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吸血大殲第53章 Smoke,Soile or Sacrifices

1 名前:遠野四季 ◆MC7218th56:2003/03/20(木) 01:49

 このスレは血を啜り夜を闊歩する"人でなし"と、それを狩ることでしか己を確立できな
い哀れな"狩人"、そしてそら等が生み出す"狂い"に犯された魑魅魍魎どもがただひたすら
に殺し、殺され、亡骸と怨念を積み重ね続ける愛すべき殲争牧場だ。

 勿論、奴等とて猿の如くただただ殺されているわけでもなければ、殺しているわけでも
ない。何かの偶然迷い込んでしまった可愛い可愛いオレの名無しちゃんの質問にも全身全
霊で答えてくれることだろう。
 だから、遠慮無く己の疑問を相手にぶつける――そう、質問するが良い。
 質問する場合は、どの"人でなし"に答えて欲しいか指定するのが吉だ。
 
 次スレは、総容量480kbに超えた時に、"超えさせた奴"が立ててくれ。
 そいつが気付かなかったり忘れていたりした場合は、個々の判断で代理を見繕うのが良
いだろう。
 500kbに達したときには、既に完全移行しているように心がけてくれ。
 
 age/sageはキサマ等の好きにしろ。ただ、メール欄に己の出典を入れることだけは忘れ
てくれるな。

2 名前:遠野四季 ◆MC7218th56:2003/03/20(木) 01:49

 
 なお、参加及び闘争を行うにあたって一定の基準を設けている。
 目を通しておいてくれ。
 
 ―参戦基準の判断―
 参戦基準は原則、『吸血鬼』に関係がある者とする。
 これは原典が吸血鬼を取り扱ったものであることや参戦者が吸血鬼、あるいは狩人であ
ることを意味するものと定義する。
 
 ―逸脱キャラクターの処遇について―
 逸脱キャラクターとは原典が吸血鬼と無関係であるものと定義する。
 此処はあくまで『吸血大殲』だからな。吸血鬼と無関係な闘争をすれば、そこに絶望的
な矛盾が生まれるのは自明の理だろう。
 だから使うな。
 どうしても使いたいのなら、頭を使え。
 異端が異端として見られないようにするには、相応の努力と実力が必要だ。
 ここ吸血大殲の可能性は無限だ。その無限の可能性の片鱗を見出せれば、幾らでもやり
ようはある。
 これは具体的にどういう言えることではない。
 既存の闘争やZEROスレ(http://www.appletea.to/~charaneta/test/read.cgi?bbs=ikkoku&key=1037803005
などに目を通して、先輩達がどのようにやっているか学んでおくのも面白いかもしれんぞ。
 
 キサマが思う大殲こそが"真なる"大殲だ。しかし、それが他の者に取っての"大殲"には
成り得ない。人は一人だからな。キサマ以外の人間は全員、キサマじゃないのさ。
 
 参加者は以上のことを適当に頭の隅に置いて、やりたい放題好き勝手絶頂に殺して殺さ
れてまた殺してくれ。
 
 関連リンクは>>3に、参戦の為の自己紹介テンプレートは>>4にある。
 新規参戦者は>>3のリンクにある『吸血大殲闘争者への手引き』に必ず目を通し、それか
>>4の自己紹介テンプレートを使って自己紹介をしてくれ。

3 名前:遠野四季 ◆MC7218th56:2003/03/20(木) 01:50

関連リンクだッ!

■『吸血大殲闘争者への手引き』
http://www.geocities.co.jp/Milkyway-Orion/4504/vampirkrieg.html
 
■真・吸血大殲板(屑共の本拠地だ)
http://plan-a.fargaia.com/html/vampbattle/index2.html

■吸血大殲闘争専用会議板(闘争の会議はひたすらここでやれ)
http://jbbs.shitaraba.com/game/1721/

 
関連リンクだ。
 
■参加者データサイト『吸血大殲 Blood Lust』(左手作成・過去ログも全てこちらにあり)
http://members.tripod.co.jp/humituki5272/taisen/index.html
 
■吸血大殲本家サイト
『From dusk till dawn』
http://www.uranus.dti.ne.jp/~beaker/
 
『戦場には熱い風が吹く』 (仮閉鎖中?)
http://www.geocities.co.jp/Playtown/4875/
 
■前スレ
吸血大殲第52章『鉄血の行軍』
http://www.appletea.to/~charaneta/test/read.cgi?bbs=ikkoku&key=043854167

■太陽板の質問スレ
吸血大殲/陰 其の15 混沌屋敷『眩桃館』地下 〜大殲資料の間〜 
http://www.alfheim.jp/~narikiri/narikiri/test/read.cgi?bbs=TheSun&key=1021881487
 
■広報、情報スレ
吸血大殲ZERO 〜二つ目の序章〜【吸血大殲広報スレ】
http://appletea.to/~charaneta/test/read.cgi?bbs=ikkoku&key=1037803005

4 名前:遠野四季 ◆MC7218th56:2003/03/20(木) 01:50

出典 :
名前 :
年齢 :
性別 :
職業 :
趣味 :
恋人の有無 :
好きな異性のタイプ :
好きな食べ物 :
最近気になること :
一番苦手なもの :
得意な技 :
一番の決めゼリフ :
将来の夢 :
ここの住人として一言 :
ここの仲間たちに一言 :
ここの名無しに一言 :

5 名前:御神苗優 ◆y4OminaeNo:2003/03/21(金) 00:50

孔濤羅VS御神苗優 『己を修羅と貸せる鬼、己が修羅を殺す妖精』
>>51章 343
 
人間のスピードをはるかに凌駕する動き。
反射神経の埒を越えたそれに追随することは、ヒトではほぼ無理なはずだった。
そう、『だった』。俺の目前で繰り広げているこの光景は、
もはや『ヒト』の埒外のものだった。
 
奴の間合いを外し、虚をつき、懐に飛び込もうとする俺の行く手を阻む剣尖。
その刺突は閃く度に俺の髪を宙に散らし、血の花を咲かせる。
だが、その何度かの攻防で、パターンを読み取った。
間合いに入れば奴の剣は反応してくる。
 
ならば・・・・・・・・対処法は一つだけ。
それよりも早く。剣が俺に届く前に叩き伏せるだけだ。
 
俺は旋風のように懐に飛び込んだ。
それを待っていたかのように放たれる閃光。
一つ。二つ。三つ。
その一つ一つがスローモーションのように目に映る。
体を僅かに捻りつつ、俺の間合いに引き寄せるべく突進する。
だが・・・・・・・・僅かに奴の技のほうが俺の疾さに勝った。
左肩に突き刺さる剣尖。肉を抉るその激痛に足が止まりかける。
(此処で――――終わってたまるか!!俺は帰るんだ――――日常の世界へ――――)
 
「う・・・・・・・・うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
 
今以上の疾さで更に前へと進む。
剣は更に肉を抉り、骨を削っていく。その痛みが疾さを更に加速させる。
そして――――― 一条の刃筋が闇を斬り上げた。
 
その一振りは奴の右肩を抉り取り、胴から切り離した。
支えを失った腕は重く、左肩に更なる激痛を齎す。
だが、その激痛に悶える時間など無い。
剣を失って尚、眼前の敵を倒さんとする奴の水月に、
左の拳を放つ。インパクトの瞬間、体内を貫かんばかりのスピードを込めて。
 
仁王立ちの体が、ゆっくりと前に倒れていく。
それを受け止めながら、俺は誰に言うでもなく呟いた。
 
「こんな腕で全てを救おうなんて大それたことは思っちゃいねぇ――――
 だから――――あがいてんだよな――――あんたも―――――俺もな」
 

6 名前:"長牙" ◆OClOnGFAng:2003/03/21(金) 19:49

長牙 VS …… (導入)

 俺は、後ろから抱きかかえるようにして女の首筋に牙を埋めていた。
 眼下では溢れた血潮が肌を覆い、裸に剥いた女の乳房が赤い膜に覆われていた。
 女の体を揺さぶるたびに、二つの肉の塊が揺れるのを、俺は見た。
 薄ぼんやりとした灯りに照らし出され、それは、ヌラヌラと輝いていた。

 淫靡な光景だな、と、どこか酷く、醒めた部分が呟いた。
 耳元で喘ぐ女の息遣いも、どこか遠くの物音のように俺の心を上滑りしていた。
 喉を潤している血液だけは相変わらず旨かったが、旨ければ旨いほど、味気ない想いが広がる。
 どこか冷め切った気分のまま、俺は半ば、事務的に手順を進めた。

 右手にナイフを取り出し、女の下腹部に突き立てる。
 ナイフの先端が子宮に浅く潜り込んだ。耳元でヒィと女が鋭く息を吸い込む。
 ついで、俺は女自身を突き上げながら、ナイフを真上に滑らせた。
 瞬間、悲鳴とも嬌声ともつかぬ絶叫を上げながら全身を硬直させ、女は果てた。

7 名前:"長牙" ◆OClOnGFAng:2003/03/21(金) 19:50

>6 長牙 VS ……

 女を仰向ける。
 荒い息をつきながら、その目は何も見てはいない。
 ショック死できれば楽だったろうが、半ば吸血鬼化しているがゆえにそれは望めない。

 俺は、腹に開いた割れ目を見下ろした。
 縦に大きくあいた裂け目は、悪趣味な性器のカリカチュアと見えなくも無い。
 そこでは腹圧に押されて腸が中からはみ出し、ゆるゆると蠢いていた。

 腸を掻き分け、俺はそこに無造作に右手を突っ込んだ。
 細く高い女の喘ぎをBGMにしながら、手探りで目当てのものを探る。
 人体の構造は把握している。
 大した時間もかけずに俺はそれを見つけ、力任せに引きずり出した。

 血の滴る、レバーだ。
「ダイエットしてるかい? おねーさん」
 無意味な軽口をたたきつつ、俺はそれに直接口をつけて齧り付いた。

8 名前:『夜の女王』 ◆QhSuCcUBus:2003/03/21(金) 19:53

夜の女王 vs ……

>>6 >>7

 つまり、コレに惹かれたのか。

大きな柱と、高く厚く辺りを覆う闇。
そして、立ち込める瘴気と、柱から聞こえる声。

この空間は酷く「向こう側」に近い。

「ふぅん・・・これはこれは。一体何人ぐらい死んでるのかしらね・・・」

だが、コレだけでは来た意味が無い。
死者の怨念など、当に見飽きているのだから。

 でも、確かここは――

そう、確かここは、塔。
脆弱な人間達が寄り添って生きる為に建てた、塔。
混沌の名を冠した積層都市の一つ。

この場所に、これ以上何も無い。
上に、行く事にした。



雑多な人の群れ。協調性の無いネオン。遠くて近い喧騒に、薄汚れた街路。
散在する滲み出るような魔力の胎動。
道行く人間が雑霊を気にも留めない事から見ても、そういう方面の現象や技術は
この街ではありふれた物らしい。

9 名前:『夜の女王』 ◆QhSuCcUBus:2003/03/21(金) 19:54

>>8

服を変えて人に紛れ、何人かの意識を覗く。
年老いた男。若い女。中年の男。
趣味も嗜好もばらばらなのは当たり前で、けれど共通する言葉が一つ。

吸血鬼。

実在を疑う事無く、拭い切れない底知れぬ恐怖と共に。
まるで一種の天災のように受け止められている言葉。
こんな在り方は異常だ。
それとも、その吸血鬼の方が変わっているのか。

気が付けば、探してみようと思っていた。


――だから、だろうか。
その音が聞こえたのは。

がぶり。噛み付く音。
ぶつん。千切る音。
くちゃ。咀嚼する音。
合間に響く、ずず、と言う啜る音。
音と共に漂ってきた血の匂いの余りの濃さに、背筋がぞくりとした。
行けば、さぞかし良い光景が見られるだろう。
是も否も無く、足が動いていた。

一歩進む毎に強くなる匂いは、質量すら伴い。
辿り着いた路地裏、赤く粘つく水溜りの中で、白い身体が踊っていた。

歓喜に震える女の顔には耳と目が無く、喉に開いた穴の所為で声にならない息がひゅー
ひゅーと音を立てて。肘までしかない左腕の断面からは白い骨が見え、左の太腿は鳥の
腿肉のように齧り取られて。右の乳房の辺りに顔を伏せたパートナーの口元からはくち
ゃくちゃという音が聞こえ。

それでもなお、女の身体を襲っているのは。

快感、らしかった。

10 名前:"長牙" ◆OClOnGFAng:2003/03/21(金) 19:56

>9 長牙 VS 夜の女王

 その足音に、俺は気づいていた。
 醒めていたからだ。頭の奥底に、どうしようもなく冷え切って冴えた部分が残っていた。
 警戒していたわけではない。
 ただ、その醒めた部分は、血を啜り、喰らうという行為の間にも、淡々と情報を処理していた。
 足音――歩幅、調子から大きさ、身長と体重を大まかに見当付ける。
 それに、血臭にわずかに混じった香り――芳香ににた、おそらくは体臭が、足跡の主が女であると教えていた。

 相手がこちらを見つけるのを待ち、さもさりげない風を装って、
 俺は、血塗れの女の腹腔から顔をあげた。

 そのとき俺はまだ、それを、偶然の遭遇だと思っていた。
 紛れ込んだ犠牲者を、ただ獲物にするためだけに、俺は視線を、
――人の魂を容易に呪縛する視線を向け、そうしておいて微笑みかけた。
 ようこそ、と。

11 名前:『夜の女王』 ◆QhSuCcUBus:2003/03/21(金) 20:02

夜の女王 vs ……

>>10

こちらを向く顔。見つめる瞳。
視線が絡み合う。
紅く、輝く、瞳。
絡み合う。
しせ、ん。

吸血鬼だ。見つけた。都合が良い事この上ない。
後は思う存分愉しむ――だけ。

だけ、なのに。




 ま、さか。

あの目。
魔眼―――それも飛び抜けて強力な。
力を抑えたままそんな物を見てしまった所為か、身体が、自由に、なら、ない。

「あ、く・・・」

足だけが変わらず動いて、距離が詰まってゆく。
なす術は、今の所、無い。

12 名前:"長牙" ◆OClOnGFAng:2003/03/21(金) 20:19

>11 長牙 VS 夜の女王

「あんたも食うかい? 生だけどな」
 意味の無い戯言を投げかける。
 あと数歩というところで、女の歩みは止まった。
 止めたのだ。

「悪いな、後がつかえてるんだ」
 俺は小声で、今はもう、ほとんどもとの姿を残していない、女だったモノに囁きかけた。

 胸郭を割り裂き、心臓に直接口をつける。
「美味かったよ――」

 咀嚼。口元で大量の血が噴いた。
 それで、生かされてきた女は、ようやく解放されたわけだ。
 それは、動きを止めた。

「さて。待たせたかな、おねーさん?」
 手のひらで口の周りの鮮血を拭いつつ、立ち上がる。
 俺は女と向かい合って、上から下まで眺め回した。
 イイ女だと思った。毒婦の風情が漂って、それがまた一段と色気を助長していた。

 鮮血に塗れたままの右手を差し出す。
 この女に、赤はさだめし似合うだろうと思いながら。

13 名前:『夜の女王』 ◆QhSuCcUBus:2003/03/21(金) 20:53

夜の女王 vs ……

>>12

止まった。
けれど、それだけ。身体の自由は戻っていない。
マネキンのように只、立っているだけ。

一歩。
そして更に一歩。
残った僅かな距離を、ゆっくりと手が伸びてくる。

「く・・・」

甘い、血に塗れた。
手が、頬に触れて。
唇に、紅い紅が引かれて。



それで、心と身体のチャンネルが少しだけ合った。

「――――いえ、いきなり、来てしまった、わたしが悪いのだし、ね」

上手く、微笑えただろうか。少しだけ不安だった。

「・・・お食事の途中に悪いけど、ちょっと良いかしら?」

そう言い終わる頃には後に下がる事が出来た。

 ハプニングはあったけれど・・・さあ、始めましょうか。

「わたしを、殺してみない?」

14 名前:"長牙" ◆OClOnGFAng:2003/03/21(金) 21:19

>13 長牙 VS 夜の女王

 俺は、下がる女をアホ面さげて見送ることになった。
 あァ、やっぱりこの女には赤が、血の色が良く似合う――

「――――どこの魔女だい、あんた」
 吸血鬼の魅了から逃れ得るのは、人の理をはみ出してしまったものだけだ。
 今度は何のゲームに巻き込まれたのか、とちらとそんな思考がよぎる。

 それでも構わない。
 どうせ避けることができないならば、俺はそれを楽しむだけだ。

「しかし、殺してくれとは穏やかじゃないな。自殺願望があるのか、お宅?」
 言いながら踏み出した。
 間合いを詰めながら、ニヤリと笑う。

「やさしくお願いしてくれたら、かなえてやらんでもないぜ?」

15 名前:『夜の女王』 ◆QhSuCcUBus:2003/03/21(金) 21:53

夜の女王 vs ……

>>14

状況は良くない――――と言うよりは悪い。
身体は動くが、魔力が使えない。新たに使い魔も呼べない。

 ・・・ふふふ。

だからこそ。
だからこそ、愉しい。
ギリギリな程、スリルは倍化するのだから。

「いえ、魔女ってわけじゃ――ない、とも言えないか。ま、余り気にしないで」

使えるのはネックレスにしていた少数の使い魔だけ。
それも、現状では何度も変形させる事は出来ないだろう。

「死にたいわけじゃないの。それまでの過程が重要なのよ。
 殺されるかもしれない。死ぬかもしれない。
 そういうのって、感じない? ああ、生きてる、って」

引き千切るようにネックレスを外し、右手に巻く。

「だから、お付き合いしてくださらない? 吸血鬼のお兄さん」

ささやかに武装した右拳を、無造作に歩み寄る男の顔面に送った。

16 名前:"長牙" ◆OClOnGFAng:2003/03/21(金) 22:19

>15 長牙 VS 魔女モドキ

 頭をふってそれを避け、ほとんど無意識の動作で関節をとりにいった。
 半身になり、やさしく拳を右手で受け止め――

「ヒマ潰しか。酔狂なこった。
 あいにく俺には、生の実感は遠いが、ね!」
 言葉とともに、鋭く捻って手首を極めにかかる。

17 名前:『夜の女王』 ◆QhSuCcUBus:2003/03/21(金) 22:45

夜の女王 vs ……

>>16

極まりきるより一瞬早く、踏み込み。

「これでも、少々長く生きていてね。暇潰しを探すのにも色々苦労しているのよ」

握り込んでいたネックレスの一端を放し、左手を使ってそれで吸血鬼の手首を絡め取る。

「貴方はそんな事は無いのかしら?」

言いざま、足を払うのと同時に両手を強引に引いた。

18 名前:"長牙" ◆OClOnGFAng:2003/03/21(金) 23:04

>17 長牙 VS 魔女モドキ

 この間合いのせめぎ合いで俺と張り合うには100年速い。
 瞬間的に体を沈ませ、払いにくるより一瞬早く体勢を整えた。

 体重を逆足に移し、払いに来た足を膝で受ける。
 いや、受けたというよりは迎えにいき、上に弾いた。
 そのまま相手の足が着地するより先に、俺は受けた足を降ろさずに逆側の膝を蹴りつけにいく。

19 名前:『夜の女王』 ◆QhSuCcUBus:2003/03/21(金) 23:52

夜の女王 vs ……

>>18

ぎしり。
無理な動きに右の手首が軋む。
構わない。取り敢えず折れてはいない。
崩れた体勢を支える為に左腕を伸ばしてしまい、右手はまだ取られたまま。
跳ね上げられた足を使おうにも間に合いはしない。

 なら―――――

蹴られるしかない。

「―――――」

物音の絶えた空間には、関節の上げる断末魔は事の他良く響いた。
覚悟はしていても、痛い。
とても、痛い。

体重を支える事が出来なければ立っている事など出来ない。
重力に引かれるまま、地面に崩れ落ちた。

20 名前:"長牙" ◆OClOnGFAng:2003/03/22(土) 00:29

>19 長牙 VS 魔女モドキ

「あいにくと暇つぶしで苦労したことは無い。
 暇なのも人生、ってな」
 吐き捨てるようにそう言い、俺は女を見下ろした。

「まだ続けるかい? それとも手を貸そうか?」
 軽い嘲弄とともに右手を差し出す。
 視線は女から外さない。その眼から外さない。

「まだ終わりじゃないだろう?」

21 名前:『夜の女王』 ◆QhSuCcUBus:2003/03/22(土) 01:17

夜の女王 vs ……

>>20

「―――そう」

暇潰しで苦労した事は無い。
なら、何故あんな目をしているのだろうか。
至福の時である筈の食事の最中でさえも、何処か――言葉にならない虚ろを抱えているような。

「・・・思ったより紳士なのね。でも、手は借りなくても大丈夫よ」

左膝は完全に折れている。焼けるように痛く、熱く、疼く。
だが右手は動く。左手も動く。
利き足もまだ無事だ。
やれる。
いや、例え両手両足が無くてもやる。

「それに、勿論これで終わりなんかじゃない―――」

深紅の瞳。
油断すると吸い込まれそう。

目を瞑るのと同時に、右手を振るった。
但し、握っているのはネックレスではなく細身のナイフ。
狙ったのは、男の足首。

22 名前:"長牙" ◆OClOnGFAng:2003/03/22(土) 01:36

>21 長牙 VS 魔女モドキ

「そんなところを狙ってどうするよ?」
 俺は、ナイフの軌道と交差するように右足を蹴り出した。

 狙ったのは首筋だった。
 顔を狙おうかとも思ったが、汚すにゃもったいないとついつい思った。
 馬鹿な感傷だ。

 ナイフと足首が交錯する。
 真っ向からぶつかったおかげで、骨が半ばまで断ち切られた。
 しかし、ぐらつきかかった足首は勢いを保持し、
 俺はそのまま、女の首筋めがけて右足を叩き付けた。

23 名前:『夜の女王』 ◆QhSuCcUBus:2003/03/22(土) 01:54

夜の女王 vs ……

>>22

片足に片腕で勝てる筈も無く、蹴りは首を打った。

「確かに―――――貴方を殺すなら、心臓よね」

揺れる頭。視界。世界。
触れている吸血鬼の右足に縋り付く。

「だから、貴方も寝てくれない?」

右足で吸血鬼の左の膝裏を蹴る。
同時、寝返りを打つように身体を捻り、回転に巻き込んで引き倒しにいく。

24 名前:"長牙" ◆OClOnGFAng:2003/03/22(土) 21:47

>23 長牙 VS 魔女モドキ

 5メートルは蹴り飛ばすつもりだったのだが、意外とタフだ。

 足を取られ、俺は逆らわずに体を回した。
 宙に浮いた不安定な状態、しかしまだ制御を失ったわけじゃない。
 俺は倒れる寸前、床に左手をついた。
 そこを支点に強引に両足を蹴り出し、パワーで女を振り払いに行く。

25 名前:『夜の女王』 ◆QhSuCcUBus:2003/03/22(土) 22:15

夜の女王 vs ……

>>24

毬のように数メートル吹っ飛び、更に1メートル程転がって、最後にコンクリートの壁。
揺れていた世界が今度は廻り出しそう。
壁を這うパイプに掴まって立ち上がり、そのまま背中を預けた。

それほどの勢いだったのに、ナイフは吸血鬼の右足首に食い込んだままだ。
むしろ、気のせいか食い込んで見えた。

「・・・ねえ、」

これでラスト。
固形物にするのなら後二回は変えられただろうけど・・・

「そのナイフ―――――」

その言葉と共に、使い魔は液体へと変化した。
紅い血の道に潜り込み、冷たく脈打つ心臓へ。

「貴方は何で出来てると思う?」

辿り着いてしまえば、喰い破るだけだ。

26 名前:"長牙" ◆OClOnGFAng:2003/03/23(日) 00:10

>25 長牙 VS 魔女モドキ

「勝算があるのなら、相手に気づかれないように仕掛けるこった」
 声音に呆れた雰囲気が混ざった。

 マクスウェルに血流を調整させる。
 左足の静脈、体内の不随意筋を用いて逆圧をかけ、せき止め。
 ナイフを抜き、左の太腿から脹脛の静脈を大きく切り裂いた。

 圧力をかけられたおかげで派手にしぶいた血の中に、蝙蝠のごときソレを見つけ、ひょいとばかり捕まえてやった。

 そのまま握りつぶす。
 吸血鬼の法外な握力に完全に原型を失い、呪的な意味さえも失って残骸と化したそれを、俺は足元に捨てた。
 べちゃりとへばり付いた黒いモノをブーツで踏みにじり、女に向き直る。

「手品は、種を知られないのが肝心だぜ?」

27 名前:『夜の女王』 ◆QhSuCcUBus:2003/03/23(日) 00:42

夜の女王 vs ……

>>26

途切れる事の無い痛み。
どくん、どくん、とまるで鼓動のように。

「ええ・・・ま、貴方の言う通りよね」

まだ―――まだだ。
もう少し、一つで良いからきっかけがあれば。

「でも、手品が一つだけとも限らないでしょう?」

嘘ではない。が、今すぐには披露出来ない。
あの眼の力。赤い眼の。

 ―――赤。

すぐ其処にもあった。目の前の吸血鬼の食事の跡が。
半ば吸血鬼化していたとは言え、精気の宿った人間の血が。

「・・・贅沢は言えないしね。今更だけど、ご馳走になるとしましょうか」

倒れ込んだ。全身で吸った。
かちりと音がしたようだった。

28 名前:"長牙" ◆OClOnGFAng:2003/03/23(日) 01:02

>27 長牙 VS 魔女モドキ

 イイ女ってのは、浅ましい振りをすると猛烈にみすぼらしく見えるもんだ、と、一瞬そんなことを思った。
 いや、そんなのはどうだっていい
 興醒め、というよりは、猛烈に腹が立っていたのだ。

 俺は、その肉塊がかつて人だったころを知っている。
 なにより、俺は”終わらせた”のだ。それを今更暴き立てる様に、猛烈に腹が立っていた。
「俺の食い残しは、そんなに美味いか?」

 腐った台詞を吐く前に右手が動いていた。
 足を切り裂くのに使ったナイフを、ほとんど無意識の動作で手加減抜きに投擲している。
 狙いは後頭部だ。

29 名前:『夜の女王』 ◆QhSuCcUBus:2003/03/23(日) 01:52

夜の女王 vs ……

>>28

薄汚れた地面に伏せて、貪った。浅ましく、餓鬼の様に。

「―――悪くないわね、って言いたい所だけど、」

空気を切り裂く音。
羽ばたきの音。
そして、甲高い金属同士がぶつかる音。

「正直いまいちだわ。・・・ああ、ちょっとだけ貴方の味がするかしら」

巨大な蝙蝠の翼がわたしを覆い、飛来したナイフはその表面を滑った。
篭められた尋常でない膂力が、こうしていても十二分に伝わってくる。

 ・・・さて。

左膝の壊れた部分は使い魔で繋いで、立ち上がった。

「あんな所を見せるつもりなんて無かったけれど・・・」

こんな所でお終いには、したくなかった。

「ショーの続きを。愉しい愉しい時間の続きを、わたしに頂戴」

踏み込み、両翼を振るった。

30 名前:"長牙" ◆OClOnGFAng:2003/03/23(日) 02:58

>29 長牙 VS 夢魔の女王

 投じたナイフは翼の表面を掠め、銀光と化して壁面に突き立った。
 翼だ。黒い蝙蝠の翼がまず、目に入った。
 毒華が花開いたようだった。
 妖艶な――魔的な魅力だ。実際に普通の人間ならまず抗えないだろう。
 獲物でもなく、人でもなく。魔としての女。
 それは、俺を、わずかに苛立たせた。

 相手の言葉には答えず、ゴキリと音を立て、首を回す。
 今までのそれを覆す気配に、ほとんど無意識に身体が警戒していた。
 左半身に身構える。身体の陰で右拳を握り締めた。
 一瞬の緊張に備えて力がたわめられ――――

 女の踏み込みに応じ、俺は弾けるように突進した。
 その勢いをのせ、振り出された黒い翼に、俺は渾身の力で拳を叩きつけていた。

31 名前:『夜の女王』 ◆QhSuCcUBus:2003/03/23(日) 03:15

夜の女王 vs ……

>>30

他の事を何も考えずに済む。
そういう状態は、好ましい物だった。

考えている。
例えば、右の肩口を狙って翼を打ち込もう、と。
例えば、それが拳で弾かれた衝撃について。
例えば、次は左脇腹へを狙おう、と。


但し、翼の縁を刃の様に変えて。

32 名前:"長牙" ◆OClOnGFAng:2003/03/23(日) 03:27

>31 長牙 VS 夢魔の女王

 俺は踏み込みを止めるつもりは無かった。
 脇腹を狙う斬撃を、左の二の腕ではじき出すように受ける。
 抉られる左腕を無視して速度をゆるめず踏み込み、
 ねじ込むように右ひじを叩きつけにいった。

33 名前:『夜の女王』 ◆QhSuCcUBus:2003/03/23(日) 03:48

夜の女王 vs ……

>>32

顎に来た肘打ちは思いの外軽く――直後に膝が落ちた。
何度目かの揺れる世界。

これも、悪くない。

片手を付いて、残りの翼の縁も刃へと変える。

「・・・ひょっとして、何か気に障った?」

左右から挟み込む様に、膝を狙った。

34 名前:"長牙" ◆OClOnGFAng:2003/03/23(日) 04:20

>33 長牙 VS 夢魔の女王

 左右からのそれを捌く術が見つからず、
 さりとて宙空からの攻防を嫌って、俺は飛び退った。

「知らんな。魔女の言うことに耳を貸すな、先人の知恵さ」
 血がまだらに模様を描く裏路地で、再び向かい合う。

――翼が厄介だ。
 間合いが読めない。こういうときは飛び道具が欲しくなるが、無いものは仕方が無い。

 左回りに動きながら間合いを詰める。
 踏み込み、フェイントを混じえて誘った。
 初撃をかわし、裏をとりに行く。

35 名前:『夜の女王』 ◆QhSuCcUBus:2003/03/23(日) 04:47

夜の女王 vs ……

>>34

仕切り直し。
わたしの世界はまだ揺れていて、吸血鬼の腕にも足にも傷は見当たらない。
それでも、迂闊には攻めて来ない。
身に染みているが、とても闘い慣れている。

「・・・そんなに悪い女に見える?」

動くだけの左膝の痛みが、ふらつく意識を修正する。
視界の外へと逃げてゆく吸血鬼。
見え見えの様子見。
ベテランの誘いには、乗った方が面白いだろうと思った。

浅く一歩。
二歩目を踏みきった勢いに体重を乗せて、左のサイドキックを放った。

36 名前:"長牙" ◆OClOnGFAng:2003/03/23(日) 22:42

>35 長牙 VS 夢魔の女王

 無言で、片頬を吊り上げてそれに答える。

――出し惜しみか。

 わずかに斜めに下がって横蹴りを外した。
 そのまま前に出る。円を描くように。
 翼を出す機会は作ってやった。さぁ、出して来い。

37 名前:『夜の女王』 ◆QhSuCcUBus:2003/03/23(日) 23:16

夜の女王 vs ……

>>36

皮肉めいた笑み。

「―――ま、自分でもそう思うけれど」

空を切った左足を地に着いて、微かな違和感。
今までは力の戻ってくる感覚に押し潰されて気が付かなかった。
いや。今もそれの感覚は余り変わらない。
なら変わったのは。
そう、違和感の方。


何を。詰まらない事だ。些細な事だ。
集中しろ。愉しめ。

振り返る動きに乗せて、変えたままの翼を全力で叩き付けた。

38 名前:"長牙" ◆OClOnGFAng:2003/03/23(日) 23:56

>37 長牙 VS 夢魔の女王

 完全にはかわせないことを、俺は見て取った。

 円の動きを外側に膨らませながら、右腕を畳む。
 前腕と二の腕を重ね、盾にしたのだ。

 翼が、刃が、3本の骨を骨を断ち切り、肺に切り込む。
 それに逆らわず回転しながら、俺は刃をやり過ごし、そのまま回転する。

 絶好の間合いだった。
 後ろ回し蹴りを放つ。かかとを、女の脊髄目掛けて叩き込みにいった。

39 名前:『夜の女王』 ◆QhSuCcUBus:2003/03/24(月) 00:27

夜の女王 vs ……

>>38

食い込む。切り裂く。しかし、浅い。

違和感は育っている。
その分何かが失われてゆく。
言葉に出来ない何かが。

左の側面を見せていた。
視界の端を掠めるモノ。
左腕を跳ね上げ右腕を添えて。
左腕はくの字の逆に折れ、右腕は衝撃で弾かれ、頚骨が悲鳴を上げた。
身体は浮いている。
左の翼を数条の刃に変えて、吸血鬼が居るであろう空間を裁断した。

40 名前:"長牙" ◆OClOnGFAng:2003/03/24(月) 00:58

>39 長牙 VS 夢魔の女王

 手応えはあった。
 追撃――――だがその思考は、薙ぎ払われた一撃に止められる。
 蹴りのフォローで体勢が悪い、俺は身を投げ出すように地面に伏せた。
 頭髪をかすめ、頭上を刃が通り過ぎていく。
 蹴りの反動とその動きで、間合いが広まった。

――今、ナイフがあれば、必殺といっていい一投を投じられていた、と思った。
 距離はあったが、翼の刃を振り切った瞬間に、それだけの隙を見出していたのだ。
 だが、ナイフは手元に無い。

 左腕を再生させながら飛び起きる。
「シュア―――」と殺意の息を吐き出しながら、
 俺は突進をかけた。

41 名前:『夜の女王』 ◆QhSuCcUBus:2003/03/24(月) 01:32

夜の女王 vs ……

>>40

手応えは無い。
右翼を同じ様に刃に変え、地面に突き立てる。
ふらふら、首の座りが悪い。

痛いと言うより浮いているような、地に足の着かない感覚。
違和感は蝕む。

足音と呼気。
殺す為に駆け寄ってくる。
わたしを。
殺す為に。

戻りつつあった左の刃が再び伸び、吸血鬼の背後から追い縋った。

42 名前:"長牙" ◆OClOnGFAng:2003/03/24(月) 22:20

>41 長牙 VS 夢魔の女王

 斜め後方――死角から迫ったそれを、俺は避けられなかった。
 太腿に食い込む。
 バランスを崩しかけ、それを右腕で押さえる。
 次の一撃に感覚を解放しながら、右腕で刃を引き抜きにかかる。

43 名前:『夜の女王』 ◆QhSuCcUBus:2003/03/24(月) 23:36

夜の女王 vs ……

>>42

深々と突き通す手応え。
足が止まった。
追撃を、と思った。

思っ、た。
違和感が、欲する。

「――――――――――」

何故か、とても、惹かれる。
立ち込める匂いに。撒き散らされた色に。

吸血鬼に「なりかけた」人間の血に。
欠片とは言え、呪いをその身に宿した人間の血に。

抗えぬ呪いを、宿した、血。

 ・・・まさか。でも―――

一瞬の停滞。

44 名前:"長牙" ◆OClOnGFAng:2003/03/25(火) 21:50

>43 長牙 VS 夢魔の女王

 刃を引き抜くと同時に無事な左足で地を蹴りつけ、加速。
 二歩目を踏むまでに右の太腿が完治、全力疾走。

 相手の一瞬の戸惑いを俺は察知していたが、構わなかった。
 叩き潰すだけだ。瞬間の血の――――赤い色彩のためだけに、今の俺は動いている。

 俺は、相手が次のアクションを取る前にその間合い、内懐に入り込んだ。
 急速に拡大される相手の顔が、表情を――おそらくは驚愕の表情を、浮かべる。
 それを、単に反応の遅滞という情報として処理し、防御度外視の全力攻撃を選択。

 相手への直線軌道、激突寸前で左へ一歩。
 同時に左足を踏ん張る。ブーツの底と地面の摩擦が一瞬、耳障りな音を立て――
 直線加速のエネルギーを、全て回転運動へ変換。
 回し蹴りを、右の爪先を、その身体のど真ん中へ叩き込みに行く。

45 名前:『夜の女王』 ◆QhSuCcUBus:2003/03/25(火) 22:12

夜の女王 vs ……

>>43

忘我の時。
詰め寄ってくる気配。
反応の遅滞。
弧を描く足。

翼でガード―――
した。へし折れるような、或いは千切れるような音も。
僅かな時間も置かず、衝撃が炸裂した。
痛いとも感じない。
只、視界が流れて、壁に激突した感触がした。

「―――――・・・」

わたしの目は、今、何色をしているのだろうか。

46 名前:"長牙" ◆OClOnGFAng:2003/03/25(火) 22:39

>45 長牙 VS 夢魔の女王

「ハ、ハ、ハァ!」
 走る。
 壁に叩きつけられた相手に追いつき、拳を、抜き手を、
 己が拳を破壊しながら、ただただ叩きつけた。

47 名前:『夜の女王』 ◆QhSuCcUBus:2003/03/25(火) 22:56

夜の女王 vs ……

>>46

何度も犯された。
拳で肩を、腕を、顔を。
貫手で胸を、腹部を。
したたかに打ち付けられる度、身体が震える。
ずぶりと中に入られると、果ててしまいそうになる。

「・・・ねえ、目を、見て」

血を吐きながら言った。

「お願、い」

流れ出してゆくばかりでは物足りない。
もう終わりなのは、悲しい。
だから、貴方と一つになりたい。

48 名前:蟆霧 ◆slMAKIRIrI:2003/03/25(火) 23:13

http://www.appletea.to/~charaneta/test/read.cgi?bbs=ikkoku&key=043854167/233
只今ミズーさんとこのオレとの殺しあい真っ最中に御座い。
 

 白く丸みを帯びた流線型は、航空力学と貨物量の兼ね合いの極地ってわけだ。
とっかかりがなくてなんとも危なっかしい場所だが、落ちるわけにもいきやしない。
 なにせここは高度一万メートル。空の断崖絶壁だ。
 
「足を滑らせるなよ。その時点でおだぶつだぜ」
 
 まあ、どのみちおだぶつなんだが。みんな。みんなな。
 昇ってきたミズー・ビアンカが、後ろのほうで立ち止まるのを『視』て、機体の先端
から腰をあげる。
 大きく腕をあげて、口笛で楽を奏でた。
 
「無抵抗飛行路……あんたは生身で入ったことはあるのかい?
 空気抵抗零の、空のカタパルト。無限に加速できる高速空路。音速を超越する
速度で飛ぶ機上でも、この中ならこうやって立っていられる。
 速く、速く、もっと速く――意味がわかるか? ミズー・ビアンカ」
 
 セリーヌ・ディオン。曲名は「My heart will go on」。
 
「タイタニックだ。無抵抗飛行路から外れたと同時、機体強度の限界を遥かに超越
した速度で空気抵抗とソニックブームに激突し、哀れ飛行機は墜落する……と」
 
 こいつが、最初から決まってた悲劇のシナリオって奴だ。
 斯くして暗殺は完全に成就される、と。
 
「く、くくく、ひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ! お疲れ様ミズー・ビアンカ。いやあ
よく頑張ったね、褒めてやるよ。飴玉でもやろうか?
 ま……なんだ。つまりは」
 
 ようやっと振り向いて、オレは言ってやった。
 多分、今日一番晴れやかな笑顔。やさしい顔だったんじゃないかね。
 
「どっちみち死ぬなら、思い出づくりにおデートしましょうってことよ」
 
 爪を、構えた。

49 名前:"長牙" ◆OClOnGFAng:2003/03/26(水) 21:18

>47 長牙 VS 夢魔の女王

「黙れ――」
 血に塗れた女の顔は、確かに美しいはずだった。
 俺は女の首に手をかけた。ギリギリと力を加える。
 この女を見ていると、どういうわけか苛立ちがむやみに募る。

 押さえ付け、そのまま肩口にかぶり付いた。
 色気の出る気分じゃなかった。食い散らかすつもりで、牙をその肉の中に進めた。

50 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus:2003/03/26(水) 21:51

夜の女王 vs ……

>>49

肩の肉が消えた。
噛み千切る、と言うよりは引き千切って。
とても熱い。

「く―――あ、っ・・・はぁ、は、」

奪われるのではなく、一つになる。
例え、その行為が吸血鬼のどんな感情に起因していたとしても。

見せて。
貴方の中を見せて。
そして、わたしの中を見て。

そうすればきっと、一つになれる。

51 名前:"長牙" ◆OClOnGFAng:2003/03/26(水) 22:00

>50 長牙 VS 夢魔の女王

 柔肉の向こうの熱い血潮を顔面に浴び、
 気が付けば獣のように唸り声すらあげ――

 ただ、浅ましく、餓鬼の本能を剥き出しにして貪る肉は、
 熱く、喉を滑り落ちるたびに俺を昂ぶらせ。
 獣に堕した俺は、ただ、獣としてその肉を甘受した。

52 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus:2003/03/27(木) 21:42

夜の女王 vs ……

>>51

わたしの身体が肉に変わり、血を滴らせて。
そこには貪られる悦びだけがあった。

不思議と怖くは無い。
確信めいた物があった。
そう。
わたしと彼は近い。


わたしは彼に溶け込んでゆく。

53 名前:"長牙" ◆OClOnGFAng:2003/03/27(木) 21:46

>52 長牙 VS 夢魔の女王

 血溜まりの中で無様に這いつくばったまま、俺は唐突に我に帰った。
 手の中には何も無く。目の前には誰もいない。

 狂乱のあとの虚脱に飲み込まれそうになり、それを振り払おうと、俺は壁に、手をついた。
 立ち上がる。

「マクスウェル――――」
 そう、呟いた。夜明けはまだ、遠かった。

54 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus:2003/03/27(木) 22:10

夜の女王 vs ……

>>53

――目覚めは性急に。
語り掛ける声が、泥の底のわたしを揺り起こす。

(・・・・・・休暇が欲しいそうよ、何て、ね)

変わらぬ景色を見て、濃密な血臭を嗅いで、流れる空気を感じる。
身体の感覚はあっても、フィルター越しのように少しリアリティに欠けて。
慣れるのには幾ばくかの時間が必要なようだった。

(彼・・・で良いのかしら、の後任はわたし、モリガン・アーンスランド。
 自己紹介はしてなかったかったわよね?)

肉に溶けたわたしが、肉に溶けてわたしに。
元からあったカタチを利用する事で、それはより容易になった。

(「魔女の言うことに耳を貸すな」、って言っていたけれど・・・
 出会ってしまった時点で貴方には運が無かったのね。
 ま、こうなった以上、お互い良い関係を築ける様に努力してみない?)

彼は夢を見る。
わたしはその夢を見る。

55 名前:"長牙" ◆OClOnGFAng:2003/03/27(木) 22:16

>6>7>8>9>10>11>12>13>14>15>16>17>18>19>20>21>22
>23>24>25>26>27>28>29>30>31>32>33>34>35>36>37
>38>39>40>41>42>43>45>46>47>49>50>51>52>53>54

……性悪女に捕まったってところか。
追い出すまで気が休まる暇がねーな。(唾を吐いた

56 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus:2003/03/28(金) 07:13

(>55のレス番纏めは抜けがあるわね。訂正)

>6>7>8>9>10>11>12>13>14>15>16>17>18>19>20>21>22
>23>24>25>26>27>28>29>30>31>32>33>34>35>36>37
>38>39>40>41>42>43>44>45>46>47>49>50>51>52>53>54



(―――あらあら。良いじゃない? こう言うのも新鮮でしょう?
 良くも悪くも退屈は紛れるんだし、ね)

57 名前:アズュラーン ◆3RZmpA8PSI:2003/04/02(水) 02:05

 さて、この地に初めて来たりしものは名乗りをあげるのが則であったな。
余が名はアズュラーン、妖魔の王。多くの魔法の主にして地底の中心の都ドルーヒム・ヴァナーシュタ
の君主であり、闇の公子の一人でもある。
闇の公子、あるいは闇の君と呼ばれるもの達には余の他に「死」、「狂気」、「宿命」といった輩達がおる。
いずれも我が従兄弟ならぬ従兄弟にして、兄弟ならぬ兄弟達よ。
我が力と夜のわざの数々について知りたくば、タニス=リー著:「闇の公子」(ハヤカワ文庫FT以下同)、
「死の王」、「惑乱の公子」、「熱夢の女王」(上下)、「妖魔の戯れ」の各書を読むがよい。
地球未だ平らかなりし頃の魔法と神秘の片鱗に触れる事ができるであろう。

出典 : 闇の公子(タニス=リー著 ハヤカワ文庫FT) 
名前 : アズュラーン
年齢 : 創世以前より存在、我ら妖魔は永生なるゆえ。
性別 : 男、としておこうさして意味はないがな。
職業 : 妖魔の王
趣味 : 夜のわざ、ようするに人界に悪を為す事よ。
恋人の有無 : この永生においてはあまたの恋人がおったし、これからもおるであろう。最愛なるものは既に亡いがな。
好きな異性のタイプ : 見目よく美しきもの、そして気高きものだ。
好きな食べ物 : 妖魔に食事は必要ないが、この世のあらゆる珍味、妙味を知っておる。特に人の不幸は蜜の味であるな。
最近気になること : 人類の愚かなる事だ。再び滅びに瀕しても二度は救わぬ所存よ。
一番苦手なもの : ここにいる多くの者同様、陽光の前に立つ事は出来ぬ。
得意な技 :魔法全般 、それはもう出鱈目に強い。殆ど詐欺といってよいだろう。余こそあらゆる呪いの父なれば。
この全能とも言える魔力は主としていやがらせの為に行使される。
一番の決めゼリフ : 人間は余を崇めたりはせぬ。ただ恐れるのみ。
将来の夢 : 永生なる者に将来を問うても意味なき事と知れ。
ここの住人として一言 :この地を訪れるは始めて故、立ち居ふるまいに至らぬ点があるやもしれぬが宜しく頼む。
ここの仲間たちに一言 : 批判、意見は遠慮なく浴びせていただきたい。
ここの名無しに一言 : 質問があれば受けようぞ。

数万年ぶりに地上に出てみればまた随分と様変わりしておるようだな。
よもや四角く平たいものであったこの大地と其をとりまく渾沌の海がかような球体に変じておるとは、
神々もまた思いきった事をしたものよの。
おかげでかつて地上にあった多くのものが滅びるか忘れ去られるかし、其と似たもの、
あるいは似つかぬものが地上を闊歩するようになっておるな。それらを見て回るのもまた一興というものよ。

58 名前:アズュラーン ◆3RZmpA8PSI:2003/04/02(水) 02:12

さて、いくつか補足すべき事項を説明いたそう。
我らは自ら妖魔と名乗るものだが、ここには同性異種が数多くおるが故、我らの種族について話さねばな。
余の原典はタニス=リーによる小説「闇の公子」とその続編のシリーズだ。
いずれの物語もかつて地球が平らで四角い形状をしていた時代を舞台としておる。

大殲におけるカテゴリーについては、D(傍観者/その他)といたそう。
後に述べる余の力の程を見ればそれが妥当である事がわかるであろう。
余はこの世の闇の事象を司る闇の公子の一人なれば、力もて余を討つなどというは世迷い言に過ぎぬゆえ。
もしも余に挑まんとするなら智慧と魂の力をもって挑むがよかろう。

次に余の持てる力について語ろうか。
【外見】
まずは余の姿であるが、これは変幻自在、いかなる変身も思いのままである。
大いなる黒鷲、焔を吐く竜、あるいは稲妻の姿となって天空を駆ける事もある。されどそのほうらの前に
現れるときは、比類無き美しさの長身の男として現れる事が多いであろうな。
また、我ら妖魔は皆、蒼白き膚と漆黒の髪と瞳を持つという特徴がある。我らの姿を描くときは留意せよ。
この事は王たる余から最も卑しきドリンドラに至るまで変わらぬ妖魔の特性の一つなれば。

【魔法能力】
余は多くの魔法の主であり、あらゆる呪いの父でもある。
破壊、創造、変成とどれも思いのままであり、相手の魔力を無に帰せしむも容易なるものぞ。
一瞬にして荒野に宮殿を作りだしたり、地上に咲く一輪の花より一人の乙女を生み出したりしたこともある。
かつて天使と戦った折には余の支配するところの異次元へと戦場を移したこともあったな。
こと、魔法に関しては好き勝手絶頂が可能といってよいだろう。
何?この丸い大地における言葉では、かようなる様を「厨房」と呼ぶのか?
そんな事は承知しておる。力もて屈服させるのは余の流儀ではない。
かつて余の怒りに触れたる人間達にいかなる手段をもって罰を下したかはシリーズ3作目の
「惑乱の公子」を参照するがよい。余のやり方が如何なるかがわかるはずだ。
されど余の力は上天と海界には及ばぬ。あちらには別の王がおるのでな。

59 名前:アズュラーン ◆3RZmpA8PSI:2003/04/02(水) 02:15

【防御】
余と余の加護を得たものは地上においてはいかなる手段においても傷つく事は無い。
されど余自身がその気になった時と余の力をもって打ちかかりし場合は例外となる。
受けるに足ると感じた価値のある一撃は敢えて受けるのが余の信条なのでな。
かつて余の愛した娘は石打ちにあった際、石に紛れていた余の血の滴を受けて死んだ。余の力によりあらゆる
危害から守られていたが、余自身の力からは守る事は能わざるゆえ。

【弱点、不死性】
我ら妖魔の本質は永生、いかなる場合においても真の意味で死するという事はない。
されど我らは夜のもの、宇宙の影たるもの故に、忌わしき陽光の前には一瞬たりとも耐える事はできぬ。
おそらくここにいる陽光を忌むもの達に比しても、最も脆弱な部類であろうな。
陽光は我が身と我が魔法によるかりそめの創造物を共に灰燼と帰さしむ。
灰となった妖魔はいずれは神秘的な方法で蘇るが、それには千年とも万年ともつかぬ年月がかかるものだ。
また、太陽の光と同様の輝きをもつ金属、黄金は余らの力が作用しにくいという事も挙げておこう。
時間稼ぎくらいには役にたつであろうよ。金は我ら妖魔にとっては喪服の色でもある。


【手下、眷属】
地上に夜のわざを為すにあたっては、我が眷属たる妖魔を遣わして事にあたらせる事も多いゆえ、かの者達
についても説明せねばなるまい。

まずは余の同類たる地底の貴族ヴァズドルー。妖魔のなかでも最も偉大にして尊大なる貴族達だ。
皆、見目良く美しく、強大なる魔力をもっておる。余もまたヴァズドルーなるがゆえ、能力、性質は
余に準ずると考えてよいであろう。

次にもの言わぬ地底の従者たるエシュヴァ。この者達は決して声を発せず、その瞳でもって物語りをなす者
達だ。その姿はヴァズドルーと同じく、大変美しく、姿を変じる能力も持っているが、より夢見がちな性質
をしており、感情を味わう事に長けておる。余が使者としてもっとも多く遣わすのもこの者達だ。
そのほうらが闘争を行っている様を密やかに見つめる黒猫や蛇はもしかするとエシュヴァが変じたものやも
知れん。

そして醜い小人の鍛冶師たるドリン族。彼等はヴァズドルーやエシュヴァと違うてたいへん醜い小人の姿を
しておる。性質もまた、下品にして卑しき者達だが、その鍛冶の腕は素晴らしく、地上のいかなる細工にも
勝る驚くべき魔法の品を作りだす才覚を持っておる。それらの品の中には地上に災いをなすべく魔力が
こめられておるやもしれぬし、あるいは余の気に入った者達へ援助の為に与えられるやもしれぬ。
そのあたりは余の胸の内ひとつだな。


見ての通り、どうしようもなく厨スペックキャラだが、それゆえに闘争の暁には相手を尊重し、
愉しんで魅せる事を常に留意していきたい。
なお、意見、批判はビシバシと浴びせていただきたい。

60 名前:フォルテッシモ ◆40gff/DQNQ:2003/04/02(水) 21:58

 
 やあ、"最強"へと続く階段を昇る資格を得た強者共(注:>>155以外)よ、待たせたな。
 俺の名はフォルテッシモ。おまえ等(注:>>162以外)がひたすらに目指す"高み"に立つ男だ。
 さあ、どうする?
 おまえ等(注:>>165以外)が夢見て飢えて欲する"最強"が此処にあるんだぜ?
 どうする? どうする?
 どうするどうするどうするってんだよ貴様等(注:>>168以外)が―――ッ!!
 
 ふん……良いだろう、ならば雌雄を決して白黒はっきりさせてやろうじゃないか。 
 
 第52章『鉄血の行軍』レス番纏めインデックス
 
>>20 アンジェラvsビリーJr
>>147 ヴェドゴニア&仮面ライダーアギトvs仮面ライダー王蛇
>>187 パンピースニクvs前園日出子
>>202 羽村亮vs天草四郎時貞『蒼月転生』
>>223 第一次遭遇〜世界一短い闘争〜
>>269 名無しクドラクvsヒョウ
>>291 蛭児vsマリアベル・アーミティッジ
>>319 トバルカイン・アルハンブラvs麻宮アテナ
>>361 フランク・グレイvs上弦
>>364 モリガンvsミカエル 〜闇と闇〜
 
 
中間レス番纏め
 
>>366 ミズー・ビアンカvs蟆霧
>>367 ダンテvsツァーレンシュヴェスタン『Air』
 
 さて……おまえ達(注:>>187は帰って良いです)、このフォルテッシモと相見える覚悟はできたか?

61 名前:フォルテッシモ ◆40gff/DQNQ:2003/04/02(水) 22:00

 ―――なに?
 この俺が、誤爆……?
 ふん、あり得んな……。
 それは矛盾している。
 俺が誤爆など、あり得ない。

 故にここは前スレだ。
 お前等はとっと次スレ↓移行しろ!!
(ttp://www.appletea.to/~charaneta/test/read.cgi?bbs=ikkoku&key=043854167)

62 名前:エジャール:2003/04/06(日) 21:33

ロゼット&クロノ&アズマリアvsエジャール
『マグダラは燃えているか!』

マグダラ修道会を襲撃した一磨の訃報は、電報を介し、光の速さで海を渡った。
犯罪結社“K”の首領、峅杷は、継嗣の真の滅びを嘆きつつも、すぐさま次の手をうった。
あたうならば、自分の手で決着をつけたい
しかし、組織の長が軽軽しく本拠地を動くこともできない。
必要なのは、一枚の刃だ。
彼の拳の代りに振り上げられ、彼の怒りを代弁して仇を葬る暗殺の凶刃だった。

その需要を満たしたのがソ連邦に根拠を置く、『闇の眷属』の重鎮、『妖婆』アングルボザ。
中国とシベリア高原を隔てた二つの組織の間に如何なる繋がりがあったのかは定かではない。
だが、間にも無く黒社会お決まりの会合がもたれ、幾つかの譲歩がなされ、幾ばくかの報酬が支払われ、
一人の刺客がアメリカにあるマグダラ修道会の本部へ派遣された。

獲物は唯一人。マグダラ修道会、騎士統括局長シスターケイト。
弓弦を離れた矢は疾く海を飛び越え、獲物のもとへと馳せ参じた。

63 名前:エジャール:2003/04/06(日) 21:35

ロゼット&クロノ&アズマリアvsエジャール
『マグダラは燃えているか!』

>>62

その日の夕方、マグダラ修道会本部の門番、マクシミリアンは腐っていた。

「いいか。ジョセフ。俺が修道会に入ったのは、日一日中こんな門の前に立っているためなんかじゃい!」
「その話は、これで14回目だな、坊主。次は血沸き肉踊る冒険をしたいって言うんだろ?」

ベテランのもと修道騎士(ミリティア)、ジョセフがマクシミリアンの言葉を嗜める。
だが、血気はやった青年は、老人の忠告に耳を貸そうとしなかった。
手に持ったライフルを構え、居もしない敵に向かって、狙いをつける。

「チャカすなよ、ご老体。俺の訓練場での成績を知ってるか?この前の吸血鬼だって、俺がいれば、一
発で・・・」
「一発であの世行きだな、くそ!化物どもを甘く見るな。ついでに言えば、その話はこれで20回目だ」

ジョセフが顔をしかめて、青年の銃身を抑えた瞬間。「それ」は姿を表した。
夕日が沈む牧歌的な郊外の光景の中を、一直線に突き進んでくる推定11tの巨体。
巨大なタンクローリーが気違いじみた速度で、修道会の門へと突撃をかけた。

とっさに反応したのは、銃を構えた逞しい青年ではなく、痩せた老人のほうだった。
大戦の前もその後も、アメリカ中を駆け回り、あらゆる妖物と戦った経験が老骨を思考するよりも速く
突き動かす。
右のタイヤに一発、左のタイヤに一発。
自分の銃弾が命中したのを確認する暇こそあらば、呆然と立ち尽くす青年の衿を掴んで、門の前から跳
び離れる。

その一瞬後に、タイヤを潰され、バランスを崩したタンクローリーが横倒しになりながらも、固く閉じ
られた鉄の門を突き抜ける。
車が地面に深くて広い轍を抉りながら横転した刹那、運転席から二つの陰が飛び出した。
50mを3秒弱という人外の速度で駆け抜け、二人の門番へと一気に詰め寄る。
この時になって、ようやく青年が反応した。

「止せ、坊主!!」

老人の叫びもパニックに襲われた脳には届かない。
静止の声を振り切ってライフルを構え、引鉄に指をかけ、銃口の中から弾を吐き出す。
訓練場で培った青年の射撃の腕は確かなものだった。
二発の聖火弾はコンマ5秒の間隔で、二人の襲撃者の心臓に命中する。
その瞬間、青年は自分の勝利を確信した。そして、見損ねた。
十字の閃光に心臓を引き裂かれ、塵となりながらも、襲撃者たちが浮べた―――微笑みを。

ドォウン――――ッ!!!

腹に応える衝撃が二人の意識を闇の彼方へ吹き飛ばした。
それから数秒の間を置いて、老ジョセフは自分の血の海の中で目覚めた。
隣には肉屑と成った青年の姿が、2,3m離れたところには膝のところで千切れた自分の足が見える。
ライフルを杖代わりにしながら、何とか立ち上がる。
心臓を打たれて塵に還ったと言う事は、敵は吸血鬼だ。
先ほどの爆発は、心臓に爆薬を仕掛けていたせいだろう。
身体に食い込んだ無数の痛みは、爆薬と一緒にねじ釘の束を仕込んだからに違いない。

「くそ(マイガー)っ!吸血鬼が自爆だと、一体何を考えてやが・・・」

横倒しになったタンクローリーに視線を移した後に、今度こそ老人は絶句した。
彼はタンクの中の重油に引火しないように、タイヤを狙って発砲した。
だが、タンクの中に詰まっていたのは、油などではなかった。
それは、ガソリンよりも遥かに危険で、遥かに凶暴で、そして餓えていた。
タンクの中から、200個の赤い瞳がジョセフを覗き返していた。

その日、マグダラ修道会本部にいた悪魔払いたちは、かつてない経験をすることになる。
身体に爆弾を仕込んだ吸血鬼たちとの接近戦というかつてない苦難を。

64 名前:エジャール:2003/04/06(日) 21:37

ロゼット&クロノ&アズマリアvsエジャール
『マグダラは燃えているか!』

>>63

最初の襲撃から3分後、修道会本部は未曾有の混乱に見舞われていた。
100体を超える爆弾吸血鬼との戦闘は至難を極めた。
身体に仕込まれた爆薬は強力で、しかも炸裂した瞬間に100mに渡って焼けたねじ釘を大量にばら撒く。
ゴキブリよりもしぶとい不死者どもは手足を打たれた程度では怯みもしない。
かと言って爆弾のせいで心臓を狙うこともできず、銃撃は自然ともう一つの急所、頭部に集中した。
だが、狙いやすい胴体とは違い、小さな頭部にさらに小さな聖火弾を命中させるのは容易ではない。
そこへ野生の獣にも等しい吸血鬼の速度が加わり、狙撃の難易度は飛躍的に上昇する。
敵に倍する人数と遥かに強力な装備を持ちながら、修道騎士たちは吸血鬼たちの我が身を省みぬ特攻に
互角の闘いを強いられることになった。
周囲には喚声と悲鳴、怒号と断末魔が湧き上がり、爆音と火薬の香りが至るところに充満した。

最初にその事に気付いたのは、1ST(修道騎士)では無く、2ND(修練士)の一人だった。
未熟な狙撃の腕故に狙いを外し、敵の頭部を狙った銃弾を誤まって胴体に命中させてしまったのだ。
その瞬間、彼は死を覚悟した。
次の瞬間には、自分がまだ生きていることに気付いた。
爆発し、100m四方に鉄製の死をばら撒くはずだった敵だけが崩れ落ち、一握りの灰になっていく。
生死の間際の集中力は、思考力を数倍に跳ね上げ、一瞬きのうちに彼は真実を悟った。

全部の襲撃者(吸血鬼)たちが爆弾を仕込んでいるわけじゃない!
実際に爆弾を仕込んだものは全体の三分の一にも満たないはずだ。
考えてみればあたりまえのことじゃないか。
全員に爆弾を埋め込んだら、たった一発の銃弾で誘爆を起こし、群れが枕を並べて全滅しかね無い。

それは、本当少し考えればわかることだった。
だが、その僅かな思考を奪うことにこそ吸血鬼の計略はあった。
気付いた事実を仲間に知らせる暇も与えずに、もう一体の不死者が彼に躍りかかる。
とっさに跳ね上がった銃口の先にあったものは―――心臓。

―――――今度はあたり籤だった。

覚悟をする間もなく、爆風の衝撃と焼けた鉄が青年を打ち倒す。
さらに、黒煙を突っ切って、三体めが倒れた彼の身体に覆い被さり、喉に深々と牙を埋め込む。

「トラヴィス!!」

泣き声のような叫びを上げて、同僚が吸血鬼の頭を聖火弾で吹き飛ばす。

「しっかりしろ、トラヴィス!僕の声が聞こえるか!?」

朦朧とした意識で、トラヴィスは自分を助け起した男を見上げる。
そして、思った
こいつは誰だったか?
そうだ!シニョンだ。
フランスからの移民で、俺の同期で、幼馴染で、無二の親友で、妹の恋人だ。
いつも腹をすかしていた見習い時代、少ない夕食を二人で分けた事もある。
でも、それ以外にも何か大事なことがあったはずだ。
伝えなくちゃいけないことが、非常に重要な何かが

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・思い出したぞ!
何故、忘れていたんだ。こんな大事なことを。
―――嗚呼、一刻モ速クコノ事ヲ知ラセナケレバ―――

「大丈夫だ、シニョン。俺は大丈夫さ。いや、それどころか・・・今までで最高の気分だぜ!」

怯えた顔で彼を見下ろす友人を、トラヴィスは人間離れした力で押さえつける。
恐がらないように赤い瞳でウィンクを送ると、親友の白い喉を一息に噛み破った。
5秒後、シニョンも彼と同じ様に蘇った。

「な?俺の言ったとおりだったろ?」
「うん、生き返ったような心地だよ!」

口を血で真っ赤な染めながら、親友たちは生きていた頃と同じ様に笑いあった。
生きている時も、死んだ後も、二人はとってもとっても仲良しだった。
だから、決めた。
昔、夕食を分けたように、可愛い妹も二人で分けようと。

夜に沈む修道会本部の中で、青や緑や黒の瞳が駆逐されていく。
代りに吸血鬼たちの赤い瞳が少しずつ、しかし確実にその数を増やしていった。
ヴァンパイアーハンターたちが、人間たちがもっとも恐れる鮮血の連鎖が今始まった。

65 名前:エジャール:2003/04/06(日) 21:38

ロゼット&クロノ&アズマリアvsエジャール
『マグダラは燃えているか!』

>>64

サミュエル・トールマンはたった一人で迷路のような本部の建物の中を走っていた。
トールマン(のっぽ)の名に恥じない長身のコンパスを利用して、風のように回廊をかけていく。
戦闘は一段落していた。いや、一段落したようであった。
吸血鬼たちが真っ先に、指揮系統を寸断したために、本部に詰めていた悪魔払いたちは個々人で戦闘の
経緯を推し量るしかなかったのだ。
ただ、時折轟く爆音と銃声、宵闇の中を走り抜ける赤い光とそれを迎え撃つマズルファイアーだけが、
戦闘が未だに続いていることを知らせている。

こんなにも夜の闇が恐いものだとは思わなかった。
足を止めただけで挫けてしまいそうだ。
その瞬間、背後から忍び寄る疑心の暗鬼に囚われ、二度と走れなくなってしまうに違いない。
だけど、彼は足を止めなかった。
確かに、吸血鬼は恐い。だが、彼にはそれ以上に恐ろしいものがある。
トールマンは恋をしていた。とうてい実りがあるとは思えない不毛な恋であった。
恋する少女には既に相棒がいて、しかも彼女は色恋沙汰にうつつを抜かす余裕も時間も無かった。
それでも、彼はひた向きに彼女を愛した。例え、見返り無くとも後悔は無い。
そして、彼女があの吸血鬼どもと戦っている姿を想像するだけでぞっとする。
無意識のうちに、トールマンは襟元を探った。
そこには、バレンタインに彼が送ったプレゼントのお返しがある。
彼女からの唯一の贈り物。男物にしては少々可愛すぎるウサギの形のピーンブローチ。
それに触れているだけで、手足に纏わりつく恐怖の鎖は消え、足取りは軽くなっていく。

この時、サミュエル・トールマンを襲った不運の要因を探っていけばきりがない。
乱戦のさなか、仲間たちからはぐれ、孤立したこと。
闘争中に闘争以外のことに意識を向けたこと。
或いは、彼の背格好が襲撃者の頭領にとって理想的であったこと。
だが、なんと言っても一番の要因は―――やはり、徹頭徹尾、彼に運が無かったことだろう。

喉に強靭な指が食い込み、自分の頚骨を砕ける音を聞いた瞬間、トールマンが考えたことは、突然自分
の目の前に現れた背の高い男のことでも、自分を見舞った死のことでもなく、


・・・・・ロゼット・・・・・


の一言だけであった。

66 名前:ロゼット&クロノ&アズマリア ◆JiAMENUx66:2003/04/06(日) 23:38

ロゼット&クロノ&アズマリアvsエジャール
『マグダラは燃えているか!』

>>62-65
「・・・・・・DAMN!」
 
またどこかで大きな炸裂音。
私達は、机やら箪笥やら椅子やらで作り上げた簡易的なバリケードに身を潜める。
この通路は、本館へと続く通路。ここから先へ進むには必ず通らなくてはならない道だ。
周りには、思い思いの武器を構えた『クラス2nd・修練士(ノービス)』数人。
 
・・・・・緊張・・・・するな。
 
この中で『クラス1st・修道騎士(ミリティア)』は私一人。
見習いとはいえ、このメンバーの中では一番ランクが上だ。
つまり指揮権は私にあるということ。
正直、私は人の上に立つというのは・・・・初めてなのだ。
ましてや、これは訓練なんかじゃない、実践。
彼ら、彼女らの命は・・・・私が握っているようなもの。
 
・・・・これで緊張しないというなら、よっぽど心臓が丈夫な人間だろう。
 
・・・・ヤバ、手足が震えてる・・・・。
落ち着かなきゃ・・・・落ち着かないと・・・・。
そうやって、考えれば考えるほど気分が落ち着かない。
どうしよう・・・・みんなに気取られたら・・・・・。
 
そんな時――――
 
「?!」
 
ぎゅっと握り締められる私の手。
驚いて顔を上げると、そこには私の手を握りしめるクロノの姿。
 
「・・・・・・・」
 
クロノは何も言わず、もう一度、きゅっと私の手を握り締めた。
・・・・・・それだけで、なんとなく私の体から震えは消えていく。
そんな私を確認し、一度深くうなずくと、厳しげな顔を浮かべて通路の端を見据えた。
うん・・・そうだね・・・・私は一人じゃない。
一度、大きく深呼吸したあと頬を両手でぱんと叩く。
よし! 気合入った!
私は、銃の装弾を確かめると、バリケードの隙間から同じように通路の端に注意を寄せる。
どっからでも・・・かかってきなさい!

