 39 名前:名無し客:2003/08/18(月) 02:40
- ワラキアの串刺し公のことはご存知ですか?
- 40 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/19(火) 00:00
- >>38
5人の配下を好きな時代から自由に連れていく、ね……
武勇に優れた将ということなら私の元には数え切れないほどいるし、
政治や殖産興業の面では、ニッコロ・マキアヴェッリや
レオナルド・ダ・ヴィンチが私を支えてくれている…
マキアヴェッリやレオナルドは、「私の配下」とは少々立場が異なるが。
これだけの人材が私の元に揃っているのに、これ以上を
求めるのはやや贅沢に過ぎる気もするのだが……
時代は問わずに、兎に角5人を選べば良いのだな。
まず一人目は、古代ローマの武将マルクス・ヴィプサニウス・アグリッパ。
ローマ初代皇帝アウグストゥスの補佐役として、彼が最も信頼を寄せた男だ。
特に軍事面の貢献が著しく、いささか軍才に欠けるところのあったアウグストゥス帝の
戦場での勝利は、その全てがアグリッパの戦略と指揮の賜物とも言われている。
彼は武将として優れていただけでなく、政治家として都市建築にも優れた才能を発揮し
神殿「パンテオン」や彼の名を冠した「アグリッパ浴場」を建設したことでも有名だ。
続いて二人目は、私の同時代人から選ぶことにしよう…スペイン王の家臣で、
スペインが占領したナポリ総督を任されている「グラン・カピターノ」こと
ゴンザーロ・フェルナンデス・ダ・コルドーバ…枢機卿時代からの、私の友人だ。
そして先にホアンの話題を述べた際に登場した、弟を差し置いて父法王から
「金のバラ」を授けられたスペイン人の武将とは、実はこのコルドーバだったのだ。
私は彼の武将としての実力だけでなく、その高潔な人格も高く評価している。
…下らん妄想だが、将来何者かの姦計にかかってコルドーバとの仲を
引き裂かれる、などということにだけはなりたくないものだな……
- 41 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/19(火) 00:02
- >>38(続き)
今度は、私の生きた時より後の時代から選ぶことにしようか……
ということで三人目は、スウェーデン王国宰相のアクセル・オクセンシェルナ。
私より130年後の時代の人物で、「北方の獅子」と畏怖された
スウェーデン国王グスタフ2世(グスタフ・アドルフ)の片腕として
国政の近代化に尽力し、一介の小国に過ぎなかった彼の国を
当時のヨーロッパでは最強の国家に育て上げることに貢献した男だ。
四人目は、神聖ローマ帝国元帥のサヴォイ公子オイゲン・フランツ。
オクセンシェルナの時代からさらに50年後に活躍した人物だ。
このプリンツ・オイゲンは、元はフランス王家に繋がる名門の出身ではあったが
風采上がらぬ小男であった上、身体も若干不自由であったことが災いして
時の国王ルイ14世に取り立てられることが叶わず、敵国であった
ハプスブルク家の神聖ローマ帝国に将軍として使え、数々の武勲を立てることとなった。
彼の奮戦により、ハプスブルク家はフランスやオスマン帝国に対する
劣勢を挽回し、ヨーロッパの列強に返り咲くことができたのだ。
そして最後の五人目については………悩みに悩んだのだが、
やはり長年にわたって私に忠誠を尽くす、あの男を外すわけには行くまい。
イタリアでも屈指の武勇を誇る名将にして、その存在だけで
何者かの死を意味すると言われるほどの悪名を馳せるこの男……
ミケーレ・ダ・コレーリア、又の名をドン・ミケロット。
幼き日より共に過ごした私の最も忠実なる従者にして、わが最高の友だ。
- 42 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/19(火) 00:04
- >>39
「串刺し公」とはワラキア公国のヴラド3世のことかね?
オスマン帝国が自国に侵入した際、彼は敵を夜襲と焦土戦術で痛めつけ、
その上捕虜にした2万か3万のトルコ兵を見せしめとして串刺しの刑に処して
オスマンの戦意を喪失させたことにより、その悪名を世間に轟かせたとか。
串刺し自体はさして珍しい処刑方法でもないが、一度に2万や3万の
串刺し死体を見せ付けられれば、如何に勇猛なオスマン帝国の兵でも
さすがに怖気を振るわざるをえなかったことだろう……
しかし、ビザンツ帝国を滅ぼして間もない日の出の勢いのオスマン帝国を
一敗地にまみれさせることができたのだから、本来ならヴラド公は
キリスト教世界では名将として讃えられてもおかしくないところだが…
世間での彼の評判は、どうも芳しくないようだな。
ヴラド公の後ろ盾となっていたハンガリーのマーチャーシュ王に
よれば、彼はハンガリーを裏切りオスマン帝国に内通していたとか。
私の見る限りでは、どうもそのあたりは怪しいところだがね……
噂では、時のローマ法王からできもしない十字軍遠征を迫られたハンガリー王が、
切羽詰った末にヴラド公をスケープゴートに仕立て上げたともいうが。
真偽のほどは兎も角、ハンガリー王はヴラド公の逆心を強調するために
彼を誹謗中傷するパンフレットを大量に印刷し、各国に配って回ったらしい。
パンフレットに記された内容は彼が家臣や領民に対する虐殺行為を
繰り返しているといったもので、その話自体は大半が事実だったようだが
ハンガリー王はヴラド公を貶める目的で、事実に殊更猟奇じみた脚色を加え
そのおかげで公にはすっかり「血を好む残虐な殺戮者」との悪評が定着してしまったようだ。
その一方で、ヴラド公の地元ワラキアでは
「厳しい規律で治安を回復し、オスマン帝国の侵略から国を守った名君」
との評判も流布しているようで…一見同じ行為であっても、
立場が変われば見方も変わってくるということだな。
- 43 名前:名無し客:2003/08/19(火) 03:02
- 過去の名将ハンニバル・バルカスとスキピオ・アフリカヌスの両名についてどう思われますか?
個人の資質の違いは、勝敗を分けたのでしょうか?
- 44 名前:名無し客:2003/08/19(火) 03:15
- ルクレツィアに手を出したいんですが、どんな報いを受けますか?
- 45 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/20(水) 00:07
- >>43
ハンニバルもスキピオも、全ての歴史における名将を何人か挙げるとするならば、
いずれも必ずその名を連ねるであろう人物であることは間違いないな。
そして、カルタゴとローマの覇権を掛けて彼らが対決した「ザマの会戦」……
これは、同じ類の才能を持つ者同士がひとつの戦場で相対した、
戦史上でも稀に見る出来事だったと言っても過言ではないだろう。
ハンニバル・バルカスは、古代でも最高の軍事的天才といっても過言ではないだろう。
何しろ彼の出現以降、戦いのあり方そのものが大きく変わったのだからね。
ハンニバルについては、象を連れてのアルプス越えばかりが大きく取り上げられているが
彼が真に得意としたのは、騎兵部隊と歩兵部隊の特長を有機的に活用して、
敵の主戦力を包囲して殲滅に持っていく戦術だ…この作戦で、彼は連戦連勝を重ねてきた。
正面から力押しする戦術しか知らなかった当時のローマ軍では、
次々と頭脳作戦を繰り出すハンニバルに勝ち目がなかったのも当然だろう。
そんなハンニバルの不幸は、個々の戦場では常に勝ち続けながらも
ローマを政治的に屈服させることができず、いたずらに
16年間もイタリア半島で時を過ごしてしまったことだ。
なぜならば、その16年間で彼は「フェア・プレイ」を身上としていたローマ人に
策略を使って勝つことの有効性を、図らずも教えてしまったからだ。
そして、そのハンニバルの軍法を最も良く理解して我が物としたのが
彼より12歳年下のプブリウス・コルネリウス・スキピオだった。
- 46 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/20(水) 00:08
- >>43(続き)
私が単純にハンニバルとスキピオの軍才を比較するなら、迷わずハンニバルに軍配を上げるだろう。
極論すれば、スキピオの戦術はハンニバルの焼き直しに過ぎなかったと言えるかもしれない。
事実、古代ローマの歴史家たちも武将としてはスキピオよりハンニバルを評価している。
ではそのスキピオは、一体何がハンニバルに勝っていたのか?
一つは彼がオリジナル作品を上回る、出来の非常に優れた模造品を作ることができたこと。
もう一つはその優れた模造品を作る下ごしらえとして、彼が発揮した政治力だ。
ハンニバルとスキピオが相対したザマの会戦では、お互いに同じ戦法を
得意とする武将同士の対決だけに、どちらがより得意な体勢を先に築くことが出来るか、
特にこの場合は圧倒的な機動力を誇るヌミディア王国の騎兵部隊を
どちらが味方に取り込むことができるかに勝負の鍵が掛かっていた。
この戦いまで、ヌミディアはカルタゴの同盟国として精強な騎兵部隊を提供していたのだが
ちょうどその頃、国内で親カルタゴ派と親ローマ派の争いが起きていたのだ。
スキピオは以前からの友人であった親ローマ派のマシニッサ王子を支援し、
彼を王位に就けることで、ヌミディアをローマの同盟国とすることに成功した。
これまでカルタゴ側に着いていたヌミディア騎兵軍を自軍に引き込むことで、
スキピオは戦いが始まる前に自らの優位を築くことが出来たわけだ。
- 47 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/20(水) 00:09
- >>43(続き)
一方でカルタゴの本国政府から帰還命令を受け取ったハンニバルは、諸般の事情で
自ら率いる軍の半分しかアフリカに連れ帰ることが出来なかった。
彼らはハンニバルが本拠地のスペインから引き連れた兵のほか、ガリア(現フランス)や
イタリアで現地徴用した兵たちも混じっていたが、皆良く鍛えられた精鋭揃いだった。
カルタゴに戻ったハンニバルの元には、新たにアフリカやギリシャの傭兵達が集まり
その数はスキピオのローマ軍を上回ったものの、イタリアで苦楽を共にしてきた
精鋭の半分を失い、またこれまで味方と計算していたヌミディア騎兵がローマ側に
走ったこともあって、彼の率いる戦力の質がスキピオに劣ることは明らかだった……
周到な根回しにより自分に有利な体勢を整えることの出来たスキピオと
準備不足のために不利な条件で戦いに臨まなければならなかったハンニバル……
武将としての資質が全く同じであるこの両者が上の条件で争うならば、
どのような結果になるか……それはもはや述べる必要もないだろう。
…そう、ハンニバルはかつてカンネーの会戦で自ら用いた戦術を
スキピオに完璧なまでに模倣された挙句、完敗した。
…彼がイタリアから連れ帰った最後の精鋭部隊も、皆ザマの平原で討ち死にした。
…しかし歴史に「もしも」は禁物だが、仮にハンニバルとスキピオが
全く同じ条件を与えられて対等の立場で戦っていたとしたら……
…勝っていたのは、ハンニバルだったかもしれない。
二人の優劣を分けたのは、戦いに望む際のお互いを取り巻く条件であり
そして自分に優位な条件を築いたスキピオの政治力だったと思う。
- 48 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/20(水) 00:10
- >>43(続き)
ここからは余談になるが、この二人は軍事面の才能だけでなくポエニ戦争終了後に
揃って不遇の内にその生涯を閉じたという点でも共通しているな。
片やハンニバルは、戦争により疲弊したカルタゴの政治と経済の立て直しに
その力を発揮したものの、あまりに強引なその手法が世間の反発を招き
反対派が彼をシリア王への内通容疑でローマに告発したこともあって、
カルタゴから追放される破目になった…そして反ローマのギリシャ系諸国を
転々とした末、最後はローマ軍に追い詰められ自ら毒をあおったという。
もう一方のスキピオは、ザマの勝利により「アフリカヌス」の尊称を受け、
戦後のローマ政界で揺るぎない地位を築いたのだが、彼自身の健康面の弱さと
突出した英雄の出現を嫌う共和制ローマの風潮が災いし、それがために
政敵のマルクス・カトーのつまらぬ告発により、政界から失脚の憂き目を見ることになった…
そしてスキピオは、ローマから遠く離れた地で孤独な死を迎えることになったのだ。
二人のあまりに共通した才能は、その後の運命まで似通わせてしまったのか……
- 49 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/20(水) 00:12
- >>44
…あれは何年か前、ルクレツィアに2度目の縁談が決まりかけた時のことだった。
ボルジアに仕える従者の身でありながら、あろうことかルクレツィアと
情を通じる者がいてね……彼は、二人の手引きをした侍女共々
体に重石を抱いて、テヴェレ川へ永遠の川遊びに旅立ったよ。
身の程知らずの愚か者に対して、神が天罰を与えたのさ…これで分かっただろう?
ルクレツィアに変な気を起こす者が、どのような末路を辿ることになるかを。
君もテヴェレ川の汚泥の中で朽ち果てるのが嫌なら、愚かな妄想は捨てることだ。
さもなければ、いずれ剣を手にした仮面の男が君の眼前に現れ、
否応なく君を二度と帰ることのない川遊びへと誘うことだろう……
……ミケロット、奴から目を離すな。
少しでも妙な真似を示すようなことがあれば………直ちに始末しろ。
- 50 名前:名無し客:2003/08/20(水) 04:54
- 閣下。やはり緋の衣より剣の方が閣下の好みに合ったということでしょうか。
- 51 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/21(木) 00:08
- >>50
ああ、君の言うとおりだ……男として生まれたからには、他の誰の手も借りず
己自身の力だけで何事かを成し遂げたいと思っていたからな。
父が私を僧籍に入れ、法王に次ぐ枢機卿の地位にまで就けたのは
私にローマ教会内においてボルジアの名を継ぐ者となることを期待したからだが、
そのようなお仕着せの名誉ぐらいで、私の心が満たされることはなかった……
それに、いくら父の尽力で私が枢機卿の中でも特に裕福な実力者と
なることが出来たとしても、私が「法王の私生児」という生まれである以上
これ以上の地位に進むことは不可能だった。
なぜなら、カトリックの教えでは正式な結婚で生まれた嫡子しか
認めない上に、聖職にある者はその正式な結婚すら許されていない。
つまり私は、カトリックの教理に照らせば二重の意味で許されざる存在……
私が「悪魔の子にすら劣る者」である以上、私が「地上における神の代理人」となることは
カトリック教理が許すはずもなかった…いかに父上が策を巡らそうとしてもだ。
しかし実力勝負の世俗界ならば、己の生まれに関係なく本人の才能と努力次第で
己の思う通りに出世することができる…どこの馬の骨とも知れぬ一介の傭兵隊長に過ぎなかった
フランチェスコ・スフォルツァが、己の力だけでミラノ公爵の地位を勝ち取ったように。
例え私生児の生まれであっても力さえあれば王にも皇帝にもなれるし、
誰にも頼らず己自身の力だけで、枢機卿として生涯約束された以上の
富と名声、それに権力を手に入れることができるのだ…だから私は、
何の迷いもなく緋の衣を脱ぎ捨て、剣によって自らの野望を実現する道を選んだのさ。
- 52 名前:名無し客:2003/08/22(金) 00:32
- やはり「イタリアの王」を狙っていたのでしょうか。
ひょっとして「ローマ皇帝」を夢見ておられたのでは?
確かに閣下なら夢想で終わらないはずでした・・・。
- 53 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/22(金) 22:04
- >>52
ローマ皇帝か……皇帝の称号に興味がないといえば嘘になるが、
別に私が神聖ローマ帝国の皇帝になったところで、これまで以上に
領土が増えるわけでもなければ、強大な権力を得られるわけでもないし…
「神聖ローマ帝国」などといっても、その内実はドイツの矮小な諸侯の集まり。
500年前ならいざ知らず現在では名誉こそあれ、その力はあってなきが如しだ。
それに、現実問題として私が次の皇帝選挙に出馬したとしても
7人の選帝侯が私を次期皇帝(ローマ王)に選出するとは到底思えないが。
何しろ選帝侯に代表されるドイツ諸侯と来たら、イタリアの小僭主以上に
己のちっぽけな利害しか頭になく、国益などという発想は全くない愚物揃いだ。
そんな連中が、優れた才覚と卓越した実力で国を支配する皇帝を喜ぶと思うかね?
…ここ200年ほどの皇帝の顔ぶれを見れば、その答えは自ずと明らかだ。
選帝侯たちが選んだのは、現皇帝マクシミリアン1世の父である
先帝フリードリヒ3世をはじめ、諸侯が都合よく御すことのできる愚鈍な皇帝ばかり。
無力な皇帝たちが諸侯の勝手放題を許していたものだから
今やドイツはすっかり弱体化し、ローマ皇帝の権威も完全に地に落ちてしまった…
尤も現在のマクシミリアン帝は、先帝とは違って侮りがたい切れ者との評判だが。
しかし同じ「ローマ皇帝」なら、所詮は諸侯のお飾りに過ぎない神聖ローマ帝国の
皇帝などよりも、むしろ私は古のローマ帝国皇帝の地位に魅力を感じるな。
…フフフ、それとも君が聞きたかったのはこちらのローマ皇帝のことなのか?
イタリアを統一したら、その勢いでフランス・スペイン・ドイツにイングランド、それに
オスマン帝国をもわが足元に従え、私の手でかつての栄光に満ちたローマ帝国を復活させる……
以前にも似たようなことを書いたが、いずれはこの夢想を現実としてみたいものだ。
- 54 名前:名無し客:2003/08/24(日) 21:24
- 確かに閣下は、ドイツ王でしかない神聖ローマ皇帝位などより、
アゥグストゥスの後継者の方が良く似合うでしょう。地中海帝国の
覇者。
時代は少し遡りますが、公爵様なら東ローマ帝国の滅亡時、
コンスタンティノープル救援に西欧中欧各国が赴むかなったことに
ついて、お考えを。
- 55 名前:名無し客:2003/08/25(月) 17:23
- 暗君、愚帝などと呼ばれる人間で印象的なのはだれですか?
- 56 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/25(月) 23:46
- >>54
フフフ、お世辞はよせ…アウグストゥスの後継者とは悪くない響きだが、
まだ私にはフランスやスペインと単独で戦えるだけの力はない。
今の段階では、地中海世界の統一は夢物語……
その夢物語を現実化するためには、まずイタリアを統一しなければならん。
フィレンツェやヴェネツィアを従えイタリアを我が物とした時、
はじめてローマ皇帝への道は開けてくるはずだ…その時を楽しみにしているがいい。
さて、本題であるコンスタンティノープルの陥落についてだが……
まず、東ローマ帝国ことビザンツ帝国の滅亡に対する私の感想は>>31で述べたとおりだ。
弱き国が強き国に膝を屈し、飲み込まれるのは歴史の必定。
私は過去の栄光に奢り、滅んでいった者に対しては追憶や感傷など一切覚えない。
これ以上は話が逸れるので止めにしておくが…それでヨーロッパの主要国が
コンスタンティノープルを見殺しにした原因だが、おおむね次の二点に集約されるだろう。
第一の要因は、西のカトリック教会と東のギリシャ正教会との間における根深い相互不信。
教会が東西に分裂して700年以上、両者の仲は険悪になることはあっても
東西の教会が手に手を取って協力するということは殆どなかった。
しまいには、東西の教会が互いに破門宣告を出し合うという事態になったぐらいだ。
何でも、ビザンツ帝国の宰相だかコンスタンティノープル教会の総主教だかが
「法王の三重冠を見るぐらいなら、トルコ人に取り囲まれた方がまだましだ」と言ったとか。
助けて貰いたい側の人間がこのようなことを言っているぐらいなのだから、
助ける側のローマ法王庁が何を考えていたかはここで述べる必要もあるまい。
内心、コンスタンティノープルの陥落に対して快哉を叫んだ枢機卿もいたのではないか?
第二は当時のヨーロッパ列強には、たかだか東の最果てにある一都市の興亡に
構うだけの余裕がなかったか、でなければ最初から関心がなかったことだ。
まず、オスマン帝国の伸張を真っ先に阻止せねばならぬ立場のはずの
神聖ローマ皇帝は、隣国ハンガリーの侵攻に悩まされとても東に構っている暇がなかった…
もっともケチな臆病者の皇帝フリードリヒ3世に、率先してコンスタンティノープルを
救おうとする度量など、最初から期待する方が無理だったろうがね。
そしてスペインは、当時レコンキスタ(国土回復運動)最後の総仕上げの真っ最中……
イベリア半島からムスリム勢力を追い出すことに精一杯で、とても兵を出すのは無理。
縁もゆかりもないビザンツ帝国がこの世から消滅したところで、何の痛痒も感じない
フランスは最初から知らぬ顔を決め込んでいたし、イングランドなどでも事情は同じだった。
- 57 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/25(月) 23:49
- >>54(続き)
少しでも本気でビザンツ帝国の救援を考えていたのは、彼の地に強大な商業権益を
持ち、確固たる居留地を有していたジェノヴァ共和国とヴェネツィア共和国だったが、
まずジェノヴァは国力が弱体化して久しく、強大な軍の派遣は期待できなかったし
強力な海軍を誇るヴェネツィアも、フィレンツェやミラノとの抗争に明け暮れて
大軍を送るだけの余裕がなく、申し訳程度の軍船と軍資金の提供が関の山……
10万からの大軍を送るオスマン帝国に到底対抗できる内容ではなかった。
しかもコンスタンティノープルの防衛戦では、以前から反目しあっていた
ヴェネツィア人とジェノヴァ人が、互いに足の引っ張り合い……
ビザンツ帝国を救うどころか、かえってその滅亡に手を貸す破目になってしまった。
しかし、コンスタンティノープルの利権が国の死活問題に直結するジェノヴァは
ともかくとして、地中海交易の根拠地をエジプトのアレクサンドリアに移していた
ヴェネツィアに、どこまで本気でビザンツ帝国を救う意思があったか…
何しろあの国は、コンスタンティノープルが陥落するやあっさりと掌を返して
オスマン帝国と講和を結び、自らの利権を確保したぐらいなのだからな。
…つまるところ50年前のヨーロッパには、ビザンツ帝国が滅んでもどうとも思わない、
あるいは目の上の瘤が消えて清々した、と感じる国しかなかったということだな。
中にはローマ帝国以来の伝統が消滅したことに対する寂しさや悔しさを感じた者も
少なからずいただろうが、実際にコンスタンティノープルの奪回を図った国は皆無なわけだし…
…それで、私があの時代に生きていたならどうしたかだって?
答えるまでもない……古い伝統に凝り固まり、新しい何かを生み出す力もない
化石のような国を、私が喜んで生き長らえさせるわけなどないだろう?
- 58 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/25(月) 23:50
- >>55
暗君に愚帝ね…歴史を紐解けば、古くはローマ帝国のカリグラやネロから、
新しくは神聖ローマ皇帝のフリードリヒ3世に至るまで、
国を傾けた愚かな君主は枚挙に暇がないが…強いて私の印象に残った者を
挙げるとするなら、比較的近い時代でこの男を挙げることになるな。
その男の名は、イングランドの「欠地王」ジョン…少しでも歴史をかじっている者なら、
この男の愚行についてはさして多くを語る必要もないと思う。
フランス王フィリップ2世の奸計に翻弄されて、フランス国内に所有していた
彼の実家であるアンジュー家の所領の殆どを奪われた事実だけでも
君主としてのジョンの無能ぶりは明らかだが、この男の最大の罪は
破門を免れるために自らの国土を時のローマ法王インノケンティウス3世に差し出したことだ。
君主にとって、領土や領国は何にもまして守らなければならないもの。
それを自らの保身のために、例え法王が相手とはいえまるで塩を一つまみするが如く
国を差し出すとは…このような愚か者、もはや王と呼ぶ資格すらない。
イングランド国内で彼が如何に嫌われているかは、彼の死後イングランドに
「ジョン」を名乗る王…ジョン2世やジョン3世が現れなかったことからも明白だ。
彼の時代から数百年経っても臣下や領民はおろか王家の間でさえ、
未だにジョンの名はイングランド一恥ずべき暗君として認識されている証拠さ。
- 59 名前:名無し客:2003/08/26(火) 07:26
- なるほどビザンティン帝国…あるいは東ローマ帝国と呼ばれし国。正式な国名は
最後までローマ帝国であった国は滅びるべくして滅びたのですな。
いかにギリシア化し東洋的になっても古代から続いたローマ帝国の滅亡は、
感傷以外のものは、現実的な為政者にとっては不要なのですね。
しかしオスマントルコの勢力拡大は強大でしたね。
フン族やモンゴルの再来と思う諸侯も多かったのでは。
- 60 名前:名無し客:2003/08/26(火) 22:09
- キリスト教に追われた異教の神々について、
もと枢機卿として一言。
- 61 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/27(水) 22:39
- >>59
…滅亡寸前の頃のビザンツ帝国は、名前こそローマ帝国だが
内実はオスマン帝国に年貢金を支払い、皇帝自らがスルタンへの軍役を提供することで
ようやく国の存立と安全を認めてもらうような、いわばトルコの属国……
かつての栄光など見る影もない、惨めな国に落ちぶれていたからな。
少しでも見る目のある者なら、過去の追憶に縋って生きるしかなかった
あの国を嘲笑こそすれ、心からの敬意を払ったりなどしなかっただろう。
それにしても、ここ最近のオスマン帝国の拡大は目を見張るものがあるな……
コンスタンティノープルを落とす前後にブルガリア、マケドニア、セルビア、クロアチアを
勢力化に収め、今ではハンガリー王さえもスルタンの使い走りと化しているほどだ。
ここまでオスマン帝国にのさばられては、神聖ローマ帝国の
マクシミリアン帝もさぞかし心の休まる時がないことだろう……
しかしトルコ人たちが暴れれば暴れるほど、ローマ皇帝はイタリアに
干渉する暇がなくなって、その分私の仕事もやり易くなるという訳だ。
その意味では、私もスルタンに足を向けて寝ることはできないかもしれんな。
しかし、オスマン帝国がかつてのフン族やモンゴルの再来という考え……
確かに当たっているとは思うが、一過性の麻疹やペストの如く
ヨーロッパを荒らしまわって消えていったフン族やタタール人とは違って、
彼の国は強力なイェニチェリ軍団や官僚制に裏打ちされたスルタンの統治体制と
飴と鞭を巧みに使い分けた被征服民に対する支配施策の展開によって
今やバルカン半島に揺るぎない地盤を築くに至っている……
その意味ではオスマン帝国と境を接している諸侯にとって、
彼の国がフン族やモンゴル以上に質の悪い相手であることは間違いないだろう。
- 62 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y:2003/08/27(水) 22:40
- >>60
異教の神々…といっても、私は別にミトラ教やマニ教に詳しいわけではないし、
ケルト人やゲルマン民族が信仰していた彼ら固有の神についても同じだ。
だからこれらの神々について、私に何か語れと言われても困ってしまうな。
そもそもキリスト教に毒された殆どのヨーロッパ人にとって、これらの神々は
馴染みがないものだし…もっともマニ教の教えは、カトリック教会から異端宣告を受けた
南フランスやイタリアのカタリ派にその名残りを留めていたようだが、
この教派自体150年以上も前に消滅して、今では省みられることもない。
…しかし同じ異教の神々でも、古のギリシア神話に登場する神々ならば
ミトラ教やドルイド教の神とは違って、現在の我々にも馴染み深い存在だ。
これらの神々も、ギリシアやローマ文明が滅んだ後キリスト教によって抑圧され続けてきた点では、
他の神と変わりないところだが…近頃は、昔と比べて大分風向きが変わってきたな。
窮屈なキリスト教の観念から解き放たれた、彼らの奔放な人間臭さは
新たな時代を生きる人間にとっての憧れであるし、イタリアの芸術家たちも彼らの物語から
様々なインスピレーションを得ているようだ…教会から睨まれない範囲ではあるが。
私もどうも辛気臭さの拭えないイエス・キリストよりは、ギリシア神話の神々に対して
強いシンパシーを感じるのだが……これは父や枢機卿の面々には内緒にしておいてくれよ。
- 63 名前:名無し客:2003/08/27(水) 23:16
- 公爵殿は、ギリシァの神々に例えるなら、そう、さしずめ太陽神
アポロンと言ったところですかな。
- 64 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :2003/08/28 21:58
- >>63
太陽神アポロンか…音楽に医術、それに予言を司る多才な神として知られているが
確かにオリンポス一と謳われた彼の美しさと知性、それに冷酷さは私に通じるところが
あるかもしれんな…彼が色恋沙汰で失敗ばかりしている点では、私とは違うが。
そんなアポロンが象徴しているものは、「均整」と「調和」であるという。
そして私の野望は、分裂と混沌によって醜く歪められたイタリアの統一……
私が地上におけるアポロンの化身だというならば、どのようなことがあっても
イタリアをわが手に握り、この地に調和を取り戻さなければなるまい。
それにしても…私がアポロンだというのなら、父上は世界を支配する主神ゼウスで、
ルクレツィアはアポロンの双子の妹アルテミスということになるのか?
しかし、ゼウスの絶大な権力と好色ぶりは確かに父にも通じるものがあるが、
アルテミスの一切の異性を寄せ付けぬ峻厳さは、どうも妹にはそぐわない気がする…
やはりルクレツィアのイメージに相応しいのは、美の女神アフロディテであろう。
…ドン・ミケロットは、差し詰め軍神アレス…いや、その存在だけで何者かの死を
指し示すあの男は、死を司る冥界の王ハデスといったところか……
- 65 名前:名無し客:2003/08/29 00:01
- はてさて、ポセイドン神は誰になるのやら。
ユリウス二世はさしずめデイオニュッソス神でしょうか?
いや、かの法王こそ軍神アレスでしょうね。
ところで閣下。コルシカ島には興味はございませぬか。
- 66 名前:名無し客:2003/08/29 02:08
- 所詮は高望みしたつけを払わされただけのこと
- 67 名前:名無し客:2003/08/29 17:36
- >>21
>…ラヴァルディーノ城塞を落としたその日に、彼女と過ごした一夜は忘れられない。
>あの時私が取った行動を、世間は「高貴な女性に対する侮辱」だの
>「鬼畜の所業」だのと散々騒ぎ立てたが…なに、大したことはない。
>私は自分自身に、己の初陣に相応しい恩賞を与えたに過ぎないのだから。
イタリア統一を目指す割にはスケール小さいご褒美ですね。
- 68 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :2003/08/30 00:21
- >>65
海神ポセイドンか……それなら少し前の時代の人物ではあるが、
オスマン帝国の先のスルタン、メフメト2世はどうであろうか?
…陸戦上手のイメージが強いトルコ人に海神を重ね合わせるのは
少し苦しい気もするが、ポセイドンの激しい気性やアポロンのそれとは異なる
得体の知れない冷酷さ、それにゼウスにも劣らぬ好色ぶりは
あのスルタンに見事なぐらい合致している気がするのでね……
それで君の言うユリウス2世とは、ジュリアーノ・デッラ・ローヴェレ枢機卿のことか?
法王選挙で父に遅れを取ってからというもの、あの御仁のボルジアに対する怨みは
並々ならぬものがあるが…フランス王のシャルル8世と組んで
父の追放を画策するなど、父上もローヴェレ枢機卿には随分悩まされてきた。
ローヴェレ枢機卿の気性の激しさは確かに軍神アレスに通じる部分もあるが、
何年経ってもボルジア打倒を諦めないあの執念深さは、むしろポセイドンに近いかもしれんな。
ローヴェレ枢機卿とはこのような男だ…万に一つ父の死後にあの御仁が法王に即位する
ようなことがあったら、どんな手を使ってでも私を破滅させようとするだろう。
…将来父の死と同時に私が重病に倒れ、そのせいで私が冷静な判断力を失うなどという
事態にならない限り、あの御仁が法王になるなどということは絶対にあり得ん話だが。
- 69 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :2003/08/30 00:22
- >>65(続き)
…話は変わるが、コルシカ島といえば以前から法王庁やナポリ王をはじめ、
フランスや神聖ローマ皇帝も領有を狙っている地中海の要衝だが、
現在の支配者は確かジェノヴァ共和国のはず…そのジェノヴァ政府は
あの島から重税を搾り取って、相当苛烈な支配を行っていると聞いている。
しかし、コルシカの住民は本来気性の激しい山岳民族の出身だ……
ジェノヴァのようないたずらに民を締め付ける統治方法では、
いずれ住民の反発を招き、遅かれ早かれ反乱が起きることになるだろう。
それで、私がコルシカ島に興味があるかという君の問いだが……
コルシカは昔も今も西地中海の制海権を握るための重要な拠点であることに
変わりはないからな、将来ヨーロッパの覇権を狙うならば
いずれ私もあの島の領有争いに加わることになるだろう…だがそれは今すぐの話ではない。
国運の衰えたジェノヴァ共和国如きは対して問題ではないが、
コルシカを狙うとなればどうしてもフランスやスペインとの衝突は回避できん……
イタリア一国も制していないのに、対等にこれらの国と争うのは無理だ。
今コルシカを制したとしても、すぐにフランス王やスペイン王の横槍が入って
私はあの島から手を引く破目になるだろう…それは骨折り損のくたびれ儲けというものだ。
コルシカ島はイタリアを制してからでも遅くはない…その時であれば、
私にもフランスやスペインの干渉を撥ね退けるだけの力は付いているだろうからな。
ところで…今から300年近く後の未来に、コルシカ島から全ヨーロッパを席巻する
風雲児が登場する予感がするのだが、これは気のせいだろうか?
そう、アレクサンドロス大王やハンニバル、そしてカエサルにも匹敵する天才がね……
- 70 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :2003/08/30 00:24
- >>66
分不相応の望みを抱いて、高い代償を払わされる破目になった者の話なら
昔から現在に至るまで、枚挙に暇がないが……
折角だから、ここで諸君にそんな愚か者の紹介でもすることにしようか。
…これから語るのは、かつて獅子の如く振舞おうとして、
犬の如く哀れに死んでいった、一人の身の程知らずの話だ。
その者の名は、今から200年前のローマ法王ボニファティウス8世。
謀略によって先代の法王から地位を奪い、その挙句死に追い込んだという男だ。
そして彼はその地位と権力を私物化してひたすら悪事の限りを尽くし、
キリストを軽蔑して現世の快楽に酔った…と、まあここまでは私や父上と同じようなものだ。
しかしボニファティウスには、私や父と違って己の現状を冷徹に分析し
先を見通す能力が喜劇的なまでに欠けていた…悲劇的ではなく喜劇的に。
この時代のローマ法王には、かつてのような絶対的な権威は失われつつあったのに
彼はその事実に目を瞑り、あたかも己が神その者であるかの如く振舞おうとした……
ローマ法王庁にも彼個人にも、そのような実力が欠けているにも関わらずだ。
………その結果ボニファティウスはどうなったか?
聖職者への課税問題をめぐってフランス王フィリップ4世と対立したボニファティウスは、
かつて「カノッサの屈辱」でローマ皇帝を破門した法王グレゴリウス7世よろしく
フィリップ王の屈服を試みたが、国内に法王権も及ばぬ確固たる権力を築き
国民の支持を得たフランス王が、法王の恫喝に屈することはなかった。
そして逆にフィリップ王の手の者による襲撃を受け、その際に受けた侮辱が原因で、
ショックのあまり彼は悶死してしまった…死後のボニファティウスに残されたのは、
「ローマ法王の権威を地に落とした、歴代法王最悪の大馬鹿者」という悪評だけだ。
法王権力の衰退と世俗王権の強化という時代の流れを読めず、
己の能力を見極めることもできずに、道化の如く振舞って惨めに死んでいった……
…法王ボニファティウス8世とは、そのような滑稽な男だ。
口さがない者たちは、彼を「ボルジア型法王の先駆け」などと呼んでいるらしいが
頭を使って勝つ手段を知らなかったボニファティウスを、父や私と一緒にされては困るな。
- 71 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :2003/08/30 00:25
- >>67
フフフ、初陣の褒美がたった一人の女ではスケールが小さいかね?
金や財宝なら、昔から掃いて捨てるほど持っているし、
わざわざ戦を起こさずとも、私の権力を持ってすれば
「世界で最も古い職業の女」の100人や200人を侍らせるなど造作もないことだ。
それに地位や名誉などというものは、私がイタリア統一の戦いに勝ち続ければ、
こちらが欲せずとも悪名と共に向こうから勝手に付いて来る……
そんな物より、あの時の私は完全に戦いを制した「勝者としての証」が欲しかったのさ。
戦場の内外で私を徹底的に侮辱し、愚弄したカテリーナ・スフォルツァ……
あの女から地位も権力も富も名声も全て剥ぎ取り、身一つに剥いて私に屈服させる、
これ以上に互いの勝利と敗北を知らしめる儀式は外にあるまい。
まして、イタリア一の美しさに満ちたアマゾンが相手であれば尚更のことだ。
…世の者にとってはつまらん褒美かもしれんが、私は十分堪能させてもらったよ。
若気の至り、と言ってしまえばそれでお終いだがね……
- 72 名前:名無し客:2003/08/30 03:40
- コンクラーベにおける枢機卿方の闘いは、ドイツ選帝侯たちの
比ではないですな。…全てはお金?
- 73 名前:名無し客:2003/08/30 18:01
- 公爵閣下。御父君アレキサンデル6世猊下や公爵閣下ご自身が
悪とおっしゃられるので・・・?
確かにローマ法王(教皇)は、カトリックの最高位であり地上に
おける神の代理人であり、ギリシャ正教の総大主教の持つ権力
とは比べ物にならないほどの力を持ちますね。
本来はローマの司教にすぎなかったはずが・・・。
この力を有効に使った法王のお一人に御父君は入られますか?
- 74 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :2003/08/30 22:00
- >>72
コンクラーベ(法王選挙のための枢機卿会議)でローマ法王に選出されれば、
絶大なる権力と共に「神の代理人」の称号をも得ることができるわけだからな……
法王選挙をめぐる暗闘は、皇帝のそれにも負けず劣らずといったところだ。
…聞くところでは、一回の法王選挙で何万ドゥカートもの大金がばら撒かれることもあるとか。
無論枢機卿たちが持つ票を買収する行為は厳禁されているし、これに違反した者は
聖職売買者として追放処分となるのだが…実際には、皆なりふり構ってはいられないようだ。
ここだけの話、父が法王に選ばれたのも対立していたスフォルツァ枢機卿と
その一派を大金で買収し、自分の支持に引き込んだからでもあるのだが……
あまり余計なことを話すと父上の立場が危うくなるので、ここで詳しい話は止めておこう。
…過去の歴史において、買収行為がばれて地位を追われた法王は何人もいたし
数年前にフランス王シャルル8世がイタリアに侵攻して来た際には
父も聖職売買のかどで告発されかけ、危うく法王の位を失うところだったからな。
- 75 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :2003/08/30 22:02
- >>73
…別に私は、品行方正を心掛けているわけではないのだけれどね。
これまで私も父上も、世間の常識とやらに照らせば
到底許されるはずもない行いを繰り返してきたことは、誤魔化しようのない事実だ。
だが私は、別にそのことについて言い訳も自己弁護もするつもりはない。
その手段がどんなに汚い内容であったとしても、結果としてイタリアが統一され
この地に平安をもたらすことができればそれでいいのだ。
目的のためなら、悪魔にさえ平気で魂を売り渡す…それが私のやり方だ。
それで、父上が歴代法王の中でも力を有効に使うことができたかどうかだが…
法王として誰も対抗できない圧倒的な権力を振るったという意味なら、答えはノーだ。
なぜならば、グレゴリウス7世やインノケンティウス3世の時代とは違って
現在のローマ法王には世俗権力に対する絶対的な優位性というものがないからだ。
…これも>>70で述べたボニファティウス8世が、先人達が長年かけて築き上げた
法王の権威を、天晴れなぐらいズタズタにぶち壊してくれたおかげなのだが。
そんな父が、どうしてフランス王やローマ皇帝と対等に渡り合うことができたのか……
それは、力のない者の武器である「技としての政治」を心得ていたからだ。
その手段は、一つは自分に有利な時が来るのを待つことであり、
そしてもう一つは使える限りのあらゆる手段を、それが最も有効な時に使うことだ。
恫喝、買収、ごまかし、懐柔…どれも使いどころを誤っては、かえって身の破滅に繋がる。
父は人間の心理というものをよく理解しているから、その時に応じた
最良の手段を見極めることができ、いつも結果を誤ることがない。
圧倒的な権威で敵をねじ伏せるのではなく、限られた力を見極めて
それを効率的かつ効果的に活用し、頭脳によって自らの勝利を引き寄せる……
その意味で、父は法王としての力を有効に使っているということになるだろう。
- 76 名前:名無し客:2003/08/31 18:38
- チェーザレ様は、占星術師や錬金術師をお信じになりますか?
- 77 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :2003/08/31 22:51
- >>76
近頃は、ヨーロッパのどこもかしこも占星術や錬金術が大流行のようで
王侯や聖職者の中にも、占星術師や錬金術師を側に置いている者は少なくない。
中には、これらの術師動に自らの言動を左右される者さえいるとか。
ほんの100年ぐらい前までは、これらの術は異端につながるとして
教会から厳しく弾圧されることもあったのだが…これも時代が変わったということか。
しかし星の動きによって物事が左右されたり、銅や鉛から金銀ができるという発想は
話としては面白いが、それが現実に起こりうるかというと…それは眉唾物だ。
星によって自分の運命が予め決められているという話は、どうもこじ付けの印象が拭えないし
錬金術師を自称する者たちも、その大半は褒美目当ての詐欺師であることが多い。
占星術や錬金術の何もかもをインチキと決め付けているわけではないが、
実際にこれらの術の正しさが実証されていない以上、素直に信用することはできないな。
当然、これらの術の使い手が私の行動に何らかの影響を及ぼすということもない。
もっとも占星術や錬金術の研究が進んだことによって、様々な科学技術の
発達につながったのは事実だ…それは認めねばなるまい。
航海術の発達は、占星術によって星の動きが明らかになったことと無関係ではないし、
錬金術における様々な実験の「失敗」も、結果的には医学や化学の発展に寄与している。
だから、占星術や錬金術そのものはナンセンスな迷信であっても、
これらの術が研究された成果は全くの無意味ではなかった…ということになるだろう。
…私のこの評価が当たっているかは、後世の諸君ならよく知っていることと思うがね。
- 78 名前:名無し客:2003/09/01 22:25
- カステル・サンタンジェロは大きなお城ですね。
そこでスイス傭兵の忠実さと勇敢さは、閣下の
はるか後の時代、フランス革命時に国王一家を
守って玉砕したエピソードで知られますね。
閣下も、ミケロット殿指揮下の親衛兵に守られ
ておいでですね。
- 79 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :2003/09/02 00:23
- >>78
カステル・サンタンジェロか、あの城は元々ローマ帝国の時代に
ハドリアヌス帝が霊廟として建設したのが起源らしいな。
その後1000年ぐらい前にローマ教会がとして改築して、現在の姿になったのだそうだ。
普段あの城は、法王が政敵を幽閉する牢獄として使っているのだが
一度ローマが戦火に見舞われると、教会を守るための要塞に早変わりする。
そしてカステル・サンタンジェロを押さえることは、教会の武力を掌握することをも意味し…
言ってみれば、あの城はローマ教会を護る最後の盾であると
同時に、教会の武力を象徴する剣でもあるという訳だ。
無論この城が我ら親子の手の内にある限りは、私の武力も安泰というわけだ。
そして他国の例に漏れず、この城でも屈強なスイスの傭兵が警護に当たっているわけだが…
200年ほど前にスイス誓約者同盟の歩兵軍がハプスブルク家の騎士軍を
完膚なきまでに打ち破って以来、スイス人の傭兵はどこの国でも引っ張りだこだ。
特にフランスがスイス傭兵の雇用に熱心で、少し前のブルゴーニュ公国との戦争以来
歴代のフランス王は金に糸目を付けず、スイス兵の独占を図ろうとしているらしい。
スイスにとっても傭兵はよほど儲かる商売らしく、スイス各州の政府は自ら率先して
傭兵募集の取りまとめを行い、ヨーロッパの各列強に売り込みを図っているそうだ。
口さがない者たちは、これを「血の輸出」などと揶揄しているようだがね。
- 80 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :2003/09/02 00:23
- >>78(続き)
現在のわが軍…近衛兵の中にも、ドン・ミケロットをはじめとする傭兵隊長の指揮の下
少なからぬ数の傭兵がいて、勿論この中にはスイス人も数多く含まれている。
しかし私は、この現状はいずれ変えなければならないと思っているのだ。
なぜなら傭兵たちは、給料を払えばそれに応じて勇敢な働きはしてくれるし、
事実これまでの戦闘でも大いに敢闘しているのだが、所詮彼らとの関係は
金で結ばれた契約に過ぎない…傭兵たちの中には、真の意味で私に忠誠を誓い、
国のために身命を賭してくれることは誰一人としていないからだ。
傭兵たちは、給料の見込みがなくなれば次の働き口を求めて去ってしまうし
ひとたび負け戦ともなれば命惜しさのあまり逃げてしまうことも多い……
命さえあれば、いくらでも高額な契約の当てはあるのだからな。
それよりも私は、自分の兵は自分の国で養うべきだと思っている。
自ら血を流して自分の国や土地を守る…これが私の目指す国家の、あるべき兵の姿だ。
戦争は傭兵を使って行うものという常識がまかり通っているこの時代に、百姓や商人たちを
兵士として徴用して戦場に送るという私の考えは飛躍し過ぎかもしれない。
しかし彼らは傭兵と違って、自らの土地や街、それに家族といった守るべきものが
国の中に存在する…守るべきもののために、彼らは身命を賭して戦ってくれるはずだ。
勿論、彼らを屈強な兵に育てるには途方もない時間がかかるだろう……
しかし、私はいつかわが国民により編成された軍で、私の考えの正しさを証明してみせる。
……その時は当然、ミケロットが先頭を切って彼らの指揮を取る予定だ。
- 81 名前:名無し客:2003/09/02 03:13
- スイス傭兵って、故郷に帰れずたらい回しって聞いたけど本当かな?
戦場にずっといると心が荒れて、故郷に戻すと治安上の問題が出来るとか。
- 82 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :2003/09/03 00:12
- >>81
確かにスイス傭兵は、一つの戦争が終わっても国に帰らず、
すぐ別の戦場に向かうという話はよく聞いている。
しかし、その理由が傭兵たちを国に戻すと治安上問題があるから、
ということはちょっと考えにくいと思うのだが……
確かに彼らも時に戦場で暴行や略奪に走ることもあるだろうが
普段のスイス傭兵は契約を忠実に守り、誇りを大切にすると専らの評判だ…
彼らが国に帰ってまで無秩序に暴れ回るという姿は想像しにくいな。
そんな訳で、私もなぜスイス傭兵が国に帰らずひたすら戦場を渡り歩くのか
その理由について少し考えてみた…以下は、根拠のない私の推論だ。
まず一つの理由としては、傭兵として出稼ぎを続けている方が
故郷に留まっているよりずっと儲かる…ということが挙げられるな。
戦争の絶えないこのご時世だ…どこの国に行っても傭兵の働き口は必ず存在するし
ましてやスイス人の傭兵ともなれば、どこの勢力でも諸手を挙げて歓迎される。
ある戦いが終わってこれまでの雇用先からお払い箱になっても、生きてさえいれば
すぐにまた別の勢力から好条件で誘われ、その足で次の戦場へと直行する。
…こんな具合だから、彼らは身体が続く限り傭兵の仕事を止められないのだろう。
もう一つの理由としては、スイス各州による雇用対策ということも考えられる。
先に述べたとおり、スイスの各州政府は積極的に自らの州の民を傭兵として斡旋している。
これらの政府は契約時に中間マージンも得ているかも知れないが、
それ以上に傭兵たちの働きが各州にもたらす収益はバカにならないものがある……
だから「血の輸出」と非難されようが、彼らは傭兵の斡旋を止められないのだ。
加えて、最近のスイスは他の国にもまして人口の増加が著しい。
人口が増えるのは良いのだが、これらの人々を養うためには現在のスイスの
国土と国力では限りがある…新たに土地を耕し、商いをはじめるだけの余裕がないのだ。
現状において国がこれらの民を飢え死にさせない方法はただ一つ、
傭兵として他の国で食い扶持を稼いでもらう以外にはない。
…つまり、スイスが国として傭兵を次々と売り込み、彼らを故郷へ戻さないのは
限られた国土の「口減らし」という目的もあるのではないかと思う。
- 83 名前:名無し客:03/09/04 22:23
- 公爵様。
後の世では人は皆平等である。と言う思想が出て参ります。
王や皇帝の神聖を否定するのですが、リアリストの閣下なら
どうお思いになられますか。
- 84 名前:名無し客:03/09/05 00:04
- 公は地獄をご覧になられましたかな?
なられたのならひとくさり、その有様を愚生にお聞かせくだされ。
- 85 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/09/06 00:07
- >>83
本来人間は自由で平等であるはずなのに、文明社会によって大多数の者が
不自由と貧困に苦しみ、王や皇帝であるという理由だけで
一部の者だけが富や権力を独占している…こうした状態を打破し
真に幸福な社会を作るためには、自由で平等な人間が共同して自らの意思で
政治や社会のあり方を進めていかなければならない……
これは私より250年後の、ジャン・ジャック・ルソーとかいう男の考えだったな。
この考えは理想としてはなかなかに立派なものかもしれんが、私の見る限りでは
これを現実に当てはめようとすると、幾つかの矛盾点が生じることは否めない。
まず、ルソーの考えでは政治社会が人間の自由と両立するためには、
全ての人間が直接参加できる状態でなければならず、しかも共同体の意思を
偏りなく普遍的なものにするために、全ての市民が一人残らず出席し、しかも全ての市民が
議論するのに必要な全ての情報と判断力を持っていなければならないという。
…だがこれを実際にやろうとすれば、政治社会の範囲は
イタリアの都市国家よりも小さな、非常に狭く限られたものとなってしまう。
さらに、彼の考えは人間性を取り戻すための政治の共同体を人間が
新しく作り出すのだ、という理念に基づいてはいるが、現実の
一人一人の人間が自主的にそれをできるという確証はどこにもない。
それは当然だろう…昨日まで自分の暮らしをどうにかすることだけにあくせくしていた
百姓や商人に対して、急に天下国家を動かすための議論をしろと振ってみたところで
彼らにはそれを行うための知識もなければ、そのための教育も受けていないのだから。
- 86 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/09/06 00:08
- >>83(続き)
ルソー自身この矛盾点は認めているようで、彼は「立法者」という
カリスマ的指導者に、この矛盾を解決する役割を期待しているという……
だが優れた能力と魅力で民を導ける指導者など、そう簡単に現れるものではない。
折角受け皿を作っても、集まった人間たちがろくに政治も知らず、彼らを正しく導くことの
できるリーダーがいない状態で彼の理想を具現化したら、どのような事態になるか?
