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吸血大殲第55章「ドグラ・マグラ」

1 名前:人修羅:2003/07/03(木) 23:18

ブゥゥゥゥーーーーーーン
ブゥゥゥゥーーーーーーン

……ここは、人間と化け物が戦う場所だ。もしくは人間と人間、化け物と化け物が戦う場所だ。

四六時中闘っていると言うわけではない。時には質問に答えることもある。
勇気ある質問者よ、遠慮なく質問してくれ。出来れば名指してくれれば嬉しいな。
何故と言えば、今ここに何人いるか誰にも把握できていないからだ。

次スレは、容量が480kbを超えた時に、超えてしまった人が立ててくれ。気付かない場合や、
立てられない場合もあるだろうから、そこら辺は臨機応変に。500kbを越える前に、完全移行しているのが望ましい。

上げたり下げたりは個人の裁量に任せる。ただ、メール欄には自分の出典を書くこと。
これは基本事項だ。くれぐれも忘れないで欲しい。

2 名前:人修羅:2003/07/03(木) 23:19

 参加したり、闘うに当たって、いくつかの制約がある。これを守って愉快に闘って欲しい。

 ―参戦基準の判断―
原典が「吸血鬼」および「狩人」に関係があるものが望ましい。原典が吸血鬼に関係があるか、
参戦者が吸血鬼、又は狩人であるという定義だな。

 ―逸脱キャラクターの処遇について―
逸脱キャラクターとは、まったく吸血鬼に関係ない作品のことだ。もともとこのスレは「吸血」大殲
だから、あまりにも場違いなキャラは好ましくないということだろう。
とはいっても、そうそう上手く吸血鬼に関係のある作品が見つかるというわけでもない。
俺自身だって、人のことは言えないわけだしな。
という訳で、そういう作品を参加させたいときは、設定に気を配って欲しい。
上手い設定が考え付けば、皆もそれで納得するだろう。事実それに成功した先人がここには沢山いる。
詳しくは過去スレや広報スレを参考のことだ。(http://www.appletea.to/~charaneta/test/read.cgi?bbs=ikkoku&key=1037803005

チャカポコチャカポコ スチャラカチャカポコ
チャカポコチャカポコ チャカポコチャカポコ

大殲は、俺たちの心の中にある。一人一人思い描いているものは違うだろう。つまり、
それぞれの人間がそれぞれ思い描いている数だけ、吸血大殲はある。それを忘れないでくれ。

新規参戦者は、以下にある『吸血大殲闘争者への手引き』を読んだ上で、参戦テンプレートを利用して欲しい。
以下は関連リンクだ。

3 名前:人修羅:2003/07/03(木) 23:19

■『吸血大殲闘争者への手引き』
http://www.geocities.co.jp/Milkyway-Orion/4504/vampirkrieg.html
 
■吸血大殲予備板(名称不定、現在の本拠地だ)
http://www.tpot2.com/~vampirkrieg/bbs/vampire/index.html

■吸血大殲闘争専用会議板(闘争の会議はこちらで)
http://jbbs.shitaraba.com/game/1721/
 
■参加者データサイト『吸血大殲 Blood Lust』(左手作成・過去ログも全てこちらにあり)
http://members.tripod.co.jp/humituki5272/taisen/index.html
 
■吸血大殲本家サイト
『From dusk till dawn』
http://www.uranus.dti.ne.jp/~beaker/
 
『戦場には熱い風が吹く』 (仮閉鎖中?)
http://www.geocities.co.jp/Playtown/4875/
 
■前スレ
吸血大殲第54章 「汝が臓腑に千の口付けを」
http://www.appletea.to/~charaneta/test/read.cgi/ikkoku/053007243/

■太陽板の質問スレ
吸血大殲/陰 其の15 混沌屋敷『眩桃館』地下 〜大殲資料の間〜 
http://www.alfheim.jp/~narikiri/narikiri/test/read.cgi?bbs=TheSun&key=1021881487
 
■広報、情報スレ
吸血大殲ZERO 〜二つ目の序章〜【吸血大殲広報スレ】
http://appletea.to/~charaneta/test/read.cgi?bbs=ikkoku&key=1037803005

4 名前:人修羅:2003/07/03(木) 23:20

これが、テンプレートだ。

出典 :
名前 :
年齢 :
性別 :
職業 :
趣味 :
恋人の有無 :
好きな異性のタイプ :
好きな食べ物 :
最近気になること :
一番苦手なもの :
得意な技 :
一番の決めゼリフ :
将来の夢 :
ここの住人として一言 :
ここの仲間たちに一言 :
ここの名無しに一言 :


ふう、俺の役目も終わりだな。新参者なので不備があったかもしれないな。それでは。

ブウウゥゥゥゥーーーーーン
ブウウゥゥゥゥーーーーーン

5 名前:アン・フューリー(M):2003/07/03(木) 23:56

アン・フューリー(M)VS高木由美子(M)

前スレ>339
中間纏めは>341

 それまで後ずさりしながら震えていたシスターは、
自分の後ろに壁があるのがわかると、背中を向けて走り出した。
アンの言ったことが解らず、ただ逃げるつもりらしい。あんなに優しいシスターだったのに、
やっぱり自分の身が大切と言うことか。アンはがっかりした。
まあ、仕方がない。追いかけて殺して、それで食ってしまおう。
 どこへ逃げるつもりだろうか? 由美子が駆けていったほうを見ると、どうやら彼女にあてがわれた部屋らしい。
自分の部屋に忘れものでもあるのかしら? もしかしたら恋人の写真とか。ふふふ、シスターがそんなはずはないか。
 さて、そろそろ追いかけようか。かけっこはそんなに得意でないアンだったが、足が四本あれば話は別だ。
アンはもう一人の自分に声をかけると、自分の体を変貌させ始めた。

――およそ十数秒後。由美子は、自分の部屋のドアの前まで来ていた。
――ここに来れば。ここに来れば、アレがある。
息を切らせ、部屋に飛び込む。
 そこで見たものは、ニコニコ笑いながら悠然と部屋の真ん中で立っているアンの姿だった。
窓から月の光が二人を照らす。アンの影は二股に分かれていた。一人に体に、影が二つ。
「不思議に思っているわね、シスター由美子? ――もう出てきてもいいわよ、ギル!」
そういって自らの服を肩までずらす。その肩が異様に盛り上がり、肉塊が出てくる。その肉塊に顔がつき、髪が生え、
ついには少年の顔になった。その少年が口を開く。
「ハイ、シスター。僕はギル。アンの双子さ。以後よろしく――短い付き合いだけどね」
「あたしたち、中国人を食べた事はなかったの。シスターはどんな味がするのかしらね、ギル?」
「ああ、とても楽しみだな、アン」
楽しそうに二人の会話は続く。二人には珍しいほどに、獲物をいたぶっている。生殺与奪の権を握っている
ライオンの気分なのだろうか? ただ月だけが3人の男女を見ていた――

6 名前:高木由美江(M) ◆2xFanatics:2003/07/04(金) 00:22

アン・フューリー(M)VS高木由美江(M)

>5

ドアを開けて飛び込もうとして、踏み出した足は一歩目で止まった。
部屋の中にアンが居る。
何故――かどうかなんてどうでも良い。
むしろ探しに行く手間が省ける。

「……由美子は寝てるよ」

諭す様に呟く。
右手が拳を形作り、篭められた力の所為か微かに震える。
止まっていた足が動き出す。

「短い付き合いってのは間違っちゃいない。けど―――」

歪な影。二つの首。
やっぱり化け物だ。神の敵だ。

――ぶっ殺してやる。

「あたしはチャイニーズじゃない。ジャパニーズだ」

目の前の化け物の顔面に拳を思いっきり叩きこんで、ついでに腹に蹴りを入れる。
ベッドに立て掛けてあったアレ――竹刀袋に入れた日本刀を取り出した。

「クソ化け物が。島原流の太刀筋死ぬまで味わせてやるッ!」

7 名前:アン・フューリー(M):2003/07/04(金) 00:37

アン・フューリー(M)VS高木由美江(M)

>6

 ニヤニヤ笑っていたところ、不意に殴られた。続いて腹部に鈍い痛み。あまりの衝撃に体が吹っ飛ぶ。
顔を上げると、綺麗な曲がった剣を持った由美子が立っていた。顔つきが変わり、気のせいか髪の毛が伸びたような気もする。
「へえ、ジャパニーズ! すごいな、シスターはサムライだったのか!」
ひゅうと口笛を鳴らしながらギルが言う。しかしアンは。
「酷い……非道いわ! 乙女の顔を殴るなんて! 女の子のお腹を蹴るなんて! 許さない、絶対に許さないんだから!」
完全に頭に血が上っている。ギルは肩をすくめると(肩などどこにもなかったが)再びアンの体内に消えていった。
「痣になったらどうするのよっ!」
そう吼えて襲い掛かる。再び顔を狙われないよう、両腕で首をガードしながら――

8 名前:人修羅:2003/07/04(金) 00:50

スレ主が参戦してないなんて前代未聞じゃないか? 一応マリオネットではいたんだがな。
そんな訳で、正式に参加を表明する。闘争中に失礼。

出典 : 真・女神転生V
名前 : 人修羅
年齢 : 16
性別 : 男
職業 : 人修羅
趣味 : 無し
恋人の有無 :無し
好きな異性のタイプ :顔が黒くなったり腕がえらい大きさになったりしない人
好きな食べ物 : 肉。種類はいえない。
最近気になること : アトラスが合併すると言う噂は……本当なのか?
一番苦手なもの : プリンパ、テトラカーン、マカラカーン
特技 : 2択
一番の決めゼリフ : ……
将来の夢 : 創世
ここの住人として一言 : 少しでも面白くなるよう、努力する。
ここの仲間たちに一言 : 俺の仲魔にならないか?
ここの名無しに一言 :名無しの存在を感じるようになりたい。

9 名前:高木由美江(M) ◆2xFanatics:2003/07/04(金) 00:56

アン・フューリー(M)VS高木由美江(M)

>7

喚きながら突っ込んでくる。
化け物のクセに、顔を殴られたのが気に入らないらしい。
笑わせてくれる。

「ハッ。 痣で済むと思ってるのかい?」

鼻で笑いながら浅く腰を落とす。
一閃。

「――その肌膾に刻んでやる」

月の光を吸って冷たく光る刃が踊る。

ニ閃。三閃。四閃。
虚空に描かれた鈍色の軌跡が化け物へと伸びた。

10 名前:人修羅:2003/07/04(金) 00:56

それで、俺に関する説明か。
 ええと、ここには昔ナオミやキョウジがいたんだったな?
俺もやつらと同じで、悪魔を使役することが出来る。
それと、俺自身も悪魔の力を生かした体術と魔法で闘える。
さらに武器を装備することは出来ないが、マガタマを使うことで耐性を変化させることが出来る。
魔法に強くなったり、物理攻撃が効かなくなったりだ。
 特技や悪魔の種類なんかは特に決まっていない。その時々によって、いろいろと違う。
神クラスの戦闘力を持つことも出来るぞ。めったにないと思うが。
こんなところか。それでは、失礼する。

11 名前:アン・フューリー(M):2003/07/04(金) 01:10

アン・フューリー(M)VS高木由美江(M)

>9

 カタナが踊るたびに、アンの体に裂傷が出来る。すぱっ、すぱっと面白いようによく切れる。
最後の一撃は、アンの腹を深く薙いでいた。

ぞろり。

臓物がこぼれだす。しかし、アンは笑っている。そう、この時を待っていたのだ。
「ギル!」
呼びかけに答えて、ギルが腹部から姿を現す。ただし今は、禍々しい怪物の姿だ。
巨大な肉塊。その形容がしっくり来る。真ん中には目玉が一つついていて、大きく口を開けている。
その肉塊は触手を伸ばすと、シスターに向かって直進させた。まずはその、邪魔なカタナをへし折ってやろう。

12 名前:高木由美江(M) ◆2xFanatics:2003/07/04(金) 01:33

アン・フューリー(M)VS高木由美江(M)

>11

斬られても笑っている。気に入らない。
切れ目を入れてやった化け物の腹から、片割れが顔を出す。
反吐の出るような笑顔。
汚物のような肉の塊。
見ているだけで虫唾が走る。

「そんなに腹が減ってるならこれでも喰いな!」

伸びて来る触手。武器狙い。
間違ってはいないが致命的にトロい。先端から三つほどに分けて切り落とす。
踏み込んだ勢いのまま左手の鞘を塊に開いた口に突き込んで、深く押し込んだ。
これだけでは終わらない。
右腕を巻くようにくるりと廻り、加速した一刀をアンの首に向けて送り込んだ。

13 名前:アン・フューリー(M):2003/07/04(金) 02:06

アン・フューリー(M)VS高木由美江(M)

>12

シスターに向かって伸ばした触手が、全て切り落とされた。速い。
それだけでは終わらず、口を開けたギルの中に鞘が差し込まれる。異物感。
さらにその場で回転すると、そのカタナがアンに向かって襲い掛かってきた。その首を刎ねようとして。
どれにも、アンは対応できない。

――もともと、アンは闘ったことなどないのだ。アンは普通の女の子である。
15,6の、年頃の若い娘が、命のやり取りをするような出来事に遭遇するだろうか? 否。
だから、由美江のあまりにも素早い動きについていけないのも当然のことだった。

 ざくっ。

 刃が肉を捕らえる。しかし、首ではない。その時にはもう、アンの体はすでになく、怪物と同化していた。
ぐちょぐちょと嫌な音を立てているそれは、カタナを受けても平然としながら、なおも触手をシスターに向かって伸ばしていく……
 そう。アンはたしかに由美江の動きに対応できない。だがそれは、こう言い換えることも出来る。
すなわち、対応する必要などないのだと――

14 名前:高木由美江(M) ◆2xFanatics:2003/07/04(金) 12:39

アン・フューリー(M)VS高木由美江(M)

>13

確かに捉えた――が、手応えが妙に重い。
そう感じた瞬間刃の当たる角度を浅くし、肉の表面を撫でる様に振り抜く。

「……ちッ」

触手から身を躱しながら、迫るそれに立て続けに剣を振るう。
表面は斬れた。
触手も斬れる。
だが、さっきまで首だった辺りの太さになると落とせるかどうか。
それに、だ。
微塵も避けようとしなかった。
実際に避けられるかどうかは別としても、全く動かなかった。
必死になって避けようとする必要が無いと。

もっと端的に言えば――

                  ――舐められた。

「幾ら斬られても痛くも痒くも無いってか?」

柄が軋む。
刀身が陽炎の様に揺れる。

「――――あんまり人間様を舐めるなよ、クソ虫ッ!」

再度閃く斬撃は、その全てが肉の中央に付いた眼球で交差した。

15 名前:アン・フューリー(M):2003/07/04(金) 18:34

アン・フューリー(M)VS高木由美江(M)

>14

 まいった。さっきから、アンが繰り出す触手はことごとく斬られている。人を斬ると脂のせいでぬめって
斬れなくなるなんて話を元ボーイフレンドで日本好きのティムに聞いたから、それを試していると言うのに、
全く効果がない。ティムの奴、嘘を言っていたのかしら? 早めに食べておいて正解だったわ。
 それにしてもこのシスターの俊敏性、持続力はなんだと言うのか。三日前、自分の服につまづいて
転んでいたのをアンは見ていた。ほんの昨日の晩の食事で、芋を喉に詰まらせてあわや主の元へ召されるところだったのも
アンは見ていた。本当に、おっちょこちょいなシスターだと思って、実はアンは好きになりかけていたのだが――
今は目の色を変えて、アンに切りかかってくる。まるで別人だ。
 尤も、アンはそれほど危機感を抱いてはいなかった。いくら彼女が強くても、疾くても、所詮人間だ。
いつかは疲れるだろうし、ミスもするだろう。そこを喰らえばいい。どうせ勝ちは見えている。
 だが――それまで何時間かかるというのだろうか? そんな単調な作業は嫌だった。
それに――こちらのほうが大きな理由だが――痛いのだ、身体が。
大したダメージはない。活動するのに支障はない。だが、それでも痛いのだ。
ちょうどタンスの角に指をぶつけたような、裁縫中に誤って針を指に刺してしまったような、そんな痛み。
これ以上痛いのは御免だ。

ずぶっ。

 由美江の一振りが怪物の目を傷つけた。一体化しているアンにも痛みが走る。今度は紙で指を切ったときのような痛みだ。
アンは決断した。さっさとケリをつけよう。相変わらずぐちゃぐちゃと鳴動を続けている怪物からアンの頭部が生えてくる。
「レディがクソだなんて、慎みを持ったほうがいいんじゃなぁい、シスター?」
 そう言って、体をわななかせた。怪物のほうの目は潰れてしまったが。別に目は一つというわけでもない。
肉塊が動くと、潰れた目はしまいこまれ、新たな目が現れた。
 そして、口から咀嚼していた鞘の残骸を吹き出す。破片になったそれは、由美江に襲い掛かる。
こんなものでも当たれば痛いはずだ。
そうして隙を作ると、アンはすかさず人間の体に戻り、窓から身を投げ出した。ガラスが割れる音が夜の孤児院に響く。

「逃げるが勝ちって言うでしょ? それじゃあね、シスター!」
 どうせ追いかけてくるだろう。ガラスで切れた肌から滴る血で追跡も容易なはずだ。だからアンは、
再び孤児院の敷地へ入る。ある場所を目指して走る。それにしても――裸で外を走るなんて、なんてはしたないんだろう。

16 名前:高木由美江(M) ◆2xFanatics:2003/07/04(金) 19:48

アン・フューリー(M)VS高木由美江(M)

>15

目玉をケーキの様に綺麗に切り分けたのを、見るより速く手応えで確認する。
これでアンが首を出せば――と、思っていた。
もう一つ出てきた目玉に唾でも吐き捨てたくなった。

肉に付いている口が尖る。はみ出していた筈の鞘は見当たらない。
予感はすぐに現実の出来事へと昇華した。
横に飛び、顔を庇いながら大きな破片を優先的に叩き落す。残りは受けた。
細かな破片が頬を、腕を、足を掠め、服やその下の皮膚を穿ち、裂く。
死にもしなければ戦闘能力も低下しない。
この程度なら問題無い。

但し、今の所は。
持久力比べをやれば、向こうに分があるに決まっている。
異教徒ども相手とは勝手が違い過ぎる。
ただ斬っても仕留めきれないなら、他の方法が必要だ。

「――五月蝿い。誰が逃がすかクソッ!」

ぶち割られた窓枠に足を掛けて、外へ飛び出す。
紅い飛沫が夜気に溶けて香る中を、化け物を追って走った。

17 名前:アン・フューリー(M):2003/07/04(金) 22:23

アン・フューリー(M)VS高木由美江(M)

>16

 思ったとおりだ。シスターは、真っ直ぐこちらに向かってきている。その足取りは速い。
獲物を追いかける狩人のよう。全く――アンの姿を見たものは、例外なく怯えるか逃げ出すかのどちらかだった。
殺そうと立ち向かってくるなんて初めてだ。今までどんな人生を送ってきたのだろうか。

こんなかよわい女の子を殺そうとするなんて、絶対にいい死に方はしないわよ! 

 一人毒づく。ギルが心の中でよくいうよなどといってきたが構ってはいられない。
今はただ、走る、走る、走る――追いつかれないように。
「きゃっ!?」
 石に足を取られた。転倒しかける。ぎりぎりで足を増やして、体勢を整える。
はだしの足がとっても痛い。血が出たかもしれない。しかし速度は落とさず走り続ける。
 やがて、大きく孤児院を回りこんで、正面玄関から院内へ入る。目指すは神父の部屋だ。
そろそろいいだろうか?
「た、助けてーーーーーーっ!」
大きく叫ぶ。演技はちゃんと出来ていただろうか? 大丈夫、ばっちりだ。だってあたしはヒロインなんだから。
その後も何度か叫んだ後、神父の部屋に滑り込む。
「な、何事だね!?」
 良かった。神父はちゃんと起きていた。この時間いつも聖書を読んでいるのを覚えていて本当に良かった。
続けて入ってくる由美江。手には銀色に光り、血と体液で濡れている東洋の剣。
全身から殺気を放っているのは、子供だってわかることだ。
 対してこちらは普通の美少女。しかも裸で、全身血だらけだ。
傷が深すぎると疑いを持たれてしまうかもしれないので、腹の傷だけは隠してあるが。
アンは神父の背中に隠れると、こう言った。
「助けて院長先生! 由美子さんがあたしに襲いかかってきたの!」

 さて。客観的に考えて、どちらが悪人だろうか?

18 名前:高木由美江(M) ◆2xFanatics:2003/07/04(金) 23:08

アン・フューリー(M)VS高木由美江(M)

>17

わざわざ外を廻って、また建物の中へ。
一体何のつもりなのか。
訝しげに感じながらも、一足遅れて同じく玄関を潜る。
それほど大きくない背中が消えた部屋は―――
上手くない。大きく舌打ちをして駆け込んだ。


そして、予想の斜め上をいかれた。

流石にクソ化け物だけあって下らない事にばかり頭が回る。
事情を説明――しても、すぐには理解してもらえないだろうし、
幾ら何でも説得力に欠け過ぎる事くらいは理解できた。

取り敢えず化け物から引き離した上で、『暫く大人しくしていて』もらおう。

「……済みませんね神父様」

いまいち状況が飲みこめずにおろおろしている神父様の胸倉を掴んで引き寄せ、
逆手に持ち直した刀の柄尻を鳩尾に打ち込む。
小さくうめいて脱力した身体を放り投げた。一応、目標地点はベッドの上だ。

「下らない事するね? ああ? 神父様が可哀想じゃないか」

邪魔な椅子を蹴り飛ばして、それごと貫くつもりで突きを放つ。
朧に霞む切っ先は三つ。三段突きだ。

19 名前:アン・フューリー(M):2003/07/04(金) 23:37

アン・フューリー(M)VS高木由美江(M)

>18

 予想が外れた。壁になってくれるはずの神父もろとも一撃で貫くつもりだったのに。
一宿一飯の恩がある神父に向かってあのような真似をするなんて、アンの常識ではありえないことだ。
とにかく、次の手を考えよう。どうするか……


 椅子の陰から突き。勿論避けられるはずもない。腹、胸、顔。全てをその身に受ける。
アンの体から血が吹き出た。そのままどうと倒れ伏す。そして流れる血。
起き上がる気配もない。

 そして、その光景を、何事かと様子を見に来た年老いたシスターが目撃する。
彼女はひゃあと声をあげると、その場にへたり込んだ。

20 名前:高木由美江(M) ◆2xFanatics:2003/07/04(金) 23:54

アン・フューリー(M)VS高木由美江(M)

>19

悲鳴。
ちらりとそちらを見て、すぐに視線を戻す。
教会関係の人間なら、口止めは容易い。
さっさと止めを刺してから、然るべき所に連絡でも取ろう。

「ああ、ちょっと待ってて下さいねシスター」

倒れて動かない化け物の胸板を踏み潰す勢いで足を叩き付け、
大上段に振りかぶった一刀を首目掛けて降ろした。

21 名前:アン・フューリー(M):2003/07/05(土) 00:12

アン・フューリー(M)VS高木由美江(M)

>20

 ああ、この手も通用しないのね。全く、どういう神経をしているんだろう。
普通倒れた相手に止めを誘うとするかしら?
 とにかく、これで相手は決定的な隙を見せた。普通ならこういう場合、上にいるほうが圧倒的に有利だ。
だが、アンには関係ない。アンは普通の女の子だが、人間の常識は通用しない。近づきすぎたそちらのミス――
 アンは、カッと目を見開くと大きく口を開けた。その中から出てくるのは異形の腕。それは狙い過たず、
今カタナを振り下ろさんとしている由美江に襲い掛かった。同時に踏みつけられている乳房が陥没し、
そこにも口が開く。とりあえず、足一本は貰ったわよ。アンは胸に開いた口でケタケタ笑いながら、
ゆっくり口を閉じる。せいぜい痛みを感じるといい。

22 名前:高木由美江(M) ◆2xFanatics:2003/07/05(土) 00:42

アン・フューリー(M)VS高木由美江(M)

>21

開いたアンの口から気味の悪い手が出てくる。
ついで、足の下の胸が口に変わる。
まあ、手はともかく口の方は半ば予想していた通りだ。

「―――舐めるなって言ったろう、このクソが」

振り下ろした所で止めた刃を胸の口の中に刺し入れて、掻き回すように抉る。
抉りながら、アンの下顎を蹴り上げる。歯に挟まれて口から伸びる手が止まる。

「クソが」

抉る。蹴り上げる。

「クソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがッ!!」

抉る。抉る。抉る抉る抉る抉る抉る抉る抉る。
蹴り上げる。蹴る。蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る。
執拗に繰り返した後、アンの顔面を足場にして胸の口から足を引き抜いた。
ブーツ越しに食いこんだ乱杭歯が肉を裂いて、生暖かい感覚が足首の辺りに広がる。
少々深い。

――それがどうした。

この程度で止まると思ったら大間違いだ。

痛んだ方の足で転がったままの化け物の胴に蹴りを入れる。
蹴り足で踏み込んで、もう一度首へ薄刃を振り下ろした。

23 名前:アン・フューリー(M):2003/07/05(土) 01:16

アン・フューリー(M)VS高木由美江(M)

>22

――ああ、もう。どうしてあたしのやる事は上手くいかないのかしら?
アンは顔を蹴られ、胸を抉られ、顔面を踏み潰されながらそんな事を思っていた。
相変わらずダメージはない。こんなもの何百発食らおうとも死ぬ事はない。だけど。
「痛いって言ってるでしょ! ちょっとは手加減しなさいよ!」
シスターはその声も聞かず胴体に蹴りを入れる。元ボーイフレンドのティムが言っていたわ。
これは、ヤクザ・キックって奴ね。聖職者のする事とは思えないわ。
 肺に痛みが行く。息が出来ない。怪物にも、ちゃんと内臓はあるのだ。
そして、シスターのカタナがアンの首に突き刺さった。
 まずい!
瞬間、その刃を異形の腕がつかんだ。同時に2本目の腕がずるりと出てくる。そして肩、頭、胴体。
人の形をした怪物が、アンの顔だった部分から這い出てきた。
「やあ、シスター。アンにずいぶん酷い事をしてくれるじゃないか」
 ギルの声だ。ただれた肌。大きく飛び出た舌。口の奥にはまた口が見える。何列にも重なる歯が覗く。
ギルはゆっくりとカタナに力を込め始める。みしみしと金属が悲鳴を上げた。

24 名前:高木由美江(M) ◆2xFanatics:2003/07/05(土) 01:56

アン・フューリー(M)VS高木由美江(M)

>23

もう一匹の化け物が顔を出した。

「はッ、そろそろ切羽詰って来たのか?」

柄から左手を離して、拳を握る。
殴った。
拳の骨が軋んだ。
もう一度。
頭突きをぶち込んでぶち込んで、更に殴る。
刃を捏ね回しながら引こうとした。動かない。押せもしない。

「この程度じゃまだまだ足りない。お前等は神の敵だ。だから死ね」

床に散らばった木片の端を踏んで、浮いたそれをつま先でトスして左手で掴む。
鋭い方の端をギルの顔面に突き立てた。
その間も柄に篭める力は抜いてはいない。首へ、ひたすらに押し込む。

25 名前:アン・フューリー(M):2003/07/05(土) 02:30

アン・フューリー(M)VS高木由美江(M)

>24

 その程度でどうにかできると思っているのだろうか。だとするならば、舐められている。
そんなちっぽけな木の欠片で、僕を倒せるとでも? 
ギルは怒っていた。あまりにも酷い、シスターのアンへの攻撃に。そして今の台詞。
「僕らはね、シスター。生まれた時からこうだったのさ。だから、
自分たちが神の恩寵に歯向かったと考えた事なんて一度もない。だってそうじゃないか? 
食事をするのは当たり前の事だろう? 僕らは一度だって、快楽で殺した事はない。
信条の違いで殺しあう君たちより、よっぽどましだと思うけどね」
 言いながら、先ほどの頭突きのときとっさに噛み付いた彼女の髪の毛を食いしばって引っ張る。
ぶち、ぶちと何本か抜けていくが相手は微動だにしない。女の命が無くなってもいいのか……?

26 名前:高木由美江(M) ◆2xFanatics:2003/07/05(土) 03:05

アン・フューリー(M)VS高木由美江(M)

>25

アンの方ほど脆くないらしい。
仕方が無い。
刀の腹、握られている部分のすぐ下辺りに膝を入れて、同時に柄を横に倒す。
日本刀はこの手の横からの衝撃に弱い。
あっさり、きん、と澄んだ音を立てて折れる。
鍔元に残った刃で引っ張られている髪を斬った。

「何をとち狂ってる。化け物に神の庇護があるわけないだろ?」

浅く首に埋まっている切っ先の部分を踏んで押す。
短くなった刃をギルの顔面に振るいながら続けた。

「あんた等が何を考えようが関係無い。化け物は化け物であるだけで罪だ。
 罪には罰を。神罰の地上代行者たるあたしらが、くれてやるッ!」

腕に振るう。胴に振るう。
首に肩に腰に。
折れた刃の間合いは短くなっているが、これだけ接近していれば問題は無い。
軽くなった分速さを増した斬撃が乱れ飛んだ。

27 名前:アン・フューリー(M):2003/07/06(日) 12:53

アン・フューリー(M)VS高木由美江(M)

>26

 駄目だ、このシスターには会話が成立しない。こちらを殲滅する事しか考えていない。
どっちが化け物なんだ。ギルは、これ以上の会話は諦めた。
 相変わらず相手の斬撃は続いている。前にも増して速くなったスピード、痛みを感じる前に体が切れていく。
だが、それがどうした。たとえ相手が百回切りつけてきたとしても、こちらの一回の攻撃で全てが終わる。
人間とはそれほど脆い生き物だ。かまわず片手で由美江の首を掴む。ぎゅうと締め上げる。
後はこのまま、ほんの少し力を入れるだけ。それでおしまい。

(ちょっと待って、ギル)
 アンの声が聞こえた。二人は精神だけで会話する事も出来る。
(今いいところなんだ、邪魔しないでくれよ)
(あたしに考えがあるの。任せて頂戴)
(……仕方ないな)
 ギルは一挙動で由美江を放り投げた。壁にぶつかりベッドへ落ちる。げほげほとむせている由美江は無視し、
ゆっくりと体をアンの中へしまいこんでいく。胸に開いた口も同じだ。
 再びアンは人間の姿になった。切り裂かれ血を流し続けている首。踏まれたおかげで鼻は曲がり、眉間と
胸と腹、いわゆる正中線と呼ばれる部分にはぽっかりと穴が開いている。それでもなお、アンは活動を続けている。
その姿のまま、老シスターへ歩いていく。腰を抜かし怯えている彼女の前まで来ると、
無理やり立たせ自らの体へ密着させる。
「おねがいシスター。あなたの口から、由美子さんに教えてあげて。主の愛の前では全ての生き物は平等だって。
 じゃないとあたし、何をするかわからないわよ」
体をくっつけていたおかげで老シスターには聞こえていた筈である。アンの体の中で、うねうねと動く物体の音を。

28 名前:高木由美子(M) ◆2xFanatics:2003/07/06(日) 22:11

アン・フューリー(M)VS高木由美江(M)

>27

切り落とせないのなら、削ぎ落としてやる。
浅くしか斬れないのなら、深くなるまで何度でもなぞってやる。
そう思った。
細く息を吐きながら実行に移そうとして、喉が詰まる。
最初は苦しいだけだったが、指が次第に深く食い込み、頚骨が危険なほどに軋む。

このままいけば肉も骨も掴み潰される。

正直そんな物無いだろうと考えつつ、ゆっくりと首を掴む化け物の手首の腱を狙い、

「――――ッ!」

それが届くより速く壁に叩きつけられていた。
遠のいていた意識が痛みで浮き上がって、加速をつけて沈み始める。
響く化け物の声。
殺意が、押し止めた。

「……こ、のッ」

不自然にシスターに密着した――あの身体の作りを考えると寧ろ自然なのか。
立ち上がる姿は幽鬼さながら、吐き出した言葉はまるで呻き声だった。
肋骨に鈍痛が纏わりつく。

―――動けるか?

問題無い。いや、動く。
間合いにして二足。一足半まで詰めて、右手の刀を中空に放った。
害意の含まれていない、攻撃ではない行為。
天上すれすれまで上がったそれへと意識が追う。その間隙。
間合いを埋めるには十分で、だがしかし武器は無い。


いや、ある。
それも手の届く所に。
アンの首に。

「お前に与える愛なんて何処にも無いんだよ、化け物」

切っ先の方の刀身を掴んで囁き、引いた。

29 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/06(日) 23:20

小早川奈津子VS黒岩省吾 『票田のブルドーザー』 導入

――――西洋甲冑だ。
 
 本日の選挙活動を終え、己の事務所に帰投した東京都都知事候補、
黒岩省吾は見た、部屋の真ん中に、どん、と置かれた白銀の甲冑を。
 それは、頭のてっぺんから足の先までを覆い尽くす、所謂フルプレートアーマー。
甲冑は、窓からブラインド越しに差し込む、夕日を帯びて紅く染まり、
見ようによってはそれなりに美しい。
 
 ――――だが、何故、こんな物が俺の事務所に?
 異邦人である彼、黒岩省吾はこの世界、この時代に馴染むため、
必死の思いであらゆる知識を吸収し、有事に備えている。
 だが、その彼の知識をもってしても、こんな所に西洋甲冑を持ち込まれた
理由はトンと見当がつかない。
 選挙の為に縁起を担ぐ為の物品――人間、特に日本人は時としてこういう
 不合理を好む――を待ちこんだのかとも思ったが、やはり、そう言った風習には思い至らない。
 
 そもそも、事務所のドアの幅よりも、甲冑の横幅の方が大きいのだ。
どうやって此処に持ち込んだ? 誰が? 一体? 何のために? どうやって?
 見たところ、重量だけでも相当な重さがあるはずだ。
 まさか、甲冑が自分で此処まで歩いて来たと言うわけでもあるまい。
 
 そこまで黒岩が思考した数秒後。
 その、半ばふざけた予測が的中し、彼は、黒岩は、人間界で築いてきた
『常識』と言う物がガラガラと音を立てて崩れ去るのを確かに聞いた。
そう、この甲冑は自ら『歩いて』ここにやってきたのだ。
 
 「をーっほほほほほほほほほほほほほほほ!!」
 甲冑が禍々しい笑い声をあげ、軽く身震いしたかと思うと
関節部のこすれる耳障りな音を従えつつ、唐突に動き出したのだ。

「をほほほ、初めまして、ですわね、黒岩省吾。アタクシの名は小早川奈津子。
本日は『話し合い』に参りましたの。早速本題を伝えさせていただきますわよ、
貴方、今回の都知事選の出馬を断念し、即刻辞退なさいな。」
 甲冑は、否、甲冑の中身は一方的、かつ、やけに高圧的な口調でそう告げたかと思うと、
またもや、をーほほほほほほ、とでも表記するしかない奇怪な笑い声を部屋中に響かせた。

30 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/06(日) 23:22

>29

「平たく言うと次の都知事は民自党、ひいてはアタクシやお父様の推薦する、
この男に内定していますの。無能、無策、無毛、三拍子揃った男ですけれども
飼い犬には時々ご褒美をくれてやるのが太っ腹な主人のあり方でしてよ。
若い力だか、改革だか存じませんけれども、ポッと出の若造に、
この国のシステムを弄られてはたまりませんわ、をーっほほほほほほほ!!」

 黒岩があっけに取られているのを認識しているのかいないのか、
それとも、そんな事は頭から気にも留めていないのか
どこからともなく取り出した「中道わたる」と言う男のポスターを、指差しながら
甲冑の怪女――小早川奈津子は甲冑の内側から声を漏らした。
 
 「さて、黒岩。貴方のことは『色々と』調べさせていただきましたわよ、
 まずはこれを御覧なさいな」

 小早川奈津子は黒岩のデスクの上にどすん、と腰を下ろしつつ、机上に置かれていた
一束の書類を、ガントレットをはめたその手で器用に摘み上げる。

 「平成○年の入院を境にして、随分と周囲の評価が違いますのね。
不治と言われた病と2ヶ月間闘った後、奇跡的に回復。
その後この相談所を開設するまでの三年間の経歴は一切不明。
と、言うかこの空白の時期に「黒岩省吾」と言う男が社会的に活動していた
痕跡が全く残っていないのはどういう事かしらね?」

 黒岩の表情を探るように視線を浴びせながら、怪女はこう続ける
「まさか、身寄り無くして死した人間の戸籍が、売り買いされているだなんて
そんな事は法治国家として許される事じゃありませんわよ、ねぇ黒岩都知事候補?」
 
 そう告げられても黒岩は微動だにせず、小早川奈津子を見据えている。
もっとも、単に呆然として動けないだけなのかもしれないが。

31 名前:アン・フューリー(M):2003/07/06(日) 23:22

アン・フューリー(M)VS高木由美江(M)

>28

 シスターは震えていた。今まで通常の生活を過ごしてきて、このまま何も起こらぬまま神の元に召されるだろう。
そんな風に思っていたのだ。そしてそれは、そんなに遠くない日の事で、ほぼ確実なことだと思っていたのだ。
 しかし違った。そもそもは一週間ほど前、新しいシスターがやってきた事が始まりだったのだ。
彼女が発見(そう、発見だ)された時、修道服は本当にぼろぼろで、さらに擦り傷だらけだった。
そのシスター由美子は、とても気立てが良く、働き者で、あんなにうるさかった子供たちも彼女の前では懐いて――
正直、いつまでもここにいて欲しいとそんな風に思っていたのだ。その由美子が、今では悪鬼のような顔をして
日本刀を手にしている。しかも、アンを串刺しにしたのだ。
 そう、アンだ――今、彼女と体をくっつけ、じっとこちらを見ているアンだ。彼女は一体何者なのか?
もともと得体の知れない子だった。今までに四度養女に貰われて、四度とも帰ってきた。近所の犬猫、
学校の友達、貰われた家の家族、そして養い親、その全てが原因不明の行方不明になっている。
彼女自身はとても明朗ないい子なのだが――その彼女が、自分の目の前で化け物に変わり、そして今血だらけで
彼女のそばに立っている。何が起きているんだ? 自分の人生は、どこで間違ってしまったのだ?
 ああ、アンが何か言っている。だが、何を言っているのか解らない。そして由美子が折れた刀を投げつけ、
こちらに迫ってくる。解らない。その彼女が、アンの首に刺さったままの刃を引いて、そして――アンの首が――
落ちると同時に彼女自身の意識も闇に落ちた。気絶したのだ。そしてそれは、彼女にとって幸運なことだった。

32 名前:アン・フューリー(M):2003/07/06(日) 23:23

>31
続き

 ちぇっ。シスターは何も言ってくれない。さっきから震えているだけ。
アンにはシスターがなんと言うかとても興味があったのだが、何も言わないのでは話にならない。
 まあ、このまま側に置いておくだけでも人質にはなるのだろう。由美子さんが何かしてきたら
その瞬間彼女を殺せばいいのだ。老人は筋ばかりで旨くないのだが。さて、最前から散々痛い目にあわせてくれた
彼女にどうやって思い知らせてやろう? そのまま丸呑みにしてやろうか。
それとも手足をもいで踊り食いにしてくれようか。どれも悪くない。さっきギルはあんな事を言ったが、
その通りだとアンは思った。殺す事は面白くもなんともない、ただの作業だ。結局食べるために殺すのだから。
大事な事は、いかに美味しく食らうか。相手の悲鳴や恐怖の表情は、大切なトッピングだ。なるべく最高の方法で
料理をしたい。そのくらいの権利は当然だと思う。

 由美江が動いた。アンに向かって一歩踏み出し、自分の武器を天井に向かって投げた。
何のポーズだ? 降参のポーズではないだろう。一体何があるのか――思わず上を見上げた。
 そして、アンが相手の真意を悟る前に、由美絵は彼女の目前まで迫り、
彼女の首に刺さったままのカタナに手を掛け、そして。

 思いっきり引いた。

 どすっという自分の首が地面に落ちる音が、アンには聞こえていた。なんと言う矛盾。しかし、化け物には
常識は通用しないのだ。その証拠に、首から離れた胴体が膨らみ、弾け、異形の姿に変貌したのだから。
 それは幾つもの口。幾つもの眼球。幾つもの触手――もともとの質量の何倍もの姿。
それは近くにいたシスターに襲い掛かり、噛み付き、彼女をただの物体に変えた。

33 名前:黒岩省吾 ◆vQsChIjITA:2003/07/06(日) 23:24

小早川奈津子VS黒岩省吾 『票田のブルドーザー』 >>29>>30
 
頭が痛い。
けたたましい笑い声が頭を揺らし、黒岩は自分の額に手を当てた。
わずかに俯き、鎧から視線を逸らす。
 
黒岩は「ダークザイド」と呼ばれる、人間の生気を吸って生きる種族。
そして、「黒岩省吾」の戸籍は、さっきこの鎧が暗に言ったように、裏で入手した物だ。
 
だが、このバケモノは何故そんなことを知っている?
理解できない。
突然現れた正体不明の鉄塊に常識を蹂躙され、自分の正体に近づかれ思考が混濁し初めている。
 
だが、いきなり鎧が襲来したり知事選の辞退を迫られたり正体に触れられたり程度で――――
俺は、自分を崩すわけにはいかない。
 
黒岩は自分にそう言い聞かせると、髪を掻き揚げて余裕の表情で顔を上げる。
 
「ああ、全くだ」
 
口元をわずかに歪め、都知事候補は笑みに似た表情さえ浮かべた。
 
「戸籍の売買などを放置しているとは・・・今の日本は腐っている。
 そんな小物なんぞにこの国を任せるわけには、いかないさ」
 
話題を逸らすことも狙い、わずかに鼻を鳴らしてそう嘯いた。
この馬鹿でかい存在にどれだけ通用するか、とてつもなく不安ではあったが。

34 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/06(日) 23:26

>33 小早川奈津子VS黒岩省吾 『票田のブルドーザー』 

 「をっほほほほ、アタクシ達日本の明日を率いるトップエリートを
小物呼ばわりしてくれるとは、貴方は随分と自信家のようですわね。
その自信がいつまでも持つとよろしいのですけれども」
 
 をほほほ、と、兜――恐らくは口元――を右の篭手で上品に添えつけながら、小早川奈津子が
足を組替えると、より深く腰掛けられたデスクが重量に耐えかねて、悲鳴を上げる。
 
 「ところで、貴方と貴方が職を斡旋した連中の周りでは、妙に失踪事件が相次いでいますの。
明らかに偶然として片付けるには多い頻度でね。まったく恐ろしい事ですわね、をほほほ」
 
 小早川奈津子の声からは、明らかに相手をじわじわと痛ぶる愉悦が感じられる。
この程度の情報ではせいぜい相手を揺さぶる程度でしかなく、決定的に追い詰めるほどの
効果を得られない事は、この怪女にもよく判っている。
 しかし、それならそれで、この眼前の男をちょいと痛みと恐怖で『説得』して、
従わせれば良いだけの話だ。そして実際、小早川奈津子にとっては『説得』など文字通り
小指の先だけで行う事が出来る。一般人にとっては随分と迷惑で不幸な事に、
それを実行できるだけの力をこの怪女は抱え込んでいた。
 
「それと、調査を依頼した―――涼村、でしたかしら? とにかく私立探偵が
なかなか面白い事を教えてくれましたわよ。何でも貴方は闇次元界の生物で人間の生気を
吸わないと生きて行けない化け物なんだそうですわよ? 全く、ファンタジーやメルヒェン
じゃないんですから冗談も大概にして欲しいところですわね、をーっほほほほほほ!!」
 
 自分の言ったその台詞に多いにウケたらしく、小早川奈津子は本当に楽しそうに笑った。
 
 「まあ、そんなタワゴトは話半分に聞いておくとしても、どこぞの二等民族の分際で
この美しい日ノ本の政権、政策に携わりたいだなんて、思い上がりの増上慢、自信過剰な
妄想はとっとと修正するに限りますわね」
 
 小早川奈津子は兜の内側から目を細めて黒岩を見据え、明らかに語気を上げて
眼前の男に詰め寄った。
 「そろそろ返事を聞かせていただきましょうか黒岩省吾! 
都知事選を降り、アタクシ達に従う気があるのか、ないのか!
さあ、さあ、さあ、さあ、とっととハイかイエスかお答えなさい!!」

35 名前:黒岩省吾 ◆vQsChIjITA:2003/07/06(日) 23:27

>>34 小早川奈津子VS黒岩省吾 『票田のブルドーザー』 
 
涼村暁。
彼の名が出たことに、黒岩は内心歯軋りした。
黒岩が唯一ライバルと認め、また誰よりも憎んでいる男。
彼に対する殺意が、鉄のように滾って来ている。
 
よりによって、俺がダークザイドだとバラすとはな。
なんて―――――――、馬鹿。
 
しかし、黒岩はそんな内面の同様を微塵も見せたりはしない。
余裕ぶっていなくては。
 
「人間でないからこそ、人間界のことを客観的に見ることが出来るんだ」
 
冗談めかして、黒岩はそう言ってみせる。
皮肉げな笑みとともに都知事候補は、机の上に置かれていたポスターを手に取った。
女の声で話す鉄塊曰く、すでに都知事に決定している男。
大した考えもなく、人に従うだけの人生を送ってきた事が如実に現れている顔だった。
 
「今の日本は腐っている、それは・・・」
 
「中道わたる」の顔で自分の顔を隠すように、黒岩はポスターを持ち上げる。
 
「人間が腐っているからだ」
 
紙が破られる音。
同時に、ポスターに隠されていた黒岩の顔が現れる。
彼ははポスターを2つに破ると、丁寧に丸めてゴミ箱へ捨てる。
そして、角度に細心の注意を払ったポーズで、鎧姿の怪女に指を突きつけた。
 
「知っているか!?世界ではじめてのポスターは1867年、フランスで作られた。
 小さな印刷屋で作られた「La Biche au Bois」というコメディの宣伝ポスターが大成功し、
 以後その印刷屋には注文が殺到したという!
 で、選挙を辞退しろとのご提案だが・・・」
  
薀蓄を語り終えて満足げな表情を浮かべつつ、黒岩は出口を指差す。
  
「答えは『ノー』だ。お引取り願おうか」

36 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/06(日) 23:30

>35 小早川奈津子VS黒岩省吾 『票田のブルドーザー』 

 「をーっほほほほほほ! 無知にして無学! 語るに落ちるとはこのことですわね!
よろしい、このアタクシが直々に貴方の間違いを正して差し上げてもよろしくってよ!」
 
 あたかも相手のポーズを模倣するが如く、手甲に包まれた指を黒岩に突きつけると
小早川奈津子は次のように続けた。
 
 「をっほほほ、よくお聞き。掲示用の大型ビラなどと言う物は、後宋中期に既にその姿を
見る事が出来ましてよ。この時期、宋国は国策によって『紙』を量産する事に世界で初めて成功し、
それによって大衆文化も大きく花開きましたわ。そんな訳で、芸術と商業、あるいは政治が結びつき、
それぞれの立場の人間にとって有益な『紙を使った広告』を、誰かが思いつくまでにさほど時間は
要さなかったと言う事は想像に難くはありませんわね。残念ながら、多色刷りというような物は
開発されていませんでしたから、木版による墨での単色刷りでしたけれども、それでもなお、
飯店の案内、戯曲への誘導、政府の広報、などなど、多種多様に利用された事が
当時の国家の記録に残っていましてよ」
 
 長口上を一気に語り終えると、小早川奈津子は突きつけた指を下ろし、
その巨体を満足げに大きくゆらすと、またもや、をほほほほ、と笑った。
 相対する黒岩のその体が震えているのは、怒りの為か、あるいは動揺しているのか。
 
 「をっほほ、おつむの方の出来もこれで知れましたわね。やはり貴方の様な男に
東京都都知事などという重職を任せる訳には行きませんわ」

 超重量を誇る、肉と金属の複合物が掛けていたデスクから腰を下ろすと、
安堵の溜息をついたような、きぃ、と机がしなる音が生じた。
 
「さて、立候補の取り下げは本人で無ければ出来ませんし、もう少し『説得』を続けさせて
いただきますわよ。まったく、民主国家のふりをしていると、こういうとき不便でいけませんわね。
さあ! これでも背負って西遊記の猿のように、じっくりと自分を見つめなおしなさい!」
 
 不意に、彼女は今まで座っていたデスクの下に片手を入れ、そして大きく振り上げた。
洒落者の黒岩が執務用に使っているこの黒檀の机は、軽く見積もっても百数十キログラム
ほどの重量があるだろう。
 それが今、決して広いとはいえない室内で歪んだ放物線を描き、
デスクの本来の持ち主である黒岩に向かって圧し掛かろうとしていた。

37 名前:黒岩省吾 ◆vQsChIjITA:2003/07/06(日) 23:30

>>36 小早川奈津子VS黒岩省吾 『票田のブルドーザー』 
 
巨大な物体は本来の用途を引き剥がされ、暴力と化して黒岩を叩き潰そうとした。
耳をつんざく轟音が、部屋全体を震撼させた。
棚の辺りがひしゃげたデスクの下にしかし、黒岩の姿はない。
 
巨大な女の背後へと、素早く回り込んでいたのだ。
お互い、普通の人間には到底不可能な行為。
しかし、この怪女は全くの人間だと黒岩は理解していた。
 
薀蓄と常識とを同時に破られたショックに、黒岩は情けなく口を半開きにしている。
唖然とした思考。その中に怒りが染み込んでくる。
怒りが脳裏を埋め尽くしていき、黒岩の表情は深い朱に染まる。
選挙期間中だということも一瞬忘れ、彼は自分の眼前に手を翳した。
 
「ブラックアウト!」
 
叫び声に応じ、蒼い瘴気が黒岩の姿を禍禍しい鎧武者へと変えた。
彼本来の姿、「暗黒騎士ガウザー」へと。
 
背の刀を引き抜くと同時に、硬質の音を立て床を蹴った。
一気に切っ先を鎧姿の女へと突き立てるべく。

38 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/06(日) 23:32

>37 小早川奈津子VS黒岩省吾 『票田のブルドーザー』 

 哀れなデスクは、その本来の用途とはかけ離れた使用法によって、
一塊の木片へと姿を変え、その報われない生涯を終えた。
 
 しかし、眼前の男を押し潰すと言う、デスクに課せられた最後の役目は、
いまだ果たされていない。高速で飛来したはずの木塊を易々と回避し、
都知事への野望を持つ男は小早川奈津子の背後へと回り込んでいた。
 
 そして聞こえる怒りを含んだ男の声。「ブラックアウト!」
 声に反応して鎧の怪女が後ろを振り向くと、男が、黒岩省吾の体が、黒く硬質の
鎧に被われていくのを目にする事となった。
 体内からにじみ出るかのように現出する鎧に被われていく―――否、置き換わっていく。
その様は、まさに『変身』と形容するにふさわしい。
 
 『変身』を終えた黒岩は背に掛けた刀――これも鎧と同時に顕現している――を抜くと、
白銀の鎧を纏った女戦士に向かって大きく踏み込む。

 「仮にも東京都都知事になろうなどと言う男が、そんな物理を無視した変身などをするとは
次世代をになう子供達の健全なる精神の発達に悪影響を及ぼしましてよ!」 
 
 常識を無視した相手への義憤に震える小早川奈津子は、手近にあった水槽を
わっしと掴むと、相手の振るう刃の前に、それを差し出した。
 奇妙な事に、その水槽を目にした黒い剣士は、わずかではあるが斬撃を鈍らせ、
結果として小早川奈津子に回避のチャンスを与える事となった。
 
 タネは水槽そのものではなく、その中身――ディスカスと呼ばれる熱帯魚である。
最も美しい魚の一種と讃えられる事も多いディスカスだが、その扱いの難しさもトップクラスである。
そんな魚をわざわざ育成しているところに、華美を好む黒岩の性格の一端を見る事が出来た。
 色艶や体格を見れば、この個体が、かなり大事に育てられている事は解る。
 だが、それが黒岩の仇となるとは誰が思っただろうか?
  
 水槽とその内部の水を通して相対する二人の姿は、互いに屈折し、歪んで相手に伝わり、
それは、どこか滑稽で、どこかグロテスクだった。
 
 「貴方の様な恥知らずな輩は、たとえ教育委員会と文部科学省が許しても、
このアタクシの常識を愛する魂が許すわけにはいかなくってよ! さあ、覚悟おし!」
 
 甲冑の怪女が左手にささげ持つ水槽に向かって、手甲に包まれた右拳を振るうと
水と、ガラスと、小石と、水草のシャワーが黒岩に向かって降り注ぐ。
 
 こぼれ落ちたディスカスは床の上で苦しげにぴちぴちと跳ねた。
 ぴちぴちと。

39 名前:黒岩省吾 ◆vQsChIjITA:2003/07/06(日) 23:33

>>38 小早川奈津子VS黒岩省吾 『票田のブルドーザー』 
 
雨を思わせる音を立てて、ディスカスは苦悶しながら一際大きく跳ねる。
その音が、黒岩の怒りをさらに掻き立てた。
この女は、絶対に倒す。その決意を抱き、彼は強く剣を握り締め、顔を上げた。
ぴちぴちと跳ねる魚を中心に、狭い部屋の中で鎧姿の男女が睨み合う。
 
――――――その光景には、シュールという言葉があまりにふさわしかった。
 
しばしの沈黙が、空間を支配する。
魚もすでに動きを止め、静寂を乱す事は無い。
その沈黙を先に破ったのは、黒岩の方だった。
刀を鞘に収め、背を向けてドアへと歩みだしながら、言葉を発する。
 
「これ以上ここを汚したくない。表に出ろ」

40 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/06(日) 23:36

>39 小早川奈津子VS黒岩省吾 『票田のブルドーザー』 
 
 「あらあら、こんな狭くて汚い場所にこだわるだなんて、随分と貧乏性ですのね。
貴方の様な小物が、まかり間違って知事になってしまったら、知事室の豪奢さと、
広大さに腰を抜かしてしまうところでしたわよ。むしろ、出馬を取りやめるように
忠告したのはアタクシの親心。まったく、そのことだけでも感謝して頂きたい
ところですわね、をほほほほほ」
 
 本来ならば、この事務所も狭いと感じるほどの窮屈さは無い。
 しかし、ほんの数合のやり取りで、室内はあっという間に乱雑を極め、今では文字通り
足の踏み場も無い。
 さらに、対峙する二人の怪人の視線と熱気、更には闘気が、部屋の容積を実際よりも
小さく感じさせていた。
 
 「まあ、貴方の申し出を受ける義理も義務もございませんけど、アタクシの
寛容なる魂を持って、貴方のレベルに合わせて差し上げようじゃありませんの」
 と、言って、当選祈願用に片目に墨の入った大達磨を片手で軽く掴む。
 怒りの為か、その手は若干震えている。
 
 「こちらが下手に出ていれば、傲岸不遜なその態度。よろしい、そうまでして戦いを望む
と言うのでしたら、アタクシのこの手で打ち砕いてみせますわ! そう、このように!」

 そして、掴んだ右手に力をかけると、大達磨は、塗料と紙の欠片を撒き散らし、
その使命を全うすることなく、短い生涯を終えた。

41 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/06(日) 23:37

>40 続き

 「ところで、貴方の目は節穴か何かですの? そのように矮小で安っぽいドアを、アタクシの
偉大なる体躯がくぐりぬけられる訳無いでしょうに。偉大なる人物にはそれ相応の出入り口が
必要と言うもの。今後はどんな来客があっても恥ずかしくないように、オークの一枚板か何かで
扉を作っておく事ですわね、をほほほほほほ」
 
 たしかに、小早川奈津子の巨躯には、そのドアは少々小さすぎる。
 よって、彼女は入室してきた時とは逆の手順で部屋を辞する事にした。
 
 すなわち、手甲に包まれたその手を窓に叩きつけ、一撃のもとに大きなガラスの一枚板を
粉砕してのけたのだ。侵入時には(嫌がる)ガラス屋を(無理矢理)呼びつけて、多少は
スマートに入室したものだが。
 ガラスの砕ける硬質の音が通行人の目を引き寄せたが、幸いにと言うべきかガラスの飛沫の
飛び散った範囲には人は居らず、とりあえずの所は怪我人は無い。
 トラブルをおそれ、逃げるようにその場を去った者もいたが、大多数の人間が好奇心に駆られて
現場を観察し続けていた。これから自分を待ち受ける、滑稽で非常識な運命も知らずに。
 
 「ちょうど、此処、東京は陛下のおわす直轄地。愛国心に溢れるアタクシ達と、
汚らしい二等民族である貴方達。どちらがこの地の支配者としてふさわしいか、
皇国の臣民に直接問うてみる事にいたしましょうか」
 
 黒岩に向かってそう宣言すると、愛と正義の美女戦士は「とぉっ!」と言う掛け声とともに、
甲冑に包まれたその身を軽やかに跳躍させ、砕いた窓を潜り抜けると、手近な電柱の頂点に
爪先立ちで降りたった。
 そして、天下無敵のウグイス嬢による、ありがたい演説が始まった。

 「をーっほほほほほほほほほほほ!! よくお聴き、無知蒙昧、軽佻浮薄な愚民ども!!
都知事選は中道、中道わたるに投票なさい! お上には従い、中道保守を尊ぶ、これこそが
戦前より続くニッポン人の美徳。民自党はこれまでもニッポン社会をリードし、導いてきましたわ。
そして、いずれは国連の常任理事国入りを果たし、世界を導く存在へと飛翔いたしますの!
その為にも口先だけの改革を唱える若造には、政権、政策を任せる訳には行きませんわ。
さあ、理解できたら、都知事には中道を! 中道わたるに清き一票を!!」
 
 あっけに取られつつも、電柱を見上げる都民の皆様に囲まれて、
小早川奈津子はなおも弁舌を振るい続けた。

42 名前:黒岩省吾 ◆vQsChIjITA:2003/07/06(日) 23:38

>>40>>41 小早川奈津子VS黒岩省吾 『票田のブルドーザー』
 
ディスカスはすでに苦悶することも出来ず、動きを停めている。
大達磨は塗料の中から内臓のように紙を吐き出し辺りにぶちまけている。
その上に窓ガラスの破片が降り注ぎ、夕日の朱に染め上げられた光が部屋を彩っている。

 
―――――――お前達の仇は、必ず取る!
ディスカスと達磨に向けて内心そう誓うと、黒岩は胸元で強く拳を握り締めた。
 
決意を胸に抱くと、その身を疾風と変えて窓の外へと飛び出す。
蒼い風は暗黒騎士の姿を取って、怪女と向かい合うべく電柱へと降り立つ。
騎士の片手には、いつもの刀の代わりに――――マイクが握られていた。
そのマイクに、黒岩は言葉を吹き込む。暗黒騎士ガウザーの姿のまま。
 
「都民のみなさん!知っていますか!?
 世界で初めての選挙は紀元前1432年、中国のタイミーという小さな村で行われました。
 人口はたった231人の村でしたが、公正な選挙の結果選ばれた村長はその功績を認められ、
 やがて皇帝へと上り詰めていったのです。そう、皇帝へと。皇帝へと!」
  
観衆の喧騒が、一瞬の内に静まりかえった。
鎧姿の怪人2人が、電柱の上で、いきなり選挙について語り始めたのだ。
無理はないことと言えた。
 
「みなさんには、自らの意志を大切にし、何が本当にこの国のためになるか考えて頂きたい!
 それだけです!」
 
決まった・・・。
シンプルながら的を射た発言。人心を真に掴む演説とはこういうものだ。
黒岩は騎士の仮面の奥で自分に陶然とする。
 
そのため、観衆はみな、ただ唖然とした表情だけを見せていた事には気付かなかった。

43 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/06(日) 23:40

>42 小早川奈津子VS黒岩省吾 『票田のブルドーザー』
 
 なにやら呆けたような表情をしながら、頭上を見上げる東京都都民に囲まれて、
二人の怪人の舌戦は激しさを増していった。

 「皇帝? 今、皇帝とおっしゃったのかしら? をっほほほほ、語るに落ちるとは
このことですわね。よろしくって? 衆愚政……国民の総意により選ばれた優秀なる
政治家によるミンシュ政治こそ我が国の基本理念。政治家に権力と権利を押し付けて、
平民どもは責任と決断を回避する。ぬるま湯に浸ったかのような安心感を与えてやるのが
この国の正しいマツリゴトと言う奴でしてよ、をほほほほ」
 
 厚いプレートと厚い脂肪の層に包まれた大きな胸をそらしながら、憂国の女志士は続けて
ありがたいお言葉を眼下の庶民と正面の黒騎士にくれてやる。あんまりにも大きく反り返りすぎて、
電柱の上から落ちそうにも見えるが、落ちそうで落ちない。バランス感覚は抜群なのだろう。
 
 「平民どもに自由意志をもって欲しくない権力者ほど、『自分の頭で考えてくれ』などと
言うものでしてよ。そのようなタワゴトで平民どもをたぶらかし、やがて、皇帝などと言う
絶対権力者におさまるつもりですわね! そのような傲慢はこのアタクシの正義の意志に基づいて
決して許すわけには行きませんわ!!」
 
 そして、勇敢なる女戦士は黒の鎧武者を成敗するべく、直線ルートを移動する事にした。
 すなわち、走ったのだ、電線の上を。
 
 一本の電線に触れているだけなら電流は流れず、感電することも無い。(自称)北半球で
もっとも賢い女である彼女はその事を知っており、コレと定めた電線の上をバレリーナの如く
軽やかに疾走する。
 
 ところで、この電線を施設した東京電力の社員はよほど腕が良かったか、良心的な男だった
らしい。なにしろ0.2トンもの重量をもつ物体を電線上で8歩移動させる事に成功したのだから。
 
 「あぁぁれえぇぇぇっ〜〜〜!!」8歩走ったところで電線が千切れた。
 
 空中に放りだされた小早川奈津子の体は回転しながら落下する。地上に接地しても回転する
勢いは死なず、まるで一塊の鉄球であるかのようにゴロゴロと地面を転がり、ついには彼女の
目指していた電柱――すなわち黒岩が立っていた――にぶち当たる。
 電柱は抗議の声をあげながら、スローモーションがかかっているかのごとく倒れ始める。
当然、電柱に連なる幾十もの電線は千切れ飛び、地上に向かって蛇のように降り注ぐ。

 電線に打ち据えられた数名の運の無い者達が『ぎゃッ』などと悲鳴を上げつつ倒れ伏す。
 足が大地に触れており、電流が電線から大地に向かって人間の身体を通って流れてしまうのだ。

 事、ここに至ってようやく、危機意識の薄い日本人の皆さんは自分達がとんでもないトラブルに
巻き込まれてしまった事に気付いたようであった。

44 名前:黒岩省吾 ◆vQsChIjITA:2003/07/06(日) 23:41

>>43 小早川奈津子VS黒岩省吾 『票田のブルドーザー』

電柱と鉄の重圧との激突は、槍のようにその頂点に立っていた黒岩をも貫いた。
脳さえも揺れる衝撃。重い頭痛と吐き気。
鉛のような感覚を抱えながらも、黒岩は自分が電柱から落下していることを認識。
咄嗟に電柱を蹴りつけ、落下のスピードを殺す。
さらに態勢も立て直し、ガウザーは蒼き凶鳥のように足から地面へと降り立ってみせた。
 
その目ははっしと鎧の怪女を見据え、その手は、未だしっかとマイクを握り締めている。
 
「都民の皆さん、ご覧ください!
 我々の意志を踏みにじろうとする者の栄光は、今ここに地に落ちました!」
  
黒岩の演説に応じるように、観衆の内何人かが、倒れた人々を介抱し始める。
倒れている人の意識の有無を確認する者、肩を貸して安全な所へと誘導する者。
 
―――――――実は、その全ては黒岩の部下なのだが。
 
それを見て、黒岩は満足げな声で演説を続ける。

 
「見てください! 彼らの素晴らしい決断力を!
 私は皆さん1人1人が、彼らのようにこの国のために何ができるか決断できる人々だと信じています!」
 
マイクから、力強い言葉が発せられていく。
もっとも、それを語るのは鎧を着込んだ騎士の姿なのだが。
鎧姿の怪人2人は、困惑という名を持つ渦の台風の目のように、周りの人々から距離をとられていくのであった。

45 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/06(日) 23:43

>44 小早川奈津子VS黒岩省吾 『票田のブルドーザー』

 「をーっほほほほほほほほほほほほ!!」
 風がやんだ。陽がかげった。周囲一帯が焼け野原のごとき不気味な沈黙に包まれた。
野良犬は尻尾を抱えて丸め込み、生ゴミをあさっていた猫は毛を逆立てた。
人々は突然の事に言葉を発する事も出来ず、不安に満ちた視線を交し合った。
 
 何か、途方も無く不吉な事が起きる気がした。焼夷弾を満載したB29が大編隊を組み、
この地を、東京を焼き尽くすために飛来した、半世紀前のあの日のように。
 
 どすん。
 
 笑い声の残響が、最後の一片まで空中に溶けていってから数秒後、黒鎧の騎士と立ち尽くす
都民の皆様の間に、新たな音響がたった。金属と大地の響き。
 ある者は着地した『それ』を呆然としてみやり、またある者は『ばッ、化け物…』と、
うめいて後退しようとしたが、膝が笑って思うように歩けない。
 そう、つい先ほど、十数メートルの高さより落下した、愛と正義の美女戦士の復活である。
 
 「応援ご苦労。あなたたち、忠実なる臣民の呼ぶ声あらば、アタクシは天空を優雅に舞う
不死鳥の如く何度でも黄泉返りましてよ、をーっほほほほほほほほ!!」
 
 ―――誰もお前なんか呼んでない。
 それは、この場に立つものの総意であったが、奇跡的にも誰の口からも言葉となって
発せられる事は無く、小早川奈津子の耳にその意見が届く事は無かった。
 
 「まあこの様に、アタクシのような大和魂溢るる女は、いかなる事態に陥ろうと傷つく事も、
取り乱す事も無く冷静に物事に対応できましてよ。これぞ愛国心の表れと言う物ですわ。
これで、貴方がたの回転の遅いおつむでも、どちらが偉大かは理解できましたわね。
解った者には、ご褒美にアタクシの美声を聞く光栄を賜わらさせてあげましてよ、をっほほほほ」
 
 そして、世紀末のローレライによる、路上でのワンマンショウが開催され、雷鳴か爆撃音の
ような不気味な歌声があたりに轟き渡った。
 
   大東亜 築く力だ この一票
   選べ適材 貫け聖戦
   よい人 よく見て よく選べ
   あゝ千万の 都民の決意 示すため
   必勝の 意気を決意を 一票へ
   必勝の 意気を決意を 一票へ
 
 苦しげに胸を抑えてへたりこむ老人がいた。貧血を起こして倒れる女性がいた。
 歌声の届く範囲にいたカラスやハトがぽとぽとと地面に落ちていく。この歌声があれば
来年度からカラスの駆除に、東京都は予算をつける必要はなくなるだろう。
 
 いまや帝都の市街において、最凶最悪の音響兵器が存分にその性能を発揮していた。

46 名前:黒岩省吾 ◆vQsChIjITA:2003/07/06(日) 23:46

>>45 小早川奈津子VS黒岩省吾 『票田のブルドーザー』
 
金属のバケツを頭から被せられて鉄槌で殴られまくったような衝撃が黒岩の全身を襲う。
暗雲が膨れ上がって空をあっという間に覆い尽くす。天候すら左右する恐るべき歌声。
その呪われた「歌っぽいわめき声」を食らって、脳細胞が壊死していくのがわかる。
このままでは、危険だ。
黒岩は最終手段を使うことを決意した。
 
爆音が、轟く。
 
すぐそばの黒岩相談所が、いきなり火を噴いたのだ。
爆音さながらの歌声とは言え、本物の爆音には及ばない。
地獄から響く魔獣の雄叫びの如きその歌声は一瞬掻き消され、
黒岩の部下たちはその隙に都民の退避を続けていく。
 
爆発の威力は計算され尽くしており、都民に被害を与えることはない。
いざという時に仕掛けておいた自爆装置の効果に、黒岩はほくそ笑んだ。
そして、避難する都民へ向けて演説を続ける。
 
「ごらんください! 自らを犠牲にして都民を守った者がいます!
 一方、都民のみなさんを音波兵器の拷問で投票を強制した者がいます!
 彼は炎の中に消えました! しかし、彼はきっと戻ってくるでしょう!
 その時こそ―――――――」
  
そう、黒岩はガウザーの姿を取ってから、自分が黒岩だとは一言も言っていない。
「鎧姿で演説する知事候補」そのものではなくッ!
あくまで「パフォーマンスの一貫」として自らを扱っていたのだッ!!
 
 「黒岩省吾候補に、清き一票を」

47 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/06(日) 23:48

>46 小早川奈津子VS黒岩省吾 『票田のブルドーザー』
 
 爆音と共にビルの壁面から吐き出された大量の黒煙によって、天下無敵のウグイス嬢の
歌と姿は完全に、黒いヴェールの向こうがわに隠されてしまった。
 見えない巨人の手で次々と剥ぎ取られていくように、大量のガレキが爆心地たる事務所―――
いまや事務所『だった』場所と言うべきか―――から大地に向かって降り注ぐ。
 煙幕の内部ゆえ、外からその様子をうかがうことは出来ないものの、降って来たガレキが
煙中の何かと接触しているらしく、がん、ぎん、ごん、といった感じの金属質の音をときおり
耳にする事が出来た。
 
 今や、ビルのどてっぱらには大穴が開き、逃げ遅れていた東京都民のみなさんは、
ただただ呆然として、もうもうと煙を吹き上げる、その大穴をぼんやりと眺めるばかりだった。
 さらには、爆発によって微細に砕かれたコンクリートが埃となって煙臭と共に大気に舞い散り、
鼻腔を刺激してはあわれな市民を咳き込ませ、角膜を刺激しては涙を流させる。
 黒鎧の武者が、なにやら演説をぶちかましているが、この調子では一体どれほどの
人間がその演説の内容にまで気をまわす余裕があるだろうか?
 
 と、その時。
―――先ほどの爆音にも負けないほどの強烈な破砕音
―――ごおんと言う、寺社の大鐘をぶっ叩いたような、金属同士の接触音
―――をーっほほほほほほほほほほほほほほ、と言う神経を逆撫でするような女性の哄笑
これら全てがいちどきに、黒き異形の戦士と、それを取り囲む選挙民の皆様の間に鳴り響いた。
 
 音の震源地を見やれば、地を覆うアスファルトごと砕かれた大きな穴がぽっかりと。
空気を切り裂く音にひかれて上空に目をやれば、高く高く舞い上がり、そして今まさに
大地に向かって落ちてこようとしている黒い金属製の大きな円盤――マンホールの蓋――がある。
 そしてご存知、声の主。
「炎にあいて水を求め、水を求めて地に潜る。水によりて炎をおさめ、炎をおさめて地に戻る。
水も滴るいいオンナ、愛と正義の美女戦士、今ここに、フェニックスのごとく大・復・帰!!」
 地面に開いた大穴から、水の飛沫を上げつつ飛び出してきた白銀の女戦士は、軽やかに着地し、
続けて上空から飛来したマンホールの蓋を、片手で難なく受け止めた。

48 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/06(日) 23:49

>47 続き
「をぉーっほほほほほほほほほほ! これぞ、日ごろの行いの差と言うもの! あわや、
爆炎とガレキに飲み込まれんとしていた、可憐なるアタクシ。しかし、運命はヒロインを
みすてたまわず! 天の助けか配剤か、足元にあったマンホールに潜り込み、難なくその場を
脱出する事が出来たんでしてよ! ついでに言えば、マンホールと言うのは人が入るからこそ、
マンホールと言うのでしてよ。まあ、偉大なるアタクシの体には少々窮屈でしたから、
多少の拡張はさせていただきましたけれども」
 
 みごと、あの災禍から逃れた正義のヒロインは、両手を大きく広げ、自らの体に大事が無い事を
周囲にアピールすると、一息のうちにそう言い放った。ちなみに彼女が潜ったのは、汚水管では
なくて、雨水管だったので、悪臭を周囲に撒き散らす二次災害が起きなかったことは、
都民の皆さんにとっては幸運だったかもしれない。だからといって状況が改善したワケでも無いが。
 
「―――ところで」
と言いつつ、小早川奈津子は黒鎧の武者に向かって向き直る。
「たかが、女一人を屠るのに爆薬を使うだなんて、さすが貴方は二等民族のことだけはありますわね。
ただしき大和魂を持つヤマトナデシコとして言わせてもらえば、切腹モノの恥でしてよ」
 
つづけて、兜の内側から眼光鋭く黒岩都知事候補を睨み付け、こう、口にした。
「恥を知らないものを『恥知らず』と、言うんでしてよ、この恥知らず!!
対立候補云々を別にしても、貴方の様な不道徳かつ非常識な男を都知事にする訳には
まいりませんわ! さあ、教育しなおしてさし上げますからじっくりと味わいなさい、
アタクシの愛の一撃を!!」
 
そうして、甲冑に包まれた体を半回転させ、じっくりと力を溜めると、手に持った
都の花であるさくらの花と都の木であるいちょうの葉っぱをデザインした東京都謹製の
マンホールを、フリスビーのごとく、黒岩候補に向かって投げつけた。

49 名前:黒岩省吾 ◆vQsChIjITA:2003/07/06(日) 23:51

>>47>>48 小早川奈津子VS黒岩省吾 『票田のブルドーザー』

「フッ、あいにくだが・・・俺は男女差別はしない主義でね」
 
平然と切り返すその黒岩の顔の前に、唸りを上げて金属のフリスビーが迫る。
彼は素早く剣を構え、暴風を孕んで迫る『マンホールの蓋』を真っ二つに断ち切ってみせた。
そしてその『蓋』が地面に落ちる前に、地を蹴って駆け出した。
剣の切っ先を、怪女へと向けて。
 
「だから、本気で行かせてもらうぞ!」
 
ちょっぴり火薬の量は間違っていた様だが、おかげで都民の退避は逆に早まっている。
こちらに関心が向く前に、邪魔者を殺せるわけだ。
いや、俺のことだからきっとここまで計算して火薬を用意していたに違いない!
 