67 名前:エジャール:2003/04/07(月) 00:30

ロゼット&クロノ&アズマリアvsエジャール
『マグダラは燃えているか!』

>>66

本部の敷地を蹂躙した敵は、本館にも確実に忍び寄っていた。
ただし、その侵入路は、少女たちが警戒していた通路の向こう側ではない。
人間が地上を這いずる生き物であるが故の死角―――真上。
手を握り締め、士気を鼓舞する少年少女を見下ろしながら、「それ」は天井をゆっくりと這い進んでく。

門番のマクシミリアンは、爆薬によって細切れになった後に、闇の口づけを受けた。
吸血鬼の洗礼は、神の息(魂)が抜け去った死んだ肉体に闇の息吹を吹き込み、蘇らせた。
だが、死者をも復活させる不死者の再生能力とて万能ではない。
何より、完全に復活するには、マクシミリアンの肉体の損傷はあまり酷すぎた。

腹から零れた腸を蛸の触手のように、天井の梁に巻きつかせながら、マクシミリアンは獲物に接近する。
両手は既に千切れて跡形もなく、足は下半身もろ共炭となった。
ただ、肘の周りに残った筋肉繊維の名残りだけが餓えたイソギンチャクのようにざわざわと蠢いている。
そこにハンサムで将来有望な青年の面影は無い。
在るのは生の気配に執着し、血に餓えたおぞましい怪物の姿だけであった。
柔らかく若い肉の香りが、温かい血の匂いが、かつて感じたことの無い法悦を怪物の中に喚起する。

―――――モウ、我慢デキナイ!!

皮が完全に剥がれ、筋肉だけの人体模型となった顔を限界までゆがめ、口を耳まで一気に引き裂く。
巻きつけていた腸を引き剥がし、翼のように広げながら、マクシミリアンは眼下の獲物に踊りかかった。

怪物の想い全てを込めた熱烈な求愛は、しかし相手に伝わる事は無かった。
毒液を滴らせた汚らしい牙が、少女の首に食い込む前、真横から飛び込んだ聖なる散弾が怪物の肉がほと
んど残っていない頬に熱い口づけを刻み込む。
一回で顔の半分が吹き飛び。二回目でその残骸も硝煙に散る。
怪物であったモノは空中で灰となり、さらに分解を繰り返して、着地する前に痕跡も残さず消滅した。

「無事か?誰か、怪我したものは!噛まれた者は居ないか!」

声を発したのは、通路の横から飛び出した長身の男である。
手に持った二連ショットガンからは、たった今怪物を葬り去った証しである二筋の煙が立ち昇っていた。
よほどの激戦を潜り抜けたのであろう。
男が着ていた修道騎士の制服は汚れてズタボロ。
髪はに乱れに乱れ、顔立ちは整っているらしいが、こびり付いた煤と汗のせいで窺い知ることもできない。

「気をつけろ!表の奴らは陽動だ。他に別働隊がいる。狙いはシスターケイトだ!彼女はどこに居る!?」

紫紺色の瞳に労わりに満ちた光を宿しながら、男はバリケードの向こう側に居るロゼットたちに近寄っていく。
腕を上げ袖で顔の汗を拭った瞬間――――男の襟元でウサギの形をしたピーンブローチが室内の明かり
を反射してキラリと輝いた。

68 名前:源義経 ◆kurouBFrUI:2003/04/12(土) 22:26

鈴鹿御前vs黒蜜(M) 『安達ヶ原に鬼、双つ』

>

安達が原の奥深く、山中に家が一つ。
その家には、鬼が住んでいた。
二匹。
その内の一匹、妙齢の女の鬼は今は居ない。
男の鬼だけが、残っていた。
一匹、と云うには欠けた身体ではあったが。

男は、かつてある一つの名の元に戦い、戦い、戦って、立て過ぎた手柄故に兄に追われ。
落ち延びる道行きで出会った女の鬼と共に往く為に、人で在る事を捨てた。

男の鬼の名を、源九郎判官義経、
女の鬼の名を、黒蜜、
と言った。



「・・・・・・・・・・・・」

九郎の心は晴れない。
黒蜜が成した行為が、目の前の光景が。
それが、重く痛い。
必要――なのだろう。
無しでもそれなりには持つ。だが、やはり。


最も、身体を、精神を満たすのは。

紅い、血なのだ。


判っているから、体感しているから。
何より、九郎自身が欲しているから、止められない。
だが、止められない事とそれを受け入れられる事は違う。
己の為に何の罪も無い者を殺し、その血を啜る。
変わりきってはいない不完全な身体故なのかもしれない。
受け入れられぬまま三百程の年月繰り返した行為は、心から何かを剥ぎ取り続けた。

こうして在る事に、疲れていた。

69 名前:源義経 ◆kurouBFrUI:2003/04/12(土) 22:27

鈴鹿御前vs黒蜜(M) 『安達ヶ原に鬼、双つ』

>>68

そんな、幾度となく繰り返した思考をなぞっていた時。
正面の引き戸の向こう、玄関の更に奥の方向に気配が生じた。

 何者だ?

まっすぐに近づいてくる。
黒蜜か、迷い人か。

声の無い問いへの答えは、同じ様に無言だった。
玄関を通り、土間を横切る気配。
黒蜜ではない。迷い人でもなかろう。
土間を超え、まっすぐに近づいてくる気配。
迷いが無い。まるで目指すモノが何処にあるか知っているように。
沸き起こる不安。焦り。
一人では動く所か声を出す事すらままならない己が身体。
部屋の引き戸の前で初めて立ち止まった気配を感じて、唇だけで笑った。
自嘲の笑み。
何を恐れる。どうしたいのだ。直前まで、生きる事に倦んでいたのではなかったか。
それがどうだ。危険の香りを嗅いだだけで、死ぬ事を恐れている。生きようとしている。
なんと浅ましく、愚かな事か。
自らの手で死ぬ事は出来そうにない。ならば、他の者に葬って貰えぬものか。
そう考えた事、一度や二度ではない。

 恐れる必要など、無い。

静まってゆく意識。
たった一つの心残り。思い浮かぶ白く美しい顔。

 黒蜜・・・・・・

心中の想い人の顔に、只、詫びた。
そして、部屋に満ちた静寂を欠片も壊す事無く。

引き戸が、開いた。

70 名前:鈴鹿御前 ◆wzY4SUZUKA:2003/04/12(土) 22:32

鈴鹿御前vs黒蜜(M)『安達ヶ原に鬼、双つ』
>>68 >>69
 
 鬱蒼とした、深い森。
 幾星霜を経た大樹の群が、足下から空までを覆い尽くしている。
 風はない。上空では強い風が吹いているらしく、僅かに覗く雲足は早いが、この森の中で
は葉の一枚も揺れはしなかった。
 普段ならば、西に目をやれば眩く目を射す夕暮れ時の赤光も、蒼然と茂った枝葉を通り抜
ける事は出来ず、辺りは既に暗い。
 常人なら、明かりを持たずには一歩も進めないだろう。無理して歩めば、そこここに瘤の如
く突き出した太根や苔生した巨石に足を取られ、身を損ねてしまうに違いない。
 
 ──安達ヶ原。
 私が一人歩むのは、そう呼ばれる一帯だった。
 
 
 
 ────麓の里で鬼の噂を聞いたのは、三日前だった。
 安達ヶ原の古樹の森、その奥より時折鬼が現れては人を襲い、浚って行く、と。古くから伝
わる伝説めいた言い伝えで、私に話を聞かせてくれた老人の叔父も、鬼に浚われたきり帰っ
てこなかったという。
 その鬼が、ほんの数日前にまた現れたというのだ。
 
 鬼の出る頻度は数ヶ月から数年に一度、一度に浚われるのはほんの数人だというが、放
っておくつもりは私にはなかった。
 例え数人であっても、鬼によって罪もない人の命が損なわれているという事実に違いはな
いのだ。
 
 
 
 この森へと赴いたきっかけを回想しつつ歩き続けるうちに、いつしか夜も更けていた。
 行く手に一軒の藁屋が現れたのは、その時だった。
 木を切り、開墾された一帯に、その建物だけがぽつりと収まっているのだ。
 近くの渓から水を引いているのだろうか、家の側にある桶に竹筒が渡され、そこから流れ
込む水が清らかな音を響かせている。
 
 家自体の造りはしっかりしている。柱も梁も太い。
 戸はなく、巻き上げられた蔀の奥に、囲炉裏のものであろう、赤々と燃える火が見えた。そ
の上に掛けられた鍋からは、食欲をそそる匂いが漂ってきていた。
 しかし、私の鼻はもう一つの臭いを捉えていた。常人なら決して気付くことはないだろう、微
かな臭い。
 これは…………
 
 
 ────血の、臭いだ。

71 名前:鈴鹿御前 ◆wzY4SUZUKA:2003/04/12(土) 22:32

>>70続き
 
 巻き上げられたままの蔀を潜り、藁屋の中へと踏み込む。
 動くものの気配はない。どうやら無人であるようだった。
 
 家の中も外見に違わず、至って質素な造りだ。囲炉裏の他には目立った家具もなく、一瞬
本当に誰かがここに棲みついているのか、疑われさえした。
 ここが鳥も通わぬ深い森の奥でなければ、そしてこの微かな血臭がなければ、猟師が狩
りの際に用いる仮小屋だと錯覚しても不思議はないくらいだ。
 
 ふと見ると、奥の方に板張りの廊下がある。短いそれはすぐ右に折れており、囲炉裏の火
の光もその奥までは届かぬ為、そこは暗闇に包まれている。
 血臭は、そちらから漂ってきていた。
 
 用意の蝋燭に囲炉裏の火を移し、私は音を立てぬよう注意しながら廊下を進み始めた。手
に触れた漆喰の壁は、やはりしっかりとした工程で拵えられたものだ。
 この建物が鬼の手になるものだとすれば、それは件の鬼が、少なくとも人間並みの高い知
性を持つことを意味する。油断は出来なかった。
 
 一旦折れた廊下はすぐに、閉じられた引き戸によって終わりを告げる。立て付けが悪いの
か、戸には微かに透き間が空いており、そこから光が漏れてきていた。
 蝋燭を吹き消す。その時には既に、私の右手には一振りの刀が握られていた。
 大通連。鬼を斬るための鬼の刀。私の相棒にして分身。
 
 左手を引き戸にかけ、一気に開いた。
 微かだった血臭が、一度にその濃度を増して鼻孔を満たした。

72 名前:鈴鹿御前 ◆wzY4SUZUKA:2003/04/12(土) 22:33

>>71続き
 
 灯明の明かりに照らされる、室内の光景──何と説明すればよいのだろうか。
 
 まず最初に視界に飛び込んできたのは、天井の梁から逆さに吊された二つの屍だった。
 一つは見たところ、死んでからそう日数は経っていない。数日前に里から浚われたという者
の屍だろう。
 首のところを切られ、そこから流れ出した血が、下に置かれた皿に溜められていた。
 もう一つの屍は……一体死後どれくらい経過しているのか、見当がつかなかった。
 何故なら、その死体は全ての血液を失い、からからに干涸らびていたからだ。やはり、首の
辺りに傷跡。しかし、こちらの傷は切り傷ではない。
 錐のような物で刺したかのような、或いは……鋭い牙で噛み破ったかのような。
 
 肉を喰らった形跡はない。
 ここに棲まう鬼は、人の肉ではなく血を啜るのだ。
 
 
 そして────何よりも異様な物が、部屋の奥に据え付けられた棚の上に乗っている、そ
れだった。
 「それ」は、生首だった。人の躯の首から上だけが、まるで神棚の上の供え物のように捧げ
置かれているのだ。
 恐らく、直接喉のところに差し込まれているのだろう。竹筒が下に向かって伸び、その先端
は油紙の袋で閉じられている。
 
 奇妙なことに、そのような状態であるのにも関わらず、「それ」は生きていた。
 赤く光る瞳をこちらに向け、唇が音無き音を発する度、油袋が細かく震えた。あれはどうや
ら、肺の代わりの役目を果たしているらしい。
 敵意はないようだ。尤も、敵意を持ったところで、あのような状態では何を行えよう筈も無い
が。
 「それ」に歩み寄り、袋を押してやると、「それ」は掠れた声を発した。

73 名前:鈴鹿御前 ◆wzY4SUZUKA:2003/04/12(土) 22:34

>>72続き
 
「殺してくれ…………その刀で、私を斬ってくれ…………」
 
 その言葉は、私にとって余りにも意外なものだった。
 「それ」の唇は朱に染まっている。屍から抜き取った血で、命を繋いでいるのは明らかだっ
た。それが何故、今になって死にたいなどと言うのか?
 
 私のその問いに、「それ」は聞き取りづらく掠れた声で答えた。
 自分は闘って闘って闘い抜いて、挙げ句にこんな姿になってまで生き長らえている。
 だが、自分はもう疲れた。
 人であることを捨てながら、鬼に成りきれる訳でもなく、このような浅ましい姿を晒し続けね
ばならぬ事に。
 そして、この命を繋ぐために、罪もない人の血を啜らねばならぬ事に。
 だから、殺してくれ。永遠に続く煉獄を、その手で断ち切ってくれ。
 自ら命を絶つことさえ出来ぬ私を哀れだと思うなら、どうかその手で殺してくれ。
 
 私は何も言わなかった。掛ける言葉も、見つからなかった。
 彼の言葉に嘘はない。どこまでも真摯なその目を見れば、それは明らかだった。
 
 だから、私は……
 一つだけ頷くと、ゆっくりと大通連を掲げ…………
 
 
 ────そのまま、一気に振り下ろした。

74 名前:黒蜜(M):2003/04/12(土) 22:37

鈴鹿御前vs黒蜜(M) 『安達ヶ原に鬼、双つ』

>>70 >>71 >>72 >>73

日が落ちて。
夕餉の支度も終わりかけた頃、だった。

干乾びた死体を一つ森の奥に捨てて、戻り―――


―――ある匂いを嗅いだ。

困惑。
人に似ているような、それでいて全く別の物のような、そんな匂い。
勿論、初めて嗅いだ匂いだった。

「これは・・・?」

迷い人なら何の問題も無い。
先日麓の里には行ってきたばかりだったが、新鮮な血は幾らあっても困らない。
けれど、恐らく違う。
気が付けば玄関口へと走っていた。


残された足跡。
小さい―――確かに人の足跡。
まさか追っ手――?

「・・・・・・九郎様!」

僅かな距離を駆ける数瞬が、これほどもどかしいと思った事は無かった。
廊下の突き当りを曲がる。

75 名前:黒蜜(M):2003/04/12(土) 22:39

鈴鹿御前vs黒蜜(M) 『安達ヶ原に鬼、双つ』

>>74

「――――――――」

曲がった。
けれど、次の一歩はすぐには踏み出せなかった。
何故なら、

「・・・・・・九郎様?」

開かれた引き戸の向こうには、あってはならない光景があった。

「お願いですから返事をして下さいませ」

身体がふらふらと頼りなく揺れ、壁に手をついて進む。
他の物は何一つ見えなかった。
二つに別れ、断面から血や脳漿を零し、垂れ流している「それ」以外の物は。
何一つ見えなかった。

一刻よりも長く感じられるほどの時間を掛けて「それ」に辿り着き、抱き上げた。
その拍子にまた中身が零れ、それがとても良くない事に思えて掬い上げて戻そうとした。
無理だった。
一目見ればもう駄目なのは判った。
認めない。そんな筈は無い。有り得ない。
愛していると、共に行きたいと言って―――なのに、わたしを置いて行ってしまう、なんて。

数え切れないほど繰り返した別れ。
涙を、止められなかった。
何時果てるとも判らない時をまた一人で過ごすくらいなら、いっそ・・・いっそ、後を追おう。
けれど、その前にやらなければいけない事がある。
両断された台の片割れを掴んで、女に叩き付けた。

76 名前:アンドリュー・深津彦・星野(M):2003/04/12(土) 23:09

麻紀絵vsアンドリュー・深津彦・星野(M) 「妖獣都市 狂血鬼」

アンドリュー・深津彦・星野(M)側 導入

炎をつけられたリキュールのグラスから立ち昇る、ちろちろと燃える
薄青い炎のみが、その部屋の照明であった。

その頼りなげな光が、黒檀のデスクの上に乗った小箱と、デスクの前に
座った、東洋人に白人の血が混じっていると思しい彫りの深い貴族的な容貌の
男を照らし出す。

「配置はすんだか?」

突然、男は自分の後ろの暗闇に問い掛けた。

「はい、たった・いま・完了・しました」

たどたどしい声が返ってきたところを見ると、男は音も無く後ろに現れた者の気配を
すぐさま感じ取ったらしい。

「全員・に・ロシアから・横流し・してきた・ブツ・持たせてあります。
 いくら・“闇ガード”でも・ここまで・着けるかどうか」

だがその声にも、男は厳しい表情を崩さない。

「“闇ガード”を侮るな、奴らに倒された同族は数多い。ましてや今回は我ら
 “ダーク”の悲願がかかっているのだ、気を抜いてはならんぞ」

「りょ…了解・しました」

声とともに背後の気配が消えると、男はデスクの上の小箱を開く。

青白い炎に浮かび上がったのは、鶏の卵ほどの大きさの宝石――血玉髄
であった。その濃緑色の地肌には、血の色の斑点が十字をなしている。

「“闇ガード”などに邪魔をさせるものか。
 この“ゴルゴダストーン”と“救世主の血”を持つ少女……。二つが揃えば
 あのお方は……我らの偉大なる指導者<血父>様は蘇えるのだ……!!」

激情のまま独りごちる男――カインの子孫たる吸血鬼<ダーク>の関東エリア
責任者、アンドリュー・深津彦・星野の額には、いつしかアルファベットのWに
似た文字――神がカインの額に刻んだ終末を意味する紋章<ω>が浮かんでいた。

77 名前:鈴鹿御前 ◆wzY4SUZUKA:2003/04/12(土) 23:23

鈴鹿御前vs黒蜜(M) 『安達ヶ原に鬼、双つ』
>>74 >>75
 
 がたん、という音がした。
 振り返れば、戸口に一人の女が立っている。
 後ろで束ねられた髪は長く、墨を流したかの様に黒い。
 対照的に、肌は真っ白だった。──人であれば、このような山奥に暮らしていては、到底
考えられぬほどに。
 唇は赤い。紅など塗っているとは思えぬのに、その色はまさに鮮血の赤そのものだ。
 
 私の姿など見えぬかの様にふらふらと歩むと、彼女は跪いた──たった今、私がその命を
絶ち斬った、「それ」の前に。
 何事か呟きながら、零れた脳漿を掻き集めようとするその姿は余りに異様で──しかし同
時に、どこか侵しがたいものをも備えていた。
 それは正に、この二人のおぞましくも深き縁を示すかの様な光景だった。
 
 それ故だろうか──いつの間にか立ち上がっていた女が、首の乗せられていた台座の片
割れを投げつけてきた際、私がそれを叩き落とす以外の行動を取ることが出来なかったのは。
 
 もしかして、私は同情しているのだろうか──長年に渡って里の者を浚い、その血を啜って
きた、忌まわしい筈のこの鬼に。

78 名前:麻紀絵(M):2003/04/12(土) 23:51

麻紀絵vsアンドリュー・深津彦・星野「妖獣都市 狂血鬼」
>>76 麻紀絵側 導入
 
 
 日比谷はビジネス街の一角は、時刻に相応しい静寂に包まれていた。
 相応しすぎたとも云える。既に世界は滅んだと説明されたら納得するかもしれない。
 もっとも、動くものはいた。それを一人――と呼んで良いものかどうか。
 
 女だ。
 かなりの長身である。身に付けたスリーピースとボウタイ、ハイヒールは全て黒、肌の透明さを
煽る為と云わんばかりだ。
 そして、その貌。
 芸術家なら、その白い美を再現したいと切望せぬものはいまい。そしてまた、真に優れた才能の
持ち主ならば、一目でその不可能を看破し、絶望に暮れるだろう。
 
 この女の美しさは、現世のそれではないからだ。
 
 美女はとあるビルの前で足を止めた。<星野トレーディング・カンパニー>と刻まれた御影石を
一瞥し、更にビルへと歩を進める。
 再び足音は止んだ。
 ショーウインドウの前である。当然入り口は閉まっている。
 
 女の体勢が少し前屈みになった――と見えた次の瞬間。
 赤光が煌いた。
 きん、という冷たい響きと、それに続くけたたましい破砕音は後からやって来た。
 女が腕を一閃させた。その行為はガラスをくり貫き、人ひとり分の空間を穿つという結果を
呼んだのだ。
 
 静かに中へと入って行く女の右手は、その五指の先にある爪は、全てが紅く尖っていた。

79 名前:黒蜜(M):2003/04/13(日) 00:04

鈴鹿御前vs黒蜜(M) 『安達ヶ原に鬼、双つ』

>>77

投げた棒切れを女が受ける隙に身を翻した。
目指すのは一つ、朱塗りの鞘に収まった太刀。
拾い上げて抜きざま、構える。
剣術など知らない。けれど、この刀となら戦える。
そう思えた。

どうか、力を貸して下さい。

祈りを込めて柄を握り締め、女を見据える。
思いの外若く見える――が、それは自分にも言える事。
何歳だろうと、人間だろうとそうでなかろうと構わない。
この女は九郎様を殺した。
それが総て。
だから殺す。
殺さなければならない。
終わらなければ、後を追えない。

踏み込み、右肩目掛けて振り下ろした。
この身に宿る力の全てを篭めて。

80 名前:アンドリュー・深津彦・星野(M):2003/04/13(日) 00:24

麻紀絵(M)vsアンドリュー・深津彦・星野(M) 「妖獣都市 狂血鬼」

>>78

女がビルの内部へと消えていく。

ビルの内部の照明は全て点いており、エアコンも効いていた。

まるで女を待っていたかのように。

エレベーターと階段を交互に見やった女は、躊躇せず階段の方へと
向っていく。

――その時、エレベーターが出し抜けに降下して来た。

ちん、と澄んだ音を立てて、エレベーターが開く。

開くとともに出てきたのは、オフィスビルのエレベーターから出てくるなど
狂人の妄想の中でしか有得ぬもの――生々しい色艶を保ったままの、首無し骸骨
であった。

今や地獄の扉と化したエレベーターから、首無し骸骨どもが吐き出されていく。
その骨だけの手には、AK47アサルトライフル、PPS43サブマシンガン、マカロフ
PMなどのロシア製武器が握られている。

先刻、謎の声が「配置した」と言っていたのは、この首無し骸骨どもだったのだ。

モデルアニメーションめいた動きで、彼らは女に向けて引き金をひいた。

81 名前:鈴鹿御前 ◆wzY4SUZUKA:2003/04/13(日) 00:41

鈴鹿御前vs黒蜜(M) 『安達ヶ原に鬼、双つ』
>>79
 
 右肩の上で火花が散った。女が振り下ろした刃と、私の大通連が噛み合い、戛、と激しい
音を立てる。
 ギリギリと押し込んでくる力は、思いの外強い。気を抜けば、肩口から一気に斬り下げられ
てしまうだろう。
 
 だが。
 今の動き──それは確かに速い。速いが、あくまでも直線的な動き。如何に怒りに囚われ
ているとはいえ、虚実も何もないそれは、彼女に剣術の心得がないことを如実に物語ってい
た。
 私の肩口に触れるか触れぬかというところまで押し込まれた刃を、渾身の力を込めて一気
に跳ね上げる。
 がら空きになった胴に、横殴りの一閃を叩き込んだ。
 
 
 ────自分の中に残る同情や憐憫の情をも、斬り捨てるかの如く。

82 名前:麻紀絵(M):2003/04/13(日) 01:09

麻紀絵(M)vsアンドリュー・深津彦・星野(M) 「妖獣都市 狂血鬼」
 
>>80
 
 奇怪極まる異常事を前にしながら、美貌に変化はない。
 氷の無表情のまま、妖女は走った。
 優雅さは春風の、速さは北風のそれを以って銃火の方に跳ぶ。最前ガラスを切り裂いた爪は、
何時の間にか元の形に戻っている。
 
 体操選手もかくやの軌跡を描き、空中を馳せる。その隙にも骸どもが放つ灼熱の銃弾が幾つか、
黒いスーツを掠めた。
 少しく赤色の狭霧が棚引く。
 その間は、女に迎撃体勢を整えさせるのに充分だったらしい。
 閃いた両の繊手は、ジャケットの胸の裏から青光りする鋼鉄を抜き払っていた。
 右手にベレッタM1945、左も最早旧式の仲間入りをした自動拳銃、コルト・ウッズマンである。
 
 翻転し、降り立つ先は妖魔どもの中央部だ。死へのダイブとしか思えない。
 この場合は違った。
 引き金を中心にして一回転、スライド付近で銃を握り直した女が着地したのと、女がその拳銃を
躯ごと振り回したのはほぼ同時であった。
 
 銃把が唸る。
 当たるを幸い、超至近距離から放たれる打撃はまさに嵐。
 咲き乱れる妖華を散らす、美しい突風だ。

83 名前:黒蜜(M):2003/04/13(日) 01:22

鈴鹿御前vs黒蜜(M) 『安達ヶ原に鬼、双つ』

>>81

斬撃は受け止められた。
十字に噛み合って拮抗する刃を力任せに更に押し込もうとする。

く―――

もう少し。
もう少しで肩に届く。そう思った瞬間、跳ね上げられた。
腕が上がる。
今胴に打ち込まれたら危ないのは、素人でも理解出来た。

後へ。飛んで、紙一重で逃れ――鋭い痛み。
逃れたのは直撃であって、無傷ではすまなかったらしい。
比較的浅くはあるものの、確かに傷は胸元に刻まれていた。

強い。

ぎり。
歯が軋む。
着地と同時に前に飛んで、突きを放った。

84 名前:鈴鹿御前 ◆wzY4SUZUKA:2003/04/13(日) 01:47

鈴鹿御前vs黒蜜(M) 『安達ヶ原に鬼、双つ』
>>83
 
 ──浅い。
 僅かな手応えはあったが、有効打にはほど遠かった。女の胸元から拭き上がった血煙は
微かだ。
 跳び下がって私の刃を避けた女は、そのまま地を蹴ると、心臓目がけて真っ直ぐに突き
込んでくる。発条さながらの勢いで繰り出された切っ先は、やはり真っ直ぐ心臓を指していた。
 
 ──それでは、私は殺せない。
 
 あくまで真っ直ぐなその突きを、右へと体を捌いて躱す。胸のすぐ左側を、利刃が駆け抜け
ていった。
 それを追うように奔ったのは、身体を回転させ、遠心力を乗せて振るった大通連の刃だ。
 足が床を噛む音と、刃が空を切る音が、一つに重なった。

85 名前:アンドリュー・深津彦・星野(M):2003/04/13(日) 01:51

麻紀絵(M)vsアンドリュー・深津彦・星野(M) 「妖獣都市 狂血鬼」
 
>>82

女が一陣の旋風と化すとともに、生ける屍は次次に破砕されていく。

空中に白い骨片が舞いちる中をまわるその姿は、さながら死の舞踏を踊る
美しき闇の天使か。

その舞踏が終わりを告げた時、女の周りには原型を止めぬまでに破壊された
骨の山があるだけであった。

階段を上り始めた女に、上の階から異変を察知して駆けつけた首無し骸骨どもが
銃火を浴びせる。

しかし、その悉くは宙を切るか掠り傷にとどまり、女は着実に前進を続ける。
やがて業を煮やしたか、首無し骸骨どもは弾切れになった銃を捨てると
自らの肋骨に手をやった。

まるで手品のように、するり、と肋骨が抜ける。

振りかぶって投げられた肋骨は、一体いかなる力学作用によるものか見当も
つかない変化を見せつつ女に迫る。

スピードこそ銃弾に劣るものの、直線的な銃弾には全く違う角度から
迫ってくるこの武器を、果たして何人が避けうるか。

86 名前:麻紀絵(M):2003/04/13(日) 02:22

麻紀絵(M)vsアンドリュー・深津彦・星野(M) 「妖獣都市 狂血鬼」
 
>>85
 
 女の眼が細められた。
 生き物じみた動きで再び廻り、二挺拳銃が正しい射撃準備姿勢を取り戻す。
 オレンジ色のマズルファイアが迸った。
 次から次へと途切れなしの炸裂音は、一発の残響のように長く長く大気を震わせた。
 
 撃つ。胸と腹を狙った数本が砕けた。
 殺せるその反動に敢えて逆らわず、振った銃身が背後から来る白々とした骨槍を叩き落した。
 勢いのままに旋回する美影の左右から、上下に火花を撃ち分ける。
 銃そのもので払い、引き金を引き、撃って払って今度は一度にそれを行う。
 乱舞する骨片が女の頬で弾けた。
 その行動の全ては上へ向かう、という一点に集約されていた。
 
 白骨の渦を砕き掻き分ける闇色の風は、階段をさかしまに昇っていく。

87 名前:黒蜜(M):2003/04/13(日) 02:30

鈴鹿御前vs黒蜜(M) 『安達ヶ原に鬼、双つ』

>>84

手応え無く、空を切る一撃。
必要最小限の動きで避けた後は、後の先を取る反撃。
風を巻いて走る女の血刀。

止まるな――

床についた足を再度蹴る。
後には動けない。右や左では避け切れない。
止まらずに前へ出て、身を捩る。

「っ・・・・!」

背後から迫った鈍色の風が、脇腹に潜り込む。
抜けた。
崩れた体勢のまま壁に突っ込み、すぐさま振り返る。
今度は、深い。
それでも、まだ持つ。が、このままでは不味い。
左手で脇腹を抑えつつ、打つべき手を考え始めた。

88 名前:アンドリュー・深津彦・星野(M):2003/04/13(日) 03:15

麻紀絵(M)vsアンドリュー・深津彦・星野(M) 「妖獣都市 狂血鬼」
 
>>86

銃弾も肋骨槍も虚しく、闇色の風が階段を吹きぬけた後に残るのは、灰色の
欠片のみ。

やがて、女はついに十階――最上階に辿り着いた。

身に着けたスーツには裂け目が目立ち、体の所々にある細かい傷からは
血が滲んでいるものの、それすら女にかえって妖しい美しさを与える
アクセサリーになってしまっている。

女はひときわ目をひく巨大な扉の前に立った。
プレートには『社長室』とある。

「ようこそ」

女が扉の前に立つと同時に声がし、ひとりでに扉が開く。

白い絨毯を敷き詰めた、60万平方メートルはある大きな部屋の中央で
ダーク関東エリア責任者、アンドリュー・深津彦・星野は女を迎え入れた。

「お待ちしていましたよ、“あちら側”の闇ガード。
 あれだけの亡者がいる中を突破してくるとは、ぜひともわが社にスカウト
 したいものですな」

軽口を叩く星野に構わず進もうとした女の足が止る。

部屋の隅から、黒ぶちの眼鏡をかけた貧相な青年が現れたのだ。

「俺の・名は・アキオ。星野様・の・下僕だ」

喉に何かがつかえてかのいるような、異様な声をあげつつ、アキオと名乗った
男は、女の肌に滲む血に不気味な欲望のこもった目を向けた。

「お前・は、星野・様・の・邪魔をする。それに・お前・は・美味そう。
 食って・やる」

その言葉とともに、男の喉の付け根に亀裂が入った。その亀裂の中から、
底無しの飢えに眼を光らせたオオカミの顔が突き出し、全身に銀毛が伸びていく。

いまや完全に人狼の正体を現したアキオは、咆哮とともに女に飛びかかった。

89 名前:麻紀絵(M):2003/04/13(日) 03:49

麻紀絵(M)vsアンドリュー・深津彦・星野(M) 「妖獣都市 狂血鬼」
 
>>88
 
 寒夜、氷で出来た鈴をそっと振った。そんな声だった。
 魔獣の叫びの最中でも、それは冷たい温度を保って聞き取れた。
 
「久し振りね」
 
 女はそう云ったのだ。
 
「“こちら側”の同胞――と云っていいのか判らないけど、それとやり合うのは」
 
 幽世、地獄、魔界。
 名称は多々ある。が、関わるものは単純に“あちら側”と呼ぶ。
 人の棲む“こちら側”と明確に隔たれた異次元――原初の時より二つの世界が繰り広げて来た
暗闘の秘史を記す文字は、例外なく昏く汚怪な血だ。
 安寧を求めるのは、しかし人間ばかりではなかった。少なからぬ異界の穏健派もまた、人の中
から選び抜かれたものたちと戦列を同じくしたのである。
 両者の平穏と調停の為に組織された集団、“闇ガード”として。
 この美女――麻紀絵のように。
 
 異界の美女は跳び退った。予想外に速い狼人の動きに、銃撃の暇を奪われたのだ。
 ベレッタとコルトが振り上がる。後退しつつ、攻撃の手は緩まっていない。
 弾を撃ち出す道具ではなく鈍器として、麻紀絵は肉薄する妖物を打ち据えようとした。

90 名前:アンドリュー・深津彦・星野(M):2003/04/13(日) 04:26

麻紀絵(M)vsアンドリュー・深津彦・星野(M) 「妖獣都市 狂血鬼」

>>89

振り上げた銃の台尻が人狼アキオの鼻面をとらえんとする。

単純な攻撃なれど、麻紀絵の異界の力をもって叩けば、顔の前半分は
確実にもって行かれるだろう。

しかし、人狼たるアキオも又、異界の住人であった。銃の台尻をがっきと
咥えると、アキオはそのまま一噛みで銃をただの鉄屑に変えた。

「見た・か、裏切り者・め。お前・は・じっくり・味わって・食って・やる」

今や丸腰となった麻紀絵を嘲るアキオの牙が、再び彼女の喉笛に迫る。 

91 名前:鈴鹿御前 ◆wzY4SUZUKA:2003/04/13(日) 23:02

鈴鹿御前vs黒蜜(M) 『安達ヶ原に鬼、双つ』
>>87
 
 交錯。
 同時にこの手に伝わるのは、肉を断つ確かな手応え。
 壁に身を預けた女の、脇腹に添えた手の下からは、真っ赤な鮮血が後から後から溢れ出
している。人ならば確実に死に至るであろう深手を負いながら、しかし女の眼は激しい戦意
を孕んで爛々と光っている。
 
 血刀を引っ提げ、女との間合いをゆっくりと詰めていく。
 灯り取りの燭台が先の交錯の際に倒れ、転がった蝋燭の炎がちりちりと燃え広がり始め
ている。
 おかげで、部屋の明るさは保たれていたが、このまま放っておけば、藁作りのこの家は、
程なく燃え落ちてしまうだろう。
 ──そうなる前に、終わらせる。
 
「ここで死になさい、名も知らぬ鬼よ」
 
 台詞の残響を後ろに残し、強く地を蹴る。
 最後の数歩を一気に詰めると、上段に構えた刀を、真っ向から振り下ろした。

92 名前:麻紀絵(M):2003/04/13(日) 23:02

麻紀絵(M)vsアンドリュー・深津彦・星野(M) 「妖獣都市 狂血鬼」
 
>>90
 
 銃だった残骸が床で硬い音を立てる中、銀の牙と黒い影が交錯した。
 結果は無惨、と誰もが予想しただろう。――が。
 
「食べる? この私を?」
 
 狼の口からは唸りが、その首の後ろに下がる男の唇からは呻きが漏れた。
 おぞましい獣の蹂躙を受ける筈だった女体は健在である。
 高速度で上下の顎により目標物を挟み込む、即ち噛むという動作が完了する前に、麻紀絵の
右貫手が狼男の喉元深くまで突き立てられていたのだ。
 麻紀絵は幽かに笑った。
 
「――どちらの口でも、無理のようね」
 
 あまりにも妖しく、あまりにも淫らな微笑が浮かんだ刹那。
 濁った目が限界まで見開かれ、男の脳天を突き破って紅の爪が姿を現した瞬間。
 
 獣と人、二つの頭は下から上に両断された。
 
 血飛沫をぶち撒けて崩れ落ちる魔獣を見下ろし、その殺戮を為した腕と爪を、女は一振りした。
 美貌は頭から被った血と脳漿で汚れている。
 そうでなくともスーツのあちこちが裂け、白磁の肌に佩かれているのは幾筋もの朱線だ。
 しかしそれは、この女の美を何ら損ねてはいない。むしろ引き立てている。
 美とは“美しさ”ではないと、人は知るだろう。
 それは“逸脱する事”なのかもしれなかった。
 
 「さて」と異界より来た女は、静かにこのビルの支配者へ向き直った。
 
「あなた達には過ぎた玩具、回収させて貰うわ、ミスター星野」

93 名前:アンドリュー・深津彦・星野(M):2003/04/13(日) 23:37

麻紀絵(M)vsアンドリュー・深津彦・星野(M) 「妖獣都市 狂血鬼」

>>92

「過ぎた玩具、だと? 
 ふん、弱い人間どもに迎合しているうちに頭まで弱くなってしまったのかね。
 これは人間にこそ過ぎた玩具だ。“豚に真珠”という言葉があるだろう?
 このブラッドストーンの真の価値が分からぬ人間どもが持っていても
 何の意味も無い。
 これは我らダークにこそ所有されるべきものだ、もう一つ――この世界もね」

貴族的な容貌に自身と嘲りを浮かべて言い放つと、彼はディナージャケットの
ポケットに小箱を収めた。

「持っていくには私を倒していけ、と言いたい所だが……もう少し私の創造物に
 付き合っていただこうか」

突然、鳥のそれともコウモリのそれとも異なる羽ばたきが聞こえてきた。
天井の一部にはめ込まれている天窓から見えるのは、何十もの人間の首、首、
首――。

しかも、それはただの生首ではない。耳まで裂けた口からは異様に発達した
犬歯が覗き、耳は肉色の翼となって広がっている。

このビルを守護していた首無し骸骨たちは、頭部をこの異形の妖物に作り
かえられてしまった者達の、いわば残りカスだったのだ。

人頭鳥の体当たりを受けた天窓が粉々に砕け散る。

降り注ぐガラスの雨の中、人頭鳥は麻紀絵へと殺到した。

94 名前:黒蜜(M):2003/04/13(日) 23:49

鈴鹿御前vs黒蜜(M) 『安達ヶ原に鬼、双つ』

>>91

気が付けば炎が踊っている。
ゆらゆら、ゆらゆらと。

どう―――

すべきか。
どうすれば殺せるのか。
歩を詰める音が聞こえた時、思案が纏まった。
唐竹の一刀を寝かせた太刀で受ける。
脇腹の傷が、篭めた力の所為で激しく痛む。
堪えて、先だってと逆の体勢になって止まった女の刀の鍔元に近い部分を、左手で掴んだ。

「九郎様の仇・・・!」

片腕の分押し込まれ、身体に食い込む刃。
むしろそれを引き付け抑え込むように捕らえ、自身の刃のみを引き抜く。
女の腹部へ、突き立てんとした。

95 名前:麻紀絵(M):2003/04/14(月) 00:16

麻紀絵(M)vsアンドリュー・深津彦・星野(M) 「妖獣都市 狂血鬼」
 
>>93
 
「この程度の使い魔とは。“こちら側”の吸血鬼とやらも、お里が知れること」
 
 羽音、奇声。渾然一体となったおぞましいうねりを、麻紀絵は感情の篭らぬ声で断じた。
 霏々と降るガラスの欠片に紅い光が映る。
 その赴く先、横に縦に、頭部が断たれ、或いは割れた。汚らしい体液を散らしながら。
 疾風の勢いをみせる麻紀絵の爪である。
 妖怪を滅ぼすものは、やはり妖女なのだった。
 
 美麗な眉が僅かに顰められた。
 流石に敵の数が多いのである。三匹殺す間に五匹、六匹が掛かる。
 右手首に噛み付いて来た生首を反対の肘でぶち砕き、麻紀絵は左手を振った。
 と、ぼろぼろの袖口からバネ仕掛けで飛び出たのはベレッタM93Rだ。すかさずセレクターを
セミオートからフルオートへ切り替え、
 
「『郷に入っては郷に従え』、と云うけれど」
 
 引き金を絞った。
 銃口が動き、火を吐く所、悪夢の混合物たちは端から微塵に消し飛んで行く。
 闇ガードが使う弾丸は全て対妖物用“処理”を施してある。口径の大小に関わらず、妖魔に
とっては致命の一打となるのだ。
 硝煙と悪臭を量産しつつ、麻紀絵は呟くように云った。
 
「“こちら側”にはこんな格言もあったわね。確か――『銃は剣よりも強し』」

96 名前:鈴鹿御前 ◆wzY4SUZUKA:2003/04/14(月) 00:25

鈴鹿御前vs黒蜜(M) 『安達ヶ原に鬼、双つ』
>>94
 
 女の行動は意外だった。
 敢えて我が身に刃を受けてこちらの動きを封じ、引き抜いた刃を突きだしてくる。
 咄嗟に飛び退こうとしたが……刀の鍔元を握り込まれてはそれも叶わぬ。
 
「…………!」
 
 反射的に身を捻ったが、躱しきれない。
 抑えきれない苦鳴が、鮮血と共に零れ落ちた。
 
 膝を突きそうになるのをこらえながら、足を飛ばす。
 食い込んだ大通連の刃を、蹴り剥がすことで女から取り戻すと、私はそのまま数歩間合い
を取った。
 足がふらつく──拙い。思ったよりも、傷は深いようだ。

97 名前:黒蜜(M):2003/04/14(月) 00:56

鈴鹿御前vs黒蜜(M) 『安達ヶ原に鬼、双つ』

>>96

蹴られ、壁に叩き付けられる。
傷がまた、開いた。

「っ―――――」

血の匂い。
自身と、それから目の前の女の―――

足りない。

その匂いに、衝動が揺り動かされる。
駄目、駄目、駄目。
血など要らない。
欲しいのはあの女の命。

赤く濡れた左手を柄に添えて脇に構え、横に薙いだ。

98 名前:アンドリュー・深津彦・星野(M):2003/04/14(月) 00:58

麻紀絵(M)vsアンドリュー・深津彦・星野(M) 「妖獣都市 狂血鬼」
 
>>95

「それを言うなら、『ペンは剣よりも強し』だよ。
 もう一つ言おう、“こちら側”の隠語では拳銃のことをハジキと言う。
 そんな物はこの剣の前ではお弾き同然だ」

言いつつ星野は、右手奥の暖炉の上に掛けてあるサーベルを手に取ると
壊れた天窓の下に立った。

「全く、こんな部屋では戦う気は起きぬ。来い!」

今や人狼アキオと人頭鳥の残骸で目も当てられぬ有様となった社長室を見て
小さく舌打ちした星野の体が、天窓を通りぬけて屋上に降り立った。

僅かな間を置いて、麻紀絵の姿も屋上に現れる。

ただ闇と風が見守るなか、妖鬼と妖女は対峙した。

「“闇ガード”……一度だけ聞こう」

油断無くサーベルを構えながらも、穏やかすらと言える口調で星野は
問いかけた。

「人間は自分以外の生物を駆逐し、或いは従えて発展してきた。
 今度は人間がそれをされる側に回ったとて、それは自然の摂理と言う物では
 無いかね?
 お前は元々“あちら側”の住人だ。そこまで人間の味方をし、我々に敵対する
 必要がどこにある?」




99 名前:鈴鹿御前 ◆wzY4SUZUKA:2003/04/14(月) 01:31

鈴鹿御前vs黒蜜(M) 『安達ヶ原に鬼、双つ』
>>97
 
 横薙ぎに襲い来る刃を、刀を縦にして受ける。三度火花が宙に奔った。
 力を込め、押し返す──その拍子に先程の傷が開き、また赤い血が床を濡らしていく。
 
 辺りに立ちこめる、両者の血の匂い。むせ返るようなそれに、一瞬女の瞳が赤く光った……
ような気がした。
 そうだ……こいつは血に飢えた鬼なのだ。ここで断たなければ、また罪もない人の命が奪
われる。
 負けるわけには────行かない!
 
 ともすれば力の抜けかかる足を叱咤し、更に大きくなりゆく炎に照らされる床を蹴った。
 身体ごとぶつかるように突進しながら、心臓目がけて突きを繰り出した。

100 名前:麻紀絵(M):2003/04/14(月) 01:34

麻紀絵(M)vsアンドリュー・深津彦・星野(M) 「妖獣都市 狂血鬼」
 
>>98
 
「下らない問いね」
 
 黒い風が、同じく黒い美身に纏わりつく。
 乱された髪を掻き上げ、麻紀絵は低い声で応じた。
 
「答えは二つ。一つは、これが私の仕事だから。もう一つは――」
 
 右手が下腹部をそっと撫ぜた。
 血に濡れ光る爪すら柔らかいものに感じられるような、たおやかな動き。
 
「個人的な秘密。あなたに教える必要はないわ」
 
 そこには“こちら側”の人間――その男もまた“闇ガード”だが――との間に育んだ生命が、
二つの世界の行く末が破壊と絶望ではなく、調和と希望であることの証が宿っているのだった。
 
 舞うように左足を一歩踏み出し、麻紀絵は半身になる。右肘が軽く引かれ、反対にベレッタを
持つ左手は前へ。
 と――光なき空間に、けぶる何かが灯ったようだった。
 美しき鬼気に彩られた鬼火が。

101 名前:アンドリュー・深津彦・星野(M):2003/04/14(月) 02:13

麻紀絵(M)vsアンドリュー・深津彦・星野(M) 「妖獣都市 狂血鬼」
 
>>100

「ふ、私としたことが少々喋りすぎたようだ。所詮我らはどこまで行っても
 敵どうしというわけだ」

星野はずい、とサーベルを前に突き出した。
もう片方の手は腰に回されている。

その身から立ち昇る不可視の妖気が、星野の周りの闇をさらに暗く濃くしていく。
だが、妖気が発されているのは星野の体からだけではない。
星野がてに持つサーベルもまた、星野に劣らぬ妖気を発している。

それも道理、彼の持つサーベルは、かつてジャンヌ・ダルクを助けてイギリス
軍をフランスから追い出し、25歳の若さで元帥に任じられた武人でありながら
魔道に堕ち、約800人の少年少女を惨殺して地獄へ捧げた魔人――青髭ジル・ド・
レエの愛刀だったのだ。

星野とサーベルから噴出す闇が、鬼火と触れ合った。

刹那。

コンクリートの床を突き破らんばかりの踏みこみと共に、斜め下から星野の
サーベルが突き出された。

しかも、刃は平に寝かせてある。

すりあげられた突きを相手がかわしても、次の瞬間寝かせた刃からの斬撃が
襲う――必殺の連続技だ。

102 名前:黒蜜(M):2003/04/14(月) 02:24

鈴鹿御前vs黒蜜(M) 『安達ヶ原に鬼、双つ』

>>99

刀が―――――
三度噛み合った太刀が、声の無い悲鳴を上げた。

もう一度・・・

防がれたのなら、今度は、もっと確実に。
捨て身とも取れる突きを避ける事も考えず。
元から捨てるつもりの命を拾う事など考えず。

「――――――――!」

心臓目掛けての突きと交錯するように、突きを放つ。
絡み合った鋼の一方は、悲鳴を上げ続けていた。

103 名前:麻紀絵(M):2003/04/14(月) 02:39

麻紀絵(M)vsアンドリュー・深津彦・星野(M) 「妖獣都市 狂血鬼」
 
>>101
 
 下方から吹き荒れる剣風は虚しく通り過ぎた。
 麻紀絵は左に跳んでいた。着地するや否や、魔人へ向かって床を蹴る。
 次に来る横薙ぎの太刀を予想済みの動きだ。妖剣は豊満な胸を餌食とするだろう。
 それも予想済みの行動であった。
 
 あらゆる攻めの機は同時に最大の隙でもある。その隙をつく代償としては安い、という戦士の
判断は賞賛すべきなのか、戦慄すべきなのか。
 
 ともあれ、返り来たる銀閃に報いるべく、麻紀絵の左手が吼える。
 ベレッタM93Rは退魔の銃弾を吐き出し続けた。

104 名前:鈴鹿御前 ◆wzY4SUZUKA:2003/04/14(月) 02:48

鈴鹿御前vs黒蜜(M) 『安達ヶ原に鬼、双つ』
>>102
 
 互いの胸目がけ、交差して繰り出される突き。
 どちらも、相手のそれを避けることなど考えてもいない。相手の刃が届く前に、相手を貫く。
 そんな必殺の思いが、込められていた。
 
 刃と刃が絡み合う、むせび泣くような悲鳴が、不意に止んだ。私の胸に吸い込まれる寸前
だった切っ先が、宙へと跳ね飛ぶ。
 女の太刀が、激しい撃ち合いに限界を超え、遂に耐えきれなくなったのだ。
 如何な業物とは言え、所詮は人の世の刃。大通連の、この世の物ならぬ刃と撃ち合えば、
無事で済む筈も無い。
 
 天井をも焦がし始めた炎を反射しながら、折れ飛んだ刃が地に刺さったのと、私の捨て身
の突きが女の胸に吸い込まれたのは、ほとんど同時だった。

105 名前:アンドリュー・深津彦・星野(M):2003/04/14(月) 03:12

麻紀絵(M)vsアンドリュー・深津彦・星野(M) 「妖獣都市 狂血鬼」
 
>>103

妖女の胸に刃が突き刺さると同時に、退魔の銃弾が星野のディナージャケットに
大穴をあけた。

だが双方相手の攻撃を受けたのは同じながら、結果の方はまるで正反対であった。

麻紀絵が胸から血を滴らせてよろめくのとは対照的に、星野は何事も無かった
かのように、笑みすら浮かべてその場に立っている。

「だから言ったろう? お弾きだと」

嘲笑とともに、星野は胸の穴から銃弾を取り出した。

対妖物処理用銃弾など、この吸血魔人にとっては豆鉄砲同然というのか。

サーベルに付いた血を一舐めし、星野はサーベルを麻紀絵への首へと狙い定めた。

「だが、ここまでの君の健闘は賞賛に値する。それに免じて、首を落とした後は
 君を人頭鳥の女王にしてあげよう」

再び、サーベルが闇に走った。

106 名前:黒蜜(M):2003/04/14(月) 03:26

鈴鹿御前vs黒蜜(M) 『安達ヶ原に鬼、双つ』

>>104

「あ・・・」

とすん、と。
想像を絶する滑らかさで心臓を刺し貫いた刃が、鼓動を止めた。
四肢から力が流れ出してゆく。

何故―――

後ほんの少しだけ持ってくれなかったのか。
あの太刀は、九郎様は、この女を殺す事を望んでいないと言うのか。
わたしの―――

「教えて・・・ください、ませ・・・・・・」

床を這って、頭部だけの亡骸へ手を伸ばす。
頬を寄せ、目を閉じ、身体を焼く炎にただ身を任せる。
薄れてゆく意識の中で、向こうで逢う事が出来れば、と思った。

107 名前:麻紀絵(M):2003/04/14(月) 03:43

麻紀絵(M)vsアンドリュー・深津彦・星野(M) 「妖獣都市 狂血鬼」
 
>>105
 
 胸に刻まれたむごたらしい痕から鮮血が盛り上がる。止まらない。
 麻紀絵の黒スーツが更にどす黒く染まっていく。雫はふらつきを隠せない足元にも流れ落ちた。
 異界の存在とは云え、斬られ撃たれれば血も出る。疵が深ければ死ぬ。
 死して後の行く先は、現世のものたちより更に不可解ではあろうが。
 
 まだ、その時ではないようだった。
 
 またも銃口を上げる。引き金にかけた指先に力を込め、麻紀絵は迫る妖刀に突進した。
 高位の妖物に効く弾ではない。敵もその事を知り尽くしている。
 だからこそ、銃を怖れない。だからこそ、警戒しようとしない。
 虚ろな銃口の睨む先は、勝利を確信した双眸であったと云うのに。
 
 夜風が、炸裂音をビル街の谷間に運ぶ。
 二人――若しくは二匹――は擦れ違った。
 
 剣持てる妖物の背後、麻紀絵は数メートルまで駆け抜けていた。
 足を止めた次瞬、ベレッタが落ちた。同時に白い細首に薄い斬線が描かれる。
 滲み出る血汐と共に、麻紀絵は嘲る風もなく、
 
「お弾きも莫伽にならないわね」
 
 そう云った後――右手で抉り抜いた吸血鬼の心臓を握り潰した。

108 名前:アンドリュー・深津彦・星野(M):2003/04/14(月) 04:28

麻紀絵(M)vsアンドリュー・深津彦・星野(M) 「妖獣都市 狂血鬼」
 
>>106

「があッ」

苦鳴と共に、星野の手から魔のサーベルが落ちた。
ディナージャケットがたちまち鮮血に染まっていく。

だが、心臓を抉られながらもなお、星野は生きていた。

これぞ彼ら<ダーク>の特徴――左右両方にある二つの心臓によって、彼らは
心臓一つを失ってもなお、その闇の生命をながらえる事が可能なのであった。

「許さんぞ、貴様……!!」

その額に<ω>の紋章が浮かび上がるのと同時に、星野のジャケットの背が裂けた。
背から飛び出したのは、皮膜の張った巨大な翼であった。
さらに、そこから三十度ほどの角度で、斜め後方へ二枚の翼が広がっていく。

同時に、星野の容貌も凄まじい勢いで変貌していった。

口は耳まで裂け、牙は剣歯虎さながらの長さとなり、瞳は血のような赤に
染まっていく。

体躯もまた、数倍の大きさに膨れ上がった。

その腕や胴体や足の皮膚は、数万の蛆虫がたかっているかのような、おぞましい
蠢きを繰り返している。

これが神に呪われた吸血鬼――ダークの真の姿なのであった。

「きしぇェェーっ!!」

ボロ布となったジャケットを振り捨てると、今や異形の怪物となった星野は
目の前に立つ全てのものを破壊せんばかりの勢いで麻紀絵へと突進した。

この体当たりをまともに食らえば、ダンプすら一撃で破壊されるだろう。

109 名前:V.A:2003/04/14(月) 23:03

V.A vs 半妖アセルス
『Colored me blood violette』


・・・感じる。
慣れたくもなかった感覚だが、もう幾度となく経験した感覚。
黒い、どす黒い波動。
そう、同族が闇に落ちようとしている波動だ。

------------------------------------------------------------------

銀の月。
そう、このところアセルスは銀色の月を幻視する。
無いはずの月、ありえない色の月。
そしてそのたびに耐え難い激痛が身体を走るのだ。
このことは白薔薇にも話していない。否、話せない。
話せば無用の心配をかけるだけだからだ。

だから、幻視が始まったら一人になる。
白薔薇に苦しむ姿を見せたくないから。

そして、今日も銀の月を見た。

------------------------------------------------------------------

「いい夜ね、アセルス」

激痛が治まったアセルスの耳に届いたのは、涼やかな女性の声。

目の前には、いつの間にか一人の女性。
夜の黒さと同じく黒い衣装。
夜の黒さから浮かび上がるような白い肌。

そして、白と黒の中で、唯一紅い唇が動いた。

「今日は、貴方を殺しに来たの」

――――死の、宣告を告げるために。

110 名前:アセルス(半妖)(M):2003/04/14(月) 23:05

V.A.VSアセルス(半妖) 『Colored me blood violette』
>>109
 
「・・・私を、殺しに?」
 
月明かりの下、その女性は私にそう告げた。
 
 
殺す・・・私が、死ぬ?
 
胴を貫かれたことがある。
拙い剣技が及ばずに、魔物に四肢を切り裂かれたこともある。
・・・それどころか、自ら命を絶とうとしたことだって。
 
でも、死ねなかった。
貫かれた胴も、切り裂かれた四肢も・・・手首の傷も、全て消え失せた。
ただその代わりに、喉が「渇いて」ゆくだけだった。
・・・私の中の紫の血は、そう易々と私の運命を終わらせてはくれなかった。
だから。
 
 
「貴女は、誰・・・本当に、私を殺せるの?」
 
血のように赤く見える、月明かりの下。
私はその女性に「何故?」と問わずに・・・そう、問うていた。

111 名前:V.A:2003/04/14(月) 23:12

V.A vs アセルス(半妖)『Colored me blood violette』
>>110

「私はV.A。人と魔の境界を観る『監視者』よ」

モノクロの女――――V.Aが名乗る。
その手にはいつの間にか、銀色に光る短剣がある。

「そして、境界を越えるものを狩る、狩人でもあるわ」

銀の短剣と同じくらいに鋭い眼光が、アセルスを見つめる。
す、とその眼光が細くなる。

「心配しなくても、その紫の血の源を破壊すれば死ねるわ」

V.Aが短剣を構え直す。
短剣が、月の光を反射してぎらりと光った。

「だから、安心してお死になさい」

――――銀光が舞った。

112 名前:鈴鹿御前 ◆wzY4SUZUKA:2003/04/14(月) 23:18

鈴鹿御前vs黒蜜(M) 『安達ヶ原に鬼、双つ』
>>106
 
 藁屋は、今や完全に炎に包まれていた。
 折から起こり始めた風に揺らされ、大樹共の影が不気味な舞いを踊っている。激しく立ち
上る煙が、僅かに覗いていた星空を、すっかり覆い隠してしまっていた。
 
 その様子を、私は太い根に腰掛け、見守っていた。
 この炎が燃え尽きるまでは、ここを動くつもりはなかった。傷のせいではない。脇腹からの
出血はもう止まっている。
 あの女と同様、私もまた鬼だからだ。ただ、依る立場が違っただけ。
 たったそれだけのことで殺し合える──その哀しさは、人も鬼も変わらない。
 
 藁屋はあっと言う間にその形を失っていく。
 天井を支えていた梁が燃え尽きたのだろう──どうっ、という音と共に、屋根が崩れ落ちた。
 
 ──そう言えば、彼女の名も知らなかった。私もまた、名乗らなかった。
 九郎様……最期まで、側に寄り添っていたあの首を、彼女はそう呼んでいた。
 愛し合っていたのだろう──愛し方が間違っていたとしても、その愛は真実だったろう。
 あの二人が、彼岸で再会できればいいと思った。この炎が、彼女たちの罪も、業も焼き尽
くし、浄化してくれればいい。
 
 
 
 気が付けば、辺りは色濃い霧に覆われている。藁屋の全てを燃やし尽くし、炎は既に鎮火
していた。
 後に残るのは僅かばかりの灰のみ──それも、じきに薄れて消えてゆくのだろう……人も
通わぬ古森は、こんな空き地など数年の内に飲み尽くしてしまう。
 そして、全ては無に帰るのだ。
 
 だから、私だけは覚えていよう──鏡の中の私だったかも知れない、悲しい鬼女のことを。

113 名前:名無し客:2003/04/14(月) 23:27

 鬱蒼とした、深い森。
 幾星霜を経た大樹の群が、足下から空までを覆い尽くしている。
 その森の一角に、小さな空き地があった。黒く蟠っているのは、どうやら何かの燃えた跡ら
しい。
 偶然だろうか──不思議なことに、それは文字を象っていた。
 
 
鈴鹿御前vs黒蜜(M) 『安達ヶ原に鬼、双つ』 レス番纏め
 
>68 >69 >70 >71 >72 >73 >74 >75 >77 >79 >81 >83
 
>84 >87 >91 >94 >96 >97 >99 >102 >104 >106 >112

114 名前:アセルス(半妖)(M):2003/04/14(月) 23:43

V.AVSアセルス(半妖) 『Colored me blood violette』
>>111
 
境界を越えるものを狩る・・・私も、その一人だから、か。
 
確かに私は、半妖になった・・・いや、なってしまった。あの人の気まぐれで。
放っておいたら私も妖魔になってしまうかも知れない。あの人と同じになってしまうかも知れない。
だからこの人――V.Aは、私を殺しに来たのか。
 
紫の血を破壊すれば死ねる・・・この人がそう言ってるんだから、多分間違いないんだろう。
でも。
 
 
「――――っ!」
 
・・・その銀の光きらめく短剣を、なんとかギリギリ避けた。
左の上腕が僅かに切り裂かれ、鋭い痛みと共に紫色の血がにじみ出す。
 
「痛っ・・・ごめん、V.A。私はまだ死ねないんだ」
 
彼女を真っ直ぐに見つめ返しながら、私はそう言った。
 
――自殺しようとしたことは確かにあった。でも、今は出来ない。
死んでしまったら・・・一緒に逃げる羽目になってしまった白薔薇に、申し訳ないから。
それに・・・私は。
 
「私は、白薔薇を護るって、そう決めたんだ。だからまだ死ねない。
 ・・・でも、貴女と戦うなんて真似も、したくない。
 退いて、くれないかな・・・?」
 
――多分無駄だろう、この人はそんなに甘い人じゃなさそうだ。
そう判っていても、私はそう問いかけていた。
 
 
剣はまだ抜かない。抜けない。

115 名前:V.A:2003/04/15(火) 00:03

V.A vs アセルス(半妖)『Colored me blood violette』
>>114

「答えを聞くまでもないでしょう? 退かない、わ」

言いながら、V.Aは軽い驚愕を覚えていた。
必殺の一撃ではないとは言え、決して手を抜いた一撃ではなかったのだ。
それをギリギリであれ、回避するとは。

「かなり、進んでいるようね」

反射神経とそれに付随する運動能力は、確実に人間の域を逸脱し始めている。
そして、腕から流れる紫の血。
そう、アセルスの妖魔化は確実に進行している。

このまま捨て置けば、彼女は確実に妖魔となる。
それも、かの妖魔の君オルロワージュの血を享けた妖魔――――
それがどれほどの力を有する存在になるか、V.Aにも見当が付かない。

いや、ただの妖魔化だけならまだ良い。
彼女は生まれついての闇の眷属ではない。
元は脆弱な心と体を持った人間だ。
強大すぎる力に晒され、闇に堕ちる事は必定。
――――そう、力の強大さ故、狂っていったV.Aの同族のように。

「・・・ねえ、アセルス。貴方、いつも何を幻視(み)ている?」

唐突に、V.Aは問うた。
幻視は心の有様。
揺れ動く心が見せる幻なのだから。

或いは、一縷の望みがあるのかも知れない、と思ったのだろうか?

116 名前:アセルス(半妖)(M):2003/04/15(火) 00:18

V.AVSアセルス(半妖) 『Colored me blood violette』
>>115
 
・・・やっぱり、退いてはくれないのか。
戦うしか――殺されないためには、剣を抜くしかないのか?
でも・・・
 
 
『貴方、いつも何を幻視(み)ている?』
「・・・えっ?」
 
 
不意に、V.Aは私にそう問いかけてきた。
一体、それはどういう・・・?
 
「――銀色の月。以前は見えなかったはずなんだけど。あれを見るたびに激痛が走るんだ。
 ・・・V.A、貴女は何か知っているの!?」
 
戸惑いながら、私は答えた。
・・・剣を抜かずに済むよう、心の中で祈りながら。

117 名前:V.A:2003/04/15(火) 00:53

V.A vs アセルス(半妖)『Colored me blood violette』
>>116

「そう、銀色の月なのね」

溜息。
或いは見逃す事も出来るかも知れない、と思っていたけれど甘かった。
V.Aはそのことを痛感した。

「闇の眷属が力に目覚める際には、破壊衝動の塊がその精神を侵蝕する。それが幻視となって顕れるの」

そう、今まで狩ってきた闇の眷属たちも同じく様々なものを幻視していた。
赤い星、青い太陽、そして――――銀の月。

「銀色の月――――それは不安の象徴」

数ある幻視の中でも、最悪とも言えるもの。
それが銀の月だ。

恐怖、不安と言った負の感情が見せる幻視。
裏返せば、それは人間の心が、闇の眷属の力に押し潰され、悲鳴を上げていると言う事。
生まれついての闇の眷属であれば、力を御する術も本能的に知っていようが、アセルスは人間だ。
人間にはありえないほど、強大で分不相応な力を御する事など不可能だったのだ。

「――――やはり、貴方は今ここで殺さないといけないようね」

V.Aの身体が、一瞬沈みこむ。
低い姿勢で、剣も抜かず無防備なままのアセルスの足を狙って、疾風の様に駆けた。

118 名前:アセルス(半妖)(M):2003/04/15(火) 01:32

V.AVSアセルス(半妖) 『Colored me blood violette』
>>117
 
“闇の眷属が力に目覚める際には、破壊衝動の塊がその精神を侵蝕する”
“銀色の月――――それは不安の象徴”
 
淡々と告げるその声に・・・私は改めて、自分がいかなる存在かを知らしめさせられた。
私が徐々に、妖魔へと変貌しつつあるということを。
 
今更・・・なんて、笑えるはずもない。
僅かながらも、私はショックを受け――それが、ただでさえ無防備だった私にさらに隙を作った。
 
 
身を沈め、V.Aが詰め寄ってくる。
・・・それを認識したときには既に手遅れだった。
 
幻魔を抜く暇はない。
回避に移る余裕もない。
何より、この僅かな時に手段を講じられるほど、私は戦い慣れてなんかいない。
ダメだ・・・ダメだ、ダメだ!
 