…恐らくは現在イタリアを食い荒らす無能な僭主どもにも劣る衆愚政治家たちが
無定見に民衆を煽動し、結果として彼らを更なる貧困と不幸に陥れることだろう。
…それはルソーも参考にしたという、ギリシアの民主制国家の歴史を見れば明らかだ。
あの時代のギリシアを象徴する国家であるアテネも、民主制の王者と呼ばれた
ペリクレスの時代は繁栄を極めていたが、彼が死んで衆愚政治家達が
跋扈するようになると途端に力を失い、ついには軍事独裁国家である
スパルタとの戦争に破れ、やがて新興のマケドニア王国の覇権に従うこととなった。
とまあこのような具合に、ルソーの理想を現実のイタリアで語ろうとすれば
色々と無理が生じてしまうわけだが、彼は私とは違う時代の人間だ。
それぞれの時代によって、置かれている状況というものはどうしても違ってくる。
彼の理想が私の時代の現実にそぐわないからといって、それだけで
彼の考えをすべて否定するのは短絡的に過ぎるというものだろう。
それに究極の理想は違えども、無能な王や皇帝を排除した正当な世の中のあり方を
追求している点では、ルソーは私やマキアヴェッリと同じだ…彼は人間の良心を
信用しているのに対し、私は人の欲望や野心だけを信じるという考えの違いはあるがね。
- 87 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/09/06 00:09
- >>84
地獄か…これまで多くの戦場で、その名に値する光景を目の当たりにしてきたが
なかでも印象的だったのは、ナポリ王国の重要拠点であったカプアの街が
陥落した時の出来事だ…あのような凄惨な地獄絵図、後にも先にも見ることはあるまい。
…もっともその地獄を作り出したのは他ならぬこの私、チェーザレ・ボルジアなのだが。
………あれは1501年7月のことだ。
私はかねてからのフランス王との約束により、ナポリ王国への遠征に出発したフランス軍に
自らの兵1,500を引き連れて加わり、ナポリ軍の防御の要であるカプアの攻略を受け持つことになった。
守るのは勇将ファブリッツィオ・コロンナ率いる3,500の兵…いずれも劣らぬ精鋭だ。
カプアをめぐる攻防は、双方が死力を尽した激しい戦闘となった……
我が軍は、敵に与する者であれば女子供であろうと容赦せずに殺戮し、家という家には火を放ち
街を炎の海と血の河で覆い尽した…そして7月24日、カプアは我が軍門に下った。
焦土と化したカプアの街で、討ち死にした者たちの血が未だ乾ききらぬ中
我が兵たちは我が物顔で暴行と略奪に走った…戦場ではごく当たり前の光景だ。
400もの死体が腐るがまま放置され、捕虜となった敵兵は見せしめとして全員縛り首となった。
生け捕りにした女たちは私が直接吟味して、最も美しい40人の女だけを
我が手元に残し、残りは全員部下たちに慰み物としてくれてやった……
この時の地獄絵図を、歴史家たちは私の残虐な本性の現れと皆手厳しく非難している。
確かに、カプア陥落はここ百年でもっとも凄惨な落城劇であったし
あの時の私の振る舞いが残忍そのものであったことは否定のしようがない。
だが私は…傍観者でいるぐらいなら、自らを徹底的に血で汚す道を選ぶ男だ。
だからあの時の出来事に対して、私は一片の後悔の念も感じてはいない。
さて、この世の地獄について語り終えたところでここからはキリスト教で
言うところの地獄の話でも始めることにしよう…と思ったが今日は時間がなくなってしまった。
そういうわけで、この話の続きはまた明日以降だ……
- 88 名前:名無し客:03/09/07 19:47
- チェーザレ様は海軍については余り重視されておられなかったような気が。
ヴェネッツイアの海軍は言うに及ばず衰えたりとは言えジェノヴァの武装商船隊
もなかなか・・・。由来をたどればナポリ・シチリアの王国はヴァイキングの
末裔たちが建国しましたし、海軍もおろそかには出来ませんね。
- 89 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/09/07 23:56
- >>84(続き)
昨日のレスでも予告したとおり、前回の続きとしてキリスト教で言うところの
死者の魂が行きつくところである、「地獄」の話をすることにしよう。
とはいっても、私自身は地獄に行った経験がないし、
本当に地獄が存在するかどうかも怪しいところなのだがね……
死んだ後に自分の魂がどうなるか、そんなことは誰にも分からない。
私が死ねば本当に地獄に行くことになるのかもしれないし、
あるいは天国や地獄はおろか、魂さえも実は存在しないものなのかもしれない。
しかし、昔から洋の東西を問わず多くの者たちが
地獄とはいかなる場所であるかを想像し、絵画や詩歌に表現してきた。
現世に対する絶望、そして死に対する漠然とした不安や恐怖……
こういった感情が、人々を存在の定かならぬ地獄への空想に駆り立てるのだろう。
そんな文学作品の中でも、特に地獄の世界を克明に描いているのが
ダンテ=アリギエリ(1265-1321)の「神曲」だ。
ここで描かれている地獄は幾つもの層により構成されており、
死者たちが生前に犯した罪の重さに応じて落とされる先が決まってくる。
欲望、貧食、吝嗇、憤怒、異端、暴力…そして欺瞞と裁かれる罪は数多くあるが
中でも最も重い罪とされているのが「裏切り」だ。
この罪を犯した者が落とされる先である地獄の最下層「コキュートス」では、
神への反逆のかどで幽閉されたサタンが、その三つの顔で世界でも
三本の指に入る悪人達を絶え間なく噛み続け、永遠の責め苦を与え続けるという。
その悪人とはキリストを裏切ったイスカリオテのユダ、
それからユリウス・カエサルを暗殺したブルータスとカッシウスの二人だ。
さて、私が死んだら一体どの地獄へ行き着くことになるのやら……
あまりにも罪が多すぎて、地獄の鬼も私をどこへ送ればいいのか
きっと判断に頭を悩ませることだろうな、フフフ……
- 90 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/09/07 23:57
- >>88
確かに、今のところ私の手元には強力な海軍は存在していないな……
これまでの戦いでは、特に海軍力を必要としなかったということもあるが。
もちろん海軍を軽視しているわけではないし、今後私の支配地域が拡大して
地中海の制覇を狙う段になれば、海軍力の本格的な強化にも
着手しなければならないだろうが……私にとって、それは当分先の話だ。
ところで、地中海世界で質量共に最強の海軍を誇る国といえば
君も触れているヴェネツィア共和国だな。
彼の国は陸軍については他の国と同様傭兵任せにしているが、
海軍は提督や艦長はもちろん、一般の水兵やガレー船の漕ぎ手に至るまで
全て自国民をもってこれに充てることを伝統としている。
オスマン帝国の船を見ても、逃げずに戦えるのはヴェネツィア共和国ぐらいのものだ。
ジェノヴァ共和国もかつてはヴェネツィアとならぶ海軍国であったが、
地中海貿易の拠点であったコンスタンティノープルをオスマン帝国に
奪われてからは、ヴェネツィアとの差は離される一方のようだ。
オスマン帝国は、今のところこれといった海軍力を整えていないようだが
地中海にはイスラム教徒の海賊たちも数多い……
もしも近い将来、スルタンがこれらの海賊を組織して強力な海軍を
編成するようなことがあれば、ヴェネツィアの立場も危うくなるかもしれんな。
- 91 名前:名無し客:03/09/08 22:41
- 全ての道はローマに通ず。
古代ローマの遺産、特に道路や水道橋などは感嘆に値しますね。
マキャベリとダ・ヴィンチに一目置かれる閣下ならよくお分かりに。
- 92 名前:名無し客:03/09/09 01:25
- 公は事敗れた後、新大陸への雄飛など思し召しにはならなんだのですか?
- 93 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/09/09 23:32
- >>91
今でも各地に古代ローマが造った道路や水道橋の跡が遺されているが
これらの遺跡を見るに付け、彼らの技術力の高さには驚くばかりだな。
ローマ人たちが遺した土木技術の数々は、1,500年以上後の我々が
どう逆立ちしてもとても追いつくことはできないだろう。
古代ローマは国中に舗装された街道網を張り巡らせることで、
軍の敏速な移動や物流の活性化を促し、1,000年以上にわたる繁栄の源を築いてきた。
また彼らは水道を整備することによって、現在とは比較にならぬほど良質な水を飲むことができ
また豊富な水のおかげで、貧しい庶民でも入浴を楽しむことができたわけだ。
しかし、これらの優れた技術はローマ帝国の滅亡によって打ち捨てられ
キリスト教が支配した中世の暗黒時代を通じて、今ではすっかり忘れ去られてしまった。
現在、友人のレオナルドに様々な国土計画を練ってもらっているが
なかでも道路網の整備は重要課題だ…古代のような道路を敷設することができれば
これまで以上に軍をスムーズに動かせるようになるし、都市間を道路網で
結ぶことことにより、人や物の往来も盛んになって商業の発展にもつながる。
水道の建設も、検討の余地があるな…古代ローマ時代に敷設された水道の中には
現在でも使われているものもあるが、かつての技術を復活させて新たな水道を
各地に建設すれば、常に清潔な水を供給できるようになり疫病も格段に減るはずだ。
古の街道網と水道網の復活…以前は実現不可能な話であった。
しかし、今の私には財力とレオナルドの知恵がある……
二つの力を結集すれば、かつての夢物語も現実のものにできるはずだ。
- 94 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/09/09 23:33
- >>92
10年ほど前に、ジェノヴァ出身の流れ者がスペインのイザベッラ女王と
フェルディナンド王の援助を受けて西回りでのインド到達を目指し、
結果「新世界」を発見したという話は私も聞いている…彼の地がインドとは無関係の
新大陸であることが判明したのは、実はついこの間なのだが。
それで、新大陸の領有を巡ってスペイン王とポルトガル王との間に諍いが起き、
父の法王アレクサンデル6世の仲介で新大陸における両国の勢力圏が
確定したのが5年ほど前…私がまだ枢機卿だった時分の話だ。
しかし、もしも私がイタリア統一の夢に破れたら新大陸へ雄飛か……
選択肢としては悪くないが、どうせ新大陸への進出を図るのなら
落ち武者の如くコソコソと逃げ延びるよりも、イタリア全土を我が物に収めた後に
堂々と新大陸の領有権争いに一枚加わってみたいものだな。
父上の裁決では、彼の地はスペインとポルトガルとの間で二分するという
約束になっているらしいが、まだまだスペイン人やポルトガル人に
発見されていない新天地はいくらでもあるはずだ。
新たな地を開拓せんとの気概に燃える者たちを次々と送り込み、
産業を興して兵馬を養う…ひっくり返しようのない既成事実さえこしらえてしまえば、
いかにスペイン王やポルトガル王といえども、最早手出しすることはできまい。
- 95 名前:名無し客:03/09/10 21:58
- ズバリ。ナバラ王国がイベリア半島を統一できなかったのは
なーぜだ?
- 96 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/09/12 00:09
- >>95
うむ……ナヴァーラ王国は、かつてイベリア半島で最大の勢威を誇り
一時はレコンキスタ(国土回復運動、再征服運動)の中心になるかとも思われたが、
その後の歴史においては、カスティリャとアラゴンの両王国の後塵を
拝することになり、結局最終的な覇者になることはできなかった……
…その流れを説明すると、大体このような感じになるな。
9世紀にピレネー山脈の南西部で建国されたパンプローナ王国を起源とする
ナヴァーラ王国が、イベリア半島で最大の勢力を誇っていたのは
「大王」サンチョ3世(在位 1000-1035)の治世下にあった時代のことだ。
サンチョ大王はカスティリャ・アラゴンの両国をも自らの傘下に収め、
ピレネーからバルセロナにまで至る一大王国を建設することに成功した。
このまま進めば、レコンキスタはナヴァーラ主導の下で達成されていただろう……
…だがサンチョ大王は、自らの死に際して大きな間違いを犯してしまった。
大王は折角平定した自らの国を、三人の息子に分割相続させたのだ。
その結果長兄ガルシア6世はナヴァーラ、次兄フェルナンド1世はカスティリャ、
末弟ラミロ1世はアラゴンの王にそれぞれ即位したのだが、
やがてナヴァーラはイベリアの主要都市の大半を奪還したカスティリャと
サルディニアやナポリといった地中海地域に版図を広げたアラゴンに圧倒され、
いつしかこの両国にレコンキスタの主役を奪われてしまうこととなった。
その後1212年の「ラス・ナーバス・デ・トロサの戦い」で、「剛勇王」サンチョ7世が活躍し
一時はナヴァーラもレコンキスタの表舞台に復帰できるかと思われたが、
その期待も王の死によって打ち砕かれることになる。
……サンチョ7世の死によってナヴァーラでは王家の正統が絶え、
国を支える重要なアイデンティティを失ってしまったのだ。
さらに、1342年には国全体がペストの大流行に巻き込まれて
人口が激減したことも、ナヴァーラにとっては大きな痛手であった……
…以後のナヴァーラは、坂道を転げ落ちるが如く衰退していく一方だ。
バスク地方をカスティリャに奪われ、フランスの3伯家の統治下に入った彼の国は
事実上フランスの属国として僅かにその命脈を保ち、そして現在に至っている。
- 97 名前:名無し客:03/09/14 20:12
- チェーザレ様がイタリア統一をした後、ミケロットはどうするつもりですか?
あの人、汚れ仕事の話が多くてそのままおいておくのは危険な気が
します。
- 98 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/09/15 22:10
- >>97
将来私がイタリアを手にした後、ミケロットをどうするかだって?
…少なくともイタリアを統一したからといって、彼がお払い箱になることはあり得ないがね。
イタリア一国を押さえたぐらいで私の覇業が終わるわけではないし、
「次なる野望」の場でも、ミケロットには色々と働いてもらわなければならん。
ヨーロッパの列強との戦いに当たって、我が軍に彼の武勇と軍才は欠かせないし
これまでと同様……消さなければならない邪魔者も多いだろうからな………
……そして何より、私とミケロットは幼き日より共に過ごしてきた仲だ。
長年の付き合いを通じて、私と彼は単なる主従以上に強固な絆を築き上げてきた……
今やミケロットは私にとって兄弟…いや、「もう一人の私」と呼ぶべき存在だ。
彼は私の考えを隅々まで理解し、私にできぬことを代わりに果たしてくれた……
そんなミケロットの存在を抜きにして、私の覇業を推し進めることなど考えられない。
彼を切り捨てると言うことは、私自身の半分を否定することになるのだからな。
もし君が、ミケロットの裏切りを懸念しているのであれば…それは杞憂というものだ。
なぜなら私と彼の絆は、誰がどんな力を持ってしても……
例え父上やルクレツィアであっても、絶対に引き裂くことはできないものだからな。
仮に他の部下が全員私に牙を剥いても、彼だけは常に私の側にいてくれると確信している。
それこそミケロットは、地獄の底まで私に付き従ってくれるだろう………
- 99 名前:名無し客:03/09/16 23:00
- 三毛いやミケロット殿は、既に閣下の分身と言えますからね。
しかしジャンヌ・ダルクの悲劇は閣下にとってどう思われますか。
冷厳なる現実家の閣下にしてみれば、勇敢な聖少女が異端とされて
処刑されることや、フランス国王が彼女を利用するだけで、見捨てて
しまうことは、やはり当然なのでしょうか・・・。
- 100 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/09/17 22:02
- ようやくここも100到達か…イタリア統一への道程と同様、完走まではまだ先が長いな。
まあ、私は自分のペースでやっていくだけさ……
>>99
ああ…ミケロットの存在と才能は、他の誰を持ってしても代えがたいものだ。
ミケロット以上に私の意図するところを正確に汲み取り
私の思うとおりの結果を実現することができる者は、他には誰もいない。
それに、他人とは所詮利用すべき存在に過ぎないと考えている私にとって
彼はただ一人、掛け値なしの信頼を寄せることのできる友人でもある。
この世のどこを探したとしても、ミケロットの代わりが務まる者などいないだろう……
…それはさて置き、本題はジャンヌ・ダルクの身に降りかかった災難についてだったな。
ジャンヌの聞いたと言う「天のお告げ」が本当に起きたことであったのか
それとも単なる精神錯乱状態から来る妄想に過ぎなかったのか……
事の真偽は兎も角、窮状を極めていた当時のフランス王室にしてみれば
彼女の出現は正に渡りに船と言ったところであっただろう。
ジャンヌのどこに武将としての才能があったのか、それを知る術はないが
とにかく彼女の活躍があったおかげで王室はオルレアンを奪回し、
シャルル7世は正式に国王として即位することができた訳だからな。
しかし、ジャンヌにとって不幸だったのは…こんなことを言っては見も蓋もなかろうが
彼女が救おうとした存在がフランス王だったこと、これに尽きる。
何しろフランスのヴァロワ家といえば、現王のルイ12世にしろ
シャルル7世やその息子の「蜘蛛」ことルイ11世にしろ、利用できる者は
徹底的に利用し、価値がなくなったとわかればあっさり見捨てる国王ばかり……
約束とは破るために存在すると、そう信じきっているような王家だ。
もし彼女が仕えたのが、信仰心と誓約を遵守する精神では
他家とは比べ物にならないほど強いというハプスブルク家だったら、
後々あのような目には遭わずとも済んだかもしれないがね。
- 101 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/09/17 22:03
- >>99(続き)
シャルル7世も、ランスで戴冠する時期まではジャンヌの利用価値を認めていたが
彼女が時期尚早と思われたパリ攻撃を強硬に主張するようになると、
王は次第に現実を見ないジャンヌを厄介者と感じるようになっていったようだ。
そしてシャルル7世の意向を無視してパリへ進軍し、結果コンピエーニュで
捕虜となったジャンヌに王からの救いの手が伸びることはなかった…
逆に王は邪魔な存在が勝手に消えてくれたと、家臣たちと共に嘲笑したそうだ。
その後のジャンヌの運命については、君たちもよく知っているとおりだが……
私は別に、シャルル7世のしたことを非難する気は毛頭ない。
一国の王である以上、国益に沿わぬ者を排除するのは当然の行為だからな。
仮に私がフランス王だったとしても、結果は同じだっただろうさ。
しかしジャンヌ・ダルクがシャルル7世を救ってくれたおかげで、
死に体から完全に甦ったヴァロワ家はその後も欲望に手足の生えた国王を輩出し続け、
やがてイタリアはシャルル8世という騎士物語かぶれの妄想家や
ルイ12世という陰謀が服を着て歩いている男に狙われるようになった……
まったく、「オルレアンの聖少女」はイタリアにとんだ災厄をもたらしてくれたというわけだ。
- 102 名前:名無し客:03/09/17 23:20
- 閣下にはお子様がいらっしゃいましたっけ?
- 103 名前:名無し客:03/09/18 22:53
- ひよっとしたら公爵さまもナバラ国王の冠が手に入ったかも
知れませんね。衰えた名のみの小国といえども王は王ですからね。
- 104 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/09/18 22:57
- >>102
私には妻のシャルロットとの間に、ルイーズという名の娘がいる。
…もっとも、私はこれまで娘に会ったことは一度もないのだがね。
結婚してから数ヵ月後、フランスの自領からイタリアに戻った頃に妻は懐妊したのだが、
当時私は己の野望実現に向けて、大切な第一歩を踏み始めたばかり……
娘が誕生したという知らせを受け取っても、フランスへ戻ることはできなかったのだ。
その後、一度妻と娘をイタリアへ呼び寄せようとしたこともあったのだが、
シャルロットから「病気でイタリアへは行けない」との返事が届き
それは実現できなかった…もっとも妻の病気というのは、実は嘘だったようだが。
私への警戒を強めたフランス王が、妻と娘の行動に規制を加えたというのが事の真相らしい。
不憫なシャルロットは、ナヴァーラの義兄の元へ行くことも出来なくなったと聞いている。
ならば、私がフランスへ行けばいいようなものではあろうが
今はイタリア統一が実現するか否かが掛かっている大切な時……
この重大な局面で、己の仕事を放り出すわけにはいかない。
…残念ながらルイーズの顔を見るのは、今しばらく先のこととなるだろう。
ちなみに私には、ルイーズの外に庶出の息子と娘が合わせて4人いるが…
ひょっとしたら、それ以外にも私も存在を知らない子がどこかにいるかもしれん。
何しろ今まで私が関係を持った女たちの中には、名前はおろか
顔さえ覚えていない者たちが数え切れないくらいいるからな……
- 105 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/09/19 22:14
- >>103
ナヴァーラ王位か…実はフランス王がシャルロットとの結婚を斡旋した際、
彼女の兄であるナヴァーラ王が条件を出してきてね……
私と結婚するに当たり、シャルロットは子孫の代に至るまで
ナヴァーラの王位継承権を喪失することになったのだ…つまり、私はもちろん
私の子孫も、ナヴァーラの王冠を被ることは永久にあり得ないということだ。
ナヴァーラの王室にしてみれば、「悪魔の子にすら劣る、坊主が妾に産ませた子」風情に
伝統あるナヴァーラの王位を攫われるのがよほど嫌だったのだろう……
しかし君も言っているとおり、弱小国とはいえナヴァーラの君主は立派な「王」だ。
どんなに吹けば飛ぶ様な弱国でも、君主が王である以上皆その権威には一目置いている。
ヨーロッパでも随一の富強を誇り、国際的に重要な地位を占める
ブルゴーニュ公国も、権威の面ではナヴァーラに大きく遅れを取らざるを得ない。
諸侯の一角に過ぎない「公」と諸侯の上に立つ「王」とでは、天地以上の開きがあるのだ。
だから力のある者は、王の称号を得て自らに箔を付けようとする……
神聖ローマ皇帝の後継者である「ローマ王」の地位を狙ってあの手この手を策し、
遂に夢叶うことなく散っていったブルゴーニュ最後の君主シャルル突進公のようにね。
…私もナヴァーラの君主の座に付けば、堂々と王を名乗ることができたのだろうが。
- 106 名前:名無し客:03/09/20 08:32
- 公爵様が言われるとおり、勝手に王を名乗っても諸国から
無視され僭主呼ばわりされるだけですから。
法王玉座にしてもそうですが、公爵さまの心中は・・・。
皇帝を名乗れるのは、この時代、神聖ローマ皇帝だけなのか。
「ローマ皇帝」の称号は、コンスタンティノープル陥落時に
鷲の紋章とともに消えたしね。モスクワの大公が皇帝を称するのは
ちょっとねえ。
- 107 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/09/20 20:14
- >>106
確かに、勝手に王だと息巻いたところで諸国は相手にしてくれないからな……
公爵や大公の地位までは、実力さえあれば手に入れることは
比較的簡単だが、これが王の称号となると事情は随分違ってくる。
王を名乗るには、国際的に認められるだけの裏付けが必要になってくるのだが……
既存の王家の後継者となるか、それとも皇帝選挙でローマ王に推挙されるか
いずれの方法によっても、現状では私が王となれる可能性は低そうだ。
後は実力で権威を認めさせ、法王や皇帝から王号の許しを得るという方法もあるが……
そのためには少しでも早くイタリアを統一して、厳然たる事実を突きつける必要があるな。
それで諸王よりさらにその上には、俗界の最高権威としての「皇帝」がいるわけだが…
ビザンツ帝国最後のローマ皇帝が帝国と運命を共にしてから数十年、
今のヨーロッパで曲がりなりにも「皇帝」の称号を許されているのは、
ドイツの神聖ローマ皇帝だけだ…もっとも、シャルルマーニュや
オットー大帝の時代とは違って、現在の皇帝には権威もなければ権力もないのだがね。
諸侯も都市も必要のある時だけは皇帝に従うが、機会さえあれば迷わず反抗する……
…正にお飾り以外の何者でもないのが、「世俗界の最高権威者」の現実の姿だ。
モスクワ大公も、ビザンツ皇帝の後継者として「ツァーリ」を自称してはいるが
その内実はタタールのハーンに仕える、諸侯の一人に過ぎない……
神聖ローマ皇帝にさえ権威を認めないヨーロッパ人もいるのに、
どうして辺境の一諸侯に皇帝としての権威を認めることができるのだ?
- 108 名前:名無し客:03/09/21 16:06
- ピサの斜塔は不思議な建物ですなあ。
都市国家ピサの威信を示す塔になるはずであったとか。
- 109 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/09/21 18:49
- >>108
ピサの斜塔か…あの建物を作り上げたピサ人というのも、よく分からん人種だ。
建築を開始してまもなく、地盤沈下のせいであの塔は傾き始めたらしいが
その後100年近い中断期間はあったにしても、頂上部を真直ぐに直したこと以外は
当初の建築案を殆ど変えることなく、傾いたままで塔を完成させてしまったのだからな……
そのおかげであの塔は、建築当時から現在に至るまで毎年少しずつ傾き続け、
何百年か後の未来には倒壊してしまうというではないか。
将来必ず倒れると分かっていながら、どうして建て直しはおろか設計の見直しさえせず、
わざわざ傾いたままで塔を完成させたのか…私にはとても理解できないよ。
…しかし斜塔が造られ始めた当初は、ピサもヴェネツィアやジェノヴァと並ぶ
海洋国家として大いに栄えていたのだが、1284年のメロリアの海戦で
ジェノヴァ海軍に壊滅的な敗北を喫し、さらにその後内紛が続いて
国力を失ったこともあって、今ではフィレンツェの属国に成り下がってしまった。
ピサの威信と繁栄を誇示すために築かれた塔は、いざ出来上がってみれば
文字通りピサの斜陽を体現する建築物になっていたというわけだな……
- 110 名前:名無し客:03/09/22 23:45
- チェーザレ様。芸術には関心はおありで?
ダ・ヴィンチ先生は絵も描くけど技術者肌ですしね。
ミケランジェロとかいろいろいますよね。
- 111 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/09/23 18:58
- >>110
無論、関心はある……新たな芸術に興味を示し、その発展に力を尽くすことも
これからの時代を生きる君主にとっては重要な義務だからな。
特にイタリアでは、ここ100年の間にこれまでの時代には見られなかった
新たな技術や価値観に基づく、斬新な絵画や彫刻が次々と生み出され
君主にとっては、有名な芸術家のパトロンとなることが一種のステータスとなっている…
近頃ではローマ教会でさえ、高名な画家たちに教会を飾る絵画を描かせているぐらいだ。
イタリアでは14世紀のジョットを皮切りに、初めて絵画に科学的遠近法を導入したマザッチョ、
そのマザッチョの技法にゴシック的要素を加え、レオナルドにも影響を与えたフラ・フィリッポ・リッピ、
「ヴィーナスの誕生」で後世に名を残したサンドロ・ボッティチェリ、
それからレオナルドの師匠に当たる、フィレンツェの大彫刻家ヴェロッキオ……
といった具合に、有名無名を問わず数多くの画家や彫刻家を生み出している。
しかし何と言っても、現在を代表する芸術家といえばやはりレオナルド・ダ・ヴィンチ、
それとミケランジェロ・ヴォナローティの二人が双璧といっていいだろう。
この二人、互いに顔を合わせた回数はそれほど多くないらしいのだが
以前より互いをライバルとして激しく意識しあっていると聞いている。
冷厳な知性の申し子であるレオナルドに、男性的な感情を体現するミケランジェロ……
これほど対照的な個性を持つ二人の天才の活躍を同時に見ることが出来るのは、
この時代に生まれた者にとっては大いなる僥倖と言えるであろう。
それともう一人、今はまだ無名だがウルビーノ出身のラファエロという若者がいて…
この無名の若者が、近い将来レオナルドやミケランジェロに
肩を並べるような巨匠に成長するのではないかという者がいる。
いくつか出回っているラファエロの作品を見る限りでは、まだそれほど強烈な個性を
示すまでには至っていないようだが……彼はまだ若いからな。
これから様々な修業や経験を経て、大化けすることになるかも知れん。
果たして彼が次の世代を代表する逸材となれるかどうか…まずはお手並拝見といったところだ。
- 112 名前:名無し客:03/09/24 15:42
- 玉葱chのキャラネタ&なりきり板にも来てね。
2chと違って細かい規制も無いし、IPも取ってないよ。
もちろんかちゅ〜しゃ等の2chブラウザにも対応してるよ。
ttp://gungnir.versus.jp/charaneta/
- 113 名前:名無し客:03/09/25 23:52
- ヴェネッツイアのゴンドラで貴婦人と一夜の戯れ。
公爵様にはそーゆーイメージも強いです。
- 114 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/09/26 23:41
- >>113
…………君は私に、そんなイメージを抱いていたのかね?
のんべんだらりとゴンドラに揺られるのは、どうも私の性に合うものではないが…
…それは兎も角、ヴェネツィアの貴婦人といえば甘く官能的であることでは他国の比ではないな。
そのヴェネツィア女性といえば、当代きってのモードの発信源として有名だが
海外交易によって発展してきた彼の国らしく、女性のファッションも実に国際的だ……
…オリエント伝来の高価な布地や宝石に香水、それに北欧の影響を受けた
「ヴェネツィア金髪」と、ヴェネツィアの流行には海外に起源を持つものが数多い。
これに、レースや金襴といったヴェネツィア特産の織物が加わって、
全ヨーロッパの女性の憧れであるヴェネツィア・モードが完成するというわけだ。
ヴェネツィアの女性がファッションに気を使うのは、他国の女性に比べて
公的な場へ顔を出す機会が多いためだとか…女というのは人にみられる機会が
多ければ多いほど、より自らを美しく見せようと懸命になるものだからな。
それとヴェネツィアの女性を語る上で忘れることが出来ないのは、
カヴァリエレ・セルヴェンテ…「奉仕する騎士」と呼ばれる彼の国独特の風習だ。
これは、政治や交易稼業で家を空けることの多いヴェネツィアの貴族が
妻を放っておくことから生じる様々な弊害を避けるために、
独身の若い貴族に妻のエスコート役を無料奉仕で行わせる制度だ。
「騎士」と呼ばれるエスコート役の男は、女性特有の雑多な疑問に助言を与え、
観劇や舞踏会などの外出時には付き添い、カードゲームの相手を務めたりする。
そして夜夫人が寝室に入ると、屋敷を退去するのだそうだ……
…どこまでこの約束が守られているのか、私には分からないがね。
とにかくこの制度があるおかげで、ヴェネツィアのご夫人方はどんなに忙しい夫を持っても
日常を愉しく過ごすことができ、常に官能的でいることができるわけだ。
………もし私が「奉仕する騎士」の役を授かったら?
それ以前に、私に安心して夫人を預けるヴェネツィア貴族がいるとは思えないが……
- 115 名前:名無し客:03/09/27 21:48
- 大砲はますます発展する武器だと思われませぬか。閣下。
いずれはダ・ヴィンチの主張するような天かける乗り物も
できるかも。
- 116 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/09/28 17:45
- >>115
大砲か…最近ではあちこちの戦場で火器が使われるようになっているし、
私もフォルリやファエンツァを攻めた際には大砲を活用したが……
あの大砲という兵器は、破壊力の面では驚嘆すべきものがあるが
命中精度があまりにも悪いので、効果の方は期待したほどでもなかったな。
…篭城を続ける敵に対する威嚇としては、それなりの役に立ったが。
大砲の威力自体は、先にオスマン帝国がビザンツ帝国を滅亡させた際に、
トルコ軍の大砲が堅固なコンスタンティノープルの城壁を崩したことで証明されているし、
今後の戦いにおいて、大砲の使われる頻度は増えることになるだろうが……
どんなに凄まじい威力を誇る兵器も、的に当たらなくては何の意味もない。
トルコの大砲がコンスタンティノープルの城壁を崩すことができたのは、
物量にものを言わせて精度の悪さを補ったからだと聞いているが……
どの国もオスマン帝国ほどの力がない以上、トルコ軍のやり方は真似できまい。
…そうなると、大砲を有効に活用できるようにするには
命中精度を向上させることによって、少ない数でも効率的にその破壊力を
引き出せるように、技術の改良を図っていくしかあるまい。
この件については、早速レオナルドに相談してみることにしよう……
彼ならば、何かいい考えが浮かぶかもしれないからな。
それで、そのレオナルドといえば幾つかの「天かける乗り物」を考案し、
その設計図をスケッチに残しているわけだが……
何でもレオナルドによれば、空気の流れは水の流れと良く似ているから、
螺子が水の流れに沿って回転する「アルキメデスのネジの原理」を応用して
空気中で高速回転する装置を作れば、人間も鳥のように空を飛べるということらしい。
私は実際にその装置を見たわけではないから、彼の説が本当かどうかは何とも言えないがね。
レオナルドの理論が正しいかどうかは、君の言うように
技術の充分発達した何百年か先の未来に回答を委ねるしかないだろう……
- 117 名前:名無し客:03/09/30 22:57
- マルコ・ポーロによれば東洋にはジパングと言う
国があるそうですよ。
- 118 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/01 23:04
- >>117
ああ、マルコ・ポーロが『世界の記述』の中で、東方の果てにある
「黄金の島ジパング(ジ=ペン=クォ)」を紹介したことは知っているよ。
何でもジパングでは黄金や真珠が無尽蔵に産出され、
国王の宮殿は屋根や床だけでなく窓さえも黄金で造られているのだとか……
そしてこの国の民は白い肌で優れた文化を誇り、物質的にも恵まれているのだという。
…これがどこまで真実であるかは、私には分からないがね。
しかし、確かにマルコの語るジパングの話は面白いし、彼の本によって
ジェノヴァのコロンブスを始め多くの者がアジアへの夢を掻き立て、
結果としてヨーロッパの大航海時代を導いた要因のひとつとなったことは間違いないが
彼が実際にジパングを訪れ、彼自身の目で彼の国の真実を確かめたわけではない以上
コロンブスのようにジパングの話を全て事実と決めてかかるのは早計だろう……
何しろ一説によれば、マルコはジパングどころかキタイ国さえ訪れておらず
実際には、ペルシア周辺で東方から往来した者の話を聞きあたかも自分が体験したかの如く、
物語をまとめたに過ぎないという話もあるぐらいなのだからな。
とは言うものの、ジパングについてはキタイ国にも足を運ぶイスラム世界の船乗りの間でも
「ワクワク」という名前で、マルコ・ポーロ同様に黄金の島として紹介されているという話だ。
だとすれば、ジパングの黄金伝説が全くのでっち上げということはないかも知れん。
案外マルコの語るジパングの噂話も、イスラムの商人か船乗りあたりから聞いたものかも……
…しかしジパングが本当に黄金の国なのか、彼の国に住む民とはいかなる者たちなのか
あるいはジパングにはマルコの語る内容とは全く違う姿が存在するのか、
そして何より、ジパングで一番美しい女性といえば一体誰なのか………
考えれば考えるほど、彼の国に対する興味は尽きぬところだな。
- 119 名前:名無し客:03/10/02 20:47
- ドゥカート金貨は大切です。
閣下は紙幣をご存知ですか。
- 120 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/03 22:56
- >>119
……どこの国に行っても、ヴェネツィアのドゥカート金貨は重宝されるからな。
今ではローマでもミラノでも、商取引には専らドゥカート金貨を使っているし
フランス王や神聖ローマ皇帝も、ドゥカートを傭兵の給料として支払っている。
無論この私も、軍資金から服代に至るまで多くの場面でこのヴェネツィア製金貨を使い、
そしてあらゆる方面から集めたドゥカート金貨をイタリア各地の銀行に預けてある。
その質の高さとヴェネツィアの経済力に裏打ちされて、今やドゥカート金貨は
ヨーロッパで最も信用のある貨幣になったと言っても過言ではないだろう……
ヴェネツィアで始めてドゥカート金貨が鋳造されたのは1284年……
ライヴァルであったジェノヴァやフィレンツェより30年以上遅れてのことだ。
元来ヴェネツィアは銀貨を主要貨幣として使っており、ドゥカート鋳造後も
しばらくは銀貨が取引の主役であったのだが、14世紀に入って
銀の流入量が減ったことにより、次第に金貨がこれに取って代わるようになった。
1328年にヴェネツィア政府が1ドゥカート=銀貨24個という相場を設定したことによって
ドゥカート金貨の価値が定着し、それ以後ヴェネツィアを越えてヨーロッパ各地で
この金貨が大々的に使われるようになった……という訳だ。
ヨーロッパでは、他にもフィレンツェのフィオリーノ金貨が国際的に出回っているが
ドゥカートと比較すると、どうも品質の面で見劣りするのは否めないな……
フィオリーノ金貨が十八金であるのに対してドゥカート金貨は二十四金、
おまけにドゥカートは0.997という圧倒的な純度を誇るとあっては、
政治と同様フィレンツェ製金貨がヴェネツィア製金貨に圧倒されるのも無理からぬことか。
- 121 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/03 22:57
- >>119(続き)
ところで話は変わるが、東洋では「紙幣」と称する紙の貨幣を使用しているそうだな……
国王や皇帝の絶対的な権力を後ろ盾にして、それ自体は何の変哲もない紙切れに
金貨や銀貨と同等の価値を持たせ、取引の場で流通させているのだとか。
わざわざ重い金貨や銀貨を運び出さなくても、その紙切れさえあれば
手軽に取引ができる……ある意味では非常に便利な制度といえるだろう。
もっとも、紙幣の流通には国家の揺るぎない保証が前提条件となっているだけに、
国家が弱体化して価値の保証がなくなると、せっかくの紙幣も
鼻紙の役にも立たないただの紙切れに逆戻りしてしまうわけだ……
現にキタイ国では、当時の国力や皇帝の権力を超えた数の紙幣を発行したために
その価値がなくなってしまい、結果として王朝の滅亡にまで繋がった例もあると聞いている。
その意味では、どこの王家もまだ絶対的な権力基盤を築いているとはいえず、
どこの国でもいつ何時大異変が起きるか分からない状況にある
現在のヨーロッパでは、紙幣を発行できる国は皆無と言わざるを得ないな。
フランスやスペイン、それにイングランドにしたところで絶対王権を
確立するまでには未だ時間がかかる…ヨーロッパの国家権力が安定し、
紙幣が造られるようになるまでは今しばらくの時が必要だろう。
…少なくとも私が生きている間は、ドゥカート金貨が紙幣に主役の座を譲ることはなさそうだ。
- 122 名前:名無し客:03/10/04 16:55
- 後世の話になってしまいますが、特に第二次大戦以降イタリア兵と言えば
弱い軍隊の代名詞のように言われています。
これについてどのような感想を抱きますか?
- 123 名前:名無し客:03/10/04 20:16
- ブルゴーニュ公国については、以前お話をお聞きいたしましたが、
ブルターニュ公国については思い入れはおありですか。
これまたケルトの末裔が建国したと言われ、水に沈める都の伝説
とかで有名ですが、ナヴァーラ王国と同じく強大なフランス王権の
前に独立国家としては厳しい状態とか。サリカ法典に縛られたフランス
王国と違いナヴァーラもブルターニュも女性君主を認めていますね。
- 124 名前:名無し客:03/10/04 22:13
- ジパングのことが話題に上っておりましたが、公よ、
後にそのジバングに公と同じ野心を抱き公と同じく途半ばにして斃れた
シニョーレNOBUNAGAという武人がおられました。
公はご存知か?
- 125 名前:名無し客:03/10/05 01:24
- あっ!? 今回は公爵様へのお目通りを願う者がこんなに
来ている。
御父君法王猊下におかれては、ローマ市民の人気はそれほど
悪くなかったと思いませぬか。
- 126 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/05 20:28
- >>122
イタリアに限らずいかなる国の軍も、永久に精強を誇っていられるわけではあるまい。
どんなに最強の称号をほしいままにしていた軍も、肝心の指導者が
愚かであったり、時代の変化や技術の革新についていけなかったりすれば、
当然その力は国力の衰えと共に脆弱化してしまう。
まして、軍事的にハンディキャップのある国で同じことが起これば、
なおさら目も当てられぬ結果となるのは当然のことだろう……
しかし、後世におけるイタリア軍は元から特別屈強というわけもなかったようだが、
何故イタリアだけが「脆弱な軍」などとかくも不名誉なレッテルを貼られるに至ったのか……
気になったので少し調べてみたのだが、どうやら当時のイタリアの指導者には
政治的な指導力が優れていた割には、軍事面での能力が不足していたようだな。
指導者に求められる軍事面の才能とは、ただ眼前の敵を打ち破ることが全てではない。
情勢を読み取った上で、何時戦争を始めていつ終わらせるのかの判断、
戦争に耐えられるだけの国力を整えるための、事前における周到な準備、
もし国に力が足りなければ、その不利を如何にして補うかの算段……
大局に立った上で、それぞれの見極めを上手く付けていくことが肝心だ。
…だがこの指導者は、同盟を結んでいたドイツの電撃戦の戦果だけに目を奪われて
「このままでは分け前に預かることなく戦争が終わってしまう」と目先の利益に捕らわれ
イタリアに戦争に耐えるだけの力がないにも関わらず、安易に参戦を決めてしまったようだ。
ただでさえ脆弱な軍事力で、しかも準備が整わない中で強国相手の戦いを強行すれば
どのような結果を生むか、少しでも軍事の心得のある者なら分かっていただろうに……
…この私とて、今の状況でフランスやスペインと戦端を開くことの無謀さは承知しているつもりだ。
この指導者の元で、イタリアがどのような戦争の結末を迎えたか……
これは私よりも、君達の方がよく知っていることだろう。
要するに、イタリアの軍隊がここまで屈辱的な言われ方をするようになった原因は
時代の流れを読めぬ指導者の存在と圧倒的なまでの準備不足……
この二つに尽きるのではないかと言うのが、私なりの考えだ。
- 127 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/05 20:28
- >>123
ブルターニュ公国か…確かこの国は、ブルトン語を話すゲール人たちが建てた国で
9世紀に西フランク王から独立を認めさせて以来、長年に渡って
フランスやイングランドの侵攻に耐えながら自立を守り抜き、
フランス人達とは異なる、ケルト独自の文化や風習を築いていたと聞いているが……
最近ではフランス王家の伸張に押される一方で、彼の国の運命も風前の灯とか。
苦肉の策として、ブルターニュの君主である公女自らがフランス王の妃となって
ひとまずはフランスに独立の保障を認めさせたようだが…果たして何時まで上手くいくことやら。
なぜならフランス王にとって、ブルターニュとナヴァーラは国内統一に残された最後の障壁。
絶対王権を確立するためには、この2国を併呑することが必要となってくるのだからな。
ちなみに、その現ブルターニュ公女であるアンヌ・ド・ブルターニュは、夫のフランス王
ルイ12世共々私の新婚初夜の「立会人」を勤めた人物でもあるのだが……これは余談だ。
ところで、ナヴァーラもブルターニュも女子や女系の君主継承を排除する
サリカ法典の適用外にあって、現に女王と公女がそれぞれの国に存在しているわけだが…
ここには「サリカ法典」のことを知らない者もいるようだから、少し説明を加える必要があるな。
少し長くなるので、一度ここで切って詳しい説明はこの続きで語ることにしよう……
- 128 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/05 20:28
- >>123(続き)
この「サリカ法典」というのは、今から200年前の1316年…カペー王朝末期のフランスで
当時の国王が男児誕生の前に死に、その後産まれた王子も即位後直ぐに夭折したことによって
残された王女と国王の弟との間で争いが起きたため、当時の実質的な権力者であった
王弟フィリップが自らの王位継承を正当化するために、古代ゲルマン民族のサリ族が
女子の領地継承権の否定を定めた法を自分の都合のよいように解釈し
女子のフランス王位継承を排除する法として成立させたものだ。
その後、カペー宗家の断絶とその分家に当たるヴァロワ王家の成立の過程で
イングランド王の横槍が入るなど再度争いが起きたので、このサリカ法典は
「女系」の……つまり「王女の息子」や「王女の配偶者」といった
男子による王位継承をも排除するものになったのだが
その時の強引な決着が尾を引いて、結局は英仏間の百年戦争に突入したわけだ。
当時の解決法に不満であったイングランド王家は、百年戦争が終わった現在でも
サリカ法典の有効性を否定し、ヴァロワ王家の王位継承権を認めていないらしい…
イングランド王の紋章には、未だに「フランス王の紋章」が書き加えられたままとなっているとか。
- 129 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/05 20:29
- >>124
ジパングのシニョーレ・ノブナガについては、以前にも述べたことがあるな……
私より少し後の時代のジパングに出現した革命児で、
ひょっとしたら私の生まれ変わりかも知れない男だとね。
シニョーレ・ノブナガも私と同様に、古い権威やそれに寄りかかる者全てを否定し
ただ有益性と効率性、そして合理性だけを判断の拠り所として
当時からすれば突拍子もない改革を次々と打ち出してきたという……
そして圧倒的な武力を背景に、戦乱の極みにあったジパングに
絶対的な王権を確立しかけながら、覇業の完成を目前にして
部下の反逆に遭い、その夢を絶たれることになったと言う話だったな。
ところで、シニョーレ・ノブナガには色々と破天荒なエピソードには事欠かないようだが…
父親の葬儀で抹香を投げつけて家臣の顰蹙を買ったとか、
圧倒的な兵数を誇る敵に奇襲を仕掛け、敵将の首を見事討ち取って見せたとか
当時のヨーロッパでも考えられなかった小銃による斉射戦術を考案し
ジパング最強を誇る騎馬軍団を完膚なきまで打ち破ったとか……
なかでも印象的なのは、当時のジパングでは最も権威があるとされていた
仏教寺院を襲撃し、一片も残さず焼き尽くしてしまったという話だ。
これをヨーロッパに置き換えれば、ローマの法王宮を焼き尽くして
法王をはじめ、枢機卿から何から皆殺しにするようなものだが……
歴史を紐解けば法王が襲撃されたこともあるし、法王宮が暴徒に襲われたことも
一度や二度ではないが、さすがにヴァティカンを滅ぼそうとした者はいなかった……
だがシニョーレ・ノブナガは、ヨーロッパ人だけでなくジパング人の間でも
恐れ多いと思われたであろう焼き討ち行為を、あっさりとやってのけたわけだ。
これだけの暴挙をやってのけたのだから、当然彼は世の者に恐れられもしたのだろうが
同時に「良くぞやってくれた」と溜飲を下げた者も少なくなかったのではないか?
伝統だの何だのにしがみ付いた古い権威などは、害毒を撒き散らす存在に他ならないし
事実そういった権威に苦しめられた者たちも少なくなかっただろうからな。
- 130 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/05 20:29
- >>125
フフフ、私も久々に多くの客が来てくれたので嬉しいのだが
こんな時に限って狩猟やら何やらで忙しくてね…なかなか回答の時間が取れず、
この時間まで君たちを待たせることになって済まなかった。
…ところで、今まで他の場所への越境はなるべく控えていたのだが
ここへの来客を増やすためには、やはり他の場所へ出向いて
積極的に売り込みを図った方がいいかもしれんが……果たしてどんなものだろうか?
さて、父上の評判についてだが……父上はあのようなお方だ、当然のことながら
世間から聖人君子としての尊敬を集めているわけではない。
何しろ父上は、ボローニャ大学を首席で卒業した才子であることは皆の認めるところでありながら
イタリア人中心のヴァティカンでは歓迎されない外国人であるだけでなく
法王位の獲得に当たっては、ご多分に漏れず相当汚い手段も用いてきたし、
おまけに「最も肉的なキリスト」と呼ばれているほどの漁色家ときている……
「心ある者」たちは、父が三重冠を被っていることさえ気に食わないことだろう。
だが、父上は現在イタリアで流行している新たな芸術を積極的に奨励し
ブラマンテやピントゥリッキオといった芸術家や建築家も保護している……
少なくともこの点では、世間は正当に評価しているようだ。
それに、信心深い者であれば眉をひそめるであろう父上の数々の言動も
ローマの庶民にとってみれば、「人間的な親しみ」を覚えない類のものでは
ないかもしれん…本当にそのように思っている者がいるかどうかは知らないが。
父上は「神の代理人」たるローマ法王としては失格であろうが、「新たな時代の君主」としては
ローマの市民にとって父上は理想的なのかもしれないが…それは買い被りすぎか?
…少なくとも、父上の説教を喜んで拝聴する者はいないだろうが
父上の言動を面白がっている者はいる……まあそんなところだな。
- 131 名前:名無し客:03/10/05 21:44
- 他国・他世界への進出ですか。閣下。
閣下へのご引見の者は増えましょうが、他国には
悪しき心を持つ者も多く、難しいところです。
ひとまず広報は必要なのかもしれませぬが。
・・・ブルターニュもナヴァーラも本来のフランス王の
封臣ではありませんからね。後世アンリ4世以後は、
「フランス及びナヴァールの王」がブルボン諸王の称号
になりましたし。
ナヴァーラ、ブルターニュ、スコットランド、バイエルン
ナポリ、琉球、一時は隆盛を誇るが、隣接する大国の前に
やがては下らざるを得ない国々・・・。
弱肉強食、それこそ真理と閣下はおっしゃるのでしょうな。
- 132 名前:オーベルシュタイン ◆rEH0G3hTlI :03/10/06 22:37
- ロマーニャ公閣下にお尋ねする。私はいわゆる謀臣、諜報関連の参謀
なのだが・・・卿には私のような家臣はおられたか?知識が少なくて
申し訳ないが卿の時代の知識が乏しいためよく分からぬ。ミケロット
卿などは間違ってもそういったタイプではないと思うのだが・・・
いかがかな?
- 133 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/06 23:03
- >>131
君の心配は良く分かる……確かに異世界への進出は難しいし、リスクも大きい。
違う世界に出れば、ここでの流儀が通用するとは限らないわけだし
空気も読まずに自分勝手な言動を繰り返しては、住人たちの反発を食らうだけだ。
しかしだからと言って、ひたすら相手の世界に迎合して己を押し隠すばかりであっては、
「それでは何のための越境か」とこれまた批判を受けることにもなろう。
「己の個性」と「相手の世界観」との間で如何にして上手く折り合いをつけていくか、
それが成功の鍵となるだろうが……まあ、必要以上に難しく考えるのもどうだろうな。
幸いなことに、ここには広報向けの場所も幾つか存在しているようだし
まずはそのような場所へ売り込むことから始めて、雰囲気に慣れてきたら徐々に
他国への進出を本格化させていけば良いのでないかと、私はそう思っている。
問題は、最近私自身が政務やら軍事演習やらに時間を取られ、
あまり他の世界に出張するだけの時間に恵まれないことだが:…その点は何とかなるだろう。
………前置きが長くなってしまったが、次からが本題だな。
- 134 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/06 23:04
- >>131(続き)
かつてはどんなに隆盛を誇った国も、一度落ち目となれば近隣の大国に目を付けられ
やがてその餌食とされる……そう、正しくこれは世界における真理だ。
ナヴァーラもナポリも、そして成り上がり者のフランチェスコ・スフォルツァが
一代で大国に育て上げたミラノ公国でさえ、その運命からは免れ得なかった……
特にミラノは、フランチェスコ亡き後もその息子に当たる
"イル・モーロ(黒い人)"ことルドヴィーゴ・スフォルツァの支配のもとで
ついこの間まではイタリアでも指折りの強国と謳われていたのだが……
神聖ローマ皇帝をも自在に操る権謀術数の達人と呼ばれたイル・モーロも、
圧倒的な武力を誇るフランス王ルイ12世を敵に回したことが命取りだった。
フランスとの2度にわたる戦争に大敗を喫したイル・モーロは、
今では遠く離れたフランスで惨めな捕囚生活を送る始末……
領地もミラノ公爵の称号も、何もかもフランス王に奪われてしまった。
イタリアを震撼させたミラノ公も、所詮はコップの中の嵐に過ぎなかったわけだ……
どんなに繁栄を極めた国であっても、小さな枠に捕らわれ大勢を読めないようでは
いずれは覇権を確立した大国に差を付けられ、併呑されるのは自明の理。
ナヴァーラやブルターニュはフランスの傘下に入ることで、ようやく国としての
体面を保っている有様だし、ナポリもフランスとスペインに食い荒らされ、
かつての海洋大国は見る影もない…それもこれも、皆が小さな利害にのみ
目を奪われ、列強と対抗する術をまともに考えてこなかったからだ。
そして、イタリアの惨憺たる現状………このままでは、この国は
フランスやスペインの思うがまま、骨の髄までしゃぶり尽くされてしまう。
そうなる前にイタリアを蝕む癌を取り除かなければ、この国が生き延びる道はない……
愚かな僭主どもの元で朽ちていく弱国は、この際一掃しなければならんのだ!
その意味では、フランス王がナヴァーラとブルターニュの二国を
我が物にしようと躍起になるのも、国家としては当然の成り行きだ。
ろくな実力もないくせに、昔の栄光を当てにし気位ばかりは高いかつての強国……
そのような存在ほど、新しい時代にとって不要なものはないのだからな。
…余談だが、後世のブルボン家の時代だけでなくカペー朝の末期にも
フランス王はナヴァーラの王冠を手にしたことがあったのだが、
この時も「フランス王」と「ナヴァール王」の称号は別物として扱われていたそうだ。
- 135 名前:名無し客:03/10/06 23:06
- あれ? 公爵さまの時代から幾千年もの未来の人物が・・・。
- 136 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/07 00:24
- >>132 オーベルシュタイン
>>135
はて、貴殿は………ほう、私より数千年も未来の人間だと言うのか。
未来の住人とは、これは何とも珍しい来客が訪れたものだな。
だがここは時代や世界を問わず、あらゆる住人に門戸を開いている……
よくぞ参られた、貴殿の来訪を心より歓迎しよう。
では、質問の答え…私に「謀臣」が存在したかということだが……
結論を先に言えば、私は特段諜報を業とする参謀をおいているわけではない。
まずドン・ミケロットは私の考えを忠実に、あるいは彼なりに補完しながら実行する……
言い換えれば「私と一心同体となった上で、私のできないことを為す」のが仕事だ。
だから、彼が独自に諜報関連の任務を請け負っていると言うわけではない。
それから、わが国の行政長官であったレミーロ・デ・ロルカも内政が専門であったし
まして傭兵隊長たちは戦うことだけが取り得の、諜報など思いもつかない連中揃いだ。
では、誰が諜報関係の仕事を請け負っていたのかと言うと…それはこの私自身だ。
私には、父上の影響下でボルジアに忠誠を誓った枢機卿たちがいるし
フィレンツェの特使であるニッコロ・マキアヴェッリのように、信頼できる情報源もいる。
そして何より、ローマには色々な伝を通じて各国の様々な情報が集約されてくる。
これらの情報源を活用した上で私の元に情報を集中させ、それを元に
私自身で考え、そして取るべき行動を決める……それが私のやり方だ。
以前私の傭兵隊長たちが反乱(1502年のマジョーネの乱)を起こした時には、
敵を撹乱するために偽の情報を流しもしたし、偽りの和議を相手に信用させるために
信頼していたレミーロ・デ・ロルカに反逆の嫌疑を着せて、彼を亡き者にもしたが……
哀れなレミーロの犠牲のおかげで、無能な反乱者どもは私の甘言に上手く乗ってくれて
最終的には連中をいともあっさりと叩き潰すことができたわけだ。
私に忠節を尽してくれたレミーロには、悪いことをしたと思っているがね………
- 137 名前:名無し客:03/10/07 21:43
- 穏やかな公爵さまの話しぶりの片隅に見え隠れする
冷酷な光・・・。
民は依らしむべし、知らしむべからずと言う古語が
ございます。公爵さまは大衆について、どう統治すべきと
お考えでしょうか。
- 138 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/09 00:05
- >>137
………確かに、民を統治するという仕事ほど難しいものはない。
私がロマーニャの諸都市を征服して我が物とした時、この地は領民から搾取することしか
知らない僭主の支配によって、あらゆる暴力と欺瞞が幅を利かせていた……
そこで私は、厳格ではあるが公正な政治を行うことで
この地方の平和を取り戻し、自らの支配力を高めることができると考え、
腹心のレミーロ・デ・ロルカにその仕事を任せることにしたのだ。
そして彼は私の期待によく応え、ロマーニャは僅かの内に平和と秩序を回復した……
だがその一方で、残酷なまでに厳しい統治は民の憎悪を呼び起こすようにもなっていた。
そこで私は、民衆の領民の不満を拭い去って民心を掌握するために
レミーロに「過酷な性格によって厳しい統治を強行した」罪を被せて処刑し、
彼の死体をチェゼーナの広場で晒したのだ……反乱鎮圧のための犠牲となった
レミーロには、この点においても生贄になってもらったというわけだ。
しかし、君が引用した「民は依らしむべし、知らしむべからず」というキタイ国の言葉……
「民とは盲目な存在であるから、為政者の方針に従わせることはできても
為政者の考えをよく呑み込ませることはできない」とはよく言ったものだ。
その考えの善し悪しは別にして、現状のイタリアに当てはめれば
残酷なようだが確かに当たっているな…レミーロの件で、私もそれを痛感させられた。
しかしこの有様では、領民たちはどんなに痛めつけられようが搾取されようが
ただ支配者の言う事に盲目的に従うだけ…これでどうして、強力な国家など創ることができようか?