そう自分に言い聞かせながら、黒岩は鋭い突きを繰り出していく。

50 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/06(日) 23:53

>49 小早川奈津子VS黒岩省吾 『票田のブルドーザー』

 ごとん。 
 ごとん。
 
 切り裂かれた二つの鉄塊が地に落ちる音を後ろに従えて、黒き剣士が疾く駆け、
殺気を込めた切っ先を、白銀の女戦士に向かって鋭く突き出していく。
「ふん、そもそも徒手の女に太刀持って当たるような臆病神に憑かれた男が、
男女サベツを語るなどとは、片腹痛し、水虫かゆし! よろしい、このアタクシが
正面から打ち倒し、貴方にれでぃふぁーすとの精神を教育してさしあげましてよ、
をーっほほほほほほほほほほほほほ!!!」
 
 知能を持った生物の神経を等しく失調させるような、独特の哄笑を眼前の黒騎士
に叩きつけ、愛と正義の美女戦士は名刀から繰り出される連撃を、臆することなく
正面から受け止める。
 いかに、人外の膂力から繰り出される強力な斬撃とはいえ、装備者の機動性を
度外視して作られた極厚のプレートメイルを突き通すことは難しい。ましてや、
その中身は重鋼板の甲冑を、絹のドレスのごとく軽やかにまとう史上最凶の貴腐人なのだ。
 インパクトの瞬間に軽く打点をずらしてやるだけで、突き出された刃先は
緩やかな曲線をもった甲冑の表面を滑っていき、鋼板を貫くには至らない。
 ときおり、兜の隙間や関節の継ぎ目を狙った正確な刺突が世紀末美女戦士を襲ったが、
あるいは鋼に鎧われた強靭な腕に払いのけられ、あるいは軽やかなステップにかわされ、
その威力を発揮する機会には恵まれる事は無かった。
 
 斬撃から刺突、刺突から斬撃へと変化する剣技の隙をついて、小早川奈津子はガントレット
に包まれたその手を握り締め、拳での一撃を加える為に、スタンスを広げた構えをとらんとする。
 
「神聖なる魂を抱えしヤマトナデシコに、貴方の様な二等民族の攻撃が通じるワケが無くってよ!
そなへよ つねに! 鉄の護りへ 挙国の進軍! さあ、今度はこちらからまいりますわよ
をーっほほほ―――――」
 
 帝都の守護天使が強打の為の重心移動を行ったかと思われたとき、その姿は突如として
地上から消え去り、続けてどぼん、という水に巨大な物体が落ちた音があたりに響いた。
 黒く、淀んだ空気を内包した大穴が、その音声の生みの親。
 黒騎士の狙い通りか偶然か、小早川奈津子は己が拡張した下水の入り口へと導かれ、
本日2回目の行水を体験する事となった次第である。

51 名前:黒岩省吾 ◆vQsChIjITA:2003/07/06(日) 23:54

>>50 小早川奈津子VS黒岩省吾 『票田のブルドーザー』
 
黒岩の目の前から、巨大な生ける鎧が忽然と消滅した。
怪女に攻撃が通用しないことに驚愕していた黒岩は、一瞬何が起こったのか気付かなかった。
そして続く、どぼん、という水没音。
その音が黒岩に、マンホールの中に小早川奈津子が沈んだことを教えた。
 
「フッ……」
 
冷笑とも溜息ともつかない息をひとつ漏らすと、下水管から視線をそらさぬまま、
2、3歩後へと下がる。地に落ちた、マンホールの蓋を求めて。
半月状になったマンホールの蓋の片割れを拾い上げると、再び前へと進む。
蒼い甲冑の暗黒騎士は決して後を振りかえることなく、ただ前へ。
 
マンホールの蓋の角が当たる様狙いを付けて、下水管の中の怪女へと、手元を蓋を投げ落とした。

52 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/06(日) 23:56

>51 小早川奈津子VS黒岩省吾 『票田のブルドーザー』

 黒鎧の騎士が半月状に切り取られた黒い金属板を、大穴に向かって放り投げる。それから一秒も
おかずに、バケツをバットでぶっ叩いたかのような景気のいい音が巻き起こり、うわんぅわんと、
コンクリートで形成され長く伸びた円柱状の地下空間に反響し、反響し、そして反響した。
やがては、鳴り響いた金属音は徐々に空気に溶け込み、あたりは静けさに支配されていった。
 
 ―――にげろ  
 静寂を打ち破り、誰が最初にそう口にしたのか。
 鎧の怪人二人の戦いに翻弄されていた哀れな都民の皆さんは、その言葉を皮切りに
アリの子を散らすかのごとく四方八方へと走り出した。タチの悪い夢のような状況から逃れる為に、
自分達の常識の世界に戻る為に。
 
 だが、悪夢はココからが本番だった。
 
 唐突に帝都の大地が大きく揺れ、逃げ惑う人々の足をとめた。
 続けて「をぉーっほほほほほほほほほほほほほほ!」と言う不吉な笑い声が
じんわりと地中から染み出し、皆の心を恐怖で縛った。
 そして、大穴の淵で鎧の怪女の様子をうかがっていた黒岩都知事候補は己が行為の結果を見た。
白銀の大甲冑の首から上はかるくへこみ、さらには180度捻れている―――いや、鉄片が当たった
衝撃で兜がぐるりと回転し、逆向きにハマってしまったのだ。あれでは『中身』は何も見えまい。
 
 「ええい! アヤシゲな邪術を行使しおってからに! 真っ暗じゃございませんの! 
男だったら、この様な小細工に頼らず、正々堂々と勝負なさいな!!」
 どうやら、正義の聖戦士は己が状況に気づいていないらしい。必勝の決意を相手に向かって告げる
ものの、相手に突きつけている(と、本人は思っている)その太い指はあさっての方向を指している。
 
「されど、この小早川奈津子を見くびってもらっては困りますわ。たとえアタクシの
両眼から光を奪おうとも、心に灯る正義のともしびまで消す事は出来なくってよ!!」
 極東のジャンヌ・ダルクはそうのたまうと、変形した兜をぶるぶると震わせ、見えない
はずの顔面をきょろきょろと四方に向けた。その行動は小早川奈津子の巨体とあいまって
餌を探す灰色熊を連想させた。

53 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/06(日) 23:57

> 52 (上の続き) 

「をーっほほほほほほほほほ! 嗅ぎつけましたわよ、薄汚い二等民族の匂いを!
どんなに姿をくらまそうとも、その身に染み付く下賎の香りまでは消し去る事が
出来なかったようですわね!」
 どうやら匂いを拾っていたらしい。実に恐るべき嗅覚だが、ここは下水管である。
雨水用で生活廃水が流れていないとは言え、空気はよどみ、悪臭がこもっている。
 
 「さあ、参りますわよ! 覚悟おし! 観念おしおし!!」
 だから、正義の聖戦士は黒岩の匂いのついた水の流れてきた方向―――つまり、黒岩の事務所
が入っていたビル―――に向き直り、水しぶきをあげつつ狭い下水管の中を爆走した。
 だが、先に進むほどに徐々に下水管は狭くなり、とても小早川奈津子の巨大な肉体は
通り抜けられそうにないようにみえる。
 
 しかし
 「をほほほ」 ごつん。がらん。
 小早川奈津子が鉄篭手に包まれたその手を振るうと、コンクリートで作られた壁が
煎餅の様に砕け、彼女のサイズに合わせて拡張されていく。
 
 「をほほほほほ」ごつん。がらん。「をーっほほほほほほほほ!!」ごつん。がらん。
 
 小早川奈津子が拳を振るうたびに帝都の大地は鳴動し、彼女が通路を拡張するたびに
地上のアスファルトは割れ、モグラが通った跡のようなこんもりとした盛り上がりが
大地に形成されていく。
 
 誰かが叫んだ。喚いた。泣き声をあげた。
 この地に住む者にとって地震は日常でもあるが、同時に最大の恐怖の一つでもある。
絶え間ない鳴動が歴史の教科書でしか知らなかった大震災を、人々に強く思い起こさせた。
 
 わずか十数秒のうちに大地の隆起は30メートルほど伸長し、爆発で大きな穴の開いた
ビルに到達せんとしていた。

54 名前:黒岩省吾 ◆vQsChIjITA:2003/07/06(日) 23:59

>>52>>53 小早川奈津子VS黒岩省吾 『票田のブルドーザー』
地面が、大きく揺れた。
たったひとりの女の力が、大地震を巻き起こしていた。
黒岩の知識の中には、こんな事態は到底入っていなかった。
もちろん、この事態への対処法も、だ。
黒岩の精神は混乱と阿鼻叫喚の渦の中に揉まれ、たったひとつのことしか考えられなかった。
 
すなわち―――――

55 名前:黒岩省吾 ◆vQsChIjITA:2003/07/06(日) 23:59

>>54
                 , '"    "' 、
               /            ヽ、
              ∧  _,,.、-‐―っ.     ヽ
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             ヽ        /        |
              li、 -‐―、 〈     .   | 
              |_j   ______ ヽ       |
                |/   ^`='    ゙ 、     |
               / く         ヽ, ,へ/
どうすればいいんだ  `iー' ヽ、   ノ    j6/
                 }ー-、_ ,  l     '/
                |`ーイ  j      /
                  __|     _、-ー' l 、
    _,,...-‐-''^^~´ ̄/ i`ヽ_ -'     | |`ヽー-- 、
  /          /  |  ヽ        | /  ヽ   `ヽ、

56 名前:黒岩省吾 ◆vQsChIjITA:2003/07/07(月) 00:00

>>55
―――――それだけが、黒岩の思考を埋め尽くしていた。
  
だが、唖然としている暇はあまりないようだった。
爆破の衝撃で脆くなっていた、かつて黒岩相談所があったビル。
それが怪女の起こした地震によって、順調に傾き始めていたのだ。
 
さらなる崩壊に巻き込まれる愚を犯すつもりは毛頭ない。
黒岩は暗黒騎士の姿を解き、スーツ姿に戻った。
そして、混乱の渦の中から颯爽と―――――逃亡した。

57 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/07(月) 00:03

>54 >55 >56 小早川奈津子VS黒岩省吾 『票田のブルドーザー』
 
 愛の聖戦士は地下を掘り進んで、掘り進んで、掘り進み、そして地上では
アスファルトが砕け、石畳が舞い上がった。をほほほほほという奇声とともに
地上も地下もずたずたに破壊され、さながらモーセが紅海で起こした奇跡のごとく、
大地は裂け、そして陥没していく。
 
 そして、とうとう、いまや息も絶え絶えと言った風情でようやく立っている
半壊したビルの根元に怒れる土竜が到達した。………そう、到達してしまったのだ。
ビルに突き当たった生ける地割れは、一瞬動きを止めたかのように見えたが、
ぶるり、と先頭を震わせ、地上に土煙を舞い上げたかと思うと、ビルに大悲鳴を
上げさせつつ、その身を強引にビル内に挿入してしまう。
更には、頭のてっぺんから足のさきまで響くような、ぴしり、としか
形容できない無気味な音がビル全体から発せられた。
 それは、鳴るはずの無い音だった。鳴ってはならない音だった。
 
 やがて、ビルの地下室のほうから、がんがんがんと、力強く階段を駆け上る音が地上に届き、
白銀の――いや、土にまみれた黄土色の戦士が地上に三たび降臨した。
 
 地下を掘り進んでいた際に、何かに引っ掛けていたようで、
小早川奈津子の兜は外れており、汗や下水と言った、たっぷりの水分で
クレンジングされ、厚化粧のそげ落ちた見るも麗しい素顔を現世に
さらけ出してしまっている。今の彼女の美しさの前ではメドゥーサさえも
恐れ入って石化してしまうことだろう。
 
 「プリンセス・ナツコーの大奇術、名づけて『ネルガルからの生還』ここに、大・成・功!!
さぁ、皆のもの、拍手を! 拍手を! コレほどまでの大奇跡を目にしたソナタ等は十年は寿命が
伸びること間違いなしでしてよ、をーっほほほほほほほほほ!!」
 
 ―――と、聞く者の寿命を十年は縮めそうな声でそう宣言した人類の戦士は、
不思議そうにあたりを見回した。彼女を称えるべき歓喜の声がまるで聞こえてこないのだ。

58 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/07(月) 00:04

>57 続き
 
「………おや? 誰ぞおらんのかえ?」
 
 おかしなことに、帝都の住民はこのビルを中心とした半径300メートルの区域から
消えてしまっているようだ。そればかりか、彼女の鋭い嗅覚を総動員しても、倒すべき
二等民族、黒岩省吾の気配を捉えることが出来ない。
よって小早川奈津子はこう結論付けた。
 
「ええいっ、おのれおのれっ、なんたることですの! あの男っ、アタクシの得票を
奪って逃げましたわねっ! アタクシがアンダーグラウンドにおいて勘案辛苦に
耐えている隙を狙ってこのようなことを起こすとは、何たる悪辣! 何たる不逞!
小早川の名において、決っっっして逃がさぬぞよ! ぞよぞよ!!」
 
 彼女の偉大なる頭脳が、上方から帝都を俯瞰することを提案するが、
さきほどの衝撃で上階への階段は崩れてしまって使えない。
 しかし、その程度でくじけてしまう愛と正義の美女戦士ではない。
その白魚のような右手にはめられた銀色に輝くガントレットをひらめかせると、
ざしゅり、と音を立てて壁面に深々と突き立てた。ついで、左手もそのやや上方に
突き立て、右手、左手、右手、左手、右手、左手、と、繰り返し繰り返しその手を
コンクリートの壁にぶっ刺しながら、凄い勢いで壁面をにじり登っていく。
 
 あっという間に屋上にたどり着いた白銀のキングコングは、ぐるぐると首から上を動かして
憎っくき仇敵の姿を捜し求める。こういうときの小早川奈津子の視力は獲物を探す
マサイ族をもはるかに凌駕する。逃げ惑う群衆にまぎれ、スーツ姿に戻った黒岩を
見つけるまでに10秒とかからない。
 勝利を確信した彼女は、東京中に響き渡るのではないかと思うような大音声で高らかに宣言した。

 「無様、ブザマですわね黒岩省吾! この程度のやりとりで、アタクシに恐れをなし、
おめおめと逃げ帰るようような根性では、この国のマツリゴトに携わる資格なし!!
クニに帰って負け犬どもと傷をなめあうがよろしくってよ、をーっほほほほほほほほほほほほほほほ
ほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほ!!」
 
 
―――――そして、その笑い声が決定打だった。
  
 

59 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/07(月) 00:05

>58

(現在地:屋上『だった』ところ)
―――ビルが、崩壊をおこし、愛と正義の美女戦士を飲み込んだ。

  __∩__
 (__   __)
    / /
   / //ヘ /\
  /  ノ__ノ\\丿
 //  //\\
  ̄  //    ̄
    し  ̄ ̄ ̄ ̄)
      ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

60 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/07(月) 00:05

>59
(現在地:たぶん18階くらい)
―――爆薬によってどてっぱらを吹き飛ばされ

    /7   
    .〉〉 
    〈〈  
    .〉〉 
    〈〈  
    .〉〉 
     V

61 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/07(月) 00:06

>60
(現在地:きっと15階かな?)
――――基礎部分を粉々に破砕され
  _  ______
 ││(_______)
 ││ ___| |__
 ││(_______)
 ││     .││
 ││     .││
 ││    ( α\へ
 ││    \__ノ\.\
   ̄            ̄

62 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/07(月) 00:06

>61
(現在地:12階位だったら良いな)
―――側面にはミシン目のように連続した穴をあけられた、
  _  ______
 ││(_______)
 ││ ___| |__
 ││(_______)
 ││     .││
 ││     .││
 ││    ( α\へ
 ││    \__ノ\.\
   ̄            ̄

63 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/07(月) 00:07

>62
(現在地:7階くらいということで)
―――そんな、このビルが

  _  ______
 ││(_______)
 ││ ___| |__
 ││(_______)
 ││     .││
 ││     .││
 ││    ( α\へ
 ││    \__ノ\.\
   ̄            ̄

64 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/07(月) 00:07

>63
(現在地:3階って事でいい?)
―――いままで持ったと言うのがまさに奇跡だったのだ。

  _  ______
 ││(_______)
 ││ ___| |__
 ││(_______)
 ││     .││
 ││     .││
 ││    ( α\へ
 ││    \__ノ\.\
   ̄            ̄

65 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/07(月) 00:08

>64
(現在地:1階っつーか地上の裂け目)
―――こうして、悲しむべき事に小早川奈津子は

  _  ______
 ││(_______)
 ││ ___| |__
 ││(_______)
 ││     .││
 ││     .││
 ││    ( α\へ
 ││    \__ノ\.\
   ̄            ̄

66 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/07(月) 00:08

>65
(現在地:そしてガレキの中)
―――あわれにも帝都の人柱となってしまったとさ。

    /7  /7 
    //  // 
   //  //  
   ミ  ミ  
  0  0

67 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/07(月) 00:09


(現在地:再び地下からこんにちは)
 
 
    『失礼ですわねっ!! まだ生きていましてよ!!』
 
 
 

68 名前:黒岩省吾 ◆vQsChIjITA:2003/07/07(月) 00:11

>>67 小早川奈津子VS黒岩省吾 『票田のブルドーザー』  エピローグ

よう! 俺、名探偵の、涼村暁さ〜!
黒岩を都知事にしないために、小早川ってこわーいおばはんに手を貸してたわけだが……。
なんと、俺の作戦はそれだけではなかったのだ〜! 
この俺も実は都知事に立候補してたわけなんだな〜。
 
都知事としての公約は消費税廃止! 週休4日制! さらに国民全員にお小遣い支給と来たもんだ!
まさに名探偵の俺の優れた脳細胞が産み出す、パーフェクトな公約ってわけだな〜!
そう……そのパーフェクトな公約の結果!
見事! この俺は都知事に当選を果たしたのだ〜!
 
「暁……お前は本当にそんな公約のおかげで当選できたと思っていたのか!?」
 
モチのロンだ!
速水のヤツはなんかため息ついてやがるが、気にしなくていいですよ〜!
俺の公約のおかげに決まっているのだ。
 
決して黒岩のヤツと、他の候補を支持してたおばはんが戦ったりしたせいじゃないぞ!?
その戦いで街はひとつ壊滅状態になって、だぁれも黒岩ともう1人に入れなかったってのは事実だ。
だが、その戦いがなくたって俺は当選していたに決まり過ぎてる!
なぜなら俺は……スーパーヒーローだからだ!
 
ああ、今のはこう、びしっとポーズを取ったわけよ、ちゃんと撮ってくれてる?
うむうむ、撮ってくれたかありがとー!
 
「……こんなヤツが都知事なんて……俺は、俺はモーレツに不安だ!」
 
何言ってんだ速水!
俺が都知事になったからには、東京もちょお安心だぜ!
しっかし、都知事の俺もやっぱ、キマリスギだぜぇ!
 
「―――――以上、都知事に当選された涼村暁氏のコメントでした」
 
ブツッ。
そこで、唐突にそのテレビ中継は切られた。
テレビのスイッチの先には、青筋を立て、ただ怒りに身を震わせる黒岩省吾の姿があった――――
 
(HAPPY END―――――、か!?)

69 名前:高木由美江(M) ◆2xFanatics:2003/07/07(月) 00:15

アン・フューリー(M)VS高木由美江(M)

>31 >32

綺麗には落とせなかったが、一筋の肉と皮でしか繋がっていない。
首は、重みですぐに落ちた。
握った右手の間から、紅い雫が落ちる。指の肉が斬れていた。
重力に引かれている柄付きの刀身を左手で受け止めた瞬間。


シスターが、欠けた。


右頬。喉笛。上腕。胸。腹。その中身。太腿。脛。
全て同時。
次の瞬間には殆ど無くなっていた。

「―――ちィッ!」

こっちにも来た。
触手の波が、餌を求めて殺到する。
笑ってやった。

両腕が描く弧は網目模様を空間に刻み、ぶつかった触手は残らず裁断された。
向こうが波ならこっちは斬撃の壁だ。
とは言え、膨れ上がった肉隗を仕留めるには足りない。

―――燃やすか。

触手が絶えると同時に飛び退く。
怒っているのか飢えているのか知らないが、あの食べっぷりなら逃げて見せれば追って来るに違いない。
念の為に右手の刀身を投げつけ、血を撒きながら外へ走った。

70 名前:X月○日付け国民新聞【社説:天命神語】より抜粋 ◆id4WoHoho6:2003/07/07(月) 00:24

小早川奈津子VS黒岩省吾 『票田のブルドーザー』 レス番まとめ

新聞は社会の公器である。本欄もそのことは十分理解しているつもりであるが、
本日に限り本欄が私情をさしはさむ事を読者の皆様がたにお許し願いたい。
混乱を極めた今回の東京都都知事選はまさかの結果となった。
 
まさに、波乱含みの一戦だったと言っても過言ではない。
先日、千代田区にて発生したビル倒壊事件は覚えておられるだろう。
信じがたい事ではあるが、有力候補として目されていた黒岩氏、中道氏の
両者がこの事件に関わっているとの嫌疑をかけられたのだ。
両陣営とも事件への関与を否定しているが、この醜聞が致命傷となり
両者とも今回の得票を大きく落す事となった。(事件は現在警察によって捜査続行中)
 
結果として知事選は泡沫候補の潰しあいとなり、無党派層を上手く取り込んだ
今回の『アイドル都知事』誕生の次第となった。
その、涼村新都知事の予算を度外視しすぎた非常に独特かつユニークな公約は、
論議を呼んでおり、都議会の反発は必至と見られている。
 
(本日の朝刊は統一地方選の為、特別紙面による編成となっております。
 関連記事は以下のとおり)
 >29 >30 >33 >34 >35 >36 >37 >38 >39 >40
 >41 >42 >43 >44 >45 >46 >47 >48 >49 >50
 >51 >52 >53 >54 >55 >56 >57 >58 >59 >60
 >61 >62 >63 >64 >65 >66 >67 >68
 
(また、本誌へのご意見ご感想などございましたら、以下の住所にて、投書など承っております)
http://www.tpot2.com/~vampirkrieg/bbs/test/read.cgi?bbs=vampire&key=1053814090
 
http://www.appletea.to/~charaneta//test/read.cgi?bbs=ikkoku&key=1035898557

71 名前:アン・フューリー(M):2003/07/07(月) 00:46

アン・フューリー(M)VS高木由美江(M)

>69

 廊下を怪物が進む。がさがさ、ばきばき。
廊下に入りきらない大きさのそれは、木造の床や漆喰で出来た壁を破壊しながら進む。
頼りにするのは血の匂い。その先に食べ物が待ち受けているのに違いは無いから。
 だが、ちょっとしたアクシデントが怪物を襲った。子供たちがその場に現れたのだ。
夜眠れと言われて、素直に寝る事が出来ない年頃である。それでもやっとまどろみかけたと思ったら、
次に聞こえてきたのはアンの悲鳴、院長先生の部屋で聞こえるどたばたした音、そしてとても大きな物体が
物を壊す音。その頃にはもうすっかり孤児たちは目を覚ましていて、好奇心と冒険心が強い何人かが
様子を見に来た。そしてそれは、何人かの子供たちには最悪の結果をもたらすことになった。
 さて、怪物の目の前には果たして数人の子供たちがその場にいた。
メインディッシュの前のオードブル程にはなるだろう。無論、美味しくいただいた。途中で悲鳴を上げられ、
中には逃げていく子もいた。一瞬追うべきか逡巡したが、すぐに結論は出た。
子供は食べるところが少なくて脂が少ない。やはり、程よい大きさの女のほうがいい――そう、判断した。

72 名前:高木由美江(M) ◆2xFanatics:2003/07/07(月) 01:21

アン・フューリー(M)VS高木由美江(M)

>71

悲鳴が聞こえる。
ボブにクリス、それとケイト。
大人しく寝ていれば死なずに済んだ――いや、それ以前にあの化け物が悪い。
全部。
全部だ。あの化け物が悪い。

ガレージに辿り付いてすぐ、隅にあるドラム缶が目に付いた。
蓋を開ける。当たりだ。量は半分ほど。
蓋を戻したドラム缶を引き倒して蹴り転がし、刀を口に咥えて側にあったジェリ缶を両手に掴んで外に出る。
もう一度ドラム缶の蓋を開けて正面玄関の方へ蹴った。
中身があふれ出てコンクリートに染みを作り、独特の臭いが広がってゆく。
ガソリンだ。
ジェリ缶の一つを使ってラインを引いて、準備は完了した。
思いの他掛かった時間を埋め合わせたのは、子供たちの身体。

もっと上手くやればこうはなら――――

今更遅い。
幾らそう思っても、死んだ人間は生き返らないし時間も戻ったりはしない。
自分に出来る事をするだけだ。



                                   確実に殺す。

73 名前:アン・フューリー(M):2003/07/07(月) 01:32

アン・フューリー(M)VS高木由美江(M)

>72

 敷地の外に出る。なおも血の匂いを追いかけると、ようやく発見する。何かの細工をしていると言う事は、
怪物の知能では判別できなかった。外に出て開放され、ますます巨大になった怪物は、由美江に襲い掛かる。

食べたい。食べたい。こいつを食い尽くしてやりたい。

 そこにあるのは復讐心や怒りではなく、純然たる食欲だった。
相変わらず緩慢な動きだが、しかし絶対的質量を以て彼女を攻撃する。触手の一本が彼女の腕に巻きついた。
後は引き寄せ、口の中に入れるだけだ。

74 名前:高木由美江(M) ◆2xFanatics:2003/07/07(月) 02:24

アン・フューリー(M)VS高木由美江(M)

>73

なまじ見えていると、じれったくなる遅さだった。
苛々する。
止めている気持ちが決壊しそうになる。
それでも待った。

「……何人食った?」

異形の口の中に消える足が。
シスターの声が。
濃さを増している血の臭いが。
乱杭歯に絡む服の名残が。


殺意を、かき立てる。

武器を持つ手に絡んだ触手を、持ち替えた刃で斬って落とす。
そのまま落とした。

折れた断面がコンクリートを打つ。
火花が飛んで、炎の蛇が地を這い、紅い竜になった。
足りない。
足元のジェリ缶を拾い上げて投げた。蓋は開けてある。
化け物は、宙を舞うそれにすら無節操に噛み付いた。
間を置かず零れ伝うガソリンにも火が移って、肉隗は炎の塊の様に見えた。

「お前等には地獄も勿体無い。魂まで焼かれて消えろ」

これは葬送の火だ。
そして、鎮魂の火でもあった。

75 名前:ワラキアの夜:2003/07/07(月) 02:52

―――初見になるか。
なに、吸血種などが闘争する場があるとの噂が流れたのでね、この場に具現したのだが―――
タタリとなるにはこれほど相応しい場もあるまい。
素晴らしい役者達と素晴らしい舞台、これほどの条件が揃った場で具現せぬ方がおかしいというものだ。
私もこの舞台で躍らせてもらうとしよう。

以下テンプレだ。

出典 : MELTYBLOOD(原作:月姫)
名前 : タタリと呼ばれているがね、ワラキアの夜の方が優雅であろう?
   : ちなみに人間であった時の名はズェピア・エルトナム・オベローンだ。
年齢 : 我が初舞台から数えれば今年で526年目となる。
性別 : 男だ。タタリ次第では女性にも為れるがね。
職業 : 死徒二十七祖bP3
趣味 : 一夜限りの舞台、感情があり筋書きがないドラマを味わう
恋人の有無 : 一夜限りの存在にそのようなモノは不要であろう。
好きな異性のタイプ : ―――無粋な。現象となった身にそのような事を聞くとは。
好きな食べ物 : 人間の血  人間ならば老若男女人種は問わぬ。一滴残らず飲み尽くそう。
最近気になること : 第六法に打ち勝つ方法
一番苦手なもの : 開演前の舞台裏に乱入する無粋な人間
得意な技 : タタリと為った対象の技
     : 私本体としてならばバッドニュース(ライ)とレプリカントコーディネイターだ。
一番の決めゼリフ : 「カット」        
「キ……キキ…キキキキキキ!タベロタベロタベロタベロ、骨ノ髄マデ食イ尽クセ!
 救いナンテありはシナイ 娯楽なんてアリハしない、ツマらないツマラナイ人間ナンテツマラナイ!
 ツマラナイクダラナイ、ウバイアイコロシアイ!ソウシテ自滅シロ自滅シロ、ツマラナイナラ自滅シロ!
 キ、キキ、キキキ、キキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキ――――――キキ、キ、ひ、
 ひひひ、あはははははははははははは!」
将来の夢 : 第六法に挑み、打ち勝ち、「滅び」を回避する事
ここの仲間たちに一言 : これほどの逸材が揃っている舞台も珍しい、存分に味わわせてもらうとしよう。よろしく頼む。
ここの名無しに一言 : 舞台がある、名優がある、血肉がある、闘争がある。足りないものは観客だけだが―――
            なに、それは君らが受け持つのであろう?

76 名前:アン・フューリー(M):2003/07/07(月) 22:33

アン・フューリー(M)VS高木由美江(M)

>74

 火。火。火。炎が怪物の体を燃やす。ごうごうと大きな音を立てて燃え盛る。
肉が焼ける匂いが辺りに漂う。それは、ちょうど護謨を燃やしたような悪臭だ。
悶える怪物。だが炎を振りほどく事は出来ず、なおも燃える、燃える、燃える。
炎に焼かれながら、なおも触手を伸ばすが、全て届かず由美江に切り払われた。

 そして。長い時間を掛けて、怪物はただの消し炭へとなっていた。残ったものは灰ばかり。
怪物には骨はなく、犠牲者の骨もまた消化されていたらしい。その灰も、風に吹かれて消えた。
これで全て決着がついた。何もかも。由美江はそう思った。だがしかし、由美江は見逃していた。
全てが燃えるほんの少し前、闇に消える一つの影があった事を。その影は孤児院へと向かっていた。

77 名前:アン・フューリー(M):2003/07/07(月) 22:34

>76

 身体が熱い。何も考える事が出来ない。この肉体を維持できない。
ギルは炎に身を焼かれながら、漸く意識を取り戻していた。覚えているのは、あのシスターが
アンの首を切り落としたところまで。その瞬間から、自分の意識が全くなくなっていた。
そうして気付いたら火の海の中。何か理不尽なものを感じないでもなかったが、
今はどうだっていい。一番の関心事は、この状態をどうやって切り抜けるか、それだけだ。
今となってはこの巨体は邪魔なだけだ。どう足掻いても火を振り切れない以上、遠からず死がやってくる。
――ならば。ギルは触手をたたずんでいる由美江に向けて振るった。全て迎撃されるが、その隙に
身体の一部分を剥離させる事に成功する。そうして、人型となったギルは孤児院に向けて走っていった。

 月の闇の中、アンの首が転がっている。その表情は。――笑っていた。にやにやチェシャ猫のような
笑みを浮かべたまま、凍り付いている。何について笑っているのか、もう誰にも解る事はない。
そして、窓から侵入してくる一つの影。シルエットから、人間ではない事がわかる。
 それはギルだった。はっきりと顔に死相が浮かんでいる。もともと彼は単体で動けるように出来ていないのだ。
ここまで来られたのだって奇跡に近い。
「ああ――アン、アン! 全く、なんだってこんな事に――畜生! ちくしょう……」
そうして、一歩一歩アンの生首に近づいていく。後、少し。あと少しでアンに手が届く――

「Amen(エイメン)」

 その祈りと銃声と共に、ギルの生命活動は全て停止した。


――こうして、スローター・ハウス孤児院を襲った惨劇の一夜は幕を閉じた。

78 名前:高木由美江(M) ◆2xFanatics:2003/07/07(月) 23:44

アン・フューリー(M)VS高木由美江(M)

>76 >77

もう数え切れないほど聞いた、何時もの銃声。
消し炭を一瞥してそちらへ向かった。

「ハインケル、随分遅かったねぇ」

足元の人型を見つめている黒い背中に、そう声を掛ける。

「そもそも由美子が逸れるのが悪いんだろう?
 わざわざこんな所まで拾いに来てやったんだ、少しは感謝してもらいたいね」

「う……」

それを言われると立つ瀬が無い。

「まあ良いさ。で、これは一体何?」

足元を見つめたまま、ハインケルが言う。
視線の先にはアンの首と――多分、ギルとか言った化け物の片割れの死体。

「化け物だよ。由美子がそいつらの食事を見ちゃってね。殺した」

「食事?」

「人間だよ。ここの子供を食ってた」

ようやく降り返ったハインケルが、今度はこっちを見て固まる。
具体的に言うと右手の日本刀。

「折られたのかい?」

「え? ああ、いや、そのなんだ。……自分で折った」

「な!? 何でそんな事するんだこの馬鹿、あたしまで局長に色々言われるじゃないかッ!」

「しょうがなかったんだって、流れでそうなっちゃったんだから。
 大体、ハインケルがもっと速く来てれば、」

「責任転嫁するなッ! 元はと言えば由美子が逸れるのが悪いんだろッ!」

「………………!」

「……!」



ギャフン
END.

79 名前:高木由美子(M) ◆2xFanatics:2003/07/08(火) 00:12

あ、あの局長? これ、報告書です……



アン・フューリー(M)VS高木由美江(M) レス番纏め

前スレ分
http://www.appletea.to/~charaneta/test/read.cgi/ikkoku/053007243/341n

>5 >6 >7 >9 >11 >12 >13 >14 >15 >16 >17 >18 >19 >20 >21 >22
>23 >24 >25 >26 >27 >28 >31 >32 >69 >71 >72 >73 >74 >76 >77 >78



は、はいっ? この書類の山を持って行け?
これって始末書ですよね……こんなにどうするんですか?

「全部お前の分に決まってるだろこのバカッたれッ!
 三日以内に提出出来なきゃ暫く減給だッ!!」

80 名前:夏祭り会議所等案内:2003/07/11(金) 22:30

 23時丁度より、夏祭りを開催いたします。

 会議所はこちらです。
 http://www.tpot2.com/~vampirkrieg/vampchat/chat2.html
 チャット環境のある方はこちらにいらしてください。

 ない方は下記のスレッドに書き込んで下さい。
 http://jbbs.shitaraba.com/game/bbs/read.cgi?BBS=1721&KEY=1055344458
 また、祭りの概要、説明等もあちらに書いてあります
 (船内構造図>75、夏祭り特殊ルール>87)

81 名前:夏祭り 全体導入:2003/07/11(金) 22:51

 就航年 2002年7月。
 総トン数 28,860トン。排水量 13,000トン。
 全長 192.8m。全幅 24.8m。
 乗客定員 440人。
 乗組員定員、295人。

 客船、夜の女王号。

 それが神聖なる役目のために選別された――

 殉教者の船の名前だった。

82 名前:夏祭り 全体導入:2003/07/11(金) 22:55

夏祭り・全体導入
>81

 数日前、ヴァチカン。

「なぜワクチンの護送に彼なのですか?」

 そのワクチンの完成は、彼らの悲願といってもいいものだった。
 吸血鬼ワクチン。
 吸血鬼化の完璧な治療。
 それは古来より続いてきた闇の眷属との闘いに終止符を打ち得る、必殺の『兵器』だ。

「不満かい?」

 それを受けて、ヴァチカンは――法皇庁特務第13課イスカリオテ機関は、ワクチンの防衛に最強の兵を送った。
『聖堂騎士』『殺し屋』『銃剣』『首斬判事』『天使の塵』
 数々の二つ名をもち、彼の『不死の王』アーカードと真っ向から渡り合う戦闘のスペシャリスト。
 しかし、

「確かに彼は優秀ですが、警護役としてはあまりに不適任です」

 アレクサンド・アンデルセン。
 確かに優秀ではあるものの、その性格は護衛向きとはとてもいえない。
 以前にも護衛の任を踏み越えて、ヘルシングと激突しかけたことを、彼は鮮明に記憶していた。

「彼では、襲撃者が現れればワクチンごと船まで沈めかねない」

 言い募る老従者。
 その様子を見ながら、第13課課長マクスウェルは酷く楽しそうに、言った。

「だからだよ」

 空気が凍る。
 しかし一瞬だけ動きを止めた従者の様子に頓着するでなく、
 マクスウェルは手を広げ、まるで歌劇のように語ってみせる。

「今回の薬……吸血鬼に対する毒であったなら、私も諸手を上げて喜んだだろう。
 だが、薬と言うのがまずい。治療薬というのが実にまずい」

「……何故です?」

 芝居じみたマクスウェルの所作に、老従者は声を沈めて聞き返す。
 マクスウェルは身体を捻り彼の顔を覗き込むように見つめながら、一言一言噛んで含めるように続ける。

「一般に、『吸血鬼』というのは『死んでいる』だろう?」
「それは当然……」
「ならば治療というのは『死者の復活』に他ならないわけだ」
「はぁ……」

 要領を得ない様子の従者に、悪戯めいた声でマクスウェルは結論を告げた。

「復活、といえば誰の御業だね?」
「あ……」

 絶句する従者。
 無理もあるまい。
 もっとも有効であるはずの武器が、反教の証となりかねないと気付いてしまったのだから。

「……どうしますか?」

 従者の瞳に暗い光が宿る。
 それは信仰の為、女を、子供を、老人をさえ迷い無く殺す狂信の色。
 その狂色が、いっそ全て闇に葬ろうかとも語っている。だが、

「それはまさかだよ」

 笑いながらマクスウェルは首を振った。

「彼のワクチンは、ことによればあのアーカードをさえ銃弾の一発で屠ることを可能にする……
 それだけのイニシアチブを、捨てるのは嘘だ」

「ならば……?」

 持っている事が知られるわけにはいかない。
 破棄することもしない。
 ならば――

「だからさ」

 一層笑みを深くして、だがその瞳に従者と同様の、いやそれ以上の狂信をたたえてマクスウェルは笑う。

「いっそ船は沈んでしまって、薬が『行方不明』になってしまえば……なんて考えても、罰はあたらないだろう?」

83 名前:夏祭り 全体導入:2003/07/11(金) 22:56

夏祭り・全体導入
>82

 リスボンへの入港を3日後に控えて、
 就航1周年を迎えた夜の女王号ではパーティーが催されていた。
 中央、ダイニングホールではビュッフェ形式で食事が振舞われ、
 甲板では花火が打ち上げられはじめる。
 世界一巨大なバースディケーキの蝋燭。
 星空を切り裂いて、大西洋を白く染める大輪の花。

 そして、それが――
 皮肉にも開戦の狼煙となった。

84 名前:ブラザー・フィリポ ◆gxPyzUNAGI:2003/07/11(金) 23:03

夏祭り ブラザー・フィリポ導入
 
「……あーんらっきぃー!
 ったく、なんでこのオレ様ちゃんともあろう者が、こんな海のド真ん中でクソつまんねー護衛
任務なんかしなきゃいけねーんだYo?
 こーゆー地味な仕事は、あの糸目の陰険マタイの方がピッタリだと思いますYo、このオレ
様ちゃんは?」
 
 「クイーン・オブ・ザ・ナイト」号の船内レストラン。
 豪奢な衣装を纏い、最高級の料理に舌鼓を打つ乗客達。
 その中で、まるで機関銃のように罵声を吐き出し続けるその物体は、明らかに浮いていた。
 身長が異常なまでに低いのはまだいいとしても、酒樽のように突き出した腹とこれまた異
様に長い腕。胴体の上に乗っかった顔はウナギかナマズそっくりな上に、お誂え向きにその
肌は黒光りまでしている。
 身に纏っている修道服の袖に刺繍されている“神の鉄槌”の紋章が、(にわかには信じが
たいが)この物体が異端審問官であることを表していた。
 
 周囲から向けられる奇異の目もまるで気にならないのか、端から聞いている者にとっては
まるで意味不明の罵倒を、誰にともなく続ける物体──異端審問官ブラザー・フィリポは、思
い出したようにメニューを取り上げると、大声でウェイターを呼びつけ、注文した。
 
「ひつまぶし五人前、さっさと持ってこい!」
  
(……共食いかよっ!? しかも五人前!?)
 
 その心の声を口に出す勇気のある者が、彼を目撃したレストランの乗客の中にいなかった
のは、恐らく双方にとって幸いだったろう。
 すぐに運ばれてきた──如何なる客であろうと、注文された料理は出来る限り迅速に客に
お出しするその商魂は、まさに超一流と言ってよかったろう──料理を、くちゃくちゃと下品な
音を立てて咀嚼しながら、フィリポは更に続けた。
 
「それにしても、なんだってあんな奴らと一緒に仕事しなきゃいけねーのYo!?
 十三課のゲハハメガネも防疫修道会の鳥仮面も、このオレ様ちゃんのこと舐めてやがるだ
ろ!? いーや、絶対そうに決まった!
 まあいいや、万が一失敗したら、アイツらに責任全部おっかぶせてやるもんNe!
 オレ様ちゃんってやっぱり天才? 秀才? ぶしゃしゃしゃしゃっ!」
 
 ──噂をすれば何とやら、とでも言うのだろうか。
 ガードマンにワクチンの入ったトランクを預けた鳥仮面──ソリア防疫修道会七会士が一人、
「薬読」のアンナロッテがレストランに入ってきたのは、丁度その時だった。

85 名前:アレクサンド・アンデルセン(M):2003/07/11(金) 23:05

夏祭り アレクサンド・アンデルセン(M) 導入 
 
 不快と困惑、今の感情を端的に表すのならばこの二語に尽きるであろう。 
どうも教皇庁第一三課イスカリオテ機関局長、エンリコ・マクスウェルは政治的活動の方に 
その関心を裂きすぎているらしい。 
一言で言い表すならば、「賢しい」。 
 
 アメリカ大陸で活動する防疫修道会から「吸血鬼ワクチン」の完成の報を受けてより、 
その輸送手段及び搬送の際の護衛を任されたのは「異端審問局」と「第一三課」。 
教理聖省異端審問局との政治的駆け引きの上での妥協案である。 
船舶による輸送が提案されたのは「吸血鬼は流水を渡ることが出来ない」ため。 
異端審問局と一三課の合同任務になったのは「吸血鬼の万が一の襲撃に備える」ため。 
 
 船室の並ぶプロムナードを歩み始めてどれほどの時間が経ったであろうか。 
 
 防疫修道会から派遣されたのは「ソリア七会士」薬読のアンナロッテ。 
少なくとも彼の目にはまだ年若い少女に見えた。 
曲がりなりにも七会士の一員である、ただの小娘ではないだろうが吸血鬼との戦闘に 
耐えうるとも思えない。 
 そして恐らくは、彼の不快感の最大の原因であろう異端審問官、ブラザー・フィリポ。 
異端審問官とも思えぬ俗物振りに苛立ちを隠せず、「船内を探索する」と伝えて出たのが 
つい今し方のことである。 
 
 いや、少なくとも「探索」と言ったのは嘘ではない。 
ヤツらは必ず仕掛けてくる。 
狙うのならば船が沖へと出る今。 
 
 ヤツら。吸血鬼(ヴァンパイア)。墓から立ち上がった者(レヴナント)。夜族(ミディアン)。 
化け物(ミディアン)。MIDIAN。 
 
「ク、ハハハハハ…………」 
 
 長躯を漆黒の僧衣に包み、頬には未だ鮮やかに残る一筋の刀傷。 
『聖堂騎士』アレクサンド・アンデルセンは確信していた。 
今、このときこそ反キリストの化け物どもが蠢き出す時であると。

86 名前:薬読のアンナロッテ ◆SORIA7miU.:2003/07/11(金) 23:07

<夏祭り>薬読のアンナロッテ導入
 
「何度も繰り返しますが、このケースは大事なものなのです。」
 
無駄だとは思いながらも再び言葉を繰り返した。
私の名はアンナロッテ。ソリア修道防疫会では七会士が一人「薬読」を名乗っている。
 
今回の任は私の左腕に繋がれたケースにあった。
防弾、耐爆、耐腐食等々、知っている限りの加工を施されたこのケースを
守る事が今回の私の使命。
 
少し訂正しよう。
もちろん重要なのはケースではなくその中身だ。
 
私が狂血病を研究している過程で偶然に完成したワクチン。
そう。狂血病だけではなく「吸血鬼化」を完全に治癒するワクチンだ。
残念ながら、現状では大量生産どころか複製も不可能。
詳しい研究の為に、各組織から選りすぐりの者が集まる事となった。
 
輸送にも細心の注意が払われている。
ダミーの輸送班は二桁に昇り、本命のこのケースには少数精鋭ながら、
教皇庁と異端審問官の中でも屈指の護衛が付いている。
 
……性格面も考慮して欲しかったと言うのは、きっと出過ぎた願いだろう。
 
アンデルセン神父は独自に船内の「探索」に行ってしまったし、
ブラザー・フィリポは勝手に食事を始めている。
 
 
いい加減押し問答にも飽きたので、
渋々と僧衣の内ポケットから一束の鍵を取り出す。
全て同じものに見えるが、この中の一つが本物のケースの鍵になっている。
開け損ねても爆発などはしないので、単なる時間稼ぎのためのものだが。
そして、手錠の鍵もこの中の一つだ。
番号を目で確認し、見られないようにしながら手錠を外す。
 
「わかりました。お預けしますが、くれぐれも大切に扱ってください。
 それともう一つ。席は喫煙席でお願いします。」
 
船内は禁煙の場所が多く、少々苛々していたことは否めない。
アタッシュケースをボーイに手渡し、私は食事の席へ向かった。
 
(現在地:パーティ会場入り口。ワクチン所持中)

87 名前:ディートリッヒ・フォン・ローエングリューン:2003/07/11(金) 23:09

「ほらほら、ぼさっとしないで、新米君」
(人遣いの荒い人だなあ)
あ、挨拶がまだだったね、僕の名前はディートリヒ…これでも吸血鬼ハンターなんだよ、
まぁ・・・新米って言葉が先についちゃうけどね。

今回の僕の仕事は「師匠」の紹介で修道防疫会のお手伝いをすることさ、
何やら重大な荷物を極秘で運搬するのを護衛しろって、うーん、でも極秘任務ってのは僕には荷が重いよ。
アンナロッテさんの連れの人たちはみんなこわーい方たちばかりだしね。
アンゼルセンにブラザー・フィリポか・・・そう本当に別の意味で怖いよ。

と、芝居はここまでにしておこうか
僕の本名はディートリッヒ・フォン・ローエングリューン 薔薇十字騎士団が位階8=3 称号人形使い
これが僕の正体。

今回の僕の仕事は、さるクライアントからの依頼で、今僕らが運ぼうとしている、
荷物の中身をすり変えることさ、なぜそんなことをするのかは、守秘義務に反するから言えないけど、
何とすり変えるかだけは、こっそり教えてあげようか?
ふふ、僕が持っているのは伝染性・致死性の強い殺人ウィルスさ、これを本来の荷物とすり変えれば
どうなるかは分かるよね? 
あとは「帝国」の名前で犯行声明を出しさえすれば、これで後は彼らが勝手に転んでくれる。

まぁ、世の中誰かが得をすれば、その分割りを食らう人もいて、
僕らはそんな人たちのためにほんの少しだけ、ささやかながら力を貸してあげるのが仕事でね。
今回なんか楽な方だよ、と思ったんだけど・・・。

ふふふ、あそこにもいる、あっちにもいる・・・まぁ分かりきってた事なんだけど、
あいかわらず修道防疫会の危機管理能力の低さは折り紙つきだね、まぁ新大陸の野蛮人どもと付き合ってりゃ、
荒事以外、能がなくなっても仕方がないかな。
ともかくあちらこちらに流しのハンターやら、魔物どもの影が見えるよ、まったく”毒龍の王”も人が悪い。
生きて帰れるかなぁ・・・一応助っ人も雇ってはいるけどね。

ついついモノローグが長くなりすぎたようだね、まぁこれからどうなることやら、とりあえず、
我ら炎によりて世界を更新せん!!。

88 名前:ヴァンパイアロード他2匹(M):2003/07/11(金) 23:10

夏祭り ヴァンパイアロード他2匹導入
 
我等が王の命を受け、現世を探りに広く天地を渡ってより数年。だがその歴程は順風ならず。
不老不死を悲願とし、世界に散らばる異端者どもの結社。
南米に潜み、戦を求める狂戦士の一団。
幾多の眷属、数多の狩人。我等すら殺しうる新たな武器。世相はかくも変容していた事実に軽い驚愕すら覚え。
だが此処まで受けた艱難辛苦、全ては不死王ブラムス様が為に。
そう、拝命を受けた我々は言うなれば王の耳であり目。
即ち世の百聞を余さず捉えるのが、ヴァンパイアロードである私の使命であり。
天地の世相ことごとくを余さず伝える事こそ、ノーブルヴァンパイアである同胞の役目が故に。
 
「…私は如何した、私は」
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・

「「―――――鼻?」」
 
とまあそこで影から肘を打ち付けるエルダーヴァンパイアはさて置き。
密やかに鳩尾へクリティカルヒット風味ですが、不死者たる我等にとってはそれもまた戯れ。
髪と礼服の色以外、まるで三つ子のようにそっくりだという密やかな世迷言も黙殺しつつ。
 
さて、既に主たる情報は残った同胞と共に送りつけ、後は悠々自適と帰路につくばかりの頃、
その話を聞いたのは「騎士団」を名乗る男からで御座いました。
それとは吸血鬼の元の人間へと戻す抗体…即ち、純正なる我々にとっては致命の猛毒そのもの。
ならばこれも何かの縁。そのワクチンを奪い、「王」への手土産とするのもまた一興。
そう、希望を奪い去り絶望を齎してこその不死者。これは闇に生きる我々の本領に他ならず。
 
フフ…目を移せばそこらかしこに同胞の影。
ヴァチカンなる信奉者の兵達に紛れ、後ろ盾なき狩人の類もちらほらと。
成る程成る程、我等の天敵たる猛毒の簒奪、皆考えることは同じということか。
 
「ふむ、しかしこのローストビーフは随分と美味」
「いやいや、この伊勢海老の野趣溢れる味の前では」
「はっはっは、このロマネ・コンティの芳醇さも知らずして何をおっしゃる」
 
贅を凝らした料理に舌鼓を打ち、美酒に酔いしれ堪能する。
いやいや、正に法悦、正に極楽。
次はカジノ辺りにでも繰り出してみたいものですなあ。

            ―――――イエ、ケシテアソンデルワケデハアリマセンヨ?
 
(現在地:パーティ会場)

89 名前:ドクター・ウェスト ◆sODrWEST1A:2003/07/11(金) 23:12

夏祭り
「なななななあああああああああああああんてこったぁ!?であるか!?
 吾輩以外にもそのような天才がいるとは!!」
  
吾輩はドクターウェスト、ちょっぴりお茶目な2○才!!
今日も今日とてブラックロッジでステキな発明を繰り広げている真っ最中!
 
「博士ェ〜、早くしないと船が出るロボ〜」
 
耳の長い神秘的な衣装をつけた美少女が、メートヒェンっぷりを見せ付けるかのように、
吾輩に向かって叫ぶのであぁる!
 
そう、この少女こそ吾輩の最高傑作の一つ、魔術理論を導入した愛天使。
闘争の化身、マインドコントロールを外された女神!人造人間エルザであぁる!
そこ!桃とかスケヒロとかふぁちまとか言ってはいけないのであぁる!
大人の世界には色々あるのであぁる!
 
そんなことはさておいて、吾輩が何故急ぐのかと言うと。
吾輩の所属しているブラックロッジ。
 
そこは悪の殿堂魅惑の世界お一人様30ドルポッキリなのであぁる!
そう、(サイタマサイタマ)して悪の魅力たっぷりのブラックロッジにはまだまだ敵は多いのであぁる。
吸血鬼。それは闇の世界の最古参。
幾千の魔術師ですら、足元に及ばない力を持つ存在。
まともに当たれば、大導師様はともかく側近の七人の大幹部アンチクロスですら脅威。
 
その吸血鬼をただの人間に変えるワクチンが発見されたと言うではないか!
ブラックロッジの新たな資金源としても、組織を拡大し邪魔者を排除するにしても!
 
吾輩の知識欲を満たすにしても最高のものではないか!!
 
そう、吾輩は吾輩の為にもこの船に乗らねばならなかったのであぁる!
 
「博士ぇ〜ダーリンも呼べばよかったロボよ〜」
エルザが船上のプールで泳ぎながら言うのであぁる。
 
「大十字九郎が来たら色々怖いのであぁる!
 ともかく、エッルッザよ吾輩たちもパーティーに行くのであぁる!」 
 
吾輩も、船の警備と設備のあまりに杜撰な所に腹を立て、
船に思わず吾輩の最新理論をぶち込んだのは今となってはいい思い出であぁる。
 
そういえば他にも同じような事をしていた者が居て、
背中に『狂的科学部』と書いてあったような気がするがまあどうでもいい事であぁる。
 
吾輩は鋭気を養いつつワクチンを手に入れる機会を、
虎視眈々と見つけようとしていたのであぁる。
 
(現在地:プールからパーティー会場途中の回廊)

90 名前:漆黒の王子(M):2003/07/11(金) 23:14

夏祭り
――――――下らん。まったく無粋だ。
私はそう思った。血に狂えるからこその吸血鬼。
私の美学に沿わぬ存在に苛立ちを覚えていた。
 
私の名はヴォルグレイ・アーカム。
人は私のことを漆黒の王子と呼ぶ。
 
吸血鬼の存在を根本的に否定するワクチン。
その存在は私を苛立たせる。私の力を、私の存在を消そうとするものは許せなかった。
 
しかし私の上位者たる鉄の姫、サレイアは今までは沈黙していた。
 
我らが組織、『四姉妹』の仇敵であるヴァチカンが動くまでは。
敵の存在を察知してからの行動は流石に素早かった。
サレイアは私に異形兵数名と幾つかの道具を預けると、
ニューヨークを出るクイーンオブナイト号へ私達を隠密裏に船へと忍び込ませる事にした。
異形兵は宝石の面々、青真珠のメルヌと海鳴石のサーリーンが欲しかった所だが、
あの二人は別件で行動中とのこと。
 
それであっても私には何ら問題はなかった。
幾ら強かろうとも所詮は人間。私に打ち勝とうとするならば武器を用いるしかない。
そして、それは私の勝利を約束するものだったのだから。
 
船が寄港地に着くその手前を狙う為に私は着々と食事と兵力を養おうとしていた……。
 
(現在地:3Fスイートルームからパーティー会場へ)

91 名前:比良坂初音 ◆HtiOHATUNE:2003/07/11(金) 23:15

「噂に聞く”騎士団”も随分せこい仕事に手を出したものね」
比良坂初音は溜息混じりに背後の人物に話しかける。
「まあ、色々とありましてね、それにしてもまさか僕の依頼を聞いてくださるとはね」
苦笑しながらも答えるのはディートリッヒ・フォン・ローエングリューンだ。
そう、彼の言う助っ人とはこの比良坂初音のことなのであった。
「別に・・・ただこういうのも面白そうだと思っただけよ」

無論、初音としてはどうしてこんな得たいの知れないテロリスト集団どもに、力を貸さなければならないのか
という思いはある。
だが、二つ返事で承諾しなければ自分はともかく奏子の身に何が起こるか分からない。
そう、思わせるだけの雰囲気が彼にはあったのだ。

ディートリッヒはもう1度依頼の内容を繰り返す。
「ともかく、貴方は影ながらワクチンを上手く最終的にヴァチカンの連中の手に渡るように行動してください
それ以外は自由ですよ、誰と戦っても別に構わない」

そこでさらに彼の背後から、ここでの彼の名前・・・新米吸血鬼ハンターディートリヒを呼ぶ声が聞こえる。
「あ、もう時間ですね、それじゃ頼みましたよ」
ディートリッヒは、にこりと笑うとそのまま去っていく、それを初音はただ眺めているのみだった。

92 名前:上月永斗&司〈M〉:2003/07/11(金) 23:15

夏祭り 上月兄弟 導入

 今回、UGNから受けた任務は簡単な事だった。さる豪華客船に乗り込み、
あるアタッシュケースを奪取する。それだけの事だ。
「伝説の暗殺者」と呼ばれた永斗には、簡単すぎる任務だ――そう、あのカザフスタンでの戦いに比べれば。
だから今回は、弟である司も連れて行く事にした。思えば弟にはいつも苦労を掛けている。
豪華客船では、就航一周年という事でパーティも開かれるらしい。たまには、家族サービスもしてやらんとな――
永斗は、そう考えていた。
 
「……で? それが期末試験真っ最中の俺を引っ張り出して吐いた言葉か? 馬鹿兄貴」
「何を言うんだ弟よ!? 豪華客船ですよ? パーティですよ? お前は心踊らないと言うのか!?」
「だからって、人をいきなりNYまで連れて来て良いって事にはならねえだろっ!」
……弟は、なぜか気に入らないようだった。
「あー、それで。奪うブツの事は何も聞いていないのか」
「いや、まったく」
「何考えてるんだおめえはよっ! 情報収集するのは常識だろうがっ!」
……シュボッ。煙草に火をつけ、紫煙を吐きながら永斗は言う。
「馬鹿だな、司。俺は暗殺者だぜ? 情報収集は専門外だ」
「あー、そうかよ……とにかく! パーティ会場に行くぜ。いいか?」
 ばっちりタキシードで身を固めた司に、夏だと言うのに厚手のトレンチコートに身を包んだ永斗が続く。
……戦いは、まさに始まろうとしていた。

〈現在地:パーティー会場〉

93 名前:レヴィ(M):2003/07/11(金) 23:20

夏祭り、レヴィ、ダッチ他ブラックラグーン勢導入
 
「胡散臭い話だな」
 
 まず、ダッチがそう切り出した。
 
「金になる話にゃ違いねぇ」
 
 レヴィがそう反駁する。
 
「燦月製薬……日本どころか世界にも名の知れた大企業が、何で海賊なんかに?」
 
 ロックが疑問を呈する。
 もっと手練の傭兵派遣企業など、他にいいところはたくさんある。
 荒事の気配は間違いない、なのに、何故海賊なのか。
 
「知るか」
 
 全部まとめてレヴィが簡潔に一蹴した。
 
「脳味噌ばっかでっかくなっちまった奴らの考える事なんて知ったこっちゃねェよ。
 あたしらはスリルとサスペンスを楽しんで、そんで金が貰えるんだ、何が悪い」
「命あっての物種……」
「ロック、日本のコトワザなんて知らねえよ。
 あたし達は金とスリルさえあれば、命を張るにゃ充分だ、違うか?」
 
 来るべき時に備えて銃器のメンテナンスを念入りに、鼻歌交じりに行いながら笑う。
 何処まで行っても、度し難い思考回路の持ち主だった。
 
「だが、ヴァチカンを敵に回すのかい? あんまり得策じゃないと思うけどなぁ」
 
 横から、ベニーが口を挟んできた。
 依頼に関して念入りに調べた結果、標的の船に目標物はヴァチカンの管理下にあるという情報を掴んだ。
 ヴァチカン、言うまでもなくカソリック――全世界に根を張る世界最大の宗教――の総本山。
 別に神など彼らは信じてはいないが、それでも敵に回して分のある相手でない事くらいは理解できる。
 ヴァチカンを敵に回すこと、それはすなわち世界を敵に回すことにもなりかねないのだ。

94 名前:レヴィ(M):2003/07/11(金) 23:21

>>93 続き
 
「だから……!」「いやまて、やはり……」
 
 イラ
 
「どうだろう? それにしては……」「……いくら推測しようにも材料が……」
 
 イライラ
 
「リスクを承知で危険に……」「じゃあ燦月に……」
 
 イライライラ
 
「それは燦月側も……」「文句は……」「いや、それは……」「だが……」「待て……」「しかし……」
 
 ブ  ツ  ン
 
「煩えェェッ!!」
 
 振り上げた両手を、銃器の山に叩きつける。
 鉄屑が、衝撃にぶちまけられた。
 
「ここまで来て何ゴチャゴチャやってやがるッ! アレを見ろ、アレは何だッ!?」
 
 そう言ってレヴィの指差した先には、一隻の船が優雅に航行していた。
 クイーンオブザナイト号、今回の略奪対象だ……それがもう、目と鼻の先。
 そんな状況で喧喧諤諤。
 
 レヴィがキレるのも無理はあるまい。
 
「こっから引き返すのか? 引き返すのかよ!? ポルトガルくんだりまで来てふざけんじゃねェッ!
 踏ん切り付かねェんならあたしが引導渡してやらァッ!」
 
 そう叫んで、甲板に飛び出していく。
 手に持っているのは……グレネードランチャー。
 
「待て、まさかレヴィ……!」
 
 ダッチが立ち上がって止めようとするが、時既に遅し。
 船上で仁王立ちのレヴィは、片目で狙いをつけつつ、グレネードランチャーを標的に向け……。
 
「BANG!!」
 
 その掛け声と共に、弧を描いて飛んでゆく榴弾。
 数秒後には、クイーンオブザナイト号の尻に大輪の爆円を咲かせていた。
 ベニー天を仰ぐ、ダッチ嘆息、ロック唖然。
 そんな仲間達を振り返って、
 
「賽は投げられたぞ! 船を側に付けろ!」
 
 ニヤリと笑ってそう告げた。
 
(現在地:洋上)

95 名前:千早雅之(M):2003/07/11(金) 23:23

千早雅之・導入
>>94

パーティの喧噪から離れた場所に男が一人。
いや、ようやく離れることができたと言うべきか。
 
エグゼクとは休暇の間でもエグゼクらしい。
男は苦笑した。
男の名は千早雅之、千早重工の社長である。
 
重度のワーカホリックである雅之が久々に取った休暇。
……正確には取らされたと言うべきだろうが。
そんな彼が休暇の場として選んだのがこの船であった。
 
様々な理由により海外に出ることすらままならぬ現状では最初で最後の機会であろう。
そう思って選んだのだったが、見通しが甘かったようだ。
想像以上に雅之の名は知られていた……恐らくはその特異性も含めて。
おかげで未だ慣れぬ作り笑いを浮かべ続ける羽目になった。
 
「……どうにも、疲れる物ですね」
 
現状に不満はない、疑問もない。
が、やはり前線に出ていた頃を思い出すことは多い。
 
そんな埒もないことを考えつつ手を付けていなかったワインを飲み干そうとした。
 
響く音、振動、微かな匂い。
雅之の目が変わった。
千早重工社長としての目ではなく、千早の誇った始末屋、死の右腕・メルトダウンとしての目に。
 
「――爆音、襲撃ですか」 
 
花火ではない。花火と武器を見誤るほど衰えてはいない。
素早く身を起こす。状況を確認する必要がある。
護衛は連れていない。
一線を退いた雅之より腕の立つ人間が居ない以上連れ歩く理由は無かったからだ。
 
 
雅之は待つ。
今のはきっかけに過ぎない。本格的に始まるのはこの後だ。
 
間もなく、本当のパーティが始まる。
 
【現在地・アッパーデッキのパーティ会場内】

96 名前:ダッチ(M):2003/07/11(金) 23:23

そう。胡散臭い話だ。
危険な話と置き換えても良い。
判らない事が一つあればそれだけ危険が増す。
報酬金額に釣られて、随分遠出したもんだ。

「それにだ……」

肝心のブツが胡散臭い事極まりない。
吸血鬼なんてのはコミックか映画辺りの登場人物だろう。
それを治療するワクチンなんてもんを奪えと言われたら、気色ばんで当たり前だ。
受けた以上きっちりこなす。
が、クライアントのご注進通り同じブツを狙ってる連中が他にもいるのなら、
タイミングを考えなきゃならない。
横合いからブツだけをかっさらえればそれがベストだ。

気が付くとそんな黙考に沈んでいた。
次の瞬間、レヴィが切れた。
不味い。

「待て、まさかレヴィ……!」

虚しく空を掴んだ手の向こうで、甲板へと繋がるハッチが勢い良く閉まる。
ゆるゆると伸びる放物線の先は他でもない。

「何てことしやがるこの馬鹿! 物事にはタイミングってもんがだなあ……」

まあ、今更ぶちこんだ弾を無かった事にも出来ない。
これもそのタイミングと言えない事は無かった。

「―――オーケイレヴィ。そこまで言うんなら準備は出来てるんだろうな?
 向こうへ行くのは俺とレヴィの二人。ロックとベニーは残って合図を待て」

足元の強襲ボートを膨らませた時、

「ダッチ? あの客船には一般人も乗ってるんだろ?」

そう声が掛かった。

「そりゃあ居るだろうな。……そういう連中に手を出す訳はねぇさ。
 俺はエドワード・ゲインじゃない。安心しろよ、ロック」

なんならそいつ等に気を配ったって良い。自分達の命に関わらない限りは、だが。
言い捨ててスパス片手にボートへと降りた。

「隅から隅まで探してる時間もねえ。まずはブツの場所知ってそうな奴を探す。
 聞き出したら連絡、近い方がブツに向かう。ドンパチは最小限だ。
 オーケイ? なら良い。こいつは仕事だ、きっちり頼むぜ相棒」

脇に付けた小さなボートから射出されたワイヤーを伝って、影が二つ客船に乗り込んだ。

(場所:左側舷の通路)

97 名前:真の勇者:2003/07/11(金) 23:25

(勇者・導入)

 吸血鬼として復活した魔王ワーロック!
 ワーロックを倒すために、わたしはワクチンを入手すべく、
 この船に乗りこんだ。
 なぜなら、わたしは王家の血を引く真の勇者だからだ!
  
 だが、どこにワクチンがあるのか全然わからない!
 ど、どうしよう!? どうしたらいいんだ!?
  
 とりあえず、甲板から身を乗り出して海を眺めてみることにした。
 なんと綺麗な海なんだろう・・・。
 見とれているわたしに、謎の爆発が迫る!
  
 もちろんわたしは、その攻撃を見事にかわした!
 だが、足場がない・・・しまった! 海に落ちてしまう!
 なすすべもなく、甲板から海へと転落してしまった!
  
 海の中に待ちうけていたのは、腹を空かせた鮫だった。 
 飢えた鮫に、わたしの体は食い千切られていく。
 わたしが息絶える頃には、海はわたしの血で、
 真紅に染まっていることだろう・・・。
  
 ざんねん!
 わたしのぼうけんは これで おわってしまった!
 
(勇者・死亡)

98 名前:片倉優樹&山崎太一朗 ◆nlYUUKi3kA:2003/07/11(金) 23:28

白髪:「ええ・・・『かくかくしかじか』。まぁ、そういう訳で、あたしは今ニューヨークに居るわけなんだけど」 
山崎: 「優樹さん。かくかくしかじか、じゃ通じません。しかも何処を見てるんですか」 
白髪:「おーらい、おーらい」  
山崎: 「って聞いてないし。っていうかそのフォークリフトは何ですか!」 
白髪:「航海中の食事。大事だよ?」 
 (山崎の指す先の5つの木箱──文字は。バドワイザー)  
山崎: 「自分は・・・理解できません。栄養的にも酒ばかりで生活できるわけないじゃないですか」 
白髪:「・・・そう?なら一度お酒だけで暮らしてみたらわかるんじゃないの?」 
山崎: 「・・・。(人間じゃ、ないんだよな・・・やっぱり・・・)って!」 
白髪:(怪しげな積荷を乗せようとしてるので。沿岸警備の人に咎められてます) 
 
「Hey you!Don't move. Follow saying.」

白髪:「・・・ねぇ。太一君?この人たち・・・なんて言ってるのかな」 
・・・・・・ 
白髪:「太一君?」  
山崎: 「優樹さんを・・・どうするつもりだ!!」 
白髪:「(やば・・・)二人の約束第3条第1項!『人に向かってフラッシュバングの禁止!』」 
山崎: 「・・・ぐ・・・じゃ・・・だったら!」 
白髪:「約束第200跳んで7条。ベレッタは仕方ないから月に3発。空砲もおやつに入ります 
   (言いながら警備員に引っ張られてます)」 
山崎: 「しかし!自分は優・・・片倉さんを見捨ててはおけません!」
 
>>94 (辺り) 

───DoGYaaAAAANNNNAAAAAAAAAAN.
 