 
「う――わ、ああぁっ!!」
 
 
――――気が付いた時、私は右手に握った「剣」で、彼女の攻撃を弾いていた。
幻魔じゃない、全く別の・・・細身でありながら、何もかもを切り裂けそうな切れ味の鋭さを見せる
禍々しい意匠の施された剣を。
 
――「妖魔の剣」を、私は右手に生み出してしまっていた。
 
 
「え、あ・・・や、あ、あああああああ――――っ!」
 
体中が、熱く沸き立つ。熱と共に、力が隅々まで行き渡る感覚。
目を掠める私の髪が、碧から蒼へと変貌していく。
・・・口の中で、元から尖り気味になっていた八重歯がさらに大きく――牙へと変わっていく。
 
そう、私は――「妖魔の剣」を抜いたことで、妖魔の姿へと変貌していった。

119 名前:V.A:2003/04/15(火) 02:45

V.A vs アセルス(半妖)『Colored me blood violette』
>>118

完璧なタイミングだったはずの斬撃が弾かれた。
鞘から剣を抜く事も間に合わない状態で、それを弾いたのはもう一振りの剣。

細身でありながら、あのタイミングの斬撃を弾く剣・・・

「――――妖魔の剣、と言う事ね」

妖魔の中でも高位のものが、己が魔力・精神を物質化して作り出す剣。
故に、その強度は主である妖魔の精神力に比例する。

「それなりに、精神力はある、と言う事かしら?」

だが、それでも妖魔の血の力には抗えない――――何という強大な力なのだろう。
さすがは妖魔の君オルロワージュの血の力、と言うべきか。

だが、まだ完全に覚醒したわけではない、今であれば。
いや、今しかあるまい。

「作り出したはいいけれど、扱いきれるのかしら、それを!」

言葉とともに短剣を喉元目掛けて突き込む。
だが、それはフェイントだ。
本命は下段の蹴り。
まずは足を潰し、その身体能力を十全に発揮させない事が重要だ。

120 名前:アセルス(半妖)(M):2003/04/15(火) 20:17

V.A VS アセルス(半妖) 『Colored me blood violette』
>>119
 
「はぁ・・・はぁ、はぁ・・・」
 
荒い息をつきながら、剣を構える。
もうどうしようもない、戦いは避けられない・・・それがわかっているから。
 
彼女の短剣が喉元に迫る。
それを、構えた剣で再び弾く。
これぐらいなら、剣技も何も別にいらない。そのままその短剣の動きに注視して・・・
 
 
その視界に、蹴り足が見えた。
 
「――――っ!」
 
文字通りの人間離れした反射神経で咄嗟に横っ飛び。
当たりはしたものの、致命的なダメージにはならなかった・・・はずだ。
もっとも――無様に転んでしまったけど。
 
そのまま休ませてなんかもらえないだろう。
転がって、痛む足をとりあえず無視して立ち上がり・・・
 
 
ひとまず、逃げる。
足が痛むから、そう速くは走れやしないけど・・・今のままでは反撃の機はうかがえない。
だから逃げる。早いところ終わらせたい気持ちとは裏腹に。
 
息が荒い、喉が・・・渇く。

121 名前:V.A:2003/04/15(火) 20:49

V.A vs アセルス(半妖)『Colored me blood violette』
>>120

アセルスは、喉への突きと膝裏を狙った蹴りを無様に転びながらも躱した。
そして、すぐに跳ねる様に飛び起き・・・逃げ出した。

「へぇ・・・」

思わず慨嘆する。
フェイントに惑わされもしない程度には『見えている』らしい。
はっきり言って、厄介だ。
せめてもの救いは、まだ理性が残っているという事。

「・・・逆かしら、ね」

V.Aの端正な顔が曇る。

理性のある相手を殺すのはイヤなものだ。
如何にそれが自分の背負うべき罪であろうとも、人の心を持ったものを殺すのは、とても辛い。
・・・今までならば、彼が居てくれた。
一緒に歩んでくれる、一緒に罪を背負ってくれる彼が居てくれたから耐えられた。
でも、その彼は今は居ない。
裏切り者の奸計に落ち、虜の身だ。

・・・そうだ。その彼を救うためにも、狩り続けねばならない。
戦う心を持ち続けるために。
強さを磨き上げるために。

だから、そう、だから。

「私は、貴方を殺す」

たん、と地を蹴り、舞い上がる。
いつの間にか、空いていたもう片手にも短剣を構え、月を背に。

銀光が二筋、閃いた。

122 名前:アセルス(半妖)(M):2003/04/15(火) 21:22

V.A VS アセルス(半妖) 『Colored me blood violette』
>>121
 
――やっぱり追いつかれた。
当たり前だ、ただでさえ足が痛む上に後ろをうかがいながらじゃスピードなんか出るわけがない。
 
そう、私は後ろをうかがっていた。
だから・・・彼女が両手に短剣を構えるのが見えた。
 
振り向く。剣を構える。
構えた剣に、短剣の片方がまともに当たりイヤな音を立てる。
 
・・・彼女の攻撃を防いだ、わけじゃない。
半分以上、ただのまぐれだ。
その証拠に・・・
 
「――痛っ!」
 
もう一方の短剣が、私の右腕を切り裂いた。
見た目以上に激しい痛みと共に、紫の血があふれ出す。
この焼け付くような痛み・・・これは、やっぱりただの短剣じゃないって事か。
これじゃ傷はすぐに治りそうにない。
 
いや、そんなことよりも・・・この出血。これ以上は拙い。
このままじゃ、直に渇きに耐えられなくなる。私がただの血を求める妖魔と化してしまう。
早く、終わらせなくちゃ――――
 
 
狙いは・・・とりあえず、彼女の手を。
武器が使えなくなれば、或いは形勢が変わるかも知れない。
・・・そんな淡い望みと共に、私は後ろに飛び退きつつ彼女の短剣を持つ手めがけて剣を振り下ろした。

123 名前:V.A:2003/04/15(火) 22:37

V.A vs アセルス(半妖)『Colored me blood violette』
>>122

「莫迦ねえ、見え見えよ」

冷笑しながら、左手首を返す。
くるり、と短剣が弧を描き、振り下ろされた妖魔の剣を逸らす。
剣先が逸らされ、完全に伸びきったところで、刃を伝って短剣を滑らせる。

同時に、一歩踏み込みながら右手の短剣をアセルスの顎目掛けて振り上げる。

もちろん、それだけでは終わらない。
踏み込んだ右足を軸にして、左足を回転させる様にして蹴りを放つ。
狙いはアセルスの左足首だ。

124 名前:アセルス(半妖)(M):2003/04/15(火) 23:14

V.A VS アセルス(半妖) 『Colored me blood violette』
>>123
 
・・・ああ、これもダメか!
私の剣は、実にあっさりと逸らされた。
そして体勢を立て直す間もなく、彼女の短剣が――――
 
 
避けた。なんとか上体を反らせられた。
顎の先に少しかすったものの、それだけで済んだ。
 
・・・わけは、なかった。
彼女が蹴りを放った――そう気付いた時には遅かった。
上体を反らし、すぐには動けない私の足首に彼女の左足がしたたかに命中。
そのまま、またしても無様に倒れ込んだ。
 
・・・痛い。
痛い。
痛い。
痛い痛い痛い・・・熱い。
足首が、腕が、顎の先が・・・喉が。
 
 
無意識に、体が跳ね上がる。右手が伸びる。
右手の剣が、先ほどまで傷つけまいとしていたことが嘘のように彼女に襲いかかる。
狙いは、彼女の胸元。
・・・なぜなら、そこにはいっぱい血が流れているだろうから。

125 名前:V.A:2003/04/15(火) 23:47

V.A vs アセルス(半妖)『Colored me blood violette』
>>124

アセルスの左足首を、V.Aの左の踵が蹴り砕いた。
もちろん、立っていられる筈もなく、アセルスは地に伏した。

だが間髪を入れず、まるでバネ仕掛けの人形の様に跳び起き、右手の剣を走らせるアセルス。
その瞳には、先程までの迷いはない。
あるのはただひたすら『渇き』
全身を苛む『渇き』、心を蝕む『渇き』だ。

「・・・堕ちた、わね」

何処か憂いを込めた様な声。
何処か悲しみを感じさせる声。

だが、それは声だけ。
V.Aの眼差しは変わらず、絶対の冷たさを持ってアセルスを見つめ続ける。

「堕ちた眷属、その力は完全にそれを制御しているものに比べ、遙かに大きいわ、確かに」

その言葉が届いているかどうか、確かめもせずV.Aは呟く様に続ける。

「でも、制御しきれない力には無駄しかないわ。つまり、ね・・・」

ゆらり、と微かに身体を揺らす。
だが、それを意にも介せず、剣先は胸元――――心臓に向かって一直線に走る。
そう、一直線に。


                      血が、飛沫いた。

126 名前:V.A:2003/04/15(火) 23:48

V.A vs アセルス(半妖)『Colored me blood violette』
>>125

妖魔の剣がV.Aの身体を・・・貫いてはいなかった。
剣先は丁度、V.Aの胸の脇を掠める様にしていただけだった。

「動きが単調すぎるのよ、結局。だから至極読みやすいし、騙しやすい」

左腕に力を込め、妖魔の剣を抜かせない様にする。
そうしておいて、右手の短剣をそれこそ何の奇もてらわず、ただ速さのみを持って走らせる。

――――狙いは、無論アセルスの心臓。

127 名前:アセルス(半妖)(M):2003/04/16(水) 00:21

V.A VS アセルス(半妖) 『Colored me blood violette』
>>125>>126
 
・・・そして、短剣は貫いた。
 
 
私の腕を。
咄嗟に胸を庇った私の左腕を、短剣は深々と突き刺した。
 
どくどくと、腕から紫の血が流れ落ちる私の腕。
そして、剣を伝い流れ落ちる彼女の赤い血。
その二つの色が、私の頭を痺れさす。
・・・もう、我慢できない。
 
 
剣から手を離し、彼女の腕を掴む。引き寄せる。
間近に来た彼女の首に腕を回し、口を開け彼女の首筋に――――

128 名前:アセルス(半妖)(M):2003/04/16(水) 00:38

>>127続き
 
噛み付こうとした、その瞬間――右手が痛んだ。
手袋に覆われた、火傷だらけの右手が。
 
「――――ダメッ!」
 
叫んで、口を引き結ぶ。
そして、左腕が短剣に抉られるのもお構いなしに、渾身の力で彼女を突き飛ばした。
 
「・・・はぁ、はぁ・・・」
 
左腕の傷に舌を這わせたくなる衝動を堪え、右手で傷を押さえる。
 
「負けない・・・私は、まだ負けてない。
 ううん、貴女にじゃない。私の中の妖魔の血に・・・私は、まだ負けてない」
 
彼女に――というより私自身に言い聞かせるように、力を込めて宣言する。
 
そして、幻魔を抜く。
本来ならば、私を妖魔へと導くこの剣は使いたくはない。
けれど今は・・・柄に付けた十字架護符が、十字架護符に焼かれる右手の痛みが、私を踏みとどまらせてくれる。
 
「私は妖魔にはならない。そして貴女に殺される気もない。
 私は人間だ・・・きっと戻ってみせる。そのためにだったら何でもする。
 ――貴女とは戦いたくない、だけどまだやるつもりなら」
 
幻魔を構え、真っ直ぐに彼女を見据えて。
 
「全力をもって・・・貴女の相手をするよ」
 
はっきりと、言い放った。

129 名前:V.A:2003/04/16(水) 01:06

V.A vs アセルス(半妖)『Colored me blood violette』
>>127>>128

「良くもまあ、吠えるものね」

呆れた様な、感心した様な口調でV.Aは言う。

「で、全力、ね。いいけれど・・・」

V.Aの瞳が、紅く染まる。
血よりも紅い、狂気の色に。

「貴方如きの全力で抗えるつもりかしら」

V.Aが動いた。

銀光がアセルス目掛けて走った。
V.Aが手にしていた短剣を投擲したのだ。

それと同時にV.Aは跳んだ。
空となった両の手には、いつの間にか銀色に輝く細身の長剣が握られている。

アセルスの頭上から斬りつける様にして着地。
着地後、伸び上がりながら、長剣を振り上げて逆袈裟に薙ぐ。
その切っ先を強靱なリストで返し、僅かに角度を変えて袈裟懸けに斬りつける。
斬り降ろしきる前に剣から左手を離し、右手一本で斬り返す。
空いた左手でアセルスの首筋を掴み、胸元を蹴って後ろに跳ぶ。
そして、止めとばかりに手にした長剣をアセルスの左胸目掛けて投擲した。

130 名前:アセルス(半妖)(M):2003/04/16(水) 01:46

V.A VS アセルス(半妖) 『Colored me blood violette』
>>129
 
短剣が投げつけられた。
私は、それを幻魔で弾・・・けられるほどの技量なんか無い。
だから横へと走って避ける。
走って避けたから、次の彼女の攻撃を待ち構えられるはずもなく。
 
斬り落とし――――かろうじて頭上に剣を構えて弾けた。
逆袈裟――――剣を戻せずに、斜めに裂傷が走った。
袈裟斬り――――なんとか戻しきり、彼女の剣を滑らせるようにして防いだ。
斬り返し――――今しがた出来たばかりの傷に追随するかのように、さらに裂傷。
 
そして首筋を掴まれ、蹴り飛ばされ。
・・・ああ、もうボロボロだ。そりゃあ喉だって渇くよ。
でも――負けないったら、負けないんだ!
 
 
長剣が投擲されるのが見えた。
見えた瞬間に――私は駆け出した。彼女めがけて。
 
胸のすぐ横に、彼女の剣が突き刺さって・・・そんなことはどうでもいい。
私は、それに構わず宣言通りの全力で、振りかぶった幻魔を彼女に叩きつけた。

131 名前:V.A:2003/04/16(水) 02:07

V.A vs アセルス(半妖)『Colored me blood violette』
>>130

全力を振り絞って叩き込んだ、斬撃斬撃斬撃斬撃。
だが、あろう事かアセルスはそれに耐えた。

止めとなるべき長剣の投擲も僅かにポイントをずれた。
それどころか、必死の形相で迫るアセルス。

「まったく・・・一生懸命なものね」

苦笑混じりに呟く。
その頭上にアセルスの剣が迫る。

一切の手加減のない、全力。
その全力で振り下ろされた幻魔がV.Aに叩きつけられ・・・なかった。

幻魔はV.Aの頭上数センチのところで止まっていた。
いや、止まっているのではない。止められているのだ。

V.Aの手が左右から幻魔の刃を止めていた。
真剣白刃取り――――そう呼ばれる技の一つだ。

「はっ!」

鋭い呼気とともにぐん、と左に振り、そのまま右に振り返す。
如何に妖魔の血に目覚めたアセルスと言えど、耐える事も出来ず、幻魔を取り落とす。

「さて、これでお互い無手になったわね」

幻魔を取り落として、呆然とするアセルスの頬に右の拳を叩き込みながら、V.Aは言った。

132 名前:アセルス(半妖)(M):2003/04/16(水) 02:38

V.A VS アセルス(半妖) 『Colored me blood violette』
>>131
 
殴られ、倒れる。
 
・・・まさか、白羽取りされるとは。
彼女の言うとおり、これでもう武器はない。
はは、じゃああとは殴り合いか・・・いいさ、もうとことんやってやる。
――倒れ込みながら、そんなことを考える。
そして、体を・・・体を起こし・・・あ、あれ?
 
力が――力が入らない。
血がどくどくどくどく流れ続けて・・・ああ、もう遅いのか。
反撃する余裕は、もう残ってないのか・・・くそ、くそくそ・・・
 
 
「負、けない・・・貴女、にも・・あのひ、とにも・・・負けない。
 白薔薇を、白薔薇を・・護らなくちゃ・・・」
 
そうだよ・・・白薔薇。彼女がきっと心配している。
だから動け、動けってば、私の体――――
 
 
 
 
 
 
動かなかった。

133 名前:ガロン ◆VTGALON.As:2003/04/16(水) 19:30

 
ヽ,.ゞ:,  ,ヾゞヾ;ゞゞ\ヾゞ:  ヾヾ゛ ゞ.ヾゞヾヽ,.ゞ:,,ヾゞヾ;ゞゞノヾゞ:  ヾゞ;ゞゞヾゞ;ゞ
,.ゞ :,,ヾゞヾ;ゞゞノヾゞ:ヾヾ  ゛ゞ.ヾ     ゞヾゞ;ゞゞヾ  ゞ;ゞ      `
ゞ:ヾゞ゛;ヾ;ゞ  ,',;:ゞヾゞ;ゞヾ.:     ヾ:ヾゞヾ., .ゞヾゞ;ゞ   ヾ;ゞゞ;ゞ `  ``
,,ゞ.ヾ\\ ゞヾ:ゞヾ ノノ ゞヾ .  ゞヾ ゞヾ  .ゞ;ゞヾ;ゞゞ;ゞ ヾ;ゞゞ;ゞ    `
ゞヾ ,,.ゞヾ::ゞヾゞ:ヾ ゞ:.y.ノヾゞ..ヾ .ゞ,'ヾ  ゞヾゞ ;ゞヽ,.ゞ:,,ヾゞヾ;ゞゞ;ゞゞヾゞ;    `
ゞヾゞ;ゞゞヾゞ;ゞiiiiii;;;;::::: イ.ヾゞ, .,;  ゞヾゞ___// ;ゞ   ゞヾゞ;ゞ  ヾ;ゞゞ;ゞ    `
ゞヾ   ゞ;ゞ iiiiii;;;;;::::: :)_/ヽ,.ゞ:,,ヾゞヾゞ__;::/      ゞヾゞ;ゞヾ;ゞゞ;ゞ
  ゞヾゞ;ゞ   iiiiii;;;;::::: :|;:/    ヾ;ゞゞ;ゞ   ヾゞ  ,            `
ヾ;ゞゞヾ;ゞゞ |iiiiii;;;;::: : |:/ ヾゞ        `
  ヾ    |iiiii;;;;;::::: ::|       `   `             `          
  `    |iiiiiiii;;;;;;::: :| `      `            `    ` ,
 `     ,|i;iiiiiii;;;;;;::: :| `    `         `     `      ` `   `
     `  |ii,iiiiiii;;;;;;::: ::| `    ,
      ,|iiii;iiii;;;;:;_ _: :|        `        `        `,
 `    |iiiiiii;;;;;;((,,,)::.:|         ` ,
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桜の樹の下には、死体が埋まっている――――――
そういう話を耳にしたことがある。
 
         何故って、
          桜の花があんなにも見事に咲くなんて
           信じられないことじゃないか
 
その男は言ったものだ。
今、此処でこうしてそれを眺めていると、その気持ちがわかる気がする。
 
花と言うものは恐ろしいものなのだ。
何か厭なものなのだ。
爛漫と咲き乱れている桜の花は、人の心を惑わすかのような艶然な美しさなのだ。
まるで、演奏がかっちり、歯車のようにかみ合い、幻覚を伴って心をかき乱すように。
人の心を打たずにはおかない、不思議な、生き生きとした、美しさなのだ。
 
川面を撫でる風に乗り、花びらが舞う。
木々がざわめく。夜の帳をさらに濃くするかの如くに。
鼻腔に満ちる、桜の妖しい香り。だが、その香りの端に、微かな匂いがした。
嗅ぎなれた匂いが―――――生に満ちた、血の匂いが―――――
 
足元に、つー、っと流れる一筋の紅い川。
体から流れ出す生の源。
その源へと眼をやれば―――――そこにあるのは、二人の少女の姿であった。
絡み合うように抱き合うその姿は、神々しく、しかしながら禁忌の香りをも放っていた。
抱かれた少女は、首から紅い液体を滴らせながら、
その胸を切なそうに震わせている。その震えも徐々に小さくなっていく―――――
首元に顔をうずめていた少女が振り向く。その赤い瞳は男を見つめ、にっこりと微笑んだ。
 
――――あぁ、桜の樹の下には、屍体が埋まっている―――――
 
男は吼えた。樹々の間を走る咆哮とともに、その姿は蒼き狼へと変化していった。
 

134 名前:箕輪祥子(M):2003/04/16(水) 19:33

ガロンvs箕輪祥子
>>133

これからメインディッシュに取り掛かろうと思っていたのに、何て無粋なんだろう。
折角こんなに綺麗な夜だというのに、騒音がそれを汚していく。

「お前、五月蝿いよ」

ケダモノ風情が私の邪魔をするなんて、許せる事ではない。
恩寵を受け、刻印を授かり、夜族の一員となったこの私に、ケダモノ風情が立ちはだかるなど。
久方ぶりの処女の血肉を味わおうとしていた私の邪魔をすることなど。

「邪魔だと、言ってるの。私は」

捕獲した娘を置き去りにして、ケダモノの方へと向き直ると、
両腕の袖を捲くり上げ、制服のボタンを外す。
露わになった胸と、その下にある支配者の刻印。
同じモノが、両の手首にも印されている。

その刻印が私の意を受けてぎちり、と音を立てて開き・・・

両腕と腹部に、巨大な顎が顕現した。

135 名前:ガロン ◆VTGALON.As:2003/04/16(水) 20:25

ガロンvs箕輪祥子
 
>>134
 
少女がゆらりと立ち上がる。
芍薬の花の如きその立ち姿は、それだけで一枚の絵の如く美しかった。
 
紅い瞳で男を睨む少女の手が、胸のボタンを一つ一つ外していく。
其処にあったのは、白き肌に描かれた獣の顎の如き刻印。
それはその手首にも描かれていた。
 
ぎちり。
音をあげて口を開いたそれは、鋭い牙を剥き威嚇する。
人狼は笑った。
目の前のこの、神々しいまでに美しく、毒々しいまでに変化した少女を。
 
「無粋なのは百も承知している。今宵は綺麗な夜だ。
 だが――――綺麗な夜に狂うのは――――止したがいい。桜の下の屍体がまた一つ、増えるから」
 
言うが早いか、疾風の如く駆けた一狼は、右の鍵爪を逆袈裟に振るい上げた。
 

136 名前:箕輪祥子(M):2003/04/16(水) 20:42

ガロンvs箕輪祥子
>>

「そうだね。屍体が増えると後片付けが面倒だ」

視界の左隅が霞んだかと思うと、青白い輝線を残して鍵爪が疾る。
制服のブラウスが引き裂かれ、花弁と共に虚空に消えた。
とっさに飛び退いたものの、完全にはかわし切れなかったらしい。
まったくもって―――不愉快だ。

「痛いな。お前、女性に対する礼儀がなってないみたいね」

ケダモノにそれを望むのは無理なのかも知れないけれど。
躾を怠っては碌な結果にはならないから。

「教えてあげる。その身をもって」

その間に悠然と立ち尽くしたまま、こちらも左腕を『伸ばす』。
その先の顎が、先ほど無礼を働いた右腕を喰らわんと襲い掛かった。

137 名前:ガロン ◆VTGALON.As:2003/04/16(水) 20:58

ガロンvs箕輪祥子
 
>>137
 
「レディに対する礼儀は習ったが、生憎と化け物に対する礼儀は学んでいない」
 
女王然と立つ少女の左腕が蛇の如くに伸びてくる中、
人狼は少女に返答する。
蛇の顎が身に触れんとする刹那、半身を捻り、やり過ごす。
避けきったはずの人狼の胸に、刻み込まれる一条の紅い筋。
 
鎌鼬か、はたまた牙が掠ったか。
いずれにせよ、相手の力量は己に勝るとも劣らぬ。
ならば、道は一つ。攻めるのみ。
 
大地を蹴った人狼は、青白い気を纏って宙を飛ぶ。
一個の砲弾と化したそれは、舞う花びらの中を突進した。
 

138 名前:箕輪祥子(M):2003/04/16(水) 21:07

ガロンvs箕輪祥子
>>137

「その言葉遣いが、なってないって言っている」

舞い踊る花弁を薙ぎ払い、冴え渡る月光を切り裂いて、
流星と化した魔狼が一直線に突き刺さる。

――――轟。

脇腹を深く抉られた。
この程度じゃ死なないと分かっていても、不愉快なものは不愉快なのだ。
決めた。殺す。

背後の気配は、いまだ着地には至っていないようだ。
加速した思考を纏め上げ、分析した結果を元に、慎重に、素早く右腕を伸ばす。

ケダモノの、後脚を狙って。

139 名前:ガロン ◆VTGALON.As:2003/04/16(水) 21:27

ガロンvs箕輪祥子
 
>>138
 
肩口にしっかりと残る感触が、少女にダメージを与えたのを教えた。
吸血鬼、もしくはその眷属ならば、まだ十分に継戦能力はある。
間髪いれずニ撃目を叩き込もうとしたその瞬間、右足に激痛が走った。
 
着地したその瞬間の隙。そこを突き、あの顎が肉を食いちぎったのであった。
疾風の如き疾さと、正確無比な一撃が彼の真骨頂である。
その一翼を、一時的にとはいえ、毟り取られた。
 
人狼はヒトの何倍もの回復能力があるとはいえ、
吸血鬼と比すれば、微々たる物である。
動きをとれるようになるまで、早くても5分はかかろう。
それまで、なんとか時間を稼がなければ――――
 
「ならば、貴様がレクチャーでもしてくれるというのか?
 ありがたくて涙が出る――――」
 
皮肉交じりに言い返すと、腰から棒を取り出す。
ヌンチャク――――既に何百、何千の夜の住人の血を吸い、
一種の概念武装にまでなった、彼の相棒。
左手を彼女に向けて差し出すと、挑発するように招いた。
 
「さぁ、さっさとレクチャーを開始してくれんかね、Queen of the Damned?」
 

140 名前:箕輪祥子(M):2003/04/16(水) 21:41

ガロンvs箕輪祥子
>>139

噛み千切った肉片を右腕の顎が咀嚼する。
・・・不味い。やっぱり、処女の血肉じゃないと。

「『レクチャーをお願いします』、でしょう?」

本当に躾のなっていない奴だ。どうしようもないな。
しかも武器まで持ち出して・・・・・・最悪。

「まずは『お座り』から覚えようか。・・・えい」

戯言をつむぎながら、再度右腕を伸ばす。
鞭の様に―――いや、蛇の様に曲がりくねりながら、
相手の背後に回りこんで膝裏に忍び寄る。

「そう、跪いて許しを乞うように」

141 名前:ガロン ◆VTGALON.As:2003/04/16(水) 21:56

ガロンvs箕輪祥子
 
>>140
 
口では軽口を叩いているが、全身から漂わせる殺気は隠せない。
その能力は凄まじいものだ。だが、その圧倒的な力に安心しきっている。
戦闘のプロでないのが救い、か。
 
背後から忍び寄る殺気。
舞踏をするかのように回ると、顎を叩き落す。
動きが遅くなった分、動きにイメージとの誤差が生じる。
足をかすめた牙が新たな傷を生む。
だが、この程度ならば問題ない。
 
「跪く?生憎、ドゲザなどという風習には無縁でね。今回はパスさせていただくよ」
 
背後を取られぬよう、桜の樹を背後にしながら、再び間合いを取り、少女と対峙する。
鬼が飽きるのが先か、それとも傷が癒えるのが先か。
内心、冷や汗を流しながらも、人狼はポーカーフェイスを崩さない。
 

142 名前:箕輪祥子(M):2003/04/16(水) 22:06

ガロンvs箕輪祥子
>>141

「何て生意気な奴。教育する価値も無いね」

もっとも、そんな面倒な事、最初からする気は無かったけど。
何か企んでる様だけど、こっちが圧倒的有利なのは変わらない。
さっさと捻り潰して終わりにしよう。

右腕を伸ばす――― 一直線に。
左腕を伸ばす――― 人狼の背後に立つ桜の木を打ち砕くように。
別々の意思を持つかのように暴れる両腕を制御しながら、一足飛びに間合いを詰め。

蹴り飛ばす。

「試してみようか。何回死んだらマシになるのか」

逃がさないよ。

143 名前:ガロン ◆VTGALON.As:2003/04/16(水) 22:31

ガロンvs箕輪祥子
 
>>142
 
一直線に伸び来る右の顎。
半身を捻ってやり過ごす。
桜を打ち砕き、背後から迫り来る左の顎。
飛び退りつつ、ヌンチャクで打ち払う。
 
両腕の猛攻を防ぐのに気をとられ過ぎた。
背後から急速に迫る殺気に気づいたときには、
背骨も折れよとばかりに繰り出された蹴りをまともに食らっていた。
 
鞠の如く大地を弾む躯は桜の大樹に激突し、ようやくその運動を止める。
口から溢れる血。今の攻撃で、いくつかの内臓は破裂寸前になっているだろう。
肋骨も何本か折れたか、罅がいったはずだ。
足のほうは7割がた回復している。ベットは最悪。
だが、此処は勝負をかけるしかない。
 
「地獄なら何度も見てきた。おかげで獄卒とも仲良くなってな、おちおち死んでもいられん」
 
口に残った血を吐き出しつつ、ゆっくりと立ち上がる。
そして、天に向かって咆哮した。
咆哮と共に、影法師の如き人狼の姿が幾つも現れる。
疾風を伴い、影が動いた。
鋭い顎を剥き出し飛び掛る影。
烈風の如き蹴りを見舞う影。
鉤爪を振るい引き裂かんとする影。
暴風の如き逆襲が、少女に見舞われた。
 

144 名前:箕輪祥子(M):2003/04/16(水) 23:03

ガロンvs箕輪祥子
>>143

え・・・・・・あ・・・・・・?

目の前で分裂する獣人。襲い掛かる無数の牙と爪。
重力に逆らって舞い上がる花弁を巻き込んで、蒼銀の旋風が紅に染まる。

「ぎぃぃぃぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!」

絶叫。
痛い、痛い、痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイイタイ・・・。

何故!? なぜ私がこんな目に遭わなきゃならない!?

「―――――――――」

瞳に昏い炎を宿らせて、私はそいつを睨み据える。
許さない。絶対に許してなるものか。

「殺すわ」

一言。ただそれだけで足りる。
もう、言葉は要らない。全力で叩き潰す。一片の肉片も残さず、喰らい尽くしてやる。

猛る人狼と同じように、私もまた颶風へと姿を変える。
両腕の、腹部の、そして、頭部にある本来のものの、全ての口を以って、相手に喰らい着く。

引き延ばされた時間の中、私は確かに自分の高笑いを聴いた。

145 名前:ガロン ◆VTGALON.As:2003/04/16(水) 23:28

ガロンvs箕輪祥子
 
>>144
 
人狼の幻影の群れは、少女の肉を抉り、切り刻んでいく。
血風舞う中、それでも少女は生きていた。
瞳に昏い炎が宿る。
そしてただ一言告げた。殺す、と。
 
暴力の嵐が、影を一つ、また一つ食いちぎっていく。
全ての顎が、目前の敵を打ち砕こうと、喰らい着いていく。
二の腕の肉を抉りとる。肩の肉を引きちぎる。胸を牙が掠める。
腿に喰らいつき、振り回す。
 
暴風が収まったとき、そこに立っているのは出来損ないのトルソの如き人狼であった。
立っているのがやっと、という風情にもかかわらず、
その眼には凛とした光があった。
 
「俺を殺すには足りんな――――あの世で獄卒にレクチャーされて来るがいい―――
 深き森の奥駆ける狼の王よ・・・・・・赤き炎となりて・・・・・・我が敵を討て!!ドラゴンキャノン!!」 
  
血まみれの右腕を掲げ、人狼は朗々と契約の呪を唱える。
その声と共に、大気が鳴動した。人狼の背後から現れる炎狼。
神世、世界を駆けた精霊達の王。
それは幾条もの炎の矢に姿を変えると、少女を焼きつくすべく飛翔した。
 

146 名前:箕輪祥子(M):2003/04/16(水) 23:39

ガロンvs箕輪祥子
>>145

視界が、紅一色染まった。
黒も、紺も、蒼も、銀も、白も、全て消えた。

そう感じる心も消えた。
そう感じる魂も消えた。
そう感じる身体も消えた。

全てを焼き尽くす浄化の炎。

残ったものは一握りの灰。
それだけ残して、少女が消えた。

147 名前:ガロン ◆VTGALON.As:2003/04/16(水) 23:56

ガロンvs箕輪祥子
 
>>146
 
一握りの灰。それが、少女が存在したことを証明する唯一の証だった。
それも、風に乗って大気へと消えていく。
人狼は糸の切れた操り人形の如く、桜の根元に倒れた。
その姿は、蒼ざめた青年の姿へと戻っている。
そのまま、彼は桜を見上げた。
 
あぁ――――桜の樹の下には屍体が埋まっている――――
 
一体、何処から浮かんできた空想なのか、さっぱりわからぬ。
だが、少なくとも今は、信じていいことなのやもしれぬ。
ヒトを狂わす、この妖幻の花の満開の下ならば。
 
カーテン・フォール
閉  幕。
 

148 名前:箕輪祥子(M):2003/04/17(木) 00:11

ガロンvs箕輪祥子闘争まとめ

>133>134>135>136>137>138>139>140>141>142>143>144>145>146>147


  久方の  光のどけき  春の日に

            しづ心なく  花の散るらむ

                        ―――紀友則
























おまけ。

>>137 >>138

がぶり。

脂肪と筋肉、双方のバランスの取れた理想的な後脚に、私は齧り付く。

『お肉ンマァァァァァァァァァァイ!!』


・・・・・・ゴメン、嘘。

149 名前:麻紀絵(M):2003/04/17(木) 01:19

麻紀絵(M)vsアンドリュー・深津彦・星野(M) 「妖獣都市 狂血鬼」
 
>>108
 
 地鳴りが襲って来る。
 それもだが、非人間からより人ならぬ姿への変貌も、さしてこの女を驚かせなかったらしい。
 
「“こちら側”にしては、中々素敵なスタイルよ、あなた」
 
 美的感覚はどうなっているのか、とんでもない感想を口にしてから、麻紀絵は床を蹴った。
 麗人と妖獣が重なる――かに見え、そうはならなかった。
 黒衣は宙を泳いでいる。如何なる挙措と等しく、華麗に。
 天へと妖女を押し上げたのは迫る魔の暴風に非ず、軽いその一蹴りであった。
 慣性の法則を鼻も引っ掛けず、麻紀絵は空中で方向を転じた。妖魔の頭上を飛び去って行く。
 風には、明らかな苦悶の吐息が混じっていた。
 
 虚空に咲いた麗華――その散る花弁の色もまた鮮やかな朱であるのは、必然でもあったろうか。
 麻紀絵は血を噴いていた。部位は断定出来ない。全身からである。
 どの疵が一番先に致命傷足り得るか、競りでも行われているかのようだ。
 加虐趣味のない男、いや女ですらも生唾を飲み込まずにはいられない爛れた悩ましさ。
 
 身を捻り、最前まで敵のいた辺りに着地の姿勢を取りつつ、躯が次の行動を選ぼうとする。
 彼我の戦力差、負傷度を瞬時に冷徹な天秤へかける戦士ならではの精神の働きは、そう意識した
時、非情な回答を弾き出した。
 
 次の敵の攻撃を避ける事、受ける事、捌く事、全て不可能、と。

150 名前:アンドリュー・深津彦・星野(M):2003/04/17(木) 02:11

麻紀絵(M)vsアンドリュー・深津彦・星野(M) 「妖獣都市 狂血鬼」
 
>>149

先刻まで麻紀絵が立っていた辺りで、星野はゆっくりと頭を巡らせた。

その巨体は、自らの胸から流れ出る血と麻紀絵の返り血で赤く染まっている。
まるで麻紀絵に見せ付けるように、星野の異様に長い舌が総身をぬらす血を
舐めとっていく。

そのおぞましい光景にも気死せず自分を睨み返す麻紀絵の眼光から、星野は
すぐさま読み取った。

その目に生まれた峻烈なる感情を。

すなわち、死の覚悟を。

ばさり、と星野の背の羽が広げられる。

闇夜を背景に上昇していくその姿は、まさしく地獄の悪鬼そのものだ。

麻紀絵のほぼ手前の空中で巨体が静止する、と見えた瞬間には、星野はすでに
巨体に似合わぬ早さで急降下していた。

その鉤爪が、死神の鎌となって麻紀絵に振り下ろされる。


一方――。

コンクリートの床に打ち捨てられた小箱が、カタカタと震動を始めていた。
もし誰かが小箱の中を検めれば、息を飲むに違いない。

小箱の中で、ゴルゴダストーンは十字の斑点からほの白い光を放ち、独りでに
その身を震わせているのだ。

それはまるで、ゴルゴダの丘で流されたキリストの血を封じこめたこの聖石が
何者かと意思の疎通をしているかのようであった。

一体誰と?

151 名前:麻紀絵(M):2003/04/17(木) 02:47

麻紀絵(M)vsアンドリュー・深津彦・星野(M) 「妖獣都市 狂血鬼」
 
>>150
 
 ――誰が?
 
 上空から来襲する“死”すら忘れ、麻紀絵は殆ど呆然としていた。
 
 これは――喋っているのは誰? この途方も無いパワーの持ち主は?
 言葉や気配に因らぬ、ただ超絶の“意思”同士の交流は何なの?
 
 その時、暖かさが下腹部から湧き上がって来ているのに、麻紀絵は漸く気付いた。
 自然と笑みがこぼれる。
 何もかも覚ったのだ。
 
 腹腔が熱い。そこから巡る力に、細胞全てが燃え上がる。
 それは形容し難い波動を付随させていた。
 光の傲慢さは無く、闇の卑屈さも無く。
 “こちら側”にも“あちら側”にも、この不可思議の気を云い表す言葉は存在しない。
 それは、どちらをも肯定する力だから。
 
 光と闇。相反するだけだった因子が溶け合った、二つの世界の可能性。
 片手でいとおしげに、麻紀絵は腹部を擦った。体内に宿る命を確かに感じる。
 麻紀絵の子。彼女と彼女が愛する男との子が、その力を麻紀絵に貸してくれているのだ。
 
「ありがとう。ママを応援してくれて」
 
 語りかけ、麻紀絵は天を、今彼女たちに邪悪なる一撃をもたらさんとする怪魔を見据えた。
 躯中の疵は色付きで赤信号を発していたが、もう気にならない。
 全ての母の如き凛然たる笑顔のまま、麻紀絵は再び跳んだ。
 
 赤い矢が放たれた。
 麻紀絵の貫手だ。
 
「さようなら。“こちら”からも“あちら”からも、ね」
 
 その猛打は悪魔のもう片方の生命に向け、一直線にたばしった。

152 名前:アンドリュー・深津彦・星野(M):2003/04/17(木) 03:42

麻紀絵(M)vsアンドリュー・深津彦・星野(M) 「妖獣都市 狂血鬼」
 
>>151

どぼっ、という濁った音が響く。

鉤爪を振り上げたまま、星野はそろそろと視線を下に向けた。

殺戮への歓喜から、自らの胸の空洞が二つになったのを知った驚愕への表情の
移行は、ユーモラスでさえあった。

バランスを失った巨体が、一直線にコンクリートへ叩きつけられる。

「何故……何故ダ……?」

急速に光を失っていく赤い目が、ディナージャケットの残骸の中の小箱を捉えた。

ずさり、ずさり。

ゴルゴダストーンの収められた小箱へと、瀕死の巨体が這いずっていく。

「ごるごだすとーんヨ、助ケテクレ、私ニ……あだむトいぶノ正当ナ後継者デアル
 だーくタル私二、力ヲ……」

だが、ゴルゴダストーンは、先程までのように光を放つことも身を振るわせる
ことも無く、星野の手の中で無生物らしく転がっているだけだ。

「何故ダ……何故私デナク、裏切リ者ヲ選ンダノダ、オ前ヲ所有スベキハ、
 真人類タル我ラデハナイノカ、オ前ガ選ブノハ我々デハナイノカ……」

哀れっぽく問いかけるその姿は、もはや彼らの称する地球の真の支配者でも、
人知を超えた妖魔でもなく、自らのアイデンティティを破壊された、ただの惨めな
負け犬に過ぎなかった。

白んできた東の空から差し込んできた朝日が、呪われた吸血鬼の体を浄化させて
いく。

崩壊の瞬間、星野は一瞬だけ麻紀絵の方を向いた。

「オ前ハ一体、何者ナンダ……?」

それが、星野の最後の言葉だった。


(アンドリュー・深津彦・星野(M) 死亡)

153 名前:V.A:2003/04/17(木) 23:00

V.A vs アセルス(半妖)『Colored me blood violette』
>>132

アセルスには、もはや立つ力すら残っていなかったらしい。
必死に立ち上がろうとするが、それはあたかも芋虫のようで・・・滑稽でそして哀れだった。

「貴方の精神力には敬意を払うわ。これだけ妖魔の力に目覚めながらも自我を保っているのだから」

見下ろすようにしながら、V.Aは言う。
だが、言葉とは裏腹にその目からは何の感情も読みとれなかった。
喜びも、怒りも、哀しみも、何もない。

当然だ。
ギロチンは、何があっても感情を表す事はないのだから。

アセルスの胸に突き立った銀の長剣を握り、一捻りする。
細身だが鋭いその刃は大した手応えを伝える事もなく、アセルスの心臓を抉り抜いた。

「さよなら、永遠に」

消え去っていくアセルスを一瞥し、踵を返す。
その瞳に深く拭いようもない憂いが一瞬よぎったのは、月光が見せた幻だったろうか?

154 名前:名無し客:2003/04/17(木) 23:10

V.A VS アセルス(半妖) 『Colored me blood violette』
レス番纏め
 
>109 >110 >111 >114 >115 >116 >117 >118 >119 >120 >121
>122 >123 >124 >125 >126 >127 >128 >129 >130 >131 >132 >153
 
 
後には、ただ一振りの剣が残るのみ・・・

155 名前:牧 豹介:2003/04/18(金) 00:10

ここ最近、急速に増えてゆく「ヒトならざる者」の事件・・・特に吸血鬼が起こすような事件。
今までにもそれなりに見てはいるけど、目に余るように増えてきてる・・・。
正直依頼でもあまり好きじゃないけど、身の回りの人達にまで累が及ぶようなら、戦わないといけませんね・・・。

―――ああ、自己紹介が遅れましたね。闘争中失礼しますが・・・
僕は牧 豹介。日本人形店「夢幻」の店長をやっています。
また――――副業として、祖父から習った仙術「狗法」で
モノノケやそれに属するものを狩る「拝み屋」をやってるんですが・・・
正直、副業のほうが有名なんじゃないかって言われるのはイタいですね。
(実際儲けも・・・そっちのほうが多かったり。)

僕の戦闘スタイルですが・・・狗法を織り交ぜた格闘が主ですね。
狗法というのは……

<狗法>
修験道のひとつ。
人が修行によって、天狗の力を身につける法。天狗になる法、とも呼ばれる。
厳しい修行によって様々な能力が開眼するが、身につけられる力は本人の資質にもよる。
身につけられる天狗の力は、
「風刃」「剛力」「飛翔」「霊波」「読心」
「水歩」「隠行」「霊視」「幻視」・・・・・・などなど。

ちなみに僕がまともに扱えるのは「風刃」「剛力」「飛翔」の三つです。
「風刃」は腕に霊気の風を絡みつかせて、それで相手を斬る術。
「剛力」は読んで字の如く、身体能力・・・特に力を一気に人間離れした領域まで押し上げる術。
「飛翔」はこれも名前通り、とても人の身では不可能な大跳躍を行う術。
あと、ろくに使えるわけでもないけど・・・
「霊波」は手のひらから霊気を放出して、それで相手を癒す術。憑き物落としにも使ったりします。
ただ・・・僕の場合は普通に使って子供の擦り傷を治すので手一杯ですね。
無理をすれば、もっといけますが。

闘争は・・・基本的に僕としてはマターリと行かせてもらいたいですね。
ちょっとリアルタイムはキツいので。

↓テンプレートです。

出典 : 夢幻街
名前 : 牧 豹介(まき・ひょうすけ)
年齢 : 25歳・・・ぐらいだったはずですが。
性別 : 男ですよ。けっこう女顔呼ばわりされるのが困りモノですが・・・
職業 : 日本人形店『夢幻』店長/第十七代目人形師『夢幻』/拝み屋『夢幻』
趣味 : 天気のいい日に近所の子供達と公園で遊ぶこと
恋人の有無 : 今は…いませんって答えておきます。
好きな異性のタイプ : 元気で明るくって、芯の強い女性でしょうか?
好きな食べ物 : 好き嫌いは……特にないですね。
最近気になること : 本業(人形店)より副業(拝み屋)のほうが需要が多くなって来てる事。ちょっとこれは・・・イタいですね(笑)
一番苦手なもの : お酒ですね。僕、極度の下戸なもので・・・
得意な技 : 狗法仙術の一つ「風刃」ですね。
一番の決めゼリフ : 「う、持病の癪が・・・」「地獄に・・・・・・・・・堕ちろ!!」
将来の夢 : このまま、平穏に日々を過ごしてゆくこと
ここの住人として一言 : 正直斬ったはったはあまり好きじゃないんですが・・・身の回りに累を及ぼす様なら、僕は全力でそれを払います。
ここの仲間たちに一言 : とりあえず・・・よろしくお願いします。
ここの名無しに一言 : 人形のご用命は日本人形店『夢幻』まで・・・宣伝です。

経験が浅いので闘争の際には少々ブザマなところもあるかもしれませんが・・・宜しくお願いします。

156 名前:名無し客:2003/04/18(金) 00:47

皆さん、原典とその媒体を教えて下さい。

157 名前:牧 豹介:2003/04/18(金) 01:05

>>156
さっそくレスがついてたので、答えさせてもらいましょうか。
僕の原典は>>155にも書いたとおりです。媒体はいわゆるマンガですね。
「夢幻街」(作・水沢勇介、ガンガンコミックス、全7巻)

・・・>>156さん、これでよかったですか?

158 名前:麻紀絵(M):2003/04/18(金) 01:07

麻紀絵(M)vsアンドリュー・深津彦・星野(M) 「妖獣都市 狂血鬼」
 
>>152
 
「――よ」
 
 灰へ還っていく相手への返答は、その灰を吹き散らす風に紛れ、妖物の耳に届いたかどうか。
 
 屋上に降り立った麻紀絵は、東方を眩しげに見遣った。
 夜が終わったのだ。
 一息つくと、灰の中から宝石を拾い上げた。静かに眺める双眸が、東雲を見る時より細まる。
 懐に収める手付きが妙に丁寧だったのは、麻紀絵なりの礼のつもりだったのかもしれない。
 彼女の息子の覚醒を促した、二千年前の聖者への。
 
 歩き出す。
 足取りに乱れは無い。誰を、どんな存在を相手にしようとも、彼女は敵を討ち果たすだろう。
 先程の答え通りの、自信に充ちた足取りだ。
 
 
 麻紀絵は、母親なのだから。
 

159 名前:ジェイムズ・グレイシールド伯爵(M):2003/04/18(金) 02:14

三十坪ほどの石造りの部屋に、一人の男が佇んでいた。

レースの袖飾りが付いた白いドレス・シャツ、深いブルーの瞳、理知的で整った
顔立ち、豊かな栗色の髪、上品な口髭……どれをとっても、非の打ち所が無い
アングロ・サクソンの貴族だ。

だが、そんなまともな外見とは裏腹に、彼が先程から凝視している物は
尋常ではなかった。

その青い瞳はただひたすらに、部屋の中央にある、ねっとりとした水面の深紅の池
――血の池と、そこに浮かぶ白大理石の棺に注がれているのだ。

突然、バタバタという足音と荒荒しくドアが開かれる音が部屋の静寂を破る。

「何事だ、騒々しい」

不興げに自分を見つめる主人の視線すら気づかぬほど狼狽した執事が、早口で
まくしたてる。

「日本支部より緊急連絡です! ダーク関東エリア本部にて、ゴルゴダストーンが
 “闇ガード”に奪われました!! 
 関東エリア責任者、アンドリュー・深津彦・星野は死亡。
 以下がその記録です」

 >76>78>80>82>85>86>88>90>92>93>95>98>100>101>103>105>106>108>149
 >150>151>152>158」

自分からひったくった紙面を読み進めるにつれて、男の顔が怒りにひき歪んでいく
のを見た執事の顔が、こちらは恐怖でひき歪んでいく。

「全世界の同族に連絡をとれ、全ての<長老>を召集しろ!」

部屋中に響き渡る怒声に叩き出されるかのように、執事は入ってきたのと
同じくらいの慌しさで部屋を飛び出した。

一人になった男は、再び血の池に浮かぶ棺の方を向き、恭しく一礼した。

「今しばらくお待ちくださいませ、<血父(ブラッドファーザー)>。
 必ずや、このジェイムズ・グレイシールドが愚か者の手からゴルゴダストーンを
 奪還し、貴方様をその眠りから覚ましてみせましょうぞ」

160 名前:ファーザー・ウェットワーカー:2003/04/19(土) 01:58

岩鬼将造vsファーザー・ウェットワーカー


階下で爆音が響き渡った。
続いて、断続的に聞こえてくる銃声と、それを彩る悲鳴と絶叫と罵声と怒声。

「まっタク、何をやってイルのだカ。親分サン頼りにならないネ」

ブツブツと零しつつ、その男は階段を降り、そこから漂ってくる血の香りに酔いしれる。
死んでいるのは男の言う『親分サン』と、その手下―――男に言わせるのなら『自分に忠実な弟子』――
―の、合わせて16名。

その状況を作り出したのは―――ボロボロの服にその身を包んだ、下駄履きの男。
血まみれのまま嗤うそいつに、階段を下りてきた僧服の白人男性―――ファーザー・ウェットワーカーは
話しかけた。

「こんナ夜更けに何ノヨウカ。ヨイ子はお休みノ時間ダロウ?」

胸に下げたアンク十字を片手で弄り回しつつ、神父形の男は詰問を続ける。

「ワタシの睡眠のジャマをスルと、ごぉっどの罰が当たル。ソウソウにたち去ルがヨイ」

161 名前:極道兵器岩鬼将造:2003/04/19(土) 02:33

「ワッハハハハハハハハハハ!どうじゃ、このワシのシマウチでマフィアと取り引きなんぞしよるとこーいう目にあうんじゃい!」

「ひぃ ふぅ みぃ …… 沢山。」

とりあえず死体の数なんぞ数えとると、上の階から足音が。
ほぅ、まだ生き残りがおったか。  

ふっふっふ。

エモノは一匹たりとも逃がさんのがワシの信条じゃ。こいつもさっさと死体に変えてやるとするかのう。
ワシは左手のマシンガンの弾倉を交換しつつそいつが降りてくるのを待ち構えた。

む!?

この足取り、隙が無いのう。ナカナカのツワモンと見た。
ええでええで。雑魚ばっかりで喰いたりなかったところじゃ。
もう一丁暴れさせてくれるとは気がきくのう。

「ククク……。」

思わず笑いが込み上げてきたわい。やっぱ喧嘩ってのはこうでなきゃいかんのう。

お、来たか……って、なんじゃこいつは?
これはアーメンとか言って十字を切る神父様ではないか。

「こんナ夜更けに何ノヨウカ。ヨイ子はお休みノ時間ダロウ?」

ほうほう、神父サマだけあって説教が得意なようじゃ。
もうちょっと能書きにつきあってやるかのう。

「ワタシの睡眠のジャマをスルと、ごぉっどの罰が当たル。ソウソウにたち去ルがヨイネ」

立ち去ったら後ろから殺らす気じゃろうに、殺気が見え見えじゃ。
ワシはハラマキから煙草をとりだして一服、ふーっと一息したのち一喝!

「 な ん で す か ぁ !? 英 語 は わ っ か ぁ り ま せ ぇ ー ん ! 

なお、ワタクシは先祖代々南無阿弥陀仏ですので、イエス様など信じてはおりまっせーん!」

宣戦布告じゃ。

162 名前:ファーザー・ウェットワーカー:2003/04/19(土) 02:51

岩鬼将造vsファーザー・ウェットワーカー
>>161


どうしようもナイ男ダナ。よっぽど死にたいノカ。
それにごぉっど馬鹿にするよくないネ。森羅万象、これ全てごぉっどの導キ。

「ワタシ、ちゃんと日本語でしゃべっッテル。お前おつむの病院行った方がヨイナ」

我が弟子たちも相当おつむが悪かったガ、この男、輪を掛けテ頭がワルイ。
きちんと教育を施すノモ、師たルワタシの役目ダネ。

「お前のセイで、ワタシ仕送りに必要な金ヅルをなくしてしまッタ。このままだとラドビアにイル家族たちが
 飢えテしまうノダ。ソレトモかわりにお前が払ってクレるノカ?」

瞳に力を入れて『セーシンセーイ』説得スル。
ワタシの瞳、カリスマにあふれテル。お布施したくなってきたダロウ?

163 名前:極道兵器岩鬼将造:2003/04/19(土) 03:30

岩鬼将造vsファーザー・ウェットワーカー

>>162

「ワタシ、ちゃんと日本語でしゃべっッテル。お前おつむの病院行った方がヨイナ」

んなこたぁわかっとるわい、こう見えてもワシは「ばいりんがる」じゃけえのう。
この神父、思ったより気が短いようじゃわい。
何、おつむの病院だとぅ!?

 許 さ ん 。

フツフツと怒りが沸いてきた。コイツは殺す。絶対に殺す。ブチ殺してマリアナ海溝に沈めたる。

なおも続く神父の口上。

「お前のセイで、ワタシ仕送りに必要な金ヅルをなくしてしまッタ。このままだとラドビアにイル家族たちが
 飢えテしまうノダ。ソレトモかわりにお前が払ってクレるノカ?」

もうんな能書きはどうでもええ、さっさと蜂の……巣に……

何じゃこいつのガンつけは!?
う〜、いかん、頭の中にケッタクソ悪いヤツの声が響いてきよる。この感覚、まるでシャブじゃ。
コラ。喧嘩の真っ最中になにやっとるんじゃワシ、しっかりせんかい!

「そうだ……神に、お布施をしなくては……。」

ふらふらとヤツのほうへと歩むワシ。ええい、いかん、極道がガンつけに負けてどうする!しっかりせえ!

口の中を噛み切って無理矢理我を取り戻す。
上手い具合に神父はまだワシが術中にあると思いこんどるようじゃ。

「おお、主よ!我が供物を受け取りたまえ〜!」

DA!DAM!

賽銭は鉛弾じゃ、遠慮なく受け取ってくれや。
狙いはもちろんその真っ赤な目ン玉じゃ。

164 名前:ファーザー・ウェットワーカー:2003/04/19(土) 03:44

岩鬼将造vsファーザー・ウェットワーカー
>>163


それでヨイのダ。あんまり持ってるヨウには見えないガ、ナケナシでもオカネはオカネだからナ。
輝ク金子に罪はナイ。私によこセバ、その汚れタ魂もピッカピカ。


(SE:BANNNNNNNG!!!)


「アウチ!!」

いきなり何するカ!!

「目ガ、目ガァァァァッ!!!?」

激しくイタイ。謝罪と賠償を要求スル!!
師に逆らう弟子、皆殺しネ!!

「いきなり撃つなんテ何て卑怯なヤツダ。おかげで視力が下がってしまッタ」

きちんと再生スルにハ、それなりのエネルギーがイル。
お前で補給さセテ貰うゾ!!

トォォォゥゥゥッ!!

飛びついテ首筋に齧り付ク。この際性別も年齢も容姿も関係ナイ。
我ガ血肉となルがヨイ!!

165 名前:極道兵器岩鬼将造:2003/04/19(土) 04:15

岩鬼将造vsファーザー・ウェットワーカー

>>164

ダーッハッハッハ!見事に引っ掛かりおったな!
ほれ、喚け喚け。もっといー声で鳴かんかい!

ン?

うぉ、いきなり飛びついてきよった!?
なんじゃこいつは、ええい、気色悪い。離れんかい!
ワシャアそっちの趣味はないんじゃ!!
あっちのほうじゃ神父サマでもそーいったもんなんかい?
いかんぞ、こんなけしからん趣味を日本に輸入させるわけにはいかん。

おっと。

そんな場合ではない。こいつ、首筋に噛み付く気じゃ。
うわ、うわ、うわ、なんじゃこの牙は!?
それにこのバカ力。こやつはホントに人間か?

左の頸動脈めがけてガブリと来た所に左手を差し込んで受け止める。
二の腕に深々と食い込む神父の牙。

どや?旨いか?特製の防弾加工済みの義手じゃ。
こっちは痛くも痒くもないで--------

「へへっ、化けモンが。」

義手のロックを解除

「ワシを誰やと思うとる」

当惑した化けモン神父に義手の外身をくわえさせたまま、一気に引き抜く。
中から現れるギラリと黒光りを放つマシンガン。その銃口をヤツの胸板に押し当て……

「 極 道 兵 器 や ど 〜 〜 〜 ! ! 」

けたたましい銃声が夜のオフィスに谺した---------

166 名前:ファーザー・ウェットワーカー:2003/04/19(土) 04:38

岩鬼将造vsファーザー・ウェットワーカー
>>165


「ほんはほほくふぁへれらりふるひひゃぁっ!?(訳:こんなモノ食わせて何するキカッ!?)」

コイツ、固くテ冷たくテ、まったくもっテ美味クナイ。
日本なんて、ゴハンが美味シイとお金が余ッテるの以外取り柄がナイと言うノに、
両方ダメなんて救いようがナイナ。

っテ、血が流レてナイじゃナイカ。コレじゃ吸えナイ。ワタシ、困ルネ。

「ひふぉ、ひふぉふぉほひょほら! (訳:血ヲ、血ヲ寄越すノダ!)」

と言ウカ、コレ外れナイ。ワタシ大ピンチ。
じゃなクテ、その外レタ腕のかわりに見えル銃口は反則ネ!!?

「(ばぎんっ!) ・・・くはッ。お前、本当に我がままナ奴ダナ。大人しくリトアニアの両しぐべっ!!?」

服がボロボロ、胸もなんかスースースル。べりーべりーイタイ。ワタシ、ゲットアングリーネ!?

「ウピルの力を舐めるデないワ!!」

心臓さえ無事ナラ、伝承通り無限に再生スル。
そんナ豆鉄砲、屁デモないネ。
こっちもお返シ。親分サンに貰っッタトカレフで―――


(SE:BoooooooMMMMMMMMMMM!!!!)


「OH! 何てコト!!? 暴発なんテ聞いてナイ!!?」

仕方ないネ。殴るカ。
顔面に二、三発ブチ込んデやれバ、正気に戻ッテごぉっどの導きを受ける様にナル。
コレ、経験談だかラ間違いナイ。

167 名前:ファーザー・ウェットワーカー:2003/04/19(土) 05:05

>>156

闘争の途中だガ、一応質問に答えるナ。
ワタシの原典は『ディープナイト・ランニング 容赦なしっ!』。
作者は友野詳サン。媒体は、ごぉっどと同ジク、カミ。つまり本ダ。
新書版と文庫版が出てル。特に文庫版は章末に解説がついてル上に、新書版より安イ。
今から買うナラ文庫版の方がお得ネ。
デモ、出来れば両方買って欲シイ。ワタシ、ボスニアにイル娘たちのために稼ぐ必要があるノダ。

(眼が、爛々と輝く)

・・・ホラ、買って来たくなっただロウ?

168 名前:ベアトリス(M):2003/04/19(土) 13:24

ここはある、街の広場。ワルプルギスの夜祭で、人外の者達が群集い、そして殺しあう。
 
何時から、どうやってこの祭りが始まったかは分からない。
 
だが、殺しあうにはいい夜だった。少なくとも俺はそう思う。
 

169 名前:片倉優樹:2003/04/19(土) 13:35

〉168 
 
・・・なんでこんなところにいるのかな。 
あたしはちょっとだけそう思う。 
 
浦さんがあたしに、この件は六課に委任する、と言ったから。 
なんていう理由は十分承知しているし、彼の言い分に間違えがあったことは 
なかったから、仕事としては当然こなすべきなのだろう。  
 
フレデリックアシュトンクロフォード、だったかな。彼の本名。  
こんな色の液体を見ると、なんとなく彼を思い出した。 
土地柄のせいもあるのだろう。 
 
 
祭りの会場、ジュースとビールを空のボトルに入れてしゃかしゃかシェイク。 
自分の瞳に見透かしたような色の流体を煽って、仕事のフリを決め込もう。 
日本で大使に扮し、要人に全治三週間の傷を負わせたアヤカシ。  
 
国外逃亡した彼を態々あたしが追うのは今更だけどほかの理由があるとしか 
思えない…

170 名前:ベアトリス(M):2003/04/19(土) 14:10

>>169
俺は工具箱を下げ、町の中央にある噴水の側で今まで遊んでいた貴族、
吸血鬼がどこへいったかを探していた。
 
奴はしぶとい。マシンガンの斉射を受けてもまだ走り回っていた。
 
このワルプルギスの祭りでは人も魔も皆ハイのようだ。
 
それは…、実に素晴らしいと思う。
俺にとっても、いい夜だ。
 
マシンガンに弾を、照明弾を装填し、天使に加護を願う。
この狩りが上手く行きますように、と。
 
そして景気付けに出店にあった、ビールを貰い、金貨を一枚渡して花火を空へと打ち上げる。
 
(場所:中央通噴水前)

171 名前:奥物部サクラ(M):2003/04/19(土) 14:12

>>169
 
「……何でこう面倒に巻き込まれやすいのかしら、わたしって」
 
 夜食くらいは自分で買いに行け。少なくともサクラは常々そう思う。
 わざとらしく溜息を吐いて、その後大きくかぶりを振って、やれやれと呟いてから
公園を横断する。
 冷汗が止まらない。幽霊に発汗機能なんてあるのかどうか、サクラには考えた事も
考えるように勤めたコトも無かったけれど――少なくとも今、気分的には冷汗が背中
を流れ落ちて行くような気分だった。
 
「なーんで旅行来てまで厄介ゴトに巻き込まれなきゃなんないのかしら?」
 
 あたま、痛い。
 視線を左右、序でに上と下にも素早く這わせると、ジャケットのポケットに手を突
っ込んだ。指先で護符の感触を探る。一枚、二枚、三枚……。
 ――最悪じゃない。
 先祖の呪いか悪魔の嫉みか、どっちみち勘弁してほしい物だ。
 もう一度だけ溜息を吐くと、歩調を速めた。
 
「あーもう……! ゼン!? 全部アンタの所為なんだからね……!」
 
 目標は広場の出口。
 視界の端の少女を軽く眺めて、早く出た方が良いわよ、とだけ呟いた。
 

172 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus:2003/04/19(土) 14:15

>>168から>>171まで

気が付いたらそこにいた。
理由はそれくらいで十分だろう。

些事はその辺りの溝にでも捨てて、この夜を心の底から愉しもう。


「ほら、どうしたのよ。元気が無いじゃない?」

広場の中央、噴水の傍まで歩く。
一歩。
服が黒く染まり。
二歩。
それが蠢いて。
三歩。
背中から翼が生えた。

「こんな夜、滅多に無いのよ? それとも、きっかけが必要かしら?」

翳した両手から、次々に紫の光が迸った。
狙いは特につけず。
しいて言うなら―――無粋な人工の光。街燈。

173 名前:マリエル(M) :2003/04/19(土) 14:16

>169

月だけを供に、街の広場を一人歩く。
今日はうるさいテンガは連れてきていない。
たまには一人になりたいことだってあるのだから。

月だけを供に、街の広場を一人歩く。
人間の祭りって言うのは、嫌いじゃない。
噴水の縁に腰掛けて、さっき買ったキャンディを舐めながらぼーっと見る。

広場がなにやら騒がしくなってきた。

「無粋ね。せっかくくつろいでいるのに・・・これだから人間って」

溜息をつきながら、悠然とキャンディを舐める。

(中央広場、噴水縁)

174 名前:オーフェン ◆a4STABbERo:2003/04/19(土) 14:20

>>168 >>172
(……また、変態かよ、おい)

 俺は無能警官もといコギーの奴に、無理矢理に夜の見回りを押し付けられていた。
 それ自体はいつものことで、仕事そのものは楽なはずだった。が、何故かは知ら
ないが、今夜に限り変態が大量に出没してやがった。

 広場に出るまでに、出くわした変態の数は二十人余り……
 夕食を奢らせた程度で引き受けるんじゃなかったと、少し後悔。
 2〜3回食事を奢らせる約束を取り付けるべきだった。

 いいかげん嫌気がさし、広場を適当に見回ったら帰ろうと思っている時に、俺はそ
いつらと会ってしまった。

 物騒な格好をした髭達磨と羽根を生やした変な女。
 考えるまでも無い、変態だ。

(……とりあえず、吹っ飛ばしとくか)

 俺は投げやり気味に魔術の構成を編み、光熱波を二人に放った。

(中央広場)

175 名前:名も無き生霊:2003/04/19(土) 14:22

>>168から>>173
僕は日課となっている、夜の散歩に出かけた。
(ああ、今日も星が綺麗だ……)
いつもの様に星を見る。――広場の真ん中にある噴水の上に、漂いながら。
 
今の僕は誰に見られることも無い。なぜなら、僕は幽霊――正確に言うなら生き霊――だからだ。
ちょっとした事故で体から幽体が抜け易くなって、それから始まった日課だった。
誰にも邪魔されず、好きなだけ星を見る――。今夜もその筈だった。
 

(広場中央、噴水の上) 

176 名前:ベアトリス(M):2003/04/19(土) 14:24

>>172
花火を上げた直後、空を見上げると女がいた。
いい女だった。少しばかり、羽が生えているのが残念だが。
 
こんな夜なんだ、いい気分で愉しもう。
 
「よう、いい祭りだ。愉しもうぜ」
 
工具箱を下において女に声をかけた後、俺は>>174の黒ずくめのガキが放った高熱波に吹き飛ばされた。
2mほど吹っ飛んで噴水に頭から突っ込んで止まる。
 
「てめぇ!何しやがる!」
噴水から立ち上がり、女に手を貸しながら叫ぶ。
 
「水も滴るいい男とは言うが、容赦しねぇぞ!」
俺の顔と名前については…。言うな。
 
(中央広場噴水)

177 名前:奥物部善ノ介(M):2003/04/19(土) 14:26

>>169>>171>>172

「・・・・・・ったく。お前はお使いも満足に出来んのか」

ご先祖様をパシらせておいてブツブツと呟く青年。
手には既に二本のソフトクリームが握られている。
もちろん両方とも自分のものだ。幼稚園児以下の幽霊に食わせるものなど一つもない。

「ん・・・ああ?」

照明が降ってきた。正確にはガラス片が。
とりあえずひょい、と避けておいてソフトクリームを一口。
・・・少々パンチが足りない。もっとも、甘ければ基本的にOKなのではあるが。

「何つーか、物騒だな。さっさと買い物済ませてババアを引き取りにいくか」

他人が何しようが知ったことではない。
奥物部善ノ介。我が道を行く男である。

178 名前:片倉優樹:2003/04/19(土) 14:30

〉172モリガン

 轟音。世間さま一般を騒がせる爆発は破片を飛び散らせながら 
存在を表してる。 
 
それとは、別方向?
視界の影に緑褐色が、崩れ、落下し…体が、反応した。 
1秒のタームに噴水で遊んでいた柔らかい金色の髪をした女の子の 
髪を掴んで全力で、引き絞るように引っ張った。  
 
世間一般の人を照らし上げていた街灯が暗い影を足場。 
女の子は髪を引っ張ったあたしをにらんでる。 
まぁ、仕方ないことだ。感謝されようと思ってやったことじゃないんだから。 
 
「すまなかったね」 
 
日本語で話してから、宙のアヤカシをにらみつける。 
緑なす髪の・・・女性。  
 
「降りてきなさい。こんな事をして、どうしようと言うの」 
 
今しがた、あたしの言葉が通じない可能性があることを学んだのに日本語で 
話し掛けるのはどうだろう、とは思った。

179 名前:オーフェン ◆a4STABbERo:2003/04/19(土) 14:32

>>176
(ちっ、威力を押さえすぎたか)

 どうやらあの程度では、髭達磨の変態を沈黙させることはできなかったようだ。
 この手の変態は、有無を言わせず沈黙させるのが一番の対処だということを、
過去の経験(思い出したくも無いが)により、オーフェンは骨の隋まで理解し
ていた。
 
「黙れ変態! 今日は手前の同類を嫌って程相手にしてんだっ! いいから黙って気絶しろっ!!」 

 寝言をほざく変態に対して怒涛のように言い返し、続けざまに光熱波を連発する。

180 名前:マリエル(M) :2003/04/19(土) 14:32

>>170
不意に広場がぱぁーっと明るくなる。
照明か何か?
・・・ほんっとうに無粋だ。人間って、これだから嫌い。

>>172
かと思ったら、噴水の近くで騒ぎを起こしたのがいる。
蝙蝠の羽を持つ、色気過剰気味の女だ。
訂正・・・人間だけじゃなくて、魔もロクなのいない。

>>174
溜息をつく私の目の前で、また光が炸裂した。
目がチカチカする。
見れば、全身黒ずくめの男が何やらしたらしい。
魔術・・・か。昨今見なくなったけど、まだいたんだ、あんなのが。
まあ、私には関係ない・・・

「あ・・・」

何やら手がすかすかすると思ったら、私は舐めてたキャンディを落としていた。
まだ、舐め始めたばっかりなのに・・・

自分の掌を、爪で浅く切る。
普通なら、そのまま滴り落ちるはずの血がぐにゃり、と蛇のように鎌首をもたげる。
ヒカトの竜血には及ばないけれど、血流操作は私にだって出来る。

「し、ねぇぇぇぇぇぇっ!!」

双頭の蛇の如く、馬鹿女(>>172)と黒男(>>174)目掛けて、血流が奔る。
そう、食べ物の恨みって、怖いことを教えてやる。

(中央広場、噴水縁)

181 名前:奥物部サクラ(M):2003/04/19(土) 14:44

>>172
 
「最悪最悪やっぱり最悪……っ!」
 
 予想通りだった。
 微塵の余地も無い光芒の洗礼が、所構わず周囲の建造物建築物を壊して回る。一発
が目の前の商店ガラスをばしゃんと叩き割り、ついでに奥の柱をふっ飛ばして、挙句
に屋根まで叩き落した。
 視界を埋め尽くす土煙に――幽霊なのに――けほけほと噎せてから、目尻に浮かん
だ涙を拭って、決然とポケットから手を抜き出す。
 
「あーもう、マジであったま来た……! 何処の阿呆よ、こんな――」
 
 唇を噛んで、口の中で祝詞を紡ぐ。
 一秒数言を紡ぐ早口は、出雲大社でも神主を務められるほど正確で、通った声は鈴
の音を思わせる。
 言葉が途切れ、刹那。
 サクラの右手の指が夜の闇に蒼い軌跡を刻んだ。人差し指と中指、掴まれた護符一
枚。夜を切り分ける生命桔梗紋――平たく言っちまえば五芒星――が、バリアと化し
て光の光芒を受け止める。
 視線の先に、確認した。
 長身の男と、それから女――少なくともあの二人は人間じゃあない。
 攻撃してきたのは女。それも見た。
 
「若造が……調子に乗ってると痛い目見るっての!」
 
 ポケットから二枚目の札を抜く。
 宙に放ると同時に、口も開いて言葉を紡いだ。早く、早く早く――空中を滑る指と
開閉する口が紡ぐ祝詞が、大気を細かく震わせる。
 
「鳥が鳴く、吾妻の山の長縄の、蕾が原の早蕨の、思い知らぬか忘れたか、
 鬼神山精打ちて去るべし――……カモン、バロンちゃん!」
 
 ごお、と。
 大気が一際大きく振動した。
 爆圧の騒々しさを振り払うかの如く、巨獣の咆哮が響き渡る。
 サクラの右脇、その足元。ライオンに匹敵するサイズの巨犬が、赤々とした瞳で周
囲の全てに敵意を表明した。
 
「……やるなら気を付けなさい。不機嫌なわたしは、ちょっとだけ怖いんだから」
 

182 名前:オーフェン ◆a4STABbERo:2003/04/19(土) 14:48

>180

 物騒な叫び声(たぶん女)が聞こえた方向へと、視線を向けた俺の目に映ったのは……
 
「何だこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 一言で言うと血、二言で言うなら血流が、俺と後ついでに変態に向かって迸っていた。
 何か蛇のようにうねってるし。
 触れるとやばそう(それ以前に、んな怪しい血に触りたくない)なので、横に跳んで
血をかわした。
 ……血が追いけてきそうな気がしたので、そのまま変な血から少し距離をおく。

(ていうか、何で血が? 貧血……いや、出血多量で死ぬだろ、この量は)
 
 様々な疑問を頭に浮かべつつ、血の発生源(と思われる)女性の方へ俺は向き直った。

183 名前:ベアトリス(M):2003/04/19(土) 14:49

>>179オーフェン
何が変態だ、ふざけやがって。
ぶちのめす。世間の厳しさを身をもって教えてやろうじゃないか。
このガキめ。
 
「ざけ…!」
光熱波が連発して襲い掛かってくるのを、大きく跳んで避ける。
この程度で音をあげてたら辺境では生きてゆけない。
が、あのタイミングで連発を避けられたのは奇跡に近い。
マシンガンではこの間合いを打破できないと悟った俺は、アクロバットを繰り返し、
工具箱まで移動する。
 
そして無言で俺は散らばった工具箱から飛び出ていた『バールのようなもの』を取り出し、
ほかの事に気を取られているらしいガキへ『バールのようなもの』を振り下ろしていた。

184 名前:涼村暁(M):2003/04/19(土) 14:53

>>168
 
いやー、お祭りってなーいいねー!
身も心も洗われちゃうね、ほんとに。
 
「バナナパフェ。クリーム多めで」
 
男らしくびしっと注文して、ふと横を見ると、(>>169
うほっ、かわいい女の子!
ちびりちびりとお酒を飲んでる姿がセクシーじゃないの!
ここは一つ、俺と夜明けのバナナパフェを・・・・・・・
 
と近づこうとしたその時。
突然の爆風が俺を襲ったね(>>174
収まったとき、俺の手から、愛しい愛しいバナナパフェは、
哀れ地面に落ちて逝っちまってたね。
 
・・・・・・・ぶっ殺す・・・・・・・ぶっ殺すっきゃないでしょ、これは。
 
「お嬢さん、そこで大人しくしててね。俺が一発、ズバーンと決めてきますからぁ♪
 シャンバイザー!!」
 
俺の声と共に、頭に現れるシャンバイザー。
それに手をかざし、俺は燦然した。
 
『燦然。それは涼村暁がクリスタルパワーの力によって、シャンゼリオンへと変身する現象である』
 
そして俺は無敵のヒーロー、シャンゼリオンへと燦然した。
さぁ、バナナパフェちゃんの敵、討たせてもらっちゃうよん!
 