私は、イタリアが真に統一国家となるためには国土を統一するだけではなく
民も変わらなければならないと考えている……
ただ支配者に盲従するのではなく、自発的に自らの国土を富まし自らの国を守っていく……
イタリアがフランスやスペインに対抗できるだけの力を付けるためには、
領民たちに「イタリア国民」としての自覚を植え付けなければなるまい。
民をそのように育て上げることもまた、支配者たる者に課せられた責務であるといえよう……
- 139 名前:名無し客:03/10/09 22:14
- 公爵閣下は、お酒はお強いので?
- 140 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/10 17:45
- >>139
いや、酒は好きではあるが、世の酒豪と呼ばれる者たちに比べれば、
私はさほど酒が強いというわけでもない…確かに機会さえあれば私も大いに酒を飲むし、
時には部下たちと共に羽目を外して大騒ぎすることもあるが………
よほどのことがない限り、正体をなくすまで痛飲することはまずないな。
基本的に、私は酒の味わいを楽しむことを重視しているものでね………
……ちなみに現在のイタリアで飲まれている酒は、その殆どが葡萄酒だ。
その他には、スコットランドやアイルランドでは大麦を蒸留した強い酒が
出回っているという話があり、東欧でも同種の酒が作られているらしいが……
今のところ、これらの酒はイタリアでは殆どお目にかかることがないな。
イングランド人やドイツ人の代名詞とも呼べるビールも
あることはあるのだが、あまりイタリア人には好まれていないようだな。
イタリアではローマ時代の名残を引いて昔から葡萄酒作りが盛んで
フランスやスペインとは比較にならぬほど、数多くの品種が存在している……
聞くところによれば、その数は100万種以上にも及ぶとか及ばないとか。
ロマーニャ公国だけでも、産地の数以上の品種があるほどで
とてもではないが私自身、その全ての品種を把握しきれないぐらいだ……
それから、葡萄酒といえばフランスの存在を抜きにして語ることはできまい。
元々彼の国の葡萄酒作りはローマ人が伝えたものなのだが
長い年月を経て、今や品質においては先発のイタリアを追い抜くに至った……
殊にボルドーやブルゴーニュといった名産地で作られる葡萄酒は抜群の品質を誇り、
ヨーロッパの各国にも盛んに輸出されて諸侯の食卓を飾っている。
これまでは、イタリアがヨーロッパ随一の葡萄酒の生産地であったが
それがフランスにとって変わられる日も、そう遠い先の未来ではないかもしれん。
- 141 名前:名無し客:03/10/10 22:30
- 小さな時計があれば便利だと思われませんか。
そう、手にいつも持てるような・・・。
- 142 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/11 21:13
- >>141
そうだな……その場で時間を知ることの出来る時計があれば便利であろうが
その為にはいつでも携帯できる小さな物でなければなるまい。
しかし、ヨーロッパで機械仕掛けの時計が発明されてから200年近く経つが、
どれもこれも大型で、気軽に外へ持ち運べる類のものではない。
これは中の機械を動かす仕組みに「重鐘」を用いているからで、
このためにどうしても機械時計は大きな造りにならざるを得ないのだ。
だから機械時計といえば、その殆どが教会にある塔時計のような大掛かりなものか
小さくてもせいぜい王侯貴族の部屋に飾られている室内時計止まりだ。
……だが最近になって、ドイツで携帯可能な小型の時計が発明されたという話を聞いた。
何でもその時計は、重錘の代わりに「ゼンマイ」という仕組みを用いていて
小さな仕掛けでも塔時計や室内時計とまったく同じ働きをすることが出来るのだという……
それでその時計は、卵型の形状から「ニュールンベルクの卵」と呼ばれているのだとか。
私は「ゼンマイ」の仕組みについて詳しいことは分からんが、
レオナルドであれば何か知っているに違いない………
彼に頼んで、ゼンマイ仕掛けの新しい時計を試作してもらうのもいい考えだな。
- 143 名前:名無し客:03/10/12 15:13
- 閣下。イタリア諸国間の争いはナカナカ絶えることが無く、またお膝元の
ローマ市においてもコロンナ家を始めとする大貴族たちの動向に常に監視
せねばならない今、だからこそ外遊などいたしたくはございませんか。
三日月の旗の更に向こうには、古代以来の歴史を持つペルシャが有り、インド、
キタイに続きます。南は広大な砂漠の向こうには肥沃な黄金境がキリスト教を
奉じているとか。まあ、ひとまずはファラオたちの栄華をしのぶためエジプト
は如何でしょうか。
雄大な話の後は…フランス王や神聖ローマ皇帝たちは、人海戦術できますからね。
イタリアの都市国家ではまず数を揃えるのが大変ですな。
- 144 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/12 19:01
- >>143
そうだな…傭兵隊長たちの反乱もあらかた片付き、当面はイタリアに
大きな動きもないだろうし……この機会だから、異国で見聞を広めるのもいい考えだ。
この状況下で、1年も2年もイタリアを留守にするわけには行かないが
身近な地中海諸国であれば、行って帰るのにさほど時間も掛からないからな……
アフリカやインド、キタイへの旅はその手の専門家に任せることにして
私は君の奨めるエジプトを見て回ることにでもしよう……
ついでだからオスマン帝国まで足を伸ばし、彼の国の内情を探るのもいいかもしれん。
……さて、異国へ旅立つに当たっては、幾つか決めておかなければならない事がある。
この旅の同行者をどうするのか、それから私が留守の間の領内を誰に委ねるのか……
ミケロットには当然同行してもらう予定だが、見知らぬ他国では
いつ何が起きるか分からんからな……連れの者はもう少し増やした方がいいだろう。
それと領内の統治を任せる者か…レミーロが生きていれば、安心して彼に任せていたのだが…
愚痴を言っても仕様がない、ここは彼に替えて抜擢した官僚たちに任せよう。
…それとこのご時世だ、我々のような者たちが堂々と異国を練り歩くのは
何かと問題があろう…やはり、我々の身分は隠しておく必要がある。
そうだな……我々は香辛料を取り扱うヴェネツィアの商人と言うことにでもしておこうか。
エジプトやトルコを行き来しているヴェネツィア商人であれば、別に怪しまれることはあるまい。
ここまで決めておけば、安心して異国への旅へと出発することができるな。
……もしここを見ている諸君のなかで、エジプト行きへの同行を
希望する者がいるなら、遠慮なく私の元まで申し出るがいい。
あまり多くを連れて行くわけには行かないが、なるべく希望は聞き入れるつもりだ。
- 145 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/12 19:01
- >>143(続き)
それで、外遊の次は現実の話に戻るわけか………
確かにヨーロッパの列強が率いる兵力は、オスマン帝国ほどではないにしても
イタリアの都市国家が対抗できるような数ではない。
この私にしたところで、現在動員できる兵の数は1万2千がせいぜい……
全兵力をかき集めても、フランスやローマ皇帝と対抗することは無理だ。
このことについては、他の国にしても同じことが言える。
イタリアの中で強国とされている、ヴェネツィアやフィレンツェにしたところで
状況は変わらないし、その他の弱小国家に至ってはもはや話にさえならぬ状態……
……現状では、イタリアのどの国家も単独で列強と争うことは不可能なのだ。
仮にどこかの列強と事を構えるとなれば、必ず別の強国と手を結ぶ必要がある……
強い味方を獲得することなしに、強敵と争うわけにはいかない。
勿論イタリアを統一してしまえば、こんな心配をする必要はなくなるわけだが……
………私としたことが、らしくもない弱音を吐いてしまったな。
- 146 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/13 18:14
- ごきげんよう、諸君………現在私は、エジプト行きに向けてヴェネツィアに滞在している。
……ここでアレクサンドリア行きの船を手配し、全ての準備が整うのを待っているところだ。
ヴェネツィアを訪れるのは初めてだが、ここは噂にたがわぬ繁栄ぶりだな……
- 147 名前:名無し客:03/10/13 21:10
- あれ?
- 148 名前:名無し客:03/10/13 21:12
- 失礼いたしました。公爵さま。
ところで本当にご旅行にお行きになられますので?
ご身分が知られたら御身に危険が及ぶやも。
そもそも、法王さまにはお話しになられましたので?
- 149 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/13 21:59
- どうも書き込みの途中で、障害に巻き込まれたらしくてね……
先ほど私が書き込んだ>>145は、全てを書き終える前に途切れてしまった。
この次で>>148への返事と共に、先ほどの内容の全てを
今一度書き込むつもりだが、果たして上手くいくことか……
- 150 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/13 22:02
- 書き込みの障害があったのは、>>145ではなく>>146であったな…では改めて今一度。
ごきげんよう、諸君………現在私は、エジプト行きに向けてヴェネツィアに滞在している。
……ここでアレクサンドリア行きの船を手配し、全ての準備が整うのを待っているところだ。
ヴェネツィアを訪れるのは初めてだが、ここは噂にたがわぬ繁栄ぶりだな……
ここの波止場はトルコやギリシア、それからアフリカにシリアと地中海各国を行き来する船で
賑わっており、その中には勿論エジプトへと向かう船も多数含まれている。
地中海が世界の全てだった時代に比べれば、さすがにその繁栄にも少し陰りが
見えているようだが、それでも地中海で最も栄えている都市であることには違いない。
>>148
旅の危険性というものは、十分承知している…まして、この私が旅をするのだから尚更だ。
私は現在、ヴェネツィアのホテル「イギリス女王館」に逗留しているが、
ここではフランス王に仕えるさる貴族ということで偽名を使っている。
さすがに私がヴェネツィアにいると知れたら、色々と面倒が起こるからな……
もしかしたら、ヴェネツィアの十人委員会辺りが既に嗅ぎつけているかも知れん。
その意味では、このヴェネツィアも安全とはいえないだろうからな、
船出の段になれば、今度はまた別の名前を使うことになるはずだ。
今回の旅だが、父上には「イスラム諸国の敵情視察」ということで了解を得た。
いくら何でも、単なる物見遊山目的の旅を父上が許されるはずはないし
私自身、何も考えずにただぶらぶら過ごすのはどうも性に合わないのでね……
エジプトを一通り見終わったら、時間に余裕のある限りトルコやロードス島、
それにギリシアも見て回ろうかと思っている……時間が許せばの話だが。
- 151 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/13 22:15
- …ここで、これから我々が向かう予定のエジプトの現状について、少し語ることにしようか。
ピラミッドに象徴される古代文明の時代からローマ帝国による統治を経た後、
アラブ人によってこの地がイスラム世界の影響下に入ってから800年……
幾つかの王朝の変遷を経て、現在は「マムルーク朝」のスルタンによって支配されている。
この王朝はその名に「マムルーク(白人奴隷)」を冠するとおり、
トルコやギリシアから買い集められた軍人奴隷のマムルークが国を牛耳っていて、
代々のスルタンもマムルークの実力者から選ばれることが多いようだ。
ちなみに、この王朝を開いた初代スルタンのシャジャル・アッドゥルは、
イスラム世界で唯一の女性君主として知られている。
このマムルーク朝は、シリアに侵攻したタタール軍を破って勇名を馳せた
5代目スルタンのバイバルス(1223-1277)の代に、タタールに滅ぼされたアッバース朝の
カリフを迎え、イスラム世界における宗教的権威を高めることで全盛期を迎えた。
しかしその後は、地中海全域に渡るペストの流行や外敵の侵入、
それに支配階級であるマムルークの横暴によって今や国は衰退の一途……
後発のオスマン帝国によって、いつ国を奪われてもおかしくない状態だ。
ギリシア・ローマ時代には、この国の中心は地中海沿岸のアレクサンドリアにあったが
969年にシーア派系イスラム王朝のファーティマ朝によってカイロが建設され、
現在ではエジプトの政治的中心はこのカイロに移っている。
古代には学術の中心として名を馳せたアレクサンドリアも、貿易都市としての地位は健在で、
主にヴェネツィアの商人たちがこの地を拠点に活躍している。
……ヴェネツィア商人といえば、彼らがアレクサンドリアから
聖マルコの遺骨を持ち帰り、自分たちの守護聖人としたという話が有名だな。
- 152 名前:名無し客:03/10/13 23:01
- 「孫子」と「韓非子」についてどう思われますか?
- 153 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/14 21:01
- ……アレクサンドリアへ向かう船をようやく見つけることができたのだが、
色々と面倒な手続があって出航まであと2、3日はかかるらしい……
それまで我々一行は、今しばらくヴェネツィアに滞在し続ける予定だ。
それで、このヴェネツィアはヨーロッパ中の数多くの書籍が集まることで知られており
ローマ教会で発禁処分とされた本も、ここでなら容易に手に入れることができる。
……噂では、ヴェネツィアには東方の書物も少なからずもたらされているとか。
その大半はアラビア起源の物であるようだが、中にはもっと東の
キタイ国で書かれた本も売られていたりするのであろうか………
- 154 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/14 21:01
- >>152
……彼らはいずれも、古代のキタイ国で活躍した人物であったな。
孫子はその著書を通じて兵を動かすに当たっての心得を説き、
韓非子は法の整備による国内統治の確立を主張したと聞いている。
私から見れば、いずれも特段変わったことを言っているようにも見えないがね……
彼らが説いているのは、為政者であれば誰でも知っていて当然のごく当たり前のことに過ぎない。
だが古代のキタイ国は、その当たり前のことすら考えることもできない状況に
あったことも忘れてはならないだろう…彼らが生きたのは、打ち続く戦乱と外敵の侵入に
常に脅かされ、社会のあり方を抜本的に問い直す思想が求められていた時代だ。
そのような時代であったからこそ、孫子や韓非子の説く思想は革新的であり、
政治や軍事のあり方を根本から再編しなおすだけの衝撃を兼ね備えていたのだ……
……それは、現代におけるマキアヴェッリの説く政治論にしても同じことが言えよう。
彼の思想は今を生きる人間にとっては衝撃が大きすぎる面もあるかもしれんが、
今後何百年・何千年も経てば、古代のキタイ国の思想がそうであったのと同様に、
誰もが知っていて当然の考えとして受け止められるようになるはずだ………
…しかし現在のイタリアを見回すと、この国がかつてのキタイ国と良く似通った
状況であることが痛いほど良く分かる……古い権威が崩れ去っていく一方で
矮小な僭主たちが己の利益追求のみに奔走し、国は理不尽と混乱を極めるばかりだ。
こんな時代だからこそ、時代を変える新たな思想を生み出すために
天は私やニッコロ・マキアヴェッリのような者を遣わしたのかもしれないな。
- 155 名前:名無し客:03/10/14 23:48
- チェーザレさま。ヴェネッツイアには観光産業と言う物があるとか。
ロードスの騎士団あたりには貴方様の顔を知っている者がいるかもしれませんね。
この時代、オリンポスの神々を讃えたアクロポリスはどうなっているのでしょうね。
- 156 名前:名無し客:03/10/15 09:24
- 「蒼天航路」の曹操について何か一言。
- 157 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/15 21:48
- どうも昨日から頭が痛むな…まさか先年患ったフランス病が今頃になって………?
いや、そんなはずはない……あの病ならば、とうの昔に癒えているはずだ。
きっと、慣れないヴェネツィアに疲れて体調を崩しただけのことだろう。
しかし、近場のヴェネツィアへ足を伸ばしただけでこんな有様では、
この先気候の厳しいエジプトでどうなることか、先が思いやられる………
>>155
うむ……聖地エルサレムへ向かう巡礼者の集う街として知られるヴェネツィアには、
彼らを相手にした観光産業という物が発達している。
巡礼客たちの宿の斡旋や旅に必要な物品の販売に始まり、エルサレム行きの船の手配や
現地における雑多な手続の代行に至るまで様々な事業を、国が率先して進めているのだ。
…もしも外国人である君がヴェネツィアの街中を歩けば、見知らぬ二人組の男に
「何かお役に立つことは?」と声をかけられることもあるだろう。
だが別に怪しむことはない……彼らはこれから聖地へ向かう君のために
必要な旅の準備とアドバイスを、きっと懇切丁寧に進めてくれるはずだ。
この観光のエキスパートたちは、「トロマーリオ」と呼ばれるれっきとした
ヴェネツィア共和国の役人で、言ってみれば国お抱えのツアー・ガイドといったところだ。
- 158 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/15 21:48
- >>155(続き)
それで聖地巡礼の旅に出ると、状況にもよるがロードス島に立ち寄ることがある。
ロードス島には島の支配者である聖ヨハネ騎士団が運営する病院があって、
旅の途中で病気になった巡礼客はここで治療を受けることができるのだ。
聖ヨハネ騎士団の構成員たちは剣を手にとって異教徒と戦うだけでなく、
巡礼者たちを治療する医術にも長じている者が多い。
……この「キリストの蛇たち」の構成メンバーはフランスやスペインを始め
ヨーロッパの各国からまんべんなく集まっていて、勿論イタリア出身の者も数多く含まれている。
イタリア出身の騎士には、コロンナ家やオルシーニ家といった私とは
何かと因縁深い家や、メディチ家のようにローマ法王庁と深い関係を持つ家の出身者も
少なからずいるというから、彼らの中には私の顔を知っている者もいるかもしれんな。
聖地巡礼が流行する一方で、キリスト教のせいで歴史の隅に押しやられ
すっかり忘れ去られてしまったのがギリシアのアクロポリスだ。
聞くところによれば、現在彼の地はオスマン帝国の管理下にあって
あのパルテノン神殿も、トルコ陸軍の火薬貯蔵庫として使われているとか……
しかし、あのような古すぎる建物に火薬など貯めておいて本当に大丈夫なのだろうか?
万に一つでも砲弾を撃ち込まれたら、パルテノンどころか
アクロポリス全体が瓦礫の山と化すことは間違いないところだが………
- 159 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/15 22:22
- >>156
曹操という人物については以前も触れたことがあるが、この作品における彼は
単なる悪役として矮小化されているのではなく、己の信じるもののためには
いかなる悪名も恐れずひたすら覇道に邁進し、これまでの常識では
推し量ることの不可能な型破りの男……といった形で描かれているようだな。
世の中を根底から覆そうとする者は、大抵の場合世間から「悪」のレッテルを貼られるものだが
真に世を変えることのできる革新的な人間は、そのような世評など気にはしないものだ。
……それは、当時における絶対的な思想であった孔子の教えに対する
彼の考え方からも読み取ることができるだろう。
自分の覇道にとって障害となるのであれば、「儒」の考えを排斥することすら厭わない。
例えそれが絶対的な真理であり、その教えを排斥することで
どのような非難を被ることになろうとも、それが人の営みや国の発展を
阻害するのであれば排除しなければならぬ……全く同感だ。
「儒」は彼にとって敵なのかと問われた時の曹操の答えを、「キリスト」に置き換えたら………
それはそのまま、キリスト教に対する私の考えになる。
私もキリストの教えが人の心を正しく導く限りは、決してそれを否定しない。
だが、もしキリストが人を縛りつけ国の再生を阻むのであれば………
……私にとってキリストは除くべき障害となるであろう。
- 160 名前:名無し客:03/10/15 23:08
- ガレー船に乗ってクルージング?
公爵さま。船酔いにはご注意ですよ。
- 161 名前:名無し客:03/10/16 00:25
- 公は信仰に対していささか過激なお考えをお持ちのようですな。
宗教は本性悪なる人間を矯正せんがための枷でありもってなんらかの束縛を人に
課すは必定、ともいえましょう。人の心を正しく導くのと人を縛りつけるのと、
神の御名の前では大差ありますまい(苦笑)
それとも…公はキリストに取って代わるお積りかな?
- 162 名前:名無し客:03/10/16 13:36
- あっても読みたくない歴史上有名人物の著書
を教えてください。
- 163 名前:名無し客:03/10/16 13:38
- …ゴバーク○| ̄|_
>>162は無視してください。
あっても読みたくないイタリアあたりの有名人(時代は問いません)の著書
を教えてください。
- 164 名前:名無し客:03/10/16 18:06
- チンコが大きいとなにか良いことありますか?
- 165 名前:名無し客:03/10/16 19:08
- 簡単な質問に答えるだけで武力・知力・政治力などを
100点満点で採点してくれるページです。
イタリアを席巻した閣下の能力値はどのくらいですか?
「あなたの能力、ステータス化します」
ttp://bom-ba-ye.com/c.cgi?takiy=1
- 166 名前:名無し客:03/10/16 23:09
- お珍しい。ロマーニャ公爵が謁見にお見えにならないとは。
諸国の外交使臣たちが至急の報告書をまとめていますぞ。
- 167 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/16 23:55
- ………昨日の頭痛の原因は、フランス病ではなくただの風邪ということだった。
…それにしても、たかが風邪如きで血を抜き取るとは……医師も大袈裟なことをする。
医師によれば、少し安静にしていれば直ぐに良くなるとの事であったが、
それまではヴェネツィアで足止めだ……船出も予定より数日遅れることになろう。
……という訳で>>160以下の諸君、君たちの質問には明日以降必ず答えるので
済まないがそれまでの間、少し待っていて欲しい………
…それからミケロット、至急父上の下へ早馬を送ってくれ……
………私がちょっとでも姿を見せぬだけで、要らざる憶測が流れてはまずいからな。
- 168 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/18 00:38
- >>160
うむ……どんなに強靭な者であっても、一月以上もガレー船に揺られていれば
一度や二度は必ず船酔いに罹り、気分を悪くするのだという。
外洋に比べればまだ安全な地中海でも、決して時化や嵐と無縁ではないからな。
旅の世話をしてくれているトロマーリオの話では、長い航海を乗り切るには
気分が悪くなった際に吐き戻すための小さなタライと
酔い止め用の薬である生姜入りシロップが絶対に欠かせないのだそうだ。
船酔いも心配だが、それ以上に気を付けなければならないのが疫病だ………
万に一つでも船内でペストやコレラが流行したら、我々に助かる術はない。
例え流行までとはいかずとも、もし乗船者の誰かがこういった病を
船に持ち込めば、それだけで我々は不利益を被ることになるだろう……
どこの港も、病気持ちの船など歓迎するはずがないのだから。
妙な流行り病に罹らぬよう、私も今のうちに身体を整えておかなければ……
- 169 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/18 00:45
- >>161
君は何か勘違いをしているようだな……それとも私の言い方が舌足らずだったかな?
少なくとも私は、信仰そのものを否定した覚えはないし
ましてや自分が神にとって代わろうなどとつまらん妄想を抱いたこともない。
悪なる人間を正しい方向へと導く、宗教の目的自体を間違ったこととは思わないし、
そのためなら人を厳しく統制していくことも必要ではあろう。
まあ、時には宗教の決まりごとを金科玉条の如く守ることを信仰と考えて
端から見れば滑稽としか言い様のない生活を送る、困った輩もいるが……
他の者や社会に迷惑をかけぬ限りは、わが国内でどんなにおかしな宗教が
出現しようが別に取り締まるつもりもないし、何かを信じるだけで救われた気分に
なれるのであれば、神だろうと路傍の石だろうと好きなだけ信じ縋ればいい。
……私が心底許せないのは、人を幸福に導くというその本来のあり方を忘れ
ただうわべだけの形に凝り固まった宗教が、あたかも自分たちだけが
世界の正義であるかのごとく振舞い、世俗世界の発展を阻害することだ。
キリスト教が支配したこの1000年で、どれだけヨーロッパが豊かになったと言えるか?
……1000年前と比べて、殆ど何も変わっていないではないか。
人々は相変わらず悪魔だ地獄だといった下らないまやかしに脅え、
どこの国もトルコやインドに比べれば、呆れるほどの貧しさに喘いでいる……
これが、信仰がその本質をどこかに置き忘れ、化石の如く硬直した結果だ。
信仰や宗教が人を幸福に導く限りは、私は何も言うつもりはない。
だが堕落しきった宗教が人や国を不幸のどん底に追いやるのであれば、
最早それは取り除くべき障害に他ならない…それが私の真意だ。
うむ………この考えは、やはり少々過激に過ぎるかな………
ジパングのセニョール・ノブナガあたりなら、同意してくれそうな気もするが。
- 170 名前:名無し客:03/10/18 18:11
- 確かに。公のおっしゃるとおり神の名の下に閉塞した感があります。
御父君は、歴代教皇の中でも話の分かるお方として著名でございます。
公は、信仰の悪しき呪縛から解き放たれておいでですね。
公が法王の三重冠をいだくことが可能ならば、新しい地平をも開けたでしょうに。
- 171 名前:ワグナス ◆.SEVENzs72 :03/10/18 19:47
- (腕と足が蝶の羽となった青年がゆっくりと降下してくる)
失礼する。私は七英雄の一人、ワグナスだ。
・・・・・・あなた方ならこの質問にどう答えるか、私としても興味がありますよ。
我々は「同化の法」でこの肉体を手に入れたのだが、
本来の「同化の法」は『新しい肉体に魂を馴染ませる』・・・・・・
つまりは新しい肉体に魂を移し変える事によって、不死となる技術だ。
さらに私達の応用版「同化の法」と組み合わせれば
保存された「本体」が無事なら殺されてもまた肉体のスペアを作る事によって……
と、本来の「同化の法」の欠点を克服する完全な「不死」となるだろう。
これは、私が見た夢の話だ。
…
……
………
…………
私達は今の時代の人間にその「同化の法」を伝えるべきかどうかを討論していた。
剣を背負った青髪の青年・・・・・・
ノエルは、かつて同志を集めようとした時と同じ雰囲気で熱弁を振るう。
「人間は愚かではありません。
この力を手に入れても私達のようにはならない筈です」
美しいが、どこか危うい雰囲気の少女・・・・・・
ロックブーケはかつて私達が英雄と呼ばれていた頃に見せていた、凛とした表情をする。
「……英雄は、悲しむ者をより少なくするために動くべき。
同化の法が伝われば、悲しむ者は少なくなる筈です」
下半身が烏賊の触手となっている青年・・・・・・
スービエは彼の潜む氷海と同じ程冷たい表情を浮かべる。
「今を生きる者以外が技術を伝えるのはルール違反だ。
人間達には自分達の足で我々の技術にまでたどり着いてもらおう、不死を望むのなら」
足が尾のようになっていて、空中に浮かぶ男・・・・・・
クジンシーは、人間の愚かさを知っているから嘲笑う。
「今の人間が、同化の法をまともに扱えるとは思えない。
きっと愚かな行いに使い、破滅を迎えるだろう」
自分自身の3倍近くの大きさの人形を従えた小柄な老人・・・・・・
ボクオーンは悪知恵ではなく、思慮を巡らす顔で呟く。
「死の定めから逃れる存在は本来なら許されるものではない。
この術を持つのは私達を最後にすべきだろう」
巨獣と大鬼で構成されたケンタウロス・・・・・・
ダンターグは無関心を隠さずに言い放つ。
「とりあえずやってみろ。失敗したらそれまでの事。
人間は数千年経っても馬鹿が治っていなかった。ただそれだけだ」
そして皆が私の意見を求めた時、私はこの夢から覚めた。
…………
………
……
…
もし、貴方(達)が私であったなら、
伝えるか、伝えないか……どちらに付くか、
そしてできる事ならその理由と、誰の意見に一番賛同出来るかを書いて欲しい。
- 172 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/18 22:47
- >>162-163
あっても読みたくない「イタリアあたりの有名人」の著書ね………
ミラノ公イル・モーロの処世術入門とか、わが弟ホアンの兵法解説書とか
カテリーナ・スフォルツァの統治論とか、実際に書かれたとしても
何の説得力も持たぬであろう本ならいくらでも思いつくが………
「絶対に読みたくない」本を晒し上げるとしたら、次の2冊ということになるかな。
(一人はイタリア人ではなくドイツ人だが……)
フリードリヒ3世著『名君への道』
吝嗇で無力な臆病者でありながら、ハンガリー王を始めとする強敵の自滅に救われて
50年以上の永きに渡り位を保持し続けた、神聖ローマ皇帝のフリードリヒ3世。
この乱世で、無事に終わりを全うできたという点だけは評価できるが
ろくに国政の舵を取ることもなく、日々借金取りの追及に四苦八苦し
戦となれば真っ先に逃げ出していた、君主としてはどうしようもない男だ……
当然のことながら、周囲の諸侯や領民からは常に蔑まれ、嘲笑され続けてきた。
こんなぐうたら皇帝が、理想的な君主のあり方を説くなどジョーク以外の何者でもない。
ジロラーモ・サヴォナローラ著『心頭滅却すれば火もまた涼し』
その狂信的な神権政治でフィレンツェを混乱の極みへと追いやった、
ドミニコ会修道士にしてサン・マルコ修道院長のサヴォナローラ。
この男の転落のきっかけは、敵対する修道士の挑発に乗って
燃え盛る炎に身を投じて神の加護を問う、「火の審判」による勝負に応じたことだった
この時彼は何を血迷ったのか、自分は勝負から逃げて弟子を送り込んだだけでなく、
その弟子も炎の中に入ろうとしなかったために、市民の支持は急降下………
言行不一致の似非預言者として、弟子共々火あぶりの刑に処せられた。
処刑の際、サヴォナローラとその一党は毅然と火刑台に登ったと言うが、
それほど立派に死ねるのならば、最初からさっさと炎をくぐれば良かったものを……
- 173 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/18 22:49
- >>164
フフフ……君は私にそのようなことを確認して貰わねばならぬほど、
己の一物に自信が持てないのかね?
…それともフランス病のせいで、まともに物事を考えることもできないのか?
おっと失礼……私としたことが、君の立場も考えずとんだ失言を吐いてしまったな……
君にフランス病などと言ったところで、何のことかさっぱり分からなかったであろう。
君がそのような病を患うだけの甲斐性の持ち主であれば、
このような質問の答えなど誰に聞かずとも、最初から分かるものだからな………
>>165
何やら良く分からぬが、ここに出ている質問に答えていけばいいのだな……
………その結果は、下に記してあるとおりだ。
チェーザレ・ボルジアさんの能力をステータス化すると…、
武力 89 、 知力 91 、 政治力 92 、 魅力 82 、
野望度 15 、 義理度 1 、 冷静度 6 、 勇猛度 6 、
寿命 5 、 相性 0 、
(武力、知力、政治力、魅力の最高値は100)
(野望度、義理度の最高値は15)
(冷静度、勇猛度、寿命の最高値は7)
武力・知力・政治力・魅力のいずれも高いのは……まあ当然の結果だろう。
これらの能力のいずれも欠けては、新たな国づくりなど不可能であるのだからな。
強いてあげれば、魅力が他に比べて若干劣るようだが………
配下の傭兵隊長に造反されたことを考えれば、これは止むを得ないことか。
…しかし、野望度が高い数値であることは予測していたが
まさか最高点を取ることになるとはね……誰も考えなかったイタリア統一を
志すぐらいなのだから、野望もそれだけ高くなるということだな。
逆に義理度は、落第どころか最低点となっているが………
この乱世は己が生き残るかどうかが全てだ、義理など通用しない。
だから、義理度で最低点を獲得しようと別に構いやしないさ……
恩知らずと謗られようが、最後に国が栄えて民が富めばそれでいいのだから。
- 174 名前:名無し客:03/10/19 18:00
- あなたにとって○○とは何ですか?
という質問をされて一番答えにくい○○を教えてください。
- 175 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/19 21:42
- >>166
やれやれ……数日居城を外しただけで、このような騒ぎになろうとは……
いよいよ明日はヴェネツィアから船出だというのに、
この分では私が死んだだの何だのと、ありもしない噂が広まりかねん。
今回の件に関しては、父に無事を伝えてはいるが
長い間私が領国にいないとなれば、周辺諸国も不審に思うことであろう。
私が不在の間、無用の憶測を抱かせぬために
ここは居城に影武者を置いておく必要があるかもしれないな………
…それは兎も角、ようやく船の準備が整い我々はエジプトへ出航の運びとなった。
ヴェネツィアからアレクサンドリアまでは、何事も起こらなければ
海路を辿っておよそ一月半の旅程となるようだが……
船内での一月半というのは、想像するよりも早く流れていくものだ。
気が付いたらあっという間に地中海を越えて、
次に返事を書くときはアレクサンドリアからになるかもしれんな……
…万が一、嵐に遭遇したり海賊に襲われたりしたらそうは行かないだろうが。
- 176 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/19 21:42
- >>170
法王の三重冠か……如何にそれを望もうとも、私が庶子である限り
「聖ペテロの玉座」に座ることはできなかったからな……
どんなに父に強い政治力があっても、私を枢機卿の地位に据えるまでが限界で
カトリックの教理がある限り、それ以上の出世は絶対に無理だった。
それゆえに私は枢機卿の緋衣を脱ぎ捨て、世俗での成功に賭けたわけだが……
仮に枢機卿を辞めずに教会に残ったとしても、形骸化した教理と
古臭い慣習に縛られて、私は閉塞感の中で悶々と余生を過ごしていただけだろう。
しかしこの世の中で、真の意味での信仰に目覚めている者がどれほどいるものか……
滑稽なまやかしや聖書にも載っていない決まりごとに縛られ
つまらない生活をすることが、信仰そのものと勘違いしている者の多いこと……
これでは、かつてキリストが糾弾したパリサイ人たちと何ら変わりないではないか。
そんな者たちに比べれば、教会の権威や聖職者の義務を軽視して憚らぬその裏で
心底では神への畏敬を失わずにいる父の方が、よほど潔いというものだ。
あの父上がそんなことを真剣に考えているだなんて、君たちにはとても
信じられないかもしれないが、要はうわべの形式よりも心から神を信じているかが、
信仰にとっては重要と言うことだ………父上の例は、少々極端かも知れないがね。
…………私はどうだったかだって?
神に救いを求めてもいなければ来世の存在を信じてもいないこの私が、
そのようなことを初めから気にかけたりするはずがないだろう………
私はただ、現世の目標に向けて邁進するだけさ。
- 177 名前:名無し客:03/10/20 02:39
- 公は地上の野望を弄び天上の清浄を愛でるお方のようですな。
いやはや…そのようなお方にはなるほど煉獄が似つかわしいのかもしれません。
しかし大方の世人は今日を安穏に暮らせればそれでよろしい。野心も卑劣も敬虔も、
ほどほどであることを好むものです。
そのような者等の目から見れば公は危険極まりない怪物のように見えるでしょう。
願わくば公よ、世人の風評にお気をつけなされ…
何はともあれ、よい風に恵まれんことを。。。
- 178 名前:名無し客:03/10/20 22:07
- ラグーザ共和国ってのもありましたよね。
- 179 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/20 22:14
- ごきげんよう、諸君……色々とあったが、我々の一行はようやく
ヴェネツィアを出航し、現在アドリア海を南へ向けて進んでいる。
我々を乗せた船はダルマツィア地方の幾つかの港に立ち寄った後、
ギリシアのコルフ島からクレタ、キプロスを経て、アレクサンドリアへと向かう予定だ……
その後はアレクサンドリアとカイロを拠点に、エジプトの情勢を
調べつつ古代の遺跡を見て回ろうと考えている。
さて…今のところ嵐もなく船は順調に進んでいるが………
>>171 ワグナス
答えるまでもないこと……私ならば、その術は断じて伝えない。
いかなる人間であろうとも、死と無縁でいることはできないし
また死が避けえないものであるからこそ、人は生きることの意味を真剣に考え、
自分が生きていたことの証を立てようとするのだ。
無論、死や老いを如何にして遠ざけるかということについては
考えることもあろうが、それも死が避けられぬという前提あってのことだ。
もし人間が永久に死ぬことがなければ、人は生きることの価値や意味はおろか
今直面する問題さえ真面目に考えなくなってしまうだろう……
…溜まっている仕事があるが今片付ける必要はない、どうせ自分は
永久に生き続けるのだから100年後か1000年後、あるいはもっと後でも
気が向いたときにやればいい…誰が文句をつけようが、俺がその仕事を
しないからといって飢えることも死ぬことも絶対にないのだから………
そして、100年後や1000年後にも同じことを考え、嫌なことや面倒なことは
永久にたらい回しにしたっていい………などと言い出す怠け者が蔓延して、
この世は働くこともなければ考えることもない、堕落した人間だらけになってしまうはずだ。
そしてもし私にその術が使えるとすれば、私がイタリア統一に邁進することもあるまい。
今イタリア制覇の事業を急がなくても、自分が生きている限りは
必ずそれを成し遂げる機会はある、政治や戦争などという仕事は面倒だから
何千年か何万年後に回したっていい、寝ていてもどうせいつかはヴェネツィアも
フィレンツェもナポリも私に跪くのだから…………ということになるのは必定だ。
これほど人間性を腐らせてまで、不死となることに一体何の価値があると言えるのだ?
ということで、件の6人が出した意見の中で私が賛同できるのは、
ボクオーンとやらの意見ということになるだろう。
自然の摂理に逆らってまで不死を手に入れることなど許されることではないし、
人は必ず死ぬからこそ自分の人生を良くしようと努力するものなのだ。
- 180 名前:ワグナス ◆.SEVENzs72 :03/10/20 23:15
- >>179
確かに……。我々は自分達を追放した者達への復讐の為に
数千年を生きてきましたが、
そういった目的も無しに永遠の命を得ても腐るだけなのかも知れません。
しかし、あなたほどの人物なら「これが終ったら次はこれだ」と
どんどん野望を膨らませていけるものだと思うのですが……。
それでは、あなたの意見は大事に保存させていただきましょう。
- 181 名前:名無し客:03/10/21 22:12
- 落ちつきのない性格で、何事も長続きしない毎日です。
こんな私ですが、何か向いている仕事はありますでしょうか。
- 182 名前:名無し客:03/10/21 23:01
- 海賊が来たら大変だ。
- 183 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/21 23:20
- >>174
答えにくい………と言えば、私が経験したことのない未来の出来事や
遥か東のキタイ国やジパングの物事を聞かれると、
返答に困ることが多いのだが……それでは君の質問に対する答えにはなるまい。
実際これまでこの手の質問が出る度に、答えを得るためにわざわざ部下を
ヴェネツィアやアレクサンドリアまで派遣しなければならず、時間も金もかかって
仕様がなかったのだが…東洋のことはともかく、なぜ未来の出来事が
彼の地に行けば分かるのか、それを聞かれても返答に窮するのだけれどね。
随分話が脱線してしまったな……私が「それが何か」と問われて
返事に詰まるものといえば……父上やルクレツィア、弟ホアンやホフレ、それに母上……
…つまり「ボルジア家」の存在そのものが、私にとっては最も答え難いものだ。
私とホアンとの間に浅からぬ溝が存在していたことからも分かるように、
私にとって家族は決して一枚岩の運命共同体という訳ではない。
しかしボルジア家が他の国家や組織と同様に、私の野望達成のために
単に利用するためだけの存在かと聞かれれば、それも違う………
兄として、政略結婚に振り回されているルクレツィアのことはいつでも案じているし
法王として日頃ただならぬ苦労をされている父上のことも心配だ。
父が存命でいる限りは、できるだけ助けになってやりたいと思っている……
そしてそれは、単に息子として親を案ずる気持ちだけでなく
私の夢、イタリア統一の野望達成のためからでもある……それも疑いのない事実だ。
私にとって家族は何ぞやと問われれば、なかなか確たる答えを見つけられないもの
であるし、また逆に如何様にも答えを引き出すことのできるものでもある……
それ故に、私にとってこれは非常に答えにくいものであると言えるだろう。
- 184 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/21 23:21
- >>177
世に大いなる志を抱けば抱くほど、人からは異質な存在と見られるものだ。
ましてや、そのためにはいかなる手段をも厭わないというのであれば
世の者にとっては理解不能で、空恐ろしげな怪物にしか見えないことであろう。
その場限りでは悪辣な手段であったかもしれないが、後世から見れば正しいことであった……
と言えるのは、あくまでも歴史を後から振り返ることのできる者だけだ。
今を生きる者たちにとっては、私は狡猾で残忍極まりない悪魔の化身、
あるいは聖書に出てくる怪物リヴァイアサンの化身にしか見えないことであろう。
まあそう思われても、私個人としては別にどうと言うことはないがね……
鬼と呪いたければ呪えばいいし、悪魔と謗りたければ謗ればいい。
例え世の者たちからいかなる非難を浴びることになろうとも、イタリア平定は
いかなる手段を持ってしてでもやり遂げるべき、わが生涯を賭けた野望だ。
そのためには、何を言われようともいかなる障害を仕掛けられることになろうとも、
私はこの道を逆戻りするわけには行かない……前進あるのみだ。
…だが私個人としてはともかく、私に係る風評によってロマーニャ公国が
立ち行かなくなってしまっては、それは確かに問題であろう……
先に私が言ったこととは矛盾するかもしれないが、その意味で世の者の
悪評を買うことになるのは得策ではない。
純粋に政治の域の話で言えば、国家を円滑に運営していくためには
なるべくなら衆人の憎しみを買わない方がいい……
君の忠告は、しっかりと受け止めることにしよう。
幸いなことに現在は風も順調だし、これまでの所は心配された海賊との遭遇もない………
この分なら、予定より早くエジプトにつくことになるかも知れんな。
異国からの便りを、楽しみにしているがいい。
- 185 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/22 23:18
- >>178
最近伸張の著しい、ダルマツィアの都市国家のことか………
スラヴ人の間では、この街は「ドゥブロヴニク」と言う名で通っているのだが。
ラグーザ共和国は地中海貿易を巡ってヴェネツィアとライヴァル関係にあるが、
海外交易が国の根幹を為し、商業貴族が国政を牛耳るなど
その国のあり方はヴェネツィアとかなり似通っている部分があるようだな
この国はもともとビザンツ帝国の保護下にあったが、1204年の第4回十字軍で
コンスタンティノープルが陥落するとヴェネツィアの支配を受けるようになり、
その後14世紀にヴェネツィアとハンガリーとの間で争いが生じると、
これを利用して自立し、本格的に地中海進出に乗り出すようになった。
…さらにオスマン帝国が台頭すると、朝貢と引き換えに自己の貿易特権を
認めさせるなど、その外交センスの高さはイタリア人でさえ舌を巻くほどだ。
この街も、昔は皮革製品や奴隷ぐらいしか商う物がなかったなかったそうだが
13世紀にセルビアの各地で鉱山が発見されるようになってからは
セルビア産の銀・銅・鉛といった鉱物資源の輸出を一手に引き受けるようになり
それを機にヨーロッパ各国との関係が一挙に深まることになった……
近頃ではオスマン帝国とヨーロッパの双方から安全を保証された中立国としての
立場を大いに利用し、地中海貿易で大きな利益を上げているとか。
我々の船も明日か明後日の内には、ラグーザに入港する予定だ。
聞くところでは、この街はその豊かさを反映して
ヴェネツィアにも劣らぬほどの美しさを誇っているそうだな………
- 186 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/22 23:18
- >>180 ワグナス
うむ……人はいつか必ず死ぬ、それは何を持ってしても避けようがない。
だからこそ人は、せめてその限りある人生を良く生きたいと願うものだし、
さらに世に志を抱く者は、自らの生を他よりも価値あるものにしたいと尽力するのだ……
私が、イタリアをこの手に収めることを生涯の宿願としているように。
もしも人が永遠の生命を得れば、このような目的は何も意味を為さなくなり
誰もが腐敗し堕落した生活を送るに違いない……
しかし、もし不死の力を得た者がその堕落に打ち勝つだけの強い精神を持っていれば
貴方の言うように新たな野望に邁進し続けることは可能かも知れん。
だが、常に何かしらの目的を持ち続けることができたとしても
次から次へと野望を膨らませ、それを達成し尽くしてしまえば
そのうち何もやることがなくなって……結局は涸れてしまうものではないか?
イタリアを支配したら次はヨーロッパ、ヨーロッパも手中に治めれば
次はアジアやアフリカ、果ては世界全体……
と野望は果てることなく続いてもそのはけ口たる世界は決して無限ではない……
いつかは行き着く所まで行き着いて、世界の全てを征服し尽くしてしまえば
やがて他と同じように無為に時を過ごすようになり、結局は腐ってしまうだろう。
そのような立場になれば、死んだ後に天国や地獄まで征服する……
などということも出来なくなってしまうのだからね。
- 187 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/22 23:18
- >>181
うむ、それは困ったことだな……どのような仕事を為すにも、
落ち着きと忍耐がなければ大成することは難しい。
国王や諸侯のように国を治め導いていく仕事であればなおのこと、
百姓や商人をするにも、根気がなければとてもやり抜くことはできまい。
君のように飽きっぽくては、修道士となることも困難であろうし……
さて、どのような仕事であれば君に向いているだろうか……
…そうだな……君のような性格でもできそうな仕事といえば……
もし君が体力に自信があるなら、思い切って「傭兵」になるというのはどうであろうな?
これは冷静な判断力が要求される武将と違って、何も考えずに
ただ戦場で槍を振るうだけの仕事だし、仕事が長続きできないといっても
傭兵として雇われるのはせいぜい戦のあるときだけだ……君のように落ち着きと
忍耐のない性格でも、この傭兵稼業ならば何とか物になるかもしれないぞ。
…もっとも私は、現在傭兵の雇用を行ってはいないので、就職の口を探すなら
フランス王か神聖ローマ皇帝か、どこか他所を当たって欲しいがね。
- 188 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/22 23:19
- >>182
そうだな……海賊に襲われたが最後、手持ちの財産を全て奪われるだけでなく
我々の身柄そのものも奴隷商人に売り飛ばされてしまう。
特にヴェネツィアの商船は、政治的な理由やら何やらで
他国の船に比べて海賊に狙われやすいのでね……尚更用心は必要だろう。
陸上であれば奴らを蹴散らすことなど造作もないが、ここは海の上…連中の庭場だ。
できることなら、海賊たちとは出くわさずに済ませたいものだな。
地中海を荒らす海賊どもは、主としてイスラム系の連中が多いのだが
外にもジェノヴァやロードス島の船が、国家公認の下で海賊行為を働いている……
特にロードス島を支配する聖ヨハネ騎士団にとって、海賊行為は財政の基幹を為す
重要な事業だからな…彼らは病院経営と同じぐらいの情熱で海賊稼業に取り組み、
トルコやオスマン帝国と誼を通じるヴェネツィアの船を容赦なく攻撃している。
ちなみに現在私たちが船を進めているアドリア海東岸……
ダルマツィア地方も、伝統的に海賊の多いところとしてよく知られている。
このあたりは島や入り江が多いので、航海に適しているだけでなく
海賊どもが身を隠すのにも最適な場所というわけだ……
ヴァイキングたちの故郷である北欧と似たようなものだな。
- 189 名前:名無し客:03/10/23 22:46
- 潮風が心地好いですか? 草原で馬を駆るようには行きませんな。
ヴァイキングと言えばノルマン人たちはヴェネツィア人以上の航海をなし
とげたのか。ナポリやシチリアの国を築いたのも彼らですね。なのに両国とも
海軍力はトホホな代物。グリーンランドやアイスランドと言ったゲルマンの神々
が住まう地まで切り開いた先祖と比べても。
- 190 名前:名無し客:03/10/25 02:09
- ふふふ。
本当に不老不死というものが得られるなら、肉体も精神も人間とは違うものになるであろうに。
- 191 名前:名無し客:03/10/25 08:47
- 公爵さまは、船の上では何をなさっておいでですか?
- 192 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/25 21:50
- >>189
今日ラグーザに入港して、数日振りに陸に上がったのだが………
不思議なもので、別に船酔いに苦しんでいるわけでもないのに
何日もの間船に揺られていると、次第に大地の感覚……
特に馬を自在に駆っている時の、あの興奮や愉悦感が恋しくなってくる。
どんなに爽快な潮風も、馬上で感じる風には敵わない……
所詮私は、陸上で生きる人間なのかもしれないな。
…海上が庭場のヴェネツィア人たちなら、全く逆のことを言うかもしれないが。
しかしそのヴェネツィア人も、かつて外洋を我が物顔で駆け抜けたヴァイキング…
そしてその子孫であるノルマン人の行動力には舌を巻くしかないだろう。
ヴェネツィアの活動範囲が地中海地域を脱しなかったのに比べて、
ノルマン人たちは北海やバルト海は言うに及ばず、外洋を渡ってアイスランドや
グリーンランド、更にその先の「野生の葡萄のなる地」にまで足を伸ばしていたのだから。
そんな彼らにしてみれば、ジブラルタル海峡を渡って地中海まで
進出することなど、赤子の手を捻るよりも容易いことであったに違いない。
- 193 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/25 21:50
- >>189
その余勢を駆って、ナポリとシチリアに勢力基盤を築いたノルマン人が、
12世紀の前半にシチリア王国を建設したわけだが……
振り返って見れば君が指摘するとおり、現在のナポリやシチリアには
かつてのヴァイキングの面影と呼べる強大な海軍力は備わっていない。
これはこの国からノルマン王家の血筋が断絶した後で、彼の地の支配権を巡って
フランスのアンジュー家とスペインのアラゴン家が相争う中で、
ナポリとシチリアからノルマン色が薄れてしまったせいだろうか……
いずれにしても現在のナポリとシチリアは、アンジュー家の継承権を
主張するフランス王とアラゴン家の本家筋に当たるスペイン王の
草刈場と化し、アラゴン家出身のナポリ王も追い出される始末……
もはやノルマンのノの字を探すことすら困難な状態だ。
もっともフランス王もスペイン王も、かつてのノルマン人の如く
彼の地に新たなる世界を築くつもりは毛頭ないようで、あの分では
遅かれ早かれナポリ人やシチリア人に叩き出されるのがオチだろうが……
- 194 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/25 21:51
- >>190
肉体も精神も人間と異なる存在と化してまで、不老不死の力を得る意味が
あるとは思えないが…永遠の命を得る代わりに人間性を失うなど、私なら御免被るね。
例え不老不死を得ることができたとしても、その姿がギリシア神話に登場する
怪物の如きおぞましいもので、人間らしさの代わりに身に纏うのがろくに考えることも
感じることもできない獣の精神では、有難味も何もあったものではなかろう。
君は不老不死の力を得れば、同時に肉体や心も今まで以上に優れたものになると
考えているのかもしれないが……そんな美味い話、存在するわけがない。
人智を超える能力を身に付けるのであれば、何らかの形でツケを払うことになるはずだ。
まあ中には、獣と化してでも永遠に生き続けたいと願う輩もいるかもしれないが……
人間でなくなってまで不老不死となることに、一体何の価値があるといえるのだ?
- 195 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/25 21:53
- >>191
普段はミケロットや他の連れの者と会話を交わし、カード遊びに興じているか
そうでなければヴェネツィアで買った本を読んでいることが多い。
天気が良く風も穏やかな日は、甲板に出て身体を動かすようにしているのだが
狭い船の上では、なかなか陸上のようなわけにはいかないな……
後は、この船に同乗している他の客と何気ない話を交わすこともよくある。
彼らは皆、我々が香辛料の取引でアレクサンドリアへ向かう商人だと
信じきっているようだ……まさかこの船にヴァレンティーノ公爵の一行が
乗り込んでいるなどと知ったら、彼らはどう思うことだろうな。
彼らは何度も東方を行き来しているらしく、トルコやエジプト、さらにその東の
インドの事情についても割と詳細な話を聞くことができる……
例えば、先年ヴァスコ・ダ・ガマ率いるポルトガルの艦隊が喜望峰周りで
インドに到達して以来、ポルトガルが相当あこぎなやり方でインドの
香辛料市場の独占を図り、そのとばっちりを受けてエジプトとヴェネツィアの市場で
胡椒の価格が信じられないぐらい高騰し、共に大損害を被っているとか……
あるいは、エジプトのスルタンが密かにヴェネツィアの協力を得て
ポルトガルを叩く大艦隊を編成したが、紅海でポルトガル艦隊に大敗を喫したとか。
はたまた、事態を打開するためにヴェネツィア政府がスルタンに対して
スエズ地峡に大運河を掘削することを持ちかけているらしいとか……
こうして話を聞く限りでは、ポルトガルが直接インドから胡椒を仕入れるルートを
開いたことで、これまではヴェネツィアやジェノヴァといった地中海諸国が中心だった
ヨーロッパの海外交易も、大きくその様相を変えていくことになりそうだ。
今後ますますその力を増していくであろうスペインやポルトガルに対して
ヴェネツィアやエジプト、それにオスマン帝国はどう対抗していくつもりなのだろうか?