「Oh No!・・・」 
 
山崎: 「爆発・・・!優樹さん・・危ない!!・・・大丈夫ですか・・・」
白髪:「あたしは、大丈夫。奴さんたちも大わらわだし・・。さて・・・行こうか・・・ 
(ちゃっかり木箱を2つだけ抱えて)」 
山崎 :「・・・いいんでしょうか。」 
白髪:「いいのいいの・・・。地元の仕事だよ。それよりも・・・。(ちょっと寂しそうな目で) 
    1箱・・・持ってくれないかな」 
山崎: 「お断りします!!」 
白髪:「・・・しかた、ない、か。」  
  
(回想終了。片倉優樹、山崎太一朗・・・乗船。客室へ)

99 名前:アルバート・ウェスカー(M)|:2003/07/11(金) 23:30

夏祭り・ワクチン争奪戦:ウェスカー導入

“クィーン・オブ・ザ・ナイト号”。
巨体にきらびやかな光の化粧、それと優雅な音楽を身に纏い、賑々しさに包まれている豪華客船。
その上空を、下とは対照的に闇に融けるようにして、一台の軍用ヘリが飛んでいた。


“―――ここ最近の間に、防疫修道会のほうで開発に成功したとされる新薬、吸血鬼ワクチン。
 諜報部の報告によると、その効能は吸血鬼に血を吸われてそのV酵素で肉体組成を変化させられ、
 同じく吸血鬼に変質してしまった人体すら元に戻せるということらしい。
 
 異分子によって変質してしまった生体の組成リセット。
 このワクチンのメカニズムはすなわち、T−ウィルス及びGウィルスの投与ないし感染によって
 B.O.Wへ変質した肉体の、その逆変化や変性率の調整理論に対する、一つのモデルと呼べるものともいえる。
 つまり、そのノウハウの解明はT−ウィルス感染によるゾンビ化の治療のみならず、人の姿を保ちつつ
 最強の戦闘能力を誇っているB.O.W――“T”シリーズを、より兵器として完全な形で生産できるという事にも繋がる。
 このワクチンを奪取し、そのノウハウ解明に成功すること。
 それは、いまや落ち目になりつつあるアンブレラ社に渡す引導には、十分なものになるだろう。 
 今回の任務は、ヴァチカンに輸送されるであろうそのワクチンの奪取である。”

 “P.S.
 今回のワクチン奪取にあたって、かねてより吸血B.O.W『キメラヴァンプ』を武器にこの業界で名を上げて来ている
 新興勢力、燦月製薬―――イノヴェルチ他、数々の勢力が動いている。任務遂行には重々注意されたし。
 
 ―――――君のその実力に期待する”

「・・・・・・フン。いくら私が新参なうえに“こんな体”であるとはいえ、安っぽく使ってくれるものだ」
男は書類を読み終えると、不機嫌そうにそれをシートに放り出す。

「何か言いましたか?」
「なにも」

操縦席からの声に、黒い軍服を着込み金髪にサングラスをかけたその男は、物憂げに返す。

「そうですか。まもなく作戦開始ポイント直上に入ります。降下準備を」
「分かった」

応えて男は立ち上がり、ヘリの出入り口のドアに手をかける。
「あ、あの・・・パラシュートやロープの類は・・・?」
「要らん」
操縦士の問いに簡潔きわまる返答を返すと、サングラスの男は、豪奢な光に照らされる夜の空へ、その身を躍らせる。
パラシュートが意味を成さない程度の高さとはいえ、普通の人間をトマトペーストに変えるには十分すぎる高度だった。
だが―――――


        ずごん。


天板は少々その身をへこませつつも、男を赤い染みに変えることなく迎え入れた。
そう・・・・・・この男も、“普通”ではないのである。
T−ウィルスの保菌者でありつつもゾンビ化せず、ウィルスに冠された名に恥じぬ、暴君の如き力を手に入れた男。

「―――フゥゥウウウウ・・・・・・」

アルバート・ウェスカー。とある地下組織の実動部隊―――
『H.C.F』の切り札たる工作員は、着地の衝撃を変換したかのような息を吐いた。

(現在地:診察室直上)

100 名前:「DEATH」:2003/07/11(金) 23:34

導入
夜の女王号……倉庫にて……。
コンテナの一つから鈍い音がする。金属を叩くかのような音が。
その音は少しずつ、少しずつ大きくなり、それにつれてコンテナが歪んで行く。
そして、
「グガァァァァ!」
雄叫びと共にコンテナの側面が破れ巨体が姿を見せる。

警備員の服だったものと帽子を身に付け、複数の髑髏を埋め込んだ棍棒を手にしたその姿。
顔は継ぎはぎだらけ。瞳は死者のもの。
そう、死を纏い、死を撒き散らすそれは……「DEATH」!
雄叫びを上げ、扉を叩き壊し、それはワクチンの持ち主の下へ突き進んで行く。
(現在地:最下層、倉庫前廊下)

101 名前:エリ&フィオ ◆uiSV001MHw:2003/07/11(金) 23:35

エリ&フィオ導入
 
吸血鬼化治療ワクチン。治療不可能と言われた吸血鬼化を治療するワクチン。
「これがあれば吸血鬼なってしまった人を救うことができる」じゃなくて、
「これがあれば吸血鬼になっても元に戻ることができる」って発想がでるようになってきてる辺り、あたし達はやばいのかもしれない。
「マミー、ゾンビ、と続いて吸血鬼か……」
悪くない、と思ってる自分がいる辺りやっぱりやばいと思う。
「美味しいですね、コレ」
人が物憂げになってる横で料理食ってるメガネの令嬢がいます。
「エリちゃんは食べないんですか?」
「いらない。つーかあんた仕事で来てるの忘れてない?」
仕事、つまり任務。先に述べた吸血鬼化治療ワクチンの奪取だ。
「忘れてませんよ〜。ちょっと息抜きしてるだけです」
笑って返してさらにぱくつく令嬢、もといフィオ。
「まぁ、スキがないもんねえ」
軽くグラスを傾ける。
スーツ(場所が場所だけに今日はスーツを着ている。フィオは夜会用のドレスだ)越しにヘビーマーダーを確かめる。

瞬間、船が揺れた。

(現在地:パーティー会場)

102 名前:麻宮アテナ ◆qZESP0jjgI:2003/07/11(金) 23:39

 (導入)
 
 「それにしても、ブルジョアなパーティーですよね」
 
 本日の(私の)演目が終わって、ほっと一息。
今日はKIMONOをぱっと脱ぎ捨てたら下にはセーラー服という、
欧米の方々に優しい演出などしました。
ゆっくりした歌いだしのあと、アップテンポに変化するところで
ばっとKIMONOを脱ぎ捨てる視覚効果。
なかなか好評でよかったよかった。
 
 そういうわけで、今の私はステージ衣装(学校の制服ですが)のまま
パーティー会場で歓談です。これも仕事のうち。
さらにお客様の目を盗んで、高そうなお酒を次々とポケットビンに隠匿。
私はこれでも友達思いのつもりなのです。
 
 (現在地:パーティー会場)

103 名前:薬読のアンナロッテ ◆SORIA7miU.:2003/07/11(金) 23:44

<夏祭り>
 
>>93>>94
 
煙草に火を付けた途端、船が大きく揺れる。
とりあえず紫煙を肺一杯に吸い込んで吐き出した後
先程預けたケースのある場所へ大急ぎで向かった。
 
「食事は後回しですか。困ったものですね」
 
ベルトに挿したには銃身を切りつめたショットガンに手をかけておく。
弾は数種類あるが、とりあえずは銀のスラッグ弾が込められている。
敵を見極め次第入れ替える事になるだろう。
 
(現在地:パーティ会場入り口。ワクチン所持(?)中)

104 名前:Kresnik ◆fFCROSSQsM:2003/07/11(金) 23:48

【乱入レス:導入】
 
「――だから」
「だから?」
 
 ――何度目だ。
 腹が立ってきた。苛立ち紛れにパフェを追加する。経費で落とそう。
 そもそも。
 
「……なーんー、で」アクセントは"で"に置くのがポイントだ。「――俺が?」
「ヒマだろう?」
「一言かよ」
 しかも即答。
 確かにまあ、ヒマはヒマだが――少なくとも、それは"休暇中に仕事を押し付けてもいい
理由"にはならない筈だ。
 なる筈がない。もしなると考えてるヤツが居るなら、諸手を上げて万歳突撃、AKやるか
ら代りに片付けて欲しいモノだけど。
 
「――じゃ、いいじゃん」
「殴っていいかな、司教」
「あ、それ状況報告書」
「訊けよ」
 
 パフェ(ジャンボストロベリー)にスプーンを刺して、片手でページを捲ってリーディ
ング。どう考えても即興で作ったとしか思えない紙の束は、コピー用紙をホチキスで止め
ただけという残酷さだ。
 
「ま・……つまり、俺がやるべきってのは――」
「――ああ、そういうコトさ」
 
 概要はと言えば――至ってシンプル、ごく単純。
 一つ、対象の殲滅。襲撃を予想される状況は確定。ならば居合わせた連中を葬り去るの
は至上だろう。幸いにして場所は流水の真上、吸血鬼を始末するには絶好の状況。
 加えて。
 二つ、ワクチン(今回の輸送目的)の警備――が、まあこっちは放っておいてもいいとの
御達し。ヴァチカン複数組織の協力体制は、手広くお仕事をカバーしている――ソイツは
涙が出るほど嬉しいけど、それならいっそ仕事回すなと言いたいが。
 ……オーライ。
 パーティを楽しむ時間は有りそうだ。少なくとも、料理とジュースを(酒は駄目だ。仕
事中だから)堪能するくらいは許されるだろう。
 
「状況条件、把握は完了。その他俺にやれってコトは?」
「別に――そうだな」考える素振りもなく、司教は続けた。「敵は殺していい……これは当
たり前だね。全滅させる事――捕獲は考えなくていい、それと、だ」
「まだ他に?」
「裏切り者は……この言い方は正確じゃあないね。ま、つまりはアレさ。獅子心中の虫は
この場で下そうってワケだけれど」
「……なる」
 
 状況は揃って、条件は揃う。
 劃して――
 
 
 
 ――場所はブリッジデッキ、眼下に下ろすは凪いだ海。
 
 オレンジジュースを満たしたグラスを揺らして、軽く笑う。
 爆音やら叫び声やら、その他諸々の喧騒は腰の下。
 ……本当、バカバカしい。
 やる事なんて最初から一つなんだから――だから。
 
「……騒がしくなって来たなぁ」
 
 懐で銃杷に触れて、もう一度笑った。
 さて、それじゃココで色々確認しよう。
 
「一つ。邪魔する奴は殺してオーケイ。二つ。邪魔しなくても人間じゃないなら殺してオーケイ。
三つ……あったっけ。まぁ、とりあえず――」
 
 グラスを手摺に置いて、軽く背を伸ばす。
 
「――適当に色々、死んで貰うとしますか」
 
(場所:ブリッジデッキ) 

105 名前:ブラザー・フィリポ ◆gxPyzUNAGI:2003/07/11(金) 23:49

>>93 >>94
 
 揺れる船内。
 周りの客達も、何があったのかとざわつき始めている。
 
 しかし────
 
「なかなかうめーじゃねーのこのひつまぶし、さっすが豪華客船、オレ様ちゃんの舌を満足さ
せるなんてやるジャン」
 
 そんな喧噪を一切無視して、フィリポはひたすら料理に舌鼓を打っていた。
 ……ひょっとしたら、任務のこと自体すっかり忘れているのかも知れない。
 
(場所:パーティー会場)

106 名前:アルビノ“山城友香” ◆0DYuka/8vc:2003/07/11(金) 23:49

夏だ!船だ!お祭りだ! 〜山城友香:導入〜

真夏のある日。一通のビデオレターが届いた。
大きな間違い。それが、全ての始まり。
そのビデオを、友香は呆然と見つめているしかなかった。
 
『───このテープは自動的に消滅する。貴殿の健闘を祈る。』
 
そんな、あまりにありきたりなメッセージを残してテープは終了する。
Evolutional Generation Organization 通称E.G.O.の指令書である。
そして、同封されている合計5枚のチケット。これで目的を達成してこい。と言うことらしい。
 
ただ、一つ。送り主の名前を完全に間違えていること以外は。
一応、E.G.O.のリストに名前は載っているとはいえ、友香はまるっきり素人だ。
たとえ、友香の身体に眠る夜族の血を考慮しても、安定性に欠ける。
 
それに、任務に於ける主要なリストだが、その道に携わって居るものなら、
一度は聞いたことのあるような危険人物ばかり。(当然、友香は気付いていないが)
このような指令は基本的にリストの中でもAクラスの人物の作戦である。
そして当然のことながら、指名されている人物も友香ではない。
 
さて、ことの重大さに気付いた友香は、E.G.O.に連絡を取った。
が、留守番電話の無情なメッセージにかき消される。
ああ無情。本部に夏休みをとられてしまっていたとは。
 
では、どうすればいいか。

─────と、言うわけで。友香は船の上にいた。
仕方がないから、チケットを使って来てしまったのだ。いいのか、それで?
 
バスに乗って、船に乗る。一件、簡単そうに見えるが異国の地においてこれほど難しいこともない。
ところがだ。優しい現地在住の日本人のおかげで難なく、船に乗れた。
 
そして、この時点で自分の運をかなり使い果たしていることに、友香は気付いていたのだろうか?
いや、絶対にこの娘、気付いていないから。

(現在位置:セカンドデッキ後方客席)

107 名前:ディートリッヒ・フォン・ローエングリューン:2003/07/11(金) 23:51

ズン、と船体が大きく揺れる、どうやら始まったみたいだ。

僕は先程のボーイを呼びとめ、その隙に糸を使う。
「その荷物返してくれないかい?」
ボーイは無表情に頷くと、アンナロッテさんの荷物を僕に手渡す。
そして僕はあらかじめ用意していたアタッシュケースと取り変える。
 
これでいい、あとは連中が勝手に奪い合えば済む話だ、僕はしばらく退場する事にするよ。

息を切らしてこちらに向かうアンナロッテさんを横目に、僕はパーティ会場へと消えていった。

(現在地:パーティ会場内部。ワクチン(本物)所持)
(ボーイが持っているのは偽物です)

108 名前:アレクサンド・アンデルセン(M):2003/07/11(金) 23:52

夏祭り 
 
>>93>>94>>

 突然の轟音が船体を揺らす。 
比喩表現ではない、文字通り「揺らせ」たのだ。 
だが、その身を揺るがせもせず、アンデルセンは通路を進む。 
勿論、襲撃に備えてのことだ。 
 
 まだ見ぬ敵に口許を歪め、一言呟く。 
 
「来い、化け物ども。殺し尽くしてやる。 
 灰は灰に、塵は塵に、土は土に。AMEN(エイメン)!」 
 
(場所:セカンドデッキ通路)

109 名前:ブルーノ・デリンジャー:2003/07/11(金) 23:52

「とある組織が吸血鬼ワクチンを豪華客船で搬送するらしい」
 合衆国諜報部が入手した情報である。
 
 吸血鬼ワクチン。それがどう言ったものかは分からないが、諸外国に対するカードとして持っておいて損はないだろう。
 次の大統領選挙もある事だし。
 
 合衆国大統領は二つ決断を下し、一人の刑事に電話をかけた。
一つは、ワクチンの奪取。
もう一つは、その任務を『ヤツ』に任せる。
 
                       *
 
「……あんな事言われりゃ、俺じゃなくてもこうなっちまうだろうな……」
 豪華客船のパーティー会場で、慣れないスーツに身を包んだ俺は、慣れない雰囲気にちょっと悪態をついてみた。

『前回の事件で娘を救出してくれた君に、重要な任務がある』
 プレジデント直々の電話に、俺は舞い上がって、「はい、何でも任せて下さい」
と答えてしまった。
 
『とある組織が極秘裏に搬送中のアタッシュケースを奪取せよ』
 それが、俺に与えられた任務だ。
 どんな奴がそれを持っているのか、それはどんな形状なのか、一切は不明。
 
「まあ、それっぽい奴が持ってるだろうさ」
 そう口にして、俺はこの雰囲気に馴染もうとした。
 
 その時――。
 

 爆音と振動が、船を包みこんだ。

(現在地:パーティー会場)
 
 
*全くの余談だが、大統領はある一つの事実をすっかり忘れていた。
 それは……
 忘れているので、分からない。

110 名前:レヴィ(M):2003/07/11(金) 23:54

>>103 夏祭り 大殲の夏、ブラクラの夏
 
 船上に上がり、すぐさま走り出す。
 お目当てのブツが何処にあるのか現状さっぱりなので、盲滅法に走り回るしかない。
 道中、たまにこっちを誰何してくる奴はミニウージーの洗礼でご退場願った。
 恨むならあたしの眼に止まった不運を恨めよ?
 
 そんな風に走り回ってたら、僧服の女と出くわした。
 しかもおあつらえ向きにケース付き。
 ビンゴ!
 
「神様の思し召しってのも案外悪くねェな。
 そいつをこっちに寄越せばよし、抵抗するなら尋常じゃなく痛い目を見て貰う事になるぜぇ?」
 
 左手にM79――船の尻にきついのをぶち込んでやったグレネードランチャーだ――をぶら下げつつ。
 右手のミニウージーを女に向けて威嚇しつつ脅迫する。
 仕事ってのはクールに終わらせたいとこだな、えぇ?
 
(現在地:パーティ会場入り口)

111 名前:上月永斗&司〈M〉:2003/07/11(金) 23:55

>>93>>94

 突然、船が大きく揺れた。一体何が起きた?
「……ちっ。外から誰かが攻撃してやがる」
「外から!? 俺たちの他にも狙ってるやつらがいたのかよ!」
「なんだ、気付かなかったのか弟よ。最低でも10人以上はいるな」
「なんてこった……一体あの荷物の中身はなんなんだ?」
「さて、な……そろそろ俺たちも動くぞ、司」
「あ、ああ……って! 何でそんなに食べ物抱えてるんだよっ!?」
見ると、海老だの肉だの大量の料理を抱きかかえ、口を大きく咀嚼させている兄がいる。
何でこの状態であれだけ喋る事が出来たのか疑問だが、深く考えないことにする。
とにかく、しばらくは様子を見るか……焦る事はないのだから。

〈現在位置、パーティ会場〉

112 名前:漆黒の王子(M):2003/07/11(金) 23:56

>>93-94
フン、他の組織が動き始めたようだ。
私は10名ほど連れて来ていた異形兵達に下層部を占領するように言うと、
血を吸い、普通の人間と変わらぬ姿の眷属たちに命を下す。
 
「さあ、舞踏の始まりだ。己の餓えに従い、存分に歌い踊るがいい。
 宴の始まりなのだから」
 
6名ほどの男女が血を、己の渇きを癒す為に船内を歩き始める。
私は機会を狙う。絶好のチャンスを逃さぬ為に。
 
(現在位置:4Fから船倉へ移動中)

113 名前:比良坂初音 ◆HtiOHATUNE:2003/07/12(土) 00:02

轟音と共に船体が揺れる、初音はいぶかしげに周囲を眺めていたが、
やがて意を決したかのように微笑む。

「そうね・・・折角ですからせいぜい楽しむといたしましょうか」
彼女にとって、もはや依頼など頭の片隅にしかなかった。
初音は微笑を絶やさぬままに、甲板から船の内部へと入っていった。

(現在位置 甲板から内部に)

114 名前:アルバート・ウェスカー(M):2003/07/12(土) 00:02

>>93>>94

着地して一息ついた直後、爆音と共に船が揺れる。
「あれは――――」

見れば、モーターボートに乗った一団――多分私と目的は同じだろう――が、
船体にグレネードを叩き込んでいたらしい。

「私もうかうかしておれんな・・・」

ウェスカーは呟くと、屋根の上からデッキに飛び降りた。
ここでこうしていても始まらない。まずは船内で目標を確認せねば。

(場所:ポートデッキ、外からエレベーターへ向かって歩いている)

115 名前:薬読のアンナロッテ ◆SORIA7miU.:2003/07/12(土) 00:04

<夏祭り>
 
>>107)>110
 
「神の愛は無限ですが、それを見ようとしない者には見えません」
 
刺青をした女性が向けるサブマシンガンに対して、
心臓部分にアタッシュケースを掲げる事によって牽制する。
 
あの程度の口径ではこのケースは貫けない。
グレネードを撃ち込まれたら危険だが、流石にそこまでの無分別ではないだろう。
 
とは言え。
 
「それはともかく、痛い目は困りますね。お互いに。」
 
あっさりと右手の銃を床に捨てて、女性の方へ蹴り出す……と見せかけて、
ケースの陰で、懐の爆薬の一つに手をかける。
 
もちろんただの煙幕弾だが、私のように防毒マスクを持たぬ者は混乱するだろう。
後は仲間(と呼べればだが)と合流するだけだ。
くわえた煙草で火を付け、煙幕弾も床に転がした。
 
(現在地:パーティ会場入り口付近。偽ワクチン所持中)

116 名前:ダッチ(M):2003/07/12(土) 00:10

夏祭り

>

結果から言えばタイミングは悪くない。
船内の人間の注意は花火に引き付けられているだろう。
グレネードが無ければ、だが。

今更言っても仕方ないと思うのはもう二度目だ。

「――――随分派手なパーティだな」

あちこちから響いてくる大小の異音。
同じブツを目指している連中は思いの他多いらしい。

――宝捜しの時間か。

レヴィと別れ、下部デッキに下りる。
幾つも連なる客室のドアの群れを前に、ひとつ溜息をついた。

(場所:セカンドデッキ、客室前通路)

117 名前:麻宮アテナ ◆qZESP0jjgI:2003/07/12(土) 00:10

>>94
 ごごごごご……。
 
 轟音と揺れ。嫌な感じ。またなにかおこりそう。
考えてみれば、私は海外旅行するたびにトラブルに巻き込まれているような。
すごく嫌な感じ。
 
 (……たぶん、ちっちゃい氷山にでもぶつかったんですよね)
 
 無理にそう思い込もうとする自分が、なんだか可哀相。
ホントはわかってるのに。またなにかに巻き込まれたって。
 
>>110
 そのとき目に入った光景。よくわからないけど物騒なものを抱えた人。
 
 (ま、まぁ、オモチャという可能性もありますし、
もしかしたらパーティーの余興かも……)
 
 この期に及んでもココロは逃げを打とうとしています。
でも、たぶんもう……。
 
>>115
 ……と、思った瞬間に煙。とっさに距離をとって、
手近なテーブルを蹴り倒して即席バリケードに。
どちらに味方するのもいけない気がします。これからどうしよう……。 
 
 (現在地:パーティー会場)

118 名前:ディートリッヒ・フォン・ローエングリューン:2003/07/12(土) 00:11

「くそっ」
僕は煙の中、手探りで例のケースを探していた
そう、先程の銃撃と煙幕とで、うっかり無くしてしまったのだ。
「あーあ、参ったなあ」

(現在地:パーティ会場内部、本物ワクチン紛失)

119 名前:「DEATH」(M):2003/07/12(土) 00:12

>>112 漆黒の王子
「ガァァァァァァァッ!」

「DEATH」は鈍い地響きを立てながら突き進んで行く。
途中には鉄のドアや狭い箇所があったが、「DEATH」にとってそんな物は障害ではない。
雄叫びとともに振り回された棍棒の一振りで歪み、砕かれて行く。
そして、今。「DEATH」が突き進んでいる前には黒衣の男。
だが、「DEATH」はまるで男が居ないかの如くまっすぐ進んで行く。

そう、「DEATH」にとって、目的以外の物は目に入らないのだ。

120 名前:ヴァンパイアロード他2匹(M):2003/07/12(土) 00:12

>>107 >>110
 
「さて…頃合ですかね?」
 
ああ、そういえば言っていましたね。
賊は内側からだと限らず、外からも来る可能性があると。そう、今この時のように。
咥え煙草の男の言でしたか、確か。

慌てずに同胞とは別の「従僕」に合図を送る。
『鷹は舞い降りた』と。
それより時を置かずして

『キシャアアアアアアアアアッッ!!』
 
この時の為に眷族にしておいたレッサーヴァンパイア――まあ成り立てですが――
がワクチンの持ち主に襲い掛かる。
警戒はしていたとはいえ、これは流石に誰もが予期し得ない急襲。
目論み通りにトランクの鎖を引き千切り、奪い取り
そのまま脇目も振らず、全速力で駆け抜けて―――――
 
「そういえば、ヴァンパイアロード」
「何ですかエルダー。早速我々も動かねばならないというのに何を」
「無論、あれを呼び戻す算段はあるのだろうな?」
  
                            ――――――あ。
 
(場所:パーティー会場
 偽ワクチン:パーティー会場入り口→そのまま入り口方向の通路へ)

121 名前:上月永斗&司〈M〉:2003/07/12(土) 00:13

>>107>>118

「……ふむ。すり替えたか。並みの者なら誤魔化せたかも知れんが、伝説の暗殺者である俺の目は誤魔化せん」
〈天からの目〉発動。あたかも神の目線から見たかのごとく、その視野は360°全てを見渡す。
エンジェルハイロゥシンドロームの能力だ。永斗は司に声を掛けると、無造作にその人物の元へ歩き出す。
手に一輪の薔薇を持って。
「さあ、その中身を渡してもらおうか」

〈この時点では、>>118には気付いていない〉

〈現在位置:パーティ会場〉

122 名前:「DEATH」(M):2003/07/12(土) 00:13

>>119追加
(現在地:船倉前廊下→4Fへ移動)

123 名前:片倉優樹&山崎太一朗 ◆nlYUUKi3kA:2003/07/12(土) 00:14

(2階、客室2032) 
 
白髪:「・・・やっぱり外国の言葉はさっぱりだったね…。もっと簡単に翻訳とかできればいいのに」 
山崎:「優樹さん。あの程度の英語、学校でも習ったでしょう」 
白髪:「・・・そうなんだろうね。ただ、あたしは外国の言葉は面倒でね。どうして使いもしない言葉を一生懸命に学ぶのか。 
    理解できなかった」 
山崎:「でも!今日は違ったでしょう!警察官に必要なのはたゆまぬ努力と・・・職務倫理の原則、覚えてますか?」 
白髪:「・・・え・・・うん、まぁ。そんな事より。太一君はさっきのやりとり・・・分かってたみたいだけれど。 
    すごいものだねぇ。英語・・・船内で何かあったら頼もうかな」 
山崎:「え・・・。はい!勿論です。・・・しかし・・・そこまで自分も自信があるわけでは・・・」 
白髪:「謙遜しない・・・。君が自分で学んだんだから誇りを持っていいと思う」 
山崎;「は、はい!それでは・・・山崎太一朗。英語の基本を唱和するです!あ(バドワイザーを煽る)」 
白髪:「(ああ・・・あたしのビールが・・・これで航海中の一日辺りの割合が・・・12本から11.5本位になった・・・」 
 
山崎:「えー・・・あー・・・英語英語・・・。デカケルトキハ、ワスレズニ!」 
・・・・・・・・・・・。  
 
>>119ほか、振動、爆発する関係のレス 
 
白髪:「・・・・・・・・・揺れるね・・・あ、ビール毀れた」 
山崎:「あー揺れてないであります。自分はまだー 酔っては、お り ま せ んー」  
白髪:「ああ、もう。どうしようか、・・・こんちくしょう・・・。ふぅ。(浦さん。こんなんでいいんですかね)」

124 名前:レヴィ(M):2003/07/12(土) 00:14

>>115 夏祭り 誰に向かって蚊取り線香炊いてやがる!? VSアンナロッテ
 
 たちまちの間に辺りへ充満してゆく煙幕。
 催涙ガスの類かと思ったが、どうやら違うらしい。
 チッ、驚かせやがって……。
 
「神の愛なんざ二束三文にもなりゃしねェ。現実に生きてくにゃ金がいるんだよ。
 だからそいつがあたしらに必要なんだ。理解したら奪われとけよ」
 
 グレネードランチャーをベルトで肩に吊り、ミニウージーを腰の後ろに挟む。
 次いで腰の後ろから取りいだしたるは、二挺のベレッタM92。
 両手に構えたそれのセイフティを外しつつ、最前まで女のいた場所へ突っ込んでゆく。
 いいぜ……楽しくなってきやがった。
 
「Let's Play!!」
 
 突っ込んでゆく最中にもトリガーを引いて女を牽制しておく。
 下手に逃げたらケツの穴が二つ三つ増えるぜぇ!?
 
「Raw deal institution Wreck that I call myself」
 
 楽しさのあまり歌いながら、まだ煙の向こう側に見える女へと吶喊だ。
 
(現在地:パーティ会場入り口)

125 名前:ブラザー・フィリポ ◆gxPyzUNAGI:2003/07/12(土) 00:16

>>105 >>115
 
「……ゲホゲホッ、なんだYoこの煙!」
 
 入り口付近から流れてきた煙に激しく咳き込み、口の中のご飯とウナギの混合物を思いっ
きり吐き出す。
 煙で視界が効きにくくなっていたのは、他の客にとっては(汚らしいモノを見なくて済んだと
いう意味では)幸いだったろう。
 
「ちくしょー、ひつまぶしが台無しじゃねーかYo! 誰か責任取りやがれっつーの!
 つーか、ワクチンどーなったんだYo!」
 
 ひとしきり咳き込んだことで、ようやく自分が何をしにこの船に乗ったのか思い出したらしい。
憤然と席を蹴ると、フィリポは短い足を一杯に動かし、出口方面へと歩き始めた。
 
(現在位置:パーティー会場を出口方面へ)

126 名前:ブルーノ・デリンジャー:2003/07/12(土) 00:17

<夏祭り>
>>115
 
 爆音と振動が収まったと思ったら、今度はパーティー会場が煙に包まれた。
「まさか…!?」
 延焼。そんな言葉が頭を過る。
 
「……ちっ!」
 こんな所で煙に巻かれる訳にはいかない。俺はとっさに出口に向かって走り出した。
 その際、慣れないスーツを脱ぎ捨てて、いつものタンクトップ姿に戻ったのは言うまでもない。

(場所:パーティー会場内→入り口付近)

127 名前:アルビノ“山城友香” ◆0DYuka/8vc:2003/07/12(土) 00:17

>>106
今回の任務は、客船クィーン・オブ・ザ・ナイト号に乗客として乗り込み、
吸血鬼化治療ワクチンを奪取するという、生まれついての夜族である友香とっては、
これ以上もないぐらい、不適当きわまりない任務。
 
まあ、そんなことは直接関係ない。
まずワクチンそのもの自体にお目にかかりそれを奪取しなければ、ことは始まらないのだ。
ところが………だ。当の本人は。
 
「………すごいな〜。」
 
と、この豪華客船の中身のすごさに呆気にとられていた。当然、任務そっちのけで。
友香はふとデッキから、外が見たくなった。
目の前に広がる星と海のパノラマ。吹き抜けていく潮風。考えただけでも、胸が躍る。
 
ただ、問題が一つ。場所や現在地もろもろ友香にはわかっていないのだ。
さて、どうして友香は客室にたどり着いていたか。日本語を喋れる乗務員に案内して貰っていたから。
そして、その乗務員は友香を気遣ってインフォメーションセンターで待機してくれるらしい。
 
そんなことを思い出しながら、友香はインフォメーションカウンターに向かった。
─────当然任務そっちのけで。

(セカンドデッキ客室→インフォメーションカウンターへ)

128 名前:漆黒の王子(M):2003/07/12(土) 00:19

>>119DEATH
鈍い、鈍い巨体が私の方へ迫る。
醜い――――――。
私は思わず嫌悪の表情を浮かべた。
だが、奴はこちらを見ていない。ただ、破壊の意志に突き動かされているようにも見えた。
 
「ふ、ふははははははは!!良かろう!よかろうではないか!!
 お前の存在を、利用させてもらうぞ!」
私は自ら棍棒に打たれる。
並みの存在ならば、私の体は砕け散っていただろう。
 
しかし、私の体は呪われている。
そう、――――――ありとあらゆる武器が通用しない。
 
私は砕け散りながらも再構成し、怪物へ道を開ける。
この怪物を使えば、私の目的はより容易となるであろうから。
起き上がり、私は怪物を進ませる。
 
そして、階下では私の眷属たちが存分に渇きを癒していると喜びながら。
(現在地:4F→パーティー会場手前)

129 名前:比良坂初音 ◆HtiOHATUNE:2003/07/12(土) 00:22

>>120
初音は大騒ぎとは別にパーティー会場へと向かう廊下を歩いていた。
と、そこに初音の前方からケースを抱えた2人、いや2匹が雄たけびを上げて迫ってくる。
「下衆」
そう口の中で呟いたかと思うと、無数の糸がレッサーヴァンパイアを包み
彼らは一瞬でズタズタのコマ斬れになっていた。

「物足りないわ・・・あら?」
彼女の足元にはディートリッヒが言うところのワクチンのケースが転がっていた。

(現在地:パーティー会場途中の廊下)



130 名前:薬読のアンナロッテ ◆SORIA7miU.:2003/07/12(土) 00:24

<夏祭り>
 
>124
 
よほど身体が単純な構造なのか、煙をまったく気にせずに突撃してくるその女性。
聞いたことの無い歌を歌うほどの余裕まである。
 
「二丁拳銃は邪道です。」
 
とりあえず一言だけ言い返すが、適当に見える射撃は的確に私の足を止める。
 
「仕方ありません。それでは……」
 
大きく振りかぶって、アタッシュケースを投勢いよく投げつけた。
二丁拳銃で塞がったその手ででどう受けとめるかは彼女次第。
 
(現在地:パーティ会場入り口付近。)

131 名前:Kresnik ◆fFCROSSQsM:2003/07/12(土) 00:25

>>104
 
 デッキを降りて――歩く場所は4階通路。
 
「……何をするでもなく」
 
 渡されたバックパック。内容量は約50キロ――フル。
 ジッパーを開ければアラ不思議、ギッシリ詰まった爆薬の海。
 
「何をしたい訳でもなく」
 
 成型爆薬を壁に4つ、デトネートコードで結んだ爆破装置はRDX――
 取り付けて、スイッチ。遠隔起爆の準備は整ったワケで。ついでにポケットからイヤホン
を引っ張り出して耳に押し込んだ。
 
「ただ流れるように」
 
 イヤホン操作。
 ギターのリフに合わせて爆薬を左右に1、2、3、4。
 オーライ。
 音量はMAX。
 そのまま加速して、3階へ続く階段へ飛び込んで。
 
「――サヨウナラ」
 
 ――通路とヴォーカルの声を、赤い奔流と爆音が押し流した。
 
(場所:4階→3階)

132 名前:千早雅之(M):2003/07/12(土) 00:27

>>114 >>115 
「来たようですね……」
 
雅之の目に入った二人の女。
シスターと……恐らくは襲撃者。
手に持っているグレネードで船を攻撃したのだろう。
 
現時点では直接の関係はないが、ここで始められると色々と厄介な事になる。
懐のミラーシェイドを取り出して掛けた。
千早製のデータゴーグル。裸眼よりは大分ましの筈だ。
 
シスターの方が何かを下に落とす。
吹き上がる白煙――煙幕。積極的に撃ち合うつもりはないのか。
ならば好都合、現状で関わるべきではない。
 
雅之は静かに移動する。
 
 
【現在位置・パーティ会場】

133 名前:ダッチ(M):2003/07/12(土) 00:29

夏祭り――らしい。

>127

騒ぎの側にブツはある。
それを求めて一歩踏み出そうとした所だった。

「……あぁ?」

向こうからやって来るのは、何処をどう見ても子供にしか見えない。
喧騒はここまで届いているのに暢気な日本人だ。

「お嬢ちゃん、出来たら部屋に戻って暫く外に出ない方が良いな」

スパスを肩に担いで、諭す様に言った。


そこに3人目が近づいている事に気付かず。

(場所:セカンドデッキ、インフォメーションセンター付近)

134 名前:ドクター・ウェスト ◆sODrWEST1A:2003/07/12(土) 00:30

>>93-94レヴィ 
な、なななななぁんにが起こったであるか!?
吾輩、いきなりの衝撃でビックらこいたのであぁる!
 
「博士〜、襲撃があったみたいロボ!先を越される可能性が70%を超えたロボ」
エルザが驚異的な性能を発揮して状況を分析する。
 
むむむ!吾輩も頑張らなくてはであぁる!
「出ろおぉぉぉぉぉッ!!シャイニングハーレエェェェェェッ!!」
吾輩は指を鳴らす。
 
――――――フィンガースナップ
 
そして爆音とともに吾輩の愛車、
ハーレーがプールの水面を割って吾輩の元へ飛んでくるのであぁる!
 
「エルザ!乗るのであぁる!先を越されたら吾輩間抜けであぁる!」
「博士、多分遅い気がするロボ」
エルザとともに、吾輩はパーティー会場へ急ぐのであぁる!
 
「ドクターブレイク!……おや?」
吾輩たちはハーレーによる突撃でドアをブチ貫いたのであぁる!
しかし――――――そこはカジノであり、なぜかじゃんけんをしている面々がいたのであぁる!
(現在位置:パーティー会場とみせかけてカジノ)

135 名前:レヴィ(M):2003/07/12(土) 00:31

>>130 夏祭り 顔面ストライク VSアンナロッテ
 
「City slam penetration Play it like a foo……おわッ!?」
 
 煙を裂いて現れたのは当のアタッシュケース。
 こいつは……ちょっと予想外だ。
 
 予想外だった故に。
 二挺拳銃を捨てて受け止める事も。
 頭を下げてとりあえずかわす事も。
 どちらも叶わず。
 
 顔面にケースを喰らって、もんどり打って倒れた。
 あ、鼻血……痛ゥ。
 
(現在地:パーティ会場入り口)

136 名前:アレクサンド・アンデルセン(M):2003/07/12(土) 00:31

夏祭り 
 
>>127

 コツ、コツ、コツ。 
靴音を鳴らしながら漆黒の神罰代行者はプロムナードを歩む。 
 
 カツ、カツ、カツン。 
 
 その歩を止め、少女の姿を認める。 
正確には「少女の姿をした夜の一族」の容を。 
 
「こんばんは、お嬢ちゃん。いい夜だな。 
 そして、死ね、化け物。 
 塵に過ぎぬお前は塵へと帰れ」 
 
 ぬらり。 
 
 柄から伸びる刀身は大きく鍵型にまがり、鈍色を映す鋼がその手に現れる。 
『銃剣』。 
彼の数ある異名の中でも最も即物的なそれは、その振るわれる武器の名でもある。 
両の手に一本ずつ。 
併せて二本の銃剣が抜き放たれ、疾風の勢いで殺到する。 
 
(場所:セカンドデッキ・インフォメーションセンター前) 

137 名前:本部以蔵:2003/07/12(土) 00:34

>>129
「こんな所であんな糸使いにめぐり合えるとはな」
 
 超実戦派柔術の使い手、本部以蔵はそう呟いた。
 
「思えば、近代に入って以来、糸使いは全てお約束の中でしか、
 糸を使用できなかった。―――――昔はよ」
 
 ―――江戸時代に活躍した仕事人
      糸一本で標的の頚動脈を締め上げ、糸を切ると同時に標的絶命―――
 
「そんな芸当を出来る奴もいたもんだ。だがよ、あの女の糸は……」
 
 ―――豆腐であればサイコロ状に斬ることも出来、
 
 ―――鋼鉄であればバラバラに寸断し、
 
「なんでも斬りさいちまうだろうぜ。勝てねえ、勝てる道理がねえ」
 
 
     ――――あの女、ワクチンをもっていっちまうぜ。
 
(現在地:パーティー会場途中の廊下)

138 名前:麻宮アテナ ◆qZESP0jjgI:2003/07/12(土) 00:34

>>124>>130>>135
 銃撃戦。すっかり蚊帳の外に置かれた私(と、会場の人たち)。
もうなにがなんだか。
 
 たぶん、私の関係ないところで、なにかが起きている。
私はたまたま、その場に居合わせてしまっただけ。
 
 (よかった……)
 
 今まで私自身がトラブルの火種になってばっかりだったのですが、
今日この件では自分を責めずにすみそうです。
どっちが勝ってもいいから、周りに被害が及びませんように……。
 
 (現在位置:パーティー会場)

139 名前:ブラザー・フィリポ ◆gxPyzUNAGI:2003/07/12(土) 00:35

>>132
 
 一体どういう視力をしているのだろうか、フィリポの足取りはこの煙の中でも確かだ。
 その目がミラーシェードをかけた怪しげな人影を捉えるのに、さほど時間はかからなかった。
 
「そこのお前、どんなに誤魔化してもこのオレ様ちゃんアイは騙せねーYo!
 大人しく死んどけ、ぶしゃしゃしゃしゃっ!」
 
 ほとんど言いがかりに等しいことを口走りつつ、その右手が閃いた。
 そこから飛び出したのはワイヤーピック──鋼線の先に鋭利な短剣が結びつけられた、刺
突用の武器だ。
 
(現在位置:パーティー会場入り口付近)

140 名前:薬読のアンナロッテ ◆SORIA7miU.:2003/07/12(土) 00:38

<夏祭り>
 
>135
 
実際に静寂があったわけではないが、私の耳にはその瞬間何も聞こえなかった。
 
「えーと――」
 
予想外の展開に、私の思考も一瞬停滞する。
 
「神のご意志ですね、これも。」
 
床に落ちたケースと銃を一辺に掴み、パーティ会場から脱出する。
それにしても、アンデルセン神父とウナギダルマ……もとい。
ブラザー・フィリポは何処へ行ったのだろうか?
 
(現在地:パーティ会場を脱出し、上階への階段付近。偽ワクチン所持)

141 名前:「DEATH」(M):2003/07/12(土) 00:42

>>128 漆黒の王子
>>131 クルースニク
「DEATH」は上階を目指し、突き進んで行く。だが……4階の各地で突如として爆発を起きた。
船体が揺れ、各地が炎に包まれる。そして、「DEATH」自身も炎に包まれ……。
普通の警備員なら、これに耐え切れる筈はない。だが、彼は「DEATH」……地獄の警備員。
この程度、手傷の内にも入らない。
 
「グガガガ……グォォォォォォ!」
 
叫びと共に炎を薙ぎ払うかのように棍棒を振り回し、「DEATH」は階段へ突き進む速度をより一層速め、
一斉に吹き出す炎と同時に3階へ飛び出したのだ。
そして、炎を振るい落とすかのように体を揺らし、そして2階への道を走り出す……。

(現在地4階→3階。2階へ移動開始)

142 名前:レヴィ(M):2003/07/12(土) 00:43

>>140 夏祭り トリガーハッピー VSアンナロッテ
 
 突然の激突にグラグラ揺れる意識の側を、女が改めて拾ったケースと共に走り去ろうとする。
 おいおいおいおい、そいつはなしだろう?
 あたしに特大のプレゼントくれといて、テメェは逃げようなんてのは――――
 
「通用しねェんだよ!」
 
 倒れたまま、逃げる女の足に銃口を向けてトリガートリガートリガートリガー。
 すぐさま起きあがり、追撃開始。
 
(現在地:パーティ会場入り口)

143 名前:アルバート・ウェスカー(M):2003/07/12(土) 00:43

>>120>>129
エレベーターに乗り込み、階のボタンを押す。行き先は・・・パーティー会場だ。
なにやら下のほうからも銃声が聞こえている。ならばその渦中に目標がある可能性も高いだろう。

階表示が、会場のあるアッパーデッキを差す。
ドアが開く瞬間―――――いきなり男がこちらへ向けて突っ込んできた。

「む!!?」

明らかに普通の人間ではない。力も軽くそんな領域を逸脱しているだろう。
だが・・・・・・

次の一瞬、その男は細切れと化していた。
何を使ったのかは正確にはわからないが・・・・これは、ワイヤーソーのようなものか?

エレベーターの外に踏み出す。
そこには―――血に赤く光る糸と、やはり返り血に赤く染まった、妖艶な女が立っていた。

(場所:パーティー会場・エレベーター前)

144 名前:上月永斗&司〈M〉:2003/07/12(土) 00:46

>>118〈ディートリッヒ〉
〈北斗視点〉
煙幕でよく見えないが、その男の側まで近づいていく。しかし――彼の手の中に、アタッシュケースは無かった。
「ちっ――無駄足を踏んだか」
北斗はそういうと、それ以上その男に興味を失ったかのように背を向け、喧騒の中へと歩き出した。

〈司視点〉>>138〈朝宮アテナ〉
兄貴がどこかに消えた。どうやら目的のものを見つけたらしいが――この騒ぎじゃあどこに行ったか解らない。
司としては、特にやる事もなく――おや? 視界に、セーラー服の少女が目に入る。どうやら日本人らしい。
何で、こんなところに? テーブルの下で料理を食べている姿を見ると、こんな修羅場にも慣れているようだが――
「おい、どうしてこんなところにいるんだ? あんたもあれを奪いに来た口か?」
そう、尋ねて見る。返答しだいでは――まあ、俺には関係ないんだが。

〈現在地:パーティ会場〉

145 名前:千早雅之(M):2003/07/12(土) 00:46

>>139
 
白煙の中から不意に現れた短剣。
雅之は体を捻って回避した。
 
こっちを狙う相手も居た――いや、違う。
少なくとも鯰に恨みを買う覚えはない。
何故か神父の姿をしてはいるが。
 
「誰です――こちらに敵対する意志はありませんが、それでも戦うというなら」
 
何処からともなく二本の刀を抜く。
現役を退いても手放すことができなかった刀。
 
力を抜く。
両手の刀が下がる。あくまでも自然体。
 
「僅かの間でよければお相手しましょう」
 
白煙の中、静かな声が響いた。
 
 
【現在地・パーティ会場入り口。神父フィリポと接触】

146 名前:薬読のアンナロッテ ◆SORIA7miU.:2003/07/12(土) 00:49

<夏祭り>
 
>142
 
今度は私が無様に転げる番だった。
右手には銃、左手には鞄、足には弾丸。
受け身を取る余裕など有るわけがない。
 
私は床と熱烈なキスをする羽目になった。
したたかに鼻を打つ。
不思議な事に煙草はくわえたままだったが。
 
そして、大事なケースは私の手を離れて(>>150)の方へ転がって行ってしまった。
 
鼻血を止める間もなく、必死に追いすがろうとする私。
……さぞ、無様な事だったろう。
 
(現在地:パーティ会場近く廊下)

147 名前:レヴィ(M):2003/07/12(土) 00:52

>>146 夏祭り ケース争奪戦(注! 包丁は出てこない) VSアンナロッテ
 
 転がってゆくケース目掛けてダッシュ開始。
 テメェにだけは渡してなるモノかよ!
 
(現在地:パーティ会場近くの廊下)

148 名前:漆黒の王子(M):2003/07/12(土) 00:53

>>131クルースニク
私の眷属が2階へ走る際、奇妙な男が階段を上るのを遠目に見たと言う。
絶滅主義者の一人のようだ。だが、あの手の輩には構うまい。
私は体を霧に変え、階下へとひた走る。
 
怪物は怪物同士でやりあうがいい。
 
爆炎が私の背を焦がす。狂っている。流石だ。
どうしようもないクズめ。しかし勝つのは私だ。
勝者は――――――最後に笑えばいい。
 
あの白い男が居ない階段を私は降り、
其処にいた一般人を襲って体を癒すと眷属に号令をかけ、
パーティー会場へと向かわせた。
 
(現在地:2F→パーティー会場へ食屍鬼を先行させる)

149 名前:比良坂初音 ◆HtiOHATUNE:2003/07/12(土) 00:53

>>129
初音はエレベーターから現れた男をじろりと眺める。
見た感じそれほどの威圧感は感じないのだが、それでもその挑発的な態度が気になった。
「これが欲しいのかしら?」
初音はケースをこれ見よがしに男に見せつける
 
「理由いかんによってはタダで渡してもいいですわよ」

150 名前:岩鬼将造 ◆893BIiCYCo:2003/07/12(土) 00:53

>>ALL
船内放送
「ピンポンパンポーン!あーテステス、あーテステス……
 えー、御乗船中の乗客及び添乗員のミナサマ。
 こちらは健康で清潔な暮らしをお届けする岩鬼消毒社でゴザイマース!
 現在本船内部において悪質な吸血シラミが多数発生いたしておりますので
 これより加熱消毒を行いマース!
  
 なお、消毒の際、激しい揺れが襲いますので、生きていたかったら禁煙を守って
 しっかりとシートベルトを着用しておいてください!!」
 
 
(TNT点火、パーティー会場をフロアごと吹っ飛ばしちゃるで。
 火薬の量とか角度とか、きっちり計算ずみじゃけえな。)
(ちなみにワシは今操舵室脇の放送室におる。)

151 名前:エリ&フィオ ◆uiSV001MHw:2003/07/12(土) 00:54

>>110>>115>>124>>130>>135
銃を持った女が入ってきた瞬間、あたしはしゃがんだ。一瞬遅れでフィオもしゃがむ。
響く銃声。燻る煙幕。
あたしはヘビーマーダーを抜いた。となりでフィオもクラシックマーダーを抜く。
 
さて……どうしようかな。

(現在地:パーティー会場)

152 名前:アルビノ“山城友香” ◆0DYuka/8vc:2003/07/12(土) 00:55

>>133>>136
さて、とてとてと歩いている友香ちゃんの目の前にスキンヘッドの黒人さん登場。
ショットガンを担いで、なにやら物騒な顔をして。
 
『お嬢ちゃん、出来たら部屋に戻って暫く外に出ない方が良いな』
 
と、とてつもなく物騒なことを言った。当然だ。ここは物騒な戦場なのだから。
ところが、気付いていない。と、言うか言葉が通じたことで舞い上がってる。

「よく、日本人だなんてわかりましたね〜。
 ほら私、こういう身体だから、日本人だってなかなか気付いて貰えなくて〜♪」

♪マークなんて出してる場合じゃないだろ………全く、この娘は。
アルビノという得意な体つきで、現地人に間違えられたこともある。
─────もはや、完璧に安心しきっている。銃を構えて相手を前にして、だ。
はっきり言えるのは、どんなことであれ間違いで任務の指令なんかするな、こんな娘に。

そして、化け物様ご来場である。いや、正確には化け物狩り様ご来場なのだが。
神父の格好をした化け物狩りは言う。

『こんばんは、お嬢ちゃん。いい夜だな。 
 そして、死ね、化け物。 
 塵に過ぎぬお前は塵へと帰れ』

銃剣を構える神父。これがかの有名なアレクサンド・アンデルセン神父であることを友香は知らない。
ただ、目の前の銃剣は黒い男の散弾銃より危険なことは容易に判断が付いた。
そして、この神父が私を狙っていること、そして今の状態で到底かなわないことも、しかし。

目の前の黒人さんはこの人になんて言われるか………。

「─────黒人さん、危ないです!」

腕をつかんで、そのままテレポート。船の上なら何処でも良い。
……………と、いうわけではないことを身をもって次の瞬間、友香と哀れな被害者さんは実感する。

………転移後、ばしゃ〜ん!!と音を立てて水の音がした。

(セカンドデッキ→(テレポート)→プール)

153 名前:ブラザー・フィリポ ◆gxPyzUNAGI:2003/07/12(土) 00:56

>>145
 
 ワイヤーピックを回避し、男は二刀を抜いた。
 だらりと両刀を下げたその姿に、しかし隙は感じられない。
 
「オレ様ちゃんが誰かって?
 異端審問官一ビューチホーかつストロンゲストな男、ブラザー・フィリポとはオレ様ちゃんの
ことだYo!」
 
 言いつつ、今度は両手が動いた。
 二本のワイヤーピックが微妙な時間差をおき、男の急所を刺し貫こうとする。
 
「オレ様ちゃんの超★クレバーな頭脳が、お前が怪しいって全力で告げてるんだYo!
 覚悟してお縄につきなっ!!」
 
 ……もはや、これは言いがかり以外の何者でもあるまい。
 
(現在位置:パーティー会場入り口付近)

154 名前:麻宮アテナ ◆qZESP0jjgI:2003/07/12(土) 00:58

 テーブルを盾にしながらさりげなく移動。
とりあえず、ここは逃げてもバチはあたらないでしょう。
幸いほかの人たちもあらかた逃げ出したようですし、
どさくさにまぎれて私も……。
 
>>118
 「……ありゃ?」
 
 結構大きめのケース。なんだろう。
ちょっと拾い上げて眺め回してみても、なんだかわかりません。
 
 ……う〜ん、これ、なにかな? 開くかな?

155 名前:片倉優樹&山崎太一朗 ◆nlYUUKi3kA:2003/07/12(土) 00:58

(2階 2032号室)

山崎:「優樹さんー・・・暇です」 
白髪:「それは、そうでしょ。どこか散歩に行ってみたら?」 
山崎:「それはいいアイディアです。じゃあ。早速準備してください」 
白髪:「・・・あたしも、行くの?」 
山崎:「・・・優樹さん。空き缶でピラミッドを作るのはやめて下さい」 
白髪:「開いてないのもまじってる。太一君も一緒に作ろうか」 
山崎:「・・・(むっ・・・)一人で出ます!」 
白髪:「ハンカチは持った?部屋の番号は覚えたかな・・・食事の時間は・・・」 
山崎:「いい加減に・・・もぅ・・・行きます!」
 
白髪:「(ひらひら)さて・・・。浦さん・・・。あたしも行ってこようか」  
(ドアの前) 
山崎:「自分も・・・行きます」 
白髪:「・・・仕方ないか・・・。でも、今日はあくまで仕事できてることを忘れないこと」 
(2032から出て、廊下へ)

156 名前:雷電&虎丸:2003/07/12(土) 00:59

>>128
雷電
「む、もしや、あの技は………?」
虎丸
「何ぃ、知っているのか、雷電!?」
雷電
「うむ、あれぞ、音に聞く『硬体術』。
 しかも、極めて高位のものだ。
 よもや、こんなところで見ることができようとは―――――」
 
――――――――――――――――――――――――――――――――――
『硬体術』
 
 古来より、相手の攻撃を防ぐ為に様々なモノが考案されてきた。
 鎧、盾、兜、小手などがその典型例であろう。
 しかし、時代が経るにつれ、武器も進化し、防具もそれに見合った防御力を得る為に、
 相応の金属を使用し、結果、実戦に使用不能な重量にまでなってしまった。
 
 そこで考えられたのがこの硬体術である。
 己自身の肉体の硬度を増し、防御力を飛躍的に上昇させる。
 一般的には気を用いて、身体を鋼鉄とするのである。
 よく知られているのが一子相伝の暗殺拳の奥義であり、怒りは肉体をも鋼鉄とするという。
 
 無論、気だけでなく、特殊な術法を用いた硬体術も存在する。
 とある魔界の王の用いた硬体術になると、身体の時間停止を行い、
 いかなる攻撃も受け付けなくしてしまうという。
 
 
 現代においてはこの技の使い手は殆ど失われてしまっているが、
 逆の発想で脂肪を大量に身体に有し、衝撃吸収肉体特質の持ち主が大勢生まれた。
 特にいわゆる先進国程、その得異体質の者は多く確認されており、
 食糧事情と何か、関係があるのでは専門家の間で囁かれている。
 
 
              民明書房刊『今日からキミも拳法殺し!』
――――――――――――――――――――――――――――――――――

157 名前:レヴィ(M):2003/07/12(土) 00:59

>>146 >>150 夏祭り ケースは何処か遠くへと VSアンナロッテ
 
 ……努力も空しく、ケースはダストシュートに吸い込まれていった。
 おいおい、何処に繋がってんだよ、コレ?
 
 ため息一つ、倒れている女を見やってもう一回。
 とりあえず、顔面にぶち込まれたケースの礼として、顔面に蹴りを叩き込んでおいた。
 
「こいつでチャラにしといてやるよ」
 
 あんまり構ってやれなくて悪ィな。
 ……あぁ、そう言や連絡すっかり忘れてた。
 
「ダッチ、目標のケースをロストした。どっかに転がってると思うからよろしく」
 
 それだけを言い残して、あたしはパーティ会場辺りを後にした。
 
(現在地:パーティ会場入り口)

158 名前:薬読のアンナロッテ ◆SORIA7miU.:2003/07/12(土) 01:04

<夏祭り>
 
>150
 
ケースは全く見あたらない。
まさか海に落ちたのだろうか?
 
そして起きあがろうとした瞬間――
 
>157
綺麗に顔面にブーツがヒットする。
気を失わなかったのは運が良いのか悪いのか、
悶絶する私を尻目に、刺青の女性はどこかへ去っていく。
 
 
(現在地:パーティ会場入り口)

159 名前:ダッチ(M):2003/07/12(土) 01:06

テレポートしても夏祭り

>136 >152

横合いから声が聞こえる。
振り向いた視線の先には神父服の男――但し、目付きが普通じゃない。
ついでと言うほど些細でもないが、ついでに言えば物騒な物を両手に下げている。

やる気だ。
しかも、このお譲ちゃんと。

――何考えてる!?

俺は目に入っていないようだ。
両手の刃物をあっさりと投げた。
見殺しにするには少々後味の悪い展開だ。

「ちっ―――」

だが、抱き抱えようとしたお嬢ちゃんの方が行動が早かった。
そして暗転。落下。
流石に何処に居るのか認識するまでには時間が掛かった。

「……今のはお嬢ちゃんがやったのか?」

他に居ないのは判っていても、そう聞いていた。

(場所:ボートデッキ、プールの中)

160 名前:上月永斗&司〈M〉:2003/07/12(土) 01:07

>>144 >>154 >麻宮アテナ

(司視点)
よく見ると、その女はアタッシュケースを持っていた。例のブツと同じ方だ。……だったら、遠慮はいらないな。
司は両手をポケットに突っ込んだまま、無造作に彼女の元へ歩いていく。
「痛い目見たくなけりゃ、おとなしくそいつを渡しな、穣ちゃん」

(現在地:パーティ会場)

161 名前:ヴァンパイアロード他2匹(M):2003/07/12(土) 01:08

>>154
「貴様のせいだ貴様の!この金髪雑魚が!」
「まあ、どの道追うしか無い訳ですがね。何処かの雑魚の仕業で」
 
ああ、もう。分かりましたから肘をぶつけるな、皿を蹴るな。
ぬっ殺すぞ朋友(ポンヨウ)
 
気を取り直し、常人では為しえない脚力用い、一跳びでパーティー会場上空を往く我等三匹。
吹き込める煙は催涙ガスの類か。フン、愚かな。
この程度の小癪な武器が我々に通用すると思ったら
 
「「「ガホゲホゴフゲハ…!」」」
 
効果は覿面、程なく落下…やるな、人間(ヒューマン。
溢れる涙を拭いつつ、醜いどすの効いた男の物騒な放送も聴きながらも体勢を整え着地。
視線の先に偶々入った光景。それは少女と―――
 
「アタッシュケースがもう一つ…?」
「成る程、ダミーというわけですか」

ふむ…複数ある上に、どれか本物かは我々には分からない。
ならば、現在入手できるものを入手するのが上策。
そう、ただ―――――打ち貫ゲフンゲフン…奪い取るのみ!
 
「いきますよ。御同胞!」
「「承知した!」」
 
その言葉と共に、少女へ迸る紫電と炎の槍。
不死者ともなれば扱う魔力は人間風情の比にあらず。
その強大な魔力を行使して発生させる自然現象攻撃…そう、魔法。
そして稲光と炎が踊る中
 
「フハハハハ…熱、熱、アツ!」
 
魔法の使えない私は率先してケースを奪いに行く役だ。
だがおかしい、援護射撃の筈なのに私めがけて撃っている気がするのは何故だろう。
(場所:パーティー会場)

162 名前:Kresnik ◆fFCROSSQsM:2003/07/12(土) 01:09

>>131
  
 4階から3階へ――暑い熱波を頬で受け、引き攣った笑いは自分で認識。
 なぁ、クールに行こう。
 例えば。
 例えば、俺はクールに動けている。
 血流を巡る殺意は麻薬めいていて、全身の機能を常識から剥離させる。
 飛ぶ。
 体が軽い。
 現実感が剥離する。乖離する意識。
 文字通りに思いのままに動く。加速する。
 着地は両足。前転して、即座に走り抜けた。
 
「く……くく」
 
 前方から迫る影。
 走り抜ける俺とそれは――だから、交差方で入れ違う。
 それは。
 黒く、昏く、
 酷く大きく醜悪な塊――つまり、俺は。
 
「――ソイツは……面白ぇよなぁ」
 
 擦れ違い様、右手に振り出したグロックの全弾を絞り切った。
 着弾は確実。死んだかどうかは知ったコトじゃない。マガジンを弾き落として、
袖のギミックを発動。滑るマガジンを銃杷に叩き込んで、客席を蹴って加速した。
 
「Waste no time dreaming in vain! さあ、踊れ踊れ楽しめ笑え! 泣いても
叫んでも助けは来ない! ココは牢獄太平洋! 一匹残らず死に尽くせ!」
 
 両手にグレネード。接触信管の二つを投げ捨てて、そのまま3廊下へ。
 
「何がやりたい何がしたい何が望みだお前等クソは! なぁ、出て来いよ!
 一杯楽しく遊ぼうぜ! なぁ、なあ、なあ、なあ、なあ!」
 
 座席を吹き飛ばしてロッカーを消してカウンターを塵に変えて――
 なるほど、ココには誰も居ない。
 走る勢いはそのままに、2階への階段を飛び降りた。
 

163 名前:千早雅之(M):2003/07/12(土) 01:10

>>153
 
神父風の鯰は再び短剣を放つ。
否、短剣ではない。煙で見えにくいがワイヤーによって繋がれている。
武器としては際物だが……それを使いこなせる程度の腕はあるのだろう。
 
雅之が動く。
視認する前に僅かに動いた白煙、それを頼りにワイヤーの軌道を見切る。
そのまま足音も立てずに間合いを詰め、一撃。
 
続けざまに弐、参、泗、伍――――
 
斬撃を加えながら交差する。
そして、そのまま脇を抜けた。
 
相手の武器の精度を考えればほぼ完全に見えていると思って良い。
ならば、視界の悪いホールにいる理由はない。 
 
雅之は入り口を抜けホールを出た。
 
 
【現在地・アッパーデッキ、廊下。神父フィリポと交戦中】

164 名前:アレクサンド・アンデルセン(M):2003/07/12(土) 01:12

夏祭り 
 
>>152>>159

 投げ放たれた二振りの銃剣は、しかし少女の体を擦り抜け。 
いや、それまであった少女の体を両断する軌跡を描きながら、しかし届くことはなかった。 
 
 通りすがりの黒人の腕を掴むと、その姿は瞬く間にかき消える。 
 
「……フン、逃がしたか。構わん、化け物。 
 たとえどこまで逃げようとも追いつき縋り付き殺し尽くしてやる」 
 
 両手に銃剣をだらりと提げたまま、ゆっくりとその場を後にした。 
 
 (場所:セカンドフロア・インフォメーションカウンターからエレベーターへ)

165 名前:アルバート・ウェスカー(M):2003/07/12(土) 01:14

夏祭り ワクチン争奪戦

>>140 
「理由如何によっては、タダで渡してあげてもいいですわよ」
目の前の、赤い糸を纏い、血に濡れた女は確かにそういった。だが――――
この手の話し方をする奴ほど、タダで渡そうとはしないものだ。

「それは嬉しい申し出だな、レディ。
 タダか・・・流石にそれは悪い気がするな。とりあえず代金は――――」

懐中のマグナムを素早く抜き放ち、女の腹をめがけ―――――

引き金を、弾く。

「鉛弾でも、貰っておいてくれ」
マズルフラッシュの向こうにいる女に――この銃声で聞こえたかどうかは知ったことではないが――そう告げた。

>>150
そこへ、いきなり唐突に放送が入る。
あまりにも予定にない発言だった。―――爆破予告だと?
まずいか?

――いや、まずはワクチンの確保だ。それさえ済めば、後はどうとでもなる。
硝煙の向こう・・・女がいる方向に向かい、足を進めた。

(場所:パーティー会場・エレベーター付近)

166 名前:漆黒の王子(M):2003/07/12(土) 01:14

>>156雷電&虎丸

――――――――む、アレは!
あの二人は!!
 
私は心の奥底から恐怖した。あの二人がここにいる。
それは真の恐怖の幕開け。
 
>>162クルースニク
私はこれからの予定をくみ上げる。
階段を移動し、パーティー会場までの道を歩きながら。
「さて、眷属よ会場の美姫たちは私がいただく。
 処女のレバーは栄養満点だ。貴様らが存分に喰らうがいい。
 ワクチンを取ったら残りは犯すなり写真をネット配信するなり好きにするがいい。
 そうしたら、すぐにこの船を出る。
 例え我々を退けられたとしても、この船はもうだめだ。
 かつて無い支配と恐怖の元、沈むであろう」 
白き殲滅主義者の比ではない。
 
あの二人がここにいるという事はあの存在が居てもおかしくないのだから。
ヴァチカンの恐怖の比ではないのだ。
 
そして、私はパーティー会場にたどり着き、知己に出会った。
>>161ヴァンパイアロード達
「さあ、救援にきたぞ!盟友達よ!」
古き縁ではあっても目的はある意味同じ。
 
ならば使い倒してくれよう。
>>150岩鬼
放送を気にせず、私は眷属たちを先行させ盟友達の元へ急いだ。

 

167 名前:漆黒の王子(M):2003/07/12(土) 01:14

>>166の現在地はパーティー会場だ)

168 名前:麻宮アテナ ◆qZESP0jjgI:2003/07/12(土) 01:15

>>150
 そのとき、唐突に聞こえてきた船内放送。
 
 『こちらは健康で清潔な暮らしをお届けする岩鬼消毒社でゴザイマース!』
 
 だれ?
 
 『現在本船内部において悪質な吸血シラミが多数発生いたしておりますので
これより加熱消毒を行いマース!』
 
 はい?
 
 『なお、消毒の際、激しい揺れが襲いますので、生きていたかったら禁煙を守って
しっかりとシートベルトを着用しておいてください』
 
 ……? シートベルト。どこにそんなものが。
船内ガイドにはそんなもの何処にも……。
 
>>160
 そのとき。
 
 『痛い目見たくなけりゃ、おとなしくそいつを渡しな、穣ちゃん』
 
 ”いかにも”という風体の人。そいつというのはたぶん、
今(なぜか)私の手にあるアタッシュケースでしょう。
そりゃ、それで事態が収まるなら喜んでお渡ししますが……。
 
>>161
 さらにもうふたり。
 
 (こっちは問答無用ですか!)
 
 炎や雷撃が、張り巡らせた力場を打ち抜けずに四散。どうしよう!
 
 「え、え〜と、あなたたちが戦って、勝ったほうに差し上げるというのはどうでしょう?」

169 名前:岩鬼将造 ◆893BIiCYCo:2003/07/12(土) 01:16

>>150  
船内放送
 
「わっははははは!! どーじゃ、驚いたか!!
 
 まだ生きてるモン!返事せんかい!
 今からこのワシ直々にブチ殺しに行ってやるけえのう!
 マフィアだかドラキュラだか知らんがみーんなまとめて魚のエサにしちゃるけえ
 待っちょれや!!」
 

決まった。決まり過ぎた。
ワシってば、何をやってもカッコ良すぎるのう。
さっき誰かがチンケな爆弾破裂させおったようじゃがあの程度じゃ
まだまだワシには及ばんのじゃ!

と、ナルシーしてる場合ではない。
今から害虫どもを全殺しにするっちゅう大仕事なんじゃけえな。
化けモンがナンボのもんか知らんがキレイさっぱり全部ブチ殺してくれるわい!

意気揚々と放送室を後にしたワシ。
廊下に出ると爆発の影響でダストシュートの管が破裂しておった。
盛大にブチまけられたゴミに混じって一個の高そうなケースが床に転がっておる。
どうやら爆風で吹っ飛ばされてここまで転がってきたようじゃが―――。
ハハァン、さてはコイツが例のブツじゃな。
丁度ええ、こいつを持っていればエモノのほうから向かってきてくれるじゃろうけの。
 
「さあ!かかってこんかい!!化けモン!
 早くせんとブツはワシがもらってまうで!」
 
(ケース回収、ブリッジデッキからポートデッキに移動中)

170 名前:アルビノ“山城友香” ◆0DYuka/8vc:2003/07/12(土) 01:17

>>159
 
「………ごめんなさ〜い。」
 
そう言って、友香は、あたふた、おろおろ。
そりゃそうだ。転移して、そのままプールにどぼ〜ん。なのだから。
とりあえず、流水に対して抵抗力があったことがある程度の救いだろうか。
 
『……今のはお嬢ちゃんがやったのか?』

「はい…とりあえずは………テレポートってわかりますか?」

顔をあげて、なんとか事の説明をする。自身の超能力について。
テレポートを始めとする超能力、本来夜族であるはずの友香が、何故有しているのかはわからないが、
これが直接的な、E.G.O.のリストに入るきっかけになった。
 
夜族であること、任務の内容は、一瞬頭をよぎったがあえて伏せた。
下手をすればここでショットガンでBANG!と言うことにもなりかねない。
それが、怖かった。まずは頼りになる人が誰であれ欲しかった。
 
プールを出る。そして、その銀色の髪から水を払って。
 
「え〜と、これから〜、どうします?」

友香は振り返って訪ねた。ある程度、任務に対しての覚悟を払いつつ。
(現在位置:プール)

171 名前:ブラザー・フィリポ ◆gxPyzUNAGI:2003/07/12(土) 01:18

>>163
 
 男が動いた。
 ワイヤーピックを絶妙の見切りで躱すと、そのまま両手の刀を立て続けに繰り出してくる。
 
 しかし、フィリポも伊達に異端審問官を名乗っているわけではない。
 常人なら五度死んでいるであろうその斬撃を紙一重で躱すと、素早く手元に戻したワイヤー
ピックを、脇を駆け抜ける男へと再び繰り出そうとして──
 
>>150
 
 閃光が走った。
 次に、凄まじい爆音と爆風。
 それに追われるようにフィリポは走っていた。先程の男と併走する形になっているが、それ
を気にする暇もない。
 
「なんでこうなるんだYo、オレ様ちゃん、もしかしてあんらっきー……?」
 
(現在位置:アッパーデッキ廊下)

172 名前:上月永斗&司〈M〉:2003/07/12(土) 01:20

>>161(ウァンパイアロード) >>168(アテナ)
ちっ。邪魔だ。(氷の塔)+(大地の牙)発動。襲い掛かってくる変な男に向かって攻撃。
それは足元に発生すると、その男を氷付けにしようと成長をはじめる!
同時に、「領域」を調整、拡大して電撃と炎を遮る。このケースに当たったら事だからな。
「戦って勝ったら……ねえ。そんな決定権があんたにあるのかよ?」
司はセーラー服の少女に問いかける。

(現在位置:パーティ会場)

173 名前:比良坂初音 ◆HtiOHATUNE:2003/07/12(土) 01:21

>>165
「まったく人の提案は吟味するものですわよ」
話にならない、この男がヴァチカンの人間なのか、それともフリーランスのハンターかは
知らない、だが、このような輩にタダでワクチンを渡すつもりはなかった。

「そう、それが答えね、なら!」
初音は自分の傍らで訳知り顔で立っていた男(>>137)を盾にして銃弾を防ぎ
さらにケースを煙で包まれたままのパーティー会場に投げ飛ばす。
「欲しければ自分で拾いにお行きなさいな・・・ふふふ」
(そして>>135に続く)

(場所:パーティー会場・エレベーター付近)

174 名前:薬読のアンナロッテ ◆SORIA7miU.:2003/07/12(土) 01:22

<夏祭り>
 
顔に付いた血を拭き足を止血した後で、新しい煙草に火を付ける。
どこかで禁煙と言われた気がするが、聞こえなかった事にする。
 
そして、ふと煙の晴れたパーティ会場に目をやると……
 
>>160>>161>>168
いろいろと不思議な光景が目に入った。
 
思わず爆弾を投げようとしたが、これでは先程の女性と同じだと思い自重する。
……もう一度紫煙を吸い込み、出た結論は一つ。
 
「ダメージが回復するまで、傍観しましょうか」
 
(現在地:パーティ会場入り口)

175 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/12(土) 01:23

 メザメ
(覚醒)
 
 ――――1等船室の天蓋付きの豪奢なベットの上で「それ」は目覚めた。
 
それは・・・女と呼ぶにはあまりに大きすぎた。
大きく分厚くそして大雑把すぎた。それは正しく肉塊であった。
 
それはほんの数時間前にパーティ会場でたらふく食事し、
明日の朝までじっくりと睡眠をとる事に決めていた。
「それ」は地上の絶対者であり、それの睡眠を邪魔する物などいないはずであった。
 
しかし、先ほどからの雑音はなんだ。断続的に続く轟音は、
「それ」から、安眠を取り上げ、中途半端な睡魔を襲わせてくる。
これでは、お肌が荒れてしまうではないか!!
 
「それ」はベットから飛び降りると、クローゼットに向かって突進し、
開ける手間もももどかしいとばかりに、扉をぶち破った。
 
―――クローゼットの中に見えるは白銀の鎧、そして2丁のチェーンソー。
 
その極厚のプレートメイルを手早く身に付けると「それ」は
「をーっほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほ!!!」と
高らかに雄たけびを上げ戦場へと身を踊らせた。
快眠を邪魔するフトドキ者たちを成敗する為に。
 
(ボートデッキ・1007号室から出撃)

176 名前:ブルーノ・デリンジャー:2003/07/12(土) 01:25

>>166

 会場内に立ちこめていた煙が消え、視界がはっきりとしてきた。
 
 俺の目に、黒装束に身を包んだ、いかにも怪しげな男の姿が飛びこんできた。
 きっとこいつだ! 俺の刑事としての本能が告げている。
 アタッシュケースは持っていないが、多分間違いない。

「Freeze!」
 拳銃を構え、怪しげな男に照準しつつ、叫んだ。
 
(場所:パーティー会場)

177 名前:「DEATH」(M):2003/07/12(土) 01:26

>>162 クルースニク
「DEATH」が2階への階段を目指す途中、男が一人居た。どうやら反対側へ向かっていた様だ。
白い服の、バッグを持った男だ。
「DEATH」にとってはどうでもいい事であり、無造作に男の横を通り過ぎた。が……

後方から叫びと共に何発もの銃声が響く。どうやら後ろから撃たれたようだ。

殆どが胴体に当たったが、一発が腕に嵌められた鎖付きの腕輪に当たり金属音を放ち、
そしてもう一発が後頭部に当たり、「DEATH」の帽子を跳ね飛ばす。

だが、「DEATH」の半分死んだ神経では痛みがあまり感じられない。
まるで何も無かったかのように走り続ける。
そして……2階への階段を駆け上った。
(現在地:2階へ移動)

178 名前:エリ&フィオ ◆uiSV001MHw:2003/07/12(土) 01:27

>>154>>161
上から何か降ってきた。人型の何か。
着地してなにやら話した後、少女に紫電やら炎やらを放ちだした。
「吸血鬼…」
「あ、エリちゃんあれ! ケースですよ!」
人命救助&目標確保のタメに0.75秒で行動開始。
背後から吸血鬼三体に50AE弾を一体頭二発、
同時にフィオが両胸に一発ずつを三セット、それぞれ叩き込んだ。
 
(場所:パーティー会場)

179 名前:アレクサンド・アンデルセン(M):2003/07/12(土) 01:27

夏祭り 
 
>>164
 
 恐らく先程の状況から考えても階下へと行くことはないであろう。 
つまりは上、パーティ会場か甲板の人混みに紛れるか。 
 
 考えを巡らせているうちにエレベーターが軽い音を立てて到着する。 
まずは上のデッキ、パーティ会場へと。 
 
(エレベーターからパーティ会場へ)

180 名前:スミレ ◆xdSUMIREYo:2003/07/12(土) 01:29

―夏祭り―
 水魔スミレ導入

 死徒二十七祖の一七、白翼公トラフィム・オーテンロッゼより、
 死徒二十七祖の二一、水魔スミレに申し付けられたそれは、

「吸血鬼ワクチン……ね」

 私は水面に立ち、
 目標のワクチンが乗っている客船を眺めてぽつり、つぶやく。

 吸血鬼化の完全な治療薬。
 吸血鬼の盟主たるトラフィムよりの指令は、そのワクチンの奪取もしくは破壊である。
 私に申し付けた意味といえば、私が吸血鬼でありながら水に適応した水魔である、と
それだけの事なのだろう。
 しかし、それは何故か符丁染みて。

「治療……か」

 人になる、それは吸血鬼に身を落としてから数百年、
 醒めることも無く見つづけてきた夢だ。
 
 そう、数百年。
 ならば人に戻ったとて、

「人として朽ちるだけ……かしらね」

 そんな事を考えて苦笑。
 多分きっと、
 それが私の希望をかなえることはないだろうけど。
 だけど戻れるかもしれない。 
 戻れるかもしれない。
 戻れるかもしれない。

 ならば。

 私は近づいてきた船の甲板を見上げ――

 月を背負うように、
 跳んだ。


(現在地:海面→ボートデッキ・プールの辺り)

181 名前:ドクター・ウェスト ◆sODrWEST1A:2003/07/12(土) 01:30

>>150岩鬼
「ぱ、爆破であるか!?吾輩、まだ全然進んでないのに!?」
吾輩は驚いたのであぁる!爆破!そして>>131などのフロアふっとばし!
頭の悪い奴が多すぎるのであぁる。
 
「博士ー、エルザ大分勝ったロボ〜」
エルザがガッツポーズをしながら吾輩に抱きついてくるのであぁる!
これはこれで嬉しいのであぁる!
 