「ガンレイザー!!」
 
胸のプレートに手をかざし、ガンレイザーを転送させる。
同時にディスクを装填、準備完了。
あの黒尽くめの大馬鹿野郎向けて駆けながら、俺は引き金を引いた。
 

185 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus:2003/04/19(土) 14:58

>>174 >>178

まあ、当たってあげても良かったのだけど。
ご指名が掛かっている以上、そういうわけにも行かないだろう。
女の前に舞い降り、閃光を避ける。

「・・・どういうつもりか、って?」

この女、魔物か。
そのくせ、今人間を助けた。

「決まってるじゃない? 殺すのよ」

通行人――無様にも棒立ちのままの、を一人、軽く刺してみる。
腹部が良い。
なるべく長く、苦しんで苦しんで、それからやっと死ねるように。

「―――こんな風に。さもなきゃ殺されるのよ。何の理由もなく」

貴方はどうする? と囁きながら、哀れな犠牲者を女の方へ押す。
縋り付くその影には、急所を外した数条の刃を伴っていた。

186 名前:名も無き生霊:2003/04/19(土) 15:00

>>174,>>175,>>176
(誰だろう、こんなに星が綺麗な夜に、照明弾を打ち上げるなんて)
そう思って広場のほうに視線を移すと、その背に翼を生やした女性が、視界に入る。
と、今度は突然の閃光と共に、男が噴水の中にまで吹き飛ばされてきた。
(うわ! だ、大丈夫――そうだね……)
男が元気に立ち上がったのを見て、ホッ、と胸を撫で下ろす。
 
>>179,
今度は連続で、真っ白な光の帯が噴水に吹き飛ばれてきた男に叩き込まれる。
 
>>180
『し、ねぇぇぇぇぇぇっ!!』
いきなり手の平から真っ赤な蛇のようなものを生やした女性が叫ぶ。
(今夜はお祭りだけど、どうしてこんなに変な人(?)達が集まったんだろう)
僕は人知れずそんな事を考えていた。

187 名前:名も無き生霊:2003/04/19(土) 15:02

>>186
(場所:広場中央、噴水上)

188 名前:マリエル(M) :2003/04/19(土) 15:07

>>182
「・・・避けたわね」

未だ掌から流れる血流を操りながら、黒男を睨み付ける。
元々対人殺傷能力はヒカトのそれよりも低いうえ、この身体だと制御が上手く出来ないのか、狙いも甘かった。
とはいえ、死角からの血流を躱すというのは並大抵じゃない。

「いいわ、本気で殺してあげる」

血流が凝縮する。
先程の斬撃を狙いとしたものではなく、撲撃。
血流が一本の棍棒のようになって、黒男に襲いかかる。

>>186
「・・・後ろのあんた。何じろじろ見てるのよ」

誰もいないかに見える背後に声をかける。
誰もいない?
そりゃ、人間には見えないかも知れないけれど、私には見えてる。

「あんまり鬱陶しいと・・・纏めて殺すわよ」

(中央広場、噴水縁)

189 名前:奥物部善ノ介(M):2003/04/19(土) 15:10

>>181

「・・・・・・・・・・・・・・・」

突然何かに気づいたかのように怪訝な表情を浮かべる。
と言うか、気づいたのだが。

「ババア、勝手に何やってやがる?」

自分の先祖であり、いざなぎ流の師匠であり、育ての親でもある所の
奥物部サクラ―――本名はうめだが、サクラと呼ばないと怒る。どうやら親にもらった名前が
嫌いらしい―――と、善ノ介とは呪的に繋がっており、幽霊であるサクラの呪的消費エネルギーは
善ノ介が負担することになっている。
早い話、MPを共有しているのだ。
おかげで、向こうが術を使うと、こっちも感じ取れるようになっている。

「また厄介事に巻き込まれたな。少しは俺を見習って平穏無事な一日を過ごせっての」

棚上げ200%な台詞を吐きつつ、彼女の姿を探して歩き回る。

>>184

「ああ!!? 勿体ねぇ!!」

ふと見やると、そこには地面と仲良くしているバナナパフェが一つ。
誰がやったかは知らないが、極刑モノの所業である。

「甘いものを粗末にする奴は、1c(ピーッ)と一緒に沈んでしまえってんだ」

犯人を探す。
見つけた。
あの光線馬鹿か。

「とりあえず・・・死刑だな。決定」

探し人のコトなど0.5ナノセカンドで忘却し、名刺ケースから引き出した護符を展開。
右手に現れた紐状の式王子―――いざなぎ流陰陽道の、使い魔の様なもの―――ピュートーンを
振り回しつつ、(>>182の)光線馬鹿の首に向かってにゅにゅいーんとまきつける。

気が短いのは、彼だけではないのだ。

190 名前:奥物部サクラ(M):2003/04/19(土) 15:15

>>178
>>185
 
「……え」
 
 どさり、と。
 目の前でくずおれるヒトカゲに、サクラは表情を凍らせる。血の尾を引いた体が、
魂を失って肉片と成り果てる瞬間。
 最初から最後までを視界に収めて、サクラはそっと自分の唇を撫でた。
 大丈夫だ、わたしは冷静。
 冷静に、何もかも冷静に思考してる。
 バロンを一撫で。見開いた瞳には冷たく澄んだ――どこまでも純粋な殺意が浮く。
死体は見て来た。合戦場の腐乱死体、歯肉を漁る犬の群、目玉を抉る鴉達。戦と言う
理不尽な現象で奪われた無数の命。
 だからこそ、許せなかった。無為に人の命を奪う、アレは。
 今になって気付いた。妖魔の視線の先、引きもせずに睨み合う白銀の髪の少女。危
ない、と声を出すまでもなく、悲痛と憤怒に歪められた端正な顔を見て悟る。
 彼女も、同じなのだろう。
 ――だったら。
 
「外道には路上の肥しでも上等過ぎるわ。
 ――死で贖いなさい。……バロン、砕け!」
 
 右手を振り払う。
 声が発された瞬間、巨獣――バロンは、巨大な四肢を地面に穿って疾走を開始して
いた。振り下ろされた脚は容易くコンクリを穿ち、嗾けられたその形相は鬼をして恐
慌の淵に追い遣る鋭さを秘める。
 神獣の名を冠した式王子は、眼前の妖魔へと、背後から猛然と襲い掛かった。
 

191 名前:オーフェン ◆a4STABbERo:2003/04/19(土) 15:16

>>183

 生意気にも変態は光熱波を避け『バールのようなもの』を取り出し、俺に殴り
かかってきた。
 変な女へと気を取られていなければ避けきれた、と断言する。そんな仮定の話
は無意味なのだが。俺のプライドに関るので予めそう断っておく。

 と、言うことで俺が殴りかかられたのに気がつくのは一瞬遅れた。
 気がつくと同時に額を逸らしたが、その一瞬のせいで完全には避けられず。
 『バールのようなもの』に眉間を掠られ、切り裂かれていた。

 振り下ろされた『バールのようなもの』が切り上げられるよりも早く、飛び退き、
変態から間を空ける。
 そのまま魔術を撃とうとした瞬間、目の隅に何かを撃とうとする、これまた変てこ
な格好をした変態の姿が映った。

(拙いっ!?)

 直感で危険を感じ、俺は咄嗟に髭達磨の変態の懐へと跳び込んだ。
 
(……この変態を盾にして防ぐ)

>>188

 ついでにさっきの女も変な血を向けてきたので、それからの盾にもする。

(中央広場)

192 名前:るい(M):2003/04/19(土) 15:16

「……あら?」

ふと気づくと、辺りの風景は一変していた。
私が出てきたヨミとも、行こうとしていた日本とも違うこの景色。
空は暗く、月と星のみが煌々と石畳を照らしていた。

「あの穴が、こんな所に繋がる事ってあるの……?」

見回して見ても……辺りにそんな穴は無い。
どうやってここに来たのかは分からないが、これでは帰るにも骨を折るだろう。

>181
そんな思案をめぐらせながら歩いていると、突然耳をつんざくような咆哮が辺りに轟く。
その叫びの方向を見ると、背景を透かしてその姿を留める少女と、一匹の犬が見えた。
さらにその視線の先には……悪魔?

>185
その悪魔……サッキュバスと呼ばれる存在は一人の男を捕まえ、今にもその翼で男を切り殺そうとしている。

私はとっさに爪を腕に突きたてる。
その赤い血は生きているかのごとく伸びると大鎌の形を作った。
そうして生み出された赤い鎌を振るうと、私は例の女悪魔に斬りかかって行った。

 ふふ…人間を助けるなんて、私も甘くなったものね……彼女のお陰、かしら。

193 名前:超光戦士シャンゼリオン(M):2003/04/19(土) 15:24

>>191 
 
「あ!?おめー、他人で防ぐなんてそれ反則だぞ!男の風上にも置けねぇー野郎だな」
 
バナナパフェちゃんの恨みに、盾として使われちゃった髭もじゃのおっさんの分もプラスだね。
だって、俺は正義の味方だからな〜♪
 
ふと見ると、瞳に怒りを込めて黒馬鹿野郎に突っかかる同士発見。
しかも、あんにゃろうの首めがけて鞭っぽいの投げつけてるジャン!
・・・・・・チャーンス!
 
「シャイニングクロー!」
 
胸のプレートに手をやって武装変更。
黄金に輝く爪が、右手に装着される。
ディスクを入れて準備OK、と。
 
「この極悪人めっ!正義の爪で成敗するから、そこから動くなよっ!」
 
爪を振り上げ、極悪非道なプリンパフェ殺害犯に殴りかかった。

194 名前:ベアトリス(M):2003/04/19(土) 15:26

>>191オーフェン
ガキは間一髪で避けやがった。
なかなかに体術の捌きが上手いようだ。
は、だがまだまだだ!
切り上げて足を引っ掛けようとした時、俺は奴の罠に嵌った。
 
「ヤベェ!」
集中砲火。
そう、ガキに対して怒りを抱いたのは俺だけではなかった。
他の有志たちの攻撃もまた、同時。
ガキを転ばせた時、射線が全て俺へと向いていた。
 
辺境を生きるハンターとして、光線銃や水撃銃に対しても防備は『ある程度』整ってはいる。
 
だが、『ある程度』だ。光線銃は皮鎧に毎日刷り込んである塗料で威力の大半は消えた。
血の斬撃が皮鎧を切り裂く。
ダメージは表層の脂肪で止まってくれたらしい。
 
日ごろの行いが良かったから、と信じたい。
そして俺は吹っ飛びながらもガキを両手で捕まえるとボディスラムを放とうとしていた。
 
(中央広場噴水前)

195 名前:名も無き生霊:2003/04/19(土) 15:29

>>181
突然、獣の咆哮が響き渡る。
(どうやって、あんなに大きな犬――なのかな――を連れてきたんだろう)
今夜になってから何度目とも判らない疑問。

>>188
と、手の平から深紅の蛇のようなものを生やした女性がこちらに向かって声をかけてきた
『・・・後ろのあんた。何じろじろ見てるのよ』
――どうして僕がここに居る事がわかったんだろうか。今の僕は誰からも見えないはずなのに――
『あんまり鬱陶しいと・・・纏めて殺すわよ』
その声に含まれる殺気に、僕は空へと舞い上がった。――一刻も早く自分の体に戻るために。
 
 
(退場)

196 名前:オーフェン ◆a4STABbERo:2003/04/19(土) 15:35

>>189

 また変な野郎が紐なんぞを投げてきたので、カウンターでそこら辺にいた地人を投げた。
 飛んで行く地人は、丁度紐を巻き込む形になったんでいい感じだ。

―――――どうせ死なないしな。

>>193

 もう一人の変態は爪で殴りかかってきたので、投げたのとは別の地人(先に投げた奴の兄)
で受け止める。
 鋼鉄よりも硬い骨……というか何やっても死なないんじゃないかと、本気で思うほど不死身な
地人の額に、鋭そうな爪がぶっすりと刺さった。が、噴水のように血を流して悲鳴をあげる程度
で済んでいた。
 そのまま喧しく悲鳴をあげる地人を放り捨て、魔術をぶっ放そうとし……

>>194
 
 その前に吹き飛ばされていた、髭の変態に捕まえられ、地面に叩きつけられた。


(中央広場噴水前)  

197 名前:片倉優樹:2003/04/19(土) 15:39

>185 モリガン 
 
 なぜ、人を傷つけてそこに喜びを見出せるのだろうか。 
そこに何の利益が生じるのだろう。血が出たら痛い。叩かれたら傷つく。 
そんなこと、あたしでさえ。銃で撃たれて死なない、身の丈8尺の男に殴られても 
全く揺るぎもしないあたしでさえ判ってることなのに。  
 
揺らぐ心臓に違和感を覚えて自分を叱咤する。…感情を押さえろ、優希。 
 
刺された人はまだ、助かる。現場の人たちだって…この騒動に巻き込まれなければ 
普通の生活に戻れるのだ。そう、まだ平穏な日常は死んだわけじゃない。 
と言っても、言葉もわからないあたしが取れる最善は… 
 
〉190 
 筋肉に蓄えられていたATPが沸騰するように消費されて、ランビエ節が悲鳴を 
上げる。相対時間が短縮されて…あたしは、脚を曲げた。あたしはこぶしを握った。 
あたしは、態勢を落とした。 ――神経融合! 
  
緑の髪、のアヤカシに向かって飛び掛ろうとしたとき、先に巨大な生物が 
彼女を襲っていた。 
経緯はわからない。でも、 
〉192 
であたしの裏側から現れた女性にも襲われている彼女。  
やはり、突発的な攻撃を行うのは用の東西を問わず、問題性があるとされているのだろうね。 
 
黙ってあたしはきびすを返し…周囲の人の手当てをはじめようと宙の妖魔に背を向けた。

198 名前:奥物部善ノ介(M):2003/04/19(土) 15:44

>>196

「甘い」

飛んできた寸詰まりを絡め取り、振り回して地面に転がっている
黒尽くめに向かって叩きつける。

「最悪だな、お前」

オマエモナー、と言う突込みには耳を貸さない。

199 名前:超光戦士シャンゼリオン(M):2003/04/19(土) 15:47

>>196
 
「今度はチンチクリンを盾に!最っ低の極悪人だな、お前は!」
 
爪に思いっきり刺さったチンチクリンをそのままに、
地面に叩きつけられた黒尽くめのバナナパフェ殺害犯にストンピング。
・・・・・・・俺の方が悪役に見える?気のせいだ。
 

200 名前:片倉優樹:2003/04/19(土) 15:51

>>197 微訂正  
 
>>185 モリガン 
 
 なぜ、人を傷つけてそこに喜びを見出せるのだろうか。 
そこに何の利益が生じるのだろう。血が出たら痛い。叩かれたら傷つく。 
そんなこと、あたしでさえ。銃で撃たれて死なない、身の丈8尺の男に殴られても 
全く揺るぎもしないあたしでさえ判ってることなのに。  
 
揺らぐ心臓に違和感を覚えて自分を叱咤する。…感情を押さえろ、優希。 
 
刺された人はまだ、助かる。現場の人たちだって…この騒動に巻き込まれなければ 
普通の生活に戻れるのだ。そう、まだ平穏な日常は死んだわけじゃない。 
と言っても、言葉もわからないあたしが取れる最善は… 
 
>>190 さくら  
 筋肉に蓄えられていたATPが沸騰するように消費されて、ランビエ節が悲鳴を 
上げる。相対時間が短縮されて…あたしは、脚を曲げた。あたしはこぶしを握った。 
あたしは、態勢を落とした。 ――神経融合! 
  
緑の髪、のアヤカシに向かって飛び掛ろうとしたとき、先に巨大な生物が 
彼女を襲っていた。 
経緯はわからない。でも、 
 
>>192 るい  
 
 あたしの裏側から現れた女性にも襲われている彼女。  
やはり、突発的な攻撃を行うのは用の東西を問わず、問題性があるとされているのだろうな。 
 
 黙ってあたしはきびすを返し。 
周囲の人の手当てをはじめようと、宙の妖魔に背を向けた。

201 名前:マリエル(M) :2003/04/19(土) 15:55

>>195
「逃げた・・・?」

一瞬だけ注意をやるが、すぐに忘れた。
既に私は戦闘人格にスイッチしている。
些事にかまけるほど甘くない。

>>196
血流を近くの男を盾にして防いだ・・・
でも、その男に投げられてりゃ世話ないね。

「纏めて死ねよやぁっ!」

血流をさらに凝縮して槍状に変化。
黒男も全部纏めて貫き通す!

(中央広場、噴水縁)

202 名前:ベアトリス(M):2003/04/19(土) 16:01

>>196>>198>>199>>201
 
地面にたたきつけ、子供が投げ返され、そして水晶を纏った男がストンピングしている。
 
正義は我にあり、だ。
 
「よし、迷惑代わりに身包みはがせて貰うぜ」
と、剥き始めた時、
 
『纏めて死ねよやぁっ!』
と小娘の叫びが上がる。
 
血の槍が俺たちに襲い掛かろうとしていた。
「まあ、まてや」
相変わらず無事だったマシンガンのグレネード、その中から出た照明弾が
血の槍を粉砕しようとする。
(中央広場、噴水縁)

203 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus:2003/04/19(土) 16:06

>>190 >>192 >>197

連続する、盛大な破壊音。
何か、とても大きなモノ――それと、もう一人の夜は似合いそうな、
けれど「この夜」には場違いな女が近づいてくる。

「奇襲にしては賑やか過ぎない? それと、そっちの貴方は少し遅い」

場違い、は訂正が必要らしい。
あれも、同じ、魔物だ。
半身に身体を開いて、後から来ていたモノ―――大型のライオンのような獣の頭
に手をついて、倒立。鎌を避ける。
そのまま、背中に乗った。

「・・・あら、指名したくせにわたしの相手をしてくれないの?」

背を見せている白髪の女。その先にはさっき刺した人間。
そうか。そんなに人間が大事なのなら。

「助けられる、と思った? ふふふ」

指を銃の形に。
BANG、とおどけて引き金を引いた。

「サービスで貴方にもあげる。受けとって?」

もう片方の手でも銃を作り、引き金を引く。
紫の弾丸が、倒れている哀れな犠牲者と赤い頭の女・・・幽霊に降り注いだ。

204 名前:オーフェン ◆a4STABbERo:2003/04/19(土) 16:13

>198 >199

 変な野郎に投げ返された地人が、倒れた俺の上に叩きつけられた。
 あと変態にストンピングされる。

「ぐぇっ!」

 肺から空気が押し出され、潰れた蛙のような声があがる。
 そのまま蹴られ続け、頭の中で何かがキレた。

>>201

(止めは槍かよ、おい)

 流石にあれを食らったら確実に死ぬ。
 なので転がって避けた。
 身体を掠り、次々と槍が地面に刺さっていく。
 内心冷や汗をかきつつ、転がる勢いを利用して立った。
 そして好き放題やってくれた変態ども(>>198,>>199,>>201,>>202)に向けて言い放つ。
 
「てめェら……全員まとめて吹っ飛びやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 手の先から放たれた膨大な熱量を持った光が全てを飲み込んでいき、

ごすっ。

 ……鈍い衝撃が後頭部に走り、そのまま俺の視界は暗くなっていった。
 キースの顔が描かれている人の頭ほどのある煉瓦が落ちるところが、
掠れていく俺の目に映った。


(退場)

205 名前:超光戦士シャンゼリオン(M):2003/04/19(土) 16:19

>>201
 
『纏めて死ねよやぁっ!』
 
にっくき糞馬鹿野郎に正義の鉄拳を食らわしている俺の耳に、
なんかヒス起こしてるお姉ちゃんの声が聞こえたね。
ふと、足をとめて見てみると・・・・・・・でかい槍が飛んできた。
 
「おいおいおいおい、そいつぁないぜ!正義の味方に攻撃するのは・・・・・・・」
 
皆まで言わせず、突然の爆発が俺の体を吹き飛ばした(>>204)。
ごろんごろんと地面を転がる。
痛ぇーっ!めちゃめちゃ痛ぇーっ!!
かといって、怒りをぶつけるべき黒馬鹿野郎は既に煉瓦の瓦礫の下。
女房思いのいい奴だった・・・・・・・。
というわけで、次の標的は・・・・・・・・ゴスロリ姉ちゃん!
 
「ねぇ、ちょっとそこのゴスロリの女の子!俺と一緒に夜明けのバナナパフェ食わない?」
 

206 名前:超光戦士シャンゼリオン(M):2003/04/19(土) 16:24

>>205 
・・・・・・・と思ったのは爆風のせいだった。
見たら乳臭い女の子。
興味なし(きっぱり)
辺りを軽く見回す。
なんかバインバインお姉ちゃん発見!
 
「ちょっとそこのお姉さ〜ん!俺と一緒にバナナパフェ食べな〜い?」
 
なんかどでかい狼とライオンのあいのこみたいな化け物とか、
背中から翼の生えたおねえちゃんとか居るけど、気にしない気にしない♪
今じゃ、翼があったら空とべる時代だからね〜。
 

207 名前:奥物部サクラ(M):2003/04/19(土) 16:28

>>200
>>203
 
「ウザいわね、妖魔の分際で……!」
 
 サクラの運動神経はけっして高くない。女子高生よりは上だろうが、成人男性と比
較してどうか、と言われれば首は横に振らざるを得ない。
 だが。
 彼女に肉体は存在しない。
 奥物部善ノ介という人間を媒体としてこの世に存在を繋ぎ止めているサクラは、物
理攻撃の一切を時として無効化する。
 サクラの姿が掻き消えた。文字通り、一瞬で姿が空気に溶ける。
 一刹那前までサクラの立っていた位置を光弾が掠めて落ち、大地に亀裂を穿つ。
 威力は推して知るべきなのだろうが――
 サクラはそんなコト知ったこっちゃないのだ。
 
 再び出現した位置は視線の先、妖魔の手前。銀髪の少女と妖魔の中間に不意に現れ
ると、その指先に挟んだ呪符を振り回す。
 祝詞は正しく一瞬。
 
「山神天神さか敷の、くりから地神の岩割の、
 八万のうら行うら敷なる神敷のうらくじの――来い、フツヌシ!」
 
 呪符は弾け、そして。
 サクラの華奢な手に、眩く輝く一本の刀身が出現した。
 痩身のサクラに似合わないほどの刀身は、けれど怖い位に澄んでいて、夜気を斬り
裂く刃は死神を畏れさせるほどにキレイだ。
 振りかぶる様子もなく、まるで小枝を振るうように――
 
「覚悟しなさい、貴女は」
 
 光弾を、横薙が一瞬で四散させた。
 右手で軽くフツヌシ――刀の姿をした式王子を振り回し、サクラは冷たい瞳を妖魔
に向ける。
 対して、振り返った彼女の瞳は優しく笑っていた。
 
「……逃げて。そのヒト、今なら助かるんでしょ?
 わたしはだいじょーぶ、これでも強いんだから。
 コイツぶちのめしたらさっさと逃げるから――今は逃げてくれないかな」
 

208 名前:奥物部善ノ介(M):2003/04/19(土) 16:29

>>201

「よっ、ほっ、はっっと」

水○しげる調のお面をつけ、ソフトクリームをぱくついたまま、飛んでくる血流の
槍をかわし続ける。

「・・・ちっ」

そこへ放たれる熱光波。
体を地面に投げ出し、転がりながらそれを避ける。
ピュートーンが燃やされ、ブーメラン効果(人を呪わば穴二つ、と言う奴である)で
二の腕にかすり傷が作られた。
それはまあ、どうでも良い。

コーンが、アイスが、一瞬にして解けた。
 
「・・・・・・ぶっ殺す」

半眼で睨みつけるが―――

「・・・・・・いないな」

ひゅるりら〜。

「・・・サクラ、探すか」

209 名前:マリエル(M) :2003/04/19(土) 16:30

>>202
「・・・ばぁか」

冷笑する。
力ある血族の私の血流を防ぎきれるとでも思ってるの?

槍が銃弾で削られる。
でも・・・それが各々また槍のようになって降り注ぐ。

「一撃で死ねた方がよかったかもね・・・」

くすくすと笑う。

>>204
槍の雨を転がって避ける黒男。
そして、放たれる光と熱。

「・・・無駄だってば」

右手から血が迸る。
血流が円を描き、光と熱を相殺する。

>>205>>206
「・・・」

声かけといて、それ?
なんだか、戦闘人格以外のところが怒りを覚えてる。

「・・・とりあえず、死んでおいて」

光と熱を遮断した血流の残りがそのまま小さな円盤状になって、襲いかかった。

(中央広場、噴水縁)

210 名前:るい(M):2003/04/19(土) 16:34

>>203
「やるわね……!」

不意をついた筈の初撃は既に見抜かれていたらしく、
鎌はただ空をむなしく切り裂くのみに留まった。

戦いの高揚感が私を包み、戦闘人格が目覚める。
体の血は沸き立つようなのに、意識はより冷え、敵を見定める。

女悪魔は既に他の襲撃者二人に気を取られて居るようだ。
今こそ、攻撃をしかける機会だろう。

鎌が血流の操作により硬度を増す。
戦闘人格へと変わった体でその大鎌に力を込める。

初撃よりもなお、鋭さをもった鎌が女悪魔を目標とし横薙ぎに振るわれた。

211 名前:ベアトリス(M):2003/04/19(土) 16:35

>>204
ガキが光熱波を再び放つ。
くそったれ!
 
悪態をつく暇も無く、俺は吹っ飛んでいった。
 
再び噴水のお世話になったらしく、痛みはそれほどではない。
 
まったく、ついてない。
噴水から出ると俺は気絶しているガキから身分証明書代わりらしきペンダントと、
武士の情けでパンツ一枚残して身包み剥ぐ。
 
『この者、DQNにつき注意』と看板を借りて書いてぶら下げてやった後、
もともとのダンスパートナーを見つけた。
 
さあ、夜はこれからだ。
 
(退場)

212 名前:ベアトリス(M):2003/04/19(土) 16:39

>>211>>209
と、言いたい所だった。 
もともとのダンスパートナーが接近しようとした時、射線が通っていた。
血の槍に貫かれ、灰と化した。
「ついてないのは俺だけじゃないようだな」
 
マシンガンを構え、黙祷してやる。
そして、小娘へ銃を構え、本業へと立ち戻ろうとする。
(復帰)

213 名前:超光戦士シャンゼリオン(M):2003/04/19(土) 16:40

>>209
 
「うごぉっ!?」
 
なんかが背中を直撃し、思い切り地面に顔をぶつけた。
・・・・・・・俺が一般の常識を持ったお兄さんで、
お子様に興味ないのを根に持った反抗!?
いやぁ、モテる男はつらいねぇ・・・・・・・
しかし!今は教育的指導を与えるよりも!
目の前のお嬢さんと仲良くなるほうが先だ!
 
俺はむくりと立ち上がると、体についたほこりを払い、
何事もなかったように再び赤毛のショートのお嬢さんに向かって歩き出した。
 
「ねぇ、彼女〜?俺と一緒にバナナパフェ食べない?」
 

214 名前:片倉優樹:2003/04/19(土) 16:40

>>207 サクラ  
 
 気配亡き気配に振り返り、目を焼く光にあたしはきっと、痛みを覚悟したんだと思う。 
しかし、その光はあたしを薙ぐことは、なかった。 
 
強さを秘めた笑み。 
彼女が守ってくれたのだろうか。 
あたしは彼女を見て・・・無責任だけれど任せることにした。 
『それぞれに出来ることを見極めて行動するのが最善だよ、優樹?』 
 
先生なら、きっとそういうだろうから。…1000分の1に要約すると、だけれども。 
とりあえず、あたしはあたしの最善のために怪我人を連れて駆けた。 
途中、歓楽街でしばしば聞くような懐かしい言葉 ――余り聞きたくなかった祖国語が 
耳に入る。 
 
>>199 
あたしはそっと、ポケットに手を入れて… 
先に押したナンバーをさっと、入力した。 
ううん、この騒ぎのことじゃなく、もっと普通のこと、いわゆる痴漢がいる、という事のために。 
(片倉優樹、退場)

215 名前:マリエル(M) :2003/04/19(土) 16:48

>>212
「銃、向けたね・・・?」

男に向かって呟く。
そう、この男は私に銃を向けた。殺意を向けた。

だから、殺す。

瞳が紅く染まる。
景色が紅く染まる。
全てが・・・紅く染まる。

「殺す、よ?」

両掌から新たな血が吹き出る。
そして、無数の血流が男に向かって襲いかかった。

(中央広場、噴水縁)

216 名前:奥物部善ノ介(M):2003/04/19(土) 16:55

>>213

「そういやさっきの心の友はどこへ行ったんだ?」

甘党の同志は貴重だ。特に男性のソレともなれば。
いた。ナンパをしている。

・・・・・・・・・

前言撤回。
昨日の敵は今日の友今日の友は明日の敵。

「人のツレに何する気だ、オイ」

背後から蹴り。
蹴り。蹴り。蹴り。

217 名前:ベアトリス(M):2003/04/19(土) 16:59

>>215
ハ、素敵だ。素敵な殺意を持っている。
これだからハンターは止められない。……息子には見せられん姿だ。
やはり、別れて正解だったと思う。
  
「ああ、さっきまでは戦友だったがな。今死んだ吸血鬼は俺の獲物だった。
 その追悼もかねている」
 
血流の勢いが増している中、早々と決着をつける気だろう。
あれだけの量ではそうもたん。
 
毎分一万二千発をはじき出す辺境随一のマシンガンを片手に、
発光弾を仕込んだナイフを数本投擲する。
 
フェイントに引っかかってくれればありがたいが…。
(中央広場、噴水縁)

218 名前:超光戦士シャンゼリオン(M):2003/04/19(土) 17:00

>>216 
 
「おぶぅっ!?」
 
また背中から攻撃された。
あぁ、もう!正義の味方相手に背中から攻撃するたぁ、どこの馬鹿だ・・・・・・・
さっきの同志だった。
 
「お前ね〜?いきなり人の背中を蹴り飛ばすなんて、どういう教育を受けてきたんだ?
 もう少しだな、常識というものを考えろ!この馬鹿たれが!」
 
指を突きつけて説教をたれる。
あぁ、俺ってば正義の味方だから、問答無用で殴りかかってくる馬鹿にも、
寛容なんだぜ〜。
 
「わかったら、もう遅いんだからさっさと家に帰って寝る。
 俺はこっちのお嬢さんに用事があるから、また後日、甘党御用達の喫茶店で会おう!」
 
と、言うと、回れ右。再びナンパを再開する。

219 名前:マリエル(M) :2003/04/19(土) 17:20

>>217
・・・見え透いてる。

発光しながら襲い来るナイフ。
銃を構えておいてそれなんて、フェイントとしても稚拙。

だから、避けない。

とすとすとす、と身体にナイフが突き立つ。

「ふふ、あはは・・・痛いねえ、痛いよ?」

痛いから、笑う。
楽しいから、笑う。

だって・・・私に血を流させることの意味、わかってないんだもの。

傷口から、さらに血が噴き出す。
そう、ナイフすら押しのけて血が噴き出す。

莫迦だ、莫迦。
血流は私の武器だというのにね。

血流を盾にしながら、そのまま突進する。
両の腕にはぐるぐると渦を巻く血流。
その渦は、人間の脆弱な身体など易々とミンチにするだろう。

その様を想像して、私はくすり、と笑みを浮かべた。

(中央広場、噴水縁)

220 名前:奥物部サクラ(M):2003/04/19(土) 17:21

>>214
 
 少女が立ち去るのを確認して、サクラは軽く微笑んだ。
 振り返った瞬間には笑みなどカケラも消えてはいたが。
 
「……さて、この辺りで幕引にしよっか?
 アンタなんか、冗談も抜きに存在価値なんてないもの」
 
 笑みも浮かべず、さりとて激昂もせず。サクラの表情には一切の感情というモノが
剥がれ落ちている。
 漣すらない感情は、澄み切った刀身に同じ。
 冷たく、どこまでも冷静に――彼女は宣告する。
 
「始末してあげるわ」
 
>>213
 
「――って、あわわわわわわ!?」
 
 ――で、よろめいた。
 あたふたと両手を振って――振り回されたフツヌシがコンクリートを豆腐みてーに
叩き切ったが――バランスを取ると、突然目の前に滑り込んできた人影を視認する。
 ……なんだろう、と。
 
「ぱ、パフェ……? や、お嬢さんは嬉しいんだけど……」
 
 特撮ヒーロー、だっただろうか。
 それに似ている。透明な鎧やらゴテゴテした飾りとか、兎に角これには見覚えが有
る。具体的に言うならゼンの所持品で見た。
 どうしたもんだろう――引き攣った頬を無理矢理手で戻すと、軽く肩を竦める。
 
「……あれどうにかしたら、デートくらいは付き合ってあげるけど」
 
>>216
 
「……ゼン!」
 
 蹴り倒されたヒーロー(?)の奥に、漸く宿主兼パートーナーの姿を確認、サクラ
は青年に駆け寄って――
 
「なにやってたのよ、このクソガキ!」
 
 ――ブン殴った。
 空いた左手のショートアッパーで顎を突き上げると、妖魔を指差して遅延の理由他
お使いくらい自分で行け甘い物ばかり食べるからそうなる云々を指摘して、
 
「――とにかく!」
 
 ヒーロー(?)と善ノ介を両脇に従えると、サクラはびしりと妖魔をフツヌシで指
し示した。
 三人いたら真ん中はリーダーらしい。
 つまりリーダーはリーダーらしく宣言するべきだろう。
 こうやって。
 
「アイツぶっ倒すわよ、ゼンちゃん、バナナパフェ君!
 勝ったらゼンの奢りでバナナパフェ三人分!」
 

221 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus:2003/04/19(土) 17:33

>>210 >>216 >>218 >>220

外れた。消された。
おまけに白髪の女に逃げられた。

「・・・残念。もっと遊びたかったのだけれど」

その内、きっと。
その下らない理性を引き裂いて、化け物として殺してやろう。

「―――振られたみたいね。引き続き貴方が相手をしてくれるのかしら?」

横一文字に走る鎌を、翼で受ける。
触れている部分が、鈍く痛んだ。

 毒――?

けれど刀を召喚した赤毛の女に比べると、こちらは見劣りするのは否めない。

「そんなに混ぜて欲しいのかしら? じゃあ、行くわよ」

鎌を跳ね上げて、全周囲に向けて刃と化した翼を振るう。
足元の獣も、鎌を持った女にも。赤毛の女にも。辺りの全てへ向けて。
その軌跡は淡く光り、空気を切り裂いて宙を駆けた。

222 名前:ベアトリス(M):2003/04/19(土) 17:34

>>219
思ったとおり、銃を見て、ナイフを避けない。
だが、それは甘い。
銃があるからといって、撃つとは限らない。
 
そもそも、相手は血を武器にしている。
刺したり、斬ったりが効かないのは分かりやすい。
そう、だからこそのフェイント。
余裕を持った吸血鬼に対し、予想外の攻撃をする。
 
接近しながら血の槍をマシンガンで一瞬だけ迎撃する。
毎分一万二千発。その反動はただ事ではない。
反動を生かしたまま、体全体を横へと倒し、銃把で小娘の顎を殴りぬこうとする。
ロックしてやるよ。

(中央広場噴水縁)

223 名前:奥物部善ノ介(M):2003/04/19(土) 17:38

>>218

「悪かったな。俺の教育状況に文句があるならコイツに言えよ」

といっても彼には理解できまい。目の前の少女とこのやさぐれた青年が祖母(と言うか
ご先祖)と孫(みたいなもの)であるなどとは。

「喫茶店も悪くないが、やはりちゃんとしたパティスリーで買ってきたものを家でぐーたら寝そべりながら
 食べた方が数段美味く感じるぞ? 特に他人に買いにいかせたモノだったりすると最高だ」

ダメ人間過ぎる。
が、そもそもゲームと甘いもの以外には何の興味も示さない、怠惰な青年である。
勤勉のニ文字など当の昔に置き忘れてきた。

>>220

「お、ババア」

彼女にとっての禁句を発し、駆け寄る少女を迎え入れる。

ばきっ。

殴られた。

「・・・・・・いきなり何しやがる!!?」

そして始まる説教タイム。
 
Q:どうする?

A:聞き流した。

「ああ、分かった分かった。用はコイツをなぐりゃ良いんだな」

問題を先送りにして向き直り、

>>221

「て訳で殴らせろ。いやだと言っても殴る。良いな?」

一応確認を取るジェントルマン。
まさに紳士の中の紳士。粗暴さなど欠片も見えないこの台詞。
祖母の薫陶の賜物であろう。

224 名前:ぺトレスク神父 ◆BADANszQYw:2003/04/19(土) 17:45

>>219 >>222
 
「わたしが悪人に向かって」
 
 声は、唐突に響いた。
 
 枯れ枝のような細身の体に、黒い神父服を纏った老人。
 それが声の主だった。
 惨状を目の当たりにしながら、冷静に、淡々と続ける。
 
「『悪人よ、お前は必ず死なねばならない』と言うとき」
 
 優しげな微笑を浮かべたまま、ゆっくりと歩き出す。
 正面の敵に気を取られている、少女の背後へと忍び寄る為に。
 
「あなたが悪人に警告し」
 
 ピキピキという音が、神父の体から漏れ出す。
 内側から何かが膨れ上がるような、不吉な音を立てて。
 
「彼がその道から離れるように語らないなら」
 
 何時の間にか、神父の顔からは微笑が消え失せていた。
 
「悪人は自分の罪のゆえに死んでも」
 
 代わりの表情は、耳元まで口が裂ける邪悪な笑い。
 それはヒト以外のモノだけが、可能な笑み。
 少女の真後ろに近付いた神父は、鉤爪の生え揃った腕を振り上げた。
 
「血の責任をわたしは―――」
 
 そして、首筋目掛けて振り下ろす―――

225 名前:ぺトレスク神父 ◆BADANszQYw:2003/04/19(土) 17:45

>>224続き
 
 「たわば!?」
 
 前に、流れ弾で死んだ。
 
 (ぺトレスク神父・死亡)

226 名前:マリエル(M) :2003/04/19(土) 17:45

>>222
「あははははは! 無駄無駄ぁ!」

左手の血流を解放。
渦を巻いていた血流がそのまま円盤状の盾になる。
銃弾の大半をそれで弾き落とす。
幾らからは身体を貫くけれど、今の私は痛みすら感じない。
だって、そのための戦闘人格だもの。

「死ね死ね死ね死ねぇぇぇっ!」

右手の渦流を解きながら殴りかかる。
クリーンヒットはしなかったけれど、かすりはした・・・

ごん。

視界が揺れた。
そして、ぐらりと傾く。

「・・・え?」

私の目が最後に捉えたのは、男が握っていた銃の底の刻印だった。

(気絶)

(中央広場、噴水縁)

227 名前:マリエル(M) :2003/04/19(土) 17:47

>>224>>225
もちろん、背後になんかいるなんて、気付いてるわけもなかった。

228 名前:超光戦士シャンゼリオン(M):2003/04/19(土) 17:49

>>220
 
デート+バナナパフェ三人分=天国(ぱらいそ)
 
俺の灰色の脳みそコンピュータが高速回転で計算式をはじき出す。
こうなったら、やるっきゃないでしょう!
 
「まかせなさいって、お嬢さん!なんたって俺は、正義のヒーローだからね!」
 
>>221
 
「まぁ、そういう訳だから、俺の幸せの為にやられてちゃって欲しいわけよ」
 
ムチムチボディのレオタードネエちゃんに向き直ると、
胸のプレートからシャイニングブレードを顕現させると、襲い掛かってくる刃を切り払う。
 
>>223
 
「いや、甘いねっ!!喫茶店から出前で持ってきてもらうバナナパフェに勝るものはないぜっ!」
 
切り払いつつも、甘党の同志との論戦にも手を抜かない。
やはり、ダメ人間同士、どこかで呼び合うものがあるのだろうか。
もっとも、ダメ人間であることを、この二人の人間は全否定するであろうが。
 

229 名前:人形使いナハツェーラー ◆.MhXHETARE:2003/04/19(土) 18:06

 
 ―――その頃、街の外の道路に一台のリムジンが停車していた……
 
「ふはははは、愚者どもがつまらぬ争いをしおる」
 
 イノヴェルチが誇るヴァンパイア三銃士こと「人形使いナハツェーラー」はモニターを見ながら笑う。
 彼にとってはかかる争いに関与する必要は無い。
 最後まで生き残った者に対し、自らトドメを刺せば、それで彼が勝者となる。
 
 ……卑怯者となじる者もいよう
 
 ……戦いの神聖を汚す者と言う者もいよう
 
 だが、漁夫の利を狙う事の一体何が悪なのか?
 勝てば、生き残れば、それで良いのである。
 歴史は常に勝者に微笑むのだ。
 負け犬には何も与えられず、存在も許されない。
 
「ふむ、そろそろだな。行くとするか」
 
 戦いの趨勢がほぼ決したと見るや、ナハツェーラーは運転手に街に向かうように指示をした。
 一台のリムジンが闇夜の中を静かに駆ける。
 
 ――――――
 
 ―――
 
 ―
 
『止まれ!』
 
 リムジンは強制停止させられた。
 交通検問である。
 
『すまないが、免許証を―――む、お前は………!?』
 
 警官がリムジンの中を覗きこんで驚愕の声を上げる。
 そう、かのヴァンパイア三銃士の、世界を又にかける大悪党が居たのだ。
 彼の驚愕も仕方在るまい。
 
『包囲だ、包囲しろ!』
 
「ええい、発進させろ!」
 
 ナハツェーラーの反応は数秒遅かった。
 数台のパトカーがバリケードになり、リムジンは発進する事が叶わなかった。
 
 
 ―――がちゃん!
 
「ば、馬鹿な……」
 
 鈍い金属音とともにナハツェーラーの腕に手錠がはめられる。
 かくして、人形使いナハツェーラーはここに御用となった。

230 名前:るい(M):2003/04/19(土) 18:07

>>221
大鎌が悪魔を切り裂いた……そう思った刹那。
大きな翼がそれを受け止めた。

翼。

悪魔なら当然持っているだろうそれは、切り裂かれることなく、そこにある。
だが、あの悪魔は私、いや、私たちの血族の持つ闇の存在に対するための毒の血を分かって居ないようだった。
その美麗な顔が一瞬だけ苦痛に染まる。だが、すぐにその表情は消えると翼を振り上げ鎌を跳ね上げた。

途端、鎌を跳ね上げた翼は刃のごとき猛威を振るい、私の体を切り裂いた。

――――――――――強い。

相手の力量を少しばかり測り間違えていたようだ。
当たる直前に身を引いたので、致命傷は裂けることが出来たが、体はそのまま、後ろへ吹き飛ばされていく。

まだやれる筈。

しかし、どうする?全力で振り抜いた鎌は余り効いて居ないようだ。
このまま長引いても勝つ見込みはないだろう。

飛ばされていく一瞬の内に回りを見回すと、式神を使っていた彼女……さらに男二人が大声で
ぶっ倒すだの叫んでいる。あの女悪魔に対して勝算があるというんだろうか……?

考えている暇は無い。ともかくこちらの手が無い以上、あの三人に頼った方が勝ちがあるだろう。
ならば……少しでも相手の隙を作った方が良さそうだ。

戦闘人格ゆえの冷静な判断は即座に実行に移された。

横薙ぎにされて傷ついた腕から、血をだすと、女悪魔に向けて振るう。
寸前に傷つけられ、噴出していた血は生き物の如く空を駆け、あの女の目に向かっていった。

狙いは目潰し――――――――――!

231 名前:ベアトリス(M):2003/04/19(土) 18:13

>>226マリエル
グラリ、と来た。吸血鬼に対し接近戦は死を招く。
それだからこそ、吸血鬼自身自分に接近戦を挑む存在に対して、一瞬の躊躇を抱く。

それを付けねらい、起死回生の一撃が決まった。
先ほどからのダメージがかなりくる。
 
まだ、倒れるな…。
まだ…。
 
俺は起き上がり、小娘の下へ移動する。
荒い息をつき、心臓へ杭を刺しこもうとした時、
後ろから声をかけられた。
 
「貴様ッ!未成年略取、並びに婦女暴行の現行犯で逮捕するッ!!」
軍服を来た男がなにやら叫びながら俺の首筋へ機械の右腕をやる。
 
電気の弾ける匂いと音。
それがこの祭りで最後の俺の記憶となった。 
 
(ベアトリス:逮捕)
(退場)

232 名前:奥物部サクラ(M):2003/04/19(土) 18:14

>>228
>>230
 
 やるもんだなー、特撮ヒーローってホントに強いんだー、頭の片隅でそんな事を考
えて、サクラは善ノ介に声を張り上げた。
 
「さって……こっちも行くわよ、ゼン。
 MPはオッケー? 無理でもやるわよ、アレ!」
 
 ポケットを探る……呪府は無い。三枚のお札。文字通り、サクラの手持ちはフツヌ
シの召喚で打ち止めだ。
 軽く奥歯を噛んで、思い立ったように逆のポケットを探る。
 あった。15センチ前後の洋菓子店のビラ。街頭で受け取ってポケットに突っ込ん
だままだったのは幸いだった。ズボンのポケットを探る。
 ここにも有る。黒のサインペン一本。
 
 ヒーロー(?)を横目にサインペンのキャップを外すと、さらさらにょろにょろと
ビラに文字を書き付ける。素人が見れば、傍目には象形文字と何ら変わる所の無いい
ざなぎの祭文――
 2秒半で15センチのビラにソレをびっしりと書き込んで、善ノ介の正面に放り投
げた。
 
「ゼン、一気にやる! オーケー!? 行きなさい、フツヌシっ!」
 
 妖魔に向き直る。
 フツヌシを振り被って、投擲。即座に右手と左手を組むと、0.5秒で炎神の祭文
を組み上げて刀身を発火させた。
 割り込むように、赤が飛沫いた。何処から? 考える必要はない。
 紅い飛沫が妖魔の視界を覆って――ラッキーだ。
 これなら。
 ――やれる!
 
「これでゲームオーバーよ……この、バカ女!」
 
 フツヌシはフェイントだ。序でに言うなら発火もハッタリだ。
 これで殺せないコト位はサクラも百も承知の上だから。
 軽く背後の青年を振り返って、サクラはウインクした。
 

233 名前:人形使いナハツェーラー ◆.MhXHETARE:2003/04/19(土) 18:14

 
 << 後日談 >>
 
 現代でも一部の刑務所の環境の劣悪さは筆舌に尽くしがたいものがある。
 衛生環境の悪さにおいては中世ヨーロッパ顔負けのところも存在する。
 最も、そのような刑務所の運営する国側は刑務所には予算を割いてられないというのが、
 本音であろう。
 
 そして、そのような国ではその環境の悪さが禍して、刑務所を生きて出られる者は数える程しかいない。
 
 
 ……一握の灰が壺に入れられてイノヴェルチに届けられた。
 一枚の紙切れとともに―――――
 
 
 ――― 死亡鑑定書 ―――
 
 氏名:ウォルフガング・フォン・ナハツェーラー
 
 職業:燦月製薬取締役、自称「貴族」
 
 年齢:400歳 
 
 死因:栄養失調
 
 
 
            ――――かくして、ナハツェーラーは歴史にその名を刻む事なく、ただの敗者として、
                  
                  舞台から退場したのである……

234 名前:奥物部サクラ(M):2003/04/19(土) 18:20

>>229
>>231-232
 
 ――時を前後する。
 サインペンを走らせるサクラの視界の隅に、走り込むパトカーのサイレン。
 苦手な英語をヒアリング。
 ああ、警察だ。
 
 とりあえずソレ所ではないのだ、今は。
 0.01秒で忘却して、彼女はサインペンを走らせ続けた。
 

235 名前:奥物部善ノ介(M):2003/04/19(土) 18:28

>>228

「ぬぅ・・・・・・」

中々物の道理と言うものを分かってる奴のようである。
好敵手に格上げ。

>>232

「おう・・・ってオマエ、いったい何を呪符にしてやがる!!」

突き出されたのは洋菓子店のビラ。言語道断である。

「ああ、もう良い!! 行くぞ」

ひったくる様にして受け取り、早口で祭文を唱え始める。

「・・・赤血、真血、火炎不動、萌えゆけかれゆけ血花ぞ咲かせ、猿神、狗神、大山不動、
 微塵と乱れて黄泉落とし、長縄、水官、波切不動、逆しに向かいて息吹吹く、天竺不動の
 天外将、天竺天よりよりおいでませ!!」

紡がれる言葉に合わせて眩い電光が走り、手にしたビラがにゅにゅいーんと伸びる。
ソレは形を三叉戟へと変え、青年の手の中に納まった。

「――――いくぜ、スサオヲ!!」

雷を宿した三叉激を振るい、宙にある蝙蝠女へと突きかかる。

―――轟。

236 名前:1台のパトカー:2003/04/19(土) 18:31

ナハツェーラーとベアトリスは無数のパトカーによる厳重な警護の元、護送されていた。
そのパトカーの一台に、2人の刑事が乗っていた。
不精ひげの刑事と、険しい顔の刑事。
彼ら2人のパトカーの上に、暗雲が立ち込めていた。
 
「これは雷が来るな―――――俺にはわかる。俺はあらゆる天候を予想する……お天気お兄さんだ!」
 
険しい顔の男が呟いた矢先に、ごろごろ、と野獣の唸りのような音が響いた。
 
「む……来たか……」
 
予想通りの落雷を待ちながら、険しい顔の刑事が呟く。
その呟きとほぼ同時に、不精ひげの刑事が叫んだ。
 
「は……腹が! 昼に食った安売りのカキフライ弁当があたったのかよ!」
 
脂汗を垂らし、不精ひげの刑事は苦鳴をあげた。
不精ひげの刑事は腹痛の前にハンドルがうまく切れなくなっていた。
そして、彼らの目の前に現れたのは、崖があるゆえの急カーブだった―――――。
 
(必殺処刑コップ・転落死)
 

237 名前:超光戦士シャンゼリオン(M):2003/04/19(土) 18:34

>>230 >>232 >>235
 
おぉ、こりゃまたド派手にぶちかましてるじゃないの!
俺も負けてられないね。
いいとこ見せて、ビシィっと決めないとね、やっぱ。
 
「シャイニングアタック!!」
 
俺の叫びと共に、胸のプレートから現れる、光の粒子が作り出す、もう一人の俺。
それがうなりを上げて、バインバインネエちゃん向けて飛んでいった。
正義のため、俺の未来のため、迷わず成仏しちゃってくれ!

238 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus:2003/04/19(土) 19:04

>>230とか>>232とか色々。

動く物が無くなるまで続けるつもりだった。
縦横に両翼を振るい続ける。

 ―――――っ!

その間隙をするすると抜けて、赤い奔流は目を、押し潰した。
激痛が意識の空白を生み、意識の空白が行動を停滞させる。

「・・・そう。邪険に扱いすぎたかしらね。ごめんなさいね。
 なら、貴方からまず殺してあげる」

目が見えずとも、周囲を捉える事は出来る。
動こうとした刹那、何かが太腿を串刺しにした。
掴んだ手が焼けるも構わず、抜いて捨てる。

そろそろ、我慢の限界だった。

どう殺そうか、思考を巡らせ――咄嗟に翼を展開する。
触れたのは切っ先。
そこから、使い魔が弾けて消えていった。
刃は胸の谷間に深々と突き立つ。
同時に、飛来した「何か」が胴を貫いた。

 これで終わり、か。

巻き起こる焔。
崩れる身体は、風に乗って四散していった。

239 名前:奥物部サクラ(M):2003/04/19(土) 19:33

 -MOON DANCE-
 
>>238 モリガン=アーンスランド
 
 ざあ、と。
 四散する妖魔の痕跡を見送って、サクラは静かに瞼を閉じる。
 祈りはせず、感慨も抱きはしない。
 ただ、一言。
 
「日本の言葉にこんなのがあるのよ」
 
 背を返して、サクラは背後にひらひらと手を振った。
 
「正義は勝つ……ってね」
 
 夜はまだ深く、朝が訪れるには幾許かの時間を要するだろう。静寂を取り戻した世
界は深い眠りに落ちたまま、けれど破壊の痕跡は消えはしない。
 そこまでは対処出来ないし――出来ないなら仕方ない。
 こっちも商売、家系はゲームと甘い物好きの宿主が浪費癖の持ち主だからして、サ
クラとしてはこんな所で捕まってやるわけにゃあいかないのだ。
 善ノ介に近寄ると、サクラは振り被った手を――
 
「おっつかれー! 良くやったぞ、流石は我が子孫!」
 
 思いっきり、背中に叩き付けた。
 飛び上がって喚く善ノ介に背を向けると、水晶めいた鎧のヒーロー(?)の肩をポ
ンポンと叩く。
 
「君もお疲れさま。デートは――ま、こんな夜だから今日は無理として、
 とりあえずコンビニでも行かない?
 バナナパフェはないかもしんないけど、タルトくらいは置いてるかもよ?」
 
 にこりと笑って、一つウインク。
 うーん、と大きく伸びると、まだぎゃあぎゃあと喚いたままの善ノ介の背中に飛び
付いた。
 
「よーっし、行け、ゼン! 目標、近くのコンビニ!
 標的、とりあえずバナナパフェ!」
 
 訳の解らない一日の始まりは、夜明け前に生まれて、夜も明けない内に通り過ぎて
行く。
 予定外のハードワーク。
 予定外の疲労に、予定外のAM4:30。
 まあ、偶には――
 偶には、こんな日が有っても良いんじゃないだろうか。
 苦笑を微笑みで覆い隠して、サクラは善ノ介の肩を思い切り叩いた。
 
「さ、そっちのヒーロー君も一緒に。行け、ゼン! れっつごー!」
 

240 名前:涼村暁(M):2003/04/19(土) 19:44

>>238 >>239
 
大爆発と共に、ボインボインの翼ネェちゃんは倒れた。
 
「正義は勝つ!やっぱ俺って・・・・・・・キマリすぎだぜぃ!」
 
勝負のポーズをしっかりキメた後、俺は燦然を解く。
さぁ、後は愛しのバナナパフェちゃんとお嬢さんとのデート、デート♪
 
「OK、OK、皆まで言うな、お嬢さん♪さぁ、俺とてぱらいそへれっつご〜♪」
 
とりあえず、同志との甘味論議はおいといて。
今はお嬢さんとの愛に生きる!
俺はお嬢さんの肩に手をまわすと、夜の街へと消えていった。
 
 

241 名前:奥物部善ノ介(M):2003/04/19(土) 19:55

>>238 >>239 >>240

どかっ。

人間の姿に戻った好敵手の後頭部に後ろ回し蹴りを決め、青年はご先祖の隣に立つ。

「疲れた。サクラ、頼んだ夜食は?」

一応そう尋ねてみる。
・・・・・・ない、らしい。

「ああ、もういい。どうせならファミレスだ。ケーキバイキング。当然お前のオゴリな」

お使いも満足に出来ん育ての親に御仏の情けは無用。
いや、ソレよりも・・・

「こいつに払わせるか。うん、そうしようそうと決まればサクラ、とっとと行くぜ」

独りで勝手に決めると、サイレン鳴り響く広場から遠ざかっていく。
ほとんど連れの二人を置き去りにしていくくらいの軽やかなペースで。

242 名前:るい(M):2003/04/19(土) 20:06

>>238

幽霊少女と男の召還による三叉の戟が悪魔を貫く。
一風変わった甲冑の男が放つ光の分身が悪魔を引き裂く。
―――――――そうして、戦いは終わった。

途端、戦闘人格のスイッチが切れ、感覚が平時のものに戻っていく。
翼に引き裂かれた部分が急速に痛み始め、私は膝をついた。

「痛た……やっぱり疲れるわね、こういうのは……」

 ヒカトだったら、きっとここまでぼろぼろにならないでしょうね……
と思考を巡らせながら私はまだ治りきらない傷を押さえ、苦笑した。

きゃあきゃあと騒ぎながら、あの変な三人組が歩いて行くのを眺め、私は立ち上がる。
破壊の後が生々しく残ったこの場所に、長居をするのも拙いでしょうね……

そして、辺りを眺め――――――――――

>>226
「――――――――――――――――――――――――――――――あら?」

顔見知った彼女が倒れていることに私は気づいた。
……何度か顔をあわせた事もある。
そう、確か彼女はヒカトの事を好き、と言っていた少女だ。

彼女に聞けばここからの帰り道も分かるだろうか?
そう考えながら、私は彼女の傍に寄って言った。

……どうやら、彼女はノックダウンしているらしい。
これでは、起こそうとしてもそうは起きないだろう。

まあ、いいわ……起きるまで待ちましょう。
いきなりこんな所に飛ばされて、戦いに巻き込まれるなんて、そうそう無いことでしょうし。
今は――――――――――私もゆっくり休みたい。

見れば空には最初見たときとは随分と位置を変えた月。
まだ、光がこの空を蹂躙するのは早い。
私は空を見上げたまま、溜息をした。

243 名前:裁判官:2003/04/19(土) 20:16

法廷の中、検事が調書を読み上げる。
>168>169>170>171>172>173>174>175>176>177>178>179>180>181>182
>183>184>185>186>187>188>189>190>191>192>193>194>195>196>197
>198>199>200>201>202>203>204>205>206>207>208>209>210>211>212
>213>214>215>216>217>218>219>220>221>222>223>224>225>226>227
>228>229>230>231>232>233>234>235>236>237>238>239>240>241>242


被告人席の二人に裁判官は言う。

「…………で、これが事件の結果となるわけか。
 被告人に懲役、30年を処す。
 本日の裁判はこれまで!
 なお、この裁判についての記録、ならびに控訴の申し出がある場合、
 
 http://plan-a.fargaia.com/html/test/read.cgi/vampbattle/1033894737/
 まで申し出る事。
 以上、閉廷!」

244 名前:極道兵器岩鬼将造:2003/04/20(日) 00:50

岩鬼将造vsファーザー・ウェットワーカー

>>166
撃つ。

ひたすら撃つ。

毛唐神父の全身がボロ雑巾のようになっていくが、そんな程度で手ぇゆるめる程ワシは甘かぁないで。
なんせこいつは化けモンじゃ。
その証拠にほれ、こんだけブチこんでもまだ潰れかけたゴキブリのようにピクピクしとる。
そんな相手にやる事は一つ!

”完全にくたばるまで攻撃し続ける!”

これ、岩鬼流あしたのために第一条じゃ!
全身にくまなく弾丸のシャワーを浴びせてやる。

「ウピルの力を舐めるデないワ!!」

うぴる?何のことじゃ?こいつ、男のクセに避妊薬でも使っちょるのか?
うう、やはりガイジンのやる事はわからんのう。

ぬ、ヤツめ、今更になってハジキなんぞ持ち出してきよった。
しかもそのトカレフはここの組が流しとった……

(SE:BoooooooMMMMMMMMMMM!!!!)

「OH! 何てコト!!? 暴発なんテ聞いてナイ!!?」


だぁ〜っはっはっはっは!!

笑いが止まらんのう。床に転がっとるコヤツらの捌いてたトカレフは(世界情勢を鑑みて削除)製の粗悪品じゃい。
まともに動作なんぞするわけなかろうがよウププ。

「ワレ、イエスサマからも見放されたようじゃのーう。」


お、今の一言は効いたようじゃの、ブチ切れて飛びかかって……

 ズ シ ン 

う、何じゃ?何が起こっとる?何故ワシは空を飛んどるんじゃ〜!?

245 名前:ファーザー・ウェットワーカー:2003/04/20(日) 01:07

岩鬼将造vsファーザー・ウェットワーカー
>>244

「ハーッハッハッ!! ごぉっどの偉大サ、思い知ッタカ」

キチント色々計算されて放ッタワンツーパンチで、成層圏の彼方マデ一っ飛びダナ。
何が計算されてイルのカト? 勿論、角度トカ色々とダ。

ウピルのパゥワー、真夜中に最高潮を向かエル。今のワタシ、神祖モ敵でナイ。

オット。とりあえず撤収の準備をしなくテハ。
金目の物を集めてとんずらネ。聞いた話ダガ、ヒラサキ市のテンドウ親分って
ヒト、我々みたいなモノに理解がアルとのコト。

「親分サン、今まで世話になッタナ。デモ、浮世の義理ジャお金にならナイ。
 サヨナラね」

何カ上空でキラリと光ったガ、気にスル暇はナイ。
警察に捕まると強制送還。シベリア帰りハ嫌ダ。

246 名前:極道兵器岩鬼将造:2003/04/20(日) 02:03

岩鬼将造vsファーザー・ウェットワーカー
>>245

な、な、な、なんじゃあやつのパンチは!?

(ジタバタジタバタ)

「うぴる」とかいうのを服るとあんな無茶苦茶なパワーが出るんかぁ!
こ、こりゃ、デスドロップどもが撒こうとしたスーパーシャブどころやないで。

(ジタバタジタバタ)

あ、あかん、意識がのうなってきた。ワシ、このまま星になるんかしら。
ああ、これまでの人生が走馬灯のように……ように……

 な る わ け あ る か い っ ! ! 

あんにゃろう、何としてでもブチ殺してくれる。
ワシはころんでもロハでは起きんのじゃ。

右目のレーザーポインターが起動。
照準用レーザーが勝ち誇って伸びなどしとる彼奴の額のド真ん中をロック。
ミサイル?いやいや、あのタフさじゃ。もっと強烈なのをかまさにゃヤツはくたばらん。

クッククク

まさかこいつを実際に使うことになるとはな。
待っとれ化けモン。今お熱いのを御馳走してやるぜ----

こんな事もあろうかと、(おお、なんかかっこええセリフじゃ!)叔父貴のレーザー衛星と
この義眼の照準システムをリンクさせておいたんじゃ。
一撃でビルごとこの世から蒸発させてくれるわい。

「あばよ、化けモン。成仏せいや、アーメン、ラーメン、冷や素麺。」

ちゃんとキリスト教式にお経まで唱えてやるなんて、ワシってなんて優しいんじゃろ。


衛星レーザー砲、発射。

247 名前:ファーザー・ウェットワーカー:2003/04/20(日) 02:25

岩鬼将造vsファーザー・ウェットワーカー
>>246

ア、ア、アアアアアアアアアアアア!!!?

「ソドムの光の柱カ!!?」

シ、塩になるのは勘弁ダ。ごぉっだむ!!