この船に同乗しているヴェネツィア商人は皆一様に、新興国のポルトガルに対して
異様なほどピリピリしている様子ではあるがね………
- 196 名前:名無し客:03/10/26 16:11
- 中国の歴史上の思想家、政治家、軍人の中で、
登用、あるいは対話したいと思う人物はおりますか?
- 197 名前:名無し客:03/10/26 17:04
- ポルトガルですか。ヴェネツィアの繁栄に比べてイマイチ、リスボンの都は
華やかさに欠けていると言いますが、お魚をたくさん食べる所は海洋国家
らしいですね。エスパーニャとポルトガルとで世界分割をしたのは、つい先年
のことですし。御父君もこの分割協定で、両国政府から多額のご寄付を・・・。
おっと、口が滑りました。
- 198 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/26 20:51
- >>196
キタイ国から登用………となると、これは難しい問題だ。
如何に優れた軍人や政治家であっても、キタイ国と同じような働きを
ヨーロッパで期待できるかどうかは分からないし、仮に登用するとしても
実際にその人物に会って人となりをよく確かめなければなるまい……
世評を鵜呑みにして安易に登用した結果、どんなに才覚はあっても
配下としては使い物にならず、結局大火傷を負う破目になることも考えられるからな。
例えば、既にここで何度か話題に出ている1,300年前の「曹操」なる者にしても、
その才能が著しく卓越していることは間違いないが、私が彼を部下として
使いこなせるかどうかとなれば…彼に会ったことがない以上、それは全く分からない。
…もっとも、彼は人の下で使われて満足するタイプの人間ではないようだがね。
その一方で、時代や立場を対話してみたいキタイの人物は、
名前を挙げればキリがない……件の曹操とも話してみたいし、
極貧の身から皇帝にのし上がった、キタイ国の現王朝の始祖である
「朱元璋」という者の話にも大いに興味があるところだ。
それから、「司馬遷」という歴史家とも対話を交わしてみたいと思っている。
彼はギリシアのポリビウスが『歴史』でローマの歴史を記したのと
ほぼ時を同じくして、キタイ国の歴史を書き記した者だということだが……
彼の考える歴史観が西洋のそれとどのように違うのか、ぜひとも知りたいものだ。
- 199 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/26 20:52
- >>197
確かにポルトガルは、これまでの歴史でさほど目立つ国ではなかったからな……
レコンキスタにおいても、カスティリヤやアラゴンの後塵を拝しがちで
どちらかといえば日陰の存在に甘んじている部分は否めなかった。
この国が脚光を浴びるようになったのは、エンリケ航海王子によって、
アフリカ西岸の探検事業が推進されるようになってからだ。
さらに国王ジョアン2世がエンリケの事業を引き継ぎ、バルトロメウ・ディアスの
喜望峰到達やヴァスコ・ダ・ガマのインド航路開拓といった探検航海の成功によって、
西のはずれの小国に過ぎなかったポルトガルに莫大な富が集まることになった。
近頃はリスボンもインドから胡椒を満載した船でやけに賑わって、
ヴェネツィアの繁栄を追い抜くのも遠い日のことではないと言われるぐらいだ。
一方のスペインも、ポルトガルに対抗して西回りのインド航路開拓を進めているが
彼らが大きな期待を寄せて送り出したコロンブスが到達したのは、
君たちも知ってのとおりインドとは全く別の新世界だった。
そこには胡椒も丁子もなく、ただ貧しい暮らしを送る裸の現地人しかいないという有様で、
スペイン王はすっかり拍子抜け……噂では、彼の地を更に奥深く進めば
その先には豊富な黄金や銀に彩られた文明が存在するということらしいが、
果たして今後ここからどのような富が得られるかは……まだ何とも言えぬところだ。
しかし、ポルトガルはスペインがいつ新大陸を越えてインドに到達するのか
気が気でなかった様子で、スペインが西回りのインド航路を見つける以前に
自らの利権を確保する必要があると感じ、法王である父に取り成しを依頼したのだ。
それで父上の裁定により大西洋を挟んで東はポルトガル、
西はスペインの勢力圏とする内容の協定が結ばれたのだが……
君の言うとおり、この時父の元には両国から相当な額の付け届けがあったようだ。
…もっとも、ポルトガルはこの時の協定の内容に不満があったようで、
両国間でトルデシリャス条約を締結して新たな勢力圏の引きなおしを行い、
結果として父の定めた境界線は全て反故にされてしまったのだけれどね。
- 200 名前:名無し客:03/10/27 22:47
- エジプトは暑いでしょうな。
- 201 名前:名無し客:03/10/28 00:36
- 公爵さま!隠密のご外遊を聞きつけたカテリーナ・スフォルツァ夫人の残党どもが
閣下の暗殺を企てているとの報が入りました。
身辺くれぐれもご用心くださいませ!
- 202 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/28 22:09
- >>200
うむ……同じエジプトでも、アレクサンドリアを中心とする地中海沿岸は
ローマやヴェネツィアに似て比較的穏やかなようだが、
マムルーク朝の都があるカイロや内陸の砂漠地帯では、
鋭い日光と乾いた熱風が容赦なく身体を突き刺すと聞いている。
特に5月から9月にかけての夏の暑さは尋常ではなく、どんなに屈強な者でも
直射日光の下にいれば、じっと座っているだけで激しい疲労を覚えるという。
幸いにも夏が終わり、これからは少しずつ暑さも凌ぎやすくなっていくようだが……
逆に冬になると今度は気温の移り変わりが激しくなり、急に寒くなったり
暑くなったりして、ヴェネツィア人を始めとする外国人は閉口しているそうだ。
更に冬から夏の季節の変わり目に当たる3月から4月にかけては、
ハムシーンとかいう砂嵐が頻繁に巻き起こり、遺跡を訪れてそのまま遭難する者もいるとか。
……それを考えると、暑さも和らぎ砂嵐の心配もない今こそが
エジプトを訪れるのには最も良い時期なのであろうな。
- 203 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/28 22:16
- >>201
やれやれ……コルフ島から船に乗り合わせた客の中で、
やけに目付きの悪い男たちがいると思ったら、そういうことだったのか……
ただでさえこの船には女っ気が全くないというのに、その上このように
むさ苦しい暗殺者どもと同じ船の中で時を過ごすことになろうとは……
どうせ狙われるなら、カテリーナ本人に付き纏われたかったものだが。
とは言っても、彼女は現在カステル・サンタンジェロの地下牢に幽閉の身だ。
わが兵たちの厳重な警備を破って、脱獄するはずもないか……
しかし、私の生命を狙っている輩をこのまま捨て置くわけにも行かないな……
この船に留まっているうちは、連中も大っぴらに行動を起こすことは考え難いが
一度エジプトに上陸して、奴らの動きを見失うようなことがあったら………
見知らぬ異国では、いくらミケロットたちでも連中を捕捉することは容易ではない。
やはり今のうちに、刺客を消す必要があるな……災いは芽の内に摘むのが鉄則だ。
まずは同行しているミケロットたちに、刺客の動きを監視させるか……
長いこと船内に押し込められていれば、そのうち奴らにも油断や隙が生じるはずだ。
連中に隙ができたら、一挙に連中を一網打尽にする……その時が勝負だ。
妙な面倒に巻き込まれないよう、できるだけ隠密裏に事を運ぶ必要があるが……
ご苦労であった……君も引き続き、暗殺者たちの監視を続けてくれ。
奴らを消し去った暁には、相応の報酬を約束しよう。
- 204 名前:名無し客:03/10/28 22:16
- スルタンとかカリフとか、イスラム教の人々はややこしいです。
が、カトリックの法王と正教会の総大主教の違いを説明するのも
難しいでしょう。今は公爵様はどのあたりにお出でかな。
- 205 名前:名無し客:03/10/28 22:54
- 公爵は、美貌と才知それから野心をも兼ね備えた女性(も)このまれるようですが、
私が挙げるこの3人の女性についてどう思いますか。
パルミラ女王のゼノビア
キエフ公国摂政のオリガ
武周皇帝の則天武后
つーか、ぶっちゃけ、一番寝所を共にしてみたいと思うのはこの三人の内、誰です?
私は三人ともご遠慮願いたい所ですが・・・
- 206 名前:205:03/10/28 22:58
- あー、変で読みづらい改行お詫び申し上げます。
- 207 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/28 23:34
- >>204
我々の船は、アドリア海を抜け出てようやくギリシアに入ったところだ。
つい先刻コルフ島を出航し、現在はクレタ島へ向かっている。
今のところ船は順調に動いているが……船内の様子はいま私が述べたとおりだ。
まさか私の外遊の話が漏れていたとはね…この件は父上とミケロットを始めとする
ごく数人の側近以外には、誰にも知らせてなかったはずなのだが。
ちなみに「スルタン」と「カリフ」の違いだが、カリフがイスラム世界全体の
指導者であるのに対して、スルタンはカリフによって
世俗世界の支配権を認められた者のことを差すのだ。
元々カリフはムハンマドの後継者として選挙によって選ばれていたのだが、
ムハンマドの甥に当たる4代目カリフのアリーを殺してカリフの位を
奪ったウマイヤ朝、さらにそのウマイヤ朝を滅ぼしたアッバース朝と
時代が進むに連れて、世襲の君主としての色合いが強まっていった。
しかしカリフの支配も9世紀ごろに入ると次第に緩みだし、エジプトやペルシアには
カリフの主権から独立した王朝が次々と誕生するようになった。
そんな中で中央アジアからマムルーク(軍人奴隷)としてイスラム世界に
流入するようになったトルコ人の勢力が次第に拡大し、彼らが11世紀に
セルジューク朝を建国し、イスラム世界の主導権を握るようになると
アッバース朝のカリフはセルジューク・トルコの君主に支配者を意味する
「スルタン」の称号を与え、世俗世界の支配権を認めるようになったわけだ。
その後はエジプトやインドでもイスラム世界の君主はスルタンを名乗るようになり、
現在の地中海世界では、アナトリアからバルカン半島に勢力を広げたオスマン帝国と
エジプトのマムルーク朝が2大スルタン国として知られている。
他方でカリフの権力は失墜の一途を辿り、遂に1258年タタールの軍勢が
イスラム世界の都であったバグダッドを占領……アッバース朝は滅亡した。
その後、アッバース家のカリフはマムルーク朝のスルタンに保護されて現在も僅かに
その命脈を保っているが…実質的にはスルタンのお飾り以上の存在意義はない。
- 208 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/28 23:34
- >>204(続き)
それから、カトリックのローマ法王とコンスタンティノープルの総大主教の違いだが……
本質的には、両者の地位に大きな違いはなかったはずだ。
というのも、元々キリスト教にはローマとコンスタンティノープルの外に
エルサレム・アンティオキア・アレクサンドリアと合わせて
5つの総主教座(五本山)が存在し、これらの教会の地位は対等であったのだ。
やがて西ローマ帝国が滅亡し、エルサレム・アンティオキア・アレクサンドリアの3都市が
いずれもイスラム教徒の手に落ちていく中で、フランク王国の後ろ盾を得た
ローマ・カトリック教会とビザンツ帝国の保護を受けたコンスタンティノープルの
ギリシア正教会が力を伸ばし、キリスト教世界を二分するようになった。
特にローマは、キリストの有力使徒であったペテロとパウロの殉教の地であったことから
ローマ教会の司教はペテロの後継者として尊敬を集めるようになり、
「法王(正確には「教皇」と呼ぶべきか…)」と呼ばれるまでにその権威は高まったのだ。
その後、ビザンツ帝国の聖像禁止令やら何やらで次第に正教会との関係を
悪化させていったカトリック教会は、それに対抗してフランク王国との関係を強化し
800年に法王レオ3世がシャルルマーニュを「ローマ皇帝」に据えたことで
完全にビザンツ皇帝から独立した地位を勝ち取るようになった。
その後の封建社会の成立において、カトリック教会と法王が精神的権威を強め
やがてその権力が世俗世界の君主を上回るようになったのは、君たちも知ってのとおりだ。
一方でコンスタンティノープルの総主教座は、ビザンツ皇帝の支配下に留まり
カトリック教会とは異なる独自の権威を確立していったが……
ローマ法王とギリシア正教会の総大主教には、ひとつだけ異なる点がある。
それは、ローマ法王が紛れもないカトリック教会の首長であり、
その権威が世俗の君主をも凌駕する者であったのに対し、ギリシア正教会の
総大主教はあくまでも正教会の首長たるビザンツ皇帝に従う存在で
その権威が皇帝の権力を超えることはなかったという事実だ。
従って、ビザンツ帝国が衰えオスマン帝国が台頭するようになると
それだけギリシア正教会の権威も弱まってくるようになった。
ついには、正教会の中でカトリックに吸収される形の統合も止む無しと
考える者も出てきたようだが…結局それは、1453年にオスマン帝国が
コンスタンティノープルを陥落させたことによって、実現を見ないまま終わった。
その後、コンスタンティノープルの総主教座はオスマン帝国の保護下で、現在も存続しているが……
イスラム教徒の支配の下では、活動も思うようには進まないようだな。
- 209 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/29 22:08
- >>205-206
………ふむ、この3人の中で一番閨を共に過ごしたい者か。
クレオパトラの末裔を自称し、大国ローマ相手に一歩も引かず
最後まで戦い抜き、栄光と共に滅んだパルミラの女王ゼノビアに、
知恵と豪腕を巧みに使いこなして夫亡き後の国内の混乱を鎮め、
後のキエフ公国隆盛の基礎を築いたオリガ公妃……
それに権謀術数の限りを尽してキタイ国でただ一人の女帝に上り詰め、
その後は仏教の教えを背景とした国内統治を進めた則天武后と……
……いずれも美貌と知性に満ちた、男勝りの女傑揃いだな。
さて、この中で誰を我が側に迎えるかだが……
哲学者と学を論じるだけの知性と自ら馬を駆って兵を叱咤激励する勇気を兼ね備え、
堂々とした立居振舞で国民を魅了したゼノビアも捨て難いし、
齢70を過ぎてなお、その容色に衰えを見せなかったと言われる
則天武后も、ある意味興味深いところではあるが………
私は敢えて、キエフ公と結婚する前のオリガを選ばせて貰おう。
キエフ公が初めてオリガに出会った時、彼女は青年に身間違えられるほどの
男装に身を包んでいたが、それがかえって美しさを引き立てていたという。
オリガに心惹かれたキエフ公は、早速不躾な言葉で口説こうと試みたが
彼女は毅然とした態度でこれを拒絶し、この時は公も引き下がった。
しかし公は、オリガのことがどうしても忘れられず
やがて正式に彼女に求婚して、二人はめでたく結ばれたということだ。
若き日のオリガ公妃の様な、凛とした男装の麗人を夜の相手とするのも
なかなか良いものであろう……まして、一度は拒絶されても
どうしても諦めきれないほどの美貌の持ち主であれば尚更だ。
- 210 名前:名無し客:03/10/29 23:41
- 公爵様は何語が得意ですか?
- 211 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/30 22:00
- >>210
部下や領民との日常的な会話や戦の指揮、それに行政文書の発行に当たっては
イタリア語を使っているが、父上やルクレツィアを始めとする家族や
ごく親しい者との間では、ヴァレンシア訛りのスペイン語で話をしている。
つまり私の得意……というより、日常慣れ親しんでいる言語はその二つということになるな。
それから、宮廷人や聖職者にとっての国際語であるラテン語も大学時代に
学んだが、これは特別自慢するほど得意というわけではない。
ヨーロッパの王侯は、大抵自らの母国語の外に教養語であるラテン語を習得していることが
多いので、異なる国の王同士が顔を合わせても意思の疎通を欠く場面はまずない。
しかし、神聖ローマ皇帝のように自らの領内で異なる言語を使う複数の民族を支配する
君主となると、領内の統治に当たっては母国語とラテン語だけでは到底追いつかない……
このような君主にとって、使いこなせる言語は多ければ多いに越したことはないと言えよう。
…事実、現在の皇帝であるマクシミリアン1世はドイツの外にブルゴーニュ地方を
自らの支配圏に収めていることもあって、母国語のドイツ語とラテン語の外に
彼の地の言語であるフラマン語とフランス語も流暢に話すことができるそうだ。
私も、イタリア一国を統一するだけなら今のままでも問題はないと思うが
将来ヨーロッパ全土を狙うとなると、イタリア語やスペイン語…それに幾ばくかの
ラテン語だけでは、間違いなく支配に苦労することであろう……
ヨーロッパの全ての言語を完璧に習得するのはさすがに無理があるが、
せめて主要各国の言葉だけでも覚えておいた方がいいかもしれん。
まずは妻やフランス王との関係から、フランス語だけでも学ぶことにしようか……
もっとも現在の旅においては、トルコ語やアラブ語を覚えた方が便利ではあろうが。
- 212 名前:オーベルシュタイン ◆rEH0G3hTlI :03/10/30 22:09
- 妹君が海陵庶人陛下のスレでいささか・・・活発な言動をしておられます。
頭痛薬をいただきたい。
まぁ、閣下の妹御でいらっしゃるのであまり心配はないでしょうが・・・
ところで公よ。先日、日本という辺境の国の民が枢機卿に任ぜられたが、
教会の実力者として一言。ついでと言ってはなんだが・・・卿は真実、神
を信じておられるのか?神聖なるべきキリスト教会と父法王を徹底的に
利用しておられたようだが。もちろん、公の行動は正統的なものだったと
思うが・・・
- 213 名前:名無し客:03/10/30 22:29
- 銀河帝国の軍務尚書閣下だ。2ちゃんキャラネタ板にも
別の軍務尚書がいるなあ。
公爵様。欧州の高等教育機関では、ラテン語とギリシア語が必修と
聞きました。確かに君主自らがいくつもの言語を使いこなせると、
部下たちにも緊張感が溢れるでしょうね。
・・・何を言っているかわかりますものね。
- 214 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/31 20:19
- >>212 オーベルシュタイン
ルクレツィアが海陵庶人殿のスレで活発な言動………何が起きたというのかね?
………なるほど、そのようなことが……婿殿までもが色を失って逃げ出すとは………
ルクレツィアよ、お前は一体どうしてしまったというのだ………?
私に何か不満があるなら、面と向かってはっきり言ってくれれば良いものを………
それほど私の妹に対する接し方は、間違っていたのであろうか………?
貴殿もそのように真っ青な顔をして……その様子では確かに頭痛薬が必要であろう。
頭痛薬ならば我が居城の薬室にいくらでもあるので、好きなだけ
持っていっても構わぬが………済まないが、妹も言っているとおり
私にはそれ以上の補償はできかねるので、どうか悪く思わないで欲しい。
……この分では、まだまだ私の下に頭痛薬を求める者が現れかねないな。
ところで話は変わるが、ジパングから枢機卿が出るというのは…これは未来の出来事であろうか?
現在のローマ教会にはジパング出身の聖職者がいるわけでもないし、
どこかの宣教師がジパングまで布教に向かったという話もないのだからな。
しかし未来のことはよく分からぬが、我々の時代における法王庁では、
いかなる国の出身者であろうとイタリア人以外はなかなか歓迎されないものだ。
父上もスペイン人であるとの理由だけで、周囲から何かと目の敵にされてきたからな……
事実、現在でもスペイン人の法王である父の存在を面白く思わず、
ローヴェレ枢機卿のように隙あらば父を失脚させようと狙っている者も少なくない。
時代が変わればそこまで極端な話にはならないかもしれんが、
未来のヴァティカンでもその手の嫉妬や敵意と決して無縁であるとは言えないだろう。
そのような中で己の立場を確立するのは容易ではあるまいが、遠いジパングから
枢機卿の栄誉を受けることになったのだから、その名に恥じぬ活躍を
期待したいものだな……例え外国人でも誰もが認めるような業績を残し、あるいは卓越した
学識を示すことができれば、父のように法王に選ばれることも決して不可能ではない。
せっかく枢機卿に選ばれたのであるから、どうせならば更にその上を
狙ってみてはどうであろうかね………彼にそこまでの意欲があればだが。
- 215 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/31 20:19
- >>212 オーベルシュタイン(続き)
それともう一つの質問、「私が真に神を信じているか」についてだが………
貴殿も察しのとおり、私にとって神とは「己が野望を実現するための方便」に過ぎない。
それはローマ法王庁、そして父についてさえも同じ事が言えよう。
例え神やキリスト教が神聖にして犯すべからざるものであろうと、
現実に存在するカトリック教会やローマ法王が絶大な権力を握り、
しかも自分が現在それを利用し得る立場にあるのならば、利用しない手はないさ……
昔よりは衰えたとはいえ、ヴァティカンの権力は未だ絶大なものであるし
何よりここには莫大な富が集積している……野望達成のためにこれを使わぬ手はないし、
私が教会軍総司令官の地位にある以上、それは当然認められる権利だ。
同じく父上のことは優れた政治家として尊敬して止まないし
また良き手本ともしているが、そのことと父の存在を利用することとはまた別の話……
地上における神の代理人として、絶対的な権威を認められた父の存在を
後ろ盾とすることはイタリアにおける私の立場を極めて有利にすることであるし、
そのような優位を得ていながらそれを利用せず、幸運の女神が
差し伸べた手を払い除けて己を苦境に追いやるなど、実に愚かなことだ。
それにしても……イタリアへ戻ったら、一度ルクレツィアとよく話し合う必要があるな………
- 216 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/10/31 21:47
- >>213
ラテン語もギリシア語も、ヨーロッパの大学では必要不可欠な言語だ。
私が学んだピサ大学を含めて、大学の講義はラテン語で行われるのが普通であるし
また大学における最も重要な学問とされている神学を学ぶに当たっては、
新約聖書を記した言語であるギリシア語の知識が欠かすことができない。
大学で必ずしもラテン語やギリシア語を極める必要はないが、少なくともこれらの言語を
知らなければ、どんなに修めたい学問があってもその入り口に立つことすら叶うまい……
そんな理由もあって、学生は学びたくもない言語をわざわざ学ばなければならんのだ。
しかし、どんなにラテン語やギリシア語を学びたくなくても、君主や政治家………
何より外交官にとっては、これらの言語を知らなければ話にならない。
先にも述べたとおり、ラテン語はヨーロッパ諸国にとっての国際共通語とも呼べる
言語であるし、ギリシア語はかつてのビザンツ帝国の公用語だ……
現在でも東欧諸国ではギリシア語が国際語として通用するし、ビザンツ帝国に取って代わった
オスマン帝国と何らかのやり取りをする場合も、ギリシア語が使われる機会が多い。
何しろスルタンの側近として使える大臣や高級官僚には、純血のトルコ人よりも
ギリシアやマケドニア系の奴隷出身者の方が圧倒的に多いぐらいだからな。
それからこれも先に述べたことだが、複数の民族を抱える君主はラテン語や
ギリシア語以外にも、国内の事情を良く知るためには
自国内で使われている言語はできるだけ知っていた方が良い。
各民族の言葉に通じていれば、通訳や翻訳などといった面倒を介することなく
彼らが何を考えているかが分かり、効率的な統治を行うことができるからな。
君主によっては、国内で使われている雑多な言語を排して単一の国語を強制する
ことを考えている者もいるかもしれんが、これは君主に絶対的な権力がなければ
不可能なことである上に、例えこれを実現しえたとしてもそれぞれの民族が
これまで使っていた言語を、そう易々と捨てられるものではあるまい………
そのようなことで反乱を起こされるぐらいなら、君主が多くの言語を
覚えた方がよほど楽に国を治めることができるというものだ。
- 217 名前:名無し客:03/11/02 10:33
- 緋の衣を纏ったこともある閣下にお尋ねするのも、あれですが
超自然的な現象は本当にあるとお思いですか?
閣下の向かわれている地のひとつ、エジプトも古代のファラオ
たち想いが宿っていそうです・・・。
「我が眠りを妨げる者は誰だ誰だ誰だ・・・」
- 218 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/02 20:40
- >>217
ファラオの墓を暴いた者が呪いで死んだだの、山奥で天使の姿を見ただの、
死んだはずのジャンヌ・ダルクが甦っただのという話はしばしば耳にするが………
その大半は人々の恐怖や願望が生み出した、一種の幻想なのではないか?
超常現象とされる物事の全てがインチキやデタラメだと断言もできないが、
こうした現象の実在を客観的に裏付ける証拠はこれまで何一つとして
発見されていないし、私自身もこうした場面に一度も立ち会ったことがない以上、
自然の摂理を超えた現象が実際に起きるかどうかについては何とも言えないな。
そういえば数年前、ヴァティカンの法王宮に雷が落ちて父上が頭に
怪我をされたことがあったのだが……信仰心に厚い者たちは、
法王にあるまじき行動ばかりしている父に対して、天罰が下ったのだと噂していたな。
まあ、あれは父の破滅を願う彼らの願望に、偶然が重なっただけのことだろうが……
それはともかく、もし目指すエジプトにファラオの呪いなどというものが
実際にあるとするならば、それは我々一行ではなく私の命を狙っている
痴れ者に的中してもらいたいが……そのようなことは期待するだけ無駄か。
そんな妄想に耽る暇があるぐらいなら、さっさと暗殺者どもを片付ける
方法を考えなくては……そろそろ船もクレタ島に着くことだしな。
いっそのこと連中をクレタの伝説に伝わる迷宮に閉じ込めて、
そこに住まう「ミノタウロス」とか言う怪物の餌食に……と、これも下らん妄想だな。
- 219 名前:光を嫌う者:03/11/02 22:55
- 永遠の命など望まぬ者チェーザレとはお前か…
ならばどうだ、お前の望むとおりイタリアをくれてやろう。
いや、イタリアばかりではない。この世界をくれてやろう。
昔、私がカナーンの荒野で会った痩せて襤褸を纏っていたあの男は
私の誘いを断ったが、遠い先には私のこの誘いにのる者も出てくる。
ブラウナウの貧相な伍長殿にすぎないその者に私は約束どおり
ヨーロッパをくれてやった…
チェーザレ、お前にもその栄光をくれてやろう。
お前の野心が私は好きだ。統一の美名をかざして殺戮をほしいままにする
その優雅なる冷酷を私は愛でる。
さあ…チェーザレよ、一言でよい。
いや言葉など要らぬ…ただ頷くだけでよい…
そうすればお前の望みを叶えてやろう…
- 220 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/03 18:03
- >>219 光を嫌う者
ほう……それでは世界を渡す代償として、お前は私に何を望むというのだ?
私の魂でもお望みかね?それとも仮初の夢から覚めた後、
私が絶望に打ちひしがれながら破滅する光景でも見たいとでも言うのか?
………実に下らん…………悪魔だか何だか知らんが、
私にとってそのような誘惑は、耳に入れる価値すらない。
私にとってイタリア統一の野望とは、己の存在意義を世に証明するために
己自身の手で成し遂げるべきものだ……例えお前が神であろうと
悪魔であろうと、我が野望に他者が介入する余地などどこにもない。
第一他者の力を借りてイタリア統一が成ったとしても、何の面白みもないし
結局はその他者にいつまで経っても頭を下げ続けるだけではないか。
それがフランス王やスペイン王であろうと、神や悪魔であろうと………
他者に頭を下げた結果として得た望みなど、どこに価値があるものか。
イタリアもヨーロッパも、自力で切り従えることにこそ意味があるのだ……
お前如きの甘言に易々と引っ掛かるどこぞの伍長とこの私を、一緒にされては困る。
それに第一、私は神の実在を信じないのと同様に悪魔の存在もまた信じてはいない。
悪魔のささやきなどというが、私にしてみればそのようなものは
自力で何事かを為すことのできない弱者の、言い訳や自己弁護に過ぎん。
という訳で、私を誘惑したところで無意味だ……大人しく立ち去るがいい。
もしその気がないなら………ミケロット、ナルド、それにタッデオ…この誇大妄想狂を
私の命を狙う痴れ者共々エーゲ海に突き落として、その目を覚まさせてやれ。
- 221 名前:名無し客:03/11/04 21:20
- 古代ローマの水道橋は閣下の時代でも新鮮な水を各地で給水しているとか。
閣下の偉業も、ローマの栄光のように輝かんことを。
- 222 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/05 21:16
- >>221
ローマの水道については、以前にも一度触れたことがあったが……
そう、現在でも古代ローマ時代に築かれた水道の中には
現在でも脈々と流れを湛え、各地に水を供給しているものがある。
西ローマ帝国が滅んだ後の538年、蛮族がローマに侵入した際に
ビザンツ帝国軍によって古代の水道はその殆ど全てが閉鎖され、
あるいは破壊されてしまった……だが水道の中には中世の長い時を経て
死から甦り、現在でも古代の恵みを供給し続けているものがあるのだ。
その水道の名は「ヴィルゴ水道」……紀元前19年、アウグストゥス帝の時代に完成したものだ。
この水道は、アウグストゥスの腹心で都市計画の天才と呼ばれた
マルクス・アグリッパによって建設されたもので、最盛期にはローマ市内の
半分をこの水道一本で賄うことができたほどであったという。
他の水道と同様、このヴィルゴ水道も538年の蛮族侵入によって閉鎖され
その後長らく放置されていたのだが、1453年に法王ニコラウス5世の力によって
900年ぶりに復活し、再びローマを潤すようになった…そして現在では、ラテン語の
「ヴィルゴ(処女)」をイタリア語読みにして、この水道は「ヴェルジネ水道」と呼ばれている。
- 223 名前:オーベルシュタイン ◆rEH0G3hTlI :03/11/06 22:35
- 11月9日は衆議院議員総選挙の投票日です。
失礼。混線したようです、ご無礼の段、御寛恕願いたい。
ところで公よ。「選挙」というものはご存知だと思うが、最高権力者を
民の総意で選ぶ、というこの制度(民主主義)にいかなお考えをお持ちか?
卿のように優れた専制支配者から見てやはりお笑い種でしかないのだろうか?
(この場合の選挙はあくまでも「一般大衆によるもの」です)あと、実際にイタリア
の支配者を選ぶ選挙が行われたとして、勝算はいかに?
- 224 名前:名無し客:03/11/06 22:48
- 公爵さま。コンスタンティノープルいや、イスタンブールと言うのでしょうか。
トルコのスルタンが君臨するローマ皇帝の都へは足を伸ばされますか?
- 225 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/07 22:01
- >>223 オーベルシュタイン
「選挙」か………我々の世界における選挙といえば、思い浮かべるのは
コンクラーベ(枢機卿会議)による法王選挙や、7人の選帝侯による皇帝選挙だが………
古代のギリシアでは、アテネをはじめとする各都市国家において
市民の総意で代表者を選ぶ、「民主主義」の制度が確立されていたのだったな。
…とはいっても、この選挙で投票できたのは各国家の市民権を有する
一部の者に限られ、国民の全員が政治に参加できたわけではないのだが。
それはともかく、この制度は民が自ら望む指導者を選ぶことができる反面で、
時として選ばれる者の実力よりうわべだけの評判や甘い文句に捕らわれ、
その結果信じられないほどの無能者を祭り上げることで、破滅を招く危険も大きい。
現にアテネでも、能力・品格共に第一級の人物であったペリクレスの時代は
自他共に認める民主主義の全盛期として繁栄を誇っていたが、
彼の死後ろくでもない煽動政治家たちが国政を壟断するようになると、
たちまちその制度は弱体化の一途を辿り、ついには他の都市国家共々
アレクサンドロス大王という強大な専制君主の前に膝を屈することとなった。
このような事態にならぬためには、指導者を選ぶ側が見た目の人気や調子の良い言葉に
惑わされず、指導者たる者の能力や見識を冷徹に見抜くことが必要であろうが……
イタリアに限らず現在のヨーロッパにおいて、政治教育を受けたわけでもない民に
私やマキアヴェッリのような物の見方ができるとはちょっと考えられん。
それを考えると、現状では民が指導者を選ぶ民主制は夢物語の域を脱することはあるまい。
- 226 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/07 22:03
- >>223 オーベルシュタイン(続き)
遠い将来、各国の民が高い政治意識をごく当たり前のこととして持つようになり、
選ばれる側にも国を治めるに相応しいだけの能力と見識を兼ね備えた人材が
多数輩出されるようになれば、過去の遺物である民主制を甦らせるのも悪くないが……
そこまで民の意識が高まるには、なお数百年の時を必要とすることだろう。
もっとも、どれほど民が高い政治意識を持つようになったとしても
肝心の指導者に人を得ないようでは、せっかく打ち立てた民主主義も
古代ギリシアのように歴史の徒花として消え去ることであろうが………
果たして貴殿の時代において、民主主義とはどのように評価されているのであろうかな?
それで話は変わるが、もし現在の状況下でイタリアの王を全ての民による
選挙で選んだとしたら……私が選ばれるかどうかは民のみぞ知る、といったところだな。
私の支配下にあるロマーニャ公国の民は、私を支持するであろうことは疑いないが……
ミラノやナポリ、それにヴェネツィアの民が私を王として推すとは限るまい。
少なくともヴェネツィアとフィレンツェの支持は諦めた方が良さそうだな………
私が彼の国に、少なからぬ恐怖を振り撒く存在であることは否定できないから。
スフォルツァ家の支配が一掃され、その後フランス王に居座られたミラノと
フランス・スペイン両王にしゃぶり尽くされているナポリについては……
外国の支配に対する不満を利用すれば、私への支持を集めることは可能かもしれん。
もっとも彼らの支持を得るとしたら、弁舌などより力でもって実証した方が
確実であろうし、その方が私らしいとも思うのだがね……
- 227 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/07 22:05
- >>224
確か1453年にコンスタンティノープルがオスマン帝国の手に落ちてからは、
彼の国ではあの街を「イスタンブール」と呼ぶようになったのだそうだな。
コンスタンティノープルへは、エジプトを一通り見て回った後で
時間に余裕ができたら、是非足を伸ばしたいとは思っているのだが……
何といってもあの街は東と西を結ぶ交流地点だからな、
東方に関する情報ならアレクサンドリアよりもあの町の方が豊富であろう。
それに、オスマン帝国が今後ヨーロッパに対してどのような姿勢を
もって臨むのか、それをこの目で実際に確認する必要もある。
スルタンの動向は、私の覇業にも大きく影響する可能性があるからね。
それはさて置き、現在我々はクレタ島の都カンディアに滞在を続けている。
本来であれば今日キプロスへ向けて出航する予定であったのだが、
ロードス島でトルコ海軍と聖ヨハネ騎士団の小競り合いが起き、
その影響で我々の船も出発を見合わせているという次第だ。
このクレタ島から北へ進めば、コンスタンティノープルまでは
ほんの少しなのだが……この分だと、そちらの航路には海賊も辞さない
トルコ船があちこちの海域をうろついていることであろうな。
- 228 名前:名無し客:03/11/08 21:59
- 帝国の軍務尚書殿との民主制談義、興味深く拝聴いたしました。
愚生も一言申してよろしいかな。
民主政治は何かと手間がかかり、しかもかけた手間の分好ましい結果を生む
というわけでないのは今更申すまでもありません。しかしそんな民主政治にも
一つ位はよいところがありましょう。それは民が自分の国を「自分の国」と
思い込めるところであります。
かのギリシアにおいてもエーゲ海に追い落とされて後のないアテネが必死になって
ペルシャに立ち向かい打ち破ることができたのは民主の民が自分の国を守ろうとした
からでありましょう。海洋国家でもあったアテネの民ならばどこへなりと新天地を
求めることもありえたでしょうに。
そもそも民は卑しいもの、自分のものでないものなど本気で守ろうとはいたしません。
国においても然り、自分のものとは思えない国などに命をかける民などはおらぬが
道理というもの。民主政治は民にそうした幻想を抱かせるという点で他に抜きん出て
おりましょう。
そのような国においては市民兵の軍隊でも勇猛果敢に戦うことができましょう。
国を守りなおかつ傭兵を雇う費用も浮くとなれば一石二鳥ではございませんか(苦笑)
公よ、民主国にもご一考あれ。ペリクレスのごとき指導者を目指すのもイタリア統一
の一案かもしれませぬぞ。
もっとも平和が長く続いた民主国の民は緊張を欠き覇気を失って使い物にならなく
なってしまうのは、やはりアテネの例がそれをよく示しているところですが…
- 229 名前:名無し客:03/11/09 03:47
- どんな政治体制も、時が立てば必ず綻びが生じる。
君がしていることも虚しいことではないのかね?
- 230 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/09 15:42
- >>228
民が自分の国を「自分の国」として自覚できる民主制か………
なるほど、民主制の浸透によって国民が誰の強制によるものでもなく自らの意思で
国を守ることができるのであれば、これほど理想的な体制はない。
それは傭兵に頼らない国民軍の編成という、私の考えに合致するところでもある。
イタリアの現状では、民主制を敷くことは制度的に未だ困難ではあるが……
将来民主制を成立させるための下地を今から作り出すことは、決して不可能ではあるまい。
……君の意見は、我が脳裏に留めておくことにしよう。
君たちの中には、私が将来の民主制を容認することで、
ボルジア家の覇権が民によって覆されるのではないかと懸念する者も
いるかも知れないが……私は別に、そうなっても構わないと思っている。
私のイタリア統一の野望は、あくまでも私個人の野望だ………
父には悪いが、私はボルジア家の永続まで望んでいるわけではない。
私が統一を果たした後に、私の子や孫がその無能ゆえに
民によって放逐されることになったとしても、それは仕方のない話だ。
力なき者や愚かな煽動者の支配が長続きしないのは、どんな体制でも同じこと……
もしも私の子孫に国を治める力がなければ遠慮なく追い落とし、取って代わるがいい。
- 231 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/09 15:43
- >>228(続き)
話が脱線したので、話題を元に戻すが…古代における民主政治の優れた指導者たち、
ペリクレスやテミストクレスに共通しているのは、彼らが例え専制国家の君主という
立場にあったとしても、民主制と同様に優れた業績を残しえたであろうことだ。
それは逆に、ローマ帝国のアウグストゥス帝やハドリアヌス帝といった
優れた皇帝たちについても言えること……彼らもまた民主政治の指導者に選ばれたならば、
ペリクレスに劣らぬ……あるいはそれ以上の指導者になっていたかもしれん。
それを考えると、実のところ政治には民主制も専制も関係なく、
ただ「よい政治」と「悪い政治」の二つしかないような気もするのだが……
ペリクレスの時代にアテネが栄えたのは、当時の民主制が「よい政治」の典型で
あったからであろうし、その後ギリシアの民主制国家が衰えていったのは
民主主義が機能不全を起こして「悪い政治」に転落したためではあるまいか?
同様に、ローマの民は彼の地に500年近く続いた共和制が長年のうちに腐敗し
「悪い政治」となっていたことを見抜いたからこそ、アウグストゥスが確立した
帝政に新たな「よい政治」が行われることを期待したのであろう。
もしも将来、ヨーロッパに民主制が再び確立されるとしたら……
それは、専制君主制ではもはや国が抱える如何なる問題を解決することもできず
それに取って代わる新たな「よい政治」が切望されるようになった時ではないだろうか?
まあ私の目から見れば、現状ではどの国も「悪い政治」に蝕まれているとしか考えられないがね……
- 232 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/09 15:44
- >>229
確かにいかなる体制も永続した例はない………それは事実だ。
しかしだからといって、何十年も何百年も先のことを気にして
己の歩みを止めることに、一体何の意味があるというのだ?
自分が関わることもない未来に拘泥して現在己がなすべきことを
放棄するなど、実に愚かな考えではないか………
そのような考えは、己の無力さを省みずただ他人や社会に責任転嫁
することしかできない、負け犬どもの逃げ口上や言い訳に過ぎん。
君もそんなに現世が空しいと感じるなら、俗世とのかかわりなどさっさと断ち切って
アルプス奥地の修道院にでも引きこもり、己の無能を嘆くがいい。
だが、もしそうでないならば……生きているうちに何某かを成し遂げたいと願うなら、
君が死んだ後の未来など考えず現在君が何をしなければならないか、
そのためには君に何が欠けているかをよく考えることだ。
君は知りもしない将来に捕らわれて、己を否定するなど詰まらぬと思わないかね?
- 233 名前:名無し客:03/11/10 22:40
- 公は帽子がお好きですか。
- 234 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/11 22:52
- ロードス島で起きた紛争もどうにか治まって、ようやく船はキプロスへ出航したが……
オスマン帝国と聖ヨハネ騎士団の関係からして、いつまた何が起きるか分からん。
いずれにせよ、妙な悶着に巻き込まれることだけは、勘弁願いたいものだ………
元々ヴェネツィア商船は、トルコ軍にも「キリストの蛇」にも狙われているからな。
>>233
勿論、帽子ならば数も種類も色々と取り揃えている……
服飾にこだわりを持つ者の、当然の嗜みだからな。
枢機卿時代から数多くの帽子を収集し、中にはトルコ式のターバンのような
珍しい物もあるが、私が好んでよく被るのは黒いビロード製のベレー帽さ。
中でも特に気に入っているのは、私が枢機卿の位を捨て、還俗してから
すぐに仕立てさせた、飾りの白い羽根が特徴となっている一品だ。
この黒い羽根付きベレー帽は、還俗して以来いつ如何なる場所でも……
例え戦場でも肌身離さず身に付け、あるいは持ち歩いている。
カテリーナ・スフォルツァを攻めた時も、カプアの凄惨な攻城戦でも
このフランス式の帽子は、常に私を飾り続けてきた。
戦場で黒いベレー帽を見て、私の存在を認めない者はいないぐらいで……
言うなれば、これはヴァレンティーノ公爵である私の身分証明のようなものだ。
もっとも、それ故に私は現在このベレー帽を身に付けていないのだが……
お忍びで旅に出ている上に、暗殺者どもが私の命を虎視眈々と狙っている中で
わざわざ正体を晒す愚を犯すわけにはいかないからな。
そんなわけで、今はヴェネツィア商人が被るごく一般的な帽子を身に付けているが……
あまりにありきたり過ぎて、ファッションとしてはどうも面白みに欠ける。
……エジプトに着いたら、ムスリム風のターバンか頭巾に取り替えるのもいい考えだな。
- 235 名前:オーベルシュタイン ◆rEH0G3hTlI :03/11/13 17:42
- 今さら公にこういったことを聞くのは、あるいは無礼やも知れぬが。
戦略の基本は「戦わずして勝つ!」だが、戦術の基本はなんなのであろうか?
- 236 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/13 22:34
- >>235 オーベルシュタイン
戦術の基本か……私が戦場で常に心掛けているのは、
「必要最小限の力を用いて勝つこと」と「敵の要所を突くこと」、この2点だな。
フランスやスペインと違って、我々には限定された軍事力しかない。
しかも、無駄に戦を長引かせてはこれらの大国の干渉を招く危険も大きい。
そんな中で、対極的な見地からすれば雀の涙ほどの価値もない
些少な成果にこだわり、時間と資源を浪費するなど愚の骨頂だ。
戦争はなるべく短期間のうちに、無駄をかけずに勝つべきであるし、
そのためには、一撃で敵を崩すことのできる急所へ攻撃を集中することが肝心だ。
このようなことは、私ならずとも兵法の心得がある者なら
誰でも知っていて当然の、戦術の基礎中の基礎ではあると思うがね……
イタリアの僭主どもには、その基本さえ分かっていない連中が実に多いのだ。
たかだか猫額の領地のために不必要な大軍を動員し、効率というものを
まったく考えずに無意味な攻防を繰り返し、結果多くの戦死者を出し国が疲弊する……
このような事態を喜ぶのは、働き口の増える傭兵たちだけさ。
まったく……戦術眼もろくに持たぬ君主たちが不毛な戦いを
繰り返してばかりいるから、イタリアはいつまで経っても弱いままなのだ。
その程度であれば、文明と無縁の野蛮人にだって充分将が務まる。
優れた将は、スマートに戦いを勝ち抜くことを心掛けるものさ。
- 237 名前:名無し客:03/11/13 22:38
- 戦争は金が掛かりますね。閣下。公国の君主として暮らすだけなら
閣下はかなりの収入をお持ちかと思いますが、やはり軍隊を擁すると
なると・・・。ボルジア家そのものもお金持ちでしたね。
- 238 名前:名無し客:03/11/14 00:06
- レパント海戦について一言お願いします
- 239 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/14 23:03
- >>237
うむ……軍備や戦争に金がかかるのは、どんなに豊かな国であっても同じことだ。
一度戦争が起きれば、傭兵たちの給料も支払わなければならないし
軍装や弾薬、それに食料の調達と……何万ドゥカートもの金が国庫から流出することになる。
いかにボルジア家が豊かで、いざという時には教会軍総司令官の権限で
ヴァティカンの教会財産を軍資金に充てることができるとしても、何の計画もなく
むやみやたらに戦争を起こしてばかりでは、そのうち破産することは目に見えている……
だからこそ、軍資金を使うべき時は慎重に見極める必要があるのだ。
そしていざその時が来たら、決して1ドゥカートの金も惜しんではいけない……
そのような状況でまで金を惜しんで戦争に敗れるのは、愚か者のすることだ。
何かを成し遂げようとする者は、決して銭金を軽蔑することもなければ惜しむこともないのさ。
話しついでにいうと、ボルジア家が金持ちになったのは
父上がその伯父に当たる法王クリストゥス3世によって、法王庁副官房職の地位と
司教区として当時では最も豊かな地方を与えられたのが始まりだ。
その後、副官房職の地位と自らの才覚により父は枢機卿でも有数の資産家となって……
1492年の法王選挙の際に、父上はその財力を大いに発揮したというわけさ。
- 240 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/15 20:07
- >>238
レパント海戦………そのような戦いは聞いたことがないが………?
なるほど……これから70年後にスペイン・ヴェネツィア連合軍とオスマン帝国との間で
争われる、地中海史上最大にして最後のガレー船による海戦か。
これまで全盛を誇っていたオスマン帝国もこの海戦に敗れたことで一転して
衰退の道を辿ることになり、戦勝国であるスペインが海上世界の覇権を握る………
というのがこの戦いの顛末のようだが……
レパントの海戦における歴史的意義とは、この戦いを境に地中海が西洋世界における
主役の地位を失い、代わって西ヨーロッパに歴史の中心が移った…ということであろうな。
レパントの海戦を境に、以後の歴史の境目となる重要な海戦の殆どが
地中海の外側の大西洋で争われるようになったのも、その証左であるといえるだろう。
この戦いの後も、オスマン帝国とヴェネツィアは地中海の制海権を賭けてしばしば争いを演じたが、
最早それはヨーロッパ世界の大勢に影響を及ぼすことはなかったようであるしな……
もう一つ言えることは、このレパント海戦がヨーロッパ世界にとって
所謂十字軍的精神を掲げて闘われた、最後の戦争であったということであろう。
この戦いまでは、イスラム世界の侵略からヨーロッパを守るという意識が
ほんの僅かながらでも残っていたようだが、この戦い以後は最早どこの国でも
時代錯誤の十字軍を唱える者はいなくなるわけだ…これは地中海が世界の中心から
転落しただけでなく、頑強なカトリック国であるスペインがイングランドとの争いに
敗れて、短期日のうちに覇権を失ったためでもあるようだが。
- 241 名前:名無し客:03/11/16 21:46
- オリエント外遊中、お国や法王宮の中の叛乱には常に備えねばなりませんね。
- 242 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/17 22:54
- 昨日、ようやくキプロスに到着した………
ここはアフロディテ生誕の地と呼ばれ、西洋と東洋の中継地点……
と言えば聞こえはいいが、その内実はそれほど牧歌的なものではない。
この島は地中海の覇権を握る重要拠点として、数々の争いに翻弄され続けてきた。
最近でも、キプロスを巡りヴェネツィアとエジプトがしのぎを削る状況が続き、
オスマン帝国も虎視眈々と漁夫の利を狙っているところだ。
…もっとも、古代ギリシア時代からの伝統を誇るキプロス名産の葡萄酒は、
昔も今もそんな争い事とは関わりなしに美味さを保ち続けているがね……
聖ヨハネ騎士団の所領に由来して「コマンダリア」と呼ばれるこの葡萄酒、
かのリチャード獅子心王も「葡萄酒の王」と呼んで愛飲していたとか。
>>241
そうだな……ヴァティカンでも未だ父の失脚を狙う連中は少なくないし、
ロマーニャ領内でも傭兵隊長の反乱が片付いて間がなく、不安定な状況は続いている。
アヴィニヨンにいるローヴェレ枢機卿の動きも気になるし、何より私の居ぬ間に
フランス王が何を仕出かすか……フランスは今のところ私の味方に付いているが
あの王のことだ、今後の情勢いかんではどう動くか全く読めたものではない。
とは言っても、今更予定を覆してイタリアへ戻るわけにも行かないし………
万一の事態に備えて手は打っておいたから、ひとまずは様子を見るしかないだろう。
とは言っても、ヴィテロッツォやオリヴェロットを始めとする反乱の首謀者たちは
あらかた処刑を済ませてあるし、生き残った者たちに大掛かりな行動を起こすだけの力はない。
情報を聞く限りでは、カテリーナ・スフォルツァが反攻に打って出る可能性も少なそうだし、
ヴェネツィアやフィレンツェが何か動きを示す様子も特に見受けられない。
…過信は禁物だが、今のところはさほど反乱を心配する必要はないかもしれんな。
まして、あの父上が生半可な策謀に足元を掬われるとは考えにくいし…………
- 243 名前:名無し客:03/11/17 23:08
- 公爵さまは、フランスの騎士たちがつけていた重装備の甲冑まみれの
重たいヨロイをつけて戦えますか?
- 244 名前:オーベルシュタイン ◆rEH0G3hTlI :03/11/18 21:19
- 公爵閣下には良い船旅をお過ごしの様で。
中国の五代十国時代「茶を好きなだけ飲みたい」という一心で木工から身を起こし
王になった御仁がいましたが、公がもし庶民の家庭に生まれていたら、どんな願いを
持ち、どんな一生を過ごしたと思いますかな?
- 245 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/18 22:42
- >>243
勿論だ……実際に、戦場では全身を漆黒の甲冑に包んで戦いに臨んでいる。
あの手の甲冑が登場したのは今からおよそ500年前だったと思うが、
最初から全身を分厚い装甲で覆う鎧が存在したわけではなく、
初めの頃は細かい板金を繋ぎ合わせた鋼鉄の服、といった感じであったようだ。
その後改良を重ねて装甲が分厚くなり、関節部の保護や複合装甲による重量の軽減など
様々な技術が導入されることで、15世紀の初め頃に現在見られるような
板金製の甲冑が完成し、騎士の象徴として戦場を華々しく飾るようになったのだ。
これらの甲冑は単に身を守る防具としてのみならず騎士の魂、あるいは誇りとして
細部に至るまで美しい意匠が施され、美術品としても高い価値を持つものも多い。
しかし最近では、こうした板金鎧は小銃や大砲などに押されてあまり振るわないな……
と言うのも、ただでさえ板金鎧は重量が重いのに銃弾や飛び道具を防ぐ目的で
装甲を更に分厚く固いものにしたために、並みの人間には扱えない代物になってしまったからだ。
しかも…どんなに装甲を分厚くしようとも、鎧で銃弾を防ぐことはどうやら不可能らしい。
挙句の果てには、着る者の体重の半分ほどもある鎧まで登場する始末だが
ここまで来るともう自分の足で動くことは、とてもではないが不可能だ……
こんな重い鎧を着て戦場に出ようものなら、銃の前ではただの的でしかない。
この分では、「騎士の誇り」もいずれは無用の長物として廃れていくだけであろうな……
- 246 名前:名無し客:03/11/18 23:15
- エルサレムへはいつ頃ご到着のご予定で?
- 247 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/19 21:39
- >>244 オーベルシュタイン
おかげ様で、ここまで大時化も海賊の襲来もなく実に順調な船旅を過ごすことができた。
オスマン帝国と聖ヨハネ騎士団の間で揉め事も起きているが、
両者の争いは、地中海では日常茶飯事……別に動じるほどのことではない。
ロードス島での紛争が、船旅によからぬ影響を及ぼすことを懸念していない
と言えば嘘になるが、我々の船の船長もこの手のトラブルには慣れているようだからな。
今後何かが起きたとしても、この分であれば上手く切り抜けられるだろう。
それで、もしも私が庶民の家に生まれていたらどんな人生を送るかであるが……
私が私のままである限りは、どんな環境に生まれつこうが
遅かれ早かれ、野望を実現する道に進んでいたことは確かであろうな。
無論、現実の私のように恵まれた状況にいるわけではないから少なくとも今の立場に
立つまでは数年、あるいは10年以上の遅れが出ることは否めないが……
どんな形にせよ、おとなしく家業を継いで平凡に生涯を終えることはないだろう。
恐らくは家を出て、学問に励みながら仕官の道を探すか、そうでなければ
傭兵にでもなって出世のチャンスを窺うことになるのではないかな?