「ん、良かったのであぁる!しかし……、隣りの娘子は何者であぁるか?
 吾輩、とんと見かけなかったのであるが」
娘とは言いがたい容姿の少女?っぽい何かがエルザの隣りに居たのであぁる!
 
「エルザのライバルロボ。今トップを争ってたロボ」
吾輩は頷いて、エルザにここから出て戦いの場所と安全地帯の確保を目指す事にしたのであぁる!
娘っこをハーレーの後ろに乗せ、三尻であぁる!
 
>>175なっちゃん
「  !? 」
吾輩は信じられないモノを見たのであぁる!
 
それは鋼の塊、それは白銀の存在。
戦の為だけに生まれたもの。
 
「な、ななななんであるか!?」
吾輩はハーレーに乗りながら眼前の存在に絶叫するのである。
(現在地: カジノから移動中に遭遇)

182 名前:片倉優樹&山崎太一朗 ◆nlYUUKi3kA:2003/07/12(土) 01:32

(2回 廊下→階段付近) 
 
「優樹さん・・」 
「うん、ああ・・・。酷いね」 
あたしのその返答に彼は、不満そうだった。でも、あたしはその理由なんか聞きはしない。 
想像は付くし、彼と議論して・・・それであたしが勝った事などないから。  
この船が機能しているのが異常に思える様相。幾ら太一君が鈍感でも気付く。 
この状態になる事は・・・先刻承知済みだった人が多数乗船していた、というコトに。 
 
>>150
あたしにとっては聞いたことの在る声の・・・ 
可笑しな可笑しな艦内放送をトドメに。彼のハートはバーストした。 

「何か、ないんですか?言う事は」 
「何も、ない。・・・そうだね。無用な争いをしてる暇だけはないんじゃないの」 
「・・・・・・あなたは…」 
 
あたしは指を彼の前に一本、突き出して、静止させた。  
「後で何をどう思われてもいいから・・・今は、あたしの言うとおりに動いて欲しいかな」 
 
偽善的な笑み。 
太一君は困った顔。でも、心音とかを鑑みると・・・喜びが大きいらしい・・・。 
 
>>162 付近 
あたしは戸惑った。顔には出さないけど躊躇した。・・・太一君が何かいいたげで・・あたしに手を伸ばし。
──どん、と銃声。たん、と足音。さっとあたしに伸びる彼の腕。 
カラダを捻るようにベレッタが飛び出し・・・太一君は階段めがけてロックオン。 
舞い降りる人影を容赦なくねめつけていた。あたしが何を言うよりも、早く。

183 名前:千早雅之(M):2003/07/12(土) 01:32

>>171 
雅之は疾走する。
その脇を併走する鯰。見た目に似合わぬ機敏さと言っていいだろう。
 
――しつこい。
 
現状がどうなってるかは誰にも分からないだろうが、良い訳がない。
或いは最悪の事態も想定する必要があるだろう。
ここで手間取るわけにはいかないのだが……
 
追走している神父に再び斬撃。
この速さでは命中は見込めないだろうが牽制にはなる。
向こうの間合いが長い以上この距離を維持するのが賢明。
 
この先にはエレベーター。上手く潜り込むことが出来るならば……
 
 
【現在地・アッパーデッキ廊下。高速戦闘中】

184 名前:漆黒の王子(M):2003/07/12(土) 01:41

>>172上月兄弟
「ふふはははははっ!」
哄笑を上げる私は盟友達へちょっかいをかけていた愚か者達へ食屍鬼を
差し向けた。食屍鬼の数は6、これならば楽に逝けるであろう。
 
しかし、広範囲の電撃で食屍鬼は数を半分に減らす。
 
「かなり多くの者達が集っているようだが…、食屍鬼はそれだけではないぞ?」
私は哄笑を上げながらマントを構えて、術をマントによる盾で止める。

>>168アテナ
「少女よ、そなたの血を飲ませていただこうか、私は乾いているのだよ」
微笑み、そして真紅の瞳で魅了しようとする。
 
この状況でかかるわけは無い、だが私の美学である。
 
>>176ブルーノ
警官らしき人影が私に銃を向ける。
 
「無粋だな…、失せよ」
私はそう一瞥して、男を無視しようとする。
三匹の食屍鬼をけしかけつつ。
 
(場所:パーティー会場)

185 名前:アルバート・ウェスカー(M):2003/07/12(土) 01:41

>>173
ワクチンがあるであろう女の下へ駆け込むさなか、硝煙の向こうから声が響いた。

「そう、それが答えね、なら!」
その直後、銀色のケースが宙を舞い、煙のもうもうと立ち込める中へ吸い込まれる。

「何!?」
全くの予想外の行動。この女、あんな至近距離からのマグナム着弾で生きているだと?
いや、それよりもワクチンが大事ではないのか?

最早、女に用も興味も無い。死んでいようが生きていようが構うものか。
今の自分には、ワクチン奪取が至上任務なのだ。

「どけェ!」
すれ違い様に、腹いせに腕を当て、女を弾き飛ばしつつ煙の中へ走りこむ。

(場所:パーティー会場)

186 名前:ヴァンパイアロード他2匹(M):2003/07/12(土) 01:41

>>168>>172
容易く打ち消される援護。
フッ、だが隙は出来よう。このまま一気呵成に
 
「があああああ!な、何故にー!?」
 
足元が凍りついたのはその瞬間だった。
ま、拙い!この氷、標的を凍りつかせんとする氷結魔法か!?
 
「大丈夫か、ロードよ!」
 
瞬く間に、というより狙い済ましたかのように矛先を変えた炎が炸裂し私を氷から開放する。
有難いが…恨みでもあるのかエルダーよ。今のは明らかに殺気が篭っていたが。
ともあれ、背後に跳躍して間合いを戻す。下手に近づけば厄介だ。
 
『勝った方が〜』
 
はっはっは、何を仰る。
我々世界の理を外れた不死者に、説教とは。
再び仕掛ける為、好機を伺う。時間は確かに無いのだが。
 
>>166
 
「おお、貴方様は!」
 
その風体にそぐわぬ闇の気配。我々に近く、だが一線を画す剛の者。
それは彼の有名な―――
 
「漆黒の王子殿…助太刀感謝致します」
 
新たな味方を得て趨勢が我々に向いてきた、そう思った矢先。
 
>>178
背後に殺気、空気を裂く音。
文明の利器こと銃弾の礫か!だが!
 
  「何の!!エルダーシールド!」
 
説明しよう!
何故か戦乙女に真っ先に粉砕されても甦った「不死身の最初ボス」こと
エルダーヴァンパイアを盾にして迫りくる攻撃をことごとく防ぎきる
吸血鬼の不死性を利用した堅固なる事無双の盾!
 
ざく、
どか、
ぐちゃ、

「…うわ」
 
言葉すらないのは何も言わないからなのか。もしくは何も言えないのか。
エルダー、貴方の尊い犠牲は忘れませんよ――――三日ぐらいは。
 
「何をするか貴様等…」
 
まだ生きてましたか。
…しぶとい。

187 名前:ブラザー・フィリポ ◆gxPyzUNAGI:2003/07/12(土) 01:41

>>183
 
 ……短足には似合わぬ、恐ろしい速さで駆けるフィリポ。
 男の攻撃も、この異様な速度、そして異常な頭身のこの物体には有効打を与えられない。
 しかし、フィリポのワイヤーピックもまた同様に、男の姿を捉えきれずにいた。
 
「ったく、ちょこまかと動くんじゃねーっつーNo!」
 
 罵声と共に鋼線をたぐり寄せ、また放つ。
 前方にはエレベーター。刃を交える二人は、そのまま箱の中へと飛び込んでいく。
 
 ──激しく今更だが、フィリポがワクチンのことを忘れ果てているのは言うまでもない。
 
(現在位置:アッパーデッキ廊下→エレベーターへ)

188 名前:ヴァンパイアロード他2匹(M):2003/07/12(土) 01:43

>>186
(場所:パーティー会場です。失礼をば)

189 名前:ダッチ(M):2003/07/12(土) 01:44

夏祭りinプールの中

>136 >152 >180

取り敢えずプールから上がるべきだろう。
泳ぎ出そうとした瞬間、笑い声らしき物(>175)が響き渡った。


――近寄らない方が良さそうだ。

勘がそう言っていた。
と、そこへレヴィからの連絡。
ブツをロストしたらしい。

「さて、どうするか……」

誰とも無く呟き、今度こそ動き出そうとした瞬間。
また、だった。
すぐ側に水音。偉くでかい。
落下してきた『何か』に巻き込まれて水中に沈んだ。

「――――今度は何だ?」

辟易としながら浮びあがり、『何か』が目に入った。
女、それもかなりの美人だ。

「誰だ……?」

何処から来たのか知らないが、見た目通りって事は無かろう。
立て続けに起こる常識外れの事態に、頭は少なからず混乱していた。

(場所:ボートデッキ、プールの中)

190 名前:極道兵器岩鬼将造 ◆893BIiCYCo:2003/07/12(土) 01:46

>>175 

ぶでん 
 
その地響きは階段の下から響いてきた。
 
ぶでん ぶでん
 
一定のリズムをもって響くその音はどうやら何かが床の上を歩く際に発せられるものらしい。
このような怪音を発しながら移動するとは、流石は化けモノじゃ。
しかし一体この化けモノ、どーいう姿をしておるのか。
今わかることはただ一つ、コヤツはとてつもなく重いっちゅうことだけじゃが……。
 
 ぶ で ん 
 
お、どうやら真下に来たようじゃな。どれどれ、ブチ殺す前にそのツラ拝んでやるとするかい。
ワシは階段の上からひょい、と下を覗き込んだ。
 
―――何じゃ? あの丸い物体は?人類の範疇を遥かに超えておる、正真正銘の化けモンではないか。
面白え、今からそのガスタンク体型をミンチにしてキロあたり100円で売り捌いちゃる。
ワシはまだこっちに気がついてなさげな化けモンの足下にありったけの手榴弾を放り込んでやった。
ブチ殺すときは何も言わずにさっさと殺すのが一番、喧嘩は先手必勝じゃけえの。
悪く思うな、丸い化けモンよ。
 
(階段の上から小早川に手榴弾投下)

191 名前:麻宮アテナ ◆qZESP0jjgI:2003/07/12(土) 01:47

>>172
 『戦って勝ったら……ねえ。そんな決定権があんたにあるのかよ?』
 
 私がもう少し強気なら、「口にききかたに気をつけてもらおう!」とでも
見栄きりしたのですが。
 
 「え〜っと、あっちの人たちにもいろいろ言い分があるんでしょうし、
そのほうがこの船もまだ安全だと思うんです。あと、私も。
もし私に襲ってくるんだったら……、あっちの人たちに向かって
思いっきりコレ投げますっ!」
 
 などと言っている間に新たな(>>178)闖入者。
このケースって、一体……。ドラッグかなにか、でもなさそうだし……。
 
>>184
 『ふふはははははっ!』
 
 今度はなんですか。
 
 『少女よ、そなたの血を飲ませていただこうか、私は乾いているのだよ』
 「トマトジュースならありますけど……」
 
 軽口でごまかしながら、あとずさり。人間として、というより女としての本能が
警報を鳴らしています。少なくとも、間違いなくこの人(?)は敵。
こっち(>>186)は無害そうですが。

192 名前:比良坂初音 ◆HtiOHATUNE:2003/07/12(土) 01:48

>>185
「どけェ!」
すれ違いざまの肘鉄、軽い衝撃は感じたが、ダメージはそれほどでもない
それでも自分に素手である程度の衝撃を与えるのだから、やはり大した腕前だ。
自分の盾となって絶命した髭面の男を無造作に放りだすと、初音は会場の方を見る
と、一人の少女が必死に戦っているのが見える・・・かなりの美形だ。

「ふふふ・・・」
初音は悪戯っぽく笑うと、パーティー会場の乱戦の中に身を投じたのであった。

(場所:パーティー会場)

193 名前:上月永斗&司〈M〉:2003/07/12(土) 01:50

>>184(漆黒の王子)
ちっ、なんだか分からんが、腐った死体が3匹もこっちに向かってくる……だがな。
「俺の領域内で、お前らに勝ち目はねえんだよ!」
〈ブレインコントロール〉で脳の温度を上昇。脳内麻薬を分泌させ、感覚が研ぎ澄まされる。
そして、〈氷の塔〉。狙いは……死体ども!
地面から突き立った氷の柱が、3体のグールを氷付けにした!

〈現在地;パーティ会場〉

194 名前:Kresnik ◆fFCROSSQsM:2003/07/12(土) 01:54

>>182
 
 面白い状況だと思う。
 中々に希有。中々に僥倖。
 
 ――着地と同時に、マズルが噛み合った。
 
 一人は人間、もう一人は――可笑しな物だ。笑えてくる。
 安物のスーツを来た男はいい。どうでもいい。眼中にない。興味が有るのは隣の
お嬢さん。男と対照的な黒スーツの上下は高級そうで、ただし小柄な身体が地名的
にスーツと合ってない。
 灰――極限に白い髪、子供めいて華奢な身体。握れば折れてしまいそうな首筋は、
傍目にはどう考えても二十歳に届いてない。
 
「いいかな、お嬢さん。化物はクソだ。連中の中には脳が腐ったマヌケしかいない。
殺戮欲、性欲食欲煩悩! 本能本性はケモノ程度でしかなく、外見を幾ら飾っても
その事実は動かしようがない。何が食いたい誰を犯したい嫌いだから殺したい、だ
けど自分は殺されたくない……――そんなカス同然の思考しか」
 
 握った手を開く。
 グロックが落ちる。
 そのまま――懐に滑らせた手で、俺は。
 
「――ないんだなコレが。オーケイ?」
 
 懐から抜いたマテバは、"その時点でポイントしていた"。
 警官と一緒にして貰っては困る。安穏と生きてきた連中と一緒にして貰ってはカド
違いも良い所だ。この距離でなら目を瞑っていても避けるのは容易い。
 そもそも――この男に興味はない。
 
「だからさ」
 
 灰色の髪の少女。女――女、バケモノ。見れば解る。匂いで解る。
 なあ、お嬢さん。
 
「今まで色々死んで貰ったしこれから色々死んで貰うから。消えな、雑魚キャラ」
 
 言い様、左手側に跳ねた。
 トリガーを絞りつつ、ポイントは白髪頭の少女へ。
 内包弾頭は聖別済みのハイドラショック6発。
 銃声を六度引き摺って、火線は大気を焼き抉った。
 
「コドモを如何こうする趣味はないから――パッと散れよ、お嬢さん!
 不運を嘆け! 明日を呪え! くく……ははははははははッ! 最高だよ!」
 
 グロックを右手に重ねて連射。
 硝煙が散る。薬莢が跳ねる。
 だから――まあ。
 一切合切死んでくれ。
 

195 名前:アルビノ“山城友香” ◆0DYuka/8vc:2003/07/12(土) 01:54

>>180>>189
もう一度、大きな水の音がする。
ちょうど友香と、黒人の真ん中当たり。
 
─────女の人。それも凄く綺麗な。大人の魅力って言葉が似合う。
 
だけど、私と同じ感じがする。でも、少し違う。
なんなんだろう、この違和感は………頭がちくりと痛んだ。

少し、混乱している黒人を余所に、友香は女性に近づいて訪ねた。

「─────もしかして、お姉さん。私と同じ眷属の方………ですか?」
 
あり得ないことをさらりと聞いていた。目の色が一瞬青に変わって女性を見ていた。

(現在位置:ボートデッキ、プールの中)

196 名前:千早雅之(M):2003/07/12(土) 01:55

>>187 
 
エレベーターに飛び込んだのは二人同時だった。
パネルを力任せに叩く。
音もなくドアが閉まる。
 
「――結局振り切れませんでしたか」
 
鯰と対峙しながら雅之は呟く。
対峙しながらも動こうとはしない。
 
いや、動けない。
 
狭すぎる。この状況ではどんな攻撃も回避のしようがない。
こちらも、恐らくは向こうも。
 
だから動かない。
 
ただ相手の出方を待つ。
低い音が、響く。上に登っているのが分かる。
 
この上は甲板。この状況では何が起こっているか知れた物ではない。
それをどう利用できるか。
 
ほんの僅かな時間、考えた。
 
 
【現在位置・エレベーター。ポートデッキへ上昇中】

197 名前:エリ&フィオ ◆uiSV001MHw:2003/07/12(土) 01:56

>>186
「小賢しいマネを……」
「うわ……ひどいですね……」
仲間を盾にして死を免れた吸血鬼二体への感想をもらしつつリロード。
吸血鬼が出張ってくるとは思ってなかったから通常弾、ホローポイントだ。
ローダーを使って一気に装填。そしてトリガー。フィオと同時に連射。計12発。
さーて今度はどっちが盾にされるのかしら?
 
(場所:パーティー会場)

198 名前:ブルーノ・デリンジャー:2003/07/12(土) 01:58

>>184
 
 向けられた拳銃を気にするそぶりも見せず、男は俺に背を向けた。
 それに呼応するかのように、3体の人型の何かが飛びかかってきた。
 
「はっ! そんな仮装でビビるとでも思ったのかっ!」
 無造作に6連射。1体が吹っ飛ぶ。
 
「俺を誰だと思ってる!?」
 さらに連射。2体めが床に転がる。
 
「SFPDのミスター・ダイナマイト……」
 残っている弾を全弾発射。3体めも崩れ落ちた。
 
「ブルーノ・デリンジャーだ!」
 弾の切れた拳銃を、黒い男目掛けて投げた。
 
(場所:パーティー会場)

199 名前:漆黒の王子(M):2003/07/12(土) 02:00

夏祭り
>>186ヴァンパイアロード達
私は彼らへ微笑む、せっかくの盾なのだから大事に使わなくてはな…。
「フ、相変わらずの不死身ぶりなかなかだな…。
 私も助勢しよう……」
 
血を啜った異形兵達からの精神感応にて、船底に多数の爆弾が既にあると聞く。
ならば、このままにして下から征圧してゆけと命ずる。
 
>>191アテナ
とぼけた事を言う少女へと歩み寄る。
構わない、犯し刻み血を啜る。
それが吸血鬼なのだから。
 
>>192比良坂
「………これはこれは。今宵の血の宴を愉しんでいらっしゃいますでしょうか?」
私は微笑み、そしてにらみ合う。
 
魅了の魔眼すら通用しないこの鬼気。
できる。
 
>>193上月兄弟
「超常の力を持つか…。では、お嬢さんそちらの少女はしばし預けましょう」
私は男二人へ歩を進め、体を霧にさせる。
 
不意打ちは卑怯ではあるまい?
 
さらに増えた食屍鬼達が二人を牽制しつつある今が好機!
(現在地:パーティー会場)

200 名前:スミレ ◆xdSUMIREYo:2003/07/12(土) 02:02

>189>195

 甲板を見下ろす。
 落下地点にプール。
 丁度いい、このまま落下――――
 
 落ちる0.2秒前に、落下地点に存在するタコに気が付―――

 巻き込んだ。

 盛大にあがる水しぶき。
 その中で私はタコがタコではなく大柄のスキンヘッドの黒人の方だったことに気付く。

「誰だ……?」

 体勢を立て直したタコ……もといスキンヘッドの黒人のつぶやき。

「─────もしかして、お姉さん。私と同じ眷属の方………ですか?」

 振り向けば、可愛らしい女の子。

「眷属? よく分かりませんけど……スミレと申します。貴方ワクチンってご存知かしら?」

 私は彼らに向かって蕩けるような笑みを浮かべて、聞いた。 


(現在位置:ボートデッキ、プール)

201 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/12(土) 02:03

>>181 ドクターウェスト

寝起きの戦乙女は、冬眠から目覚めたばかりのグリズリーのごとく
あたりを睥睨し、そして最初にしつけをすべき存在を目にとめた。
 
「おまちなさいなっ! ソナタはここを何と心得る! 
そのような二輪車にまたがって通行してもよい場所ではなくってよ!!
さらには、一人ならまだしも、そのような三人乗りとは…………
これは、許されざる大罪といえますわね、さぁ、誠意を込めて
ぶった切ってさし上げますから、覚悟おし、おしおし!!」
 
この船内の狭い通路では、通路一杯に広がった小早川奈津子の巨体に
向こうからツッこんでくるバイクを切り捨てるなど、外す方が難しい。
 
ましてや、あまりにも自由の利かないハーレーの三人乗りである。
あわれ、白衣の男と、二人の少女の乗ったハーレーは、
小早川奈津子の携えた、チェーンソーのサビとなる…………
………かと思われたが、

>>190 岩鬼
なにやら、丸く小さな物体が、頭上から降り注ぎ、
愛と正義の美女戦士の兜に当たってがこん、がこんと
硬質の音を響かせた。
 
「ええい! 何者ぞ! ワラワの神聖なる戦いを邪魔だてするとは
タダではおかぬぞよ!! 忠君愛国! 八紘一宇! 進め一億火の玉ですわよっ!!」
 
白銀の聖戦士は、鼻を効かせて人気を探ると、ぐるり、と、首を回して上を見た。

「をーっほほほほほほ! 見つけましてよ下郎! そのような場所に隠れて
コソコソコソコソと! その程度でワラワの目をごまかせるとお思いかえ?」

そして、足元に転がった手榴弾を手に取ると、上階に向かって
投げ返さんとした、その時…………

その手に取った、手榴弾が破裂した。

さらには、周囲に転がった手榴弾に誘爆し、
爆裂して爆裂して爆裂して爆裂して爆裂した。
(ボートデッキ・通路)

202 名前:ブラザー・フィリポ ◆gxPyzUNAGI:2003/07/12(土) 02:03

>>196
 
 狭いエレベーターの中、一人と一匹──いや、二人の男は睨み合う。
 完全な膠着状態だった。
 この狭い空間では、どちらも互いの攻撃を躱しきれない。捨て身でかかれば仕留められる
かも知れないが、無論フィリポにそんなつもりはない。痛いのは嫌いな男なのだ。
 
「──オレ様ちゃんから逃げられると思ったら大間違いだっつーNo」
 
 じりじりと時間が過ぎていく中、エレベーターは上昇していく。上昇していく……
 
 チーン、と言う軽快な音と共に、停止するエレベーター。
 自らを僅かに揺らした後、扉は静かに開いた。
 
(現在位置:エレベーター。ポートデッキに到着)

203 名前:「DEATH」(M):2003/07/12(土) 02:04

2階へ上り、そして上へ進む前に一度回りを見渡してみる。
 
「グガガガ……」
 
すでに人の姿は無く、僅かながら炎が燃えているだけだった。
かなり遠くの方の階段では先刻すれ違い、そして後ろから撃ってきた男と他の2人が何かをやっているが、
そんな事はどうでも良い。

まずは、ワクチンの下へ向かわねばならない。

「DEATH」は、階段を自らの体で破壊しつつ、上へ進んで行く。
(現在地:アッパーデッキ)

204 名前:アレクサンド・アンデルセン(M):2003/07/12(土) 02:07

夏祭り 
 
>>172>>178>>184>>186>>191>>192

 その場は、かつて華やかなパーティが開かれていたであろう面影も既になく、 
紅塵の巷間と化している。 
化け物と人間とが互いに入り乱れ、或るものは血刀を揮い、またあるものは 
銃弾を撃ち込み、またあるものはその牙を犠牲者の首筋に埋め込んでいる。 
 
「ク、ハハハハハハハ……。生きている者か、それとも死んでいる者か、どちらでもいい。 
 生きている者は死ね。死んでいる者は地獄へ帰れ。 
 地獄では火が消えることも蛆が尽きることもない――――――AMEN(エイメン)!」 
 
 両の手に抜き出された銃剣の数、知れず。 
 
「主よ、汝はいにしえより、世々我らの住所にてましませり 
  山いまだなりいでず 
 汝いまだ地と世界とを造りたまわざりし時、 
  とこしえよりとこしえまで、汝は神なり」 
 
 聖句を紡ぎながら全て投擲すると、再び銃剣を何処からともなく抜き出し乱戦の最中へと 
その身を沈めた。 
 
(場所:パーティ会場) 
(攻撃は無差別) 

205 名前:ドクター・ウェスト ◆sODrWEST1A:2003/07/12(土) 02:08

>>201なちゃーん
吾輩、死神に会うのは久しぶりなのであぁる!ここまで非常識なのは類を見ないであるが。
しかし、三尻のハーレーでは回避不能!
 
「エルザ!」
 
吾輩は叫ぶ。エルザがバイクから少女を抱え、
飛び降りると同時に吾輩はバイクのアクセルを最大限吹かし、
壁を駆け抜けようとする!
 
それでも吾輩の命は風前の灯火ッ!!ああ、吾輩の全国のファン達よ!
吾輩のことを夜眠る前にそっと思い出し、二時間くらいなきつづけて欲しいのであぁる!
と思った矢先!
 
>>190岩鬼
吾輩を救う天使の響きあり!!
それは丸く、小さかった!だが、威力はバツグンであぁる!
そう、それは手榴弾!
 
吾輩は爆発の衝撃をいなしつつ、鎧の怪人へドクターブレイクをかますと、
離脱していたエルザ達とともに、脇を駆け抜けるのであぁる!
 
「感謝感激雨霰であぁる!!」
 
(現在地:ポートデッキ・通路)

206 名前:麻宮アテナ ◆qZESP0jjgI:2003/07/12(土) 02:11

>>192
 『ふふふ・・・』
 
 また誰か来ました。長い黒髪。美人。街で逢ったらぜったい振り返りそう。
でも視線の先はやっぱりこのケース。
 
 ……これは、本当に危ない。これ抱えてたら、
この世の全ての存在を敵に回しそう。でも、とりあえず
あっち(>>199)には渡すべきではないようです。あからさまにダメ。
と、なると……。
 
 「……えぇいっ!」
 
 ひたすらに弾丸をばら撒く二人組み(>>197)のほうへ、
わざと目立つような気合の声とともに、ケースをを放り投げました。
これがなんだかはわかりませんが、今は捨てたほうがいい。
このケースこそがまさに、”Heart of the MAELSTROM(災禍の中心)”

207 名前:上月永斗&司〈M〉:2003/07/12(土) 02:13

>>199〈漆黒の王子〉
ちっ。倒しても倒しても、死体が出てくる。
何匹出てこようと、領域内ではオルクスに傷を付ける事は出来ないだろう。
だが、間違いなく上がっていく侵食率。身体の中で増殖するレネゲイド。
(こりゃあ。さっさと片付けないとな……)
瞬間! 目の前の男の姿が、霧となった!
「うおっ!? どんなオーヴァードだ、こいつはっ!?」
そのままそいつは、俺の真後ろに現れた! 
(まずい! 対応しきれねえっ!)
だが。
チュインッ! チュインッチュインッチュインチュインッ!
二人の男を引き裂くように、弾丸が絨毯に傷を付ける。男が空を仰ぐと、そこには。
「……上月永斗、参上」
シャンデリアの上にトレンチコートを着た男が立っていた。
そのまま司を庇う様に、黒服の男の目の前に立つ。
「ふっ。どうした司? お前の強さはそんなもんじゃないだろう?」
「うるせえ馬鹿兄貴。今までどこに行ってたんだよっ!?」
見ると長門のコートのすそが、ぷっくりと膨らんでいた。別名、火事場泥棒。

(パーティ会場)

208 名前:ヴァンパイアロード他2匹(M):2003/07/12(土) 02:13

>>185 >>191 >>197
 
「ちっ、このままでは拉致が空かん」
 
確かに、しかもまた撃ってくる気配。
その上に更なる来客、状況は混迷の極みというべきか。
ならば…
 
「オ○テガ、○ッシュ。奴にジェットストリームアタックを掛けるぞ!」
「「誰がオル○ガ(マ○シュ)だ!誰が!」
 
そんな応酬を行いながらも隙無く縦一直線に並び立つ我等。
エルダーも万全とは行かないが再生を始めている。我々吸血鬼が容易く死ぬ筈は無いのだ。
先頭に居るノーブルが雷光を散らして牽制したのも次瞬、
我等は一部の乱れなく、疾風もかくやの速さで駆け抜け迫る。両手の爪を閃かせ。
そう、標的はあの小娘二人だ。
三位一体。人の反応できる速さを超え、死を呼ぶ陣風と化したこの奥義、
果たして貴様等に抗えるか。いや、無理だ。無理と言え。
 
>>199
何やら不穏な事を聴いた気がするが放っておく。
突撃中ゆえに。
 
>>204
何やら聖句と風きり音が聴こえたが、同じく無視だ。
……何か刺さったような音まで聞こえたが。
(場所:パーティー会場)

209 名前:ダッチ(M):2003/07/12(土) 02:14

夏祭りでもまだまだプールの中

>195 >200

ワクチン……同業か?

――そうは見えねえな。

どうでも良い思考を打ち消す。

「知らん事も無いが――――なんで探してる?」

眷属? 同じ?
どうにも判らない事だらけだ。
そろそろ、この仕事を受けた事を後悔し始めても罰は当たらないだろう。
いまいち気の入らない感覚を誤魔化し、そう返した。


プールのど真ん中辺りで浮いたまま。

(場所:ボートデッキ、プールの中)

210 名前:薬読のアンナロッテ ◆SORIA7miU.:2003/07/12(土) 02:15

<夏祭り>
 
>>204

どうにも人外レベルの闘争に付け入る隙を見出せず、吸い殻を積み上げていた私だが
元気一杯のアンデルセン神父を見送って、何事もなかったかのように
新しい煙草に火を付けた。
 
                        ( ゚Д゚)y─~~ ウマー
 
 
>>206
そして、見覚えのある……と言うか私が持っていたケースは
二人組み(>>197)の方へと飛んでいく。
 
休憩はこれくらいにして、そちらへ向かうとしよう。
 
(現在地:パーティ会場入り口→会場内へ)

211 名前:千早雅之(M):2003/07/12(土) 02:18

>>202 
ドアが開く。
潮の香りと火薬の薫りと血と体液の匂いがした。
 
それを感じる間もなく、動く。
雅之の右手が霞むように動いた。
無造作に刀をワイヤーに叩きつける。
更に左の一刀を横に振り牽制。 
 
そして、疾走。
  
まだ狭い。もっと広い場所。
記憶が正しければこの先はプール。
 
そこで、迎え撃つ。 
 
 
【現在地・ポートデッキ廊下。後にプールへ移動】

212 名前:アルビノ“山城友香” ◆0DYuka/8vc:2003/07/12(土) 02:19

>>200>>209
『眷属? よく分かりませんけど……スミレと申します。貴方ワクチンってご存知かしら?』
 
蕩けるような優しい笑み。そして、任務をまた思い出す。
 
「ワクチン………ですか?」
 
瞳の色は赤に戻って、普通に頭を捻った。
答えるべきか、否か?迷っていた。まあ、この際。問題はないだろう。
先に黒人が答える。

『知らん事も無いが――――なんで探してる?』

それを追うように友香も答えた。
 
「えっ〜と、噂には聞いているんですけど………それが実際見たことは。」

任務のことは黙っていた。でも、このお姉さんが敵になるとは思えなかったから。
もはや、甘口を通り過ぎて、大甘の友香ちゃんだった。

(現在位置:未だにプールの中。)

213 名前:蟆霧(M):2003/07/12(土) 02:19

>>206 夏祭り 乱入
 
 飛んでゆく筈だったケースの把手に、オレの鉄爪が引っかかった。
 空中でナイスキャッチ、オレ。
 今まで影も形も見せずに潜伏してたのは、こうやって横合いから殴りつけてやるためだよ、ひゃっひゃ。
 
 というワケで、真打ち様のご登場ってワケだ。
 蛙のように地面を着地してご一同を睥睨。
 蛇のように舌を垂らしてあっかんべー。
 
「スットロいんだよ、テメェら」
 
 それだけ言い残して、パーティ会場の外へオレダッシュ。
 
(現在地:パーティ会場→廊下へ)

214 名前:片倉優樹&山崎太一朗 ◆nlYUUKi3kA:2003/07/12(土) 02:19

>>194 2階階段付近 
 
──ああ、どうして。 
あたしは手を伸ばした。腕を掴み返した。太一君を背中に庇った。 
僅か数センチの飛来物がひゅー、ひゅーと音を立てて。爆音と、乾いた「かちり」という音と。 
耳慣れない空気の振動のマーブル。 
 
空気だけじゃ飽き足らず、あたしを指した。 
皮膚がやぶけて、肉がちぎれた。痛みは、くることがわかっていたから・・・無視した。 

 折角買ったスーツ。 
太一君がせっつくから一緒に買いに行った服だ。 
ぼろぼろになっちゃったね・・・はは・・・。  
 
一言だけ、呆然としてる太一君に言った。 
「太一君?君・・・・・・・・・・・・・・」 
 
「片倉さん・・・肩・・・背中・・・撃たれて」 
 
「厨 な ん じ ゃ な い か っ て 。言われてるんだけど・・・」  
 
「・・・・・・・・・こ、こんな時に・・・な、何を」  
 
「いいから、見てなさい」 
 
イキナリのご挨拶な人を見た。じっと見た。 
楽しそうだった。退路を考えて行動してるのだろうか?理解し難いよ・・・。 
 
「あー、あー。言葉・・・分かりますかね。いきなり、銃撃つなんて。 
 とりあえず、戦う意思なんてあたしはないからね・・・。収めてくれると、嬉しいな・・・」 
 
どうでも良かった。被害があたしだけでとりあえず良かった。 
彼が傷ついたら・・・あたしは・・・。自分が傷つくなら誤魔化せる。でも、親しい人が傷ついたとき。 
どうしたらいいか分からないから・・・。本当に良かった。あとは、この人がやめてくれれば終わり。 
流れた血液を手に握り、眼前の敵を場違いに・・・やや微笑みながら、見てあげる。

215 名前:漆黒の王子(M):2003/07/12(土) 02:20

>>198ブルーノ
「小ざかしい…。貴様は邪魔だ…」
私は足掻く警官にそういいながら、霧と化し先の兄弟らしき男たちへ奇襲をかけようとしていた。
 
「そして、死ぬがいい!」
二人の兄弟の遊撃らしき男の首筋へレイピアを差し込もうとしたとき、
背後から弾の切れた拳銃が飛んでくる。
 
武器であったものは武器ではない。故に私は脅威を感じ、
避ける。だが、私が狙っていた男にその銃は当たりそうになっていた。
 
>>204絶滅主義者
避けようとしたのもつかの間。私に、この場にいる者全てへ銃剣が投げつけられる。
私は避けない。武器などは私に意味はないのだから。
「せいぜい頑張りたまえ…」

食屍鬼たちは見る間もなく貫かれ、果ててしまったようだが…。 
私の体を祝福儀礼がなされた銃剣が貫く。
甘い、まだ甘いのだ…。私の体にかかった呪いを解くまでには至らない。
貫かれ、大穴が開いた体が見る間もなく閉じてゆく。
 
>>202アテナ
「しばし、待っていたまえ。じきに真の快楽を教えてあげよう」
私は少女へそういい残し、 
「さて、其処の兄弟らしき者よ。覚悟は出来たかね?」
レイピアとマントを構え、私は言った。
 
>>207上月兄弟
銃で私を傷つけられると思った男が勝ち誇る。
「いい気になるなよ?小童どもが…」
私はそう言って、雷撃を使う男へマントで切りかかると見せかけ、
レイピアを一度に三回突きこんだ。 


(パーティー会場)

216 名前:比良坂初音 ◆HtiOHATUNE:2003/07/12(土) 02:22

>>204>>206

初音の視線を感じたのか少女は怯えたような表情を見せる。
どうやらケースを狙っていると思ったらしい、だが・・・・

(ふふふ、本当に上物ですこと、こんな状況でもなければ連れて帰るところですが)
初音はとりあえず放たれたケースと入れ違いに少女の制服を伸ばした爪で引き裂く
(さあ、せめてその美しい肢体を見せて頂戴な)

しかし初音の期待は裏切られる。
そう、初音の予想とは裏腹に、少女は制服の下に何故かビキニの水着を着こんでいたのだった。
それを知った初音は舌打ちしつつも、続けざまに飛来する銃剣を
次々と回避していくのであった。

217 名前:スミレ ◆xdSUMIREYo:2003/07/12(土) 02:24

>>209>>212

「知らん事も無いが――――なんで探してる?」

――なんで、と言われましても……

「えっ〜と、噂には聞いているんですけど………それが実際見たことは。」

 女の子の方は実際に知らないようだ。
 だから私は黒人の方に向き直り、
 プールから身体を引き抜き、
 水面に立って彼を見下ろし、

「お分かりになりません……?」

 口の端から牙が見えるように笑みを浮かべた。

218 名前:「DEATH」(M):2003/07/12(土) 02:25

>>204 アンデルセン
それらは聖別された銃剣であり、彼が不浄の力で動くゾンビであったならこれが致命傷であっただろう。
しかし、Dr.キュリアンの手によって科学で新たな命を吹き込まれた「DEATH」にとっては、
鋭利とは言え只の銃剣に過ぎない。かなりの数が腕に刺さり、そして一気に引っこ抜かれる。

「ガガガァ!」

唸りを上げ、そして、棍棒をきつく握り締め。
そして、銃剣が飛んで来た側……パーティ会場へ棍棒を振り回し突っ込んで行く。
残っていたテーブルや椅子が載っていた料理やキャンドルもろとも次々に吹き飛ばされて行く。
(現在地:2階からの階段→パーティ会場)

219 名前:ブラザー・フィリポ ◆gxPyzUNAGI:2003/07/12(土) 02:27

>>211
 
 エレベーターのドアが開いた瞬間、男が弾かれたように動いた。
 振るわれた刃を、一方はワイヤーピックの鋼線を犠牲にしながら受け、もう一方を躱すフィリ
ポ。
 その俊敏な動きを見れば、もう誰も彼のことをナマズだのウナギだのとは呼ばない……こと
もないだろう、やはり。
 
 疾走する男を追い、フィリポもまた走り出す。
 ……潮の香りが鼻に入り、一つ大きくくしゃみをしながら。
 
「誰だYo、こんな時にオレ様ちゃんの噂してんのは!?
 ま、このスーパーアイドルフィリポちゃんの噂したがる気持ちは分からないでもないけどNe、
ぶしゃしゃしゃしゃっ!」
 
 戯言をほざきながらも、足の動きも手の動き求めないのは、褒めるべきなのか否か。
 二人の走る先は、屋外プール。
 
(現在位置、ポートデッキ。プール方面へと疾走中)

220 名前:ブルーノ・デリンジャー:2003/07/12(土) 02:30

>>215
 俺の投げつけた拳銃は、奴には当たらなかった。
 まあ、それは良いとしよう。当たらなかったのなら――殴るまで。
 俺は男の方へと走り出そうとした。
 
 その時。
 
>>204
 俺の鼻先を、銃剣が掠めた。
「んの野郎……! 公務執行妨害で逮捕してやる!」
  
 矛先を眼鏡の大男に変え、走り出した。
  
 近くのテーブルの上にあったコショウの瓶を手に持って。
 
(場所:パーティー会場)

221 名前:薬読のアンナロッテ ◆SORIA7miU.:2003/07/12(土) 02:32

<夏祭り>
 
>>213
 
ケースが一瞬にして奪われる。
一体、何人の組織員がこの船に乗っているのだろう?
帰ったら、情報部員を小一時間問い詰めるとしよう。
 
 
>>218
そして、背後から謎の存在が突進してきた。
普段なら難なくかわせるはずのそれを……
 
「痛ぅ!」
 
足に怪我を負っていた私は、かわしきる事ができなかった。
軽々と宙に舞う私の身体。
 
(やれやれ、何と報告書に書きましょうか――――)
 
そう思ったのが、私の最期の意識だった。
 
 
(薬読のアンナロッテ、意識不明 : リタイヤ)

222 名前:極道兵器岩鬼将造 ◆893BIiCYCo:2003/07/12(土) 02:33

>>201 なっちゃん
>>205 ドクターウェスト
 
閃光 轟音 爆風
 
そして……『オーッホホホホホホホホホ!!』 
一度聞いたら三日三晩は悪夢にうなされそうな笑い声。
 
 
ええい!なんちゅう頑丈な化けモンじゃ!!
その悪趣味で悪趣味かつ悪趣味な鎧はイイ感じでベコベコになっておるようじゃが
中身のほうはピンピンしておるではないか。おんどれは戦車か何かかい!
 
……ん? 戦車か。ならば今度はこいつをお見舞いしてくれるわい
右足に仕込んだ対戦車ロケットランチャーをオープン、弾頭はHEATじゃ。
これならその悪趣味で(略)な鎧も中身の化けモンもこんがりと芯まで焼きつくしてやるけえのう。
あばよ、化けモノ!!

(ロケット弾発射の瞬間、>>205がターゲットを轢いていく。
 外れたミサイルは床に大穴を開け、球状生物はその中に転がり落ちていった――)

ぬう!!何者じゃ今のボーソーゾク!! チンピラの分際でワシのエモノをかっさらいおってからに。
おかげであの化けモンを仕留め損なったではないか!!
 
「ワレェ!!待たんかい!!」
 
ワシはカモシカのような長い足で全力疾走、クソ生意気な単車小僧の後を追い掛けていった。
 
(ポートデッキからプール方面にダッシュ中)

223 名前:エリ&フィオ ◆uiSV001MHw:2003/07/12(土) 02:33

>>204>>206>>208>>213
排莢、再装填。
まだまだ元気な吸血鬼三体。なんか一体復活してるし。
「ショットガンがいるわねコレ」
「フレイムショットでもいいかもしれませんね」
 
縦一直線に並び立ち、突っ込んでくる吸血鬼。
先頭の一体が雷光を散らす。しゃがんでかわした。
残りの二体が爪を閃かせて突っ込んでくる。あたしは跳んで、フィオは大きくサイドステップしてかわ……
 
『……えぇいっ!』
気合いとともに飛んでくるケースinワクチン。
ちょっと高度が足りない。
しからばっ!
跳び越え中だった吸血鬼を踏み台にしてさらに高みへ。
―――とっ!?
 
横合いから思いっきりかっさらわれた。
 
Sit FACK!!
 
「んなろっ!」
着地様に二発。大外れ。クソッタレ。
毒突いて振り向くと吸血鬼を盾に銃剣をかわしたフィオがいた。
 
「追うわよ!」
「はーい!」
 
(現在地:パーティ会場→廊下へ)

224 名前:麻宮アテナ ◆qZESP0jjgI:2003/07/12(土) 02:34

 危険物を投棄して当面の安全を確保……と思いましたが、
この人(>>204)はそんなことお構いなしのようです。
現われるなり、無数の金票(ひょう)をばら撒いて……。
 
 「冗談じゃないですよ」
 
 テーブルを盾にやり過ごし、とにかく安全なところへ……。
 
>>215
 『しばし、待っていたまえ。じきに真の快楽を教えてあげよう』
 
 (……死のスカイラーク? そんなにファミレス嫌いなのかしら)
 
 よくわからないので、とりあえず後回し。
ひとまず近くの階段へ走ろうとしたとき(>>216)、刃の一閃!
私の制服があえなく引き裂かれて……水着。
 
 (すぐ泳げるように下に着込んでおいてよかったぁ……)
 
 理香ちゃん譲りの不精が、このときばかりは役に立ちました。

225 名前:アルバート・ウェスカー(M):2003/07/12(土) 02:35

>>206
煙に巻かれながらも、ワクチンを探して走り回る。
何やらあちこちから跳弾、流れ弾が飛ぶ。いくらかは私の体に当たったが、全く問題にならない。
T−ウィルスの力でタイラント級に高められた身体能力や耐久力は伊達ではないのだ。

>>206
そこへ――――

「えいっ!」
少女のものと思しき声と共に、またしても銀のケースが宙に舞う。
方向は―――盛大に銃弾をばら撒きつつ、何者かと交戦しているらしい二人組(>>197)。
どうやら気付いてはいないらしい。奪うなら今だ――――!

>>204 
そう思った直後、何やら聖句らしき言葉と共に、大量の刃物が背中に突き立つ感触。
これでもまだ、T−ウィルスで強化された者を殺すには足りない。

が、その凄まじいまでの銃剣群のショックは、こちらのバランスを崩させるのには十分だった。
たまらずよろめき、スピードが落ちる。

「ええい、いまいましい!」
苛立ちと痛みと怒り。ふざけるな、普通の人間風情が!
背中に刺さる刃もそのままに振り返り、
剣を投げたとおぼしきカソックの男に、マグナムを3発発射した。

226 名前:上月永斗&司〈M〉:2003/07/12(土) 02:35

>>204(アンデルセン)
突然辺りを銃剣が飛び交う。狙いなんぞはつけてない、めくらに投げている。
こちらに向かってきた全てが、永斗の体に突き刺さる。そして――

>>215(漆黒の王子)
闇の男がつきかかってきたレイピア。避ける事も出来ずに永斗はその身に剣先が潜り込むのを感じた。
しかし。
「くっくっくっく……なかなかの攻撃だが、俺を倒すにはまだまだだな」
体に穴が開いた部分が、音を立てて塞がっていく。オーヴァードの能力の一つ、リザレクトである。
「今度はこっちから反撃させてもらうぜ!」
永斗がコートを広げると、そこには数百本の薔薇が。その薔薇の全てが、メキメキ……と異様な音を立てて、
銃へと形を変えていく……〈ハンドレッドガンズ〉+〈ジェノサイドモード〉!
ズキューンズキューンズキュンズキュンズキュン!
一万発の銃弾が、男の身体を貫いた。

>>213蟆霧(M)
 突然現れてきたそれが、アタッシュケースをキャッチした。そのまま外へ逃げ出す。
「兄貴、対象が取られた! 追いかけるぞ!」
言って、司は領域を変異させる。〈猫の道〉だ。その場の空間が割れた。
「じゃあな、後はよろしくやってろや!」
捨て台詞を残すと、そのまま消える。

〈現在位置:永斗:パーティ会場 司:?〉

227 名前:千早雅之(M):2003/07/12(土) 02:42

>>219    >>209 >>212 >217

ワイヤーを弾き、受け、流し、避ける。
刀を弾かれ、受けられ、流され、避けられる。
 
無為な行為を繰り返しながら走る。
無為だと分かってはいるが――悪い気がしないのはこの世界に居きる人間の性か。
 
だが、いい加減に終わらせないと悪いのも確か。
脱出の手筈を整えるには相応の時間を要する。
プールにて決着を付けるつもりだった。
 
プールには人が居た。
人ではないのも居た。
 
人は逃げ損なった乗客か。
水面に立てる存在は人とは言えまい。
 
どうする。
害をもたらす者か、否か。
眼前の敵を討つ時に背を向けて大丈夫か、否か。
 
鯰と向かい合いながらも、プールに居る者達を無視することは出来なかった。
 
 
【現在地点・甲板プール。ダッチ、山城、スミレを視認】

228 名前:ダッチ(M):2003/07/12(土) 02:43

夏祭りだけどプールはもう良いよ

>212 >217 その他プール付近の連中

今日は何回呆気に取られれば良いんだろうか。

「……つまり、あんたは自分を治療したいって事か?」

どうやら、目の前の女は話に聞いていた吸血鬼らしい。
『同じ眷属』と言っている以上、お嬢ちゃんも似たような物なのか。
とてもそうは見えんが。

「……良く判らんが、まあ良いさ。この船にあるって事は知ってるんだろ?
 そこから先は俺も良く知らん」

表立って敵対する意思が無いなら問題は無い。
このまま別れてワクチンを掻っ攫うだけだ。
そのためにも、何時までも水の中に居る事は無い。
三度目の正直で泳ぎ出そうとした。

――今度は何なんだ一体。

何処からとも無く湧いてくる人間人間。
いや、あれの中にも人間外の奴が居るのかもしれない。


とんでもない異世に迷い込んじまった。

(場所:ボートデッキ、プールの中)

229 名前:Kresnik ◆fFCROSSQsM:2003/07/12(土) 02:43

>>214 片倉組
 
 ……おやまあ。
 肩を竦めてマテバを収めて、竦めた勢いで上体を沈めた。
 身体は流れに載せて回転させて――翻ったカソックから、吊り下げたMP5を
引き剥がす。コンマ1秒。グリップに触れる。コンマ2秒。
 ポイント――不意に気付く。周囲で群為すグールの群。なるほど、船員やら船
長やらその他諸々。
 やれやれ。
 銃口は一旦女から外して――
 
「you and i aren't built tolast♪」
 
 水平に眼前を凪ぐ。
 MP5の銃口が瞬く。跳ね回る薬莢と跳ね散る脳漿と肉片と骨片と、船員の名
残が赤く赤く散って飛んで、
 イヤホンを弄る。音量を上げる。撃った。
 
「GO astray the onry way・……」
 
 ハッピーエンドは。
 脳漿が散る。頭部が半壊する。羊水めいた腐汁がブチ撒けられる。
 
「You and i will make it fast――」
 
 ハッピーエンドは♪
 
「Brun the candle at both ends!」
 
 ハッピーエンドはありえない♪
 雨が降ればお前等を殺し、太陽が昇れば貴様等を嬲り、
 
「Let's take a ride before we fall......」
 
 弾切れ。
 MP5を投げ捨てて、フロアの全員に笑みを返す。
 
「お嬢さん、魔法使いは好きかい? ライオンとか熊とか狼とか――色々な物に
変身したりする、童話のアレさ」
 
 両手を振る。軽く首を鳴らして肩を鳴らす。
 口が笑みに引き攣る。
 
「さあ、楽しんでくれ。遊んでくれ。素敵に愉快に足掻いて藻掻いて足掻いて飾
って緩く盛大に――」くすり、と笑う。「――フィナーレだ」
 
 ――アタマの中で、世界を焼却炉に放り込むスイッチを入れた。
 
 掌が変わる。
 足元で焔が吹く。
 陽子レベルで細胞が変質していく。
 解るコトは一つ。
 それは、つまり。
 フロアを嘗め尽くす炎の柱はイコールで俺で――何もかも焼いて払って塵にす
るって事だ。
 
「Leave no room for happy endings……ぅぅぅッハァ―――――ッ! ハハッ!
ハハハハハハッ! 焼け死ねよォ、骨もミソも一緒くたにゼリーみたいにドロドロ
溶けて地獄で仲良くプリンになってよォ――ッ! ヒュウぅぅぅうっ!」
 
 ――全部焼け死ね。
 
 劃して、フロアは焼却される。
 灰塵の劫火の中で。
 

230 名前:アレクサンド・アンデルセン(M):2003/07/12(土) 02:47

夏祭り 
 
>>218>>220>>225
 
 投擲した銃剣はかなりの数に上るはずだが、それでもまだ尽きる気配を見せない。 
更なる数の銃剣を手に駈ける彼の視界の端、巨大な人影が映る。 
 
 奇妙なカリカチュア。神の造形の冒涜。 
一言で表せるならば、これに尽きる言葉はないだろう。 
人の姿を悪意を以て歪に捻れさせた、ゴリアテ。 
手には幾重に重なる人骨の埋め込まれた棍棒を持ち、それを膂力の限り振り回す。 
さながら暴風の吹き荒れるが如く、触れるものを破壊し粉砕し灰燼へと帰する。 
 
「なんじ人を塵にかえらしめてのたまわく 
  人の子よ、汝ら帰れと 
 汝の目の前には、千年もすでに過ぐる昨日のごとく、 
  また夜の間のひとときに同じ」 
 
 手にある銃剣を全て一斉に投擲する。 
だが、それは本命ではない。 
更に二本、両手に構えると疾駆する。 
 
 彼を目掛け駆け出す男――――――無視する。 
 銃撃を加える男――――――それも無視する。 
 
 銃弾が胸、腹、頭部を抉るが回復法術と強化処理を施された肉体には欠片ほどの 
ダメージもない。 
 
 そのまま地を蹴り、空へ。 
 逆手に握られた二本の銃剣は巨人の頭部へと埋め込まれる。 
 
(場所:パーティ会場) 

231 名前:Kresnik ◆fFCROSSQsM:2003/07/12(土) 02:47

>>229
(現在地は変わらず。2階フロア)

232 名前:アルビノ“山城友香” ◆0DYuka/8vc:2003/07/12(土) 02:48

>>217
「お分かりになりません……?」
 
刹那の出来事だった。お姉さんが………水面に立った。
そして、牙をむける。やっと、わかった。………このお姉さんは私と同じで同じじゃない。
きっと、このお姉さんは私みたいな先天性じゃないんだ。元々は人間。
 
『……つまり、あんたは自分を治療したいって事か?』
 
黒人さんとお姉さんの会話で、揺るがない事実だとわかる。
 
『……良く判らんが、まあ良いさ。この船にあるって事は知ってるんだろ?
 そこから先は俺も良く知らん』
 
だから、ワクチンをほしがってる。どうしようなくいたたまれなくなっている友香ちゃんをよそに。
 
>>211>>219>>222
 
な ん か い っ ぱ い や っ て き た 。

(現在位置:プールの外で、二人を見つめてあたふた、おろおろ)

233 名前:漆黒の王子(M):2003/07/12(土) 02:49

>>226上月兄弟
再生能力を持っていたらしい男が笑う。
そして、その体から銃が幾重にも連なって出る。
構わない。銃など私には効かないのだから。
硝煙と銃声が私の体を貫く。

「これで…満足かね?」
 
男が勝利を確信した時、無傷の私は私は男の顔へレイピアをつきこむ。 
(パーティー会場)

234 名前:蟆霧(M):2003/07/12(土) 02:50

>>223エリ&フィオ >>226 上月永斗&司 夏祭り 乱入
 
 おーおー、後から後から追ってきますよ有象無象が。
 だけど残念無念アンタら人間。
 ここまでやってオレ様追えますか?
 
 軽く一っ飛びで壁に貼り付く。
 で、片手の爪と両足を使ってシャカシャカシャカシャカ。
 見る奴が見たらゴキちゃん思い出してヒステリーかもな、ひゃっひゃっひゃっ。
 登る登る登る、そして手すりを飛び越えてジャーンプ。
 その先には。
 
 ――――――――プールかよおい。
 
 どぼん。
 
(現在地:廊下→プールへ)

235 名前:ディートリッヒ・フォン・ローエングリューン:2003/07/12(土) 02:51

下のほうでは予想通り大騒動となっている、そんな中、僕はなんとか操舵室に辿りついていた。
とりあえず仲間に連絡を送る。
「やあ、魔道士かい?うん・・・どうやら作戦は失敗みたいだよ」
「大体さあ、薬の中身を入れかえる程度で世界を滅ぼせたらこんな苦労はしないよ」

「うん・・・まぁ、どうせなら嫌がらせの一つもしたいよね、それじゃ迎えよろしくね」

さあ、ここからが本番だ、僕は操舵室のコンピュータを操作し、航路指定をそれとなく変更していく。
ちなみに僕の足元には無力化した船員たちが倒れこんでいた。

236 名前:麻宮アテナ ◆qZESP0jjgI:2003/07/12(土) 02:56

 階段を3段飛ばしにしてポートデッキへ。
とにかく、何がおきているのかわからないとなにもできません。
どうすればいいのかわからない以上、まずは安全を確認……。
 
>>227>>228>>232
 「って、……ここもですか?」
 
 乱闘から逃げて、別の乱闘に飛び込んでしまったようです。
しかも、遅れて飛び込んできた(>>234)のは”あのケース”
 
 ……逃げても逃げても、災禍が追ってくる。
 
 (現在位置:プール)

237 名前:ブラザー・フィリポ ◆gxPyzUNAGI:2003/07/12(土) 02:56

>>227
 
 短刀が男の頬を掠め、刀の切っ先がフィリポのナマズ髭の先端を宙に舞わせる。
 疾走する二人は、いつしかプールサイドへとたどり着いていた。
 
「────あー! Uzeeeeeeee!
 もういい加減死んじゃって下さいYo!」
 
 叫び声と共に放たれるワイヤーピックは両手からそれぞれ二本ずつ。
 今までにまして勢いを乗せたその攻撃には、更に30万ボルトにも達する高圧電流が乗せ
られている。
 そう、異端審問官ブラザー・フィリポは、体内に多数の発電細胞を持つ強化人間だったのだ。
 
>>217 >>228 >>232 >>234
 
 ちなみに、プールの中の人間その他は、彼の目には全く入っていなかった。
 
(現在位置:甲板プール)

238 名前:ドクター・ウェスト ◆sODrWEST1A:2003/07/12(土) 02:56

>>222岩鬼
吾輩を救ってくれた天使のような893!に吾輩は投げキッスを一つくれてやるのであぁる!
「THANK YOU SO MATCH!!」
微妙につづりが違うのは気にしないのであぁる!
 
吾輩はあの鎧の異形の事を忘れようとしつつ、プールサイドへダッシュであぁる!
 
>>227>>228>>232とかとか
吾輩たちはプールサイドに隠してある非常用の物資を入手し、
再起を図ろうとしたところで……。
 
>>229
ドデカイ爆発を聞くのであぁる!
 
「本気でどこの馬鹿であるか?
 大体にも奪おうとする物資とかその辺を忘れて破壊活動のみしか考えない
 アフォはどうしようもないのであぁる!」
吾輩は思わず悪態をつき、周囲を観察し、エルザに非常用ボートを準備させるのであぁる!
 
「エッルッザ!この娘は邪魔なので早く避難させるであぁる!」
容姿に不自由な娘は戦利品などを持ちながらも大人しく非常用ボートに乗ってくれたのであぁる!
 
(プールサイド)

239 名前:上月永斗&司〈M〉:2003/07/12(土) 02:57

>233(漆黒の王子)
〈永斗視点〉
ふむ。どうやら、普通の攻撃は通用しないらしい。ならば、どうするか――
「戦いの鉄則その2! 敵の足を止めろ! 頼むぞ司!」
何も答えない。何故だ!? 
その時司は、すでにこの場から立ち去っていたのだが、永斗は全く聞いていなかった。
そこに迫り来るレイピア!
「おひょうっ!?」
なんとか身をひねらせて避ける。今のは危なかった。そう何度もリザレクトが使えるわけでもない。
 
だったら、こういう手はどうだっ!?
「戦いの鉄則その3――火力は圧倒的に!」
薔薇の花を手榴弾に変える。そのまま男に向かって投擲!

(司視点)
司が猫の道から現れた先は――シャンデリアの上だった。そうそう、ここなら気付かれる事も無いだろう。
兄貴がだいぶ苦戦しているようだ。機を狙って、一撃くれてやるしかないな。

(現在位置:パーティ会場)

240 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/12(土) 02:59

>>205 ドクターウェスト >>222 岩鬼
―――バラバラと天上から降るガレキと爆煙の中から、笑い声が聞こえる。
「をほほ」
 
―――爆音の残滓を引き継ぐかのような大声で
「をっほほほ」
 
―――爆煙ごと大きく息を吸い込み、煙のヴェールを薄め
「をっほほほほほほほほ」
 
―――そして、大笑と共に白銀の聖戦士が再び姿をあらわした。
「をーっほほほほほほほほほほほほほほ!!」
 
ところどころ、甲冑はへこんだり、やや砕けたりしているが、
その動きを見る限り『中身』がダメージを受けた様子は無い。
 
「ええい! 女一人にかような飛び道具を使うなどとは何たる恥知らず!!
あの者どもに、愛と青春の往復ビンタをくれてやらねば気がすまぬ!!」

そして、義憤に燃えた白銀のジャンヌ・ダルクは階段目掛けて駆け出した、
目指すは階上、不躾な3人組とやくざ風の男である。

―――しかし、愛と正義の美女戦士の行く手を阻む物がある。(>>203)
彼女にも負けぬ巨体を誇る、腐れた肉塊である。

「そこをおどき! このバケモノ! さもなくばワラワの聖剣で
八つ裂きにしてくれようぞ!!」

(アッパーデッキ・階段付近)

241 名前:ヴァンパイアロード他2匹(M):2003/07/12(土) 03:03

>>223

「私を踏み台にした!?」

よもや2匹目では無く、奥に居る私を狙うとは!?
おのれ…マチルダさんが居ないからといって調子に乗りおって!
ところで誰ですか。マチルダさんとは。
さて、アタッシュケースは遥か後方に持ち去られてしまったようだ。
ならば早速我々も追わなければ。
 
「行きますよエルダー…エルダー?」
 
いえ、だから何故とも動かないのか。
たかが聖別された銃剣が刺さった程度の手傷で、
そう、たかが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
                   え、銃剣!?
 
「エ、エルダーーーーーーーッッッ!!」
 
ああ、聖別武装のオカゲでさらさらと塵に。
 
(“アルトリア遺跡の悪い夢”エルダーヴァンパイア:享年300ちょっと
              此 処 に 殉 職            )
 
「赦さん…赦さんぞ…」
 
唇をかみ締めながら、その両の眼は燃えて。
憤懣と殺意を限りなく込めて。
私は、我々二人は。
 
「貴様等の血は…何色だぁーーーーー!」
 
叫びとともに跳躍跳躍跳躍。
床、壁、天井、上下左右、神速の速さで飛び移り。
縦横無尽に憎き人間どもを……襲わずにケースのみを追い廊下を駆ける。
我々の目的を忘れてはならない。いや、けして勝てないと踏んだわけではない。
現にまだ二人もいる。うむ、そうさ。そうだともさ。
 
しかしノーブル…女房思いの良い奴だった―――――――――
いえ、別に女房なんていませんが。

(場所:パーティー会場→ケースを追って廊下からプールサイドへ)

242 名前:スミレ ◆xdSUMIREYo:2003/07/12(土) 03:04

>>212>>217>>234 その他プール付近

『……つまり、あんたは自分を治療したいって事か?』

 ああ、そうなのかもしれない。
 思い私は、曖昧に頷く。

『……良く判らんが、まあ良いさ。この船にあるって事は知ってるんだろ?
 そこから先は俺も良く知らん』

 嘘かと思う、しかし黒人の言葉に嘘は読み取れなかった。
 落胆……しかけたその時、

>>234
 水音。
 見やればアタッシュケースを持ち、何故か目隠しをつけた男。
 アタッシュケース。
 確証は無かった、それはただの直感で。

「掴め」

 呟いてプールに腕を差し込む。
 瞬間、私の腕を模した、しかし数倍の大きさを持つ腕が目隠しの男をつかみ上げる。
 私は水面を歩き、彼の手からアタッシュケースを取り上げながら、聞いた。

「これが……ワクチン?」


(現在地:プール)

243 名前:漆黒の王子(M):2003/07/12(土) 03:05

>>239上月兄弟
私は苦笑する。超常の力を持とうとも、所詮人は人の常識に縛られている事に。
人である必要などどこにも無いはずなのに、人であろうとする愚かさに。
そう、武器が未だに効かぬ事に気づかずにおろかな行為を続けるこの者を、
 
――――――私は殺そうと思った。
 
「火力の問題ではない、要は…相性なのだよ」
私はマントで手榴弾を弾くと男を組み伏せようとする。
 
「さあ、闇の口付けを受け、そして真の悦びを知るがいい」
私は男へ牙を伸ばす。
(パーティー会場)

244 名前:アルバート・ウェスカー(M):2003/07/12(土) 03:06

苛立ち紛れにマグナムをしまいこみ、ワクチンケースの行方のほうに向き直る。
その瞬間―――

>>213
「スットロいんだよ、テメェら」
その声と共に、宙を舞うケースがひったくられる。
こちらを馬鹿にしきった捨てゼリフを吐いた直後、ケースを奪ったその影は、凄まじい勢いで出口へ疾走する。
その速度も、すでに人間のそれではなかった。だが―――

「私に対しても、同じ台詞が吐けるか?」
こちらとて、とうにただの人間では無いのだ。

ひたすら人外の速度で逃げる人影に、こちらも人間の速度を越えた速度で追跡をかける。
なにやら他にもトンビに油揚げを奪われた連中(>>223>>226)が追いすがってきているが、構うものか。どうせ追いつけはしまい。

見れば“トンビ”は壁をよじ登り、上層へと逃げようとしているらしい。
手すりを乗り越え、その向こうへ姿を消す男。

「フハハ、まるでゴキブリだな!」
嘲笑を投げつけ、男の消えた手すりへ、強化された跳躍力で大ジャンプ。
あっさりと障害を乗り越え、上層へ。
見れば男はプールにはまって、無防備にも忘我しているらしい。

「さて、鬼ごっこは終わりだ。覚悟はいいな?」
男の背後へプールサイドから忍び寄り、拳を振り上げ・・・・・・殴りつけた。
さて―――――死ね。

(場所:プール)

245 名前:ディートリッヒ・フォン・ローエングリューン:2003/07/12(土) 03:08

「軌道データよし、航路計算よし」
思ったよりも早く仕事が済んでよかった。
船長用のマイクを手に僕は最後の総仕上げをすることにした。

突如船内全てに青年の声が響き渡る。
「皆さん、聞いてください・・・もうすぐこの船は沈みます、正確には僕が沈めるんだけどね、
 実はこの船はあとわずかの時間で、衛星レーザー砲の射程圏内に入るのですよ」

「衛星レーザー砲といっても復旧したばかりでして、おかげで衛星ではなく、船を射程内に持っていくはめに
 なってしまいまして、あ、そういえば僕の本当の名前を皆さんに言うのを忘れていましたね」

「僕の本名はディートリッヒ・フォン・ローエングリューン 薔薇十字騎士団が位階8=3 称号人形使い
 どうしてこんなことするのかって?それは僕らが世界の敵、だからさ」

「それでは最後に魔法の言葉を教えてあげよう、我ら炎によりて世界を更新せん!、じゃあまた会えたらいいね」

その声と同時に何人かが操舵室の中に飛び込んで来る、がそこにはすでに彼の姿は無く
マイクに直結されたレコーダーがまわっているだけであった。

246 名前:「DEATH」(M):2003/07/12(土) 03:09

>>230 アンデルセン
>>240 小早川
体全体と脳天に銃剣を刺されてしまいながらも、雄叫びを上げて突き進んで行く「DEATH」。
だが、流石に脳への損傷は全く影響が無いとは言えず、濁った死者のものであった瞳から血を流し、
唸り声も激しいものに変わっている。

そして、「DEATH」の目の前にはチェーンソーを構え、鎧を着た巨体が有った。
本来なら「有った」ではなく「居た」というべきだが、それは「DEATH」には「人」と認識できない姿だった。
そして、目の前のそれに向かってへ棍棒をより激しい勢いで振り回し、突き進んで行く。

247 名前:蟆霧(M):2003/07/12(土) 03:12

>>242 スミレ >>244 アルバート・ウェスカー 夏祭り 乱入
 
 おお? 何だこの腕、ワクチン持ってこーってか?
 一応形だけ抵抗してみるも、この腕やたら力強いの何の。
 あっさりワクチンはもぎ取られてしまいました、まる。
 
「おいおい冗談じゃねえぞ、返せよこの野……」
 
 何か覚えてるのはそこまで。
 背後からもの凄い勢いでぶん殴られたオレは、二度三度と水面を跳ねて気絶。
 
 ⊂⌒~⊃。Д。)⊃
 
 どんぶらこ〜どんぶらこ〜。
 
(現在地:プール、蟆霧脱落)

248 名前:ダッチ(M):2003/07/12(土) 03:17

夏祭りは山でやった方が良いな

>242 >244 >247

いい加減、そろそろ慣れてきた。
この連中全部、恐らくワクチンに関係しているんだろう。

――やれやれ、俺達以外にまともな人間はいるのか?

無性に煙草が吸いたくなった。
が、そんな時間もなさそうだ。
奇妙な目隠しの男に、金髪の男。どちらも見た目はまともに見える。
やってる事はまったくの人間外だ。
そして、手にはケースを下げている。

――あれか。

泳ぎ出すより速く、女が何かで目隠しの男を捉える。
水面を歩く方法を聞きたい所だった。
ともかく、手の届く範囲に近づかなければ始まらない。
ひっそりと、水を掻き始めた。

(場所:ボートデッキ、プールの中)

249 名前:千早雅之(M):2003/07/12(土) 03:18

>>237 
奇矯な叫び声を上げながら鯰は何度目か分からない攻撃を仕掛ける。
今までに倍する速度。
そして、空気を焼く匂い。
雅之のミラーシェイドはその正体を瞬時に判別し伝えた。
 
高電圧。サイバーウェアで強化してるのか或いは特殊体質なのか。
いずれにせよ、受けることは出来ない。
 
他の人間(>>228 >>232 >>234 >>236 >>241)を気にする余裕はなかった。
 
身を沈める。
這うように疾走。
一本が頭上を掠める。髪の焼ける匂い。
 
もう一本。
雅之は右の一刀を投げつけた。
ワイヤーと絡み合い軌道が逸れる。
胴体を外れ、右腕を撫でる。
 
突き抜けるような衝撃、直撃は避けても電撃までは完全に避けられる物ではない。
だが、一度勢いが付いた身体を押し返すことは出来なかった。
 
そのまま神父の方に向かう。
沈み込んだ体勢から一気に伸び上がる。
刀を握ったままの左手が顎に向かって奔った。
 
 
【現在地・人大杉なプールサイド】

250 名前:極道兵器岩鬼将造 ◆893BIiCYCo:2003/07/12(土) 03:18

>>238 ドクターウェスト
 
ドカドカドカ!!
 
下駄の音も高らかにプールサイドを突っ走る。
お、ワシの喧嘩に水差しおったあの単車小僧あんなところにおったんかい。
ボートの用意なんぞして逃げ出すつもりらしいがそうは問屋が卸さんのじゃ!
 
「コォォラ!! そこの単車野郎!!待たんかい!!
 ワシの喧嘩邪魔しおって、テメエこの落とし前どうしてつけてくれるんじゃあぁぁ!!」
  

走りながらM60を乱射、乱射、乱射!!
周りには何人か人影があったが知ったことかい。
どうせ全員ブチ殺す予定じゃったからの。
 

251 名前:片倉優樹&山崎太一朗 ◆nlYUUKi3kA:2003/07/12(土) 03:19

(2階、階段付近)  
 
>>229 krat   
 
マシンガンに・・・炎。 
夏純ちゃん──あたしの友人のアヤカシ──に似た姿で彼は部屋を、廊下を薙いでいった。 
人の言葉なんか全く聞かずに。人の悲鳴すら、意に返さずに。 
熱はちりちりと皮膚を焼く。 
太一君は怒っていた。・・・あたしを撃ったから?自分が無視されたから? 
色々なモノが壊されたから? 
 
まぁ、どれでもいいです。 
結局、無傷で生き延びてくれたんだから。軽率な彼にしては合格を上げていいですよね。 
・・・浦さんには悪いけれど、あたしは満足したので帰ります。 
船がなくなるなら・・・ここのアヤカシ連中の動態調査も無意味でしょう? 
 
「優樹さん」 
 
何か言いたげな彼。 
  
「さて・・・帰ろうね・・・」 
 
言わせないあたし。そう。時はまだまだ続くのだから。 
ゆっくりといいたいことを言い合えるようになればいい。今は、まだ。 
───炎の中をあたしは走り、海へと。出た。その後は・・・運命は天に、ね。 
 
(片倉優樹&山崎太一朗、退場) 
 
・・・後日談 
 
「優樹さん。あの船、消えたのは・・・優樹さんが大量にビールを積んだ所為だと思います」 
「・・・さっさと全部飲もうとしたのに止めたのは君でしょ」 
「・・・飲んでも飲まなくても重量は、変わりません」 
「・・・そうだったね」 
 
・・・とりあえず、まだ、平和です。(Fin)

252 名前:上月永斗&司〈M〉:2003/07/12(土) 03:20

>>243(漆黒の王子)
男が永斗に組み付いてきた。そしてそれはそのまま、永斗の首筋に噛み付こうとする!
だが。
「……ふ。お前は大きく見誤っている」
永斗は言った。負け惜しみではないようだ。
「俺たちは、とっくに人間捨てた存在なのさ!」
そこで体内のレネゲイドウイルスを意図的に活性化させる! プチ…プチ…脳細胞が音を立てている。
飛躍的に上昇した身体組織で、男を振りほどく!
その瞬間、手榴弾が爆発する。爆風で、二人は吹き飛ばされる。
「……たしかにあんたは強かったが、俺の敵ではなかった」
ゆっくりと煙草に火をつけながら、言う。そしてコートから薔薇を取り出し銃に変換。ある一点をポイント。
「……さよならだ」    発射。

その弾丸は、しっかりと目標に命中した。シャンデリアの留め金に。そう、男は気付いていなかったのだ。
自分がシャンデリアの真下にいた事に。ぐしゃ。ものが潰れる嫌な音。
それだけなら、今までのように程なく再生していただろう。だが――
「凍っちまえば、再生も出来ないだろう!?」
〈氷の塔〉+〈ブレインコントロール〉。
シャンデリアを覆うように、巨大な氷柱が聳え立つ。これで――終わりだ。

(パーティ会場)

253 名前:麻宮アテナ ◆qZESP0jjgI:2003/07/12(土) 03:20

>>237
 『もういい加減死んじゃって下さいYo!』
 
 物騒な叫びとともに4本の縄金票(じょうひょう)が飛びます。
相当の使い手。さらに、どさくさでケースを確保した(>>242)女の人。
そして単なる変な人(>>238)。
 
 「ど、どうしよう……」
 
 もうなにがなんだか。いままで薄々気づいていたことですが、
私はひょっとして全世界に嫌われているのでしょうか?
 