(ちゃんちゃらちゃらららちゃんちゃんちゃ〜ん♪)

伝説のきゅーぴー三分くっきんぐのメロディが聞こえてクル。
ワタシ、丸焼きカ!!?

「へーるぷ、へーるぷみーネ!!?」

もうワタシお金欲しいナンテいわナイ。誰か助けてクレ〜〜〜〜。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
・・



⊂⌒~⊃。Д。)⊃ 

(こんがりやかれますた。)


「ダ、ダガ、マダダ! マダオワランヨ!!」

うぴるノ再生能力と我ガ信仰心ヲモッテスレバコノ程度―――

祈リ 囁キ 詠唱 念ジロ!!


おおっと。

248 名前:あさになりますた。:2003/04/20(日) 02:26

岩鬼将造vsファーザー・ウェットワーカー
>>247


                \ │ /
                 / ̄\   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
               ─( ゚ ∀ ゚ )< さいたまさいたま!
                 \_/   \_________
                / │ \
                    ∩ ∧ ∧  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\∩ ∧ ∧ \( ゚∀゚)< さいたまさいたまさいたま!
さいたま〜〜〜〜! >( ゚∀゚ )/ |    / \__________
________/ |    〈 |   |
              / /\_」 / /\」
               ̄     / /
                    ̄

249 名前:ファーザー・ウェットワーカー:2003/04/20(日) 02:27





                     ⊂⌒~⊃。Д。)⊃

(最高に灰って状態) 

250 名前:極道兵器岩鬼将造:2003/04/20(日) 02:45

岩鬼将造vsファーザー・ウェットワーカー
>>247-249

わーっはっはっは!
どーやらビルごと蒸発しおったみたいやのう!
 
(今だ上昇中)

どーじゃ、参ったか!クソ化けモンが!
たとえ化けモンじゃろうとワシの相手するには10000000年早いわぁぁぁ!

(まだまだ上昇中)


ワシに喧嘩売ったモンはみーんな地獄逝きじゃあぁぁぁぁ!!!

(それでも上昇中)

ん?

と、と、止まらんぞ。
おい、誰か、誰かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


------------------------------ FADE OUT------------------------------


「あっ、流れ星! …………世界が平和でありますように…………」

251 名前:そして誰もいなくなった。:2003/04/20(日) 02:55

>>250



























                                ひゅるりら〜

252 名前:名無しさらりーまん:2003/04/20(日) 03:00












ん?
何でしょう、コレ。
なになに?




『平成残狂伝 〜死んでもらいます〜』 岩鬼将造vsファーザー・ウェットワーカー
 
闘争まとめ?

>160
>161>162>163>164>165>166>244>245>246>247>248>249>250
>251


『感想はこっちに寄せて欲しいの』

ttp://plan-a.fargaia.com/html/vampbattle/res.cgi/1033894737

(会社員は怪訝な表情でしばらく見ていたものの、直に興味を失い報告書を屑篭に丸めて捨てた)

253 名前:極道兵器岩鬼将造:2003/04/20(日) 21:43

てなわけでいきなり星になってしもうたが、ワシも正式に参戦の襲名披露じゃ!
ワシの名は岩鬼将造、またの名を極道兵器じゃ。
出典は石川賢のコミック「極道兵器」。
関西系やくざ岩鬼組組長にして極道連合の初代総長、ようするに日本のドンじゃ。
ワシのシマで勝手は許さんけえ、そこんとこ、ようけ肝に命じとけや。
わしのエモノはこれ、左手にマシンガン、右足にロケットランチャーといった具合じゃ。
アメリカマフィアと喧嘩して大怪我したとき、全身に武器を埋めこんだ極道兵器として復活したんじゃわい。
以来日本を狙ってるマフィアどもと出入りの繰り返しよ。
まあいずれヤツらは皆殺しにしちゃるがのう。


出典 :極道兵器
名前 :岩鬼将造
年齢 :20台後半じゃ
性別 :男!
職業 :岩鬼組組長兼極道連合初代総長
趣味 :喧嘩じゃ!
恋人の有無 :山鬼組の山鬼なよ子が許嫁じゃ。いー女だぜ。
好きな異性のタイプ :気っ風のいい女、極道の妻
好きな食べ物 :牛丼!
最近気になること :アメリカマフィアのヤツら、さっさと勝負かけてこんかい!
一番苦手なもの :バカもん! 苦手があって極道がつとまるかい!
得意な技 :ハジキ、ポントウ、ドス、その他体内に内蔵した火器類でブチ殺すんじゃあ!
一番の決めゼリフ :俺は極道兵器だ!
将来の夢 :いずれ天下を取ったるけえのう!骨のあるモンはワシんトコに来い!
ここの住人として一言 :ワシのシマで勝手さらすヤツは例えバケモノでもブチ殺す!日本全土がワシのシマじゃ!
ここの仲間たちに一言 :早速だが化けモン共の住み処に殴り込む!
ここの名無しに一言 : わいは極道兵器やど〜!

なんじゃい、アメリカマフィアの次は「どらきゅら」がこの日本で悪さを企んどるだと?
ワシのシマウチでそんな勝手は許さん!こん外道!化けモンだかなんだか知らんがブチ殺ーす!
拓三、三太郎、出入りの用意じゃ。ありったけのエモノ持って来ーい!

254 名前:不死の男(M) ◆UNdeAdJL8w:2003/04/22(火) 21:50

星川翼vs不死の男『月下の黙示録』
星降る夜、男はたたずんでいた。
月が二つある夜を、男は刀を取り出して振るう。
 
男には目的があった。『闇の世界への門を開く』という目的が。
 
―――そう、俺は闇の世界へ行かねばならない。
そのためには、『夜を守る者』を斬らねばならない。
 
『闇の世界への門』を開く為の準備は全て整っている。
後は、開くのを妨害する者達を片付けるのみ。
 
幾度も、幾度も俺が門を開くのを妨害した者達。
年端も行かぬ子供であろうとも、容赦はしない。
斬って捨てる。
  
今度こそ、門は開く。
俺は、闇の世界へ行けるのだ。
 
がさり、とこの街外れの森の祭壇の側で音がした。
もう、感づいたか。
 
ああ、いよいよだ。守護者を一人一人斬る度に俺は目的へと近づく。
 
そう、楽しみだ。手下どもに他の者達に襲い掛からせる。
楽しみは順番にな。
 
「………来たか、仕事を片付けるか?それとも、遊んでゆくか?」
 
金髪の男に俺はそういう。どちらにしろ、やることは同じだ。

255 名前:星川翼 ◆dicYNUKIME:2003/04/22(火) 21:57

星川翼vs不死の男『月下の黙示録』
>>254
 
「…………」
 
 男の声に応じて、無言で青年が歩み出た。
 月光で浮かび上がる姿は、細身の体に脱色した金髪。
 整った顔立ちは、何処か女性的な物すら感じさせた。
 
 万人が認める“優男”そのものの外見だ。
 
「……………はぁ」
 
 木陰から姿を現した青年――星川翼は、一つ大きな溜息をつく。
 
「どうせ遊ぶなら、もっと可愛い方がいいんだけどなぁ」
 
 直後、心底残念そうな言葉が吐き出された。
 
 性別について語らない辺り、可愛ければ問題はないらしい。
 別の所で色々と問題な気もするが、それは置いておくとしよう。
 
「ま、折角のお誘いで―――断るのも失礼だしね」
 
 言いつつ、腰の細剣(エペ)を抜く。
 眼前に引き寄せてキスをするような仕草をした後――
 
「それじゃ、お相手しようか」
 
 切っ先を相手に向け、半身に構えるフェンシング独特の構えを取った。
 先刻まで纏っていた、軽い空気が一瞬にして張り詰める。
 
 見た目の軟弱さに騙されてはいけない。
 彼もまた、此処に立つに相応しい狩人。
 夜を守る者――“火者”の一員なのだから。

256 名前:不死の男(M) ◆UNdeAdJL8w:2003/04/22(火) 22:17

星川翼vs不死の男『月下の黙示録』

>>255
ハ、気取ってやがる。周りでも手下どもがほかの守護者達を相手取っているころだろう。
奴らは俺達にはない力を使う。言霊を使い、弾丸を見抜き、炎を呼ぶ。
 
闇の世界へ行けない俺達では届かない力を。奴らは持っている。
だから、策を練る、武器を揃える。
 
「ああ、では始めようか。門を開く儀式を」
 
俺は刀を構え、振るう。
突きのフェンシングに突きで応えるバカはそういない。
俺も例に漏れず、刀を逆手にもって腕の振りで奴のスピードへと迫る。
 
時には蹴りで軸足を攻め、時には宙を舞い、頭上に注意を向けさせる。
コートに手を入れ、ボーラを取り出し、フェンシングなどでいうマンゴーシュのように扱う。
 
俺にとって、大切な一瞬はまだ訪れていなかった。

257 名前:星川翼 ◆dicYNUKIME:2003/04/22(火) 23:12

星川翼vs不死の男『月下の黙示録』
>>256
 
 男の猛攻に対し、翼は眼光を鋭く研ぎ澄ます。
 その一撃一撃はどれも桁外れの速度とパワーを備えた攻撃だ。
 少しばかり注意した所で、避けられるものではない。
 
「―――っと!」 
 
 だが、そのどれもを紙一重で回避してゆく。
 僅かな身のこなしだけで蹴りを逸らす。
 振るわれる刃の軌道も、自らの剣――サン・テグジュぺリで受け流す。
 
 如何に異能の狩人である“火者”でも肉体は只の人間だ。
 訓練を積んでも、身体能力だけで凌げはしない。
 では何故、化け物である男と対等に戦えるのか?
 
 その秘密は、彼の眼にある。
 “貫目”と呼ばれる一種の魔眼によって、動体視力が大幅に強化されているのだ。
 敵の初動が見えていれば、後の先を取る事で、ある程度の差は補える。
 
(とはいえ……)
 
 そろそろ殺しきれない威力で、腕が痺れてきている。
 防戦一方では、不利になるのはこちらだ。
 
(受けてばかりも癪だし、お返しさせてもらおうかな)
 
 打ちかかってきた刃を受け止め、流れを加えて回転。
 しなる細剣の特性を活かして力のベクトルを完全な別方向へと転換させた。
 
(―――隙が出来た!)
 
 その機を見逃さず、空いた胸へと突きを送り出す。
 速度も威力も申し分無い、カウンター気味の一撃を。

258 名前:不死の男(M) ◆UNdeAdJL8w:2003/04/22(火) 23:39

星川翼vs不死の男『月下の黙示録』
>>257
しかし、今日は本当に月がきれいだ。真月と呼ばれる魔道をなす為の月もよく満ちている。
とても、気分がいい。
奴は次々と俺の攻撃を防ぎ、確実に俺に手傷を負わせている。
強い。さすがだ。全細胞が喜びに満ちている。
  
だが、闇の世界へ行くには時間が少ない。
 
ならば、こうしよう。
 
隙を見せ、申し分のない一撃が俺の心臓を貫く。
目の前が赤く、赤く染まる。
 
だが、俺は死なない。死ねないのだ。
この程度では。
 
細剣が俺の体を貫いたと同時に俺は体をさらに剣の根元までつきこませる。
 
「捕まえたぞ」
 
この距離では刀は振るえない。
 
「死を超えた所に闇の世界はある…。
 そう、真の闇の世界はまだまだ先だ。
 お前にも見せてやろう、真の闇の世界を」
 
左手のボーラを振るい、奴へ絡みつかせようとする。
お楽しみは、これからだ。

259 名前:星川翼 ◆dicYNUKIME:2003/04/23(水) 20:34

星川翼vs不死の男『月下の黙示録』
>>258
 
「……いやぁ、絶世の美を手元に置いておきたい気持ちは分からないでもないけど」
 
 軽口を叩いてみるものの、内心は冷や汗ものだ。
 彼もトレーニングはしているが、あくまでスピード重視の絞り込んだ筋肉。
 とてもじゃないが、人外と力比べをする気にはならない。
 
「引く手数多なんだよね、僕は」
 
 相手の左手は、既に動き始めている。
 一瞬でも判断が遅れたら其処で終わりだ。
 この状況を打破する為の思考を、急いで組み立てる。
 
 鍔まで突き刺さっている状態では、引き抜くにしても遅れる。
 押して突破というのは更に難しい。
 
(どうせなら、このままで行ってみようか)
 
 柄を握る手に力を込める。
 同時に人間の体に宿る精神の力――霊力も。
 魔を退ける者である彼等は、こういった超常の力を扱う術も持っているのだ。
 圧倒的に劣る部分を、補う為に。
 
「だから、順番を待って貰えないかな!」
 
 ちなみに女性優先だから、回ってくる可能性は微妙。
 そんな注意を秘密にしつつ、男の体内へと霊力を送り出す。
 激痛を感じて、向こうが距離を取ってくれる筈。
 
 と、思った直後。
 
 男のボーラが迫るのを視界に捉えた。
 如何に軌道を見切れていても、紐は“点”でなく“線”で襲い掛かって来る。
 そして、この体勢では、“線”から逃れられない。
 
(これはちょっと拙い……かな?)

260 名前:不死の男(M) ◆UNdeAdJL8w:2003/04/24(木) 22:07

星川翼vs不死の男『月下の黙示録』
>>259
フン、気合を込めてきたか。熱く冷たい感触が俺の心臓を貫く。
だが、芯には届かない。だから死なない。
まだ、死ぬわけにはゆかない。
 
「ハ、整理券は持っている」
 
俺はボーラを振るい、縛り付けようとする。
守護者に打ち勝ち、その守護者の血をもってすれば闇の世界への門は開くだろう。
 
もう、俺はこの世界では生きられないロクデナシのバケモノだ。
故に、世界を破壊するか俺が死ぬかどちらかになった。
そのどれでもない第三の道である闇の世界への道行きはすべてに勝る幸福。
 
俺の邪魔をするな。
 
「500年前からの予約でな」
 
ボーラを振るった後、蹴りを放つ。
さあ、限界まで力を出せ…。

261 名前:星川翼 ◆dicYNUKIME:2003/04/24(木) 23:29

星川翼vs不死の男『月下の黙示録』
>>260

 くるり、と意思持つもののように紐が絡み付く。
 腕を縛られ、動きを止められるのは危険だ。
 一撃でも貰えばこっちは致命傷なのだから。

(ううん、縛られるほどハードなのはちょっと好みじゃないなぁ……)

 しかし、思考には割と余裕があった。
 過去に縛られた屈辱も多少思い出してしまうが、とりあえず忘れる。
 
 繰り出された相手の蹴りは、忘れようとしても忘れられないが。
 
「………!」
 
 男の靴が胴体に減り込み、衝撃が体内を暴れまわった。
 その凄まじい蹴りの力を利用して、剣を手前に引く。
 強烈な一撃を耐えた甲斐があって―――なんとか細剣は抜けた。
 
 とはいえ、腕を封じられてダメージを負った事実は大きい。
 動く度に激痛が走るこの状態では、機敏に動く事も難しくなる。
 
「予約、か―――」
 
 絶望的な不利な状況にあっても、瞳は光を失わない。
 それどころか、男を見る眼光はより強さを増している。
 “貫目”が持つ、もう一つの能力を使う為に。
 
「悪いけど、一番は譲れないよ?
 僕のプリンセスの予約が入ってるんだ」
 
 喋るだけでも痛みが襲う。
 だが表情はそのままだ。格好悪い所など見せてはいけない。
 何故なら―――
 
「“王子様”だからね」
 
 自由にならない体で、何一つ、気取った仕草を崩さずに。
 
「プリンセスの約束をすっぽかしちゃ、駄目に決まってる」
 
 サン・テグジュペリを構えつつ、言う。

262 名前:不死の男(M) ◆UNdeAdJL8w:2003/04/25(金) 00:08

星川翼vs不死の男『月下の黙示録』
>>261
叫び声に雄たけび。爆音がこの森に響き渡る。
手下どもには少々荷が重すぎたようだ。
 
だが、構わない。俺が闇の世界へ赴けば、また奴らも行けるだろう。
そうなる運命なのだ。
 
「ああ」
 
更なる激痛。息がつまり、視界が再度暗く、赤く染まる。
まだだ、まだ、倒れるな。
闇の世界を見るまでは。
 
目の前の守護者を屠り、血をすすり、一人残らず闇の世界にささげるまでは。
 
奴が剣を構える。
 
俺はふらつきながら、地を蹴り、前へ進む。
 
「プリンセスには詫び状を送るとしよう」
逆手に構えた刀を振りかぶるフリをしながら残った手で銃を抜き、撃つ。
 
轟音が夜の森に響いた。

263 名前:星川翼 ◆dicYNUKIME:2003/04/25(金) 21:16

星川翼vs不死の男『月下の黙示録』
>>262
 
 斬撃に見せ掛けて、何か別の事を仕掛けて来る。
 視線を集中していたおかげで、それは即座に理解した。 
 一旦凝視を中断。先に相手の攻撃を見極めなければならない。
 
 気合を入れた直後、銃口と目が合った。
 
(え、これは流石に予想外―――) 
 
 発砲。
 
 通常の攻撃なら見切れない事も無いが、銃弾は流石に無理だ。
 驚異的動体視力の“貫目”をもってしても、コマ落としにしか見えない。
 仮に初弾がかわせたとしても、連射は凌げないだろう。
 
 咄嗟に、ある一つの考えが思い浮かぶ。
 
 だが、それは言ってみれば只の賭け。
 勝ったとしても、圧倒的不利を覆すには足りない。
 それでも―――やるしかない。
 
(こうなったらイチかバチか、だ)
 
 頭にざっと弾道を思い描いた。
 半歩退く。もう後戻りは出来ない。
 
 弾丸は飛翔し、左腕で肉と血を弾けさせた。
 同時に、動きを封じていたボーラの紐も。
 
「……やっぱり痛い」
 
 当たり前の事をぼやきつつ、身体を捻りながらバックステップ。
 一連の動作で、戒めとなっていた紐が解け落ちた。
 
「とりあえず―――」
 
 接近する敵を見定め、二連続で刺突を放つ。
 一撃目は銃を持つ手へ小手突きを。二撃目は、もう一方へ。
 
「お気遣いは無用、とだけ言っておくよ」
 
 まずは間合いを取る。
 後に繋ぐべき、必殺の一撃の為に。

264 名前:不死の男(M) ◆UNdeAdJL8w:2003/05/02(金) 00:11

星川翼vs不死の男『月下の黙示録』
>>263
ハ。思わず顔が緩んだ。流石に銃では直ぐに勝負がついて終ってしまうかと危惧していた。
 
が、ボーラから抜けるのに使われ、今俺の前に細剣を構えている。
 
勝負が簡単につくのは俺にとって非常につまらない。
闇の世界へ行くにもただの勝利では物足りない。
 
そもそも、銃弾で方がつくのならこれほど簡単で、味気ないものは無い。
 
「おお」
息が止まる。鼓動は既に止まった。だが意志だけは止まらない。
 
今の俺は闇の世界へ行く。
ただ、その為だけに動く機械。道具。
 
「分かった。では本番へ行こうか」
 
銃を取り落とす。 
もう、これは必要ない。
 
歩を進め、刀で地面を擦る。
跳ね上がった刀身が銃を空へと持ち上げる。
 
空いた手で受け止め、そのまま銃把で打ち据えようとする。
せいぜい、こういうフェイントぐらいにしか使わない。
 
「軽蔑するか?」

265 名前:星川翼 ◆dicYNUKIME:2003/05/02(金) 02:59

星川翼vs不死の男『月下の黙示録』
>>264
 
 相手のフェイントに次ぐフェイント。
 正々堂々、そんな言葉が空しく響く。

『軽蔑するか?』 
「いいや?」
 
 事も無げに言うと、銃把の下へ潜り込むように屈む。
 男の腕が、頭上を吹き抜けた。
 
「それくらいは当然さ」
 
 彼はこう思っている。
 
 フェンシングは、騎士道精神を重んじるべきだ。
 しかし、それは、守るべき相手にだけ適用すべきだ。
 実際は真っ正直に戦ってくれる相手の方が少ないのだから。
 
 都合のいい解釈だが、真理だ。
 
「こっちも、それなりの事をやらせてもらうしね」
 
 痛みを堪えながら、左腕を振る。
 血の雫が、男の眼球へ向って飛び散った。
 
(先刻ので大体の見当はつけた。後は……)
 
 稼いだ僅かな時間の間に、再度男を見る。
 “貫目”のもう一つの―――いや、真の能力を行使する為に。

(よし、見えたっ!)
 
 今、男の体には、幾つもの点が見える。
 これこそが、“貫目”の真の能力。
 物質全てが持つ最も脆い箇所、“破砕点”を見極める力だ。
 其処を突けば、どんな強固な物質も一撃で崩壊させる事が出来る。
 
 もちろん、生物の体もその例外ではない。
 
 神経、血管、骨、筋肉。
 それらの最も脆く、致命的な部分が彼には“見える”のだから。
 
「―――シッ!」
 
 吐息と共に、胴の“点”へと刺突が疾る。
 寸分の狂いも無い、正確な一撃が。

266 名前:不死の男(M) ◆UNdeAdJL8w:2003/05/04(日) 01:59

星川翼vs不死の男『月下の黙示録』
>>265
まだ、俺が人である部分への殺意が集中している。
これは危険だ。
人としての部分を多く引きずるが故に俺は脆い。
 
ああ、そうだろう。俺はまだ人間を脱しきれていない。
多分、両方が交じり合った中途半端な状態なのだろう。 
故に、銃弾で撃たれたり心臓を刺されたしたぐらいでは死なずに動けている。
 
充分に人ではないのだろうが、闇の世界ではまだまだだろう。
より強く、より激しく。
俺は闇の世界へ行きたい。
 
もっと、もっと強く。
すり抜けた奴がこちらへ構える。
 
胴体へ点が走る。
俺の体を貫く為に。
 
御免蒙る。
 
ああ、クソクソクソクソッたれ。
流石にこれだけは厄介だ。
上に跳ぶか、下を這うか。
 
二つに一つ。俺は上に跳ぶ。
人間に翼はない。普通なら方向転換もできず、的になる。
 
俺は夜に飛翔する。
刀と一体化した竜巻のように奴へと強襲する。

267 名前:星川翼 ◆dicYNUKIME:2003/05/04(日) 22:37

星川翼vs不死の男『月下の黙示録』
>>266
 
 ―――気合を入れた割りに、あっさりと避けられた。
 これは拙い。決めるべき所で決めないというほど格好悪い事は無い。
 
 そして、それ以上に。これほど危険な瞬間も無い。
 
 突きのせいで、刃を捌くには間に合わないと判断。
 崩れた重心を更に前へ。倒れるようにして身を低く沈める。
 そしてそのまま―――前転。
 腕のバネと平衡感覚をフルに稼動して、跳ね起きた。
 
(そろそろ、何か突破口を見つけないと拙いかな)
 
 傷の痛み、体力の消耗。
 様々なマイナス要素が襲い掛かる。
 おまけに変にアクロバティックな動きをしたせいで、余計酷い。
 
 だが、相手が空中にいる時点で背後を取れた。
 今度こそ避けようがない……はずだ。多分。
 
 とにかく、立ち上がる間も惜しい。
 上半身だけ起こし、不安定ながらも背の“点”―――脊髄に照準。
 剣尖を弾丸に見立て、突きを放つ。

268 名前:不死の男(M) ◆UNdeAdJL8w:2003/05/04(日) 23:02

星川翼vs不死の男『月下の黙示録』
>>267
月が、綺麗だ。この日、この時を狙ってことを起こした甲斐があった。
俺は空を舞いながらそう思った。
 
刀が、唸る。
 
刃を翻し、静寂を切り裂くように俺の周囲を巡らせる。
弾く音が聞こえた。
 
脊髄を狙った剣を受けきれたようだ。
危ない。
 
ああ、しかしどうしてこうなってしまうのだろうか。
渇く。酷く喉が渇いた。
 
「おい」
 
俺は木にもたれて言う。
奴へ。聞いていようがいまいがお構いなしに。
 
「喉、渇かないか?」
そう、生きているのなら栄養は必要だ。
どんな時でも。
 
そして、今の俺はとてもハイだ。
高出力を出すエンジンがそれに適応した燃料を必要とするように。
俺も必要な栄養がなんであるのか、すぐ分かった。
そう、血液。
 
闇の存在には人の血を必要とするものが多いと聞く。
きっと、俺もそうなりつつあるのだろう。
酷く体が冷える。
 
俺はさわやかな笑顔で奴へと歩を進めた。
栄養を得る為に。決着をつけるために。
 
そして魂の芯から温まる為に。
コンバットナイフをだして、即興で二刀流の剣舞を試みる。
 
「少し、飲ませてくれ」

269 名前:星川翼 ◆dicYNUKIME:2003/05/05(月) 00:14

星川翼vs不死の男『月下の黙示録』
>>268
 
(……これまで防がれると、ちょっと自信無くすかも)
 
 正直、どれも必殺の攻撃だと思って送り出してきた。
 それがこうも失敗に終わると、流石に自尊心が傷つく。
 
 相手が桁違いの力を持っているのは分かっている。
 にしても―――これは、異常だ。
 本当に突き抜ける一歩手前、とでも言うべきだろうか。
 
 背筋に、冷たい感触が降りる。
 
「やれやれ」
 
 だが、しかし。
 立ち上がり、負傷が嘘のような、毅然とした態度で構えを取る。
 
「男性すら誘惑してしまうなんて……罪深い男だね、僕も」
 
 煌く刃の光芒に、切っ先を向けて。
 何時も通りの気障な微笑を浮かべたまま。
 内に秘める、気迫だけを高めてゆく。
 
「美酒に酔うのは僕だけでいいさ」
 
 刀身に神経を通わせ、血流を通わせて腕の一部にするイメージ。
 愛剣サン・テグジュペリと肉体に、霊力を循環させる。
 
「特に、勝利の美酒はね」
 
 剣と、自分と繋がる。そんな感覚が走った。
 体も剣も重さを一切感じない。
 
 これは一種の緊張状態へと、肉体を強化・調整。超高速の突きを可能にする準備だ。
 体には負担がかかるが、二刀流に対抗するには、これしかない。
 即ち、彼の切り札―――
 
「スラック・アタック!」
 
 二本の白刃に負けず劣らず、何条もの閃光が躍る。
 その全てを弾き、打ち落とし。
 体に存在する無数の“点”を、貫く為に。

270 名前:不死の男(M) ◆UNdeAdJL8w:2003/05/05(月) 00:43

星川翼vs不死の男『月下の黙示録』
>>269
実際、俺の今の状態からは奇蹟と呼ぶほかない状態だった。
痛みは感じず、体に鉛が入ったかのように気だるい。
 
その代わりと言ってもいいのかもしれないが、ダメージや流された事が相手には酷く堪えているらしい。
 
悪くはない。
だが、実感が伴わない。
どうしたものか。
 
「そうか」
 
銀光が舞う。
稲妻のように、嵐のように。
 
「だが渇くんだとてもな」 

力をこめて、二刀を振るう。
嵐を、稲妻を斬るように。
即興の剣舞が破られ、俺の刀もコンバットナイフも弾き飛ばされる。
両手が酷く、熱い。
腱を断たれ、どうやら物を掴むのに苦労しそうだ。
 
しかし、向こうもどうやら剣を落としたようだ。
 
ダッシュし、掴みかかる。
力の加減が効きそうにない。
 
「全ては闇の世界にある」
 
喉が、渇く。渇きすぎた。
栄養が欲しい。
俺は歯が伸びる錯覚に囚われながら奴の血を啜ろうと―――

271 名前:星川翼 ◆dicYNUKIME:2003/05/05(月) 01:45

星川翼vs不死の男『月下の黙示録』
>>270
 
 打ち合う火花が、新たに生み出される火花で掻き消される。
 人間の限界を遥かに超えた、化物のような速度。
 
 その中で、鋼同士がふと離れる一瞬。
 僅かに速度が勝り、相手の腕に命中したらしい。
 相手が剣を取り落としている。
 
 一気に畳み掛けようとするが―――
 
「腕が……!?」
 
 既に、こちらも限界に来ていた。
 強化も、所詮肉体に嘘をついて過剰に働かせているだけに過ぎない。
 筋肉の断裂などのリスクは、不可避の物なのだ。
 
 男が、詰め寄る。
 
「あんまり可愛いからって、押し倒―――」
 
 冗談すら聞いてもらえない。
 骨が軋むほど強く掴まれて、密着する。
 細剣、サン・テグジュペリの間合いの内へ。
 
 だが、翼の手の内に、剣は無い。
 
「残念だけど」
 
 代わりに握られているのは、十字の護章。
 
「まだこっちでやり残してる事が色々とあるから、ねぇ?」 

 開かれた掌で、光が溢れる。
 そして、瞬きする間に細剣の形へと変化した。
 護章は、彼の剣のもう一つの姿。
 これを凍夜の月光に晒す事で、護章は剣へと変わる、という訳だ。
 
 苦し紛れの策だったが、最後の一手としては十分だったらしい。
 
「其処は一人で見て来るといいよ」

 何故なら。
 刀身は、真っ直ぐに男の首骨―――“破砕点”へと、伸びていたのだから。

272 名前:不死の男(M) ◆UNdeAdJL8w:2003/05/05(月) 02:01

星川翼vs不死の男『月下の黙示録』
>>271
組み敷く。草の潰れた汁が鼻をつく。
酷く熱い。
お互い、手は全て出したはずだ。
 
これで、決まる。
守護者の血を飲み干す事で俺は闇の世界に行ける。
そして、渇きも癒える。
 
一石二鳥だ。
 
「そういうな。病み付きになる」
 

渇く餓える視界が深紅に染まり狂おしいばかりの渇望が俺の脳を占有し
ただただ俺の脳裏を満たすのは食欲であり性欲であり支配欲である。  
闇の世界が見えた世界は反転し唸るうねる血への渇きと欲求が解放され喉に熱く熱く
染み渡り全ての渇きが癒え俺の手下達が手を振り俺を向かいいれああ弟がいるにこやかに
受け入れられる全てを許したいそう俺が求めていたものは
 
銀の光が、
 
 
(不死の男;死亡)

273 名前:星川翼 ◆dicYNUKIME:2003/05/05(月) 21:54

星川翼vs不死の男『月下の黙示録』
>>272
 
 ぼとり、と胸の悪くなる音を立てて男の首が落ちる。
 “破砕点”を完全に捉えた結果が、これだ。
 筋肉の抵抗が最も薄く、首骨が最も脆い箇所を的確に打ち抜く。
 
 そうすれば―――筋肉、骨といった支えを失った頭は、自然と落下するという訳だ。
 
「あんまりいい気分はしないねぇ、圧し掛かられるのって」
 
 呑気な事を言いながら、血の流れ出す体を押し退ける。
 人の姿をしたモノを殺すのは初めてではないが、やはり、何処か気分は悪い。
 せめてもの救いは、外見が女性でなかった所だろうか。
 
「……と、と」
 
 軽い眩暈を覚え、傍の木に寄り掛かる。
 今回は何時も以上にハードだった。生きているのが、不思議なくらいに。
 
 とりあえず今は、それで良しとしよう。
 他に望む事は何も無い。
 
「それじゃ、帰ろうかな」
 
 頼り無い足取りで歩き出す。
 
 凍りついた夜から、帰る為に。
 平凡で、騒がしい日常へと、帰る為に。

274 名前:必殺!処刑コップ(大きい方)(M):2003/05/05(月) 22:00

ク、ハ。
この森で俺達は複数の死体を発見した。
 
状況から判断するにきっとこのような闘争が行われたに違いない!
 
星川翼vs不死の男『月下の黙示録』闘争まとめ
 
>254>255>256>257>258>259>260>261>262>263
>264>265>266>267>268>269>270>271>272>273
 
感想、ならびに突っ込むべき事はこのスレにリンクすればいいと出た!
ttp://plan-a.fargaia.com/html/test/read.cgi/vampbattle/1033894737/
 
そう、俺は…。現場検証のスペシャリストだ!

275 名前:ダンテ ◆JvmjyDANTE:2003/05/07(水) 04:54

vsツァーレンシュヴェスタン
『Air・覚えていますか』
http://www.appletea.to/~charaneta/test/read.cgi?bbs=ikkoku&key=043854167/277-278
 
 胸から生えた切っ先を、掴む。力を込めすぎて指が落ちるところだったが、この
程度の痛みがなんなのか。なんだというのか。
 力任せに、『前に』引き抜いた。
 胸をぶち破って、ブツぶつと肉をひっかけながら出てくる鋼。あまりの激痛と失血
が、さしものオレの強靭な精神にすらノイズを撒く。
 涙したい。
 喚きたい。
 死にたくない。
 
「ああ、分かってるさ」
 
 このオレの腕は二本しかない。守れるものは限られている。
 理不尽な死に嘆く者は、いつだってどこにだっている。ずっとずっと、こんな死へ
の苦痛なんか消えない。消し去れやしない。
 結局、遅かれ早かれ、こんな悲しみだけが広がって、人を、大事なものを、守り
たいすべてを押し潰すわけだ。クク、なんて不毛な。
 
 だが。
 だからといって。
 
「――それでも、オレは結論を急ぎすぎもしなければ、世界に絶望もしちゃいない!」
 
 ドン、と、引き抜いた剣を地に突き立てた。
 大地を揺らす一撃が、ゆるい風と砂塵を飛ばす。
 
 その盲いた眼を抉じ開けてやる。
 亡き魂にまでとどくように。
 この全身全霊を以って葬ってやる。
 ただ安心して逝けるように。
 
 人の心の光を、見せつけてやる。

276 名前:ダンテ ◆JvmjyDANTE:2003/05/07(水) 04:54

>275

 
 剣を構える。
 いつもの大剣とは勝手が違う。それよりもさらに大きく、分厚く、そして歪な、それ
はまさしく板のような剣。重みが傷に響く。
 振りかぶる。
 
 ゼクスは笑っていた。死神を前に笑っていた。笑うことでしか自分を保つことが
できないその姿は無残。
 ズィーベは叫んでいた。同胞の死を前に叫んでいた。叫ぶことでしか現実から
逃げられないその姿は滑稽。
 ふたりは、等しく狂い、惑い、壊れていた。
 剣を滅茶苦茶にかざし、構えも何もなく振るう。
 
 横薙ぎに剣を振るった。
 ただ一刀。
 ただ一刀で、二人が構えた剣を真っ二つに折り砕き、そのままの勢いで二人の
躰を寸断し、上半身を飛ばす。
 あまりに鋭すぎる断面から噴く血はあまりに少なく、それがふたつそろって空を
舞う光景は、いっそ幻想的なまでに美しく。
 
 勢い余った剣が、砂を大仰に吹き飛ばしながら大地にめり込む。
 数秒後、ぼとりと落ちる二つの上半身。絶命など確認するまでも無い。
 
 見たろ。これが悪魔狩人の力だ。
 明日はもっと強くなる。明後日はもっともっと強くなる。明々後日も、その次の日
も、ずっとずっと、何処までも強くなる。必ず。
 約束する。
 救えなかった君のために、君の家族を守ってやる。その愛する人を守ってやる。
その家族を、その大切な人を、必ず、必ず守ってやる。
 その、いつかまで。
 絶対に忘れない。
 
 ゼクス。ズィーベ。
 
 約束する。
 だから、今は――――さよなら。

277 名前:シモンズ・バーニアット(M):2003/05/07(水) 15:02

La Campanella ――クリスティーン・フローレンスvsシモンズ・バーニアット




異端審問官。
その姿を見たことがある人間は少ないが、その存在を知らぬ者はいない教会の使徒。
魔女狩りと言う唯一つの目的のために存在し、駆動する歯車。
その権限は絶対であり、彼らの任務遂行の為ならばいかなる超法規的処置もまかり通る。
曰く、人としての異端者である魔女を狩るための殺戮者。
中央より来たる白い死神。
殺人許可を持つ禍い人。
異端審問官について囁かれることは幾つもあるが、彼らに対する認識は共通だ。

―――即ち、危うきに近寄るべからず。


・・・それは深々と雪の降る寒い夜の話。
鉛色の空を見上げていた女性に声をかけた青年の話。
朽ちかけた教会の前に佇む、男と女の話。
ありふれた―――何処にでもある喜劇の一幕。

さあ、始めよう。
この上なく陳腐な男女の話を。



再会は突然だった。しかし必然ではあった。
教会の秘密を持ち出し、逃亡した彼女を追う。それは彼にとって至極当然の任務内容だったからだ。
特に彼女は『銃使徒』の称号を与えられていた。
それは教会で特殊任務に当たっていたと言う事であり―――彼女が特異変質存在、即ち魔女である事を意味する。

マントの下の白い僧服。
胸に下げられた教会のシンボル。
首に巻きつけられた紫色のチョーカー。

それは単体では無害なただの記号に過ぎない。
だがその三つが合わさった時、それは恐怖の代名詞を意味する一つの記号に変化する。
即ち、

「悪いね、クリス。先に謝っておくよ。・・・言わなくても分かるだろ? 僕がここにいるって事の意味を」

教会直属の殺人職能者、異端審問官。

278 名前:クリスティーン・フローレンス(M) ◆RSy/Judas.:2003/05/07(水) 15:06

La Campanella ――クリスティーン・フローレンスvsシモンズ・バーニアット

>>277

澱んで、灰色にくすんだ空。
偶然見付けた人気の無い、打ち捨てられた一角にあった教会。

―――神なんて信じていないのに、縋りたくなる。

それは、人の性なのだろうか。
傾いた十字架に捧げるのは、祈りには遠く。

「・・・柄じゃないわね、こういうのは」

外に出れば、雪が降り始めて。
閉ざされた空を見上げた時、背後から声を掛けられた。
懐かしくもあり、出来れば聞きたくなかった声。

「久しぶりね、シモンズ。半年ぶりくらいになる?」

振り返れば、雪と同じ白。
首のチョーカーだけが酷く異質。それは神に背く異端に死を与える者の証。

「もちろん良く判っているわ。けど、謝る事は無い・・・貴方は仕事じゃない。
 それに、わたしも――――」

閃いた右手の中には、大口径のオート。
全体は深い蒼で、スライドにはホワイトヴァインが金で刻まれている。
教会から持ち出した『秘蹟』の一つ――聖銃。

「忘れてないわよね、わたしの特技。―――こう言う場合はお互い様でしょう?」

手の中の鋼はその虚ろに目の前の男を捉え、殺意を吐き出す時を待っている。

279 名前:シモンズ・バーニアット(M):2003/05/07(水) 15:28

La Campanella ――クリスティーン・フローレンスvsシモンズ・バーニアット
>>278


「ああ、あの時は確か連絡員の真似事をさせられてたっけ。懐かしいな」

あくまでにこやかに笑いながら、シモンズは彼女の元に近づいて行く。
肩に積もった雪を払い―――手袋越しに伝わる冷たさに、僅かに顔をしかめて。
目の前に突きつけられた銃など、気にもしていない素振りで。

「忘れる訳が無いだろう? だから僕が派遣された。もっとも、かつての君の同僚達には反対されたけれど。
 どうやら僕は彼らに信用されてないみたいだ。困った事に」

ゆっくりと、少しずつ己の額へ近づいていく銃口を尻目に、世間話をするかのような軽薄さで語りかけながら
彼女の元へと足を進めて行く。
そして、その銃口がまさに火を噴こうとした瞬間、

「じゃあ、貸し借りはなしと言う事で。始めようか、『銃使徒ユダ』」

まるで魔法の如くシモンズの手中に現れた一挺の拳銃が、彼女の眼前に突きつけられていた。

280 名前:クリスティーン・フローレンス(M) ◆RSy/Judas.:2003/05/07(水) 15:59

La Campanella ――クリスティーン・フローレンスvsシモンズ・バーニアット

>>279

静かに、まるで降る雪のように。
僅かずつ、けれど確実に。
堆積する緊張がギリギリまで引き絞った人差し指を押し――

「・・・まるで漫画ね、こういう状態」

――眉間をポイントするハンドガンが、彼の手にあった。
張り詰め、解れ、切れかけた危うい糸。
風に吹かれただけで容易く切れてしまいそうな。

「そう。裏切り者には裏切り者の事情があるのよ、シモンズ」

聖銃を握っている手で、突き付けられた銃を上に弾く。
同時にベレッタM92FSセンチュリオンを抜いた。
トリガーは、何時も通りの重さしかなかった。

281 名前::2003/05/07(水) 16:19

La Campanella ――クリスティーン・フローレンスvsシモンズ・バーニアット
> 背景 
 
 それは、如何なる理由を以てしても如何なる秘蹟を以てしても、
彼らにとっては耳障りな「騒音」だった。神経の端から端まで、 
逆撫で削ぎ取り粗塩を塗り込む。不快、そんな感情しか起こらない。 
 その無垢なる瞳に感情があれば、だが。 
 黒の眼球が忙しなく動く。 
 暗い暗い夜空の元を、教会の外れを覗く為に。
 ああ、あった。 
 忌諱すべき存在が、憎んで果てない悪鬼どもが。 
 聖職者を名乗る破壊者が今日も、騒音と不穏と不和を撒き散らす。 
 
 耐えきれるものではなかった。 
 鳩の身に音は果てしなく辛く、悪意は脳の奥までも捻る。 
 空は暗い。 
 風は冷たい。 
 けれど、それが如何なるものか。 
 ここで死すには運命はあまりにも単調で、つまらなかった。 
 
 だから、飛び立とう。 
 
 その鳩が何を思ったか、誰にも知れない。吹雪く夜空に向かって 
飛び上がる愚行を、本能が許したとは思えない。だが、その鳩は飛んだ。 
精一杯に翼を広げ、飛んだ。死しか待たない、冷たい闇へ。 
 そこには何もなかった。 
 温もりも、優しさも、生も……死も。 
 
 だから、飛び立とう。 
 
 鳩は自由だった。 
 今日も自由で、白く、平和の象徴だった。

282 名前:シモンズ・バーニアット(M):2003/05/07(水) 16:32

La Campanella ――クリスティーン・フローレンスvsシモンズ・バーニアット
>>280


銃を握ったままの状態で突き上げられた右手を拳銃を真上に投げ上げる事で対処し、シモンズは三分の一歩分後退した。
白く凍った空気を引き裂いて、銃弾が飛来する。
正確に急所を狙って放たれたそれは、しかし背後に立つ枯れ木の梢に積もった雪を叩き落とすだけにとどまった。

シモンズは空になった両の手でポケットを探り、イヤーウィスパーを取り出して装着すると、
マントを翻し、その下に吊るされた手榴弾を引き千切って投げつける。


閃光。

轟音。

>>281

飛び立つ鳩。


熱はない、だが優しくもないその光を背にしてシモンズは走る。
瞳を閉じたまま、しかし何の迷いもなく、彼女の方へと。
左手には、先ほど投げ上げたものとまったく同じ型の自動拳銃。

純白の中で唯一黒いそいつが、無音の世界で咆哮する。
ちっぽけなその弾丸に、ありったけの殺意を詰め込んで。

283 名前:クリスティーン・フローレンス(M) ◆RSy/Judas.:2003/05/07(水) 17:27

La Campanella ――クリスティーン・フローレンスvsシモンズ・バーニアット

>>280

「それ」を出すのが見えた瞬間、目は瞑った。
幸い、教会のドアは近い。腕を交差して飛び込む。
麻痺した耳には銃声は届かなかったが、翻ったコートが穿たれる感触があった。

「・・・っ!」

仰向けに床に落ちて、開いたドアを蹴り付けて閉める。
聖銃が立て続けに吼えた。
まだ聴力は麻痺したまま。

―――そうそう当たらない、か。

跳ね起きて、会衆席に並ぶ長椅子の影に。
ベレッタを口に咥えて、空のマガジンを捨てた聖銃に新たなマガジンを叩きこむ。
後退位置から戻るスライドが、銀の弾丸をチェンバーに送りこんだ。

「・・・楽な相手じゃないわね」

それでも、やられる訳にはいかない。やらなければいけない。
エッジを――弟の身体に宿る吸血鬼を追う。
『ユダ』はその為に生まれたのだから。

284 名前:シモンズ・バーニアット(M):2003/05/07(水) 17:50

La Campanella ――クリスティーン・フローレンスvsシモンズ・バーニアット
>>283


相手を礼拝堂の中に追い込む事には成功した。ここまでは予定通りだ。
だが、いくら彼の能力をもってしても、完全はあり得ない。
いくら突出した能力があろうと、彼の行動を制限するのは彼自身の肉体であるからだ。

扉の隙間から襲いくる銃弾を難なくかわし、シモンズは耳に詰められたウィスパーを外す。
同じように扉の間隙を通じて銃弾を返して後、建物の外側から回り込み、
吹き曝しの状態の窓を突き破って礼拝堂に突入した。

交錯する二対の視線。

瞳を軽く細めて微笑を表現すると、穴の開いた天井の真下に立ち、
そこから落ちてきた鉄の塊をキャッチする。
先ほど投げ上げた拳銃である。
左右に大きく両腕を広げた状態でしっかり掴み取ると、真正面の彼女に向かって大げさなアクションで
双方の拳銃を突きつけると、

発砲。
発砲。
発砲。

間断なく吐き出される銃弾に対し、酸の雨に打たれて今にも朽ち果てそうな形相の十字架の聖者が
何を考えたか、知る術は何もない。

285 名前:伊藤惣太 ◆PVyuQOeWVw:2003/05/07(水) 18:47

???vs???

 ナイフを構える。
 サド公爵の愉悦。結局、俺はずっとコイツを使ってきた。
 人間の手にはあまるデカさ。形状。鋭さ。全部慣れた。
 慣れるほど使って、吸血鬼どもを狩り立ててきた。
 今回も、それと同じだ。
 
 強く握り締める。皮手袋が鋭くうなった。
 駆け出す。体中の筋肉をポンプみたく軋ませ、人体の持つ最高の速度を稼ぎ出す。
 まだ。まだ遅い。もっと速く、速く、速く、
 この男を、
 ブチ殺さなくては。
 
「がああああああぁぁぁぁっ!」
 
 煮え滾る殺意を、肩に乗せる。振りかぶる。
 切っ先に願う。疾く、刺され。
 叩きつけるように、俺は眼前の男にナイフを突き出す。
 狙うは心臓。それ以外ありえない。

286 名前:クリスティーン・フローレンス(M) ◆RSy/Judas.:2003/05/07(水) 18:57

La Campanella ――クリスティーン・フローレンスvsシモンズ・バーニアット

>>284

ドアを叩くのは鉛の弾の過激なノック。
返事をするのも命懸け――ふとよぎる下らない思考。

―――・・・?

遅い、と思った刹那だった。
横手の窓から白い影。
反射的に飛び退き、両手の銃を向ける。

「・・・全部お見通しだった、って訳?」

だとしたら悪い冗談だ。
いや、向けられた「二丁」の銃を前にしていると冗談にもならない。

左足を椅子の上、右足を椅子の背に掛けて、
そのまま弾丸をばら撒きながら椅子の背の上を祭壇方向に走る。
左の脹脛と右の上腕を一発ずつが掠め、左脇腹の浅い所を更に一発が貫通した。

―――痛・・・くっ。

祭壇の燭台を掴んで投擲、説教壇を盾に――まあ、頼りないけれど無いよりは良いだろう。
聖銃とベレッタを、焦燥に駆られながらリロードした。

287 名前:ヴェドゴニア ◆amVJEDOGOs:2003/05/07(水) 19:08

???VS???
 
 さすがは俺だ、よく分かってやがる。
 狙うべきところは唯一つ、脈打つ心臓、それが吸血鬼を滅するロウ。
 でも、だからこそ、その一撃は読みやすい。
 
 俺の手にもサド侯爵の愉悦。
 悪趣味な装飾を施された、もっとも扱い慣れたナイフ。
 吸血鬼が使うように最適化された武器を振る俺と『俺』。
 なるほど、所詮は同じ一つから分かたれた二人、か。
 
 刃が噛み合う、火花が散る、鋭い金属音一つ。
 ギリ、と押し込まれる刃を、俺は腕を旋回させる事で逸らす。
 身体の外に流れた刃と腕をガイドに、『俺』へともたれ掛かる。
 肩に押されてバランスを崩す『俺』。
 
「どうした、そんなんじゃ当たる攻撃も当たらないぜ、『俺』」
 
 殺意を剥き出しにぶつけてくる――それも仕方ないか――『俺』に対して囁きかける。
 同時に肘でアゴをかち上げつつ、逆手に持ち替えたナイフをアバラの隙間目掛けて振るった。
 俺と違って、人間は心臓以外の内臓を傷つけられただけでも十分致命傷になる。
 更に人間と吸血鬼の運動能力の差、やっぱり俺は圧倒的に有利だ。
 余裕すら持って、俺はこの茶番劇の勝利を思い描いていた。

288 名前:シモンズ・バーニアット(M):2003/05/07(水) 19:39

La Campanella ――クリスティーン・フローレンスvsシモンズ・バーニアット
>>286


「うん、最初から知っていた。それが僕の能力だから」

未来を視る能力。
それが彼の異端審問官としての能力だ。
それは予測などと言う不確定なものではない。
幾つにも分岐した未来を視認し、その情報を元に戦術を組み立てる。
故に彼は―――不敗にして無敗。

もっとも、同じ能力者―――魔女の未来を確定する事は難しい。
彼らは運命の外より自らの未来を引き寄せることが出来るからだ。
だから彼はそれ以外の未来を読む。自分の未来を、この場所自体の未来を読む。
砕け散る長椅子を、宙を舞う燭台を、崩れ落ちる天井を幻視する。

交差する弾道の外側に状態を反らし、撃つ、撃つ、撃つ。

右手の銃を撃ち尽くしたのと同時に投げ上げて口で銜え、空いたその手で
空になったマガジンを投げ捨てると、新しいマガジンを突っ込んで遊底を引く。
再装填が済むのと同時に、牽制に放っていた左手の銃も―――こちらはまだ
多少残弾があるが―――再装填。

散発的に襲ってくる銃弾をぎりぎりのラインで外させながら、両手の拳銃の狙いを
罰辺りにも祭壇上十字架にかけられた聖者の足元につけ、引き金を引く。

倒壊寸前だった聖者は自重を支えきれずに、壇上の背教者目掛けて倒れこんだ。

289 名前:伊藤惣太 ◆PVyuQOeWVw:2003/05/07(水) 19:52

>287 ???vs???
 
 囁いてくるその隙が、唯一の救いだった。
 普通なら絶対に躱せなかった一刺しを、ジャケットをたぐりよせて楯にする。
 裏に仕込んでおいた鉄板がナイフを受け止める。
 だが、その純粋な力だけはいなせない。俺の体が宙に浮く恐怖。
 
 地面に背中から叩きつけられた。
 二度、三度と転がって衝撃を逃がすと、勢いを利用してすぐさま立つ。
 胸がズキズキ痛みやがるが、折れてまではいないはずだ。
 ケブラーがたやすく裂けている事実にゾッとする。
 
 奴の顔を見る。
 俺と同じ顔。俺と同じ姿。俺と同じ存在。
 ただ少々、コイツと俺は道を違えた。それだけのことだ。
 
 皮肉げに唇を歪めている。
 俺は忌々しく血反吐を吐いた。
 
 素早く拳銃を引き抜く。レイジングブル・マキシカスタム。
 流石に昔のまま、化け物仕様の拳銃じゃあないが……それでも、人間が扱える限界すれすれの狂犬だ。
 両手で構える。紫外線のレーザーサイトが、確実に敵をとらえる。
 
「あああッ!」
 
 何度も引き金を引く。五発、六発。
 硝酸銀と血液破壊剤を仕込んだ弾頭が、腕全体を痺れさせながら吹っ飛んでいく。

290 名前:クリスティーン・フローレンス(M) ◆RSy/Judas.:2003/05/07(水) 20:13

La Campanella ――クリスティーン・フローレンスvsシモンズ・バーニアット

>>288

そうなる事が判っていた。
これから起こる事実が見えていた。
つまり、未来を知る事が出来る、と言う事か。

―――最悪ね。

当たらない訳だ。
どうする。どうすれば良い。
不意に響く、軋む音。

「―――――!?」

加速するばかりの焦りが、彼の狙いに気付くのを遅らせた。
十字架。
随分皮肉に満ちた攻めだ。

「・・・罰当たりかしらね、っ!」

咄嗟に放った蹴りはちょうど顔面に。
赤錆びた顔にライダーブーツの後がくっきりと刻まれた。
浮び上がったそれに右腕を掛けて、渾身の力で振る。
同じく罰当たりな神の使徒へ向けて。

291 名前:ヴェドゴニア ◆amVJEDOGOs:2003/05/07(水) 20:20

>>289 ???VS???
 
 なるほど、抜け目ない奴だ。
 防弾防刃繊維だけに飽きたらず、鉄板まで仕込んでやがるとは。
 だが、それでこそ『俺』。
 バケモノならざる身で、人ならざる者達を相手してきた経験から身に付けた知識と経験。
 それに裏打ちされた完璧な武装。
 そうでなくちゃ『俺』じゃない。
 
 紫外線に顔をしかめつつ、飛来する銃弾を視認する。
 だが甘い、忘れたワケじゃないだろう?
 俺達吸血鬼は、銃弾を『視て』かわすことができる事を。
 
 走る、一発目を、首を傾けてかわす。
 僅かにこめかみの辺りを掠めて、髪を一房持っていくに留まった。
 少しだけ脳みそが揺れる、さすがにフリークスウェポン、その威力は伊達じゃない。
 すぐに視線を定めて二発目、身体を半身にしてやりすごした。
 三発目をバク転ですり抜け、後ろに飛んだ反動で前に出て四発目をナイフの一撃で弾く。
 五発目をしゃがんでかわし……六発目!
 それはもう俺の眉間に着弾しようとするタイミング、かわせない……だが。
 
 右手を亜音速で振るう。
 残像すら視認できないスピードで顔の前を手が通り過ぎ、驚異は俺の掌の中へ。
 『俺』の目前で立ち止まり、腕に力を込める。
 パキリと、手の中の銃弾がワレル音。
 あふれ出した硝酸銀が掌を灼くが、その程度の痛みにどうにかなる俺じゃない。
 『俺』に殊更見せつけるように開いた掌から、銃弾の残骸がこぼれ落ちた。
 地面に零れて、寂しげな金属音を立てる。
 
「どうした……『俺』はこんなモンか?」
 
 だとしたら、この交わりに何の意味がある?
 ほんの僅か交錯した可能性世界、そこでの闘争にどんな意味があるというのか。
 
 ……いや、考えるのは後にしよう。
 今は、唯生きる事だけを。
 こんなところで死ねないだけの理由が、俺にはあるのだから。
 
 ――それは、『俺』にもあるのだろうか。
 
 ……考えるなッ!
 思考を断ち切るように、サド侯爵の愉悦をアゴ目掛けて振るった。

292 名前:シモンズ・バーニアット(M):2003/05/07(水) 20:54

La Campanella ――クリスティーン・フローレンスvsシモンズ・バーニアット
>>290


未来が書き換えられた。
リアルタイムで変化する未来を何とか追いながら、それでもシモンズは余裕の態度を崩さない。
少なくとも、外見上は。

実際は既に限界寸前だ。元々彼はそんなに体力のある方ではないのだ。
動きが鈍れば当然、知っていたとしても対処する事は出来はしない。

飛んできた十字架をバックステップでかわし、足元に銃弾を一発。
倒れてくる聖者の、茨の冠の棘が引っかかる軌道の先にある己のマントの端を
吹き飛ばして引き剥がし、機動力の低下を事前に予防する。

ここまでは良い。

だが、どうするか。
既に彼女本人の未来は白紙のノートの如く映り、彼にその先を知覚させない。
周囲の状況も、変化の幅が大きすぎる。

どうしても見えないのだ。自分が勝つ未来が。

「いい加減疲れてきたんだけど、ねっ!!」

自分が死ぬ未来も見えてこない。これは自分が生き残ることを暗示しているのか。あるいは―――

散漫になりがちな思考を無理やり軌道修正し、長椅子と言う遮蔽物を確保しながら
シモンズは彼女の傍へと疾走する。

より強い可能性を、より狭い選択肢を求めて。

293 名前:伊藤惣太 ◆PVyuQOeWVw:2003/05/07(水) 21:54

>>291 ???VS???
 
 そう、殺せない。
 ダウナー系のカプセルを一錠口に放り込む。噛み砕いて嚥下。たぎりすぎだ、少し落ち着け。
 この程度で殺せないのは、誰より俺がよく知っている。
 
 ついでに言えば。
 もう、俺はコイツに通用する攻撃を持っていない。
 
 ナイフも、銃弾も、あっさりと止められた。
 もうこれ以上、どうやったって毛筋ほども傷をつけられやしない。
 それが実力差だ。真っ向から開いた差だ。
 いまさらそれを埋めることは出来ない。
 
「……はっ、余裕なんて見せてる暇あるのかよ、『俺』?」
 
 それでも、殺す。殺さなければならない。
 この腕が動くかぎり。この足が駆けるかぎり。俺が生きているかぎり。
 理屈など、必要あるものか。
 コイツがココにいる。それで充分だ。
 
 奴のナイフの軌道は圧倒的に速かったが、それでも間合いを詰め、振り下ろすよりは、俺が引き金を引くほうが速かった。
 牽制にすらならない弾丸は、それでも反動で俺の体を後ろに飛ばす。
 容赦なく手首が外れる激痛が走るが、喚きたいのをおさえ、懐のケースを取り出す。
 血液破壊剤を入れたインジェクターをまとめて掴むと、とにかく奴へとばらまいた。

294 名前:クリスティーン・フローレンス(M) ◆RSy/Judas.:2003/05/07(水) 22:03

La Campanella ――クリスティーン・フローレンスvsシモンズ・バーニアット

>>292

どうする―――


駄目だ。考える前に銃弾に集中しろ。
動け。的を絞らせるな。
トリガーを引け。
相手の思考を掻き乱せ。
裏をかけ。彼の「能力」を超えろ。

「疲れて来た? 仕事の割に鍛え方が足りないわね」

―――そう。

見えるのなら、見えても対処しようの無い状況を作り出せ。
例えば――始めた時のような。

牽制の銃撃を交換しつつ、互いに距離を詰める。
聖銃がホールドオープンした瞬間、跳躍。空中でそれを投げた。
彼の背後に、背中合わせに着地。

「・・・シモンズ。貴方はこの後どうなるか判る?」

右腕をだらりと垂らして、聞いた。

295 名前:ヴェドゴニア ◆amVJEDOGOs:2003/05/07(水) 22:14

>>293 ???VS???
 
「チ……だったら余裕を奪ってみろよ」
 
 至近で放たれた銃弾が通り過ぎていく。
 もともと狙った一撃じゃないんだろう、反動を利して距離を取られた。
 そしてバラ撒かれた注射器……中身は例の薬か。
 懐からレイジングブル・マキシカスタム――『俺』のとは違う特別製だ――を抜いて空間へと向けた。
 目を細め……連続で引き金を絞る絞る絞る。
 
 放たれた凶悪な鉄塊が、次々と器を打ち砕いていく。
 中身の液体が虚空にブチ撒けられながら、砕けて輝く破片と共に地面へと落ちていく。
 返り血のように俺にもいくらか浴びせられるが、血中に取り込まれない限りどうって事はない。
 委細構わず、『俺』に向けてトリガー。
 それで弾切れ、手を開いて銃を落とし、今度は畳まれた三つ刃――旋風の暴帝――を取り出す。
 バネが弾けて刃が開く、中心の把手を持って『俺』へと斬りつけた。
 
「薬に頼らないとメンタリティ制御できないようじゃ駄目だろ」
 
 薄笑いを浮かべて『俺』を嘲笑う。
 まだだ……まだこんなモンじゃないだろう? 人間を選んだ『俺』よ。

296 名前:シモンズ・バーニアット(M):2003/05/07(水) 22:36

La Campanella ――クリスティーン・フローレンスvsシモンズ・バーニアット
>>290


回り込まれた。
反応が出来なかったのだ。その速さに。
銃使徒。聖銃と呼ばれるカスタムメイドの大型拳銃の扱いに特化した、教会のエージェント。
多少鍛えた―――と言っても、通常のバウンサーやスイーパー相手でも遜色ない
レベルではあるが―――程度の異端審問官では、能力を用いてもその差を埋め切れなかったか。いや・・・。

肩越しに相手の呼吸を感じとる。
元来諦めの良いシモンズは、彼女の一言で覚悟を決めた。

不思議な事に、真っ白だったはずの彼女の未来が、様々な姿に変化し始める。
吉兆か凶兆かは彼には判断が付かないが、まったく見えないよりは好ましい事ではある。
少なくとも、彼女は運命の輪に巻き込まれ始めている事だけは確かなのだから。

「ああ、判るよ。最悪な事にね」

軽口を叩きながら、こちらも両腕をだらりと真下にたらす。

「最初に聞いておくけど、三歩と五歩、どっちが良いかな?」

その選択によってまた、運命は変わる。
その選択が正しい事を、シモンズは信じてもいない神に祈った。

297 名前:クリスティーン・フローレンス(M) ◆St55teCR9k:2003/05/07(水) 22:52

La Campanella ――クリスティーン・フローレンスvsシモンズ・バーニアット

>>296

「そうね・・・3歩にしましょうか」

根拠は無い。
彼にはこの選択が、その結果の全てが見えているのだろうか。

一歩。
お互いの背中が離れた。

二歩。
床が歩く度に今にも抜けそうな音を立てる事に、今になって気がつく。

三歩。
半身振り返って、左手のベレッタのトリガーを。
只ひたすらに速く。

298 名前:伊藤惣太 ◆PVyuQOeWVw:2003/05/07(水) 22:53

>>295 ???VS???
 
 悪寒だけで身を傾げる。
 それでも避け切れず、弾丸は俺の頬と右耳をかすめ、衝撃波が肉を切る。
 直撃すれば人体など原型無く吹っ飛ぶ破壊力。悪夢のように懐かしい。
 さらに取り出される三枚の重ね刃。凶悪なフォルム。旋風の暴帝。
 これだ。なんとも懐かしいこいつらこそ、鬼を狩る鬼殲鬼の武器。
 人として生きることを選んだ俺が、彼女とともに切り捨てた武器。
 
 彼女――――か。
 
 俺の目には光にしか映らない一閃。
 経験が危機に反応する。かざしたレイジングブルのバヨネットが、銃身ごと中ほどから消える。
 切り落とされた。
 その衝撃で、またも俺は後ろに下がる。
 
「く、くっくっ、か弱い人間は薬(こんなもの)でもないと戦えなくてな。おまえと違って」
 
 こっちの間合いに入るには、俺の速度じゃ全然足りない。
 どっかからそのスピードを持ってくる必要がある――――それを持ってるのは、こいつ。目の前の『俺』だ。
 それにはあれじゃあ……旋風の暴帝ではリーチが長すぎる。
 もう一度、ナイフを。サド公爵の愉悦を握らせなければならない。
 
「……そっちじゃ、リァノーンは元気なのか、よッ!」
 
 軽い挑発のつもりだったが、半ば本気で知りたくもあった。
 言いつつも右腕をはめ込みつつ、奴に向かって低く飛び込む。

299 名前:シモンズ・バーニアット(M) ◆OQdumlhYVQ:2003/05/07(水) 23:07

La Campanella ――クリスティーン・フローレンスvsシモンズ・バーニアット
>>297


「ああ、それじゃ」

もはや彼は勝つ事を捨てていた。ここで死なぬとしても、どうせ何時かは死ぬのだ。
そう割り切ってしまえば楽だった。
故に―――彼の足取りは、非常に軽やかであった。

一歩。
複数の未来が混在して視える。
撃ち抜かれるヴィジョン、外れるヴィジョン、撃つと見せかけて逃げるヴィジョン。

二歩。
混じり合った未来が螺旋を描き、脳内で閃光の形を取る。

三歩。
振り返って、右腕を跳ね上げる。
トリガーに掛かる指に力が入るその直前、

確定された未来が脳裏に浮かび上がった。

300 名前:クリスティーン・フローレンス(M) ◆RSy/Judas.:2003/05/07(水) 23:25

La Campanella ――クリスティーン・フローレンスvsシモンズ・バーニアット

>>299

速く。
それは、刹那より短い時間だったろう。

銃声は殆ど同時だった。
結果は―――

わたしの銃弾は、彼の右のこめかみを掠めた。
この距離で外す事など、有り得ない事だった。




彼の銃弾が、わたしの左目を撃ち抜いていなければ。
半分に狭まった視界が、酷く紅く。
痛みは不思議なほどに無かった。

301 名前:ヴェドゴニア ◆amVJEDOGOs:2003/05/07(水) 23:37

>>298 ???VS???
 
「あァ、元気だよ……もうかれこれ百年の付き合いになるな」
 
 右腕……何か動きがおかしいとは思ってたが、なくしたのか。
 替わりにはめ込まれた機械仕掛けの仰々しい腕。
 ありゃ、存在そのものが凶器で狂気って感じだな。
 
「そういうそちらこそ、みんなはどうしてるんだ?
 フリッツは? モーラは? 弥沙子や香織は?」
 
 人としての道を選んだ以上……彼女はいない筈だ。
 それを選んだ『俺』に文句は言いたいが、責める筋合いなどありはしない。
 バケモノを選んだ時の俺も、本当にギリギリまで悩んでいたから。
 当然、人を選んだ俺だって苦渋の選択を強いられていた筈なんだ。
 
 ……感傷に浸るのもほどほどにしとかないとな。
 改めて、現実――虚構に目を向ける。
 懐に飛び込んでくる『俺』。
 何を狙ってるのか知らないが、思い通りにさせてやるつもりもなければ必要もない。
 踏み込んできただけバックステップ、低い姿勢になっている『俺』に暴帝を投げつけてやった。
 その体勢でかわせるか?

302 名前:伊藤惣太 ◆PVyuQOeWVw:2003/05/08(木) 00:17

>>301 ???VS???
 
 旋風の暴帝……その一番ろくでもないところは。
 あんなナリして、その性質はブーメラン……つまり、投げつけてもまた手元に戻るところにある。
 
 なんとか動く右手にナイフを握る。
 近づく俺から逃げる『俺』。そうだ、ただの人間の俺が、何もなしに吸血鬼に突っ込むわけがない。
 「そう思うに違いない」んだよ、『俺』はっ!
 だから、何も持ってない俺を不必要に恐れて逃げる!
 
 投げつけられる暴帝。その様はまさに猛威を振るう竜巻だ。
 ここから躱すことはできない。
 躱す気なんて最初からない。
 左の義手を突き出して、刃を真っ向から受け止める。
 鋼の義手が、いともあっさりとスクラップに刻まれるが、それでいい。
 それでわずかにそれた暴帝の軌道に、俺はナイフを突き込むことができる!
 刃の側面を強打されて、旋風は狂ったように回りながら吹っ飛んでいく。
 その先は――――そう、わざわざ身を低くして近くした地面だ。
 刃は大地に傷跡を残し、パワーを失って遠くに転がる。
 
「モーラは、今は俺の相棒だ。弥沙子も香織も便りが届く。
 フリッツは、死んだ。俺が殺したようなもんだ」
 
 少しだけ悩んだ。
 俺とコイツ、一体どちらの選択が正しかったのか。
 すぐに考えるのをやめた。
 俺が選んだのは、こっちだ。
 
 今のでサド公爵の刃もずたずただ。数合も打ち合えば折れるだろう。
 いや、それ以前に、それまで俺が保つかどうか。
 
 痛む右手で構える。
 来い、と呟く。もう勝機などいくらもない。それで気が楽だった。あとのことを考える必要もない。

303 名前:ヴェドゴニア ◆amVJEDOGOs:2003/05/08(木) 00:31

>>302 ???VS???
 