……まあ、「大人しく家業を継がなかった」というのは現実の私も同じ様なものだけれどね。
父上が用意した枢機卿の地位を、私は野望達成のためにあっさり擲ってしまったのだから……
- 248 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/19 21:39
- >>246
キプロスを出たら、次に船はパレスティナのヤッファへ寄港する予定になっている。
ヤッファは聖地巡礼の玄関口とでも言うべき港で、巡礼者たちはここで船を降り、
陸路を驢馬に跨ってイェルサレムに向かうことになるのだ……
途中で寄り道しなければ、聖地までおよそ2、3日の行程といったところであろうか。
もっとも港ではアラブ人による入国検査などもあり、割と長いこと足止めを食うことも
多いらしいので、実際にはイェルサレムまで一週間以上かかるようだ。
……とは言っても、今回の時点で我々がイェルサレムに向かうことはない。
我々の目的地は、あくまでもエジプトのアレクサンドリアやカイロだからな。
ヤッファで聖地巡礼者を見送った後、我々はそのまま船に居残りエジプトへ直行する。
イェルサレムへ向かうのは、エジプトの視察を終えてからの話となろう。
もっとも私は、時間に余裕があるなら寂れ切ったイェルサレムよりも
地中海第一の都市であるコンスタンティノープルを見て回りたいと考えているがね……
ちなみに次の寄港地であるヤッファは、昔はパレスティナでも有数の港町として
栄えていたが、200年ほど前にイスラム教徒に街を占領されてからは寂れる一方……
今では多くの建物が廃墟と化し、船着場しか使える施設は残っていないようだ。
- 249 名前:名無し客:03/11/20 01:09
- 国を作る・・・自分の死後の行く末は見届けられぬ。
少し残念には思いませんか?
- 250 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/20 22:14
- ヤッファというのは……本当に何もない街だな。
聖地巡礼者たちの通行許可証を得るために、船は数日ここに停泊するそうだが……
気の利いた宿も見るべき名所もなく、我々はただ退屈な思いを弄ぶだけだ。
唯一の楽しみは、肉や果物を売りにやって来るアラブ人と会話を交わすことぐらいだな。
>>249
全然寂しくない……と言えば嘘になるが、死後の行く末を見届けることが
できないのは誰もが同じなのだから仕方があるまい。
世の大多数の者と同じように、自分が死んだらその後は文武共に優れた者に
継いで貰いたいと願う気持ちは私とて同じだが、例え願いが叶わず
愚かな後継者が私の遺産を全て食い潰すことになっても、私にはどうにもできないことだ……
死人が現世の出来事に関わるなど、天地がひっくり返っても不可能だからな。
だから私は、君主が死後の行く末を案じるのは要らぬ心配だと考えている。
死後の行く末を心配するぐらいなら、現実に生きている自分が為すべき目標を
達成するために全力を尽すことの方が、君主にとっては大事なのではないか?
君主や支配者の中には、死後においても自らの威光を示すために
贅の限りを尽した陵墓や生前の姿を模した彫像を建立する者もいると聞くが……
私に言わせればそんな物を建立してまで死後の評判に拘るなど、実に愚かな話だ。
君主が神にも等しかった古代オリエントの専制国家ならいざ知らず
今時そのような物に縋り付いて国が上手くいった例など聞いたこともないし
陵墓や偶像…ましてや自分の遺体を永久保存し、崇拝の対象にさせる君主など
どこの世界でも大抵はろくでもない暗君と相場が決まっているものさ。
- 251 名前:名無し客:03/11/22 07:05
- 閣下の時代は、今のような激しい余り民族対立がなかったと思うのですが。
そう、閣下が輝いていた時より幾星霜をへた現代では・・・。
- 252 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/23 00:13
- >>251
我々の間では、民族の違いはそれほど問題ではないからな………
「民族」が国家の重要な要素となるのは、もっと後の時代のことだ。
ヨーロッパでは他国人が国王として君臨もすれば、己の利益のため異民族の王に
忠誠を誓い、自分と同じ民族を敵に回し争うことも珍しくない。
神聖ローマ帝国の皇帝がドイツ人やボヘミア人ばかりであるとは限らないし、
オスマン帝国でもスルタンの周囲にあって国政や軍事を司るのは、トルコ人よりも
ギリシア人やアルバニア人といった異民族の方が多い…それが我々の時代だ。
我々の社会で民族の違いを原因とする対立が殆ど起こらないのは、
ヨーロッパがキリスト教という民族の別を超えた統一概念によって
曲がりなりにも秩序付けられているせいかもしれん……
神の前ではイタリア人であろうとフランス人であろうと、ドイツ人であろうと
イングランド人であろうと分け隔てなく平等であるというのがキリスト教の建前だ。
その建前があるのだから、自身が仕える主君が多民族であっても
同じキリスト教徒である限り何ら不都合はないわけであるし、
まして民族の違いを理由にキリスト教徒同士が争う道理などないわけだ。
オスマン帝国の場合は、そもそもイスラム教の教理によって民族間の平等が
徹底されている上に、キリスト教徒であるギリシア人やスラブ民族も
一定の制約はあるにせよ帝国内の活動はそれなりに保証されている。
スルタンの権力が揺るぎないうちは、あの国で民族対立が起きる可能性は少ないだろう。
そう……彼の国で異民族の力が強くなりすぎて、統制が緩まない限りは。
もっとも我々の世界で実際にこの手の諍いが全くないかといえば、それは嘘になるがね………
その最たる例が、キリスト教の総本山たるローマ・カトリック教会さ。
我が父がスペイン人であることを理由に、教会の大多数を占める
イタリア人枢機卿から様々な嫌がらせを受けていたのは先に述べたとおりだが、
ヴァティカンではイタリア人やフランス人、それにスペイン人の枢機卿が
それぞれ派閥を形成し、互いに相争っているのが実情だ……この背景には、
自国人の枢機卿を通じ教会への影響力を強めようとする、各国の王の思惑もあるようだが。
- 253 名前:名無し客:03/11/23 00:37
- 公の船旅もヨーロッパを離れオリエントへ足を踏み入れましたな、音信が滞り
いささか心配しておりましたが…
後の世に民族が争いの種になるとすればそれは公のおっしゃる通り国家や政治が
宗教と縁を切ることになったからでしょう。そういえば…北方ドイツの地で
一人の青年が雷に打たれたのを機に回心してキリストへの信仰を篤くしたとか
風の便りに聞きました。
公は宗教を道具のごとく思っておいでのようですが信仰のためには死をも厭わず
戦う狂信者が現れることもありますぞ。
まこと人の心は計りがたきもの…ヴァティカンも派閥争いなどにうつつを抜かして
おられる内が華ですな(苦笑)
- 254 名前:名無し客:03/11/23 18:56
- 公爵さまの御旅も順調のようで。
しかし瀉血は効果が本当にあるのでしょうか。
公爵さまも以前おっしゃっておられましたが医師たちは
何かと言うと瀉血をしますな。かえって体力を奪うような
気がしてなりませぬ。
- 255 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/23 22:25
- 船がパレスティナを離れた途端、急に周りの雰囲気が明るくなったように
思えるのは気のせいかな……イェルサレムへの巡礼者がヤッファで全員下船し、
船内で抹香臭い話題を耳にすることがなくなった所為かも知れないが。
それはともかく、この船が次に向かうのは……終着地のアレクサンドリアだ。
我々の船旅も、いよいよ終わりに近づいている……思えば、長いようで短い旅であったな。
>>251
民族が争いを引き起こす原因となるのは、古い時代の話だと思っていたが……
何やら未来の話を聞く限りでは、我々の子孫は現在の我々に比べて
著しく退行しているような気がしないでもないのだが、果たして………
しかし……君の言いようでは、そのドイツの青年が将来ヴァティカンにとって
大いなる脅威となり得るようにも聞こえるのだが……
ローマ法王庁の権威に楯突いた狂信者といえば、先年火刑に処せられた
サヴォナローラとその一党が記憶に新しいが、まさか彼もその同類ではあるまいな?
―――もっとも、実際のサヴォナローラという男は狂信者どころか
ただの似非預言者、あるいは言行不一致の詐欺師に過ぎなかったわけだが。
その程度の男であれば、父上や私の相手になるはずもないが
もし彼がキリスト教を真に変える改革の旗手で、しかも各国の王侯を巻き込むだけの
大きな流れを作り出すことができたら……簡単に解決できる問題ではなくなるだろう。
とはいえ、彼のもたらすであろう変革によってローマ教会が窮地に陥ったとしても
父上であれば、事態を収拾させることは可能かもしれん……
それこそサヴォナローラの時のように、彼を火刑に処す形になったとしてもだ。
あるいは時代が変わって、仮にローヴェレ枢機卿が法王の地位にあるとすれば
恐らく彼の性格からして、軍事力で改革を押し潰すことを考えるだろう……
――もっともこの場合は「狂信者」の手痛い反撃を受け、ヨーロッパ全土が
かつてのフス戦争を上回る泥沼に陥る事態も十分考えられるが。
しかし……もしも彼と相対する法王が、父上でもローヴェレ枢機卿でもなく
肥満体のジョヴァンニ・デ・メディチあたりだとしたら……
きっとあの男のことだから、事態を上手く収拾することができず教会は分裂……
ヴァティカンの権威が暴落するどころでは済まなくなるかもしれんな。
- 256 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/23 22:27
- >>254
瀉血か……医師たちは、血を抜くことがあらゆる病に対する最善の治療法だと
信じているようだが、あの療法のどこにそんな効果があるのやら。
大体、血を抜いてペストやマラリアが治ったなどと言う話は聞いたこともない。
むしろ血を抜くことでただでさえ弱まっている体力がますます失われ、
却って死を早めるだけの結果に終わることの方が多いというではないか。
ヨーロッパの医学では、万病の根源は血にあると盲信されているらしく
何かあれば医師たちは必ず血を抜くのだが…はっきり言って、どこにも根拠のない話だ。
血を抜くだけで病が治るのであれば、街の肉屋でも充分医師が務まるではないか。
それに引き換え、イスラム世界ではヨーロッパとは比べ物にならぬほど医学が発達している
という話で……何でも聞くところによれば、イスラムの医学では腹部を切開して
病根を切除することが可能なばかりか、眼の病までも手術で治せるというではないか。
怪しげな治療法で患者を殺してばかりのヨーロッパ医学とは、天地以上の開きがあるな。
ヨーロッパの大学でも、イスラムの名医イブン・シーナーの著書を医学の教科書と
しているそうだが、それで何故瀉血しか知らない医師ばかり輩出されるのか……
まったく……イブン・シーナーも、この体たらくにはきっと呆れ果てていることであろう。
- 257 名前:名無し客:03/11/24 18:50
- アレクサンドリア。エジプト随一の港町であり、プトレマイオス朝エジプト
王国の都。クレオパトラとアントニウスのエピソードは公爵さまに、どの
ような想いいだかせますか?
- 258 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/25 00:15
- >>257
さて、アレクサンドリア到着まであと数日に迫ってきたわけだが……
船を降りたら、まずはこの街のヴェネツィア商館へ向かうことになるだろう。
ポルトガルのインド航路開拓によって、エジプトの香辛料市場がどれほどの打撃を
受けているのか、いよいよエジプトに攻撃の刃を向けるとも噂されている
オスマン帝国に対して、この国のスルタンは如何なる手段で対抗するつもりなのか……
カイロへ足を伸ばす前に、まず基本的な情報を把握する必要があるからな。
それで、このアレクサンドリアはアレクサンドロス大王に起源を発する
ギリシア文化の中心地であったと同時に、3000年の伝統を誇った
古代エジプト王国終焉の地でもあるのだが……そのエジプト王国を滅亡に
追いやった張本人が、プトレマイオス朝最後の女王であったクレオパトラと、
その愛人にしてカエサルの宿将であったマルクス・アントニウスだ。
諸君も知ってのとおり、アントニウスを虜にする前のクレオパトラはユリウス・カエサルの
愛人としれ納まっていたわけだが、実際には世間で言われているほど
カエサルは彼女に骨抜きにされていたわけでもなかったらしい。
確かにカエサルには、女性関係にだらしない一面があったことは事実だが
だからといって彼は色香に惑わされて公的な判断を曲げるような男ではなかった。
クレオパトラにエジプトの統治者としての地位を保証したのも、それが当時のローマにとって
最も有益と判断したからであって、別に彼女の美貌に溺れたからではないのだ。
もっとも、当のクレオパトラ自身はそうは考えていなかった節があるようだが……
- 259 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/25 00:16
- >>257(続き)
その後、紀元前44年3月15日にカエサルが暗殺されるとローマの政局は
暗殺者ブルータスの一党を討ち果たした二人の男に主導されるようになる……
カエサルの養子となったオクタヴィアヌスとアントニウスだ。
正確にはもう一人、レピドゥスという男を加えて「第二次三頭政治」が始まったのだが
この際彼の存在は忘れてもいいだろう……彼は大局には何ら影響を及ぼさなかったのだから。
そして、カエサルという強大な庇護者を失ったクレオパトラが新たなる相手として
選んだのが、ローマ帝国第一の実力者にのし上がったアントニウスだった。
クレオパトラにとって、確かにカエサルは男としても充分魅力的であっただろうし
政治・軍事共に卓越した実力者でもあったから、愛人としてはこの上ない存在だったに違いない。
だが、カエサルは女性の愛に溺れはしてもそれを公の場に引きずる男ではなかったゆえ
クレオパトラの意のままになることもなく、彼女は何かが違うと感じていたはずだ。
それ故に、次に彼女が選んだ相手はカエサルのような不世出の英雄ではなく
人格・力量ともに第一級ではなくとも、自分の意のままに操ることのできる男だった……
そして、キケロが評するところの「肉体でも頭脳でも剣闘士並みの男」であった
アントニウスは、クレオパトラの求める条件にぴったり適合していたというわけさ。
洗練とは程遠いアントニウスを篭絡することなど、彼女には造作もないことだった。
クレオパトラとの愛に溺れた日々は、いつしかアントニウスに
ローマの武将としての立場を忘れさせ………ついにはローマ本国に
妻を残しているにも関わらず、クレオパトラとの結婚式を挙げるにまで至った。
それだけでなく、彼は結婚の引き出物としてローマが制覇していた
オリエント諸地方の統治権をエジプト女王に譲ると宣言したのだ。
―――これは、実にあさはかな宣言であった。
まず、ローマの法律では二重結婚など許されていないし、何よりもローマが苦心して
獲得したオリエントを、女の色香に迷ってローマにとっては属国同然の
同盟国に過ぎないエジプトに与えてしまったのだ……この知らせを聞いた時の
ローマ市民の反応が如何なるものであったかについては、語る必要もないだろう。
- 260 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/25 00:17
- >>257(続き)
更に悪いことに、アントニウスは東方の大国パルティアへの遠征に失敗し
彼の配下にいた多くの将兵を失ってしまった……元々ローマの戦略には
パルティアの征服など予定していなかったのだが、オリエント全域の領有を望む
クレオパトラの野心に乗せられ、アントニウスが戦略を変えてしまったのだ。
これによりローマにおけるアントニウスの権力は大いに失墜したわけだが、
その後ローマ市民がアントニウスを決定的に見放すきっかけとなる事件が起きる……
エジプトの首都アレクサンドリアで、アルメニア遠征の凱旋式を挙行したのだ。
ローマ人にとって、凱旋式とは単に勝利を祝うための祭りではない。
ローマの神々に戦勝を報告し、感謝の祈りを捧げることも重要な目的なのだ。
それゆえに、凱旋式は彼らを守護する全ての神が集うローマで行わなければならない。
エジプトの女神に扮して、アントニウスを出迎えたクレオパトラの心中が
如何なるものであったか私には知る由もないが、この凱旋式が
ローマ人たちの激しい怒りを買うことになったことだけは確かだ。
それだけでなく、「凱旋将軍」アントニウスは何を血迷ったのか集まった市民に対し
地中海の東半分をそっくりクレオパトラに贈与することを宣言し、
オクタヴィアヌスに対しては帝国を東西に分割することを正式に要求したのだ。
―――オクタヴィアヌスは勿論、元老院もこの要求を黙殺したことは言うまでもない。
- 261 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/25 00:17
- >>257(続き)
後は歴史が示すとおりだ―――オクタヴィアヌスは巧みな世論操作により
アントニウスとクレオパトラをローマ帝国の公敵に仕立て上げ、
本来は自分とアントニウスの個人間の権力闘争であった争いの構図を
ローマとエジプトの国家間の争いにすり替えることに成功した……
無論、世論の圧倒的な支持を自分の元に集めてだ。
そしてオリエントの王侯で、アントニウスとクレオパトラに味方した者は
誰もいなかった……アントニウスに脅されて兵を供給こそしたが、
彼らはクレオパトラの浅はかな野心に肩入れする気などさらさらなく、
自ら軍を率いてエジプトに馳せ参じた者は一人としていなかったのだ。
そして……アクティウムの海戦でエジプト軍はローマ軍に完敗、
アントニウスはその後の絶望的な反撃も空しく、ついに自刃………
クレオパトラもプトレマイオス家の財宝と引き換えにエジプト王国の存続を図ったが
オクタヴィアヌスがその取引に取り合うはずもなく、毒蛇にわが身を噛ませ
アントニウスの後を追うことになった…これが古代エジプト王国の最期だ。
結局のところ、クレオパトラに欠けていたのは「時代を読む能力」ではなかったかな。
当時既に斜陽の道を辿っていたプトレマイオス朝の実力で、人材・資源共に
絶頂期に会ったローマと争うことなど初めから無理があった。
彼女はエジプトの富とローマに反感を抱くギリシア人の協力、それにアントニウスの
軍才があればローマに勝てると思い込んでいた節があるようだが、
その見通しの甘さが、君主や政治家としてのクレオパトラの限界だったのだ。
一方のアントニウスは、カエサルのような一流の人物の下で働いていたから
実力を発揮できたのであって、彼が決して人の上に立つ者の器ではなかったことは
パルティア遠征の失敗や、数々の政治的失策を見れば明らかだ。
そんな男を愛人に選んでしまった時点で、クレオパトラの破滅は決まっていたのだろう……
- 262 名前:名無し客:03/11/25 22:38
- 以前にも話題がありましたが、公爵さまも女性の方には
ご用心と言ったところでしょうか・・・。
プトレマイオス朝のファラオたちは、ギリシアの将軍の末裔ですから。
それでも古代のファラオたちを継承していたのですね。
それはローマ皇帝位を受け継いだビザンティンの皇帝たちのように・・・。
- 263 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/26 22:39
- これまでのレス内容を、今一度読み返してみたのだが――
誤字だらけで何とも恥ずかしい限りだ。
こういう初歩的なミスは事前に防ぐことができるものであるし、
また防がなければならないものでもあるのだがね……
もしもこれが、文章の叙述でなく戦いの場であれば命取りにもなりかねんからな。
如何なる場面でも、君主たる者は慎重さを欠いてはならんということだ。
>>262
確かに、この世にはカテリーナ・スフォルツァをはじめとして
私に怨みを抱く女は数え切れぬほど存在するだろうが……それぞれの怨み事に
いちいち構っていたら、私が本来すべきことに割く時間がなくなってしまうな。
もっとも、色恋沙汰が原因で国を滅ぼすような事態だけは避けねばならんが……
いずれにせよ、女の怨みは買わない方がいいに決まっている。
君の忠告は、頭の片隅にでも留めておくことにしよう。
――さて、プトレマイオス朝歴代の国王が、マケドニア出身のギリシア人でありながら
エジプトでファラオとして振舞ったのには、ちゃんとした理由がある。
エジプトでは3,000年もの間、王朝は次々と変われども一貫して
永遠の魂を持つ神の化身とされるファラオによる神権政治が続いてきた。
そのエジプトにギリシア人の支配を確立したのは、先にも述べたとおり
紀元前4世紀のアレクサンドロス大王だが、この時に重大な問題が発生したのだ。
――神の支配に慣れたエジプト人にとって、人間の子たる王に支配されることは
これまで経験もしていなければ、想定もしていない事態だった。
これは、新たなる支配者の下で従来の権益を維持し続けようと図った者たちにとっても
都合が悪かったし、支配される民にとっても納得のいく話ではなかったのだ。
- 264 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/26 22:39
- >>262(続き)
そこで支配階級である神官たちは、神のお告げと称してアレクサンドロスに
人の子ではなく神の子であると伝えることで、彼の支配に正当性を与えることにした。
そして大王の死後、その正当性は彼の支配を受け継いだプトレマイオス朝に
受け継がれ、ギリシア人の支配する王朝でありながら古代より受け継がれた
神の化身としての正当性をもってエジプトを統治することになったのだ。
因みに、ローマが同じギリシア人の王国であったマケドニアとシリアを滅ぼしながら
エジプトだけは同盟国として独立を認め続けたのも、実は同じ理由による。
仮にプトレマイオス朝を潰してエジプトをローマの属州としても、エジプト人が
人の子に過ぎないローマ市民の支配を受け入れず、反抗に走ることは明白だった。
それよりも同盟国として形式上独立を認め、旧来の制度による支配に委ねた方が
ローマにとっては安全であったし、安上がりでもあったのだ。
そして、対内的には神聖不可侵なファラオとして振舞ったプトレマイオス朝の王だが
対外的にはあくまでもマケドニアやシリアと同じく、アレクサンドロス大王の
後継者たるヘレニズム世界の王であり、日常の生活はギリシア式だった。
例のクレオパトラも、先述の凱旋式や伝統的な祭祀の際はエジプト古来の装束で臨んだが
普段は衣服も髪型もギリシアやローマのスタイルで通していたらしい。
事実、現代に残るクレオパトラの肖像もその殆どがギリシア女性特有の風貌で、
所謂おかっぱ頭が特徴の、エジプト風の像は僅か一つしか存在しないそうだ。
――遥か先に灯りが見える……これまでになく明るい、活気に満ちたものだ………
間違いない、あの灯りの先にある街は――――――アレクサンドリアだ。
遂に辿り付いたか………エジプトの玄関口、そして地中海最大の貿易都市に。
- 265 名前:名無し客:03/11/27 19:39
- 廷臣A「公爵閣下は無事アレキサンドリアにお着きになったそうだ」
廷臣B「それは重畳なこと。しかし随分とウルビーノより離れてしまいましたな」
廷臣A「いかにも…そういえば貴公、つい先だって我が傭兵隊長どもの下に訪れていた
客人のことをご存知か?」
廷臣B「ほう、そのような者が。先の反乱事件が片付いて間もないというのに
…していかなる客人であった?」
廷臣A「まあそれは詳しく言うまいて。しかしどうもペルージアやボローニャとて
あの件ですごすご引き下がるつもりはなかろう様子…しかもどうやら
今回はその背後に仲人殿がいるとかいないとか」
廷臣B「さてさてそれはまた何としたこと。公爵閣下にはやお知らせせねば…
かな?」
廷臣A「いやいや、貴公がそれほど忠義とは(笑)しかしお互いまずもって
御身大事というところかな?」
廷臣B「いかにも…ですな(笑)」
- 266 名前:名無し客:03/11/28 21:24
- 野心溢れる部下がいたとして、その掌握術をこっそり伝授してみてください。
- 267 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/28 23:13
- >>265
アレクサンドリアに到着したのはいいが………
慣れぬ船旅の疲れが一挙に出たのか、上陸した途端に喉を痛めてしまって………
おかげで、満足に飲み食いすることも叶わぬ有様だ。
――先にヴェネツィアで引いた風邪が、今頃になって再発したのだろうか?
それにしても、このエジプトはイスラムの国だけあって
疲れを癒そうにも葡萄酒はおろかビールさえ手に入らないときている……
ここがかつて、世界で初めてビールが醸造された地であるにも関わらずな。
しかし、イタリアから届いた穏やかならざる情報……さて、どう対処してくれようか?
私に歯向かったヴィテロッツォとオリヴェロットの二人を縛り首にした上、
死体をセニーガリアの街で晒し物にしたことが、よほど「連中」を刺激したと見えるな。
しかし、今度の一件で誰が何を企んでいるのかは知らんが、気になるのは
その者の背後にフランス王らしき人物の影が見え隠れすることだ……
――ウルビーノ公やペルージアのバリオーニ、それにシエナのペトゥルッチなどは
最早恐れるに足りんが、あのフランス王をこの争いに巻き込むわけにはいかん。
下手に餌を与えてフランス王の介入を許せば、これまでの努力が全て水の泡になる。
近頃は王も私の真意に気付きつつあるようで、私の行動に何かと横槍を入れるように
なってきてはいるが……フランスと正面切って戦ったところで勝ち目はない。
国力が充実するまでは、フランス王を敵に回すわけにはいかん……
本来なら、ヴィテロッツォたちをあの世へ送った余勢を駆ってバリオーニとペトゥルッチも
始末しておきたかったが……この際、多少の妥協は止むを得ないだろう。
――もっとも、それが私の寛容を意味するわけではないがね。
反乱に加わった者たちには、少なくとも私が受けた以上の屈辱を味わってもらう……
例えフランス王が背後にいたとしても、これだけは曲げられん。
連中とて、私が裏切り者を心から許し迎え入れるなどとは考えていないはずだ。
それにしても………廷臣たちはこの私が何も異変に気付くことなく、
ただのんべんだらりと異国で時を過ごしているとでも思っていたのか?
- 268 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/29 21:39
- 今日アレクサンドリアの街を散策していたら、元ミラノ公の
ルドヴィーコ・スフォルツァに非常に良く似た男を見かけてね……
そう、あの男は「イル・モーロ」本人としか思えないほどそっくりだったよ。
――それとも、あれは本当にフランスの地下牢に繋がれているルドヴィーコ自身で、
地中海を越えてはるばるアレクサンドリアまで逃げてきたのであろうか?
そんなはずはあるまい……奴は間違いなくフランスで捕らわれの身になっているはず。
第一あのフランス王が、そう易々とルドヴィーコを逃がすとは考えられん。
あれは他人の空似だ、そうに決まっている……ルドヴィーコがイル・モーロ(色黒公)と
仇名されるほどモーロ人(北アフリカのイスラム教徒)に似ているのだから、
逆にあの男に良く似たモーロ人やアラブ人がいたとしても別におかしくはあるまい。
- 269 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/29 21:39
- >>267
野心に満ちた部下の掌握術か………あまりにも野心が過ぎて
私自身や国の安寧を危うくするような者であれば、火の粉が降りかかる前に
始末してしまうことが最も安全な手段であろうが………
あまりに疑心暗鬼になって有能な臣下を消す真似は、君主としては褒められたことではない。
そういった野心家たちを上手に使いこなすことも、優れた君主の条件の一つだ。
――では君主は野心に満ちた臣下と、どのように付き合うべきなのか?
要は、その臣下の野心が私や国にとって有益な結果を生むように
コントロールしつつ、その者の欲求を満たしてやればよい。
そのためには、その者が臣下として何を欲しているか、自分の元で如何なる仕事を
したいと望んでいるかよく把握した上で、相応の仕事を与えてやることが肝心だ。
その際、この臣下に能力と困難に耐え得るだけの気概が認められるのであれば、
当然のことだが簡単な仕事よりも達成が難しい仕事を任せた方がよい。
野心に満ちた者たちは、より高く己を売り込みたいと考えているものであるし
またそれを成し遂げるために必要な努力も、常に続けているはずだからな。
そして、臣下が求める仕事を成し遂げた後は……存分に報いてやるべきであろう。
だが、その者の実績と比べてあまりに過大な褒美を与えてはならない。
確かに恩賞が少なすぎては臣下の不満を招くことになるし、引いては反逆を招く危険も大きい。
だが吝嗇な君主との評判を恐れて、あまりに気前良く大盤振る舞いを続けては
やがて臣下はそれを当たり前のことと感じ、更に過大な要求を突き付けるようになるはずだ。
そのようなことが続けば、いずれ君自身や国家財政の破綻を招き
その臣下をコントロールし続けることももはやできなくなる……
――その時は、その者の野望の牙は君自身に向けられることになるだろう。
だから恩賞は充分与えるとしても、その内容は実績に見合った相応のものであるべきだ。
実績相応の報いであれば、臣下の欲求も充分満たされるであろうし
次の仕事達成に向けてその者のモチベーションも高まるであろうからな。
- 270 名前:名無し客:03/11/30 03:10
- 公よ、アレクサンドリアへの無事のご到着まずはお喜び申し上げます。
しかし…公もいささか甘いところがおありのようですな。
人は同時にいくつもの徳を兼ね備えることなどできぬが道理。野心に満ちて
有能な、しかも恩賞によるとはいえ忠節でもある臣下などと、そのような者が
真実この世におりましょうか?
野心を持つ者はいかに操ろうとしてもいずれ君主に弓引くは必定、有能な者も
有能なるが故にいずれは自己の才におぼれ身の程知らずな夢に身をやつし易い。
つまりご自身野望を抱く君主が望みうる唯一の臣下は愚鈍だが
忠節なる者のみ…その忠節も心底というより恐怖が先に立ちましょうて(苦笑)
ミケーレ殿は例外中の例外でありましょう。
所詮、覇者に真の友などおらぬ様に真の臣下などおりはしますまい。
この理(ことわり)、公が分からぬ訳はなかろうに(苦笑)
- 271 名前:名無し客:03/11/30 09:43
- ヽ(´ー`)人(´ー`)人(´ー`)人(´ー`)人(´ー`)人(´ー`)人(´ー`)人(´ー`)人(´ー`)人(´ー`)ノ
( へ) ( へ) ( へ) ( へ) ( へ) ( へ) ( へ) ( へ) ( へ) ( へ)
く く く く く く く く く く
チェーザレ様の来訪を歓迎するアレクサンドリアの市民。
・・・スゲー怪しい。お気をつけて閣下。
- 272 名前:オーベルシュタイン ◆rEH0G3hTlI :03/11/30 17:54
- 君主論ならぬ進化論いや、臣下論の話題が花咲いておりますな・・・・
公よ。余興の一環として聞いていただければ良いが、ヤーパン(日本)の地
では、この季節になると「忠臣蔵」という話がなにかと話題に上ります。
これは「主君の仇を忠臣が討つ」という話ですが。「仇討ち」について
感じるところがおありなら・・・お聞きしたいのですが・・・・
- 273 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/30 21:41
- >>270
――君の素晴らしい弁舌はそれをそのまま持ち帰り、ウルビーノのグイドバルド公爵か
ボローニャのジョヴァンニ・ベンティヴォーリオ翁にでも聞かせることを勧める。
自己保身以外何の関心もない、詰まらぬ小僭主どもであれば君の考えを受け入れもしよう。
だが世に大望を抱く者にとっては、そのような意見はいらざるお節介というものだ。
私だけではなくフランス王やスペイン王、それに神聖ローマ皇帝が
君の意見を聞いたところで、返ってくる答えは全て同じだと思うがね。
第一私は、個人の信義など一切信じてはいない……私が臣下に求めているのは
忠誠心ではなく、ただどれだけ私のために役立ってくれるかということだけだ。
私にとって益するところが大きければ、例え昨日までの敵でも喜んで迎えるし
私に不変の忠誠を誓う者でも、何の役にも立たなければ容赦なく切り捨てる。
――おべっか使いの無能な臣下など、我が陣営には必要ない。
主君におもねって出世することが望みならば、リミニであろうとペーザロであろうと
何処なりと行きたい国ヘ行き、せいぜい無能な主君の歓心を買うがいい。
そしてより強大な国の牙にかかり、主君共々滅びるがよかろう。
それに、野心を持つ臣下が必ず主君に弓を引くと君は言うが、
実力のない者が身の程も弁えず叛逆に走ったところで、大抵結果は見えている。
――――先のマジョーネの叛乱がいい例だ。
己の実力を読み違えて、将来に向けた展望があるわけでもないのにただ矮小な私欲と
私怨に突き動かされて、愚かしくも叛逆に走る……そして最後は必ず滅びるものだ。
あの叛乱に対する危機感を全く感じなかったと言えば、それは嘘になるが……
その程度の詰まらぬ野心に斃れる様であれば、私も所詮それまでの男。
イタリアを平定する能力も資格も、初めからなかったということだ。
- 274 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/30 21:42
- >>270(続き)
――では、能力のある臣下が私に背いたら?
例えどんなに切れ者との評判を取っても、その者に大局が見えないようであれば
無能者の叛乱と結果は同じ………いずれはボロが出て滅びるだけだ。
だが、もしもその者に私をも上回る遠大な理想があって、なおかつ
それを実現できるだけの実力と知能に真に恵まれているのであれば……
恐らく私は、その臣下にイタリアを統一する権利を譲り渡すことになろう。
これは負け惜しみでも何でもなく、真に力と理想ある者が時代の主人公たるべきことが、
歴史における必然だからだ……この真理だけは、誰も抗いようがない。
――もっとも現在のイタリアには、私を上回る壮大な理想と野望に
燃える者など、どこの国へ行っても見かけることはないがね。
とは言うものの、初めから臣下の叛乱を心配して事に当たるのは小人の考えだ。
そのようなことに一々頭を悩ませるぐらいなら、如何に臣下の能力を
引き出し、それを己の利益としていくか……それを考えることの方が大事であろう。
大体、海千山千の野心家をろくに靡かせることもできない無能な君主に
ヨーロッパの列強やオスマン帝国と対等に争うことができるとでも思っているのかね?
- 275 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/30 21:43
- >>271
妙だな……私がこうしてエジプトへの旅に出ていることは、私と行動を共にしている
ミケロットたち以外は、父上とごく少数の側近しか知らないはずだ。
ヴェネツィアをはじめとするイタリア各国やその他のヨーロッパ列強は勿論、
エジプトのスルタンにもこのことは一切知らせていない。
それなのに、何故このように周到に用意された歓迎が待っているのか……
――まさか私の周囲に、行き先を漏らした裏切り者がいるのか?
そういえば、以前にも私の暗殺を企てたカテリーナ・スフォルツァの残党が
我々と同じ船に乗り合わせていたことがあったが……
これらの状況からすると、何者かが意図的に情報を流している可能性も考えられる。
いずれにせよ、用心に越したことはないだろう………
――ミケロット、ナルド………あの連中の動きから目を離すな。
- 276 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/30 22:21
- >>272 オーベルシュタイン
仇討ちね……確かその『忠臣蔵』は、辱めを受けた上に自殺に追い込まれた
主君の仇を、その家臣たちが討ち果たすという物語だったはずだが。
ジパングと違って、ヨーロッパでは仮に主君が殺されたとしても
臣下がその仇を討つ例は、滅多にお目にかかることはないな。
物語や戯曲の世界では、仇討ちが題材となることもあるようだが
これも多くは肉親や親友の仇を討つといった内容が大半で……
忠臣が主君の仇を討つ話は、実際の歴史でも文学でもあまり聞いたことがない。
そのような例があるとすれば、ユリウス・カエサルが暗殺された後に
暗殺者ブルータスとカシウスの一党を、アントニウスとオクタヴィアヌスが
殲滅したフィリッピの会戦(紀元前42年)ぐらいのものだが……
厳密に言えば、この戦いも仇討ちというよりはカエサル亡き後の政局を巡る
カエサル派と共和主義者の決着戦と呼ぶ方がふさわしいものだった。
――もっとも、出陣を前にしてオクタヴィアヌスはブルータスとカシウスを
殺した暁には、「復讐の神」に捧げた神殿を建立することを宣言しているほどだから、
この戦いには仇討ちとしての意味も、確かに色濃く反映してはいたのだが。
- 277 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/11/30 22:22
- >>272 オーベルシュタイン(続き)
ヨーロッパで主君の仇討ちを滅多に見かけないのは、主君と臣下の主従関係が
ジパングのそれとは性質が異なるからではないだろうか。
ヨーロッパにおける主従関係は決して神聖不可侵なものではなく、
あくまでも「契約」によってドライに成立しているものだ。
臣下は契約の範囲内においては主君に忠誠を誓い、一定の義務を
果たさなければならないが、契約にない物事について従う義務はないし
主君も臣下に対して、契約を超えた服従を強いることはできない。
だから……仮に私が殺されたとしても、私の臣下が仇を討つことは
まずないであろう………例えそれがドン・ミケロットでもだ。
いくらミケロットと主従関係を超えた固い絆で結ばれているといっても、彼にそこまでの
義務があるわけではないし、私自身死んだ後のことまで強制するつもりもない。
第一、仇討ちなどと他人事の怨みに振り回されるのは私の趣味ではないからな。
この他には、聖書の「汝の隣人を愛せよ」だの「右の頬を打たれたら、左の頬を差し出せ」
といった文句に代表されるように、キリスト教の教理が仇討ちや仕返しの類を厳しく
戒めていることも、ヨーロッパで仇討ちがあまり為されない理由の一つとして考えられるだろう。
- 278 名前:270:03/11/30 22:24
- 公よ、お許しあれ!
愚生はしがない老いぼれ道化にすぎなければ、これも一場の座興に過ぎませぬ。
しかし・・・公のお覚悟や天晴れ!
はやイタリアの統一がなり、古代ローマの栄光をよみがえらせん日も
遠からんかな! (祝歌を奏しつつ退席す)
- 279 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/01 20:53
- >>278
フフフ…………まあそんなに気に病むな。
私もああは言ったが、君のような物言いをする男は決して嫌いではない。
せっかく皆と話をする場を設けているのに私の意見に
同調する者ばかりでは、面白みも何もあったものではないからな。
時にはこうして皆と意見を論じ合うのも、私は良いのではないかと思うぞ。
――勿論、最低限の礼儀や常識はわきまえて貰わねば困るがね。
それだけ気をつけてくれれば、後は何も気にする必要はない。
一場の座興などと言わず、これからも私に意見があるなら遠慮せずぶつけるが良かろう。
ところで話は変わるが、今日から12月だな……今年のキリスト生誕祭も間近に迫り、
そろそろローマでは準備が始まっている頃だと思うが………
――思えば、これまで私も様々な場所でクリスマスを迎えてきた。
フランス王の人質として、敵中で苦い時を過ごしたこともあれば
戦いの最中、兵士や百姓達と一晩中陽気に飲み明かしたこともある。
――あの時は、ヴィテロッツォも一緒であったな……それも今や昔の思い出だ。
この分だと今年は、オリエントの何処かでキリスト生誕祭を迎えることになろうが……
こうしてムスリムの地でクリスマスを祝うのも、また貴重な経験かもしれんな。
- 280 名前:名無し客:03/12/01 22:23
- ヴァティカンでは聖誕祭の準備で御父君もお忙しいでしょうね。
- 281 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/02 22:36
- >>280
ヴァティカンにとって、聖誕祭は復活祭と並んでもっとも重要な行事の一つだからな……
今頃は、父もきっと目の回るような毎日を過ごしていることであろう。
事前の準備も大変なものだが、当日はサン・ピエトロ大聖堂で各地から
やって来る群集を前にしてミサや説教の連続で、父上も気の休まる暇がない。
そして本来であれば、私も教会軍総司令官の地位にある以上
戦争でもない限りヴァティカンで開かれる諸儀式に参加せねばならないことに
なっているのだが、私は元々あの手の厳しい儀式はどうも性に合わなくてね……
現在はこうして遠いアレクサンドリアに身を置いていることでもあるし、
父には悪いが今年のミサへの出席は遠慮させてもらおう。
――それに信心深い者たちにとっては、私がローマにいない方が
きっと晴れやかな気分で聖誕祭を迎えることができるだろうからね。
- 282 名前:名無し客:03/12/03 22:59
- >〜それに信心深い者たちにとっては、私がローマにいない方が
きっと晴れやかな気分で聖誕祭を迎えることができるだろうからね。
〜
公爵さまもなかなかおっしゃいますな。
そう武具に身を固めた公爵さまを純粋に恐れる者と宮廷の陰謀大好き
緋の衣の方々と・・・。
- 283 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/04 22:22
- >>282
フフフ……私がヴァティカンの堅物に好かれていないことぐらい、当然知っているさ。
何しろ、枢機卿だった頃は「聖職者にあるまじき言動」の数々で教会中の顰蹙を買い、
緋の衣を投げ捨ててからははカトリック教会の権威をひたすら己のためだけに
利用することで、神の尊厳とやらを踏みにじり続けてきたのだ。
そんな私を、法王庁のお偉方たちが快く思っているはずがあるまい。
――まあ、他人からどう思われようと私は己の生き方を変えるつもりはないが。
しかし、真面目な枢機卿はただ私の実力を恐れるだけだからまだ良いが
所謂策謀好きの曲者たちとなると……私や父に対する恐怖心のあまり、隙さえあれば
ボルジアを破滅させようとあの手この手で挑んでくるから、実に厄介だ。
――とは言っても、幸いなことに我々にとって脅威となり得る強敵は
現在その殆どが幽閉されているかローマを追われているかのどちらかだ。
最もボルジアを激しく憎んでいるであろうローヴェレ枢機卿は
ローマ教会の駐在大使としてフランスのアヴィニヨンに厄介払いしてあるし、
同じく父を悩ませたアスカーニオ・スフォルツァ枢機卿も、
同族のイル・モーロ共々フランス王の捕囚として現在は幽閉の身だ。
彼らに代わって我々を脅かす枢機卿も、今のところ特に見当たらないし
この分であれば父上も安心して、今年のキリスト聖誕祭を祝うことができるであろう。
……それに、善良なるローマ市民の諸君と枢機卿のお歴々もね。
- 284 名前:名無し客:03/12/04 22:39
- 公は韓非子を拝読なされましたか?
もしそうであれば、感想も是非お聞かせください。
- 285 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/05 22:13
- >>284
『韓非子』の感想については既に>>154で述べているので、ここでその内容を繰り返すことはしない。
-―今回はアレクサンドリアで偶然入手できたこの書物を基に、この書物の著者とされる
「韓非」なる人物が如何なる言説をもって法の起源と目的を説き、そして法をどのように
用いるべきとしているのか、その点について簡単に述べることにしよう。
まず韓非は、何故世の中に法が求められるようになったかを、次のように説明している。
――原始の状態では人が働かずとも衣食が足りており、賞罰を行わずとも
自治が保たれていたが、人口の増加に伴い衣食の余剰がなくなり、働いても報われなく
なったため人民の争奪が起こり、賞罰を厳しくしても国を治めることができなくなった。
そして、徳や礼によって人心を掴むことを目的とした古代の統治法は、
知略の優劣や国力の差によって国の存亡が決まる世の中では通用しない……
そしてその乱れを克服し、争いの中で国を上手く治める方法として
韓非が主張するのが、「厳しい刑と法による力を背景とした統治」だ。
それでは韓非は、その法の目的をどのように考えているのか?
その前に、彼が統治される人民を如何なる特性を持つ存在として
考えていたかについてまず触れねばなるまい-―再び、彼の言葉を引用しよう。
――もし、君主が民に耕作を強いて生産を豊かにしようとすると
民は過酷だと思い、刑罰を重くして悪事を禁じようとすると厳しいと感じる。
租税を徴収して国庫を充たし、民を飢えから救い戦争に備えようとすると、貪欲だと思う。
国内の邪な者を摘発しし、賞罰を厳密に分けて私がないようにし、民に力を合わせて
戦わせるのを急ごうとするのは、敵を虜にするためであるのに、暴虐だと思う。
これらはいずれも、国を豊かにし生活を安らかにするためであるのに、
民はこれが自分たちにとって喜ばしいことであるとは分からない。
- 286 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/05 22:14
- >>284(続き)
…何やら、ニッコロ・マキアヴェッリあたりが言いそうな文句であるな。
ともかく、韓非は上の言葉のとおり民が為政者とは異なる思惑を持つ存在であると断定し、
君主が民を治めるためには刑罰により民を畏怖させ、また褒賞により
民に利を求める心を引き起こすことによって民の心を法の力で
強制的に国家の目的と合致させることが必要だと説いている。
韓非は同時に、主君と臣下の関係についても
――臣下は命懸けで力を出すことによって主君に自らを高く売り込もうとし、
一方で主君は、高い身分や俸給をちらつかせることで臣下に高い結果を求める。
主君と臣下とは、父子の間柄のように親しい関係にあるのではなく
所詮は冷徹な打算によって成り立っているものなのである……と主張している。
この当たりは、私が常々主張している部分と全く同じだな。
ゆえに韓非は、人の善行を期待するよりも、賞の効力を利用して人民や臣下を
国家目的に挺身するようしむけ、一方で罰によって人を誤った行為から遠ざけることを重視する。
そして、法による統治によって結果的に富国強兵を実現させるというわけだ。
では韓非は、国を治めるためには具体的にどのような法が施行さるべきと考えていたのか?
……について述べようと思っていたのだが、残念ながら時間がなくなってしまった。
君たちには悪いが、この続きは明日か明後日に答えることにしよう……
- 287 名前:名無し客:03/12/05 23:21
- >>21
でも少し触れられてましたが、
カテリーナ・スフォルツァさんとの一夜の風景を発見しました。
いやぁ〜、優雅なる冷酷に相応しい最高の女性の口説き方ですね
ここまで口説き文句が上手いとなると、マリア様だって落とせそうですね。
(・∀・)ニヤニヤ
ttp://www5e.biglobe.ne.jp/~yumehit/novel/cateliena2a.html
- 288 名前:名無し客:03/12/05 23:34
- こっちが>>287の前編です。忘れてました。
ttp://www5e.biglobe.ne.jp/~yumehit/novel/cateliena1a.html
- 289 名前:名無し客:03/12/06 00:36
- 公爵様、アレクサンドリアの大図書館にてかかる希書を見つけて参りました。
作者は不詳でありますが書き様などから推し量れば「韓非」なる人物と近き
所の者かと。お目汚しならばご容赦を…(苦笑)
「統治の要諦は慈悲にあり。
慈悲あるところに恩愛生ず。恩愛あるところに平安生ず。しからば民、
心安くして生業に励まん。民、生業に励めば家富み、家富めば、国栄える。
国栄えれば、人ますます相い寄り、国自ずからにして武備を整うも易からん。
然りといえども、君主の道は慈悲にあらず、慈悲あるを装うにあり。
仁君ややもすれば国を傾く。なんとなれば仁は聖人のよく弁える理にして
庶衆のよく解することあたわず。故に庶衆の慈悲、恩愛は畢竟ただ私利のみ。
仁君の慈悲は私情にして、君主の道たる慈悲はひとえに技ならんか。」
(『君主要諦之論』)
- 290 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/06 21:17
- >>284(続き)
昨日の約束どおり、今日は前回の続きということで
『韓非子』の著者である韓非が、国家を治めるためにはどのような法が
施行さるべきと考えていたのか、それについて触れることにしよう。
韓非は法を、その適用される場面や対象に応じていくつかの種類に分けているが
中でも彼が最も重視しているのは、大衆を治めるための法であり
具体的には「賞罰を下すための明確な規定」という意味で用いられることが多い。
ここで韓非は「法」と「賞罰」を対置させて、これらを分かつことのできないものとしている。
なぜなら法は記述として存在していても、それがその本来の職能を
果たさない限りは絵に描いた餅も同然であって、法の尊厳的存在性を
堅固としたものにするためには、刑罰や褒賞の存在が欠かせないからだ。
また韓非は、賞罰を法の規定どおりに行使し法の威信を確立する前提として、
法を周知徹底させておかなくてはならないとしている。
だが、もしここで法を作りながらも、その内容が知性の優れた人でさえ
難解なものであれば、民は法を理解する手立てがなくなるであろう。
だから韓非は、法は分かり易い内容でなければならず、またその内容を
周知徹底させるためには成文法の形を取ることが必要だと主張している。
そして彼によれば、法は君主が人民に垂れた最上の教えである以上
その法を犯すことは勿論のこと、法について異議を唱えることも許されない。
…韓非子にとって法とは、利害関係の相違する人民と君主を結び付ける唯一の紐帯の
ような存在であったから、法の絶対的な徹底が当然考えられるわけだ。
- 291 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/06 21:17
- >>284(続き)
つまり、ここまでの彼の考えを要約すると下のとおりになるのではないだろうか?
――褒賞は間違いなく与え、刑罰は重く必ず執行し、そして法は一定で
確固たるものとして、それを民に余す所なく周知するのが一番である。
だから主君は、時を移さず褒賞を与え、誅罰を下すのに容赦してはならない。
名誉が褒賞の価値を支え、謗りがその罰に伴うようであれば、
本人の見識や能力とは一切関係なく、各々が自分の力を出し切ろうとするのである。
このような法の徹底は、言い換えれば民が身分や門地に関係なく
功績次第でいくらでも抜擢されることも意味するわけだが、これは民に均等な機会を与える
というよりも、民の前に人参をぶら下げることで功を立てようとする利心を
掻き立てさせる意図から為されるものであることに留意する必要があるな。
ただし韓非は同時に、法のみによっては国家の安寧は果たせないことも見抜いている。
つまり、法は人民の行為の基準となり、政府の官吏は法を施行することによって
民から仰ぎ見られる存在となるわけであるが、当時は官吏を制御する術が確立されて
いなかったこともあって、臣下が主君を弑するという事態もしばしば発生した。
故に、韓非は法のみならず「術」や「勢」による臣下のコントロールの必要性も説いていたのだ。
-―と、説明口調になってしまったが、以上が『韓非子』で韓非が説いている「法」の概念だ。
大半の諸君にとってはあまり馴染みのない、面白みに欠ける内容であったかもしれんが、
もしもここを見ている者の中にイタリアやドイツの小国を治める君主が
いるのであれば、多少は治世の参考になったのではないかな?
- 292 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/06 21:18
- >>287-288
何ともまあ、よくもここまで書き切ったものだな………
確かに件の文章に描かれたあの夜の描写は、事実と異なっているわけでもないのだが。
-―私は単に、力づくでカテリーナ・スフォルツァを征服したかったわけではなかった。
私を徹底的に愚弄し侮辱してくれた「イタリア第一のプリマ・ドンナ」を、
誰に強制されるわけでもない自らの意思で、この私に対して
膝を折らせることでで、あの戦いにおける完全な勝利を得たかったのさ。
……その結果は、あえてここで語る必要もないだろう。
しかし、カテリーナはともかく私に聖母マリアを口説くことができるかといえば、
それは果たしてどうであろうかな……と言うよりも、それ以前に
彼女が私の興味を引く類の魅力を備えている女性であるのかどうか。
私は女であろうと財宝であろうと、どうしても手に入れたいと願えば
手段を選ばぬが、それが自分の興味を引かない存在で
あるならば、無理をしてまで我が物にするつもりはない。
その点で行くと、所謂聖母だの聖女だのと呼ばれる女性は、私からすれば
どうも女としての魅力や面白みに欠けるようにしか見えないのだが……
こんなことを言っていたら、また教会のお偉方の反感を買うことになりそうだがね。
- 293 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/06 21:18
- >>289
この『君主要諦之論』も、先の『韓非子』と同じ古代キタイ国で書かれた著作なのかね?
私が足を運んだアレクサンドリアの書店には、このような書物はなかったのだが。
しかし、キタイ国から遠く離れたエジプトになぜこのような書物が揃っているのだ?
これは、ムセイオンが建設されギリシア・ローマ世界随一の学術都市として栄えた
古い時代の名残りが、現在のアレクサンドリアにも残されていることの証左なのか……
それはさて置き、この書物の著者は国を治める要諦は慈悲にあると言っておきながら、
同時に君主が慈悲を極めようとすると逆に国が傾くとも説いている……
一見すると両者は矛盾しているようにも聞こえるが、この著者は君主が民に
仁愛や礼を説こうとしても、民は自分の利欲を満たすことだけしか考えていない
存在だから、所詮民がそれを理解できるわけがないとも言っているな。
だから、「仁君の道」で国を治めることは無駄なことで、表向きは仁君を装いながら
民の利欲を満たすようにしてやれば良いというのが、この著者の考えなのであろう?
私の解釈が、果たして正しいのかどうかは分からんがね………
更に、韓非が言うように民の利欲を国家目的に適合するよう仕向ければ
ある意味では怖い物なしの国家が誕生することになるかもしれんな………
本当にそんな国家体制ができるかどうかは、確証がないところだが。
- 294 名前:名無し客:03/12/07 02:49
- 公爵閣下。アレクサンドリア滞在中は
何を召し上がっておいでですか?