>>245
 そのとき、またも船内放送。
 
 『皆さん、聞いてください・・・もうすぐこの船は沈みます、正確には僕が沈めるんだけどね、
実はこの船はあとわずかの時間で、衛星レーザー砲の射程圏内に入るのですよ』
 
 『衛星レーザー砲といっても復旧したばかりでして、おかげで衛星ではなく、船を射程内に持っていくはめに……』
 
 ……私はやっぱり嫌われている。全世界に嫌われている。

254 名前:アルビノ“山城友香” ◆0DYuka/8vc:2003/07/12(土) 03:24

な ん か い っ ぱ い や っ て き て 。 
 
>>227>>237
 
目の前で激闘を繰り広げたあげく。
 
『────あー! Uzeeeeeeee!
 もういい加減死んじゃって下さいYo!』
 
ナマズ髭の男が、ワイヤーピックを出して。電流を流す。
 
当然、水を伝って………友香の足下に流れて。
まるでギャグマンガのように、一旦骨が見えるような電流を浴びる。
 
そして、なんとか立ち上がった友香ちゃんは。
ふらふらと歩いて。ちょうど年格好の同じ頃合いの女の子(>>236)が見えたので。
そこに向かって倒れ込みました。

255 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/12(土) 03:24

>>246 DEATH
狂いし巨躯の警備員が雄たけびを上げて、世紀末美女戦士に突っこみ、
その手に持った棍棒を振り下ろさんとする。

「をっほほほほほほほ、そのような棒切れ一本で、ワラワをどうにかできると思って?」
小早川奈津子のチェーンソー一閃。みごとに棍棒は真っ二つになった。

しかし、ゾンビ警備員の腐った脳髄はあきらめる、ということを知らないらしく
今度は素手で掴みかかろうとしてくる。

「ふん、ワラワと力比べでもする気かえ?」
懐に入られてはチェーンソーのような武器は使いにくい、
小早川奈津子はチェーンソーを床に放り捨てると、相手のベルトを掴み、
まるで横綱のように安定して相手を吊りにかかる。

「をっほほほほほほほ、身の程というものをわきまえた方がよくってよ、
―――――どぉおぉおっせい!!!!」

思いっきり、巨躯のゾンビを持ち上げたかと思うと、そのまま天井にぶつけ、
さらには、押し込み、押し込んで、ついには天井を突き破らせた。

(アッパーデッキ・階段付近)

256 名前:ブラザー・フィリポ ◆gxPyzUNAGI:2003/07/12(土) 03:27

>>249
 
 30万ボルトの高電圧を以てしても、男を仕留めることは出来なかった。
 左手に握られた刀が突き出され──フィリポを貫いた。正確には、その残像を。
 
 咄嗟に後ろに転がることにより、辛うじて死の顎から逃れたのだ。
 しかし、妙にスースーする頭の感触に、思わず頭に手をやったフィリポは、次の瞬間大音声
で叫んでいた。
 
「あーーーーーーっ!!
 か、髪の毛が、オレ様ちゃんの髪の毛が……!!」
 
 或る意味、肉体を傷つけられるより遙かに甚大な傷を負ってしまったフィリポ。
 何やら呟きながら、ふらふらと後ずさっていく──甲板の端の方へと。
 
 しつこいようだが、他の者のことなど頭の片隅にもないことは言うまでもない。
 
(現在位置、プールサイド)

257 名前:ドクター・ウェスト ◆sODrWEST1A:2003/07/12(土) 03:28

>>240弐四七代征夷大将軍
吾輩は決して後ろを振り向かないのであぁる!
アレを思い出すのはゴメンであぁる!
 
「博士〜、衛星レーザーの直撃コース射程に入りそうロボー」
エルザが衝撃的な発言をしてくれやがっているのであぁる!
 
「ナ、ナナ、ナナァントオォォォォッ!?」
吾輩の声が思わず裏返ったりしちゃったりするのであぁる。
「そ、それはマジであるか?」
そして、>>245の放送により、吾輩は決意したのであぁる!
 
救命ボートが降りたのを確認しつつ、吾輩はギターケースを構え、
吾輩の仕事をなさんとするのであぁる!
 
>>250岩鬼
「それはそれでガンバルのであぁる!後ろ後ろ!気をつけるのであぁる!」
吾輩は凡俗に構う気などまるっきりないのであるが、その後ろにあの悪夢がいるとなれば話は別であぁる!
 
巨大な機関銃が吾輩達を打ち抜こうとする!
ああ、吾輩達はなすすべも無く撃たれるのであろうか?
否!否否否であぁる!
エルザが高速機動モードにはいり、吾輩と救命艇に銃弾が降り注ぐ前に、
颯爽と現れた棺桶型の雄姿!
 
「エルザのライバルに銃を撃つのは許さないロボ」
銃弾を受けた棺桶が砕け散る。その中から巨大な砲門が現れる。
エルザが砲門を開き、言う。
「術式魔砲Dig me no grave!拡散モード発射ロボ!」
輝きを増した魔術理論の結晶たるバスターランチャーが周囲を破壊と暴力の渦へと巻き込もうとしていた!
……いや、もう破壊と暴力と混沌の渦ではあるが。
 
吾輩は衛星レーザーに対し、ハッキングを試みる最中であぁる!
(プール)

258 名前:アルバート・ウェスカー(M):2003/07/12(土) 03:33

>>247
プールの外から男を殴りつけ、水に沈める。
右肩上がりだった溜飲をようやく下げ、ワクチンを探すが――――プールサイドにも、まして水の中にもそれらしきものは見当たらない。
・・・一体どこに行った!?
視線を上げ、視界を広げてさらに辺りを見回し―――

>>242
そこで、怪訝そうな顔をしてケースを抱える女を見つけた。
なるほど、水の上は見ていなかったが――――水の上!?
どういう原理かは知らなかったが、女は水の上に浮いている。
B.O.Wでも、こんな真似はできない。一体何者だ、この女―――!?

いや、そんな事よりワクチンだ。何より作戦終了予定時刻までも無い。
見た感じ、しどけない服装に少々緩んだ顔。底知れないものはあるようだが、隙だらけである。

「ああ、そこのお嬢さん。そのケースを渡してくれると嬉しいんだがな」
サイドの上をつかつか歩み寄り、一言そういった。

>>237
その次の瞬間――――全身に猛烈なショック。何が起こったのか理解できない。
「が――――ぁぁあっ!!?」
全身の筋肉が過剰に流された信号にオーバーヒートを起こし、言うことを聞かなくなってゆく。
高圧電流が流されたと理解したのは、煙を上げつつ膝をつくその瞬間だった。

(場所;プールサイド)

259 名前:ディートリッヒ・フォン・ローエングリューン:2003/07/12(土) 03:33

>>257
博士の手がすさまじい勢いで動き、コードが入力された途端、
画面が青年の姿を映し出し、再び船の中に声が響きわたる。
「あーあ、やっちゃったね」
モニターに移る青年の口ぶりはそれでも何故かうれしそうだ。
「あなたの打ちこんだコードは目標変更コードさ、ちなみにレーザーの目標はヴァチカンに変更されたよ」

「さあ、異端審問官に13課に防疫修道会。それにその他の正義の志ある方々、これを見過ごすつもりかい?」
「そして、吸血鬼の皆さんたちは千載一隅の好機を棒に振るつもりかい?何をすればいいかはわかるよね」
青年は余裕たっぷりの笑みを浮かべこう締めくくる。
「まあ、僕らはどうころんでも別に損はしない、ゆっくりと楽しめないのが残念なことくらいかな、
 ま、ともかくそれじゃ幸運を!」

260 名前:ディートリッヒ・フォン・ローエングリューン:2003/07/12(土) 03:35

そしてその声が終わると同時に船底で幾つもの爆発音が響き、
船内は大きく傾くのであった。

261 名前:アレクサンド・アンデルセン(M):2003/07/12(土) 03:36

夏祭り 
 
>>246>>255

 頭部、特に脳への損傷は流石に無視できないものだったのか、怪物はその巨躯を大きく震わせ 
獣じみた唸りを上げる。 
山が揺れるかのように、それでも倒れることなく大きく歩を進める。 
一歩、更に一歩。 
 
 その先には――――――凡そその場には似つかわしくない銀に輝く巨大な甲冑姿。 
一合打ち合わせると棍棒はチェーンソウによって斬り飛ばされる。 
そのまま組み合った二体の巨漢は、やがて雌雄を決する。 
 
 つまり、甲冑に身を包んだ怪人物が巨大な化け物を掴み上げ、そのまま上方へと投げ飛ばした。 
それは即ち頭部に付いたままのアンデルセンをも共に投げ飛ばしたと言うことであり、 
 
盛大な破壊音を響かせながら崩れる天井部を突き抜け、その体は宙を舞った。 
 
(場所:アッパーデッキ階段付近から上へ)

262 名前:漆黒の王子(M):2003/07/12(土) 03:38

>>252上月兄弟
「ほう…、覚悟を決めたかね…」
私の余裕は崩れない、むしろ喜びがこみ上げてくる。
さあ、若者よ闇の世界へ来たまえ。
 
手榴弾の爆発はどうでも良かった。
武器に意味はないのだから。
そう、武器に意味はなかった。
 
轟音とともに降り注ぐシャンデリア。
それは武器ではない。
 
――――――私の体を貫く衝撃。
 
「は、は、ハハハハハハハハハハハ!!」
私の哄笑は止まらない。まだ、私は死なない死なないのだ!
体を霧と化せば――――――!

そう、私はもう一人の存在を忘れていた。
「な、なんだとっ!?馬鹿な!私が…私がこんな所で!?」
その意識は氷に包まれ、私の思考は停止した。
 
(漆黒の王子:死亡)
(パーティー会場)

263 名前:「DEATH」(M):2003/07/12(土) 03:40

>>255 小早川
チェーンソーでいくつもの壁を打ち砕いてきた棍棒を一刀両断され、
そして素手での掴み合いを試みた「DEATH」を彼女は……見事に持ち上げ、
天井にぶつけ、そして押し込んで大穴を開けた。

天井に穴を開け、そして放り投げられ鈍い地響きと共に数回バウンドして
プールの脇へその巨体を現す「DEATH」。

そして、立ち上がる。頭に銃剣が刺さり、棍棒も無く鎖も千切れて腕輪の部分のみ、と惨たらしい有様だが、
それでも戦闘能力には失われておらず、に、唸りと共に立ち上がる。

とりあえず耐久力だけはDr.キュリアンの予想を遥かに上回る好成績である。

264 名前:千早雅之(M):2003/07/12(土) 03:40

>>250 >>256 
電撃の影響で倒れていたのは幸運と言うべきか。
重機関銃は倒れた雅之の上を通り過ぎていく。
 
電撃の影響を脱するには多少の時間が必要だ。
呼吸を整える。
衝撃が完全に和らぐことは無いが、大分マシにはなるはず。
 
一撃は外れた。 
この状況鯰にとって好機の筈だが何故か後ずさっているのが見えた。
 
訳が分からないが、ここは回復に務めるべきだろう。
 
 
【プールサイドにて待機】

265 名前:レヴィ(M):2003/07/12(土) 03:42

>>242 スミレ 夏祭り その他諸々に関わってる余裕なんざない
 
 走り回って走り回って走り回った結果、今あたしはプールサイドにいる。
 っつーか魔女の釜の底にいる。
 阿鼻叫喚って言葉が生やさしく見えるその状況は、一体誰が誰で誰が何を持ってるのかさっぱりだ。
 ダッチの声が聞こえたような気もしたが、姿は見つからない。
 
 と、水の中にケースを持った人影!
 
 何も考えずに、二挺拳銃をその人影に向けて乱射乱射乱射。
 ……割と溜まってたのか、いろいろと。
 そりゃ当てもなく走り回ってりゃストレスの一つや二つ溜まるってなモンだぁな。
 
(現在地:プール)

266 名前:麻宮アテナ ◆qZESP0jjgI:2003/07/12(土) 03:44

 ひどい乱戦。もうどうすればいいのか。
判断材料ほとんど皆無。衛星レーザーなんとかも来るそうですし、
寄港予定地のリスボンまでテレポートかなにかで逃げたほうが……?
 
>>254
 そのとき、私と同じくらいの年の女の子がふらふらと……。
 
 「あっ……」
 
 抱きとめます。大丈夫、まだ生きてる。
たぶん、この人は大丈夫。まともなひと。たすけなきゃ!
 
 (現在位置:プールサイド)

267 名前:ヴァンパイアロード他2匹(M):2003/07/12(土) 03:47

>>242 >>244 >>247 >>249 >>250 >>257他プール付近の面々

疾風怒濤の勢いで駆けつけて見れば、そこに広がるは混沌コントンまた混沌。
いや、明らかに人が多いというか多すぎるというか。
これはあれか、オーディンの策略か何かか。もしくはロキの。
 
そんな事を思いながら、我が身と足は一直線。
流れ弾を掻い潜り、死闘喧騒飛び越えて。
狙うはワクチンの持ち主である妙齢の女性一人―――否。
あれは確か、あの死徒27祖が一人…水魔スミr
 
突如、閃光。
 
「ぐ、ぐわー」
 
ええ、ノーブル!?そんな簡単に!?
というかあっけないにも程があるぞ!オデロかジェリドか。
運悪く、というか運が悪すぎるとばかり光条に心臓を貫かれ、また一人灰に帰っていく。
早すぎたんだ!いや、遅すぎたのか。一体どっちだ。
仕方ないのでとりあえず無視した。
 
「殺られはせん!この程度で不死者の栄光を殺られはせん!
 殺られはせんぞォォォォォ!!」
 
日輪ならぬ不死王の力を借り、跳躍の勢いをそのままに渾身の力を込め、
今、必中必殺の飛び蹴りを敢行する。
そう――――
 


            美  し  き  魔   鳥  の  よ  う  に  !  
  


(場所:プール)

268 名前:アルバート・ウェスカー(M):2003/07/12(土) 03:48

いきなりの不意をついた電流に、凄まじく力を殺がれる。
立ち上がろうとしても、体が言うことを―――

>>259
「あなたの打ちこんだコードは目標変更コードさ、ちなみにレーザーの目標はヴァチカンに変更されたよ」

そこへ、耳に障る放送が入る。水を差された格好だが、意識が何故か醒めた。

「さあ、異端審問官に13課に防疫修道会。それにその他の正義の志ある方々、これを見過ごすつもりかい?」
「そして、吸血鬼の皆さんたちは千載一隅の好機を棒に振るつもりかい?何をすればいいかはわかるよね」
そんな事は知ったことではない。そして私はそのいずれでもない。
そしてやることは一つ。そう、ワクチンを――――奪うこと。

>>260 
そして、その直後に響く爆音。傾き始める船。
もはや本当に猶予など欠片も無い。みしみしと軋む体を引きずり、私は水上の女へ――
その腕に抱えられるワクチンケースへ、飛び掛った。

269 名前:エリ&フィオ ◆uiSV001MHw:2003/07/12(土) 03:49

>>234>>244>>245>>259>>260
………逃げられた。
「「ひ、非常識……」」
図らずも声がハモる。そりゃこんな逃げ方されればね……。
そしてさらに追う男。こっちも非常識だよちくしょう。
「この船にまともな人はいないんでしょうか……」
いたとは思うけどもうみんなグールか死体のどっちかだよ。
「おっかけますか?」
「いや、なんか…もういいや」
疲れがどっと出てきた。
そのままずるずるとその場へ座り込む。あー、ちくしょう。
チューインガムを口に放り込んで膨らます。
 
そこへ船内放送。
――――勘弁してくれ。
 
「どうします?」
「脱出するに決まってんでしょ」
「どうやって?」
「こんなこともあろうかと貨物にスラグマリナーを仕込んであるわ。それで脱出よ」
瞬間爆発音が響いた。船底から。いくつも。
そして傾く船内。
 
「うわわわわ」
「急ぐわよ!」
 
(現在地:廊下→船倉)

270 名前:極道兵器岩鬼将造 ◆893BIiCYCo:2003/07/12(土) 03:50

>>257 ドクターウェスト
 
むう、何じゃあの娘、ケッタイなハジキなんぞ持ち出しおってからに。
面白え、今から思いっきり感じるのをブチこんでヒィヒィ言わせちゃるで。
ワシのテクは半端じゃないけえ、覚悟しいや、けけけけけ。
 
(M60を構え直したとき、>>239の高圧電流)

「ぐがぎぐげごがご」
 
だ、誰じゃい! 濡れたプールサイドに高圧電流なんざ流しおったのは!
この耐熱防弾防電加工された特注の雪駄を履いてなかったら今頃黒焦げになっておったじゃろうが!
こういったアブナイ玩具で遊ぶようなガキはきっちりと仕置きせなあかんのう。
 
―――――って、犯人はどこのどいつじゃ?
ええい、面倒じゃ。こういうときは周りにおるモンを全員ブチ殺せばええんじゃ!
 
M60のトリガー引きっぱなしでプールサイドを駆け回る。
銃弾やら刃物やら訳のわからん波動拳みたいのやらが飛んでくるが気にしない。
 
「ワッハハハハハハ! んなモン怖いと思うから当たるんじゃあ!!
 ワシが睨みつけりゃあ核ミサイルだって避けていくわい!!」
 
(プールサイドにいるモンに無差別攻撃)
 
ところでどこかに鏡はないかのう?
髪のあたりが妙な感じなんじゃが―――

271 名前:上月永斗&司〈M〉:2003/07/12(土) 03:51

>>245>>259と、船内に放送が入った。
「おい……兄貴」
「なんだ、弟よ?」
「こんな話ちっとも聞いてねえぞっ!? どこが簡単な仕事なんだよ!?」
「しかし、目標が変更されたようだぞ? ヴァチカン、と。ならば俺たちには関係あるまい」
どがぁぁぁぁぁぁん!
>>260船底で爆発が響く。船体が斜めに傾ぐ。このままでは、長くは持たないだろう。
「……で、どうするんだ? もう一度ワクチンを奪いに行くのか?」
「司よ。お前に教えてやろう。戦いの鉄則、その4。逃げ足は素早く、だ。」
「へいへい、結局それか……で?どうやって逃げるんだ?」
「む、任せておけ。兄ちゃんに考えがある」
兄弟は、会話を交わしつつ、ついでに意識不明者もサルベージして>>221、デッキ上へ上がっていく。

(現在位置 パーティ会場→デッキ上へ)

272 名前:ドクター・ウェスト ◆sODrWEST1A:2003/07/12(土) 03:51

>>259ディードリット(違)
ふむ?吾輩が衛星にハッキングしたら、攻撃目標変更の表示がなされた。
吾輩自体は別に構わんのだが、攻撃目標がヴァチカンとあってはややこしいのであぁる!
「ふふん、吾輩の目をこれで開かしたつもりであるか?
 凡才め、吾輩を侮ったな?吾輩の実力を知らなかったのであるな?
 吾輩を知り、吾輩の叡智を畏れるが良い!!」
吾輩はネットワームを繰り出し、ハッキングを続ける。
カウントダウンを少しだけ、遅らせられればそれで良いのであぁる。
 
そして、吾輩はこの船の道中退屈しのぎに作っていたスイッチを押し込んだ。
そう、これこそが吾輩が船に追加させた魔術理論の武装!
 
「スーパーウェスト無敵砲『人工衛星だってヘッチャらさ!アクシズ落しは勘弁な!』くんであぁる!
 攻撃目標、衛星レーザー!!」
そして、吾輩はスイッチを押すキーワードを言った。
 
「ぽちっとな!」
船が振動を立てて船首が開く。
この揺れは少々吾輩も予想外であぁる!
 
「博士〜!危ないロボー」
エルザが吾輩に警告をするが・・・。
吾輩は船から落ちそうになっているのであぁる。
(プールサイドでWOWOWOWOWOW!)

273 名前:スミレ ◆xdSUMIREYo:2003/07/12(土) 03:52

>>242>>258は気付かなかった)
 
 やっと手に入れた。
 それが終わりを告げる物なのか、
 それとも始まりを告げる物か、
 わからないが、それはやっと私の手に……

 銃声。
 
 認識より早く、激痛とともに腕が飛ぶ。
 アタッシュケースごとくるくると宙を舞う。
 
 その情景を他人事のように見詰めながら私が思ったのは、
 
――ああやっぱり。

 だった。
 
 侭ならぬまま吸血鬼になり侭ならぬまま事この状況に至り。
 それでもいまだに夢を見る自分自身に苦笑して。
 私の腕ごと飛んでいくアタッシュケースを見送る。
 
 
(現在位置:プール)

274 名前:スミレ ◆xdSUMIREYo:2003/07/12(土) 03:53

>>273
レス参照>>242じゃなくて>>273

275 名前:Kresnik ◆fFCROSSQsM:2003/07/12(土) 03:55

>>251
 
「……さてさて」
 
 逃げられちゃったか――な。
 それでは暫し、本来の目的に立ち返るとしよう。
 肩を鳴らして、目的を反芻する。
 任務は単純で、目標要項は単一。
 1.ワクチンの護衛――まあ、コレはいい。正直知ったコトでもないし、担当の連中
が奮闘しているだろう。
 2.ヴァンパイアの殲滅――問題を挙げるならこの一点か。正直、各階の爆破に手
間を取られ過ぎた。食い足りないのは事実だ。
 本題。
 極限の矛盾で根本の否定で色々と問題だらけだが――
 つまり。教会側としては、ワクチンを"欲していない"。そこに関わるのは論理であり
歴史であり秘蹟であり、吸血鬼化を治療する/使者の復活=冒涜という一点に尽き
るだろう。
 だったらどうするか――結論。
 連中ごと、この海上の牢獄を崩壊させてしまえばいい。
 
「爆破爆破……お仕事お仕事、ってか。アホらしい」
 
 一杯一杯じゃねぇか。
 各組織のいがみ合い。一枚板でないヴァチカンの軋轢。信仰の形は一つでないに
しろ、利権絡みのいざこざはアタマに来るだけだ。
 カレンツァは――司教は、故に言った。
 粛清だ、と。
 
「エンジン〜ルームはぁ〜どーこーでーすーかぁー♪」
 
 グロック両手に、通路に残るグールを射殺して回る。
 マガジンチェンジは6回、射殺したのは23匹。全員元船員。
 そうして、目出度く――辿り着いたのは、機械音を響かせる目標の場所。
 バックごと投げ出して、デトネートコードを時限式にセット。それじゃ、と軽く振り返っ
て、エンジンルームを後にする。
 1階を走り回り、戦争を探し当てるのに約5分。指向性爆薬で船倉の壁を吹き飛
ばすのに48秒。
 後は簡単だ。
 ウォーターバイクのエンジンに活を入れ、狂宴の園を退出するだけ。
 
 ――と。
 
>>245
 
 レーザー。
 レーザーらしい。
 ……また――随分豪華な事で。
 とどのつまりは、
 
「――勝手にやってくれ」
 
 エンジン始動。
 遠く、船倉の奥での爆音を耳にして――ウォーターバイクは船倉を後にする。
 では、とりあえず祈りましょう。
 連中に――輝ける死と荒廃と滅びが有りますように。
 
「……バァイ」
 
 帰ったら――まずは何か、甘い物を食べよう。
 

276 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/12(土) 03:59

>>263 DEATH >>261 アンデルセン
「をっほほほほほほほほ、思い知ったかえ? バケモノ」
片手を腰に当て、大きく胸をそらして勝ち誇る小早川奈津子。

「……はっ、こうしてはおれぬ。あのぶしつけなモノどもに仕置きをせねば」
自らの神聖なる使命を思い出した小早川奈津子は軽やかにジャンプすると、
今、腐肉の棍棒で空けた大穴をくぐりぬけ。上階へと身を躍らせた。

「ええい! さきほどのチンピラ、それに珍走団! 逃げ隠れせず
姿を見せるんでしてよ!!」

風のようにデッキ上を走りぬけ、あちらこちらと索敵する小早川奈津子
の視線がある方向で釘付けになった。

「をっほほほほほほ、流石はワラワ。高所より探せばどんな物であろうとも
一目でわかるというもの。さぁ、善は急げと申しますし、早速参りますわよ
をーっほほほほほほほほほほ!!」

―――視線の先にあったものは、ヘリコプター、である。

(ヘリポート・ヘリに乗り込み)

277 名前:ブラザー・フィリポ ◆gxPyzUNAGI:2003/07/12(土) 04:00

>>250 >>264
 
 飛び交う重機関砲にも、身を伏せて回復を待つ男にも、もう気を配る余裕はなかった。
 何と言っても、男の命たる髪の毛を失ったのだ。これ以上の悲劇がどこにあろう。
 
 だから、フィリポが本来の使命であるワクチン護衛を完全に忘れ去っていたとしても、誰が
彼を責められようか。
 ────十分責められる気もするが。
 
>>270
 
 その時、再び足下で跳ねる銃弾が、彼を絶望の淵よりすくい上げた。
 そして、フィリポが最初に行ったことは……
 
 ヴァチカンを狙っているという衛星砲を止めることでも、
 この船内のどこかにあるだろうワクチンを取り戻すことでもなく、
 
>>264
 
 大切な髪の毛を奪った男への復讐であった。
 
「オレ様ちゃんの髪の毛の仇、絶対ここで取ってやるっつーNo!!」
 
 ありったけのワイヤーピックに渾身の電撃を込め、男目がけて投げはなった。
 
(現在位置:プールサイド)

278 名前:「DEATH」(M):2003/07/12(土) 04:03

>>261 アンデルセン
>>267 吸血鬼

「DEATH」の横には先刻銃剣を頭に刺した神父が倒れ、そして今まさに吸血鬼が飛び蹴りを仕掛けようとしている。
「DEATH」の目には一瞬だけその吸血鬼の背中に謎のオーラらしき物が見えたが、そんな事はどうでもいい。
今は、それを迎撃する事に全力を注がねばならない。

「ゴォォォッォォン!!」

一流のバレーボール選手のモーションをなぞるかのごとき動きで、トスの構え、
飛び蹴りを受け、そしてトスで遥か上空へ吹き飛ばす。

「ゴォォンンォオン!」

吹っ飛んで行く吸血鬼を見つめて唸りを上げる「DEATH」。
その唸りは妙に楽しげな響きを帯びていたのであった。

279 名前:上月永斗&司〈M〉:2003/07/12(土) 04:07

>>271

ボート・デッキには実に多くの人間や、怪物がケースを奪い合っていた。誰もこちらの事に気付いていない。
そのまま、あるものを探しているのだが――見つからない。
「なあ、司よ。ヘリコプターはどこにあるんだ?」
「ヘリコプター?」
「ああ、ヘリだ。こういった船にはヘリが用意されていると相場が決まっているではないか」
「……一応聞いとくんだがな、兄貴。ヘリなんて操縦できるのか?」
「………………」
無言。これだから、兄貴は。
その時。一体の巨大な鉄の塊が、ヘリコプターに向かって突進していった。>>276
なんだ、あんな所にあった。司はすかさず〈氷の戒め〉を発動させる。
地面から生えた氷の蔦が、その物体を絡め取った。
その隙に、こちらがヘリコプターに向かって突進する! 一人抱えて重いが、まあなんとかなるだろう。

〈ヘリポートへ〉

280 名前:アルビノ“山城友香” ◆0DYuka/8vc:2003/07/12(土) 04:07

>>266
目が覚める。あ、綺麗な長い髪、赤のビキニを着てる。
ここは、プールだから。泳ぎに来る人がいてもおかしくない。
  
むしろ、目の前で起こってる大乱闘すまっしゅぶらざ〜すみたいな状況がおかしいわけで。
……………頭がくらくらして。もう一度倒れそうになるのを。なんとか耐える。
 
そして、起きあがった瞬間。
目の前にいるいかにも、ちんぴら風味な人の機関銃を乱射してて。(>>270
 
目の前におそってくる銃弾。が、当たらない。
これは………バリアー?闇の眷属の次は、超能力者のご同輩登場と言うわけですか?
 
一発だけ、そらしそこねた銃弾が頬を掠める。
顔を覆う、血が流れる。これぐらいなら大したことはないが………友香の血の色は蒼。
たとえ、超能力者とはいえ普通の人間がこれを見てびっくりしないかと。
 
戦々恐々として、目の前の女の子を見つめていた。

281 名前:エリ&フィオ ◆uiSV001MHw:2003/07/12(土) 04:09

階段を駆け降り、通路を走り、たまにいたりするグールを撃ち殺してさらに走る。
 
船倉までもう少しのところに、一人の女がいた。黒いセーラー服に長い黒髪。
一般人か?
 
「この船もうすぐ沈むわよ。死にたくなかったら着いてきなさい」
言い捨てて横をすり抜ける。
一人乗りのスラグマリナーに二人ってのは少し窮屈だろうけどそこは勘弁してもらおう。
 
(現在地:船倉付近の廊下)

282 名前:ダッチ(M):2003/07/12(土) 04:15

夏祭りは水に縁があるのか

>268 >273 とかその辺

日頃の行いが良いとは間違っても言えない。
法も犯せば人も殺した。
世間一般の基準で言えば悪人の類だろう。
おまけに今日はとことん運が無い――
そんなこの身にも幸運はやってくるらしい。

音を立てて目の前に落ちたアタッシュケースを見ながら思うのも一瞬。

ブツを持っていれば狙われる。
ショットガンを右に、アタッシュを左に抱え、プールからあがる。

「悪いがこれも仕事だ」

ついでに追ってきそうな金髪の男に一発スパスを撃ちこんでおいた。

――そろそろヤバイか?

見ればあちこち火を吹き、足場も傾いている。

「ベニー、ついて来てるな? そろそろこの船は沈む。ビーコンを追って拾ってくれ。
 レヴィ、遅れるなよ!」

走る。
左側舷に。

(場所:ボートデッキ、プールサイド)

283 名前:比良坂初音 ◆HtiOHATUNE:2003/07/12(土) 04:15

>>281
「そうですか・・・ですがお構いなく」
そう言うなり初音は自分のそばにいた眼鏡の娘めがけ糸を放つ。
「私大変苛立っていまして、依頼人は一人で逃げてしまいますし、その上愛らしい娘に出会いましても
 手が出せませんし」
初音は歌うように恨み言をこぼすと、二人に向かって優しく微笑む。
「ですから逃げるついでに貴方たちを血祭りにあげようかと思いますの」

そして彼らがそうやっている間にも、足下の水かさは刻一刻と増しているのであった。


(現在地:船倉付近の廊下)

284 名前:千早雅之(M):2003/07/12(土) 04:19

>>277 
来る――混乱の中で感じた殺気。
そして、来た。
 
十数本ものワイヤーが未だ伏せている雅之に襲いかかる。
食らえば死なぬまでも行動不能は間違いない。
そうなれば、この船と心中する事になるだろう。 
 
そのような趣味は生憎と持ってはいない。
 
冷静に感覚を確かめる。
3、2、1――――戻った。
 
腕と足に力を込めて飛び上がる。
側にあったバーの屋根を蹴って更に一飛び。
 
そのまま鯰に向かって飛んだ。
体を捻って力を溜める。溜める。溜める。
 
そして、――――一閃。
            ――――二閃。
                      ――――三閃。
 
――――――――死の舞踏。
 
左の刀が唸る。
その結果を確かめずに更に蹴る。
 
反動で弾かれる身体。
プールに叩きつけられた。 
 
至極浅いプールで溺れそうになりながら、雅之は考える。
活きる術を。

285 名前:麻宮アテナ ◆qZESP0jjgI:2003/07/12(土) 04:19

>>260
 船体が傾きます。これは本当に危なくなってきました。
いよいよ沈没でしょうか。でも……。
 
 『ワッハハハハハハ! んなモン怖いと思うから当たるんじゃあ!!
ワシが睨みつけりゃあ核ミサイルだって避けていくわい!!』
 
 絵に描いたようなヤクザ屋さん(>>270)のマシンガン乱射。シールド!
私と女の子を包む球形の力場が、弾丸を四散させます。
人一人抱えていることですし、このまま後ずさって逃げ……。
 
>>280
 びっ。
 
 女の子の頬にひとすじの線。シールドを消すタイミングが速すぎた!
心の中で謝りながら、横抱きにした彼女をかばいながら逃げ出します。
さすがにちょっと重い……。
 
 頬をつたう血の色は蒼。どうやら彼女もわけありのようです。
私にとっては些細なことですが。今はそれより安全を。
 
 (現在地:プールサイド)

286 名前:アレクサンド・アンデルセン(M):2003/07/12(土) 04:22

夏祭り 
 
>>259>>260

 不意に、聞こえる声。 
恐らくは若い、軽薄な響きの声である。 
その話の内容共々不快を煽る以外の何物でもない。 
堆い瓦礫の山を掻き分け身を起こすと、ゆっくりと周囲を睥睨する。 
 
「ヴァチカンを攻撃か。フン……馬鹿馬鹿しい。 
 たとえこの地上から消え去ろうとも信仰自体を消し去ることは出来ん。 
 主の御名の下に集う我らの元に教会はある。 
 『見よ、神の幕屋、人と共にあり。 
  神、人と共に住み、人、神の民となり、神みずから人とともにいまして 
  彼らの目の涙をことごとく拭い去りたまわん』――――――AMEN(エイメン)」 
 
 その手には神の御言葉。 
 聖書のページが一枚、更に一枚と繰られ 
 
「だが、流石にこれ以上は殺し切れんか。 
 一旦は去ることにする……待っていろ、テロリスト」 
 
 純白の頁が螺旋を描きながらその姿を覆い隠し 
 
 
 後には、僧衣の神父の姿はなかった。 
 
(アレクサンド・アンデルセン(M) 退場) 

287 名前:ドクター・ウェスト ◆sODrWEST1A:2003/07/12(土) 04:25

>>270岩鬼
は!?吾輩意識がdでたであるか!?船からぶら下がりつつ、
吾輩無防備であるか?無防備なのであるか!?
英雄的行為をなした吾輩は英雄らしく死んでゆけであるか!?
否!否否否否!否であぁる!
 
「甘いのであぁる!エッルッザ!吾輩の援護を頼むのであぁる!」
「博士、分かったロボ!アフロヤクザはエルザが相手するロボ!」
エルザは術式魔砲を横に飛ばすと吾輩に迫り来る銃弾をトンファーで迎撃するのであった。
 
そうこうしている間に吾輩はカウントダウンがギリギリチョップな状況を打破すべく、
先のスイッチを押す!
エンジンが停止していてもこれまでエンジンからチョッパっていたエネルギーで必要充分!
吾輩の一世一代の知性を見るのであぁる!
 
「ぽちっとな!であぁる!」
開いた船首から、怪光線が衛星めがけて発射されるのであぁる!
魔術理論の粋を極めた吾輩の力なら、衛星ビーム砲もICHIKORO!
 
「わはっわはっわははははははっひゃーはっはっはっはっははっは!」
吾輩は高笑いをしつつ、難儀しているご婦人(>>273)を助けちゃったりするのであぁる!

288 名前:ドクター・ウェスト ◆sODrWEST1A:2003/07/12(土) 04:27

>>287の現在地はプールの上であぁる!)

289 名前:レヴィ(M):2003/07/12(土) 04:27

>>273 スミレ >>282 ダッチ 夏祭り 脱出行開始
 
 宙を舞うケースを、ダッチが回収したのを確認する。
 ヒュウ♪ 運命ってのもたまにゃ悪くねェなこりゃ。
 
 まぁ、それはそれとして、そろそろこの船はヤバイ。
 明らかに沈みかけてる。
 傾いた船に付き合う道理はないやな……ぼちぼち脱出としゃれ込みますかねぇ!
 
『ベニー、ついて来てるな? そろそろこの船は沈む。ビーコンを追って拾ってくれ。
 レヴィ、遅れるなよ!』
「言われるまでもねェ!」
 
 叫び返して、走り出す。
 両手には二挺拳銃(トゥーハンド)、後ろに弾幕を張りながら走る走る走る。
 こっちゃラグーン号まで逃げきりゃゲーム・セットだ!
 テメェらにゃ悪ィがデッド・エンドしかなさそうだなぁ。
 
「♪I see a blood sucker soul♪ Come on baby push to shove ♪ Squeeze a drop of mercy」
 
 終わりも見えて、興が乗ってきた。
 テメェら最高! だが死ね!
 
「Place yourself outside of life♪ I see a blood sucker soul♪ Come on baby push to shove!!」
 
(現在地:プール→脱出へ)

290 名前:エリ&フィオ ◆uiSV001MHw:2003/07/12(土) 04:29

>>283
『そうですか・・・ですがお構いなく』
「あ、そ」
構っている余裕はなかった。足元に水が来ている。もたもたしていたら助かる命も助からない。
「きゃあっ!」
背後でフィオの悲鳴。振り向き様にフィオが倒れ込んできた。抱き留める。
その背中には裂傷があった。じわりと血が滲み出す。
『私大変苛立っていまして、依頼人は一人で逃げてしまいますし、その上愛らしい娘に出会いましても
 手が出せませんし』
『ですから逃げるついでに貴方たちを血祭りにあげようかと思いますの』
言うと女は微笑んだ。
 
ああチクショウ。厄日だクソッタレ。
女の面を狙い、ヘビーマーダー弾倉内の50AE弾を全て見舞った。
 
(現在地:船倉付近の廊下)

291 名前:ブラザー・フィリポ ◆gxPyzUNAGI:2003/07/12(土) 04:31

>>284
 
 ワイヤーの先の無数の短刀が、地に伏せた男を刺し貫いた──かに見えた。
 しかし、それは残像────男の姿は宙にあった。
 
 続く斬撃を防ぎ切れたのは、正に奇跡と読んでもよい類の僥倖であったろう。
 しかし、奇跡は二度は続かない。
 更に放たれた蹴りがフィリポを捉える。その一撃は、彼の身体を宙へとはじき飛ばすには充
分であり──更に悪いことに、吹き飛んだその先に戦隊は存在しなかった。
 
 虚空へと真っ逆様──とならなかったのは、この場合決して幸運ではなかっただろう。
 何故なら、そこには先客(>>267)がいたからだ。
 そして最悪だったのは──ぶつかった瞬間触れ合った体の部分が、よりにもよって唇であ
ったこと。
 
 空中キス、しかも男同士という、世にも希少な(そして、決して味わいたくない)体験をしなが
ら、二人(?)は諸共に落ちていくのであった。

292 名前:Kresnik ◆fFCROSSQsM:2003/07/12(土) 04:34

>>275
 
 ウォーターバイクを加速させる。
 フルスロットルで駆ける機体が、白い波飛沫を上げて海上を切り裂いて疾走する――悪く
ない。感を掴めば、確かにレジャーには最適だ。
 ともあれ。
 無目的に走り続ける訳では――ない。
 燃料が切れるか故障するかすれば、大海のど真ん中で立ち往生というクソ面白くない結
果を呼び込む羽目になる。
 だから。
 視界を覆う船が――規模こそ小さい物の、れっきとした船が目の前を悠然と通るのを見た
時は、内心安堵の気持ちすらあった。
 加速して――バイクを踏み台にして、跳躍した。高さ6メートルの交番に着地して、乗員数
名に軽く会釈する。
 
「はーいはいはいはい、ちょっとお邪魔しますねー」
 
 喧騒喧騒喧騒――あー、はいはい。
 煩いですねー。静かにして下さいネー。そこのキミ、拳銃抜かない。
 抜かな、
 
「……あーあー、騒ぐから。殺しちまったよ。悪ぃ」
 
 あーあー。
 だって仕方ない。正当防衛だ。
 それに、船に乗った時から気付いてる。
 手に手に握ったハンドガンの銃口を向けてくれている乗員の皆さんは全部――
 
「危ねぇなぁ……まったく」
 
 ねぇ?
 
 
 
 ――つまり、ヴァンパイア組織のバカンス、と言った所だろうか。
 
 沈まない船の上で催すパーティーは、スリルの中で生きる実感を与えてくれる、とでも
いうつもりか。
 実際は、まあ。
 スリル所かサメのエサ。
 水中のプランクトンに滋養を提供する羽目になっただけだけれど。
 船の中から引っ張り出したワインセラーから漁った一本を(ナポレオンだった。生意気
な)グラスに注いで、例の船はどうなったろう、とぼんやり考える。
 
 ……まあ。
 
「どうにでもなる――か」
 
 とりあえずは連絡用の無線と、適度な水分と食料と――
 ……全部揃ってんじゃん。
 バカンス完成。
 
「面白くもなき世を面白く〜」
 
 まあいいか、と笑う。
 ……偶には――こんなのも、悪くないから。
                                             
                                          【退場】

293 名前:千早雅之(M):2003/07/12(土) 04:35

>>282 >>289
 
プールから出て軽く水を吐く。
足が付く程度のプールで溺れ死ぬのは御免だ。
そして、厄介事が済んだ以上ここに居る理由もない。

ならばどうする。

簡単だ。船で逃げる。
救命艇が無くても動く船はあるのだ。
例えば――海賊の船とか。
 
あんなに騒がしく言っていればイヤでも聞こえる。
 
雅之は早々に立ち去ろうとしている二人を見た。
その足が向かう先は……左左舷か。
 
場所さえ分かれば後は動くだけ。
 
未だ混乱の中にあるプール近辺から離れた。
 
 
【移動中>>282 >>289を追尾】

294 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/12(土) 04:36

  _  ______   _  ______     _  ______     __∩__
 ││(_______) ││(_______)   ││(_______)   (__   __)
 ││ ___| |__  .││ ___| |__    ││ ___| |__       / /
 ││(_______) ││(_______)   ││(_______)      / //ヘ /\
 ││     .││    .││     .││      ││     .││        /  ノ__ノ\\丿
 ││     .││     ││     .││      ││     .││      //  //\\
 ││    ( α\へ  .││    ( α\へ    ││    ( α\へ       ̄  //    ̄
 ││    \__ノ\.\││    \__ノ\.\  ││    \__ノ\.\     し  ̄ ̄ ̄ ̄)
   ̄            ̄   ̄            ̄  .  ̄            ̄        ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  _  ______   _  ______     _  ______    
 ││(_______) ││(_______)   ││(_______)       /7   
 ││ ___| |__  .││ ___| |__    ││ ___| |__       .〉〉 
 ││(_______) ││(_______)   ││(_______)       〈〈  
 ││     .││     ││     .││      ││     .││          .〉〉 
 ││     .││     ││     .││      ││     .││          〈〈 
 ││    ( α\へ   ││    ( α\へ    ││    ( α\へ          〈〈  
 ││    \__ノ\.\.││    \__ノ\.\  ││    \__ノ\.\      〈〈  
   ̄            ̄  . ̄            ̄     ̄            ̄       〈〈  
  _  ______   _  ______     _  ______        〈〈  
 ││(_______) ││(_______)   ││(_______)       〈〈  
 ││ ___| |__ . ││ ___| |__    ││ ___| |__        〈〈  
 ││(_______) ││(_______)   ││(_______)       〈〈  
 ││     .││     ││     .││      ││     .││          .〉〉 
 ││     .││     ││     .││      ││     .││           V
 ││    ( α\へ   ││    ( α\へ    ││    ( α\へ        _  ______
 ││    \__ノ\.\.││    \__ノ\.\  ││    \__ノ\.\   ││(_______)
   ̄            ̄    ̄            ̄     ̄            ̄   ││ ___| |__
                                                   ││(_______)
                                                   ││     .││
                                                   ││     .││
                                                   ││    ( α\へ
                                                   ││    \__ノ\.\
                                                     ̄            ̄

(現在地・ヘリ内部)

295 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/12(土) 04:37

>>279 上月永斗&司〈M〉
ヘリのローター音を圧して、巨大な狂笑が響く。

「ええいっ!! そなたら、ワラワの邪魔をするんじゃなくってよ!」
(>>279)をひきづりながら、小早川奈津子はヘリを発進させる。

ヘリをフラフラと操りつつ、何とか体勢を安定させていく。
そして、小早川奈津子はついにプールサイドに見つけた。あの男たちを。
 
「天網恢恢祖にして漏らさず! 悪事千里を走る! 鵜の目鷹の目覗き込む!
ワラワの目から逃れる事など、来世に転生しようとも不可能な事でしてよ
をーっほほほほほほほほほほほほほほほほほほほ!!」
 
操縦桿から片手を離し、ヘリから身を乗り出すと眼下に向かって高らかにこう告げた。
そして、何のためらいも無く、ヘリからひらりと身を乗り出すと、
船に向かって落ちて…………行けなかった。相対速度が違いすぎるのだ。
 
「なんのぉっ! ヤマトナデシコたるもの、この程度で諦めたりはしなくってよ!!」
 
………なんと、真のヤマトナデシコは、空中を「泳ぎ始めた」
 
空中を泳いで、
空中を泳いで、
空中を泳いで、
 
そしてやっと、船に手が届く……
……と、言う所で、(>>260)船が傾き始めてしまった。
 
「ああれぇぇぇぇっ!!」

(そして、海の中。合掌)

296 名前:比良坂初音 ◆HtiOHATUNE:2003/07/12(土) 04:39

>>290

「まあ・・・気の強い娘ですこと」
初音は平然とエリの射撃を回避し、そして懐に入り込むとすかさずその唇を奪った。
エリは最初こそ抵抗のそぶりを見せていたが、やがて甘い声を漏らしだす。
「あら?思ったよりもいい味じゃないの・・・くくく」
初音はエリの耳たぶを甘噛みしながら囁く。
「気が変わったわ・・・殺すのはやめて、お前たちを贄にしてあげる」
そして初音は床で倒れたままのフィオの身体も背負い、海の底へと消えていった。

(比良坂初音 脱出)

297 名前:ヴァンパイアロード他2匹(M):2003/07/12(土) 04:42

>>278 >>291
 
「そ、そんな馬鹿な!?」
 
必殺、であった。
必殺の筈だった。というか明らかに確実にこの上なく必殺の一撃だった。
それが、どうであろう。
 

   ト  ス  に  負  け  た  
 

夜の闇を斜め90度で英々と突き進み。
その上吹き飛んだ先には、それはもうお誂えといわんばかりに、
ええ、ナマズが一匹。しかも正面を向いて唇一直線。
 
「―――――――」
 
ああ、この落下間。堕ちるのか。地上に。
刺さってますね、何か。正確には突き出た肋骨。
折れたそれが心臓を見事に。打ち上げられた衝撃で突き出たか。
というよりあれか、貴様
 
          そ  ん  な   最  期   か  
 
 
                             ――――――何て無様。
 
『――――我焦がれ、誘うは焦熱への儀式、
                 其に捧げるは炎帝の抱擁――――――』
 
落下に落下を重ねながら、息も絶え絶えになりつつも、詠唱するは力有る言霊。
戦乙女に屠られまいと、必死で習得した火炎魔法。
それに加え、「こんな事もあろうかと」懐に隠し持っていたのは
30センチほどにも満たない魔杖。
最早この傷この惨状、万に一つも助かりはしまい。体も無論魂もだ。
だが私にも遺児、いや意地がある。というかもう嫌だ、何もかも。
 
かくなる上は激突寸前で、そう―――――
 
『        イ フ リ ー ト キ ャ レ ス
          レ  ッ   ツ   自  爆        』
 


                           __,,:::========:::,,__
                        ...‐''゙ .  ` ´ ´、 ゝ   ''‐...
                      ..‐´      ゙          `‐..
                     /                    \
        .................;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::´                       ヽ.:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.................
   .......;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙       .'                             ヽ      ゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;......
  ;;;;;;゙゙゙゙゙            /                           ゙:                ゙゙゙゙゙;;;;;;
  ゙゙゙゙゙;;;;;;;;............        ;゙                              ゙;       .............;;;;;;;;゙゙゙゙゙
      ゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;;;;;;;;.......;.............................              ................................;.......;;;;;;;;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙
                ゙゙゙゙i;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;l゙゙゙゙゙
              ノi|lli; i . .;, 、    .,,            ` ; 、  .; ´ ;,il||iγ
                 /゙||lii|li||,;,.il|i;, ; . ., ,li   ' ;   .` .;    il,.;;.:||i .i| :;il|l||;(゙
                `;;i|l|li||lll|||il;i:ii,..,.i||l´i,,.;,.. .il `,  ,i|;.,l;;:`ii||iil||il||il||l||i|lii゙ゝ
                 ゙゙´`´゙-;il||||il|||li||i||iiii;ilii;lili;||i;;;,,|i;,:,i|liil||ill|||ilill|||ii||lli゙/`゙
                    ´゙`゙⌒ゞ;iill|||lli|llii:;゙|lii|||||l||ilil||i|llii;|;_゙ι
 
 
 
「サキュバス。あの壷をブラムス様に届けてくれよ!
 あれは――――良い物だぁーーーーー!!!」
 
その断末魔の叫びも夥しい爆音に掻き消され、
盛大な灼熱の華を咲かしたのを最後に、血を啜るボンクラーズは今此処に滅び去るのみ。
君は何処に落ちたいなどと、ナマズを前に誰が言ってやるものか。
  
(VP吸血鬼一同改めボンクラーズ:華々しく?戦死)

298 名前:ダッチ(M):2003/07/12(土) 04:42

夏祭りだってえのにえらい目にあった

>289

幸運は想像より多少長続きした。
それで十分お釣りが来た。
手摺を踏んで宙を飛び、行く先は大海。
着水の音は二度続いた。

「……さあ、引き上げだ」

来た時に使ったボートにレヴィを引き上げ、ワイヤーを切り離す。
モーターは一発で大人しく起動し、甲高い音を引きながら沈む客船から離れていった。

(場所:プールサイド→レヴィと共に脱出)
(ワクチンの奪取に成功)

299 名前:麻宮アテナ ◆qZESP0jjgI:2003/07/12(土) 04:55

>>285
 女の子を抱えたまま、デッキに走り出ました。
あとは救命ボートを調達して脱出を……。
 
>>257
 ……あった。海に浮かぶボート。先客がいるようですが、
まだ収容人数には余裕がありそうです。よかった。
  
 ボートを手すりを乗り越えて、あとでごまかしが効く程度に
落下速度を緩めながらのダイブ。水しぶき。
 
 「……ぷはっ」
 
 彼女を抱えてばちゃばちゃと適当に泳ぐフリをしながら、
念動で水面を滑ります。ボートの縁に手をかけ、
 
 「ご一緒させてください……」
 
 返事も聞かずに這い上がりました。
 
 (現在地:洋上)

300 名前:アルバート・ウェスカー(M):2003/07/12(土) 04:55

女の腕に抱かれる銀のケースに向けて、飛び掛ろうとした刹那―――――

>>273
不意に女の腕がはじけ、ケースが腕ごと飛んでゆく。
「なっ!?」
不意のことに修正もきかず、女にぶち当たって着水する。
・・・・が、今は何よりワクチンが最優先だ。
ぶち当たった女のことを頭から追いやり、ケースの行方を目で追うと・・・
二人の人影が、銀のケースを抱え、走るのが見えた。

フラストレーション。ワクチンへの妄執。失敗とダメージへの怒り。
それら全てが、T−ウィルスとあいまって最後の力でも呼んでいるというのか。
水から上がり、しぶとく追いかける。
ウィルスの力で人外の身体能力を得ているとはいえ、蓄積されたダメージが酷い。
速度はいまや、“奴らよりわずかに速い”レベルまで落ち込んでいた。

>>282
そこへ、打ち込まれるショットガン。衝撃にのけぞり、足が一瞬止まる。
マグナムに残った二発を、奴らの背中に叩き込もうとして――――そこまでで、私は限界だったようだ。
意志とは全く関係無しに膝をつき、視界が勝手に空を向いてゆき・・・・・・その景色も、徐々に白んでゆく。

>>295
引き金を弾こうとした指だけは、最後まで律儀に動いたらしい。
轟音と衝撃が二回。

            二つの澄んだ金属音。
     狂った機械音―――

                    最後に、爆音。

遠退いていく騒音をBGMに、視界はその、暗い白色を強めて行き―――――――


(アルバート・ウェスカー DIED)

301 名前:エリ&フィオ ◆uiSV001MHw:2003/07/12(土) 05:01

>>296
至近距離からの弾丸を女はたやすくかわしてみせた。
驚く間もなく、あたしの懐に入り込んでくる女。
そして、あたしの唇に口づけをした。
「ん!?」
腕からフィオが滑り落ち、床に伏す。
両手を突っ張って押しのけようとするがびくともしない。
そのうちにぞわりと何かが沸き上がってきた。 身体から、力が抜けていく。
「ふ…ぅ…ぅぅ………」
『あら?思ったよりもいい味じゃないの・・・くくく』
女があたしの耳たぶを甘く噛む。
「あ…や、ぁぁ……」
『気が変わったわ・・・殺すのはやめて、お前たちを贄にしてあげる』
辛うじて手に引っかかっていたヘビーマーダーがごとりと落ちた。
 
(END)

302 名前:千早雅之(M):2003/07/12(土) 05:01

>>298 
 
あの海賊達もこうなるとは思っていなかっただろう。
悠々と脱出し、意気揚々と帰還しようとしたら上から人が降って来たのだから。
 
もっとも、雅之の方からすれば博打に等しい話なのだが。
 
間を空けていたのが問題だった。
要するに出遅れたのだ。
甲板から見たときには既にエンジンに火を入れていた。
 
普通に降りていたのでは間に合わない。
だが、このまま死ぬつもりもない。
 
選択肢は殆ど無かったと言っていいだろう。
 
ボートが出るのと同時に助走、そのまま手摺りを蹴り、そして落下。
昔ですらここまでバカなことはしなかった。
 
そのまま加速直前だったボートの上に着地、いや落下した。
幸運と言うしかないだろう。
 
そして、雷でも落ちたような顔をしている二人を見つつ一言。
 
「……さて、少しビジネスの話をしませんか?」
 
実にエグゼクらしい笑顔で雅之は言った。

303 名前:極道兵器岩鬼将造 ◆893BIiCYCo:2003/07/12(土) 05:02

>>287 ドクター西
 

何じゃと!?あの耳長娘、トンファーで銃弾を弾きよった!?
ならばこのロケット弾でどうじゃ!
さっき丸い化けモンを狙ったときは貴様らのせいで外れてもうたが
今度はレーザー誘導付きじゃけえ外しはせんで。
弾けるモンなら弾き返してみいや!
ロケットランチャー全弾発射、狙いは娘っ子の額の真ん中じゃ。
ほれ、レーザーサイトが赤く点っておるじゃろう?
 


ドカン、と派手な花火を確認、あれなら全員消し炭間違い無しじゃ。
さあて、次はどいつをブチ殺すか―――。

304 名前:スミレ ◆xdSUMIREYo:2003/07/12(土) 05:10

>>273>>282>>289>>300
 
 水から上がる。
 髪をかきあげようとして右手が千切れていることに気付く。
 癒す気にはならない。
 
 手をすり抜けるどころか引きちぎって、
 飛んでいってしまった私の始まり。
 
 ぐらり、足元が傾く、
 不規則な振動が連続している。
 救命ボートに急ぐ乗客の列。
 船が沈む。
 
 空を仰ぐ。
 笑うような下弦の月。
 自動式なのだろう。冗談のように上がる花火。 
 何もかもが酷く道化めいて。
 
 私は笑う。
 
 口の端を吊り上げて、
 止め処も無く涙を流し、
 薄く笑う月を見上げ、
 声をあげ、歌うように、
 
 私は笑う。
 
 千切れた腕を抱え、
 朽ちた夢を抱え、
 嘲りの月の下で、
 船が沈むその時まで、
 
 私は笑う。
 
 止む事もなく、
 慟哭のように哀切のように、
 慯みのように諦観のように、 
 
 私は笑う。
 私は笑う。
 私は笑う。
 私は笑う。
 
 延々と、延々と、延々と、延々と、
 
 水の腕に抱かれるその瞬間まで、
 
 私は延々と笑い続けた。
 
 
(水魔スミレ END)

305 名前:ドクター・ウェスト ◆sODrWEST1A:2003/07/12(土) 05:15

>>303 岩鬼
吾輩が静かに壊れ始めているご婦人を抱え込んだ時、
893がロケットランチャーを出してきたのであぁる!
ええい!この大人げないやつめ!吾輩、ド許せぬのであぁる!
「レッツギグ!」
吾輩の声に術式魔砲がエルザの元へとエンジン噴射して飛ぶ!
 
「博士!感謝ロボ!」
エルザは間合いを取りながら、ロケット弾に術式魔砲を拡散モードで撃ち放つ!
 
「Dig me no grave(我、埋葬に値わず)ファイア!!」
爆発が連鎖し、吾輩が抱えていたご婦人は>>304と水の中へ消え去ってしまったのである。
無念を思いながらも吾輩はエルザとともに海へ落ちて行くのであった…。
 
(現在位置:海上)

306 名前:麻宮アテナ ◆qZESP0jjgI:2003/07/12(土) 05:48

>>303>>305
 『博士!感謝ロボ!』
 
 『Dig me no grave ファイア!!』 
 
 わけのわからないミサイルが、わけのわからない女性に防がれました。
もう私も大抵のことでは驚きません。おかしな具合に疲れてぐったりしかけたとき、
先客のわけのわからない男性が爆風にあおられて海に落ちました。
 
 ……なんだかうれしそう。でも放ってはおけません。
 
 ざぶん。
 
 再度飛び込んで救出。ショックで動けないようです。
この人には悪いですが、下手に元気に暴れられるよりこのほうが楽。
もうひとり誰か(>>304)いたような気がしたのですが、姿は見えません。
気にはなりましたが、このうれしそうな男の人呼吸が止まっています。
1分1秒が惜しい。
 
 浮上。横に寝かせ、頭を上向きにし、鼻をふさいで……。
 
 「……ふ〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
 
 口移しに思い切り息を吹き込みました。
 
 (現在位置:洋上)

307 名前:極道兵器岩鬼将造 ◆893BIiCYCo:2003/07/12(土) 06:36

>>303
カチカチカチ
 
乾いた音をたてるM60。トリガーをいくら引いても答えは同じ。
チイッ!弾切れかい。
M60を放り捨てたその時じゃった。

ぐらり
 
船が思いっきり傾きおった。それも尋常ではない勢いで。
 
「おわおわおわわ。」
 
慌てて手近なところにあった手摺にしがみつくワシ。
この突然の揺れと傾斜に見舞われた人やらモノやらがバラバラと海へと落っこちて行く。
いかん、この角度は危険じゃ。明らかに船の復元力を超えておる。
えい、仕方ない、ここはひとまずズラかるとするかい。
 
何? どうやってこの場からフケるかじゃと?
ふっふっふ、丁度すぐそこにおあつらえむきのデブ(>>278)がおるではないか。
転げ落ちまいとプールの縁石にしがみついてじたばたしとるようじゃが
ここは一つ、ワシの脱出に協力してもらおうかの。

飛び蹴りでデブの顔面に移動を敢行。
どや? 防弾加工済みの特別製安全雪駄の味は?
今ならスパイクのおまけ付きじゃ。釣りはいらんけえな。
 
怒り心頭に達したらしきデブゴンはワシをふん捕まえようとしてくるが……。
縁石にしがみついておった手を離すとどうなるか、考えるまでもなかろう?

 
傾斜した甲板を滑り落ちる化けモンの身体にすかさず飛び乗るワシ。
そのまんま奴をボード代わりにして海面向かってのスーパーサーフじゃ!!
 
 
 「 こ の 夏 一 番 の 波 が 来 る ぜ ぇ 〜 〜 〜 ! ! 」
 
 
ワッハハハハ!ビッグウェンズデーも吃驚やでェ!
このまま華麗に着水じゃ!
 
 

って、コラ! 暴れるな、田吾作が!
角度が狂うじゃろうが!
うわ うわ うわ いかん、このままでは―――――

308 名前:上月永斗&司〈M〉:2003/07/12(土) 11:20

>>294>>295〈小早川奈津子〉
こんな事は初めてだ。
UGNのエージェントとして各作戦に参加し、伝説の暗殺者として、
様々な場所で、様々な敵と戦ってきた。
だが。
エフェクトの効果をものともせず、その巨体を揺らし3人分の体重を引き摺ってヘリコプターに乗り込まんとする、
大鎧は見た事がなかった。しかも声を聞く限り女性である。
どんな顔をしているか見てみたい。
二人はそう思ったのだが、彼女の兜の面当てが下ろされているのは、幸運なことだった。
それ(彼女と呼びたくはなかった)は3人を適当に後部座席に押し込むと、
操縦桿を握ってヘリを発進させる。とにかくも、これで脱出できる……二人がそう思ったのもつかの間。
 
それは巨体を揺らしてヘリから落下した。奇声とも哄笑ともつかぬ声を発したまま。
 
「…………」
「…………」
無言。そしてそのままそれは海へ落下していった――そこまではいい。いや、良くは無い。
あの距離から落下して生きていられるはずが無い。いや、そんな事ではなく。
 
問題・操縦席が無人のヘリコプターはどうなるのか?
答え・墜落する。
 
……チンッ! シュボッ。ライターで煙草に火をつけ一服する。
「ふん……ままならねえ、もんだな?」
「んなこといってる場合かーーーーーーっ!? 冗談も時と場合を考えやがれっ! 
 どうすんだよおいこのままじゃ本当に墜落しちまうぞ!?」
「飛び降りるぞ」
「馬鹿か兄貴っ!? こんな高さから飛び降りて無事でいられるはず――ってわぁぁぁぁぁっ!」
 永斗は有無を言わさず司を突き落とすと、自らも小脇に女性を抱え飛び降りた。
みるみる迫る海面。そこに待つのは死。
「いや! 違うなっ! 俺たちの未来に待つものは! 輝かしいロードだ!」
 懐から薔薇を取り出す。それは永斗の手から離れると、メキメキと異音を立てて変異していった。
手榴弾。ダイナマイト。プラスチック爆弾。エトセトラ。
それらは海面に落ちた瞬間爆発し、派手な水柱を上げた。
そうする事により、衝撃のショックを和らげる。
そして無事に着水。いや、無事とは言い難かったが、生きてはいる。
 
>>257>>299
なんとか水面に顔を出すと、一艘のボートが。まさしく天の助けと近づく。先客が何人かいて、
その中には先ほど見かけた少女もいた。今はなぜか赤いビキニを着ていたが。
「ハッハッハァッ! 命が惜しければ載せてくれなさいお願いします」
微妙に低姿勢に永斗が言う。嫌だと言っても乗り込むつもりだが。
 
(現在位置・海上)

309 名前:ブラザー・フィリポ ◆gxPyzUNAGI:2003/07/12(土) 22:30

「夏祭り」エピローグ、ブラザー・フィリポの場合
 
 ポルトガル辺りのとある漁村。
 村始まって以来の椿事が発生したのは、その日の朝だった。漁に出ようとした村人の一人
が、浜辺に打ち上げられた奇妙な物体を発見したのだ。
 頭部はどこからどう見てもナマズなのだが、生えているのはヒレではなく人間の手足だった。
爆発(>>297)にでも巻き込まれたのか、身に纏った修道服らしきものはあちこちが焦げている。
 
「どこかの施設から逃げ出した実験動物か?」
「いや、サーカスの見せ物小屋から脱走したナマズ人間だろ?」
「馬鹿、ナマズ人間なんているわけねえだろ」
「じゃあ俺達の目の前に転がってるのは何だよ」
「知るか、オレに聞くな」
 
 もぞもぞ、もぞもぞ。
 
「何でもいい、こんなモンが転がってたんじゃ漁の邪魔だ。
 おいお前ら、とっととこいつを片付けちまえ」
「何で俺達が……」
「ワシが知らんとでも思ってたのか? 一昨日お前らが仮病で漁をサボって何をしてたのか」
「げ、バレてたのかよ! ……ったく、喰えねえジジイだぜ。
 ────って、おい! 動いてるよ! こいつ生きてやがる!」
「「「何ぃ!?」」」
 
 驚く村人達を後目に、物体──フィリポはムクリと身を起こすと、大きく伸びをしながら声を
発した。
 
「Oh? いつの間に陸地に着いてたんだ?
 まっいいや、沈み行く船からの華麗な脱出、さっすがオレ様ちゃんだね、ぶしゃしゃしゃしゃ
しゃっ!
 ……ん? お前ら、誰に断ってオレ様ちゃんのビューチホーなボディー、じろじろ見てんだYo?
さっさと喰いモンのある場所に案内しろっつーの!」
 
 唖然とした村人達が取れる行動は、ただカクカクと頷くだけだった……。
 
 
【The End……?】

310 名前:「DEATH」(M):2003/07/13(日) 01:23

(「DEATH」:エピローグ)

「……」

奇妙な男にサーフボード代わりにされて数時間……。
人の居ない砂浜でようやく「DEATH」は意識を取り戻す。
もう、自分をサーフボードにした男も、
自分を投げ飛ばした女も、
後ろから撃った男も、
自分の頭に銃剣を刺した男も、
船倉で跳ね飛ばした男も、
トスで吹き飛ばした男も、
もう居ない。「DEATH」一人である。

「グ……」
行かなければ。
「ググ……」
主人であるキュリアンの下へ。
「グググ……」
失敗の報告の為に。
「グァァァァァァ!!」
激しい勢いで起き上がり、まるで今までの痛みを全く感じないかのような唸りを上げ、
「DEATH」はまた走り始めたのだった……。

(「DEATH」:作戦失敗)

311 名前:Kresnik ◆fFCROSSQsM:2003/07/13(日) 16:55

 Duel of the fates -Immigrant Song/Child of oblivion- Kresnik vs Arucard
 
 前スレ>>311
 
 街を縛る五芒星。
 サウスブロンクスを包囲する配置で突き立てられた巨大な柱/結界媒体は、不動の
テトラグラマトンとなって街を清浄の檻で包み込んだ。
 死体は塵に帰り、動く死体/ヴァンパイアは足掻く間もなく灰へと変わって散っていく。
 馬鹿馬鹿しくなるほどの脅威を横目で流して、ジャックは黙したままのカレンツァへ詰
め寄った。ケリーは止めない。タルジェノが片眉を上げたが、ジャックは無視した。
 カレンツァはタルジェノを制して、
 ジャックは、カレンツァを睨み付ける。
 そうして。カレンツァは――
 
 ――そうだな、と。全ての顛末を語った。
 
「マウリティウス……騎士団?」
「そう。最小最強のヴァチカンの切札。君達がけして知る事のなかった、抹消された名
を冠する騎士達さ」
 
 頭の中が、霞む。
 事実を処理しきれない。
 見知った筈の人間が急に離れて行くような違和感と喪失感。
 その名前も知らない騎士団の中に、アイツが、
 
「君がまだコロンビアに居た頃、彼は年端も行かない少年の頃。君以外の友が居て、
君とは違う理想を抱いていた頃の話だ。君に"チーム=クロウ"が在るように、彼には
仲間達が在った」
 
 ジャックは押し黙り、次いで語気を荒げてピーターを睨んだ。
 
「訊いた事もな――いいや。そんなモノ有る訳がない。何処の妄言だ? 超人部隊?
生体兵器? 狂人の戯言かコミックの世界の話は止してくれ!」
「有る訳がない? 正にその通り。これは実験で、同時に生きた部隊だったんだ。超
人を――いや。創始者の司教に習うなら、神の戦士を作り出す狂事。一人居れば旧
世代の突撃銃で師団も殺し尽くし、ナイフ一本でドラゴンでも捌いてくれるだろうさ。
そう"造られた"騎士達は、歴史所かヴァチカンからも秘匿されていた。いつでも消え
る事が出来るように、痕跡すら残さずに終われるように」
「……出来の悪い冗談だ」
「冗談は嫌いだよ」
「戯言に付き合ってる時間は、ない」
「事実だ」ピーターは静かに続ける。「――否定するなら勝手にすればいい」
 
 血が滲むほど、唇を噛んだ。
 タルジェノの視線も受け流し、彼我の立場も他所にして、ジャックは激昂する。
 

312 名前:Kresnik ◆fFCROSSQsM:2003/07/13(日) 17:17

>>311
 
「ふざけるな! ターミネーターの集団だ? ……馬鹿馬鹿しい。だったら、どうして
この事態に出て来ない!? そんな連中が本当に居たなら――」
「――……騎士団消滅までの間に、彼等は無数の異形を狩り尽くした」
「……なんだって?」呆然と、彼は息を次いだ。「今、なんて――」
「壊滅したのさ。数年前に。本隊投入の作戦中に全滅した。相手がそれだけ強かっ
たのか、何かの不都合があったのかそれは解らない。事実は一つだけだ。彼等は
歴史から、世界から消滅した」
 
 "仲間達が在った"――此処に到って、カレンツァが過去形でその名前を口にした
事を思い出す。それは、つまり。
 
「鋭い刃は折れ易い。洋の東西を問わず、これは事実だ――が」
 
 カレンツァが射るような視線を向ける。
 心臓を直接握られるような圧力に耐えて、ジャックは視線を逸らさない。相も変わ
らないのは、正体不明な威圧感。
 君は、と大司教は口を開いた。
 
「――君は、日本刀を知ってるかい? 粘り強く、それでいて限りなく鋭い。芸術品
的価値を得るまでに作り込まれた最高級の殺傷用具。そう。彼等はそうあるべくし
て作られた。殺すべきモノとして。異形を、ヒトを、異端を、そして――自身と神をも
殺すモノとして。自我も信仰も否定して、ユダとなってペテロの剣を振るうモノとして。
精神操作、薬物投与、魔術処理――人体実験の材料のような扱いさえ受けてね。
……だけど、彼らが彼らであるべくして必要な要素は、たった一つだった」
「……何が言いたい、司教」
「恨まれる謂れはないよ。彼の選択を覆す事は、彼を冒涜しているのに等しい。
――そう、求められたただ一つの要素はね、ジャック。"殺意"だ。誰にも止められ
る事の無い絶対意思。それが最も重要だった。刀のように純粋で、澄み切って閃く
悪夢のような殺意……それさ」
「カタナ? アイツはカタナなんて言うには脆弱過ぎる。アンタは知ってる筈だ。ど
うして、」
 
 首を振ってカレンツァを睨み付けて――ジャックは、息を詰まらせた。
 顔を向けたそこには、大司教の顔が在る。冷淡でも能面のような笑みでもない、
普段はけして見せる事のない――悲痛と瞋恚に覆われた顔が。
 
「ジャック。彼等全員に共通していた点を教えてあげよう。良いかい? それはね。
全てを失っていたって事なのさ。家族を殺され、或いは自ら殺し、憎悪と悔恨に塗
れて生きていた。御互い以外に身内はなく、御互い以外に友はない。
 明日を見る事もなく、過去を振り向く事もなく、今を殺し続ける。友の亡骸を想い、
全ての邪悪を呪い、やがて産まれてくる子供達の為に祈る。それだけが彼等の絆
で、それだけが彼等の意味だった。
 殺戮の為の小隊、滅びを告げる小集団、死を司る家族達。故に強かったのさ。
誰も勝てないほどに強く、事実誰も勝てなかった」
 
 息を飲む。
 年下の大司教は軽く目を伏せると、悲哀交じりの声色で続けた。
 

313 名前:Kresnik ◆fFCROSSQsM:2003/07/13(日) 17:49

>>312
 
「血塗られているが故に聖人に並ぶ事を望まず、隠されているが故に列聖される事は
ない。信念だけを真実に生きた呪われた聖騎士――故に、その名はマウリティウスを
もって呼称された――……Mauritius Knights、とね。
 彼は生き残り。たった一人の聖騎士、もはや語られる事のない証人。歴史の狭間に
飲み込まれた友人達を証明する事の出来た最後の人間だ。彼は騎士団の代表じゃな
く、騎士団その物なんだ。36人の騎士達の魂を背負った――……彼の目的は、僕に
提示した条件は一つ。自分の生ある内にヴァンパイアの王を殺す事、その為の舞台を
用意する事。払った代償は彼の命。ヴァチカンへ提供するのはアーカード。プロテスタ
ントのジョーカー。自身の生命を叩き付けて、奴を破壊する――それが僕へと提示した
彼のカード。彼は何を置いても、家族の存在した証が欲しかったんだ」
 
 結局――家族と同じ道しか歩めないんだな――と、カレンツァは呟く。
 
 ……痛がっている。
 この男が、悼んでいる。自分と同じように。人間と同じように。
 信じられない事では、ないのかもしれない。
 人間なのだ。この男も、また。人の肉に縛られる神の御霊は、ならばやはりヒトの感
情を持っているのだろう。
 ジャックは、そう思う。
 