「そうか、フリッツが、な……」
 
 何とはなしに納得する。
 『俺』の隣にモーラがいるんなら、そこにフリッツの居場所はないだろう。
 どういう紆余曲折を経たのかは興味深いところではあるが……。
 
 そんな思考に委細構わず、『俺』の刃が迫る。
 あそこまで身を呈して暴帝を潰されるとは思っていなかった、それは認める。
 慎重すぎた俺を読んでの行動は見事というしかない。
 だが、俺の牙はまだ折れちゃいない。
 
 この距離で『俺』に対処できる武器は一つしかないだろう。
 一度しまったサド侯爵の愉悦を再度抜く。
 呟きに、応と呟き返す。
 
 刃と刃がぶつかる、シンプルな殺し合い。
 打ち、弾き、受け流し、突き込み、切り払う。
 よく付いてきている、人間とは思えない集中力と反射神経だ。
 だが、それだっていつまで保つか?
 『俺』も、その刃も。

304 名前:シモンズ・バーニアット(M):2003/05/08(木) 00:39

La Campanella ――クリスティーン・フローレンスvsシモンズ・バーニアット
>>300


終わった、か・・・・・・。
最後の最後で視えた未来。それを見せたのが何者であれ、やはり感謝せねばなるまい。
もっとも、生きている事が幸福な事とは、必ずしも限らないのではあるが。

「流石に疲れたね・・・・・・おや?」

たった今気が付いたように、シモンズは鐘楼の方を振り返る。
錆付いたその鐘が苦しげに告げる回数は六回と十八回。
続いて聞こえてくる足音の主。当然シモンズは彼のことを知っている。

僧衣を纏った長身の壮年男性。
今しがたシモンズが殺した女と同じ『銃使徒』の称号を持つ彼の名は、皮肉にもシモンズと同じ―――

「『銃使徒』シモン。少しばかり遅刻のよう、ですね」

息が切れる。やはり運動不足だろうか。
深呼吸をして呼吸を整える。吸って、吐いて。

「・・・・・・ふう。と言う訳で、彼女は僕が仕留めました。これから帰りますが・・・ご一緒しますか?」

相変わらずの軽薄な口調で、シモンズは男に話しかける。
本音を言えば、少し休みたかった。
火照る身体を、降り積もる雪で冷ましたかったのだ。
それでも、シモンズは警戒はやめなかった。

彼が視た未来の中には、眼前の男に撃ち殺されると言う未来も映っていたから。

305 名前:伊藤惣太 ◆PVyuQOeWVw:2003/05/08(木) 01:42

>>303 ???VS???
 
 四度目の金属音。力負けして腕が大きく吹き飛ぶ。
 もはや腕もあがらない。ナイフに溜まった疲労も限界だ。
 長年連れ添った相棒だ。寿命ぐらいじっくり見なくてもわかる。あと二回。
 それだけ打ち合えば刃は折れる。
 
 下から跳ね上がってきた奴の刃を受けた。
 衝撃に大きく腕があがる。
 痺れる右腕に鞭をいれる。ここだ。
 満身の力をもって腕を振り下ろし――――ナイフを投げつける!
 
 狙いは眼。
 無論、いくら不意を突こうと、銃弾よりも遅い攻撃だ。弾かれる。
 しかしそのナイフは、弾かれれば……砕ける。
 刃金のかけらが奴の目の前で弾け、それは隙を生む。
 
 それだけの隙があれば。
 懐から、もう一個のケースを取り出せる。
 
 インジェクターをさっきと同じようにバラまく。
 無論、叩き落される。それはわかっている。だがそれの中身は――――

306 名前:銃使徒シモン ◆e6StAGFMhw:2003/05/08(木) 01:49

La Campanella ――クリスティーン・フローレンスvsシモンズ・バーニアット
>>304

「ふむ――――こういうときには、礼の一つでも言った方がよいのかね?」 
 
 険しい顔のまま、にこりともせず『銃使徒』シモンは目の前の若い男に皮肉な口調で問いかける。 
 白い僧服の――――これで髪が金髪でなければ知っている神父にそっくりだっただろう―――― 
異端審問官の冗談ともつかない言葉はあえて黙殺し、倒れたままの少女を見る。 
 
 『銃使徒』ユダ。 
 インモラルナンバーの背徳者。 
 
 既に空虚しか映さないその瞳は片側を欠いたまま酷くリアリティのない印象で、さながら壊れた人形 
のそれにすぎない。 
 果たして「未来を視る」というこの男は、この様な瞳をすることがあるというのだろうか。 
 ふと、奇妙な興味が幽かに湧くのを感じ、懐に腕を伸ばすと…………煙草入れを取り出す。 
 
 葉巻をくわえたまま、警戒を怠らない若者に口調はそのままに尋ねる。 
 
「そういえば、火は持っていないかね? 
 こう寒くては堪らんからな」 
 
 寒さは、感じてはいなかった。 
 ただ、胸の中には雪よりも冷たく、抑えがたい感情が熾火の様に燻っている。 
 『銃使徒』ユダを倒してみせたこの男、異端審問官《シモンズ・バーニアット》の腕のほどを自ら試 
してみたいという、ただ、それだけが。 
 
 いまは、いい。 
 いまは、かつては同じ『銃使徒』として肩を並べたこの少女の亡骸を前にして、喪失感と充足感という 
相矛盾する想いが全てだった。 
 ふと、口をついて出るのは、一言。 
 
「『願わくは我らの手のわざを、かたからしめたまえ』……では、行こうかね」 
 

307 名前:ヴェドゴニア ◆amVJEDOGOs:2003/05/08(木) 01:58

>>305 ???VS???
 
「クッ……」
 
 砕け散ったナイフの欠片が目つぶしになり、反応が遅れる。
 その隙にバラ撒かれたのは、また例の注射器か。
 だが……こんなモンが効かないのは先刻承知の筈だろうに。
 ……何かの布石か?
 
 かといって、喰らってやるワケにもいかない。
 右に左に縦横無尽にナイフを振るって、次々にアンプルを叩き割る。
 俺に刺さる事は決してない。
 中身が飛び散り、俺にも掛かる……コレは、さっきと違う、この臭いは……。
 
「……ガソリンだとッ!?」
 
 先の血液破壊剤入り注射器はコレの布石……!?
 慌てて『俺』の方へと向き直る。
 ……拙いッ!

308 名前:シモンズ・バーニアット(M):2003/05/08(木) 02:11

La Campanella ――クリスティーン・フローレンスvsシモンズ・バーニアット

レス番まとめ



>277
>278>279>280>281>282>283>284>286>288>290>292>294>296>297>299>300>
>304>305

なお感想は、

http://plan-a.fargaia.com/html/vampbattle/res.cgi/1033894737/

こちらか

http://www.appletea.to/~charaneta/test/read.cgi/ikkoku/1035898557/

こちらまで。

309 名前:伊藤惣太 ◆PVyuQOeWVw:2003/05/08(木) 02:26

>>307 ???VS???
 
「遅いよ……ッ!」
 
 ポケットから抜きざま、火をつけたライターを投げる。
 大きく燃える炎は消えることなく、逃げようとする『俺』の足元、滴るガソリンに落ち、
 
 ――――ぼっ、と燃え上がった。
 
 激しく、人の形の炎が燃える。
 吸血鬼は炎に弱い。焼き、清められ、その体は再生することなく塵に戻る。
 こいつで……終わりだ。
 
「だから……言っただろうが。余裕見せてる暇なんざないって、な」
 
 懐から煙草を取り出す。指がどうしようもなく震えて、少々苦労する。
 やっとの思いで、くしゃくしゃの箱から一本取り出して、咥えて、はたと気づく。
 
「……そっか、ライター使っちまったか。火がねえ」
 
 まあ、いい。
 『俺』の火柱を眺めながら、火のついていない煙草を咥え、じっと佇む。それでいい。
 
 勝利の実感も、喜びもなかった。
 いや、あったのかもしれない。むしろそれだけではなく、悲しみや怒りや、空しさ、そんなものがごちゃまぜになっていて。
 結局、何もないように、感じてしまう。
 ただ、胸糞悪い思いで、その炎を見つめる。
 
「……帰らなくちゃ、な」
 
 自分でも意図せず、そんな言葉が漏れた。帰ろう、彼女のところに。

310 名前:シモンズ・バーニアット(M):2003/05/08(木) 02:32

La Campanella ――クリスティーン・フローレンスvsシモンズ・バーニアット

レス番まとめ改定
(>308は無視)


>277
>278>279>280>281>282>283>284>286>288>290>292>294>296>297>299>300>
>304>306

なお感想は、

ttp://plan-a.fargaia.com/html/vampbattle/res.cgi/1033894737/

こちらか

ttp://www.appletea.to/~charaneta/test/read.cgi/ikkoku/1035898557/

こちらまで。

311 名前:ヴェドゴニア ◆amVJEDOGOs:2003/05/08(木) 02:55

>>309 ???VS???
 
 ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ……!
 火は拙い、俺が焼ける、灼ける、燃える、燃え尽きる……!
 巫山戯ろッ……ココで終われるかッ!
 
「余裕……かましてんのは……そっちだッ……!」
 
 念じる、念じる、念じる。
 イメージを練り上げ、具現させる。
 チリチリと思考を灼く炎が、焦燥を煽る。
 落ち着け、落ち着くんだ……まだ、機はある。
 深く、深く、深く……。
 
 風が、吹いた。
 そよ風は、俺のイメージと共に風速を増して強風となり、暴風へ。
 収束していくそれは、俺を焦がす炎へと叩きつけられる。
 風圧に負けた炎は勢いを失い、俺に振り払われた。
 割れた炎から現れた黒焦げの俺は、果たして『俺』の目にどう映ったか?
 
「……ッさすがに、今のはやばかったぜ」
 
 だが、俺は生き延びた。
 そして、『俺』は勝ったと思ってしまった。
 
 戦場じゃ、そういう奴から死んでいく。
 
「帰るべき場所は、忘れちゃいけないけど、な」
 
 俺のイメージは、少し離れた場所にある旋風の暴帝を鷲掴みにしている。
 ふわりと宙に浮いた刃が回転し、『俺』目掛けて飛んでいく。
 
「だけど……ちゃんと帰ってやる為にも……終わるまでは忘れとけ」
 
 かわせない……筈だ。
 膝を突きながら、最後の一瞬まで気を抜かずに行方を見守り続けた。

312 名前:伊藤惣太 ◆PVyuQOeWVw:2003/05/08(木) 03:23

>>311 ???VS???
 
 胸を裂いて。
 鋼鉄の刃が咲く。
 
「……く、……はっ、がはっ」
 
 押し寄せる血塊を、我慢することなどできなかった。
 喉の奥から溢れ出してくる濁流を、溢れさせるようにして吐く。顎より下がべっとりと赤く染まる。
 そう、忘れていた。
 念動力。あの時俺が確かに行使したあの力を、完璧に失念していた。
 膝が折れかける。やばい、今倒れたら、絶対に立ち上がれない。
 視界にもやがかかる。消えかける意識を強く握り締める。
 無駄だった。すべてが指の隙間からすべりおちていく。
 死ぬ。
 
 目に映る奴は、黒かった。消し炭にならなかったのが不思議なくらい全身を焼かれていた。
 それでも、生きている。時間がたてば、その傷も再生するのだろう。
 俺は、無理だ。完全に致命傷だ。
 眼の前が赤く染まる。何もかもが燃えているようにも、血を流しているようにも見える。
 
 体がぐらついた。
 駄目だ、今倒れては駄目なのだ。
 いくら言い聞かせても、もうほんのわずかにも、力が入らない……
 
 黒焦げの『俺』に倒れこむ。
 熱で皮膚が焼けた。そのはずだ。もうその感覚もない。

313 名前:ヴェドゴニア ◆amVJEDOGOs:2003/05/08(木) 03:36

>>312 ???VS???
 
 倒れてきた『俺』の身体を抱き留める。
 胸に咲いた刃……完璧に致命傷だ、絶対に助からない。
 対して、炭化した俺の皮膚は、既に新しい皮膚が再生しつつあった。
 事実、ボロリと剥がれた頬の下からは、新しい皮膚が顔を出している。
 これが、どうしようもない人間と吸血鬼の差。
 いくらでもやり直しの利く吸血鬼と違って、人間には唯一度の生しかない。
 
「これで……終わったのか?」
 
 呟く声に、力はない。
 何の意味があったのかも分からない。
 この邂逅がもたらすのは、一体何だっていうんだ……?
 
 腕の中の俺を見下ろして嘆息する。
 とにもかくにも、終わったんだ。
 俺は、帰らなきゃいけない、リァノーンの下へ。
 
 ……『俺』は、帰れないんだな、モーラの下へと。
 誰の仕組んだ運命の皮肉か知れないが、随分と手の込んだ悪戯だ。
 これも、あるいは歩んできた道の鏡写しって事なのか。
 
 ……やめよう、考えたって分からない事は分からない。
 過去の亡霊は消えて、俺は更なる未来へと、それだけだ……。

314 名前:伊藤惣太 ◆PVyuQOeWVw:2003/05/08(木) 04:01

>>313 ???VS???
 
 死んだ。
 確実に、根こそぎ、徹底的に死んだ。殺された。
 だから、もう動くはずなんかなかった。
 
 左腕、義手接続部が震える。
 のろのろと、絶望的な時間をかけて腰までその先があがる。
 腰に吊るしてあるのは、もうひとつの義手。
 人の手の形を成していない、ただの武器。だから銃のように、ホルスターに吊ってある。
 白木の杭を吸血鬼の心臓に撃ちこむ、ただそのためだけの義手。パイルバンカー。
 その義手をはめる。かちり、と響く音。
 
 『俺』が気づいた。
 その眼をぎらりと睨みあげる。
 
 俺よ、俺の体よ、もう一度だけ動け。
 あのときの、ヴェドゴニアとして死した骸を武器とし、吸血鬼どもと戦い抜いた、あの記憶を想い出せ。
 あの力を、この最後の一瞬だけ、
 取り戻せ!
 
「アアアアァァァァッ!」
 
 左手が駆け抜けた。同時に奴の右手も。
 両者の速度は互角――まったくの互角!
 奴の右手は俺の心臓を握りつぶし……俺の義手もまた、完全に奴の心臓を杭で撃ち貫いていた。
 
「……塵は、塵に……灰は、灰に。」
 
 もはやこの身を立たせる理由すらなく、重力に惹かれるがままに倒れ、まぶたを閉じる。
 ぶっつりと切れた、意識の先で思うのは。
 ただただ、どこまでも――――からっぽな、満足感だった。

315 名前:ヴェドゴニア ◆amVJEDOGOs:2003/05/08(木) 04:48

>>314 ???VS???
 
 呆然と、俺の胸を見下ろす。
 間違いない、俺の心臓を、長大な杭が貫き通している。
 最初に確認した、もっともシンプルな対吸血鬼のロウ。
 それが、確実に成されてしまった――――。
 
「あ……アァァァァァァァァァッ!」
 
 血が流れ出す、血塊が口腔から弾ける。
 だが、それ以上にもっと大事な、生きる何かが失われていく。
 待て、待ってくれ……俺は、まだ、待ってくれる、人が……。
 頼む、灰になるな俺の手足ッ!
 だけど、ルールはルール、決して覆る事はなく……。
 
「……なァ、おまえはそんなに俺が許せなかったのか?」
 
 何故、こんなにもこいつは俺を滅ぼそうと……。
 何があって、これほどまでに吸血鬼を憎むようになったんだ、『俺』は。
 だけど、その問い掛けに『俺』は沈黙を保ったままで。
 
 ……もう、手足の感覚は失せていた。
 俺の起こした風は、まだ辺りで唸りを上げている。
 それが、灰になった俺の手足を虚空に巻き上げて消し去っていく。
 『俺』を見下ろしてみる。
 おまえは、何でそんなに満ち足りた顔をしてるんだ……待っている人を置き去りにするってのに。
 忘れちゃ、駄目だろうが……。
 
「リァ――ノーン……」
 
 呟きを聞く者とてなく、灰は既に胸の辺りまで侵食してきている。
 もう、消えるまで後幾ばくもない。
 あァ、せめて、最後は君の側で逝きたかったよ……。
 そんな想いごと灰が、意識までを飲み込み――――。
 
 俺の想い、『俺』の想い、俺の身体……。
 その全てを、風がさらって消し去った。
 
 後には、人を選んだ男の亡骸が一つ。

316 名前:プロローグ:2003/05/08(木) 04:54

>314>315

 伊藤惣太は振り向いた。
 そこには街路樹が少しざわめいているばかりで、特に何もあるわけではない。

「ん? どうしたの、惣太」

 幼馴染みの香織が振り向いて、惣太のほうを訝しげに見ている。
 それでもしばらく、惣太はそちらのほうをじっと見ていたが、やがておもむろに向き直る。

「……いや、なんでもねぇ。行こうぜ」
「何よー。教えなさいったら。気になるでしょうが」
「だから何でもねえっての。ほら、遅刻するぞ」
「うわ、やっばー」

 そうして慌しく、二人は学校へと走っていく。


 それは、まだ分岐にすら行き着かない、
 ひどく懐かしい、これからのひとときの話――――

317 名前:BGM:MOON TEARS(SONG BY 小野正利):2003/05/08(木) 05:19

優しいまなざし 散りゆく最後に想う――――――
 
STAY IN MY HEART 風よこの胸を 突き抜けて 愛しい人の下へ
STAY IN MY HEART この地の果てまで 届かぬ嘆きを抱いて眠れ
 
伊藤惣太(ハンター)VS伊藤惣太(ロードヴァンパイア)レス番纏め
>285 >287 >289 >291 >293 >295 >298 >301 >302 >303
>305 >307 >309 >311 >312 >313 >314 >315 >316
 
感想は以下のいずれかまで
ttp://plan-a.fargaia.com/html/test/read.cgi?bbs=vampbattle&key=1033894737
 
ttp://www.appletea.to/~charaneta//test/read.cgi?bbs=ikkoku&key=1035898557

318 名前:M.ガデス(M):2003/05/08(木) 20:37

三輪坂真言美vs吸血Zバット

『んがぁ……もう食べられないよぅ……ん、んご……』
 床に倒れこみ、幸せな夢を見て眠っている作業員達を視界に収め、私は満足げに頷いた。
「うむ、流石は私。作戦参謀たる私が精鋭を率いて指揮すれば、作戦の完遂など、造作もない事だ。はっはっは」
 
 ――O市の水道を一手に担う浄水場を制圧し、浄水施設に絶対服従薬を投下する、今回の作戦。
名付けて、『飲料水洗脳作戦』の第一段階――浄水場の制圧は30分と掛からずに完了した。
 
 本来ならば、作戦の実行は私ではなく別の者が行うのだが……実行隊長は風邪を引いて寝込んでいる。
 全く、奴も先の作戦を失敗しなければ、床下に落とされる事もなかっただろうに。
 大体にして、奴は肝心な所で抜けている。総統は何故あんな奴をスカウトしたのか……
 
「……ゴホン」
 わざとらしくせき払いをして、脱線しかけた思考を元に戻す。
「……では、作戦の第二段階に移行する。行くぞ! 我等の理想の為に!」
 宣言と共に、右手を上方45度に掲げる。
 
『イーッ!』
 ぞろぞろと這い出してきた、黒い全身タイツの戦闘員達もまた、右手を上方45度に掲げた。

319 名前:三輪坂真言美 ◆qJKoTodamA:2003/05/08(木) 20:38

三輪坂真言美vs吸血Zバット
>>318
  
O市の水道を一手に担う浄水場……
桜水台学園一年生は皆で社会見学に来ていた。
 
もちろんその中には、火者である百瀬壮一と三輪坂真言美の姿もあった。
 
「うーん、やっぱり浄水場とか見ると高いところに上って『わーっはっは』とかしたくなりますねー」
 
至極上機嫌で浄水場を見て回る真言美。
自由行動のこの時間ぐらいしか彼女の意図するような『見学』は出来ない故、仕方ないことなのだが。
まあ、付き合わされる百瀬の方は災難では、ある。
 
「いや、なんねーけど」
 
真言美の世迷い言を一言で切って捨てる百瀬。
なんだかんだ言っても、きっちり付き合っているあたり、かなり人がいい。
 
「はうっ、一言で片づけるかな!」
 
ががーん! とか書き文字がバックに出そうな勢いでショックを受けてみる真言美。
だが百瀬は慣れたもので、そんなものは一切無視。
 
「おら、莫迦言ってねーでさっさと戻るぞ、けったくそ悪い」
 
そう言い放って、さっさと歩き始める百瀬。
 
「むー、何故モモちゃんは乙女の浪漫がわからないかなー」
 
そんな風に拗ねる真言美にツッコミを入れる百瀬。
 
「いや、そんなん乙女関係ないし」
「うわ、それわたしが乙女じゃないとでもっ!?」
 
百瀬は溜息を一つ付いて、さっさと先に行く。
 
「付き合ってらんねーな、先行くぞっ!」
「わー、モモちゃん、ちょっと待ってくれてもー」
「待たない」
 
その時、真言美の目に何かが映った。
そう、黒い、手のようなもの。
 
そして、声が聞こえた。
 
『イーッ!』
 
「ま、まさか悪の秘密結社!?」
 
……どういう脳の構造をしているのか、一度見てみたいものである。
 
それはともかく、真言美は弾かれたように走り出した。

320 名前:M.ガデス(M):2003/05/08(木) 21:03

三輪坂真言美vs吸血Zバット
>>319


「よし、では各人配置に付け……む?」
 戦闘員達が整列している遥か後方から、ブレザーを着た少女がこちらに走ってきていた。
 ここから見た感じの印象で言えば、中学生だろうか。

「我等に気付いたか? ふむ……年端も行かぬ少女を手に掛けるのは気が引けなくもないが……」
 顎に手を添え、思考を巡らせる。

 年端も行かぬ少女ならば、我等の『教育』もすんなり受け入れるだろう。
 食い扶持は減るが、手駒が増えるに超した事はない……。
 女幹部が一人しかいない我が組織に華が増えれば、戦闘員達の士気を上げる事が出来るだろう。
 色気は足りないが、改造すればマシになるかもしれない。

「……作戦を変更する。第二段階移行の前に、あの少女を捕らえよ! 多少は傷が付いても構わん!」

『イーッ!』
 戦闘員達の声が、妙に興奮している。
 私への敬礼もそこそこに、戦闘員達は我先にと走り出した。

321 名前:三輪坂真言美 ◆qJKoTodamA:2003/05/08(木) 21:47

三輪坂真言美vs吸血Zバット
>>320
「くっ、来ますか!?」
 
走りながら、真言美は鞄からMDを引っ張り出す。
そして、腰に装着して、ヘッドホンを耳に。
 
ここまでにかかったのはわずか1ミリ秒……なわけもない。
なんだかんだ言って、真言美はそう器用な方ではないから仕方あるまい。
 
「あーっ、ヘッドフォン〜!」
 
訂正、かなりぶきっちょだ。
 
と、まあそうこうしている間に戦闘員たちは目の前に迫ってきている。
 
「な、なんだか無駄〜に力篭もってませんか、戦闘員さんたち?」
 
後頭部にでっかい汗の粒を垂らしながら、ひとりごちる。
しかし、真言美相手にこの態度とは……余程女性に飢えているのだろう、南無南無。
 
「と、とにかく、来ないでくださいっ!」
 
とまあ、叫んだところで戦闘員は急に止まれない。もとい、やめられない止まらない。
そんなことはわかっているから真言美のすぐにMDのプレイボタンを押し、10曲目を選択。
 
「眼にうつらねど風に混じりし…小さき塵よ…」
 
びょう、と風が渦を巻く。
そして、壁となって戦闘員たちと真言美の前に立ちはだかった。
 
だが、これはしばしの時間を稼ぐのが目的、次は……
 
「愛ある限り戦いましょう。命、燃え尽きるまで!
 正義の女子高生、三輪坂真言美、ここに参上っ!」
 
……名乗り上げかよ。

322 名前:M.ガデス(M):2003/05/08(木) 22:31

三輪坂真言美vs吸血Zバット
>>321
 
 
『愛ある限り戦いましょう。命、燃え尽きるまで!
 正義の女子高生、三輪坂真言美、ここに参上っ!』
 少女が名乗りをあげた。途端にその場に硬直する戦闘員達。
 秘密結社の戦闘員に改造された者のDNAに刻み込まれた習性であるから、硬直した件に関しては、特に咎めない。
 
 ……しかし、実に器用に停止しているものだ、と思う。
 走っている最中の姿勢はともかくとして、今まさに飛び掛からんとして地を蹴った瞬間で硬直しているのは、一体どうやっているのか、小一時間問い詰めてみたい衝動に駆られる。
 
 
 いや、やってみたい訳ではないのだが。
 
  
「ぬ……! ええい、猪口才な! 戦闘員、やってしまえぇい!!」
 
 少女の方に向かう際に見かけた小屋の屋根の上で、私は手を振り上げて叫んだ。
 
『イーッ!』
 硬直が解けた戦闘員達は、いつのまにか手に持っている消火器やら角材やら鎖鎌やらを高々と掲げ、
三輪坂真言美と名乗った少女に大体二人づつくらいで襲いかかった。

323 名前:ミズー・ビアンカ ◆c0Ko8pMIZU:2003/05/08(木) 22:41

>>48
蟆霧VSミズー・ビアンカ
イン・ア・フライト (空戦領域)
 
楕円形の機体の上にようやく両足をつけ、自らの身体を支える。
そこで待っていたのは、何とも馬鹿げた、「死亡宣告」だった。
 
この上もない極上の笑顔で。
同時に極上の胸の悪さを感じさせる表情で。
吸血鬼―――ヒカゲは、それを嬉しげに語った。
 
全てを余さず聞き取ったミズーに、ありきたりな感情は浮かばなかった。
恐怖? ―――否。ミズー・ビアンカを恐怖させるものは死ではない。
絶望? ―――否。ミズー・ビアンカは既に「絶望」という地点を通過して存在している。
悲しみ? ―――否。ミズー・ビアンカの涙は、流れ出すと言う事を知らない。
 
そこに在るのは、ただ。
全てを殺す、獣。
絶対殺人武器。
 
もう何も考える必要などない。自分は獣に身を任せればいい。
生か、死か。そんなことは、殺してから考えればいい―――
 
上顎と下顎が、固定される事なくせわしなく動き、口腔内の歯をがちがちと
鳴らさせる。
それは恐れから来る身震いではない。
身の内、獣から湧き上がる咆哮が、蟠り、今にも噴出する予兆。
開放する前に、口内に溜まった胃液の残滓と、血液と、唾を足元へ吐き出す。
その上で、改めて、目の前の紅眼の男を真っ直ぐ見据える。
男の表情は、それでも笑顔に満ちていた。
 
「―――アアアアアアアアアアアアーーッ!!」
 
ミズーは、吼えた。
自らの身体にかかる負荷の一切を無視し。
手に持った鋼を、振り上げ、そして切り込んだ。

324 名前:三輪坂真言美 ◆qJKoTodamA:2003/05/08(木) 23:23

三輪坂真言美vs吸血Zバット
>>322
「うひゃあっ!?」
 
襲い来る戦闘員。
真言美はその攻撃を奇声を発しながら躱す。
 
そのエモノの物騒さに、ちょっと涙しているのは内緒だ。
 
「も、もう怒りましたよーっ! なんて言うか『怒る!』って感じですっ」
 
変身は出来ないがなー。
 
ともあれ、MDの7曲目を頭出し。
そして、そして流れる韻律を追うようにして詠唱。
 
「おちかたのしげきがもとを
 やきがまのとがまをもって
 うちはらうことのごとく
 むかうものをうちはらいけり」
 
言霊。
言葉に込められた咒力を以て、事象をねじ曲げる能力。
真言美の言葉は、まさにその名の如くそれ即ち真言。
故に。
現実さえも真言美の言葉の前にその有り様を変える。
 
ぱち、ぱちっ。
 
何かが弾けるような音、そしてそれが最後の言葉を以て現象となる。
 
「ドキドキレーザーっ!」
 
帯電した空気が、一瞬にして小規模な雷を生み出し、戦闘員たちに降り注ぐ。
……どうでもいいが、それレーザー違う。

325 名前:M.ガデス(M):2003/05/08(木) 23:58

三輪坂真言美vs吸血Zバット
>>324

 一瞬、空気が、空間が爆ぜた。溢れ出した雷が戦闘員達――と言うか、主に戦闘員の持っている得物に落ちた。
『イーッ!?』
 絶叫を上げ、ばたばたと倒れて行く戦闘員達。その顔色はうかがえない。
 顔まですっぽり全身タイツに覆われているから、なのだが。
 
 ただでさえ黒い戦闘員達の黒焦げを前にして、少女は身構え、ぐ、っと私の方を見据えている。
 
「……ふっ。三輪坂真言美……流石だな。それでこそ私が終生のライバルと認めた存在!」
 ちなみに、ライバルと言うのは今決めた。
 
「貴様は確かに強い……だがしかし!」
 少女を指差した後、左拳を脇腹に添え、真っ直ぐに伸ばした右腕を左肩の上方に向ける。
「変、身……とあぁーっ!」
 ポーズを決めたまま、屋根から高く飛び跳ねる。
 
 空中で三回転し、少女の背後にさっそうと着地した時には、変身が完了していた。
 
 こんな事もあろうかと、練習しておいた甲斐があった。備えあれば憂いなし。
 
「吸血……Zバーット!!」
 秘密結社Qの作戦参謀M.ガデスとは仮の姿。
 吸血コウモリの改造人間、吸血Zバットこそが私の真の姿である。
 
「三輪坂真言美……貴様は強い。
 だが……O市浄水場じゃあ……二番目だ」
 鋭い爪の付いた指で少女を指差し、言ってやった。

326 名前:三輪坂真言美 ◆qJKoTodamA:2003/05/09(金) 00:34

三輪坂真言美vs吸血Zバット
>>325
「二番目って……じゃあ誰が一番だって言うんですか!」
 
律儀に反応する真言美。
だが、それってすでに負け台詞なのだが……

327 名前:吸血Zバット(M):2003/05/09(金) 01:02

三輪坂真言美vs吸血Zバット
>>326

『二番目って……じゃあ誰が一番だって言うんですか!』
「ヒュゥ〜〜〜〜〜、チッチッチ」
 軽く口笛を吹き、舌打ちと共に二本の指を顔の前で振ってみせる。
「――私だ」
 ニィッと笑い、親指で自分を指差した。
 
 
 なお、コウモリの顔でどうやって笑ってるんだ、とか、
どうやって口笛を吹いてるんだ、と言った突っ込みは受けつけない。
 

「ふっ……疑っているようだな。私には分かるぞ、三輪坂真言美。ならば、証拠を見せてやろう……戦闘員A!」
 私の言葉を受け、黒焦げになった戦闘員が起き上がる。
 そして、どこからともなく取り出した瓦を、私と少女の前に十枚ずつ積み上げ――倒れた。

「ご苦労……では、良く見るがいい、私の力を!」
 宣言と共に、大きく振り被った右手を瓦目掛けて落とした。

 私の手刀が空を切り――積み上げられた瓦十枚を、文字通り両断した。
 
「さあ……次は、お前の番だ」
 少女を見据えて、再度ニィッっと笑ってみせる。

328 名前:三輪坂真言美 ◆qJKoTodamA:2003/05/09(金) 01:25

三輪坂真言美vs吸血Zバット
>>327
「むむっ……」
 
『金剛力』の新開であればともかく、単純なパワーでは真言美は所詮常人の域を越えはしない。
瓦割りなど、そうそう出来るものではない。
 
だが、真言美はにやりと笑った。
 
「いいでしょう。このわたしの本当の力をおみせしましょうっ!」
 
瓦に向かい、すっくと立ち、深呼吸。
そして……跳んだ!
 
「真言美〜っダイナミックッ!」
 
落下しつつ空中で回転、そして踵を瓦目掛けて叩き降ろす!
 
轟音!
そして舞い上がる土煙!
 
煙が晴れたそこには、ゆらりと立つ真言美の姿があった。
そして、瓦は……
 
 
十枚とも倒れている戦闘員に突き刺さっていた。
 
 
「ああっ、割れてないっ!」
 
いや、そういう問題ではない。

329 名前:吸血Zバット(M):2003/05/09(金) 01:54

三輪坂真言美vs吸血Zバット
>>328
 
 割れていない。一枚も割れていない。
 あれだけ派手に立ち回っておきながら……割るどころか、戦闘員に突き刺さっている。
 
 どう返すべきか、常人なら悩むところだろうが……
 
「……ふっ……ふっふっふ、なかなかやるな、三輪坂真言美。
それでこそ……それでこそ、我が組織が認めた最大のライバルにして、女幹部候補!!」
 少女をビシッ、と指差す。
 もちろん、片方の腕は訳もなく広げたポーズで。
 
「だが……茶番はここまでだ! 行くぞっ!!」
 地を蹴って、空に舞い上がる。
 空中で少しの間静止した後、少女に向かって急降下。
 
「私の鉤爪の切れ味を思い知れぃ!!」
 両手の鉤爪を振りかざし、少女に迫る!

330 名前:三輪坂真言美 ◆qJKoTodamA:2003/05/09(金) 22:15

三輪坂真言美vs吸血Zバット
>>329
「うきゃわぁぁっ!?」
 
上空から襲い来るZバットの攻撃を、前転して躱す。
びり、と言う音がしたが、それを気にする間もない。
 
「あぁん、スカート破けちゃった〜」
 
だから、気にするなよ。
 
「仕方ないですね、こうなったら……」
 
びりびり、と破れた部分からスカートをさらに破る。
ちょうどスリットを入れるようにして、動きを妨げないようにするためだ。
 
「よーしっ、目指せ森永奈緒美っ!」
 
いや、目指すな。
 
再度のZバットの攻撃を今度はジャンプして回避。
右手をZバットに向けてかざしつつ、MDを再生。
 
「このやみに ほむらともす かむさきの……」
 
詠唱と共に、真言美の伸ばした手の先が陽炎にゆらりと揺れる。
周囲の熱が、その一点に集中しつつあるのだ。
そして、言葉が言霊となる。
 
「バード○アブラ○ターッ!」
 
熱が炎の球となり、Zバット目掛けて飛んだ。 
……いや、それ版権まずいだろう?

331 名前:吸血Zバット(M):2003/05/09(金) 23:59

三輪坂真言美vs吸血Zバット
>>330
 攻撃を全て躱された私は、隙を伺うべく空中で待機していた。

「む? 何をしているのだ……?」
 少女が翳した手が真っ赤に燃えている。まるで、私を倒せと轟き叫んでいるようだ。
 
「――なんとっ!?」
 少女の掌から、火球が放たれた。
 とっさに身を翻して躱――せず、腹部に食らってしまった。
 
「あちゃちゃちゃちゃちゃあっ!?」
 情けない声を上げて、私は墜落した。
 
  
 
 浄水場の隣にある、採石場に。

332 名前:三輪坂真言美 ◆qJKoTodamA:2003/05/10(土) 00:17

三輪坂真言美vs吸血Zバット
>>331
「むっ、そっちですかっ!」
 
墜落したZバットを追って走る真言美。
そして、そこは……採石場。
 
「周りに人はいない、ですね。とは言え、あまり大規模法術は使えない……うにー」
 
通常、言霊の力を行使するのは『凍夜』と呼ばれる特殊な空間内である。
そこでは火者と光狩しか動けず、周りのものには決して被害が及ぶこともない。
だが『凍夜』でないこの状況では……
 
「しかた……ないですね」
 
意を決し、真言美はキッ、とZバットを睨み付け……そして詠唱を開始した。
 
「ふっしぎしぎ、まっかふしっぎ、ふぅわぁ〜」
 
……おーい。
 
「ふっしぎしぎ、まっかふしっぎ、ふぅわぁ〜」
 
……いや、踊らんでいいから。
 
すると、あろう事か周りの風景が歪み始めた。
うにょるんうにょるんとイイ具合に空間が歪み、不思議j……もとい『凍夜』が現出する。
そこは、人の世界たる表界と光狩の世界たる裏界の交わる地。
 
「この空間では、光狩の力、そしてそれと源を同じくする火者の力は3倍にパワーアップします!」
 
ちなみに、そんな設定はない。

333 名前:吸血Zバット(M):2003/05/10(土) 01:11

三輪坂真言美vs吸血Zバット
>>332
 
 しょうじょはふしぎなおどりをおどった!
 
 ……が、私は別段混乱などはしていない。
 うむ、していないんじゃないかな?
 いや、多分してないと思う。
 ……まあ、覚悟はしておこう。
 
「――なんだここは……」
 景色が歪んでいた。
 切り立った崖が波打ち、倒木が流れ、岩が宙に浮き、
青々と茂った木が根を空に向け、戦闘員達が声援を送っている。
 
「ふっ……落ちつけ、吸血Zバット……」
 目を閉じて、深呼吸。
 爪で毛並を整え、口を開けて口臭スプレーを吹き付ける。
 
 意を決して、目を開ける。
 
 
 ……やっぱり世界は歪んでいた。
 
『この空間では、光狩の力、そしてそれと源を同じくする火者の力は3倍にパワーアップします!』
 平べったい胸を誇らしげにそらして、少女が言った。
 
 つまり、ここは異空間と言う訳か。
 
 ――ちょっと待て。私はその『ヒカリ』とか言うのでもなければ、『カシャ』とか言うのでもない。
 
「……圧倒的に私の不利ではないのか? それは……」
 小声で呟いてみる。
 
 が、相手は年端も行かぬ少女だ。
『女子高生』とは言っていたが、恐らく飛び級か、サバでも読んでいるのだろう。
 ならば、多少のハンデをやっても、問題はあるまい。
 ハンデを押し返せるだけの策を以って戦えば良いのだ。
 
「ふっ……かかって来るが良い!」
 間合いをうかがう振りをしつつ、次の手の為に、軽く羽ばたきをし始めた。
 
 
 さあ、飛び込んで来い――!

334 名前:三輪坂真言美 ◆qJKoTodamA:2003/05/10(土) 01:55

三輪坂真言美vs吸血Zバット
>>333
「では遠慮なくいきますっ!」
 
叫ぶと同時に真言美はジャンプした。
いつの間にZバットより高いところにいたか、などと聞いてはならない。
そういうものだからだ。
 
「詠唱省略っ、真言美スペシャル!」
 
……省略するなよ。
しかし、省略しても、言霊の威力は変わらない。
 
Zバットの前の地面が雷によって横一文字に削り取られる。
 
「ナパーム!」
 
炎が猛威を振るう。
 
「アイシクル!」
 
氷の槍が地面から生える。
 
ひょっとして、不思g……もとい凍夜の効果は詠唱の省略なのか?
 
空中で法術を連発する真言美。
だが、人間は鳥でない以上ずっと空中にはいられない。
いやがおうにも地面に降りる時が来る。
 
「あ」
 
だが、着地先の地面にも氷の槍が生えていた。
 
「きゃーんっ!?」
 
氷の槍が、真言美の身体を貫き……はしなかった、運良く。
その代わり、スカートが槍に引っかかり、宙ぶらりんの状態だ。
 
「やーん、ぱんつ見えちゃうーっ!」
 
いや、そんな心配はええから。

335 名前:吸血Zバット(M):2003/05/10(土) 03:04

三輪坂真言美vs吸血Zバット
>>334

 少女はラスタースクロールしている崖の上に立っていた。
 太陽を背負って。
 
「ちぃっ!」
 私は太陽が苦手だ。
 曲がりなりにも、吸血鬼だし。
 
 思わず目を覆った瞬間、足元が雷によって抉り取られる。

「ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉーっ!」
 気合のこもった雄叫びを上げ、宙に舞う!

「あぢゃぢゃぢゃぢゃあっ!」
 翔んだ先で、炎の舌に全身を念入りに舐められた。
 良い感じに体毛が焼けた私は、そのまま地面へと落下して行く――
 
「いだだだだだだつめつめつめたたたたたたあっ!?」
 落ちた先で、氷の槍が全身を掠めたり突き刺さったりした。
 身体のあちこちから、血が吹き出す。
 
「あ〜……星になった怪人達が河の向こうで手招きを……」
 このまま首でも吊って楽になりたいくらい、私の身体はぼろぼろになっていた。
 
 私と少女が戦っているフィールドの遥か向こうでは、戦闘員達が宴会をしている。
 奴らめ……基地に帰ったら説教だ。
 
 生きていられたら、だが。
 
「おのれ……なんとか体勢を立て直さねば……む?」
 ふと気付くと、少女が氷の槍に引っ掛かって身動きが取れずにいた。

「くっくっく……はぁ〜はっはっはぁ〜っ!」
 大きく胸をそらして高笑い。
 身動きの取れない少女の元へ、1ミリ秒で駆け寄った。
 
 
 いや、1ミリ秒は嘘。
 
 
「もう少し発育が良い方が望ましいのだが、贅沢は言っていられん
                           ……貴様の血、貰い受ける!!」
 スカートを必死に押さえている少女の片腕を強引に掴み取り――噛み付いた。
 
 普通なら首筋に噛み付くところだろうが、『あんまり目立つ所に傷を付けるのもどうかナー?』
……と言う、私なりの配慮だ。
 
 意外と紳士だな、私も。
 
 牙によって貫かれた肌から溢れ出す血を、ゆっくりと嚥下する。
 極上のワインにも似た味が、私の喉を潤す。

「これはなかなか……中学生とは思えぬほどに熟成した……」
 ちょっとグルメっぽく評価してみたりする。

336 名前:三輪坂真言美 ◆qJKoTodamA:2003/05/10(土) 21:25

三輪坂真言美vs吸血Zバット
>>335
「きゃーいやーはなしてーおかーさーん!」
 
じたばたじたばた。
……現在、真言美の身体は氷の槍に貫かれたスカートによって宙吊りになっている。
そのような状態で、手足をじたばたさせればどうなるか。
 
まあ、落ちる。
 
「きゃーーーーーーっ!?」
 
ずてん。
 
真言美は顔面から派手に落ちた。
幸いにもZバットの牙はそれで外れてくれたが……かなり痛い。
 
「鼻打ったよぉー」
 
これ以上低くなってはかなり拙い状態なのだから大事にすべきかと思う、私見だが。
 
「よくもやってくれましたねーっ! とくに!」
 
起きあがり、ずびしっ、とZバットに指を突きつけながら真言美は叫ぶ。
 
「誰が中学生ですかーっ!」
 
いや、君のことだが。

337 名前:麻宮アテナ ◆qZESP0jjgI:2003/05/11(日) 00:00

 ハインケル・ウーフーVS麻宮アテナ
吸血海殲(第30章収録)後日談 <聖者の街へやってきた>
 
 さて、3人を抱えてヒースロー空港に倒れこんだはいいものの、
当然のように私は荷物をすべてなくしていました。現金もパスポートもなく、
持っているものは着ていた制服だけという、文字どおり着のみ着のまま。
車も拾えず、結局日本大使館目指して2本の足でロンドンを
ほぼ横断する羽目になりました。
 
 「もう二度と、英国には来たくない……」
 くだらない駄洒落を笑う余裕すら無くしたころ、ようやく、本当にようやく、
私は大使館に転がり込んだのです。
 
 先に到着(というより避難)していた社長さんと合流できたものの、
身元確認その他の手続きのために身動きが取れませんでした。
結局私が機上の人になったのは、 当初の予定から遅れること、実に12日……。
 
 JALのマークの飛行機に乗って、片道6,220マイルの旅。飛行機の事故率は
車や電車などよりはるかに低いといいますし、これでようやく日本に帰れます。
帰れるはず、なのですが。
 
 唐突な機内アナウンス。ヒアリング率60パーセント程度の英語力を駆使して
がんばって聴き取りを試みます。とんでもなく嫌な予感。
 
 (え〜と、unexpected situation は『不測の事態』で、
lands in emergency は……緊急の国? ああ違うよね。
え〜と……、そう『緊急着陸』!)
 
 不吉な言葉が頭の中で組みあがったとき、操縦席のほうから現れたのは、銃を持った男たち。
 「――勘弁してください」
 
 思わず、泣き言がこぼれました。

338 名前:麻宮アテナ ◆qZESP0jjgI:2003/05/11(日) 00:02

 (>>337から)
 
 成田空港までれっつごーだったはずの飛行機が、ローマ郊外の
フィウチミーノ空港に『緊急着陸』してから4時間が経過しています。
私はというと、他の乗客たちに混じっておとなしくしているだけです。
敵(以外の何者でもないでしょう)の目的がわかりませんし、人数も武装も
わかりません。戦車とケンカしても勝てるような私と違って、ほとんどの乗客は
善良な一般市民ですから、あまり派手なことになっては困ります。このうえは、
話し合いで穏便に解決してほしいものですが……。
 
 ……それからさらに2時間後。
 
 (英国発の飛行機だからSAS(特殊空挺部隊)かな?)
 
 (日本国籍機だからSAT(警視庁特殊強襲部隊)かな?)
 
 (それとも、イタリアに着陸したからGIS(警察特殊介入部隊)かな?)
 
 「もう、どこでもいいや……」
 
 思考が少しづつおかしくなってきます。突入してくるのはどこの特殊部隊でしょうか。
正直なところ、誰でもいいから何とかしてと言いたいくらいです。最低の英国旅行。
 
 ですが、そのわずか10分後。私は『誰でもいい』などと思ったことを激しく後悔し、
ついでにこの『最低』が実は上げ底にすぎなかったことを思い知ったのでした。

339 名前:ハインケル・ウーフー ◆5bAMENiFwA:2003/05/11(日) 00:04

>>337 >>338 ハインケル・ウーフーVS麻宮アテナ
 
 ハイジャックされて不時着した航空機内、重苦しい空気が支配するそこに突如として新たな人影。
 その人影は、あまりにもこの場には場違いに過ぎた。
 短く整えられた髪、サングラス、そしてカソック……。
 法皇庁イスカリオテ機関、通称第十三課の神罰の地上代行者、ハインケル・ウーフー。
 彼女は今、ハイジャック犯殲滅の命を受けてこの機内へと真正面から乗り込んできた。
 
「さてと……ハイジャック犯は何処?」
 
 まるでその辺で道を聞くような調子で尋ね、辺りを見回す。
 と、客席を巡回していた二人のハイジャック犯が手の機関銃を向けながらハインケルを誰何する。
 一人ずつをちら、と視認した後……いつの間にか現れた両手の獲物がそれぞれをポイント。
 一回ずつトリガー、一人は指をぐしゃぐしゃにされ、武器を取り落とて泣き喚いている。
 もう一人は脳天を撃ち抜かれ吹っ飛び、乗客の一人である少年と激突して止まった。
 もちろん、即死だ。
 
 時ならぬ殺戮劇に、乗客にパニックが巻き起こる。
 悲鳴、怒号、泣き声――これは死体と激突した少年のモノだ、怪我をしたらしい――阿鼻叫喚の様相。
 騒ぎを聞きつけ、更なるハイジャック犯が操縦席から出てくる……と同時に銃声銃声銃声。
 心臓と肺と脳を撃ち抜かれ、力無く崩れ落ちていく。
 そのまま操縦席へと消えていくハインケル、そして銃声銃声銃声銃声銃声……。
 
 何事もなかったかの様に操縦席から現れたハインケルは、大量の返り血を浴びてとても朱かった。
 
「任務終了っと」
 
 こともなげに呟いて、現れた時と同じように消えていこうとするハインケル。
 事後処理は、何処ぞの警察組織がやってくれる手筈だ、もうやるべき事はない。
 しかし、この任務はまだ終わりではなかった――。

340 名前:麻宮アテナ ◆qZESP0jjgI:2003/05/11(日) 00:10

 ハインケル・ウーフーVS麻宮アテナ <聖者の街にやってきた>
>>339
 
 ふらりと現れた人影。神父さん、ではなく女性です。女性は神父さんには
なれないはずですが? 誰何の声。彼女はそれを無視して……。
 
 どどっ。
 
 (……同時に抜き撃ち!?)
 その両手の銃が、瞬時に二人を無力化。
 
 男の子が巻き添えになりました。ぎゅう、という悲鳴を引き金に、
パニックが巻き起こります。男の子に転がり寄ってみると、頭を強く打ったらしく
意識がありません。隣では、お母さんらしい女性が正体のわからないわめき声を
あげています。
 
 「誰か、お医者さまはいませんかあっ! だれかあ!!」
 私のその声に重なる銃声、悲鳴、銃声、泣き声、銃声、怒号、銃声。
そのまま操縦席へ向かう彼女。銃声、銃声、銃声。
 
 ふたたび現れた彼女は、真っ赤でした。全身が真っ赤。絵の具の
材料については、あまり考えたくないところです。
 
 『任務終了っと』
 「ちょっとまってください!」
 
 訝しげにこちらを向く彼女に、私はまくし立てました。
 「まだ終わってません! お医者さんの準備! 車の準備!
あと病院の受け入れの準備! いくらでもやることはあります! はやくっ!!」
 
 無関係の、しかも子供が傷ついたせいで言葉が乱暴になるのが
自分でもわかりましたが、今はそれどころではありません。

341 名前:ハインケル・ウーフー ◆5bAMENiFwA:2003/05/11(日) 00:11

>>340 ハインケル・ウーフーVS麻宮アテナ
 
 何事か喚き立てている少女の方を胡乱げに見やるハインケル。
 サングラス越しにも、あからさまに冷たい視線を向ける。
 言葉にはしないまでも、その態度が、視線が雄弁に物語っている。
 
 ――何、いい子ぶってんだと。
 
 一つ嘆息し、疲れたように口を開く。
 
「あぁ、それは私の仕事じゃない、もうすぐそう言うことを担当してくれるのが来るから」
 
 面倒くさげに手をひらひらさせ、少女にそう告げる。
 と、そのハインケルの肩にとある男の手が掛かった。
 強引にハインケルを振り向かせ、何事か喚いている。
 まったく筋道を為していない言葉の羅列を拾ってみると、要するに事情の説明を求めているらしい。
 それに対してもぞんざいに対応し、その手を振り払った。
 男は尻餅を突いたまま、相変わらずわめき続ける。
 それにもう取り合わず、今度こそ入ってきた様に出て行こうときびすを返して歩いていく。
 
 ふと、何かを思い出したかのように足を止め……天井に向けて発砲。
 喧噪を引き裂く銃声、次いで訪れる静寂。
 首を巡らし、満足した様に一つうなずき口を開く。
 
「いいか! もう一時間もすれば地元の警察機関が事態の収拾に訪れる!
 それまではここから出られないけど、じっとおとなしく亀の様に丸くなって待ってな!
 ごちゃごちゃ抜かす奴は一歩前に出ろ! ぶん殴って当分しゃべれないようにしてやる!」
 
 しーんと静まりかえった機内、誰もハインケルの言葉に立ち上がらない。
 それを確認して立ち去ろうとした時――。

342 名前:麻宮アテナ ◆qZESP0jjgI:2003/05/11(日) 00:15

 ハインケル・ウーフーVS麻宮アテナ <聖者の街にやってきた>
>>341
 
 男の子は頭を打っているので、下手に私が動かすわけにはいきません。
専門家の手に任せないと。彼女は当然、その手配をしてくれると思っていたのですが。
 
 『あぁ、それは私の仕事じゃない、もうすぐそういうことを担当してくれるのが来るから』
 
 ……軽い眩暈。どうしてローマくんだりまで連れてこられて、
日本製お役所根性丸出しの言葉を聞かなければいけないのでしょうか?
 
 (……落ちつきなさい私。騒ぎをおこしてる暇はないよ、早くこの子を)
 脳挫傷。内出血。頭蓋骨骨折。夏のローマにいても寒気に襲われる想像が、
胸の中で走り回ります。この子を早くお医者さんに診てもらわないと。
1分でも早く、1秒でも早く。それなのに!
 
 『いいか! もう一時間もすれば地元の警察機関が事態の収拾に訪れる!
それまではここから出られないけど、じっとおとなしく亀の様に丸くなって待ってな!
ごちゃごちゃ抜かす奴は一歩前に出ろ! ぶん殴って当分しゃべれないようにしてやる!』
 
 もう駄目。我慢できません。今でも十分対応が遅いのに、この上さらに一時間も……。
 「……待てるわけないでしょ!!」
 
 機内中の視線がこちらを向きました。気にしません。
 「あなたがやりたくないのなら結構。私が外に出て頼んできます。
ええ、ご心配には及びません。あなたのお手は煩わせませんよ。
ではごきげんよう、任務に忠実なお方」
 
 本当に余計な一言を付け加えながら、毛布を掴んでいちばん近い非常口へ。

343 名前:ハインケル・ウーフー ◆5bAMENiFwA:2003/05/11(日) 00:15

>>342 ハインケル・ウーフーVS麻宮アテナ
 
 うんざりだ、という感情を視線と全身と嘆息とで雄弁に表現しながら、声の主へと首を向ける。
 意識をなくした少年を抱きかかえた少女は、相変わらず青臭い主張を続けていた。
 あまつさえ、少年を外へと連れ出そうというらしい。
 
「勝手なことをするなと言ったぞ」
 
 ゴリッと、少女の頭部に冷たい銃口を押しつける。
 撃鉄が起きる、引き金に指を掛ける。
 
「これ以上何かしようってんなら、撃つ」
 
 指に心持ち力を加えようとした刹那。
 背後の乗客の固まりから悲鳴と絶叫が上がった。
 あわてて振り返ったハインケルは――――何事か喚き散らしながら銃を持って立ち上がる男を見た。
 しまった……! 保険に乗客へメンツを紛れ込ませてたか!
 
 とっさに地面へと伏せるハインケル。
 その上を機関銃の銃弾がやかましく通り過ぎていく。
 錯乱しているのか、その弾道が伏せているハインケルを指向するようすがない。
 鳴りやまない銃声悲鳴怒号絶叫銃声銃声――――!
 
「クソがぁッ!!」
 
 伏せながら腕を上げてトリガー。
 乾いた銃声と共に額に大穴を開けた男が、鮮血をまき散らしながら崩れ落ちた。
 安堵のため息ともに埃を払いながら立ち上がり……思い出したように少女の方を見て……。
 サングラス越しにも分かるほど目を見開いた。
 
「だから勝手な事はするなと言ったんだ」
 
 呆然と、血にまみれて立ちつくす少女、少女自体に怪我はない。
 ならば、その血は誰のモノか?
 答えは簡単、腕の中の少年のモノだ。
 頭に銃弾を喰らい、少女の腕から頭を、腕を力無く垂れている。
 
 ――――どう見ても事切れていた。
 
「安っぽい正義感が被害を拡大する、個人の暴走が全てをぶち壊しにする」
 
 つかつかと少女に歩み寄り、目の前で立ち止まる。
 侮蔑とある種の怒りを込めて少女を見下ろす。
 
「どう責任取るんだ、この事態は? 私は私にやれる範囲での事はやった。
 おまえの暴走まで私は面倒見切れない。
 どうする? さぁどうするんだ小娘!?」
 
 遠慮呵責ない言葉で少女を責め立てる。
 おまえが悪いとハインケルは明言しているのだ。

344 名前:麻宮アテナ ◆qZESP0jjgI:2003/05/11(日) 00:23

 ハインケル・ウーフーVS麻宮アテナ <聖者の街にやってきた>
>>343
 
 「……気にするな、なんて言ってもムダだから言わない。大いに気にしなさい。
でもあんたのやったことは間違ってないし、ブラックジャックでもいなきゃ
助けられなかったわよ。あんたは万能でもなけりゃ全能でもないの。幸いな事にね。
だから……」
 
 理香ちゃんの声。ためこんでいた涙があふれて、抱きかかえた電話機が濡れて。
 
 跳弾とか、無駄に使った力とか、病院とか、警察とかがぐるぐるまわってホテルの中。
ベッドの上でした。明日には帰れるはず。こんなとこにいたくない。いやだ。
帰りたい。あいたい。泣き虫がまんできない。あいたいよ……。
 
 「……アタマ使いなさい。そのピストル女、あんた以上にその子の役に立ったか?
そいつの言うとおりにしてればその子助かったか? そうだってんなら
あたしもなんにも言わないわよ。泣きながら帰って来なさい。けど……」
 
 「がしゃん」 理香ちゃんの声が壊れた音。ばらばらの電話機。
 
 濁っていた視界が一瞬で鮮明になります。破片が飛んで、私の頬から
血が出たのがわかりました。友達を亡くした受話器が、手の中で震えて。
 
 空港の彼女。私をわざわざ追いかけてきて殺そうとしたんですか。
それだけならまだしも、理香ちゃんの声を。
 
 私の頭で、なにかがおかしくなりました。
 
 「……Step outside,Cruel」
 あなた、歩いては帰さない。

345 名前:ハインケル・ウーフー ◆5bAMENiFwA:2003/05/11(日) 00:24

>>344 ハインケル・ウーフーVS麻宮アテナ
 
『ATHENA-ASAMIYA……日本じゃ名の知れたアイドルらしいな』
 
 数時間前、イスカリオテ機関内、マクスウェルの執務室にて。
 机には、疲れた顔で椅子に腰掛けて報告を受けるイスカリオテ機関長、エンリコ=マクスウェル。
 報告しているのはハインケル、少女の行動、素性まで調べ上げた上で局長室に帰投したようだ。
 その結果、少女――――麻宮アテナが日本で有名な芸能人、そしてサイキッカーである事を突き止めた。
 
『で、それはさておき被害者は一人か。まぁ上出来だろ』
「はい」
 
 ハインケルの瞳の奥にちらつく暗い炎に敢えて気付かないふりをした。
 どうせ止めても無駄だろうから、それならいっそ気付かなかった事にしておいた方がいい。
 報告書の端っこを机でトントンとまとめながら、そんな事を考える。
 ――――まったく、何でこううちの奴らは歯止めの利かない奴らばっかりなんだか。
 
「それじゃ失礼します」
 
 きびすを返すハインケルに、無言でひらひらと手を振る。
 
『さてと……麻宮アテナが泊まってるホテルは何処だったかね?』
 
 極力迅速に事後処理するための準備にマクスウェルは入った。
 
 イスカリオテ機関の玄関を出て、止めてあった車に乗り込む。
 目的地は既に調べてあった。
 あのクソ売女の宿泊しているホテルまでアクセルを踏み込み、ハンドルを駆って、神罰を下しに行こう。
 
 
 
 そして、時間は元に戻る。
 ホテルの廊下、涙声で電話口に話しかける少女。
 
(ハン、自分だけが悲劇の主人公気取りか?)
 
 腹立たしい、仕事にけちが付いたのはこっちなのに。
 あのまま何事もなければ、誰一人死ぬことなく終わっていたはずなのに。
 腹立ち紛れに銃を抜き、受話器を照準する。
 トリガー、粉々に砕ける受話器、呆然とする少女。
 
 涙を溜めた瞳でこちらを見据え、外へ出ろと生意気な口調で告げる。
 ……気に入らない、テメェのやりたい事なんて何一つやってやるモノか。
 
「五月蠅いバカ黙れ死ね」
 
 死を宣言し、少女に向けてトリガートリガートリガー。
 さぁ見せてみろ、サイキックって奴を!

346 名前:麻宮アテナ ◆qZESP0jjgI:2003/05/11(日) 00:31

 ハインケル・ウーフーVS麻宮アテナ <聖者の街にやってきた>
>>345
 
 どこか適当なところで、お互いひっくり返るくらいに殴り殴られしようと
思っていました。でも。
 『五月蠅いバカ黙れ死ね』
 
 こ れ は ひ ど い 。
 
 あくまで殺しにこだわるこの身勝手さはいっそ清清しいくらいです。銃声銃声銃声。
 
 「……」
 銃弾の犠牲になったのは私じゃなく、一瞬前まで廊下の突き当たりに屹立ましましていた
大理石像です。台座に固定されていなかったのをよいことに私に”取り寄せ”られて、
背中を撃たれて撃たれて撃たれて。おいたわしや。どうやらミネルヴァ像のようですが、
アテナの身代わりがミネルヴァとは、冗談にしてもあんまり面白くありません。
 
 私をアルカイックスマイルで見つめながら、なおも侠客立ち(おとこだち)する女神さまを
さっさと見捨てて、手近な階段を駆け登って4階の私の部屋へ。どうせ部屋番号まで
調べているのでしょう。さあ追って来なさい。獲物はここですよ。
 
 415号室。どうしょうもないこの私がよいこ(415)とは笑えるやら泣けるやら。
街路を見下ろす窓に触れて完全密閉します。これで、たとえ爆弾が爆発しても無問題。
近づいてきます。あと30秒。走ればいいのにわざわざ歩いてくるあたりは
さすが人でなしというべきですか? でも残念。私の暴力は生半可な怪物より
怪物じみているんですよ。あなたが心性において人でなしであるように、私は
暴力行為において正しく人でなしというわけです。
私ちょっとおかしくなってますけどいいですよね別に。
 
 ユニットバスでシャワーの設定をいじって、機雷代わりに4コの雷球とこんにちは。
さぁさ、ご遠慮なさらずに。憎ったらしい私を殺すには、部屋に入らなきゃいけませんよ。
はい、そのドアを開けて〜。新婚さんいらっしゃい。鍵はかかってないんです。

347 名前:ハインケル・ウーフー ◆5bAMENiFwA:2003/05/11(日) 00:32

>>346 ハインケル・ウーフーVS麻宮アテナ
 
 なかなかに突飛な防御をしてくれたアテナに、苦笑いを隠せないハインケル。
 逃げるアテナを追って自分自身もすぐさま階段を駆け上る。
 部屋番号を一つずつ改めていき……とある部屋の前で立ち止まって唇を吊り上げた。
 その部屋番号は、414号室。
 ドアノブに手を掛けて捻る……果たしてその扉は開いた。
 薄暗い部屋の中に、仕込みが確かであることに満足して得物に手を掛ける。
 巨大で、凶暴で、神聖なそれを担ぎ上げ、414号室と415号室を仕切る壁へと目を向けた。
 それの先端を、壁に向けて……トリガー。
 
 轟音が、ホテル4階に響き渡った。
 
 壁が砕けた415号室、もうもうと立ち込める粉塵の中に聖書のページが舞い飛んでいる。
 その薄煙の向こうに、ハインケルは立っていた。
 手には――強いて例えるなら――パイルバンカーを手にしている。
 それが埋葬機関の外典、第七聖典という名であることをアテナは知るまい。
 女の身体にはある意味不釣り合いに過ぎるそれを構えながら、ハインケルは口を開いた。
 
「こいつはね、転生否定の概念武装。コレの直撃を喰らって死んだ奴は、魂まで消し飛んでしまう。
 別にアンタの魂なんてどうでもいいんだけど……サイキックなんてイカサマに対抗しようと思うとね。
 こっちとしてもイカサマさせてもらおうってワケ」
 
 コレはハインケルの勘というか、賭でしかない。
 調べたところによると、アテナの使う超能力の前には、銃弾すらも当てることは困難だという。
 それどころか、爆発物を使用してすら怪しい。
 つまり、ハインケルの手は全て封じられているにも等しい。
 
 だが、概念武装ならどうだ?
 あるいは、ただの銃器や火薬よりはサイキックに対して何らかの親和性を発揮するのではないか?
 そう考えて第七司教と交渉(昼飯にカレー十杯をおごる)の末に一時的に借りる約束を取り付けたのだ。
 果たして、昼飯代の価値があるのかどうかはこれから決まる。
 
 凶暴な光を湛えた杭が、アテナにその切っ先を向けて黙していた。

348 名前:麻宮アテナ ◆qZESP0jjgI:2003/05/11(日) 00:38

 ハインケル・ウーフーVS麻宮アテナ <聖者の街にやってきた>
>347
 
 ”♪ なんでどうして ぴんち しゃれにならない どき・どき”
 
 ホントになんでどうしてこんな目にあっているんでしょうか私は。
 
 ”♪ とらぶるこうせん ぶるぶるうちゅうはおおさわぎ ととととおっけー”
 
 脳天気な歌がエンドレスで頭上を高速回転。
 
 外国人の私が周りに配慮してるのに自分は好き勝手無茶しほうだい。
 
 あとで神様にお祈りでもして罪を許された気になるんでしょうねあなたは。
 
 3発銃撃されたので3×3=9発ひっぱたいてあげますこれぞまさに因果応報。
 
 『こいつはね、転生否定の概念武装。コレの直撃を喰らって死んだ奴は、魂まで消し飛んでしまう。
 別にアンタの魂なんてどうでもいいんだけど……サイキックなんてイカサマに対抗しようと思うとね。
 こっちとしてもイカサマさせてもらおうってワケ』
 
 イカサマとは片腹痛い種も仕掛けも魔法もないですよ私は。
 
 いや、ホント。流血の中もがき踊るさまを見物するのも
すぐれてときめきたもうありけりかもしれません。。
 
 ”♪ てんかむてきのさくせすすとーりー はじめようー”
 何コーラスめかのフェイドアウトと同時に壁が崩れる音。

349 名前:麻宮アテナ ◆qZESP0jjgI:2003/05/11(日) 00:39

 (>>348から)
 
 ごちん。
 
 瓦礫が直撃。目から火花……。
  
 
 
 
 
 「……あぶなかったですよ。本当に」
 
 頭へのショックで正気が戻ったのでしょうか。さっきまでの自分自身に冷や汗。
私はホテルを宿泊客ごと瓦礫に変えてでも、目の前の彼女を排除しようとしていました。
危なかった。危なかった。本当に危なかった。 
 
 その目の前の彼女。謎のメガバズーカランチャー(がいねんぶそう?)まで持ち出して、
どうでも私を、いえ人間を殺したくて仕方がないようです。でもさすがの私といえども、
こんなポスタルなハッピートリガーの餌になるほど安くはないはず。脳が不器用といっても、
理不尽な暴行を受ければ痛いと感じるし腹も立ちます。1発殴られれば0.5発くらいは
お返ししたくなるときもあるのです。私にだって。
 
 さて輝ける聖職者さまのありがたい福音によると、『コレの直撃を喰らって死んだ奴は、
魂まで消し飛んでしまう』そうです。なるほど。当たらなければいいのですか。
こんなインチキオカルト兵器を防げるかどうか正直わかりませんが、
避ける手段はあります。それに……。
 「……二度は撃てませんよ」
 
 意思伝播から0.7秒で、彼女の衣服が発火。乗じて、麻酔代わりの衝撃波を
直にぶつけるべく接近。加減無しで叩きつければその部位は確実に麻痺。
重要器官にでも当たれば昏倒間違い無し。
 
 炎のオブジェとして解脱しつつある彼女。近接戦闘開始。

350 名前:ハインケル・ウーフー ◆5bAMENiFwA:2003/05/11(日) 00:40

>>348 >>349 ハインケル・ウーフーVS麻宮アテナ
 
「ったく! 大したバケモノじゃないか、ええ?」
 
 燃え上がったカソックを、咄嗟に脱ぎ捨てる、近寄ってくるアテナ目掛けて。
 裾を翻し、アテナの眼前に大きく広がるカソック。
 中に吊ってある手榴弾に引火しないか多少心配だが、そうすぐにどうこうはなるまい。
 
 カソックをブラインドに見立て、その向こうにいるはずのアテナ目掛けて第七聖典の引き金を引いた。
 重苦しい金属音と共に、長大な杭が射出され、カソックを貫いて飛んでいく。
 轟音が響き渡り、壁に突き刺さってひび割れが広がって崩れ落ちた。
 
「それだけの力を持ちながら、アンタはテロリストをどうにかできなかった!
 それどころか、みすみす幼い少年の命を落とすような羽目にまで陥ったってか!
 はっ、笑いを通り越して呆れるね」
 
 今ので殺れたとは思っていない。
 脱ぎ際にカソックから抜き取っておいたデリンジャーを右手に、左手一本で第七聖典をぶら下げて待機。
 アテナの動きがあり次第、銃口がそちらを向く。
 
「そんなに、自分が可愛いか? そんなに、自分の力が人にばれるのが恐いか?
 恐いんだろうね、だからテロリストに対して何もしなかった、できなかった。
 他の誰よりも、我が身が可愛いってワケだ」
 
 杭が、無数の聖書のページへと還っていく。
 粉塵の中を舞う、言葉が記された切れ端。
 
「私は違う。私はやるべき事があるのなら躊躇しない。
 いくらでもこの手を血に汚そう、いくらでも人でなしの誹りを受けよう。
 我らは神の代理人、神罰の地上代行者。それを遂行することに、何を迷う必要がある?」
 
 部屋を舞う、ハインケルの言葉の切れ端。
 
「人でなしは、どっちだろうね?」

351 名前:麻宮アテナ ◆qZESP0jjgI:2003/05/11(日) 00:45

 ハインケル・ウーフーVS麻宮アテナ <聖者の街にやってきた>
>>350
 
 発火と同時に接近、近接戦闘……!
 「……だはっ!?」
 視界を覆われた瞬間背後に倒れこんで反撃を回避。直後に、
視界に入った窓の外の空中に瞬間移動。建物全体がふるえる中、
見つからないように壁に貼りつきます。
 
 彼女の判断がコンマ6秒も遅ければ勝負ありでしたが、さすがに思い切りがいい。
でもこれで、肌着姿の彼女に武器は乏しいはず。あの謎のオカルト砲と、器用に抜き取った
小さいピストルと、口三味線。あとひとつふたつは隠し持っているかもしれませんが。
 
 『そんなに、自分が可愛いか? そんなに、自分の力が人にばれるのが恐いか?
恐いんだろうね、だからテロリストに対して何もしなかった、できなかった。
他の誰よりも、我が身が可愛いってワケだ』
 
 ……わざわざ言ってもらわなくても、私のいやらしさは私がいちばんよく
知ってます。『他の誰よりも』というのはともかく、嫌っているはずの我が身を
可愛いと思っています。そのくせわざわざ事件に首を突っ込んだり。
そのとおりひどい矛盾ですホント。いい加減ですよ。でも。
 
 『私は違う。私はやるべき事があるのなら躊躇しない。
いくらでもこの手を血に汚そう、いくらでも人でなしの誹りを受けよう。
我らは神の代理人、神罰の地上代行者。それを遂行することに、何を迷う必要がある?』
 
 部屋の中には彼女。舞散る粉塵と紙切れ。まだ燃えている法衣。それにくっついた
鈴なりの手榴弾。こうやって離れたところからピンを次々抜いて……。
 
 『人でなしは、どっちだろうね?』
 「両方だとおもいますよ」
 
 完全に密閉した窓越しに答えました。直後に連続で破裂音。

352 名前:ハインケル・ウーフー ◆5bAMENiFwA:2003/05/11(日) 00:46

>>351 ハインケル・ウーフーVS麻宮アテナ
 
「……ッ! えげつない真似してくれるねぇ!?」
 
 ピンの飛んだ音に、ハインケルの顔が引きつる。
 咄嗟に、粉塵の中へと姿を消し……数秒後、手榴弾が爆発爆発連鎖爆発。
 室内での使用を想定していたので火薬量は抑えられているが、それでも部屋の中を爆炎が舐めていく。
 赤い花が、室内のありとあらゆるモノを砕いてゆく。
 ドアを吹き飛ばして廊下へと爆炎が噴出し、近くにいたホテルのボーイを吹き飛ばした。
 
 十数秒後、爆発は収束し、少しずつ部屋の内部がその姿を見せ始めた。
 室内は、破壊の傷痕が生々しく刻まれて、無惨な様を晒している。
 ちろちろと揺らめく炎の舌が、爆発の規模を物語っていた。
 窓の外のアテナが、遠目には視認しづらい室内にあるハインケルの姿を追い求めて……。
 
「……何処を見ている?」
 
 横合いから聞こえてきた、ハインケルの声。
 咄嗟に首を向けたアテナが見たのは、埃まみれで隣の窓枠に腰掛けているハインケルの姿。
 爆発の瞬間にひび割れた壁を蹴り砕き、隣室へと転がり込んで伏せてやり過ごしたのだ。
 そのまま、アテナの意識の外であろう隣の窓から、最前外にいる事を確認していたアテナを捕捉。
 サングラスの割れた片方から覗く、垂れ目がちの瞳、だがその眼光は何処までも鋭く、まっすぐで。
 こめかみから伝い落ちる朱い筋、第七聖典をコッキングする音、再装填される転生否定の楔。
 光る切っ先がアテナの目を射抜き――――。
 
「さようなら、人でなし。――Amen」
 
 トリガー。
 空を裂き、杭がアテナを貫かんと唸りを上げる。

353 名前:麻宮アテナ ◆qZESP0jjgI:2003/05/11(日) 00:50

 ハインケル・ウーフーVS麻宮アテナ <聖者の街にやってきた>
>>352
 
 経験から言うと、自分への嫌悪とか吐き気というものは
たいてい後からのしかかってきます。
 
 予想以上の爆発。それにまきこまれた人がいたことにうめきながらも、
掲げた両手の間にエネルギーを超々高収束。姿は見えなくてもたぶん彼女は……。
 
 『……何処を見ている?』
 隣りの部屋とは。しかもよりによって無傷。
 
 あの、謎オカルト兵器。それが三度私を狙っています。宙に静止した
私の両手には光の投槍。命中すればお互い必殺でしょうが、彼女があれを
発射する瞬間にこちらは発射と回避を同時にできて有利。
 
 『さようなら、人でなし。――Amen』
 トリガーの一瞬前に、飛ぶ力をカット。重力に掴まれて落ちる私の
頭めがけて杭。かわせない!?
 「〜〜っ!!」
 のけぞる上半身。杭に額を削られながら光を投擲。このタイミングならはずさない!
 