新鮮な魚介類でしょうか。
- 295 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/07 18:49
- >>294
アレクサンドリアに着いてからは、一般のエジプト人と同じ物を食することが多いな。
せっかく異国に来たのに、現地の食文化に親しまないとあっては旅の楽しみが薄れるというもの。
そこで今回は、エジプトでどのような料理が食されているかを少し話すことにしよう……
エジプト人は「食事を最大の楽しみとする民族」と呼ばれるだけのことはあって
古代より3,000年の歴史を誇る、豊かな食文化が発達しているのだそうだ。
現在では、古代ギリシアやローマ帝国を起源とする地中海の食文化に
アラブ人がイスラム教と共にもたらした中近東の食文化が融合し、更には新世界より
伝わった新しい農作物を取り入れた、独特の料理を楽しむことができる。
ナイル川流域で豊富に産出される米や豆・野菜類を中心として
アレクサンドリア近辺で獲れる魚介類など、食材の種類も豊富だ。
まず、エジプト人にとっての主食といえばパンが挙げられる。
「エジプト人はパン食い人」という言葉があるほど、エジプトではパンが好まれ
貨幣のない古代においては、ピラミッド建設の報酬としてパンとビールが
ファラオから労働者に支給されていたという話もあるそうだ。
胡麻とヨーグルトを混ぜたペーストを付けたり、ターメイヤ(空豆の揚げ物)を
挟んだりして食べるのが、エジプトにおける一般的なパンの食べ方のようで
ターメイヤの店はどこへ行っても大混雑だ……そういえば、先日街で見かけた
イル・モーロ似の男も、ターメイヤの屋台を営んでいる様子だったな。
エジプトで大量に獲れる米や豆類も、彼らにとってはパンと共に欠かせない常食だ。
豆類は主に空豆・レンズ豆・ヒヨコ豆などが好まれており、磨り潰してスープにしたり、
塩煮にしたり先に挙げたターメイヤのように揚げ物にしたりと、調理方法も数多い。
米は野菜のスープをかけて食べるか、牛乳や砂糖と一緒に煮てデザートにすることが多い。
古代から栽培されている玉葱や茄子、モロヘイヤをはじめとして最近新世界から
もたらされたトマトなど野菜の種類も数多く、サラダやスープにふんだんに使われている。
このあたりは、野菜類を殆ど食べることのないヨーロッパ人とは大きく異なるところだ。
- 296 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/07 18:50
- >>294(続き)
肉類については、羊肉・牛肉・鶏肉といったあたりが盛んに食されているようだ。
中でも羊肉が最も好まれていて、どこの街角でもシシカバブを買うことができる。
変わったところでは、古代王国の時代から食べられている鳩料理というものがあって
エジプト人の間ではこの鳩が、「精力の付く食材」として親しまれているのだそうだ。
私も一度鳩のグリルを試してみたのだが、その味は……
-―それはさて置き、エジプトで料理に使われる肉類は当然のことながら
他のイスラム諸国と同様に、戒律に従って屠殺された家畜のものだ。
無論、戒律により豚肉を食することは厳禁であることは言うまでもない。
肉料理といえば、次に来るのは当然魚料理であろうな。
以前私は、どこかで「エジプト人は魚介類を好まぬ」と聞いたことがあったのだが、
このアレクサンドリアには地中海で獲れた多くの魚介類が揃っている。
ここでよく食されているのは、スズキのような白身魚やイカ・エビといったところで
調理方法はギリシアをはじめとする地中海沿岸のそれに近いようだ。
それから、エジプト人が好むのが甘い菓子類で……
アレクサンドリアの市場でも、数多くの焼菓子やケーキを目にすることができる。
しかし、この菓子類は……もうこれでもかというぐらい砂糖やシロップを
ふんだんに使っていて、我々とってはくど過ぎるぐらい甘味の強い代物なのだ。
機会があるなら、君も一度その甘さを心行くまで味わって見るといいだろう。
食事については特に不満はないが、このアレクサンドリアで
唯一閉口しているのは、街中では酒を一切飲むことが許されていないことだ。
葡萄酒もビールも、エジプトでは古代より作られてきた酒であるのにな……
現在のエジプトが飲酒厳禁のイスラム世界に属する以上、これは仕方があるまい。
どうしても酒が飲みたくなった時は、ヴェネツィアの商館に足を運ぶことにしているよ。
――それも叶わぬ場合は、エジプトの花茶やコーヒーで我慢しているがね。
- 297 名前:名無し客:03/12/08 22:30
- らくだに乗ると楽だよ。
チェーザレ様。砂漠の中にそびえるピラミッドとかスフィンクスの
観光にはいかれましたか。アレクサンドリアからは少し距離がありますね。
- 298 名前:(アサシン):03/12/08 22:43
- ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アッラー、アクバル!
- 299 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/09 21:48
- >>297
ギザの三大ピラミッドとスフィンクスへはまだ足を運んでいないが、
これらの遺跡があるのは、確かマムルーク朝の首都カイロの近くであったな。
我々もアレクサンドリアの事情を調べ終えたら、次はカイロへ向かう予定だ……
その時には、ピラミッドもスフィンクスも目にする機会があるだろう。
そのアレクサンドリアからカイロへの旅は、ナイル川を行き来する船を利用する
つもりでいたのだが…考えて見れば、駱駝に乗って陸路を進むという手段もなくはないな。
――もっとも砂漠の道では、途中で夜盗に出くわしたり遭難したりする危険が大きいので、
ヴェネツィア商館の駐在員は陸上の旅を積極的には勧めていない様子だったが。
まあ陸上の危険というものは、どこであろうとそう大して変わらないような気もするが……
やはり慣れない地で危険な陸路を進むよりは、船を使用した方が安全だろう。
――ヴェネツィア人も、大半の場合は水路を利用しているようだからな。
ここからは余談になるが、カイロから更にナイル川を船で奥地まで溯ると、
古代王国の中心であったルクソールへ行くことができる……
かつてギリシアの詩人ホメロスが、「百門の都」と謳った古代都市テーベのあった場所だ。
ここには、アメン神をはじめとする古代エジプトの三大神を祀ったカルナック神殿や
同じくアメン神に捧げたルクソール神殿があり、1,000年以上に渡って
わが世の春を極めた古代エジプトの栄華を、現在でも偲ぶことができる。
ナイル川を挟んだ対岸には、古代のファラオが葬られた「王家の谷」と呼ばれる
場所があるらしく、ミイラと共に納められた高価な副葬品を狙って
昔から現在に至るまで、墓泥棒が絶えたことがないという話だ。
- 300 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/09 21:49
- >>298 (アサシン)
やれやれ………誰に頼まれたかは知らんが、我々の命を狙うとは何とも無謀な男だ。
イスマイール派のアサシン教団は、もう250年も前にタタール軍の手で壊滅し
その残党もマムルーク朝によってあらかた一掃されたと聞いていたのだが……
――現在でも、まだこのような手合いが生き残っていたとはな。
このエジプトが、かつてシーア派を掲げるファーティマ朝によって
支配されていたことを考えれば、それも納得できないことではないが……
――しかしさすがの暗殺者も、今回ばかりは狙った相手があまりにも悪すぎたな。
よりによって、私やミケロットを相手に暗殺を仕掛けるとは愚かな真似を……
本来であれば当然生かしては帰さぬところだが、ここはイタリアではなくエジプトだ。
異国で無用な騒ぎを起こして、後で面倒事に巻き込まれるわけにもいかん。
そういうわけだ……ミケロット、この男はスルタンの官憲に引き渡してやれ。
この手の暗殺集団は、スルタンにとっても到底看過できる存在ではあるまい。
もっとも、彼が縄に付くことを拒否して自ら命を絶つつもりであれば、私は別に止めないがね……
- 301 名前:名無し客:03/12/09 22:39
- イタリア式の服装では暑くございませんか。
- 302 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/10 20:34
- >>301
まあ、全然暑くないといえば嘘になるがね……
幸いなことに、このアレクサンドリア一帯は地中海の風に影響されているので
内陸のカイロやルクソールに比べれば、遥かに凌ぎやすい気候をしている。
それにエジプト全体も、既に暑さが一段落した乾季に入っているし
現在我々が着ているヴェネツィア商人の衣装でも、特別難儀することはない。
これが暑気の厳しい雨季であれば、そうは行かなかったかもしれないが。
イタリア式の服装でも暑さは特に問題ないのだが、厄介なのはイスラムの地で
このような恰好をしていると、要らざる面倒事に巻き込まれやすいということだ。
イスラム教徒の安息日である金曜日や祝祭日に、うっかりヨーロッパ式の衣服を着て
外出しようものなら、狂信者による暴力の標的となる危険が高い……
――我々も、つい先日アサシン教団を名乗る者に襲われたばかりだが。
そんな事情があるから、ヴェネツィア人やジェノヴァ人、それにフランス人など
この町に住むヨーロッパ人は安息日や夜間の外出を厳禁しているのだ。
服装を変えれば安全が保障されるというわけでもないが、
妙なトラブルで旅の楽しみを邪魔されるくらいなら、いっそのことエジプト滞在中は
全員アラブ式の衣装で通した方がいいかもしれんな……
特に、我々の場合は他のヨーロッパ人とは異なり、夜間でも平気で外出するしね。
――今度市場へ出向いた折に、我々一行に見合う衣服を探すことにでもしよう。
- 303 名前:名無し客:03/12/14 17:48
- オスマン・トルコのスルタンは大軍を動員できるので
正直、公は羨ましくありませんか。
- 304 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/14 22:30
- ――アラブ人の衣服は、エジプトの暑さを凌ぐにはうってつけだな。
しかも衣服を変えて以来、周囲に怪しまれず堂々と街中を歩き回れるようになって
アサシン教団のような妙な連中に目を付けられることも少なくなっている。
このようなことであれば、もっと早くイスラムの服に着替えるべきであったな……
>>303
それは私に限らず、ヨーロッパ全ての君主が抱いている羨望であろう……
何しろオスマン帝国の陸軍力は、ヨーロッパのどの国をもってしても
比較にすらならないほどの、凄まじい規模を誇っているのだから。
仮に私がイタリア全土を統一し得たとしても、未だその力はトルコの足元にも及ぶまい。
――フランスやスペイン、神聖ローマ帝国にしたところで状況は同じだ。
タタール人の残党もかつての力を失い、マムルーク朝も凋落の一途を辿っている今
我々の世界でオスマン帝国に対抗できる国は、最早どこにも存在しないと言ってもいいだろう。
過去の歴史を紐解いても、現在のオスマン帝国以上の軍事力を有する国家が
あるとすれば、せいぜい全盛期のローマかイスラム帝国しかないのではないか?
――後は、東のキタイ国かチンギス・ハンのモンゴル帝国ぐらいか。
もしも将来オスマン帝国と戦うとすれば、イタリア一国を平定するだけでは力不足だ……
トルコ軍の圧倒的な物量に対抗するには、やはりヨーロッパ全土を我が旗の下に納めねばなるまい。
- 305 名前:名無し客:03/12/15 22:42
- ムスリム風の衣服ですか。結構お似合いですな閣下。
お髭も伸ばしておいでですか?
- 306 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/16 22:19
- >>305
ムスリムの装束に着替えて皆からどのような反応が返ってくるか、正直不安な面も
ないわけではなかったが、どうやら評判は上々のようで安心したよ。
まあ、私ならばどんな服装でも常に上手に着こなせる自信はあるが……
しかし今の私の恰好を見て、果たしてヴァティカンの連中はどんな言葉を発することやら……
何しろ、あのローマ教会にはほんの少しでも服飾に異国風の意匠を取り入れるだけで
悪魔に魂を売っただの何だのと、白い目を向ける輩が少なからずいるぐらいだからな。
以前、オスマン帝国のジェム王子がヴァティカンで人質生活を送っていた時には、
ファッションに拘りを持つローマの若者の間でオリエント趣味が爆発的に流行していた。
その時は、私も弟のホアンも我先にと競ってトルコ風の服装をしていたが、
流行とは全く縁もゆかりもない、信仰心一筋のキリスト者たちは
苦虫を噛み潰した表情で我々のことを見つめていたものだよ………
――そしてムスリムの服装と来れば、当然忘れてはならないのが顔全体を埋め尽くす髭だ。
イスラム世界では男子は皆髭を大いに伸ばすことが奨励され、大の大人の癖に
髭もろくに伸ばさぬ男は、何やら特殊な趣味の持ち主と見なされることもあると聞いている。
中にはオスマン帝国のメフメト2世のように、立派な髭の持ち主でありながら
そちらの趣味が非常に盛んである者もいるようだが………以上、閑話休題。
私は以前から髭を生やしているので、このままムスリム式の服装に袖を通しても
別に違和感を持たれることはなかったが、連れの中で髭を生やしていない者は
やはりこの服装に馴染んでいないというか………どうも不恰好であることは否めない。
「郷に入っては郷に従え」とも言うからな、髭を伸ばすのが余程嫌だと言うのならば別だが
今後はアラブ人になりきるつもりで、彼らにも大いに髭を生やして貰う。
せっかく異国の服装に身を包んでいるのだから、少しでもそれらしく
見せた方が良いではないか……もちろん私も、これまでよりは長めに髭を伸ばすつもりさ。
- 307 名前:名無し客:03/12/17 21:50
- 法王宮の高位の方々が閣下のお姿をご覧になれば、お言葉どおり
唖然としますでしょうな。御父君でさえ苦笑なされるかも。
ヴェネツイア商館にはたびたび立ち寄られるのでしょうか。
それにエジプトの地にあれば、インド・キタイなど遙東方の
国々の噂も聞こえてくるのでは? はてさてペルシアの王朝は?
- 308 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/18 22:52
- さて、いよいよキリスト聖誕祭も間近に迫ってきたが……
アレクサンドリアとカイロ、どちらの街で今年の聖誕祭を祝うことにしようか?
>>307
ならばいっそのこと、このままムスリムの衣装でヴァティカンに赴き
サン・ピエトロ大聖堂でイスラム式の礼拝でも捧げてやろうか?
呼び方は何であろうと、所詮キリスト教もイスラム教も根っこでは同一の神を
信仰している事実に変わりはないのだから、少しぐらい礼拝の方法が
違っていたとしても、別に不都合があるわけではないだろう?
フフフ、呆気に取られた枢機卿団の間抜け面が目に浮かんでくるよ。
――ヴェネツィア商館には、それこそ毎日のように顔を出しているさ。
胡椒の価格からポルトガルとマムルーク朝スルタンとの抗争の顛末に至るまで、
ヴェネツィア商館に行けば常に最新の情報を入手することができるからな。
先日まではヴェネツィア商人の服装をしていたから、商館の者たちにも
別に怪しまれることなく自由に出入りできたが、この恰好に変わって今後はどうなることやら。
――少なくともムスリムの安息日である金曜日には、中に入れてもらえそうにないな。
最近のアレクサンドリアでは少なくなったようだが、今でも安息日やイスラムの祝日になると
狂信者によるキリスト教徒への暴行がごく稀に起こることがあるらしいから。
イスラム世界はヨーロッパ以上に各国が密接に繋がっているから、
当然このエジプトでもインドやペルシアに関する情報は頻繁に耳にすることができる。
チンギス・ハーンの時代とは違って、現在では陸路による東西交流はさっぱりなので、
キタイ国についてはインド経由の又聞き情報ぐらいしか入っていないようだが……
- 309 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/18 22:52
- >>307(続き)
前にも少し話したが、長年エジプトのスルタンが独占してきたインドの香辛料市場は
強大な武力を背景としたポルトガル艦隊の進出によって、ほんの数年で大きく様変わりした。
ポルトガル人は単に安値で胡椒を買い漁るばかりに留まらず、競争相手である
エジプト商船を何隻も撃沈するものだから、エジプトには胡椒がすっかり入らなくなって
スルタンは商売上がったり……スルタンと結託して莫大な利益を得ていた
ヴェネツィアも、とばっちりを喰らってリアルト市場には閑古鳥が鳴いている有様だ。
特に今年は両国にとって散々な年であったようで、エジプトのスルタンは
ヴェネツィアの意を受けてインドの王に脅しを掛けさえしたらしいが、
ポルトガル艦隊の武力により恐怖を感じているインド王はまるで取り合わなかったそうだ。
ペルシアでは、チンギス・ハーンの末裔であるイル・ハーン朝が消滅して以来
ティムール帝国の支配を受けていたが、最近そのティムール帝国の分裂に乗じて
イスラム神秘主義者の一党が武装蜂起し、サファヴィー朝なる新しい王国を築いたという話だ。
この久々に出現したペルシア人の王国がヨーロッパと接触するのは当分先の話に
なるだろうが、聞くところによればこのサファヴィー朝はオスマン帝国に対抗して
シーア派を国教に据え、国王も「スルタン」ではなくペルシアの伝統的君主の称号である
「シャー」を名乗るなど、他のイスラム国家とは異なる特色を持っているらしい。
オスマン帝国の背後に控えるこの国の存在、覚えておいて損はないであろう。
- 310 名前:名無し客:03/12/21 01:39
- あーっ。夜中は冷えるなあ。
公爵さまもこんな時はローマが恋しくなりませんか。
- 311 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/21 20:42
- ――今年の聖誕祭だが、やはりアレクサンドリアで迎えることに決めたよ。
イスラム教の興隆以後に建設されたカイロでは、聖誕祭を祝う者は
数えるぐらいしかいないだろうが、このアレクサンドリアには
ヴェネツィア商館をはじめとして、ヨーロッパ人の居留地がいくらでもあるからな。
それに、イスラムによる征服以前のアレクサンドリアは、ローマやイェルサレム、
それにコンスタンティノープルと並ぶキリスト教の一大聖地だったという伝統もある。
それを特別意識しているわけでもないのだが、少なくともカイロよりはここの方が
後ろめたさを感じることなく、キリストの生誕を祝う祭りを楽しむことはできるだろう……
――もっともイスラム教徒の恰好で聖誕祭を祝ったりしたら、
周囲の者からは奇異の眼差しで見られることになるかもしれないがね。
- 312 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/21 20:43
- >>310
砂漠地帯では、焼け付くような暑さに見舞われる昼から一転して
夜が訪れると、逆に厳しい寒さに見舞われるということらしいな。
もっとも、このアレクサンドリアは年中温暖な気候に恵まれていることもあって、
夜になってもそれほど気温が下がることはないがね……
海の向こうのイタリアでは、そろそろ雪がチラ付く所もあるはずだが、
エジプトではめったな事がない限り、この季節でも雪など望むべくもない。
幸いなことに、このアレクサンドリアは私にとって非常に過ごしやすく、
飽きることのない街だ……それこそイタリアでの仕事を、一瞬忘れそうになるぐらいにね。
だから特別何か変事でもない限りは、今すぐローマへ帰ろうなどという気も起こらない。
しかしこうして異国に身を置くことによって、普段当たり前のように見ているものを
見ることができないのは、正直言って妙な気分もしないわけではない。
ローマを恋しく思うとすれば、ここではこの時期に雪を見ることができない
ということぐらいかな……それ以外は、エジプトには何の不満もないさ。
- 313 名前:名無し客:03/12/22 12:42
- 公爵様の時代の、最新の世界地図をごらんになっていただき、
思うところ、感じるところを教えてください。
- 314 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/22 22:21
- >>313
世界の情勢については、これまでも何度となくこの場において話したところだが……
改めて世界地図を広げて感じるのは、やはりオスマン帝国は他国の追随を
許さぬほど圧倒的で、確実にバルカン半島で覇権を築きつつあるということ、
何だかんだ言ってもヨーロッパではフランスにスペイン、それからハプスブルク家が
頭一つ抜きん出ていること、そしてイタリアはこれらの強国に比べてあまりに弱小で
一刻も早く統一を達成しなければ、いずれ列強の食い物にされてしまうであろうことだな。
……一方でオスマン帝国の影に隠れて目立たぬ存在であるが、
最近東ヨーロッパで急激に力を増しつつあるのが、ロシア人のモスクワ大公国だ。
この国では、20年ほど前に大公イヴァン3世がタタール人からの独立を宣言して以来
武力で諸侯の反抗を抑え、領民の農奴化を進めることで専制を強化していると聞いている。
そのイヴァン大公は近頃「ツァーリ」なる称号を自称して、自らがビザンツ皇帝の
後継者であると吹聴しているらしい……ついこの間までタタール人の顔色を
窺っていたロシア人が、ビザンツ皇帝の姻族に当たるという理由だけで
したり顔をして皇帝を自称するなど、ヨーロッパ人にとっては噴飯ものの話だが。
アジアに目を転ずれば、オスマン帝国を破ったティムール帝国がその歴史に
幕を閉じようとしており、その後の覇権を巡って各国がしのぎを削る状況が続いている。
オスマン帝国も無論アジアの覇権を狙っているはずだし、ペルシアには先にも述べた
サファヴィー朝が力を増しつつある……いずれこの両国が衝突するのも時間の問題だろう。
そうかと思えば、インドにはアフリカ大陸を回ってきたポルトガル艦隊が武力で自らの勢力を
築きつつあり、その煽りを受けてインドにおけるエジプトの影響力は低下する一方……
ヴェネツィア共和国までもがそのとばっちりを受けていることは、先述のとおりだ。
現在のところは、オスマン帝国にもサファヴィー朝にもポルトガルを阻止する
手立てはなく、当分はポルトガル人の勢力拡大が続くことになりそうだ。
この分だと、そう遠くない将来に彼らの勢力はキタイ国まで達することになるかもしれんな……
- 315 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/22 22:22
- >>313(続き)
――さて、ここまで話を続けて、諸君たちの中であることに気が付いた者はいるかな?
そうだ……これまではアジアもヨーロッパも、それぞれの世界の間に
接触がないわけではなかったが、基本的にはお互い別の世界に生きていた。
我々がインドの現状など知る由もなかったし、その逆もまた然りだ。
――しかし、オスマン帝国がアジア・ヨーロッパ・アフリカの三大陸に跨る大帝国を
築き上げようとしており、またスペインやポルトガルがアジアや新世界への
航海を積極的に進めることによって、これまでバラバラに進んでいた
世界の流れが、今になって一つにまとまろうとしているのだ。
最早我々にとって、アジアはマルコ・ポーロの書物にのみ記された
夢の世界ではなくなりつつあるし、これまでこの話で触れてこなかった新大陸についても
最近では裸の蛮族しかいない未開の地ではなく、相当に高度な文明を持つ
インディオたちの帝国が存在しているらしいことが分かっている。
いずれは彼らも、我々の世界と大きく関わっていくことになることは確かであろう……
果たしてそれが、互いにとって幸せな形になるかどうかは分からないが。
- 316 名前:名無し客:03/12/22 22:52
- レオナルド・ダ・ビンチは、公爵にとってどのような人物だったのでしょうか。
- 317 名前:名無し客:03/12/23 07:16
- さすがは、チェーザレ殿。
新大陸の国家にも造詣がおありとは。アステカ・インカの両帝国を
筆頭に栄えると言うかの地の様子は地中海世界とは大きく異なるで
しょうね。エスパーニャやポルトガルの商人たちならこの種の噂は
詳しいかもしれませんね。ヴェネツィア大使たちも情報を集めてい
るかも・・・。
- 318 名前:名無し客:03/12/23 07:16
- さすがは、チェーザレ殿。
新大陸の国家にも造詣がおありとは。アステカ・インカの両帝国を
筆頭に栄えると言うかの地の様子は地中海世界とは大きく異なるで
しょうね。エスパーニャやポルトガルの商人たちならこの種の噂は
詳しいかもしれませんね。ヴェネツィア大使たちも情報を集めてい
るかも・・・。
- 319 名前:名無し客:03/12/23 07:16
- ああっ。公爵さまへの手紙が二本になってしまった・・・。
- 320 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/23 17:17
- >>316
レオナルドとの関係か……君主が芸術家を保護するという意味の、
所謂パトロンとクライアントの関係ではないとは言えるだろうな。
例えどんなに美しい絵を描く者でも、自分の役に立たなければ
私はわざわざ一芸術家のために国庫から大金を惜しまず出すような真似はしない。
一方のレオナルドも、真に欲しているのは芸術活動を援助してくれる者ではなく
自分の理想を実行に移すことのできる、実力を持った存在だ。
――そんなレオナルドにしてみれば、私は彼の計画を実現するための実力も
理解力を兼ね備えた、理想的な君主として写ったわけだ。
片や私にとっては、自己の国家建設を進める上で彼の才能がどうしても必要だったのだ。
城塞を建設するにしても、街を整備して道路や運河を通すにしても
これまで私の下にいる臣下の中で、国土計画の能力に長けた者はいなかった。
だから、レオナルドの夢を実現することで我が国が豊かになるのであれば、例えほら話でも
乗るだけの価値はあると判断して、彼の売り込むアイデアを採用することに決めたわけさ。
考えようによっては、私とレオナルドはそれぞれ自らの目的のために互いを利用し合う
関係と言えるかもしれないが……それはそれで、ひとつの真実ではあろう。
しかし、だからこそ我々の間には互いを共同の理想を実現できる友人として
真摯に認め尊重し合う気持ちが、間違いなく存在している………
パトロンとクライアントのような上下関係では、このような感情が生まれることはあり得まい。
私とレオナルドは互いを対等の立場の友と認めて、尊敬し合っているよ。
- 321 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/23 17:18
- >>317-319
私もヴェネツィア人も、新世界についてはそれほど詳しいわけではないが……
何しろ我々が新大陸のことで知っているのは、殆どがスペインや
ポルトガルとの取引を通じて入ってくる、間接的な情報ばかりだからな。
ヴェネツィア共和国の上層部も自己の死活問題に関わるだけに、情報網を駆使して
新大陸の情報を手に入れようと躍起になっているらしいが……
スペインもポルトガルもガードが固いようで、なかなか思う様に進んでいないようだ。
ヴェネツィアにとっては、自国の船を外洋に出すことができないのが何より痛いところであろう……
しかしそうは言っても、互いに船の往来を続けていれば自然と情報は入ってくる。
船乗りの間で交わされる何気ないやり取りの中で、新世界には太陽神を
信仰する古代オリエントのような帝国が存在するらしいだの、
その国には信仰の中心としてピラミッドが建立され、そこで戦争の捕虜を
生贄として神に捧げその死体を皆で喰らうだの……といった話はよく出てくるのだよ。
スペイン王室にしろポルトガル政府にしろ、噂話まで取り締まることはできないからな。
もっとも、これだけ噂話が飛び交えば中にはガセネタも存在するだろうし
話が流れる中であることないことがどんどん付け加えられ、雪だるまの如く
虚像が膨れ上がって勝手に一人歩きを始めるということもあるだろう。
新世界にある大帝国については、今のところどの話も正確性を欠いている以上
詳しいことは実際に現地に行って、この目で確かめなければ何も分かるまい。
もしも近い将来、我々のようなヨーロッパ人が彼らの大帝国に足を踏み入れたとしたら
果たして相手はどのような反応を示すことであろうな………
- 322 名前:名無し客:03/12/23 23:13
- ヴェネツィアの船は何故外洋に行けないのですか。
- 323 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/24 21:15
- ごきげんよう、諸君………遂に明日はキリスト聖誕祭だな。
イタリアの父上は、今頃ミサの最終準備で一時も気の休まることがないであろう……
私は堅苦しいことは父やヴァティカンの枢機卿団に任せて、いつもこの日を楽しむだけだが。
普段はムスリムの陰に隠れているアレクサンドリアのキリスト教徒たちも、
この数日間だけは日頃の憂さを忘れ、陽気にこの日を祝っているようだ。
私もこれから、ミケロットや他の連れたちと共に街へ繰り出して
一晩中飲み明かし、市井の女と戯れながらこの日を愉快に過ごすつもりさ。
……フフフ、ムスリムの服装で酒など飲んでは問題があるかな?
- 324 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/24 21:16
- >>322
まず断っておかなければならないのは、ヴェネツィアには外洋に船を送り込む
力がないわけでもなければ、人材を欠いているわけでもないということだ。
最近でもヴェネツィア出身のカボットなる男が、イングランド王の支援を受けて
新大陸への到達を果たしているぐらいだからな……もっとも彼は、キタイ国を目指して
再度新大陸への航海に出たその途上で、残念ながら遭難してしまったらしいが。
それに、いくらポルトガル艦隊が強大といっても、ヴェネツィアの海運力は優にそれを上回る。
彼らが本気になれば、ポルトガルを駆逐することなど容易であったはずだ……
では何故、そのヴェネツィアは外洋に船を出すことができず、
スペインやポルトガルに大きく遅れを取ることになってしまったのか?
――答えの一つとしては、ヴェネツィア人自身が新製品開発や新市場開拓といった
未知の分野を切り開くことが得意な人種ではなく、なおかつヴェネツィア政府が
その手の事業に積極的でないということが挙げられるだろう。
ヴェネツィアは自身が先駆者となるよりも、他者が切り開いた物事を
実用化し、自らの利益へと変えていくことの方が得意な国家だからな。
だが、それならば例え他国から二番煎じと揶揄されようが、スペインやポルトガルの
開拓した市場に割り込み、自身の権益を築き上げることだって可能なはずだ。
それなのに、ヴェネツィアはどうして新世界への進出ができないのか……
というよりもやろうと思えばできるはずなのに、それをやろうともしないのか?
- 325 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/24 21:16
- >>322(続き)
――要は、ヴェネツィア人は新大陸やインド航路が自分たちにとって
さして大きな利益を生む市場であるとは考えていなかったのだ………
わざわざ危険な大西洋を渡ったところで、胡椒の獲得には実用的ではないと思っていたのさ。
現にコロンブスが新大陸から帰ってきた時、彼は一粒の胡椒を持ち帰ることもできなかった。
労多くし実りの少ない事業に無駄な力を費やさなくても、ヴェネツィアには
エジプトを経由して常に胡椒を確保できるルートが既に確立されていた。
だから彼らは高をくくっていたのさ……ヴァスコ・ダ・ガマが凱旋するまではね。
ガマが帰ってきた時は、ヴェネツィアでは天地をひっくり返すような騒ぎになったそうだ。
これまで地中海交易を通じてヨーロッパの香辛料市場を独占してきたのに、
彼がヴェネツィアの手を介することなく胡椒を山と積んでリスボンに入港した事実は、
リアルト市場にたむろする商人たちに、この世の終わりすら実感させたとか。
――事実、ガマのインド航路発見以降ヨーロッパの香辛料市場はその勢力図を
大きく変えることとなり、ヴェネツィアは大損害を被っている。
しかし、ヴェネツィア政府の上層部には相当楽天的な考えの持ち主がいるらしく、
心ある者たちがスペインやポルトガルに乗り遅れまいと外洋への進出を主張しても、
なかなか重い腰を上げようとはしない……どうも彼らは、インド航路に要する
往復期間の長さと一度の航海で半分近くの船が失われるリスクの高さから、
ポルトガルがやがてインド航路の活用を諦めるであろうと考えているようだ。
だから、あえて危険を冒してインド航路の進出を図る必要はなく、これまで通り地中海市場を
維持することが、結果的にヴェネツィアに取って有益になるというのが彼らの判断だ。
エジプトで見聞きした限りでは、そう話が上手くいくとは思えないがね……
――つまるところ、ヴェネツィアが外洋に船を出せない理由はヴェネツィア人の気質と
伝統的に地中海市場を重視する彼らの政治的姿勢にあるといえそうだな。
それが吉と出るか凶と出るか、答えが出るのはいま少し先の話になると思うが……
- 326 名前:名無し客:03/12/24 22:37
- サタンいやサンタクロースは、砂漠ではあの姿では動けませんな。
教会軍最高司令官殿。
- 327 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/25 20:17
- さて、君たちにとって今年のクリスマスはどのような物だったかな……?
ローマでは聖誕祭のミサも無事執り行われ、私も昨晩は実に愉しく過ごさせてもらった……
日が高く昇っていることにさえ、全く気が付かないぐらいにね。
――しかし、よく探せばアレクサンドリアにも酒を飲める場所があったのだな。
勿論その店に集っているのはキリスト教徒ばかりだったので、
ムスリムの恰好をしている我々一行はとにかく目立って仕方がなかったが。
>>326
サンタ・クロース……古代ローマ時代に実在した聖ニコラウスのことかね?
彼は3世紀の終わりから4世紀のはじめにかけて、現在のアナトリア半島にある
ミュラの街で司教を務めた人物で、両親から受け継いだ莫大な資産を投げ打って
数多くの貧しい者たちを助け、奇蹟によって難破船を救助したこともあったという。
ディオクレティアヌス帝によるキリスト教徒大迫害を信仰の力で耐え抜き、死の危険をも
省みず神の愛を説き続けたことから、彼は「愛の司教」とも呼ばれているとか。
聖ニコラウスについては、次のエピソードがよく知られているな……
…ある時、ニコラウスは近所の靴屋が貧しさのあまり3人の娘を嫁に出すことができず、
思い余って娘たちを売り飛ばそうとしているという噂を耳にした。
心を痛めた彼は何とかしてそれを止めさせようとして、夜な夜な嫁入りの支度金として
充分な金貨を密かに靴屋の家に投げ入れ、おかげで靴屋は娘を全員嫁に出すことができた。
そしてニコラウスの愛は、靴屋の主人の心をも貧しさから救ったという。
この話にあやかって、ヨーロッパでは毎年12月6日を聖ニコラウスの祝日と定めている。
フランスやドイツやネーデルランドでは、12世紀頃からこの日の前夜に
子どもたちが靴下や小舟を窓先にかけておくと、聖ニコラウスがやって来て
密かにプレゼントを入れてくれると信じる風習が定着しているようだ。
ちなみに、この時ニコラウスはいつも赤い司教服を着ているということらしい。
確かにあの司教服に身を固めては、砂漠で自由な動きはままならないことだろう……
……しかし、その聖ニコラウスとキリスト聖誕祭に何の関係があるのであろうか?
今述べたとおり聖ニコラウスの祝日は12月6日であるし、聖誕祭とは3週間近い開きがある。
聖ニコラウスの祝日と違って、聖誕祭には子どもにプレゼントを与える風習があるわけでもない。
時期が近いとはいえ、何時この二つの風習が一緒になってしまったのだろうか……?
- 328 名前:名無し客:03/12/25 22:43
- どうやら公爵閣下は新年を異国の地でお迎えになられるようですね。
これもまた一興ですね。
- 329 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/26 20:31
- >>328
うむ……よほどの急用でもない限り、年内にイタリアへ戻ることはないだろう。
旅に出た当初は、これほどアレクサンドリア滞在が長引くとは思わなかったがね……
それだけ、この街は私を強く魅了したということだな。
しかし、いくらこの街が気に入っているとはいえ、今回の旅の趣旨を考えれば
いつまでもアレクサンドリアに留まり続けるわけにも行くまい。
この旅ではエジプトの通商事情の外に、政治事情も調べる必要があるのだから。
――そろそろ、第二の目的地である首都カイロへ出発すべき時が来たようだな。
前にも少し述べたが、カイロへの移動については船を利用する予定だ。
駱駝に跨って陸路を進む考えも一瞬頭をよぎったのだが、
ヴェネツィア商館やアレクサンドリアの住人から情報を集めた結果、
やはり素人が砂漠を縦断するのは危険が大きいということが分かってね……
より安全な、ナイル川を船でさかのぼるルートを進むことに決めたのだよ。
カイロ行きの船を調達できれば、このアレクサンドリアともしばしの別れだな………
――とは言っても、仮に明日船を調達することができたとしても
アレクサンドリアからカイロまで水路で数日はかかるから、ひょっとすると年明けは
カイロではなくナイル川で迎えることになるかもしれんな……それもまた一興か。
- 330 名前:名無し客:03/12/29 14:42
- エジプトの支配者たちは法王に外交関係の使者を送っているのかな。
- 331 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/30 16:30
- 昨日ようやくカイロ行きの船を調達でき、数週間親しんだアレクサンドリアを出立した……
そして今は、かつてユリウス・カエサルがクレオパトラを連れて
船旅を楽しんだナイル河の上から、この文を書き記しているところだ。
しかしいくら河といってもこれだけ大きいと、海にいるのとさほど変わらぬような気もするな……
勿論、船の揺れ方は地中海にいる時とはまた違うものであるが。
それにしても、エジプトを遥かに越え遠くアフリカの奥地にまで達するという
ナイル河の流れ………果たしてどこまで溯れば源流に達するものであろうか?
古くはカエサルがこの河の源流探しに挑んだと記録に伝わっているが、
そのカエサルを含めて源流まで到達した者は、未だに誰一人としていないそうだ。
- 332 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :03/12/30 16:30
- >>330
この件について、ローマから外交関係の文書を急ぎ取り寄せ調べたのだが……
これまでのところ、ローマ法王庁とエジプトのマムルーク朝との間で
公式な使者のやり取りがなされたという記録は見付かっていない。
私自身、これまでマムルーク朝の使者を直接ヴァティカンで謁見した経験はないしな……
――しかし、これはあくまで表向きの話なので、過去において
両者が非公式の形で使者をやり取りした可能性が全くないとも言い切れないが……
もしもエジプトのスルタンが法王庁に使節を派遣するとすれば、その要件は
現在の事情から察するに地中海交易を巡る紛争の仲介、といった当たりであろう。
そう言えば、以前マムルーク朝のスルタンから父上宛てに、インドにおける
ポルトガルの勢力拡大阻止に協力しなければイェルサレムを破壊して聖地巡礼を妨害する、
という内容の文書が届いた事があったな……どうもその背後には、例の香辛料市場を巡って
エジプトと利害を同じくする、ヴェネツィア政府の入れ知恵があったらしい。
とは言うものの、エジプトにとってもヴェネツィアにとっても聖地巡礼は重要な収入源であるから、
彼らに本気でイェルサレムを破壊する意志などあるはずがない……父上もその辺は
お見通しであったようで、結局彼らの哀願にも近い恫喝が実を結ぶことはなかったわけだが。
さて、あと一日半で年の移り変わりを迎えることになるな……
果たして諸君たちにとって、今年は有意義な一年であったと言えるかな?
私もここに来ておよそ5ヶ月、これまでなかなか充実した日々を過ごすことが
できたと思っている……よもや異国で新年を迎えることになるとは予想外であったが。
これからはカイロ到着まで船が寄港する予定はないとのことなので、
よほどのことがない限り、これが年内で最後の諸君への返事となる。
次にここへ立ち寄るのは年が明けて、カイロに到着してからということになろう。
では、ごきげんよう………諸君たちにとって、新しい年が実りの多い一年であることを。
- 333 名前:名無し客:03/12/30 18:27
- 良いお年を。公爵さま。
- 334 名前:メフメト2世@征服王:03/12/31 11:05
- やらないか?
- 335 名前:名無し客:03/12/31 13:25
- うほっ、いい侯爵!
- 336 名前:名無し客:03/12/31 13:26
- × 侯爵
○ 公爵
- 337 名前:名無し客:04/01/01 09:28
- 謹賀新年。ヴァレンティーノ公爵閣下。寿ぎを。
- 338 名前:名無し客:04/01/06 13:02
- 何かの食べ物を強烈に食べたくなるというのは、その栄養が体に足りていない証だそうです。
最近、そういう経験はありましたか?
- 339 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/01/06 23:06
- ごきげんよう……年が明けて随分時が経ってしまったが、今年もよろしく頼む。
もっとも、エジプトではキリスト教世界とは違って太陰暦が使われているので、
年が明けたといってもあまり実感は湧かないのだがね………
それはともかく>>333に>>337、君たちにとっても今年が良い一年であることを。
あれから何事もなく船旅が進み、我々一行は無事カイロに到着した。
先にも述べたように、イスラム世界では我々とは違う暦が使われているので
行き交う者たちの間にも年が明けたという意識は全く見られず
市場でもモスクでも、目に映るのは普段と何も変わらぬ光景ばかりさ。
ここ数日で変わったことといえば……ここがイスラム教国であるにも関わらず
>>334-336のような男色家に声をかけられたことぐらいだな。
生憎私はその手の趣味を持ち合わせていないので、部下のミケロットとタッデオに
後の禍根とならぬよう、連中を纏めてナイル河へ叩き込んでおくよう命じておいたが
以後のことは何も知らない……大方ナイルに棲む鰐の餌になったか、
川岸に這い上がった所でスルタンの官憲に捕まったか、そのどちらかだろう。
しかしスルタンの宮廷ならばともかく、それ以外では厳格にイスラムの教えが
守られているこのエジプトで男色を公言するなど、命が幾つあっても
足りないのに……世の中には、実に無謀な物好きもいるものだ。
どう足掻いても彼らには生き残る道など残されていないわけだが、果たして鰐に食われるのと
戒律に従って打ち首になるのと、どちらが彼らにとってより幸せなのか………
ムスリムでもなければ男色趣味もない私には、知る術はどこにもないな。
- 340 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/01/06 23:06
- >>338
現在、強烈に身体が求めている飲食物と言えば……私の場合は葡萄酒だな。
何しろここは飲酒厳禁のイスラム世界だ……アレクサンドリアのようにヨーロッパ人向けの
酒場でもない限り、葡萄酒はおろかビールを飲むことさえ、我々にとっては夢のような話さ。
しかも、このカイロはマムルーク朝スルタンのお膝元であるばかりでなく、
アズハル大学に代表される、イスラム教学の中心地とも来ている……
このような街で下手に飲酒などしようものなら、熱心なムスリム達によって
たちまち袋叩きに会うことは間違いあるまい。
それにアレクサンドリアと違って、ここにはヨーロッパ人も数えるほどしかいないし……
愚痴はさて置き、現在私がこうして葡萄酒を熱烈に欲しているということは、
それに含まれている栄養素が私に著しく不足している証であるということであったな。
果たして葡萄酒にどのような栄養が含まれ、それが不足することによって
私の身体に如何なる悪影響をもたらすことになるのか、詳しいことは分からないが……
葡萄酒を百薬の長と讃えたキリストの言葉もあるように
その栄養が如何なる物であるにせよ、軍陣や政務に疲れた私の身体を癒し、
荒んだ心を軽やかにしてくれる物であることだけは間違いあるまい。
もっとも過ぎたるは何とやらではないが、あまりに己の限度を越えた飲酒は
却って心身を痛めつける猛毒ともなり得る………
それを弁えた上で、百薬の長としての葡萄酒と生涯末永く付き合っていきたいものだ。
- 341 名前:名無し客:04/01/07 09:53
- 人間が大空を自由に飛べるようになったとしたら、
どのようなことが起こるとお考えになられますか?
- 342 名前:名無し客:04/01/07 18:36
- 自分にとっての以下の人材を、一刻館キャラハンからお選びください。(複数回答可)
【上司】:
【同僚】:
【秘書】:
【部下】:
- 343 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/01/07 22:56
- >>341
以前、空飛ぶ機械の図面をレオナルドに見せてもらったことがあるが
果たして彼の提唱した原理で、本当に空を飛ぶことができるのだろうか……?
レオナルドによればアルキメデスの螺子の原理を応用して、巨大なエアスクリューで
素早く空気をかき回せば、人を空へ飛ばすことなど造作もないということだが……
現実問題として、我々にはそのために必要な技術が不足しているので
彼の理論が正しいかどうか、立証することは今のところ不可能だ。
仮にレオナルドの理論が正しいとしても、それによって人間が実際に空を
飛べるようになるのは、気の遠くなるほどの未来の話となるであろう。
それで、実際に人が空を飛ぶことが可能となった場合だが……
まず考えられるのは、その技術を軍事の面に用いることであろう。
誰にも気付かれることなく敵陣を偵察し、大砲も届かぬ上空から
石礫や矢玉の雨を降らせ、自らは傷つくことなく壊滅的な打撃を与える……
そして、それに対抗する手段として対空用の攻撃技術が生み出され、やがては我々が馬を駆るが如く
空飛ぶ機械同士が戦闘を繰り広げる光景を目にするようにもなるだろう。
……これまでの歴史を辿れば、優れた技術は皆戦争と共に発達してきたのは当然の理。
私でなくとも、世の為政者や権力者ならばまず同じことを考えるであろうな。
今ひとつ考えられるのは、空飛ぶ技術の限界へ向けた追求……
つまり人はどこまで速く、そして遠くまで飛ぶことができるかが競われるということだ。
技術が進めば、一昼夜にしてアジアや新大陸に辿り付くことも可能となるかも知れぬし
天空を越えて人間が月や他の星まで到達することも夢ではなくなるかもしれん。
しかし、将来人が星の世界にまで足を伸ばし、仮にそこで目にする世界が
ローマ教会の公認する天動説と全く異なるものだとしたら……
それこそヴァティカンは、天地を引っくり返すような大騒ぎになることは間違いあるまい。
- 344 名前:名無し客:04/01/08 20:50
- 占いの類とどう付き合っておられますか?
- 345 名前:名無し客:04/01/08 20:51
- 上記に関連して、予言の書、もしくは預言の書の類はいかがですか?
- 346 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/01/08 21:54
- >>342
さあ、どうなのだろうね………この世界の住人で私の秘書や部下に
相応しい人材は果たして誰なのか、むしろこちらが聞きたいぐらいさ。
と言うのも、実はここへ来て既に半年が経とうとしているのに、一部を除いて
この世界の住人が如何なる者であるか、私には詳しいことが殆ど分からないのだ。
もっとも、これはいずれ他の世界へ顔を出すと宣言しておきながら
私自身の出無精からそれを果たせずにいることが問題なのだが……
唯一、妹のルクレツィアのいる場所には折を見て出向くようにしているのだが、
海陵庶人殿をはじめとする彼の地の住人は、どちらかと言えば
私と力量を競い合うライバル、あるいは友と呼ぶべき存在だからな………
君の提示したそれぞれの類型に当て嵌めることは難しそうだ。
まして、ルクレツィアは血を分けた大切な妹………
イタリア統一という危険の大きな仕事を、妹に強いるわけにはいかない。
というわけで、せっかく質問を貰ったのに心苦しいことではあるが、
現時点でこの問いに対する明確な答えを示すことは、私にはできそうにない……
しかし、このまま「分からない」ということでこの話を打ち切るのも面白くないし、
何よりも諸君やこの世界の住人にとって礼を失することになろう。
……そこで私としては、逆にこの世界の住人で私の主君や部下に相応しい
人材として諸君が考えているのは誰なのか、それを諸君に聞いてみたいと思う。
できることなら、なぜその人物が私にとっての人材として相応しいと考えるのか、
その者の性格・能力・世界観などに触れながら説明してくれるとあり難い。
とは言っても、何のヒントもないままに突然「チェーザレ・ボルジアが求める人材」を
推挙するというのも、相当困難なことであろう……ノーヒントで思いつくがまま
適当と思われる人物を紹介するのも、それはそれでまた面白いかもしれないが。
それはともかく、次回……恐らく明日か明後日となろうが……ここを訪れる際には
今回提示された類型ごとに、私が求める人材の条件について述べることにしよう。
- 347 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/01/10 21:09
- さて……一昨日に予告したとおり、今日は>>242に対する返信に関連して
「チェーザレ・ボルジアが求める人材」について語ることにしよう。
果たしてこれからの説明が、諸君たちの判断の救いになるだろうかな………?
【上司】
上司……即ち私が仕える主君に必要な条件は、
第一に私の理想のために必要な協力を惜しまぬ者であること、
そして我が野望達成に利用できるだけの絶大な権力を持っていることだ。
私の周囲にいる人物で両方の条件を兼ね備えているのは、やはり我が父にして
ローマ・カトリック教会の頂点に立つ存在である法王アレクサンデル6世こと
ロドリーゴ・ボルジアをおいて外にはいるまい。
果たしてこの世界の住人で、父上以上に私の主君に相応しい者はいるのであろうか……?
【同僚】
私にとっての同僚とは、私と対等の地位に立つ同盟者のことを差すことになろうか。
同盟者といっても、君主としての力量もないくせに先祖代々の地位に安住するだけの者であれば、
せいぜい利用するだけ利用し、価値がなくなったら切り捨てるだけの話だが……
末永く盟友として付き合う者となると、かなり条件は難しくなるな。
一国の主として相応しいだけの政治力と軍事的才能があることは当然だが、
それに加えて私の考えを十分理解できるだけの頭脳を持ち、尚且つ私の野望と競合することが
絶対にない者であること……ここまで虫のいい条件に当てはまる者は、そういるはずもない……
- 348 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/01/10 21:09
- (続き)
【秘書】
私に限らず秘書に求められるのは、情報や報告を的確に処理し
主人の職務を円滑ならしめる事務処理能力、法令や布告を作製するために必要な文書能力、
外国使節との応対に不可欠な交渉能力や語学力……といった当たりであろう。
それから、私の仕事の性質上「口が堅い」ことも条件として挙げられるところだな。
後は、常に私の考えを察することのできる、回転の速い頭脳があれば言うことはないのだが。
【部下】
私の部下には、ドン・ミケロットやタッデオ、ナルドを始めとして
武勇に優れた将ならいくらでも揃っているので、ここでは民を安んじて兵を強くし
引いては国を豊かにすることのできる、行政能力に長けた者が欲しいところだ……
行政長官のレミーロ・デ・ロルカを処刑して以来、我が陣営には彼の代わりを務める人材がおらず、
その手の仕事を全て私一人で処理しなければならないのが悩みの種でね。
フィレンツェからニッコロ・マキアヴェッリを引き抜くことができれば、
この悩みは一挙に解決できるのだが……もしも彼ぐらいの才覚の持ち主が
この世界にいるようであれば、ぜひとも紹介してもらいたいものだ。
……と、以上が私の必要とする人材の条件だな。
しかし、なぜあの中には【愛人】の項が入っていなかったのか…いや、今のはほんの戯れだ。
- 349 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/01/10 21:10
- >>344
占いの結果が良いものであればそれを励みとしているし、逆に悪い結果が出れば
それを笑い飛ばすか、自らを律する戒めとしているだけのことだ……
いずれにしても、あまり占いの内容を真に受けるようなことはないさ。
私とて、女難の相が出ていると言われれば少しは女性関係を律しもするし
火難の相が出ていると言われれば、火の取扱に気を付けようという気持ちにもなるが……
占い師に明日国が滅びると言われて動転するほど、私は迷信を信じる質ではない。
世の君主には、国のあり方を決める際に占いに頼る者も少なからずいるようだが……
所詮占いや予言というものは、将来起こりうるかもしれない可能性を示しているに過ぎん。
民百姓ならともかく、仮にも一国の主ともあろう者が占いなどに
振り回されて非現実的な行動に走るなど、実に愚かな話だ。
第一、星の動きの変化や獣の骨の割れ目模様で未来が分かるというのであれば、
とうの昔にヨーロッパは統一されていてもおかしくないではないか。
- 350 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/01/10 21:11
- そして、占いや予言と来れば付いてくるのが、予言書や預言書の類だが……
残念ながら時間がなくなってしまったので、これに関する
>>345への返答は、申し訳ないが次回ということにさせてもらおう。
では、今日はこの辺で………
- 351 名前:名無し客:04/01/11 19:44
- 公爵さまは非常に理性的だ。カチカチの教条主義者ではないですな。
ヴァチカンには頭の固い方々も多いのに。だからこそ人々は公爵さまの
庇護を求めるのかも。
・・・女性に対しては野性的かもしれませぬが。
- 352 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/01/12 17:46
- >>345
預言書といえば、最も有名なものとして挙げられるのは新約聖書の最後を飾る
『ヨハネの黙示録』であろう……この書物は1世紀の終わり頃に記されたとされるもので、
確か、未来におけるキリストの復活と再臨、神と悪魔との最後の戦いを経て
世界の終わりに神の救いがもたらされるという内容だったと記憶している。
この『ヨハネの黙示録』が記された背景には、当時のローマ帝国によってキリスト教が大弾圧を
受けていたという事情がある……諸君も、暴君ネロや3世紀中頃のデキウス帝、それから
4世紀初めのディオクレティアヌス帝による大規模なキリスト教徒迫害の話は聞いたことがあるだろう。
獣の生皮を被せて犬に食わせただの、生きたまま燃やして灯台の灯にされただのと……
詳しくはどこかの書物を当たって欲しいが、このように過酷な立場に置かれていた信徒に
対して、あらゆる艱難辛苦に耐えて信仰を保ち続ければ、いつか必ず神によって救いが
もたらされるという激励の意を込めて記されたのが、かの『黙示録』であったというわけだ。
……それを己の都合のいい様に解釈して、神罰だこの世の終末だなどと吹聴して
いたずらに民の恐怖心を煽り、オカルトで一儲けを企む輩は昔も今も珍しい存在ではない。
しかし金儲け程度の話ならばまだ笑い飛ばすこともできようが、中には終末思想で
民を誑かし、国を乱す怪しからん奴らも存在する……ジローラモ・サヴォナローラのようにね。
予言も終末思想も自分たちの内輪に留まっている内はまだ良いが、これが社会全体に波及し
世を乱す災いの種となるようであれば、その元凶は叩き潰さねばなるまい。
私個人について言えば、別に予言書の内容など信じてはいない……まあ、他の者が
予言書の内容を信じるのであれば、それは好きにすれば良いとは思っているがね。
大体、未来の出来事が予め定まっているなどと、それほど詰まらぬ話もないのではないか?