「折れた刀はね、ジャック。それでも、生命を断ち切る鋭さを持っているんだ」
 
 短く言って、カレンツァは紙切れを――古惚けた1枚の写真を差し出した。
 受け取って、ジャックは眉を顰める。
 触れれば崩れてしまいそうな色褪せた写真は、
 
「……これは」
「ケジメ、だそうだ。彼と逢った最後に渡されたよ。……君が受け取って問題無い。
どうあれ、君に渡すように言われていた物だから」
 
 受け取った写真。
 モノクロに褪せ、古惚けた一枚。36人の集合写真。国籍もまばらな一団の中――
その中央に、ジャックは見覚えのある姿を確認する。年端も行かない東洋人の少年
の姿に、彼は見知った一人の人間の面影を幻視する。少年の首に腕を巻き付けるよ
うにして笑うもう一人の少年。微笑みながらそれを見詰める北欧系の男。幻視をその
顔に焼き付けた一人を除いて、自分はその全てを知り得ない。
 刻まれる年号。
 今日から丁度、10年前。
 知らない友人。
 知らない笑顔。
 知らない絆――
 その全てが、友人を死へと駆り立てる。
 
 ……死人に勝てないとは、この事じゃないか。
 
「始まる」
 
 ピーターは冷たい眼差しを取り戻し、言った。
「ウリエルが剣を振り下ろすよ」
 

314 名前:Kresnik ◆fFCROSSQsM:2003/07/13(日) 19:01

>>313
 
My sin/Bound with rage
 
 足が、灼けた。
 錯覚。実際は左太腿が削ぎ落とされただけ。
 血が零れて、激痛が頭の中をエラーだらけに変える。
 側頭部のエラーが酷い。痛……痛い痛い、痛、い。
 ザラザラとワケの解らない思考が生まれて消えて落ちて行く。
 背後を振り返るのは、駄目だ。それをやれば、死ぬ。
 通路を真っ直ぐ走って、T字路。走る先には壁。開くのは左右への道――だから、
 痛くて、壊れそうで、だけど脇に身を投げた。転がるみたいにT字路を横へ。
 ……だから、死ななかった。
 轟音が弾けた。
 今しがた立っていた場所が薙ぎ払われる。悪夢みたいな弾幕が射線上を完全に破壊
する。ガラスが散って、コンクリートの破片は羽虫みたいで、混ざり合った大気はまるで
水晶で出来た世界みたいで、
 は……くそ。畜生、イカレてるよ。
 
「……なんで」
 
 この火力は――何処から。
 火力、
 弾丸の軌跡が正面の壁に炎を生む。API弾、成る程、これは。
 さっき――俺が、棄てた。
 
「はは……は」――なんて、酷い。「――ハナシだ」
 
 まるで、笑い話。
 どうしようもない、不確かな。
 
「は……あはははは、はははははははは、」
 
 ――は。
 
 失敗した、か。
 呟いた声は轟音に飲まれて、耳に届く前に可聴不能のノイズに変わる。壁に背を付け
て、息を吐き出して、そのままずるずると座り込んだ。
 手の中の銃――視線を落とす。アーカードの銃。
 こんなのが、何の役に立つんだよ。
 こんなモノ、アイツに向けてどうなるんだ。
 アイツには、そうか。関係、ないんだ。
 こんな銃を使わなくても、
 どんな武器でも、
 人間を殺すだけなら、アイツは――何でも。
 状況は悪くなっただけ。俺は死に近付いただけ。奪った銃は手の中に、奪われた銃は
火箭を吐き出し続ける。
 考えるまでもない、最悪。連射が効くモノをあんなバケモノが握れば、余計ヒドい事に
なるなんて事は、目に見えてたコト、なのに。
 俺の――人間の身体なんてのは、小口径でも容易に破壊するんだから。
 ……畜生。
 全く……なんで。アイツの思考は、
 アイツの行為は、
 どうして――こんなに。
 俺とアイツはこんなに――似て
 

315 名前:Kresnik ◆fFCROSSQsM:2003/07/13(日) 19:11

My sin/Bound with rage
 
>>313 >>314修正
 
 足が、灼けた。
 錯覚。実際は左太腿が削ぎ落とされただけ。
 血が零れて、激痛が頭の中をエラーだらけに変える。
 側頭部のエラーが酷い。痛……痛い痛い、痛、い。
 ザラザラとワケの解らない思考が生まれて消えて落ちて行く。
 背後を振り返るのは、駄目だ。それをやれば、死ぬ。
 通路を真っ直ぐ走る。正面にはT字路……先には壁。開くのは左右への道――だから、
 痛くて、壊れそうで、だけど脇に身を投げた。転がるみたいにT字路を右へ。
 ……だから、死ななかった。
 轟音が弾けた。
 今しがた立っていた場所が薙ぎ払われる。悪夢みたいな弾幕が射線上を完全に破壊
する。ガラスが散って、コンクリートの破片は羽虫みたいで、混ざり合った大気はまるで
水晶で出来た世界みたいで、
 は……くそ。畜生、イカレてる。
 
「……なんで」
 
 この火力は――何処から。
 火力、
 弾丸の軌跡が正面の壁に炎を生む。API弾、成る程、これは。
 さっき――俺が、棄てた。
 
「はは……は」――なんて、酷い。「――ハナシだ」
 
 まるで、笑い話。
 どうしようもない、不確かな。
 
「は……あはははは、はははははははは、」
 
 ――は。
 
 失敗した、か。
 呟いた声は轟音に飲まれて、耳に届く前に可聴不能のノイズに変わる。壁に背を付け
て、息を吐き出して、そのままずるずると座り込んだ。
 手の中の銃――視線を落とす。アーカードの銃。
 こんなのが、何の役に立つんだよ。
 こんなモノ、アイツに向けてどうなるんだ。
 アイツには、そうか。関係、ないんだ。
 こんなモノ使わなくても、
 どんな武器でも、
 人間を殺すだけなら、ヒトを壊すだけなら、アイツは――何だって。
 状況は悪くなっただけ。俺は死に近付いただけ。奪った銃は手の中に、奪われた銃は
火箭を吐き出し続ける。
 考えるまでもない、最悪。連射が効くモノをあんなバケモノが握れば、余計ヒドい事に
なるなんて事は、目に見えてたコト、なのに。
 俺の――人間の身体なんてのは、小口径でも容易に破壊するんだから。
 ……畜、生。
 全く……なんで。アイツの思考は、
 アイツの、行為は、
 どうして――こんなに。
 俺とアイツはこんなに――似て
 

316 名前:Kresnik ◆fFCROSSQsM:2003/07/13(日) 19:17

>>315
 
「……ああ、そうか」
 
 そうだった――か。
 あの、目か。
 奴の、奴のあの目。
 頭に焼き付いて離れない、あのドス黒い赤色。
 立ち上がる。激憤が身体を強制起動させる。多分ソレは正確じゃない。
 怒りのエネルギーと言うのは思いの他強くて、こうして立ち上がる事だって、
 は……はは、ふふ。なんて――これは、なんて。
 馬鹿らしい、事実。
 激怒の大罪。サタン。罪悪の力を借りてまで戦おうとするこの咎人を、主よ、どうか
お許し下さい。もう僅かだけ、この身が地上に在る事をお赦し下さい。
 それと……お前は、お前はもう少しだけ力を貸せ、俺の身体。
 床を蹴った。視野は狭く、足が縺れないのが不思議なほど。
 蜘蛛の巣を千切って錆びた配管を蹴って、コンクリートに足音を叩き付ける。
 ドアも朽ちた四階フロアを飛び出して、鉄錆の匂いが充満した廊下を尻目に、八階
まで駆け上がる。
 後は、迷わなかった。
 其処は大伽藍。
 主を失ったガラス張りのホールを走り抜けて、一気にガラス窓を蹴り破って――
 
 一瞬、俯瞰する。
 眼下を悠然と歩む紅い影。獲物に最後の弾丸を撃ち込む為に進むアーカード。
 ――バカが。
 どっちが死ぬかは、すぐに解るコトだ。
 切札は一つじゃない。
 
 がしゃんと、隣のビル9階の窓を叩き割って着地した。駆け出した足は止めない。
 屋上。ビルのあわいを吹き抜ける風は冷たく強く、赤錆の匂いを周囲に撒き散らし
ては消えては果てた。
 天には月。真円を描く天体は、灰色に輝いて聳える。
 網膜がイカレてしまったのか。脳がやられたのか。月は、もっと――もっと紅い筈
だ。こんなに呪われた色はしていない。紅くない月が何処に在るって言うんだ。世界
の月は悉く紅く、天は黒く、愛しい紅月は失せて遠い。
 いや。
 そう――か。
 は。はははは、は、そうか。得心した。
 この世界の支配者がアーカードであるのなら、ノスフェラトゥであるのなら、この呪
われた色も当然。
 壊れた空がミクロ単位のピースになって、頭と心臓の隙間をビッシリと覆い尽くして
埋めて行く。脳の襞に星の欠片が入り込む。痛い。神経がイカれそうな痒みが走り
回る。切開した頭蓋に指を突っ込んで掻き毟りたい気分、
 ……クソが。落ち着け。クールに、俺はクールだ。
 ビルの屋上には一つの蟠り。漆黒のシートで覆われた巨大なカタマリ。
 シートを剥がす。
 RH−64アパッチ。罪人を焼き払う、人の知が生み出した人造のメルカバ。
 機内へと身を滑り込ませる。ハーネスは背に置いたまま、ゴルフバッグを座席の脇
に放り投げる。窮屈な空間。マシンと一体になったような気分。
 コントロールパネルから高度計をゼロへ。メイン電源をオン。
 ずん、と低い唸りが周囲を満たす。息吹を吹き返す鋼鉄の空間。
 端から端までパネルがオレンジに輝きを放つ。契機類の数字が白く輝く。後部エン
ジンから吹き上がる低い金属音。回転を始めたタービンの咆哮。シート越しに伝わる
暴力的な機械の鼓動。
 燃料流量、筒機温度、回転確認、エンジン系統正常作動確認。
 俺の感覚神経精神、共に正常。確かめる術はないけれど、きっとそう。
 まあ。
 そもそも狂っていた所で何も変わりやしない。
 さあ、行こう。
 相棒。俺は大丈夫。俺はやれる。
 コレクティヴスティックを引く。全身を叩く振動が倍加する。
 ローターの爆音。
 ダウンフォースが地面へ叩き付けられる。
 そのまま、サイクリックレバーを引いた。
 全身を襲うG。キャノピーの外の光景が一瞬で移り変わる。遠ざかる。
 視界がぐらぐら揺れて、心はぐらぐら揺れて、油の匂いが現実感を奪い去って。
 空に在るのは俺一人。大地に在るのはヤツ一匹。
 来い。
 
 ……殺してやる、アーカード。
 

317 名前:アーカード ◆VAMPKPfGto:2003/07/13(日) 21:07

>>316 Duel of the fates -病ノ慰メ- Kresnik vs Arucard
 
 苛立ちが募っていく。焦燥が募っていく。
 眼鏡の奥の瞳を歪ませて、"彼女≠ヘ叫んだ。
 
「チィッ………! ウォルター、状況は一体どうなっている!?」
「ヴァチカンの窓口も相当混乱しているようです、お嬢様」
「連中も予想していなかっただと………馬鹿な!」
 
 蜂の巣を突付いたような騒ぎに見舞われるヘルシング本部、インテグラはコールを繰り返す受話
器を力任せに床に叩きつけた。帰頭時刻を大幅に越えても現地機関員の元へ帰還しないアーカード
は、遠くイギリス、ヘルシング本部への混乱をも招いた。
 十三課のマクスウェルは出払い、アレクサンド=アンデルセン神父は動いていない。計ったよう
なタイミングの悪さ。まるで、どこかから恣意的な介入があったかのような。
 アーカードと交戦している人間の正体は未だもって掴めない。
 いや、そもそも、"あの<Aーカードと一時間に及んで交戦できる人間が存在するとでもいうの
か? だが、現状は存在するからこその混乱であり、危機だ。奥歯を鳴らして、インテグラが葉巻
の吸い口をシガーカッターで切り落す。甘い煙で苛立ちを押しこむと、眉根に寄った皺を解した。
 キリスト教同士で争っているような余裕はどこにもないというのに、この状況は、考える限りの
想像の限界で最悪だ。
 傍らのウォルターは喋らない。彼は執事だ。主人を支える事を至上とする彼に指示を仰ぐ訳には
いかない。結論を出すのはインテグラ。ヘルシング局長、インテグラル=ファルブルケ=ウィンゲ
ーツ=ヘルシングでしかあり得ないのだ。
 ヘルシングが動く事は出来ない。結論として投入できる戦力は、局員を除けばアーカードの"子
であるセラス=ヴィクトリアのみであり、彼女の能力では海を渡れないばかりか、アーカードとこ
こまで渡り合った相手では、あっさりと滅ぼされかねない。
 アーカードが勝てないのであれば、誰にも勝利はない―――それほどの、切札なのだ。
 ―――アーカード、とは。
 灯火を先端にした葉巻を咥えたまま、インテグラは目を開く。
 アレ(アーカード)に敗北など有り得ない。
 ぎちり、吸い口を強く噛みつぶす。
 

318 名前:アーカード ◆VAMPKPfGto:2003/07/13(日) 21:09

>>317
 
「……ウォルター」
「は」
「最低限の連絡業務だけは継続。戦闘準備に回った局員達を下がらせろ」
「お嬢様―――」
「聞えなかったか? 私は決断した。それだけだ」
 
 ウォルターが静かに笑う。好々爺然として、それ以上に凛として。
 先代、先先代とヘルシング家に仕えてきた彼は歴史の生き証人、危機の意味も知り尽くしている
といった所なのだろう。
 
「いいえ、私はただの執事(バトラー)なれば。では、早急に。そうそう、帰り掛けにお茶をお持
ち致しましょう。ルフナの素晴らしいものを一つ、ペンウッド卿から戴いております」
「……頼む」
「お嬢様。一つ私めに言わせて頂けるなら」
 
 ドア口でウォルターが歩みを止めた。
 
「"あれ≠ヘ、最強のヴァンパイア。最強のバケモノです。死神と言えども、あの魔王を、ヘルシ
ングを打ち倒すことなど、誰にもできますまい。高い授業料を払わせてやるだけの事、身の程を教
えてやるだけの事です、ヴァチカンに、その死神に」
「………解っているとも、そんなことは」
 
 ドアの閉まる音をスーツの背中で聞いて、インテグラは紫煙を吐き出した。
 葉巻から落ちた灰を靴底ですり潰すと、ブラインドを指で押し上げる。
 既に夜。外は魔物達の時間だ。
 
「―――"バケモノを打ち倒すのは、いつだって人間だ=Aか」
 
 そうだ。
 "死神≠ノなど、アーカードを倒すことはできない。
 胸の中で燻る焦燥に任せて、白塗りの壁を殴り付けた。
 

319 名前:アーカード ◆VAMPKPfGto:2003/07/13(日) 21:15

>>318
 
 腐臭すら拭い去られてしまったような清浄の大地は、本来ならば吸血鬼など立ってもいられまい。
所か、死した細胞を破壊されて消滅するのが関の山だろう。死者にとっての安息は、生者にとっての
平穏とは同義ではないのだ。
 地獄。否、天使が笛吹く裁きの刑場か。
 この結界の中にあっては、尋常の不死者は裁きの火に焼かれ、灰に還る事を強制される。
 だが、例外はある。
 アーカードは普通の吸血鬼でもなければ、そもそも尋常でもなかった。灼熱の溶岩を歩むにも等し
い歩みは、散歩でもするかのようだ。
 ブロウニングは弾が切れた時点で放棄した。弾薬がなければ、あんな物はただの玩具と変わりない。
 間隔を広げて獲物の気配を察知し、目的地をビルへと定め、そして。
 アーカードは、ビルの階段を踏む。
 一歩、階段を踏み締める。
 いくら疾(はや)くても、いくら逃げても、夜の吸血鬼から、ましてアーカードから逃げられる道理はない。
 アーカードは夜だ。体内を這い回る虫の動きなど手に取るように理解できる。
 獅子心中の虫を泳がせておくのにも飽いた。
 かつりかつりと硬い音が跳ねる。
 狭い密室の中、長靴の音は必要以上に響いた。
 
「ふふ、これは」
 
 かつり、かつり。
 コンクリートと長靴の合唱。
 屋上へと続く階段を上りきり、錆び付いたドアを開けて。
 そして、アーカードは。
 喜悦と驚愕に、頬を緩めた。
 

320 名前:アーカード ◆VAMPKPfGto:2003/07/13(日) 21:16

>>319
 
「これは………ははッ」
 
 その笑声は、朗々と響き渡る爆音に音の欠片まで捻って潰されただろう。風圧が顔を撫で、長くな
びく髪が滅茶苦茶になぶられる。
 今、彼の白い横顔には消え様のない笑みが張り付いている。
 血色の視線は空に。
 空、周囲よりも一際背の高いビルの屋上より遥かに高く、一切の音を圧する音源はあった。サーチ
ライトがアーカードを闇の中に浮かばせる。
 鋼鉄の戦車は、殺意の風で大地を洗いながら空を踊る。
 
「は……、はははははッ、これは………くくッ、やってくれる。人間め………ふふふ、はははは!」
 
 大袈裟に両手を広げて空を仰ぐと、彼は叫ぶように笑った。
 
「次から次によく考える! 良いだろう、そのメルカバで精々あがいてみせろ。面白い鬼札(ジョー
カー)だ。実に面白いぞ、お前は。やってみせろ。私を殺してみせろ、人間め!」
 
 そうするつもりなのだろう。言わずもがなだ。長く伸びた砲身と、尾翼に負った禍々しいミサイル
群。それら全てが、なにより雄弁な意思の象徴。
 意思は殺意。殺意こそ意思。
 素晴らしい。
 最高に狡猾で、最悪にしぶとく、だから、これこそは正に人間の悪意そのものだ。
 白銀の銃身(バレル)が上空を定める。豆鉄砲にも等しいそれを向けるのは愚かだと自分で嘲い、
嘲(わら)いながら、アーカードは引鉄を引いた。

321 名前:ドクター・ウェスト ◆sODrWEST1A:2003/07/13(日) 23:09

夏祭り〜あんえぴろーぐ〜
>>306>>308
青空があった――――――
 
吾輩は綺麗な金色の花畑を歩む。今日はいい天気のようであぁる!
吾輩がいつか超えようと思った科学者や次に解明しようと思っていた未知なる神秘達が
吾輩に救いを、解明を求めようとしている!
 
ああ!ここは科学者の理想郷!
天晴れカッポーレ!吾輩の追い求めた世界?
 
否!否否否!否であぁる!吾輩、まだ遣り残した事がたくさんあるのであぁる!
吾輩は携帯電話を取り出し、どこだか分からないがコールをすること三回!
応答があったとたん、吾輩は事務所だかなんだか分からない所に叫ぶのであぁる!
 
「吾輩、カエル!タクシー!」
 
今まで吾輩を待ち受けていた光景が一変し、何処かのアイルランドとの国境っぽい町並みに変わるのであぁる!

「この装備では研究するには足りないのであぁる!吾輩はマタ来るのであぁる!」
 
そう、神秘達に吾輩は言い放つと迎えに来たタクシーに颯爽と飛び乗ろうとした時!
 
『アイヨー』
 
いかにも乳が垂れ落ちて策を練りまくって目的を遂げようとしても、
ついついHETAREる運ちゃんが吾輩に答え、
アクセルを思いっきり踏み込んで吾輩を跳ね飛ばしたのであぁる!!
何たる外道!何たる非道!何たる無知蒙昧!
この、世紀の大天才ドクター・ウェストに対する何たる不遜!
そう吾輩が怒りを感じる間も無く、目の前を白い光が
 
「ギャアアアアアアアアアアアアァァァァァァァッ!?」
 
そして吾輩、現世に立ち戻ったのであぁる!
 
「フッ……ゴボブハッ!?わ、吾輩は…どうしていたのであるか?」
目の前には見知らぬ少女の顔、上気した頬と潤んだ瞳。
そして吾輩の唇に柔らかい感触…………。
 
まさか、YOMOYA!?
 
「ままままままっ、MASAKA!?WHY!?WHAT!?
 ワガハイノクチビルを奪われましたか?」
吾輩の言語回路がショート。思考回路はショート寸前今すぐ会いたいの。
誰にとかは聞いてはいけないのであぁる!
 
「わ、吾輩のファーストキスは奪われちゃったのであぁるか!?
 吾輩の純潔までも!?キャアァァァァァァッ!イヤアァァァァァァァッ!!
 吾輩、犯されるウゥゥゥッ!?」
  
吾輩の魂の慟哭に対し、この海域を離れるのに使えそうな道具を探していたエルザと、
毎年クリスマスにとかその辺りにテロリストと戦ったり、
ゲイの警官と組んで事件を解決しそうなほどに草臥れたオッサンやらその他凡俗どもが、
吾輩にツッコミを入れるべくバールのような物や思わず、感染する言葉。
ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ〜♪と叫びたくなるような鈍器を振りかぶろうとしているのであぁる!
 
「NOooooooooooooooooooooo!!」  
 
――――――そして、吾輩は日常へ還る。
大暗黒時代にして大混乱時代。しかしながら大黄金時代のアーカムシティへと。
 
(ドクターウェストの奇妙な冒険第一部『華麗なる吾輩』完)

322 名前:ダッチ(M):2003/07/13(日) 23:39

祭りの終わり

>302

港にほど近い人気の無い海岸から、強襲ボートを出す。
砂浜のスーツ姿は、先だっての脱出の直前『落ちてきた』日本人だ。
上等なスーツをきっちり着こなしている様は、言っちゃ悪いがロックより何倍も決まっている。

「やれやれと……」

結局、あの後喚きながら銃を突き付け、ボートから蹴り落とそうと暴れるレヴィを
羽交い締めにしたまま交渉し、近場の海岸まで運ぶ事で話が付いた。
多少の寄り道でこれくらい稼げれば、断る理由は何処にも無い。
ラグーン商会は、物も運べば人も運ぶ。

「さて、デートの相手を待たせる訳にはいかねえ。少し急ぐぞ」

後はブツを指定の海上でクライアントに引き渡すだけだ。
操舵室のシートに腰を沈める。
澱のような疲れが、瞼の上にも溜まっているようだった。

「ベニー、周辺への警戒を怠るなよ」

エンジンが唸り、船体が水を切り始めた。

323 名前:ダッチ(M):2003/07/13(日) 23:40

>322

数日後、公海上、某ポイント。

クライアントの船と接舷したラグーン甲板上に、ワクチンはあった。

「――――これだ」

アタッシュを差し出す。
報酬と交換の手筈だ。それが無い。

――臭ぇな。

「どういうつもりだ?」

返事は無い。
ただ、顔が歪んだ笑みを浮かべた。
一斉に右腕を上着の下に入れる。出てくるのを待つつもりは毛頭無い。

「……そっちがそのつもりならこの話はご破算だな。レヴィ!」

背後から影が飛び込んで来る。
叫び声と、銃声と共に。
一つ顔に穴が空き、二度血煙が舞い、三人が倒れ、四度目の悲鳴が聞こえる。

「ベニー、出せ!」

全速で動き出した甲板の上、転がる様にしてハッチに滑り込む。
背後に爆音。グレネードが二度。
操舵室から覗くと、更に大きな爆発が一度。
船が沈むのを見ながら、シートへ腰を下ろした。
無論、アタッシュは持ったままだ。

「ダッチ? 電話、ヴァチカンからだ。
 ――――どうする、出るかい?」

話は一つ、ワクチンの事しかない。
それは確かに手元にある。
そして、このまま俺達が持っていてもクソの役にも立たない。

――精々高く売ってやるか。

「……オーケイ、繋いでくれ」

交渉へと思考を飛ばしながら、進路をタイへ向けた。

324 名前:アルバート・ウェスカー(M):2003/07/14(月) 01:18

夏祭りワクチン争奪戦 [VACCINE HAZARD CODE:Queen of The Night]
EPILOGUE

>>300

ところどころ炎に包まれ、大きくその形を変え、沈みゆく“クィーン・オブ・ザ・ナイト号”。
大きく変形し、ゆがみ、傾きつつある船体の中、一人の男がむくりと起き上がる。


「お゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁぁぁぁうぅ・・・・・・・」


その男はオールバックの金髪で、黒い軍服のようなものを着ていた。
その男は起き上がるまで、手に一丁の拳銃を握っていた。
その男は倒れ伏すまで、己の知性に従ってその超人的な身体能力を行使していた。


だが、それはもう今までの“男”ではなかった。
瞳孔を白濁させ、両手を前に突き出し、ふらふらと歩き始める。
その千鳥足とOの字に空いた口。そこから漏れる、最早声などと定義できない“音”。
そう。その姿はまさしく、生ける屍・・・・・・喰屍鬼そのものだった。


肉体の限度を越えるダメージ。凄まじい量の肉体への電気刺激。
それらの総和は、男が己の肉体を制御できるだけの生命力、そのマージンを当に越えるものであった。
彼の肉体の同居人・・・・・・“暴君の病原菌”は、自己防衛のために、
死にゆく宿主の肉体を保全しようと爆発的に増殖する。
そして、その手綱を握るべき“宿主”自身は、すでに死に体であり――
結果として“家主”は、“同居人”にその座と肉体を明け渡した。


新たな肉体の主の最大の欲求は、その肉体の保全。
そして、それを成す一番手っ取り早い方法は――――――喰らう事。

「ゔゔぅうぅぅぅぅえ゙ぁ・・・・・・」

金髪の男・・・・・・アルバート・ウェスカーだった生き物。
それは苦悶とも唸りともつかぬ音を出しながら、最大の欲求――食欲を満たさんと、崩れゆく船内へ姿を消した・・・


[BAD END]

325 名前:麻宮アテナ ◆qZESP0jjgI:2003/07/15(火) 08:55

>>306>>321
 『フッ……ゴボブハッ!?わ、吾輩は…どうしていたのであるか?』
 
 なんとか、蘇生成功……。呼吸が止まっているのを確認したときは心底焦りましたが、
どうやら神様は気まぐれにでも力を貸してくれたようです。あとでツケの請求書がまわってくるでしょうが、
とにかくもこの人は助かった。抱えてきた女の子(>>280)も無事。本当によかった……。
 
 『わ、吾輩のファーストキスは奪われちゃったのであぁるか!?
 吾輩の純潔までも!?キャアァァァァァァッ!イヤアァァァァァァァッ!!
 吾輩、犯されるウゥゥゥッ!?』
 
 ううっ、なんだか喜べないよぅ。とにかく、当面の問題は解決……。
 
>>308
 『ハッハッハァッ! 命が惜しければ載せてくれなさいお願いします』
 「……意外に早かったですね、請求書」
 
 株式会社神様の社訓は”いつもニコニコ現金払い”なのでしょう。多分。
やっぱり、このくらいの商才が無いと神様にはなれないんですねぇ。
 
 ……さて、この小さい(というより、小さすぎる)ボートに3人追加というのは正直辛いです。
救助されるまでの食料や水の問題もありますし、ここは誰か一人くらい降りるべきでしょうか。
具体的に言うと、私とか私とか私とか。
 
 「と、いうわけで、みなさま旅の安全を」
 お別れの挨拶をしながら、浮き輪をシュコシュコと膨らませます。リスボンまで約900キロ。
私ひとりならなんとでもなります。あ、浮き輪の柄が『明日のナージャ』です。ラッキー!
 
 ……あれ、お二人組、なにか言いたそうです。もしかして、女性を差し置いて
ボートに乗るのは納得できない、と? ”しんぱい、入りません”なんですけどねぇ。
でも、オトコのココロイキというやつを無碍にするのもなんですし、ここはひとつ、
 
 「じゃんけんで勝ったほうがボートを降りる、というコトでどうでしょう?」

326 名前:上月永斗&司〈M〉:2003/07/15(火) 13:34

エピローグ>321>325

 この連中は変だ。兄貴も大概変人だが、こいつらは輪を掛けて変人だ。司はそう思っていた。
 人工呼吸から蘇生してすぐ、なにやらわめきだす変人が1人。
まさしくマッドサイエンティストといった言葉が似合う。妙に甲高い声が気に障る。
 その男を釘バット――なぜこんなところに有ったのか――でぶん殴って黙らせた女性も変だ。
まるでおとぎ話の妖精のように長い耳をしている。
というか、なぜ語尾に「ロボ」と付けているのか。
 その他にも色々と変な人物がいたのだが、その中でも一番がマイペースに浮き輪を膨らませていた。
何のつもりだ? 常識だとかそういう概念を一切合切捨てるなら、一つだけ考え付く事がある。
……この浮き輪で陸地まで行くつもりなのだ。
何かの冗談か、とも思ったが、この少女の顔つきは真剣だ。そして、それだけに司は彼女に憐憫を覚えた。
すっかり膨れ上がった浮き輪(なぜか日本のアニメキャラクターの柄だった)を海に投げ込もうとして、
漸くこちらに気付いたようだ。しばし目を合わせ、彼女が口を開く。
 
『じゃんけんで勝ったほうがボートを降りる、というコトでどうでしょう?』
 
また変な事を言っている。なぜじゃんけん? というかこういう場合普通は負けたほうなのではないか?
自分から船を降りたがっている? 何のために? 司はそれが気にかかったが、
なんにせよ向こうが勝手に降りてくれると言うなら好都合だ。いいかげんこちらも限界が近い。
出来るだけ安全な場所で休みたい。司は口を開きかけ――――

「じゃんけん! じゃんけんか! いいだろう女、相手してやろう! 
 この俺に叶うものなど存在しないと知るがいい! く、くはははははは!」

 馬鹿に先を越された。彼女の話を半分ほども聞いていなかったらしい。馬鹿は勝つ気満々だ。
抱えていた女性をボートに引き上げさせると、水の中にも関わらずなにやら形容不可能なポーズをとると、
なぜか空を飛んだ。相手の少女もそれが当たり前のように空を飛ぶ。そのまま落下しながら、
すさまじいじゃんけんの応酬を繰り広げ始める。いちいち手を広げたり、腰を突き出したりという
意味不明のポーズを取りながら。どこからか、ゴゴゴゴゴという音が聞こえた気がした。

327 名前:上月永斗&司〈M〉:2003/07/15(火) 13:36

>>326
 
 その光景を、司はただずっと見ていたが――いいかげん馬鹿らしくなった。
〈氷の戒め〉発動。馬鹿ともう1人の馬鹿を氷の蔦で絡めとる。
二人とも何がしかの抗議をしたが、それらは全て無視。サラマンダーシンドロームの特質を生かし、
海を凍らせ足場を作る。10人は楽に乗れるほどの氷を発生させると、
二人の拘束を解きおもむろに切り出した。
「みんな、こっちの足場にいったん移ってくれ」
 ? ? ? な一同。だがいいかげん説明する気力も無い。半ば強引に、一同を氷の足場へ。
「なるほど、そういうことか」
 自分の意図に永斗は気付いたらしい。得心顔で頷く。
「それじゃ、やってくれ」
「何を?」
「何を、じゃ無くて。気付いてるんだろ?」
「だから、なにをだ」
 ……兄貴は気付いていなかった。戦闘以外の事には全く頭が回らない。それが永斗だ。
分かっていたはずなのに。ため息をつきながら、言う。
「兄貴は〈ビーグルモーフィング〉が使えただろ? だから……」
「……おおぅ!」
 今度こそ理解した永斗は脱出用ボートに触れると〈ビーグルモーフィング〉を発動させた。
異音と共にそれは姿を変え、小型クルーザーに変形した。
呆気に取られる一同を尻目に、兄弟はその船に乗り込むと、どうとその場に倒れた。
「なー、つかさー。兄ちゃんエフェクトの使いすぎでジャームになりそうな気がするぞー」
「なんとか我慢しろよ。オーバーワークなのは俺も一緒なんだ。
 ――ああ、あんたら、操縦は出来るよな? 頼むから、俺たちも乗っけて行ってくれよ。俺はもう寝る」
 言うが早いか、船からは二人分の寝息が聞こえてきた。
 
――その後、食料が無くなって生死を賭けた争いをしたりコンパスが故障して漂流した挙句に
ひょうたん型の島に流れ着く羽目になったりしたのだが、それはまた別の話である。
 
〈上月永斗、司、任務失敗。生存〉

328 名前:柏崎理香 ◆ovRikaPLFk:2003/07/16(水) 00:07

>>325>>326−327
 「……と、いうわけで、完全燃焼4,800秒したじゃんけんでありました」
 「国立かよ。それよりそのドザエモンを襲って唇奪ったってのを詳しく聴かせろ。
ちゃんとパイルダーオンまでさせてやったか? ん〜?」
 「なんのはなし?」
 
 うわセクハラ通じねぇよ。わかってたけどな。
まぁいろいろあったようだが、この子は無事帰国を果たした。それで良しとしよう。
 
 ”豪華客船、大西洋上で爆発”のニュースを知ったときは、
生存能力はともかく、絶望的なまでに要領の悪いこの友人を
あたしは少なからず心配したが、どうやら今回はうまく立ち回らされたようだ。
この子にジャンケンで引き分ける人間がこの世に存在したとは驚きだが。
 
 「と、いうわけでね。お土産無いの。ごめんね……」
 「貸しにしとく」
 
 とりあえず、祝杯と称してビールでも空けるか。今日ばかりはこの子も、
「理香ちゃんは、まだお酒飲んじゃダメなんだよ!」などとは言うまい。
言われたときは隠れて飲んでるけどな。とりあえず、
冷蔵庫に2ダースほど常備してあるヱビスビールから始める事にする。
やっぱヱビスだろ。ビールは。
 
 「んぐんぐんぐ……、ぷはぁっかああっはああっ!!」
 
 何か言いたそうなふくれ面を肴に、350mlを一気にあおる。美味い。
エンジンがかかってきた頭の中で、あたしは無事返ってきた友人に
あらためて「おかえり」を言った。
 
   ―― 了 ――

329 名前:Kresnik ◆fFCROSSQsM:2003/07/16(水) 01:43

Duel of the fates -My punishment/"Tell me that you love me"- Kresnik vs Arucard
 
>>320
 
 モードチェンジ。系統をガナーからパイロットへ。
 火器系統全掌握。
 掌に握るのは、50ポンドのLX−14が2つと、三千発の30ミリ弾。追加武装
の弾頭はヘルファイアが二つ、データ上は5千度の大火球で対象を滅却する特殊
燃焼火薬、コード"Tプラス"が二つ。
 個人装備には過ぎた火器。これで殺せないモノは、常識で考えて存在しない。
 ……そうさ、殺してやる。
 殺す――殺して、くそ。黙れ、俺の身体。
 指が震える。耳鳴りが喧しい。鼓動が煩くて、畜生、黙れ黙れ黙れ!
 喧しい。ごうごうと唸る機械の悲鳴。
 喧しい。トクトクと鼓つ俺の鼓動。
 喧しい。カチカチと鳴る口の中。
 
 解ってるんだから、もう少し――少しだけ黙ってくれたって良いだろ?
 畜生。頼む――から。
 状況を伝えるHUDに意味なんてもうない。目的は一つだから。相手は戦車でも
編成部隊でもない。相手は一つ。ただ一個のモノ。
 ヴァンパイア=ロード、アーカード。
 サーチライトの中央。赤い影。コレクティヴレバーを引く。ブレードのピッチが上
がる。はぁ、はは、呼吸が痛い。くそ、まだだ。落ち着け。
 アイツを殺すまでは、もっと冷静になれ。
 
 ……ああ、そういえば。
 そういえば、団長が得意だった。操縦術。俺は全然上手く出来なくて、今は上手
くやれてるのか。次は、次はどうすれば良い? なあ、教えてくれ、団長。みんな
が居ればきっと上手くやれる。やれた筈なんだ。
 みんなが、居れば……居たなら。
 いない。
 もう、誰もいない。
 フットペダルを思い切り踏み込んでトルクの増加を押さえ込んだ。
 HUDの照準。安定しない。ゆっくりだ。中心にヤツを合わせて、まだだ。
 まだ。
 まだ、まだ、冷静に、静かに――そう。
 誰もいないけど、冷静に。
 誰もいないけど、俺は一人でやれるから。
 俺は一人でやれるから、大丈夫だから……――みんな。
 

330 名前:Kresnik ◆fFCROSSQsM:2003/07/16(水) 01:45

>>329
 
「――No.36からNo.0、"クリストフォロス"以下、全隊へ。俺から、みんなへ。
 天国でも地獄でも良い……訊いてる、みんなへ。俺が証明するから。皆の存在
した意味を、生きた証を。コイツは俺が殺す。絶対に。絶対に殺してみせるから。
 謝っても償えないけど、何をしても償えないけど、なあ、見てて……見ててくれ。
 ……これで、最後だから」
 
 独りごちて、そのまま、心に仕舞い込んだ。
 みんな。
 『良いか、ナイフを使う時はな』――トニー。俺を護って頭を吹き飛ばされた。
『生き延びる事を考えろ。ガキの仕事は殺しじゃない』――アレフ。連中を道連れ
に大量のTNTを起動させた。『日々の鍛錬を忘れるな、生きる為に』――劉。たっ
た一人で百匹近い連中を刺し違えた。『俺が死んだら、ラッキーストライクを一緒
に埋めてくれ』――陽気なケントはヴァンパイアになった。俺が首を刎ね飛ばした。
アイツは微笑んだまま逃げなかった。
 強かった。愛してた。家族だった。愛してた、愛してた、愛してた!
 ホントに……これは、ホントだよ。
 トリガーに指を添えた。もう、震えは止まってる。
 みんな、死んだ。
 もう、みんな何処にも居ない。
 一人だ。もう、みんな死んでしまった。俺を残して消えてしまった。
 俺を庇って死んだアンソニー、俺に殺されたデイド、みんな友達だった。
 星を見に連れて行ってくれたカール、ポーカーが弱いエドガー、大好きだった。
 どうして死んだ? どうして一緒にいられない? 簡単だ。お前等の所為だ。
 アーカード。お前じゃない……お前等の、バケモノの、俺達みたいに外れたバケ
モノの所為なんだ。
 消えなきゃいけない……化物は。俺達は。世界から――なぁ、そうだろう?
 俺には解る。解るんだ。解ってる……お前の事は、俺の事は、オレ達の事は。
 
 ――そうさ。
 だから。
 だから、殺してやるよ。クソ野郎。
 バケモノのクセに、似過ぎてる、お前。似過ぎた、オレ。
 俺の分身。黒い俺……――カガミの向こうの、オレ。
 終わろう。潔く、消えちまおう。
 グリップを退いてトリガーを握り込む。ガトリングとヘルファイアを並列起動。
トリガーを押し込んで、Tプラスのロックを解除。
 殺意を握り敵意を握り当意に身を委ね――だから。
 俺は、コイツを殺す。
 
「そうさ、お前を殺して証明してやる。みんなはちゃんと居たんだ。ただ消えちまっ
た訳じゃない。お前だけは――あぁ、だから死ね。此処で死ね。
 なあ。
 なぁ……なあ、死んでくれよ。死ね、死んじまえ、アーカード!」
 
 トレーサーの軌跡は青い閃光。白煙を導いて吶喊するヘルファイアの群。
 一瞬すら長く、眼下へ集中する弾頭はまるで鮫の群の様に見えた。
 
「さあ……死ねよッ!」
 
 視界の全てが――朱光に、染まる。 
 

331 名前:アーカード ◆VAMPKPfGto:2003/07/16(水) 23:46

>>330 Duel of the fates -死ヘ到ル疵- Kresnik vs Arucard
 
 一歩も退かず、退く素振りも見せず、アーカードはアパッチへとカスール弾を叩き込んだ。
 硬い音。弾丸は、それより遥か大質量の飛来物に押し退けられた。あの巨躯の前では、そ
の巨砲すら荒鷲に向けた豆鉄砲でしかないだろう。
 アーカードはそれを見る。
 
「ふふ、ふふは、ハ―――ははハは! く……、この、人間……め!」
 
 響くのは、アーカードの笑声だ。
 これこそが殺意(イシ)。
 素晴らしい。
 是(これ)だ。
 是を待っていた。
 私が探していたのは、求めていたのは、見たかったのは、この身で確かめたかったのは!
 アパッチの返礼は、モンスターカートリッジと知られるカスールの改造弾すら玩具に比す質
量を内包していた。対地ミサイルは、そのままビルの屋上に突き刺さった。
 ―――炸裂。
 足場が揺れた。呆気なく崩れた。体勢が不安定に崩れる。
 対戦車弾頭級の弾丸の雨。飛び来る対地ミサイル(ヘルファイア)――直撃する、と感じ取
るのが先か、左腕が消失していた。弾丸に持って行かれたのだと言う事はわかった。
 瞬く巨大なマズルフレア。
 並の吸血鬼なら三回は即死する弾丸が雨となって降り注ぎ、まるでゼリーかバターを割く
かのように、不死王の肉体を易々と引きいていく。
 手足をもがれたアーカードは、反応できなかった。だから――達磨になったまま、血と肉と
骨を巻き散らし、彼は笑った。笑い続けた。
 笑う、笑う、笑う。内蔵と肉片にまみれ、アーカードは笑うのをやめない。
 対戦車ミサイルがビルの天蓋をえぐり割る。
 粉塵と爆炎と瓦礫が飛びちった。怒り狂った炎の波が空気を食いながら屋上を舐め、暴力
的な圧力は天蓋を丸ごと浮き上げる。
 ちぎられた左手と拳銃が、一際大きく広がった亀裂に飲み込まれた。その一瞬後には、亀
裂すら倒潰に巻き込まれて大穴と化す。

332 名前:アーカード ◆VAMPKPfGto:2003/07/16(水) 23:47

>>331
 
 襲いかかる猛炎。烈火の触手は四方八方に這い回る。
 無数の肉塊へと分断されたアーカードは、そして、見た。
 炎の浄化。
 対地ミサイルの群、その最後に降り注いだ二発。すでに立つ力は無く、崩壊を待つのみとな
ったビルへと接触し―――
 ―――なにもかもが、赤く塗られた。
 真っ黒なキャンバスへと、赤いペンキをぶちまけられたかのような。
 地獄の炎の名を持って呼ばれたミサイルをアーカードは知っていたが、それすら。
 主力戦車すら一撃で壊滅して除けるヘルファイアですらも、比して並べば玩具に過ぎない。
 それは、もはや常識すら超越した破壊だ。
 言うなれば、人間が生み出した浄化の火――かつて、邪神(バアル)を崇めた罪の街を焼き
払った硫黄の如き。
 赤光は広がり、破壊し、痕跡を残して収束する。
 ビルは失くなっていた――文字通りの、消滅。これほどまで塵と変じたモノをビルと呼ぶこと
など、ありとあらゆる比喩と語彙を用いても不可能だろう。
 
 ―――そう、"アーカードは嘲いながら思うのだ=B
 
 大地は焦土、空は底なしの闇。
 溶けた金属の臭いは強く香り、夜風に流れて上空にまで届いた。
 空。ローターの爆音轟く、空。
 全ては不意に突然に、悪意の塊は発露した。
 夜が弾けた。闇が弾けた。
 高高度をホバリングするアパッチの四方八方で、突如と漆黒の塊が中央へと収束したのだ。
夜が形を為す、質量を持った闇。夜の色よりなお深い、黒の触手。
 ゴムのように伸びた触手はキャノピーを這い、ローターを巻き、テールに巻きつき―――
アパッチ全体に絡むや、その形状を変移させる。半液体さながらコールタールのようなゲル
と化し、ヘリを完全に包みこんだのだ。
 もちろん、それは。
 目が開いた。キャノピーの内側に外側に尾翼にローターに。
 一斉に、異形の瞳が咲いた。傷口か腫物かを連想させる、無数の眼球。
 非現実的な光景。
 一斉に、笑った。声はなく、しかし確実に。恐らくは千を越えるだろう瞳の群は、同時に笑み
を形作ると、ヘリを揺するように蠕動した。
 アパッチが軋みを上げ始めた。フレームが泣き叫ぶ。
 微細な蠕動はやがて獲物を絞め殺す蛇の締め付けとなって、アパッチをその身の内で破
壊しようと悪意を解放した。
 全ての瞳(アーカード)が、笑う。

333 名前:小早川奈津子 ◆id4WoHoho6:2003/07/19(土) 02:57

夏祭りワクチン争奪戦 [VACCINE HAZARD CODE:Queen of The Night]
小早川奈津子エピローグ

――――『それ』の手は、あとと少し、あと、もう、ほんの数センチが及ばず、
ヘリからも、船からも離れて自由落下し、『それ』は着水し、そして沈んだ。
 
しかし『それ』は迷わない、へこたれない。
彼女を侮辱したものの命をもって、この屈辱を晴らさねばならない。
 
「をーっほほほほほほほほ! これで逃げ切ったと思ったら大間違いでしてよ!
 ワラワの正義の一撃! たぁっぷりとお召し上がりなさいませ、をーっほほほほほほほ!」
 
超重量の鎧もなんのその『それ』は、海面まで一気に駆け泳ぐと高く高く
派手に水柱を吹き上げ、そして渾身の一撃を客船のどてっぱらに向かってお見舞いした。
固い篭手をはめたその拳は、みごと鉄板を貫通し、小さいながらも船腹に穴が開いた。
 
―――いや、どうしたことか。『それ』が、もがいている。
あまりにも深く突き刺さりすぎたその手が、船体から抜けないのだ。
 
「なんたることですの! ワラワの手をお放し、お放しっ!!」
 
ついには、『それ』の一撃が止めだったのか、最初はじわじわと、
やがては勢いづいて一気に、『それ』の手に噛み付いたまま巨大な客船は沈んでいった。
 
 
 
―――船が沈んでから、おおよそ2時間のち。
まるで発泡スチロールか何かで出来ているかのように、大鎧が海上に浮かび上がった。

「ええい! ワラワとした事が油断いたしましたわ、さっそく連中を追いかけませんと!」

『それ』はまるで何事かもなかったかのように叫ぶと、追撃のために周囲の匂いをかぎ始めた…
……と、そのとき『それ』の雷鳴のごとき大音量の腹の虫が泣き喚いた。

「しかぁし、腹が減っては戦はできぬ。ちょいとした腹ごしらえに新鮮な魚介の踊り食いと
 参りましょうかね、をっほほほほ」

そして、『それ』は魚を捕らえ、泳ぎながら食べ、食べながら泳いだ。
イワシの群れなどは、その大きな口を空けて、群れの真ん中を突っ切るだけで事足りる。

「をほほほほほ、(むしゃむしゃむしゃ)、ワラワから(ガツガツガツ)完全に
 逃れようなどとは(モリモリモリ)身に過ぎた望みであることを(ゴボゴボゴボ)
 思い知るがよくってよ、をーっほほほほほほほほ!」
 
 そして『それ』は本能に従い、魚のいる方へいるほうへと泳いでいった。
 海流に沿って、北へ、北へと………

―――後日、北極圏にて極地の調査団が、重量一d近くありそうなホワイトベア−をも
瞬く間に葬り去る白銀かつ硬質のUMA(未確認不思議動物)を観測する事になるが、
それはまた、別の話である………

(小早川奈津子・北極圏)

334 名前:Kresnik ◆fFCROSSQsM:2003/07/20(日) 01:39

Duel of the fates -A haughty cage/Prisoner of distress- Kresnik vs Arucard
 
>>332
 
 意識を、直接叩かれた。
 とくんとくんと脈が早鐘を鼓つ。
 キャノピーを覆い尽くす、一面の黒。
 一面の、瞳。
 一面の、アーカード。
 後部パネルが軋みを上げる。キャノピーが正体不明の圧力に悲鳴を上げている。
 ヤツは、
 ヤツの狙いは、
 つまり。
 
「――……ヘリごと、潰す気か」
 
 自分で吐き出したその仮定に、ぞっとする。
 微かな呟きを、その闇は果たして聞き届けたのだろうか。嘲笑するように瞳が蠕動
して、機体全体がぎしぎしと揺れる。
 もう時間が無い。
 もう持たない。
 時を置かずしてアパッチは鉄クズと化す。中の俺はそれに抗う術はなく、間違いな
く圧死するだろう。
 自分の死骸。想像も付かないソレが――あの闇の中に取り込まれるのだろうか。
 それは。
 そんなの――は。
 かちんかちん。何だ、この音は。がち、がちがち、この、音は。
 頬に触れて、口に手を寄せて、気付く。
 歯が、鳴ってるだけ。歯が、
 ……怖い?
 怖い、のか?
 恐怖して――る? この状況を、夜を、アーカード、を。
 その仮定に。
 アタマが、焼けた。
 シートの下に手を突っ込んで、グレネードピストルを引っ張り出す。
 
「……悪い冗談だ」
 
 笑いが、口に溶けた。
 そう、まだ。
 まだだ。まだ。
 まだ殺されて、やらない。
 俺は死なない。まだ、死んでやらない。
 座席で姿勢を変えて、ハッチ方向のキャノピーに向き直る。デュアルパーパス装填
済みのHk40。亀裂入のキャノピーへポイント。
 いませり。
 いませり。神は、貴方はいませり。ここに。主よ、我が主よ。我に御加護をお授け下
さい。この愚かな迷い人に、サタンの誘惑を撥ね退ける力をお授け下さい。
 一度だけ瞼を閉じて、
 強く祈って、瞼は硬く閉じたまま。
 深く願って、開く。
 それで。
 それで、迷いと恐怖は少しの間だけ、消えた。
 あの日。
 あの時。
 泣きじゃくりながら額をポイントした俺に、アイツは言った。
 
『――お前が生きてるなら、まだ終わりじゃないんだ』
 

335 名前:Kresnik ◆fFCROSSQsM:2003/07/20(日) 01:41

>>334
 
 そう。
 そう――だ。
 その……通りだ。
 
「まだ、終わりじゃないんだ」
 
 思い出した。
 思うのはヤハウェの祈りでもヴァチカンの趨勢でもない。
 みんな。
 大好きだった、みんなの笑顔。
 強くて、優しくて、信念を遺して逝ってしまった俺の家族。
 最後まで諦めない事を教えてくれた団長。最後まで強かった彼。二人目の父親。生
き方を与えてくれた師。俺の憧れで信念で、気高く逝ってしまったあの人。
 一人で泣いていた俺の傍にいてくれたアリー。死に際まで綺麗だった彼女。初めて
触れた唇。初めて恋したたった一人の家族。焦れて愛して、護り切れずに手から零れ
落ちた透明な命。
 みんな、教えてくれた。
 
 ――諦めるな。
 
 今なら、解る気がする。
 俺がこうしている限り、誰かがこうして在る限り、真の終わりなんて訪れない。
カケラでも光が残っている限り、無限の夜は在り得ない。
 朝は来る。いつだって。
 バケモノは死に尽くして、抜けるように綺麗な朝が。
 俺がそれを見る事が出来なくたって構いやしない。
 見る事が出来なくても、いつか来ると信じられるだけで。
 だから。
 そんな世界に、オレ達は邪魔だ。
 トリガーを押し込んで、破砕音が残響して、粉砕された風防ガラスが顔面に飛び掛
かる。目は閉じない。頬と瞼を掠めた鋭利な痛み。瞼の脇から血が流れ込む。
 流れ込んで来たのは、冷風とガラスと、
 そして、
 それは、
 
「アーカード」
 
 目の前にまで迫った黒い流動体。
 漆黒の無数の瞳。
 どんなホラー映画だって、これに比べればよっぽどマシだろう。
 ジェイソンもフレディもB級に成り下がるに決まってる。
 ガラスごと弾頭が穿った傷痕は既に無い。
 嘲うような瞳の群が、黒い奔流に埋もれて迫る。
 だけどソレは遅い。俺の覚悟はソレよりも早い。
 恐怖はない。だから思う。俺は、思う。
 
「終わるのは……オマエなんだよ、アーカード!」
 
 カソックの袖を引き寄せて顔面を覆う膜に。腰から引き剥がしたグレネードを正面
に放って――接触起爆。
 重い、衝撃。
 爆炎の洗礼が全身を洗う。ガラス片が粒子になってカソック越しに飛び掛かる。
どうだっていい。確実に言える事は、クソ忌々しい膜に穴をブチ開けた事だ。
 奥には、空。果てない、夜。
 耐火スプレーを塗りたくったカソックを盾に――俺は立ち上がって、足を振り出して、
身体はアーカードに開けた孔を抜けて。
 
 ――見た。
 
 ヘリを包み込もうとする漆黒の幕。一面を無数の瞳と口が覆う、闇色のカーテン。
 手を伸ばしてスキッドを掴む。振り出した両足を引っ掛ける。
 後はもう、迷わなかった。
 思い切り撓めた両足を一気に引き伸ばす。
 闇の底へと、身体は一散に下っていく。
 

336 名前:アーカード ◆VAMPKPfGto:2003/07/21(月) 21:14

>>335 Duel of the fates -射干ノ鴉ハ死ヲ詠イ- Kresnik vs Arucard
 
 炎火が爆ぜた。
 想像もしなかった。そう、これはもはや、人間の発想ではあるまい。
 眼前で手榴弾を炸裂させたのだ。
 ありえない決断、驚嘆すべき判断力! 漆黒の内壁を破った男は今や眼下、地上二百mまで
漆黒の空を下りつつある!
 ヘリの惨状も凄まじかった。
 乗り捨てられたアパッチ内部は榴弾の破片と爆風になぶられ、計器類を泣き喚かせながら小
火災にあおられている。
 アーカードは――漆黒の塊は、無数の瞳は、唐突に動いた。
 コールタールで塗り固めたようなアパッチは、その巨体から無数の触手を空へと解き放ったの
だ。放射線状に走る黒い糸はまるで、闇で織られた蜘蛛の巣だ。
 黒い網は刹那に空を駆ける。
 衝撃で揺れるローターを黒糸が絡める。直後、突如と回転が息を吹き返した。
 おぉぉん、と狼の遠吠えのような、聞く者をすくませる怪音。電力を用いずして、ローター
は異怪の力で持ち直したのだ。
 表面の火災へは、膜の表面から生まれた蝙蝠が飛んだ。一匹、二匹、三匹、四匹……瞬く間
に生まれた無数のそれが、火の粉をその身で押し潰し、そのまま機体へ同化、鎮火する。
 表面だけを覆っていたゲルは、機体の隙間から機関部へ。
 各部位の間隔を欠片も残さず埋め、やがて黒いゼリーはキャノピー内をどぷりと満たした。
ペダルに、ハンドルに、シートに。砂時計が落ちるようにアーカードは溜まっていく。
 現時点の結論が弾きだされた。
 依然として、アパッチは空に。災禍にあおられるも変容なき巨体は――否。
 それは否だ。それは、"変わっている=B
 無数の腕を生やしたヘリが、無数の腕に生まれた無数の瞳が、その鳴動と瞳孔の動きをもって
嘲弄を表現しているのだから。それを変容無しと呼ぶは愚かだろう。
 どろり。キャノピー内部に変化が生じた。
 風防ガラスに押し付けられるように溜まっていた黒い水溜り、そこに。
 アーカードが、生えた。
 
「それだ、私が望んだのは……私が求めるのは! そうだ、いいぞ人間! まだ動くか、まだや
れるのか。まだ生き長らえて私を殺すというのか! くく……いいぞ。いいぞいいぞ、それでこそ
だ! それでこそ人間だ! 私が求めているのは……はははっ! はははははっ!」
 

337 名前:アーカード ◆VAMPKPfGto:2003/07/21(月) 21:16

>>336
 
 明瞭な声だった。
 漆黒の液体の真上にアーカードの上半身は損壊なく復元し、その口は標的への賛美を紡ぐ。
内に満たされていた黒液は、徐々にアーカードの下半身を成していく最中だ。
 
「人こそが私を殺しうる。かつては、人の意思こそが私を殺した――ならば、お前こそは私を再
び殺しえるのか……証明してみせろ、今すぐここで、貴様の全てを投じて!」
 
 ばつん。
 何かが、弾ける音がした。
 浮遊する黒いドームから、一斉に。
 殻を破る雛(ひよこ)のように。
 腕が、生えた。
 鋭い鉤爪。指と爪に結合部はなく、真っ黒なゴムがそのまま爪の形を成すも同然の形状だ。
百本を越えた黒腕は、細く長い無数の紐といい換えてもいい。識者ならH・P・ラブクラフトのモ
ンスターを想像するだろうか――もちろん、かの作家が想像した、その程度の異形でも恐怖で
もありはしないのだが。
 "這い寄る混沌=iニャルラトテップ)すら呑み込む混沌、"黄衣の王=iハスター)さえ凌駕す
る狂気、恐怖という想像の粋を凝らして創り上げられた邪神すら、その闇の前では霞んで消え
る。
 真の悪夢、真のバケモノ、真の邪神。それこそがアーカード、それこそが。
 彼という、魔王。
 キャノピーの中では、アーカードが小さな笑みを湛えてシートに身を埋めていた。その肩から、
背から、無数の紐を生命維持装置のコードの如く伸ばして。
 しかしそれは、生命を維持する管ではあり得まい。
 彼の悪意。
 彼の害意を解き放つ、殺戮の媒体だ。
 
「ここからが始まりだ。これからが開幕だ! 夜は落ちた、月は冴えた。さあいくぞ、歌い踊
れ。輪舞(ロンド)だ人間! 死者でなく尋常でもない、お前の存在意義を証明してみせろ!」
 
 腕が伸びた。千本にも及んだ腕が。
 水面を漂う海藻を思わせる蠢きで月光を遮り、無数の腕がカーテンを造る。重機関銃へと伸
びた幾つかの鉤爪が、砲身へとその身を絡ませて伸びた。
 一体化する、黒腕と砲身。アパッチとアーカード。
 今やそれは黒くいびつで禍々しく、空を漂う一匹の怪異と言って差し支えあるまい。
 アーカードは腕砲を眼下に下ろし、天下る男へと照準する。
 
「詠え死神、終焉の挽歌は今にこそ相応しい」
 
 夜空を舞う怪異(アーカード)は、そう詠って締め括る。
 眩いばかりのマズルフレアを、闇に溶けるその身から発して。
 怪鳥の咆哮。それは死を誘う銃火であった。

338 名前:ブルーノ・デリンジャー:2003/07/21(月) 21:34

>>321 >>325
 気が付くと、ボートに乗っていた。
 ついでに、船は沈みかけていた。
 目の前では真っ赤なビキニの若い女の子が、イカレた格好の兄ちゃんに人工呼吸をしている。
「……何がどうしてどうなったんだ……?」
 ここに至るまでの記憶がすっぽり抜け落ちていて、思い出せない。
 まあ……命があるだけマシかもしれない。任務は果たせなかったが。
 
 そうしているうちに、例のイカレた格好の兄ちゃんが目を覚ましたらしい。

『わ、吾輩のファーストキスは奪われちゃったのであぁるか!?
 吾輩の純潔までも!?キャアァァァァァァッ!イヤアァァァァァァァッ!!
 吾輩、犯されるウゥゥゥッ!?』
 
 訂正。格好だけじゃなく、頭もイカレてるらしい。

「いいから、もうちょっと寝てろ」
 力の抜けた声で呟き、何故かしっかり持っていたコショウを瓶ごとイカレ男に投げつけた。

 その際、視界の端にブサイk……じゃなく、『特徴的な顔立ち』の女の子が見えたが、見なかった事にした。

 
(ブルーノ・デリンジャー 任務失敗) 
 
 ブルーノが美の方向にチャレンジブルな顔立ちの少女(政治的に正しい表現)を見なかった事にしている頃。
 我らが合衆国大統領は、ある大事な事を思い出した。
「……あの船、私の可愛いキャロラインが乗ってたんだった……!」

 あー、大統領。娘さんなら、無事です。ボートの上で、ミスターダイナマイトに見なかった事にされてますけど。

339 名前:夏祭り・エピローグ:2003/07/21(月) 21:48

夏祭り・全体エピローグ
 
 かくて殉教は為された。
 客船、夜の女王号は海中へと没し、殉教者の列に新たなる百余名が加わった。
 しかし――神意は彼らの前をすり抜けた。
 示された奇跡は何方へとも無く消え去ったのだ。
 
 
 
 
 ヴァチカン第十三課。
 執務室にて、ワクチン紛失の報を聞き、しかしマクスウェルは動くことが無かった。
 
「よろしいので?」
「いい訳が無いだろう」
 
 従者の問いに、怒気の篭った声で応じるマクスウェル。
 しかし彼は座して不動のままだ。
 
「ですが……」
「だが幸いあれはワクチンだ。即座に我々に向く牙になるわけではない。
 化け物同士の潰しあいに使われるならそれも結構。
 そうでないのならば、害になる前に探し出し、取り返せばいい……」
 
 執務机に肘を置き手を組んで、呟くようにしゃべり続けるマクスウェル。
 その手には筋が浮き、ギリ、と歯軋りの音が響く。
 
「了解しました」
 
 言い置いて退室する老従者。
 彼が扉を閉めたその瞬間、背後から罵詈雑言の絶叫と盛大な破壊音が響きだしたのだった。
 
 
【END】

340 名前:夏祭りまとめ:2003/07/21(月) 21:50

夏祭りまとめ
全体導入
>81 >82 >83

アレクサンド・アンデルセン
導入
>85
本編
>108>136>164>179>204>230>261>286(退場)
 
薬読のアンナロッテ
導入
>86
本編
>103 >115 >130 >140 >146 >158
>210 >221
 
ブラザー・フィリポ
【導入】
>84 
【奔走? 迷走?】
>105 >125 >139 >153 >171 >187
>202 >219 >237 >256 >277 >291
【顛末】
>309
 
ディートリッヒ・フォン・ローエングリューン
導入
>87
本編
>107 >118 >235 >245(退場)
おまけ
>259>260

Kresnik
>104 >131 >162 >194 >229 >231 >275 >292
  
ヴァンパイアロード他2匹…こと吸血鬼ボンクラーズ
【導入】
>88
【大暴れ天童(ウソ)】
>120 >161 >186 >188 >208 >241 >267
【DIE団円〜散り行くは美しきボンクラの夜〜】
>297
 
漆黒の王子
『導入』
>90
『真の勇者』
>97
『交戦の序曲』
>100 >112 >119 >122 >128 >131 >141 >148
『恐怖の襲来』
>156 >166 >167 
『牙への道』
>176 >184 >186 >188 >191 >193 >199 >204
>207 >208 >215 >216 >220 >226 >233 >239
>243 >252 
『死』
>262
 
ドクター・ウェスト
【導入】
>89
【行動】(一人遊びから第三種接近遭遇まで)
>134>150>175>181
(テンの救いと災厄の化身と芋洗いプール)
>190>201>205>222>227>228>229>232>238
(災厄の胎動と吾輩を侮った男と抗争番外地)
>240>245>250>257>259>260>270
(完成!吾輩の大発明!!)
>272>287 
(愁傷な終章への第一歩)
>303>304>305
(奪われた吾輩の純潔ッ!!ああ、ドクターウェストよ永遠なれ!)
>305>321
 
比良坂初音
導入
>91
本編
>113 >129 >149 >173 >192 >216 >283
脱出
>296
 
上月永斗&司
導入
>92
行動
>111 >121 >144 >160 >172 (ワクチンを狙え! 初期目的達成の為に)
>193 >207 >226 >239 >252 (あっさり目的を忘れ、漆黒の王子との戦い)
>271 >279 >308      (そして脱出へ)
エピローグ
>326 >327
追記:>271でアンナロッテを救助。
 
☆レヴィ
導入
>93 >94
本編
>110 >124 >135 >142 >147 >157 >265 >289
 
☆ダッチ
>96 >116 >133 >159 >189 >209 >228 >248 >282 >298 >322 >323
 
千早雅之
>95 >132 >145 >163 >183 >196 >211
>227 >249 >264 >284 >293 >302
 
片倉優樹
>98 >123 >155 >182 >214 >251  
 
アルバート・ウェスカー
導入
>99
作戦開始、争奪戦へ
>114 >143 >165 >185 >225 >244 >258 >268
任務失敗、死亡
>300
バッドエンド(ゾンビ化)
>324
  
「DEATH」
導入
>100
船内での行動
>119 >122 >141 >177 >203 >218 >246 >263 >278
エピローグ
>310
 
エリ&フィオ
導入
>101
本編
>151>178>197>223>269>281>290
終焉
>301
 
麻宮アテナ
>102 >117 >138 >154 >168 >191 >206 >224 >236 >253
>266 >285 >299 >306 >325 >328 
 
ブルーノ・デリンジャー
導入
>109
行動
>126 >176 >198 >220
エピローグ
>338
 
極道兵器岩鬼将造、仁義なきまとめ
>150 >169 >190 >222 >250 >270 >303 >307
 
小早川奈津子
>175 >201 >240 >255 >276 >294 >295
エピローグ
>333
 
水魔スミレ
導入
>180
行動
>189 >195 >200 >209 >212 >217 >234
>242 >247 >258 >265 >273
終了
>304
 
蟆霧
>213 >234 >247
  
全体エピ
>339

341 名前:アルビノ“山城友香” ◆0DYuka/8vc:2003/07/22(火) 01:18

山城友香:エピローグ 〜旅は道連れ?〜
 
 『わ、吾輩のファーストキスは奪われちゃったのであぁるか!?
 吾輩の純潔までも!?キャアァァァァァァッ!イヤアァァァァァァァッ!!
 吾輩、犯されるウゥゥゥッ!?』

と言う絶叫で、友香ちゃんは再び船の上で目を覚ましたわけだが、
そこに広がる光景は異常としか言いようがなかった。
 
緑色の髪のいかにも博士風の人が、さっきの女の子を前に叫んでいる。
どちらかと言えば、立場が逆な気がするのだが、まあ、それは良いとする。
で、緑色の髪の人の妹さんと思わしき方は、語尾に『ロボ』をつけている。
 
そして、しばらく呆然としていた頃。
友香を助けてくれた女の子が、明日のナージャの浮き輪を膨らましてから、
目の前の二人組に対していった言葉。
 
『じゃんけんで勝ったほうがボートを降りる、というコトでどうでしょう?』
 
ああ、わかったという風に手を叩く友香ちゃん。で、友香ちゃんのこの状況に対しての判断だが。
 
(ああ多分、これは罰ゲームを賭けてジャンケン大会でもやってるのかな?)
 
と、言うお気楽なところにまとまった。そうすれば、語尾の『ロボ』も、
浮き輪を膨らまして、船を一旦降りて、追いかけると言うことも納得がいく。
前者は良くある罰ゲームだし、後者はテレビで見たことがある。本格的だな〜。
 
「………皆さん、元気ですね〜。」 
 
なんだかどっと、疲れてきた。私にはそんな元気はないです、と言わんばかりにぱたりと倒れ込み。
すぅ〜、すぅ〜と、とてつもな〜く、安らかな寝息を立ててもう一度眠ってしまった。
 
この後、甲板でそのまま寝てしまったので、太陽に当たって、お肌が少し大変なことになったり、
帰りのチケットと荷物が客船の中(つまり、今は海底)だったり、
この船が何処へ行くのかわからなかったりするのだが………
 
おやすみ、友香ちゃん。起きたらきっと災いのオンパレードが待ってるけど。

- THE END ? -

(そう言えばすっかり忘れていたが任務失敗。幸か不幸か別として生存。)
 
以下、行動まとめ。
導入
>106>127
顛末
>152>170>195>212>232>254>280
エピローグ
>341

342 名前:アル・アジフ ◆Al.AMXyAUA:2003/07/22(火) 23:30

マリアベル・アーミティッジVSアル・アジフ 《人外ロリ大決戦inアーカムシティ》
 
我が名はアル・アジフ。最強の魔導書たる「死霊秘法」のオリジナルだ。
何だその目は。ああ、この姿か?
妾ほどの魔導書となれば、魂魄が宿り貌(カタチ)を持つなど当然の事。
 
まあ、そのような些末な事はどうでも良い。
今宵は妾の経験した、世にも不愉快な出来事を語ってやろう。
茶菓子は無いが楽にして聞くが良い。
 
 
     * * *  * * *  * * *  * * *
 
 
とある夕刻。妾は宵闇に染まりつつある街路を急いでおった。
珍しく人通りは少ない。活気にあふれたこのアーカムシティでもこのような時間はある。
知識のある者ならば逢魔ヶ時とでも呼ぶ、人の流れの途切れるそんな時刻。
 
妾は焦っておった。
あまり時間がない。九郎のたわけが教会で長話をしたせいだ。
急がねば――――                  ――――ケーキ屋が閉まってしまう。
 
 
いや、そう笑うな。あれは良いものだぞ?
長き時を過ごしてきた妾とて、知識と経験の差くらいはわかる。
あのような物を知らずに過ごしてきたとは、このアル・アジフ一生の不覚。
それに加え、妾が今向かっておる店はアーカムシティでも最上級の店だ。
売り切れで涙を呑んだことなど珍しくない。
 
 
 
全力で走った甲斐あって、何とか最後の一個を買うことが出来た。
しかし、一個か。まあ良い。九郎はそこまで甘党ではない故な。
 
喜びに足取りも軽く家路につく妾。
その幸福を邪魔する者があろうとは想像もせず、運命の曲がり角に立つ。
 
 
              ぐしゃ
 
 
そう、その曲がり角から出てきた者に衝突してしまったのだ。
説明するまでもないが、先程の音は妾が後生大事に抱えていたケーキの箱を
アスファルトに馳走してしまった音だ。
 
いかに妾の心が広いとは言え、口が無いどころか生物でも無い物に
苺をふんだんに使ったショートケーキをくれてやる道理は無い。
 
「――どこを見て歩いておる、汝ぇ!!」
 
ちなみに、妾は一つ通りの先の信号を見ておったのだが細かい事はどうでもよい。
そして、改めてそのぶつかった相手を見た妾は怒りを中和する程の困惑を覚えた。
 
 
……なんだ、この布だるまは?

343 名前:マリアベル@着ぐるみ。 ◆nOblerEDv.:2003/07/22(火) 23:34

>342 マリアベル・アーミティッジVSアル・アジフ 《人外ロリ大決戦inアーカムシティ》
 
それは、黄昏時。
わらわの、この玉のお肌を焼く陽光がようやく鳴りを潜めようかというそんな時間。
本来ならば我らの時はこれから。好きこのんで忌まわしき太陽の下へと出る必要はない。
じゃが・・・その日は違った。
 
 
――ケーキ。
そう、乙女の嗜みとして欠かすことの出来ない甘ーいショートケーキ。
それを買い求めるため、わらわは夜の帳が降りようとしておる大通りを急いでおった。
この地にあって、実に最高級のそれを食わせてくれる店へと。
 
・・・まあ、言うまでもないことじゃが陽光避けの着ぐるみ姿で。
 
 
急ぎに急いだ。
かの店の人気は十分すぎるほどに知っておる。このような時間では売り切れは必至。
今時分まで買いに出ることの出来なかった己が運を呪いながら、ただひたすらに急いだ。
 
ゆえに・・・曲がり角から不意に現れた「そやつ」と正面衝突してしまった。
そして勢い余って、歩道に尻餅。くう・・・我ながらはしたない!
 
羞恥で頭に血が上る。
そこに、何とも無礼な言葉を浴び――――
 
「な・・・何をほざくかこのバカチンが!
 不意に現れたのはおぬしのほうであろうが!」
 
思わず、怒鳴り返してしまった。
――道に件のケーキ屋の箱が転がっておることも、眼前の少女が奇異な目で見ておることにも気付かずに。

344 名前:マリアベル@着ぐるみ。 ◆nOblerEDv.:2003/07/22(火) 23:35

(参考・着ぐるみ姿→ttp://www.fides.dti.ne.jp/~hime4/kigurumibell.jpg)

345 名前:アル・アジフ ◆Al.AMXyAUA:2003/07/22(火) 23:45

マリアベル・アーミティッジVSアル・アジフ 《人外ロリ大決戦inアーカムシティ》
 
>>343>>344
 
「誰がバカチンだ、このオ○Qもどきめ。
 全身で不審を主張しておる汝などに、そんな事言われる筋合いは無い!」
 
妾は服の埃を払いながらしげしげとその「物体」を観察した。
――うむ、立派な布だるまだ。百歩譲ったとして出来の悪い案山子にしか見えぬ。
 
む。
 
「そうか、理解したぞ。汝はブラックロッジの手先だなっ!」
 
このように怪しげな覆面など、そうとしか思えぬいやそう決めたそうに違いない。
ならば容赦の必要など毛頭無い。ケーキの痛みを思い知らせて地獄に叩き込んでやろうぞ!
 
「最強にして最高の魔導書の化身たる、このアル・アジフを舐めるでないわっ!!」
 
 
妾は魔力を掌に集め、路上で転がる布だるま目掛けて解き放つ。
ケーキの代わりに焼かれるが良いわっ!!