 命中確認できないまま落下中に2転。3転目に身体中ののクッションで
着床しながら、さらに地面を転がって衝撃を減殺。数メートル転がって停止。
4階から落下くらいで死ぬつもりはまったくありませんでしたが、全身鈍痛左肩激痛。
 
 (でも。すごく気持ちいいね。あ〜あ……)
 
 石畳に仰向けになって見る異国の空。疲れたし。痛いし。いっそ死ぬまで
こうしているのもいいかな。
 
 ……ふう。

354 名前:ハインケル・ウーフー ◆5bAMENiFwA:2003/05/11(日) 00:52

>>353 ハインケル・ウーフーVS麻宮アテナ
 
 回避は間に合わない、咄嗟に第七聖典を光の槍に向けて突き出して盾代わりにする。
 一度、二度と叩きつけられる衝撃に、第七聖典ごと吹っ飛んで壁に叩きつけられた。
 くらりと遠のく意識を、無理矢理引き戻して立ち上がる。
 後頭部に鈍痛、手を当てるとぬらりとした感触、そして朱く染まる手のひら。
 
 致命傷ではないが、両手は衝撃にしびれていて思うように動かないし、脳みそもぐらぐらと揺れている。
 ふらつく足で窓際に取り付き、外を確認。
 アテナが地面で転がっているのを視認する。
 
 ――――どうする? 悠長に階段を降りて追いかけるのか?
 そんな事をしていて逃げられたらどうする?
 今、ここで確実に仕留める必要がある――――。
 
 選択は一瞬、窓枠に足を掛けて落下。
 急速に近づいてくる地面、だがハインケルの視線はホテル側に向けられている。
 自重、並びに第七聖典の重量を計算に入れて……地面に激突する寸前。
 
「ここだっ!」
 
 振りかぶった第七聖典を、ホテルの壁へとトリガーを引かずに叩き込む。
 杭が壁に打ち込まれて急停止、ハインケルはその第七聖典の上によじ登る。
 壁に足を掛けて第七聖典を引っこ抜き、わずかな距離を落下。
 再び手に第七聖典を下げ、靴音高くアテナへと歩み寄る。
 
「立て、そろそろ決着を付けてやるよ」

355 名前:麻宮アテナ ◆qZESP0jjgI:2003/05/11(日) 00:55

 ハインケル・ウーフーVS麻宮アテナ <聖者の街にやってきた>
>>354
 
 左手の痛みで吐き気に掴まりました。もう気持ちよくない。脱臼。
神経を鈍化させて痛みを緩和、外れた関節を自分の手で入れて……。
 「う〜〜〜〜〜〜っ!!」
  
 真っ白な頭で最初に知覚したのは彼女。サイコスピアを防いだ。どうやって。 
ひらりと飛び降りてきます。空中でビルの壁に杭打ちして足場にし、着地。
 (あ、そういうこと、ですか……)
 健在の秘密はたぶんあの大砲。次弾を発射して相殺できたとは思えないので、
武器そのものを盾にしたのでしょう。でもサイコソードと同じく、サイコスピアも
もともと相手のシールドを強引に突破するための方法。生半可なオカルト品を盾にしても
まとめて風穴が空くはず。これが話に聞く、伝説工芸品というものでしょうか……。
 
 『立て、そろそろ決着を付けてやるよ』
 
 立ちあがりながら考えます。なにをするべきか。要はあのオカルト砲さえ撃たれなければいいのです。
いえいっそ今すぐ撃ってくれれば、トリガーの瞬間に射界を外しながら
懐に跳び込めるのですが。迂闊にこちらから動くとリスクが大きい……。
 
 ところで物を投げるときは、あたりまえですが重い物より軽い物のほうがスピードが出ます。
念動で物を動かすときも同様。私を例にあげると、持ち上げて動かす事のできる限界重量は
1tちょっとでしょうか。このパワーで、直径22.5mm重さ9.5gの1ポンド硬貨を動かせば
その初速は……秒速約750メートル。
 「ちゃりん」と音がして、袖から硬貨がこぼれます。あとは私の意思ひとつで
任意の点を撃ち抜くこの殺人硬貨。万一これで倒せなくても、できた隙につけこんで近接戦闘に。
 
 「あなたはどうして、私を殺すんですか?」
 すこし冷静になれて、ようやくこんなことを考えました。仕事の邪魔された、というだけでしょうか。
あの子の関係者なら、怒りにまかせて私を殺害しようとするのも納得できます。それとも単に……。
 「もしかして、私がキライなんですか?」

356 名前:ハインケル・ウーフー ◆5bAMENiFwA:2003/05/11(日) 00:57

>>355 ハインケル・ウーフーVS麻宮アテナ
 
「嫌い? あぁ嫌いだね。いい子ちゃんぶって外面取り繕ってにこにこへらへらしてる奴は嫌いだ。
 あんたらがテロにも脅えず平和面してられるのは誰のおかげだ? 裏で泥被ってる私らだ。
 だったら、私のやることにいちいちしゃしゃり出てくるんじゃない。
 いつもそうだ、あんたらみたいなのが私らの存在に文句を付ける、何も知らない癖に」
 
 冷徹に光る杭は、小揺るぎもせずにアテナを指向している。
 それでいて、それが解き放たれる様子はない。
 先手を取る愚を理解している、後の先を取る為が故の沈黙。
 
「ヴァチカンが人道主義だって看板の裏で私らみたいなのがいるなんて知らないだろう?
 知ればおまえらは騒ぎ立てるからねぇ、人道にもとる行為だって」
 
 少し、意識が揺らいだ。
 頭からの出血は思った以上に多いのかも知れない。
 
「人道が何になる? それだけ掲げてれば納得する奴らは確かに多いさ。
 だけど、結局それも何かを犠牲にして成り立っている、そういう事だ、だったら……」
 
 片手でサングラスをむしり取る。
 決して鋭いとは言えないが、強い光を宿した瞳でアテナを見下ろした。
 口元が不快げに歪められている。
 
「その上であぐらかいてる奴らは、せめて邪魔するな。
 黙って私らのやる事を見てろ、見てしまったら縮こまってろ、銃口の前に立つな」
 
 きっかけがない、仕掛けられない。
 言葉だけを費やしながら、時間が流れる――――。

357 名前:麻宮アテナ ◆qZESP0jjgI:2003/05/11(日) 01:02

 ハインケル・ウーフーVS麻宮アテナ <聖者の街にやってきた>
>>356
 
 『……その上であぐらかいてる奴らは、せめて邪魔するな。
 黙って私らのやる事を見てろ、見てしまったら縮こまってろ、銃口の前に立つな』
 
 ああ、そうなんだ。陰で命のやり取りをして民間人(私は外国人ですが)の平和を
守っていると自負する彼女には、甘ったるい横槍がどうにも我慢できなかった。そうなんだ。
 
 やや急な坂道を挟んで均衡崩れず。時間だけが通りすぎます。
仕掛けてこないのはさすがプロ。でも私は、このまま夜までにらみ合いしても一向構いません。
どうせ警察屋さんは出てこない様子(彼女の差し金でしょう)ですし、
種種の関知能力で闇夜の視界を確保できるぶん、こちらが有利。
 
 からからから……。
 
 意識を逸らさないまま場違いな音にちらりと目を向けると、上手から走ってくるのは
一台のベビーカーです。可愛らしい赤ちゃんが乗っています。ひとりで。
 (……なんで、ベビーカー?)
 こちらの疑問を無視して、私たちの間の坂道を下っていく”それ”。周辺の人たちが
避難している今、このまま下っていけば100mほどでデヴェレ川に落ちて、そのまま
ティレニア海まで流されそうです。プロの彼女は当然のように動かず。そうこうしているうちに
ベビーカーは私たちの間を通り過ぎ、なおもスピードを上げながら川へ……。
 
 「……落とさないわよ!!」
 彼女に致命の隙を作るはずだった1ポンド硬貨を叩きつけて、ベビーカーの車輪を破壊。
「がりっ」と音がしてストップ。赤ちゃんは無事。間髪いれずサイコシールドを展開!
 
 がががっ。
 
 直後、撃ち出された杭が私を守る球形の力場に突き刺さって、火花と轟音を撒き散らします。
叩きつけられる負荷に思わず苦痛の声。これを防ぎきればこちらの勝ち。さもなくば……!

358 名前:ハインケル・ウーフー ◆5bAMENiFwA:2003/05/11(日) 01:04

>>357 ハインケル・ウーフーVS麻宮アテナ
 
 焦れる空気を打ち破るように訪れた絶好の好機、天の配剤としか思えない、致命的な隙。
 勝ち誇ったように、ハインケルは叫ぶ。
 
「ハ、甘ちゃんが! 何でもかんでも救えるなんて思ってんのか!?」
 
 躊躇なく第七聖典のトリガーを引き絞る。
 重苦しい音と共に吐き出された杭は、しかしアテナが展開した力場と衝突して火花を散らした。
 
「何っ!?」
 
 咄嗟の判断力に舌を巻きながらも、すぐに冷静さを取り戻す。
 あっさりと無効化されないという事は、やはり目論見は外れてはいなかったという事だ。
 転生を否定する概念武装は、人にあらざる力を否定するかのように、力場に牙を突き立てている。
 空気が軋む音、空気が灼け付く臭い、空気を焦がす光。
 両者の力は未だ拮抗し、バランスの崩れる気配は感じられない。
 一押しを加えようかという様に、言葉を唱える。
 
「人の子よ、主なる神はこう言われる。
 あらゆる種類の猛禽と、あらゆる種類の野の獣に語りなさい。
 お前たちは集まれ。
 来て、わたしがお前達のために屠ったわたしの犠牲に向かい周囲から集まれ。
 それはイスラエルの山々の上での大いなる犠牲である。
 お前達はその肉を食らい、その血を飲め。
 勇士達の肉を食らい、国の支配者達の血を飲め。
 それは雄羊、小羊、雄山羊、雄牛であり、みなバシャンの肥えた動物たちである。
 お前達はわたしがお前達のために屠った犠牲から、飽きるまで脂肪を食べ、酔うまで血を飲むがよい」
 
 未だ、均衡は崩れない。
 
「何も犠牲にできない奴に……何が成せるって言うんだ!」
 
 均衡の轟音すらかき消さんとばかりの――叫び。
 未だ、均衡は崩れない。

359 名前:麻宮アテナ ◆qZESP0jjgI:2003/05/11(日) 01:17

 ハインケル・ウーフーVS麻宮アテナ <聖者の街にやってきた>
>>358
 
 一点を穿つ力とそれを阻む力。帯電した髪が悲鳴をあげながら逆立ち、
身体中の毛穴から何かが吸い上げられる感覚。それでも均衡は崩れなくて。
 
 (あっうう、なんか、どうでもよくなって、きちゃったよ……)
 
 削り取られた精神力に反比例するように、疲労とか諦念とか虚無感とかが
加速度的に胸を食い荒らしていきます。そう。80年の人生が18年になるだけなのです。
たったそれだけのこと。今ここでふっと力を抜けば、ぜんぶおしまい。それも素敵。
 
 (ああ、でも、理香ちゃんに、いっぱい借りっぱなしだね)
 
 チョコレートでべたべたになった顔を拭いてくれました。
 学校帰りには手をつないでくれました。
 寝込んだときは、リンゴをすりおろしてくれました。
 
 粗忽で時間を守らない、おおざっぱな不真面目うっかりさん。
走馬燈とかいうもので思い出されるのはみんな、彼女のことばかり。
あのときも、あのときも、あのときも。なんでもない小さな優しさを少しづつ降らせて私を。
 
 「……歩かせてくれた」
 
 実際には何秒経ったのか何時間経ったのか、展開した力場に亀裂。
 (まだまだっ!)
 渦巻き立ち昇る力、無駄に撒き散らしていたエネルギーを方向付け、
私を破滅させようとした杭を「ばきり」と圧壊。そのまま滑るような移動で
距離を零にした私の右肘が、地面を砕かんばかりの踏みこみと共に、
彼女の身体のど真ん中に、
 
 どかっ。
 
 ものすごい勢いで突き刺さりました。

360 名前:ハインケル・ウーフー ◆5bAMENiFwA:2003/05/11(日) 01:24

>>359 ハインケル・ウーフーVS麻宮アテナ
 
「カ……ッ」
 
 臓腑をえぐり取られたかと思えるほどの一撃が、身体を貫く。
 衝撃に宙を舞い、たっぷり五メートル後ろに受け身も取れず落下。
 地面に叩きつけられた痛みは、先ほどの一撃に苛まれている神経に毛ほどの反応も与えなかった。
 一度地面で跳ね、そのまま大の字に。
 意識はあるが、動けない、指の一本も思うままにならない。
 
「う……クソッ……」
 
 起きあがれない、激痛に不随意筋が跳ね回る。
 辛うじて首だけを上げてアテナを見やる。
 ……そこにある事実、杭は、サイキックを貫けなかった。
 
 当たり前といえば当たり前の話だ。
 そもそもが2:8で負けるギャンブル。
 杭があれだけの抵抗を示したのも、本来は考えられない事なのだろう。
 
 傍らに転がる第七聖典。
 毒づいてみたくても、アレに自分の声は届くまい。
 
(終わりだ……)
 
 目を閉じて、唯終わりを待つ。
 
「ただ伏して……御主に許しを請い……」
 
 自分は、許されなかった。
 
「ただ伏して……御主の、敵を……打ち倒す者……なり」
 
 あいつは、敵ではなかったのか。
 ――分からない。
 御主ならざる身にできる事は、唯々伏して神罰を遂行する事のみ。
 なれば、その身に何が分かると言うのか。
 
 血が出るほどに、歯ぎしり。
 これから起こることに、ハインケルは抵抗できない、その事実に歯噛みする。
 できることは、ただ伏して運命を受け入れるのみ――――。

361 名前:麻宮アテナ ◆qZESP0jjgI:2003/05/11(日) 01:25

 ハインケル・ウーフーVS麻宮アテナ <聖者の街にやってきた>
>>360
 
 一撃に打ち貫かれた彼女が綺麗に飛んでいきます。まだ生きてる!
流石の鍛え方に更なる追撃で報いるべく力を収束……!
 
 (だめっ……!!)
 
 ……だめ。だめ。それをやっちゃったらもう終わりだよ私。
それをやっちゃったらもう、もうだめ。あわせる顔がないよ。
 
 私はどうかしていました。
 
 
 
 公園で一夜を明かして翌朝。英語で書かれた新聞を苦労して読んでみると、
なんでも昨日のホテルの一件は便乗テロだそうです。いよいよ私も
テロリストの仲間入りか、と思うと改めて泣きたくなりましたが、
容疑者リストにも被害者リストにも『Athena Asamiya』の名前はありません。
 
 それならばと空港に向かっても、誰何も襲撃もなし。恐るべきことに
本当に私は、あの事件とは無関係ということになっているようです。
ローマまで来てキツネにばかされている、と思いこみたいところですが、
私の身体の怪我は本物ですし、あの事件の渦中にいたのも本当のこと。
つまり、あれだけの事件を捻じ曲げられる何者かの手が、すぐ近くに。
 
 ちょうどキャンセルで空きができた(!)成田行きの飛行機に乗ると、
精神的に潰されました。いろいろあってたぶん、私自身が私に拒否反応。
昨日からろくに食べていないのに化粧室で何度も吐いていると、
自分が情けなくて惨めで汚らわしく思えてきて、そのせいでまた吐き気がして……。
 
 私はやっぱり、どうかしていました。

362 名前:柏崎理香 ◆ovRikaPLFk:2003/05/11(日) 01:30

>>361
 
 さや、さや、さや。
 
 あたしの手にあるべっこうの櫛が、長い黒髪を通る音。シャンプーの香りがする。
鏡の中の伏目がちな顔。唇がときどき開きかけても、すぐにきゅっと結ばれる。
 
 言いたくても言い出せないか。
 
 この子のことだから、またぞろ向こうで如何ともしがたい事態に遭遇して、
感じる必要もない責任を感じて自分を痛めつけているのか。
 
 一緒に鏡に写り込んでいるテーブル上の瓶は、かの有名な『ザ・スコッチ』だ。
あたしの好みだけを考えるなら土産としてナイス判断ではあるが、年齢制限に考えが
及ばなかったか、それとも知ってて選んだか。どちらにせよ、完調のこの子にはないこと。
 
 顔の左右に小さめのみつあみをひとつづつ作って、あとの髪は自然に後に流す。
みつあみを飾るに、リボンでなくチロリアンテープを選ぶのがミソだ。
 
 ショートのあたしと違って、この子の髪は色々工夫して遊べる。ちょっと羨ましいが
この長い黒髪も、ていねいに手入れをする几帳面さを持ったこの子なればこそ。
それが心労のせいか今は、手にとってみるとやや痛んでいる。ひとりでよほど
泣いたのだろうか。自惚れでもなんでもなしに、この子はあたしへ依存するところが
大きさいことを実感させられた。
 
 いずれ何とかしてやるべきなのだろうが、今はまだ。

363 名前:柏崎理香 ◆ovRikaPLFk:2003/05/11(日) 01:34

>>362
 
 ……よし完成。あとはヘアバンドなりカチューシャを選べばオッケー。
いつもより随分賑やかになるが、気分が変わってちょうどよかろう。
仕上げに耳元で囁いてやる。
 
 「おいコラ、アテナちゃん」
 「……」
 「ボンバボ・グガスビ・ボドダン・リント。ケ・セラ・セラ」
 
 ……しばしの静謐のあと、「なんで……ぐろんぎ……」と
腹よじらせて笑い転げる現役アイドルを目撃ドキュン。
 
 笑って笑って。しばらく笑い転げて。うつ伏せになって笑いつづけて。
 
 「……ありがとね」
 
 震える声が小さく聞こえた。

364 名前:ハインケル・ウーフー ◆5bAMENiFwA:2003/05/11(日) 01:37

>>361 >>362 >>363 ハインケル・ウーフーVS麻宮アテナ エピローグ
 
 ――――――――数日後、ローマ市内、とあるインド料理店にて。
 
「そりゃ、セブンで突破するなんて無理に決まってるじゃないですか」
 
 もの凄い勢いでカレーをかき込みながら、ハインケルの疑問に答えるシエル。
 一体どう喋っているのか、口と手を間断なく動かしながら、その発音が不明瞭になることはない。
 脇には山と積まれた空の皿が十二枚。
 
(……十杯って約束じゃなかったっけ?)
 
 自分の手元にあるカレーには一切手を付けない――あの食欲を見てたらそれだけで腹一杯だ。
 というか、アテナとの交戦によるダメージが抜けきっていない事もあるのだが。
 それを差し引いてもげんなりした顔で、まだ止まる気配のないカレーシスターを見やる。
 
「ご主人、おかわりをお願いします」
 
 ……少しだけ、財布の中身が心配になった。
 と、少しだけ皿から視線を上げたシエルが、
 
「十杯越えた分はセブンの修理代ですからね」
「……あぁ、そう」
 
 と、気持ち棘のある声で反駁する。
 確かに相当手荒い使い方をしたから傷だらけではあったのだが、そんなに酷いダメージだったか……?
 
「というか、貸す前にちゃんと使い道を聞いておくべきでしたねー」
 
 シエルが手を止めて、顔を上げた。
 どうやら、少し長い話になるようだ。
 ハインケルもいずまいを正して向き直る。

365 名前:ハインケル・ウーフー ◆5bAMENiFwA:2003/05/11(日) 01:38

>>364 続き

「摂理の鍵、は分かりますよね?」
「……えっと、何?」
「……」
 
 シエルの表情からは、「アンタホントに聖職者?」という無言の言葉がありありとにじみ出ていた。
 気を取り直して、話を続ける。
 
「えっとですね、一度吸血鬼になってしまった者達はもう人間の基準では死んでいます。
 なのにそれが生きているのは、それが人間ではないからですね。
 では、それを滅ぼしてやるにはどうしてやればいいか?」
「人間であることを思い出させてやる?」
 
 デキのいい生徒に満足する教師の顔で首肯。
 そのまま講義は続行される。
 
「そうです、その人間に戻す為の洗礼儀礼、その力を持つ概念武装を『摂理の鍵』といいます。
 もっとも、それは総称で、大抵の概念武装は『摂理の鍵』的な側面を多少は持ってるんですけどね」
「で?」
 
 まだ、本題には入っていない筈だ。
 別に大した興味もあるワケではないが、後学のために聞いておくのも悪くあるまい。
 そう思い、先を促した。
 
「はい、それでですね、摂理の鍵というのは、当然鍵穴とそこに差し込む鍵が存在します。
 概念武装が鍵で、滅ぼされる死徒が鍵穴というワケですね。
 コレがカチリとはまらないと、概念武装は効果を示さない。
 ここからが大事なんですが、鍵と鍵穴は、何も死徒とそれを滅ぼす概念武装だけとは限らないんです」
 
 ハインケルにもようやく少しずつ話が飲み込めてきた。
 つまり……。
 
「第七聖典には、第七聖典に合った摂理の鍵がある?」
「そうです、それがご存知の通り『転生』というワケです。
 確かに、超能力という存在も我らから見れば異端ですから、セブンも頑張りはしますけど……。
 所詮は畑違いですから、どう頑張っても突破は不可能でしょうね」
 
 つまり、賭は始めから負けで決まっていたというワケか。
 がっくりとうなだれ、肘を突いた腕の掌に顔を埋めて嘆息する。
 そういう話は、できれば最初に聞かせておいてほしかった。
 空いた手のスプーンでかちゃかちゃと、カレーの残る皿を苛立ち紛れに突っつく。
 シエルが何か言いたげにしているが、気にしない。
 自分のカレーをどう扱おうが知ったこっちゃない。

366 名前:ハインケル・ウーフー ◆5bAMENiFwA:2003/05/11(日) 01:38

>>365 続き
 
 とはいえ、ここでどんよりしていても話は始まらない。
 気を取り直して、顔を掌から上げた。
 
「じゃあ、超能力には超能力用の概念武装が存在する?」
「さぁ、少なくとも埋葬機関の聖典にはそんなのは存在しませんが……。
 どちらかというと、そういうのはAxの方が得意そうじゃないですか?」
 
 ロストテクノロジーなどに通じている分、確かに奴らの方がサイキックなどにも精通していそうだ。
 今度、“教授”(プロフェッサー)を尋ねてみよう、とハインケルは思った。
 
 どうやら、講義はコレで終わりらしい。
 またカレーとの格闘に戻ったシエルを見て、今度はハインケルが本題を切り出す番だった。
 
「で、アンタ確かもうすぐ日本に飛ぶんだっけ?」
「……耳が早いですね、相変わらずイスカリオテの皆さんは」
 
 口と手を止めずに、問いに対して言外に肯定してみせる。
 同時に、だからどうしたという響きも持たせていた。
 
 最近、日本という国はまるで吸血鬼のメッカにでもなったかのような状況だ。
 イノヴェルチ最大派閥の一つである燦月製薬の暗躍。
 マゴーラカ神教を隠れ蓑に種の存続、拡大を画策する夜刀の神。
 二十七祖が二人と、あの真祖の姫君が日本にいるという噂までもが流れてきている。
 高城とかいう一族と狂血病の関連性を調査するという話もあったはずだ。
 それらの問題全てに対してシエル一人が派遣されるワケではないのだが……。
 
「アンタ一人じゃ目的は達せられそうにないねぇ?」
「……何が言いたいんですか」
 
 誰もが知っている暗黙の秘密だろう。
 シエルの秘密、シエルの目的、シエルの執念、シエルの死に場所――――。

367 名前:ハインケル・ウーフー ◆5bAMENiFwA:2003/05/11(日) 01:39

>>366 続き
 
「人手が欲しくないか?」
「だから何を……」
「私を連れてけ」
「……」
「……」
「はい?」
「揃って問題は複雑、選択肢は酷薄、しまいにゃ時間制限まである……選んでる余裕、あるの?」
「いや、ですけど私の一存じゃ……」
「心配すんな、私が何処からも波風立たないようにしてやる」
「はぁ、それならいいですけど……あ、ちょっと!」
 
 話は終わったとばかりに、財布の中身を丸ごとテーブルの上にぶちまけて席を立つ。
 後ろからの声はとりあえず無視した。
 店の扉をくぐって駅までの道を目指す。
 どうやら、あのカレーシスターは目の前の誘惑を断ち切れなかったらしく、追いかけてくる様子はない。
 
 異端をぶち殺す、それに理由など必要ない、そう思う。
 だが、どうせなら理由のあった方がいい。
 頻発する日本での吸血鬼関連の事件、それに当たる人材は多いほどいい。
 かといって、あんまり多いと今度は自分の行動に制限が掛かりかねない。
 隠密性を理由に、シエルの随行に一人だけ立候補する。
 当然、日本では数多くの吸血鬼事件を追っかける事になるだろう。
 
 その傍らで、一人の日本のアイドルをストーキングする事くらいは大した問題になるまい。
 任務の過程で、不幸にもそのアイドルが巻き込まれて死去したとしても――――だ。
 
 平日の昼下がり、大通りを歩く人はそう多くはない。
 狂笑を浮かべるハインケルの表情が見とがめられる事がなかったのは幸いと言うべきか。
 生かされた、その恥辱に塗れてのうのうと生きていられるほどハインケルのプライドは低くない。
 
(待っていろ、麻宮アテナ。すぐにも天罰は下る)
 
 来るべき日を夢想しながら、神罰の地上代行者は大通りを歩く。
 
TO BE CONTINUED

368 名前:エンリコ・マクスウェル(M):2003/05/11(日) 01:56

日本ねぇ……まぁ好きにしろ。
ただし、熱狂的再征服(レコンキスタ)発動までには必ず帰ってこい、必ずだ。
時はまだ今しばらくの猶予がある。
それまでの間は吸血鬼退治もストーキングも好きにするがいいさ。
……あぁ、ただし面倒は少なめにしてくれよ?
 
ハインケル・ウーフーVS麻宮アテナ レス番まとめ
>337 >338 >339 >340 >341 >342 >343 >344 >345 >346
>347 >348 >349 >350 >351 >352 >353 >354 >355 >356
>357 >358 >359 >360 >361 >362 >363 >364 >365 >366
>367
 
感想は以下のいずれかまで
ttp://plan-a.fargaia.com/html/test/read.cgi?bbs=vampbattle&key=1033894737
 
ttp://www.appletea.to/~charaneta//test/read.cgi?bbs=ikkoku&key=1035898557

369 名前:吸血Zバット(M):2003/05/11(日) 02:01

三輪坂真言美vs吸血Zバット
>>336
 
「女子高生、と言っても……君はいわゆる、アレではないのかね? 
 ――っと、彼女はなんと言ったか……」
 答えは喉まで出かかっているのだが。
 
「むぅ……ほら、アレだ。空を飛んだり、父親がサンタだったりする……」
 分かっているのに言葉に出来ないのは、なかなかにもどかしい。
 
『イーッ!』
「む? ああ、そうだった、それだ」
 宴会中の戦闘員の一人が、正解を教えてくれた。これで今夜はぐっすり眠れそうだ。
 
「君は、彼女と一緒なのだろう? つまり――美h(以下諸事情により省略)と」
 少女の方に向き直り、ビシッ! と指差してみた。
「だが、ここで一つ疑問が生じる。
 彼女と比べると、君は――その、なんだ。聡明さに欠けると言うか……
 飛び級が出来るほどの学力を持ち合わせていないように見受けられるのだ。
 故に私は――」
 腕組みをしつつそう言ってから、私はもう一度少女に指を向けた。
 
「君に問う。
 ……どういった経緯で、飛び級をするに至ったのかね?」

370 名前:三輪坂真言美 ◆qJKoTodamA:2003/05/11(日) 02:03

三輪坂真言美vs吸血Zバット
>>369
「だから飛び級じゃないって言ってるじゃないですかっ!」
 
憤懣やるかたない、と言う風情でZバットを睨み付ける真言美。
だが、Zバットのほうはさっぱりわからない様子。
 
「……」
 
ずんずんとZバットに近づく。
 
「何度も言ってるように……」
 
むんず、と襟首を掴む。
 
「中学生じゃないですーっ!」
 
そして、投げた。
小柄な身体を活かして、Zバットの懐に潜り込んでの変則背負い投げ。
全身のバネを使った見事な投げだ。
 
そして、そのまま自分の身体を投げ出すようにして、肩からZバットの腹部に落ちる。
そして、その状態のまま文句をさらに続ける。

「大体ですね、Zバットって言ってるくせにムチも使わなければカードもないあなたに言われたくないですっ!」
 
「二月二日飛鳥五郎を殺したのは貴様か!、とも言わないですしっ! パチ臭いにも程がありますよっ!」
 
……何故そんなに詳しい。

371 名前:吸血Zバット(M):2003/05/11(日) 03:15

三輪坂真言美vs吸血Zバット
>>370

「ぐべらぼぁっ!」
 少女の肩が、私の腹部、と言うか鳩尾に突き刺さった。
 
 決して重くはない体重とは言え、それなりの重量が一気に落ちてきたのだ。しかも、鳩尾に。
 改造人間だって、一応『人間』だ。強化しているが、限度もある。
 鳩尾への痛恨の一撃によって、私は意識を急激に失いかけた。
 
 ああ、川のせせらぎが聞こえる……。
 幅は広いのに、流れは穏やかだ……。
 へぇ……三途の川の水って、意外に温かいんだなぁ……。
(ざぶざぶざぶ<川を渡る音)
 ああ、もうすぐ向こう岸だ……。
 
『――も言わないですしっ! パチ臭いにも程がありますよっ!』
 
 ――。
『――パチ臭いにも程がありますよっ!』
 
 ――――。
『――パチ臭い――』
 
 ――――――。
『――パ(略)』
 
「――パチモノ臭くて、何が悪いか!!!!」
 上に乗ったままの少女を跳ね飛ばして起き上がり、声の限りを尽くして叫んだ。

「いいんだ、パチモノ臭くても、デ○クリ○ゾンとタメ張れるかそれ以上のポリゴン不細工でも、
 出来の悪い同人ゲームみたいな出来でも――」
 言ってて鬱になりかけた。
 と言うか、実際になった。
 ……発売した会社、潰れてるし(ちなみに、ライトスタッフ)。
 
「でぇぇいっ! それは置いておいて、食らえぃっ! 必殺、ソニックウェーブ大往生ブラックレーベル!!」
 口を大きく開け、少女に向けて超音波を放つ!
 
 
 本来ならば、波○拳よろしく両手を合わせて超音波を放つのだが、今回に限り、特別大サービスだ。
 余談だが、この技は『黒っぽいのが素敵』と、お茶の間の奥さまにはご好評をいただいている。

372 名前:弓塚さつき:2003/05/12(月) 01:08

広報スレでオーケーをもらったので、参戦させてもらうね。
今までの「弓塚さつき」よりは全然下手っぴかもしれないけど、
じっくり見守ってくれると嬉しいです。
 
出典 :月姫
名前 :弓塚さつき
年齢 :17歳
性別 :女
職業 :高校生だった―――今は吸血鬼。半人前だけど………
趣味 :志貴くんを追いかける事
恋人の有無 :今は、ね。でも、必ず……
好きな異性のタイプ :わたしのピンチにわたしを助けてくれる人かな?
好きな食べ物 :……綺麗な、いい血かな。まだ、わたし、半人前だから―――――
最近気になること :……シナリオ、わたしの。
一番苦手なもの :日光、流水………もう、わたしはみんなのいる世界に戻れないんだ―――――
得意な技 : 固有結界<枯渇庭園>
一番の決めゼリフ :
「―――待っててね、すぐに一人前の吸血鬼になって、志貴君に会いに行くから!」
将来の夢 :一人前の吸血鬼になって、志貴くんと……
ここの住人として一言 :新米だけど、よろしくお願いします。 (ぺこり
ここの仲間たちに一言 :何人目のわたしか分かりませんけど、今度こそは……
ここの名無しに一言 :初心者ですけど、じっくり見てくれると嬉しいです。

373 名前:蟆霧 ◆slMAKIRIrI:2003/05/12(月) 02:20

>>323
蟆霧VSミズー・ビアンカ
 
 
「ひょう」
 
 剣を振りかぶったところまでは見ていた。
 剣が左手、肘から先を飛ばしたシーンは、いまみてる。
 そのあいだは……零。一瞬たりとも捉えられなかった。夜刀の神の眼をしても。
 
 おいおいおいおい、なんだい。やれば出来る子なんじゃない、ミズー・ビアンカ。
 おにいさんはとっても嬉しいです。はい。
 それでなくっちゃあ最終決戦になんざなりやしません。素晴らしい。
 今のこのオレの気持ちをあらわすために、両手をいっぱいにかかげて空に。や、
月がきれいないい夜だ。ひぃ。
 
「ゃっは――――ッははは!
 好い、佳い、奇麗だ、キレイだぜミズー・ビアンカァっ!」
 
 わずかにバックステップ。墜ちるギリッギリで踏みとどまって、さて。
 右手より取り出だしましたるは脱手?、中国に古くより伝わる暗器に御座い。
 ただの暗器と思い召されるな。扇のように広げましたるこの白刃、それ一、二、
三、四、五と、全部投げました。
 しかしあら不思議。飛んでいく刃は数えて六つ。五つ目の影にひときわ凶悪な形
の一本が隠れているじゃないですか。
 これぞ必殺絶手?。ほかの奴は刺さっても致命傷にはなりにくいが、これだけは
乾坤一擲の威力をもってるって寸法さ。
 

374 名前:蟆霧 ◆slMAKIRIrI:2003/05/12(月) 02:32

>373の訂正ぃ―――っ。
蟆霧VSミズー・ビアンカ
 
 
「ひょう」
 
 剣を振りかぶったところまでは見ていた。
 剣が左手、肘から先を飛ばしたシーンは、いまみてる。
 そのあいだは……零。一瞬たりとも捉えられなかった。夜刀の神の眼をしても。
 
 おいおいおいおい、なんだい。やれば出来る子なんじゃない、ミズー・ビアンカ。
 おにいさんはとっても嬉しいです。はい。
 それでなくっちゃあ最終決戦になんざなりやしません。素晴らしい。
 今のこのオレの気持ちをあらわすために、両手をいっぱいにかかげて空に。や、
月がきれいないい夜だ。ひぃ。
 
「ゃっは――――ッははは!
 好い、佳い、奇麗だ、キレイだぜミズー・ビアンカァっ!」
 
 わずかにバックステップ。墜ちるギリッギリで踏みとどまって、さて。
 右手より取り出だしましたるは脱手?、中国に古くより伝わる暗器に御座い。
 ただの暗器と思い召されるな。扇のように広げましたるこの白刃、それ一、二、
三、四、五と、全部投げました。
 しかしあら不思議。飛んでいく刃は数えて六つ。五つ目の影にひときわ凶悪な形
の一本が隠れているじゃないですか。
 これぞ必殺絶手?。ほかの奴は刺さっても致命傷にはなりにくいが、これだけは
乾坤一擲の威力をもってるって寸法さ。

375 名前:蟆霧 ◆slMAKIRIrI:2003/05/12(月) 02:57

スンマセンもう一回>373の訂正やらせろや
蟆霧VSミズー・ビアンカ
 
 
「ひょう」
 
 剣を振りかぶったところまでは見ていた。
 剣が左手、肘から先を飛ばしたシーンは、いまみてる。
 そのあいだは……零。一瞬たりとも捉えられなかった。夜刀の神の眼をしても。
 
 おいおいおいおい、なんだい。やれば出来る子なんじゃない、ミズー・ビアンカ。
 おにいさんはとっても嬉しいです。はい。
 それでなくっちゃあ最終決戦になんざなりやしません。素晴らしい。
 今のこのオレの気持ちをあらわすために、両手をいっぱいにかかげて空に。や、
月がきれいないい夜だ。ひぃ。
 
「ゃっは――――ッははは!
 好い、佳い、奇麗だ、キレイだぜミズー・ビアンカァっ!」
 
 わずかにバックステップ。墜ちるギリッギリで踏みとどまって、さて。
 右手より取り出だしましたるは脱手金票(ひょう)、中国に古くより伝わる暗器に
御座い。
 ただの暗器と思い召されるな。扇のように広げましたるこの白刃、それ一、二、
三、四、五と、全部投げました。
 しかしあら不思議。飛んでいく刃は数えて六つ。五つ目の影にひときわ凶悪な形
の一本が隠れているじゃないですか。
 これぞ必殺絶手金票。ほかの奴は刺さっても致命傷にはなりにくいが、これだけ
は乾坤一擲の威力をもってるって寸法さ。

376 名前:ミズー・ビアンカ ◆c0Ko8pMIZU:2003/05/12(月) 17:32

>>375
蟆霧VSミズー・ビアンカ
イン・ア・フライト (空戦領域)
 
止まらない。
止まる事を知らない。
喉から搾り出されるように続く咆哮も。
標的を求めて稼動する身体も。
 
この瞬間。
獣の時間が続くかぎり、何も終わることはない。
今、この時だけは、自分と標的のほかは、世界から切り離される。
 
跳ね上げられた丸太のように、綺麗な弧を描いて、男の腕が真上に飛ぶ。
撒き散らされる粘っこい液体が、彼女の頬にしぶいた。
直後、ほんの僅か距離が遠ざかる。飛び道具を放つ為の間合い取りであると、
本能的な部分で察知はできた。
 
飛来する凶器。射手の手元を見るまでもない。
来るものを、ただ受け止めるだけでいい。
 
一本目。これは避けるまでもなく、左頬を微かに切り裂き背後へ抜けた。
二本目は左脇。心臓に近い地点へと突き立つ。だが身体は動く。
問題は、無い。そのまま、三本目の軌道上に左腕を乗せた。
四本目は腹部へと飛んでいた。切っ先の鋭い鉄が革鎧を容易く貫通し、
中身へと食い込む。だが、やはり動ける。
五本目。顔の正面だった。右腕が動き、操られた剣の腹が叩き落す。
 
そして、六本目。
五本目に隠された必殺の一本は、真っ直ぐ彼女の喉を狙っていた。
迷わず、三本目を受け止めた左腕を、手を開いた形で伸ばす。
 
 
全ての凶器が到達したと同時、ミズー・ビアンカは一歩を踏み出した。
咆哮は、途絶えない。
突進も、途絶えない。
獣を止める事は、叶わない。
 
凶器をその平に突き立てたままの左手が。
最短距離を進み、男の肩へと伸ばされる。

377 名前:ヘルボーイ:2003/05/12(月) 21:11

これはこれは…日本もしばらく来ないうちに変わっちまったな。
何だか盛り上がっている様じゃないか、吸血鬼ども。
知らない奴も多いと思うんで自己紹介しておくぜ。

俺の名はヘルボーイ。何でこんな名前なのかは分からないし
別に気にもかけちゃいねえ。
出典はアメコミ『ヘルボーイ』。
小学館プロダクションから何冊か翻訳版が出てるから見てみるといい。
フィギュアも出てるぜ。寺田克也氏が描いた俺のイラストを
立体化したやつがな。
さて…あとはテンプレで済ますぜ。

名前 :ヘルボーイだ。(真の名前:アヌン・ウン・ラーマ)
年齢 :1944年12月23日に召喚された様だ。そこから換算して現在59歳だ。
性別 :こんなナリをしちゃいるが男だ。
職業 :超常現象捜査局所属のオカルト調査員をしている。
趣味 :考えた事もねえな。
恋人の有無 :色恋沙汰には興味ないんでね。
好きな異性のタイプ :さあな。さっぱりだ。
好きな食べ物 :子供の頃パンケーキとヌードルスープが好きだったな。
        あとルーマニアのパプリカ・チキンが絶品なんだよ。
最近気になること :最近やたらと化け物達が騒ぎやがる。
          何か悪い事が起きなきゃいいんだけどな。
一番苦手なもの :カニバリズムは見ていて腹が立つ。
得意な技 :得意って言うわけじゃねえんだけど…。
      俺の右腕は見ての通りこんなごつい石の腕でな。
      困った時にゃこいつで一発ガツン、ってのもしょっちゅうさ。
      何でそんな物付いてるかって?俺にもよく分からん。
一番の決めゼリフ : 決め台詞じゃねえけど、『Son of a…!』ってのは
          口癖になってるぜ。
将来の夢 :おいおい…俺はもうこんな歳だぜ?
ここの住人として一言 :一時は世界最高峰の調査員とも呼ばれた身だ、
            恥だけはかかない様勤めるよ。
ここの仲間たちに一言 :この中でレムリア語の分かる奴はいるか?
ここの名無しに一言 :人は喰うなよ。

ああ、そんでもってだな、今は鯖落ちしてて上手い事書き込めねえけど
ttp://plan-a.fargaia.com/html/vampbattle/res.cgi/1013898230/
に詳しい事や原典は書き込んでおくよ。

それじゃ、そろそろ仕事を始めるとするか…。

378 名前:蟆霧 ◆slMAKIRIrI:2003/05/12(月) 22:16

>376
蟆霧VSミズー・ビアンカ


 いや、本当は絶手金票もどうでもよかったんだよ。どうせ効かないって。わかっ
てて撃ったし。
 本命はこっち。それぞれの刃にくくった黒紐のほうでした。からみつかせちまえ
ばあとは振り回すなりなんなり好き放題。足場の悪いところじゃ相手の体勢崩し
たほうが勝ちってね。
 はい。わかってるっての。全部あとの祭りさ。
 ここまで密着されちゃ、紐をからませるどころじゃない。
 
「チィ」
 
 舌打ちすらもどかしく動き始める。右腕だけでこのスピードの化獣(バケモノ)を
相手にやりあえるってほど己惚れてもいない。だが逃げ場もない。
 右肩をとろうとするミズー・ビアンカの手。その手が燃えているかのように恐ろしく、
オレは思わず一歩逃げた。
 途端、足を滑らせた。
 
「おあっ!?」
 
 ここは高度一万メートル。
 
 遮二無二湾曲した旅客機壁面にしがみつき、なんとか躰の安定を確保。
 その際ちょうどいいところに蹴りがはいったのか、突進してきたミズー・ビアンカ
が今度はダイブ寸前。ひゃっひゃっ、いいザマ。
 と、と、思ったらオレの躰がひっぱられる。
 
 ――――ヤロウ、投げた金票にくくりつけてた紐だ! しっかりミズーの野郎は
あの紐を握って安全を確保してやがった。墜ちる奴に引きずられる。
 
「往生際悪いンじゃねぇのッ!」
 
 懐からナイフをとりだす。右手にからんでいるこの紐を切り落とせば、それで奴
はまっさかさまだ。

379 名前:三輪坂真言美 ◆qJKoTodamA:2003/05/12(月) 23:49

三輪坂真言美vs吸血Zバット
>>371
「輪っか超音波っ!?」
 
Zバットの口から吐き出された超音波を辛くも躱す真言美。
だが、一度は躱せてもそう何度も躱せはしない。
 
「きゃん!?」
 
輪っかの超音波が真言美の左肩を抉った。
肩の部分の制服が弾け飛び、白い肌が露出する。
そして、肌を犯す赤い血。
それが、一つ、二つと増えていく。
直撃こそないものの、かなり危険な状態だ。
 
「くっ……」
 
さすがにふざけた様子ではいられず、真言美の顔が引き締まる。
だが、その瞳は決して絶望に曇ってはいない。
テレビの向こうのヒーローがそうだったように。
 
MDを再生。
血にまみれながらも朗々たる調子で真言美は唱える。
 
「たまちはう かみのやしろは わがこころこころのおくにかみむかうなり」
 
その目の前に迫る超音波。
真言美はゆっくりと手を前にかざし……打ち合わせた。
 
ぱぁん!
 
激しい音が響き渡り、超音波が雲散霧消する。
 
「柏手祓い。音はより大きな音に消されるが道理……です」
 
ゆらり、と立つ真言美の姿は痛々しくも凛々しい。
 
「そして……ヒーローは勝つのが道理です!」
 
ゆらり、と真言美の足下に火者の護章に刻まれた紋様が浮かぶ。
そして、真言美はたん、と地を蹴る。
足には炎。まるで意思を輝きとしたかの如き、まばゆい炎。
 
「真・言・美・ファイナーーーール!」
 
轟音と共に炎を纏った蹴りがZバットに叩き込まれた。

380 名前:吸血Zバット(M):2003/05/13(火) 01:10

三輪坂真言美vs吸血Zバット
>>379

「ぐ、おおあああぁ〜っ!!」
 少女の渾身の蹴りが、私の胸部を痛打、そのまま吹き飛び――崖の側面に叩きつけられた。
 
 瓦礫が、崩れ落ちた私の身体に降り積もる。
 
 
 静寂が、空間を支配した。
 
 
「ふっ……ふっふっふ……はぁーっはっはっは〜〜〜っ!!」
 瓦礫の中から立ち上がり、高笑い。もちろん、両手を腰に当てて、である。
 
「三輪坂真言美!! 
 ――今日はこのくらいにしておいてやろう。
 だが、忘れるな……」
 渾身の力を込めて、少女を指差す。
「次に出会った時こそ、貴様の最後!
 同時に……我が結社の新たなる幹部――ダーク☆マナミィ――の誕生の瞬間であると言うことを!!」
 ニヤリ、と笑ってみせてから、戦闘員達の方へ向き直る。
 
「――撤収! 逃げるのではないぞ、私相手に健闘した少女に免じて、この場は引いてやるのだ!!」
 少女に聞こえるよう、大声を張り上げた。
 そう、私は逃げるのではないのだ。
 
 ……信じろ。
 
 戦闘員達は素早い動作で荷物をまとめ、近くに止めてあるトラックに放りこんだ。
 
 ちなみにこのトラックは我等の所有物である。
 窓ガラスが割れていたり、ドアの所に『O市浄水場』などと書いてあるが、気にしてはいけない。
 
「では――さらばだ! はぁーっはっはっはっ!!」
 最後にもう一度高笑いをしてからトラックに乗り込み――撤収した。

381 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus:2003/05/13(火) 20:43

ロゼットvsモリガン
「Nightmare Beauty」

>>導入

偶然は、何時も愉しませてくれる。
それは今回も変わらないようだった。

今日の昼――午後1時を少しほど過ぎた時間。
街の雑踏の中ですれ違った人間の中に、ある少女が居た。
『憑かれて』いる。
それも一目で判るほどのかなり強力な悪魔に。

――へぇ。

咄嗟に呼び止めていた。

「ねぇ、貴方。プレゼントを・・・いえ、大したモノじゃないわ。
 貰ってくれない?」

見た目は只の逆十字をあしらった銀のネックレスだが、無論見た目通りの筈が無い。
見知らぬ人間に声を掛けられた挙句物まで押し付けられて流石に少女も困惑している様子だったが、
手を取って強引に受け取らせる。
捨てられようと構わない。
要は「触れる」一瞬が出来ればそれで良いのだから。

その場はそれで別れた。
愉しみは、ゆっくりと味わうべきだろう。




今夜、あの少女は夢を見る。
悦びに満ちた、地獄のように良い夢を。
それが、始まりだ。

382 名前:ロゼット&クロノ&アズマリア ◆JiAMENUx66:2003/05/13(火) 20:45

ロゼットvsモリガン
「Nightmare Beauty」
 
>>381
「・・・・・・・ふやっ?!」
 
あわててベットから体を起こす。
朝、窓の外からは鳥のさえずりと爽やかな朝日が差し込んできている。
あー・・・・・・もう朝か。
 
「・・・・ったく、変な夢みた・・・・」
 
そう呟きながら、髪の毛を手でぐしぐしする。夢見が悪かったせいか、酷く気分がだるい。
何であんな夢・・・・・夢?
 
「あれ? そういえばどんな夢見たんだっけ?」
 
ふと、思い返してみる
変な夢を見た、それは間違いない。
ただ、その内容が思い出せない。
 
「・・・・・・ま、いっか」
 
んーっと一度大きく伸びをする。
あふ・・・なんか眠気が抜けないな・・・・・・。
そんな事を考えながら、私は顔を洗いにタオル片手に洗面台へと向かった。

383 名前:ロゼット&クロノ&アズマリア ◆JiAMENUx66:2003/05/13(火) 20:46

>>382続き
(うー・・・・・眠い・・・・・)
 
私は、聖堂の掃除をしながら睡魔と闘っていた。
少し離れたところで、クロノも同じようにイスを雑巾で磨いている。
ステンドグラスから差し込む光が、床に綺麗な模様を描く。
なんだか・・・・その光を見てるだけで・・・・眠気が・・・・・
くら、と意識が飛びそうになり―――――
 
<寝ちゃいけない! 寝たら「また」あいつが来る!>
 
危うく意識を取り戻した。
危なかった・・・・・あのまま眠ってたら、またあいつに・・・・・って?
 
「また? あいつ? ・・・・・・・・何考えてるんだろ」 
『ロゼット! ちょっとこっち手伝って!』
 
む・・・・クロノが呼んでる。
 
「なぁにー? 一人でできないのー?」
 
私は、頭を振りながらモップ片手にクロノの元へ向かった。

384 名前:ロゼット&クロノ&アズマリア ◆JiAMENUx66:2003/05/13(火) 20:47

>>383続き
「あふぁぁぁぁぁふん・・・・・・・」
 
お昼。
私は、昼食を終えてマグダラ修道会の中庭でクロノとアズマリアと一緒に休んでいた。
 
「もう・・・・少しは恥じらいなよ、大口開けて欠伸なんて」
 
クロノが、嘆息しながら私の欠伸をとがめる。
 
「仕方ないじゃない・・・・眠いんだ・・・・も・・・・・ふあぁぁぁぁぁぁ・・・・・」
 
反論しながらまた欠伸。どうにも眠気が収まらない。
 
「何か疲れることでもあったんですか?」
 
アズマリアがくす、と笑いながら聞いてくる。
 
「うーん・・・・特に何もしてないと思うんだけど・・・・・」
 
どうにも、思い当たるところがない。
 
「・・・・前みたく、時計の封印がってことはないよね?」
 
クロノが顔をしかめて聞いてくる。
 
「あー大丈夫。さっき長老(エルダー)のじじぃに見てもらったけどなんともないって・・・・・・
 あふぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・」
 
言いながら、また欠伸。どうにもこうにも止まらない。
 
「ならいいけど・・・・・・」
 
クロノが、そういいながら溜息をつく。
丁度そのとき、爽やかな初夏の風が中庭を吹き抜けていく。
心地よい日差しと、風。それが、私を眠りへと誘う。
 
「・・・・・・・・・」
 
気持ちいい・・・・・なぁ・・・・・・
太陽を見上げながら、そんな事を考えた瞬間。心に隙が生まれた。
その隙を突いて、睡魔が私の意識を奪っていく。
しまった!! そう思った瞬間には遅かった。
 
『・・・・ロゼット? ・・・・寝てる?』
『疲れてるみたいですから、暫く休ませて上げましょう?』
 
クロ・・・・ノ・・・・アズマ・・・・リア・・・・・・。
酷く遠くから聞こえる二人の声を聞きながら、私の意識は闇に落ちていく。
そんな私を嘲笑うような、艶やかな女性の笑い声が、聞こえたような、気が、した。

385 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus:2003/05/13(火) 20:48

ロゼットvsモリガン
「Nightmare Beauty」

>>382 >>383 >>384

「・・・こんにちは、ロゼット」

この名前は、数時間前に本人の口から教えてもらったばかりだ。
唇の柔らかさと共に。

「さあ、夜の続きをしましょうか?」

舞台は太陽の照っている中庭。
悪くない場所だ。
おまけに隣には少女と少年――いや、これが悪魔か。

「ふふ、そう硬くならないで・・・」

忘れていた夢を思い出して緊張しているのが余りにもあからさまで、
自然と笑いが漏れる。

「で、貴方は何処からが良い?
 痛い思いがしたい? それともベッドの上から再開の方が良いかしら?」

その言葉で詳細を思い出したのか、少女は頬を赤らめて―――

「―――あら、今頃思い出したの? そう、あの続きをするのよ。
 ああ、でも全く同じだとつまらないでしょう? だから少しだけ趣向を変えてみたわ」

夜は二人きりだった。
今は違う。
本質は変わらずに、けれど決定的に。

386 名前:ロゼット ◆JiAMENUx66:2003/05/13(火) 20:49

ロゼットvsモリガン
「Nightmare Beauty」
 
>>385
・・・・・目を開く。
場所は変わらない、さっきまで私が居た中庭だ。
空には太陽。爽やかな光。
だが―――違和感。
そこには、初夏の爽やかな空気も、風も、香る草木の臭いもない。
よく出来た箱庭。評価するならそれが一番か。
そして―――そこには「居てはいけない」はずの人物。
 
「あんた・・・・・はッ」
 
艶やかな笑みを浮かべ、まるで自身の肌と豊満な体を晒すような衣装の女―――。
昨日、私にいきなり銀のネックレスを突きつけてきた女性。
そして・・・・・・
 
「・・・・・・ッ!」
 
彼女の言葉に赤面する。
昨日の夜、見た、『夢』をようやっと思い出した。
彼女は昨夜私の夢に現れ―――私を―――私を・・・・・・弄んだのだ。
・・・・・・くッ・・・・こンの・・・・・!
 
「クロノ、アズマリア!」
 
私は、彼女から目を離さずに傍らで芝生に座っている二人へ警告の叫びをあげる、が・・・・・・。
 
『・・・・・・?』
『・・・・・・・・』
 
二人は私の声に気がつかない。否、私と彼女の存在など居ないかのように雑談を続けている。
――――え?
二人へと振り向いた私の背筋を一瞬冷たいモノが流れる。
・・・・・その時になって、私はようやっと気がついた。
普段私が首から下げている懐中時計・・・・クロノ、100人殺しの悪魔たるクロノを封じる懐中時計。
肌身離さず身につけていたそれを、ついさっきまで首に下げていたそれを、今の私はつけていなかった。
 
「・・・・これ・・・・は・・・・・?」
 
その懐中時計の変わりに、私は別のものを首から提げている。
目の前の彼女が、私に突きつけてきたネックレス。なんと言うことはない、安物のシルバーアクセサリ。
『逆十字(アンチクロス)』のネックレスが、陽光を浴びて、きらりと怪しく輝いた。

387 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus:2003/05/13(火) 20:50

ロゼットvsモリガン
「Nightmare Beauty」

>>386

良い反応をしてくれる。
とても良い。
その焦りと不安に塗れた表情が堪らない。
こういう「遊び」は、相手が良いと倍愉しくなる。

「・・・どうかしたの? ああ、ひょっとしてそこの悪魔が助けてくれると思った?」

左手で懐中時計を弄びながら、ゆっくりと歩み寄る。
赤く染まった頬に、そっと触れた。

「なら残念ね。わたしは貴方しか感じない。貴方もわたししか感じられない。
 今のここはそういう世界なのだから」

指は首筋を伝い、ネックレスに辿り付いた。
シスターが身に付けるには相応しくないデザインの、悪夢を運ぶモノ。

「気に入ってもらえたかしら? まあ、これと比べたら見劣りするかもしれないけど」

手の中の懐中時計に視線を落とし、耳朶をくすぐる様に囁く。
その間も手は止めず、肩口へ。
修道服の生地を掴んで引き千切った。

「―――あら、折角つけてあげたキスマーク、消えちゃってるじゃない。
 まだ起きると消えるのかしら・・・ふふ、もう一度つけてあげましょうか?
 今度は、消えないくらい濃く」

白い肌に、爪を立てた。

388 名前:ロゼット ◆JiAMENUx66:2003/05/13(火) 20:51

ロゼットvsモリガン
「Nightmare Beauty」
 
>>387
「・・・・・・?!」
 
気がつけば、彼女は私の体に手を回しながら頬に手を触れていた。
・・・・いつの間に?!
思わず、腰のホルスターに手をまわ・・・・・しまったッ・・・・!
いくらなんでも、普段から武器を身に着ける習慣は私にはない。
あ・・・・・。
彼女の指が、私を舐めるように撫でさする。
気持ち悪い・・・・・!
思わず顔を背けた私の目に、彼女の手のひらで弄ばれるクロノの懐中時計が映る。
それ、返・・・・・っ!
 
「ひああああああ?!」
 
懐中時計を奪い返そうとしたその時、彼女の手が私の服を引き裂いた。
ひあ?!
胸元が、大きくはだける。
彼女は、私の胸元をちらと見ると艶やかな―――生ぬるい不愉快な笑みを浮かべ、私を見る。
彼女の腕に力が入り、長い爪が私の腕に食い込んだ。
 
それが、限界。
 
「〜〜〜〜〜ッ!!!」
 
私は、その不快感に耐え切れず、彼女を振り払おうと暴れる!
 
「・・・・は・・・・・離せッ! 気持ち悪いのよ!
 大体、私にはそんな趣味なんてないんだから!」
 
暴れながら、彼女の手の中にある懐中時計を見る。
・・・・返せ! それは、『私の』だ!
私は、懐中時計を見据えながら、彼女の腕につかみかかった!

389 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus:2003/05/13(火) 20:52

ロゼットvsモリガン
「Nightmare Beauty」

>>388

時計を奪い取られた。
正確には奪い取らせてあげた、と言うべきか。

「随分な言い方ねぇ。あんなに悦んでくれたのに」

僅かに開いた距離を保ったまま、続けた。

「事細かに語ってあげましょうか? 昨夜、貴方がどんな声で鳴いたか」

笑みが深くなる。
少女の痴態を思い出して。その「味」を思い出して。

「それとも―――実地を踏まえて追体験してみる?」

翼が、音を立てて変形する。
歪に。
鋭く。
そして長く。
二度、太腿の辺りを狙って軽く振った。

「ほら、ぼーっとしている時間は余り無いわよ? 速く、わたしを愉しませてくれなきゃ」

もっと足掻いてくれなければ。
もっと絶望してくれなくては、面白みに欠ける。
急かす様に、もう一度翼を振りかぶった。

390 名前:ロゼット ◆JiAMENUx66:2003/05/13(火) 20:52

ロゼットvsモリガン
「Nightmare Beauty」
 
>>389
抵抗するかと思いきや、彼女はあっさりと私の体を離し、懐中時計を手放した。
―――いやに、あっさり・・・・?
何にせよ、私はネックレスをはずして、懐中時計を掛けなおそうと――――
 
「あ・・・・・え?」
 
次の瞬間、懐中時計が私の手の中でさらさらと音を立てて崩れてゆく。
 
「え、え、え?」
 
わけも分からないうちに、懐中時計は完全に砂となって私の手から零れ落ちていった。
私の首には合いも変わらず『逆十字(アンチクロス)』のネックレスが揺れている。
くッ・・・・・。
精一杯の怒りを込めて、目の前の相手を睨みつけてやった。
だが、彼女はひるむことなく―――いや、むしろそんな私を見てさらに笑みを深くする。
DAMN・・・・・ッ!
彼女の言葉が、ぐさぐさと私の羞恥心を突き刺し、刺激した。
昨晩、彼女にいいように弄ばれた自分の姿が、ありありと浮かび上がる。
 
「―――ッ?!」
 
一瞬、意識がそれた次の瞬間。
彼女の翼が鋭利な刃物のようになって私に襲い掛かる!
 
「っとぉ?!」
 
あわてて地面を蹴り、後ろへと跳ね跳んだ!
先ほどまで、私の体があった空間を刃物が薙いで行く。
 
「この・・・・・変態!」
 
武器はない。そして、私には護身程度の格闘術しか覚えがない。
けど――――
拳を前にぐっと突き出し、脇をしめ、腰を落として構えの姿勢。
 
「出来る出来ないじゃなく、やるしかないよね・・・・ッ」
 
素手でどこまでやれるか・・・・私の顔を冷や汗が流れた。

391 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus:2003/05/13(火) 20:53

ロゼットvsモリガン
「Nightmare Beauty」

>>390

何をするのかと思えば、素手でやるつもりらしい。
理解していないのだろうか。

「・・・本気? だとしたら―――――」

それとも、侮られているのだろうか。
覚悟だけで何とかなると、この差が覆せると思っているのだろうか。
わたしを、その程度だと思っているのだろうか。

「――――余り、わたしを怒らせない方が良いわよ?」

教えてあげよう。
差を。夢でも変わらない現実を。
身体に証を刻んで、刻んで、刻んで。
愚かな意思を粉々に壊して。

「ねぇ・・・」

少しだけ本気で動いた。
少女の右側面に廻りこみ、首を掴む。

「ちゃんと、受身取りなさいね?」

呟きながらゆっくりと吊り上げる。
暫くそのまま絞め続けて、放り投げた。
まだまだこれからなのだから、死なない様に加減して。

392 名前:ロゼット ◆JiAMENUx66:2003/05/13(火) 20:54

ロゼットvsモリガン
「Nightmare Beauty」
 
>>391
ふっ、と彼女の姿が掻き消える。
 
「んな?!」
 
一体どこに?! 驚きのあまり一瞬構えが崩れた、次の瞬間。
 
「げふっ?!」
 
意識していなかった右側から、いきなり首をつかまれる!
彼女が、片手で私の首を掴みあげていた。
きりきりと、細い指が私の首を締め上げる。食い込んだ長い爪が痛い。
 
「か・・・・・・」
 
彼女の腕を振り払おうと、両手で必死に彼女の腕に爪を立てる。
が、それが無駄な努力なことは、未だに力が抜けることがない彼女の握力から察することができよう。
逃れようと暴れる私と、怪しく嘲う彼女を尻目に談笑しているクロノとアズマリアの対比が、酷く、酷く滑稽だった。
このまま・・・じゃ・・・・・・・え?
 