未来には何が起きるか全く分からないからこそ、人は未来に対して希望や不安を持ち
己の将来が自分にとってより良いものになるよう努力していくものだと、私は考えているよ。
……しかしそうは言っても、これからも私の思惑とは関係なく預言書や予言書の類は
数多く生み出されて、世の者を一喜一憂させることになるのであろうな。
- 353 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/01/12 20:36
- >>351
………確かに時代は移り変わり、世にはレオナルドやマキアヴェッリを始めとする
合理的思考の申し子が数多く輩出されるようになったが、ヴァティカンでは相変わらず
コチコチの教条主義が幅を利かせているな……私と父上を除いては。
そもそもカトリックの教理には合理性とは相容れない部分が大きいから、どうしても教会のお偉方が
新しい思考を受け入れられない堅物揃いになるのは、致し方ないところではあるが。
頭が固いのは、何もヴァティカンばかりではない………イタリア全土を通して
新しい時代の思考を受け入れることの出来る君主が、果たして何人いると思うかね?
新しい芸術に理解を示し、これを積極的に保護した君主ならばフィレンツェの
ロレンツォ・デ・メディチを始め枚挙に暇がないが、古い思考の呪縛から脱して
自分の為したいこと、国の行く末のために何が一番手っ取り早い方法かを考え、
それを実行できる君主など、イタリアには殆どいないに等しい。
……唯一、私以外でこの手の才覚に溢れている者がいるとすれば、
それは我が妹婿のフェラーラ公アルフォンソ・デステ殿ぐらいのものだな。
他のあらゆる物事を理性で割り切る私が、女性に対してだけ本能剥き出しなのは……
別にどうと言うことはない、単に自分に対して正直なだけさ。
……絵画や彫刻というものの価値は、知性があってはじめて理解できるものだが
女の価値はどんなに理性ぶったところで、到底見極められるものではない。
ある女性を見定める際に、本当にその女性が「いい女」であるかは直感で嗅ぎ取るものさ……
その見極めが出来るようになるまでは、かなりの経験をこなす必要があるが。
そして、欲しいと思ったものは国であろうと女であろうと、
手に入れるためには如何なる手段をも選ばない……そのことには何も違いはないさ。
- 354 名前:名無し客:04/01/16 23:59
- 何もかも公務を投げ出したくなるようなことはありませんでしたか?
- 355 名前:名無し客:04/01/17 08:41
- おー、雪が降ってて寒いですわ。閣下。
御身はいまだエジプトにおわすや?
- 356 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/01/17 22:48
- >>354
日常においては、自分の為すべきことを投げ出そうなど考えたことは露ほどもないが………
だが、こうして異国で羽根を伸ばしている時ぐらいは、ヴァティカンのことも
イタリア統一の野望も一切投げ出して、のんびりとしていたいとは思っている。
だから、ちょうど今が「何もかも公務を投げ出してたくなる」……というよりも
実際に「公務を投げ出している時」ということになるのであろうな。
何を考えているのかは知らんが、私の暗殺を狙ってわざわざエジプトにまで刺客を
差し向ける輩もいるが、せめて異国にいるときぐらいゆっくりさせて貰えないものかね……
――しかしそうは言うものの、こうして遠い異国でイタリアのことを忘れようと努めても
いつも頭に浮かぶのは、己の野望実現に向けての方策ばかり………
なまじ平穏な日々が続くといい加減退屈な自分自身を持て余してくるし、本来やらねば
ならない事を何もしなければ、それだけ野望実現が遠のくような不安にも駆られて……
こうして君への返事をしたためている間にも、ヴァティカンの情勢がどうなっているのか、
国内に何か異変が起きていないか……そんなことばかりが頭をよぎって仕方がない。
……どうも私は、何処へ行こうとも己の野心から逃れることはできない性質のようだ。
- 357 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/01/17 22:49
- >>355
ちょうどヨーロッパは、冬の真っ只中であるからな……何処へ行っても寒さからは
逃れられぬであろうし、アルプスの奥地ならずとも大雪に悩まされている所はあるだろう。
このような時期に戦争があると、とにかく寒さに難儀して仕方がないものだが……
……それはヨーロッパに限らず、アジアや新世界でも状況は似たようなものであろうな。
しかしエジプトも1月ともなれば、さすがに寒さと無縁ではない……
確かに、日中はあまり空気の冷たさを感じることはなく、むしろ暖かいぐらいなのだが
夜に入ると一転して、「これがエジプトか?」と思わずにはいられないほど冷え込んでくる。
殊に、アレクサンドリアと違ってカイロは乾燥した内陸にあるので、朝と夜とでは
寒暖の差が非常に激しい……夜この街を歩き回る際には、防寒着の用意が欠かせないな。
……そういう訳で、私は現在もエジプトの都カイロに逗留している。
しかし、曲がりなりにも地中海貿易の中心として、活気に満ち溢れているアレクサンドリアに
比べると、この街はオスマン帝国の圧力とポルトガルによるインド航路発見に
よる影響のせいか、非常に寂れているようにも見受けられるな……
それでもヨーロッパの諸都市に比べれば、まだ大きな賑わいを見せてはいるが。
カイロの近くにあるギゼーの大ピラミッドも見てきたのだが、何千年もの時を経て風化が
進んだせいか、かなりみすぼらしい印象だった……これは、ピラミッドの表面を被っていた
花崗岩を、建築材料として引き剥がしてしまったためでもあるそうだ。
ところで、ピラミッドをファラオの墓として紹介したのは、古代ギリシアの歴史家ヘロドトスだが
これまでのところ、あの建造物から王の遺体が見付かった例は殆どないらしい。
ピラミッドは果たしてファラオの墓なのか、それとも全く別の目的で築かれた代物なのか……
……真相の究明については、後世の判断を待つことにしよう。
今後についてだが、何事も起こらなければ今後もしばらくは外遊を続けるつもりだ。
もしもローヴェレ枢機卿かカテリーナ・スフォルツァあたりが何かよからぬことを
企んでいるようであれば……その時は急ぎイタリアへ立ち戻らねばなるまい。
そのような事態、できれば起きて欲しくないがね………
- 358 名前:名無し客:04/01/19 22:26
- 紅海と地中海の間に運河は作れそうですか。閣下。
ダ・ヴィンチの技術力とエジプトの民衆の労力を動員できれば
あるいは・・・。
- 359 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/01/20 22:16
- 先日、この世界のとある場所でローヴェレ枢機卿の姿を見かけたのだが……
あの古狐、詳しい経緯は知らんが毒を用いて父上の暗殺を企てていたらしい。
……もっとも、毒を喰わされたのは父上ではなく奴自身だったようだが。
それにしても、「毒薬使いのボルジア」相手に毒殺を図るとは浅はかな真似を……
しかしローヴェレのことだ、何時またどんな手で父上の排除を企てるか分からん。
そろそろ私も、イタリアへ帰るべき時が来たのであろうか………?
- 360 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/01/20 22:16
- >>358
……スエズ地峡に運河を掘削して、地中海と紅海を直結するという考えか。
古代エジプト王国の時代には既にその構想が存在していたというし、先にも述べたが
ヴェネツィア政府も運河掘削を計画し、見積書をエジプトのスルタンに売り込んだという話もある。
更には、オスマン帝国も独自にスエズ運河建設の可能性を探っているぐらいだから、
実はこの考え自体はそれほど目新しいものというわけでもない。
では問題は、果たしてこのスエズ運河掘削計画が実行可能なものであるかということだが……
まず技術面では、レオナルドのような優れた技術者の力を持ってすればその点は簡単に
解決できるであろうし、現にヴェネツィアの見積でも運河建設は充分可能と断じている。
古代でもピラミッドを建造したほどの建築技術が存在していたし、ギリシア時代には
ペルシア王クセルクセス1世が航行の安全のためにアトス岬に海軍用の運河を
開削した実例もある……思うに、古代の技術力を持ってすれば、
現代の我々よりももっと簡単にスエズ運河を開くことができたのではないか?
地中海と紅海との間には水位の差も殆どないし、陸地も平坦な上に地峡内にある湖を
有効的に利用すれば工事の手間も省けるから、砂の崩れにさえ注意すれば
さほど高度な土木技術がなくても、比較的容易に運河を完成させることができるそうだ。
- 361 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/01/20 22:17
- >>358(続き)
……次に建設にかかる費用の問題だが、こちらの解決は技術面よりもさらに簡単だ。
全盛期のエジプトやローマ帝国のような大規模な国家ならば、運河の一本や二本掘るぐらい
別に痛痒を覚える範囲の出費ではなかったであろうし、ヴェネツィアも東方貿易で得た利益を
集中すれば、運河建設に必要な資金を充分賄うことができるという話だ。
要するに建設に必要な技術力と資金、これらの資本を集中できるだけの力さえあれば
スエズ地峡に運河を掘削することは我々でも充分可能なのだ。
私ならば、レオナルドという優れた技術者がパートナーにいるし、その気になれば
法王庁の金庫を叩いて、軍資金を捻出することもできる。
法王庁だけでは賄いきれないのであれば、イタリア全土を統一するまで……
ヴェネツィアの交易特権さえ手にしてしまえば、スエズ運河建設など造作もないことだ。
これほど高い実現可能性があり、古代から構想や計画が練られているにも関わらず
スエズ運河の掘削が実行に移されない理由……それは純粋に政治的なものだ。
先のヴェネツィアの計画が頓挫したのは、香辛料貿易の利権を失うことを恐れた
エジプトのスルタンが、建設に同意しなかったためであった。
もう一方のオスマン帝国は、目下エジプトのスルタンとは敵対関係にある……
彼の国が運河建設を実行するには、武力でマムルーク朝を倒しエジプトその物を
制圧してからでなければ話にならない。
いずれにしても、運河を掘るための最終的な条件としてはスルタンの支持を得るか
それともエジプトを自身の支配下に置くか…そのいずれかを満たしていることが必要であろう。
- 362 名前:名無し客:04/01/22 22:22
- ヴァティカンの建物は回廊が多くて吹きさらし状態。冬は寒いでしょう。
- 363 名前:名無し客:04/01/25 04:16
- 最近、「河童の川流れ」的な事を体験しましたか?
- 364 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/01/25 19:32
- >>362
ヴァティカンに吹きさらしの回廊……はて、そのようなものが存在したかな?
サン・ピエトロ大聖堂改修に関する設計図やスケッチならば私も目にしたことはあるが
吹きさらしの回廊など、どこにも載っていなかったぞ………
……それとも君は、サン・ピエトロ広場の列柱回廊のことを言っているのかね?
その回廊が設計されるのは、私の時代より160年も後の話ではなかったか?
284本もの柱と140体もの聖人像で飾られた彼の大回廊を設計したのは彫刻家の
ジャン・ロレンツォ・ベルニーニという者で、列柱回廊の設計を命じたのは私の父と同名の
法王アレクサンデル7世、11年の歳月をかけた末に回廊が完成したのは1667年……
我々にとっては、気の遠くなるほど先の話だな。
あれほど大規模な大回廊が築かれた背景には、サン・ピエトロ大聖堂を建設するに
当たって、教会に付き物の鐘塔を造ることができなかったという事情があったらしい。
このために、カトリックの総本山でありながら非常に貧相な見栄えのする建物に
なってしまった大聖堂を立派に飾ろうとして、アレクサンデル7世が思いついたのが
サン・ピエトロ広場を拡張し、広場を大掛かりな回廊で取り囲むことだった……
そして法王と旧知の仲であったベルニーニが、広場の設計を任されることになったわけだ。
ベルニーニは、回廊を支える柱の高さを低く抑えることによって、中央にそびえる大聖堂を、
より大きく立派なものに見せることに成功したと言うが……
そう言われても、サン・ピエトロ広場はおろか大聖堂の修築すら未だ構想の段階に
留まっている我々にとっては、今ひとつ実感の湧かない話であるな。
- 365 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/01/25 19:32
- >>363
私にとっての「河童の川流れ」といえば、やはり配下の傭兵隊長に叛乱を起こされたことだな。
1502年の「マジョーネの叛乱」は、不覚としか言いようのない事件だった……
自他共に認める当代きっての策謀家として悪名高いこの私が、よりによって部下たちの
仕掛けた謀略にはまり、一時は我が領国の半分を失うほどの窮地に陥ったのだから。
……もしも奴らの思惑通り事が運べば、私はイーモラの城塞で叛逆者どもに挟撃され
たちまち撃ち滅ぼされていたとしてもおかしくなかっただろう。
私にとって幸いだったのは、敵側に強力な統率力を備えたリーダーがいなかったこと、
奴らが互いの不信感から足の引っ張り合いを起こし、その行動に俊敏性を欠いたこと、
そして反乱者どもの利害が一致していなかったことだった。
私ならば、短時間のうちに挙げた戦果を利用する機会を逃さず、決定的な策に打って出る
ところだが……一国の君主を名乗っているとはいえ、所詮奴らは無能者の集まり。
空き巣泥棒の如く我が領国を掠め取ることは出来ても、奴らの頭ではそれが精一杯だった。
それはさて置き、連中が自らの有利を活かすことのできぬ愚か者揃いであったおかげで
私は十分時を稼ぎ、奴らの結束を切り崩すことで失地を挽回し、最終的には叛乱を鎮圧し
叛逆の首謀者どもをあの世へ送ることができたわけだが……
あのような無能者どもに反乱を許すなど、私にも油断があったとしか言いようがない。
例え我が配下であっても、イタリアの小僭主など信用するにも値しない存在であることは
充分分かりきっていたのに……「飼い犬に手を噛まれる」とは、正にこのことだ。
- 366 名前:名無し客:04/01/26 18:28
- ふと、子供時代を振り返りたくなるときなんてありますか?
- 367 名前:名無し客:04/01/27 20:14
- 極限状態に置かれて口走ってしまったこと、口走ってしまいそうな事を教えて下さい。
- 368 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/01/28 23:28
- 突然だが、急遽エジプトからイタリアへ帰国することになった……先にローヴェレ枢機卿が
父の暗殺を企てた件で、真相解明のためにローマへ戻らなければならなくなったのだ。
http://appletea.to/~charaneta/test/read.cgi/ikkoku/058182094/308
http://appletea.to/~charaneta/test/read.cgi/ikkoku/058182094/310
事実関係は上のとおりだが、果たしてこれがローヴェレの単独犯行だったのか
それとも教会内で奴に同調する者がいるのか……?
既に教会警察を動かして、ローヴェレに近い枢機卿を何名かカステル・サンタンジェロの
地下牢に拘束し、背後関係を厳しく追及しているところだが……
何よりも、あれ以来姿を眩ましたローヴェレの行方も気になる。
もしもローヴェレ枢機卿の動向について何か知っていることがあれば
私のところへ知らせて欲しい……情報を提供した者には、相応の褒賞を出そう。
仮にあの古狐を生け捕りにすることが出来たら、100万ドゥカートの賞金……
いや、一国一城を与えるに値するほどの大手柄だな……
すんでの所でローヴェレの野望を打ち砕いた件のシスターにも、何か褒美を出さねばなるまい。
何といっても、彼女は父上の生命を救ってくれた恩人だからな……
- 369 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/01/28 23:29
- >>366
子どもの頃も含めて、自分の過去を振り返ろうと思うことはあまりないな……
現在の私にとって、過去に起きた出来事はそれほど重要ではないし
昔の思い出に浸るぐらいならこれからの自分が何をやりたいか、あるいは何を為すべきかを
考え、そのことを実行に移すことの方が遥かに大事だと思っているから。
私は父の意向で幼い頃から僧籍に入れられ、聖職者として教会内で一大勢力を
築いてきたボルジア家の伝統を受け継ぐべく、様々な英才教育を受けてきたのだが
それが現在何かの役に立っているわけでもないしね……ピサ大学にいた頃も、
専ら狩りや競馬に熱中してばかりで、神学や哲学の授業には顔を出すことすらなかったよ。
……おかげで私は、「何事かを為すにはどうもその頭脳が適していない」だの、
「学問芸術の教養のない男」だのと、散々なレッテルを貼られる破目になってしまったがね。
もしもこの時期の私が、本気になって神学を始めとする学問に取り組んでいれば
ボローニャ大学を首席で卒業して三つの博士号を獲得した父上のように、
ヴァティカンきっての俊才として今頃は枢機卿団の筆頭に君臨していたかもしれん。
しかし私の生まれでは、「緋の衣」よりさらに上の地位を窺うことは、例え天地がひっくり返っても
絶対に不可能……例え父上と同じ道を進んだところで、父以上の存在となることはあり得ない。
……だから私は、自分で自分の道を切り開くことのできる、武将としての人生を選んだ。
過去の生き方をすっぱり断ち切った私には、昔の思い出は何の価値もないのさ……
かつて私が抱いた、女性たちの思い出も含めてね。
- 370 名前:名無し客:04/01/30 00:34
- いかな野望に燃える侯爵様でも、今までの事を白紙に戻したい、なぞと
思うときがあったりしますか?
- 371 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/01/30 23:14
- >>367
………もしも私が、極限状態に置かれたとしたら?
恐らくその時、私はありったけの否定の意味を込めて、血を吐くが如くただ一言
「ノー!」とだけ答えるのではないかな………
気のせいか、将来私自身でもどうにもならぬほど絶望的な状況に追い込まれて、
そのような言葉を口走りそうな予感がするのだよ……
それがどういう状況であるのかは、見当が付かないがね。
なぜ切羽詰った状況でそんな言葉を口にするのか、それは私にも良く分からない。
それは現実を認めようとしない強がりの心から来るものに過ぎないのか、
それとも絶望的な立場に追い込まれてもまだ希望を捨てず、最後の逆転に
望みを賭けた一世一代の叫びなのか……極限状態に置かれた際の心境が
如何なるものであるかは、実際にその時を迎えなければ分かるまい。
……私としては、やはり後者であることを願いたいが。
しかし、出来ることならばギリギリの状態まで自分を追い込むのは避けるべきだ。
そうならぬために、常に先手先手を打って最悪の状況を回避するのが、
優れた君主の取るべき道だと私は考えているがね。
- 372 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/01/30 23:18
- >>370
無論、答えは「Si」だ……むしろ、大いなる野望に燃えているからこそ
時に今まで進めてきたことを白紙に戻さなければならないこともあるものだ。
これまで周到に進めてきた計画でも、状況の変化により
実現の見込みがなくなったり、懸けた労力に比べて割に合わないと
判断したりすれば、迷わず全てを白紙に戻すのは当然のこと。
イタリア統一の大望に比べれば眼前の野望の一つや二つ、潰れた所でどうということはない。
些末な利害にかかずらって大局を見失うなど、実に愚かな話ではないか。
……事実、これまでも私は幾つもの野望を、究極の目標たるイタリア平定のために諦めてきた。
妹のルクレツィアを手駒に使ってまで進めてきたナポリ王位簒奪の計画も、
ナポリ王が私に王女を嫁がせることを渋り、実現の見込みが低いと知るやあっさり撤回した。
ボローニャ攻略を目前に控えながら、フランス王の制止によって進軍を見送らねば
ならなかったこともあった……確かに王の横槍は腹立たしかったが、
ここで攻撃を強行すればフランス軍を敵に回すことは明白であったし、
我々にはフランスの圧力を撥ね退けるだけの国力もなかった。
……その状況でボローニャを攻めても、私には何の得にもならないと判断したのさ。
より大きな望みを実現させるためならば、小さな野望など幾ら捨てても惜しくはない。
昔も今も猫額の領土やガラクタほどの価値もない王侯の位にこだわり
不毛な争いを繰り返す君主は後を絶たないが、何とも無駄なことだとは思わぬか?
幾ら目の前の領地や王位を諦めようが、イタリア一国を統一さえしてしまえば、
そんなものは頬張りきれぬほど手に入れることができるというのに………
「燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや」とは、正にこのことだな。
- 373 名前:名無し客:04/02/01 14:11
- 上司に信頼される部下になるには、どうしたら良いのでしょうか。
- 374 名前:◆UYwMl8CsAs :04/02/02 12:34
- 教えて偉い人!
(歴史に詳しそうな人と、偉そうな人へのアンケートです)
ウチのクラスの生徒なんだけど、歴史が苦手って子が多くて、
テストの点数がすっごく悪いのよねぇ。歴史の先生が困ってるんでさー、
「歴史に興味を持たせるためのお知恵」を拝借させてもらえないかしら。
唐突なお願いで申し訳ないんだけど、よろしくお願いするわねー。
- 375 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/02 22:27
- >>373
前にも、似たような質問を訊かれたような気がするが……まあいいだろう。
第一に、己に課せられた職務を全力で遂行すること。
第二に、主君の意図するところを読み取り、期待する結果を導くことができること。
第三に、己の立場をわきまえ、相応の責任を果たすこと。
第四に、主君の役に立つ有用な能力や技術を持っていること……
主君に信頼される部下になるため、私が求める条件を思うがまま述べてみたが
何処の世界へ行っても、求められる条件はだいたい同じではないかな?
立場や職層は違っても、「信頼される部下」の類型にそう大きな違いが
あるわけではあるまい……宰相であろうと、軍人や官僚であろうと、
それぞれの立場に応じて果たすべき義務や責任がある。
まずそれを果たすことが、上の者の信頼を得る最低限の条件と言えよう。
……だが、君が主君や上司に「必要欠くべからざる者」と認められるには、
最低限のノルマをこなすだけではまだ足りない。
上の者から全幅の信頼を得るためには、上に掲げた条件を全て果たした上で、
さらにもう一つプラスアルファが必要となってくる……
それは、自分に課せられた責任より一歩でも二歩でもグレードの高い、
困難な職務に取り組み、なおかつ成功させることだ。
もしも君が他人の嫌がる仕事や実現困難とされる計画を率先して引き受け、
期待される成果を残すことができたならば……きっと君の上役は
君の能力と積極性を認め、自分にとって必要不可欠な存在として、
君により責任の重いポストを任せるようになるであろう。
- 376 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/02 22:32
- >>374 ◆UYwMl8CsAs
おや、あなたは………フフフ、唐突な願いならばお互い様だ。
別に気にされることもあるまい。
しかし、突然あのような場所に姿を見せ、あなた方もさぞかし仰天していることであろう……
さて、質問の答えだが……まず、あなた方の学校……というよりあなた方の国では、
歴史を教える際に特定の時点で起きた事件と、その当事者たる人物の名前だけを
ただ平板に暗記させてはいないかな?
それでは、教わる側にとっては単調な数式を繰り返し解かされるのと同じで、
面白みも何もあったものではあるまい……歴史に興味を失うのも当然だ。
歴史とは、決して退屈で単調な年表の連なりでは断じてないし
歴史上の出来事というものも、前後の時代と何の関係もなく唐突に起きるのではない。
現在起きている幾多もの事象が、複雑な社会事情や自然条件、それに
当事者たちの思いに左右されているのと同じように、歴史教科書のほんの一行で
済まされている出来事も、その裏にはその事件に至る色々な事情があり、
またそれに関わる者たちの織り成す、無数の悲喜劇がある。
- 377 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/02 22:32
- >>374(続き)
……そしてその出来事は、次の時代の事件を引き起こす一つの要因となり、
新たな悲劇や喜劇を後世へと残していく……
例え、とある王朝が終焉を迎えても、その時代に刻まれたいくつもの事件は
必ず次の時代の歴史を育む大いなる糧となるのだ。
こうした終わりのないドラマを読み解く作業を楽しめるからこそ、歴史は面白いのだよ。
しかし、子女を対象とした学校教育でそこまで求めるのは難しいかもしれない……
そこで、ジパングで行われている歴史教育に対して少々言わせて貰いたいのは
年表の暗記よりも、もう少し「人物」に重点を置いてはどうかということだ。
歴史とは、言い換えれば無数の人間が作り出す物語……善行も悪行も包み隠さず
語り尽くし、もっと生の人間の思いを伝えることができれば、退屈な歴史の授業も
生徒たちに興味深く受け入れて貰えるのではないだろうか?
聞くところでは、イタリアで皆が震え上がるほどの悪名を馳せたこの私を、
後世のジパングの歴史教科書は全くといってもいいほど無視しているそうではないか。
私や私の周囲にいる者たちの話をもっと教科書に取り上げれば、
歴史の授業も面白みを増すのは疑いないのだがね………実に惜しいことだ。
- 378 名前:東洋人の少女 ◆/AyumuDrSA :04/02/04 14:48
- えーと、ここでええんやろか?
ごめんくださーい、ご注文の品お届けにあがりましたー。
納品書
乾燥パスタ2000箱 デュラム粉1000袋 オリーブオイル1000本
トマト800箱 スパイス各種400箱 スペック80箱 ボッタルガ80箱
葡萄酒4000本
(以下はサービス品やさかい、お早めにお召し上がりなー)
茹でたてパスタ8000食分 ハンバーガー8000食分 ポテトL8000食分
- 379 名前:名無し客:04/02/04 16:36
- ボルジア公もオペラなどをごらんになるのですか?
- 380 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/04 22:12
- ローヴェレの事件に関連して、隣国へ軍を進めることになった。
傭兵と国民兵は既に招集済みで、軍装と弾薬の調達も完了し、
出兵に向けた準備はほぼ整っている。
後は、先日私自らが発注した兵8,000人分の兵糧が届けば、
いつでも出陣の号令をかけることができるのだが……
>>378 東洋人の少女 ◆/AyumuDrSA
……おお、先日から頼んでいた糧食がついに届いたか。
思っていたより、ずっと到着が早かったな……
これで、次の出陣に当たって懸案だった兵たちの糧食が
一気に確保できた……礼を言わせて貰うぞ。
……では、期日までに注文の品を滞りなく持ってきてくれたので、約束どおり
報酬を支払うことにしよう……これが今回の代金である、金貨一万ドゥカートだ。
……一枚たりとも欠けてはいないはずだが、念のため確認してくれ。
この金貨は非常に重い代物なので、持ち運びには十分気を付けるのだぞ。
それから帰り道で山賊に奪い取られぬよう、細心の注意を払うようにな。
それでは、長旅ご苦労であった。
くれぐれも、君の仲間たちによろしく伝えて欲しい。
- 381 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/04 22:14
- ……食糧が届いたところで、これからの我が軍の行動について説明する。
兵士諸君のうちでパスタやハンバーガーを食している者は、そのままで聞くように。
先日、サン・ピエトロ・イン・ヴィンコリの枢機卿ジュリアーノ・デッラ・ローヴェレが、
父上の毒殺を図り失敗したことは、既に諸君も聞き及んでいることと思う。
この事件に関して、ローヴェレに近い十数名の枢機卿を拘束し、背後関係を追及しているが
事件直後に奴が忽然と消息を絶ったこともあって、未だ真相の解明には至っていない。
ところが先日、マジョーネの叛乱における唯一の生き残りである
パンドルフォ・ペトゥルッチが治めるシエナの街に、
そのローヴェレが潜伏しているとの情報が私の許に届いた……
先の講和条約の条件を破り、キリスト教世界の大罪人を匿うとは許し難き所業!
そこで、一度ならず二度までも私の逆鱗に触れたペトゥルッチの罪を責め
歩兵・騎兵合わせて8,000の軍をもってシエナの街へ進発することとする。
ペトゥルッチが私の怒りを解く条件はたった一つ……
それは大逆犯ジュリアーノ・デッラ・ローヴェレの引渡しである。
もしも私の要求に応えることができなければ、今度こそシエナ共和国は
叛逆者に相応しい報いを受けることとなるであろう!
出発は明日の夜明けとし、全軍は二手に分かれ、先発隊はミケロットとナルド、
本隊は私自らが指揮を取ることとする。
……それでは、改めて指示があるまで各自持ち場で待機しているように。
- 382 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/04 22:16
- >>379
私の時代には、まだ「オペラ」なる物は世に現れてはいないのだがね……
古代の芸術の再評価が進む中で、ギリシア時代の演劇を研究しているグループがあって、
このギリシア演劇を、新たな形で世に送り出そうという話は聞いたことがある。
彼らは、台詞を歌いながら演じられていたと言われるギリシア悲劇を手本として、
歌を言葉に置き換えた、新しい種類の音楽劇を作ろうと模索しているらしい。
ここ半世紀ほどの間で、俄かに古代の演劇研究が盛んになったのには
他の芸術復興と同様、オスマン帝国がビザンツ帝国を滅ぼしたことが大きく影響している。
コンスタンティノープルの陥落によって多くのギリシア人が難民となって
イタリアへ流入し、これをきっかけに王侯貴族たちの間でギリシアやローマの文芸を
愛でることが流行し、古代の演劇も数多く上演されるようになったのだ。
こうした中で、ギリシア神話の世界に登場する田園風景を理想郷と見なし、
そこで繰り広げられる牧童や妖精の恋物語を歌った劇が登場する……
これは「牧歌劇(パストラーレ)」と呼ばれ、16世紀の後半に
妹のルクレツィアの嫁ぎ先でもあるフェラーラの宮廷で大いに流行したとか。
- 383 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/04 22:17
- >>379(続き)
さらに時代が進み、16世紀末のフィレンツェでバルディ伯爵の公演を受けた
「カメラータ」という芸術サークルが、ギリシア音楽の要素を取り入れ
歌より言葉、音楽より劇を重視した全く新しいタイプの音楽劇が完成させる……
これが、君たちの時代でいう「オペラ」なのだよ。
伝承に伝わる最初のオペラ作品は1594年上演の「ダフネ」、正式な記録に残っている
最古の作品は1600年初演の「エウリディーチェ」で、いずれの作品も台本は
リヌッチーニ(1562-1621)、音楽はペーリ(1561-1633)の手によるものだ。
これら最初期のオペラは、パストラーレの流れを汲んでギリシア神話に題材を取っている。
フィレンツェで誕生したオペラは、その後マントヴァやローマでも人気を呼び、
やがて初のオペラ劇場が完成したヴェネツィアで大発展を遂げることになる……
ちなみに、「オペラ」の呼称が始めて用いられたのはヴェネツィアにおいてのことだ。
いずれにしても、君たちの時代で見られるオペラが完成したのは私の時代から100年も後の話さ。
そこまで長生きできれば、私もオペラを堪能することができるかもしれんがね……
- 384 名前:ジュリアーノ・デッラ・ローヴェレ@現在潜伏中:04/02/04 22:34
- えらい事態になってしまった・・・
こうなったら、ほとぼりが冷めるまでフランスへ逃げるか・・・・・
あの若造とて、フランス王が相手では手出しができまいて。
しかし・・・忌々しいのはあの赤い服のシスターだ・・・
上手いこと謀りおって、余に毒を盛るとは!
おかげで、未だに顔の発疹が全く取れん・・・一体どんな毒を使ったのだか。
きっと背後で、ボルジア親子が手を回したのに相違ないわ!
いずれ余が法王に即位した暁には、ボルジアの若造もシスターも、
揃って地獄に送ってくれる・・・その時を楽しみにしておれ!!(脱兎の如く逃走)
- 385 名前:名無し客:04/02/05 17:46
- うわわ、閣下、大丈夫ですか?
女性の謀は恐ろしいですねえ。
そんな、魔性の女に出会った事ってありますか?
- 386 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/05 23:32
- >>384
斥候「公爵様、報告します!
我が方の動きを察知したローヴェレ枢機卿が、夜陰に紛れてシエナを脱出し、
ピサから海路フランスへと逃亡したとのことであります!」
……何、それは真実か!
厄介なことになった……このままフランス王の庇護下に入ってしまえば、
ローヴェレの捕獲は最早不可能……いくら我々が奴の引き渡しを求めても、
フランス王が首を縦に振ることはまず考えられまい……
あの古狐め……我々の弱みに乗じるとは、何処までも卑怯な奴!
今度我が眼前に姿を見せたら、例えフランス王が何を言おうと八つ裂きにしてくれる!
こうなったらやむを得ん……至急シエナの政府委員会に特使を派遣し、我が意を伝えるのだ。
『シエナ共和国がローヴェレ逃亡の罪を認め、今後とも我が国と友好関係を続ける
意思があるならば、謝罪の証として直ちにパンドルフォ・ペトゥルッチを我が陣営に引き渡し、
賠償金として金貨三十万ドゥカートを納めること……もしもこの要求を呑めない場合は、
ただちに全軍に総攻撃の指令を下し、シエナの街を灰燼に帰す』とな。
- 387 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/05 23:33
- >>385
「魔性の女」ね……君が問うところとは違う意味でならば、
カテリーナ・スフォルツァの名前を挙げるところだが、彼女はアマゾンの如き
猛々しい女傑ではあっても、政治の才能は皆無に等しい。
彼女は他国相手の謀どころか、国内の人心を掴むことすらできなかったのだからな。
その意味で策謀に長けた人物といえば、やはりマントヴァ候爵夫人の
イザベッラ・デステをおいて外にはいないだろう……
果たしてマントヴァ候夫人に「魔性の女」という形容が相応しいか、それは分からないがね。
しかし彼女は、下手な男より余程冷徹な政治のあり方を知っていると見える。
マントヴァ候夫人と直接対面したことはまだないのだが、何度か手紙をやり取りする内に
なかなか侮り難い、遣り手の政治家だという印象を持ったよ。
……以前、我が娘のルイーズとマントヴァ候国の後継者であるフェデリーコ・ゴンサーガの
縁談を進めるに当たって、実際に結婚が成立した際に返還するという条件で
マントヴァに結納金の支払いを要求したことがあったのだが、この際にマントヴァ候夫人が
私に送りつけた返答が実にウィットの利いたものでね………その手紙には、こう書いてあった。
「マントヴァの国庫にこのような大金はなく、あるのは私の宝石だけです。
しかし、まだ歳も若く、宝石を楽しむことのできる女からそれを取り上げ、
息子の結婚の際に返していただいても、その時にもう歳を取り
宝石を楽しむ年齢は過ぎてしまっていることでしょう。
真の紳士なら、どうしてこのようなことができるでしょうか。」
……これには私も苦笑して、要求を取り下げるしかなかったよ。
正に、一本取られたという感じだったね。
- 388 名前:名無し客:04/02/06 12:59
- 公!
ローヴェレ卿を発見しますた!
例のハンバーガ屋です!
- 389 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/06 20:46
- >>388
何……ローヴェレは、まだフランス王の許に辿り付いていなかったのか!?
それならば、奴がフランスに上陸する前に、何としてでも
捕獲せねばなるまい……直ちに追手を差し向けることにしよう。
ローヴェレがフランスに逃げ延びるまでが勝負だ………
一度奴が王の懐へ飛び込んでしまえば、もう我々は一切手出しができなくなる。
そうなる前に奴を追い詰め、必ず身柄を拘束しなければな。
……だが、あくまでも事は内密に処理する必要がある。
如何なる世界であっても、他の場所で無用な騒ぎを引き起こし、そこの住人に
迷惑を掛ける事態だけは、どんな事情があっても絶対に許されん。
だから人目につく場所では、ローヴェレを好きなように泳がせておけ。
そして誰にも気付かれぬよう、隠密裏に奴を捕えローマへ連行するのだ……良いな。
しかし逃亡中の身であるにも関わらず、堂々と鯨飲馬食に及ぶとは……
……あの古狐、どこまでも人を食った奴だ。
この分だと奴はフランスまでの道中、モグラの如くあちこちに姿を見せるのではないか?
報告ご苦労であった……君も引き続き、奴の監視を続けてくれ。
今後は情報の中身に応じて、それに見合った報酬を支払うことにしよう。
- 390 名前:名無し客:04/02/08 16:03
- ローヴェレ卿、逃亡中の身で堂々と飲食店に姿を現すところを見ると、
陽動か何かではないですかね? と疑ってしまうのですが。
公のお気に入りの陽動作戦なんて、ありますか?
- 391 名前:名無しの悪魔使い ◆DeviLrsEg2 :04/02/08 16:10
- >>390
ローヴェレ卿の影武者という可能性も考えられますね。
(公は影武者を用いたりするんだろうか・・・?)
- 392 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/08 19:10
- >>390
陽動作戦にしては、やけにローヴェレが本格的に焦っているようにも見えるのだが……
……しかしあの男のことだから、油断は禁物か。
私としては、あのまま便所で朽ち果ててくれた方がありがたいのだがね。
で、話は変わるが……私自身、これまでの戦いで陽動作戦を用いたことは何度かあった。
その中でも、特に私の悪名を高め、世間に痛烈な印象を残したのは、
マジョーネの叛乱の首謀者である傭兵隊長を、マキアヴェッリが記すところの
『偉大なるしらばっくれ』の果てに片付けた時であろうな……
あの時に用いた作戦は、これまで私が張り巡らせた策謀の中でも特
に傑作のひとつに数えられるものだと自負している。
あれは叛乱が起きておよそ二月後のことだった……当初はこちらの不意を突いて
優位な立場にあった叛乱者たちも、この頃になると互いのエゴの衝突から
結束が緩み、互いに足の引っ張り合いを起こすようになっていた。
しかし、叛乱側も一つにまとまればその力は私を上回るが、
バラバラになってしまえば、何処の勢力も私と単独で争うことは不可能……
一度勝ち得た軍事上の有利も、いずれは水泡に帰すことは目に見えていた。
…そして、遂に叛逆者の一人が、その状況に耐えかねて私に対して講和を申し出たのだ。
堤防の一角が崩れれば、後は雪崩を打つが如し……他の謀反人どもも
少しでも自分の有利を高く売り込もうと、続々と私に頭を下げにやって来た。
これまで散々私をコケにしておいて、今更になって「我々は友人だ、どうか許して下さい」と
彼らは皆、一様に口を揃える……よく言ったものだが、この時の私は
彼らの申し出を、失った友を再び迎え入れるが如く喜ぶ振りをして、彼らを安心させたのさ。
- 393 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/08 19:10
- >>390(続き)
……その一方で、私は叛逆者どもを根絶やしにするための、軍備の増強を怠らなかった。
しかし、「その時」がやって来るまでは、絶対に自らの本心を誰にも明かすことはしなかった。
そのために、私は有能な腹心を処刑してまで、ひたすら平和の空気を装うことに専念したのだ。
やがて「占領したセニーガリア地方を公に献上するので、どうかお出で願いたい」
という申し出が、反乱者たちから私の許に届いた……
果たして彼らは、占領した街の献上に事寄せて、私を亡き者にするつもりだったのか?
その真意は、今となってはどうでもよい事だが…私は招待を受けて立った。
……ついに、私の待ち望んでいた「その時」がやって来たからだ。
城門で出迎えた彼らに対して、私は親しみに満ちた喜びで応え、彼らの好意に対する
お返しとして自分の宿所で一緒に飲もうと叛乱者たちに持ちかけた……
彼らにも迷いはあったようだが、これまでの演技が功を奏して、見事誘いに乗ってくれたよ。
……すっかり油断して宿所に入った彼らを捕らえるのは、赤子の手を捻るより簡単だった。
そして、主人を失った軍を撃破するのもまた同じこと……
突然の変事に動揺する敵兵をことごとく討ち果たした後、私は叛乱の最後の後始末を付けた。
……判決は、勿論縛り首だ……それ以外の結末など、絶対にあり得ない。
しかし、叛乱者たちも何年も私と行動を共にしていたのだから、
一度私に盾突けばどうなるか、そのくらいは分かっていたであろうに……
彼らは虫が良いのかお人好しなのか、とにかく見事に私の演技に踊らされ、
愚か者に相応しい結末を迎えることになったというわけだ。
- 394 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/08 19:12
- >>391 名無しの悪魔使い ◆DeviLrsEg2
もしもローヴェレが、今後あちこちの場所に姿を見せるようなことがあれば
中には本物ではなく、影武者が混じっている可能性もあるかも知れんが……
あの飲食店にいるローヴェレは、本物と見て良いのではないか?
少なくとも、あのお里が知れる下品極まりない口調は、間違いなく
ローヴェレ本人のものであったし……第一、現在逃亡中の身の上である奴に、
とても影武者を雇うような余裕があるようには見えないからな。
果たして、例の便所に閉じ込められたローヴェレが、我々の目をかいくぐって
どうやって脱出を図るつもりなのか………見物だな。
我々もあの店で、あの哀れな道化師の無様な姿を、暫く見物することにしよう。
それはさて置き、私もこれまで影武者を使おうと思ったことはあるし、
先のエジプト視察の際には、実際にイタリアへ影武者を残しても見たのだが……
どうも、大して影武者の役には立っていなかったようだ。
まあ、それも仕方のない話か……自分で言うのも何だが、
「イタリアで最高の美貌を誇る武将」との評判を取る、この私の代わりを演じることの
できる風貌を持つ者など、イタリアにもスペインにも殆どいないであろうからな。
- 395 名前:名無しの悪魔使い ◆DeviLrsEg2 :04/02/11 19:50
- そう言えば、ローヴェレ卿らしき人物を「松屋 一刻館店」で見かけましたが。
でも、もうどこかに行ったかも・・・。
それにしても、あの人はよく食べますね。
空腹だったとはいえ何もあそこまで・・・。
- 396 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/11 21:44
- >>395 名無しの悪魔使い ◆DeviLrsEg2
やれやれ……ローヴェレめ、ハンバーガー店から姿を消したと思ったら、今度は………
……よほどあの男は、飲食店に身を潜めるのが好みと見える。
果たして、奴の行動は料理目当て故のものなのか、そこで働く店員が目当てなのか、
それとも単に、追い詰められて判断に迷いを来たしているだけなのか、
いまいち私には見当が付かぬが……そのような場所に姿を隠せば
直ぐに発見されるであろうことは、誰にでも分かりそうなことだと思うがね。
しかし、奴はハンバーガー店でも、枢機卿としての品位を疑いたくなるほど
乱暴な食事をしていたが、別の場所でも同じことを繰り返していたとは………
いい加減、年齢も年齢なのだから、少しは落ち着いても良さそうなものだが。
まあ、私がローヴェレの健康を心配する必要など別にないか……
……私が思うに、ローヴェレが方々の飲食店で暴飲暴食に走るのは、
奴の生い立ちと関係しているのではないかな?
あの男は、ボルジアやメディチのような名門とは異なり、元は貧しい職人の小倅。
長く修道生活を送った後、法王に登りつめた伯父のシクストゥス4世の伝手で
枢機卿にまで出世したのだが……どうもあの男は、緋の衣を身に纏うように
なった今でも、育ちの悪さが抜けていないらしい。
枢機卿会議でもしばしば品のない言葉で喚き散らし、他の者の顰蹙を買うことも
少なくなかったとか……その口撃の的にされるのは、大抵の場合父上だったらしいがね。
…きっと、その生まれついての品格のなさが、奴の食生活にも現れているのだろう。
ともかく、我々も件の店に探りを入れて、ローヴェレの様子を窺う必要があるな。
報告ご苦労であった……君には情報提供の謝礼として、金三千ドゥカートを進呈しよう。
- 397 名前:名無し客:04/02/11 23:27
- この時代の枢機卿方はなかなかやり手が多いということですね。
公爵様・・・。
- 398 名前:名無しの悪魔使い ◆DeviLrsEg2 :04/02/11 23:35
- (これだけの大金どうしよう・・・。とりあえず円とマッカに三分の一ずつ両替するか。)
それにしてもローヴェレ卿は良くも悪くも「努力家」だったのですね。
その結果が法王暗殺未遂による逃亡生活とは皮肉な話で・・・。
- 399 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/12 23:54
- >>397
はて……君の言うやり手とは、どのような意味なのかな……?
所謂女性関係の話であれば、高位聖職者の地位にありながら公然と愛人を囲っている者は、
「最も肉的なキリスト」と呼ばれた父を始め、別に珍しい存在でも何でもない。
……あのローヴェレでさえ、ローマに帰れば愛人持ちの身であるからな。
むしろ、女の一人や二人をモノに出来ないような甲斐性なしには、
法王や枢機卿の重責は到底務まらないとさえ言われているぐらいさ……
そのぐらいの精力を持ち合わせていなければ、ヴァティカンの権力闘争を
生き延びて己の地位を確固たる物にするのは、とてもではないが無理な話だ。
その手の浮いた噂を聞かないのはジョヴァンニ・デ・メディチぐらいのものだが……
あの男の場合は、不細工過ぎて女が寄ってこないのだ。
人並み外れた醜男であるのみならず、私とは同い年とは思えないほどの
見苦しい肥満体とあっては、枢機卿の地位と権力を持ってしても
なかなか愛人のなり手を見つけ出すことは、なかなか困難であるようだ……
私もジョヴァンニを見ていると、少し彼のことがかわいそうにさえ思えてくるよ。
…まあ、彼にその手の欲がないというのであれば、要らぬ心配ではあるだろうがね。
- 400 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/12 23:55
- >>398 名無しの悪魔使い ◆DeviLrsEg2
おや、ローヴェレ発見の懸賞金が三千ドゥカートでは不服かね………?
君が望むならば、もう少し額を上積みしても良いが……何しろ、君の報告のおかげで
私はローヴェレの、あの無様な姿を堪能することが出来たのだから。
あれほど愉快な物を私に見せてくれたのだから、確かに三千ドゥカートでは安すぎるな。
五千……八千……それとも、一万ドゥカートが望みかな?
しかし……確かにあのローヴェレも、卑しくはあるが切れ者であることには違いない。
しかも、低い身分から苦労を重ねて、枢機卿の地位にまで登りつめたのだから
君の言うとおり、それまでに様々な努力を重ねてきたこともまた事実だ。
……だが、その努力も裏目に出てしまっては、何の意味もないわけだが。
詰まらぬやり方で父の暗殺を図ったものの、企みに失敗しただけでなく
意図していた結果が、逆に自分自身に降りかかる破目に………
それがローヴェレにとっての、全ての不幸の始まりだったな。
後は、行く先々で必ずといっていいほど災厄に出会って……自業自得としか言いようがない。
だが…報告によれば、奴はフランス王の許へ逃亡を図っているはずなのだが……
いつも潜伏している先は、フランスとは縁もゆかりもない飲食店ばかりではないか。
……あの男には、方向感覚というものがないのか?
それ以前に、ローヴェレには本気でフランスへ逃げる意思があるのかどうか……
今頃はフランス王も、きっと判断に迷っていることであろう。
- 401 名前:名無しの悪魔使い ◆DeviLrsEg2 :04/02/13 00:02
- い、いえ。三千でも十分大金です(あわわわ・・・)。
言葉足らずでどうもすみませんでした。
ところでフランスはこの件に関して何も言ってこないのでしょうか?
言ってこないのであれば、今のうちに釘をさしておいたほうが良いのではないでしょうか?
歴史的(政治的)背景は良く分かりませんが法王の暗殺未遂犯であれば、
フランス王もおいそれと匿うような事は出来ないと思いますが?
- 402 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/13 00:36
- >>401 名無しの悪魔使い ◆DeviLrsEg2
たった三千で、もう充分なのか………君も随分無欲だな。
ところで、ローヴェレの仕出かしたことだが……
まず当初の事実関係については、>>368で示してあるとおりだ。
その後については、君もよく知っていることであろう。
今のところこの件に関して、フランス王から公式の見解は何も出ていないが……
勿論フランス王には、父を通じて一言釘を刺すつもりではいる。
だが……はっきり言って、我が国とフランスとでは軍事力には雲泥の差がある。
現在の世の中において、軍事力の差はそのまま政治力の差にもつながる……
法王庁の権威は、現在でも他の世俗権力からも一目置かれるものではあるが
軍事力の面では、未だヨーロッパの列強と対抗できるだけの力はない。
万に一つ、フランス王が破門を恐れずヴァティカンとの正面衝突を決断した場合……
我々には、フランス王の武力に対抗する手段は残されていない。
……つまり、仮にフランス王が武力を笠にローヴェレの保護に乗り出したら、
我々にはそれを止めることは、残念ながらできないのだ。
そしてローヴェレ枢機卿が、フランスへの逃亡を決断した理由についてだが……
まずローヴェレには、先代フランス王のシャルル8世と結んでフランス軍のイタリア侵入を
手引きした前科があるし、シャルルのイタリア遠征が失敗に終わった後は
法王庁の出先機関が置かれているフランスのアヴィニヨンへ
駐在大使として赴任するなど、フランスとは浅からぬ関係がある。
あくまで推測だが、恐らく奴はその関係を頼りに、フランスへの逃亡を決断したのであろう。
全ては、ローヴェレ本人にしか分からぬことではあるが……
- 403 名前:名無し客:04/02/14 02:39
- そんな事よりヴァレンティーノ公よ、ちょいと聞いてくれよ。公とかなり関係あるけどさ。
このあいだ、一刻館の松屋行ったんです。松屋。
そしたらなんかターバン巻いたムスリムっぽい人がいて座れないんです。
で、よく見たらなんかアラブの香辛料問屋の隠居とか言ってるんです。
もうね、アホかと。馬鹿かと。
お前な、アラブのどこに香辛料問屋があるってんだよ、ボケが。
問屋だよ、問屋。
なんか注文山盛りしてるし。一人で豚飯カレブウ生姜焼き定か。おめでてーな。
勿論豚飯は大盛りじゃぞー、とか言ってるの。もう見てらんない。
お前な、カレー丼やるからその席空けろと。
松屋ってのはな、もっと殺伐としてるべきなんだよ。
自販機の前で長々考え込んでる奴といつ喧嘩が始まってもおかしくない、
刺すか刺されるか、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。偽タリバンは、すっこんでろ。
で、やっと座れたかと思ったら、そいつが、「断じて、逃亡中の枢機卿などではないぞ!」とか言ってるんです。
そこでまたぶち切れですよ。
あのな、逃亡中の枢機卿なんてきょうび流行んねーんだよ。ボケが。
得意げな顔して何が、枢機卿などでは、だ。
お前は本当に逃亡中なのかと問いたい。問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。
お前、本当はヴァレンティーノ公に捕まえてもらいたいちゃうんかと。
松屋通の俺から言わせてもらえば今、松屋通の間での最新流行はやっぱり、
唐揚げ飯、これだね。
唐揚げ飯並サービス価格。これが通の頼み方。
唐揚げ飯ってのは唐揚げが飯に乗っかってる。そんでサラダも乗ってる。これ。
で、それがサービス価格。これ最強。
しかしこれを頼むと次から店員にマークされるという危険も伴う、諸刃の剣。
素人にはお薦め出来ない。
まあ公爵、ローヴェレ卿は、とっとと捕まえなさいってこった。
- 404 名前:名無し客:04/02/14 06:43
- もしナポレオンみたいな人物が、公爵閣下の同時代に生まれて
やはり全ヨーロッパを制する勢いを持っていたら、どうお付き合いしますか?
- 405 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/14 21:25
- >>403
ローヴェレが、またあの店に………今度は、ムスリムに変装してだと?
……正体を隠すために、なりふり構わずという感じのようだが
どうも見る限りでは、狙いが空回りしているとしか思えんな。
しかし、「断じて、逃亡中の枢機卿ではない!」……などと、一体何を考えているのだ。
これではまるで、自ら正体を明かしているのと同然ではないか。
…しかも、奴は誰が見てもムスリムと分かる恰好をしているのに
堂々と豚肉を食して、それで怪しまれないとでも思っているのか?
本当に、ローヴェレには逃亡者としての自覚があるのかどうか……
逃亡者ならば逃亡者らしく、大人しく隠れていれば良いものを
あの男は「早く捕まえてくれ」とでも言わんばかりに、
あちこちの飲食店で目立つ真似ばかり繰り返しているではないか。
身の安全を図るならば、さっさとフランス王の許へ急げばよいのに……
私には、あの男の本心が如何なるものか、今ひとつ分からない。
とにかく……ローヴェレが「松屋」にいると分かった以上、もう一度探りを
入れねばなるまいが、私ではあの店の娘に面が割れているからな……
…今度は、ミケロットをあの店へ寄越すことにしよう。
奴がまだ、店に留まっていれば良いのだが………
報告ご苦労であった……君に情報提供の謝礼として、金五千ドゥカートを進呈しよう。
- 406 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/14 21:26
- >>404
もしもナポレオン・ボナパルトが、実際に彼の生きていた時代と同じように
ヨーロッパ制覇の野心を持って生まれてきたとすれば、
遅かれ早かれ私も彼と対決することは避けられないであろう。
……だが、実際の戦略に当たっては、その時の国力差や
周囲の勢力関係を踏まえた上で、和戦を判断することになろう。
少なくとも、私がイタリア一国を手に収めないうちに、ナポレオンとの
正面衝突に踏み切ることは、国力差を考えれば得策ではない。
私と彼と、互いの個人的な能力差が遜色ないものでも、
軍事力や資金力に圧倒的な差があっては、対抗のしようがないからな。
……だから、私がイタリアを統一するまでの間は、ひたすら彼とは
和睦を保ち、対等な力を整えることに専心することになるであろう。
そして、いざイタリアを平定して、ナポレオンと対決する段になったとしても、
単独で彼と戦うのは無謀……その時は、彼に対する包囲網を築くべく、
他国との連携を模索することになるであろう……恐らく、敵も同じことを考えるはずだ。
そうなると、スペインや神聖ローマ帝国……それにオスマン帝国といった
周囲の大国を、どちらがより早く味方に引き入れられるか……
それが私とナポレオンとの勝負の鍵を握ることになるであろうな。
- 407 名前:名無し客:04/02/16 23:15
- 牛丼は好きじゃなかったので困らない私。
そんなことはともかく、公爵様はドゥカート金貨しか使わないのでしたね。
以前もお聞きしましたが純度が高く基軸通貨と言えますからね。
私にもお恵みを。
- 408 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/17 23:19
- 近頃、巷でローヴェレの人気が高まりつつあるとの情報があるが……
フフフ……この状況下で、奴もいつまで逃亡生活を続けられるかな?