346 名前:マリアベル@着ぐるみ。 ◆nOblerEDv.:2003/07/23(水) 00:23

>>345 マリアベル・アーミティッジVSアル・アジフ 《人外ロリ大決戦inアーカムシティ》
 
「な・・・ブラックロッジじゃと!?」
 
眼前の少女、言うに事欠いてわらわをテロリスト扱い。
 
「このわらわのどこをどう見ればそのようなタワゴトを・・・って」
 
そしていきなりなにやら撃ってきた。
いや待て、おぬしにはじょーしきというものがないのか!?
 
ともかく、黙って食らってやる義理などはない。
とっさにレッドパワー「エネルギーフェイザー」を放ち、それにぶつけた。
 
――爆発。大音声。
突然の出来事に、少ない人通りの中で騒ぎが巻き起こり始める。
 
が、その様な些事、わらわには関係ない。
先にじょーしきを破ったのは向こうであるゆえに。それに――
 
「ええい、突然何をする!
 大体「アル・アジフ」じゃと? かの魔導書がおぬしだとでも言うのか?
 冗談を言うのならばもう少し笑えるものにすることじゃな!」
 
爆風に煽られながら、そやつを笑い飛ばす。
まずは何よりも、このような世迷い言をほざく奴をとっちめねば・・・いい加減気が済まぬわ!
 
「さあ、どうした自称魔導書。それで終わりか?」

347 名前:アル・アジフ ◆Al.AMXyAUA:2003/07/23(水) 00:39

マリアベル・アーミティッジVSアル・アジフ 《人外ロリ大決戦inアーカムシティ》
 
>>346
 
む。街は一般市民達の悲鳴と怒号に溢れておる。
ええい、何という非道な奴らなのだブラックロッジめ!(←破壊の元凶)
 
「ふ、所詮案山子には脳味噌が詰まっておらぬか。哀れな事よ」
 
妾は腕を一部ページに戻し、宙を彷徨わせた後に元に戻す。
 
「どうだ。妾ほどの魔導書ともなれば、汝の想像も及ばぬ領域におるのだ。
 観念して正義の軍門に降るがよい!」
 
そしてスカートの裾を翻し、妾のしなやかな脚が宙を舞う。
魔力の輝きを込めた必殺の蹴りが、薄暮のアーカムシティに麗しき三日月を描く。
 
「くらえッ! アトランティック・ストライク・Mバージョン!!」
 
 
                   ちなみに、Mはマンでもミニマムではなくモドキだが何か。

348 名前:マリアベル@着ぐるみ。 ◆nOblerEDv.:2003/07/23(水) 01:08

>>347 マリアベル・アーミティッジVSアル・アジフ 《人外ロリ大決戦inアーカムシティ》
 
そやつが自らの腕を紙片と化させ、また元に戻す。
ふむ・・・よもや、ただの世迷い言ではないのか。確かにそれ相応の魔力を持ち合わせてはおるようじゃし。
 
じゃが、
 
 
まあ、
 
 
どーでもよい。そのようなことは。
魔導書がどうとか以前に、たわけたことを抜かしておることには変わりなし、じゃ。
 
「は、これだけのことをやって正義とはまったく恐れ入る。
 聡明なるこのわらわとはおーちがいじゃな」
 
余裕綽々と構える。
 
――構えすぎた。
 
そやつが突然、蹴りを放ってきた。
先ほどと違い予備動作などほとんど無し、ゆえに今度は避ける手だてもなく、魔力の軌跡を描いた蹴りがわらわを――――
 
             ぼすっ
 
 
「・・・・・・」
 
『かー、かー、かー』
 
何故か、騒乱の中でカラスの鳴き声がよく響いた。
 
 
「で」
 
少女・・・まあ、アルでよいか。
そのアルが目の前におるので。
 
「そ・れ・で・お・わ・り・か・?」
 
そやつの口に両手の親指を突っ込み、ぐにーっとのばしてみた。
先ほどの蹴り、少々痛かったのでな。まずはちょっとした仕返し。
この引きつった笑顔を見せられぬのがひじょーに残念じゃ、うむ。

349 名前:アル・アジフ ◆Al.AMXyAUA:2003/07/23(水) 01:31

マリアベル・アーミティッジVSアル・アジフ 《人外ロリ大決戦inアーカムシティ》
 
>>348
 
くっ、やはり九郎がおらぬではこの程度の破壊力か。
技が未完成の気もするが、これは懸案としよう。
 
「へえひっ、ほのゆひをはあさふはっ!(訳:ええいっ、その指を話さぬかっ!)」
 
無礼にも妾の可憐な唇をむにーっと広げる着ぐるみ娘。
 
――むう? 着ぐるみ娘?
 
そう。指を突っ込まれた事で気付いたが、生意気にもこの案山子には「中の人」が居るらしい。
ならば引きずり出してやるまで。
 
だがその前に。
 
「がぶ」
 
これ以上下ぶくれにされぬ内に、思いっきり指を噛んでやった。
そして小娘がひるんだ隙に。
 
「アトラック=ナチャ!!」
 
九郎がこの呪文を唱えるたびに何故か不愉快になるが、
忘却の彼方に追いやった忌まわしき記憶はそのままにしておこう。
 
妾の腕や髪に巻き付いたリボンが命を得たかのように動き始める。
目標はこの着ぐるみ自体。
これも今気が付いたのだが、がこれだけ布地が余っていればリボンは絡み放題だ。
彼奴の動きが鈍くなった合間に、妾は目標のモノを探し当てる事が出来た。
 
「ここかっ!」
 
魔導書に魔術師が不可欠なように、着ぐるみにはジッパーが不可欠な筈。
案山子の背中に目標物があると、蜘蛛の糸と化したリボンが妾に伝えて来た。
 
指がかかると同時に一気に引き下ろす。
この案山子の中身はどんな愉快な生物なのだ?

350 名前:マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv.:2003/07/23(水) 02:07

>>349 マリアベル・アーミティッジVSアル・アジフ 《人外ロリ大決戦inアーカムシティ》
 
指を噛まれ、悶絶しておるわらわの身にアルのリボンがまとわりついてくる。
むう、何とも面妖な・・・かの死霊秘法の名を名乗るだけのことはあるか。
じゃが一体何を――って
 
じじーーっ・・・着ぐるみのジッパーが引き下ろされる音が耳を打つ。
待て。それは待て。まだそうするわけにはいかんのじゃ。
だーーやめいというにええいこのリボンが鬱陶しいああ脱がされてしま――――
 
 
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
 
外気に触れる肌。
じゃが一方、あの肌を焼かれる時の痛みは感じぬ。
思わず閉じておった目をそーっと開ける。
 
・・・ってこの場所、十分に日陰ではないか。
ほっ。
 
 
「・・・む?
 あ、や、えーと・・・こほん」
 
取り乱しておったことを今更気付き、咳払い一つ。居住まいを正す。
そして改めて、腰に手を当て奴に対して威厳を示す。
間違っても誤魔化しなどではない。断じて。
 
「ふ・・・どうじゃ驚いたか?
 これがわらわ、ノーブルレッドであるマリアベル・アーミティッジの真の姿じゃ。
 先ほどから案山子だ○バQもどきだと五月蠅かったが・・・ま、実際にはおぬしなどよりも数段上、じゃ」
 
とりあえず実際の背丈は無視して「見下ろ」す。
これで、相手がこのような小娘などではなくうっとりメロメロ級のナイスミドルであったならばなおよかったのじゃが。
・・・いや、それはそれで問題か。
 
「で、どうするのじゃ?
 これでもなお、わらわを彼奴らブラックロッジの手先だなどとぬかすか、おぬし?」

351 名前:アル・アジフ ◆Al.AMXyAUA:2003/07/23(水) 02:34

マリアベル・アーミティッジVSアル・アジフ 《人外ロリ大決戦inアーカムシティ》
 
>>350
 
アーミティッジだと? 何処かで聞いた名前だが、まあそれは良い。
 
「マリアベルと言ったな。汝、鏡を見たことがあるのか?」
 
数段上とか言う戯言をさらりと余裕の表情で聞き流し、
ただ事実のみを、妾より数段薄い小娘の胸に突き付ける。
 
「そんな赤い目と長い耳を持った人間がいるか、虚けっ!!」
 
目の前の小娘の瞳は真紅の輝きを持ち、
耳に到ってはあの騒々しい自動人形の様に長い。
しかも、妾のページに刻まれた記述によれば「ノーブルレッド」とは
吸血種の一種でもあった筈。
 
「ブラックロッジの手先であろうがなかろうが、外道の知識を持って魔を払うのが妾の使命。
 哀れなケーキの後を追って、乾かず飢えず無に還れ、小娘!」
 
うむ、完璧に決まった。
九郎は自宅で惰眠をむさぼっておるし、デモンベインは地下で待機中だが
このようなちんちくりんなど妾だけでお釣りが来る。
 
妾は間合いが詰まったままなのを良いことに攻撃をしかける。
もちろん、通用しなかった未完成の技で再びしかけるような愚はおかさぬぞ?
最強の魔導書の名は伊達ではないのだ。えっへん。
 
 
「レムリア・インパクト・Mバージョン!!」
 
                                          ――何をこけておる、そこ。

352 名前:マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv.:2003/07/23(水) 03:07

>>351 マリアベル・アーミティッジVSアル・アジフ 《人外ロリ大決戦inアーカムシティ》
 
ふ、このわらわのルビーの如き目とちゃーみんぐな耳をついてくるとは・・・さぞかしショックが大きかったと見えるな、うむ。
 
じゃが、わらわを魔として祓う、などと言われては黙っておるわけにもいかぬか。
ではわらわも、全力を持って降りかかる火の粉を・・・
 
いや、待て。
 
『哀れなケーキの後を追って、乾k(以下略)』
 
けーき?
ケーキと言ったか、今?
そういえば先ほど、あの店の箱を見たような・・・
 
「・・・あーーーーーー!!!?」
 
思わず叫んで、キッとアルを見据えた。
先ほどのような魔力の輝きを掌に帯びさせ、わらわに迫るアル。
すなわち。
 
 食 ら っ て も 無 意 味 。
 
ゆえに避けずに、代わりにアカとアオ(精神感応攻撃デバイス。平たく言えば顔の描かれたビット)を
奴の額めがけてけしかけた・・・ぱこーん、と。
 
ふ、二番煎じなど愚の骨頂――とかそのようなことはどーでもいい。
大事なのは・・・大事なのはそれではなくッ!
 
「おぬし、おぬしまさか・・・わらわのケーキを!?」
 
そのまま、大声張り上げながら掴みかかる。
ええい、よもやこやつがあの店のケーキを――――う〜〜!!
甘いものの恨みは恐ろしいぞ〜!!

353 名前:アル・アジフ ◆Al.AMXyAUA:2003/07/23(水) 22:21

マリアベル・アーミティッジVSアル・アジフ 《人外ロリ大決戦inアーカムシティ》
 
>>352
 
小気味よい音を立てる妾の額。
そして、マリアベルの投げた何か愉快な物体が当たった所を起点に、
粉々に砕け散る妾の『虚像』
 
「うつけ、同じ手を続けて二度使うと思うてか」
 
遙か高みから小娘を見下ろす妾。
上空を制す者は闘いを制すと言う。この闘い、もらったも同然だ。
 
ああ、何が起こったか分らぬか?
仕方ない、解説してやろう。
 
今のは「ニトクリスの鏡 」を使った幻像だ。
攻撃を仕掛けると見せかけて幻像と位置を入れ替え、
妾自身はアトラック=ナチャの糸を使って上空へ逃れた訳だな。
同じ呪文でも使い方によって千変万化する。この程度は初歩の初歩よ。
 
「言うなれば『相手が勝ち誇った時、そいつは既に敗北している』といったところよ。
 闘いの年季の違いを思い知れ、小娘ッ!!」
 
 
            む? 
 
――はて。
両手が塞がっておるのに、この高さからどうやって攻撃したものか。

354 名前:マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv.:2003/07/23(水) 22:55

>>353 マリアベル・アーミティッジVSアル・アジフ 《人外ロリ大決戦inアーカムシティ》
 
「・・・って、なに?」
 
掴みかかったアルの体が無数の破片と化した。
同時に降りかかる、アルの自信に満ちあふれた声。
 
く――これは、虚像に騙されたか。
ええい、味な真似をしよる・・・
 
上空を見上げる。
夕焼け――わらわの目には少々、痛い――に染まった空の下、勝ち誇った表情の小娘が
蜘蛛の巣状に伸びたリボンに捕まり、わらわを見下ろしておった。
あまつさえ、えらそーなことをのたまって。
 
 
リボンに捕まって。
 
両手で。
 
・・・ほほう。
 
 
「ふむ・・・それでおぬしは今、勝利を確信しておるわけか?
 ならば」
 
ひょい、っと手を振る。
そこから、レッドパワー「ファイアボルト」の炎が飛び出した。
目標、リボン。
 
――火がついた。
よーく、燃えそうであった。
 
 
「勝ち誇っておるおぬしは敗北しておる、と」
 
さーて、どうするのじゃ?
落ちてきたら・・・先ほどの続きだぞ?
ふっふっふ♪

355 名前:アル・アジフ ◆Al.AMXyAUA:2003/07/23(水) 23:15

マリアベル・アーミティッジVSアル・アジフ 《人外ロリ大決戦inアーカムシティ》
 
>>354
 
「ぬ、汝は魔術師なのかっ!?」
 
炎に包まれる妾のリボン――に見えるが、実のところあれも妾のページの一部だ。
だからと言って燃えぬわけではない。
空中で手がかり足がかりを失えば、落下するのが世界の法則。
 
そして、その世界の法則に自らの意を持って新たなる式を産み出すのが魔術師である。
 
「だが甘いっ! バルザイの偃月刀よ!」
 
もちろん、妾が偃月刀を召喚したとて、術者がおらんでは大した威力はない。
切れ味、速度ともに大幅に鈍るのは自明の理。
 
だが、偃月刀を使えば落下の方向を制御するのは容易い。
そして落下の速度をプラスすれば、か弱い妾の身体でも充分な破壊力を得ることが出来る。
法則に真っ向から逆らわず、わずかにねじ曲げるだけで可能な芸当。
 
 
「ケーキの仇っ! 氏ね氏ね氏ね氏ね氏ねーーーーーっ!」
 
 
偃月刀に乗って独楽のように回転しつつ、怒濤の勢いで空を駆ける妾。
攻防一体のこの技を、その身体でどう受け止めると言うのだ小娘ッ!
 
しかしこの技は――+激しく酔いそう+だ。
改良の余地有りとしておこう。

356 名前:マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv.:2003/07/23(水) 23:50

>>355 マリアベル・アーミティッジVSアル・アジフ 《人外ロリ大決戦inアーカムシティ》
 
刃を纏った独楽と化したアル。
さすがに、あれをまともに食らってはか弱きわらわなどひとたまりもない。
むう、どうするか――――
 
 
逃げるか。
 
 
うむ、思ったが吉日。いや日ではないが。
ともかく、あれを受けてやる道理などない。
よって――――駆け出す、走る、かっこよく言えばだっしゅじゃッ!
 
剣風を背に受けながら、脇目もふらず走る!
背後に落下音が聞こえる、じゃが油断は出来ぬ。
もっと走って走って走って――――
 
「ってあち、あちあちあち!」
 
・・・走りすぎた。日陰から夕日の照らす場所へと躍り出てしまった。
無論のこと、慌てて引っ込む。
――ああ、死ぬかと思ったぞ。
 
しかし、これでは逃げ場などない。
覚悟を決めて、背後を振り向き・・・
 
 
そこにいたのは、目を回してぶっ倒れておるお馬鹿な魔導書一人。
 
 
「・・・ふう」
 
つかつかつか、と改めて近づく。
 
「わらわは魔術師ではない・・・言ったであろう、ノーブルレッドじゃと。
 いや、それ以前に今のわらわは甘い物好きの一人の乙女。
 そう、あのケーキ・・・あれを楽しみにしておったというに!」
 
もう一度掴みかかる。
今度は、虚像などではないな?
 
「さあ、わらわが買う予定であったあのケーキ・・・どうしたのじゃ!」

357 名前:アル・アジフ ◆Al.AMXyAUA:2003/07/24(木) 00:11

マリアベル・アーミティッジVSアル・アジフ 《人外ロリ大決戦inアーカムシティ》
 
>>354
 
「うにゅ。お、おのれ。にげるとはひきょうものめ……」
 
目が回って、漢字で表記が出来ぬ程ろれつが回らぬ妾。
くう、長時間の回転滑空がこれほどのものとは。
 
「買う予定であっただと?  予定は未定で確定では無いわ。
 妾が買ったケーキこそ、汝が台無しにしてくれたのであろうが!」
 
そこまで話してピンと来た。
こやつはノーブルレッド、つまりは吸血種であったな。
ならば太陽に弱いはず。先程も夕陽に焼かれそうになっておったし。
今頃気付いたのかと言う突っ込みは却下だ。
 
「ふっふっふっ、妾を掴んだのは失敗だったな、マリアベルとやら。
 たっぷり日光浴をするがいいわ。――ニトクリスの鏡よ!」
 
妾の呼びかけに応え、少し離れた空間にニトクリスの鏡が具現化する。
本来鏡は光を跳ね返すもの。むろん太陽光線とて例外ではない。
 
この鏡で太陽光線を反射して浴びせれば、今度こそこんがりウェルダンだ。
思い知るがいい闇の眷属めがっ!
 
 
――――――む?
 
何故何も起きぬ?
 
掴みかかられた体勢のまま、ひょいと首を傾けて鏡に映った逆しまの風景を見る。
 
 
 
            ……しまった、日没か。

358 名前:マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv.:2003/07/24(木) 00:57

>>357 マリアベル・アーミティッジVSアル・アジフ 《人外ロリ大決戦inアーカムシティ》
 
かー、かー・・・何故か再び、カラスの鳴き声が響き渡る。
 
ふ、発想は悪くないが――日没の時間を見誤るとは。
語るに落ちたな、アル・アジフ!
 
 
ちなみにわらわが先刻、日に焼かれそうになったことはおいておく。
 
大体、そのようなことは極めて些細なもの。
それよりも、じゃ。
 
「ふん、おぬしがあの時飛び出してきさえしなければこのようなことにはならずに済んだ。
 すなわち自業自得であろうが。
 じゃがな」
 
がしっ、と頬を掴む。 
 
「わらわにとってはそれだけではない・・・既に日没、そしてあの店は閉まるのが早い。
 つまりわらわは、他のケーキを買うチャンスさえもおぬしに奪われたのじゃ」
 
そしてぐにーっと、今度はほっぺたを伸ばしてみる。
一方で髪なども引っ張ってみたり。
殴るなどという野蛮な行い、わらわには恥ずかしくて出来ぬからのう。
 
「ど・ー・し・て・く・れ・る・の・じゃ・?」
 
ぐにぐに、きゅー。
ひっぱってひっぱってひっぱって・・・恨み、今こそはらす時!

359 名前:アル・アジフ ◆Al.AMXyAUA:2003/07/24(木) 01:20

マリアベル・アーミティッジVSアル・アジフ 《人外ロリ大決戦inアーカムシティ》
 
>>358
 
「ええい、そのような事知ったことかっ。
 妾の胃に収まるはずだったケーキを台無しにしおって!」
 
話も状況も最初の方に戻った気がするが、同じ轍を踏まぬのが最強の魔導書たる由縁。
 
頬の痛みで零れそうな涙を無視しつつ、マリアベルの頬を引っ張り返す。
むにーっと伸びるマリアベルの顔。ふ、何と珍妙な事よ。
ケーキよ喜べ。仇は取ってやったからな!
 
 
そして……
 
「いました、アレが騒ぎの元凶ですっ! 貴様等、神妙にお縄に付け!!」
「ストーン君はいつも元気だが、妙に台詞が時代がかっているねえ」
 
「「五月蠅いっ! 余所でやれっ!」」
 
                   ど か ー ん
 
「おい、アル。あんまり遅いから探しに来てやったのに…… 何やってんだよ、お前」
「てけり・り」
 
「「喧しいっ! 取り込み中だ!!」」
 
                   ち ゅ ど ー ん
 
 
 
いろいろと痛ましい犠牲を出しつつ、凄絶な頬の引っ張り合いは夜を徹して行われた。

360 名前:ドクター・ウェスト ◆sODrWEST1A:2003/07/24(木) 02:01

>>358マリアベル >>359アル・アジフ
≪人外ロリ大決戦inア―カムシティ≫闖入
 
吾輩とて生身の人間!時々甘い物が欲しくなるのであぁる!
エルザもお年頃!覆面達にも甘い物をと要求され、吾輩じゃんけんに大負けに負け!
こうして恥を忍んで大量にケーキを買い込むのであぁる!
 
「あ、おねいさんこの限定ケーキとこのファンシーなプディングも、
 吾輩所望するのであぁる!」
 
ちょっぴり引き気味なおねいさんを横に吾輩はケーキをたらふく買い込んだのであぁる!
そう、よく女の子に言われるように、『甘い物は別腹、だって育ち盛りですもの♪』であぁる!
 
きゃー♥♥♥
ってな具合に吾輩は愛車のシャイニングハーレー改!
その名も『スーパーウェスト素敵バイク28号〜今が駆け抜ける時〜』に、
ケーキ運搬用スペシャルキャリアーを搭載させ、いかなる困難があろうとも!
中のケーキが崩れたりしないようにセッティング!
いざ!イザイザイザヤカマクラ!と言わんばかりに吾輩、マシンを駆っているのであぁる!
 
吾輩が近道しようとしたそんな時!爆音と轟音、そして姦しい叫びが聞こえたのであぁる!
 
「ん〜〜ん?吾輩の耳に響く乙女の祈りと魔力の叫び!
 これは!?よもや?」
  
シャイニングハーレーに搭載された魔力探知機その名を!
『教えて!ダウジン君!完全版。初回特典ドクターウェスト等身大抱き枕&
 ポスター付きの上にマイフェイバリットソング100選!』くんにも多大な反応!
 
超☆魔導書と古代種族の少女二人が絡み合っているではないかッ!!
そう!そいつらに触れることは死を意味する!
まさしくキャットファイトの真っ最中!
それは混沌への片道切符!!
古書店のおねいさんもビックリなドロドロの世界へのファンファーレであぁる!
されど、吾輩はチャレンジャアァであるからして、
吾輩の技術の粋を極めた捕獲作戦を1psecで練り上げ、実行するのであぁる!
 
「やや!?あ、あ、あ、あ、あアル・アジフ!?そして、ノーブルレッド!?
 ここであったが百年目!
 先ほど吾輩が買い占めたケーキと一緒に吾輩の研究の手土産としてくれるぅっ!
 イザッ!喰らえィッ!ネットランチャァァァァァァァッ!!」
 
ギターケースからの捕獲ネットの発射!これゾ吾輩の秘儀であぁる!    
作戦の成功に吾輩は感極まって、ギターを演奏しつづけていたのであぁる。

361 名前:アル・アジフ ◆Al.AMXyAUA:2003/07/24(木) 02:24

>>360 乱入してきた大変な変態
 
「でえい、ややこしい所に出てくるな変態めがっ!
 それに手土産―――― 何? 買い占めたケーキだとっ!?」
 
ふ、ここでその台詞を出したが100年目。
ブラックロッジに食わせるケーキなどは無いわっ!!
 
頬を引っ張り合っていた手を無理矢理に振り払い、
妾は変態博士の方へと向き直る。
 
その妾に飛んでくる捕獲ネット。
おそらく妾の腕力では引きちぎることなど全く不可能。
それどころか、抗魔術処理をしてある可能性すらある。
ドクター・ウェストは性格的には最悪だが、能力的に侮ることはできん男なのだ。
……妾も今イチ納得がいかぬが、事実なので仕方がない。
 
 
それでも所詮は変態の策。
 
「九郎ッ!」
 
死闘を繰り広げていた妾をほったらかしにして惰眠を貪る九郎
――なぜか焼けこげだらけだが無視する事にした――の身体に手を触れる。
 
一瞬にしてマギウス・スタイルに変身する九郎。
だが意識のないままの九郎と妾に、捕獲ネットはかわす術もなく襲いかかり……

362 名前:アル・アジフ ◆Al.AMXyAUA:2003/07/24(木) 02:26

《人外ロリ大決戦inアーカムシティ》in三つ巴?
 
>>361
 
すとん。
 
 
あっさりとすり抜ける。
そう。ちびモードになった妾の方が網目より小さいだけのこと。
 
再び身体を元に戻し、網目に絡まった九郎を尻目に呪文を紡ぐ。
 
「イタクァ! クトゥグア! たまには妾の言うことを聞けぃ!!」
 
いろいろと私怨の混ざった呪文の勢いに応え(と言うか勢いにのまれ)
真紅のオートマチック白銀のリボルバーが闇を引き裂いて具現化する。
 
 
「いとぅ・いず・たーいむっ!!」
 
 
拳銃とは思えぬ発砲音が月をも震わせる勢いで響き渡った。
 
 
                                 さらば変態。

363 名前:ドクター・ウェスト ◆sODrWEST1A:2003/07/24(木) 21:36

《人外ロリ大決戦inアーカムシティ》in三つ巴?
>>361>>362アル・アジフ
ふひゃははははははははっ!見たか三鷹!吾輩のサクは超☆か〜んぺきなのであるよ?
誤字の神までも吾輩を祝福するのであぁる!
 
哀れ、ネットガンにこうも見事に捕らえられたアル・アジフと大十字九郎!
吾輩の勝利と栄光に貢献するのであぁる!
 
そして、吾輩はグローバルロードを駆け抜けて、天上天下吾輩独尊!
とばかりにケーキを食べながら栄養栄華を極めるのであぁる! 
 
しっかぁし!  
「な゚!?」
 
アル・アジフは非道な事に大十字九郎を盾として、吾輩へ二挺拳銃を差し向けたのであぁる!
 
「ま゛!?」
 
吾輩の見る間に、吾輩の目には二挺の魔銃がロケットランチャーにも見えたのであぁる!?
                                 :;              ∵
                                      \((从⌒从*)) /
                                *    #((  :: ) ( ⌒ ζ * / ・
                                  \曝ク  ∵ ━(( : ∂ ))  /
_________( ⌒ )       _         \ (( § ) ⌒;  lll ;从 *(・)/
|:   ∧ ∧   :|口口|Σ )  三買エ_)         ._ 煤@;  ) (( ‡ *   ζ  ∵―
|:  ミ#゚Д゚ミ   :|口口|Σ  )            三買エ_) (( 从 ( >>吾輩: ) ¢) )―
 ̄ ̄ミつ σ ̄ ̄ ̄(  )                   : *煤i( 从 1((  )) *ヽ\ ヽ・
  〜ミ  ミ                          : / / ・(( ;  :  )) (  ζ\*
    U U                               / (__)W(__)_)W\    ・
 
「吾輩のケーキイイイイイイィィィィ〜〜〜〜ッ!?」
吾輩、大威力にて吹き飛ばされ、ケーキを彼奴らに奪われてしまったのであぁる!
トボトボと吾輩が家路にたどり着いた時、エルザが吾輩の労を労い、
ケーキを作ってくれたのに感動の涙を流す吾輩だったのであぁる!
それにしては、覆面達の姿がないのであるが……。
 
『エルザ、みんなにケーキを作ったロボ。博士も食べるロボ』
吾輩、感激の余り新曲を披露した後、直ちにイートイン!

364 名前:sODrWEST1A:2003/07/24(木) 21:36

>>363
 ――――――――――――――――――
 
 
      しばらくお待ちください
 
 
 ――――――――――――――――――
 
そして、吾輩と覆面達はある温泉地の旅館グループを経営する長女の如し料理に敗北し、
二週間の入院を強制されたのであぁる。
 
(ドクターウェストの奇妙な冒険第二部戦闘調理:完) 

365 名前:マリアベル・アーミティッジ ◆nOblerEDv.:2003/07/24(木) 21:43

《人外ロリ大決戦inアーカムシティ》+何か。
>>360 初見でも判る変態
>>361>>362 アル・アジフ
>>363>>364 そして末路
  
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・( ゚д゚)ポカーン
いや、何があった、今。
 
わらわとアルとの壮絶なる一騎打ち(※反論不可)に何者かが乱入してきおった。
というか・・・変態が。変態以外の何ものでもない奴が。
それに対し突然アルが激昂して網がとんできてアルがなにやらとんでもない銃を撃って
いやしかしアレは銃なのか? あの威力はそこらのARMを軽く凌駕するというかそもそも機械なのかどうかすら怪しいわけで
ともあれそれによってあの妙な変態は一撃の元に吹っ飛び――
 
して。
 
 
「――何故にわらわまでが網に巻かれておるのじゃ」
 
現在の状況――うごけない。
どうやらこの網、アルを捕まえるために放ったようじゃがそのアルはいかなるカラクリか一瞬小さくなって
かるーくすり抜けよって・・・おかげでわらわがとばっちり。
 
ああ、もう何がなにやら。
 
「説明を・・・求めてもよいか、アル・アジフ?」
 
さすがに、そう尋ねずにはおられんかった。
一気に押し寄せた数時間分の戦い(※しつこいようじゃが反論不可)の疲れを肩に背負いながら・・・

366 名前:アル・アジフ ◆Al.AMXyAUA:2003/07/24(木) 22:10

マリアベル・アーミティッジVSアル・アジフ 《人外ロリ大決戦inアーカムシティ》
 
>>363>364 良い変態は死んだ変態だけ
>>365 強敵と書いて「とも」と読む
 
「うむ、話せば長くなるが。見ての通り悪の変態だ。
 しかも変態の分際でケーキを買い占めるなど、愚の結晶体のような男よ」
 
九郎に絡まったネットを解きつつ(そして武士の情けでマリアベルも自由にしつつ)
妾はかいつまんで説明する。
 
大量のケーキを目の前にした妾は、海のように寛大な心になっておった。
今までのマリアベルの非礼も水に流す事にしよう。
 
ふむ。それに流石にこの量は食いきれんな。
腐らせるのも勿体ない。
 
「マリアベルとやら。お互い喉も渇いた頃合いだろう。
 インスタントのコーヒーとティーパックの紅茶くらいは馳走してやろうぞ。」

367 名前:アル・アジフ ◆Al.AMXyAUA:2003/07/24(木) 22:11

マリアベル・アーミティッジVSアル・アジフ 《人外ロリ大決戦inアーカムシティ》
 
>>366 そしてエピローグ
 
で、場面は変わって大十字探偵事務所なのだが。
 
 
「なんだこの人数は。どっから嗅ぎつけてきおったのだ、こやつ等。」
「俺が知るかよっ。だいたいうちはこんなに入れる程広かねーはずだぞ?」
 
「はいはい、細かい事言ってると大きくなれないよ九郎ちゃーん?」
「そうですわ。このお店は私も馴染みの店ですもの。」
「ええ、お嬢様の慧眼には感服いたします。」
「せやなー」「カスのような下賤のお店にしてはいい味ですねー」「……アルたん(;´Д`)ハアハア」
「うめー」「美味しいぞ、九郎ー」「……(ぱくぱく)」
 
「……おぬしら、いつもこのような生活をしておるのか?」
「妾を何だと思っているのだ、汝。」
 
 
幾つ目かのケーキにフォークを刺し、口に運ぶ。
自分でも自覚出来る程の仏頂面が、かすかな微笑みに変わる。
 
 
まあ良い。これも平和な風景の一環だ。
過酷な闘いは心の片隅に追いやり、心ゆくまでこの貴重な時間を楽しむとしよう――――
 
 
 
                                                     【Fin】

368 名前:アル・アジフ ◆Al.AMXyAUA:2003/07/24(木) 22:12

>>367 追加シナリオ
 
「ふむ、余はやはりミルクティの方が口に合うな。」
「イエス、マスター。全ての甘味はマスターの心のままに従うが定め。」
「ああ、ひどいぢゃないか、ひどいぢゃないか。
 そのエクレアは僕がさっきからずうっと目を付けていたのに。つれないなあ。」
 
 
「いやだから何故ここにおるのだ汝等ッ!!?」
 
 
 
                                       【今度こそFin】

369 名前:イーヴァ ◆cpOCEg7EVA:2003/07/24(木) 22:49

爆音が響いた。
窓の外に眼をやると、宝石箱をぶちまけたようなビルの灯が微かに煙に霞んでいた。
また、ブラックロッジのテロだろうか。
わたしは読んでいた新聞をテーブルに置くと、眼を閉じ耳を澄ませる。
街が歪む音が聞こえるかもしれないから。
 
流れ流れて今、わたしとルークは魔導都市アーカムにいる。
世界有数の大都市として貪欲に成長し続けるこの街は、
その貪欲さ故に、人を惹きつける輝きを発して止むことはない。
そして、人の集まる所にわたしたちのご飯の種――つまりトラブル――が絶えることもまたない。
ほら、例えばわたしが読んでいた新聞の三面にも……。

マリアベル・アーミティッジVSアル・アジフ 《人外ロリ大決戦inアーカムシティ》
レス番纏め
 
<発端>
>342 >343 (>344)
 
<死闘>
>345 >346 >347 >348 >349 >350 >351 >352 >353
>354 >355 >356 >357 >358 >359
 
<ドクターウェスト、乱入>
>360 >361 >362 >363

<乱入者の末路>
>364

<そして結末へ>
>365 >366
 
<エピローグ>
>367 >368

370 名前:Kresnik ◆fFCROSSQsM:2003/07/26(土) 19:11

Duel of the fates -Angels will arise,fallen Angels will arise,「Come On Alise!」- Kresnik vs Arucard
 
>>337
 
 天を下る身体。
 失墜する身体。
 安定しない全身。
 俯瞰する地面はまだまだ遠くて、底のない沼みたいだ。
 それでも恐れはなくて、頭で別の事を思考した。
 ……嘗て空を追放された堕天の王は、何を思っていたのだろう。
 あれはいつかの昔。酒の肴はミルトンで、仲間達との馬鹿話。アリーは呆れ半分に
 笑って、ケティはマジメに耳をそばだてて、議論好きな劉はチャーリーと激論を交わ
して――俺はといえば、オレンジジュースのコップを持ってそれを眺めてた。
 
『どうして堕ちたのか?』
 
 永遠の命題。堕落への渇望。愚者への誘い。
 下らなくも、考えた。何故か? 何故叛逆した? 力強き者への抵抗。従属の不満。
支配への餓え。劉の命題論だかなんだかは理解できなかったし、チャーリーのレトリ
ック批判も聞き流して、ただみんなの会話に耳を傾けていた。あの頃は理解もしなか
った。ただ、そこに居られるのが幸せだった。
 あの時はただ、楽しかった。みんなと居られるのが幸せだった。だから、考えもしな
かった。今は一人だから――そう、だからこそ今更に。
 今更に、思う。
 簡単なコトだと、そう思う。
 ルシファーは驕り昂ぶり、主の権威に嫉妬し、逆恨む如くに憤怒した。
 バカな話だ。あの時から、俺はそう思ってた。
 俺は違う。主の威光に跪き、彼の手を取ってその右手となろう。
 ヒトとしての意味を剥奪される日が来るのなら、俺が滅びる日が来るのなら、せめ
て彼の雷となって地獄を下ろう。
 人を護り、異形を討ち、世界の闇を薙ぎ払う為の。
 そう。
 ――せめて、俺は。
 
 今更何を恐怖する。今更何を躊躇する? みんなの生の証明。嘗て在った死神達
の生の証明――その為に生き延びた。
 その為に仲間でも喰らった。家族を破滅させ、親友も殺した。
 もし、今に罪を問うとするのなら――そう。此処で迷うコトこそが、俺が成す最大の
罪になる。
 もう、失う物は何もない。
 
 頬と髪と脇とを掠める擦過音。髪を、腕を、脚を、身体を、光の矢が掠めて過ぎる。
 まるで戦場の中心に立ってるみたい。遥かな足元、巨大な爆炎。世界を揺るがす
みたいな轟音。耳が割れる。
 地上へは20メートル――落下のベクトルは、スキッドを蹴った際に計算把握調整
している。高高度からの落下、耳を叩く風音は死霊の共鳴となって響き渡る。
 生と死の境界線。1ミリのデッドライン上で踊るロンド。
 背中で弾けては散華するマズルフラッシュの雨の中、俺の身体は焦土と化した大
地の逆側、一際背の高いビル屋上を通り過ぎ――
 

371 名前:Kresnik ◆fFCROSSQsM:2003/07/26(土) 19:20

Duel of the fates -Angels will arise,fallen Angels will arise,「Come on Arise!」- Kresnik vs Arucard
 
>>337 >>370を修正
 
 天を下る身体。
 失墜する身体。
 安定しない全身。
 俯瞰する地面はまだまだ遠くて、底のない沼みたいだ。
 それでも恐れはなくて、頭で別の事を思考した。
 ……嘗て空を追放された堕天の王は、何を思っていたのだろう。
 あれはいつかの昔。酒の肴はミルトンで、仲間達との馬鹿話。アリーは呆れ半分に
笑って、ケティはマジメに耳をそばだてて、議論好きな劉はチャーリーと激論を交わし
て――俺はといえば、オレンジジュースのコップを持ってそれを眺めてた。
 
『どうして堕ちたのか?』
 
 永遠の命題。堕落への渇望。愚者への誘い。
 下らなくも、考えた。何故か? 何故叛逆した? 力強き者への抵抗。従属の不満。
支配への餓え。劉の命題論だかなんだかは理解できなかったし、チャーリーのレトリ
ック批判も聞き流して、ただみんなの会話に耳を傾けていた。あの頃は理解もしなか
った。ただ、そこに居られるのが幸せだった。
 あの時はただ、楽しかった。みんなと居られるのが幸せだった。だから、考えもしな
かった。今は一人だから――そう、だからこそ今更に。
 今更に、思う。
 簡単なコトだと、そう思う。
 ルシファーは驕り昂ぶり、主の権威に嫉妬し、逆恨む如くに憤怒した。
 バカな話だ。あの時から、俺はそう思ってた。
 俺は違う。主の威光に跪き、彼の手を取ってその右手となろう。
 ヒトとしての意味を剥奪される日が来るのなら、俺が滅びる日が来るのなら、せめ
て彼の雷となって地獄を下ろう。
 人を護り、異形を討ち、世界の闇を薙ぎ払う為の。
 そう。
 ――せめて、俺は。
 
 今更何を恐怖する。今更何を躊躇する? みんなの生の証明。嘗て在った死神達
の生の証明――その為に生き延びた。
 その為に仲間でも喰らった。家族を破滅させ、親友も殺した。
 もし、今に罪を問うとするのなら――そう。此処で迷うコトこそが、俺が成す最大の
罪になる。
 もう、失う物は何もない。
 
 頬と髪と脇とを掠める擦過音。髪を、腕を、脚を、身体を、光の矢が掠めて過ぎる。
 まるで戦場の中心に立ってるみたい。遥かな足元、巨大な爆炎。世界を揺るがす
みたいな轟音。耳が割れるような激音。
 地上へは20メートル――落下のベクトルは、スキッドを蹴った際に計算把握調整
している。高高度からの落下、耳を叩く風音は死霊の共鳴となって響き渡る。
 生と死の境界線。1ミリのデッドライン上で踊るロンド。
 背中で弾けては散華するマズルフラッシュの雨の中、俺の身体は焦土と化した大
地の逆側、一際背の高いビル屋上を通り過ぎ――
 

372 名前:Kresnik ◆fFCROSSQsM:2003/07/26(土) 19:28

>>371
 
「良いか……アーカード」
 
 そのまま、聳え立つビルへ身体を寄せた。
 壁に両足を叩き付ける。慣性を殺す。スニーカーが摩擦に悲鳴を上げて、全身は
自由落下の法則に任せて下へ下へ。頭上と足元が光の矢の掃射で叩き崩される。
 当ってない。直撃は、無い。
 見ろ……見ろよ、アーカード。俺は、まだ死んでない……!
 落下していく屋上の縁の一角――縦横2メートル四方の塊。
 飛び移った。
 落下する足場で頭上を振り仰ぐ。漆黒の要塞。世界も心も覆い隠す黒い闇は、瘴
気を纏いながら悠然と闇色の空を徘徊している。
 は……なあ、そんなに余裕かよ、オマエ。
 あぁ、俺は怖い。怖いよ? 怖いけど――……そうか。
 オマエは、余裕なのか。
 肩を弾丸が掠める。衝撃で足場を踏み外しそうになる。……くく、は、はは。そうか。
この差が、オマエに余裕を与えてるのか。
 
「――人間を舐めるな、バケモノ」
 
 余計なモノは思考から排除した。
 Hk40カスタム。両手を振り上げて、抑え付けるように握った。
 降り注ぐ瓦礫。破片を受けながら、静かに石隗の縫い目をポイント。
 頭の中は冷え切って、ドライアイスでも詰め込まれたよう。風と灰と血の匂い。全て
は手に触れるように掴めた。クロックアップされた思考速度は俺の統制すら離れ、世
界の全てを逐次計算する。
 マズルでアパッチをトレース。軌道は経験が、タイミングは感覚が高速で演算開始。
 魂を弄う落下速度にエスコートされながら、感覚は限界を越えて何処までも冴え渡
っていく。純化された戦闘意思に促され、身体は例外ない戦闘機械へ。
 ラダーサイトを見据える。0.001秒単位で目標修正を繰り返し――
 俺は、諦念を込めて人差し指に力を込める。
 がちん、と引き絞るトリガー。ずん、と鈍いリコイル。
 白煙を引いて飛来する弾頭を視認と同時、FCSを高速起動――弾頭モード変更、
 ……目は醒めてるか、オレ? オーライ、それじゃ行こうぜ。
 
【Starting『Wishmaster』Verγ――COMPLETE.
 Load command-///-[-9-8-7-6-5-]-[OK]
 Warhead-Mode/[type]-[Air-burst]/――『Go!』】
 
「終われ――消え堕ちろ。お前はもう要らない……見飽きたんだよ、クソがっ!」
 
 夜空の絶叫が響き渡った。
 頭上では、夜気も灼き払うような熱い炎。
 ……頭が、痛い。
 落ちた背中も痛い。木屑を詰め込んだゴミ箱の中、頭上を振り仰ぐ。
 見上げた夜空は――……オレンジ色の花火が飾っていた。
 

373 名前:蔵田雅(M):2003/08/04(月) 01:57

鬼元刀京異聞 ――ハルノシュラ―― 〜クロウvs蔵田雅





真っ当な法が力を失い、狂った法がその威を振るう街、東京。
銃器の完全規制と始末法―――重犯罪者に対する逮捕・殺害権を一般市民に委託する
法案―――により、この街には古風な『刀』を握った犯罪者『愚連』とそれを狩る
賞金稼ぎ『始末』達で溢れかえっていた。
やがてこの街はもう一つの名で呼ばれる事となる。

刀の街、『刀京』と―――。


それは一つの伝説だった。
この街に潜む、奇妙な伝説。
普通、名のある愚連や始末には、その得意とする戦法や攻撃方法から取られた
通り名が付けられる。
例えば、彼女の鉄槌に由来する『打ち砕く』と言う通り名のように。
だが、そいつにはそれがなかった。
にも拘らず、そいつの名は裏の世界で禁忌とされる程に轟いていた。
そいつと相対して生きているものは存在しないと言う、冗談のような伝説の『愚連』。
通り名を残さぬが故に恐るべき、最強の名。

クロウ。

意味すら残さぬ、音のみの存在。

374 名前:クロウ ◆kurouBFrUI:2003/08/04(月) 02:04

鬼元刀京異聞 ――ハルノシュラ―― 〜クロウvs蔵田雅

>>373

百と十五年経った。その間に八回。それだけだ。
ただ一人を百十五年探し続けて、か細い噂の糸の端を見付けたのはたった八回。
その幾つかは外れで、残りは辿りきる前に糸が切れた。
「黒蜜」と名乗る女への手掛かりは、十一年前に絶えて以来音沙汰も無い。

最初の内は一人で探していた。直に限界に気付いた。
情報を握る者の――力のある組織の手が要る。
対価には何が良いか。売れる物は一つしかない。
幸いにも道具は手元にあり、やり方は何故か心得ていた。

躊躇いは始めてから二年で捨てた。


百年は長い。
世界や、そこに生きる人や―――

                     そして、人で無い生物まで。

全てが変わるには十分過ぎるだけの時間。
それでも、今も変わらない事がある。

「クロウ。俺の名はクロウだ。もし生きていられたら、誰にその様にされたか広めておけ」

左手首を潰し、右腕を肘から切り落とした男にそう言い捨てて歩き出す。
名を告げて、広めろと言うやり方。黒蜜の耳に届かせる為。
仕事を蹴ってまで訪れた9回目の手掛かりは、何時も通り空振りに終わった。
手間が掛からなかったおかげで時間は有る。が、今更仕事の方に回る気にもならない。
熾火のように燻る苛立ちを押し殺して、塒へと歩き出した

375 名前:蔵田雅(M):2003/08/04(月) 02:36

鬼元刀京異聞 ――ハルノシュラ―― 〜クロウvs蔵田雅
>>374

惨い―――とは思わなかった。
命のやり取りをしている以上、当然といえる結果なのだ。
生きているだけ運が良いだろう。尤も、生きているだけの生しか残されて
いないとも言える状態ではある。
残酷までに慈悲深い所業。
傲慢の域を超える身勝手さ。
どちらだろう、と埒もない事を考える。
答えは出ない。すぐにその考えを振り捨てた。

中程まで燃え尽きた煙草を壁面に押し付け、傍らに立てかけてあった
鉄槌に手を伸ばす。
軽く振る。馴染んだそれは腕の延長線上にあるように感じられた。
刀を打つ道具であり―――刀を討つ道具でもあるその鉄槌。
準備完了。

「―――クロウ、だな?」

立ち去ろうとする『それ』に声を掛け。

「何処にも、行かせない」

刀の間合いの僅かに外より、横殴りに鉄槌を突きつける。

376 名前:クロウ ◆kurouBFrUI:2003/08/04(月) 03:11

鬼元刀京異聞 ――ハルノシュラ―― 〜クロウvs蔵田雅

>>375

背後の気配。
無視して歩き去ろうとして、掛けられた声。
それを聞いてもまだ面倒だと思っている。

間合いを詰める足音。
風を切る音。
それを聞いてもまだ面倒だと思っている。

進行方向に跳びながら振り返り、鞘に収めたばかりの太刀を抜き放つ。
己が身も同然の、血肉を浴び喰らい続けた鋼。

「始まったら、終わるまでは一緒さ」

敵の獲物は鉄鎚。
刀や身体の末端でなければ、食らっても一度ではどうこうならないだろう。
それに先端が重い鎚では、振るおうにもこちらほど自在にはいくまい。
上から叩きつけるか、或いは今のように横に振るか。
足が地に着くと、目の前の女に向けて走る。

「その後はさよならだ」

一歩半で刃圏。
入るのと同時、鉄鎚を握る右腕へと一撃を送った。

377 名前:蔵田雅(M):2003/08/04(月) 03:40

鬼元刀京異聞 ――ハルノシュラ―― 〜クロウvs蔵田雅
>>376

外から内へ。
上から下へ。
振り抜き、伸び切った利き腕に向かって銀光が迫る。
更に踏み込む。
弓手を握りから外し、馬手を柄に沿って根元へと滑らせる。
勢いをつけて反転する鉄槌の柄が刀身を叩いて軌道をずらす。
至近距離。
手首を返し、相手の顔面に向かって真っ直ぐに突き出す。
右肩関節部やや下に疼痛。
掠めた。
無視。

378 名前:クロウ ◆kurouBFrUI:2003/08/04(月) 03:59

鬼元刀京異聞 ――ハルノシュラ―― 〜クロウvs蔵田雅

>>377

きん。

そんな音を聞いた気がした。
刀身から伝わる振動。軌道がずれる。
それでも当たった。が、言うまでも無く浅い。

切り返してもう一撃。
いや、刀身を叩いたのはなんだ。
あれか。鼻っ柱へと突き込まれる柄尻。
目や呼吸器は不味い。

頭を傾ける。耳元を掠めた。痺れと鈍い痛み。
引き付けた刃の腹を柄に擦り付けて走らせた。

指を貰う。

379 名前:クロウ ◆kurouBFrUI:2003/08/04(月) 04:09

鬼元刀京異聞 ――ハルノシュラ―― 〜クロウvs蔵田雅

>>377>>378修正)

きん。

そんな音を聞いた気がした。
刀身から伝わる振動。軌道がずれる。
それでも当たった。が、言うまでも無く浅い。

切り返してもう一撃。
いや、刀身を叩いたのはなんだ。
向こうへと逃げていく柄尻。あれか。
で、今度は槌の頭か。まるで棍の様に使う。

首の筋肉を緊張させる。額で受けた。重い。痺れと鈍い痛み。
堪えて、引き付けた刃の腹を柄に擦り付けて走らせる。

指を貰う。

380 名前:蔵田雅(M):2003/08/04(月) 04:22

鬼元刀京異聞 ――ハルノシュラ―― 〜クロウvs蔵田雅
>>379

手応え有り。
狙いはやや外れた。
鼻腔を潰すことが出来れば良かったのだが―――存外しぶとい。
右手に不自然な加重。
視線を横に向ける。
遡る白刃。
疾い。
咄嗟に手放す。
錘を下に落ちる鉄鎚。
跳ね上がる柄に向かって手を伸ばす。

―――届くか?

381 名前:クロウ ◆kurouBFrUI:2003/08/04(月) 04:44

鬼元刀京異聞 ――ハルノシュラ―― 〜クロウvs蔵田雅

>>380

太刀と違い、槌に鍔は付いていない。
そう反応するしかないだろう。
つまり、これは読めた。

標的を失った剣を止める。
後ろに置いた足に体重を移して、落下する鉄の塊へ蹴りを放つ。

そう易々と手に取らせるわけにはいかない。

382 名前:蔵田雅(M):2003/08/04(月) 04:56

鬼元刀京異聞 ――ハルノシュラ―― 〜クロウvs蔵田雅
>>381

柄が前方へと逃げる。
届かない。
蹴り飛ばされた鎚の頭が此方へと進路を変える。
腹筋を固め、後方へ跳ぶ。
衝撃。
胃の腑が裏返るが如き痛み。
堪えて伸ばす左手。
今度こそ、掴んだ。

383 名前:クロウ ◆kurouBFrUI:2003/08/04(月) 05:29

鬼元刀京異聞 ――ハルノシュラ―― 〜クロウvs蔵田雅

>>382

こっちを向いた長い柄。
女が体勢を立て直すより速く、追い縋って左手を伸ばす。
端の部分にぎりぎりで指が掛かる。
潰れよとばかりに力を込めた。
右腕を後方へ引き、さながら見えない弓を引いているような形を作る。
左腕を引き、反動で右腕を突き出す。
握った太刀の切っ先は女の咽喉笛へ吸い込まれていく。

384 名前:蔵田雅(M):2003/08/04(月) 19:02

鬼元刀京異聞 ――ハルノシュラ―― 〜クロウvs蔵田雅
>>383

姿勢が崩れ、たたらを踏む。
神速で突き出される切っ先。
考えるより早く身体を動かす。
右手を鎚の頭に添え、
左手を押し出す様に力を込め、
右側面、相手の外側へと身体を倒れ込ませる。
皮一枚。
切っ先によって引き裂かれ、血が滲む。
二転。
まだ、やれる。

385 名前:クロウ ◆kurouBFrUI:2003/08/04(月) 20:11

鬼元刀京異聞 ――ハルノシュラ―― 〜クロウvs蔵田雅

>>384

これも浅いか。やる。
首筋の赤が目に飛び込んでくる。疼く。
そう言えば暫く吸っていない。

突き出した右手に左手を添える。
女はほぼ背後。
振り向きながら腰を落とし、地面を這うような横薙ぎの一閃。

良い匂いだ。

386 名前:蔵田雅(M):2003/08/07(木) 04:51

鬼元刀京異聞 ――ハルノシュラ―― 〜クロウvs蔵田雅
>>385

片膝をつき、上体を起こす。
立ち上がりかけた瞬間を狙い襲い来る剣閃。
柄尻を地面に突き立て、力を込める。
反動を用い、後方へ跳び退く。
刀と腕と。
その二者の丈を合わせ、僅かに届かぬ間合いを保ち。

立ち上がる。

「はン、上等じゃァないか」

昂揚している。だが、油断は禁物。
鉄鎚を構え直し、相手の出方を待つ。
静かに。

387 名前:クロウ ◆kurouBFrUI:2003/08/07(木) 21:43

鬼元刀京異聞 ――ハルノシュラ―― 〜クロウvs蔵田雅

>>386

振り出しに――いや、振り出しは背中を向けてたから微妙に違うか。
まあ、どうでも良い。
向こうは様子見の構えだ。

大勢には影響無い程度の傷。
けれど匂う。色が見える。
それが昂ぶりを呼ぶ。

腰の鞘を毟り取って左手で握る。
左手の鞘を大きく前に、右手の太刀は脇に。

「……どうした? 来ないなら俺は行くぜ?」

そのまま後ろに下がる。
誘いだ。
乗ってくれば良い。乗ってこないならこのまま行く。

そして、何処かで目の前の女に似た女が一人死ぬ――かもしれない。

388 名前:Kresnik ◆fFCROSSQsM:2003/08/10(日) 13:28

Duel of the fates -Angels will arise,fallen Angels will arise,「Come on Arise!」- Kresnik vs Arucard
 
>>337 >>371>>372を把握の問題で修正
 
 天を下る身体。
 失墜する身体。
 安定しない全身。
 俯瞰する地面はまだまだ遠くて、底のない沼みたいだ。
 それでも恐れはなくて、頭は別の事を思考した。
 ……嘗て空を追放された堕天の王は、何を思っていたのだろう。
 あれはいつかの昔。酒の肴はミルトンで、仲間達との馬鹿話。アリーは呆れ半分に
笑って、ケティはマジメに耳をそばだてて、議論好きな劉はチャーリーと激論を交わし
て――俺はといえば、オレンジジュースのコップを持ってそれを眺めてた。
 
『どうして堕ちたのか?』
 
 永遠の命題。堕落への渇望。愚者への誘い。
 下らなくも考えた。何故か? 何故叛逆した? 力強き者への抵抗。従属の不満。
支配への餓え。劉の命題論だかなんだかは理解できなかったし、チャーリーのレトリ
ック批判も聞き流して、ただみんなの会話に耳を傾けていた。あの頃は理解もしなか
った。ただ、そこに居られるのが幸せだった。
 あの時はただ、楽しかった。みんなと居られるのが幸せだった。だから、考えもしな
かった。今は一人だから――そう、だからこそ今更に。
 今更に、思う。
 簡単なコトだと、そう思う。
 ルシファーは驕り昂ぶり、主の権威に嫉妬し、逆恨む如くに憤怒した。
 バカな話だ。あの時から、俺はそう思ってた。
 俺は違う。主の威光に跪き、彼の手を取ってその右手となろう。
 ヒトとしての意味を剥奪される日が来るのなら、俺が滅びる日が来るのなら、せめ
て彼の雷となって地獄を下ろう。
 人を護り、異形を討ち、世界の闇を薙ぎ払う為の。
 そう。
 ――せめて、俺は。
 
 今更何を恐怖する。今更何を躊躇する? みんなの生の証明。嘗て在った死神達
の生の証明――その為に生き延びた。
 その為に仲間でも喰らった。家族を破滅させ、親友も殺した。
 もし、今に罪を問うとするのなら――そう。此処で迷うコトこそが、俺が成す最大の
罪になる。
 もう、失う物は何もない。
 
 頬と髪と脇とを掠める擦過音。髪を、腕を、脚を、身体を、光の矢が掠めて過ぎる。
 まるで戦場の中心に立ってるみたい。遥かな足元、巨大な爆炎。世界を揺るがす
みたいな轟音。耳が割れるような激音。チェーンガンとヘルファイアの残弾が、遠慮
呵責なくこの身に牙を向いた音。
 ……全く、ミサイルは使い切っておくべきだった。
 地上へは20メートル――落下のベクトルは、スキッドを蹴った際に把握調整して
いる。高高度からの落下で、耳を叩く風音は死霊の共鳴となって響き渡った。
 生と死の境界線。1ミリ足らずのデッドラインで、落ちる身体はロンドを踊る。
 背中で弾けては散華するマズルフラッシュの雨の中、俺の身体は焦土と化した大
地の逆側、一際背の高いビルへと落ちていく。
 深く、遠く、地獄その物の下界へ。
 

389 名前:Kresnik ◆fFCROSSQsM:2003/08/10(日) 13:30

>>388
 
 口が渇く。
 濁った冷たい風に嬲られて、粘膜は完全に干上がっている。軽く唇を舐めた。
 落ちて行く視界の中――自分を笑いたくなる位の冷静さで、そっと言葉を告いだ。
 
「良いか……アーカード」
 
 落着の寸前――夜空から廃墟のビルへと移り変わる景色。
 今なお速度を増す身体。重力加速度を引き連れて風を切り続ける肉体を御し――
空気の膜を無理矢理裂きつつ、聳え立つビルへ全身を寄せた。
 壁に両足を叩き付ける。慣性を殺す。スニーカーが摩擦に悲鳴を上げて、全身は
自由落下の法則に任せて下へ下へ。頭上と足元と左右のコンクリートが遥か頭上か
ら降り注ぐ光の矢の掃射で叩き崩される。
 頬を掠める光。瞼を叩くコンクリートの破片。目に血が流れ込む。唇に鉄錆の味が
広がる――けど。当っては、いない。直撃は、無い。まだ、死んでない。
 見ろ……見ろよ、アーカード! まだだ。
 俺は、まだ死なない!
 頭上を振り仰ぐ。漆黒の要塞。世界も心も覆い隠す黒い闇は、瘴気を纏いながら
悠然と闇色の空を徘徊している。
 輝き続ける分間4千発のマズルフラッシュが自己主張。夜空で点滅を繰り返すソ
レは、まるでパレットに満ちた黒へと放り込まれたオレンジの絵の具みたいで――そ
の中に落ちた一滴の白が俺なら、今や殺意という筆が掻き回して生み出そうとする
色は、やがては漆黒へと終息していく混沌色だ。そうとも、この黒は果てしない。
 だけど。
 白は、消えない。幾ら黒を上塗りされても――完全には、絶対に消えはしない。
 は……なあ、そんなに余裕かよ、オマエ。あぁ、俺は怖い。怖いぜ?
 けど、そうか。
 オマエは、余裕なのか。
 肩を弾丸が掠める。衝撃で足場を踏み外しそうになる。……くく、は、はは。そうか。
この差が、オマエに余裕を与えてるのか。
 
「――人間を舐めるな、バケモノ」
 
 死ぬのはお前さ。口の中で続けて、ヤツに関する情報以外の一切を思考から排除
する。
 Hk40カスタム。両手を振り上げて、グリップを引き付けるように握った。
 降り注ぐ瓦礫。破片を全身で受けながら、静かに石隗の縫い目をポイント。足場亡
き中空という足場の上、震える手とグラ付くマズルでアパッチをトレース。
 頭の中は冷え切って、ドライアイスでも詰め込まれたよう。風と灰と血の匂い。全て
は手に触れるように掴めた。クロックアップされた思考速度は俺の統制すら離れ、世
界の全てを逐次演算する。
 弾丸軌道は経験が、タイミングは感覚が高速で演算開始。
 感覚を揺さぶる落下速度にエスコートされながら、感覚は限界を越えて何処までも
冴え渡っていく。
 純化された戦闘意思に促され、身体はただただ冷静な戦闘機械へ。ラダーサイトを
見据え、0.001秒単位で目標修正を繰り返し――
 俺は、諦念を込めて人差し指に力を込めた。
 がちん、と引き絞るトリガー。ずん、と鈍いリコイル。
 白煙を引いて飛来する弾頭を視認、FCSを高速起動。弾頭モード変更、
 
【Starting『Wishmaster』Verγ――COMPLETE.
 Load command-///-[-9-8-7-6-5-]-[OK]
 Warhead-Mode/[type]-[Air-burst]/――『Go!』】
 
 小さく、コマンド終了の電子音――パネルをなぞり終える指。唐突で奇妙な開放感
に押されて喉の奥から笑い声とも歓声とも悲鳴ともつかない声を絞り出し、
 
「終われ……消え堕ちろ。お前はもう要らない――見飽きたんだよ、クソがっ!」
 
 地面への相対距離、ゼロ。
 どすん、背中に鈍い衝撃。息が詰まる。
 同時に――夜空の絶叫が響いた。頭上には、夜気も灼き払うような熱い炎。
 ……頭が、痛い。
 落ちた背中も痛い。木屑を詰め込んだゴミ置き場の中で、頭上を振り仰ぐ。
 見上げた夜空は――……オレンジ色の花火が飾っていた。
 

390 名前:蔵田雅(M):2003/08/13(水) 18:35

鬼元刀京異聞 ――ハルノシュラ―― 〜クロウvs蔵田雅
>>387

打撲、裂傷、骨、筋肉に異常なし。
男の後退に合わせ、ジリ、と一歩踏み込む。
風が流れる。

死線上で綱渡りする感覚。
駆け引きは、焦ったら負けだ。
誘っているのは分かる。
だが。

「これだけ時間を稼がせてもらったんだ。それがどう言う事か―――」

呼吸を乱さない程度に言を区切る。
威圧と虚言。
心に楔を打ち込む。
風が冷たい。
鎚の頭を僅かに後方へ。
予備動作に見えるか。

状況はまだ動かない。

391 名前:アーカード ◆VAMPKPfGto:2003/08/13(水) 22:25

>>389 Duel of the fates -夜ハ謳イ死ヲ奏デ- Kresnik vs Arucard
 
 <「あれ」は危険だ>
 
 迫り来る拳ほどの塊に、無数の<アーカード>はその脅威を直感した。
 <危険だ>
 それは事実だ、それは確信だ。
 鎌首をもたげた蛇が獲物に馳せる――その動作を思わせる怒涛の勢い。数本の触手がグレネード
弾頭へと走った。黒腕は芥のように無造作に弾殻を圧壊するだろう。まるで玩具でも潰すように、卵の
殻を割るように。
 そのはずだった。無下に捻り潰すはずだった。
 予定は覆された。
 グレネードの黒点は小さな赤点へと変色……起爆の予兆は突然。直後の炸裂は間をおかない。
 接触を起因とする爆裂ではない、射手の恣意混じりの遠隔起爆。夜陰を切りわけて殺到した触手の
海また海は、獲物を追う鮫から転じ、大網に追われた魚群となった。
 虚空から生まれ出でたのは炎の波。夜気を殺し命奪う熱波だ。無数の触手は炎と鉄の破片にずた
ずたに抉られ、切り刻まれ、最初からなかったように夜空に溶けていく。
 グレネードの猛威は本体にすら及んだ。
 矢継ぎ早に触手が伸びる。穿たれ抉られ、剥ぎとられた損傷を補っていく。
 不死と死人の街を縛す聖域が外因からなる結界であるのなら、この不死者の王の結界は内因から
なる結界だ。外敵を排撃し殲滅する光(キリスト)の秘蹟の中で蠢(うごめ)くのは、魔王を守護し闇の
癒しで再生を与える偽救世主(アンチ・キリスト)の秘蹟か。
 聖魔の兄弟は、ここにあって代理戦争を開始したのだ。
 
「愉快だ、実に愉快だ。楽しいぞ、貴様は。魂を肉に置いてその異常か。まったくもってお前等は異常
者だらけだ、二千年前から何も変わらん、あの時からすら何も変わらない……くッ、くく、はッ、ははッ、
ははははははッ……まったくもって異常者、狂人の巣窟だ、いつの時代も貴様達(ヴァチカン)は!」
 
 万古を経ても変わらぬ定め。光と闇の相克、白と黒は相容れぬ。かつての独逸、今の亜米利加。正
も邪もない世の中ならば、時代の優劣決むるは力の理(ことわり)である。
 かつて人と言う白に破れたこの不死王にとって――かつて彼が傅く者持たぬ王であった頃、彼を討
ち果たしたのは、そう、人間だ――この男は再度巡った白との再戦。運命を背負った闘争だ。
 だからこそ彼は楽しいのだ、この上なく。
 喜悦に答えるように闇(アーカード)は濃度を増しつつあった。
 ぼこぼこと黒く泡立つ鋼の体表、いまや瞳だけでなく数多の口腔を生やすそれ。時折その歯を噛み
合せると、がちがちがちと奇怪な笑い声を上げた。
 一きわ目立つ瞳の集合、キャノピー部の五十にも及ぶ群の中央に、一対の巨大な赤眼が出現した。
にいと、潰れた卵のような笑みへ瞳が歪む。曇りはなく、されど明るさも快活さもまるで見て取れない
薄笑み。それは恐らく、意思の疎通すら通らぬ爬虫類か鳥類のそれに似ていたからだろう。
 
 再度触手が閃いた。
 それは無数で長大で、キリの先端を有した数多のトゲだ。
 ヘリの本体は杭打ち機となった。海底へと錨を打ち込む戦艦の如くに遥か遠く下、ビルの群群へと
キリを突き刺したのだ。がくんと機体が揺れ、空へと巨体を固定する。
 そこで終わらない。打ち込まれた触手の黒は壁面へと滲み出す。ビルにも瞳が生まれた。次いで
口が。触手を打ち込まれたビルの全てが、瞳と口の塊と変わった。
 結界を自らという結界で塗り替えて全ての彼、即ち夜の全てが笑った。千里の先まで届く声とは、
この時けして比喩ではない。声は届くのではなく、全てに遍在して在ったのだ。
 

392 名前:アーカード ◆VAMPKPfGto:2003/08/13(水) 22:27

>>391
 
「さあ、支払いをすませなければな。貴様の悪意、しかと受け取った。ペイは弾んでやる。チップも付
けてやろう。今のお前にはそれだけの価値がある。「殺し屋」よ、「死神」よ。私はとても"うれしい≠ィ
前のような恐るべき馬鹿が、恐るべき人間がまだこの世界にいる事が、かつて私を"殺した≠の人
間のようなモノがいる事が、とてもとても、嬉しい。まだまだこの世界は狂気に満ちている」
 
 そして。
 火砲が閃いた。
 今やその一弾一弾すら尋常の物ではない。今や弾薬庫にすらアーカードは"侵食≠オていた。そ
の細胞は弾丸の構成すら変質させていたのだ。薬莢と火薬へと加えられた一要素。不死王の細胞
という要素をして、放たれた火箭は漆黒の弾体を成した。
 地へと下った男の姿はもはや遠い。――だが。火箭が撃ち抜くのは男の肉ではなかった。
 チェーンガンが鼬のように首を廻らせる。四方へ八方へ。マズルフレアを撒き、爆音を放ち、地上を
黒き弾丸の雨で覆い尽くしたのだ。
 狙いを違えたのか? 遥か下方を狙えないからか? 否。彼は、断じてその両方に否を返す。
 射線の先には彼の目的があった。
 南では二台のワゴンがフロントガラスとルーフを射抜かれた。
 東ではトレーラーが、西では廃棄されたクレーン車が、北には乗り捨てられたカローラが。
 撃ち込まれた弾丸は楔となる。
 着弾点を中心として、染みは車体全体へと滲み渡った。瞳が生まれ口が生まれ――げたげたと笑
う周囲のビルと同じ変容を果たす。――違う一点はと言えば、この怪異は自ら走行するという事だ。
 金属を擦り合わせるような叫び声にタイヤの摩擦音も高々と、すべての車体はアクセルを押し込
んだ。ドライバーもなく加速した車体は、路地に落ちた青年の元へと集っていく。仕上げとばかりに
青年を捉えたのはチェーンガンの砲身だ。
 火弾が唸る。火鉢に放られた弾ける栗のごとく異界の黒弾は飛び、男を四方から挟撃する車両の
ただ中へ。
 三千世界の鴉を殺す悪意が今こそ、猛悪と解放された。
 

393 名前:クロウ ◆kurouBFrUI:2003/08/14(木) 21:26

鬼元刀京異聞 ――ハルノシュラ―― 〜クロウvs蔵田雅

>>390

当然だが、前を向いたまま後ろが見える訳じゃ無い。
かと言って後ろを向くのは間抜けにもほどがある。
このまま下がって変な物でも踏めば、隙が生まれる。

「来ないのか? なら行く」

女に背を向ける。これだけなら只の間抜けだ。
勿論、これだけじゃない。
背を向けながら『女の方へ』跳んで、ぶち当たりに行く。
身体の影で右手の太刀を逆手に持ち直し、柄尻に左手を添える。
間髪入れず、自分の腹に突き立てた。
普通ならこんな事はやらないし、そもそもやれない。
が、俺なら骨さえ避けておけば、さほど問題も無い。



その気になれば逃げられたろう。
なんで行かなかった?
決まっている。この匂いの所為だ。

394 名前:アーカード ◆AoARUcArDs:2003/08/16(土) 00:32

アーカードVS長谷川虎蔵『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』 導入
 
 ――――とある花街、名も知らぬ遊郭で事件は起きた。
 
 花街の客を装った吸血鬼により、大規模な吸血鬼禍(ヴァンパイア・ハザード)発生。
 遊女、客を中心に吸血による転向者多数。
 現在、当該の吸血鬼は遊郭に立てこもって遊女達の血を啜っているとの事。
 ターゲットの名はクイン、アメリカから流れてきたチンピラ吸血鬼らしい。
 
 花街は、まさに混乱のるつぼへと叩き込まれていた。
 「なった」ばかりで、血の渇きを抑えきれない転向者達が更なる犠牲者へと牙を剥く。
 いくら親が死ねば戻れる段階とはいえ、あまり放置しておくのも被害の拡大に繋がる。
 よって、混乱の最中に赤黒い影に頭を吹っ飛ばされ、心臓を抉られて滅びる転向者達がいた。
 
「数が多い。雑魚にばかり構ってもいられんな」
 
 親となる吸血鬼が逃げ込んだとされる遊郭の方へと視線を向けて、アーカードが呟く。
 逃げまどう人々へ真っ向から対峙しているかのように、人をかき分けて頭一つ抜けたアーカードは歩く。
 道すがらに、転向者達を滅ぼしながら。
 追う者追われる者一緒くたの海を泳ぐように。
 
「……ここか」
 
 目的の遊郭の入り口で立ち止まり、建物を見上げる。
 ここらでも一際目立つその建物の中に、吸血鬼がいる。
 くつくつと喉を鳴らし、建物の中へと一歩踏み出した。
 
「退屈だけはさせてくれるなよ」
 
 死体を貪っていた転向者をジャッカルで射殺し、更に奥へと進んでいく――――。

395 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg:2003/08/16(土) 00:48

アーカードvs長谷川虎蔵 『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』
>>394
 
「偶に羽根伸ばそうって来てみりゃあ。――何なんだ一体」
 
 そんな事を呟きながら、群集を掻き分けて進む男が一人いた。
 方向は逃げ散る流れと逆に、即ち騒動の中心へと向かっている。
 
 長身の男だ。見かけはまだ若い。
 造作そのものは端正だが、女性的な柔さとは無縁の精悍な顔付きである。
 長髪を背に流すロングコート、スーツにネクタイ。全て黒であった。 
 物凄く面倒臭そうな光を点す瞳は一つきりだ。右眼は眼帯に覆われている。
 
 随所に点在する死体の幾つかと、時折見え隠れする牙持つ人影を視界に入れ、男は
うんざりしたような面持ちで頷いた。
 
「こんなとこで吸血鬼禍起こすかね。最近の成り立て(ニューボーン)は、どうにも品が無いな」
 
 いかんね、と云い様、地面に視線を落とす。その表情が訝しげに顰められた。
 死体である。何体もあった。
 左胸に巨大な空洞が開いているもの。下顎から上が無いもの。頭部だけのもの。
 血臭と同量の硝煙に塗れるそれらを、男は吸血鬼に成りかけて成り損ねた残骸と認めた。
 
「そんじょそこらの吸血鬼の仕業じゃねえ、と。随分とまあ剣呑なニオイだ」
 
 男は顔を上げた。左眼は屍と血で舗装された道の先を見つめている。
 酷く凄絶な眼差しであった。
 
 
「……で、結局行く先までおんなじかよ。何つーか、何てんだ。ツイてねえなぁ」
 
 暫くの後、元々目指していた遊所の店先に立ち、隻眼の男はぼやきながら嘆息する。
 数ある異名を世界の暗黒街へ轟かすこの男の今一つの名は――長谷川虎蔵と云った。

396 名前:アーカード ◆AoARUcArDs:2003/08/16(土) 00:49

>>395 アーカードVS長谷川虎蔵『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』
 
 ――――――――十数分後。
 
「――――フン、これだけの騒ぎを起こすからどれだけ骨のある奴かと思ってみれば、唯のチンピラか」
「あ、アーカード……クソッ! 何でこんなとこに……」
 
 一人の女性――既に目は朱く、牙は鋭く――を腕の中にかき抱きながら、クインが呆然と呟く。
 真逆、こんな極東の国に逃げてきてまで大英帝国が擁する最強の吸血殲鬼と出会ってしまうとは。
 アメリカでヘマをやらかし、ヴァチカンへの尻尾切りとしてフロストの一派から離脱させられた。
 それから必死で奴らの手から逃げ回り――戦って勝てる相手ではない――この極東へと流れ着いたのだ。
 ここなら、この国ならヴァチカンの手も及ばないと及ばないと思っていたのに……何故ヘルシングが?
 そもそも、この騒ぎは何だ? 何故、たかだか一人つまみ食いしただけでこんな事態になっている?
 しかも、その首謀者がなし崩しに自分という事になっているらしい。
 一人吸ったというのならば確かにそうだが、それにしても不理解に過ぎる。
 その一人は、未だ路地裏で転化の痛苦にのた打ち回っている筈なのに。
 
 しかし、現実はそのような事情になど構ってくれはしない――さりとて、まだ諦めるには早い。
 最強の吸血殲鬼、ヘルシングのジョーカー、不死の王アーカード。
 まともに戦えば勝ち目はゼロにも等しいだろう……だが、この人質を使って逃げる事ならば?
 藁より細く脆い希望であっても、そこに縋らずにはいられないのが生ける者――死んでいるが――の性。
 
「おい、いいかアーカード。妙な真似はするなよ? アンタだって、生存者は多い方がいいはずだ。
 下手に動くと、この女が……ッ」
「五月蠅い」
 
 クインが全てを言い終える事はできなかった――理由は二つ。
 一つは剣呑な銃声が続く声をかき消したからであり、一つは声を出すべき頭が欠けたから。
 音もなく、まるで気が付けばそこにあったかのような454カスール改造銃の硝煙漂う冷たい銃口。
 轟音を響かせて空を裂く爆裂鉄甲弾は、狙い過たずに頭一つ高いクインの頭部のみを撃ち砕いていた。
 血と脳漿が盛大に弾けて室内にぶちまけられ、ゆっくりとその巨体がくずおれてゆく。
 腕の中の女がゆっくりと畳の上に倒れ伏した。

397 名前:アーカード ◆AoARUcArDs:2003/08/16(土) 00:49

>>396 続き
 
「雑魚が私と取引だと? 思い上がるな。おまえに選択権など始めからない、私に敵対した時点でな」
 
 銃を懐にしまい、倒れている女の方へ視線を向けて……表情に困惑を浮かべた。
 親は確かに死んだ、そして時間的にもまだまだ余裕はあったはずだ。
 だが、薄く開かれた目の奥から覗く瞳は朱い光を放ち、唇からは鋭い犬歯がちらりと顔を出している。
 
(――――どうしてこの女は未だ『吸血鬼』なのだ? 否、どうして既に『吸血鬼』になっているのだ?)
 