「な・・・・え?」
 
不意に息が楽になる。同時に上下感覚が失われる。
自分が投げ飛ばされたのだと気がついたのは、地面にしたたかに背中を打ち付けた時だった。
 
「―――――ッ」
 
息が・・・・できない・・・・・・。
衝撃で、肺機能が一時的に麻痺しているような感じだ。
夢の世界なのに、痛みを感じたり苦しいだなんて、卑怯すぎる・・・・・・!
げほげほと、咳き込む。
―――無理だ、生身でどうこう出来る相手じゃない!
かといって・・・武器はない。
どうする、どうする?
彼女を睨み付けながら、私の顔を汗が、伝った。

393 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus:2003/05/13(火) 20:55

ロゼットvsモリガン
「Nightmare Beauty」

>>392

掻き毟られた痕がひりひりと痛む。
むず痒く、熱を持っているような感覚。

「・・・まるで猫ね」

悪くない。
けれど、

「―――その程度じゃ、足りないのよ」

もっと深く。痛く。強く。苦く。辛く。
傷付けよう。
例えば腕。肘関節を逆に曲げる時の音が聞きたい。靭帯の千切れるぶちぶちと言う音。
目はどうだろう。ゆっくりと自分の眼球に迫ってくる指先を見て少女はどんな顔をするだろうか。
それが眼窩に挿し込まれた時、胸の踊るような絶叫をあげてくれるだろう。
抉り出して食べさせてみたら。味を聞いてみるのも良い。

「ひょっとして痛いのが好き? ・・・ねえ、焦らさないで。
 武器が無いなら探しなさい。早く。早く早く。早く早く早く」

歩み寄る。
先ほど付けられた傷口に滲んだ血を舐め取りながら。

「素手でなんて、何をしてもやるだけ無駄よ。あんまり意地悪しないで。
 そんな風に意地悪されると、わたし――――」


――我慢が、効かなくなる、から。


気が付けば走っていて、右手を振りかぶっていた。
その手を叩き付ける。死んで欲しい。
死なないで欲しい。わたしにも傷を、痛みを。

394 名前:ロゼット ◆JiAMENUx66:2003/05/13(火) 20:55

ロゼットvsモリガン
「Nightmare Beauty」
 
>>393
「・・・・・・・・!!!」
 
迫ってくる。
彼女が腕を振り上げ襲い掛かってくる。
ぶつけられて来る発気は、愛しさであり、殺意であり、歓喜であり、憎悪。
言葉にしがたい。それは、苛烈な愛とでも言えばいいのか。
 
「ひぁ・・・・・!」
 
動かなかった。
逃げなければならないのに、体が動かなかった。
ああ―――多分あと数秒後には、彼女の腕は私に振り下ろされ、私はその腕に叩きつぶされるだろう。
その先は―――その先は――――
 
        死
 
「――――」
 
真っ白だった。
私の頭の中は、酷く酷く真っ白だった。
無我の境地。これがそうなのだろう。
そしてその白の中、私はある結論に達していく。
これは『夢』だ。それも『私の夢の世界』だ。
なら、この世界は彼女のモノである以上に『私のモノ』のはず―――――!!
意識が、加速した。
両手を重ね合わせ、彼女に向けてそれをイメージする。
普段から私が使っているそれを。
それは重く冷たい鉄の塊。
それは、破壊の鉄槌であり、殺意の具現であり、そして―――悪意を断つ剣!
両手の中でイメージが固着する!
 
「あッあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 
咆哮と銃声が同時に響いた。
手の中に生まれ出たそれは、普段から私が愛用している武器。
手に馴染んだその重さとグリップの握り心地――――ガバメント・カスタム!
十字のマズルフラッシュが光る!

395 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus:2003/05/13(火) 20:56

ロゼットvsモリガン
「Nightmare Beauty」

>>394

詰まる所、これは夢でしかなく。
わたしの見ている夢でもあれば、この少女の見ている夢でもある。

「・・・そうよ。やれば出来るじゃない」

どちらかがあると思えばそれは確かに其処に「在る」事になるのだ。
眼前の少女がそうしたように。
その手に握られた拳銃も、撃ち込まれた弾丸も、夢の中に存在した。

右肩が爆ぜていた。
焼けていた。焦げていた。爛れていた。
この程度になると、すぐには痛みはやってこない。
肉の焼けた鼻をつく匂いが広がる。

「痛いわ。とても痛い。とてもとても痛い。
 ほら、見て? こんなに肉が抉れて。治すには栄養が必要だわ」

未だに硝煙が棚引いている拳銃を左手で掴む。手の平が熱い。
引き寄せて口元辺りの高さまで上げる。細い腕、中には血と肉。

処女の、匂いがする。

「―――だから、貴方の血と肉を頂戴」

微かに動かすだけで、熱く疼く右肩が引き攣れる。
断続的に続く脈打つような苦痛が、堪らなく愛しい。
手首の下、肘の少し上の辺りに噛み付いた。千切り、飲み食らう為に。

396 名前:ロゼット ◆JiAMENUx66:2003/05/13(火) 20:57

ロゼットvsモリガン
「Nightmare Beauty」
 
>>395
彼女の右肩に銃弾が直撃する。
十字の閃光が炸裂し、彼女の体を弾けさせる。
それでも―――彼女の笑みは収まらない。
否。
むしろ、その一撃に悦びすら感じているのだろうか?
 
「くッ・・・・」
 
もう一度、今度は急所・・・・額に銃口を向けようとしたその瞬間。
 
「えぁ?!」
 
じゅう、と肉の焼ける音。
彼女が、手の肉が焼ける事などかまわずに銃ごと私の体を引き上げる。
なッ―――?
何を、と言おうとした私の口は、その言葉を紡ぐ事はなかった。
何故なら。
 
「いぁあぁぁぅぅぁぁぁあああ?!」
 
彼女の口が私の腕に喰らいつく。
その痛みに、絶叫が口から放たれた。
このっ、このっ、このっ!!!!
私は、狙いもまともにつけずにガバメント・カスタムをトリガー。
トリガー、トリガー、トリガートリガートリガーッ!
当てることなど考えていない。
痛みを堪えるように、痛みをごまかすように引き金を引きまくる。
6発分の銃声が、青い空に響いた。

397 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus:2003/05/13(火) 20:58

ロゼットvsモリガン
「Nightmare Beauty」

>>396

甘い。
舌の上に広がる赤い紅い朱い血は、法悦の味。
歯の食い込んでいる赤い紅い朱い肉は、悦楽の味。

銃声が連続した。
耳元でかき鳴らされた轟音が聴覚から他の音を奪い、
高速で運動する遊底が銃を握っていた左手を弾く。
弾丸は全て明後日の方向に――掴み上げている上に距離が近すぎては無理も無いが、飛んでいく。
改めて手首を捉えて、腕の肉を食い千切った。

少女を解放して、右肩を押さえながら一歩下がる。
そして噛む。滲み出た血が口の中に広がる。噛む。肉が更に千切れる。噛む。
細切れになった肉を。飲みこむ。

「・・・ああ、美味しい。そう言えば、昨夜は最後までしてなかったのよね」

そう言えばそうだった。
良い事をしたと思う。そうでなければ、ここまでの味を堪能する事は出来なかったのだから。
日ごろの行いを感謝してみようか。例えば、この少女の信じる神に。

「そうだ、弾はまだ残ってる? 無いなら、準備は早くしてね」

猫が自身の傷にする様に、肩の傷を舐める。
痛みを癒す為に。痛みを鎮める為に。痛みを――――


――――引き出す為に、歯を立てた。


「・・・っ、は、あ―――――――――」

吐息は苦鳴には遠く、寧ろ喘ぎにこそ近く。
少女を横目に見ながら、左手の中で紫の光を弄んだ。

398 名前:ロゼット ◆JiAMENUx66:2003/05/13(火) 20:58

ロゼットvsモリガン
「Nightmare Beauty」
 
>>397
「〜〜〜〜〜〜ッ!!」
 
痛い。痛すぎる。
彼女の歯が私の腕を食いちぎっていった。
彼女の口のサイズに、腕の肉が抉れて無くなっている。
だらだらだらだら、傷口から血が流れ落ちて、腕を伝う。
今まで怪我をしたことがないわけじゃない、痛い思いをしたことがないわけじゃない。
けれど、今回のそれは精神的なショックが段違いに違う。
体の一部を「喰われる」なんて経験は、今までにない。
 
「くぐ・・・・ぅ!」
 
涙目になりながら、彼女を睨み付けた。
彼女は、私の一部をじっくりと、まるで料理を味わうように租借し、飲み込む。
気持ち――――悪い。
とにかく、そこにあるのは生理的嫌悪感だ。
彼女は、そんな私を横目に見ながら自身の傷を舐め、癒し、さらに傷つける。
そして嬌声。
不快だ。不快なことこの上ない。
私は、空になったカートリッジを抜き捨てる。
もはや、コツはつかんだ。
新しいカートリッジをイメージ、固着、装填。
銃口を向けようとして・・・・
 
「痛ぅ・・・・ッ!」
 
腕の痛みがそれを邪魔する。
こっちの腕じゃ狙いがつけられないか・・・・・!
すぐさま、無事なほうの手に握り返す。
そして、ふと、一瞬思考にノイズが走る。
  
・・・夢の世界で『死んだ』ら、現実の世界の私はどうなるんだろう?
 
だが、それも一瞬。
持ち替えた腕で相手の急所にポイントしながら腰を落とす。
余計なことは考えない。
今は、目の前の敵を倒す、それだけ!
トリガーに指をかける。
――――あたれッ!
マズルフラッシュと衝撃が私の腕と目を刺激した!

399 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus:2003/05/13(火) 20:59

ロゼットvsモリガン
「Nightmare Beauty」

>>398

身体を貫き、脳を刺し、思考が昂ぶってゆく。熱く、高く。
こうしていると良く判る。それこそ痛いほどに。


―――わたしは、この子が欲しくて堪らない。


希望も絶望も、愛情も嫌悪も。肉体も精神も何もかも全部。
全部、わたしの物に、したい。

「この気持ちは・・・例えるなら恋に近いのかしら」

唇を離した傷口の肉が盛り上がり、欠けた形を埋めてゆく。
緩やかに引く苦痛が少し名残惜しい気がした。
力を入れてみる。
若干の違和感を感じるものの、特に問題にはならないだろう。
左の手の平の火傷はとうに癒えていた。

こちらを向いている銃口――狙いは心臓か。
この距離なら、避けようとしなければ当たる。だが、近いおかげでトリガーを引く指も良く見える。
その瞬間のタイミングが判れば何の問題も無いと言えた。

準備はもう、出来ている。

「ねぇ、貴方は恋ってした事ある? 聞かせて頂戴。貴方の愛しい人の名前を。
 そして見てもらいましょう? 羞恥も快感を呼ぶ事を、貴方の身体に教えてあげる」

殺意の具現たる鋼の咆哮は一度。
行く手の敵を打ち砕こうと疾駆する退魔の弾頭を――


――紫光を纏う左手で、掴み潰した。


一度この身に受けた物故に、どの程度の魔力を持って防げば良いかは理解している。

「今度はわたしの番ね。同じく飛び道具でも使わせてもらおうかしら」

右手の人差し指で、少女の太腿を指した。
但し、その手は銃を形作り、人差し指の先端は左手と同じ光を発している。

「――――BANGBANG! なんてね」

二つの蛍のような光が、儚げな外見にそぐわぬ力を秘めた光が、指先から迸った。

400 名前:ロゼット ◆JiAMENUx66:2003/05/13(火) 21:00

ロゼットvsモリガン
「Nightmare Beauty」
 
>>399
どういう仕組みか知らないが、彼女の傷が癒えていく。
こういうのを目にするたびに、私はとんでもない連中を相手にしているのだということを認識させられる
見た目が人間と変わらない分、余計にだ。
 
『ねぇ、貴方は恋ってした事ある?』
 
彼女の言葉に、脳裏に浮かぶ影。
レミントン牧師。
私の恩師にして、尊敬する人物。
そして――――何故か、もう一人の影が脳裏をよぎる。
三年前のあの日から、私とともに歩んできた。
辛いこともうれしいことも分かち合ってきた、彼のことを―――
けれど。
 
「答える義務はないでしょう?!」
 
銃弾が、彼女が無造作に突き出した手を、貫いて――――
いく事はなく、彼女の手のひらに輝く光に捕らえられる。
 
「そんなのアリ?!」
 
二撃目を放とうと、トリガーにかけた指を・・・・・
 
「あぐふッ?!」
 
両ももに激痛!
がッ・・・・あ・・・あ!
腕の痛みがどこかへ飛んでいってしまうような痛み。
熱い、灼熱のように熱い赤い紅い流れが、太ももを伝って地面に紅い溜まりを作る。
・・・・・この、この・・・・・!
彼女の、銃に似せた手の先から出た魔弾は、十二分の殺傷力を持って私を傷つけた。
これで、私の機動力はゼロに等しい。
 
「――――――」
 
・・・・・・・私は、手にした銃からカートリッジを引き抜く。
残っているのは、チャンバーに一発だけ。
 
「・・・・・・ッあぅ」
 
どさり、と体を地面に投げ出した。

401 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus:2003/05/13(火) 21:00

ロゼットvsモリガン
「Nightmare Beauty」

>>400

当たってしまった。
今のは――避けて欲しかった気もする。
動きが殺がれて、もう恐らくまともには動けない。

――つまらない。

そろそろ終わりだろう。
・・・いや、まだ。まだだ。目が死んでいない。
何を考えて弾倉を抜いたのかは判らないけれど、何かする気なら――

「悪い子ねぇ。そうやって油断させておいて、何をするつもり?」

その遊びに乗ってやろう。
少女が外せばわたしの、当てれば少女の勝ちだ。

「―――驚かないで良いわ。命懸けのギャンブルなんてゾクゾクするもの、付き合ってあげる。
 その代わり、これが最後よ?」

語尾は、二箇所から聞こえた。
兆候は僅かなブレ。小刻みに横に揺れているような、ごく微かな。
それがゆっくりとずれたまま安定して、左足で右に、右足で左に一歩、『同時』に出た。
それまで立っていた位置から、『二人のわたしが左右に別れて歩き出した』。

「「良く見なさい。チャンスは一度きりよ」」

本体と分身が何もかも寸分違わない、と言うわけではないけれど、少女には触れなければ判らない。
そして、どちらに仕掛けられてもそのまま受ける。
これはお互いに五分五分のゲームだ。

「「本物のわたしを、捉えられるかしら?」」

左右から、ゆっくりと少女に近寄る。
迷い、躊躇う時間を与える為に、一歩一歩。

402 名前:ロゼット ◆JiAMENUx66:2003/05/13(火) 21:01

ロゼットvsモリガン
「Nightmare Beauty」
 
>>401
彼女が、一歩、一歩近づいてくる。
私は、体を投げ出したまま、彼女が迫ってくるのをじっと待つ。
・・・・近づけないと駄目だ。
残りは一発、至近距離で決めれば必殺、確実に決めなければそこで終わり。
・・・・・銃の中に入っているのは・・・・・<福音弾(ゴスペル)>。
極小単位の呪文を、稀少銀に転写した魔法弾。
現在、マグダラが誇る携帯兵装としては最強レベルの弾丸!
あと三歩、あと二歩、あと一歩・・・・
 
「?!」
 
後一歩のところで、彼女の歩みが止まる。
妖艶な笑みを浮かべ、彼女が嘲笑する。
・・・・気づかれてた!
あわてて上半身を起こして、銃口を向ける私の前で・・・・・彼女が『二人』になる!
冗談! どこまで、化け物か!
 
「ぐづっ・・・・・」
 
太ももの痛みが走る。
は―――フィフティフィフティにしても、賭けるチップが高すぎる。
けれど・・・・・。
 
「逃げられない勝負であることは事実よね?!」
 
血が流れる腕を銃を持った腕に添える。
痛いが、一発ぐらいなら持つはずだ。
 
「赤(ルージュ)か! 黒(ノワール)か! 賭けてやろうじゃないのッ!」
 
引き金を引き絞る!
轟音とともに、銃口から光弾と、輝く翼を思わせる光が爆ぜた!

403 名前:モリガン・アーンスランド ◆QhSuCcUBus:2003/05/13(火) 21:01

ロゼットvsモリガン
「Nightmare Beauty」

>>402

眩しい。今までの弾丸と違う。
それに、寒い。直前まで暖かかったのに。
身体が震えて、立って、いら、れ、な、い。

喋ろうとしたら、唇の間からごぼりと大量の血が溢れた。
その内の幾らかは地面を紅いペンキの様に染め、その残りは首を伝い、胸へ。
もう、そこは形を残してはいなかったけれど。

――酷い物ね。

all or nothing. 敗者に与えられる物は無い。

「・・・今まで、こう言うギャンブル、負けた事、無かったん、だけど」

もう一人の――分身のわたしの色が薄れ、存在感が欠けてゆく。
解ける様に宙に消えて、魔力が霧散した。

――もう・・・いや、やっと、終わりか。

「頑張っ、た・・・わね。強いわ、あな、た・・・」

どうしてだろう。
何故、わたしは微笑んでいるのだろう。
奇妙な感覚が、心の内を満たしていた。
開放感? おかしい。

ひょっとして、死とは、充足なのだろうか。


悪くない、気分だ――――――――



                                          そう、思えた。

404 名前:ロゼット ◆JiAMENUx66:2003/05/13(火) 21:03

ロゼットvsモリガン
「Nightmare Beauty」
 
>>403
<エピローグ>

目の前の彼女が片方が、粒子になって消えていく。
BINGO、だ。
 
「私の・・・・勝ちみたいね」
 
傷の痛みに耐え、血まみれの服のまま私はにやりと口の端を持ち上げた。
胸に大穴を空けた彼女が、ふらふらと体を揺らす。
そんな彼女の顔は先ほどまでの妖艶な笑みとは違う、とても安らかな笑顔だったような―――気がする。
よく思い返せない。
流した血の量が多すぎたか・・・・私もまた、前のめりに倒れ伏す。
痛みはもう・・・・感じない。
瞳がゆっくりと閉じられて・・・・・・私の視界は、闇に落ちた。
 
   ********
 
痛い。
痛すぎる。
さっきから私をさいなむこの痛みは・・・・・なんなんだろう・・・・・・。
 
「ロゼット! いい加減におきなよ?!」
「・・・・・痛いんじゃこのボケナスーッ!!」
 
がばぁと、上半身を起こす。
後ろで、アズマリアがきゃ、と小さく悲鳴を上げた。
 
「もっとふつーに起こせないの?! 何で頬っぺた叩きますか?!
 乙女の柔肌になんつー真似を・・・・・・」
 
私は、じんじんする頬を撫でさする。
 
「なかなかおきないそっちが悪いんじゃないか!
 僕だって最初は普通に起こしてたんだよ?!」
 
クロノが口を尖らせてぶーたれた。
 
「シャラップ! 言い訳無用!
 それに、起こすならもっと早く起こしなさいよ?!
 こっちは大変だったんだからね?」
 
私は、腰に手を当てながらクロノを指差す。
 
「大変って・・・・何がさ?」
「そりゃ、もちろん・・・・・・・アレ?」
 
・・・・・・・何で私、変なこと口走ってるんだろう?
 
「・・・・・変なの。
 ともかく、そろそろ仕事に戻らないと。 時間迫ってるんだから」
「やばッ・・・・・急ぐよ! んじゃ、アズ、またね!」
「はい、また、お仕事の後で」
 
私達は、アズマリアに手を振りながら中庭を後にする。
 
「そういえば、眠気のほうは?」
「ん・・・・・何か昼寝したら直っちゃったよ」
「・・・・ただの寝不足だね。夜更かししたんじゃない?」
「・・・・・そっかなぁ?」
 
そんな事を、二人で話しながら。
 
      *********
 
マグダラ修道会のロゼットの自室。
テーブルの上に、整理されていない書類やら筆記用具に混じって、
『逆十字(アンチクロス)』のネックレスが転がされている。
そのネックレスが、陽光の中まるでバターのようにじゅう、と泥の塊と化した。
そして――――完全に原型を無くしたソレは、一気に乾いて崩れ去る。
風。
粉々になったそれは開かれた窓の外へとさらさらさらさらと、吹き飛ばされていった。
後には、何も、残らない――――。
 
<FIN>

405 名前:QhSuCcUBus:2003/05/13(火) 21:09

ロゼットvsモリガン
「Nightmare Beauty」

レス番纏め。

>381 >382 >383 >384 >385 >386 >387 >388 >389 >390 >391 >392
>393 >394 >395 >396 >397 >398 >399 >400 >401 >402 >403 >404

感想は以下へ。
ttp://plan-a.fargaia.com/html/test/read.cgi?bbs=vampbattle&key=1033894737
 
ttp://www.appletea.to/~charaneta//test/read.cgi?bbs=ikkoku&key=1035898557



・・・・・・これもまた、泡沫の夢。

406 名前:ミズー・ビアンカ ◆c0Ko8pMIZU:2003/05/13(火) 21:55

>>378
蟆霧VSミズー・ビアンカ
イン・ア・フライト (空戦領域)
 
身を捩り彼女の手から逃れようとする男。
その身体が、不意に視界から消失する。
同時に、鈍い衝撃が腹部に響いた。
 
要因は、直ぐに知れた。
殺人者と、標的。
追うものと追われるものは、何時の間にか旅客機の背の隅へと
お互いの位置を変えていた。
滑らせて跳ね上がった男の足が、偶然蹴りに転じたらしい。
殆ど力が加わっていなかったが、その足は、凶器に貫かれた傷口を抉るには
充分な勢いを持っていた。
 
瞬間走った激痛を無視できず、バランスを崩す。
倒れかかったその先に、もたれかかるべき壁があるはずもなかった。
そのまま、旅客機の背から転落する。
 
落下は、何故か一瞬だった。
大きな揺れを伴って、ミズーの身体は空中に垂れ下がる。
ふと見ると、自らの身体に刺さった凶器から、細い影が確認できた。
凶器には、紐が絡ませてあったらしい。
そしてその紐を、凶器が刺さったままの左手が、強く握り締めていた。
 
目線を上方に向ける。
男は、まるで蜘蛛の様に、旅客機の壁面に張り付いていた。
その右手から、糸は繋がっているらしい。男の体勢も、彼女の重みで
徐々に崩れつつある。
 
男が悪態をつきながら、懐をまさぐり短刀を取り出す。
自分と男をつなぐ糸を切り離すつもりらしい。
 
(・・・・・・ッ!)
 
再び、反応が肉体を凌駕する。
長剣の柄を握っていた右手を開き、肩の上へと持ち上げる。
離された長剣が落下するが、それを止める術はなかった。
 
そして、限界まで伸ばされた右腕が、男の足首に掛けられた。

407 名前:三輪坂真言美 ◆qJKoTodamA:2003/05/13(火) 22:01

三輪坂真言美vs吸血Zバット
>>380
「終わった……」
 
何故か夕日を背に受けながら、真言美は呟いた。
だが、これで戦いが全て終わったわけではない。
これからも長く苦しい戦いが真言美の前に待っているのだ!
戦え真言美! 負けるな真言美!
 
「ふふっ、燃えますねっ」
 
……まあ、とりあえず半裸に近いような、その格好をどうにかすべきだと思うが。
 
「きゃーん!?」
 
 
-Fin-

408 名前:名無し客:2003/05/13(火) 22:10

三輪坂真言美vs吸血Zバット
戦いの足跡

>>318>>319>>320>>321>>322>>324>>325>>326>>327>>328
>>329>>330>>331>>332>>333>>334>>335>>336>>369>>370
>>371>>379>>380>>407


この戦いのご意見、感想を以下へお寄せ下さい。
http://plan-a.fargaia.com/html/test/read.cgi?bbs=vampbattle&key=1033894737
 
http://www.appletea.to/~charaneta//test/read.cgi?bbs=ikkoku&key=1035898557
 
*よいこのみんなへ
きゅうけつZバットのまねは、きけんですので、ぜったいにしないでくださいね。

409 名前:蟆霧 ◆slMAKIRIrI:2003/05/13(火) 22:42

>>406
蟆霧VSミズー・ビアンカ
 
 
 右手にからんだ紐を、右手に持ったナイフで切るわけだ。しかも足場も姿勢も、
最悪といっていい状況。当然のようにうまくいかない。 
 難儀すること、それでも数秒。紐をばっさりと切って落とす。
 
「御然らばミズー・ビアンカァっ……ってああッ!?」
 
 紐は落ちた。しかしミズーはそこにいる。
 理由は簡単。お嬢さんは今度はオレの足をつかんでやがる。しぶといったらねえ
ってぇの。
 
「だぁかぁらぁ、しつこい女は嫌いだってなァ!」
 
 ったく、いったいなんだってんだ。
 死の宣告はしてやった。何度も窮地に落としてやった。今また幾度となく魂の緒
ぶっちぎりにちぎってやってるのに、行く先には死しかねえってのに。
 いつまでこいつは、こんなにしぶてぇんだ。糞。
 
 ミズー・ビアンカの眼。
 苛烈な炎のように燃える、獣のように前だけ見る眼。
 
「……吐き気がすンだよ」
 
 ナイフを走らせる。オレの足に。
 太腿からばっさりと切り捨てられた、肉と骨の塊が、重力にひかれて落ちる。
 それにしがみついた、ミズー・ビアンカとともに。
 
 その一喝が落下を加速させればいい。
 憎々しげに思いながら、絶叫を叩きつける。
 
「墜ちろ、カトンボォッ!」

410 名前:伊藤惣太 ◆amVJEDOGOs:2003/05/14(水) 01:13

ヴェドゴニアVS弓塚さつき 導入
 
 すっかり薄暗くなった学校の帰り道――つまり、すっかり気分がよくなってきた頃。
 
 俺の身体はすっかり昼間に適応できないようになりつつあった。
 朝起きてから、夕暮れまでどうしようもなく付きまとう倦怠感。
 日が暮れてから本調子が出てくるバケモノの身体。
 もう、俺が日を浴びた途端に灰になっちまうまで幾ばくもないだろうな、と思う。
 
 つまり、俺には時間がない……だけどもリァノーンへの手掛かりは細く、遠く。
 未だ学校に通って、モーラ達からの情報を待ってしか動けない日々。
 焦りだけを募らせつつ、何でもない顔をして学校に通い続けるのがこんなにも、辛い。
 
 今日も、部活動もそこそこに学校を引き上げてきたところだ。
 俺が俺の顔をしてられるのも、下校時刻が限界だから。
 気怠さが引きかけてる肉体を引きずって、のろのろと帰り道を歩く。
 
 ――――鼻につく、赤くて甘い匂い。
 
 ここ数日で嗅ぎ慣れて……飲み慣れた匂い。
 何処からか漂ってくる――血の匂い。
 俺の理性は無視しろと連呼しているのに、肉体はその匂いに惹かれてふらふらと歩き出す。
 薄暗くなってきた中、よりいっそう闇の濃い路地裏へと……。
 
 そこは、血の匂いでむせかえるほどだった。
 闇のわだかまった中でもはっきり分かるほどに、朱い空間。
 血と、死と、死を越えた者の饗宴。
 闇の奥でうずくまり、何かを啜る何か。
 
 ……いや、分かってるはずだ、俺は、目の前の光景が何なのかを。
 
 そこにいるのは吸血鬼で、啜っているのは人間の血。
 辺りにバラ撒かれている肉片は人間の成れの果てで、全部死んでるって――――。
 
 ガタリ、と後ずさった俺の身体が、ゴミ箱を鳴らした――――――。

411 名前:弓塚さつき:2003/05/14(水) 01:15

>410
 
 ここ最近、幾つか、学んだこと。
 
 
   ひとつめ。
 
   みんなの知らないところには思いもつかないモノが潜んでいること。
   例えば、強盗とか、殺人鬼とか、死体とか………
 
 
 
                              ―――吸血鬼とか………
 
 
 ……振り向く。
 そこにはひとりの男の子がいた。
 年でいえば、志貴くんとそう違わないくらいの………
 
「運がないね……。でも、こんなところに迷い込んできたあなたが悪いんだよ?」
 
 
   ふたつめ。
 
   血にも色々な種類があって、味も全く違うこと。
   お婆さんより、お爺さんより、おばさんより、おじさんより、女の子より………
 
 
 
                              ―――男の子がいいこと………
 
 
 後ずさる彼にゆっくりゆっくりと近づいていく。
 もう、彼は逃げられないし、逃がさない。
 それに、うん、こういう質のいい血なら大歓迎。
 
「そんなに怖がらなくてもいいよ。苦しませるつもりもないし………」
 
 
   みっつめ。
 
   吸血鬼の身体はひとのそれとは比べ物にならないこと。
   けものより遥かに早く動けて、腕の一振りで………
 
 
 
                              ―――ひとを粉々にする事は訳もないこと
 
「それじゃ、ばいばい」
 
 右腕を彼の脇腹に突き出した。
 ずぶり―――――やわらかい肉の感触。
 びちゃり――――あたたかい血の感触。
 
 腕を彼の脇腹から抜いて、真っ赤に染まった右手をぺろりと舐める。
 
「……やっぱり、質のいいキレイな血の方が身体に馴染むな」
 
 一人前の吸血鬼にはまだ程遠いけど、うん、この調子でいけば大丈夫。
 志貴くん、待っててね。
 わたし、頑張るから、立派な吸血鬼になるからね………!

412 名前:ヴェドゴニア ◆amVJEDOGOs:2003/05/14(水) 01:48

>>411 ヴェドゴニアVS弓塚さつき
 
 まず驚いたのは、闇から現れた吸血鬼が、俺と年の変わらない姿をした少女であった事。
 話す言葉が、その外見に相応しく、咄嗟に彼女が吸血鬼であると認識できなかった事。
 何より――こんな事には慣れている筈の俺が、この状況におののいている事。
 慣れた、つもりだったのに……心の準備ができてないとこんなに脆いモノなのか、俺は……?
 
 そんな、俺の逡巡と混乱に構う様子も見せずに、少女は俺へと詰め寄ってくる。
 何を、何に恐れているのか、俺はただ後ずさることしかできない。
 俺がさがれば、同じだけの距離を詰められ――次瞬、その姿がかき消えた……と思った刹那には、もう。
 
 ぞぶり、と脇腹に腕が潜り込んでいた。
 途端に失われていく俺の血……俺の命。
 引き抜かれた少女の腕は朱く、俺の血で――――――。
 
 ドクリと、奥底で蠢く。
 奪われた命には相応の代価を、と、衝動が叫び出す、吸血衝動が首をもたげる。
 肉体が変容を始める、筋肉が人間の限界を超えて張りつめる、骨格が鋼の硬度を備える。
 人間が終わって、ヴェドゴニアへと成り果てる――――。
 
 変容は、数秒と経たずに終了した。
 制服は膨張した肉体に耐え切れずに破けちまったが、気にしても仕方ない。
 どうせ、脇腹に大穴空いた制服なんて着れたモンじゃねェしな。
 とにもかくにも、今はこの降って湧いた火の粉を払い除けないと――――!
 
 本当に、唯の年頃の少女にしか見えない事にとまどいは隠せないが……よぎる誰かの顔。
 だが、それは一瞬すぎて俺に何なのかを気付かせさえしてくれなかった。
 
 鞄に、万が一を考えて忍ばせていたナイフ――サド侯爵の愉悦を取り出す。
 俺が死んだと思って油断しているのか、物思いにふける少女に切っ先を向けつつ低く跳躍。
 地を這うような一閃を、少女の心臓辺りに狙いを付けて振るった。
 
「俺の血が欲しけりゃな、テメェの血を差し出せ――そういうルールなんだよ!」

413 名前:弓塚さつき:2003/05/14(水) 02:42

>>412 ヴェドゴニアVS弓塚さつき
 
「え……?」
 
 澱んだ空気が動いた。
 風を切る音がした。
 黒い閃光が煌いた。
 
 考えるより、先に右手が動いた。
 鈍い金属音がして、わたしの右手とその黒い閃光が衝突し……互いに弾けた。
 
 それはそのままケモノのように後ろへと後退してわたしを見る。
 
 それの瞳は煌々と赤く光って        それはわたしの瞳と同じ輝きで……
 それの口から長い牙が生えて       それはわたしの牙と同じ鋭さで……
 
 どこをどう見てもそれは『吸血鬼』。
 わたしと同じモノ、なの? でも……
 
「……わたしと同じ? え、でも、さっき、確かに殺したはずなのに――――」
 
 そう、本当に殺したんだ。
 あの感触は何回もやったから、よく分かってる。
 ずぶりと肉を引き裂いて、ごきりと骨を砕くあの感触。
                                           ぐるぐると
 おかしい、おかしいよ。
 さっきは本当にただの人間だったのに。
 あの怯え方はどう見ても、嘘には見えなかったのに。
                                           まわる
 分からない、分からないよ。
 こんな吸血鬼がいるなんて………
 どうして、こんな所にこんなモノがいるの……?
                                           わたしの思考
 
「一体、あなたは何なの………?」
 
 そんな言葉がわたしの口から、飛び出していた。

414 名前:ヴェドゴニア ◆amVJEDOGOs:2003/05/14(水) 19:38

>>413 ヴェドゴニアVS弓塚さつき
 
 感じる、少女のとまどい。
 それは嘘でも何でもなく少女の姿そのままで、俺のとまどいをも広げていく。
 構えだけは解かずに、少女の問いに答えた――答える必要なんてないだろうに、俺は……。
 
「俺か、俺は見ての通りの吸血鬼……君の同類だよ。
 もっとも、ヴェドゴニアの俺は血を失わないと吸血鬼化しない半端者だけどな。
 普段は人間とそう大差ないが、君に殺されてヴェドゴニアの俺が目覚めたってことさ」
 
 血を失うことで、血を欲するバケモノへと変じる俺。
 こんな血塗れの戦場で何処か抜けている少女。
 どっちも正しく半端者だと、心の中で苦笑した。
 彼女もまた、吸血鬼となってから日が浅いのだろうか。
 
 説明はもう十二分な筈だ。
 何があったのか知らないが、既に手遅れである事だけは分かる。
 ならば、俺にできる事は、心臓を貫いて塵に返してやる事だけ。
 それが、せめてもの餞。
 
 不意を突いた初撃は弾かれた。
 成り立てといっても、そのポテンシャルは決して低くない。
 油断すると、鈎爪に心臓を貫かれてお陀仏だ。
 慎重に、慎重に距離を計り、隙を窺う。
 落ち着け……俺はここまでに数多くの死線をくぐり抜けて来たはずだ。
 今更、こんなところで後れを取るワケには――死ぬワケにはいかない。
 
 チリチリと、うなじが焦げるような感覚――――何時、来る?

415 名前:弓塚さつき:2003/05/14(水) 19:40

>>414 ヴェドゴニアVS弓塚さつき
 
 ヴェドゴニア……?
 
 そうなんだ、そういう変わった吸血鬼もいるんだね。
 うん、勉強になった。
 
 けど、同じ街に吸血鬼はそう何人もいらないよね?
 そんなにたくさん居たら、食べ物のひとが居なくなっちゃうし………
 それに向こうの吸血鬼もナイフを抜いて、やる気みたい。
 
 わたしも半人前。
 向こうも半人前。
 
 じゃあ、生き残った方が一人前に近づけるってことになるよね?
 まだ、吸血鬼は殺した事ないし、これはいい経験になるかな。
 
 大丈夫、ちゃんとやってみせるよ、志貴くん。
 志貴くんみたいな殺人鬼にはまだ程遠いけど、こうやって一歩一歩ずつ、慣れていくんだ。
 
 
「うん、今夜は、わりと楽しめそうだよね……」
 
 瞳が真紅に染まっていく。
 牙が長く鋭く伸びていく。
 鼓動がとくんとくんと早まって、頬が紅潮して、ちょっと身体が火照ってる。
 
 ……初めて出会う吸血鬼、殺人鬼にわたし、興奮してるみたい。
 でも、そんなに悪くない感触。
 うん、また、ひとつ、志貴くんの気持ちが分かった気がする。
 
「じゃあ、はじめようか。慌てなくてもいいよ、夜は長いからね……!」
 
 とん、と地面を蹴って踏み込む。
 ぶん、と右手を振り下ろす。
 
 それぞれ、異なる動作だけど、必要な時間は一瞬。
 普通のひとなら、これでおしまいだけど、これくらいは平気だよね?
 だって、あなたも吸血鬼で殺人鬼なんだから………

416 名前:ヴェドゴニア ◆amVJEDOGOs:2003/05/14(水) 21:05

>>415 ヴェドゴニアVS弓塚さつき
 
「あァ、夜は長い……だけどアンタは此処で終わりだッ!」
 
 振り下ろされた一撃を、ナイフで弾く、弾けた拍子に後退し、反動で踏み込み一撃、二撃。
 もちろん、こんな攻撃が当たるとは思っちゃいない。
 ただの様子見だったが、予想した以上に彼女の運動能力は高いらしい。
 こともなげにナイフの軌道を見切り、かわす。
 こいつは……少し認識を改めないとな。
 つまり、俺は彼女にとまどいなんて感じてる暇はないって事だ。
 
 牙を見る、瞳を見る。
 そこには見間違えようもないバケモノの証である鋭い牙、朱い瞳……俺もか。
 またちらつく誰かの影、だけどそれはさっきよりも長く、はっきりと。
 それで、気付いた。
 
 ――そうか、俺は目の前の少女に弥沙子を……変わり果てたあの子の姿を重ねてるのか。
 
 俺の戦いに巻き込まれてしまった弥沙子、吸血鬼に成り果ててしまった弥沙子。
 責任なんて、償いなんてできる筈もない。
 ただ、戦い続けること、彼女を塵に還すこと、それだけしかできないのに。
 だのに、俺は。
 
 この現実を、罰と捉えているのか……?
 ……馬鹿馬鹿しいッ!
 
 揺らぐナイフの切っ先を確かにするために、腕に力を、殺意を込める。
 断ち切れ、断ち切れ、断ち切れ……ッ!
 そんなの、何の償いにもなっちゃいない。
 そう、分かっている筈なのに……歯ぎしり。
 
 ああなってしまったら、終わらせてやるしかないんだ……ッ!
 動け、俺の腕、俺の足、俺の心!

417 名前:弓塚さつき:2003/05/14(水) 22:41

>>416 ヴェドゴニアVS弓塚さつき
 
 がつん、と弾かれるわたしの右手。
 ひゅん、と風を切り裂く黒い刃物。
 
 軽く後ろに跳ねながら、それをかわす。
 うん、いい感じで避けれてる。
 吸血鬼同士で戦うのは、ちょっと不安があったけど、これなら大丈夫。
 
 
 もう一回、踏み込んで左手を突き出す。
 火花が散って、弾かれるわたしの左手と彼のナイフ。
 
   ……志貴くん、わたし、分からなかったんだ。
   ずっと、ずっと、見ていたんだよ?
   志貴くんの優しいところも、怖いところもずっと見ていたんだ。
 
 続けざま、右手を突き出す。
 路地裏に鈍い金属音が木霊する。
 
   でも、どうしても、志貴くんの怖いところが分からなかったんだ。
   授業中もお昼休みも放課後の別れる時までずっと見ていても、分からなかったんだ。
   だから、志貴くんに積極的に話し掛けることなんて、出来なかった。
 
 彼の右側面に向かって、頭を沈め低い姿勢のまま駆ける。
 そして、左手を彼の脇腹に向かって、繰り出す――――――
 
   けどね、分からなくて当然だったんだ。
   だって、志貴くんは人殺し、わたしと住む世界が違ったんだもん。
   ひとを殺さないと生きていけない、そんな世界に居たんだもんね。
 
 ――――ことをせずに、そのまま彼の背後に回る。
 一瞬、遅れる彼の反応。
 
   でも、今は分かるんだ。
   こうやって、ひとを殺さないといけない身体になったせいで……
   こうやって、血をすすらないといけない身体になったせいで……
 
 彼が振り向こうとする、その瞬間、わたしは左手の爪を振るった。
 ぶちぶちと肉が千切れる感触――――びちゃびちゃとわたしの頬を濡らす返り血。
 
   ほら、こうやって殺すんだよね?
   ほら、こうやって愉しむんだよね?
   大丈夫、きちんと出来てるよ、志貴くん。
 
 
                            ―――だから、わたしのこと、待ってて……

418 名前:ヴェドゴニア ◆amVJEDOGOs:2003/05/14(水) 23:13

>>417 ヴェドゴニアVS弓塚さつき
 
「ク……ァッ……ッ!」
 
 やられた、迷いの隙を突かれた。
 背中を大きく、脊髄が露出するほどに抉られてしまっている。
 ビクビクと、全身が痛みに反応して痙攣する。
 痛い、本気で何もかも投げ出して死んでしまいたくなるほどに、痛い。
 
 ……だけど、ただ痛いだけだ。
 確信した――彼女は知らない、吸血鬼の本質を知らない、あるいは知識として浸透していない。
 吸血鬼は、心臓を貫かないと死なない。
 それがどんなに深く、酷く、致命傷であっても、例え真っ二つになったって吸血鬼は死なないんだ。
 たった一つのルール、心臓を殺られない限りは。
 
 事実、抉られた傷は既に再生を開始している。
 ゆっくりと、しかし確実に。
 対して、彼女からの追撃は来ない。
 ダメージを負わせた事に油断し、慢心しているのか。
 だけど……戦場でそんな余裕は無いぜッ!
 
 痛みを堪えて振り返り、その勢いをも利用して横薙ぎの一撃を繰り出す。
 驚きの表情、防がれた、構うモノか、どうせ本命じゃない。
 体勢の崩れたところへ、続けざまに突き込み、切り払い、切り下ろす、遠慮会釈なく次々と叩き込む。
 よくガードしているが、それもいつまで保つかな……!
 
「君に何があったか知らないけど……助けてはやれないけど……今楽にしてやるよッ!」
 
 それは、目の前の少女に向けた言葉であると同時に、自分への言い訳。
 彼女――を終わらせるしか術を持たない、ちっぽけな俺への。

419 名前:弓塚さつき:2003/05/15(木) 00:22

>>418 ヴェドゴニアVS弓塚さつき
 
「痛っ―――――!」
 
                 右腕にぱっくりと開いた大きな傷。
                 熱い焼け付くような感覚。
 
 けど、これだけじゃなかった。
 
    左の脇腹に穿たれた穴。
    黒い鉄の異物が差し込まれ、中身を蹂躙する。
 
                 左の首筋に一筋の赤い線。
                 ぴしゃりと勢いよく吹き出すわたしの血。
 
    右胸が裂かれる。
    肉が断たれて、熱くて鈍い痛みがわたしを襲う。
 
 
「痛い………」
 
 凄く痛いよ、志貴くん。
 吸血鬼になった最初の時、寒くて、辛くて、痛かったけど、どれとも違う感じ。
 肉を裂かれて、抉られる――――こんなに痛いとは思わなかったよ、志貴くん。
 
 ……まだ、分からない。
 殺し合いを愉しいって思うより、痛いって気持ちの方が強いんだ。
 その辺りが志貴くんをまだ分かる事が出来ない原因だね………
 
『君に何があったか知らないけど……助けてはやれないけど……今楽にしてやるよッ!』
 
 ……………
 
 ……ふっと目の前が暗くなる。
 
 
   瞬間、浮かんだのは夕日が差すあの十字路。
   瞬間、浮かんだのは志貴くんとかわした言葉。
 
   『だからまたわたしがピンチになっちゃったら、その時だって助けてくれるよね?』
   『そうだね。俺に出来る範囲なら、手を貸すよ』
 
   あの言葉は物凄く嬉しかった。
   志貴くんがわたしを「弓塚さつき」と見てくれた上での言葉、そして、約束。
   はじめて、志貴くんがわたしをわたしと認めた上で約束してくれたんだ。
   
 ……………
 
 ……それを―――――――
 
「あなたは………」
 
 ナイフが迫る。
 ―――胸に込み上げる気持ち、そう、これは怒りだ。
 
「何も知らない癖に、軽々しく………」
 
 右肩に突き刺さるナイフ。
 けど、ひるんでなんかあげない。
 ―――こんな奴に志貴くんとの大切な約束を汚された気がして、
 
「助けてやれないとか、楽にするとか、言わないでよっ!!!」
 
 左手を握って、そのまま、あいつの顔に向かって繰り出した。
 ―――許さない……!
 
                       ――――そう、志貴くんは約束してたんだからっ!
                       ――――わたしを助けてくれるって!!
 
 ―――絶対に許さないんだからっ……!

420 名前:ヴェドゴニア ◆amVJEDOGOs:2003/05/15(木) 01:18

>>419 ヴェドゴニアVS弓塚さつき
 
 その、あまりの衝撃にのけ反る。
 単純で原始的、故に破壊力抜群だな、乙女の拳って奴は……。
 鼻血をまき散らしながら、グラグラ揺れる脳みそで、そんな場違いな感想を抱く。
 
 確かに軽率だったかもしれない。
 一体何があってそうなったかもしらずに、軽々しく言うべきじゃなかったかもしれない。
 だけど、その辛さは君だけじゃない、俺だってな……!
 
「一人だけ不幸の主人公気取りかよッ!」
 
 サド侯爵の愉悦を握り込んだまま、拳を叩き込む。
 快音、普通の女の子にやったら間違いなく人でなしだが、相手は幸い吸血鬼、コレでおあいこだ。
 
「俺だってな、毎日毎日陽の光を我慢して学校に通って、夜は夜でバケモノ共と殺し合いやってんだよ!
 アンタは何だ? なってしまった事を受け入れて、諦めて、終わってしまっただけじゃねェか!
 血の渇きに負けたんだ、アンタはッ!」
 
 酷い言いぐさだと思う。
 血の渇きを我慢しろだなんてよく言えたモンだ、この俺が。
 他ならぬ俺自身が、血に飢えたバケモノだってのに。
 それに、俺はまだ人間の振りをして学校に通うことだってできるんだ。
 彼女には、そんな選択肢なんて存在しなかったに違いない。
 本当に、酷い言いぐさだけど……それでも。
 
 もう、彼女に道はないんだ。
 
「認めろよ……終わっちまえよッ!」
 
 大上段から、ナイフを振り下ろす。
 自己嫌悪を噛み潰しながら。

421 名前:弓塚さつき:2003/05/15(木) 02:20

>>419 ヴェドゴニアVS弓塚さつき
 
『一人だけ不幸の主人公気取りかよッ!』
 
 怒声とともにあいつが拳をわたしの顔に叩き込む。
 ぐらり、と揺れる視界、聞えるあいつの声。
 
『俺だってな、毎日毎日陽の光を我慢して学校に通って――――』
 
 何よっ!
 太陽の下に出れるだけでっ!
 学校に行けるだけでっ!
 
                    ――――十分に幸せじゃないっっ!!
 
 わたしはもうどんなに望んでも太陽の光を浴びることは出来ないのに………
 わたしはもうどんなに望んでも学校で志貴くん達とお話出来ないのに………
 
 薄暗い路地裏で眠りについた時、何回、夢見た事か………
 
 
    ―――休み時間、志貴くん達とお話することを……
         そう、例え、どんなに他愛の無い普通のお話でも良かった―――
 
    ―――光差す学校の中庭で、志貴くん達と愉しく昼食を取ること
         わたしを見てくれなくても一緒に居られるだけで良かった―――
 
 何回、泣きはらした目で目を覚ましたことか分からない。
 それをこいつは………!
 
『アンタは何だ?
 なってしまった事を受け入れて、諦めて、終わってしまっただけじゃねェか!
 血の渇きに負けたんだ、アンタはッ!』
 
 知らないよっ!
 目が覚めたら、いきなりこんな身体になっていて……
 しばらくしたら、身体がボロボロと崩れはじめて……
 
                    ……寒くて、痛くて、辛くて―――――――
 
 それでも、生きる為にはひとを殺して、血を吸うしかなくて―――――――
 もう、血の渇きとかいう話じゃないのにっっ!

422 名前:弓塚さつき:2003/05/15(木) 02:22

>>421 
 ぼやけた視界が元に戻っていく。
 ……最初にわたしの目に映ったモノは―――――
 
『認めろよ……終わっちまえよッ!』
 
 ―――――大上段にナイフを振りかざすあいつだった。
 
 振り下ろされるナイフの刃を右手で掴む。
 刃で深く右手が切れるけど、気にしない。
 ざっくりと切られて、血が止まらない。
 それでも、痛みは感じない。
 
 ―――――それ以上にわたしの気持ちはあいつへの怒りで塗り潰されているから…
 
「認めないっ、終わらないっ!!」
 
 あいつを睨みつけたまま、そう叫ぶ。
 
 そう、認めない、絶対に認めない。
 何故なら………
 
「志貴くんはわたしを助けてくれるっていったんだからっ!」
 
 ……絶対に志貴くんはわたしを助けてくれるんだ。
 
   ――――中学生の時、体育倉庫に閉じ込められた時。
         志貴くんは震えていたわたしを助けてくれた――――
 
 そう、今度もあの時みたいに助けてくれるんだ。
 寒くて、苦しくて、震えているわたしを助けてくれるんだ。
 
「それをあなたなんかに否定はさせないっっ!」
 
 左手を握って、あいつのお腹を殴りつける。
 ……まだまだ、こんなものじゃ済ませないんだからっ!

423 名前:ヴェドゴニア ◆amVJEDOGOs:2003/05/15(木) 03:30

>>421 >>422 ヴェドゴニアVS弓塚さつき
 
「グハッ……」
 
 ボディに叩き込まれた、痛烈な一撃に身を折る。
 吐き気を必死で飲み干して、腹を蹴っ飛ばした。
 反動で距離を取りつつ、再度ナイフを構えて、機を窺う。
 
「シキ……そいつがアンタの王子様か」
 
 あァ……俺は最低な奴だ。
 今から、彼女の心を折るために、最後の聖域を無惨に踏みにじろうとしてるんだから。
 だけど、未練を残したまま消え去るのは、やっぱりかわいそうだと思うから。
 いや、認めよう……彼女に最大の隙を作るために、俺はそうするんだ。
 
 ――正しく、俺は最低だ。
 
「そいつがアンタの何なのかは知らないし、聞くつもりもない、だけど……。
 アンタ、本当に助けてくれるなんて思ってるのか……そいつが、アンタみたいなバケモノを?」
 
 俺には助けてくれる人達が――モーラ達がいた。
 少女の爪を、冷静にナイフで捌く。
 右から左から縦横無尽に襲いかかってくるそれを、馬鹿丁寧に処理していく。
 それ自体は簡単だ、彼女は既に冷静さを失って大振りになってるだけだから。
 
「お姫様らしいっていえばそうだけどな、ちっと現実に夢見すぎじゃねェか?
 もう分かってるんだろ? 自分がどんなに人からかけ離れてるのか、終わってるのか」
 
 彼女には、誰もいなかった――――。
 時折、単調にナイフで反撃を繰り出す。
 そんな攻撃で、彼女にダメージを与えられるとは思っていない。
 
「おまえにはもう、何もない」
 
 ナイフを、柄がブッ壊れるんじゃないかと思うほどに握りしめる。
 吐き気がする、俺自身に。
 全ては、トドメを刺す一瞬に向けての布石。
 そう何度言い聞かせても、胸のいらつきは収まらない――いっそ、見逃してやれば。
 
 いや、駄目……それは、駄目だ。
 終わりのない時間に彼女を放り出すワケにはいかない。
 彼女は、きっとこれからもたくさんの人を殺して血を啜る。
 既に、彼女はそのことに禁忌を抱いていない。
 例えそれが彼女にとっての幸せであっても……それだけは看過するワケにはいかない。
 
 だから、俺は全てを押し殺して言葉を継ぎ、ナイフを振るう。
 少女を突き崩す、それだけの為に。

424 名前:弓塚さつき:2003/05/15(木) 21:33

>>423 ヴェドゴニアVS弓塚さつき
 
『アンタ、本当に助けてくれるなんて思ってるのか……そいつが、アンタみたいなバケモノを?』
 
 うるさい!
           虚しく
 うるさい!
           弾かれる
 うるさい!
           わたしの爪
 
 あなたなんかに志貴くんの何が分かるのよっ!?
 志貴くんは半人前のあなたなんかと違う!
 志貴くんはほんもののひとごろしなの!
 
『お姫様らしいっていえばそうだけどな、ちっと現実に夢見すぎじゃねェか?
 もう分かってるんだろ? 自分がどんなに人からかけ離れてるのか、終わってるのか』
 
「うるさいっ! わたしはまだ終わってなんかないっっ!!」
 
 この身体になって、吸血鬼になって、わたしは志貴くんとやっと同じ立場に立つことが出来たの!
 今なら……
 
        わたしは志貴くんを理解できる。
        志貴くんはわたしを理解できる。
 
                           だから、志貴くんはわたしを助けてくれるのっ!
 
 それを何も知らないあなたなんかにどうこう言われたくなんかないっ!
 
『おまえにはもう、何もない』
 
「あるっ! わたしには志貴くんがいるんだからっ!!」
 
 許さないっ!
 こいつだけは絶対に引き裂いて、殺してやるっ!
 わたしの志貴くんを否定する奴なんて、皆、引き裂いてやるんだからっ!
 
 ――――わたしの意思に反して、弾かれる続けるわたしの爪。
 ――――わたしを嘲笑い続けるあいつの顔。
 
 喋るなっ!
 わたしの志貴くんを否定するなっ!
 
 ――――右手を振りかざす。
 ――――狙うはあいつの顔。
 
 その鬱陶しい口をもう2度と聞けないようにしてやるんだからっ!
 志貴くんを否定する口なんて、無いほうがいいんだからっ!
 
 ――――空気を引き裂いて、わたしの怒りを込めて、
 ――――わたしはあいつの顔に爪を振るった……!

425 名前:ヴェドゴニア ◆amVJEDOGOs:2003/05/15(木) 22:51

>>424 ヴェドゴニアVS弓塚さつき
 
 もう、彼女の目は俺と、俺のナイフしか見えていない。
 遮二無二打ち込んでくる彼女の爪は単純極まりなく、ただの反射行動として弾ける。
 こうし向けたのは俺、彼女の心を踏みにじったのは、間違いなく俺だ――――。
 
「認めろ……アンタはもうお終いだッ!」
 
 大振りの、顔面を狙った爪の一撃。
 だから、それじゃ吸血鬼は滅びないんだよ……アンタには経験のない事だったんだろうが。
 そして、俺はこの時を待っていた。
 
 大振りが故に、対処も簡単。
 ナイフを持つ腕に、最大限の力を込める――ギリ、と筋肉が鳴り、終わりへの力を蓄える。
 銃弾すら視認する俺にとって、全力を込められたその腕も、決して対処できない速度じゃない。
 俺の頭に彼女の爪が接触するかしないかの刹那を狙って……ナイフを持つ腕を振り上げた。
 爪と刃、肉と肉、骨と骨の衝突する音をさせて、少女の腕が跳ね上がる。
 
 そのまま前のめりになる少女の身体を受け止めて、耳元に口を寄せて囁く。
 
「俺の事だったら、いくらでも恨んでくれていいぜ……だから」
 
 散々、俺はナイフ一本だけで戦い続けてきた。
 そうすることで、他の攻撃があるという事を意識の外へ追いやるためだ。
 ある種単調ですらあるその攻撃も、布石。
 更に言葉を重ねて激昂させる事で、冷静な判断力を奪った。
 今、彼女にはナイフ――と、俺自身――しか見えていない筈。
 
 だから、今俺が彼女の心臓を捉えた左手の鈎爪は、まったくの意識の外。
 彼女自身が散々振るってきたそれを、俺が振るう事もできるという、至極単純な事実を彼女は失念した。
 故に、今、俺の手は彼女の中に潜り込み、脈打つ心臓を掌握している。
 次から次へと溢れてくる血が、俺の手を赤く濡らす。
 俺の手という異物があるから、再生も不可能。
 彼女の足下には、既に大量の血溜まりができあがっていた。
 
「アンタをそうした奴の事を教えてくれ……このまま塵と消える前に」
 
 こんな事を言う資格は俺にはない……だけど。
 せめてもの罪滅ぼし、いや、自己満足と言われても構わない。
 それでも、俺はこんな悲劇を生み出した奴を許すつもりはなかった。

426 名前:弓塚さつき:2003/05/15(木) 23:53

>>425 ヴェドゴニアVS弓塚さつき
 
 弾かれるわたしの爪。
 跳ね上がるわたしの腕。
 嘲笑うあいつの言葉。
 
『俺の事だったら、いくらでも恨んでくれていいぜ……だから』
 
 恨む……?
 そんな生温いものじゃない………!
 今すぐにでも、引き裂いて、その口を塞いでや――――――――
 
 ―――――ごぶり
 
 わたしの口から唐突に漏れた音。
 わたしの口から唐突に漏れた赤。
 
「え………?」
 
 あいつの左手のわたしの心臓を握っていた。
 どうして、何時の間に………?
 
『アンタをそうした奴の事を教えてくれ……このまま塵と消える前に』
 
 わたしの頭が結論が出す前に、あいつがそう聞いてきた。
 
「……知らないよ。目が覚めたら、こんな身体になっていたんだから」
 
 わたしがそうを言い終わると同時に………
 
 ―――――ぐしゃり
 
 何が弾けた音。
 
 ―――――どさり
 
 何か倒れる音。

427 名前:弓塚さつき:2003/05/15(木) 23:53

>>426
 
 
 あれ、おかしいな………
 
 どうして、こんなに周りが暗いだろう?
 どうして、こんなに体が寒いんだろう?
 どうして、地面に倒れているんだろう?
 
 寒いよ、志貴くん。
 辛いよ、志貴くん。
 
「――――志貴くん、助けて。わたし、今、すごくピンチなんだ………」
 
 ……約束、守ってくれるよね?
 わたし、凄く、頼りにしているんだよ。
 あの約束があったから、わたし、どんなに寒くても、辛くても、渇いても、
 こうやって、生き抜くことが出来たんだ………
 
 
 あ、そうだ、志貴くんが来てくれるんだから、笑顔でいないと………
 そうじゃないと、志貴くんに余計な心配をかけちゃうし。
 
 うん、立ち上がって、志貴くんに………
 
 あれ、おかしいな。
 何故、立ち上がれないんだろう?
 こんなに手足に力を入れているのに………
 
「……志貴く…ん、ごめ…ん、手を…貸して……くれ…るかな。
 ちょっ…と、立ち……上がれな……いんだ、わた…し」
 
 
 ……………
 
 
 ……志貴…くん、遅い…なあ。
 わた…し、凄く、ピン…チなん…だよ?
 立つ…ことさ…え出来……ない……くらいに………
 
 
 ……で……も、待っ……てるか…ら……、
 …志貴く……んは遅……れても、必……ず来て…く……れる……って…信じ――――――

428 名前:フィーア ◆VierFrypjg:2003/05/15(木) 23:57

ダンテvsツァーレンシュヴェスタン 〜Air〜
途中経過レス番まとめ

>275>276

 わたしはわたし。……あなたじゃないわ。

429 名前:蟆霧 ◆slMAKIRIrI:2003/05/16(金) 00:21

蟆霧VSミズー・ビアンカ
イン・ア・フライト (空戦領域)

>48>323>375>376>378>406>409

えー、ご覧のお客様方にご連絡いたしまァーす。
まもなく当機は目的地、皆殺しの野に到着の予定ー。
どうぞシートベルトをご着用くださーい。決して席をお立ちになりませぬよう。

430 名前:伊藤惣太 ◆amVJEDOGOs:2003/05/16(金) 00:36

>>426 >>427 ヴェドゴニアVS弓塚さつき
 
「……そうか」
 
 その呟きと共に、左手に力を込める。
 手の中に収まった心臓は、思った以上に呆気なく、あっさりと砕け散った。
 彼女の身体を解放し、一歩後ろに下がる。
 地面に崩れ落ちて、俺の耳に――もしかしたら自分の耳にすら――届かない言葉を呟き続ける少女。
 途切れ途切れに聞こえてくる、シキという単語。
 血の海でもがきながら、決して来ない助けを待つ彼女。
 それも、吹く風に灰と散って――――。
 
 拳を、路地裏の壁に叩きつけて叩きつけて叩きつける。
 壁と一緒に俺の拳も砕けるが知ったことか。
 一緒に頭も打ち付けた、額が割れて血が流れる。
 チープな自傷、何にもならず、何も生み出さない感傷、それでも、俺はその行為を止められなかった。
 
「……血、もらっときゃよかったな」
 
 疼く牙に、今更気付いた。
 手に付いた血を舐める事で、無理矢理間に合わせる。
 俺だけが人間に戻り、血と死臭だけが立ちこめるそこを後にした。
 
 ……帰り道は、人目に付かないとこを選ばないとな。
 
「あの制服は、確か三咲町の……」
 
 そして、シキ。
 珍しい名前というワケでもないが、ありふれた名前でもない。
 これだけの手掛かりしかない、ないけど……。
 
「モーラ達……協力してくれるかな」
 
 何とか説き伏せてみるしかない。
 俺一人で何とかできるほど、俺の手は長くない。
 駄目なら……俺との協力関係を盾に取ってでも首を縦に振らせるまでだ。
 
 すっかり陽も落ちて、満月が闇夜を薄明るく照らす。
 この月を眺めて嘲笑ってる化物(フリークス)、吸血鬼共……残さずブチ殺してやる。
 こんなのは、もうこんなのはたくさんだ……ッ!
 
「おまえらが牙にかけた命の数だけ泣き叫べ……それから塵に還してやる」
 
 人目につかない路地裏で呟く俺の表情は、人にして鬼のそれだった。
 
(BGM:MOON TEARS)

431 名前:ロゼット&クロノ&アズマリア ◆JiAMENUx66:2003/05/16(金) 00:39

ロゼット&クロノ&アズマリアvsエジャール
『マグダラは燃えているか!』

>>62 >>63 >>64 >>65 >>66 >>67
 
さてさて、どうなることやら
 
クロノ
「ま、なんとかなる。でしょ?」
 
もちろん!

432 名前:弓塚さつき:2003/05/16(金) 00:45

ヴェドゴニアVS弓塚さつき、のレス番纏めです。
 
>410>411>412>413>414>415>416>417>418>419>420
>421>422>423>424>425>426>427>430
 
この闘争に関する感想は……
新生吸血大殲 感想スレッド
http://plan-a.fargaia.com/html/vampbattle/res.cgi/1033894737/
一刻館質問スレ感想スレ
http://www.appletea.to/~charaneta/test/read.cgi/ikkoku/1035898557
にお願いします。

433 名前:シエル ◆kcbhGUILTY:2003/05/16(金) 01:01

えーっと――――
こう言う仕事は初めてなんですけど、これで良いんでしょうか。


・・・わたしは雑用係じゃないんですけどね、まったく。
気が付けばこんな役回りばかりな気がします。
でも、愚痴ばっかり言っても仕方ないですしね。
これも任務の内だと思って我慢します。
と言うわけで、このスレで行われた闘争のインデックスです。


第53章 Smoke,Soile or Sacrifices レス番纏めインデックス

>>56 長牙 VS 夢魔の女王
>>113 鈴鹿御前vs黒蜜(M) 『安達ヶ原に鬼、双つ』
>>148 ガロンvs箕輪祥子
>>154 V.A VS アセルス(半妖) 『Colored me blood violette』
>>159 麻紀絵(M)vsアンドリュー・深津彦・星野(M) 「妖獣都市 狂血鬼」
>>243 祭り ― 無題 ―
>>252 『平成残狂伝 〜死んでもらいます〜』 岩鬼将造vsファーザー・ウェットワーカー
>>274 星川翼vs不死の男『月下の黙示録』闘争まとめ
>>310 La Campanella ――クリスティーン・フローレンスvsシモンズ・バーニアット
>>317 伊藤惣太(ハンター)VS伊藤惣太(ロードヴァンパイア)
>>368 ハインケル・ウーフーVS麻宮アテナ <聖者の街にやってきた>
>>405 ロゼットvsモリガン 「Nightmare Beauty」
>>408 三輪坂真言美vs吸血Zバット
>>432 ヴェドゴニアVS弓塚さつき
 
 
中間レス番纏め
 
>>5  孔濤羅VS御神苗優 『己を修羅と貸せる鬼、己が修羅を殺す妖精』
>>428 ダンテvsツァーレンシュヴェスタン『Air』
>>429 蟆霧VSミズー・ビアンカ イン・ア・フライト (空戦領域)
>>431 ロゼット&クロノ&アズマリアvsエジャール 『マグダラは燃えているか!』


ふう、これで全部ですか・・・?
纏めるのって地味に大変ですね―――――
お腹空いちゃいましたよ。


あ、後・・・
次のスレは、
吸血大殲第54章 「汝が臓腑に千の口付けを」
http://www.appletea.to/~charaneta/test/read.cgi/ikkoku/053007243
になります。
じゃあ、これでわたしは失礼しますね。

434 名前:遠野四季 ◆MC7218th56 :03/09/06 07:48

 星に恋をした男がいた。
 男は海辺に立ち、両手を伸ばして星を崇めた。
 星を抱きしめる事が出来ないのは分かっていたが、それを運命と納得して想
い続け、立派な文学作品を生み出すことが出来た。
 ある日、想いが募って最高に高まった時、星へ向かって虚空に身を投げ出し
た。しかし、もうすぐ星に手が届こうとした刹那のほんの一瞬であるが、届く
訳が無い、と疑いを抱いてしまう。
 そして彼はバラバラになって渚に倒れていた。
 もし、想い続けることができたなら、星と一つになっていただろう。

435 名前:大槻達樹:03/09/08 22:17

うぁ…スゲっ…って見とれてる場合じゃなかった…
えーアーカム日本支部から派遣された新人のスプリガン
『大槻達樹』といいます、よろしくお願いします!カテゴリーは『A』ですね

あとAMスーツ(アーマードマッスルスーツ)の事ですけど、
御神苗先輩のAMスーツとは違って『パワー』『ディフェンス』『スピード』
のタイプがあります、出典は『SPRIGGAN-LUNAR VERSE-』からです(原作から数年後の話です)

あと武装は場合によっては色々変わりますが、スタンダードの装備は以下の通りです、

『ナイフ(オリハルコン製)・投げナイフ×2・ゼロバースト(AMスーツの機能+精神エネルギーを使用した攻撃も可能)』

です、それではよろしくお願いします!

出典 : SPRIGGAN-LUNAR VERSE-(PSのゲームソフトで完全オリジナルストーリーのお話)
名前 : 『大槻達樹』です
年齢 : 18です
性別 : 男性です
職業 : アーカム日本支部のスプリガンです!(まだまだ成り立てですが)
趣味 : ないです
恋人の有無 : いません(いるかどうかわからないですし)
好きな異性のタイプ : いません
好きな食べ物 : レーション
最近気になること : 御神苗先輩達の行動…
一番苦手なもの : 特に無いです
得意な技 : サイコブロー(AMスーツの機能)
一番の決めゼリフ : 『月を兵器なんかに変えさせない!!』って所でしょうか
将来の夢 : 一流のスプリガンになる事です!!
ここの住人として一言 : 初心者ですけど頑張ってやらさせていただきます!
ここの仲間たちに一言 :どうぞよろしくお願いします!!
ここの名無しに一言 : 答えられる範囲で質問していただければいいですよ


436 名前:書けませんよ。。。:停止

真・スレッドストッパー。。。( ̄ー ̄)ニヤリッ

437 名前:書けませんよ。。。:停止

真・スレッドストッパー。。。( ̄ー ̄)ニヤリッ

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