こうも有名になってしまえば、何処に姿を現わそうがローヴェレは注目の的……
この分ならば、奴が我々の手元に落ちるのも時間の問題であろう。
>>407
ギュウドン……? ああ、例の『松屋』で売られていた牛肉の料理だな。
あの店に送り込んだミケロットから、何やら得体の知れぬ病気が牛に蔓延した影響で、
そのメニューが店頭から姿を消したとの報告が入っていたが。
それは、どのような病気なのであろうか……人間にも感染する類の病なのか?
……そういえば、ローヴェレが頼んでいたのも殆どが豚肉のメニューであったな。
それはさて置き……君も指摘するとおり、ヴェネツィアのドゥカート金貨は
ヨーロッパでは圧倒的な信用度を誇る、言うなれば国際的な機軸通貨とも呼べる存在だ。
イタリアでは外に、フィレンツェが発行するフィオリーノ金貨も有力だが、
純度も流通量も、ドゥカート金貨に比べれば到底太刀打ちできる内容のものではない。
ローマやフェラーラだけでなく、フランスを始めとする外国とのやり取りでも
使われるのはドゥカート金貨であるし、勿論この世界においても
私が使用しているのはこのヴェネツィア製の金貨だ。
ドゥカート金貨は、殆ど純金といっても良いほどの高い純度を誇っているので、
大抵の場合は、どの国であっても変わらぬ価値があるのだよ。
だが……当然のことではあるが、いくら君が金を必要としているからといっても
ただで私の金庫からドゥカート金貨を恵むわけにはいかない。
どうしても金貨を欲するのであれば、私のためにそれ相応の働きをしてもらう必要がある。
私の許で傭兵や官僚として働きたいのであれば、勿論話は聞こう。
それとも君は、もっと手っ取り早い手段でドゥカートをせしめたいのかね?
ならば、この世界を徘徊しているジュリアーノ・デッラ・ローヴェレを探し出し、
もしも可能であれば奴を生け捕りにすることだ……見事あの古狐を召し取ったならば、
褒美として10万ドゥカート、そっくり君に進呈しようじゃないか。
ただし……無用の騒ぎを引き起こして他所の住人を困らせた場合は、この限りではないがね。
- 409 名前:名無し客:04/02/18 11:18
- 子供時代のあなたが、今のあなたを見たら何て言いますかね。
- 410 名前:名無し客:04/02/18 11:18
- 公爵の「下火になっちゃったこと」を教えてください。
- 411 名前:名無し客:04/02/18 11:18
- 地獄めぐりと天国めぐり、どっちが楽しそうですか?
- 412 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/18 23:16
- >>409
……恐らく、幼き日の私は野望に邁進する現在の私の姿を見たら、
「やっぱり、僕に大司教も枢機卿も勤まるはずがなかったね」とか、
「誰にも邪魔されずに、これからもやりたいことをやれ」と言うのではないかな?
前にも書いたと思うが、私は子どもの頃から父の定めた高位聖職者としての
安穏な将来に満足せず、己の道は己自身の手で決めたい、
自分だけの力で何事かを成し遂げたいと願っていた……
それが、イタリア統一の野望として頭の中で具現化したのは、もっと後の話であるがね。
とにかく人に縛られる事が大嫌いで、自分の道は自分で決めなければ
気が済まないという性分は、昔も今も変わることがなかった……
だから、お仕着せの出世コースに粛々と従うことなく、イタリアの異端児として
ただ己の野望を実現することだけに全力を注ぐ私の姿を見て、
少年の私はある意味安堵もするだろうし、そして私をキリスト教世界の
枠に押し込めようとした者たちの滑稽さをせせら笑うことだろう。
しかし、もしも私が野望に生きることなく、あのまま枢機卿として生きる道を
選んだとしたら……いや、このようなことは想像する必要もないか。
私が他人によって定められた道を受け入れるはずもないことは、
子どもの私とて知り抜いていることであろうから。
- 413 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/18 23:17
- >>410
「信仰心」ならば、下火に向かうどころか当初から無いに等しいし
「女に対する欲望」は、逆に昔も今も尽きることがない。
さて……私にとって下火になってしまったことといえば、何があったか……
……そうだな……イタリア制覇の野望を進めるに当たって、最初の目標として
狙っていながら、情勢の変化によっていつしか興味が失せてしまった
「ナポリ王位への野心」……そうだ、これがあったぞ。
……枢機卿の衣を捨て、俗界で自らの野望を実現することとなった私が
一番初めにターゲットとして定めたのが、イタリア南部とシチリア島を支配する
アラゴン家のナポリ王国……別名「両シチリア王国」だった。
ナポリには、私の野望を実現するのに都合の良い条件がいくつも揃っていたからだ。
その強大な外見に比べて王国の内情は諸侯の反抗でガタガタであったし、
当時私は弟ホアンの死によって、彼に与えられる予定であったヴェネヴェントの地を
ナポリ王から貰うことによって、ナポリ王国の廷臣としての地位も得ていた。
加えて、ボルジア家とアラゴン家は縁戚関係があったから、
ナポリの王権に食い入ることは、それほど難しいとは思わなかったのさ。
……だが、私は結局ナポリへの野心を、二つの理由であっさり捨て去ることになる。
一つは、ナポリ王が私に娘を嫁がせることを渋ったこと……これは、前にも書いたがね。
もう一つは、密かに提携を探っていたフランス王ルイ12世が
密かにナポリに対する野心を燃やしていることがわかったため……
当時の情勢を考えれば、フランスを敵に回してまでナポリ王位を得るメリットはない。
だから、私はナポリ王位をあっさり見捨て、フランス王との連携によって
ロマーニャとトスカーナを平定することを、当面の目標に切り替えたのさ。
- 414 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/18 23:17
- >>411
それは勿論、答えるまでもないこと………地獄めぐりに決まっている。
天国に行ったところで、どうせ辛気臭くて堅苦しい雰囲気しか感じないだろうからな。
杓子定規の「神の愛」やら「正義」やらに雁字搦めにされて、
息苦しい思いに苦しめられるなど、想像するだけでゾッとする。
……それに比べれば、地獄の方がはるかに見るべき物は多いだろうさ。
キリスト教世界における地獄がいかなる場所であるかは、先に>>89で
ダンテの『神曲』の描写を引用してあるので、今一度そちらを読み返して欲しい。
それで、地獄の罪人にとって最も重い罪は、先にも記したとおり
「裏切り」の罪であるわけだが……当然、私を裏切った傭兵隊長ども……
ヴィテロッツォにオリヴェロットに、パオロ・オルシーニも、今頃は皆
ユダやブルータスと同様、サタンに噛まれ続ける責め苦を味わっているだろう。
地獄の最下層で、己の愚行によってもがき苦しむ奴らの様子を見て、
その無様さをせせら笑ってやるのも、また一興であろう。
……あるいは、私が死んだら魔女どもを侍らせて、地獄の制覇に乗り出す
というのも、悪い考えではないかもしれんな。
例え地獄へ落ちようが、私が私であることに変わりはないさ。
- 415 名前:名無しの悪魔使い ◆DeviLrsEg2 :04/02/18 23:29
- >>414
確かに「地獄編」のほうが「天国編」よりも描写が活き活きしていましたね。
天国にしろ地獄にしろ永遠はごめんですが。
それにしても、地獄の最下層で魔王ルシファーと合間見える公爵・・・。
絵になりそうだ・・・。
- 416 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/20 20:36
- >>415 名無しの悪魔使い ◆DeviLrsEg2
現世に生きる私にとっては、あの世での幸福など何の意味もないこと……
私はダンテと違って、天国にベアトリーチェを待たせているわけでもないからな。
天国に比べれば、むしろ地獄の方が遥かに起伏に富んで面白そうではないか。
しかし、果たして地獄の王であるサタンがどのように私を遇するかは、
実際に地獄へ行ってみないことには、何も解りようがないがね………
……それにしても、これまで歴史上に名を残してきた人物で
果たしてどれだけの者が、地獄行きを免れることができたのであろうか?
現世で何事かを成し遂げた者たちは、皆その代償として
数多くの血を流してきた……カエサルやシャルルマーニュにしても、
チンギス・ハーンやサラディンにしても、一大の英雄と呼ばれた者はは皆、
血生臭い代償を払うことによって、己の名声を世に確立してきた。
……そんな彼らが天国で安閑と過ごしている姿など、私にはとても想像がつかないな。
無論、彼らが地獄の責め苦を、甘んじて受けているわけではあるまい……
むしろ、チンギス・ハーンやシャルルマーニュなどは、鬼どもを自らの手下に加えて、
今頃は地獄の覇権を賭けて競い合っているのではないかな?
彼らと語り合うも良し、地獄の覇権争いに一枚加わるも良し……
とにかく……私にとって、地獄は少なからず楽しみが待ち受けている場所といえそうだ。
- 417 名前:名無し客:04/02/22 04:28
- ルネサンス期のもので、特にお好きな・気になる絵画は何かありますか?
- 418 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/22 18:53
- >>417
最近描かれた絵画で、気になるものね……私は絵画に対しては、ローヴェレや
ジョヴァンニ・デ・メディチほど強い執着心を抱いているわけでもないのだが……
しかし……先にも書いたとおり、近頃のイタリアには数多くの優れた画家が登場し、
続々と優れた作品が生み出されているし、私もこの時代に生きる人間である以上、
これらの絵画に全く興味がないわけではない。
……どちらかといえば、私の場合は絵画そのものよりも、それを描いた人間に
強く惹かれる傾向があるのだがね。
とにかく、ここで私の心を引いた名作を幾つか紹介することにしよう。
- 419 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/22 18:54
- >>417(続き)
ttp://art.pro.tok2.com/D/daVinci/leon03.JPG
まずこの作品だが、諸君の中にも知っている者はいるだろう……
私のよき協力者である、レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』だ。
この作品に関しては、ちょっとしたエピソードが語られていてね……
この『最後の晩餐』は、彼がミラノのイル=モーロの許に身を寄せていた時期に
聖マリア=デレ=グラツィエ修道院の依頼を受けて描かれたものだが、この絵の制作を
依頼されてから3年間、レオナルドはスケッチにさえ取り掛かろうとはしなかった。
何遍催促しても同じ有様だったので、さすがに依頼者の修道院長が堪りかねて
イル=モーロに抗議し、何とか作品の製作を急がせようとしたところ、
レオナルドはイル=モーロにこう答えたという。
「──芸術を創造しようとして大芸術家が手をこまねいているときこそ、
精魂を傾け、構想を練っているわけで、それから、脳裏をかすめる形態を描くものなのです。
私は1年この方、毎日朝晩ミラノの貧民窟へ通って、ユダの悪辣さをもっている顔を
探しているのですが、まだ見つからないのです──」
そして少し間を置いて、彼はまたこうつけ加えた。
「あの修道院長をモデルにすれば済むのですが、彼が笑い者になるのも気の毒なので……」
…と、さすがのレオナルドも、世話になっている人間を茶化すことは躊躇われたようだ。
……私が彼の立場なら、迷わずイル=モーロの色黒面をモデルにしてやったところだが。
あるいは、あのローヴェレでもいいだろう。
あの男の下賎な面ほど、ユダの悪辣さに通じるものはないからな……
ttp://borgia.peko.li/gallary/Leonards.jpg
……ついでになるが、こちらはつい先頃レオナルドが描いた、私の頭部のデッサンだ。
現在彼は、私の覇業を手伝う傍らで、フィレンツェのさる大富豪より依頼を受けて
その大富豪の妻の肖像を描く仕事に取り掛かっているとか……
彼のことだから、また完成させるまでに2年も3年も時間をかけることになるだろうがね。
- 420 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/22 18:55
- >>417(続き)
ttp://art.pro.tok2.com/M/Michelangelo/mich04.jpg
そして、レオナルドと並ぶイタリアの二大巨匠といえば、私と同年齢である
ミケランジェロ・ブオナローティだが……彼は彫刻の分野では、上にも示したとおり
既に名作と呼べる幾つかの作品を世に送り出しているが、絵画の面では
まだそれほどの作品を完成させるには至っていないようだな。
ミケランジェロは人体の正確な描写に定評があるので、絵画を描かせても
かなりの物を作り上げるのではないかと思うが……事実、彼はレオナルドの作品を評して
「あのくらいのものなら、私の下男でももっとうまく描いたでしょう」と豪語しているとか。
ミケランジェロの言葉が真実であるかどうかは、いずれ彼が絵画の世界に
進出すれば、明らかになると思うが……まあ、レオナルドとミケランジェロの間には
感情的な対立もあるからな、その点は割り引いて考えなければならないだろう。
……ここでもう一人、同じ時代の画家を紹介することにしよう。
ttp://art.pro.tok2.com/R/Raphael/raph38.jpg
こちらの作品は、ウルビーノ生まれのラファエロなる者が描いた『磔刑』だ。
作品のテーマ自体はキリストの磔刑と、取り立てて興味を引くようなものでもないのだが
聞くところによればこのラファエロは、まだ20歳そこそこの若者だそうで
この歳で、これほどまで才能の片鱗を見せ付けるとは……
いずれはレオナルドやミケランジェロに匹敵する、あるいはそれ以上の巨匠に
成長するやも知れんな……彼の生涯に、そこまでの時間的余裕があればの話だが。
…余談だが、この若者の絵に対しては、ジョヴァンニ・デ・メディチが相当惚れこんでいるとか。
- 421 名前:名無し客:04/02/24 18:26
- 人にモノを言うとき、「これは言わないようにしている」という言葉が
ありましたら教えてください。
- 422 名前:名無し客:04/02/24 19:34
- 閣下!イタリアに行って参りました!
最後の晩餐も実物見てまいりました!
いまや、15分に一回、25名まで、扉が一つ開くごとに後ろの扉が閉まる
ような非常に厳重な体制で保存されておりました。
予約ももう全く取れない状況だとか。
なんていうかイタリアは迫力がありますな。
その辺にン百年前の建物が至高の芸術作品を伴ってぽんぽん置いてあるなんて、
地震の国ジパング出身の自分は圧倒されるばかりでしたよ。
- 423 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/24 22:01
- >>421
特に言葉というものでもないが、諸国と交渉する際には、それが政治的手段として
有効である場合以外、己の野心を匂わせる言動は避けるようにしている。
あまり露骨に自らの野望を明かしては、周囲の強国を必要以上に警戒させ、
結果として自分の行動が阻害されることになるからだ。
……特にフランス王やヴェネツィアのように、いずれ私と衝突する可能性のある、
しかし現在は敵対してはならぬ相手には、ほんの戯れ言程度の
ことであっても、私に敵対する口実となりうる言質を与えてはならない。
しかし………実は最近になって、少々困ったことが起きている。
ローマの父が、生あるうちに私の成功する姿を見たいとの焦りからか、
殊更フランスやヴェネツィアをないがしろにする言動を取り出すようになったのだ。
おまけに、法王庁を訪問したヴェネツィア大使に対して、父は迂闊にも
「チェーザレに王位を与える」などと広言を吐いたという話も伝わっている。
……こうした言動は、私にとって決して好ましい結果を生むことではない。
なぜならば、この手の噂が広まることによってフランスやヴェネツィアを刺激し
仮にこの両国を敵に回すような事態になったとしても、現在の私には
フランスやヴェネツィアと対等に戦うだけの国力が備わっていないからだ。
……いずれこの両国と対立することも想定して、密かに別の大国との
提携を模索してはいるのだが……未だ、確たる回答を得るには至っていない。
いずれにせよ、新しい味方を得る前に、古い味方を敵に回す愚を犯してはならないのだ。
- 424 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/24 22:03
- >>422
そうか、君はミラノまで出向いて『最後の晩餐』を見に行ったのか………
しかし、あの絵の保存は、それほどに厳しいものであったのか?
だとすれば、それはレオナルドがあの絵に用いた技法と関係があるかもしれんな。
普通、壁画を描く際には、その殆どが漆喰の上に顔料を塗って固着させる
「フレスコ」の手法によって作製されるものだが、『最後の晩餐』を描く際に使用されたのは
卵や膠で顔料を溶き、板壁に直接顔料を接着させる「テンペラ」の手法だったのだ。
「テンペラ」は「フレスコ」と違って重ね塗りが利くので、色に深みを持たせることもでき、
細やかな筆遣いによる表現も可能で、レオナルドにとってはうってつけの手法だった。
………だが、この手法には大きな欠陥がある。
イタリアは非常に湿気の多い気候なので、表面を接着剤で塗り固めたような壁は
保存には剥いておらず、直ぐに顔料が剥がれてしまうのだ。
さらに悪いことに、この絵が描かれた場所は特に湿気の多い食堂だ……
その辺はレオナルドも気付いていたようで、壁に鉛白の地塗りを施して、
顔料の剥落が起こらないような工夫をしているが、天才にも失敗はあるものらしい。
この絵は完成直後から顔料の剥落が始まり、このままでは数十年後には
せっかくの名作も、ただの染みの塊と化してしまうという……
勿論、今後それを防ぐための補修も行われることであろうが、果たしてレオナルドが
描いた元の表現を留めたまま、あの絵を保存できるであろうか……?
- 425 名前:名無し客:04/02/25 16:11
- 閣下! 最近、物忘れが激しいです。どうしたらいいでしょうか!
- 426 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/25 22:16
- >>425
……物忘れが酷いのというのであれば、大切な物事を忘れないように、
日頃から備忘録を記す習慣を身に付けてはどうかね?
私も、重要事項の決定や外交使節とのやり取りを行う際は、その内容を
逐一秘書に記録させている……重要事項を自分の頭だけに留めていては、
自らの勘違いや失念が原因で、墓穴を掘ることにもなりかねんからな。
こうした類の記録には、重大な機密事項に属するものもあるので
何もかもを文書に記録させることに、全く危険がないわけではないが……
それでも、自分の考えや生の言葉を何らかの形で残しておけば、
万一忘れてしまった場合でも直ぐに思い出すことができるし、
後々の判断に当たって、間違いを犯す危険を軽減することもできる。
だから、まずは頭の中で思ったことを、何にでも書き留めておくのが良かろう。
……しかし、それでは「万一物を忘れてしまった場合の対策」にはなっても
物忘れをしないための根本的な解決にはなりえないな。
私は医者でも何でもないから、何故人が物忘れをするのか、
その仕組みについては分からないし、それを防ぐ処方箋の出しようもないが……
ただ、人間の頭脳という物は、常日頃から使い続けることを意識しなければ
やがてその機能が衰えてしまうものとは言えまいか?
……身体の鍛錬を怠れば、やがて体力が衰えてしまうのと同様にね。
つまり、常に何かを考え思い出すことによって、脳を鋭敏に保つ努力を
続けていれば、物忘れを絶対にしなくなるということはないにせよ、
少なくとも物覚えを良くするための助けにはなるのではないかな?
別に私の言っていることには、何の根拠があるわけでもないがね………
- 427 名前:名無し客:04/02/25 23:30
- 公爵様は歯は丈夫でしょうか。エジプトの王たちは歯が磨耗していたとか。
砂の影響とも言われます。旅行時大丈夫でしたか。
- 428 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/26 22:30
- >>427
歯の手入れについては、私も日頃からそれなりに気を使っているので
これまでのところは、虫歯を患った経験はないな………
別に歯の手入れといっても、私の場合はせいぜい布や金属製の楊枝で汚れを取ったり、
香辛料を混合した葡萄酒で口の中を含嗽するぐらいことなのだが。
……まあ、歯の心配をするのであれば、私よりも方々の飲食店で悪食を繰り返す、
ローヴェレのことを心配してやった方がいいような気もするがね。
奴もあのように暴飲暴食を重ねていては、そのうち歯を傷めてしまうのではないか?
ところで、以前私が訪れたエジプトでは、砂の影響によるものかどうかは分からないが
古くから歯磨法が盛んで、ある種の木を噛んで柔らかくした「チュースティック」
なるものに歯磨剤を付けて歯を磨く風習が、既に3,000年も前からあったそうだ。
当時は、ビンロウ樹の実やナイルで獲れる「緑粘土」といった主たる材料に
甘味料としての蜂蜜や殺菌作用があるとされた緑錆を加えて、歯磨剤を作っていたという。
一方で、ヨーロッパでは「処女の小便で含嗽する」だの、「獣骨と塩を焼いた灰で歯を磨く」
だのといった、キテレツな虫歯の予防法を実践する者もいたらしい。
何でもこれらの方法は、古代ローマの時代に「歯を食う虫を殺す方法」として考案され、
現在に至るまで、歯科医の間では有効な虫歯の予防法と信じられているそうだが……
こんな方法で、虫歯を防ぐことができるかといえば、はっきり言って怪しいところだな。
それにしても……まさかカエサルやアウグストゥスも、こんな胡散臭い方法で
歯の手入れを行っていたのだろうか……彼らが手に入れたエジプトには、
ローマとは比べ物にならぬほど、古くから発達した歯磨法が伝わっていたというのに。
- 429 名前:名無し客:04/02/27 13:27
- 公爵を3色で表すとしたら、何色になると思いますか?
- 430 名前:名無し客:04/02/27 15:27
- 公爵に足りすぎているものは何ですか?
- 431 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/29 13:57
- >>429
私を三つの「色」で表現するとしたら………?
簡単そうに見えて、随分回答に悩む質問ではあるが……強いてあげるとするならば、
「青」、「赤」、それに「黒」が、私を現わすに相応しい色であるといえようか。
まず「青」とは、長年に渡って受け継がれてきた、誇り高き血筋を象徴する色のことだ。
諸君の中にも、高貴な血筋を指して「青い血」と呼ぶことを知っている者はいるだろう。
それは、いつ如何なる時でも感情に動かされることなく、常に冷静な行動が取れる人間で
なければならないという、高貴な家に生まれ付いた者の生き方から来ているのだ。
この例えが元になっているからなのか、ヨーロッパにはフランス王家を
はじめとして、「青」をシンボルカラーとして取り入れている家も多い。
そして、私の華麗なる血筋を現わす「青」と対をなすのが、私の野望を表す「赤」……
そう、この「赤」とは、そして戦場で数多くの敵から浴びてきた、返り血の色なのだ。
我が宿願であるイタリアの統一は、奇麗事だけで達成できるものではない。
野望のためには、例え鬼と呪われようが悪魔と謗られようが、
汚い手段を用いることも無辜の者達を犠牲にすることも、躊躇ってはならないのだ。
今後も、私は悪名と引き換えに数多くの血を流すことであろう……
そして残った「黒」だが…………これは、実は私が最も好みとする色だ。
普段の生活で着ている衣服も、黒を基調としたものが多いし
戦場に赴く際も、身につけるのは黒く塗られた甲冑だ……
……それから、実は私の髪も、妹のルクレツィアとは違って「黒髪」なのだよ。
家柄や信条を離れて、一個の個人としての私を表現するのに
最も相応しい色があるとするなら、それはやはり「黒」を置いて外にはあるまい。
- 432 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/02/29 13:58
- >>430
私に足り過ぎているものか……選択肢が多すぎて、これは答えに困る質問だな。
容貌ならば、両親の出来が良かったせいか、これ以上ない程恵まれているし
金だって有り余るほど持っている……これは、いくらあっても足りないことはないのだが。
しかし、それ以上に足りすぎて困るものがあるとすれば……それは私の「頭脳」だな。
こう言っては何だが、現在のイタリア国内を見回す限り、私に比較的近い
頭脳を持つ者はいるのだが、私を凌駕するほどの頭の冴えを見せる者は
誰一人としていない………敵国は勿論、私の配下の中でさえも。
強いて挙げれば、私にとっての政治の師である、ローマの父上ぐらいか……
そのお陰で、ロマーニャの平定も殆ど達成することができたし、
傭兵隊長の叛乱という窮地に陥っても、最終的には乗り切ることができたわけだが。
しかし……そうであるが故に、私の側近には私の考えを咀嚼して、忠実に実行に移すことが
できる者はいても、私以上の才覚を持って我が国の戦略や政略を別の観点から観察し、
間違いがあった場合はそれを正すことができるという者がいない。
そんな時には、もう少し自分が愚鈍に生まれついていたら……と思わないでもないな。
とは言うものの、もしも私が愚かな頭の持ち主だったとしたら、イタリア統一はおろか
とうに他国に攻め滅ぼされることは間違いないわけで……
これも、私がイタリアで、ひとり突出した存在であるがための悩みだな。
- 433 名前:名無し客:04/02/29 22:11
- 公爵ともなると、多くの宝を所有していると思うのですが。
「心の中で光り輝く宝物」って言われて、何か思いつきますか?
- 434 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/03/01 21:41
- >>433
世間で「宝」と呼ばれる財物は少なくないが、どんなに有り難がられている物でも
自分自身が真にその価値を認めなければ、如何ほどの価値もあるまい。
例えどんなに高価な宝石であろうと、金銀や骨董品であろうと、我が心を惹く何かが
感じられなければ、結局そこら辺に転がっている路傍の石と、何ら変わるものではない。
……つまり、その事物に「心の中で輝かせる」だけの価値がなければ、
どんなに高く値踏みされている物だろうが、宝と呼ぶ資格などないのだよ。
逆にいえば、どんなに世間にとって詰まらぬものでも、己の役に立つ、
あるいは他に替え難い価値があると認められるならば……それは立派な宝だ。
その意味で、私にとって宝と呼べるのは、私の野望を後押しして
イタリア制覇を手助けしてくれる一切の存在………人や物をひっくるめた全てだ。
ミケロットの武勇やレオナルドの技術は、余人をもって替え難いものであるし
金のためではなく己の国のため、ひいては己自身のために戦うことのできる
ロマーニャ公国の国民軍も、傭兵による代用は利かないものだ。
こういった才能や制度に助けられなければ、ロマーニャやトスカーナの平定も
現在のような速度では進展しなかったかもしれん………
それに比べれば、どんなに高価な宝石や骨董品も、私にとっては如何ほどの価値もない。
例えそれらが無くなろうとも、どこかで替わりを見つけることはできるのだから。
- 435 名前:名無し客:04/03/04 14:21
- 確かクレオパトラってたくさんいたんですよね。
公爵は(いちばん有名な)クレオパトラに魅力を感じますか?
- 436 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/03/04 22:47
- >>435
プトレマイオス朝エジプトの女王、クレオパトラ7世については
これまでも何回かここで話題になっていたが……
確かに「クレオパトラ」という名前は、プトレマイオス朝の出身地であるギリシアや
マケドニアでは、そう大して珍しいものではない……というよりも、この名前は
昔から現在に至るまで、ごく一般的なものとして通っている。
……もっとも、歴史に名前を残す「クレオパトラ」は、件のクレオパトラ7世だがね。
それで、そのクレオパトラについては、絶世の美女であったとの伝承が有名だが……
……果たして、実際のところはどうであったものか?
当時の貨幣に刻まれた彼女の肖像を見る限りでは、特に目を引くほどの美貌だった
わけでもなさそうだし……美しかったことは美しかったのかもしれんが
見たところごく標準的なギリシア女性という感じで、後世の誰かが評するように、
「クレオパトラの鼻がもう少し低かったら、歴史が変わっていた」ということはなかったろう。
まあ美女であれば、私もそれなりに魅力を感じることもあるだろうが……
しかし過去の人物の如く、彼女に格別入れ込むことはなかったのではないか?
ただ、彼女は聡明な女性ではあったらしく、ギリシア語をはじめ数カ国の言語に
通じていたというし、カエサルやアントニウスの前へ登場した際に披露した
パフォーマンスを考えると、かなり頭の切れる人物であったことは確かであろう。
少なくとも、カエサルはクレオパトラの外見よりも知性に引かれたというのが実情のようだ。
もっとも、彼女の知性が君主としての能力に直結したかといえば、必ずしもそうではないがね。
女王としてのクレオパトラに対する私の評価は、以前この場(>>258-261)で
語っているとおりなので、興味のある諸君は今一度そちらを読み返して欲しい。
- 437 名前:名無し客:04/03/04 23:28
- 公爵殿は恋文はお得意かな?
- 438 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/03/05 22:24
- >>437
恋文………? いや、私はそのようなまどろっこしい真似はしないな。
恋文の文面などに煩わされて、貴重な時間を失うぐらいならば
狙った相手を力ずくで物にするのが、私のやり方だ。
……私が欲しているのは経緯ではなく、あくまでも結果という果実なのだから。
弟のホフレに嫁いだナポリ王女のサンチャと関係を結んだ時も、
特に恋文のやり取りなどは必要なかったし、リミニ公女のドロテアを見初めた際には……
ただ自分の欲求を満たそうと、行動を起こしただけだった。
あの時は、ドロテアがヴェネツィアのさる傭兵隊長の下へ嫁ぐところを、
部下に命じて婚礼の行列を襲わせ、彼女を乗っていた輿ごと略奪させたのだ。
そんな私が、唯一恋文らしき物を書くことがあるとしたら、それは我が妻に対してだ。
私が自らの野心を実行に移し始めた時、私は妻のシャルロットを
フランスに置き去りにしたまま、イタリアへ戻らなければならなかった。
ヴァランス公国の領主代理として所領に留まるというのが名目だが、
実際のところは私を警戒するフランス王に、体よく人質に取られたのだ。
だが私は、フランスに残してきたシャルロットを忘れたことは一時としてない。
できれば、シャルロットをイタリアへ呼び寄せたいと思ってもいるのだが
あのフランス王が、それを許すはずもあるまい……
私にできるのは、せめて進物に事寄せて、手紙で近況を伝えることだけだ。
そうやって、私は妻と顔を合わせることもなく、ただ恋文をやり取り
するだけの関係を、もう何年にも渡って続けているのさ。
……おっと、もう一人大事な相手を忘れてはならなかったな。
フェラーラに嫁いだ妹のルクレツィアに対しても、勿論私は便りを寄越しているよ。
- 439 名前:名無し客:04/03/06 05:01
- 極東の辺境の国では、男女がちまちまと恋文や詩を交わして
互いの想いを知った後、ようやく対面して話をするとか。
そういうまどろっこしいやり方、いかがお思いになります?
- 440 名前:名無し客:04/03/07 01:33
- チェーザレ様は猫がお好きですか?
- 441 名前:名無し客:04/03/07 05:36
- チェーザレ様がビビッと来た、美女と美男子を教えて下さい。
- 442 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/03/07 15:59
- >>439
……確かその国では、色恋沙汰に限らず日常生活のあらゆる面で
わざわざまどろっこしい手順を踏まなければ、何も立ち行かないのではなかったか?
ある決まりごとを破れば祟りがあるだの、何事かを為す際には
よい方角と悪い方角が決まっているだのと、事情を知らぬ他国の人間から見れば、
滑稽としか思えない因習にとらわれて日々過ごしているとか……少々話が脱線したな。
先にも記したことだが、私は女であろうと国であろうと、欲しい物を得るためには
手段を選ばないし、必要もないのにまどろっこしい手を使うこともしない。
だから、自分の思いを遂げるために、いちいち七面倒くさい形式を踏まねばならない
というのは滑稽に見えるし、率直に言えば失笑すら禁じえないくらいだ。
だが、私にとっては滑稽でしかないその手の習慣も、その極東の国の者に
とっては、思いを伝えるためには便利な手段なのであろう。
色恋沙汰でも何でも、自分の思うままに行動を起こすのは非常に労力がかかるし、
それに必ずしも、自分の期待する結果が得られるとは限らない。
それよりも、少々手間がかかっても確実に成果が得られる形式があるならば、
そちらに縋った方が、楽に思い通りの結果を得ることができるのではないか?
世の中に罷り通っている妙な風習は、大抵の場合はそうして成り立っているものさ。
- 443 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/03/07 15:59
- >>440
いや、私はそれほど猫が好きではないな……どちらかといえば、馬や犬の方が好みだ。
馬は、戦場や狩場で常に私と一体を為す友のごとき存在であるし
犬も猟犬として、狩りに出かける際には大いに役立っている。
それに比べて、猫が私の生活に役立つ機会というのはあまりないのでね……
役立つとしても、せいぜいネズミを獲るぐらいのものだな。
私に限らず、現在のヨーロッパで猫はそれほど好まれていない……
むしろ、猫は忌避される動物と言ってもいい。
というのも、猫は昔から魔女の供を務める動物というマイナスイメージがあってね……
魔女と共に、猫もカトリック社会からは目の敵にされているというわけだ。
近頃でも論拠の乏しい「魔女狩り」が各地で猛威を振るっているが、
その巻き添えを食って、ここ数百年の内に多数の猫が犠牲になったとか。
そのお陰でネズミの数が激増し、ペスト流行の遠因ともなったという話もあるそうだが……
- 444 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/03/07 16:00
- >>441
まず前者については、対象が多くて答えに困ってしまうな………
ナポリ王女のサンチャ・タラゴーナとは、彼女が末弟ホフレに嫁いだ時から
既に関係を持っていたし、あのカテリーナ・スフォルツァも一国の君主としてはともかく、
女としては私の欲求を満たすのに充分な存在であった。
しかし、君の質問にあるところの「ビビッと来た美女」をあえて挙げるとすれば……
>>438で触れた、リミニの旧領主の娘であるドロテア・マラテスタがそれに当たるであろう。
何年か前になるが、私は何の面識もなかったドロテアを偶然見かけて
これは是非我が物にすべきだと思い、既に述べたように婚礼に向かう
彼女の行列を部下に襲わせ……そのまま私の物にしてしまったというわけさ。
それから後者についてだが………これは私よりも、弟のホアンに聞くべきであろう。
私と違って、弟はそちらの面でもかなり盛んであったようだから……
結果的にはそれがホアンにとって、文字通り命取りとなってしまったのだがね。
……これ以上は弟の名誉のために止めておこうか。
今となっては「死人に口なし」で、ホアンも何とも答えようがないであろうからな。
- 445 名前:名無し客:04/03/08 22:41
- 北の国へは旅行しないの?
- 446 名前:名無し客:04/03/09 01:14
- 食うか食われるかの生活をされていると存じますが、
日々の「束の間の楽しみに浸れる時間」ってどんなときですか?
- 447 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/03/09 22:20
- >>445
現在の私は、ローヴェレ枢機卿の拘束に向けて全力を注いでいるのでね……
旅をしたくとも、イタリアを離れることができないのだよ。
それに、南のエジプトや東のペルシアと違って、
ヨーロッパの北方は我々にとって未知の世界というわけでもないしな。
神聖ローマ皇帝のお膝元であるドイツの動向ならば、イタリアからでも十分把握できるし、
その北に位置するデンマーク・スウェーデン・ノルウェーの3国にしても、
我々と同じキリスト教世界に属する国だ……互いに知らない間柄ではない。
……と言うよりも、法王の息子であるこの私の悪名は、彼の地においては
エジプトと比べ物にならないほど広まっているはずだ。
そんな中で、私がドイツや北欧を出歩いていることが知れたらどうなるか?
……何もトラブルが起きない可能性など考えられまい。
まず間違いなく、イタリアへの野心を燃やすローマ皇帝を刺激することになるはずだ。
イタリア一国をも未だ固めきっておらず、フランス王との関係も微妙なものに
なりつつあるこの時に、ローマ皇帝と無用の衝突を起こす愚は避けねばならん。
そんなわけで、私個人の事情もあるが、政治的なリスクが高いこともあって
北方へ旅をする予定は今のところ立っていない。
もし必要があるならば、家臣の誰かを彼の地へ送り込むことになるだろう。
- 448 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/03/09 22:21
- >>446
確かに私は、戦場においては文字通り生死を賭けた戦いに臨んでいるし、
そうでない時も厳しい政務に追いまわされ、なかなか心の休まる時がない。
たまに時間に余裕のできた時は、狩りに出かけて気晴らしをするのだが、
これは何の準備もなしに、突然の思いつきで出来るものではない。
そんな私に、日常のつかの間の楽しみに浸れる時があるとしたら……
まずは、愛馬を駆って城内の馬場を走り回ることが挙げられるな。
狩猟ほどではないが馬に乗っていれば充分運動になるし、
わずらわしい日常の懊悩もしばし忘れることができる。
馬に乗れない時は、従僕たちとチェスの卓を囲むことが多い。
こう見えても、チェスの腕には自信があってね……
つい夢中になりすぎて、時に政務に戻ることを忘れる時さえあるぐらいだ。
チェスは頭脳の訓練にもなるから、肉体の鍛錬を兼ねた狩りや乗馬と同様、
私にとって楽しみと実利の両方を得られる、有益な娯楽というわけだ。
後は、美しい女性と過ごす一時だな……
実際の利益を抜きに考えれば、これに勝る楽しみは他にあるまい。
……さて、ドロテアを待たせているので、今夜はこれで失礼させてもらうよ。
- 449 名前:名無し客:04/03/11 12:02
- 他国の特産品で一度は見てみたいものはありますか?
それとは別に、貿易してみたい特産品はありますか?
- 450 名前:名無し客:04/03/12 03:21
- 【一刻館】妄想を吐露するスレ【妄想劇場】
http://www.appletea.to/~charaneta/test/read.cgi/ikkoku/1063981092/
の>>159に閣下のデータを載せてみましたがどうでしょう?
- 451 名前:名無し客:04/03/12 09:43
- チェザレ枢機卿!メディチ家との争いはどうなりました?
- 452 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/03/13 22:55
- 急に体調を崩してしまった……まさかマラリアということはないと思うが……
>>449
どんなに珍しい特産品でも、それが実際に我が国に必要でなければ
特に興味が湧くことはないな……交易とは、国を富ますために行なうものであって
稀少品の独占といった、私情の入る余地は一切ないのだから。
……その意味で我々が欲している物としては、これからの戦に勝ち抜くために
必要不可欠である、最新の武器と黒色火薬といったあたりが挙げられるが……
今後においてこういった物は、出来合いの物を他国から輸入するよりも、
できることならば自国で生産できるようにしたいと考えている。
製鉄技術や火薬の調合法については、現在レオナルドと共に進めている
国家計画でいずれ確立させていくつもりだが、これらの原材料は
最終的には他国からの輸入に頼らねばならなくなるかも知れん。
その意味では、鉄を精製するために必要な鉄鉱石や、黒色火薬の原材料である
硫黄や硝石といった、鉱物資源の輸入ルートを確保する必要が出てくるであろう。
鉄鉱石は主にアルプスの山麓、硫黄は火山地帯で採れるようだが……
噂では、西の新世界に私の欲するこれらの資源が、大量に眠っているとも聞いている。
……もしも事実であれば、かなり興味を掻き立てられる話であるが。
- 453 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/03/13 22:55
- >>450
私はこの原典がどのような物であるか、よく分からないのだが……
私の能力を示す内容としては、良くできているのではないか?
一つ異なるのは、現在の私は既に「枢機卿の衣」を持っていないという点だが。
私の富も権力も、緋の衣に頼ることなく、全て自力で築き上げてきた物だからな。
それはさて置き、あちらのスレッドに「Regina della spada」の名が出ていたので、
ここでその剣がいかなる物であるか、少し説明することにしようか。
「Regina della spada(剣の女王)」は、私がまだ枢機卿の位にあった頃に金細工師の
エルコレ・デ・フェレーリに作らせた宝剣で、専ら儀式や鑑賞に用いているものだ。
この剣には、表と裏を二つの面に区切り、そこに私の寓意を示した
図柄と文字が、それぞれ刻まれている。
表の二面は、力による勝利の確信をカエサルの活躍に寓し、
裏の二面には、高い調和の中での生への賛美が込められている。
この宝剣は、自分自身を語ることを好まない私が、己の野心を形に表した数少ない宝物さ。
……もっとも、ここでは呆れるほど多弁に、己のことを語っているがね。
もう一つの「ボルジアの毒薬」については……ここで語る事は止めておこう。
それが実際にあるのかないのか、仮に実在したとしても
その内容をベラベラと明かすのは、何にしても良い結果を生むことはあるまい。
ただ、「毒薬使いのボルジア」という悪名が世間に広まれば、
それだけで強力な武器となりうることもある………とだけは言っておこう。
- 454 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/03/14 16:04
- >>451
メディチ家との抗争については、特に大きな進展はないといったところだな。
と言うよりも、現在のメディチ家はフィレンツェの支配権を失って久しく
ボルジア家と抗争しようにも、我々に対抗するだけの力があるとはいえない状態だ。
先にマジョーネの叛乱が起きた際に、オルシーニの一党が
メディチ家のフィレンツェ復帰を策謀していたとの噂は聞いたことがあるが
結局叛乱そのものが潰れたことで、噂のまま終わってしまったようだし……
無論、現在もメディチ家が、我々にとって潜在的な脅威であることに変わりはないが
あの家に我々を倒すだけの実力がない以上、こちらも無理に対決を急ぐ必要はない。
当面は、メディチ家がフィレンツェの支配者の地位に復帰することのないよう、
マキアヴェッリを通じてフィレンツェ政府を牽制しておけば、それで充分であろう。
それよりも、私にとって気になるのは、またしても行方を眩ました
ジュリアーノ・デッラ・ローヴェレの行方だが……
既に奴は、我々の追及を逃れてフランスへ亡命してしまったのであろうか?
- 455 名前:名無し客:04/03/15 10:23
- >>454
とてもお詳しいですね。
さすがチェザレ枢機卿!感動しました。
- 456 名前:名無し客:04/03/16 09:47
- 理不尽な理由でふっかけたケンカ、公爵ならば勝ち抜けますか?
- 457 名前:455ですが:04/03/16 16:50
- カンタレラで瞬殺ですよね。
- 458 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/03/17 21:46
- >>455 >>457
いや、何と言うことはないさ………敵の情報を常に把握しておくことは
戦略における基本中の基本であるからな。
もっとも、メディチ家についてはサヴォナローラにフィレンツェを追われて以来
各地を転々と逃げ回っているためか、>>454で記した以上に詳しい情報は
私の元にもなかなか届いてこないのだよ。
ジョヴァンニ・デ・メディチもローマから逃亡して、最近では顔を合わす機会がないし……
それで、「カンタレラ」についてだが………前にも言ったとおり、ノーコメントだ。
世間では、私や父が要人の暗殺に屍毒を用いているとの噂は、勿論私も知っている。
ここでこの噂を、全くの出鱈目と否定することはしないが、
このような毒で、果たして思いどおりに邪魔者を消すことができるかといえば……
まあ……ひとつだけ言えるのは、私がこのように便利な毒を思うままに
操ることができたならば、武力や策謀を駆使せずとも
私はとうの昔にイタリア全土を統一できたであろう、ということだな。
- 459 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/03/17 21:47
- >>456
戦争も外交も、その本質は理不尽な理由で引き起こされる国同士の喧嘩だ……
いかに神の美名で飾ろうとも、この世には正義の戦争などどこにも存在しない。
その喧嘩を如何にして上手く勝ち残っていくか、その術こそが政治というものさ。
この理不尽な喧嘩に勝ち抜くために、優れた君主は様々な策謀を巡らし、
他国を追い落とすためには手段を選ばず、己の国を強くすることに専心する。
それができない君主は、如何に国が上手く治まり民から慕われていようとも
いずれは狼の如き他国に丸呑みされて、滅亡するだけだ。
……私もイタリアをこの手にまとめるために、これまで様々な術策を駆使してきたし、
躊躇うことなく汚い手を使うことで、ここまで勝ち残ってきた。
例え鬼と呼ばれようとも悪魔と謗られようとも、勝てば全ては正当化される。
どんなに勝利にいたる経緯が道に外れる物であろうが、
最終的に強い国を築き、民に平安をもたらすことができればそれで良いのだ。
- 460 名前:名無し客:04/03/18 10:37
- 切歯扼腕した経験はおありですか?
- 461 名前:名無し客:04/03/21 00:38
- 最近のローヴェレ枢機卿の動静は如何でしょうか。公爵様。
それはともかく、優雅なる冷酷とはまさに言いえて妙ですね。
- 462 名前:名無し客:04/03/21 01:15
- とある愚かな男の不審な動きを察知いたしました。
どうなされましょう?
http://appletea.to/~charaneta//test/read.cgi/ikkoku/010000024/l50
- 463 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/03/23 20:46
- 済まない、諸君……突然我が国内で、面倒な問題が起きてしまってね……
問題が解決するまで、暫くここに来れそうにないのだ。
だが、いつになるかは断言できないが、国内のゴタゴタが
片付いたら必ずここに戻ってくるので、質問を置いてくれた諸君には
勝手を言って済まないが、今暫く待っていて欲しい。
では、またいずれ近日中に………
- 464 名前:名無し客:04/03/23 20:49
- 公爵の帰還を楽しみにしております!
行ってらっしゃいませ!
- 465 名前:名無し客:04/03/24 22:18
- ヴァレンティーノ公爵なら難なく乱を鎮めて
ほどなくお戻りになられるでしょうな。
- 466 名前:名無し却:04/04/09 23:13
- 投獄されたのかや。
- 467 名前:名無し却:04/04/11 10:10
-
- 468 名前:名無し却:04/04/27 00:57
- 無意識の知覚はフランス語で「ク・ドゥイユ(coup d'Oeil)」といい、ナポレオンはク・ドゥイユがあれば、
戦場に臨んで地形を一瞥しただけで勝機をつかむことができると言ったらしいですが、
公にもかかる知覚はあるとおもいますか?
- 469 名前:名無し客:04/05/17 01:35
- …牢獄の中は快適でしたか?
- 470 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/07/05 23:06
- さて……領内での仕事が片付くまで、あと少しといったところか……
思った以上に面倒な問題なので、ここに戻って来れるようになるまで
今暫く時間はかかるだろうがね……
私は別に、牢獄に閉じ込められたわけではないが、
連日政務の部屋に缶詰にされて、机上の仕事にかかずらっているのは………
……確かに投獄されたのも同じ気分だな。
まあ、これもレミーロを処断したツケが回ってきたと言われればそれまでだが……
そういうわけで、以前のように諸君の問いに対して
答えられるようになるまでは、もう少し時間がかかりそうだ。
それまでは、済まないが暫く待っていてくれ……私は必ず、ここへ帰ってくる!
- 471 名前:名無し客:04/07/06 00:23
- おおせのままに、閣下。
無事の凱旋を心よりお待ちしております。
- 472 名前:名無し客:04/07/10 04:57
- おおっ、閣下。471卿同様、我もお待ち申し上げておりますぞ。
- 473 名前:名無し客:04/07/31 08:00
- http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1090122468/l50
- 474 名前:名無し客:04/07/31 22:13
- 東方にある中国という国では昔、漢の初代皇帝劉邦という人が
「三傑」と呼ばれた名臣を縦横に使いこなして天下を得ることができたそうです。
三傑とはすなわち、
計略をめぐらし千里の外に勝利を決した「張良」、
国を整え補給路を絶やさぬ事に尽力した「蕭何」、
そして用兵に優れ兵を率いて戦えば必ず勝った「韓信」
ですが、閣下がもしこの三人のうちの誰かを配下にできるとしたら誰がいいですか?
- 475 名前:名無し客:04/08/21 10:04
- 閣下のフランス病は、マラリヤによって偶然治癒したという話を
聞いたことがありますが、高熱以前以後でおかげんに心当たりはありますか?
- 476 名前:名無し客:04/08/28 05:05
- http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%8A%E5%B7%9D%E6%B0%8F%E7%9C%9F
- 477 名前:名無し客:04/08/28 05:09
- http://appletea.to/~charaneta/ikkoku/img/060352910/477.jpg (36KB)
閣下の肖像画をお持ちいたしました。まさに勇猛果敢な
それでいて常に冷静な閣下の偉大なお姿が・・・。
- 478 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/09/25 18:40
- 前にここへ戻ってくると書き込んでから二月以上が経ってしまったが……
今こそ宣言しよう、ヴァレンティーノ公爵が帰ってきたと!
とはいっても、肝心の国事が完全に片付いたわけではないのでね……
以前のように頻繁に顔を出す、というわけにはいかないのだ。
私が不在の間に溜まっている質問も大分あるが、取りあえず
余裕のある時に少しずつ答えを返していくということで勘弁して欲しい。
質問をくれた君たちには、誠に申し訳ないことだが……
しかし私がここを離れている間に、すっかりこの世界も様相を
変えてしまったようだな……私の知っている者の多くが
ここから去り、代わって新たな者が数多く姿を見せているようだが……
世がどう変わろうが時代がどうなろうが、私は私だ。
以前と変わらぬようにやっていくだけさ。
私がいない間も応援してくれた君たち、今まで待たせて済まなかった。
そしてそうでない君たち…………残念だったな。
それでは、再開といこうか……
- 479 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/09/25 18:40
- >>460
はっきりとした己の目標があって、実力次第でそれを実現することは
可能であるはずなのに、自分ではどうにもならない物事のために
それを果たすことができない時は、切歯扼腕するしかないといった感じだ。
かつて、弟のホアンが教会軍総司令官の職に任ぜられた時……
実力も才能も兼ね備えている者が望みの地位に付くことができず、
誰から見ても役不足の男に元帥杖と軍旗が手渡される様を、
黙って見守らなければならなかったあの時の思いは……
到底歯噛みするぐらいで晴れるものではなかった。
イタリア制覇の野望を実行に移すようになってからも、
私の頭を押さえつけるより強大な力によって、せっかく実現しかけていた
覇業を中途で断念しなければならないことは一度や二度ではない……
そう、フランス王やスペイン王の存在によってね。
フランスやスペインと対等に争える力のない現在、私の力では
彼らの干渉に逆らえないことは分かっているし、
それもイタリアを制覇するまでの辛抱だと言い聞かせてはいるが……
どうにも歯がゆい思いを拭い去ることはできないな。
- 480 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/09/25 18:41
- >>461-462
私が国事に忙殺されている間に、ローヴェレもすっかり鳴りを潜めて
しまったようだが……私にとって、それは好都合というものだ。
奴が下らん策を弄さぬ限り、私は安心して覇業に打ち込むことが
できるし、ヴァティカンの父上も恥を晒さずに済むのだからな。
……そうは言っても、あの古狐のことだからいつ帰ってくるか分からんが。
しかしローヴェレも、自分の逃げ場所を持ったまでは良かったが
見知らぬ者に居場所を奪われ、逃げ道を失うことになろうとは……
まったく奴に相応しい、愚かな結末だな。
それはさて置き、これでローヴェレがどこへ姿を現そうが、もはや私から
逃れることはできなくなったというわけだ。
以前のように飲食店に身を潜めるなどと、詰まらんことは考えぬことだ。
私の目が光っている限り、この世界で貴様が安息を得ることはない……
ローヴェレにはそう言っておこう。
- 481 名前:チェーザレ・ボルジア ◆Ces.71sV8Y :04/09/25 18:42
- >>468
優れた武将であれば、誰しもそういった知覚が備わっているのではないか?
ユリウス・カエサルは勿論のこと、スキピオ=アフリカヌスや
ハンニバル、それにアレキサンダー大王……
いずれの名将も、物量の不利を卓越した才覚と閃きによって補い
戦場での勝利を得た者ばかりだ……一瞬のうちに地勢を読むことも、
彼らにとっては造作もないことであったろう。
しかし、カエサルやハンニバルのようにまでは行かなくとも
戦場で素早く地勢を読み、己の勝機を掴んでいくことは……
一軍を率いる将にとっては、欠くべからざる能力だ。
例えどれほど強大な軍を率いていても、地形を読めずその場に応じた
作戦を立てることができなければ、敗北する以外に道はないからな。
もっとも、こうした無意識の知覚を持ち合わせていない、あるいは
持っていても使い道を知らぬ者が一軍の将になることなど無理な話だが……
しかし、そうは言っても近頃イタリアで幅を利かせている小僭主たちの
顔ぶれを見てみると……とてもではないが、無意識の知覚など
欠片ほども備えているようには見受けられないな。
皆、目に見えることだけに気を取られ、戦場で勝つために
重要なことに心を向けようとしない……
だから、彼らは一人の例外もなく無意識の知覚を研ぎ澄ませた者に
敗れることになるのさ……そう、この私によってね。
- 482 名前:名無し客:04/09/26 00:44
- 閣下! お待ち申し上げておりました。
ぜひイタリア統一を。
- 483 名前:名無し客:04/09/26 09:00
- お帰りなさいませ。お疲れでございましょう。まずはごゆるりと。
- 484 名前:名無し客:04/09/27 23:09
- お父上の法王猊下にはお変わりございませんか。
ヴァティカンでこの世の天国を味わっておいででしょうか。
- 485 名前:名無し客:04/10/11 05:45
- http://www.appletea.to/~charaneta/ikkoku/img/060352910/485.jpg (45KB)
閣下。どこかで見た城ですな。
- 486 名前:名無し客:04/10/27 08:34
- 定期上げ。
- 487 名前:名無し客:05/01/01 05:20
- 新年の寿ぎを。
って公の宮廷には誰もいないな。
- 488 名前:名無し客:2005/05/17(火) 21:18:53
- ローマ法王に対する敬称は「聖下」
- 489 名前:朱元璋&永楽帝:2005/09/26(月) 22:11:02
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