 通常、吸血鬼に血を吸われた人間はまず吸血鬼に「なりかける」。
 その程度は様々だが、意志なき食屍鬼から数年掛けて吸血鬼へと変貌していくケースが多い。
 今回殲滅した吸血鬼はそうではなく、割と早い段階でなってしまうケースであるようだ。
 だからといって、たかだか数時間で完全になってしまうケースなど、アーカードは聞いた事がない。
 例外はいつだってあるモノだが……。
 
「……仕方あるまい」
 
 懐にしまった銃を改めて抜き、うつろな表情をしている女の頭部へポイント。
 吸血鬼になってしまっている以上、生かしておくワケにはいかない。
 婦警のような例外はそうそうありはしないのだ。
 
「呪うなら我が身の不幸だけを呪うのだな。おまえはそれ以外何も悪くはないのだから」
 
 銃口が、冷たい銀光を眼下の女へと投げかける――――。

398 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg:2003/08/16(土) 00:52

アーカードvs長谷川虎蔵 『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』
>>396 >>397
 
 軽い擦過音がした。
 ほの明りが灯って消える。マッチの火だ。
 
「とうに苦界へ堕ちてる女に、今更そういう物云いはちっとばかり野暮じゃないか?」
 
 からかうような声が、紫煙を混じらせて入り口辺りから漂って来た。
 散らばる障子の残骸を踏み、柱に背を預けた男が紙巻を吹かしている。
 長谷川虎蔵であった。
 
「ま、手前ぇら吸血鬼に粋だ何だと説いたって、そりゃもう時間の無駄だろうが。
 にしてもな、色里へ泥靴で上がって暴れ散らした挙句、女郎にてっぽー突きつけてんじゃ
ねーつうんだ」
 
 尤も虎蔵自身も土足ではあるのだが。
 左眼だけを横にやり、素早く室内を見渡す。
 散乱する夜具やら調度品、血溜り、そして巨大な拳銃を構える紅い男。
 芬々たる死の臭いの元凶はこいつか、と虎蔵は胸の内で毒突いた。
 
 もう一つ――その銃口の下、伏したまま夢見るような面持ちを湛える遊女。
 眼は赤色に潤み、口元には八重歯にしては長すぎる白さが零れている
 抜けるようなその肌の色は、決して白粉だけの所為ではあるまい。
 
 虎蔵は煙草を口に戻した。もう一服。
 煙を天井へ吐いてから第一な、と続ける。
 
「そこの朱乃は、これから俺と一戦交える女だ。手荒くしてくれるなよ」
 
 隻眼が男を射る。次第に細まっていく。
 煙草の先端で一筋、幽かな紫電が湧いた。

399 名前:アーカード ◆AoARUcArDs:2003/08/16(土) 00:52

>>398 アーカードVS長谷川虎蔵『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』
 
 背後から掛けられた声に、すっとアーカードの目が細まった。
 漂ってきた一筋の紫煙に隠された口元が、笑みに歪む。
 
「これは失礼。屋内で土足を脱ぐという極東の習慣にまだ慣れていないモノでな」
 
 首を前に向けたまま、何処かからかうような調子を含んだ声で反駁した。
 その間も、銃口の単眼は女の頭部を一瞬も逃さずに睨み付けている。
 「なってしまった」自分の身体にまだ馴染めないのか、女の方は倒れたまま動かない。
 向けられた銃口にも気付いていないかのように、だが新たに現れた男に対しては微かな反応が見えた。
 その様子に気付き、男への興味が更に募る。
 
「おまえ達は知り合いか。なるほど、それは無碍に見捨てるワケにもいくまいな」
 
 だが、とアーカードは続ける。
 
「私の仕事はゴミ掃除だ。そして、吸血鬼と化してしまったこの女はゴミだ。
 今はまだいいだろう、だが、直に血の渇きに耐えられなくなる、殺したくてたまらなくなる。
 ――――血を啜りたくて疼くようになる。
 情事の最中にすら、おまえの首に牙を突き立てたくて仕方なくなる」
 
 一つ言葉を区切り、首だけが後ろへと傾く――朱い光を放つ瞳が片方、男へと向けられる。
 
「そうなったら、おまえはどうするね?」
 
 口元には、嘲笑を思わせる形に笑みが深く刻まれていた。
 剥き出しの牙が、白く光る――――。

400 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg:2003/08/16(土) 00:54

アーカードvs長谷川虎蔵 『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』
>>399
 
 嘲りを、虎蔵は鼻先で笑い返した。
 
「やっぱりあれだ、新生者(ニューボーン)も長生者(エルダー)もあったもんじゃねぇ。
 お前ら吸血鬼はどいつもこいつも野暮天だ」
 
 躯ごと、静かに吸血鬼へ向き直る。
 正確には吸血鬼“達”だ。床から見上げる赤い目線へ、眼だけで軽く応じる。
 上がる隻眼が鈍く輝く巨銃を、禍々しい牙を、そして嗤う瞳を順繰りに見遣った。
 
「紅い渇き? 殺したい、啜りたい? 床ん中で牙立てるかも?」
 
 口の端が歪む。多分相手と同じく、笑いなのだろう。
 その貌は何か別の生き物のようで――眼前の怪物が浮かべる表情と何処か似通っていた。
 
「馬鹿。だから、良いんだよ。
 その程度のヤバい女抱けなくて、男の甲斐性なんざ語れんだろうに」
 
 両手を脇に垂らしたまま、黒衣の男は立っている。
 その身に寸鉄も帯びているとは思われない。精々左の指が摘んだ煙草くらいだ。
 そこから流れる煙に乗って僅かな、だが剄烈な鬼気が一筋、吸血鬼へと流れた。

401 名前:アーカード ◆AoARUcArDs:2003/08/16(土) 00:54

>>400 アーカードVS長谷川虎蔵『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』
 
「ほう」
 
 男の返答に、一つ感嘆を含んだ声を漏らす。
 男の剛胆に感心しているのか、表情にも僅かに賛嘆の色がある。
 もっとも、それも深く凄惨な笑みの中に埋もれてしまうが。
 
「さて、それは困った。おまえはこの女に手を出すなと言う。だが私の仕事はゴミ掃除でね……」
 
 一度、銃口を女から外して男の方へ全身で向き直る。
 朱と黒の二色で構成されたその姿は、漂う鬼気を受け流して揺らぐ様子もない。
 少し離れた男へと歩いていき、すれ違う間際で踵を鳴らして立ち止まる。
 男の真横から、血の臭いが漂う吐息と共に最後の問い掛け――闘争への引き金――を行った。
 
「助けたければ、私を打ち倒せ」

402 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg:2003/08/16(土) 00:55

アーカードvs長谷川虎蔵 『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』
>>401
 
 横から吹き返って来る殺気の対流に乗るかのように、煙草を挟んだ指が持ち上がる。
 自然極まりない動作だ。
 ああ、とまだ笑みを浮かべたままの虎蔵は突きつけられた“引き金”を――
 
「じゃ、そうするかね」
 
 “引いた”。
 
 小爆発は、石火の暇(いとま)すら与えぬ間に起こった。
 指先で弾いた煙草が、灼熱の雷震と変じて吸血鬼に襲い掛かったのだ。
 陰陽五行で云う“木”気、最前煙草に込めておいた雷(いかずち)を解放したのである。
 五行の則を縦横無尽に駆使する事こそ、長谷川虎蔵の尤も能くする所であった。
 
 コートが黒翼の如く翻る。
 火風を避け、同時に虎蔵は室内へ飛び込んでいた。
 こんな狭い空間でこんな技を揮えば、助けるべき朱乃の身にまで害を及ぼしかねない――
そんな思考はこの男にはない。
 余波には巻き込まれるかもしれないが、今の彼女は人外の世界に足を踏み入れた存在だ。
 常人とは比較にならない耐久力を得ている筈だし、第一もう“死んでいる”。
 冷徹とも無情とも評しようがない、凄まじいまでに割り切った行動と云えた。
 
 ともあれ雷鼓の余韻鳴り渡る室内を、護るべき女人へと虎蔵は跳ぶ。
 爆風に煽られ、朱乃の躯は窓際まで叩きつけられていた。

403 名前:アーカード ◆AoARUcArDs:2003/08/16(土) 00:56

>>402 アーカードVS長谷川虎蔵『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』
 
 狭い室内を雷鳴が鳴り響き荒れ狂い、アーカードを打ちのめす。
 その奔流に身を灼かれ煙を上げながらも哄笑。
 半身が吹き飛ばされ、明らかに心臓が消し飛んでいる状態で嬲られて吹っ飛ぶボロ切れは嗤う。
 
「そうか、人間ではないなおまえ? 土着の自然霊の一種か。
 それが人に紛れて生きていると、なるほどなるほどおもしろい」
 
 受けた一撃から、そう判断した。
 これほどの雷撃、人の身にすぐさま操れるモノではない。
 人が身につけた魔術とは一線を画す、生粋の雷。
 
「何を思ってその身を人にやつしているのか、興味深いことではある」
 
 宙を舞いながら、女へと向かう男にジャッカルの銃口をポイント。
 室内と室外、それを隔てる僅かな隙間を縫うように、その照準は正確の極み。
 
「事が終わって口を利く元気があったら聞かせてもらうとしよう」
 
 トリガー、雷鳴響く空間をよりいっそう強く自己主張する銃声が切り裂く。
 まっすぐに、自分に対して背を向けている男の背中へと直進していった。
 
「敵前で背を見せていていいのかね?」
 
 自らの非常識さを棚に上げて、愉快そうに揶揄する。
 誰もが、この状況で背後から狙われることなど想定すまい。
 壁に叩きつけられたところで着地、全身から煙を上げて再生を続けるボロ切れが室内へと歩き出した。

404 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg:2003/08/16(土) 00:57

アーカードvs長谷川虎蔵 『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』
>>403
 
 虎蔵は片膝をついて着地した。伏した朱乃の前である。
 唸る銃弾を知ってか知らずか、背を向けたまま右手を畳へ振り下ろす。
 
 途端、虎蔵の真後ろの畳が撥ね上がり直立したのである。その向こう、そのまた向こうと
陸続し、瞬く間に部屋の半分は畳の林と変じる。黒コートはその中に埋没した。
 如何なる力学の作用を働かせたか、乱立する畳返しの秘技であった。
 尤も弓矢なら兎も角、巨銃の咆哮の前には所詮薄紙の守りでしかない。
 畳の壁は悉く鋼鉄の銃鳴に粉砕され、木っ端微塵に裂かれた。
 
 硝煙と共に乱舞する井草の残片の中にあるのは、しかし横たわったままの朱乃だけだ。
 彼女は奇跡的に銃火を逃れたと見えるが、黒い風来坊は影も形もない。
 
 声だけが、フィルムの逆回転めいて復元していく吸血鬼の脇からした。
 
「余所見よりはマシさね」
 
 その言葉が終わらぬ内、灼き金の如き刃筋が空を走った。
 忽然と横手に現れた虎蔵が、羽ばたくような逆袈裟斬りを繰り出したのだ。
 諸手がそれぞれ握る日本刀は両の腰から抜き払ったものである。――文字通りの丸腰から。
 
 常軌を逸した容量の武器を躯の隅々に隠し持つ暗器術、その精髄を駆使した双刀居合が吸血鬼の
腕を胸を切り刻まんと閃く。

405 名前:アーカード ◆AoARUcArDs:2003/08/16(土) 00:57

>>404 アーカードVS長谷川虎蔵『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』
 
 舞い散る井草の霞の中で振るわれる一閃、断ち切られる朱黒い生命体。
 腕が斬られて刃は止まらず、そのまま胴体を袈裟懸けに切り払う。
 剣風に押されて宙を刎ね飛ぶ腕、ずり落ちていく胴体――どさりと床に上半身と下半身が落ちた。
 血しぶきが井草吹雪に彩りを添える。
 振り切られた刃は、間違いなくアーカードの身体を寸断していた。
 
「見事」
 
 ――――しかし、うつ伏せに落ちた上半身が顔を上げて嗤う、あまつさえ賛嘆の言葉を掛ける。
 表情に苦痛はなく、怒りもなく、唯歓喜。
 自らがこしらえた血溜まりの海の中で、アーカードは確かに喜んでいた。
 血塗れの惨劇に、それを作るほどの男の腕に。
 
「では、私も一つ芸を見せるとしよう」
 
 宙を舞っていた腕が、慣性にも重力にすら逆らってその動きを止めた。
 と、腕全体が色彩を失って漆黒へと変貌し……次にはバケモノへと変じていた。
 掌を顎とし、指の先端に目の付いたバケモノ――バケモノとしか形容しようのない何か。
 それが大口を開けて、男の喉元へと噛み付こうと宙を走る。
 
 気が付けば、上半身も下半身も何処かに消え失せていた。

406 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg:2003/08/16(土) 00:58

アーカードvs長谷川虎蔵 『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』
>>405
 
 冴えた調べが湧いた。
 腕と眼球と牙をこね回し、暗黒をまぶして形成された“何か”を、虎蔵の左手にあるものが
迎え撃ったのである。
 刀ではなかった。
 数珠だ。ただし一顆は赤子の頭ほどもある。
 段平から瞬く間に千邪万刃を避く霊宝霊珠へと変化し、黒衣の周りを巨大な円となって巡った
それが、闇色の一噛みを受け止めたのであった。
 
「やー面白い面白い。あんた、芸が細かいな」
 
 居場所は知らず、形影を闇と一にした吸血鬼へ虎蔵は云い放つ。
 軽口を叩いてはいるものの、その額には冷汗が浮かび、片手で押さえた数珠は小刻みに震えている。
 ぴしり、と霊珠に亀裂が刻まれた。
 食い込んで離れない顎が、珠を噛み砕かんと更に深く牙を突き立てたのである。
 隻眼が流れる。急速に暗転していく周囲の闇の中から、そこだけ取り残されでもしたか
のように横たわったままの女を捉え、安否を確かめてすぐ戻った。
 視線が交差した。
 一つしかない瞳と、おぞましい塊の指先それぞれに浮かぶ複数の眼とが。
 眼差しは逸らさない。切先も化物の凶眼に据えたまま、寝かせた右の刀をそろそろと後ろに引いた。
 また音を立て亀裂が深まる。
 
「面白すぎて俺、木戸銭踏み倒してケツまくりたくなって来たよ」
 
 弱音とは裏腹に、虎蔵は思い切り剣尖を突き込んだ。

407 名前:アーカード ◆AoARUcArDs:2003/08/16(土) 00:59

>>406 アーカードVS長谷川虎蔵『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』
 
 男の剣が、闇の腕に突き込まれる。
 ゼリー状の液体に棒を突っ込んだかの様な音、手応え。
 それに、闇の腕がびくりと震えた。
 尾を引く闇をばたつかせ、無数にある目を大きく苦悶に見開いている。
 だが、数珠に食い込んだ牙は緩まるどころか、むしろ苦痛を糧として一層強く食い込んでいく。
 そこへ追い打ちとばかりに潜り込んだ刃を横に一閃、斬り払われた闇は断末魔を上げる事なく霧散した。
 だが、牙を力の限りに打ち込まれた数珠にはヒビが入り、割れていく音は間断なく大きくなり続ける。
 おそらくは後一撃も保つまい。
 
「お褒めいただき、誠に重畳」
 
 声は、部屋の何処かからした。
 それが合図であったかのように、部屋にわだかまる闇が蠢き出す。
 ざわり、という音、影から影が這いずり出て部屋を蹂躙し始める。
 数秒と経たずに、部屋はおぞましい漆黒で塗り込め尽くされた。
 闇は時折その姿を狗に、目に、名状不能の何かに変えながら男を睥睨する。
 闇が渦巻きながら混沌を成そうとするかのように男の周りにわだかまり……。
 轟、と闇が男の足下から狗の顎を形取って隆起し、その暴力が数珠へと叩きつけられる。
 破砕音すら風を潰す音にかき消されて聞こえないまま、数珠は粉々に砕け散った。
 
 そして、それが始まりの合図となった。
 
 闇から次々とコウモリが発生して羽音が室内に充満する。
 聞く者の耳を聾する音の圧力が、全てを圧倒せんとするかのように次から次から次から次へと。
 羽音に紛れるかのように、肉食獣の低い唸りが四方八方から流れてくる。
 世界が赤黒く染まり、世界が男に殺意を向けながら欲情し歓喜していた。
 
「拘束制御術式、三号二号一号、解放」
 
 コウモリの幕を切り裂くように、狗達が三匹、男に牙を剥いて飛びかかる。
 口蓋から飛び散る飛沫は、血の色をしていた。

408 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg:2003/08/16(土) 01:00

アーカードvs長谷川虎蔵 『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』
>>407
 
 その赤色は更に深まった。
 数珠の護りを砕いた獣達の内、真ん中の一匹が頭頂から胸まで縦一文字に裂け、血飛沫を
振り撒いたのだ。
 床を蹴った虎蔵が、黒犬獣と交差し様に放った唐竹割りの仕業である。
 闇に上塗りされた血汐には、斬殺者自身の血も含まれていたが。
 
 獣の呻き。
 それもまた虎蔵のものだ。
 
「この使い魔(ファミリア)」
 
 軋るような声を絞り、牙剥く無明の闇を駆け抜ける虎蔵の手に愛刀は無い。
 それは背後の畳に転がっている。取り落としていた。
 太刀は一匹を確かに斬った。が、その左右の犬――としか形容できない魔獣どもは、それぞれ
右の二の腕と左肩の肉を噛み千切ったのであった。
 
 部屋に充ちる真っ黒い何かは、獣臭く、血腥く、それ以上に名状し難い。
 闇が発する吐息だ。
 躯中を貪ろうとする蝙蝠の群れの只中を突っ切り、虎蔵は鮮血に塗れた右手を口元へ遣る。
 最前の出鱈目な巨大銃、昏闇そのものの魔怪、そして溢れ出す邪気、魔気、妖気。
 人に非ざる脳内神経回路網を幾つものイメージが巡り、結果複数の名が呼び起こされた。
 
 真祖、人形(ひとがた)を取った闇、夜の征服者(コンキスタドール)。
 吸血鬼を狩る吸血鬼。
 
 袖から飛び出す日本刀の柄を咥えて即、バックステップ。
 口で抜刀した勢いのままに、捻った躯が旋回する。
 異名の数々を統合すべき今一つの名を叫び、虎蔵は届く範囲の妖物全てへ刃を薙ぎ返していた。
 
「――不死の王ッ!」

409 名前:アーカード ◆AoARUcArDs:2003/08/16(土) 01:00

>>408 アーカードVS長谷川虎蔵『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』
 
「知っているか。光栄の極みだ」
 
 言葉に含まれた悦楽の成分が、聞く者の耳朶に溶け込むかのよう。
 裏社会の裏側までを知悉した者であれば、その名を耳にしていたとしても何の不思議もない。
 日を浴びても滅びない、心臓を貫かれても滅びない、十字架を恐れない、聖句に耳を背けない。
 流れ水を渡る――とにもかくにも死なない。
 死を超越した「不死の王」、英国王立国教騎士団の走狗で殲鬼、アーカードの名を。
 
 部屋を塗り潰す闇は未だ濃く、血生臭く、死の色を滲ませ。
 吐息の音が四方八方から響き、視線の気配が沸いては消える。
 一瞬たりとも同じ顔を見せず、流転し流転し流転する。
 男が薙ぎ払い散らした形ある闇達も、すぐにまた闇へと還っていく。
 真に正しくいたちごっこで千日手。
 闇が獣を繰り出し、男が撃退する、今はそれが続くだろう。
 だが、生ある者は疲弊する、肉体的にも精神的にも。
 死せる者は疲弊しない――生そのものに疲弊することはあっても、だ。
 
 斬、と犬としか形容しようのない生物が斬られ、鈍、と蝙蝠らしき物体が潰される。
 縦横無尽に荒れ狂う男の様に、アーカードはなお嗤う、嗤笑する。
 
「さて、ではおまえはその不死の王を前に、どのように立ち向かうのだ?」
 
 声は何処までも悦楽を含み、敵意の欠片も感じられない。
 だが、それでもこの闇の具現は、男を犯し破壊し殺し尽くしたくてたまらないのだ。
 完膚無きまでに解体された肉の山に顔を埋め、その血肉を啜りたくてたまらないのだ。
 今は、それをより美味くいただくための調理の途中。
 アーカードの繰り出す攻撃の全てが、男の振るう腕が刀が、全てがそのための贄。
 
 轟、と腕が一ダース、闇から唸りを上げて男へと迫っていく。

410 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg:2003/08/16(土) 01:01

アーカードvs長谷川虎蔵 『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』
>>409
 
 斬り捨てた何匹目かの陰獣を踏みにじり、虎蔵の体勢は止まった。
 荒い息の合い間から、群がり来る十二の手を迎えるようにゆらり、と双腕が持ち上がる。
 血汐が雫を散らし、虎蔵の顔は歪む。噛まれた疵は深い。
 腕をそのまま上になら“お手上げ”。だが無論方向は違う。
 
「むぅん!」
 
 気合い一声、開いた両手は真横に広がった。
 と、長大な棒が幾つも幾つも、黒衣の背の向うから突き出たのである。
 尖端には鋭い鋼――放射状に並ぶ物騒な光背は、全てが槍また槍だ。
 
 朱塗り、片鎌、十文字。十本を越す長柄の穂先は一斉に光を発した。
 鋭利ゆえの光沢ではない。火花が生じ、育まれた紫電が鋼と鋼の間を繋ぐ。
 
「こうやって一気に丸ごと、な」
 
 まだ刀を咥えているにしては随分と明瞭な発音で、虎蔵は断言する。
 ひん曲げた唇が刻むその表情。
 笑いにしては凄惨すぎるが、笑い以外の何物でもない。
 そして怒声は、形容でなく爛々と輝く隻眼から発せられた――かとも思われた。
 
「――屠る!!」
 
 最初に目も眩む閃光が、次いで音がやって来た。元始、初めて人が言葉に変換した音だ。
 
 いかづちが、
 
 どん。
 
 
 『どのように立ち向かう』のかという、質問の形を取った嘲弄に対する、行為を以ってしての
解答である。
 それは、虎蔵が己が武具より放った破魔の雷は、襲い来たる闇の怒涛だけに止まらず壁を天井を、
そしてこの建物そのものを初源の白に染め変えて後、消して砕いた。
 
 秒単位で計れる間の出来事であった。

411 名前:アーカード ◆AoARUcArDs:2003/08/16(土) 01:02

>>410 アーカードVS長谷川虎蔵『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』
 
 世界が、白い轟音と閃光に塗り潰された。
 
 雷光は破壊の槌を振るい、部屋を破壊し、辺りを破壊し、不死の王を破壊する。
 耳を聾する爆音は、もはや生物の可聴域を越えた段階に達して荒れ狂う。
 赤黒いバケモノは、白の向こう側に焼かれて壊されて霞んで消えた……嗤いながら。
 
 屋根が消し飛んで、漆黒の夜空が姿を現した。
 夜空に輝く星は、地上よりの光にかき消されてさほど輝いていない。
 今はむしろ、雷帝の光こそが全ての光を凌駕してそこにあったが。
 そんな中でも、中空に鎮座する真円の月だけは、負けじと威容を誇って月光を投げかけていた。
 
 禍々しく――月下の不死の王を祝福するかのように。
 
 暴力が止み、辺りには静寂が戻ってきた。
 とはいえ、吹き荒れた暴威の爪痕は生々しく一帯に刻まれている。
 室内であった筈のそこは、吹きさらしの屋外へと変わり果てていた。
 男の放った雷挺が、如何に圧倒的で絶対的だったかを示すかのように。
 
 その中心――爆心地に、黒スーツの男が一人。
 破壊など何処吹く風といったように、白に支配される事なく黒。
 悠然と立っているように見える男の腹から……朱い腕が生えていた。
 塗れた朱、血の朱、生命の朱。
 つまり――男の背後に屈んだ状態のアーカードから腕が伸びて体内へと消え、腹から姿を現していた。
 もう片方の腕に、未だ胡乱な目をした女を抱き抱えながら。
 
「女の扱いが悪すぎる。如何に不死者の門を叩いているとはいえ、あの破槌の中では生き残れん」
 
 焦げた頬をパラパラと崩れ落ちさせながら嗤い、言葉を紡ぐ。
 全身に負った重度の火傷は、並みの生命体なら炭化した塊となって死んでいる。
 ましてや破魔の雷、ひとかどの不死者とて塵と化していたに違いない。
 その破壊を、炭化した人柱に成り果てても、アーカードは生き延びた。
 女の方は……ほぼ無傷だ。
 女を蹂躙する筈だった暴力のほとんどを、不死の王たるアーカードが引き受けたからに他ならない。
 
 別に女を助けた事に、大して意味はない。
 強いて言えば、この女が死ぬ事で男の戦意が萎える事を危惧しての事だが、恐らくそれは要らぬ心配だ。
 女の為に戦えても、女の為に死ぬ奴ではあるまい。
 ならば何故、と問うても答えはきっと帰ってこない。
 アーカード自身も、答えを自分の中に持たぬが故に。
 
 女をやや乱暴に放り投げる、受け身を取る気配もなく床に叩き付けられる女。
 腕を捻り、引き抜く……男から吐血の気配。
 血塗れの腕を舐めながら、なおも頬を歪める。
 舐め取られた血の下から、漆黒のなめした革の拘束衣が顔を出している。
 空いた腕に改造銃を抜き、傷口へ抉り込むように銃口をねじ込んだ。
 
「まだどれだけのカードを隠し持っているか知らんが……出し惜しみだけはしてくれるな」

412 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg:2003/08/16(土) 01:03

アーカードvs長谷川虎蔵 『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』
>>411
 
 今し方とうって変わり、今度は虎蔵の方が身を屈めた。
 膝をつく。大量の血塊と苦悶の声が一時に口から溢れる。
 穿ち貫かれた疵を更に銃口で嬲られ、それでも軽く笑って呟いたのは、これは余裕ではない。
 
「手札出せってな――サマしか揃わん賽振りくさる、手前ぇら僵尸が云う台詞、か」
 
 人も人外も問わず、押しなべて百遍は殺せる猛打を涼しい顔でやり過ごす。
 長谷川虎蔵を以ってすら、苦笑するしかない相手と云うのも世に、いや夜にはいる訳で――
 そして銃声、と云うよりもう砲撃音だ。兎も角それが跳ね返った。
 
 放たれた巨弾は夜気をぶち抜き、黒衣をもぶち抜いて虎蔵を吹き飛ばした。
 
 虎蔵の体勢は傾ぎ、そのまま急速に沈み始めた。
 大地に転がる。
 鉄火の牙が食い千切っていった痕は、向こう側が見えそうな、と云う表現では過剰どころか
全く言葉が足りない。
 正確に云うならば、腹の辺りが半分程“無い”のだ。
 それきり虎蔵は動かない。伏したままである。
 
 動かないその躯の下の地面が、静かにどす黒く染まって行く。
 噴き出す血だ。躯中の穴という穴から、特に今腹に開いたばかりの大穴から。
 どくどくと流れた。後から後から流れた。きり無く流れた。
 流れ続けた。
 
 それでも虎蔵は動かない。
 動けないのかもしれず――もう動く事は無いのかもしれず。

413 名前:アーカード ◆AoARUcArDs:2003/08/16(土) 01:03

>>412 アーカードVS長谷川虎蔵『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』
 
 ボロ屑に成り果てた男を見下して、冗談でも吐くような調子で語りかける。
 
「いやなに、イカサマの上手さで言えば人間達も大したものだと思うのだがね。
 おまえが通り一遍の人間であるかどうかはさておいて、だが」
 
 血に染まり、血だまりで藻掻くその姿に、果たしてイカサマを打つ余力が残っているのか。
 それでも相手のイカサマを信じて、アーカードは笑い。
 相手の反撃を期待して、男の側へと歩み寄る。
 下界の喧騒など何処吹く風の静寂に、靴音を高く響かせながら。
 
「とはいえさすがに辛いか」
 
 気遣う言葉を吐きながら、足元を指向する二挺の巨大拳銃。
 ボロ屑を塵に還すには過剰にすら思える暴力を振りかざして、なおも期待は揺るがない。
 心の中で――逆境を覆せ、致命傷を乗り越えろ、立って反撃しろ、私を打ち砕け――と叫ぶ。
 拘束衣のバケモノは、嗤いながらトリガーを引く、引く、引く引く引く引く。
 
 爆音にも似た銃声が、六つ。

414 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg:2003/08/16(土) 01:04

アーカードvs長谷川虎蔵 『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』
>>413
 
 先ず、頭部が熟柿のように砕けた。
 次いで胴体も後を追い、両手両脚と一緒に赤い残片となった。
 
 銃弾六発と虎蔵だったもののなれの果て。貸借の仕訳勘定はぴったり合っている。
 
 ならば何故、放り捨てられた朱乃は笑っているのだろう。
 しどけなく開けた口から小さな牙をこぼし、痴呆めいた微笑を空に送っているのだろう。
 
 月が翳っているからだ。
 ぬばたまの翼が、月光を遮っているからだ。
 黒衣の背より生えたその翼を一杯に広げ――
 長谷川虎蔵が天に在るからだ。
 
 地には死骸など影も形も無い。木切れらしい破片が幾つか転がっている事だけが、巨弾は確かに
何かを破壊したのだという、甚だ不明瞭な立脚点であると云えた。
 そう。これはイカサマに他ならない。
 吸血鬼の銃二挺が喰い散らかしたのは虎蔵ではない。どこに隠し持っていたかと問うも愚かしい、
一本の丸太だった。
 己の代わりに斬らせ、或いは撃たせて相手の眼をまんまと眩まし、虚実混交の内に反撃に転ず、
これぞ長谷川虎蔵一流の変わり身の術。
 
 とは云え最初の一発は、これだけは現実に腹部を貫通していたらしい。
 ごっそり抉られた腹からだけ、向こう側の蒼月が窺える。
 虎蔵は動かず、上空十数メートルの一点に停止したままだ。
 歩き、笑い、銃を撃ち、あまつさえ死んでいるのに死なない。――眼下の“地獄”そのものの
立ち姿を、どんな表情で睥睨しているかは、片手で左眼の眼帯を覆い、乱れ髪を風の荒びに任せて
いる所為で他者には判らない。
 そこから、切るぜ、という呟きが落ちていった。
 
「望み通りに、俺の持ち札全部な」
 
 羽ばたく翼が倍も巨大に膨らむ。
 黒羽の舞い散る中、怒声と同時に稲光りが天に刻みを入れた。
 
「――切ってくれるわ!」

415 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg:2003/08/16(土) 01:04

>>414 続き
 
 白と紫の白熱が黒衣の全身で千々に躍る。
 押さえていた眼帯が消し飛んだ。左眼――のあった箇所を縫っている、幾本の紐までも。
 顔中の血管を浮き出させた、獰猛なまでの悪相が四肢を捻って悶える。
 耳まで引っ裂けた口で、穿たれた疵痕で、そして左眼の空洞で。
 噴き上がる不知火は光の奔流となった。
 日出ずる東方を象徴し、生気を司り活性化させる“木”気の雷を我が身を灼く程ぶち込み、
怒っているのか笑っているのか、多分本人にも判らないに違いない。
 
 とまれ、夜鴉は絶叫した。
 
 弾ける閃光に乗って、虎蔵の周囲に数珠また数珠が出現したのはこの時の事だ。
 惑星を守護する衛星の如く、規則だった動きで周りを廻る。
 
「仁義八行彼宿の霊玉天風矢来の豪雨と成りて疾く彼の辣奸をォォォォォォォォォォォォォォォ」
 
 雷と怨嗟をこってりと塗りたくられた呪言の詠唱は一息に、
 
「う・ち・く・だ・け」
 
 放たれた。
 たわめられた霊圧に耐え切れなくなった珠の群れは、時と場を選ばぬ砲弾のスコールと化す。
 一足先に吸血鬼めがけて殺到する霊宝霊珠を追い、虎蔵もまた飛天夜叉の勢いで急速降下した。
 
 懐に入れて抜いた右手が、毎度ながら出鱈目なサイズの凶器を掴み出して振りかぶる。
 刃渡りだけで虎蔵の長身を遥かに上回る――刀身には『要銭不要命(命は要らん、金欲しい)』
と刻まれていた――長大な青竜刀だ。
 落下し様に迸らせるのはこれ以上無い程真っ向上段な唐竹割り、とついでに一声。
 
「斬り捨て御免!!」

416 名前:アーカード ◆AoARUcArDs:2003/08/16(土) 01:05

>>414 >>415 アーカードVS長谷川虎蔵『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』
 
「ハ、ハ、ハハハ――――ハハハハハ! 見事だ、見事なイカサマだバケモノ奴(め)!」
 
 自らの有様を棚に上げて哄笑するアーカード。
 月を暗く覆い隠す漆黒の翼、同じ色に塗り込められた鬼神の如き形相。
 闇夜の頂点に君臨するバケモノが、闇を切り裂く雷光を背負い、圧倒的な存在感を叩きつけてくる。
 真円の月が、漆黒に染まったバケモノの、そこだけは伽藍堂な腹の穴を満たしていた。
 
 最前まで男がいた筈の場所に残っていた木片の残骸を踏み砕きながら、一歩前へ。
 
「そうだ、もっとだ――まだ、まだ、まだまだだ。
 まだあるだろう、もっとあるだろう、私を打ち倒そうとしているだろう?
 まだ足りん、まだまだ足りん、私を打ち倒すにはな」
 
 赤黒い身体が闇に解けていく、それは闇と羽音と甲高い泣き声へと変じていく。
 次から次へと、次々次々次々と。
 生物的なフォルムを放棄した、蝙蝠状の物体が、不死の王に月光を取り戻さんとバケモノを取り囲む。
 
 ――――その包囲網が爆散した。
 闇蝙蝠が潰れ、砕け、闇の飛沫を撒き散らして消滅していく。
 それは一度ならず二度、三度、四度五度六度と何度も何度も。
 それを行ったのは――珠。
 バケモノが放った、自らの霊力を載せたいくつもの珠が、闇を裂いて潰して砕いているのだ。
 まるで意志ある生き物のように行っては帰り帰っては行き、有り得る軌道を有り得ぬ軌道も描いて砕く。
 数秒と経たずに、辺りの蝙蝠群は完膚なきまでに殲滅し尽くされた。
 
 遅滞なく容赦なく、次いで珠はアーカードを指向し、流星の如き尾を引いて降り注いでゆく。
 
「それがおまえの次なるカードか――ハハハッ」
 
 軽く笑いながら、両手の二挺拳銃を持ち上げる。
 迫り来る珠の群れに向けて撃つ、撃つ撃つ撃つ撃つ撃つ撃つ撃つ撃つ撃つ撃つ撃つ。
 当たらない、珠は変幻自在自由自在、幻惑するかのような軌道を描き続け、決して一定しない。
 
「ハハ――――――ッ」
 
 笑声を、粉砕音が掻き消した。
 アーカードの頭部が、珠に叩き潰されて上顎より上を消失させてしまっている。
 これでは、如何なバケモノであっても嗤う事などできまい。
 頭を失って傾ぐ身体に、しかし珠は一切の遠慮も慈悲も与えない。
 腹に胸に肩に腕に足に背中に腰に首に顎に掌に股間に肋骨に背骨に腰骨に心臓に肝臓に腸に――――
 ありとあらゆる場所に降り注ぎ叩きつけ穴を開け、不死の王をズダボロにし尽くす。
 無事であるところを探す方がよほど困難なほど破壊し尽くされた吸血鬼へ。
 
 大上段、真上から急降下――轟音と共に振り下ろされた青竜刀が、真一文字に両断した。
 重く、強く、鋭く、圧倒的な斬撃。
 刃自身も月光を享けて、尋常ではあり得ない輝きを放っている――今は血に塗れ隠れているが。
 
 支えもバランスも何もかもを失った屍体が、倒れた。
 とめどなく止めようもなく流れ続ける血が、辺りを正しく血の海に染め上げている。
 人一人の器にはどう考えても余る量の血を流し、不死の王の屍体は血の海に沈む。
 ピクリと動くこともなく、生の気配など微塵も感じさせることなく――――
 
 どう考えても、それは死んでいる。

417 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg:2003/08/16(土) 01:06

アーカードvs長谷川虎蔵 『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』
>>416
 
 大刀が血糊を垂らして持ち上がり、また黒翼が腥い大気を攪拌して羽ばたき、どちらも風を巻く。
 踝まで血の海に浸かった虎蔵は、己が斬戮した屍(かばね)の屍を睨み据えた。
 荒い息を飲み下し、口を開く。勝者が口にする言葉は一つしかない。
 凱歌(かちどき)だ。
 
 であるのに――大地は揺れた。
 
「――んな訳あるかあッ!」
 
 ひと蹴り足を踏み鳴らし、烏天狗は怒号する。
 蒼白く光る左眼よりも、狂い豹を思わせてぎらつく隻眼の方が、余程常ならぬ滾りを湛えている。
 青竜刀は右手一本で支え、空いた左手だけがぴん、と横に伸ばされた。
 人差し指、中指のみを垂直に立て、後は握り込む。道教の達者が剣指と称する呪印である。
 静止したのが一瞬なら、一つ所に止まるのも一瞬だけだ。
 次々と空間に呪の形象を刻み、血の海の中心から眼を離さず虎蔵は吼え立てた。
 
「千回殺しても万遍無く起きて来る手前ぇらが、この程度でくたばる筈無かろうが!
 見せろ。
 死んでも死なん、殺されても殺されんと誇って笑って高ぁ括る貴様のしゃッ面!
 見せやがれェ!」
 
 印の動きに呼応するかのように、浮遊していた必殺の弾丸が新たな動きを見せた。
 虎蔵の眼前に結集したかと思うと円陣を組む。数珠の形を取り戻した霊珠は緩やかに、そして
次第々々に大車輪の旋回を見せ始める。
 剣指が夜空の天ッ辺を突き指す。虎蔵は熾烈極まる語調で呪願文を放った。
 
「破邪剣正ッ! 勅吽轟!」
 
 一過、霊珠は光の――少なくともそう見える速度で、剣指に沿って垂直に飛び立った。
 夜空の彼方に消え去った光の渦は、瞬く間に煌く星の一点と相成る。
 
 甲走る残響が生じたのは、それとほぼ同時だ。
 鏑矢(かぶらや)のような、耳を鋭く突く唸りを引いて、大量の何かが落ちて来る。
 今、数珠が星影と消えた辺りから、蒼月を映し、夜光を一杯に反射させ、後から後から陸続と。
 鋭く細かいそれは、それらは鋼だ、刃だ、武器だ。
 
 刀、剣、槍、矛、戟。果ては呉鉤、大斧、狼牙棒等々々。全て霊珠が変じし武具である。
 数を問うのは無理だろう。空恐ろしい事に、実際の雨粒を数えるのにも等しい物量なのだ。
 魔を断ち神すら斬り刻む――断魔斬神の秘力を込めた利剣の雨が、闇の支配全てに降り注ぐ。
 
 さかしまの剣山地獄の矛先から免れ得ているのは、青竜刀を振り回して狂笑する虎蔵本人と、
如何した訳か朱乃だけであった。

418 名前:アーカード ◆AoARUcArDs:2003/08/16(土) 01:07

>>417 アーカードVS長谷川虎蔵『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』
 
 見渡す限り刃金の大地、鋼の地平、凶器の展覧会――武器、武器、武器、人が人たる証左でもある道具。
 それに刺し貫かれ切り裂かれ押し潰された、アーカードの残骸。
 鉄の暴力に埋葬されたそれは、今現在何処にあるのか視認できない。
 その中で唯一人狂笑を張り上げ、青竜刀を掲げるバケモノの背後より――――
 
「――――死ぬほど、痛かったぞ」
 
 死んだ声が響いた。
 不死の王――元より生者などではあり得ないが、さりとて死の中にあって死を生きるバケモノ。
 常に愉悦と狂気と狂喜を声に張り付かせていた声が、その色を失っていた。
 声に振り返ったバケモノが見るは、
 
「だが、死ぬほどの目には慣れているのでな」
 
 ――――骨と皮と血と肉と生と死と不死が無様に絡み合った出来損ない。
 剣山のような武器の筵の上でキチキチと音を立てながら、少しずつ屍体の形を成そうとしてゆく。
 少しずつ、少しずつ……だが確実にあり得ない速度で。
 
「それにしても、ここまで手酷く殺られたのは久しぶりだがね」
 
 未だ自由の利かないらしい肉体の切れ端は、その場で僅かに這いずり回るのみ。
 まだ腕を成していない腕で、武器を掻きながら。
 まだ足を成していない足で、武器を掻きながら。
 半欠けの頭部で、バケモノを見上げる。
 
「さて、次なる策(て)は何だ? まだ足りんぞ、私を滅ぼすには」
 
 それでも、嗤う。
 余裕など微塵も感じられない風体で、何もできない肉体で。
 なのに声音には、気が付けばいつもの色が戻りつつあった。

419 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg:2003/08/16(土) 01:09

アーカードvs長谷川虎蔵 『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』
>>418
 
 最も深い所から、最も昏い闇に塗れた声が云う。
 生と死をどろり一つに溶かしたその姿。
 死が、死すら死せる死それ自身を繕っていく境目の無い世界――真祖(ダーク・ロード)だ。
 
「あはははは! そうかそうか、まだ足りんか、もっとやらなきゃ駄目か」
 
 足の踏み場も無い剣の荒れ野の只中で、最も巨大なる一剣が天を突く。
 破顔一笑、迎え相打つ構えは右八双。
 通常の刀の間合いではない。が、刀も尋常ではない。
 このまま振り下ろせば、吸血鬼は再び大根のように両断されるだろう。終わらぬ命に対して、
意味ある事か如何かはさておき。
 
 黒衣の体勢が弓なりに反る。翼も眦も吊り上がる。
 
「気が合うな。俺もまだまだ喰らわせ足りん!」
 
 刹那、銀の大蛇が閃いた。
 袈裟懸けの斬撃は正面の吸血鬼にではなく、反転した背後へ向けてだ。
 再び大地は鳴動した。今度は比喩ではない。
 それは鍔元まで地面に撃ち込まれた大魔剣の重量故であり、そしてそれだけではなかった。
 
 震動は収まらない。
 寧ろ高まっていくばかりの揺れは、大地に亀裂を走らせた。蜘蛛の巣状に連鎖する破壊は地表に
ひび割れを広げ続ける。
 倒れた朱乃を正確に外に置き、虎蔵と魔王とを中心とした直径十数メートルの圏内を廻り廻る
断裂を線とするならば、それを結ぶべき点は刀森剣林の連なりだ。
 時に経(たていと)となり、また緯(よこいと)となって、地割れは一つの形を成していく。
 それは図形だった。描き手の意思が確かに介在する幾何学模様だった。
 
 矢継ぎ早に大気が騒乱する。無手の虎蔵が両手で結んだ剣の指と呪願文であった。
 
「居収五雷神将、電灼光華、上則護身保命、下則縛鬼伏邪、一切死活滅道我長生!
 急急如風火雷令! 勅!!」
 
 注がれ続けた酒が、遂に杯の張面から溢れ落つ。そんな情景を思わせて大地は砕けた。

420 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg:2003/08/16(土) 01:09

>>419 続き
 
 雪崩のような音を立て、割れた地面は急速に浮き上がる。
 苦悶する地母神の衣を押しのけ、膨れ上がって現れ来るものがある。
 中を細かい方形に仕切られた八角形と、それを取り巻く巨大円。
 化物二匹を載せた新しい大地だ。白光を滲ませる大盤だ。
 
 と、地の底から引かれるような動きで、並び立つ剣が盤面に潜り始めた。
 一振り消えるたび、盤には青光る字句が刻印される。
 東西南北、八卦に九字。九星並びに十干十二支。
 あれ程林立していた刀剣は瞬く間に姿を消しつつあり、辺りは霊字輝く巷と変わる。
 
 それは万剣をして張り巡らされた魔陣の完成でもあった。
 
 捕えた妖物の三魂七魄を余さず残さず無に還す。
 天機太陽、地維太陰に叛せし邪魅魔障悉くを剋す秘呪密法、世に呼んで『封殺』と云う。
 本来、幽幻道士の本領たる奥義だ。方術に精通しているとは云え、これは虎蔵の埒外に当たる。
 術者が見れば瞭然の、式の組み立てに精妙さを欠く力押しの様からもそれは明らかだ。
 
 だが専門外であるが為に、原初的であるが為に――その技は圧倒的なまでの“力”に充ちていた。
 
「月の都を剣太刀(つるぎだち)、身は三界の狩衣(かりごろも)。
 肩も鯔背(いなせ)に闇斬らば――哈ッ!」
 
 朗々と呪歌を奉じる姿は、まるで舞台役者が大見えでも切るかのようだ。
 ずん、と柄を蹴って最後の大青竜刀を地に送り、ざんばら髪を乱して虎蔵は振り向いた。
 
「やあやあ、遠からんものは音にも聞け、近くば寄って眼にも見よッ。
 長谷川虎蔵が一世一代! 飛び六方の卍舞い!」

421 名前:アーカード ◆AoARUcArDs:2003/08/16(土) 01:10

>>419 >>420 アーカードVS長谷川虎蔵 『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』
 
 舞台は光に、絢爛たる破邪に満ちて――役者の舞いと口上が、崩壊に華を添える。
 不死すら殺す破陣のただ中に捕らえられたアーカードは――光に圧殺されつつあった。
 武器という武器、力という力がアーカードの『封殺』という一点に凝集され、叩きつけられる。
 荒削りな呪紋様式でさえ、原始的な力を以てアーカードの存在に否定を突きつけてきていた。
 
 充ち満ちる光、光、光光光光光光光光光光光光光光光光光光光光光光光光光光光光光光光光――――!
 
 奔流、洪水、暴力さながらに、アーカードというちっぽけな闇を洗い流さんと殺到する光光光。
 全てを凌駕する光の中にあって、あまりに矮小なその闇は、
 
「ハ、」
 
 その中で、
 
「ク、ハハ」
 
 消え去りそうな程小さな狭間に押しやられながら、
 
「ハ、ハハハハッ」
 
 それでも、
 
「ハ、ハハハハハハはははハハハハハハハHAハハハ覇ハハハハHAHAHAHAHAハハハハハハハハハ
ハハハハハハハはハハハハハハハッハハハハHAハハハハククハハハハはハハハハハハハHAハハハ
ハハハハ刃ハハハハハハクハハハハハハ破ハハハハハHAHAハハハハハハハハハハハハハハッ!」
 
 光を圧倒して、嗤う。
 壊れたかのように、壊そうかというように、楽しそうに愉しそうに嬉しそうに哀しそうに。
 抑えきれないかのように抑えようともしないかのように抑える術を知らないかのように。
 
 嗤う、笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う嗤う唯々笑う笑う笑う嗤う笑う笑うワラウ嗤い続ける――――

422 名前:アーカード ◆AoARUcArDs:2003/08/16(土) 01:11

>>421 続き
 
 闇が、笑声と共にその領域を主張し始めた。
 破損だらけで間違いだらけでエラーだらけの不死から、壊れた蛇口のように闇が漏れ溢れ出す。
 墨より夜より闇より漆黒より何よりも濃い黒が、光へと溶け込み、侵食を開始する。
 闇と混ざり合った光は、本来自分が作り出すべき存在であるはずの影に呑まれて、姿を失っていく。
 光を捕食した闇は、更なる光を求めてその領域を広げていく。
 力尽きた闇は光に負けて消滅していくが、次なる闇が、次々なる闇が、次々次々なる闇が溢れ出す。
 渦を描き螺旋を描き、閃光を掻き消し破邪を打ち消し、貪欲に光を叩き潰していく。
 
 ――――その中心にあるアーカードは、闇の凝った百眼魔人と成り果てていた。
 漆黒の塊、表面に浮かぶ瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳瞳。
 眩しそうに目を細めるそれらは、嬉しそうに光を取り込み呑み込み、闇の制圧下としていく。
 黒い触手がその数を増やし、今や光と闇は拮抗状態――否、明確に光は押され続けていた。
 刻一刻と光は輝きと領地を奪われ、力を失くして消滅していく。
 荒れ狂う闇と光の飽くなき闘争の果てに――――
 
 闇が瞳が不死が、光を掻き消した。
 後には唯圧倒的な、闇。
 
 巨大な闇の塊が、月光を覆い隠すように、否、我が身に一身に受けようと宙空に一つ。
 その闇の球体を、紅い腕が突き破った。
 後を追うように現れたもう一本の腕が、闇の亀裂を広げてゆく。
 その様はまるで、闇から生まれる雛の様であり――――そんなかわいげのある代物では無論あり得ず。
 ズルリ、と這い出してきたのは。
 
 血に染まったかのような深紅のスーツを纏った――無傷のアーカード。
 表情には、生誕と感嘆と驚嘆に染まった喜びを浮かべ。
 白い手袋に包まれた両手を打ち合わせて、バケモノへと拍手を送る。
 
「見事だ。五百年を超える死の中、これほどまでに追いつめられた事はかの男を除いてかつてない。
 いいや、奴とてこのレベルまで私を滅ぼせはしなかった。
 一歩間違えれば、間違いなく遺漏なく完璧に私は滅んでいただろう。だが……」
 
 拍手は止み、残ったのは前進の靴音。
 
「私は生き延びた、死に延びた。この通り私は未だ此処にある」
 
 バケモノの眼前で拳を振り上げ、
 
「見事な舞台だった……だが、もうそろそろ幕切れだ、残念なことにな。
 どんな舞台も、どんな物語もいつかは終わる。終わりのない物語などない。
 それがどんなに喜劇であっても、悲劇であっても、悪夢であっても、どれほど名残惜しくともだ」
 
 バケモノの顔面へと振り下ろした。
 
「さぁ、クライマックスはどう飾る?」

423 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg:2003/08/16(土) 01:12

アーカードvs長谷川虎蔵 『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』
>>421 >>422
 
 形容し難い音響が炸裂した。
 
 虎蔵の顔面はひしゃげた。衝撃が噴出する先、取り敢えず後方へ弾き飛ばされる。
 随分と風通しの良くなっている腹部は、たっぷりと風精を吸った事だろう。
 魔銃に匹敵する破壊を生んだのは一つの肉。化物の力で揮われた、化物の拳だ。
 
 平時なら避ける手立ては幾らでもあったろう。
 だが今、精魂を傾けたと云っていい『封殺』が破綻した時、術者たる虎蔵は全身“虚”の状態に
陥らざるを得なかった。
 敵からの賞賛を許し、接近を許し、膺懲の一打まで許したのもむべなるかな。
 
 光の陣備えから一転して闇が再支配した大地を、数メートルも擦りながら薙ぎ倒される。
 同じ距離だけ地面に轍(わだち)の痕を残し――止まった。
 止めたのだ、虎蔵自身が。
 即座に、それまでに加えられた運動力を利用して跳ね起きている。
 ぴん、と二枚の黒羽が広がった。触れただけで折れそうな緊張感の“静”を保つ。
 黒衣そのものもだ。
 半身になり、腰を深く落とす。弓弦(ゆんづる)を手にしたかのように、左手を前に、右手を
大きく引いた姿勢を崩さない。
 
 思い切り力を溜め、思い切り“ぶん殴る”。これはそう云う構えだ。
 単純極まりない。だが、殴ろうとするのは人から隔たる事遠い異類である。
 只の単純では済まないし、済まさせない。――今し方殴った方の吸血鬼王が“死なない”と云う
だけの冗談事を以って、光の包囲網を無してみせたように。
 
 在る眼と無い眼、どちらも滾る双眼はその怨敵を捉えて逸れない。
 昏い闇色の天、黒い闇色の地、そして紅い闇色の魔王へ陰々と、ざらついた声が夜を渡った。
 
「本日只今千秋楽。……お代は見てのお帰り、じゃ済まさんぞ」
 
 虎蔵の右拳からは軋みが洩れていた。
 自身の掌の骨を握り砕いているとしか思えない異音を立て、緊く硬く絞られた拳の中から、更に
一つ洩れ出た。幾筋もの紫電の瞬きも。
 
「幕だ。演目は――終わらん手前の命の“終わり”!」

424 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg:2003/08/16(土) 01:13

>>423 続き
 
 吼えて瞬息、振り上がった右拳で雷火の筋は束になる。
 拳からニの腕、一の腕までを取り巻き、狂相を蒼白く照らし出す。
 右腕の筋肉が倍も盛り上がった。――錯覚でない証拠に、膨れた袖口は内部より破けていた。
 
「義血侠血光って唸り、因果の星宿二十と八! 七曜重ねて五雷を得れば、巡る十干甲乙歳星!
 六妄晴れなば斬妖滅鬼、足し割り掛け引き六十四卦!!
 一切阿修羅一切夜叉一切羅刹、鬼神諸天皆大順伏!!」
 
 己の生命を繋ぎ止めていた雷気を、言魂によって天地万物を爆砕する火気へと“相生”させ。
 
 飛躍した。
 
 魔性の速度で馳せる虎蔵の姿は一人ではない。
 羽ばたく翼の背後には陽炎じみた、だが確かに同じ顔、同じ構えの黒衣が幾人も連なっている。
 実体無き分け身、それは絞り出された強大なエネルギーが時間と空間まで歪めたが故であったか。
 放たれた矢の如く、烈火迅雷の“動”の狙う先は如何なる生物だろうと存在する生命の中心――
 
 振り撒く叫喚の中から真っ直ぐに、最短距離の線を通って吸血鬼の左胸へと、
 
「三千大千世界(みちおほち)の果てまで素っ飛びやがれェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!」
 
 拳が一つ。

425 名前:アーカード ◆AoARUcArDs:2003/08/16(土) 01:14

>>423 >>424 アーカードVS長谷川虎蔵 『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』
 
 紫電と破壊を撒き散らす、バケモノの拳が唸る。
 夜気を灼き、夜気を裂き、夜気を閃光に塗り潰しながら、スパークの弾ける音が耳障りに鳴り響く。
 あるいは先の破陣にも勝る力を拳の一点に凝集させ、まっすぐに吸血鬼の左胸――心臓へと伸びてくる。
 いつしか、紫電はその性質を爆炎に変えて、雷気よりも苛烈な熱気を放出していた。
 魔を焼き浄化するは、なるほど古来より炎だ、それは正しく吸血鬼を殲滅するための拳であると言える。
 
 その、必滅の一撃が自らに向けられているのを自覚した上で、それに対するアーカードは……一つ嗤う。
 一歩力強く踏み込み、地を踏み潰すかのように力を下半身に蓄える。
 骨が肉が腱が軋むほどに踏みしめられた足から、腕へと力を伝達する。
 その力を、弓引くようにしなる右腕が更に増幅していく。
 驚くほど基本に忠実な、膂力に頼りがちなバケモノとしては意外といっていいほど、実直で愚直な拳。
 地を噛んでいた足が、力の反発に耐え切れないといったかのように、前へと滑り出る。
 無論そんな筈はなく、そのスリップはより確実に力を叩き付けるための予備動作に過ぎない。
 
「最高の一撃には、最高の一撃で報いよう」
 
 蓄えられた力の具現たる拳を、バケモノの拳目掛け、捻りを加えて一直線に解き放った。
 空を裂く音は、弦が鳴る音にも似て甲高く澄んで、清冽――これがバケモノかと思うほどに。
 
「終わらせられるモノならば終わらせてみせろ、この命!」
 
 極限まで貌に刻み込まれた嗤いは、生物でもバケモノのそれでもなく、唯罅割れた仮面としか見えない。

426 名前:アーカード ◆AoARUcArDs:2003/08/16(土) 01:14

>>425 続き
 
 ――――そして、対極で両極で究極の拳が衝突した。
 
 二人を中心とした世界に、爆音と爆炎が爆ぜる。
 力を封じたバケモノの拳から、破壊が炸裂し爆裂し裂帛が迸る。
 打ち据えたアーカードの拳が潰れひしゃげ、腕の尺が短くなっていく――潰されて、消し飛んでいく。
 引き換えにバケモノの拳も、衝撃に耐え切れず骨が粉々に砕けていたが。
 
 爆発はそれだけに留まらない。
 夜闇を塗り潰して塗り替えてしまえとばかりに赤々と明々と紅々と朱々と火柱を上げる。
 それは血よりも暴力的で絶対的な、アカ。
 無分別な破壊は、舞台はもちろん、二人の役者と一人の脇役にすら何ら分け隔てなく牙を剥く。
 圧倒的な暴力の光と波に、赤黒いアーカードの姿が飲み込まれてゆく……哄笑と共に。
 
「ハハハハハ、どうやらこれで今宵の舞台は幕引きのようだな! ハハ、ハハハッ。
 残念だ、残念だが次の舞台を楽しみにしておくとしよう! ハハハ――――――――――――――――」
 
 その笑い声すら轟音に飲み込まれ、不死の王をもろともに掻き消していき……。
 場に残ったのは唯々圧倒的なまでに吹き荒れる炎、爆発、閃光。
 耳を聾し、目を灼き、呼吸を焼き付かせる大破壊――――!
 
 それすらも数秒後には嘘のように消え失せ、後には何も残っていなかった。
 あれほどの闘争の跡とは思えないほどに、何も。
 何も、何も、何も――――

427 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg:2003/08/16(土) 01:15

アーカードvs長谷川虎蔵 『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』
>>425 >>426
 
 ――在る筈は無いのに音がした。
 
 幽かな風がそよいで、それから。
 きん、と鼓膜に残る唸りが引かれたかと思うと、黒影が垂直に天下った。
 女の行く手に立ったのは、満身で創痍に非ざる所の無い、ぬばたまの凶鳥が一羽である。
 小脇に喪神したままの朱乃を抱え、長谷川虎蔵は低い声で云う。
 
「誰が次なんぞやるか。こんな阿呆くせー事は二度と御免だ」
 
 軽く苦笑し、懐を探った。煙草を出すと一本抜いて咥える。
 
「大博打、元も子も無くしてすってんてん、ってな。俺ぁもう鼻血も出ん。――やれやれ」
 
 躯が崩れた。
 
 渦のような喧騒が湧いた。
 何所に止まっていたのか、鴉の群れが一斉に舞い上がったのだ。
 寄せては返す波涛の如く、羽音と鳴き声は収まらない。時ならぬ黒い喧騒は、上空をぐるぐると
循環し続けている。
 
 取り落とした遊女と同衾する形で大地に寝た虎蔵はぼんやりと呟いた。
 口の端の煙草が揺れる。
 
「さっさと殺れ、と云いたいが――その前に一服はさせろよ、なあ?」

428 名前:アーカード ◆AoARUcArDs:2003/08/16(土) 01:17

>>427 アーカードVS長谷川虎蔵 『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』 エピローグ
 
 渦を巻いて飛び立つ黒翼が、何もなかった筈の空間を闇色に拭い去っていく。
 後には、降り注ぐ漆黒の羽根に彩られた赤黒い影。
 あれほどの破壊に巻き込まれた筈なのに、またしてもダメージらしいダメージを感じさせない。
 余裕と憐憫の嘲笑すら顔に貼り付けて、アーカードは闇の濃い路地裏で二人を見下ろしていた。
 
「楽しすぎて、危うく仕事を忘れるところだった」
 
 そう言って懐に手を突っ込み、ズルリと引き出す。
 血色のコートから現れた右手に巨大な漆黒、左手に凶暴な純白、暴力を以て暴力を制する二挺の銃。
 すなわち、ジャッカルに454カスール改造銃。
 法儀礼を施された爆裂鉄甲弾は、特に対吸血鬼に絶大な威力を誇る。
 その圧倒的な鉄火を放つ銃口が、二人を指向した。
 
「待ってやってもいいのだが、私は少々忙しい」
 
 銃口は小揺るぎもしない。
 
「今回はかなり特殊なケースでね。子(ゲット)がこれほど早く独立するなど聞いた事がない。
 あんな雑魚が特例だったとは思いにくいのだが。あるいはその女が特別なのか」
 
 突如として、今まで向いていた方向が間違いであったかのように、銃口が夜気を切って持ち上がる。
 横に倒した銃身が今度は左右を指向し、双翼を成した両腕から瞬く間もなく二度、轟音が立ち上がった。
 放たれた銃弾に呼応して右1.5km、左2kmの距離より、破壊された吸血鬼の断末魔が二つ、響き渡った。
 そして、塵へと還る音――もっとも、それをアーカード以外が知覚できたかは分からないが。
 
「どうやら、前者らしい。討ち漏らした奴らも、既に転化を果たしている」
 
 夜空の頂で輝く真円の月を見上げながら、誰に聞かせるでもなく舌打ち一つ。
 これからの瑣末事を思って、うんざりしているのか。
 
「今回の件、騒動そのものはあのドラゴネッティのはぐれ者が起こしたのに間違いないが……。
 それに便乗した者達がいるようだ。忌々しいことに、正体が分からない」
 
 思い出したかのように、二人へと視線を戻して、
 
「そういうワケで、私は忙しい。一服つけるのを待っている余裕はない。
 なので、後はおまえに任せる。好きにしたまえ。女一人の手綱くらいは握っておけるだろう?」
 
 楽しいとも忌々しいとも取れる表情を浮かべて、そう告げた。
 それきり二人からはまるで興味を失ったといった風に、きびすを返して闇へと溶け込んでいく。
 
「――――それに、その方が再戦のいい口実になる」
 
 消え行く背中が、キチガイじみた嗤笑に揺れていた。
 それきり、まるで誰もいないかのような静寂に辺りは包まれ、残されたのは唯二人。
 否、今一つの気配が、入れ替わりに闇の奥から生まれた。

429 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg:2003/08/16(土) 01:18

アーカードvs長谷川虎蔵 『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』 エピローグ
>>428
 
 寝転がったまま、心底面倒臭そうに一つの目線だけがその方へと送られる。
 陰火のように現れ出たのは若い男だ。
 暫し、全身酷い様の虎蔵と似たような態の朱乃を眺めたかと思うと、男は懐から短刀を抜いた。
 顔色と同じ暗い三白眼、それと剥き出した犬歯を光らせて、二人の方へ歩を詰める。
 
 紛う事無き吸血鬼――ではあるが、悪夢に紛う“退場”をした千両役者の代わりにしては、随分
格の下がった端役と云える。
 冷たい殺気を横溢させ、男は近寄りながら刃を振り上げようとした。
 
「余計な真似すんなよ」
 
 虎蔵の言葉が自分に対して吐かれたものでは無いと覚ったか、また急速に高まり出した妖気に
気付いたか、男は愕然とした表情で足元を向いた。ひッと甲高く息を吸う。
 
 たくさんのものが男を見ていた。
 苦悶する胎児の細い眼や、髑髏の虚ろな眼窩や、はたまた造作のねじくれた貌が。
 地に落ちた影――男自身の影を覆い、異形どもを詰め込んだその作り主は、男の少し後ろにいた。
 女だ。品の良い和服を着ている。
 月光を眼鏡のレンズで跳ね返し、女は利鎌の如き笑みを浮かべた。
 ぞろり、と闇が闇の中から這い出た。
 
 盛り上がり、既に本当の死人と等しい顔色の男を包み込む。
 魂消る絶叫。そして骨肉を噛み千切り咀嚼する昏闇のうねり。
 
「この連中を送るにはきちんと心臓を突き通した方が綺麗なのだが……まあ腹に収めりゃ同じだし」
 
 胸の悪くなるような物音を気にした風も無く云い、笑みを絶やさず女は近付いて来た。
 虎蔵は今度こそうんざりした顔を作る。
 彼の怪しげな知己の中でも極めつけに得体の知れないこの女は――名を麻倉美津里と云った。

430 名前:長谷川虎蔵 ◆QaSCroWhZg:2003/08/16(土) 01:20

>>429 続き
 
「おい、呼んでないぜ」
「当然さね。私ゃ自主的に見物に来たのだから」
 
 美津里は二人の脇に立った。ぐるりを見渡す。
 
「騒ぎの火種になった舶来物は如何でも良いのだが、ご丁寧に其処かしこで油を注ぎ足してた連中、
それをちょっとね。
 “種の拡散分布と血液の安定供給を維持するためのカウンターアベレージ計画”とゆーてな。
 判るかな? 判んねーだろうなー」
「判んねーよ」
「先ごろ、浅野某と云う邪学者が斯界に問うた論文さ。中々に読ませると感心してたら、乗せられ
たんだか乗ったんだか、兎も角そう云う輩がもう出たの。つまりこれ」
 
 便乗犯の一人だねぇと指差す先で吸血鬼、もとい既にその喰い残しは、軽い発破音と共に塵状の
噴煙となって消滅した。
 そちらへ顔も向けず、虎蔵は大分焼け焦げた朱乃の髪を摘んでいる。別段興味も無さそうである。
 咥えた煙草の先で頼りない火花が弾け、小さな火が点いた。
 
「この国原産のか。で、わざわざ物見遊山たぁ、お前も大概暇だな」
「何、そう馬鹿にしたものでもない。真逆こんな所に『不死の王』が現れようとは思わなかったし」
 
 『魔女』は袖で口元を押さえ、くつくつと笑う。実に愉しそうだ。
 
「いや、彼とはちぃと訳有りなのさ。久しやあれから幾星霜、大いに久闊を叙したかったのだけど。
 横槍は無粋と遠慮したのだよ。此処は大いに喜ぶ所だろう、お前さんとしては」
「ああ全くだ。嬉しくって涙が出るね」
 
 虎蔵の物云いを柳に風と聞き流し、逆に美津里は皮肉そうに朱乃を見て、それから虎蔵を見た。
 
「しかしお前あれかね、女の為に命張って、女の前で死ぬのかね。無様やなー」
「……五月蝿ぇよ」
「あはは、労わってあげようかえ?」
「笑えねえやな。それこそ真っ平だ」
 
 せせら笑う首が静かに横になった。美津里は面白そうに覗き込む。
 
「云い忘れた」
 
 隻眼が開き、じろり。
 
「そんなに暇ならお前な、朱乃の身の振り方でも整えてやれよ。今日日、夜刀の神なんざ流行らん
のだから」
 
 また閉じた。
 今度は開かなかった。
 
「自分でおやり、自分で。あんたの敵娼(あいかた)だろうに。
 大体骨絡みに乱痴気騒ぎが好きな癖に、気の無い振りしてお誘いをすっぽかすのはいかんねぇ」
 
 なあ、と美津里は、この場にいない誰かに同意を求めるように呟き、空を仰いだ。
 
 天では猶も鴉の群れが喧しい。
 長谷川虎蔵の口元で垂れた煙草は、去って行く同胞(はらから)たちの後を追いかけるように、
ゆらゆらと紫煙を立ち昇らせ続けるのだった。

431 名前:QaSCroWhZg:2003/08/16(土) 01:36

マッチを擦ると燃え滓が残る。煙草を吸えば煙が残る。
 
人や人でなしが殺したり殺されたりしても、矢張り何かが残る。
レス番纏めが残る。
 
 
アーカードvs長谷川虎蔵 『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』 レス番纏め
>394 >395 >396 >397 >398 >399 >400 >401 >402 >403 >404 >405 >406
>407 >408 >409 >410 >411 >412 >413 >414 >415 >416 >417 >418 >419
>420 >421 >422 >423 >424 >425 >426 >427 >428 >429 >430
 
 
どっとはらい。

432 名前:最後のラインを超えちまったよ…:最後のラインを超えちまったよ…

最後のラインを超えちまったよ…

433 名前:エンハウンス ◆SqaveNgerQ:2003/08/16(土) 02:36

……次スレだ、順次移行しろ。
 
吸血大殲第56章「散り往く者に墓碑銘は無く」
http://www.appletea.to/~charaneta//test/read.cgi?bbs=ikkoku&key=060968108

434 名前:クロウ ◆kurouBFrUI:2003/08/16(土) 17:30

鬼元刀京異聞 ――ハルノシュラ―― 〜クロウvs蔵田雅
中間レス番纏め

>373 >374 >375 >376 >377 >378 >379 >380 >381
>382 >383 >384 >385 >386 >387 >390 >393


……もう少し、掛かりそうか。

435 名前:Kresnik ◆fFCROSSQsM:2003/08/21(木) 00:48

Duel of the fates Kresnik vs Arucard
 
>>311>>312>>313>>315>>316>>317>>318>>319>>320>>329>>330
>>331>>332>>334>>335>>336>>337>>388>>389>>391>>392
 
 世界に記される事はない記録。
 夜に刻まれる傷痕。
 深い黒は憎悪も絶望も飲んでは消える。
 神明に於いて誓う。
 宴の終焉は近い。
 
 今ぞ。
 鎮魂歌を奏でよう。
 

436 名前:エンハウンス ◆SqaveNgerQ:2003/08/21(木) 17:51

>>70 小早川奈津子VS黒岩省吾 『票田のブルドーザー』
>>79 アン・フューリー(M)VS高木由美江(M)
 
>>340 >>341 夏祭り
 
>>369 マリアベル・アーミティッジVSアル・アジフ 《人外ロリ大決戦inアーカムシティ》
>>431 アーカードvs長谷川虎蔵 『ぬばたまの夜の街に燦爛と燃え』
 
以下、途中経過
>>434 鬼元刀京異聞 ――ハルノシュラ―― 〜クロウvs蔵田雅
>>435 Duel of the fates Kresnik vs Arucard
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 太陽亡き無明の闇。
 月は、陽光とは趣を異にしたツメタイヒカリを下界へ投げ掛ける。
 人の目には暗闇にも似た真っ黒い世界を、復讐騎は一人歩いていた。
 闇の中血の色に輝く隻眼は、何処か悲壮と焦燥と憔悴を滲ませている。
 提げた闇色の魔剣は血に濡れ、身に纏うコートは赤く斑に染まっていた。
 
 ――――この夜も、数体の吸血鬼を殲滅した。
 楽な戦いでは決してなかった。
 救えない人がいた、救われた人もいた――犠牲者は、数える気にもならない。
 自らも、決して浅くはない傷を負った。
 もっとも、それはさほど時を置かずして、半ばが塞がりかけてはいるが。
 
 救えなかったなどと、思い上がりはしない。
 救えたなどと、自惚れるつもりもない。
 エンハウンスにとって、全ては結果だ。
 最後に吸血鬼が滅びればそれでいい――いくら死体と血と涙を積み重ねようとも。
 
 眩めきながら、夜明けの近くなってきた世界を歩く。
 夜明けを信じて――だからこその日没すらも待ちわびて、また次の夜を、次の次の夜を往こう。
 夜に奴らがいる限り、果てずの夜を往き続けよう。
 いつか埋もれるほどの罪と共に逝く、その日まで。
 
 戦場は、続く。
 
 
                                 TO BE CONTINUED TO 56th VAMPIRKRIEG

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